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P「真」雪歩「真ちゃん」
-移動中-
P「しかし、今日も暑いな…」
P「1つ目と2つ目の現場が近いから歩きにしたが、タクシーを呼べばよかったな」
P「二人とも大丈夫か?」
真「はい、ボクは大丈夫ですよ」
雪歩「はいですぅ……ふぅ、ふぅ…」
P「あっ、雪歩。なんだったらその荷物…」
真「雪歩、その荷物貸して」ヒョイ
雪歩「わっ、悪いよ、真ちゃん」
真「いいからいいから。トレーニングにもなるし」
雪歩「えへへ、ありがと。真ちゃん///」
P「……ぐぬぬ」
-事務所-
雪歩「プロデューサー、真ちゃん。お茶をどうぞ」コトッ
P「おぉ、雪歩。ありがとう」
真「いつもごめんね、雪歩」
雪歩「ううん。私が好きで淹れてるだけから気にしてないで」
P「ズズッ…いやー、今日も美味いよ」
真「うーん…ズズッ…やっぱり雪歩のお茶は格別だね」
雪歩「あっ、真ちゃん!」
真「どうかした?」
雪歩「その湯のみ、私の…」
真「ああっ、ごめん雪歩! ボク全く気付かなくって!」
雪歩「ううん、いいの。むしろ真ちゃんなら…///」
真「雪歩…///」
P「……ぐぬぬ」
-楽屋にて-
P「じゃあ、外にいるから、衣装合わせ終わったら呼んでくれ」
真「今回の衣装はめちゃくちゃ可愛いですね!」
P「たまには真のお願いも聞かないとな」
ガチャ
P「~♪」
真『…ちょ、ちょっと、雪歩やめてよ!』
P「……」ピタッ
雪歩『で、でもっ、真ちゃんがちゃんとブラを着けれてないから…』
真『はあっ…/// ゆっ、雪歩!そんなところ、急に…やんっ///』
雪歩『ご、ごめんね、真ちゃん。でも、この衣装ならもっと胸を上げたほうがっ…』
雪歩『……はい、できたよ真ちゃん!』
真『はぁ…はぁっ…』
真『いくら雪歩でも、次は急にやったら怒るからね…///』
P「……ぐぬぬ」
-再び事務所-
P「忙しいところに来てもらって悪いな」
P「雪歩」
雪歩「プロデューサー、どうしたんですか?」
P「単刀直入に聞く」
P「雪歩は俺の真をどう思ってるんだ?」
雪歩「ま、真ちゃんですか…? …私の大切な友達…ですけど…」
雪歩「プロデューサーこそ『俺の真』って、どういうことですか?」
P「意味も何も、そのままだが」
雪歩「でも、真ちゃんはプロデューサーとは付き合ってません」
P「そんなの、俺が一番知ってる」
雪歩「じゃあ、なんで…」
P「付き合ってなくても、それでも俺の真であることには代わりない」
雪歩「そっ、それは、おかしいです!真ちゃんは、皆の真ちゃんですぅ!」
P「なっ、何を言ってるんだ!真は俺の真だ!」
雪歩「っ…プロデューサーの真ちゃんじゃなくて、皆の…。ううん…、私の真ちゃんです!」
P「おい、皆のじゃなかったのか!」
雪歩「違います!私の真ちゃんです!」
P「俺の!」
雪歩「私のですぅ!」
P「はぁ…はぁ…」
雪歩「ふぅ…ふぅ…」
P「ちょっと、落ち着こう…」
雪歩「そ、そうですね…」
P「冷静に考えてくれ。雪歩は女。真も女だ」
P「ここに友情以外の感情が芽生えるのはおかしい!」
雪歩「…っ!」
雪歩「…そっ、それを言うなら、プロデューサーだって、アイドルとプロデューサーの関係ですぅ!」
雪歩「ファンや事務所の皆を裏切るんですかっ?」
P「…っ!」
P「くそっ、俺はもう帰る」
雪歩「…好きにしてください」
P「今度、真を連れてきて、直接本人に選んでもらうからな」
P「それで決着つけるから、それまで持ち越しだ」
雪歩「……っ」プイッ
・・・
・・
・
ガチャ
P「……ただいまー」
雪歩「……」
P「…おかえりの一つもないのか?」
雪歩「……」
雪歩「…寄り道して、遅い時間に帰る人にはありません」プイッ
P「さっきの件で、真の家に行って、時間が取れそうな日程を確認してただけだよ。とりあえず、次の日曜日は確保したから」
雪歩「また、真ちゃんに浮気ですか?」
P「くっ…、真が可愛いんだからしょうがないだろ…」
P「それで、晩ご飯は?」
雪歩「もう、全部食べちゃいました。自分で冷蔵庫の残りでも探してくださいっ」
雪歩「私は先に寝ますぅ!」
バタンッ
P「なんだよ、雪歩のやつ…」
ガチャ
P「……」
P「こんなにいっぱい食えるかよ…」
P(一言で言うと、俺と雪歩は付き合って同棲している)
P(いつからか…どうしてなのか…。語るほどでもない、ほんの些細なきっかけから)
P(しかし、一つ、普通のカップルと違うと言えば…)
P(……俺と雪歩は真が好きなだけ…)
・・・
・・
・
-日曜日-
真「こんにちはー」
P「おぉ、よく来たな真」
雪歩「いらっしゃい、真ちゃん」
真「……」
真「………あっ、あはは…」
真「本当に二人が同棲してたんですね…」
P「あぁ、言ってただろ?」
真「いや、何か舞台裏でも言い争ってたりしてるから、てっきり仲が悪いのかと…」
雪歩「そんなことないよ!」
真「……」
真「…………あの」
P「?」
雪歩「?」
真「……あの、ポスターは…?」
P「あぁ、あれか?見ての通り、真が写った等身大ポスターだよ」
P「しかも、壁一面に全パターンだ。どうだ、可愛いだろ?」
真「……。……あそこに飾ってるのは?」
雪歩「あれは、真ちゃんがこの間のライブで着てた衣装だよ」
雪歩「実は、プロデューサーに頼んで回収してもらったんだけど、洗ってないから真ちゃんの良い匂いがするんだ、えへへっ///」
真「……」
P「ちなみに、その隣にあるのは、真に内緒で作った等身大の抱き枕な」
P「交互に抱いて寝るって雪歩と約束してるのに、昨日も一昨日も雪歩が抱いて寝たんだぞ、ズルいと思わないか?」
雪歩「むっ、その前にプロデューサーが3日間手放さなかったからですぅ!」
P「あれ、そうだっけ?」
真「……」
雪歩「あと、抱き枕には、真ちゃんがレッスンで使ったトレーニングウェアを着せてるんだよ?かわいいよね?」
P「もちろん、雪歩に頼んで更衣室から拝借したから、洗ってないけどな」
真「………」
真「……………」
真「うわああああああああああ!!!!」
P&雪歩「どっ、どうした!(どうしたの?)真!(真ちゃん?)」
真「なっ、なんなんですか、これはっ!!」
P&雪歩「?」
真「天井にまでボクのポスターやブロマイドを貼ってるし!」
P「どこにいても、真の視線を感じられるんだ、最高だろ?」ニヤニヤ
真「部屋にBGM流れてると思ったらボクの歌だし!」
雪歩「部屋のどこにいても、真ちゃんの声が聞こえるんだよ?」ニコニコ
真「なんなのこれはあああああーーーー!!!」
真「正直、玄関開けた時からボクの視線ばっかりで怖かったけど!!」
P「俺と雪歩が1日かけて部屋を飾ったんだぜ」
雪歩「そういえば…、あれが二人でした初めての共同作業ですぅ…///」
真(何処で照れたの?!)
真「……二人は」
P「?」
雪歩「?」
真「二人は本当に愛し合ってるんですか…?」
P「……」
雪歩「……」
P「そんなの当たり前だけど…」
雪歩「いくら真ちゃんでも、言っていいことと悪いことがあるよ…」
シーン
真(えっ、ボクが悪いの?)
P「そもそも、好きじゃなきゃ同棲しないし」
雪歩「私も、男の人で触れ合えるのは、プロデューサーだけだよぉ…」
真(……じゃあ、なんでボクはこんな空間に閉じ込められてるんですか…)
P「最近の雪歩は真にかまってばっかりで…」
雪歩「プロデューサーこそ、真ちゃんのことしかみてないですぅ…」
P「……雪歩」チラッ
雪歩「……プロデューサー」チラッ
真(………)
P「なんかごめんな、雪歩…つい真の事になると…」
雪歩「いえ…いいんです、プロデューサー…私も真ちゃんが…」
P「雪歩は悪くないよ、俺が…」 イチャイチャ
雪歩「私が悪いんですぅ…」 イチャイチャ
真(………)
真(は?)
P「今日ぐらい、たまには一緒に寝ようか…?」 イチャイチャ
雪歩「ええっ!もうプロデューサー。真ちゃんの前で恥ずかしいですぅ…。でも…、今日ぐらい…」 イチャイチャ
真「……」
真「ボクもう帰ります…」
P「どうしよう、俺、一緒寝るだけじゃ…」 イチャイチャ
雪歩「……私は…いいですよ…」 イチャイチャ
ガチャ
真「…じゃあ、また明日、事務所で」
P「じゃあ、今日は二人の寝てる真ん中に、真の抱き枕な?」
雪歩「はいですぅ」
真「っ?! それだけはやめてえええぇぇぇぇっっ!!!!」
P&雪歩「?」
-おしまい
まこりん、ごめんよ
まこりん可愛い
Entry ⇒ 2012.09.25 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
カレン「あなたにとって、私は何?」ゼロ「……!」
ルルーシュ(どうする!? KMFが邪魔だが扇達は無防備だ……バレないようにギアスを使えば、しかし……!!)
南「みんなお前を信じていたのに!!」
杉山「井上も吉田も、お前の為に死んだんだ!!」
カレン「待ってッ!! 一方的過ぎるわ、こんなの!!」
カレン「ゼロのおかげで私達、ここまで来られたんじゃない!! 彼の言い分も!!」
玉城「どけっ! カレン!!」
杉山「ゼロと一緒に死にたいのか!?」
南「まさかギアスにかかってるんじゃないよな!?」
カレン「……ッ……」
カレン「……答えて、ルルーシュ……あなたにとって、私は何……?」
ゼロ「……!」
ルルーシュ(…………な……何だろう……?)タラリ
ルルーシュ(まずいぞ……何だと訊かれても具体的に何かなど考えた事がない!)※聞いてない
ルルーシュ(だがナナリーとシャーリーを喪い、C.C.も記憶喪失の今、俺にとって唯一残った大事な存在なのは間違いない)
ルルーシュ(だが『大事な存在』とは何だ? 具体性に欠ける……)
ルルーシュ(落ち着け、冷静に考えろ……間に合わせの答えではカレンの信頼を損ねる、それは避けねばならない)
ルルーシュ(この状況からして考える時間はあまりない……急ぎ検証せねばならない!)
ルルーシュ(鍵となるのはやはり先ほどのカレンの発言だ)※聞こえてない
ルルーシュ(『何?』と訊かれた以上は、抽象的なものではなく固有名詞としての答えだな……)
ルルーシュ(対人関係に置いて使われる固有名詞ともなれば膨大な数となる)
ルルーシュ(だがさっきカレンはゼロではなくルルーシュとしての俺に聞いてきたな)
ルルーシュ(加えてカレンは女性だ、これらを考慮すると150パターンほどに絞り込める! それならいける!!)
※現在ルルーシュはシュナイゼルの姿が目に入ってない
ルルーシュ(なんとかするには、なんとか……!!)
扇「何とか言ったらどうだ、ゼロ!!」
玉城「ゼロォ~ッ!! 間違いだって言ってくれよぉ~っ!!」
千葉「いい加減離れろ紅月!! お前まで巻き込むぞ!!」
カレン「……ねぇお願い、答えて!!」
ゼロ「……タイム!!」
カレン「え? あ、あの……タイムって、何?」
ゼロ「タイムはタイムだ、ちょっと待て!!」
藤堂「タイムなどといえる状況と思うのか!!」
ゼロ「ちぃ、頭でっかちどもめ……カレン、ちょっと耳貸せ!!」
カレン「えぇ? あ、はい……」
カレン「で、ホントに何?」
ゼロ「カレン、君はさっき俺に訊いたな? 『あなたにとって、私は何?』と。今それを考えてる」
カレン「はぁ!? ……じゃ、じゃあ……」
ゼロ「だから考える時間が欲しいんだ、そのためのタイムだ!!」
カレン「……そう、今になって考えるって事は……」
ゼロ「ん? ……なんだ?」
カレン「……私はあなたにとって、何でもなかったのね……」ウルッ
ゼロ「ほぁ!? 違う、間違っているぞカレン!!」ヒヤアセ
ゼロ「えぇい聞け!! いいか、大事か嫌いかどうでもいいかの3択なら、間違いなく大事だ!! これはホントだ、本心だ!!」
カレン「……!!!!」
ゼロ「だがここで疑問なのが、大事な物といっても何だという事だ」
カレン「えぇ?」
ゼロ「例えば幼馴染という間柄があるだろう」
ゼロ「アレはあまりに距離が近すぎるために、いるのが当たり前になってしまう。だからどんな存在かという事を意識することも少ない」
ゼロ「俺が君に感じている想いはそんな感じだ、いるのが当たり前だけに何かと訊かれるとわからない!!」
カレン「いや、大事なものってだけで充分嬉しいんだけど」
ゼロ「ダメだ、君が納得しても俺は納得しない!! 俺にとって君は何か、自分でもその解が欲しい!!」
ゼロ「ダメだダメだ!! 納得は全てにおいて優先する!!」
カレン「うわぁめんどくさ……」
ゼロ「というわけだからカレン、考えるだけの時間が欲しい。少し待ってくれないか」
カレン「この状況で待てってのも……」
ゼロ「仕方ないだろう、色々あって思考もまとまらないんだ!!」
カレン「あ……そうか、そうだよね……C.C.とナナリーの事、それにシャーリーも亡くなったって聞いたし……」
ゼロ「……!! そうか、知っていたか……」
カレン「……わかった、待つわ……でも、少しだけだよ?」
ゼロ「ありがとう、カレン!!」
ゼロ「そうだな……5分、いや3分くらいでなんとか」
カレン「そう、それじゃ一旦気を落ち着けましょう! はい、深呼吸!! 吸って~」
ゼロ「(スウゥ~~~~~~ッ)」
カレン「吐いて~」
ゼロ「(ハアァ~~~~~~ッ)」
カレン「どう? 少しは落ち着いた?」
ゼロ「ああ、思考がクリアになった気がする!!」
カレン「あと、あまり難しく考えなくていいからね? イメージ的な答えでも十分だから」
ゼロ「何!? それではせっかく150程度に減ってたパターンがまた5000以上に増えてしまう!!」
カレン「(そうだ、こーいうやつだった)……好きに考えなさい!! んじゃそろそろOK!?」
カレン「落ち着いて考えれば大丈夫だから、あなたは出来る子だから!!」
ゼロ「わかった、では俺は検証に入る!!」
千葉「何をやってるんだあの二人は? この状況でヒソヒソ話こんだりして」
藤堂「突然深呼吸など、意味が……」
カレン「みんな!!!!」
一同「「「!?」」」
カレン「チャージドタイムアウト、ゼロ!!」シュピッ
一同「「「」」」
カレン「だから正式にタイムの申し入れをしたんです!!」
千葉「言ってられる状況か!! 囲まれてるの判るだろう!?」
カレン「だって彼にも考える時間ぐらいあったっていいでしょ!? 言う事ないのか~とかいいながら銃突きつけて、言わせる気すらないじゃない!!」
玉城「いやそうだけどさぁ、少しは読もうぜ空気?」
カレン「あんたに言われるのだけは心外ねぇ!!」
藤堂「落ち着け紅月君。君がそこを離れれば済む話だぞ?」
カレン「ダ~メ~で~す!! 彼は今すっっっごく大事な事考えてるんだからぁ!!」
ゼロ「……」ブツブツ(うつむきながら思案中)
カレン「違います~!! その……プライベートな事だから、ここで言うわけには……」モジモジ
藤堂「ますます判らん。それがハッキリしないなら我々だって納得せんぞ?」
千葉「そうだ、また私達を騙す事考えてるとしか思えない!!」
カレン「違いますってば!! あ~もう……ホントに言わなきゃダメェ?」
南「いくらカレンの言う事でも、ダメなもんはダメ!!」
カレン「南さん……!! ロリコンだって言いふらすわよ!?」
南「なっ、皆の前だろ!! 言うなぁ~っ!!」
一同「「「いや、もう知ってるし」」」
南「」
ゼロ「……」ブツブツ
カレン「藤堂さん……!!」
藤堂「だが納得が欲しいのも事実だ。紅月君、今ゼロは何を考えている?」
カレン「うぇ!? や、やっぱり言うのぉ!?」
千葉「どくか話すか、二つに一つだ!!」
扇「どくんだカレン!! その方がいいんだぞ!!」
カレン「う、うぅ……」モジモジ
ゼロ「……」ブツブツ
シュナイゼル「(ルルーシュが長考とは珍しいねぇ)」ヒソヒソ
カノン「(いやここ長考する場面じゃないと思いますわ、失礼ですが弟君って意外とバカですか?)」ヒソヒソ
シュナイゼル「(まぁ見ていようじゃないか。私の弟だ、驚くべき逆転の一手を繰り出すかもね)」ヒソヒソ
千葉「ほら紅月、はっきりしろ!!」
カレン「か、彼にとって、その……私は何かって……///」モジモジ
一同「「「「「「」」」」」」
藤堂「……ほぅ?」
ディートハルト「これはこれは……当初の予定より番組内容が変わるかもしれませんねぇ」
千葉「紅月……そういうのは二人だけの時に訊くべきだと思うぞ」
カレン「しょ、しょうがないじゃないですかぁ!! 命張るつもりで、後押しほしくて訊いたんだからぁ!!///」
ゼロ「……」ブツブツ
ルルーシュ(さて改めて考えるとだ。役職という考え方は消え去るな)
ルルーシュ(なぜなら出すべき解は『ゼロ』としてではなく『ルルーシュ』としての答えだ、よって部下とか同僚はもってのほかだ)
ルルーシュ(ではクラスメイト……だめだ、これはその他大勢と同義だ。第一今現在カレンは学生の立場ではない)
ルルーシュ(では友達……大事だが軽いな。それにただの友達ではない気がする)
ルルーシュ(それなら親友……は違う。俺はスザクが最初で最後の親友だと認識しているからな)
ルルーシュ(……くっ、予想以上に困難な問題だ!!)
ルルーシュ(他に俺達の関係に近い言葉……となるとまさか男女関係になるのか!?)
ルルーシュ(すると恋仲!?……ち、違うな……異性として意識した事もあるかもしれなくもないかもしれないが付き合ってるわけじゃない、告白した・されたもないだろうが!!)ドキドキ
ルルーシュ(ならば愛人……ってバカか俺は!! 俺達はそんなふしだらな関係では断じてない!!)ドキドキ
ルルーシュ(えぇい、何かヒント、ヒントはないか!?)
ルルーシュ(だが今は『ルルーシュ』としての答えだ!! あ~何かヒントヒント……)
ルルーシュ(!! そうだ、俺に対しカレンがかけた言葉!!)
ルルーシュ(それに対し俺自身が抱いた感情、これを検証すればヒントにはなる!!)
ルルーシュ(よぉ~し思い出せ!! カレンがかけた言葉の一言一句!! それに対し抱いた感情!! その全てを!!)
ルルーシュ(大丈夫だ、俺はやれば出来る子だ!! さっきカレンもそう言ったじゃないかぁぁぁっ!!)
(カレン『ふざけないで!!……一度失敗したくらいで何よ!』)
(カレン『しっかりしろルルーシュ!!』)
(カレン『何やってたのよあんた達は!?私が捕まってる間に!!』)
(カレン『待って!! 一方的すぎるわ、こんなの!!……彼の言い分も!!』)
(カレン『……共に進みます。私は、あなたと共に』)
ルルーシュ(!!!!)ピキーン!
ゼロ「フ、フフフハハハハハハハ……!!」
藤堂「!?」
カレン「!? 素顔を……!?」
千葉「本当に……ブリタニア人の子供……!?」
ルルーシュ「自分自身の気持ちに……カレンが俺にとってどんな存在であったかと言うことに!!」
扇「くっ! 早くどくんだカレン!! ギアスをかけられてしまうぞ!!」
ルルーシュ「ギアス? そんなものを使いはしない!!……カレン!!」
カレン「は……はいっ!!」
ルルーシュ「日本ではこんな時、こう言うんだろう? 『ととのいました』ッ!!」
ルルーシュ「ああ。ずいぶんと時間がかかってしまって、すまなかったな」
ルルーシュ「判ってしまえば簡単な事だった。なぜ判らなかったんだろうな、俺は」
カレン「じゃあ、その……聞かせて……」ドキドキ
藤堂「待て。ディートハルトよ!! ちゃんとカメラは回っているか!?」
ディートハルト「当然です。メモリー、バッテリー残量ともバッチリです」
千葉「いや藤堂さん、ここは自重された方が……」
藤堂「千葉ァ!! 一世一代の告白シーンだ、最期かも知れないし撮っておくのが筋だろう!!」
千葉「す、すみません!!」
ルルーシュ「あの、もう言ってもいいのか?」
藤堂「ああ、存分に言うがいい!!」
カレン「はい……」
ルルーシュ「俺は今まで何度も君を騙し、傷つけてきた。しかし、それでも君は俺を信じてついて来てくれた」
カレン「う、うん……」ドキドキ
ルルーシュ「君の言葉に、行動に、何度救われたかなど……もう数え切れない」
ルルーシュ「ゼロの仮面を被り続ける騎士団生活の中でも、君の近くでだけは素の俺でいられたんだ」
カレン「も、もったいつけないでよ……早くその、言って……」モジモジ
ルルーシュ「……そうだな。では、今ここに宣言する!!」バッ!!
藤堂「よし、全員注目!!」バッ!!
ディートハルト「よし、ここは二人をアップで!!」ガシャッ!!
カレン「……!」ドキドキ
ルルーシュ「言葉で表すなら!!」
カレン「…………っ!!!!」ドキドキドキ!!
一同「「「表すなら!?」」」キキミミッ
ルルーシュ「俺のッ!!」
カレン「………………ッ!!!!!!」ドキドキドキドキ!!
ルルーシュ「お母さんですッ!!!」
一同「「「「「「「」」」」」」」
カレン「……はい?」
ルルーシュ「カレン。C.C.から聞いていると思うが、俺は幼少の頃に母上を喪っている」
ルルーシュ「それからはナナリーをただ一人の家族として生きてきた」
ルルーシュ「だが9歳ともなればまだまだ母親が恋しい頃だ」
ルルーシュ「そんな時期に母上を喪った俺は無意識に母性愛を求めていたのだと思う」
ルルーシュ「そこへ現れたのが君だよ、カレン!!」ズバッ!!
カレン「全く意味がわからないんだけど!?」
千葉「……誰かわかるか?」
杉山「全然」
玉城「わかる方がすげーよ」
藤堂「……ふむ」
ルルーシュ「そしてその時抱いた感情を繋ぎ合わせたとき、パズルは解けた!」
ルルーシュ「落ち込んだ時に思いやりある言葉をかけ励ましてくれる優しさ!」
ルルーシュ「へたれて自暴自棄になった時に本気で叱ってくれる厳しさ!」
ルルーシュ「窮地に陥った時は我が身を省みず助けようとする度胸!」
ルルーシュ「性的トラブルを予感させる状況を逸早く察知する洞察力!」
ルルーシュ「信じた相手にはどこまでも尽くそうとしてくれる深き情!」
ルルーシュ「それらを象徴する、母性愛が詰まったかのような大きな胸!!」
ルルーシュ「どこをとっても!まさに!日本の良きお母さんそのものじゃないか!!」
カレン「」
ルルーシュ「そばにいてくれると安らぐのも当然だ……俺が求めていた母性は、こんなすぐそばにあったのだから!!」ダキシメッ
カレン「ちょ! るる、ルルーシュ!?///」ドキドキ
ルルーシュ「そうさ、母上もこんな暖かさを持っていた……!! あぁ、暖かいよカレン!!」
カレン「あの、人の話を聞いt
ルルーシュ「思い返せば母上もKMF操縦の達人だった!! そんなところも共通するなんて、まさに完璧だ!!」
カレン「」
千葉「まぁ確かに紅月なら意外といいお母さんになるかもしれないが、それとこれとは」
藤堂「むぅ……」
カノン「(殿下、アレはさすがに冗談ですよね?)」ヒソヒソ
シュナイゼル「(いや、本気かもしれないね。彼はマリアンヌ様の事大好きだったから)」ヒソヒソ
ルルーシュ「大丈夫だ、もう心配要らない!! 君の事は、この俺が必ず守るから!! また母の絆を失ってたまるものか!!」
カレン(い、いい台詞かもしれないけど……話の流れがこんなんじゃ喜べないじゃないのぉ!!)
ディートハルト「えーっと、今のは編集ミスとか聞き間違いじゃありませんよね?」
ルルーシュ「いつも言っているだろう!! 俺はいつでも大真面目だ!!」
一同「「「「「」」」」」
カノン「(本気、みたいですね……」)ヒソヒソ
シュナイゼル「(ルルーシュ……まさか、新たな扉を開けてしまうとは……」)ヒソヒソ
ルルーシュ「なんだ?」
藤堂「今の言を聞く限り、少なくとも紅月君の事は駒と思ってはいないようだな?」
ルルーシュ「当たり前だ!! この人は俺にとって第二の母さんだ!!」キッ!
扇「カレン! こんなバカに付き合う必要はないぞ!?」
ルルーシュ「俺はいたって真剣だ!! 彼女はこの俺が、命に代えても守る!!」
千葉「いやカッコいい台詞かもしれんが、この流れじゃ台無しだぞお前!」
藤堂「ならば問う!! 君にとって我々は……黒の騎士団とは何だ!!」
ルルーシュ(やはり、そうくるか!!)
ルルーシュ(この答えとてその場しのぎの物は許されない……チャンスは一度のみ!)
ルルーシュ(だがカレンの問いに解を導き出したとき、ここで出すべき答えも見えた! あとはやるだけ……!!)
藤堂「応えてもらおう、ゼロ!! 我らは君にとって、駒か、否か!!」
ルルーシュ「もちろん、答えは出ているさ!! だがその前に一つ、質問に答えてもらいたい!!」
千葉「何だと!?」
扇「お前に質問する権利なんt
藤堂「待て!! ……答えよう。何だ?」
ルルーシュ(感謝するぞ藤堂!! これならいける!!)
ルルーシュ「だが元々はブリタニアに対抗する一レジスタンス組織、謂わば無頼の輩だ!! わかるか!?」
藤堂「……重々承知している。だがそれが今何の関係がある?」
ルルーシュ「そう、元々は社会に疎まれ、弾き出された存在……いわばギャングや、日本の……ヤクザ、といったか? それと同じ!!」
ルルーシュ「そんな彼らの様な組織に共通する呼称は知っているか!?」
藤堂「待て……ッ!! まさか!?」
ルルーシュ「一家、ファミリー……言語による表現の差異こそあるが、その意味は同じ!!」
ルルーシュ「そう……『家族』だよ!!」
ルルーシュ「だが黒の騎士団を立ち上げて以来、皆が俺を頼ってくれる、必要としてくれる!」
ルルーシュ「そうしているうちにここは俺が存在していられるもうひとつの場所になっていたんだ」
ルルーシュ「そう、自分が存在していい、そしているのが当たり前の集団……運命共同体!!」
ルルーシュ「例え血の繋がりがなくとも、それはつまり家族といえないだろうか!?」
玉城「ゼ、ゼロォ~ッ!」ウルッ
藤堂「待て」
ルルーシュ(く……さすがに、苦しいか!?)
藤堂「我々を家族というのなら……」
ルルーシュ「……素顔をさらさなかった理由、か?」
千葉「そ、そうだ!!」
ルルーシュ「いわば俺は日本人の敵。素性をさらして、受け入れてもらえるとは思えなかった」
ルルーシュ「だから俺は仮面で素顔を隠すしかなかった。皆が必要としてくれたのは『ゼロ』であって―――俺じゃ、ないから」
千葉「そんな、それじゃ……」
ルルーシュ「怖かったんだよ、手にした家族を失うのが。そして結果は見ての通りだ」
ルルーシュ「そういう事だ、藤堂。納得してもらえただろうか?」
藤堂「いや……折角説明してもらって悪いが、そうじゃない」
ルルーシュ「何……?」
藤堂「……お父さんポジは、誰だ?」
藤堂「だからお父さんといえるポジションの人間だ。紅月君がお母さんポジなら、対となる存在が必要だろう」
ルルーシュ(そんな……!! 予想外だ!! 父親にブリタニア皇帝であるシャルルを持つ俺にとって、父親など最も忌むべき存在!!)
ルルーシュ(そんな父親のポジションに収まる人物だと!? そんなもの考えすらしないぞ!!)
ルルーシュ「……っ」
扇「藤堂将軍、出るわけないですよ答えなんて!! さっきのだって所詮でまかせだろうし!!」
ルルーシュ「違う、俺は本当に!!」
玉城「どうなんだよゼロォ!!」
ルルーシュ(くっ、どうする!? 答えが見出せない、このままでは……カレン!!!!)
ルルーシュ(そう、全てを受け止めるような大きな背中……俺の持っていない力強さを感じさせる背中!!)
ルルーシュ(そして言動の端々から感じさせる男らしさ……それを持ち得るのは!?)
玉城「な、なぁゼロ……俺今まで親友と思ってたけど、お前もしかして俺を親父代わりに……」
ルルーシュ「いや、それはない」
玉城「」
藤堂「ン、ンンッ!!」
千葉「……藤堂さん?」
藤堂「そ、そういえば……私ももし若い頃ヤンチゃをしていれば、君くらいの年の子供がいてもおかしくないんだがな……」チラッ
ルルーシュ「!?」
ルルーシュ「藤堂……あなたは……」
藤堂「わ、私も家庭を持つのも吝かではないというか、だな……その」チラッ
ルルーシュ「い、いいのか……? 俺が、あなたを父と呼んでも……!!」フルフル
藤堂「わ、私は別にその……構わん、ぞ?」ドキドキ
ルルーシュ「と、藤堂……! いや違う!!」
ルルーシュ「お藤さんッ!!!!」ブワッ
藤堂「ゼロ……いや、ルル坊!!」ニッ
千葉「藤堂さぁん!! 正気に戻ってぇ!!」
千葉「嘘ぉっ!! だって、だってぇっ!!」
扇「藤堂将軍がこんな事をいうなんて、まさか! これがギアスか!?」
ルルーシュ「違う!! 言っただろう、この場でギアスは使わないとさっき言っただろう!!」
ルルーシュ「言っておく!! 皆が今いるその場所は、俺のギアスの有効射程外だ!! だから大丈夫だ、問題ない!!」
ルルーシュ「お藤さん! そして皆! あなた達の心は、あなた達自身のものだ!!」
藤堂「ルル坊……!!」
千葉「私が言ってるのはそこじゃない!!」
千葉「藤堂さんがお前の父親になったら、その奥さんは紅月ということになるのかぁっ!?」ナミダメ
藤堂・ルル「!!!!」
千葉「だってそうだろう!? お前が紅月を母親と思ってるって事は!!」
藤堂「そうだな、母の対は父だ!! 父と母の組み合わせは夫婦だ!! すなわち!!」
ルルーシュ「カレンと……お藤さんが、夫婦……!?」
玉城「けどよぉ? シングルマザーって言葉だってあるだろぉ?」
ルルーシュ(確かにその言葉なら解決する……だが俺はカレンにもっと幸せでいて欲しい!! 認めるべきか、どうなんだ!?)
藤堂「落ち着け、千葉よ」
千葉「ムリですぅ! ダメなんですか!? 私みたいな三十路の行き遅れはぁ!!」グスグスッ
藤堂「弱ったな……正直言うと私も男である以上、幼妻という言葉にはロマンを感じる」
南「お、俺も若い方がいいです!!」
千葉「」
ルルーシュ(まずいぞ……これではそのうち千葉がヒステリーを起こして全てが終わってしまう!! どうする!? どうすればいい!?)
カレン「あのぉーーーーーっ!!!!」
一同((((ビクッ!!))))
ディートハルト「っと、そういえばさっきから彼女、何も喋ってませんでしたね」
ルルーシュ「カレン……いや、カーさん?」
カレン「誰がカーさんよ!? さっきから聞いてりゃぁ皆好き放題いってくれちゃってぇ!!」プンスカ
カレン「皆一旦銃下げて!! 静かにして、そんで私の話を聞くっ!!!!」
一同「「「「は、はいっ!!!!」」」」
カレン「ルルーシュ。折角告白してもらってなんだけど、私……あなたのお母さんになんてなれない!!」
ルルーシュ「のぁっ!!??」ガビーン
カレン「そして藤堂さん!! あなたの奥さんにだってなれません!!」ズバッ!!
藤堂「な……に……!?」
千葉(ちょ、ちょっと安心……)
ルルーシュ「そんなカレン、どうして!?」
カレン「どうしても何も! そんなもん考えなくてもわかるでしょ!?」
カレン「ったりまえでしょ!! いい、あんたと私は同い年なのよ!?」
カレン「同い年で母子なんて成立するわけ!?」
ルルーシュ「はぅっ……!?」
藤堂「待て紅月君、ルル坊が私の連れ子で君が再婚相手と言うなら成り立つぞ!!」
カレン「藤堂さん、あなたは立派な戦士だし、日本人の誇りも忘れない素晴らしい方です」
カレン「でも、あなたは私のタイプじゃありません!! だから妻になんてなれません!!」
藤堂「そっ……ん、な……」
カレン「大体千葉さんがいるでしょーに!! 千葉さんの好意なんて皆知ってんですから!!」プンスカ
千葉「こ、紅月ぃ……///」ブワッ
カレン「だったら千葉さんが藤堂さんの奥さんになれば万事解決でしょ!?」
カレン「千葉さん料理上手いし、ちょっとぶっきらぼうだけど思いやりあるし、その……む、胸だっておっきいし」
千葉「紅月……お前……」ウルウル
ルルーシュ「だけど、俺は君こそが!!」
カレン「ストップ!! いいから話聞く!!」
ルルーシュ「!?」
カレン「『全てが終わったら、一緒にアッシュフォード学園に帰ろう』って。……あのときは言えなかったけど、私すっごく嬉しかった」
ルルーシュ「カレン……」
カレン「あの言葉に、捕縛されたときに叫んでくれた事がホントに嬉しくて―――その言葉があったから、捕虜になってるときも、腐らずにいられたの」
ルルーシュ「あ、ああ……」
カレン「戻ってきて、大事な人を3人も失って、そんなあなたを心から支えたいと思った。一緒に歩んでいきたいと思った」
ルルーシュ「俺だって、俺だってそうだ、だから―――」
カレン「そう思ってたのに……いきなりお母さんって何よぉ!!」
ルルーシュ「」
ルルーシュ「えぇ!? 普通に言えばいいんじゃないのか!?」
カレン「いえるかぁっ!! 想像してみなさいよ!!」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
リヴァル『なぁ、最近ルルーシュとカレンの関係って変わった? 付き合ってるってワケでもなさそうだけど」
ルルーシュ『あぁ、伝えてなかったな。実は……母です』
カレン『息子です』
ルルーシュ『母さん、今日は確か卵が安くなってるはずだ』
カレン『じゃあ帰りに買い忘れないようにしないといけないわね~』
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ルルーシュ「リヴァルならきっとわかっt
カレン「くれるかぁっ!! 変な事やってるとしか映らないわよ!!」
カレン「絶対イヤ!! ムリ!! 受け入れられるわけないでしょう!!」
藤堂「しかし紅月君、この黒の騎士団という大家族の中で君のポジショニングは極めて重要だ!!」
藤堂「ルル坊が君を極めて近い位置に求めているなら、母親以外に何がある!?」
ルルーシュ「そうだカレン、何ならいいんだ!? 頼む、教えてくれ!!」
カレン「……っ」
カレン「……め……さん……」ポソッ
ルルーシュ「ん? 何だ? よく聴こえないぞ?」
カレン「およめさんが、いいです///」
カレン「……うん///」コクリ
ルルーシュ「なら別に問題ないじゃないか、お藤さんのお嫁さんで、俺の母さんで」
カレン「話聞いてた? ……あなたのお嫁さんになりたいって、そう……言ってるんだけど」
ルルーシュ「……へ?」
ディートハルト「これは……想像以上の画が撮れそうな気がしますねぇ!!」
扇「カレン、何を言っt(ガスッ!!)
千葉「紅月……!! がんばれ、紅月!!」
カレン「悪かったわね不器用で!! けど、あなただって鈍感が過ぎるわよ!!」
カレン「そうよ、私はあなたが好きよ! 愛してるわよ!! ナナリーにだって、シャーリーにだって負けないくらい!!」
カレン「あのバベルタワーでまた逢えた時―――うぅん、きっと初めて学園であった日から気になってたわよ!!」
カレン「全くバッカじゃないの!? よりによってこんな、皆の見てる前で言わせるなんて!! ばかぁ!!!!////」
ルルーシュ「お……俺は……」
ルルーシュ「君が愛してくれても、俺はパートナーとして守る事なんて……」
藤堂「―――喝ッ!!」
ルルーシュ「!! お藤さん!?」
藤堂「ルル坊……紅月は皆の面前で、勇気を振り絞ってお前に告白したのだ」
藤堂「お前はその想いを無下にする気か? それでもお前は私の息子、日本人か!?」
ルルーシュ「だが俺は、ブリタニア人で……」
藤堂「心さえあれば、それは日本人。……お前が自分で言った言葉だ。忘れたか?」
ルルーシュ「!!」
藤堂「守る自信がない? フ、甘ったれるなよ。さっき紅月を守りたいと言ったのはお前自身だ」
藤堂「その意思に偽りなくば、全てを賭して護り抜く覚悟を決めろ。女子にああまで言わせたのだ、腹を括れ!!」
ルルーシュ「俺は……俺は……!!」
藤堂「(? アナタ?)なんだ千葉よ、この期に及んで!!」
千葉「すみません、ですが一つ問題が残っています!!」
藤堂「……言え」
千葉「はい……その、例え本人同志がいいと言っても、渡された資料によれば彼はまだ17歳!!」
千葉「紅月を娶るには法律上年齢がわずか、ほんのわずか足りません!!」
ルルーシュ「っ……そうだ……俺にはまだ、カレンをお嫁さんにするなんて……!!」
藤堂「フ、そんな事か。下らんな」
千葉「えぇ!?」
藤堂「覆す手が……私にはある!!」キュピーン!
藤堂「ルル坊、お前は『元服』というものを知っているか?」
ルルーシュ「ゲン、プク? ……いや」
藤堂「さすがに知らんか。かつて日本がまだ戦国の世だった頃に存在した制度でな」ニヤリ
藤堂「その制度の元では、男子は齢十五にして大人である事を認められる」
ルルーシュ「……!!」
藤堂「ルル坊、お前は以前我らに言ったな? 我々の合衆国日本は、かつて敗れた日本とは違う、新しい日本だと」
藤堂「ならば婚姻に関する法律に、新たにそれを取り入れればいい。さすれば―――」
ルルーシュ「まさに全ての条件はクリアされる!!……お藤さんッ!!」
藤堂「フフ……若人よ、幸せになるがいい」キラーン!
千葉「ああ、藤堂さん……なんて奇跡の人!!」シンスイ
千葉「は、はい!! アナタ!!」
藤堂「こんな私だが、ついてくる覚悟はあるか? 常に奇跡を求められる我が道に……そして、黒の騎士団という大家族の長の妻として、ルル坊の母親としての道に」
千葉「あぁ……あなたが望んでくれるのなら、どんな道でも!!」
藤堂「フ……ではついて来い!!」
千葉「喜んで!! ……おい、ゼロ!! いや、ルルーシュ!!」
ルルーシュ「!! はい!!」
千葉「(コホン)仕方ないから私もお前を認めてやる。だから早く、紅月に応えてやれ!!」
ルルーシュ「……はい!! 俺の心にもう、迷いはない!!―――カレン!!」
カレン「……はいっ!!」
カレン「うぅん……いいの」
ルルーシュ「ご覧の通り、俺は頭しか取り柄がないような……心も体も弱い男だ」
ルルーシュ「今まで支えとした者達も失って、正直何で今立てているのか不思議なくらいだ」
ルルーシュ「だから隣で支えてくれる人が欲しいんだ、俺は、だから―――」
カレン「うん……///」
ルルーシュ「その……これからも俺を、支え続けていてくれないか? 俺の、一番近くで……」
カレン「―――っ」
カレン「共に進みます……私は、あなたと共に……いつまでも……!!」ウルッ
ルルーシュ「ありがとう、カレン……!!」ギュッ
南「藤堂さんも、ようやく前に進めたようで!」
藤堂「フ……よせ。息子の前で恥はさらせん」
千葉「あの、あなた……子作りはいつ始めます?///」
玉城「あのカレンがなぁ……うおぉ~ん!! 見てるかナオトォ~~~ッ!!」ゴウキュウ
ディートハルト「もうこれ完全に別の番組として編集しなおした方がよさそうですねぇ……ちょっと、若いお二人」
ルル・カレン「「は、はい!?」」
ディートハルト「折角ですし、番組の締めとして皆の前でキスして頂けますか?」ジィーッ
ルル・カレン「「うぇっ!?」」
扇「ちょ、ちょっと待ってくれ!!」
一同「「「……あ゛?」」」
杉山「そうだそうだー!!」
扇「あ、ああ……すまない―――じゃなくって!!」
扇「みんな、忘れたのか!? ゼロを、ルルーシュを引き渡せば、俺達の日本は還ってくるんだぞ!?」
ルルーシュ「何っ!?」
カレン「何それ……どういう事!?」
扇「カレン、黙っていてすまないな。俺達は約束したんだ、彼を引き渡す事と引き換えに日本を還してもらうと! そう、そこにいる―――シュナイゼル特使と!!」
シュナイゼル「そういう事だよルルーシュ。幸せそうなところ申し訳ないが、ね」
ルルーシュ「いたのですか兄上」
シュナイゼル「……まさか本気で気付いてなかったのかい?」
ルルーシュ「えぇ」
シュナイゼル・カノン「」
シュナイゼル「まぁ、そういう事になるね。だが正直君が放った手は予想外だったよ。ここは兄として誇るべきかな?」
扇「彼は俺の要求に―――君の身柄と日本の交換にイエスと答えてくれた!!」
扇「ゼロ!! カレンの、俺達の幸せを想うなら!! 俺達のために人柱となれ!!」
ルルーシュ「俺は……俺はまた、政治の道具に……!? そん、な……」
カレン「ルルーシュ……!! 扇さん、あなたはっ!!」
扇「この約束は会談の場にいたものなら皆知っている!! そうでしょう、藤堂将軍!!」
藤堂「……知らんな」シレッ
扇「えっ……!?」
藤堂「確かにいた。そしてルル坊が我々を駒として扱っていたという言葉に酷くショックを受けたのも事実だ」
扇「だったら!!」
藤堂「だが実際はどうだ? 彼は我々を家族として見ていてくれた。お前とて今、彼の心からの告白も聴いただろう」
藤堂「これまでの作戦に犠牲が出たのも否定は出来ん。しかしそれで我々がここまで来られたのも事実だ」
藤堂「今冷静になって思えば、敵国の宰相に言に誑かされ、子供一人に全ての罪を着せようとしたのもおかしな話だ」
扇「でも、それはギアスが……!!」
藤堂「喝ッ!!」
扇「!!!!」ビクッ
藤堂「扇……いや、要ッ!! そこに座れ!!」
藤堂「す・わ・れ・と言った。ほれ、正座ァ!!」
扇「は、はいっ!!」
ルルーシュ「お藤さん!?」
藤堂「ルル坊、ここはこの父に任せておけ。……要よ」
扇「は、はい……」ビクビク
藤堂「今一度確認するが、お前がシュナイゼルに持ちかけた取引。あの言葉に、我々は首を縦に振った憶えはないのだが?」
扇「」
藤堂「いきなり現れたお前がいきなり捲し立て、いきなりシュナイゼルに取引を持ちかけた。我らの了解も取らず独断でだ。誤りはあるか?」
扇「い、いえ、でも……」
藤堂「どうなんだ、あ゛?」ギロリ
扇(ビクゥッ!!)い、いえ……その……ありま、せん……」
藤堂「話を終えた憶えはない!! フ、だが……ルル坊、何か言ってやる事はあるか?」
ルルーシュ「あぁ、戦場にいる以上はそこにいる兵士は駒と割り切って指揮したのは確かだ」
扇「ほらやっぱり―――」
ルルーシュ「だがそれは俺自身とて変わらない。でなければ、KMFで前線になんて出ないし」
扇「」
藤堂「わかったか? ルル坊は公私を使い分けてただけだ。に、対して……要よ」ヌゥッ
扇「と、藤堂将軍……近いです……」
藤堂「あの時聞けなかったが、お前と一緒に現れた褐色肌に銀髪の女子……アレは誰だ? 日本人ではなさそうだが」
藤堂「ひとっことも紹介なかったよなぁ? 彼女は何だ、お前のコレか?」(※小指立てて)
扇「えっ、あの、その何ていうか……彼女はその、千草といっt
ルルーシュ「違うな!! 間違っているぞ」
藤堂「ほぅ、知ってるのかルル坊?」
ルルーシュ「もちろんだよお藤さん。褐色肌に銀髪など、俺には一人しか思い当たらない」
ルルーシュ「彼女の名はヴィレッタ・ヌゥ。アッシュフォード学園の体育教師にして、その真の姿はブリタニア軍機密情報局の一員、同時にブリタニアの男爵」
ルルーシュ「学園での俺の監視役にして、さらにいうと扇の想い人ですよ」
藤堂「ほぅ? 自分の連れにブリタニア人を選ぶくせにルル坊はダメなのか、おまけに紹介も無しか!! いいご身分だなぁ要よ!!」
扇「」
藤堂「喝ッ!!」
扇「」
藤堂「彼女が出来ても紹介無し、それでいて人様の幸せはぶち壊す。お前は王にでもなったつもりか?」ゴゴゴゴゴ
扇「いやだって、ゼロは皇族d
藤堂「黙らんかっ!! もう一つ訊くが、お前は彼女に手は出したのか!?」
扇「えっ!?」
藤堂「キズモノにしたのか、と訊いている!!」
玉城「そういや扇よぉ、黒の騎士団旗揚げしてちょ~っとした辺りから付き合い悪くなった事あるよなぁ?」
扇「玉城!? だ、黙っててくれ!!」
藤堂「ほぉ~う?」ピキピキ
ルルーシュ「それについても知っていますよお藤さん。彼女はかつて俺の素顔を知ったのですが、その後撃たれて記憶喪失になった」
ルルーシュ「扇はそんな彼女を匿っている内に情が移ったようです。そして深い仲になったと―――」
扇「うわぁぁ!! うわぁぁぁぁぁっ!!」アセアセ
カレン「記憶を失ってるのいいことに? 扇さん……サイッテー」
藤堂「要よ、事実か?」
扇「え、あ、その……間違いではないですけど……」
南「あぁ、アレで俺ゼロに不信感抱いたんだ」
ルルーシュ「あのときは俺もトラブルで対応できず、犯人も判らなかった」
ルルーシュ「だが調査の結果、扇を撃ったのはヴィレッタだとわかっている……やはり記憶喪失中に好き放題されたのがイヤだったのかな」
南「じゃあお前自業自得じゃないか!!」
扇「南ぃ!!」ナミダメ
藤堂「ほほぉーう……我々はずいぶんお前に信用されてなかったのかなぁ? えぇ要よ」
扇「だって好きなんだ、しょうがないだろぉ!?」
千葉「さすがにフォローできん!! まるっきり獅子身中の虫じゃないか!!」
扇「」
ルルーシュ「いや、俺にだって責任はあるから……」
扇「そ、そうだ!! お前が責任を取r
藤堂「その前にお前が果たすべき責任があるだろうが!!」ゴツン!!
扇「ひっ!?」
藤堂「あのお嬢さんをキズモノにしたのなら、責任を取るのが男というものだ!! 時に、彼女の家にご挨拶には行ったのか!?」
扇「いやだって、敵国同士ですs
藤堂「誤魔化しなど聴く気はない!! 先のルル坊と紅月の精一杯の告白を忘れたか!!」
藤堂「きちんと正装して、ご挨拶の品を用意して!! ヴィレッタ嬢のご両親に詫びを入れて来い!! 貴様とて責任の取れる歳だろう!!」
藤堂「それを成し遂げてくるまで、この斑鳩の敷居を跨ぐ事はこの父・藤堂鏡志朗が許さん!! 勘当だ!!」
扇「そ、そんなぁ……」
カノン「いやアナタ家長って、ママゴトみたいなものでしょ?」
藤堂「我らは運命共同体だ。それに気付かせてくれた愛息子を差し出すつもりはない」
ルル・カレン「お藤さん……!!」
シュナイゼル「ですが彼は我々にとっても弟です。それも血の繋がった実の、ね」
コーネリア「そうだ、今更反故にするなど許されない!!」
ルルーシュ「姉上、いつの間にか独房から出ていたのですね。気付きませんでしたよ」
コーネリア「酷いなお前!! さぁルルーシュ、母国で裁きが待っているぞ!!」
ルルーシュ「俺を棄てた国が今更!! 今一度いう、俺の家族はこの黒の騎士団だ!!」
藤堂「ルル坊もこう言っている。……代わりといっては何だが、この放蕩息子……扇要をくれてやる。責任を取らせてやってくれ」
シュナイゼル「いえ、いりません」
扇「」
ルルーシュ「おかげで俺は血ではなく絆で繋がった家族を手にし、そして愛する者をこの手に得た。感謝すべきなのかな、シュナイゼル?」
シュナイゼル「その必要はないよ。なかなか楽しめたしね……しかしだ」
シュナイゼル「家長殿、私が乗ってきた艦に先のフレイヤが搭載されているのは知っているね?」
藤堂「何!? 貴様、まさか!!」
シュナイゼル「戻って来ないなら消すもやむなしです。……残念だよルルーシュ。君は私を超える事はできない」
ルルーシュ「フレイヤだと!? ……おのれ……おのれシュナイゼル!!」
カレン「でも、そんな事したらあんた達だって!!」
シュナイゼル「そうかもしれないね。だが黒の騎士団と超合集国はゼロと柱を失い、今度こそ瓦解する」
カノン「尤も、そうなる前に私達は脱出させてもらうけど。 ここで私達を殺して心中するか、見逃して消えるか、二つに一つよ」
コーネリア「兄上、まさかそんな……」
コツン、コツン、コツン
ラクシャータ「な~んかさっきから騒がしいけどぉ、一体全体何の騒ぎなわけぇ?」
カレン「ラクシャータさん!?」
ラクシャータ「紅蓮のチェックとか色々終わって暇だったから来てみたんだけどぉ、誰か説明してくれるぅ?」
ラクシャータ「ちょ~っとストップ! そのボーヤはだぁれ? 服はゼロっぽいけどぉ」
ルルーシュ「ああ、俺がゼロ……本当の名はルルーシュだ」
ラクシャータ「ふぅ~ん、結構かぁわいいじゃな~い? イタズラしたくなっちゃうわぁ♪」
ルルーシュ「!!」ゾクッ!!
カレン「ダメです!! ……実は―――」
・ ・ ・ ・ ・ ・
ラクシャータ「フレイヤねぇ……おっかしいわねぇ?」
ルルーシュ「? どうした?」
ラクシャータ「いやね、暇だからうろついてたら特使用の船があったからぁ、それも散策しちゃったのぉ」
ラクシャータ「んでも爆発物らしきものもな~んもなかったわよぉ? 武装は機銃とリニア砲だけ、格納庫ももぬけの空だしぃ」
一同「「「」」」
シュナイゼル「おやおや、ブラフだとバレてしまったようだねぇ?」
ルルーシュ「シュナイゼルゥゥゥゥゥゥッ!!!」
カノン「殿下、さすがに旗色悪いですわよ! どうします!?」
シュナイゼル「ここは退いた方がいいだろうねぇ。だが負けたつもりはないよ? いわば痛み分けだよこれは」
コーネリア(こんなカッコ悪い兄上見た事ない!!)
シュナイゼル「ではルルーシュ、カレン嬢、それに黒の騎士団諸君。またいつかお逢いしましょう」
藤堂「待て。おまけを忘れるな」ポイッ
扇「」
シュナイゼル「まぁ、ペナルティと見れば仕方がないね。営倉にでも放り込んでおいて……そうそう、ヴィレッタ君も忘れずにね」
カノン「了解ですわ殿下~」
コーネリア「ルルーシュ!! 私は絶対諦めないからなぁ!! 待ってるがいい愚弟よ!!」スタコラサッサー
騎士団一同「「「「」」」」
千葉「そうですね、やつらの駒と化してしまうところでした」
南「扇のヤツ、俺達にまで隠し事して……」
玉城「もういいじゃねぇかよ、んなこたぁ!! それよりさぁ」
杉山「そうだな、一度に2つも夫婦が成立したんだ! 宴会の準備でもしないとな!」
藤堂「昇悟が誤解を抱いたまま逝ってしまったのは心残りだが……あいつなら、きっと我らを向こうから祝福してくれるだろう」
千葉「……そうですね」
カレン「これで、よかったのかな……?」
ルルーシュ「わからない。だが俺達は、再び歩き出す事ができる。……それで充分じゃないか?」
カレン「……うん」
ルルーシュ「? どうした?」
カレン「C.C.の事、どうしよう……それに、神楽耶様も」
ルルーシュ「C.C.なら問題ない。今の無垢な人格なら、妹や娘として収まる事が出来る」
ルルーシュ「もし記憶が戻ったなら、そのときは―――」
カレン「そのときは?」
ルルーシュ「お姑さんなり、お婆ちゃんなり。どっちでもイケるだろう?」
カレン「ずいぶんマルチなポジションね」
ルルーシュ「あいつは元々常識が通じないからな」
ルルーシュ「カレンが俺の奥さんになってくれた以上、どうするべきか……」
藤堂「フ、甘いなルル坊」
ルル・カレン「「お藤さん!?」」
藤堂「お前は言ったな、ゼロは記号にすぎないと。ならば状況に応じて、ゼロを演じるものが替わればいい」
ルルーシュ「!! それは!?」
藤堂「作戦指揮を取る、治世をするなどの時はお前が演じる。部隊を鼓舞するときは私。プライベートの時は……」
南「俺やりたいです!!」シュバッ!!
藤堂「だそうだが……どうする?」
藤堂「我々は家族だろう? 今までお前に何もかも頼り過ぎた。今度は大人が子供のために体を張るばんだ」
玉城「そうだぜ親友、いやブラザー!! 頼ってくれていいからよぉ!!」
ルルーシュ(いや、お前は頼れない)
南「神楽耶様は俺が幸せにする!!」
千葉「わ、私も、いい母親になれるよう努力する……」
ルル・カレン「「みんな……!!」」
ディートハルト「あーっと皆さん、ちょっとよろしいですか?」
ディートハルト「お忘れですか? 私はお二人のキスシーンが撮りたいと言ったのですよ」
ルル・カレン「「!!///」」
ディートハルト「番組は打ち切りと先に言いましたが、とんでもない。これからもこの黒の騎士団という大家族のホームドラマ、バッチリ撮らせてもらいますよ」
ディートハルト「その団欒の象徴たるシーンとして、さぁ! さぁ!!」ワクワク
カレン「……ルルーシュ……」
ルルーシュ「カレン……」
カレン「……いいよ?///」
ルルーシュ「……ああ、それじゃ、いくぞ?///」
カレン(お母さん、私初めてキスします……誰よりも大切な人と……)
ルルーシュ「カレン……」
カレン「ルルーシュ……!」
ルル・カレン「……」アトスコシ
一同「「「「あとちょい、あとちょい!!」」」」
ガシャアアアアァァァン!!!
ルルーシュ「なんだ!?」
藤堂「蜃気楼!? 誰だ!!」
ロロ「兄さんの家族は、僕だけでいいっ!!!」キュイィィィン!!
千葉「消えた!? 一体何が起こった!?」
藤堂「くぅっ……KMFは出せるか!!」
ラクシャータ「全機整備完了済み、いつでもオッケーよぉ♪」
藤堂「よし!! 出られるものは全員出るぞ!! 全力で我らが息子を取り戻せぇ!!」
カレン「これってバベルタワーの時の……!? ルルーシュ……!!」
シュナイゼル「ん? あのKMFは……これは運が巡ったかもしれないねぇ」
シュナイゼル「アーニャ、ずっと待たせて悪かったね。あのKMFを捕らえられるかい?」
アーニャ「破壊、なら……」グッ
ズギュウゥゥゥゥン!!
アーニャ「!! えっ!?」
ブゥン! ブゥン! ブゥン!
アーニャ「……何? あの、動き……」
シュナイゼル「どうにも捉えられないか……まぁ、これ以上はこちらが危ない。アーニャ、帰っておいで」
アーニャ「了解……残念」
シュナイゼル「アーニャを収容次第全速で本国に帰還しよう。次の手を考えなきゃね」
カノン「営倉に入れたアレはどうします? 結構あそこ揺れますけど、ましてや全速出すと」
シュナイゼル「はて、アレ? なんのことだったかなぁ?」
ルルーシュ「何をしているロロぉ!! 俺は帰るんだ、操縦席からどけぇ!!」ゲシゲシッ
ロロ「血の繫がりがなくても絆で結ばれた家族……!! 兄さん、僕キュンときたよ!!」
ロロ「安心してね兄さん! 僕一人でお父さんでもお母さんでもお嫁さんでも、何でもこなしてあげるから!!」
ルルーシュ「ふざけるな!! 俺の話w―――
キュイィィィン!!
ロロ「そうさ……今までだってそうだった! 僕は兄さんの、たった一人の弟で!!」
ロロ「ずっと僕を……! 僕だけを家族として見てくれたんだ!」ググッ
ロロ「あんなとってつけたような、紛い…物の、付け焼刃の家族、なん…か!!」ハァハァ
ロロ「僕の想いに!! 敵うものかぁーーーーっ!!」
ルルーシュ「―――を聴け!! お前、何しているのかわかt―――
キュイィィィン!!
ロロ「兄さんの、たった一人の……家族で!!」ハァハァ
ロロ「僕が兄さんの!! 支えになるんだっ!! ロロ・ランペルージと、してっ!!」
ルルーシュ「―――っているのか!! いい加減怒るぞ!!」
ロロ「兄さんが僕のために怒ってくれる!? ぼ、僕はちゃんと、人間として……!!」
ピピピッ(通信)
藤堂『ルル坊!! 無事かぁーっ!!』
カレン『ルルーシューーー!!!』
藤堂『待ってろ息子ぉ!! 今助けてやる!!』
カレン『言ったでしょ、あなたと一緒にいるって!!』
ルルーシュ「だめだ、来ちゃいけない!!」
ロロ「兄さんが父と、お嫁さんと認めた人!! 僕はそんな人要らない!!」
キュイィィィン!!
ルルーシュ「やめろロロ!! 俺の大事な―――
藤堂『喝ッ!!!』
パキィィィン!!
ロロ「嘘!? 何で!!?」
藤堂『どこのどいつか知らんが、一家の大黒柱を甘く見るな!!』
ルルーシュ「二人とも聴いてくれ!! コイツの事は俺が自分で決着をつける!!」
藤堂『何!?』
カレン『でも、私……!!』
ルルーシュ「心配するな、必ず戻る! 戻ったら全て話す、だから俺を信じて待っていてくれ! 俺達の家、斑鳩で!!」
藤堂『ルル坊……!!』
カレン『……約束だからね! 嘘ついたら許さないんだから!!』テッシュウー
ルルーシュ(よし……これで、あとはこのバカを!!)
ロロ「退いた!? ……よし、あとは出来る限り遠くへ……!!」
キュイィィィン!!
――――――――――――――――――――――――
―――――――――――
ルルーシュ「ロロ……どうして俺を連れ出した?」
ロロ「兄さんは……嘘つき、だから……」ムシノイキ
ルルーシュ「え?」
ロロ「嘘、だよね? 僕の事、嫌いになったなんて……」ゼェゼェ
ルルーシュ「フッ、そうか、見抜かれていたか。―――ああ、お前の兄は、嘘つきなんだ」
ロロ「もち、ろんだよ……僕は、兄さんの事なら…なん、でも」スゥ
ルルーシュ「だがちゃんと本当の事だって言うぞ?」
ロロ「……え゛」
ロロ「兄、さん……? だって、僕h
ルルーシュ「確かに血の繫がりがなくとも絆があれば家族となる。それは立証された」
ロロ「そうだ、よ兄さん……それは僕、が最初n
ルルーシュ「だがお前には絆を一片たりとて感じない」
ロロ「う、そだ……!」プルプル
ルルーシュ「残念ながら現実だ。シャーリーを殺め、ナナリーまで亡き者にしようとしたお前に、弟たる資格があると想うのか?」
ルルーシュ「自分の世界だけで完結して、新たに家族ができる事すら否定するお前に、我が弟たる資格はない!!」
ロロ「!!!!」ガァーン!
ルルーシュ「お前はやりすぎたんだよロロ。もっと視野を拡げていれば、こうもならなかったものを」
ロロ「あ、あアァ……」プルプル
ルルーシュ「せめてもの手向けだ。お前に最もふさわしいギアスをかけてやる」スッ
ロロ「に、イ、さn
ルルーシュ「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア……いや、ルルーシュ藤堂が命じる―――」
ルルーシュ「ボロ雑巾のように地面を這い蹲っていろ!!」
キュイィィィィン!
ロロ「!!!!」キィィィィン……パァン!!
ロロ「イエス、マイ…ブラザ……」シュタッ
ガッサガッサ(地面でうつ伏せになって金魚運動してるとお考え下さい)
ルルーシュ「さらばだ偽りの弟ロロ、我が人生最大の汚点よ……」
ルルーシュ「貴様が大事にしていたストラップは、もうあげたかった相手もいない……冥土の土産にくれてやる」ポイッ
藤堂「むぅ……息子の危機に手を拱いているしかできんとは!!」
千葉「あなた、落ち着いて下さい……帰ってくると言ったんでしょう?」
カレン「ルルーシュ……お願い、無事でいて……」
ピピピッ
オペ子ズ「! レーダーに反応、蜃気楼です!!」
キィィィィィィン!!
藤堂「おぉ……帰ってきたか!!」
千葉「本当に……心配ばかりかけて!!」
ルルーシュ「――ただいま、みんな。ケリはつけてきたよ」
カレン「―――ルルーシュッ!!」
ルルーシュ「格納庫に下りたら、全員を集めてくれないか。伏せていた事も、ギアスの事も、何もかも全て話すよ……」
ギアスの力の事、ゼロとして立ち上がった理由、虐殺皇女の真実。
足掻き続けた果てに、妹ナナリーを始め、様々な物を失い続けた事。そして―――
―――斑鳩 ゼロ改め、ルルーシュの私室―――
カレン「みんなが理解してくれてよかったわね~。あのロロとかいう子の事は、私も驚いたわ」
ルルーシュ「だからって、あの仕打ちはないんじゃないか? みんなから一発ずつ殴られるなんて……イッテテテ!!」
カレン「それで済めば安いものでしょ? もしみんなが家族と認めてくれなかったら、こうして生きてさえいないんだから。はい、おしまい!」ペシッ
ルルーシュ「カレンのビンタが一番痛かったんだが?」
カレン「うっさいわねぇ、愛の鞭よ!! 愛の鞭!!」
ルルーシュ「そんなトコ隠れてないで出て来いよ。誰も虐めたりしないから。それと、ご主人様じゃないっていっただろ?」
C.C.「じゃあその、なんとおよびすれば……」
ルルーシュ「そうだな、お兄ちゃんでいいぞ?」
カレン「それじゃ私がお姉ちゃん、か……なぁんかフクザツ」
ルルーシュ「じゃあいっそ、パパとママのがいいか?」
カレン「ちょ! 何バカいってんのよ!!」
ルルーシュ「フッ……フフハハハハハハハッ!!」
カレン「……ったく、もぅ」
C.C.(ぱぱ、まま……なんだろう、なんだかあったかい……)
カレン「ラクシャータさん! どうしたんです?」
ラクシャータ「いや若いお二人にねぇ? 今後の子作りの予定とか訊いとこうなんて思ったり♪」
ルルーシュ「!?」
カレン「そっ……そういうのは、せめて学校出るまでお預けってお藤さん達も!!」
ラクシャータ「へぇえ~? だったらぁ……若旦那はアタシが毒見しておこうかしらぁ?」ペロォリ
ルルーシュ「!!」ゾクリッ!!
カレン「だめぇ!! 絶対だめですってばぁ!!」
ラクシャータ「あっはは~♪ 冗談冗談♪ まぁ精々ガンバッてねぇ~♪」スタコラサー
神楽耶「ねぇゼロ様?」
ゼロ「なんでしょうか神楽耶様?」
神楽耶「何だか最近のゼロ様、見るたびに体格や背の高さなど変わってるような気がするのですが、私の見間違いじゃございませんよねぇ? 今日もずいぶんパツンパツンな……」
ゼロ「め、滅相もない! 私はゼロ、世界を壊し創造する男! その根底たる思想さえあれば、多少の見た目など!」
神楽耶「まぁもともと何でもありの方というのは存じてますが……」
ゼロ「そうです、私は自分の体にさえ奇跡を起こすのです!!」
神楽耶(何だか加齢臭? とかいうのを感じますわ……これやっぱりニセモノですよねぇ?)
ゼロ(バレてないよな、バレてないよな!? 男・南! 折角得た幸せの時を手放してたまるものかぁーっ!!)
神楽耶「う~~……ホントのゼロ様にはいつお逢いできるのでしょうか……」ハフゥ
星刻「最近ずいぶんと斑鳩部隊の結束が固くなったようだな」
香凛「以前と関係が変わったようです。なんでも、血ではなく絆で結ばれた家族、とか―――」
星刻「絆、家族……か。ならば私も、天子様と……ぐっ、ガハァ!!」
香凛「星刻様!! 大丈夫ですか!?」
星刻「だ、大丈夫だ……私に甘え摺り寄って くる幼妻な天子様を想像し悶えただけだ……!!」
香凛(……この人総司令でほんとに大丈夫なのかしら?)
シャルル「……」
シャルル「……C.C.がぁ、来ぉないなぁ……」
シャルル「これでぇは、ラグナレクの接続が行えぇんではぬぁいかぁ……」
シャルル「……だぁが、ルルゥーシュは息災なよぉうだなぁ……」
シャルル「今のあやつなぁら、このシステム無ぁしでも世界を変えられるやもしれんなぁ……」
シャルル「なぁらばワシは見届けようぞ我ぁが愚息よぉ……なぁに、時間はいくらでぇもあぁる!!」
シャルル「フフフフフ、フフフフハハハハハハハ……」
シャルル「フブフハァッハァッハァッハッハァッ!! オォールハィルブリタァァァ~ニアァ~ッ!!」
シャルル「……んだぁができるなら……孫は見たい、な……」
藤堂「あれが天空要塞ダモクレスか……これまでのようにはいかなさそうだな」
ルルーシュ「あそこにナナリーが……俺は……」
千葉「案ずるなルルーシュ。お前は一人ではないのだ、そうだろ?」
藤堂「そうだ、今や支配に抗う全ての人々がお前の味方だ。そしてお前の側には我々がいる」
玉城「そうそう! それにお前の妹ってんなら、俺達にとってもそうだろ!?」
ジェレミア「ならば助け出すのみです! そう、我ら全員の全力を挙げて!」
ルルーシュ「みんな……!!」
カレン「だから、ナナリーも取り返して、帰りましょう! あの日常へ!」
ルルーシュ「カレン……そうだな、いつでも頼らせてもらう」
ディートハルト「さぁ、いよいよ番組も大詰めといった所でしょうか!!」
藤堂「ルル坊!! 最後の戦いだ、皆に喝を入れてやれ!!」
カレン「ルルーシュ! 行こう!!」
ルルーシュ「ああ、行こう! 俺達の望む明日のために!! ―――黒の騎士団、出撃!!」
こうして一人の少年を中心とし、世界を二分する壮大な最後の家族喧嘩が始まった。
血で繋がれた家族と、絆で繋がれた家族。
どちらの家族が勝ったのかは、また別のお話。
だが、黒髪の少年と赤髪の少女は、いかなる時も常に共に在ったそうな――――――
おしまい。
なんという王道臭い最終決戦エンド
Entry ⇒ 2012.09.25 | Category ⇒ コードギアスSS | Comments (2) | Trackbacks (0)
菫「お茶を飲んだら尭深がちっちゃくなった?」淡「うん!」
ガチャ
尭深「おはようございます…」
尭深「…誰もいない。今日は一番のりか…」
尭深「あれ、なんだろこのお茶の缶?『若返りの茶』…?」
尭深「そういえば今日、誠子が珍しいお茶を見せるとか言ってたっけ…」
尭深「……」ソワソワ
尭深「飲んでも…いいよね?」
尭深「…いただきます」ゴクリ
~~~~~~~
バタン
淡「みんなおっはよー」
淡「やったーいちばんのりだー」
淡「みんな来るまでソファーで寝てようかな~」トコトコ
たかみ「Zzz…」スヤスヤ
淡「…だれ、この子」
淡「ちょ、ちょっと起きなさいあなた!」ユサユサ
たかみ「ふにゃ…?」ムニャムニャ…
淡「起きた?」
たかみ「…おねえちゃんだれ?」
淡「あたしは淡、大星淡よ。あなた、自分の名前言える?」
淡「そうなんだ、タカミちゃんって言うんだ~……へ?」
たかみ「どうしたの、おねえちゃん?」キョトン
淡「タカミって…え、なに?…同姓同名?」ブツブツ
たかみ「お、おねえちゃん?」
たかみ「おねえちゃん?」ウルウル
淡「こんな小学1年生くらいの子供がいるわけないじゃん」ブツブツ
たかみ「うぅ……」ウルウル
淡「…ってなんで泣きそうになってるの!?」
たかみ「おねえちゃん…たかみをむししないでよぉ…」ウルウル
たかみ「…うん」ニコッ
淡「ふぅ…なんとかなった、かな?」
たかみ「あわいおねえちゃん!」
淡「なにかな、タカミちゃん?」
たかみ「だいすきー」ダキッ
淡「はいはい、タカミちゃんはあまえんぼうだね」ヨシヨシ
淡「はいはい…にしても…この子はいったい…」
ガチャ
亦野「おはようございマス」
淡「セーコ!」
たかみ「!?」
亦野「その子は…」
淡「なにか知ってるの!?」
亦野「まあね。ほら尭深~、怖くないよ~」
たかみ「おねえちゃん…だれ?」ビクビク
亦野「お姉ちゃんはね、誠子、って言うんだ。よろしくね」
たかみ「…はじめまして」ビクビク
淡「セーコ…その子のことなにか知ってるの?」
亦野「知ってるも何も…淡もよく知ってる、渋谷尭深本人だよ」
淡「……………は?」
淡「お茶?」
亦野「通販で買ってみたんだけどね…若返りの茶…まさか本物とは…」
淡「なんでそんなもの買ったの?」
亦野「興味本意…かな?胡散臭い商品ってつい買ってみたくなるんだよね」ハハハ…
淡「それで…タカミはずっとこのままなの?」
亦野「効果は半日くらいだとかいってたかな?それまで淡が面倒みてあげなよ」
亦野「いや…なんだか今の尭深はアタシのこと怖がってるし、それに…」チラッ
たかみ「……」ヒシッ
亦野「さっきからずっと淡にしがみついてるしさ」
ガラッ
菫「すまない、遅くなった」
照「おはよう、みんな」
淡「あ、テル、菫…」
たかみ「……」ギュッ~
菫「ん?なんだその子供は…それに尭深は遅刻か?」
亦野「アタシが説明します。実は……」
~~~~~~~~~
菫「…にわかには信じられない話だが…」チラッ
たかみ「?」チョコン
照「たしかに渋谷さんに似てる…かな?」
亦野「それで…お茶の効果が切れるまで誰かが面倒見ないと…」
淡「よしよしタカミちゃんはいい子だね~」ナデナデ
たかみ「えへへ~!」ニパー
渋谷さんが淡ちゃんに充電スタイルで座ってます
照「え?菫って子供好きだったっけ?」
菫「部の面倒ごとを解決するのは部長の仕事だろ?」
菫(尭深に私の秘蔵の衣装を着せて遊びたい!…とは言えないな)
菫「ほら、尭深。菫お姉ちゃんのところにおいで」
たかみ「すみれおねえちゃん…なんだかこわい…」フルフル
菫「」ズーン
照「す、菫!大丈夫だよ、こわくなんかないよ!」アワアワ
亦野「ねぇ淡…尭深は淡になついてるみたいだし淡が面倒みてやってくれない?」
淡「え…でも…」
たかみ「あわいおねえちゃん…たかみのこときらいなの?」ジッ…
淡「うぐっ……」
たかみ「おねえちゃん…」ウルウル
淡「あ~…もう!わかった!あたしがタカミちゃんの面倒みてあげるよ!」
たかみ「あわいおねえちゃ~ん!」ギュッ~
照「菫!あなたまで幼児退行しないでよ!」
亦野「これは今日の部活は中止かな?」ハハハ…
淡「…だね」
たかみ「あわいおねえちゃん」クイクイ
淡「どうしたの、タカミちゃん?」
たかみ「…おしっこいきたい」
あ?
亦野「子供なんだからついていってあげなよ、淡」
淡「あ…そうだね。タカミちゃん、トイレまでいっしょにいこうね~」
たかみ「うん…」モジモジ
亦野「いってらっしゃ~い」フリフリ
淡「………」テクテク
たかみ「………」トコトコ
淡「……大丈夫?我慢できる?」テクテク
たかみ「…うん」トコトコ
淡(うわ…ヤバいかも…急ごう!)
淡「ちょっと急ごうか、タカミちゃん?」テクテク
たかみ「………」ピタッ
淡「タカミちゃん?」
たかみ「あわい…おねえちゃん…」プルプル
淡「ほら!あとちょっとだから…ね?」
たかみ「……」ウルウル
淡「よしよし、いい子いい子」ナデナデ
淡「あ…」
たかみ「ごめんなさい…」チョロチョロ…
たかみ「ごめんなさい…ごめん…なさい…ごめん…なさい…」チョロ…
たかみ「…」ペタン
たかみ「ふぇぇぇええええん!!!!」ポロポロ
たかみ「ふぇえぇぇええん!!!!」グスッ
淡「泣かないでタカミ!」
たかみ「」ビクッ
淡「よかった…泣き止んだ…」ホッ…
たかみ「うわあぁぁあぁあん!!!!あわいおねえちゃんにおこられたぁ~!!」ボロボロ
淡「」
~~~~~~
淡「…落ち着いた?」
たかみ「…うん」グスン
淡「大丈夫だから…安心しなさい!」
たかみ「たかみのこと…エグッ…きらいに…エグッ…ならない?」グスン
淡「なるわけないでしょ!」
たかみ「あわいおねえちゃん…ごめんなさい…」グスン
淡「次からはもっとはやくいうこと!いいね?」ナデナデ
たかみ「…うん!」ニッコリ
淡「おもらしの後始末も終わったし…部室に帰ろっか?」
たかみ「うん!」
淡「服も汚れちゃったし着替えないとね…あたしの体操着でなんとかなるかな?」
たかみ「あわいおねえちゃんのたいそうぎ!?いいの?たかみがきてもいいの?」キラキラ
淡「着られればね」
たかみ「わーい」
淡「もどりました~」
たかみ「ました~」
亦野「おかえり。戻ってきてなんだけど今日の部活は中止だってさ」
淡「菫ェ…」
亦野「淡、今日ははやく帰って尭深と遊んであげて」
淡「そうする…でもその前に着替えさせないと…タカミちゃ~ん、こっちおいで」ゴソゴソ
たかみ「はーい」トコトコ
淡「タ、タカミちゃん、バンザイしてちょうだい」
たかみ「ばんざーい」
淡「脱がせるよ」ヌギヌギ
淡(うわっ…まだ毛が生えてないよ…小学生くらいなら当たり前か…)ジィ
たかみ「あわいおねえちゃん?」
淡「あ…な、なんでもないよ!着せてくよ!」
たかみ「はーい」ニコー
淡「はい着替え終わり!汗臭くてごめんね」
たかみ「あわいおねえちゃんのにおい…いいにおい…」クンクン
淡「嗅がないでよ!///」
たかみ「えへへ」ニパー
淡「もう…」
亦野「もういいかい、お二人さん?部室の鍵を閉めたいんだけど…」ニヤニヤ
淡「今出るよ、セーコ!タカミちゃん、行こっ」
たかみ「うん」ギュッ~
亦野「それじゃアタシはこっちだから」テクテク
淡「バイバイセーコ!…ほらタカミちゃんもバイバイしなさい」
たかみ「…バイバイ」フリフリ
亦野「やっと慣れてくれたみたいだね、バイバイ尭深」バイバイ
たかみ「…」ササッ
淡「コラコラ隠れちゃダメでしょ、タカミちゃん」
亦野「ハハハ、まあいいさ。また明日ね尭深、淡」
-淡自宅-
淡「…というわけでお宅のタカミさんは今日あたしの家に泊まりますので…」
淡「はい、ありがとうございます。では失礼します」ガチャン
淡「ふー…緊張したー」
たかみ「あわいおねえちゃん、おつかれさま?」ギュ~
淡「ありがとね、タカミちゃん」ナデナデ
たかみ「えへへ~」ニパー
淡「今日はあたしのお母さんもお父さんも帰ってこないからいっぱい遊べるよ!」
たかみ「ほんとに!?わーいわーい!」キャッキャ
淡「遊ぶ前に…お腹すかない?」グゥ
たかみ「…うん///」クゥ
淡「よーし、なんでも好きなもの作ってあげちゃうよ!なに食べたい?」
たかみ「えっとね、えっとね…たかみ、オムライスたべたい!」
淡「オムライス…いいね!ちょっと待っててね、とびきり美味しいの作ってあげるから!」
たかみ「わーい」ルンルン
淡「おまたせ~、淡特製オムライスの出来上がりだよ!」
たかみ「わー!おいしそー!」
淡「どうぞめしあがれ」
たかみ「いっただきまーす」パクッ
淡「どうかな?」
たかみ「すっごくおいしー!」パァァ
淡「よかった。あたしも食べよっと。いっただきまーす」モグモグ
たかみ「…」ガツガツ
淡「そんなに急いで食べると喉につっかえるよ」
たかみ「うぐっ…」
淡「…ってタカミちゃん!大丈夫!?ほらお水だよ」トントン
たかみ「んぐんぐ…ぷはー」コクコク
淡「まったく、もー…ふふふ」
たかみ「ありがと、あわいおねえちゃん!」ニパー
淡「あ、ほっぺにご飯粒が…」ヒョイパク
たかみ「えへへ~」ニパー
淡「あはは!」ニコッ
たかみ「ごちそーさまでしたー」
淡「それじゃ洗い物するから手伝ってくれるかな?」
たかみ「たかみ、おてつだいするー」
淡「偉いぞ、タカミちゃん」ナデナデ
たかみ「えっへん!」ドン
淡「じゃあ、あたしが洗うから、タカミちゃんは拭いてね」
たかみ「りょーかい!」ビシッ
淡「洗い物も終わったし、遊ぼうか!?」
たかみ「わーい!」キャッキャ
淡「なにして遊ぼうかな…」
たかみ「たかみ…おほんよみたいなー」モジモジ
淡「おほん?…あぁ、本か!絵本なんかあったかな…ちょっと探してから待っててね」
たかみ「はーい」
淡「あ、あったあった。この前菫にもらった絵本!」
淡「聞いたことない物語だったけど、面白かったしタカミも気に入るぞー」ドタドタ
淡「おまたせっ!」
たかみ「おーそーいー」ブーブー
淡「ごめんごめん。じゃあ読むから膝に座って」
たかみ「うん」チョコン
淡「それじゃ、『シャープシューター』の始まり始まり~」ペラッ
作:パンジー弘世
絵:エイスリン・ウィッシュアート
淡「…こうしてテルーは妹のサキーと結ばれたのでした。めでたしめでたし」パタン
たかみ「わーい」ウトウト
淡「タカミちゃん、眠い?」
たかみ「うん、ちょっと…」
淡「お風呂入って寝ようか」
たかみ「うん」
淡「今日はシャワーだけにしようね」キュッキュッ
たかみ「うん」ウトウト
淡「シャンプーするから目を閉じてね~」
たかみ「うん」ウツラウツラ
淡「かゆいところはありませんか~?」シャカシャカ
たかみ「ないー」ウツラウツラ
たかみ「おー」
淡「それ~」シャワワー
たかみ「…ぷはー」プルプルプル
淡「はい、流し終わったよ。次は体洗うね」シュコシュコ
たかみ「おねがい~」
たかみ「…」ウツラウツラ
淡(にしても…タカミの身体って柔らかいなぁ…)
淡「…」プニプニ
たかみ「!くすぐったいよ~」
淡「……」ツンツン
たかみ「きゃはははは!!やめて~」ジタバタ
淡「あ…ごめんねタカミちゃん」
たかみ「もー!しっかりやってよ、あわいおねえちゃん!」
淡「はいはい」ゴシゴシ
たかみ「~~~♪」
たかみ「どしたの?」
淡「な、なんでもない!続けるよ~」
淡(無心で…無心で…)
淡「……」ゴシゴシ
たかみ「~~~♪」
たかみ「うん」
淡(なんとか平静を保てた…)シャワワー
淡「…よし、あがろうか」
たかみ「うん!」
淡「風邪引かないようにしっかり拭いてね」フキフキ
たかみ「あわいおねえちゃん、ふいて~」
淡「自分でやりなさい!」
たかみ「けちー」
淡「…仕方ないな~、今回だけだよ?」フキフキ
たかみ「あわいおねえちゃんだいすき~」
淡「調子いいんだから、まったく…」フキフキ
たかみ「あわいおねえちゃんの!?わーい!」ルンルン
淡「じゃあ寝室にゴー!」
たかみ「ごー!」キャッキャ
淡「コラコラ暴れちゃダメでしょ」
たかみ「いっしょに寝ようね!」
淡「いいよ、タカミちゃん」
たかみ「わーいわーい!」
淡「電気消すよ」
たかみ「そのまえに~…」モジモジ
淡「その前に?」
淡「ぶふぅ!?」
たかみ「…ダメ?」ウルウル
淡「い、いいけど…ホントにいいの?」
たかみ「もっちろん!」
淡「えっと…えっと…///」アワアワ
たかみ「はやく~」
淡「い、いくよ…」
たかみ「んー…」
淡(タカミの唇まで…あと30cm…あと20cm…あと10cm…)ドックン…ドックン…
淡「………」チュゥ…
淡「……ぷはっ!///」
たかみ「えへへ…あわいおねえちゃんとちゅーしちゃった~」ウキウキ
淡「ね、寝るよ!///」
たかみ「おやすみなさいっ!」
淡「……」
たかみ「あわいおねえちゃん…ねちゃった?」モゾモゾ
淡「まだ起きてるよ」
たかみ「えっとね、たかみ…あわいおねえちゃんのおよめさんになりたい!」
淡「っ!?ゲホッゲホッ…」
たかみ「だ、だいじょうぶ?」
淡「大丈夫だよ、タカミちゃん」
淡「グー、グー」
たかみ「…あわいおねえちゃん?」ツンツン
淡「グー、グー」
たかみ「ねちゃった…」
たかみ「…おやすみなさい」チュゥ
淡(なにこれかわいいいいいいいいいいい!)
淡(ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい)
淡(と、とりあえず羊を数えて落ち着こう)
淡(新道寺の中堅が一人、新道寺の中堅が二人、新道寺の中堅が三人…)
淡「Zzz…」スヤスヤ
たかみ「Zzz…」スヤスヤ
淡「タカミ…大好き…ムニャムニャ」スヤスヤ
たかみ「わたしもぉ…」スヤスヤ
~~~~~~
淡「Zzz…」
尭深「…」パチッ
尭深「…」ムクリ
尭深「…?」キョロキョロ
尭深「ここ…どこ?…隣にいるのは…淡ちゃん?」
淡「タカミちゃん、お嫁さんにしてあげるよ~…ムニャムニャ」グーグー
尭深「お、お嫁さん!?ちょ、ちょっとどういうこと?淡ちゃんってば!」ユサユサ
淡「んー?あ、おはようタカミ…」ボー…
尭深「こ、これっていったい…」
淡「おはようのちゅー」チュゥ~
尭深「ん!?…」チュゥ…
淡「えへへ、タカミとキスしちゃった~」
尭深「キュウ…」バタリ
淡「タカミと…キス…?ってタカミ、元に戻ったんだね、タカミ起きてよ!」ユサユサ
カン
淡「昨日は大変だったな…タカミの誤解を解いたりして疲れた」ハァ…
淡「…タカミと仲良くなれたから、まあいっか」
淡「ん?このお茶は…『若返りの茶』!?」
淡「……」ゴクリ
~~~~~~
あわい「おはよーございます!」
尭深「…あなた、だれ?」
あわい「おーほしあわいです!」
尭深「………え?」
カン
やめようと思ってるんだけどな…
Entry ⇒ 2012.09.25 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
やよい「だーれだ?」P「おっ?」
P「……」
P「(この声はやよい…)」
P「(後ろから目隠し…)」
P「(こんな茶目っ気のある遊びをしかけてくるとは…)」
P「(しかも…)」
やよい「ふふー♪」ペト~…
P「(身長足りないから背伸びして俺にもたれかかってる感じだし…)」
P「(まぁ、なんだ…)」
P「(かわいい)」
小鳥「(なにあれ、かわいい♪)」
P「……」
P「(やよいが、だーれだ…)」
P「(何か意図があるのだろうか?)」
P「(やよいと答えるのは簡単だ)」
P「(しかし、やよいが俺にかまってもらいたいとかそういうかわいいことを考えてたら)」
P「(間違えてあげる方が良いのだろうか?)」
やよい「……」
やよい「…プロデューサー?」
P「(いや、やよいの場合は本気で自分の名前を当てて欲しいという期待も…)」
小鳥「(かわいいなぁ♪)」
P「あ、あぁ、すまん…ちょっと待ってくれ…」
やよい「あっ、はいっ!」ペト~…
P「(もうやよいが踏ん張り疲れて、軽くおんぶ状態だ…)」
P「(多分、傍目から見たら…)」
P「(凄いかわいい姿なんだろうなぁ…)」
小鳥(それはもう♪)」
やよい「……」ペト~…
P「(そろそろ答えてあげないと、やよいが待ちくたびれちゃうな)」
P「……」
P「(…一回、間違えてみようかな)」
P「…よし!」
やよい「う?」
P「お前の声がわかったぞ!」
やよい「あっ♪ホントですかぁ?」
P「(かわいい)」
小鳥「(良い笑顔♪)」
やよい「え?」
やよい「じゃあじゃあ間違えちゃってたら、どうすれば?」
P「そうだな…そんなことは無いと思うが…」
P「ちゃんと自分の耳で、お前の声を理解したいからな」
P「悪いけど、そのまま目隠ししたままの状態でいてくれ」
やよい「う~…間違えられちゃったらショックかもぉ…」
やよい「あっ、でもでも!間違えてるなんてことはないんですよね!?」ペト~…
P「……」
P「(すまん…今から1回間違える…)」
小鳥「(間違えましょう♪)」
やよい「あっ!はいっ!」
やよい「……」ワクワク…
P「お前は…」
やよい「……」ワクワク…!
P「亜美だ!」
やよい「…!」ムスッ…!
やよい「ぶー!ぶっぶーです!」ペト~…
P「(かわいい)」
小鳥「(膨れた顔で寄りかかってる、やよいちゃんかわいい♪)」
P「なっ…!?あ、亜美じゃなかったのか…?」
やよい「違いますよぉ!」
やよい「うぅ~…」
やよい「間違えないって言ったのに~…」ペト~…
P「……」
P「(俺はこの反応を期待してた)」
小鳥「(期待通りの反応です♪)」
やよい「…う?」
P「冷静に考えたら、お前の声は亜美じゃなかったな」
やよい「あっ…」
やよい「こ、今度こそ、わかってもらえましたか!?」ペト~…
小鳥「(背伸びを維持しようとするたびに、もたれかかっちゃうやよいちゃんかわいい♪)」
P「ごめんな…お前の声を間違えちゃうなんて…」
P「俺、どうかしてたよ…」
やよい「そ、そんな…」
やよい「わ、わかってもらえたのならそれで大丈夫ですっ!」ペト~…
やよい「私の方こそ…」
やよい「さっき、ちょっと…あっ!?…むーってしちゃって、ごめんなさい…」ズッ…スッ!
P「(かわいい…)」
小鳥「(ずれた目隠しをとっさに修正する、やよいちゃんかわいい♪)」
やよい「呼んでもらっても大丈夫ですか…?」
やよい「私の名前…」ペト~…
P「……」
P「(答えてじゃなくて…)」
P「(呼んで…)」
P「(やよいは本当に俺にかまってほしかったのか…)」
P「(ちょっとかわいすぎないか?)」
小鳥「(ええ、とっても♪)」
満面の笑み浮かべながら鼻血垂れ流しているとしてもか?
……あれ、可愛いな
P「じゃあ…呼ぼうか?」
やよい「あ…は、はいっ!」ペトッ!
P「……」
やよい「……」ドキドキ…
P「お前の名前は…」
やよい「……」ドキドキ…!
P「…やよい、手を離してもらっていいか?」
やよい「あっ…♪」
やよい「はぁい♪」バッ…!
P「……」クルッ…
やよい「うっうー♪正解ですっ♪」ニコッ!
P「うわっ、かわいい」
小鳥「かわいいですねぇ♪」
P「やよい、いきなりどうしたんだ?」
やよい「う?」
P「あぁ、いや」
P「ちょっとびっくりしちゃってさ」
やよい「びっくり?」
P「うん」
P「いきなりやよいが、だーれだ?なんて、茶目っ気のある遊びをしてくるなんて思わなかったからさ」
やよい「あっ…も、もしかしてご迷惑でしたかぁ…?」シュン…
P「いやいや、そんなことはないぞ!」
小鳥「むしろ喜んでたわよ♪」
P「あぁ」
やよい「そ、それなら安心ですっ!」
やよい「え、えーっとぉ…」モジモジ…
P「…?」
やよい「…えへへ♪」
やよい「プロ…お兄ちゃんに私の声、当てて欲しいなぁって思ったの…」
やよい「それだけ…♪」
P「……」
P「うわやよいかわいい」
小鳥「本当にかわいいです♪」
P「あぁ、間違えるものか」
やよい「…えへへー♪」
P「(しかし本当にかまってほしいだけだったとは…)」
P「(ここまで懐かれていると…なんだ…)」
P「本当に兄になっても…良いな…」
やよい「えっ?そ、それはダメっ!」
P「えっ?」
やよい「あっ…!」
やよい「あ、う、うぅ…」
小鳥「がんばれやよいちゃん♪」
やよい「ほ、ホントのお兄ちゃんじゃダメで…そのっ…」
P「……」
やよい「う、うぅ…」
やよい「お…」
やよい「お、おっきくなったらお兄ちゃんと結婚したいからお兄ちゃんはお兄ちゃんじゃダメー!」
P「うわあああああああああああ」
小鳥「きゃあああああああああ♪」
やよい「は、はいっ!?」ビクッ!
P「おいでっ!」バッ…!
やよい「えっ?」
やよい「……」
やよい「…お、おじゃまします…?」ポスッ…
P「やよいっ!」ムギュッ…!
やよい「はわっ!?」
P「お前の気持ちが大人になっても変わらなかった、その時は…」
P「結婚しよう!俺、ずっと待ってるから!」
やよい「あ…」
やよい「…うんっ♪」
やよい「私をお兄ちゃんのお嫁さんにしてくださいっ…♪」ペト~…
小鳥「あれが大人の「だーれだ?」よ」
亜美「亜美、まだまだ大人になれそうにないや…」 おわり
Entry ⇒ 2012.09.25 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (2) | Trackbacks (0)
ゼロ「新たなKMFを造ってくれ」ラクシャータ「はぁ?」
ラクシャータ「いつもながらいきなりね~、虎の子の蜃気楼まで出したのにまだご不満?」
ゼロ「確かに蜃気楼の力を見せつける事は出来た。だがカレンが捕われた今、戦力の大幅低下は否めない」
ゼロ「対してブリタニア側はと言えば、まだラウンズもギルフォードらも健在だ。こちらも更なる戦力が求められる」
ラクシャータ「まぁ星刻は中華から離れられないようなもんだしぃ、神虎に期待ともいかないわねぇ」
ラクシャータ「んじゃどんなコが入用か教えてくれなぁい?」
ゼロ「ズバリ!! 変形合体するKMFだ!!」
ラクシャータ「……ごっめぇん、よく聴こえなかったわぁ」
ゼロ「冗談はやめにしてくれ。私はいつでも本気の事しか言わん」
ラクシャータ「確かに今までもそうだったわよねぇ、んじゃもう一回言ってくれるぅ?」
ゼロ「フッ、理解してくれるまで何度でも言ってやるさ」
ゼロ「私が望むのは、変形・合体を可能とするKMFだ!!」
ラクシャータ「……ゼロさぁ、ちょっと疲れてるんじゃなぁい? ちったぁ寝た方がいいよぉ?」
ラクシャータ「ホンットに脳味噌まともなんなら、少ぉ~し考えればわかるでしょぉ?」
ラクシャータ「第一、アンタ専用の蜃気楼はウチ唯一の可変機でしょうに」
ゼロ「わからんやつだな。変形するだけならブリタニアにもナイトオブスリーのトリスタンがある」
ゼロ「今更変形するだけの機体なんて二番煎じにしかならん、だから合体する機体がいるのだよ!!」
ラクシャータ「……なぁ~んでそこまで合体にこだわるかねぇ」
ゼロ「違うな、間違っているぞ。アレは装備を変えただけだ、合体ではない」
ゼロ「合体というからには、2機以上の組み合わせで新たな1機となる必要がある。私が言っているのはそれだ」
ラクシャータ「そんなんムリだってばさぁ。は~い、この話は終わり~」
ゼロ「バカをいうな! やりもしないうちから全否定するんじゃない!!」
ラクシャータ「あんたさぁ、KMFがどんな機体かぐらいわかるわよねぇ?」
ゼロ「今更だな。全長4~5m前後、ランドスピナーとスラッシュハーケンを基本武装とし、腹部から背中にかけて脱出機構をかねたコクピットブロックが存在する。大まかにこんなところだろう」
ラクシャータ「今自分で気づかなかったぁ? コクピットブロックの占有領域ってかなりでかいのよぉ」
ラクシャータ「合体なんて言ったら、そのときコクピットブロックどうなっちゃうわけぇ?」
ゼロ「それを考えるのがお前達の仕事だろう!」
ラクシャータ「うっふふ~、アタシ珍しくゼロの事殴りた~くなっちゃたわぁ♪」
ゼロ「それは当然だな。既存の機体とはフレーム構造からして異なるのだから」
ラクシャータ「なぁんだ、ちゃんとわかってんじゃないさ。その通り、規格外れだから開発も整備も面倒なのよぉ」
ラクシャータ「そこに合体なんてま~た面倒な事入れちゃったらぁ、はいどうなるでしょう?」
ゼロ「面倒かどうかは問題じゃない。やれるのかやれないのか訊いている」
ラクシャータ「」
ゼロ「当然だ。カレンがいない以上、戦力増強のためなら面倒などという言い訳を聞く気はない」
ラクシャータ「そりゃアタシだってカレンちゃんがいないってのは淋しいし、ツラいけどさぁ」
ゼロ「なら答えは簡単だ。カレン抜きでもブリタニアを叩くなら更なる力が要る、そのためには合体だ!!」
ラクシャータ「そこでなんで合体に行きつくのか、アタシにはわかんないのよねぇ」
ゼロ「1+1はなんだ。答えは2だ。そういう事だ、さぁ造れ!!」
ラクシャータ「や~よ。技術屋の手間も考えな。んじゃアタシそろそろ寝るから、んじゃねぇ~」
ゼロ「クッ……これ以上は水掛け論にしかならないか!!」
カッケーじゃねぇかちくしょう
ゼロ「というわけで、今回はラクシャータと検討中の新たなKMFについて議論する」
ラクシャータ「だぁから造るつもりないってば」
藤堂「新型機か。確かに我らの機体を見返せば、星刻の神虎を除けば3タイプしかないな」
朝比奈「一般団員や僕らの暁。藤堂さんの斬月。それとゼロの蜃気楼だね」
千葉「たまに見かける金色のもいるだろう? 確か、ヴィンセントとかいう」
ゼロ「その通りだ。対してブリタニアはラウンズ専用機をはじめ、さらにバリエーション豊富な品揃えだ」
扇「あ、ああ、確かにそうだ。これではこちらのとれる戦略も限られてしまうよな」
ゼロ「その通りだ、扇。それ故に私は新たな機体案を提示したのだが、ラクシャータには受け入れられないようでな」
玉城「んだよラクシャータもケチだなぁ!」
藤堂「してゼロよ、その案とはどんなものだ?」
ゼロ「もうラクシャータに飽きるほど言ったがまぁいい。ズバリ! 変形・合体するKMFだ!!」
ディートハルト「ふむ……その他のオーダーは?」
ゼロ「それだけだ」
一同「「「「「「」」」」」」
ゼロ「2機以上のKMFが合体して新たな一つとなる。これ以上にどんなオーダーが要るというのだ!」
玉城「だよなぁ! 合体変形は男のロマンだもんなぁ!」
ゼロ「ほぅ、玉城は賛成か」
玉城「ったりめぇよ親友!! そんなん造るんなら俺も乗せて欲しいぜぇ!!」
ラクシャータ「造んないっつってしょぉ? それに玉城乗っても壊すだけ~」
千葉「だがラクシャータの言う事も尤もだ。第一、整備の方が大変になる」
ラクシャータ「やっぱ千葉ちゃん常識人で助かるわぁ。ほ~ら皆ももっと言ってやってぇ」
朝比奈「確かにねぇ、僕と千葉だって藤堂さんほどじゃないけど戦果は挙げてるよ?」
ディートハルト「規格外の機体となれば破損した際の修復なども大変ですしね」
南「暁は量産性高いし、パーツの換装だってすぐだ。コイツを元に斬月みたいなの造った方が……」
C.C.「おやおや、さすがに無茶振りが過ぎたようだなぁ、ゼロ?」
ゼロ「くっ……お前達、なぜこの必要性がわからん!!」
C.C.「カレンが捕われた事で気が気でないのはわかるが、頭に血が昇り過ぎだ。少し休んで頭冷やせ」
ラクシャータ「どーやら結論出たみたいねぇ? んじゃこの話はお流れってことで~」
藤堂「……」
千葉「私達だって紅月の事は心配だ。だがだからって合体など……」
朝比奈「いくら何でも話がおかしいとこ行きすぎだって」
ディートハルト「ゼロ、申し訳ありませんが私はこの件はノータッチとさせていただきます」
扇「せめてパーツのバージョンアップとかでいいじゃないか。手は回しておくさ」
ゼロ「くっ……なぜだ、なぜこんな結果に……!」
C.C.「ほら、わかったら休め。いつまでも合体なんて夢見てんじゃない」
藤堂「……待て」
一同「「「!?」」」
藤堂「合体が夢みたいだと? さすがに聞き捨てならんな」
玉城「旦那ぁ! 旦那はわかってくれるのかぁ!?」
ラクシャータ「ちょ~っと藤堂? ま~た話ややこしくしないでくれるぅ?」
藤堂「諸君らは合体というものがどういうものか、判っているのか?」
玉城「そりゃアレよぉ、でっけぇスーパーロボットになってバッタバッタとなぎ倒すんだよなぁ?」
藤堂「玉城は少し黙ってくれ。否定派の意見を聞きたい」
玉城「」
ラクシャータ「技術屋の意見だとぉ、開発も整備も維持もメンド~」
ディートハルト「ノーコメントとさせていただきたいですが……手間しか掛からないと思います」
扇「もし誰か一人でも欠けてしまったら、その瞬間成り立たなくなってしまうし……」
藤堂「……甘いな。誰も合体の素晴らしさを何一つ判っていない」
ラクシャータ「アタシインド人だけど」
ディートハルト「私ブリタニア人ですが」
藤堂「心さえあれば我らは日本人。ゼロがそう言っただろう」
ゼロ「藤堂……!!」
藤堂「……話を戻そう。諸君は合体ロボットをテレビで見たとき、どんな印象を抱いた?」
玉城「そりゃでっかくて超強くt
藤堂「玉城は黙っていてくれ」
玉城「」
扇「あ……すごく、強そうだなぁと」
南「ピンチをひっくり返すヒーローだよな」
杉山「チームワークのなせる業、っていうか」
朝比奈「出てきた瞬間みんな歓喜ですよ、まるで藤堂さんのようだ」
藤堂「フ……なんだ、諸君もちゃんとわかってるんじゃないか」
藤堂「民衆のピンチに颯爽と現れ、悪を討つ為に戦い抜く。そして一人一人の力は小さくとも、チームの絆を一つに束ねる事で圧倒的な力を発揮する」
藤堂「逆境にあろうともそれすらひっくり返し、敵を倒し、民衆の心に勇気と希望を齎す」
藤堂「どうだ、我々黒の騎士団にも通じる物があると思わないか?」
男達(((((ゴクリ・・・!!))))
千葉「そ、そう言われれば確かに……!」
ラクシャータ「千葉ちゃんさぁ、藤堂が言ったからそう感じてるだけでしょぉ?」
千葉「なっ!!??」
藤堂「何……?」
ラクシャータ「現実考えて欲しいんだけどさぁ、色々問題ありまくりなわけぇ」
ラクシャータ「まず合体するために余計な変形機構つけなきゃいけないしぃ」
ラクシャータ「それに連結する部分の強度だって確保しなきゃいけないでしょぉ?」
ラクシャータ「それにこれゼロにもいったんだけどぉ、KMF合体させたらコクピットブロックどーするわけよぉ?」
扇「じゃ、じゃあ、合体する前にコクピット先に脱出させて、機体だけ合体するってどうかな?」
ゼロ「バカモノ! そんなもの合体ではない!!」
藤堂「そうだ、チーム全員が一つの機体に乗り込んでこそ合体だ!! 全く、わかってないな」
扇「」
ラクシャータ「ほ~ら全然条件クリアされてないじゃない? それに合体してる最中隙だらけでしょぉ?」
藤堂「フ……甘いな、ラクシャータ」
ラクシャータ「はぁ?」
藤堂「合体の瞬間というのはな、敵も待ってくれるものなのだ」
藤堂「ロボットの合体シーンやヒーローの変身シーンは敵は待ってくれる。常識だ」
ラクシャータ「テレビの中の常識でしょぉ? 現実にそれやって、ブリタニアが待ってくれるわけぇ?」
藤堂「確かに全てのブリタニア兵がそうではないかもしれん。だが我々は、待つであろう将官を知っている」
ゼロ「フフハハハハ、そうだ、ヤツなら必ず待つ!!」
玉城「って、誰よ?」
藤堂「フ、知らないとは言わせないぞ」
ゼロ「ああそうだ。我々も幾度となく刃を交えたあの男!」
藤堂「そう、ヤツの名は!」
ゼロ・藤堂「「柩木スザクッ!!!」」
――――――――――――――――――――――
スザク「へっくしっ!!」
スザク「う~ん、風邪ひいたかなぁ?」
ゼロ「そう、あの特区日本の式典での発言からその事実は明白だ」
藤堂「そして彼は帝国最強のラウンズの一人」
ゼロ「その特権地位にいるヤツなら、我々の合体中に攻撃しようとする兵士を制止するのも容易い!!」
藤堂「ゼロ……!!」
ゼロ「藤堂……!!」
ガシィッ!!(握手)
藤堂「……そういう事だ、ラクシャータ」
ゼロ「わかってもらえたかな、合体の素晴らしさを」
ゼロ・藤堂「なら答えは自ずと出るはずッ!!!」
ラクシャータ「」
南「こうまで熱く語られては、俺達の魂も燃え滾るってもんだ!!」
杉山「そうだ! 黒の騎士団全員の絆を一つにすれば!」
ゼロ「そう! 倒せぬ敵など!!」
男衆一同「「「「「何もないッッッ!!!」」」」」
千葉「藤堂さん……かっこいいです……!!!」
ラクシャータ「」
男衆一同「「「「「頼む!! ラクシャータ!!!」」」」」
ラクシャータ「あ~はいはい、暑苦しいからやめやめぇ!!」
ラクシャータ「わ~かったわよぉ、やりゃいーんでしょぉ? やりゃ~さぁ(溜息)」
男衆一同「「「「「……ヒャッホォ~~~~~~イッ!!!」」」」」
藤堂「当然だ! 協力は惜しまん!」
ゼロ「システム周りはまかせてもらおう。蜃気楼のドルイドシステムもサポートに回せばかなり楽になるだろう」
ラクシャータ「正直アタシ合体なんて夜以外サッパリだからさぁ、資料の調達よろしく~」
玉城「よっしゃ! 杉山ぁ! レンタル屋でかたっぱし合体ロボアニメ借りまくるぜぇ!!」
杉山「任せとけ! よぉ~っし、久々の特務隊の出番だ!!」
ディートハルト「なんだか凄い盛り上がりようですね……こないだの中華開放以上じゃないでしょうか」
ゼロ「フ……当然だ」
藤堂「ああ、合体変形は男のロマンだからな」
藤堂「ディートハルト、玉城達が資料を調達したらお前も一緒に観るといい。……観れば判るさ」
ディートハルト「はぁ……」
C.C.「やれやれ……やっぱり男達ってバカだな」
ゼロ(待っていろ、ナナリー! カレン!!)
ゼロ(俺達はこの合体KMFプロジェクトを成功させ、必ずお前達を取り戻す!!)
ゼロ(そのときはあまりのカッコよさに失神させてやるぞ!! フフフフハハハハハ……ッ!!)
何でトリスタンだけあんなダサいんだよ…
変形すれば結構いけるけど
一番かっこいいのはモルドレッド異論は認める
ナナリー「――で、そのときお兄様ったら……」
カレン「ふふ、そうなんだ。意外とかわいいトコもあるのね……」
カレン(やっぱりナナリーは私の知らないルルーシュをたくさん知ってるのね)
カレン(いつか、私にもそんな姿見せてくれたらいいな……)
スザク「ナナリー総督。少々席を外していただいてよろしいですか?」
ナナリー「あ、はい―――ではカレンさん、また後で……」
カレン「うん、またね……(フゥ)で? 何の用かしら」
スザク「カレン。エリア11の多くのレンタル屋に黒の騎士団員と思われる者が出入りした事が確認された」
カレン「は?」
スザク「そして特定ジャンルの映像作品が片っ端借りられたそうだ。レンタル先は蓬莱島……合衆国日本だ」
スザク「僕はこれをゼロの……ルルーシュの企みと考えている。知ってる事を話して欲しい」
カレン「……あんたの頭がどうかしたって事ぐらいしか言えないわね」
カレン「わかるわけないでしょ。ってかアンタ何でもかんでもルルーシュに結び付けすぎ」
スザク「だが僕にはそうとしか思えない! さぁ言うんだ、ゼロはルルーシュなんだろ!? ヤツは何故ロボットアニメを借り占めさせたんだ!!」
カレン「ゼロの正体は知らな……って何? ロボットアニメぇ!?」
スザク「そうだ! エリア11の多くのレンタル屋からロボットアニメが姿を消したんだ!!」
カレン「それを陰謀だと思えるアンタ、やっぱ頭どうかしてるわ……」
ラクシャータ「や~っぱジョイントんとこ負荷かかりすぎるわねぇ~」
ゼロ「やはりそこか。だが資料を観てある程度は合体プロセスは理解出来ただろう?」
ラクシャータ「作品ごとにまちまちだからなんともね~、物理法則無視したのもあるし。さすがにアレはムリ」
ゼロ「できる範囲でいい。最低でも2機、理想は5機合体だ」
ラクシャータ「ふぅん……ちなみに誰にメイン張らせる気ぃ?」
ゼロ「私と言いたいところだが、私は火器管制などのほうがいいだろう」
ゼロ「メインは藤堂、またはカレンだ……取り戻したら、だがな」
ゼロ「安全性を求めるなら一箇所まとめか……できそうか?」
ラクシャータ「2機だったらなんとかねぇ~」
ゼロ「そうか……」
C.C.「なぁラクシャータ、なんなら紅蓮と蜃気楼の合体機構でも考えてやったらどうだ? もちろんコクピットはまとめでな♪」
ゼロ「おいC.C.! ドサクサに何を言っている!!」
ラクシャータ「あっはは~♪ 考えとくわぁ~」
ゼロ「おいそこ! 変なトコだけ乗るんじゃない!!」
ゼロ「おい!!」
ラクシャータ「あ~らやだ、ちょっと大変な事になりそうね~」
C.C.「ほぅ? どこがどう大変なんだ?」ニヤニヤ
ラクシャータ「そうねぇ~、ゼロのコクピットの前部分にカレンちゃんがいる形なんだけどぉ」
ラクシャータ「今考えてる案だとぉ、ゼロの腰か胸の前にカレンちゃんのお尻がきちゃうのよねぇ」
C.C.「だ、そうだぞ?」
ゼロ「……」
ゼロ(ま、まずい……想像してしまった……)
ゼロ(その想像通りなら、いくら俺でも理性を保てる自信がない……!!)
ラクシャータ「あっはは~、りょうか~い♪」
C.C.「ふふっ、からかい甲斐があるヤツだな全く」
ゼロ「いいからさっさとだ!! あと1週間で試作機を仕上げるぞ!!」
―――その頃、談話室―――
『ファイナルフュージョン! 承認!!』
『ファイナルッ!! フュゥゥゥゥジョォォォォォンッッッ!!!』
ディートハルト「おぉ、これが……これが日本の、愛と勇気と魂の結晶……!!」
藤堂「どうだ、ブリタニア人のお前にもわかるか? これがそう!」
ディート&藤堂「「合体だ!!!」」
マニュアルモードなら4人でファイナルフュージョンしたぜ!
ラクシャータ「一応形にはなったわよぉ」
ゼロ「おぉ、ついに!!」
藤堂「完成したのか、我らの新たなる希望が!!」
ラクシャータ「ゼロのオーダー通り、5機合体にしてみたわよぉ。メインは藤堂、ア・ン・タ」
朝比奈「さすが藤堂さん! 僕も全力でサポートします!!」
ラクシャータ「あぁごっめ~ん、朝比奈君の席はないんだわぁ」
朝比奈「」
千葉「案ずるな朝比奈、お前の分まで私が!!」
ラクシャータ「千葉ちゃんもざんね~ん」
千葉「」
ラクシャータ「そりゃアンタ達、これには藤堂とゼロも乗るのよぉ?」
ラクシャータ「エース級がみぃ~んな乗っちゃったら他どうすんのさぁ」
千葉・朝比奈「」
藤堂「して、残る3人は?」
ゼロ「焦るな。ちゃんと決めてある」
C.C.「やっぱりか。まぁ、こうなるとは思ってたよ」
ゼロ「紅一点は必要だからな。そして次、杉山!!」
杉山「俺!? やった~!! 出番が来たぁ~っ!!」
ゼロ「そして残る一人……それは!」
一同(ゴクリ……)
ゼロ「玉城真一郎! お前だッ!!!」
一同「「「「「「」」」」」」
玉城「ぃよっしゃあぁ~~~っ!! 遂に俺の時代がキターーーーーッ!!!」
ゼロ「私はいつでも大真面目だ」
扇「でも玉城じゃ!!」
ゼロ「違うな、間違っているぞ。お前達、思い出してみろ」
ゼロ「この手のチームには大抵一人トラブルメーカー的な者がいる。そしてそういう者の存在が逆にチームの連携を生み、時には運を呼び込む」
ゼロ「私が玉城に期待しているのはそこだ。わかるな?」
玉城「ゼ、ゼロォ~ッ!! やっぱりお前は親友だぜぇ!!」
ゼロ「玉城、お前は私がこの計画を立ち上げた時真っ先に賛同してくれた」
ゼロ「お前の掛け値なしの忠義に感謝する!」
玉城「よっしゃあ! 俺はやる! やぁってやるぜぇ!!」
C.C.「(ちなみに、玉城の合体後の配置はどこなんだ?)」ヒソヒソ
ゼロ「(背中の目立たない小さな部分だ、実はなくても構わんがカッコだけついてればいい)」ヒソヒソ
藤堂「遂に……遂に夢を実現するときが……!!」
C.C.「やれやれ、面倒だがつきあってやるか」
杉山「あっちから見ててくれ、吉田、井上! 俺達は本当のヒーローになる!」
玉城「よっしゃ行こうぜ!! ……あ、そういやよぉ」
ゼロ「なんだ?」
玉城「合体した時の名前ってどんなんよ?」
ゼロ「フフフハハハ、まさか何も考えてないと思ったか? 教えてやろう、その名はッ!!」
一同「「「「「その名は!?」」」」」
ゼロ「黒の騎士団最強の守護神! 名づけて黒乃王(クロノオー)!!!」ババン!
一同「「「「「」」」」」
C.C.「……ダッサ」
ゼロ「」
ジノ「なぁスザクぅ。日本ってアニメとか特撮とかすっげー盛んだったらしいけどさ」
スザク「あぁ、僕も好きだよ。再放送とかもよく見てたし。ルルーシュが必死に変身ポーズの真似とかしてたっけ……」
ジノ「へぇ~、あの学園の貴公子がねぇ。あ、それでちょっと観てみたんだけどさ」
ジノ「あのロボットの合体とか、ヒーローの変身とかってモロ無防備じゃん? なんで敵さん放置してんのかな~って」
スザク「よくは判らないけど、一種の『お約束』みたいなものらしいよ。そこで攻撃するのは邪道なんだって」
ジノ「ふ~ん、日本のサブカルってのも面白いもんだな~」
ビーッ、ビーッ、ビーッ
アーニャ「スザク、ジノ、敵襲」
ジノ「みたいだな! んじゃ行っかぁ♪」
スザク「黒の騎士団か!! 彼らの好きにはさせない!!」
スザク「やはり現れたか、ゼロ!!」
ゼロ「御機嫌ようブリタニアの諸君。今回もいつものラウンズ3人組でのお出ましか、仲がいい事だ」
ジノ「いんや~それほどでも」
アーニャ「褒めてない」
ゼロ「今日の我々を中華の時と同じと思ってもらっては困る。我々の新たな力を御見せしよう」
スザク「何をしようと同じだ! お前達は自分が止めてみせる!!」
ゼロ「では行くぞ! 精鋭部隊、前へ!!」
藤堂・C.C.・杉山・玉城「「「「応!!!!」」」」
スザク「ゼロの機体も以前と違う部分が……?」
アーニャ「でも一機だけ、なんか小さい」
玉城「誰がちっさいだってぇコラァーッ!!」
ゼロ「藤堂! アレはすぐには行わない。敵兵力を減らしてからやるぞ!!」
藤堂「任せておけ。玉城のサポートは私とC.C.がやる」
C.C.「あのバカの子守とは癪だがな。杉山は地味だがそこそこやるし、大丈夫だろう」
ゼロ「結構だ。朝比奈、千葉、援護は頼むぞ!!」
千葉・朝比奈「「承知!!」」
ゼロ「では戦闘開始!!」
ゼロ「相転移砲、発射!!」ドッコォーン
千葉「藤堂さんの邪魔はさせない!!」ズガァッ
ジノ「やるねぇ、でもおイタはいけないよっと!!」ザンッ
朝比奈「くっ!! すみません、藤堂さん!!」ダッシュツー
アーニャ「以前より、強い……」
ゼロ「そろそろか……藤堂! アレをやるぞ!!」
藤堂「フ、待ちかねたぞ……! 号令を頼む!!」
ゼロ「よしきたぁっ!! 総員!! 合体フォーメーション、発令ェーッ!!!」
ジノ「は? 合…」
アーニャ「体…?」
スザク「だと!!? 何を言っている!?」
扇「あ、ああ!!」ポチッ (※適当に合体BGM脳内再生してくれ)
藤堂「よし、往くぞ皆ぁ!!」
ゼロ「我らの力、今こそ一つに!!!」
C.C.「ふふっ、やってやろうじゃないか!」
杉山「よぉ~し、見ていろブリタニアぁ!!」
玉城「おぉ~っし、いくぜぇーっ!!!」
スザク「やらせるものか!! ブラスター、いけぇ!!!」ズギュゥゥゥゥン
ドゴォォォォォン……
玉城「畜生ォーッ!! 何で俺はいつもぉ!!」
一同「「「「「「」」」」」」
ゼロ「なん……だと……」
藤堂「スザク君……バカな……!!」
スザク「今は戦闘中だ! 隙を見せるほうが悪い!」
ジノ「おいおいスザクぅ、お約束破っちゃっていいのかぁ?」
藤堂「スザク君、君は日本人の誇りを忘れてしまったのか!!?」
スザク「藤堂さん、現実はアニメじゃありません!!」
ゼロ・藤堂「スザアアアァァァァァクッッッ!!!」
アーニャ「……何? 今の」
C.C.「残念なお知らせだ。エナジーがそろそろレッドゾーンになる」
杉山「こっちもだ!」
藤堂「いかんゼロ! 玉城がやられた影響で誘導信号に狂いが生じたようだ!!」
ゼロ「なんだと!? えぇいおのれぇぇぇっ!」
C.C.「さすがにまずいな。どうするんだ坊や?」
ゼロ「くっそぉっ! だが敵戦力はだいぶ削った! まことに遺憾ながら撤退する!!!」
―――黒の騎士団、撤退―――
ジノ「帰ったか~……にしてもスザク、やっぱり合体妨害はひどいと思うぜぇ?」
スザク「戦場だし仕方ないよ。でも、ちょっと見てみたかったかな」
アーニャ「記録、失敗……残念」
ゼロ「えぇい、くそ!! スザクのヤツめ!!」
ラクシャータ「だぁから言ったでしょぉ? KMFで合体なんて現実的じゃなかったのよぉ」
ゼロ「うるさい! 何が、何が原因だ!!」
C.C.「何がもくそも全てだろう。致命的なのは人選ミスだな」
藤堂「ゼロ、すまんが同感だ。玉城には荷が重かったんだろう」
玉城「んなことねぇって! なぁゼロォ?」
ゼロ「シャラァップ! くそ、もう一度プランの練り直しだ!!」
C.C.「おい、まさかまだ合体にこだわるつもりか?」
ゼロ「当然だ!!」
藤堂「次は失敗しないよう、慎重にいこう! ゼロ!」
ゼロ「というわけでラクシャータ! お前も機体プランから練り直しておけ!!」プンスカ スタスタ
ラクシャータ「はぁ~あぁ、まぁたお仕事増えちゃったぁ」ポリポリ
ラクシャータ「ロマンがどーとかイマイチわかんないんだっけどぉ~……どうしよっかねぇ」
ラクシャータ「…」
ラクシャータ「……」プスプスプス
ラクシャータ「あーっ! も~やだストレス溜まるぅ!!」
ラクシャータ「そんなに合体好きなんなら夜の合体でもしてろってのよぉ!」
ラクシャータ「アタシだってず~っとご無沙汰だしぃ!」
C.C.「おやおや、さすがに荒れてるようだな? ラクシャータ」
ラクシャータ「ん~? 何よぉCちゃ~ん?」
C.C.「なに、だったら変にこだわるバカにお灸を据えてやろうと思ってな?」
ゴニョゴニョゴニョ
ラクシャータ「……へぇ?」ペロリ
ゼロ「全く……玉城のヤツさえ落とされなければこんな事には!」カポッ
C.C.「そもそも計画が根本的におかしいだろう。KMFは一人一騎が基本の兵器だぞ?」
ルルーシュ「わかっているさ、そんな事は!!」
C.C.「そんなに悔しかったか? カレンを奪われた事が」
C.C.「もっと近くに、手の届く場所においていれば奪われないと思ったか?」
ルルーシュ「黙れ!!」
C.C.「だったらとっとと取り戻してやれ。それでいつか言ったように、紅蓮と蜃気楼に合体機構でもつけてもらやいい」
C.C.「あぁ、理性保つのが大変だったか?」
ルルーシュ「黙れと言っているだろうが!!」
C.C.「はいはい……ところで明日はエリア11に戻らなきゃいけないんだろ? だったらさっさと着替えて寝ろ」
ルルーシュ「言われなくても……」
クローゼットガチャっと
ラクシャータ「ばぁ☆」
ルルーシュ「ほわぁっ!?」ガタタッ
ラクシャータ「んっふふ~♪ ナイショ☆」
ラクシャータ「それにしてもぉ……ゼロの素顔がこんなボーヤだったとはちょっと驚きねぇ?」
ルルーシュ「!! しまった、仮面が!!?」
ルルーシュ「くっ、今見た事を忘r
C.C.「せぃっ」ドゴッ
ルルーシュ「ぐふぅっ!?」
C.C.「焦るなよ。ラクシャータはお前の正体などバラさないさ。その方が面白いらしくてな?」
ラクシャータ「ふふふ~、だぁから安心してオッケ~よぉ♪」
ルルーシュ「くっ……な、何が目的だ!?」
ラクシャータ「んでも今回のはちょっと理不尽すぎるのよねぇ、我侭言いすぎ」
ルルーシュ「わ、悪かったとは思ってる……で、今は何がしたいんだ!?」
ラクシャータ「おかげでアタシもかんなりストレス溜まっちゃってさぁ……アイデア煮詰まっちゃったのよぉ」
ラクシャータ「アンタが何でそんなに合体に拘るのか、ちゃ~んと理解するために……」
ルルーシュ「し、C.C.!! たすk
ガチャッ(ドアLOCK)
C.C.「ふふっ」ビデオジィーッ
ラクシャータ「アタシに合体の素晴らしさ、体感させてもらうわよぉっ!!」ガバッ
ルルーシュ「」
ルルーシュ「ほぅゎあぁああッー――――――――」
―――しばらくお待ちください―――
ラクシャータ「んっふふ~♪」ツヤッツヤ
ルルーシュ「うぅっ……」グスッ
ラクシャータ「いや~久しぶりに堪能したわぁ♪」
ラクシャータ「初めて奪っちゃってごめんねぇ、まさかまだ納品前だったなんて知らなくってさぁ♪」
ルルーシュ「うぅっ……こんなにも簡単に……本当に大事な時のために守ってきた純潔がぁ……」グスッグスッ
C.C.「はっ、以前カレンに迫った事あるくせによく言う」
ラクシャータ「あ~ら、んじゃ本命ってカレンちゃん?」
C.C.「どうだかな、妹かもよ? こいつシスコンだから」
ルルーシュ「黙れぇっ! もういいだろうそんなことぉっ!!」
ラクシャータ「早速これは形にしたいわねぇ、んじゃアタシラボに戻るから~♪」
ラクシャータ「あぁそうそう、煮詰まっちゃったらまた来るから、覚悟してねぇ~ん♪」テッテッテッ
C.C.「だ、そうだ。よかったな?」
ルルーシュ「ちっとも、よくない……!」グスグス
C.C.「まぁかける言葉も見当たらないが……」ポムッ
C.C.「ようこそ、大人の世界へ」
ルルーシュ「」
ロイド「はぃ? 合体KMF?」
スザク「ええ、こないだの戦闘で、黒の騎士団がそんなものを実現したとか」
ロイド「ま~たラクシャータが無茶やらかしたのかなぁ……でもなんか悔しいぃ~っ!」
スザク「それで、モノは相談なんですけど、僕らの方でもそれ出来ないかな~って」
ロイド「……へぇ?」
セシル「スザクくん、今の話って」
スザク「事実です。まぁ、色々あって見れませんでしたけど」
ロイド「セシル君」
セシル「えぇ」
ラクシャータ「お待たせしちゃったわねぇゼロォ♪ 新しい合体機構、できちゃったわよぉ☆」
ゼロ「そ、そうか……」アトズサリッ
ラクシャータ「なぁによぉ、とって食おうってんじゃないから安心しなさいってぇ」
ゼロ「あぁ……で、今度はどんなだ?」
ラクシャータ「こんなんだ♪」ペラリッ
ゼロ「!! これは……まさかこんな答えがあったとは!!」
ラクシャータ「ど~ぉ?」
ゼロ「よぉし……今度こそやるぞ!!」
ラクシャータ「おっけ~、んじゃ景気づけにアッチの方もやりましょっかぁ♪」
ゼロ「」
ゼロ「御機嫌ようブリタニアの諸君。挑戦を受けてくれた事、感謝する」
スザク「お前を相手に退く気はない!」
ジノ「なぁなぁ、今度は例の合体ちゃんと見せてくれるのか?」
藤堂「邪魔したのはそちらだろうが! 折角の見せ場を!」
アーニャ「知らない。悪いのはスザク」
スザク「安心しろゼロ。君達がまた合体するというなら、今度は止めない」
ゼロ「ほぅ?」
スザク「なぜなら……自分達も同じ力を身につけたからだ!!」
ゼロ・藤堂「何!?」
ナナリー「カレンさん、一体何が始まるんですか? モニターも用意されてるようですが……」
カレン「スザクが置いてったのよ。何か、私がいない間に黒の騎士団が合体ロボ作ったとかで」
ナナリー「合体……ですか?」
カレン「それでなんか自分達も合体できるようにとか何とかで、頂上決戦を見届けろ~とか言っててさ」
ナナリー「お兄様がいたら喜ぶのに……」
カレン「アイツ、こういうの好きなの?」
ナナリー「ハイ♪」
カレン(ルルーシュ……まさか、本気でそんなバカなもの造ってないわよね……?)
ゼロ「柩木スザク! 我々の合体を邪魔しながらパクリと来るか! 著作権というものを知らんのか!!」
スザク「我々は合法、君達は非合法の組織だ! KMF法にも抵触してないから問題ない!」
藤堂「柩木スザク……そこまで堕ちたか!!」
ゼロ「おのれ……おのれぇ、スザァァァァァクッ!!」
ジノ「まぁそういうわけだからさ、早いとこそっちの合体見せてよぉ~」
アーニャ「記録、早く」
ゼロ「いいや、ここは諸君らに先手を譲ろう。どうぞ我らに稚拙なパクリ合体を見せてみるがいい」
スザク「……そうか。よし、アーニャ! ジノ! 合体だ!!」ポチッ
ジノ・アーニャ「OK!!」ポチッ
ゼロ「フフフハハハハ!! 相転移砲、スタンバイ!!」ピピッ ガシュゥーッ
藤堂「! ゼロ、まさか!?」
ゼロ「目には目を、歯には歯をだ!! 合体を妨害される悔しさを思い知るがいいっ!!」
ゼロ「相転移砲、発射ぁっ!!」ポチッ
ズギュゥーーーン!!
ラウンズ3人「(つ特大ブレイズ・ルミナス)」
キキキキキンッ
スザク「そんな卑劣な真似、対策済みだ!!」
ゼロ「」
ガシィーン、ガシィーン
藤堂「何と……変形どころか分離も伴った合体とは!!」
C.C.「あんだけパーツ分割してしかもそれが個別に変形とは、やるなぁ」
千葉「あの状態で攻撃できれば一撃なのに、障壁が邪魔だ!!」
ゼロ「これではまるっきりヒーローロボの合体ではないか! おのれぇぇぇぇっ!!」
ガシン! ガシン!! キュピーン!!
スザク「円卓合体!」
ラウンズ3人「キィィィィング!! アーサァァァァァァァッ!!!」シュキィーン
朝比奈「モルドレッドのボディをベースに、残り2機が分割・変形して合体なんて!」
千葉「肩のハドロン砲はそのままに、トリスタンとランスロットの得物まで合体して巨大な剣に!」
C.C.「コクピットブロックまでキチンと統合された位置に……おや?」
ゼロ「む? トリスタンのボディが……」
玉城「なぁ、左手のあの楯って、トリスタンとかいう可変機のボディだよなぁ?」
ジノ「いや~驚いた? 他にうまく配置できる場所がなくってさぁ~ハハハッ!」
アーニャ「防御したらジノ、ヤバい」
騎士団一同「「「「「「」」」」」」
スザク「どうだ! これが王道の力だ!!」
カレン「!! すごい……ほんとに3機のKMFが合体して!!」
ナナリー「そんなに凄いんですか?」オロオロ
カレン「そっか、ナナリー視えないもんね……じゃあ、私が今起きてる事教えてあげるね?」
ナナリー「すみませんカレンさん、ありがとうございます」
カレン「今はこっちに来てるラウンズ3人の機体が合体して、まるでおっきな騎士に……」
カレン(負けないでよルルーシュ……私、最後まで見届ける! 今自分にできる事をする!)
カレン(そう、ナナリーへの……実況を!!)
スザク「さぁゼロ、こちらは合体した。今度はそちらの番だ!!」ジャキッ
藤堂「フ、敵ながら天晴れな完成度だ」
朝比奈「でも今回はこっちだって!」
千葉「ああ、以前とは違うんだ!!」
C.C.『そうだな坊や、大人になったしな? くくっ』(※プライベート通信)
ゼロ「う、五月蠅い! ……では見せてやろう、こちらの新たな合体を!!」
ゼロ「ラクシャータ! 扇! 準備はいいか!?」
ラクシャータ「いつでもオッケ~よぉ~ん♪」
扇「BGMの準備もバッチリだ!」
ゼロ「ぃよぉし!! では真・合体フォーメーション、始動!!」ポチッ
ゼロ「いくぞ! 来い、藤堂!! C.C.!!」
藤堂「承知!!」
C.C.「ふふっ!!」
ゼロ「斑鳩! 艦首ユニット射出!!」
ラクシャータ「すっ飛んできなぁ、艦首飛燕衝角ぅ♪」ポチッ
バシュッ! ズヒュゥーン
スザク「アレは!?」
ジノ「あの艦の先端のアレ(紋章ついた黒い部分)が外れたぁ!?」
アーニャ「すごく、おっきい……記録」パシャ
ルルーシュ(そう、騎士団全員の想いがこもったこの斑鳩! これとて十分、合体の対象だ!!)
ルルーシュ(KMFよりも遥に大きいこのユニットなら、変形するよう改造する事も容易! ならば!!)
ゼロ「いくぞ! 合体ッッッ!!」ポチッ
藤堂・C.C.「「合体ッッ!!」」ポチッ
ガシィィン!!
ジノ「おぉう!? 何だぁ!? 3機のKMFがあのユニットにつっこんでったぞ!?」
スザク「まさか……戦艦(の一部)と合体なんて……!!」
アーニャ「変形、してる……あのユニット」パシャ
ガキン! ガキン!!
ゼロ「とくと見よ!! これぞ我らの切り札!」
藤堂「力あるものへの反抗の象徴!」
C.C.「(言わなきゃならんのか?)じ…自由を求め、抗う翼!」
ゼロ「その名も! 反逆合体!!」
3人「真! 黒乃王ォォォォォッ!!」ズドォォォォン!!
スザク「いや、あの……」
ジノ「なんかこう、木人?ってやつみたいで、正直……」
アーニャ「手足短か……ダッサ」
―――ブリタニア政庁 特別虜囚室―――
カレン(る、ルルーシュ……これはないわぁ……)ガックシ
ナナリー「どうかされましたか、カレンさん?」
カレン「う、うぅん……なんでも、ないから……」
藤堂「聞き捨てならんな。この一見シンプルな姿に秘められた力強さが判らんとは」
C.C.(いや、フツーにダサいだろ)
南「いやぁ、ないわぁ」
杉山「ないない」
千葉「藤堂さぁぁん……うぅっ」ナミダメ
朝比奈「どうして、こうなっちゃったんだろうね……」
ゼロ「」
スザク「ゼロ、正直その黒い木人には全くセンスを感じない」
ジノ「う~ん、その腹の騎士団マークもダサさを加速してるってか……」
アーニャ「……記録に値しない」
ゼロ「」ブチッ
ゼロ「大体アレだ! 見た目が強さに直結するのか!? そうじゃないだろ!!」
スザク「だがロボットというものはカッコよさだって必要だ!!」
藤堂「この悪魔の羽に見立てた艦首飛燕爪牙の美しさが判らんか柩木!」
スザク「でも肝心の本体が黒木人じゃどうしようもない!!」
C.C.(もうやだこいつら)
ゼロ「木人木人言うな! そんな台詞は戦って勝ってから言えぇ!!」ガシィン
スザク「望むところだ黒木人!!」ジャキッ
男4人「「「「いくぞぉぉぉぉっ!!!」」」」
C.C.・アーニャ(早く帰りたい)
ゼロ「クッ、回避だ! C.C.!!」
C.C.「やってるよ」グイィッ!
ギュン!(回避成功)
ゼロ「こちらのターンだ、藤堂!!」
藤堂「任せておけ。翼状飛燕爪牙、発射!!」ズキュッ!!
アーニャ「どうする?」
スザク「決まってる、回避だ!!」ギュン!!
ジノ「おぉ~、防御じゃなくてよかったぜ~」
―――ブリタニア政庁(ry)―――
カレン「すごい、こんな特大サイズの戦い見た事無い……」
ナナリー「どんな感じなんですか?」
カレン「例えるなら、そうね……荒ぶる騎士と、え~……か、怪獣の戦いってとこかしら」
カレン(言えない、言えないよぉ、木人だなんて……私なんて説明したらいいのルルーシュ!?)ナミダメ
ゼロ「こちらに残された手もわずか……!」
アーニャ「スザク、そろそろエナジーヤバい」
C.C.「残り時間わずかといったところか……どうするんだ?」
ジノ「どうもこうも! 次の一撃が」
藤堂「お互い最後の一撃となるか……!!」
スザク「ならば!!」
ゼロ「とるべき手はひとつ!!」
ゼロ・スザク「「突撃あるのみ!!!」」ズゴゴゴゴォォーッ!!!
ゼロ「(ニヤリ)バカめ、予想通り突っ込んできたな……! 藤堂! C.C.!!」
藤堂「む!」
C.C.「ほぅ? 例のアレか!」
ゼロ「ククク……貴様らがダサいと蔑んだこの腹の紋章の力を見るがいい! 極大相転移砲展開!!」ポチッ
ガシャン!
ゼロ「蜃気楼を内包したからこそ使えるこの武装の威力! その身で味わえぇ!!」ズギュゥゥゥゥン!!
スザク「!! この距離、このスピードではかわせない……!!」
キュィィィィン!
スザク「生きるためにも、ここはシールドだッ!!!」ガシャッ!!
ジノ「え」
ズガガガッ! ドゴォォォン!!
騎士団一同+カレン「「「「「」」」」」
ジノ「あれぇ~~~~ッ!!」ダッシュツー
スザク「ジノォォォォォッ!! おのれっ、ゼロォッ!!」
ゼロ「待て、今のはお前g
スザク「黙れこの人殺しがァァァァァッ!」
ジノ「いや生きてるって」
ゼロ「お前! 自分のやった事すらわからんのかぁ!!」
ピピィィィィッ!!
C.C.「残念なお知らせだ……」
アーニャ「もう、エナジーがない」
スザク「くっ! こんなところで!!」
ゼロ「ここまでか……藤堂、C.C.! 引き揚げるぞ!!」テッシュゥーッ
スザク「くそっ……くそぉ! ジノの仇は必ず! 黒の騎士団の黒木人めぇ!!」
ジノ「お~い、聞いてる? そろそろ回収してくんねぇ?」
ラクシャータ「おやぁ、ゼロ達が帰ってきたようだねぇ?」
ディートハルト「計算ではユニットがドッキングするとき丁度エナジー残量がゼロになる頃でしょう」
扇「ともあれ、ラウンズ専用機を1機落としたんだ! これはいけるぞ!!」
玉城「やっぱ合体ロボってすげぇなぁ! 俺興奮しちまったぜぇ!!」
南「みんな! 木人が帰ってくるぞ! 迎えに行こう!!」
騎士団一同「うおぉぉぉっ! 木人! 木人! 木人! 木人! 木人!……」
ゼロ「だから……木人じゃないのに……」ワナワナワナ
ジノ「うぅ~っ痛っててて……ったくひでぇよスザクぅ~っ」
スザク「すまないジノ、僕が不甲斐ないばっかりに……」
アーニャ「スザクが悪い、全部」
ジノ「あ~あ、トリスタンも修理にしばらくかかるっつーし……しばらく動けないかァ~ッ」
アーニャ「あんな合体機構、邪魔。いらない」
セシル「ごめんなさいね。今度はもっとマシな改造にしておくから」
ロイド「いや~それでもアールストレイム卿とヴァインベルグ卿の機体まで弄れてゾックゾクしたよぉ♪」
ジノ「いや~でも面白かったっすよ? 日本人が好むのもわかる気がするなぁ!」
スザク(ゼロがルルーシュなら……あの趣味の悪さは治させないといけない)
スザク(見ていろルルーシュ! 僕が正しいロボットのあり方を教えてやる!!)グッ
ナナリー「先日の戦い、誰も犠牲が出なくてよかったですね」
カレン「ふふ……ナナリーは優しいね」
ナナリー「でもあのときのカレンさんの実況、お見事でした! お兄様達が観てたアニメのナレーションみたいで!」
カレン「よ、喜んでもらえたなら……解説冥利に尽きる?のかなぁ」
ナナリー「昔お兄様にいろんなお話聞かせていただいたのを思い出しました……また、聞けたらいいなぁ」
カレン「ナナリー……っ、大丈夫、きっとまたルルーシュと一緒に暮らせるわよ! そしたら、いくらでも……」
ナナリー「はいっ! その日を楽しみにしてます! そのときはまた、カレンさんも一緒ですよ?」
カレン「え?……ふえぇっ!?」
千葉・朝比奈「「藤堂さん!!」」
藤堂「戻ったぞ。今回は痛み分けに近い形だったが……」
ディートハルト「お見事です。合体というものの素晴らしさ、骨の髄まで味わいました」
杉山「まぁ、見た目はアレだけど」
藤堂「ああ、今後の研究課題だな」
扇「って、やっぱり今後も合体路線でいくのか?」
ラクシャータ「もっと研究すればぁ、機構の見直しとか色々できそうだしねぇ? ねぇ~ゼロォ?」
ゼロ「」ビクッ!!
C.C.「ふふっ、まぁ頑張れよ、元坊や?」
ゼロ「念願叶って合体KMFは実現した。想像以上に大変だったがな」カポッ
C.C.「おまけに襲われる形だが夜の合体も実現した。万々歳じゃないか」ニヤニヤ
C.C.「お次は誰と合体だ? カレンか? シャーリーか? それともやはりナナリーか? くくっ」
ルルーシュ「下劣な事を言うな! 今考えるようなものでは……」
クローゼットガチャッと
ラクシャータ「やほぉ~☆」
ルルーシュ「ほゎあぁっ!?」
ラクシャータ「お疲れだったわね~ゼロ? いぃえルルーシュ君と呼んだ方がいいかしらぁ?」
ルルーシュ「ラクシャータ!! 何故またクローゼットにいるぅ!?」
ルルーシュ「ちょ、ちょっと待て……その妙に艶かしく俺の顎に当てた手は何だ!?」
ラクシャータ「言ったでしょぉ? 労いと今後のためってぇ。つまりさ? カレンちゃんが戻ってきたときのためとかぁ、新しいアイデア出したりのためにぃ……」ペロリ
ルルーシュ「!!」ゾクッ!!
ラクシャータ「色々教え込んだげるわよぉ! それじゃ! いっただっきまぁ~すぅ♪」ガバッ!!
ルルーシュ「ひぃゃあああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ルルーシュ(ナナリー、カレン……お前達を助け出すまで、俺は生きてないかもしれない……)
C.C.「やれやれ。どこまでいってもハートは童貞坊やってか?」
おしまい。
予定より遥かに長くなってしまったがどうにか書ききれた……
支援してくれた方々サンクス、それじゃ俺は寝ま~す(ガクリ)
Entry ⇒ 2012.09.24 | Category ⇒ コードギアスSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
淡「陽に照らされて星は輝く」 前半
あくまでパラレルワールド的に捉えてください
麻雀そのものは弱いので、その辺は結構適当です。積み棒計算はできないので省きます
プロ子「む……」
妹子「うぅ……」
爺「ほほ、これはこれは」
爺「終局じゃな。また淡のトップか。うむうむ、それでこそじゃ」
プロ子「本当に、お孫さんの実力は目を見張るものがありますね。これでまだ中学生とは、
将来が楽しみです」
爺「応とも。この子の両親は牌に触りもせず会社を大きくすることばかり考えておったから、
孫の代には期待しておらなんだが、よもやこれほどの逸材があの二人から産まれるとは。
ワシの遺伝子が受け継がれておる証拠じゃの。見てみい、ワシとて現役プロの君と比べても見劣りせん戦績じゃ」
爺「ほっほ。言うようになったのう。――それに比べ、お前はなんじゃ妹子」
妹子「うっ……」ビク
爺「半荘五回打って全てラスとは……情けない。それでもワシの孫か?」
妹子「ご、ごめんなさい……」
爺「まあ、プロになるというワシの夢は淡が遂げてくれるじゃろうし、もうそれでよいわ」
淡「……」
淡「じゃあ、私部屋に戻って少し休むね」ガタ
爺「ああ待ちなさい淡。お前、本当に今年のインターミドルには出んのか?」
爺「何故じゃ。史上初のインターミドル個人戦三連覇……お前なら容易かろうに。のう、プロ子さん」
プロ子「確かに、貴女の実力は中学生の内では頭抜けているわ。絶対とは言わないまでも、
おそらく三連覇もできると思うわ」
淡「……だから嫌なのよ」ボソ
爺「む?」
淡「なんでもない。今年受験だしね、勉強しないと」
爺「……まあ、お前がそう決めたのなら強要はせんが。なら淡、お前どこに進学するつもりじゃ?」
淡「まだ決めてない。別にどこでもいいよ」
淡「いやだよ、大阪なんて。東京から出る気はないから」
爺「そうか? じゃったら……やはり白糸台かのう。昨年は優勝しておるし、なにより昨年、強力な一年生が入ったらしいしの」
淡「強い一年?」
爺「うむ、確か名前は……宮永照、とかいったか」
淡「知らない。どうでもいいよそんなの。じゃあ私戻るから」ガチャ
爺「おい淡、進学先は白糸台でいいんじゃな?」
淡「まだ決めてないってば」バタン
淡「はあ……」ゴロン
淡(インターミドル……やっぱり出るべきだったかな。もしかしたら今年は……)
淡(ううん、どうせ同じだよ。私より強い人なんているわけない……)
物心ついた頃から祖父の趣味の麻雀に付き合わされていた私は、気がつけば祖父を超えていた。
祖父は私のために家にプロを呼んで指導させてくれた。強い人と打つのは楽しくて、もっと強くなりたいと思った。それは私が一番麻雀を好きだった時期だ。
淡(……でも、二年前)
中学に入った私は一年生で麻雀部のレギュラーを取り、インターミドルに出場した。
――そして、愕然とした。同年代の子たちの、あまりの弱さに。
一年間戸惑い続けた私は再びインターミドルに出場して……結局、期待は落胆に散った。
淡(私と互角に戦える人なんてどこにもいなかった。全国にさえ)
淡(中学の麻雀部の皆は私を怖がって誰も私と打ちたがらなくなって、三年生に上がる前に私は退部した)
その時に私はようやく気付いた。私は他人とは違うのだと。
まるで星のように、見上げてくれる人はいても、隣にいてくれる人はいないのだと。
そうと気づいたら、もう麻雀なんて楽しくもなんともなくなった。麻雀への情熱も、すっかり冷めてしまっていた。
淡「プロ、かぁ」
淡(正直、プロの道にそこまで魅力を感じないんだよね)
確かにプロには私より強い人も大勢いるだろう。彼女らと打っている間は、きっと楽しく麻雀に没頭できると思う。
断言できる。十年もすれば、私はきっと世界最強の雀士になる。数多のプロを足蹴にもかけない、最強の打ち手に。
淡「……そんなことになったら、私はどうすればいいの?」
そしてきっとその時こそ、私は真の意味での孤独を味わうことになると思う。
淡「そんなのは……やだ」
淡「そんな思いを味わうくらいなら、もういっそ麻雀なんて……」
祖父は猛反対するだろうが、別にいい。だいたい、祖父は自分が遂げられなかった『プロになる』という夢を私に押し付けているだけだ。
淡「あれだけ手加減されて、わざと指し込んでもらってるっていうのに、『現役プロに見劣りしない戦績』だなんて、馬鹿みたい」
そんな人に私の進路をとやかく言われる筋合いなんてない。
別に白糸台に入らなくたっていい。どこの麻雀部に入ったって同じだ。
ただ、その年の優勝校が変わるだけ。
もう麻雀なんて、どうでもいい――。
淡「……イライラするなぁ……」
翌年
私は高校生になった。祖父の強い希望で、結局白糸台高校に入学することになった。
友「大星さん、おはよう!」
淡「おはよ」
友「ねえねえ大星さん、もう入る部活決めた?」
淡「うーん……一応、麻雀部に入ろうかなって」
淡(てか、おじいちゃんに絶対入れって言われたしなぁ……)
友「あ、大星さんもなんだ。私もだよ!」
淡「友ちゃんも?」
友「うん。やっぱり白糸台って言ったら麻雀部だよね。インハイ二連覇だよ、二連覇。すごいよね」
淡「あー……うん、そうだね」
淡(ふーん、二連覇してたんだ。興味なかったから知らなかった)
友「それになんと言っても、白糸台には宮永先輩がいるからね!」
淡「宮永? 誰?」
友「ええ!? 宮永照知らないの!? インハイ二冠王者の、高校最強の選手だよ!」
淡「ふーん」
淡(ああ、そういえばおじいちゃんが言ってたっけ)
友「あ、さては大星さん、初心者でしょ? これから麻雀をやろうっていうなら、宮永照は知っといた方がいいよ」
淡「……友ちゃんはどうなの?」
友「えへへ、私はこれでも小学三年生の頃から麻雀をやってるし、去年は個人戦で県ベスト16まで行ったんだよ!」
淡「ふーん」
友「ねえ、体験入部はどうするの?」
淡「体験入部?」
友「正式な入部までに、三回体験入部の機会があるんだよ。そのときに部の人と打ってもらったり
できるんだって。で、四回目に入部試験をするの。
すごいよね、気合い入ってるよね白糸台。さすがって感じ」
淡「それいつやるの?」
友「今日一回目があるよ。あーでも今日は私都合悪いから、二回目から参加するつもり」
淡「ふーん。行ってみようかな」
友「お、やる気だね。でも気をつけてね。間違っても二軍の人と打っちゃだめだからね。
白糸台は二軍でも県代表クラスの実力だって言うし」
淡「うん。分かった」
放課後
淡「麻雀部……ここか」ガラ
淡「すいません、体験入部しにきたんですけど」
A子「はーい。いらっしゃーい。どうぞ入って」
淡「失礼します」
淡(うわ、人多いな)
A子「はじめまして。入部希望の人だよね?」
淡「まあ、一応。――あの、宮永照っていう人がいるって聞いたんですけど」
A子「あら、ふふ。貴女も? みんな宮永さんのことを初めに訊くよね。でもごめんね、
いま一軍のメンバーは練習試合でいないの。次の体験入部の日にはいると思うけど」
淡「そうですか」
淡(まあいっか。二軍でも全国レベルらしいし)
A子「じゃあ、さっそく打とうか。中学で部活の経験は?」
淡「二年の終わりに辞めました」
A子「あら、どうして?」
淡「つまんなかったから」
A子「あー……そっか。うん、仕方ないよね。勝てなくて辞めてく子、実はうちも結構多いんだ」
A子「じゃあちょっと待ってね、今空いてる子探すから。――ねえ誰かー。三軍で手の空いてる子いるー?」
淡「あの」
A子「ん? なあに?」
淡「ここにいる中で一番強い人と打ちたいんですけど」
A子「え、でも……」
淡「誰が二軍で一番強いの?」
A子「えーっと、一軍っていうのがつまりスタメンのことで、五人しかいないんだ。
だから二軍のトップっていうと、白糸台で六番目に強いってことなんだけど……」
淡「それでいいよ。誰ですか?」
A子「一応、私……ってことになるんだけど。一軍のいない間、部を任されてるから」
淡「じゃああなたでいいです」
A子「う、うん……じゃあ、ちょっとまってね。二軍からあと二人連れてくるから」タタタ
淡(白糸台の二軍は県代表クラス。なら、彼女らと打てば、自然とインハイのレベルも見えてくる)
淡(もし二軍でも私と渡り合えるくらいに強いなら、高校生の麻雀のレベルにも期待できる)
A子「お待たせ。連れてきたよ」
B子「その子? 二軍と打ちたいなんて言ってるの」
C子「生意気だよね。自信過剰っていうか」
A子「コラ、そんなこと言わないの。この二人は二軍の八位と九位。ごめんね、この二人、
一軍に入れそうにないから最近気が立ってて」
B子・C子「「うるさい」」
A子「じゃあ打とっか。手加減はしなくていいんだよね」
淡「はい。よろしくお願いします」
淡(――見せてよ。白糸台の実力)ゴッ
一週間後
昼休み
友「はぁ~……」
淡「どうしたの? 今朝からずっと溜息ついて」
友「うん、昨日さ、麻雀部の二回目の体験入部行ってみたんだけどさ」
淡「あ、そっか。昨日二回目あったんだっけ」
友「うん。大星さんは来てなかったけど、私一人で行って、打ってもらったんだ。
でも……予想外すぎたよ」
淡「……うん。ほんとにね」
淡(ほんとに予想外だった。インハイ二連覇を達成した白糸台の実力……見誤ってた)
淡(まさか……あんなに弱いなんて)
淡『ツモ。8000オール』
B子・C子『……』
A子『……トびです』ジャラ
淡『……』
A子『あ、あなた……何者なの?』
淡『……失礼します』ガタ
A子『ちょ、ちょっと待って! ね、ねえ! 次はいつくるの?
一週間後にまた体験入部があるから、そのときなら一軍の人が――!』
淡『来ません』
A子『え……?』
淡『もう……ここには来ません』
友「大星さんさ、麻雀部入るの?」
淡「……分かんない。入らないかも」
友「だよね……。私も昨日体験入部行ってそう思った。あんな人たちと打つなんて嫌だよね」
淡「うん。ちょっと弱すg――」
友「強すぎるよね、白糸台。手も足も出なかったよ」
淡「……………………誰と打ったの?」
友「三軍のD子先輩とE子先輩と、体験入部の子。三軍であれだけ強いなんて予想外すぎるよ」
淡「……そっか」
友「あ、私このあと用事あるんだった。ごめん、先に教室戻るね」
淡「うん」
友「じゃあね。三軍に負けた私が言うのもなんだけど、大星さんみたいな初心者は麻雀部
やめといた方がいいよ。
あそこはほんとに強い人しかいないから、きっとすぐつまんなくなって辞めちゃうよ」
淡「……うん。そうだね」
淡「……」
淡(……もういい。入部なんてやめとこう)
淡(結局私は一人ぼっちなんだ。誰も私の隣を歩いてくれない)
そうだ。星は二つ並ばない。誰もいない闇の中で、一人孤独に在るしかない。
もう麻雀なんてやめよう。これ以上孤独感を味わわされるのなんて……耐えられない。
淡「……イライラするのよ。あんたたちが弱いせいで」
淡「弱い奴なんて、皆いなくなっちゃえばいいのに」
あるいは……。
淡(私が……もっと弱くなればいいのかな。そうすれば、もっと麻雀を楽しめるのかな)
淡(教えて……誰か教えてよ。麻雀、楽しくないよ……)
二週間後
放課後
友「じゃあ大星さん、また明日」
淡「うん。また明日」
淡「ふう……HR長引いちゃったな」
あれから、私は一度も牌に触っていない。祖父に何度か誘われたが、体調が悪いと断り続けた。
もう弱い祖父の相手をするのはうんざりだった。プロ子は祖父に気を遣って本気で打ってくれないし、
妹子は話にならないくらい弱い。そもそも、私はもう麻雀なんて打ちたくなかった。
淡(何もやる気がおきない。なんか人生がつまんないよ。はぁ……)
ガラッ
菫「失礼します。大星淡さんはいますか?」
淡「? はい、大星は私だけど」
菫「君か。はじめまして。私は三年の弘世菫だ。よろしく」
淡「なにか用?」
菫「ああ、少し話がある。時間いいか?」
淡「いいけど……」
菫「よし、じゃあ歩きながら話そう。ついてきてくれ」
淡「……?」
廊下
淡「あの」
菫「ん、なんだ?」
淡「もしかして、麻雀部の一軍の人?」
菫「へえ、どうして分かった?」
淡「空気で分かるよ、そんなの」
菫「それはすごいな。A子が言ってた通り、かなりの逸材らしいな」
淡「A子?」
菫「一度目の体験入部のときに、A子と打ったんだろ?」
淡「ああ……」
淡(三人と打ったけど、誰がA子なんだろ。まあいっか)
淡「で、今私たちは麻雀部に向かってると?」
菫「そういうことになるな。今日、入部試験があるんだ。それを受けてもらわないと、
いくら強くても入部できないからな」
淡「あの。申し訳ないんですけど、私麻雀部に入る気ないんで」
菫「どうして?」
淡「そんなの……決まってるでしょ」
淡「弱いからだよ。あなたたちが」
菫「……」
淡「もううんざりなの、弱い人と打つの。体験入部の日、ここで六番目に強い人と打ちました。
――雑魚でした。あれで六位なんて、一軍の実力もお察しって感じだね」
菫「……」
淡「ここって全国で一番強い高校なんでしょ? その高校の六位があんなんじゃ、
インハイのレベルも高が知れてるよ。そりゃ私が出れば全国優勝なんて余裕だろうけど、
でも私はごめんです。迷惑なの。あなたたちなんかと打ったって、きっと……」
きっと、私の中の孤独感が増すだけだ。そして対局の後、対局者は私を怯えた目で見上げるんだ。
まるで、決して手の届かない、宇宙の果てに輝く星を見つめるような目で。
淡「だから、もう麻雀部になんて行かない。用がそれだけなら、私は帰ります」
菫「……可哀想に」
淡「……は?」
菫「君は常に上を目指すタイプの人間なんだな。負けず嫌いだけど、でも常に自分より
強い人間を求めてる。一緒に歩く仲間を欲しがってる。
でも君は今まで、そういう人間に出会えなかったんだな。本当に、不憫でならない」
淡「……そんなの、いるわけないじゃん。星を目指す人なんているわけないでしょ」
菫「いるさ。たとえ宇宙の果ての星だって。あるいは暗い海の底だって。そこに
挑もうする人間はいるんだ。何度打ちのめされても、必死に食らいついて、目標にして、
〝それを楽しいと思える人間〟は、必ずいるんだ」
淡「……」
菫「だからこそ、私は君に麻雀部に入ってほしい」
淡「……どうして?」
菫「簡単だ。――あそこには、宮永照がいるからだ」
淡「宮永、照」
菫「今日の入部試験は、あいつとの対局の結果で合否を出す。もちろん勝てとは言わない。
実力を見るだけだ」
淡「やめた方がいいよ。その人、ここのエースなんでしょ? そんな人に一年生が
勝っちゃったら、申し訳ないし」
菫「ははは」
淡「……何が可笑しいの?」イラ
菫「いや、すまない。まあ一度打ってみるといい」
淡「体験入部の日、そんな風に私のことを小馬鹿にして笑った人と打ったよ。
もう顔も覚えてないけど」
どうやらこの菫とか言う人は、私が宮永照に勝てるはずがないと思っているらしい。
淡(いいよ。面白いじゃん)ゴッ
淡(高校生チャンピオン? 一万人の頂点? 笑わせる。私はそんな頂よりももっと高い、
遥か宙の果てにいるんだ)
それに、ちょうどいい。高校生チャンピオンと打てば、それで全国の高校生のレベルは
つまびらかになる。今日宮永照を下し、彼女より上はいないんだと理解すれば、
私は今度こそ何の未練もなく麻雀なんてやめられる。
淡(――もう終わりにしてやる。何もかも)
菫「さあ、ついたぞ。入ってくれ」ガラ
淡「失礼します」
淡(――あれか。宮永照)
後ろ姿しか見えないけど、どうやら打っているらしい。
周りに人垣ができていて、誰も何も話さない。不気味なほどの静寂だった。
照「――ツモ。12000オール」
淡「……っ」ピク
新入生A「……と、トびです」
新入生B「私も……」
新入生C「わ、私もです……」
菫「ちょうど終わったみたいだな」
照「じゃあ結果を発表します」
照「A子さん」
新入生A「は、はい……」
照「三軍」
新入生A「は、はい。ありがとうございます! よかったぁ……」パァ
照「B子さん」
新入生B「はい」
照「二軍」
菫「お」
部員たち「!」ざわ・・・ざわ・・・
新入生B「あ、ありがとうございます! やったあ!」
照「二軍のF子。繰り下がりで三軍」
F子「はい……」
部員「F子ちゃん、ついに落ちちゃったか……」ヒソヒソ
部員「覚悟してたと思うよ。うちって実力主義だし」ヒソヒソ
部員「でも、あんなに頑張ってたのに……」ヒソヒソ
照「C子さん」
新入生C「は、はい……」
照「――申し訳ないけど、あなたの実力じゃうちではやっていけない。不合格」
新入生C「……っ! は……はい……」
菫「あまり気を落とさないでくれ。うちは秋にもまた入部試験をやるから、そのときにまた来てくれればいい」
新入生C「……いえ、私は、その…………もう、いいです。ごめんなさい……!」タタタ
菫「あっ……ふー」
淡(フン)
淡(そうよ。弱いやつは消えればいい。トばされるような雑魚が麻雀なんかするのが悪いのよ)ツカツカ
淡(それになに? 三人トび? アホらしい。どんだけ弱いのよ。ほんとイライラす…………え?)ピタ
淡(そんな一瞬で三人をトばすなんて……この人、まさか私と同じ高火力麻雀……?)
照「ん?」
そのとき、背後の私の気配に気づいたのか、宮永照が後ろを振り向いた。
淡「――ッ!!」ゾクッ!
淡(な、なにこのプレッシャー……)
照「入部希望者?」
淡「……違います」
照「?」
菫「彼女は大星淡さん。お前と一局打ちたいそうだ。打ってやってくれ」
照「いいけど。東風でいいの?」
菫「ああ。君も、それでいいな?」
淡「なんでもいいよ」
菫「よし、じゃああと一人……一子。入ってくれ」
一子「え、私?」
菫「ああ。この四人で打つ」
部員「!!」ざわ・・・ざわ・・・
部員「そんな、新入生一人に一軍三人なんて……」ヒソヒソ
部員「ひどい……可哀想だよ」ヒソヒソ
部員「でも待って。あの子、ひょっとしてこの前の……」ヒソヒソ
菫「それじゃあ、始めようか」
四人「よろしくお願いします」
淡(じゃあ、お手並み拝見といこうかな)ゴッ
東一局
淡「リーチ」
菫「早いな。まだ四巡目なのに」
淡「あなたたちが鈍いんだよ」
淡(四巡もあれば十分。私の星の引力が、有効牌を引き寄せる)
淡(どんなに強くても、宙に投げ出されれば所詮、人は無力。より大きな力に翻弄されるしかない)
淡(――さあ、引きずり込んでやる。宇宙の闇へ――!)ゴォォォォォ!
一子「うっ……!?」ゾクッ
菫「これは……」ゾクッ
菫(予想以上だ。まさかこれほどとは……)
淡「――ふふ」カチャ
淡「――ツモ。リーチ一発ツモ三暗刻ドラ3。4000,8000」
三人「……」ジャラ
淡「…………」イラ
淡(なんなの? あれだけ息巻いておいて、このザマ? 結局この人たちも口だけか)
淡(イライラするなぁ……)イラ
照「……」ゴッ‼
淡「……ッ!?」ピク
淡(え、後ろ――)バッ
淡「……?」
一子「……っ」ビク
菫「……来たか」ピク
淡(なに……今、なにかを見られた……?)
菫(さあ、ここからだぞ大星淡)
東三局
親:照
ドラ:2索
照「……」白
淡「……ッ」ギリ
淡(くそ、鳴けない……私が役牌を鳴けないなんて……)
淡(宮永照……あれからもう三回和了られてる。安手ばかりだったから気にならなかったけど、
こんなにあっさり三連続和了されるなんて、ここ数年なかった)
淡「チッ」カチャ
四五六244赤5⑨⑨⑨北北白 4
淡(六巡目なのに、まだこんな手。かろうじて得意の手になれる形は保ってるけど、
明らかに普段より引力の効果が弱い)
淡(いや、違う……。私の支配が弱まってるんじゃない。それを超える支配が、今この卓に
充溢してるんだ。私の星の引力すら振り払う、圧倒的な支配が)
淡(高校生チャンピオン……多少はやるみたいだけど、あんまり調子に乗らないでよね)ゴッ
照「……」カチャ
淡「……」カチャ
淡(よし。三枚目の北。これで聴牌。三暗刻に高めドラ2がつく。
ちょっと安いけど、まあいいか)カチャ
淡(いや……待てよ。ここで素直に聴牌を取れば切るのはドラの2索か赤5索)
淡(こんな牌を切らなきゃいけないって時点で、私の支配に綻びが出てる証拠だ。
いつもならドラを暗刻にして5索の単騎待ちになってたはず。なら、この場は私ではなく、
宮永照の支配下にあるってこと)
淡(だめだ。この牌は切れない……。だったら……)
淡「……」北
淡(これなら!)
照「ロン」
淡「え……?」
二二三三四四112233北 北
照「12000」
淡「そんな……!」ガタッ
淡(素直に切っていれば、私が宮永照の当たり牌を潰していた。くそ、裏目?
いや、これはそんなんじゃない。もっと別の……)
菫(彼女は自分の麻雀に絶対の自信があるようだな。だが同時に、自分の力を超える支配の
存在を受け入れるだけの賢さも持っている。変にプライドにこだわったりせず、時には
自分の麻雀を曲げることも厭わない。だから小さな違和感にもすぐ気付けるし、
臨機応変に立ちまわれる)
菫(だがその麻雀は既に照に『見抜かれている』。下手に賢しく立ち廻ろうとすると、
照の思う壺だ。さあ、どうする?)
淡(くっ……)
淡(最初に和了ってから、宮永照以外だれも和了れてない。もう五連続和了された)
淡(しかもこの人、私のこと狙い撃ちしてる。この私をトばすつもり? 図に乗って……!)
123四四五五発発白白白中 六
淡(よし、私の引力もまだ消えてない。三巡目で張った)
淡(でも、まだだ。こんな安い手で上がっても仕方ない。次の私の親――そこに強い流れを持っていきたい。
だからまだ上を狙う。索子を全部落として小三元と混一色まで絡める。やれる。私ならできる……!)
淡「……!」3索
照「……」カチャ
一子「……っ」カチャ
菫「……」カチャ
淡(一子って人は必死に食らいついていってる感じだけど、この菫って人は
勝とうとしてない。ただ私の力を測ってる)
淡(正直……宮永照一人だけに注意していればいいっていうのはありがたい。一気に叩いてやる)
1四四五五六六発発白白白中 中
淡(よし、いつもの私の手だ。そうこなくちゃ。1索を落として聴牌。ツモでも親被りで
宮永照に痛手を負わせられる)
照「……」ゴッ
淡「ッ!」ゾクッ
淡(なに…………風?)
淡(感じる……何か強い力……強い風を)
でも、有り得ない。だって私の引力が効いてるってことは、今ここは『宙の中』のはず。
宇宙に風なんて吹かない。なら、今ここは宙なんかじゃなく……。
淡(違う……ここはまだ、宮永照の支配下なんだ……!)
照「……」ゴォォォォォ!
淡(まずい、このひと和了る度に打点が高くなってる。次はきっと直撃なら私を
トばせる点でくる)
淡(このままじゃ次巡、私はきっと宮永照の当たり牌を掴まされる。
なら聴牌を崩して別の牌を切るしか……でも、まさかそれも『見抜かれてる』?)
淡(くそ、どうすれば……!)
菫「……」白
淡「――!」
淡(――これだ!)
淡「ポン!」カチャ
淡「……」白
菫(食い替え……? まあうちでは禁止していないが……なるほど、この子ももう照の力
を見破ったか。だが――)
淡(これで私が当たり牌を引くことも打つこともない。それにツモ巡も変わって、
宮永照の予定していた牌と違う牌があっちに流れる。私の聴牌も崩れないし、
次に引力を使って中か発を引けば……!)
菫(――それでも、照は止められないのさ)
照「……」カッ
照「……」ガシッ ギュルルルルル
淡(なっ……!)
淡(まずい。この感じ……やられる! そんな……ツモ巡をズラしたのに!?)
ドゴォ!
照「ツモ。8000オール」
淡「……ぁ……」
菫「トびだ」ジャラ
一子「……私も」ジャラ
淡「……私、は……」
淡(……残ってる……けど、数千点……たったこれだけ? この、私が……)
淡(星の引力をものともしない、圧倒的な場の支配)
淡(まるで牌そのものが宮永照にかしずいてるみたいな、凄い力を感じた)
淡(この人……別格だ)
部員「……」ざわ・・・ざわ・・・
部員「すごい、あの子……宮永先輩と打ってトばなかった!」ヒソヒソ
部員「一軍の二人ですらトんだのに」ヒソヒソ
菫(最後のあの食い替え……あれがなければ彼女が当たり牌を掴んでいた。
直撃は24000点。彼女はトんでいた)
菫(照の和了りこそ防げなかったが、彼女は自分のトびを回避したんだ)
菫(大星淡……私の想像以上だな)
菫「どうだ照、感想は」
照「感想はともかく、入部試験の結果を発表する」
淡「わ、私はまだ入部するとは――」
照「大星淡さん」
照「一軍」
部員「!!!」ざわ・・・!ざわ・・・!
部員「い、一軍!? 一年生が、白糸台の!?」
部員「え、ってことは、じゃあ……!」
照「一子」
一子「……はい」
照「繰り下がりで二軍」
一子「…………はぃ。今までありがとうございました」ペコリ
部員「そんな……一子さん……」
一子「いいの。実力が全てなんだから」
部員「……」
淡「……」
菫「よかったな大星さん。文句なしで合格だそうだ。よく打ったよ」
淡「文句なし……? よく打った……? こんな、首の皮一枚繋がっただけで?
……馬鹿にしないでよ」
菫「まさか。馬鹿になんてしてないさ。むしろ君の力に驚いてるくらいだ」
淡「でも――!」
菫「君だけだ」
淡「え?」
菫「今日照と打った人の中で、トばなかったのは君だけなのさ」
淡「は……」
淡「だ、だって、一人でもトんだらそこで終局でしょ?」
菫「ああ」
淡「じゃあ、じゃあなに? 今までこの人と打った人は全員、3人同時にトばされ
続けたっていうの? 私以外の全員が!?」
菫「そうだ。私と一子も含めて、君以外の全員が、同時にトばされた。照がつけた
記録によるとそうなってるな」
菫「君はそれを自分の力で回避したんだ。首の皮一枚だって十分さ」
淡「そんな……馬鹿な」
照「菫、私は少し外の空気を吸ってくる。後は任せてもいい?」ガタ
菫「ああ、お疲れ様」
照「それじゃあ。――それと、大星さん」
淡「な、なに?」
照「入部するなら、来週までに入部届けを持ってきて。それ以降は
受け付けられないから」ガラ ツカツカツカ
淡「…………ま」
淡「待って!」ガタ
屋上
淡「待って、宮永さん!」
照「何?」
淡「あなた……あなたは」
淡「どうして麻雀を続けてるの?」
照「……」
照「……どういう意味?」
淡「だって、あんなに強いなら、あなたとまともに戦える人なんているわけない!」
淡「現にインハイで二連覇してるんでしょ? だったら、もう周りは格下だらけじゃん!」
淡「そんなの……そんなの、絶対つまんないじゃん!!」
照「……」
淡「なのにどうしてあなたは麻雀を続けるの?」
照「……」
照「分からない」
淡「え?」
照「昔は、ただ強くなりたかった。私にも目標があった。でも今は……もう
なんのために麻雀を打ってるのかすら、思い出せない」
淡「だ、だったら」
照「でも多分……私には、麻雀しかないからだと思う」
淡「麻雀しか、ない?」
照「……そういうあなたはどうなの?」
淡「私?」
照「麻雀は好き?」
淡「……昔は好きだった。今は微妙」
照「私も」
淡「強い相手と戦いたいってずっと思ってた」
照「私も同じ」
淡「……全国には、あなたみたいな人が他にもいるの?」
照「私とやりあえる選手を二人知っている。長野に一人。鹿児島に一人」
淡「……私よりも、強いの?」
照「実際に打ってみればいい。そのためには部に入らないといけないけど」
淡「……ふふ」
淡「私……ずっと孤独感に苛まれてきた。強すぎて、誰とも近づくことはできないんだって」
照「……わかる。私も、たまに闇の中にいるような気分になる。誰もいない、寂しい世界に」
淡「一人じゃないよ」
照「?」
淡「私がいる。私が、あなたの傍にいます。私ならあなたと麻雀が打てる。一緒に歩いていける」
照「……そうだね」フッ
淡(そうだ。私はもう独りなんかじゃない)
やっと見つけたんだ。私と同じ所にいる人を。私と同じくらい……ううん、
それ以上に強くて、熱くて、大きくて……まるで太陽みたいに輝く人を。
近づけばその熱に焦がされて、誰も傍に寄ることすらできない。でも、私なら。
太陽の引力に引き寄せられて、どこまでも近づいていける。ずっと一緒に歩いていける。
星は二つ並ばない。でも、星は太陽の周りを廻り続ける。離れることなく、いつまでも。
淡「――これからよろしくお願いします。テル」
ようやく出会えた。
プロの世界にすら感じなかった、圧倒的な力。五年、十年。あるいはもっと先。
私が人生をかけて目指すに値する高み。私の――生涯の目標に。
照「よろしく。淡」
小さく笑った彼女の笑顔が眩しくて、まるで太陽の光みたいだと感じた。
その陽の光に照らされて、星はどこまでも輝き続ける――。
照のいう私とやりあえる選手に咲さんは入っていない?
照がまだ咲きさんの実力を把握してないからじゃね?
レベル差はありそう
二ヶ月後
あれから、私は正式に白糸台高校麻雀部の部員になった。
入部と同時に一軍入りが確定していた私は、基本的に一軍のメンバーとしか麻雀を打たなかった。
二軍以下の実力は知っているし、興味もなかった。二軍以下は名前も覚えていない生徒がほとんどだ。
私の興味はただ一つ、テルだけだった。
照「――ロン。1000点」
淡「あ!」
菫「終局か。いつも通り、と言ってはあれだが、照のトップか」
淡「くっそー……今回はいけると思ったんだけどなー」
照「内容は悪くなかった。特にミスもなかったし、よく打ててたと思う」
淡「それって、単純に素の実力で負けてるって意味じゃん」
照「事実だから」
淡「ふーんだ。でもま、そうこなくっちゃね。私の目標なんだから」
照「でも、淡も強くなってきてる」
淡「あ、やっぱりそう思う? 私も、なんか最近すごい調子いいんだよねー」
菫「……」
菫(強くなってきてる、か)
菫(……確かに、この二カ月で大星は凄まじい成長を見せている。照の影響なのか本人の
やる気が今までと違うのか、とにかく入部当初とは比べ物にならないほど強くなった)
菫(今も半荘一局打って、照と大星の差は20000点。たった20000点しかない。もう東風
どころか半荘一局ですら、大星が照にトばされることはない)
菫(それどころか、照の支配に抗って逆に場を支配し返したり、照の連続和了を個人の支配
のみで止めるようになった)
菫(まるで一昨年の照を見ているようだ。もはや大星も照と同格……全国の怪物の一人だ)
菫(並の打ち手じゃないとは思ってたが、まさかこれほどとはな……)
淡「よーし、じゃあもう一局打とうテル!」
照「ああ。――あ、ごめん。そろそろ行かないと」
淡「え、帰っちゃうの?」
照「ああ。これから取材があるんだ。インハイが近いから、三連覇に向けての意気込みとか
いろいろインタビューしたいらしい」
淡「そんなぁ……」
照「また明日たくさん打てるから」
淡「……わかった。じゃあ私も帰る」
菫「……っ!」
照「いや、それは」
菫「何言ってるんだ大星」
菫「照はちゃんとした理由で早退するんだ。お前のそれはただのサボりだろう」
淡「だってテルがいないとつまんないんだもん。どうせ私がトップだし」
菫「っ……おい」
渋谷・亦野「……」
淡「あ、そうだ! ついでに私もテルと一緒にインタビュー受けるよ!」
照「え?」
淡「白糸台のナンバー2、最強の大型新人現る! みたいな。私って何気にインターミドルも
二連覇してるし、記者も喜ぶと思うんだよね」
菫「だめだ」
淡「む。なんでよ」
菫「何故もなにもないだろ。呼ばれてもいないのに取材を受けるなんて馬鹿な真似は
認めるわけにはいかない」
淡「じゃあ私はどうすればいいのよぉ」
菫「ここで麻雀を打つに決まってるだろ。大会までもう何日もないんだぞ」
淡「だから、テルがいない白糸台なんて意味ないんだって」
尭深・誠子・菫「……」
照「淡」
淡「はい」
照「こんなとこで怠けてるようじゃいつまでもたっても私には勝てないよ。大人しく練習に参加してて」
淡「……まあ、テルがそう言うなら」
照「それでいい。それじゃあ、私は行ってくるから」
淡「行ってらっしゃーい」
菫「……気をつけてな」
菫(……悪いな、照)
照「……」コク
ガララ、ピシャ
菫(大星の加入により、一軍の力は一ランク上昇したと言っていい。間違いなく、歴代の
白糸台メンバーの中で最強のチームだ)
菫(そういう意味では、私の先見は間違ってなかった。彼女ならきっとチームのエースとして
活躍できる日が来る)
菫(だが、一つ大きな誤算があった。それは、大星が照に入れ込みすぎて、
他の部員を全く顧みなくなったことだ)
菫(初めはみんな苦笑い混じりで許してくれていた。だが、もういい加減それも限界にきている)
菫(私もタイミングを見て何度か大星を注意した。だが大星は全く聞く耳を持たなかった)
菫(いや、というよりも、あいつは照以外の部員のことをカボチャか何か程度にしか思っていない)
菫(それは私たち一軍に対しても例外ではない。大星は照以外の部員との溝を、日毎に開け続けている)
菫「……」カチャ
淡「……」カチャ
菫(七巡目。大星は一向聴といったところか。それに安い)
菫(……明らかに遅い。照と打ってるときのこいつはもっと高い手を
四巡とかで作ったりする、高速高火力麻雀だ)
菫(それに……大星の支配が弱い。宇宙に引きずり込まれるようないつもの感覚がない)
菫(……手加減……いや、単純に〝本気じゃない〟のか)
菫「くっ……」カチャ
淡「……」カチャ
菫(張ったか。場を支配しなくても牌が自然とあいつのところへ集まってくる。
照以外でここまで牌に愛された奴を見るのは初めてだ)
尭深「……」カチャ
淡「ロン」
尭深「……ッ」
淡「8000」
尭深「……はい」
菫(強い……もう尭深や誠子じゃ相手にならない)
菫(――いや、私も、もう……)
淡「終わりだね」
菫「……そうだな」
尭深・誠子「……」
菫「半荘三回で全て淡がトップか」
菫(手を抜かれて、ここまで……)
淡「あーあ。つまんな」ボソ
淡「やっぱり私帰りますね」ガタ
菫「お、おい!」
淡「テルはああ言ってたけど、やっぱり意味ないですよ、あなたたちと打っても」
菫「大星!」
淡「何回打ってもどうせ私がトップですってば」
菫「そういう問題じゃ――!」
誠子「……いいじゃないですか。本人が帰りたいって言ってるんですし」
菫「お、おい誠子」
尭深「……私もそう思います」
菫「……」
淡「じゃ、そういうことで。お先にー」バタン
菫「……どういうつもりだお前たち。大会を目前に、チームがこんな状態でどうする」
尭深「チームに不和をもたらしてるの、どう考えても大星さんだと思います」
菫「しかし……」
尭深「大星さんが強いのは認めます。でも、いくらなんでも彼女の態度は酷いです」
誠子「入部してからずっとあんな感じだもんね。私たちだけじゃなくて、他の部員の子も
みんな大星さんと距離を置いてますよ」
菫「……」
誠子「大星さんを引き込んだのって先輩ですよね。できれば先輩になんとかしてほしいです」
菫「……わかった。大星には私から言っておく」
菫「だからお前たちももう少しだけ、大星のことを大目に見てやってくれないか」
菫「あいつは今まで、自分と対等に打てる奴がいなくて、私がここに誘ったときには麻雀を
辞めようとすら思っていたそうだ。そんなときに初めて自分以上の人間を見つけて、
あいつは今照に夢中で周りが見えてないだけなんだ」
尭深・誠子「……」
菫「きっといつか大星とも楽しく打てる日が来ると思う。だから……頼む」ペコ
尭深「や、やめてください先輩。顔上げてください」
誠子「まあ大星さんのことはまだ正直微妙だけど、同じ一軍のメンバーですからね」
菫「……すまない。ありがとう、二人とも」
菫(だが、大星が素直に言うことを聞くとは思えない)
菫(……大星に勝つしかない。そうすれば、きっとあいつも私の言うことを聞いてくれるはずだ)
淡「ちわーす」ガラ
菫「挨拶はきちんとしろ大星。部のルールは守れ」
淡「はいはい。……あれ、菫だけ? 他の一軍のメンバーは?」
菫「尭深と誠子は今日は休みだ。照は進路の件で担任と話があるから、その後でくる」
菫(二人には今日は休んでもらった。照が進路相談をするこの日に合わせれば、私と大星の
一騎打ちになる。そこで私が勝てば、大星も文句はないはずだ)
菫(……照には何も言っていない。もし言えば、あいつは個人的に大星と話を付けるかもしれない。
だが、それじゃだめだ。照の言うことなら素直に聞くだろうが、それだと根本的な解決にならない)
菫(私個人の力で大星に勝たないと、意味ないんだ)
淡「えー、テルいないの? なーんだ。じゃあテルがくるまで休んでますね」
菫「何が休むだ。まだ何もしてないだろ」
淡「だってメンバーがいないんじゃ打てないじゃん」
菫「何言ってる。メンバーなら沢山いるだろ。二軍から二人呼べばいい」
部員「……!」ビクッ
菫「大星。最近お前は部というものを無視し過ぎてる。これ以上我を通すつもりなら、
いい加減黙っている訳にもいかないぞ」
淡「ふふん、偉そうに。私を退部でもさせるつもり?」
菫「最悪の場合、そうなる可能性もある」
淡「菫にそんな権限ないでしょ。あるとすれば顧問だけど、顧問は私の実力に期待してる。
学校としても白糸台の三連覇は是非とも達成してほしいところだろうし、私を退部なんてさせるわけない」
菫「だが照が口添えすれば有り得ない話じゃないぞ」
淡「あははっ。テルが私を追い出すって? それこそまさかだよ。テルだってやっと
自分と互角に戦える打ち手に出会えて喜んでるんだよ? むしろ私の退部には反対するに決まってる」
菫「なに?」
淡「だってそうでしょ? テル、あんなに強いのに今まで退屈してなかったわけないじゃん。
弱い人とばっかり打ってきて、うんざりしてたに決まってるよ」
菫「――大星」ギリッ
菫「私たちの雀力について何を言おうが我慢してやる。だがな、私たちと照が共に
過ごしてきた二年間まで侮辱するつもりなら、いくらお前でも許さない!」
淡「ふふ、共に過ごしてきた? テルの強さの後ろをとことこついて行っただけでしょ?
よかったね、テルと一緒に過ごせて。あの人と同じチームにいるだけで、インハイ
三連覇の栄光を我がもの顔で語れるんだから」
菫「なんだと……!」
淡「いいよ。そこまで言うなら、テルと過ごしたっていうその実力見せてよ。
ただし、私が勝ったら今後は私の好きにさせてもらうからね」
菫「……望むところだ。――おい、誰か二軍で手の空いてる者はいないか?」
部員「……」サッ
菫(みんな一斉に目線を逸らした……。皆大星を怖がってるんだ。このままじゃ大星は本当に……)
菫「……一子、A子。卓に入ってくれ」
一子・A子「……!」ビクッ
A子「わ、私、ですか……」
一子「……」
菫「……頼む」
菫(半端な奴を入れたんじゃすぐトばされて終わるだけだ)
菫(だがこの二人でも大星が相手では正直力不足は否めない。いや、大星が言うように、
こいつと互角に戦えるのはもう、うちの部では照しかいない)
菫「……始めるぞ」
菫(ここで大星を倒す。倒してみせる……!)
菫(この感じ……)
淡「……」ゴォォォォ
菫(照と打ってるときの大星と同じだ。本気で勝ちに来てる)
一子「……」カチャ
A子「……」カチャ
菫(二人はもう聴牌すら目指してない。大星に怯えて、安全牌を切ることしか頭にない)
菫「……」カチャ
菫(大星を止められるのは私しかいない。だが、この局が終わればもうオーラス。
大星と私の点差は19000点以上ある。このままじゃ……)
菫「……」カチャ
菫(張った。八巡目で三面待ち。リーチをかければ倍満確定。一気に逆転できる!)
菫「リーチ!」
菫(射抜いてやる……大星の支配は確かに強力だが、絶対に攻略できないようなものじゃない)
淡「――ふふ」
菫「!?」
淡「今頃リーチ? 菫、遅すぎるよ」
菫「なに……?」
淡「私の手の速さ知ってるでしょ? 私はとっくに聴牌してたんだよ。あなたたちがノロマだから
暇つぶしに打点を上げてたの。なのにリーチするなんて、打ち落としてくださいと言ってるようなものじゃん」
菫「なにを――」
淡「ポン」
菫「……!」
菫(ツモ巡が変わった?)
淡「さ、ツモってよ菫。それが当たり牌だから」
菫「……」
菫(そんな、馬鹿な……)カチャ
菫「……」カチャ 赤5
淡「……」ニヤッ
淡「ロン」
2223346北北北 南南南
淡「ダブ南混一色ドラ4。16000」
菫「な――!」ゾワッ
淡「あと二巡で南はツモれてたから三暗刻もつけれたけど、まあこのくらいにしといてあげる」
菫「……」ガクッ
菫(皆……すまない)
淡「……」
淡(まあ、菫はまだ勝とうとしてるし、絶望的に弱いわけじゃないからいいけどさ。
他の二人はなんなの? 聴牌すら目指してない。ただ逃げ回ってるだけ。恥ずかしくないの?)
淡(一緒に打ちたくないのはこっちも同じだっての。まるで鳩撃ちしてる気分だわ)
淡(……イライラするなぁ)
オーラス
菫「……」カチャ
一子「……」カチャ
A子「……」カチャ
淡(つまんない。全然楽しくない。早く終わりたいなぁ)ボー
菫「……おい、お前のツモ番だぞ、大星」
淡「え? ああ、うん」
淡(これ以上続けて何になるの? もう役満直撃じゃないとマクれないんだよ?
あーもう……イライラする)
ガラ
照「ごめん、遅れた」
部員たち「あ。お疲れ様です!」
菫「照――」
淡「テル!」パァ
淡「もう、遅いよテル!」ガタ
菫「お、おい大星! まだ対局中だぞ。席を立つな」
照「ごめん。進路相談が思ったより長引いて――ん? 尭深と誠子はどうしたの?」
菫「あ、ああ。二人は今日は休みで――」
淡「そんなことどうでもいいじゃんテル。さ、早く打とうよ!」
ガシャン、ジャラジャラ
菫「な――!?」
一子・A子「!」
菫「お前、山を崩して……何やってる! まだ対局は終わってないだろ!」
淡「え? ああ、もうこんな対局どうでもいいじゃん。どうせ私の勝ちだよ」
菫「な……」
淡「それより、早く誰か抜けてよ。テルが座れないじゃん」
菫「……大、星……お前……」
菫(どうでも、いい?)
菫(私は……お前を更生させたくて。この一局、私なりに一生懸命、全力で打ったんだ)
菫(なのに……)
A子「あ、あの。私抜けます」
一子「あ、ちょ、ちょっと待って。私が……!」
菫「……」
淡「さ。早く打とうテル。今日は半荘二回で30000点以内に収めてみせるからねー!」
照「ああ。がんばれ」
菫「照……」
菫(どうして何も言わないんだ照。お前は大星のやり方を認めるというのか?)
菫(今はいい。お前がいる内は大星も大人しくするだろう。だが来年はどうする)
菫(私とお前がいなくなったら、大星は完全に孤立するぞ。今度こそ本当に、大星は
一人ぼっちになってしまう。お前はそれでもいいって言うのか、照)
照「……」
淡「今日はとことんまで付き合ってよねテル」
照「ああ……うん。そうだね」
菫(……照!)
照「……」
淡「え、いきなり? させないよ!」
淡「ポン」発ポン
菫「……」白
淡「ポン」白ポン
一一二三四中中 白白白 発発発
淡(小三元確定で聴牌。一萬と中のシャボ待ち)
淡(けど、私は役満は和了れない。なら引けるのは一萬だけ)
照「……」カチャ
淡(テルは当然見抜いてるはず。きっとテルの手牌の頭は一萬。私の待ちは握られてる)
一一二三四中中 白白白発発発 三
淡「なら、これでどうだ!」一萬
淡(これで聴牌も崩れないし、手代わりもできる。あとは私とテルの支配力の
どちらが勝るか――!)
照「ロン」
淡「え」
234567③④⑤西西一一
照「1000点」
淡「……!」ゾクッ
淡(まただ……私が待ちを変えたらそこを狙い撃ちにされる。かといって素直に打っても、
そのときに限ってそれが狙われたりする)
淡(読まれてるんだ。私の打ち方そのものを……!)
淡(すごい……この人は本当にすごい。マグレとか運がいいとか、そんな偶然すらも蹴散らす、圧倒的な力。本物だ……)
淡(すごいよ、かっこいいよテル。私の同類……私の目標!)ドクン
淡(楽しい。麻雀が楽しい。さっきまであんなにつまらなかった麻雀が、まるで別の遊びみたいに思える)
淡(テルだけだ……テルと打ってるときだけは、私は心から麻雀が楽しいと思える)
淡(テル、あなたに出会えて本当によかった)
淡「――よっしツモ! 4000,8000!」
菫「お」
照(……和了られた。三連続和了で終わりか)
一子「……うぅ。わ、割れました」
淡「うはっ、テルの親のときに倍満和了っちゃった! ちょっと見てよこの点差。
半荘一局打ってたった12000点差だよ」
照「ああ。上出来だ」
淡「あは。もっと褒めてテル!」
菫「……」
菫(本当に凄い。照と一試合打っても25000点離されない計算だ。去年の全国大会ですら
そんな僅差で照に迫った選手はほとんどいなかった)
淡「さっ、今の感じを忘れない内にもう一局いこう!」
菫「いや、今日はここまでだ。もう練習終了時刻だ」
淡「え? ……うわ、もうこんな時間。あーあ。テルと打ってると時間が過ぎるの早いなぁ」
照「また明日打とう、淡」
一子(やっと終わった……)ホッ
菫「……照。このあと少し残れるか?」
照「? いいけど」
菫「そうか、よかった。大会の件でちょっとな」
照「……」ピク
淡「それなら私も一緒に残るよテル!」
菫「いや、大星は……」
照「淡は今日は帰って」
淡「えー、なんで」
照「淡にちょっとしたサプライズを考えてて、そのことについて話すの。
淡がいたら意味がないから」
淡「サプライズ? それってもしかして、大会では私が大将! とか?」
照「――まあ、そんなところかな」
菫「!」
部員「!?」ざわ・・・ざわ・・・
部員「い、一年生が大将……!?」
淡「ほんと!? 大将って、去年までのテルと同じポジションだよね?」
照「ああ」
淡「やった! 私、テルの後継者だ!」
照「だから白糸台の大将に相応しくなるために、帰ってどうして今日勝てなかったのか考えて」
淡「はーい。じゃあ、お先に失礼しまーす!」ルンルン
菫「……本気か?」
照「顧問にももう話してある。実力的にも、有り得ない話じゃない」
菫「……まあ、お前がそう言うなら私は構わないが」
菫(やはり照は、私たちよりも大星の力を買ってるのか……?)
部員「それじゃあ、お先に失礼します」
菫「ああ、戸締りは任せてくれ」
部員「はい。お疲れ様でした」ガラ
菫「――これで全員帰ったか」
照「それで、何の用?」
菫「大星のことだ」
照「……うん」
菫「正直なところ、大星のことどう思ってる?」
照「強いと思う」
菫「そうじゃない。あいつの日頃の態度のことだ」
照「……あまりよくはないと思う」
菫「なら、なぜ大星に何も言わない。エースのお前が放置してるのは良くないだろ」
照「……」
菫「……まさかとは思うが、慕ってくれてるから甘やかしてる、とかじゃないだろうな?」
照「そういうわけじゃない」
菫「なら何故だ。このままじゃ、大星は完全に部で孤立してしまうぞ。
いや、もう孤立してると言ってもいいぐらいに、部員との仲は険悪だ」
照「……」
菫「……本当は、お前の力を借りずにあいつを更生させたかった。だが、駄目だった。
私の力不足だ。もうあいつはお前の言葉でしか動かない。頼む、照。あいつに一言いってやってくれ」
照「……それだと」
菫「ん?」
照「それだと、淡は弱くなる」
菫「なに……?」
照「淡は孤高だから強いんだ。孤独こそが淡の力の源泉なんだ」
菫「な……」
照「淡のことを考えるなら、淡は部員と仲良くなんてなるべきじゃない」
菫「照……お前、まさか……」
菫「大星を、わざを部員と衝突させるように誘導してるっていうのか……?」
照「……」
菫「どうなんだ!!」
照「淡が部員たちにどういう態度を取るのかは、あくまであの子次第。私には関係ない」
菫「お前――!」
菫「強くなれるなら孤独になってもいいって……大星がそう望んでると本気で思ってるのか!?
照魔鏡でなんでも見抜いたつもりになってるんじゃないだろうな!?」
照「部員と仲良くしたいなら淡はあんな態度はとってない。あれがあの子の答えじゃないの?」
菫「違う!」
菫「大星は友達が欲しかったんだ! 一緒に楽しく麻雀を打てる仲間が!」
菫「初めてあいつを見た時、私は大星にお前と同じ匂いを感じた。だからこそ、私は大星をここに誘ったんだ。
お前が私たちと仲間になれたように、きっと大星も私たちとやっていけるって」
照「無理だよ」
菫「なんだと?」
照「淡は強すぎる。並の打ち手じゃ、あの子の隣に並ぶことすらできない」
菫「……隣に並べなければ仲間じゃないとでも言いたいのか?」
照「少なくとも、それは淡の求めてる仲間じゃない」
菫「……」
照「ただ一緒に麻雀を打って、一緒に帰ったり、一緒に笑い合ったり、それだけの友達
が欲しいなら、
淡にもできるかもね。でも、淡はそんな友達なんて求めてない」
照「私が淡に言い聞かせて、部員と仲良くなるように命令すればあの子はしてくれると思う。
でもそれで淡が楽しめると思う? 誰と打っても簡単に勝てる麻雀を打ち続けて、相手に
気を遣って手加減したりして、……そんなことをしても、きっと淡はこう感じるはず」
照「『ああ、やっぱり私はこの子たちとは違うんだ。分かりあったりできないんだ』って。
打てば打つほどに、淡は今以上の孤独を感じることになる」
菫「……お前も、そうなのか?」
照「?」
菫「お前も、今まで私たちと打ってきて、そう感じていたのか?」
照「私のことじゃない。――でも、そう感じていた子を知ってる」
菫「? 誰のことだ?」
照「…………その子は」
照「あまりにも強すぎて、周りに自分と同じレベルで麻雀を打てる人がいなかった」
照「普通に打てば簡単に勝ってしまう。そうすると一緒に打っていた人たちは不機嫌になって、
その子に八つ当たりしたりしていた。でもわざと負けても、手加減してるとバレて叱られた」
照「だからその子は、勝ちも負けもしないような麻雀しか打たなくなった」
全国大会の二回戦をみてみろよ
魔王は改心してないぞ
手ごわい人がいたからだから(震え声)
照「誰と打っても、何度打っても、全てプラマイゼロ。自分の勝ちを捨ててその子の
プラマイゼロを防ごうとしても、結局プラマイゼロで終局してしまう」
照「わかる、菫? 強すぎる人間が格下に合わせようとすると、そんな歪な麻雀が
生まれてしまうんだ。淡はあの子と同じ次元の打ち手だ。私はもう二度と……あんな風に
麻雀が歪んでいくところなんて見たくない」
菫「……だから、大星は孤独であるべきだと言うのか」
照「そう。淡は下を見るべきじゃない。どんなに互いが歩み寄ろうとしても、部員達と淡が
分かりあうことはない。どんなに手を伸ばしても星に手が届かないのと同じように」
菫「……」
照「だったら、淡は上を目指し続けるべきだ。そうすれば、ちゃんとした目標がある限り
あの子はどこまでも強くなれる」
菫「……照」
菫「お前の考えは分かった。だがお前には白糸台麻雀部のエースとして、先輩として、
それに見合った態度を取ってほしい」
照「分かった。これからは私からも言っておく。でも、無理に淡と部員を仲良くさせようとは思わない」
菫「……なあ照。大星がお前にとってどういう存在なのかは、私にはわからない。
本当に強い者同士でしか分からないもの、見えないものもあるんだろう。私ではその
領域に踏み込むには力不足なんだろう」
菫「だがな。私にとって、大星は可愛い後輩なんだ。強すぎるせいでお前に縋るしかない
あいつのことを不憫に思うし、大星の孤独を埋めてやれない私自身を恥ずかしく思う」
菫「お前がなんと言おうと、私は大星に部の皆と仲良くなってほしい。一緒に上を目指す
仲間になってほしい。それが麻雀部としてあるべき姿だと信じてる」
照「……」
菫「……話はそれだけだ。付き合わせてすまなかった」
照「構わない。じゃあ、私は帰る」
菫「ああ」
照「……」ガラ
菫「――照」
照「……?」ピタ
菫「最後に一つだけ訊いてもいいか?」
照「なに?」
菫「お前も大星と同じで……私たちと打っても、楽しくないのか?」
照「……」
菫「私たちはお前のことを大切な仲間だと思ってる。確かに、力の差があり過ぎて、たまに
お前が怖くなるときがある。でも、それでも私はお前と打っていて楽しいぞ。
だがお前は……私と打っても楽しくないのか? 孤独を感じるのか?」
照「……」
菫「応えてくれ、照。頼む」
照「……」
照「楽しくない」
菫「っ……」
照「でもそれは、菫のせいじゃない」
菫「?」
照「私は……」
照「私は、麻雀……好きじゃないんだ」
菫「麻雀を、好きじゃない?」
照「ああ」
菫「ならお前は、なんのために麻雀を打ってるんだ」
照「……」
照「……帰る」
菫「お、おい、照!」
ガラ、ピシャ
菫「照……」
菫「……私が間違ってるのか?」
菫「皆で楽しく麻雀を打ちたいって……そう思う私は間違ってるのか?」
菫「教えてくれ、照……大星」
二日後
昼休み
淡「あー、やっとお昼だ」
淡「友ちゃん、一緒にお昼食べよ」
友「あ、う、うん……」
友「あ、あの、ごめん大星さん……私、今日もちょっと……」
淡「……そっか」
友「う、うん。本当にごめんね。そ、それじゃ」タタタ
淡「……」
淡(私が白糸台の一軍に入ってから、あの子とも気まずくなっちゃったな)
淡(私のこと初心者とか言ってたのまだ気にしてるのかな。結局麻雀部にも入らなかったみたいだし)
淡(――ま、いっか。私にはテルがいるんだ。普通の友達なんていらないし)
淡(早く部活に行きたい……テルに会いたい)
ガラ
菫「大星、いるか」
淡「? 菫?」
菫「話がある。麻雀部に関することだ」
淡(あ、大将の話だ!)
淡「はーい、すぐ行きまーす!」ウキウキ
屋上
淡「菫、大将の件どうなったの?」
菫「ああ、さっき顧問とも話してきた。次の大会の大将はお前だ、大星」
淡「やったー! テルと同じポジション!」
菫「……それで、だ。大星」
淡「? まだなにかあるの?」
菫「お前の、日頃の態度についてだ」
菫「最近のお前の、部員に対する態度はあまりにも目に余るものがある。先輩に対しても「弱すぎる」だの「あなたと打っても仕方ない」だの、
挙句の果てには「雑魚」とまで言ったことがあるらしいな」
淡「だって本当のことじゃないですか」
菫「心の内でどう思おうとそれはお前の勝手だ。だが本人を前にしてわざわざ言う必要のないことだろ」
淡「陰口ならオッケーってこと?」
菫「そういう問題じゃない! 話を逸らすな!」
淡「こういうのって、「陰口を叩くくらいなら本人に直接言え」とか言われるものだと
思ってたけど。直接言うのもだめなんですね」
菫「当たり前だろ」
淡「だって弱いんだもん。菫、私はあなたにも期待してたんだよ?」
菫「なに……?」
淡「テルと打って、白糸台の一軍は別格なんだ、って嬉しかったのに。蓋を開けてみたら強いのはテルだけじゃん」
菫「……」
淡「白糸台で歴代最強とか、チーム虎姫とか言われてるけど、私に言わせれば白糸台なんて
テルのワンマンチームだよ。ま、今は私とテルのチームだけど」
菫「……大星。お前ももう高校生だろ。子供じゃないんだ。自分の発言が他人を不快にさせていることに気付け」
淡「私が勝ったら好きにさせてくれるって約束したくせに。先輩なら約束守ってよね」
菫「……あのな、大星」
菫「お前の気持ちは分かる。お前にとって照は初めて出会えた自分の同類なんだろう。
お前が照に入れ込んでるのもわかる。でもな、だからって他の部員のことを蔑ろに
していい理由にはならない。そうだろ」
淡「うるさいなぁ。文句があるなら私より強くなってから言ってよ」
菫「っ……大星!」
淡「それに、心配しなくても来年には私退部してるし、来年からはまた普通の白糸台に戻れるよ」
菫「――――」
菫「――――ぇ」
菫「な……ん、だと?」
淡「なにって、退部だよ。麻雀部を辞めるの」
菫「ど、どうして」
淡「だって、来年にはテル卒業しちゃうじゃん。なら麻雀部なんている意味ないし」
菫「……」
淡「ああ、でも麻雀は続けるよ。おじいちゃんに頼んで家にプロを呼んでもらって、
本格的に稽古をつけてもらうんだ。
テルは卒業したら大学にいくのかな? まああれだけ強ければ即プロ入りもあるだろうけど。
とにかく私も卒業したらテルと同じ道に進むの。クラブ活動なんかで遊んでる暇ないし」
菫「――大星」
淡「ああでも、テルと同じ大学に入ってインカレ四連覇ってのもありかなー。――ん?」
パシンッ!
淡「あぅ――ッ!」ドサ
菫「白糸台を……いや。全国の雀士を舐めるのも大概にしろ!!」
淡「……」
菫「白糸台の一軍になりたくて、でもなれなくて……三年間毎日毎日何時間も必死に
麻雀を打って、青春を捧げて、それでも一度も大会に出ることなく卒業する部員が、
いったいどれだけいると思ってる」
菫「一子だってそうだ。あいつは今年卒業で、三年になってやっと一軍入りして大会に
出られるって喜んでたんだ。だがお前が入部して、繰り下がりで二軍落ち……団体戦で
大会に出る夢はもう叶わない」
菫「だがそれでもあいつが文句一つ言わなかったのは、お前が……お前なら白糸台を優勝
に導く一人になってくれると信じたからだろ。全国優勝の夢をお前に託したからだろ!」
菫「お前はそういう……他の部員の夢や、期待や、想いを受け継いで、あるいは蹴落として。
白糸台の一軍の座を勝ち取ったんだ。そんなお前が……照がいないから部を辞めるだと?
ふざけるな……ふざけるなよ……馬鹿みたいじゃないか」
菫「お前みたいなやつがいてくれるなら、私や照が卒業しても大丈夫だって……
お前になら白糸台を任せられるって、そう思ってた私が……馬鹿みたいじゃないかぁ!」
淡「知ったことじゃないよ、そんなの」
菫「!?」
淡「あなたたちが勝手に私に期待して、勝手に失望した。それだけじゃん。
私があなたたちに勝手に期待して、勝手に失望したのと同じことだよ」
菫「……私たちの実力では、そんなに不足か。部にいることすら耐えられないほどに」
淡「はい」
淡「いつもあれだけ言ってあげてるのに、まだ気づいてなかったの?
あなたたち、本当に弱いよ。相手にならない」
菫「……」
淡「そんなあなたたちでも、全国ではそれなりに上位の選手なんでしょ? だから私は、
全国にも期待してない。だから全国優勝にも興味ない。
全国なんて、テルが行くっていうからついていってるようなものだもん」
淡「まあ、テルの強さを三連覇っていう完璧な形で歴史に残したいっていう気持ちはあるけどね。
そういう意味では、全国優勝には意味があるかも。でも、それだけだよ」
淡「だいたい、夢を受け継いだ? 笑わせないでよ。私は別に、一子の想いを
継いだから一軍にいるわけじゃない。――強いから。私は強いから一軍なの。
そして一子は弱いから二軍になった。それだけじゃん」
菫「……」
淡「そこに勝手に感情論を持ちこんで美的解釈しないで。麻雀部も、ただの部活でしょ?
つまんないから辞めるの。――話はそれだけ? なら帰るね」
菫「お前は……一緒に麻雀を楽しめる仲間が欲しくて、麻雀部に入ったんじゃないのか」
淡「違うよ」
淡「今なら、私がなんのために今まで麻雀を打ってきたのかわかる。私は
テルに出会うために、麻雀を続けてきたんだ」
淡「テルも同じだよ。私はずっと、どうしてあんなに強い人がこんなお遊びみたいな麻雀部で
腐らずに続けてこれたのか不思議だった。でも、きっとテルも私に出会うために今まで
部に残ってたんだ」
菫「違う」
淡「違わない。私たちが出会うためだけに、白糸台麻雀部はあったの。そして私たちは出会った。
まるで星と太陽が引力で引かれ合うみたいに。――ふふ、なんだかロマンチック」
菫さんが魔物クラスになっても、淡ちゃんはそれ以外の部員とは馴れ合いはしなさそうだし
菫「……」
淡「まあ、心配しなくても全国優勝はしてあげるから。テルが卒業するまでは部にもいてあげる。
でもその後は私の好きにさせてもらうから」
ガチャ、バタン
菫「……」ギリ
菫(もう、だめだ。大星はもう、何を言っても無駄だ)
菫(もう私では大星を止められない。諌めてやることすらできない。照も大星を放任してる……)
菫(誰かがあいつに勝つしか……全国で誰かが大星に勝てば、きっとあいつの考えも変わる)
菫(だが全国にすら、大星と渡り合える選手なんて何人いるか……)
菫(それに、大将の大星が負けるということは同時に、白糸台の敗北も意味する。それは……だめだ)
菫(大星が改心するためには、誰かが勝っても負けてもだめなんだ)
菫(勝ちもせず、負けもせず、それでも大星に負けを認めさせられるような選手……そんなの、いるわけない)
菫(くそっ……!)
一ヶ月後
菫「県予選突破、まずは御苦労だった。皆全国大会までの間、気を緩めることなく今の状態を
維持してくれ」
渋谷・亦野「はい」
照「……」コク
淡「……」ボー
菫「……大星、聞いてるのか?」
淡「え? ああ、聞いてるよ。それより、全国ではなるべく私に回る前に他家をトばしてくれません?」
菫「お前が予選で打ったのは決勝だけだろ」
淡「あの程度の相手に大将まで回ってくるのがまずおかしいんだよ。四人もいればどっかで
トばせるでしょ。わざわざ私の手を煩わせないでくださいよ」
菫・亦野・渋谷「……」
照「それは悪かった。私がもっと先鋒で点を取っていればよかったな」
淡「そんな! 違うよ。決勝でテルが何万点毟ったと思ってるの!
問題なのは風前の灯だった他家を三人がかりでトばせなかった後の人達だってば!」
菫「……とにかく、立ち上がりとしては悪くない。全国では大星まで回る回数も増えるだろう。
油断だけはするなよ、大星」
淡「……」シーン
菫「……」ハァ
淡「そうだ。他の県の結果も出たんだよね? どうなったんですか?」
菫「ん、ああ。だいたい予想通りといったところだな。千里山、臨海、永水、そして
うちがシード校になるだろう。他もだいたい予想通りだ」
淡(永水……テルの言ってた、テルとやりあえる二人のうちの一人、神代がいる高校か。私は大将だから先鋒にくるだろう神代とは当たらない。ちぇ)
淡(でももう一人……龍門渕の天江衣。彼女は大将、私と当たる。実はちょっとだけ
期待してるんだよね。テルのお墨付きなら、期待はずれにはならないだろうし)
淡「龍門渕は勝ったんですよね?」
菫「龍門渕は――ん? いや、来てない……? 予選で負けたようだ」
淡「は!?」ガタッ
淡「負けた? 龍門渕が? え、大将まで回らなかったの?」
菫「ちょっと待て、いま調べる」ペラペラ
菫「……いや、回ってるな。他校とさほど差はない状態で回ってきたらしい」
淡「はあああああ!? なにそれ、じゃあ単純に実力で負けたってこと!?」
菫「まあ、そういうことなんだろうな。龍門渕がどうかしたのか、大星」
淡「……」ガックリ
淡(なにそれ……いい加減にしてよ……どんだけ私の期待を裏切れば気が済むのよ)
淡「……で、どこに負けたの?」
菫「長野代表は……清澄……?」
淡「清澄? どこそれ」
菫「私も聞いたことがない。無名校だろう」
淡「無名校?」イラッ
淡(テルに認められたくせに、そんなどこの馬の骨とも分からないような高校に負けるなんて、
テルの顔に泥を塗るつもり? イライラするなぁ……)イライラ
淡「清澄の大将って誰?」
菫「えーっと……清澄、清澄……あった、これだ」ペラペラ
菫「大将――え?」
淡「? どうしたの?」
菫「……大将……宮永、咲……?」
照「――ッ!」ピクッ
淡「宮永?」チラッ
誠子・尭深「……」チラッ
菫「……照、お前の……妹さんか?」
照「……違う」
照「私に妹なんていない」
菫「……そうか」
淡(……ふーん?)
淡「菫」
菫「ん、どうした?」
淡「清澄と龍門渕の県予選決勝の映像とかってある?」
菫「ああ、あるぞ。欲しいのか?」
淡「うん。ちょっと全国に向けて相手チームを研究しとこうかな、って」
菫「! お、大星……!」パァ
菫「どうした、いつになくやる気じゃないか。ああいいぞ、すぐ持って来てやるから、
そこで待っててくれ!」タタタ
菫(大星が相手チームを研究するなんて。よかった……大星もやっと本気になってくれたか)
菫「――ほ、ほら、持ってきたぞ。長野と大阪、鹿児島に……強豪校のはあらかた――」ハァハァ
淡「長野だけでいいよ。じゃ、これ借りるね」ヒョイ
菫「え……?」ポカン
自宅
淡「……」ジー
淡「……弱いじゃん、龍門渕。っていうか全部。長野レベル低いなー」
淡「風越の先鋒と清澄の中堅はまあまあだけど、他が弱すぎる。原村和も
期待してたほどじゃないな。インターミドル優勝したらしいけど、ま、所詮は
私のいないインターミドルでだしね」
淡「さってと。退屈な副将までが終わったし、やっと大将戦だよ」ピッ
淡「……」ジー
淡「……」ジー
淡(天江衣……悪くないじゃん。確かに、この県の中では別格だわ。白糸台でも余裕で
一軍入りできる。というか、テル以外でこの子に勝てる人、うちにいないな)
淡(案外私ともいいとこまでやりあえるかも。テルが認めるだけある)
淡「……あとは……清澄」
咲『――ツモ。嶺上開花』
淡「……」
淡「まあ、悪くはないね。天江に手も足も出ない他の二校と違って、ちゃんとやりあえてるし」
淡「でも、総合力だと天江の方が面白いね。別に清澄の大将には魅力感じないや」
淡「天江衣とやりたかったな……この子個人戦にも出ないらしいし、なんなんだろホント」
解説『――数え役満! 宮永咲選手が本大会二度目の数え役満を和了りました!』
淡「……宮永、か」
淡(実力云々よりも、この名字が気になる。テルの反応から察するに、どうも何かしら
テルと関係ありそうなんだよね)
淡「……オッケー。とりあえず、期待しといてあげる」
淡「失望させないでよね、宮永咲……!」ゴッ
あとカンドラも乗せも
抽選日
ざわ・・・ざわ・・・
菫「トーナメント表の抽選日だ。まずはうちがどこと当たるのか、しっかりとチェック
しておくんだぞ」
渋谷・亦野「はい」
菫「……それにしても、意外だな。大星は今日来ないかもしれないと思ってたんだが」
淡「トーナメント表は私も興味あるからね」
菫(大星が最近やる気だ……嬉しいことだ)
淡「ふぁ~あ」
淡(退屈ぅ……どうでもいいよ、シード校にもなれなかった雑魚のことなんて。それより……)
『続きまして、清澄高校』
淡「お。やーっときた」
菫「なんだ。清澄を注目してるのか?」
淡「まあね」
『清澄高校――』
淡「……同じ側か。清澄と当たるのは準決勝か」
菫「清澄とうちが勝ち抜ければ、決勝でも当たる可能性はあるぞ」
淡「それはないよ」
菫「? なぜだ」
淡「清澄の大将は……」
淡「私が、潰すから」ゴッ
菫「……」ゾクッ
菫(本気だ……本気の大星だ)
菫(負けるわけがない。こんな怪物が……)
※ストーリーの展開上、抽選はこっちの都合にさせてください。
白糸台と臨海が入れ替わったと思ってください。
数日後
淡「さーて、準決勝か」
あれから、白糸台は当然のように勝ち進んでいった。私は準決勝まで一度も卓につくことなく、
全て副将まででどこかがトんで終わった。テルが殺し損ねた死に損ないに他の三人が
止めを刺すような形が常だったけど、私としてもまあ文句はない。
そして準決勝の日が訪れた。この日、白糸台は清澄高校と対決する。
菫「永水が敗退とはな。番狂わせもあったものだ」
淡(神代も期待はずれだった。最後にちょっといい感じの雰囲気になってたけど、アベレージは普通だったし)
照「……」
淡(それより……テルの様子が少しいつもと違う。普段よりももっと静かだ)
照「――じゃあ、行ってくる」
淡「行ってらっしゃい、テル」
菫「頼んだぞ、照」
照「……」コクン
淡「――あ、そうだ。テル!」
照「?」ピタ
淡「できれば今日は軽く流す感じでやってくれない? 私清澄の大将と打ちたいんだ。
テルが本気だしたらどっかトんじゃいそうだし」
照「……」
菫「馬鹿なこと言うな。照、いつも通り打ってこい」
照「分かってる」
淡「ほんと心配性だなぁ皆。私までに100点残してくれればそれで大丈夫だよ」
照「……」
淡「? どうしたの、テル」
照「……淡」
照「――侮ると負けるよ」
淡「――え?」
照「……」バタン
淡「……負ける? 私が……?」
菫「照の言う通りだぞ大星。どんな相手でも油断するなよ」
淡(……テルは私の強さを知ってる。その上で、私が清澄の大将に負けるかもしれないって言うの?)
菫「無論、私たちも手加減するつもりはない。最悪――いや、最悪ではないが、お前に
回さずにトばせるなら、そうするつもりだからな」
淡(テルが認めた二人、神代と天江衣。清澄はそのどちらにも勝ってる。それは偶然なんかじゃなく、実力通りの結果だったってこと?)
菫「お前はその日の気分で手を抜いたり全力でいったりムラがありすぎる。ただでさえ
お前はまだ全国で打ってないんだ。万が一ってことも……」
淡(咲……宮永咲。やっぱりなにかあるんだ、テルと)
菫「……大星、聞いてるのか?」
淡「菫、清澄の大将って宮永だよね? これ、本当にテルと無関係なの?」
菫「……さあ。私にもなんとも言えない。ただ、照に妹がいるという話は聞いた。
普段あいつは否定してるが、昔、ポロっとな」
淡「ふーん」
淡(妹……テルの妹、か)
淡(――面白そうじゃん)ゴッ
数時間後
実況『さあ、Bブロック準決勝も残すところこの副将戦の南場と、大将戦のみとなりました』
実況『先鋒で宮永選手が広げた大量リードを守る白糸台。しかし中堅戦で清澄と姫松に
大量失点を許してしまいました』
実況『続く副将戦、原村和のめざましい活躍により清澄が白糸台に猛追を仕掛けています。
両校の点差は20000点にまで縮まりました。白糸台はこのリードを守りきって
大将に繋ぐことができるのか。そして現在一人沈み状態の有珠山はここから
追い上げることができるのか』
淡「――あんなこと言われてるけど?」イライラ
尭深・菫「……」
淡「尭深……あなた中堅戦で何万点取られたか分かってる?」
渋谷「……」
菫「やめろ大星。個人のミスはチームのミスだ。それが団体戦だろ」
淡「は? で、個人の手柄もチームの手柄ってわけ? 今までそうやってテルの手柄を
自分のものみたいに語ってきたんだ」
菫「……っ」
淡「だいたい菫、あなたもマイナスだったよね。で、誠子もマイナス。……あほらし。
ていうか、なんか菫の試合でなにがあったのかよく覚えてないんだけど」
淡(そういえば、なんか次鋒戦はいつのまにか終わってたな)
菫「姫松と清澄の中堅は強敵だった。尭深には少し荷が重い相手だったんだ」
淡「誠子も苦戦してるっぽいね」
菫「確かに、清澄に追い上げられてるな。だが一位で大星に回すことはできるだろう」
淡「当たり前じゃん。テルが何万点取ったと思ってんの。これで逆転なんかされたら、
もう軽蔑だよ、軽蔑。もう絶対敬語使わないから」
渋谷「……」
照「淡」
淡「ん、なぁに、テル」
照「そろそろ淡の番。準備して」
淡「準備なんていらないよ。ふつーに打てば勝てるってば」
照「淡」
照「――言うことを聞け」
淡「――っ」
菫「……!」
菫(照が大星を嗜めた……?)
淡「……テル。本気で思ってるんだね、私が負けるかもしれないって」
照「ああ」
淡「……ふーん」
菫「……」
菫「大星、誰であれ油断は禁物だ。照が言いたいのはそういう――」
淡「黙ってて」
淡「……いいよ」
淡「じゃあテル、賭けない?」
淡「私と清澄、どっちが勝つか」
照「……」
菫「おい、馬鹿な話はよせ。これは全国大会なんだぞ。トトカルチョなんて言語道断だ」
照「構わない。その勝負乗る」
菫「お、おい照!」
淡「決まりだね。安心してよ菫。私はもちろん、私の勝ちに賭ける。私が自分から
負けにいくようなことはしない。むしろ、これで心おきなく全力で清澄を潰せるよ」
淡「で、テルは清澄の勝ちに賭けるんだね?」
照「……」
照「いや、勝つのは白糸台だ」
淡「え?」
菫「……? 照……?」
淡「……」
淡「――――ぷ」
淡「あ、あはははははっ。な、なぁんだテル、やっぱり私が勝つと思ってるんじゃん!」ケタケタ
淡「あーおっかしー……こんなに笑ったの久しぶり。なんだかんだで、テルも勝算のない勝負はできないか。
でもこれじゃあ賭けにならないよ。私もテルも、どっちも私の勝ちに賭けちゃったら、ねえ?」
菫「当たり前だ。だから賭けなんてのはもう――」
淡「はいはい、分かってるよ。この話は終わり。いいよね、テル?」
照「……」
淡「……テル?」
照「――なに言ってる。私がいつ淡の勝ちに賭けたの?」
淡・菫「え?」
照「私は『白糸台が一位通過する』と言ったんだ。『淡が勝つ』とは言っていない」
菫「ど、どういうことだ?」
照「私は――『宮永咲が勝つ』に賭ける」
渋谷・菫「……!?」
淡「……ふーん……? 一位通過するのは白糸台。でも勝つのは清澄の大将。そう言いたいんだね?」
照「そうだ」
菫「得失点差で大星が負ける、ということか?」
淡「ちがうよ菫。見て、あの誠子の無様な対局を。もう清澄と白糸台の点差はほぼ
無いに等しい。白糸台が勝つなら、最低でも私は1万点ビハインドくらいにしかならない。
まあ、別に私が清澄に得失点で100点でもマイナスになったら負け、っていう
条件でもいいけど、テルが言ってるのはそういうことじゃないよね?」
照「ああ」
照「打ってみればいい。淡の実力なら、それでどっちが勝者か判断がつく」
淡「最高に面白いよテル。あなたと打ってるときでも、こんなに武者震いはしなかった」
淡「ペナルティは後払いでいい? とびきりすごいの考えとくから、覚悟しといてね」
照「ああ」
実況『副将戦終了――! 清澄、怒涛の追い上げにより、ついに白糸台を射程圏内に
収めた――!』
淡「ちょうど終わったね。じゃあ、行ってきます」ガタ
バタン
菫「……照、どういうことなんだ? 白糸台が勝つのに、淡が負けるって……」
照「……」
照「点数で勝ったからといって、それが必ずしも勝利を意味するわけじゃない」
菫「……」
照『――強すぎる相手が格下にあわせようとすると――』
菫(照が言ってたのは……まさか……)
廊下
淡「……くそ」イライラ
イライラする。イライラする。イライラする――!
淡「私が負けるって? そんなわけない。私とテルが高校生最強なんだ。そこに
他人が割り込んでくるなんて、ありえない――!」
淡(清澄……潰してやる。もう麻雀が打てなくなるくらいにボコボコにしてやる……! 今日という日を一生のトラウマにしてやる!!)
淡「……ん?」
カツン、カツン
淡「あれは……」
淡(あの子が――宮永咲)
咲「……あ」
淡「――よろしく、清澄さん」
咲「あなた確か、白糸台の……」
淡「大星淡。あなたは宮永さんだよね?」
咲「はい」
淡「宮永はうちの部にいるから、呼びづらいから咲ちゃんって呼んでいい?」
咲「あ、はい。じゃあ私も淡ちゃんって呼んでもいいですか?」
淡「もちろん。仲良くしてね。あと、同級生なんだから敬語使わないで。なんかムズムズするから」
咲「あ、ごめんなさい」
淡(まあ、今日以降あなたと卓を囲んで会うことはないだろうけどね)ゴォォッ!
咲「あの」
淡「ん、なあに?」
咲「その……お姉ちゃん、元気かな?」
淡「――テルのこと? やっぱり姉妹なの?」
咲「え、あ、うん」
淡「ふーん」
淡(そっか……ますます面白くなってきた)
淡「テルなら元気だよ。咲ちゃんも先鋒戦見たでしょ?」
咲「うん。凄かった。お姉ちゃん、びっくりするくらい強くなってた」
淡「……」ピク
淡(強くなってた? なに、その『昔は私の方が強かったのに』みたいな上から目線。
イライラするんだけど)
淡「咲ちゃん、テルと何かあったの?」
咲「え、どうして?」
淡「だってテル、『私には妹なんていない』とか言ってたから。もしかしたら
咲ちゃんのことなんて眼中にないのかも」
咲「……!」ビク
咲「……や、やっぱりそうなのかな……」
淡「うん。きっとそうだよ」ニッコリ
咲「……」グス
咲「私ね、昔お姉ちゃんにひどいことしちゃったんだ」
淡「ひどいこと?」
咲「……お姉ちゃんは、きっとまだ私のこと許してないんだと思う」
咲「だから私、麻雀でお姉ちゃんに伝えたいことがあるの。そのためにも、この試合、
絶対負けられないよ」
淡「ふふ、そうだね。絶対勝たないとね」
咲「うん。この試合で勝って、決勝に行って、お姉ちゃんに会いに行きたい」
淡(――無理だよ、咲ちゃん)
淡(あなた、ここで終わるんだから)ゴッ
Entry ⇒ 2012.09.24 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
淡「陽に照らされて星は輝く」 後半
※ここから長い麻雀パートに移ります。あまり麻雀得意ではないので、いろいろ
ミスがあると思いますが生温かく見守ってやってください
準決勝大将戦
東一局
白糸台:125000
清澄:113000
姫松:98000
有珠山:64000
親:咲
実況『さあ、ついに準決勝大将戦のスタートです。決勝戦に上がれるのはこの中の上位
二校のみ! いったいどこが勝ち上がるのか――!』
四人「よろしくお願いします」
淡(ラス親か。咲ちゃんは起家)
末原(清澄……借りは返させてもらうで)
東一局
末原(清澄との差は15000。これをなんとか詰めるしかない。振り込まんのは当然やとして、
親の連荘……それしかあらへん)
末原(1000点でも2000点でも、とにかく少しずつ清澄との差を詰める。親が流れたら
絶対に振り込まず、大きい手を狙う。子で安い手を和了って場を進めるわけにはいかんからな)
咲「……」4萬
末原(鳴ける、けど……鳴いたら三色が消えるし手が安くなる。子でそんな手は和了られへん。清澄の親を楽に流させたりしたらあかんねや)
淡「……」カチャ
咲「――カン」
末原「!」
末原(まずい……!)
咲「――ツモ。嶺上開花。1300オール」
実況『早速宮永選手の嶺上開花が決まった――!』
末原(また嶺上開花……あかん、また差が広がってもうた)
末原(清澄の嶺上開花を止めるには、カン材になりそうなものをなるべく捨てないこと、
順子場を作ること、捨て牌とかから清澄が持ってそうな暗刻を予想して、それから……)
淡「……」
淡(一局打っただけでわかる。場を支配する力。限定的だけど、かなり強い)
淡(嶺上開花が得意技なのかな? これを止めるには、まず咲ちゃんの支配を上回る
力で場を支配し直すしかない)
淡(まずは咲ちゃんの支配が王牌だけなのか、それともツモ牌、あるいは卓全体にまで
及んでいるのか、それを確認しないと。嶺上開花そのものの対策はその後でいい)
次局
咲「ツモ、嶺上開花」
実況『宮永選手、二回連続で嶺上開花だ――!』
末原「くっ……」
次局
淡「……」カチャ
六六六八八八北北北1234 4
淡(ツモった。――けど、今はこんな手を和了ることよりも……)4索
実況『!? お、大星選手、和了りを見逃してツモ切り――!? これはいったい
どういうことでしょうか――!』
咲「――カン」
末原「ちょ――」
咲「ツモ。嶺上開花」
実況『宮永選手、三連続和了、そして三回連続の嶺上開花だ――!』
実況『大星選手、高めを狙ったか。しかしあそこで和了っておくべきだった――!』
実況『これでついに清澄が白糸台を抜いてトップに躍り出た――!』
末原(ちょ、ちょっと……前の試合より明らかにペース早いやん……。もう三回連続やで)
末原(清澄の連続和了だけはなんとしても防がな……もう安手でも和了るべきか?)
淡「……」
淡(支配域は卓全体か。王牌は特に強力。カン材が自然と咲ちゃんのところへ流れていく
のを感じる。かなり私に近い打ち筋。――でも、防げないほどじゃない)
淡(嶺上開花は、それ自体が咲ちゃんの能力ってわけじゃない、か。あくまでも
王牌の支配から発生した結果に過ぎない。なら嶺上開花だけを防ごうとするのは無意味)
淡(まずはその結果の出所……根本的な支配を断ち切ることが重要だ)
淡(――それだけ分かれば十分。あとは私の支配と咲ちゃんの支配……どちらが上をいくか)
淡(……じゃあ、始めようか)クス
淡(――引きずりこんでやる。宇宙の闇へ)ゴォォォォォッ!!
咲「――うっ!?」ゾクッ
末原「――!?」ビクッ
有珠山「……?」
末原(な、なんやこの感じ……? さ、寒い……?)カタカタ
咲(こ、これ……お姉ちゃんや、衣ちゃんと同じ……!)
淡「ふふ」ゴォォォォ
淡「怯えることないよ。私が和了ることができるのは、どれも〝成り損ない〟の安い手ばかりだから」
咲「成り損ない?」
淡「そう。私の麻雀はまだ未完成なの。だから、完成した完璧な役は作れない」
末原「ど、どういう意味ですか」
淡「――今から教えてあげる」ゴッ
東一局
末原「……」カチャ
末原(張った。四巡目で跳満の手。早くに手作りできたんはラッキーや。ここで
一気に差を詰める)
末原「リーチ」白
淡「遅いよ」
末原「え?」
淡「ロン」
123二二二発発発中中白白 白
淡「小三元、発、白。8000」
末原「しょ、小三元……?」
末原(な、なんでわざわざそこで止めるんや。白を鳴いて二萬を捨てれば、フリテンとはいえ
大三元聴牌やないか。流局間近とかやったらまだしも、まだ四巡目。手代わりも十分
ありえる。
逆転されてんねんし、ここで大きく取りたいと思わんのか?)
淡「ふふ」
末原「!?」
※有珠山に活躍の場はありません。有珠山が上がってくるのかも分からない段階で書き始めたので、
今回は数合わせ程度に思っておいてもらえると助かります
淡「言ったでしょ? 〝成り損ない〟しか和了れないって」
末原「な、成り損ない……?」
末原(つ、つまり大三元の成り損ない……ってこと?)
東二局
末原(と、とにかく……それやったら、役牌を捨てへんかったらええだけや)
末原「……」五萬
淡「――ふふ」
淡「ロン」
三三三五五①①①②②西西西
淡「三暗刻トイトイ。8000」
末原「な――!」
末原(さ、三暗刻トイトイって……四暗刻聴牌やないか!)
末原(二回連続でこんな大物手――――いや、大物手やない。たった8000点や。
どういうことや。二回とも、もう少し粘れば役満っていう手やった。やのにそれを
わざわざ崩して満貫……)
末原「――!」
末原(ま、まさか、『成り損ない』って……)
淡(そう。『役満一歩手前の役を和了る』。それが私の力)
淡(今の手、ロン和了りかツモ和了りか……たったそれだけで、13飜が4飜にまで
下がる、未完成の力)
淡(だから、完成した強さを持つテルにはまだ及ばない。
――でも、あなたたちを倒すにはそれで十分)
淡(――見せてやる。宇宙の闇を)ゴッ
末原「……」ゾクッ
咲「……」
白糸台:137200
清澄:124400
姫松:88200
有珠山:60200
東三局:一巡目
咲「……」
咲(感じる……何かとても大きな力がこの卓に働いてる。迂闊には動けない……)
咲「……」⑨筒
末原(と、とにかく白糸台に連荘はさせたらあかんねん。ここは安手で流すしかあらへん)
末原(ちょうど配牌もいい。喰いタンで和了ってしまお)一萬
淡「――ふふ」
末原「!」ビクゥ
末原(そ、その笑い方やめて! ロンされたかと思って驚いてまうやん!)
淡「間抜けた顔。まだ一巡目だから、誰かが和了るには早い……そう高を括って
安心しきってるね」
末原「…………え?」
淡「気づかないの? もうここはあなたたちがいつも呑気に麻雀を打ってる卓とは全く
別次元の場所――『宙の中』なんだよ?」
パラララララララ……
末原「……………………ぇ?」
二三四五六七八九3455赤5
淡「――人和。おまけで一通平和ドラ1。16000」
末原「――――」
実況『れ、人和炸裂――! これは珍しい役が飛び出しました。人和は本大会では4飜として
採用しています。が、こんな役はここ数年一度も出ていません!』
実況『末原選手、これで3回連続大星選手に満貫以上を振り込んでいます』
末原(人和……? なんやそれ……地和の『成り損ない』とでも言うんか……。
こんなん、ルールさえ違えば役満やんか……!)カタカタ
淡「――ふふ。震えてるね」
末原「……!」ビク
淡「でも、まだだよ。血の気が凍るには……まだ早い」
淡「――さあ、私の親番だね」ゴッ
末原「ひっ……!」カタカタ
東四局
末原(だ、大丈夫や。今は白糸台が親番。私が一巡目で振り込んでも人和はない……!)
末原(地和の成り損ないやって言うんなら、あんな速攻の手は子のときにしか……!)
淡「――ふふ」
末原「……!?」ゾクッ
淡「ダブルリーチ」2筒
末原「――!」
末原(ぁ――て、てんほ……)
末原(こ、こんなん無理や……捨て牌もないのに、危険牌なんかわかるわけない……)
末原(いやや、振り込みたくない――!)
咲「――カン」
末原・淡「!?」
咲「――ツモ。嶺上開花」
1133456777 1 2222
咲「3000,6000です」
淡「……はい」ジャラ
末原「……」ジャラ
末原(な、なんやこれ……なんやこれ……)
末原(私まだ一回もツモってないのに……こんな……まるきり蚊帳の外やないか)
末原(いや、まだや……まだまだいける。こんなことでメゲたらあかん!)
淡(配牌でその手……確実に槓材を揃えて和了る力……)
淡(私の支配は消えてない。じゃあこれは純粋に、咲ちゃんの支配力が上回ったってこと?)
淡「……」ギリ
淡(やってくれるじゃん。いいよ、面白いよ)
淡(思い知らせてやる……)
咲「……」
白糸台:148400
清澄:135200
姫松:59200
有珠山:57200
※牌の表記は索子「1」萬子「一」筒子「①」でいきます
わかりづらくてごめんなさい
南一局
有珠山「……」カチャ
末原「……」カチャ
末原(今度は六巡目までこれた。でもまだ白糸台がどんな手を張ってるかわからん。
高めは狙うけど、無茶はできん。常に警戒しとかなあかん)
末原(白糸台の捨て牌……字牌もなしに索子と筒子ばかり切ってる。萬子の染め手か
……まさか、国士ちゃうやろな)
淡「……」カチャ
咲「……」カチャ
一一二二三三七八九九九①③
淡(河だけ見れば萬子で染めてるように見えるはず。でも実際は②筒待ち)
淡(成り損ないも絡まないダサい手だけど、今はこれでいい)
有簾山「……」②筒
末原「……」②筒
淡「……」カチャ
実況『大星選手、有珠山と姫松からの和了り牌を見逃した! これはあくまでも
清澄を狙い撃ちするということか――!?』
淡(雑魚から毟ったって私の気は収まらない。咲ちゃんから直撃もらわないとね)
淡(分かってるんだよ咲ちゃん。②筒、溢れてるんでしょ? 早く切りなよ)
咲「……」カチャ
二二四五②22245678 六
実況『宮永選手、六萬をツモった! しかしこれで②筒が溢れてしまった。これは
振り込んでしまうか――!?』
咲「……」4索
淡「……!」ピク
実況『おっと、宮永選手、聴牌と三面待ちを崩して4索切り――!? 結果的に
大星選手への振り込みは回避できたものの、これはどういうことでしょうか』
淡(……聴牌に取らない……? 私の当たり牌を読まれてる? でも、これじゃあ
咲ちゃんも和了れない。それともチンタラ回し打ちするつもり?)
私なら十分引ける。それもそう遠くない、数巡後に)
淡(溢れた牌を残して回し打ちなんてしてたら、私の速度に敵うわけない。
――それでも、咲ちゃんが勝てると確信してるんなら……私には『絶対に引けない』と
思ってるってことだ。②筒は私のツモれる位置にない。……つまり)
咲「……」カチャ
二二四五六②2225678 二
咲(――四枚目の②筒は、嶺上牌にある。淡ちゃんがツモることはない)
咲(私は次に2索をツモるから、それでカン……②筒を引いて嶺上開花……!)
淡「……」
淡(……そういうこと。あくまで嶺上開花に拘るんだ)
淡「……ふふ」
末原「……!」ビク
淡(それなら――)
淡「……」タン 七萬
有珠山「……」九萬
淡「――カン」カチャ
一一二二三三八八九九九①③ 九
咲「!?」
咲(あ、そ、その②筒は、私の――!)
ゴォッ!
一一二二三三八八①③ ② 九九九九
淡「ツモ。嶺上開花。400,700」
咲「うぅ……」
淡「ふふ」
咲(私が淡ちゃんの当たり牌で和了ろうとしてたことが読まれた……?
まさか嶺上開花を横取りされるなんて……)
淡(馬鹿にしないでよね咲ちゃん。私の和了り牌を握り潰した上で、その牌で
ツモ和了ろうなんて、ちょっと調子に乗り過ぎだね)
淡(……とはいえ、私も満貫手を1飜手にまで下げられちゃったか)
淡(――そういえば、こんな安い手で和了るのなんて何年ぶりだろう。
テルにかっこ悪いとこ見せちゃったな)
淡(テル……私は咲ちゃんに勝てないって言ってた。今のところ得失点差では1000点
くらい勝ってるけど、これじゃ互角だって言われても仕方ない)
淡(テルならきっと、もう二位に五万点差つけててもおかしくない。なのに私は
たったプラス1000点……?)
淡(私は――私は世界でただ一人、テルの隣を歩ける存在じゃなきゃだめなんだ。
こんなところで咲ちゃんなんかと『いい勝負』してる場合じゃない)
――打ってみればいい。淡の実力なら、それでどっちが勝者か判断がつく――
淡「……」ギリ
淡(いいよテル。見せてあげる……!)ゴッ‼
南二局
実況『さあ前半戦も南二局に突入しました。清澄と白糸台の両校が凄まじい活躍を見せる中、
有珠山は焼き鳥状態、そして姫松の末原選手は既に39000点の失点となっています』
実況『そしてその姫松の親番。末原選手、この親はなんとしてもものにしたいところでしょう』
末原「……」
末原(こんなこと言ったら主将には叱られるやろうけど、私は白糸台を抜いて一位抜け
なんて狙ってへん。もちろん決勝戦では白糸台も倒すつもりや。でも今この場は、とにかく
二位抜けでもいいから決勝を目指すことが優先)
末原(――そう思ってたのに、二位の清澄との差はもう取り返しのつかんところまで来てる。
……なんとしてもこの親で連荘して差を詰めなあかん)
末原「……」カチャ
一二二三三四四六七八九九発 中
末原(親番でめっちゃええ配牌や……と言いたいところやねんけど、役牌が二つ……)
末原(今まで打ってきてここまで役牌を切りたくないと思う対局は初めてや。それも、
相手は平気で人和なんか和了りよるし……。有り得るで、人和小三元なんてふざけた手が、
この白糸台の大将に限っては)
末原(でも、じゃあこれ持っとくんか? 仮にどっちかを頭にできても、もう片方は
切らなあかん。どっちも抱えるつもりならチートイツしかあらへん。せっかくの親番……
それもこんなええ配牌でそんなことやっとったら、勝てるもんも勝てへん。攻めるんや!)
末原「……」中
淡「ポン」
末原「!」ビクッ
末原(も、もっとった……やっぱり配牌から中の対子……)ブルッ
咲「……」カチャ
有珠山「……」カチャ
末原「……」カチャ
一一二二三三四六七八九九発 赤五
末原(じゃあ、やっぱり持っとるんか? 発の対子……まさかこれで和了るなんてことは……)
末原(切りたくないけど……でも切らな……まだ二巡やで? 二巡で11飜以上の手が
入って聴牌しとるんや。勝負するしか……ない!)発
淡「ポン」
末原「うっ!」ビクッ
末原(ぽ、ポンか……よかった……い、いやよくない。小三元濃厚やないか)
末原(でも、もし白糸台が聴牌やったとしても、うちもこれで張った。ダマでも十分やけど、
あと1飜増えるだけで24000点が36000点にまで跳ね上がる)
末原(ツモれれば最高やけど、もしロンなら……せっかくの三倍満を倍満どまりに
してまう。リーチをかければ三倍満確定なんや)
末原(――あかん……リーチなんてもってのほかや。狙い撃ちされてお終いや。そんな
甘い相手ちゃうで)
※ドラは基本表記しませんが、役宣言でドラがあったら「ああ、これがドラなのかな」くらいに補完してください
末原(でも、もし……もし和了れるなら、リーチかけるべきちゃうんか? こんなええ流れ
もう来えへんかもしれん。今が勝負のときちゃうんか? うちは今二回振り込みの危険を
犯して役牌を切ったんちゃうんか。そこまでやったのに結局保身に走るんか? くそ、
どうすればええんや……)
淡「……チッ」
淡「あのさ」
末原「っ、な、なんですか?」
淡「ざ……っ、ふー……えっと、早く打ってもらえます?」
淡(なに悩んだって同じだよ)
末原「あ、す、申し訳ありません」アセアセ
末原(……行くしかない! 勝負や!)
末原「リーチ!」
淡「……」
淡(リーチ、か……)
淡(――ここで潰すか? いや、焦らなくてもこんなのいつでも始末できる)
淡(それより、私のこの手……テルにいいとこ見せようと思ったのに、こんな無様
な手が揃うなんて……最悪だ。まだ本調子じゃないのかな)
淡(こんな手で和了りたくないな……もういっそ姫松に和了らせようかな。とりあえず、
この巡は放置してみるか)
咲「……」カチャ
末原「……」カチャ
末原(こい……! 頼むわ、来て……!)
末原「……」
末原「……」チラッ
白
末原「…………ぁ」
末原(う……嘘やろ。こんな……な、なんでうちにばっかりこんな牌が……クソ……!)
末原「くぅ……」
淡「……」フー
淡(白をツモったのかな。まったく、事ここにきてそんな牌をツモるなんて、よっぽど
場を支配する力に乏しいんだね。そのくせ他者の支配に抗う力もないなんてね)ヤレヤレ
末原「……」
末原(行くしかない……行くしかないんや!)
末原「……」タン 白
有珠山「……!」
有珠山(白? これは、白糸台の当たり牌じゃ……)
淡「……」
咲「……」
末原「……?」
有珠山「……え、っと……」
有珠山「ツモってもいいですか?」
淡「当たり前でしょ。誰も鳴き宣言してないんだから」
有珠山「あ、はい。じゃあ……」カチャ
末原「……」
末原(は、白が通った? 杞憂やったんかな……いやでも、中と発を鳴いて、こっから
どんな役満の成り損ないになるって言うんや……?
小三元もない。三暗刻もない。……まさか三槓子? 有り得なくはないけど……)
末原(――いや、そうか。白糸台は小三元を和了るつもりやったけど、まだ聴牌できて
なかったって可能性もある。なら白糸台はまだ一向聴以下。私の方が早い――!)
末原(和了るで、親の三倍満!)
咲「……」カチャ
咲(まずいよ……間に合わない)
有珠山「……」カチャ
淡「……」カチャ
淡「っ……」ピタ
淡「……………………チッ」
末原「……?」
末原(なんや、今度は自分が長考? 私の親リーに対して危険な牌を掴んだんか?)
末原(ええで……振り込め……振り込め……!)
淡「……………………ま、いっか」
末原(――振り込め!)
淡「ツモ」
末原「え?」
西西西南南南① ① 中中中 発発発
淡「混老頭トイトイ混一色西南中発ドラ2、6000,12000」
末原「」
末原「……」クラッ
末原(ふ、ふざけなや……)
末原(なんやその手!)
末原(白糸台の最後の手だしは北。つまり字一色聴牌やった。それをわざわざ落として
の①筒待ち……? 有り得ん。そんなん有り得んやろ)
末原(混老頭も清老頭の成り損ないってこと? 役牌のポンからてっきり小三元やと
ばかり思とったけど、そんなんもあるんか……どういうことなん)
淡「……」
淡(でもこんなの、清老頭の成り損ないとは言えない。私の混老頭ってのは、1,9牌
の刻子を四組揃えて、頭だけ字牌とか、そういうのであるべき。これじゃ字一色の
成り損ないじゃない)
淡(星の引力で場を支配したはずなのに、どうしてこんな恰好悪い手が入っちゃったんだろう)
咲「……」
咲(①筒待ち……か)
白糸台選手待合室
誠子・尭深「……」
菫「……清澄。なるほど、お前が買うだけのことはあるな、照」
照「……」
咲の手牌
一一九九①⑨⑨1199白白
菫「今の局、確かに大星の支配は効いていた。だが同時に、清澄の支配も行き渡っていた。
大星は小三元の素は手に入れたが、同時に清澄も白を所持。そして清老頭に必要な
1,9牌の半分を清澄が独占する形になってしまった。
結果、大星はあんな歪な形での混老頭しか和了れなくなった、ということか」
菫(大星、そいつは今までの奴とは訳が違うぞ。お前は清澄を出し抜いて和了ったつもり
かもしれないが、実際には清澄も①筒待ち。あと一手ツモ巡が違っていれば、混老頭を
和了っていたのは清澄なんだ。侮ると、お前でも本当に……)
菫「大星ほどではないにせよ、場を支配し、相手の手配を見透かす力。
それに、槓からのブースト。そして嶺上開花。確かに強敵だな」
照「……違う」
菫「ん?」
照「あの子の本当の強さは、そこじゃない」
菫「どういうことだ照。……お前、やっぱり清澄の大将のこと知ってるのか?」
照「……」
南三局
白糸台:173700
清澄:129700
姫松:45800
有珠山:50800
末原「……」カチャ
末原(あ、あかん。まだ前半戦やのに、マイナス5万点って、こんなんあっていいはずない。
しかもまたラス転落……。前の試合で清澄警戒しとったけど、白糸台……こっちがやばすぎる)
末原(せめてもっとこの人の牌譜があれば対策もできたのに、この大星淡、今大会では
予選の決勝以外打ってない。それ以外は全部大将に回ってくる前に終わってたから)
末原(せめて和了りの特徴だけでも知っておきたかった……けど、そんなん言っても
なんも始まらへんし、まずは一回和了ることや。ここまで和了れてるのが清澄と白糸台
だけとか、こんなこと許しとったらあかん)
末原(もう安手でもなんでもいい。一回和了りたい。安手で場を進めるのはホンマは愚行やねんけど、もうこの際仕方ない)
一一二三三七七八八九東東白 三
末原(よし、安手どころか、倍満手。今回は五巡目まで来てるし、
白糸台にも速攻の気配はない。大きく負けてる身としては勝負したいところやけど
……この白。これどないしよか)
淡「……」カチャ
末原(白糸台はツモ切り。いま河には役牌が一つも出てない……まさかまた小三元?
あかん、この白は切られへん。なら……安くなるの覚悟でチートイツや)三萬
淡「……」
淡(姫松は回し打ちか。白は出ない……?)
111222白白中中中発発 9
実況『大星選手、またしても非常に高い手を張っています! 三暗刻トイトイ小三元ホンイツ役牌二つにドラの1索が三枚……
数え役満に到達します。いえ、ツモ和了りすればそもそも四暗刻――! とてつもない大物手です!』
淡(……違う……私の麻雀はまだ完成していない。だからまだ役満は和了れない)
淡(私は今までの麻雀人生の中で、役満を和了ったことは一度もない。何度も狙ったけど、一度も和了れなかった。どんなに格下が相手でも)
淡(テルに出会って、私の力はまだ未完成なんだってことに気づいた。いつかテルを超えた
とき、私の麻雀は、最高の形で完成するはず。でも、今はまだその時じゃない)
淡(……だからきっと、この手じゃ和了れない。和了るなら、飜数を下げないと……今
14飜だから、最低でも二つは下げないとね。どうやって下げるか……)
咲「……」カチャ
咲「……」2索
淡「――っ!」
淡「カン」カチャ
111白白中中中発発 2222
実況『おっと? 大星選手、宮永選手の捨てた2索をカン。この鳴きは……どういう
ことでしょうか。無意味に飜数を下げただけに思えますが』
淡(喰い下がりでホンイツが1飜下がって、三暗刻も消えて合計11飜の手になった。この手なら和了れるはず)
淡(でも……なんか、違和感。咄嗟に鳴いちゃったけど、今の2索……あのタイミングで咲ちゃんがあれを捨てたのは偶然? それとも……)
咲「……」カチャ
咲「カン」
淡・末原「!」
456④⑤⑥二四五白 発 ⑦⑦⑦⑦
咲「……」二萬
淡(……? 嶺上開花じゃない? なら、今のカンは……)
咲(淡ちゃんが嶺上牌からも有効牌を取れるんなら、王牌に発を置いておくのは危険
だよね。私も和了りづらくなっちゃうけど、大きい手を淡ちゃんに和了られるよりはいい)
淡(……まさか私にわざとカンさせて、次の嶺上牌を狙ったの? ……あじな真似してくれるじゃん)
淡(でも、どうするの? 姫松が白を一枚もってる以上、その白はもう頭にもなれない
完全な不要牌。仮に姫松が白を切っても、頭ハネの権利は私にある。咲ちゃん、もうこの
局で和了れないんだよ?)
淡(それに、私の感じだとまだ発は出切ってない。あと一枚は山にあるはず。私がそれを引いたら……
――いや、それだと三暗刻がつく。13飜になるから和了れない……!?)
淡(まさか……私が役満以上を和了れないのを見越して……?)
咲(淡ちゃん、『成り損ない』しか和了れないって言ってた。なら、役満は和了れないってことだ。この局ではそれを確かめたい。複合役ありで数え役満なら出せるのか、それも
できないのか。それがわかれば、その情報は後半戦できっと活きてくる)
咲(私の予想では……多分和了れない。じゃないと、今の2索鳴きは説明できないもん)
淡「っ……」
淡(……なんにせよ、咲ちゃんはこの局では和了れない。もう咲ちゃんを警戒する必要もない。
なら肝心なのは有珠山と姫松だけど、有珠山はまだ聴牌にも遠い。問題は姫松……)
淡(そこそこの手を張ってきてる。でもこっちも咲ちゃんと同じで余った白を持て余してるせいで
和了れない。なら、結局この局で和了るのは私ってことになる)
淡(手を上げるならともかく、手を下げるのなんて簡単――と言いたいところだけど、
生憎、そうもいかない。いま私が一瞬でも聴牌を崩せば咲ちゃんがすぐさま白を切ってくる。
当然姫松もそれに続いて白を捨ててくるだろうから、白が全滅……
私は山のどこかにある発を引くまで和了れない)
淡「……」
淡(最悪、この局は流したっていっか。あるいは唯一和了れる有珠山が和了ってもいいし、
もし有珠山が発なんか捨ててきたら、それで和了ればいい)
一一二二三三七七八八九東白 九
末原(きた! チートイツにするつもりやったけど、思いもがけずリャンペーコー
チャンタ混一色の倍満手になった。
白の単騎待ちなんがネックやけど、とにかく聴牌や。くそ、白さえ切れれば清一も絡めれる手やのに……)
淡(張ったか。でもその白は切れないし、もうツモることもできない。大きい手が出来て
喜んでるみたいだけど、その手、和了れないんだよ)
淡(有珠山もまだ一向聴ってとこか。これは流局かなぁ)
咲「……」カチャ
咲「……!」
咲(――発! ……四枚目の発がきた。淡ちゃんを避けるみたいに、一手遅れて私のところへ。
……やっぱり淡ちゃん、役満手は和了れないんだ。――よし、それだけ分かれば……)
咲「……」タン 白
淡・末原・有珠山「!?」
淡(え、白? ここで? なんで?)
末原「――ま、待ってください!」ガタッ
末原「ろ、ロンです! 16000点、頭ハネです!」
咲「はい」ジャラ
淡「……」
淡(差し込み……? なんでわざわざ。流せばいいじゃん、こんな局)
咲「……」
南四局
末原(なんとかラスからは這い上がれた。清澄から直撃取れたんも大きい。後半戦に
入る前に、もう一回くらい和了りたい。でも、今は白糸台の親番……無茶はできへん)
淡(さて、と。私の親か……)
淡(――行くよ!)ゴォッ!
咲・末原「……!」ビク
咲「……」
咲(……させないよ)ゴッ
淡(まずは役牌二つずつ)
発発中中白白東東
淡(効いてる。私の星の引力が、有効牌を引き寄せてるのを感じる)
淡(ダブルリーチで決めてやる……!)
発発中中白白東東西西13
発発中中白白東東西西13赤5八
淡(…………は?)
淡(ダブルリーチじゃない……!? 私の親番で? どうして……)
咲「……」カチャカチャ
淡(……咲ちゃん……あくまでも私に歯向かう気なんだね)
淡(でも、いくら足掻いたところで私に大きな手が来てることに違いはない。一気に
ツモって終わらせてやる)
淡「……」八萬
咲「……」②筒
淡「ん?」
末原(嶺上開花やないんか)ホッ
淡(嶺上開花じゃないなら、今の槓は多分、私のツモる牌をずらすのが目的。
東をツモるつもりだったけど、邪魔されちゃったか)
淡(東をツモったのは有珠山……こっちはもうオり気味だから生牌の東なんて切ってこないな)
淡(まあいいか。なら東を落として中を頭にすれば――)
淡「……」カチャ
淡「……」東
咲「……!」カチャ
咲「……」白
淡「ポン」
咲「……」発
淡「……? それもポン」
末原(……ちょっとどういうつもりや清澄。白糸台の親のときに役牌を二つも連続で
捨てるなんて。よっぽど大きい手が来てるんか?)
淡「……」カチャ
中中東東135 6 発発発 白白白
淡(一向聴か。次巡に東を引いて、その次に2索を引いて和了りだ)
咲「……」カチャ
咲「カン」
淡・末原・有珠山「!」
淡(まさか、もう?)
末原(は、早すぎるやろ)
末原「……」カチャ
有珠山「……」カチャ
淡「……」カチャ
淡(――――ん?)ピク
淡「――ッ!」
淡(なっ……こ、これ……!)
中中東1135 中 発発発 白白白
実況『おーっと、大星選手、ここでついに中をツモった――! これで大三元確定!
他校に止めを刺す一撃となるか――!?』
淡「…………」
淡(違う――『掴まされた』!)
淡(さっきの局で、咲ちゃんは私が役満手以上を和了れないことを見抜いたんだ。
この中をツモったことで大三元は確定――つまり、『もうこの手じゃ和了れない』!)
淡(今の槓は東をツモる順をズラす以外に、私に中をツモらせる意図もあったんだ)
淡「……」ギリ
淡(ならこの中を捨てればいい――ってわけにもいかない。私の麻雀を見抜いたんなら、
この中を捨てるのは承知の上のはず。なら、咲ちゃんの当たり牌はこの中で間違いない。
じゃないとこれを掴ませる意味がない。逆に私がこれを持ち続ける限り、咲ちゃんも和了れない)
淡(……またこの流れ? 私も和了れない。でも咲ちゃんも和了れない。このまま他家が
和了るか流局? 一体なにが目的――いや……なるほど。そういうことか)
淡(……いいよ、咲ちゃん。認めてあげる。確かに、あなたなかなか強いよ。
あなたが白糸台にいれば私も少しは退屈せずに過ごせたかも)
淡(確かに咲ちゃんは私の能力の弱点を見抜いて、その隙を突いてきたかもしれない。
面白い力も持ってるし、白糸台でもナンバー3には入れただろうけど、でも、所詮は
そこまでってことだね)
淡(咲ちゃんは全力を出しても、私に和了らせないようにするのがやっとなんだ。自分の
和了るチャンスを棒に振ってでもしないと、私を止められない。最悪、いざとなれば
さっきみたいに他家に差し込んででも私の和了りを防ぐしかない)
淡(その結果が、この点差だよ。前半戦だけで得失点48000点差。チーム毎に見れば
60000点差。それが私たちの実力の差だよ、咲ちゃん)
淡「……」東
咲「ロン」
淡「…………は?」
四五六4赤56④⑤⑥東 東 8888
咲「三色ドラ2。3900です」
淡「」
実況『宮永選手、大星選手の大三元を阻止――! 独走状態の白糸台に一矢を報いた――!』
淡「……」ジャラ
実況『前半戦終了――! 前半戦は清澄と白糸台の競い合いでしたが、終わってみれば
白糸台の完全一人浮き状態――! このまま白糸台が三連覇に繋がる勝利を掴むのか――!』
ごめんなさい。正しくは有珠山の捨て牌でカンです
白糸台:169800
清澄:117600
姫松:61800
有珠山:50800
末原「……お疲れさまでした」
有珠山「お、お疲れさまでしたぁ……」ガックリ
淡「……おつかれさまでした」
咲「お疲れさまでした」ペッコリン
廊下
淡「……」カツカツ
淡(最後の一局……待ちは中じゃなかった)
淡(……私の考えを読まれた。私が中を切らずに東の対子落としをすると見て、そこで
狙い撃ちしたんだ。――くそっ)
淡「……でも、私の勝ちだから」
そうだ。清澄は前半戦でたったプラス4600。私はプラス44800。
誰が見たって私の勝ちだ。照との賭けは、私の勝ちで文句なんてないはずだ。
咲ちゃんは私に一矢を報いたに過ぎないんだ。
ガチャ
淡「ただいま」
菫・尭深。誠子「……」
淡「……? なに? 三人とも変な顔して」
菫「いや、なんというか……」
淡「ねえテル、見てたでしょ? 私の勝ちだよ。前半戦だけで45000点のプラス。
賭けは私の勝ちってことでいい?」
照「まだ後半戦が残ってるから」
淡「ふふ。照も往生際が悪いなぁ。安心してよ。別に変な罰ゲームなんてさせないよ。
そーだなー。私の家に三日くらい泊まりこんでずーっと麻雀打とうよ。他にプロを二人くらい呼んでさ」
照「いいよ。私が負けたらね」
淡「もう、どう見たって私の勝ちじゃん。菫もそう思うでしょ?」
菫「……」
淡「……菫?」
菫「照の言った通りになった」
淡「…………は? なにが?」
菫「照がな、言ったんだ。清澄の大将は、前半戦をプラマイゼロで終わるって」
淡「プラマイゼロ?」
菫「清澄は前半戦でプラス4600。25000点持ち30000点返しで考えたら、
プラマイゼロだ」
淡「――」
淡「……偶然でしょ、ただの」
菫「いや、気になって調べてみたら、清澄は一つ前の試合でも同じことをやってる。
それに県予選の個人戦でも何度か。照が言うには、彼女はこれを意図的にやってるらしい」
淡「……狙って……プラマイゼロ……?」
菫「……」
淡「……それで? 仮にそうだとしたらなんなの? 点数調整と勝つ技術は別でしょ?
実際には私と咲ちゃんの間には得失点が40000点差もあるんだから、私の勝ちじゃん」
照「淡は毎試合プラマイゼロにできる?」
淡「そんな訳わかんないことしようとも思ったことないから分からないよ。でも出来るんじゃない?」
照「でも菫とか白糸台の一軍メンバーには出来ないんじゃないか?」
淡「まあ……毎回確実に、ってことだったらかなり格下じゃないと厳しいかもだけど」
照「そういうことだよ」
淡「なにが?」
照「つまりあの清澄の大将は、〝淡のことを相当格下だと思ってる〟ってことだよ」
淡「……」
照「確かに今のままなら白糸台は一位通過するだろう。でも、それで清澄に勝ったと言える?」
淡「……」
淡「手加減されてるっていうの? この私が?」
照「どう捉えるかは淡の自由」
淡「……」ギリッ
淡「……いいよ。わかった」
淡「後半戦、私は死んでも咲ちゃんにプラマイゼロなんてさせない。白糸台も一位で通す。
麻雀の内容でも勝つ」
淡「それができたら、文句なしで私の勝ちってことでいいよね?」
照「ああ。そこまで出来れば、私の完敗だ」
淡「じゃあそれでいいよ。一応、テルも罰ゲーム考えといてよ。まあ無駄だろうけど」
ガチャ、バタン
菫「……本当なのか、清澄が狙ってプラマイゼロをやったなんて」
照「まず間違いない」
菫「……信じられん。あの大星を相手に……。お前はどう思うんだ? 本当に大星相手に
二連続プラマイゼロが出来ると思うか?」
照「私はそう賭けた」
菫「……そうだったな」
照「でも、かなり難しいと思う」
菫「ならどうしてこんな賭けをしたんだ。いくらなんでも分が悪すぎるぞ」
照「勝ち負けはどうでもいい。私はただ、知りたいだけ」
菫「知る? 何をだ」
照「淡ならあの子の……咲のプラマイゼロを止められるのかどうか」
菫「照……」
照「もし淡に咲が止められるなら……」
照「きっと、私にも止められる」
咲「……ふう」
咲(淡ちゃん……すごく強かった。お姉ちゃんと互角くらいの力は持ってる
……お姉ちゃん……見てくれたかな。私の麻雀。私の伝えたい事……お姉ちゃんに伝わったかな)
淡「咲ちゃん」
咲「あ。淡ちゃん」ぺっこりん
淡「……」
咲「……? どうかしたの?」
淡「さっきのプラマイゼロ、狙ってやったの?」
咲「……!」ピク
淡「どうなの?」
咲「……ごめんなさい」
淡「なんで謝るの?」
咲「だって……」
淡「……」
淡「……次の後半戦で、もう一回プラマイゼロにしてみなよ」
咲「え?」
淡「それができたら、咲ちゃんのこと認めてあげる。私よりも強い雀士だってね」
咲「あ……うん。どうも」
淡「私に認められるかどうかなんて興味ないって感じだね」
咲「え、いや、そんなことないよ」アタフタ
淡「……言っとくけど」
淡「私に勝てないようじゃテルには一生勝てないよ」
咲「――ッ!」
お姉ちゃんの後輩、雑魚いよ
淡「やってみなよ、プラマイゼロ。私は全力で阻止する。絶対にプラマイゼロになんてさせない。
プラマイゼロできなきゃ、咲ちゃんって別に凄くもなんともないよね。正直、天江衣にも劣ってるよ。
当然、私にもね。前半戦どおりの実力って感じ」
咲「……」
淡「でも、私が全力を出しても……それでもプラマイゼロにできるんなら、認めてあげる。
高校生で一番テルに近い打ち手だって」
咲「……お姉ちゃんに……」
淡「それだけ。じゃあ、後半戦よろしくね」
ツカツカツカ
咲「……」
咲「よろしくね、淡ちゃん」ゴッ!
実況『さあ、ついに準決勝も後半戦に差し掛かりました。独走状態の白糸台を止める
ことはできるのか――!」
四人「よろしくお願いします」
東:有珠山
南:清澄
西:姫松
北:白糸台
咲「……」
淡「……」
淡(咲ちゃん、やる気だね、プラマイゼロ)
淡(させるもんか。私を相手にそんなふざけた真似、絶対許さないから)
東一局。親:有珠山
有珠山:50800
清澄:117600
姫松:61800
白糸台:169800
淡(この一試合、もう単純な点の取り合いじゃない。私と咲ちゃんのプライドをかけた勝負だ)
私の勝利条件は三つ。
一つ。白糸台が一位通過すること。
二つ。咲ちゃんにプラマイゼロをさせないこと。
三つ。麻雀の内容で咲ちゃんに負けないこと。
淡(私のリードは5万点以上ある。そうそうひっくり返されることはない。白糸台の
1位通過っていう条件はほぼクリアされてると言っていい)
淡(そして咲ちゃんのプラマイゼロを阻止すれば、連動して内容でも勝ったって言えるはず。
とにかく咲ちゃんをプラマイゼロにしないこと。それができれば私の勝ちだ)
咲ちゃんのプラマイゼロを潰す方法は大きく分けて三つある。
まず、咲ちゃんに和了らせない。プラマイゼロなんていう微調整は咲ちゃん自らが動かないとできるはずがない。
必ずどこかで和了って点数を調整してくる。私はそれを叩けばいい。
次に、プラマイゼロから大きく引き離す。プラマイゼロになるのはプラス4500から5400まで。その点数から
大きく咲ちゃんを引き離すだけで、プラマイゼロはぐっと難しくなる。
マイナスならベストだけど、最悪プラスに引き離してもいい。そうなると咲ちゃんは自分から
他家に振り込んで点数を調整するしかない。そこで私が咲ちゃんよりも先にどこかに差し込むか、なんなら私が先に和了ればいい。
最後は、オーラスで刺す。オーラスまでに私がトップ、かつ咲ちゃんがプラマイゼロの状態でなければ、
最後に私が和了るだけで咲ちゃんのプラマイゼロは不可能になる。和了る際に咲ちゃんが
プラマイゼロにならないように調整するだけでいい。
淡(この後半戦、私は和了りまくればいいってわけじゃない)
淡(私が和了りまくって20万点とったとしても、咲ちゃんがプラマイゼロにすることは不可能じゃない。試合では勝っても、勝負に勝ったことにはならない)
淡(私自身も適度に点数を調整していかないと。時には和了りを見逃したり、他家に
振り込んだりすることも必要だね)
淡(……ふふ。こういう趣向の麻雀は今まで打ったことないよ。なかなか面白いね。
――でも、最後に勝つのは私だよ、咲ちゃん)
淡(じゃ、まずは軽く挨拶代わりに……)
淡「ツモ」
発発22234666888 5
淡「混一色三暗刻。2000,4000」
末原「なっ……!」
四暗刻まで見える手……白糸台、しょっぱなから全開かいな)
末原(赤5索じゃなかったのだけが救いか……ドラが乗ればハネ満まで伸びとった)
淡(……そういえば菫が前に言ってたな。この手を和了るなら赤5索は狙わないのか、って)
淡(分かってないよね皆。それだと5索が全部赤くなるじゃん。五本の内一本だけ赤いからこそ
『完璧な成り損ない』なんじゃない。赤5索なんてダサイ手、ツモってもイラついて崩しちゃうよ)
実況『大星選手、肩慣らしとばかりに満貫をツモ和了り――! やはり白糸台を
止めることはできないのか――!?』
末原(あかん……どっかで流れを掴まな。ただでさえ清澄とも大差なんや。このままじゃ
二位で決勝進出も厳しい)
有珠山「うぅ……」
淡(姫松と有珠山はどうやって二位になろうか考えてるのかな? ふふ、まあせいぜい
低い次元で足掻いてればいいよ)
淡(さあ、咲ちゃん……そろそろ本気出してよ)
咲「……」
姫松(……配牌は悪くない。一巡目はまず北を切って、それから……)
咲(淡ちゃん……すごいプレッシャーだ。今まで何度かプラマイゼロを防ごうとしてきた人は
いたけど、その中でも一番手ごわい相手だ……)
咲(でも……淡ちゃんに勝てれば、お姉ちゃんに一番近い打ち手だって認めてもらえる。
私は……お姉ちゃんにもう一度会うために来たんだ。こんなところで負けられない……!)
咲(お姉ちゃん……あの日のこと、許してもらおうとは思わない。ただもう一度だけ……
お姉ちゃんと話がしたい)
咲「……」カチャ 北
淡「ロン」
咲「え――」
234456三四五①①①北 北
淡「人和。8000」
淡「聴牌気配すら読めなかった? 不注意すぎるよ咲ちゃん」
咲「……」
淡「あのさ。私に宣戦布告しといて対局中に他のこと考えてる余裕なんてあるの?」
咲「……!」ビク
淡「あんまりイライラさせないでね」
咲「……うん」
末原「……」
末原(あ、危なかった……清澄が北を切らんかったら、私が切ってた……白糸台……ほんまにバケモノやないか)
淡(私はもう十分リードを取ってる。多少振り込んででも、咲ちゃんの和了りを防げばいい)
淡(咲ちゃんが和了りそうになったら姫松か有珠山にでも差し込んで咲ちゃんの点数を変動させない。理論上はこれで勝てる)
咲「……」カチャ
淡(咲ちゃんが張った。待ちは索子が臭い。……流すか)
淡「……」カチャ
末原「ポン!」
淡「……」カチャ
末原「……!?」
末原「ろ、ロンです! 5800」
淡「はい」チャラ
咲「……っ」
淡(ふふ。悔しそうにしてる。前半戦で私に点を取られ過ぎたね。いくらでも差し込んであなたの
和了りを阻止してあげるよ)
咲「……」
咲(そう来るのか……困ったなぁ)
末原(白糸台が振り込むなんて珍しいな。これは、流れが来てる……? 今がチャンスや)
末原(親番が続行できるし、ここは軽くでも連荘目指すべきやろか)
東三局
咲(……まずは軽く和了らないと。これ以上振り込んでマイナスに傾くのはよくない)
淡(――って、思ってるんだろうけど。そうそう簡単にはいかないってこと教えてあげる)
淡「カン」 白
末原(? 白を暗槓……? なんでわざわざ)
淡「もいっこ、カン」 中
咲・末原・有珠山「!?」ビク
末原(しょ、小三元……!?)
咲(しかも槓ドラが……淡ちゃんの鳴いた中!)
淡(ふふ、どう? 和了れば倍満以上確定の手だよ。これをツモ和了りすれば咲ちゃんはマイナス6000)
淡(更にマイナスに傾く上に、有珠山がもう三万点弱しか残らない。私なら一瞬で消しトばせる。
そうすればプラマイゼロどころの話じゃないよね?)
咲「ん……」
淡(ほら、そういう事態を防ぐにはどうすればいいの、咲ちゃん?)
咲「……」カチャ
有珠山「! ろ、ロン。3900です」
咲「……はい」チャラ
末原「……」ホッ
淡「ふふ」
淡(そう。私の和了りを防ぐには自分から他家に差し込むしかないよね。私が大きいのを和了って
有珠山がトぶよりはずっと確実。それが正解だよ、咲ちゃん)
淡(でもこれから私が大きな和了りをしそうになる度に咲ちゃんはそれを繰り返さないといけない。じゃないと他家が
トんじゃうしね。その度に咲ちゃんはマイナスに傾いて、プラマイゼロから遠ざかっていく)
咲「……」
淡(まあ、そんな『他家が弱かったからプラマイゼロを防げた』みたいな勝ち方はしないけどね。
あくまで正面から咲ちゃんを叩き潰す。でも、咲ちゃんはその可能性も考慮しないといけない)
淡(相当動きが制限されるはず。さあ、これでもまだプラマイゼロ出来るって言うならやってみせてよ)
南四局
淡「……」カチャ
淡(私の親番か。さーて、どうしてあげようかな)
淡「……」ゴォォォォォ!
咲(あ、しまった……!)
淡(ふふ。もう私の星の引力を止める気力もないのかな? 遅いよ、咲ちゃん)
淡「ダブルリーチ!」
咲・末原・有珠山「!」ビクッ
実況『出ました、大星選手のダブルリーチ――! 天和の『成り損ない』。しかしその威力は
絶大です――! さあ、他の三校はこれを防ぐことができるのか――!?』
淡(できるよね、咲ちゃん。別にむずかしいことじゃないよ)
淡(ほら、姫松が配牌で一向聴だよ。一巡待ってあげるから、差し込んであげなよ)
咲「……」
咲「……」カチャ
最強のキャラを作るにはそのキャラの心理描写を一切省くことが重要らしいな
打ってる最中の咲さんってそういうところあるよね
別に咲に限らず麻雀漫画はボコられる奴の視点で進むのが基本や
咲「……」カチャ
末原「あ、ロン! 7700!」
咲「……」チャラ
淡「ふふ」ニヤ
淡(どう? 身動きが出来ずに少しずつ窒息していくような感覚。まるで宇宙に
放りだされたみたいでしょ? もっと引きずり込んであげるよ……宇宙の闇へ)ゴォォ
淡(これで咲ちゃんは後半戦マイナス21600点。今の段階では倍満を和了ってもプラマイゼロには届かない)
淡(意識すればプラマイゼロなんて簡単に止められるもんだね)
咲「……」
もう咲ちゃんは戦意喪失したような面持ちだった。
今まで格下相手に得意げにプラマイゼロをやってきたんだろうけど、今回ばかりは相手が悪かった
ということだろう。続く南一局、親の有珠山が2600オールを和了った。それはまたしても
咲ちゃんがプラマイゼロから遠ざかることを意味していたが、咲ちゃんは何もできなかった。
続く南一局二本場――
淡「……」カチャ
東東南南西西北北白白発発⑦ ⑦
淡「……ツモ。4000,8000」
咲・末原・有珠山「!」ビク
淡(何の苦もなく字一色の鳴り損ない和了っちゃったよ。これで咲ちゃんはマイナス28200。
悪あがきもここまでかな?)
淡「あーあ。なんかがっかりだな。咲ちゃん、もっと楽しませてくれると思ってたのに」
咲「……っ」
淡「まるで張り合いないよ。この程度でテルに挑もうなんて、身の程知らずにも程があるよね」
咲「……」
淡「だいたい咲ちゃん、テルの強さ分かってるの? この私ですらテル相手に一度も
トップとったことないんだよ? 麻雀でテルに何を伝えたいのか知らないけどさ、
こんなんじゃテルも「弱いなぁ」としか思わないんじゃない?」
咲「……淡ちゃん」
淡「んー?」
咲「ちょっと……うるさい、かな」
淡「そう? 負けてるときは何でも耳障りに聞こえるものじゃないかな」ニコリ
咲「まだ勝負は終わってないよ。まだ私の親番が残ってる」
淡「そう、最後の親番だね。これを逃せば、残り二局でプラマイゼロにしないとだね。
――できると思ってるの?」
咲「お姉ちゃんに挑むなら……」
咲「それくらいじゃないと、駄目なんだよね」ゴォォッ!
淡「やってみなよ」ゴォ!
南二局
淡(咲ちゃんの親……喰いタンでも和了ってやろうかな。ふふ、咲ちゃん悔しがるだろうなぁ)ニヤニヤ
咲「――カン」
淡「お?」
咲「ツモ。嶺上開花。2000オール」
淡(案外あっさり和了られちゃったか。さっきの挑発でさすがに火が点いたかな?
まあそれくらいじゃないと面白くないけどね)
南二局
咲「……」カチャ
淡(……咲ちゃんが張った。でも安い。連荘狙いできたか。いいよ、受けて立ってあげる)
末原(清澄……張ったか? せやけど、ここはうちもオりれん。私の親は次の南三局。うちと清澄の
点差はまだ三万点以上ある。ここで逃げたら、次の親でケチついてまう気がする)
淡「……」カチャ
淡(四巡目で一向聴……珍しく私の手が重い。このままなら咲ちゃんに和了られちゃうか……)
淡(咲ちゃんの待ちは多分③⑥筒。私が振り込むことはないけど……他の二校が読めてるかどうか……)
淡「……」タン 赤5筒
有珠山「――っ、チー」 ④赤⑤⑥
淡(――よし。今のはただのドラ回収じゃない。この局数と点差でそんなケチな点棒拾っても仕方ないからね。
有珠山は⑥筒が危険だと察知してる。なら筋の③筒も切らないよね。よし、こっちは大丈夫)
淡(あとは……)チラッ
末原「……」カチャ
末原(張った! 溢れたのは③筒か……切りにくいけど……)
末原(――いくしかない!)カチャ
淡「……チッ」
咲「ロン。3400」
末原「っ……はい」チャラ
淡「……」
淡(いくら私でも姫松が振り込むのを止めるのはちょっと厳しいな。小三元ちらつかせて
オりさせることもできるけど、それならもう私が和了っちゃった方が早いか)
南二局
淡「カン」発
末原(っ……小三元か……いや、さっきの緑一色……?)
末原(いや、暗槓なら発を鳴いて役満一歩手前に出来る役なんかいくらでもある。
字一色。混老頭、四槓子、四暗刻……全部を警戒するなんか無理や。くっ……わざわざ
暗槓したのは他家の動きを牽制するためか)
淡(これなら姫松も有珠山も勝手にオりてくれるでしょ。さぁてと――)
咲「――カン」 4索
淡・末原・有珠山「!?」
咲「――ツモ。2600オール」
淡「――」ヘー
淡(4索……緑一色の大本命じゃん。お構いなしか……やっと全開ってわけ?)
淡(もうこうなると下手なハッタリは逆効果だね。さっさと和了っちゃう方が確実か)
実況『清澄高校の宮永選手、ここにきて親の三連続和了です。一位の白糸台とも、三位の姫松とも
大きく差が開いての二位。この連続和了は二位抜けでの決勝進出を盤石なものとするのか、
それとも一位の白糸台にすら食らいつく決意の表れか――!』
淡(私も咲ちゃんももう点数も順位も考えてない。あるのはただ、プラマイゼロへの調整のみ。
咲ちゃんは今マイナス11000点。オーラスで最後の調整をするつもりなら、ここは
満貫12000くらいを狙ってくるはず。そうすればプラス1000点。オーラスで3900を
和了ればプラマイゼロだ)
淡(させないよ……!)ゴッ
淡「……」カチャ
一一一二二三四六七八九九⑨ 九
淡(――よし。張った)
実況『大星選手、この局面で九連宝橙聴牌だ――! 五萬なら役満となります――!』
淡(ってことは、五萬は和了れないってことだ。九連を張ったらいつも清一になるから、ツモるのは
五萬子以外。多分次か、その次くらいに来る)
有珠山「……」カチャ
淡(有珠山……この点差でもまだ戦意喪失してないな。親番もないし、役満を狙うしかない状況)
淡(姫松以上にオりれないから、危険牌でもガンガン切るしかない。――ここから取る?
これ以上咲ちゃんに点数調整させるのもよくないし)
有珠山「……」カチャ 東
咲「――カン」
淡(っ、馬鹿……! いくら突っ張るしかないったって、よくそんな牌切るね。信じられない)
咲「もいっこ、カン」カチャ
淡(くそ……これ和了られるな。あーあ、だから弱い人と打つのは嫌なのよ。
まあ、次で親を流せばまだプラマイゼロは十分防げるはず)
咲「――もいっこ、カン!」
淡・末原・有珠山「!?」
淡(三連続……!? まって、しかもこの牌……これ、安手なんかじゃない!)
咲「――ツモ」
99南南 南 ①①①① ⑨⑨⑨⑨ 東東東東
咲「三暗刻三槓子トイトイ混老頭東南嶺上開花ツモ。――36000点です」
有珠山「ひっ――!」ビクッ!
末原「」
実況『…………さ』
実況『――三倍満!! 親の三倍満が飛び出しました――!! 有珠山の捨てた牌から
三連続カンにより一気に手を進め、三倍満にまで上りつめました――!』
実況『これは姫松、有珠山にとっては致命傷の一撃となるか――!? 二位の清澄と三位の
姫松の点差は七万点以上にまで広がってしまいました!! 有珠山高校は親番がないため絶体絶命。
親を残す姫松も、もはや敗退は時間の問題か――!』
末原「……」プルプル
末原(き……清澄ぃ……!)ギリリ
有珠山「……」ボーゼン
淡「…………」
淡(これは……どういうこと?)
淡(確かに驚いたよ。ここで三倍満かましてくるなんてね。――でも、それって駄目でしょ。
今ので咲ちゃんはプラス25000点。これ、どうするの? どこかに20000点振り込まないと
プラマイゼロにできないんだよ? てっきりオーラスで指定の点数を和了ってプラマイゼロにしてくる
と思ったのに、これじゃあ『オーラスで指定の点数に振り込んで』点数調整するしかないじゃない。
そんなこと……本気でできると思ってるの?)
淡(……思ってるんだろうなぁ……自分で自由に役を作って点数調整するならまだしも、
誰かにその役を作ってもらってそこにちょうど振り込むなんて、そこまでできれば確かに
神技だよ。はっきり言って、多分私もできない)
淡(……調子に乗り過ぎだよ、咲ちゃん)
淡(分かってるの? もう有珠山が10000点ないんだよ。今私が有珠山を
トばせばそこで終わり。あなたは馬鹿丸出しで負けるんだよ)
咲「……」
咲(……そんなことさせないよ、淡ちゃん)
南二局
淡「……」カチャ
四四四七七七南南南⑨⑨⑧① ⑧
淡(はい、三暗刻、南、ドラ3でハネ満。これで有珠山トばしてあげる)
咲「……」カチャ ③筒
有珠山「っ……」ピク
有珠山「…………」
有珠山「ろ、ロン……です。3900」
咲「はい」ホッ
淡(ふん、差し込んだか。点数調整も兼ねてるんだろうけど、必死だね咲ちゃん)
咲(……危ないところだった。もし有珠山の人が和了ってくれなかったら……多分、負けてた)
末原(くそっ……なんて迷惑な和了りや。もう戦意喪失したならじっとしといて欲しいもんやけど……まあ振り込んでトばれるよりはマシか)
末原(私は諦めへんで清澄。この親番……絶対ものにしてみせる!)
淡(さて、あとたった二局。咲ちゃんは今プラス21100点。ここから二局でマイナス16000点
しないといけないわけだけど、二局に分けて考えれば決して不可能じゃない。満貫に二回振り込めばいいわけだしね)
淡(でももしオーラスでこの点数だったら? オーラスだけでマイナス16000なんて
できるわけがない。だってそんな点数で和了っても姫松も有珠山も二位になれないんだから。だからこの局、
咲ちゃんは必ず姫松に振り込もうとするはず。姫松は連荘を狙って8000点でも喜んで和了るだろうし、
それを二回繰り返したあと、誰にも振り込まず、誰にもツモ和了りさせなければようやくプラマイゼロ、か)
淡(――ふふ。相当きつそうだね咲ちゃん。焦ってるのがこっちまで伝わってくるよ)
咲「……」
咲(分かってる。ここからプラマイゼロはかなり厳しいよ……)
咲(――でも、きっと淡ちゃんは私のやろうとしてることは読めてないはず。だって淡ちゃん
には思いつくはずのない方法だもん)
咲(そこで決める――!)ゴッ!
23567中中中発発発白白
淡「――ふふ。リーチ」カチャ
咲・末原・有珠山「!」
実況『大星選手、ここでリーチ! 点差と役を考えればダマでも十分な手ですが、
これは他家を牽制するためのリーチでしょうか――!?』
淡(これでまず有珠山はオりる。あとは姫松。ここはオりない。オりれない。私のリーチに
対して責め続けるしかない。振り込めばそこで終わりだ)
末原「くっ……」
789①①①②③一二二三1 北
末原(いい手が入ってる……これは和了りたいけど……1索は白糸台に危険や。いや、もうここまで
めちゃくちゃな打ち手やと待ちなんか読まれへんけど、ここで振り込むことだけはあかん)
末原(まずは現物の北や。この1索は順子に伸ばして使うしかない)
淡(――無駄だよ。あなたは次に4索をツモる。それを切ってお終いだよ。あなたも、咲ちゃんもね)
咲「……」
咲「……」カチャ 1索
淡・末原「!」
淡(これは――私の当たり牌……!)
淡「……く」
淡(だめだ、和了れない。これを和了ったら咲ちゃんの思うつぼだ。咲ちゃんのプラマイゼロの
調整を手伝うだけで終わっちゃう)
淡「……」
末原(……ロン宣言しない。この1索は通る! 現物がなかったから、もうここはこれに与るしかない。
三色は消えるけど、振り込むよりはずっとええ)
末原「……」カチャ
789①①①②③一二二三1 4
末原「……」カチャ 1索
淡「……」ギリ
実況『あーっと。大星選手、清澄高校の当たり牌を見逃したため、これは同巡フリテン縛りで
和了ることができません――! いったいなぜ清澄から和了らなかったのか』
淡(……別にいいよ。次で今ツモった4索切ったら同じことだし)
咲「……」カチャ
咲「……」タン 4索
淡「ぐっ……!」ピク
淡(また私の当たり牌!? このっ……私が和了れないのをいいことにやりたい放題……!)
末原(この4索も通る。よし、いい感じや)
789①①①②③一二二三4 一
末原(よし、いける!)
末原「……」タン 4索
実況『――ああー! これも同巡フリテンで和了れない――! 大星選手、清澄からの出和了りを
二度見逃したせいで、もう二度もチャンスを手放しています』
淡「……」ギリィ
淡(まだだ。この巡で有珠山がもう一度4索を引く。それは山越しだから、有珠山がそれを捨ててくれば和了れる。
有珠山はオりてるだろうけど、この流れなら4索は安全と思って切ってもおかしくない)
淡「……」カチャ
咲「カン!」
淡「!? なっ――!」
淡(私の捨て牌を――!)
末原(ちょ、ちょっとまって清澄……まさか……嶺上開花!?)
淡(違う。和了ってどうするの。これは嶺上開花じゃなく、有珠山が4索を引かないように
ズラしたんだ。……でも、それだと結局4索を引くのは姫松だ。こんどはフリテンにならないから和了れる!)
咲「……」カチャ クルッ
槓ドラ 西
咲「……」カチャ 西
淡(今開けた新ドラの西を躊躇いなく切ってきた。これは……――! あ、しまった!)
有珠山「ぽ、ポン!」カチャ
淡「くっ……!」
淡(西は有珠山の風牌……!)
淡(カンで西をドラにして有珠山に鳴かせたんだ。まずい、この鳴きでまたツモ巡がズレて、
4索をツモるのは咲ちゃんになった。もう4索は出ない……!)
咲「カン!」
淡(ちょ……今度は暗槓!?)
咲「……」カチャ クルッ
末原(槓ドラ……――!!)
末原(槓ドラが私の①筒! これでドラ3……倍満手や!)
末原「……」カチャ
末原(こい! ――――!)カッ
末原「ツモ! イーペーコー純チャンドラ3、8000オール!」ッターン!
淡「なっ――」ガタッ
実況『末原選手、ここで親倍――! これで試合はまだ分からなくなりました――!』
淡「……」
淡(私が咲ちゃんから和了れないことを利用して、二度も姫松の危険牌処理を手助けして、しかもあの槓ドラ……)
淡(有珠山に当たり牌が渡ることの阻止。槓ドラで姫松の手を上げてきっちり8000点マイナス。
そしてツモ巡そのものをズラして姫松に当たり牌をツモらせる。……槓ドラを利用してここまで思惑通りに進めてくるなんて)
なん、、、だど、、、、、、、、
淡(……やってくれるね、咲ちゃん)
咲「……」
淡(次で仕留めてやる……絶対に)ゴッ
南三局
淡「ポン」北
末原(くそ……まずい牌鳴かせてもうたか?)
末原(でもこの配牌……これは……)
淡(咲ちゃんは今プラス13100点。オーラスでマイナス8000点になればプラマイゼロだ)
淡(今の点差のままオーラスになれば咲ちゃんの負けは確実。その考えは間違ってないはず。
さっきは少し余裕出してリーチなんてしちゃったから後の状況変化に対応できなかったけど、
今度は鳴いて速攻で仕留める)
咲「……」カチャ 東
淡「ポン」カチャ
咲「……」カチャ 西
淡「ポン」カチャ
中中中九 北北北 東東東 西西西
淡(星の引力を使えば十分勝算はある。これで和了っても咲ちゃんはプラマイゼロにならない)
末原「……」カチャ
末原(……こい!)
末原(こい!)カチャ
末原(こい!!)カチャ
末原「……」カチャ
末原「……! っ、き――!」ビクッ
一九①⑨19東南西北白発八 中
末原(きた!! 国士13面待ちや!!)ドックンドックン
淡「――ッ!?」ビクッ
淡(この感じ……! まさか姫松、役満張ったの? この土壇場で!?)
末原(いける……! これを和了れば、清澄と並ぶ!)ドックンドックン
淡「……」
淡(この捨て牌……国士か。しかもこの気配……尭深がオーラスで和了るときと同じ。
まさか13面待ち……?)ギリ
淡(ツモなら16000オール。咲ちゃんは逆にマイナス2900点になって、今度は
二局で8000点前後を和了ればプラマイゼロになる。……それくらいなら、十分有り得る)
淡(有珠山も聴牌には遠いから差し込めない。咲ちゃんは当然和了らないだろうし、まずいな……
私が和了るしかない。この手で和了れば6000,12000。ここで和了れば姫松はオーラスでどんな手を和了っても二位にはなれないんだから、
咲ちゃんから2000点和了ったりしないはず。それよりもここで姫松に役満和了られて
二位争いに参加されるほうがずっと面倒だ)
淡(仕方ない、次で引くしかないね)ゴォォォッ!
咲「……」カチャ
咲「――カン」
淡(また暗槓? 大丈夫、暗槓ならツモ巡は狂わない。次巡で当たり牌をツモれるはず。
悪あがきだよ、咲ちゃん)
咲「……」カチャ クルッ
淡(新ドラは……――え)ピク
淡(新ドラ、西……? 私の鳴いた牌だ。ってことは、ドラ3がプラスされて……)
淡「――ッ!!!」
中中中九 北北北 東東東 西西西
淡(九萬がドラだから……混老頭トイトイ中混一色ドラ5、14飜で数え役満――!
まずい、この手じゃ和了れない!!)
淡「……くっ!」カチャ
淡「――――!!??」
淡(なっ……九萬じゃない……!?)
中中中九 一 北北北 東東東 西西西
淡「ぐっ……そ、そんな!」
淡(確かに一巡前までは九萬を引けるはずだったのに……数え役満になったから、牌が私を避けて……!
しかも、手牌に字牌しかない……これじゃあどれを切っても……!)
実況『こ、これは――!!! 大星選手、手牌が全て末原選手の当たり牌になってしまった――!!
こ、これはもう、振り込むしか道はない――! 親の役満直撃は48000点です!!』
淡「…………」プルプル
咲(淡ちゃんの弱点は13飜以上の手を和了れないこと。だからカンを操ってドラを乗せることが
できる私なら、淡ちゃんの手を封じることができる。今までそんな止められ方をしたことは少ないはず)
淡(……この一瞬を狙ってたっていうの……? 私に役満を振り込ませることを……!)
咲「……」
淡「く……そぉ……!!」タン!
末原「!! ろ、ロン!! 国士無双、48000点です!!」
淡「……」ギリッ!
清澄:130700
姫松:130700
有珠山:5800
実況『な、なんということでしょう!! まさかここで白糸台が三位の姫松に役満を放銃!!
これにより有珠山以外の三校の点差はほぼ横並び状態です! これは姫松の二位進出……
いえ、まさかの白糸台の三位転落すらも十分考えられる点差となりました――!』
淡(こ、この私がこんな雑魚相手に役満を振り込むなんて……テルの見てる前でよくもこんな……!)ギリィ!
有珠山「……」カチャ
咲「ロン。1600」
淡(あっ……! しまった、動揺してる間に和了られた)
実況『清澄高校が有珠山から安手を和了り、姫松高校の親が流れます。ついに準決勝大将戦の
オーラスに突入です!!』
清澄:132300
姫松:130700
有珠山:4200
末原(オーラスや。清澄との差はたった1600点や。ここで2飜以上和了れば二位抜けや!)
淡(今の和了りで咲ちゃんはプラス14700。この点差なら誰かが和了った時点で即終局。
正真正銘、最後の一局だ)
淡(ここから咲ちゃんがプラマイゼロにするには9000点以上の振り込みが必要……
でも振り込んだら三位に転落。だから私が8000オールを和了って、その前に咲ちゃんが
リーチしてリー棒を1000点だせば、600点差で姫松に勝ちつつプラマイゼロ。
……無理だ。できるわけない。もうプラマイゼロは絶対に不可能だ)
淡(プラマイゼロは諦めたか。役満を振り込ませて一矢報いたってことかな。確かに、プラマイゼロに
されるのと同じくらいの屈辱だよ、咲ちゃん)
淡(こうなった以上、もうプラマイゼロの心配はない。ここで私たちの戦いの勝敗を
決める要素があるとすれば、それは私か咲ちゃんがどこかに振り込んで三位に転落っていう赤っ恥を晒すこと以外にない)
淡(最後の最後でこんな殴り合いみたいな麻雀にもつれ込むなんてね。でも、ここを押さえれば私の勝ちだ)
淡「ポン!」カチャ
999⑤⑤⑧⑧北北北 111
淡(トイトイ。ツモれば三暗刻だ。4800だからプラマイゼロにもならないし、即終局。
これでとどめを刺す……!)ゴッ!
末原「……」カチャ
二二二234赤56②②③③④ ④
末原(来た! タンヤオイーペーコー平和ドラ1で三面待ち! これを和了れば文句なしで1位通過や!)
淡(……姫松も張った。まずい。オーラスは私が親……高い手をツモられれば親被りで
三位転落も有り得る。そんなことになるくらいなら自殺したほうがマシだ)
淡(⑤筒も⑧筒もまだ二枚ずつある。絶対に先に和了ってみせる!)
有珠山「……」カチャ ⑨筒
咲「チー」カチャ ⑦⑧⑨筒
淡「……っ」
淡(私の⑧筒……くそ、でもまだ一枚ある)
咲「……」カチャ
咲「……」タン 赤⑤筒
淡「――あ」ピク
淡(⑤筒――私の当たり牌だ!)
実況『――ああーっと。ここで宮永選手、赤⑤筒を捨てた――! これは大星選手の当たり牌!
これで勝負は決着だ――!』
淡「ろ――」
淡「――」ピタ
淡「……」
淡(赤⑤筒……ドラ……これを和了ったら、私の手はトイトイドラ1で9600点になる)
淡(咲ちゃんは今プラス14700。私に9600点を振り込んだら、プラス5100点)
淡(つまり……プラマイ、ゼロ――!?)ゾクッ
咲「……」ジー
淡「……っ」ゾ
淡(これは事故じゃない。差し込んだんだ。これが私の当たり牌だって分かった上で切ってるんだ)
淡(この子、正気!? ここで私が和了ったら、清澄は三位に転落。決勝に進めないんだよ!?
咲ちゃん、そうまでしてプラマイゼロに拘るっていうの!?)
咲「……」ジー
淡「くっ……」
淡(咲ちゃんは私を試してるんだ。私が咲ちゃんとの勝負に決着をつけるのか、
それとも手近な勝利に飛びつくのか。私の器を測ってる……)
照『――打ってみればいい。淡の実力なら、それでどっちが勝者か判断がつく――
』
淡(――ッ! ……そうだ、ここでロン宣言するっていうことはつまり、姫松とのめくりあいに
勝つ自信がないって認めるようなものだ。そんな屈辱……受けられるわけない!)
淡「……」
実況『え……? えっと……? 大星選手、ロン宣言を……え、しない……? な、なぜ?』
末原「……」カチャ
実況『あ、ああーっと! 末原選手が牌をツモりました。もう大星選手はロン宣言できません!
こ、これはどういうことでしょうか!? 今ロンすれば勝利は確定していたというのに、なぜ
見逃したのか――!?』
咲「……」
咲(淡ちゃん、すごいプライドだ。確かに、この人に勝たないとお姉ちゃんに挑む資格なんてない)
淡(まだだ……まだ二枚ある。それを引ければ)
咲「……」タン 赤⑤筒
淡「――!!」ビクッ
淡「ぐっ……!」
淡(に、二巡連続……!? こ、こいつ……!)ギリギリ
実況『お、大星選手、なんと二巡連続で当たり牌を見逃した――! も、もう私には訳がわかりません!』
淡「……」プルプル
淡(……こ、ここまでコケにされたのは生まれて初めてだ……血管ブチ切れそう
……)プルプル
淡(これであとは⑧筒一枚……姫松は多分三面待ち。当たり牌の数では私が圧倒的に不利だ)
淡(それでも先に引けるかどうか。それが雀力の差なんだ。私なら引ける、引いてやる!)
末原「……」カチャ
末原(こい……!)ドックンドックン
淡(くそ、来るな……!)ドックンドックン
末原「……く」カチャ
淡「……」ホッ
淡「……」カチャ
淡(こい……!)ドックンドックン
末原(来るな……!)ドックンドックン
淡(くそ、不要牌……)カチャ
咲「……」カチャ
末原「……」カチャ
淡「……」カチャ
淡(っ……くそ!)タンッ
白糸台控室
照「……淡。押されてる」
菫「あの大星が……」
誠子「大星さん、何度も和了りを見逃してましたよね。これで逆転負けして敗退なんてことになったら……」
尭深「どうするんですか?」
菫「――どうもしないさ。言っただろ、個人のミスはチームのミスだ。それが団体戦だ。
まあ、部長としてしっかりと叱っておくがな」
尭深「……わかりました」
菫「それに、私は大星が勝つって信じてる。あいつはきっと負けない」
誠子「……弘世先輩、なんか嬉しそうですね」
菫「え?」
誠子「いえ、なんかそんな気がして」
菫「……嬉しい……」
菫「そうか、そうなのかもしれないな」
照「どうしたの?」
菫「私は、大星が追い詰められて嬉しいのかもしれない」
誠子「日頃の恨みつらみがあるからですか?」
菫「おいおい、そういう話はやめろ。そうじゃない。
見てみろ、大星の顔を。あんなに必死になってる大星を見たことあるか?」
照「私と打ってるときでも、あんなに必死になってるところは見たことない」
菫「でも、私たちは多分、いつもあんな感じで麻雀を打ってるんだと思う。聴牌になったときは
当たり牌が出ないか目をギラギラさせて、他家がツモるときは、和了るな和了るな、って念じながらさ」
菫「私はそれこそが麻雀の醍醐味だって思ってる。麻雀を打つやつは皆そのときのドキドキとか、
和了れたときの喜びとかが大好きで、だから麻雀を打つんだと思う。
でも大星は今までそんな感覚を味わえたことがないんだ。唯一照だけがそれに近いものを与えてくれるから、
あいつは照と打ちたがるんだと思う」
尭深・誠子「……」
菫「でも今、あいつはその感覚に肉薄してる。姫松がツモれば逆転負け。自分がツモれば完全勝利。
その両極端な境地で、自分の運に全てを託す感覚。……もしかしたら大星は今、生まれて
初めて麻雀を打っているのかもしれない」
照「……それが嬉しいの?」
菫「ああ、嬉しい。あいつもやっぱり私たちと同じ、麻雀を楽しめる女子高生なんだなって思うと、
なんだろうな、なんて言えばいいのか分からないが……多分、私はそれが嬉しいんだと思う」
照「……そう」
尭深「――――あ」ピク
誠子「あ!」
菫・照「――ッ!」
菫「こ、これは……!」ガタッ
菫「清澄!!」
淡「……」カチャ
淡(くそ、また引けない……どうして)
末原「……」カチャ
末原(く、なんで引かれへんのや)
咲「……」
淡(テル……)
どこまでも暗く、どこまでも孤独な宙の中で、私が初めて見つけた光。温かな輝き。
彼女に近づきたくて私は麻雀を打ってきた。テルと一緒に歩けることを誇りに思っていた。
私に負けるようじゃテルに挑む資格はないと咲ちゃんに言ったけど、それは私にも言えることだ。
こんなところで負けるようじゃ、私にテルの隣に並ぶ資格なんてない。
淡(いやだ……)ドックン ドックン
テルから遠ざかりたくない。もう二度と孤独になりたくない。もっとあの太陽の光に照らされていたい。
負けたくない……負けたくない!
淡(私は――)ドックン ドックン
こんなに負けたくないと思ったのは生まれて初めてだった。
こんなに心臓が脈動するのは初めてだった。こんなに手の平に汗が滲むのは初めてだった。
でも、不思議とこの感覚は嫌いじゃなかった。
緊張に霞む視界は眩しくて。汗ばむ身体は暖かくて。
もしかしたら……。
私の胸を震わすこの鼓動こそが。この火照る身体の熱こそが。
私がずっと欲しかった、星すらも照らす陽の光だったのかもしれない――。
淡(私は――咲ちゃんに勝ちたい!)
タン
――ツモ。
実況『――き』
実況『決まったァァァ!! ついに準決勝大将戦決着――! 勝者は――!!』
淡「……はあ……はあ……」
何も聞こえなかった。
まるで鼓膜が切れたかのように静かだった。姫松と有珠山が立ちあがり何かを言っていた気がするが、何も聞こえてこなかった。
ただ、心臓の音だけが聞こえた。ドックンドックンと脈打つその鼓動の音だけが、ずっと響いていた。
淡「……はあ……はあ……」
ぴちゃん、と頬を滑った汗が卓に落ちて、私の意識はようやく目覚めた。
開かれた私の手牌。掴みとった最後の⑧筒。トイトイ三暗刻の4000オール。
私の勝ちだった。
白糸台:144800
清澄:128300
姫松:126700
有珠山:200
淡「……私の……勝ちだね、咲ちゃん」
咲「うん」
卓には私と咲ちゃんだけが残っていた。決勝進出を果たした二人だけが。
淡「ねえ、どうして赤⑤筒切ったの? 私が和了ったらどうするつもりだったの?」
咲「淡ちゃんは和了らないと思ったから」
淡「……ふふ」
淡「まあ、あれだね。私をここまで追い詰めたことは認めてあげる。でも、やっぱりまだ
テルには及ばないよ」
咲「そう、なのかな……」
淡「でも、確かに高校生の内では段違いの強さだと思う。ま、私ほどじゃないけど」
咲「あはは……」
咲「じゃあ私帰るね」
淡「うん、じゃあ、また決勝でね」
咲「うん」ガタ
ツカツカツカ
淡「……」
淡「ねえ、咲ちゃん」
咲「ん?」
淡「――どうして、オーラスで和了りを見逃したの?」
咲「――――」
咲「……気づいてたの?」
淡「まあね。私が⑧筒をツモる前、咲ちゃん聴牌になってたよね。カンして嶺上開花すれば
和了れてたんじゃないの?」
咲「……うん」
淡「和了ればよかったのに。私が赤⑤筒和了らなかった時点でプラマイゼロは諦めたんでしょ?」
咲「うん。まあ、和了られても困ったんだけどね。もうあの時点で私はドン詰まりになってたんだ」
淡「ならせめて最後に気持ち良く和了って終わればいいのに」
咲「……」
咲「私の手は5飜で、2000,4000の手だった。それなら和了ってたと思う」
咲「でもそのためにはカンをしないといけなかったから」
淡「……槓ドラか」
咲「うん。あそこでカンしてたら、ドラが乗ってハネ満手になってたと思う。そしたら3000,6000……
淡ちゃんが親被りで三位になってた」
淡「……決勝でテルに会いたいんだったっけ?」
咲「うん。だから白糸台に敗退してほしくなくて」
淡「放銃さえしなければ誰が和了っても二位抜け確実だったもんね。なるほどね……」
淡(勝たせてもらった……って形になるのかな、これ)
淡「あーあ。なんかすっきり出来ないなぁもー。手加減されて勝ったみたいじゃん」
咲「ううん、私のプラマイゼロに付き合わなかったら私だって普通に負けてたかも」
淡「ほんとだよ! 私が何回和了りを見逃してあげたと思ってるの! ほんとストレスマッハだったんだから!」
淡「だいたい、ほんとにそのカンで嶺上開花できてたかどうかも分かんないじゃん」
咲「むっ、それは出来てたもん」
淡「いーや出来てなかったね。仮にできてても、それでドラが一つ乗ったかどうかもわかんないし」
咲「乗ってたもん」
淡「乗らなかったもんねー。ベー」
咲「乗ってたの! ああもう、山崩さなきゃよかった!」
淡「ふふー。結局私の完全勝利ってことだよね。やっぱ私サイキョーだわー」
咲「ふん、私の誘導で役満振り込んだくせに」
淡「は、はあ? あんなのわざとだし。ああすれば咲ちゃんが大きくプラスになるから、
プラマイゼロさせにくくなるなーって思って、わざと振り込んだんだし」
咲「うっそだー。『くっそー!』とか言いながら切ってたじゃん」ププ
淡「言ってないっ!」
咲「言ってたよ。涙目で」
淡「涙目だったの咲ちゃんじゃん!」
咲「私はずっと平静だったよ」
淡「どこが。『人和振り込んじゃった、あわあわ~』ってしてたじゃん」
咲「し、してないよっ」
淡「言っとくけど、決勝ではもうプラマイゼロ勝負なんてしないからね。っていうか、咲ちゃんも
出来ないでしょ。二位じゃ意味ないんだし」
咲「うん、そうだね」
淡「普通に点の取り合いしたら私が勝つに決まってるんだから。決勝ではこんなに競るとは思わないでよね。ベー」
咲「大丈夫、決勝では私も点を取りにいくから。逆に淡ちゃんトばないように気をつけてね」ニッコリ
淡「ふん、決勝戦でほえ面かかせてあげるから」
咲「こっちこそ」
淡・咲「ふんっ!」
淡・咲「……」
淡・咲「――ぷ。あはははっ」
淡「……まあ、あれだね」
咲「ん?」
淡「私の方が強いのは確かなんだけど、まあ……そこそこ強いってのは認めてあげる」
淡「だから特別に! ほんとにとっくべつに! 今日から私のライバルを名乗ることを
許してあげる。感謝してよね」
咲「えー? 別にいらないや」
淡「うっさい! ありがたく受け取れバーカ! 私のライバルなんて今のとこテルくらいしかいないんだからね!」
咲「……お姉ちゃん」
淡「……」
淡「昔テルと何があったのか知らないけどさ、あの人は理由もなく人を嫌ったりする人じゃないと
思うよ。妹なら尚更」
咲「……うん。全部、私のせいなんだ」
咲「だから私……お姉ちゃんに会って、伝えなきゃ」
淡「……ふふ」
淡「伝わるといいね。咲ちゃんの伝えたいこと、私にもなんとなく分かるよ。私も――さっき
同じものを感じてたと思うから」
咲「……うん」
咲「ありがとう、淡ちゃん」ニコ
ガチャ、バタン
淡「ただいまー。あー疲れた」
菫「御苦労さま、大星。危ないところだったな」
淡「別に危なくないよ。余裕余裕。決勝では普通に打つから勝てるよ」
菫「油断するなよ大星。お前は気づいてないだろうが、オーラスで清澄は」
淡「嶺上開花を見逃したんでしょ? そんなの分かってるってば」
菫「え、あ、ああ、気づいてたのか。なら――」
淡「分かってる。次はちゃんと打つって。――それよりテル。どう? 咲ちゃん、
プラマイゼロにできなかったよ」
照「ああ、そうだね」
淡「これって私の勝ちってことでいいんだよね?」
照「……」
照「でも淡、清澄の大将に完全に勝ったって言える?」
淡「む……か、勝ったもん。一位通過したし、プラマイゼロも防いだし、合計収支でも勝ったじゃん」
照「でも最後に清澄が見逃さなかったら淡は負けてた」
淡「嶺上開花できてたかどうかもわからないし、ドラが乗ったかも分からないじゃん」
照「もしドラが乗らなくても淡は抜かれてたよ」
淡「……」
照「……」
菫「――引き分けでいいだろ、別に」
淡「私引き分けって大嫌いなの。白黒はっきりつけたいから」
照「……じゃあどっちも勝ちってことにしない?」
淡「どっちも勝ち?」
照「勝ったら相手のいうことを一つ聞くって約束だったけど、お互いに一つずつ相手に命令できるの」
淡「うーん……まあそれでいっか」
菫「私からも一つ頼みごとがあるんだが、もう二度と麻雀で賭け事なんてしないでもらえるか」
淡・照「私に勝ったら聞いてあげる」
菫「……」
淡「じゃあ何にしよっかなー。やっぱ私の家に泊まり込んで麻雀打ちまくるとかかなー」
照「……ねえ」
淡「ん?」
照「命令できる権利、いま使いたいんだけど、いい?」
淡「え、早速? まあいいけど……なに?」
照「……」
菫「……? どうした、照」
照「……次の決勝戦――」
照「私に、大将を代わって」
つづく!
ごめんなさい、一旦ここで終わります。前後編で考えてて、ここで前編終わりです。
淡編が終了したので、次の照編で姉妹の関係や三人の今後は全部終わらせます。
後編もやろうかと思ったんですが、正直、まさか15時間以上かかるなんて夢にも
思ってなかったので、次は日にちを跨いでもいいように
週末くらいに立てることにします。このスレで淡関係が全部終わると思って辛抱強く読んでくださった方々、
本当に申し訳ないです
なんかそろそろ本編で淡が出てきて能力解禁されそうなんで、それまでになんとか投下したかったんです
こんなに夜遅くまで沢山の支援や感想、本当に嬉しかったです。ありがとうございました
照編ではもっと麻雀パート短くします。ほんとにごめんなさい。つい書きすぎちゃいました
乙乙乙
どうしてもこの順番にしないと終わらなかったので、なんとか許して下さい
ssを投下するのは二回目なのですが、皆さんの何気ない感想や支援が本当に嬉しかったです
とちゅう三回さるさんくらったので、多分皆さんの支援なしじゃここまで書けませんでした
本当にありがとうございました!
野暮だけど咲はカンドラ乗らないのとインターハイは順番変えられないんだぜwww
みたいですね。プロット練ってる段階で知って焦りましたwwww
なので最後は咲は和了らず、最後のドラは乗ったの?乗らなかったの?と濁らせる
感じで終わらせました
オーダー変更は、このパラレルワールドでは認められている、ということでお願いします
どうしても照と決勝で戦ってほしくて
さて、寝ます。こんな遅くまで付き合ってくださってありがとうございました
また今週か来週の金曜日くらいに投下できたら、そのときはよろしくお願いします
続き楽しみにしてる
あわあわフルボッコになるかと思ったらなんかいいかんじに落ち着いたな
Entry ⇒ 2012.09.24 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (5) | Trackbacks (0)
P「春香。そんな体じゃムリだって」春香「ケホケホ…、大丈夫です」
春香「だめですよ、せっかくのレギュラーなんですから……」
P「なにいってんだよ、風邪が酷くなったらどうするんだ?」
P「それに、共演者の人にも迷惑がかかるだろ?」
春香「そうですけど……、ケホケホ」
P「ほら、咳もでてるし」
春香「だ、大丈夫ですよ」
P「春香……」
P「わかった、お前がそういうなら俺は力尽くでもお前を止めてみせる」
P「 卍 解 」
春香「うっ…、ぐっ……!」
P「俺の卍解は解放と共に空間を作り出す」
P「そして、その空間に入り込んだものは、敵味方問わず」
春香「う、…あ、…ああ…!」
P「強烈な嘔吐感に襲われることになる」
春香「うげえええええええっ」
ビチャ、ビチャビチャビチャッ!!
春香「こ、これは……、私のゲロが人の形に!?」
P「俺の卍解は、人の吐瀉物を自在に操ることができる!」
春香「なん……だと」
P「さあ、ゲロ人間に抱きつかれるのがいやなら、おとなしく今日は休め」
春香「……わかりました」
春香「あ、ありがとうございます」
P「まあ、今日はゆっくりやすみなさい」
春香「はい……、ごめんなさい。意地はっちゃって」
P「気にするな、俺もゲロ吐かせてわるかったな」
春香「…いえ、かえってスッキリしちゃいました」
P「そっか、それはよかった」
P「もっぺん吐いてく?」
春香「いえ、いいです」
春香「はい」
P「安静にしてろよ」
春香「わかりました」
ギィィ
バタン
P「久々に卍解を使ったせいか、ちょっと疲れたな」
P「社長には卍解するなって言われてるし……」
小鳥「プロデューサーさん、卍解使ってませんよね?」
P「ま、まさか……」
小鳥「あなたの卍解は、アイドル達に深い精神的ダメージを与えるかもしれませんからね」
P「そ、そうですよ。アイドルに吐かせるなんて、できるわけないでしょう?」
小鳥「はい、プロデューサーさんはそんな人じゃないですよね」
P「は、はい」
P「なにがですか?」
小鳥「だって、卍解に至れる人って芸能界でもそういませんから」
P「あー、確かに」
P「まあ、俺は修行を重ねたので」
小鳥「もしかして、事務所の皆も卍解できたり」
P「まさか」
小鳥「わかりませんよ?もしかしたら隠しているだけかもしれませんし」
P「か、隠す必要があります?」
小鳥「目立ちたくない、とか」
P「目立ってなんぼですよ、アイドルは」
小鳥「まさか、できませんよ」
P「そうなんですか……」
小鳥「できたとしても、卍解しなくてもいい日々が続けばいいとおもいますし」
P「……そうですね」
小鳥「あ、お茶。飲みます?」
P「お願いします」
小鳥「はい。プロデューサーさんの「各自でやるように」という指示をちゃんと伝えておきましたよ」
P「ありがとうございます」
P「春香、よくなるといいですね」
小鳥「そうですねえ、元気なのが一番ですし」
P「せっかく、レギュラーの仕事ももらえましたし」
小鳥「代役はどうするんですか?」
P「伊織にたのんでおきましたよ」
小鳥「そうですか、なら安心ですね」
小鳥「そうですねえ……」
小鳥「あ、お菓子ありますよ?」
P「あ、食べます食べます」
小鳥「これ、結構高いんですよ」
P「へー、そうなんですか」
P「あ、……美味しい。値がはるだけはありますね」
小鳥「そうですねえ~……」
小鳥「……どうかしたんですか?」
P「いま、とてつもない霊圧を感じたような」
小鳥「気のせいじゃないんですか?」
P「だといいんですけど」
小鳥「きっと、みんなが帰ってきたんですよ」
P「でも、まだ早くないですか?」
小鳥「あら、本当ですね」
P「……どういうことだ」
P「霊圧がどんどん近づいてくる」
小鳥「私も感じます……」
P「この感じ、どこかで……」
P「これは、この霊圧は……」
ギィィ
冬馬「よお」
P「やっぱりお前だったのか、冬馬」
冬馬「きまってんだろ?お前達に宣戦布告しにきたのさ」
P「宣戦布告だと?……一体なにを……」
ドンッ!!
P「なん……だと」
小鳥「キャア!プロデューサーさん!?」
冬馬「とりあえず、まずは1人だな」
P「お前ら、何が目的だ……!」
冬馬「さあな、俺も上に従ってるだけしよ」
冬馬「まあ、安心しろよ。今日はこれで引き上げてやるからよ」
P「待て!……アイドルの皆には手を出させないぞ!」
冬馬「へえ、言うじゃねぇか」
冬馬「でもよ、そのボロボロの身体でどうするっていうんだ?」
P「へっ、まだ俺には卍解が残っている」
冬馬「そうか、なら教えといてやるよ」
冬馬「おれはまだ、刀剣解放をしていないぜ」
P「嘘……だろ?」
P「……い、いったか」
小鳥「だ、大丈夫ですか!?」
P「はい、それよりも……皆を集めてください」
P「仕事も、オールキャンセルで」
P「これは、765プロ始まって以来の事態ですよ」
小鳥「わ、わかりました!」
伊織「相当まずい状況みたいね」
美希「ミキ、不安なの……」
P「ああ、お前の気持ちわかる」
P「だけど、俺たちは戦わなくてはいけない」
雪歩「そんな……」
P「いいか、多勢に無勢になってもかまわない」
P「どんな手をつかってでも、961プロの連中を倒すんだ!」
伊織「ちょっと、社長もいないのにそんな勝手なことしてもいいの!?」
P「いいんだよ、別に」
伊織「別にってなによ、アンタちゃんと考えてるの!?」
千早「ちょっと、プロデューサーに口が過ぎるんじゃ……」
伊織「アンタは私に口が過ぎるわよ、千早」
千早「……!」
P「社長が不在のいま、戦力的にもこちらが完全に不利だ」
真「どういう事ですか?」
P「おそらくだが、ヤツらは相当の力を持つ」
P「冬馬にあったが、相当の霊圧だった。おそらく美輪さんに匹敵するだろう」
伊織「なんですって!?」
P「それともう一個。やつらは、おそらく卍解を超えるであろう力をもっているかもしれない」
千早「そんな……」
P「この戦いは相当に辛くなるだろう」
P「死ぬなよ?]
一同「はい!」
P「はい」
冬馬『よう、さっき振りだな』
P「……なんのようだ」
冬馬『今頃、作戦会議してんじゃねぇかなっておもってな』
P「…お察しの通りだけど」
冬馬『誰か1人、忘れてねぇか?』
P「…………!」
冬馬『具合悪いんだろ?……ちゃんと気遣ってやれよな』
P「わざわざそれをいいに電話してきたのか」
冬馬『ああ』
P「……」
冬馬『それじゃあ、また後でな』
ピッ ツーツーツーツー
千早「プロデューサー?」
P「春香がヤツらに狙われてるかもしれない……!」
真「えぇっ!?」
P「冬馬のやつ、春香が風邪でダウンしてることまでしってた」
貴音「……すでに、彼が近くにいるとみて間違いないでしょうね」
P「ああ……、助けにいかないと」
千早「プロデューサー、私がいきます」
P「任せていいのか?」
千早「はい」
P「……じゃあ、美希。お前もついていってやってくれ」
美希「はいなの!」
真「プロデューサー、浮かない顔ですね」
P「おそらく、ジュピターの残りの2人も、冬馬と同等の霊圧を持つはず」
P「ダウンしてる春香はもちろん、千早と美希でアイツらと戦うことになったら……」
やよい「だ、大丈夫ですよ、千早さんたちなら……」
P「だといいんだが」
伊織「ねえ、私たちも何かをするべきじゃないかしら?」
P「……いや、今は下手にうごくべきじゃない」
P「春香の無事を確認したら、あちらの出方を待つ」
春香「うん、ありがとう。ケホケホ」
美希「寝てなきゃダメだよ?」
春香「うん……、でも。事務所が大変だっていうのに」
美希「仕方ないの、春香はいま具合悪いんだから。ね、千早さん」
千早「そうね……」
千早(でも、春香が無事みたいでよかったわ)
美希「千早さん、どうしたの?」
千早「いえ」
千早(いま、とてつもない霊圧を感じたような)
春香「ケホ、ケホ……、ゲホゲホッ!」
美希「は、春香っ!?」
千早「大丈夫!?」
春香「だ、だいじょう……、ぶ」
千早「熱、測ったほうがいいんじゃないかしら」
千早「春香、はい、体温計」
春香「ありがとう、千早ちゃん……」
美希「千早さん、春香大丈夫かな?」
千早「ちょっと、心配ね」
千早「あ、私。プロデューサーに電話してくるわね?春香は大丈夫だったって」
美希「はーい」
美希「大丈夫なの、ハニーはそんなの気にしないから」
春香「美希……」
春香「ねえ、美希。ちょっと話があるんだけど、いいかな?」
美希「?」
P『そうか、でもヤツらの襲撃にはあってないようでよかった』
千早「はい、私もひとまずは安心───」
ドンッ!!
千早「!?」
P『千早、どうした?今の音は……』
千早「どうやら、前言撤回しなくてはいけないみたいですね」
ピッ ツーツーツ
千早(今は大変な時期。私達でなんとかしないと……)
千早「…………!」
千早「嘘……でしょう?」
美希「 」
春香「あれ、千早ちゃんもどってきたんだ?」
千早「春香、あなたもしかして……」
春香「……そう、私は961側」
千早「どうして、何故私達を裏切ったの!?」
春香「どうしてなんだろう…、教えてあげてもいいけど」
春香「どうで千早ちゃんはここで死ぬから、教える意味はないよね?」
千早「…………」
千早「膨らめ〝血覇矢〟」
千早「……春香、あなたがあちら側というのなら、容赦はしないわ」
春香「……それじゃ、いくよ。千早ちゃん!」
千早「ええ、いくわよ春香!」
春香(すこし、様子をみたほうがいいかな?)
千早「──なんて、貴女はいま思っているのでしょう、春香?」
春香「!?」
千早「……そして、それは大きな間違いよ春香」
千早「わたしのこの、血覇矢は鬼道系」
ガキィンッ
春香「こ、これは……!」
ボコッ、ボコボコボコッ!
千早「この血覇矢の鏃に傷つけられたものは、その傷口から霊子を注入され……」
ボコボコボコボコッ
千早「その部位が何倍にも膨れ上がる!」
千早「そのまま、膨らみ続けて最後には破裂する」
千早「それが貴女の最期よ、春香」
ボコッ、ボコボコボコォ!
美希「……ん、んぅ……」
千早「美希、目が覚めたのね!」
美希「……!千早さん、後ろ!」
ドンッ!!
千早「う、……か、はァっ!?」
春香「こんなの、……流れてきた霊子を傷口から出せばいいだけだよ?」
千早(そんな、春香にそんなことができたなんて)
千早(解放した様子はない、それどころか斬魄刀も持ってない……)
千早(そういえば、春香が斬魄刀をもっている姿を見たことないわ……!)
千早「……まさか、春香、貴女……」
春香「流石千早ちゃん。気づいたんだ?」
美希「え、え?何、どういう事なの?」
千早「おそらく春香は………」
千早「常に、卍解状態なの」
美希「嘘……でしょ?」
春香「……そこまで分かるだなんて、流石千早ちゃん!」
美希「千早さん……」
千早「美希、貴女は逃げて。この事をプロデューサーに伝えるの」
美希「で、でも!」
千早「いいから、早く!」
美希「……わかったの、千早さん。負けちゃイヤなの!」
千早「…………ええ」
千早「……ええ、むしろその方が好都合なの」
春香「……どういうこと?」
千早「あまり、人には見せたくないの」
春香「ダメだよ、千早ちゃん?そうやって、思わせぶりな大技があるように見せかけて」
春香「私を動揺させようったって、そうはいかない──」
千早「 卍 」
千早「 解 」
千早「ええ、何も変わらない。それが私の卍解」
春香「……どういうこと?」
春香「ただの見掛け倒しなら、容赦はしない!」
ドンッ!!
春香「………なっ、聞いていない?」
千早「だからいったでしょ?変わらないのが私の卍解だって」
春香「……?」
千早「つまり、時間の停滞。私には、卍解している間、決して時が流れない」
千早「傷も負わないし、成長もしないわ」
春香「そ、そんな卍解……!どうやって倒せば……!」
千早「逃がさないわよ、春香!」
春香「……またね、千早ちゃん」
千早「待ちなさい、春──」
千早「くっ……、瞬歩で逃げられてしまったわ」
伊織「……それにしても、春香が卍解を使えた、いいえ。使っていたなんて」
P「ああ、卍解の使い手が敵に回った以上。状況がより悪くなったな」
ズンッ……
P「この霊圧は……!」
真「外から、ですよね」
P「…………」
ガララッ
P「……冬馬、春香!」
真「空に、浮かんでいる……」
P「春香、元気そうじゃないか」
春香「えへへ、私の仮病どうでしたか?」
P「さあ?アカデミー賞はもらえるんじゃないのか?」
千早「貴方達、何が目的なの!?」
冬馬「さあな、俺たちは上の指示にしたがってるだけだよ」
冬馬「そうだよな?──高槻」
伊織「え……?やよい……?」
やよい「……」 ニヤッ
P「まさか、やよいまでそっち側だっていうのかよっ!?」
やよい「うっうー♪そうですよ、プロデューサー……」
冬馬「ああ、先にかえって黒井のおっさんに色々説明してるよ」
P「黒井社長がお前達のボスなのか?」
春香「プロデューサーさん、私とやよいがこちら側なのに」
春香「765プロに、私達のボスがいる……なんて疑わないんですね?」
貴音「オイ、どういうことですか?」
小鳥「……ふふっ」
P「小鳥さん……まさか、貴女が!?」
小鳥「高みを求めて」
P「地に堕ちましたか、小鳥さん」
小鳥「傲りが過ぎますよ、プロデューサーさん」
小鳥「最初から誰も天に立ってなんかいません」
小鳥「あなたも、私も、神様すらも」
小鳥「ですが、その耐え難い天の座の空白も終わります」
小鳥「これからは……」
小鳥「私が天に立つ」
千早(音無さんが、インカムを外した……!?)
小鳥「ごきげんよう」
P「ま、待ってください!小鳥さん、小鳥さん!」
伊織「まさか、やよいが…………」
真「ショックだよね、春香たちが裏切るだなんて……」
P「…………どうする、皆」
千早「どうするって……いわれても」
美希「決まってるの、負けてなんか、いられないよ!」
響「そうだよ、自分も舐められっぱなしはイヤだぞ!」
P「……そうか」
P「よし、ならば……!」
P「 9 6 1 プ ロ を ぶ っ 潰 す ! 」
P「なんだこれは、まるで迷宮じゃないか」
P「……手分けしていこう」
千早「……春香」
美希「千早さん……」
真「絶対、勝ちましょうねプロデューサー!」
P「おう!」
誰の卍解が命を刈り取る形をしてるの?
貴音「……まさか、こんな形で戦うことになるとは思ってもいませんでした」
貴音「やよい」
やよい「うっうー!私もですよ、貴音さん」
貴音「では……いざ!」
貴音「 卍 解 !」
やよい「うっうー♪じゃあ、みせてあげますね」
やよい「私の刀剣解放(レスレクシオン)を!」
やよい「───蓄えろ」
P「貴音の霊圧が……消えた?」
P「いや、それはおいておいて……!」
P「なんだ、この巨大な4つの霊圧は……!?」
P「……この建物に向かってきている、だと……!?」
やよい「貴音さんが弱いんじゃないくて、私が強いんです!」
貴音「 」
やよい「……さて、みんなのお手伝いにいこうかな?」
ドドドドドドドドド
やよい「!?」
やよい(……こ、この霊圧!)
あずさ「あらあら……、間に合わなかったかしら~?」
あずさ「貴音ちゃん、大丈夫?」
貴音「 」
あずさ「気絶しているみたいだけど、よかった。無事みたい」
やよい「うっうー!あずささんもすぐに気絶させてあげますよぅ!」
やよい「うぅ…!」
やよい(近づくだけで、霊圧に押しつぶされちゃう……)
やよい「で、でも!ききませんよ!」
ベチャァッ
やよい「私の刀剣解放、〝モヤシ〟は貧しくなればなるほど強くなる!」
ビリッ、ビリビリ
やよい「べろちょろを捨て、服も限度まで破った私は……!」
やよい「最硬の防御力と、最強の……」
ザンッ
やよい「ちから゛ッ」
ズズズズ……ズルッ ブシャァァアアア
やよい「そん……な…馬鹿……な」
あずさ「やよいちゃん?おイタしちゃだめよ?」
真「……これが、伊織の卍解……!?」
伊織「どうやら、やよいは負けたみたいね……、だったらこれを封じておく必要もないわ」
伊織「私の卍解は、相手のあらゆる力を封じるわ」
伊織「ごめんなさいね、真。あなたの斬魄刀も反応しないでしょう?」
真「ううん、ボクは大丈夫。それよりも……」
伊織「ええ、今はこの男を倒すことを考えないと」
北斗(ひとたび卍解されてしまえば、こちらが帰刃できなくなってしまうから……!)
北斗「これは、万事休すというヤツかな」
伊織「あら、随分と潔いのね?」
北斗「もともと俺は、女の子に手を上げるつもりはなかったからね」
伊織「そう、私には関係ないわ。あんたたちや小鳥がやよいを誑かしたから……!」
北斗「……冬馬、翔太」
北斗「チャオ☆」
ドンッ!!
千早「春香……」
美希「千早さん……」
千早「ごめんなさい、美希。渡しにやらせてほしいの」
美希「は……はいなの」
千早「いくわよ、春香」
千早「──卍解」
千早「あなたに勝ち目はないわ!」
春香「……それでも、千早ちゃんだって、今以上に強くはならない!」
千早「ええ、そうね」
千早「だけれど……、私の卍解はそれだけじゃないわ」
春香「!?」
千早「私の卍解は、ただ何も変わらない」
千早「そう、私は分からない。意味が分かるかしら?」
春香「わからないな、教えて千早ちゃん」
千早「……つまり、停滞した私の時間を」
千早「相手に流れさせることができるの」
春香「……なにぃっ!?」
春香「つまり、千早ちゃんに攻撃したら、私がダメージを受けるってこと?」
千早「ええ、そうよ」
春香「なるほど、完全に攻撃を封じたわけだね」
千早「だから、春香。今すぐ降参を──」
春香「…………」
千早「なに、春香」
春香「私の卍解の能力──おしえてなかったよね?」
千早「ええ」
春香「おしえてあげるよ、私の卍解は……」
春香「時間を逆回しにする」
千早「!?」
美希「なん……だと」
春香「右のリボンで自分の、左のリボンで相手の時間を逆回しにするんだよ?」
千早「……!」
春香「時間を流れなくする千早ちゃんの卍解」
春香「時間を逆に流れさせる私の卍解」
春香「どっちが勝つかな?」
千早「──やってみなさい、その勝敗が、即ちこの戦いの勝敗よ」
春香「…………」
千早「見事ね、春香」
千早「貴女の卍解で、私は時間を戻された」
千早「今の私は、卍解を使える前の私……」
春香「…………そうだね」
春香「それじゃ、千早ちゃん。このまま赤ちゃんより前に──」
美希「だめなの!」
春香「……美希。美希じゃ私には勝てないよ……」
美希「や、やってみなくちゃわからないの!」
美希「卍解!」
美希「……あれ、なんで?」
春香「美希も、卍解できるようになる前にもどってもらったんだよ?」
春香「始解で、卍解にかてるわけないじゃない……」
美希「やってみなくちゃ、わからないよ!」
美希「……握れ、〝鬼切〟」
春香「美希、残念だけど容赦なく潰すね」
美希(やっぱり、卍解は協力すぎるの……!)
美希(でも、きっとミキにも勝機はあるはずなの!)
ガキンッ
春香「美希ッ!全然きいてないよ!」
ギィインッ!
美希「キャァッ……!」
美希(考えるの、……何か、きっと突破口が……!)
美希(……あれ、そういえば)
美希「ミキね。気づいちゃの」
美希「その能力、多分。回数の制限があるでしょ」
春香「!」
春香「……ばれちゃった」
春香「そうだよ、これは一日三回が限度」
春香「千早ちゃんと、美希に一回ずつ」
春香「さっき、千早ちゃんを赤ちゃんにしようとしたのを中途半端にとめられて一回」
春香「時間を逆回しにすることはできなくなった」
春香「でも、それがなくても、私は負けないよ!」
春香「そうやって、がむしゃらに突っ込むだけじゃ……」
ガシッ
春香「!?」
春香「私の、リボン……を!?」
美希「右のリボンが、春香の時間を逆に回す……だったよね?」
美希「これで、終わりなの!」
春香「くっ」
春香「くそおおおおおおおおおおお!!」
P「次はお前だ、冬馬」
冬馬「おっと、その前にお客さんのようだぜ」
P「?」
亜美「兄ちゃん!」
真美「助太刀に参上したでござるで候!」
P「お、おまえら!……それに」
高木「待たせてしまったようだね」
P「社長……」
高木「彼は君に任せたよ、我々はこの先にいる巨悪を倒す」
P「は、……はい!」
P「ああ」
冬馬「じゃあ、いくぜ!」
冬馬「──飾れ〝フィギュア(Alice or Guilty)〟」
P「それがお前の、帰刃か」
冬馬「ああ、アンタも卍解してこいよ!」
P「いわれなくとも」
P「 卍 解 」
冬馬「いくぜ、かかってこいよ!」
P「……ああ!」
ザンッ!
ガキィン!
ズン!
P(流石に速い!付いていくのがやったとだぜ……!)
冬馬「どうした、それで本気かよっ!」
P「……くっ!」
P「おえええええええっ!」
ビシャ、ビチャチャ、ビチャチャチャビチャビチャ!
冬馬「……!?」
P「俺の卍解、みせてやる!」
ゲロ「う、うおおおおおおおおおっ!」
冬馬「これがアンタの卍解か……!」
ゲロ「うがあああああああっ!」
ビチャッ
冬馬「くっ、汚ぇ……!」
P「黒縄嘔吐明王」
冬馬「史上最悪と言われる卍解をお眼にかかれるなんてな……!」
冬馬「だが、それでも俺には勝てないぜ!」
ゲロ「うがあああああっ!」
冬馬「げっちゅぅ!」
ドンッ!!
P「な、……俺のゲロが飛び散った、だと!?」
P「……どうやら、そのようだな」
冬馬「おとなしく、負けをみとめたらどうだ?」
P「悪いがそれはできない」
冬馬「なんでだよ」
P「俺は負けてないからな」
P「みせてやるよ……俺の卍解の真の姿を」
冬馬「なん……だと」
冬馬「この空間すべてが、薄いゲロの膜につつまれているのか」
P「そのとおり。そして、少しでも動けば」
冬馬「な…、俺の体がゲロになっていくっ!?」
P「これが、俺の嘔吐丸──卍解名、黒縄嘔吐明王が最悪と言われる所以さ」
冬馬「なるほど……納得したぜ」
P「このゲロに包まれた以上、お前はゲロになって、俺の卍解の一部になるだけだ」
冬馬「……ちっ」
P「残念だったな、冬馬。俺の勝ちだ」
雪歩・響「 卍 解 」
───────
──
─
翔太「 」
雪歩「なんとか勝てた……」
響「でも、びっくりしたさー。……わめき散らすたびに強くなるんだから」
響「でも、自分の卍解の敵じゃないさー!」
律子「私こそ、まさか貴女たちが出てくるとは思わなかったわ」
律子「あずささんに次ぐ力をもっていて、社長から始解すら禁じられてるあなた達がね」
亜美「社長さんがね、非常事態だからっていって亜美たちも戦っていいって言ったんだ」
律子「あの社長が……?へえ、それほどまでに彼女を警戒していたなんて」
真美「律っちゃん」
律子「そうね、……おしゃべりしている余裕はないわね」
3人「 卍 解 」
亜美「そうだよ、これこそ亜美たちの卍解」
真美「この世にひとつしかない、2人でひとつの卍解だよ!」
律子「威力、硬度など、すべてが卍解二つ分に匹敵するといわれている」
律子「でも、それは並の卍解2つ分ということ!」
律子「私の卍解は、並じゃない!」
真美「いっけー!」
律子「着なさい、亜美、真美!」
ガキッ
律子「……どうやら、貴女たちの卍解は直接攻撃系のようね」
真美「そうだよ→」
亜美「律っちゃんのも、そうみたいだね?」
律子「ええ、純粋な打ち据えあい……それが勝敗を決めるわ!」
ガンッ
ズガガガガ
律子(さすがの強度……!このままでは……!)
ガッ
バキィイイッン
律子(!)
律子「私の卍解が…………!」
律子「折れた」
律子「どうやら、私の負けの様ね」
真美「ううん、真美たちも超あぶなかったよ」
律子「あなた達が、卍解を使いこなせるようになったら……」
律子「そのときは、もう私の手に負えないわ」
亜美「……」
律子「それよりも……そろそろね」
律子「彼らの戦いは」
小鳥「火種を煽る風 集いて惑うな我が指を見よ」
小鳥「光弾・八身・九条・天経・疾宝・大輪・灰色の砲塔」
小鳥「弓引く彼方 皎皎として消ゆ」
小鳥「破道の九十一 千手皎天汰炮 」
ズババババババババババ
社長「聞かないよ、小鳥君。そんなものはね」
社長「全力で、かかってきたまえ」
小鳥「それじゃあ、同時にいきましょうか」
卍
解
小鳥「さすがですね、社長!」
小鳥「私の卍解の全力と黒棺を3回もくらって、無事でいられるだなんて」
社長「これくらいでないと、皆にしめしがつかないからね」
小鳥「そうですか、でも」
小鳥「あなたは私に勝てない」
─────
──
─
社長「 」
小鳥「だから、言ったじゃないですか」
小鳥「とはいえ、人類でも最高クラスの霊圧をもつ社長もこの程度でしたし」
小鳥「──後の三人も、軽く倒せますよ。ね、プロデューサーさん?」
P「小鳥さん……!」
小鳥「そうそう、プロデューサーさんの卍解も厄介ですし」
小鳥「ここで倒してしまいましょうか」
P「それは俺のセリフですよ、小鳥さん」
P「俺は、貴女を倒すための力を得てきた」
P「最後のゲロ牙天衝を」
P「最後のゲロ牙天衝ってのは、俺自身がゲロになることです」
P「この技を使えば俺はプロデューサーの力の全てを失う」
P「最後ってのはそういう意味です」
小鳥(まさか 私は業界人とは別次元へと進化を遂げた事で)
小鳥(二次元の存在が三次元の存在に干渉できないように)
小鳥(自分から意図的にレベルを下げて干渉しない限り)
小鳥(業界人にも一般人にも私の霊圧を感じ取ることはできなくなった)
小鳥(まさか、まさか、彼は私よりも……更に上の次元に立っているというの?)
小鳥「馬鹿な!! そんなはずがないわ!プロデューサーごと気がこの私を超えるだなんて!」
小鳥「そんな事が──」
スッ
P「無ゲロ」
ビシャ、ビチャビチャビチャ
P「色々あったけど、なんとか日常にもどってこれたな」
千早「そうですね、代償は大きすぎましたが」
春香「だぁ、だぁ…」
P「春香は赤ん坊になったままだしな」
千早「……これも、仕方のないことなんでしょうか」
P「ああ、でも。社長ももうすぐで戻ってこられるみたいだし」
P「そうなったら、765プロ再始動だな」
千早「そうですね……」
P「そういや、千早」
千早「はい?」
P「なんで、お前の始解放自分に使わないの?」
ドンッ!!
真「プロデューサーの霊圧が……消えた?」
おわり
またこんなカンジの書いてみたい
それじゃ、おつかれさまでした
笑わせてもらったわ
よかったよ
Entry ⇒ 2012.09.24 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
なお「ダイエットで……」みゆき「ウルトラハッピー!」
なお「手を合わせて。はい、いただきます!」
けいた・ゆうた・こうた・はる・ひな「「「「「いただきまーす!」」」」」
なお「今日はみんなプールに行くんでしょ?バテちゃわないようにしっかり食べなねー」
はる「なおねーちゃんは、れいかねーちゃん達と?」
なお「うん。今日はみんなで宿題をやるよ……けいたー?あんたはちゃーんと計画的に宿題やってるの?」
けいた「なおねーちゃん、ご飯おかわり!!」
なお「ごまかすんじゃない!あとそれは自分でやりなさい」
ゆうた「なおねーちゃん、僕の魚けいたにーちゃんより小さーい!」
なお「同じだから。ねーちゃんが選んだのが信じらんないのー?もう、じゃあねーちゃんの食べな。こうた?骨は避けられる?」
こうた「んー!美味しい!」
なお「そ、良かった」
なお「? どうしたのひな。お骨刺さった?」
ひな「ううん。はるねえちゃんが、ご飯あんまり食べてないの」
はる「あっ、し、しーーっ!」
なお「……はーるー?」
はる「う、うぅ……だってぇ」
なお「だってじゃない!緑川家でお残しは許しません!!」
はる「だって今、ダイエットしてるんだもん……」
なお「……ダイエットぉ?」
けいた「色々我慢して痩せるやつだよ。俺のクラスの女子もそんなこと言ってたー」
なお「……あのねぇ、あんたまだ小学生でしょ?そんなこと気にするないじゃない」
はる「だって、だって!今日はお友達とプールに行くし、太ってたら……」
なお「一日抜いただけで変わるわけないじゃない。もー、大体ね、はる。はるのどこに痩せるだけのお肉があるの?」
はる「こ、ここんとことか!」
なお「細っこい腕出して何言ってるの、もう。お母ちゃんに怒られるよ……ゆうた、ご飯よそいに行く?ねーちゃんも食べるから」
ゆうた「あ、うん……」
けいた「……ねーちゃん、それ何杯目?」
なお「? 前もって置いてあった四杯をよそいなおすから、八杯になるね?」
はる「……」
ゆうた「……」
なお「?」
けいた「別に太っては見えないけどさ。ねーちゃんこそ、ダイエットするか悩むべきなんじゃないの?」
なお「けいた、あんただけ昼ごはん無しね」
けいた「あんまりだ!!!」
なお「大体、今は成長期なんだから。食べられるだけ食べないと、ほら。体の成長がね、うん。れいかもそう言ってた」
なお「……」
なお「……まぁたしかに朝から十二杯はちょっと多い、かな?とは思うけど」
なお「……この間のお泊り会でれいか以外のみんなに引かれたっけ」
なお「ま、まぁいいじゃない。それより、さっ!朝の洗濯を…………」
体重計
なお「……こういう時に限って、目に入るなぁ」
なお「た、試しに!別に理由なんてないけどね!」
なお「あ、あたしサッカー部のエースだし!体調管理はしっかりしてるから!」
なお「だから、その。ベストの体重だって、きちんと維持してるよ……」
なお「……」
ガタンッ!カタンッ、カタンカタンカタンカタン……
なお「……う、わ」
みゆき「明日はもう月曜日だよね。学校かぁー」
キャンディ「クルーゥ、つまんないクルー」
あかね「こないだまで夏休みをじゅーぶん満喫しとったやん。でもま、分かるで。日曜の昼過ぎると凹みだすわなー」
やよい「私は日曜朝九時のクラシックを聞くともう憂鬱だよ……」
れいか「? やよいさん、随分と高尚な趣味をお持ちですね?今度お付き合いしてもいいですか?」
やよい「あ、いや別にそういうわけじゃないんだけどね……あれ?なおちゃん?」
なお「……あ、えっ!?あぁ、うん。そうだね」
あかね「? なんやなお、うわの空やな」
やよい「? あ、もしかして宿題のこと?」
あかね「あー……うち、まだ全然英語やってへんわ」
みゆき「ねぇみんな!絵本の読み聞かせ大会しない!?」
あかね「現実から逃げんとちゃうぞ、全教科手付かずちゃんめコラ」
れいか「なお?計画的に進めないと、また夏休みのように泣きつくことになるわよ?」
なお「こ、今度は大丈夫だよ、多分。いや、宿題のことじゃないんだ……」
やよい「なおちゃんらしくないね」
みゆき「あ、分かった。なおちゃん、おなかすいたんでしょ?だからボーッとしちゃったんだよね」
キャンディ「クールゥ、キャンディもおなかすいたクルー」
れいか「ふふっ、なおは昔から、食いしん坊だものね?」
なお「あー……」
あかね「よっしゃ!今日も今日とてホットプレート持参のうちが!お好み焼き屋の看板娘の腕ふるったろーやないか!」
みゆき「わーい!あかねちゃんにっぽんいちー!」
あかね「褒めんといてー!青ノリくらいしか出ぇへんからー!」
なお「あー、あの。あたし……今日は、いいや。ははっ」
あかね「……はぁ?」
なお「だ、だから。今日はあたし、いいよ。お昼……食べなくて」
あかね「……」
なお「……あ、別にあかねのだから食べないとかじゃなくって、今日はその、いっかなーって」
あかね「どないしたんや、なお!?びょ、病気か!?」
なお「へ?」
みゆき「ど、どどどどどうしようなおちゃんがお昼抜きなんてそんなびょ、病院びょーいん救急車だよぉー!」
やよい「ゴーゴーファイブって何番だっけ!?」
れいか「お二人とも、落ち着いてください。不思議図書館には救急車はこれません。とにかくまずはなおを安静に寝かせることを迅速に急いでゆっくり的確にす早く対処しないといけません」
なお「ち、ちがっ、そんなんじゃないから!ただ……その。ダイエットしてる、だけだからぁ!」
なお「う、うん……」
あかね「……アホか」
やよい「あ、あかねちゃんバッサリ切捨てすぎー」
あかね「だってそうやろ。自分、どこに落とす肉があんねん」
なお「いや、実は今朝ね。体重計乗ったら……ベスト体重越えてたんだ」
れいか「あぁ、私が計算してあげた例の……だけど、なお?あれは参考程度であって」
なお「いやいやいや、れいか。あたし、一度決めたことは曲げたくないんだ!それに最近、なんとなく動きも鈍ってた気がする、うん」
あかね「あー、それは最近うちらはあんたのサッカーしとるとこ見とらんからなんともゆえへんけど」
あかね「みゆき、のっからんでえぇ。休みもてあましとるからって乗っからんでえぇ、あんたは宿題しぃ」
なお「うん!どうしても、前の体重に戻したいんだ!」
みゆき「ダイエットで……ウルトラハッピー?」
なお「そう!」
やよい「あー、あかねちゃん。これはもうダメかも」
れいか「みゆきさんの目が輝いてしまいましたね」
キャンディ「クルぅ、それよりキャンディはお好み焼き食べたいクルー」
あかね「あとでな……あーしょーもない」
みゆき「みんな!今日はなおちゃんのダイエット計画でウルトラハッピーに、けってぇーい!」
あかね「先輩に怒られるからそれやめーや」
なお「とりあえず、基本は運動だよね」
あかね「まー、動けば痩せるわな」
やよい「は、走るんだよね?えーっと、私遅いから、みんなの足手まといかも……」
れいか「ランニングですから平気ですよ、やよいさん」
みゆき「よーっし、気合だ気合だ気合だぁー!みんな、よーい、ドン!」
キャンディ「頑張るクルー!」
あかね「あ、待ちーやみゆき!そないな、最初から飛ばしよると……」
キャンディ「みーゆーきーぃ、歩いてたらダメクル~?」
あかね「……だからゆうたやん、そもそもみゆき体力無いし」
れいか「やよいさんは、このペースなら余裕そうですね?」
あかね「以外に体力はありよるからな、やよい」
やよい「うん!毎週日曜八時前はダンsなんでもない」
なお「っはぁ、ふう。み、みゆきちゃん大丈夫?っ、あたしいつもならこんなの、なんてことないはずなのに」
あかね「食ってへんからやろ、昼飯」
あかね「みゆきが早々にダウンしよったのでー、次はうちの案でいきますー」
みゆき「ウルトラハッピー!」モグモグ
キャンディ「クールぅ!」
やよい「ふふっ、二人ともさっきお昼食べたのにがっつきすぎー」
れいか「あかねさん?なおは頑として食べようとしませんし、ここで一体なにを……」
なお「そ、そうだよあかね!ここで食べちゃったらさっきの運動が無駄になる!」
あかね「あー、えぇねんえぇねん。なおには、うちの手伝いしてもらうから」
なお「へ?」
あかね「夏過ぎたーゆうても、厨房はあっついでー?覚悟しー?」
あかね「おっちゃんおーきに!なお、豚一枚やー!」
なお「分かった!生地を混ぜて、豚にk」
あかね「あーあーあー!キャベツはこないな太かったらあかん!やり直し!」
なお「えぇ!?一玉分切り終わったばっかりなのに!?」
あかね「うちの店で出す以上、うちのやり方にしたがってもらいますー!えぇからはよしー!」
なお「分かったよ、もう!直球勝負!!」ダンダンダンダンダンッ
やよい「い、忙しい時間になると本当に大変そうだね」
みゆき「うん、私達はお好み焼き食べてるだけで楽ちんだけどねー。なおちゃん、すっごい汗かいてるよ」
キャンディ「クルぅ、あかねはこりでなおを痩せさせようとしてるクルぅ?」
れいか「えぇ、確かに厨房での作業は大変です。ですけど、あかねさんの狙いは、ふふっ。他にあるみたいですよ?」
なお「(おなかすいたよぉ……)」グーーーーッ
あかね「(ふっふーん、なおもこんだけ美味そうな臭いに囲まれよったら、我慢できひんやろ)」
あかね「(今に『ダイエットやめたー!』ゆうて、うちのお好み焼き食べたがるに違いあらへん!)」
あかね「(よっしゃ、そろそろなお用のDXミックス玉つくったろかな。っと、その前にー)」
あかね「どーやー、なお。もー限界やないのん?」
なお「……そうだ、そうだね」
あかね「せやろ、せやろ。分こうたらあかねちゃん特製n」
なお「だから一口、一口くらい、いい、よね」ガシッ フラーッ
あかね「!?あ、あかん!!生地は生で飲んだらあかぁぁぁん!なおーーぉぉおおお!!!!!!」
みゆき「……」
キャンディ「ば、バットエナジーが少し見えた気がするクル」
やよい「……追い込められすぎー」
れいか「逆効果だったようですね……」
れいか「キャベツなら、ダイエットに最適な食材よ?だからたくさん食べましょう、なお?」
あかね「れ、れいかのとりなしでなんとかなったわ……すまん、失敗した」
やよい「ね、狙いは悪くなかったと思うよ、あかねちゃん」
なお「……虫になったみたいで、イヤだよぉ」シャクシャク、シャクシャク
れいか「なら、ダイエットをやめる?」
なお「……」シャクシャク、シャクシャク
みゆき「うーん、あんまり疲れないで運動できることってあるかなぁ……あ、そういえばやよいちゃん?」
やよい「うん?なぁに?」
みゆき「さっき、毎週えーっと、何かやってるって言ってなかった?」
あかね「まぁ、あんた軽く聞こえるようにゆうとった気ぃするけどな。うん」
みゆき「何をするのー?私も体力つけたいから、興味あるなぁー」
れいか「えぇ、是非ともお聞きしたいです、やよいさん。なおのためと思って」
なお「お願い、やよいちゃん」シャクシャク、シャクシャク
れいか「なお。人に物を頼むときは、食べる口をお休めなさい」
やよい「えー、えーっと……ほんと、たいしたことじゃ。ただ、その……」
やよい「ま、毎週その……テレビの前で、だ、ダンス、を……」
TV『行けゴー○ースターズ♪飛べ○ーバースターズ♪』
やよい「なおちゃん!もっと腰振って!そう!そうそう!!
なお「こ、こう!?えっと、あれ!?」
あかね「やよいんちに行ったら、なんや録画されていたものとものっそ動きのえぇダンスを見せられました」
みゆき「やよいちゃん楽しそー!」
れいか「ついていっているなおは大変そうですけどね」
キャンディ「クールぅ、クルぅ」
やよい「ちがうよ、こう!こう!ほら、司令官をみて!!あの黒りんのキレのある腰さばきを!」
なお「く、黒りん!?だれ!?!?」
やよい「黒りんは凄いんだよ!リアルでも万引き犯を捕まえてシャットダウンしちゃう特撮俳優の鑑なの!黒りんかっこいー!」
なお「わ、わかんないけど確かにかっこいい!よ、よし、こう、だね!」
なお「な、なんでいきなり似非フランス語なの……?」
やよい「これで覚えたよね、よーし、それじゃぁ」
なお「あ、うん。通しで踊って……」
やよい「今度はCD音源に合わせて踊るよ!大丈夫、同じ動きをすればいいから、全然大丈夫だよ!」
なお「」
あかね「あれを丸々一曲はきっついわぁ」
みゆき「TVサイズで大変そうだったのにねー」
れいか「そうですね、なおも運動は得意ですがきっと……」
やよい「? 何やってるのみんな? みんなで踊ろうよ!」
あかね「こ、こっちにまで飛び火したっ!?」
なお「ぜぇ、ぜぇ……」
あかね「も、もうあかん。もう無理や、やよい堪忍して」
れいか「っふぅ、っふぅ。ダンスというものは、授業でしかしたことがありませんでした……」
やよい「えへへ、みんなで楽しいことをすると、やっぱり何倍も何倍も楽しいねっ!ねっ、みゆきちゃん!」
みゆき「う、うん。うる、うるとら、はっぴーだよねぇー……」
あかね「今ほど遠い顔しとるけどな自分」
キャンディ「とーべー、バールカーンクルぅ」
あかね「ほんであんたは高見の見物か、うちらと一緒に頑張るんとちゃうかったんか」
なお「う、うん。大変だけど、うん。頑張れば結果は出るよ、絶対」
あかね「志はえぇねんけどな……情熱の向かうとこが違うやろ確実に」
れいか「なおが満足してないといきますと、次は何をしましょう」
あかね「そーやなぁ。せや、てっとりばやく、痩せとって綺麗な人に、話聞いてみたらえぇんとちゃう?」
みゆき「うちのお母さんがどうしたの、あかねちゃん?」
あかね「見上げた親子愛やなコラ、否定せんけども」
みゆき「っていうことなの、お母さん!」
育代「あらあら……お母さんなんかで、参考になるかしら?」
なお「とってもなります!うちのおかあちゃんも、みゆきちゃんのお母さんはとっても綺麗だねって言ってます!」
れいか「私のお母様もです」
やよい「ママも、みゆきちゃんちのママはモデルになってほしいくらい綺麗ね~、って言ってます」
育代「あらあら、とっても嬉しいわ。でも、うーん……おばさん、特に気をつけていることはないの」
なお「えぇ……でも、そんなに綺麗で痩せてるのに」
育代「あらあら、歳相応なのよ?服のせいね、きっと」
みゆき「えー、お母さん痩せてるじゃん!昨日もお風呂で……」
あかね「……みゆき、まだお母ちゃんと風呂入っとるん?」
みゆき「? うん、お父さんとm」
育代「み、みゆき!」
やよい「仲いいなぁー、羨ましい」
れいか「そうですね、微笑ましいわ」
あかね「……あれ、うちだけやろかツッコミたいの」
なお「あたしも流石にお父ちゃんとは入れないよ、みゆきちゃん」
みゆき「えー?あ、そーだお母さん!お母さん、スポーツしてたじゃない」
育代「?なぁに?」
みゆき「お父さんとー、夜中に二人でストレtt」
育代「みゆき!!!」
育代「あ、あらあらやだわ。大きな声を出しちゃって、ごめんなさい?」
やよい「?」
れいか「?」
あかね「……」
なお「……」
みゆき「なんで怒るの?この前だって、私が眠れなくってお部屋いったら汗だくで……」
育代「ちょ、みゆ、みゆきあのね!そのお話はね、えーっと……」
博司「たっだいまー!みゆきー、育代さーん!お父さん、早上がりなので帰ってきたよー!」
育代「……博司さん、丁度いいところに」
博司「へ?あれ、なんだか育代さん、怖いお顔を……」
育代「実演、見せてあげましょう?ね?」
博司「な、何の……?」
育代「ここで、グイーーッと限界まで前に倒すのよー?」
博司「育代さん痛い!痛い痛い痛い痛い僕のアキレスがピーンて!!ピーンて痛い痛い痛い!!」
育代「あなたのせいですからね、みゆきが寝るまで待ってっていつも言ってるのに……はい、グイーーッ♪」
みゆき「わぁー、こんなに大変なのをしてたんだー」
やよい「す、すっごく痛そうみゆきさんのパパさん。あとなんだか声に赤い鬼の化身の雰囲気がワクワクするよぉ」
れいか「ストレッチをすることにより血行が改善され、美しさが保たれる。そういうことでしょうか」
あかね「あー、なんやみんな、お取り込み中みたいやし……そろそろおいとましよかー?」
なお「みゆきちゃん、弟か妹が出来たら、色々教えてあげるからね」
みゆき「? うん、それってウルトラハッピーだね、えへへー!」
みゆき「うん、おまたせキャンディ!なおちゃん、参考になった?」
なお「え、あ、うーん……えっと、相手がいないとダメだし、ってあたし何言ってんだろ」
れいか「? わたしが手伝ってあげるわよ、なお?」
あかね「れいか、それ一部をものすごく刺激する発言やからやめて。ほんまやめて」
やよい「うーん、運動も、美容面もやりきったよね。なおちゃん、効果あった?」
なお「えーっと……おなかが減っただけかなぁ」
あかね「うちの店のキャベツ全部食い尽くしておいて自分」
れいか「と、なれば……最後は、精神面ね、なお?」
なお「せ、精神面……?」
みゆき「うん、おまたせキャンディ!なおちゃん、参考になった?」
なお「え、あ、うーん……えっと、相手がいないとダメだし、ってあたし何言ってんだろ」
れいか「? わたしが手伝ってあげるわよ、なお?」
あかね「れいか、それ一部をものすごく刺激する発言やからやめて。ほんまやめて」
やよい「うーん、運動も、美容面もやりきったよね。なおちゃん、効果あった?」
なお「えーっと……おなかが減っただけかなぁ」
あかね「うちの店のキャベツ全部食い尽くしておいて自分」
れいか「と、なれば……最後は、精神面ね、なお?」
なお「せ、精神面……?」
曾太郎「話は聞いた、緑川の娘よ」
なお「ご、ご無沙汰しております」
みゆき「なおちゃん、怖がってるね?」
れいか「昔から、私の家に来てよくお祖父様に怒られていましたから」
やよい「虫とかお化けに怯えてたのとはまた違う怖がりかたかも」
あかね「昔からゆうやろー?ほんまに怖いんわ地震雷、家事お祖父様やーちゅうこっちゃ」
キャンディ「きゃ、キャンディは怖くないクルぅ」
あかね「顔おかしなっとるで」
曾太郎「うむ。身体の節制にかけるその心意気やよし。君の年齢ではいささか早すぎるように思うが」
なお「そ、そうは行きません!決めたんです!」
曾太郎「左様、君ならばそう言うと思っていた。そこの座蒲にかけなさい」
なお「ざ、座禅、かぁ……」
曾太郎「……」
やよい「あ、あのかっこいい杖みたいなのはなに!?」
れいか「警策と言って、集中を欠いて姿勢が乱れた時分に肩を叩くためのものです」
みゆき「た、叩かれちゃうの!?」
あかね「ゆうても、そんな痛くないんやろ?新喜劇のまきざっぱみたいな」
キャンディ「きゃ、キャンディは怖くないクル」
あかね「せやから顔おかしいって」
曾太郎「……」
なお「―――っ」グゥ~~ッ
曾太郎「……」トントン パシィーーーン!!
なお「っっ!!」
みゆき「い、痛そう……」
あかね「なお、今絶対食べもんのこと考えよったな」
曾太郎「……」トントン、 パシィーーーン!!
なお「っ!!」
なお「――――っ」グゥ~~~~
曾太郎「……」トントン、 パシィーーーン!!
なお「っ、っ」グゥ~~~~
曾太郎「……」トントン、 パシィーーーン!!
あかね「考えすぎやろ」
なお「っ!おなか、すいたよぉ……」グゥ~~~~~~
あかね「ゆうてもうたし」
曾太郎「鍛え方が足りん」
なお「うぅ、精進、します……」グゥ~~
れいか「お疲れ様、なお。はい、これを」
なお「あ、うん……って、これ!ダメダメ、ダメだよ!虫みたいなのはいやだけど、キャベツ以外は!」
れいか「お母様に言って、豆腐を中心とした健康によいものを作ってもらったわ。なお、少しでも食べないと……」
なお「いいや、ダメだ!れいか、気持ちは嬉しいけど……」
曾太郎「緑川の娘よ。食べなさい、もう分かったはずだろう。育ち盛りの君に、そのような節制など……」
なお「っ、それじゃ、ダメなんです!あたしは、このままじゃ……れいか、ごめん。失礼します!」
れいか「あっ、待ってなお!どこに行くの!」
なお「やっぱりこういうのは、あたしの性にあわない!走ってくるよ!」
あかね「待ち、なお!……行ってもーた」
やよい「ど、どうしよう……?」
みゆき「追いかけよう……なおちゃんのために、って思ったけど……今のなおちゃん、全然ウルトラハッピーじゃ、ないもん!」
キャンディ「クル、クルぅ!苦しいことも、みんなで分け合うクルぅ!」
狼「ウ~ルルル~♪俺様ウルフルン~♪」
魔女「うーん、困っただわさぁ」
狼「あぁん?ババァ、なぁ~にこんなところで頭抱えてやがんだぁ?」
魔女「あっ、ウルフルン!丁度いいだわさ!今月の分のあんたの出撃ノルマ、あたしによこせだわさぁ!」
狼「はぁ?確かにテメェはもう今月分達成してるけどよぉ、どういう風の吹き回しだぁ?仕事熱心なのはかまわねぇが」
魔女「あと数回、どうしても今月中にバットエナジーを集めて!スーパーマジョリーナタイムを発現させる必要があんだわさ!」
狼「ってぇと、あのテメェが若返るあれかぁ?」
狼「中身ババァだから興味ねぇけどよ。何がしてぇんだよ?近いうちにシリアステコ入れはねぇはずだぞ?」
魔女「あの、お節介で面倒な、コーバンとかいうところにいる生意気な人間が!」
狼「おぉ。なんだ、悪いことでも企んで……」
魔女「今月で移動になるとかなんとか言いやがるんだわさ!!」
狼「……おう」
魔女「一度でも、婆さん扱いするあいつを見返してやるんだわさ!べ、別に最後の最後で振り向かせてやろうなんて思ってないんだからねだわさーーーー!!」
狼「吐き気するやめろ。まぁ、なんだ。上手くやれよ。ほれ、黒っぱな」
魔女「いただくよ!それじゃ行ってくるだわさー!」サッ!
狼「まったくどいつもこいつも、悪の幹部としてなさけねぇ。人間なんかに入れ込みやがって」
ジョーカー「うっふふぅん?うーるっふるんすわぁん?その割に、最近なぜだかキュアハッピーの資料ばかり眺めているようでっすがぁ~?」
狼「ぶっ飛ばすぞクソジョーカーきめぇ寄るな」
なお「っ、でも、でも。今のあたしは、あたしじゃないんだ。変わらなきゃ、うん」
なお「何よりこんなんじゃ、弟妹たちにしめしがつかない。よしっ、直球勝負!」
みゆき「なおちゃん、どこまで行っちゃったのかなぁ」
やよい「またこの河川敷に戻ってきちゃったね」
あかね「走るーゆうとったから、ここやと思ったんやけど」
れいか「なおは単純、いえ、素直なのでここに向かうと思います。どこへ……チアリーディング部のみなさんが、練習している姿しかありませんね」
みゆき「あー……最近練習、行ってないなぁ」
あかね「大丈夫や、誰もみゆきがチア部所属なんて覚えてへんから」
みゆき「酷いよ!?」
あかね「あんたの参加頻度には負けるわ」
魔女「ここで集めれば、スーパーマジョリーナタイムまであと一歩だわさ!」
魔女「さぁて……世界よ!最悪の結末!バッドエンドに染まるだわさ!!」
魔女「白紙の未来を、黒く塗りつぶすだわさぁー!!」
キャンディ「クル!?バッドエンド空間クルぅ!?」
みゆき「あっ、ち、チア部の……えーっと、みんなが!」
あかね「所属なのに覚えてへんやん……膝ついて、ボンボン投げ出してもーてるー!」
「もう応援なんてしたくない…」
「男の目線がキモイ…」「衣装かわいくない」
魔女「いーっひっひっひっひ!人間どもの発したバッドエナジーが、悪の皇帝ピエーロ様を、よみがえらせていくだわさぁー!!」
なお「み、みんな!これは……」
れいか「なお、やはり近くにいたのね。えぇ、バッドエンドの連中よ」
やよい「なんだか、気合が入ってる……?」
あかね「こっちも負けてられへんで!みんなを、助けな!」
みゆき「うん!いくよ、みんな!」
プリキュア、スマイルチャージ!
サニー「太陽サンサン、熱血パワゥァ!キュアサニェー!」
ピース「ぴかぴかぴかりん☆じゃん、けん、ぽん!キュアピース!」
マーチ「勇気凛々、直球勝負!キュアマーチッ!」
ビューティ「深々と降り積もる、清き心。キュアビューティ!」
五つの光が導く未来!
輝け!スマイルプリキュア!!
魔女「こいだわさ!黒っぱなの、ハイパーアカンベェ!」
ボンボン「」ギュワンッ
ハイパーアカンベェ「ハイパーアカンベェ~っ!!ベェー!!」バクッ!!
魔女「」
ハッピー「!マジョリーナが食べられた!」
サニー「この間のウルフルンの時と一緒や!きっと、あのアカンベェと……」
ハイパーアカンベェ「いーっひっひっひ!力が、力が溢れるだわさぁーーー!!」
ピース「!?ボンボンの先が、伸びてきたよぉ!?」
ビューティ「皆、避けるんです!はっ!!」
ハッピー「う、うん!っ!」
マーチ「分かった……っ!?」ガクッ
サニー「よっしゃ……マーチ!?」
マーチ「あっ……な、なんで。変身した、のに!力が!」
ハイパーアカンベェ「おやぁ?足でまといがいるみたいだなぇ!まずはオマエからだわさ、キュアマーチ!!」
マーチ「っ!!!!」
キャンディ「マーチぃ!!」
ハッピー「だ、大丈夫、マーチ!?」ギリギリッ
ピース「え、えっへへ。なんだかヒーローみたい、私!」ギリギリッ
ビューティ「サニー、マーチの、肩を!」ギリギリッ
サニー「おう!だからゆうたやろ、ちゃんと食べやーって!ほら、肩貸しぃ!」グイッ
マーチ「っ、ありがとう。ごめん、ごめんみんな……」
サニー「後や!キャンディに預けとるうちの鞄に、あんた用のお好み焼きあるから!それ食えば……」
マーチ「で、でも……」
サニー「まだゆう気かこの……」
ハイパーアカンベェ「いっひっひっひっひ!たった三人じゃ、ハイパーアカンベェの力は押さえられないだわさぁー!!」ブン!!
ハッピー「えっ、うわぁっ!?」
ピース「わわっ、きゃぁーー!」
ビューティ「っ!!」
マーチ「!?ハッピー!ピース!ビューティ!!!」
ハイパーアカンベェ「いーっひっひっひっひ!そうすればそのままスーパーマジョリーナタイムの始まりだわさぁー!!」
マーチ「す、スーパーマジョリーナタイム……あんたが若返る、あれ!?」
サニー「こないだマーチがゆうとったやつか……なんや、自分そないなアホなことのためにこんなことしよんのかコラァ!」
ハイパーアカンベェ「もちろんピエーロ様復活のついでだわさ!それに、くだらなくなんかない!!」
ハッピー「っ、そんな、そんなあなたの自分勝手のために、みんなをバッドエンドなんかにさせない」
ピース「そ、そうだよ。どうしてマジョリーナのために不幸にならなきゃいけないの!?」
ビューティ「どうしてあなたは、そのマジョリーナタイム、にこだわるのです?戦うのなれば、今で十分……」
ハイパーアカンベェ 「えぇいうるさいうるさい!あんたたち小娘には、わからんだわさ!」
ハイパーアカンベェ 「老いた自分の惨めさが!!!変わっちまったことの絶望が、理解できるはずなだわさーーー!」
マーチ「!!!」
ハイパーアカンベェ「あたしゃあねぇ!そりゃあ若い頃は美しかった!あんたたちちんいくりんなんかに負けないくらいねぇ!」
ハイパーアカンベェ「だがどうだい!今じゃあの狼の若造にさえババアと言われる始末だ!むかしゃ姐さんと言っていたのに!」
ハイパーアカンベェ「おまけにあいつは!生意気な人間風情にまで年寄り扱いされるとくる!そんなの、我慢できるかい!!!」
ハイパーアカンベェ「あたしゃこんな醜い姿なんかじゃない!もっともっと美しく、もっともっと強く、完璧な姿をしていたんだわさ!」
ハイパーアカンベェ「あんたたちにも、短い人生だろうが少しはあるだろうさね!あの時が良かった、こうすればよかった、ってねぇ!」
ハイパーアカンベェ「その時に戻れる手段を持つあたしが、そいつを求めて……何が悪いって言うんだわさぁああああああ!!!」
マーチ「……」
ハッピー「……可哀想だね、あなた」
ハイパーアカンベェ「!?!?」
マーチ「ハッピー……?」
ハッピー「学校なんてなかったし。ずっと大好きな絵本を読んでいられた。お母さんに一日中甘えていられた」
ハッピー「でも……でも!私は絶対に、今を後悔したりなんて、しない!」
ハッピー「私の今を否定したりなんてしない!!」
ハッピー「だって!あの時の私にないもの!今の私はいっぱいいっぱい、いーーーっぱい持ってる!」
ハッピー「あれからたくさん読んだ幸せな絵本!たくさん起きた楽しい事!たくさん出合った優しい人!」
ハッピー「あんまり幸せじゃなかった本!ちょびっとの悲しい事!仲良くなれないまま分かれちゃった人!」
ハッピー「あかねちゃん、やよいちゃん、なおちゃん、れいかちゃん、キャンディ!大事な、大事なお友達!」
ハッピー「全部が全部、私なの!今の私!あの時なかった、今の私だもん!」
ハッピー「私は、いつだって今がいっちばんウルトラハッピー!」
ハッピー「だから……あなたなんかに、絶対負けない!!」
マーチ「……」
マーチ「サニー……」
サニー「今のうちは、今一緒にいるみんなといられればそれでええ。昔のことなんて知るかい、あんたの考え押し付けんといて」
ピース「私、パパに会いたい。ずっとそう思ってた」
マーチ「ピース……」
ピース「でも、もういいの。パパは私の中にずっと一緒にいてくれる。私は私で、今を強く!前に進む!あの時に負けないパパの愛を、今の私だってずっともらってるんだから!」
ビューティ「歳を重ねて、徳を積んで。それでも尚あなたはあなたの『道』の尊さを分かっていないのですね」
マーチ「ビューティ……」
ビューティ「それまでの全てを、今この瞬間輝かせるために生きる。それが『道』というものです。自らも受け入れられないあなたは、みゆきさんの言う通り。可哀想だわ」
マーチ「……」
マーチ「あぁ、そっか」
ハイパーアカンベェ「小娘があたしに説教してるんじゃないよ!潰してやるだわさぁああああ!」
マーチ「太ってるのが何さ、体重が何さ……あたしは、あたしなんだ」
マーチ「いつもみんなに言ってるのに……お父ちゃんとお母ちゃん、それにお天道様に感謝してご飯を、って」
マーチ「あたしが一番、否定してたんだ。っはは、ほんと……お姉ちゃん失格だ」
サニー「気づけたんやし、えーんちゃう?」
キャンディ「クル!マーチ、お好み焼きクル!」
マーチ「うん……全ての食材に、感謝して!いただきますっ!」
サニー「なんや、うちは『マーチ待ってたしー!』とかゆえばえぇんか。それより早く食い終わってくれへん?残りの三人めっちゃ踏ん張ってあんたの見せ場まで持ちこたえとるから」
マーチ「おかわり!」
サニー「はよ行かんかい!!!」
ハッピー「あ、マーチ……ぷぷっ、青ノリ着いてるよー!」
ピース「あははっ!でも、マーチらしいかも」
ビューティ「本当に、待っていたわ。さぁ、マーチ」
マーチ「うん!こいつの相手は、あたしだ!ご飯を食べて元気100倍だよ!」
サニー「それ以上あかん、あんた勇気リンリンで既に容疑かかっとんのにそれはあかん」
ハイパーアカンベェ「あんたが相手ぇ!?はっ!あんた一人の浄化なんて効かんのに、何ができるだわさぁー!」
マーチ「今なら、いくらだって走れる!プリキュア!マーチ……ッ!!」
ハイパーアカンベェ「!?風の力を足に纏わせたまま、あたしの周りをグルグル走り始めただわさぁー!?こ、これ、は!?うひゃーだわさぁーーー!?!?!?」
ハッピー「わぁ、すごい!」
ピース「風の力といえば竜巻だよねっ!わかってるぅーなおちゃーーん!!」
ビューティ「動けなくなりましたね。流石よ、マーチ」
マーチ「上手くいくもんだね。さぁ、直球勝負にとどめといこう!」
ハイパーアカンベェ「う、動きを封じておいてなにが直球だわさ!くっそ、くっそぉだわさぁああああああ!」
ペガサスよ!私達に力を!!!
プリンセスサニー「プリンセスサニィー!」バーン
プリンセスピース「プリンセスピース!」キリッ
プリンセスマーチ「プリンセス」ヒュルヒュルジャキッ「マーチッッ!」
プリンセスビューティ「プリンセスビューティ!」バシィーン
プリキュア!プリンセスフォーム!!
プリンセスハッピー「開け、ロイヤルクロック!」
キャンディ「みんなの力をひとつにするクルぅ!ティン!」
プリンセスハッピー「とどけ!希望の光!」
はばたけ!光り輝く未来へ!!
プリキュア!ロイヤルレインボーバーストォオオオオオオオオ!!!
ハイパーアカンベェ「ちっくしょうだわさぁあああああああ……」
プリンセスハッピー「フッ……輝け!」
ハッピースマイル!!!
みゆき「なおちゃんも、元通りだし!ウルトラハッピーだね!」
なお「みんな、ごめんね……あたし、なんにも分かってなくて」
あかね「あー、えぇねんえぇねん。あんたなら回り道してもいつか気づくー思っとったし」
やよい「それに今日、なんだかんだで楽しんだもん!特にダンスとか!」
れいか「えぇ、信じてたわ、なお……だけど、これっきりにしてね?」
なお「うん……あたし、みんながいてくれて……良かった!」
みゆき「えへへ。なおちゃん、今が一番?」
なお「うん!ウルトラハッピーだよ、みゆきちゃん!ご飯がいくらでも、食べられそう!」グーッ
やよい「あ、なおちゃんおなか鳴ってるっ」
あかね「っはー、こうなったらなんや、今日はうちの店貸切で、お好み焼きパーティーしよかー!」
れいか「ふふっ、あかねさん。店じまいをする覚悟でないといけないわ?」
なお「……ありがとう、みんな!」
なお「はいっ、じゃあ手を合わせて」
けいた・ゆうた・こうた・はる・ひな「「「「「いただきまーす!」」」」」
なお「はいはい、めしあがれ」
けいた「なおねーちゃん、またそんなに食うの?」
なお「いいの。えーっとね、はる」
はる「うん」
なお「はるが気にする気持ちを、分かってあげられなくもないんだ。でもね、ちゃんと食べないと……」
はる「ううん、大丈夫。ひなとね、お話したの」
ひな「ちゃんと食べないと、なおねーちゃんみたいになれないから、はるねーちゃんたっくさんたべるんだって!ひなとお約束したー!」
なお「……そっか!偉いぞ、はる、ひな!」
こうた「こーたも!!」
なお「うん!みんな偉い偉い!」
けいた「……俺が一番食ってるもんねーだ!……ところでさ、なおねーちゃん?」
なお「なに?あ、また体重がどう、とか言ったら……」
けいた「ちが、ちがうよ!なおねーちゃんさぁ……」
けいた「背、去年から滅茶苦茶伸びたよね……いいなぁ。やっぱたくさん食べなきゃなぁ」
なお「……そっちぃぃいい!?!?」
完
魔女「……餞別だわさっ!『納豆ぎょうざ飴』をプレゼント・フォー・ユー、だわさ!」
警官「?マジョさん、僕の移動取りやめになったって話、しませんでしたか?」
魔女「!?う、嬉しくなんかないだわさ!!!あと、あたしゃマジョリーナだわさぁああああ!!!」
今度こそ、完
とりあえず、来週はポップ爆発せんかい!
じゃあの!
ABC朝日放送 日曜朝八時半
スマイルプリキュア!
大好評放送中!
関連グッズも続々発売中!!
乙
Entry ⇒ 2012.09.24 | Category ⇒ プリキュアSS | Comments (2) | Trackbacks (0)
P 「お絵描き予行演習をしよう」
また、アイドル達の絵の上手い下手は勝手なイメージで書いた物なので
公式設定があれば、それとはかけ離れた物になるかも知れませんので
気になる人はご遠慮ください
美希 「ん? ミキ達TVなら、もう結構出てるよ?」
P 「ふっふっふ 聞いて驚け!今回の番組は『ミュージックマスター』だ!」
亜美 「ええ!あのゴールデンの!?」
千早 「?」
春香 「千早ちゃん知らないの?司会も人気お笑いコンビがしてる超人気番組だよ!?」
千早 「私あまりTV見ないから…」
P 「今回は歌の枠と、全員参加のコーナーの枠が一つ貰えたんだ」
律子 「これで知名度がグーンと上がるのは間違い無しよ!」
雪歩 「すごいですぅ! さすがプロデューサーさんですぅ!」
やよい 「私 がんばりますー!」
P 「歌枠についてはあまり心配していないんだが、その後のコーナーの方が問題で…」
あずさ 「どういったコーナーなんですか?」
P 「ほら よくあるだろ?お題を与えてもらって絵を描くっていうコーナー」
真 「あ~ よくありますね、ヘタだと笑われちゃうかもですけど」
P 「ヘタならヘタで美味しいんだが、それも、その人のイメージによるからな」
真美 「真美は絵得意だよ!」
貴音 「わたくしはあまり得意では…」
伊織 「このスーパーアイドル伊織ちゃんなら何も心配いらないわよ?」
P 「本番でどんなお題が与えられるかは分からないが、今回はそうだな…」
響 「なんでもいいぞー 自分完璧だからな」
P 「うーん みんなが知ってるのがいいよな…動物の『象』でいこうか」
春香 「『象』ならたしかにみんな知ってますもんね、特徴もあるから描きやすいかも」
全員 「はい!」
P 「じゃあ、制限時間は10分にしておこうか」
P 「よーい はじめ!」
カキカキ ウーン コレハイガイト …
律子 「この子達の絵については、私達何も知りませんからちょっと楽しみですね」
P 「ヘタでも春香や亜美や真美、あと響なんかもいじられ役としてはいいんだけどな」
律子 「雪歩なんかは、『穴掘って埋まってますぅ』 なーんてことになりかねませんからね」
P 「うん あまりにひどい様だとイメージにかかわる子もいるから…」
P 「よし時間だ、みんな描けたか?」
全員 「はい!」
P 「じゃあそうだな、あずささんから見ていきましょうか」
あずさ 「全然面白みが無いかも知れないですけど…」
P 「それでも全然いいんですよ、あずささんからなのは、ちゃんと理由もありますから」
あずさ 「そうですか~? じゃあどうぞ」
P 「うん 長い鼻・大きな耳・太い足 完璧に象ですね、あずささんなら大丈夫だと思ってました」
あずさ 「一応特徴だけはちゃんと描いてあるつもりです~」
亜美 「でもTV的にはこれでいいの?兄ちゃん」
P 「ああ、こういうコーナーで全員が全員ヘタなら逆に面白くないんだ」
春香 「あ 分かりました振り幅ですね!」
P 「そうだ、さすが春香だな」
あずさ 「どういう事ですか?」
P 「こういう時はな、まず常識的な絵を見せておくと、ヘタな人がよりヘタに見えるんだ」
律子 「あずささんの絵なら完璧に前フリをこなせるますからね、言う事無しですよ」
あずさ 「じゃあ本番でも、早めに発表できるようにしますね~」
P 「はい、お願いします MCにも伝えておきますね」
やよい 「はい! ジャジャーン!」
千早 「高槻さんの象かわいい…」
あずさ 「あら~ やよいちゃんっぽくてかわいいわね~」
やよい 「私 兄弟がいーっぱいいて、みんなに描いてくれってよく頼まれるから絵は得意なんですー」
P 「うんうん やよいならどんなお題が与えられても大丈夫そうだな」
伊織 「多分 視聴者も『やよいは絵が上手だなあ』って言う事間違いなしね」
やよい 「えへへ 照れちゃいますー」
美希 「クレヨンで描いてるのがかわいいの」
千早 「プロデューサー、後でこの絵いただけます?」
P 「俺も心配しすぎたかな?この調子でみんなのも見せてもらおう」
P 「次はそうだな…春香 見せてくれるか?」
春香 「はい!」
全員 「…」
春香 「え?みんなどうしたの?結構上手く描けてると思うんだけど…」
美希 「春香はなんでも無難にこなせるアイドルだと思ったけど…」
貴音 「これは…」
亜美 「めちゃくちゃ甘く見て、ギリギリ象だね…」
真美 「子供が見たら泣いちゃうよ→!」
千早 「春香は絵がヘタなのね…」
春香 「ひどいよ 千早ちゃんまで!」
律子 「せめて色くらいはもう少しアイドルらしい色を選んで頂戴ね」
春香 「ほ 本番はもうちょっと真剣に描きますから!」
春香 「あとフォローのコメントで笑いとりますから!!」
響 「春香…アイドルとして、その発言はどうかとおもうぞ…」
P 「うん… まぁ、不安要素もあるけど春香なら何とかできるだろう」
亜美 「合点承知!」
真美 「ちょ→真剣に描いたから問題ないっしょ!」
P 「合作かと思ったけど別々に描いたんだな」
亜美・真美 「とくとみさらせーい!」
春香 「ちょっと!アウトアウト!」
雪歩 「だ 駄目だよ亜美ちゃん真美ちゃん!」
P 「こういう事があるから予行演習しておきたかったんだ…」
亜美・真美 「え?なんか問題あるの?」
律子 「今回の番組のスポンサーが任〇堂やポケ〇ンなら問題ないんだけどね…」
P 「スポンサーがライバル会社なら間違いなく2人のところはカットになるな」
亜美 「大人の事情なんてちらないよ!」
真美 「そうだよ真美たち一生懸命描いたのに!」
亜美 「ちぇ 折角上手に描けたのにー」
真美 「いざとなればモザイクいれたら大丈夫っしょー」
P 「それじゃ 意味ないだろ…」
美希 「……」ウトウト
P 「美希、眠そうだな」
貴音 「先ほど絵を描いている時からすでに眠そうでしたね」
真 「半分寝ながら描いてたけど、大丈夫なのかな?」
P 「じゃあ美希のを先に見るか」
美希 「どうぞなの~…」ウトウト
千早 「半分寝ながら描いていたのに、上手なのね」
真 「面倒くさがって色を塗ってないのが美希らしいや」
真美 「線がよろけてるし、変な所にに線が描いてあるけどミキミキやるなー」
P 「…」
律子 「どうしたんです?プロデューサー」
P 「気がつかないのか?、みんなちょっとこれを見てくれ」カキカキ
亜美 「うわー、何これ!『おにぎり』っていう文字が隠れてたよー!」
春香 「意識して描いたのか無意識なのかは分からないけどすごいですね…」
P 「多分、無意識だろうけど、変な所で天才が見え隠れするな」
貴音 「食欲や睡眠欲など、人間の欲望が良く顕れた素晴らしい絵ですね」
P 「そう手放しで褒められたもんじゃないだろうけど、すごい才能だな」
美希 「あふぅ…」
貴音 「わたしくし『書』であれば多少の心得があるのですが…」
律子 「あまり自信無さそうね」
貴音 「正直、春香の絵を除いて、みなより上手く描けている自信はありません…」
春香 「言い返したいけど言い返せない…」
.貴音 「ゆえに『書』を基本に描いてみました」
P 「よくわからないが見せてもらえるか?」
律子 「こ これって…」
貴音 「はい 『象』という『文字』の成り立ちから、わたくしなりの象を描いてみました」
亜美 「お姫ちん…」
真美 「ぶれないわぁ…」
P 「なんかある意味芸術的だけど、番組的には面白いかもだからOKだぞ貴音」
貴音 「面白い…ですか、わたくし真剣に描いたのですが…」
律子 「貴音のミステリアスな部分が見えていいんじゃないかしら?」
貴音 「そうですか、それなら良いのですが」
P (美希あたりにフォローを頼んでおこう…)
P 「気を取り直して次は誰に見せてもらおうかな…」
律子 「あら 真ずいぶん自信ありそうな顔してるわね」
真 「へっへーん ボク女の子らしい趣味にあこがれて、ちょっと絵とかも練習してたんです」
P 「へー じゃあ真、見せてくれるか?」
真 「いいですよー自信作です! どうぞ!」
伊織 「何よこれ!!」
真 「何って象だよ?」
やよい 「すっごく迫力がある象ですー」
P 「真… この乗ってる人は誰なんだ…?」
真 「南蛮兵ですよ、戦象に乗ってドカーン!バシーン!って」
響 「象がかわいそうだぞー」
全員 「「「「え!?」」」」
P 「おい響、まさか今の『象』と『ぞー』をかけたのか?」
響 「ぜ 全然ちがうぞ!自分がそんな寒いギャグいうわけないだろ!」
千早 「フフッ!…プフフ!」
響 「うがー!すべってなんかないぞ!」
P 「真は絵が上手いけど、もうちょっと著作権とか心配の無い絵にしてくれ…」
真 「カッコよく描けたんですけど、もうちょっと女の子らしい絵の方がよかったかな…」
雪歩 「でも真ちゃんっぽくて素敵かも ウフフ」
律子 「少し心配になってきましたね…」
P 「ま まぁ次は大丈夫だろ雪歩見せてくれるか?」
雪歩 「は はい!あまり上手じゃないですけど…どうぞ…」
春香 「わ!アイドルっぽいかわいい絵だ」
真 「すごいよ雪歩!、ボクもこんな風に描けば良かったんだね」
P 「雪歩…お前なら大丈夫だって俺は信じてたよ 」ホロリ
雪歩 「そ そんなことないですぅ」
律子 「ちょっと心配でしたが、雪歩は全然大丈夫ですね」
あずさ 「色づかいもかわいいですね~」
美希 「つっこみどころもないけど、雪歩の女の子っぽいイメージはグンとあがったの」
雪歩 「えへへ」
千早 「今の所アイドルの絵としては一番いいんじゃないかしら?」
やよい 「雪歩さんすごいですー!今度教えてもらっていいですかー?」
雪歩 「そんな褒められたら、私…恥ずかしくて…穴掘って埋まってますぅ!」
P 「どっちにしろ穴掘るんだな」
律子 「すごい真剣な顔して描いてたわね」
響 「うん 自分、象は飼ってないけど動物はみんな仲間だからな!」
P 「響はヘタでも大丈夫だな、むしろいじられ役のほうが、かわいいってイメージあるし」
春香 「ムキになって『自分、ヘタじゃないぞ!』とか言ってる姿が思い浮かぶかも アハハ」
響 「なんか、アイドルとしての方向性がわからなくなってきたぞ…」
響 「…なんか自信無くなってきたけど…はい」
全員 「!!!」
P 「ひ、響 お前めちゃくちゃ上手いじゃないか!」
律子 「ほんと…これ番組もてるくらいのレベルよね…」
真 「こ これ何も見ないで10分で描いたの?」
響 「自分いつも動物図鑑とか見てるし動物園もよくいくから動物ならなんとか…」
伊織 「…!」 ワナワナ
伊織 (このままじゃ 私の絵なんて普通すぎてTV的にもまずいことになるわね…)
伊織 (描き直して、もうちょっとディティールも加えてレベルを上げないと…!!)ペラッ カキカキカキカキ!!
亜美 「ん?」
真美 「あーいおりんズルしてるー!」
P 「コラ伊織、もう制限時間も過ぎてるから描き直しは駄目だぞ」
亜美 「兄ちゃんもああ言ってるし観念しろー いおりんー!」バッ
伊織 「あ!待って…まだ顔の途中だから!」
真美 「兄ちゃんパース!」
P 「別にヘタでも大丈夫だって、みんなにもフォロー頼んでおくし」
春香 「どうしたんですか?何かコメントをあげないとさすがに伊織もかわいそうですよ」
チラッ
春香 「…」///
やよい 「どうしたんですかー?みんな黙って」
P 「や やよいはみちゃ駄目だ!」
響 「いったいどんな絵なんだ?」バッ
P 「コ コラ響!駄目だって!」
バサッ
全員 「」///
やよい 「?」
真 「伊織、自分の描いた絵をよく見てごらんよ」///
伊織 「別になんてことな………いいいいい!!!!」
雪歩 「わ 私フォローのコメントなんて出来ないですぅ!」
P 「す すまん伊織こんな事になるなんて思っても…」
伊織 「ち ちがうのよ!これは何かの間違いなのよ!途中だったから!」
P 「う…うん 分かってるから みんな分かってるから」
伊織 「変態!ド変態!変態大人!!!!」ボカスカ
あずさ 「あらあら うふふふ」
伊織 「あれは象なのよ象、色塗ったら分かるんだから…」ブツブツ
千早 「あの…」
春香 「プロデューサーさん千早ちゃんのがまだ…」
P 「え? あ! すまん千早」
律子 「まぁ 忘れてしまうのもなんとなくわかりますけどね」
P 「そうなんだ、千早は歌とか芸術分野が得意っていうイメージがあって心配してなくてつい…」
千早 「かまいませんよ ウフフ、でも折角描いたので見てもらえますか?」
P 「ああ、もちろんだとも」
千早 「拙作ですがどうぞ」 テレテレ
美希 (一気に目が覚めたの!)
貴音 (面妖な!)
真 (とりあえず耳がない)
やよい (なんだか怖いですー…)
雪歩 (色が青すぎて何が何だか分からないですぅ)
響 (笑いながら血を吐いてるぞ…)
亜美 (サ サインまで書いてる!)
真美 (書かないほうがましなのに!)
春香 (千早ちゃん 私の絵さっきヘタって…)
伊織 (象だから象だから)ブツブツ
P 「ち 千早、これは一体…」
千早 「ちょっと個性を出して描いてみました」 フンスフンス
P 「はは…律子はどう思った?」
律子 「え ええ なんというか独創的な絵で…(ここで振るってプロデューサーひどいですよ!)」
千早 「みんな声も出ないみたいね、本番が楽しみだわ」
全員 「あは…あははは…」
P 「うん だからなんとなくでいいから、その人に合ったコメントを用意してあげておいてくれ」
伊織 「偉そうに言ってるけど、あんたの絵はどうなのよ」
春香 「うんうん プロデューサーさんの描く絵ってちょっと興味あるかも」
千早 「私の絵の後は見せにくいかもしれませんが、見せてもらえますか?」
P 「お 俺は関係ないだろ、番組に出るわけじゃないし」
亜美 「そんな事いってー、ほんとはめっちゃへたっぴなんじゃないの?」
P 「ムッ」
真美 「いるよねーへたっぴなのに評論だけは上手い人ー」
P 「ムカッ」
伊織 「ま どうせへっぽこプロデューサーの絵なんてたいしたことないわよ」
P カキカキカキカキ!!
おわり
SS初心者なので色々問題あったかもしれませんがまた頑張って書きたいと思います
おやすみなさい
乙
春香 千早 伊織 やよい 美希 貴音 自分で描いた
真 トレス
響 写真加工
亜美 真美 トレス後にモザイク処理
でした
こういうのも、イイネ!
絵心があるってすごいなぁ、尊敬する
Entry ⇒ 2012.09.24 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
洋榎「大阪デートや!」 初美「よろしくですよー」
洋榎「…………」
洋榎「…………ん」
洋榎「くぁ……あったま痛……」
洋榎「…………」
洋榎「寝とったんか……」
洋榎「…………」
洋榎「どこやここ」 キョロキョロ
洋榎「京橋か……?」
洋榎「……えーっと、何でこんな所で寝とったんやっけ?」
洋榎「えーっと……」
洋榎「確かウチ、大阪戻ってきたんやったな」
洋榎「結局団体戦はボロ負け、個人戦でもウチがちょっと惜しいとこまで行っただけで……」
洋榎「……」
洋榎「思い出したわ」
洋榎「絹達に爽やかーにバトンタッチするためにも、沈んだ空気どないかしたかったら……」
洋榎「お疲れさんパーティしようとしたんやった」
洋榎「そんでどうなったんやっけ……」
洋榎「……アカン、思い出されへん」
洋榎「……しかしまぁ、この頭の痛さといい、予想はつくわなぁ」
洋榎「どーせまた代行に見つかって、なんだかんだで飲まされて潰れたんやろ」
洋榎「これだから体育会系ノリ全盛期のオバハンはアカンわー」
洋榎「何がとりあえず生中やねん、こちとらまだ未成年やっちゅーねん」
洋榎「……絹達ちゃんと家帰ったんやろうな」
洋榎「昔代行が無理矢理飲ませた時の感じから行くと、恭子あたりはヤバイ気がすんねんけどなー」
洋榎「まぁ由子はクッソ強かったし、アイツが送ってくれとるやろ」
洋榎「……絹はちゃんと断れる子やけど、ウチがここに放置されたことを考えるとなぁ……」
洋榎「……酔って一見まともな絹にウチが預けられて、恭子と漫は由子と代行が送っていったってとこか」
洋榎「……」
洋榎「絹、一人で酔ったまま帰宅してたらええんやけど」
洋榎「アイツ乳でかいし美人やからなー」
洋榎「変な男にホテルにでも連れ込まれてたら……」
洋榎「…………」
洋榎「あ、あかん! 急いで帰らな!」
洋榎「ええっと、ICOCA、ICOCA……」
洋榎「あれ、無い……」
洋榎「ていうか、財布もなくない……?」
洋榎「……」 サーッ
洋榎「あわわわわ、どどどどないしたらええんや!?」
洋榎「お、おまわりさーーん!?」
初美「何を騒いでるんですかー?」
洋榎「うわあ、変態さん!?」
初美「失礼な人ですねー」
洋榎「ていうか自分よく見たら永水の副将やん」
洋榎「初音やっけ」
初美「違います、初美ですよー」
洋榎「ああ、そうやったな」
洋榎「初音がネギで初美がヌギ、よっしゃ覚えた」
初美「ほとんど初対面なのにえらい喧嘩の売りようですよー」
洋榎「わかっとらんなー」
洋榎「初対面やからこそ、フレンドリーに距離を詰めたろいう親切心やないか」
初美「詰めすぎて余裕でオーバーランですよー」
洋榎「つーかお前さん何しとるん」
初美「え」
初美「えと……その……」
初美「か、観光ですよー!」
洋榎「巫女服着て大阪旅行とかケッタイやなー」
初美「ははは……」
初美(ちょっとポカをやらかして、お仕置き兼ねて大阪まで自腹で来るはめになったとは言えないですよー……)
洋榎「あ、そや」
洋榎「金貸してくれへん?」
初美「え」
洋榎「いや、いきなりで申し訳ないんやけどね」
洋榎「ちょーっとまあ、大声じゃ言えない理由で財布盗られてもーて……」
洋榎「ウチ帰ったら帰すから、貸してくれたら助かるなーって……」
洋榎「……だめ?」
初美「……」
初美「うーん……」
初美「じゃあ、お礼に大阪観光案内でもしてくれたら貸してあげるですよー」
初美(どうせ大阪まで来たんだから楽しみ尽くしてやりますよー)
洋榎「いよっしゃ、決まりやな!」
洋榎「とりあえず腹ごなしにテキトーにコンビニで飯でもこうて電車乗ろかー」
初美「財布持ってない人間の言うセリフじゃないですよー」
洋榎「あ、やっぱり?」
初美「それに折角大阪まで来たんですから、たこ焼きとかが……」
洋榎「ちゅーてもこの辺美味いたこ焼き屋あったかなぁ」
初美「じゃあもうちょっと我慢を……」
洋榎「しゃーないなー」
洋榎「まぁよう考えたら思ったより腹減っとらんし、我慢したろ!」
初美「じゃあ何で言ったんですか……」
[京橋駅構内]
洋榎「さーて、うちに帰るついでに案内できる所は案内しようと思うんやけど」
初美「よろしくですよー」
洋榎「……とりあえずこれが都会名物自動改札機や」
初美「鹿児島にだって自動改札くらいありますよー!」
洋榎「え、そーなん」
洋榎「何か変なお面みたいなん持ち歩いとるし、児童ポルノな格好で居ても犯罪起こらんみたいやし」
洋榎「てっきり発展途上国みたいなトコかと」
初美「鹿児島の人に謝ってくださいー」
洋榎「あーいトゥイマテーン」
初美「……」 イラァ
[愛宕家近隣]
洋榎「ここがかの有名な、愛宕ハウスの最寄りコンビニでございまーす」
初美「これっぽっちも有名じゃないですよー」
洋榎「これから有名になるねん」
洋榎「あの有名美人雀士姉妹と有能監督という最強ファミリー愛用のコンビニとしてな!」
初美「さっさと財布取りに行きますよー」
洋榎「え、ツッコんでもくれへんの」
初美「そこまでする義務はないですよー」
洋榎「これだから関東人は」
初美「鹿児島は関東じゃないですよー……」
洋榎「はい、愛宕家ー!」
初美「……」
洋榎「何かコメントせーや!!」
初美「え、いや、だって……」
初美「人様の家を貶めるのって最低ですよー」
洋榎「貶す前提!?」 ガビーン
洋榎「何かあるやろ褒めるとこ!」
初美「う、うーん……」
初美「鹿児島は土地が安いからかもっと大きくて雰囲気ある民家がいっぱいありますから……」
洋榎「っかー、気に入らんわー!」
洋榎「グローバルスタンダードに考えーや!」
初美「日本のスタンダードは大阪じゃなくて東京ですよー」
洋榎「ああ!?」
洋榎「ちゅーわけでただいまーなんやけど……」
初美「?」
洋榎「…………」
洋榎「鍵まで盗られとる……」
初美「ちょ……」
洋榎「とりあえず誰かおるかも分からんしチャイム鳴らしてみるわ」 ピンポーン
初美「…………」
洋榎「…………」
初美「出ないのよー」
洋榎「ああクソ、出ろや!」 ピンポーンピンポンピンポンピンポピンポピンポポポポピンポーーーン
初美「おお、高橋名人ばりの16連射ですねー」
洋榎「おっかしいな……」
洋榎「今日休日やし絹は家におるはずやけど……」
初美「お出かけとかじゃないですかー?」
洋榎「せやったらええねんけど……」
洋榎「あのまま昨日帰ってきてへんっちゅー可能性もあるからな」
洋榎「ちょっと心配やわ」
初美「……ふーむ」
初美「窓から中を覗くとか……」
洋榎「せやな」
洋榎「庭から回りこむで」
初美「え、私もですか?」
洋榎「当たり前やろ、一人で家先残る気か」
初美「仮にも部外者の私がそこに行くのは色々と問題が……」
洋榎「ええから来いて!」
初美(うう……見つかったらもうどうにでもなれですよー!)
洋榎「よっと……ここからならリビングが……」
洋榎「お、絹や!」
洋榎「よかった……無事帰っとったんか……」
初美「無事帰った……?」
洋榎「ああ、いや、ちょっと昨日どんちゃん騒ぎしとったからな」
初美「……なるほど、どんちゃん騒ぎ」
洋榎「そうそう」
洋榎「まーそれで疲れとったんやろか」
洋榎「爆睡こいとるやないか」
初美「というか、疲れて眠ってしまったって言う感じですねー」
洋榎「せやなー疲れとるんやろうなー」
洋榎「いやもうホント疲労って怖いわーまるで泥酔したかのように眠ってまうねんなー!」
初美「何でそんな疲労を強調するんですかー?」
洋榎「え、いや別に」
洋榎「しっかしまぁ……」
洋榎「向こうが頭で横になっとるせいで……」
初美「太もも丸見えですねー」
洋榎「部屋着のハーフパンツが色気を醸し出しとるわ」
初美「ダボッとした衣服の隙間から秘部が見えそうですよー」
初美「ちょっと無防備すぎますねー」
洋榎「……」 ジトー
初美「?」
初美「何ですかその目はー?」
洋榎「いや、そのちまっこい背丈でも、棚の上にもの上げることはできるんやなと」
初美「?」
洋榎「あーしかしほんま絹はエロい体しとるな」
初美「呼吸する度にお胸が上下しているのが手に取るように分かりますよー」
洋榎「……おっぱいって、あないな動きするもんなん?」
初美「……私に聞いて分かると思ってるんですかー?」 ムー
洋榎「……すまん」
洋榎「あ、寝返りうった!!」
初美「うわ」
洋榎「ん?」
初美「今、動かした足の隙間から見えちゃいましたよー」
洋榎「な、おま、何見とんねん!」 ムキー
初美「ちょ、騒がないでくださいよー!」
洋榎「絹にセクハラかましていいのはウチだけや!」
初美「シスコンですかいい歳こいてー!」
洋榎「姉妹愛と言え!」
洋榎「……とりあえず絹に毛布かけたらなアカンな」
初美「……どうやって家に入るんですかー?」
洋榎「絹を起こすのも可哀想やしな」
洋榎「通常時はここに……」 ゴトッ
初美「植木鉢……?」
初美「その下に鍵でも入れてるんですかー」
初美「典型的ですけど、防犯的にはそれ大丈夫なんですかねー」
洋榎「鍵開けっぱで家留守にする九州人には言われたないわ」
洋榎「大体勘違いしてもろたら困る」
初美「へ?」
洋榎「ここに鍵なんてないで」
初美「じゃあ一体……」
洋榎「これはこうするためのもんや」 ヨッコラセ
初美「ストップ・ザ・投球モーション」
初美「何やってるですか!」
洋榎「何って、扉が開かへん絹起こせへんときたらもうガラス破るしか道ないやろ」
初美「そりゃそーかもしれませんけどもー!」
洋榎「大丈夫やって、セコムのシールはあれ貰いもんで別に入ってるわけとちゃうから」
初美「そもそも根本的な問題はそこじゃなくてですねー!」
初美「起こしたくないならガラス破壊音響かせちゃダメですよー!」
洋榎「……なるほど一理あるな」
初美「わかってもらえてよかったですよー」 ホッ
初美「とりあえず植木鉢は元に戻しておいてくださいよー」
洋榎「へいへーい」
初美「全くもう……派手に音がした場合、立ち位置的にヤバイのは私なんですからねー」
洋榎「ははは、せやなー」
洋榎「すまんかった……って、何かガムテープ貼ってるーーーー!?」 ガビーン
初美「セコムに入ってないなら、こうやって……と」 ヒュパッ
洋榎「躊躇なく怪しい棒で殴り抜いたーーーーーー!?」 ガビーン
初美「祈祷とかに使う道具はこういうことにも使えるのですよー」
洋榎「めちゃんこ罰当たりやな……」
初美「はい、これで音もなくガラスも散らばらず鍵を開けて入れますよー」
洋榎「え、あ、うん……」
洋榎(マジでガラス割りおった……オカンに見つかったら殺されてまう……)
洋榎「あ、上がるなら靴は脱いで――」
初美「そのへん抜かりはないですよー」
初美「こんなこともあろうかと持ってきていた手袋も装備してますしー」
洋榎「どんな事態を想定した大阪旅行やねん!」
初美「万が一妹さんが目を覚まして姿を見られても不審者扱いされて逮捕されないように――」
初美「結局さっき寄らされたファミマで貰った買い物袋に穴を開けてかぶれば完璧ですよー」 フフン
洋榎「不審者度マシマシやないか!」
洋榎「文字通り頭隠して尻隠さず状態やで!」
初美「通報されても特定されて逮捕されなきゃオーケーですよー」
洋榎「いやオーケーでも何でもないから!」
初美「おじゃましますよー」
洋榎「ほんで何で真っ先に上がっとんねん!!」
初美「まぁまぁ、ここまで完璧に変装したんですから、少しでも急いだ方が総合的には正解かなと」
洋榎「ガラス叩き割った時点でどう転んでも不正解に行き着く気がするんは気のせい?」
洋榎「さて、家に上がったはいいけど……」
初美「……妹さん、よく寝てますねー」
洋榎「風邪ひきそうやし、毛布かけたらな」
初美「その前に一揉みしたらダメですかねー」
洋榎「抜かり無いほど警戒するんやなかったっけ」
初美「……冗談ですよー」
洋榎「今にも舌打ちしそうなツラしとるぞオイ」
洋榎「大体絹の可愛さは胸やのうて、このサッカーで引き締まった足――」 ナデッ
絹恵「ん……」 モゾ
洋榎「!!」 ビクッ
初美「!!」 ビクゥッ
絹恵「おねえ……ちゃん……」
初美「お、おおお起きてしまったんですかー!?」
洋榎「いや、寝言みたいや……」
初美「驚かせないでくださいよー!」
絹恵「お姉ちゃん……大……好きだよ……」
洋榎「……絹……」
絹恵「置いて……いかないで……」
洋榎「絹……」
初美「涙……怖い夢でも見てるんですかねー」
絹恵「一人に……せんとって……」
洋榎「……大丈夫や、絹」
洋榎「ウチはいつでも絹と一緒やから」
洋榎「誰より絹を愛しとるし、いつだって絹のことを考えとるわ」 ギュッ
初美「……」
初美(何か……ちょっと胸が苦しいですよー……)
初美「妹さん、ちょっと落ち着きましたねー」
洋榎「あんまり悪夢見るようやったら起こそか思ったけど……」
初美「寝かせておいてあげた方がよさそうですねー」 ファサッ
洋榎「……毛布、とってきてくれたんか」
初美「ええ、毛布かけたいとか言うてましたのでー」
洋榎(それで躊躇なく人ン家の毛布引っ張り出せる所が凄いわ)
洋榎「……あ、そや」
初美「はいー?」
洋榎「ちーっとばっかし、シャワー浴びてきてもええやろか」
初美「え」
洋榎「……いやほら、路地裏みたいなとこで目覚めたし……」
洋榎「さすがにちょっとこのままってのは恥ずいやん?」
洋榎「思ったより臭くなっとらんけど、やっぱりほら、一応は今から観光地とか行くかもしれへんわけやし」
初美「ふむ……」
洋榎「それにほら、ウチって美人やから……」
初美「BEGIN?」
洋榎「美人や! 沖縄担当は銘苅やろ!!」
初美「すみません、あまりに結びつかない単語だったもので……」
洋榎「なんでやねん!」
洋榎「これでもウチは姫松のアイドルやねんで!」 ビシッ
初美「それで、美人だからなんだっていうんですかー?」
洋榎「今のセリフガン無視か!!」
洋榎「まぁほら、ウチ財布盗られたわけやん?」
初美「アホですねー」
洋榎「やかまし!」
洋榎「まぁとにかく、そのくらい爆睡こいてたわけや」
初美「間抜けですねー」
洋榎「黙らっしゃい!!」
洋榎「とにかく――その、なんつーか、痴漢とかにあっても気付かなかったと思うわけで」
初美「無防備ですねー年頃の娘なんだから気をつけましょうよー」
洋榎「お前には言われたないわ!!!」
洋榎「とりあえずそんなわけで、寝とる間に襲われとったかもしれんから……」
洋榎「シャワー浴びておきたいねん」
初美「妹さんみたいなムチムチドーンならともかく、その体を襲う人なんて……」
洋榎「こ、これでも結構男子からえっちな目で見られとるんやで?」
初美「痴漢冤罪だけは起こさないでくださいよー」
洋榎「誰が自意識過剰やねん!!」
洋榎「あーもう!」
洋榎「とにかく風呂に行くから!」
初美「股間が痛まないのなら、犯されてる心配はないと思うんですけどねー」
洋榎「髪とか肌とかに、その、なんや……」
洋榎「こすりつけられとるのかもしれへんやん」
初美(意外とナイーブなんですねー……)
洋榎「とりあえず入ってくるから!」
洋榎「冷蔵庫の中の茶でも飲んで適当にしとってや!」
洋榎「あ、絹をいじめるのだけはアカンで!」
洋榎「ほんなら!」 タッタッタッタッタッ
初美「……」
初美(さ、さすがにこの状況で適当にくつろぐっていうのは無茶ですよー)
初美「…………」
初美「薄い毛布にくるまった薄着の妹さんの肢体を見ながらシャワーの音を聞くってなかなかニッチなエロスがありますねー……」
初美「…………」
初美「お、落ち着かないですよー」
初美「妹さん、起きなければいいんですけど」
初美「…………」
初美「ていうか起きられたら完全に積みですよー……」
初美「…………」
初美「この場に居るのは限界ですよー」
初美「とはいえお風呂に行くわけにもいかないですし……」
初美「妹さんをいじめなければ何してもいいみたいですから、お部屋に避難させてもらいますー」
[洋榎の部屋]
初美「おじゃましまーすと」
初美「……ふむ、なかなか広いですねー」
初美「中学以降放置してたと思しき勉強机が2つ……」
初美「姉妹で1部屋ですかー」
初美「ベッドも2段ベッドですし、随分仲良しさんだったんですねー」
初美「私達もなかなか仲良しこよしですけど、この姉妹には負けそうですよー」
初美「何か二人で撮った写真とか妹さんの机に飾ってありますし……」
初美「……部屋も随分整理されてますねー」
初美「予想じゃもうちょっと物が散乱しているかと思ってましたけど」
初美「……妹さんが、頑張ったんでしょうねー」
初美「……」
初美「とりあえず妹さんが整理していなさそうな所をチェックしてみましょうかー」
初美「……」
初美「机の引き出しの一番下を全部開けて……と」 ゴトッ
初美「その下のスペースを探れば、ほら……!」
初美「大事そうな手帳~~!!」 ペカー
初美「多分日記か何かですよね~」
初美「……」
初美「まぁ妹さんをいじめる以外は特に禁止されてませんしねー」 パラパラ
『今日は恭子と由子とサンマをやった』
『いっぱい勝てた。楽しかった』
初美「夏休みの宿題として無理矢理書かされた小学生の絵日記並の内容ですよー……」
『今日の夕飯はコロッケだった。うまい』
初美「うわぁ」
『絹が告白されたらしい。どこのウマの骨とも分からん奴に絹をやれるかい!!』
初美「これはシスコンですねー」
『今日は官とく代行が来た』
初美「めちゃくちゃ書き直した痕跡があるうえに誤字と平仮名ですかー……」
『おっぱいが大きくなるための本を買う所を後輩の漫に見られた』
『あいつ気付かん振りしとったけど後ろ姿がプルプル笑いを必死にこらえるソレだった』
『むかつくから今度差し入れに振りまくったコーラ渡そうと思う』
初美「この人、わりと普通の人生なのに、日記読む限り毎日楽しそうなのよー」
『今日から全国大会』
『ウチが皆とたたかえる最後の夏』
『絶対に、勝ちたい』
『勝ってまた、全国4強に入りたい』
初美「……」
初美(ちょっと胸が痛みますねー)
初美「……」
初美(大会の記録……)
初美(見てると心が痛まないわけではないのに、目が離せない……)
初美(初戦突破の時の喜びや打ち上げのこと……)
初美(私達を破ったあとの姫松の人々のこと……)
初美(……そして、敗れた時のこと)
初美(その後の個人戦の感想も含めて……)
初美(自分も体験したことだけに、胸がズキズキと痛みますよー)
初美(……特に……)
初美(友達への、面と向かって放せない本音のページはいろんな意味で読むのがきつかったですよー)
『明日は、打ち上げをしようと思う』
『皆を驚かせてやるわ!』
『色々ジョークグッズも買ったし、楽しみやわ』
『……それか、最後やし、泣かせにいくべきやろうか』
初美「……」
『あいつらには、伝えたいことばがいっぱいある』
『ありがとうじゃ足りないほどの感謝の言葉や、好きだった所』
『思い出話に、アドバイス』
『きりがないことをどう伝えたらええんやろ』
初美「……ああ見えて、結構考えてたんですねー」
初美「……私も、逃げてばっかりいないで、いい加減姫様に遺す言葉を考えないとダメですねー」
『皆のことがごっつ好きやけど、伝えるのは照れくさいわ』
『黙ったまま卒業してもええ気はするねんけどなぁ』
『それかやっぱ言うべきやろか』
『普段のキャラにのっとって、おふざけ的に言うべきか』
『それとも、真面目に想いを伝えるか』
『どないしたらええんやろか』
初美「……」 パラ
初美(結局……どうしたんでしょうかねー)
初美(ちょっと気になるんですけど)
初美「……と、そろそろお風呂から上がってきそうですねー」
初美「この日記、さすがに適当に置くことは出来ないですよー」
初美「かといって、机の奥に眠らせて陽の目を見せないというのももったいないし……」
初美「えーっと」 キョロキョロ
初美「……よし」 ヨイショット
初美「とりあえず、共用っぽい本棚の辞書の横に挿しときましたよー」
初美「これで妹さんがいつか見つけてくれるでしょー」 ニコー
初美「やっぱりこういうのは、ご家族の方に発見されてなんぼですからねっ」 ウフフン
洋榎「あがったでー」 ペタシペタシ
初美「わわわっ、服着てくださいよー///!!」
洋榎「えー……自分がそれ言うてまう?」
初美「わ、私は服着てますしっ!」
洋榎「バスタオルだけのウチより肌面積多いやんけ」
初美「……そ、それより!」
初美「早く着替えて大阪観光行きましょう!!」
洋榎(話そらしおった……)
初美「お洋服はー」
洋榎「着たでー」
初美「カバンはー?」
洋榎「持ったー」
初美「それじゃあ、お金はー?」
洋榎「……盗られたからない」
初美「……貯金はー?」
洋榎「か、関西人は宵越しの銭は持たないから……」
初美「それこそ関東人だった気がしますよー」
初美「しょうがないですねー、ちょっとくらいなら奢りますよー」
洋榎「ほんまかー!?」 オメメキラキラ
初美「そのかわり行く所とかは決めさせてもらいますよー」
洋榎「そらもうお任せしまくりよ!」
初美「それじゃ、とりあえず行きましょうかー」 ガラガラ
洋榎「あ、また窓から出てくんや……」
初美「そりゃ窓から入ったんですから、窓から出ますよー」
洋榎「普通ドアから出てかへん?」
初美「入った所と出ていく所が異なっていて許されるのは食べ物くらいですよー」
洋榎「可愛い顔してさらっとシモネタ言いおって……」
[駅]
洋榎「とりあえず駅まで来たわけやけど……」
洋榎「どーこ行くかなぁ」
洋榎「何か行きたいトコでもあるかー?」
初美「それが決まっていたら一人でさっさと回ってるですよー」
洋榎「……まぁ、せやろな」
洋榎「とりあえず電車乗ってから考えるってのもありやな」
洋榎「デートの定番言うたら海遊館やけど……」
初美「……これってデートなんですかねー?」
洋榎「デートでええんちゃう?」
洋榎「ウチはケッコーアンタのこと気に入ったしな!」
初美「……まあ、じゃあデートってことでいいですよー」
洋榎「いしょっしゃ!」
洋榎「大阪デートや!」
初美「よろしくですよー」
洋榎「そういやこっちって泊まっていくん?」
初美「デート開始後いきなりホテルのお誘いとか最低ですよー」
洋榎「違うわ!」
洋榎「泊まってくんと日帰りとじゃプランの組み立て変わってくるやろ!!」
初美「てっきり泊めてくれるのかと思いましたよー」
洋榎「……まぁ、絹さえよければ泊めてやってもええんやけど」
洋榎「オカンが何て言うかやなー」
初美「そんなマジで考えられても困りますよー」
初美「……一応夜は予定があるから一緒にはいられないんですよー」
洋榎「そっかー残念やなー」
洋榎「ウチと居れんでお前も寂しいやろー」 ケラケラ
初美「むしろ夜は静かに過ごしたい派ですから清々ですよー」
洋榎「何やとォ!」
洋榎「まぁでも日帰りやったら海遊館はやめとこか」
洋榎「どうせ定番の道頓堀あたりは外せへんのやろ」
初美「そうですねー」
初美「折角なんで、大阪の中心地に行ってみたいですよー」
洋榎「中心地ねぇ」
初美「大阪の学生がよく行く街を気ままにブラブラしてみたいですー」
洋榎「ああ、そうか、鹿児島にはジャスコくらいしかブラブラするとこないもんな」
初美「鹿児島なめたらこの神事に使う有難い棒を根本まで挿しますよー?」
洋榎「どこに!?「」
洋榎「まぁ、せやったらとりあえずは難波方面やな」
初美「おお、聞いたことありますよー」
洋榎「道頓堀でブラブラ食べ歩いてもよし、なんばパークスあたりで買い物するもよし」
洋榎「日本橋にはオタロードとかいうのもあるみたいやし、なかなか楽しめるやろ」
洋榎「その後は歩いて心斎橋通って梅田まで出たらええか」
初美「梅田……って、確か大阪駅でしたよねー」
洋榎「まぁ、とりあえず同義と思っててもええんちゃう」
洋榎「とりあえず梅田ついたら美味いもんくってバイバイでええやろ」
洋榎「別の場所で用事あっても梅田からなら行きやすいやろうし」
洋榎「ほんまやったら新世界で串かつ食ったりしたかったんやけど、昼から串かつっちゅーのもアレやしな」
初美「じゃあ時間があったらってことにしておきますよー」
洋榎「せやなー」
洋榎「通天閣とか大阪城とか見たい場所あったら先言うてくれや」
初美「そのへんは今度姫様達と見に来たいから、今回は人の多い繁華街に行きたいですよー」
洋榎「おいおい、今からデートやっちゅーのに、他のオンナとのデートの話はNGやで」
[難波]
洋榎「ちゅーわけで、なーんばー!」 イエーイ
初美「おー、人がいっぱいですねー」
洋榎「せやろーすごいやろー!」
洋榎「ちなみにあっちに行くとビックカメラがあるねんで」
洋榎「あ、ビックカメラっちゅーのは家電量販店で……」
初美「そのくらい知ってますよー!」
洋榎「ああ、てっきり家電量販店すら知らんものかと」
初美「ビックカメラはないですけど、ヤマダ電機とかベスト電器はちゃんとあるですよー」
洋榎(ベストデンキってなんやろ……)
洋榎「んでどの出口から出る?」
初美「ほえ?」
洋榎「オタロードとかいうとこ行くんならあっち」
洋榎「ほんでもって道頓堀行くならあっち」
洋榎「買い物するんやったらあっちって感じやけど」
初美「うーん……」
初美(どこ行くのがいいのかさっぱりですよー)
初美(ここはオカルトに頼ることにしますよー)
初美(姫様達みたいに上手くは出来ないけど……)
初美(大阪の観光案内人を下ろして――と)
初美(どうしたらいいか教えて下さい!)
オタロードに行くか、道頓堀に行くか、買い物エリアに行くか
>>132
洋榎「ちゅーわけでここがオタロードや」
初美「おおー」
初美「おかしな格好の人って、意外といないものですねー」
洋榎「せやな、少なくともこの中で一番奇抜な衣装着とるのはお前や」
初美「そろそろブランチにしたいですよー」
洋榎「オタロード方面やったらバッファローカレーあたりがウチは好きやけど……」
洋榎「折角オタロードまで来たんやし、メイドカフェとやらに行ってみたいなぁ」
初美「たこ焼き食べたかったですよー」
洋榎「それやったら道頓堀に出なアカンかったわ」
初美「じゃあもうちょっと我慢しますー」
初美「大阪までせっかくきたし、お店に入らないで食べ歩きたいんですよー」
洋榎(大阪のイメージ食べ歩きしかないんやろか)
洋榎「ケバブごっつ食いにくくない?」
初美「2人で1つにして正解でしたねー、結構ボリュームありますよー」
ちゃちゃのん「…………」
洋榎「あれ?」
初美「どうかしたですかー?」
洋榎「いや、あいつ……」
初美「ん?」
洋榎「家老渡の奴やん」
初美「あー……?」
洋榎「ウチ、個人戦でも戦ったからよう覚えとるわ」
洋榎「確かささのんだかって自分を呼んでた気が」
初美(よう覚えとる言うたわりにうろ覚えですねー……)
ちゃちゃのん「……ふぅ」
初美「佐々ゴニョゴニョさん」
ちゃちゃのん「わひゃぁ!?」 ビクッ
洋榎「凄い声出したな……」
初美「あ、驚かせてごめんなさいですよー」
ちゃちゃのん「あれ……アンタ……」
洋榎「久しぶりやな!」
洋榎「浪速の雀姫愛宕洋榎とはウチのことやで!」 フッフフーン
ちゃちゃのん「永水の副大将の……!」
初美「はいーお互い戦ったことはないのでこれがはじめましてですねー」
洋榎「って無視か!!」
初美「日本橋でお買い物ですかー?」
洋榎「どうせエロっちい本なんやろー」
初美「ホモ本を買った可能性も捨て切れないですよー」
ちゃちゃのん「ち、ちがっ……///!」
ちゃちゃのん「そんなん購読しとらんよ……!」
洋榎「じゃあ何しとってんこんな店で」
初美「思いっきりオタショップから出てきましたよねー」
ちゃちゃのん「え、えと、その……」
ちゃちゃのん「ちゃちゃのん、アイドル人気があったから、その……」
ちゃちゃのん「水着写真集出すことになっとって、それのイベントの一環で……」
ちゃちゃのん「その、握手会とトークショーをしに……」 テレテレ
初美「はぁ……」
洋榎「チッ……」
ちゃちゃのん「何か心底面白くなさそうなリアクションされたーーーーーーー!?」 ガビーーーン
初美「よくこの時期にできましたねーそれ……」
洋榎「ボロッカスに負けた直後やっちゅーのになぁ」
ちゃちゃのん「……あんまりしょげとっても、何にもならんけぇ」
ちゃちゃのん「あんまり引きずっとっても、あの人に笑われそうやしな」
洋榎「……ほほう」 キュピーン
洋榎「何や、オトコでもできたんか!?」 ウリウリ
初美「ほほう両想いですかー? 片想いですかー?」 ウリウリ
ちゃちゃのん「ちょ、やめてよー恥ずかしいー!」 ウワーッ
ちゃちゃのん「あ、そ、そうじゃ!」
ちゃちゃのん「このあと暇かのう?」
洋榎「話変えおったな」
初美「確実に動揺してるですよー」
ちゃちゃのん「あ、あのさ、このあとちゃちゃのん麻雀に誘われとるけぇ!」
ちゃちゃのん「よ、よかったら一緒に……」
洋榎「麻雀かーええなー」
初美「残念ですけど辞退するですよー」
洋榎「ええ!? 何でや!!」
初美「……だって、一度打ち始めたら、絶対夜まで続けるじゃないですかー」 ヒソヒソ
洋榎「うっ……」
洋榎(否定できへん……)
初美「それにちょっとやらないといけないことがあるので……」
洋榎「まーまたの機会ってことやな」
ちゃちゃのん「それは残念じゃよー」
ちゃちゃのん「……それじゃ、また」 フリフリ
初美「はい、またねーですよー」 フリフリ
洋榎「おー、次会った時もボッコボコにしたるわー!」 ブンブン
洋榎「……」
洋榎「はー、打ちたかったわ」
初美「もー、大阪デートはどうしたんですかー」
洋榎「そうやけどぉ……」
初美「さすがの私でも、そこまで目移りされるとちょっと凹みますよー」
洋榎「う……す、すまん」
洋榎「でもちょっと気にならへん?」
初美「……そりゃまぁ、あの人お胸も私より大きいし、可愛らしい顔ですけど……」
洋榎「いやそーやのうて」
洋榎「アイツの対戦相手や」
初美「ふむ?」
洋榎「大阪のイベントでこっち来とって、こっちで対戦相手捕まえたんやろ?」
初美「……確かに気になりますねえ」
洋榎「もしそれが姫松か千里のメンツ、もしくは荒川憩ちゃうかったら……」
洋榎「そいつは腕をあのオンナに見込まれた猛者っちゅーことになるからな」
洋榎「来年の大阪の台風の目になるかもわからん奴の顔は拝んでおきたいやろ」
初美「……もう卒業してしまうのに、熱心ですねー」
洋榎「後輩たちは気になるもんやろ」
初美「ですねー」
初美「しかし……結構評価してるんですねーさっきの人」
初美「あの人が選んだってだけでそれなりの評価を下すようですけど」
洋榎「まぁウチほどではないけど、なかなかに強い奴やしな」
洋榎「アイドル人気っちゅーのが気に食わんけど」
初美「まぁ、アイドル人気なさそうですもんねー」
洋榎「誰が不人気や」
初美「誰がとは言ってませんよー」
洋榎「じゃあその哀れんだ目やめ」
洋榎「さて、アイツを軽く尾行しとるわけやけど」
洋榎「アイツ道頓堀までやってきおったな」
初美「たこ焼き屋さん並んでますねー」
洋榎「この辺は分母も多いしなあ」
洋榎「かといって銀だこは変化球やからいきなり食わせるんもなー」
初美「とりあえず私買ってくるから尾行お願いしていいですかー?」
洋榎「おお、まかしとき」
初美「オカルト使えばそっちの居場所ならわかるのでー」
洋榎「なにそれこわい」
初美「あ、勝手に声かけにいったりしないでくださいよー」
洋榎「わ、わかっとるわ!」
初美「絶対麻雀誘われてホイホイ行くタイプですしー」
洋榎「大丈夫やっちゅーねん!」
初美「途中で知らない人についてっちゃダメですよー」
洋榎「小学生か!!」
初美「電信柱は姿を隠すものであって、そこでおしっこしたらダメですよー」
洋榎「人扱いですらない!?」
初美「あと、迷子になったら早く戻って――」
洋榎「もうわかったから!」
洋榎「愛宕をなめるな!」 卍
初美「?」
洋榎「……」
洋榎「み、見失ったら困るからもう行くわー///!」 ドヒューン
初美「何だったんですかねーあのポーズ」
洋榎「えーっと、おったおった……」
洋榎「おーおー声かけられとる」
洋榎「この辺りは変なスカウトやナンパも多いから気を付けなあかんでー」
洋榎「っとと、あぶな」
洋榎「油断しとるとすぐぶつかりそうになるな」
洋榎「休日の難波で立ち止まるのはほんま困難やで……」
洋榎「――――!?」
洋榎「おいおい……」
洋榎「冗談やろ」
洋榎「どういうことやねん」
初美「おまたせですよー」
初美「たこ焼きうまうまですよー」
洋榎「……」
初美「どうしたですかー?」
洋榎「アレ見てみ」
洋榎「ごっついメンツになっとるで」
久「お待たせー」
久「ごめんねー、ちょっと後輩に頼まれてた服とか見てたら遅れちゃってさー」
胡桃「待ち合わせにはゆとりを持つ!」
胡桃「佐々野さんなんて、私より早い20分前にはいたんだから!」
ちゃちゃのん「他にやることなかったけぇ」
ちゃちゃのん「鹿倉さんも早かったのう」
胡桃「まぁ私は最初からこの辺で御飯食べてたからね!」
初美「……」
洋榎「なぁ」
初美「ダメです」
洋榎「いや、あのさ」
初美「お断りしますよー」
洋榎「一局だけ」
初美「絶対終わらないじゃないですか」
洋榎「そ、そんなことは……」
初美「勝つまでやるタイプですよねー?」
洋榎「か、勝つから、いきなり」
初美「勝てるとは限らないですよー」
洋榎「だ、大丈夫やって全員に勝ったことあるし!」
初美「勝ってもリベンジ宣言されたら受けて立っちゃうタイプじゃないですかー」
洋榎「そ、そうやけど……」
初美「おとなしくメンツを確認したんだから観光の続きしますよー」
初美「大体もうメンツは決まってるんじゃないですかー?」
洋榎「そうかもしれへんけども……」
洋榎「さっきウチらを誘ってくれたし、乱入大歓迎っちゅーことやろ」
初美「……そんなに乱入したいものですかねー」
洋榎「麻雀馬鹿ならあんだけのメンツが集まりゃそらワクワクもするで!」
初美「むー」
初美「そういえばはるるも笑ってたし、あのメンバーは確かにニコニコしたくなるかもしれませんけど……」
洋榎「せ、せやろー!」
洋榎「せやから――――」
初美「あ、もう一人誰か来ましたよー」
洋榎「誰や!?」
久「そういえば主催は?」
胡桃「まだみたい!」
ちゃちゃのん「あ、あそこ!」
胡桃「全力疾走して――あ、コケた」
ちゃちゃのん「痛そう……」
久「うーん、走る度にバインバイン揺れてるわね……」
ちゃちゃのん(……ちゃちゃのんもあのくらいあれば……) むにむに
胡桃(うわあ、往来で自分の胸揉んでる……!!)
漫「あ、あの……!」 タタタタタッ
漫「お、遅くなって……すんません……!」 ゼハーゼハー
漫「……ハヒー」 ゼヒューゼヒュー
ちゃちゃのん「あはは……お疲れ様じゃよー」
胡桃「もっとゆとりを持って行動する!」
漫「す……すんません……」 ゼハーゼヒー
ちゃちゃのん「と、とりあえず呼吸落ち着けて……」
久「そうそう、膝に手をついてそうしてると胸元がセクシーよ」
漫「ど……どこ見てはるんですか……」 ゼハー
胡桃「飲む?」 スッ
漫「あ、ありが――――」
胡桃「塗る制汗剤」
漫「いりませんよ!!」
胡桃「冗談」
胡桃「制汗スプレー、はい、使っていいよ」
漫「あ、ありがざっす……」 フヒー
久「そういえば、滝見さんは?」
漫「いや、なんか迷子になったってメールが来て……」
漫「とりあえず迎えに行って、ここ来る途中の雀荘の前で待機してもろてます」
胡桃「あー、それで遅れたんだ」
ちゃちゃのん「メールくれたらよかったのに」
漫「あ、そっか……」
漫「すんません、時間ギリギリで焦っちゃってて……」
久「いつでも冷静にいないとダメよー」
久「テンパるとろくなことがないんだから」
胡桃「それ貴女が言っちゃうんだ……!」
久「経験者だからこそのセリフよ」
洋榎「何であのメンツにスズが混じっとんねん」
初美「不思議な集まりですねー」
洋榎「ていうか、滝見って確かお前ンとこの……」
初美「ですねー」
初美「はるると一緒にこっちに来たんですけど……」
初美「はるるは用事があるって言ってたので……」
洋榎「はー……その用事っちゅーんがこれか」
洋榎「……」
洋榎「って何で全国ン時の中堅メンツ集めておいてウチだけハブやねん!」
洋榎「ウチが混ざらな片手落ちやろ!」
初美「お、落ち着いて下さいよー」
久「しかしまぁ、変わったメンツよねぇ」
胡桃「何だか団体戦が懐かしい」
ちゃちゃのん「ちゃちゃのんだけ1回戦負けってのが悲しいのう……」
漫「す、すんません……」
漫「私のワガママでお忙しいとこ集まって頂いて……」
久「いえいえー」
胡桃「いいリベンジの機会だと思っとくよ!」
ちゃちゃのん「それに丁度こっちには仕事も入っとったしのう」
洋榎「いやいやリベンジするんやったらやっぱりウチが混ざらなアカンやろ!!」
初美(もういっそこの橋から突き落としたら黙ってくれますかねー)
久「しかしまぁ、まっさか引退直後にこんな豪勢なメンツで卓を囲めるなんてね」
ちゃちゃのん「そっかー、そういえば今日のメンツで引退じゃないの上重さんだけじゃったかー」
漫「す、すみませんなんか……」
胡桃「いいんじゃないかなー」
胡桃「相手の強化を防いで自分を強化するのなら、引退した人を使うのが一番だしー」
漫「べ、べべべ別にそんな腹黒いことを考えていたわけじゃ……!」 アタフタ
久「あはは、まあ別にそういう思惑でもいいんだけどねー」
ちゃちゃのん「ちゃちゃのん達もまだ麻雀は続けていきたいし、強い相手との試合は大歓迎じゃ!」
久「それに、私の後輩達ならきっと連覇してくれるでしょうし!」
胡桃「いいなー、私も後輩欲しかったなー」
漫「あ、あはは……」
洋榎「……何やアイツ、強くなりたかったんか」
初美「見事に全国じゃ足引っ張ってましたしねー」
洋榎「そないな理由やったら、ウチらに相談したらええのに」
初美「人望ってやつですねー」
洋榎「……」 グリグリグリ
初美「あああああ無言の攻撃はマジギレっぽくて怖いですよ~~~!」 ウワーン
久「しかし、頑張るわねぇ」
漫「……そら、頑張りますよ」
漫「結局また、シードから弾かれてまいましたし」
漫「……もう、負けたないんです」
漫「強くなりたい……姫松を引っ張れるくらい……」
漫「エースになりたいんです」
漫「末原先輩や、真瀬先輩……」
漫「それに――主将……愛宕先輩のためにも」
漫「来年こそ、優勝旗を持ち帰りたいんです」
久「それでわざわざ、私達を相手にねぇ」
漫「愛宕先輩が戦った人達と戦えば、何か掴めるかな思いまして……」
久「もういない、あらゆる面での主柱であった主将みたいになりたい、か――」
胡桃「あそこまでマナ悪にはならないでいいからね!」
ちゃちゃのん「泣かせる話じゃよー」 ズビー
胡桃(うわ、涙もろっ!)
洋榎「…………」
初美「…………」
洋榎「…………」 スッ
初美「あ、どこ行くですかー」
洋榎「心斎橋にでも行くでー」
初美「……麻雀はもういいんですか?」
洋榎「秘密特訓したいんやったら、させたろやないの」
洋榎「こーいうんは気付かん振りして評価だけしてやるっちゅーのがオトコってもんや」
初美「オトコではないと思いますよー」
洋榎「まぁなんにせよ……しゃーないからここはスズの矜持を尊重したるわ」
洋榎「来年には、戦い甲斐ある雀士に育つとええねんけど」 スタスタ
初美「……」
初美「憧れて、成ろうとされて、照れてるんですかー?」
洋榎「ば、誰が照れんねん!!!」
初美「わかりやすいですよー」
[心斎橋]
洋榎「ちゅーわけで心斎橋や」
初美「ここは何があるんですかー?」
洋榎「んー……パルコとかあったんやけど……」
洋榎「今はまぁ、ライブハウスとかそーいうとこか」
洋榎「ああ、ジョジョバーとかがあったりもするんやで」
初美「ジョジョ?」
洋榎「……自分ジャンプとか読まんタイプか」
初美「週刊誌のですか?」
洋榎「ああ」
初美「週刊雑誌はモーニングとチャンピオンしか読んでないですよー」
洋榎(アカンどっちも読んどらん奴や……)
洋榎「どっか寄りたいとこあったら言ってやー」
初美「了解ですよー」
洋榎「とりあえずブラブラするでー」
初美「はーい」
洋榎「……」 ブラブラ
初美「……」 ブラブラ
洋榎(アカン会話なくなった!!)
初美(無言は無言で何か気まずいですよー!)
初美「あ、あの!」
洋榎「な、なんや」
初美「私、そういえば、>>205に行ってみたかったんですよー!!」
安価下
安価下
初美「USJに行ってみたいですよー!」
洋榎「うへぇ」
初美「何ですかそのリアクション」
洋榎「いや、ちーと遠いなあと思って……」
洋榎「ていうかUSJとか厨房の時行ったっきりやから案内はあんま出来へんで?」
初美「ちょちょーっと回るだけだから大丈夫ですよー」
初美「どうせディズニーと違って乗り物サクッと乗れますしー」
洋榎「なんちゅーことを」
[電車]
洋榎「とりあえずUSJで何乗るかやなぁ」
洋榎「ウチ、バックドラフトのとかジュラシックパークのとか……あとはジョーズとバックトゥザフューチャーのくらいしか分からんで」
洋榎「しかもまだあるのかすら不明やし」
初美「大阪人のくせにダメダメですよー」
洋榎「ひらパー派やねんからしゃーないやろ」
初美「ひらパー?」
洋榎「ひらかたパークっちゅーのがあんねん」
洋榎「ブラックマヨネーズがひらパー兄さんとかいって広告塔やってるんやで!」
初美「ぶらっくまよねーず……?」
洋榎「何や自分、お笑いとか見ん人か」
初美「笑点ならたまに見ますよー」
洋榎(花月あたりに行かんでよかった……)
初美「そういえば、USJってパレードとかあるんですかねー」
洋榎「あるにはあるでー」
初美「グッキー!とかいうやつですかー?」
洋榎「それ知らんわ」
洋榎「でも確か、ワンピースのプレミアムショーだか何かをやっとったような……」
洋榎「……さすがにワンピースくらいは分かるやろ?」
洋榎「あの超有名海賊漫画や」
初美「海賊漫画と言ったらフルアヘッドココですよー」
洋榎「……すまん、それ分からんわ」
[ユニバーサル・スタジオ・ジャパン]
洋榎「ちゅーわけで、来たでUSJ!」
初美「とりあえず日が暮れるまでブラブラするですよー」
洋榎「あ、あのクッソでっかい地球の前で写真撮るかー?」
初美「やめときますよー」
洋榎「そうかー?」
初美「時間が惜しいですからさっさと建物見て回りましょう」 マガオッ
洋榎「え、あ、うん」
洋榎(あ、あれ、もしかしてこいつテーマパークガチ勢……?)
初美「次はこのエリアに行きますよー」
洋榎「ま、まって……」
洋榎「ちょ、疲れたて……!」 ハァハァ
初美「もー」
初美「そんなことではディズニーランドは戦いぬけ無いですよー」
初美「如何に無駄なく効率的にアトラクションを乗れるかが鍵なんですよー」
初美「それによって建造物に裂ける時間も決まりますし」
初美「USJは初ですから、パレードの良スポットを陣取るには何時間前に並べばいいかもわからないんですからー!」
洋榎(帰りたい……)
洋榎「も、もっとこう……なんちゅーの?」
洋榎「スヌーピーやセサミストリートにきゃー可愛いとかいうてまったりのんびりしてみたり……」
洋榎「もしくはハリウッドエリアでうひょーかっこえー言うてブラブラしてみたりやな……」
初美「仕方ないですねー」
初美「一応そっちの意見も尊重してあげますよー」
洋榎「ほんまか!」
初美「じゃあ割りとのんびり待つ奴に乗りましょうか」
初美「ハリウッドとスヌーピーとかなら……多分ハリウッドとかの方がいいですよねー?」
洋榎「おう!」
洋榎「つってもハリウッドエリアって何あったっけなー」
洋榎「ジョーズやバックトゥザフューチャーとかは別エリアやったっけ?」
洋榎「ジュラシックパークとか結構おもろかったんやでー、最後の落下クッソ怖いねんけどな!」
初美「……あー……絶叫得意じゃないんですかー」
洋榎「べ、別に苦手やないで!」 アセアセ
初美「……ならいいんですけどー」
洋榎「しかしこの乗りもん初めて乗るわー」
初美「ああ、どうりで……」
洋榎「?」
洋榎「しかしハリウッド・ドリームとか、何かイッツアスモールワールドを思い出すネーミングやなー」
洋榎「見た目通りお子様ってか!」 ガハハ
洋榎「まぁでもたまにはのんびり児童向けに乗るっちゅーのもありやな!」
初美「……」 アワレミノメー
ハリウッド・ドリーム・ザ・ライドは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのハリウッドエリアにある新感覚ジェットコースター。
ライドは、椅子に腰掛けると足が浮くように設計されていて体を支えるのは腰元の安全バーだけであるため、宙に浮いているような感覚が味わえる。それに加え、コースターにはマイナスGが味わえるポイントがあり、次の3つが挙げられる。
・キャメルバック: 意味は「らくだの背中」。「こぶ」と速度でマイナスGをつくる。メインゲートから見える大キャメルバックは迫力満点。
・ホースシュー: ユニバーサルシティ駅から見えるこの急カーブはこれ。大きく放り出されるようなカーブ。
・ダブルヘリックス:二重の螺旋状のコース。一気に上へとかけあがる。
(wikiより)
洋榎「うきゃああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
初美「あー楽しかったー」
初美「やっぱり乗り物一発目は最強絶叫系に限りますよー!」
洋榎「……アカン……何かチカチカする……」
ゲロゲロゲロゲロゲロ
キャー、ハルチャーーーーン!!
初美「うわあ、あっちで同乗してたお姉さんが吐いてるですよー」
洋榎「ほ、報告せんといて……も、もらいゲロしそう……」
洋榎「アカン……胃液どころか鼻から臓物吹き出しそう……」 フラフラ
初美「右からですかー? 左からですかー?」
洋榎「よ、弱った人間にそういうこという……?」
初美「ホントに飛び出した事例なんてないから大丈夫ですよー」
洋榎「最初の事例になってまうかもしれへんやろ!」
洋榎「そうなったらどないすんねん!」
初美「んー……」
初美「通報したあと写メってツイートするとおもいますー」
洋榎「そういうことやなくて!」
洋榎「……そういうことだとしても最悪やんその行動!」
初美「ほら、随分元気になったじゃないですかー」
洋榎「まだフラフラやけどな……!」
洋榎「ど、どっかで休もうや……」
初美「じゃああっちで休むですよー」 タッタッタ
洋榎「もうどこでもいいから座りたいわ……」
洋榎「ん?」
初美「どうかしたですかー?」
洋榎「いや……」
洋榎「あそこに居るの……」
洋榎「由子やん」
初美「ああ、チームメイトの」
洋榎「何してんやろ……」
初美「デートじゃないですかねー」
洋榎「で!?」
初美「そりゃこの場所で、座ったテーブルに飲み物2つ置いてあったらそう考えるのが自然ですよー」
洋榎「……」
洋榎「あ、あそこで休もか」
初美「気になるですかー」
洋榎「そらな」
初美「でも、至近距離に行くとかリスキーなことしますねー」
洋榎「……」
洋榎「変装に使えそうなグッズ買ってくるのが一番ちゃうやろか」
初美「……はぁ」
初美「じゃあ買ってくるので、見つからないよう隠れていてくださいよー」
洋榎「おう、任せとけやー!」
初美「ただいまですよー」
洋榎「おーう、おかえり」
初美「はい、エルモのかぶりものですよー」
洋榎「……」
初美「あれ、気に入りませんでしたかー?」
洋榎「タグにペットヘッドって書いてあるんやけど」
初美「……」
洋榎「……」
初美「まあ、大差無いですよー」
洋榎「あるわ!」
初美「しーっ。気づかれますよー」
洋榎「う、うぐ……」
初美「それで、どんな感じですかー?」
洋榎「相手、まだ来ーへんわ」
洋榎「連れ待たすとか最低のオトコやな」
洋榎「相手次第じゃぶん殴ってでも由子を連れ戻すわ」
初美「……仲良しさんなんですねー」
洋榎「……マブダチやからな」
洋榎「ウチはアイツが好きやし、アイツが不幸になるくらいなら恨まれた方がマシや」
初美「……」
初美(ちょっと胸がいたいですよー) ズキン
洋榎「つーか由子のカッコ……」
初美「スーツ、なかなか似合ってますねー」
洋榎「浮きまくっとらへん?」
初美「まぁ、テーマパークじゃ珍しいですよねー」
洋榎「お、誰か来た!」 コソコソ
初美(結構ペットヘッド似合ってるのよー)
郁乃「おまたせ~~~」
洋榎「!?」
由子「ホントにえらい待たされたのよー」
洋榎「」 パクパク
初美「どうしたのよー?」
洋榎「……うや」
初美「へ?」
洋榎「監督代行や、あれ」 アタマカカエー
郁乃「いや~~~それにしてもその格好浮いとるわ~~~~~」
由子「着替えも許さず連れてきたのはそっちなのよー」
郁乃「だってぇ~~~~待つの嫌じゃな~~~~~い」
由子「遅刻した直後に言うセリフじゃないのよー……」
初美「……なんていうか、その……」
洋榎「すまんな、あんな恥ずかしい監督代行で」
郁乃「まあまあ、これでも気を使っとるんやから~~~」
由子「はぁ……」
郁乃「こう見えても、由子ちゃんのことは買っとるんよ~~~」
郁乃「そうじゃなかったら、元気づけるためにUSJになんて連れてこ~へんて~~~」
由子「代行……」
由子「世間一般に出会い頭に強制的人連れてくることは拉致って呼ぶと思うんですがー」
郁乃「細かいこと気にしたらアカンて~~」
郁乃「それに監督代行やのうて、監督って呼んでや~~」
由子(この人ホントめんどくさいのよー)
郁乃「それで、就職活動の方の調子はどう~?」
由子「いきなり嫌なことストレートに聞いてくるのよー……」
郁乃「まぁほら~~オブラートに包む方が傷つくことだってあるし~~~?」
郁乃「それにほら、教師としても進路状況は把握しておかなきゃいけないから~~~~」
由子「まぁ、やっぱりちょっと厳しいですよー」
由子「麻雀が強い所に行きたいってだけで、その仕事がやりたいわけじゃないですからねー」
由子「志望動機が弱いって怒られるのよー」
郁乃「あとその口調が足引っ張っとるんちゃうかな~~~」
郁乃「敬語めっためたや~~~ん」
由子「ホントにズバズバ言ってくるのよー……」
洋榎「……アイツ、進学せぇへんのかー」
初美「知らなかったんですかー?」
洋榎「アイツとはくっだらない話ばっかしとったからなー」
洋榎「まぁさすがに一緒の大学で、なんて思っとらんかったけども」
洋榎「恭子はウチとちごうて頭のいい大学一般入試やろうし、これで三人バラバラかぁ」
初美「……別れはいつか来るものですよー」
洋榎「……せやな」
洋榎「アイツに内定出たら祝ったらんとなぁ」
郁乃「もう進学したら~~~?」
由子「……」
由子「遠慮しておくのよー」
由子「恭子はやりたい仕事もあっていい大学に行くし……」
由子「主将――洋榎はこの前の全国でヒーローになったのよー」
由子「二人の友人に胸張って並べるよう、今はただ麻雀が打ちたいのよー」
郁乃「麻雀なら大学でやって打てるんに~~~」
由子「一刻も早くプロになって、洋榎に自慢したいのよー」
郁乃「意固地やな~~~~」
初美「……さっきの後輩の子といい、意外に慕われてるんですねー」
洋榎「意外って何やねん意外って」
郁乃「まぁ息抜きになったならよかったわ~~~」
郁乃「色々あったけど、引きずってもしゃ~なしやし~~~~」
由子「……」
由子「せめて奢って欲しかったのよー」
郁乃「しゃ~ないやん、安月給やも~~~ん」
洋榎「ひでえ……」
初美「でもどうやら、あの人ちゃんと進路考えてるみたいですねー」
洋榎「せやなぁ、見習わんと」
初美「あ、そろそろパレードの時間ですー」
初美「さ、行きますよ!」
洋榎「え、まだ行くん……?」
初美「あー楽しかったですよー!」
洋榎「いきいきしとんなー」
初美「そっちはグッタリしすぎですよー」
洋榎「……洋榎や」
初美「はい?」
洋榎「ウチの名前」
洋榎「まー知っとるやろうけど、一応、な」
洋榎「デートしとんのに、そっちとか言われとったら締まらへんやろ」
初美「……ですねー」
初美「でも、改めて名前を呼ぶのって照れますよー」
洋榎「……そんなん言われたら意識してまうやろ!」
洋榎「ホラ、サクッとシレッと普通に言うてまえ!」
初美「は、はい……えと……」
初美「披露宴!」
洋榎「何でそうなんねん!!」
洋榎「……ったく」
洋榎「ほら」 スッ
初美「ほえ?」
洋榎「こんだけ人がおったら、手を握りでもしとらんと、迷子になるかもしれへんやろ」
初美「……恥ずかしいからいいですよー」 プイッ
洋榎「まぁそう言わんと」
初美「……」
洋榎「……せいっ!」 ギュッ
初美「はわっ!?」
洋榎「ふふん、お子様やな!」
洋榎「大人のオンナは多少強引にでも願いを叶えるもんやでー!」 ニギニギ
初美「私達はまだ未成年ですよー!」
洋榎「……」 ニギニギ
初美「な、なんですかー」
洋榎「いや……手ェあったかいなー思て」
初美「そ、そうですかー?」 テレッ
洋榎「まー夏やと暑苦しいだけやし、手が冷たい人の方が心があったかい言うけどな!!」
初美「……乙女心の掴み切れない人ですよー」 ハァ
洋榎「……ついでにっと」 ギュッ
初美「えええ!?」
初美「ななな何を……」
洋榎「ん、ハグや」
洋榎「後ろからこうするん、絹以外にやるんはごっつ久々やなー」
初美「……」
初美「妹さんとはよくするんですねー」 ブスッ
洋榎「何ふてくされとんねん」 ウリウリ
初美「ふてくされてないですよー」 プクー
初美「ただシスコン気持ち悪いなって思っただけですー」
洋榎「はっはっは」
洋榎「なんとでもいえー! 姉妹愛最高やー!」
初美「……」 ムー
洋榎「まぁでも、絹へのハグとアンタへのハグは別モンやわ」
初美「ふぇ!?」
初美(そ、それは妹へのそれと……)
初美(す、好きな人へのそれの違い……とか///?)
洋榎「絹はこうしてハグしとったら腕にやらかい胸がぷよぷよ当たっとったしなー」
初美「……」
洋榎「……あ、もしかして胸無いん気にしとった?」
初美「……べーつにー」 ブッスー
洋榎「……」
洋榎「えい」 むにゅっ
初美「ひゃあ!?」
洋榎「うーん、ウチより胸平らで硬いな……」 ペタペタ
初美「ちょ、ま、何を――///!!」
洋榎「……いやほんま見事な直線で」
初美「ひ、人のこと言えないじゃないですかー!」
初美「背中に欠片も胸の感触ありませんよー!」
洋榎「何やとこらー!」 クニクニクニ
初美「ちょおおおおおおお!?」
初美「ば、服脱がせないでくださいよー!」
洋榎「勝手に脱げとるだけやろ!」 モミモミ
初美「さ、さすがにこれは恥ずかしいですー!」
洋榎「普段のカッコと変わらんやんけ!」 モミモミ
初美「ぜ、全然違……ひゃうっ///」
洋榎「ちょ、何変な声出し……」 モミモミ
初美「……んっ」 ピクッ
洋榎「…………」 モミモミ
初美「……ふうっ」 ユビカミッ
洋榎「…………」 ムラッ
洋榎(あ、あかん……何か冗談じゃすまんような感じが……)
洋榎「……な、何かごめん……」 スッ
初美「い、いえ……///」 ハー…ハー…
[電車]
洋榎「…………」
初美「…………」
洋榎(ごっつ気まずい……)
洋榎(ちょっと調子乗り過ぎてもうたかなぁ)
洋榎「……なぁ」
初美「……なんですかー」
洋榎「……悪かったな」
初美「……いえ」
洋榎「……ちょっと……甘えとったわ」
初美「……」
洋榎「人肌が恋しかったっちゅーのも否定出来へん理由ではあるけど」
洋榎「お前の華奢な体が心地よかったっちゅーのと、お前なら笑ってゆるしてくれるやろなんていう最低な思考が原因やな」
洋榎「……ほんま、ごめん」
初美「……」
初美「……初美ですよー」
洋榎「……?」
初美「最初に、覚えたって言ったじゃないですかー」
初美「……私は、“お前”じゃなくて“初美”ですよー」
洋榎「……すまんかったな、初耳」
初美「何でそうなるんですかー!」
洋榎「披露宴とか言うてくれた仕返しや」 クケケ
初美「むむー!」
憧「……」 ジトー
洋榎「っとと、騒ぎすぎるのはアカンな」
洋榎「人が見とるわ」
初美「そうですねー……」
初美「USJでも騒ぎすぎて痴態を見られちゃいましたし」
洋榎「わ、悪かったって」
[梅田]
洋榎「さて、梅田に帰ってきたわけやけど」
初美「……」
洋榎「……やらなアカンこと、あるんやろ?」
初美「……」
初美「……したく、ないですよー」
洋榎「……」
初美「……お別れ、したくないです」
初美「もうちょっとだけ」
初美「出来ればずっと」
初美「こうやって馬鹿やっていたいですよー」
洋榎「……」
洋榎「そないなこと言われてもなー」 ポリポリ
初美「……ですよねー」
初美「わかってますよー」
初美「私はもう18歳ですからねっ!」
初美「……ずっといっしょになんてこと、ありえないって分かってます」
初美「分かって……」
洋榎「……」
洋榎「なぁ」
初美「?」
洋榎「ほんなら、最後に――一緒に、どうや」 クイッ
初美「あれって――――」
洋榎「大阪名物、観覧車や!」
初美「お、おお~~~~!!」 キラキラ
洋榎「ユニバやランドにはないからなー王道なんに」
初美「の、乗りたいですー」
洋榎「おう、乗ろか~」
洋榎「……カップルで乗るもんなんやろうけどな、観覧車って」 ニカー
初美「……わ、私達もカップルに見えるんですかねー」 ポソ
洋榎「いやいいとこ姉妹ちゃう」
洋榎「あーでも絹みたいに妹は美人系やないと不自然かー」
洋榎「ほんなら美人教育実習生と生徒とか!?」 ガハハ
初美「……」 ドゴッ
洋榎「おおうみぞおち……」
初美「……ほら、行きますよー!」
洋榎「へーいへい」
洋榎「……」
洋榎(ほんま、げんきやなー)
洋榎(ほんで田舎もんや)
洋榎(……多分、知らんのやろうなぁ)
洋榎(大阪では有名やねんけどな、この観覧車)
洋榎「やっぱり向かい合うべきなんやろなぁ」
初美「……ですねー」
初美「……」 ゴウンゴウン
洋榎「……」 ゴウンゴウン
初美「……私、観覧車なんて初めてですよー」
洋榎「ウチも二人っきりで観覧車に乗るなんて絹と乗った以来やわ」
初美「……ほんっとシスコンですねー」
洋榎「ウチは愛する人はとことん愛す主義やねん!」 ガハハ
初美「……妬けますよ、ホント」
洋榎「……さて、名残惜しいけど」
洋榎「物事には終わりっちゅーもんがある」
初美「……」
洋榎「やること、あるんやろ」
洋榎「それが済んだら、ウチらはサヨナラや」
初美「……」
洋榎「……この観覧車な、乗ったらお別れするってことで有名なんやで」
初美「ええ?!」
洋榎「まぁそんなわけで、うちらは多分どう転んでもコイツの呪いでお別れや」
洋榎「……」
洋榎「せやから……」
洋榎「もういろんなもんかなぐり捨てて、ホントのこと、言ってまおうや」
洋榎「……」
初美「……」
洋榎「……なあ」
初美「……はいー」
洋榎「ウチもな、別にニブチンとはちゃうで」
洋榎「ニブチンやったら主将なんて務まらんしな」
初美「……そう、ですかー」
洋榎「……せやけどな」
洋榎「はっきりと、言葉にして言ってもらいたいねん」
洋榎「気になってしゃーないことの真相を知るんなら、本人の口から聞きたい」
初美「……」
洋榎「……ウチのことで、何か言いたいこと、あるんと違う?」
洋榎「なあ、窓の外ばっかみとらんと――ウチの目、ちゃんと見てや」
初美「……っ!」
初美「でも……」
洋榎「……」
洋榎「まあ確かに……言い難いことやろうなぁ」
洋榎「それを強要するんは確かにフェアやない、か」
初美「……」
洋榎「せやから、まずはウチが言うわ」
初美「えっ……」
洋榎「よーやくこっち向いてくれたな」 ニッ
洋榎「……やっぱ想いを伝えるなら、こうして面と向かわんとな」
初美「……」
洋榎「……いざとなると怖気づいてまうなあ」
洋榎「これじゃ皆に笑われてまうわ……」
洋榎「お姉ちゃんカッコ悪いーとか、意外とヘタレなんですねーとか」
洋榎「……頑張るのよーとか、常に自分の都合いいよう考えるのが持ち味でしょう、とか」
洋榎「きっと、笑いながら言われてまうわ」
洋榎「……せやから、言うわ」
洋榎「アイツらに、心配されるようじゃ終わりやしな!」
洋榎「漫も由子も、ウチに負けへんようにって、頑張っとったしなー」
初美「……」
洋榎「……」
洋榎「もうすぐ頂上や」
洋榎「……今日のこれがホンマモンのデートで……」
洋榎「カップルになれるんやったとしたら――」
洋榎「頂上行く前になっとくべきなんやろうなぁ」
洋榎「観覧車の天辺でキスとかちょっと憧れるしな!」
初美「……」
洋榎「……ツッコんではくれんのな」
洋榎「まぁええわ、もう言ったようなもんじゃないかってツッコまれてもぐだぐだやったしな」
洋榎「……ウチも結構勇気出して言うねんから、目、そらさんといてな」
洋榎「一目惚れとか、うそくさーと思うかもしれへんけど」
洋榎「それでも、一緒におったら落ち着いたっちゅーかなんちゅーか」
洋榎「楽しかったってのが大きいんかな?」
洋榎「ああでも顔も可愛らしいと思っとるけどな!」
初美「……要領を、全然得てませんよー」 グスッ
洋榎「自分こそ、目をうるませるの早いでー」 ケラケラ
洋榎「……ウチとしては、泣かんといてほしいんやけどなぁ」
洋榎「ずっと笑っとってほしい」
洋榎「……ウチ、な」
洋榎「初美。お前に惚れてもうたみたいや」
洋榎「大好きやで」
初美「う……うう……」
洋榎「ほら、泣かんといてや」
洋榎「……」
洋榎「返事、聞いてもええかな」
初美「……そんなの……わかってるはずじゃないですかぁ……」 グスッ
洋榎「それでもや」
洋榎「ワガママ、聞いてくれや」
洋榎「聞きたいんや、初美の口から」
初美「うう……」
初美「私だって、洋榎ちゃんのこと、好きですよぉ……!」
洋榎「……そっか」
洋榎「……アカンなぁ」
洋榎「こういう時は笑うもんやってウチが言うたはずなんに」
洋榎「ちょっと目元が滲んできたわ」 ゴシゴシ
初美「うう……」
初美「好きですよー……」 ヒック
初美「まともに話したばっかりなのに」 ヒック
初美「なのにどうしようもなく、好きになっちゃったんですよー……!」 エグッエグ
洋榎「はは、ホンマ嬉しいわ」
洋榎「……初美に会えて、ホンマによかったわ」
そう言った貴女の顔は、妙に穏やかで。
その表情には、達観と覚悟が滲み出ていて。
初美「酷い……人ですよー……」 ヒック
初美「こんなこと……言いたくなかったのにー……」 エグッ
大好きだって言わされて。
離れたくないと思わされて。
洋榎「……すまんな」
洋榎「ウチがもっとニブチンやったらよかったんやろうけどなぁ」 タハハ
それでもそれは叶わなくて。
全てを捨てて一緒に歩んでいきたくても、貴女はそれを許してくれないのだろう。
洋榎「……言ってくれ、初美」
だからせめて、愛しい人の最後の願いを叶えるために。
私自ら、引導を渡すために。
涙でぐちゃぐちゃになりながらも、言った。
初美「……洋榎ちゃんは……もう、亡くなってます……」
え?
初美「今の洋榎ちゃんは……幽霊、です……」
愛宕妹が置いていかないでと涙
ちゃちゃのんの全スルー
確かに伏線になってるのか…
永水は巫女だから交霊とかアリかも
洋榎「……あー、やっぱりかー」
洋榎「そら記憶もないわなぁ」
洋榎「……お疲れ会に向かうとこまでは記憶があるし、その途中で事故ったんかな」
初美「……そこまでは……分かりませんよー……」
初美「ただ……亡くなったことは、知っていましたよー……」
初美「その……私のミスで、成仏できるはずの洋榎ちゃんの魂を、降ろしてきてしまって……」
洋榎「それでウチを成仏させるため、大阪までやってきたと」
初美「……はい……」
初美「ごめんなさいですよー……」
初美「……嫌われても、文句は言えません……」
泣いていたら、いつの間にか貴女が傍に寄ってきていて。
私にだけは触れることが出来る手で、涙を拭って。
他のものは、私と洋榎ちゃんには動いて見えるだけでまるで動かないのに。
涙だけは、洋榎ちゃんにもしっかりと拭い取れて。
おかげで、洋榎ちゃんの表情がよく見えて。
洋榎「……」
初美「……!」
幽霊のはずなのに、あったかい感触が、唇に伝わってきて。
洋榎「……気にしんといてや」
洋榎「惚れたオンナの失敗くらい、許せんくって何が浪速の英雄や」 ニヒヒ
初美「洋榎ちゃん……」
洋榎「……それにな、ウチは幸せなんやで」
洋榎「観覧車の天辺でキスするなんてイベントを、最後に経験できたんやからな!」
初美「……私も……」
初美「洋榎ちゃんに会えて、幸せでしたよー」
初美「こんなカタチになっちゃったし……」
初美「別れがくるのが、辛いですけど……」
洋榎「……」
初美「それでも……」
初美「出会わなければよかったなんて言えないほど、洋榎ちゃんのこと、好きになっちゃいましたから」
洋榎「……あーあーまた鼻水垂れ流しちゃって」
洋榎「……それでもよーやく、また笑ってくれたなぁ」
初美「……だって、私は笑顔がチャームポイントですからー」
初美「最後まで……可愛いって思われたいんですよー……」 ズズッ
初美「……そういえば……」
洋榎「ん?」
初美「いつ、気付いたんですか?」
洋榎「……確信したのは、道頓堀でやな」
初美「……」
洋榎「あんとき、一回一人になったやろ?」
初美「はい」
洋榎「そんとき違和感あったねん」
洋榎「歩いてて、歩きにくさが尋常じゃない」
洋榎「まるで皆が、ウチのこと見えてへん風に歩いてきよる」
初美「……それで……」
洋榎「しまいには――あの宮守のちまっこいの、おったやろ」
洋榎「ちまっこすぎて見えとらんかったんやけどな、まぁ向こうもこっちを見えとらんわけで……」
洋榎「見えてへん同士で見事にぶつかって、そんでもって体をすり抜けられたら、誰でも気づくわ」
洋榎「漫の会話も、死んだウチの分まで頑張ろういうことやったとしたら、スジが通るしな」
洋榎「ウチが死んだと考えたら、他の皆の行動も納得いくねん」
洋榎「絹があんな寝言を言うとった意味も」
洋榎「ゆーこがプロになって自慢したいって言うた相手が、ウチ一人やったことも」
洋榎「あの監督代行が、元気づけなアカンと思ってUSJに連れていくほどゆーこが落ち込んどった理由も」
洋榎「……ああ、絹が疲れ果てて眠っとったのも、飲み過ぎやのうて、多分ウチが死んだことによる泣き疲れやな」
洋榎「それにゆーこの服装」
洋榎「初美はすかさずスーツっちゅーたけど、あれ、喪服として着とったんちゃうかな」
洋榎「多分ゆーこや、家におる絹は、今日の通夜に出るんやろ」
洋榎「仕事で来とった佐々野だけでなく、岩手や長野、鹿児島からわざわざ来てくれたのも、明日葬式があるからやろ」
洋榎「多分あんな吐きそうになったのにゲロすら吐かずにサクッと復活したんも、もう幽霊やったからやろ」
洋榎「コースターみたいに知らん人が隣に座ってきにくいもんをチョイスしたのも――」
洋榎「店員が人数分のグラスを運んでくる飲食店に入りたがらず屋台のたこ焼きにこだわったのも――」
洋榎「全部、ウチに自分が幽霊やってことを悟らせないためやったんやな」
初美「……なんでもお見通しなんですねー」
洋榎「惚れたオンナの気遣いくらい、気づかないようじゃ失格やからな」 ハハ
洋榎「あと、ウチからは普通に物が動いて見えとったけど、多分実際は何も動いてないんやろ」
初美「……はいー」
洋榎「まあ、そうやなかったら大混乱やろうしなぁ」
洋榎「でもそれで、インターホンあんな鳴らしても絹が起きなかったことにも説明がつく」
洋榎「初美がリスクを犯してまで窓を自ら叩き割ったり、毛布を引っ張りだしてきたことにもな」
洋榎「タオル一枚で風呂場から出てきた割に、すぐ水滴も廊下から消えてた時点でおかしいとは思っとったんやけどね」
洋榎「切符も実際には買ってないし、幽霊だから改札も通れてたっちゅーことか」
初美「はい……」
洋榎「あ、もしかして、改札通るときに違和感ないように、混雑した駅ばっかり選んどった?」
初美「……正解ですよー」
初美「何でもお見通しなんですねー」
洋榎「普通の幽霊やったら騙されとったんかもしれんけど、一緒にしてもろたら困る」
洋榎「格が違うわ!」 ドヤドヤ
初美「そういえば……」
初美「もう一個謝っておきますよー」
洋榎「何や?」
初美「日記、見ちゃいましたー」
洋榎「おまっ……!」
初美「……想いは、ちゃんと生きてる内に伝えないとダメですよー」
洋榎「ウチへの告白せんまま逃げようとしてた奴のセリフとちゃうな」 クスクス
初美「うう……否定出来ないですよー」
洋榎「……しゃーないやん、伝えたかってんけど、その前に事故ってもうたんやから」
洋榎「頭痛かったし、服は着てたのに財布も鍵も携帯すらも吹っ飛んでたことから見て――」
洋榎「持ち物吹き飛ぶ勢いで車にでもツッコまれたんやろうなぁ」
初美「ボケ冥利につきますかー?」
洋榎「せやなあ、初美のツッコミよりキレはよかったかもな!」
初美「むむ、そこまでいうならこの神事に使う有難い棒を突っ込んでもいいんですよー!」
洋榎「ひい、胎内から逝ってまうぅ!」
洋榎「まぁ、でも、初美のおかげで楽しい幽霊ライフやったで」
初美「……そのまま続けますかー?」
洋榎「冗談」
洋榎「それじゃヤバイから、わざわざ大阪くんだりまで来てくれたんやろ」
初美「……はい」
初美「そのままだと、地縛霊になってしまうですよー……」
洋榎「そらゴメンやな」
洋榎「佐々野の奴にされたように、会話してもらえへんことがずっと続くようになるわけやろ?」
洋榎「大阪人として、ボケ・ツッコミ出来へんとか考えられへんわー」
初美「……」
洋榎「……まもなく地上につくな」
洋榎「ジンクス通り、これで、うちらも、お別れになってまうな」
初美「……お別れ、したくないですよー」 ウルッ
洋榎「……なあ」
初美「はい……?」
洋榎「ウチの体、幽霊やけどあったかかったか?」
初美「……はい」
初美「私にだけは、生前と同じように感じることが出来るんですよー……」
洋榎「……そうか、ほんなら……」
洋榎「胸か手のひら、貸したるわ」
洋榎「胸はないけど初美のよりはぷにぷにやでー」
洋榎「手のひらは、何か雀力的なのがあって有り難そうやん?」
洋榎「……ああ、太もももありやろなー」
洋榎「ウチの太ももは気持ちええって絹が!」
初美「……そのどれも、多分妹さんのお下がりですよー」
洋榎「……ま、まあな」
初美「……それじゃ、嫌ですよー」
初美「まだ地上まで、もうちょっと時間ありますから――」
初美「妹さんですら触れたことない……洋榎ちゃんの一番大事なところをください……」
洋榎「……ええで」
洋榎「むしろこっちが、生きてる初美をキズモんにしてまうのが申し訳ないくらいや」
初美「……傷物には、なれませんよ」
初美「私に触れられても、傷つけることは出来ないんです」
初美「……傷跡を、遺すことは出来ないんですー」
初美「だからせめて……記憶に刻みつけてほしいですよー」
初美「洋榎ちゃんのこと、こんなに好きだったってことを」
初美「洋榎ちゃんが、私のことを、大好きだったってことを」
洋榎「そのかわり、約束してくれ」
初美「はい……?」
洋榎「ウチの分まで、ちゃんと生きたってくれ」
洋榎「後を追うとか、アホなこと考えんなや」
初美「……」
洋榎「確かに、うっかりウチを降ろしたとかいうのはアカンかったかもしれへんけどな」
洋榎「ウチほんまに恨んどらへんし」
洋榎「一人で寂しいとも思っとらん」
洋榎「むしろ後を追われる方がキッツいわ」
洋榎「……それに、そんなことになったら、それこそ成仏出来んで地縛霊になるで」
洋榎「……ただでさえ、絹達が心配で、成仏出来へんっちゅーに」
初美「……」
初美「それにも、気付いてたんですかー……」
洋榎「まぁな」
洋榎「アンタが死なないまでも姿をくらまそうとするくらい思いつめはじめたのは大体分かっとったわ」
洋榎「最初の頃の気楽さが、時間とともになくなってったしな」
初美「……私もまだまだですねー」
洋榎「成仏条件も、USJにゆーこがおって分かったわ」
洋榎「ウチは多分、姫松のメンバーが心残りで成仏出来へんのやろ」
初美「……はい」
初美「本当なら、そんな間もなく天界送りだったんですけど……」
初美「私のせいで、現世への未練を持ったまま降りてきてしまったので……」
洋榎「通りでやたらと絹や漫が気になっとったわけや」
洋榎「……行く先々にゆーこや漫がおったのも、狙っとったん?」
初美「……はい。それもちょっとしたオカルトですよー」
初美「漠然とした居場所しか分からなかったですけど」
洋榎「それでか」
洋榎「ウチが見えへんのバレんように麻雀参加は断固として拒否っとったのに、佐々野の後をつけることには賛同してくれたんは」
初美「……ごめんなさいですよー」
洋榎「……これで初美がちゃんと前向いてくれたら……」
洋榎「あとは恭子が前向いとるの確認したら、成仏かな」
洋榎「ホントは起きとる絹に会いたかってんけど……」
洋榎「ちゃんと見守っとるって伝えられたしな」
初美「……妹さんは、ちゃんと前を向けていますよー」
初美「二人のお部屋、日記を見た時入りましたけど……」
初美「ちゃんと、整理されてましたから」
洋榎「そっか……」
洋榎「ほんならよかったわ」
初美「……」 ギュッ
洋榎「ん?」
初美「嫉妬です。妹さんへの」
洋榎「……可愛いやつやな」
洋榎「ウチが世界で一番愛しとるのは、初美やで」
初美「……わかってても、ちょっと、嫉妬しちゃいますよー」
洋榎「……こういうことするの初めてやねんけどなー」
初美「わ、私だってそうですよー!」
洋榎「幽霊相手でも、体験したら巫女ってクビになるんかな」
初美「構いませんよー」
初美「私、大学こっちに決めましたしー」
洋榎「ほほう」
初美「大阪LOVERみたいに、大阪のおばちゃん目指しますよー」 フフ
洋榎「大阪どころか、もっと遠い遠距離恋愛になってまうけどな」
初美「いつか行くまで、浮気しないで待ってて欲しいですよー」
洋榎「浮気は甲斐性、ウチは初美が浮気してもええんやで」
初美「……浮気なんてしませんよーだ!」
洋榎「……ふふ」
洋榎「好きやで、初美」
初美「……私もですよー、洋榎ちゃん」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・
洋榎「……地上、ついてもーたな」
初美「……はい」
洋榎「ほんなら、行こか」
初美「……行きたくないですけど……行きましょう」
初美「洋榎ちゃんに心配かけないためにも、私だって前を向けるって見せなくっちゃいけませんからね!」
[ファミリーマート愛宕家付近店]
洋榎「まっさかまたここ来るはめになるとはな」
初美「もはや観光地でも何でもないですからねー」
洋榎「調子こいて観覧車乗ったせいで、他回れへんかったなー」
初美「私は後悔してないですよー」
洋榎「……ウチもや」
初美「……あ、そろそろ来ますよー」
洋榎「よっしゃ、行こか」
初美「……」
洋榎「怖いか?」
初美「そりゃあ、そうですよ」
初美「お通夜に向かう途中で声をかけるんですし」
初美「私お通夜に呼ばれてないのに、ですよー?」
洋榎「しゃーないやん、恭子はウチの親友やし」
洋榎「それに……ウチの最初で最後のツレや」
洋榎「紹介、したいやない」
初美「まったく……変人扱いされたり、殴られるのは私なんですよー」
洋榎「はは、恭子はそんなオンナちゃうて」
初美「……だったらいいんですけどー」
洋榎「お、来た! 行くで!」
初美「は、はいい!」
恭子「ごめんな、わざわざ迎えに来てもろて」
絹恵「いえ……一人でいるよりいいですから」
絹恵「それよりすんません、早めに来てもろてしまって」
由子「何か窓が割られてたっていうし、一人にしたら心配だし気にしなくてもいいのよー」
絹恵「それに……少しでも早く、見てもらいたいものがあって」
漫「見てもらいたいもの……?」
恭子「それって……その手に持ってる日記か何かのこと……?」
初美「あのっ……!」 タッ
絹恵「わっ」
漫「あれ、確か永水の……」
由子「ああ、USJで一人騒いでた……」
初美「は、はじめましてですよー」
初美「私、その――」
初美「愛宕洋榎さんとお付き合いさせて頂いていた――」
初美「いえ、お付き合いさせて頂いている、薄墨初美というものですっ!!」
【そして】
順子「WEEKLY 麻雀 TODAYの西田です」
順子「この度は、念願の女流プロとなったわけですが――」
あれから数年が経った。
初美「……そうですねー」
初美「“降ろす”のをやめたせいで、随分遠回りをしたような気がしますー」
順子「おろ……?」
あの日、大好きな貴女と別れて。
私はオカルトを辞めた。
初美「ああ、いや――むしろ近道をやめ、ゆっくりと道を歩いたって方が正しいですかねー」
順子「はあ……」
それでも麻雀を続け、姫様達から大きく遅れること数年。
念願のプロ雀士になることができた。
順子「そ、そういえば、薄墨プロは常に日記帳のようなものを持ち歩いていますね」
順子「先にプロになった、対戦経験もある原村プロのぬいぐるみのようなものなんでしょうか」
初美「……そうかもしれないですねー」
初美「これ、宝物なんです」
貴女と過ごした最後の晩。
貴女の大事な人達と、初めてまともに言葉を交わしたあの日の晩。
……思うようにいかなくて、でも、認めて欲しくて一生懸命で。
そして、想いが通じた晩。
初美「大切な人の大切な人達に、認めて貰った大切な証」
私は、宝物を託された。
涙を浮かべ、それでも無理くり笑おうとした妹さんの手によって。
それは私に預けられた。
初美「これを持ち歩くことで、遠くにいる大切な人がそばに居てくれる」
初美「そんな気になって、つい持ち歩いちゃうんですよー」
順子「そ、それは熱愛発覚ということで……!?」
初美「……遠距離なんですけどねー」
遠い場所に居る大好きな人。
まだ当分、会いに行く事の出来ない人。
順子「こ、これ記事にしても……?」
初美「隠すことじゃないですし、ご自由にー!」
順子「こ、これはスクープだわ……!」
貴女は重いと言うかもしれない。
別の奴と幸せになりと言うかもしれない。
でも貴女より素敵な人が、出ないんだからしょうがない。
貴女のことを諦めて、幸せになれた佐々野さんが、羨ましくないわけじゃないけど。
それでもやっぱり、私の中では未だに貴女が一番だから。
だから貴女の意思を継ごう。
生きている皆にはせめて笑って欲しいと願っていた、貴女を尊重して生きよう。
常に巫山戯て皆を笑わせてくれた、貴女みたいに生きていこう。
初美「あ、すみません……そろそろ行かないといけない時間なんですよー」
順子「そ、それは噂のカレとデートで……!?」
そして、そうすることで。
私自身、心の底から笑っていよう。
あの人に、素敵だと言ってもらえた笑顔でいよう。
いつかあの世でまた会った時に、文句を言われたくないから。
初美「いえー……ちょっと違いますよー」
初美「大切な人の大切な人達と、大切な人にプロになったと報告しに」
順子「ほほう、そ、それで……そのあとは……?」
だから、笑う。
私は笑う。
貴女の分まで笑顔になって、貴女の分まで笑顔を生み出せるように。
初美「……多分、ご想像の通りですー」
初美「この宝物と一緒に――」
私は笑って、日記帳を掲げて見せた。
そしてあの日、貴女が見せたような笑顔で堂々と宣言する。
初美「大阪デートや!」
私の笑顔は、貴女の元に届いてますか――――――?
カン
すごかった
乙
面白かった
これは凄い
乙です
Entry ⇒ 2012.09.23 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
古澤頼子「華やかな世界に憧れて」
美術館
頼子(……落ちつく……)
頼子(順路は……こっちかな? えっと……あ)
頼子(……すごいな……この人の作品、本当に綺麗……)
頼子「……次は……えっと……」
頼子「……」
頼子「……?」
P「……」
頼子(……スーツの、人? こんな昼間に珍しいな・・…)
P「……?」
頼子(……あれ……? こっちを見てる……?)
頼子(え、あれ……こ、こっちに来てる……? なんで……!?)
P「あの、すみません」
頼子「は、はい……?」
P「出口って、どっちなんでしょうか……?」
頼子「……はい?」
P「実は、迷ってしまって……」
頼子「……あ……そこに、順路が……」
P「え? あ……ほ、本当だ……」
頼子「……気づかなかったんですか……?」
P「ははは……慣れてなくて……」
P「でも、来てよかった。いいものを見れましたし」
頼子「……」
P「仕事の関係でもらったんですけどね……うん。こういうのって、いいですね」
頼子「……例えば……」
P「はい?」
頼子「例えば、どれが気にいりました……?」
P「うーん……どれも、よかったんですけれど……あっちで見たのが……」
頼子「あっち……?」
P「はい、えーっと……なんて名前だったかな……? 割と素朴な雰囲気の……落ちついた感じで……」
頼子「……ひょっとして……ルソー、ですか……?」
P「あ、たぶんそれ……かな?」
頼子「……そうですか……」
頼子「……」
P「よく、こういうところに来るんですか?」
頼子「……えぇ、まぁ……」
P「じゃあ、詳しいんですか?」
頼子「……多少は……」
P「へぇ……あの、よければここの作品の解説とか、お願いできませんか?」
頼子「解説、ですか……?」
P「迷惑じゃなかったら、なんですけど。なんとなく良いものだってわかっても背景とかさっぱりで」
頼子「……わかり、ました……」
P「ありがとうございます……じゃあ、ちょっと進みましょう」
頼子「あ……順路、こっちです……」
P「あれ?」
P「はぁ……なんというか、その……」
頼子「……太った人、ばかりですけれど……」
P「あ、はい……理由とかあるんですか?」
頼子「……その、ふくよかさが幸せを表現している、とか……いろいろ……言われてはいます」
P「ふくよかさが、幸せ……あぁ、まぁ確かに……?」
頼子「……でも……」
P「……?」
頼子「……本人は……芸術家は、理由など知らずにある形にひきつけられるものだ、って……」
P「……なるほど」
頼子「……理由なんて、後付けでいいものだ、なんて……」
P「……」
頼子「……自分に、素直で……そういうのも……素敵かななんて……」
P「本当だ……あの、ありがとうございました」
頼子「いえ……私も、楽しかったです……」
P「あと、その……」
頼子「……?」
P「……」
頼子「……なんでしょう……?」
P「……アイドルに、興味はありませんか?」
頼子「……アイドル?」
P「はい。俺、プロデューサーをしているものなんです」
頼子「……」
頼子「……」
P「名刺です。これ……」
頼子「プロデュース……私を……」
P「はい」
頼子「……あなたが……?」
P「……俺じゃダメですか?」
頼子「いえ、そうじゃなくて……私は、アイドルなんて柄では……絵画や美術が好きなだけで……」
P「……そう、ですか? 俺は、すごく素敵だと思ったんです。考えるだけでも、どうか」
頼子「……なんで、ですか?」
P「えっと……なんででしょう。わからないけど、でも……」
頼子「わからない……?」
頼子「……ボテロ……?」
P「あ、いや。あなたが太いとかそういうのじゃなくて……彼がそういう作品ばかり作った理由を教えてくれたじゃないですか」
頼子「……確かに……言いましたけれど……」
P「理由なんて、後付けはできますけど。俺はあなたをプロデュースしたいんです」
頼子「……そう、ですか……」
P「ダメですか?」
頼子「……柄じゃ、ないです……」
P「……」
頼子「その……でも……アイドルって……華やかな世界なんでしょうね……」
P「そ、それは、もうもちろん! やるからにはトップにしてみせます!」
頼子「……うん。楽しそうだな……って。やってみたい、です」
P「ほ、本当ですか!?」
頼子「は、はい」
P「あ……なるほど。親御さんに……」
頼子「はい……」
P「……え?」
頼子「……はい?」
P「すみません、おいくつでしょう?」
頼子「……17歳、ですけれど……」
P「なんと」
頼子「どうしたんですか……?」
P「い、いや……落ちついた雰囲気だったからもう少し上だと思ってました……」
頼子「そう……ですか……ありがとう、ございます……」
頼子「あ……家は、少し。事務所までうかがいますから……」
P「そうですか……ん、メール? すみません、ちょっと」
頼子「はい……」
P「……げっ、杏のやつ……!? す、すみません! ちょっと失礼します!」
頼子「は、はぁ……」
P「その、よかったら今度ここまで。怪しい事務所とかじゃないですから! ホームページもみて確認してください!」
頼子「……いっちゃった……」
頼子「……名刺も……本物……?」
頼子「……」
頼子「とりあえず……帰ろうかな……」
頼子「……これ……」
頼子「お母さんは、あなたの自由にって……」
頼子「……うーん……」
頼子「パソコン……そうだ、ホームページ……」
頼子「……」カタカタ…
頼子「……ここ、かな……えっと……」
PC[あなたもアイドルに! シンデレラ・プロジェクト]
頼子「……シンデレラ……」
頼子「……綺麗……」
頼子「これも……素敵だな……」
頼子「……私も……なれる、のかな……?」
頼子「……」
頼子「なって、みたいな……こんな、風に……」
頼子「うん……」
頼子「がんばって、みよう……かな……」
頼子「……明日、空いてたっけ……? えっと……」
頼子「……うん。いって、みようかな」
頼子「……今日は……寝よう……」
頼子「……ここかな……?」
頼子「えっと……地図……」
頼子「……うん。間違って、ない」
頼子「ここの、中に……」
頼子「……」
??「ん? そこで何をやってるんだ?」
頼子「えっ……!?」
??「怪しいもの……ではないよな……」
頼子「え、えっと……私は……」
??「みなまでいうな……うちの助手が、スカウトしたんだろ?」
頼子「じょ、助手……?」
??「あぁ、すまない……申し遅れた」
晶葉「私の名前は池袋晶葉。21世紀が誇る大天才、発明家兼、アイドルだ!」
頼子「は……はい……?」
晶葉「ふむ……よければ、名を聞かせてほしい」
頼子「よ、頼子……古澤頼子です……」
晶葉「頼子か……うん。今日は面接かなにかかな?」
頼子「そうです……」
晶葉「だったらこっちだ。来てくれるか?」
頼子「は、はぁ……」
晶葉「なに、緊張することはないさ。安心してくれていい」
頼子「……?」
晶葉「私も最初はとても緊張していたが……気のいい人も多いんだ。大丈夫だぞ」
頼子「あ……はい。ありがとう、ございます……」
頼子「こ、ここ……?」
晶葉「あぁ、向こうから入るとレッスン待機中のアイドルに鉢合わせしてたかもしれないからね」
頼子「レッスン待機中って、例えば……?」
晶葉「あぁ、別にいじわるをするわけじゃないんだ。ただまぁ……初見で彼女たちと会うときっとすさまじいインパクトをうけるだろうから……」
頼子「……インパクト……双葉杏ちゃん、とか……?」
晶葉「あぁ、そんな感じだな……私も初めてこの事務所に来た時は……」
頼子「……?」
晶葉「いや、いい。これはこっちの話だからな……にょわーには気をつけてくれ」
頼子「にょ、にょわー?」
晶葉「彼女もすぐに、メジャーデビューするだろうが……うちの事務所の核弾頭だよ」
晶葉「いろんな意味で、な……あれには私も焦った。でも、いい奴なんだよ?」
頼子「……そう……」
晶葉「それじゃあ私はレッスンがあるから、このへんで。入ってまっすぐ行けば事務室が見えるはずだ」
頼子「……うん、わかった」
晶葉「健闘を祈るよ。願わくば、またアイドルとして一緒に仕事ができることを」
頼子「うん、それじゃあ……」
晶葉「あぁ、またな」タッタッタ…
頼子「……」
頼子「うん……よし、いくぞっ……」
「開いてますよ、どうぞー?」
頼子「……失礼します……」
ちひろ「……あら? えーっと……」
頼子「えっと……ここのプロデューサーさんに……」
ちひろ「あぁ、なるほど……はい、わかりました」
頼子「え、えっ……?」
ちひろ「シンデレラ・プロジェクト。全ての女性にアイドルとしての機会を……」
ちひろ「私達があなたに聞きたいのはひとつです」
頼子「……」
ちひろ「輝くステージに、立ちたいですか?」
頼子「は……はい!」
ちひろ「うん、いい返事ですね……いいですよ。えっと……」
頼子「頼子……古澤頼子です……」
頼子「ど、どうしたんですか……?」
ちひろ「プロデューサーさんの名簿に名前がない……?」
頼子「名簿、ですか……?」
ちひろ「えぇ、割と後先考えずに声をかけるから連絡しろって言ってるんですけれど……」
頼子「名前……あっ」
ちひろ「どうしました?」
頼子「私、名前……いってない……」
ちひろ「……はい?」
頼子「その……昨日、会ったんですけれど……」
ちひろ「あ、あぁ……なるほど。美術館で見つけた逸材さん、ですか……」
頼子「えっ……」
ちひろ「改めて、ようこそ。我がプロダクションへ!」
頼子「は、はい……よろしくお願いします……?」
ちひろ「あなたに働く意思があるのなら……レッスンを始めるための書類はここにあります」
頼子「……」
ちひろ「でも、すぐに決めて後悔なんてことはして欲しくない……どうですか? 今日は、見学でも」
頼子「見学……ですか……」
ちひろ「えぇ。レッスンしているアイドル達と……あと、ついでに。オンの時のプロデューサーさんを」
頼子「……オンの時って?」
ちひろ「いえ、きっとあなたがあったプロデューサーさんはどこか抜けてそうで方向音痴の頼りなさげな人だったはずなので……」
頼子(……確かに……?)
ちひろ「それ基準で考えると、痛い目みちゃうかもしれませんしね?」
頼子「……痛い目……ですか……?」
ちひろ「まぁ、こちらへどうぞ……ついてきてください」
ちひろ「レッスン室、です。今はプロデューサーさんが見てるはず……どうぞ?」
頼子「……」
P「きらり、ステップ遅れてる!」
きらり「にょ、にょわっ! りょーかいだにぃ!」タタンッ
P「卯月は逆にステップが早い、落ちつけ!」
卯月「は、はいっ、頑張りますっ!」タタタンッ
P「あと、杏は動け!」
杏「えー、めんどくさーい……」タン…トン…
P「いつまでたってもレッスン終わらないぞ? はい立ったー!」
杏「わかったわかったー、はぁーもー……」
ちひろ「すごい、でしょ?」
頼子「……はい……」
ちひろ「普段は結構ダメな人なんだけど……人を見る目はあるの」
頼子「……」
ちひろ「その人が、絶対間違いないっていった人材……こちらとしても、ぜひ働いてもらいたいんだけど」
頼子「……あれは、島村卯月ちゃんと……双葉杏ちゃんと……」
ちひろ「あぁ、彼女は……諸星きらりちゃん。身長182センチの大型アイドル……現在成長中らしいけれど」
頼子「せ、成長中……?」
ちひろ「精神的にも、物理的にも……ね。そろそろメジャーのオーディションにでる頃なの」
頼子「……すごいですね……」
ちひろ「本当にね……あと、トレーナーさんが見てる人たちがこっち……」
頼子「あ、はい……」
頼子「すごかったですけれど……その……」
ちひろ「……?」
頼子「……私、本当にあの人たちみたいになれるでしょうか……?」
ちひろ「それはもう。きっと」
頼子「……そこまで、信じられるんですか……?」
ちひろ「えぇ、あんな人ですけど……きっとね」
頼子「……そう、ですか……」
ちひろ「どうしますか?」
頼子「今日は、帰ります……ありがとう、ございました」
ちひろ「わかりました……送りましょうか?」
頼子「……大丈夫、ですから。 それじゃあ……」
頼子「あ……」
P「あ」
頼子「……プロデューサー、さん」
P「昨日の……結局名前聞けずじまいだった……見学でもしていきますか?」
頼子「……いえ、見させてもらいました……でも……」
P「……?」
頼子「私は……」
P「なんでしょう?」
頼子「……できると、思いますか……?」
P「……できるって、何が?」
頼子「私じゃ……無理かもって……」
P「……」
頼子「……ごめんなさい……昨日声をかけてくれて、嬉しかったです……」
P「待ってくれ」
頼子「……?」
P「本当に、できないと思ってる……のか?」
頼子「……あんな風に、表現したり……苦手で……」
P「……もったいない!」
頼子「え、あっ……」
P「ちょっとこっちへ。やってみればわかるから!」
頼子「プ、プロデューサーさ……」
P「あぁ、君ならきっと一流のアイドルになれるはずなんだ!」
頼子「……私が……」
P「そう。ちなみにここはダンスレッスンがメインだけど……ステップなんか踏んだりして」
頼子「ス、ステップ……」
P「できれば背筋も伸ばして、前を見て……」
頼子「前……? あ、鏡……」
P「自分で自分の動きが確認できるようにってことで用意してあるんだ」
頼子「私が……」
P「できると思うんだ、君なら……君だから」
頼子「……少しだけ、教えてください」
P「あ、あぁ! とりあえず簡単なステップだけ……こう……」
P「うん、そんな感じで……いい、やっぱりいいよ!」
頼子「……」トン、タッタン…
P「前を見てみるんだ」
頼子「……? あ……」トン、トントン…
頼子(私が……踊ってる……)
P「……簡単なステップだけど、動きにキレがあった。やっぱり逸材だ!」
頼子「……逸材……輝けるの……?」
P「……って、あ。 また熱くなって……すみませんでしたっ!」
頼子「……」
P「いや、レッスンになるとどうしてもいつもの口調が出てしまって……というか、帰ろうとしてるところを呼びとめて無理に……」
頼子「……プロデューサーさん」
P「な、なんですか?」
頼子「……敬語じゃなくても、大丈夫ですよ……?」
P「え、いや……その……」
P「……?」
頼子「……だって……同僚に、なるんですから……」
P「そ、それじゃあ……!」
頼子「私も……なれますか……? あの、輝く舞台の上の人たちみたいに……」
P「なれるとも! あぁ、させてみせる!」
頼子「……信じます……よろしくお願いします、プロデューサーさん」
P「よろしく……えっと……」
頼子「……頼子、です。古澤頼子……1日に、3回も自己紹介をするなんて初めて……」
P「は、はは……うん。よろしく、頼子!」
頼子「……はい」
――
頼子「……ふぅ……」
P「うん、いい感じだ……でも」
頼子「……なんですか……?」
P「背筋は伸ばした方が見栄えがいい、かな。背も高いんだし」
頼子「背……背は、きらりちゃんがいるから……」
P「いや、きらりは別格だよ……きっと見栄えがすると思うんだ。胸を張ってさ」
頼子「胸を……」
P「うん。前を、先を見るんだよ」
頼子「猫背になるの……癖だから。 ……少しずつがんばります……」
P「そうだな。アイドルになるんだもんな!」
――
―――
――
頼子「感情を表現……」
P「あぁ、頼子はせっかく美人なのにそのままじゃもったいないと思ってな」
頼子「……ありがとうございます」
P「うん、そうだな……まずは笑顔だ!」
頼子「笑顔ですね……えっと……」
頼子「こ……こうですか……?」ニィ…
P「お、おしい! なにか違う! これはこれでありだけど不敵な笑みだからな、それ」
頼子「え、えっ……」
P「こう……にこっ、みたいな……」
頼子「こ……こう……」ニコ…
P「そう、それだ。それだよ!」
――
―――
――
P「うーん……」
頼子「どうしたんですか……?」
P「いや、頼子のアイドル衣装の案が出てるんだけどさ」
頼子「衣装……!」
P「うん。そろそろデビューも見えてきたしな……それで、方向性がさ」
頼子「方向性……ですか……?」
P「そう、意外とミステリアスな雰囲気が似合うんじゃないかって思うんだ」
頼子「ミステリアス……? ミステリーはたまに読みますけど……」
P「いやいや、そうじゃなくて……」
頼子「えっ、あ……違いました?」
P「残念ながら……ん? 待てよ……ミステリーか……怪盗……ありかもしれないぞ!?」
頼子「え、えぇっ……?」
――
―――
―――
――
頼子「プロデューサーさん、私……」
P「うん、よかった……! 初めてのお仕事、成功だ!」
頼子「はい……私、うまくできてましたか?」
P「あぁ、最高だった! 怪盗衣装もはまってたぞ?」
頼子「本当に……? 嬉しい、です」
P「本当だとも……うん、ここからがんばっていこうな!」
頼子「……うん、がんばる……プロデューサーさん」
P「うん?」
頼子「私がアイドルだなんて……驚きですよね」
P「そうかなぁ?」
頼子「そうですよ……きっと、いろんな人がびっくりしました。でも、一番驚いてるのは私……」
P「そうか? 落ちついて見えたけどな……」
頼子「ふふ……ポーカーフェイスもこういう時には役立つの。プロデューサーさん、ありがとうございます」
――
―――
―――
――
―
頼子「……お月見、ですか?」
P「あぁ、だいぶ名前も売れてきたしどうかな? 団子を配るんだが……」
頼子「お団子……」
P「うちの事務所からは、頼子と……あと、晶葉を出そうと思ってるんだ」
頼子「晶葉さん?」
P「うん……あれ、同じレッスンだったことはあったっけ?」
頼子「いえ……事務所に初めて来たときに、少し」
P「へぇ……団子作り自体は晶葉のロボがあれば楽にいけるかなって思う」
頼子「……なるほど……」
P「え? あぁ、そりゃあロボ任せにはできないからな……」
頼子「なるほど……うん、わかった……」
P「うん?」
頼子「イベントまで……どれぐらいありますか……?」
P「そうだな……だいたい2週間、かな。十五夜にあわせてだから……」
頼子「……ありがとうございます。精いっぱい、がんばります」
P「うん、わかった! じゃあその方向で話を進めておくよ」
頼子(十五夜……お月見……下調べしないと)
頼子「フフ……楽しいな……」
――
P「ふぅ……んー。今日はもう上がるか……」
頼子「……あ、プロデューサーさん。お疲れ様です」
P「ん、頼子か。お疲れ……って何だ、その本?」
頼子「これですか……? お月見のイベントに呼んでいただくということで調べていたんです」
P「へぇ……流石は頼子だな。勉強熱心だ」
頼子「いえ……アイドルになってから、いろんなことに興味が尽きなくて……」
P「そうか……うん、いいじゃないか」
頼子「はい……知ってたことも、知らなかったことも。すごく輝いて見えるんですよ……」
P「それは、頼子も輝いてるからじゃないか? ……なんて、ちょっとクサいか」
頼子「……ふふっ、そうですね。あんまりプロデューサーさんにはあわないかも」
P「な、なんと」
頼子「あ、本ですか……?」
P「うん。教えてほしいな……普段、あまり読まないから」
頼子「そうなんですか……えっと、たとえば、お月見が元々中国の行事だった、とか……」
P「へぇ……そうだったのか」
頼子「でも、今の日本のお月見はだいぶ本家とは形も変わってるみたいですけど……」
P「例えば?」
頼子「例えば……プロデューサーさんは、十三夜ってご存知ですか?」
P「十三夜? 十五夜じゃなくてか?」
頼子「はい……十五夜と並ぶぐらい、いい月としてあげられていて……」
P「へぇ……」
頼子「どちらかしか見なかった場合、片月見といってあまりよろしくない、らしいです……」
P「なんと……知らなかったな。そりゃ見ないと」
P「うん? どうした?」
頼子「……十三夜も一緒に見ましょうね」
P「あぁ、いいとも。約束だな」
頼子「えぇ……期待してるから、きっと……」
P「確かに、楽しみだなぁ……その前に……」
頼子「えぇ、わかってます……お団子作りも勉強してますから」
P「……流石は頼子だな」
頼子「ふふっ……ありがとうございます」
P「よしっ、絶対に成功させるぞー!」
頼子「……はいっ」
晶葉「ん……おぉ、頼子!」
頼子「晶葉さん……お久しぶりです」
晶葉「……さんづけはよしてくれ。なんだかむずがゆいじゃないか」
頼子「でも……」
晶葉「あの時は、新人さんを先輩としてアドバイスする立場だったが……私達は対等だろう?」
頼子「……じゃあ、晶葉ちゃん?」
晶葉「……どうもむずがゆいが、まぁいいかな。私のロボは相変わらず完璧だ」
頼子「流石は晶葉さん……」
晶葉「また戻ってるじゃないか……」
頼子「あっ……つい」
晶葉「……まぁ、呼びやすいように呼んでくれればいいんだが……今度のお月見、楽しみだな」
頼子「……そうですね。とっても」
頼子「そんなに……?」
晶葉「ふふん、まぁ私の手にかかればこの程度簡単さ……だが」
頼子「……?」
晶葉「その、ロボが団子を作る機能はできたのにだな……何故か……」
頼子「……あ、ひょっとして……」
晶葉「おはずかしながら、私自身の手作り団子という奴がうまくできなくてだな……」
頼子「……ふふっ」
晶葉「わ、笑うなっ! 死活問題なんだぞ!? 私のファンだという殊勝な奴らには、その、それぐらいしてやりたいと思ったんだ!」
頼子「いいですよ……作りましょう、晶葉さん」
晶葉「いいのか……!? あ、ありがとう!」
頼子「本を読んだかいがあります……一緒に、少しずつ」
晶葉「あぁ、本番は近いぞ!」
――
晶葉「……ふぅ。ようやく私もうまく作れるようになったな」
頼子「上手です……うん、もう明日は本番ですけどこれならなんとか……」
晶葉「ははは……まさか私がここまでロボから離れると不器用だとは思わなかったよ。助かった、ありがとう」
頼子「いえいえ……」
晶葉「……ところで、頼子」
頼子「どうしたんですか……?」
晶葉「明日は、本番なわけだが……特別な団子を作ったりはしたのか?」
頼子「特別な……?」
晶葉「あぁ、ロマンチックに月に愛なんて誓ったり……なんてな」
頼子「……」
晶葉「……うちの助手、もとい……私達のプロデューサーだよ。どうなんだ?」
頼子「そんなの……ありませんよ?」
晶葉「ほう……」
頼子「気のせいです……それに」
晶葉「それに……なんだ?」
頼子「それに。月は移り気だから気持ちを誓ってはダメなんですよ?」ヒョイッ
晶葉「むぐっ……!?」
頼子「私もひとつ……あむっ」
晶葉「な、なにをするんだいきなり」
頼子「うん、美味しい……おませさんな口はふさいじゃいましょう、なんてね」
晶葉「……まったく。ポーカーフェイスもいいけれど、もっと素直に……むぐぅっ!?」
頼子「はい、もうひとつ……」
晶葉「も、もうっ……ふん。別に頼子が後悔しないのならそれでいいだろうがな……私はこれ以上は言わない」
頼子「……」
晶葉「一度、向き合ってみるのも悪くないんじゃないか?」
頼子「……考えてみますね」
―――
――
頼子(考える……考えてみたけれど、あまり眠れなかった……)
P「……頼子?」
頼子「あっ……プロデューサーさん……」
P「どうした、イベント中だぞ?」
頼子「……すみません……少し」
P「体調が悪いなら……休むか?」
頼子「いえ、平気です……私の、ファンの人達ですから……私が配らなきゃ……」
P「だが……」
頼子「……大丈夫。 顔を上げて、前を見て……そこに、ファンの人達がいれば……私は……」
P「……そうか。信じるぞ」
頼子「……はい」
ファン「うん、こちらこそ! いつも応援してるよ!」
頼子「はい……」
P「……もう、時間だな」
頼子「あ……終わり、ですか……?」
P「あぁ。お疲れ様、頼子」
頼子「ありがとうございます……あの、プロデューサーさん」
P「うん? どうした?」
頼子「……あとでお団子食べましょう。皆には秘密で……」
P「……おいおい」
頼子「あまっちゃったし、もったいないですよ……ね?」
P「うーん……じゃあ、お願いしようかな」
頼子「あ、はい……私達は……」
P「帰っていくファンの人達に、手でも振ってあげてくれ。最後までアイドルとしてな」
頼子「……わかりました」
P「片付けとかは、スタッフの人がやってくれるから大丈夫だぞ……それじゃ、あとで」
頼子「はい、あとで……」
頼子「……」
頼子「……いっちゃった……」
晶葉「やぁ、頼子。お疲れ」
頼子「あっ……晶葉さん。お疲れ様です」
晶葉「……頼子も、そんな顔をするんだな」
頼子「そんな顔……?」
晶葉「なに、プロデューサーがいってくるといって出てすぐ……寂しそうな顔をしていたぞ?」
頼子「……そんなはず、ありませんよ」
頼子「さらう……?」
晶葉「あぁ、頼子のステージ衣装のとおりに恋の怪盗になって……な」
頼子「……」
晶葉「……そんな複雑な表情しないでくれるないか」
頼子「あ、いえ……確かに、私のお仕事は皆の心を奪うこと……怪盗みたいかもしれないけど……」
晶葉「しれないけど、なんだ?」
頼子「……あっ」
晶葉「ふふん、自分の気持ちには素直になったほうがいいぞ? 私はファンの皆に手を振ってくる……廃棄分の団子も回収してこよう」
頼子「それじゃあ私は……」
晶葉「頼子はここにいて、プロデューサーを迎えればいいんだ……ようやく向き合えたんだからな。自分の気持ちと」
頼子「……」
晶葉「廃棄分はいっそファンにランダムでばらまいてこようか。あぁ、忙しくなりそうだ……いくぞお月見ウサちゃんロボ!」
ロボ「ガガピー!」
頼子(……向きあえた……気持ち……)
P「ただいま……お待たせ」
頼子「プロデューサーさん……お帰りなさい……」
P「……あれ? 晶葉とロボ達は……?」
頼子「……お団子の処理にいきました」
P「そうか……まじめだなぁ」
頼子「……その、プロデューサーさん」
P「うん? どうした」
頼子「お団子、食べますか?」
P「あ……そうだな。晶葉は戻ってこないけど先にちょっと食べちゃおうか」
頼子「……はい」
頼子「そうですか……よかった……」
P「……」
頼子「……」
P「あぁ……なんだか、いい風だな……」
頼子「……そうですね……とっても……」
フワッ…
頼子「……あ……」
頼子(――風が、草を揺らす音だけが大きく聞こえて……スタッフの人達の喧騒が、どんどん離れていって)
頼子(見上げた空は、あまりにも透き通って、遠くまで暗く、だけど輝いて見えて)
頼子(これが私の――)
頼子「あ……いえ……この月を見ていたら、いろんな気持ちが……」
P「月……? 確かに……そうだな、いろいろあったな……」
頼子「はい……なんだか……」
P「どうした?」
頼子「……いえ、何でもありません。ただ……」
頼子「……そう、ただ……月が……綺麗ですね……」
P「……あぁ……」
頼子(……今は……これが私の精一杯の勇気。自分の気持ち……)
頼子「……どうしたんですか……?」
P「死んでもいい、かな」
頼子「……!? えっ……」
P「……そういう意味だったのか?」
頼子「プロデューサーさん……知ってたんですか……?」
P「まぁ、その……頼子がよく本で調べものなんかもしてるから……ちょっとな」
頼子「……」
P「……ははは。照れくさいなぁ……それに、柄じゃなかった」
頼子「確かに……似合ってませんでしたけど……」
P「うぐっ……」
P「……あー。言ってみたかっただけだったりとか……」
頼子「違いますよ……わかった上で、言ったんですから……」
P「……」
頼子「……」
P「これって、告白なのかな?」
頼子「……私は、そのつもりでしたけれど……」
P「……あぁ。うん……なるほど、日本語訳をこうした理由がわかったかもしれない」
頼子「理由……ですか?」
P「あぁ……なんだか、さっきまでよりもずっと。綺麗に見えるんだ……月も、頼子も」
頼子「……ふふっ、やっぱり似合わない」
P「そう茶化さないでくれよ……」
P「うん……? どうした?」
頼子「これから先のことは、考えていますか……?」
P「……そう、だな……」
頼子「……」
P「アイドルとしての、頼子はまだまだ伸びる……俺は、それを応援したい」
頼子「そうですか……」
P「うん。俺はやっぱり、プロデューサーだから」
頼子「……わかりました。それなら私も、アイドルですから」
P「……いけるところまで、いってみたいんだ。ついてきてくれるか?」
頼子「えぇ……きっと、どこまでも」
おわり
月見でクるものがあって、吐きだしたかったんですけれど
なんとか書きたかった部分が書けて満足です
あと、モバマスSSが急激に増えてすごくうれしいです。みんなも書けばいいと思うの
Entry ⇒ 2012.09.23 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (2) | Trackbacks (0)
入須「来たぞ、折木君」
・古典部部室
奉太郎(千反田は図書館、里志は総務委員の会議、伊原は図書委員の仕事…)
奉太郎(三度目の奇跡だ。今日の奇跡を信じて、この問題を終わらせる)
奉太郎「こんにちは、先輩」
入須「あぁ」
奉太郎「お久しぶりですね」
入須「…そうだな、一週間ぶりだ」
奉太郎「はい」
入須「…早くないか?」
奉太郎「そうですか?」
入須「…まぁ、元々私から言い出したことだ。君が気にする必要は無いんだが」
奉太郎「えぇ」
入須「手紙で呼び出されたのは初めてだ」ガタッ
奉太郎(…先輩はいつも目の前に座るな)
奉太郎「俺も下駄箱に手紙を入れたのは初めてです」
入須「それで、これはどういう事だ?」パサッ
『本日放課後、古典部部室にて。 折木奉太郎』
奉太郎「そのままの意味ですよ」
入須「…と言われてもな」
奉太郎「部室なので、抹茶が無くて申し訳ないんですが」
入須「それは構わないが」
奉太郎「安心しました」
入須「…それで、なんだ?」
奉太郎「…実は、特に大した用事は無かったんですが」
入須「……帰る」スッ
奉太郎「冗談です」
入須「………」トスッ
奉太郎「…入須先輩、お話があります。聞いてもらえますか?」
入須「…あぁ」
奉太郎「……以前、先輩が俺に相談した事を覚えていますか?」
入須「さて、なんだったか」
奉太郎「恋の相談ですよ。先輩に好きな人がいると」
入須「……それは、忘れてくれ。終わった事だ」
奉太郎「…その次に先輩が俺に話した事は、覚えていますか?」
入須「…高校生活についてだ。主に、朝と放課後のな」
奉太郎「えぇ。そして休みの日に先輩の髪の話、文化祭で先輩が怒っていた理由の話」
入須「随分ピンポイントだな」
奉太郎「共通点があります」
入須「…一体なんだ?」
奉太郎「わかりませんか?」
入須「……あぁ」
奉太郎「…先輩、前に俺の事をこう言ってましたね。よく理解してくれて、特別だと」
入須「そうだな」
奉太郎「特別な事、それは人それぞれあります。勿論俺にも」
入須「君にとって特別な事?」
奉太郎「先輩、例えば自分の前を歩く人が居たとしたら、それはどの様な人でしょうか?」
入須「…急になんだ」
奉太郎「答えてください」
入須「……目上の人だろう。上司、先輩」
奉太郎「では、自分の後ろを歩く人は?」
入須「単純に逆にすれば、部下、後輩。目下の者だ」
奉太郎「それなら、隣は?」
入須「同期、同級生。対等な関係の者だ」
奉太郎「…では、その隣を歩く人が先輩の後ろに下がっていくとして、その理由はなんでしょうか?」
入須「…折木君、なぞなぞをする為に私を呼んだのか?」
奉太郎「先輩、答えてください」
入須「……わかった。そうだな…本質的に、立場が下なんじゃないか?」
奉太郎「と言うと」
入須「人を避けるにしろ狭い道を歩くにしろ、自分が動く事で相手を引き立たせている」
奉太郎「では逆に、前に出て行く場合の理由はなんでしょうか?」
入須「…自ら引き立つ為に動く。リーダーたる者、若しくは相手を守る為」
奉太郎「……ありがとうございます。参考になりました」
入須「意図を教えてはくれないのか?」
奉太郎「…先輩、今の話、俺は抜けている事があると思います」
入須「なんだ?」
奉太郎「隣を歩く人は同級生だけではありません。年上の友達や親、年下の知り合いや兄弟」
入須「…確かに」
奉太郎「そして、隣に歩く人が前に出る。 …導いているんじゃないでしょうか?」
入須「隣の者をか?」
奉太郎「えぇ、例えば、俺の様な何もできない省エネ人間をね」
入須「…君は何もできなくないよ」
奉太郎「…そう言って貰えると嬉しいです」
入須「本当だ」
奉太郎「……本題に入りましょうか、先輩」
入須「…待て」
奉太郎「はい」
入須「聞きたくない」
奉太郎「聞いてもらいます」
入須「嫌だ」
奉太郎「先輩」
入須「………」
奉太郎「…知る事の出来る者が、知らないフリをする事はできない」
入須「…どういうことだ?」
奉太郎「先輩、人の気も知らないで、勝手に結論を出すのは良くありませんよ」
入須「………」
奉太郎「………」
入須「……わかった、聞かせてくれ」
奉太郎「はい」
奉太郎(布石は打った。ここからだ…!)
奉太郎「…先日言ってましたね、昔の関係に戻るのは嫌だと」
入須「あぁ」
奉太郎「それは、俺と先輩の距離が離れてしまうからですか?」
入須「…そうだ」
奉太郎「なら、それはありえません」
入須「なぜだ。君は私に騙され、苦手意識を覚えたはずだ。そうなれば…」
奉太郎「先輩、俺はどうやら省エネはやめられません。そしてあなたは女帝と呼ばれている」
入須「…あぁ、変わらない」
奉太郎「それで良いんです。見方を変えましょう」
入須「見方を…?」
奉太郎「先輩は、隣に歩きながら俺を導いてくれていると」
入須「…私が、君を」
奉太郎「えぇ。先ほどの共通点の話ですが、あれは全て先輩の問いに俺が考え、答えを示した話です。正答は少ないですが」
入須「…なるほど、確かに」
奉太郎「最初は嫌でしたが、今はそこまで嫌ではありません。まぁ、余り多いと困りますけど」
入須「…そんなに言わないよ」
奉太郎「悪い気はしませんけどね」
入須「……だが、私はまた君を騙そうとするかもしれない。導くと嘘をついてな」
奉太郎「その時は、また先輩の真意を俺が解きます」
入須「………」
奉太郎「先輩、あなたは俺に道を示してくれた。そして、これからも変わらないでしょう」
入須「あぁ」
奉太郎「これがこの間の答えです。 …先輩は特別です。俺には、あなたが必要な理由がある」
入須「!」
奉太郎「俺達は二人で歩いていく。そして先輩は時々前に出て、俺を導いてください」
入須「…それなら君は、時々後ろに下がって私を見守ってくれるのか?」
奉太郎「そうですね、後ろに下がって、俯瞰で先輩の気持ちを理解しましょう」
入須「…そうか」
奉太郎「お互いが特別であれば、対等じゃないですか?」
入須「……そうかもしれない。だが、私は君を束縛してしまう。嫉妬心も強い。君はこんな女、嫌だろう?」
奉太郎「先輩、俺は先輩を信頼します。だから先輩も俺を信じてください」
入須「だが…」
奉太郎「………」
奉太郎(ここか…)
奉太郎(姉貴が言っていたな。わかっている事実を検討し、わからない事に上書きしろと)
奉太郎(姉貴…信じるからな。失敗したら、一生恨むぞ)
奉太郎「…あの時、俺の事を変わっていないと言いましたね、先輩」
入須「…あぁ」
奉太郎「そんな事はありません。変わっていますよ、俺は」
奉太郎(………)ドク…ドク…
奉太郎(胸が痛い…勇気を出せ、俺!)
奉太郎(…事実はある。全てを伝えるんだ、先輩に!)
入須「…折木君?」
奉太郎「俺は…俺は!」
奉太郎「入須先輩の事が、どうしようもなく好きになりました!」
入須「!!」
奉太郎「変わっていないなんて、言わせません」
入須「………」
奉太郎「………」ガタッ
入須「お、折木君
ギュッ
入須「!」
奉太郎「束縛してください。嫉妬してください。騙してください」
奉太郎「そのままの先輩で良いんです。俺は、そんな先輩が堪らなく好きなんですから」
入須「………」
奉太郎「………」
入須「………」ポロ…ポロ…
奉太郎「! 先輩…?」
入須「折木君…折木君…」
奉太郎「…泣かないで下さい、先輩」
入須「うるさい…」
奉太郎「…調子が戻ってきましたね?」
入須「……この一週間、とても辛かった。そして今、とても幸せだ」
奉太郎「はい」
入須「想いが込み上げて、止まらない…嬉しくて、悲しくて…」ポロ…ポロ…
奉太郎「はい」
入須「君がこんな…私を抱きしめるからだ。 …暖かくて、優しくて」
奉太郎「………」
入須「今、私も変わった。君の事が…大好きになったよ」
奉太郎「はい」
入須「こんな私でいいのか…?」
奉太郎「…先輩以外、いません」
入須「…嬉しい」ギュッ
奉太郎「………」ギュッ
入須「………」
奉太郎「……入須先輩」
入須「……折木君」
奉太郎「………」
入須「……ん」
奉太郎「………」チュッ
入須「んっ…」
奉太郎「……ふぅ」
入須「………」
奉太郎「………」
入須「……もう一度」
奉太郎「…おあずけです」
入須「…バカ」
奉太郎「これでも、恥ずかしいんですよ」
入須「気にしなくて良いよ」
奉太郎「俺が気にします」
入須「………」ギュッ
奉太郎「……先輩、好きです。この気持ちは、忘れません」
入須「…忘れたら、怒るからな」
奉太郎「手帳に書いておきますよ」
入須「ふふっ。あぁ、頼む」
奉太郎(…入須先輩、出会った当初はこんな関係になるとは思って居なかったが)
奉太郎(こんなにもかけがえのない人が出来て、俺も、幸せだ)
・10分後
入須「これで…正式に恋人同士、だな」
奉太郎「そうですね」
入須「お互いに好きだと確認しあったし」
奉太郎「えぇ」
入須「……キスもしたし」
奉太郎「…はい」
入須「君と将来どういう家族になるのか、今から楽しみだな」
奉太郎「……え?」
入須「折木君、私は婚前交渉は構わないけど、子供は結婚後だからな」
奉太郎「……結婚?」
入須「…君の為なら、痛みも我慢するよ」
奉太郎「ちょっと待ってください」
入須「…なんだ?」
奉太郎「……いや、急に話が飛躍したような気がするんですが」
入須「どこがだ?」
奉太郎「結婚って…」
入須「先ほどキスをしたじゃないか」
奉太郎「はい」
入須「結婚と言う事になるだろう?」
奉太郎「……いや、なんでですか。なる訳ないでしょう」
入須「何故だ、なるだろ?」
奉太郎「なりませんよ」
入須「なる」
奉太郎「なりません」
入須「………」
奉太郎「………」
入須「…まぁ、前提と言う事にしておくよ」
奉太郎「…もうそれでいいです」
入須「結婚はするけどな」
奉太郎「…もうなんでもいいです」
入須「そうか。まぁ、学生結婚は何かと大変だからな、すぐの話じゃないよ」
奉太郎「…はい」
入須「元気が無いぞ」
奉太郎「…疲れが一気に来ました」
入須「私の為に考えていてくれたんだな…ありがとう」
奉太郎「…これは五限の体育ですね。体が痛い」
入須「………」ペシッ
奉太郎「痛っ! 何するんですか…」
入須「君にはデリカシーが足りないな。それに鈍感だ」
奉太郎「酷い言われようですね」
入須「…そして、女に警戒心が足りない」
奉太郎「うっ…もう良いじゃないですか、それは」
入須「ヘラヘラしてた」
奉太郎「してませんよ。笑顔の練習です」
入須「なら、私にも見せてみろ」
奉太郎「…嫌です」
入須「あの女性に出来て、私には出来ないと」
奉太郎「…そういうわけじゃ
入須「なら見せてみろ」
奉太郎「………」
入須「早く」
奉太郎「………」ニコッ
入須「!」カーッ
奉太郎「…これでいいですか」プイッ
入須「あ、あぁ…」ドキドキ
奉太郎「……恥ずかしいんですから」
入須「…余り、やらなくていいよ」
奉太郎「…はぁ」
入須「目に毒だ…」
奉太郎「失礼な」
入須「年上の女性には絶対に見せない様にな」
奉太郎「…はぁ」
入須「わかったな?」
奉太郎「まぁ、はい」
入須「今日から君には首輪を付けさせてもらうからな」
奉太郎「……え?」
入須「しっかり面倒を見てやろう」
奉太郎「先輩、自由とは」
入須「有って無い様な物だ」
奉太郎「独裁者じゃないですか…」
入須「ふふっ、冗談だよ。 …監視はするが」
奉太郎「…先輩」
入須「しばらく我慢しろ。一週間分、君に甘えたい」
奉太郎「…仕方ないですね」
入須「ふふっ、楽しみだ」
奉太郎「それじゃ、そろそろ帰りましょうか」
入須「あぁ、腕を組んでな」
奉太郎「早速ですか」
入須「…私は容赦しないからな。覚悟しろよ」
奉太郎「…はい」
奉太郎(腕を組んで、隣同士で歩いていく…)
奉太郎(道に迷ったら、先輩が前に出て正しい道を探す。俺はその後ろで考えて、先輩に助言をする)
奉太郎(二人で協力して、この先を歩いていく)
奉太郎(隣同士、対等に…どこまでも…歩いていこう)
奉太郎(かけがえのない、特別な人と一緒に)
奉太郎「行きましょうか、冬実先輩」
入須「! あぁ…そうだな、奉太郎」
おまけ
奉太郎(……ん?)
奉太郎「先輩、少しここに」コソコソ
入須「ん? あぁ…」
奉太郎「………」コソコソ
ガラッ
里志「うわっ!」
伊原「えぇっ!」
千反田「きゃあっ!」
奉太郎「………」
里志「…ばれたね」
伊原「だからやめようって言ったのに!」
千反田「あ、あの、その、これは…」
奉太郎「………」
里志「……逃げろっ!」
伊原「あ! ちょっと待ってよ!」
千反田「え? あ、待ってください! 私、気になりますーっ!」
奉太郎「………」
入須「…見られてたな」
奉太郎「その様ですね」
入須「…まぁ、私は見られていても構わないがな」
奉太郎「俺は嫌ですっ!」
エピローグ
奉太郎「おはようございます。先輩」
入須「おはよう。時間通りだな」
奉太郎「はい。それじゃ、行きましょう」
入須「あぁ」
奉太郎「……大分寒くなってきましたね」
入須「冬も近いからな」ギュッ
奉太郎「…暖かいですね、先輩」
入須「ふふっ、君もな」
奉太郎「昨日はお邪魔しました」
入須「あぁ、気にするな」
奉太郎「…予想通り先輩の父親には睨まれてしまいましたが」
入須「…それも気にするな。まぁ、なんとか説得しよう」
奉太郎「先輩が結婚を考えている、なんて言うからですよ」
入須「本心だ」
奉太郎「空気で死ぬかと思いました」
入須「…まぁ、ゆっくり行こう」
奉太郎「…そうですね」
入須「時間はある。君にも、私にも」
奉太郎「はい」
入須「いつか、二人で一番幸せになろう」
奉太郎「えぇ、必ず」
??「おおーい!」
奉太郎「…里志だ」
里志「奉太郎! 入須先輩!」
奉太郎「随分早いな」
入須「おはよう、福部君」
里志「おはようございます。奉太郎達の姿が見えたから追ってきたんだよ」
奉太郎「朝から元気だな、お前は」
里志「そりゃそうだよ! なんせ神高の女帝を落とした帝王、折木奉太郎とその女帝が腕を組んで歩いているんだからね」
入須「…そんな話になっているのか」
奉太郎「話半分に聞いておいてください」
里志「嘘じゃないよ、奉太郎」
奉太郎「……嘘だと言ってくれ」
里志「大体、こんな露骨にアピールすれば誰だって気づくさ」
入須「…奉太郎、堂々としろ」
奉太郎「ですが、先輩…」
入須「私は気にしない」
奉太郎「俺が気にするんですっ!」
里志「その内新聞部や放送部が来るかもね」
奉太郎「勘弁してくれ…」
里志「女帝、入須冬実を手に入れた帝王、果たしてどの様な人物かっ! ってね」
奉太郎「…お、俺の省エネ生活を返してください、先輩」
入須「…まぁ、頑張ってくれ」
奉太郎「先輩!」
入須「知らん」
里志「…まったく、諦めなよ、奉太郎」
奉太郎「………」ガクッ
入須「歩け」
奉太郎「……はい」
奉太郎(好きだけど…好きだけど…!)
奉太郎(別れようかな…)
入須「…今、何を考えていた?」
奉太郎「い、いえ、何も!」
おわり
これで、とりあえずこのSSシリーズは終わりです。
入須先輩に惚れて自家発電として書いたSSでしたが、
色々な方にお読みいただきまして、ありがとうございました。
それでは、また次の機会がありましたら、宜しくお願いします。
いりすたそ~
Entry ⇒ 2012.09.23 | Category ⇒ 氷菓SS | Comments (2) | Trackbacks (0)
紬「まろやか?」
少女の名前は秋山澪。彼女は吸血鬼でした。
吸血鬼は人の生き血を吸って生きていきます。
しかし、澪は人見知りで恥ずかしがり屋だったので、その勇気がありませんでした。
このままでは駄目だと考えた澪の両親は、彼女一人を残して館から出て行きました。
吸血しなければならない状況を作り、澪に一人前の吸血鬼になってもらうためです。
しかし澪はなかなか家をでる勇気が持てず、すっかり衰弱してしまいました。
一人の少女が館を訪れたのは、その頃のことです。
紬「森に花を摘みにきたのはいいけど、迷っちゃったみたい」
紬「ここはどこかしら」
紬「あら、あんなところにお家があるわ。ちょっとお邪魔してみましょう」
紬「あれ、鍵が空いてる」
紬は扉を開け、館に入りました。
澪はそれに気づいていたのですが、怖くて自分の部屋に閉じこもっていました。
紬「誰もいないのかしら‥…ひょっとして空き家かしら。ちょっと探検してみましょう」
紬は次々と部屋を巡り、ついには澪の部屋の前に辿り着きました。
紬「あれ、この部屋から人の気配を感じる」
澪「‥‥」
紬「この布団‥‥あやしい」
紬はベッドの上の布団が膨らんでいることに気づきました。
誰かが隠れていると確信した紬の顔には、悪い笑顔が浮かんでいました。
紬「わっ!!!」バッ
澪「うおおおおあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
紬「キャッ」
澪「食べてもきっと美味しくないぞ」
びっくりした澪は自分が食べられてしまうと思い込んでしまいました。
布団で頭部を守りながらガクガクと震えています。
紬「驚かしてごめんなさい。食べたりしないから出てきて」
澪「‥‥ほんとう?」
紬「本当」
澪「‥‥嘘だっ! そうやって安心させた後、パクリと食べちゃうんだ」
紬「どうしたら、信じてくれる?」
澪「‥‥」
澪は少し考え、布団の下から紬の顔を覗き込みました。
紬はとても綺麗な金色の髪をしていました。
やわらかく輝く髪を見て、異国のお姫様みたいだな、と澪は思いました。
澪「‥‥きれい」
紬「えっ」
澪「その髪、さわってもいい?」
紬はためらいながらも承諾しました。
すると澪は布団から出てきて、恐る恐る紬の髪を触りました。
澪「やわらかくてすべすべだ」
紬「くすっぐったい//」
澪「きれいな、髪」
紬「あなたの髪も、とってもきれい」
澪「//」
紬「触ってもいい?」
澪「うん」
紬はやさしく澪の髪を撫でました。
澪は気持ちよさそうに目を細めます。
紬「でもお肌はちょっと荒れてるみたい」
澪「‥‥っ」
荒れた肌を見られるのが嫌だったのです。
紬「ごめんなさい。無神経なこと言ってしまって」
澪「いいんだ。仕方のないことだから」
紬「ひょっとして、アトピーか何かの病気?」
澪「ううん。違うんだ」
紬「家から石鹸をもってきてあげる。とってもお肌がすべすべになるの」
澪「違うんだ。私は吸血鬼なんだ」
紬「吸血鬼?」
澪「うん」
紬「‥‥」
紬は少し考えてからこう言いました。
紬「それじゃあ、私の血、吸う?」
澪「へっ」
紬「私の血を吸ったら、お肌きれいになるんでしょ?」
澪「いいの?」
紬「うん」
澪は紬の首筋を見つめました。
両親が帰ってこない以上、いずれ血を吸う必要があります。
紬の首筋はとてもやわらかそうで、その中にある血もとても美味しそうだと澪は感じました。
澪「本当にいいの?」
紬「うん」
紬「‥‥っ」
小さな牙を紬の首筋に突き立て、血を吸い始めました。
澪は血の味を楽しみながら、顔に触れる紬の髪の感触を楽しみました。
数十秒ほどの食事の後、澪は口を離しました。
澪「まろやかー」
紬「まろやか?」
澪「うん」
紬「あっ、肌が綺麗になってる」
澪「‥‥本当だ」
紬「吸血鬼って凄い!」
澪「//」
澪「ちょっと力が強いんだ」
紬「他には?」
澪「怪我の治りもちょっと早いんだ」
紬「凄いっ!」
澪「//」
紬「ねぇ、私とお友達になってくれないかな?」
澪「‥‥いいの?」
紬「うん!」
澪「ことぶきつむぎ‥‥?」
紬「うん。親しい人はムギって呼ぶわ」
澪「琴吹さんでいいかな」
紬「うん」
澪「私は、秋山澪」
澪「親しい人は‥‥澪って呼ぶ」
紬「澪?」
澪「うん?」
紬「うーん。あっ、ひょっとして澪ちゃんは桜が丘の生徒?」
澪「えっ、なんで知ってるんだ?」
澪「琴吹さんも桜ヶ丘に通ってるの?」
紬「うん。あっ、それじゃあ、りっちゃ‥‥田井中律さんも知ってるよね?」
澪「もちろん知ってるよ。たった一人の友だちだから」
紬「りっちゃんから一度だけ澪ちゃんのこと聞いたことあるわ」
澪「律‥‥」
田井中律は狼少女でした。
吸血鬼が栄養を吸収できるのは人間の血からだけなので、律の血を吸っても意味がありません。
だから、最近は律が来ても居留守を使っていました。
カサカサの肌を見られるのが嫌だからです。
澪「えっと‥‥」
紬「学校楽しいよ。そうだ澪ちゃん、軽音部に入らない?」
澪「軽音部?」
紬「うんっ! 軽音部。りっちゃんがメンバー集めてやろうって。後一人足りないんだけど」
澪「琴吹さんもメンバーなの?」
紬「うんっ!」
澪「全部で何人なの?」
紬「今のところ3人だよ」
澪「律と琴吹さんと‥‥あと一人か」
紬「唯ちゃんって言うの」
澪「唯ちゃん?」
澪「紅茶?」
紬「うん。いつも練習前にティータイムをやってるの」
澪「いいなぁ‥‥」
紬「澪ちゃんもおいでよ」
澪「だけど‥‥」
澪は迷いました。
軽音部は楽しそうです。
しかし外界との関わりを断って久しい澪は、なかなか踏ん切りを付けることができませんでした。
紬「迷ってるんだ?」
澪「‥‥うん。最近人に会ってないから、怖いんだ」
紬「そうなんだ‥‥」
澪「‥‥」
澪「‥‥?」
紬「明日学校にきてみない? 私がずっと一緒にいるから」
澪「いいの?」
紬「うん。だってお友達だもん」
澪「‥‥あっ、ごめん」
紬「えっ」
澪「さっき律のことたった一人の友だちって言ってごめん。琴吹さんとも友達になったのに」
紬「‥‥澪ちゃんって繊細なんだね」
澪「うん、そうなんだ」
紬「ふふっ」
澪「笑うなんて酷い‥‥」
紬「ごめんなさい。澪ちゃんがあまりに可愛かったから」
澪「//」
次の日の朝早く、紬は澪の家に迎えに行きました。
紬「澪ちゃん、いきましょ」
澪「本当に大丈夫かな?」
紬「大丈夫だって、ねっ」
紬は澪の手をとりました。
澪「あっ‥…やわらかい」
紬「澪ちゃんの手もやわらかい。それにとってもすべすべ」
澪「//」
紬「さぁ、行きましょ」
澪「‥‥うん」
久しぶりのおいしい空気を澪はいっぱい吸い込みました。
紬はそれをニコニコ見つめました。愛しそうに。
しばらく歩くと、通学路に出ました。
律「おーい! ムギ‥‥と澪!?」
澪「り、りつ」
紬「りっちゃんおはよう」
律「なぁ、どうして澪が‥‥」
紬「実は‥‥」
紬と澪は律に昨日のことを話しました。
澪はちょっとだけ居心地が悪そうにしています。
律「そんなことがあったのかー」
澪「うん」
律「でも、なんで今まで私に会ってくれなかったんだ?」
澪「い、言いたくない」
澪「嫌なものは嫌だ!」
紬「メッ! りっちゃん!!!」
律「うおっ!」
紬「女の子は色々あるんだから、りっちゃんは追求しちゃ駄目よ!」
律「まぁムギがそう言うなら‥‥」
紬「わかってくれればいいの」
律「‥‥ん?」
紬の言葉は、自分のことを女の子扱いしていないのでは、と律は思いましたが。
紬がそのような皮肉をいう訳がない、と思い、文句は言いませんでした。
律「あぁ」スタスタ
紬「‥‥りっちゃん、一人で歩いていっちゃ駄目」
律「えっ」
紬「りっちゃんは澪ちゃんのもう片方の手を握ってあげて」
澪「えっ?」
意外な提案に面食らってしまった律でしたが、
それはそれで面白そうだと思い、紬の言葉に従いました。
律「澪の手暖かいな」ギュ
澪「ううっ、これは恥ずかしいよ」
紬「そう?」
澪「あれって?」
紬「CIAに捕獲されたエイリアンの図のことね!」
律「そう、それ!」
澪「お、おまえら‥‥」ピキピキ
律「澪が」
紬「怒ったー」
二人は手を解き、澪を置いて走り出しました。
澪は怒ったフリをして二人を追いました。
学校はもうすぐそこです。
その中の一人が近寄ってきました。そうです、平沢唯です。
唯「ムギちゃん、りっちゃん、その子は?」
紬「新しい軽音部員よ?」
澪「へっ」
唯「へぇ?そうなんだ?。ふーむ」
唯はじっと澪のことを見つめました。
澪は少し居心地が悪そうにしています。
唯「えいっ」
澪「きゃっ」
突然唯は澪に飛びつきました。
唯「なかなか良い抱き心地ですな?」
紬「ふむふむ」
澪「は、はなれてくれ」バシ
唯「あっ‥‥」
澪は走って教室から出て行ってしまいました。
紬はそれを追いかけます。
紬「澪ちゃん、大丈夫?」
澪「あぁ、うん。あの唯って子、誰にでもあぁなのか?」
紬「唯ちゃんが抱きつくのは、気に入った子だけよ」
澪「‥‥私は気に入られたってことか」
紬「いや?」
澪「嫌じゃやないけど、いきなり抱き付かれるのは困る」
紬「そうね。じゃあ唯ちゃんに言っておくから」
澪「えっ、それはいいよ」
紬「そう? じゃあ言わないでおくね」
澪「あぁ」
休み時間も、トイレに行くときも、ずっと一緒でした。
やがて放課後になり、四人は部室に集まりました。
唯「澪ちゃんも楽器やるの?」
澪「あぁ、私はベースを弾くんだ」
唯「ベース! 凄い!!」
澪「//」
紬「唯ちゃんはね、ギタリストなの」
澪「へぇ?平沢さんギター弾けるんだ」
唯「えへへ?」
澪「琴吹さんは何をやるの?」
紬「私はこれ」
澪「キーボードか」
澪「律はドラムだろ。知ってるよ」
律「そ、そうだな」シュン
唯「ねぇ、せっかく四人揃ったんだから、合わせてみようよ」
紬「そうね、やってみましょ」
律「あぁ、そうだな」
澪「‥‥できるかな」
澪は不安そうな顔をしましたが、紬と律に押されて演奏しました。
四人で合わせるのは初めてでしたが、演奏はとても楽しく明るいものでした。
演奏しながら澪は、学校に来てよかったと思いました。
唯「うんうん。すっごくうまかった」
澪「//」
唯「それにひきかえ、ねぇ」
律「な、なんでこっちを見るんだ」
唯「りっちゃんってさ、部長さんなのに下手だよね」
律「ひ、酷い‥‥」シュン
澪「まぁまぁ律。これからだって」
律「うぅ‥‥」
律が落ち込んでいると、ティーセットを持った紬がやってきました。
紬「お茶をいれるわー」
唯「お菓子もあるの?」
紬「えぇ、今日はロールケーキよ!」
紬「ふふふ、澪ちゃんも好きなんだ」
澪「うん」
紬「それは良かった」
紬はお茶の準備を始めました。
受け皿を並べ、カップを置き、皿を並べ、ティースプーンとフォークをセットする。
紅茶をカップに注ぎ、ロールケーキを切り分けて、皿に盛り付ける。
その一連の流れはとてもゆったりとしていましたが、全く無駄のないものでした。
いつの間にか澪は紬に見蕩れていました。
澪「きれい‥‥」
唯「澪ちゃん?」
澪「‥‥ううん、なんでもない」
紬「どうぞ、澪ちゃん」
澪「‥‥」ゴク
紬「どう?」
澪「美味しい‥‥」
紬「おかわりもあるから、どんどん飲んでね」
澪「あぁ」ゴク
唯「ムギちゃん、ムギちゃん。私にも早く」
紬「ええ、唯ちゃん。今いれるわ」
ティータイムは終始和やかでした。
美味しいお茶と美味しいお菓子、楽しそうに過ごす3人。
澪は軽音部にきて本当に良かったとひしひしと感じました。
澪「律‥‥?」
律「こうなったら練習あるのみだ!!」
唯「さっきの演奏気にしてたんだ」
紬「おっ、りっちゃんやるきね?」
律「あぁ、これからドラムマニアやりに行くぞ」
紬「えっと‥‥」
唯「ムギちゃんは知らないんだ。ゲームのことだよ。ドラムを叩くゲーム」
律「あぁ。ドンドンドコドンってリズムに合わせて叩くんだぞ」
紬「面白そう!!」
律「じゃあ今日の部活はこれくらいにして、みんなで行こうぜー」
唯・紬「おー」
澪「‥‥」
紬「澪ちゃん?」
澪「‥‥私はいい」
澪「私は行きたくない」
律「そんな事言わずにさー。澪も行こうぜ」
澪「ごめん律。久しぶりに外に出たから疲れてるんだ」
澪「私はいいから琴吹さんと平沢さんと3人で行っておいでよ」
律「うーん」
紬「‥‥私も澪ちゃんと一緒に帰るわ」
律「それじゃあムギ頼むよ」
澪「いいよ。琴吹さんも楽しんできなよ」
紬「だけど‥‥」
澪「ドラムマニアに興味津々だったじゃないか」
紬「‥‥」
澪「それじゃあ、私は帰るよ。さよなら」
もちろん四人で遊ぶのが嫌だったわけではありません。
澪はゲームセンターに行くのが嫌だったのです。
人が沢山いる場所、しかも素行の良くない人がたむろしている場所。
澪にはまだそんなところに行く勇気がありませんでした。
澪「はぁ‥‥」
澪「なんだか妙な空気にしてしまったな」
澪「でも軽音部は楽しかった」
澪「うん。明日から頑張ろう」
澪は長い独り身生活のせいで、独り言がくせになっていました。
傍から見たら、ただのかわいい妙な人です。
そんな澪の後を追いかける少女がいました。そう、紬です。
紬「澪ちゃん!!」
紬「約束したから」
澪「約束?」
紬「私がずっといっしょにいるって、約束したから」
澪「でも、もう放課後だよ」
紬「家に帰るまでが学校です!」
澪「‥‥ぷっ」
紬「澪ちゃん?」
澪「琴吹さんって真面目な顔して面白いこと言うんだね」クスクス
紬「//」
紬「うんっ!」
二人は歩き出しました。
ゆっくりと、一歩一歩しっかりと。
夕焼けで赤く染まった街を通り過ぎ、少し暗くなった森を抜けて、澪の家に着きました。
澪「上がっていってよ。お茶ぐらい出すから」
紬「うん」
澪「琴吹さんはそこら辺に座ってて、今用意するから」
紬「うん」
ソファに座った紬は辺りを見回しました。
すると一枚の写真が目に入りました。そこには幼い澪と律が写っていました。
紬「ありがとう。ねぇ、あの写真」
澪「あっ、あれか」
紬「うん。小さい頃の澪ちゃんとりっちゃんだよね」
澪「あぁ、そうだよ」
紬「ふたりともかわいいわ?」
澪「そうかな? 今とそんなに変わらないと思うけど」
紬「うふふふ」
澪「ねぇ、琴吹さん」
紬「なぁに?」
澪「私はこれから上手くやっていけると思う?」
紬「不安?」
紬「澪ちゃんは人が沢山いるところに行くのが嫌だったんだね」
澪「‥‥! 気づいてたんだ」
紬「うん」
澪「琴吹さんは凄いな。それにひきかえ律のやつは」
紬「りっちゃんも気づいてたと思うけど」
澪「えっ」
紬「澪ちゃんが人ごみ苦手だって知ってるから」
紬「だからこそ、ゲームセンターに連れて行こうとしたんだと思う」
澪「‥‥そうなのか」
紬「うん。りっちゃんなりの気遣いじゃないかな」
紬「澪ちゃん?」
澪「いやさ。律にも琴吹さんにもこんなに気遣われて、情けないなって」
紬「そんなことないと思うけど。ベースだってとっても上手だったし」
澪「あぁ、ベースは独りで練習してたから‥‥」
紬「ねぇ、澪ちゃん」
澪「なんだ?」
紬「少しずつ慣れていけばいいと思うの。一歩ずつ」
澪「そうかな?」
紬「うん。私はそう思う」
澪「‥‥」
紬「私ね、今とっても楽しいの」
紬「うん。たまたま訪れた家を探検したら、お姫様みたいな綺麗な女の子が出てきて‥‥」
紬「私と友達になってくれて‥‥」
紬「その子は同じ学校の子で‥‥」
紬「軽音部で一緒に演奏して‥‥」
紬「こうやって、一緒にお喋りして‥‥」
紬「本当に、とってもとっても楽しいの!!」
澪「琴吹さん‥‥」
紬「澪ちゃんは楽しくない?」
澪「突然人が家に入ってきたときはどうなるかと思ったけどさ‥‥」
澪「やってきたのはお姫様みたいに綺麗な女の子で‥‥」
澪「その子は同じ学校の子で‥‥」
澪「とっても優しくて面白い子で‥‥」
澪「血はすっごくまろやかで‥‥」
澪「あっ」
話しているうちに、澪は紬の血の味を思い出してしまいました。
視線は紬の首筋に釘付けです。
澪「‥‥ごめん」
紬「吸う?」
澪「いいの?」
紬「えぇ」
紬「‥‥」
澪「まろやかー」
紬「やっぱりまろやかなんだ」
澪「うん。とってもまろやかで、包み込まれるような優しい味」
紬「//」
澪「//」
澪「同じ事?」
紬「お姫様みたいだって」
澪「だってとっても綺麗な髪で、綺麗な瞳だから」
紬「眉毛は太いよ」
澪「それもかわいいと思う」
紬「//」
紬は澪にほめられて真っ赤になってしまいました。
容姿を褒めてもらったことは何度もありましたが、
眉毛まで褒めてもらったのは初めてだったのです。
紬「そんなことない!!!」
澪「わっ」
紬「髪の毛は艶のある綺麗な黒だし、瞳もぱっちりしてるし」
紬「ちょっと病弱そうだし、おしとやかだし」
紬「お姫様そのものよ!!」
澪「//」
力説されて、澪も頬を真っ赤に染めました。
紬の言葉は力強く、1点の嘘偽りもないことは明らかです。
澪は照れくさそうに言いました。
紬「そういう澪ちゃんのほうこそ」
紬も照れくさそうに言いました。
澪「ねぇ、琴吹さん」
紬「なぁに?」
澪「ムギって呼んでいいかな?」
紬「うん。よろこんで!」
澪「これからよろしく、ムギ姫」
紬「あらあら、そんな呼び方したらりっちゃんが嫉妬するわよ」
澪「律が? ないない。律はお姫様って柄じゃないから」
澪「‥‥ぷっ」
紬「澪ちゃん?」
澪「やっぱりムギってときどき面白いことを言うね」
紬「もう‥‥だけど、それなら私にもチャンスがあるのかな」
澪「なんのこと?」
紬「うふふ、なんでもないわ」
澪「教えてよ」
紬「秘密」
二人の関係はまだ始まったばかり。
紬の秘密が明かされるのは、もっと後のお話。
彼女たちにはまだまだ時間があるのです。
めでたしめでたし?
おしまいっ!
>>70
かわいい
Entry ⇒ 2012.09.23 | Category ⇒ けいおん!SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
結衣「もっと女の子らしく」
結衣「……」ペラッ
結衣「あ、このお料理美味しそう……」
京子「良く言えばボーイッシュ、悪く言えばガサツというかさ」
京子「言葉遣いも男の子みたいだし、……まぁそれがいいっていう子もいるんだけど」
京子「ごらく部の面々に比べて女の子らしさが無いんだよなぁ……」
結衣「京子、今夜はこのロールキャベツでいいかな?」
京子「ろ、ロールキャベツ……!」ジュル
結衣「はいはい、あまり興奮しないの……おすわり」
京子「へっへっ……くぅ~ん」ペタッ
結衣「ぷ、プライドは無いのか京子には……」ナデナデ
結衣「でもさ、初めて作る料理だから失敗するかもしれないよ?」
京子「ううん、結衣の腕ならレシピ通りやれば事故は起きないって」
京子「いつも結衣のご飯を食べてきた私が保証するよん」ニコッ
結衣「……あ、ありがと」
結衣「じゃあ今日のおかずはロールキャベツにしてっと……」メモメモ
結衣「待てよ……」ピタッ
結衣「主食をご飯にするとちょっと組み合わせとしてどうなんだろう?」
京子「えっ、私は別に問題ないと思うけど」
京子「ご飯+ロールキャベツ、だけでいいじゃん」
結衣「うーん……」
京子「ノンノン、……気にし過ぎ、それだけでも十分ご馳走だよ」
京子「ポイントなのは結衣の手料理ってことで、それだけで嬉しい……」
京子「はっ!?……な、なーんちゃって」アセアセ
結衣「へっ?どうしたのそんなに慌てちゃって」
京子「な、なんでもない、それより今日の晩ご飯はどうするの?」
結衣「えっと……」
京子「おぉ……」
結衣「失敗したらゴメンな、先に謝っておく」
結衣「京子とはいえ不味いのを食べさせると思うとちょっと気が引けるな……」
京子「京子とはいえ、ってちょっと失礼じゃないの?」ジッ
結衣「あはは……」
京子「ま、期待して待ってますよ結衣シェフのお料理」ニコッ
結衣「……もう、プレッシャーかけるなよ」
結衣「あのさ、さっきのってどういう意味なの」
京子「うん?」
結衣「わ、私が行き遅れるってハッキリ言ったよなお前……」ジトッ
京子「あぁ……」
結衣「行き遅れるって、……つまりおばさんになるまで独身ってこと?」
京子「ま、まぁそういうこと……」
結衣「むっ……」
結衣「……」ジトッ
京子「いやんっ、そんなジト目で見つめちゃダメよ」
結衣「割りとズボラなところがある京子にそんなこと言われるとは……」
京子「わ、わたしってズボラなの!?」
結衣「自覚無かったんかい」
結衣「ご、ごめん、ズボラって言うのは少し言い過ぎた……」
京子「……」スッ
結衣「どうしたの急に立ち上がって?」
京子「今日はただ遊びに来ただけだっていうのに……」
京子「私服はちゃんとよそ行きの可愛いの選んだぞ!!」ズイッ
結衣「そうだね、そのシャツとネクタイの組み合わせ可愛いな」
京子「へっ!?……あ、ありがと」
京子「うっ……と、とにかくだ!」
京子「ジャージでもいいのに、可愛くおめかしをしてきた幼なじみにズボラとは……」ムスッ
結衣「だから悪かったって、ごめんな京子」
結衣「ズボラって言うより慌てん坊かな、……ちょいちょい」
京子「ん、ゴミでも付いてる?」ススッ
結衣「ネクタイ曲がってる、せっかくオシャレしたんだから……」クイッ
京子「あっ……」
京子「ふへへ……」
結衣「惚けた顔してどうしちゃったの?」
京子「はっ!?な、なんでもない!」
結衣「寝ぐせも付いてるし、……そのまま座ってて、櫛持ってくるから」
京子「う、うん……」
結衣「京子の髪思ったよりサラサラ、手櫛でもいいくらい」
京子「思ったより、は余計」
結衣「まぁまぁ、素直に褒めるのも照れくさいしさ……」スッ
結衣「私の髪じゃとてもこうはいかないな、……あー、羨ましい」
京子「嘘つけー、確認のためにもあとで結衣にもやってあげる」
結衣「……じゃ、じゃあお風呂上りにでも」スッス
京子「らじゃっ♪」
京子「んー……♪」
京子(なんか落ち着くなぁ、髪をとかしてもらってるだけなのに……)
京子(結衣の匂いがふわっと頭に広がって、……えへへ)トサッ
結衣「っと、……こっちに寄りかかったら重いんですけど」
京子「いいじゃんいいじゃん、減るもんじゃないし!」
結衣「た、体力が減る」スッスッ
京子「その答えじゃダメ、重いけど我慢してね」
結衣「もう、しょうがないな……」
京子「ご、ごくろーであった結衣君」
京子「……」トサッ
結衣「だ、だから寄りかかるなって、終わったからそっち行ってもいいよ」
京子「んー……もう少しこのまま」
結衣「……少しだけだからな」
京子「えへへ」
結衣「あのさ、自分でも薄々気づいてたんだ」
京子「えっ?」
結衣「さっきの話だよ、私が行き遅れるってやつ」
結衣「……私にはあかりみたいな誰からも好かれる可愛さは無いし」
結衣「……それこそちなつちゃんみたいな女の子らしさも無い」
結衣「……」ギュッ
京子「んっ……ゆ、結衣……」
結衣「京子みたいに誰とでもすぐ打ち解ける明るさも無いからさ」
京子「ぐえっ、ゆ、結衣苦しいよ~」
結衣「お母さんにも言われたんだ、もっと女の子らしくしなさいって……」
京子「えっ……?」
結衣「可愛いとか女の子らしさとは無縁だもん、自覚はしてるけど」
結衣「……してるけど、ちょっと泣きそう」
京子「あ、あの、私そういうつもりで言ったわけじゃ……!」
結衣「いいよ隠さなくて、……京子なりに心配してくれたんでしょ」
結衣「まだ気は早いと思うけどなんか怖くなってきた」
結衣「自分もテレビの婚活女子みたいになるのかな……」グスッ
京子「あ、あのね、だから私と……」
結衣「うん?」
京子「わたっ、わた……わた、わたわたわた……」カァー
京子「わ……私と練習してみないかな、なーんて……」
結衣「練習?」
京子「だ、だからね、結衣はこのままじゃ婚活女子になっちゃうから……」
京子「三十路で独り身の寂しい婚活女子になっちゃうからね」モジモジ
結衣「くっ……血も涙も無いな、京子は」グスッ
結衣「いつもならツッコミ入れてるけど、自覚があるから言い返せない……」
京子「……」ジッ
結衣「な、なんだよ、この距離で見つめてくるなって」
京子「わ、私と練習がてら一日新婚ごっこ、しよう!」
結衣「……」
京子「……」カァー
結衣「ごめん、意味がよく分からない」
京子「だ、だから、新婚ごっこをすれば、結衣の女子力が上がって……」
京子「もしかしたら貰い手が見つかる、……かも」
結衣「京子……」ジッ
京子「……あ、あはは、なーんて」
結衣「そこまで私のこと心配してくれたんだ、……ありがとう」ギュッ
京子「うひゃあ!?」
京子「ちょ、ちょっとどうしちゃったの結衣!?」
京子「いつもならこんな冗談ツッコミ入れて終わりでしょ!」アセアセ
結衣「……冗談で言ったの?」
京子「うっ……そ、そんなワケないじゃん!」
結衣「でしょ、私のこと心配してくれたんだよな」
京子「……う、うん」
結衣「いつもはおちゃらけてるけど、やっぱり根は優しいままだ……」ギュッ
結衣「昔からずーっと変わってないな、……ありがとう京子」
京子「っ……うぁぁぁぁ……」カァー
京子「と、とりあえず、一回離れようか!?」
結衣「……っと、ご、ゴメン!」パッ
京子「あ、いや、別にいいけど……」
結衣「京子の久しぶりの優しさでちょっと思考回路が……」ホロリ
京子「むっ……、久しぶりの優しさってなんだよ~!」
結衣「ははは、悪い悪い」
京子「……お、おう」
結衣「ん、ちょっと食器の洗い物してくるからダラダラしてて」
結衣「……」トテトテ
京子(うぅぅ、結衣ってば相当日和ってるなぁ……)
京子(いつもなら怒りの鉄拳が飛んでくるのに、……割りとノリノリじゃん)
京子(やっぱり気にしてるのかなぁ、ちょっとボーイッシュってことを)
京子(……だとしたら悪いこと言っちゃたな、あとで謝らないと)
京子(で、でも、……今日一日新婚ごっこ、えへへ……)モジモジ
京子「しょうがないよ、私だって宿題は溜めちゃうし」ニヘラ
結衣「それで結局、宿題見せて~、だもんな」
京子「……えへへ」
結衣「……」クスッ
結衣「でも、こんなんじゃいいお嫁さんとはとても言えないよな」
京子「そ、そんなことないって!」
結衣「京子……、無理して褒めなくてもいいよ」
結衣「うわっ、ちょ、ちょっと引っ張るなって」
京子「ほらこの鏡で見てみなよ、結衣のエプロン姿様になってるよ?」
結衣「……うそ」
京子「ううん、可愛いって、……私が保証する」ニコッ
結衣「さっきからそればっかり……」
結衣「でもありがとう、……お世辞でも嬉しい」
京子「お、おぉう……デレ期?」
結衣「……うっさい」
京子「……」ズーン
結衣「うっ、……そこまで露骨に嫌そうな顔されても」
京子「だって、せっかくの新婚ごっこなのに、……離れ離れなんて」ポッ
結衣「買い物行かなきゃパスタがただの素面になるけど」
京子「!?」
結衣「買ってきて欲しいものはメモにしたから、お金も入ってるよ」
結衣「……お願いね、……あ、あなた」
京子「は、はい……」カァー
結衣「う……ぁぁぁ……、さ、さっさと行ってくれ、お願いだから!!」
結衣「京子がいない間にお風呂の準備もしておこう……」キュッキュ
結衣「ちょっと休憩……」
結衣「よし、京子がいない間にロールキャベツを作っておこう」ゴソゴソ
結衣「キャベツの葉っぱをたっぷりのお湯で茹でて、こっちでスープを……」イソイソ
結衣(うーん、……どうやったらいいお嫁さんになれるんだろう)
結衣(やっぱり笑顔か?パートナーを癒す笑顔?)
結衣(……)ニコッ
結衣(うっ……慣れないことはするもんじゃないな)
結衣(新婚といったらよくマンガで見る、お帰りなさいあなた~、がある……)
結衣(やってみようかな、どうせ私にお嫁スキルなんて無いんだし)
結衣(笑顔もぎこちない、女の子らしさもないし)ハァ
結衣(しかし、それを京子相手に……)
結衣(京子相手に……)モンモン
グツグツグツグツグツグツ
結衣「う、うわぁあっつ!吹きこぼれた!!」カチッ
京子「ベーコンと生クリームってことはカルボナーラかな?」ガサッ
京子「……」グゥー
京子「お腹の虫は正直だなぁ、あはは……」
京子「たっだいまー、あなたの京子がいま帰ったわよ……」ガチャッ
結衣「……」
京子「結衣どうしたん、そんなとこに突っ立って?」
結衣「あ、いや、その……」モジモジ
京子「うんっ、ただいま!」
京子「いきなり尻に敷かれるとは、だいたい想像出来たけど」
結衣「……」
結衣「ご、ご飯にする?お風呂にする?」
京子「へっ……」
結衣「……そ、それともわたし?」
京子「……」
結衣「……」
京子「お風呂で」
結衣「はい」
結衣「座布団、あった……」ポフ
結衣「……」ギュッ
結衣『……そ、それともわたし?』
結衣「ぁぁぁぁぁぁぁぁ……」カァー
結衣「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」ジタバタ
結衣「ああああああああああああああああああ!!!」バタバタ
結衣「……」カチャカチャ
京子「おっ、やっぱりカルボナーラだね!」
京子「……」グゥー
京子「あはは、もうお腹ペコペコだ~晩ご飯にしよう!」
結衣「……」ジッ
京子「なぁに?」
結衣「べ、べつに、なんでもない」
京子「結衣ぃ、このパスタすっげー美味い!明日も作ってくれ!!」
結衣「そんなもんでいいならいつでも作るよ」
結衣「あ、パスタ少なかったら私の少し分けるけど……」
京子「んーん」フルフル
京子「確かにちょっと少なめかなぁと思ったけど、お腹に溜まるもんだね」
結衣「生クリーム入ってるからね」
結衣「胃もたれするかもと思って、パスタは2人で1.5人前の分量にしておいたんだ」
結衣「パートナーの栄養管理もお嫁さんの仕事だしな……」モグモグ
京子「……えへへ」
結衣「……ごめん」
京子「えっ?」
結衣「案の定ロールキャベツ失敗しちゃってさ……」
結衣「あーあ、キャベツが破けてお肉と分離しちゃってるし」モグモグ
京子「でも美味しいじゃん、十分立派なロールキャベツだよ」
結衣「……そ、そうかな」
結衣「まぁどっちにしろ京子にはしばらく作られない、一人のときに練習しておく」
京子「むむっ!」
結衣「でも、形がいびつなのを出すわけにもいかないだろ」
京子「……じゃあ次は私も手伝うから、ロールキャベツ作るの」モグモグ
結衣「えっ?」
京子「2人で一緒に作って、2人で一緒に食べよ?」
京子「……わ、私はもっと結衣の手料理食べたいもん」
京子「だからそんな形が変だとか気にしなくていいから――」
結衣「デレ期?」
京子「な゛っ!?」
結衣「でもいい心がけだよ、働かざる者食うべからずって言うし」
京子「なっ……ふんっ、もう知るか」モグモグ
結衣「あー……あの、ほ、ほんとはとっても嬉しかったよ」
結衣「冗談でもそんなこと言われてもリアクションに困るというか……」
京子「……本音だからね、さっきのは」
結衣「……」
京子「へへへ、結衣ってば、ほほ緩んでるし顔真っ赤じゃん」ニコッ
結衣「っ、ゲホッゲホッ!!」
京子「あれ、もう食べちゃったの!?」
結衣「いいよ急がなくても、喉に詰まっちゃうから」
京子「……」モグモグ
京子「んぐっ、じゃあ洗い物は私に任せて、お風呂行っておいで」
結衣「えぇ、京子にできるかな……」
京子「大丈夫、割ってもちゃんと片付けておくから」ニコッ
結衣「……割るの前提かよ」
京子「結衣、流しながらでいいから耳貸して欲しいんだけど」
結衣「うん?」
京子「ほんと大した話じゃないから」
結衣「まぁ大方食後のラムレーズンとかだろ、いつもの場所にある――」
京子「あの時、ご飯でもなくお風呂でもなく……」
京子「結衣を食べたいって言ったらどうなってたの?」
結衣「ぶっ!!」
京子「あ、いやその……」
京子「結衣って冗談とか言わない人だから、ビックリしてついスルーしちゃって……」
結衣「……けっこう、本気だった」
京子「えっ?」
結衣「私には何もないから……」
結衣「ああやって行動するしか無かった、……でも結局はギャグにしかならない」
結衣「はぁ……、空回りしてばっかりだ」テクテク
結衣「お風呂行ってくるから、お皿よろしくね……」バタン
京子「あっ、結衣……」
結衣「あれ、居間に電気が付いてない」ガラッ
結衣「京子、電気も付けないで何してるの……」
京子「……」ガバッ
結衣「うわっ!?」
京子「……」ギュッ
結衣「……とりあえず電気付けるよ、何も見えないから」
京子「だ、だめ、……電気付けないで、顔見られたくない」ギュッ
結衣「……ん、じゃあこのままでいい」
京子「……ありがと」ギュッ
結衣「く、苦しい」
結衣「とりあえず一回離れない?」
京子「……やだ」
結衣「……へ、変な匂いとかしないよね私」
京子「……」ギュッ
京子「いい匂い、ずーっとこうしていたいくらい」
結衣「……そっか、良かった」
京子「結衣、ゴメンね……」
京子「今日結衣に酷いこと言って傷つけちゃったよね」
京子「結衣?」ギュッ
結衣「はっ!……ね、寝てないよ、ちょっとウトウトしただけ」
京子「もう!ちゃんと起きてて、少し話したいから」
結衣「いいよ、付き合ってあげる」
京子「結衣には可愛いとこたくさんあるのに、悪いところなんて無いのに」ギュッ
京子「……ちょ、ちょっとにぶちんなところがあるけど」
京子「それなのに私は――」
結衣「もういよ京子、ちょっと落ち着いて」
京子「で、でも……結衣……」グスッ
結衣「もちろん」ギュッ
京子「あいだだだだだだ、く、くるしっ!」
結衣「私がこうなったのって全部京子のせいなのに……」
結衣「それをやれ女っ気がないだの、ガサツだの……」
結衣「挙句の果てに三十路まで独り身?」
結衣「コイツ、だんだん腹が立ってきた……」ギュギュッ
京子「あいたたた……だ、だって、こうすれば結衣と!!」
京子「……結衣と新婚ごっこ出来ると思ったから」
結衣「……」
京子「……ご、ごめんなちゃい」
結衣「それでついつい毒を吐いた、ってこと?」
京子「わ、私だって本心にもないことを言うのは辛かったんだよ……」
結衣「京子の毒で私のプライドはボロボロなんですけど」
京子「……だ、だから本心じゃ」
結衣「……それでも、京子に言われるのは傷つくよ」
結衣「他の誰に言われるより、ずーっと心が痛いんだ」
京子「ゆ、結衣……!」
京子「ゆ、結衣、ゴメンね、ごめんなさい……」
結衣「ううんっ、き、気にしなくていい、……私は平気だから」
京子「泣かないで、結衣、……結衣」グスッ
京子「わ、私が責任持って、お嫁さんに貰ってあげるから、泣かないで!!!」
結衣「……」カチッ
京子「ま、眩しい、急に電気つけないで!!」
結衣「なに?」
京子「な、泣いてないじゃん!!嘘泣きかよさっきのは!?」
結衣「あれくらいで泣くわけないだろ、京子じゃあるまいし」
京子「な゛っ……」グスッ
結衣「ぷっ……、くふふふ……」ピクピク
京子「もおおおおおおおお!!結衣の馬鹿、アホ!!!」ポカッポカ
結衣「いたたたた、く、クッションで叩くなって!」
結衣「これでおあいこ、チャラってことでいいよね」
京子「こ、こっち見るなバカ……」
結衣「ひどい言われようだな、あはは……」
結衣「ふぅ……」
結衣「あのさ、私はこのままでいいんだよね?」
結衣「おかしくなんかないよな、それだけは聞きたい」
京子「おかしくなんかない、ずっとこのままでいてほしい」
京子「……他の人はどう思ってるか分かんないけど」
京子「私はいまの結衣が一番好き、……た、たぶん」プイッ
結衣「……」クスッ
京子「んっ……、女の子と女の子なのに?」
結衣「別にいいんじゃない、変だとは思わないけど」
京子「そっか、……えへへ」ギュッ
京子「じゃあ中学卒業するまで売れ残っててね?」
結衣「中学卒業で売れ残り扱いか……」
京子「男の子とか女の子に言い寄られても絶対断ること!」
結衣「ん、ずーっと待ってるからな」
京子「おやすみ~……」
京子「ね、ねえ結衣、……素直に言っちゃえば?」
結衣「お前もな」
京子「いや、だから私のこと恋愛的に好きでしょ?」
結衣「京子こそ私のこと好きでたまらないだろ」
京子「さ、さぁ~どうかな」
結衣「じゃ、じゃあ私もどうかなぁ」
結京「……はぁ」
京子(ほんと甲斐性なしだなぁ結衣は……)
結衣(ほんと甲斐性なしだな京子は……)
おしまい
結京良かったよぉ
大したことはなかったな、にやけすぎて頬が痛いが
いいものを見た
Entry ⇒ 2012.09.23 | Category ⇒ ゆるゆりSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
洋榎「愛宕家名物、お姫様抱っこや!」
「すんませーん、こっちまでボール蹴って貰えへんかー?」
絹恵「ええよー、ほないっくでー」
絹恵「……!!」キュピーン
ピューン!
「すげー!」
洋榎「ってそれ飛ばし過ぎちゃうかー?」
絹恵「……」
洋榎「ん? どうしたんや絹」
絹恵「足首くじいてもた……」ズキズキ
洋榎「なんやて!?」
絹恵「やっぱりブランクあるんはきついわー」
洋榎「ていうか大丈夫なんか?」
絹恵「軽い捻挫程度ちゃうかなーとは思うんやけど……」ズキン
絹恵「あはは、ちょっと歩くんはきつそうや」
洋榎「しゃあないな。じゃあ、アレを出すしかあらへんな……」
絹恵「あれって、まさかアレですか!?」
洋榎「そうや、愛宕家名物お姫様抱っこや!」
絹恵「出たー! 夢見る乙女の定番!」
洋榎「ほな、いきまっせー」
洋榎「……ぐぬぬ」ヨロヨロ
絹恵「うん、やっぱり無理やと思うわ」
洋榎「そんな事は……あらへんで……」ヨロヨロ
絹恵「その気持ちでだけで十分やわ。でも現実みいな」
絹恵「このままやったら二人とも怪我するわ。ウチはお姉ちゃんに怪我してほしないもん」
洋榎「むむむ、しゃあない。おんぶで我慢するか……」
絹恵「うん、それが妥当なトコやわ。ほなお願いな」
洋榎(それにしても、絹の太ももめっちゃムチムチやったわ……)
洋榎(サッカー部の頃は引き締まった健康的な美脚やったけど今はちょうどええ感じや)
洋榎(膝枕とかしてもろたら気持ち良さそうやなー)
絹恵(お姉ちゃん! おんぶするんはえーねんけどなんでお尻のとこ持つんよ!?)
絹恵(こういう時って普通膝から抱えるもんなんちゃうん!?)
絹恵(し、しかもなんか位置取りが上手くいってへんのかちょくちょく動くし……)ソワソワ
洋榎「……」
洋榎(やってもた……なんか流れでお尻から抱えてもたわ……)
洋榎(このタイミングで言い出すんも気まずいからこのまま行くしかないんやけど)
洋榎(……やーらかいなぁ。マシュマロみたいやわ)
絹恵「……う、うんんっ。家まで頑張ってやー」
洋榎「……」スタスタスタ
洋榎(おおう……動くたびに絹のおもちが形を変えてウチの背中をつっついてきよるで……)
洋榎(まさに侵略すること山のごとしやな!)ドヤ
洋榎(…‥うん、アホな事でも考えとかんとやっとられんわ)ドキドキ
絹恵「……」
絹恵(お姉ちゃんの背中でウチのおもちがぎゅーって押しつぶされてる……)
絹恵(なんか手で揉まれたりするんとは違う、その時々で違う角度から背中に)
絹恵「ひゃぅっ」
洋榎「ど、どないしたんや!?」
絹恵「な、なんもないよっ」
絹恵(先っぽこすれた……ムズムズする……)
洋榎「お、おう。何でも言ってみい」スタスタスタ
絹恵「この体勢ちょっとバランス悪いから、もっとこー……抱きつく感じでもええ?」
洋榎「お、おう……?」
洋榎(くっついたり離れたりするさっきまでの方が落ち着かんかったし……)
洋榎(こっちの方がまだマシかもしれへんな)
洋榎「ま、まぁええと思うで? てかなんで今までそうせーへんかったんか不思議なくらいやわ」
絹恵「う、うん。せやな」
絹恵(あんまり密着するんもどうかと思っとったからやねんけどな。この方がええわ)
洋榎(耐えろ耐えるんやでウチ。家まではもうちょいや)ドキドキ
絹恵「……」
絹恵(体押し付けたら今度はお姉ちゃんの首筋がこんなに近く……)
絹恵(お姉ちゃん、髪束ねてポニーテールにしてるからうなじが……)
絹恵(うなじを見ると興奮するって人はいっぱいおるみたいやけど)
絹恵(今日になってその人達の気持ちが初めて分かったわ。なんかこのラインが色っぽいわ)
絹恵(ってウチ何考えてんねん! そんなん、そんなんサカリの付いたワンちゃんみたいやん!)
絹恵(…でも、ちょっとくらいなら)スーハー
洋榎「おおぅ!? ちょ、絹、鼻息荒いで!?」
絹恵「ご、ごめん!」
洋榎(うああああ、首筋に息が掛かるんてめっちゃモゾモゾするわ!)
絹恵(やっぱりバレてもた……うわー超恥ずかしい)
絹恵「……」
洋榎(アカン、なんかめっちゃ気まずいで。流れを変えるための話題作りをせな……)
洋榎「そ、そういえば愛宕家名物のお姫様抱っこっていつから言い出したんやっけ」
絹恵「え? 確かウチらが小学生の頃に見とったアニメを見てあれやってみよって言い出したんが最初ちゃう?」
洋榎「そうやったっけ? 絹がオトンにやって貰ったんやなかったっけ?」
絹恵「そんな事もあった気がするわ。オトンと言えば、酔っ払ったノリでオカンにもやった時はおもろかったわ」
洋榎「ああアレな! 普段スパルタの鬼みたいなオカンが珍しく顔真っ赤にして慌てとったんが傑作やったわ!」
絹恵「そんでオトンが『あかん、無理。このオバハン重い』とか言ってもてオカンマジギレ」
洋榎「あはははは! いくら酔っ払っとった言うても自分の嫁さんにオバハンて!!」
洋榎「せやな、愛宕家はホンマに笑いに絶えんおもろい一家やで」
絹恵「うん、愛宕家は最高や」
洋榎・絹恵「せやろーさすがやろー」
絹恵「……ぷっ」
洋榎「真似すんなや! って突っ込みたいトコやけどタイミングばっちりやから許したるわ」
洋榎「ほら着いたで」
絹恵「ん、ありがとなお姉ちゃん」
洋榎「これくらいならお茶の子さいさいんこさいん……たんじぇんと!」
絹恵「あ、お姉ちゃん今一瞬迷ったやろ」
洋榎「そ、そんなわけあるかい! オチ付けようと思ってなんか無いか考えただけや!」
絹恵「うん、なんとか部屋までは行けそう」
洋榎「部屋まで手伝ったろか?」
絹恵「別にええよ。もうあんまり痛くないし」
絹恵「後で湿布でも貼っといたらすぐ治ると思うわ」
洋榎「そっかー。体は大事にせなアカンでー」
絹恵「うん、ありがと。治ったらまたジョギングでも始めようかなー」
洋榎「そ、それはアカン」
絹恵「え?」
洋榎「あ。ああいや、ええんちゃうかな!」
洋榎(あの太もものムチムチが無くなるんが勿体無いなんて言えるわけあらへんからな……)
洋榎(まあ引き締まった健康的な太ももは太ももで気持ちえーかもしれへんな)
洋榎(……今度、膝枕お願いしてみよう)
竜華「一人で何言うてんの?」
カン!
ぶっちゃけうなじくんかくんかをさせてみたかっただけだし。
つーわけで用事あるんでそろそろ出かけます。
短いSSでしたが読んでくれてありがとうございました。
咲日和の愛宕姉妹は可愛すぎるよな
Entry ⇒ 2012.09.22 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
凛「う、うちに帰ったらいっぱいしてあげるから今は、ね?」P「…」
P「すまない、気になりだすと止まらなくてな」
凛「…分かった、私が最初に言ったことだからね」
P「ありがとう!」
凛「だけど恥ずかしいからちょっと部屋移るよ」
P「…んっ」
凛「気持ちいい?」
P「…ふぅ、凛は耳掻きが上手だな」
P「はいはい」ゴロン
凛「……」
凛「大きいのがあるね、ちょっと我慢出来る?」
P「……おいおいそこまで子供じゃないよ」
凛「ふふ、じゃあ取るよ」
P「……ふぁ…んんっ」
凛「……声も我慢出来る?」
P「それは無理」
凛(やっぱり毎日走り回っているからかな?)
凛(……うちのハナコみたい)
凛「ふふっ」
P「どうかしたか?」
凛「ううん、なんでも」
P「……思い出し笑い?」
凛「……違うよ、というか失礼だよ」
P「悪い悪い、珍しく笑うから気になってな」
凛「……聞きたい?」
P「もちろん」
凛「どうして?」
P「……さっきの凄く可愛いかったからな」
凛「……そ、そう?ありがと」
P「どうした、いきなり顔を背けて?」
凛(卑怯だよ、カウンターなんて)
凛「……プロデューサーちょっと目を瞑ってて、一分くらいでいいよ」
P「よく分からんが、分かった」
凛「……ふぅ」
P「……」
凛「……」チラ
P「……」
凛(今の内に落ち着かせないと)
凛(そうそう、あのとき急に来たから私まだ風呂上がりだったんだ)
凛(……)
凛(まずいまずい、また顔赤くなってきちゃった)
凛「プロデューサー、もう一分延長で」
P「」
凛「……プロデューサー?」
P「」スースー
凛「…たまにはいいよ…ね」
P「」スースー
凛「…ふぁ……私もちょっとだけ…眠たくなって…きちゃっ……た」
凛「」くぅくぅ
P「」スースー
ちひろ「おかしいですね、こっちの部屋に…は……」ガチャ
ちひろ「…まぁ」
凛「」くぅくぅ
P「」スースー
ちひろ(……夫婦みたい)
ちひろ「コホン」
ちひろ(……この後、迎えにいってもらいたかった娘がいたんですが、今回ばかりは特別ですよ?プロデューサーさん!)
乙
まったりしててよかった
Entry ⇒ 2012.09.22 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
C.C.「童貞坊やめ」ルルーシュ「…………は?」
ルルーシュ「…………なんだと?」
C.C.「女が迫ってくると断れないのが童貞の特徴だもんなぁ」
ルルーシュ「……」
C.C.「図星をつかれて何も言えないのか、童貞」
ルルーシュ「……違うな。間違っているぞ」
C.C.「なんだと?」
ルルーシュ「あのあと済ませたからな。シャーリーと」
C.C.「なに!?」ガタッ
ルルーシュ「フハハハ」
ルルーシュ「強がりだと?俺から溢れ出る自信が見て取れないというのか?」
C.C.「童貞はな、童貞と言われると否定するものだ」
ルルーシュ「おやおや。これは異なことを。俺は童貞ではないから否定しただけだが?」
C.C.「証拠でもあるのか?ないだろ?」
ルルーシュ「証拠だと?」
C.C.「ほら、見ろ。何も出てこないじゃないか。お前は童貞で決まりだな」
ルルーシュ「ならば、シャーリーに確認を取るか?」
C.C.「その小娘と口裏を合わせているんだろ。そんなものなんの証拠にもならん」
ルルーシュ「何故、認めようとしない!!」
C.C.「お前からは童貞の臭いしかしないからだ」
ルルーシュ「違う!!もう俺は!!!」
C.C.「しつこい奴だ。現実を見ろ」
C.C.「私はもう寝る。おやすみ、童貞坊や」
ルルーシュ「いいだろう。そのときの写真がある」
C.C.「写真……?」
ルルーシュ「シャーリーが思い出にと携帯電話のカメラで撮ったんだ。事後だがな」
C.C.「捏造写真か。見る価値はないな」
ルルーシュ「ほら、見てみろ」
C.C.「見ない」
ルルーシュ「これを見ろ!!」
C.C.「うるさいっ!!」
ルルーシュ「貴様ぁ……!!」
C.C.「そんなもの、なんの証拠にもならない。お前は童貞。チェリーボーイだ。私が言うのだから間違いない」
ルルーシュ「ちぃ……強情な女め……」
C.C.「ふん」
C.C.「……」
ルルーシュ「さぁ、言え」
C.C.「……じゃあ、どこで済ませた?」
ルルーシュ「待ち合わせ場所の近くにあったホテルだ。最初はシャーリーの服を乾かす目的で入った」
C.C.「それで?」
ルルーシュ「そこで……。まぁ、そこは言う必要はないか」
C.C.「童貞だから言えないんだろ。嘘じゃないか」
ルルーシュ「……そういう雰囲気になってしまったんだ」
C.C.「雰囲気?雰囲気だと?笑わせる」
ルルーシュ「なに?」
C.C.「それなりに勇気が必要な行為なのに、雰囲気で済ませる?バカを言うな。そんなことあるわけないだろ。これだから童貞は……」
ルルーシュ「お前、処女か」
C.C.「違うぞ?失礼な奴だな、お前」
C.C.「いい機会だから教えてやろう。私も元はギアス能力者だったんだよ」
ルルーシュ「そうなのか」
C.C.「誰からも愛される力を私は持っていた。いいか?愛されるギアスだ。この意味が分かるな?」
ルルーシュ「相手の心を操るのか」
C.C.「そうとも。愛されるということはだ、それなりのことも済ませている。歴戦の女戦士だぞ、私はな。数多の男が私の体の上を風のように過ぎ去っていったんだよ」
ルルーシュ「……」
C.C.「坊やでは絶対に手が届かない位置に私はいる。人生の大先輩だ。その私に向かって……清き乙女だと?侮蔑するにしてももう少しマシなことをいえないのか?」
ルルーシュ「……」
C.C.「これだから、童貞坊やは困る。私は寝る」
ルルーシュ「愛されるギアスか……。それはどのように愛されるんだ?」
C.C.「……」
ルルーシュ「愛され方も色々だと思うがな」
C.C.「何がいいたい?」
C.C.「そうだな」
ルルーシュ「となれば、愛されるギアスは心酔、いや崇拝に近い形で愛されていたんじゃないのか?」
C.C.「……!」
ルルーシュ「深く愛しすぎると行き着く先は、リリジョンだ」
C.C.「いうな」
ルルーシュ「お前、愛されすぎてそういう行為など誰にもしてもらえなかったんじゃないか?」
C.C.「ちがう……」
ルルーシュ「ただ供物を与えられ、崇められ、傍に居てもらえるだけで幸せと言われていたんじゃないのか?」
C.C.「違う!!結婚も迫られたことだってある!!憶測で語るな!!童貞め!!」
ルルーシュ「証拠はあるのか。貴様が幾多の男を受け入れたという確固たる証が!!!」
C.C.「……」
ルルーシュ「ふん。どうやら、無いようだな」
C.C.「ちがう……わたしは……」
ルルーシュ「魔女ではなく処女だったとはな。フハハハハハ!!!」
ルルーシュ「では、提示してくれ。お前が魅力あふれる女だったということモノを!!」
C.C.「あるわけないだろ」
ルルーシュ「フハハハハ。ならば、俺の勝ちだな」
C.C.「勝ちってなんだ?」
ルルーシュ「経験の差だ」
C.C.「うぐっ……」
ルルーシュ「人生の先輩が色々と教えてやろうか?」
C.C.「……」
ルルーシュ「あーっはっはっはっはっはっは!!!」
C.C.「分かった。呼べ」
ルルーシュ「……なに?」
C.C.「シャーリーとかいう小娘を呼べ。確かめる」
ルルーシュ「……おいおい、勝負はついただろ」
C.C.「いいから呼べ。早く」
C.C.「知るか。早くしろ、ほら」
ルルーシュ「ふざけるな!!貴様の我侭にシャーリーを巻き込むんじゃない!!!」
C.C.「なんだと?」
ルルーシュ「未経験者は部屋の片隅で丸くなっていればいいんだよ」
C.C.「ああ。丸くなってやる。だから、シャーリーをここに呼べ」
ルルーシュ「認めるんだな?」
C.C.「ああ、そうとも。私はC.C.、処女だ。誰からも愛され過ぎた女だ。これで満足か?」
ルルーシュ「あ、ああ……」
C.C.「さぁ、シャーリーを呼べ。女同士じゃないと聞きづらいこともあるからなぁ」
ルルーシュ「長年生きてきて、何を今更恥じることがある」
C.C.「生娘が相手を童貞と罵っていた。そして生娘であることが発覚した。本人の気持ちになれないのか?」
ルルーシュ「お前……今、恥ずかしがっているのか?」
C.C.「かなりな」
C.C.「黙れ。早くしろ。あとピザもな」
ルルーシュ「……もう寝るぞ」
C.C.「聞こえないのか。私はシャーリーを呼べと言っているんだぞ?」
ルルーシュ「だから、迷惑だろ」
C.C.「電話だけでもいい。かけろ」
ルルーシュ「貴様のことをどう説明するつもりだ!!」
C.C.「妹ってことにしておく」
ルルーシュ「ナナリーに扮する気か?!ふざけるな!!」
C.C.「バレない自信はある。根拠はない」
ルルーシュ「できない。この話は終わりだ」
C.C.「貴様、私に赤っ恥をかかせて終わりにするのか?」
ルルーシュ「貴様が悪いんだろ」
C.C.「分かった。もうお前には頼まない」
ルルーシュ「……」
ルルーシュ「おい。いつまで部屋の隅にいるつもりだ。ベッドを使え」
C.C.「丸くなれとお前はいった」
ルルーシュ「何を拗ねている」
C.C.「考え事をしているだけだ」
ルルーシュ「……もういい。勝手にしろ」
C.C.「するとも。私はC.C.だからな」
ルルーシュ「ちっ……」
C.C.「……」
ルルーシュ「灯り、消すぞ」
C.C.「好きにしろ」
ルルーシュ「全く……」パチンッ
C.C.(こうなったら……)
シャーリー「……」スタスタ
C.C.「……とまれ」
シャーリー「わぁ?!誰ですか?!」
C.C.「私のことはどうでもいい」
シャーリー(見たことないなぁ……。うちの制服着てるし、アッシュフォードの生徒なんだろうけど……)
C.C.「単刀直入に訊く。お前、最近、経験したか」
シャーリー「はい?」
C.C.「いいから答えろ」
シャーリー「なんの経験ですか?」
C.C.「女が経験すると言ったらアレしかないだろ」
シャーリー「……」
C.C.「どうなんだ」
シャーリー「ど、どうしてそんなこと初対面の貴方にいわないとダメなの?」
C.C.「ということは、経験済みか?」
C.C.「待て。逃がさん」
シャーリー「ちょっと……なに?」
C.C.「答えろ」
シャーリー「ああもう!!貴方には関係ないでしょ!!いきなりなによ!?」
C.C.「貴様の所為でこっちは大恥をかいたんだ!!それぐらい言え!!」
シャーリー「大恥ってなに?!私は関係ないでしょ?!」
C.C.「あるな!!大いにある!!お前が諸悪の根源だ!!」
シャーリー「なんでよ?!」
C.C.「このアバズレ!!」
シャーリー「はぁ!?」
カレン「シャーリー?なにやってるの?」
リヴァル「授業始まるぜ」
シャーリー「あ、二人ともたすけてー」
C.C.「話は終わっていないぞ」
C.C.(カレンか……!!)
カレン(C.C.じゃない……!!なにやってるのよ?!)
C.C.(黙っていろ)
カレン(どうしよう……ゼロに言ったほうがいいかな……)
リヴァル「その子、誰?」
シャーリー「知らない人なの」
C.C.「私はお前をとても知っている」
シャーリー「どういう意味?」
C.C.「で、どうなんだ。したのか、してないのか」
シャーリー「何でも知らないじゃない」
C.C.「揚げ足をとるな。質問に答えればいいんだ、小娘」
シャーリー「小娘って同い年ぐらいでしょ」
C.C.「一緒にするな。積み上げてきた経験には雲泥の差がある」
シャーリー「わけわかんないんですけど」
リヴァル「二人とも落ち着けよ。何の話なんだ?」
C.C.「シャーリーが経験者がどうかって話だ」
シャーリー「だから、なんの経験なんですか?!」
リヴァル「経験って……ズバリ、男でしょ」
シャーリー「おとこぉ?!」
C.C.「そうだ。お前、中々見所があるな。今度、可愛がってやってもいいぞ?」
リヴァル「マジで?!」
C.C.「さあ、シャーリー。答えろ」
シャーリー「尚更、言えません!!」
C.C.「人数もか?」
シャーリー「あなたはどうなんですか?!」
C.C.「……ざっと、1000人かな」
リヴァル「すげー……」
シャーリー「同じ女として……ひく……」
シャーリー「……ひ、ひとりです」
リヴァル「えぇ!?」
C.C.「ひ、ひとり……だと……?」
シャーリー「それが普通でしょ?!」
リヴァル「まぁ、うん……。で、ルルーシュとはどこで?」
シャーリー「なんでルルが出てくるの?!」
C.C.「ルルーシュ以外に一人いるのか?!」
シャーリー「はぇ?!」
リヴァル「シャーリー……ルルーシュが聞いたらショック受けるぞ……」
シャーリー「いや……あの……」
C.C.「ふふ……なんだ……ただの浮気性な女だったのか」
シャーリー「1000人も相手にした貴方がいうことじゃないでしょ?!」
C.C.「一人の男も愛せないお前がいうな」
カレン「それで……ええ……そうなんです。え?はい、それはもう……私はゼロのこと……その……す、好きですけど……」モジモジ
シャーリー「なっ……!?」
C.C.「お前なんか地獄に落ちろー」タタタッ
シャーリー「あ!ちょっと!!待ちなさいよ!!」
リヴァル「行っちゃったな」
シャーリー「……」
カレン「あれ?さっきの子は?」
リヴァル「向こうに行ったけど」
カレン「そう……」
シャーリー「カレンの知り合い?なら、失礼なこと言わないでって言っておいてほしいんだけど……」
カレン「ああ、うん。言っておいてあげる」
シャーリー「何が目的だったんだろう」
リヴァル「ルルーシュのこと狙ってる子じゃねーの?」
シャーリー「それはありえるけど……」
カレン(ゼロに一番信頼しているって言われた……今日はよく眠れそう……)
シャーリー「あ、ルル……」
リヴァル「ルルーシュさんよぉ、すげー可愛い子が今、いたんだけどぉ」
ルルーシュ「何か言っていたのか?」
シャーリー「経験がどうのこうのって……。よくわかんないけど」
ルルーシュ「なんて答えた?」
シャーリー「そんなの言えるわけないでしょ?!」
ルルーシュ「そうか」
シャーリー「そうかって……」
リヴァル「いいよなー、ルルーシュは。色んな女から想いを寄せられて」
ルルーシュ「気苦労しかないって」
リヴァル「ちくしょう……強者の余裕かよ……」
シャーリー「あ、それよりも早く教室にいこ。授業始まるし」
ルルーシュ「ああ、そうだな」
カレン「ふふ……ぜろぉ……」
C.C.「くそ……あんな小娘に……小娘にすら……私は負けるのか……経験で……」
C.C.「ふざけるな……。こっちはなぁ……多くの王族や政治家にだって傍にいてほしいって言われたんだぞ……」
C.C.「私以外にそんな女がどこにいるというんだ……まったく……小娘は何もわかっていない……」
C.C.「これだからすぐに体を許すような……やつは……」
C.C.「うぅぅ……」
咲世子「C.C.さん?」
C.C.「ん?」
咲世子「ここに居られましたか。ルルーシュ様から探して欲しいと言われまして」
C.C.「そうか」
咲世子「何かあったのですか?」
C.C.「……お前は経験があるのか?」
咲世子「はい?」
C.C.「男に抱かれたことはあるのか?」
咲世子「男性にですか……」
咲世子「ありませんね。恥ずかしながら。仕事一筋だったもので」
C.C.「そうなのか?」
咲世子「はい。それが何か?」
C.C.「現状から脱したいと思ったことはないか?」
咲世子「いえ。特に私はルルーシュ様のお傍に居られたらそれで幸せですので」
C.C.「……そうなのか。お前にとってルルーシュはそれだけの存在なのか」
咲世子「ええ」
C.C.「私は脱したい」
咲世子「そうなのですか」
C.C.「時々、色々なものが頭を巡る。想像もする。五感を働かせることもある」
咲世子「C.C.さん……」
C.C.「どうしたらいいかな……」
咲世子「襲ってしまっては如何ですか?」
C.C.「無理やりは好かない。合意の上でないとなんか、気持ち悪いだろ」
C.C.「……一人だけな。条件付きだが」
咲世子「では、そのかたに言ってしまえばいいじゃないですか」
C.C.「何をだ?」
咲世子「私を抱いてくれー!!!と」
C.C.「言えるか!!」
咲世子「それほどの仲ではないと?」
C.C.「私のプライドの問題だ」
咲世子「では、その気にさせれば問題はないわけですね」
C.C.「その気?」
咲世子「ええ。相手から求めてくるなら、C.C.さんもそれを受け入れるわけですから」
C.C.「まあ、そうだな」
咲世子「では、その方法を伝授してさしあげます」
C.C.「お前も未経験者だろ?偉そうになにを……」
咲世子「誘惑の心得はあります。ベッドに入る前に事は済むので男性に抱かれたことはないだけです」
ナナリー「お兄様、お帰りなさい」
ルルーシュ「ただいま、ナナリー」
ナナリー「お兄様、ちょっといいですか」
ルルーシュ「どうした?」
ナナリー「少し服が乱れているような気がして……」
ルルーシュ「どれどれ……」
ナナリー「どうですか?」
ルルーシュ「いや、大丈夫だ」
ナナリー「そうですか。ありがとうございます、お兄様」
ルルーシュ「気にするな」
C.C.「帰ってきたのか、坊や」
ルルーシュ「なんだ、居たのか」
ナナリー「……」
C.C.「それにしてもこの部屋は暑いな……。服でも脱ごうかな……」チラッ
C.C.「……」
ナナリー「お兄様?」
ルルーシュ「俺とシャーリーの関係を探っていたのか?」
C.C.「上着から脱ぐか」チラッ
ルルーシュ「質問には答えないか。まぁいい。お前の自由だからな」
ナナリー「何かあったのですか?」
ルルーシュ「ナナリーの気にすることじゃない」
ナナリー「はぁ……」
C.C.「下も脱ぐかな。これは出血大サービスだなぁ、まったく」チラッ
ルルーシュ「ナナリー、夕食はなにがいい?」
ナナリー「お兄様のお作りになるものでしたら、なんでも」
ルルーシュ「それが一番困るんだけどな」
ナナリー「ふふっ」
C.C.「ぬぐぞー、本気だからなー」
咲世子「どうでしたか?」
C.C.「まるで効果がなかった。そればかりか他の女のことばかりだ」
咲世子「そうですか……」
C.C.「このままでは終われない。どうにかしろ」
咲世子「そうですね。あからさまな誘惑には屈しない人物には、さりげないスキンシップなんてどうでしょうか?」
C.C.「さりげないスキンシップだと?」
咲世子「ええ。何気なく手に触れたり、肩に触れたりするのです」
C.C.「……」メモメモ
咲世子「そうすることで相手は自然と好意を持ってくれるものですから」
C.C.「本当か。それで向こうから来るのか」
咲世子「来ます」
C.C.「分かった」
咲世子「ご武運を」
C.C.「さりげないスキンシップ……さりげない……」
ナナリー「ありがとうございます」
ルルーシュ「熱いから気をつけてな」
ナナリー「えっと……」オロオロ
ルルーシュ「ここだよ」ギュッ
ナナリー「あ……。ありがとうございます」
ルルーシュ「全く」
ナナリー「私にはお兄様がいないとダメですね」
ルルーシュ「そうだな」
ナナリー「もう、お兄様ったら。ふふっ」
ルルーシュ「ははは」
C.C.「ルルーシュ」
ルルーシュ「なんだ?」
C.C.「手を握ってやろうか」
ルルーシュ「気持ち悪いことをするな」
ルルーシュ「必要ない」
ナナリー「お兄様、フォークは……」
ルルーシュ「ここにある」ギュッ
ナナリー「ありがとうございます」
C.C.「……」ススッ
ルルーシュ「なんだ?」
C.C.「私はこう見えて手相占いが得意なんだ」
ルルーシュ「手相だと?」
C.C.「見てやろう」
ルルーシュ「結構だ」
ナナリー「お兄様、見てもらえばいいではありませんか」
ルルーシュ「いいんだよ。どうせ嘘だからな」
C.C.「ええい!!触らせろ!!!」ギュッ
ルルーシュ「離れろ!!!」
咲世子「ダメだったのですか?」
C.C.「ああ……」
咲世子「……」
C.C.「もうどうしていいのかわからない……」
咲世子「C.C.さん、元気を出してください」
C.C.「このまま一生……花弁を散らすことの無い可憐な花のままでいるんだろうな……」
咲世子「そう悲観しないほうが」
C.C.「はぁ……」
咲世子「分かりました。では、最終手段です」
C.C.「最終手段だと?」
咲世子「ええ。これで篭絡されなかった殿方はおりません」
C.C.「聞かせろ」
咲世子「紙とペンをご用意ください」
C.C.「よし」
C.C.「ああ」
咲世子「では、日本の言葉を紙に書きます」
C.C.「日本の?」
咲世子「はい。それでどのような男も……確実に落ちます」
C.C.「それは本当か?妖しいモノだな」
咲世子「効果は絶大ですよ」
C.C.「で、なんと書けばいい?」
咲世子「貴方の」
C.C.「あな、たの……」カキカキ
咲世子「肉」
C.C.「に、く……」
咲世子「便器です」
C.C.「便器、です……これでいいのか?」
咲世子「その紙を胸に貼り付けて意中の男性の前に言ってみてください。言葉を理解してもらえば、間違いなく向こうから迫ってきますから」
ルルーシュ「ナナリー?何をしているんだ?」
ナナリー「えっと……秘密です」
ルルーシュ「俺に秘密か。寂しいな」
ナナリー「ごめんなさい。でも、もう終わりましたから。あとはプリントアウトするだけです」
ルルーシュ「そうか」
ナナリー「はい」
C.C.「ルルーシュ」
ルルーシュ「なんだ。さっきから落ち着きのない奴だな。―――何を貼り付けている?」
C.C.「読めるか?」
ルルーシュ「貴方の……にく……便器……です?」
C.C.「そうだ」
ルルーシュ「どういう意味だ」
C.C.「調べてみろ」
ルルーシュ「ちっ……。はいはい」
C.C.「ナナリー?」
ナナリー「お兄様ぁ」
ルルーシュ「なんだナナリーまで同じものを貼り付けて……。なんだそれは?」
ナナリー「咲世子さんから教えてもらったおまじないです」
ルルーシュ「咲世子さんから?」
C.C.「ナナリー?!お前も……?!」
ナナリー「なにか?」
ルルーシュ「なんのおまじないなんだ?」
ナナリー「秘密です」
ルルーシュ「また秘密か」
ナナリー「ふふっ。調べたら分かりますから」
ルルーシュ「そうか。なら調べてみるか」
C.C.(まずい……。言葉の意味だけでなく、もし男性を振り向かせる方法なんてことがバレたら……!!)
C.C.(またルルーシュに弱みを握られる……!!)
C.C.「ま、まて!!」ガシッ
ルルーシュ「なんだ、離せ」
C.C.「いや、離すわけにはいかなくなった」
ルルーシュ「なんだと?お前が言葉の意味を調べろと言ったんだろうが」
C.C.「そうだが、状況が変わった。調べるな」
ルルーシュ「いいから離せ」
C.C.「できないな」
ルルーシュ「C.C.……!!」
C.C.「……」
ナナリー「お兄様……」
ルルーシュ「分かった。調べないから、腕を離してくれ」
C.C.「分かってくれたか、坊や」パッ
ルルーシュ「―――フハハハハ!!!今だ!!!」カタカタカタカタカタ
C.C.「ルルーシュ!!!」
C.C.(終わったな……。もうここには居られない……)
ナナリー「お兄様、分かったのですね」
ルルーシュ「ナナリー。その紙は貼り付けるものではない。取れ」
ナナリー「でも……」
ルルーシュ「取るんだ!!」バッ!!!
ナナリー「あ……」
C.C.(さようなら、ルルーシュ)コソコソ
ルルーシュ「C.C.。お前はこっちだ」グイッ
C.C.「なんだ?何を怒っている?」
ルルーシュ「こい」
C.C.「私は悪く無いぞ。全部、咲世子だ。咲世子の入れ知恵だ」
ルルーシュ「いいからこい」
C.C.「やめろ。怒られるのは嫌だ」
ナナリー「……」
ルルーシュ「この紙に書いてある文字。どういう意味なのか、分かっているのか?」
C.C.「意味は知らない」
ルルーシュ「……やはり処女だな。お前は」
C.C.「お前だって知らなかったのだろ」
ルルーシュ「……知らないこともある。生きていくうえでは必要のない言葉だ」
C.C.「ふん」
ルルーシュ「これ、簡単に言えば「私を抱いてください」ってことだぞ」
C.C.「……」
ルルーシュ「……」
C.C.「……」ビリビリ
ルルーシュ「今更破いても遅い。どういうつもりで胸に貼り付けた?」
C.C.「深い意味はない。気にするな」キリッ
ルルーシュ「……」
C.C.「分かったよ。部屋の隅で丸くなる。それでいいな?」
C.C.「なるだろ。私が口を噤んでいればな」
ルルーシュ「ならないな」
C.C.「いーや、なるな」
ルルーシュ「……」
C.C.「部屋の隅で丸くなった。もう私に構うな。触れるな」
ルルーシュ「お前、何を拗ねている?」
C.C.「拗ねてなどない。私はC.C.だぞ?」
ルルーシュ「今日のお前の行動を考えればすぐに分かるがな」
C.C.「ほう?シスコン坊やが?言ってみろ。大ハズレに決まっている」
ルルーシュ「シャーリーのことだろ」
C.C.「……」
ルルーシュ「当たりか」
C.C.「いや、ハズレだ。間抜け。顔を洗って出直して来い」
ルルーシュ「こいつ……」
C.C.「違うな。ぜんっぜん、違う。まるで関係がない。どうしてそこに行き着いたのか理解できない」
ルルーシュ「そんな事実などないと言ったら?」
C.C.「……え?」
ルルーシュ「お前に童貞と言われて、つい口から出た嘘だったと言ったらお前はどうする?」
C.C.「嘘……なのか……?」
ルルーシュ「仮の話だ」
C.C.「どっちだ?嘘なのか?嘘なんだな?」
ルルーシュ「……」
C.C.「だろうと思ったよ。私は初めから分かっていた」
ルルーシュ「待て」
C.C.「何かな、万年チェリー坊や?」
ルルーシュ「急に態度がでかくなったな。貴様、自分の立場がわかっているのか?」
C.C.「どういう意味かな?」
ルルーシュ「お前は俺に向かって抱いてくださいと願ったんだぞ?」
ルルーシュ「バカか」グイッ
C.C.「なっ?!」
ルルーシュ「それがお前の願いなんだろ?」
C.C.「やめろ……」
ルルーシュ「怖気づいたか?」
C.C.「……無理やりは……嫌だ……」
ルルーシュ「くっ……」
C.C.「……」
ルルーシュ「もういい。寝る」
C.C.「なんだ、やめるのか」
ルルーシュ「ふん……」
C.C.「童貞の限界か。つまらんな」
ルルーシュ「貴様っ!!」
C.C.「な、なんだ。やるか?!」
スザク「膣内から変えていけばいいのに」
スザァク!
ルルーシュゥ!
C.C.「ふぅー……」
ルルーシュ「するつもりも無いくせに、粋がるな」
C.C.「何をいう。その言葉、そのままお前に返す」
ルルーシュ「やはりシャーリーのほうが可愛げがあっていいな」
C.C.「なら、あの小娘とやることやればいいだろ」
ルルーシュ「それもそうだな。今から呼び出すか」
C.C.「ああ、でもあいつ、ルルーシュ以外の男とすることしているらしいけどな」
ルルーシュ「シャーリーの交友関係は熟知している。特定の男性などいない」
C.C.「……」
ルルーシュ「残念だったな」
C.C.「だが、奴は男と経験をしたと言っていたが」
ルルーシュ「俺とキスしたことを言ったんだろ」
C.C.「じゃあ、シャーリーは呼ぶな。危険だぞ」
ルルーシュ「お前よりは何倍も安全だ」
ルルーシュ「さて……」
ピリリリ
C.C.「誰からだ」
ルルーシュ「カレンだな……。―――私だ」
カレン『あ、ゼロ。今日はこちらにこないのですか?』
ルルーシュ「ああ。色々あったからな……」
カレン『そうですか』
C.C.「……」
ルルーシュ「何か緊急の用でもあるのか?」
カレン『い、いえ……あの……ゼロ?』
ルルーシュ「どうした?」
カレン『あの……私は……ゼロのこと……す、好きですから』
ルルーシュ「私もカレンのことは信頼している。できることなら、ずっと傍にいてほしい」
カレン『ゼロぉ……はいっ!!紅月カレンはこの身を色んな意味でゼロに捧げます!!』
カレン『でへへ……』
C.C.「ぜろぉ、まだぁ?C.C.、がまんできなぁい」
ルルーシュ「!?」
カレン『え……ゼロ……?』
ルルーシュ「おい!!」
C.C.「もうこんなになってるのにぃ」
カレン『あ、ごめんなさい……。それじゃあ……』
ルルーシュ「まて!!カレン!!」
C.C.「ふふっ……あはははは」
ルルーシュ「貴様!!何の真似だ!!」
C.C.「ただの悪戯だ」
ルルーシュ「ふざけるな!!カレンに何らかの悪影響が出たらどうする?!」
C.C.「この程度で動揺してしまうなら遅かれ早かれ戦死する」
ルルーシュ「おまえはぁ……」
ルルーシュ「その根拠はなんだ……。全く」
C.C.「さてと、そろそろ寝ようかな」
ルルーシュ「お前!!」
C.C.「男は床で寝ろ」
ルルーシュ「どこまで身勝手なんだ……お前は……」
C.C.「求められて唇を重ねるような軟派な男が言うと滑稽だな」
ルルーシュ「お前はどうなんだ?」
C.C.「私は求められたからと言って、それに応じたりはしない。見た目ほど尻は軽くないからな」
ルルーシュ「ほう……?」
C.C.「私はC.C.だからな。特に小僧の頼みなんて―――」
ルルーシュ「C.C.……」
C.C.「お……」
ルルーシュ「……」
C.C.「まて……歯を磨いてからだ……」
C.C.「なに……?」
ルルーシュ「そのような奴にとやかく言われる筋合いはないな」
C.C.「この……」
ルルーシュ「こんな女に罵声を浴びせられたであろうシャーリーが不憫でならない」
C.C.「歯を磨けばいいと言っている」
ルルーシュ「磨いているうちに断る理由を考えるんだろ?」
C.C.「そ、そこまで嫌じゃないが」
ルルーシュ「そ、そうか」
C.C.「……やはり、今日は部屋の隅で丸くなっておく」
ルルーシュ「もういいから、ベッドで寝ろ。お前みたいな女が部屋の隅にいると怖いからな」
C.C.「じゃあ、男は床で寝ろ」
ルルーシュ「はいはい」
C.C.「おやすみ」
ルルーシュ「ああ」
C.C.「……」コソコソ
ルルーシュ「なんだ?」
C.C.「私は寝相が悪いからな」
ルルーシュ「わざわざ床にいる俺の隣まで来るほどか。とんでもないな」
C.C.「今日は特別寝相が悪くてな。私も困っている」
ルルーシュ「お前の傍で寝ることになる男は大変だな」
C.C.「だろうな。同情するよ」
ルルーシュ「貴様に同情されても何一つ嬉しく無いな」
C.C.「お前に同情したわけじゃないがな」
ルルーシュ「俺以外の誰がお前の傍に居られるというんだ?」
C.C.「それはこっちに台詞だな」
ルルーシュ「寝言も多いし。最低の女だ」
C.C.「お前こそ歯軋りが酷いな。最悪の男だ」
ルルーシュ「魔女が……」
ルルーシュ「ん……」
C.C.「すぅ……すぅ……」
ルルーシュ「顔を洗うか……」
咲世子「おはようございます、ルルーシュ様」
ルルーシュ「おはよう」
咲世子「おや?」
ルルーシュ「あ、これは……」
咲世子「どうやら、おまじないの効果が出たようですね」
ルルーシュ「おまじないって……」
ナナリー「咲世子さん!!私は効果が出ませんでした!!」
咲世子「そんなことは……。では、この藁人形を使ったお呪いを試してましょうか」
ナナリー「はい」
ルルーシュ「咲世子さん。ナナリーにおかしなことを吹き込むのはやめてください」
咲世子「も、申し訳ありませんでした……」
カレン「はぁ……」
シャーリー「カレン?どうしたの?元気ないみたいだけど」
カレン「べつにぃ……」
リヴァル「ふられたのかぁ?」
カレン「あ?」
リヴァル「うわ……マジで?」
カレン「そんなじゃないわ……」
ミレイ「そんなんじゃないって顔じゃないわねー」
カレン「放っておいて下さい……」
スザク「カレン……」
ルルーシュ(昨日の電話の影響か……)
ナナリー「カレンさん、あの……」
カレン「なぁに?」
ナナリー「何があったのか聞かせてください。お力になれなくても、お話しを聞くことはできますから」
ルルーシュ「いや。会えていないな」
シャーリー「もう、なんだったのかな。あの子!!」
リヴァル「でも、シャーリーさ。ルルーシュ以外に思いを寄せている男なんているのか?」
シャーリー「え?!いや、いないよ……って、何いってるのかな?!」
スザク「ルルーシュ、シャーリーはルルーシュのことが好きらしいよ」
ルルーシュ「そ、そうだったのか……」
シャーリー「わぁぁああああ!!!!!」
ミレイ「間接的こくはくぅ」
シャーリー「なんでそんなこというのぉ!!!」
スザク「こういうことは早いほうが」
シャーリー「自分で言うから!!!」
スザク「じゃあ、今言ったらどうかな」
ルルーシュ「……」
シャーリー「いえるわけないでしょぉ!!!」
ミレイ「よしよし」
スザク「あれ……泣かせてしまった……」
リヴァル「よくやったよ。スザク」
スザク「そうかな?シャーリーが前進できたなら、僕も嬉しいよ」
ルルーシュ「全く……」
ニーナ「ふふっ」
カレン「へー、そうなんだ」
ナナリー「是非、試してください」
カレン「ありがとう、ナナリー。元気でてきたよ」
ナナリー「いえ」
シャーリー「うぅぅぅ……」
ナナリー「シャーリーさん」
シャーリー「なに……?」
ナナリー「元気の出るおまじない、教えてあげますから。涙を拭いてください」
ゼロ「色々すまなかったな」
扇「いや。ゼロの用事は済んだのか?」
ゼロ「ああ、問題はない」
扇「ならいいんだ」
ゼロ「さてと」
カレン「ゼロー!!」タタタッ
ゼロ「カレ―――」
扇「カ、カレン?!何を貼り付けて!?」
カレン「魔法の言葉だって聞いて……。ゼロ……ドキドキしますか?」
ゼロ「あ、ああ……」
カレン「よかった……」
玉城「なんだ、カレン!?ゼロ専用の便器になったのか?!」
カレン「うん」
ゼロ「肯定するな!!お前はその言葉の意味がわかっていないのか?!」
ゼロ「それは……抱かれてもいいという合図なんだぞ……」
カレン「そうみたいですね」
ゼロ「なに?」
カレン「ゼロ。C.C.のようにはいかないかもしれませんが、私も精一杯がんばりますから」
ゼロ「カレン!!私は!!」
カレン「ゼロの親衛隊ですから!!私!!」
ゼロ「が……!?」
扇「ゼロ」
ゼロ「なんだ?」
扇「カレンを幸せにしてやってくれ」
ゼロ「何を言っている?!」
カレン「ゼロ……リードしてくれると嬉しいです」
ゼロ(そんなことできるわけがない……!!ここは……戦術的撤退だ!!)ダダダッ
カレン「あ!!ゼロー!!!」
ルルーシュ(昨日は酷い目にあったな……。カレンめ。わかってやるなんて、なんと性質の悪い……。今後も注意しておかなくては……)
シャーリー「あ、ルルー」
ルルーシュ「シャーリー。おは―――」
シャーリー「この胸に貼った紙?これ、ナナちゃんから教えてもらったの。元気の出るおまじない」
ルルーシュ「シャーリー……」
シャーリー「どうしたの?」
スザク「シャーリー!?」
シャーリー「スザクくん、どうかした?」
スザク「……君は男なら誰でもいいっていうのか!!!」
シャーリー「え?」
ルルーシュ「スザク!!よせ!!」
スザク「一途だと思っていたのに!!君は最低だ!!まるっきり痴女じゃないか!!!」
シャーリー「ち……」
ルルーシュ「スザク!!もういい!!やめろ!!」
シャーリー「ごめっ……なさい……私……しらなくて……」
スザク「知らなかったじゃ済まされない!!僕は君のことを思っていっているんだ!!!」
シャーリー「はい……」
ルルーシュ「スザク、もういいだろ。シャーリーも反省している」
スザク「でも……」
ルルーシュ「今後は気をつければいいだけだ、シャーリー」
シャーリー「ルル……」
スザク「シャーリー、もうこんなことしちゃいけない」
シャーリー「うん……もうしない……こんなこと……恥ずかしいもん……」
スザク「よし。なら、いいんだ」
ナナリー「……」
ナナリー「次のおまじないを試しましょうか……」
ナナリー「ふふっ」ウィィン
ルルーシュ「酷い一日だった。カレンもシャーリーも……。困ったものだ」
C.C.「満更でもなかったんだろ?童貞坊やめ」
ルルーシュ「……は?」
C.C.「なんだ?」
ルルーシュ「魔処女がよく言う」
C.C.「お前……!!」
ルルーシュ「なんだ?」
C.C.「……な、なら、お前が私を魔女にすればいいだろ?」
ルルーシュ「ごめんだな」
C.C.「なに!?」
ルルーシュ「お前は図に乗って、今以上に可愛くなくなりそうだからな。暫くは様子をみる」
C.C.「ふざけるな!!もうお前以外にいないんだからな!!」
ルルーシュ「……そうか。なら、考えてみてもいい」
C.C.「……部屋の隅で丸くなるから……契約する覚悟ができたら、こい……」
おしまい
CCが可愛い
CCが可愛い
Entry ⇒ 2012.09.22 | Category ⇒ コードギアスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
聖「……みずき、もう少し真剣に練習しろ」
聖「……」パスッ ヒュッ
みずき「やっぱり、いざ先輩達がいなくなると……」パスッ ヒュッ
聖「そんなことを言うものじゃない」パスッ
みずき「分かってるけどさぁ」
聖「気持ちは分からないではないが、練習に身が入っていないこととは話は別だ」
みずき「むー」
聖「……はっきり言うが、今の状態だと手塚の方がエースに相応しいぞ」
みずき「そーかもね……はぁ……」
聖(なんとかならんかな……)
※みずき サボりぐせ取得
練習後
みずき「おつかれー」
聖「おい、この後はミーティングが……」
バタン
聖「……はぁ」
円谷「えーっと……ドンマイ?」
手塚「橘の奴……大丈夫かなぁ」
聖「まだ大会には時間があるが……このままではな」
円谷「去年の夏は帝王とあかつきが潰し合ってくれたからよかったけどねー」
手塚「組み合わせ次第じゃ両方と戦わないといけない……ウチの地区は何かおかしい」
聖「文句を言っても始まらん。とにかく、手塚とみずきの両看板が仕上がらないことには、万全とは言えん」
手塚 B(70) B(75) 146km スライダー3 カーブ3 フォーク2 安定感4
みずき A(85) C(60) 139km オリジナル5 スクリュー3 対ピンチ2 ケガしにくさ4 タイムリーエラー ムラッ気 人気者
こんな感じ
大正義恋々高校^p^
聖「加藤先生……すいません、私がもっとしっかりしていれば」
円谷「そういうことは言わないの!」
手塚「そうそう、橘のことはチーム全体で考えていこう。先輩達が抜けて何か物足りないのは、みんな一緒なんだから」
聖「お前達……すまない」
加藤「ふふふ、どうやら心配することはなさそうね。近い内に『彼』もやってくるし……」
聖「『彼』?何のことですか?」
加藤「すぐに分かるわよ。さて、ミーティングを始めましょう?」
「「「???」」」
※円谷・手塚 チームプレイ○
円谷 CDBCBB 弾道2 送球○ 盗塁4 走塁4 守備職人 サブポジ○ チームプレイ○
くらい。大正義恋々ry
数日後 教室
みずき(最近練習出来てないなぁ。自分でサボってるんだから当たり前だけど)
みずき「……先輩達が部に居た頃は、毎日毎日楽しかったのに……」
キーンコーンカーンコーン
みずき(……いっそ授業もサボっちゃおうかしら)
教師「えー、HRを始める前に連絡がある」
みずき(あーあ、ほんとに何か面白いことでも起きないかなぁ)
教師「今日からこのクラスに転校生がやって来る。みんな仲良くな」
みずき(転校生ねぇ。私が漫画の主人公なら、ここで『あー!!?』とか言って立ち上がったりするんだろうな。ま、あり得ないけど)
教師「君、さっそく自己紹介を」
??「はい」
みずき「あー!!?」ガタッガタン
教師「どうした橘?」
??「……」
みずき「アンタ……友沢!?」
友沢「……漫画のキャラか、お前は」
教師「野球部に入部希望らしいし、ちょうど席も空いてるから橘の隣な」
みずき「な゛ー?!」
みずき「……ちょっと」
友沢「何だ」
みずき「屋上まで着いてきなさい」
友沢「……やれやれ」
クラスメートA「あれ、告白か何か?」ヒソヒソ
クラスメートB「何かただならぬ関係みたいだしな、朝の反応的に」ヒソヒソ
クラスメートC「勝気な美少女とクールっぽいイケメン……YESだね!」ヒソヒソ
クラスメートD「小生のみずきタソを返せー!」
友沢「……周りの反応はどうにかならんのか」
みずき「……あきらめなさい。私は慣れた」
※みずき・友沢 精神ポイントが下がった……
友沢「……で?」
みずき「で?じゃないわよ!何でアンタが転校してくるわけ?!」
友沢「……」
みずき「……だんまりとはね。カッコつけてるつもりかしら」
友沢「……そう受け取ったなら、それでもいい」
みずき「ふん、そういうすかした態度が気に食わないのよ」
友沢「勝手に言ってろ」
みずき「……でも、本当にどういうこと?帝王のアンタがライバル校に転校して、当然のように野球部志望だなんて」
みずき「何よ?」
友沢「お前、最近サボっているらしいが、今日は来い」
みずき「なっ……よ、余計なお世話よ!ていうか何でアンタがそのことを知ってるワケ?!」
友沢「……本当にサボってたのか。意外だな」
みずき「……色々あんのよ、乙女にはね」
友沢「乙女ね……ま、俺がここに居る理由も含めて、部活に顔を出せば分かると思うぞ。じゃあな」
みずき「むむ……わけわかんない……」
みずき(なんだか友沢に説得されたみたいで癪だけど、結局大会には出たいし勝ちたいのは間違いないのよね)
みずき「サボりも潮時、か。先輩達が居なくて物足りないのは変わんないけど」
聖「それでも練習に顔を出さないよりはずっとマシだな」
みずき「聖……その、ごめんなさい」
聖「いいさ」
手塚「先輩達が居なくなってつまんないっていうのはみんな一緒さ」
円谷「でもそこは俺達自身で、これから何とかしていこうぜ」
みずき「あんた達まで……うん。それもそうね。いつまでも後ろ向いてても始まらないわ」
※みずき サボりぐせ 解消
友沢「……」
加藤「すでに知っている人も多いと思うけど、今日から野球部に新たな仲間が加わります」
部員A「あれって帝王の……」
部員B「だよなぁ」
加藤「さすがの知名度ってところかしらね……亮君、改めて自己紹介を」
友沢「今日から入部する友沢亮です。ポジションはショート」
みずき「は?!」
友沢「よろしくお願い……」
みずき「待ちなさい!何でアンタがピッチャー希望じゃないのよ?!」
友沢「……」
加藤「それについては私から言わせて貰うわ。そこら辺は、彼がウチの高校に来た理由でもあるから」
聖「というと?」
加藤「……数ヶ月前、妹から相談を持ちかけられたの。『ある優秀な野球少年』の体について、ね」
友沢「……」
手塚「確か監督の妹さんって……」
円谷「近くの総合病院の看護婦さんでしたっけ」
加藤「そう。妹……京子と私は同じ先生の元でスポーツ医学を学んでいたのだけれど、得意分野が少し違うの」
聖「なるほど。その『ある優秀な野球少年』の検査を妹さんから頼まれた、ということですか」
加藤「そういうこと。まぁ、私達の先生にお願いしてもよかったんだけど、多少過激なことも辞さない性格の人で……
まぁそれは置いておきましょう。最終的に施設だけ借りて、私が精密検査を行ったわけ」
みずき「……検査の結果は?」
加藤「限りなく黒に近いグレー、という所ね。少なくとも、医学を志す者として看過出来るような状態では無かったわ。
その子が身を置いている環境が、過酷な練習と熾烈な競争を是とする帝王野球部だからこそ、
尚のこと放っておくことが出来なかった。それ程に稀有な才能の持ち主なのよ」
聖「つまり、その野球少年というのは」
友沢「……特に肘がボロボロでな。決め球のスライダーが、もうまともに投げられないらしい」
みずき「……アンタ、ってわけね……」
加藤「現状の帝王の練習及びシステムだと、どうしても亮君の選手生命に危険が及んでしまう。
そこで私は、帝王の監督や私の先生、そして亮君本人と、何度も話し合った末に、彼の転入を提案したの。
ウチなら設備の整った総合病院にも近いし、メニューの調整なんかも柔軟に対応出来るからね」
円谷「……よく帝王側も本人も納得しましたね。悪い言い方だけど、戦力の引き抜きみたいなもんだし」
手塚「練習環境が変わるのもリスクだと思うんですけど」
友沢「……実際そこら辺は悩んだけど、プロ入りする前に体を壊しちゃ人生計画がパーだからな」
聖「ビッグマウスはほどほどにな……と言うべきところだが、友沢ならまぁ間違いなくプロからオファーが来るだろうな」
加藤「現3年のパワプロ君や早川さん、あかつきの猪狩君、帝王の山口君に引けを取らない注目度であるのは間違いないわ。
そこら辺も考慮しているからこそ、帝王の監督もこちらの提案を受け入れてくれたのよ。
『戦力的に大きな打撃にはなるが、野球界の為と思えば致し方ない』ってね。『覚悟するように』っても言われたけれど」
手塚「『覚悟しておくように』って……当たったらラフプレーとかしてきたり?」
友沢「ラフプレーはさすがに無いだろうが、執拗にマークされるのは間違いないだろうな。
お前たちには正直申し訳ないと思うけれど、その分実際のプレーで貢献していくつもりだ」
聖「ふむ……ショート希望ということなら、ちょうど不足していたポジションだし、
戦力的には大幅なパワーアップということになりそうだな。問題は体の方だが……」
友沢「転入手続きのゴタゴタの間に体は休ませておいた。加藤先生からの指導は勿論、
京子さんにもリハビリの面倒を見てもらったから、今すぐにでも動きたい所さ。
……しかし意外だな。守備に定評のある恋々でショートが不足だなんて」
円谷「これでようやく本職セカンドに戻れそうだなぁ。正直助かるよ、俺一人だったし」
友沢「……一人?しかもサブポジション?何かの間違いじゃないのかそれ」
手塚「しょーがないんだよね、そこら辺の事情は」
聖「……聖域(JK)」
友沢「……?」
聖「……みずき?」
みずき「ごめん、やっぱり今日は私練習パスするよ」
聖「は?」
みずき「加藤先生、ごめんなさい、後でサボってた分まで罰は受けますから、今日は……」
加藤「うーん……ま、分かったわ。覚悟しておきなさい」
みずき「ありがとうございます……友沢、みんな、ごめん。お先」
手塚「あれれ、一目散だ」
円谷「せっかく久しぶりに来たのに……」
聖「……本人がああ言ったんだ。明日からは問題なく来るだろう」
聖(それにしては、複雑な表情をしていたけれど)
加藤「……亮君、やっぱり今日の練習禁止」
友沢「えっ?!久しぶりだから特別に動いていいって……」
加藤「あぁ、えっと……野球の練習は、ってこと。監督としてウォーミングアップを命じます」
友沢「はぁ、まぁ、動けるならいいですけど……」
友沢「校門出て左に10分ってとこでしたっけ……アップにも物足りない気がしますけど」
加藤「また故障寸前まで行きたいのかしら?」
友沢「うっ……りょ、了解しました」
加藤「素直でよろしい。他のみんなも、しっかり準備運動とアフターケアを怠らないように!」
友沢出発後
聖「……加藤先生」
加藤「何かしら?」
聖「神社はランニングコース外のはずですけど、どうして友沢君に?」
加藤「……勘よ」
聖「は?」
加藤「六道さんにも、その内分かるわよ。ふふ」
聖「???」
みずき「……何でアンタがここに来るのよ。帰るにしても家は反対方向でしょ」
友沢「今日は軽いアップまでって言われたんだ。神社まで走って来いだと」
みずき「ふーん」
友沢「……お前こそ、どうしてここに居るんだ。お前の帰る方向だって逆だろう」
みずき「別に……なんとなく、よ」
友沢「……」
みずき「……」
「なぁ」「ねぇ」
友沢「……何だ?先に言えよ」
友沢「質問によるな」
みずき「アンタ、隠し事してない?こっちに来た理由、あれだけだと思えないんだけど」
友沢「……さすがに腐れ縁ってわけか」
みずき「不本意だけどね。その……家族のこととか、そこら辺について、何も言ってなかったし」
友沢「それは別に隠そうとは思わないし、かといってひけらかして同情を誘うつもりもない」
みずき「でも……」
友沢「……屋上でお前に転入の理由を話さなかったのは、お前が俺の家の事情をある程度察しているからだ。
他の部員に前もって話したりされたら、俺がやりづらくなるだけだしな」
みずき「そんなデリカシーの無い事しないわよ?!」
友沢「どうだか。お前、お節介だし」
友沢「……まぁ、バッサリと言うとだな。母さんの看病と弟たちの面倒見るのとバイトとの兼ね合い……」
みずき「はぁ?!アンタ、あれだけ私が言っておきながらまだバイト増やすつもりなの!?いい加減に……」
友沢「耳元で怒鳴るなよ!?しかも逆だ逆。バイトはこれから減らせるんだ」
みずき「そうなの?」
友沢「理香さん達の先生が『出世払いでいいデース』って言って、母さんの治療費とか俺の検査費用を負担してくれたんだよ。
おかげで無理にバイト増やしたりする必要も無くなったんだ」
みずき「うさんくさっ?!」
友沢「そう言いたくなる気持ちも分かるが、実際大助かりさ。母さんも京子さんの勤務してる近くの病院で診てもらえることになったんだ。
帝王だと電車を使わざるを得なかったけど、ここなら自転車で十分だし、翔太たちの学校も近い。
壊れる寸前だった体も、何とか持ち直させてくれたし、いいこと尽くめで怖いくらいだよ」
友沢「……まぁ、な。少なくとも、スライダーを試合で放ることはもう無いだろう」
みずき「……そっか……ごめん、嫌なことまた聞いちゃって」
友沢「……気にするな。これでも、自分の中では一応けじめをつけたつもりだし」
みずき「……」
友沢「……お前の質問には答えたんだから、今度はこっちの番だ」
みずき「……いいわよ」
友沢「どうして今日もサボった?最初は普通にやる気みたいだったが」
友沢「……分かった、約束する」
みずき「……そもそも最近何でサボってたか、アンタは分かるかしら?」
友沢「理香さんから少し聞いていたくらいだったから、理由までは」
みずき「……さっきもちょっと思ったんだけど、理香さんって名前呼びなのね」
友沢「?話に関係あるのか?」
みずき「……無いわね。続けましょう。私が練習をサボりがちになったのは……
先輩たちが部活に来なくなったから。間違いなくこれが理由ね」
みずき「そうね。年末までは来てくれてたんだけど」
友沢「なんだ、むしろよく来てくれてたくらいじゃないか」
みずき「うん。他の先輩達も、何人かはちょくちょく顔を見せてくれたわ。今でもたまに来る人は来るし」
友沢「ならそれで」
みずき「よくないのよ、私にとっては」
友沢「……先輩たちが現役だった頃がよかったというわけか」
みずき「……暇を見つけては遊ぶくせに、ヘッドスライディングだけ気合入れてたダメガネは嫌いじゃなかった。
みんなの人気者で、おどおどしてる雅先輩をからかうのが日課だった。
簡単そうに私のボールを受けるパワプロ先輩を尊敬してたし、ちょっとだけあの才能が妬ましかった。
パワプロ先輩とのキャッチボールを心底楽しそうにやってたあおい先輩が大好きだった。」
みずき「でも、分かりきってたことだけど、それは部のみんなが思ってることで……
私だけいつまでも甘ったれてるなんていうのも、おかしな話。だから、それはもう解決したの」
友沢「じゃあなんで今日は休むんだ?」
みずき「うー……アンタが原因っていうか、えっと」
友沢「俺?」
みずき「アンタは何も悪くないんだけどね。私が勝手に、色々考えてて……」
友沢「……」
みずき「アンタは私のこと意識したこと無かったかもしれないけど、私はアンタをずっと
ライバルだと思ってたっていうか……あぁっもう、恥ずっ!恥ずい!」
友沢「ふむ」
何か、その、変な気持ちになっちゃってさ。すごく辛くて、やるせなくて……
自分のことじゃないのに、何言ってんだろうね、私。わ、笑いたければ笑いなさいよ」
友沢「……まさか。笑ったりなんてしないさ。最初に約束したし」
みずき「うぅ、そういえばそうだったわ……」
友沢「……それから、俺もお前はライバルだと思ってるよ」
みずき「そう、なの?」
友沢「あぁ。お前の周りが凄過ぎて、俺のことなんてシニアで争っただけ、もう過去の人間扱いだろうと思ってた」
みずき「……あんだけ投げ合っておいて『だけ』とか過去の人だなんて思ってるわけ無いでしょうに……
今でも思い出すわよ……ほら、去年だって練習試合でさ……」
矢部(どんな状況でやんすかこれ)
矢部(神社の軒下にコツコツ貯めてきたエロ本を回収しようと思って来てみれば、
みずきちゃんとどこかで見たことのあるイケメンが楽しそうにお喋りしているでやんす。
明らかに不純異性交遊でやんす。不潔でやんす。爆発しろでやんす)
矢部(これはあえて空気を読まないで参上して、雰囲気をぶち壊してやるでやんす。
そしてみずきちゃんからゴミカスを見るような視線を受けてそれを今夜のオカズにするでやんす。
名づけてAKY721作戦でやんす。完璧でやんす!)
矢部「デュフフ……コポォでやんす……」
チョンチョン
矢部「なんでやんす?今取り込み中でやんす」クルッ
ゲドー君「」ギョギョー
矢部「」
友沢「それでその時山口先輩がさ……」
みずき「えー?!あの人そんな人だったんだ……意外」
加藤「コラコラ亮君!」
友沢「げ!理香さん?!すっ、すいません!サボりじゃなくて、ええと……」
加藤「その呼び方は診療中だけよ?全く、遅いから心配して来てみれば……青春真っ只中って所かしら?」
みずき「そ、そんなんじゃないですよ!」
加藤「……ま、いいわ。どうせ亮君用のメニューは明日から始めるわけだし」
加藤「ええ。体に出来るだけ負担をかけない特訓、っていう矛盾したオーダーで組むのは中々骨が折れたけどね」
友沢「う……すいません、ありがとうございます」
加藤「そ・こ・で!橘さん!」
みずき「はい?」
加藤「度重なる部活の無断欠席……いくら私が野球に関しては素人監督とはいえ、
到底見過ごせるものじゃないわ。このままじゃ、懸命に練習に励んでいる他の子達に示しが付きません」
みずき「うぅ……すいません、ごめんなさい」
加藤「謝って帳消しにならないのは分かっているでしょう?チームのエース格とはいえ、それ相応の罰を受けてもらいます」
みずき「はい……私に出来ることなら、何でも」
加藤「いい覚悟ね。非常によろしい。では、あなたには罰として……」
加藤「亮君のトレーニングパートナーを命じます!」
友沢「えっ」
加藤「亮君の要望に応えて、『通常練習後』『可能な限り長時間』の特別メニューを組んでおいたから、
亮君と一緒にこれを年度が変わるまでの間、きっちりみっちりしっぽりこなしなさい」
みずき「ええええええええ!?れ、練習後に長時間って、体を痛めつけるだけじゃないですか?!」
加藤「さっき言ったわよ?『体に出来るだけ負担をかけない特訓』って。
一見矛盾したオーダーでも、ダイジョーブ医学にかかればどうってことないわ。
それに、あなた達二人の経過を観察して、随時メニューは調整していくから安心しなさい」
友沢「まぁ、り……加藤先生が組んでくれるんだから、間違いは無いだろう。
理由はどうあれ、サボってたお前が悪いっていう面もあるし、あきらめろ」
加藤「あら、亮君と食べればいいじゃないの。ふ・た・り・で♪」
みずき「だっ、な、ななな」
友沢「……すまん、甘いのはそこまで得意じゃない」
みずき「何でそこでまともな反応なのよ?!」
加藤「これは監督命令です!……あ、首尾がよければ来年度の部のメニューに組み込む予定だから、
そこら辺もよろしくね。ある意味責任重大よ?」
みずき「もういやー!?」
※みずき 負け運
みずき「ふぇぇ……また増えてるぅ……」
友沢「元々俺のリハビリも兼ねてるんだ、メニューが段々きつくなるのは仕方ない」
みずき「そうはいっても今日のは増えすぎよ!ウェイトの時間が2倍近いじゃないの!?」
友沢「……ま、女のお前にはきびしーかもなー」(棒読み)
みずき「むぎぎぎぎぎ……しゃーどんとこいオラー?!」
友沢(相変わらず誘導しやすいなこいつ)
みずき「なんて言うと思った?!もうその手には乗せられないわよ!?」
友沢「ちっ」
みずき「舌打ち禁止!……あーもう!あんなにサボるんじゃなかったー!!」
友沢「自業自得、だな」
みずき「むきー!!」
みずき「誰がこんな奴と!」
友沢「……理香さん、こいつの言うとおり、実際今日のメニューは増えすぎな気がしないでもないんですけれど」
加藤「もう、名前で呼ぶのは二人の時……診察の時だけって言ってるじゃないの」
友沢「あ、すいませんつい……」
みずき「……」ビキビキ
加藤「うふふ……まぁともかく、確かにそろそろ根を上げる頃だとは思ってたわ。
最近の橘さんは基礎練習を疎かにしがちだから……まだパワプロ君たちが現役だった頃は、どんな練習も熱心だったんだけど」
みずき「……あおい先輩分が足りない……」
友沢「うわぁ……」
みずき「……冗談よ。真に受けないでよね」
これなら基礎練習よりはモチベーションが上がるんじゃない?そうね、例えば……スライダー系のボールとか」
みずき「!」
友沢「!」
加藤「亮君にも手伝ってもらいなさい。彼のスライダーは、間違いなくプロレベルだった。
きっと良いアドバイスをしてくれるはずよ。勿論、亮君には投げさせないけど」
みずき「ちょっと待って下さい!それだと友沢が……」
加藤「……もう亮君は、野手として第二の野球人生を始めたと言っても過言じゃない。
でもこの程度でうじうじする様なら、プロになんてなれないでしょうし、なったとしても活躍は厳しいでしょう。
投手としての自分を冷静に振り返ることが出来るかどうか、それが一つの分岐点だと私は考えるわ。どうかしら、亮君?」
友沢「……」
みずき「友沢……」
加藤「……ええ、いいわ」
友沢「……ちょっと走ってきます。すぐ戻るんで……あぁ、橘は休んでてくれ」
みずき「ちょっ、待ちなさ……加藤先生、私も!」
加藤「はいはい、どうぞいってらっしゃい」
みずき「ついでにウェイト免除で!」
加藤「それは却下ね」
みずき「あう」
※みずき 寸前×
神社
みずき「はぁ、はぁ……やっぱりここよね……はぁ」
友沢「橘……」
みずき「やっぱジョグで流せばよかった……はぁ、はぁ、とんだピエロだわ……」
友沢「どうして、ここだと?」
みずき「……簡単よ。アンタが野球馬鹿だから」
友沢「……何だそりゃ」
みずき「この神社、どうしてかは知らないけどみんな練習場にしてるのよね。
パワプロ先輩も、あおい先輩も、雅先輩も、手塚も円谷も聖も……
もちろん私もね。ほら、野球馬鹿ばっかり。だからアンタもここに来るって寸法よ」
友沢「……」
みずき「まぁ、実際当てずっぽうって言えばそうなんだけどさ。私の目に狂いが無かったってことね」
みずき「……誰でもそんな気分になる時はあるんじゃないかしら」
友沢「この前『けじめはつけた』とか言ったのにこのザマは無いだろう」
みずき「私はそうは思わないわ。逆に、平気な顔して『分かりました、さぁスライダーの特訓だ』
とか言われてたら、アンタのことぶん殴ってたかも」
友沢「む……」
みずき「……アンタがピッチャーやってる姿、私はよく覚えてるわ。
いつも強気でグイグイ攻めてて……変な言い方だけど、ちょっと癪に障るような、
憎たらしいアンタらしくて、でも気持ちがボールに乗ってて、清々しかった。
こいつは本当に楽しくて投げてるって、そんな風に見えて、嫌いじゃなかったの」
友沢「……お前」
みずき「あんなに全力で投げてたアンタが、そう簡単にピッチャーをあきらめられるわけ無い。
その証拠に、気持ちの整理をもう一度したいから、アンタはここに来た。違う?」
友沢「………………違わない、な」
友沢「ふ……何でもお前に見通されてるみたいで、ちょっとむかつくが」
みずき「気にしてやってる分だけ感謝しなさいよ、全く」
友沢「はは、そうかもな……お前の言う通り、俺、ピッチャーやってるのは好きだったよ。
それなりに自信もあったし、この腕一本で家族を食わせていくんだって思ってた。
それがもう投げられないなんて、悪い冗談だと思いたかったさ。
野球が続けられるって分かった後も、自分がピッチャーだった時のことを、
何とか忘れようとするばっかりで、ちゃんと向き合おうとしなかった」
みずき「……まだ逃げる?」
友沢「まさか。里香さんの言う通り、ここで立ち止まってたらプロでやっていけるわけが無い。
それに、今の俺にはパートナーがいるんだ。そいつには貸しを作ったり、
迷惑かけたくない。なんてったって、後が怖そうだからな」
みずき「よく言うわよ」
友沢「……俺のピッチング、褒めてくれてありがとうな」ニコッ
みずき「?!べ、別に褒めてなんかないし!?嫌いじゃないってだけで……あ、アンタのことも別に」
友沢「は?なんでそういう話になるんだ?」
みずき「ぐっ……な、なんでもないわ!ふん!」
友沢「???」
友沢(復活) 弾道3 ABBABC AH PH サブポジ○ ポーカーフェイス
またまた数日後、スライダーの特訓中……
みずき「えいっ」ククッ
スコーン
みずき「ふぅ……少しは様になってきたかしら」
友沢「そうだな、そろそろ本格的に実戦に近い練習をしてもいいんじゃないか。
次からは聖に残ってもらって、ボールを受けてもらおう」
みずき「……アンタ、いつから聖のこと呼び捨てにしてるの」
友沢「え?いや、昨日話してたら『名前で良い』って本人がな。
……それがどうかしたか、橘?」
みずき「……ふーーーんだ。何でもありませんよー……えい」クッ
スコーン
みずき「えっ、ちょっ……」
友沢「前も言ったと思うけどお前は腕の振りが甘いんだよ。もっとこう手首まで使って……」
みずき「う、うん……」
みずき(近い近い近い!?)
友沢「……あれ、もしかしてサイドだからもっと重心低い方がいいのか……?
腰をもっとこうして……いやでもこれだとちょっと負担が……」
みずき「……ッ!……ッ!」
みずき(真剣過ぎて何も言えないじゃない……!えっち!スケベ!!変態!!!)
※みずき 低め○
……いつもこんな感じなら、少しは可愛げが出るだろうに)
友沢(……首、白くて細いな……ていうか、体全体細いんだな、やっぱり女の子か)
友沢(……せっけんの良い匂い……)
友沢(……あ)
友沢「ま、まぁこんな感じのフォームでいいんじゃないか!うん」パッ
みずき「えっ?!あ、ああ。うん、分かったわ。さ、サンキュー」
友沢「お、おう」
みずき「こほん……気を取り直して……えいっ!」グググッ
スコーン
友沢「?!」
みずき「……凄い変化したわね今」
※みずき スライダー系オリジナル変化球取得 クロスファイヤー取得
友沢 弾道が上がった! ポーカーフェイス消去
帰り道
みずき「疲れたー!!」
友沢「お疲れ」
みずき「今日は大収穫ね。あんなに曲がるスライダーをマスターするなんて、さすが私」
友沢「確かにあれには驚いたな」
みずき「……でも投げ過ぎでかなり疲れちゃった。早いとこ帰って休もうっと」
友沢「迎えでも頼んだらどうだ?」
みずき「……それだとアンタが一人になっちゃうじゃないの」
友沢「……もしかして、今までそれで律儀に一緒に帰ってくれてたのか、お前」
みずき「ふん。感謝しなさいよね」
友沢「何故無駄に偉そうなんだ……」
友沢「二人乗りは危険だろ、もう真っ暗だし」
みずき「男がそんな細かいこと気にしないの!」
友沢「あっ!コラ!俺も疲れてるんだからそんないきなり……うおっ!!」フラフラ
みずき「あはははは!楽しいわねこれ!」
友沢「……ったく……バランスとるの難しいんだから、しっかりつかまってろ」
みずき「私みたいな美少女に抱きつかれてる気分はどうかしら?」
友沢「言ってろ」
みずき「ふふふ」
※みずき 積極打法 積極走塁
みずき「……いきなり何よ、かしこまっちゃって」
友沢「こっちに来てから、お前に助けられてばっかりだなと思ってさ」
みずき「……私が好きでやってるんだからいいの。アンタとの特別メニューも、
なんだかんだで結構楽しいし、練習不足も解消出来たし。結果オーライってやつよ」
友沢「……そういうもんか」
みずき「……」
友沢「……」
みずき「……ねぇ」
友沢「あっ!」キキー
みずき「わぷ?!……いったぁ……ちょっと!止まるなら合図とか……」
友沢「す、すまん……でも、ほら!上見てみろ!」
みずき「はぁ?……あっ!!流れ星!」
壁が足りん
みずき「迎えを頼んでたら見られなかったわね、これは。正に結果オーライだわ」
友沢「珍しいこともあるもんだ……」
みずき「……流れ星……!そうだ!」
友沢「どうした?」
みずき「今日のすっごい曲がるスライダーの名前が決まったわ」
友沢「は?いや名前ってお前子供じゃないんだから」
みずき「名付けて『シューティングスター』よ!」
友沢「……中二?」
みずき「うるさい!」
特訓の成果によりみずきと友沢がパワーアップしました
みずき A(85) C(65) 140km クレッセントムーン5 スクリュー3 シューティングスター4 負け運 対ピンチ2 ケガしにくさ5 タイムリーエラー 寸前× ムラッ気 低め○ ノビ4 キレ4 クロスファイヤー
人気者 積極打法 積極走塁
友沢 弾道4 AABABB ケガしにくさ4 AH PH 送球○ サブポジ○
(二人とも厨キャラじゃ)いかんのか?
その後みずきちゃんと友沢の仲が進展したりしなかったり
ゲドー君に連れ去られた矢部君がシーズン前半だけ超強化されたりされなかったり
パワプロ君が新人(笑)として大正義化したり
恋々が甲子園優勝したりしなかったり
とりあえず終わりです
読んでくれた人ありがとー
厨キャラ最高や!!
女性でこの能力は恐ろしすぎる…
面白かった
気が向いたらまた書いてくれ~
乙
Entry ⇒ 2012.09.22 | Category ⇒ 版権物SS | Comments (2) | Trackbacks (0)
#
練習後
聖「おい、この後はミーティングが……」
バタン
聖「……はぁ」
円谷「えーっと……ドンマイ?」
手塚「橘の奴……大丈夫かなぁ」
聖「まだ大会には時間があるが……このままではな」
円谷「去年の夏は帝王とあかつきが潰し合ってくれたからよかったけどねー」
手塚「組み合わせ次第じゃ両方と戦わないといけない……ウチの地区は何かおかしい」
聖「文句を言っても始まらん。とにかく、手塚とみずきの両看板が仕上がらないことには、万全とは言えん」
手塚 B(70) B(75) 146km スライダー3 カーブ3 フォーク2 安定感4
みずき A(85) C(60) 139km オリジナル5 スクリュー3 対ピンチ2 ケガしにくさ4 タイムリーエラー ムラッ気 人気者
こんな感じ
大正義恋々高校^p^
聖「加藤先生……すいません、私がもっとしっかりしていれば」
円谷「そういうことは言わないの!」
手塚「そうそう、橘のことはチーム全体で考えていこう。先輩達が抜けて何か物足りないのは、みんな一緒なんだから」
聖「お前達……すまない」
加藤「ふふふ、どうやら心配することはなさそうね。近い内に『彼』もやってくるし……」
聖「『彼』?何のことですか?」
加藤「すぐに分かるわよ。さて、ミーティングを始めましょう?」
「「「???」」」
※円谷・手塚 チームプレイ○
円谷 CDBCBB 弾道2 送球○ 盗塁4 走塁4 守備職人 サブポジ○ チームプレイ○
くらい。大正義恋々ry
数日後 教室
みずき(最近練習出来てないなぁ。自分でサボってるんだから当たり前だけど)
みずき「……先輩達が部に居た頃は、毎日毎日楽しかったのに……」
キーンコーンカーンコーン
みずき(……いっそ授業もサボっちゃおうかしら)
教師「えー、HRを始める前に連絡がある」
みずき(あーあ、ほんとに何か面白いことでも起きないかなぁ)
教師「今日からこのクラスに転校生がやって来る。みんな仲良くな」
みずき(転校生ねぇ。私が漫画の主人公なら、ここで『あー!!?』とか言って立ち上がったりするんだろうな。ま、あり得ないけど)
教師「君、さっそく自己紹介を」
??「はい」
みずき「あー!!?」ガタッガタン
教師「どうした橘?」
??「……」
みずき「アンタ……友沢!?」
友沢「……漫画のキャラか、お前は」
教師「野球部に入部希望らしいし、ちょうど席も空いてるから橘の隣な」
みずき「な゛ー?!」
みずき「……ちょっと」
友沢「何だ」
みずき「屋上まで着いてきなさい」
友沢「……やれやれ」
クラスメートA「あれ、告白か何か?」ヒソヒソ
クラスメートB「何かただならぬ関係みたいだしな、朝の反応的に」ヒソヒソ
クラスメートC「勝気な美少女とクールっぽいイケメン……YESだね!」ヒソヒソ
クラスメートD「小生のみずきタソを返せー!」
友沢「……周りの反応はどうにかならんのか」
みずき「……あきらめなさい。私は慣れた」
※みずき・友沢 精神ポイントが下がった……
友沢「……で?」
みずき「で?じゃないわよ!何でアンタが転校してくるわけ?!」
友沢「……」
みずき「……だんまりとはね。カッコつけてるつもりかしら」
友沢「……そう受け取ったなら、それでもいい」
みずき「ふん、そういうすかした態度が気に食わないのよ」
友沢「勝手に言ってろ」
みずき「……でも、本当にどういうこと?帝王のアンタがライバル校に転校して、当然のように野球部志望だなんて」
みずき「何よ?」
友沢「お前、最近サボっているらしいが、今日は来い」
みずき「なっ……よ、余計なお世話よ!ていうか何でアンタがそのことを知ってるワケ?!」
友沢「……本当にサボってたのか。意外だな」
みずき「……色々あんのよ、乙女にはね」
友沢「乙女ね……ま、俺がここに居る理由も含めて、部活に顔を出せば分かると思うぞ。じゃあな」
みずき「むむ……わけわかんない……」
みずき(なんだか友沢に説得されたみたいで癪だけど、結局大会には出たいし勝ちたいのは間違いないのよね)
みずき「サボりも潮時、か。先輩達が居なくて物足りないのは変わんないけど」
聖「それでも練習に顔を出さないよりはずっとマシだな」
みずき「聖……その、ごめんなさい」
聖「いいさ」
手塚「先輩達が居なくなってつまんないっていうのはみんな一緒さ」
円谷「でもそこは俺達自身で、これから何とかしていこうぜ」
みずき「あんた達まで……うん。それもそうね。いつまでも後ろ向いてても始まらないわ」
※みずき サボりぐせ 解消
友沢「……」
加藤「すでに知っている人も多いと思うけど、今日から野球部に新たな仲間が加わります」
部員A「あれって帝王の……」
部員B「だよなぁ」
加藤「さすがの知名度ってところかしらね……亮君、改めて自己紹介を」
友沢「今日から入部する友沢亮です。ポジションはショート」
みずき「は?!」
友沢「よろしくお願い……」
みずき「待ちなさい!何でアンタがピッチャー希望じゃないのよ?!」
友沢「……」
加藤「それについては私から言わせて貰うわ。そこら辺は、彼がウチの高校に来た理由でもあるから」
聖「というと?」
加藤「……数ヶ月前、妹から相談を持ちかけられたの。『ある優秀な野球少年』の体について、ね」
友沢「……」
手塚「確か監督の妹さんって……」
円谷「近くの総合病院の看護婦さんでしたっけ」
加藤「そう。妹……京子と私は同じ先生の元でスポーツ医学を学んでいたのだけれど、得意分野が少し違うの」
聖「なるほど。その『ある優秀な野球少年』の検査を妹さんから頼まれた、ということですか」
加藤「そういうこと。まぁ、私達の先生にお願いしてもよかったんだけど、多少過激なことも辞さない性格の人で……
まぁそれは置いておきましょう。最終的に施設だけ借りて、私が精密検査を行ったわけ」
みずき「……検査の結果は?」
加藤「限りなく黒に近いグレー、という所ね。少なくとも、医学を志す者として看過出来るような状態では無かったわ。
その子が身を置いている環境が、過酷な練習と熾烈な競争を是とする帝王野球部だからこそ、
尚のこと放っておくことが出来なかった。それ程に稀有な才能の持ち主なのよ」
聖「つまり、その野球少年というのは」
友沢「……特に肘がボロボロでな。決め球のスライダーが、もうまともに投げられないらしい」
みずき「……アンタ、ってわけね……」
加藤「現状の帝王の練習及びシステムだと、どうしても亮君の選手生命に危険が及んでしまう。
そこで私は、帝王の監督や私の先生、そして亮君本人と、何度も話し合った末に、彼の転入を提案したの。
ウチなら設備の整った総合病院にも近いし、メニューの調整なんかも柔軟に対応出来るからね」
円谷「……よく帝王側も本人も納得しましたね。悪い言い方だけど、戦力の引き抜きみたいなもんだし」
手塚「練習環境が変わるのもリスクだと思うんですけど」
友沢「……実際そこら辺は悩んだけど、プロ入りする前に体を壊しちゃ人生計画がパーだからな」
聖「ビッグマウスはほどほどにな……と言うべきところだが、友沢ならまぁ間違いなくプロからオファーが来るだろうな」
加藤「現3年のパワプロ君や早川さん、あかつきの猪狩君、帝王の山口君に引けを取らない注目度であるのは間違いないわ。
そこら辺も考慮しているからこそ、帝王の監督もこちらの提案を受け入れてくれたのよ。
『戦力的に大きな打撃にはなるが、野球界の為と思えば致し方ない』ってね。『覚悟するように』っても言われたけれど」
手塚「『覚悟しておくように』って……当たったらラフプレーとかしてきたり?」
友沢「ラフプレーはさすがに無いだろうが、執拗にマークされるのは間違いないだろうな。
お前たちには正直申し訳ないと思うけれど、その分実際のプレーで貢献していくつもりだ」
聖「ふむ……ショート希望ということなら、ちょうど不足していたポジションだし、
戦力的には大幅なパワーアップということになりそうだな。問題は体の方だが……」
友沢「転入手続きのゴタゴタの間に体は休ませておいた。加藤先生からの指導は勿論、
京子さんにもリハビリの面倒を見てもらったから、今すぐにでも動きたい所さ。
……しかし意外だな。守備に定評のある恋々でショートが不足だなんて」
円谷「これでようやく本職セカンドに戻れそうだなぁ。正直助かるよ、俺一人だったし」
友沢「……一人?しかもサブポジション?何かの間違いじゃないのかそれ」
手塚「しょーがないんだよね、そこら辺の事情は」
聖「……聖域(JK)」
友沢「……?」
聖「……みずき?」
みずき「ごめん、やっぱり今日は私練習パスするよ」
聖「は?」
みずき「加藤先生、ごめんなさい、後でサボってた分まで罰は受けますから、今日は……」
加藤「うーん……ま、分かったわ。覚悟しておきなさい」
みずき「ありがとうございます……友沢、みんな、ごめん。お先」
手塚「あれれ、一目散だ」
円谷「せっかく久しぶりに来たのに……」
聖「……本人がああ言ったんだ。明日からは問題なく来るだろう」
聖(それにしては、複雑な表情をしていたけれど)
加藤「……亮君、やっぱり今日の練習禁止」
友沢「えっ?!久しぶりだから特別に動いていいって……」
加藤「あぁ、えっと……野球の練習は、ってこと。監督としてウォーミングアップを命じます」
友沢「はぁ、まぁ、動けるならいいですけど……」
友沢「校門出て左に10分ってとこでしたっけ……アップにも物足りない気がしますけど」
加藤「また故障寸前まで行きたいのかしら?」
友沢「うっ……りょ、了解しました」
加藤「素直でよろしい。他のみんなも、しっかり準備運動とアフターケアを怠らないように!」
友沢出発後
聖「……加藤先生」
加藤「何かしら?」
聖「神社はランニングコース外のはずですけど、どうして友沢君に?」
加藤「……勘よ」
聖「は?」
加藤「六道さんにも、その内分かるわよ。ふふ」
聖「???」
みずき「……何でアンタがここに来るのよ。帰るにしても家は反対方向でしょ」
友沢「今日は軽いアップまでって言われたんだ。神社まで走って来いだと」
みずき「ふーん」
友沢「……お前こそ、どうしてここに居るんだ。お前の帰る方向だって逆だろう」
みずき「別に……なんとなく、よ」
友沢「……」
みずき「……」
「なぁ」「ねぇ」
友沢「……何だ?先に言えよ」
友沢「質問によるな」
みずき「アンタ、隠し事してない?こっちに来た理由、あれだけだと思えないんだけど」
友沢「……さすがに腐れ縁ってわけか」
みずき「不本意だけどね。その……家族のこととか、そこら辺について、何も言ってなかったし」
友沢「それは別に隠そうとは思わないし、かといってひけらかして同情を誘うつもりもない」
みずき「でも……」
友沢「……屋上でお前に転入の理由を話さなかったのは、お前が俺の家の事情をある程度察しているからだ。
他の部員に前もって話したりされたら、俺がやりづらくなるだけだしな」
みずき「そんなデリカシーの無い事しないわよ?!」
友沢「どうだか。お前、お節介だし」
友沢「……まぁ、バッサリと言うとだな。母さんの看病と弟たちの面倒見るのとバイトとの兼ね合い……」
みずき「はぁ?!アンタ、あれだけ私が言っておきながらまだバイト増やすつもりなの!?いい加減に……」
友沢「耳元で怒鳴るなよ!?しかも逆だ逆。バイトはこれから減らせるんだ」
みずき「そうなの?」
友沢「理香さん達の先生が『出世払いでいいデース』って言って、母さんの治療費とか俺の検査費用を負担してくれたんだよ。
おかげで無理にバイト増やしたりする必要も無くなったんだ」
みずき「うさんくさっ?!」
友沢「そう言いたくなる気持ちも分かるが、実際大助かりさ。母さんも京子さんの勤務してる近くの病院で診てもらえることになったんだ。
帝王だと電車を使わざるを得なかったけど、ここなら自転車で十分だし、翔太たちの学校も近い。
壊れる寸前だった体も、何とか持ち直させてくれたし、いいこと尽くめで怖いくらいだよ」
友沢「……まぁ、な。少なくとも、スライダーを試合で放ることはもう無いだろう」
みずき「……そっか……ごめん、嫌なことまた聞いちゃって」
友沢「……気にするな。これでも、自分の中では一応けじめをつけたつもりだし」
みずき「……」
友沢「……お前の質問には答えたんだから、今度はこっちの番だ」
みずき「……いいわよ」
友沢「どうして今日もサボった?最初は普通にやる気みたいだったが」
友沢「……分かった、約束する」
みずき「……そもそも最近何でサボってたか、アンタは分かるかしら?」
友沢「理香さんから少し聞いていたくらいだったから、理由までは」
みずき「……さっきもちょっと思ったんだけど、理香さんって名前呼びなのね」
友沢「?話に関係あるのか?」
みずき「……無いわね。続けましょう。私が練習をサボりがちになったのは……
先輩たちが部活に来なくなったから。間違いなくこれが理由ね」
みずき「そうね。年末までは来てくれてたんだけど」
友沢「なんだ、むしろよく来てくれてたくらいじゃないか」
みずき「うん。他の先輩達も、何人かはちょくちょく顔を見せてくれたわ。今でもたまに来る人は来るし」
友沢「ならそれで」
みずき「よくないのよ、私にとっては」
友沢「……先輩たちが現役だった頃がよかったというわけか」
みずき「……暇を見つけては遊ぶくせに、ヘッドスライディングだけ気合入れてたダメガネは嫌いじゃなかった。
みんなの人気者で、おどおどしてる雅先輩をからかうのが日課だった。
簡単そうに私のボールを受けるパワプロ先輩を尊敬してたし、ちょっとだけあの才能が妬ましかった。
パワプロ先輩とのキャッチボールを心底楽しそうにやってたあおい先輩が大好きだった。」
みずき「でも、分かりきってたことだけど、それは部のみんなが思ってることで……
私だけいつまでも甘ったれてるなんていうのも、おかしな話。だから、それはもう解決したの」
友沢「じゃあなんで今日は休むんだ?」
みずき「うー……アンタが原因っていうか、えっと」
友沢「俺?」
みずき「アンタは何も悪くないんだけどね。私が勝手に、色々考えてて……」
友沢「……」
みずき「アンタは私のこと意識したこと無かったかもしれないけど、私はアンタをずっと
ライバルだと思ってたっていうか……あぁっもう、恥ずっ!恥ずい!」
友沢「ふむ」
何か、その、変な気持ちになっちゃってさ。すごく辛くて、やるせなくて……
自分のことじゃないのに、何言ってんだろうね、私。わ、笑いたければ笑いなさいよ」
友沢「……まさか。笑ったりなんてしないさ。最初に約束したし」
みずき「うぅ、そういえばそうだったわ……」
友沢「……それから、俺もお前はライバルだと思ってるよ」
みずき「そう、なの?」
友沢「あぁ。お前の周りが凄過ぎて、俺のことなんてシニアで争っただけ、もう過去の人間扱いだろうと思ってた」
みずき「……あんだけ投げ合っておいて『だけ』とか過去の人だなんて思ってるわけ無いでしょうに……
今でも思い出すわよ……ほら、去年だって練習試合でさ……」
矢部(どんな状況でやんすかこれ)
矢部(神社の軒下にコツコツ貯めてきたエロ本を回収しようと思って来てみれば、
みずきちゃんとどこかで見たことのあるイケメンが楽しそうにお喋りしているでやんす。
明らかに不純異性交遊でやんす。不潔でやんす。爆発しろでやんす)
矢部(これはあえて空気を読まないで参上して、雰囲気をぶち壊してやるでやんす。
そしてみずきちゃんからゴミカスを見るような視線を受けてそれを今夜のオカズにするでやんす。
名づけてAKY721作戦でやんす。完璧でやんす!)
矢部「デュフフ……コポォでやんす……」
チョンチョン
矢部「なんでやんす?今取り込み中でやんす」クルッ
ゲドー君「」ギョギョー
矢部「」
友沢「それでその時山口先輩がさ……」
みずき「えー?!あの人そんな人だったんだ……意外」
加藤「コラコラ亮君!」
友沢「げ!理香さん?!すっ、すいません!サボりじゃなくて、ええと……」
加藤「その呼び方は診療中だけよ?全く、遅いから心配して来てみれば……青春真っ只中って所かしら?」
みずき「そ、そんなんじゃないですよ!」
加藤「……ま、いいわ。どうせ亮君用のメニューは明日から始めるわけだし」
加藤「ええ。体に出来るだけ負担をかけない特訓、っていう矛盾したオーダーで組むのは中々骨が折れたけどね」
友沢「う……すいません、ありがとうございます」
加藤「そ・こ・で!橘さん!」
みずき「はい?」
加藤「度重なる部活の無断欠席……いくら私が野球に関しては素人監督とはいえ、
到底見過ごせるものじゃないわ。このままじゃ、懸命に練習に励んでいる他の子達に示しが付きません」
みずき「うぅ……すいません、ごめんなさい」
加藤「謝って帳消しにならないのは分かっているでしょう?チームのエース格とはいえ、それ相応の罰を受けてもらいます」
みずき「はい……私に出来ることなら、何でも」
加藤「いい覚悟ね。非常によろしい。では、あなたには罰として……」
加藤「亮君のトレーニングパートナーを命じます!」
友沢「えっ」
加藤「亮君の要望に応えて、『通常練習後』『可能な限り長時間』の特別メニューを組んでおいたから、
亮君と一緒にこれを年度が変わるまでの間、きっちりみっちりしっぽりこなしなさい」
みずき「ええええええええ!?れ、練習後に長時間って、体を痛めつけるだけじゃないですか?!」
加藤「さっき言ったわよ?『体に出来るだけ負担をかけない特訓』って。
一見矛盾したオーダーでも、ダイジョーブ医学にかかればどうってことないわ。
それに、あなた達二人の経過を観察して、随時メニューは調整していくから安心しなさい」
友沢「まぁ、り……加藤先生が組んでくれるんだから、間違いは無いだろう。
理由はどうあれ、サボってたお前が悪いっていう面もあるし、あきらめろ」
加藤「あら、亮君と食べればいいじゃないの。ふ・た・り・で♪」
みずき「だっ、な、ななな」
友沢「……すまん、甘いのはそこまで得意じゃない」
みずき「何でそこでまともな反応なのよ?!」
加藤「これは監督命令です!……あ、首尾がよければ来年度の部のメニューに組み込む予定だから、
そこら辺もよろしくね。ある意味責任重大よ?」
みずき「もういやー!?」
※みずき 負け運
みずき「ふぇぇ……また増えてるぅ……」
友沢「元々俺のリハビリも兼ねてるんだ、メニューが段々きつくなるのは仕方ない」
みずき「そうはいっても今日のは増えすぎよ!ウェイトの時間が2倍近いじゃないの!?」
友沢「……ま、女のお前にはきびしーかもなー」(棒読み)
みずき「むぎぎぎぎぎ……しゃーどんとこいオラー?!」
友沢(相変わらず誘導しやすいなこいつ)
みずき「なんて言うと思った?!もうその手には乗せられないわよ!?」
友沢「ちっ」
みずき「舌打ち禁止!……あーもう!あんなにサボるんじゃなかったー!!」
友沢「自業自得、だな」
みずき「むきー!!」
みずき「誰がこんな奴と!」
友沢「……理香さん、こいつの言うとおり、実際今日のメニューは増えすぎな気がしないでもないんですけれど」
加藤「もう、名前で呼ぶのは二人の時……診察の時だけって言ってるじゃないの」
友沢「あ、すいませんつい……」
みずき「……」ビキビキ
加藤「うふふ……まぁともかく、確かにそろそろ根を上げる頃だとは思ってたわ。
最近の橘さんは基礎練習を疎かにしがちだから……まだパワプロ君たちが現役だった頃は、どんな練習も熱心だったんだけど」
みずき「……あおい先輩分が足りない……」
友沢「うわぁ……」
みずき「……冗談よ。真に受けないでよね」
これなら基礎練習よりはモチベーションが上がるんじゃない?そうね、例えば……スライダー系のボールとか」
みずき「!」
友沢「!」
加藤「亮君にも手伝ってもらいなさい。彼のスライダーは、間違いなくプロレベルだった。
きっと良いアドバイスをしてくれるはずよ。勿論、亮君には投げさせないけど」
みずき「ちょっと待って下さい!それだと友沢が……」
加藤「……もう亮君は、野手として第二の野球人生を始めたと言っても過言じゃない。
でもこの程度でうじうじする様なら、プロになんてなれないでしょうし、なったとしても活躍は厳しいでしょう。
投手としての自分を冷静に振り返ることが出来るかどうか、それが一つの分岐点だと私は考えるわ。どうかしら、亮君?」
友沢「……」
みずき「友沢……」
加藤「……ええ、いいわ」
友沢「……ちょっと走ってきます。すぐ戻るんで……あぁ、橘は休んでてくれ」
みずき「ちょっ、待ちなさ……加藤先生、私も!」
加藤「はいはい、どうぞいってらっしゃい」
みずき「ついでにウェイト免除で!」
加藤「それは却下ね」
みずき「あう」
※みずき 寸前×
神社
みずき「はぁ、はぁ……やっぱりここよね……はぁ」
友沢「橘……」
みずき「やっぱジョグで流せばよかった……はぁ、はぁ、とんだピエロだわ……」
友沢「どうして、ここだと?」
みずき「……簡単よ。アンタが野球馬鹿だから」
友沢「……何だそりゃ」
みずき「この神社、どうしてかは知らないけどみんな練習場にしてるのよね。
パワプロ先輩も、あおい先輩も、雅先輩も、手塚も円谷も聖も……
もちろん私もね。ほら、野球馬鹿ばっかり。だからアンタもここに来るって寸法よ」
友沢「……」
みずき「まぁ、実際当てずっぽうって言えばそうなんだけどさ。私の目に狂いが無かったってことね」
みずき「……誰でもそんな気分になる時はあるんじゃないかしら」
友沢「この前『けじめはつけた』とか言ったのにこのザマは無いだろう」
みずき「私はそうは思わないわ。逆に、平気な顔して『分かりました、さぁスライダーの特訓だ』
とか言われてたら、アンタのことぶん殴ってたかも」
友沢「む……」
みずき「……アンタがピッチャーやってる姿、私はよく覚えてるわ。
いつも強気でグイグイ攻めてて……変な言い方だけど、ちょっと癪に障るような、
憎たらしいアンタらしくて、でも気持ちがボールに乗ってて、清々しかった。
こいつは本当に楽しくて投げてるって、そんな風に見えて、嫌いじゃなかったの」
友沢「……お前」
みずき「あんなに全力で投げてたアンタが、そう簡単にピッチャーをあきらめられるわけ無い。
その証拠に、気持ちの整理をもう一度したいから、アンタはここに来た。違う?」
友沢「………………違わない、な」
友沢「ふ……何でもお前に見通されてるみたいで、ちょっとむかつくが」
みずき「気にしてやってる分だけ感謝しなさいよ、全く」
友沢「はは、そうかもな……お前の言う通り、俺、ピッチャーやってるのは好きだったよ。
それなりに自信もあったし、この腕一本で家族を食わせていくんだって思ってた。
それがもう投げられないなんて、悪い冗談だと思いたかったさ。
野球が続けられるって分かった後も、自分がピッチャーだった時のことを、
何とか忘れようとするばっかりで、ちゃんと向き合おうとしなかった」
みずき「……まだ逃げる?」
友沢「まさか。里香さんの言う通り、ここで立ち止まってたらプロでやっていけるわけが無い。
それに、今の俺にはパートナーがいるんだ。そいつには貸しを作ったり、
迷惑かけたくない。なんてったって、後が怖そうだからな」
みずき「よく言うわよ」
友沢「……俺のピッチング、褒めてくれてありがとうな」ニコッ
みずき「?!べ、別に褒めてなんかないし!?嫌いじゃないってだけで……あ、アンタのことも別に」
友沢「は?なんでそういう話になるんだ?」
みずき「ぐっ……な、なんでもないわ!ふん!」
友沢「???」
友沢(復活) 弾道3 ABBABC AH PH サブポジ○ ポーカーフェイス
またまた数日後、スライダーの特訓中……
みずき「えいっ」ククッ
スコーン
みずき「ふぅ……少しは様になってきたかしら」
友沢「そうだな、そろそろ本格的に実戦に近い練習をしてもいいんじゃないか。
次からは聖に残ってもらって、ボールを受けてもらおう」
みずき「……アンタ、いつから聖のこと呼び捨てにしてるの」
友沢「え?いや、昨日話してたら『名前で良い』って本人がな。
……それがどうかしたか、橘?」
みずき「……ふーーーんだ。何でもありませんよー……えい」クッ
スコーン
みずき「えっ、ちょっ……」
友沢「前も言ったと思うけどお前は腕の振りが甘いんだよ。もっとこう手首まで使って……」
みずき「う、うん……」
みずき(近い近い近い!?)
友沢「……あれ、もしかしてサイドだからもっと重心低い方がいいのか……?
腰をもっとこうして……いやでもこれだとちょっと負担が……」
みずき「……ッ!……ッ!」
みずき(真剣過ぎて何も言えないじゃない……!えっち!スケベ!!変態!!!)
※みずき 低め○
……いつもこんな感じなら、少しは可愛げが出るだろうに)
友沢(……首、白くて細いな……ていうか、体全体細いんだな、やっぱり女の子か)
友沢(……せっけんの良い匂い……)
友沢(……あ)
友沢「ま、まぁこんな感じのフォームでいいんじゃないか!うん」パッ
みずき「えっ?!あ、ああ。うん、分かったわ。さ、サンキュー」
友沢「お、おう」
みずき「こほん……気を取り直して……えいっ!」グググッ
スコーン
友沢「?!」
みずき「……凄い変化したわね今」
※みずき スライダー系オリジナル変化球取得 クロスファイヤー取得
友沢 弾道が上がった! ポーカーフェイス消去
帰り道
みずき「疲れたー!!」
友沢「お疲れ」
みずき「今日は大収穫ね。あんなに曲がるスライダーをマスターするなんて、さすが私」
友沢「確かにあれには驚いたな」
みずき「……でも投げ過ぎでかなり疲れちゃった。早いとこ帰って休もうっと」
友沢「迎えでも頼んだらどうだ?」
みずき「……それだとアンタが一人になっちゃうじゃないの」
友沢「……もしかして、今までそれで律儀に一緒に帰ってくれてたのか、お前」
みずき「ふん。感謝しなさいよね」
友沢「何故無駄に偉そうなんだ……」
友沢「二人乗りは危険だろ、もう真っ暗だし」
みずき「男がそんな細かいこと気にしないの!」
友沢「あっ!コラ!俺も疲れてるんだからそんないきなり……うおっ!!」フラフラ
みずき「あはははは!楽しいわねこれ!」
友沢「……ったく……バランスとるの難しいんだから、しっかりつかまってろ」
みずき「私みたいな美少女に抱きつかれてる気分はどうかしら?」
友沢「言ってろ」
みずき「ふふふ」
※みずき 積極打法 積極走塁
みずき「……いきなり何よ、かしこまっちゃって」
友沢「こっちに来てから、お前に助けられてばっかりだなと思ってさ」
みずき「……私が好きでやってるんだからいいの。アンタとの特別メニューも、
なんだかんだで結構楽しいし、練習不足も解消出来たし。結果オーライってやつよ」
友沢「……そういうもんか」
みずき「……」
友沢「……」
みずき「……ねぇ」
友沢「あっ!」キキー
みずき「わぷ?!……いったぁ……ちょっと!止まるなら合図とか……」
友沢「す、すまん……でも、ほら!上見てみろ!」
みずき「はぁ?……あっ!!流れ星!」
壁が足りん
みずき「迎えを頼んでたら見られなかったわね、これは。正に結果オーライだわ」
友沢「珍しいこともあるもんだ……」
みずき「……流れ星……!そうだ!」
友沢「どうした?」
みずき「今日のすっごい曲がるスライダーの名前が決まったわ」
友沢「は?いや名前ってお前子供じゃないんだから」
みずき「名付けて『シューティングスター』よ!」
友沢「……中二?」
みずき「うるさい!」
特訓の成果によりみずきと友沢がパワーアップしました
みずき A(85) C(65) 140km クレッセントムーン5 スクリュー3 シューティングスター4 負け運 対ピンチ2 ケガしにくさ5 タイムリーエラー 寸前× ムラッ気 低め○ ノビ4 キレ4 クロスファイヤー
人気者 積極打法 積極走塁
友沢 弾道4 AABABB ケガしにくさ4 AH PH 送球○ サブポジ○
(二人とも厨キャラじゃ)いかんのか?
その後みずきちゃんと友沢の仲が進展したりしなかったり
ゲドー君に連れ去られた矢部君がシーズン前半だけ超強化されたりされなかったり
パワプロ君が新人(笑)として大正義化したり
恋々が甲子園優勝したりしなかったり
とりあえず終わりです
読んでくれた人ありがとー
厨キャラ最高や!!
女性でこの能力は恐ろしすぎる…
面白かった
気が向いたらまた書いてくれ~
乙
Entry ⇒ 2012.09.22 | Category ⇒ その他 | Comments (0) | Trackbacks (0)
岡部「ん?どうしたバイト戦士よ」鈴羽「べっ別に…なんでもないよ」
鈴羽「うん、分かってるよ。もう少ししたら戻るつもり」
岡部「うん、そうしたほうがいいだろう。こっちもミスターブラウンに難癖付けられたらかなわんからな」
鈴羽「あはは、店長ならやりそーだね。……ところで、他の人たちは?橋田至とか椎名まゆりとか……牧瀬紅莉栖、とかさ」
岡部「うむ、ダルならメイクイーン+ニャン2でイベントがあるらしいから今日は来ないぞ」
鈴羽「ふーん、じゃあ椎名まゆりの方は?」
岡部「何を言っている。メイクイーン+ニャン2でイベントがあると言っただろう。まゆりもメイドとして参加しているに決まっているだろうが」
鈴羽「あーそっか。そうだよねー、あはは」
岡部「助手は……分からんな。あいつは来る日もあれば来ない日もあるからな。まったく…助手の本分というのが分かっていないから困るのだ」
鈴羽「そうなんだ……」
岡部「で、それがどうかしたのか?」
鈴羽「そっか…じゃあ、今日はこのまましばらくは岡部倫太郎と二人きり……か」ボソ
岡部「…?何か言ったかバイト戦士よ」
鈴羽「えっ!?別にっ!?それにしてもあっついなぁ~…」
鈴羽(…よし、これは……チャンス、かな)
鈴羽「まー、そうなんだけどねー。暇じゃん」
岡部「ここにいても暇な気がするが」
鈴羽「こうやって話をしてるだけマシってもんだよ」
岡部「ほう……この鳳凰院凶真の素晴らしい伝説を聞きたいのか…いいだ」
鈴羽「あー、いやそういうんじゃなくて」
岡部「ろう…って何っ!?」
鈴羽「岡部倫太郎ってさ、結構面白いし。そういうのじゃなくてさー何かほら…もっと違うの聞かせてよ」
岡部「…?言っている意味が分からん」
岡部「なっ何!?何だそれは!!そんなデマ情報何処から拾ってきたのだ!」
鈴羽「ネット」
岡部「…フゥー……、バイト戦士よ。貴様はどうやら騙され易い体質のようだな」
鈴羽「え?何でさ」
岡部「ネット情報というのは誤情報や、機関によって都合よく捏造された情報がごーろごーろ転がっているのだ」
鈴羽「えー!!マジで!?」
岡部「ああ、マジだ。よって、俺はその機関による妨害も掻い潜ってきた猛者でもあるのだ」
鈴羽「へー。やっぱり岡部倫太郎ってすごいんだねー」
岡部「フン!!当たり前だろう!!俺は狂気のマーッドサイエンティスト、鳳凰院凶真だからな!!フゥーハハハ!!」
鈴羽「へー…じゃあ、やっぱり岡部倫太郎は常人とは違うってことなんだよね」
岡部「クックック…当たり前だ、俺をそこ等辺の凡人と一緒にするな。俺は過去をも操る時空の使者…」
鈴羽「じゃあ、あたしも…普通の人間じゃないんだよね…」
岡部「何…?」
岡部「…タイムトラベラーとでも言いたいのか?」
鈴羽「まあねー」
岡部「ふ…フゥーハハハ!!!それはいい!!狂気のマッドサイエンティストとタイムトラベラー!!現代人では到底理解不可能だ!!」
岡部「ククク……コレなら貴様と俺で世界を混沌の世界に陥れることが出来るではないか!!」
鈴羽「むー…信じてないなー」
岡部「ふん、なら証拠を見せてみるがいい」
鈴羽「じゃー岡部倫太郎が見せてよ。自分が狂気のマッドサイエンティストってとこをさ」
岡部「ほう…?いいのか?別に構わないが……貴様、コレを見たらもう俺の恐ろしさに身も心も震え上がり…二度と普通の生活を送れる事がなくなってしまうが…本当にいいのだな?」
鈴羽「うん、いーよ」
岡部「む…」
鈴羽「さーさー、はやくー」
岡部「むむ……」
鈴羽「ねーねー?まだー?」
岡部「むむむ………」
鈴羽「うんうん、そう来ると思ったよ。岡部倫太郎はそういう人だもんね」
岡部「何…?」
鈴羽「岡部倫太郎ってさー…押しに弱いタイプでしょ?流されやすそーだし」
岡部「なっなにを!?そんなわけあるか!!」
鈴羽「そーお?じゃあ、こんなことしても全然動じないんだよねー」
岡部「なっ!?何故近づいてくるのだ!!さっきは暑いとか言っていただろう!!」
鈴羽「あっついね~…そんな白衣着てて暑くないの?」グイ
岡部「うおっ!?顔を近づけるなっ!!そっそれに白衣は科学者にとっての正装であってだな!?」
鈴羽「脱いじゃいなよ…汗、掻いてるよ?」
岡部「ぬおお!?まっ待て!バイト戦士よ!!こっこれは一体何のまねだ!!」
鈴羽「んー?岡部倫太郎の好きな実験…だよ?」
岡部「実験…?」
鈴羽「岡部倫太郎が押しに強いのか、弱いのか…その実験」グイ
岡部「おおう!?」
鈴羽「鈴羽」
岡部「へ?」
鈴羽「鈴羽って呼んだら、考えてあげてもいーよ」
岡部「す……鈴羽。少し、離れてくれ。この状態は…その、危険だ」
鈴羽「うーん……やーめた」ダキッ
岡部「うぉぉおい!?何故抱きつくのだ!?名前で呼んだら離れると言ったではないかっ!?」
鈴羽「えー?言ってないよー?考えるとは言ったけど…。で、考えてみて…やっぱやめた!」
岡部「なっ…!?きっ貴様……この俺を騙すとは…って何でうぉ!?」ドサッ
鈴羽「岡部倫太郎って外出てない割には結構身体しっかりしてるねー意外」
岡部「何処を触って…待て!?これ以上は駄目だ……」
鈴羽「……ふーん、じゃあこのままだね」
岡部「何だと…!?」
鈴羽「岡部倫太郎があたしを否定したいなら…あたしを引っぺがせばいいよ。でも…そうしたら、あたしはもう…」
鈴羽「……あたしはもう、岡部倫太郎とこうやって接する事出来なくなっちゃうよ…?」
鈴羽「あはは、まだ30分も経ってないよ?もう根を上げたの?」
岡部「……この状態を他のラボメンに見られるのは不味い」
鈴羽「そう?あたしは全然構わないなー…。それに今日はいつものメンバー来ないんでしょ?いいじゃん」
岡部「……まぁ、そうだが」
鈴羽「汗が…君に垂れちゃってるけど……仕方ないよね。この体制じゃ」
岡部「お前が…どけばいい話だ」
鈴羽「あたしは絶対に動かないよ。君が…行動すればいい。あたしを退かすか…受け入れるか。…岡部倫太郎に、決めてほしい」
岡部「ぐ……どうして、どうしてこうなった…。世界線が変わったからなのか…。これも、運命石の扉の選択だと言うのか」ブツブツ
鈴羽「………」
鈴羽(……結構しぶといな。体力は無いほうだと思ったけど……、岡部倫太郎は…どういう選択をするんだろう)
鈴羽(岡部倫太郎…君は、あたしに優しくしすぎなんだよ…。本当は、こんなことしてちゃ駄目なんだけど……気持ちは抑えられないから…)
鈴羽(君が、あたしを突き放すなら……あたしはもう、思い残す事はないよ……自分の使命のために、もうここに未練はなくなる)
鈴羽(……それにしても、今日は一段と暑いな…。どうしてだろう)
鈴羽「暑そうだね……ハァハァ」
岡部「お前も辛そうではないか…」
鈴羽「君がさっさと決めてくれればこんな辛い思いしなくていいのになー」
岡部「うぐ……」
鈴羽「ねぇ……君に抱き付いちゃっていいかな?流石にこの暑さで上の体勢はキツイ」
岡部「……好きにしろ」
鈴羽「うわ……顔にベッチャリと汗が……」
岡部「当たり前だ…こんな密着体勢のままではこうなる」
鈴羽「これじゃあ、どっちの汗かわかんないね」
岡部「………」
鈴羽「………」
鈴羽(ここまでしても、駄目…か。やっぱりあたしなんかじゃ…いや、それともアトラクターフィールドによる世界線の収束…)
鈴羽(未来から来たあたしはこの時代のオカリンおじさんとそういう仲になったら…パラドックスが発生する…のかな。やっぱり、この恋は実らないの…かな)
鈴羽(でも…駄目だと分かっても…。それでも…。あたしは…あたしは…)
鈴羽「……え?」
岡部「お前は…俺にどうしてほしいのだ?」
鈴羽「それ、聞いちゃうんだ…?卑怯じゃない?それって」
岡部「俺は…狂気のマッドサイエンティストだ。…卑怯な事だろうが、平気でするのだ」
鈴羽「はは、なるほど……。それがさっきの証明なんだ……そっかー…」
岡部「俺は……中途半端な気持ちでそういう行為をする気はない」
鈴羽「……うん。そうだね、君はそういう人だったもんね」
鈴羽「椎名まゆり?」
岡部「あいつは……幼馴染で……大切な人間で……人質だ。それ以上でも以下でもない」
鈴羽「……奇妙な関係だね。……じゃあ、牧瀬…紅莉栖?」
岡部「あいつは…助手だ」
鈴羽「え…と…あっ!!じゃあまさか漆原るか!?まさか岡部倫太郎がそっちの人だったとは……」
岡部「なっ!?かっ勘違いするなっ!?俺は同性愛者ではない!!」
鈴羽「……じゃあ、あたしじゃ…駄目な、理由は…何?」
鈴羽「え?」
岡部「俺は、お前をその……ほら、あーゆうの…ああ、察しろ!!そういうのをお前とするのは吝かでもないと言っている!!」
鈴羽「そっそう……じゃあ、何で」
岡部「俺は…お前が大事なラボメンであり、仲間であることなのは言えるのだ。だが…お前とその、恋人…というのはどうなのかと…な」
鈴羽「………ふ」
鈴羽「なんだよもー!!それ、煮え切らないなーあはは」
岡部「なっ!!俺としてもどうかと思うが一応真剣に考えたのだぞ!?笑うな!」
鈴羽(……なーんだ、何悩んでるんだろうあたし。岡部倫太郎はそういう人だって分かってたのに…。今更何を怖気付いちゃったんだろう)
岡部「…?おい、鈴羽。いつまで笑っているのだ」
鈴羽(…うん、運命は自分の手で変える。どうしようもないんならこんな過去に飛んだりしないしね……よしっ!)
鈴羽「ねえ、岡部倫太郎」
岡部「む?な…なんだ?」
鈴羽「もう、待つのやめたよ……君は、私がそうしたいから…私のものにする!!岡部倫太郎!かくごー!!」
岡部「へっ!?何っ!?ちょっ待っ鈴羽!!」
鈴羽「安心してよ岡部倫太郎。あたしもこういうの初めてだから…さ」
岡部「ぬおっ!!脱ぐなっ!」
鈴羽「えー?もしかして着衣プレイってやつ?あたしとしては暑いし裸でしたいんだけどなー」
岡部「だー!!だーかーら!訳が分からんぞ!!何故その…するのが決定になっているのだ!!」
鈴羽「はー?それこそおかしいよ?この状況だよー?わけ分かんないのはそっちだよー」
岡部「だっだからといって…!!」
鈴羽「もう観念しなよ?岡部倫太郎、諦めは肝心だよー?」
岡部「う……そっそうだ!Dメール!!アレを使って」
鈴羽「逃がさないっよ!!」ドス
岡部「ぬわっ!!」
鈴羽「さぁーって。どう?結構鍛えてるし、スタイルには自身あるんだー」
岡部「お…おお」
鈴羽「あはは。そんなにジロジロ見ちゃってさー興味深々じゃん」
岡部「なっ!!そっそれはだなっ!?きっ機関が俺に精神攻撃をだなっ!?」
岡部「は?なっ何を」
鈴羽「じゃー今度は君の身体に快楽攻撃をーなんちゃって」
岡部「何を言って…うぉおお!!脱がすな!!」
鈴羽「…おお、何かごっちゃごっちゃ言ってた割にはやる気満々じゃん」
岡部「これは生理現象だっ!?俺の意思では」
鈴羽「少し…慣らすね?初めては痛いって言うし」
岡部「俺の話をまずは…むぐっ」
鈴羽「むぅ…んちゅ……」
鈴羽「ん…ちゅ…ぷは!とりあえずキスから…だよね!」
岡部「おおう……」
鈴羽「さぁーって次は下」
岡部「ちょ…そこは待っ…はうん」
鈴羽「はむ…じゅぷ…じゅ…」
岡部「まっ…バイト戦士よ…ちょっとまっ!!!」ガリ
岡部「──ッ!!おまっ!!噛むなよ!!不能なったらどうする!?」
鈴羽「しーらない!名前で呼ばない岡部倫太郎……いや…倫太郎がいけないんだよーだ」
岡部「……分かった鈴羽。もう、ここまでされて引くことは出来ん」
鈴羽「……やっと、覚悟…決まった?」
岡部「…ああ、こんな場所で悪いが。さっきキスされて…いやな気分には…寧ろ良かった。俺は…お前に惹かれていたのかも…しれんしな」
岡部「まぁ…一時の迷いかもしれないことも否めないが」
鈴羽「あっはっは。ひっどーい、そんな曖昧な気持ちなんだ」
岡部「なっ!!しっ仕方ないだろう!?お前が半ば強引にしてきたのだ!!そんな状態でも文句を言うとは」
鈴羽「あーはいはい、じゃー続き、続き」
鈴羽(なーんだ、案外脈アリだったわけだ…これはイケる!)
鈴羽「ふふ、もうあたしの方は準備万端だけど……一応、触っとく?」
岡部「なにっ!?」
鈴羽「そりゃーほら、あたしのココとか…さ、胸とかも。一応触っといた方が得じゃん?」
岡部「……お前が言うのか?それ…」
鈴羽「あっ、でもSEXはするからね?今のはあくまで前戯のことだから」
岡部「いや、流石に覚悟は決まっているさ…」
鈴羽「あーゴメン、そういえばそうだったね」
岡部「まぁ、この鳳凰院凶真が責められっぱなしというのも癪だしな、お返しをしてやろう!」ガバッ
鈴羽「うわぁ!」
岡部「クククまずは胸をいたぶってやろう……」
鈴羽「うっ…んぅ……はぁっ…」
鈴羽「あっ…うっ…そこ…ああっ!」
岡部「うむ、見事に固くなるものだな…」
鈴羽「かっ…観察…んっ…するようなのやめっ!あっ」
岡部「鈴羽…気持ちいいか?」
鈴羽「う…ん…りんたろ…が触ってるとこ…熱くなって…じわって…あう!…キ…」
岡部「ん?」
鈴羽「キ…キス…して?」
鈴羽「キス…キスぅ…」
岡部「ふ……そうか、そうかキスしてほしいか!!」
鈴羽「はぁうっ!!しっ…してよぉ…いじわるしないで」
岡部「フーッハハハ!!だが断!?」
鈴羽「んむっ……むちゅ…んっ……じゅる」
岡部「むぐ…ん…」
鈴羽「むぅ……んっ!?」
鈴羽「ぷは…あっ!そこ…はっ!」
岡部「ふ…無理やり奪うとはな…流石戦士といったところか…だが、下が無防備だぞ?」
鈴羽「はぁっ!あっ!あぅ……不意打ちはっ…」
岡部「にしても…すごい事になっているぞ」
鈴羽「そりゃ…好きな人にこんな嬉しい事されてるんだ…当たり前だよ」
岡部「──ッ!」ドキン
鈴羽「んぃっ!?いっいきなりはげっし…んあっ!!」
岡部「さあ、なんでだろうな」
鈴羽「あっ…う…ちょっちょっと待って倫太郎っ!!少し緩めっ!!ひぃっ!」
岡部「もっと激しくしてほしいのだな?」
鈴羽「んぐっ…くっそぉ…ニヤニヤしやがってぇ……んぅっ!?」
岡部「いや、そういう感じてる顔が可愛いと…思って…だな」
鈴羽「─ッ!?そっそんなっ…今そんなの…卑怯…んぁっ!!イッ─」
鈴羽「──ッ!──~~─~ッ!!!」ビクビク
岡部「うぉぉ……」
鈴羽「─…はぁ……はぁ」
岡部「……イッた…のか?」
鈴羽「……見事に、ね。…なんかくやしいな~」
岡部「ふ…この俺の妙技に掛かればお前なんぞ…ぉお!?」
鈴羽「じゃあ…次はあたしの番だね」
鈴羽「はぁ…はぁ…じゃあ、いくよ…」
岡部「ぅぉぉ……」
鈴羽「ん……ぐ……はぁ……」
岡部「大丈夫か…?汗が尋常じゃないが……」
鈴羽「暑いんだよ……心も……身体も……でも、それ以上に嬉しいから、この瞬間が…嬉しいから…全然ヘーキ」
岡部「そう…か」
鈴羽「ははっ……流石に異物感がすごいね……でも、不思議とそんなに痛みはないかな……」
岡部「血が出ているが……」
鈴羽「そりゃ…膜破れてるんだから…血はでるよ…でも、もっと…んぅ」
岡部「ぬおお!こっこれは…っ」
鈴羽「……どぉ?気持ち……いい?」
岡部「すごく……締め付けられて……こんなの初めてだ…」
鈴羽「よかった……気持ちいいんだよ…ね?…あたしは、もう少し…時間掛かるか…な」
岡部「まぁ、行為自体が初めてだから……な」
鈴羽「はは。……じゃあ、動く……ね」
岡部「ぐっ……ん…これは……やばい…」
鈴羽「はぁ……ふぅっ…すごく、気持ちよさそうな……顔、してる。うれっしいよ……あたしで感じてくれて」
岡部「そういうお前も……なんだか顔が変わってきたようだ…が」
鈴羽「はぁ……んっ…ぁっ!何だか……気持ちよく…なって…きっ…あっ!」
鈴羽「んぐぁ!!…このっ…あたしが…リードするって…あっ!下からつかない…ひっ!?」
岡部「男が寝たままマグロなのもどうかと…思って…な」
鈴羽「あぅ…やるね……倫太郎…はぁはぁ……んぁっ…あぅっ…このぉ…」
岡部「鈴羽……気持ちいいぞ……ぐっ」
鈴羽「キッキス……した…い…んぁあっ!」
岡部「意外だ…な。お前がそんなにキス魔だったとは……」
鈴羽「うっるさい……なぁっ……あたしだって……自分で驚いてるっ…んっ…くらいだっ…ぁっ…よぉ」
岡部「ふっ…そうか…うぐっ…急に締め付けがっ…んむっ」
鈴羽「むちゅ…んちゅ……じゅるる…ちゅ…れろ…ちゅ」
岡部「んむっ…ちゅ…れろ…じゅる…」
岡部「ぐ…鈴羽…もう……」
鈴羽「はぁ、待って…あたしももう少しだか・・・らぁっ!」
岡部「はぁ…ヤバイ、どいてくれっ……このままじゃ」
鈴羽「な…何言ってんの…?この状態…動くわけ…ない、じゃん」
岡部「はぁ!?ちょ…」
鈴羽「既成事実上等……!さぁ…っ…あたしの中に…んぅ…全部、吐き出し……なよっ!」
岡部「んおお……出っ」
鈴羽「んっ…あっ…──ッ──~~ッ!!!」
鈴羽「はぁ……はぁ……熱っ……この感じ……すごっ…い……」
岡部「はぁ……はぁ……」
鈴羽「……出しちゃった…ね」
岡部「ああああ……やってしまった……」
鈴羽「あはは。……じゃあ、もう何発出しても変わらないよねー?」
岡部「…………は?」
鈴羽「あはは。流石に5回連続はキツかったかなー」
岡部「おま……精気を……いや、生気を吸い取られた気分だ……」
鈴羽「あははー。じゃーシャワー借りるよーん」
岡部「ああ……もう、好きにしてくれ」
サァァァ
鈴羽「……ふぅ。……まだ、お腹…熱いや」
鈴羽(……やばいなぁ………この感じ。離れたくない…なぁ)
鈴羽(でも、……それでも、あたしは…やらなくちゃいけない……未来のために…倫太郎と…幸せになれる未来のために)
鈴羽「……グス」
鈴羽(……さて、行こうかな。……そう、あたしは信じたい。倫太郎を)
鈴羽「ふー…上がったよー?次、倫太郎入っていいよー」
岡部「ああ、そうする」
鈴羽「……さて、準備、…しようかな」
鈴羽「その状態で屋上だもんねー……雨でも降ってくれたらいいのにさー…ホントに…何で、降らないかな…グス」
鈴羽「あー、でも…雨なんて降っちゃったら…コレ…壊れちゃうかもだし…な」
鈴羽「あーやば!これ以上ここいたら溶ける!!それに…」
鈴羽(倫太郎の…こと…行けなくなっちゃうし…)
鈴羽「さてと…って熱っ!?うわっ!あっつ!!そういえばこれ……この直射日光に当たってたら迂闊に触れない…参ったなぁ」
岡部「……はぁはぁ」
鈴羽「…………」
岡部「……はぁはぁ」
鈴羽「……あーあ、来ちゃったか……まぁ、そうだよね…」
岡部「…その人工衛星……お前」
鈴羽「……お昼ごろさ、倫太郎…あたしがタイムトラベラーって証拠見せろって言ってたよね」
岡部「じゃあ…これ…やはり」
鈴羽「うん、察しの通り。…タイムマシン。未来の2036年からあたしが乗ってきたもの」
鈴羽「……倫太郎も証明してくれたもんね。……これでフェアになったかな?凶器のマッドサイエンティストとタイムトラベラーだよ」
鈴羽「ううん、逆。過去に行くんだ」
岡部「何?何故だ…?」
鈴羽「はは。君が必要になるものを君に届けるためだよ」
岡部「…?何だそれは」
鈴羽「……IBN5100」
岡部「な…に!?」
鈴羽「あたしは過去に行ってIBN5100を手に入れる…そして今の君にそれを届けるんだ」
岡部「そうな……のか?」
鈴羽「うん、そのためにあたしは行かないといけないんだ」
岡部「そう…か。それじゃあ、引き止める…訳にはいかんな」
鈴羽「うん、ありがとう。倫太郎」
岡部「……ああ」
鈴羽「………」
岡部「…………」
鈴羽「…あははー……ちょっとねー。熱くてさー…触れなくて」
岡部「……はぁ?何なのだそれは……フッ」
鈴羽「あー!!馬鹿にしたなー!!!いくら倫太郎でもそれは酷い!」
岡部「フフ……まぁ、なんだ。少し、話でもするか?…そこの日陰で、太陽が落ちるまで…な」
鈴羽「………うん」
岡部「で、お前が過去に戻ったらラボにIBN5100がいきなり出現するのか?」
鈴羽「さぁ…?流石にそれはわかんないよ…過去が変わるかもどうかも分からない」
岡部「…だがそれでは…」
鈴羽「でも、大丈夫だよ。多分……明確な理由はないけど」
岡部「むぅ……」
鈴羽「にしても暑いねー……ホント」
岡部「何…夏なんだから仕方あるまい」
鈴羽「特に今日は……一段と暑かったよ」
鈴羽「うん……まぁ、感銘とかは受けないけど」
岡部「まぁ、綺麗と思うくらいだがな」
鈴羽「まー…毎日見てるしね」
岡部「……そろそろ、か」
鈴羽「うん、普通に暑いけど…もう触れないほどでもないと思うよ」
岡部「うむ……達者でな」
鈴羽「……ねぇ、倫太郎」
岡部「どうした、鈴羽」
鈴羽「倫太郎は……あたしのこと、好き?」
岡部「む……」
鈴羽「あたしは、倫太郎のこと……大好きだよ。誰よりも…愛してるよ」
鈴羽「君は…?君は、あたしのこと……どうなのかなーって」
岡部「俺は……」
岡部「俺は、鈴羽のことが好きだ。勿論…な」
岡部「まぁ、ラボメンとして……好きだ」
鈴羽「……そっか」
岡部「……そして、それと同時に……一人の女性として愛してもいる」
鈴羽「!!!」
岡部「大好きだぞ、鈴羽」
鈴羽「………」グス
岡部「おっおい!?何故泣く!?」
鈴羽「嬉しくて…さー。まさか、君から…そんな言葉が聞けるとは思わなくて…駄目もとでも言って見るべきだね」
岡部「鈴羽……」
鈴羽「ねぇ、抱きしめて。強く、強く。君の温もりを…あたしの温もりを……お互い忘れないように…さ」
岡部「……」ギュ
鈴羽「……あー、あとキスしてよ。やっぱこれだけじゃ物足りない」
岡部「我侭な奴だな」
鈴羽「それくらいいーじゃんか……お願いだよ、倫太郎」
鈴羽「んぐ……ちゅ」
岡部「………」
鈴羽「………」
鈴羽「………ありがと、倫太郎。あたしもう大丈夫だよ」
岡部「そう……か」
鈴羽「ねぇ……一つ約束しない?」
岡部「ん?何だ?……言ってみろ」
鈴羽「あたしのこと……忘れないでね。あたし、絶対成功させて…君を迎えに行くから」
岡部「フ……タイムマシンで…か?」
鈴羽「もちろん。あたしタイムトラベラーだしねー」
岡部「ならば、お前も俺のことを忘れるなよ?勿論、未来のお前もだ」
鈴羽「あはは、何それー?無茶言うなー」
岡部「対等条件だ」
鈴羽「ははは。上等、絶対に忘れてやるもんかー」
外見しだいで50までいけるぞ俺は。特に、漫画版の40鈴羽は普通に美人1
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鈴羽「あー…それねー…あたしも考えたけど……タイムパラドックスが起こりそうだし…止めた。君に危険が起こったらやだし」
岡部「それではお前だって!」
鈴羽「あたしはいーんだ。未来で生まれるのが確定してるんだし、未来が変われば問題なし」
岡部「では……記憶が」
鈴羽「そこはさー…、ほら?愛の力?ってやつとかでなんとかなるんじゃないかなー」
岡部「何なのだその科学的根拠のまったくないスイーツ(笑)な回答は」
鈴羽「んー…でも、そういうことでしょ?あたしは意地でも君の事は覚えておくよ。前世?の記憶で未来のあたしにも記憶をーって…何か自分で何言ってるのかわかんないや」
岡部「うむ、まったくわからん」
鈴羽「ほらっ!そこで愛の力ーってやつだよ。それで全部丸く収まるわけだし」
岡部「フッ……まったくその通りだな」
鈴羽「「あははー。やっぱり君といると楽しいなぁー倫太郎」
岡部「そうか、ならよかったよ」
鈴羽「よーし、そろそろ未来の君とのランデヴーのために頑張ってこようかなーと」
岡部「ああ、頑張って来い。それと、その言葉は古いぞ?鈴羽」
岡部「ああ」
鈴羽「………」
岡部「ん?どうした鈴羽」
鈴羽「べっつにー…なんでもないよーん♪」
鈴羽「じゃあ、行ってきます」
岡部「ああ、行ってらっしゃい」
鈴羽(……さぁ、行こう。輝かしい未来のために…)
ゴゴゴゴ……スゥゥ
岡部「タイムマシンが……消えていく」
岡部(だが、ビックリしたものだ……しかし、鈴羽のことだ……大丈夫だろう)
岡部(俺は……鈴羽のために出来る事をしよう……)
岡部(タイムマシンが……完全に消えた……か)
岡部(……──ッ!?こっこの感じは……!?)
岡部「ぐ……うぅ……」
岡部(なら、世界線が移動した……のか)
岡部(なら……ラボには…)
岡部「誰かいるか!?」
まゆり「あーオカリーン!トゥットゥルー」
ダル「こんな時間まで何処行ってたん?」
岡部「そっそれより!IBN5100は!!」
ダル「そっそれならココにあるけど…」
岡部「……そうか」
岡部(これがココにあるということは……鈴羽は無事に……よかった)
ダル「あーそういえばオカリン。店長からなんか手紙預かったお。オカリン宛に」
岡部「何…?ミスターブラウンが?俺宛に手紙だと?」
ダル「いや、差出人は……阿万音鈴羽って人だけどさ」
岡部「何!?鈴羽からだと!?」
ダル「え?何?オカリン知り合いなん?」
ダル「うっうん」
岡部「……枚数は一枚だけか」
岡部「何々………何だこれは」
まゆり「オカリンどうしたのー?」ヒョイ
岡部「ちょっこら!!まゆり返すのだ!!」
まゆり「えーっと…『あたしの倫太郎へ、9月1日午後6時ラジ館屋上。愛してる』だってー!うわぁ!これラブレターだよぉー」
紅莉栖「ブフゥーー」
ダル「うわっ!!牧瀬氏コーヒー汚い!!そしてオカリンリア充氏ね!!!」
紅莉栖「……何……だと?」
まゆり「うわぁ…よかったねぇ~オカリン」
岡部「……あ、ああ」
岡部(一体どういうことだ?今日は……8月15日……このまま何事も起きなければいいが)
岡部「少し、ミスターブラウンと話してくる」
ダル「オカリンが……ちくしょー!!なんであんな厨ニ病がぁぁぁ」
岡部「まず、阿万音鈴羽というバイトは雇ってませんか?」
天王寺「はぁ?何寝ぼけた事言ってんだ?鈴羽さんが何で俺の店のバイトになんだよ」
岡部「鈴羽……さん?」
天王寺「つーか、おめぇ鈴羽さんと知り合いだったのかよ」
岡部「え、ええ。まぁ」
天王寺「まーだが、ビックリしたなぁー当時鈴羽さんに2010年にお前にこれ渡せって言ってきたときはどういうことかって思ったけどよ」
天王寺「まさか、本当に渡すときが来るとはな!まったく未来予知ってレベルじゃねーよな」
岡部「そっそうですか…」
天王寺「まぁ、この手紙渡してきたときの鈴羽さんはちょっとキモかったな……終始ニヤニヤしてて、なんというか…まぁキモかったな」
萌郁「あの……」
天王寺「おお、来たかバイト!!」
岡部「何…!?今なんと言ったのだ?ミスターブラウン」
天王寺「ああ?バイトのことか?」
岡部「指圧師が……バイト?……この寂れたブラウン管工房の…?」
岡部「いっいや……そうだ!!それよりその阿万音鈴羽さんは今何処に?」
天王寺「……なんだお前知らねえのか?」
岡部「……え?」
天王寺「そうか、しらねえみてえだな……まあ、いいか別に」
岡部「なっ何かあったんですか!?」
天王寺「んーなんていうかよー……失踪したんだよ」
岡部「……失踪?」
天王寺「失踪…っていうかよ。消えた…って方が正しいかもな」
岡部「……は?」
天王寺「まー、そうなるわな。俺だってそうだった。でも、たしかに鈴羽さんは消えたんだ」
天王寺「俺に手紙を渡した丁度1年ぐらい経ったときくらいかな…出かけてくるって行ったっきり帰ってこなかった」
岡部「…それは何処に行くって言ってたんですか?」
天王寺「あー…えっと確か……ラジ館だったっけな」
岡部「……そうか、そういうことか。フ……ミスターブラウン、情報提供感謝する」
岡部(とはいえ、何故タイムマシンが来たのかもよく分からんが…あの時リーディングシュタイナーが発動したという事はそういうことなのかもしれない)
岡部(それに前の世界線と違って鈴羽の扱いは変わっていた……って待て、ということはあの時の鈴羽はいなくなっていて…俺…童貞…なんじゃないか?)
岡部(だっだがしかし…あの時の感覚はまだ残ってるし……心だけ卒業?…いや、意味分からん…何なのだこのあられもないどうしようもない感覚は)
岡部(まぁ…とりあえずのところはいいだのだろうこれで…このまま……何も起きなければいいが……)
岡部「ふぅ……とりあえず知的飲料で、喉を潤すか」
まゆり「オッカリーン!ラブレターのえーっと阿万音さん?ってどういう人?今度紹介してね~」
ダル「リア充氏ね」
紅莉栖「何だコレ何打コレんだんだこれ……どうしてこうなったどうしてこうなったどうしてこうなった」ブツブツ
岡部(……何だこのカオスな空間は)
こうして何事もなく日にちは過ぎていって……9月1日を迎えた。
ダル「うお!もう9月か……こうして僕の夏休みもまた無駄に過ごしていくのか鬱だ」
紅莉栖「ああ、リア充さっさと死ね。あ、違った行くならさっさと逝けよ厨ニ」
岡部「クリスティーナ……」
岡部(まぁ、行くがな)
岡部「午後5時58分か」
岡部(本当にココに来るんだろうか……というかタイムマシンに乗ってくるってことだよな?いや…よく分からんが)
ゴウゥン……シュゥゥ……
ダル「おおお!!ホントにタイムマシンキター!!」
まゆり「わー!粉みたいのがキラキラしてて綺麗ー」
紅莉栖「あーはいはい、タイムマシンね。もうどうでもいいわ、人生が」
岡部「………ふむ」
岡部(あの時のは違って随分綺麗なものだな……未来はちゃんと変わってくれたのだろうか)
ガシュウン……
鈴羽「ぷあぁ!ふー…」
鈴羽「あ!!倫太郎!!!逢いたかったよー!」ダキッ
岡部「うわぁ!!」
まゆり「わぁ!」
ダル「うは!なんて裏山!!オカリンに嫉妬!!」
紅莉栖「空って青いなー……私はそんな空に浮かぶ雲になりたい」
鈴羽「逢いたかったー!逢いたかったよー!!」
岡部「なっ!!お前何故容姿が全然変わってないのだ!?てっきりもう随分な年だと…」
鈴羽「あー!ひっどーい!!あたしはまだ19歳だよー!まだ成人すら迎えてないよ!!」
岡部「どっどういうことなんだ!?」
鈴羽「んふー。まぁ、いろいろあってさー!でも、倫太郎に逢えてよかったー!!んー」
岡部「んなっ!?」
鈴羽「むちゅ……ん」
まゆり「わーお!大胆!!」
紅莉栖「私は空を浮かぶ雲なの……ふわふわ、何も考えずふわふわ」
鈴羽「あーそうだね、えーっとね。どこから話そうかなー」
岡部「あ、ああ」
鈴羽「そして、過去に行った鈴羽は記憶データをある機械にコピーしたの」
岡部「待て、機械とは何だ?」
鈴羽「さぁ?未来の君がなんか過去に伝言を送ったとかなんとか」
岡部「Dメール…か?」
鈴羽「それでーあたしは、生まれてから15歳くらいになってその記憶を移植したんだよねー」
岡部「なっ!では、記憶が上書きされてしまうのでは」
鈴羽「あー、そんなことないよー?上書き保存じゃないからさ」
鈴羽「まぁ、記憶を移植する前から倫太郎の事好きだったけど……未来の君、かっこいいんだもん」
岡部「そっそうか……。いや、待てよ?それなら過去に行った鈴羽と未来の鈴羽…2人存在するのではないか?」
鈴羽「あー…多分今のこの時代ならまだあたしはいるだろうねー…多分、イギリス辺りかなー?今は」
岡部「イッイギリス!?」
岡部「では…どうなるのだ?」
鈴羽「あたしが生まれた瞬間に消えたんじゃない?」
岡部「…は?」
鈴羽「いやさ、それがさーあたしが生まれる3年前くらいから記憶消えててそこまでしか記憶なくって」
岡部「何かややこしいな」
鈴羽「何か詳しい事はお父さんとか…全然教えてくれなかったからよくわかんないけど」ジロ
ダル「え?何で僕睨みつけられてるん?」
まゆり「きっとエッチな目で見てたからだよ~」
ダル「そっそんなことないもん!紳士的に子どもを愛でるような優しい目で見てたもん!!」
まゆり「そこがもうアウトだよ?ダル君」
岡部「ともかく、今は鈴羽は二人いるということか…」
鈴羽「そうだねー。倫太郎に逢いに行きたかったんだけどねー」
岡部「?逢いに来ればよかったじゃないか」
鈴羽「はー…そういうところは治らないんだね…乙女心を察してよ」
鈴羽「そりゃ、好きな男にいきなりオバサンになった姿なんて見せたくないじゃん」
岡部「あ、そうか」
鈴羽「ともかく、今この世界にいるもう一人のあたしがどうなったのかは今のあたしじゃ分かんないんだよね…」
岡部「そうか……」
鈴羽「まーそういうパラドックスを無くすためにもあたしが来たんだけどねー」
岡部「…?どういうことだ?」
鈴羽「あのさ、このタイムマシンって世界線における影響を受けないんだよねー流石あたしの倫太郎とお父さんだよ!こんなもの作るなんて」
鈴羽「つまりさー、あたし…言ったよね?迎えに来るって」
岡部「あ、ああ…確かに言っていたが」
鈴羽「その応えにうん。って言ってくれたよね」
岡部「あ、ああ」
鈴羽「あはは!なら話は早いや。あたしと一緒に2036年に来てよ!」
岡部「なっ何!?」
鈴羽「あのさー、コレに倫太郎が乗って未来に帰れば…未来に本来いた、おじさん倫太郎はどうなると思う?」
岡部「……今、タイムマシンで未来に行ったら…消えるんじゃないのか?」
鈴羽「そ、消える」
岡部「だっだが!!俺は未来でこれを作ったりしてるだろう!?矛盾が発生しまくるぞ!!」
鈴羽「まー未来に行ったら多分、このタイムマシンは未来に着いた瞬間消えるかも」
岡部「なっなら!!」
鈴羽「まーでも、これ倫太郎のいう…リーディングシュタイナー?って能力があるから大丈夫なんじゃない?」
岡部「だっだがな…」
鈴羽「ああああ!!もう!!つーかさ、こんなの健全でホントはどうでもいいんだ」
岡部「はぁ?」
鈴羽「あたしは…倫太郎と…一緒にいたいだけなの!!もうごちゃごちゃ言わずに来てよ!!」
岡部「おーい!!何を言うのか!?」
鈴羽「迎えに来たんだよ?もういいじゃん、未来は平和だったよー?ラボメンみんなぜーんぶ元気にしてるし」
岡部「…!!」
紅莉栖「今、確実に言えることは…この女が岡部を未来に連れ去ろうとしてるのよ」
まゆり「えー?それって何か悪いの?」
紅莉栖「このタイムマシンは未来への片道切符…つまり、岡部が行ったら少なくとも私達は2036年まで岡部と一緒にいられなくなる」
まゆり「えー?それはやだよー…まゆしぃ寂しいなぁ」
岡部「……」
鈴羽「……まぁ、行ってる事は間違ってない。…やっぱり倫太郎に決断してもらうしかないね」
岡部「……」
鈴羽「あたしと一緒に未来に行ってあたしと愛し合うか、それともココに残って今までの日常を過ごすか」
岡部「……俺がお前と行ったら世界線が変わるんじゃないか?」
鈴羽「……まず、間違いなく」
岡部「変わったら、平和かどうか分からないんじゃないか?」
鈴羽「……うん」
岡部「行かなかったら……お前の言うとおり平和な…ラボメンが全員平和で元気にいられる世界が続くんじゃないのか?」
鈴羽「…………いや、違うよ」
鈴羽「うん、私以外は……ね」
岡部「………」
鈴羽「だから、決めてよ。あたしを選ぶか、その他を選ぶか」
岡部「……分かった」
鈴羽「………」
まゆり「ねぇ、オカリン」
岡部「……まゆり?」
まゆり「オカリンはその阿万音さんのこと……大好きなんだよね」
岡部「………ああ」
鈴羽「……ッ」
まゆり「……うん、だったら着いてった方がいいんじゃないかな」
岡部「何……?だが、しかし」
まゆり「やっぱり、好きな人同士は一緒にいるべきだよ」
岡部「まゆり……」
岡部「……当たり前だ」
まゆり「……うん、なら行ったほうがいいと思うな。まゆしぃはホントのこと言うと少し寂しいけど…それでも」
岡部「………」
まゆり「…でも、行かないのならそれはオカリンが決めたならそれでもいいよ。オカリンがしたいようにしたらいいと思うな」
鈴羽「……」
岡部「………俺、鈴羽に着いて行く」
鈴羽「!!!」
鈴羽「……本当に?」
岡部「……ああ、俺は鈴羽…お前と一緒にいたい」
鈴羽「倫太郎……りんたろー!!」ダキ
岡部「鈴羽…」
鈴羽「好き好き!!りんたろー!大好き!!」
紅莉栖「もうどうにでもなーれ」
ダル「牧瀬氏に……敬礼っ!!」
間違いない
数年後にタイムマシンつくってオカリン奪いにいくよ
数年後にタイムマシンつくって鈴羽刺すよ
まゆり「えーっと…次は2036年だから…20年後かな?あー…まゆしぃそれじゃあもう36歳だよー…おばちゃんだねぇ」
岡部「ははは。どんなに年をとってもまゆりはまゆりだ」
まゆり「えっへへーそれじゃあオカリン……またね」
ダル「くっそー!なんか駆け落ちみたいですげー!!オカリン…お前のことは忘れない」
紅莉栖「ふー、生きてる意味って何だろう。それを研究しよう。そうだな、20年ぐらい研究しよう、そうしよう」
岡部「ああ、俺が不在の間…ラボを頼むぞ。…20年後に、また会おう」
シュゥゥゥゥン
まゆり「…行っちゃったねぇ」
ダル「……ん?待てよ?オカリンが戦線離脱したってことはラボメンで男って僕だけじゃね?ウッヒョーーイ!!オカリーンgj!!」
紅莉栖「なっなに?岡部…?クリスティーナ…お前はホントに可愛いな…。なっ可愛いとかっ!!本当の事だ…紅莉栖。岡部……」
岡部「む…狭いな…それはどういうことだ?」
鈴羽「この選択をして」
岡部「ふ……さっきまでの威勢はどうした?何故そんなことを言う」
鈴羽「……無理言っちゃったかなーって」
岡部「何を今更。…それに俺はこの選択をとったことに後悔なぞ微塵も感じていない」
鈴羽「…え?」
岡部「大好きなお前とずっと一緒にいられる。それだけで十分だ」
鈴羽「…倫太郎……ありがとう。…そして、愛してるよ。ずーっとさ」
岡部「フ……鈴羽よ……俺もずっとお前の事を愛していくさ、どんなことがあろうとも…な」
鈴羽「クス……そうだねー」
岡部「うむ」
鈴羽「これも、運命石の扉の選択ってやつかな?」
岡部「フ…そうだな。そして、この選択は俺達自身の選択でもあるわけだ…」
鈴羽「うん、これからもずっと末永く……一緒にいてね。これが運命石の扉の選択なんだからさ」
おわり
良かった
未来の助手がろくでもないことしかしない気がする
面白かった
Entry ⇒ 2012.09.21 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
照「渋谷のお茶を勝手に飲んだら無視されるようになった」
菫「はぁ・・・」
淡「テルー、それはやばいよ」ニコニコ
照「菫、ため息ばかりついてると幸せ逃すよ?」
照「あと、大星はトイレ掃除一週間ね」
淡「なんで!?」
照「私の不幸で飯が美味いみたいな態度が許せない」
照「ひどくない。相応の罰。嫌なら渋谷と仲直りする方法の案を出して」
淡「まずはその性格を直s」
照「あ?」
淡「・・・」
菫「まぁ、そんなことより」
淡(そんなこと・・・)ガーン
菫「照、お前、本当にお茶を飲んだだけか?」
照「…? どういうこと?」キョトン
照「…? 私は勝手にプリンを食べられたら先輩だろうが家族だろうが無視するけど」
菫「・・・バカと渋谷を一緒にするな」
照「ひどい」グスッ
淡(ぷぷぷ、テルざまぁああああ)
照「大星、トイレ掃除一週間追加ね」
淡「なんで!?」
照「なんとなくイラッときた」
菫「それで? 本当に心当たりないのか、照」
照「……分からない。 私は勝手にお茶を飲んだことが原因だと思ってるけど」
菫「はぁ・・・とりあえずは根本的原因を知ることが仲直りの一番の近道だろう」
淡「スミレママの言う通りだよ、テル」
菫「大星、トイレ掃除一ヶ月追加だ」ピキピキ
淡「え!?」
照「!?」
照「む、無理」
菫「照、渋谷と仲直りしたくないのか?」
照「・・・」
菫「だったら私の言う通りに行動しろ。それに何も今すぐに仲直りをしにいけとは言ってないぞ」
照「・・・」
菫「現状の確認をするだけだからな、いいから行ってこい」ゲシゲシ
照「い、痛い、やめて菫、蹴らないで、わ、わかったから!行ってくるから背中蹴らないで」
淡「ぷっ」
照「・・・」ズーン
照(し、渋谷に完全に嫌われてる・・・)
淡「・・・」ズーン
淡(ト、トイレ掃除がまた増えた)
菫「で? どうだったんだ、照」
照「・・・」グスッ
淡「・・・」ショボーン
菫(この様子じゃ相当嫌われてることが分かったみたいだな、ってかなんで大星まで落ち込んでるんだ?)
菫「?」
照「私の顔を見た瞬間に逃げるように去っていった。 それも顔を真っ赤にするほど怒ってた」
菫「それは・・・」
淡(・・・ん?)
菫「相当怒ってるな・・・ やっぱりお前お茶以外にも何かしただろ」
淡(え? いやいや! え?)
淡(まぁ、察するにタカミは間接キスが恥ずかしかったんだろうね。相変わらず乙女だなぁ、タカミーは)
照「どうすればいいと思う、菫」
菫「とりあえず謝意を込めて新しいお茶を何本か買っておくべきだな」
照「わ、分かった」
淡「・・・」
淡(・・・面白そうだからこのままでいっか)ニコニコ
菫「そうだな、後は」
ガチャ
尭深「お、遅くなりました・・・」ウツムキ
誠子「失礼します。すいません、宮永先輩、弘世先輩。遅くなりました」キリッ
照「・・・菫、この話はまた後で」コソコソ
菫「分かってる」コソコソ
菫「遅れてきた罰は大星と一緒にトイレ掃除だ」キリッ
淡「・・・」
淡(こいつら)
尭深「ご、ごめんなさい! 弘世先輩にみ、みゃーながせんぱっ///」
尭深(あうっ)
淡(かわいい)
照(かわいい)
菫(かわいい)
誠子「誠に申し訳ありません、御両人。 比度の失態、我が白糸台に勝利を齎すことで償いましょう」キリッ
淡「お前誰だよ」
誠子「大星よ、如何にお前が強かろうが所詮は年下、口の聞き方には気をつけろ」
尭深「せ、誠子、暴力はダメだよ!」あたふた
照「・・・」じーー
照(…私以外には普通に接するんだ)むすっ
菫「どうした、照」
照「いや、なんでもない。そろそろ練習を始める。菫、相手して」ゴゴゴゴゴゴゴ
照「・・・今日はここまでにする」ギュインギュイン
菫「そうだな、時間も時間だし今日はここまでだな」
尭深「ふぅ・・・疲れた」ゴキュゴキュ
誠子「牌が重い」
淡「・・・ズルイ」ボソッ
照「…? なにが?」
淡「勝ち逃げはズルイよ、テル!」
照「・・・」
淡「もう一回やr」
照「大星。これ以上、駄々をこねるようならトイレ掃除を増やすよ」
淡「!?」
尭深「だ、大丈夫だよ、淡ちゃん! 次はきっと勝てるよ」なでなで
照「!?」ガーン
淡「うぅ、タカミー」チラッ
照「ぐっ」ギリッ
淡(ふっ)ニヤリ
照「なっ!!」
菫「…? どうしたんだ、照」
照「・・・なんでもない」ギリッ
照(大星ェ)
尭深「う、うん! お先に失礼しま」
菫「ちょっと待った」
誠子「…弘世先輩?」
尭深「…?」
照「・・・菫?」
淡「・・・」
淡(はぁ・・・トイレ掃除めんどくさいなぁ)
誠子「あ」
尭深「・・・」
尭深(…忘れてた)
菫「まぁ、今からトイレ掃除は大変だろう。忘れたくなる気持ちも分かる。」
菫「そこで、だ。私から提案がある」
誠子「…?」
尭深「…?」
菫「今日は大星、二年生のどちらか一人、私がトイレ掃除をしよう」
誠子「え? いいんですか、弘世先輩」
菫「後輩だけに罰を押し付ける真似はしない」
照(私は早く帰りたい)
尭深「え?」
誠子「ということで悪いけど、尭深。先に帰ってて」
尭深「私がトイレ掃除をやるから誠子が先に帰ってもいいんだよ?」
誠子「いや、今日は私がやるよ」
尭深「・・・分かった」
菫「決まったな」
菫「―――ということで照、きちんと仲直りしとけよ」ボソッ
照「!?」
尭深「えっ!? そ、それは」
照「・・・」
照(やっぱり…)
誠子「尭深、ちょっと耳貸して」
尭深「な、なに?」
誠子「――――」ゴニョゴニョ
尭深「ッ!! む、無理だよ、そんなの////」カァアア
誠子「ふっ、まぁ、頑張れ」なでなで
照「……」ギリリッ
尭深「ッ!?//// そ、それじゃあ弘世先輩、お先に失礼します! 誠子と淡ちゃんもじゃーね」
照(また無視された・・・)
菫「ああ、渋谷、また明日な」
誠子「・・・」
ガチャ、バタン
菫「ん? どうしたんだ、亦野」
誠子「…弘世先輩。大星がいません」
菫「・・・」
菫(大星ェ!)
尭深「……」テクテク
照「……」テルテル
尭深「……」
照「……」チラッ
尭深「……」チラッ
照(あ、目があった、けどすぐそらされた・・・)
尭深「……////」カァアア
照(な、なにを話していいのか分からない……)ズーン
尭深「……」ウツムキ
照「…」イラッ
照「はぁ・・・また無視?」ボソッ
尭深「っ!?」はっ
照「渋谷、私の何が気に入らないの?」
尭深「ち、ちがっ」
照「違う? なら何で無視をするの? 私のことが嫌いだから無視するんだよね?」ぷるぷる
照(―――そう、か。無視されるのってこんなに辛いものだったんだね、咲)
照「昨日の放課後? お茶のことで怒ってるの」
尭深「ち、違います! 宮永先輩、あれは私の飲みかけだったんですよ?////」
照「…? 飲みかけだと何かまずいの?」キョトン
尭深「え? だ、だからあれは私が口をつけて飲んでたものなんですよ?」
照「…?…?」
尭深「あ、う、も、もういいです」
尭深「・・・別に怒ってません」ぷいっ
照「・・・」なでなで
尭深「ひゃう」ビクン
尭深「み、宮永先輩?」
照「いや、こうすると年下の女の子は落ちるって菫が」なでなで
尭深「・・・」
尭深「宮永先輩は私のことを落としたいんですか?」ジトー
照「え?」
尭深「ど、どうなんですか?」
照「わ」
尭深「わ?」
照「分からない」
尭深「・・・」ジトーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
照「い、いや、やっぱり落としたいかもしれない」
尭深「・・・」
照「え?」
尭深「わ、私が宮永先輩を落とします!////」カァアア
照「っ!?」ドキッ
照(それは年上の女の子が年下の女の子にするからこそ効果があるものだって菫が嘆いてたんだけど・・・今言うのは無粋かな)ドキドキ
照「・・・それは本気?」ドキドキ
尭深「ほ、本気です!////」カァアア
尭深「ひゃう、み、宮永先輩? これは、その、そういう意味で捉えても」
照「いいよ」ダキッ
尭深「宮永先輩…」ギュッ
照「渋谷…」なでなで
尭深「・・・尭深って呼んでください」ギュウ
照「尭深…」
ギュッ
―電柱の影―
?「・・・」カシャカシャ
?「あは、これをサキに見せたらどうなるかな? あはははは、サキの反応が楽しみだなぁ」ニコニコ
カシャカシャ
―カン―
?「もしもし、サキー生きてる?」
咲『ねェ、淡ちゃん。この写真なに?』
淡「あはははは、どう? キレーに撮れてるでしょ? テルとタカミの姿」
咲『へェ、タカミって言うんだこの女』ギリッ
―その頃―
尭深「っ!?」ゾクゾク
照「尭深、どうしたの?」なでなで
尭深「ふぁあ、な、なんでもないです」ごろごろ
―今度こそカン―
ガチャ
淡「おっはよー」
菫「・・・」ギロリ
誠子「・・・」ギロリ
淡「え? あー、い、嫌だなぁ、そんなに見つめられると照れちゃう」
菫「大星、辞世の句を読め」チャキ
誠子「貴様は我が怒りに触れた」ボキッ
淡「どうもすいませんでしたぁああああああああ」ゲザァ
菫&誠子「「天誅!!」」
ドゴォオオーー!!
照「尭深・・・」ギュッ
尭深「照先輩・・・」ギュッ
いちゃいちゃ
二人ともちょーかわいかったよー
長時間お疲れ様なのよー
Entry ⇒ 2012.09.21 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
結衣「ちなつちゃんとキスの練習をしたって?」 あかり「それは…」
結衣「自分でもびっくりするほど落ち着いているよ……」コォー
あかり「そういう落ち着くじゃなくって……」
あかり「やっぱりそういうのはす、好きな人同士でするものだよ」
結衣「あかりは私のこと好きじゃないの?」
あかり「好きだけど……」
あかり「こういうのはちゃんとしたいし」ボソ
結衣「え、なに?」
あかり「いきなりき、きすはレベルが高いと思うな」
あかり(これでひとまずはぐらかせるはず)
結衣「いやだ」
結衣「私はもうすでにそのレベルまで達している」
あかり「」
あかり「そんなレベルであかりに挑もうなんてあまあまだよ!」
結衣「……これでも?」グイッ
ギュ
あかり「ひゃ// ゆ、結衣ちゃん!?」
あかり「ま、まだだよ// あかりのヒットポイントは全然減っていないんだから!」
結衣「私はずっとまえからあかりのことが好きでした」
結衣「本当はあかりともっと遊んだりしゃべったりしたかったけど、みんなの前だと少し恥ずかしかったから……」
結衣「あかり……愛してます」
あかり「///」
あかり「あ、あかりも結衣ちゃんのこと好きです」
あかり「大好きです」
結衣「……エッチ?」
あかり「違うよもう!!」バシ
結衣「いたっ」
あかり「ん……」チュ
結衣「……」
あかり「」パッ
あかり「結衣ちゃん大好き」
結衣(…今まで意識なんかそんなにしてなかったけど、恋人となると妙に緊張するな…)
結衣(部屋の掃除はした、あかりに見せられないものは隠した)
結衣(オムライスを作るための材料も買ってあるし、ジュースもお菓子もある)
結衣(…問題、ないよな。うん)
結衣(後はあかりが来るのを待つだけだ…!)
結衣(…それにしても早すぎたかな。まだ朝の7時だし)
結衣「…暇だ。ゲームでもして時間を潰すしかないか…」
…
結衣「む!この!!くっ、意外と難しいなこれ…」カチャカチャ
結衣「後このステージさえクリアできれば…!!」カチャカチャ
ピンポーン
結衣「今いいところなんだ、後に…」
ピンポーン
結衣「…仕方ない、諦めるか」
結衣「…ん?もう11時になったのか。11時…って、あかり!!」
あかり「うーん…携帯に電話を…」
ドタドタドタドタ ガチャ
結衣「あかり!ごめん!!」
あかり「わぁ!?び、吃驚したよぉ…」
結衣「ちょっと暇つぶしにゲームやってたら…」
あかり「そんなに熱中してたの?」
結衣「ちょっとね…さ、入ってあかり」
あかり(…そうだ、ちょっと結衣ちゃんをいじっちゃってみようっと)
あかり「…ふ、ふーん。結衣ちゃんは、あかりよりもゲームが大事なんだぁ…」
あかり(慌ててる結衣ちゃん可愛いなぁ)
結衣「そ、その、えーっとだな…ちょっと、あかりが家に来るからって、緊張しちゃって、その」
あかり「その?」
結衣「…凄い早く起きちゃって、7時に用意が終わって、11時まで時間を潰そうとゲームをしてたら…」
あかり「こうなったというわけ?」
結衣「ご、ごめん…」
あかり「…クスッ 結衣ちゃん、あかり、別に怒ってないよぉ」
結衣「え?」
あかり「ちょっといじってみたかっただけだから、大丈夫だよぉ」
結衣「……へぇ。そうやってあかりは私の心を弄ぶんだ」
結衣「いいもーんだ。今日はあかりの大好きなオムライス作ってあげないよーだ」
あかり「えええ!?そ、そんなぁ…あかり、結衣ちゃんのオムライス楽しみにしてたのに…」
結衣「あ、あかりが、私にさっきの謝罪という事でキスしてくれたら許してあげようかなー」チラッチラッ
あかり「えぇ!?こ、ここで?」
結衣「別にしなくてもいいよーだオムライス作らないだけだしー」
あかり「…キスで、いいの?」
結衣「え、え?」
あかり「…結衣ちゃん」
結衣「あ、あかり…ん…」チュ
結衣「…え、あ、う、うん、その、えっと……」カオマッカ
あかり「…ゆ、結衣ちゃん?」
結衣「…あーえっと、その、アレだ。抱きしめたい」
あかり「ゆ、結衣ちゃ…きゃ!」
結衣「…」ギュゥ
あかり「ゆ、結衣ちゃん?」
結衣「…まさか、本当にするとは思ってなかったから吃驚した」
結衣「…そっか。じゃあキスはしたくなかった?」
あかり「う…ぁ…そ、そんなの、したくなかったらしてないよぉ…」
結衣「…やっぱり、あかりは可愛いな」ギュ
あかり「あぅ…そ、その、結衣ちゃん…抱きしめられるのも嬉しいけど…」
結衣「…どうしたの?」
あかり「その、他の人が…見てる…から…」
アツイワネー
ワタシモアンナセイシュンオクリタカッタワー
ユイアカキマシタワー!!
結衣「…」
あかり「は、恥ずかしいから部屋に入れてほしいなーって…」
結衣「そ…そうだな」
結衣(…暫く隣の部屋のおばちゃんとかにからかわれそうだ…)
結衣(…まぁ、相手があかりだから…いいかな、うん)
結衣「あかりが来るから、気合入れて掃除したんだ」
あかり「そうなんだぁ…結衣ちゃん、ありがとう!」ニコッ
結衣「本当あかりの笑顔は殺人的」
あかり「え、ええ!?」
結衣「ハッ…私は何を…」
あかり「そ、その、そんな事言われると恥ずかしいよぉ…」モジモジ
結衣「マジあかり天使」
あかり「結衣ちゃん!?」
あかり「材料は揃ってるの?」
結衣「うん。あかりが来る前に揃えておいたよ」
あかり「そっかぁ…」
結衣「…?残念そうだけど、どうかした?」
あかり「結衣ちゃんと一緒にお買い物に行きたかったなぁって思っただけだよぉ」
結衣(…私のバカ…なんでこんな重要なイベントを見逃してたんだ…!!)
結衣(せっかくあかりと新婚夫婦みたいに買い物できるチャンスがあったというのに…!!)
結衣(二人で食材を選びながらキャッキャウフフしてそして『あかり、これが欲しいなぁ』とか言われたかった…!!」
あかり「あ、あの、結衣…ちゃん?」
結衣「そして私は『もう、仕方ないなぁ…あかりは特別だから買ってあげる』とかそんなことを言ったりして…」
あかり「結衣ちゃん口から妄想が出てるよぉ!?」
結衣「!?」
あかり「あ、あの…結衣ちゃん?」
結衣(きっと引かれたよなぁ…うぅ…大事な時に私は何をしてるんだ…)
あかり「…そ、その、結衣ちゃん」
結衣「…何?」
あかり「えっとね、その、さっきの結衣ちゃんの口に出したの…嬉しかったよ」
結衣「え、ど、どうして?」
あかり「だって、それだけ結衣ちゃんは、あかりの事を思ってくれてるって事だよねぇ」
あかり「だから、純粋に嬉しかったよ、結衣ちゃん!」
結衣(…あかりは、本当に優しいよな)
結衣(…だから、好きになったんだけど…さ、ふふ)
結衣「…ありがと、あかり。それじゃ、気合入れなおして作ろうか」
あかり「うん!」
あかり「卵かき混ぜたよぉ」
結衣「ん、それじゃ焼いていこうか」
あかり「入れるよぉ…それ」ジュー
結衣「後は焦がさないようにうまくやって…っと」
あかり「…結衣ちゃんって、どうしてそんなに上手く出来るの?」
結衣「うーん…慣れかな、やっぱり。料理は慣れないとやっぱりうまく作れないよ」
あかり「そうなんだぁ…ねぇ、結衣ちゃん」
結衣「ん?」
あかり「今度、あかりにお料理教えて欲しいんだけど…良いかなぁ?」
結衣「もちろん良いよ。じゃあ今度、オムライスの作り方を教えるね」
あかり「わぁい!…あ、ゆ、結衣ちゃん…卵が…」
結衣「し、しまった!」
あかり「…本当に焦げてない方食べていいの?」
結衣「流石に焦がしちゃった方をあかりに食べさせるわけにはいかないしな」
あかり「でも…」
結衣「…じゃあ、今度。あかりが私にオムライス作って欲しいかな」
あかり「うん、いいよぉ!練習しておかないと…」
結衣「さ、冷めちゃうから食べよう。いただきます」
あかり「いただきます」
結衣「…焦げててもそれなりに美味しいな」
あかり「…気になるから、ちょっと頂戴、結衣ちゃん」
結衣「いいよ、はい、あーん」
あかり「あーん…モグモグ…うん、結構大丈夫だねぇ」
結衣(…あれ。素でやったけど…これって…)
あかり(…あ。間接キスだし恋人みたいな…)
あかり「う、うん!美味しいよ!!」
結衣(…キスまでした仲なのに…)
あかり(なんで恥ずかしくなっちゃうんだろう…)
結衣「…」
あかり「…」
結衣「あ、あのさ あかり「あ、あのね」
結あか「「あ…」」
結衣「…なんで緊張なんかしてるんだろうな、私たち」フフッ
あかり「…うん、おかしいよねぇ」クスクス
結衣「食べたら、次は何がしたい?」
あかり「うーん…まだ決まってないよぉ」
結衣「そっか…まぁ、家でのんびりするのもいいかもしれないけど…」
あかり「…うん。そうしようよぉ、結衣ちゃん」
結衣「分かったよ、あかり」
結衣「それじゃ、片付けてくるね。あかりは休んでて」
あかり「うん…ふぁぁ…」
結衣「…眠い?」
あかり「うん…お腹いっぱいになったからかなぁ…ちょっと眠たい…」
結衣「…そうだ。あかり、膝枕してあげる」
あかり「いいの?」
結衣「もちろん」
あかり「それじゃあ…お言葉に甘えるよぉ…」
結衣「…ふふ、あかりは、可愛いよな、本当」
あかり「うぅ…結衣ちゃんったらぁ…」
あかり「ぁ…」
結衣「…夢じゃないかなって、今でも思うときがあるんだ」ナデナデ
あかり「…えいっ」ギュ
結衣「いて!?あ、あかり?」
あかり「…夢じゃないでしょ?勝手に、夢にされたら困るよぉ」
結衣「…あかり」
あかり「だって、あかりも結衣ちゃんと恋人になれてすっごい嬉しいもん」
あかり「だから、夢じゃないかな、なんて思ったら駄目だよ、結衣ちゃん」
結衣「…そうだな、確かにあかりの言う通りだな」
結衣「ん?」
あかり「…あかりが寝る前に、キスして欲しいなぁ」
あかり「夢じゃないかなって言った罰として…ね?」
結衣「…あかり、それは罰にならないよ」
結衣「…だって、私もあかりにキス、したかったから…さ」
あかり「あ…結衣ちゃん…んん…」チュ
結衣「……ん、ふぅ。満足した?」
あかり「…うん」
結衣「…それじゃ、おやすみ、あかり」
あかり「うん…おやすみ、結衣ちゃん…」
結衣「…本当、幸せ者だな、私は」ナデナデ
あかり「ん…」
結衣「…ずっとずっと、好きだった」
結衣「…やっと気持ちを伝えられて、恋人になって…」
結衣「…願わくは、ずっとこのまま、あかりと一緒に…」
結衣「…いや、ずっと一緒にいる。もう、そう決めた」
あかり「んぅ…ゆい、ちゃーん…」
結衣「…ふふ。どんな夢を見てるのかな、あかりは…」
結衣「……あかり、これからも、ずっと好きだよ…」
チュ
あかり(ぁ…もう、寝てる時にキスするなんて…)
あかり(…今は、寝たふりで誤魔化しちゃったけど、あかりも…)
あかり(…あかりも、結衣ちゃんの事…大好きだよ)
明日というか今日もやらんとならないことがあるからねおっさん…
本当はもう少し書きたかったけど、今回はこれで勘弁してください
また書いてね
Entry ⇒ 2012.09.21 | Category ⇒ ゆるゆりSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
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Entry ⇒ 2012.09.21 | Category ⇒ その他 | Comments (0) | Trackbacks (0)
伊織「わわわ私はオタクじゃないわよ!!!」
小鳥「またですか?」
律子「ちょっといないと思ったら、また食玩ですか……」
P「そう。あと一種類でコンプリートだからね」
P「今日は10個買っちゃった」
P「さーて、来い来い!」ガサガサ
P「来たー!!もえPレアー!!」
小鳥「良かったですね」
律子「勤務時間中ですよ?!」
P「俺今休憩時間中だし、スマホで書き込むからいいじゃん」
律子「そういうことではなくてですね……」
律子「はあ……もう勝手にしてください」
雪歩「オタクですぅ……」
真美「アレはまっき症状ですなー」
亜美「亜美達、ゆーかいされてかんきんされるかもー!」
春香「そ、そこまで言わなくても……」
春香「うーん、でも、ああいうのはもう少し大人しくやって欲しいかも……」
千早「仕事さえやってくれれば私は別にどうでもいいけれど」
やよい「……」
やよい「……伊織ちゃん、あれ見て……」
伊織「……!!」
真「またなんだよ……」
春香「オタクかあ。ちょっと嫌だなあ」
やよい「伊織ちゃん?」
真「おお、ハッキリ言ったね」
伊織「と、当然でしょ?事務所にオタクがいるなんてキモくて仕方ないわー!!」
伊織「だ、誰かハッキリ言ってやった方がいいかもね!」
そう。クレヨンしんちゃんの劇中劇ま・ほー少女もえPから取った
が、クレしんキャラは出ません
小鳥「ハイ、765プロです……、ハイ、少々お待ちくださいませ」
小鳥「プロデューサーさん、旭日テレビの~さんです」
P「あー、はいはい。どうもっす」
P「ちわーっす。俺です」
P「ええ、はい」
P「……」
P「へっへっへ。マジっすか?」
律子(仕事は何とかやってるし……)
P「例のもえPイベント、関係者席、ええ、2人ですね?」
P「マジ感謝っす!」
P「ええ、じゃあ今度また夜を徹して、もえPトークしますか!!」
P「へっへっへ。お疲れっす」ガチャ
P「え?前からお願いしてたもえPイベントに俺も行けるって連絡が……」
律子「真面目に仕事しろー!!このバカー!!」
伊織「イベント……」ゴクリ
やよい「……?」
伊織「ここじゃあ言い難いから、顔貸しなさいよ」
P「おう、いいよ」
―屋上―
P「何?告白?」
伊織「バカ言ってんじゃないわよ!」
P「あ、魔法少女もえP?」
伊織「……そうよ」
伊織「キモいって言われてるわよ……ちょっと控えなさいよ」
P「まあ実際キモいしなあ」
伊織「自覚あるのね……」
P「何?話それだけ?わざわざ済まないな」
伊織「2人分席あるって言ってたけど、誰かと行くわけ?」
P「あー、まだ誰と行くか決めてるわけじゃないんだけど」
P「ああいう業界も誰かに見せてやりたいし」
P「亜美、真美のどっちかかなー」
伊織「りょ、両方あんたのことキモいって言ってたわよ」
P「あ、何か具体的に名前が出ると凹むな」
伊織「べ、別に行きたいわけじゃないんだからね。あくまでも仕方なく……」
P「ふーん」
P「じゃあお願いしようかな」
伊織「か、感謝しなさいよ!!」
真「ホントだよ」
伊織「え?」
春香「これで少しは控えてくれるといいんだけどね」
やよい「……」
伊織「……」
伊織「にひひひひひ……」
やよい「……伊織ちゃん……」
小鳥「あら?プロデューサーさん、片づけるんですか?」
P「さっき怒られまして」
律子「これに懲りたら、もう机の上食玩だらけにしちゃダメですよ」
P「伊織ー、そろそろ行くぞー」
伊織「はひっ」
P「そんなに緊張するなって」
真美「いおりんなんか変なのー!今日はどんな仕事なの?」
P「ん?んー、イベント視察」
亜美「へー、よっぽどすごいイベントなんだねー?」
伊織「ととと当然よ!!こんな機会滅多にないんだから!!」
P「じゃあ俺、ディレクターさんに挨拶してくるから」
伊織「はいはい、別に戻ってこなくていいわよ」
伊織「にひひひ……とうとうここまで来たのね……」
P「……」
『もえもえピピピ、もえピピピ!』
ウォオオオオオオオ!!
伊織「キャー!!」
伊織(ああ、もえPの声優さんの声をこんなに近くで聞けるのね……)
P(伊織、俺が戻ってるのにも全然気づかないな)
伊織「ふう……」
P「あ、いたいた」
伊織「あ、あんたどこにいたのよ?イベント終わっちゃったじゃない」
P「いや、すぐ隣にいたぞ?」
P「終わる直前にまた挨拶に行ったんだけど」
伊織「え?そ、そうなの……?私も挨拶に行った方がいいかしら……?」
伊織「そ、そう?」
P「もう、もえPの大大大ファンだって伝えたから」
伊織「は、はあ?な、何言っちゃってるのかしら?
わ、私がこんな子供向けアニメのファンなんてありえないでしょ?」
P「俺の目の前でキャーキャー騒いでたの誰だっけ?」
P「俺がいたのにも気づかずに」
伊織「……」
P「ファンなんだろ?」
伊織「…………ハイ…………」
伊織「……ちょっと」
P「……例の話か」
律子「何か……プロデューサーが大人しくなったのはいいけど……」
小鳥「ちょっと様子が変ですね……」
P「ああ、鍋食べてたな!」
伊織「鍋を食べるだけで一回分の放送を使うなんて、何て斬新なのかしら!」
P「鍋を食べるもえPもかわいかったな!」
伊織「もえPは最早天使ね……」うっとり
P「もえPマジ天使」
P「ああ、ウエハースがおまけに付いてくるやつね」
伊織「それよ!もえPノーマルのステッキ付、あんたダブってない?」
P「ああ、2個あるよ。欲しいのか?」
伊織「……」
P「欲しいって言ったらあげるけど?」
伊織「……欲しい…です……」
P「よーし」
真「この前ガツンと言ったのが逆に良かったのかな?」
あずさ「ガツン?」
春香「そうなんですよ。伊織が言ったから、オタク趣味を事務所では控えてるみたいです」
貴音「なるほど……私にはよくわかりませんが……」
響「プロデューサーキモかったからなー」
やよい「……」
やよい「おはようございまーす!!」
かすみ「お、おはようございます……」
小鳥「あ、かすみちゃん。話は聞いてるわ」
やよい「ごめんなさい。どうしても今日は遅くなっちゃうのに、家には誰も……」
律子「いいのよ。ゆっくりしていってね?」
P「じゃあやよい、行こうか」
やよい「はいっ!」
小鳥「じゃあ、そこでくつろいでてね」
小鳥「って言っても、一人じゃ退屈よね……」
小鳥「そうだ!プロデューサーさんの食玩がこの辺に……」
小鳥「あったあった」
小鳥「かすみちゃん?こういうの好きかしら?」
かすみ「あ、もえP!」
小鳥「これ好きに使っていいからね?」
かすみ「いいんですか?やったあ!」
伊織「ただいまー。あら……?」
かすみ「あ、お邪魔してますー」
伊織「あ、今日って言ってたわね。大変ね……」
小鳥「伊織ちゃん、30分くらい留守番お願いできる?
どうしても郵便局へ行く用事が出来ちゃって……」
伊織「いいわよ」
小鳥「お願いね?じゃ、いってきまーす」
伊織「……!!」
伊織「……あの……それ……」
かすみ「もえPですか?」
伊織「もえP……好きなの……?」
かすみ「はいっ!」
かすみ「毎週見てるんだけど……お菓子とか買えなくて……」
伊織「……」ゴクリ
伊織「ちょっと、お話しましょ?」
……
P「ただいまーっす」
やよい「……あれ?かすみ?」
かすみ「それでー、あの魔法でピピピって野菜に変わるのがー」
伊織「最高ね!!」
伊織「あ、でも、おさるの格好のもえPもかわいいわよねー」
かすみ「あ、うん。今日は楽しかったですー!」
伊織「わ、私もよ」
P(む……)
かすみ「うん。すごく楽しかったよ」
やよい「……かすみ……」
やよい「あんまりプロデューサーとか伊織ちゃんに近づいたら駄目だよ?」
かすみ「えー、どうしてー?」
やよい「どうしても!!」
かすみ「……」
やよい「返事は?」
かすみ「うん……」
P「伊織、今日は凄いの借りてきたぞ」
伊織「な、何よ?」
P「ほーれ」
伊織「これ……」
P「もえPなりきり変身セット」
伊織「でもアレ普通に売ってるでしょ?別に借りてこなくても……」
伊織「……!!」
P「着てみる?」
伊織「……」
伊織「……着てみる……」
伊織「と、当然でしょ?」
P「もえPとはまた違った魅力が……」
伊織「そんなにジロジロ見られると恥ずかしいじゃない……」
P「写真……撮ってやろうか?」
伊織「……え?」
伊織「……かわいく撮りなさいよ……」
P「ほーら、ステッキ振り上げてー」
伊織「こうかしら?」
P「はい、笑顔笑顔!おっ、いいよー」パシャ
やよい「……何してるんですか……」
やよい「その格好……」
伊織「こ、これは違うの!」
やよい「やっぱり伊織ちゃん、プロデューサーとおなじオタクで変態さんだったんだね」
伊織「やよい、待って!」
やよい「うっうー、私に触らないで下さい」
やよい「あと、かすみにも近づかないで」
P「……」
P(やっぱり事務所でやるのはまずかったか)
我那覇乙
ゾだけじゃねーかwww
やよい「うっうー、プロデューサーもお仕事以外では私に話しかけないで下さいー」
P「まあ、俺のことはいいけど、伊織は許してやってくれよ」
P「俺が無理やり頼んだんだからさ」
やよい「……嘘。伊織ちゃん、とっても楽しそうにしてました」
やよい「私といるときだってあんなに楽しそうな顔みたことないのに……」
P(ふむ……)
やよい「だって……将来犯罪者になるから近づいちゃいけないって……みんな言ってます!!」
やよい「小さい女の子が見るようなアニメが好きなんて、おかしいです」
P「やよい」
やよい「……」
P「別に伊織は、小さい女の子が見るようなアニメが好きなわけじゃないと思うぞ」
P「たまたま、魔法少女もえPという作品が好きになったんだ」
P「ああ、そうだな。しかし」
P「やっぱり見てもいないのに批判しちゃ、いけないなあ」
やよい「え?」
P「さあ、こっち来い」
やよい「ええー!!!」
やよい「もえもえピピピですー!!」
伊織「……あんた、何やったのよ?」
P「いや、DVD全部見せただけ」
伊織「賭けに出たわね……」
P「やよいは絶対ああいうの好きだと思って」
P(それに……きっとやよいは寂しかったんだよ。自分の知らないものにハマる伊織が)
伊織「いえ、むしろ昨日グッズを全部捨ててしまおうかと……」
P「そういえば凄いクマだな、大丈夫か?」
伊織「でも駄目だった……。私には捨てられない……。でもやよいも捨てられない……」
P「おーい」
伊織「あの、私……」
やよい「ごめんなさい!!」
伊織「え?」
やよい「私、昨日はひどいこと言っちゃって……」
やよい「それが好きなんだよね?!伊織ちゃん!!」
伊織「え?え、ええ……」
P(DVD見ながら適当にでっち上げた話だけど信じて良かった……)
伊織(ちょっとアホっぽくてお金にはしっかりしてるところがやよいに似てるからなんて言えない)
やよい「なんですかー?」
P「食玩あげるから、かすみちゃんと一緒に遊びなさい」
やよい「え?いいんですかー?」
P「ああ」
P「俺も仲間が増えて嬉しいし」
やよい「あ、ありがとうございますー!!かすみも喜びますー!!」
やよい「もちろん!もえPの話一杯しようね!」
伊織「やよい……!!」
P「良かった良かった」
P「これで俺も許されたな」
やよい「あ、プロデューサーはかすみに近づかないで下さいねー」
小鳥「プロデューサーさん、電話ですー。旭日テレビの」
P「あ、ハイハイ」
P「お電話代わりましたー」
「あ、Pちゃん?俺俺」
P「ちゅーっす!どうもっす」
「例のアレ、いけそうだよ」
「でね、実は姉妹っていう設定になりそうなんだ」
「一人はこの間イベント来てた伊織ちゃんでいいとして」
「もう一人、誰か良い子いない?」
P「へっへっへ、そりゃもう、良い子がいますよ。高槻やよいって言いまして……」
―魔法少女もえP 劇場版―
―謎の中学生魔法少女姉妹の正体とは?―
―来春公開!!!―
終わり
後悔はしていない
あとクレヨンしんちゃん見てて思いついたので
もえPはそのまま使った
つづきはよ
読んでくれた皆さんありがとう
Entry ⇒ 2012.09.21 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
P「婚活パーティに行ったら音無さんがいた」
P「…え?」
P「音無さん、どうしてここに…」
小鳥「社長の勧めで…プロデューサーさんは?」
P「俺も社長に……」
小鳥「……」
P「……」
小鳥「はい…」
P「ところで、いい出会いはありましたか?」
小鳥「うーん…しっくりこないと言うか」
P「そうなんですか」
P「実は俺も…」
小鳥「ひどいですね」
P「曰く、年収は最低でも一千万は欲しいようです」
小鳥「私がお話してた男の人は、自分の年収の話しかしませんでしたね」
P「お金が全てなんでしょうね」
つまり成立するわけがない
最近は600万位に相場が下がったらしいが、まだまだ厳しいだろう…
P「ええ、同感です」
小鳥「ふふっ、気が合いますね」
P「そうですね」
小鳥(プロデューサーさん……か)
P(音無さん…か)
小鳥(意識したこと、なかったな)
P(意識したこと無かったなぁ)
偽者だ
ピヨちゃんなら、社長からPが婚活に行く事を聞き出して偶然を装って参加するとかするだろ
妄想さえナントカすれば高スペックだぞ
30近くまで一度も言い寄られたこともないなんて相当じゃないですかー
小鳥「え?」
P「その…ここは空気があまり良くないので」
小鳥「……そうですね」
小鳥「私で良ければ、ぜひ」
P「決まりですね。 では行きましょうか」
小鳥「はい」
小鳥「プロデューサーさんに、お任せします」
P「むむ、プレッシャーですね」
キョロキョロ
P「あ、ここはどうです?」
小鳥「良さそうな雰囲気ですね…ここにしましょうか」
P「はい」
…
P「なかなか洒落てますね」
小鳥「私、場違いかなぁ…」
P「いやいや、音無さんは綺麗ですから」
小鳥「…なんだかむず痒いですね」
P「それに…たまには背伸びしても罰は当たりませんよ」
小鳥「それもそうですね」
小鳥「はい」
P「俺と音無さんの婚活パーティ二次会に」
小鳥「乾杯」
チン
P「……美味しい」
小鳥「ほんと、美味しい」
小鳥「少子化の原因を目の当たりにしましたね」
P「まあ、思いがけない出会いがありましたが」
小鳥「ふふっ、本当ですね」
P「……」
P「音無さん」
小鳥「はい?」
小鳥「…え?」
P「…あ! そういう意味ではなく…」
P「たまに、こうして二人で…」
小鳥「はい、喜んで」
P「え?」
P「あ、そっちか…」
小鳥「はい?」
P「いえ、何も!」
P「少し席を外しますね…!」
小鳥「はい」
スタスタ
小鳥「なんだ…告白かと思っちゃった」
小鳥「マスター、アースクエイクを…」
マスター「はい」
マスター(告白だったのになぁ…)
小鳥「あ、どうも」
クイッ
小鳥「…ふぅ」
P(大人の雰囲気ムンムンで近寄り難い…)
小鳥「あ、おかえりなさい」
P「あ…はい」
マスター「はい」
P(…にしても)
小鳥「……ふぅ」
P「音無さん、なんだか妖艶だなぁ」
小鳥「え?」
P「あ!」
小鳥「なんだか顔があつい…」パタパタ
マスター「どうぞ」
P「ど、どうも」
マスター「仲睦まじいようですね」
P「…!?」
小鳥「…!!?」
マスター(微笑ましいなぁ)
P「ふ…」
小鳥「夫婦…」
P「そんな…俺じゃ音無さんと釣り…」
小鳥「…小鳥です」
P「はい?」
小鳥「名前で、呼んでくれますか?」
P「こ、小鳥さん…?」
小鳥「はいっ」
P「小鳥さん」
小鳥「……もう一回」
P「小鳥さん」
小鳥「ん~っ、えへへ」
P「…そろそろ出ますか?」
小鳥「はいっ」
P「すいません、お会計を」
小鳥「そんな、悪いです」
マスター「お代は結構ですよ」
P「え?」
マスター「今夜は私の奢りです」
マスター「但し、次からはしっかり頂きますから」
小鳥「マスター…」
P「マスター…」
マスター「また二人で来てくださいね」
…
小鳥「素敵なマスターでしたね」
P「また行きましょうね」
小鳥「はい、また連れて行って下さい」
P「任せて下さい」
小鳥「約束ですよ?」
P「家まで送りましょうか?」
小鳥「…いえ、気持ちだけ受け取っておきます」
P「そうですか…ではまた明日」
小鳥「はい、おやすみなさい」
P「おやすみなさい、小鳥さん」
P(断られちゃった…がっつき過ぎたか?)
小鳥(断っちゃった……私のバカ)
高木「どうだったかね? 婚活パーティは?」
P「パーティ自体は…イマイチ」
高木「ふむ…では君たちは」
小鳥「申し訳ないですが…」
P「こっそり抜け出して小鳥さんと二人で飲み直しました」
高木「……どうやら音無君とかなり親しくなれたようだね」
P「え?」
高木「呼称が」
P「あっ!」
P「し、式って…!」
小鳥「まだ早いですよ!」
高木「まだ?」
小鳥「うっ……」
春香「式…?小鳥さんとプロデューサーさんが結婚?」
春香「お祝いしないと!」
小鳥「まんまと罠に嵌められたんですね」
ガチャ
パンパンパン
P「うぉわ!?」
小鳥「きゃあ!?」
春香「ご結婚、おめでとうございます!」
P「!?」
小鳥「!?」
P「いや…」
春香「黙ってるなんて、水くさいですよっ!」
小鳥「春香ちゃん…?」
春香「あ、あと皆に知らせておきました!」
P「……」
小鳥「……」
春香(盛大にお祝いしてあげないとね!)
P(あかん)
小鳥(もう引き返せないパターンに入った…)
小鳥「はい?」
P「いっそ結婚しちゃいますか?」
小鳥「ふふっ……そうですね」
P「では、改めて…」
P「結婚して下さい、小鳥さん」
小鳥「はいっ、喜んで!」
ぶっちゃけスレタイしか考えて無かった
もうちょい練ってから書けば良かったと反省してる
Entry ⇒ 2012.09.21 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (2) | Trackbacks (0)
岡部「鈴ワン・・・だと・・・?」 鈴羽「わんわん♪」
【深夜、未来ガジェット研究所】
岡部「ふむふむ…・・」 カタカタカタ…
─────────────────────────────
【猫飼ってる奴に聞きたいのだが… 】
[1]鳳凰院凶真[sage]2010/08/14(土) ID:???
猫の喜ぶ撫で方を教えてくれないか?
[2]名無し[sage]2010/08/14(土) 10:05:43 ID:???
>>2get
[3]名無し[sage]2010/08/14(土) 10:05:43 ID:???
ぬこと聞いてキマスタ
[4]黒の絶対零度[sage]2010/08/14(土) 10:06:00 ID:???
まず毛を逆なでてはいけません。。
毛の向きに沿ってやさしくナデナデしてあげてください。
─────────────────────────────
岡部「ふむ、毛の向きの沿って…」 ナデナデ
???「ひゃう!? お、岡部…////」
岡部「なになに…『背中をなでる時は、背骨に触れないように』か…」 サスリサスリ
???「やあ! せ、背中…そんな風にされたら、くすぐったいよお…////」
岡部「次は『アゴと首周りを指先でやさしく』だな…少し顔をあげろよ。」 クイ、コチョコチョ
???「あ…あ…おかべ…おかべぇ…////」 トロン…
岡部「効果は抜群だ。 この黒の絶対零度とやら、かなりの猫スキーと見た。
む? 『眉間を指でグリグリしてやるのも効果的』だと…よし!」 グリグリ
???「痛っ! ちょ、お、岡部!? それは痛い! やめるニャーーー!!」
ドンガラガッシャーーン!
岡部「ぐええーーー!? なぁにをするのだ、クリスティーニャ!!
せっかくご主人様が膝の上で愛でてやってるというのに!」
紅莉栖「う、うるさい! バカ! やりすぎだ!////」 ニャーン♪
紅莉栖「だいたい、@ちゃんねるの片手間に撫でられても嬉しくないんだから!」
岡部「む? 気持ちよくなかったのか?」
紅莉栖「グリグリ以外はすごくよかったけど…//// って、そういう問題じゃない!
私はあんたにご主人様としての自覚を持てと言ってるの!
もっとこう…私を第一に優先して行動するニャ!!」
岡部「だ~~まれ!! ただでさえ貴様に貴重な@ちゃんタイムを妨害されているのだ!
そっちこそ少しは主の立場を考えろ!!」
紅莉栖「岡部、@ちゃんなんかしてないで、私と遊びなさい。」
岡部「ちょっと待ってろ。 今いい所なのだ。」
紅莉栖「む! ふにゃーーーー!!」 カタカタカタ!
岡部「あーーーー!?」
─────────────────────────────
[20]鳳凰院凶真[sage]2010/08/14(土) ID:???
イf簿jp;あlがんgろあ;あp:んgら:nばお;なpん¥:あ
[21]名無し[sage]2010/08/14(土) ID:???
ちょwwwなんぞwwww
[22]名無し[sage]2010/08/14(土) ID:???
包茎院どうしたwwwww
[23]鳳凰院凶真[sage]2010/08/14(土) ID:???
すまない、猫がやった。
[24]名無し[sage]2010/08/14(土) ID:???
ぬこじゃしょうがない
[25]黒の絶対零度[sage]2010/08/14(土) ID:???
ぬこの画像うp!
─────────────────────────────
~【以上、回想終了】~
岡部「お前のおかげで、既に@ちゃんでは『鳳凰院=ぬこ』でネタにされてるんだぞ!
主の名誉に傷付けて、貴様はそれでも使い魔か!?」
紅莉栖「使い魔じゃなくて猫だと言っとろーが! ほら、くやしかったらコレでご主人様らしい事をしなさい!」
岡部「む? これはヘアブラシか?」
紅莉栖「そ、それで私をけ、毛づくろいしろ!////」
岡部「」
シュッシュ シャーシャー
紅莉栖「にゃふ~♪」
岡部「気持ちいいか?」
紅莉栖「ま、まあまあだニャ!////」
岡部「うむ、しかしお前の髪の毛はサラサラで手触りがいいな。
これなら俺がブラッシングする必要なんかないんじゃないか?」
紅莉栖「そ、そんな事ないわよ! これはご主人様の義務なんだから!////」
岡部「そうか…」
紅莉栖「そうよ。」 ピコピコ! フリフリ!
岡部「…・なあ、前から気になってたんだが、その猫耳と尻尾はどうなってるんだ?
手を触れてないのに、勝手にピコピコ、フリフリ動いてるぞ?」
紅莉栖「ああ、これは装着者の脳波を読み取って動くように私が改造して…って、
私は猫なんだから耳と尻尾を動かせるのは当たり前じゃない!」
岡部(才能の無駄遣いすぎるぞ、紅莉栖…・・)
岡部「しかし、夜のクリスティーニャとの生活を始めて、もう一週間か…」
紅莉栖「ふふん! こんな可愛い猫ちゃんがあんた見たいな厨ニ病の
ペットになってやったんだから感謝しなさいよね!」 ピコピコ! ピーン!
岡部「ああ、そうだな…」
紅莉栖「へ?」
岡部「毎晩、お前が夜のラボに居てくれるようになってよかった。
以前は夜になると、一人っきりだった…・・ありがとうな。」
紅莉栖「ふぇ!? そ、そんな…私はただ…岡部の傍にいたかったから…////」 モジモジ
岡部「………」 スウ…
紅莉栖「? 岡部?」
岡部「ひっかかったな、クリスティーーーニャ!! 捕まえたーーー!」 ガシィ!!
紅莉栖「きゃああ!? な、何するの岡部!?」
岡部「無駄だ。 こうがっちりと俺の腕の中に囚われては脱出できまい!
ククク、この鳳凰院凶真が、使い魔の数々の無礼をこのまま許すと思ったか?」
紅莉栖「な、何をする気!?」
岡部「罪には罰に決まっておろう? お前の大嫌いなあれさ…」
紅莉栖「ま、まさか…」 カタカタ…
岡部「そう…」
ゴロン!
岡部「『もふもふの刑』どぅわーーーー!!」
紅莉栖「いやあああーーー!!」
紅莉栖「やだやだ! 『もふもふ』はやだよぉ! お願い、岡部!」
岡部「ファーッハッハッハ! お前は本当にもふもふが嫌いだなあ!!
そんなにあれが不快なのか? んー?」
紅莉栖「…良すぎるからイヤなんだよぉ…////」 ボソ…
岡部「ん? 今なんて言った?」
紅莉栖「な、なんでもない!!//// とにかくアレはやめてよ!
アレされると私、頭の中が真っ白になって、変になっちゃうの!」
岡部「なるほど…それは大変だな…」
岡部「だが断る!!」
紅莉栖「な、なにぃ!?」
岡部「という訳で、もふもふさせろぉぉーーーーーー!!」
モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ!!
紅莉栖「ニャああああーーーーーー!!!!」
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チュンチュン
チュンチュン
紅莉栖「ん…はあ…・朝?」
岡部「ぐ~…」
紅莉栖「岡部…? あれ、私、あのまま寝ちゃったんだ!
いけない、他の皆が来る前に着替えて、ホテルに戻らなきゃ!」
岡部「ん~…クリスティーニャ…」 ムニャ・・
ギュウゥゥ…
紅莉栖「きゃ!? お、岡部! だ、駄目だよ、放して…////」 ゴソゴソ
【シャワールーム】
シャアアアーーーー…・
紅莉栖「ふう…気持ちいい…」
きゅん♪
紅莉栖「う! ま、まだお腹の奥が疼いてる…岡部にもふもふされたから…////」
「あんなに何度も、何度も…激しくするからだよ…岡部のバカ…////」
「本当に…エッチなんだから…////」
※【彼女はもふもふされただけです。】
シュル…キュ…・
紅莉栖「よし、着替え完了。 クリスティーニャから牧瀬紅莉栖にへんし~ん!ってね。」
岡部「ぐ~ぐ~ふご…・」
紅莉栖「おのれ…気持ちよさそうに寝やがって!」 ツンツン!(頬を突っつく)
岡部「ん~~…」
紅莉栖「ゆ、昨夜は私をあんなにメチャクチャにしたくせに…本当に憎ったらしいんだから!!////」 ツンツン!
岡部「ふへへ~…くりす~…」 ムニャムニャ
紅莉栖「まったく…また後でね、愛しいご主人様♪」 チュッ…
カン カン カン(階段を降りる)
紅莉栖「くう~~、朝日が沁みる~~! …ん?」
シャアアーーー! キキィーーー!
???「とうちゃ~~く! あれ?」
紅莉栖「阿万音さん…・」
鈴羽「牧瀬紅莉栖…・」
紅莉栖(ちっ…せっかくいい気分だったのに、嫌な娘に会っちゃった…)
紅莉栖「あら、おはよう阿万音さん。 今日は早いのね。」
鈴羽「心にもない挨拶はしなくていいよ、牧瀬紅莉栖。
君の考えてる事は顔に出てるから。」
紅莉栖「あら、あなたがそんなに空気の読める娘だったなんて意外だわ。」
鈴羽「そりゃあ、私は君以上に、君の本性を知ってるからね。」
紅莉栖「うふふふ…・・」 ゴゴゴゴゴ…!
鈴羽「あはははは…・」 ドドドドド…!
鈴羽「ねえ今、岡部倫太郎のラボから出てきたの…?」
紅莉栖「…・そうよ、昨夜は研究で遅くなったからここに泊まらせてもらったの。 それが何か?」
鈴羽「べっつに~…ただ、あんまり我がままを言って、彼に迷惑をかけないで欲しいな。」 ムス!
紅莉栖(この反応…やっぱりこの娘も岡部のことを…) ギリ…!
紅莉栖「ふふふ…」
鈴羽「!?」
紅莉栖「それなら阿万音さん、お願いなんだけど、今日は岡部を起こしたりせずに
ゆっくり眠らせてあげて欲しいのよ。」
鈴羽「な、何で?」
紅莉栖「彼…昨夜は私の為にいっぱい頑張ってくれたから…疲れてるのよ…・」 クスクス!
鈴羽「そ、それってどういう意味さ!?(何…この牧瀬紅莉栖の勝ち誇った顔は!?)」
紅莉栖「じゃあ、私は一度ホテルに戻るから。 またね、『ただのラボメン』の阿万音さん♪」 スタスタ
鈴羽「あ、ちょっと…何だよ、もう!」
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【時は流れ、お昼ごろの未来ガジェット研究所】
ドン! ドン! ドン!
岡部「む!? 誰だ、ラボのドアを乱暴にノックしおって!?」
まゆり「はーい、どちらさまー?」 ガチャ
ブラウン「おーーかーーべーー!!」
岡部「ひぃ!? Mrブラウン!?」
ブラウン「おう、岡部…ちょいと家捜しさせてもらうぜ!」
岡部「や、家捜し?」
ダル「ちょ!! オタクの部屋を探索とか、マジ勘弁!!」
ブラウン「岡部…俺に何か隠し事をしてねえだろうな…?」
岡部「か、隠し事!? ふ…この鳳凰院凶真は常に周囲に陰謀を張り巡らしているのだ!
無論、あなたの周りにもなMrブラウン! 今さら気付いても、もう遅…」
ブラウン「お前最近、ここで猫を飼ってるだろ?」
岡部「ぶほおおおーーー!?」 ビチャァ!!
まゆり「オカリン!?」
ダル「ドクターペッパー噴いた!?」
ブラウン「その反応は図星だな!!」
ブラウン「近所から苦情がきてるんだよ!
『夜中になると、このビルから猫の鳴き声がしてうるせえ』ってな!
おう、部屋貸す時言ったよなぁ、ペット禁止だって!」
ダル「ぬこ…だと…!?」
まゆり「えー! オカリン、猫さん飼ってるの!?
いいなーいいなー、まゆしぃーにも抱っこさせてー♪」
岡部「(クリスティーニャの声がでかすぎたか!?) ご、誤解だ、Mrブラウン!
おおお、俺は断じて猫科動物など飼ってはいない!!」
ブラウン「ほー、だったら部屋の中を調べてもかまわねえな! 上がらせてもらうぜ!」
ガサゴソ、ガサゴソ
ブラウン「ぬう~~! ガラクタがあるだけで、動物を飼ってる痕跡すらねえ!」
岡部「ご、ご理解いただけたでしょうか…?」
ブラウン「まだだ! お、そこの棚なんて猫を隠すのにちょうどよさそうじゃねえか!」 ガラ!
ダル「ちょ! そこは!!」
ブラウン「何だ、この本? 『ロリきゅ~ぶ』…!? 橋田ぁ…テメェ、綯をこうゆう目で!!」
ダル「違うお!! 僕はYESロリータNOタッチの精神を…ぎゃあああーーーー!!」
まゆり「オカリン、猫さんは本当にいないの? まゆしぃ、猫さんと遊びたかったなあ…」
岡部(問題ない…俺が飼ってるのはクリスティーニャだ…何の問題もないはず!)
チリンチリーーン…
ブラウン「!! おい今、鈴の音が聞こえたぞ! 猫の首輪だな!」
岡部「う…!!」
まゆり「あ、この音は…」
チリーン チリーン
ブラウン「外からか…だんだんこっちに近づいてくるぜ!」
ダル「ち、ちがうお…これは…」
チリーン チリーン
ブラウン「ドアの前…そこだーーーー!!」 ガチャ!
紅莉栖「きゃあ!? 店長さん! どうしたの?」
ブラウン「ま、牧瀬?」
まゆり「紅莉栖ちゃん! トゥトゥルー☆」
紅莉栖「ちょっと、これは何の騒ぎ?」
ブラウン「おい、牧瀬! お前、猫を隠したろ! どこだ!」
紅莉栖「な、何の事ですか?」
ブラウン「恍けるな! 今まで鈴の音が!!」
紅莉栖「それってこれのことですか?」 チリーン
ブラウン「へ…首輪…?」
ブラウン「何でお前が鈴の首輪なんてつけてんだよ!?」
紅莉栖「これは、こういうチョーカーです。」
まゆり「それのおかげでねー、最近は鈴の音が聞こえたら紅莉栖ちゃんが来たってすぐ分かるのです!」
ブラウン「くううーーー! 紛らわしいモンつけやがって!」
岡部「も、もうご理解いただけたでしょうか…?」
ブラウン「ぬう…今日のところは引き下がる!! 覚えてやがれ!!」 バン!
岡部「あーーーー怖かったーーーー!!」
紅莉栖「一体なんだったの…?」
まゆり「あのねーカクカクシカジカー。」
紅莉栖「!!!! そ、それは不思議ねー///」
まゆり「紅莉栖ちゃん、顔が真っ赤だよ?」
紅莉栖「あ、暑さのせいよ!」
ダル「やっぱりブラウン氏にも、そのチョーカーは首輪にしか見えなかったお。
つまり、牧瀬氏は首輪プレイの真っ最中という認識は正義!」
紅莉栖「橋田のHENTAI! これはそんな下品なものじゃないの!(これは私と岡部の絆なんだから!)」
岡部「あー…こほん! と、とにかく俺達の何かしらの行動がMrブラウンに誤解を与えたのは確かだ。
なのでーそのー…しばらくは、誤解を招きそうな行為は慎もうと…考える訳で…」 チラ…
紅莉栖「……」
ダル「そうは言ったって、何が間違ってぬこを飼ってるってことになるん?」
まゆり「あっ! ひょっとしてまゆしぃのうーぱ人形が夜な夜な、鳴き声を上げて…」
ダル「あるあ…ねーよ! 呪いの人形かよ!?」
岡部「おい、やめろ! 呪いとか言うな! 想像しちゃうだろ!」
紅莉栖「怖いの?」
岡部「ファーーッハッハッハ! この鳳凰院凶真が怪談ごときに…」
紅莉栖「ねえ、まゆり。 私の大学に、『首切りジャック』っていう怪談があってね…」
岡部「やめて!!」
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【深夜、未来ガジェット研究所】
岡部「ふう、皆は帰ったか…今日のことでクリスティーニャも来ないだろうし、久しぶりに静かな夜だ。」
岡部「……」 チラ
うーぱ人形「」
岡部「落ち着け、鳳凰院凶真…うーぱの呪いなぞ、あの場のでまかせだ…・
鳴き声の正体はクリスティーニャなのだから…」
うーぱ人形「」
岡部(くっ…! なんだかコイツの目の模様が血の涙に見えてきたぞ…!)
岡部「そういえば、助手が…」
紅莉栖『窓の外を見ると、ナイフを握った首切りジャックが・・・』
岡部「────ッッッ!!」 シャー!(カーテンを閉める)
し~~~~ん…・
岡部「うう…夜のラボってこんなに静かだったのか…
最近はクリスティーニャが騒がしかったから忘れていた…」」
し~~~~ん…・
岡部「……・・」
し~~~~ん…・
岡部「…・ぐす…・」
し~~~~ん…・
岡部「クリスティーニャ…・」
バーーーーン!!
岡部「ひぃ!?」
紅莉栖「お化けだと思った? 残念! クリスティーニャでした!」 ニャ~ン♪
岡部「ク…クリスティーーニャーー! お、驚かせるな!!」
紅莉栖「ゴメンね、怖かった? 泣いちゃった?」
岡部「う…怖くないし…泣いてない!」 グス…
紅莉栖「なら、私は帰った方がいいかニャ?」
岡部「い、いや…せっかく来たのだしゆっくりしていけ…」 ギュ…
紅莉栖(計画通りwwww つかやべぇ! 岡部が可愛すぎ萌え死ぬwwwww////)
紅莉栖「うふふ、もう私と距離を置こうなんて考えちゃダメよ。
さあ、今夜は店長さんに怒られないように静かに遊びましょうね。」
岡部「うん…」
紅莉栖「でも静かな遊びって何があるかな…?」
岡部「そうだな…」
岡部「では、お散歩なんてどうだ?」
紅莉栖「ニャ?」
【深夜の通り】
岡部「いくら秋葉原といえど、この時間ではほとんど人がいないな。」
紅莉栖「う…うう…」 ビクビク ギュウ…
岡部「どぉした、クリスティーニャ? そんなにピッタリくっつかれては歩きにくいではないかぁ?」
紅莉栖「お、岡部ぇ…やっぱり帰ろうよ…ぐす…怖いニャぁ…////」
岡部「クックック…何が怖いのだ?」
紅莉栖「だって…もし、この姿を岡部以外に見られたら…」
岡部「何を言っている? お前が人間に見えるのは俺だけなのだろう?」
紅莉栖「ううう…・!!」
【深夜の公園】
岡部「ふむ、小動物共でにぎやかな公園も夜は静かなものだ。」
紅莉栖「うう…ひぐ…」 ビクビク
岡部「クリスティーニャ、あんまりメソメソしていると置いていくぞ?」
紅莉栖「やだやだぁ!! 一人にしないで、岡部ぇ!!」 ポロポロ…
岡部(ククク…俺を怪談でビビらせた罰だ!)
岡部「む? 前から人が来るな。」
紅莉栖「ええ!?」
通行人A「でさー…・」
通行人B「まじwww」
紅莉栖「ほ、本当に来てる!! どうしよう!? どうしよう!?」 アタフタ!
岡部「ほら、俺の白衣の中に入れ。」 ファサ… ※(着ている白衣を広げる。)
紅莉栖「は、白衣の!?////」
岡部「早く!」
通行人A「─────。」 スタスタ
通行人B「~~~~~wwww」 スタスタ
岡部「……」 ※(紅莉栖を白衣で包むように抱きしめてる)
紅莉栖(お、岡部が私を守ってくれてる…////)
岡部「あいつらは行ったぞ、クリスティーニャ。」 ファサ…
紅莉栖「う、うん…////」 ギュウ・・・
岡部「そんなにしがみ付かなくても、もう大丈夫だ…怖かったか?」
紅莉栖「うん…でも、岡部がいてくれたから平気…////」
岡部「そ、そうか…(な、何だその俺を頼りきった瞳は? ドキドキしてしまうではないか!////)」
紅莉栖「岡部ってさ…イジワルだけど…優しいよね…」
岡部「な!? は、ハーーハッハ! どどどど、どうしたのだ、我が使い魔よ!?
こここ、この鳳凰院凶真が優しいなどと…」
紅莉栖「そうやって…あなたが、私を優しくイジメるから…
私はどんどんあなたから離れられなくなっちゃうんだよ…」
岡部「ク、クリスティーニャ…」 ドキドキ
紅莉栖「岡部…」
ブォン! ズダーーーーーン!!
岡部「………?」
紅莉栖「……・??」
岡部「ク、クリスティーニャ…今、俺達の顔の間を何かがかすめなかったか…?」 チラ…
紅莉栖「そ、そうね…何か…刃物のようなものが…」 チラ…
ビーーーーン! ※(近くの木に深々と突き刺さるナイフ)
岡・栗 「「 ひいいいいーーーー!? 」」
???「あーん、外したー! この時代の生活で腕が堕落しちゃったかな?」
岡部「バ…バイト戦士ーーーー!!??」
鈴羽「やっほー、岡部倫太郎ー♪」
鈴羽「おやおや? 発情した雌猫かと思ったら…?」
紅莉栖「あ…あ…・」 カタカタ
鈴羽「随分と愛らしい格好をしてるね、牧瀬紅莉栖wwwww」 プークスクス!
紅莉栖「にゃあああああーーーーーー!! 見るなーーーー!!!/////」
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【数十分後、未来ガジェット研究所】
鈴羽「ふ~~~ん、一週間も前からこんな事をね~~…・」 ジロリ
岡部(くっ…視線が痛い!)
鈴羽「私は店長に、今夜ラボを見張ってるよう指令を受けてたんだ。
岡部倫太郎が猫を無断で飼っていないか調査するためにね。」
岡部「う…それではまさか…」
鈴羽「君が、あの格好の牧瀬紅莉栖を連れて、外に出てきた時は驚いたなあ。
放心して、声をかけるタイミングを逃しちゃったよ。」
岡部「ううう…・!////」
鈴羽「それでしかたなく尾行したら、君達がやたらベタベタしてるんだもん!
イライラして、思わずナイフ投げちゃった♪」
岡部「『壁殴っちまった』みたいなノリで言うな!」
鈴羽「まあまあ、ちゃんと外したんだしいいじゃん。 ねー牧瀬紅莉栖~?」
紅莉栖「ま、牧瀬紅莉栖って誰ニャ~? クリスティーニャは猫だから分からないニャ~?」 コソコソ
鈴羽「ねえ、彼女さっきから君の後ろに隠れて、何を言ってるの?」
岡部「これ以上、お前に顔を見られたくないのだろう…
意地でも、『クリスティーニャ≠牧瀬紅莉栖』を貫く気だ…」
鈴羽「ふ~~ん…・」
紅莉栖「に…ニャ~ン…・」 ダラダラ(滝汗)
鈴羽「牧瀬紅莉栖のペチャパイ。」 ボソ
紅莉栖「貴様ぁぁーーーー!! 人の身体的欠点をつく悪口は最も悪質な…」
鈴羽「やっほー牧瀬紅莉栖♪」 ニコニコ
紅莉栖「~~~~~っっっ!!??/////」 カアァ~!
岡部「あ~…それでバイト戦士よ。 このことはMrブラウンには…というか
誰にも言わないで欲しいのだが…・」
鈴羽「え~~? せっかく牧瀬紅莉栖をおちょくるネタができたのに…」
紅莉栖「貴様の脳味噌、解剖したろか!?」
岡部「俺達は、動物を飼っていたのではないのだから、Mrブラウンとの契約は違反しないはずだ!
も、もしもこのことをバラしたら、我が魔眼がお前を記憶を強制的に…・」
鈴羽「はいはい、冗談だよ。 店長には上手く誤魔化しとくし、誰にも言わない。
牧瀬紅莉栖のせいで、岡部倫太郎まで笑い者になるのは耐えられないもん。」
紅莉栖「だ、だから私は牧瀬紅莉栖じゃないと言っとろーが!!」
岡部「そうか…恩に着るぞ、鈴羽。」
鈴羽「さて…それじゃあ、私は帰るよ。」
岡部「フハハー! ではこの鳳凰院凶真、自らが送っていってやろう!
クリスティーニャも来るか?」
紅莉栖「留守番してるニャ!!」 プイ!
【深夜の通り】
鈴羽「くふふふ…・!」
岡部「むう…まだ笑ってるのか?」
鈴羽「ごめん、あんな牧瀬紅莉栖の姿を見るとは思わなかったからw
君も彼女に付き合わされて大変だねー。」
岡部「ファーーッハッハッハ! 俺にとってこの世界の森羅万象全てが児戯!
助手風情の遊びに付き合うなぞ造作もないこと!」
鈴羽「おお! さすが岡部倫太郎!」
岡部「ヌアーハッハッハ!! もっと褒め称えるがいい!」
鈴羽「…・ねえ、岡部倫太郎?」
岡部「ん?」
鈴羽「君はさ…ああいう格好をした女の子が好きなの…?」
岡部「ぶほぉ!? 馬鹿を言うな! ダルじゃあるまいし!」
鈴羽「じゃあ…ああいう格好をした牧瀬紅莉栖が好きなの…?」
岡部「んげほぉ!!??////」
岡部「違う!! お、俺はラボの長としてラボメンのクリスティーナの相手をしてやってるだけだ!
そうだバイト戦士よ! お前も俺に頼みたい事があれば何でも言ってみろ!
この鳳凰院凶真がたちどころに叶えてやろう!!」
鈴羽「へえ…それって、君は私を牧瀬紅莉栖と同じくらい大切に思ってるってこと?」
岡部「そうだ!! 俺の前では、クリスティーナもバイト戦士も等しく小者!
俺こそが唯一絶対の存在だのだーーーー!!」
鈴羽「…嘘つき…」 ボソ
岡部「ん? 何か言ったか?」
鈴羽「ん~? 何でもないよ♪」
鈴羽「もうここまででいいよ。 見送ってくれてありがと!」
岡部「む? 一人で大丈夫か?」
鈴羽「大丈夫! 何せ私は戦士だからね!
早く帰ってあげないと、クリスティーニャが癇癪起こすよw」
岡部「う…そうだな…では、気をつけて帰れ」
鈴羽「そうそう、頼みごとは何か考えておくから。」
岡部「金貸せ系のお願いはなしだぞーーー!!」
鈴羽「あははーー! じゃあねーー!」 シャアーー
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【翌日、昼間の未来ガジェット研究所】
チリンチリーン
岡部「む、この鈴の音は助手だな。」
ガチャ
紅莉栖「ハロー」
まゆり「あ、紅莉栖ちゃんトゥットゥルー☆」
ダル「ねえ、牧瀬氏、最近ラボに来るのが遅いけど、何かあるん?」
まゆり「目にもクマができてるね~、まゆしぃは心配なのです…」
紅莉栖「ええと…向こうの研究とかレポートとか、いろいろとね。」
岡部(夜遅くまでクリスティーニャになってるからだろ…)
鈴羽「やっほー皆ー! お邪魔するよー!」
紅莉栖「!!」
岡部「!!」
まゆり「スズさん! トゥットゥルー☆」
ダル「阿万音氏、どうしたん?」
鈴羽「ちょっとね~♪」
岡部(おい、まさかバラしたりしないよな!? 違うよな、鈴羽!?) ダクダク(滝汗)
紅莉栖(言ったら殺す!言ったら殺す!言ったら殺す!言ったら殺す!) ギン!(眼光)
鈴羽「うふふ…実は橋田至にちょっとお願いがね。」
ダル「え? 僕に? 何?」
鈴羽「ここじゃちょっと…外で、二人きりで話したいな。」
ダル「マジ!? 何この話の流れ!? ひょっとしてフラグ立ってる!?」
まゆり「それはないと思うのです♪」
ダル「ですよねー。」
鈴羽「という訳で、ちょっと橋田至を借りるよ。」
ダル「僕はまだいいと言ってないのに!? 阿万音氏、恐ろしい子!」
岡部「バ、バイト戦士! くれぐれも昨夜の事は…!」 ボソボソ
鈴羽「大丈夫だよ、言わないって約束したでしょ?」 ボソボソ
ダル「二人で顔を近づけてボソボソと…これはリア充の香り!?」
岡部「うるさい! さっさと行って来い!」
紅莉栖(もしバレたら橋田もろとも…) ブツブツ
まゆり(紅莉栖ちゃんから強い殺気を感じるのです! 筋肉がうずいちゃうなー♪)
【ブラウン管工房の店先】
鈴羽「実は君に相談したい事があるんだ。」
ダル「なん…だと…? 美少女からの相談事キターーー!!
これ完全に阿万音氏ルートに入ったよね!?」
鈴羽「えっと、何を言ってるかよく分からないけど…相談ごとってのはさ…」
鈴羽「私に…その…ゴニョゴニョ…なお店を案内して欲しいんだよね…////」
ダル「な…・なんだってーー!!」
ダル「何で阿万音氏がそんなお店を!?」
鈴羽「え~とその~…まあ、いろいろあって…///」
ダル「そうは言っても、僕も忙しいからな~(積んだエロゲの処理とか)」
鈴羽「そんな事、言わずにさ! お店だけ教えられても、私じゃ何を買えばいいか分かんないんだ…
ね? お願いだよ、橋田至~…・私を助けると思って!」 ウワメヅカイ
ダル「はうう!!??」 ズキューーン☆
ダル(何だお、この感じ!? 『萌え』とも違う…『恋』とも違う…この暖かい感情は!?
阿万音氏におねだりされたら、何でも言う事聞いてあげたくなったちゃうぅぅーー!) ビクン!ビクン!
鈴羽「どうしたの、橋田至?」
ダル「何でもないお! よーし! 僕、なんでも買ってあげちゃうおーー!」
鈴羽「本当! わーい、ありがとう橋田至ー♪」
ダル「フヒヒヒヒヒwwww」
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【その日の深夜、未来ガジェット研究所】
岡部「今日は結局、ダルとバイト戦士の奴、帰ってこなかったな。」
紅莉栖「むー…岡部は阿万音さんの事がそんなに気になるのかニャ?」 ニャ~ン♪
岡部「当然だろう。 奴は大事なラボメンの一人だからな。」
紅莉栖「はむ!」 ガブ!
岡部「痛てて!! 指を噛むな!」
紅莉栖「今夜はね…岡部の体中に私の歯形をつけてあげる…
その傷が疼くたびに私の事を思い出すようにしてあげる…」 ペロ…
岡部「や、やめろ! クリスティーニャ!」
紅莉栖「大丈夫…服の下に隠れるようにつけるから…はむ!」 ガリ!
岡部「ふあぁ!////」
紅莉栖「あれ~? 今、気持ちよさそうな声が出たね? ひょっとして岡部、噛まれて感じちゃってる?」 クスクス…
岡部「ち…違う…俺は…////」
紅莉栖「ふふふ…感じさせてあげるよ…岡部…
あの女の事なんか、脳内から消し去ってあげる…!」
???「ちょっと待ったーーーー!!」
.
バーーーーーーーン
???「やっほーーーー!!」
岡部「え?」
紅莉栖「ふぇ?」
???「岡部倫太郎! こんばんわーーーん!!」
岡部「なななな!?」
紅莉栖「あ…あ…阿万音さん!?」
鈴羽「わんわんわーーーん♪」 ピコピコ! フリフリ!
紅莉栖「ああああ、阿万音さん!?」
岡部「バイト戦士!? なんだ、その格好は!?」
鈴羽「えへへー、似合う? メイドさんだよー! 橋田至と専門のお店で買ったんだ!
何とかってアニメのキャラのコスなんだって。
鈴羽「スカート短いし、胸の谷間も見えちゃってて恥ずかしいけど…////」
紅莉栖「何であなたが猫耳メイドに!?」
鈴羽「チッ!チッ!チ! よく見てよ、この耳と尻尾を!」
岡部「む…クリスティーニャの物より、毛がフサフサしてる。
それにこのクルンと短く、丸まった尻尾はまさか…」
鈴羽「そう、これは犬耳、犬尻尾!! 私は迷子の野良犬、鈴ワンだワン♪」
紅莉栖「な、何よそれ! 人間なのに犬とか馬鹿なの!? 死ぬの!?」
鈴羽「君がそれを言うの、牧瀬紅莉栖? いや、今はクリスティーニャか。」
岡部「バイト戦士! 一体何のつもりだ!?」
鈴羽「違う、違う、鈴ワンだってば!」
岡部「もう、何が何だか分からない…」
鈴羽「あはは! 簡単な事だよ!」
鈴羽「岡部倫太郎は、私の願いを何でも聞いてくれるんだよね?」
岡部「あ、ああ…金を貸して系以外ならな。」
鈴羽「ならお願いなんだけど…私を…その…」
鈴羽「岡部倫太郎の犬にしてください!!」
岡部「」
紅莉栖「んな…・!?」
鈴羽「だ、駄目かな?////」
紅莉栖「駄目!ダメ!だめ! ぜーーったいだめーーー!! そんなの許さないんだからーー!」
鈴羽「クリスティーニャには聞いてないよ。 これは岡部倫太郎が決めることだよ。」
紅莉栖「あり得ないわよね、岡部!? あんたにはもう私がいるんだから!!」
岡部「もしもし…ああ、俺だ…今、機関からの攻撃を受けている!…・
未だかつてないほどの精神攻撃だ…さすがの俺も、今回はダメかもしれん…」
紅莉栖・鈴羽 「「 現実逃避、禁止!! 」」
岡部「あー、えーと…バイト戦士よ!」
鈴羽「鈴ワン!!」 ガルル!
岡部「す…鈴ワンよ…」
鈴羽「わんわん♪」
岡部「き、貴様…何故、俺の犬などになりたいのだ…?」
鈴羽「君に可愛がって欲しいからだよ!」 キリ!
岡部「な、何だそれは!?」
紅莉栖「ダメーー! 岡部に可愛がられるのは私だけなのーー!!」
岡部「ク、クリスティーニャは少し黙ってろ!////」
鈴羽「や、やっぱり…ダメ…?」
岡部「まあ、その…・」
鈴羽「そ、そうだよね! こんな素性の知れない変な犬なんて嫌だよね!
ご…ごめんね…ぐす…変なこと言っちゃって…もう二度と…ひっく…君の前には…」 ポロポロ…
岡部「い!? いやいやいや!! そんな事はないぞ! この鳳凰院凶真が貴様の主となってやろう!!」
鈴羽「あっそう♪ わーい、やったワーン!」 ケロリ
岡部(は、嵌められたああーーーー!!)
紅莉栖「おーーーかーーーべーーーー!!」
岡部「ク、クリスティーニャ!? す、すまん! だが今のはしょうがないだろう!?」
紅莉栖「うるさい! うるさい! このHENTAI!! その根性を引っ掻き直してやるーーー!」 グワ!
岡部「ひいぃぃーー!!」
鈴羽「おっと!!」 ガシ!
紅莉栖「ふぇ?」 グルン!
ポーーイ! ドスン!
紅莉栖「ふみゃーーー!?」
鈴羽「ごめんね~、ご主人様をお守りするのが犬の役目だから♪
岡部「クリスティーーニャーー!?」
岡部「す、鈴ワン!? 今、クリスティーニャが宙を舞ったぞ!?」
鈴羽「大丈夫。 ちゃんと怪我しないように手加減したし、落ちたのだってソファーの上だろ?」
紅莉栖「うううう…・許さーーーーーん!」 キシャーー!
岡部「よ、よせ! お前が太刀打ちできる相手じゃない!」
鈴羽「そーそー、猫が犬に勝てるかっていうの。」
紅莉栖「ぬぐぐぐ…!!」
岡部「ええい、お前ら喧嘩はやめろ!」
鈴羽「ねえ、岡部倫太郎。 そんな乱暴な猫はほっといて私と遊ぼうよ!」 ギュウ! ムニムニ
岡部「うひゃあ!? こら、鈴ワン! む、胸が当たってるぞ!?////」
鈴羽「やだなぁ、当ててるんだよ。」 ムニュムニュ
岡部「ぬおおお~~!?////」
紅莉栖「岡部から離れろ、この発情犬! ほら、岡部! おっぱいなら私のがあるからこっちに来なさい!」 グリグリ
岡部「クリスティーニャ、肋骨を擦り付けるな。 痛いぞ。」
紅莉栖「キシャーー!」 ガリガリ!
岡部「ぎゃーーーー! 顔を引っ掻くな!」
鈴羽「大変! 顔に引っ掻き傷が! じっとしてて!」 グイ!
岡部「な、何をする、すz…・」
鈴羽「ん…」
ペロン…
岡部「ひやあ!?」
鈴羽「ん…ぴちゃ…ちゅう…・」
ペロ ペロ ペロ ペロ ペロ
岡部「うは…ひあぁ!? す、鈴ワン…!?」
鈴羽「ちゅぱ…どう? まだ痛む?」
岡部「お、お前、今、俺の顔を…!?」
鈴羽「だって…傷が痛そうだったか…い、いやだった…?」
岡部「いや…おかげで痛みは消えたが、俺の顔など舐めては汚いだろ?」
鈴羽「そんな事ないよ! ご主人様の顔を舐めさせてもらうのは犬にとって最高のご褒美だよ!
き、君が許してくれるなら、もっとペロペロしたいな…////」
岡部「鈴ワン…////」
紅莉栖「ぐぬぬ…」
鈴羽「ふふ…怖い猫さんが睨んでるから、この辺にしとこっか?
よーし! それじゃあ、さらに私の忠犬っぷりを見せちゃおうかな!
岡部倫太郎、何か私に命令してみて!」
岡部「命令?」
鈴羽「何でもいいよー 私は、我侭な猫とは違って、ご主人様に服従するワンちゃんだからねー。」
岡部「ふ、服従…////!?」
紅莉栖「岡部のHENTAI!!]
岡部「へ、変な想像をするな、ヴァージンキャット!
鈴羽「ほら、はやくー♪」
岡部「え、えーと…『お手?』」
鈴羽「わん♪」 ポフ!
岡部「…・いや、本当にするなよ!」
鈴羽「君が命令したんじゃないか。」
岡部「じゃあ…・『おまわり』?」
鈴羽「わんわん♪」 クルクル!
岡部「ぬお!? ストップ!! スカートが広がってパンツが…////」
鈴羽「『チンチン』もしようか?」 くぱぁ…(チンチンのポーズ)
岡部「ぶほぉ!?(鼻血) 女の子がそんな下品なポーズをするな!」
紅莉栖「ぐす…岡部ぇ…私もパンツあるよ…だから私を見てよぉ…」 ピラ!
岡部「おぶほぉ!?(鼻血) 涙目でスカートをたくし上げるな、クリスティーニャ!」
鈴羽「ね?ね? 私、ちゃんと言う事聞くでしょ?」
岡部「聞きすぎるくらいだ!」
鈴羽「えへへー♪ 私、偉いかな?」
岡部「ああ、偉い偉い…・」
鈴羽「 ジー…・ 」 キラキラ!
岡部「ん?(何か期待に満ちた目で俺を見ている?)」
鈴羽「 ジーーーーー…・ 」 ワクワク!
岡部「どうした、鈴ワン?」
鈴羽「あのさ! 言う事を聞いた、賢いワンちゃんにしてあげることがあるでしょ?」
岡部「え? えーと…ドクペでも飲むか?」
鈴羽「ちがーーーう!! 『なでなで』だよ!!」
岡部「『なでなで』だとぉ!?」
鈴羽「ご主人様は、ワンちゃんに『えらいぞー』『いい子いい子ー』ってをなでなでしなきゃいけないの!
紅莉栖「だめ! 岡部になでなでされていいのは私だけなの!!」
鈴羽「だらかそれを決めるのはご主人様だって。 ほら、やってやってやって~~!」 ジタバタ
岡部「くっ・・分かった! や、やるから騒ぐな!」
紅莉栖「そんな…!!」
岡部「え、偉いぞ鈴ワン~…いい子いい子~…」
なでなでなで…・
鈴羽「わふ…・♪////」 パタパタ!
岡部「鈴ワンの髪の毛は、ポヤポヤして気持ちいいな…触っていると心が安らぐ…」
鈴羽「わーい、岡部倫太郎に褒められたー♪」 ブンブン!
岡部「お前の犬耳と尻尾も本物みたいに動くんだな…」
鈴羽「私の感情どおりに動くよう、橋田至が作ってくれたの! 『やっぱ獣耳は動いてこそっしょ!』って!」
岡部「尻尾を振るってことは嬉しいのか、鈴ワン?」
鈴羽「うん、ご主人様に褒められる事は、犬のしふくだからね!」
岡部(私服?…ああ、至福か。)
鈴羽「ねえ、もっとなでてもらってもいいかな…?////」
ミレニアム・ハンド
岡部「ふ…よかろう。 我が『至福千年の手』をとくと味わえい!」
鈴羽「わー! ありがとう! それじゃあ…・」
ゴロン!
鈴羽「今度は私の体を撫でてくれるかな…?」
岡部「ぶーーーー!?」
紅莉栖「…・・」 プルプル…
岡部「鈴ワン!? ど、どうして急に仰向けに!?」
鈴羽「だから~、今度は私の体を君に撫でて欲しいんだよ~」
岡部「ななななな!?」
鈴羽「頭だけじゃ物足りないよぉ…私の全てでご主人様を感じたいの…////」
岡部「いやいやいやいや!」
鈴羽「自分で言うのも何だけど…結構、さわり心地がいいと思うよ? 私の体。////」
岡部「ぬおおおーーーーー!?」
岡部(た、確かにクリスティーニャより、全体的に肉付きが良くて女らしい肉体…って俺は何を考えている!)
鈴羽「ほらほら、遠慮することないって! 私は君の犬なんだよ、君のものなんだよ?
つまりこのおっぱいやお尻も君が好きに触っていいんだよ~♪」 タユン!
岡部「や、やめんか! この発情犬!」
鈴羽「あれ~? 岡部倫太郎って意外と臆病なんだね?」
岡部「な、何だと!?」
鈴羽「だってそうじゃん。 自分の飼い犬の体に触れるのもビビるなんて。
狂気のマッドサイエンティストが呆れちゃうなー。」
岡部「べ、別にビビってなどおらん!」
鈴羽「強がらなくていいよ、震えてるクセに。」 クス
岡部「な…なめるなよ、犬風情がーーー!! この鳳凰院凶真の実力、見せてくれるわーー!」
グワッ!!
モニュン♪
鈴羽「きゃうん!?////」
岡部「あ…・!?」
岡部「あ…あ…」
鈴羽「ん…////」
モニュモニュモニュ…
鈴羽「はう! い、いきなり…そんな強く…・だめぇ…!////」
岡部(思わず胸をわし掴みにしてしまったぁぁぁ----!!) ギュウウ!
鈴羽「ふあぁぁ!?////」 ビクン!ビクン!
岡部「しまった!? 驚いてさらに強く握ってしまった!」
紅莉栖「」
鈴羽「お…岡部倫太郎…・////」 トロン…
岡部「す、すまん、鈴ワン…その…」
鈴羽「あ、謝らないで…私は全然、嫌じゃないよ…////」
岡部「す、鈴ワン…////」
紅莉栖「もういや!!!」
岡部「!?」
岡部「ど、どうした? クリスt」
紅莉栖「何よ! 何よ! 岡部ったら鈴ワンばっかり構って!!
そんな後から来た奴より、私を可愛がりなさいよ!!」
岡部「お、落ち着け、クリスティーニャ!」
鈴羽「ペットのジェラシーかい? みっともないよ。」
紅莉栖「何ですって!?」
鈴羽「君が岡部倫太郎に遊んでもらえないのは、魅力がないからでしょ?」
紅莉栖「うう…うううう…・!!!」
岡部「ク、クリs」
紅莉栖「岡部の馬鹿ぁ!! 大っ嫌い!!」 ダッ! バーン!
岡部「ま、待て、クリスティーニャ…紅莉栖ぅぅぅぅーーーーーーー!!!!」
- - -- ── ────────────────── ── -- - -
- - -- ── ──────────── ── -- - -
- - -- ─ ── ─ -- - -
- - - - -
【深夜、秋葉原の通り】
紅莉栖「ぐす…おかべのばかぁ…ひぐ…!」 トボトボ…
「ううう…・わたしより、すずわんのほうが…いいんだぁ…!」
「おかべ…おかべぇ…・」 グスグス…
???「あっれーwwwwちょっwww何アレwwww?」
紅莉栖「ふぇ…?」
DQN1「彼女wwwwその格好なにwwww?」
DQN2「すっげwwwwさすがアキバwwww夜中でもモエ~かよwwww!」
紅莉栖「あ! いえ、これは…その…!////」
(しまったぁ!! 勢いで飛び出しちゃって、周囲を気にしてなかった!)
DQN1「つかwwww彼女エロすぎじゃねwwwwスカート短すぎwwwwパンツちらちら見えてるしwwww」
DQN2「これ誘ってるっしょwwwww誘ってるっしょwwwww」
紅莉栖「ち、違います!」
やめてください
DQN1「これ首輪?wwwwwひょっとしてSMプレイ?wwwww」 ヒョイ
紅莉栖「!! 駄目! これに触らないで!」 バシ!
DQN1「痛ってwwwwこいつ俺の手叩きやがったwwwwカッチーーーン☆ときたわwwww」
DQN2「どうする?wwwww犯っちゃう?wwwww犯っちゃう?wwwww」
紅莉栖(こ、こいつら、なんかヤバイ! 逃げないと!)
DQN3「おっと逃がさねーよ…」 ガシ!
紅莉栖「きゃあ!」
DQN1「あっwwwwDQN3先輩wwwwチョリーーッスwwww」
紅莉栖「何するの!? 放して!」
DQN3「今日はきめぇオタクを狩りに来てたんだが、いい獲物がいなくてイラついてたんだよ…
クックック…もう帰ろうと思ってたトコに、こんな上玉が飛び込んでくるとはなあ…」
DQN1「先輩wwww犯っちゃいます?wwww犯っちゃいます?wwww」
DQN2「犯りましょうよwwww俺、さっきからチ○コ勃っちゃてるもんwwwww」
紅莉栖「い、いやぁ! 誰か助け…」
DQN3「騒ぐんじゃねえ! おい、口に布詰めろ!」
DQN1「チョリーーッスwwww」
紅莉栖「む…むぐぅ…!!」 ジタバタ!
DQN2「よっしゃwwwwそこの路地裏に連れ込もうぜwwww」
DQN3「おう、最初は俺が挿れっからな!」 カチャカチャ…ポロン!
DQN1「(先輩、チ○コちっちぇwwww) 俺2番目でお願いしマースwwww」
紅莉栖「んんーーー!!(やだ! やだぁ!! 助けて! 助けて岡部ぇ!!)」
???「わん、わん、わわーん♪ 迷子の子猫ちゃんはここですかー?」
紅莉栖「むぐ!?」
DQN3「だ、誰だ!?」
鈴羽「やっほークリスティーニャ。」
紅莉栖「むーー!」
DQN3「ああん? なんだコイツは!?」
DQN1「ちょwwwww増えたwwwww」
DQN2「犬耳とかwwwwwつかオッパイでけぇwwww」
1cmって すげー!
鈴羽「あー、君達、君達? 悪いけどその娘を返してくれるかな?
私は別にどうでもいいんだけど、私のご主人様が悲しむんだよ。」
DQN1「ごwwww主wwww人wwww様wwwwとwwwwかwwww」
DQN2「オッパイでけぇwwwwオッパイでけぇwwww」
DQN3「この女のお友達かぁ!? ちょうどいい、3人に1人じゃ物足りなねえ!
おい、あの犬女もこっちに連れて来い!」
紅莉栖「んーー!(ダメ! 逃げて!)」
鈴羽「…あのさ、私は今、最高に機嫌が悪いんだよね…早く消えないと噛み殺すよ…?」
ぶっちゃけ、作り手の悪意を感じるほどにw
DQN1「機嫌悪いのwwwwwアノ日?wwww大丈夫、俺らがハッピーにしてあげるwwww」
DQN2「オッパイでけえwwwwオッパイでけぇwwwww揉ませろwwwww」 ズイ!(手を伸ばす)
鈴羽「はあ…・・」
ゴキン!
DQN2「ギャあああああーーーーーー!!!!!」
DQN1「え?」
鈴羽「大げさだなあ…腕の骨、へし折ったくらいで…」
DQN1「てめえええーーーーよくも俺のマブダチをおおおーーー!!」
鈴羽「うざい…」 ブン!
ボクシャ!!
DQN1「ごべぇ!?」
鈴羽「あ、ごめん。 アゴ砕いちゃった。」
紅莉栖「むむ!(す、すごい!)」
DQN3「ひいいいーー! お前ナニモンだよ!?」
鈴羽「私? 私は忠犬、鈴ワンだわん♪」
DQN3「ふ…ふざけやがって! ぶっ殺してやんよ!」 ジャキーン!
紅莉栖「ふぐ!?(ナイフ!?)」
鈴羽「やめなよ、刃物なんて出されたら手加減できないよ?」
DQN3「オラーーーー!!」 ヒュ!
鈴羽「よっと。」
ズドン! グシャア!
DQN3「あ…・」
鈴羽「男って大変だねー、こんな柔らかくて脆い急所がぶら下がってて♪」
紅莉栖「はひゅ…!?(き…金…蹴り…!?////)」
DQN3「アッーーーーーーーーーーー!!!!!」
鈴羽「はい、おっわりー。 立てる、クリスティーニャ?」
紅莉栖「ん…ぺっ! ごほごほ! うん…ねえ、アレって…?」
DQN3「」 ビクン! ビクン!
鈴羽「うん、蹴り潰しちゃった♪ まあ、死にはしないでしょ。」
紅莉栖「同情したくないけど、同情しちゃうわ…」
鈴羽「ところで~助けてもらったお礼はないのかな?」
紅莉栖「…・ありがとう、おかげで助かったわ。」
鈴羽「どういたしまして。 あんまり感情が篭ってない気がするけど、気にしないであげるよ~」
紅莉栖「……それじゃあ。」 スタスタ
鈴羽「ちょっと、どこに行くの? そっちはラボとは反対方向だよ?」
紅莉栖「あなたには関係ないでしょ!」
鈴羽「君の行き先なんて興味ないけど、岡部倫太郎が君を探してるんだよね。」
紅莉栖「だったら、あなたが行って慰めてあげればいいでしょ!!」
鈴羽「…・聞こえなかった? 彼は君を探してるの。」
紅莉栖「関係ない! あいつは私より、あんたがお気に入りなんだから!」
鈴羽「それ…本気で言ってるの…?」
紅莉栖「そうよ! だからもう私に関わらないで! これ以上、私を惨めにしないでよ!!」
パチンッ!
紅莉栖「痛ぅっ!?」
鈴羽「……」
紅莉栖「何すんのよ!?」
鈴羽「勝手な事…言うなよ…」
紅莉栖「え…?」
鈴羽「彼の気持ちも知らないで勝手な事を言うな!!」
紅莉栖「ッ!?」 ビクッ!
鈴羽「岡部倫太郎の奴さ…君が出て行った時、すぐに後を追って飛び出したんだよ…
でも慌てていたから、階段でつまづいて転がり落ちて…それで足を挫いて…」
紅莉栖「えっ!?」
鈴羽「でも彼、足が痛むのも構わずに、君の後を追いかけてさ…
私が『動いちゃダメ!』『手当てしなきゃ!』って言っても聞かないで…
君を見失った後も…必死に君の名前を呼んで、足を引き釣りながら走り回って…」
紅莉栖「そんな…」
ヘタリンじゃなかったんだ…
鈴羽「彼ね…私の肩を掴んで、必死に頼むんだよ…
『紅莉栖を探してくれ! 俺はあいつに謝らなければ…!』ってね…」
鈴羽「悔しかったなぁ…・なんで君なんかが、彼にこんなに愛されてるんだろうって…!
分かる?…『ただのラボメン』の私とは訳が違うんだよ…?」 ギリ…!
鈴羽「当然だよね…私は君みたいに綺麗じゃない…女の子らしくないもん…
オシャレなんか何も知らない…私が知ってるのは、人の殴り方…銃の撃ち方…ナイフの使い方…
どうやれば好きな人が私を見てくれるかなんて…全然分かんない!!」
鈴羽「分かんないから…彼に一番好かれてる…君の真似をするしかないじゃないか!!」
紅莉栖「阿万音さん…」
鈴羽「やめて! 何も言わないで! 今は全部言わせて!」
紅莉栖「…・・」
鈴羽「それで…その結果がこれだよ…私が来たせいで彼に怪我をさせて…
君を危険にさらして…私、最低だよ…惨めなのは私の方だよ…」
鈴羽「ぐす…はあ~…悪かったね、迷惑をかけちゃって…
岡部倫太郎はこの先の道にいるはずだよ。 ほれ、行ってあげな。」
紅莉栖「阿万音さん…あなたは…?」
鈴羽「さっき君も言ってたよね…これ以上、私を惨めにしないで…」
紅莉栖「う…」
鈴羽「ほれほれ、早くしな。 さもないとお尻に噛み付いてでも行かせるよ?」 (「・ω・)「ガオー
紅莉栖「ごめんなさい…」 ダッ!
鈴羽「ふふふ…私って馬鹿だね…父さん…」
【人通りのない道】
岡部「紅莉栖ーー! どこだ、紅莉栖!
くそ…せめて両足が動けば…どこに行ったんだ、紅莉栖…」 ズルズル
チリンチリーーン…
岡部「この鈴の音は!?」
紅莉栖「岡部!」 タッタッタ!
岡部「紅莉栖!? 紅莉栖ーーー!!」
ガシっ!!
岡部「よかった…紅莉栖…!」 ギュウ…!
紅莉栖「ごめんね…岡部…ごめんね…私のせいで、こんなにボロボロになって…」 ギュウウ…
岡部「すまなかった、紅莉栖…お前を悲しませて…俺はご主人様失格だ…」
紅莉栖「ううん…私が岡部を信じなかったのが悪いの…」
岡部「俺を許してくれるのか…?」
紅莉栖「許すなんて…私こそ、これからも岡部の猫でいていいの…?」
岡部「もちろんだ。 紅莉栖は俺の猫だ…俺だけの使い魔だ…だからどこにも行くな…」
紅莉栖「うん! 私も岡部のそばを二度と離れない!!」
???「…・・」
岡部(はっ!…あそこの影から見ているのは…!?)
???「……」 スゥ…
岡部「待て!! 鈴羽!」
鈴羽「!?」 ビクゥ!
岡部「どこに行く気だ、鈴羽! まさかこのまま、いなくなるつもりじゃないだろうな!?」
鈴羽「……」
岡部「お前、紅莉栖を探してる時ずっと申し訳なさそうにしてたからな…
ほら、そんな所にいないで、こっちにおいで。」
鈴羽「駄目だよ…私はそこに行く資格なんてない…私は君に必要ないもん…」
岡部「バカヤロウーーー!!」
鈴羽「わふ!?」 ビク!
岡部「資格がどうとか…必要がどうとか…そんなのは飼い主の俺が決めることだ!
お前は言った筈だぞ! 犬はご主人様の命令に服従すると!
俺はお前がいなくなるなど認めない!! お前も俺のそばにいろ!」
鈴羽「でも…でも…私…」
紅莉栖「鈴ワン! 岡部の命令よ! 早くこっちに来なさい!」
鈴羽「牧瀬紅莉栖…?」
紅莉栖「私達は岡部のペットよ。 ペットの役目は…ご主人様の望みを叶えることでしょ?」
鈴羽「~~~~っっ!! うん!!」 ダッ!
鈴羽「岡部倫太郎!!」 ギュウ!
岡部「鈴羽…」 ギュウ…
鈴羽「私、岡部倫太郎の一番になれなくてもいい…
二番目でも三番目でもいい…だから君のそばにいさせて…!」
紅莉栖「岡部! ご主人様として、ちゃんと私達を愛しなさいよね!」
岡部「ファーーハッハッハ! 誰に物を言っている!? 俺は狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真!
使い魔達の世話は責任を持ってやり抜こうではないか!!」
岡部「さあ、紅莉栖! 鈴羽!」
紅莉栖・鈴羽 「「 違う!! 」」
紅莉栖「私はクリスティーニャで!」
鈴羽「私は鈴ワンだわん♪」
岡部「そうだったな。 クリスティーニャ、鈴ワン! 帰ろう…俺達のラボへ!!」
- - -- ── ────────────────── ── -- - -
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- - - - -
【数日後の昼、未来ガジェット研究所】
ドン! ドン! ドン!
岡部「む!? 誰だ、ラボのドアを乱暴にノックしおって!?」
まゆり「はーい、どちらさまー?」 ガチャ
ブラウン「おーーかーーべーー!!」
岡部「ひぃ!? Mrブラウン!?」
ブラウン「おう、岡部…ちょいと家捜しさせてもらうぜ!」
岡部「や、家捜し?」
ダル「おい! この展開、前に見たことあるぞ!」
紅莉栖「今度は何事なの、店長さん?」
ブラウン「どうしたもこうしたもねえ! またご近所から苦情が来たんだよ!
最近、夜中になると猫に加え、犬の鳴き声までするようになったってな!」
岡・栗「「 んぼほぉ!? 」」 ブシャアア!
まゆり「オカリン!? 紅莉栖ちゃん!?」
ダル「二人してドクペ吹いた!?」
ブラウン「おらぁ吐け!? 猫と犬っころはどこにいる!?」
岡部「ご、誤解だ、Mrブラウン!!」
鈴羽「そーだよ、店長。 何もいないって私が報告したじゃん。」
岡部「あっ! 鈴羽!」
ブラウン「うるせえ! 現に苦情が来てるんだよ! お前がいい加減な報告するからだぞ!」
鈴羽「でもこのラボには動物の毛一本落ちてないよ?
その苦情を言ってきた人が何か勘違いしてるんじゃないの?」
ブラウン「ぬ~~…・ん? バイト、お前その首輪は何だ?」
鈴羽「首輪じゃなくてチョーカーだよ。 私だってオシャレくらいするんだよ。」
ブラウン「牧瀬の奴といい、最近はそういうのが流行ってるのか?
若けー奴らのファッションはさっぱりわからねえ…」
岡部「そ、そーなのですよ、Mrブラウン~…」
紅莉栖「おほほほ…・」
ダル(あれ? 何故だろう…今、オカリンにガチの殺意が湧いたお…)
岡部(くっ…やはり声が漏れていたか…お前らが大声出すからだぞ!) ヒソヒソ…
紅莉栖(な、何言ってるの! あんたが…その…激しくするからじゃない!////) ヒソヒソ…
鈴羽(そうだよ! あの『もふもふの刑』が悪いんだ!
あれをされると理性が飛んで、声を抑えられないんだよ!////) ヒソヒソ…
まゆり「む~、オカリンが何かまゆしぃに隠し事をしてるのです!」 ムキムキ
ブラウン「岡部ぇ…何を隠してやがる…!」 ボキボキ!
ダル「オカリン、ラジ館の屋上に行こうぜ…何故か分からないけど、キレちまったよ…!」 ゴゴゴゴ…
岡部「いや…これは…その…!!」
紅莉栖「ふふふ…岡部…」
鈴羽「岡部倫太郎…」
「「 今夜も私達を可愛がってね♪ 」」
【おわり】
最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました。
乙
Entry ⇒ 2012.09.20 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
岡部「なぜ泣いているのだ?」
クリア後の話なのでネタバレ注意です
紅莉栖「し、シュタインズゲート?何ですかそれ」
岡部「…気にする必要はない」
紅莉栖「はぁ…あ、あの、これから時間あります?助けてくれたお礼がしたいのですが…」
岡部「礼はいい」
紅莉栖「でも」
岡部「…いいんだ」
紅莉栖「…」
紅莉栖「…ここで話しても仕方ないですね」
紅莉栖「とりあえずどこか落ち着いて話せる所に行きませんか?聞きたいこともありますし」
岡部「わ、分かった」
紅莉栖「この街にもこんなカフェがあったんですね」
岡部「…」
紅莉栖「さて、色々聞きたいんですけど改めまして」
紅莉栖「本当に、本当にありがとうございました」
岡部「…無事でよかった」
岡部「…本当に」
紅莉栖「…ラジオ会館でも貴方は私を知っているようだった」
紅莉栖「どうして、助けられたんですか?」
紅莉栖「あんな誰も来ないような部屋で、武器まで持って」
岡部「それは…」
岡部「…言えない」
岡部(だが俺は、それでもあんな記憶を紅莉栖に思い出させたく無い)
岡部(俺が紅莉栖を…)
紅莉栖「…そうですか」
岡部「…意外だな、もっと問い詰めてくるものだと思ったが」
紅莉栖「そりゃあ気になりますよ、本当は」
紅莉栖「命の恩人である貴方が言いたくないのなら、無理に聞く訳にもいかないでしょう?」
岡部「済まない、これだけは話す訳にはいかないのでな」
紅莉栖「…どうして」
岡部「ん?」
紅莉栖「どうして泣いているんですか?」
岡部「…え」ポロポロ
紅莉栖「ふふっ、目。真っ赤ですよ、おかしな人」
岡部「なっ、…ふ、フゥーハハハハハ!!貴様、先程までしおらしかったのにとうとう本当の正体を現したな、セレセブめ!」
紅莉栖「セレセブ違う!!」
紅莉栖「…あれっ?」
岡部「!!」
紅莉栖「何だろう、やっぱり何か忘れているような…」
岡部「な、何でもない、忘れろ」
岡部(前の記憶を取り戻しつつあるのは嬉しい)
岡部(だが、やはりあんな辛い記憶は思い出させたく無い…)
岡部(紅莉栖は無事で、目の前にいる)
岡部(それで十分ではないか…)
ダル「オカリンもすっかり厨二病抜けちゃったなー、違和感すげぇお」
岡部「もうそんな歳でもないからな」
紅莉栖「厨二病ってあのフゥーハハハって叫びながら痛いキャラ演じる奴?」
まゆり「えっへへー、オカリンはオカリンだけどねぇ、実はマッド
岡部「まゆり、言わなくていい。あと紅莉栖も痛いとか言うな!」
岡部「それに…もうまゆりも、人質卒業だしな」
まゆり「んー?」
岡部(…それもあるが)
岡部(厨二を演じる事で思い出されても困るからな)
岡部(ラボに行きたがる紅莉栖に冷や冷やしたが、記憶は戻っていないようで安心した)
岡部「こんな所に呼び出してどうした?紅莉栖」
紅莉栖「あ、あのね、その…」
紅莉栖「あ、あんたとの付き合いも長いでしょ?だから、えっと、えーっと、んんー…」モジモジ
岡部「おーい、なんだその変な踊りは」
紅莉栖「ちゃかすな岡部のバカッ!」
岡部「き、今日は暑いから早くして欲しいのだが」
紅莉栖「ああもうムードのない男ねっ!!…あ、あんたが」
紅莉栖「あんたが好きなのよ!!もうどうしようもなくっ!」
岡部「!!!」
紅莉栖「だ、黙ってないでなんとか言いなさいよっ!」
岡部「…」
岡部(俺に幸せになる資格が…あるのか?)
岡部(見殺しにし、自分の手で殺しておいて)
岡部(俺に…)
岡部(だが…)
岡部「…紅莉栖」
紅莉栖「はっ、はひっ!!」
岡部「お前から言わせて済まなかったな」
岡部「紅莉栖、好きだ」
紅莉栖「っ、!!」
岡部(今目の前にいる紅莉栖を悲しませたくは…ない)
紅莉栖「…ぉ、ぉかべ」
紅莉栖「ちゅ、ちゅうとか、して、しても、いいんだからな?」
紅莉栖「ぁぁもう何言っちゃってんだろ私、もう恥ずかしい…」ブツブツ
岡部「紅莉栖、すまない…」
岡部「それだけは…それだけは出来ないんだ…」
紅莉栖「え…」
岡部「いや、違う、もちろんお前とき、キスはしたいに決まっている」
紅莉栖「…もしかして口臭気にしてたり?」
岡部「ち、違う!…兎に角だ。俺は、お前とキスは出来ない。…駄目か?」
紅莉栖「う、ううん、岡部がそういうんだったら仕方ないかなっ、て…」
岡部「紅莉栖…」ギュッ
紅莉栖「ひゃっ///」
紅莉栖「…い、今ので許す」
岡部「…ありがとう」
紅莉栖「ん、むぅ…もう朝?」
岡部「zzz」
紅莉栖「倫太郎は…まだ寝てるか」
紅莉栖「…可愛い顔しちゃって」
紅莉栖「…」
紅莉栖(倫太郎は未だにキス、してくれない)
紅莉栖(別に平気、だけど)
紅莉栖「やっぱり寂しいや…」
紅莉栖「…ごめんね、一回だけ、約束事破らせて」
紅莉栖「倫太郎…」チュッ
岡部「ん…朝か」
紅莉栖「遅いわよ、休みだからっていつまでも寝てないで朝ご飯食べちゃってー」
岡部「分かったー」
紅莉栖「気を付けなさいよー」
岡部「あぁ、分かった」
紅莉栖「行ってらっしゃい」
紅莉栖「…」
紅莉栖「おかべ…」
紅莉栖「お帰りなさい…」
岡部「…どうした?浮かない顔をして」
紅莉栖「…私ね、全部…全部思い出しちゃったの」
岡部「!?」
紅莉栖「倫太郎が…倫太郎が、まゆりや私を救う為にどれだけ頑張ったか」
紅莉栖「それに…倫太郎が、私が刺された記憶を思い出さないようにしてくれていたのも」
岡部「紅莉栖…」
紅莉栖「今まで、本当に辛かったね、本当にごめんね、 本当にありがとう」
紅莉栖「本当に…」ボロボロ
岡部「だっ、大丈夫かっ!?」
紅莉栖「わ、私はっ、平気、それより」
紅莉栖「全部、話してくれる…?」
岡部「あぁ…」
紅莉栖「そうだったの…未来の倫太郎がDメールで…」
岡部「今まで黙っていて悪かった」
紅莉栖「私を思っての事だったんでしょ?いいのよ」
紅莉栖「倫太郎…本当にありがとう。今まで、お疲れ様」
岡部「おいおい、これで終わりみたいな事を言わないでくれ」
紅莉栖(…)
岡部「それで、この流れだからいう訳ではないんだが」
岡部「そ、そろそろ、結婚、しないか…?」
紅莉栖「あなたー、ご飯よー」
倫太郎「お、今日も美味そうだな」
倫太郎「初めの頃の紅莉栖のご飯はとても食べられたものでは無かったのにな」
紅莉栖「もう、あの頃の話はしないでくれる?」
倫太郎「別に今が上手なのだから問題なかろう?」
倫太郎「…紅莉栖、なんか元気が無いな」
紅莉栖「え?そ、そんなことないわよ!ほら、さっさと食べちゃって!」
紅莉栖(もし万が一、私の仮説が当たったら…)
紅莉栖(私は…どうすれば…)
紅莉栖「…」
倫太郎「紅莉栖、本当に大丈夫か?」
紅莉栖「あ、ちょっとボーッとしちゃっただけよ、大丈夫!」
倫太郎「無理するなよ、今日の食器は俺が洗っておくから休んでいろ」
紅莉栖「…うん」
紅莉栖「ふぅ…」
紅莉栖(…確率としては低いし、心配する必要はないわよね)
紅莉栖(ないわよね…)
紅莉栖「あなた」
倫太郎「ん、どうした?」
紅莉栖「愛してるわ」
倫太郎「ブッ!!い、いきなりどうした?」
紅莉栖「…あなたは?」
倫太郎「も、もちろん愛してるに決まっているだろう」
倫太郎「お前を世界で一番愛してるのはこの俺だ」
紅莉栖「ありがとう、その気持ち、忘れないでね」
倫太郎「ふっ、忘れるものか」
紅莉栖「…ありがとう」
紅莉栖「すみません、じゃあうちの子お願いしますね」
紅莉栖「いい?門限までには帰ってくるのよ?」
子供「はーい!」
紅莉栖「ただいまーっ、あなたー、お昼食べたー?そうめん買ってきたけどー」
倫太郎「…」
紅莉栖「…あなた?」
倫太郎「ここは…」
岡部「ここはっ!?世界は!?」
岡部「…紅莉栖…?」
岡部「紅莉栖なのか!?」
岡部「本当に、本当にっ、!!本当に紅莉栖なのか!?」
岡部「よかったっ、よかったっ…」
岡部「紅莉栖っ、もう、何処へも行かないでくれ…っ、!!」
紅莉栖「…」
岡部「…紅莉栖?」
岡部「なぜ泣いているのだ?」
END
もし執念オカリンがリーディングシュタイナー発動したら的なのが思い浮かんだので書きましたんこぶ
あああああその発想はあった
乙
リーディングシュタイナー発動しまくってるから
なんらかの精神病に見えるよなw
>>44乙おもしろかった
実際は他人が見てリーディングシュタイナー発動してるのは2000年の時の一回と
最後のシュタインズ・ゲートに突入したときの1回だけじゃないの?
ほかの世界線はなかったことになるんだし
乙
Entry ⇒ 2012.09.20 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
ルルーシュ「貴様ぁ!!童貞ではなかったのか?!」スザク「違う!」
ルルーシュ「ほら、また同じところで間違えているぞ」
スザク「あ、ほんとだ」
ルルーシュ「全く。ま、そのほうが教え甲斐があるけどな」
スザク「そうかな?ありがとう」
ルルーシュ「皮肉だ」
スザク「……なぁ、ルルーシュ」
ルルーシュ「どうした?」
スザク「こんなこといきなり訊くのはおかしいって分かってるんだけど……」
ルルーシュ「どうした?なんでも言ってくれ」
スザク「じゃあ、その……女性とするときって……どうしてる?」
ルルーシュ「……え?」
ルルーシュ「……」
ルルーシュ(なんだ。この質問は。どういう意図がある……?)
ルルーシュ(いや、まだ答えをだすには早計だ。じっくりと話を聞こう)
ルルーシュ「スザク、それはどういう意味だ?」
スザク「えっと、実はこの前……ユーフェミア様に―――」
ルルーシュ「……!!」ガタッ
ルルーシュ(ユフィ!?ユフィだと?!)
ルルーシュ(ど、どういうことだ……!?)
ルルーシュ「……」
スザク「つ、続けていいかな?」
ルルーシュ「あ、ああ……」
ルルーシュ(こ、こいつ……!!俺よりも先に大人の階段を上ったというのか……!!スザク……!!)ギリッ
ユフィ『スザク。私のことが好きならできますね?』
ルルーシュ「そういわれたのか……?ユフィに……?」
スザク「……うん」
ルルーシュ「そ、それで?」
スザク「僕、そんな経験が一切なかったから……どうしていいかわからなかったんだ」
ルルーシュ「そうなのか」
ルルーシュ(ふっ。なんだ。驚かせて。まだスザクはチェリーボーイのままか)
スザク「そういうと、ユーフェミア様が―――」
ユフィ『ふふ。だろうと思った。じゃあ、私がスザクをリードしてあげますね』
スザク「そ、それで……全てを委ねてしまっ―――」
ルルーシュ「ふざけるなぁ!!!!」
スザク「……!?」ビクッ
スザク「ルルーシュ、待ってくれ。初めは僕もちゃんといった。身分が違いすぎますって」
ルルーシュ「それで……?」
スザク「でも……」
ユフィ『この部屋にはユフィとスザクという男女しかおりません』
スザク「そういったんだ」
ルルーシュ「それだけの……それだけの理由か……!?」
スザク「仕方なかったんだ!!そうじゃないとユフィは騎士を剥奪するって」
ルルーシュ「ええい!!!見損なったぞスザク!!」
スザク「……どうしてそこまで必死になるんだ?」
ルルーシュ「え」
スザク「友達にあまりこういうことはいいたくないけど……」
ルルーシュ「な、なんだ?」
スザク「ルルーシュは経験したことがないのか?」
ルルーシュ「……!?」ガタッ
ルルーシュ「……」ギリッ
ルルーシュ(落ち着け……!!こんなことでスザクに失望されては……!!)
ルルーシュ「あっはっはっはっは!!!!」
スザク「どうした?」
ルルーシュ「待て待て。スザク、間違っているぞ」
スザク「なに……?」
ルルーシュ「お前、ここに編入してきてから何を見てきた?」
スザク「どういうことだ?」
ルルーシュ「俺は……モテる!!!」
スザク「……確かに」
ルルーシュ「365日、女に困ることなどない。そんな俺を捕まえて経験がないだと……?」
ルルーシュ「そんなことがあるわけないだろ!!!」
スザク「そうか。流石はルルーシュ。そうでないと」
ルルーシュ「ふっ。女の扱いなんてチェスよりも簡単だ」
ルルーシュ「なんだ……?」
ルルーシュ(この話の流れなら、恐らく情事のときのテクニックかなにかだろう)
ルルーシュ(くっくっく……ネットや本で得た知識ならある。これなら……勝てる!!)
スザク「……実は下手だって言われた」
ルルーシュ「……下手?」
スザク「もっと勉強してきてほしいって言われたんだ。どうしたらいい?」
ルルーシュ(なんだ。最も愚かな質問を選んだな、スザク)
ルルーシュ「そんなものネットで―――」
スザク「ちなみにもうネットでは調べたし、本もみた。だけど、いまいち分からなくて」
ルルーシュ「なんだと?」
スザク「僕ってほら、体で覚えるほうが得意だから」
ルルーシュ(なんだ……なにを言ってる……?)
スザク「だから、ルルーシュが実演してくれると助かるんだけど」
ルルーシュ「じつ……えん……?」
ルルーシュ「まてまて!!!貴様!!何を言っている!?」
スザク「え?ニーナや生徒会長のほうがよかったかい?」
ルルーシュ「そうじゃない!!」
スザク「ナナリーはちょっと……」
ルルーシュ「きさまぁ!!」
スザク「も、もしかして……僕か……それは……あの……いくら友達でも……」ポッ
ルルーシュ「照れるな!!気持ち悪い!!!」
スザク「とにかく、僕に実際しているところを見せてほしいんだ」
ルルーシュ「……見せるって……」
スザク「慣れているんだろ?」
ルルーシュ「いや……」
ルルーシュ(まずい……まずいことになった……!!)
ルルーシュ(どうする……どうすれば……!!!)
スザク「……」ワクワク
スザク「見ることはできるけど、どうにも激しすぎる。あれではきっとユフィは痛がってしまいそうで」
ルルーシュ(確かに。スザクに加減などできるわけがない)
ルルーシュ(考えろ……考えるんだ。この場を上手く切り抜けるためには……!!)
ルルーシュ「―――まて。そもそも、人に見せるようなものではないだろう」
スザク「ちゃんと気配を消して隠れてるから」
ルルーシュ「だから、いくら親友でもそんなところを見られたくは無いんだ」
スザク「相手がシャーリーでもかい?」
ルルーシュ「当然だ!!というか、相手どうこうの話ではないぞ」
スザク「そうなのか」
ルルーシュ「お前がユフィと経験を重ねていけば言いだけの話だろう」
スザク「勿論、それも考えた。だけど……」
ルルーシュ「なにか問題でもあるのか?」
スザク「その日の帰り……コーネリア総督に呼び出されたんだ」
ルルーシュ(コーネリアに……?)
スザク「そう涙目で言われて」
ルルーシュ(今度、ユフィに会ったとき、自室に隠しカメラがないか調べておくように言っておくか)
ルルーシュ「分かった。つまり、ユフィとはもう練習ができないってことか」
スザク「そうなんだ。ユフィがコーネリア総督に僕としたことを話さないとも限らないし」
ルルーシュ「……」
スザク「頼む、ルルーシュ。僕とユフィのために見せてくれないか」
ルルーシュ「しかしな……」
スザク「ダメか?」
ルルーシュ「だから、人に見せるものじゃ―――」
スザク「そうか。やっぱりルルーシュも経験が……」
ルルーシュ「あると言っているだろ!!見せることじゃないってだけだ!!」
スザク「でも、そこまで強く拒絶するってことは教えられないってことじゃないのか?」
ルルーシュ「ちがう!!!俺はどんな女でも満足させられる技量をもっている!!」
スザク「すごい!じゃあ、見せてくれないか!?」
スザク「……♪」ワクワク
ルルーシュ(ダメだ。こいつ、俺が実演するまで諦める気配がない……!!)
スザク「……ルルーシュ?」
ルルーシュ(……まてよ?そうか。見せれば、それで満足するというなら……!!!)
ルルーシュ「よし、わかった。だが、自室ならまだしもここで実演するとなると、女を誘うのが手間だ」
スザク「じゃあ、すぐにはできないっていうのか」
ルルーシュ「ああ」
スザク「いつなら?」
ルルーシュ「明日なら」
スザク「明日か。分かった」
ルルーシュ「じゃあ、明日の放課後にここにこい。お前はそうだな……段ボールを用意しておくから、その中から観察でもしていろ」
スザク「ルルーシュ。でも、見ているだけじゃ……」
ルルーシュ「手順の全てを紙に書いておいてやる。それを見ながら、俺の実演を鑑賞していろ」
スザク「助かるよ、ルルーシュ。ありがとう」
ルルーシュ(さて……明日の茶番に付き合ってくれそうな女を見つけるか)
ルルーシュ(生徒会長は……却下。恐らく、面白おかしく噂を流すだろうし、それ以前に門前払いだ)
ルルーシュ(ニーナ……。いや、ニーナはどこか潔癖症のようなところもある。誘ってものってはこないだろう)
ルルーシュ(シャーリー……もダメだ。嫌われてしまう)
ルルーシュ(となると……カレン……。ダメだ。奴は黒の騎士団。俺が今後、奴を変に意識してしまうかもしれない)
ルルーシュ「……」
C.C.「何をしているんだ?」
ルルーシュ「……ふっ。なんだ。いい人材が―――」
C.C.「ん?」
ルルーシュ(C.C.なんて論外だ!!くそ!!)
C.C.「変なやつ……」
ルルーシュ「ダメだ……。相手が……」
ナナリー「お兄様、どうかされましたか?」
ルルーシュ「ナナリー……」
ルルーシュ(ナナリーか……。ナナリーなら快諾してくれる可能性が高い)
ルルーシュ(だが……しかし……)
ナナリー「お兄様?」
ルルーシュ「え?」
ナナリー「あの……何か困っているのですか?」
ルルーシュ「いや、なんでも……」
ナナリー「もし私にできることなら、なんでも言ってくださいね」
ルルーシュ「……」
ルルーシュ(ナナリーか……。スザクからはナナリーの顔が見えないようにすれば……)
ルルーシュ「ナナリー、ちょっといいかな」
ナナリー「はい、なんでしょう?」
ルルーシュ「明日の放課後、生徒会室に来てくれないか?」
ナナリー「はい。なにかあるのですか?」
ルルーシュ「……そこでナナリーを抱きたい」
ナナリー「抱く……?」
ルルーシュ「ああ。だめかな?」
C.C.「……」
ナナリー「ここでもいいですよ?ぎゅってしてください」
ルルーシュ「いや、明日の生徒会室で抱きたいんだ」
ナナリー「そうなのですか……」
C.C.「おい!!!」
ルルーシュ「黙っていろ」
C.C.「貴様……何を言っている……!!」
ナナリー「分かりました。じゃあ、明日の放課後に生徒会室で」
ルルーシュ「ああ。待っていてくれ」
ナナリー「お兄様に抱いて貰えるなんて楽しみです」
ルルーシュ「ふふ……そうか」
C.C.「ルルーシュ……お前……」
C.C.「おい。犯罪者」
ルルーシュ「お前に言われたくないな」
C.C.「ナナリーを抱くとはどういう了見だ」
ルルーシュ「そのままの意味だよ」
C.C.「目が不自由な妹によくもまぁ、そんな卑劣なことができるな」
ルルーシュ「俺は女に不自由していない」
C.C.「は?」
ルルーシュ「それを証明する必要があるんだ」
C.C.「ふーん。そこで妹を選出する貴様の思考回路は理解できないな」
ルルーシュ「適任者がナナリーしかいなかった。それだけだ」
C.C.「お前、かなり女に不自由しているんだな」
ルルーシュ「あとはプレイの手順を紙に記し、それをスザクに読ませつつ、俺が事に及べば……ふふふ……」
ルルーシュ「あーっはっはっはっは!!!勝てる……!!勝てるぞ!!!」
C.C.「……お前の負けだよ。坊や」
C.C.「お前の鬼畜プランか?」
ルルーシュ「ああ。これをナナリーに読ませる」
C.C.「読ませる?」
ルルーシュ「俺の台本は完璧だ」
C.C.「台本とはなんだ?ナナリーを嬲るシナリオか?」
ルルーシュ「何をいう。俺はナナリーに手を出すことなく、抱いてやるんだよ」
C.C.「……意味がわからないな」
ルルーシュ「このボイスレコーダーに録音するのさ」
C.C.「ナナリーの喘ぎ声か」
ルルーシュ「それだけじゃない。情事中の会話もだ」
C.C.「……」
ルルーシュ「既に俺の肉声は録音してある。聞くか?」
C.C.「100%気持ち悪いだろうから遠慮しておく」
ルルーシュ「そうか。自信作なんだがな」
ナナリー「……お兄様?」
ルルーシュ「起こしちゃったか」
ナナリー「いいえ。なんだか今日は寝付けなくて」
ルルーシュ「どうかしたのか?」
ナナリー「明日、お兄様に抱いてもらえると思うと……少しドキドキしてしまって」
ルルーシュ「そうか……。ところでナナリーに読んでほしいものがあるんだけど」
ナナリー「なんでしょうか?」
ルルーシュ「できるだけ感情を込めて読んでくれ。点字処理はしてあるから」
ナナリー「はい。分かりました」
ルルーシュ(レコーダー、オン)カチッ
ナナリー「―――お兄様……今日はここでなにをするんですか?」
ナナリー「え?服を?どうしてですか?」
ナナリー「だ、だからって……少し恥ずかしいです……お兄様……」
ルルーシュ「……」
ナナリー「わ、たしたち……兄妹なの、に……ぃ……んっ……」
ナナリー「そこは……きた、ない……です……」
ルルーシュ「……」
ナナリー「ひっ……んっ……もう……あ……おにいさま……いく、のです、か……?」
ルルーシュ「……」ギリッ
ナナリー「わ、わたしも……もぅ……ふぁ……」
ルルーシュ「やめろぉ!!!!」
ナナリー「え?」
ルルーシュ「もうやめてくれ……こんなナナリー……見たくない……」
ナナリー「あ、あの……お兄様……?」オロオロ
ルルーシュ「悪い。今夜のことは忘れてくれ、ナナリー」
ナナリー「あの、このお話は……」
ルルーシュ「俺が考えた演劇の台本だったんだけど。ちょっと、失敗した。ごめん、ナナリー」
ナナリー「いいえ。お兄様の脚本、素晴らしかったです。まるで登場人物が私とお兄様みたいでしたし、二人はすごく愛し合っているようでしたから」
ルルーシュ「はぁ……」
C.C.「どうした?妹の陵辱は諦めたのか?」
ルルーシュ「初めからナナリーを抱くなんて無理だったんだ……」
C.C.「……よかったよ。まだ良心が残っているようで」
ルルーシュ「だが、まずい。このままでは……俺は……」
C.C.「シャーリーに電話してみろ。喜んで食いついてくれると思うが」
ルルーシュ「……」
C.C.「カレンでもいいんじゃないか」
ルルーシュ「……」ジーッ
C.C.「なんだ?」
ルルーシュ「……」
C.C.「読まないぞ?私は読まないからな」
ルルーシュ「台本はここにある」
C.C.「読まないと言っている!!聞こえないのか!?」
ルルーシュ「ん……朝か」
ルルーシュ「C.C.?できたか?」
C.C.「……ほ、ほら」ポイッ
ルルーシュ「どれどれ?」カチッ
『あっ……あっ……ルル……シュ……そうだ……いいぞ……奥を……犯してくれ……あっ……』
ルルーシュ「……上出来だ」
C.C.「全く。つまらないことに使うな……」
ルルーシュ「よし。これで前提条件は全てクリアだ」
C.C.「……」
ルルーシュ「あとは放課後を待つばかりか……くくくく……」
C.C.「で、何時ごろに生徒会室にいけばいいんだ……?」
ルルーシュ「何を言っている。スザクがいるのに出歩こうとするな。部屋にいろ」
C.C.「な……!?」
ルルーシュ「あとは……スザクが入れるだけの段ボールを用意しておけば……完璧だ」
ミレイ「え?ここを貸切にしてほしい?」
ルルーシュ「はい、30分ほどでいいんで」
ミレイ「それはいいけど、なんでまた?」
ルルーシュ「少し……」
ミレイ「ふーん」
シャーリー「ルル、何かあるの?」
ルルーシュ「別にいいだろ」
リヴァル「おいおい、ちゃんと言ってくれなきゃ、貸せるわけないだろー?」
ミレイ「……もしかして……誰かと二人っきりになりたいとか?」
シャーリー「……!!!」
カレン「……」ピクッ
ルルーシュ「……まぁ、そんなところです」
ミレイ「そういうことなら貸しましょう!!ええ、貸してあげる!!」
ルルーシュ「変な噂を流したり、詮索は無しでお願いしますよ?」
ミレイ「さぁ、ルルーシュくんのお相手はだーれだ?」
リヴァル「やっぱ、気になりますよねー」
シャーリー「……だれ……だれなの……」ソワソワ
カレン「……」ジーッ
リヴァル「あっれ?てっきりシャーリーかカレンだと思ってたんだけど」
カレン「な、なんであたしが!!」
ミレイ「しっ。誰かきた」
リヴァル「え……?」
スザク「……」スタスタ
スザク「……」ガラッ
ミレイ「おーっと!!!まさかのダークホース!!!」
カレン「なにぃぃ!?!?」
シャーリー「……う……そ……」
スザク「ルルーシュ」
ルルーシュ「来たか。そこの中に入っていろ。もうすぐ、俺の相手も来る」
スザク「分かった。期待させてもらう」
ルルーシュ「ふ。その中を汚すなよ?」
スザク「うん」
ルルーシュ「……」
ルルーシュ(よし。あとはナナリーを待ち、このボイスレコーダーを再生させるだけだな)
ルルーシュ(イレギュラーさえなければ……予定通りに終わるはずだ)
ルルーシュ「……」
ルルーシュ(しかし、ナナリーが来たときどうするか)
ルルーシュ(事情とか説明できないしな……)
ルルーシュ(ま、ナナリーなら下手な言い訳をする必要もないな。くくく……)
ミレイ「さぁ、同志諸君。これは由々しき事態である」
リヴァル「あの二人、妙に仲がいいと思ったら……マジかぁ……俺も狙われてたのかなぁ……」
シャーリー「だから……だから……私の気持ちにも……!!!」
カレン「……なんとか、見れないかな……?」モジモジ
ミレイ「やっぱり、乙女としては美男子の秘め事って気になるわよねー?」
リヴァル「マジですか?」
シャーリー「そんな……そんなこと……ルルが……ルルがぁ……」
カレン「……」コソコソ
ミレイ「ドアの隙間から見れる?」
カレン「この位置だと……よく……」
ナナリー「あの」
シャーリー「きゃぁ?!」
ナナリー「なにをされているのですか?」
ミレイ「なんでもない!!なんでもなわよー?!」
ミレイ「ニーナまで!?」
ニーナ「ちょっと中に」
ミレイ「今はだめ!!」
ナナリー「え?どうしてですか?」
シャーリー「今はダメなの!ほんとに!!」
リヴァル「ああ。きっと大変なことになってる」
カレン「……」コソコソ
ナナリー「でも、お兄様に来るように言われてて」
ミレイ「え?!」
カレン「……それって」
ミレイ「……なるほど。私たちは勘違いをしていたのかも」
シャーリー「どういうことですか?」
ミレイ「これはきっと三人プレイなのよ」
カレン「……え?」
ミレイ「それがどうしたっていうの?」
シャーリー「え?いや……」
リヴァル「それはないですって!!」
カレン「スザク……!!」
ニーナ「え?え?」
ミレイ「……どうする?通す?」
シャーリー「そんなことできませんよ!!!」
ミレイ「そうよね」
ナナリー「あの……通してもらえませんか?」
ミレイ「だめだめ。流石の私も看過できないから」
ナナリー「でも、お兄様との約束が……」
カレン「あたしがいってきます」
ミレイ「そう?ちゃんと叱ってこれる?」
カレン「やってみます」
ガラッ
ルルーシュ「来たか」
スザク(来た……)
カレン「ルルーシュ!!」
ルルーシュ「……!!」
スザク(カレンか。なるほど)
ルルーシュ(な、何故……カレンが……入って来る……?)
カレン「話があるんだけど」
ルルーシュ(ここでカレンを追い出せば、スザクに悪い方向で誤解される……)
ルルーシュ(仕方ない。カレンで乗り切るか……!!)
カレン「あれ?スザクは?」
ルルーシュ「カレン。そこに座ってくれ」
カレン「なんで?」
ルルーシュ「いいから」
ルルーシュ「カレン。じっとしていろ」
カレン「な、なんで……?」
ルルーシュ「いいから……」
カレン「ちょっと……」
ルルーシュ(まずは抱きしめないとな。スザクの位置からはそれぐらいのことは見えているだろうし)
カレン「ルルーシュ、あのさ。流石に妹に手を出すってないと思うんだけど―――」
ルルーシュ「……」ギュッ
カレン「なっ?!」
スザク(おぉ……)
カレン「こ、こらぁ!!なにを―――」
ルルーシュ「(黙れ。静かにしていろ)」
カレン「(な、なに?何がしたいの……?)」
ルルーシュ「(いいから黙っていろ。頼む。あとでなんでも奢ってやる)」
カレン「(い、いやあの……離して……くれると……あの……)」
カレン「あ……あの……」
ルルーシュ(よし。再生だ)カチッ
『さぁ、服を脱ごうか』
カレン「ふ―――」
ルルーシュ「(静かにしろ)」グッ
カレン「むぐ……?!」
『ああ、よし。服を―――』
ルルーシュ「……!!」ピッ
スザク(あれ?別の女性の声……?)
ルルーシュ(しまった!!C.C.の声は特徴的すぎる!!)
ルルーシュ(やつめ。声色ぐらい変えろ……!!)
カレン「(あの……いつまで……抱きしめてるの……?)」
ルルーシュ(くっ……なんとかして……カレンに台詞を……そうだ)
ルルーシュ「(カレン、このイヤホンをつけろ)」
ルルーシュ「(ダメだ。いいから、つけろ)」
カレン「(はいはい……)」
ルルーシュ「(よし。そこから聞こえてくる台詞を声に出せ)」
カレン「え……?」
ルルーシュ「聞こえなかったのか?服を脱げといったんだ」
カレン「えっと……ああ、よし……服を脱げばいいのね……?」
ルルーシュ「ああ。そうだ」
カレン「で、でも……恥ずかしいんだけど……」
ルルーシュ「構うことはない。ここには俺とお前しかいないのだからな」
カレン「そ、それも……そうね。わ、わかった脱ぐよ……」
ルルーシュ「ああ。早くしろ」
カレン「……」スルッ
ルルーシュ「本当に脱ぐな!!!!」
カレン「え?」
ルルーシュ(しまった……!!つい……!!)
カレン「え?脱ぐんじゃないの?」
ルルーシュ「あ、いや、脱げ。上着だけでいいからな」
カレン「そのつもりだったけど」
ルルーシュ「そうか」
ルルーシュ(ふー……俺もまだまだだな。これぐらいのアクシデントで動揺してしまうとは)
カレン「……脱いだよ」
ルルーシュ「ふふ。いい胸じゃないか」
カレン「どこみてるのよ!!」
ルルーシュ「おい!!そんな台詞はない!!」
カレン「はぁ!?」
ルルーシュ「(聞こえてくる台詞を言えばいいんだ!!)」
カレン「(私のち、ち、く……び……はいい色でしょ、とか……言えないからっ)」
ルルーシュ「(それでも言うんだ!!俺を助けると思って!!)」
カレン「あ、あた、し……のちくび……いい、色でしょ……」
ルルーシュ「ああ。素晴らしいな。吸い付きたいぐらいだ」
カレン「……」プルプル
ルルーシュ「(どうした。早く続きを―――)」
カレン「……っ!!」
パシンッ!
ルルーシュ「……え」
カレン「こんなこといえるかー!!!!!」ダダダッ
ルルーシュ「まて!!カレン!!」
ルルーシュ(ぐぅぅ……!!くそ、カレンでは荷が重かったか……!!)
ルルーシュ(スザクは……!!)
ルルーシュ(出てこないな。まだ、静観しているのか)
ルルーシュ(ならば、今すぐ追いかければ……!!)
ルルーシュ「カレン!!待ってくれ!!」
ミレイ「あ、出てきた」
カレン「うぅ……ぐすっ……」ポロポロ
リヴァル「泣いてるじゃん!?」
シャーリー「カレン、何かあったの!?」
カレン「クリ……とか……もう……いやぁ……」ポロポロ
ニーナ「な、なにが……」
ナナリー「えっと……」
ルルーシュ「カレン!!―――はっ?!」
ミレイ「はぁい」
ルルーシュ「会長……ここでなにを?」
ミレイ「それよりどうしてカレンがないてるのかなぁ?」
ルルーシュ「そ、それは……」
ナナリー「お兄様、何かお話があるのでは?」
ルルーシュ「ナナリー!!来ていたのか!!助かる!!」
ルルーシュ「な、なんですか?」
ミレイ「女の子を泣かせるようなことしておいて、妹を連れ込むとか流石にないかなー?」
ルルーシュ「しかし、時間がないんです!!」
ミレイ「でも」
ナナリー「あの、私は別に―――」
シャーリー「ルル!!ダメでしょ!!なにしてたか知らないけど、こんなこと……ダメ!!」
ルルーシュ「シャーリー……」
ルルーシュ(ちっ……。どうする……。この状況でナナリーを連れ込むにはリスクが高すぎる)
ルルーシュ(ならば―――選択肢は3つ)
ルルーシュ(その中で無難なのは……!!!)
ルルーシュ「こい、シャーリー!!」ガシッ
シャーリー「え?!」
ルルーシュ「お前にしか頼めないかもしれないんだ!!」
シャーリー「わ、わたし……?」
リヴァル「うん。願ったり叶ったりってやつだな」
シャーリー「で、でも……一体……なにを……?」
ルルーシュ「中で説明する。とにかくきてくれ」
シャーリー「う、うん……」
ルルーシュ(シャーリーなら、合わせてくれるかもしれない)
ルルーシュ(シャーリーに賭ける……!!)
シャーリー(なんだろう……もしかして……カレンでも泣いちゃうような……恥ずかしいことを……?)
シャーリー(そんな……そんなこと……どうして……)
シャーリー(で、でも……それがいけないことってルルに分かってもらわないと!!)
シャーリー(私が……体を張って……!!)
ガラッ
ルルーシュ「よし、シャーリー、実は―――」
スザク「ルルーシュ。ちょっといいかな」
ルルーシュ「……スザク!?」
スザク「あれ?カレンはどうしたの?」
ルルーシュ「お前……なんで……!!」
スザク「気になることがあるんだ」
ルルーシュ「気になることだと……?」
スザク「ああ。えっと……」
シャーリー「え?え?」
ルルーシュ(なんだ……なにをするつもりだ、スザク!!)
スザク「ルルーシュ、初めに抱きしめただろ?」
ルルーシュ「ああ」
スザク「それって、こういう風にかい?」ギュッ
シャーリー「!??!!?!」
ルルーシュ「ばか!!そうじゃない!!こう、優しくだ!!」ギュッ
スザク「そうか。やっぱり、加減が難しいな」
シャーリ「ひっ……」ウルウル
シャーリー「ルル……違うよね……」
ルルーシュ「どうした?」
シャーリー「ルル……わたし……信じてるから……」
ルルーシュ「おい!シャーリー!!」
シャーリー「だれにもいわないからっ!!」ダダッ
ルルーシュ「シャーリー!!」
スザク「あれ?」
ルルーシュ「バカか!!どうしてでてきた!!」
スザク「いや、どうしても確認したくて」
ルルーシュ「見られたくはない行為といっただろうが!!」
スザク「ごめん」
ルルーシュ「いいから、隠れていろ!!質問は終わったあとに聞いてやる!!」
スザク「わかったよ」
ルルーシュ(ええい。スザクが天然であったことを計算にいれていなかった……!!まずい、まずいぞ……!!)
シャーリー「うぅ……ルルが……ルルがぁ……」ポロポロ
カレン「ひどい……ひどいよぉ……」ポロポロ
ミレイ「な、なにがあったの?」
シャーリー「……いえません」
カレン「いえない……です……」
リヴァル「な、なんだ……?」
ルルーシュ「シャーリー!!」
ミレイ「ちょっと!!本当になにしたの!?」
ルルーシュ「え?いや、何も……」
リヴァル「ルルーシュ……お前……」
ナナリー「お兄様?」
ルルーシュ(くそ……やはり、当初の予定通り……)
ルルーシュ「ナナリー!!」ガシッ
ナナリー「は、はい」ビクッ
リヴァル「まてよ!!ルルーシュ!!友達やめるぞ!!」
ニーナ「それだけはだめぇ!!」
ルルーシュ「しかし、もう15分もないんです!!」
ミレイ「……いいわ。私がいく」
ルルーシュ「なに……?」
ニーナ「ミレイちゃん!!」
ナナリー「ですから、私は別に……むしろ、二人きりになりた―――」
ミレイ「ダメよ。ナナリーちゃん。ここは私に任せて」
ナナリー「いえ……」
ミレイ「さ、行きましょう」
ルルーシュ「は、はい……」
ルルーシュ(予想外だが会長ならなんとかなるかもしれない)
ルルーシュ(終わったあとが大変そうだが……火消しとかが)
ルルーシュ「スザク?」
ミレイ「ええ」
ルルーシュ(まさか、シャーリーが喋ったのか?)
ルルーシュ「スザクならさっきのどさくさに紛れて出て行きましたけど」
ミレイ「そう、なの?」
ルルーシュ「はい」
ミレイ「全然、気がつかなかった……」
ルルーシュ「じゃあ……」
ミレイ「え……」
ルルーシュ「……」ギュッ
ミレイ「……」
ルルーシュ「(会長、このイヤホンをつけてください)」
ミレイ(なるほど……。あの二人が泣くわけね……)
ミレイ「(イヤホンね。はいはい)」
ミレイ「(どうしてそんな―――)」
『あっ……!!いいっ!!もっとだ!!もっと、つけ……くっ!!んっ……!!』
ミレイ「……!!!」
ルルーシュ「(さぁ……感情をこめて)」
ミレイ「(え……いや……これって……)」
ルルーシュ「(早く)」
ミレイ「……」
ルルーシュ「(会長?)」
ミレイ「おち……ん……ぽ…………」プルプル
ルルーシュ「え?まずは服をって台詞から―――」
ミレイ「なかにだしてぇ!!!」
ルルーシュ「何をいっているんだ!!あなたはぁ!!!」
ミレイ「貴方が言えっていったんでしょ!!」ウルウル
ルルーシュ「その台詞はもっと先ですよ!!」
ルルーシュ「会長……!!」
ミレイ「うわぁぁん」ダダダッ
ルルーシュ「どういうことだ……」
ルルーシュ(そうか!!再生しっぱなしだったからか……!!)
ルルーシュ(止めておかないと……)ピッ
ルルーシュ(くそ……もうタイムリミットが迫っている……)
ルルーシュ(このままでは俺のプライドが……!!)
スザク「―――ルルーシュ、あのさ」
ルルーシュ「お前は黙っていろ、スザク!!」
スザク「いや……少しおかしくないか?」
ルルーシュ「おかしくない!!」
スザク「そうか」
ルルーシュ(時間的に次が最後だ……)
ルルーシュ(慎重に選ばなくては……!!)
カレン「うっく……ぐすっ……」
シャーリー「ルル……ルル……」
ミレイ「こんな汚れた女じゃ……はぁ……」
リヴァル「どうしたんですかぁ?!ねぇ!?」
ニーナ「ミレイちゃんまで……」
ナナリー「……」
ガラッ
ルルーシュ「……」
リヴァル「おい!!ルルーシュ!!おまえ、なにしたんだよぉ!!!」
ルルーシュ「説明している時間はない。―――ナナリー!!」
ナナリー「はい」
ルルーシュ「こい」
ナナリー「今、行きます。お兄様」
リヴァル「ふざけんな!!もうお前は友達でもなんでもないからなぁ!!!」
ナナリー「お兄様……」
スザク(え……この声……)
ルルーシュ「じゃあ、いくよ」
ナナリー「はい……優しくだいてください」
ルルーシュ「ああ……」ギュッ
ナナリー「お兄様の優しさが……伝わってきます……」ギュッ
ルルーシュ「(ナナリー、イヤホンをつけて)」
ナナリー「(はい)」
ルルーシュ「(聞こえてくる台詞を声に出してくれ)」
ナナリー「(わかりました)」
スザク(間違いない……ナナリーだ……!!)
スザク(ルルーシュ……君は……!!)
スザク「……」ギリッ
ナナリー「わかりました」
ルルーシュ「いい乳首だな。吸い付きたくなる」
ナナリー「やだ……恥ずかしいです……」
ルルーシュ「ふん。隠すな。今からそのピンクを黒くそめてやる」
ナナリー「そ、そんな……」
ルルーシュ「だが、まずは……その唇から……」
ナナリー「あ……だめ……」
ルルーシュ(よし。第一条件はクリア―――)
スザク「―――やめろぉぉぉぉ!!!!!」
ルルーシュ「?!」
ナナリー「え?スザクさん?」
スザク「ルルーシュ!!!見下げ果てたぞ!!!」
ルルーシュ「スザク……!!何故、邪魔をする!!!」
スザク「君がモテるのはわかった!!だけど……ナナリーにまで手をだすなんて!!君は、屑だ!!」
スザク「どうしてだ……どうしてそんなことができるんだ!!君は間違っている!!」
ルルーシュ「なんだと?」
スザク「君はナナリーを大事にしてきたんだろ?どうしてそんな性の捌け口にできるんだ!!」
ナナリー「せいの……?」
ルルーシュ「何を言い出すかと思えば……。これはお前のためにやっていることだ」
スザク「ナナリーを巻き込むな」
ルルーシュ「ナナリーは快諾してくれた。教えられる立場であるお前が口出しするな!!」
スザク「嘘だ!!ナナリーは騙されている!!」
ナナリー「え?え?」
ルルーシュ「スザク、いい加減にしろよ……。それもこれもお前のためだろうが……!!!」
スザク「僕はそこまで頼んでいない」
ルルーシュ「おのれ……一度、経験したからと調子にのるなよ……!!」
スザク「なんだ、それ。まるで自分は経験していないような言い草だな」
ルルーシュ「なっ……!!」
ルルーシュ(まずい……口がすべった……)
ルルーシュ(ナナリーの前で俺が童貞だとバレたら……!!)
スザク「やっぱり。初めからおかしいと思っていたんだ。この資料もよくわからないし」
ルルーシュ「やめろ……言うな……」
スザク「ルルーシュ、君は……」
ルルーシュ「スザァァク!!!!」
スザク「……!!」
ルルーシュ「いいだろう。俺は妹に手を出した。それは認めてやる」
ナナリー「お兄様、手を出していたのですか?」
ルルーシュ「だが、お前もこともあろうにユーフェミア副総督の純潔を奪ったのだぞ?」
スザク「そ、それは……」
ルルーシュ「俺は身内に手を出したにすぎない!!だが、貴様はどうだ!!」
ルルーシュ「騎士に任命され、浮かれ、求められるままにお前はユフィを穢したんだぞ!!」
スザク「ルルゥゥゥシュ!!!」
ちょっと待て
ナナリー「あの……お兄様……」オロオロ
ルルーシュ「俺の勝ちは目に見えているがな」
スザク「ぐっ……」
ルルーシュ「ふ……ふふふ……スザク、その一回が仇になったな」
スザク「ああ、そうだ。僕は罪を犯した。だけど、僕はその責任を取る」
ルルーシュ「な、なに……!?」
スザク「将来、ナイトオブラウンズになって、僕はユフィと結婚できるぐらいまで上り詰めてみせる!!」
ルルーシュ「くっ……」
スザク「ルルーシュ、君は妹を穢した責任、どう取るつもりだ?」
ルルーシュ「!?」
スザク「いつかナナリーにも想い人ができるだろう。だが、そのときこそ兄という存在が疎ましくなる!!」
ルルーシュ「やめろ……」
スザク「君とナナリーは結婚できない。それでもナナリーは想い人の前で重い十字架を背負いながら、隠しながら、生きていくしか無いんだぞ!!!」
ルルーシュ「だまれぇぇ!!!」
ルルーシュ「ふふふ……スザク……立派な心がけだな……」
スザク「それが騎士の務めだから」
ルルーシュ「はは……そうか……お前は……いいな……」
ルルーシュ「なら、どうすればいい!!俺は……俺は……ナナリーを愛しているんだぞ!!!」
ナナリー「あ、あの……そんなはっきりと……」
スザク「……ルルーシュ。君なら、責任の取り方がわかるはずだ」
ルルーシュ「なに……?」
スザク「……」
ルルーシュ「……だめだ!!だめだ!!そんなこと……!!」
スザク「ルルーシュ」
ルルーシュ(俺が……この俺が……憎み続けた皇帝になれというのか……スザク……!!)
スザク「……」
ルルーシュ「……」ギリッ
ナナリー「お兄様……私も大好きです……愛してます」オロオロ
スザク「ルルーシュ」
ルルーシュ「そうだな……なるほど……それもいい」
スザク「どうする?」
ルルーシュ「ナナリー?」
ナナリー「は、はい」
ルルーシュ「俺は……ナナリーと結婚したい」
ナナリー「え……」
ルルーシュ「そのために俺は修羅の道を選ぶ」
ナナリー「お、お兄様……やめてください……あの、私、どこかの養子になりますから、そうすれば結婚も穏便に……」
ルルーシュ「ナナリー、時間はかかるけど……必ず……」
ナナリー「えっと……あの、結婚しなくても一緒に住んでいるだけで……」オロオロ
スザク「心は決まったんだな」
ルルーシュ「ああ」
ナナリー「お兄様、今夜から一緒のベッドで寝てください……それぐらいで私は満足ですから……」
本気で暴君になって世界を征服する
ルルーシュ「俺もようやく決心がついた」
スザク「そうか」
ナナリー「あの……」
スザク「だけど……いいのか、ルルーシュ?」
ルルーシュ「なにがだ?」
スザク「経験がないまま、ナナリーとしたらきっと―――」
ルルーシュ「スザク!!きさまぁ!!!!」
スザク「あ、ごめん」
ナナリー「え?」
ルルーシュ「ナ、ナナリー!!違うんだ!!俺はもうスゴイ慣れている!!きっと、ナナリーも喜んでくれると思う!!」
ナナリー「お兄様……?そんなに……?」
スザク「でも、ダメだよ。ルルーシュ。キスぐらいは済ませておかないと」
ルルーシュ「……なに?」
スザク「まだなんだろ。キス」
ルルーシュ(ふざけるな。いくらなんでもキスは……!!)
スザク「ああ。この資料、キス以外のことがすごく多かったし、ルルーシュはキスもしたことないんだろうなって」
ルルーシュ「ま、まて……お前……ユフィとは何をした……?」
スザク「え?何ってキスだけど」
ルルーシュ「……」
ナナリー「え?スザクさんユフィ姉さまとキスしたんですか?」
スザク「あ、う、うん……」
ナナリー「すごいすごい。お兄様なんて週に1回しかしてくれなくて」
スザク「え……?」
ルルーシュ「スザク……」
スザク「な、なんだい?」
ルルーシュ「ふははははは!!!!!お前……まだ童貞だったのかぁ!!」
スザク「何を言っている。きちんとした。へたくそといわれたけど」
ルルーシュ「……」
ルルーシュ(そうだ……。そもそも監視カメラまで置いている部屋で、事に及ぼうとすれば……)
ルルーシュ(あのコーネリアが座視しているわけがない……!!)
ルルーシュ(自慢のナイトメアで愚息と共に串刺しにするはずだ)
ルルーシュ「スザク……もう一度、聞こう。お前、ユフィと何をした?」
スザク「キスだ」
ルルーシュ「……つまり童貞だな」
スザク「童貞じゃない。きちんと済ませた」
ルルーシュ「貴様ぁ!!童貞ではなかったのか?!」
スザク「違う!僕はユフィとキスをした!!」
ナナリー「……っ」
ルルーシュ「ふふふふ……あーっはっはっはっは!!!」
スザク「ど、どうした?」
ルルーシュ「お前……それで童貞を卒業できるなら、俺は7年前にナナリーで卒業していることになる!!」
スザク「ルルーシュ……何を言っているのかわかっているのか?!」
ルルーシュ「当たり前だろう」
ナナリー「お兄様……」
スザク「ルルーシュ……僕は……」
ルルーシュ「お前、ずっとブリタニア軍にいて殆ど勉強はできてなかったそうだな」
スザク「基礎ぐらいは」
ルルーシュ「保健体育は必須じゃなかったのか」
スザク「そうだ」
ルルーシュ「スザク。童貞の意味をきちんとユフィに聞いて来い。話はそれからだ」
スザク「え?」
ルルーシュ「お前には色々と早かったようだ。俺が悪かったよ」
スザク「そ、そうか……うん……よくわからないけど、ユフィに聞いてみる」
ルルーシュ「それがいい」
スザク「あ……もうこんな時間か。そろそろ仕事だ。それじゃあ」
ルルーシュ「ああ。がんばってこい」
ルルーシュ「全く。はた迷惑な奴だよ」
ナナリー「それよりお兄様?」
ルルーシュ「なんだい?」
ナナリー「お兄様って―――」
ガラッ
ルルーシュ「ん?」
カレン「ルルーシュ……」
シャーリー「……」
ミレイ「そっか……ルルーシュくんって……ふーん……」ニヤニヤ
リヴァル「ルルーシュ。お前は親友だよ……うんうん……」
ルルーシュ「なんだ……!!なんのことだ……!!」
ニーナ「ふふ……ちょっとかわいいかも」
シャーリー「じゃあ、あの……私のバージンって……ルルに……?」
ルルーシュ「は?」
※
※
※
・イケメン
・秀才
・理事長と懇意な一家の御曹司(学園上の立場)
・生徒会副会長
・話してみると情に厚い
学生としてのルルはありえないぐらいのハイスペック
スザク「失礼いたします!!」
ユフィ「スザク!どうしたのですか?今日も来てくれるなんて」テテテッ
スザク「あの……ユーフェミア様」
ユフィ「この部屋ではユフィでいいっていってるのに」
スザク「あ、ごめん。ユフィ」
ユフィ「それでなんですか?あ、もしかして……キスの……」モジモジ
スザク「あの……僕は恥ずかしいことにキスをすれば童貞ではなくなるものだと思っていたんだ」
ユフィ「まぁ」
スザク「でも、今日、友人にそれは違うと窘められて」
ユフィ「そうなのですか」
スザク「では、どうしたら……いいのかと……」
ユフィ「しりたい?」
スザク「で、できれば」
ユフィ「ふふ、わかりました。では、こちらに」
ユフィ「私もこういうことは初めてなんですけど―――」
ガンガンガン!!!!
スザク「!?」
ユフィ「だ、だれですか!?」
スザク「まさか……下がってユフィ」
ユフィ「でも……!!」
スザク「僕が確認するよ」
ユフィ「気をつけてね」
スザク「……」ピッ
ウィィィン……
コーネリア「……おのれ……イレヴン……!!」
スザク「コーネリア総督……!?」
ユフィ「えっ!!」
コーネリア「……ユフィのかたきぃぃぃ!!!!スザァァク!!!」
+涙目
ルルーシュ「全く。今日は酷い1日だった」
C.C.「お疲れ、坊や」
ルルーシュ「スザクはキスで童貞を捨てられたと思っていたようだ」
C.C.「ちゃんと説明したのか?」
ルルーシュ「ユフィに聞いておけといっておいた」
C.C.「そうか。では、今日ぐらい童貞くんから非童貞に格上げだな」
ルルーシュ「まさか。それは無理だ」
C.C.「何故だ?」
ルルーシュ「ユフィにはコーネリアという守護者がいるからな」
C.C.「そうだったな」
ルルーシュ「スザクがユフィを愛する限り、あいつは童貞など捨てられない」
C.C.「そういう坊やは童貞を誰に捧げるんだ?」
ルルーシュ「俺は童貞じゃない!!」
C.C.「嘘はいいよ。私に読ませたえっちぃ台詞で貴様が童貞であることは明白だ」
C.C.「エッチな本やゲームから抜粋したような喘ぎ声しかないのだから、すぐにわかるさ」
ルルーシュ「そ、そんなハッタリに……!!」
C.C.「もうナナリーにも筒抜けだぞ?」
ルルーシュ「そ、そんなわけ……!!」
C.C.「聞いてきたらどうだ?まぁ、生徒会の連中も気を遣って言わないようにしていたんだろうけど」
ルルーシュ「そんな……ナナリーが……?」
ルルーシュ「まて、そもそもナナリーは童貞とかそんな言葉を知らないはず……」
C.C.「女っていうのはな、男の知らないところで成長する生き物なんだよ」
ルルーシュ「くっ……」
ルルーシュ「ナナリー!!」ダダダッ
C.C.「アホめ」
C.C.「……童貞ぐらい……私が奪ってやるのに……」
ルルーシュ「ナナリー!!」
ナナリー「あ、お兄様」
ルルーシュ「ナナリー……あの……」
ナナリー「なんでしょう?」
ルルーシュ「……」
ルルーシュ(聞けるわけ無い……そんなこと……)
ナナリー「……お兄様?」
ルルーシュ「なんだい?」
ナナリー「私、お兄様のこと愛しています」
ルルーシュ「ナナリー……」
ナナリー「私の身も心もお兄様と共にあります」
ルルーシュ「……」
ナナリー「だから……お兄様はずっと私の傍にいてください……お願いします……」
ルルーシュ「勿論だ。どこにもいくものか」
ルルーシュ「ん?」
ナナリー「お兄様って童貞なのですか?」
ルルーシュ「!?」
ナナリー「お兄様?お兄様?」
ルルーシュ(まずい……俺は……ナナリーにだけは嘘をつけない……!!)
ルルーシュ(どうしたら……どうしたら……!!!)
ナナリー「ありがとうございます」
ルルーシュ「え……」
ナナリー「お兄様、私とのために大切にしてくれていたのでしょう?」
ルルーシュ「……」
ナナリー「私はそれがとても嬉しいです。お兄様にそこまで愛されて……幸せ……」
ルルーシュ「ナナリー……」ギュッ
ナナリー「お兄様……」ギュッ
ルルーシュ「ナナリー……愛している……俺はお前を絶対に守る……そして……結婚する……!!」
咲世子「ナナリーさ―――え!?」
ナナリー「すぅ……すぅ……」
ルルーシュ「ん……ナナリー……」
咲世子「なぜ……一緒に寝て……」
C.C.「大丈夫だ。一線はこえていない」
咲世子「そうですか。残念です」
C.C.「……え?」
咲世子「それではもう少し幸せな時間を……」
C.C.「……」
C.C.「ルルーシュめ……お前が一緒じゃないと、ベッドが冷たいんだからな……まったく」
ナナリー「おに……さまぁ……」
ルルーシュ「ななりぃ……だいすきぃ……だ……」
C.C.「……」イラッ
C.C.「いいかげんにおっきろー!!」
ナナリー「お兄様、お茶を入れました」
ルルーシュ「ありがとう」ナデナデ
ナナリー「えへへ」
リヴァル「あの……ご兄妹の様子、おかしくありません?」
ミレイ「まぁ、どうだろうね。これは思わぬ方向からライバル登場ってやつね」
シャーリー「ね、ねえルル、今度の日よう―――」
ナナリー「……」ジーッ
ルルーシュ「なに?」
シャーリー「……ううん、なんでもない」
ナナリー「……」ニコッ
カレン「ルルーシュ、あのね―――」
ナナリー「……」ジーッ
カレン「やっぱり、なんでもない……」
ルルーシュ「なんだ、変なやつらだな」
ルルーシュ「そんなこと言ってませんでしたけど」
リヴァル「じゃあ、あれだ……腰でも砕けて……」
ミレイ「ふけつー」
リヴァル「あ、いや、すいません……」
ルルーシュ「でも、確かにどうしたんだろう」
ナナリー「電話とかできないんですか?」
ルルーシュ「かけてみたけど、繋がらないんだ」
ナナリー「そうですか。心配ですね」
シャーリー(も、もう一度……!!)
シャーリー「あのっ―――」
ナナリー「……」キッ
シャーリー「……っ」ビクッ
ルルーシュ「なんだよ?」
シャーリー「と、といれ……」
コーネリア「ユフィはなぁ!!!ユフィはなぁ!!!」ドゴォ
スザク「ごほっ?!」
コーネリア「ユフィはわたしだけの可愛いいもうとなんだぁぁ!!!!」ドゴォ
スザク「がはっ?!」
コーネリア「それを……それをお前は!!おまえはぁぁぁぁぁ!!!!!」ウルウル
ギルバート「おやめください!!死んでしまいます!!」
コーネリア「うるさい!!!ユフィの騎士はわたしがする!!!こんなイレヴンにまかせておけるかぁぁぁ!!!」ポロポロ
ギルバート「お気を確かに!!」
コーネリア「ユフィの純潔をかえせぇぇぇ!!!!」ポロポロ
スザク「……」
スザク(ごめん……ユフィ……)
スザク(ぼくじゃ……むり……だ……)
コーネリア「かえせぇ!!ユフィをぁぁぁおおお!!!!」
ギルバートなんちゃらギルフォードじゃなかったっけ
良く覚えてないや
ギルバート・G・P・ギル フォードだった
ちょっとROMってる
ルルーシュ「……ダメだ。スザクと連絡がつかないな」
ナナリー「お兄様っ」
ルルーシュ「どうした?」
ナナリー「ぎゅってしてくれませんか……?」
ルルーシュ「なんだ。急に甘えん坊になったな」
ナナリー「ご、ごめんなさい……。そんなつもりは……」
ルルーシュ「いいよ」ギュッ
ナナリー「あ……」
ルルーシュ「ナナリー……愛してる……」
ナナリー「私もです……お兄様……」
ナナリー(お兄様の純潔は誰にも渡しません……誰にも……)
ルルーシュ「ナナリー……」スリスリ
ナナリー「ふふ……お兄様……♪」
C.C.「……魔女め」
おしまい
ナナリー小悪魔
腹筋が破壊された
乙だ
Entry ⇒ 2012.09.20 | Category ⇒ コードギアスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
伏羲「のう、そこのお主」 折木「」
伏羲「のう、そこの眠そうな目をしたお主だ」
折木「………」
折木(ありのまま起こったことを話そう)
折木(学校の帰りに妙なヤツに絡まれた)
伏羲「分かっておるのだろう?無視するでない!」
折木(見た目の割に爺くさい話し方……何だあの格好?)
折木(怪しすぎる………)
伏羲「のう!」
折木(………見なかったことにしよう)スタスタ
伏羲「待てと言っておるだろうがボケ!」ビシュッ
ビュオォォォウッ!!
折木「…………っ!」ビクッ
ハラッ
折木(……髪が一房持って行かれた)
折木(つむじ風……?いや、『かまいたち』か?)
伏羲「すこーし頼みたいことがあるのだが、協力してくれんかのう?」シレッ
折木「…………」
どこか桃を売っているところを教えてくれぬか?」
折木「今時旅の者って………」
伏羲「まぁそう言うな!どうだ、案内してくれんかのう?それ相応の礼はさせてもらうぞ?」
折木(…………正直死ぬほど面倒だ。だが………)
折木(ここで嫌だと言っても恐らくコイツはどこまでもついて来るだろう)
折木「…………はぁ。分かったよ」
折木「そんなんじゃない。面倒事はさっさと片付けたいだけだ。
………『やらなくてはいけないことは手短に』、だ」
伏羲「何だそれは?」
折木「何でもない。行くぞ」
折木「………福部里志」
伏羲「言っておくがわしに偽名は通用せんぞ」
折木「……………………折木奉太郎」
伏羲「やはり偽名だったか」
折木「!!」
伏羲「かっかっか。青いのう」ケケケ
伏羲「奉太郎、か。わしは………あー、望とでも呼んでくれ」
…………
…………………
…………………………
折木「…………」スタスタ
伏羲「うーん、のどかなところだのう。西岐を思い出す」
伏羲「田舎も捨てたものではないぞ?こういうところで日がな一日寝てくらせたら最高だのう」
折木「…………まぁ、それについては否定しない」
伏羲「おお、お主話が分かるな」
折木「俺も、やらなくていいことならやりたくないからな」
伏羲「ふむ?」
伏羲「………若いくせに、老子のようなことを言うガキだのう」ボソッ
折木「何か言ったか?」
伏羲「いや、何でもないぞ?」
折木「……もうすぐ商店街だから、桃ならそこの八百屋に売ってるだろ」
伏羲「おおそうか!この国の桃は最高だからのう!いやー楽しみ楽しみ!」
折木(……………この国?)
折木(本当に何なんだ………?)
…………
…………………
…………………………
折木「……………」
伏羲「うーん美味い!!やはり白○は最高だのう!」モシャモシャ
折木「……………」
伏羲「品種改良もここまでくるとは、人の知恵も侮れぬものだ」モッシャモッシャ
伏羲「ん?おお奉太郎、お主もどうだ?一つくらいなら分けてやるぞ?」
折木「それは俺が買った桃だ」
伏羲「むぅ、細かい奴め」
折木「いや細かくない………はぁ。もういい」
伏羲「む?」
伏羲「うむうむ。物わかりのいい人間は嫌いではないぞ。食べ物を恵んでくれる人間はもっと好きだがな」モシャモシャ
折木「そんなんじゃない。ただ疲れるのが嫌いなだけだ」
伏羲「ふむ……さっきもそんなことを言っておったのう?」
折木「そう。『やらなくてもいいことならやらない、やらなくてはいけないことは手短に』
『省エネ』が俺のモットーだからな」
伏羲「本当に老子のようなことを……いや、ナマケという意味では老子の方が上か」
折木「老子?道家の老子か?」
伏羲「何!?お主知っておるのか!?」
折木「いや、高校生なら誰でも知ってるだろ。世界史や倫理の教科書に載ってるからな」
伏羲「何ですと!?ちょ、ちょっと見してみ!」
折木「はぁ………?ええと………あった。ほら」ゴソゴソ
伏羲「ふおおおお本当に載っておる………」シゲシゲ
折木「…………?」
折木(まるで知り合いみたいな口ぶりだな……まさかな)
伏羲「許せーーーーん!!!」
グシャッ
折木「あ」
伏羲「あ」
伏羲「す、すまぬっ!……ついカッとなって」
折木「…………………はぁ。まぁ、1ページや2ページ破れたくらいなら平気か」
伏羲「まぁ待て!そのくらいわしが何とかしてやる!」
折木「弁償ってことか?桃一個買えないヤツが何を……」
伏羲「まあ見ておれ!
むむむむ……………ハッ!!」
ビカッ
折木「っ…………!」
マッサラァァァァァ……
折木「…………本当に直ってる。新品みたいだ」
伏羲「だから言ったであろう?」フフン
折木「望、アンタ一体………」
伏羲「これで桃の礼はチャラだな。それでは奉太郎、達者でのう」テクテク
折木「ちょっと待て」ガシッ
伏羲「グエッ!?」
伏羲「ググッ……疲れるのはイヤと言っておったクセに細かいヤツだ……」ギリギリ
折木「だいたいどうやったんだ?どういうトリックなんだ」
伏羲「わ、分かった………分かったからフードを掴むのはやめてくれ………」ギリギリ
…………
…………………
…………………………
折木「それで?さっきのは一体何なんだ?」
伏羲「一体も全体も、破れた本を元通りにしただけだ」
折木「そんなことできるわけないだろ」
伏羲「フフーン、そう思うであろう?」
折木「は?」
伏羲「実はな奉太郎。
……………わしは道士なのだ」
折木「……………道士?」
無理もない。今時人間界に来る道士はおらんからのう」
折木「…………それで結局何だ、道士って」
伏羲「うん?まぁ、お主らの馴染みのある言葉で言うと『仙人』ということになるな」
折木「はぁ?仙人?」
伏羲「正式には、わしは弟子を取っておらんので道士と名乗っておる」
折木「………………」シラーッ
伏羲「むっ、その眼、信じておらぬな?」
懐から破れた俺の教科書が出てきた方がまだ納得できる」
伏羲「やーれやれやれ。若いくせに頭が固いのー」フイー
折木「む」
伏羲「よっしゃ。そこまで言うのなら証拠を見せてやろう」スクッ
折木「証拠?」
伏羲「うむ。………これが何か分かるか?」スッ
折木「さっきアンタがしこたま食べた桃の種だろ」
伏羲「うむ。美味かったぞ」
伏羲「それをそこの土に埋めよ」
折木「はぁ?」
伏羲「ホレ、スコップだ」キコキコキコーン
折木「何処から出した」
伏羲「いいからさっさと掘って埋めるのだ。『やるべきことは手短に』、であろう?」ニヨニヨ
折木「」イラァ
ザックザック
ポイポイ
ペタペタ
折木「…………これでいいのか」
伏羲「上出来だ。これに……」ゴソゴソ
折木「………まだ何か出てくるのか」
伏羲「コレを使うのだっ!」テレレッテレー
折木「…………それは?」
伏羲「桃の成長に効くハゲの薬だ!」
折木(どう見てもリ○ップだが)
伏羲「じぇいっ!」ピチョピチョ
シーン……………
折木「………何も起きないが」
ムクッ
折木「ん?」
伏羲「」ニヤッ
ムクムクムクッ
折木「嘘だろ……」
ムクムクムクズドドドドドドォーーーーーー!!
折木「い、一瞬で実がなった……」
伏羲「はーーーーっはっはっはっは!!!」
伏羲「見たか奉太郎!これがわしの力よ!」カッカッカ
折木「い、いや、ひょっとしたらその薬に仕掛けが…」
伏羲「疑り深いヤツだのー。……ならば周りを見るがよい」
折木「周り?」キョロキョロ
主婦「………丁目のスーパーで卵が……」
学生「……マジで?どんだけーww………」
老人「………今日こそは須藤さんから一局……」
折木「………だれもこっちに気づいてない…」
……そういう空間を作った」
折木「望……アンタまさか本当に……」
伏羲「やーっと信じたのか?」
折木「…………これだけ証拠を見せられたら、な」
…………………
…………………………
伏羲「さて、ようやくお主が信じたところで商談に移ろうかのう」
折木「商談?」
伏羲「桃の礼だ。お主の望みを言うてみい」
折木「俺の……望み?」
伏羲「たいていのことなら叶えてやるぞ?ホレホレ、言うてみい」ホレホレ
折木「望み………」
あ、思春期ならば女かのう?」
折木「アンタ、仙人とか言ってた割に世俗の臭いが半端じゃないな」
伏羲「わしは昔からそうでのう!修行を面倒くさがって居眠りばかりしておった」
折木「……………」
伏羲「それよりも早よう望みを言うてみよ」
折木(……………)
折木「……………………ない」
伏羲「む?」
折木「俺に望みなんて、ない」
折木「…………べつに聖人君子を気どってるわけじゃない」
伏羲「ふうむ」
折木「分からないんだ………本当に、自分が何がほしいのか。何がしたいのか」
伏羲「……………」
伏羲「………わしの知り合いにも、『究極のナマケ』を開発した極度の面倒くさがりがおるが」
折木「そんなものに興味はない。ただ、『不必要なこと』が煩わしいだけだ。
そうやって俺は、必要最低限のことを、必要最低限の労力でこなしてきた」
伏羲「それが、さっき言うておった『省エネ』ということだな?」
折木「ああ、だけど………」
全てを『やらなくてもいいこと』と『やらなくてはいけないこと』に分けていくうちに…………」
折木「俺は、『やりたいこと』が分からなくなってしまったんだ」
伏羲「…………プッ」
折木「!?」
伏羲「あーーーーーーーーーーっはっはっはっはっはっはっはっは!!!」ゲラゲラ
折木「お、おい」
伏羲「こ、行動原理…やりたいこととか…ブフッ!!プーップップップップ!」クスクス
折木「」
伏羲「ブッ!バァーッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!」ゲラゲラ
伏羲「ハハハハハハハハハハハッ!!!」
…………
…………………
…………………………
伏羲「あー笑った笑った。このわしを笑い死にさせる気か奉太郎」プププッ
折木「…………」
伏羲「年の割に達観しておると思っておったが。なかなかどうして、青臭いことを言うではないか、
え?奉太郎」
伏羲「違う違う逆だ。お主が余りに月並みなことを言うのでのう」
折木「月並み?」
伏羲「おのれのアイデンティティに悩む思春期が月並みでなくて何だというのだ?」
折木「!」
伏羲「お主に限らず、お主ぐらいの歳の子どもは皆そういった悩みを抱えておるものよ。
程度の差はあれど、な」
折木「…………」
そう言ってきたのは『悟りに近づきたい』と言っておった坊主を除けば随分と久しぶりだのう」ウーン
折木「…………これ以上何もないなら、俺はこれで」
伏羲「おおそうだ!お主、わしと一緒に来ぬか?」
折木「…………は?」
折木「」
伏羲「長いこと一人で旅をしてきたが退屈でのう。そろそろ道連れがほしいと思うておったのだ。
お主はどうやら、気が合いそうだからのう」
折木「それが、俺に何の得があるんだ?仙人にでもしてくれるのか?」
伏羲「いや、悪いがそれは無理だ。仙人になるには生まれつきの『素質』が必要なのでな。
まぁ、占いくらいなら教えてやれるがのう」
伏羲「そのかわり、浮世の煩わしさからは解放されるぞ?」
折木「!!!」
伏羲「さっき自分で言うておったではないか。『面倒は嫌いだ』、
『やらなくてもいいことはやりたくない』と」
折木「それは…………そうだが」
伏羲「それらぜーーーーんぶから解放されるのだ。割と最高の気分だぞ?」
折木「…………………」
伏羲「要するにお主、人と関わるのが疲れるのであろう?
ならば社会のしがらみから抜け出してしまうのが手っ取り早いと思わぬか?」
伏羲「親、友達、学校…………全部鬱陶しいのであろう?
ならばそんなものは捨ててしまえばよいのではないか?」
伏羲「おおそうだ、そういう世捨て人が集う集落にも心当たりがある」
折木「…………世捨て人が、集落?」
伏羲「個を消す仮面付きの、だがのう」
折木「……………」
伏羲「お主の言うそこでの『やらなくてはいけないこと』とは、自分の食うものを育てることだけだ」
伏羲「最高の省エネ生活だと思うのだがのう」
伏羲「さぁ、どうする?」
折木(どうする………)
折木(そもそもこんな荒唐無稽な話を信用してもいいのか?新手の詐欺か何かじゃないのか?)
折木(……………いや、無駄だな。既に十分すぎるほどの証拠を見せられた)
折木(そもそも詐欺ならもっと単純に金を巻き上げようとするはずだ)
折木(俗世を捨てる………俺が?)
折木(それが…………俺の望み?)
折木(全部、『やらなくてもよく』なる……)
折木(……………そうだ)
折木(俺はずっとそれを望んでいたじゃないか)
折木(世捨て人?上等じゃないか)
折木(もとから『感情が死んでいる』と言われて久しいこの俺だ)
折木(いい機会だ。この際全部捨ててしまおうじゃないか)
折木(それで俺の省エネは完成する!)
折木(そうだ、それが俺の………………)
―――――私、気になります!折木さん!
折木「!!!!」
伏羲「……………今、お主の胸に思い浮かんだものは何だ?」
折木「あ………」
伏羲「誰の顔だった?」
折木「それは…………」
伏羲「まぁよい。のう奉太郎。人というのはな、そう簡単に何かを捨てることなど出来んのだ」
折木「…………」
時にはおとし、そのたびに傷つきながらまた背負いこむ」
伏羲「闘いの中にあってもそうだ」
折木「闘い?」
伏羲「頭の中の自分が言うのだ。
『賢くなれ。面倒なものは切り捨てろ。そうすれば勝てる』とのう」
折木「……………」
伏羲「だが、捨てられんのだ」
折木「!」
わしの心が、魂魄が、『それ』を捨てたくないと聞かんのだ」
折木「…………俺には分からんが、それが、アンタの『やるべきこと』だったんじゃないのか?」
伏羲「そうだ……と言いたいが、違うな。単なるわしのわがままだ」
折木「わがまま?」
伏羲「そう。『誰も死ななければいい』『わしがまもればいい』、という、傲慢で自己中心的な願いだ」
折木「…………」
傲慢で何が悪い、とな」
折木「?」
伏羲「自分の大切なものを背負いこんで何が悪いのだ。守りたいものを守って何が悪いのだ」
伏羲「それを決めるのは他の誰でもない、自分自身ではないか」
伏羲「それに口出しできるほどお前は偉いのか!………そう言ってやったことがある」
折木「…………何の話だ?」
伏羲「おお、何でもない。話がそれてしまったのう」
折木「傲慢な……願い………」
伏羲「む?どうした奉太郎?」
折木「いや、別に……」
伏羲「………奉太郎」
折木「何だ?」
伏羲「悩むことをやめてはならぬぞ」
折木「…………どういうことだ?」
悩むことから逃げてはならんのだ」
伏羲「悩んで悩んで悩み抜いて、最後に自分の中に残ったものを、大切にするがよい」
折木「悩み抜く………」
伏羲「そうだ。大切なものは自分で決めるのだ」
伏羲「それが、お主の『導』となる」
伏羲「………説教くさくなってしまったかのう」
折木「………なぁ、望」
伏羲「何だ、奉太郎」
折木「さっきも言ったけど、俺は面倒ごとが嫌いだ」
伏羲「うむ」
折木「そんな俺にも見つけられるだろうか。
抱え込みたいものが。大切な―――『道導』が」
伏羲「………知らんわそんなもん」
折木「は!?」
伏羲「だーかーらー、何度も言うておるではないか。お主のことはお主しか決められんと」
折木「おい、じゃあ今までの話は…」
伏羲「現にお主はさっき自分で決めたではないか。
『行かん』、とな」
折木「…………あ」
折木「自分の心……ねぇ」
伏羲「…………顔がニヤけておるぞ、ムッツリめ」
折木「なっ!?」
伏羲「カカカっ。ダアホめ、男子高校生の考えておることなどお見通しだ」カカカ
折木「ぐっ」
伏羲「初めて会ったときからそのスカした態度が若干気に入らんかったのだ。
いーい気味だのう!」
伏羲「何だ、かかってこんのか?」ホレホレ
折木「……言っただろ、疲れるのは嫌いなんだ」
伏羲「………まあよい。それも『選択』だ。
…………さて、と。そろそろ行くかのう」
折木「えっ?」
伏羲「つかの間のよい退屈しのぎになった。感謝するぞ、奉太郎」
折木「そうか……今度は何処に行くんだ」
伏羲「もともと行くあてのないぶらり旅だからのう……
そうだ、美味いもののあるところに心当たりはないか。ナマグサ以外がよいのだが」
折木「………リンゴなら、隣の県の名産だが」
伏羲「リンゴか!たまにはそれもよいな。桃も最近飽き気味だしのう」
折木「桃…………あっ」
伏羲「あっ」
伏羲「ち、馳走になったのう!美味かったぞ!ではさらばだ!!」ダッシュ!
折木「待てこのっ」
伏羲「疾っ!!!」ビシュッ
ギュオォォォォォゥゥッ!!!
『じゃあな奉太郎!達者でな!!』
折木「くっ、待て!望!」
『ん?ああ、まだちゃんと名乗っておらんかったな!』
折木「何だって!?」
『わしの名は太公望!』
『またの名を伏羲!!始まりの人が一人である!!!』
ギュオォォォォォ…………ッ
折木「消えた………」
折木「何だったんだアイツは…………」
折木「夢……じゃないよな。目の前に桃の木があるし」
伏羲『自分の大切なものを背負いこんで何が悪いのだ。守りたいものを守って何が悪いのだ』
伏羲『悩んで悩んで悩み抜いて、最後に自分の中に残ったものを、大切にするがよい』
伏羲『それが、お主の『導』となる』
折木「導……か…」
「折木さん?こんなところでどうされたのですか?」
折木「!」
える「何かあったのですか?」
折木「ち、千反田………」
折木「え、あぁ、これか?………さぁ、もとから生えてただけだと思うが」
える「いいえ、昨日ここを通った時にこんな立派な木はありませんでした」
折木「そうか………お前が言うんなら間違いないんだろうな」
える「ええ、間違いありません!」
折木「そうか………」
える「ひょっとして、何か御存じなんですか?」
折木「!」ギクッ
える「やっぱり御存じなんですね?」
折木「あのな、千反d(ry」
える「どうして一夜でこんなに大きな木が生えたのですか?」
折木(一夜どころか一瞬だけどな)
える「一体ここで何があったのですか!?」
える「私、気になります!」
折木「……………ハァ」
…………
…………………
…………………………
―――――夜
折木「…………疲れた」ドサッ
折木(下校早々ヘンなのに捕まるわ、千反田には見つかるわ)
折木(千反田は何とか誤魔化してきたが……)
折木(………なぁ、望)
折木(俺の選択は、本当に正しかったのか?)
折木(これからも面倒ごとを背負い続ける、この選択が………)
折木「……………違うな。
『正しさ』なんて何の意味もない」
折木(正しいかどうかよりも、俺自身が選んだこと自体に意味がある。
その選択の積み重ねが、俺の『導』になる、ってことか…………)
バサッ
折木(本当に新品同然だな……それでいて、俺の名前や書き込みはそのまま……ん?)
折木「ここだけ折り目がついてるぞ……?」
パサッ
折木「……………」
折木「やれやれ、口ではああ言ってたくせに」
折木「負けず嫌いにもほどがあるだろ」クスッ
ポイッ
バサッ
~~~~~こうして周の軍師・呂尚(太公望)の活躍で…………
わしの名前は呂望だ!間違えるな↑
おしまい
今日引越しの準備しなきゃなのに何やってんだ……
じゃあの。
>>111
こ・・・これが・・・現実逃避・・・ッ!
Entry ⇒ 2012.09.20 | Category ⇒ 氷菓SS | Comments (1) | Trackbacks (0)