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岡部「俺が女だと!?」
岡部「催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなものじゃあ断じてない」
岡部「もっと恐ろしいものの片鱗を…ではない!」
岡部「ポルっている場合ではないぞ鳳凰院凶真よ!」
岡部「俺の体に何が起きたというのだ。こんな…」サワサワ
岡部「無い…」フルフル
岡部「……」ペタペタ
岡部「…こっちも無い」ショボン
岡部「……」
紅莉栖「あら、ハロー岡部」
岡部「おお、助手か!!助手に聞きたいことがある。どうして俺は女になっているのだ!?」
紅莉栖「はぁ!?あんた何言ってるの?またいつもの中二病ですか?」
岡部「俺はさっきまで男だったろう助手よ!それがどうして女になっているのだ!?これは冗談で言っているのではない!」ドンッ
紅莉栖「ビクッ…何よもう、そんなに大声で話しちゃって……冗談にしては悪質よ、岡部」
岡部「これが落ち着いていられるかッ!!はっまさか…」
岡部「なあ、紅莉栖、俺のフルネームを教えてくれ」
紅莉栖「今紅莉栖って言った!?…あなたの名前は岡部倫子よ。学生証にもそう書いてあると思うけど」
岡部「まさか」ガサゴソ
岡部「ウソだろ、おい…」
岡部「俺の本名が…岡部倫子だと…!?」
岡部「この場合いつDメールを送ったのかは重要でないな。今重要なのは誰がどんな文面で誰に送ったかだ」
紅莉栖「ちょっと、さっきから何を一人でぶつぶつ言ってるのよ」
岡部「助手よ。俺が寝ている間にDメールを送ったか?」
紅莉栖「送ってないわ、それと助手ゆーな」
岡部「そりゃそうだよな…俺が女になってるって事はDメールを送った事実が無かったことになっているということだろうし」
バタン
ダル「うひーあちー。脂肪が溶けてゲルになるレベル」
ダル「いきなり倫子ちゃんの嫉妬イベントキター!!度重なるフラグクラッシュによく耐えてここまで来たかいがあったお」
岡部「何を訳わからんことを言っているのだ!!未来からメールが来てるか確かめるだけだ。助手もそういったのは届いているか?」
ダル「なんだ。また、実験かお。どんなメール送ったん?」
岡部「それが俺にも分からないんだ」
紅莉栖「分からない()とか、ラボ創設者()のくせに管理がなってないwww」
岡部「煽るなネラーが!!そんなことよりメールは届いていないのか!?」
ダル「僕も届いてたとしたら真っ先に倫子ちゃんに報告しますし、はい」
岡部「そうか…、じゃあ一体誰に届いているんだ?」
紅莉栖「どんなメールを送ったか分からないって言ってたけど、送る前と送った後でどんな変化が起きてるの?もしかしたらその変化からメールの内容と人物を特定できるかもしれない」
岡部「気がついたら女になってた」
紅ダ「は?」
岡部「だから、ラボで寝てて気がついたら倫太郎が倫子になってたんだ」
紅莉栖「つ、つまり、俺があいつであいつが俺で、アポトキシンを服用したと」
岡部「落ち着け、クリスティーナ」
ダル「厨二病の男とか誰得。そんな世界線僕は認めないお」
岡部「お前の意見なんかしるか!!」
紅莉栖「すぅーはぁー、よし落ち着いた。そうね、もし岡部が男の世界線から女の子になってる世界線に移動したんだとしたら因果となるメールは岡部が生まれてくる前に送られてないと辻褄は合わないんじゃないかしら?」
岡部「作戦名:お父様に聞きましょう(オペレーションリーディングオイディプス)を発動させる。各自両親のポケベルに未来からの連絡は入ったかを聞いてくること」
ダル「そんな…もったいないこと僕には出来ない!!そんなことしたらせっかくの比翼連理のダールン、ハーレムルートが台無しだお」
紅莉栖「語呂悪いし、橋田は比翼連理ってよりも肥沃連理って感じね」
ダル「ちょっ、牧瀬氏酷いお」
岡部「ええい、話を聞け!!全く、俺の一生がかかってるんだぞ!!」
紅莉栖「冗談よ。とりあえず聞いてはみるけど、あんたはDメールを打ち消す内容を考えなさいよ」
岡部「うむ、わかっている。それとダルは聞き出した暁にはフェイリスとるか子の手料理を振る舞ってもらうよう取り計ろうではないか」
ダル「その中に倫子ちゃんとまゆ氏もキボンヌ」
岡部「俺はともかくまゆりはやめといた方がいいと思うが」
紅莉栖「あれは、科学者的な知的探求心を満たしていったらああなっただけで、まともなのも作ろうと思えば作れるはず…」
岡部「お湯入れて三分待つのは料理に入らないからなインスタント処女」
紅莉栖「あんたも処女でしょ、ブーメランよブーメラン」
ダル「女の子達が目の前で処女発言。二次元にいかなくても桃源郷はここにあったんだお」
岡部「俺は男だ!いや、そうじゃなくてまゆりも相当酷かったような気がするが…」
バタン
まゆり「トゥットゥルー、おはよーみんな」
ダル「まゆ氏、まゆ氏、倫子ちゃんがまゆ氏の料理食べない方がいいとかって」
まゆり「えー、ひどいよオカリン。オカリンがまゆしぃに料理を教えてくれたのに」
岡部「なん…だと…俺がまゆりに料理?」
まゆり「家事を教えるのは姉の役目だーって言って教えてくれたの忘れちゃったの?」
紅莉栖「それがね、まゆり…」
まゆり「ええーオカリンは実は男の子だったの?じゃあお姉ちゃんじゃなくてお兄ちゃんだねー、えっへへ」
まゆしいを抱きしめたん? って想像したらなんか高まってきたわ
有りだな。全然ありだわ
まゆり「そっかぁ、オカリンはリーディングシュナイゼルさんが出てるから分からないんだっけ?」
岡部「シュタイナーだ!!」
まゆり「オカリンはまゆしぃがお婆ちゃんにしごかれて大変だったときに、女の子は筋肉を鍛えるものじゃない。私がお姉ちゃんになって、家事とかを教えるから鍛えるのは止めろって抱きしめて言ってくれたんだよー」
岡部「そうか…お婆ちゃんにしごかれてるときに…えっ!?」
まゆり「だからオカリンはまゆしぃのお姉ちゃんなのです」
まゆり「紅莉栖ちゃんだって可愛くて頭も良いからまゆしぃうらやましいって思うなー」
ダル「牧瀬氏とまゆ氏と倫子ちゃんの百合展開はぁはぁ」
岡部「ああ、そうだ。機関の工作により今までで一番酷い敵地に送り込まれてしまった。今回ばかりは生きて帰れそうに無い。そうだな、俺に何かあったら彼等に伝えてくれ…最期まで強く戦ったと…エル・プサイ・コングルゥ」
岡部「ゴホン、話が逸れてしまったが、まゆりにももう一度説明する。両親にポケベルに未来からの連絡があったかどうか確認してくれ」
岡部「今日のところは以上で解散とする」
岡部「精神的に疲れた。こんな世界線は早くなかったことにしたいのだがな」
翌日
岡部「昨日は何が何だか分からなく取り乱してしまったが、紅莉栖の前で父親の話は良くなかったな」
岡部「それにしても、両親に聞いてもそんな連絡は無かったと言うことらしく八方塞がりになってしまった」
バタン
ダル「グーテンモルゲン、あれ?倫子ちゃん一人なん?」
岡部「ああ、二人はまだ来ていない。それと倫子ちゃんと言うのはやめろ。寒気がする」
岡部「昨日の説明を聞いてなかったのか?今の俺は男だぞ」
ダル「そんなものは関係ないんだお。可愛いは正義」キリッ
岡部「なにがキリッっだ。それより聞いてきてくれたか?」
ダル「聞いたけどその前にやることがあるよね。倫子ちゃん」
岡部「ああ、料理のことか?それならばまゆりが来てからにしようと思うのだが」
ダル「違うお。人に頼んだときはそれ相応の対価を支払うものだってばっちゃが言ってたお」ハアハア
岡部「息を荒げてこっちに来るな!!いや、マジでやめてくださいお願いします」
ダル「もう遅いお」
岡部「いやー」
まゆり「トゥットゥルー、あれダル君。オカリンに何やろうとしてるのかな?」
岡部「た、助けてくれまゆり!ダルが俺のことを襲おうとして」グスッヒッグッ
ダル「ち、違うお。毎回やってるミニコントみたいなものだお。ちょっとしたジョークだお」ブルブル
まゆり「ダル君。冗談でも女の子を泣かせるのはいけないのです」
まゆり「だから覚悟してね」
ダル「…ああ、オワタ。分子レベルでズタズタにされる未来しか見れない」ガタガタ
アッ―――!!!
岡部「ああ、ありがとな。まゆり」グスッ
まゆり「いいんだよ。ダル君も一回懲らしめないとダメなのです」
岡部「しかし今になって思えば、いやーって女子か!俺は」
まゆり「今オカリンは女の子なんだから良いんだよ。それにオカリンに何かあったらまゆしぃが守ってあげるのです」
岡部「まゆり…」
バタン
紅莉栖「ハロー、あれ?あそこに転がってるのは新作ガジェットの部品?」
まゆり「大丈夫。壊さないようにお仕置きしたから、まだダル君だよ」
紅莉栖「相変わらず、えげつないわね…」
岡部「皆揃ったところで昨日の作戦の報告を聞こうではないか」
紅莉栖「…岡部、…その事なんだけど」
岡部「そうだったな、すまなかった紅莉栖」
紅莉栖「なんで謝ってるのよ?」
岡部「だって、紅莉栖はあまり父親との仲は良くなかったんだろう?」
紅莉栖「いえ、普通に仲良いですけど?」
岡部「バタフライエフェクトか…」
紅莉栖「それが、岡部の女体化がバタフライエフェクトの可能性があるの」
紅莉栖「それが、パパのポケベルに不思議な連絡が来てたらしいのよ」
岡部「なら紅莉栖がDメールを送ったのは確定したのか」
紅莉栖「そうらしいわ、内容は直接言いたいって、今こっち向かってるわよ」
岡部「な、なに!?助手の父さんがこっちにくるだと!!」
紅莉栖「そう。ここの場所を教えたからもうちょっとしたらつくと思うわ」
コンコン
紅莉栖「パパかも」
岡部「取りあえず、そこにあるダルらしき物体をシャワー室に押し込め。警察を呼ばれては適わん」
まゆり「どうぞー」
中鉢「お邪魔します。おおー、ここが紅莉栖が言っていた未来ガジェット研究所か」
紅莉栖「パパ!!ずいぶん早かったのね」
岡部「なっ、中鉢だと!!」
中鉢「そこにいる人達はラボの皆さんか?紅莉栖がいつもお世話になってるね」
岡部「いや、こちらこそ。…じゃなくて紅莉栖の父さんがドクター中鉢…」
中鉢「私を知っているのかい?お嬢さん」
岡部「お嬢さんではない!!我が名は鳳凰院凶真だ!!ラジ館でタイムマシンの発表会を開こうとしていたろ、それを見に行こうとしてたんだ」
まゆり「紅莉栖ちゃんのお父さんかぁ。トゥットゥルー、まゆしぃです」
岡部「分かるのか?この良さが」
中鉢「もちろんだよ、私の中鉢という名前も8という数字を中に入れる事によって永遠や無限をあらわしているのだからね」
岡部「なるほど、貴様もなかなかいい名前をしているな」
中鉢「紅莉栖はいい友人をもったな」
紅莉栖「そこで共感しあうってどうよ…それに鳳凰院じゃなくて岡部倫子だから」
岡部「しかし、なぜあなたほどの男がジョンタイターの理論をパクったのだ?」
中鉢「酷い言いぐさだな、あれは私と鈴さんや皆で作った理論だからあんな奴とは一緒にして欲しくは無いのだがね」
岡部「鈴さんって橋田鈴のことか!?」
中鉢「そうだよ、鳳凰院さんは鈴さんを知っているのかい?」
中鉢「そうか…思っていたよりも世界は狭いんだな」
岡部「そうだ、せっかく来たんだ。我がラボの発明品を見てゆくかドクター」
中鉢「いいのかい?なら少し拝見していこうかね」
紅莉栖「今はその話じゃなくてポケベルに入った内容でしょパパ」
中鉢「そうだった。あの時のことはよく覚えてるよ」
――
中鉢「なんだ?差出人不明?むすめうまれたらなかよくしろ?」
中鉢「間違いか?いや、それではつまらんな。きっとこれは宇宙人が送ってきた信号に違いない、もしくは未来人とか。鈴さんに意見でもきいてみるか」
ヤスイヨーヤスイヨー
中鉢「八百屋か…何時もお世話になっているし、たまにはメロンでも買っていくのもいいな」
中鉢「すいませんメロン一つください」
八百屋「はいよ毎度あり。嬉しそうな顔してるけど良いことでもあったのかい?」
中鉢「もしかしたら未来か宇宙と交信出来る発明ができるかもしれないんだ」
中鉢「子供ですか、それは良いことですね」
八百屋「まあな、これからもっと忙しくならなくちゃ食わせるのに苦労しそうだけどな」
中鉢「でも、生まれて来る子供はきっと健康に育ちますよ。野菜食べると元気な子産めるって言いますし」
八百屋「なら嫁にも野菜をたんまり食べてもらわないとな。はいよお釣り。また来てくれよ」
中鉢「ええ、また来させて貰いますよ」
中鉢「申し訳ない、大丈夫か?」
不良1「いったいのー。ああ、これ骨折してるわ」
中鉢「いや、それはない」
不良1「なんだとこら、この炎の絶対零度、0℃になにいちゃもんつけてくれてんだ」
中鉢「炎の癖に絶対零度は可笑しいだろ。絶対零度は0℃じゃなくて0Kだし」
不良2「てめぇ痛い目見ねぇと分からないらしいな」
中鉢(つい反応してしまったが、逃げた方が良さそうだな)
ダッ
不良3「まてやわれぇ」
「なんか楽しそうなことをしてるねぇ。私も混ぜてくれよ」
不良2「うっせぇな。誰だよ」
「あんまり大勢で男を追いかけてるのは見ててみっともないよ」
不良3「ああ!?怪我したくなけりゃ引っ込んでろババア」
お婆さん「全く酷い言い草だ。これは少しお仕置きが必要かねぇ」ヒュン
不良2「ガハッ」バタッ
不良3「なんだこの婆さん。動きが人間じゃねぇぞ、ヘブッ」バタッ
お婆さん「全く、この程度で粋がるなんて百年早いよ坊やたち」
不良1「この婆さんやべぇよ。逃げんぞ、お前ら」
不良2、3「ま、まってくれよー」
お婆さん「お前さんもお前さんだよ。自分の身は自分で守れないんじゃ男として失格だよ」
中鉢「すいません」
お婆さん「たまたま私が見かけたから良かったけど、こういうこともあるんだから気をつけなさいよ」
中鉢「は、はい。本当にありがとうございました」
お婆さん「…最近の若い者はこれだから、うちの息子も貧弱で困ったものだわ。やっぱり孫が生まれたら私が鍛えてあげなきゃダメなのかもしれないねぇ」
――
中鉢「と、その日はこんな風に色々あったから記憶に有ったんだろうね。紅莉栖にポケベルに連絡が来たかどうか聞かれたとき、すぐ思い出したよ」
岡部「き、貴様の仕業だったのかぁぁ!!」
中鉢「いきなりどうしたんだね。大声なんか出して」
岡部「あなたが会った八百屋は俺の父だろう。そして助けてくれたお婆さんはまゆりのお婆ちゃんに間違いないだろうな!!」
まゆり「まゆしぃのお婆ちゃんはやっぱりすごいのです」
岡部「あなたが野菜を食べろといったから俺は女になって、あなたが不良に絡まれたからまゆりは人間離れした筋力を手にしてしまったんだ」
中鉢「話はよくわからんが、やはり世界は狭いと言うことがよくわかったよ」
ダル「やっと直ったお。僕の凄まじい生命力に感謝。あれ、そこにいるおじさんはどちらさん?」
紅莉栖「あ、橋田が居るの忘れてた。私のパパよ」
ダル「お義父さん。娘さんと健全な交際をさせて頂いてます。橋田至ともうします。」キリッ
中鉢「それは本当か紅莉栖?」
紅莉栖「んなわけなかろーが。誰が好き好んで橋田と付き合わなきゃいけないのよ」
中鉢「良かった。こんな奴と付き合ってるなんて言われたら、父さん3日は寝込むからな」
ダル「なんで、僕の周りにはおにゃのこが多いのに1人も落とせないの?教えてエロい人ー」
ダル「それは、倫子ちゃんが彼女になってくれるって事でFA?」
岡部「何度も言っているが今は男だ!」
まゆり「ダル君はまだお仕置きが足りなかったのかな?」
ダル「すいません。調子に乗りすぎました」ドケザ
中鉢「意外と長居してしまったから、私はそろそろ帰るよ」
紅莉栖「えっ、パパもう帰っちゃうの?」
中鉢「紅莉栖がどんな所でどんな友人と過ごしているかが気になっただけだからな。紅莉栖が楽しそうな所にいることがわかって良かったよ」
中鉢「なんだね?」
岡部「もし、あなたが紅莉栖の才能に嫉妬して、紅莉栖につらく当たってしまう世界があったらどうする?」
中鉢「そんな自分がいたら、そんな事はくだらないと説教をしてしまいたいね」
岡部「そうか…」
中鉢「じゃあ私はもう行くよ。これからも紅莉栖の事をよろしく頼むよ」
岡部「任せてください」
中鉢「ただしピザ、てめーはダメだ」
ダル「牧瀬氏の父さん、最後とんでも無いこと言ってなかった?」
岡部「全面的にお前が悪いだろ。それにしても助手は純血のネラーだったとはな」
岡部「そして、お前がDメールを送った犯人だったとはな助手よ」
紅莉栖「そうみたいね。岡部、前の世界線での私とパパの仲ってそんなに悪かったの?」
岡部「ああ、お前から聞いた話だと相当悪かったっぽいな」
紅莉栖「そう…」
岡部「どうする?Dメールを送るか?」
紅莉栖「だって、そうしないと岡部は女の子のまんまになっちゃうでしょ」
岡部「そうなんだが…いいのか?過去を変えることに反対していたお前がDメールを送るほど悩んでいたんだぞ」
岡部「考えればいい、俺はお前の気持ちを尊重するぞ」
岡部「それに、この世界線ではまゆりは死にそうにないしな」ボソッ
紅莉栖「わ、私は――――」
紅莉栖「パパと仲の悪かった世界に戻るだけなのに、それが恐いの…」
岡部「…それが紅莉栖の選択なら俺は否定しない」
岡部(俺の性別一つでまゆりが助かり、紅莉栖も苦しむことの無い世界に来れたのだから安いものだ)
紅莉栖「なんで…なんで岡部はそんなことが言えるの?性別が変わっちゃったのよ」
岡部「俺はルカ子に、そんなものは関係ないと言ってきている。実際に我が身に降りかかったらそんなことは言えないというのが本音だが…」
岡部「いいんだ、好きな人の気持ちを変えてまで俺は戻りたいとは思わん」
紅莉栖「えっ!?」
岡部「気付いたんだよ。普通ならば迷うことなんか無くDメールを送るはずなのに、俺は迷って、結局紅莉栖に決断してもらった」
岡部「それ程、紅莉栖の気持ちが大切だったんだろうな」
紅莉栖「おかべ…」
岡部「お前はどうなんだ?」
紅莉栖「と、言いますと?」
岡部「お前は俺が好きかと聞いているんだ」
紅莉栖「で、でも岡部は女の子だし…」
岡部「体は女だが心は男だ。それに今更野郎なぞ好きになれる訳ないだろう」
岡部「責任感などは無くてもいい。紅莉栖が俺の事を好きかどうかが知りたいんだ」
紅莉栖「私も岡部のことが…好き…だよ」
ダル「キター!!!本物の百合展開!!!これで勝つる!!!」
まゆり「もー、ダル君!二人を邪魔しちゃうのはまゆしぃあんまり好きじゃないなー」
ダル「ご、ごめん、まゆ氏。だから引っ張ってかないで」ズルズル
まゆり「じゃあ、まゆしぃはダル君とメイクイーンに言ってくるのです」
紅莉栖「…邪魔があったけど伝わったよ…ね?」
岡部「まだ伝わらないな」
紅莉栖「そっか…なら」チュッ
紅莉栖「これなら伝わった?」
岡部「ああ、伝わったよ。紅莉栖」
岡部「これが二人の選択だってことがな」
おわり
昨日この名前でスレ立てしてくれた人
ありがとニャンニャン
Entry ⇒ 2012.10.24 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (5) | Trackbacks (0)
岡部「最近ラボメン達が中途半端に前の世界線の記憶を思い出してる」
岡部(無事このシュタインズ・ゲートの世界線に辿り着き、そして奇跡的に紅莉栖とも再会した……)
岡部(紅莉栖もまゆりも死ぬ事のない世界線。これでやっと平穏な日々を取り戻した……そう思っていた)
紅莉栖「ねえ、岡部……答えて」
岡部「……」
紅莉栖「わ、私たち……そのっ」モジモジ
岡部「……」
紅莉栖「き、キス、したわよね」
紅莉栖「た、確かラボの……こ、この辺りで」
岡部(辛い記憶のある紅莉栖には、まだ世界線漂流の経験を全て語っていない)
紅莉栖「し、しかも一回じゃなくて何度も、何度も……」モジモジ
岡部(リーディングシュタイナーは誰もが持つ能力。だから、いずれはラボメンの誰かが記憶を思い出すと予想はしていた……しかし)
まゆり「オカリン……」
フェイリス「ニャニャ!?凶真はフェイリスと二人きりの夜を過ごしたのにクーニャンにも手を出していたのかニャ!?」
ルカ子「お、岡部さんは僕とデートしてくれたのに……」
萌郁「私も……キス、された」
岡部(どうしてこうも全員中途半端に思い出してるのだ!)
紅莉栖「……好きだ」ボソッ
岡部「!?」
紅莉栖「……世界で一番大切な人の事を忘れる筈ない」ボソッ
岡部「なっ……」
紅莉栖「岡部が……言ってくれた」
まゆり「……」
フェイリス「凶真……」
ルカ子「岡部さん……」
萌郁「……」
紅莉栖「そのままはぐして……何度も何度もキスした」
岡部「も、妄想も大概に……」
紅莉栖「岡部はファーストキスじゃないって言ってた……」
岡部「」
紅莉栖「そう言えば、岡部のファーストキスの相手って、だれ?」
岡部「そ、そんな事、どうでも……」
萌郁「私……?」
紅莉栖「えっ」
紅莉栖「なっ!?」
まゆり「オ~カ~リ~ン?」
岡部「ご、誤解を招くような言い方はやめろ! キスだけだっただろうが!」
萌郁「……やっぱり、あの事は……本当、だったんだ」
岡部「あっ……」
岡部(しまった……!)
萌郁「……岡部くん」
岡部「な、なんだ……?」
萌郁「責任……取って、ね?」
岡部「……」
岡部「はあああああ!?」
紅莉栖「ちょっ、桐生さん!?」
フェイリス「抜け駆けなんて卑怯ニャ!」
萌郁「岡部くんに……キス、された。それも、押し倒されて……大胆に」
まゆり「どういう事かな~オカリン」
ルカ子「お、岡部さんに押し倒されるなんて……いいなぁ」
紅莉栖「そ、それなら私だって岡部に責任を取って貰う必要があるわよ!」
フェイリス「ニャニャ、そ、それニャら凶真と、岡部さんと一緒に寝た私だって!」
紅莉栖「えっ」
まゆり「フェ、フェリスちゃん……?」
ルカ子「ど、どういう事ですか!?」
紅莉栖「寝たのは否定しないんだ……」
まゆり「まゆしぃ、だってオカリンに一緒になんて、最近ないのに……」
ルカ子「お、岡部さんと一晩一緒!? はあ、はあ……」
萌郁「牧瀬さん、フェイリス、さん……私……三股?」
岡部「違う!」
岡部「そ、それは、その……」
フェイリス「岡部さんっ!」ギュッ
岡部「!?」
フェイリス「やっぱり、岡部さんは、私の王子さまだったんだね」
岡部「こ、こら、離れろ留未穂!」
まゆり「オカリンはフェリスちゃんの本名を知らない筈なのに……」
紅莉栖「それじゃあ……」
萌郁「全て、事実……」
ルカ子「全部、本当……なら、僕が岡部さんとデートして、そのまま結ばなて赤ちゃんを授かったのも本当なんですか!?」
岡部「えっ」
フェイリス「さ、さすがにそれは……」
まゆり「ルカくんは男の子だから赤ちゃんはできないんじゃないかな~?」
岡部「そ、そうだ!何を言っているのだルカ子!」
岡部(確かにデートはしたが、子作りなどした記憶がないぞ!?)
ルカ子「で、でも……」
岡部「だいたい、デートと言っても結局最後はいつも通り修行をしただけだ」
萌郁「デートは、したんだ……」
岡部「」
岡部「そ、そうか……」
ルカ子「はい……えへへ」
岡部「……」
紅莉栖「4股とか……」
まゆり「……」
萌郁「岡部くん……意外とやり手、だね」
フェイリス「凶真の一番がフェイリスなら、別に構わないニャ」
岡部(まだデートをしただけのルカ子、一緒に寝ただけの留未穂は、まだ何とかなる……多分)
岡部(問題は萌郁と紅莉栖だ。二人にキスをしたのは事実だ……)
岡部(責任は取るべき、なのか……)
まゆり「オカリン」
岡部「な、なんだ?まゆり」
岡部(まさか、また何かややこしい事が……!?)
岡部(いや、待て。まゆり相手には特に手を出していな……)
まゆり「オカリンは、まゆしぃの手をむぎゅーって握ってくれてね、どこか二人で遠くに行こうとしてたよね」
岡部「えっ?ああ……」
岡部(確かに、まゆりの死を回避する為に色々と策を試したな。海外逃亡までしようとした事もあったな)
まゆり「えへへ、あれって駆け落ちしようとしたんだよね」
紅莉栖「か、駆け落ち!?」
フェイリス「そ、そんニャ……」
萌郁「遊び、だったの……?」
ルカ子「駆け落ちならぼ、僕も一緒に連れて行って下さい!」
岡部「な、何を言ってるのだまゆり!?」
まゆり「あれぇ?でも、オカリン、何だか必死に何かから逃げようとしてるみたいだったよ?」
岡部(た、確かにまゆりの死から何としても逃げようとしていたが!)
紅莉栖「そうか、分かった……」
フェイリス「クーニャン?」
紅莉栖「岡部は、私たちと4股して、バレそうになったからまゆりと駆け落ちしようとしたんだ……」
ΩΩΩ<な、なんだってー!
フェイリス「そんなっ……私は、岡部さんとずっと一緒にっ」
ルカ子「か、駆け落ちなんて……どうして僕と駆け落ちしてくれないんですか!?」
萌郁「……責任、逃れ……、酷い」
紅莉栖「わ、私の初めてを奪っておいて、駆け落ちなんて、許さないからな!」
岡部「なんだよ、これ……」
まゆり「オカリンと駆け落ちかぁ……えへへ、まゆしぃはそれもいいのです」ムギュ
岡部(世界線漂流の事を全て話すか……? だが萌郁にはどう説明すればいい?)
岡部(まずは、まゆりと駆け落ちの誤解を解かなければ……)
岡部(その為には俺が駆け落ちする必要がない事を証明しなければならない)
岡部(駆け落ちする必要がない。つまり、4股でないと、彼女たちに理解して貰わねばならん)
岡部(ならば……)
紅莉栖「な、なによ!高笑いしても誤魔化せないんだからな!」
岡部「誤魔化すぅ?助手ぅ、貴様は一つ勘違いをしているぞ」
紅莉栖「勘違い?」
岡部「俺は勘違いどころか、そもそも4股すらしていない!」バサッ
紅莉栖「はあ!?あ、あんた今更になってなかった事にする気なの!?」
岡部「違う!なかった事にする?俺がそんな事をする筈はない!」
紅莉栖「」ビクッ
紅莉栖「で、でも4股して、私にキスして他の子達に浮気してたじゃない!」
岡部「浮気ではない!全部本気だ!」
紅莉栖「!?」
岡部「確かに俺はお前とラボで何度もキスをした。今でもあの時の感触を明確に思い出せる」
紅莉栖「お、思い出さんでいい!」
岡部「あの時言った言葉も、気持ちも、全て本当だ。嘘偽りはない」
紅莉栖「そ、それって……」
岡部「だがそれは他のみんなも一緒だ」
岡部「萌郁を必死になって押し倒されてキスしたのも事実だ。あんなに激しいキスをしたのは初めてだった」
萌郁「岡部くん……」キュン
岡部「ああ」
岡部(……あれ、よく考えてみればこっちの方がゲスリンじゃないか?)
紅莉栖「へぇ~」
岡部「い、いや待て!違うんだ!状況が状況だったのだ!」
紅莉栖「女の子と一緒に寝て、違う女の子とデートとして、また違う女の子を押し倒してキスして、そして告白した挙げ句、また他の子と駆け落ちする状況ね~」
岡部「いや、それは……」
ぼわっ
紅莉栖「きゃっ!」
フェイリス「ま、前が見えないニャ!」
萌郁「眼鏡……曇る」
まゆり「あわわっ」
ルカ子「い、一体何が……」オロオロ
紅莉栖「くっ、やっと見えるようになった……あれ岡部は?」
フェイリス「いないニャ」
萌郁「……逃げた」
岡部「はあ、はあ……咄嗟に逃げてきたが、これからどうする」
岡部(とりあえず、紅莉栖には後で事情を全て説明しよう。そしたら理解はしてくれる筈だ)
岡部(まゆりも、前の世界線で全て終わったら話すと約束していたんだ。話せば、今回の事も納得してくれるだろう)
岡部(萌郁には全て話せないが、とりあえず何か言い訳を考えておくか……)
岡部(ルカ子とフェイリスには、全て話すべきかどうか……)
岡部「とにかく、今日はラボには戻れんな……ん? あれは……」
ダル「……」
岡部「ダル……?」
岡部(いや、待て。鈴羽がこの時代に居る筈がない。となると……)
岡部「鈴羽の母親となる女性……確か、名は阿万音由季だったか」
岡部「なるほど……ダルめ、既に嫁を見つけたのか。全く幸せ者め……」
ダル「……!」
由季?「~っ!」
岡部「しかし、何だ……様子が変だな。会話はここからじゃ聞こえんし、少し近付いてみるか」
ダル「由季たん!由季たん!」ハアハア
由季?「や、やめっ」
ダル「ぼ、僕たちは将来ケコーンして鈴羽たんを授かるんだお!だから今のうちに練習を……」ハアハアハアハア
岡部「」
ダル「あっ、オカリン!ふひひ、紹介するお!僕の嫁の阿万音由」
岡部「その歪み!俺が断ち切る!」ドゴッ
ダル「」
岡部「大丈夫か?」
由季「えっ、は、はい……」
岡部「……一つ聞くが、その男とは知り合いか?」
由季「いえ、さっきそこでいきなり話しかけられて……」
岡部「そうか……」
岡部(ダルと阿万音由季とのファーストコンタクトは最悪な形になってしまったな)
岡部「済まない、迷惑をかけたな」
由季「な、なんであなたが謝るんですか?助けてくれたのにそんな……」
岡部「俺はその男の知り合いなんだ。少し錯乱していたみたいで、そいつの知人とあなたを誤認していたようだ」
由季「そ、そうだったんですか……」
岡部「本当は悪くない奴なんだ。許してくれると有り難い」
由季「いえ、そんな……気にしませんよ」
岡部「そうか、ありがとう」
岡部(良かった……これで少しはケアできたか?)
由季「あ、あのっ」
岡部「なんだ?」
由季「名前、聞いてもいいですか?」
岡部「ああ、こいつの名前は橋田至だ。ダルとでも呼んでやってくれ」
由季「そ、そっちじゃなくて、あなたの名前を」
岡部「俺か? フッ、そんなにも我が真名が聞きたいか!我が名は鳳凰院凶真!狂気のマッドサイエンティストだ!フゥーハハハ!」バサッ
由季「あなたもレイヤーですか?出来れば本名の方を……」
岡部「レイヤーではない!この白衣はマッドサイエンティストにとって正装なのだ!決してコスプレではない!」
由季「それで、名前は……」
岡部「ぐぬぬ、華麗にスルーしよって……岡部倫太郎だ」
由季「岡部、くん……」
岡部「ふん。ではまたな、阿万音由季」
由季「……岡部、倫太郎」
岡部「気がついたか」
ダル「オカリン……? 僕、なんでこんな所に……あ、そうだ!由季たん!僕の由季たんは?」
岡部「由季たん!ではない!全く……少しは落ち着け」
ダル「落ち着けとかwwwwwwあんな可愛さ子が嫁確認なのに落ち着けとか無理だろ常考wwwwwwうっはwみwなwぎwっwてwwきwwwたwww」
岡部「このHENTAIめ……」
岡部(まあ、向こうもあまり気にしてはないみたいだし、ダルがこれから猛アタックを続ければ、いずれは結ばれるだろうな)
ダル「あれ?ねえ、オカリン。あれ由季たんじゃね?」
岡部「なに?阿万音由季はさっき別れた筈だが……」
鈴羽「おっ、いたいた!おーい!父さ~ん!おじさ~ん!」
岡部「なん、だと……」
岡部「ば、馬鹿な!?何故この時代に鈴羽が!?」
鈴羽「えへへっ、えいっ」ムギュ
岡部「なっ」
ダル「何となく分かってたけど、オカリンェ……」
岡部「お、お前、なんで……」
鈴羽「えへへっ、来ちゃった」
岡部「き、来ちゃったって……」
ダル「オウフ……天使すぐる」
岡部(あれ? 鈴羽、髪を染めたのか? 前は黒ではなかった筈だが……それに癖毛じゃなくてストレートになってる)
鈴羽「問題?ううん、父さんたちに会いにきただけだよ?」
岡部「り、理由はそれだけなのか?」
鈴羽「うん」
岡部「そ、そうか……」
岡部(問題が起きてない、ただ俺達に会いに来ただけでタイムマシンを使ったのか? この世界線の未来はどうなっているのだ)
ダル「うwwwっwwwはwwwその為にパパたちに会いにくるとかwww可愛いすぎるだろwww」
鈴羽「あはは、やっぱりダルおじさんはいつの時代も相変わらずだね」
岡部「こいつの性格は未来でも変わっていないのか」
ダル「オウフwwwサーセンwww」
岡部「…………」
ダル「…………」
岡部・ダル「「あれ?」」
鈴羽「もう~その呼び方は止めてよ、ダルおじさん」
ダル「お、おじ……」
岡部「ほ、ほら、ダル!鈴羽も思春期なんだ!娘が父親から距離を置く話をよく聞くだろ?」
ダル「な、なるへそ!思春期か~まさか鈴羽たんにも来るとはwwwパパショックだおwww」
鈴羽「ええ~距離なんて置いてないよ」ムギュ
岡部「えっ」
鈴羽「んっ」チュッ
岡部「んむっ!?」
鈴羽「んっはむ……ぷは、ほらね?あたしたち親子、仲が良いってご近所からも評判なんだよ?」
ダル「」
鈴羽「あれ?ダルおじさん、倒れちゃったよ。具合でも悪かったのかな?」
岡部「本当、なのか……?」
鈴羽「ん?なにが?」
岡部「お前が、俺の……娘?」
鈴羽「もう、今更なに言ってんのさ。オカリン父さん」ムギュ
岡部「お、おかしいだろうが!阿万音由季はダルと結ばれる筈だ!?だいたい、親子ならキスなんてせんわ!」
鈴羽「でも、確かにあたしの母さんは阿万音由季で、父さんは岡部倫太郎だよ?それに……んっ」チュッ
岡部「んむぐっ」
鈴羽「んっ、キス、教えてくれたの、父さんなんだよ?」
鈴羽「いつしか父さんのキスなしじゃ、満足に寝付けなくなったんだよね~」
岡部「そ、そんな事、許される筈がないだろ!?阿万音由季は止めなかったのか!?」
鈴羽「う~ん、だってこれ、そもそも父さんが母さんにしてた事をあたしにもするようになっただけだし……」
岡部「」
ダル「」
岡部「な、なにがだ」
鈴羽「だってあんなにも上手な父さんと初々しい状態でキスできるんだもん。タイムマシンを使う価値はあるよ!」
岡部「」
ダル「」
鈴羽「えへへ、これから滞在中は毎日キスしてね、父さんっ」
岡部「ば、馬鹿者!そんな事……」
鈴羽「父さんのキスなしじゃ眠れないんだよ。こんな風にしたの、父さんなんだから。ちゃんと責任取ってよね」
岡部「」
最初は違和感しかなかったが、最近では自分でもキスが上達してるのが分かってきて、楽しむようになった。
これも、リーディング・シュタイナーが及ぼした歪みの一つなのだろう。だから俺はそれを否定しない。なかった事にはしない
紅莉栖たちについてだが、結局萌郁を覗いた全てのラボメンに真相を話した。正直、あそこまで思い出した萌郁を完全に誤魔化す事はできないと思っていたが、なんとかなった。
恐らく、彼女も薄々気付いてはいるだろうが、特に追求される事はなかった。
紅莉栖たちに俺が本気だったという事が伝わり、誤解も解けた。ダルは旅に出た。リーディング・シュタイナーによって生まれた歪みは無事全て解決した。
岡部「なあ、聞いて良いか?」
由季「なに?」
岡部「娘にキスをする父親って、どう思う?」
由季「う~ん、それも愛情表現の一つだと思うけどな」
岡部「そうか……」
由季「もしかしたら、この子が産まれたらする気?」
岡部「……さあな」
由季「それじゃあ、平等に、私にも……」
岡部「無論、そのつもりだ」
由季「えへへ……私たち、愛されてるね、鈴羽」
終わり
読んでくれた人、ありがとニャンニャン
これやっぱりゲスリンだよね(確信)
乙
ダルはどこに旅に出たんだろうな...
Entry ⇒ 2012.10.09 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
紅莉栖「全部思い出したら大変な事になってしまった……」
紅莉栖(全部、思い出した……)
紅莉栖(α世界線で岡部と過ごした事、全部……)
紅莉栖「どうしよう……」
紅莉栖(全部思い出したせいで今まで以上に岡部の事、好きになっちゃった……)
紅莉栖「岡部が好き過ぎて胸が痛い……」
紅莉栖(私のために何度もタイムリープして、最後まで足掻き続けて……)
紅莉栖(救えないって私を抱きしめながら謝って、好きだってキスされて……)
紅莉栖(そしてパパのナイフから私を庇って、血まみれになって……それでも助けてくれて)
紅莉栖「そ、そんな事された惚れちゃうだろ……ばか岡部」
紅莉栖「……」
紅莉栖「ぬ、ぬわああああ!!な、何を言っとるんだ私は!」ジタバタ
紅莉栖(だいたい、何で岡部は何も言ってくれなかったの!?)
紅莉栖(α世界線の大まかな経緯や、私を救った事は説明してくれたけど……あ、あんな関係だったなんて)
紅莉栖「いや、私なら岡部の言葉なら絶対信じていた」
紅莉栖(そしたら……またあんな関係に……)
紅莉栖「え、えへへ……岡部」
紅莉栖(ああ、ヤバい。顔がにやける……会いたい、早く岡部に会いたい……)ウズウズ
紅莉栖「で、でもいま私はアメリカに居るし……」
prrrrr
岡部『紅莉栖!?どうかしたか!?』
紅莉栖「ふぇ?」
紅莉栖(な、なんでこんなに動揺してんの?っていうか名前呼び!?)
紅莉栖「えっ、あっ、べ、別に大した用じゃないんだけど……」
岡部『なに?そう、なのか……?』
紅莉栖「う、うん……」
岡部『……緊急の用ではないのだな』
紅莉栖「そう、だけど……」
紅莉栖(あれ、なんか……怒ってる?)
岡部『……いまこっちは何時だと思ってる』
紅莉栖「あっ」
岡部『時差を考えろ、まったく……相変わらずドジっこだな助手よ』
紅莉栖「助手って言うーな」
紅莉栖(さっきは紅莉栖って呼んでくれたのに……)
岡部『助手の分際でこの鳳凰院凶真の眠りを妨げるとは……偉くなったもんだなクリスティーナよ』
紅莉栖「だから謝ってるでしょ!あとティーナも禁止っ」
岡部『まあいい、それで用とはなんだ?』
紅莉栖「えっ」
岡部『メールでも律儀に時差を考えて送るお前が、こんな時間に電話を掛けてきたんだ。何かあったんだろ?』
紅莉栖(い、言える訳ないじゃない!ただあんたの声が聞きたかったからだなんて……でも)
紅莉栖「ほ、本当に大した用じゃないの。ただちょっと……」
岡部『なんだ?』
紅莉栖(でも、全部思い出したんだから……少しくらい素直になっても、いいよね)
紅莉栖「岡部の声が、聞きたかったから……」
岡部『なっ……』
岡部『……』
紅莉栖「えっと、岡部……?」
岡部『……俺も』
紅莉栖「えっ?」
岡部『俺も、お前の声が聞きたかった、紅莉栖』
紅莉栖「!!」
岡部『次は、いつこっちにこれそうなんだ?』
紅莉栖「ふぇ?ま、まだ決まってないけど、近い内に休みが取れると思うからその時に……」
岡部『そうか……その時はラボメン全員で空港に迎えに行ってやろう。感謝するんだな』
紅莉栖「うん……ありがとう、岡部」
岡部『くっ、今日は機関からの精神攻撃が激しいな』
紅莉栖(顔を見て言うのは難しいけど、電話越しなら素直になれる……)
紅莉栖「岡部に会えるの、楽しみにしてる」
岡部『俺もお前に早く会いたい、紅莉栖』
紅莉栖「なっ!?」
岡部『じゃあな。研究、がんばれよ』
ツーツーツー
紅莉栖「……」
紅莉栖「ぬわああああ!!」ジタバタ
紅莉栖「岡部デレすぎだろ……」
紅莉栖(あ、あんな事、言われてたら、私……)
紅莉栖「岡部……好き過ぎて胸が痛い」ギュッ
紅莉栖(会いたい……早く……)
ラボ
紅莉栖「という事で来ちゃった」
岡部「」
紅莉栖「岡部?」
岡部「来ちゃったって、お前……研究は?」
紅莉栖「区切りのいいところで終わらせてきたわ」
岡部「お前の仕事に支障がないならいいが……」
紅莉栖「ごめん……急いでてそこまで気が回らなかった。まゆりたちには悪い事したわ」
岡部「まあ、帰りに空港までラボメン全員で見送りすればいい」
紅莉栖「……ありがとう、岡部」
紅莉栖「なに?」
岡部「その、昨日の電話といい、どうしたのだ?」
紅莉栖「えっ?」
岡部「少し、様子がおかしいというか……やはり何かあったのか?」
紅莉栖「……」
岡部「……紅莉栖?」
ギュッ
岡部「えっ……」
紅莉栖「岡部……」
紅莉栖「……たの」
岡部「なに?」
紅莉栖「全部、思い出したの。α世界線で過ごした岡部との出来事、全部」
岡部「なっ……」
紅莉栖「岡部……」ギュッ
紅莉栖「好き……大好き」
紅莉栖「あの時の返事、ちゃんと言いたかったから……」
岡部「あ、あの時って……それも思い出したのか」
紅莉栖「……うん」
岡部「そう、か……」
紅莉栖「……」
岡部「……」
紅莉栖(い、勢いで告白してしまった……で、でも仕方ないじゃない!全部思い出して、岡部の顔見て、我慢なんて出来るワケないじゃない)
紅莉栖「あっ……」
紅莉栖(岡部の体……温かい)
岡部「紅莉栖、目を瞑れ」
紅莉栖「ふぇ!?そ、それって」
岡部「……全て思い出しのなら、意味は分かるだろ」
紅莉栖「そ、それは……」
岡部「なら……」
紅莉栖「わ、わかった……」パチ
チュ
紅莉栖「……んっ」
岡部「……紅莉栖」
チュ
紅莉栖「んむっ、はむっ……んっ」
紅莉栖(ちょっかカサカサのの唇、舌を絡ませた時の感触、仄かなドクペの味……あの時と全部同じだ)
岡部「ぷはっ……」
紅莉栖「んっ、……えへへ」
岡部「なんだ?」
紅莉栖「私たち、これで両思いになれたんだよね?」
岡部「そ、そうだな」
紅莉栖「つ、つまり恋人同士って事でおk?」
岡部「こ、恋人!?」
紅莉栖「……違うの?」
岡部「あ、いや、その……お前がそういう関係を望むなら、俺もその関係を望む」
紅莉栖「なら、決まりね」ギュッ
岡部「こ、こら……引っ付きすぎだ」
紅莉栖「いいじゃない。私たち、恋人同士なんだから」
岡部「恋人同士、か……なら仕方ないか」
紅莉栖「そうよ、諦めなさい」
岡部「なんだ?」
紅莉栖「どうして……α世界線での私との関係を話してくれなかったの?」
岡部「それは……」
紅莉栖「話してくれたら、もっと早くこういう関係になれたのに……」ムギュ
岡部「リーディング・シュタイナーは誰しもが持つ能力だ。お前が発現しているのも観測している。だが、全て思い出す保障なんてなかった」
紅莉栖「……」
岡部「あれら全ての世界線は俺以外にとって『なかった事』だ。その『なかった事』を引き摺るのは俺だけで十分だ。そう思って、話さなかった」
岡部「それに……」
紅莉栖「それに?」
岡部「例えお前が全て思い出さなくとも、俺がお前を好きという感情に変わりはない」
岡部「だが、そうだな。α世界線の事は話せなくても、好きだと伝えていれば、もっと早くこういう関係になれたもしれんな」ムギュ
紅莉栖「……」
岡部「……? 紅莉栖?」
紅莉栖(な、なにこのイケメン……惚れてまうやろ。惚れてるけど)
紅莉栖(お、岡部にこんなに愛されてるなんて……や、ヤバい!顔が赤い!あ、頭がフットーしそう!)
紅莉栖「……」ボー
紅莉栖(ああ、岡部ぇ……好き、大好き)
岡部「紅莉栖?大丈夫か?」
ギュッ
岡部「む?」
紅莉栖「おかべ……」
岡部「どうした?」
紅莉栖「えへへ、ふひ、なんでもない」
岡部「そ、そうか」
岡部「なんだ?」
紅莉栖「ううん、呼んでみただけ」
岡部「そ、そいか」
紅莉栖「えへへ」
岡部「……」
紅莉栖「……倫太郎」
岡部「!?」
紅莉栖「名前……」
岡部「なに?」
紅莉栖「いつまでも岡部のままじゃダメかなって……」
岡部「別に俺はそれで構わん」
紅莉栖「その、不便じゃない」
岡部「不便?」
紅莉栖「い、いつかは二人とも『岡部』になるんだから。い、言わせんな!恥ずかし」
岡部「」
紅莉栖「でも、岡部呼びで馴れちゃったら、いざそうなった時にちゃんと呼べないし……」
岡部「だからって……」
紅莉栖「それに……」
岡部「なんだ」
紅莉栖「私自身、あなたの事をちゃんと名前で呼んでみたいし」
岡部「……っ」
紅莉栖「お、岡部が嫌って言うなら別に今は岡部呼びでもいいけど」
岡部「……二人きりの時だけ」
紅莉栖「ふぇ?」
岡部「二人きりの時だけ、特別に名前呼びでも構わん」
岡部「……ああ」
紅莉栖「い、いまって二人きりよね?」
岡部「そう、だな……」
紅莉栖「……」ゴクリ
紅莉栖「り、倫太郎」
岡部「」ビク
岡部「……やはり違和感がある」
紅莉栖「なら、これから馴れていかないと。ね?倫太郎!」ギュッ
岡部「……くっ」
岡部「なんとなく、締まりがない名前だからだ」
紅莉栖「そう?いい名前だと思うけど。少なくとも鳳凰院凶真(笑)さんよりはずっと素晴らしい名前よ?」
岡部「貴様!我が真名を愚弄するか!」
紅莉栖「あはは、でもあんたにピッタリの名前だと思うけどな。いっその事、あだなで呼ぶとか?」
岡部「お前にだけはオカリンと呼ばれたくないな」
紅莉栖「なら倫太郎をとってリンリンとか?」
岡部「却下だ!なんだ、そのパンダに付けるような名前は!?」
紅莉栖「ふふっ、冗談よ」
紅莉栖「ん?なに?」
岡部「お前は、俺の名前、いいと思うか?」
紅莉栖「ええ」
岡部「そう、か……」
紅莉栖「それがどうしたの?」
岡部「あ、いや……お前が、そう言うならこの名前も悪くない、かもな」
紅莉栖「倫太郎……」
岡部「くっ、やはり違和感はあるがな……」
岡部「名前で呼ばず『あなた』呼びでも構わないがな」
紅莉栖「ふむん、そうね。それなら名前で呼ばなくてもいいわね」
岡部「……」
紅莉栖「……」
岡部「な、なあ」
紅莉栖「な、なに?」
岡部「お、俺たち、もしかしてとんでもない会話をしてないか?」
紅莉栖「『あなた』呼びとか、はは、わろすわろす……」
岡部「フゥーハハハ!」
紅莉栖「ふぅーははは!」
岡部「……」
紅莉栖「……」
紅莉栖「は、はい!」
岡部「その、だな……が、学生結婚はするつもりはないからな!」
紅莉栖「あっ、えっと……うん、その、待ってる」
岡部「あ、ありがとう……」
紅莉栖「うん……」
岡部「あと、えっと、お、お前がアメリカがいいと言うなら俺もアメリカに住むが……」
紅莉栖「そ、そんな、倫太郎に悪いわよ……」
岡部「お前には研究に集中してほしい。だが、日本とアメリカで離ればなれもご免だ」
紅莉栖「いい、ね?」
岡部「無論だ」
紅莉栖「倫太郎……」
岡部「紅莉栖……」
ギュッ
――
紅莉栖「んっ、ねえ、倫太郎」
岡部「どうした?紅莉栖」ナデナデ
紅莉栖「えへへ、んっ、あの、ね」
岡部「なんだ」
紅莉栖「私たち、これからもずっと一緒、よね?」
岡部「無論だ」
紅莉栖「ふふっ……そっか」
ギュッ
岡部「もう二度と離したりはしない……俺はずっとお前の傍にいる」
紅莉栖「んっ……倫太郎」
チュ
岡部「んっ、俺もだ。紅莉栖」
チュ
紅莉栖「んむっ……えへへ」
岡部「これからずっと一緒だ。例え体が物理的に離れていても、心は共にある」
紅莉栖「倫太郎と一緒……ふふっ」
岡部「ああそうだ。なんたってこれが――」
紅莉栖「シュタインズ・ゲートの選択、でしょ?」
岡部「ほぅ、分かってるではないか」
紅莉栖「無論だ!だって私は鳳凰院凶真の助手にして伴侶でもある鳳凰院紅莉栖なのだぜ?」
岡部「ふっ、そうだったな」
岡部「フゥーハハハ!」
紅莉栖「ふぅーははは!」
おわり
書き溜ないから遅くてごめんね
読んでくれた人、保守してくれた人、ありがとニャンニャン
Entry ⇒ 2012.09.30 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (2) | Trackbacks (0)
岡部「未来へ……か」 鈴羽「リンリーン!」
~ラジ館屋上~
あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
岡部「おれは ラジ館屋上で、2036年へと帰還する鈴羽を見送ったと
思ったら いつのまにか、鈴羽を再び目にしていた」
な… 何を言っているのか わからねーと思うが。
おれも 何をされたのか わからなかった…。
頭がどうにかなりそうだった… 催眠術だとか超スピードだとか。
そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ。
もっと恐ろしいものの片鱗を 味わったぜ…。
鈴羽「話は後にして! 未来が大変なことになってるんだって! だからリンリンの力を借りたいの!」
岡部「は?」
鈴羽「いいから早く乗って!」
岡部「ま、待て! そ、その前に教えろ!」
鈴羽「だから、待てないんだってば! ほら、行くよリンリン!」 ガシッ
岡部「だから、そのリンリンというのはなんだーーーーっ!」
鈴羽は、俺の叫びを華麗にスルー。
俺は流されるままタイムマシンの中へと連れ込まれる。
こうして俺は──不本意ながらも──飛ぶこととなった。
岡部「未来へ……か」
鈴羽「リンリーン!」
世界線変動率 3.372329%
岡部「これがタイムマシンの内部か、実に興味深い」 キョロキョロ
鈴羽「起動完了っと」 ポチッ
鈴羽「2036年へのタイムトラベルは、大体6時間くらいかかるからゆっくりしててよ」
岡部「2036年……6時間……」
岡部(意外に時間がかかるな……。
いやしかし、26年という歳月を跳躍するのだからそれを考えると短いものか)
鈴羽「リンリーン」
岡部(まさかダルと由季の仲を取り持つために走り回るだけで終わらず、2036年にまで連れて行かされるとはな)
岡部(どうやら、俺はこいつにまた振り回されねばならんようだ)
岡部「……」
岡部(しかしまあ、それも悪くはないかもしれない)
岡部「……だからその呼び方は一体何だ。俺はパンダかなんかか!」
鈴羽「パンダ? 違う違う。ほら、君さー、前におじさんって呼ぶなって言ったでしょ?」
岡部「当然だ、俺は決しておじさんではないからな」
鈴羽「2036年の君を呼び捨てするのも気後れするじゃん?」
岡部(2036年だと、俺は44か45か。
確かに18かそこらの小娘に呼び捨てにされるのも……。
いやしかし──)
岡部「だからといってリンリンはないだろリィィンリィンは!」
鈴羽「岡部”倫”太郎のリンと”鈴”羽のリンでリンリン、あはは、かわいいでしょ」
岡部「かわいくないわっ!」
岡部(というかそれだと、自分の名前も呼んでいることになるだろ)
ついさっき帰っていった鈴羽と、随分印象が違う。
二つのおさげは後ろ側でまとめられており、服装も迷彩色の──まるで軍人のような──服。
そして、少しだけ憂いを帯びた表情。
2036年から来たということは、あの”コミケ騒動”の時の鈴羽と変わらないはずだが……。
それとも世界線が変動したのか?
俺はその疑問を投げかける。
鈴羽「違う違う、世界線は変わってない……と思うよ」
鈴羽「厳密に言えば、タイムマシンに乗って時間跳躍した際にわずかに変動するんだけど、それは誤差みたいなものだから」
鈴羽「あたしは2010年8月20日から2036年8月20日に帰還して、一ヶ月経過した後」
鈴羽「つまり2036年9月20日から来た阿万音鈴羽……っと今は橋田鈴羽で問題ないのかな」
岡部「ほう……だからさっき俺がラジ館の屋上にいることも分かったわけだ」
鈴羽「そうそう、さすが察しがいいね」
岡部「オシャレ?」
鈴羽「2036年に帰還した翌日、リンリンが会いに来てくれてさ……」
岡部(早速会いに行ったのか、未来の俺)
鈴羽「それで……」
岡部「それで?」
鈴羽は頭をポリポリとかく。
これは照れている証拠だ。
鈴羽「……い、いきなりギュって」
岡部「ギュ?」
岡部(俺が鈴羽の髪をギュ?)
岡部「ダキ?」
岡部(俺が鈴羽の髪をダキ……唾棄?)
岡部「おい、さっぱり分からんぞ」
鈴羽「……ええとその……」
鈴羽「だ、抱きしめられちゃった」
岡部「は?」
鈴羽「い、いきなりリンリンにギュって! ダキって! 抱きしめられちゃったんだってばっ」
岡部「なんだとぅ!?」
鈴羽「会うなりいきなりだよ? もうびっくりしたんだからー」
鈴羽「だから、その……あたしも頑張ってみようかなーって思って、髪型変えてみたり、お化粧勉強してみたり……」 ボソボソ
岡部(なんてこった……)
しかも相手は友人の娘、なんてことをしてくれる、未来の俺)
鈴羽「あぁもう! こんなことリンリンにも話してないのに!」
頭をかく速度があがる。
おい、そんなにかくとハゲるぞ。
鈴羽「まっ、あたしとリンリンの仲が良いこと、父さんは複雑に感じてるみたいだけどさ」
岡部(そりゃそうだ、ダルにしてみれば、父親のポジションを取られたと感じてるに違いない)
岡部(そう……だよな?)
鈴羽「……」
岡部「……?」
岡部(まずい、地雷を踏んだか?
いやいやいや、でも突っ込まざるを得ないだろ)
岡部「…………」
岡部「ふ……む」
岡部「そのおさげ! 中々似合ってるではないかブァイト戦士よ!」
鈴羽「えっ?」
岡部「しかし、さながらポンデリングを二つに割って装着したかのような髪型だなこの、スイーツめっ!」
鈴羽「ポッ、ポンデェ!? な、なにおうー!」
岡部「……」
岡部「ククッ、甘い、甘いぞバイト戦士。貴様はドーナツのように甘々だ!」
鈴羽「な、なんなのさ……いきなり」
岡部「未来のことを話すのは禁則事項、そうだったな」
サイズハング
岡部「これぞ我が能力【カマかけ】! いいか、俺は全てお見通しなのだフゥーハハハ」
カラーリングジェントルマン サイズハング
岡部(【顔色窺いは大人のたしなみ】からの【カマかけ】の禁断コンボ、相手は死ぬ)
岡部「だから……遠慮などしていないで話すがいい」
岡部(もっとも、これから未来に降り立つのだから、禁則事項もクソもないのだがな)
岡部「ちなみに俺はポンデリングは嫌いではないぞ」
鈴羽「ぷっ……」
岡部「む……」
鈴羽「やっぱり君って優しいね」
岡部「や、優しさなどではない! 俺に隠し事は無意味だということだ!」
鈴羽「そうだよね、話さないわけには……いかないよね」
そう言って鈴羽はうつむく。
やはりこいつ、強がっていたか。
明るく振舞おうとしてたようだがこの鳳凰院凶真の目は欺けない。
鈴羽「この服は……戦闘服」
岡部(せんとう? せんとう……銭湯?)
鈴羽「あたしたちタイムトラベラーの任務は、ロストテクノロジーを回収するため……前にそう言ったよね?」
岡部「あぁ……覚えている」
鈴羽「装備もある程度充実した物を支給される。それがこの服とか、その他諸々」
鈴羽「見てくれはただの迷彩服だけど、結構性能いいんだ」
岡部「ふむ……」
岡部(実際過去へタイムトラベルするとなると、色々な問題が出てくるのだろうな……)
岡部(そういった問題を解消しつつミッションを遂行するには──
質のいい装備とよく訓練されたベトコン……じゃない、エージェントでなくてはならないと言うわけか)
鈴羽「で、ここからが本題」
鈴羽「2036年9月20日に……つまりあたしたちがこれから飛ぼうとしてる日に」
鈴羽「父さんと君が……誘拐された」
岡部「な……に?」
岡部(銭湯で融解!? 俺とダルが融ける!? しかも尊敬語!?)
岡部(ってアホか俺は、戦闘と誘拐に決まっているだろ)
岡部「それは……本当なのか?」
鈴羽「嘘言ってどうするのさ」
岡部「だが、大の大人を誘拐などと……」
鈴羽「……タイムマシン」
鈴羽「犯人は、二人とタイムマシンとを引き換え……そう要求してきたんだよ」
鈴羽「……許せない、父さんたちが頑張って作り上げたタイムマシンをこんな卑怯な手で……」
岡部(そうか……タイムマシンの存在)
岡部(時間を支配することは世界を支配することだって難しくないかもしれない)
岡部(それを考えれば、研究者をとっ捕まえて研究させ……いや、完成されているのであればタイムマシンを横取りの方が早い……か)
岡部「となると……犯人はかなり絞られるのでは?」
鈴羽「それが……あたしも開発に関わってた人全員と面識があった訳じゃないんだ」
鈴羽「相手がタイムマシンを要求してきてる以上、警察とかに頼ることもできないし……」
岡部「なるほど、確かにいたずらと思われても仕方ないだろうな」
岡部「……そうだ、誘拐について紅莉栖は何と言っている?」
岡部(あいつはタイムマシンに関して否定的ではある。
しかし、好奇心旺盛の実験大好きっ子。
俺たちがタイムマシンの開発をしているのであれば、あいつも俺たちの近くで開発に関わっているはず)
鈴羽「えー……えっとそれが……」
ばつが悪そうに目を泳がす鈴羽。
おい、なんだよ。
しどろもどろ。
岡部「三行にまとめると──」
岡部「由季から俺達が誘拐されたことを聞く。
頭が真っ白になる。
気づいたらタイムマシンに乗っていた」
鈴羽「あ、あはは……」
岡部「……これでいいか?」
鈴羽「う、うん……」
岡部「お前、本当に特殊な訓練を受けたのかっ!?」
鈴羽「だ、だってー、二人が誘拐されたって聞いて、拷問とかされたんじゃないかって思ったらいてもたってもいられなくって……」
岡部(うっ、拷問か……なくはないな)
岡部(タイムマシンのために誘拐までする犯人だ、情報を吐かせるためには拷問もためらわないだろう)
鈴羽「そ、それに! 困ったらいつでも俺を頼れ、って言ったのはリンリンでしょー!?」
岡部「いや、言っとらんわ!」
鈴羽「……一応ね」
岡部「一応?」
岡部(紅莉栖ならばタイムマシン開発の中心にいてもおかしくない、そう思ったのだが)
鈴羽「タイムトラベル理論に関しては、リンリンの功績が大きい。父さんはそう言ってた」
岡部「…………」
岡部(ほう……)
岡部(ほぉおぅ……」
岡部「……」
鈴羽「?」
岡部「ククク……ははは、ふはは」
鈴羽「えっ?」
岡部(さすがは鳳凰院凶真、SERNはおろか、あの天才少女・牧瀬紅莉栖すらも出しぬいたというのか!)
鈴羽「リ、リンリン?」
岡部「リンリンではなぁい! 俺は! 鳳凰院凶真だっ! フゥーハハハ!!」
岡部(紅莉栖に話を聞くのは、2036年に着いてからでも遅くはあるまい)
岡部(今は未来の情報、主にタイムマシンの情報を、少しでも聞きだしておくとしよう)
岡部(待っていろ未来の俺、この灰色の脳細胞を持つ鳳凰院凶真が貴様を華麗に救出してくれるわフゥーハハハ!!)
鈴羽「着いたよ」
岡部「ここが……」
鈴羽「そう、2036年の秋葉原」
岡部「ってラジ館の屋上に出るんじゃなかったのか? ここはどこかの研究室のようだが」
鈴羽「何言ってんのさ……って、あぁそっか」
鈴羽「ラジ館は一度建て直されてるんだよ、ここは新ラジ館9階」
岡部「な、なるほど、つまりこの場所は旧ラジ館の屋上に当たる、というわけか」
鈴羽「そういうこと、ちなみに今は10階まである」
岡部「この一室を借りてタイムマシン研究というわけか、しかし……元が屋上なだけあって広いな、ラボとは比べ物にならん」
鈴羽「違う違う、ラジ館自体君の会社のものらしいよ」
岡部「は?」
岡部(どれだけ儲かってるんだうちの会社)
鈴羽「ちょっとね」
鈴羽がタイムマシン外部に取り付けられたパネルを操作すると──
岡部「た、タイムマシンが消えたっ!?」
鈴羽「消えた訳じゃないよ、透過処理ってやつ? なんていったかな、未来ガジェットの……」
鈴羽「そうそう、攻殻機動迷彩ボール! あれの技術を応用したって言ってたかな」
鈴羽「全体を覆うように取り付けられたモニタと、そのモニタの直角且つ外側を向くように取り付けられた超小型C-MOSカメラ」
鈴羽「それによる、擬似的光学迷彩って感じ、詳しいことは分かんないけど」
岡部「空間移動のできないタイムマシン故にカモフラージュが必要、というわけか」
鈴羽「……機密性はできるだけ高くしないとね、でないと悪い奴らに利用──」
鈴羽「……っ」
岡部「…………」
岡部「……ん?」
鈴羽「い、一応さー。何かあった時のために、指紋認証からパスコード認証に変えとくねっ、パスは──」
岡部「……」
鈴羽「……メ、メモ……わ、渡しとくね……”ま、万が一の時”のために……」
岡部(泥沼……)
鈴羽「そ、それがその……」
鈴羽「母さんから誘拐の話を聞いてすぐ飛び出してきちゃったから、詳しいことは何も……」
岡部(……まじか)
岡部「……そう言えば、移動のできないこのタイムマシンで少しだけ過去に戻るとどうなるのだ?」
岡部(VGLシステムによって同じ空間座標にタイムトラベルしたら、飛んだ先には当然タイムマシンがあるはず)
俺の脳裏に、タイムマシンがめり込んだラジ館の光景が浮かんでくる。
鈴羽「当然の疑問だよね。でも大丈夫。VGLシステムで計算する空間座標処理にほんの少し手を加えればいいんだよ」
鈴羽「今のコンピューターの処理能力なら難しいことじゃないんだ」
岡部「となれば、数時間前に飛んで由季の話を──いや、誘拐を阻止すれば!」
鈴羽「だめだよ……近い過去や未来に飛ぶことは禁止されてるんだ」
岡部「……? なぜだ」
鈴羽「万が一あたしがあたしに接触してしまうと、深刻なタイムパラドックスが生じる可能性がある、父さんはそう言ってた」
鈴羽「何が起こるかは、不明……」
鈴羽「もしかしたらあたしという存在は世界に消されてしまうかもしれない……」
鈴羽「いや、あたしが存在する世界すら崩壊するかもしれない……」
鈴羽「だからあたしが生まれる2017年以降の過去に飛ぶことはできないんだ……」
岡部(2017年以降の過去……変な言葉だ)
鈴羽「あたしみたいな若年者がタイムトラベラーに選ばれるのもそういった理由もあるんだ」
岡部「だから2010年に飛んで、俺に助けを求めてきたというわけか」
鈴羽「うん……」
岡部(ってちょっと待て)
岡部(パラドックスが生まれるのでは?)
その疑問をぶつけてみる。
鈴羽「あ、あはは……」
鈴羽「もうダメダメだ……あたしは戦士失格だね……」
岡部(特殊な訓練とはいったい……うごごご!)
鈴羽「ど、どうしよう……」
鈴羽「……」 ジワッ
岡部(やれやれ……世話のやける)
岡部「…………フフフ、フハハ」
岡部「フゥーッハハハ!」
鈴羽「リ、リンリン?」
岡部「らしくないなバイト戦士ぃ! 貴様にはっ! 俺というブレェェェンがついているではないかっ!」
岡部「一流の戦士である貴様とこの俺が組めば、怖いものなどありはしないのだっ!」
岡部「パラドックス? その程度の問題など些細な事──」
岡部「いや、むしろ犯人にハンデを持たせてやらねばなっ」
岡部「卑怯な犯人の野望なぞっ! この狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真が打ち砕いてやるっ!」
岡部「フゥーハッハッハッ!!」
鈴羽「……」
岡部「……だが、当然貴様にも動いてもらわねばならん。俺は頭脳労働向きなのだからな」
鈴羽「……リンリンに励まされてばっかだなぁ。そうだね、あたしもしっかりしないと」
岡部「だから、リンリンではなぁぁい!」
鈴羽「分かったよ岡部倫太郎。必ず二人を救出しようね!」
岡部(いつもの鈴羽に戻ってくれたようだな)
岡部「あぁ……そのためにもまず由季の話を聞かねばな。どこにいるのだ?」
鈴羽「母さんなら、旧ラボにいるはず」
岡部「旧ラボ? 大檜山ビルのラボのことか?」
鈴羽「そうだよ」
岡部「まだあったのか」
鈴羽「みんなの思い出の場所だからね」
岡部(ラボか……。そういえばミスターブラウンは健在なんだろうか。
60も近いはずだが)
───
──
外に出てみると9月の終わりにしてはやや不快な熱気と、どんよりとした鈍色の空が俺たちを待ち受けていた。
今にも一雨きそうである。
岡部「街並み自体はあまり変わらないな。相変わらずの趣都といった感じだ」
もっとも、割合中年が増えた印象。
オタク連中も高齢化とは。
たたかわなくちゃ、げんじつと。
ブロロー
岡部「2036年でも変わらず、車は走っているのだな」
鈴羽「? 当たり前じゃん」
岡部(車もしばらく空を走る予定はなさそうだ)
───
──
~大檜山ビル前~
鈴羽「さ、着いたよ」
岡部(うん……ボロい。よく生き残ってこれたな大檜山ビル)
ブラウン管工房は、相変わらず健在だった。
店内には2010年以上に暇を持て余していたミスターブラウンと思わしき人物の姿がある。
年をとったせいだろうか、少し線が細くなったような気がした。
とはいえ元気そうで何よりだ。
少し安心しつつ、俺たちはラボへと急ぐ。
今は彼と話をしている場合ではない。
ガチャリ
岡部「おぉ……」
鈴羽「どう? 26年後のラボは」
岡部「家具などは変わっているようだが……配置はあまり変えていないのだな」
岡部「それに小奇麗にしていると言った印象だ」
鈴羽「今でも母さんやあたしはお邪魔させてもらってるし」
岡部「そうなのか……しかし、由季はどこにいった? いないようだが」
鈴羽「おっかしいなー、あたしがラボを飛び出してから、そんなに時間は経ってないはずなんだけど」
鈴羽「母さーん、どこー?」
開発室やシャワールームを探しに行く鈴羽をよそに、俺はラボ内を見渡していた。
ふと棚に、ラボに似つかわしくない見慣れぬ物が──
おい……これって……。
間違いない、某修羅の国でたびたび問題視される”あれ”だ。
棚の隅で怪しい光を放つ、卵ほどの大きさのそれを見て、背筋が寒くなる。
岡部「お、おいっ……鈴羽、これって……しゅ……しゅりゅ……」
鈴羽「ん? どうしたの?」
岡部「今の日本ではこんなもの所持するのが許されるのかっ? 世紀末なのかっ? ヒャッハーなのかっ!?」
鈴羽「あぁ、これのこと?」
岡部「ば、ばかやめろ! 持つな! 爆発でもしたらどうするっ!」
鈴羽「大丈夫だってば」 ポン ポン
岡部「よ、よせ! 乱暴に扱うな!」
鈴羽「それより……どうしよう……母さん見当たらない……」
岡部「それよりって……」
岡部(2036年の日本は修羅の国に実効支配された模様、ご了承ください)
岡部「お、落ち着け、まだそうと決まったわけでは……」
岡部(そんな物を持ちながら取り乱さないでほしい、というか一旦置け!)
岡部「……なぁ、俺と親しい人間にも犯人から連絡が来ている可能性は?」
鈴羽「え?」
岡部「考えてもみろ、お前や由季はダルの家族だ、家族となれば人質としての効果は十分」
岡部「となれば……その、俺の家族とかにも接触があってもおかしくは……」
岡部(未来のことについて、詳しく聞くつもりはないが、が今はそんなことを言ってる場合ではない)
岡部(少しでも事件の真相に近づかなくては)
鈴羽「その……あたしもついひと月前に再会したばっかだから、未来の君についての詳細は知らないんだよね」
岡部「そうか……」
鈴羽「こ……恋人はいたって話だけど……」
岡部「恋人っ!?」
岡部「な、なあおい……そ、それは一体誰なのだ……?」
岡部(……聞きたいような聞きたくないような)
鈴羽「そんなこと、あたしが知るわけ無いじゃん」
鈴羽「誰だか知らないけど、とある女の人とかーなり親密な関係なんだってさ!」
岡部「なぜふてくされる!」
鈴羽「この~、あたしというものがありながら~……」
岡部「ま、待て、何の話だ!」
鈴羽「忘れたとは言わせないよ! あんなことしておきながら!」
岡部「わ、忘れるも何も、俺はまだ知覚すらしていないはずだがっ!!」
鈴羽「むー……」 ジロリ
岡部「……っ」
岡部(ヤバい、一体何をしてくれたんだ、未来の俺)
岡部「え、えっと、そのっ……あ、謝る! 謝るから!」
鈴羽「……」
鈴羽「……あっはは、ごめんごめん」
岡部「へっ?」
鈴羽「冗談だよ、冗談。君があんまり動揺してたからさ」
岡部「き、貴様……この俺にサイズハングを……」
岡部(じょ、冗談か……)
岡部(どうやらふざける余裕くらいは出てきたようだな──ってどこからどこまでが冗談なんだ?)
鈴羽「ともかく、恋人に関してはさ、父さんと母さんが話してるのを聞いただけだからあたしは知らないんだ」
岡部(恋人がいたっていうのは本当だったのか。
よかった、魔法使いにクラスチェンジしていたらどうしようかと……)
岡部(しかし……とある女……一体誰なんだ……? まゆり? もしかして紅莉栖?)
岡部「そ、そうだ! 紅莉栖! 紅莉栖に連絡を取ってみるんだ」
ツー
鈴羽「…………」
鈴羽「だめ、出ないや……」
鈴羽「母さんの携帯にもかけてみたけど、だめだった……」
岡部「くっ、こんな時に何をやっているんだ」
鈴羽「──!」
鈴羽「しっ……誰か……登ってくる」
岡部「何も聞こえないが……」
鈴羽「あたしには聞こえる」
岡部「由季が戻ってきたのでは?」
鈴羽「母さんなら足音を消して登ってきたりしないよ」
鈴羽「……隠れよう」
開発室の奥で、俺たちは息を殺し、じっと身を潜める。
カチャリ、扉が静かに開けられた。
頬を流れる汗は暑さのせいだけじゃないだろう。
──「橋田鈴羽、隠れているのは分かっている。大人しく出てこい。それと白衣の男もだ」
聞きなれないドスの聞いた男の声。しかも俺たちの存在はバレている。
どうする?
出ていっても大丈夫なのか?
何者だ?
──「タイムマシンについて話をしよう」
こいつ──
鈴羽「出ていくしか……ないみたいだね」
鈴羽は開発室から出る。それに俺も続く。
男は黒のスーツに身を包み、サングラスをかけていた。
その右手には拳銃。
ピリピリと伝わってくる殺気。どう考えても堅気の男ではない。
鈴羽「何者……」
男「タイムマシンはSERNが回収する」
岡部(SERN──!?)
俺の脳裏にゼリーマンズレポートの画像が浮かんでくる。
岡部(SERN……Zプログラム……SERN……ディストピア!)
岡部(ダメだ、タイムマシンは絶対に渡してはならない)
男「言っておくが、抵抗は無駄だ。この場所以外にも我々の仲間は散らばっている」
岡部(くそっ……何十年もの間、世界中の科学者を欺いてタイムマシン研究を行なってきた機関だ。単なる脅しではないだろう)
男「その前に」
銃口がゆっくりと俺の方へと向けられる。
男「そちらの男は必要ない」
あ……。
ヤバい、死ぬ。
あれ、でもここで俺が死んだら2036年の俺はどうなるんだ?
絶望的な状況だというのに、なぜかそんな疑問が浮かんだ。
男「……」 ピク
男「……俺が何者か、というのはどうでもいいことだ」
ピン
その時、横で何かが外れる音──
男の気が逸れる。
と同時に、鈴羽が髪に挟んであった何かを掴み、男に投げる。
男「なっ! 手榴……!?」
岡部「──!?」
ボォン
男「うおおっ!?」
頭も目の前も白、白、真っ白。
ああ、おかべよ、しんでしまうとはなさけない。
と思いきや──
鈴羽「今のうち!」 ガシッ
岡部「なぁぁっ!?」
すれ違いざまに鈴羽は男に対し──
鈴羽「でやーっ!」
ゴッ
痛烈なニーキック。
男「うっ……」
───
──
タタタタタッ
岡部「あ、あの白い煙は一体……爆発は!? 手榴弾ではなかったのか!?」
鈴羽「モアッドスネーク2nd Edition Version2.51」
岡部「は?」
鈴羽「手榴弾を模して作られた小型の超瞬感加湿器だよ、レバーを外して3秒後に無数に散りばめられた穴からボン」
鈴羽「ちなみに水を入れてレバーを取り付ければ何度でも使用可能」
岡部「はっ……はっ……そ、そうだった、のか……」
鈴羽「思ったより湿度の制御が出来ないみたいで、随分前に開発中止になっちゃったんだけどね、役に立ったよ」
鈴羽「急ごう岡部倫太郎、こうなった以上はラジ館に行って奇襲を仕掛けるか……もしくは──」
──タイムトラベル。
だがそれは最後の手段として取っておきたい。
──タイムパラドックス。
想定不能の事態が起こる可能性。
さらに、飛べば全て解決かと問われればといえば、そうでもない。
とにかくここは鈴羽の言うとおり急がなくては。
SERNはすでにタイムマシンに──場所だけだが──近づいている。
───
──
タタタタッ
岡部「はぁっ……ひぃっ……」
鈴羽「もうちょっとだから、頑張って……」
岡部「はぁっ! ふぅっ!」
タタタタタッ
岡部「先に……行って……状況を……」
岡部「すぐ……追いつくっ……」
鈴羽「わ、分かった。ラジ館の入り口前にいるから──」
岡部(体力の無さが恨めしい……)
───
──
岡部「……はっ……はっ……」
岡部「はぁっ……ふぅーっ……」
岡部「ふぅっ……着いた……鈴羽はもうとっくに着いてるはず。ヤバい、足手まといにしかなってない」
岡部「鈴羽はどこだ……?」 キョロキョロ
岡部(いた──)
岡部「すず──」
声をかけようと思ったその瞬間、鈴羽の表情が強張る。
鈴羽「──!」
──「橋田鈴羽、一緒に来てもらう」
──「騒げば……分かっていると思う、二人がどうなるか」
先ほどの男と同様、堅気らしさを感じさせない冷徹な声。
鈴羽「……二人は無事なの?」
女「それはこれからのあなた次第」
非情な脅し文句。
距離はあったがかろうじて会話の内容も聞き取ることができる。
黒いフルフェイスヘルメットのような物を被っていて、女の顔を確認することはできない。
岡部(鈴羽の背後を取るとは、あいつもSERNのエージェントか!?)
岡部(どうする……迂闊に動けば俺も……)
女「ラジ館屋上、先行してもらう」
岡部(くそっ! 鈴羽っ……!)
岡部(どうする? 人質がこの付近にいる可能性はある)
岡部(しかしこのままでは鈴羽は……)
岡部(俺たちと世界の運命、どちらを取るか──そんな選択を迫られることに……)
岡部「いや──」
そんなこと──
岡部「そんなこと、させてたまるか!」
岡部「屋上……そう言ってたな」
~4階~
岡部「静かだな……全く人が居ない」
~8階~
岡部「はぁっ……はぁっ……やはり……」
岡部「階段を一気に登るのは……はぁっ……」
屋上への階段を登り切ると、そこには二人の人間が対峙していた。
一人は鈴羽。
もう一人は変な仮面をつけている髪の長い女。
あれは確か、まゆりの好きなうーぱ。
うーぱの仮面をつけた、ふざけた女。
岡部「鈴羽っ!」
鈴羽「あっ!」
仮面の女「あら? お客さんですか」
岡部「そこの貴様! 観念するのだな!」
仮面の女「……いきなり現れて一体何なんです? 名前くらい名乗ってはいかがですか?」
岡部「ふぅん! いいだろう……」
岡部「きけい! すでに人質は解放済みだ!」
鈴羽「う、うそ! ホントに!?」
仮面の女「……」
岡部「人質と引換にタイムマシンを横取りするつもりだったんだろうがそうはいかん!」
仮面の女「どうやったんですか?」
岡部「タイムマシンを使えばいくらでも可能だ! 時間を支配するとはそういうことだフゥーハハハ!!」
鈴羽「……」
仮面の女「…………」
岡部「フッ……」
岡部(サイズハング。効け……効いてくれ、騙されろ)
岡部「まさかあのような場所に監禁しているとはな、手間取ったぞ」
岡部「だぁが、時間を支配するこの狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真に不可能はなぁい!!」
岡部(どうだ? ボロを出してくれれば、そこからなんとか──)
仮面の女「ふむん」
仮面の女「つくならもうちょっとマシな嘘をついてください」
岡部「……っ!?」
岡部(バレた!?)
仮面の女「私知っていますから、タイムマシンで近い過去や未来に飛ぶのを禁止されていること」
鈴羽「くっ……」
仮面の女「人質が解放されていないこともです、部下に確認するまでもありません」
岡部(まずい。しくじった……か?)
仮面の女「それとあなた達が、随分昔からSERNにハッキングをしかけていたことも知っています」
岡部「なっ……」
岡部(どうする……)
岡部「う、嘘だと思うのならば部下に電話して聞いてみるがいい!」
仮面の女「だから、確認するまでもないって言ったじゃないですか」
仮面の女「第一、過去に飛んだとしたらまず誘拐が起きないようにしますよね、はい論破」
岡部(くそ! やはりパラドックスが起きるのを覚悟で飛ぶべきだったか?)
岡部(こうなったら強引にでもこいつを人質にして──)
岡部(大丈夫だ、相手は細身の女……俺でもいける……!)
岡部「おぉぉっ──」
鈴羽「あっ! だめ!」
ガシッ
岡部「うぐぁっ」
岡部(なんだ? 何が起こった?)
顔を起こして後ろを見ると、俺の背後の空間が歪んでいる。
似たような映像を見たことがあった。
透明なバケモノが一人ずつ人間を殺していき、最後には自爆する映画のワンシーン。
くそ、もう一人いやがった!
鈴羽「くっ!」
仮面の女「あなたはそこでじっとしていてください」
岡部「くそっ!」
仮面の女「さて、話を戻しましょう」
鈴羽「……っ」
仮面の女「タイムマシンはどこです?」
岡部「鈴羽! やめろ──うぐっ、もがが!」
仮面の女「黙っていてください」
仮面の女「さあ早く」
仮面の女「……言わなければ……わかりますよね?」
鈴羽「答えて!」
仮面の女「一人はあなたのパパなんでしょう? ダメですよ、パパは大事にしないと」
鈴羽「……くっ」
鈴羽「本当に……タイムマシンを渡せば解放してくれるの?」
ダメだ。
仮面の女「ええ、もちろんです、約束します」
やめろ。
仮面の女「ですが──」
鈴羽「なっ……!? そんな! 話が違う!」
仮面の女「悪く思わないでください。二人とも解放してしまっては、再びタイムマシンを開発されてしまう恐れがありますので」
鈴羽「そんなことさせない! させないから……」
仮面の女「だめです」
仮面の女「あぁ……でしたら、選んでください」
鈴羽「……え?」
仮面の女「橋田至か岡部倫太郎、どちらを解放するのか。あなたに選択権を差し上げます」
鈴羽「そんな……」
仮面の女「安心してください。命までは取りません。……二度と日本の土を踏むことはないでしょうが」
仮面の女「じっくり考えてくださって結構ですよ、それこそ時間はたっぷりありますから」
鈴羽「……っ」
鈴羽は顔をうつむかせ、拳を震わせている。
くそ、なんでだよ、なんでこんなことさせるんだよ。
岡部「もがっ……!」
グググッ
岡部「うぐっ……!」
鈴羽「…………」 チラッ
岡部「むぐぐっ……!!」
鈴羽「ふー……」
仮面の女「決まりましたか?」
鈴羽「うん、決めた」
仮面の女「……どっちを……助けますか?」
鈴羽「あたしは……」
仮面の女「……わがままが通じる状況だとでも?」
鈴羽「岡部倫太郎は大切な人。あたしの存在が消失してしまいそうになった時、あたしを信じて力を貸してくれた」
鈴羽「父さんはあたしを育ててくれて、愛してくれて……父さんのおかげで大切な人と巡りあうことができた」
鈴羽「どっちも見捨てるなんて、できない」
鈴羽「どちらか一人を選択するなんて、できない
鈴羽「あたしはどっちも助けてみせる。助けだしてみせる!」
仮面の女「……どうするつもり?」
鈴羽「実のところ少しだけ迷ってたんだー、でもおかげで吹っ切れたよ」
鈴羽「二人とも助けて、世界も君たちの好きにはさせない。迷ったら攻める! 戦士だからね!」
まさか──
鈴羽「世界線を変えることができれば……」
タイムマシンで──
鈴羽「ごめんね……岡部倫太郎、君を巻き込んじゃって。……励ましてくれたことすごく嬉しかったよ」
鈴羽「きっと変えてみせるから」
鈴羽「ちゃんと迎えに来るから」
鈴羽「見てて、岡部倫太郎!」
岡部「──っ」
そう言い終えた鈴羽は弾かれたように飛び出し、下の階へと姿を消した。
あのバカ。
肝心なところで抜けてるくせに、一人で戦おうとするな。
パラドックスが怖くないのかよ、自分が消えるかもしれないんだぞ。
何が巻き込んじゃってごめんだ、お前に振り回されるのは二度目だ、そんなのちっとも苦じゃない。
仮面の女「はー……やれやれ」
仮面の女「バカですねえ」
岡部(なに──?)
仮面の女「あれじゃ今から”タイムマシンを使います”って言ってるようなものじゃないですか」
岡部(しまった、本当の狙いはそっちか! だとすると用済みになってしまえば鈴羽は──)
岡部「うおおっ!」 ググッ
──「う──っ!?」
体が勝手に動いていた。
俺を押し伏せていた奴は油断していたのだろう。拘束は意外にも簡単に解けた。
岡部(早くタイムマシンの元へ、鈴羽の元へ──!)
岡部「だめだ鈴羽……!!」
カツカツカツカツ
岡部「はっ……はっ……」
カツカツカツカツ
岡部(頼む、間に合ってくれ!!)
カツカツカツカツ
カツカツカツ
パン
──銃声。
カツカツ ダッ
岡部「鈴──!」
まず視界に飛び込んできたのは先ほどのフルフェイスヘルメットを被った女の後ろ姿。
そして鈴羽。
左胸に赤い花を咲かせながらゆっくりと力なく倒れていく鈴羽。
その奥でタイムマシンが色を取り戻していた。
女の横を素通りし鈴羽の元へ駆け寄る。
銃を持っていたがそんなもの関係ない。
ガシッ
岡部「おい、しっかりしろ!」
鈴羽「う……」
岡部「傷口は……」
岡部(ダメだ、血がどんどん溢れてきている)
岡部(これではもう……)
鈴羽「……」
岡部「おい、目を開けろよ……」
岡部「お前は戦士だろ?」
岡部「こんな所で眠っていたらだめだ……ろ」
女はヘルメットに手をかけ、ゆっくりと持ち上げる。
ヘルメットに隠されていたその顔は──
岡部「桐生……萌郁!?」
26年の歳月が現れていたものの、面影はあった。
まとめられた金髪。
何を考えているか読めない表情。
岡部(こいつ……SERNとつながってたのかよ……バカだ……俺は)
鈴羽「ごめん……」
岡部「っ! 鈴羽!」
鈴羽「ご……ごめんね、失敗した……」
岡部「もういい喋るな!」
鈴羽「ホントに……ごめん……巻き……込んじゃって」
岡部(タイムマシンを使って──!)
岡部「世界がどうなろうと……知ったこっちゃない」
岡部(パラドックス? そんなのどうだっていい──)
岡部「俺はお前を助ける……!」
そうだ、こんなことあっていいはずがない。
罰を受けるべきなのは俺の方だ。
SERNにハッキングを仕掛けなければよかった。
タイムマシンを作ろうなんて思わなければよかった。
悪いのは俺なのだからここで鈴羽が死んでいいはずがない。
萌郁「……ごめんね、岡部くん」
岡部(何がごめんだ、謝るくらいならなんでこんなこと)
顔を上げ、萌郁の顔を睨みつける。
罪悪感からか、萌郁の眉がハの字になっていた。
俺の視点は萌郁の顔一点の集中する。
鈴羽を撃ちやがったこの憎い女の顔一点のみ。
だが──
ふと視界の端に──
よく見ると萌郁がプラカードを持っている。
リ……キ……ッ……ド
は? 液体?
いや、これは──
ドッキリ──
岡部「は?」
鈴羽「あ、あはは……」
岡部「す、鈴羽!? は!? え!?」
岡部(な、何が何だか分からない)
岡部「おい、なんだよこれ」
萌郁「ドッキリ……」
「「「「大成功ーっ!!」」」」
と同時に物陰からわらわらと人が出てくる。
な。
な。
な。
岡部「なんだよこれぇ!!」
仮面の女が部屋に入ってくる。
岡部(もしかして──)
紅莉栖「まったく、壁殴り代行お願いします、2時間1万円コースで」
まゆり「ふぅーっ。ごめんねー、オカリン。痛かった?」
──仮面を外した紅莉栖、多分。それと変なスーツを着た、まゆり。
るか「ええ、ちょ、ちょっとやりすぎだったような気がしますけど、とってもドキドキしました」
──フェイリスとルカ子、さん。
岡部「鈴羽、これは一体……」
鈴羽「それが、あたしがこの部屋に入ったらさ、父さんと萌姉さんがいて……」
鈴羽「”誘拐は狂言、撃たれたフリして倒れていろ、計画の最終段階だ”って言われて……」
鈴羽「すっごくびっくりしたんだけど、ドッキリのプラカード見せられて……あの……あはははは……」
ダル「鈴羽ぁ! 僕は嬉しい、嬉しいぞぉぉ! オカリンでFAって、即答されたらどうしようかとぉ!」
由季「でもこれで二人の想いが本物だって、分かったでしょ? だからあたしは最初からそうだって言ったのにー」
ダル「うん、これはもう……認めざるを得ないかもわからんね……つか若いころのオカリン懐ー! 思い出が蘇るお」
由季「お父さん、口調口調」
ダル「ふひひ、サーセン!」
──ダルと由季、さん。
萌郁「ちなみに、屋上の様子は、タケコプカメラー3rd Edition ver1.02で生中継だった」
萌郁「外の筒と内部のカメラは、それぞれ独立した動きが可能」
萌郁「つまり一つの物体としては高速回転してるものの、中のカメラ自体は回転しておらず、空中からの撮影が可能」
萌郁「ちなみに回転と同時に電極に高電圧が掛かり、イオンエンジンの上昇力で長時間の浮遊が可能、よ」
鈴羽「ちょ……みんな見てたってことぉ!?」
岡部「いや、そんなことよりもこれは……」
鈴羽「そうだよー! て、てゆーかなんなのさ! 説明を要求するーっ!」
岡部「そうだそうだっ!!」
由季「ごめんね鈴羽、岡部くん。お父さんがあなたたちの想いを確かめたいっていうから、二人が企画して……」
ダル「企画・僕、オカリン。脚本・ルカ氏。演出・オカリン。演技指導・フェイリスたん。衣装提供・まゆ氏。キャスト・他三名」
鈴羽「み、みんなグルだったってことーっ!?」
ダル「一ヶ月くらい前だっけか。いきなり”鈴羽を嫁にもらっていくぞフゥーハハハ!”って──」
鈴羽「ちょっ!?」
岡部「はぁーん……?」
ダル「なんの冗談かと思ったら本気だったとかもうね」
由季「あはは……あの時は二人とも大げんかしちゃって大変だったよね」
ダル「いくらオカリンとはいえ──つかオカリンだからこそ許せない! 絶対にだ!」
ダル「……そう思ってた時期が僕にもありますた……」
紅莉栖「ってことは許すの? 結婚」
ダル「まぁ、あんだけラブチュッチュを見せつけられたらもうね……」
鈴羽「え、え!? ちょっ……ま、まだ早いってっ!」
由季「照れなくてもいいのよ?」
ダル「あぁ……あんなにパパとラブラブだった鈴羽が……」
紅莉栖「ちょ、橋田キモい」
ダル「どしたん?」
岡部「その……撃たれた鈴羽の左胸からは間違いなく血が飛び出してきていたが」
ダル「ちょ、胸とか言うなし!」
萌郁「それはこの、サイリウム・ガンで……」
萌郁「弾は血糊入り、着弾と同時に衣服や肌に付着」
萌郁「着弾の際に先端部分が潰れ、弾のから血糊が流れでる仕組みになっている」
萌郁「あたかも銃に撃たれて出血したかのような演出を可能にする」
ダル「どう? 結構なクオリティだったっしょ?」
これでもかというほどのドヤ顔。
このオヤジ、殴りたい……。
鈴羽「父さんも……! このっこのっ!」 ポカポカ
ダル「ふひ、ふひひ」
ワイワイ。
ワイワイ。
なんだ。
なんだなんだ。
結局、俺はまたしてもこの橋田一家に振り回されていただけというわけか。
良かった、誘拐された俺たちも銃で撃たれた鈴羽もいなかったんだ。
良かった良かった。
岡部(んなわけあるか!)
岡部「きぃさぁまぁらぁぁ!!」
ダル「うおぅ、オカリンが怒った!」
───
──
ダル「もう帰っちゃうん?」
岡部「ぅあーたり前だ」
ダル「もうちょっとゆっくりしていけばいいのに」
岡部「26年後の世界などもうこりごりだ」
由季「あはは……ごめんね、心配かけちゃって」
岡部「い、いえ……」
紅莉栖「あら、未来のママに対してはつつましいのね、こっちはパパよ?」
岡部「うぅるさい! このっ! ノリノリ天才変態熟女めっ!」
紅莉栖「なっ──熟っ!? ちょ!」
岡部「2010年に帰ったら、貴様の小ジワが増えるたびにほくそ笑んでくれるわフゥーハハハ!」
紅莉栖「それ以上言ったら2036年があんたの命日になるから……」
由季「そうそう、一番に頼る人が過去の岡部くんだなんてね」
鈴羽「や、やめてよ二人とも! あの時は本当に頭が真っ白で……」
岡部「しかしまゆりは本当に年を取ってるのか? 随分と若々しく見えるが」
まゆり「やだなぁもう、オカリンってば」
岡部「もしや波紋の使い手っ……存在したのか!」
岡部「……」 チラッ
岡部「それにひきかえ助手ときたら……」
紅莉栖「う、うっさい! 私はアンチエイジングに否定的なの! 相応に歳を重ねていきたいだけなの!」
岡部「フン、増やすのは脳のシワだけで十分だと思うがな」
紅莉栖「……やっぱり今のうちに殺して世界線を変えとくべきみたいね」
岡部「この狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真をまんまと出し抜くとはな……恐れいったぞ」
留未穂「とかいって結構楽しんでたよね♪」
るか「そ、それは、ええっと……」
岡部「時にフェイリス、お前……その口調は……」
フェイリス「ぎにゃああ、その名で呼ぶのはやめるのニャー!!」
紅莉栖「留未穂さん、口調口調」
鈴羽「だっ、だからそれはっ……」
紅莉栖「おかげで計画が変更……私の見せ場が……」
まゆり「ホントはねー、屋上でクリスちゃんがうーぱの仮面を外して、ばばーん! ってする予定だったんだよ~」
紅莉栖「でも、正直うーぱの仮面はセンスを疑うわー……」
まゆり「えー? そんなことないよぉ」
るか「でも岡部さんが”過去の俺の想いも見てくれればダルも納得する”って言って、急遽シナリオを変更したんですよね」
萌郁「あれにはびっくりした、岡部くんの言う通りに事が運ぶんだもん」
岡部「気のせいか……かなり流暢にしゃべるようになったのだな、シャイニングフィンガーよ」
萌郁「あははっ、そんな風に呼ばれたの久しぶり、懐かしい」
萌郁「岡部くんなら途中で”機関の陰謀を阻止する”とか言ってどっか行っちゃったよ」
紅莉栖「過去の自分を見て、厨二病再発ですねわかります」
岡部「貴様こそ、26年経った今でも@ちゃん用語とはな」
紅莉栖「う、うっさい!」
ダル「まっ、二人が接触しちゃうとタイムパラドックスが生じる危険性が微レ存」
紅莉栖「しっかし……こうやって若いころの岡部を見てると……2010年のラボを思い出すわね」
ダル「あ、あの時のことはもう思い出したくないのだぜ……」
まゆり「大変だったもんね~」
ダルがうなだれる。
ふむ。
ということはこいつ、知っているようだな。
自分の娘に惚れたこと──
自分の娘に罵倒され、快感を得たことも──
新しく好きな女が出来たから君とは付き合えない、キリッ、と自分の娘をフッたことも──
それを知った日、枕に顔を埋めてぐりぐりしたに違いないフゥーハハハ!
鈴羽「あたしにとっては、一ヶ月前、岡部倫太郎にとっては三日前のことなんだよね」
鈴羽「まるであたし達だけ時間が止まったみたいだよね」
紅莉栖「……はいはいマグママグマ」
───
──
鈴羽「それじゃ、2010年まで送っていくね」
岡部「あぁ、頼む」
まゆり「オーカリーン、またねー」
るか「お体を大事にしてくださいね」
留未穂「過去の私に……ニャ、ニャンニャン語を封印するよう、言ってくれると助かります……」
萌郁「騙してごめんね、岡部くん」
紅莉栖「中でイチャイチャすんなよ? ラブホじゃないんだからな」
ダル「許さない、絶対にだ」
由季「はいはい、よしよし」
岡部(こいつら……好き放題言いやがって)
鈴羽「あ、あはは……」
鈴羽「いやぁ、それにしても……なんて言ったらいいのか」
岡部「……」
鈴羽「ごめんっ! ホントにごめんね!」
鈴羽が手を合わせて、頭を下げてくる。
茶番に巻き込んだことだろうか、ドッキリに加担したことだろうか。
あるいは両方か。
急にあの場面が思い浮かんで、少し照れくさかかった。
岡部「あ、案ずるな、相手は未来の鳳凰院凶真なのだ。これも必然というやつだ」
それにしても未来の俺め、随分と手のこんだことをしてくれる。
俺や鈴羽がどう行動するか、まるで分かってたみたいじゃないか。
ああ……。
そうか、きっと未来の俺も同じ目にあったんだな。
岡部「あぁ」
鈴羽「起動完了っと」 ポチッ
鈴羽「2010年へのタイムトラベルは、行きと同じく6時間くらいかかるからゆっくりしててよ」
岡部「6時間……」
岡部(6時間か、やはり長い。でもようやく解放された気分だ)
岡部「ふー……」
岡部(ずっと緊張していたせいかどっと疲れが出てきた)
岡部(にしてもこいつはあまり疲れてないように見えるが……)
岡部(……やはりよく訓練されているのだろうな)
岡部「……」 チラッ
鈴羽「ん? どしたの?」 ニコニコ
鈴羽と目が合う──が。
思わず目をそらしてしまう。
うわっ、なんだこれ。
鈴羽「エヘヘ」
岡部「な、何を見ている! あまりジロジロ見るんじゃない!」
鈴羽「えー? だって、向かい合わせで座ってるんだからしょうがないじゃん」
岡部「ぐぬぬっ……」
岡部「おっ……俺だ! 今強烈な精神攻撃を受けている! あぁ……相手は俺の魔眼と対をなす邪眼の持ち主だ」
岡部「その邪眼に魅入られし者は、現実と夢との区別がつかなくなるのだぁぁ」
岡部「し、心配はいらない、1分後にまた連絡する、エル・プサイ・コングルゥ」
夢は見れたかよ。
鈴羽「前から気になってたんだけどさ。それってどこに電話してるの? というか今つながらないよね」
おのれ野暮なことを。
電波はつながらなくとも、心でつながっているのだ。
定時報告に水を差されたせいか、上手く思考が働かない。
話す内容が浮かんでこない。
こいつに抱いていた感情は、ダルのように父性愛、そう思っていたはずだが。
こ、これはもしや──
いや、そんなまさか。
岡部「……っ」 チラッ
だめだ! 娘(仮)の顔もまともに見れん父親がどこにいるっ!
認めよう、俺はこいつのことを──
こいつに──
鈴羽「あっはは、どうしちゃったの? 今の君、怪人百面相、って感じだよ」
苦悩する俺などどこ吹く風、鈴羽は相変わらず満面の笑み。
行きよりもずっと時間が長く感じる。
今だけはアインシュタインに文句を言いたい気分だ。
───
──
はじめは無限のように思われた時間も、一度平静を取り戻せばなんのことはない。
タイムマシン内にだけ存在した時間は、あっという今に過ぎていった。
というか、寝てた。
~ラジ館屋上~
岡部「戻ってきたか……わざわざ送ってもらってすまなかったな」
鈴羽「いや、連れてきちゃったのはあたしだし……ね」
鈴羽「…………」
鈴羽「ねえ、リンリンはなんであんなことしたのかな」
岡部「……ダルに俺たちの仲を認めさせる、だろう?」
鈴羽「……」
鈴羽「……もうちょっとだけこの時代に留まろうかな」
岡部「え? あ、あぁ……どうせ跳躍する先は同じなのだから、いいのではないか?」
俺は鈴羽が未来に帰った後のことを考えていた。
しばらくこいつに振り回されることもないと思うと、複雑な気持ちだ。
ふと視線を横にやる。
こいつは今、何を思っているんだろうか。
そんな俺の思いを察したのか──
鈴羽「……待ってるんだよ」
岡部(待ってる? 何をだ!?)
岡部(ま、まさか男を見せる時が来たのか?)
岡部(いやしかし……)
岡部(お、落ち着け俺! 素数だ、素数を数えるんだ。2,3,5,7,9……)
岡部(いや、9は違うだろっ!)
岡部(67,71,73,79……)
岡部(101,103,107,109…………)
岡部(…………151……初代ボケモンって151匹だったよな確か……)
岡部「なあ、2036年だとボケモンってどのくらいに……」
岡部(じゃなくて!)
鈴羽「?」
岡部(ええい……!)
定時報告。
決して逃げたのではない、フゥーハハハ。
とその時──
ブーブー
岡部「うわぉぁっ!?」
岡部「なんだ、メール……か。全く、空気を読めんメールだ」
鈴羽「……」
ピッピ ピッ
09/20 18:26
From:sg-spk@jtk93.x29.jp
Sub:
本文なし。
※添付ファイル二つあり。
岡部「まさか──」
鈴羽が跳躍する日時を間違えた?
いや──
岡部「Dメール……か!?」
鈴羽「……」
ピッ
恐る恐る1つ目の添付ファイルを開いてみると、ムービーが再生された。
『…………』
『初めましてだな、26年前の俺』
『俺は2036年から、このムービーメールを送っている』
岡部「未来の俺……なのか」
鈴羽「やっぱり……なんとなく来るような気がしてた」
『このメールを受け取ったということは、鈴羽と共に2036年に跳躍し、2010年に戻ってきた、そうだな』
『なぜ俺たちが、いや、俺が誘拐などという狂言を仕組んだか分かるか?』
『必要なことだったからだ』
『そう──26年前に俺が観測した2036年では”実際に誘拐は起きた”』
『タイムマシン開発の中心人物という理由で、未来の俺やダル、紅莉栖はSERNに拉致された、そして俺は鈴羽に連れられタイムトラベル』
岡部「まさか──」
『ここまで言えば分かるだろう』
『俺たちはSERNから人質を解放するために動き──』
『最終的に鈴羽は……SERNのエージェント、ラウンダーである桐生萌郁の凶弾によって倒れた』
『辛かっただろう、胸が引き裂かれそうだったろう』
『お前の気持ちはよく分かる。お前は俺だからな』
『だが、悲哀の他にもう一つの想いがお前の中で芽生えたはずだ』
岡部(そう……あの時俺は、何としてでも鈴羽を助けようと思った)
『銃弾を受けながらもタイムマシンに乗り込むことが出来た俺は、鈴羽を助けるためにあらゆる方法を試すことになる』
『誘拐の計画を邪魔した。SERNにクラッキングを仕掛けて重大なエラーを起こさせた。萌郁を殺そうとしたこともあった』
『しかしアトラクタフィールドの壁が俺に立ちはだかった』
『皮肉な話だ、銃弾を受けても致命傷とならなかったのもそのおかげだったのだろう』
『世界線の収束、確定した事実、回避不可能』
『Dメールによる過去改変も考えた、しかし不確定要素が強すぎるDメールを使おうという気になれなかったのだ』
『いつしかFG204の燃料は尽きかけていた──俺の体力や気力と同じように』
『2010年に戻った傷だらけの俺を支えてくれたのはラボのみんな──』
『その中にはラウンダー、桐生萌郁もいた。萌郁を見るたびに俺の心に怒りの炎が灯った』
『しかし──それと同時に鈴羽を助けたいと強く願う気持ちも蘇ったのだ』
『やがて俺は思いつくこととなる、今回の計画を──』
『SERNへのハッキングを続行──ラウンダーの動向を探り、桐生萌郁を懐柔』
『同時に会社を立ち上げ、ダルや紅莉栖とともにタイムマシンの開発』
『俺はお前を騙した、世界を騙したのだ』
『因果は成立した』
誘拐事件──狂言ではあるが──の果てに凶弾に倒れる鈴羽。
タイムマシンに乗る俺。
世界から……2036年から姿を消す鈴羽。
そして何より、鈴羽を救おうと強く願った俺。
『だが……世界線が変動したわけではない、俺のリーディングシュタイナーは”まだ”発動していない』
『これからお前には、俺が過ごした26年を過ごしてもらわねばならない』
『26年もの間お前を縛ることになる、確定した未来を過ごさせることになる』
『そのことついても大変申し訳なく思っている』
『しかし、それは俺やダルや由季、鈴羽のためであり、何よりお前のためでもある。それを分かってくれ』
『お前が倒れた鈴羽を抱きかかえながら感じたあの気持ち、それによって引き起こされた”鈴羽を救いたい”という執念』
『その意志を次のお前に託して欲しい』
『本来は禁則事項だが、お前の負担を少しでも軽くするためにタイムトラベルの理論についてのデータを添付する』
『俺は2036年から戻る際に乗ってきたFG204を元にタイムトラベル理論を完成させたが、お前にはそれがないからな』
『…………』
『これにてオペレーション・シェブン第二段階コンプリート……と同時に、オペレーション・シェブン第二段階の概要説明を終了とする』
『もっとも、SERNとの戦いが終わったわけではない』
『2036年でラボを襲った男は我が社の人間だ。……SERNのスパイだったようだな、恐ろしい思いをさせてすまない』
鈴羽「どこかで見覚えあると思ったら……」
『まだまだ安心はできないということだ……だが俺は、必ず奴らの野望を打ち砕いてやる』
『……それでは、そちらも健闘を祈る』
『エル──』
『プサイ──』
『コングルゥ──』
鈴羽「……」
岡部「は、はは……何をやっているんだ俺は……44にもなって……まるで厨二病──」
鈴羽「やっぱり……」
鈴羽「……やっぱり君はあたしを助けてくれたんだね……」
鈴羽「2010年の時も……2036年でも」
岡部「……そ、そのようだな」
鈴羽「……ねえ、岡部倫太郎」
岡部「ん?」
鈴羽「未来の君が言うにはさ、世界は多世界解釈で成り立ってるわけじゃないらしいんだ」
岡部「……?」
鈴羽「今こうしてあたしたちがここにいる世界は二人の主観として、確かに存在する」
鈴羽「でもさ……もしあたしが2036年に戻ってしまったらどうなるのかな」
鈴羽「君にとっての主観の世界が正しいんだとしたら、2036年に戻った時点であたしは消失することになる」
鈴羽「逆にあたしにとっての主観……いや、2036年の君にとっての主観の世界こそが正しいのだとしたら、今の君が消失しちゃうのかなぁ……」
鈴羽「それって……すごく悲しいよね……」
岡部「そんな……はずは……。消えるわけ……無いと思うが」
岡部「お、俺にはちゃんと今まで生きてきた記憶がある。そしてそれはこれからも続く──そのはずだ」
岡部「お前にだって2036年まで生きてきた軌跡があり、その記憶もあるはず……そうだろ?」
鈴羽「そうなんだよね……。2017年に産まれて今まで、あたしは橋田鈴羽として生きてきた……」
鈴羽「もちろん、全部覚えてる訳じゃないけど、今までの18年間であったことを思い出せる」
鈴羽「でも……世界線が変わることで記憶が再構築されるなんて、神がかり的な現象があるんだとしたら……」
鈴羽「あたしの今までって”世界によって作られた記憶──作られたあたし”なんじゃないかなぁって……」
鈴羽「そんなあたしは”2010年にタイムトラベルしてきたと世界に承認されたことで”ようやく自我を持つことができた!! ……とかさ」
岡部「……」
鈴羽「あーもう! なんだかこんがらがってきちゃったや!」
岡部「言わんとしてることはなんとなくわかるが……」
鈴羽「ずっと……」
岡部「え?」
鈴羽「ずっとここにいようかな……」
岡部「お、おい……だが……」
鈴羽「……」
鈴羽「2036年には戻らず……ずっとここに……君のそばに……」
……そうか。
不安なのだな。
もしかしたら自分が消えてしまうかもしれない。
その恐怖に怯えているのだな。
だとしたら俺は──
岡部「え?」
鈴羽が胸に頭を押し付けてくる。
岡部「なぜ謝る……」
鈴羽「君に悲しい思いをさせてしまった……、君をこれから26年間縛り付けてしまう」
鈴羽「それだけじゃない、未来の君をずっと……ずっと縛り付けてきたんだあたしは……」
鈴羽「バカだバカだ、何がタイムトラベラーだ……あたしが過去になんて飛ばなかったら……」
鈴羽「知らなければよかった」
鈴羽「……いや知れてよかった。君に謝ることができてよかった……」
鈴羽「君のそばにいてあげたい……」
鈴羽「あたしは……どうしたら良いのか……わかんない、わかんないよ岡部倫太郎……」
あぁ──そうか。
不安だったんじゃない。
消えるのが怖かったんじゃない。
こいつは──
2010年の俺。
2036年の俺。
どちらの俺にも孤独と戦う日々を味あわせたくなかったんだな。
岡部「泣いて……いるのか?」
鈴羽「ごめん、ごめんね……」
全く……抜けているかと思いきや勘が鋭かったり。
強い意志を持っているかと思いきや泣き虫だったり。
岡部「フッ……案ずるな、お前は何も心配しなくていい、全て”俺”が決めたこと、そうだろう?」
岡部「お前は……戻るのだ──お前の両親や、お前を助けた”俺”がいた時代へと……」
鈴羽「で、でも……」
岡部「2036年こそ、お前の生きる場所なのだから」
鈴羽「でも! ……これから君は26年間、あたしのいない世界であたしのために……」
鈴羽「そんなの……そんなのって……」
鈴羽「そんな君を残して未来へ帰るなんて……」
岡部「…………」
やれやれ。
やはり世話のやける……。
岡部「泣くなバイト戦士ぃ!」
鈴羽「……え?」
岡部「SERNとの戦いは! まだ終焉を迎えたわけではなぁい!」
岡部「フゥーハハハ、自惚れるな! 貴様のためだけに送る26年間ではないのだっ!」
鈴羽「岡部倫太郎……」
岡部「……それに、こっちにはラボのみんなだっている。それまで上手くやっていくさ」
岡部「だから……お前は向こうの俺を支えてやってくれ」
鈴羽「……」
岡部「お前は戦士なのだろう?」
ガシガシと、少しクセのある髪を撫でてやる。
鈴羽「…………」
鈴羽「そうだね……そうだよね」
鈴羽「あはは、君にはホント、元気……もらってばっかり、だよ」
目には涙──
が、先ほどの思いつめた表情とうってかわって眩しそうに笑う鈴羽。
鈴羽「ありがと、岡部倫太郎」
岡部「フッ、笑っている方がお前らし──」
突然──
柔らかい感触が電流となって走り、脳髄を麻痺させる。
小鳥がついばむようなキス。
今度は唇だった。
鈴羽「エヘヘ。あたしのこと忘れないようにっておまじない!」
鈴羽「あっはは、……リンリンにバレたらヤキモチ妬いちゃうかな」
どうなんだろうか。
今の俺は2036年で、鈴羽が2010年で、あああ、頭が働かない。
岡部「あ、あぁ……向こうの俺にも宜しく伝えてくれ」
タイムマシンに乗り込んだ鈴羽は、俺に一瞥すると──
鈴羽「ありがと」
岡部「……ああ」
鈴羽「さよなら」
数秒後、光がタイムマシンを包みこむように輝き──
そこにあったタイムマシンは、跡形もなく消えてしまっていた。
突如──
周りの景色が琥珀色に包まれ、ぐにゃぐにゃと揺れ始める。
平衡感覚は失われ、立っていられなくなり──
岡部「うっ!?」
岡部「これは……リーディングシュタイナー!?」
どういうことだ……もしや世界線が変動した?
岡部「……」
岡部「…………」
岡部「ふむ、よく考えてみればなんら不思議なことではない」
岡部「世界から殺される運命だった鈴羽が、再び無事に2036年に戻ったことにより世界線が変動した。こんなところだろう」
岡部「そしてその世界線では鈴羽はずっと笑って過ごしている」
で、いいんだよな?
そうに決まっている。
しかし──
アトラクタフィールドの収束、SERN、ラウンダーの萌郁。
俺は実際に、それらを観測した訳じゃないから実感は湧かない。
世界が収束するというのなら、一度会った後、再び鈴羽と会うのは随分先になるのだろうな。
正直に言うと少し寂しい。
とはいえ、他でもない未来の俺からの頼みでもある。
やってやるさ。
それがシュタインズゲートの選択だというのならな。
どうせならばSERNを徹底的に壊滅……いや、逆にこの鳳凰院凶真が牛耳ってくれようか。
うむ、悪くない。
世間を欺く国際研究機関の影の支配者、実にマッドだ。
だが……。
まずすべきことは──
岡部「ん……?」
今、何か──
ドーン
突然起こった、壮絶な爆音。
同時に視界が真っ白になる。
何が起こった?
これは、まさか。
いや、でもそんなはずは──
少しずつ視界が元通りになり──
目の前にはタイムマシン。
鈴羽「…………っ」
岡部「鈴羽ぁ!?」
というか様子がおかしい。
鈴羽「うぅー……」
なんだよ、なんでそんな怪訝そうな顔で俺を見るんだ。
というか、睨まれてる?
鈴羽「……」
岡部「一体どうして……」
鈴羽「どうしたもこうしたもないよっ!」
鈴羽「萌姉さんがリンリンは渡さないって言うんだよー!」
岡部「……」
岡部「は?」
岡部「な、な、なんだとぅ!?」
鈴羽「覚悟してよね、リンリン!」
岡部「と、と言うことはその格好は……」
鈴羽「まゆ姉さんから借りてきたコスプレ衣装!」
岡部「ま、待て!」
岡部「そ、そんなことせんでも俺はお前のことを──」
鈴羽「問答無用ーっ!」
鈴羽「さぁ、覚悟ーっ!」 ダキッ
岡部「お、お、おぁ……」
岡部「未来へ……か」
鈴羽「リンリーン!」
岡部「か……か……帰れーっ!」
一ヶ月後──
2010年 9月20日
あのあと一日中、俺にベッタリな鈴羽であったが……。
結局、翌日には実に満足気な顔を浮かべて未来へ帰っていった。
『君の想いはちゃんと伝わったよ。これでもう大丈夫だね!』
『だから最初からそう言っていただろう! お、俺はお前のことが……す、好き、好きだ、と……』
『あ、改めて言われると照れるってば……』
『う、うるさい! お前が言わせたようなものだろう……』
『あっはは、そうだったね』
『あぁ……元気でな』
『……』
『……』
『き……』
『……?』
『き……き……』
『き?』
『き……君に一生萌え萌えキュン!』
その瞬間、ハッチが閉じ──数秒後にはタイムマシンは光の中へと消えていった。
あの時、鈴羽がどんな顔をしていたのかよく確認できなかった、が大方の予想はつく。
しかし、二度ならず三度までも不意打ちとはな。
最後の最後まであいつはこの俺を振り回してくれた。
岡部「ふふ……」
まゆり「あれー? オカリン嬉しそうだねー、えっへへー」
紅莉栖「岡部、あんた何一人でニヤついてんの? 気持ち悪いわよ」
岡部「うるさいぞうーぱ仮面」
紅莉栖「う? は──はぁー!?」
まゆり「えー? クリスちゃんうーぱのお面持ってるのー? 見せて見せてー?」
紅莉栖「も、持ってないわよ! つーか変な呼び名増やすなこのバカ岡部っ!」
ブーブー
岡部「ん? メールか?」
ピッピッ
09/23 19:08
From:skyclad2036@egweb.ne.jp
Sub:
本文:これくらいはいいよね!
※添付ファイル一件。
これは……もしや?
ピッピッ
岡部「ぶふぉっ!?」
写っていたのは未来の俺と──
見ているこっちの顔が綻んでしまいそうになるほどの笑顔の鈴羽──
あ、あいつめ。
またしてもやってくれる。
まゆり・紅莉栖「?」
岡部「マイフェイバリットライト──、ま、マイファーザーダール!!」
ダル「はぁ? なんぞ?」
岡部「ダル! 今すぐ電話レンジ(仮)の改良にとりかかるぞ!」
ダル「どしたん急に……つかファザー? ハカーの間違い?」
岡部「細かいことはどうでもいい! とにかく改良だ!」
ダル「僕は積みゲーを消化するのに忙しいわけだが」
岡部「至急頼む! 報酬はポテチ一ヶ月分だ!」
ダル「いやどす」
岡部「今なら0カロリーのコーラもつけてやる、すぐに取り掛かってくれるな?」
ダル「いいですとも!」
ついにこの時が来たのだ。
フフフ、バイト戦士め、この狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真。
やられっぱなしで終わると思うなよ!
ピッピッピ
ピッ
Dメール──
届け──
To:skyclad2036@egweb.ne.jp
sub:
本文:鈴羽、誕生日
おめでとう
岡部倫太郎
2036年9月27日の鈴羽の元へ──
見てくれた人、ほ支援してくれたすべての人に感謝
バイト戦士おめでとう!萎えちゃんはごめんね
よかった!
鈴羽誕生日おめでとう!
Entry ⇒ 2012.09.27 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
岡部「ん?どうしたバイト戦士よ」鈴羽「べっ別に…なんでもないよ」
鈴羽「うん、分かってるよ。もう少ししたら戻るつもり」
岡部「うん、そうしたほうがいいだろう。こっちもミスターブラウンに難癖付けられたらかなわんからな」
鈴羽「あはは、店長ならやりそーだね。……ところで、他の人たちは?橋田至とか椎名まゆりとか……牧瀬紅莉栖、とかさ」
岡部「うむ、ダルならメイクイーン+ニャン2でイベントがあるらしいから今日は来ないぞ」
鈴羽「ふーん、じゃあ椎名まゆりの方は?」
岡部「何を言っている。メイクイーン+ニャン2でイベントがあると言っただろう。まゆりもメイドとして参加しているに決まっているだろうが」
鈴羽「あーそっか。そうだよねー、あはは」
岡部「助手は……分からんな。あいつは来る日もあれば来ない日もあるからな。まったく…助手の本分というのが分かっていないから困るのだ」
鈴羽「そうなんだ……」
岡部「で、それがどうかしたのか?」
鈴羽「そっか…じゃあ、今日はこのまましばらくは岡部倫太郎と二人きり……か」ボソ
岡部「…?何か言ったかバイト戦士よ」
鈴羽「えっ!?別にっ!?それにしてもあっついなぁ~…」
鈴羽(…よし、これは……チャンス、かな)
鈴羽「まー、そうなんだけどねー。暇じゃん」
岡部「ここにいても暇な気がするが」
鈴羽「こうやって話をしてるだけマシってもんだよ」
岡部「ほう……この鳳凰院凶真の素晴らしい伝説を聞きたいのか…いいだ」
鈴羽「あー、いやそういうんじゃなくて」
岡部「ろう…って何っ!?」
鈴羽「岡部倫太郎ってさ、結構面白いし。そういうのじゃなくてさー何かほら…もっと違うの聞かせてよ」
岡部「…?言っている意味が分からん」
岡部「なっ何!?何だそれは!!そんなデマ情報何処から拾ってきたのだ!」
鈴羽「ネット」
岡部「…フゥー……、バイト戦士よ。貴様はどうやら騙され易い体質のようだな」
鈴羽「え?何でさ」
岡部「ネット情報というのは誤情報や、機関によって都合よく捏造された情報がごーろごーろ転がっているのだ」
鈴羽「えー!!マジで!?」
岡部「ああ、マジだ。よって、俺はその機関による妨害も掻い潜ってきた猛者でもあるのだ」
鈴羽「へー。やっぱり岡部倫太郎ってすごいんだねー」
岡部「フン!!当たり前だろう!!俺は狂気のマーッドサイエンティスト、鳳凰院凶真だからな!!フゥーハハハ!!」
鈴羽「へー…じゃあ、やっぱり岡部倫太郎は常人とは違うってことなんだよね」
岡部「クックック…当たり前だ、俺をそこ等辺の凡人と一緒にするな。俺は過去をも操る時空の使者…」
鈴羽「じゃあ、あたしも…普通の人間じゃないんだよね…」
岡部「何…?」
岡部「…タイムトラベラーとでも言いたいのか?」
鈴羽「まあねー」
岡部「ふ…フゥーハハハ!!!それはいい!!狂気のマッドサイエンティストとタイムトラベラー!!現代人では到底理解不可能だ!!」
岡部「ククク……コレなら貴様と俺で世界を混沌の世界に陥れることが出来るではないか!!」
鈴羽「むー…信じてないなー」
岡部「ふん、なら証拠を見せてみるがいい」
鈴羽「じゃー岡部倫太郎が見せてよ。自分が狂気のマッドサイエンティストってとこをさ」
岡部「ほう…?いいのか?別に構わないが……貴様、コレを見たらもう俺の恐ろしさに身も心も震え上がり…二度と普通の生活を送れる事がなくなってしまうが…本当にいいのだな?」
鈴羽「うん、いーよ」
岡部「む…」
鈴羽「さーさー、はやくー」
岡部「むむ……」
鈴羽「ねーねー?まだー?」
岡部「むむむ………」
鈴羽「うんうん、そう来ると思ったよ。岡部倫太郎はそういう人だもんね」
岡部「何…?」
鈴羽「岡部倫太郎ってさー…押しに弱いタイプでしょ?流されやすそーだし」
岡部「なっなにを!?そんなわけあるか!!」
鈴羽「そーお?じゃあ、こんなことしても全然動じないんだよねー」
岡部「なっ!?何故近づいてくるのだ!!さっきは暑いとか言っていただろう!!」
鈴羽「あっついね~…そんな白衣着てて暑くないの?」グイ
岡部「うおっ!?顔を近づけるなっ!!そっそれに白衣は科学者にとっての正装であってだな!?」
鈴羽「脱いじゃいなよ…汗、掻いてるよ?」
岡部「ぬおお!?まっ待て!バイト戦士よ!!こっこれは一体何のまねだ!!」
鈴羽「んー?岡部倫太郎の好きな実験…だよ?」
岡部「実験…?」
鈴羽「岡部倫太郎が押しに強いのか、弱いのか…その実験」グイ
岡部「おおう!?」
鈴羽「鈴羽」
岡部「へ?」
鈴羽「鈴羽って呼んだら、考えてあげてもいーよ」
岡部「す……鈴羽。少し、離れてくれ。この状態は…その、危険だ」
鈴羽「うーん……やーめた」ダキッ
岡部「うぉぉおい!?何故抱きつくのだ!?名前で呼んだら離れると言ったではないかっ!?」
鈴羽「えー?言ってないよー?考えるとは言ったけど…。で、考えてみて…やっぱやめた!」
岡部「なっ…!?きっ貴様……この俺を騙すとは…って何でうぉ!?」ドサッ
鈴羽「岡部倫太郎って外出てない割には結構身体しっかりしてるねー意外」
岡部「何処を触って…待て!?これ以上は駄目だ……」
鈴羽「……ふーん、じゃあこのままだね」
岡部「何だと…!?」
鈴羽「岡部倫太郎があたしを否定したいなら…あたしを引っぺがせばいいよ。でも…そうしたら、あたしはもう…」
鈴羽「……あたしはもう、岡部倫太郎とこうやって接する事出来なくなっちゃうよ…?」
鈴羽「あはは、まだ30分も経ってないよ?もう根を上げたの?」
岡部「……この状態を他のラボメンに見られるのは不味い」
鈴羽「そう?あたしは全然構わないなー…。それに今日はいつものメンバー来ないんでしょ?いいじゃん」
岡部「……まぁ、そうだが」
鈴羽「汗が…君に垂れちゃってるけど……仕方ないよね。この体制じゃ」
岡部「お前が…どけばいい話だ」
鈴羽「あたしは絶対に動かないよ。君が…行動すればいい。あたしを退かすか…受け入れるか。…岡部倫太郎に、決めてほしい」
岡部「ぐ……どうして、どうしてこうなった…。世界線が変わったからなのか…。これも、運命石の扉の選択だと言うのか」ブツブツ
鈴羽「………」
鈴羽(……結構しぶといな。体力は無いほうだと思ったけど……、岡部倫太郎は…どういう選択をするんだろう)
鈴羽(岡部倫太郎…君は、あたしに優しくしすぎなんだよ…。本当は、こんなことしてちゃ駄目なんだけど……気持ちは抑えられないから…)
鈴羽(君が、あたしを突き放すなら……あたしはもう、思い残す事はないよ……自分の使命のために、もうここに未練はなくなる)
鈴羽(……それにしても、今日は一段と暑いな…。どうしてだろう)
鈴羽「暑そうだね……ハァハァ」
岡部「お前も辛そうではないか…」
鈴羽「君がさっさと決めてくれればこんな辛い思いしなくていいのになー」
岡部「うぐ……」
鈴羽「ねぇ……君に抱き付いちゃっていいかな?流石にこの暑さで上の体勢はキツイ」
岡部「……好きにしろ」
鈴羽「うわ……顔にベッチャリと汗が……」
岡部「当たり前だ…こんな密着体勢のままではこうなる」
鈴羽「これじゃあ、どっちの汗かわかんないね」
岡部「………」
鈴羽「………」
鈴羽(ここまでしても、駄目…か。やっぱりあたしなんかじゃ…いや、それともアトラクターフィールドによる世界線の収束…)
鈴羽(未来から来たあたしはこの時代のオカリンおじさんとそういう仲になったら…パラドックスが発生する…のかな。やっぱり、この恋は実らないの…かな)
鈴羽(でも…駄目だと分かっても…。それでも…。あたしは…あたしは…)
鈴羽「……え?」
岡部「お前は…俺にどうしてほしいのだ?」
鈴羽「それ、聞いちゃうんだ…?卑怯じゃない?それって」
岡部「俺は…狂気のマッドサイエンティストだ。…卑怯な事だろうが、平気でするのだ」
鈴羽「はは、なるほど……。それがさっきの証明なんだ……そっかー…」
岡部「俺は……中途半端な気持ちでそういう行為をする気はない」
鈴羽「……うん。そうだね、君はそういう人だったもんね」
鈴羽「椎名まゆり?」
岡部「あいつは……幼馴染で……大切な人間で……人質だ。それ以上でも以下でもない」
鈴羽「……奇妙な関係だね。……じゃあ、牧瀬…紅莉栖?」
岡部「あいつは…助手だ」
鈴羽「え…と…あっ!!じゃあまさか漆原るか!?まさか岡部倫太郎がそっちの人だったとは……」
岡部「なっ!?かっ勘違いするなっ!?俺は同性愛者ではない!!」
鈴羽「……じゃあ、あたしじゃ…駄目な、理由は…何?」
鈴羽「え?」
岡部「俺は、お前をその……ほら、あーゆうの…ああ、察しろ!!そういうのをお前とするのは吝かでもないと言っている!!」
鈴羽「そっそう……じゃあ、何で」
岡部「俺は…お前が大事なラボメンであり、仲間であることなのは言えるのだ。だが…お前とその、恋人…というのはどうなのかと…な」
鈴羽「………ふ」
鈴羽「なんだよもー!!それ、煮え切らないなーあはは」
岡部「なっ!!俺としてもどうかと思うが一応真剣に考えたのだぞ!?笑うな!」
鈴羽(……なーんだ、何悩んでるんだろうあたし。岡部倫太郎はそういう人だって分かってたのに…。今更何を怖気付いちゃったんだろう)
岡部「…?おい、鈴羽。いつまで笑っているのだ」
鈴羽(…うん、運命は自分の手で変える。どうしようもないんならこんな過去に飛んだりしないしね……よしっ!)
鈴羽「ねえ、岡部倫太郎」
岡部「む?な…なんだ?」
鈴羽「もう、待つのやめたよ……君は、私がそうしたいから…私のものにする!!岡部倫太郎!かくごー!!」
岡部「へっ!?何っ!?ちょっ待っ鈴羽!!」
鈴羽「安心してよ岡部倫太郎。あたしもこういうの初めてだから…さ」
岡部「ぬおっ!!脱ぐなっ!」
鈴羽「えー?もしかして着衣プレイってやつ?あたしとしては暑いし裸でしたいんだけどなー」
岡部「だー!!だーかーら!訳が分からんぞ!!何故その…するのが決定になっているのだ!!」
鈴羽「はー?それこそおかしいよ?この状況だよー?わけ分かんないのはそっちだよー」
岡部「だっだからといって…!!」
鈴羽「もう観念しなよ?岡部倫太郎、諦めは肝心だよー?」
岡部「う……そっそうだ!Dメール!!アレを使って」
鈴羽「逃がさないっよ!!」ドス
岡部「ぬわっ!!」
鈴羽「さぁーって。どう?結構鍛えてるし、スタイルには自身あるんだー」
岡部「お…おお」
鈴羽「あはは。そんなにジロジロ見ちゃってさー興味深々じゃん」
岡部「なっ!!そっそれはだなっ!?きっ機関が俺に精神攻撃をだなっ!?」
岡部「は?なっ何を」
鈴羽「じゃー今度は君の身体に快楽攻撃をーなんちゃって」
岡部「何を言って…うぉおお!!脱がすな!!」
鈴羽「…おお、何かごっちゃごっちゃ言ってた割にはやる気満々じゃん」
岡部「これは生理現象だっ!?俺の意思では」
鈴羽「少し…慣らすね?初めては痛いって言うし」
岡部「俺の話をまずは…むぐっ」
鈴羽「むぅ…んちゅ……」
鈴羽「ん…ちゅ…ぷは!とりあえずキスから…だよね!」
岡部「おおう……」
鈴羽「さぁーって次は下」
岡部「ちょ…そこは待っ…はうん」
鈴羽「はむ…じゅぷ…じゅ…」
岡部「まっ…バイト戦士よ…ちょっとまっ!!!」ガリ
岡部「──ッ!!おまっ!!噛むなよ!!不能なったらどうする!?」
鈴羽「しーらない!名前で呼ばない岡部倫太郎……いや…倫太郎がいけないんだよーだ」
岡部「……分かった鈴羽。もう、ここまでされて引くことは出来ん」
鈴羽「……やっと、覚悟…決まった?」
岡部「…ああ、こんな場所で悪いが。さっきキスされて…いやな気分には…寧ろ良かった。俺は…お前に惹かれていたのかも…しれんしな」
岡部「まぁ…一時の迷いかもしれないことも否めないが」
鈴羽「あっはっは。ひっどーい、そんな曖昧な気持ちなんだ」
岡部「なっ!!しっ仕方ないだろう!?お前が半ば強引にしてきたのだ!!そんな状態でも文句を言うとは」
鈴羽「あーはいはい、じゃー続き、続き」
鈴羽(なーんだ、案外脈アリだったわけだ…これはイケる!)
鈴羽「ふふ、もうあたしの方は準備万端だけど……一応、触っとく?」
岡部「なにっ!?」
鈴羽「そりゃーほら、あたしのココとか…さ、胸とかも。一応触っといた方が得じゃん?」
岡部「……お前が言うのか?それ…」
鈴羽「あっ、でもSEXはするからね?今のはあくまで前戯のことだから」
岡部「いや、流石に覚悟は決まっているさ…」
鈴羽「あーゴメン、そういえばそうだったね」
岡部「まぁ、この鳳凰院凶真が責められっぱなしというのも癪だしな、お返しをしてやろう!」ガバッ
鈴羽「うわぁ!」
岡部「クククまずは胸をいたぶってやろう……」
鈴羽「うっ…んぅ……はぁっ…」
鈴羽「あっ…うっ…そこ…ああっ!」
岡部「うむ、見事に固くなるものだな…」
鈴羽「かっ…観察…んっ…するようなのやめっ!あっ」
岡部「鈴羽…気持ちいいか?」
鈴羽「う…ん…りんたろ…が触ってるとこ…熱くなって…じわって…あう!…キ…」
岡部「ん?」
鈴羽「キ…キス…して?」
鈴羽「キス…キスぅ…」
岡部「ふ……そうか、そうかキスしてほしいか!!」
鈴羽「はぁうっ!!しっ…してよぉ…いじわるしないで」
岡部「フーッハハハ!!だが断!?」
鈴羽「んむっ……むちゅ…んっ……じゅる」
岡部「むぐ…ん…」
鈴羽「むぅ……んっ!?」
鈴羽「ぷは…あっ!そこ…はっ!」
岡部「ふ…無理やり奪うとはな…流石戦士といったところか…だが、下が無防備だぞ?」
鈴羽「はぁっ!あっ!あぅ……不意打ちはっ…」
岡部「にしても…すごい事になっているぞ」
鈴羽「そりゃ…好きな人にこんな嬉しい事されてるんだ…当たり前だよ」
岡部「──ッ!」ドキン
鈴羽「んぃっ!?いっいきなりはげっし…んあっ!!」
岡部「さあ、なんでだろうな」
鈴羽「あっ…う…ちょっちょっと待って倫太郎っ!!少し緩めっ!!ひぃっ!」
岡部「もっと激しくしてほしいのだな?」
鈴羽「んぐっ…くっそぉ…ニヤニヤしやがってぇ……んぅっ!?」
岡部「いや、そういう感じてる顔が可愛いと…思って…だな」
鈴羽「─ッ!?そっそんなっ…今そんなの…卑怯…んぁっ!!イッ─」
鈴羽「──ッ!──~~─~ッ!!!」ビクビク
岡部「うぉぉ……」
鈴羽「─…はぁ……はぁ」
岡部「……イッた…のか?」
鈴羽「……見事に、ね。…なんかくやしいな~」
岡部「ふ…この俺の妙技に掛かればお前なんぞ…ぉお!?」
鈴羽「じゃあ…次はあたしの番だね」
鈴羽「はぁ…はぁ…じゃあ、いくよ…」
岡部「ぅぉぉ……」
鈴羽「ん……ぐ……はぁ……」
岡部「大丈夫か…?汗が尋常じゃないが……」
鈴羽「暑いんだよ……心も……身体も……でも、それ以上に嬉しいから、この瞬間が…嬉しいから…全然ヘーキ」
岡部「そう…か」
鈴羽「ははっ……流石に異物感がすごいね……でも、不思議とそんなに痛みはないかな……」
岡部「血が出ているが……」
鈴羽「そりゃ…膜破れてるんだから…血はでるよ…でも、もっと…んぅ」
岡部「ぬおお!こっこれは…っ」
鈴羽「……どぉ?気持ち……いい?」
岡部「すごく……締め付けられて……こんなの初めてだ…」
鈴羽「よかった……気持ちいいんだよ…ね?…あたしは、もう少し…時間掛かるか…な」
岡部「まぁ、行為自体が初めてだから……な」
鈴羽「はは。……じゃあ、動く……ね」
岡部「ぐっ……ん…これは……やばい…」
鈴羽「はぁ……ふぅっ…すごく、気持ちよさそうな……顔、してる。うれっしいよ……あたしで感じてくれて」
岡部「そういうお前も……なんだか顔が変わってきたようだ…が」
鈴羽「はぁ……んっ…ぁっ!何だか……気持ちよく…なって…きっ…あっ!」
鈴羽「んぐぁ!!…このっ…あたしが…リードするって…あっ!下からつかない…ひっ!?」
岡部「男が寝たままマグロなのもどうかと…思って…な」
鈴羽「あぅ…やるね……倫太郎…はぁはぁ……んぁっ…あぅっ…このぉ…」
岡部「鈴羽……気持ちいいぞ……ぐっ」
鈴羽「キッキス……した…い…んぁあっ!」
岡部「意外だ…な。お前がそんなにキス魔だったとは……」
鈴羽「うっるさい……なぁっ……あたしだって……自分で驚いてるっ…んっ…くらいだっ…ぁっ…よぉ」
岡部「ふっ…そうか…うぐっ…急に締め付けがっ…んむっ」
鈴羽「むちゅ…んちゅ……じゅるる…ちゅ…れろ…ちゅ」
岡部「んむっ…ちゅ…れろ…じゅる…」
岡部「ぐ…鈴羽…もう……」
鈴羽「はぁ、待って…あたしももう少しだか・・・らぁっ!」
岡部「はぁ…ヤバイ、どいてくれっ……このままじゃ」
鈴羽「な…何言ってんの…?この状態…動くわけ…ない、じゃん」
岡部「はぁ!?ちょ…」
鈴羽「既成事実上等……!さぁ…っ…あたしの中に…んぅ…全部、吐き出し……なよっ!」
岡部「んおお……出っ」
鈴羽「んっ…あっ…──ッ──~~ッ!!!」
鈴羽「はぁ……はぁ……熱っ……この感じ……すごっ…い……」
岡部「はぁ……はぁ……」
鈴羽「……出しちゃった…ね」
岡部「ああああ……やってしまった……」
鈴羽「あはは。……じゃあ、もう何発出しても変わらないよねー?」
岡部「…………は?」
鈴羽「あはは。流石に5回連続はキツかったかなー」
岡部「おま……精気を……いや、生気を吸い取られた気分だ……」
鈴羽「あははー。じゃーシャワー借りるよーん」
岡部「ああ……もう、好きにしてくれ」
サァァァ
鈴羽「……ふぅ。……まだ、お腹…熱いや」
鈴羽(……やばいなぁ………この感じ。離れたくない…なぁ)
鈴羽(でも、……それでも、あたしは…やらなくちゃいけない……未来のために…倫太郎と…幸せになれる未来のために)
鈴羽「……グス」
鈴羽(……さて、行こうかな。……そう、あたしは信じたい。倫太郎を)
鈴羽「ふー…上がったよー?次、倫太郎入っていいよー」
岡部「ああ、そうする」
鈴羽「……さて、準備、…しようかな」
鈴羽「その状態で屋上だもんねー……雨でも降ってくれたらいいのにさー…ホントに…何で、降らないかな…グス」
鈴羽「あー、でも…雨なんて降っちゃったら…コレ…壊れちゃうかもだし…な」
鈴羽「あーやば!これ以上ここいたら溶ける!!それに…」
鈴羽(倫太郎の…こと…行けなくなっちゃうし…)
鈴羽「さてと…って熱っ!?うわっ!あっつ!!そういえばこれ……この直射日光に当たってたら迂闊に触れない…参ったなぁ」
岡部「……はぁはぁ」
鈴羽「…………」
岡部「……はぁはぁ」
鈴羽「……あーあ、来ちゃったか……まぁ、そうだよね…」
岡部「…その人工衛星……お前」
鈴羽「……お昼ごろさ、倫太郎…あたしがタイムトラベラーって証拠見せろって言ってたよね」
岡部「じゃあ…これ…やはり」
鈴羽「うん、察しの通り。…タイムマシン。未来の2036年からあたしが乗ってきたもの」
鈴羽「……倫太郎も証明してくれたもんね。……これでフェアになったかな?凶器のマッドサイエンティストとタイムトラベラーだよ」
鈴羽「ううん、逆。過去に行くんだ」
岡部「何?何故だ…?」
鈴羽「はは。君が必要になるものを君に届けるためだよ」
岡部「…?何だそれは」
鈴羽「……IBN5100」
岡部「な…に!?」
鈴羽「あたしは過去に行ってIBN5100を手に入れる…そして今の君にそれを届けるんだ」
岡部「そうな……のか?」
鈴羽「うん、そのためにあたしは行かないといけないんだ」
岡部「そう…か。それじゃあ、引き止める…訳にはいかんな」
鈴羽「うん、ありがとう。倫太郎」
岡部「……ああ」
鈴羽「………」
岡部「…………」
鈴羽「…あははー……ちょっとねー。熱くてさー…触れなくて」
岡部「……はぁ?何なのだそれは……フッ」
鈴羽「あー!!馬鹿にしたなー!!!いくら倫太郎でもそれは酷い!」
岡部「フフ……まぁ、なんだ。少し、話でもするか?…そこの日陰で、太陽が落ちるまで…な」
鈴羽「………うん」
岡部「で、お前が過去に戻ったらラボにIBN5100がいきなり出現するのか?」
鈴羽「さぁ…?流石にそれはわかんないよ…過去が変わるかもどうかも分からない」
岡部「…だがそれでは…」
鈴羽「でも、大丈夫だよ。多分……明確な理由はないけど」
岡部「むぅ……」
鈴羽「にしても暑いねー……ホント」
岡部「何…夏なんだから仕方あるまい」
鈴羽「特に今日は……一段と暑かったよ」
鈴羽「うん……まぁ、感銘とかは受けないけど」
岡部「まぁ、綺麗と思うくらいだがな」
鈴羽「まー…毎日見てるしね」
岡部「……そろそろ、か」
鈴羽「うん、普通に暑いけど…もう触れないほどでもないと思うよ」
岡部「うむ……達者でな」
鈴羽「……ねぇ、倫太郎」
岡部「どうした、鈴羽」
鈴羽「倫太郎は……あたしのこと、好き?」
岡部「む……」
鈴羽「あたしは、倫太郎のこと……大好きだよ。誰よりも…愛してるよ」
鈴羽「君は…?君は、あたしのこと……どうなのかなーって」
岡部「俺は……」
岡部「俺は、鈴羽のことが好きだ。勿論…な」
岡部「まぁ、ラボメンとして……好きだ」
鈴羽「……そっか」
岡部「……そして、それと同時に……一人の女性として愛してもいる」
鈴羽「!!!」
岡部「大好きだぞ、鈴羽」
鈴羽「………」グス
岡部「おっおい!?何故泣く!?」
鈴羽「嬉しくて…さー。まさか、君から…そんな言葉が聞けるとは思わなくて…駄目もとでも言って見るべきだね」
岡部「鈴羽……」
鈴羽「ねぇ、抱きしめて。強く、強く。君の温もりを…あたしの温もりを……お互い忘れないように…さ」
岡部「……」ギュ
鈴羽「……あー、あとキスしてよ。やっぱこれだけじゃ物足りない」
岡部「我侭な奴だな」
鈴羽「それくらいいーじゃんか……お願いだよ、倫太郎」
鈴羽「んぐ……ちゅ」
岡部「………」
鈴羽「………」
鈴羽「………ありがと、倫太郎。あたしもう大丈夫だよ」
岡部「そう……か」
鈴羽「ねぇ……一つ約束しない?」
岡部「ん?何だ?……言ってみろ」
鈴羽「あたしのこと……忘れないでね。あたし、絶対成功させて…君を迎えに行くから」
岡部「フ……タイムマシンで…か?」
鈴羽「もちろん。あたしタイムトラベラーだしねー」
岡部「ならば、お前も俺のことを忘れるなよ?勿論、未来のお前もだ」
鈴羽「あはは、何それー?無茶言うなー」
岡部「対等条件だ」
鈴羽「ははは。上等、絶対に忘れてやるもんかー」
外見しだいで50までいけるぞ俺は。特に、漫画版の40鈴羽は普通に美人1
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鈴羽「あー…それねー…あたしも考えたけど……タイムパラドックスが起こりそうだし…止めた。君に危険が起こったらやだし」
岡部「それではお前だって!」
鈴羽「あたしはいーんだ。未来で生まれるのが確定してるんだし、未来が変われば問題なし」
岡部「では……記憶が」
鈴羽「そこはさー…、ほら?愛の力?ってやつとかでなんとかなるんじゃないかなー」
岡部「何なのだその科学的根拠のまったくないスイーツ(笑)な回答は」
鈴羽「んー…でも、そういうことでしょ?あたしは意地でも君の事は覚えておくよ。前世?の記憶で未来のあたしにも記憶をーって…何か自分で何言ってるのかわかんないや」
岡部「うむ、まったくわからん」
鈴羽「ほらっ!そこで愛の力ーってやつだよ。それで全部丸く収まるわけだし」
岡部「フッ……まったくその通りだな」
鈴羽「「あははー。やっぱり君といると楽しいなぁー倫太郎」
岡部「そうか、ならよかったよ」
鈴羽「よーし、そろそろ未来の君とのランデヴーのために頑張ってこようかなーと」
岡部「ああ、頑張って来い。それと、その言葉は古いぞ?鈴羽」
岡部「ああ」
鈴羽「………」
岡部「ん?どうした鈴羽」
鈴羽「べっつにー…なんでもないよーん♪」
鈴羽「じゃあ、行ってきます」
岡部「ああ、行ってらっしゃい」
鈴羽(……さぁ、行こう。輝かしい未来のために…)
ゴゴゴゴ……スゥゥ
岡部「タイムマシンが……消えていく」
岡部(だが、ビックリしたものだ……しかし、鈴羽のことだ……大丈夫だろう)
岡部(俺は……鈴羽のために出来る事をしよう……)
岡部(タイムマシンが……完全に消えた……か)
岡部(……──ッ!?こっこの感じは……!?)
岡部「ぐ……うぅ……」
岡部(なら、世界線が移動した……のか)
岡部(なら……ラボには…)
岡部「誰かいるか!?」
まゆり「あーオカリーン!トゥットゥルー」
ダル「こんな時間まで何処行ってたん?」
岡部「そっそれより!IBN5100は!!」
ダル「そっそれならココにあるけど…」
岡部「……そうか」
岡部(これがココにあるということは……鈴羽は無事に……よかった)
ダル「あーそういえばオカリン。店長からなんか手紙預かったお。オカリン宛に」
岡部「何…?ミスターブラウンが?俺宛に手紙だと?」
ダル「いや、差出人は……阿万音鈴羽って人だけどさ」
岡部「何!?鈴羽からだと!?」
ダル「え?何?オカリン知り合いなん?」
ダル「うっうん」
岡部「……枚数は一枚だけか」
岡部「何々………何だこれは」
まゆり「オカリンどうしたのー?」ヒョイ
岡部「ちょっこら!!まゆり返すのだ!!」
まゆり「えーっと…『あたしの倫太郎へ、9月1日午後6時ラジ館屋上。愛してる』だってー!うわぁ!これラブレターだよぉー」
紅莉栖「ブフゥーー」
ダル「うわっ!!牧瀬氏コーヒー汚い!!そしてオカリンリア充氏ね!!!」
紅莉栖「……何……だと?」
まゆり「うわぁ…よかったねぇ~オカリン」
岡部「……あ、ああ」
岡部(一体どういうことだ?今日は……8月15日……このまま何事も起きなければいいが)
岡部「少し、ミスターブラウンと話してくる」
ダル「オカリンが……ちくしょー!!なんであんな厨ニ病がぁぁぁ」
岡部「まず、阿万音鈴羽というバイトは雇ってませんか?」
天王寺「はぁ?何寝ぼけた事言ってんだ?鈴羽さんが何で俺の店のバイトになんだよ」
岡部「鈴羽……さん?」
天王寺「つーか、おめぇ鈴羽さんと知り合いだったのかよ」
岡部「え、ええ。まぁ」
天王寺「まーだが、ビックリしたなぁー当時鈴羽さんに2010年にお前にこれ渡せって言ってきたときはどういうことかって思ったけどよ」
天王寺「まさか、本当に渡すときが来るとはな!まったく未来予知ってレベルじゃねーよな」
岡部「そっそうですか…」
天王寺「まぁ、この手紙渡してきたときの鈴羽さんはちょっとキモかったな……終始ニヤニヤしてて、なんというか…まぁキモかったな」
萌郁「あの……」
天王寺「おお、来たかバイト!!」
岡部「何…!?今なんと言ったのだ?ミスターブラウン」
天王寺「ああ?バイトのことか?」
岡部「指圧師が……バイト?……この寂れたブラウン管工房の…?」
岡部「いっいや……そうだ!!それよりその阿万音鈴羽さんは今何処に?」
天王寺「……なんだお前知らねえのか?」
岡部「……え?」
天王寺「そうか、しらねえみてえだな……まあ、いいか別に」
岡部「なっ何かあったんですか!?」
天王寺「んーなんていうかよー……失踪したんだよ」
岡部「……失踪?」
天王寺「失踪…っていうかよ。消えた…って方が正しいかもな」
岡部「……は?」
天王寺「まー、そうなるわな。俺だってそうだった。でも、たしかに鈴羽さんは消えたんだ」
天王寺「俺に手紙を渡した丁度1年ぐらい経ったときくらいかな…出かけてくるって行ったっきり帰ってこなかった」
岡部「…それは何処に行くって言ってたんですか?」
天王寺「あー…えっと確か……ラジ館だったっけな」
岡部「……そうか、そういうことか。フ……ミスターブラウン、情報提供感謝する」
岡部(とはいえ、何故タイムマシンが来たのかもよく分からんが…あの時リーディングシュタイナーが発動したという事はそういうことなのかもしれない)
岡部(それに前の世界線と違って鈴羽の扱いは変わっていた……って待て、ということはあの時の鈴羽はいなくなっていて…俺…童貞…なんじゃないか?)
岡部(だっだがしかし…あの時の感覚はまだ残ってるし……心だけ卒業?…いや、意味分からん…何なのだこのあられもないどうしようもない感覚は)
岡部(まぁ…とりあえずのところはいいだのだろうこれで…このまま……何も起きなければいいが……)
岡部「ふぅ……とりあえず知的飲料で、喉を潤すか」
まゆり「オッカリーン!ラブレターのえーっと阿万音さん?ってどういう人?今度紹介してね~」
ダル「リア充氏ね」
紅莉栖「何だコレ何打コレんだんだこれ……どうしてこうなったどうしてこうなったどうしてこうなった」ブツブツ
岡部(……何だこのカオスな空間は)
こうして何事もなく日にちは過ぎていって……9月1日を迎えた。
ダル「うお!もう9月か……こうして僕の夏休みもまた無駄に過ごしていくのか鬱だ」
紅莉栖「ああ、リア充さっさと死ね。あ、違った行くならさっさと逝けよ厨ニ」
岡部「クリスティーナ……」
岡部(まぁ、行くがな)
岡部「午後5時58分か」
岡部(本当にココに来るんだろうか……というかタイムマシンに乗ってくるってことだよな?いや…よく分からんが)
ゴウゥン……シュゥゥ……
ダル「おおお!!ホントにタイムマシンキター!!」
まゆり「わー!粉みたいのがキラキラしてて綺麗ー」
紅莉栖「あーはいはい、タイムマシンね。もうどうでもいいわ、人生が」
岡部「………ふむ」
岡部(あの時のは違って随分綺麗なものだな……未来はちゃんと変わってくれたのだろうか)
ガシュウン……
鈴羽「ぷあぁ!ふー…」
鈴羽「あ!!倫太郎!!!逢いたかったよー!」ダキッ
岡部「うわぁ!!」
まゆり「わぁ!」
ダル「うは!なんて裏山!!オカリンに嫉妬!!」
紅莉栖「空って青いなー……私はそんな空に浮かぶ雲になりたい」
鈴羽「逢いたかったー!逢いたかったよー!!」
岡部「なっ!!お前何故容姿が全然変わってないのだ!?てっきりもう随分な年だと…」
鈴羽「あー!ひっどーい!!あたしはまだ19歳だよー!まだ成人すら迎えてないよ!!」
岡部「どっどういうことなんだ!?」
鈴羽「んふー。まぁ、いろいろあってさー!でも、倫太郎に逢えてよかったー!!んー」
岡部「んなっ!?」
鈴羽「むちゅ……ん」
まゆり「わーお!大胆!!」
紅莉栖「私は空を浮かぶ雲なの……ふわふわ、何も考えずふわふわ」
鈴羽「あーそうだね、えーっとね。どこから話そうかなー」
岡部「あ、ああ」
鈴羽「そして、過去に行った鈴羽は記憶データをある機械にコピーしたの」
岡部「待て、機械とは何だ?」
鈴羽「さぁ?未来の君がなんか過去に伝言を送ったとかなんとか」
岡部「Dメール…か?」
鈴羽「それでーあたしは、生まれてから15歳くらいになってその記憶を移植したんだよねー」
岡部「なっ!では、記憶が上書きされてしまうのでは」
鈴羽「あー、そんなことないよー?上書き保存じゃないからさ」
鈴羽「まぁ、記憶を移植する前から倫太郎の事好きだったけど……未来の君、かっこいいんだもん」
岡部「そっそうか……。いや、待てよ?それなら過去に行った鈴羽と未来の鈴羽…2人存在するのではないか?」
鈴羽「あー…多分今のこの時代ならまだあたしはいるだろうねー…多分、イギリス辺りかなー?今は」
岡部「イッイギリス!?」
岡部「では…どうなるのだ?」
鈴羽「あたしが生まれた瞬間に消えたんじゃない?」
岡部「…は?」
鈴羽「いやさ、それがさーあたしが生まれる3年前くらいから記憶消えててそこまでしか記憶なくって」
岡部「何かややこしいな」
鈴羽「何か詳しい事はお父さんとか…全然教えてくれなかったからよくわかんないけど」ジロ
ダル「え?何で僕睨みつけられてるん?」
まゆり「きっとエッチな目で見てたからだよ~」
ダル「そっそんなことないもん!紳士的に子どもを愛でるような優しい目で見てたもん!!」
まゆり「そこがもうアウトだよ?ダル君」
岡部「ともかく、今は鈴羽は二人いるということか…」
鈴羽「そうだねー。倫太郎に逢いに行きたかったんだけどねー」
岡部「?逢いに来ればよかったじゃないか」
鈴羽「はー…そういうところは治らないんだね…乙女心を察してよ」
鈴羽「そりゃ、好きな男にいきなりオバサンになった姿なんて見せたくないじゃん」
岡部「あ、そうか」
鈴羽「ともかく、今この世界にいるもう一人のあたしがどうなったのかは今のあたしじゃ分かんないんだよね…」
岡部「そうか……」
鈴羽「まーそういうパラドックスを無くすためにもあたしが来たんだけどねー」
岡部「…?どういうことだ?」
鈴羽「あのさ、このタイムマシンって世界線における影響を受けないんだよねー流石あたしの倫太郎とお父さんだよ!こんなもの作るなんて」
鈴羽「つまりさー、あたし…言ったよね?迎えに来るって」
岡部「あ、ああ…確かに言っていたが」
鈴羽「その応えにうん。って言ってくれたよね」
岡部「あ、ああ」
鈴羽「あはは!なら話は早いや。あたしと一緒に2036年に来てよ!」
岡部「なっ何!?」
鈴羽「あのさー、コレに倫太郎が乗って未来に帰れば…未来に本来いた、おじさん倫太郎はどうなると思う?」
岡部「……今、タイムマシンで未来に行ったら…消えるんじゃないのか?」
鈴羽「そ、消える」
岡部「だっだが!!俺は未来でこれを作ったりしてるだろう!?矛盾が発生しまくるぞ!!」
鈴羽「まー未来に行ったら多分、このタイムマシンは未来に着いた瞬間消えるかも」
岡部「なっなら!!」
鈴羽「まーでも、これ倫太郎のいう…リーディングシュタイナー?って能力があるから大丈夫なんじゃない?」
岡部「だっだがな…」
鈴羽「ああああ!!もう!!つーかさ、こんなの健全でホントはどうでもいいんだ」
岡部「はぁ?」
鈴羽「あたしは…倫太郎と…一緒にいたいだけなの!!もうごちゃごちゃ言わずに来てよ!!」
岡部「おーい!!何を言うのか!?」
鈴羽「迎えに来たんだよ?もういいじゃん、未来は平和だったよー?ラボメンみんなぜーんぶ元気にしてるし」
岡部「…!!」
紅莉栖「今、確実に言えることは…この女が岡部を未来に連れ去ろうとしてるのよ」
まゆり「えー?それって何か悪いの?」
紅莉栖「このタイムマシンは未来への片道切符…つまり、岡部が行ったら少なくとも私達は2036年まで岡部と一緒にいられなくなる」
まゆり「えー?それはやだよー…まゆしぃ寂しいなぁ」
岡部「……」
鈴羽「……まぁ、行ってる事は間違ってない。…やっぱり倫太郎に決断してもらうしかないね」
岡部「……」
鈴羽「あたしと一緒に未来に行ってあたしと愛し合うか、それともココに残って今までの日常を過ごすか」
岡部「……俺がお前と行ったら世界線が変わるんじゃないか?」
鈴羽「……まず、間違いなく」
岡部「変わったら、平和かどうか分からないんじゃないか?」
鈴羽「……うん」
岡部「行かなかったら……お前の言うとおり平和な…ラボメンが全員平和で元気にいられる世界が続くんじゃないのか?」
鈴羽「…………いや、違うよ」
鈴羽「うん、私以外は……ね」
岡部「………」
鈴羽「だから、決めてよ。あたしを選ぶか、その他を選ぶか」
岡部「……分かった」
鈴羽「………」
まゆり「ねぇ、オカリン」
岡部「……まゆり?」
まゆり「オカリンはその阿万音さんのこと……大好きなんだよね」
岡部「………ああ」
鈴羽「……ッ」
まゆり「……うん、だったら着いてった方がいいんじゃないかな」
岡部「何……?だが、しかし」
まゆり「やっぱり、好きな人同士は一緒にいるべきだよ」
岡部「まゆり……」
岡部「……当たり前だ」
まゆり「……うん、なら行ったほうがいいと思うな。まゆしぃはホントのこと言うと少し寂しいけど…それでも」
岡部「………」
まゆり「…でも、行かないのならそれはオカリンが決めたならそれでもいいよ。オカリンがしたいようにしたらいいと思うな」
鈴羽「……」
岡部「………俺、鈴羽に着いて行く」
鈴羽「!!!」
鈴羽「……本当に?」
岡部「……ああ、俺は鈴羽…お前と一緒にいたい」
鈴羽「倫太郎……りんたろー!!」ダキ
岡部「鈴羽…」
鈴羽「好き好き!!りんたろー!大好き!!」
紅莉栖「もうどうにでもなーれ」
ダル「牧瀬氏に……敬礼っ!!」
間違いない
数年後にタイムマシンつくってオカリン奪いにいくよ
数年後にタイムマシンつくって鈴羽刺すよ
まゆり「えーっと…次は2036年だから…20年後かな?あー…まゆしぃそれじゃあもう36歳だよー…おばちゃんだねぇ」
岡部「ははは。どんなに年をとってもまゆりはまゆりだ」
まゆり「えっへへーそれじゃあオカリン……またね」
ダル「くっそー!なんか駆け落ちみたいですげー!!オカリン…お前のことは忘れない」
紅莉栖「ふー、生きてる意味って何だろう。それを研究しよう。そうだな、20年ぐらい研究しよう、そうしよう」
岡部「ああ、俺が不在の間…ラボを頼むぞ。…20年後に、また会おう」
シュゥゥゥゥン
まゆり「…行っちゃったねぇ」
ダル「……ん?待てよ?オカリンが戦線離脱したってことはラボメンで男って僕だけじゃね?ウッヒョーーイ!!オカリーンgj!!」
紅莉栖「なっなに?岡部…?クリスティーナ…お前はホントに可愛いな…。なっ可愛いとかっ!!本当の事だ…紅莉栖。岡部……」
岡部「む…狭いな…それはどういうことだ?」
鈴羽「この選択をして」
岡部「ふ……さっきまでの威勢はどうした?何故そんなことを言う」
鈴羽「……無理言っちゃったかなーって」
岡部「何を今更。…それに俺はこの選択をとったことに後悔なぞ微塵も感じていない」
鈴羽「…え?」
岡部「大好きなお前とずっと一緒にいられる。それだけで十分だ」
鈴羽「…倫太郎……ありがとう。…そして、愛してるよ。ずーっとさ」
岡部「フ……鈴羽よ……俺もずっとお前の事を愛していくさ、どんなことがあろうとも…な」
鈴羽「クス……そうだねー」
岡部「うむ」
鈴羽「これも、運命石の扉の選択ってやつかな?」
岡部「フ…そうだな。そして、この選択は俺達自身の選択でもあるわけだ…」
鈴羽「うん、これからもずっと末永く……一緒にいてね。これが運命石の扉の選択なんだからさ」
おわり
良かった
未来の助手がろくでもないことしかしない気がする
面白かった
Entry ⇒ 2012.09.21 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
岡部「鈴ワン・・・だと・・・?」 鈴羽「わんわん♪」
【深夜、未来ガジェット研究所】
岡部「ふむふむ…・・」 カタカタカタ…
─────────────────────────────
【猫飼ってる奴に聞きたいのだが… 】
[1]鳳凰院凶真[sage]2010/08/14(土) ID:???
猫の喜ぶ撫で方を教えてくれないか?
[2]名無し[sage]2010/08/14(土) 10:05:43 ID:???
>>2get
[3]名無し[sage]2010/08/14(土) 10:05:43 ID:???
ぬこと聞いてキマスタ
[4]黒の絶対零度[sage]2010/08/14(土) 10:06:00 ID:???
まず毛を逆なでてはいけません。。
毛の向きに沿ってやさしくナデナデしてあげてください。
─────────────────────────────
岡部「ふむ、毛の向きの沿って…」 ナデナデ
???「ひゃう!? お、岡部…////」
岡部「なになに…『背中をなでる時は、背骨に触れないように』か…」 サスリサスリ
???「やあ! せ、背中…そんな風にされたら、くすぐったいよお…////」
岡部「次は『アゴと首周りを指先でやさしく』だな…少し顔をあげろよ。」 クイ、コチョコチョ
???「あ…あ…おかべ…おかべぇ…////」 トロン…
岡部「効果は抜群だ。 この黒の絶対零度とやら、かなりの猫スキーと見た。
む? 『眉間を指でグリグリしてやるのも効果的』だと…よし!」 グリグリ
???「痛っ! ちょ、お、岡部!? それは痛い! やめるニャーーー!!」
ドンガラガッシャーーン!
岡部「ぐええーーー!? なぁにをするのだ、クリスティーニャ!!
せっかくご主人様が膝の上で愛でてやってるというのに!」
紅莉栖「う、うるさい! バカ! やりすぎだ!////」 ニャーン♪
紅莉栖「だいたい、@ちゃんねるの片手間に撫でられても嬉しくないんだから!」
岡部「む? 気持ちよくなかったのか?」
紅莉栖「グリグリ以外はすごくよかったけど…//// って、そういう問題じゃない!
私はあんたにご主人様としての自覚を持てと言ってるの!
もっとこう…私を第一に優先して行動するニャ!!」
岡部「だ~~まれ!! ただでさえ貴様に貴重な@ちゃんタイムを妨害されているのだ!
そっちこそ少しは主の立場を考えろ!!」
紅莉栖「岡部、@ちゃんなんかしてないで、私と遊びなさい。」
岡部「ちょっと待ってろ。 今いい所なのだ。」
紅莉栖「む! ふにゃーーーー!!」 カタカタカタ!
岡部「あーーーー!?」
─────────────────────────────
[20]鳳凰院凶真[sage]2010/08/14(土) ID:???
イf簿jp;あlがんgろあ;あp:んgら:nばお;なpん¥:あ
[21]名無し[sage]2010/08/14(土) ID:???
ちょwwwなんぞwwww
[22]名無し[sage]2010/08/14(土) ID:???
包茎院どうしたwwwww
[23]鳳凰院凶真[sage]2010/08/14(土) ID:???
すまない、猫がやった。
[24]名無し[sage]2010/08/14(土) ID:???
ぬこじゃしょうがない
[25]黒の絶対零度[sage]2010/08/14(土) ID:???
ぬこの画像うp!
─────────────────────────────
~【以上、回想終了】~
岡部「お前のおかげで、既に@ちゃんでは『鳳凰院=ぬこ』でネタにされてるんだぞ!
主の名誉に傷付けて、貴様はそれでも使い魔か!?」
紅莉栖「使い魔じゃなくて猫だと言っとろーが! ほら、くやしかったらコレでご主人様らしい事をしなさい!」
岡部「む? これはヘアブラシか?」
紅莉栖「そ、それで私をけ、毛づくろいしろ!////」
岡部「」
シュッシュ シャーシャー
紅莉栖「にゃふ~♪」
岡部「気持ちいいか?」
紅莉栖「ま、まあまあだニャ!////」
岡部「うむ、しかしお前の髪の毛はサラサラで手触りがいいな。
これなら俺がブラッシングする必要なんかないんじゃないか?」
紅莉栖「そ、そんな事ないわよ! これはご主人様の義務なんだから!////」
岡部「そうか…」
紅莉栖「そうよ。」 ピコピコ! フリフリ!
岡部「…・なあ、前から気になってたんだが、その猫耳と尻尾はどうなってるんだ?
手を触れてないのに、勝手にピコピコ、フリフリ動いてるぞ?」
紅莉栖「ああ、これは装着者の脳波を読み取って動くように私が改造して…って、
私は猫なんだから耳と尻尾を動かせるのは当たり前じゃない!」
岡部(才能の無駄遣いすぎるぞ、紅莉栖…・・)
岡部「しかし、夜のクリスティーニャとの生活を始めて、もう一週間か…」
紅莉栖「ふふん! こんな可愛い猫ちゃんがあんた見たいな厨ニ病の
ペットになってやったんだから感謝しなさいよね!」 ピコピコ! ピーン!
岡部「ああ、そうだな…」
紅莉栖「へ?」
岡部「毎晩、お前が夜のラボに居てくれるようになってよかった。
以前は夜になると、一人っきりだった…・・ありがとうな。」
紅莉栖「ふぇ!? そ、そんな…私はただ…岡部の傍にいたかったから…////」 モジモジ
岡部「………」 スウ…
紅莉栖「? 岡部?」
岡部「ひっかかったな、クリスティーーーニャ!! 捕まえたーーー!」 ガシィ!!
紅莉栖「きゃああ!? な、何するの岡部!?」
岡部「無駄だ。 こうがっちりと俺の腕の中に囚われては脱出できまい!
ククク、この鳳凰院凶真が、使い魔の数々の無礼をこのまま許すと思ったか?」
紅莉栖「な、何をする気!?」
岡部「罪には罰に決まっておろう? お前の大嫌いなあれさ…」
紅莉栖「ま、まさか…」 カタカタ…
岡部「そう…」
ゴロン!
岡部「『もふもふの刑』どぅわーーーー!!」
紅莉栖「いやあああーーー!!」
紅莉栖「やだやだ! 『もふもふ』はやだよぉ! お願い、岡部!」
岡部「ファーッハッハッハ! お前は本当にもふもふが嫌いだなあ!!
そんなにあれが不快なのか? んー?」
紅莉栖「…良すぎるからイヤなんだよぉ…////」 ボソ…
岡部「ん? 今なんて言った?」
紅莉栖「な、なんでもない!!//// とにかくアレはやめてよ!
アレされると私、頭の中が真っ白になって、変になっちゃうの!」
岡部「なるほど…それは大変だな…」
岡部「だが断る!!」
紅莉栖「な、なにぃ!?」
岡部「という訳で、もふもふさせろぉぉーーーーーー!!」
モフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフモフ!!
紅莉栖「ニャああああーーーーーー!!!!」
- - -- ── ────────────────── ── -- - -
- - -- ── ──────────── ── -- - -
- - -- ─ ── ─ -- - -
- - - - -
チュンチュン
チュンチュン
紅莉栖「ん…はあ…・朝?」
岡部「ぐ~…」
紅莉栖「岡部…? あれ、私、あのまま寝ちゃったんだ!
いけない、他の皆が来る前に着替えて、ホテルに戻らなきゃ!」
岡部「ん~…クリスティーニャ…」 ムニャ・・
ギュウゥゥ…
紅莉栖「きゃ!? お、岡部! だ、駄目だよ、放して…////」 ゴソゴソ
【シャワールーム】
シャアアアーーーー…・
紅莉栖「ふう…気持ちいい…」
きゅん♪
紅莉栖「う! ま、まだお腹の奥が疼いてる…岡部にもふもふされたから…////」
「あんなに何度も、何度も…激しくするからだよ…岡部のバカ…////」
「本当に…エッチなんだから…////」
※【彼女はもふもふされただけです。】
シュル…キュ…・
紅莉栖「よし、着替え完了。 クリスティーニャから牧瀬紅莉栖にへんし~ん!ってね。」
岡部「ぐ~ぐ~ふご…・」
紅莉栖「おのれ…気持ちよさそうに寝やがって!」 ツンツン!(頬を突っつく)
岡部「ん~~…」
紅莉栖「ゆ、昨夜は私をあんなにメチャクチャにしたくせに…本当に憎ったらしいんだから!!////」 ツンツン!
岡部「ふへへ~…くりす~…」 ムニャムニャ
紅莉栖「まったく…また後でね、愛しいご主人様♪」 チュッ…
カン カン カン(階段を降りる)
紅莉栖「くう~~、朝日が沁みる~~! …ん?」
シャアアーーー! キキィーーー!
???「とうちゃ~~く! あれ?」
紅莉栖「阿万音さん…・」
鈴羽「牧瀬紅莉栖…・」
紅莉栖(ちっ…せっかくいい気分だったのに、嫌な娘に会っちゃった…)
紅莉栖「あら、おはよう阿万音さん。 今日は早いのね。」
鈴羽「心にもない挨拶はしなくていいよ、牧瀬紅莉栖。
君の考えてる事は顔に出てるから。」
紅莉栖「あら、あなたがそんなに空気の読める娘だったなんて意外だわ。」
鈴羽「そりゃあ、私は君以上に、君の本性を知ってるからね。」
紅莉栖「うふふふ…・・」 ゴゴゴゴゴ…!
鈴羽「あはははは…・」 ドドドドド…!
鈴羽「ねえ今、岡部倫太郎のラボから出てきたの…?」
紅莉栖「…・そうよ、昨夜は研究で遅くなったからここに泊まらせてもらったの。 それが何か?」
鈴羽「べっつに~…ただ、あんまり我がままを言って、彼に迷惑をかけないで欲しいな。」 ムス!
紅莉栖(この反応…やっぱりこの娘も岡部のことを…) ギリ…!
紅莉栖「ふふふ…」
鈴羽「!?」
紅莉栖「それなら阿万音さん、お願いなんだけど、今日は岡部を起こしたりせずに
ゆっくり眠らせてあげて欲しいのよ。」
鈴羽「な、何で?」
紅莉栖「彼…昨夜は私の為にいっぱい頑張ってくれたから…疲れてるのよ…・」 クスクス!
鈴羽「そ、それってどういう意味さ!?(何…この牧瀬紅莉栖の勝ち誇った顔は!?)」
紅莉栖「じゃあ、私は一度ホテルに戻るから。 またね、『ただのラボメン』の阿万音さん♪」 スタスタ
鈴羽「あ、ちょっと…何だよ、もう!」
- - -- ── ────────────────── ── -- - -
- - -- ── ──────────── ── -- - -
- - -- ─ ── ─ -- - -
- - - - -
【時は流れ、お昼ごろの未来ガジェット研究所】
ドン! ドン! ドン!
岡部「む!? 誰だ、ラボのドアを乱暴にノックしおって!?」
まゆり「はーい、どちらさまー?」 ガチャ
ブラウン「おーーかーーべーー!!」
岡部「ひぃ!? Mrブラウン!?」
ブラウン「おう、岡部…ちょいと家捜しさせてもらうぜ!」
岡部「や、家捜し?」
ダル「ちょ!! オタクの部屋を探索とか、マジ勘弁!!」
ブラウン「岡部…俺に何か隠し事をしてねえだろうな…?」
岡部「か、隠し事!? ふ…この鳳凰院凶真は常に周囲に陰謀を張り巡らしているのだ!
無論、あなたの周りにもなMrブラウン! 今さら気付いても、もう遅…」
ブラウン「お前最近、ここで猫を飼ってるだろ?」
岡部「ぶほおおおーーー!?」 ビチャァ!!
まゆり「オカリン!?」
ダル「ドクターペッパー噴いた!?」
ブラウン「その反応は図星だな!!」
ブラウン「近所から苦情がきてるんだよ!
『夜中になると、このビルから猫の鳴き声がしてうるせえ』ってな!
おう、部屋貸す時言ったよなぁ、ペット禁止だって!」
ダル「ぬこ…だと…!?」
まゆり「えー! オカリン、猫さん飼ってるの!?
いいなーいいなー、まゆしぃーにも抱っこさせてー♪」
岡部「(クリスティーニャの声がでかすぎたか!?) ご、誤解だ、Mrブラウン!
おおお、俺は断じて猫科動物など飼ってはいない!!」
ブラウン「ほー、だったら部屋の中を調べてもかまわねえな! 上がらせてもらうぜ!」
ガサゴソ、ガサゴソ
ブラウン「ぬう~~! ガラクタがあるだけで、動物を飼ってる痕跡すらねえ!」
岡部「ご、ご理解いただけたでしょうか…?」
ブラウン「まだだ! お、そこの棚なんて猫を隠すのにちょうどよさそうじゃねえか!」 ガラ!
ダル「ちょ! そこは!!」
ブラウン「何だ、この本? 『ロリきゅ~ぶ』…!? 橋田ぁ…テメェ、綯をこうゆう目で!!」
ダル「違うお!! 僕はYESロリータNOタッチの精神を…ぎゃあああーーーー!!」
まゆり「オカリン、猫さんは本当にいないの? まゆしぃ、猫さんと遊びたかったなあ…」
岡部(問題ない…俺が飼ってるのはクリスティーニャだ…何の問題もないはず!)
チリンチリーーン…
ブラウン「!! おい今、鈴の音が聞こえたぞ! 猫の首輪だな!」
岡部「う…!!」
まゆり「あ、この音は…」
チリーン チリーン
ブラウン「外からか…だんだんこっちに近づいてくるぜ!」
ダル「ち、ちがうお…これは…」
チリーン チリーン
ブラウン「ドアの前…そこだーーーー!!」 ガチャ!
紅莉栖「きゃあ!? 店長さん! どうしたの?」
ブラウン「ま、牧瀬?」
まゆり「紅莉栖ちゃん! トゥトゥルー☆」
紅莉栖「ちょっと、これは何の騒ぎ?」
ブラウン「おい、牧瀬! お前、猫を隠したろ! どこだ!」
紅莉栖「な、何の事ですか?」
ブラウン「恍けるな! 今まで鈴の音が!!」
紅莉栖「それってこれのことですか?」 チリーン
ブラウン「へ…首輪…?」
ブラウン「何でお前が鈴の首輪なんてつけてんだよ!?」
紅莉栖「これは、こういうチョーカーです。」
まゆり「それのおかげでねー、最近は鈴の音が聞こえたら紅莉栖ちゃんが来たってすぐ分かるのです!」
ブラウン「くううーーー! 紛らわしいモンつけやがって!」
岡部「も、もうご理解いただけたでしょうか…?」
ブラウン「ぬう…今日のところは引き下がる!! 覚えてやがれ!!」 バン!
岡部「あーーーー怖かったーーーー!!」
紅莉栖「一体なんだったの…?」
まゆり「あのねーカクカクシカジカー。」
紅莉栖「!!!! そ、それは不思議ねー///」
まゆり「紅莉栖ちゃん、顔が真っ赤だよ?」
紅莉栖「あ、暑さのせいよ!」
ダル「やっぱりブラウン氏にも、そのチョーカーは首輪にしか見えなかったお。
つまり、牧瀬氏は首輪プレイの真っ最中という認識は正義!」
紅莉栖「橋田のHENTAI! これはそんな下品なものじゃないの!(これは私と岡部の絆なんだから!)」
岡部「あー…こほん! と、とにかく俺達の何かしらの行動がMrブラウンに誤解を与えたのは確かだ。
なのでーそのー…しばらくは、誤解を招きそうな行為は慎もうと…考える訳で…」 チラ…
紅莉栖「……」
ダル「そうは言ったって、何が間違ってぬこを飼ってるってことになるん?」
まゆり「あっ! ひょっとしてまゆしぃのうーぱ人形が夜な夜な、鳴き声を上げて…」
ダル「あるあ…ねーよ! 呪いの人形かよ!?」
岡部「おい、やめろ! 呪いとか言うな! 想像しちゃうだろ!」
紅莉栖「怖いの?」
岡部「ファーーッハッハッハ! この鳳凰院凶真が怪談ごときに…」
紅莉栖「ねえ、まゆり。 私の大学に、『首切りジャック』っていう怪談があってね…」
岡部「やめて!!」
- - -- ── ────────────────── ── -- - -
- - -- ── ──────────── ── -- - -
- - -- ─ ── ─ -- - -
- - - - -
【深夜、未来ガジェット研究所】
岡部「ふう、皆は帰ったか…今日のことでクリスティーニャも来ないだろうし、久しぶりに静かな夜だ。」
岡部「……」 チラ
うーぱ人形「」
岡部「落ち着け、鳳凰院凶真…うーぱの呪いなぞ、あの場のでまかせだ…・
鳴き声の正体はクリスティーニャなのだから…」
うーぱ人形「」
岡部(くっ…! なんだかコイツの目の模様が血の涙に見えてきたぞ…!)
岡部「そういえば、助手が…」
紅莉栖『窓の外を見ると、ナイフを握った首切りジャックが・・・』
岡部「────ッッッ!!」 シャー!(カーテンを閉める)
し~~~~ん…・
岡部「うう…夜のラボってこんなに静かだったのか…
最近はクリスティーニャが騒がしかったから忘れていた…」」
し~~~~ん…・
岡部「……・・」
し~~~~ん…・
岡部「…・ぐす…・」
し~~~~ん…・
岡部「クリスティーニャ…・」
バーーーーン!!
岡部「ひぃ!?」
紅莉栖「お化けだと思った? 残念! クリスティーニャでした!」 ニャ~ン♪
岡部「ク…クリスティーーニャーー! お、驚かせるな!!」
紅莉栖「ゴメンね、怖かった? 泣いちゃった?」
岡部「う…怖くないし…泣いてない!」 グス…
紅莉栖「なら、私は帰った方がいいかニャ?」
岡部「い、いや…せっかく来たのだしゆっくりしていけ…」 ギュ…
紅莉栖(計画通りwwww つかやべぇ! 岡部が可愛すぎ萌え死ぬwwwww////)
紅莉栖「うふふ、もう私と距離を置こうなんて考えちゃダメよ。
さあ、今夜は店長さんに怒られないように静かに遊びましょうね。」
岡部「うん…」
紅莉栖「でも静かな遊びって何があるかな…?」
岡部「そうだな…」
岡部「では、お散歩なんてどうだ?」
紅莉栖「ニャ?」
【深夜の通り】
岡部「いくら秋葉原といえど、この時間ではほとんど人がいないな。」
紅莉栖「う…うう…」 ビクビク ギュウ…
岡部「どぉした、クリスティーニャ? そんなにピッタリくっつかれては歩きにくいではないかぁ?」
紅莉栖「お、岡部ぇ…やっぱり帰ろうよ…ぐす…怖いニャぁ…////」
岡部「クックック…何が怖いのだ?」
紅莉栖「だって…もし、この姿を岡部以外に見られたら…」
岡部「何を言っている? お前が人間に見えるのは俺だけなのだろう?」
紅莉栖「ううう…・!!」
【深夜の公園】
岡部「ふむ、小動物共でにぎやかな公園も夜は静かなものだ。」
紅莉栖「うう…ひぐ…」 ビクビク
岡部「クリスティーニャ、あんまりメソメソしていると置いていくぞ?」
紅莉栖「やだやだぁ!! 一人にしないで、岡部ぇ!!」 ポロポロ…
岡部(ククク…俺を怪談でビビらせた罰だ!)
岡部「む? 前から人が来るな。」
紅莉栖「ええ!?」
通行人A「でさー…・」
通行人B「まじwww」
紅莉栖「ほ、本当に来てる!! どうしよう!? どうしよう!?」 アタフタ!
岡部「ほら、俺の白衣の中に入れ。」 ファサ… ※(着ている白衣を広げる。)
紅莉栖「は、白衣の!?////」
岡部「早く!」
通行人A「─────。」 スタスタ
通行人B「~~~~~wwww」 スタスタ
岡部「……」 ※(紅莉栖を白衣で包むように抱きしめてる)
紅莉栖(お、岡部が私を守ってくれてる…////)
岡部「あいつらは行ったぞ、クリスティーニャ。」 ファサ…
紅莉栖「う、うん…////」 ギュウ・・・
岡部「そんなにしがみ付かなくても、もう大丈夫だ…怖かったか?」
紅莉栖「うん…でも、岡部がいてくれたから平気…////」
岡部「そ、そうか…(な、何だその俺を頼りきった瞳は? ドキドキしてしまうではないか!////)」
紅莉栖「岡部ってさ…イジワルだけど…優しいよね…」
岡部「な!? は、ハーーハッハ! どどどど、どうしたのだ、我が使い魔よ!?
こここ、この鳳凰院凶真が優しいなどと…」
紅莉栖「そうやって…あなたが、私を優しくイジメるから…
私はどんどんあなたから離れられなくなっちゃうんだよ…」
岡部「ク、クリスティーニャ…」 ドキドキ
紅莉栖「岡部…」
ブォン! ズダーーーーーン!!
岡部「………?」
紅莉栖「……・??」
岡部「ク、クリスティーニャ…今、俺達の顔の間を何かがかすめなかったか…?」 チラ…
紅莉栖「そ、そうね…何か…刃物のようなものが…」 チラ…
ビーーーーン! ※(近くの木に深々と突き刺さるナイフ)
岡・栗 「「 ひいいいいーーーー!? 」」
???「あーん、外したー! この時代の生活で腕が堕落しちゃったかな?」
岡部「バ…バイト戦士ーーーー!!??」
鈴羽「やっほー、岡部倫太郎ー♪」
鈴羽「おやおや? 発情した雌猫かと思ったら…?」
紅莉栖「あ…あ…・」 カタカタ
鈴羽「随分と愛らしい格好をしてるね、牧瀬紅莉栖wwwww」 プークスクス!
紅莉栖「にゃあああああーーーーーー!! 見るなーーーー!!!/////」
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【数十分後、未来ガジェット研究所】
鈴羽「ふ~~~ん、一週間も前からこんな事をね~~…・」 ジロリ
岡部(くっ…視線が痛い!)
鈴羽「私は店長に、今夜ラボを見張ってるよう指令を受けてたんだ。
岡部倫太郎が猫を無断で飼っていないか調査するためにね。」
岡部「う…それではまさか…」
鈴羽「君が、あの格好の牧瀬紅莉栖を連れて、外に出てきた時は驚いたなあ。
放心して、声をかけるタイミングを逃しちゃったよ。」
岡部「ううう…・!////」
鈴羽「それでしかたなく尾行したら、君達がやたらベタベタしてるんだもん!
イライラして、思わずナイフ投げちゃった♪」
岡部「『壁殴っちまった』みたいなノリで言うな!」
鈴羽「まあまあ、ちゃんと外したんだしいいじゃん。 ねー牧瀬紅莉栖~?」
紅莉栖「ま、牧瀬紅莉栖って誰ニャ~? クリスティーニャは猫だから分からないニャ~?」 コソコソ
鈴羽「ねえ、彼女さっきから君の後ろに隠れて、何を言ってるの?」
岡部「これ以上、お前に顔を見られたくないのだろう…
意地でも、『クリスティーニャ≠牧瀬紅莉栖』を貫く気だ…」
鈴羽「ふ~~ん…・」
紅莉栖「に…ニャ~ン…・」 ダラダラ(滝汗)
鈴羽「牧瀬紅莉栖のペチャパイ。」 ボソ
紅莉栖「貴様ぁぁーーーー!! 人の身体的欠点をつく悪口は最も悪質な…」
鈴羽「やっほー牧瀬紅莉栖♪」 ニコニコ
紅莉栖「~~~~~っっっ!!??/////」 カアァ~!
岡部「あ~…それでバイト戦士よ。 このことはMrブラウンには…というか
誰にも言わないで欲しいのだが…・」
鈴羽「え~~? せっかく牧瀬紅莉栖をおちょくるネタができたのに…」
紅莉栖「貴様の脳味噌、解剖したろか!?」
岡部「俺達は、動物を飼っていたのではないのだから、Mrブラウンとの契約は違反しないはずだ!
も、もしもこのことをバラしたら、我が魔眼がお前を記憶を強制的に…・」
鈴羽「はいはい、冗談だよ。 店長には上手く誤魔化しとくし、誰にも言わない。
牧瀬紅莉栖のせいで、岡部倫太郎まで笑い者になるのは耐えられないもん。」
紅莉栖「だ、だから私は牧瀬紅莉栖じゃないと言っとろーが!!」
岡部「そうか…恩に着るぞ、鈴羽。」
鈴羽「さて…それじゃあ、私は帰るよ。」
岡部「フハハー! ではこの鳳凰院凶真、自らが送っていってやろう!
クリスティーニャも来るか?」
紅莉栖「留守番してるニャ!!」 プイ!
【深夜の通り】
鈴羽「くふふふ…・!」
岡部「むう…まだ笑ってるのか?」
鈴羽「ごめん、あんな牧瀬紅莉栖の姿を見るとは思わなかったからw
君も彼女に付き合わされて大変だねー。」
岡部「ファーーッハッハッハ! 俺にとってこの世界の森羅万象全てが児戯!
助手風情の遊びに付き合うなぞ造作もないこと!」
鈴羽「おお! さすが岡部倫太郎!」
岡部「ヌアーハッハッハ!! もっと褒め称えるがいい!」
鈴羽「…・ねえ、岡部倫太郎?」
岡部「ん?」
鈴羽「君はさ…ああいう格好をした女の子が好きなの…?」
岡部「ぶほぉ!? 馬鹿を言うな! ダルじゃあるまいし!」
鈴羽「じゃあ…ああいう格好をした牧瀬紅莉栖が好きなの…?」
岡部「んげほぉ!!??////」
岡部「違う!! お、俺はラボの長としてラボメンのクリスティーナの相手をしてやってるだけだ!
そうだバイト戦士よ! お前も俺に頼みたい事があれば何でも言ってみろ!
この鳳凰院凶真がたちどころに叶えてやろう!!」
鈴羽「へえ…それって、君は私を牧瀬紅莉栖と同じくらい大切に思ってるってこと?」
岡部「そうだ!! 俺の前では、クリスティーナもバイト戦士も等しく小者!
俺こそが唯一絶対の存在だのだーーーー!!」
鈴羽「…嘘つき…」 ボソ
岡部「ん? 何か言ったか?」
鈴羽「ん~? 何でもないよ♪」
鈴羽「もうここまででいいよ。 見送ってくれてありがと!」
岡部「む? 一人で大丈夫か?」
鈴羽「大丈夫! 何せ私は戦士だからね!
早く帰ってあげないと、クリスティーニャが癇癪起こすよw」
岡部「う…そうだな…では、気をつけて帰れ」
鈴羽「そうそう、頼みごとは何か考えておくから。」
岡部「金貸せ系のお願いはなしだぞーーー!!」
鈴羽「あははーー! じゃあねーー!」 シャアーー
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【翌日、昼間の未来ガジェット研究所】
チリンチリーン
岡部「む、この鈴の音は助手だな。」
ガチャ
紅莉栖「ハロー」
まゆり「あ、紅莉栖ちゃんトゥットゥルー☆」
ダル「ねえ、牧瀬氏、最近ラボに来るのが遅いけど、何かあるん?」
まゆり「目にもクマができてるね~、まゆしぃは心配なのです…」
紅莉栖「ええと…向こうの研究とかレポートとか、いろいろとね。」
岡部(夜遅くまでクリスティーニャになってるからだろ…)
鈴羽「やっほー皆ー! お邪魔するよー!」
紅莉栖「!!」
岡部「!!」
まゆり「スズさん! トゥットゥルー☆」
ダル「阿万音氏、どうしたん?」
鈴羽「ちょっとね~♪」
岡部(おい、まさかバラしたりしないよな!? 違うよな、鈴羽!?) ダクダク(滝汗)
紅莉栖(言ったら殺す!言ったら殺す!言ったら殺す!言ったら殺す!) ギン!(眼光)
鈴羽「うふふ…実は橋田至にちょっとお願いがね。」
ダル「え? 僕に? 何?」
鈴羽「ここじゃちょっと…外で、二人きりで話したいな。」
ダル「マジ!? 何この話の流れ!? ひょっとしてフラグ立ってる!?」
まゆり「それはないと思うのです♪」
ダル「ですよねー。」
鈴羽「という訳で、ちょっと橋田至を借りるよ。」
ダル「僕はまだいいと言ってないのに!? 阿万音氏、恐ろしい子!」
岡部「バ、バイト戦士! くれぐれも昨夜の事は…!」 ボソボソ
鈴羽「大丈夫だよ、言わないって約束したでしょ?」 ボソボソ
ダル「二人で顔を近づけてボソボソと…これはリア充の香り!?」
岡部「うるさい! さっさと行って来い!」
紅莉栖(もしバレたら橋田もろとも…) ブツブツ
まゆり(紅莉栖ちゃんから強い殺気を感じるのです! 筋肉がうずいちゃうなー♪)
【ブラウン管工房の店先】
鈴羽「実は君に相談したい事があるんだ。」
ダル「なん…だと…? 美少女からの相談事キターーー!!
これ完全に阿万音氏ルートに入ったよね!?」
鈴羽「えっと、何を言ってるかよく分からないけど…相談ごとってのはさ…」
鈴羽「私に…その…ゴニョゴニョ…なお店を案内して欲しいんだよね…////」
ダル「な…・なんだってーー!!」
ダル「何で阿万音氏がそんなお店を!?」
鈴羽「え~とその~…まあ、いろいろあって…///」
ダル「そうは言っても、僕も忙しいからな~(積んだエロゲの処理とか)」
鈴羽「そんな事、言わずにさ! お店だけ教えられても、私じゃ何を買えばいいか分かんないんだ…
ね? お願いだよ、橋田至~…・私を助けると思って!」 ウワメヅカイ
ダル「はうう!!??」 ズキューーン☆
ダル(何だお、この感じ!? 『萌え』とも違う…『恋』とも違う…この暖かい感情は!?
阿万音氏におねだりされたら、何でも言う事聞いてあげたくなったちゃうぅぅーー!) ビクン!ビクン!
鈴羽「どうしたの、橋田至?」
ダル「何でもないお! よーし! 僕、なんでも買ってあげちゃうおーー!」
鈴羽「本当! わーい、ありがとう橋田至ー♪」
ダル「フヒヒヒヒヒwwww」
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【その日の深夜、未来ガジェット研究所】
岡部「今日は結局、ダルとバイト戦士の奴、帰ってこなかったな。」
紅莉栖「むー…岡部は阿万音さんの事がそんなに気になるのかニャ?」 ニャ~ン♪
岡部「当然だろう。 奴は大事なラボメンの一人だからな。」
紅莉栖「はむ!」 ガブ!
岡部「痛てて!! 指を噛むな!」
紅莉栖「今夜はね…岡部の体中に私の歯形をつけてあげる…
その傷が疼くたびに私の事を思い出すようにしてあげる…」 ペロ…
岡部「や、やめろ! クリスティーニャ!」
紅莉栖「大丈夫…服の下に隠れるようにつけるから…はむ!」 ガリ!
岡部「ふあぁ!////」
紅莉栖「あれ~? 今、気持ちよさそうな声が出たね? ひょっとして岡部、噛まれて感じちゃってる?」 クスクス…
岡部「ち…違う…俺は…////」
紅莉栖「ふふふ…感じさせてあげるよ…岡部…
あの女の事なんか、脳内から消し去ってあげる…!」
???「ちょっと待ったーーーー!!」
.
バーーーーーーーン
???「やっほーーーー!!」
岡部「え?」
紅莉栖「ふぇ?」
???「岡部倫太郎! こんばんわーーーん!!」
岡部「なななな!?」
紅莉栖「あ…あ…阿万音さん!?」
鈴羽「わんわんわーーーん♪」 ピコピコ! フリフリ!
紅莉栖「ああああ、阿万音さん!?」
岡部「バイト戦士!? なんだ、その格好は!?」
鈴羽「えへへー、似合う? メイドさんだよー! 橋田至と専門のお店で買ったんだ!
何とかってアニメのキャラのコスなんだって。
鈴羽「スカート短いし、胸の谷間も見えちゃってて恥ずかしいけど…////」
紅莉栖「何であなたが猫耳メイドに!?」
鈴羽「チッ!チッ!チ! よく見てよ、この耳と尻尾を!」
岡部「む…クリスティーニャの物より、毛がフサフサしてる。
それにこのクルンと短く、丸まった尻尾はまさか…」
鈴羽「そう、これは犬耳、犬尻尾!! 私は迷子の野良犬、鈴ワンだワン♪」
紅莉栖「な、何よそれ! 人間なのに犬とか馬鹿なの!? 死ぬの!?」
鈴羽「君がそれを言うの、牧瀬紅莉栖? いや、今はクリスティーニャか。」
岡部「バイト戦士! 一体何のつもりだ!?」
鈴羽「違う、違う、鈴ワンだってば!」
岡部「もう、何が何だか分からない…」
鈴羽「あはは! 簡単な事だよ!」
鈴羽「岡部倫太郎は、私の願いを何でも聞いてくれるんだよね?」
岡部「あ、ああ…金を貸して系以外ならな。」
鈴羽「ならお願いなんだけど…私を…その…」
鈴羽「岡部倫太郎の犬にしてください!!」
岡部「」
紅莉栖「んな…・!?」
鈴羽「だ、駄目かな?////」
紅莉栖「駄目!ダメ!だめ! ぜーーったいだめーーー!! そんなの許さないんだからーー!」
鈴羽「クリスティーニャには聞いてないよ。 これは岡部倫太郎が決めることだよ。」
紅莉栖「あり得ないわよね、岡部!? あんたにはもう私がいるんだから!!」
岡部「もしもし…ああ、俺だ…今、機関からの攻撃を受けている!…・
未だかつてないほどの精神攻撃だ…さすがの俺も、今回はダメかもしれん…」
紅莉栖・鈴羽 「「 現実逃避、禁止!! 」」
岡部「あー、えーと…バイト戦士よ!」
鈴羽「鈴ワン!!」 ガルル!
岡部「す…鈴ワンよ…」
鈴羽「わんわん♪」
岡部「き、貴様…何故、俺の犬などになりたいのだ…?」
鈴羽「君に可愛がって欲しいからだよ!」 キリ!
岡部「な、何だそれは!?」
紅莉栖「ダメーー! 岡部に可愛がられるのは私だけなのーー!!」
岡部「ク、クリスティーニャは少し黙ってろ!////」
鈴羽「や、やっぱり…ダメ…?」
岡部「まあ、その…・」
鈴羽「そ、そうだよね! こんな素性の知れない変な犬なんて嫌だよね!
ご…ごめんね…ぐす…変なこと言っちゃって…もう二度と…ひっく…君の前には…」 ポロポロ…
岡部「い!? いやいやいや!! そんな事はないぞ! この鳳凰院凶真が貴様の主となってやろう!!」
鈴羽「あっそう♪ わーい、やったワーン!」 ケロリ
岡部(は、嵌められたああーーーー!!)
紅莉栖「おーーーかーーーべーーーー!!」
岡部「ク、クリスティーニャ!? す、すまん! だが今のはしょうがないだろう!?」
紅莉栖「うるさい! うるさい! このHENTAI!! その根性を引っ掻き直してやるーーー!」 グワ!
岡部「ひいぃぃーー!!」
鈴羽「おっと!!」 ガシ!
紅莉栖「ふぇ?」 グルン!
ポーーイ! ドスン!
紅莉栖「ふみゃーーー!?」
鈴羽「ごめんね~、ご主人様をお守りするのが犬の役目だから♪
岡部「クリスティーーニャーー!?」
岡部「す、鈴ワン!? 今、クリスティーニャが宙を舞ったぞ!?」
鈴羽「大丈夫。 ちゃんと怪我しないように手加減したし、落ちたのだってソファーの上だろ?」
紅莉栖「うううう…・許さーーーーーん!」 キシャーー!
岡部「よ、よせ! お前が太刀打ちできる相手じゃない!」
鈴羽「そーそー、猫が犬に勝てるかっていうの。」
紅莉栖「ぬぐぐぐ…!!」
岡部「ええい、お前ら喧嘩はやめろ!」
鈴羽「ねえ、岡部倫太郎。 そんな乱暴な猫はほっといて私と遊ぼうよ!」 ギュウ! ムニムニ
岡部「うひゃあ!? こら、鈴ワン! む、胸が当たってるぞ!?////」
鈴羽「やだなぁ、当ててるんだよ。」 ムニュムニュ
岡部「ぬおおお~~!?////」
紅莉栖「岡部から離れろ、この発情犬! ほら、岡部! おっぱいなら私のがあるからこっちに来なさい!」 グリグリ
岡部「クリスティーニャ、肋骨を擦り付けるな。 痛いぞ。」
紅莉栖「キシャーー!」 ガリガリ!
岡部「ぎゃーーーー! 顔を引っ掻くな!」
鈴羽「大変! 顔に引っ掻き傷が! じっとしてて!」 グイ!
岡部「な、何をする、すz…・」
鈴羽「ん…」
ペロン…
岡部「ひやあ!?」
鈴羽「ん…ぴちゃ…ちゅう…・」
ペロ ペロ ペロ ペロ ペロ
岡部「うは…ひあぁ!? す、鈴ワン…!?」
鈴羽「ちゅぱ…どう? まだ痛む?」
岡部「お、お前、今、俺の顔を…!?」
鈴羽「だって…傷が痛そうだったか…い、いやだった…?」
岡部「いや…おかげで痛みは消えたが、俺の顔など舐めては汚いだろ?」
鈴羽「そんな事ないよ! ご主人様の顔を舐めさせてもらうのは犬にとって最高のご褒美だよ!
き、君が許してくれるなら、もっとペロペロしたいな…////」
岡部「鈴ワン…////」
紅莉栖「ぐぬぬ…」
鈴羽「ふふ…怖い猫さんが睨んでるから、この辺にしとこっか?
よーし! それじゃあ、さらに私の忠犬っぷりを見せちゃおうかな!
岡部倫太郎、何か私に命令してみて!」
岡部「命令?」
鈴羽「何でもいいよー 私は、我侭な猫とは違って、ご主人様に服従するワンちゃんだからねー。」
岡部「ふ、服従…////!?」
紅莉栖「岡部のHENTAI!!]
岡部「へ、変な想像をするな、ヴァージンキャット!
鈴羽「ほら、はやくー♪」
岡部「え、えーと…『お手?』」
鈴羽「わん♪」 ポフ!
岡部「…・いや、本当にするなよ!」
鈴羽「君が命令したんじゃないか。」
岡部「じゃあ…・『おまわり』?」
鈴羽「わんわん♪」 クルクル!
岡部「ぬお!? ストップ!! スカートが広がってパンツが…////」
鈴羽「『チンチン』もしようか?」 くぱぁ…(チンチンのポーズ)
岡部「ぶほぉ!?(鼻血) 女の子がそんな下品なポーズをするな!」
紅莉栖「ぐす…岡部ぇ…私もパンツあるよ…だから私を見てよぉ…」 ピラ!
岡部「おぶほぉ!?(鼻血) 涙目でスカートをたくし上げるな、クリスティーニャ!」
鈴羽「ね?ね? 私、ちゃんと言う事聞くでしょ?」
岡部「聞きすぎるくらいだ!」
鈴羽「えへへー♪ 私、偉いかな?」
岡部「ああ、偉い偉い…・」
鈴羽「 ジー…・ 」 キラキラ!
岡部「ん?(何か期待に満ちた目で俺を見ている?)」
鈴羽「 ジーーーーー…・ 」 ワクワク!
岡部「どうした、鈴ワン?」
鈴羽「あのさ! 言う事を聞いた、賢いワンちゃんにしてあげることがあるでしょ?」
岡部「え? えーと…ドクペでも飲むか?」
鈴羽「ちがーーーう!! 『なでなで』だよ!!」
岡部「『なでなで』だとぉ!?」
鈴羽「ご主人様は、ワンちゃんに『えらいぞー』『いい子いい子ー』ってをなでなでしなきゃいけないの!
紅莉栖「だめ! 岡部になでなでされていいのは私だけなの!!」
鈴羽「だらかそれを決めるのはご主人様だって。 ほら、やってやってやって~~!」 ジタバタ
岡部「くっ・・分かった! や、やるから騒ぐな!」
紅莉栖「そんな…!!」
岡部「え、偉いぞ鈴ワン~…いい子いい子~…」
なでなでなで…・
鈴羽「わふ…・♪////」 パタパタ!
岡部「鈴ワンの髪の毛は、ポヤポヤして気持ちいいな…触っていると心が安らぐ…」
鈴羽「わーい、岡部倫太郎に褒められたー♪」 ブンブン!
岡部「お前の犬耳と尻尾も本物みたいに動くんだな…」
鈴羽「私の感情どおりに動くよう、橋田至が作ってくれたの! 『やっぱ獣耳は動いてこそっしょ!』って!」
岡部「尻尾を振るってことは嬉しいのか、鈴ワン?」
鈴羽「うん、ご主人様に褒められる事は、犬のしふくだからね!」
岡部(私服?…ああ、至福か。)
鈴羽「ねえ、もっとなでてもらってもいいかな…?////」
ミレニアム・ハンド
岡部「ふ…よかろう。 我が『至福千年の手』をとくと味わえい!」
鈴羽「わー! ありがとう! それじゃあ…・」
ゴロン!
鈴羽「今度は私の体を撫でてくれるかな…?」
岡部「ぶーーーー!?」
紅莉栖「…・・」 プルプル…
岡部「鈴ワン!? ど、どうして急に仰向けに!?」
鈴羽「だから~、今度は私の体を君に撫でて欲しいんだよ~」
岡部「ななななな!?」
鈴羽「頭だけじゃ物足りないよぉ…私の全てでご主人様を感じたいの…////」
岡部「いやいやいやいや!」
鈴羽「自分で言うのも何だけど…結構、さわり心地がいいと思うよ? 私の体。////」
岡部「ぬおおおーーーーー!?」
岡部(た、確かにクリスティーニャより、全体的に肉付きが良くて女らしい肉体…って俺は何を考えている!)
鈴羽「ほらほら、遠慮することないって! 私は君の犬なんだよ、君のものなんだよ?
つまりこのおっぱいやお尻も君が好きに触っていいんだよ~♪」 タユン!
岡部「や、やめんか! この発情犬!」
鈴羽「あれ~? 岡部倫太郎って意外と臆病なんだね?」
岡部「な、何だと!?」
鈴羽「だってそうじゃん。 自分の飼い犬の体に触れるのもビビるなんて。
狂気のマッドサイエンティストが呆れちゃうなー。」
岡部「べ、別にビビってなどおらん!」
鈴羽「強がらなくていいよ、震えてるクセに。」 クス
岡部「な…なめるなよ、犬風情がーーー!! この鳳凰院凶真の実力、見せてくれるわーー!」
グワッ!!
モニュン♪
鈴羽「きゃうん!?////」
岡部「あ…・!?」
岡部「あ…あ…」
鈴羽「ん…////」
モニュモニュモニュ…
鈴羽「はう! い、いきなり…そんな強く…・だめぇ…!////」
岡部(思わず胸をわし掴みにしてしまったぁぁぁ----!!) ギュウウ!
鈴羽「ふあぁぁ!?////」 ビクン!ビクン!
岡部「しまった!? 驚いてさらに強く握ってしまった!」
紅莉栖「」
鈴羽「お…岡部倫太郎…・////」 トロン…
岡部「す、すまん、鈴ワン…その…」
鈴羽「あ、謝らないで…私は全然、嫌じゃないよ…////」
岡部「す、鈴ワン…////」
紅莉栖「もういや!!!」
岡部「!?」
岡部「ど、どうした? クリスt」
紅莉栖「何よ! 何よ! 岡部ったら鈴ワンばっかり構って!!
そんな後から来た奴より、私を可愛がりなさいよ!!」
岡部「お、落ち着け、クリスティーニャ!」
鈴羽「ペットのジェラシーかい? みっともないよ。」
紅莉栖「何ですって!?」
鈴羽「君が岡部倫太郎に遊んでもらえないのは、魅力がないからでしょ?」
紅莉栖「うう…うううう…・!!!」
岡部「ク、クリs」
紅莉栖「岡部の馬鹿ぁ!! 大っ嫌い!!」 ダッ! バーン!
岡部「ま、待て、クリスティーニャ…紅莉栖ぅぅぅぅーーーーーーー!!!!」
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- - - - -
【深夜、秋葉原の通り】
紅莉栖「ぐす…おかべのばかぁ…ひぐ…!」 トボトボ…
「ううう…・わたしより、すずわんのほうが…いいんだぁ…!」
「おかべ…おかべぇ…・」 グスグス…
???「あっれーwwwwちょっwww何アレwwww?」
紅莉栖「ふぇ…?」
DQN1「彼女wwwwその格好なにwwww?」
DQN2「すっげwwwwさすがアキバwwww夜中でもモエ~かよwwww!」
紅莉栖「あ! いえ、これは…その…!////」
(しまったぁ!! 勢いで飛び出しちゃって、周囲を気にしてなかった!)
DQN1「つかwwww彼女エロすぎじゃねwwwwスカート短すぎwwwwパンツちらちら見えてるしwwww」
DQN2「これ誘ってるっしょwwwww誘ってるっしょwwwww」
紅莉栖「ち、違います!」
やめてください
DQN1「これ首輪?wwwwwひょっとしてSMプレイ?wwwww」 ヒョイ
紅莉栖「!! 駄目! これに触らないで!」 バシ!
DQN1「痛ってwwwwこいつ俺の手叩きやがったwwwwカッチーーーン☆ときたわwwww」
DQN2「どうする?wwwww犯っちゃう?wwwww犯っちゃう?wwwww」
紅莉栖(こ、こいつら、なんかヤバイ! 逃げないと!)
DQN3「おっと逃がさねーよ…」 ガシ!
紅莉栖「きゃあ!」
DQN1「あっwwwwDQN3先輩wwwwチョリーーッスwwww」
紅莉栖「何するの!? 放して!」
DQN3「今日はきめぇオタクを狩りに来てたんだが、いい獲物がいなくてイラついてたんだよ…
クックック…もう帰ろうと思ってたトコに、こんな上玉が飛び込んでくるとはなあ…」
DQN1「先輩wwww犯っちゃいます?wwww犯っちゃいます?wwww」
DQN2「犯りましょうよwwww俺、さっきからチ○コ勃っちゃてるもんwwwww」
紅莉栖「い、いやぁ! 誰か助け…」
DQN3「騒ぐんじゃねえ! おい、口に布詰めろ!」
DQN1「チョリーーッスwwww」
紅莉栖「む…むぐぅ…!!」 ジタバタ!
DQN2「よっしゃwwwwそこの路地裏に連れ込もうぜwwww」
DQN3「おう、最初は俺が挿れっからな!」 カチャカチャ…ポロン!
DQN1「(先輩、チ○コちっちぇwwww) 俺2番目でお願いしマースwwww」
紅莉栖「んんーーー!!(やだ! やだぁ!! 助けて! 助けて岡部ぇ!!)」
???「わん、わん、わわーん♪ 迷子の子猫ちゃんはここですかー?」
紅莉栖「むぐ!?」
DQN3「だ、誰だ!?」
鈴羽「やっほークリスティーニャ。」
紅莉栖「むーー!」
DQN3「ああん? なんだコイツは!?」
DQN1「ちょwwwww増えたwwwww」
DQN2「犬耳とかwwwwwつかオッパイでけぇwwww」
1cmって すげー!
鈴羽「あー、君達、君達? 悪いけどその娘を返してくれるかな?
私は別にどうでもいいんだけど、私のご主人様が悲しむんだよ。」
DQN1「ごwwww主wwww人wwww様wwwwとwwwwかwwww」
DQN2「オッパイでけぇwwwwオッパイでけぇwwww」
DQN3「この女のお友達かぁ!? ちょうどいい、3人に1人じゃ物足りなねえ!
おい、あの犬女もこっちに連れて来い!」
紅莉栖「んーー!(ダメ! 逃げて!)」
鈴羽「…あのさ、私は今、最高に機嫌が悪いんだよね…早く消えないと噛み殺すよ…?」
ぶっちゃけ、作り手の悪意を感じるほどにw
DQN1「機嫌悪いのwwwwwアノ日?wwww大丈夫、俺らがハッピーにしてあげるwwww」
DQN2「オッパイでけえwwwwオッパイでけぇwwwww揉ませろwwwww」 ズイ!(手を伸ばす)
鈴羽「はあ…・・」
ゴキン!
DQN2「ギャあああああーーーーーー!!!!!」
DQN1「え?」
鈴羽「大げさだなあ…腕の骨、へし折ったくらいで…」
DQN1「てめえええーーーーよくも俺のマブダチをおおおーーー!!」
鈴羽「うざい…」 ブン!
ボクシャ!!
DQN1「ごべぇ!?」
鈴羽「あ、ごめん。 アゴ砕いちゃった。」
紅莉栖「むむ!(す、すごい!)」
DQN3「ひいいいーー! お前ナニモンだよ!?」
鈴羽「私? 私は忠犬、鈴ワンだわん♪」
DQN3「ふ…ふざけやがって! ぶっ殺してやんよ!」 ジャキーン!
紅莉栖「ふぐ!?(ナイフ!?)」
鈴羽「やめなよ、刃物なんて出されたら手加減できないよ?」
DQN3「オラーーーー!!」 ヒュ!
鈴羽「よっと。」
ズドン! グシャア!
DQN3「あ…・」
鈴羽「男って大変だねー、こんな柔らかくて脆い急所がぶら下がってて♪」
紅莉栖「はひゅ…!?(き…金…蹴り…!?////)」
DQN3「アッーーーーーーーーーーー!!!!!」
鈴羽「はい、おっわりー。 立てる、クリスティーニャ?」
紅莉栖「ん…ぺっ! ごほごほ! うん…ねえ、アレって…?」
DQN3「」 ビクン! ビクン!
鈴羽「うん、蹴り潰しちゃった♪ まあ、死にはしないでしょ。」
紅莉栖「同情したくないけど、同情しちゃうわ…」
鈴羽「ところで~助けてもらったお礼はないのかな?」
紅莉栖「…・ありがとう、おかげで助かったわ。」
鈴羽「どういたしまして。 あんまり感情が篭ってない気がするけど、気にしないであげるよ~」
紅莉栖「……それじゃあ。」 スタスタ
鈴羽「ちょっと、どこに行くの? そっちはラボとは反対方向だよ?」
紅莉栖「あなたには関係ないでしょ!」
鈴羽「君の行き先なんて興味ないけど、岡部倫太郎が君を探してるんだよね。」
紅莉栖「だったら、あなたが行って慰めてあげればいいでしょ!!」
鈴羽「…・聞こえなかった? 彼は君を探してるの。」
紅莉栖「関係ない! あいつは私より、あんたがお気に入りなんだから!」
鈴羽「それ…本気で言ってるの…?」
紅莉栖「そうよ! だからもう私に関わらないで! これ以上、私を惨めにしないでよ!!」
パチンッ!
紅莉栖「痛ぅっ!?」
鈴羽「……」
紅莉栖「何すんのよ!?」
鈴羽「勝手な事…言うなよ…」
紅莉栖「え…?」
鈴羽「彼の気持ちも知らないで勝手な事を言うな!!」
紅莉栖「ッ!?」 ビクッ!
鈴羽「岡部倫太郎の奴さ…君が出て行った時、すぐに後を追って飛び出したんだよ…
でも慌てていたから、階段でつまづいて転がり落ちて…それで足を挫いて…」
紅莉栖「えっ!?」
鈴羽「でも彼、足が痛むのも構わずに、君の後を追いかけてさ…
私が『動いちゃダメ!』『手当てしなきゃ!』って言っても聞かないで…
君を見失った後も…必死に君の名前を呼んで、足を引き釣りながら走り回って…」
紅莉栖「そんな…」
ヘタリンじゃなかったんだ…
鈴羽「彼ね…私の肩を掴んで、必死に頼むんだよ…
『紅莉栖を探してくれ! 俺はあいつに謝らなければ…!』ってね…」
鈴羽「悔しかったなぁ…・なんで君なんかが、彼にこんなに愛されてるんだろうって…!
分かる?…『ただのラボメン』の私とは訳が違うんだよ…?」 ギリ…!
鈴羽「当然だよね…私は君みたいに綺麗じゃない…女の子らしくないもん…
オシャレなんか何も知らない…私が知ってるのは、人の殴り方…銃の撃ち方…ナイフの使い方…
どうやれば好きな人が私を見てくれるかなんて…全然分かんない!!」
鈴羽「分かんないから…彼に一番好かれてる…君の真似をするしかないじゃないか!!」
紅莉栖「阿万音さん…」
鈴羽「やめて! 何も言わないで! 今は全部言わせて!」
紅莉栖「…・・」
鈴羽「それで…その結果がこれだよ…私が来たせいで彼に怪我をさせて…
君を危険にさらして…私、最低だよ…惨めなのは私の方だよ…」
鈴羽「ぐす…はあ~…悪かったね、迷惑をかけちゃって…
岡部倫太郎はこの先の道にいるはずだよ。 ほれ、行ってあげな。」
紅莉栖「阿万音さん…あなたは…?」
鈴羽「さっき君も言ってたよね…これ以上、私を惨めにしないで…」
紅莉栖「う…」
鈴羽「ほれほれ、早くしな。 さもないとお尻に噛み付いてでも行かせるよ?」 (「・ω・)「ガオー
紅莉栖「ごめんなさい…」 ダッ!
鈴羽「ふふふ…私って馬鹿だね…父さん…」
【人通りのない道】
岡部「紅莉栖ーー! どこだ、紅莉栖!
くそ…せめて両足が動けば…どこに行ったんだ、紅莉栖…」 ズルズル
チリンチリーーン…
岡部「この鈴の音は!?」
紅莉栖「岡部!」 タッタッタ!
岡部「紅莉栖!? 紅莉栖ーーー!!」
ガシっ!!
岡部「よかった…紅莉栖…!」 ギュウ…!
紅莉栖「ごめんね…岡部…ごめんね…私のせいで、こんなにボロボロになって…」 ギュウウ…
岡部「すまなかった、紅莉栖…お前を悲しませて…俺はご主人様失格だ…」
紅莉栖「ううん…私が岡部を信じなかったのが悪いの…」
岡部「俺を許してくれるのか…?」
紅莉栖「許すなんて…私こそ、これからも岡部の猫でいていいの…?」
岡部「もちろんだ。 紅莉栖は俺の猫だ…俺だけの使い魔だ…だからどこにも行くな…」
紅莉栖「うん! 私も岡部のそばを二度と離れない!!」
???「…・・」
岡部(はっ!…あそこの影から見ているのは…!?)
???「……」 スゥ…
岡部「待て!! 鈴羽!」
鈴羽「!?」 ビクゥ!
岡部「どこに行く気だ、鈴羽! まさかこのまま、いなくなるつもりじゃないだろうな!?」
鈴羽「……」
岡部「お前、紅莉栖を探してる時ずっと申し訳なさそうにしてたからな…
ほら、そんな所にいないで、こっちにおいで。」
鈴羽「駄目だよ…私はそこに行く資格なんてない…私は君に必要ないもん…」
岡部「バカヤロウーーー!!」
鈴羽「わふ!?」 ビク!
岡部「資格がどうとか…必要がどうとか…そんなのは飼い主の俺が決めることだ!
お前は言った筈だぞ! 犬はご主人様の命令に服従すると!
俺はお前がいなくなるなど認めない!! お前も俺のそばにいろ!」
鈴羽「でも…でも…私…」
紅莉栖「鈴ワン! 岡部の命令よ! 早くこっちに来なさい!」
鈴羽「牧瀬紅莉栖…?」
紅莉栖「私達は岡部のペットよ。 ペットの役目は…ご主人様の望みを叶えることでしょ?」
鈴羽「~~~~っっ!! うん!!」 ダッ!
鈴羽「岡部倫太郎!!」 ギュウ!
岡部「鈴羽…」 ギュウ…
鈴羽「私、岡部倫太郎の一番になれなくてもいい…
二番目でも三番目でもいい…だから君のそばにいさせて…!」
紅莉栖「岡部! ご主人様として、ちゃんと私達を愛しなさいよね!」
岡部「ファーーハッハッハ! 誰に物を言っている!? 俺は狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真!
使い魔達の世話は責任を持ってやり抜こうではないか!!」
岡部「さあ、紅莉栖! 鈴羽!」
紅莉栖・鈴羽 「「 違う!! 」」
紅莉栖「私はクリスティーニャで!」
鈴羽「私は鈴ワンだわん♪」
岡部「そうだったな。 クリスティーニャ、鈴ワン! 帰ろう…俺達のラボへ!!」
- - -- ── ────────────────── ── -- - -
- - -- ── ──────────── ── -- - -
- - -- ─ ── ─ -- - -
- - - - -
【数日後の昼、未来ガジェット研究所】
ドン! ドン! ドン!
岡部「む!? 誰だ、ラボのドアを乱暴にノックしおって!?」
まゆり「はーい、どちらさまー?」 ガチャ
ブラウン「おーーかーーべーー!!」
岡部「ひぃ!? Mrブラウン!?」
ブラウン「おう、岡部…ちょいと家捜しさせてもらうぜ!」
岡部「や、家捜し?」
ダル「おい! この展開、前に見たことあるぞ!」
紅莉栖「今度は何事なの、店長さん?」
ブラウン「どうしたもこうしたもねえ! またご近所から苦情が来たんだよ!
最近、夜中になると猫に加え、犬の鳴き声までするようになったってな!」
岡・栗「「 んぼほぉ!? 」」 ブシャアア!
まゆり「オカリン!? 紅莉栖ちゃん!?」
ダル「二人してドクペ吹いた!?」
ブラウン「おらぁ吐け!? 猫と犬っころはどこにいる!?」
岡部「ご、誤解だ、Mrブラウン!!」
鈴羽「そーだよ、店長。 何もいないって私が報告したじゃん。」
岡部「あっ! 鈴羽!」
ブラウン「うるせえ! 現に苦情が来てるんだよ! お前がいい加減な報告するからだぞ!」
鈴羽「でもこのラボには動物の毛一本落ちてないよ?
その苦情を言ってきた人が何か勘違いしてるんじゃないの?」
ブラウン「ぬ~~…・ん? バイト、お前その首輪は何だ?」
鈴羽「首輪じゃなくてチョーカーだよ。 私だってオシャレくらいするんだよ。」
ブラウン「牧瀬の奴といい、最近はそういうのが流行ってるのか?
若けー奴らのファッションはさっぱりわからねえ…」
岡部「そ、そーなのですよ、Mrブラウン~…」
紅莉栖「おほほほ…・」
ダル(あれ? 何故だろう…今、オカリンにガチの殺意が湧いたお…)
岡部(くっ…やはり声が漏れていたか…お前らが大声出すからだぞ!) ヒソヒソ…
紅莉栖(な、何言ってるの! あんたが…その…激しくするからじゃない!////) ヒソヒソ…
鈴羽(そうだよ! あの『もふもふの刑』が悪いんだ!
あれをされると理性が飛んで、声を抑えられないんだよ!////) ヒソヒソ…
まゆり「む~、オカリンが何かまゆしぃに隠し事をしてるのです!」 ムキムキ
ブラウン「岡部ぇ…何を隠してやがる…!」 ボキボキ!
ダル「オカリン、ラジ館の屋上に行こうぜ…何故か分からないけど、キレちまったよ…!」 ゴゴゴゴ…
岡部「いや…これは…その…!!」
紅莉栖「ふふふ…岡部…」
鈴羽「岡部倫太郎…」
「「 今夜も私達を可愛がってね♪ 」」
【おわり】
最後までお付き合いいただき本当にありがとうございました。
乙
Entry ⇒ 2012.09.20 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
岡部「なぜ泣いているのだ?」
クリア後の話なのでネタバレ注意です
紅莉栖「し、シュタインズゲート?何ですかそれ」
岡部「…気にする必要はない」
紅莉栖「はぁ…あ、あの、これから時間あります?助けてくれたお礼がしたいのですが…」
岡部「礼はいい」
紅莉栖「でも」
岡部「…いいんだ」
紅莉栖「…」
紅莉栖「…ここで話しても仕方ないですね」
紅莉栖「とりあえずどこか落ち着いて話せる所に行きませんか?聞きたいこともありますし」
岡部「わ、分かった」
紅莉栖「この街にもこんなカフェがあったんですね」
岡部「…」
紅莉栖「さて、色々聞きたいんですけど改めまして」
紅莉栖「本当に、本当にありがとうございました」
岡部「…無事でよかった」
岡部「…本当に」
紅莉栖「…ラジオ会館でも貴方は私を知っているようだった」
紅莉栖「どうして、助けられたんですか?」
紅莉栖「あんな誰も来ないような部屋で、武器まで持って」
岡部「それは…」
岡部「…言えない」
岡部(だが俺は、それでもあんな記憶を紅莉栖に思い出させたく無い)
岡部(俺が紅莉栖を…)
紅莉栖「…そうですか」
岡部「…意外だな、もっと問い詰めてくるものだと思ったが」
紅莉栖「そりゃあ気になりますよ、本当は」
紅莉栖「命の恩人である貴方が言いたくないのなら、無理に聞く訳にもいかないでしょう?」
岡部「済まない、これだけは話す訳にはいかないのでな」
紅莉栖「…どうして」
岡部「ん?」
紅莉栖「どうして泣いているんですか?」
岡部「…え」ポロポロ
紅莉栖「ふふっ、目。真っ赤ですよ、おかしな人」
岡部「なっ、…ふ、フゥーハハハハハ!!貴様、先程までしおらしかったのにとうとう本当の正体を現したな、セレセブめ!」
紅莉栖「セレセブ違う!!」
紅莉栖「…あれっ?」
岡部「!!」
紅莉栖「何だろう、やっぱり何か忘れているような…」
岡部「な、何でもない、忘れろ」
岡部(前の記憶を取り戻しつつあるのは嬉しい)
岡部(だが、やはりあんな辛い記憶は思い出させたく無い…)
岡部(紅莉栖は無事で、目の前にいる)
岡部(それで十分ではないか…)
ダル「オカリンもすっかり厨二病抜けちゃったなー、違和感すげぇお」
岡部「もうそんな歳でもないからな」
紅莉栖「厨二病ってあのフゥーハハハって叫びながら痛いキャラ演じる奴?」
まゆり「えっへへー、オカリンはオカリンだけどねぇ、実はマッド
岡部「まゆり、言わなくていい。あと紅莉栖も痛いとか言うな!」
岡部「それに…もうまゆりも、人質卒業だしな」
まゆり「んー?」
岡部(…それもあるが)
岡部(厨二を演じる事で思い出されても困るからな)
岡部(ラボに行きたがる紅莉栖に冷や冷やしたが、記憶は戻っていないようで安心した)
岡部「こんな所に呼び出してどうした?紅莉栖」
紅莉栖「あ、あのね、その…」
紅莉栖「あ、あんたとの付き合いも長いでしょ?だから、えっと、えーっと、んんー…」モジモジ
岡部「おーい、なんだその変な踊りは」
紅莉栖「ちゃかすな岡部のバカッ!」
岡部「き、今日は暑いから早くして欲しいのだが」
紅莉栖「ああもうムードのない男ねっ!!…あ、あんたが」
紅莉栖「あんたが好きなのよ!!もうどうしようもなくっ!」
岡部「!!!」
紅莉栖「だ、黙ってないでなんとか言いなさいよっ!」
岡部「…」
岡部(俺に幸せになる資格が…あるのか?)
岡部(見殺しにし、自分の手で殺しておいて)
岡部(俺に…)
岡部(だが…)
岡部「…紅莉栖」
紅莉栖「はっ、はひっ!!」
岡部「お前から言わせて済まなかったな」
岡部「紅莉栖、好きだ」
紅莉栖「っ、!!」
岡部(今目の前にいる紅莉栖を悲しませたくは…ない)
紅莉栖「…ぉ、ぉかべ」
紅莉栖「ちゅ、ちゅうとか、して、しても、いいんだからな?」
紅莉栖「ぁぁもう何言っちゃってんだろ私、もう恥ずかしい…」ブツブツ
岡部「紅莉栖、すまない…」
岡部「それだけは…それだけは出来ないんだ…」
紅莉栖「え…」
岡部「いや、違う、もちろんお前とき、キスはしたいに決まっている」
紅莉栖「…もしかして口臭気にしてたり?」
岡部「ち、違う!…兎に角だ。俺は、お前とキスは出来ない。…駄目か?」
紅莉栖「う、ううん、岡部がそういうんだったら仕方ないかなっ、て…」
岡部「紅莉栖…」ギュッ
紅莉栖「ひゃっ///」
紅莉栖「…い、今ので許す」
岡部「…ありがとう」
紅莉栖「ん、むぅ…もう朝?」
岡部「zzz」
紅莉栖「倫太郎は…まだ寝てるか」
紅莉栖「…可愛い顔しちゃって」
紅莉栖「…」
紅莉栖(倫太郎は未だにキス、してくれない)
紅莉栖(別に平気、だけど)
紅莉栖「やっぱり寂しいや…」
紅莉栖「…ごめんね、一回だけ、約束事破らせて」
紅莉栖「倫太郎…」チュッ
岡部「ん…朝か」
紅莉栖「遅いわよ、休みだからっていつまでも寝てないで朝ご飯食べちゃってー」
岡部「分かったー」
紅莉栖「気を付けなさいよー」
岡部「あぁ、分かった」
紅莉栖「行ってらっしゃい」
紅莉栖「…」
紅莉栖「おかべ…」
紅莉栖「お帰りなさい…」
岡部「…どうした?浮かない顔をして」
紅莉栖「…私ね、全部…全部思い出しちゃったの」
岡部「!?」
紅莉栖「倫太郎が…倫太郎が、まゆりや私を救う為にどれだけ頑張ったか」
紅莉栖「それに…倫太郎が、私が刺された記憶を思い出さないようにしてくれていたのも」
岡部「紅莉栖…」
紅莉栖「今まで、本当に辛かったね、本当にごめんね、 本当にありがとう」
紅莉栖「本当に…」ボロボロ
岡部「だっ、大丈夫かっ!?」
紅莉栖「わ、私はっ、平気、それより」
紅莉栖「全部、話してくれる…?」
岡部「あぁ…」
紅莉栖「そうだったの…未来の倫太郎がDメールで…」
岡部「今まで黙っていて悪かった」
紅莉栖「私を思っての事だったんでしょ?いいのよ」
紅莉栖「倫太郎…本当にありがとう。今まで、お疲れ様」
岡部「おいおい、これで終わりみたいな事を言わないでくれ」
紅莉栖(…)
岡部「それで、この流れだからいう訳ではないんだが」
岡部「そ、そろそろ、結婚、しないか…?」
紅莉栖「あなたー、ご飯よー」
倫太郎「お、今日も美味そうだな」
倫太郎「初めの頃の紅莉栖のご飯はとても食べられたものでは無かったのにな」
紅莉栖「もう、あの頃の話はしないでくれる?」
倫太郎「別に今が上手なのだから問題なかろう?」
倫太郎「…紅莉栖、なんか元気が無いな」
紅莉栖「え?そ、そんなことないわよ!ほら、さっさと食べちゃって!」
紅莉栖(もし万が一、私の仮説が当たったら…)
紅莉栖(私は…どうすれば…)
紅莉栖「…」
倫太郎「紅莉栖、本当に大丈夫か?」
紅莉栖「あ、ちょっとボーッとしちゃっただけよ、大丈夫!」
倫太郎「無理するなよ、今日の食器は俺が洗っておくから休んでいろ」
紅莉栖「…うん」
紅莉栖「ふぅ…」
紅莉栖(…確率としては低いし、心配する必要はないわよね)
紅莉栖(ないわよね…)
紅莉栖「あなた」
倫太郎「ん、どうした?」
紅莉栖「愛してるわ」
倫太郎「ブッ!!い、いきなりどうした?」
紅莉栖「…あなたは?」
倫太郎「も、もちろん愛してるに決まっているだろう」
倫太郎「お前を世界で一番愛してるのはこの俺だ」
紅莉栖「ありがとう、その気持ち、忘れないでね」
倫太郎「ふっ、忘れるものか」
紅莉栖「…ありがとう」
紅莉栖「すみません、じゃあうちの子お願いしますね」
紅莉栖「いい?門限までには帰ってくるのよ?」
子供「はーい!」
紅莉栖「ただいまーっ、あなたー、お昼食べたー?そうめん買ってきたけどー」
倫太郎「…」
紅莉栖「…あなた?」
倫太郎「ここは…」
岡部「ここはっ!?世界は!?」
岡部「…紅莉栖…?」
岡部「紅莉栖なのか!?」
岡部「本当に、本当にっ、!!本当に紅莉栖なのか!?」
岡部「よかったっ、よかったっ…」
岡部「紅莉栖っ、もう、何処へも行かないでくれ…っ、!!」
紅莉栖「…」
岡部「…紅莉栖?」
岡部「なぜ泣いているのだ?」
END
もし執念オカリンがリーディングシュタイナー発動したら的なのが思い浮かんだので書きましたんこぶ
あああああその発想はあった
乙
リーディングシュタイナー発動しまくってるから
なんらかの精神病に見えるよなw
>>44乙おもしろかった
実際は他人が見てリーディングシュタイナー発動してるのは2000年の時の一回と
最後のシュタインズ・ゲートに突入したときの1回だけじゃないの?
ほかの世界線はなかったことになるんだし
乙
Entry ⇒ 2012.09.20 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
岡部「クリスティーニャよ!」 紅莉栖「ニャ~♪」
【未来ガジェット研究所】
まゆり「はあ~…」 ショボーン…
岡部「ど~した、まゆりよ!? 常時能天気娘なお前がため息などつーいてー!?」
まゆり「むー、ひどいよ、オカリン! まゆしぃにだってブルーになる日があるのです!」
紅莉栖「何かあったの、まゆり? 私達でよかったら相談に乗るわよ?」
まゆり「えへへ~ありがとう、紅莉栖ちゃん♪ 実はまゆしぃ、お仕事で失敗しちゃったのです…」」
ダル「仕事? それってメイクイーンニャンニャンのこと?」
まゆり「うん…実はまゆしぃ、フェリスちゃんにメイクイーンの新しい制服のデザインを相談されてたのです。」
ダル「ちょっ!? メイクイーンの新デザイン制服!? マジっすかーーーー!?」
まゆり「うん。 フェリスちゃんが、『飽きられる前に次の手を打つのが、ビジネスの鉄則ニャ!』って。」
岡部「なるほど、それでコス作りが趣味のまゆりに意見を求めてきたのか?」
まゆり「うん。 まゆしぃね、一生懸命考えて、実際に作って持っていったんだけど…」
紅莉栖「却下されたの?」
まゆり「うん…『これじゃあ、エッチすぎてお巡りさんに怒られちゃうニャ。』って。」
岡部「どんなん持ってったんだ、お前は…」
まゆり「ここにあるよ。 オカリン、ここを持って広げてみて~」
岡部「どれどれ…ぬお!? 何だ、この露出度の高いメイド服は!?」
紅莉栖「パンツの見えそうなミニスカート!!
胸元と背中、腋も大胆に開いている!!」
ダル「まゆ氏、これって『あれが私の御主人様』をイメージしてるん?」
ttp://shimg.surpara.com/shop/item/44/44756.jpg
まゆり「うん! まゆしぃは前からこの服と猫耳は似合うとおもってたの~!」
ダル「フェイリスたんが、このコスで目を見て混ぜ混ぜをしてくれると思うと…みなぎってキターーー!!」
岡部「落ち着け、ダル! 却下されたと言っていただろう!」
まゆり「絶対気に入ってくれると思ったのにな~…」
岡部「バカモン! 現実にこんな格好で接待したら、完全に風俗だぞ!」
紅莉栖「ふうぞ…!? 岡部のHENTAI!!////」
岡部「何でだよ!?」
まゆり「せっかく作ったのにどうしよう? ねえねえ、紅莉栖ちゃん?
このコス着てみない? 紅莉栖ちゃんならきっと似合うよ~♪」
紅莉栖「ええ!? む、無理無理! これは恥ずかしすぎるわ!!」
岡部「ファーッハッハッハ!! 正直に言ったらどうだ、クリスティーナ?
私のひんそーな体では、この服につり合いませんと!!」
紅莉栖「な、なんですってーーー!!」
ダル「痴話喧嘩乙!」
岡・栗「「 痴話喧嘩じゃない!! 」」
ダル「それより、そろそろ作りかけのガジェットの開発、再開しね?
僕は早く終わらせてメイクイーンに行きたいお!」
岡部「そうだった! 助手風情の相手をしている暇ではなかったな!」
紅莉栖「むー!」
- - -- ── ────────────────── ── -- - -
- - -- ── ──────────── ── -- - -
- - -- ─ ── ─ -- - -
- - - - -
【深夜、未来ガジェット研究所】
紅莉栖「う~~~ん…あら、もうもうこんな時間になっていたのね…
ガジェット開発に夢中になってたらつい…ちょっと休憩しよう…」
「橋田とまゆりはとっくに帰っちゃったし、岡部は買出しにいってまだ帰ってこない。」
「ブラウン管工房も閉まって、このビルには私一人か…・」
「暇ねえ…@ちゃんでもしようかしら…あら?」
紅莉栖「これ、昼間にまゆりが出した猫耳エロメイド服…ここに置いてったんだ。
改めて見ても、これはひどい…岡部の言うとおり完全に風俗ね…
まゆりは私に似合うなんて言ってたけど、これは着れないな~////」
『ファーッハッハッハ!! 正直に言ったらどうだ、クリスティーナ?
私のひんそーな体では、この服につり合いませんと!!』
紅莉栖「くっ…誰が貧相な体よ! 自分だってモヤシのクセに!
私だってその気になればこれくらい…・!!」
『紅莉栖ちゃんならきっと似合うよ~♪』
紅莉栖「…誰も居ないし…ちょっとだけ着てみようかな…」
【着替え完了、姿見の前】
紅莉栖「うわー! うわー!! こ、これはひどいwwww ////」 ニャーン♪
「無理!! これで人前に出るとか絶対、無理! 普通にパンツが見えちゃってるし!////」
「それに…やっぱり私だと胸元が寂しい気がする…」 ペターン!
「岡部の言う通りね…やっぱり岡部も小さいのは嫌なのかな…」
「…・・ぐす…・」
紅莉栖「はあ…私、何をやってるんだろう…
こんなの着るんじゃなかった…早く着替えy」
ガチャ
岡部「フゥハーーハッハッハーーー!! 狂気のメェェーードサイエンティスト、鳳凰院凶真!!
ただいま買出しから帰還した!! 作業ははかどってるか、じょーーーしゅーーーよー…・」
紅莉栖「」
紅莉栖「お…お…か…・!?////」
岡部「もしもし? ああ、俺だ…ありのまま起こった事を話すぜ…
『この鳳凰院凶真がコンビニに夜食を買いに行ってラボに帰ってきたら、
助手のクリスティーナがエロい猫耳になっていた』 何をry」
紅莉栖「い…い…!!////」
岡部「何だかわからない…『機関の陰謀』とか『比翼恋理のだ~りん』とかじゃ断じてない!
…もっと恐ろしい物の片鱗を味わっている…エル・プサイ・コングルゥ。」
紅莉栖「いやああああああーーーーー!!!!」
紅莉栖「見ないで!! 見ないで、岡部!!」
岡部「み、見るなと言われても…・」
紅莉栖「いや…いやぁ…!!」 ポロポロ…
岡部(泣いている!? 一体これはどういう状況なんだ?
こいつが着ているのは、昼間のまゆりのコス!?)
岡部「…・・可愛いな…」 ボソ…
紅莉栖「へ…?」
紅莉栖「お、岡部? 今、私の事を『可愛い』って言ってくれたの…?////」
岡部「あ! い、いや…違う!! 今のは間違いだ!!
別に助手のスレンダーな体型が本当に猫みたいで愛らしいとか
気の強そうな顔とキュートな服のアンバランスぶりがたまらんとか、
そんなの全然、考えてないんだからなぁーーー!」
紅莉栖「はう!?////」 ボシュー!
岡部(全部、言っちゃったよ、ちくしょうーーー!!」
紅莉栖(どどどどど、どうしよう!? ものすごく嬉しいのに、恥ずかしくて岡部の顔を見れない!////) モジモジ
岡部(うああああーーー!! 何か言え、ク、クリスティーナ!!
こ、この空気は耐えられん! どうすれば…どうすれば…そうだ!!))
岡部「や、ややや!? 何という事だー、ラボの中に野良猫が紛れ込んでしまったー(棒)
おのれーどこから入りこんできたのだー(棒)」
紅莉栖「へ? ね、猫?」
岡部「しかもこの野良猫ー、何故か助手の姿と声でしゃべるではないかー(棒)」
紅莉栖「な、何を言ってるの、岡部!?」
岡部「これはあれだなー、俺が疲労のせいで意識が混濁して、幻覚を見てるのだー
だからただの猫が助手に見えるのだー、そうに決まってる!(棒)」
紅莉栖「あ…」
岡部「これ以上起きていたら、体に悪いなー、今夜はもう寝てしまおう、そうしよう(棒)」
スタスタスタ、バタン!(ソファーに寝転がる)
岡部「ぐーぐーすやすや ぐーぐーすやすや(棒)」
紅莉栖「岡部…・」
岡部(よーし! 我ながら完璧な作戦! これでこの場で起きた事をただの幻覚になった!
後は俺が寝ている間に助手が着替えれば万事解決!!)
紅莉栖「私は…猫…」
岡部(そーだ、クリスティーナ! さあ、俺が目をつぶっているうちに人間に戻れ!)
紅莉栖「………」
紅莉栖「に…にゃ~ん…////」
岡部「!?」
紅莉栖「にゃあ…////」 キシ…キシ…
岡部(ん? んん~!? 何だ、何だ?
この猫の鳴きマネは助手か? 何をしている?) チラ(薄め目開け)
紅莉栖「にゃーん…////」 キシ…キシ…
岡部(な、何故、四つん這いでこっちに近づいてくるのだ、助手よぉぉーーー!!??)
紅莉栖「う~~…にゃあ!」 ピョン! ドスン!
岡部「ぐほお!? な、何をする助手!? 寝ている人の上に飛び乗りおって!」
紅莉栖「じょ…助手じゃないニャ!!」
岡部「はあ…?」
紅莉栖「わ、私は迷子の野良猫、クリスティーニャ!!
決して人間の天才少女、牧瀬紅莉栖じゃニャいんだから!!」
岡部「」
紅莉栖「お…お前には私が人間の姿で、日本語を話しているように感じるかもしれニャいけど
それはただの脳内物質の異常分泌が見せる幻覚・幻聴なんだから!
私は正真正銘、まじりっ気なしの猫科動物よ!…じゃなくて、猫科動物ニャ!」
岡部「」
紅莉栖「だからこうやって、私がお前の体のよじ登ったり、添い寝したりしても問題ないのニャ!
だって私は猫だから! はい論破完了!!」
岡部「」
紅莉栖「ろ、論破完了だって言ってるでしょ!!」
岡部「」
紅莉栖(うわ~~~!!! 何やってるんだ私は~~~!!!
岡部、完全に固まっちゃてるじゃん!)
岡部「」
紅莉栖(『このまま猫のふりすれば岡部に甘えられる』とか、そんな訳あるかーー!!
パニくってるとはいえ、何を考えてるのよ!? 一分前の私のアホーーーーー!!)
岡部「」
岡部「そうか…猫なのか…」
紅莉栖「ふえ!?」
岡部「猫じゃ…しかたないな…」
紅莉栖「そ、そうよ! 私は猫なんだから!!////」
岡部「ああ…」
岡部(ってお前のような、肌色率の高い猫がいるかーーー!!
くそ! せっかく気を使ってやったのに、助手風情が、この鳳凰院凶真をおちょくりおって!
こうなったらボロを出させて、お前が人間のクリスティーナだと証明してやる!)
岡部(クックック…まずは軽いジャブからだ!)
岡部「フハハハー! クリスティーニャよ!
お前が猫ならば、こーゆーことをしてもかまわんな!!」
なでなでなで…・
紅莉栖「きゃあ!?」
岡部「何を驚いているぅ? 猫ならば頭を撫でられるのは好きであろう?」
(髪の毛サッラサラだな…触っていて気持ちいい…)
紅莉栖「ふ…フニャ…///」 トロ~ン…
なでなでなで…・
岡部「ほうれ、耳の裏とかもくすぐってやるぞ~~!!」
(どうだ、プライドの高いお前には屈辱だろう? さっさと正体を現せ!)
こちょこちょ…
紅莉栖「やん!…あ…ん!…お、おか・・べぇ♪////」 スリスリ
岡部(あ、あれ? なんか自分から俺の手に頬ずりしてるぞ?)
紅莉栖「ああ、岡部…岡部ぇ…あなたの指、気持ちいいニャア…/////」 スリスリ
岡部(く、くそおおーーーー!! 可愛いじゃねえか!!)
岡部「ウェイウェイウェイ!一旦ストォォップ!!」 ガバ!
紅莉栖「にゃ!? お、岡部…?」 ウルウル…
岡部(う…体の上からどかした途端、寂しそうな目で見つめてきおって…!
ええい! 惑わされるな、こいつは猫ではなく助手だ!!)
岡部「ふふふ…そっちがその気ならやむを得ん、次の手だ…
俺にこの道具を使わせた事を後悔させてやる!
え~と…確かこの棚にしまってあったはず…」 ガサゴソ
紅莉栖「岡部ぇ、何してるの? ねえ、もっとなでなでしてよぉ…」 スリスリ
岡部「うお! 四つん這いで俺の脚に擦り寄るな! ちょ、ちょっと待ってなさい!」
岡部「これでもない! ここでもない! どこにどこに…・あった!
クックック…これが分かるか? クリスティーニャ!!」
岡部「ねーーこーーじゃーーらーーしーーー!!」 チャラララッラッララー!
紅莉栖「ね、猫じゃらし!?」
岡部「以前、未来ガジェットの材料として、100均で買ってきたのだ!
ほーれほれほれ! じゃれついてみろー!」 パタパタパタ
紅莉栖「くっ…それは…」
岡部「おやー? 猫なら猫じゃらしに喜んで飛びつくはずだぞ?
天才少女のプライドがそれを許さないのかぁ~?
やはりお前は人間のクリスティーナなのかぁ~?」
紅莉栖「ち、ちがうもん! 私は猫のクリスティーニャだもん!」
岡部「ならば何故、猫じゃらしに反応せん?
無駄な足掻きはやめて、潔く自分が人間だと認めろぉ!!」 パタパタパタ
紅莉栖「うう…私は…私は猫だニャー!!」 バッ!
岡部「ええっ!?」
紅莉栖「にゃ! にゃにゃん!」 テシテシテシ!
岡部(助手の奴、本当に猫じゃらしにじゃれ付き始めた!?)
紅莉栖「この! この! こっちか!?」 ペシ! ポム!
岡部「こ…こっちだぞ~クリスティーニャ!」 パタパタ!
紅莉栖「えい!」 タシ!
岡部「惜しい! こっちだ~!」 パタパタパタ!
紅莉栖「あっ! この、待て~♪」
岡部・紅莉栖 (( やべぇ…これ超楽しい…!! ))
岡部(俺の猫じゃらしを一生懸命、追いかける猫耳紅莉栖…可愛い過ぎだろぉぉーーー!)
紅莉栖(楽しい♪ 猫になりきって岡部と遊ぶの超楽しい~♪)
岡部「はーーっはっはっは! いいぞぉ、クリスティーニャぁ!」
紅莉栖「にゃんにゃんにゃ~~ん♪」
【この時、一つの奇跡が起こった。】
岡部「ほ~れ!」 ファサ!
【岡部が何気なく振った猫じゃらしの先端のもこもこが、偶然にも…・】
紅莉栖「…・!!! ひゃうぅ!?///」
岡部「!?」
【クリスティーニャの素肌を撫ぜたのだ!!】
紅莉栖「な、何するの、岡部!! 思わず変な声が出ちゃったじゃない!/////」 アセアセ!
岡部「す、すまん…しかし、あんなに大声を出すほどか?」
紅莉栖「しょうがないでしょ! くすぐったかったんだから!」
岡部「…・・! ほ~う、クリスティーニャ? さっきの耳こちょの時といい、
お前はひょっとして、くすぐったがりなのか?」
紅莉栖「ふぇ!? べ、別のそういう訳じゃ…////」
岡部「ふふふ…そうか…そうかぁ…・!!」 ワキワキ ジリジリ
紅莉栖「ひっ! お、岡部? どうして手をワキワキさせながら近寄ってくるの…?」 ビクビク…
岡部「そおおおーーーーい!!」 ガバァ!!
紅莉栖「きゃああああ!?」
岡部「ファーーハッハッハーーー!! 捕まえたぞ、クリスティーニャ!」 ギュウウゥ…!
紅莉栖「ち、ちょっと!! 放しなさいよ、このHENTAI!!/////」 ジタバタ ジタバタ
岡部「ん~~? これまた異なことを? 自分の猫を抱きしめることの何がHENTAIなのだ?」
紅莉栖「くぁwせdrftgyふじこ!!??/////」
紅莉栖(い、今コイツなんて言った!? 私が岡部の猫!?
それって私は岡部のモノってこと!?////)
岡部「クリスティーニャ…」
紅莉栖「お、岡部…・////」
岡部「こちょこちょこちょこちょーーーー!!」
紅莉栖「え!? ちょ待、ふにゃああああああ!!!!!」
紅莉栖「ちょ…あはは!…く…おか…何してぇ…ふみゃああああ!?////」
岡部「何って、ただの猫とのスキンシップだぞぉ? よーしよしよし、わき腹がいいのか~?」 コチョコチョ
紅莉栖「にゃあ! にゃふ!? や、やめろぉ!!////」
岡部「それともぉ…ここかぁーーー!?」 コチョコチョ
紅莉栖「あああああ!? ダメぇ! 腋! 腋はやめてぇ!!////」
【1時間後】
紅莉栖「はあ…! はあ…! はあ…!」 クッタリ…
岡部「おやおや…最初の元気はどこにいったのかな、クリスティーニャ?」
紅莉栖「くううう…岡部ぇ…あ、あんた、後で…覚えてなさい…!」 ビクン!ビクン!
岡部「ま~だ、ご主人様にそんな口を聞くか? ならばこうだ!」
ゴロン!
紅莉栖「きゃ! こ、今度は何をする気…!?」
岡部「知ってるか、クリスティーニャ?
世の愛猫家の間では『もふもふ』という行為が流行ってるのだ。」
紅莉栖「も…もふもふ…?」
岡部「猫のお腹に顔を埋め、スリスリしながらその毛皮と腹肉の感触を楽しむのだ…」
紅莉栖「な!!」
岡部「お前のお腹は毛は一本も無いが(あったら嫌だ)、真っ白ですべすべで
キュッとくびれて…もふもふしたら、さぞ気持ちいいだろうな…」
紅莉栖「ま、待って…! それだけは駄目…
そんな事、岡部にされたら私、恥ずかしくてしんじゃう…!
お願い、岡部…他のことなら何でもするから…それだけは…!」
岡部「ふっ…」
岡部「うおーーー! もふもふさせろーーー!!」 モフモフモフモフモフ!!
紅莉栖「にゃああああーーーーー!!/////」
- - -- ── ────────────────── ── -- - -
- - -- ── ──────────── ── -- - -
- - -- ─ ── ─ -- - -
- - - - -
チュンチュン!
チュンチュン!
岡部「ふごー…ふごー…ぐふ! う~ん…朝か…
あれ…俺は昨夜、何してたんだっけか…?
助手といっしょにラボで作業して…夜食を買いに行って…それから……・」
岡部「あああああああーーーーーー!!??」
岡部「助手!? クリスティーーナ!! どこだ!?」
「どこだ!? どこにいるんだ!?」
「俺は…俺はーーーーー!!!」
【同日正午、未来ガジェット研究所】
岡部「 orz 」
ダル「どしたん、オカリン? 朝から、ずっと頭抱えて?」
まゆり「オカリン、お腹減ってるの? まゆしぃのバナナ食べる?」
岡部(え…えらい事やっちまったぁぁーーーー!!)
岡部(昨夜は異常なシュチュエーションと、徹夜のハイテンションのせいで
つい調子に乗ってクリスティーナにセクハラしまくってしまった!!)
岡部(目が覚めたら、助手はどこにもいないし、電話にもメールにも出ない…
やっべー…絶対に怒ってるよ…このままアメリカに帰っちゃったらどうしよう!?)
ガチャ
紅莉栖「はろー」
まゆり「紅莉栖ちゃん、トゥットゥルー☆」
岡部「!!」
ダル「牧瀬氏、今日は来るのが遅かったお?」
紅莉栖「ごめん、ごめん。 ちょっと買い物してたら時間かかっちゃって。」
まゆり「ほえ? オカリンどうしたの? 顔色悪いよ?」
岡部「なななな、んんんん、でででで、もももも、なななな、いいいい…・!!」 ブルブル
紅莉栖「あ、岡部。 はろー。」
岡部「え?」
岡部「ク、クリスティーナ? お前、怒ってないのか…?」
紅莉栖「怒る? 何を?」
岡部「い、いやその…昨夜のことを…」
紅莉栖「え? 岡部、私になんかしたっけ? 私はあんたがコンビニ行ってる間に帰ったけど?」
岡部「は? いや、だって…」
紅莉栖「ごめん、何を言ってるのか分からないわ? それより早くガジェットの組み立てを始めましょう。」
岡部「????」
【その夜、未来ガジェット研究所】
岡部「ふう…今日はここまでにしておくか。」
紅莉栖「そうね…他の2人も帰っちゃったし、私も失礼するわ。
また明日ね、岡部。」 スタスタ…ガチャ
岡部「…・・(助手の奴、結局いつもと変わりが無かった…
昨夜のクリスティーニャは本当に俺の幻覚だったのか…?)」
岡部「う~~~ん…一度シャワーを浴びて冷静になるか…」
シャアーーー… ゴシゴシ
岡部「ふう、いいお湯だった。」 ガラ
紅莉栖「こんばんわだニャ、岡部~♪」 フリフリ!
岡部「」
紅莉栖(やべ、はずした!?)
岡部「助手、お前…」
紅莉栖「だ、だから私は牧瀬紅莉栖じゃない! 助手はさっき帰っただろ!
私はお前の飼い猫、クリスティーニャだ! 人間の姿に見えるのはお前の幻覚だ!!」
岡部「ちょっと待て。 迷子の野良猫じゃなかったのか?」
紅莉栖「はあ!? あんた昨夜、私を『俺の猫』って言ったじゃない!
それって私の飼い主になるってことでしょ!!」
岡部(そ、そういえばそんな事を言った気が…)
紅莉栖「あ、あの言葉は嘘だったの…・」 ジワ…
岡部「う、嘘じゃない! 嘘じゃないぞ! お前は俺が責任を持って飼うから泣くな!」
紅莉栖「ホ、ホント! えへへ…♪」
紅莉栖「そ、それじゃあ、飼い主としてこれを私につけニャさい!」
岡部「え…・これは首輪…だと! これをお前に付けろと!?」
紅莉栖「そ、そうよ!! く、首輪がないと野良と区別がつかないじゃない!
私が保健所に捕まったり、他の人に拾われて攫われちゃったりしてもいいの!?」
岡部「いや、その心配はいらないと思うが…
あれ? ひょっとして昼間のお前の買い物ってこれのこと…」」
紅莉栖「と、とにかく付けなさい!! 飼い主としての責任よ!!」
岡部「わ、分かった! 分かった! つければよいのだろう!!」
岡部(くそ! こうなれば鳳凰院モードだ!!)
岡部「フ…・ファーーッハッハッハ!! いまここに
我、鳳凰院凶真とクリスティーニャの使い魔の契約を結ぶ!!」
紅莉栖「う…うん…////」 ドキドキ
岡部「ん…・こうか?…」 カチャカチャ
紅莉栖「あ…あ…!////」 ゾクゾク!
岡部「よし、ついた。 苦しくないか?」
紅莉栖「うふふ、これで私は岡部のモノだね…////」
岡部「ぬぐ!? く、くそ! ペットの分際でこの俺をドギマギさせおって! 許さん!
こうなったら今宵も貴様に、この鳳凰院凶真の力をたっぷりと味合わせてくれるわ!!」
紅莉栖「う、うん…岡部…」
紅莉栖「今夜も私を可愛がってね♪」
【おわり】
アニメでも助手が可愛かったのでカッとしてやっちゃいました。
だからもっとニャンニャン見たかった…っ
これも運命石の扉の選択か…
乙
Entry ⇒ 2012.09.17 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
紅莉栖「何度タイムリープしたって岡部を寝取られる……」
8月13日 夕方
タイムリープマシン完成祝の宴会のための買い出しから帰った私は、ラボの開発室にいた。
椅子に座り眺める──世界を揺るがすかもしれない、このタイムリープマシンを。
しかし宴会まで時間が空いたのと、連日の徹夜続きもありついウトウトしてしまい──。
紅莉栖「んん……ん……」
紅莉栖「おか……べぇ……あんた……」
紅莉栖「……急に仲間がどうとか……支離滅裂……むにゃ」
紅莉栖「……ふへへ、おかべぇ……」
紅莉栖「ふぇ……」
紅莉栖「あ、あれ、私……」
紅莉栖(寝てたのかな。やだ、私ったら……こんなところでだらしない……)
紅莉栖(もし見られてたら一生の不覚──)
アッ ンッ ンッ ンッ
紅莉栖「……?」
開発室から、そっとリビングを覗いてみる──
岡部「はぁっ……ふぅっ……」
「あっ……あんっ……んんっ……おかっ……いいっ……」
紅莉栖(ちょ!)
紅莉栖(な、なによこれ……お、岡部が……岡部が!)
岡部「うぐっ……ふっ……はっ」
女と重なり合っている。
紅莉栖(じゃ、じゃ、じゃない!) ギュウウ
紅莉栖(いったたたたたた!)
紅莉栖(ゆ、夢……じゃない……)
紅莉栖(おかべ……さっき……私のこと大切……って……いい雰囲気になって……あれ、私なんで……ふぇ……) ジワッ
紅莉栖(おかっ……、おかべぇぇ……うぅ……)
紅莉栖(なんでっ……わ、私だっておかべのことっ……)
紅莉栖(そ、そりゃいきなり求められたら断ったかもしれないけどどど、でもっ、でもぉ……)
紅莉栖(こんなの、あんまりよ……)
岡部「くっ……うぐっ……!」
紅莉栖(……落ち着け、カームダウッ、牧瀬紅莉栖)
紅莉栖(これは夢じゃない、現実。そして岡部は女とファックしている、紛れもない事実)
紅莉栖(顔はよく見えなかったけど……あれは多分>>13さん……よね)
1.まゆり
2.萌郁
3.ルカ子
4.フェイリス
5.鈴羽
選んでオナシャス
1~5以外の安価はstにする
紅莉栖(私は開発室でうたた寝していたと思ったらいつのまにか『岡部とまゆりがミッショナリースタイルで繋がっていた』)
紅莉栖(な…何を言ってるのか分からないとは思うけど、私も何なのか分からなかった)
紅莉栖(頭がどうにかなりそうだった……)
紅莉栖(夢だとか、妄想だとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてない)
紅莉栖(もっと恐ろしいものの片鱗を味わったわ……)
パンッパンッパンッ
アッ……ンンッ……アッ
オカッ……オカリッ……
紅莉栖「……」
チラッ
木製の机の上で静かに佇むタイムリープマシン。
これを使えば──
紅莉栖(岡部は渡さない……絶対にだ)
紅莉栖「跳べよぉぉぉぉっ!」
けれど8月13日、私は世界の構造と残酷さを知ることとなる──
皮肉にも、私が完成させたタイムリープマシンの力を使うことで。
紅莉栖「何度タイムリープしたって岡部を寝取られる……」
紅莉栖「うぅっ……」
紅莉栖「……はぁっ……はぁっ……」
岡部「おい、どうした助手よ……、まさか機関からの定時連絡に問題でもあったか?」
岡部「それとも……・そんなに階段がきつかったのか? ん? この貧弱実験大好きっ娘め!」
紅莉栖(……ここは……ラボの前? 確か私はラボの開発室で岡部とまゆりの……)
紅莉栖(そしてタイムリープマシンを起動して……)
岡部「お、おい……クリスティーナ?」
紅莉栖「い、今何時!?」
岡部「え? あ……17時くらいだが……」
紅莉栖「17時……」
紅莉栖(私の記憶では19時くらいだったはず……と言うことは)
紅莉栖(携帯携帯……今は8月13日の17時……うん、合ってる)
紅莉栖(成功したんだわ、タイムリープ)
紅莉栖「おっ……おかべっ!」
岡部「んん? なんだ? 言いたいことがあるのなら聞いてやらんこともないが」
紅莉栖「……え、えっと……」
紅莉栖(ど、どうしよう、跳んだはいいけどほぼノープランだった……)
紅莉栖(あわわわ……考えて! 考えるのよ天才脳科学者!)
紅莉栖「……と、とりあえずラボに入りましょ?」 ニコッ
岡部「お、おう……?」
紅莉栖「……」
岡部「……」
紅莉栖(き、気まずい……)
岡部「おい、何か話が……あるのではないか?」
紅莉栖「ええ!? う、うん、そ、そうなんだけど……」
紅莉栖(ど、ど、どどうしたらいいの!?)
紅莉栖(まゆりとファックしないで! なんてお願いできるはずもないし……)
紅莉栖(ああああ! 恋愛経験0で過ごしてきた過去の私を殴りたい……助走付けて殴りたい……)
紅莉栖(……ウェ、ウェイウェイウェイ!)
紅莉栖(大丈夫、例え岡部とまゆりがそういう雰囲気になったとしても、ここに私がいれば何の問題もないはず)
紅莉栖(私がいる目の前でファックできるのならやってみなさい!)
紅莉栖「あ、や、やっぱり話すほどのことでも……なかったかなーって……」
岡部「……?」
紅莉栖「ふぇっ!? な、なんでよ! もうすぐ宴会じゃない!」
岡部「まゆりを迎えに行ってくる、少々帰りが遅いのが気になっていたのでな」
紅莉栖「ちょ!」
紅莉栖(今行かせたらそのままラボじゃなくてラブホでズッコンしかねない! だめよ、ここは絶対行かせちゃダメ!)
岡部「では少しの間留守を任せ──」
紅莉栖「おかべぇっ!!」 ダキッ
岡部「ぬわあぁっ!?」 ゴシャ
紅莉栖「あ……」
岡部「……お、おのれザゾォンビ……この鳳凰院凶真の足を引っ張って転倒させるとはぁぁ!」
紅莉栖「せ、説明ゼリフ……乙」
紅莉栖「だ、だからごめんって……」
岡部「もういい、行ってくる」
紅莉栖「ちょ!」
バタン
紅莉栖「あ……う……」
紅莉栖(ど、ど、どうしよう、このままじゃ私の岡部が……おかべがぁっ……」
紅莉栖「……」
紅莉栖「こうなったら」
ピッピッピ
To:まゆり
Sub:コスプレについて話がある件
本文:マシン完成の時も思ってたんだけど、ちょっとコスプレに興味が湧いてきたっていうか
別に今すぐ着たいって訳じゃないんだけどね?
よかったら話聞かせてもらえないかなーなんて
とりあえず連絡もらえないかしら?
まゆり「クリスちゃん……ど、どうしてこんなことするのかなぁ……?」
紅莉栖「ごめんなさいまゆり、少しの間大人しくしてもらえるかしら」
まゆり「コスしたいってのは、嘘だったの?」
紅莉栖「……」
まゆり「何か、しゃべってよ……ねぇ……」
紅莉栖「今は何も話せない……全て終わったら、埋め合わせはするから……」
私はコスプレの話に食いついてきたまゆりをホテルに連れ込み、ロープ縛り上げて身動きを取れないようにした。
親友(笑)
今の私はきっとものすごく醜いだろう。
途中まゆりから身が凍るほどのプレッシャーを感じたので海馬に電極をぶっ刺しておいた。
命に別条はない、多分。
ロープが千切れていたがすんでのところで間に合ったらしい。
恐ろしい子!
ガチャ
紅莉栖「はろー……」
シーン
紅莉栖「あれ、まだ戻ってないのかな……」
紅莉栖(時刻は18時……岡部ったらどこほっつき歩いてるのかしら)
ピッピッピ
To:岡部
Sub:
本文:早く帰って来なさいよ
まゆりなら気分が悪いから、今日は遠慮しとくって言ってたわよ
ピッ
紅莉栖「ごめん、ごめんねまゆり!」
紅莉栖「でも私は……! 岡部のことがっ……!」
────
───
──
紅莉栖「……ふへへ、おかべぇ……」
紅莉栖「ふぇ……、あ、あれ、私……」
紅莉栖(また寝てたのかな。やだ、私ったら……こんなところでだらしない……)
紅莉栖(よ、涎垂れてるし……。あ、岡部! 岡部に見られてないでしょうね!?)
紅莉栖(もし見られてたら一生の不覚──)
アッ ンッ ンッ ンッ
紅莉栖「……?」
開発室から、そっとリビングを覗いてみる──
岡部「はぁっ……ぐぅっ……」
萌郁「あぁっ……んんっ……おかべくっ……いいっ……」
紅莉栖「」
ここから岡部の表情をうかがい知ることはできなかったが──
眉を八の字にさせながら切なげに喘ぐ桐生さん。
ウーマン・オン・トップ、激しく揺れる二つのメロン。
今にもはち切れそうなくらい激しく上下する。
ズッチュッ ズッチュ
萌郁「どう……? おかっ……べく……」
岡部「うぐっ……はげし──あまり動くとっ……」
萌郁「おかべくん……すき……んっ……」
岡部「んむっ……」
チュル チュッ
ズチュッ チュッ
岡部と桐生さんの結合部を目視することはできなかった──
が、水気を帯びたその音から、二人の繋がりあった部分は熱く燃え上がっていることが容易に想像できた。
なんなのよ……。
なんなのよぉっ……。
紅莉栖「跳べよぉぉぉぉっ!」
岡部「うっ!」
萌郁「あっ……」
~ホテル~
まゆり「ク、クリスちゃん?」
萌郁「……IBN5100は……どこ?」
紅莉栖「ごめんなさい、あなた達二人には大人しくしてもらうわ」
ブスッ ブスッ
まゆり「」
萌郁「」
紅莉栖「今度はうたた寝しないうたた寝しないうたた寝しないうたた寝しない」
紅莉栖「うぅ、でも眠い……」
紅莉栖「おかべぇ……早く戻って……きて……」
────
───
──
ガチャ
岡部「む、紅莉栖か、一人か?」
紅莉栖「あ、お、岡部!」
岡部「突然だがお前に言うことがある、紅莉栖、俺はお前が好きだ!」
紅莉栖「ふぇっ!?」
岡部「お前はどう思っている?」
紅莉栖「私も──!」
紅莉栖「……ふへへ、おかべぇ……」
紅莉栖「ふぇ……、あ、あれ、私……」
紅莉栖(ま、また寝てた!? ど、どうして!?)
紅莉栖(うっ……ってまた涎垂れてるし……。あ、岡部! 岡部は!?)
アッ ンッ ンッ ンッ
紅莉栖「──!」
開発室から、そっとリビングを覗いてみる──
岡部「はぁっ……ふぅっ……」
るか「あっ……あんっ……んんっ……おかべさっ……いいっ……」
紅莉栖「」
いわゆる背面駅弁。
岡部はいわゆる……アナルファック──後ろの孔を使用──していた。
少し距離があるが、ここからでも結合部がはっきり確認することができる。
岡部「うぐっ……うぅっ!! きつっ……」
るか「はっ……うぅっ、おか…………んんっ」
そびえ立つ肉の塔が天を仰ぐたび、漆原さんの後門が強引にこじ開けられていく。
漆原さんは悩ましげな声をあげ、前門からは綺羅びやかな蜜が滴り落ちていた。
るか「あっ……あぁっ……」
岡部「ルカ子っ……ぉおっ……」
紅莉栖(何? 何が起きてるの?)
紅莉栖(いくら漆原さんが岡部のことを想っているとはいえ、こんなのあまりにも不自然すぎる……)
紅莉栖(……もっと考える時間が欲しい……この不可解な現象の解を得るために……)
るか「おかっ……おかべさんっ……す、すきですっ…‥! も、もっとはげしっ……んっ……」
岡部「ぐぅっ……うぅっ……おぉぁっ……」
紅莉栖「」 イラッ
紅莉栖「跳べよぉぉぉぉっ!」
岡部「うっ!」
るか「あぁっ……!」
紅莉栖「……ここは」
紅莉栖(開発室……未完成のタイムリープマシン……時刻は10時)
紅莉栖「……今回も成功のようね」
紅莉栖(さて、考える時間がほしいわ……、さっさとタイムリープマシンを完成させて──)
紅莉栖「はっ──」
紅莉栖(……だめ、私……また失敗してもタイムリープマシンさえあればやり直せる、そう思考してた)
紅莉栖(……いつしか岡部と誰かが重なり合っていても驚かなくなっている……)
紅莉栖「でも、一応完成はさせておかないとね」 カチャカチャ
岡部・ダル・まゆり「?」
────
───
──
紅莉栖(もちろん宴会は明日へと延期。今や私のラボでの権限は岡部なんかよりずっと上だものね)
紅莉栖(……これで岡部からラボメンガールズを遠ざけることができた……)
紅莉栖(橋田には後でお礼言わないとね)
紅莉栖(これで岡部は私と……)
紅莉栖「うふ、うふふっ……」
しかしこの時の私は、世界の構造、どんなにタイムリープしていても結果は収束する──
その事を理解していなかった。
────
───
──
フェイリス「んっ……んっ……んぁっ……きょうっ……おかべさんっ……だめっ……そんなにっ」
紅莉栖「」
気づけば私は、今日4度目のうたた寝。
その後開発室から岡部と猫がファックしているのを目撃する。
橋田のやつ、しくじったみたいね。
大方メイクイーンにでも行ったんだろうけど……。
それじゃあ意味が無いじゃない!
ちなみに、今回のプレイはドギースタイル。メイド服は着たまま。
四つん這いになったフェイリスさんを岡部が背後から突きまくる。メイド服は着たままで。
その度にフェイリスさんの顔と猫耳が快楽に歪む。メイド服は着たままだけど。
ふむん、これが着エロというものか……。
参考にしよう──。
フェイリス「あっ……おかっ……いま……いまは……るみっ……ほって……あんっ」
岡部「うぐぁぁぁっ!!」 パパンパンパパンパン
留美穂「あっあぁっ……はげしっ……いっ……」
あらやだ、涎なんて垂らしちゃって。
全く犬みた──あ、猫か。
って──
くだらないこと考えてる場合じゃない。
岡部「うぅぅっ!」
岡部(の童貞)は私が守る。
紅莉栖「跳べよぉぉっ!」
岡部「うっ!」
留未穂「ぁっんんっ……」
紅莉栖「……」
紅莉栖(今は……8月11日の19時……)
紅莉栖(タイムリープの限界である二日間しか考える時間はない)
紅莉栖(いや、岡部が犯される前に飛べば時間は無限……)
紅莉栖(だめ、こんな考えじゃダメよ、今までは成功してるとはいつ失敗するとも限らない)
紅莉栖(早く……早く解を導き出さなきゃ)
───
──
おかしい、どう動こうとも結果は変わらない。
ある程度の過程は変化する……。
しかし、最終的に岡部と私以外の誰かがラボでファックするという結果に落ち着く。
これじゃまるで運命論じゃない……。
岡部「あぁぁっ!!」 パンッパンッ
鈴羽「んっ……あっ……おかべっ……りんたっ……」
……ラボで岡部倫太郎と誰かがファックしたという結果、そしてそれを目撃した牧瀬紅莉栖。
この結果は変わらないということなのかしら?
だとしたら岡部は世界に犯されてることになる
抗えぬ運命……。
そんなの認めない、運命論なんて私は支持しない。
鈴羽「あっ……もっと! 奥までっ……ぇっ……」
考えろ、考えるのよ牧瀬紅莉栖。
どうしたら岡部を救うことができるの?
……喉が渇いたわね。
シャー
鈴羽「ま、牧瀬……紅莉栖っ!?」
岡部「うっうっ……!」 パンッパンッ
トコトコ ガチャ バタン キュポッ ゴキュ
紅莉栖「続けて、どうぞ」
鈴羽「……っ!?」
中途半端にめくれ上がったジャージに押さえつけられているものの、二つの膨らみが切なげに揺れる。
スパッツは履いたまま──
と言うことは局部の部分だけ破って、ということだろうか。
岡部「すずっ……鈴羽ぁっ……!」 パンッパンッ パパンッ
鈴羽「き、君はっ……んっ……一体……」
どうやら岡部には私のことが目に映らないらしい。
岡部「うぐうぅぅうぁぁっ!」 パンパンパンパン
鈴羽「あっ……ちょ、おかべりんたっ……やめっ……ぁぁっ……」
だけど、快楽に身を委ねていると言うよりは──
岡部「あぁぁぁぁっ!」 ズッチュ パン チュ パンパンパン
鈴羽「あんっ、ちょっと、激しすぎっ……る……って!」
岡部「ぐうぅうぅぅっ」 パンッパンッ
苦しんでいる──ように感じた。
前回のファックを目撃してからからだろうか。
もしかして弱みでも握られているんじゃ……?
いや、今は理由はどうでもいい、岡部を……岡部を守る方法を考えるのよ。
ただただ思考を──
パンパンパン
もしかして──
パンパンッ
あの時のあれ。
そして数日前のHENTAI行為。
極めつけにはリーディングシュタイナー。
パンパカパーン
その時……! 圧倒的閃きっ……!!
牧瀬紅莉栖に電流走る……!
岡部の童貞を。
すでに起きたことの結果を変えられないとしても、この方法ならば。
まずタイムリープ、その後……あの娘とコンタクトをとり、その後──
待ってて岡部、絶対、助けるから……。
あんたを、助けるから……。
紅莉栖「跳べよ」
岡部「うっ」
鈴羽「ぁんっ」
前編 『変態少女のメランコリィ』 END
8月13日 夕方
俺はタイムリープマシンの開発評議会のための買い出しを終え、ラボでゆっくりしていた。
紅莉栖はタイムリープマシンの最終チェックがしたいといい、開発室に篭りっぱなしだ。
俺はというとソファに腰を掛け、評議会までの空いた時間を持て余していた。
岡部「うーむ……暇だな……クリスティーナでもからかうか」
シャー
岡部「……」 チラッ
紅莉栖「むにゃむにゃ……おかべぇ……」
岡部(!? な、なんだ……? 寝てるのか……?)
岡部(……バカ者め、夏とはいえ風邪を引いても知らんぞフゥーハハハ!)
岡部(どれ、タオルケットでもかけ──)
紅莉栖「ばか……おかべ……」
岡部「……」 イラッ
岡部(ドクペでも飲むか)
ゴキュ
岡部(う……しかし、紅莉栖の寝顔……ちょ、ちょっとドキっとした)
ガチャ
岡部「おわうっ! まゆりではないか、脅かすな」
まゆり「んー? どうしたのー?」
岡部「い、いや、なんでもない……ちょっと機関による精神攻撃のせいで動悸が、な……」
まゆり「……顔赤いよー?」
岡部「え? そ、そうか?」
まゆり「風邪かなー?」 ピトッ
岡部「や、やややめんかっ」
まゆり「もー、お熱がちゃんと計れないよぉ~」
岡部「この狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真! 風邪などに倒れるわけがなかろうっ!」
岡部「うっ……、そ、それはだな」
まゆり「えっへへ」
岡部「……まゆり?」
まゆり「あの時は、オカリンが死んじゃうんじゃないかって、すっごく心配だったんだよー?」
岡部「そ、そんな……大げさな……」
まゆり「まゆしぃはとっても心配なのです」
岡部「え?」
まゆり「オカリンのリーディングシュークリーム? の時と、昔熱出した時……おんなじなんだもん……」
まゆり「急に目の前がぐにゃぐにゃしてきて、立っていられなくなって~、って……」
岡部(……リーディングシュタイナーのことか)
岡部「まゆり……」
まゆり「えっへへ、ごめんね? 急に……こんな話しちゃって。せっかくのかいはつひょーぎかい、なのにねっ」
岡部「心配するな、俺はどこにもいかん」
岡部「だからお前もずっと俺のそばに──」
岡部「……っ」
まゆり「ふえっ?」
岡部「い、いや、なんでもない……」
まゆり「ねえオカリンオカリン、覚えてる?」
岡部「何を──んっ」
チュッ
まゆり「えへへ……」
岡部「おまっ……いきなり、な、何をっ……」
岡部「え? あ、あぁ……」
まゆり「ね、ねえオカリン」
岡部「お、おう!?」
まゆり「まゆしぃたち……もう……大人……でいいんだよ……ね?」
岡部「え!? ど、ど、どどうでしょう!?」
まゆり「まゆしぃはそろそろ……大人の階段……登りたいなー……って、思ってるんだぁ」
なにいいいい!?
まゆり「ね……い、いいよね? オカリン……」
今にも消えそうな声で呟くと、まゆりは顔を近づけてくる。
まゆり「んっ……」
岡部「──!」
先ほどの小鳥が啄むようなキスとは違い、今度は恐る恐る舌を絡ませてきた。
まゆりの細い喉から漏れる吐息、今まで経験したことのない感触。
全身の毛穴が開き、体温が上昇するのを感じ取る。
同時に、下半身にも灼熱の欲望が溢れ出す。
岡部「んんっ……」
まゆり「オカリ……」
まゆり「……えへへ」
岡部「まゆ……」
まゆり「ずっと、オカリンと……こうしたいなー……って思ってたんだぁ」
まゆり「でもね? オカリンはクリスちゃんと……」
まゆり「だからまゆしぃは……もう──」
そう、開発には今、紅莉栖が──
だが、もはや抑えることはできなかった。
ギュウウッ
まゆり「え!? えー!?」
我慢できるはずがないじゃないか!
俺はただの学生で、ただの男だ。
今度は俺からまゆりの唇を求めた。
唇、舌、歯茎とあらゆる箇所を貪り、耳、首へと目標を変える。
まゆり「オカッ……んんっ……はっ……んっ」
並行してまゆりのふくよかな乳房も揉みしだくと、豊満な胸とに対して小さな躰が一瞬引きつった。
まゆり「あっ……ぅっ……」
悩ましげに声を濡らすまゆりが愛おしすぎて──
俺はまゆりの下腹部の下へ指先を這わせる。
すでにまゆりの運命石の扉は、淫らにぬたついていた。
岡部「……だめか?」
まゆり「……で、でもこれ以上は……」
岡部「もう、抑えられないんだ……」
まゆり「オ、オカリーン……」
この時の俺は残念ながら冷静ではなかった。
一時の欲望に溺れるということが、いかなる破滅を招くのか、あの時の教えてやりたい。
岡部「あ……あぁ」
床に仰向けになっているまゆり。
そのまゆりを見下ろす。
自己主張の乏しい肉芽──
もはや運命石の扉は、俺の魔剣を受け入れる準備ができていた。
例えるなら宇宙。
キラリと濡れ輝く星たち。
その中でもひときわ大きく、そして煌めく太陽にそっと触れてみる。
まゆり「やっ……だ……だめぇ……」
岡部「……」
この圧倒的征服感。
今まで大事に大事にしてきた幼馴染。
冒涜──
思わず滅茶苦茶にしたくなる。
実戦はじめてにも関わらず、脈打つ我が魔剣は桃色からどす黒く変色していた。
岡部「……いくぞ」
まゆり「う…………うん」
機は熟した。
ずっと閉ざされてきた秘部に、孤独の観測者をあてがう。
まゆり「ひぅっ……」
濡れた感触が絡みつく。
思わず身を震わせるが、もう立ち止まれない。もう迷いはない。
ずぶずぶと埋まっていく魔剣ミストルティン。
まゆり「ぁ……ぅ……」
岡部「うくっ……」
今、俺は運命石の扉へと到達したのだ。
動けなかった。
僅かな振動でも果ててしまいそうだったからではなく──
甘美な快楽を一秒でも長く味わっていたからでもなく──
ただただ思考が延々と引き伸ばされていた──
まゆり「ぅっ……おかり……ん」
岡部「……」
まゆり「……い」
まゆり「いいよ……動いても……」
まゆり「まゆしぃなら……大丈夫……だから」
岡部「……あ……ぁぁ」
───
──
まゆり「はぅっ……ぅっ……ん」
岡部「ふっ……! はっ……!」
まゆり「んんっ……」
運命石の扉に到達してから、どれほどの時間が過ぎただろうか。
随分長い時間を過ごしてきたようにも、一瞬のことだったようにも感じる。
岡部「まゆ……りっ……」 ニチュッ
まゆり「んっ……ぁっ」 チュッ
岡部「はぁっ……ふぅっ……」 ズッチュ
まゆり「あっ……あんっ……んんっ……おかっ……いいっ……」
岡部「くっ……うぐっ……このままではっ!」
まゆり「いいよ……このままっ……」
岡部「はぁっ……はっ……」
「跳べよぉぉぉぉっ!」
岡部・まゆり「!?」
岡部「うっ!」 ドピュルルル
グニャアアアア
……どういうことだ?
俺が送ったのはDメールではなく精子だ。
まさかそれで世界線が変動したとでも?
いや、それより紅莉栖だ、紅莉栖の声が聞こえた。
もしかしてあいつ、タイムリープを?
となると紅莉栖がタイムリープしたことにより世界線が変わるような行動──
その結果俺のリーディングシュタイナーが発動したといったところか。
体の火照りは依然として収まっていなかったが、思考は冴え渡っている気がした。
「おか……あんっ!」
岡部「おいまゆり、い、今はそれどこじゃ──」
萌郁「んっ……あっぁっ……」
目を疑った。
いつの間にか俺は床に仰向けになっており、萌郁が俺に跨り身を捩らせている。
な、なぜだ、俺はなぜ萌郁と!?
まさか世界線が変わったから!?
い、いや、それより……も、だ。
さっきイッたばかりなのに我が魔剣がまた血に飢えている。
いや、”また”ではない、恐らく俺は”まだ”イッてないのだ。
だが脳はイッたと認識している……。
その記憶の齟齬が俺を苦しめることになる──
岡部「う、うぐっ……」
萌郁「岡部く……?」
岡部「うぁぁぁ!」
脳はイッたと認識しているはずなのに下半身は脈動を留まることを知らない。
まずい、なんだかおかしい。
萌郁「あっぁっ……すごっ……んんっ」
萌郁が腰を激しく上下させてるところに、さらに捻りを加え、魔剣の刺激を高める。
早く、早く魔剣に溜まった邪を──
「跳べよぉぉぉぉっ!」
岡部・萌郁「!?」
岡部「うっ!」 ドピュルルル
グニャアアアア
うぐっ……。
恐る恐る目を開く──
そこには黒髪、ルカ子──
俺はルカ子の両の膝の裏に腕を通し、華奢な体躯を持ち上げ、腰を跳ね付かせていた。
なんだよこれ。
さらに、またも世界線が変わったせいで脳と体の状態の齟齬が発生している。
脳からの快楽物質の放出は次第に抑えられていくものの、依然として俺の下半身は膨張を続けており、ルカ子の蜜壷に包まれている。
──正確には後門だったのだが、今の俺は知る由もないし、今後も知ることはなかった。
るか「き、きて、おかべさっ……」
相変わらずキュンと来る。
だが男だ。
いや、今は女だ。
くっ……前代未聞前人未到の境地……!
脳はすでに果てている。だが躰は欲しがることをやめない!
頭では分かっていても、躰がそれを受け入れようとしない!
るか「ふぁぁっ! だ、だめぇぇぇ……」
「跳べよぉぉぉぉっ!」
岡部・るか「!?」
岡部「うっ!」 ドピュルルル
グニャアアアア
艶かしい躰を貪りつつ、脳は必死に抑制をかけようとした。
しかし躰は……俺の躰ではなくなったかのように律動する。
パンッパンッ
岡部「うぅうぅっっっぐぐぅっ!」
留美穂「にゃっ……うっ……あんっ……奥にぃっきて……るっ……」 パンパン
苦しい、すべて出し切りたい、注ぎ込みたい。
視界は真っ白になり脳髄は常に電流が迸っている。
もはや目の前の躰が誰のものかなど関係無かった。
留美穂「あぅううぅっ!」
紅莉栖「跳べよぉぉっ!」
岡部「うっ!」
留未穂「ぁっんんっ……」
グニャアアア
世界が俺を犯そうとしている。
いや、この場合俺が世界を犯しているのか?
……そんなことはどうでもいい。
全部俺のせいだ。
俺が迂闊に運命石の扉を開いたせいだ。
そこに首を突っ込んだせいだ。
あのときの俺に言ってやりたい。
迂闊なことをするなと。
軽率なことをするなと。
見てみぬフリをするなと。
もっと注意をはらえと。
一時の欲望に溺れてしまっては破滅を招くということを!
壊れる、壊れてしまう。
依然として俺の脳は錯覚を起こし快楽物質、脳内麻薬をぶちまけている。
このままでは廃人も同然、いやそのほうがまだましかもしれなかった。
パンッパンッ
もはや抑制することが出来ない。
もはや自分の躰ではなかった。
これではまるで猿じゃないか……。
なんだろう、灼熱の蜜に溺れている岡部倫太郎──
それを上から冷えた目で見ている俺、そんな感覚。
パンパン
鈴羽「牧瀬……紅莉栖っ!?」
紅莉栖「続けて、どうぞ」
今はこの数億もの岡部倫太郎を放出したい。
そのために腰をくねらせ続ける。
白濁のワルツを踊り続ける。
岡部「すずっ……鈴羽ぁっ……!」 パンッパンッ パパンッ
鈴羽「あんっ、ちょっと、激しすぎっ……る……って!」
岡部「ぐうぅうぅぅっ」 パンッパンッ
紅莉栖「跳べよ」
鈴羽「!?」
岡部「うっ!」 ドピュルルル
ながい。
こんどはとてもながい。
俺は琥珀色の海を泳ぎ続けていた、全裸で。
すごくぐにゃぐにゃしてる。
目を閉じて流れに身を委ねる、全裸で。
とてもきもちがいい。
次第に世界は元の形へと収束する。
あ……。
俺は……。
うぐっ……
長いリーディングシュタイナーだった
だが今の俺の躰はそんなことお構いなしだった
今すぐに出し切りたい
俺を受け入れて欲しい
しかし俺の目の前には誰もいなかった
ど、どういうことだ?
岡部「紅莉栖!?」
紅莉栖「あんた一体……」
岡部「く、紅莉栖、助けてくれ……」
紅莉栖「ふぇっ!? は、初めて名前を……って今はそんなことどうでもいい!」
紅莉栖「あ、あんた……」
紅莉栖「あんたたち一体……ナニを……!」
岡部「はっ!?」
後ろを覗いてみる。
るか「はぁっはぁっ!!」 パンパンッ
岡部「」
まさか──
観測した途端、俺の運命石の扉は”異物”を認識し出した。
るか「お、おかべっ、おかべさぁん!」 パンッパンッ
待て、ルカ子はさっき女だったはず──
と言うことはさっきのやたらと長かったリーディングシュタイナーは……
紅莉栖のタイムリープ+ルカ子のDメール打ち消し……!?
いや、そんなことはどうでもいい。
男だとか、女だとかそんなことはどうでもよかった。
今はただこの苦しみを──
紅莉栖「あ、あわわわわ!」
岡部「くっ、紅莉栖っ……!」
岡部「俺はお前のことがっ……」
岡部「すっ──」
岡部「だっ──」
そこで俺の脳は限界を迎えた。
その後、夢の中でルカ子に何度も何度も突かれながら──
紅莉栖にだいしゅきホールドを食らい──
俺自身も幾度と無く、その細身の体を貪り尽くした。
その喧騒の外で、屈強そうな男たちが、とち狂ったダルやまゆりにゲルバナにされていた。
が、そんなことはどうでもいい。
シュタインズゲートは開かれたのだから。
後編 『再生と狂気のマッドサイエンティスト』 END
乙
乙乙
クリスが過去に戻っていろいろやったから現代のオカリンからしたらちびっと世界線が変わってるんじゃない?
タイムリープで世界線~については
>>135
です、ちょっぴり補足すると
原作ルカ子ENDでルカ子タイムリープ→ほんのすこしだけ過去が変わってオカリンRS発動、ってあったので
タイムリープでもRS起こるくらいの変動は起こせるのではないかな、と
見てくれた人ありがとう
まゆしぃはごめんね
Entry ⇒ 2012.09.09 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
岡部「フェイリスで抜いてしまった……」
岡部「はあ……」
フェイリス「凶真、ため息なんか吐いてどうかしたかニャ?」
岡部「なっ、フェイリス!? なんでここに……」
フェイリス「今日はオフだからラボに遊びに来たのニャ!」
岡部「それなら挨拶くらいしろ……急に入ってこられると心臓に悪い」
フェイリス「ニャニャ? ちゃんとフェイリスはお邪魔しますって言ったニャ」
岡部「そ、そうだったか?」
フェイリス「でも、凶真ってば何か考え中みたいだったから気付いてくれなかったのニャ……」
岡部「す、すまん……」
岡部「まゆりはレイヤー仲間とコスの採寸をするから今日は来ない。助手とダルはガジェットに必要なパーツをそれぞれ買い出しに行っている」
フェイリス「ニャるほど、つまり凶真とドキドキの二人だニャ!」
岡部「二人きり!?」
フェイリス「うにゃ? どうかした?」
岡部「いや……」
岡部(ただでさえ抜いた後で会話しにくいというのに……よりによって二人など)
フェイリス「それで、凶真」
岡部「なんだ?」
フェイリス「さっきはニャんでため息を吐いていたのニャ?」
フェイリス「凶真がため息を吐くなんて珍しいニャ……ま、まさか!?」
岡部(ば、バレた!? い、いや、そんな事は……)
フェイリス「遂に奴らが復活したのかニャ!?」
岡部「はあ……?」
フェイリス「なんとか前に封印したと思ってたけど、まさかもう封印が解けるなんて……」
岡部「……」
フェイリス「フェイリスと凶真の二人で協力したなんとか封印したあれが、また解き放たれるなんて……ため息を吐くのも分かるニャ」
岡部(良かった、どうやら気付かれてないみたいだ……)
岡部「あ、愛ぃ!?」
フェイリス「凶真……?」
岡部「な、なんでもない……」
岡部(普段はスルーするような冗談の言葉でも、反応してしまう……マズいな)
岡部(とりあえず、いつも通りフェイリスに話を合わせて怪しまれないように……)
フェイリス「……」ジー
岡部「おい、なぜそんなに睨み付ける……」
フェイリス「凶真はニャにかフェイリスに隠し事をしてるニャ……」
岡部「!?」
フェイリス「凶真、フェイリスの目を見るニャ」
岡部「ぐっ、だから隠し事など……」
フェイリス「さっきのため息も、その隠し事が原因かニャ?」
岡部「なっ」
フェイリス「ふふ、凶真は隠し事が下手ニャ」
岡部「ち、違う!俺は……」
フェイリス「無駄ニャ! フェイリスの眼を全ての真実を見抜くのニャ!さあ、凶真!全てを晒すニャ」ジー
岡部「や、やめっ」
フェイリス「凶真はどんな隠し事をしてるかニャ~♪」ジー
フェイリス「ニャフフ~ん」ジー
岡部「こ、後悔するぞ……」
フェイリス「そんニャこと……えっ」ジー
岡部「くっ」
フェイリス「……」ジー
岡部「……フェ、フェイリス?」
フェイリス「はぅ」
岡部「そ、その……すまん」
フェイリス「あ、う、ううん……」
岡部「……」
フェイリス「……」
岡部(き、気まずい……)
フェイリス「お、岡部さんも、男の子だもんね……し、仕方ないよ」
岡部(フェイリスが素になってる……そこまで動揺してるのか)
岡部(ば、バカか俺は!? なんて事を聞いているんだ!!)
フェイリス「ううん」
岡部「……えっ」
フェイリス「ダルニャンは最近、彼女ができたから……」
岡部「そ、そうか。意外に律儀だな。あいつ……」
フェイリス「……」
岡部「……」
岡部(俺は、ダル以上のHENTAIという事か……)
岡部「な、なんだ!?」
岡部(や、やはり嫌われたよな……最悪、ラボメンを辞めるなんて言い出す可能性も)
フェイリス「お、岡部さんはどうして……」
岡部「り、理由か? 最近はガジェットの開発で忙しくてろくに処理できなかったんだ……すまない、こんなのただの言い訳だ」
フェイリス「あ、その……違うの」
岡部「違う?」
フェイリス「その……」モジモジ
岡部「……?」
フェイリス「ど、どうして岡部さんは、私で……したの?」
フェイリス「クーニャンやマユシィの方が岡部さんの傍によく居るのに……」
岡部「幼馴染みのまゆりを今更そんな目で見れない。紅莉栖は……あまり異性として意識した事がないな」
フェイリス「ルカニャンやスズニャン、モエニャンは……?」
岡部「なぜその三人が……あとルカ子は男だ」
フェイリス「岡部さん……」
岡部「そうは言ってもな……」ポリポリ
岡部「しょ、処理しようと思った時に最初に思い浮かんだ女性がお前だったんだよ」
フェイリス「!?」
フェイリス「岡部さんが、私で……」
岡部「こんな男と二人きりなど、気持ち悪いだろ。今日は帰った方がいい」
ムギュ
岡部「えっ……」
フェイリス「……そんな事で帰らなきゃならないなら、ラボメンガールズみんな岡部さんと顔合わせできないよ?」
岡部「はあ? それはどういう……」
チュ
フェイリス「んっ……」
岡部「なっ……」
留未穂「いまは、留未穂って呼んで……」ギュ
岡部「な、な、なんで……俺は、お前を」
留未穂「私も、同じだから」
岡部「えっ」
留未穂「その、岡部さんで想像して……し、してる、から」モジモジ
岡部「な、ん……だと……」
留未穂「だから、岡部さんが気に病む必要なんてないの……」
岡部「な、なんで」
留未穂「……?」
岡部「なんで、俺で……」
岡部「あっ……」
留未穂「こんなに、想ってるのに……」
岡部「じゃ、じゃあ、まさか……」
留未穂「うん……岡部さんは?」
岡部「お、俺!?」
留未穂「岡部さんは、どう想ってるの?」
岡部「お、俺は……」
岡部(抜いた後、留未穂の顔を見て感じた顔の紅潮は恥じらいのせいか?)
岡部(こうして留未穂に想いを告げられ、鼓動が早くなっているのは異性に初めて告白されたから……?)
岡部(違う、そうじゃない……)
岡部(そうだ、俺は、俺は……)
岡部「……留未穂」
留未穂「なに?」
岡部「俺も、お前の事が……」
ガチャ
紅莉栖「ふぅ~疲れた。ったく、橋田が余計なものを買うせいで余計な時間がかかったじゃない」
ダル「ええ~そううう牧瀬氏だって……あれ、フェイリスたん?なんでオカリンに抱き付いて……」
岡部「マズい……」
ダル「男女二人きりのラボ、これは……僕と由季たん以降の二組目のカッポゥの予感www」
紅莉栖「ちょ、橋田!なに馬鹿な事を言ってんのよ!」
岡部「……」
フェイリス「にゃはは、クーニャンの言う通りニャ。フェイリスはただ凶真から魔力を分け与えて貰っ」
ムギュ
フェイリス「えっと……凶真?」
岡部「改めて言う。フェイリスいや、秋葉留未穂よ。俺もお前と同じ想いだ」
フェイリス「えっ」
紅莉栖「なっ……」
ダル「ほぅ」
岡部「俺は、お前が好きだ」
――
留未穂「んっ……朝?」
岡部「おはよう、留未穂」
留未穂「岡部、さん……? どうして、岡部さんが」
岡部「まだ、寝ぼけてるようだな……」ナデナデ
留未穂「んっ……あ、昨日……っ」モジモジ
岡部「いまの自分の姿を見ればすぐ思い出せただろ」
留未穂「きゃっ……」バッ
岡部「今更、隠す必要もないだろ」
留未穂「そ、それでも恥ずかしいよ……昨日は、あのまま、寝ちゃったんだよね」
留未穂「まだ少し体が重いけど、大丈夫だよ。ありがとう、心配してくれて」
岡部「お前は俺の大切な恋人なんだ。当然だろ?」ナデナデ
留未穂「えへへ……ねえ、岡部さん」
岡部「なんだ?」
留未穂「その、私で良かったの?」
岡部「何がだ?」
留未穂「私が、恋人で、本当に……」
チュ
留未穂「んむっ!?」
岡部「馬鹿者、お前以外で良い訳がないだろ」
岡部「俺は、もうお前以外有り得ないんだ。だから、二度とそんな事は言うなよ」ギュ
留未穂「うんっ……」
岡部「しかし、これからどうするか……」
留未穂「あの時、岡部さんが告白したあと、クーニャンたちに追いかけられて……」
岡部「逃げてる途中に追っ手の人数が増えていつの間にかラボメン全員に追いかけ回されるはめになっていたな」
留未穂「……なんとか、私の家に逃げ込んだけど」
岡部「ラボには当分戻れんな」
岡部「確かにな……」
留未穂「岡部さんは、今日どうする?」
岡部「お前が良ければ、もう少しここに居させて貰えると助かる」
留未穂「それじゃ、私も岡部さんと一緒に居ようかな」
岡部「そうか、なら……今日はずっと一緒だ」
留未穂「ううん、違うよ」
岡部「なに?」
ギュ
留未穂「これからも、ずっとだよ」
岡部「ふっ、そうだった。だってこれが」
留未穂「シュタインズ・ゲートの選択、だね」
おわり
読んでくれた人、ありがとニャンニャン
(ベッドシーンまで)跳べよおおおおおおおおお!!!!
Entry ⇒ 2012.09.03 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (2) | Trackbacks (0)
岡部「みんな俺から離れていく……」
ピリリリリ
着信音。見覚えのない番号──
ピリリリリ
底知れぬ不安が思考を支配する。
出たくない。
ピリリリリ
だがそれが止まる気配はない。
意を決して指に力を込める──
ピッ
その瞬間、周りの景色が琥珀色に包まれ、ぐにゃぐにゃと揺れ始める。
平衡感覚は失われ、立っていられなくなり──
女性「ちょ、ちょっと!? 大丈夫!? しっかりして!」
ごめん……なさい……。
Chapter 1 『分離喪失のデジャヴュ』
からだが──
あたまが──
煮えたぎる熱湯の中にいるみたい。
ボコボコと湧き上がる泡が産まれては消え、産まれては消え──
延々と繰り返される。
見覚えのない記憶の泡が産まれては消え、産まれては消え──
延々と繰り返される。
永遠にも感じられる時間。
まゆり……。
たすけられない?
このまましぬ?
熱はやがて引いていく。
今、深く暗い海の底にいる。
無意識に息が漏れる。また泡。
くりす……。
くりす?
くりすってだれ?
岡部「……ぁ」
女性「あっ!」
岡部「あれ……」
女性「良かった。目を覚ましたのね、倫太郎くん」
岡部「……あ、叔母……さん? あれ……ぼくは……」
叔母「あなた一ヶ月も熱にうかされてて……もう大変だったのよ」
叔母「でも、もう大丈夫だからね」
岡部「ねえねえそんなことより聞いてよ!」
叔母「?」
岡部「夢を見たんだ、すごく長い夢」
岡部「ぼくが大人になるまでの夢!」
岡部「それでね? けんきゅうじょをつくって、色んな仲間もいて!」
岡部「それで……あれ?」
叔母「……大丈夫、叔母さんが付いてるから……」
岡部「ねえ……まゆりは? まゆりに会いたい」
叔母「まゆ……り? 誰かしら」
義叔父「友だちかなんかだろう」
叔母「でも、2000年クラッシュの直後だし……今は東京中が混乱してて……とてもお友達と連絡なんて……」
義叔父「日本──いや世界中も大混乱だ。そのせいで義兄さんたちの葬儀もいつになるか──」
岡部(そう……ぎ……?)
叔母「ちょっとあなた!」
義叔父「まだ8歳だ、葬儀の意味なんて分からんさ」
叔母「え、え!? す、少し遠くに行っちゃっただけよ」
岡部「今、そうぎって……」
義叔父「……っ」
岡部「うそだ、夢の中では二人ともずっと生きてて……」
岡部「うそだうそだうそだ……」
叔母「倫太郎くん……」
岡部「なんだよこれ……なんだよこれぇぇぇ!」
叔母「倫太郎くん……大丈夫、大丈夫だから……!」
~小学校~
少年「おかべって頭いいよなー」
岡部「そんなことないと思う」
少年「親がすぱるたなのか?」
岡部「いや、そういう訳じゃないんだけどさ。なんとなく解き方が閃くっていうか、覚えてるっていうか」
少年「またまたー、ガリ勉してんじゃねーのー?」
岡部「はは……」
叔母「あいつって誰よ」
青年「倫太郎。年下のくせに妙に落ち着いてるっていうかさ、なんか生意気」
叔母「あんたが子供すぎるの、中学生でしょ?」
青年「そうだけどさー……」
叔母「でも、もうちょっと子供らしくしてもいいのにねぇ……」
叔母「まだ私達に遠慮してるのかしら、もう随分経つのに」
叔母「少し可愛げないわよね」
岡部「……」
岡部(聞かなかったことに……)
ギッ
青年・叔母「!?」
岡部「……あ」
叔母「あ、や、やだ……いたの? あはは……」
岡部「……す、すみません」
~中学校~
少年A「なあ、数学の宿題見せてくれよー」
岡部「またか、いい加減自分でやってこいよ」
少年A「いいだろー? 岡部なら宿題なんてちょちょいのちょいだろ!」
岡部「……たく、仕方ないな」
少年A「へへっ、サンキュー!」
少年A「ったくよー。岡部の奴、また宿題ガチでやってやがった」
少年B「空気読めってんだよな、全問正解とか怪しまれるっつーの」
少年C「つか、ズルでもしてんじゃね?」
少年A「なくはねーよなぁ」
少年B「それで調子乗ってるとしたら痛すぎだろ」
少年C「たまに予言じみたこと言うのも痛いよなー」
少年B「そうそう、あいつの口癖、”なんか見覚えがある”だからな」
少年A「いてーいてー! はははっ」
岡部「……っ」
青年「はははっ!」
岡部「……っ」
岡部「くだらない……ただの厨二病じゃないか」 ボソッ
青年「は?」
岡部「……何がマッドサイエンティストだ!」
青年「……なにTVにケチつけてんだよ」
叔母「ちょ、ちょっと……」
岡部「あ……いや……」
青年「意味分かんね」
義叔父「おいおい、食事中だぞ、二人とも」
岡部「……すみません」
青年「……」
TV「フゥーハハハ!」
岡部(デジャブってやつなのか?)
岡部(まゆり……まゆりは今どこで何をしてるんだ)
岡部「……」
岡部(眠れないな、トイレにでも行こう)
岡部「……?」
『でもねぇ……』
『俺だって我慢してんの、でもあいつはいつまで経っても塞ぎこんだままだし、暗いし笑わねーし』
『今日の晩飯んときだって聞いたろ? 事あるごとにわけわかんねーことばっか言ってさ』
『そう言うな、倫太郎も両親を無くして辛い思いをしてきているんだよ』
『2000年を境に色々と変わってしまって、混乱してるのよ……』
『でももう4年だぜ!? 俺だって友達亡くしてたりなぁ!』
『最近は言わなくなったけど、最初の頃はまゆりがどーとかこーとか煩かったよな!』
『俺だって、あの頃は辛かったんだぞ!?』
『論点がずれてきている、ともかく倫太郎はまだ中学生だ、追い出すなんてとてもじゃないができない』
『そうよ、少なくとも中学卒業までは……ねぇ』
岡部「……っ」
岡部(俺の居場所は……ここじゃない)
岡部(学校にも……家にもないんだ)
岡部「記憶を頼りに来てみたが……本当にあったんだな。来たことなんてないはずなのに……」
岡部「大檜山ビル二階……」
岡部「……空き部屋……か」
岡部「……ははっ、ははは」
岡部(ここに来ればまゆりに会えるんじゃないか、そう思ったんだけどな)
岡部(会えるわけがない。当たり前だよな……)
岡部(俺にはもう居場所もないし、家族も、幼馴染もいないんだ……)
男「おい、何してんだ店の前で。客か?」
岡部「え? あ、いや……俺は……」
男「んだよ、ガキか。客って訳じゃあなさそうだな」
岡部「俺はガキじゃ……」
男「ガキだろ、高校生……ってとこか?」
岡部「……中学生です」
岡部「……」
男「で? ここらじゃ見ない顔だし、うちの客でもないみてーだけどよ、なんの用だ?」
岡部「……ここの二階って、ずっと空き部屋なんですか?」
男「あん? そうだけどよ」
岡部「なんだかここ、すごく懐かしくて……俺の居場所だった……そんな感じがするんです」
男「居場所? 変なこと言うじゃねーか」
岡部「……俺には居場所がないんです、家にも学校にも」
男「なんだよ、家にも学校にもいたくねえってか?」
男「……なぁ、真冬のマンホールの中──いや、ガキにする話じゃねーな」
岡部「……」
男「……おめーどっから来たんだ? 家は?」
岡部「中野……いや、池袋」
男「池袋っていやー、2000年クラッシュで特に被害がでかかった……」
男「……おめーみてーなガキにも色々あるってわけだな」
岡部「……」
男「俺は天王寺裕吾。おめー、名前は?」
岡部(てん……のうじ……)
岡部「岡部」 ボソッ
天王寺「あん?」
岡部「岡部……倫太郎」
天王寺「なんだと? 岡部倫太郎?」
岡部「……はい」
岡部(はしだ……はしだ……すず……?)
岡部「聞いたことは……あるような」
天王寺「……そりゃそうだよな、仮に会ったことあるっつっても覚えてるわきゃねーよな……」
岡部「……?」
天王寺「いや、こっちの話だ」
天王寺「なあ岡部、おめー今日からうちでバイトしねーか」
岡部「え? バイト?」
天王寺「っつっても、まだ中坊だからよ、実質手伝いみてーなもんだ」
天王寺「もちろん謝礼もそれなりに出してやる。そんで、おめーが中学卒業したら、ここの二階、格安で貸してやるよ」
岡部「え……?」
岡部「……中学生の俺でも分かるくらい安いですよねそれ……。いや、それとも、一日1000円とかですか?」
天王寺「んなわけねーだろ、月だよ月」
天王寺「あぁ、後、ブラウン管ちゃんを壊したら、家賃アップな」
岡部「……」
天王寺「どうする? 自信なかったら断ってもいいんだがな。欲しいんだろ? 居場所ってやつが」
岡部「いえ、やります、やらせてください」
天王寺「へへっ」
チャリンチャリンチャリン ガコン
岡部「……?」
天王寺「ほらよ」
岡部「これって……」
天王寺「マウンテンジュー、ガキは好きだろ? こういうの」
天王寺「いいから飲んどけって」
岡部「……」
カチッ プシュ
岡部「……美味い」
天王寺「そうか、そりゃ良かった」
こうして俺は、手伝いとしてブラウン管工房に出入りすることなった。
とは言え、時代はブラウン管テレビよりも液晶テレビ。
工房の手伝いは忙しさとは無縁だった。
たまに来る貧乏そうなお客の接客の他は、店内の掃除、店長の娘である綯の世話ばかり。
それでも俺は、中野にある叔母の家に帰らない日もあるほど、この場所に入り浸った。
居場所を求めて。
記憶の奥底にある、この場所を──
Chapter 1 『分離喪失のデジャヴュ』END
2006年 12月
天王寺「んじゃ俺はちょっと遠出するからよ、綯の世話と店番、頼んだぞ」
岡部「いってらっしゃい、店長」
天王寺「あ、言っとくが綯に手ぇ出したら殺す」
岡部「だ、出しませんよ……」
岡部「ごめんな綯、今日は店内の掃除しときたいから……」
綯「そっかー……じゃあ私、一人で遊んでるね」
岡部「ホントにごめんな」
岡部(物分りの良い子で助かる)
岡部「さて、と……」
岡部「よっ……」
岡部(TV重っ……)
綯「あ、お父さ~ん!」
天王寺「おー、よしよし、いい子にしてたか綯~?」
綯「うん!」
岡部「お帰りなさい、店長」
天王寺「おう、どうだ? 客は来たか?」
岡部「いえ、今日は一人も……」
天王寺「……かー、世知辛ぇなぁ」
岡部「それじゃあ俺、帰りますんで」
天王寺「おい、今日はうちで飯食って行けよ」
岡部「え、でも……」
天王寺「遠慮すんなって、シュークリームも買ってきてるしよ」
綯「わーい! ありがとうお父さ~ん!」
岡部「じゃあ、お言葉に甘えて……」
天王寺「んじゃ車用意してるから、店閉めといてくれや」
岡部「そうですかね」
天王寺「会った頃なんて、ひょろっひょろしてやがってよ。あー、おい、肉食え肉」
岡部「はい、頂きます」
綯「お父さん、シュークリーム!」
天王寺「おいおい、だめだぞ綯~、デザートは食後って決まってんだよ」
綯「え~」
岡部「はは……」
天王寺「送ってってやるよ」
岡部「でも、そこまでして頂くわけには……」
天王寺「おめーの老け顔なら夜道歩いてても大丈夫だろうが、まだ中学生だろ? いらねぇ遠慮すんなって」
岡部「……はは、酷いですよ、それ」
天王寺「うるっせぇ、男はなぁ、ちょっとくれー老けてたほうが貫禄あんだよ!」
岡部(なるほど、そう自分に言い聞かせてるんですね)
天王寺「ったく、また信号まちかよ……」
岡部「……」
天王寺「……もうすぐ高校受験だな、勉強はしてんのか」
岡部「いえ、あんまり」
天王寺「おいおい、高校浪人とかシャレになんねーからな、やっとけよ?」
岡部「大丈夫です、学校の授業はちゃんと受けてますし」
フラッ……
岡部「……っ」
天王寺「おい、冗談だよ、本気にすんなって」
岡部(あの……女……!?)
岡部「店長! ここまでで結構です!」
天王寺「あ、おい!」
ガチャ バタン
天王寺「おい、岡部! おめーどこに──」
岡部(どこだ、どこへ行った!)
岡部「はぁっ……はぁっ……」
岡部「くそ……どこに……」
岡部(見たことあるんだ……どこかで! 気になる……会って話がしたい……)
岡部「はぁっ……はぁっ……どこ……に……」
岡部「──あ」
岡部「お、おい!」
女「……」
岡部「こ、こんなところで寝てたら風邪を……」
女「……」
岡部「なぁ……」
ユサユサ カラン……
岡部(ん? なんだこれ)
岡部「す、睡眠薬!!?」
女「……」
岡部「大変だ……! で、電話! 救急車!」
岡部(着信……店長!)
ピッ
天王寺『やっと出やがった……おい! 岡部! おめー今どこに──』
岡部「店長! 大変なんです! 人が! 人が倒れてて!」
天王寺『は? お、おい、そりゃ本当──』
岡部「せっかく会えたのに! ど、どうしたら──」
天王寺『落ち着けって! あー、えっと、とりあえず場所を言え』
岡部「……あ…‥え、えっと……こ、公園! ○○公園……!」
天王寺『分かった、そこで大人しく待ってろ』
医者「心配要りませんよ、飲んだ睡眠薬の量はたいしたことはありませんし、最近のは安全性が高いですから」
天王寺「そ、そうか、そりゃ良かった」
岡部「……」
医者「それより、この寒さの中ずっと眠っていたら、危なかったかもしれませんね」
天王寺「ったく、自殺なんてバカなことしやがる」
岡部「あ……」
天王寺「お、目が覚めたようだな」
女「ここ……は」
天王寺「病院だ。感謝しろよ? こいつがいなきゃ今頃あの世行きだ」
岡部「……」
女「……」
天王寺「俺は医者を呼んでくる。少しの間任せたぞ、岡部」
女「おか……べ」
女「どうして」
岡部「え……?」
女「どうして死なせてくれなかったの!?」
岡部「お、おい!」
女「どうして! どうしてどうして!」
ガララ
天王寺「何があった!」
看護師「下がってください!」
女「どうしてよぉっ……!!」
岡部「……っ」
天王寺「な、なんだってんだよ一体……」
医者「とてもじゃないが話せる状態じゃありません。今日はもうお帰りになってまた後日……」
~病院~
岡部「……」
女「……」
岡部「なぁ……」
女「……」
岡部「……」
女「帰って」
岡部「……っ」
女「帰って……帰ってよ!」
岡部「……分かった」
岡部「また……来る」
女「来なくて……いいっ……」
岡部「……」
女「……」
岡部「なぁ、聞いてもいいか」
女「どうして」
岡部「え……」
女「どうして助けたりなんかしたの」
岡部「それは……聞きたいことが……あったからで……」
女「そんな理由で……そんな理由で助けたの?」
女「人の生き死にを左右させておいて、そんな理由で!?」
岡部「そんなつもりじゃ……」
女「あなたはそれで満足でしょうね……でも私は……っ」
岡部「……もうすぐ、退院できるんだってな」
女「……退院したところで、どうしようもない」
女「どうすることもできない。どう生きていけばいいのかも、分からない……」
女「家族もいない……私には……居場所がないの……」
岡部「……」
岡部「気持ちは、分かるよ」
女「……適当言わないで」
岡部「俺もそうだったから」
岡部「2000年に両親が死んだが、幸いなことに叔母夫婦に引き取られて面倒見てもらえた」
萌郁「……」
岡部「窮屈だった、俺の居場所はここじゃないっていつも思ってた」
女「消えてしまいたい、って思ったことは、ないの?」
岡部「どうだろうな……楽になりたいって思ったことはあるかもしれない」
岡部「それでも、生きてさえすれば考えも環境もいずれ変わる」
岡部「きっかけがなんであれ、居場所を作ることだってできる」
岡部「だから……死ぬだなんて、悲しいこと言わないでくれ」
岡部「絶望して一人で孤独に死んでいくなんて……そんなの悲しすぎるよ……」
女「……」
岡部「って、中学生なんかにお説教されても腹立つよな……」
女「え……」
岡部「ん?」
岡部「なんだよそれ」
女「見た目より、老けてる、から」
岡部「あのな……」
女「ふふ……」
女「……桐生、萌郁」
岡部「え?」
萌郁「私の、名前」
岡部(入り口の前で確認済みなんだがな)
岡部(まあいい……)
岡部「岡部倫太郎だ」
萌郁「ありがとう、岡部くん……もう少しだけ、頑張ってみようかな」
岡部(しかし、前向きになってくれたみたいでよかった)
岡部(これで記憶の謎を解く鍵が……)
岡部(って何を考えているんだ俺は!)
岡部(違う、そうじゃない! そんな理由で助けたわけじゃない……! あれは夢、夢なんだよ……!)
岡部(助かってよかった、前向きになってくれてよかったって、思ってる!)
岡部「うぅっ……」
女の子「あの……大丈夫ですか?」
岡部「あ、あぁ……心配要らない、少し立ちくらみが──」
岡部「え──」
女の子「んー?」
岡部「まゆり……? まゆりじゃないか!」
まゆり「え? どうしてまゆりの名前……」
まゆり「い、痛いよ!」
岡部「あ……わ、悪い……」
まゆり「え……えっと……」
岡部「なあ、覚えてないか? 俺のこと! ずっとまゆりのこと探してたんだよ!」
まゆり「え? え……あ……」
まゆり「あー! 岡部くんだぁー!」
岡部「そうだよ、岡部だよ!」
まゆり「なつかしいなぁ……小さい頃はよく一緒に遊んだよね~」
岡部「そう、そうだよ……」
岡部「……っ」
まゆり「え? あ、あれ? 岡部くん……? どうして……泣いてるの?」
岡部「え? い、いやっ……な、なんでだ……ははっ……」
岡部「よくわからないけど、まゆりの姿を見たらなんか……ぐすっ……」
まゆり「もう、大げさだよ~」
岡部「でも、どうして病院にいるんだ?」
まゆり「……」
まゆり「ねえ岡部くん、座って話そうよ。久しぶりに会えたから話したいこともいっぱいあるし」
岡部「あ、あぁ……」
それから俺たちは今まであった出来事を語り合った。
他愛もない話、世間話。
小さい頃の思い出。
2000年クラッシュでまゆりの両親が亡くなったこと。
それに伴い上野にいる叔母に引き取られたこと。
叔母はとても優しく、まゆりを本当の娘のように可愛がってくれたこと。
だけど、次第に話は暗転する。
まゆりは今、完治の難しい病気を患っている──
まゆり「うん」
岡部「がんばれよ」
まゆり「うん、ありがとう、岡部くん」
明るく振舞っていたが、目を見れば分かる。
まゆりは今、とても苦しんでいる。
だったら俺は、苦しみから救ってやりたい。
あの笑顔を守りたい。
連れてなんて行かせない。
そう、心に誓ったんだ。
あれ?
いつの話だ?
天王寺「もうおめーも高校生か」
岡部「ええ」
天王寺「よく頑張ったな、今日から2階は好きに使えや」
岡部「ありがとうございます、店長」
天王寺「言っとくけどよ、晴れて一人暮らしだからって、いきなり女連れ込むんじゃねぇぞ!」
岡部「そ、そんなこと……」
天王寺「しょっちゅう萌郁の見舞いに行ってたじゃねーか」
岡部「それは……別にそんな関係じゃないですよ、それに……」
天王寺「それに?」
岡部「勉強も忙しくなるでしょうし、そんな暇ありません」
天王寺「へぇ、おめーが勉強? これまでおめーが勉強してるとこなんてみたことねーのに」
天王寺「医者……か、そりゃあれか、例の幼馴染のためってやつか」
岡部「……」
天王寺「おめーの叔母夫婦への恩返しにもなるな。高校の学費は出してもらってんだろ?」
岡部「はい、本当に頭が上がりませんよ」
天王寺「まっ、頑張れや、立派な志だ」
~病室~
ガララ
岡部「まゆり元──」
るか「あ、こ、こんにちは……岡部さん」
岡部「あ、あぁ」
岡部(確かまゆりのクラスメートの漆原るか……)
まゆり「……あ、岡部くん。いつもごめんね」
岡部「いや、構わない。それより、いつもより元気が無いみたいだけど、悪いのか? 体調」
まゆり「ううん、そういうわけじゃないんだけど……」
るか「……」
まゆり「……ちょっとだけ疲れちゃったから眠るね?」
岡部「そうか……それじゃ仕方ないよな」
まゆり「ごめんね? せっかく来てくれたのに」
るか「……それじゃあボクも……これで」
るか「……」
岡部「何か知ってるんじゃないのか? よかったら教えてくれないか」
るか「で、でも……」
岡部「頼む、教えてくれ。まゆりの力になりたいんだ」
るか「え、えっと……ボク、病室の前でまゆりちゃんの叔母さんとの会話……聞いちゃって……」
るか「き、聞くつもりはなかったんですけど……ボク……」
岡部「いいから早く聞かせてくれ!」
るか「は、はい! それで、その……」
るか「まゆりちゃんの叔母さんもお金を借りてまで頑張ってはいるみたいなんですが……」
るか「これ以上の入院は難しいかも……って話……らしい、です」
岡部「そん……なっ……」
るか「うぅ……」
岡部「国とか自治体はなんとかしてくれないのかよ! そういう制度とかあるんだろ? なぁ!」
るか「それがその……全額を公費負担でというわけにはいかない、とか……そうおっしゃってました……」
岡部「なん……だよそれ……」
るか「あの……岡部さん?」
岡部(どうする……バイトを増やすか?)
岡部(でもそうすれば勉強がおろそかに……)
岡部(いや、そんなの関係ない。入院費が払えなくなってからじゃ手遅れなんだ)
岡部(そうだ、俺が今できることをしろ)
岡部(決めたんだろ? まゆりのこと守るって)
俺はただの学生。
当然働ける場所、時間は限定される。
それでも、もがくこと以外に術を知らない俺は、ガチガチのスケジュールの中、バイトと勉強に明け暮れていた。
が、そんな生活が長く続くわけはなく──
岡部「……」
岡部(7時にブラウン管工房を出たら、10時まで次のバイト……)
綯「ねえ」
岡部(少し遅れることを伝えないとな……)
綯「……ねえってば」
岡部(この店で仕事がない時は勉強させてもらおう)
岡部「ん? あぁ……綯か……いたのか」
岡部「今俺は忙しい、悪いが一緒に遊んでいられ──」
岡部「うぐっ……」
綯「お、お兄ちゃん!?」
岡部「はぁっ……はぁっ……な、なんでもない……」
岡部(くそっ……時間が足りない……金も足りない)
岡部(なんでまゆりなんだよっ! まゆりが何かしたってのかよっ!!)
岡部「……」
岡部「…………
岡部(今なら……)
ゴソゴソ
岡部(盗むのか? この金を? 俺に良くしてくれた店長から?)
岡部(それでいいのか? 本当にいいのか?)
岡部(でも、そうしないとまゆりは……まゆりはっ……!)
天王寺「おい、おめー何してんだ」
岡部「──!?」
岡部「店長、なんでもう戻って……」
天王寺「あん? この時間に戻るっつったろうが」
岡部「……っ」
天王寺「それよりなんだ? 金なんか握りしめて。そりゃおめーの金じゃ……ねーよな?」
岡部「こ、これはっ……」
天王寺「……はぁ」
岡部「……」
天王寺「見なかったことにしてやるからさっさとその金しまえ、くれてやる」
天王寺「遊ぶ金欲しさじゃねーってことは俺がよくわかってる」
天王寺「あれだろ? 例の幼馴染のためだろ?」
岡部「……はい」
天王寺「ただし、もうその幼馴染とやらのために頑張るのはよせ」
岡部「え……?」
天王寺「そうしねーと、おめーまでぶっ倒れちまう」
岡部「で、でも! それじゃあまゆりは──」
天王寺「岡部、なんでそうしてまで必死になる。他所の事情に口出ししてんじゃねえ」
岡部「でもまゆりにはもう……! まゆりを助けられるのはっ……!!」
天王寺「……岡部」
天王寺「おめー、人を殺す覚悟、あるか?」
岡部「……は?」
岡部「ひ、人を……?」
岡部「……」
天王寺「……」
天王寺「冗談だよ、忘れろや」
岡部「いや──」
岡部「ある、あります……」
岡部「俺はまゆりを助けるためなら……」
天王寺「……はぁ」
天王寺「……ったく、冗談のつもりだったのによ」
岡部「……」
天王寺「いいか、聞いちまったらもう戻れねーぞ」
岡部「はい……」
その日、俺は天王寺裕吾の裏の顔を知ることになる。
ラウンダー
FB
SERN
父親のように慕っていた人物の意外な一面。
しかしそれを受け入れるのに時間は要らなかった。
まるで最初から知っていたかのように。
こうして俺は、ラウンダー”地を這う者”として生きることを決めた。
身を裂くような寒さの中、しんしんと雪の降る日のことだった。
Chapter 2 『焦躁のサクリファイス』 END
2008年 2月1日
~高校~
ダル「岡部氏岡部氏」
岡部「なんだ」
ダル「最近休みがちだったけどだいじょぶ? 風邪?」
岡部「そんなんじゃない」
岡部(任務のせいで休んでるなんて言えるはずがないだろう)
ダル「あのさ、今日カラオケいかね? アニソン三昧」
岡部「悪いが他をあたってくれ、今日は用事がある」
ダル「ちょ、またすかー! 付き合い悪いっつーの!」
ダル「はいはい、厨二病厨二病、厨二病は不治の病」
岡部「だからそんなんじゃないって言ってるだろ」
ダル「つーか橋田っていい加減よそよそしいっつーに」
岡部「橋田は橋田だろ」
ダル「もう! 岡部氏って呼んであげないんだからね!」
岡部「一向に構わん」
ダル「ぐはー、岡部氏デレなさすぎ……」
ガララ
岡部「まゆり、元気か?」
まゆり「あ、岡部くん、いつもごめんね~」
岡部「いいんだ、俺には見舞いに来ることしかできないしな」
まゆり「学校やバイトも忙しいんでしょ?」
岡部「そんなに大したことじゃない」
まゆり「でも、無理はしないでね? まゆりなら大丈夫だから」
岡部「……それを言うなら、俺だって……大丈夫だ」
まゆり「……えっへへ。岡部くんは、優しいねぇ~」
岡部「……っ、そんなんじゃない! 俺はただ──」
岡部「そ、そうだ! 今日はまゆりにプレゼントを持ってきたんだ、誕生日だろ?」
岡部「ほら、開けてみろ」
まゆり「わ~、ありがと~!」
ガサガサ
まゆり「……っ」
岡部「その髪留め、まゆりに……似合うかと思って……」
まゆり「……」
岡部「どうした? 気に入らなかった……か?」
まゆり「……っ、ううん! そうじゃないの。とっても嬉しいなーって思ってたんだぁ」
岡部「そ、そうか」
まゆり「うん! ありがとう、岡部くん。大事にするね、えへへ」
岡部「気に入ってくれてよかった」
岡部「じゃあ俺はそろそろ……」
まゆり「え? もう行っちゃうの?」
岡部「ゆっくりしていきたいとこなんだが、これからバイトでな」
まゆり「そっかぁ……それじゃあ、仕方ないよね……」
岡部「また来るからな」
まゆり「うん、それじゃ、またね」
岡部「あぁ、がんばれよ」
ブーブー
ピッ
岡部「こちらM3」
FB『M3、任務だ』
FB『我々を嗅ぎまわっている連中が、ある場所に潜伏してるとの情報が入った』
FB『本日19時に奇襲を仕掛け殲滅する』
岡部「……っ」
FB『殲滅はアルファチームが担当する』
FB『M5の調べによると奴らの人数は6人』
FB『仕留め切れずに逃亡を図られる可能性も考慮しておめーには待機メンバーとして加わってもらう』
FB『殲滅作戦開始とともに、おめーにはγ地点に待機してもらう』
FB『万が一、連中が逃亡してきた場合……』
FB『……殺れ』
FB『……必ず仕留めろ』
岡部「……っ」
FB『どうした、不安か?』
岡部「い、いえ」
FB『気休め程度だが……γルートが脱出ルートとして使われる可能性は一番低い』
FB『18時に○○に集合、詳しいことはM5に聞け』
岡部「……了解」
FB『あまり気負うなよ』
岡部「……分かっています」
ピッ
岡部「……」
シーン
M5「よし、それではM6はα、M3はγ、俺はβ地点にて待機」
M5「アルファチーム、殲滅に移行しろ」
「「「了解」」」
~γ地点~
岡部「……」
パララララ グアア
岡部(始まった!)
岡部(早く終われ……終わってくれ!)
パラララ ガン ガン ウアア
岡部「……」
シーン
岡部「……止まった」
岡部(震えが止まらない、くそっ……こんなときに!)
岡部(来るな……来ないでくれ、誰も来ないでくれ!)
岡部(早く……早く殲滅完了の連絡をくれ……お願いだ!)
岡部「……」
シーン
ザ……ザ-……
──『こちらアルファチーム、目標6人全員の殲滅を確認した』
タッタッタ
岡部「──!」
『万が一、連中が逃亡してきた場合……』
タッタッタ
岡部「……ぁ」
男「はぁっ……はぁっ……」
岡部(なんだ? 一体どうして……全員死んだんじゃなかったのか!?)
男「はぁっ……はぁっ……ちくしょう! なんだってこんなことに……」
岡部(どういうことだ? 情報になかった仲間!? それとも目撃者か!?)
男「はぁ……はぁ……電話っ……連絡を……」
岡部(……まずい!)
『……殺れ』
ザッ
男「──!?」
パーン
男「かはっ……!」
岡部「はぁっ……はぁっ……」
男「う……ぐぁ……」
『……必ず仕留めろ』
岡部(うぅ、ま、まだ生きてる……んだよな、これ)
どうした、撃てよ
岡部「!?」
まゆりのためなんだろ
なんでもできるんじゃなかったのかよ
仕留めろよ
岡部「う……」
うわああああああああああああああ
ああああああああああああああああ
パーン
男「がぁっ!」
パーン
パーン
パーン
パーン
岡部「あああああ!!」
カチッカチッカチッ
M7「よせ、もう死んでいる」
岡部「うっ……ぁっ……うぇっ……」
M7「こちらM7、連中の仲間か……もしくはねずみがいたようだ」
M7「問題ない、M3が始末した」
岡部「あ……あぁ……」
M7「M3、余計な心配は無用だ。たとえ一般人だったとしても警視庁への根回しはFBが行なってくれる」
岡部「うぅ……」
岡部「…………」
殺した……俺が。
ぐちゃぐちゃになるまで……。
いや、覚悟はしてたことだろ。
わかってたんだ、いつかこんな日が来るって。
でも──
『一般人だったとしても』
俺は……俺は……。
ガチャ
萌郁「あの……」
どうだ、人を撃った感想は
どうだ、人を殺した感想は
岡部「……誰だ、お前」
萌郁「え? あの……覚えてない?」
俺はお前だよ
久しぶりだな
岡部「久しぶり」
萌郁「あ、うん……」
岡部「何しに来た」
萌郁「え? ご、ごめん、迷惑だった……かな。遊びに来てもいいって、言ってたから」
お前、このままじゃ壊れるぞ
なれよ、俺に
鳳凰院凶真に
萌郁「あの、岡部くん……?」
鳳凰院凶真の仮面を、被れよ
俺ならお前を助けてやれるんだ
楽にしてやれるんだ
岡部「……なら早く助けてくれ」
萌郁「おか……震えてる」
萌郁「手もこんなに冷たい……」 キュ
岡部「寒いんだ、とんでもなく寒いんだ」
寒さのせいだけじゃないだろ
早く被れよ、ペルソナを
萌郁「岡部くん……!」 ギュ
岡部「……ぁ」
岡部(萌……郁……?)
萌郁「私、君に助けられた……」
萌郁「君のお陰で、生きる意味、見つけられたの」
萌郁「ねえ、全部話して……。君が抱えてる物、私にも背負わせて……」
萌郁「……今度は私が、あなたの力になりたい」
岡部(萌郁……) ギュウ
やれやれ
まあいい、いつでも呼ぶがいい
俺は常にお前のそばにいる
俺はお前だからな
ピッ
岡部「FBからの連絡が入った、これから現場へ向かう」
萌郁「了解」
萌郁「……あの、岡部く──」
岡部「仕事の時は岡部と呼ばないでくれ」
萌郁「ご、ごめん……なさい」
岡部「行くぞ、M4」
萌郁「了解……M3」
そう、俺は仮面を被る
今は岡部ではない
俺が名は 我が名は
鳳凰院凶真
Chapter 3 『自己防衛のファケレ』 END
2009年 4月12日
~学校~
ダル「なぁなぁ岡部氏、僕達もいよいよ卒業の年っすな」
ダル「また一緒にクラスになれて嬉しいお」
岡部「橋田、今俺はものすごく眠いんだ、話しかけないでくれ」
ダル「ええー? 何? もしかして徹夜でネトゲしてたとか?」
岡部「……」
ダル「ちょ、無視すんなし」
岡部「少なくともお前が考えてるようなことじゃないとだけ言っておく」
ダル「3年になって厨二病がちょっとはマシになってるかと思いきや、加速してた件について」
岡部「……」
~病室~
ガララ
岡部「まゆり、元気か?」
まゆり「……」
岡部「ん? どうしたんだ? 調子、良くないのか?」
まゆり「岡部くん……まゆりね、聞いちゃったの」
岡部「……?」
まゆり「まゆりの入院費……払ってくれてたの、岡部くんだったんだね……」
岡部「……」
まゆり「全部、叔母さんから聞いたよ?」
まゆり「岡部くんずっと無理してた……よね」
岡部「そんな……こと……」
まゆり「このままじゃ、まゆりの知らない岡部くんになっちゃう気がして、怖いの……」
まゆり「もう大丈夫だから……私、岡部くんの重荷になりたくないよ……」
岡部「そんなことない!」
まゆり「……っ」
岡部「そんなことない、重荷だなんて考えたこと無い」
まゆり「なんで? どうして私なんかのために……」
岡部「なんかじゃない、お前がいたから今の俺がいるんだ」
岡部「きっと今も、自分の居場所を掴めないまま、どこかを彷徨ってたかもしれない」
岡部「決めたんだよ、守るって。どんなことを犠牲にしてもお前の笑顔を守るって!」
まゆり「岡部くん……」
岡部「だから……重荷になってるだなんて思わないでくれ……」
岡部「俺はそんなことっ……一度も思ったことはない」
まゆり「ホントに?」
岡部「あぁ、本当だ」
まゆり「……」
まゆり「……まゆりは愛されちゃってるねぇ……えっへへ……ちょっと照れくさいよぉ……」
岡部「……はは」
本当にそうか?
岡部「──!?」
岡部(頼むからまゆりの前で出て来ないでくれ!)
お前は嘘まみれだな
岡部(お前は一体誰の味方なんだ!)
俺はお前の味方だよ
お前は俺だからな
まゆり「岡部くん……?」
岡部「はっ……」
まゆり「だ、大丈夫? やっぱり、無理してるんじゃ……」
岡部「む、無理なんかしてないさ」
まゆり「でも、バイトもすっごく大変……なんだよね?」
岡部「そ、それはっ……」
まゆり「もしかして危ない事……とかしてない……よね?」
岡部「……大丈夫だ、心配するな!」
まゆり「そうなの?」
岡部「ほら、俺って理数系には強いだろう?」
岡部「画期的な発明品を売ってるんだ、小さいけど研究所だってある」
まゆり「そうなんだ~、岡部くんってやっぱりすごいねぇ~、えっへへ~」
岡部「そうだ、まゆりもラボラトリーのメンバーに加わるといい」
まゆり「ええー!? いいの~!? まゆり、何もできないよ?」
岡部「心配するな、まゆりはいるだけでいいんだ。ずっと俺のそばに……いるだけで……」
まゆり「ラボラトリーのメンバー……ラボメンかぁ……えへへ」
岡部「だったら早く元気になれよ?」
まゆり「うん……」
岡部「それじゃ俺はそろそろ帰るからな」
まゆり「岡部くん……」
岡部「ん? どうした?」
まゆり「ありがとうっ」
岡部「……あぁ」
ガララ
岡部「ふふ……」
岡部(まゆりの笑顔……俺は守れるだろうか、いや、守ってみせる)
自我をコントロールし
心の中の善と悪を分離させ
それぞれ独立させたつもりだろうが
まゆりがお前のそばから姿を消した時
お前はどうなるかな?
岡部「……」
~ラボ~
ダル「んんんんんんん~~……」
岡部「どうした、そんなに唸って。腹でも痛いのか?」
ダル「いや、なんつーか。……岡部氏、ゴミ量産してどうするんのさ」
岡部「な、なんだと!」
ダル「はっきり言ってセンス無さすぎっしょ……オモチャの光線銃にリモコン仕込んだだけって、アリエンティ、マジアリエンティ」
ダル「あえて言おう、カスであると」
岡部「ぐっ……橋田……殴られたいのかっ……!」
ダル「はいはい、厨二病厨二病」
岡部「大体、俺が4月にラボに誘った時には即断ったくせに、どういうつもりだ」
ダル「だって、秋葉の──それもメイクイーン+ニャン2の近くにあるなんて聞かされてなかったんだもの!」
ダル「あ、良かったらこれから一緒にどう?」
岡部「結構だ」
ダル「ぐはー! 即答すか。つかなんでよー! フェイリスたんに会いに行こうず」
岡部「だからそのフェイリスが苦手なんだよ、俺は……」
岡部「あいつと話してると頭が痛くなってくる」
ダル「ふーん、まあいいや、じゃあ僕はこれで」
岡部「あぁ……」
ダル「ふひひ、もうすぐ誕生日だしフェイリスたんにイベントお願いしよっと」
岡部(俺は発明に向いてないのか? だが、記憶の奥底でこれらのガジェットを作れと……)
ゴチャゴチャ
岡部(やはり俺に発明など向いてないようだな……)
~ATFエレベーター内~
岡部「おい橋田、バナナがゲル状になる理由はまだ分からないのか」
ダル「全くもってイミフ、つーか僕だけに任せてないで岡部も調べるべきだろ常考!」
岡部「俺は色々とやることがあるんだ」
ダル「ったくもー! あなたいつもそうやって言い訳ばかり! 今日だって集合時間に1時間も遅れてきて!」
岡部「気色悪い、殴りたくなるからやめろ。それに、昼頃メールしただろ、遅れるって」
ダル「は? 昼頃? 着てないけど」
岡部「何……? いや、確かにしたはず」
ダル「だから着てないっつに」
岡部「携帯貸せ!」
ダル「あ、ちょ!」
ピッピ
岡部「ない……消したのか?」
岡部「……っ」
かみ合わない会話に戸惑いを覚える俺。
ポーン
ふと耳に、目的の階に到着したことを知らせる軽快な音がこだました。
同時に鉄の扉が割れ、飛び込んくる光に目を細める。
ゆっくりと鮮明になっていく視界の先にその人物は柱を背に立っていた。
岡部「……ぁ」
岡部「紅莉栖……」
気がつくと俺は──
その女を強く強く抱きしめていた。
岡部「あの女ぁ……全力で殴りやがって」
『馬鹿なの!? 死ぬの!?』
岡部「……」 ペタ
岡部(まだヒリヒリする。……くそ、いつもの俺ならこんなことには)
岡部(”あの夢の記憶”は、るかや橋田の時に”蘇っても封印しとく”と強く誓ったはずだったのだが……)
岡部「今日の俺はどうかしてるな」
岡部「きっと疲れてるんだ、さっさとラボに戻ってゆっくりしよう」
岡部「ん?」
天王寺「おう、岡部か」
岡部「もう閉店ですか、今日は早いんですね」
天王寺「今日はバイトの面接があってな」
岡部「バイト? こんな客も来ない店にバイトとは物好きな」
天王寺「おめぇが言うなや」
女「おっはー」
天王寺「……」
岡部「……っ」
岡部(この女……?)
岡部「まさか、バイトというのは……」
天王寺「そのまさかだ」
天王寺「名前は」 鈴羽「阿万音鈴羽」
天王寺「年は」 鈴羽「18」
天王寺「志望動機は」 鈴羽「ブラウン管が好きだから」
天王寺「採用」
岡部「まて、これはコントか?」
鈴羽「そういう君は……誰?」
天王寺「岡部ってんだ、この上を間借りしてるバカだよ」
鈴羽「ふーん」
スッ
岡部「ん?」
鈴羽「握手」
岡部「あぁ」
ギュウ
岡部「……っ」
鈴羽「よろしく、岡部倫太郎」
岡部(牧瀬紅莉栖といい、阿万音鈴羽といい、なんなんだ……一体)
~萌郁のアパート~
ガチャ
萌郁「あ、岡部くん」
岡部「邪魔するぞ」
萌郁「いらっしゃい。急に、どうしたの?」
岡部「今日、泊めてくれ」
萌郁「え? うん、いいけど」
岡部「ラボに人が押しかけててな、うるさくて敵わん」
岡部(ったく、あいつら、俺の部屋だということを忘れやがって……)
萌郁「マウンテンジュー、持ってくるね」
岡部「あぁ」
萌郁「ケバブも、あるから、一緒に……食べよ?」
萌郁「……岡部くん、なんだか、最近、変。何か、あった?」
岡部「なんでもない」
萌郁「疲れてる? 仕事にも、身、入ってない」
岡部「なんでもないって言ってるだろ。……少し黙っててくれ」
萌郁「……っ、ごめん、なさい」
岡部「……」
岡部(早くしないと……まゆりが……)
岡部(もう長くない? ふざけるなよ!)
岡部(早くDメール……電話レンジの仕組みを解明して……)
岡部(過去を……今を……未来を変えなくては)
岡部「……FBから? 定時連絡の時間ではないはずだが」
萌郁「え?」
ピッ
岡部「こちらM3」
FB『M3、ヘマったようだな』
岡部「……? なんのことです?」
FB『今、お前を探ってる奴らがいる。俺んとこにも聞き込みに来やがった』
岡部「……っ!」
FB『恐らく相手はユーロポールの捜査官だ』
岡部「なぜ……バレたんだ」
FB『知らねぇよ。いつも冷静なおめーらしくもねーミスだな』
FB『このことは本部には内緒にしといてやる』
岡部「……了解」
ピッ
萌郁「……FBは、なんて?」
岡部「俺の正体がバレたかもしれない。相手は……ユーロポールの捜査官」
萌郁「……っ」
岡部「殺すしか無い、今捕まるわけにはいかない」
萌郁「岡部くん。私も、力になる」
岡部「……勝手にしろ」
男「……おい、応答しろ、おい」
甘いんだよ
それでこの俺を出しぬいたつもりか?
チャキ
恨みはないが、死ね
ズキッ
岡部「……ぐぅっ!」
岡部(ここのところ頻発してる頭痛……くそ、こんなときにっ……)
岡部(俺は……俺はまゆりのためにも……立ち止まるわけには……いかないんだよっ!)
ザッ
男「──!?」
ズブッ
男「ぁ……が……」
ズッ
ビシャア
男「あ……ぁ……ぁ」
ドサッ
岡部「はぁ……はぁ……」
岡部(俺は一体、いつまでこんな事を続ければいいんだろうな)
ズキン
岡部「あぐっ──!?」
萌郁「ええ、そう。FBの予想通り、相手は、捜査官だった。……ユーロポールの」
萌郁「大丈夫。……2人とも、始末した」
萌郁「……目標αは、ガード下。目標βは、そこから離れた、路地に、死体、転がってる」
萌郁「……了解」
ピッ
萌郁「……M3、目標ブラボーも、排除してきた。後始末は、FBが。私たちは撤収を」
岡部「……萌郁」
萌郁「!? 初めて、名前、呼ばれた。こういう場では、本名呼ぶのは、まずいわ。コードネームを」
岡部「それより……なぁ」
萌郁「……?」
岡部「”思い出した”んだ、全部──」
そう、全部──
2010年 8月17日 17:00
もうすぐ、まゆりが死ぬ。
まゆりを救うためには最初のDメールのデータを消し、β世界線へと飛ばなくてはならない。
だがβ世界線にいけば、今度は紅莉栖が死ぬ。
なんでだよ……なんでなんだよ……こんなの、ひどすぎるだろっ……。
何かまだ、手があるはずだ! 諦めるな! 紅莉栖を見殺しになんて……俺にはできない!
俺は世界に抗う……!
だがどうすればいい。
ありとあらゆる可能性を考えても、答えは見つからなかったじゃないか!
岡部「ダメだ! 考えてる暇はない、そろそろまゆりが死ぬ時間だ! ここは一旦タイムリープして──」
『逃げるの?』
岡部「……」
『何度タイムリープしたって、1%の壁は超えられない!』
岡部(やってみなきゃ、わからないだろう……!)
岡部(鈴羽……こんな時鈴羽がいてくれればどれだけ心強かったか……)
岡部(鈴羽だったら何と答えてくれただろうか……)
『何年かに一度、世界線が大きく変動する大分岐のような年があるんだ』
『湾岸戦争があった1991年、2000年問題があった2000年、そしてタイムマシンが開発された2010年』
岡部(2000年……)
岡部(今ここで、俺がタイムリープに付いて回る48時間の限界を超えたらどうなる?)
『48時間を越えて跳躍すると、脳の物理的な状態の齟齬が大きすぎて障害を引き起こす可能性がある』
岡部「……っ」
岡部(人格も15年後の綯だった……よな?)
岡部(なら……俺にだって……!)
『障害を引き起こす可能性がある』
岡部「くっ……」
岡部(俺が初めて携帯を手にしたのは、1999年の誕生日に買ってもらった時)
岡部(届く。2000年に。あの時代の鈴羽に)
岡部(確か誕生日の夜、急な発熱で倒れたが……)
岡部(大丈夫、鈴羽は2000年の6月までは生きているはず。成功したら必ず鈴羽とコンタクトを取るんだ!)
岡部(10年もあれば何かしら対策が見つかる、きっと……見つけてみせる)
ピッピッピ
岡部「1999年へのタイムリープ……」 ゴクッ
『忘れないで』
岡部「紅莉栖……俺はっ……」
『あなたはどの世界線にいても一人じゃない』
岡部「お前もっ……」
『──私がいる』
岡部「助けるっ!!」
ピッ
その瞬間、周りの景色が琥珀色に包まれ、ぐにゃぐにゃと揺れ始める。
平衡感覚は失われ、立っていられなくなり──
Chapter 4 『暗中のメテンプシュコーシス』 END
世界線変動率 2.615074%
2010年 8月15日 17:04
岡部「ははは……そうか、そういうことだったのか。あの夢の正体も、記憶の正体も」
岡部「全部、あったことだったんだな」
岡部「俺の10年はなんだったんだろうな。タイムリープして……こんな、冗談みたいな世界線で……」
萌郁「M3……? タイム……?」
岡部「俺がやったことといえば2000年問題を引き起こし──
まゆりの両親、俺の両親を含め、多くの人間を死に追いやり──
まゆりを苦しめただけ──」
岡部「そしてまゆりも結局助からない……助けられない」
岡部「はは、ははは……」
萌郁「M3、しっかりして、よく、わからないけれど」
岡部「……」
岡部「…………」
岡部(冷静になって考えてみるとおかしい、腑に落ちない)
岡部(タイムリープしたところで世界線を大きく変動させることはできないはず)
岡部(にも関わらず、俺のいたα、βにも似通わない世界線へと変動を遂げた)
岡部(1999年12月14日に跳躍した後の俺は、記憶の通り、その後一ヶ月の発熱に倒れ──)
岡部(1月14日に気がついた時、記憶のほとんどはモヤがかかったような状態に陥り、単なる夢だったと思い込んだ)
岡部(おかしいじゃないか、俺は過去を変えるような行動は起こしていない)
岡部(なのになぜ世界線が変わった? それも、2000年問題が引き起こされるほどの大分岐)
岡部(俺のタイムリープそのものがファクターだったと? いや、そう考えるのは早計すぎる)
岡部(ともかく紅莉栖……それに鈴羽の意見も聞きたい、あいつらならば力になってくれる)
萌郁「……待って、M3!」
岡部「触るな」
萌郁「っ……どこへ、行くの? FBからは、待機命令がっ……」
~ラボの前~
岡部「紅莉栖」
紅莉栖「ぁ、お、岡部っ……」
岡部「よかった、お前に頼みが……」
鈴羽「噂をすれば……ってやつか」
岡部「鈴羽、お前にも頼みがある。お前はタイムトラベラー……だよな?」
鈴羽「っ……なんであたしが、タイムトラベラーだって知ってんの!?」
岡部「なんでって……」
鈴羽「確かに、ラボメンのみんなに話した。岡部倫太郎以外のラボメンにはね」
岡部「なに?」
鈴羽「お前はあたしの情報をどうやって手に入れた? 内通者か?」
鈴羽「岡部倫太郎、一緒にいた桐生萌郁って女は、何者なの?」
岡部「あいつは……」
鈴羽「ラウンダー?」
岡部「……」
鈴羽「肯定ととって構わないみたいだね」
紅莉栖「そんなことより! 何かいうことはないの?」
岡部「……なんのことだ?」
紅莉栖「何も言わないつもり!?」
岡部「俺のことはどうでもいい」
紅莉栖「見たのよ、さっき、ガード下で」
岡部「……っ!」
岡部「見たって、何を……」
鈴羽「服に血が付いてるよ」
岡部「待ってくれ、説明すると長くなるが──」
紅莉栖「ねえ岡部、全部嘘だったの? 私たちを騙してたの?」
岡部「だから説明をさせてくれ、Dメールを使うなりして世界線を変えれば──」
紅莉栖「使うってどうやってよ! 電話レンジの仕組み、まだ解明してないのに!」
紅莉栖「放電現象がいつ起きるかも不明確でしょ!?」
岡部「その原因は、42型ブラウン管TVだ、あれが付いてる時だけ──」
鈴羽「なぜ、それを知っている」
紅莉栖「ぁ……」
鈴羽「あたしたちは電話レンジの仕組みについて、この一週間ずっと話し合ってきた」
鈴羽「岡部倫太郎、お前も含めてね」
岡部「……確かに、そうだ」
鈴羽「今のはまるで……最初から知っていたような口ぶりじゃん」
紅莉栖「わかってて黙ってたの?」
鈴羽「お前は嘘まみれだね」
鈴羽「あたしがいた2036年でもそうだった」
鈴羽「嘘と裏切りだけで世界を手に入れたお前はさ」
鈴羽「その嘘を塗り重ねるために、数多の命を奪い続けてる」
鈴羽「だからあたしはタイムトラベルして来たんだよ、未来を変えるために」
岡部「だったら話は早い、今すぐ世界線を変えよう。こんな世界線は誰も望んじゃいない」
紅莉栖「あんた……あんた……なんであんなこと……」
紅莉栖「ねえ、あの子……まゆりはもう長くないんだから、もう悲しませるような真似は……やめてよ……」
岡部「紅莉栖、頼む、信じてくれ。俺は別の世界線から来た。いや、正確には”別の世界線の記憶も持っている”」
岡部「なかったことにすれば……α世界線に戻れば……」
岡部「……っ」
まゆりを助けるためにはそこからさらにβ世界線へと移動しなくてはならない。
しかしそうすれば今度は紅莉栖が──
紅莉栖「警察を……呼ぶわ」
岡部「紅莉栖。やめろ、やめてくれ。そんなことしても無駄だ」
紅莉栖「あんたはそうやって、自分のしたことを嘘で覆い隠していくのね……」
やめろ。
紅莉栖「次は……」
やめてくれ。
紅莉栖「次は私も殺すの!?」
ああああ……。
鈴羽「スタングレネード!?」
バン
キィィィィン
萌郁「岡部くん! 逃げて!」
鈴羽「くっ……仲間か!」
────
───
──
萌郁「あそこには近づかない方がいい、もう正体、知られちゃったから……」
岡部「まゆりに……まゆりに会いに行ってくる……」
萌郁「岡部くん……」
~病室~
ガララ
岡部「まゆり……」
まゆり「あ、岡部くんだぁ」
るか「岡部さん、今日はもう来ないかと思いましたよ、椅子どうぞ」
岡部「まゆりっ……」
岡部(俺は結局お前を苦しめただけ……赦してくれ……)
まゆり「岡部くん……どうしたの?」
岡部「……いや……なんでもない」
岡部「いや、本当になんでもないんだ」
るか「……あ、ボ、ボク、飲み物買ってきます」
るか「まゆりちゃんはオレンジジュース、岡部さんはマウンテンジュー、ですよね」
まゆり「ありがとう~、お願いするね?」
岡部「あぁ、頼む……」
るか「それじゃあ行ってきますね」
まゆり「うん、こうしてるとね~。なんだか昔を思い出して、ほわほわ~って気持ちになるのです」
岡部「はは、懐かしいな、この遊園地よくいったよな」
まゆり「え? 行ったのは、一回だけだよ?」
岡部「あ……そうか、そうだったよな」
まゆり「岡部くん?」
岡部「……」
まゆり「私ね? 岡部くんにはすごく感謝してるんだよ」
まゆり「まゆりのこと色々気にかけてくれて、髪留めもプレゼントしてくれて、入院費まで出してくれて」
まゆり「本当にね、どれだけ感謝しても、足りないのです、えへへ」
まゆり「あ、だめっ!」
岡部「……ぇ?」
まゆり「ごめんね……」
まゆり「この髪、医療用のウィッグだから……」
まゆり「……もうまゆりの髪は殆ど残ってないのです」
岡部「……」
まゆり「治療の副作用、でもね? そのおかげで、クリスマスまでは生きていられるかもって希望が出てきたんだぁ」
まゆり「クリスマスにはサンタさんに、もう少し時間をくださいって、お願いしようかな」
岡部「……っ」
岡部「あぁ……がんばれよ……」
まゆり「うんっ」
岡部「……少し、風に当たってくる」
わかってるんだ、これも全部自業自得だって。
こうなったのも俺が不用意に過去を改変したせいだ。
岡部「でも、こんなの……きつすぎるだろっ……」
何か、何かあるはずだ……世界線を元に戻す方法が。
冷静になれ。
今までだってそうしてきたじゃないか。
~萌郁のアパート~
萌郁「岡部くん……大丈夫? 顔色、すごく悪い……)
岡部(頭が割れそうだ……)
岡部(混在する記憶、離れていくラボメン)
萌郁「おか……べくん……」
岡部(助けられない……まゆり)
岡部(……いや、考えろ。世界線を戻す方法を……2000年問題、2000年問題さえどうにかできれば……)
ブーブー
ピッ
岡部「……もしもし」
FB『……M3か?』
岡部「……はい」
FB『もっとも、仕事とすら呼べるもんじゃねーがな』
FB『未来ガジェット研究所のタイムマシンを持って来い、本部に搬送する』
岡部「……っ」
FB『……発明サークルの奴らが抵抗してきた場合は殺せ』
FB『ただし、開発者の2人は殺すな、確保してSERNに連行する』
岡部「……」
岡部「なんとか……なりませんか」
FB『質問は受け付けない』
FB『作戦開始は3時間後だ』
FB『M3とM4は先行し、アルファチームとして突入しろ』
FB『バックアップとしてブラボーチームが応援に入る』
FB『お前らはタイムマシン確保を最優先だ』
FB『……はぁ』
FB『迷ってんならよ、今決めろや。
どっちにつくのかな。
覚悟がねーなら選ばないことを選べ、流されろ、従え』
岡部「……いえ、問題は、ありません」
FB『……』
カチャッ
ツーツーツー
岡部「……」
萌郁「FBは、なんて?」
岡部「電話レンジ……タイムマシンを回収しろ、と」
萌郁「……そう」
岡部(どうする……電話レンジが回収されてしまえば、過去改変を行うことができなくなる)
岡部(それはつまり俺はこの世界線から移動することができなくなるということ)
岡部(いや……鈴羽のタイムマシンを使えばあるいは……。しかし……乗ってしまえば戻ってこれない……)
岡部(未来の俺……鳳凰院凶真……俺は一体なぜ……?)
岡部(いや、考えるのは未来のことじゃない、今のことだ。……どうすればいい)
岡部(そもそも、Dメールで大分岐のような変動を起こせるのか? 2000年問題が起こった原因も分からないのに?)
岡部(そして起こせたとしても、Dメールによる事象のコントロールは難しい)
岡部(2000年問題を阻止するとなればなおさらだ)
岡部(となると──)
岡部(強引ではあるが……)
岡部「萌郁、俺を助けてくれるか?」
萌郁「え? もちろん、岡部くんのため、なら」
岡部「今から言うことをよく聞け」
俺は立ち止まるわけにはいかない。
犠牲にしてきた全ての思いのためにも。
Chapter 5 『暗黒回帰のハイド』END
私の知るあなたは、ジキル博士ではなく、ハイド氏だった。
彼が私に見せる顔は仮面。
彼は私を本当に必要としてるわけじゃない。
本当に必要してるのは別の人。
萌郁「そんなっ、そんなことしたらっ……過去を変える前に岡部くんが……死んじゃう……」
岡部「大丈夫だ、俺は絶対に死なない」
岡部「この世界線での俺は2036年時点でも生きている、つまり今の俺はどうやっても死ぬことはない」
萌郁「よく、分からない……」
岡部「不死身ってことさ」
萌郁「冗談は、やめて」
岡部「冗談なんて言っていない」
萌郁「でもっ……」
萌郁「でもっ、わざわざそんな危険な真似しなくてもっ」
岡部「誠意を見せるにはどうしたらいいか」
岡部「命をかけることだ」
岡部「俺は一人でもやる」
萌郁「……」
私は……どうしたいんだろう。
彼の望みが叶ったら、私と彼との関係はどうなるの?
過去が変わるってどう変わるの……?
それでも、私は──
萌郁「分かった……私、やる……」
岡部「すまない、お前には辛い選択をさせることになる」
岡部「辛くなどない、俺がやらなきゃダメなんだ」
萌郁「どうして、そこまで……」
岡部「……」
岡部「お前こそ、どうして俺に力を貸してくれるんだ? ラウンダーを裏切ることになるんだぞ」
萌郁「……岡部くんは、私に生きる意味、くれたから」
萌郁「私にとって、FBは父、岡部くんは……兄のような、もの」
岡部「そのFBも裏切ることになる」
萌郁「……いえ、岡部くんは……兄以上の特別な、存在」
岡部「……」
そう──
萌郁「岡部くんの……力に、なりたい」
ただ、それだけ──
~ラボの前~
ガヤガヤ
岡部「……」
岡部「よりによって、ほぼ全員集合とはな」
岡部「……時間はない、このまま作戦開始だ」
萌郁「……岡部くん」
萌郁「キス、するね」
岡部「──んっ、おまっ、何を」
萌郁「……終わったら、ケバブ、もう一度一緒に、食べたいね」
岡部「……」
萌郁「了解」
ガチャ
「岡部!」
「うおぉう、びっくりしたぁ!」
「岡部さん!」
「倫太郎!」
「何しに……来たの?」
「みんな、聞いてくれ」
萌郁(……始まる……できるの? 私に……)
萌郁(岡部くん……岡部くん……)
「まゆりを助けるためだった、信じてくれ」
「まゆりをっ……だしに使わないで!」
「岡部さん……すごく悲しそうな目……してます」
「倫太郎……嘘は言ってないニャ……」
「嘘だよ、そんなことあるはずがない」
「で、でもフェイリスたんのチェシャーブレイクは……」
「こいつは2036年では自らを神格化し、鳳凰院凶真と名乗ってる。さっきもそう言ったでしょ」
「嘘なんかじゃない。こんな世界線は変えなきゃいけない……そう思っている!」
「……みんな、俺が……信じられないのか?」
萌郁(合図……岡部くん……)
バタン
萌郁「動くな! 全員両手を上げろ!」
鈴羽「ラウンダー!?」
紅莉栖「岡部、これは一体……」
岡部「……」
萌郁「タイムマシンはSERNが回収する」
萌郁「開発者の牧瀬紅莉栖、橋田至……岡部倫太郎は付いてきてもらう」
フェイリス「倫太郎も!?」
萌郁「抵抗するのなら、容赦はしない」
ダル「ちょ、ど、ど、ど、どういうこと? 岡部はラウンダーを裏切ったってこと?」
鈴羽「……」
岡部「萌郁、無駄だ。こっちには鈴羽と俺がいる」
萌郁「手をあげろ! 岡部倫太郎!」
紅莉栖「岡部っ……」
岡部「俺は電話レンジを渡す気はない」
萌郁「……喋るな! 手をあげろ!」
るか「お、岡部さん、ダメです……撃たれちゃいます……」
岡部「俺は、電話レンジを使って、過去を変える!」
萌郁(岡部くん……! 岡部くん岡部くん岡部くん……!)
カチャ
フェイリス「り、倫太郎……ダメ……」
萌郁「……」
岡部「……」
萌郁(岡部くんのために、岡部くんのために、岡部くんのために……岡部くんを……!)
鈴羽「茶番だね……」
鈴羽「……はっきり言いなよ岡部倫太郎、目的は何?」
岡部「……何のことだ」
鈴羽「何を企んでいる?」
岡部「手厳しいな……」
鈴羽「今の君はどうやっても死なないからね」
鈴羽「ラボのみんなを信用させてDメールを送ろうったってそうは行かないよ」
岡部「なにを、バカな……」
萌郁「しゃべるな! 撃つぞ」
岡部「……」 チラッ
萌郁(岡部くん……私には、できないよ……)
ガタッ ガタタッ
ダル「わああ! な、なに!?」
M5「裏切ったようだなM3」
M6「M4、開発者は殺すなとの命令だ」
鈴羽「くっ……!」
萌郁(ブラボーチーム!? そんな! 早すぎる!)
ダル「わああ、やめて、撃たないで!」
M7「開発者三名の他は──」 カシャ
るか「ひっ……」
フェイリス「ぁ……」
鈴羽「くそ……!」
岡部「やめろ……」
M7「必要ない」
岡部「やめろおおおおおおお!!」
パララララ
岡部「あがっ……! はぁ……ぁぁぁ……」
萌郁(岡部くん──!!)
鈴羽「……っ」
紅莉栖「岡部……フェイリスさん達を庇って──いや、いやぁぁ!」
岡部「ぐっ……あぁっ……」
るか「岡部さん! 岡部さぁん!! 死なないで……死なないでぇぇ!」
M5「M4、タイムマシンを回収しろ」
『大丈夫だ、俺は絶対に死なない』
『この世界線での俺は2036年時点でも生きている、
つまり今の俺はどうやっても死ぬことはない』
『よく、分からない……』
『不死身ってことさ』
岡部「うぅっ……」
──でも、あなたは突っ伏したまま、今にも動かなくなりそうで。
つま先に触れるおびただしい量の血がそう訴えていた。
萌郁「いや…………いやぁぁぁぁ!!」
パーン
M7「がはっ!」
M6「な、M4……貴様!」
M5「裏切るのか!」
鈴羽「くっ……よく……分からないけど、とにかくこいつらを──」
ダーン ダーン
M6「ぐぁっ!」
ダル「わぁぁ!」
M5「くそっ!」
パララララ
紅莉栖「きゃあああ!」
ダーン ダーン
M5「くっ、ちょこまかとっ……」
パラッ パララッ
ダーン ダーン
M5「うがっ!」
鈴羽「ふー……」
鈴羽「なんとか……片付いたみたいだね」
萌郁「岡部くん! しっかりして岡部くん!」
岡部「……ばか、だな、それじゃさくせんのいみ、ないだろ」
フェイリス「あ……り、倫太郎! 死んじゃいやぁぁ!」
岡部「しんぱい、するな……おれは、しなない」
紅莉栖「救急車、早く……救急車!!」
るか「でも、このままじゃ岡部さんが!」
岡部「たのむ、よばないでくれ……いまは……はやく、かこ……かえっ……」
鈴羽「……とにかく、応急手当を。誰か車を用意して、この場所はもう危ない」
ダル「で、でも、誰も免許持ってなくね……?」
萌郁「わ、私が……近くに、車停めてある……」
鈴羽「……お願い」
岡部「……」
どうか死なないで……。
お願い……。
お願いだから……。
萌郁「車、用意して、きた……」
鈴羽「……さ、運ぶよ。手伝って、橋田至」
ダル「お、おう……」
岡部「うぐっ……」
るか「岡部さん……死に、ませんよね? 大丈夫、ですよね?」
紅莉栖「今はなんとも言えない……奇跡的に一発も急所に当たってないけれど、出血が多すぎるわ……」
鈴羽「大丈夫だよ、こいつは死なない。絶対にね」
フェイリス「こんなに血だらけなのに……?」
鈴羽「アトラクターフィールド理論……世界線の収束ってやつ、生存が約束されてるんだ」
萌郁(岡部くんが言ってたのと同じ……)
紅莉栖「ね、ねえ、電話レンジはどうするの?」
萌郁「……大きめのバンだから、全員乗っても、余裕、ある」
鈴羽「……持っていったほうがよさそうだね」
~ラジ館内~
紅莉栖「ひとまず、応急手当は終わったけど……」
ダル「ぼ、僕達これからどうなっちゃうん? つかラ、ラウンダーのおねーさんは一体……」
鈴羽「はぁ……もう訳がわからない」
萌郁「……」
岡部「うぅっ……」
るか「岡部さん!」
フェイリス「目を覚ましたの!?」
岡部「ここは……俺は一体……」
紅莉栖「ここはラジ館内。あんた、フェイリスさん達を庇って撃たれたのよ」
岡部「……さすがにもうダメだと思ったが、やはり世界線の収束によって死は免れたということか」
岡部「うぐっ……」
紅莉栖「無茶しやがって……バカ……」
紅莉栖「……それについては……謝るっ……」
岡部「もっとも、捜査官を殺したのは確かなのだから、無理もない……のかもな」
鈴羽「説明して岡部倫太郎、お前は一体何をしようとしている」
鈴羽「世界線の収束によってお前の死は否定されるにしても、あんなの……無茶すぎる」
岡部「言っただろう、まゆりを助けるため、だと」
るか「ボクたちを庇ったのは……どうして……」
岡部「……知らん、体が勝手に動いていただけだ」
フェイリス「倫太郎……」
岡部「ともかく……未来の俺が何を考えてるのかは知らないが、今の俺はそのためだけに動いている」
萌郁「……」
岡部「……そのためなら手段は選ばない、そう決めたんだ」
紅莉栖「岡部……」
鈴羽「……全部話してみて。信じるかどうかは……別だけど」
岡部「……あぁ」
彼の持つ能力のこと。
その能力で幾つもの世界線を漂流したこと。
α世界線では、椎名さんが世界に殺される運命にあったこと。
IBN5100を使いα世界線からβ世界線に移動することで、椎名さんを助けようとしたこと。
そして”クラッキングを実行することができなかった”ため、タイムリープの限界を超え、この世界線に来てしまったこと。
2000年問題を阻止し、α世界線を戻るのが、今の目的なこと。
紅莉栖「ふむん……」
ダル「それが本当だったらラノベ作家になれると思われ!」
るか「ボク、何がなんだか……」
鈴羽「リーディングシュタイナーなんて能力、信じがたい話だけど……」
鈴羽「世界線をまたいでも記憶が継続する力を、本当に持っているのだとしたらお前の話に矛盾はない」
フェイリス「り、倫太郎は嘘を言ってないのニャ、た、多分……」
鈴羽「確かに、世界線をまたげば椎名まゆりを助けることができるかもしれない」
岡部「だから、それを回避するために──」
鈴羽「結局、お前は何がしたかったんだ」
岡部「……っ」
鈴羽「いたずらに世界線を変えて、数多の人間を死に追いやって」
鈴羽「かと思ったら、今度はそれをなかったことにしようとしている」
鈴羽「ちょっと勝手すぎるんじゃない?」
鈴羽「この世界線に幸せを見出している人はどうなる? その人の気持ちを考えたことは?」
萌郁「……っ」
岡部「そ、それはっ……」
紅莉栖「ちょ、ちょっと鈴羽、言い過ぎよ……」
鈴羽「……確かに、ちょっと言い過ぎた。不本意だけど……謝罪する。……ごめん」
鈴羽「……実際は、あたしのやろうとしてることも同じなんだよね……」
岡部「鈴羽……」
鈴羽「ごめん、思わず頭に血が上っちゃったよ」
鈴羽「あたしも、ずっと葛藤があったから……」
鈴羽「こんな世界なんて変えてやる! なんて思っててもさ」
鈴羽「時々分からなくなるんだ。あたしや一部の人間の思いだけで変えてもいいのかって」
鈴羽「確かにあたし達にとって、2036年は酷い世界だった」
鈴羽「それでも……そこに生きる人達にも、それぞれ幸せを見出してたかもしんないんだよね」
萌郁「……」
世界線が変動してしまったら、私と岡部くんの関係はどうなってしまうのだろう。
少なくとも、今までのようにはならないよね……。
もしかしたら、彼と出会ってすらいないかもしれない。
彼に聞くのは……簡単。
でも聞くのが……怖い。
岡部「やってくれるのか?」
鈴羽「それがレジスタンスの仲間や、父さんとの約束だからね。あたしはやるよ」
鈴羽「迷ってちゃ……ダメなんだ」
岡部「父さ……そういえば、お前は父親の正体について知っているのか」
鈴羽「え? あー……うーん」
岡部「なんだ、微妙な反応だな」
鈴羽「……」 チラッ
岡部「……」 チラッ
ダル「う、うぇ?」
鈴羽「はー……あたしの父さん、カッコ良かったんだけどな」
岡部「……なるほど」
萌郁(なにかしら、この分かり合ってますオーラ……ちょっと悔しい)
鈴羽「んー、それがさ、世界線を変える鍵は岡部倫太郎が握ってる、としか聞いてないんだよね」
紅莉栖「岡部が?」
鈴羽「そう」
鈴羽「でも実際にどう握ってるのかは分からない。岡部倫太郎を抹殺することなのか、再起不能にすることなのか」
岡部「おい……」
るか「そ、そんな! だめです! 岡部さんは悪い人なんかじゃ……」
鈴羽「……冗談だって」
鈴羽「ともかく、レジスタンス内ではそういうことになってたんだ」
岡部「……そうか」
紅莉栖「つまり、2000年問題を阻止すれば、世界線は変わるってこと?」
岡部「そうだ、現に2000年問題が起きなかった世界線を経験しているからな」
ダル「2000年問題が起きなかった世界線があるん? 想像できんわな」
フェイリス「確かに、そうニャ」
るか「ボクたちの中では、当たり前の認識ですからね……」
紅莉栖「2000年問題……」
紅莉栖「年号を2桁で管理しているコンピュータが、2000年を1900年と誤認してしまい、処理を続行できなくなる問題のこと」
萌郁「表向きは、ね」
紅莉栖「え? ど、どういうこと?」
岡部「昨日、2000年問題について詳しく調べたところ、1つの疑問点が浮かんだ」
るか「あ……確かに、ボクも聞いた事あります」
岡部「にも関わらず、壊滅状態の地域もあれば、被害の少ない地域もある。かと思いきや、全く無傷な地域だってあった」
フェイリス「ワクチンプログラムを使わない、もしくは使えなかったとかはないのかニャ?」
岡部「おかしいと思わないか、世界規模で懸念されたバグだぞ」
岡部「少なくとも、甚大な被害を引き起こすと予想されるコンピュータへは最優先でワクチンが当てられたはずだ」
フェイリス「確かにそうだニャン」
岡部「そして、被害の地域にバラつきがあること、このことから1つの結論を導き出すことができた」
ダル「つまり、どういうことだってばよ」
萌郁「薬を作ってから毒をまく、SERNの常套手段」
萌郁「いえ、その薬こそが、毒、だったのかも」
紅莉栖「ええっ!? ちょ、説明しろ!」
萌郁「2000年クラッシュ後は、どれも、再起不能な状態、だった」
岡部「研究の分野は主に素粒子物理学や物理工学系」
鈴羽「それって、もしかして……」
岡部「あぁ、2000年クラッシュは、誤作動などではなく──」
岡部「ニセのワクチン──いや、ウィルスによって人為的に発生させられたものだったのかもしれない」
萌郁「目的は、タイムマシン研究を行わせないため……」
紅莉栖「そんな……」
岡部「SERNはエシュロンを使い全世界のタイムトラベルに関する情報を集めている」
岡部「これはどの世界においても共通なはずだ」
岡部「すなわち、SERNは大小問わず、タイムトラベルについて研究している機関を監視──」
岡部「脅威に感じたSERNは、機関にニセのワクチンを掴ませ、潰した」
萌郁「もちろん、カムフラージュだったり、経済の壊滅を目的として潰された地域もあったかも、しれない」
紅莉栖「もしそれが真実だとしたら、許せない……」
岡部「もう1つ分かったことがあるが、ワクチンプログラムの開発にあたった人物は自殺している」
萌郁「責任を感じて、なのか、消されたのかは……わからない」
鈴羽「なんてこと……」
ダル「うわー、SERNパネェっす……マジパネェっす……」
鈴羽「だとすると、未来を変える具体的な案──」
鈴羽「それは2000年までに、ウィルスに対するワクチンを開発、世間に公表する」
鈴羽「あるいは、SERNサーバー内にクラッキングを仕掛け、ウィルス自体を無害なものに改竄してしまう」
岡部「そうだ」
岡部「……が、やれるか?」
鈴羽「オーキードーキー、なんたってあたしは……」 チラッ
鈴羽「いや、なんでもないや」
ダル「お、おう……?」
岡部「……もっとも、今語った推察が当たってる証拠はどこにもない」
岡部「それとSERNのサーバー内にクラッキングを仕掛けるのであればIBN5100も必要になってくる」
岡部「恐らく、2000年クラッシュの計画は、最重要機密に近い扱いだろうからな」
鈴羽「とーなると……1999年じゃなくて、余裕を持って跳躍したほうがいい、ってことかな」
岡部「あぁ」
岡部「待ってくれ、最後に……謝罪の言葉をっ……」
鈴羽「ん?」
萌郁「……っ」
岡部「……まゆりと話をさせて欲しい」
鈴羽「でも、今の君が出歩くのは……」
るか「あ、でしたらボク、病院から電話してくれるよう頼みにいきましょうか?」
フェイリス「ニャニャ、だったらフェイリスも行くニャン、ルカニャンを一人にするわけには行かないニャン」
ダル「あ、だったら僕も」
岡部「橋田、お前はここにいてやれ」
ダル「えー、なんでさー! か弱い乙女二人を出歩かせるなんて紳士のやることじゃないお!」
るか「あの、ボクたちでしたら、大丈夫なので……ここ歩いて10分も掛かりませんし……」
紅莉栖「やんわりと断られてる件について」
ダル「ぐはー……」
るか「任せてください!」
岡部「二人とも俺を信じてくれてありがとう、礼を言う」
フェイリス「フェイリスは最初から倫太郎のこと信用してたニャン!」
萌郁(最後に話したいのは……椎名さんかぁ……)
萌郁(……そうよね、岡部くんにとっては、椎名さんを助けるためにやってきたんだものね……)
萌郁(何……期待してたのかしら、私ってば)
岡部「俺の能力を考えれば、そこに行き着くのは難しことではないだろう」
ダル「でもそれっておかしくね?」
ダル「岡部のリーディングシュタイナー……だっけ? を知ってるのって、限られた人だけじゃん? 例えばボクらみたいな──」
岡部・紅莉栖「あぁ、なるほど」
ダル「んぇ?」
鈴羽「ともかく、これでレジスタンスの創設者に顔向け出来る」
岡部「創設者……とある世界線では創設者は俺だったりしたんだが、この世界線では誰なんだ? 気になるな」
鈴羽「君が創設者ぁ~? バカも休み休みいいなよ、冗談にもなんないって」
岡部「くっ……俺が動けないのをいいことに……」
岡部「ほう、それは興味深いな」
鈴羽「おかげで、数ある反体制組織でもうちほどの勢力を持った組織は他になかった」
鈴羽「おまけにその創設者は女性。聡明で凛としてて、みんなの憧れの的だったらしいよ」
ダル「うひょー! 女ボスktkr」
紅莉栖「へぇ……すごい。尊敬しちゃうわね」
萌郁「……」
萌郁(すごい人……岡部くんと対等に渡り合うなんて……)
岡部「御託並べはほどほどにしろ。で、誰なんだ」
鈴羽「……えっと、それが、実際に会ったことはないんだ」
岡部「なんだ、知らないのか」
岡部「レジスタンスという立場を考えれば不思議じゃないな」
鈴羽「コードネームは世界でも知られてるんだけどね……」
紅莉栖「へぇ、なんて言うの?」
鈴羽「栗悟飯」
紅莉栖「ぶっ!」
岡部「……」
ダル・鈴羽「ん?」
萌郁「……?」
ピッ
岡部「……もしもし」
まゆり『岡部くーん、こんばんは~』
岡部「あぁ……元気にしてたか?」
まゆり『うん、今日は体調すっごくいいんだぁ』
岡部「わざわざ電話してもらってすまない。本来なら、俺から会いに行くべきなのに」
まゆり『ううん、そんなの全然気にしなくていいよ~、いつもお世話になってるのはまゆりだもん!』
岡部「……はは、今日のまゆりはホントに元気そうだな」
まゆり『……そういう岡部君は……なんだかとても辛そうな声だけど、大丈夫~……?』
岡部「いや、なんでもない。少しマウテンジューを飲み過ぎて腹が痛いだけだ」
まゆり「あはは、岡部くんってば好きだもんねぇ~、マウンテンジュー」
まゆり『ん~?』
岡部「病気、治るといいな」
まゆり『……うん、そうだね』
岡部「それじゃあ、切るな。いきなり電話なんかかけさせて、悪かった」
まゆり「ううん、気にしないで? 嬉しかったよ」
岡部「本当に……ごめんな……がんばれよ」
まゆり「え? う、うん、岡部くんも、頑張って」
岡部「あぁ……」
岡部「ふー……」
紅莉栖「全く、まゆりが相手となると人が変わったみたいに優しくなるんだから」
岡部「うるさいカメハメ波、少し黙れ」
紅莉栖「なっ!?「
紅莉栖「ちょ! あんたっ! それ、それをどこでっ!」 ガシッ
岡部「ぐぁっ! き、貴様! 今の俺に触るな! いて、いてて!」
ダル・鈴羽・萌郁「……?」
ダル「阿万音氏~、もう行っちゃうん?」
鈴羽「早く今を変えないと……きついでしょ、体」
紅莉栖「そうよね……途中から忘れてたけど、体中風穴だらけだもの……岡部ってば」
岡部「これくらい、大したことはない」
鈴羽「……今なら分かる気がするよ」
岡部「……?」
鈴羽「今の君はさ、2036年での悪逆非道の限りを尽くした鳳凰院凶真とは似ても似つかない」
鈴羽「ただひたすら椎名まゆりを救うことに必死になってる」
鈴羽「……見てて危なっかしくなるくらいね」
鈴羽「仮面の下で膨れ上がった悪意の塊。きっと……2036年の君はそれを抹殺しようとしていたのかな」
鈴羽「椎名まゆりを殺した世界を否定することで──」
岡部「……我ながら迷惑な話だ」
鈴羽「それじゃ後は任せたよ、岡部倫太郎」
鈴羽「あたしは手助けするだけ。椎名まゆりを救うのは君だよ」
鈴羽「きっと、未来を変えてみせるね」
岡部「あぁ……頼んだぞ」
ダル「阿万音氏~! 頑張れよ~、僕たち見てるからな~!」
紅莉栖「いってらっしゃい、鈴羽」
萌郁「……頑張って」
鈴羽「ふふ……」
プシュー バタン
萌郁「……」
シュー
あ、タイムマシンが輝いている──
世界が……変わる。
岡部くんと私の関係も……変わる。
岡部くん、今あなたは何を思っているの──?
誰のことを考えてるの──?
Chapter 6 『哀心迷図のカイン』 END
紅莉栖……すまない。
俺はこれからお前を見殺しにする選択をしなくてはならない。
そして萌郁……お前にも申し訳ないことをした。
最初はただ、お前を利用していただけなのかもしれない。
記憶を取り戻す鍵。もしくは単なる仕事仲間として──
でも今はただの仲間じゃない。
まゆりや紅莉栖たちと等しく大事な仲間だ。
お前も俺のことを特別な存在だと言ってくれた。
その気持ちを俺はなかったことにしてしまう。
今の関係をなかったことに──
岡部「ありがとう、萌郁。さようなら……また、会おう」
萌郁「……っ」
岡部(タイムマシンが……消えるっ!)
ダル「阿万音氏ぃ~!」
紅莉栖「あら、やけに残念そうね、橋田」
ダル「なんか他人って気がしなかったんだお」
紅莉栖「告白しとけばよかったのに、時間を超えた恋愛なんてロマンティックじゃない?」
ダル「ちょ、超えるのは次元だけでおkだお!」
紅莉栖「はいはい、ワロスワロス」
岡部「……」
萌郁「どうしたの、岡部くん、浮かない顔、して」
岡部(確かに……俺は物理的タイムトラベルで生じる世界線の変動を経験したことはないからはっきり断定することはできない)
岡部(しかし、鈴羽が過去に飛んだ時点でイレギュラーが生じ過去は変わるはず)
岡部(鈴羽が2000年問題を阻止したのであれば、リーディングシュタイナーが発動しなくてはならない)
岡部(だというのに──)
ダル「2000年問題かぁ、不謹慎ながらも当時は少しwktkしてますた、サーセン!」
萌郁「本当に、不謹慎……」
紅莉栖「ね、ねえ岡部、ちょっと……いい?」
岡部「……紅莉栖も気づいたか」
紅莉栖「なのに今私たちは”2000年問題が起こったこと”を覚えてる」
岡部「そのようだな」
紅莉栖「リーディングシュタイナーを持ってる岡部ならともかく、私たちも覚えてるってことは──」
紅莉栖「過去は変わっていない……」
岡部(これは……この状況は……)
くくく……失敗した。
まゆりは助からない。
岡部「……っ」
岡部(出て……来るな!)
岡部「……誰か来る」
ダル「フェイリスたん達じゃ?」
岡部「いや、この足音は……」
コツコツコツ
岡部「……」
天王寺「よう」
萌郁「FB……!」
紅莉栖「店長さん!?」
天王寺「裏切ったみてーだな、M3、M4」
ダル「ちょ! ど、どういうことなん!?」
岡部「FB、俺達の上司で──」
萌郁「──ラウンダー、よ」
天王寺「まさかとは思ったが、ホントに裏切るとはな」
岡部「……」
天王寺「ったく、ボロボロじゃねーか」
天王寺「しかしやってくれたぜ、片付けるの大変だったんだぜ、死体」
天王寺「まぁ……おめーは目的のためなら手段は選ばない男だからな」
萌郁「FB……どうして、ここが……」
天王寺「おい、うちのバイトはここにいねーのか? なんだよ、うちのバイトだけハブってんのか?」
岡部「まさか……フェイリスとるかを!?」
天王寺「おめーにしちゃ無用心だったな、M3」
岡部「くっ……」
天王寺「さあ、タイムマシンの在り処を教えろ。ラボから持ちだしたんだろ?」
岡部「この……罪のない人間にまで手を──」
岡部「……っ」
天王寺「そうだな。おめーがそれを言えるはずねーよな」
紅莉栖「岡部……ど、どうするの?」
萌郁「……っ」
岡部「萌郁、よせ」
天王寺「わーかってねーみてーだなM4、銃を降ろせ」
天王寺「俺が戻らなかったら他のラウンダー達に命令が通達するように仕向けてある」
岡部「くそ……!」
岡部「……分かった、渡す……渡すから……誰も、傷つけないでくれ……」
萌郁「岡部く……ん」
天王寺「それでいい」
これでDメールを送ることも叶わなくなる。
抵抗すればまゆりやフェイリス、るかも傷つく。
どうしようもない。
そして放っておけばまゆりが死ぬ。
どうしてだよ……なんで俺から奪うんだよ……。
どうして引き離すんだよ……。
岡部「俺はあなたのことを尊敬していた! なのにっ……!」
天王寺「裏切っといてよく言うぜ」
岡部「あなたも俺の気持ちは分かっていたはずだ! まゆりを救うのにどれだけ必死になっていたか!!」
天王寺「……はぁ」
天王寺「おめーらが裏切ったこと、本部には内緒にしといてやる」
天王寺「開発者の二人もすでに逃げたって報告してやる」
天王寺「だから今後、俺に近づくな。別の地域で1からやり直せ」
岡部「……」
天王寺「甘ぇな、俺も……」
それじゃ……意味が無い。
俺だけ別の場所でやり直したって意味が無い!
俺の居場所はそんなところにない!
萌郁「は、はい……」
コツコツコツ
ああ、これは罰だ。
きっと罰なんだ。
まゆりを助けるためとはいえ、罪のない人間に手をかけてきた報いだ。
だから世界は俺にこんなに辛く当たるんだ。
また……みんな俺から離れていく……。
ブーブー ブーブー
────
───
──
──かべくん!
萌郁「岡部くん!」
岡部「……っ! 俺は……一体……」
ダル「桐生氏と店長が階段降りてった後、放心状態だったお……」
岡部「そうか……」
ブーブー ブーブー
岡部「……?」
ピッ
From:M4
Sub:
本文:FBが後で御徒町の家に来いって
内緒の話があるみたい
岡部「橋田、そういえば紅莉栖はどこへ?」
ダル「あぁ、まゆ氏のとこに行くって言ってたお」
岡部「そうか……」
岡部「橋田、お前は紅莉栖のことを頼む。FBはああ言っていたが紅莉栖の身が心配だ」
ダル「え、ええ!? まだ危険なんすか!?」
岡部「わからないから頼んでいるんだ」
ダル「う、えっと……オーキードーキー!」
萌郁「それじゃ、岡部くん……肩」
岡部「あぁ、たの──うぐっ!」
萌郁「ごめん、なさい……まだ、痛むよね」
岡部「……大丈夫だ、気にするな」
~天王寺家~
天王寺「来たな」
岡部「一体どういうつもりです? 近づくなと言ったり、来いと言ったり」
天王寺「まあ座れや、萌郁もな」
萌郁「……さ、岡部くん、座って……」
岡部「あぁ……すまない」
岡部「う……くっ……ぅっ……」
天王寺「ったく、何発撃たれてやがんだ。ホントに死ぬぞ岡部」
岡部「問題はないですよ、この世界では俺は死ぬようにはなっていない……」
天王寺「……? まあいい、話ってのはつまり、あれだ」
天王寺「これを……」
ピラッ
岡部「手紙……?」
岡部「……これは……この手紙は……橋田鈴から!?」
天王寺「ったく、よりによってなんで今日なんだか」
岡部(この世界線でもFBは鈴羽の世話に……)
岡部(そう言えば出会った時にも……)
『なぁおめぇ、鈴さん……橋田鈴って知ってるか?』
岡部(因果はある程度収束するということか……例え大分岐によって変動した世界線でも…‥)
天王寺「茶、淹れてくるからよ。読んでろや」
岡部「……」
岡部(読むのが……怖い)
パラッ
おひさしぶりです。あまねすずはです。はしだいたるの娘です。
あなたにとっては、つい数時間前以来のことかもしれない。
今は、西暦2000年の、6月13日です。
これをあなたが読んでいる、だいたい10年前ということになります。
結論だけ、書く。
失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した
あたしは失敗した失敗した失敗した失敗した
あたしは失敗した失敗
これをあなたが読んでいる、大体9年前、10年前になります。
失敗した。
ワクチン、いや、ウィルスが配布される1999年12月15日15時
それを阻止するためにあたしは14日、SERNサーバー内クラッキングを仕掛けることにした
訳あってクラッキングは15日朝にした、でも問題なかった、間に合ったはずなんだ
あたしは確かにクラッキングに成功した
でも失敗した
あたしは確かにウィルスを改ざんした
でも失敗した
それがSERNにバレた形跡もなかった
でも失敗した
恐怖の大王は落ちた
予言より半年も遅れて
失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した
あたしは失敗
何が原因なのクラッキングはうまくいかなかったいやうまくいったはずだった
ゴメンね
あたしは、なんのためにこの歳まで生きてきたんだろう
あたしの計画は狂ってしまった。
その原因を、この1年考え続けていた。
そして、わかった。
12月14日と15日の間に、何者かがあたしのPCに忍び込んだ。
いや、盗み見たんだと思う。
そしてあたしの用意した偽装ウィルスを有害なウィルスへと書き換えた。
あたしはあの日、クラッキングを仕掛けなければならなかったんだ。
あの日を逃したらダメだったんだ。
でももう遅い。
ゴメン。
ゴメン。
こんな人生は、無意味だった──
なんだよこれ……・。
ああ……俺はまた鈴羽に絶望を味わわせて──
俺はまた──
俺は──
Chapter 7 『自己喪失のアポティヒア』 END
俺は──
俺は変わったか?
なあ、鈴さん。
天王寺「茶入ったぞ。まっ、ゆっくり飲んでけや。会うのは……最後になるだろうからな」
萌郁「……っ」
岡部「……」
天王寺「どうしたんだよ、固まっちまって」
岡部「FB……鈴……橋田鈴とはどういう関係だったんで……」
天王寺「……昔世話んなった人だよ」
岡部「FB、あなたは……橋田鈴の正体──いや、使命を……ご存知ですか?」
天王寺「……」
鈴さんの使命、それは恐らく──
2000年問題の阻止──だった。
岡部「……邪魔したのはあなたなのか?」
天王寺「その手紙に何が書いてあるのかわかんねーけどよ、もう終わったことだろ?」
岡部「終わったことだと……?」
岡部「橋田鈴は……鈴羽はそんなことをさせるためにあなたの世話をしたんじゃない!」
天王寺「お前に何が分かる! お前に鈴さんの何が分かるってんだ!」
岡部「分かるさ……彼女はさっきまで、ほんのさっきまで近くにいた」
天王寺「何言って……」
天王寺「なっ……」
天王寺(鈴さんがうちのバイトだと?)
『なあ鈴さん』
『ん?』
『あんた、なんで縁もゆかりもない俺にここまで親身にしてくれるんだ?』
『そうだね……』
『人は巡り巡って誰かに親身にしてもらうことになってる』
『だから君もいずれ誰かに親身にしてあげる事だよ』
『……』
だから俺は、こいつらをどうにかして救ってやりたかった。
鈴さんや綴が俺にしてくれたように。
天王寺「……何をだよ」
岡部「あの日……1999年12月14日に何があったのかを」
天王寺「聞いてどうする」
岡部「鈴羽は……未来を変えるために……変えるためだけに……タイムトラベルして自分の時間を犠牲にしたんだ」
岡部「それなのに……使命を果たせないなんて、あんまりじゃないか……」
天王寺「……」
天王寺「……鈴さんには悪いと思ってるよ。だがな、俺にはどうすることもできなかったんだ」
岡部「……」
岡部「……後悔してるんだな? ならば過去にDメールを送るんだ、そうすれば鈴羽もあなたも救──」
天王寺「過去を変える? 次は綯の命まで危険に晒せってのか」
天王寺「SERNを裏切ればどうなるかってことくらい……痛いほどわかってんだ、俺はよ」
天王寺「綴……綯の母親はSERNに殺された、俺のせいでな」
萌郁「……っ」
天王寺「ここまで言えばもう分かるだろ、俺のことはともかく、綯まで巻き込むわけにはいかねえんだよ!」
岡部「し、しかし、綯は世界線の収束で命は保証──」
天王寺「もう話す気はねえ! 茶飲んだらさっさと帰れ。そして──」
天王寺「二度と面見せんな」
プルルルル
プルルルル
天王寺「電話か……」
ピッ
天王寺「……」
天王寺「……っ」
萌郁「……?」
天王寺「……っ!?」
岡部「FB……?」
天王寺「……いや、問題はない。……了解した」
ピッ
萌郁「大丈夫……? すごい、汗……」
天王寺「未来ガジェット研究所に行くぞ」
岡部「ラボへ……?」
萌郁「そんな、どうして、いきなり……?」
天王寺「タイムマシンも持っていく」
萌郁「……え?」
岡部「電話レンジを?」
~ラボ~
天王寺「……」
岡部「なぜラボに電話レンジを……?」
天王寺「送る準備、してくれや……」
萌郁「もしかして……」
天王寺「そう、送るんだよ、Dメール。過去の俺によ……」
岡部「でも、なぜいきなり……」
天王寺「もうな、流されんのはやめたんだ」
岡部「……その前に、話してくれませんか、あの日のことを」
岡部「1999年 12月14日に何があったのかを──」
天王寺「……分かった、よく聞いとけよ」
そう、話さなきゃならねえ──
ずっと、後悔してきたから。
きっと、俺がこいつを変えちまったから。
プルルルル
ピッ
天王寺「こちらM2」
男『私だ』
天王寺「……」
男『仕事だ。要観察者、橋田鈴が所持しているPCをなんとか探ってほしい』
天王寺「……なんだと?」
男『彼女は何年も前から我々SERNにハッキングを仕掛けてきている、目的はいくつか考えられるものの不明だ』
男『だが、近いうちに何かを仕掛けてくる可能性がある』
天王寺「何を……仕掛けるんだ?」
男「……」
男『……それが分からないからこうして君へ電話している』
天王寺(鈴さんは何をしようと……?)
天王寺「よ、要観察者は……病院だ」
男『病院? 体調でも崩しているのか?』
天王寺「いや……どうもついさっき、目の前でガキが倒れたらしく、付き添ってるらしい」
男「……」
天王寺「しばらく戻らないかもしれない……そう言っていた」
男『好都合だな』
男『M2、君はこれから、要観察者の自宅に向ってくれ』
天王寺「……了解」
男『30分後、コンピュータに精通しているM1をそちらに向かわせる』
男『彼がPC内のデータを探っている間はサポートに回って欲しい。万が一要観察者が戻って来ることがあれば……殺せ』
天王寺「……りょ、了解」
男『以上だ』
M1「……これは驚きました」
天王寺「何か……分かったのか」
M1「彼女はどうやら2000年クラッシュを防ごうとしてるみたいですよ」
天王寺「2000年クラッシュ? コンピュータが誤作動を起こすっていうあれか」
天王寺「でもよ、そんなの個人で防げるもんじゃねーだろ」
M1「なるほど、あなたは知らされてないのですね」
天王寺「……?」
M1「あ、内緒ですよ?」
天王寺「あん?」
M1「SERNは2000年クラッシュを人為的に引き起こそうとしてます」
天王寺(何……?)
M1「そう、薬だと思って飲んだら毒だったっていうオチですよ、愉快でしょ?」
天王寺「……っ」
M1「そのウィルス──アンゴルモアが明日ばら撒かれるんですが、どうやらターゲットはこれをクラッキングで改竄しようとしてるみたいです」
M1「アンゴルモアに非常に似通ったプログラムがあったので、気になって覗いてみたのですが
中身はなんのことはない……誤作動のごも起こさせない様な欠陥品でした。ガッカリです」
天王寺「つまり彼女は、SERNサーバー内のウィルスを改ざんして、2000年クラッシュを阻止しようと……?」
M1「でしょうね、きっと情報を覗きみた際に計画に気づいたんでしょう、健気なことです」
天王寺「……なあ、2000クラッシュなんて起こしてどうしようってんだ」
M1「それは、あなたの知る必要の無いことです」
天王寺「……」
M1「不安ですか? 大丈夫、この地域はさほど被害が出ないと思いますよ」
天王寺「おい、どういうことだ」
M1「おっと、ちょっと喋りすぎました」
天王寺「何をした」
M1「無事に2000年クラッシュが起こるようにしただけですよ」
天王寺「……無事にって、おい……」
天王寺(鈴さん……俺はどうしたら……)
天王寺(あんたには世話になった、恩を讐で返すような真似はしたくない……)
M1「変な気は起こさないほうがいいですよ。最近お子さん、生まれたんですよね?」
天王寺「くっ……」
恐怖の大王は予言の半年遅れて落ちた。
たくさん人が死んだ。
結局俺は流された。
選ばないことを、選んだ──
Chapter 8 『恩讐のディーレクトゥス』 END
8月16日 20:32
~ラボ~
岡部「……電話レンジの設定、完了です。42型ブラウン管も点灯済み」
天王寺「……」
岡部「では……放電現象が発生したらメールを……」
天王寺「なぁ岡部、別の場所から送ることって出来んのか?」
岡部「可能ですが……」
天王寺「なら俺は下に行ってブラウン管眺めながら送ることにするよ」
岡部「……分かりました。それでは激しく揺れだしたら、メールの送信をお願いします」
萌郁「……私、FBと一緒に、いる」
岡部「……萌郁?」
岡部「そうか……今度こそ、本当に別れになるんだよな」
萌郁「名前……呼んでくれて、嬉しかった」
岡部「……さよなら……萌郁」
萌郁「うん……さよなら、岡部くん、また……会えるんだよね、それがたとえ、今の私じゃなくても……」
岡部「……」
岡部「……店長も、色々とすみませんでした」
岡部「まだガキだった俺に良くしてくれたこと、感謝しています」
天王寺「気にすんなよ、俺はただ恩を返そうと思っただけだ」
天王寺「──なぁ岡部」
岡部「……なんです?」
天王寺「人間がどれだけ科学を進歩させようと、所詮ただの人間だ」
天王寺「決して神のようにはなれねえ」
岡部「……?」
天王寺「年寄りの戯言だよ、聞き流せや」
───
──
岡部「しかし……なぜ店長はDメールを送ろうなどと……」
岡部「電話を取る前は頑なに拒んでいたはずだが……」
岡部(電話! もしかして──)
ガチャリ
紅莉栖「は、はろー……」
紅莉栖「あ、岡部……!」
岡部「紅莉栖……どうしてここに……」
紅莉栖「あの……店長さんの家に行って綯ちゃんに聞いたら、ラボに行くって言ってたから……」
岡部「なに? 店長の家に行ったのか?」
紅莉栖「いや、あの……」
紅莉栖「隠してもしょうがないわよね……」
岡部「……」
紅莉栖「これ……見て」
Sub:
本文:タイムリープ
ピッ
From:chris-m@docono.ne.jp
Sub:
本文:マシン作って
ピッ
From:chris-m@docono.ne.jp
Sub:
本文:岡部を助けて
紅莉栖「そ、Dメール。未来から……。送ったのは多分私……」
紅莉栖「タイムリープマシンの構想自体は、すでに私の頭の中にあったから……。さっき抜けだしてパーツを買ってきたの」
岡部「お前……電話レンジを改良するためにラボ……店長の家に?」
紅莉栖「電話レンジを改良してタイムリープも出来るようにしたいって言えば、店長さんも了承してくれるかなって思って」
岡部「……全く、無茶を……。お前は今、ラウンダーに追われてるんだぞ」
紅莉栖「だって、岡部の力になりたかったんだもの……」
岡部「紅莉栖っ……!」
『忘れないで』
『あなたはどの世界線にいても一人じゃない』
『──あたしがいる』
紅莉栖「ふぇっっ!? ちょ、あんた何いきなり抱きついて!」
岡部「……すまない、紅莉栖」
お前を見捨てる選択をしなくちゃいけないんだ。
なのに、お前は……そんな俺に力を貸してくれる。
岡部「すまない……」
岡部「どうしてお前なんだよって思ってた……」
紅莉栖「おか……」
岡部「本当に、すまない……俺はお前を……助けられない……」
紅莉栖「よく、分からないけれど……」
紅莉栖「最初会った時も、こうやって、いきなり……抱きしめられたのよね」
岡部「あぁ……そうだったな」
紅莉栖「ふふ、あんたってばホントに強引なんだから」
岡部「今度は、殴らないんだな……」
紅莉栖「当たり前、でしょ。今のあんた……こっちが痛くなるくらい弱々しいんだもの……」
天王寺「ったく、いつもイライラさせられてたあの揺れを待つ日が来るたぁ夢にも思わなかったぜ」
萌郁「FB……過去が変わったら私たちの関係、どうなるの、かな」
天王寺「……さあな」
萌郁「また、会えるよね」
天王寺「そうだといいな」
萌郁「FBは……私にとって、父みたいな存在、だった」
天王寺「……俺もお前のことは娘みたいに思ってたよ」
────────────────────────────────────────
紅莉栖「電話レンジ、改造しなくていいの?」
岡部「問題ない。近いうちに完成されるマシンを使って跳躍してきた人物がいる」
岡部「その人物がすでにDメールを送るために待機している」
紅莉栖「……そっか……ちゃんと、力になれたんだね、私」
岡部「あぁ、お前の作ったマシンの出来はガチだった」
紅莉栖「と、とと当然でしょ! なんて言ったってこの私が手がけたんだからっ!」
萌郁「覚えてる? 綯ちゃんがみんなで一緒にプールに行きたいって言った時」
天王寺「はは、忘れもしねーよ。あの時、頑なに拒んだんだよな、岡部」
萌郁「そ……プールなんて、子供の行くところ、だって」
天王寺「実際には泳げねえからだったんだよな。そっちの方がガキだっつーの」
萌郁「ふふ、岡部くんの、数少ない欠点」
天王寺「……あぁ、あん時は傑作だった」
────────────────────────────────────────
バリバリバリバリ
岡部「放電現象、始まった……」
紅莉栖「岡部……目、閉じて」
岡部「え?」
紅莉栖「いいから、早く閉じなさいよ!」
岡部「あ、あぁ……」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
天王寺「……来たか」
萌郁「……」
天王寺「……」
────────────────────────────────────────
紅莉栖「……」
ふと……・
唇に触れる柔らかい感触。
岡部「紅莉栖……お前……」
紅莉栖「……っ」
紅莉栖「キス……だけだからな!」
To:future-gadget8@hardbank.ne.jp
Sub:
本文:覚悟を決めろ
流されるな
選択しろ
天王寺「頼んだぞ……1999年の俺……」
ピッ
萌郁「……」
萌郁「さようなら、私のお父さん。きっとまた、会おうね……」
その瞬間、周りの景色が琥珀色に包まれ、ぐにゃぐにゃと揺れ始める。
平衡感覚は失われ、立っていられなくなり──
やがて世界は元の形へと収束する。
Chapter 9 『収束のデスペディーダ』 END
ここ……は?
ラボのようだ。
目の前には紅莉栖、世界線が変わる前と同じ光景。
だが、体中の痛みは消えている。
岡部「紅莉栖……」
紅莉栖「岡部……あんたは選ばなくちゃいけない。分かってるはずよ」
岡部「あぁ……分かっている」
紅莉栖「まゆりか……私か……二人共選ぶなんて都合のいい話は……ない」
岡部「……分かっている」
すまない……みんな。
俺が逃げだしたばかりに。
二人のどちらかを選ばなかったばかりに。
色んな思いを犠牲にしてしまった。
辛い思いをさせてしまった。
でも俺はもう逃げない、選ぶよ。
ガチャ
まゆり「ずるいよクリスちゃん、まゆしぃもその話に加わる権利はあるのです……」
岡部「まゆりっ!」
紅莉栖「ま、まゆり!?」
久しぶりにお前の元気な姿が見れて嬉しいぞ。
るか「そ、そうですよ! そんなのず、ずるいですっ」
フェイリス「凶真はフェイリスを選ぶのニャ! 2人は前世からのつよ~い絆で結ばれてるニャン!」
紅莉栖「ちょ! おま! い、いつから……!」
ん?
なんだこれ。
萌郁「そう、抜け駆けは、だめ」
鈴っ! 鈴羽!? 鈴羽だ!
なんでいるんだよ、お前はすでにタイムトラベルしてるはずじゃ……。
岡部「おい鈴羽、お前はSERNのディストピア構築を回避するために1975年に飛んだはずでは……」
鈴羽「え? SERN? ディストピア? なにそれ」
会話が噛み合っていない、これはもしや……。
鈴羽「いや、してたね、絶対」
萌郁「確率を2分の1まで高めて、あわよくば、選ばせる」
フェイリス「汚いニャンさすがクーニャンきたないニャン」
るか「ボ、ボクだって……岡部さんと……」
まゆり「みんなぁ、だめだよぉ……オカリンが困っちゃってるよ~」
紅莉栖「まゆりの言うとおりね!」
フェイリス「フェイリスたちを除け者にして選ばせようとしてたのはどこの誰かニャーン?」
鈴羽「そうだよー!」
るか「ボ、ボクだって、岡部さんに……」
萌郁「選ばれ、たい」
「オカリン!」 「岡部!」 「岡部……くん」 「岡部さん!」 「凶真ぁ~!」 「岡部倫太郎ーっ!」
みんな俺の近くに集まってくる……。
わかっているんだ、これも全部自業自得だって。
こうなったのも俺が不用意に過去を改変したせいだ。
まゆり「あれ~……オカリン、どうして泣いてるの……?」
岡部「でも、こんなの……きつすぎるだろっ……」
世界線変動率 3.08106%
Last Chapter 『比翼恋理のジキル』 END
ひよくの、、、?
8月18日
昨日、10年ぶり──俺の主観では──に池袋の実家に戻ってみた。
そこには遠い昔に見た元気な両親の姿があり、思わず目頭が熱くなる。
が、必死に堪える。知る必要のないことだから。
ただ俺は一言、随分放ったらかしにしてすまない、とだけ伝えた。
もっとも、両親は何を勘違いしたのか”だったら店番を頼む”と言ってきたのだったが。
秋葉にも違いはあるだろうかと、歩きながらあちこち眺めてみる。
街を行き交う人はかつてのように様々な顔を覗かせている。
その表情は、2000年問題の爪痕が深く残ったあの世界線よりも随分明るかった。
鈴羽「うーっす、岡部倫太郎ー」
岡部「鈴羽か」
俺はこの世界線での記憶が無い。俺は鈴羽から、それとなく聞き出してみる。
これまでどう過ごしてきたのか。なぜ鈴羽がタイムトラベルしてきているのか。
鈴羽「それで父さんってば、コミマの中心で萌え萌えキュン! だもんね、あはは!」
岡部「……それは見てみたかったな」
鈴羽「え? 君もいたじゃん」
岡部「え? あ……そ、そうだったな」
どうやら俺はダルとその嫁の仲を取り持ったらしい。
──こいつの存在を消さないために。
そのお礼に未来の情報を一つだけ教えると言ってくれた。
──安心した。
未来ではディストピアも構築されず、鳳凰院凶真もラボのみんなと仲良くやっているらしい。
ありがとう、鈴羽。これで肩の荷が降りた。
岡部「……」
フェイリス「あ、凶真ぁ~! おかえりニャさいませ~、ご主人様!」
俺はこの場所が苦手だ。
俺の居場所ではない、そう思っていた。
だが──
フェイリス「それで~、凶真は冥界より召喚されし黒き堕天使、4゜Cの策略からフェイリスとメイクイーンを守ってくれたのニャ!」
岡部「当たり前だ、俺の目の黒いうちはそんな奴の好きにはさせん」
フェイリス「ニャフフ、凶真はフェイリスの王子様なのニャ!」
岡部「俺は王子様などではない! あえて言うならば、地を這う者!」
このやりとりも随分と懐かしく感じる。
と言っても、俺にとっては記憶のみが存在するやりとりだけなのだが。
たまにはこういうのも悪くない。
もう居場所を失う恐怖に怯えなくてもいいのだから。
岡部「るか」
るか「あ、お、岡部さん! こんにちは!」
るかは神社の境内で掃き掃除をしていた。
相変わらず巫女装束が似合っている。
竹箒を持つその姿はとても可憐で、思わず見とれてしまうほどだ。
るか「それで、岡部さんはボクの修行に付き合ってくださって……」
るか「信じて素振りを続けていれば、清心斬魔流 の奥義を会得できる、と……」
岡部「あぁ、そうだ、信じていれば何事も乗り越えられる」
るか「はい……、ボク、頑張ります」
そういえばこの世界線のるかは男なのだろうか? 女なのだろうか?
いや、よそう。
るかは俺を慕って付いてきてくれる。
俺のことを信じてくれる。
男だとか女だとか、そんなことはどうでもいい。
岡部「邪魔するぞ」
萌郁「あ、岡部くん」
相変わらず部屋が雑然としている。
空のインスタント食品の容器。無造作に転がっている缶。積み上げられた雑誌。片付けられない女。
あの時の俺はこんな状態の部屋が好きだった。
綺麗にしてあると、汚れた俺が入ってはいけないと思うから。
岡部「相変わらずだな」
萌郁「……また片付け手伝ってくれる?」
岡部「……ああ」
岡部「それと、ケバブ……買ってきた。一緒に食おう」
萌郁「ありがとう、岡部くん」
今度は俺がこいつの力になってやろう。
もうペルソナを被る必要はないのだから。
ダル「オカリーン! ハーレムとか許さない、絶対にだ!」
岡部「おい、何の話だ」
橋田至、マイフェイバリットライトアーム。
α世界線においても、あの世界線においてもタイムマシンを作り上げ、歴史を動かした男。
もしかしたら、俺なんかよりずっと苦悩があったのかもしれない。
岡部「なあ橋……ダル」
ダル「ちょ、ハシダルって、変なあだ名つけんなし」
岡部「というかお前にはすでに阿万音由季という彼女がいるだろう」
ダル「それとこれとは話が別! ラボでラブチュッチュ*6とか無理! 死ぬ! 僕が死ぬ!」
相変わらず飛ばしている。
あの世界線においてもこういう会話で、いくらか救われていたのかもしれないな。
そして、おまえがいてくれたからこそ、俺はこの世界に来ることができた。
まゆりも紅莉栖も死なない世界線に。
ラボメンが元気に笑っている世界戦に。
ありがとう、お前は最高の相棒だ。
岡部「なんだ?」
紅莉栖「あんまり、見ないでよ……なんなのよ、一体」
岡部「いや、なんでもない」
サイエンシーに論文が載った天才少女。
気が強すぎるのが玉に瑕だが、何度も俺を地の底から救い上げてくれた女。
紅莉栖「ったく、私のホテルに泊まったからって”そういうこと”はまだ、ダメなんだからな! だからイヤラシイ目つき禁止!」
な、なに!? ホテル!?
泊まったのか!? 俺が? 紅莉栖と!?
まゆり「いいなー、まゆしぃも一緒に泊まりたいなー」
岡部「それは、どっちと……だ……」
岡部「……なるほど」
この笑顔に何度励まされてきたか。
俺はようやく、こいつの笑顔を守ることが出来た。
まゆり「またみんなでプールにも行きたいねえ~」
プール!? 行ったのか!?
勘弁してくれ……。
体を動かすのは得意なんだが水泳だけは唯一ダメなんだ。
紅莉栖「岡部がかわいそう、また溺れるわよ」
まゆり「大丈夫だよ~、今度こそ泳げるようになるよオカリン!」
やっぱり溺れたんだな。
紅莉栖「そ、その時は私も……お、教えてあげるから、泳ぎ……」
岡部「……ふふ、それではその時はお願いしようか」
どうもこの世界線の俺は色恋沙汰ばかりだったようだ。
やれやれ、この世界線に適応していくのは骨が折れそうだな。
ならば俺が変わってやろうか?
俺ならばスイーツ(笑)も軽くいなしてやるぞ
フゥーハハハ!!
それも悪くない。
が──遠慮しておく。
もう俺には必要ない。
そ、そうか……
岡部「こんにちは」
天王寺「おう、岡部じゃねえか、どうした」
岡部「いえ、たまたまた近くによったもので」
天王寺「そうか、まあ上がれや」
FB……天王寺裕吾。
居場所を探していた俺を救ってくれた恩人。
俺に家族のぬくもりを与えてくれた第二の父。
綯「オカリンおじさん、こんにちは……」
岡部「綯、俺はおじさんではない」
綯「ひぅっ……」
天王寺「こら岡部! 綯をビビらせてんじゃねえ! 殺すぞ!」
相変わらず娘を溺愛しているようだ。あまり変わっていないようで安心した。
そしてどうもこの世界線の綯は俺が怖いらしい。
α世界線では逆に俺をビビらせてくれたのに。
岡部「はは、それは横暴ですよ……」
綯「あ、お母さん!」
え──?
綴「あら、そちらの方は?」
天王寺「あぁ、工房の二階を間借りしてる岡部ってんだ」
岡部「あなたは……」
綴「いつも主人がお世話になってます。天王寺綴です、よろしくお願いしますね、岡部くん」
『綴……綯の母親はSERNに殺された、俺のせいでな』
岡部「そうか……変えることが出来たんですね……」
天王寺「あん?」
岡部「いえ、なんでもないですよ」
これがシュタインズゲートの選択というやつか。
Epilogue 『異世界線のアナザーヘブン』 END
長々と付き合ってくれてあんがと
だーりん、ブラウニアンモーション、ハイド、アンダーリンと
色々混ぜてるので原作だけの人は分かりにくかったかもねごめんね
感動した
ケバブ食べてくる
Entry ⇒ 2012.08.25 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
「岡部倫太郎の消失」
「岡部、頑張って」
「……元気で」
その弱々しい岡部の声を聞いて、私は耐えきれずに泣き出しそうになってしまった。
それを必死に堪え、無理矢理に笑顔を作り岡部に見せたあと改札へと歩き出す。
岡部はその場から動かず、ただ見送るだけだった。
本当は、今すぐ駆け寄ってきて「行くな」と引き止めて欲しい。
抱きしめて「そばにいてくれ」と言って欲しい。
でもそれは許されないことだから。私たち二人が決めたこと。
まゆりを助けるために。岡部を救うために。
ありがとう、岡部。私は、もうあんたには会えない。
私は、消える。この世界線に、取り残される。
岡部との距離が少しずつ離れていく。そのとき、声が聞こえた。
「俺は……」
「牧瀬紅莉栖のことを。牧瀬紅莉栖の温もりを」
「絶対に、忘れない……!」
やっぱり岡部は馬鹿だ。そんなことを言われたら、泣きそうになるに決まってる。
いや、もう既に私は泣いていた。岡部に背を向けた時から、ずっと。
そこにとどめを刺したのは、私の大切な人の震える声だった。
気付かれてはいないだろうか、それだけが少し心配だった。
もう二度と、会うことはない。私と岡部の世界線は、交わることはない。
岡部に会えて、よかった。岡部がいてくれて、幸せな時間を過ごすことができた。
ありがとう、愛しい人。さよなら、愛しい人。
そのまま秋葉原駅の改札を通り、空港に向かう路線のホームへと進む。
ホームに着いた時、ちょうど電車が来たところだった。
それでも、私はその電車には乗らなかった。次の電車も、その次のも。
私はそのままホームの端に行き、一人俯いて立っていた。
他の誰にも泣き顔を見られないように、誰にも声を掛けられないように静かにそうしていた。
気付けば通勤客でホームはいっぱいになっていた。
それだけの時間をこの場で過ごしてしまっていた。
その時間で私は、とても単純な欲望についてずっと考えていた。
もう一度、岡部に会いたい。
駅員に忘れ物をしたと言い改札を抜け、目的地へと走り出した。
目指すのは思い出がたくさんある場所、大切な人がいる場所。
電話もせず、ただ私は走っていた。もし突然私が現れたら驚くかもしれない。
それと同時に、未練を強くさせてしまうかもしれない。
でも、そんなことはどうでもよかった。岡部に会いたい、それしか考えられなかったから。
体力のない自分がどうして夢中になって止まらずに走ることができたのか。
その答えは分からないが、今はこうしてラボの前にいる。
部屋の窓が少し開いている――誰かいる。こんな朝早くからいるのは、一人しかいない。
誰かに声を掛けられた気がしたが、気にせず階段を駆け上る。
そこには、岡部がいる。私の大切な人がいる。
私はドアを開けようとノブに手をかけた。そして思いっきり開けようとした。しかし、
「あれ……? 開かない……岡部! そこにいるんでしょ?」
その問いに反応はなかった。無視している? まさか、恥ずかしいとか思っているのだろうか。
「岡部、お願い。どうしても会いたくなった、だから……」
その言葉を遮るように、部屋の中から物凄い音が聞こえてきた。
この音、この揺れは、間違いない。
「電話レンジを誰かが使っている……? 岡部! なにをしてるの!?」
その言葉にも反応はなく、揺れは続く。
ぐにゃりと景色が歪んだ気がした。自分が揺れているような感覚、
視界に入るものが二重三重にも分散して、また色が失われて。
この感覚は、いったい――
紅莉栖(急にくらっとしたと思ったら視界が歪んで……そのまま)
紅莉栖(今はなんともない……なにが起きたのか分からない)
紅莉栖(とりあえず、もう一度ラボに……あれ?)
紅莉栖(ここは……ラボじゃない。今私がいるのは……)
紅莉栖(ベッドがある、それにこの部屋の雰囲気は……ホテルみたいね)
紅莉栖(……でも、私が泊まっていたホテルとは違う)
紅莉栖(いつの間に移動した? 意識を失っていたってこと?)
紅莉栖(そんなはずは……ともかく、現状を把握しないと)
紅莉栖(手帳を見る限りは、私は日本に講演、講義、それに視察で来た……らしい)
紅莉栖(それ自体はあまり変わりはない。でも、明らかに変わっている)
紅莉栖(……記憶障害? 私が? そんなことがある訳……ん?)
紅莉栖(電話……誰からだろう。とりあえず、今の状況では出た方がいいか……)
紅莉栖「もしもし、どちら様ですか?」
教授『牧瀬博士、私です。東京電機大学の教授の○○です』
紅莉栖「……ああ、七月の終わりに講義した時の」
紅莉栖(岡部を徹底的に論破してやった時のアレね……もうずいぶん前に感じるけど)
紅莉栖「そ、そうですか……わざわざありがとうございます」
教授『今後ともあなたのご活躍を願っております。また日本に来る機会があればご連絡くださいね』
紅莉栖「ええ、そうさせてもらいます。それでは、またいつか」
教授『はい、失礼いたします。お気をつけて』
紅莉栖(帰国することは岡部しか知らないはず……それなのに)
紅莉栖(……違和感、なにかがおかしい気がする。とりあえず今は)
紅莉栖(ラボにもう一度戻って……岡部に会おう)
紅莉栖(……もともとはそのつもりでラボに向かったんだから、今更迷う必要はないわよね)
紅莉栖(暑い……ホテルから距離があったから途中でタクシーで来ちゃったけど)
紅莉栖(……そんなこと言ったら、また岡部にセレセブとか馬鹿にされそうね)
紅莉栖(セレブじゃないって言ってんのに、つーかセブンティーンでもないっつーの)
紅莉栖(……もし、もう少しだけ早く知り合えてたら、岡部に誕生日祝ってもらえたのかな)
紅莉栖「って、そんなこと考えてる場合じゃない! 私は岡部に会いに来た……よし!」
紅莉栖(この階段を上れば、もう一度岡部に……)
「おう、どこに行こうとしてんだ、あんた」
紅莉栖「へっ!? こ、この声は……店長さん?」
紅莉栖「ど、どこって……ラボですけど」
天王寺「ラボぉ? んなもんウチの上にはねえよ。なにと勘違いしてんだ?」
紅莉栖「えっ……? なにを言ってるんですか。ラボですよ、正式には未来ガジェット研究所」
天王寺「それはコッチの台詞だ、その未来ナントカはこのビルにはねえんだ」
紅莉栖「冗談、ですよね? だって、上には岡部や橋田やまゆりが……」
天王寺「岡部? んー……悪いが、知り合いに岡部なんてヤツはいねえな」
紅莉栖「そんな……か、確認させてください! 上の部屋を見せてください!」
天王寺「別にいいけどよ……本当になんもねえぞ?」
紅莉栖「……お願いします。そんなはずは……ないんです」
天王寺「わかったわかった……今鍵を持ってきてやる、ちょっと待ってろ」
天王寺「じゃ、開けるぞ。……よっと」
紅莉栖(中に入れば、岡部や橋田やまゆりが……えっ?)
紅莉栖「なにも……ない」
天王寺「言ったじゃねえか、なんにもねえってよ」
紅莉栖「嘘……嘘よ! こんなことがあるはずない!」
天王寺「落ち着けって。ここは前から空き部屋だ、しばらくは誰も入ってねえんだ」
紅莉栖(机も、ソファーも、橋田の使ってたPCも)
紅莉栖(電話レンジも……タイムリープマシンも……なにも、ない)
紅莉栖(ラボが……消えた)
天王寺「お、おい、大丈夫か?」
紅莉栖「……店長さん、ここに岡部倫太郎という人物が来たことは」
天王寺「さっきも言ったが、岡部って知り合いはいねえんだ……。
もしかしたら、俺が忘れてるだけかもしれねえけど」
紅莉栖「そうですか……ありがとうございます、ご迷惑をおかけしました」
天王寺「俺はいいんだが……あんたの方は大丈夫か? 顔色悪くなってんぞ……」
紅莉栖「大丈夫です……失礼します」
天王寺「あ、ああ、なにかあったらまた来てくれ」
紅莉栖(どうして……どうしてラボは消えてしまったの!?)
紅莉栖(つい二時間前まで私はラボに入ろうとしていた……それなのに)
紅莉栖(ラボはない、店長さんは岡部のことを知らない……岡部にも会えない)
紅莉栖(……いや、一度落ち着かないと。冷静さを失ってしまってはなにもできない)
紅莉栖(急に世界が変わった、私の知らない内に……あれ?)
紅莉栖(この状況、似てる。……岡部の体験した、世界線の移動)
紅莉栖(急な変化に驚き、自分だけが異質な記憶を持つ……岡部はそれを)
紅莉栖「リーディング・シュタイナーと呼んでいた……それなら、今の状況は」
紅莉栖「……岡部だ。今は岡部に会わないとどうしようもない」
紅莉栖(この状況に関しても岡部はきっとなにか知っているはず。……出なさいよ、岡部)
紅莉栖(……! 繋がった!)
紅莉栖「もしもし! 岡部!? 実は」
『お客様のおかけになった電話番号は、現在使われておりません。お客様のおかけに――』
紅莉栖「……えっ? な、なにか間違えたのかしら……気が動転してるからね」
紅莉栖(もう一度、岡部の番号に……)
『お客様のおかけになった電話番号は、現在使われておりません。お客様のおかけに――』
紅莉栖(……見間違えでもない、押し間違えてもいない。それはつまり)
紅莉栖(岡部の電話番号が……違う番号になっている)
紅莉栖(岡部、岡部……あれ? アドレス帳に登録されてない……?)
紅莉栖「……他の人、まゆり……ない。橋田も……ない」
紅莉栖(……アドレス帳の中身も違う、メールボックスの中身も違う)
紅莉栖(覚えている番号は岡部のだけだし……携帯でコンタクトを取るのは、不可能)
紅莉栖(やっぱり、直接会いに行くしかない……でも、ラボは存在しない)
紅莉栖(岡部や他のラボメンにも会える場所、それがあれば……)
紅莉栖(……あっ、あった。あそこに行けば、誰かに会えるはず――)
紅莉栖(ここに自ら進んで行く日が来るとは思わなかったわ……)
紅莉栖(そんなこと考えてる場合じゃないわね。……ともかく中に)
「お帰りニャさいませ。お嬢様♪」
紅莉栖「フェ、フェイリスさん! よかった、やっとラボメンに会えた……」
フェイリス「ニャニャ? フェイリスに会っただけでそんなに喜んでくれるなんて嬉しいニャン♪」
紅莉栖「ええ、まさかあなたに会えてこんなにホッとするなんてね……」
フェイリス「お一人様ニャン? 初めてみたいだから色々説明した方がいいですかニャ?」
紅莉栖「……そう、私とあなたが会うのはこれが初めて」
フェイリス「ニャ!? まさか、悠久の刻を越え、再び導かれた……」
紅莉栖「席、適当に座るわね。どこか空いてる席は」
フェイリス「ニャー……もうちょっとノって欲しいニャン」
紅莉栖「すいません。ここ、座っていいですか?」
ダル「ぬおっ!? ぼ、僕との相席を希望するってことでよろしいか!?」
紅莉栖「ああ、先に言っておきますけど好意とかそういうのじゃないですから」
ダル「なんだお……てっきりフラグが立ったのかと思ったのに」
紅莉栖「……その感じからして、私のことは知りませんよね」
ダル「そりゃ僕なんかが素敵な女の人と知り合いになるスキルなんて……ん?」
紅莉栖(店長さんやフェイリスさんの感じから、ある程度は予想できたけど……)
紅莉栖(実際、橋田にまで知らないって言われるのは……ちょっとショックね)
紅莉栖「へっ? あ、あなた、私のことを知ってるの!?」
ダル「もちろんですとも。牧瀬氏の講義……僕もタイムマシンに対する考えを改めざるを得なかったので」
紅莉栖「ああ……そういうことですか。でもあの時は講義というよりはディスカッションの方が近かったですね」
ダル「いや、牧瀬氏が大体喋って時折質問に答えるとかそんな感じでしたけど」
紅莉栖「……? だって、あの時は岡部が私に突っかかって来て」
ダル「岡部? そんな学生いたっけ……」
紅莉栖「ちょ、ちょっと待って。岡部ですよ、岡部倫太郎。あなたの友人でしょう?」
ダル「んー、僕の友人にはそんな名前の人物は……」
紅莉栖「えっ……?」
ダル「岡部……岡部倫太郎……あっ、思い出したお」
紅莉栖「ほ、本当!? 教えて、岡部はどこにいるの!?」
ダル「いや、教えてと言われても……ただ高校の時にクラスが同じだってだけで」
紅莉栖「そこであなたたちは仲良くなって……」
ダル「仲良く? あるあ……ねーよ。いや、敬語ならないですよって言った方が?」
紅莉栖「敬語でもタメ語でも何でもいいから教えて!」
ダル「わ、分かったお。岡部倫太郎ってのは僕とは対照的な人物だった訳で」
紅莉栖「対照的な人物?」
ダル「僕が非リアにたいしてあっちは超リア充。ルックス良し、彼女アリ、
人気者って感じで……うわっ、思い出しただけでも鬱になりそうな件について」
紅莉栖「お、岡部がリア充!?」
紅莉栖「あ、有り得ん……あの岡部がリア充なんて……」
ダル「つーか牧瀬氏、リア充とかそういう言葉の意味が分かるとは……もしかして」
紅莉栖「ねらーじゃないから! って今はどうでもいいわ……じゃあ、岡部の連絡先とかは」
ダル「リア充の電話番号なんて持ってる訳ないお」
紅莉栖「でも、同じ大学で同じ学年なんじゃ……」
ダル「同じ大学? いや、あっちはたしか文系だったからそれはないと思われ」
紅莉栖「そんな……」
紅莉栖(……リア充で文系とか、私の知っている岡部とは全然違う)
紅莉栖(間違いない……世界は改変された。その結果、この世界の岡部が生まれてしまった)
紅莉栖「ええ……ありがとう、橋田さん」
ダル「あれ、僕いつの間にか名乗ってたんだ……全然覚えがない件について」
紅莉栖(橋田は繋がりなし……それなら、もっと深い繋がりを持つ人に)
フェイリス「ダルニャ~ン、ついに春が来たのかニャ?」
ダル「……僕は三次元とは決別した男、いつまでも変わらずフェイリスたん命!」
紅莉栖(……フェイリスさんは三次元じゃないのか?)
フェイリス「二人の会話がヒートアップしてたから、注文を取るタイミングがなかったニャン」
ダル「たった今ヒートエンドしたとこなのだぜ」
紅莉栖「……ええ、そうね。あっ、なにか飲み物をもらえるかしら。できればアイスコーヒーとか」
フェイリス「かしこまりましたニャ♪ 今すぐお持ちいたしますニャーン」
ダル「はあ……フェイリスたんマジ天使」
紅莉栖(……こうやって見ると、本当に世界が変わったのか疑わしくなるわね)
紅莉栖「ありがとう。えーっと、砂糖は……」
フェイリス「お待ちくださいニャ。ガムシロップとミルクを入れて」
紅莉栖「あっ、ちょっと別に私は……入れちゃったしもう遅いか」
フェイリス「まーぜまーぜ……まーぜまーぜ」
紅莉栖「……どうして目を離さないのかしら」
ダル「出たー! フェイリスたんの必殺技、目を見てまぜまぜー!」
紅莉栖「必殺って、誰も死なないでしょうが」
ダル「僕がキュン死するので」
紅莉栖「……はあ」
紅莉栖(本当はもっと焦るべきなのに……変わらない人に会うと、流されそうになってしまう)
紅莉栖(岡部、あんたは変わってなんかいないわよね……?)
フェイリス「ニャ? 聞きたいこと? スリーサイズは秘密ニャン♪」
紅莉栖(誰も知りたくねえっつーの)
ダル「ウヒョー! フェイリスたんの秘密、僕気になります!」
紅莉栖「橋田さん、ちょっと黙ってて」
フェイリス「で、フェイリスに聞きたいことってなにかニャ?」
紅莉栖「このお店に、椎名まゆりという女の子が働いていますよね。その子に会いたいんですけど」
フェイリス「椎名まゆり? ニャー……そんな名前の子は働いてないニャン」
紅莉栖「働いて、いない? そ、そんな……たしかにこのお店には椎名まゆりって女の子が!」
フェイリス「……じー」
紅莉栖「えっ? 急に黙ってどうしたんですか……」
フェイリス「……じー」
紅莉栖(目を見られている……? でも、そんなことしていったいなにが……)
紅莉栖「そうですか……椎名まゆりは、このお店にいないんですね」
紅莉栖(岡部もまゆりもほとんど手掛かりなし……これは会うまでに時間がかかりそうね)
ダル「牧瀬氏、その椎名まゆりって……もしかしてコスプレ衣装作るの得意だったりする?」
紅莉栖「えっ? ……ええ、その通りだけど」
ダル「トゥットゥルー、っていう変わった挨拶とかしたりする?」
紅莉栖「ええ、するわね。トゥットゥルーって」
ダル「それでいつも同じ帽子かぶってたりする?」
フェイリス「それはダルニャンも一緒ニャン」
紅莉栖「たしかに帽子はかぶってるけど……もしかして、まゆりのことを」
ダル「まゆ氏のことなら知ってるお。何度も会った訳じゃないけど」
紅莉栖「ほ、本当!?」
紅莉栖「連絡先は? まゆりの電話番号は知ってるの?」
ダル「えーっと、たしかまたコミケで会えるかもってことで交換したはず……」
紅莉栖「そんな簡単に交換して大丈夫なのかしら……」
ダル「いや、僕が何度か衣装を褒めたら次も頑張るから見に来てねー、って感じで」
紅莉栖「ああ……まゆりらしいわね」
ダル「まっ、まゆ氏に手を出すとかそんなふしだらなことは考えないお」
紅莉栖「へえ、ずいぶん紳士的じゃない」
ダル「だって僕はフェイリスたん命!」
紅莉栖「連絡先、早く教えてもらえる?」
ダル「……牧瀬氏の目が怖い件について。えっと、あっ、あったあった」
紅莉栖「ありがとう。……さすがに外で電話した方がいいわよね」
ダル「それは間違いないと思われ」
紅莉栖「そうだ、橋田さん。あなたの連絡先も教えて欲しいのだけど」
ダル「僕の連絡先? ま、まさかやっぱりフラグが」
紅莉栖「……立たないって言ってるでしょうが。まあ、連絡を取ることはあるかもしれないけど」
ダル「じゃ、とりあえず好感するってことでFA?」
紅莉栖「ええ、そうしておきましょうか」
紅莉栖(岡部と会った後、橋田の力が必要になる可能性は高い)
紅莉栖(この二人がいないと、今の状況を打破することはおそらくできない……)
紅莉栖(そして岡部、あいつに早く会わないと……)
フェイリス「また来てニャンニャーン♪」
紅莉栖(橋田と連絡先を交換した、まゆりの連絡先を手に入れた)
紅莉栖(岡部まで後少し……あいつに会えれば、必ずなにか見つかる)
紅莉栖(少し不安なのは、この世界線の岡部は私の知っている岡部とはかなり離れている)
紅莉栖(……まあ、それは問題ないわね。世界線が変わったのだから岡部のリーディング・シュタイナーが発動する)
紅莉栖(つまり、今この世界線にいる岡部も今までの様に記憶が上書きされている)
紅莉栖(もしかしたら、岡部もラボがなくて焦ってるかもしれないわね……)
紅莉栖「……よし、まゆりに連絡しよう」
紅莉栖(日付は変わっていない、ということはまゆりは……もしかしたら既に)
紅莉栖(……お願い! 電話に出て……まゆり)
まゆり『トゥットゥルー♪ まゆしぃです、なにかご用ですか?』
紅莉栖「まゆり? まゆりなのね!? よかった、繋がった……」
まゆり『えっと、どちら様ですか? まゆしぃの携帯電話には登録されていないので分からないのです……』
紅莉栖「そうよね、急に連絡してごめんなさい。私は牧瀬紅莉栖、……覚えてたりするかしら?」
まゆり『うーん……ごめんなさい、まゆしぃには覚えがありません……』
紅莉栖「……そっか。いいのよ、私もあなたにはまだ会ったことがないはずだから」
まゆり『聞きたいことですか? まゆしぃに分かることだったら』
紅莉栖「あなたの幼馴染に、岡部倫太郎という男の人はいる?」
まゆり『えっと、はい。オカリンのことだったら、その通りなのです』
紅莉栖「よかった……そこまでは変わっていないのね」
まゆり『変わる?』
紅莉栖「こっちの話よ、気にしないで。……ここからが本題、岡部倫太郎にどうしても会いたいの」
まゆり『オカリンに会いたいんですか?』
紅莉栖「ええ、私は岡部に絶対に会わなければならない理由があるの」
まゆり『えっと……まゆしぃはどうすればいいんですか?』
紅莉栖「岡部の連絡先を教えて、お願い」
紅莉栖「どうしたの? 幼馴染だから知っているでしょ?」
まゆり『実は、オカリンが中学になってからはあまり会っていないのです』
紅莉栖「えっ……?」
まゆり『だから、勝手に連絡先を教えるのはオカリンに悪い気がするのです』
紅莉栖「……見ず知らずの人に連絡先を教えるのは気が引ける、か。
たしかにその通りね。……でも、こっちもどうしても岡部に会いたいの。だから……お願い」
まゆり『えっと……じゃあ、まゆしぃが直接聞いてみます。牧瀬紅莉栖さんって女の人が会いたがってるよって』
紅莉栖「ええ、お願い。なるべく早く……きっと岡部もそう思っているはずだから」
まゆり『わかりました。じゃあ、オカリンから答えがもらえたらまゆしぃから連絡します』
紅莉栖「ありがとう。……まゆりさん、よろしくね」
紅莉栖(まあ、問題はないわね。岡部も今頃、世界が変わってしまったことに気付いているはず)
紅莉栖(それなら私が会いたがってると聞けば、岡部は必ず会ってくれる)
紅莉栖(まゆりは今は生きている、でも……いつ死んでしまうかは分からない)
紅莉栖(ラボが存在しない状況で最悪の結果を迎えてしまえば……取り返しがつかないことになる)
紅莉栖(それだけは避けないと……岡部、急いで。あんたがいないと、まゆりが救えない……)
紅莉栖(……これだけ必死になっても、私は岡部に会えなくなる訳だが)
紅莉栖(そんなことを考えてる場合じゃないわね。……今は待つしかないか)
紅莉栖(まだお金には余裕があるみたいね。……これ以上泊まるような事態にはなりたくないけど)
紅莉栖(この世界線の私は今日アメリカに帰るはずだった。ラボメンとの親交もほとんどなかった)
紅莉栖(でも、私には前の世界線の記憶がある……つまり岡部の言っていた、
リーディング・シュタイナーとかいうのを私も持っているかもしれないってこと?)
紅莉栖(それなら誰でも岡部のような力を持っている……? それか私になにか関係があるとか……)
紅莉栖(それも含めて岡部と話す必要がある。まゆりに催促してみた方が……あっ)
紅莉栖(ナイスタイミングね、まゆりから電話だ)
紅莉栖「もしもし、まゆりさん?」
まゆり『こんばんは、まゆしぃです。オカリンに聞いてみたんですけど……』
紅莉栖(当然すぐに会いたいって言ってくるはず、……あっちも焦ってるだろうから)
紅莉栖「えっ……? すぐに会いたい、とか言っていなかった……?」
まゆり『は、はい、そんなに会いたがってるなら仕方ないか、って言っていたのです』
紅莉栖(どういうこと……? 岡部の方もこの状況に困惑しているはずなのに……)
まゆり『えっと、場所は池袋のコーヒー屋さんです。池袋駅からすぐのところにある――』
紅莉栖(おかしい……ラボが無い、電話レンジも無い、それなのに岡部からは焦りを感じない)
紅莉栖(……岡部、あんたはなにを考えてるの? まゆりを助けるんじゃなかったの?)
まゆり『あの、聞こえてますか?』
紅莉栖「あっ……ご、ごめんなさい。もう一度場所を教えてもらえるかしら?」
まゆり『了解なのです。池袋のすぐのところにあるコーヒー屋さんの――』
紅莉栖(待ち合わせの場所は……このお店ね。時間にはまだあるか)
紅莉栖(……正直、不安だ。まだ会ってもいないし話してすらいない……でも)
紅莉栖(岡部はまゆりを助けるために多くのものを犠牲にしてきた……それは、岡部自身の心も含まれる)
紅莉栖(だからこそ、まゆりを助けられなかったら全てが無駄になってしまう)
紅莉栖(仮にまゆりが死んでしまったとしても、β世界線に行けばその事実はなくなるかもしれない)
紅莉栖(でも、IBN5100は? 橋田のハッカーとしての腕は? ラボという場所は?)
紅莉栖(その全てがないと、β世界線に行くこともできない……)
紅莉栖(岡部、あんたはわかってるの? 今がどれだけ危険な状況なのか、まゆりを助けられないかもしれないのよ?)
紅莉栖(お願い、岡部……会って私を安心させて。私自身のことは、もう既に決めたことだから……何も気にしなくていい)
(そろそろ時間か……少し緊張してきたかも)
この状況を岡部はどう考えているのか。まさか、全てを諦めてしまったのではないか。
岡部に限ってそんなことはない、と信じたい。でも、岡部の心は既に壊れかけていたから。
もしかしたら、既に色々動いた後なのかもしれない。
打開策を見つけ、その協力を私に頼むという可能性もある。
それならなにも心配することはない。キチンとした考えがあるならばそれでいい。
待ち合わせまであと五分、その時――男が店に入ってきた。
その男は髪は茶に染めており、耳にはピアスを開けている。
シャツの胸ポケットの膨らみは煙草だろうか。服装もいわゆる、イマドキっぽい。
顔はよく見えなかったが、私はすぐに見るのをやめた。
(さすがにあれは、違うわね……いくらなんでも)
待ち合わせの目印として、私は机の上に少し厚めの本を置いている。
男はその本に視線を移し、まっすぐに私のいるテーブルに歩いてくる。
そして、私の座っている席の反対、同じテーブルの席にその男は座った。
「えっ!? は、はい……」
そこで私は男の顔を確認した。
見覚えのある顔、見慣れた体格、そして忘れられないその声。
間違いない、この男こそが――
「お、岡部……なの?」
「はい、俺が岡部倫太郎です。はじめまして、どうぞよろしく」
髪は茶色、耳にはピアス、喫煙者(未成年)。
岡部倫太郎、通称オカリン改め、チャラリンがそこにいた。
岡部「えっと、まゆりに言われてここに来たんですけど」
紅莉栖「そ、そうでしたね……あれ? ちょっと待って……」
紅莉栖(今、岡部はたしか……はじめまして、って言った……?)
紅莉栖「岡部、さん……確認したいんですけど、私に見覚えは?」
岡部「ええ、前に会った覚えはないですね」
紅莉栖「……っ! り、リーディング・シュタイナーは発動していないの!?」
岡部「リーディング……なんのことだか」
紅莉栖「それすらも分からない……そんな……こんな、ことって……」
岡部「研究室はまだ一年だから入ってないので。レンジは……家にありますけど」
紅莉栖「……IBN5100、タイムリープマシン、Dメール、これに関しては!?」
岡部「なにがなんだか……ごめんなさい」
紅莉栖「だ、だったら……ラウンダー、CERN、これならきっと……」
岡部「……悪いですけど、全部聞き覚えがないです」
紅莉栖「う、嘘……嘘よ……だって、これじゃ……」
私の予想していたのとは全然違っていた。おそらく、考えうる中で最悪の結果だ。
岡部は焦ってもいない、絶望してもいない、希望を見つけたのでもない。
ただ、なにも知らないだけだった。
岡部「だ、大丈夫ですか?」
紅莉栖「……ごめんなさい、急に呼び出したのにこんな風になってしまって」
岡部「いや、俺は別に大丈夫ですけど……」
紅莉栖「あの……私の方が年下なので、くだけた感じで話してください」
紅莉栖(……正直、話し方なんてどうでもいい。今は……なにも考えられない)
岡部「じゃ、普通に喋らせてもらうけど……あんた、俺になんの用があったんだ?」
紅莉栖「用は……ごめんなさい、色々あったんだけど……無くなってしまった」
岡部「無くなった? あんたが俺にどうしても会いたいって言うからここに来たんだぞ?」
紅莉栖「ええ……岡部倫太郎に会いたかった。……でも、あなたではない」
岡部「……意味は理解できないけど、俺に話すことはないってことでいいのか?」
紅莉栖「……そう思ってくれていいです」
紅莉栖「……まゆりさんには、迷惑をかけてしまいました」
岡部「まっ、そこは気にしなくてもいいだろ。あいつはそんな細かいこと気にしない」
紅莉栖「……そうですね」
岡部「昔は俺にくっついてばっかで俺がいなくなったらどうなるか、って子供ながらに不安だったんだ」
紅莉栖「今は……あまり話とかしてないんですか?」
岡部「俺が中学に上がってからほとんど話してないな……」
紅莉栖(岡部とまゆりの関係が全然違う、これもこの世界線での変化の一つ……?)
岡部「まあ、あいつも見た目はいいからそのうちいい男を見つけて幸せになるだろ」
紅莉栖「幸せに……? まゆりが、ですか?」
岡部「ああ、ただ……あの性格だと、変な男に騙されることも十分考えられるけどな」
紅莉栖「…………っ」
その無神経な言葉は私の神経を逆撫でし、
目の前の岡部倫太郎という名前の男に、私は苛立ちを感じていた。
紅莉栖(でも、まゆりが幸せになるには……あんたの力が必要なのに、まるで他人事みたいに……)
岡部「まゆりにはもう会ったか?」
紅莉栖「い、いえ、まだです」
岡部「ん、そうなのか。あいつは危なっかしいからな……事故に遭っても仕方が無い位だ」
紅莉栖「事故に、あっても?」
岡部「ああ、車に轢かれたり、駅のホームから落ちたりとか……なんか心配になってきた」
紅莉栖「――っ!」
岡部「なあ、あんたもまゆりに会う時は気を付けるように言ってお」
紅莉栖「……岡部」
岡部「ん、何だ?」
紅莉栖「それ以上――それ以上言うな! あんたが……岡部倫太郎がそんなことを言うな!」
岡部「お、おい……急にどうしたんだ」
あんたはまゆりを助けるために、色んなもの、人を犠牲にしてきた!」
「そこにはあんたの心や、私の命も含まれる!
それなのに……なんで軽々しくまゆりのことをそんな風に言うことができるのよ!?」
「全部忘れた? ふざけるな! あんたとまゆりのためにどんな思いをして、誰が涙を流したのか……」
「まゆりが何度死のうと、誰かに殺されようと、車に轢かれようとあんたは何度も助けようとしたんでしょ!?」
「岡部が……あんたがまゆりを選んだから、私は覚悟することができた。
まゆりのために、あんたを守るために、辛い思いをさせないために……」
「忘れないんじゃなかったのか!? 忘れないって言ったから、私は……私は……だから……っ……」
頭の片隅では理解している。この岡部になにを言っても無駄だ。
この岡部は私の求めている岡部ではない、私の好きな岡部ではない。
こんな男に言っても時間の無駄、そう思いながらも言葉を止めることはできなかった。
紅莉栖(馬鹿だ……なに言ってるんだ、私……あんな大声出して)
岡部「……悪いな、あんたの言ってることはさっぱり理解できない」
紅莉栖「……ええ、そんなこと位……わかってる」
岡部「なにも分からない、思い出せもしない。……ただ、悪かった。謝る」
紅莉栖「…………」
岡部「……周りの客もこっち見てるし、正直居づらい。ここで帰ってもいいか?」
紅莉栖「……ええ、好きにして」
岡部「ああ、それと……またなにかあったらここに連絡してくれ。話くらいは聞ける、と思う」
紅莉栖「……あんたの連絡先なんて聞かなくても知って――あっ」
紅莉栖(連絡先、知らないから……まゆりに聞いたんだ)
(いや、私は……今ここにいない岡部のことも、知らなかった)
(岡部は世界線が変われば必ずリーディング・シュタイナーを発動させると思っていた)
(だから、私は岡部に会おうと、岡部に頼ろうとしていたんだ)
(……岡部がいないと私、なにもできない。岡部が……岡部がいないと)
ふと顔を上げると、既に岡部はいなくなっていた。
テーブルの上には電話番号の書いてある小さな紙が残されていた。
(この番号に電話する日……来るのかな)
周りの客の視線は少し感じていた。でも、今はなにも気にせずこうしていたかった。
「あの……大丈夫ですか?」
そこにまた、聞き覚えのある声が聞こえた。
(この声は……まゆり?)
紅莉栖「そう……ありがとう、まゆりさん」
まゆり「あの、オカリンとお話……できましたか?」
紅莉栖「……できたと言えばできた。けど、思っていたのとは全然違ったわ」
まゆり「もしかしたら、まゆしぃが伝えるのが下手だったから……」
紅莉栖「そ、そんなことないわ。あなたのおかげよ、まゆりさん」
まゆり「でも……目が真っ赤だから、泣いちゃうようなことが……」
紅莉栖「だ、大丈夫。これは、その……自分のせいだから」
紅莉栖(橋田やフェイリスさん、それにまゆりはあまり変わらないように見える……)
紅莉栖(それなら、なぜ岡部だけあんなに変わってしまったのか……)
紅莉栖(……ダメだ、今は岡部のこと……考えたくない)
紅莉栖「いいのよ、別に気を遣ってくれなくても……一人で帰れるから」
まゆり「でも……」
紅莉栖(うっ……この純粋な瞳には抗えないなにかがあるわね……)
紅莉栖「わかった、一緒に行きましょう。でも、時間は大丈夫なの?」
まゆり「まゆしぃは夏休みだから、時間はたっぷりあるのです」
紅莉栖「そっか、羨ましいわねー……」
まゆり「牧瀬さんは、夏休みじゃないんですか?」
紅莉栖「こう見えても私、大学を卒業してるのよ?」
まゆり「ええー? じゃあ、牧瀬さんは、えっと……二十……」
紅莉栖「あー、違うの。十八歳、大学は飛び級で卒業したから」
まゆり「ええー!? す、すごいんですね……まゆしいはびっくりなのです」
紅莉栖「お、落ち込まないで。あなただって、ほら……とってもキュートよ」
まゆり「キュート? ……あの、ありがとうございます」
紅莉栖「……ねえ、まゆり。私のことは牧瀬さん、じゃなくて紅莉栖って呼んでくれない?」
まゆり「えっ? クリスさん、ですか?」
紅莉栖「うーん、思い切ってちゃん付けとかどうかしら」
まゆり「えっと、クリス……ちゃん?」
紅莉栖「上出来よ。それで堅い言葉遣いもなし、気楽に話しかけて。私もそうするから」
まゆり「うん……わかったよ、クリスちゃん。こんな感じかな?」
紅莉栖「ええ、完璧ね」
まゆり「えへへ、まゆしぃはクリスちゃんとお友達になれてとっても嬉しいのです♪」
紅莉栖(……まゆりのおかげで助かったわね。心に余裕が無かったはずなのに一気に落ち着いた)
紅莉栖(やっぱりこの子だけは……死なせる訳には、いかない)
まゆり「コスプレの衣装を作ってたよ。誰かに来てもらうためにたくさん作ってるんだー」
紅莉栖(……本当になにも変わってない、そういう風にしか思えないわね)
まゆり「でも、それだけだとやっぱり暇になっちゃって、お家でダラダラしちゃうのです……」
紅莉栖「部活やアルバイトとかはどう?」
まゆり「部活はあまり興味がなくて……アルバイトは、
してみたいなーってたまに思うけど……まゆしぃにできるかなぁ」
紅莉栖「それなら、メイド喫茶なんてどう?」
まゆり「ええー? まゆしぃには無理だよー……」
紅莉栖「そんなことないわ。まゆりにピッタリなお店を紹介してあげる、どう?」
まゆり「うーん、じゃあ一回行ってみようかな。クリスちゃんも一緒に行ってくれる?」
紅莉栖「もちろん、きっと気に入るわよ」
紅莉栖「そろそろ帰った方がいい時間か……ずいぶん話し込んじゃったわね」
まゆり「あのね、クリスちゃん……まゆしぃは、クリスちゃんに謝らないといけないことがあるのです」
紅莉栖「謝らないといけないこと? そんなこと記憶にないけど……」
まゆり「本当はね……オカリンの電話番号をすぐに教えようと思ったの。でも……」
紅莉栖「……続けて」
まゆり「最近、オカリンと全然お話してなかたったから……チャンスだと思ってしまったのです」
紅莉栖「つまり……岡部の電話番号をすぐに教えても良かったけど、
岡部と話したかったからわざわざ仲介役をしたってこと……?」
まゆり「うん……ごめんね、クリスちゃん。まゆしぃ、余計なことして邪魔しちゃって……」
紅莉栖「まゆり、あなたって……本当にキュートね」
まゆり「わっ……く、クリスちゃん……苦しいよー」
紅莉栖「これは罰ってことで、大人しく抱きしめられてればいいのよ」
まゆり「そ、それは……」
紅莉栖「中学に岡部が行ったら疎遠になったんでしょ? もっと甘えればよかったじゃない」
まゆり「……まゆしぃはしっかりとした人になりたかったのです」
紅莉栖「しっかりとした人、ねえ」
まゆり「だからオカリンに頼らないようになろうって思って。……そうしたら、気付いたら話しにくくなっていたの」
紅莉栖「……そうだったのね。でも、どうしてしっかりとした人になりたいって思ったの?」
まゆり「おばあちゃんが見守ってくれてるから……だから、おばあちゃんが見てて安心できるような人になりたいのです」
紅莉栖「そう……いいおばあさんなのね」
まゆり「……うん、まゆしぃはいつまでも……忘れないよ」
紅莉栖(いつまでも忘れない、か……どっかの馬鹿もそう言って忘れやがって……!)
紅莉栖(……あー、ダメだ。思い出すと少しヘこむ……)
まゆり「クリスちゃん、メイド喫茶のお話、忘れないでね?」
紅莉栖「ええ、もちろんよ。じゃあ、気を付けて」
まゆり「うん! またね、クリスちゃん。トゥットゥルー♪」
紅莉栖(さっきまでの絶望感はまゆりのおかげで嘘のように消えていった。でも……)
紅莉栖(あの笑顔が、急に消えてしまう可能性もある……。
世界線が変わったとはいえ、その結果から逃れられると決まった訳ではない)
紅莉栖(それなら、私のすべきことはただ一つ……岡部を、取り戻す)
紅莉栖(そしてあいつを引っぱたいてでもβ世界線に移動させる……!)
紅莉栖(そのために元の世界線に戻らないといけない……)
紅莉栖(誰かが起動した電話レンジ、それが原因なのはわかってる)
紅莉栖(誰が何をしたのか……それも調べないといけないか)
紅莉栖(電話レンジで世界線が変わったのなら……Dメールしか考えられない)
紅莉栖(それを元に戻すにはDメールの内容を打ち消すようなメールを送らなければならない)
紅莉栖(そのためには電話レンジ、42型ブラウン管、つまりはあの部屋が必要ね)
紅莉栖(あの部屋を借り、そして電話レンジを完成させる……これが最低条件)
紅莉栖(問題は、電話レンジ……岡部たちの話を思い出せば、あれが偶然によって生み出されたことは間違いない)
紅莉栖(偶然生み出された物を作る……これほど大変なことはない)
紅莉栖(前途多難、岡部は完全に頼りにならない。となると頼れるのは……橋田か)
ダル「おっ、牧瀬氏こっちこっち」
紅莉栖「相変わらずここなのね……」
ダル「僕の居場所はここなので。で、僕に頼みたいってことってなんぞ」
紅莉栖「橋田さん、あなたにお願いしたいことは……」
ダル「ま、まさか……ムフフな展開ktkr!?」
紅莉栖「HENTAI発言は慎んで。お願いというのは……」
ダル「ふむふむ」
紅莉栖「――研究を手伝って欲しいの」
ダル「……へっ?」
紅莉栖「……橋田さん。あなた、ハッカーとしての腕は確かよね」
ダル「……まあ、その通りだけど。どうして牧瀬氏がそれを知ってる訳?」
紅莉栖「それはどうでもいいの。……手伝ってくれるの、くれないの?」
ダル「んー、僕も暇じゃ無い訳で。相手をしてあげないといけない女の子がたくさんいるんだお」
紅莉栖(こういうところは変わらんのか……)
紅莉栖「そうね……橋田さん、こう考えてはどう?」
ダル「ん?」
紅莉栖「自分で言うのもなんだけど、私はそれなりに名が知られている。
その学者の手伝いをした、という事実。……これは後々、効いてくるんじゃないかしら」
ダル「た、たしかに。経歴とかで色々使えそうな経験ではある……」
紅莉栖「あなたの腕なら十分にこなせるレベルよ。どう、やってみない?」
ダル「……オーキードーキー! 牧瀬氏、よろしく頼むのぜ」
紅莉栖「場所はもう決めてあるわ。ここのすぐ近くよ」
ダル「この近く……研究施設とかあったっけ?」
紅莉栖「ええ、この研究はそこでしか行えないの。すぐに手配するわ」
ダル「うーん、そこは牧瀬氏に任せます。僕は出番が来たらまた呼んでくれればおk」
紅莉栖「そうね、なるべく早めに連絡が行くようにするわ。それまで待っていて」
ダル「了解しますた。……はあ、美人学者との時間とかみなぎってくるお」
紅莉栖「変なコトしたら脳をちょこっと弄るからね」
ダル「お、おうふ……それだけは勘弁」
天王寺「――で、上の部屋を借りたい。そういうことでいいか?」
紅莉栖「ええ……どうでしょうか?」
天王寺「……ぶっちゃけ、誰も借り手が見つからなくて困ってたとこなんだ」
紅莉栖「ということは……」
天王寺「ああ、好きに使ってくれ。まあ、好きにっつっても限度はあるけどな」
紅莉栖「あ、ありがとうございます! 明日から、すぐに入っても大丈夫ですか?」
天王寺「別にいいけどよ。掃除とかはいいのか?」
紅莉栖「大丈夫です、自分たちでやります。……それと、店長さん」
天王寺「おう、なんだ。エアコンなら自費で付けてくれよ」
紅莉栖「そうではなくて……その大きい42型のブラウン管、絶対に売らないでくださいね」
天王寺「なんだそりゃ。もしかして、欲しいのか? 今なら入居祝いってことで安くしとくぞ」
紅莉栖「け、結構です。……それでは、また明日」
紅莉栖(……同じレンジを探すか、それとも別のでも大丈夫か実験するか)
紅莉栖(電話も同じのじゃないとダメなのかしら……偶然を生み出した時は忠実に再現すべきか)
紅莉栖(……少なくとも、ちょっとやそっとで完成するとは思わない方がよさそうね)
紅莉栖(資金は講演とか講義のとかでそれなりにあった、一ヶ月はなんとかなるはず)
紅莉栖(……なにもない状態から作るのって、相当な労力が要るわね)
紅莉栖(そう考えると、岡部って凄かったのかな……いや、でもあいつなにも作ってないし)
紅莉栖(でも、いてくれたら……やっぱり、嬉しいかな)
紅莉栖(……無理やり脳に電極ぶっさしてリーディング・シュタイナー発動しないかしら)
ダル「うへー……あっつい。牧瀬氏いるー?」
紅莉栖「待ってたわよ。とりあえず座って座って」
ダル「よっこらせっくす……へえ、ボロいビルだと思ったけど、中は意外とキレイじゃん」
紅莉栖「殺風景なのは我慢して、色々揃える時間はないから」
ダル「で、この蒸し暑い部屋の中で僕たちはいったい……ん?」
紅莉栖「あら、気付いたみたいね」
ダル「えっと、このレンジと電話はなんなん? しかも五個ずつくらいあるし」
紅莉栖「とりあえず前のと同じ型、それと違うのも揃えたわ」
ダル「……これでなにをする気?」
紅莉栖「電話レンジ、一緒に作ってもらうから」
ダル「はい……?」
ダル「まさか、天才学者牧瀬氏の研究が……こんな」
紅莉栖「ガラクタ作りだとは思わなかった、って言いたそうね」
ダル「自覚はあるみたいでちょっとホッとしたお。しかし、遠隔操作できるレンジって言われても……」
紅莉栖「たしかに、電話とレンジをくっつけただけのガラクタにしか見えない。
……でも、私にとってはそのガラクタが今必要なの。他でもない、私のために」
ダル「……天才の考えることは分かんないって本当だった件について」
紅莉栖「ほら、橋田さん、頑張って。あなたの力は後でちゃんと誰かの役に立つから」
ダル「へいへい、……まあやりますけど」
ダル「ふう……とりあえず一台完成しますた」
紅莉栖「こっちも出来たわ。……さあ、いよいよ実験開始ね」
ダル「実験って、ご飯でも置いて温めてみるとか?」
紅莉栖「いいえ、温めない。強いて言うなら……戻す」
ダル「戻すって……冷凍?」
紅莉栖「冷凍になる場合もあるわね。……今はこのバナナを使うわ」
ダル「バナナを握る牧瀬氏、絵になりますなあ……」
紅莉栖「……止めるヤツがいないと本当にフリーダムね」
ダル「で、戻すって結局なにするん?」
紅莉栖「ちょっと待ってて、下を確認してくるから」
ダル「下の確認……考えようによってはエロい気がする」
ダル「その下ってのがイマイチ分からない件について」
紅莉栖「詳しい説明は……またいつかする。さあ、バナナを用意して」
ダル「ほい、これをレンジの中に入れればおk?」
紅莉栖「ええ、そして電話レンジの設定をする……」
ダル「温めるなら#押して数字入れればいいはずだけど」
紅莉栖「それを変えるの。数字を入れてから#を入力する」
ダル「へっ? そんなことしてなんになるん?」
紅莉栖「観てれば分かるわ。……1、2、0、#」
ダル「おっ、電話レンジが動き出した。これでも動くのか……」
紅莉栖(後は、バナナが房に戻れば……再現できたってことになる)
紅莉栖「……失敗、か」
紅莉栖(偶然の産物、理論が偶然に当てはまり、そして環境が整っていた)
紅莉栖(でも、それは本来は非情にデリケートなはず……一つ配線が違えば、
少しでも環境が違えば結果は変わってくる可能性は……ある)
紅莉栖(ゼロからラボの環境を作り、リフターの存在する環境も同じであるかも分からない)
紅莉栖(それでも、やるしかない……理論はある、実際に電話レンジは機能したという事実がある)
紅莉栖(……それならきっと、生み出すことはできるはず)
ダル「……バナナ、あたたかいお」
紅莉栖「……今日はダメか。時間的にもこの辺がリミットね」
ダル「牧瀬氏、どうなったら成功なん? さっぱり分からないまま配線弄ったり温めたりの繰り返しなんだが」
紅莉栖「今言っても信じないと思う……だから、成功したらその目で確かめて」
ダル「んー、わかりますた。じゃ、またやることになったら連絡して」
紅莉栖「ええ、また明日連絡するわ」
ダル「あ、明日……? 明日もこれと同じことを繰り返す訳?」
紅莉栖「もちろん。私一人でもやるわ、……早く、なんとかしたいから」
ダル「……午後からなら行けるかもしれないから、またその時はよろしくってことで」
紅莉栖「ありがとう橋田さん。また会いましょう」
紅莉栖(……ある程度は覚悟してたけど、実際上手く行かないと萎えるわね)
紅莉栖(殺風景な部屋……ゴチャゴチャしてたけど、あれ位じゃないと落ち着かないわね)
紅莉栖(岡部……あんたは、本当になにも思い出さないの? まゆりも、私のことも……)
紅莉栖(……っ!? 電話か……もしかして、岡部!?)
紅莉栖「も、もしもし!」
まゆり『あっ、クリスちゃん。トゥットゥルー、まゆしぃだよ』
紅莉栖「なんだ、まゆりか……」
まゆり『えー……? まゆしぃ、電話かけちゃダメだったの……?』
紅莉栖「そ、そういう訳じゃないの。……えっと、何か用かしら?」
まゆり『うん、あのね……実は――』
まゆり「おーい、クリスちゃーん。ごめんね、待たせちゃったかな?」
紅莉栖「まだ待ち合わせの五分前、全然問題ないわ」
まゆり「クリスちゃん、今日はお願いします」
紅莉栖「ただメイド喫茶に連れて行くだけだけど……ともかく、早速行きましょうか」
まゆり「うん! まゆしぃはメイド喫茶は初めてなのです。どんなところなの?」
紅莉栖「……とりあえず、女一人で行く場所ではないってことは確かね」
フェイリス「お帰りニャさいませ。お嬢様♪」
まゆり「は、はじめまして……椎名まゆりです」
フェイリス「ニャニャ? これはご丁寧にどうもだニャン。フェイリス・ニャンニャン、よろしくニャ♪」
紅莉栖「別にいきなり自己紹介をしなくてもいいのよ、まゆり」
まゆり「えー、そうなの? まゆしぃ、こういうところは初めてだから……」
フェイリス「今日はお嬢様二人とは珍しいニャン。どういう風の吹き回しかニャ?」
紅莉栖「えっと、この子がメイド喫茶でのアルバイトに興味があるって言ってるのよ」
まゆり「く、クリスちゃん……えっと」
フェイリス「ニャるほど……マユシィ、でいいのかニャ?」
まゆり「は、はい」
フェイリス「では……早速テストだニャン!」
紅莉栖「……テスト?」
まゆり「よ、よろしくお願いします」
フェイリス「第一問! マユシィの趣味はなにかニャ?」
まゆり「えっと、コスプレの衣装を作ることです」
フェイリス「ニャニャ!? 高評価だニャン! 続けて第二問! 人と接するのは好きかニャ?」
まゆり「うーん、誰とでも友達になりたいなー、って思います」
紅莉栖「私ともすぐに仲良くなったから、人と接するのは好きだと思うわよ」
まゆり「えへへー、ありがとうクリスちゃん」
フェイリス「ニャニャニャニャ……! これは大物の予感がするニャ……」
紅莉栖(なんの大物だ、ってのは野暮よね、きっと)
まゆり「口癖……特徴……えっと」
紅莉栖「ほら、いつものアレ。やってみたら」
まゆり「えっ? う、うん……トゥットゥルー♪ まゆしぃでーす」
フェイリス「ま、マーベラスニャー! 合格ニャン!
マユシィにはマユシィ・ニャンニャンとして明日から働いてもらうニャ!」
まゆり「あ、ありがとうございます」
フェイリス「マユシィ、明日からよろしくニャン♪」
紅莉栖「よかったわね、まゆり」
まゆり「うん! クリスちゃんのおかげだよー。ありがとう、クリスちゃん」
紅莉栖(世界線が変わっても、人の本質は変わらないのかもしれない)
紅莉栖(それならあんたは、どうして変わってしまったの……?)
紅莉栖(外見じゃない、人間の中身……それが、今のあんたは変わってる)
紅莉栖「じゃあ、お言葉に甘えようかしら。えっと席は……あっ」
ダル「あっ」
紅莉栖「なるほどね……まあ、そんなことだろうとは思ってたけど」
ダル「いや、僕にはフェイリスたんに会うという重大な使命があって……」
紅莉栖「いいわよ、そんなことで責めないわ。、こっちは協力をお願いしてる訳だし」
まゆり「あれ? ダルくんだー、トゥットゥルー♪」
ダル「まゆ氏、まさかコミケ以外の場所で会うとは思わなかったお」
まゆり「本当だねー、こうやって会えると嬉しいね」
ダル「でも、まゆ氏がどうしてここに?」
まゆり「えっとね、まゆしぃは明日からここで働くのです!」
ダル「……なんですと!? 牧瀬氏、申し訳ないが明日からはしばらくやることができたので」
紅莉栖「……どうぞ、ご自由に」
ダル「じょ、冗談だお……だからその冷たい目は勘弁」
ダル「まっ、実験と言っても僕にもなにがなんなのかさっぱりわからないんだけど」
紅莉栖「……そのうちわかるわ、きっと」
まゆり「でも、なんだか面白そうだねー。まゆしぃは実験とか、そういうのはよくわからないから羨ましいのです……」
紅莉栖「それなら、来てみる? ラボに」
まゆり「えっ? 行ってもいいの、クリスちゃん?」
紅莉栖「ええ、まゆりなら大歓迎よ。ねえ、橋田さん?」
ダル「まゆ氏も来るなら行くしかないだろ常考」
紅莉栖「……本当、わかりやすい人間で助かったわ」
ダル「牧瀬氏、そんなに褒めるなって」
紅莉栖「褒めてないっつーの」
紅莉栖「ここがラボよ、なにもなくて退屈だろうけど」
まゆり「うわー……ここで実験をしてるんだね」
ダル「実験という名のガラクタ作りだったりするんだけど」
まゆり「でも、いいなーここ。まゆしぃはこういうのに、ちょっと憧れてしまうのです」
紅莉栖「それなら、いつでも来ていいわよ。ねえ、橋田さん?」
ダル「熱烈歓迎まゆ氏。いつでもカモン、待ってるお!」
まゆり「ありがとう、クリスちゃん♪」
紅莉栖「……そうだ。せっかくだから、まゆりもラボメンにならない?」
まゆり「ラボメン?」
ダル「ってことは、まゆしが003って訳か」
まゆり「おおー、なんかカッコいいねー。どんどんラボメンが増えたらもっと楽しくなるね」
紅莉栖「そうね。次は、004……か」
紅莉栖(……変な話ね、あれだけラボのリーダーだって主張してたあいつがいないなんて)
紅莉栖(004の私が001、003の橋田が002、002のまゆりが003)
紅莉栖(だったら、あんたは004ってことになるわね)
紅莉栖(……もし、本当に入ってきたら……助手って呼べばいいのかしら?)
紅莉栖(それが嫌で入ってこないとか有り得るわね……まっ、来たらの話だけど)
紅莉栖(……来なさいよ、バカ)
紅莉栖「まゆり、バナナ!」
まゆり「は、はい!」
紅莉栖「橋田さん、次はこっちとこっちを組み合わせて」
ダル「オーキードーキー!」
まゆり「クリスちゃん……休まなくて大丈夫? まゆしぃは心配なのです……」
紅莉栖「大丈夫……よ。時間は……限られてる、よっ……から」
ダル「あー……あっちー……」
まゆり「ダルくん、飲み物買って来たよー」
ダル「うおおお! まゆ氏マジ女神! しかもダイエットコーラとか気が利き過ぎだろ常考……」
紅莉栖「きょ、今日もダメだった……」
ダル「うへー……疲れたお……」
まゆり「二人とも、大丈夫……?」
紅莉栖「ええ、大丈夫……時間も時間だし、そろそろまゆりは帰った方がいいわね」
まゆり「クリスちゃん、今日は色々ありがとう。感謝してもしきれないのです」
紅莉栖「大げさよ。……私も買い物ついでに外出ようかしら。橋田、あんたはどうするの?」
橋田「僕も帰るお……つーか牧瀬氏、僕の扱いぞんざいになってね?」
紅莉栖「そう? きっと気のせいよ、ほら早く」
まゆり「ダルくーん、置いてっちゃうよー」
ダル「そ、そこはゆっくりと待つとこだろ常考……」
まゆりはメイクイーンでのアルバイトを一生懸命頑張り、終わったらラボに寄っていく。
今のところまゆりにはなにも起きていない。それはいいことであると同時に、不発弾のような危険な感じもする。
橋田は午前中はメイクイーンに行った後、私の手伝いをしてくれる。
基本的には毎日手伝ってくれている。岡部が我が右腕と呼ぶだけはある。
私は、相変わらず電話レンジのことばかり考えている。
まだ一週間だ、岡部の繰り返した日々には到底及ばないだろう。
それでも、なにも光が見えない状態では不安にもなる。
これで本当に上手く行くのか、自分は無駄なことをしているのではないか。
それは焦りでもあり、恐怖でもある。自分は無力だと、知りたくないというのもその一つかもしれない。
このまま、夏は終わろうとしていた。しかし――
それはあらかじめ決まっていたことのように、突然起きてしまった。
ダル「牧瀬氏……」
紅莉栖「なによ……」
ダル「……なにも、起きない件について」
紅莉栖「…………」
ダル「……無言はなしでお願いします。……つーか、お互いに結構ガタがきてるんじゃね?」
紅莉栖「あるあ……あるある」
ダル「……前から思ってたんだけど、牧瀬氏ってねらーでFA?」
紅莉栖「…………」
ダル「……沈黙は肯定と受け取るのぜ」
まゆり「あれー? 二人とも、元気ないねー……」
紅莉栖「ええ……きっと暑さのせいよ……」
ダル「ホカホカバナナの暑さにやられたか……」
まゆり「二人とも……ぐったりって感じなのです」
ダル「……コーラ」
紅莉栖「……アイスコーヒー、目を見てまぜまぜなしで」
まゆり「もうー、飲み物だけじゃなくてちゃんとご飯も食べなきゃダメだよー」
ダル「……食べる気起きねーっす」
紅莉栖「……橋田に同じく」
まゆり「むー、まゆしぃが元気になりそうなもの持ってくるから、ちゃんと食べてね」
紅莉栖・ダル「あーい……」
ダル「……なんでまゆ氏ってあんな元気なんだろ」
紅莉栖「……本当ね、ごはんも毎日たくさん食べてるみたいだし」
ダル「……なるほど、食料の差が決定的な胸の差を生み出して」
紅莉栖「……電極カイバー」
ダル「……すんません」
小さい体に無尽蔵のパワー、そんな言葉がよく似合うと思う。
そしてまゆりはこっちに向かって歩いていた。
その両手には溢れんばかりのオムライスがそれぞれ持たれていた。
(あれ一人分……? どう考えても無理な件について……)
橋田みたいなことを考えながら、私はまゆりを迎えるために体を起こす。
そして体を起こしきった後、私は目の前の光景を疑った。
それはまるでスローモーションのように、ゆっくりと見えた。
私が見たもの、それは――まゆりが倒れていく様だった。
「――ま、まゆりいいいいいいい!!」
こんな大声を出したのは久しぶりだった。
それ以外の感情は、どうしても表すことができなかった。
すぐさま救急車を呼び、まゆるは病院に搬送された。
私と橋田は付き添いとして、一緒に病院に行くことにした。
病院に着いてすぐ、まゆりのご両親が来られたから私たちはいる必要が無くなった。
それでも私は、まゆりの病状を知るために病院に残った。
頭の中では、「やっぱり」、「どうして」、「やめて」、という言葉がぐるぐると回っていた。
しばらくして、まゆりのご両親が私たちのところにやってきた。
まゆりに付き添って頂いてありがとうございます、とかそんな風なことを言われたと思う。
「まゆりは……まゆりは生きているんですか!?」
私はどんな顔で質問したのだろうか。きっとまゆりのご両親は驚いたに違いない。
私の聞いた答えは、「まゆりは死んではいない、原因は不明である」。
私には心当たりがあった。まゆりが倒れた原因、それは――世界がまゆりを殺そうとしているという事実。
ここはβ世界線ではない、α世界線なんだ。だから、死ぬのはまゆりだ。
紅莉栖(まゆりはまだ死んではいない……でも、このままでは確実にまゆりは……)
紅莉栖(早く、早く電話レンジを完成させないと……完成させる?)
紅莉栖(何日も実験して、なにも成果が出なかった。それが一日で完成するのか?)
紅莉栖(それよりも早く、まゆりが死んでしまったら……終わりだ)
紅莉栖(世界線の移動もできず、まゆりも助けられない……今一番可能性が高いのは、この結果)
紅莉栖(私は、私はなにができる? まゆりを助けるために……いったいなにが……)
紅莉栖(必要なものは……整った環境、優秀な頭脳、そして……まゆりを助けたいと思う人間がいること)
紅莉栖(……心の奥底で、考えていたことがある。もし、こうなってしまった時にどうするか)
紅莉栖(取り返しのつかない事態になった時、どうやってこの状況を打破するのか)
紅莉栖(私には一つだけ、方法がある。……岡部倫太郎にも、ラボにも頼らない方法がある)
紅莉栖「……SERNに、技術を提供すれば」
もし全てが駄目になってしまった時、最終手段としてそこに飛び込むことも頭の片隅で考えていた。
それは本当の最終手段だ。誰にも頼れず、どうしようもなくなった時、そうするしかない時に取る行動だ。
もちろんそんなことをしたくないというのが本音だ。だが、現実は待ってくれない。
まゆりが死ぬ位なら、岡部がなにもできないのなら、喜んでこの身を売ろう。
もともと死ぬことは覚悟していた、それよりは数倍もマシかもしれない。
ただ、まゆりを殺そうとした機関に結果的に手を貸すことになるのは、嫌だ。
明日、もう一度電話レンジの実験をしよう。それで駄目なら、仕方ない。
私は二度目の覚悟を決め、安物の小さいソファーから立ち上がった。
座っていては、縮こまっていては駄目な気がしたからだ。
殺風景な部屋を見渡し、外にでも出ようかと思った時、ドアが開いた。
そして現れたのは、私の――大切な友人だった。
「く、クリスちゃん……」
「まゆり……? あ、あんた……どうしてここに……」
紅莉栖「えっ……? な、なにを謝るって言うの?」
まゆり「せっかくクリスちゃんのおかげでアルバイトできたのに……こんなことになって」
紅莉栖「ば、バカ! あんたの体が何よりも大事なの! そんなこと……謝らなくていい」
まゆり「でもね、まゆしぃがお店で倒れたら……クリスちゃんはきっと気にするんじゃないかな、って思ったの」
紅莉栖(違う……そうじゃない。まゆり、あなたは……死ぬことが決められている……)
まゆり「なにも気にしなくていいから……まゆしぃは、クリスちゃんにとっても感謝してるから」
紅莉栖「……わかった。ありがとう、まゆり……今、あんたは」
まゆり「えっとね、しばらくは病院にいることになるって言われたんだ。
だからその前に、メイクイーンのみんなやダルくんやクリスちゃんに会っておこうと思って」
紅莉栖「そっか……言ってくれれば会いに行ったのに」
まゆり「実は……ラボにも寄りたかったから。ここ、まゆしぃのお気に入りだったんだよ」
紅莉栖「……喜んでもらえてよかった。ここで待ってるから、早く戻って来なさい」
まゆり「うん! ……クリスちゃん、ありがとう」
まゆり「あっ、ダルくん。メイクイーンにいたんじゃなかったの?」
ダル「まゆ氏を追って走ったけど……はあ……はあ、物凄く速かったから見失って……ふー……」
まゆり「こんなに元気なのに、病院に行かないといけないなんておかしいよね……」
紅莉栖「……本当に、本当にそうね」
紅莉栖(どうして、どうしてこんな元気なまゆりが死なないといけないのか……)
ダル「……まゆ氏、そろそろ戻った方がいいんじゃね?」
まゆり「……もうちょっとだけ、ここにいたいのです」
紅莉栖「まゆり……でも――電話? も、もしもし」
岡部『岡部倫太郎だ、番号は前にまゆりに聞いた。気を悪くしたら謝る』
紅莉栖「岡部……岡部なの?」
まゆり「……っ!」
岡部『まゆり……? 俺も今、家から出て行ったまゆりを探しているんだ。なにか知っているのか?』
紅莉栖(あっ……そうだ、この岡部は……岡部じゃないんだ)
岡部『もしかして、そこにまゆりがいるのか? いるのなら場所を教えてくれ』
紅莉栖「(まゆり、どうする?)」
まゆり「……言っても、いいよ」
紅莉栖「分かった……。岡部さん、まゆりは秋葉原にいます」
岡部『やっぱりか……バイト先に行ったと思って秋葉原に来たけど正解だったな』
紅莉栖「……どうしますか、連れて行きましょうか?」
岡部『いや、あまり動かしたくない。場所を教えてくれ、俺が向かう』
紅莉栖「わかりました、場所は秋葉原駅を出て――」
岡部「……まゆり、こんなところにいたのか」
まゆり「オカリン……迎えに来てくれたの?」
岡部「ああ、お前の両親に頼まれた。……ったく、どうして脱け出したりしたんだ」
まゆり「……ごめんなさい」
紅莉栖「待ってください、まゆりはこれから入院するから……その前に挨拶をしに来てくれただけです」
岡部「それが駄目だって言ってんだ。普通に考えたらわかるだろ?」
まゆり「…………」
ダル「えっと、まゆ氏も反省してるみたいだし、ここは穏便に……」
岡部「あんたには関係ないだろ。……ん? その顔、どっかで……」
ダル「高校の時、同じクラスだった橋田。……覚えてないかもしれないけど、一応」
岡部「いや、覚えてるよ。こんなとこで会うとはな……それにしても、ここはなんなんだ?」
紅莉栖「……それ、どういう意味ですか?」
紅莉栖「このレンジは……そんなものじゃない!」
岡部「だったらなんだっつうんだよ。まゆりも急にバイトを始めて倒れるし、
隠れてた場所もこんな怪しいところ……まゆり、変な奴には騙されんなよ」
まゆり「ち、違うよ! クリスちゃんもダルくんも優しいし、メイクイーンだって楽しいもん……」
岡部「お前の両親から聞いたけど、メイド喫茶なんだろ? まゆり、いかがわしいところでバイトはするな」
ダル「いかがわしい……? ……それ、メイクイーンを馬鹿にしてるように聞こえる件について」
岡部「そう取ってもらって構わない。こんな怪しい建物や変なバイト、
挙句の果てには優しい顔した変なヤツらに付きまとわれて……どうしちまったんだ」
紅莉栖「……岡部、それ……本気で言ってんの?」
岡部「ああ、本気だ。まゆりのことを思ってこそだ、なにか間違ってるか?」
紅莉栖「岡部……岡部えええ!!」
「君かわうぃ~ね~」
とか言うのかと思ったのにどうしてこうなった
あんたが中心になって、いっつもあんたは悩み続けて……それを、あんたが馬鹿にするのか!」
「……また俺の知らない話か。あんた、あれか? いわゆる、不思議ちゃんってヤツ」
「……まゆりが、まゆりが死んじゃうのよ! あんたはそれをどうにかしようと死に物狂いで、
何度も何度もたちあがって……そして後少しのところまできた。それなのに……どうして忘れてんだバカ岡部!」
「まゆりが死ぬ……またそれか。本人が入院する前に……そんなこと言うんじゃねえ!」
「……っ! だ、だって、まゆりは死ぬのよ!? あんたが忘れてるだけで……本当はどうにかしないといけないのよ!?」
「ま、牧瀬氏、落ち着いて」
「離せ橋田! 今岡部に言わないと私も岡部も後悔する! だから……だから」
「……まゆり、行くぞ。こんなとこにいる必要は無い」
「で、でも……クリスちゃんが」
「待って! 逃げたらダメ! 岡部、思い出して! あんたは……岡部倫太郎であり」
「……ラボメンナンバー001、鳳凰院凶真なんだから!」
「ほうおういん、きょうま……? ――っ!? あっ、がっ……ああああああああああああ!!」
岡部は頭を押さえながら絶叫し、その場に座り込んでしまった。
「ど、どうしたん急に……」
「あっ、ぐっ……あ、頭が……割れる……視界が、ぼやける……」
「オカリン……オカリン、大丈夫!?」
しばらくすると岡部は再び立ち上がり、私の方をまっすぐ向いた。
「岡部……もしかして、記憶が」
その言葉に、岡部はなにも答えてくれなかった。
「……すまん。まゆり、行くぞ」
「オカリン……大丈夫なの?」
「今は自分の心配をしろ。……それと、もうここには来ない。まゆりをこれ以上たぶらかさないでくれ」
「岡部……」
岡部とまゆりはそのまま去って行った。あの頭痛は、いったいなんだったのか。
岡部の記憶が戻ったのかと期待をしたのは事実だ。だが、事実は違っていた。
橋田と私はなにも言わず、気付いた時には橋田も帰っていた。
また私は、一人になってしまったみたいだ。
岡部に思い出してもらうことも、まゆりを救うことも、私の声を届けることも、全て失敗してしまった。
後にはなにも残らない。この精神のまま、私は電話レンジを完成させることができるだろうか。
答えはすぐに出た。一人ではなにもできないだろう。
やはり、私はSERNに行くしかない。まゆりを助けるために、岡部に元に戻ってもらうために。
どうすればSERNとコンタクトを取れるのだろうか。メール、電話、店長さん?
ただ私はソファーに座って、そんなことばかりを考えていた。
しかし、口ではまったく違うことを無意識に発していた。
「おかべ……私……あんたのために、まゆりのために……頑張ったんだよ?」
「……それなのに、どうして怒るの……おかべ。怖かった……怒るあんたなんて……嫌だよ」
私の精神は間違いなく崩壊してしまった。
なにもせず、うわ言のように岡部、岡部と言い続けていた。
一通の、いや――三通のメールが届くまでは。
届いたのは、2034年からのメールだった。
(2034……? ……これは、Dメール!?)
『世界線は変わ』
『ったラジ館屋』
『上に行け』
「ラジ館屋上……!」
落ち込んでいた私いつのまにかどこかへ消えていた。
ラボを出て、秋葉原駅の方へと全力で走って行った。
目指すのは、ラジ館屋上。そこには、きっと――
「はあ……はあ……これ、完全に不法侵入よね……って今更過ぎるか」
そういえば、この世界線ではタイムマシンはどうなっているのだろうか。
だが、ここまで登れたことを考えるとラジ館に被害は出ていないだろう。
(それより、この扉どうやって開ければいいのよ……鍵かかってるみたいだし)
そんなことを考えていると、扉の向こうから声がした。
「離れて! 危ないよ!」
「へっ!? な、なに!?」
慌てながらも私は扉の前から離れた。
すると向こうから「せーの!」という声と共に、銃声が何発か鳴り響いた。
「ひ、ひいいっ!? じゅ、銃!?」
そんな私の叫びも気にせず、扉の向こう側の人物が正体を現した。
「君が……牧瀬紅莉栖だね」
「あなたは……阿万音さん……?」
少し疑問風になったのは、私の知っている阿万音さんより少しだけ幼かったからだ。
そして、わたしの目の前には大きな鉄製の何かが存在した。
「これは……タイムマシン?」
「そうだよ。あたしはこれに乗って2034年から来たんだ」
「2034年? 2036年じゃなくて?」
「うん。実はこれ……SERNの第一号のタイムマシンなんだ」
「せ、SERNの!? ど、どうしてあなたがこれに!?」
「あたしは三人の思いを請け負って、ここまで来た」
「三人……? それはいったい……」
「一人はあたしの父さん、一人は岡部倫太郎」
「岡部……? 岡部が、このタイムマシンを作ったって言うの!?」
「いや、違うよ。これを完成させたのは最後の一人、牧瀬博士、二十年後の君だよ」
「二十年後の……私が、タイムマシンを」
鈴羽「大丈夫、きっとそうなるだろうって牧瀬博士も言ってたから」
紅莉栖「牧瀬博士……それが私の二十年後か」
鈴羽「そう、あたしがお世話になった博士。父さんと岡部倫太郎の仲間であり、タイムマシンの開発者」
紅莉栖「……私は、やっぱりSERNに行ったのか。そうするしかなかったから、仕方が無いか……」
鈴羽「牧瀬紅莉栖、あたしは全て話すように牧瀬博士に頼まれてるんだ」
紅莉栖「全てを……? 岡部のことやまゆりのことを教えてくれるの!?」
鈴羽「うん。だから、聞いて欲しい。これから君が、二十年後の君がどんな道を歩んだのか。そして」
鈴羽「岡部倫太郎の、無念を」
紅莉栖「岡部の……無念」
決めてからはとても速かったみたいだよ。
自分の行った今までの実験、タイムリープのこと、Dメールのこと。
価値のある情報にプラスして君の優秀な頭脳をSERNは高く評価した。
君はすぐにタイムマシンの開発、それもかなり上の方に位置することができた。
そのまま君はしばらくSERNの人間とタイムマシンの開発を進める。
その半年後、椎名まゆりが病院で亡くなった。
原因不明の病気、少しずつ衰えていって、そのまま静かに息を引き取った。
あたしの父さんや岡部倫太郎も葬儀には参加した。
でも、その時はなにも特別な思いは無かったんだ。
でも、十二年後、岡部倫太郎は思い出すんだ。
全てを、今までなにもしてこなかったことを。
その時に岡部倫太郎が向かったのが、あたしの父さんのところだった。
岡部「……ダル、その呼び方はなんだ。もう俺を、オカリンと呼んでくれないのか……?」
ダル「オカリン……? 一度も読んだことがないな、勘違いじゃないか?」
岡部「なっ……! ほ、本気で言っているのか!?」
ダル「ああ、本気だ。……悪いけど、なにも知らない」
岡部「俺は……まゆりを助けるために後少しのところまで来たんだ……それなのに、それなのに……!」
ダル「……それは、牧瀬氏が昔言っていたことととても似ているな」
岡部「ああ……紅莉栖は正しいことしか言ってなかった。それを俺は……俺は、俺は……」
ダル「……牧瀬氏に、連絡を取ってみないか? 連絡先は知っているだろう?」
岡部「……昔、消してしまった」
ダル「それなら僕が代わりにコンタクトを取ろう。それでいいな?」
岡部「頼む、ダル……もう遅いかもしれないが……それでも俺は……」
そしてこの世界線での三十年間、その記憶が混在していたみたい。
だから、君に言った酷いことも全て覚えているし、
椎名まゆりに対してなにもできなかったことも覚えている。
岡部倫太郎は最後まで後悔していた。
あの時、紅莉栖の言葉に従っていれば、まゆりに何かしてあげれば、
死ぬ間際までずっと、後悔し続けた。自分の非を、嘆き続けた。
その岡部倫太郎を見捨てられなかったのが、あたしの父さん。
岡部倫太郎と父さんは牧瀬博士に会いに行った。
その時、牧瀬博士はとても喜んだ。仲間が戻って来たこと、
そして、Dメールがちゃんと岡部倫太郎に届いていたことを。
Dメール? ああ、2022年に牧瀬博士が送ったんだ。
「椎名まゆりはバイト先の秋葉原にいる」ってね。
本当は、あそこに岡部倫太郎は現れなかった。
君が椎名まゆりを送り届けて終わりだった。
そこで岡部倫太郎に未来からのメールを送ること、
ラボに向かわせることで記憶を強烈に思い出して欲しい、そう牧瀬博士は狙ったんだ。
結果的に、君のおかげで頭痛が起きたことによって綻びが生まれた。
だから岡部倫太郎は十年以上経ってからだけど、思い出すことができた。
ハッカーの腕と別の世界線だけどタイムマシンを修理した実績、
そして岡部倫太郎の世界線漂流の経験、これもSERNには価値のあるものだった。
開発の途中で岡部倫太郎は死に、あたしの父さんも死んだ。
最後に残った牧瀬博士、彼女ももう長くはないみたい。
彼女が作り上げたSERN第一号のタイムマシンを、あたしはこうしてここまで持ってきた。
まあ、正直色々あったんだけどね……。
えっ? 持ってきたってどういう意味かって?そんなの決まってるよ。
牧瀬紅莉栖、君がこの世界線を元の世界線に戻すんだ。
このタイムマシンに――世界線を移動することができるタイムマシンに乗ってね。
「その通り、それは絶対にできないし、できる訳が無いんだ。……でもね」
「大きな変化じゃないけど、世界線の微量な変化はタイムマシンに乗れば起きる」
「岡部倫太郎の持つリーディング・シュタイナーは発動しない程度って感じかな」
「じゃあ、世界線を移動っていうのはいったい……」
「このタイムマシンは、君の記憶を頼りに世界線の分岐点も遡ることができる」
「自身の体験を生かし、牧瀬博士は完成させた。完成したはず、って言った方がいいかな」
「CERNはこんな機能は望んでいない。この機能は父さんと牧瀬博士が創り上げたものだから」
「普通の人は世界線が変わったことなんて知らない、気付いていない、記憶にもない」
「ほんの少し思い出したとしても明確な分岐点を知っている訳では無い」
「その分岐点を知っているのは誰か。世界線が変動した瞬間、リーディング・シュタイナーを発動させた人間だけ」
「それは今、この世界にはただ一人。牧瀬紅莉栖、君しかいない」
「流れに逆らう、普通の人間が普通のタイムマシンに乗ってもそれしかできない」
「でも、牧瀬博士が記憶というものを頼りに遡るタイムマシンを作った、そして牧瀬紅莉栖。君が居る」
「CERNは今、タイムマシンを利用した世界の掌握を実行に移そうとしている」
「それを防ぐため、あたしの父さん、岡部倫太郎、そして牧瀬博士
三人の思い、無念、希望、そのすべてをあたしは請け負ってきた。そして君に託したい」
「つまりはそういうことだね。理解してくれた?」
「……まったく納得できない。理論的にも考えられない、夢物語ね」
「それでも、君に乗ってもらわないといけないんだ。……牧瀬紅莉栖、お願い」
「……はあ、世界線を移動できるか。失敗したら私はどうなってしまうのか。
今日という日で存在が消えるのか、遡ったとしても私の記憶が保全されているかどうか」
「それは……牧瀬博士もどうなるかわからないって言ってた。大分弱々しくなってたから……
きっと、完成したものを作るのは不可能だったと思うんだ。……でも、これを君に託さなければならない」
「不完全なものを過去の自分に押し付けるなんて、狂気のマッドサイエンティストも泣いて逃げ出すわね」
「……牧瀬紅莉栖、どうする?」
「決まってる。――これに乗って、時間だろうが世界線だろうが遡って、必ず元の世界線に戻す」
「ありがとう! お願い、君に全てが懸かっているんだ……」
「わかった。……β世界線に行けばどうなるかわからないし、今更気にすることでもないか」
「それで、これを頭に付けて」
「うわっ……この電極というかなんというか……これを頭に?」
「牧瀬博士の自信作だからね、きっと大丈夫だよ!」
「……大丈夫か、未来の私」
「じゃあ、行ってらっしゃい。気を付けてね!」
「気をつけられたらいいけどね、はあ……」
「行くよ……」
阿万音さんは手馴れた感じでスイッチをどんどんと押していった。
帰りのこと? 一応操作は教わった、けど……。
β世界線に行けば私の存在なんてどうなるか分からない。
それに、誰かがなにかをして世界が変わったのなら、このタイムマシンも存在しないことになるはず。
……平行世界がなければ、の話だけど。
ともかく、これがきっとラストチャンスなのだろう。
まゆりを救い、岡部の無念や橋田の優しさ、そして私の執念は無駄ではなかったと証明したい。
頼むぞ、牧瀬博士――二十年後の私。
「う、あっ……あああっ……頭が、割れそう……」
(えっと、ハッチはたしかこの辺に……あったあった)
目の前に広がっていたのは、ラジ館の屋上、そして秋葉原の朝を見下ろしていた。
(秋葉原には着いた。でも……ここが元の世界線だとは限らない)
(時間は……あれ、この時間だともしかして……)
私はラジ館を急いで出て、秋葉原駅の改札付近を陰からこっそり覗いていた。
すると、現れたのは――スーツケースを持った私と、岡部だった。
「岡部、頑張って」
「……元気で」
(うわー……こうやって客観視すると恥ずかしい……)
(でも、これで確認できた……私は、元の世界線に戻って来たんだ)
あの時、ラボには誰かがいた。誰かが電話レンジを起動させていた。
ラボに急いで戻り、その正体を暴く。なぜこんなことをしたのか、する意味があったのか。
理由を知らなければ、ここまでの苦労は全て無駄になってしまう。
(電話レンジを使うことができる人物は限られている……岡部、橋田、私)
(いや、外部の人間……その可能性もある。だとすると、SERNやラウンダー?)
まだ立ち続けている岡部を少しだけ眺めた後、私はラボへと向かおうとした。
だが、その前に気になることが起きた。
(あれ……? 岡部、誰かから電話がかかってきた……?)
岡部は電話をとると話しはじめ、そのままどこかへと移動してしまった。
(えっ? あいつ……どこに向かったんだ?)
それも気になるが、今はラボに行かなければならない。
私は急いでラボへと向かった。
(人の気配は……ない。それならまだ、相手より先にラボに入って待つことができる……)
(でも鍵があるから外部の犯人では……って鍵なんて強引に開けられるわよね)
(とりあえず、中に入って隠れて……ん? 鍵が、開いてる……?)
(もしかして、もう誰か来ている……!? それなら用心しなければならない……)
(静かに息を殺して……中の様子を……)
(……音がしない。まあ、よく考えれば、誰かいるならもうとっくに動かしてるわよね)
(……よし、入ろう。……えいっ!)
勢いよく私はラボの中へと入った。だが、やはりというか誰もいなかった。
(岡部が鍵を閉め忘れた……? まあ……気が動転してたってこともあるか)
(ともかく、これで隠れられる……えっと、いい場所は……)
(シャワー室、位しかないか。……とりあえずここに)
私はシャワー室に隠れ、その時を待った。
時間にはまだ余裕がある。この間に私は、誰の手によるものなのかを考えることした。
そこでは、岡部は(見た目は)チャラリンだった。
でも、岡部はまゆりのことを本当は心配していたようでもあった。
やはり、人間の本質は変わらないのかもしれない。
岡部はどのような形であっても、まゆりを完全に忘れることはできない。
では、その岡部がまゆりと離れるようになってしまったのはなぜか。
岡部はまゆりを人質と呼ぶ。それにはもちろん理由があるはずだ。
今私がいる世界線での二人の関係を、構成させなかったようななにかがあった?
いや、これは岡部とまゆりを中心に考えただけであって、他に考えることは多くある。
それでも、岡部の変化はハッキリ言って異常だ。
ラボで起きた世界改変、そして岡部の変化、これにはおそらく関わりがあるはずだ。
……考えても考えても、結論は出なかった。
そして私は、現れた人物を問い詰める、という単純な方法をとることにした。
相手が武器を持っていたら……終わりだけど。
世界改変の時間まで後、二十分。
息を殺し、相手を待つ。必ず誰かは現れる、それは間違いない。
(……ここで撃たれたりしたら、どうなるのかしら。対策しておけ――っ!?)
来た、人の気配がする。その感覚は間違っていなかった。
ドアを開ける音、足音、そしてそのまままっすぐに電話レンジへと向かっていく。
(……よ、よし、まずは相手の顔を確認しないと)
私は静かに、ゆっくりと体を動かし、少しずつ覗き込む。
誰かがいるのは間違いない。では、それはいったい誰か。
世界を改変し、まゆりの救出を困難にし、私や岡部を絶望へと突き落とそうとした人物。
その顔を、私は見た。許されない相手を、私は確認した。そして、その人物とは――
私は、言葉を失ってしまった。
私はしばらくその事実を信じることができなかった。だって、どうして、なぜ?
だが、納得はできる。その人物が改変すれば、
確かに岡部とまゆりの関係が変化する可能性は高い。
いや、むしろその人物にしかできない。だからこそ、納得してしまった。
信じられないが、それ以外に当てはまる人物はいない。
武器の心配はなくなった。命を落とす心配は、今は考えないでおく。
静かに隠れていただけだが、私は立ち上がり、その人物のところへ向かった。
距離は本当に短い、すぐに相手も気づいた。
後ろを振り向いたその顔は、どうして私がここにいるのかわからない、といったところか。
世界を改変し、あと一歩まで迫ったまゆりの救出を阻んだ人物。
それは――
「……なにをしているの、まゆり」
「……っ! ……クリスちゃん」
私の大切な友人、岡部があらゆるものを犠牲にして守ろうとした人物。
――椎名まゆりであった。
「…………」
「……お願い、答えてまゆり! どうして、どうしてあなたがこんなことを……」
「……あのね、まゆしぃ……全部聞いちゃったんだ」
「全部、聞いた……?」
「うん……オカリンとクリスちゃんがラボで話していたのを、全部。……ごめんね、盗み聞きしちゃって」
「ラボでの会話……っ! まさか、昨日の……」
「あのね、まゆしぃが生きている世界と……クリスちゃんが生きている世界は……違う世界なんだよね」
「それと、まゆしぃもクリスちゃんもどっちも生きられる世界は……ないんだよね」
「……まゆり」
まゆりは全てを知ってしまった、今は自分が死ぬ世界だということを。
そして今、岡部は私が死ぬ世界へと移動しようとしていることを。
「でも、まゆしぃは何度も何度も……そうなっちゃたから。……その度に、オカリンは悲しい顔をしてくれてた」
「まさか、タイムリープした全てを覚えているの……?」
「ううん、全部じゃないよ。……でも、オカリンが何度も泣いてくれたのは、覚えているのです」
「……そう、覚えているのね」
「ねえ、クリスちゃん。これはまゆしぃの夢じゃ、ないんだよね……。
オカリンが辛い思いをしたのも……全部、全部……夢じゃないんだよね」
私はなにも言うことができなかった。そうだ、と言っても何も意味はない。
違う、と嘘を言う必要もない。まゆりは、全てを知ってしまったのだから。
「だからね、まゆしぃは決めたのです。……クリスちゃんも、オカリンも悲しい思いをしない世界を作ろうって」
「私も岡部も悲しまない世界……それを目指して、Dメールを送ろうとしたのね」
「……うん」
「……Dメールを誰に送ろうとしたの?」
「……お父さんに、送ろうと思ったんだ」
「お父さん……? たしかに、肉親なら影響は大きいかもしれないけど……」
「……えっと、これを送ろうと思ったのです」
まゆりの見せた未送信メール、その中身は。
『おばあちゃんはまゆりを見守ってるよ』
「これで……このメールで世界があれだけ改変したというの……?」
「……そのメールを送ろうとした時はね、まゆしぃはおばあちゃんが死んじゃってとっても悲しかったの」
「その時に、オカリンが……まゆりは俺の人質だ、どこへも行くなって言ってくれたのです」
「そこから人質の関係が始まった……」
「それだけじゃないよ。オカリンが今みたいなことをしてるのは……その時がきっかけだったから」
「フゥーハハハ、って感じで笑ってね。まゆしぃを抱きしめて……どこにも行くなって……」
岡部のマッドサイエンティストとしての行動、鳳凰院凶真へとつながるもの。
それは、悲しみに暮れるまゆりを、弱々しいまゆりを繋ぎ取るために、始まったものだった。
「……おばあちゃんがいなくなっても、見守ってくれていると思えば、ってことね」
「うん。それならオカリンは……まゆしぃから離れられるだろうから」
そして同時に、マッドサイエンティストや鳳凰院凶真なんかも必要が無くなる。
岡部がラボを作らない、というのも納得ができる。
やはり、岡部に一番影響を与えられるのは、まゆりだ。
まゆりは一通のメールで、岡部を自分から離すことに成功した。
だが、それが生み出した結果は――。
「ねえ、クリスちゃん。……飛行機に乗ったんじゃなかったの?」
「……ええ、そのつもりだったわ。まあ、そろそろこっちに着くかもね」
「えっ? どういうこと……?」
「私はね……まゆりがそのメールを送って改変された世界から来たの」
「そして、私は世界改変を……まゆりのDメール送信を止めるために、ここにいる」
「……クリスちゃん」
私はあの世界線で様々なものを見てきた。その中から、まゆりに響きそうなものを私は選んだ。
「……岡部は、まゆりを救えなかったことを後悔しながら死んでいった」
「……っ! クリスちゃん……それ、本当なの?」
「ええ、未来人が言うんだから間違いない。……あんたがどれだけ世界を変えようと、
岡部は最後にはまゆりのために命を懸け……そしてあんたを救うために何でもするのよ」
「そ、そんな……」
「……私も、まゆりを助けるために死ぬまで頑張ってたみたいよ。あと、橋田もね」
「…………」
「まゆり、はっきり言うわ。――あんたがどれだけ岡部から離れようとしても、岡部は絶対にあんたを助けようとする」
たとえ記憶がなくても、忘れていても、人間の本質は変わらない。
岡部はどんな状況であっても、まゆりのことを思っていた。
「だから、あんたは……岡部に助けてもらうことを拒むな。……岡部のために、みんなのために」
「まゆり、……それはあなたが優しすぎたから、そして、岡部のことをわかっているからできたのだと思う」
「でも、クリスちゃんは大変な目に遭ったんでしょ……?」
「……ええ、電話レンジは完成しないし、橋田は相も変わらずHENTAIだし……
岡部はチャラリンだし……あー、思い出しただけでもイライラしてきた……」
「チャラリン?」
「髪は茶色、ピアスを開けて未成年のクセに煙草を吸って服装もバッチリ決めてる岡部のことよ」
「ええっ? まゆしぃ、そんなオカリンは嫌なのです……」
「同感ね。……それでも、意外とまゆりを大切に思ってたりもするのよね」
「そうなの?」
「うん、どこでも岡部は岡部よ。チャラリンだけど」
「そっかー……まゆしぃもちょっと見てみたいかな」
「今度やらせみようかしら。きっと嫌がるだろうけど」
「えへへ……クリスちゃん」
「なに、まゆり?」
「……ありがとう」
「えっ? どうして?」
「すぐわかるわ……来た!」
「あれ……? 開かない……岡部! そこにいるんでしょ?」
「情けないけど……このまま離れるのは嫌だから戻って来た。だから、ここを開けて」
「岡部、お願い。どうしても会いたくなった、だから……」
「これ、クリスちゃんの声だよね……?」
「ええ、この世界線の私ね……鉢合わせたらアウト」
「あっ、それなら……えーっと……あっ、もしもし、オカリン?」
『まゆりか……今度はどうした?』
「今ね、ラボの前でクリスちゃんがチューしたい、チューさせろー! って暴れてるのです」
(は、はあ!?)
『な、なに!? 分かった……今すぐ向かう!』
そうするとまゆりはニヤニヤしながら電話を切り、私の方を向いた。
「クリスちゃん、まゆしぃはちゃんと言ったよー。昨日のお話を全部聞いたって」
「全部…………あっ、あああっ!? ま、まさか……」
「えへへー、クリスちゃんが羨ましいなーってまゆしぃは思います」
「ちょ、ちょっと、まゆり! ……鬱だ」
「オカリンが近くにいたから、きっとすぐに会えたんだよ」
「近くにいた?」
「うん、一時間前くらいにオカリンに電話してね、ラボには来ないでねって言っておいたんだ」
「じゃあ、駅で岡部が電話していたのはまゆりだったのね……でも、どうして?」
「もし、ラボに来ちゃったら……離れたくないって思っちゃうかもしれないから」
「……でも、もうその必要はない。いいわね、まゆり?」
「うん……あのね、まゆしぃもクリスちゃんみたいに頑張るからね」
「私みたいに? どういうこと?」
「それはね……内緒なのです」
「……もう。わかった、でもいつか教えなさいよ」
そんな日が、もし来たらどれだけ幸せだろうか。
でも、β世界線に移れば私はいなくなる。
さようなら、まゆり。……元気でね。
「……それではこれより、『現在を司る女神』作戦最終フェイズを開始する」
岡部とまゆり、橋田、三人だけしかいないはずのラボ、そこに私はこっそり隠れていた。
世界線が変わるのを見届けるため、そして、岡部の声を聞くために。
「ダル、始めてくれ」
「……いいんだな?」
「……ああ」
「オーキードーキー」
そこには当たり前のラボの光景があった。
岡部がいて、まゆりがいて、橋田がいる。三人は協力して、なにかを成し遂げようとしていた。
そこに、私の姿はなかった。あってはいけないのだが、やはり少し寂しい。
きっと、未来の私は岡部と橋田が来てくれた時、涙を流して喜んだはずだ。
それは、岡部と一緒にいられなかった私が言うのだから間違いない。
そして、橋田の腕によってすぐに目的のものは見つかったようだ。
「オカリン! 見つけた! マジであったぞコレ!」
「あったのか? 俺が送ったDメールが!」
後少しで、世界は変わり、私は――。
橋田は立ち上がり、岡部のために席を空けた。
「その儀式はオカリンに譲るわ」
岡部は席に座り、自分を落ち着かせるために深呼吸をした。
本当に消えてしまうのか、私にはわからない。それでも、さようならと思わずにはいられなかった。
「……待って、オカリン」
「まゆり……? どうした、なにも問題は……」
「クリスちゃん、出てきて欲しいのです」
「く、紅莉栖?」
「えっ? 牧瀬氏おるん? どこどこ?」
(ま、まゆり!? いったい何を考えているの……?)
「クリスちゃん……お願い」
そこまで言われては、もはや隠れている意味などなかった。
岡部や橋田と目が合い、何を言っていいのか分からなかった私はとりあえず、
「は、ハロー……」
といつも通りの挨拶をしてみることにした。
「色々あるのよ……ちなみに、私はそこまであんたとチューしてない方の私だから」
「なっ……な、なにを言っているんだ!?」
「おっ? オカリン、そのチューとやらを出来ればkwsk濃密にレポよろ」
「はあ……まゆり、どういうつもり?」
「……オカリン、まゆしぃは謝りたいのです」
「あ、謝る?」
「まゆしぃはね、オカリンの重荷になりたくない、クリスちゃんに生きてほしいから……オカリンから離れようとしたの」
「離れようと……どういうことだ」
「本当は、まゆしぃはDメールを送るつもりだったんだ……」
「……なにを送るつもりだったのだ」
「子供の頃のまゆしぃが、一人でも頑張るって思えるようなメール。それを送るとね……」
「オカリンは、まゆしぃとはあまり話さなくなったの。……ね、クリスちゃん」
「紅莉栖? なぜお前がそれを……」
「改変後の世界から!? い、いつの間にそんなことが……」
「……まあ、それはどうでもいいの。……まゆり、どうしてこんな話をしたの?」
「オカリンから、離れようとして……結局まゆしぃは迷惑をかけちゃったから、謝りたいと思ったのです」
「そ、そうか。だが、身に覚えのないことを謝られてもな……」
「あのね、本当に言いたいのはこっちの方なんだ……オカリン、お願い」
「……まゆり、言ってみろ」
「世界が変わった後に、まゆしぃにクリスちゃんのことを教えてほしいのです」
「まゆり……あんた」
「クリスちゃんがそんなに頑張ってくれたんだから、まゆしぃもクリスちゃんを……助けてあげたいの」
「まゆり……だが、お前は俺のように記憶できる訳ではないんだ。だから……」
「でも……やっぱりまゆしぃはラボメンはみんな一緒がいいのです」
「……まゆり、ありがとう。……その気持ちだけで十分だから」
後少しで泣きそうだった。いや、もしかしたら泣いていたかもしれない。
それほどまゆりの言葉は暖かかった。この世界への未練なんてすべて吹き飛ばしてしまうくらいだった。
それを受けて岡部はたちあがり、高らかに笑い出した。
「お、岡部……?」
「まゆり、お前は俺の人質だ。ならば、その願いは……この俺が叶えてやろう!」
岡部は立ち上がったまま、大声で続けた。その顔はどこか晴れやかだった。
「誰が二人とも助けられないと決めた、誰が諦めろと言った、それを言っていたのは全て自分ではないか!」
「これは終焉では無い、旅立ちだ。新たな戦いの始まりだ!」
「この鳳凰院凶真が諦めるなど、有り得ん。俺は世界線を越え、今こうしてこの場に立っている!」
「お、いつものオカリンっぽいじゃん」
「まゆり、まずはお前を救う。そして紅莉栖、長くなるかもしれないが待っていろ。
必ずやお前も助けだし、全てを手に入れる世界線へと到達して見せる!」
「呆れた……そんな都合のいい世界線、あると思ってんの?」
「無ければ創り上げるまでだ。それこそが、マッドサイエンティストというものではないか!」
そこにいたのは、岡部倫太郎であり、鳳凰院凶真だった。私の大好きな、大切な人がそこには立っていた。
「……バカ岡部、本気にするぞ」
「構わん。待っていろ、紅莉栖! まずは――β世界線へ移動する!」
そして、岡部はエンターキーを押した。
あと私にできることは、待つだけだ。
なにも考えられず、ただそこにいるだけ、それしか私には許されていなかった。
これが、死んだってことなのだろうか。非科学的だけど、あの世っていうものなのだろうか。
(このまま、この真っ暗闇に取り残されるのかな……)
おそらく、というか間違いなくそうだろう。
これが、世界線を移動し、私は死んでしまったという証なのだろう。
(……岡部、本当にたすけてくれるの? 待っていればいいの……?)
その問いに答えはない。ただ暗闇が広がっているだけなのだから。
そこに、声が聞こえた。聞き覚えのある、いつまでも聞いていたい声。
「お前は……俺が、助ける」
そして、世界はまた変わった。
「だ、大丈夫ですか?」
目の前にいたのは二人の男、二人ともくたびれたスーツを着ている。
「え、ええ……大丈夫です」
「体調が悪いようですし、今日はここまでしておきましょうか」
「牧瀬さん、またなにか思い出したら教えてください。この電話番号までいつでもどうぞ」
(警部……警察か。……警察? どうして私が警察と?)
それよりも、もっと先に考えるべきことがあった。
ここはどこなのか、今は何日なのか、そして――。
(この世界線は……いったい。私は生きているみたいだから……β世界線ではない?)
外に出ると、まだ日差しが少し強い。
(まだ夏……? 今日は、何月何日だろう……)
ポケットに入っていた携帯を確認すると、すぐに日付は分かった。
今日は8月25日、暑いのも納得できる。
(生きている、わよね……ここがあの世とは思えないし……)
(……秋葉原に行ってみれば、なにかわかるはず)
(岡部は、まゆりは……無事なのだろうか)
私は電車を乗り継ぎ、秋葉原に向かった。
電車の中では様々な不安や可能性について考えていた。
(ここはα世界線で、岡部たちは移動した。……平行世界はあった、ってパターン)
(岡部が失敗して全員α世界線にいるパターン、私もβ世界線で生存できたパターン)
(……そして、私もまゆりもどちらも生存できる世界線)
ともかく今は単純に、岡部に会いたい。
(……とりあえずここに来てしまった。ここに来れば、誰かには会えるはず)
(鍵は開いてる……ってことは、誰かいる?)
「こ、こんにちは……」
「あれー? お客さんだ、こんにちは」
(……まゆり! 生きている? 日付は8月25日……いや、まだわからない。
あの世界線ではずいぶん後にまゆりは死んでしまった……)
「はじめまして。椎名まゆり、まゆしぃです☆ よろしくお願いします」
「よ、よろしく。私は牧瀬紅莉栖です」
「まきせ、くりす……? もしかして……クリスちゃんですか?」
「えっ? ええ、たしかにまゆりにはそう呼ばれていたけど……まさか、覚えているの?」
「ううん、オカリンに教えてもらったのです。お前には大切な友人がいる。
牧瀬紅莉栖という人物を、お前を絶対忘れてはいけない、って」
(岡部……あの時の約束、守ってくれたんだ)
まゆり「うん! いいんだよー、クリスちゃん」
紅莉栖「あの、岡部はどこにいるの? 今はどこかに出かけてるとか?」
まゆり「……えっとね、オカリンは今……入院しているのです」
紅莉栖「……えっ? ど、どういうことなのまゆり!?」
まゆり「まゆしぃもよくわからないけど……気づいたら入院していて」
紅莉栖「意識は……あるの?」
まゆり「……入院したての頃は、ちょっとだけ起きてたの。そこでクリスちゃんのことを教えてもらったのです」
紅莉栖(私のことより他に話すことがあるでしょうが、あのバカ……)
まゆり「今は、ずっと寝てて起きないから……まゆしぃは心配で仕方ありません」
紅莉栖「……まゆり、その病院。教えてくれる? お見舞いに行ってみようと思う」
まゆり「あっ、それなら一緒に行こうよ。二人で行けばきっとオカリンもすぐに起きるよー」
紅莉栖「そうね……一緒に行きましょうか」
紅莉栖「岡部……本当に目を覚まさないのね」
まゆり「まゆしぃがどれだけ声をかけてもダメだったのです……」
紅莉栖「……どこを怪我したの?」
まゆり「お腹にとっても深い傷があるってお医者さんが……」
紅莉栖「……なにをしたらそんな傷がつくのかしら」
まゆり「それが分からなくて、オカリンもなにも言わなかったみたいなのです……」
紅莉栖「そう……まあ、岡部らしいといえばらしいわね」
紅莉栖(またそうやってあんたは一人で抱え込もうとしてるのか?)
紅莉栖(聞きたいこと、たくさんこっちはあるんだから……早く起きなさいよ、岡部)
まゆり「クリスちゃん、まゆしぃはそろそろ帰らないといけないのです……」
紅莉栖「ええ、わかった。気を付けて帰りなさいよ、まゆり」
まゆり「クリスちゃんはもう少しここにいる?」
紅莉栖「そうね……そうしようと思ってる」
まゆり「じゃあ、オカリンのことよろしくお願いします。またねクリスちゃん、トゥットゥルー♪」
岡部「…………」
紅莉栖(岡部にやっと会えた、まゆりも側にいる……それなのに)
紅莉栖(あとはあんたが起きるだけよ、岡部……)
私はそのまま、時間の許す限り岡部の側にいた。
そうして、ただ岡部の側にいる日々が数日間続いた。
辛いことばかりだった気もするが、得たものは大きい。大切な仲間、友人、そして、大切な人。
その人が今、目の前にいる。目を覚まさないけど生きている。
それだけでも十分喜ぶべきことだ。それでも私は、岡部と話をしたい。
この世界線でなにがあったのか、まゆりはもう心配しなくてもいいのか。
私がまゆりのDメールによって改変された世界で、あんたになにを言われたのか。
全部話したい、全部聞きたい、知りたい、伝えたい、だから――。
「岡部……お願い、目を覚まして……」
この言葉が届かない、それも分かっている。それでも私は岡部に言葉を投げ続ける。
そのうちに、私は岡部にまだ言っていないことがあるのを思い出した。
(そういえば、私……岡部に好きって言ってないかも)
(こ、こういうのって……寝ているときに言ってもいいのかな……)
(でも、なんとなく卑怯な気も……いや、それだと一生言えない気もする……)
(……ちょっと不謹慎な気もするけど、これはある意味チャンスよね)
(今、岡部に好きって言えば……こう、なんか、やってやったぞ感があるというか)
(よ、よし……今しかない、練習とかそういうもんだと思えば……)
(いつかちゃんと言うってことで……とりあず練習、そういうことにしよう)
(えっと、こういう時は……なんて言えばいいんだろう)
「でも、短いけどその分あんたとは……結構、色々、心を通わせたというか……」
「……正直に言うと、あんたがいないともうダメなんだと思う」
「今はあんたが寝てるから、こうやって言えるけど……起きたらこんな風に言えないんだからな!」
「ファーストキスだって岡部にあげたし……その後もキスは……いっぱいしたし」
「……い、いい、一度しか言わないから。寝てたからって、もう一度言うとかないから」
「岡部……私は、あんたのことが……」
「す、……す……好き、だから」
(……は、恥ずかしい! これなに……寝ている相手に言ってるだけなのにものすごく恥ずかしい!)
「はあ……寝てるからいいけど、もし起きてたら本当に死ねるわねこれ……」
「まさか、起きてるとか無いわよ――――あ」
紅莉栖「…………」
岡部「…………」
紅莉栖「…………」
岡部「……あー」
紅莉栖「…………」
岡部「いや、その……」
紅莉栖「…………」
岡部「とぅ、トゥットゥルー……」
紅莉栖「……い」
岡部「……い?」
紅莉栖「い、い……」
岡部「い……?」
紅莉栖「いやあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
「『お、岡部……』のところだな」
「……お約束の一番最初からってことね。岡部、ちょっと頭開いて。電極ぶっ刺すから」
「お、落ち着けクリスティーナ! 俺は病人だぞ!?」
「知るか! 病人とか言って起きないで……さんざん人に心配させといて……! つーかティーナじゃねえし!」
「す、済まなかった……いや、本当に起きたタイミングが丁度よかっただけで……」
「……もういい、どうせいつかは言うことになるんだから」
「そ、そうだな……なあ、紅莉栖」
「……なによバカ岡部」
「あー、その……俺も、好きだ」
「…………嬉しいから許す」
「ああ、もう悩まなくてもいい。まゆりも紅莉栖も死なない、
これが俺の、そして仲間たちと勝ち取った世界線なのだ」
「そっか……あんた頑張ったのね、お疲れ様」
「なあ、紅莉栖。どうしてお前は覚えているんだ? リーディング・シュタイナー、俺と同じ位の力を持っているのか」
「さあね。チャラリンが不甲斐なかったから、私が頑張るしかなかったのよ」
「……チャラリン?」
「多分チャラリンの方がモテると思うけど……私は今の方がいいから」
「あ、ああ……よくわからんがそうなのか」
「……ねえ、岡部」
「なんだ、紅莉栖」
「約束する。俺はどこにも行かない、ラボメンの側に。……そして、お前と共にある」
「……わかった、信じる。ねえ、岡部……その」
「……するならもっと近づけ」
「わ、わかってるわよ! よっと……じゃ、じゃあ、いくわよ」
「早く来い……俺は動けないんだからな」
「偉そうにするな。……目、瞑って」
「……紅莉栖」
「……岡部」
岡部は紅莉栖を頼り、紅莉栖は岡部を探した。
その二人はラボ、という空間であったりラボメンという仲間によって繋がりを強めていった。
二人は、様々な形で最も大切な友人を、自分を理解してくれた人質を命がけで救った。
岡部倫太郎は二度と消えない。これからもラボに存在し、ラボメンと共にあり続ける。
そして、その横にはきっと、牧瀬紅莉栖がいつまでもいてくれるはずだ。
終わり
よく頑張った
面白かったです
最後までありがとう!!
Entry ⇒ 2012.07.27 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
紅莉栖「岡部から他の女の匂いがする」岡部「えっ」
岡部「えっ」
紅莉栖「ちょっと岡部」
岡部「へ、な、なんだ」
紅莉栖「…………これは」クンクン
岡部「ぅ、うわ、や、やめろぉ!においを嗅ぐな!お前は犬か!」
紅莉栖「んー?」クンクン
岡部「お願い、やめてっ!謝る!明日からファブリーズする!俺が汗くさいのはわかった!頼むから嗅がないでください!」
紅莉栖「…………白衣、ね」
岡部「え」
岡部「…………な、なんだ?」
紅莉栖「白衣脱ぎなさい」ガシッ
岡部「え、ちょ、助手貴様さっきからなにうぉお!?」
紅莉栖「…………やっぱりこれだ」クンクン
岡部「き、貴様ぁ!我がインテリジェンスの象徴を!ってだから嗅ぐなっ」
紅莉栖「わからない……一人じゃ、ない?」
岡部「ふぇ?」
岡部「ええい、誰が触るというのか!そんなことやるのは現在進行形でお前だけだ!」
紅莉栖「…………岡部に自覚症状はなし、か」
岡部「おい助手、さっきから何をわけのわからないことをっ!」
紅莉栖「今日は……全員くる予定になってるからちょうどいいわね」
岡部「おい、人を無視するな。話を聞けっ」
カツカツ
紅莉栖「階段を上がる音!?誰かが来る!岡部、隠れるわよ!」
岡部「なっだから何故俺が――――っていうか俺の白衣っ」
岡部「だからおい何故ラボの長たる俺がシャワールームに隠れなきゃならんのだ」コソコソ
紅莉栖「いいから黙って」コソコソ
まゆり「みんなでお買い物にいったのかなぁ………あ」
紅莉栖「………ほら」
まゆり「オカリンの白衣ー♪白衣ー白衣ー♪」
岡部「!?」
紅莉栖「アイロンセット……!?」
岡部「……コス作りの道具を持ち込んでるのは知っていたが…………」
まゆり「~~♪」
紅莉栖「っ、まゆりにはこれがあったか……なんという幼馴染み属性……家事スキルは同レベルだと思っていたのに……!」
まゆり「~♪~~♪」
岡部「というか白衣ってアイロンいるのか?」
紅莉栖「あんたハンカチにすらアイロンかけたことないわけ?」
岡部「…………ないな」
岡部「ぐ、ぐぬぬ……」
紅莉栖「それにしてもまゆりは流石ね」
岡部「そ、そうだ!俺がやらなくてもまゆりがやればいいだろう!何故ならあいつは鳳凰院凶真の人質だからなっ」
紅莉栖「人質にアイロンかけて貰うマッドサイエンティストって……」
岡部「で、だ。もう隠れるのはいいだろう。そもそも何故隠れるのだ。俺は人質を労ってやらねばならん」
紅莉栖「……待ちなさい、岡部」
まゆり「んっ……」
岡部「!?」
紅莉栖「アイロンかけた白衣に、顔を埋めた……!」
岡部「ちょ、まゆりお前まで……」
紅莉栖「足バタバタさせてる、凄いキュートね……」
岡部「……っていうかアイロンかけた後にやったら意味ないだろっ、やめてっ」
紅莉栖「それにあの淀みない手付き、これは常習犯ね」
岡部「やっ、ほんとやめて!手を離せ紅莉栖、俺はまゆりを止める!いやっ嗅がないでくれっ!恥ずかしいっ!」
紅莉栖「あ、ちょ、岡部っ」
岡部「うわああああ――――!!」
まゆり「えっ」
紅莉栖「あーあ」
岡部「……とりあえず白衣に顔を埋めるのはやめてくれ」
まゆり「ごめんなさい……」
岡部「いや、あ、うん。怒ってるわけじゃない。むしろこちらが感謝せねばらならない、いつもアイロンかけてくれてありがとう。さすがこの鳳凰院凶真の人質なだけはある」
まゆり「まゆしぃは悪い子です……」
紅莉栖「ううん、大丈夫よまゆり。岡部の白衣に顔埋めるくらいなら私もしょっちゅうやってるわ」
岡部「…………おい」
まゆり「えへへ、ごめんね。オカリン……」
岡部「(電話を取り出す)……ああ、俺だ。人質と助手が機関による洗脳工作を受けた疑いが強い。このままじゃ俺へのダメージが大きすぎる。……ああ、そうだ。一刻も早くファブリーズを買ってこなければならない。頼んだぞ、エル・プサイ・コングルゥ……」
まゆり「あの、ね。いつもやってるわけじゃないんだよ?寂しくなった時にね、ぎゅっとするとオカリンに抱きしめられてる気がして――――」
岡部「まゆり、もうやめてくれ。俺は羞恥心で爆発しそうだ」
紅莉栖「でも白衣の匂いは、まゆり一人じゃなかったわ……」
まゆり「え」
岡部「えっ」
まゆり「全然気付かなかったのです……」
岡部「って貴様らも普段からそういうことをやってるから気になるんだろっ、もういい!もうたくさんだ!!俺は白衣を家に持って帰るぞっ!!それでいいだろ!!」
紅莉栖「却下」
まゆり「白衣についてはね、まゆしぃがおばさんによろしくねって頼まれてて……」
岡部「ええいっなにを頼んでるかうちの親は!?」
カツカツ
紅莉栖「また誰か来た!?隠れるわよ岡部!まゆり!」
まゆり「え?あわわわ」
岡部「あ、ちょ、やっ、もうやめっ」
岡部「だからどうして隠れる必要があるっ」コソコソ
紅莉栖「だめよ、岡部の白衣は誰にも渡さないんだからっ」コソコソ
まゆり「ええー紅莉栖ちゃん、白衣についてはまゆしぃが頼まれてて……」コソコソ
フェイリス「おかしいニャ。ダルニャンから凶真やクーニャンがいるって聞いてきたのに……」
岡部「来たのはフェイリスだぞ、あいつが何かするわけないだろっ」
紅莉栖「わからないわよ。ほら」
フェイリス「これは凶真の白衣」
岡部「あっ、ちょ……」
まゆり「フェリスちゃん……」
紅莉栖「頭から被った!?」
岡部「猫かっ――っていや違うだろっ」
まゆり「わぁ……」
フェイリス「ニャ、ニャ」
紅莉栖「被るだけで着ないのがミソね」
岡部「いや、もはや匂い嗅ぐのと変わらんではないかっ」
フェイリス「ニャ♪」
まゆり「フェリスちゃん、いいなぁ……」
紅莉栖「はっ、これが本当の猫をかぶる……!?」
岡部「いやうまいこといったつもりか!」
岡部「ええい見てられんわっ離せ離さんかクリスティーナ、ってまゆりもはなせっ」
まゆり「オカリン邪魔するの可哀相だよ。ほらフェリスちゃんがくしくししてるよ」
フェイリス「~~~♪」
紅莉栖「ソファに寝ころんでまるっきり猫ね。夏なのに暑くないのかしら……」
岡部「どうりでいつもアイロンかけて貰ってるのにいつもクシャクシャなわけだってもういいだろ!いいから離せよ!!」
まゆり「駄目だよオカリン」
紅莉栖「そうよ、どうせならもっと行動がエスカレートするまで見てましょ」
岡部「趣味が悪いわっ!ええい、離せっ――おい!!フェイリスお前もいつまでやっとるか!!」
フェイリス「ニャニャ!?」
まゆり「あっ」
紅莉栖「あーあ」
岡部「お前までなにを……」
まゆり「フェリスちゃん」
紅莉栖「せっかくの実験なのにばれちゃったわね……」
フェイリス「まゆしぃ!?クーニャンまで!?」
岡部「とりあえず俺の白衣を被るのやめてくれ……」
フェイリス「こ、これはだニャ……来るべきラグナロクのために神様を呼び覚ます踊りを……」
岡部「……髪ぼっさぼさになってるぞ」
フェイリス「ニャニャ!?」
岡部「もういい、二人が三人になろうがそう変わらん……」
フェイリス「……三人?」
まゆり「えへへぇ~、お仲間だねフェリスちゃん」
紅莉栖「まぁそういうことね」
フェイリス「ニャ……///」
岡部「……もういいだろ?なんかもう疲れてきたぞ、凄く……」
紅莉栖「駄目よ」
岡部「俺の白衣が玩具にされてのはもうわかった、ここまでされてると何もいえん……」
岡部「そんなわけあるかっ、俺の私物だぞ!」
まゆり「オカリン大人気だねぇ~」
岡部「ぜんっぜん嬉しくない!全然!これっぽっちも!」
カツカツ
まゆり「あっまた誰か来るみたいだよ~?」
紅莉栖「ほらフェイリスさん、隠れるわよ」
フェイリス「ニャニャ!?」
岡部「ええいもうこんなことに付き合ってられるかっ俺は白衣を持って家に帰っあっ、まゆり引っ張るなっ――」
まゆり「オカリンもう大きい声出さない?」コソコソ
岡部「んっんっ、ぷはっ……ええいわかった頼むから口に手を当てるな鼻を押さえるなっ息が出来んっ」コソコソ
紅莉栖「次は漆原さんね……」コソコソ
フェイリス「こうやって覗いてたニャンか……恥ずかしいニャ……」コソコソ
るか「……あの……どなたかいらっしゃいませんかー……」
岡部「っていうか狭っ!さすがに4人シャワールームは狭いっ!」
まゆり「オカリンおっきな声出しちゃ駄目だよ~」
フェイリス「にゃ!?あっ、キョーマそこはっ……」
紅莉栖「ちょっと岡部どこ触ってんのよっ」
るか「岡部さーん……まゆりちゃーん……?」
まゆり「まゆしぃがオカリン抑えてたから……ごめんね、フェリスちゃん」
岡部「す、すまない、フェイリス……」
フェイリス「キョーマは大胆だニャ……///」
るか「…………あ」
紅莉栖「早速白衣に目を付けた……橋田以外の唯一の男性とはいえ立派な容疑者だわ」
岡部「ルカ子はそんなことせんわっ」
フェイリス「んー、それはどうかニャー……」
まゆり「ルカくんもオカリン大好きだからねぇ、えへへ」
岡部「いや、流石に……!?」
るか「これ岡部さんの……?」
紅莉栖「白衣を手に取った……!」
フェイリス「ニャニャ?いくニャ!?いくニャ!」
まゆり「頑張れ、ルカくんっ」
岡部「いやっなにを応援しとるかっ」
紅莉栖「――――よし、いったっ!」
るか「…………ぶかぶかだ……///」
紅莉栖「普通に着た!?」
岡部「ふっ、ルカ子、俺は信じてたぞ……」
紅莉栖「……彼に岡部のはサイズ大きすぎるわ、袖から指先しか出てないね」
フェイリス「彼氏のワイシャツを着てる彼女状態ニャ!これはポイント高いニャ、流石ルカニャン……!」
岡部「いや、だが男だ」
まゆり「ルカくんはルカくんだよー」
フェイリス「卑猥だニャ!?」
岡部「どこがだ!お前までダルみたいなことを言うなっ!」
紅莉栖「んー……普通に白衣着てるだけ、か……」
まゆり「ルカくんは恥ずかしがり屋さんだからねぇ~」
岡部「おい、もういいだろ……」
紅莉栖「確かに着てるだけで満足してるみたいだし、これ以上は進展しそうにないわね」
フェイリス「純情な愛だニャ」
まゆり「愛だねぇ」
岡部「…………師弟愛だ」
るか「え、あっ……きゃ、岡部さん!?」
まゆり「えへへ、白衣コスのルカくんも可愛いねぇ~」
紅莉栖「うん、凄くキュートね」
フェイリス「可愛いニャン。お客呼べるレベルニャン」
るか「み、皆さんまで!?あ、あの、これは……!?あっ、すっ、すいません岡部さん白衣を勝手に……!?」
岡部「いい、許そう!むしろ褒めてやってもいい!お前がそこまで白衣に憧れを持っていようとは知らなかった!フゥーハハハ!!この狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真の弟子として素晴らしいことだ!」
るか「あっ、はい……あ、ありがとうございます……?」
岡部「白衣の良さに気付くのは素晴らしいことだ!なんなら新しい白衣プレゼントしてやろう!」
るか「えっ」
まゆり「オカリン違うよ。ルカくんが着たいのはオカリンの白衣なんだよ?」
まゆり「そうだよね、ルカくん」
岡部「ええい何をいうか!我が人質ながらお前にはわからんのかこの白衣の素晴らしさが!圧倒的なこの機能美を!」
まゆり「えっとねー……まゆしぃにはわからないのです……」
紅莉栖「……逃げたわね」
フェイリス「薄々わかっていながらも恥ずかしくて逃げてるだけニャン」
紅莉栖「中二病乙、っと」
岡部「貴様らも人を勝手に分析してるんじゃない!」
紅莉栖「えっ、けど足音なんて聞こえないけど……?」
フェイリス「猫の耳は確かだニャ、いいから早く隠れるニャン!」
岡部「おいまだやるのかもういい加減に――うおわっ」
るか「ええ?まゆりちゃん?」
まゆり「ルカくんもオカリンと一緒に隠れようねぇー」
ガチャ
鈴羽「おっはー!……ってあれ?」
岡部「おいっ5人は流石に無理あるだろっ」コソコソ
まゆり「えへへぎゅーぎゅーだねぇ」コソコソ
るか「っ……岡部さん、これはちょっと苦しいです……あっ」コソコソ
フェイリス「隙間に埋もれるのは慣れてるニャ……」コソコソ
紅莉栖「岡部どこ触ってんのよっ!ちょ、やめて!やめなさいよ!やめてよ!事務所から訴えるわよ!」コソコソ
岡部「事務所ってどこだよ……というか貴様らから連れ込んだのによく言うっ……くっ体の身動きが取れん……っ」
まゆり「みんな仲良しさんだねぇ」
鈴羽「んー……?あれ、これって」
紅莉栖「よし食いついたっ」
岡部「もはやそういう状況じゃないだろっこれぇ!」
まゆり「んー?」
フェイリス「生地を確かめてる、ニャ?」
紅莉栖「色気もなにもあったもんじゃないわね……」
るか「岡部さん、すいませんっちょっと右手がっ……きゃ……」
岡部「す、すまん……だがっどうしようも身動きが……」
鈴羽「白衣はどんな時代でも変わらないか……父さん……」
紅莉栖「父さん!?」
岡部「なぜこっちを見る!?」
フェイリス「ニャニャ?もしかして凶真の隠し子ニャ!?」
岡部「そんなわけないだろっ」
紅莉栖「リンリン!?」
岡部「なっ、なぜこっちを見る!?俺じゃ……」
フェイリス「キョーマ、顔真っ赤ニャ……いつの間にそんな呼び方になってるニャ、スズニャンもあにゃどれないニャ……」
るか「岡部さんが……リンリン……」
まゆり「パンダみたいだねぇ」
岡部「おい、この際言っておくがオカリンも相当なものだぞっ」
まゆり「ええーオカリンはオカリンだよー」
ブンッ
紅莉栖「あぶなっ」
岡部「なっぐぶぇっ!?」
るか「ああっ、岡部さんっ!?」
フェイリス「ナイスヒットだニャ」
鈴羽「…………あれ?みんなしてどうしたの?」
岡部「おいっ、ビット粒子砲を投げるものがあるかっ!!」
鈴羽「えーそっちがこそこそ隠れてるのが悪いと思うなー。危険が潜在しているとなったら体が勝手に動くんだから……」
岡部「洗剤……?せんざい…………潜在……ああ……」
紅莉栖「……流石ね」
まゆり「スズさんには簡単にばれちゃったねー」
紅莉栖「岡部の白衣がどれだけの人の手に渡っているか確かめるためよ」
鈴羽「??」
岡部「ああ、それでいいのだバイト戦士よ。正直助かった、それが普通の反応だ。まさかお前こそが一番常識人だという判断を下すことになろうとはこの鳳凰院凶真、夢にも思わなかったぞ……」
紅莉栖「待って。阿万音さん?」
まゆり「あのね、みんなオカリンの白衣をぎゅーってしたり、してね?」
フェイリス「どことなく凶真の匂いがして気持ちいいニャン?」
るか「あ、あの……僕は……///」
岡部「わざわざ説明せんでいいっ!いいか、おかしいのはお前らだ!だいたい人の白衣を毛布か何かと勘違いして――――」
鈴羽「…………え?あっれー?今日はまだやってないのになんでわかったの?」
岡部「」
鈴羽「そ、そりゃあたまにだよ!あたしだってそういう気分になる時もあるよ!……おかっしーなー、痕跡を残したつもりはないけど……」
紅莉栖「自白、一ね」
鈴羽「えっ、え?」
まゆり「えへへ、やっぱりスズさんもやるよねー」
紅莉栖「事前に想定していた以上に人数が多いわね」
鈴羽「しまったなー毎回ちゃんと監視カメラの有無もチェックしてたんだけどなー」
まゆり「みんなみんなオカリンのこと大好きなのです」
るか「岡部さん……流石です……」
岡部「ぜんぜん嬉しくないぞ、ぜんっぜん。正直、貴様らがここまで変態だったとは思いも寄らなかった……」
鈴羽「勝手に白衣触ってたのは謝るけど。流石へんたいって言い方はひどいと思うなー」
まゆり「そうだよぉー」
フェイリス「やっぱり彼氏の服着てみたりするのは女の子にとっての憧れニャン」
紅莉栖「シチュエーション萌え、ね」
るか「そっ、そうですよね、別におかしくなんかないですよね!」
岡部「いや!おかしいだろぉ!」
紅莉栖「さて確かめるべきはあと一人……、いや二人の可能性が微レ存……?」
まゆり「ダルくんも?」
岡部「やめんかクリ腐ティーナ!気色悪いこと言うな!鳥肌がたつわ!」
カツカツ
鈴羽「!……誰か来るよっ」
紅莉栖「みんな隠れるわよっ」
フェイリス「合点承知ニャ」
岡部「だからいつまでこんなっ、待て!流石にシャワールームに6人は入らないだろ!絶対に無理だ!」
まゆり「ルカくん、もっとオカリンにくっついていいんだよ?」
るか「あっ……すいません岡部さんっ……」
岡部「む、無理だ……絶対にっ、無理があるぞこれ……」
萌郁「…………」
フェイリス「やっぱりモエニャンニャ……!」コソコソ
紅莉栖「流石に、苦しいけど……さてついに来たわね」コソコソ
まゆり「えへへ、オッカリーン」コソコソ
るか「すいません岡部さん、本当にすいませんっ……」コソコソ
岡部「こ、この体勢は……無理だ……潰れるっ……」コソコソ
鈴羽「静かにっ、桐生萌郁は鋭いからバレるよ」コソコソ
萌郁「…………?」
岡部「そうはいうが……これは通勤ラッシュ時の乗車率250%並みだぞっ……」
萌郁「…………」カチャ
紅莉栖「……! しまった、携帯を取り出した!」
フェイリス「凶真携帯の電源を切るニャ」
岡部「こんな体勢で無茶言うなっ」
岡部「ちょ、お前鈴羽どこを触って、ぁ、待て、ああっ」
フェイリス「……エロイニャ」
るか「きゃ、岡部さん、耳に吐息がっ……」
まゆり「えへへ、オカリンにぎゅってされて、みんな幸せだねぇ」
鈴羽「…………切ったよ!」
紅莉栖「ナイス、阿万音さん!」
萌郁「…………?」
紅莉栖「こ、これでなんとか観察を続けれるわ……!」
鈴羽「あれ?手抜けなくなっちゃった……」
岡部「や、やめっ、そこはっ、ふぇ」
フェイリス「……至近距離で喘ぐ凶真とか物凄くエロイニャ」
紅莉栖「警戒してる……?」
フェイリス「それとなく周囲を見渡してるニャ、流石に手強いニャン」
鈴羽「あれ?あっれー?全然抜けないや……まぁいいや」
るか「岡部さんっ」
岡部「い、いいわけないだろっ、その、お前らの胸がっ」
フェイリス「あててんのニャ」
まゆり「ぁ、オカリンの息がくすぐったいよぉ」
鈴羽「あ、そこは……リンリン……っ」
紅莉栖「なにやってんのよ、岡部っ」
岡部「不可抗力だっ俺は無実だっ」
フェイリス「! モエニャンが動いたニャ!」
ガチャ
紅莉栖「白衣を持って逃げた!?」
フェイリス「さすがニャ!こっちの裏をかく大胆な行動ニャ!」
岡部「俺の、白衣っ」
るか「岡部さんっ、岡部さんっ……」
鈴羽「あ、これ手触れてるの……」
岡部「ひっ、やめろ触るな握るなっ」
まゆり「えへへ、オカリンー」
フェイリス「……こっちも阿鼻叫喚で追おうにも追えないニャ」
紅莉栖「いいから出るわよっ」
ガチャ
鈴羽「捕まえてきたよー」
萌郁「…………っ」
岡部「はぁ……はぁ……」
紅莉栖「……さ、流石にシャワールームに6人は無理があったわね……」
るか「……ぁ、あっ」
まゆり「みんな汗びっしょりだねぇ」
フェイリス「楽しかったけど真夏にやることじゃニャいニャ」
鈴羽「あのさ、あの時になんかあたし物凄いものを触ったような気が……」
紅莉栖「……で、桐生さんはどうして逃げたの?」
萌郁「…………」カチャ
フェイリス「凶真、携帯の電源入れるニャ」
岡部「も、もうお婿にいけない……」
紅莉栖「ほら岡部……いいから読みなさいよ……」
岡部「っ……貴様ら本当に好き勝手っ……」
フェイリス「なになに……」
岡部「あっ人の携帯をっ」
まゆり「『シャワールームからゴソゴソ音がしたから怖くなって持ったまま逃げちゃった』だってー」
フェイリス「そりゃ、あれだけガサゴソやってたらばれるにゃん……」
るか「無理も、ないですね……」
紅莉栖「くっ、観察対象が気付いてしまった時点で失敗か……」
鈴羽「不覚だね」
フラッ
萌郁「あっ………」
ガッ
フェイリス「さすが凶真ニャン。押し倒すとはテンプレ通りのラッキースケベニャン」
鈴羽「あーあ普段から鍛えてないからこんなことで足がふらつくんだよ」
岡部「す、すまん萌郁。足がふらついて」
萌郁「…………っ、大丈夫」フルフル
るか「お、お二人とも大丈夫ですか?」
まゆり「ごめんねー萌郁さん?」
紅莉栖「岡部、あんたなにやってんのよ……」
ガチャ
ダル「ちーす、お、こりゃみんなおそろいで…………え?」
「「「「「「「え」」」」」」」
岡部「ち、違うっダル!落ち着け!萌郁を押し倒したのは事故で……!」
萌郁「…………」コクコク
紅莉栖「そうよ、非力なマッドサイエンティストさんが蹴躓いたせいでね」
岡部「なんだとっ、元はといえば貴様がだな!」
ダル「ちょ、牧瀬氏その姿……」
紅莉栖「へ?」
フェイリス「そうニャン。これは凶真の見事なラッキースケベの結果ニャン」
ダル「ちょ、フェイリスたんまで……」
フェイリス「ニャ?」
ダル「全員の乱れた着衣……上気して汗ばんだ肌……おまけに息があがってる……」
まゆり「んー?」
るか「えっ、え?」
鈴羽「……あ」
萌郁「ぇ?」
ダル「おまけにくしゃくしゃになった白衣を脱いでるオカリン……」
岡部「いや、な?ダル?」
ダル「…………いつの間にかラボがラブホになっていた件について」
岡部「ウェイト!ウェイト!!ちょっと待て!お前は何か勘違いしてる!」
ダル「もはやオカリン爆発しろってレベルじゃねーぞ……全員とか……壁殴りはよ……」
岡部「おいダル!?」
ダル「うわああああああああああリア充爆発しろおおおおおおおおおおおおお!!」ドンドンドン
岡部「やめろダルっ!?床を叩くなっ!!そんなに暴れるとミスターブラウンが!!」
ダル「マグマはよおおおおおおおおおお!!」
ブラウン「おい、おかべえええええええええええ!!」
岡部「」
終了
Entry ⇒ 2012.07.17 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
岡部「神は俺にまたしても洗濯をせまろうというのか!」
岡部「雨か」
まゆり「雨だねぇ」
ダル「雨っしょ」
岡部「はぁ……」
岡部「……」 グッショリ
まゆり「わわー……びっしょびしょに濡れてるねぇ……洗濯物」
ダル「あ、まゆ氏、びしょびしょに濡れてるーってのもう一度よろ」
岡部「言わすなド低脳が!」
まゆり「んー……?」
岡部「おのれぇぇぇ……」
まゆり「てるてる坊主つくんなきゃだねぇ」
岡部「神は俺にまたしても洗濯をせまろうというのか!」
岡部「わずかなスペースに無理やり押し込められ水攻め、薬品攻め、さらには回転運動による身体歪曲」
岡部「それこそブラックホール内の超重力に押しつぶされるかのごとく」
岡部「ククク、これを拷問と言わずして何というのだ」
ピーピーピー
岡部「仕上げは熱風によってその体の水分を絞り上げてくれるわ!」
岡部「フゥーッハッハッハ!」
───
──
ピーピーピー
岡部「む……」
岡部「コイン切れ……くそ、まだ生乾き……」
岡部「全く、8分100円とはぼったくりもいいところだな」 チャリン
ゴゴゴゴゴ
岡部「ゆけい! ムスペルヘイムの熱に身を捩るのだっ」
岡部「……」 ソワソワ
───
──
岡部「……」 ソワソワ
まゆり「もうすぐクリスちゃんに会えるねー、オカリン」
岡部「なっ! べ、別に俺は助手に会いたいなどとは一言も──」
まゆり「まゆしぃは早く会いたいなー、オカリンも会いたい? 会いたいよねー」
岡部「まぁゆりはさっさと受験勉強にでも移れ? な?」
岡部「うむ、確か……明日のはず」
ダル「さすがオカリン、牧瀬氏のスケジュールは完璧に把握ですねわかります」
岡部「や、奴は俺の助手だからな! スケジュール管理も俺の仕事である」
ダル「はいはいツンデレ乙」
まゆり「もー、照れなくてもいいんだよ、お洗濯まで張り切っちゃって」
岡部「照れてないっ」
ダル「でも、明らかに落ち着きがない件」
岡部「き、貴様こそ顔が緩みっぱなしではないか!」
ダル「今日のお前にだけは言われたくないスレはここですか? 明日は由季たんとデートなんだお、ふひ、ふひひ」
岡部「それこそお前にだけは言われたくないわっ」
───
──
~翌日 駅構内~
ザワザワ
岡部「クリスティーナはまだ来てないみたいだな」
まゆり「んー、そうみたいだねぇ」
ザワザワ
まゆり「あ」
まゆり「ねぇねぇオカリン! ほらほら、クリスちゃんだよぉ」
岡部「むっ」
まゆり「クリスちゃーん」 ブンブン
まゆり「わぁー、久しぶりぃ」 ダキッ
紅莉栖「うふふ、元気そうでなにより」 ナデナデ
まゆり「会いたかったよぉ、クリスちゃーん」
紅莉栖「私もよ、まゆり」
岡部「……」
紅莉栖「……そういえば橋田はいないの?」
まゆり「ダル君はねー、”こんなクソ暑い中外出歩けるかーぁ、僕はラボで待ってるぞーぅ!”って言ってたよー?」
紅莉栖「ったく……」
紅莉栖「で」
紅莉栖「あんたなんでそっぽを向いてるの?」
岡部「……」
まゆり「クリスちゃんに会えてとってもとーっても嬉しいなーって思ってるんだよーきっと」
紅莉栖「ふぇっ!?///」
岡部「ち、違う! こんなところで堂々と百合フィールドを展開されて困り果てているのだっ」
紅莉栖「なっ、別に展開してない! 全然展開してないんだからな!」
紅莉栖「というか会うなりセクハラまがいの発言はやめろこの変態!」
岡部「あいっかわらずキャンッキャンとうるさいぞクリスティーナ」
紅莉栖「あんったがそうさせてんだろ! 後ティーナってつけんなとあれほど!」
岡部「フゥーハハハ! このやりとりも実に半年ぶりだな助手よ!」
紅莉栖「だからあんたの助手になった覚えはこれっぽっちもないと言っとろーが!」
まゆり「えっへへー」
岡部・紅莉栖「まゆり?」
まゆり「なんでもないのです」 ニコニコ
まゆり「さ、早くいこ?」
ガチャリ
岡部「帰ったぞー、ダル」
紅莉栖「グッモーニン」
まゆり「ダル君トゥットゥルー」
ダル「おぉ牧瀬氏、これは久しぶりでござる」
紅莉栖「久しぶり、元気だった?」
ダル「我が息子ともども元気です、ふひひ」
紅莉栖「会うなりセクハラはよせよ……このHENTAI」
ダル「HENTAIじゃないよ! 仮にHENTAIだったとしてもHENTAI紳士だお!」
紅莉栖「はいはい、どうでもいい、ホントどうでもいい」
紅莉栖「相変わらず蒸し風呂みたいな部屋ね……」
ダル「全くだお。ラボの士気を高めるためクーラーを要求する、全力で!」
紅莉栖「ホント、いい加減エアコンの1つや2つ付けなさいよね、昨年末も寒さでシバリングが止まらなかったじゃない」
岡部「あれは貴様が薄着だったのが悪いのだっ」
紅莉栖「だからって掃除機の排気を温風として使うとか馬鹿なの!? 死ぬの!?」
岡部「なっ、貴様ぁ!」
岡部「この狂気のマッドサイエンティストが改造を施した、”またつまらぬ物を繋げてしまったby五右衛門(改)”を愚弄するか!」
岡部「掃除もしながら暖房もできるというすぐれものだぞっ!」
紅莉栖「どこがよっ。産廃以外の何物でもないでしょ!」
まゆり「はいはーい、二人ともそこまでー」
岡部・紅莉栖「ん?」
まゆり「ドクペだよー、はい、オカリン、クリスちゃん、どうぞっ」
紅莉栖「サンクスまゆり」
岡部「うむ、ご苦労」
まゆり「ねぇねぇ、ジューシー唐揚げナンバーワンもあるよー? 食べるー?」
紅莉栖「あら、こんなクソ暑い中でかけるの?」
ダル「ふひひ、僕自身から発せられる熱は別なのだぜ」
紅莉栖「なにそれ、意味不明なんですけど」
ガチャ バタン
紅莉栖「ねぇ、あれどうしたの? やけに嬉しそうだったけど」
まゆり「ダル君はねー、今日デートなんだってー」
紅莉栖「え? うそ! あの橋田が!?」
まゆり「そうだ、ジューシー唐揚げナンバーワンチンしてくるねー」 トタタ
紅莉栖「そ、そう言えば彼女ができたとか言ってたっけ……」
紅莉栖「生意気な……橋田のくせに」
紅莉栖「ね、ねーよ!///」
岡部「ほぉう? 相変わらず寂しい青春を送っているのだなクリスティーンナッよ!」
紅莉栖「そ、そういうあんたはどうなのよ!///」
岡部「馬鹿なことを言うな! 俺は狂気のマッドサイエンティストであり望むのは世界の混沌、色恋沙汰に身を支配されることなどっ……」
岡部「一切ないのだフゥーハハハ!」
紅莉栖「そ、そうなんだ」
紅莉栖「……」
岡部「……」
紅莉栖「……」
岡部「……」
まゆり「はーい、二人ともー。ジューシー唐揚げチンできたよー」 トタタ
岡部「でかしたまゆり!」
紅莉栖「ありがとう、まゆり!」
岡部「……」
まゆり「んー? どうしたのクリスちゃん、眠いのー?」
紅莉栖「えぇ、時差ボケかしら……」
まゆり「だったらねー、ソファでちょっと横になる? 今ならまゆしぃのお膝貸してあげるよー?」
紅莉栖「ええっ!? いやでもっ……」
まゆり「遠慮しなくてもいいんだよー? えっへへー」
岡部「ふぅん、まだ昼前だというのにまゆりの膝枕でオネムとは……このお子様セレセブめっ」
紅莉栖「セレセブゆーな!」
岡部「……フゥーハハハ、いっちょまえに寝顔は見られたくないというのかこの、メリケン処女めっ!」
紅莉栖「なっ──んであんたがそんなこと知って──///」
岡部(あ、やばい)
紅莉栖「……///」
岡部「……」
まゆり「もーだめだよオカリーン、クリスちゃんと喧嘩しちゃあ」
岡部・紅莉栖(多分まゆりは意味が分かってないな・わね)
まゆり「えっへへ」
岡部「随分ごきげんだな、紅莉栖と会えたのがそんなに嬉しかったのか?」
まゆり「んー、それもあるけどねー」
岡部「あるけど?」
まゆり「春の頃はオカリンとっても寂しそうだったのに」
岡部「春?」
まゆり「うん」
岡部「……」
まゆり「去年の冬にクリスちゃんがラボに遊びに来てくれた時もオカリンすっごく楽しそうで」
紅莉栖「むにゃむにゃ……」
まゆり「まゆしぃまで楽しくなってきちゃってね?」
紅莉栖「カイバー……むにゃ……」
まゆり「ずっとあんな時間が続けばいいなーって思ってたのです」
まゆり「それからオカリンは、とっても寂しそうで……」
岡部「そんなに顔に出てたか?」
まゆり「ううん、みんなには分からないようにしてたのかなぁ」
まゆり「でもね? まゆしぃにはちゃんと分かってたんだよ?」
岡部「……敵わないな、まゆりには」
まゆり「だからね? 今のクリスちゃんとオカリンを見てると、まゆしぃはとっても幸せなのです」
まゆり「でもねー……オカリンはもっとクリスちゃんに優しくしないとだめだよぉ」
紅莉栖「むにゃ……オカベー」
岡部「優しく……だと?」
まゆり「うん」
紅莉栖「ヘンタイ……むにゃにゃ」
岡部「ぐっ! こいつは俺にとって助手だからな。少々厳しい程度がちょうどいいのだっ」
まゆり「もーオカリンってば」
まゆり「紅莉栖ちゃんおはよーう」
紅莉栖「ふぇっ!? わ、私ったらいつの間に……」
まゆり「えっへへー、紅莉栖ちゃんの寝顔、ごちそうさまでしたぁ」
紅莉栖「ちょ、ちょっとそういう事言わないでっ///」
岡部「起きたのならばさっさとよだれを拭いてこい」
紅莉栖「た、垂れてねーし! 全然垂れてねーし!」
まゆり「それじゃあまゆしぃはるか君のところに行ってくるねー」
岡部・紅莉栖「えっ?」
紅莉栖「そ、そうなの?」
岡部「いつ頃戻ってくるんだ?」
まゆり「んー、夕方までには戻ってこれるといいなぁ」
岡部「そうか……気をつけろよ」
まゆり「うん! それじゃあまたねー」
紅莉栖「気をつけて」
バタン
岡部・紅莉栖「……」
ガチャ
まゆり「あ、二人とも仲良くねー? トゥットゥルー」
バタン
岡部「……」
紅莉栖「……」
岡部・紅莉栖(な、なにか話さないと!)
紅莉栖「……」
岡部(おのれっ……意識した途端何も浮かんでこなくなったぞ)
紅莉栖(て、ていうかこれ二人っきりよね……あわわわわどうしようどうしようどうしよう)
岡部・紅莉栖(話題話題話題話題話題)
岡部・紅莉栖「「あの」」
岡部「なんだ助手よ、話すがいい」
紅莉栖「いっ、いや、その……岡部から……」
岡部「遠慮するな」
紅莉栖「遠慮とかしてないし、全然してないし///」
岡部(くっ……鳳凰院モードで乗り切るか?)
──『優しくしないとだめだよぉ』
岡部「ぐぬぬ……」
岡部「え? いや、曇っているが……」
紅莉栖「あ、そ、そうよね……」
岡部・紅莉栖「……」
岡部「天気といえばぁ!」
岡部「昨日は大雨でな!」
紅莉栖「へ、へぇーそう、日本では雨だったのね」
岡部「全くぅ! 干していた洗濯物を再びコインランドリーに持って行く事になろうとはな!」
岡部「まさにシュタインズゲートの洗濯ということか!」
紅莉栖「あは……あはは」
岡部「はは……ははは」
岡部「……」
紅莉栖「……」
岡部・紅莉栖(まゆりぃぃぃぃぃ)
───
──
岡部「……」
紅莉栖「……」
ガチャリ
まゆり「トゥットゥルー、ただいまー」
紅莉栖「まゆりぃ!」 ギュ
まゆり「わわー」
岡部「随分早かったんだな」
まゆり「え? うん、ちょこちょこーって直すだけだったので」
岡部「そうかそうか」
まゆり「あ、それよりほらほらー」 ピラッ
紅莉栖「お祭りか……ふむん」
岡部「メリケンスイーツ(笑)は祭りははじめてか? ん?」
紅莉栖「何回か行ったことあるわよ、バカにしないで」
まゆり「ほらほらー、オカリンもクリスちゃんも行こうよー、浴衣もあるよー?」
紅莉栖「そうね……そうしましょう」
岡部「うむ、童心に返るのも悪くないな」
岡部「ん? あぁ……ではドクペを買ってくる」
バタン
紅莉栖「ふぅ」
まゆり「どうしたのー? お祭り、いやだった?」
紅莉栖「いや、そうじゃないの」
紅莉栖「……岡部って私のこと嫌いなのかしら」
まゆり「え?」
紅莉栖「最初に会った時から変なあだ名で呼ぶし、いつもいつも私のことからかうし」
紅莉栖「アメリカにいる間もあんまりメールくれなかったし……」
まゆり「……そんなことないよ?」
まゆり「オカリンはね、クリスちゃんのことが大好きなんだよ」
紅莉栖「ふぇっ!?///」
まゆり「もちろんまゆしぃもクリスちゃんのことが大好きだよー、えっへへー」
紅莉栖「あ、ありがと……///」
まゆり「クリスちゃんの研究の邪魔になるからあんまりメールしない方がいいーって」
紅莉栖「そ、そうなの?」
まゆり「オカリンホントは寂しいのにねー、えっへへ」
紅莉栖「あいつが寂しがる? ま、まさかー……」
まゆり「ホントだよー、まゆしぃには分かるもん」
紅莉栖「信じられない……アンビリーバブル」
まゆり「はい、終わり~」 ポン
紅莉栖「サンクス」
まゆり「じゃあ今度はまゆしぃが着るのも手伝ってねー」
紅莉栖「オーケイ」
岡部「着付け……終わったみたいだな」
まゆり「トゥットゥルー、どうかなー? かわいいよねー」
岡部「う、うむ……これはまた……中々」
紅莉栖「ちょ、こっちみんなっ///」
まゆり「似合ってるでしょー」
岡部「……」
紅莉栖「……///」
岡部「や、やはり浴衣には貧乳のほうがよく似合──へぶぅっ!?」
紅莉栖「まじでいっぺん死んでこい!」
岡部「お、おう……」
るか「あ、皆さんこんばんは」
まゆり「るか君、トゥットゥルー」
るか「牧瀬さんも、お久しぶりです」
紅莉栖「はろー、お久しぶり。相変わらずキュートね」
るか「そ、そんな……キュートだなんて」
岡部(だが男だ)
紅莉栖「お父さんの手伝いしてるのよね? まさに理想の娘だわ」
岡部(だが男だ)
紅莉栖「しかも巫女服がこんなに似合ってる……お嫁に行く時とかもう反対されそう」
岡部(だが男だ)
岡部「しかし……中々賑わっているな」
るか「はい、土曜日ですので」
るか「あ、それじゃあボク、仕事があるのでこれで失礼しますね」
紅莉栖「頑張ってね」
岡部(だが……男だ)
紅莉栖「あれ? まゆりは?」
岡部「あ、いない、いないぞ!?」
紅莉栖「さっきまでいたのに……」
岡部「ったくあいつは……気がつくといつもいなく──」
まゆり「あ、おかいん ふりふひゃん あこやき おいひいよー」
岡部・紅莉栖「」
岡部「……まっさきに買い食いとはな、さすがまゆり」
まゆり「えっへへ、お祭りと言ったら屋台! なのです」
岡部「全く、まゆりといると飽きなくて済む」
紅莉栖「ホント、あんたが過保護になるものうなずける」
まゆり「こっちこっちー」
紅莉栖「ホント、すごく大きい……です」
岡部「……」
紅莉栖「なっ、なんでもない///」
岡部「やはり貴様は生粋の@ちゃんねらーと言うことか」
紅莉栖「うっさい!///」
パシュ
まゆり「わわー……逃げられちゃったよー……」
岡部「そんな馬鹿正直にやっても失敗するだけだぞ」
紅莉栖「いいところ見せてみたら?」
岡部「ぬっ……いいーだろう、ゴールドフィッシュごとき、すぐにでも捕獲してやる」
パシュ
岡部「」
岡部「造作もっ──」
パシュ
岡部「」
紅莉栖「ダメダメね」
岡部「う、うるさい、ならば貴様がやってみろ」
紅莉栖「望むところよ」
紅莉栖「いい? 脳科学的見地によれば動物が生命の危機に貧した時の行動はとにかく脅威からの離脱
すなわち離脱が不可能な位置まで威嚇しつつ誘導……そして一気に……」
パシュ
紅莉栖「」
岡部「ふぅん、偉そうなことを言った割にはみじめにも失敗ではないかフゥーハッハッハ!」
───
──
紅莉栖「あれ? なにかしらこれ」
まゆり「そえはねー、リンゴ飴ちゃんだよ」
紅莉栖「リンゴ飴? ふむん、こんなのあるんだ」
まゆり「おいしいよー」
紅莉栖「そうなの? でも……」 チラッチラ
岡部「……欲しければ買ってやらんこともないぞ? ん? 助手の面倒を見るのはこの俺の仕事でもあるからな」
紅莉栖「べ、別にあんたに買って欲しいとかそんなこと思ってないんだからな!」
岡部「フゥーハハハ、素直になったらどうなのだクリスティーナよ」
───
──
まゆり「もー、だめだよクリスちゃーん、お口の周り、べたべただよー?」
紅莉栖「えっ? うそっ///」
岡部「……」 チラッ
紅莉栖「み、みんなHENTAI!」
岡部「いやっ、別にそういう目で見ていたわけではっ」
紅莉栖「あんたがHENTAIだってことを再確認した、ホント再確認した!」
岡部「さ、さっさと口の周りを拭くのだな、みっともない」
紅莉栖「ぐぬぬっ……」 フキフキ
岡部「全く、子供じゃあるまいし……」
紅莉栖「ほ、ホントだ、またいなくなっちゃった」
岡部「全くあいつはふらふらと……!」
るか「あれ? そんなにあわててどうしたんですか?」
岡部「まゆりがいないのだ!」
るか「はぐれちゃったんですか?」
紅莉栖「携帯……携帯……だめ、つながらない」
岡部「くそ、あいつはいつもいつも……!」
紅莉栖「探しましょ」
岡部「ルカ子、良ければお前も手伝ってくれないか?」
るか「は、はい」
紅莉栖「ええ」
~~~~~~~~~~~~~~~
ザワザワ
岡部「まゆり……どこだ、まゆり!」
~~~~~~~~~~~~~~~
ザワザワ
紅莉栖「どこ? どこにいるの?」
~~~~~~~~~~~~~~~
ザワザワ
るか「まゆりちゃん……一体どこに……」
るか「はぁっ……はぁっ……」
るか「まゆりちゃん……どこに……」
るか「え?」
るか「あ、あれは──」
まゆり「あ、るか君」
るか「こんな所で、何してたの?」
まゆり「えーっとねー。お星様に手が届かないかなーって」
るか「星に……?」
るか「そ、それよりまゆりちゃん、岡部さんたちが……」
まゆり「ねぇねぇるか君、少し座って話さない?」
るか「え? いいけど……」
まゆり「星……よく見えるねぇ」
るか「うん、東京じゃ珍しいくらいだね、ここらへんは田舎だからかな」
まゆり「短冊にはお願いした?」
るか「え? えっと……お父さんとお母さんと、お姉ちゃんが元気でいられますようにって……」
まゆり「るか君は家族思いだねー、えっへへ」
るか「そうなの?」
まゆり「うん」
まゆり「織姫さまに……」
まゆり「織姫さまになれますようにーって」
るか「……」
まゆり「えっへへ、まゆしぃはロマンティストの、厨二病なのです!」
るか「……きっと、なれるよ」
まゆり「……ううん、まゆしぃにとっての彦星さまにはね」
まゆり「もう織姫さまがいるんだ」
るか「え?」
まゆり「まゆしぃにとっての彦星さまは……オカリン」
るか「まゆりちゃん……」
まゆり「だからね、まゆしぃは昨日”オカリンとクリスちゃんが逢えますようにー”って」
まゆり「てるてるまゆしぃを作って、晴れますようにーっていっぱい祈ってたんだぁ」
るか「星……よく見えるよね」
まゆり「うん、まゆしぃのおかげかもねぇ、えっへへ」
岡部「まゆり! まゆり……どこにいるんだ!」
岡部「はぁっはぁっ……」
──「星……よく見えるよね」
──「うん、まゆしぃのおかげかもねぇ、えっへへ」
岡部(ん? この声は……まゆりとルカ子?)
まゆり「まゆしぃは、ホントは札幌の大学に行きたくなかったけど……行こうかと思います」
るか「えっ?」
岡部(は──!?)
岡部(お、思わず隠れてしまった……札幌!? 札幌ってどういうことだよ!」
るか「岡部さんのそばにいられなくなっちゃってもいいの?」
まゆり「よくないよ……よくないけど」
まゆり「まゆしぃね? オカリンとクリスちゃんが一緒にいるのを見るとすっごく嬉しいんだぁ」
まゆり「2人はとっても恥ずかしがり屋で、中々素直になれないけど……」
まゆり「オカリンも、クリスちゃんの前ではとっても楽しそうで」
まゆり「それを見てるまゆしぃも段々楽しくなってきちゃって」
まゆり「まゆしぃを救ってくれた鳳凰院凶真がふっかーつって……えっへへ」
るか「……」
まゆり「でもおっかしいなぁ……とっても嬉しくてまゆしぃ大勝利☆……なのに、なんだか胸がぎゅーって……なるんだ」
岡部(まゆり……)
るか「で、でも、岡部さんだってきっとまゆりちゃんと一緒にいたいんじゃないかな」
まゆり「だめだよるか君、オカリンはクリスちゃんのことが好きなんだよ、まゆしぃじゃ、ないんだ」
まゆり「まゆしぃはさ、もうオカリンの人質じゃいられないよ……」
まゆり「ずっとそばにいる訳には、いかないもんね」
岡部(まゆり……)
岡部(神は俺にまたしても選択をせまろうというのか)
るか「いつだったか、ボクに教えてくれたよね」
るか「彦星はアルタイル……織姫はベガ」
まゆり「うん」
るか「ベガは白くて明るくてとっても綺麗、海外だと白いアークライトって呼ばれてる」
まゆり「うん」
るか「顔、上げて?」
まゆり「え?」
るか「ほら、見上げてみて」
まゆり「……あ」
まゆり「夏の……大三角……だね」
るか「そう、ベガとアルタイルと……デネブ」
まゆり「え……?」
るか「あ、いや! 決してまゆりちゃんが織姫さまになれないとか、そういう意味じゃなくて、その……」
るか「……デネブって他の2つよりもすっごく遠くにあるんだよ?」
るか「それでもあんなに輝いて見えるのは光度が太陽の5万倍もあるからなんだって」
まゆり「えへへ、るか君はお星様博士だねぇ……」
るか「まゆりちゃんといる時の優しい岡部さん、牧瀬さんといるときの強引な凶真さん……どっちも本物の岡部さん」
るか「ううん、まゆりちゃんと牧瀬さんがいてこその岡部さんなんだって、ボクは思うな……」
るか「まゆりちゃんがそばにいるから、いつでも笑ってられる」
るか「牧瀬さんがそばにいるから、いつでも元気でいられる」
るか「だから、岡部さんのそばにいられないだなんて言わないで? ね?」
まゆり「るか君……」
まゆり「えっへへ、ありがとるか君、なんだか……元気でたのです」
紅莉栖「あ、いたいた、まゆりー!」
岡部「──!?」
まゆり「あ、クリスちゃんだぁ!」
紅莉栖「ん? どうしたのよ岡部、こんなところで」
岡部「お、おい!」 ボソボソ
まゆり「え?」
るか「え?」
岡部「……」
まゆり「オカリン、聞いてたの?」
岡部「す、すまん、聞くつもりはなかったんだが」
まゆり「オカリンはクリスちゃんのこと……」
紅莉栖「……?」
まゆり「ううん、なんでもないのです」
紅莉栖「……まゆり?」
まゆり「まゆしぃはさ、オカリンのそばに居ても……いいのかな」
紅莉栖「ちょっとまゆり……いきなり何言い出してるのよ……」
岡部「……」
岡部「クク……」
岡部「ククク……」
岡部「フハハ……」
まゆり「オカリン?」
岡部「フゥーハハハ!!」
岡部「お前はこの狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真の、人質なのだからな!」
まゆり「オ、オカリン?」
岡部「どこにも連れてなんて行かせないのだフゥーハハハ!!」
紅莉栖「ちょ、また厨二病?」
岡部「クリスティーナよ!」 ビッ
紅莉栖「ふぇっ!?」
岡部「貴様もこの俺から離れることは許さん!」
紅莉栖「ちょ、勝手に何言い出してる!」
岡部「貴様もまた俺の助手なのだからなフゥーハハハ!!」
岡部(あぁ……へたれ、俺……)
岡部(だが今はまだ、これで赦してくれないか?)
ガシッガシッ
岡部「どわあ!」
紅莉栖「きゃあ!」
岡部「おいまゆり、引っ張るな!」
紅莉栖「ちょっと! どこいくのよ!」
まゆり「さあさあ、短冊に願い事書きに行くのです!」
まゆり「るか君も早くー」
るか「ま、待ってまゆりちゃん……!」
岡部「……」
紅莉栖「何お願いするの?」
まゆり「えっへへー、内緒だよー」
──みんながいつまでも仲良くいられますように
以上だ
Entry ⇒ 2012.07.07 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
紅莉栖「うっさい!童貞のくせに!」岡部「えっ?」
岡部「な、なんだ?」
紅莉栖「な、なによ、その反応……童貞、なんでしょ?」
岡部「……」
紅莉栖「えっ……」
岡部「………」
紅莉栖「……」
岡部「お、お前がそう思うんなら、そうなんだろうな。お前の中ではな」
紅莉栖「ど、どういう意味よ」
岡部「……」
紅莉栖「童貞、じゃない……の?」
岡部「ど、どうだかな……狂気のマッドサイエンティストは色恋に現を抜かさん」
紅莉栖「……」ジー
岡部「くっ……」
紅莉栖「ちょ、どこいくのよ!」
岡部「買出しだ、ドクペが切れてたからな……では留守番を頼むぞ、助手」
紅莉栖「まだ話は終わって……」
バタン
紅莉栖「……」
紅莉栖「岡部が、童貞じゃ……ない?」
紅莉栖(でも、岡部……顔はけっこういいし、背も高い、声も宮野だし、身嗜み整えたらモテそうだし……)
紅莉栖「い、いや、でも岡部に限ってそんな……」
紅莉栖「私の岡部が……」
紅莉栖「……汚された?」
紅莉栖「……」
紅莉栖「……許さない」
紅莉栖「見つけ出して脳髄引きずりおろしてやる…………」
紅莉栖(いや、待って……岡部の初めてを奪った相手は案外身近にいる可能性も……)
ガチャ
まゆり「トゥットゥルー♪ あっ、今日は紅莉栖ちゃんだけなんだ~」
紅莉栖「まゆり……」
まゆり「んー? どうしたの、紅莉栖ちゃん。なにか悩みでもあるの?」
紅莉栖「えっ?」
まゆり「いま、すっごく難しそうな顔してたよ?」
まゆり「悩みことならまゆしぃがいつでも相談にのるのです」
紅莉栖「サンクス、まゆり」ナデナデ
まゆり「えへへ」
紅莉栖「……」ナデナデ
まゆり「く、紅莉栖ちゃん……? 頭を撫でるのはもう、」
紅莉栖「……ねえ、まゆり」
まゆり「な、なあに?」
紅莉栖「あなたが……」ナデナデ
紅莉栖「……岡部の初めての相手?」ナデナデ
まゆり「ふぇ?」
紅莉栖「あなたも保健体育の授業は受けてるから、分かるよね……?」ナデナデ
まゆり「そ、それって……はぅ」
まゆり「あ、わわ、ま、まゆしぃは、その、え、えっちなにはいけないと思いますっ」モジモジ
紅莉栖(この反応は……まゆりじゃ、ない)
まゆり「そ、それに、まゆしぃはオカリンとキスまでしかしてないよ~」モジモジ
紅莉栖「えっ」
まゆり「ほえ?」
まゆり「あっ、で、でも、小さい時にだよ? オカリンが人質で実験をするって」
紅莉栖「あなたが岡部の人質になったのって、岡部が中学生の時よね?」
まゆり「う、うん……」
紅莉栖「へえ~」
紅莉栖(中学生が小学生相手にキッスねえ……あとで岡部を問い詰めよう)
まゆり「あ、あの……紅莉栖ちゃんはどうしてそんな事を聞くの?」
紅莉栖「岡部の初めての相手を探してるのよ」
紅莉栖(見つけ出して、必ず私が……)
まゆり「えっ、オカリンの……初めて? お、オカリンは童貞さんじゃ……」
紅莉栖「それが、どうやら違うみたいなのよ」
まゆり「……」
まゆり「そん、な……」
紅莉栖「まゆり……?」
まゆり「オカリンの初めてが、オカリンと初めてキスしたのはまゆしぃなんだよ……? だから初めての相手もまゆしぃの筈なのに」ブツブツ
紅莉栖「えっと……」
まゆり「オカリンの初めてはまゆしぃなの、わたしが、オカリンの……だって、わたしは、オカリンの人質なんだから……」
紅莉栖(これは……)
まゆり「誰かなあ、まゆしぃのオカリンを汚しちゃった人は、えへへ」
まゆり「なあに、紅莉栖ちゃん。まゆしぃはこれからオカリンを汚した人を見つけに行くから、忙しいのです」
紅莉栖「なら、二人で協力しない?」
まゆり「えっ?」
紅莉栖「二人で探したほうが早く見つかるだろうし」
まゆりそうだね、うん! そうしよっか!」
紅莉栖「よし、じゃ早速二人で探しに行こっか」
紅莉栖(私の岡部を汚した不届き者を……)
まゆり「うん! オカリンの初めての人かあ~どんな人かあってゆっくりお話したいな」
まゆり(会って、じっくりお話をしたいのです)
紅莉栖「とりあえず、岡部の身近に居る女性、つまりラボメンに聞いてみるのが一番ね」
まゆり「スズさん居るかな~」
鈴羽「あっ、椎名まゆりに牧瀬紅莉栖じゃん」
まゆり「あっ、 スズさん! トゥットゥルー♪」
鈴羽「とぅっとぅるーえへへ、なんかいいね、この言葉」
まゆり「気に入ってくれてよかったのです♪」
紅莉栖「あの、阿万音さん。実は私たち、あなたに聞きたい事があるの」
鈴羽「あたしに?」
紅莉栖(阿万音さんはラボメンの中でも、岡部とかなり仲がいい)
まゆり(二人でよく、サイクリングに行ったりしてるのです)
紅莉栖「へ、変な質問なんだけどね」
鈴羽「変な質問……?」
紅莉栖「阿万音さん……あなた」
まゆり「オカリンと……した?」
鈴羽「したって……なにを?」
紅莉栖「……性交」
鈴羽「はっ?」
紅莉栖「違うわよ、生産性のない子造りのこと」
鈴羽「そ、それって……な、なに言ってんの!? あ、あたしが岡部倫太郎と、そんなこと……」アセアセ
まゆり「う~ん、違うみたいだね」
紅莉栖「そうみたいね」
鈴羽「お、驚かさないでよ、もう~」
紅莉栖「ちゃんと変な質問って前置きはしたでしょ?」
鈴羽「それにしたって……不意打ちすぎるよ」
まゆり「ごめんね、スズさん。変なこと聞いて」ペコリ
鈴羽「いいよ、でもなんでそんな事聞いたの?」
まゆり「どんな人かな~って気になったのです」
鈴羽「へえ~岡部倫太郎の初体験の相手かぁ」
鈴羽「初体験の相手………」
鈴羽「……」
鈴羽「はあ!?」
紅莉栖「えっ」
まゆり「ほえ?」
鈴羽「は、初体験……? そ、そんな、オカリンおじさんのは初体験は未来であたしとの時じゃ……」ブツブツ
鈴羽「この時点ではまだ童貞の筈……まさか、あの時のオカリンおじさんの言葉はフェイク?」ブツブツ
まゆり「紅莉栖ちゃん……」
紅莉栖「ええ、どうやら私たちの同士が増えそうね」
紅莉栖「なに?」
まゆり「なにかな。スズさん」
鈴羽「二人はオカリンおじ……岡部倫太郎の初体験の相手を見つけてどうするつもり?」
紅莉栖「ちょっと興味本位であってみたいだけよ」
紅莉栖(私の岡部を汚したその図々しさ、本当に興味深い頭してるわ。ぜひとも開頭してじっくり観察したいわね)
まゆり「どんな子か、一度お話してみたいのです」
まゆり(どんな子かな~まゆしぃのオカリンを汚しちゃった子って。会うの、楽しみだな~えへへ)
鈴羽「なるほどね」
紅莉栖「もちろんよ、数が多いに越した事はないわ」
まゆり「うんっ! スズさんなら大歓迎だよ~」
鈴羽「サンキュー牧瀬紅莉栖、椎名まゆり」
鈴羽(あたしのオカリンおじさんを誑かした相手……絶対に許さない)
鈴羽(きっと、オカリンおじさんは無理やりそいつに責められて仕方なくヤッたんだ。それをなかった事したかったから、あたしとした時に童貞だって嘘を吐いて……)
鈴羽「それじゃ、いこっか。岡部倫太郎の初体験の相手を探しに」
鈴羽(あたしのオカリンおじさんに、そんな思いをさせるなんて……生かしておくもんか)
フェイリス「おかえりニャさいませ、ご主人様って、あれ? クーニャン? それにマユシイにスズニャンも」
紅莉栖「こんにちは、フェイリスさん」
まゆり「フェリスちゃん、トゥットゥルー♪」
鈴羽「うわ~凄いね、この店。メイドがいっぱいいる」
フェイリス「クーニャンたちが来るなんて珍しいね。ささ、案内するニャ」
紅莉栖「ううん、いいの」
フェイリス「うにゃ?」
まゆり「ごめんね、お客さんとして来たんじゃないの」
鈴羽「キミにちょっと聞きたいことがあってね」
鈴羽「単刀直入に聞くよ。キミ、岡部倫太郎と……そのっ」モジモジ
紅莉栖「単刀直入に聞くんじゃなかったのかよ……」
鈴羽「だ、だって、その……恥ずかしいじゃん」
まゆり「えへへ、まゆしぃも流石にここで聞くのは恥ずかしいかなぁ」
紅莉栖「もう、仕方がないわね」
フェイリス「……?」
紅莉栖「フェイリスさん。あなた、岡部と性交した?」
フェイリス「ふにゃ!?」
フェイリス「く、クーニャン!? にゃ。にゃにを言って……」アセアセ
紅莉栖「この慌てよう……」
まゆり「まさか……」
鈴羽「キミが私の岡部倫太郎の童貞を!?」
ざわっ……ざわっ……
フェイリス「あわわっ、お、お店の中でにゃんて事を言い出すの!?」
紅莉栖「怪しい……」
まゆり「フェリスちゃん、まゆしぃはがっかりなのです」
鈴羽「ラボメンが相手か、なら手加減くらいはしてあげるよ」ポキポキ
ざわっ……ざわっ……
フェイリス「もう! 話は後で聞くから! 三人ともお店から出て行くニャ!」
紅莉栖「くっ、追い出されてしまった……」
まゆり「お店の中で聞くのは、やっぱりだめだよね……」
鈴羽「うまく逃げられたね……」
ガチャ
フェイリス「フェイリスは逃げも隠れもしないニャ!」
まゆり「フェリスちゃん……お店の方は大丈夫?」
フェイリス「にゃんとか、お客様の誤解を解くことができたニャ」
まゆり「そっか~よかった」
紅莉栖「ご、ごめんなさい……」
鈴羽「ごめん、その件については謝るよ」
フェイリス「それで、その……さ、さっきの話って」
紅莉栖「改めて聞くわ。フェイリスさん。あなた、岡部とした?」
鈴羽「……」ゴクリ
まゆり「……」
フェイリス「……したニャ」
まゆり「そんな……」
鈴羽「キミが、岡部倫太郎と……」
フェイリス「そう! 凶真とは前世からともに戦った仲。フェイリスと凶真は共に来世で結ばれる契りえを交わしたのニャ!」
紅莉栖「……」
まゆり「……」
鈴羽「……」
紅莉栖「そういう、厨二病の、いらないから……」
フェイリス「ふにゃ……」
紅莉栖「もう一度、はっきりと尋ねる。あなたは岡部と性交した?」
紅莉栖「……フェイリスは違うけど、秋葉留未穂としてヤッてた、はなしよ?」
フェイリス「……」スッ
留未穂「残念だけど、岡部さんとはそういう関係じゃないよ」
鈴羽「猫耳とるだけで随分変わるもんだね……」
まゆり「そっか、フェイリスちゃんでもないんだ……」
留未穂「……」スチャ
フェイリス「ニャニャ? みんなの話だとまるで凶真が童貞じゃないみたいニャ」
紅莉栖「そうよ」
フェイリス「えっ?」
鈴羽「岡部倫太郎は……童貞じゃ、ない」
紅莉栖「残念だけどね」
まゆり「オカリンは大人になってしまったのです」
フェイリス「あ、ありえない……ありえないよ、そんな事!」
鈴羽「口調が素になってる……」
紅莉栖「認めたくないのは分かる、でも、事実よ」
フェイリス「でも……、だって、岡部さんは昨日まで童貞だったんだよ!?」
紅莉栖「なっ……」
まゆり「えっ」
鈴羽「ど、どういうこと!?」
紅莉栖(口調が混ざってる……)
フェイリス「その時、二人の会話を聞いたんだけど……」
――――
――
ダル「オカリン、僕とうとう卒業したお」
岡部「そ、卒業って、まさか、お前!」
ダル「由季たん、最高ですた……はあ、はあ」
岡部「まさか、お前に先を越されるとはな」
ダル「いや~オカリンもぜひ経験してみるといいお! いつまでも童貞()なんて恥ずかしいお! あっ、ごめん……相手がいないか」
岡部「このデブ殴りたい……」
――――
――
紅莉栖「なるほど……」
鈴羽「つまり、岡部倫太郎はその時点ではまだ童貞ってことか」
紅莉栖「ふむん……そうなると昨日、岡部が会った女性に限られてくるわね」
鈴羽「岡部倫太郎が昨日あった女性……」ジー
フェイリス「だ、だから私じゃないニャ!」
まゆり「あっ!」
紅莉栖「どうしたの、まゆり。なにか心当たりでもあるの?」
まゆり「昨日はオカリン、ルカくんのところに行ってたのです」
紅莉栖「えっ……」
まゆり「で、でもルカくんは男の子だし……」
フェイリス「そ、そうニャ! いくら凶真でもそれは……」
紅莉栖「男とか女とか関係ない」
鈴羽「!?」
まゆり「それは……」
紅莉栖「岡部は、初対面の男の娘に対してこんな事を言って落とした男なのよ?」
フェイリス「だ、だけど……」
紅莉栖「行って、直接確かめるしかなさそうね……」
フェイリス「フェ、フェイリスは……」
鈴羽「真実を知りたくなないのい?
まゆり「オカリンの初めてがどんな感じか聞けるかもしれないんだよ?」
フェイリス「凶真の……岡部さんの初めてを……」ゴクリ
フェイリス「……わかったニャ、フェイリスも、凶真の初めての相手を知りたいニャ」
紅莉栖「OK,なら、行きましょうか。柳林神社に……」
フェイリス(岡部さんの相手、ルカニャンなのかな……)
フェイリス(私と岡部さんとの初めて同士を想定してたけど……経験ある岡部さんにリードしてもらうのも、悪くないかな、えへへ)
ルカ子「あれ? みなさんお揃いでどうしたんですか?」
紅莉栖「ハロー漆原さん」
鈴羽「キミに聞きたい事があってね」
ルカ子「ぼ、僕に、ですか?」
まゆり「と~っても大事なことなのです」
フェイリス「凶真に関する極秘事項だニャ」
ルカ子「きょ、凶真さんの!?」
紅莉栖「「あなた、岡部とやった?」
ルカ子「へ?」
鈴羽「ストレートすぎるよ……」
フェイリス「それじゃ伝わらないニャ……」
まゆり「ルカくんは純粋なのです」
ルカ子「えっと……やりましたよ?」
紅莉栖「!?」
ルカ子「は、昨日も修行を見てくれました」
フェイリス「そのオチはフェイリスが使ったニャン」
ルカ子「ふえ?」
鈴羽「なにって、そりゃ……」
紅莉栖「性交よ」
ルカ子「せいこう……?」
ルカ子「……」
ルカ子「はぅ……」
紅莉栖「この様子だと違うわね」
鈴羽「みたいだね」
まゆり「やっぱり、男の子同士はいけないと思います」
フェイリス「凶真はノーマルだったニャ」
紅莉栖「みんなで岡部の脱童貞相手を探してるのよ」
ルカ子「へ?」
まゆり「ラボの誰かかな~って思ったんだけど」
鈴羽「いまのところ、みんなシロなんだ」
フェイリス「昨日、凶真は童貞を捨てたみたいニャんだけど……ルカニャンが相手でもないとなると」
ルカ子「あ、あのお、岡部さんがその、卒業したって」
紅莉栖「事実よ」
ルカ子「そ、そんな……」
紅莉栖(みんなショックを受けてたから、漆原さんもやっぱりこうなるか)
ルカ子「う、後ろは大丈夫なんですか!?」
紅莉栖「えっ」
えっ
鈴羽「な、なかなか大胆だね」
フェイリス「てっきりルカニャンは受けかと思ってたニャ」
ルカ子「ど、どうなんですか!?」
紅莉栖「そど、どうって、流石にそこまでは分からないわ」
ルカ子「そ、そんな……」
ルカ子「前は、きっと素敵な女性が岡部さんの前に現れるから、諦めてた。だから、せめて後ろだけでもって、狙ってたのに……」グス
紅莉栖「漆原さん……」
ルカ子「こんなの酷いです! あんまりだよ……こんな事なら、こんな思いをするなら、後ろだけを狙うんじゃなかったっ……!」グス
紅莉栖「いま、それを探してるんだけどね……でも困ったわね」
まゆり「う~ん」
鈴羽「手がかりが何かあればいいんだけど……」
フェイリス「ねえ、ルカニャン」
ルカ子「な、なんですか……?」グス
フェイリス「昨日、凶真がここに来た後、どこかに行くとか言ってなかったかニャ?」
ルカ子「昨日、てすか?……あっ」
紅莉栖「な、なにか言ってたの!?」
ルカ子「は、はい、確か、昨日は僕と修行を終えたあと、桐生さんのおうちに行くと……」
フェイリス「ニャン、だと……?」
紅莉栖「桐生さんの、家……」
まゆり「たしか、萌郁さんは一人暮らしって言ってたような……」
鈴羽「ま、まさか……」
ガチャ
岡部「ふぅ、まさかドクペが売り切れているとは……少々時間が掛かってしまったな」
萌郁「おかえり、なさい……」
岡部「うおっ!? し、指圧師!? なぜお前がここに……」
萌郁「昨日、部屋のお掃除、手伝ってもらったから、そのお礼に……」
岡部「礼など必要ないと言っただろ。それより、指圧師」
萌郁「……なに?」
岡部「助手……紅莉栖の奴、見なかったか? 留守番を頼んだんだが」
萌郁「……ラボ、私が……来た、時、誰もいなかった」
岡部「そうか、まったく。留守番もろくにできんのか、クリスティーナめ」
岡部「ふ、ふふ」
萌郁「……?」
岡部「フゥーハハハ! 助手のあの反応! 傑作だったな!」
萌郁「岡部、くん……?」
岡部「うむ、お前にも説明してやろう。最近ダルや紅莉栖に人を童貞だのなんだとからかわれてな」
萌郁「岡部、くん……童貞、なの?」
岡部「そこに反応するな!……ごほん、ダルはともかく助手は自分も処女の分際でからかってきたからな。少し仕返しをしてやったのだ」
萌郁「……どん、な…?」
岡部「なに、簡単な事だ。童貞とからかれた時にいつものようにムキにならず、黙っておけばいいのだ」
萌郁「どういう……こと?」
岡部「ムキになるという事は自分が童貞だと言ってるようなものだからな。だが、いつも童貞と言われて反論していた相手が急に反論しなくなるとどう思う?」
萌郁「……脱、どうてい?」
岡部「そう思うだろうな! 今朝、紅莉栖の奴が見事に引っかかりおったわ! あの間抜けた顔は当分忘れられんな! フゥーハハハ!」
しかも空腹状態でござる
岡部「ん? どうした、指圧師」
萌郁「童貞は……いや?」
岡部「ふ、ふん俺は狂気のマドサイエンティストなのだ。性行為をしたかしてないかなど、興味ない」プイ
萌郁「……そう」
ぎゅ
岡部「えっ……」
萌郁「昨日のお礼……」
岡部「じょ、冗談がすぎるぞ、指圧師……」アセアセ
萌郁「んっ……」ムギュ
岡部「お、おい! あ、当たって……」
萌郁「岡部、くん……」
岡部「あ、あまりからかうでない! ほ、本気で襲ってしまうぞ……」
萌郁「岡部くん、なら……いい」ギュ
萌郁「岡部くんは……私のこと、嫌い……?」
岡部「そ、そういう訳じゃ……」
萌郁「じゃあ、問題……ない」ギュ
岡部「ま、待て待て待て待て!! こ、こんな事、勢いでしていい事ではないだろう!?」
萌郁「……」カチカチカチ
岡部「め、メール? この体勢じゃケータイは見れないぞ」
萌郁「……見て」ヒョイ
岡部「わざわざお前の打った画面を見せるのか……」
『岡部くんって以外にまじめだね(≧∀≦)
でもそんなんじゃ童貞は卒業できないゾ(^▽^)ノ』
岡部「う、うるさい!」
萌郁「なら、私……の、家で」
岡部「そ、そういう問題ではない!」
萌郁「岡部くん……」
岡部「くっ、……」
岡部(い、いかん、このままでは本当に萌郁として……)
ガチャ
岡部(た、助かった! 紅莉栖か!?ダルか!?誰でもいい! とりあえずこれで有耶無耶に……)
紅莉栖「……」
鈴羽「……」
まゆり「……」
フェイリス「……」
ルカ子「……」
岡部「……えっ?」
紅莉栖「話は全部聞かせてもらったわ……童貞」
紅莉栖「まったく、人騒がせな童貞ね。だから童貞は困るのよ」
岡部「黙れ!貴様とて処女だろーに!」
紅莉栖「今日までは、ね……」
岡部「えっ……?」
まゆり「よかった~オカリンがチェリリンで」
岡部「ちぇ、チェリリン!?」
鈴羽「岡部チェりーん太郎だから、略してチェリリンだよ」
岡部「ま、まて! なんだそのふざけた名前は!」
ぎゅ
岡部「なっ、だ、誰だ!?俺の背後から襲いかかるなんて」
ルカ子「岡部さん、岡部さん、岡部さん、岡部さん……」ハアハア
岡部「る、ルカ子……?」
ルカ子「岡部さん、岡部さん、岡部さん、岡部さん……!!」ハアハアハアハアハア
岡部「おい、フェイリス! 見てないでなんとかしてくれ! ルカ子の様子がおかしい!」
ルカ子「岡部さん、岡部さん、岡部さん、岡部さん……うっ」ハアハア
フェイリス「凶真……」
岡部「は、早く、たすけ……」
ちゅ
フェイリス「んっ……」
岡部「えっ……?」
留未穂「岡部、さん……」ギュ
岡部「お、お前まで……」
紅莉栖「ねえ、岡部」サワ
岡部「さ、触るな!」ビク
紅莉栖「私たちが、どれだけ心配したか分かってる?」
岡部「……え?」
紅莉栖「最初ね、私の岡部が汚されたと思って頭の中、真っ白になったわ」
まゆり「まゆしぃのオカリンを」
鈴羽「あたしのオカリンおじさんを」
紅莉栖「汚した奴を許さない、って」
鈴羽「そんな奴、生かしておけないからな」
まゆり「うんっ」
岡部「なっ……」
ルカ子「岡部さんは前後ともに綺麗なままでした! 本当によかった……」
岡部「」
フェイリス「モエニャン、抜け駆けはずるいニャ」
萌郁「ごめん、なさい……」
紅莉栖「でも、ここで岡部の童貞を誰かが奪うとまた争いになる」
岡部「そ、そうだ! だから早く俺を解放して」
紅莉栖「なら、みんなで奪えばいいよね」
まゆり「うんっ!」
鈴羽「賛成」
留未穂「岡部さん……えへへ」
ルカ子「岡部さん、岡部さん、……」
萌郁「ないす……あいでぃあ」
岡部「えっ……」
紅莉栖「じゃ、そういう事だから。覚悟しろよ、童貞」
ガチャ
ダル「とぅっとぅるー♪ だるしじだお☆って、あれ……オカリン?」
岡部「」
ダル「どしたん、そんな干からびた顔して……」
岡部「……なあ、ダル。一ついいか……?」
ダル「なんぞ……?」
岡部「……童貞、とはなんだ?」
ダル「ナニってそりゃおんにゃの子とにゃんにゃんしてない男の事っしょ常考」
岡部「ふっ、違うなあダル。間違ってるぞ」
ダル「おっ? その口ぶり……もしかしてオカリン」
岡部「……童貞とは、女を知らない男の事だ」
ダル「ほう……」
岡部「だから、俺はまだ童貞だ……」
絶対に許さない!
岡部「俺はあいつらの考えを理解できなかった……」
ダル「あいつらって、オカリンまさか複数対戦!?」
岡部「行為をただ体験した男がどうやって女を知るというのだ?」
ダル(なんか、オカリン悟り開いてね……?)
岡部「行為だけでなく、その想いを真に理解したとき、俺は童貞から脱せる」
ダル「な、なにがあったん?」
岡部「ラボがラブホになった、と言えば分かるだろ」
ダル「oh……しかも複数、もしかして全員?」
岡部「ああ」
ダル「うわっ……」
岡部「だが、結局、俺はあつらの考えを理解できなかった」
ダル「つまり……?」
岡部「俺はまだ童貞という事だ。真に童貞から脱せられる日は……シュタインズ・ゲートが選択するさ」
おわり
読んでくれた人、ありがとニャンニャン
行為は妄想で補完か
面白かった
Entry ⇒ 2012.07.02 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
ダル「ラボメンガールズで結婚するなら誰がいい?」岡部「なに?」
ダル「いや、ただなんとなく聞いてみただけ。ほら、こういう会話って普段できないじゃん」
岡部「クリスティーナたちが居る前でそんな事を話たら間違いなく海馬に電極を刺されるだろうな」
ダル「それにさあ、オカリンの好みってどんなタイプかなって、いう好奇心もある。一人くらいは好みのタイプいるっしょ?」
岡部「下らん。俺がそんな事に現を抜かすなどありえん」
岡部「……やけに食い付いてくるな。何を企んでいる?」
ダル「べ、別にそんな事ないお!」
ダル(やっべーなんでオカリン、こういう事は妙に鋭いんだよ……)
ダル(最初はフェイリスたんにオカリンの好みを聞かれただけなのに……それがいつのまにか牧瀬氏たちにも広まって……)
ダル(聞くんだったら直接本人に聞けお……)
岡部「まあ、たまには我が右腕の下らない話に乗ってやっても構わんか」
ダル「さっすがオカリン!」
ダル(さっさと聞いて逃げる用意しとかないと……)
岡部「しかし普通、そういうのは誰と付き合いたいか、とかではないのか? 結婚はいきなり飛びすぎだろ」
ダル「ま、まあ似たようなもんじゃん」
ダル(フェイリスたんは好みのタイプを聞いただけなのに、牧瀬氏が結婚したい相手聞けなんて言うから……)
ダル「ほう」
――――
――
ブラウン管工房
紅莉栖「はあ!?」
鈴羽「ど、どういうこと!?」
萌郁「納得、できない……」
まゆり「オカリン……」
ルカ子「や、やった!」
フェイリス「フニャニャ、当然だニャン」
岡部「俺が今挙げた二人以外の家事スキルを考えてみろ」
ダル「ああーなるほど……」
岡部「恋人関係なら家事ができようができまいが、どうでもいいが結婚となるとな……やはり考慮してしまう」
ダル(……これはもう早速決着が着いたんじゃね?)
――――
――
ブラウン管工房
フェイリス「やっぱり女の子ならお料理の一つや二つはできニャいと。ね、ルカニャン♪」
ルカ子「ぼ、ぼく、フェイリスさんには負けませんっ」
紅莉栖「こ、恋人なら家事関係ないって岡部言ってたし、恋人期間中に家事なんてマスターできるし」
萌郁「私も、カップめんなら、作れる……」
まゆり「ま、まゆしぃだってじゅしーからあげナンバーワン温められるもん」
鈴羽「あ、あたしなんて自給自足で食費なんてほとんどかからないよ!」
岡部「残念ならがルカ子は男だ」
ダル「じゃあ、フェイリスたん?」
岡部「俺はあいつが少し苦手なの知ってるだろ」
――――
――
ブラウン管工房
フェイリス「ニャン、だと……?」
ルカ子「男とか、女とか、そんなの関係ないですよ!」
紅莉栖「いや、あるだろ……」
――――
ダル(ど、どういうことだってばお、オカリン……)
岡部「つまり! この俺、鳳凰院凶真に伴侶など入らぬのだ! フゥーハハハ!」バサッ
岡部「な、なんだ急に……」
ダル(ここで有耶無耶にされるとまた同じような役が回ってくる。なんとしても誰か一人を選んで貰わないと)
ダル「男同士の会話なんだから、そこはビシィと誰か一人選ぶだろ常考……」
岡部「そうは言ってもな……あいつらをそんな目で見たことがないのだから選べと言われても無理だ」
ダル「じゃ、じゃあ結婚までは言わないけど、一緒に居たい子とかは?」
岡部「ふむ……それなら、何だかんだで付き合いの長いまゆりだな」
まゆり「っ!」ガタッ
紅莉栖「くっ、一緒に居た時間の差か……!」
フェイリス「さすがは幼馴染み……」
ルカ子「強い……」
鈴羽「中々、厄介だね」
萌郁「……強敵」
まゆり「オカリンはまゆしぃと一緒に……え、えへへ」
まゆり「まゆしぃ、大勝利、なのかな」
岡部「ラボメンガールズの中で二人きりになって変に気を使わなくていい奴なんてまゆりくらいだからな」
ダル「んじゃさ、まゆ氏と結婚したらよくね?」
岡部「は、はああ!? な、な、何を言い出すのだお前は!」
ダル(手っ取り早くオカリンが誰かを選べば僕は解放される。ここはまゆ氏推しでオカリンを説得して……)
ブーブー
ダル「ん? メール?」
From:牧瀬氏
タイトル:なし
本文
お前を見ているぞ
ダル「」
ダル「な、なんでもないお!」
ダル(こええ、牧瀬氏めっちゃこええ……こ、これは迂闊な真似はしないほうが良さげかも)ガクブル
岡部「と、とにかく! まゆりは俺の人質なのだ! これからもな!」
ブラウン管工房
まゆり「ずっと人質って事は、まゆしぃが大学生になっても、社会人になってもオカリンが傍に居てくれるって事だよね?」
紅莉栖「まゆり……?」
まゆり「えへへ、それじゃあわたしがオカリンのお嫁さんになるしかないね、仕方ないね、えっへへ……」
フェイリス「もうお嫁さん気取りなんて早すぎるニャン……」
ダル(でも、この様子だと、僕があのまままゆ氏推してたら決着付いてたんじゃね?)
岡部「だいたい、付き合ってもない相手との結婚など想像できん」
ダル「じゃあ、誰と付き合いたい?」
岡部「な、なに?」
ブラウン管工房
紅莉栖「!」
フェイリス「これは……」
ルカ子「……」ゴクリ
鈴羽「気になるね……」
萌郁「……」
まゆり「えっへへ、まゆしぃはオカリンのお嫁さんなのです」
岡部「確かに家事スキルは関係ないと言ったが、べ、別に誰でも付き合うとは……」
ダル「でも好みのタイプくらいはいるっしょ?」
岡部「……まあ、な」
ガタッ!
岡部「な、なんだ? いま下の方からもの凄い音がしなかったか?」
ダル「さ、さあ? 気のせいじゃね?」
ダル(牧瀬氏たち、なにやってんだお……)
紅莉栖「キタアアアアアアアアアアアアア!!」ガタッ
萌郁「岡部くん、岡部くん、の好みは、私……岡部くん、岡部くん」
フェイリス「凶真の好みはフェイリスだニャン! さっきのは照れ隠しかニャ? もうっ、凶真ってばかわいいニャン♪」
ルカ子「性別なんて関係ない、そうですよ、性別なんて関係ないんです! 岡部さんの好みはきっと……」
鈴羽「いや~父さんが目の前に居るから今後の挨拶とか色々楽なのは助かるね」
まゆり「オカリンの好み……えっへへ、やっぱりお嫁さんのまゆしぃかなあ」
岡部「な、なんだ?」
ダル「その好みのタイプって誰?」
岡部「……言わなきゃならんか」
ダル「ここで言わなきゃ男じゃないお」
岡部「そこまで言うか! ……わかった。ただし! 一度しか言わないからな」
ダル「さっすが、オカリン!」
岡部「俺の好みは、だな……」
ダル(つ、ついに決着が……)ゴクリ
岡部「>>70」
ダル「えっ? でもオカリン、フェイリスたん苦手だってさっき言ったじゃん」
岡部「……正確には、フェイリスではない」
ダル「うん? どゆこと?」
岡部「嘘で塗り固めた女に興味はない。フェイリスは別になんとも思わないが……」
岡部「る、留未穂なら……まあ、その、なんだ。いい、と思う」
ダル「つまりオカリンはフェイリスたんの素が好みのタイプと」
岡部「……何度も言わせるな」
紅莉栖「にゃ、ニャンだと……」
ルカ子「フェイリスさんが……そんな」
萌郁「あ、ありえない……そんなっ」
鈴羽「失敗、した……?」
まゆり「お嫁さんはまゆしぃに変わりないよね……」
留未穂「岡部さんっ、えへへ……」
――――
――
ダル「因みにどういうとこが好みなの? 僕的には素の時よりもフェイリスたんの時の方が好みなのだが」
岡部「意外としっかりしている所とか、あと一人で背負い込もうとする所とか……支えてやりたいとは思うな」
岡部「俺との身長差が気になるが……まあ、可愛いのではないか?」
ダル「つまりオカリンはフェイリスたんの素が見た目も性格も好きすぎて辛い、と」
岡部「あ、あくまでも好みのタイプだと言った筈だ! じ、実際にその、異性として留未穂を好きという訳じゃないだからな!」
ダル「ツンデレおつ」
岡部「だ、誰がツンデレだ!?」
性格良し、器量良し、おっぱい大きめ、金持ち故の余裕
岡部「なんだ? 足音……?」
ガチャ
留未穂「はあ、はあ……」
岡部「なっ!? フェイリス!?」
留未穂「岡部さんっ」ギュッ
岡部「お、おまっ! は、離れろ、フェイリス! なぜお前がここに居る!?」
留未穂「……いまは、留未穂って呼んで」
岡部「なに? あっ、猫耳が……」
留未穂「岡部さん、嬉しい……」ギュッ
岡部「だ、だから! なぜ、抱き締めるのだ……」
留未穂「私も、岡部さんの事が大好きっ」
岡部「は、はあ!?」
ダル「……」
留未穂「私、岡部さんになら、支えてもらいたいな……」
岡部「き、聞いていたのか……!?」
留未穂「うん。全部、聞いてた」
岡部「」
留未穂「や、やっぱり……いきなりだと迷惑だった?」
岡部「そ、そんな事はない! ただ、その……まさか告白されるなど思っていなかったから」
留未穂「岡部さんは、私の事どう思ってる……?」
留未穂「……」ジー
岡部「くっ……め、目を瞑れ!」
留未穂「えっ?」
岡部「お前の読心術で先読みされたら、たまらをからな。だから、目を瞑れ」
留未穂「う、うん……」
岡部「よし……あと、その状態で少し踵を上げろ」
留未穂「……? こう?」ヒョイ
岡部「これで届きやすくなったな」
ちゅっ
留未穂「んむっ!? ……んっ」
岡部「んっ……ふぅ、やはり身長差は課題になるな」
岡部「好きだ」
留未穂「!」
岡部「俺も、お前が好きだ」
留未穂「そ、それじゃ……」
岡部「その、まあ……今後もよろしく頼む。留未穂」
留未穂「うんっ。こっちこそ、よろしくね。岡部さん」
ダル「……」
岡部「なんだ?」
留未穂「その、岡部さんが私の事を名前で呼んでくれるから、私も……岡部さんの事、名前で呼んでもいい?」
岡部「な、名前で? 俺はあまりこの名前は好きではないのだが……」
留未穂「だめ……?」
岡部「……二人きりの時だけ、だからな」
留未穂「うんっ、ありがとう。倫太郎さん」
岡部「ぐっ、やはり慣れないというか、こそばいな……」
留未穂「大好き、倫太郎さん……」
岡部「俺もだ、留未穂……んっ」
イチャイチャイチャイチャ
ダル「……」トテトテ
バタン
ダル居ない者扱いwwwww
ダル「……」
ダル「………スゥ」
ダル「リア充のばかあああああああああああああああん!! 爆発しろぉおおおおお!!」
ダル「……ふぅ」
ダル(まっ、オカリンならフェイリスたんを任せられるか……)
キョーマ!フェイリストツイニムスバレルトキガキタニャ!
ソウダ!オレハスベテヲオモイダシタ!ゼンセヨリトモニタタカイ、アイシアッタハンリョ、フェイリス
キョーマ……アイシテル
オレモダ、フェイリス
ダル「……」
ダル「フェイリスたんの時は苦手じゃなかったのかよ……」
おしまい
飯食う
>>64から次のラボメンガールズは>>175
屋上
俺得
岡部「指圧師だ」
ダル「へえ~桐生氏か。なんか意外だお」
岡部「まあ、見た目はいいし、その、あれだ……」
ダル「あれ?」
岡部「年上、だからな……」
ダル「年上属性萌えか、オカリン分かってるうう!」
ブラウン管工房
紅莉栖「ま、まあ? 見た目と年上だった所が好みだって話だからべ、別に驚かないけど」
鈴羽「そ、そうだね、あくまでも好みの話だし」
フェイリス「凶真がモエニャンを好きだって決まった訳じゃないニャ!」
ルカ子「だ、大丈夫……まだ僕にもチャンスが」
萌郁「岡部くん、岡部くん、岡部くん、岡部くん、岡部くん、岡部くん、岡部くん、岡部くん、岡部くん、は私を選んでくれた岡部くん、岡部くん」
岡部「今まで年上の女性とは余り接する機会がなかったからな……あいつと居ると緊張してしまう」
ダル「そりゃあ、あんなエロい格好したおっぱいお姉さんがいたら誰だって緊張するお」
岡部「HENTAI発言は止めろ。だいたい、貴様と一緒にするでない!」
ダル「ふひひ、サーセン」
岡部「まったく……」
岡部「俺は見た目だけで判断しない。ちゃんと中身を見て決めている」
ダル「えっ? じゃあ性格も桐生氏がタイプなの? ずいぶんとマニアックすな~」
岡部「マニアックって、失礼な……」
ダル「オカリンってもしかして女の子に依存されたいの?」
岡部「断じて違う!」
ダル「じゃあ、桐生氏の性格のどこが好みなの?」
ダル「つまり過保護欲をそそると」
岡部「まゆりもそうだがな。どうにも傍に居てやりたいと思ってしまう」
ダル「しかもそれが年上だからギャップもあって萌える、と」
岡部「だ、だからそういう訳では……!」
ダル「素直になろうぜ、オカリン」
岡部「……少し、そそる」
ダル「うん、それでよろしい」
紅莉栖「……」
鈴羽「……」
フェイリス「……」
ルカ子「……」
萌郁「岡部くんが、私に……そそる……私も、岡部くん、に、そそる」ジュルリ
まゆり「まゆしぃも、これからオカリンに依存しよっかな……」
紅莉栖「私もそうしよ……そうすれば岡部は」
鈴羽「あたしに構ってくれる……」
フェイリス「凶真……」
ルカ子「僕は、もとから岡部さんなしじゃ生きれません」
岡部「もう反論するのも面倒になってきた……」
ダル「オカリンのタイプは桐生氏って事でFA?」
岡部「あくまでも好みはな。最初に話してた結婚は難しいと思うが……」
萌郁「岡部くんが傍に居てくれるなら、それでいい……」
岡部「っ!」ビクッ
萌郁「つい、さっき……岡部くん、事、考えてると、会いたくなって」ギュッ
岡部「な、何の真似だ!?」
萌郁「岡部くん……岡部くん」
岡部「だ、だから何だ!」
萌郁「岡部くん……私、岡部くん、が居ればいい、岡部くんが傍に居てくれるだけ、あとは何もいらない、なにも……」ムギュー
岡部「……くっ、だからお前は放っておけないんだよ」ギュッ
萌郁「あっ……」
萌郁「なに?
岡部「依存するな、とは言わん。だがな、何もいらないなんて言うな」ギュッ
萌郁「岡部、くん……」
岡部「お前にはダルやまゆり、紅莉栖や鈴羽、ルカ子にフェイリスとたくさんのラボメンがいる。そいつらをいらないなんて言わない」
萌郁「………ごめん、なさい」
岡部「依存はともかく、まあ……傍になら居てやる。お前はラボメンだからな」
萌郁「……うんっ」
ダル「………」
岡部「なんだ?」
萌郁「家事……できるように……なったら」
岡部「……?」
萌郁「結婚、してくれる……?」
岡部「は、はあああああ!!?」
萌郁「結婚、したら……岡部くん、と……ずっと、傍に居れる」
岡部「さ、さっきの、全部聞いていたのか!? け、結婚なんて出来る訳ないだろ!!」
萌郁「……どう、して?」
岡部「過程を飛ばしすぎだ。結婚の前に、その、あるだろ」
萌郁「………子作り?」
岡部「違う!」
萌郁「恋人……岡部くんは、恋人になってくれるの?」
岡部「……それは告白なのか?」
萌郁「……」コクリ
岡部「なっ!……本気か?」
萌郁「……うん」
岡部「そ、そうか……ならば俺も返事をしなくてはならんが」
萌郁「……」
岡部「少しだけ、返事を待って貰ってもいいか?」
萌郁「……どう、して?」
萌郁「……」
岡部「確かに、お前は俺の好みのタイプだ。だが、それだけが理由で付き合っても関係は長くもたん。だから……」
萌郁「わかっ、た……」
岡部「そうか……なら、良かっ」
ズイッ
岡部「……何故俺の手を掴んで引っ張っる」
萌郁「早、く……いこ……?」
岡部「どこに?」
萌郁「私の、家……」
萌郁「私の事……もっと知ってもらうため」
岡部「……確かに互いを知ってからだと言ったが、それが何故お前の家に行く事に繋がる。一体何をするのだ?」
萌郁「……」ポッ
岡部「お、おい、なぜ顔を赤らめる!? 何をする気だ!? 止めろ! 離せ!」ズルズル
萌郁「橋田、くん……」
ダル「えっ、僕……?」
萌郁「岡部くん、一晩……借りる、から……みんなに、謝って、おいて」
ダル「わ、分かったお……」
岡部「おい、ダル! 何をしてる!助けてくれ! ダル!」ズルズル
ダル「……」
萌郁「……それじゃ、……また、ね」
岡部「この裏切りものぉおおおおおぉおおおおおぉおおおおおぉおおおおお!!!」
バタン
ダル「オカリン、強く生きろ……」
次の日、オカリンはげっそりした顔で嬉しそうな桐生氏と腕を組んでラボに来ましたとさ、おしまい
お前最高だよ
岡部「紅莉栖だ」
ダル「ああーやっぱり?」
岡部「な、なんだ! その微妙そうな顔は!」
ダル「なんていうか、やっぱりなって感じ」
岡部「別に好みが紅莉栖だが、あいつの事が好きという訳では……」
岡部「……」
ダル「どしたの? 急に黙って」
岡部「……いや、紅莉栖が好きだから好みの異性が紅莉栖なのか?」
ダル「えっ?」
岡部「あっ……」
フェイリス「そ、そんニャ……」
鈴羽「失敗した……」
ルカ子「ぼ、僕の岡部さんが……」
萌郁「くっ……」
まゆり「あれれー? おかしいなあ、オカリンのお嫁さんはまゆしぃなのに、どうしてオカリンの好きな人が紅莉栖ちゃんなのかなー?」
紅莉栖「ふ」
紅莉栖「ふふっ」
紅莉栖「フゥーハハハ!!」バサッ
紅莉栖「まあ? 当然の結果よね。私は岡部を愛してるし岡部も私の事を愛してるんだもん。何もおかしくないわ」
紅莉栖「ふふっ、岡部と、ううん、倫太郎と結婚かあ。子供の名前はどうしよ……二人の名前をとって紅莉倫とか? えへへ」
岡部「あ、いや、違う! いまのは、その……」
ダル「言い訳は見苦しいのだぜ、オカリン。全部吐き出しちゃえよ」
岡部「はい、紅莉栖が好きすぎて辛いです」
ダル「それでいいんだ、それで……リア充爆発しろ」
岡部「な、なぜまだ付き合ってもないのにリア充呼ばわりされなきゃならんのだ!」
ダル「まだ、って事はいずれは付き合う予定なんだ」
岡部「無論だ。これはシュタインズゲートの選択だからな」
ダル(うわっ、開き直ったお……)
まゆり「……どういう事かなあ、これ。オカリンはまゆしぃが好きすぎて辛い筈なのに
フェイリス「ここまで惚れ込んでるニャンて……」
鈴羽「やはり天才か……」
ルカ子「岡部、さんっ……」グスッ
萌郁「……岡部、くん」
紅莉栖「わ、私も岡部が好きすぎて辛いんだからな! 責任取れよ! ……住むならアメリカより日本になるのかな。で、でも岡部の事だからきっと私の望む方を選んでくれるだろーし。もうっ、優しすぎるんだからっ!」
ダル「そんなに好きなら、なんで結婚したい相手聞いた時に牧瀬氏挙げなかったの?」
岡部「物事には順序がある。付き合って恋人同士になり、デートを重ねプロポーズをするという過程を飛ばして紅莉栖と結婚なんて出来ない」
ダル「ああーそうっすか……」
ダル(普段の態度で牧瀬氏がオカリンに激デレなのは知ってたけど、まさかオカリンもここまで牧瀬氏にぞっこんだったとは……)
ダル「でも、牧瀬氏って料理できんでしょ? 結婚は難しくね?」
岡部「家事なんて掃除と洗濯、食器洗いが出来れば十分だ。料理は俺がすればいい」
ダル「オカリン、料理できんの?」
岡部「……ま、まあ結婚まで時間がある。二人でゆっくり覚えればいい」
ダル「……そう」
フェイリス「……」
ルカ子「……」
萌郁「……」
鈴羽「……」
まゆり「えへへ、やっぱりオカリンと結婚するのはまゆしぃだったんだ。だってまゆしぃはお料理苦手だし、でもオカリンと二人でこれから上手くなっていくから平気だよね」
紅莉栖「岡部の手料理が毎日食べられるとか……ああっ、やばい……幸せすぎて涙出てきた。大好き、岡部」
ダル「うん、分かってる。誰にも言わないお」
ダル(中継されてるけど……)
岡部「ならいい」
ダル「そんなに好きなら告白しちゃえばいいのに」
岡部「そう、だな……うむ、お前の言う通りだ。次に紅莉栖と会う時にこの想いを伝えよう」
ダル「えっ、まじで?」
岡部「ああ、二言はない」
タタタタタッ
ガチャ!
紅莉栖「は、ハロー! 岡部!」
岡部「」
紅莉栖「私だってラボの一員なんだから、来たって構わないでしょ」
岡部「そ、そうだが……くっ、なぜこのタイミングで!」
ダル「あっ、そうだー僕これから用事があるんだったーそういう事でオカリン僕帰るわー(棒)」
岡部「はあ!? お前、何を言って」
ダル「そんじゃねー(棒)」
バタン
岡部「……」
紅莉栖「……」ドキドキ
紅莉栖「な、なに?」ドキドキ
岡部「だ、大事な話がある」
紅莉栖「だ、大事な話?」ドキドキ
岡部「あの、だな……」
紅莉栖「う、うん……」ドキドキ
岡部「その……」
岡部「お、俺と……」
岡部(落ち着け、付き合ってくれ、と一言、言うだけだ。付き合ってくれ、付き合うという事は恋人同士になる、恋人になってくれ、恋人になってする事はデート、デートを重ねて、それから)
紅莉栖「岡部と……」
岡部「け、結婚してくれ!」
岡部「えっ?」
紅莉栖「あっ、えっと、その……」アセアセ
岡部「ち、違う! 今のはなしだ! 結婚じゃなくて、その……」アセアセ
岡部(いや、待て)
紅莉栖「そ、そうよね、さ、さすがに早いもんね、け、ケコーンは」ドキドキ
岡部(……どの道、言うならば早いか遅いかの違いではないか。ならば)
岡部「改めて言う、紅莉栖」
紅莉栖「う、うんっ」
岡部「結婚を前提に付き合ってくれ」
岡部「無論だ。俺はお前の傍に……一生居たい」
紅莉栖「な、なら目を瞑れ!」
岡部「なぜ?」
紅莉栖「いいから瞑れ!……答えて、あげるから」
岡部「……こうか?」
紅莉栖「私も、岡部とずっと一緒にいたい……大好き、岡部」
ちゅっ
岡部「んっ……紅莉栖、愛してる」ギュッ
紅莉栖「私も、愛してるよ、岡部」
ちゅっ
ブラウン管工房
まゆり「」
ルカ子「」
鈴羽「」
フェイリス「」
萌郁「」
ダル「……リア充、末永く爆発しろ」
こうしてオカリンと牧瀬氏は末永く幸せに暮らしましたとさ、おしまい
おい
岡部「ルカ子だ」
ダル「アッー!」
岡部「か、勘違いするな! あくまでルカ子のような女性が好みだと言ったのだ」
ダル「いわゆる大和撫子って奴?」
岡部「そうなるな」
ブラウン管工房
紅莉栖「アッー!」
フェイリス「ふぇ、フェイリスだって大和にゃで子だニャン」
鈴羽「大和撫子って、なに?」
萌郁「漆原、さん……みたいな、子の、こと」
ルカ子「や、やっぱり性別なんて関係ないんですよね!」
まゆり「なでこならまゆしぃにだって当てはまるのです」
ダル「おんにゃの子の手料理は男の夢だお」
岡部「だが、男だ」
ダル「だが、それがいい」
岡部「HENTAIめ」
ダル「いや~それほどでも」
岡部「誉めとらんわ!」
ダル「性格とかもるか氏がタイプなん?」
岡部「性格か……あくまで大和撫子の立ち振る舞いや、家事スキルがタイプであって、性格は少し好みと違うな」
ダル「んじゃ、どんな性格が好みなの?」
岡部「明るく真っ直ぐな奴だな。自分の意志をしっかりと見せる女性は好意を抱く。その点は鈴羽あたりが当てはまるか」
紅莉栖「漆原さんと阿万音さんの二段構え、だと……?」
フェイリス「フェイリスも明るくて真っ直ぐなメイドだニャン!」
萌郁「明るい……」
まゆり「まゆしぃも、明るくて真っ直ぐだよ」
ルカ子「阿万音さんのような性格……僕と正反対だよぉ」グスッ
鈴羽「へへっ、やっぱ元気が一番だねっ」
岡部「まあな、高望みしすぎてるとは自負している」
ダル「好みのタイプ通りの子なんて、実際にはそうそういないもんだお」
岡部「わかっている。それに俺は好みだけを基準に異性と付き合ったりはしない」
ダル「意外とオカリンってそういうところ、ちゃんとしてるよな」
岡部「意外とはなんだ、意外とは」
岡部「……付き合うなら、互いによく知った仲でないと長くは続かんと思うがな」
ダル「ほう、例えばまゆ氏とか?」
ダル「だって、オカリンにとって互いによく知った仲の異性ってまゆ氏くらいじゃね?」
岡部「確かに、よく知った仲であるが、逆に俺とまゆりでは互いの距離が近すぎて異性として殆ど感じられん」
ダル「そんなもんなの?」
岡部「そういうものだ」
ダル「でも、殆どって事はまゆ氏の事、異性として感じる事もあるって事でしょ?」
岡部「ま、まあな」
ダル「へえ~」
岡部「まあ、これはラボメンガールズ全員に言える事だがな」
ガタンッ!
岡部「なんだ? 今の音……下からか?」
ダル「き、気のせいだお」
ブラウン管工房
まゆり「お、オカリン……あぅ、恥ずかしいなあ、もぅ」
紅莉栖「まゆりだけじゃない、私全員に……」
ルカ子「岡部さんが……僕に……」
留未穂「岡部さんが、わ、私に……ふふっ」
萌郁「岡部、くんが………」
鈴羽「お、岡部倫太郎があたしに発情してたって事!?」
岡部「人を不能みたいな言い方するな。俺だって男だ。ほら、フェイリスの目を見てまぜまぜだったか?」
ダル「うん」
岡部「あれをされてお前がフェイリスに嵌った理由が分かったよ」
ダル「と、言うと?
岡部「……正直、もえた」
ダル「まさかオカリンが理解者になってくれる日が来るなんて、思わなかったお」
岡部「他って……何故聴きたがる」
ダル「普段牧瀬氏たちと何も思ってなさそうに装っていて実はむっつりなオカリンがどう思ってるのか気になるじゃん」
岡部「む、むっつり!?」
ダル「ほらほら、男だったら最後まで言おうぜ!」
岡部「……いいだろう。どうせ黙っててもしつこそうだしな」
ダル「wktk」
いいことだ
ダル「普段は口論ばっかだけど、実はむっつりエロい事考えてました的な?」
岡部「ち、違う! 断じて違う! 紅莉栖は……あのストッキングが時々目にちらつくんだ」
ダル「たしかにあれはエロい」
岡部「いい加減にしろ。それで、だ。本人が無意識にやってるか知らんが、俺がソファーに座ってると、よく隣に座ってくるんだ」
ダル「ふむ」
岡部「あの太ももがあんな近くでちらついてみろ。悶絶ものだぞ」
ダル「確かに……」
ダル(これ、下で中継されてるんだよな……オカリン、ご愁傷様)
岡部「バイト戦士……鈴羽はもっと危険だ」
ダル「kwsk」
岡部「あいつとはたまにサイクリングに誘われてな。気が向いた時は付き合ってやるんだが」
ダル「……」
岡部「そのサイクリングの際は何故かいつもあいつが後ろに乗って、俺がペダルを漕ぐのだが……分かるだろ?」
ダル「当たってんのよ、か」
岡部「……あいつ、着痩せするタイプだった」
ダル「……そう」
岡部「なぜ、不機嫌そうな顔をしているのだ」
ダル「別に」
岡部「次って、そうだな、ルカ子は修行している時が中々」
ダル「まあ、巫女服はエロい罠」
岡部「いや、最近は巫女服ではなく、体操服で修行をしているのだが……」
ダル「なん、だと……」
岡部「ほら、体操服の上って薄いだろ? だから汗をかくと透けて」
ダル「るか氏のレベル制限B地区が発動する、と」
岡部「男だとわかっているのだかな……」
ダル「まあ、るか氏が相手なら仕方ないお」
岡部「ああ、あれは……別にこう、エロいとか、そういうのではないのだが」
ダル「なんだ、エロなしかよ」
岡部「聞いておいてそんな顔をするな。まゆりと一緒に電車に乗っていた時なんだかな」
ダル「うん」
岡部「あいつ、席に座ると疲れて途中で寝てしまうんだ。だから、よく俺が肩を貸してやるんだが、その日は俺自身も寝てしまってな」
ダル「ほうほう」
岡部「互いに寄り添い合って寝てしまったから、その起きたら……れてたんだ」
ダル「えっ?」
岡部「だ、だから! 起きたらまゆりに頬をキスされた状態だったのだ!」
ダル「Oh……」
ダル(しかしこのオカリン、意外とぴゅあである)
ダル「桐生氏はそういうの、ないの?」
岡部「指圧師か? あいつは……」
ダル「なに?」
岡部「……何もしなくてもエロい」
ダル「禿同」
岡部「正直、近くにいると結構緊張する」
ダル「だって男だもの、仕方ないお」
ダル「まあ、これはこれでいいんじゃね?」
ダル(こんだけオカリンのむっつり話聞かされたら好みのタイプがどうこう言ってられないだろうし……)
ダル「あっ、いっけね。もうこんな時間だ」
岡部「結構、話していたからな」
ダル「僕、これからちょっと用事あるから帰るわ」
ダル(逃げるな、今しかないお)
岡部「そうか、分かった。じゃあな」
ダル「うん、また明日~」
ダル(オカリン、生きろ……)
バタン
ドタドタドタドタ
岡部(足音……? しかも複数の)
ガチャ!
紅莉栖「……はあ、はあ」
岡部「クリスティーナ?」
まゆり「オカリン……はあ、はあ」
ルカ子「岡部、さん……はあ、はあ」
鈴羽「岡部倫太郎……」ジュルリ
萌郁「岡部くん、岡部くん、岡部くん、岡部くん……」
岡部「珍しいな、こんなに大勢がラボに集まるなん」
岡部(なんだ……? 紅莉栖たちの様子がおかしい)
ガシッ
岡部「えっ……?」
鈴羽「岡部倫太郎っ!」ムギュ
岡部「ば、バイト戦士!? 一体なんの真似だ!?」
鈴羽「もうっ、あたしに発情してるなら言ってくれたら良かったのに……」
岡部「は、発情!? 何を言って」
ちゅっ
まゆり「んっ……」
岡部「えっ……? ま、まゆり?」
まゆり「えへへ、今度はほっぺじゃないから、まゆしぃの事、もっと意識してくれたかな」
まゆり「うーうん、違うよ」
岡部「じゃ、じゃあ何故それを知って……ま、まさかダルが!」
紅莉栖「橋田が言ったんじゃない。私たちは実際に見てたのよ」
岡部「な、に……?」
紅莉栖「そこのゲロカエルん人形や、うーぱクッショシ、ソファーに机、掃除機も、含め計34個の隠しカメラでこのラボを見ていたのよ」
岡部「はああ!? い、一体、なんの為に」
フェイリス「凶真を手に入れるためニャン」ギュッ
萌郁「岡部くんの、ため……」ギュッ
岡部「フェイリス、それに指圧師……な、なぜ俺の両手に絡んで」
ギュッ
ルカ子「えへへ、これで逃げれないですね、岡部さん」
岡部「う、後ろからも!?」
岡部「なっ」ビクッ
鈴羽「だったらこうすれば互いに満足できるよね」ギュッ
留未穂「岡部さんも、我慢するのは大変でしょ?」
ルカ子「だったら我慢しなければいい」
萌郁「こう……すれば、みんな……」
まゆり「ハッピーエンドになれるのです」
岡部「じょ、冗談、だよな?」
「岡部」「オカリン」「岡部倫太郎」「凶真」「岡部さん」「岡部、くん」
「「「「「「愛してる」」」」」」
読んでくれた人、保守してくれた人、ありがとニャンニャン
リア充爆発しろ
Entry ⇒ 2012.07.01 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
岡部「まゆりの腋がスパイシーすぎる・・・」
紅莉栖「えっ」
岡部「流石に女の子なんだからもう少し気を使うよう指導しなければならんな」
紅莉栖「・・・」クンクン
岡部「それとなく伝えるにはどうしたらいいか・・・」
紅莉栖「ね、ねえ岡部」
岡部「なんだいたのか助手よ」
紅莉栖「ずっといたし助手じゃないし。ま、まゆりの腋ってそんなに気になる?」
岡部「この季節はな。仕方ないと言えば仕方ないが」
紅莉栖「そう・・・」クンクン
岡部「どうした?」
紅莉栖「なんでもない。ちょっとシャワー浴びて来る」
岡部「あぁ……ご苦労、まゆり」 ジー
まゆり「んー……? どうしたのかなー?」
岡部「……時にまゆり、随分と汗をかいてるようだが」
まゆり「あのねー? 新作のコスの期限が迫っているので、駅から走ってきたのです☆」
岡部「うぐっ……そ、そうなのか」
まゆり「ねーねーオカリーン。隣、座ってもいいかな~?」
岡部「えっ!? あ、か、構わんぞ! 座るがいい! 存分に座るがいい!!」
まゆり「ありがとー、えっへへー」 ポスッ
岡部(Oh...spicy...)
まゆり「ふんふーん♪」 チクチク
岡部「……」
岡部「とうっ」 ドスッ
まゆり「ひゃっ!」
岡部「クッククク、脇が甘いぞまゆりぃ! 裁縫に夢中になっていて脇腹がノーガードではないかぁ!」
まゆり「オカリーン!? ひどいよ~、まゆしぃはねぇ、今集中してるのです!」
岡部「あ、あぁすまん、脇目もふらず裁縫に夢中だったものでな」
まゆり「もー、手元が狂ったら危ないよぉ……」
まゆり「それにね? いきなり女の子の脇腹をつつくなんて、まゆしぃは良くないなーって思うなー」
まゆり「なんでこんなことしたのかなー?」
岡部「それはまゆりが俺の人質だからだフゥーハハハァ!」
岡部「これは一種の拷問であーる!」 ドスッ ドスッ
岡部「ふんっ!」 ドスッ
まゆり「えへへ、もー、くすぐったいよオカリーン」
まゆり「ふんふーん♪」 チクチク
岡部「……」
まゆり「んー……」
まゆり「喉乾いたなー、ちょっとコンビ──」
岡部「待つのだまゆりよ! 今この狂気のマッドサイエンティストが冷蔵庫から知的飲料を提供してやる!」
岡部「ほら、ありがたく頂くがいい! なんならバナナもくれてやる!」
まゆり「わー、ありがとーオカリーン」
岡部「フゥーハハハァ! どうだ! 気が利くだろう! わーきがくなー! この俺は本当にきがきくなー」
まゆり「おおー、まゆしぃは愛されてるねー」
まゆり「でもドクペじゃなくてお茶がよかったなー、なんてねー、えっへへー」
岡部「お、おのれまゆり!」
岡部「この鳳凰院凶真がそうやすやすと要求を飲んでたまるか! わきまえろ人質ぃ!」
まゆり「ふふーんふーん♪」 チクチクチク
岡部「……」
岡部「時にまゆりよ」
まゆり「んー?」
岡部「今話題のドラマ”和気”の話なんだが……」
岡部「3話が気になってるんだがどうなんだろうなー、わーきになるなー」
まゆり「わきー?」
岡部「脇役がいいキャラしててなー、ワーキングホリデーの下宿先で浮気がどーたらこーたら」
岡部「わー気になる、すごーく気になるぞー、3話にしてすごく臭くなってきたぞー?」
まゆり「んー……」
まゆり「……」 クンクン
岡部「そそそそんなことないぞまゆりっ!?」
まゆり「でもー……お昼に食べたスパイシーチキンの匂いが取れてないみたいだよぉ……」
岡部「は? スパイシー?」
まゆり「うん」
まゆり「ここ最近ね? まゆしぃはフレマのスパイシーチキンを食べるのが日課だったのです」
岡部「なんだとぅ!?」
まゆり「ごめんねオカリン……まゆしぃ、気がついてあげられなくて……」
岡部「い、いや……」
岡部(なんだ……そういうことだったのか)
岡部「クックク……。案ずることはないぞまゆり!」
岡部「たとえ強烈な食品の匂いを醸しだしていようと、この季節のダルには足元にも及ばんからなフゥーハハハァ!」
岡部「かくいうこの俺鳳凰院凶真も生物兵器をこの体に宿しているのだ! 嗅いでみるがいい、ほらぁ!!」
まゆり「えへへ、やめてよオカリーン」
バタム
紅莉栖「待たせたわね岡部! シャワー浴びてきたわよ!」
紅莉栖「さ! 思う存分腋の匂いを嗅ぎ……」
岡部「」
紅莉栖「な……さ…い……」
まゆり「く、クリスちゃん……? トゥッ……トゥルー」
紅莉栖「」
紅莉栖「ままままままゆり!?」
紅莉栖「ち、違うのよ!」
紅莉栖「これは、その……わき……わきに……」
紅莉栖「Wow!! kill no knee oiっていったのよ! そう! Wow!! kill no knee oi!! 全く英語が出来ない男の人って!」
岡部「」
まゆり「」
岡部「く、紅莉栖?」
まゆり「……クリスちゃん?」
紅莉栖「く……く……」
紅莉栖「ク……クォーラルボンバー!!」 ガガァ
岡部「へぶぅっ!?」
まゆり「わわー! ラ、ラリアット!?」
紅莉栖「もう生きていけないー!!」
バタン
まゆり「待ってー! クリスちゃーん! 待っててばー」
岡部(Oh...floral...)
天井はぐねぐねと蠢き、周りの音は幾重にも重ねられたように鼓膜を刺激する。
微かに残る花のような香りは岡部の鼻孔をくすぐらせ、今この時を心地よい空間へと変化させる。
時間と空間の役割は逆になっていた。
時間は……無限に引き伸ばされていた。
こうして岡部の目の前に腋フェチとしての道が開かれた。
岡部「あの時の腋の臭いが忘れられん」
岡部「しかし助手に面と向かって”腋の匂いを嗅がせてくれ”などと言えるはずもない……」
岡部「そんなことをした日には警察に突き出される……ぐっ、おのれ助手め……」
岡部「わき……わき……!」
岡部「あれは指圧師!」
岡部「くそ! 静まれ俺のエビルノーズ!」 ヒクヒク
岡部「結局萌郁のアパートまでつけてしまった……」
岡部「いかんいかん、これではストーカーではないか!」
岡部「……」
岡部「だがあのわがままボディ……豊満な胸と腕に押し付けられた腋……至高の匂いなはず!」
岡部「やってやる……やってやるよ!」
ピンポーン
萌郁「……?」
萌郁「岡部……くん?」
岡部「……話したいことがある」
萌郁「……?」
萌郁「……何……言ってるのか全然……」
パカッ ピッピ
岡部(──今だ!)
岡部「借りるぞ指圧師!」
萌郁「あ……!」
萌郁「け、携帯! かえして……!」
岡部「フゥーハハハ! 返してほしくば自分で奪い取ってみろ! ほーれほれ、高い高い!」
萌郁「おかっ……返して……!」
岡部(──きた! 腋が目の前に!)
岡部(ふぉぉおぉぉぉ! くんかくんか! あぁぁぁあぁぁっ! いい! いいぞぉ!)
岡部(指圧師の困った顔可愛い! くんか! つーかいい匂い!)
岡部(ゆるふわロングウェーブな髪をなでなでしたい! モフモフ! 髪モフモフ!! くんかくんかスーハスーハ!)
岡部(あぁあぁぁ! 肉ばっか食べる人間の体臭は臭いって聞いてたけどそれも癖になる! いやっつーかそれが癖になる! くんかくんか!)
岡部(サバンナ! サバンナだココ! くんか! 野生の香り! あぁ指圧師かわいい! 普段の8割増しくらいでかわいい!)
萌郁「おぉぉかぁぁべぇぇぇぇぇ!!」 ドゴッ
岡部「ぐはぁっ!?」
岡部「ぐぉっ……みぞっ……みぞっ……!」
上腹部に強烈な衝撃が走る。
それと同時に手から携帯の感触がなくなる、がそんなことはどうでもよかった。
胸が苦しい。息ができない。
次第に目の前が色を失っていく。
薄れゆく意識の中で見たのは、携帯を取り戻して安堵する萌郁の笑顔。
萌郁かわいい。
こうして岡部はMに目覚めた。
岡部「俺は目覚めたのだ」
岡部「手始めにルカ子に五月雨で殴られつつ腋の匂いをだな……」
~柳林神社~
岡部「ルカ子! 俺を五月雨で殴れ!」
るか「え!? えええ!?」
るか「そ、そんなこと……できません」
岡部「……」
岡部「ぐっ……あぁぁぁっ!!我が身に宿りし悪霊の暴走がぁぁぁっ!」
るか「岡部さん!?」
岡部「は、はやくぅ! この俺に取り憑いた魔を……五月雨で……五月雨で取り除いてくれっ……!」
岡部「頼むルカ子……!早く……早くしないと秋葉が血の海っ……ぐぁぁっ!」
るか「ボ、ボク……やります!」 キッ
るか「えいっ! えいっ! えいいっ!!」 ポカポカ
るか「やぁっ! お、岡部さんから……出ていってぇ!」 ポカポカ
岡部(全然痛くないし快感でもないな……)
岡部「……」 スッ
るか「え? 岡部さん……もう大丈夫なんですか?」
岡部「ルカ子、腰が入っていないぞ、素振りはちゃんとしてたのか?」
るか「えっ……その……ご、ごめんなさい……最近はあまり……」
岡部「……仕方ない、この俺が自ら指南してやろう」 スッ
るか「えっ、ちょ、おかっ……手が……触れて……」
岡部「後ろの俺は気にするな、思う存分素振りをするがいい」
るか「え……えええ!?」
岡部「振りがあまーい!!」
るか「じゅーうご……! じゅーうろく……!!」
岡部「まだまだぁー!」
るか「よんじゅ……! よんじゅいち……!!!」
岡部「……」
岡部(汗だくのルカ子……なんだこれ、なんだこの気持ち)
るか「はぁ……はぁ……おか……べさん……ボク……もう……」
岡部(──! 今ちょっと……きゅんときた)
るか「岡部……さん?」
岡部「……」 スッ
るか「ひゃっ!?」
るか「ちょっ、だ、だめっ……おかっ……」
岡部(いいこれ! いいぞこれ!汗に濡れた巫女装束、いい匂い、可憐な美少女、だが男だ!)
岡部(泣きそうな顔さわさわしたい! サワサワ! 顔モフモフ!! くんかくんかスーハスーハ!)
岡部(あぁあぁぁ! ほんとに男でいいのかよこいつ! いやっだめだろ! この世界線はなんて非情なんだくんかくんかぁぁ!)
岡部(この背徳感! たまらない! 俺ヤバい、世界もヤバい! ルカ子の脇の臭いで世界がヤバい! だが男だ!」
るか「岡部さん……やめっ……」 ジワッ
るか「うぅ……どうしてっ……こんなっ……」
岡部「──ハッ!」
上目遣いで瞳を濡らし俺を見る美少女……だが男だ。
声は色っぽく、聴く者の琴線に触れる……だが男だ。
地べたにへたり込む姿は男だろうが女だろうが釘付け……だが男だ。
男だというのに♀の匂いがしたなぁ……だが男だ。
頬を紅潮させ小刻みに震えている、苛めたくなる……だが男だ。
こうして岡部はSに目覚めた。
岡部「おろかな愚民どもを傷めつけてそっと涙を拭いてやりたいやりたい気分だフゥーハッハッハァ!」
岡部「手始めに生意気な猫娘を手のひらで踊らせてくれるわっ!」
~メイクイーン~
フェイリス「おかえりニャさいませーご主人様ー」
フェイリス「凶真! よくきたのニャ」
岡部「案内を頼む、留未穂」
ザワッ
フェイリス「ニャニャ!? 凶真ぁ、誰のことを言ってるのニャ? フェイリスはフェイリスなのニャ」
フェイリス「……にゃはーん……もしかして前世で固く結ばれていた女の子のことをフェイリスに重ねているのニャ?」
岡部「嘘で塗り固めた女に興味はない、いいから席まで案内しろ留未穂」
フェイリス「ニャウゥー……わかったのニャ、だからその名前で呼ぶのはやめるニャ!」 ヒソヒソ
岡部「ご苦労」
フェイリス「それではごゆっく──」
岡部「あ」
ガシャーン
フェイリス「ニャ!? 怪我はないかニャ!? 服は大丈夫かニャ!?」
岡部「すまん留未穂! 手が滑った!」
フェイリス「だ、だからその名前で呼ぶのはやめるのニャ!」 ヒソヒソ
岡部「おぉっとまた手が滑ったぁ!」 パシッ
留未穂「──!」
岡部「これは大変だぁ! 猫耳が取れてしまったぞぉ!?」
留未穂「かっ、返してっ……!」
岡部「ほーれほれ!」
岡部「俺が椅子に座った状態でも届かないとは滑稽だな留未穂よ! フゥーハハハァ!」
ザワザワ
岡部(──ここだっ!)
岡部(スーハァァァ!!! くくんかくんか! むはぁ! すはぁ! おおおおおおおぁぁあああぁぁ!!)
留未穂「ひゃうっ!?」
ざわっ ざわっ
ざわっ ざわっ
岡部(ぐっはぁー!! なんだこの甘い香り! くんかくんか! さすがゲーム中で唯一いい匂いという描写がされているだけはある!)
岡部(すはぁ! すはぁ! くんかっ! 天国! 天国行きそうだこれ! メイド・イン・ヘブン!)
岡部(スーハスーハ! あぁあぁぁ! 仕事中だろ? いくらなんでも汗かかないとかないだろ? でもいい匂い! 甘い! 提案する! これは売れる! くんかぁぁ!!)
留未穂「ちょっとおかべさっ……あぅっ……」
岡部(むはぁ!! たまらない! いつも強気な猫娘めっ!この俺をコケにするとこうなるのだスゥーハハハァ!) グリグリ
留未穂「だっ……だめだよ岡部さん……こんなっ……///」
岡部(はぁはぁ! くんかくんか! あぁぁぁぁ!! マジいい匂い! マジいい表情! ダイバージェンスの値がぁぁぁぁっ……変わるっ……!!)
ざわっ ざわっ
ざわっ ざわっ
幾多の眼光が俺の体を貫く。
その目誰の目?
目の前には顔を上気させ恨めしそうに俺を見つめるフェイリス、もとい留未穂。
客の憎悪、店員の好奇の目、そして頭に残る花のような香気。
なんだこれ、快感。見られるってすごい。興奮。
こうして岡部は視線フェチになった。
と同時にメイクイーン出入り禁止を食らった。
岡部「俺だ。 あぁ、まんまと猫娘の策略にはめられたようだ……何? あそこには重要なエインシェントウェポンが存在するだと?」
岡部「……フッ、案ずるな、たとえ侵入が困難だとしても必ずやり遂げてみせるさ、何……見られたからからと言ってさしたる問題はない」
岡部「ククッ、むしろ好都合だ……あぁ、お前も気をつけろ、エル・プサイ・コングルゥ」
ザワザワ ヒソヒソ
岡部「あぁ、見られてる、見られてるぞ俺……ゾクゾクするぅ! セレンディピティとはこういうことを言うのだな!」
ブーブー
岡部「……?」 ピッピ
本文:お前を見ているぞ
岡部「はがぁぁぁぁっ! これぞ恍惚!」
鈴羽「ちーっす、岡部倫太郎ー」
岡部「バイト戦士か……」
鈴羽「あれ? なんか嬉しいことでもあったの? あっはは、顔がだらしないぞー?」
岡部「ククッ、次々と未知のシュタインズゲートが開く様を見ているとつい……な」
鈴羽「あはは、なにそれー」
岡部「……ん?」
岡部「なんだか臭わないか?」
鈴羽「えっ!? そ、そう? そうかな?」 クンクン
岡部「別にお前が臭うとは一言も言ってないのだが」
鈴羽「えっ、いや、あはは……その」
鈴羽「あたしあんまお風呂入れてないからさー、あは、あははは」
岡部「なにっ!?」
岡部「……いや、なんでもない」
岡部(風呂に入れてない……夏…………汗、またもやシュタインズゲートを開く時が来たのか!?)
岡部(いや待て待て、落ち着け俺)
岡部(夏場の……しかもサイクリングが趣味……そして何日も風呂に入ってない女の腋の匂いだぞ!?)
岡部(それは卒倒するほどの匂いに違いない……迂闊なことをするな……フェイリスの匂いを思い出せ)
岡部(あの甘い匂いを上書きしても良いのか!? 脳にDLしてもいいのか!? 記憶に齟齬が生じる可能性は!? 俺が俺でなくなる可能性があるんじゃないのか!?)
岡部(……違う……見て見ぬふりをするな!)
岡部(人は自分で思っている以上に愚鈍な生き物なんだよ)
岡部(普段の臭気の中に埋もれている何気ない体臭など気にも留めないし、知覚したとしてもすぐに忘れるか、脳が処理をしないかのどちらかなんだ)
鈴羽「ねえ、岡部倫太郎……?」
岡部(……どうする、本当にいいのか? 鳳凰院凶真……後戻りできなくなるぞ?)
鈴羽「あ、綯ー、うぃーっす」
綯「と……オカリンおじさん……こ、こんにちは」
岡部「……」
鈴羽「ねえ岡部倫太郎ー、さっきから黙りこんじゃってどうしたのさー」
岡部(決まりだな、これこそシュタインズゲートの選択)
鈴羽「ねえってばー」
岡部「あ! IBN5100!!」
鈴羽「え!? どこどこ!?」
岡部「──今だ!」 ガシッ
岡部(くんかぁぁぁぁぁぁ!! ぐぁっ! 強烈! なんだこれ! くんかくんか!! これがラグナロックを闘いぬいた戦士の匂い! むせ返る!)
鈴羽「ちょ! 何やってんのさ岡部倫太郎!!」
岡部(すはぁ! すはぁ! ぐはぁ!! 地獄! 天国から地獄!!) チラッ
綯「ひっ……」
岡部(うああああ! 見られてる、見られてるぞ! 小動物に見られてる! スーハスーハ! あぁあぁぁ! 狂気の沙汰ほど面白いっ! くんかぁぁ!!)
鈴羽「や、やめてってば! く、くすぐったいってあはははは!」
岡部(あふぅぅぅ! なんだこれHENTAIセクハラ行為してるのに笑ってる! 鈴羽ってこんなにかわいかったのか!? すはぁ! くんかくんか!) チラッ
綯「ひぃぃぃっ……」
岡部(やばい、まだ見られてる、蔑むような目、畏怖を覚えた目! 快感! もっと見てくれ! 孤独の観測者はここにいる! ここにいるぞムゥーハハハ!!)
視線、響く笑い声、鼻をつく刺激臭。
だがそれがいい。
今はそのすべてが愛おしい。
鈴羽かわいい、小動物もかわいい。
ふと覆いかぶさる大きい影。その瞬間視界に覆いかぶさる影。
そこからの記憶はない。
だが強烈な行為とともに海馬に蓄積されたエピソードは忘却されない、それだけは言えた。
そうして岡部はドM、ドSへとレベルアップし、視線フェチ、腋フェチのスキルを強化した。
さらに小動物にトラウマを植えつけた。
岡部「……うーむ」
岡部「目覚めてみればラボ……今日一日非常に重要な”何か”があったような気がするのだが……思い出せん」
岡部「うぐっ……頭がいたい……リーディングシュタイナーか? いや違う……もっと物理的な痛みだこれは」
岡部「……」
岡部「それにしても汗だくだな、シャワーでも浴びるか」
────
───
──
ガチャリ
紅莉栖「おかべー……?」 コソーリ
紅莉栖「ふむん……いないのか、ラボの明かりが付いてたから誰かいるかと思ってたんだけど」
紅莉栖「いきなり暴力は……まずかったわよね、やっぱり……」
紅莉栖「で、でも岡部に嫌われたんじゃないかって思ったわけじゃなくて! そ、その……」
紅莉栖「さ、さすがにいきなりラリアットはやりすぎたと思うし! 謝罪の1つくらいはしないと私の気が収まらないっていうか!」
紅莉栖「っていうか私の腋の匂いよりマシってどういうことよ! 比較対象に私を出すってどういうこと!? 納得行かないんですけどー!」
紅莉栖(岡部の白衣……)
紅莉栖「……」
紅莉栖「……」 スッ
紅莉栖「……なにこれ、汗びっしょりじゃない、きったな」
紅莉栖「人の腋の匂いに文句をつけるくらいだから、と、当然自分の匂いには自信あるんだろうな?///」
紅莉栖「……」
紅莉栖「な、何考えてるのよ私ってば!」
紅莉栖「こっ……こんなのHENTAIじゃない……///」
紅莉栖「……で、でもっ……仮にも女の私に対して臭いとか許せない……」
紅莉栖「岡部の匂いも比較し私が臭くないという証明が必要、よって岡部の白衣を臭うことは実験の一環であるという解が導ける」
紅莉栖「ごくり……」
紅莉栖「……」 クンクン
紅莉栖「はぁぁぁっっ! これが岡部の匂い……! なにこれ……なによこれ!」
紅莉栖「岡部! 岡部! 岡部! 岡部ぇぇぇ! すーはすーは! ごめん! いつも怒鳴ってばっかでごめん!」
紅莉栖「岡部かわいい岡部かっこいい!白衣かっこいいよ岡部ぇぇぇ! 岡部岡部岡部! はうぅううぅ!」
紅莉栖「あのボサボサ黒髪なでなでしたいくんかくんか! あの無精髭でじょりじょりされてみたいよぉぉ!」
紅莉栖「フゥーハハハって言われながら抱きしめられたい! ぎゅってされたい! 岡部ぇ!岡部の匂い!」
紅莉栖「あぁあああ…ああ…あっあっー!あぁあああ!!!」
岡部「」
紅莉栖「はぁっぁぁっ岡部ぇぇぇぇ!! おか……」 チラッ
岡部「」
紅莉栖「」
岡部「」
紅莉栖「くっ……」
紅莉栖「くっく……」
紅莉栖「クォーラルボンバー!!」 ガガァ
岡部「へぶぅっ!?」
その時俺の記憶が世界線を超えてきた。
ダイバージェンス1%の壁を超えたエピソードは再び俺の脳に収束を始める。
紅莉栖の……匂い。フローラル。俺を目覚めさせた優しい匂い。
そうだ……俺は……俺は孤独の観測者。
ドMでドSで視線フェチで腋フェチ……。
萌郁かわいい。
ルカ子かわいい。
留未穂かわいい。
鈴羽かわいい、小動物かわいい。
でもやっぱ紅莉栖かわいい。
今回も俺を目覚めさせてくれるのは紅莉栖、お前だったのか。
岡部「すまない……紅莉栖」
紅莉栖「えっ!? い、いや私の方こそ……いきなり……あんな///」
岡部「腋の匂いが臭いと言ったな? あれは嘘だ。……いや厳密に言えば嘘じゃないが……」
紅莉栖「ちょっ……!」
岡部「俺はお前(の腋の匂い)が好きだ」
紅莉栖「ふぇっ!? な、なんで急に……そんなことっ///」
岡部「お前はどうなんだ?」
紅莉栖「とととと言いますと?」
岡部「お前は俺の(腋の匂いの)こと……好きか?」
紅莉栖「……顔をっ……目をつぶれ……」
岡部「どうして」
紅莉栖「い、いいからっ!///」
岡部「──!」
唇に微かな感触。
なんだこれ。
え? どういうことだ?
紅莉栖「……したくてしたわけじゃないから///」
誰か説明して欲しい、俺はなぜキスをされたんだ。
俺は……。
俺は……。
腋の匂いが嗅ぎたかっただけなのに。
腋の匂いを嗅ぎあいたかっただけなのに。
岡部「おい紅莉栖……」
紅莉栖「ちょ、まじまじと顔をっ……こっち見んなっ///」
岡部「俺は腋の匂いをだな……」
紅莉栖「は?」
岡部「いや、その……俺はお前の腋の匂いを嗅ぎたかったのであって……」
紅莉栖「」
岡部(あれから紅莉栖から強烈なビンタを食らい夜が明けた)
岡部「まだヒリヒリするな、くそ……あのメリケン処女めがっ!」
ガチャリ
まゆり「トゥットゥルー、こんにちはー」
岡部「うむ、ご苦労」
まゆり「あれー? オカリン一人かなぁ?」
岡部「あぁ、そうだ」
まゆり「ねえねえオカリン」
岡部「なんだ?」
まゆり「昨日はごめんねー? まゆしぃはスパイシーチキンを食べる日課はやめました」
岡部「いや……別に食べたい物を食べればよかろう」
岡部「確かにフレマのスパイシーチキンは鼻に残る強烈な匂いではあるが……」
岡部「おいおい、別に重荷にだなんて……」
まゆり「自分の匂いには中々気づけない……昨日まゆしぃはそのことを実感しました!」
まゆり「だからこれからはー。前以上に匂いには気を使おうと思いまーす」
まゆり「えーっとー……するめはらすめんと?っていうんだっけ?」
岡部「それを言うならスメルだっ」
岡部(そういえばまゆりの腋の匂いは嗅いでなかったな……)
岡部「……どれ、この鳳凰院凶真が人質のメディカルチェックを行なってやろう」
まゆり「ええー!? メディカルチェックー?」
岡部「そうだ、さあまゆり……腕をあげろ」
まゆり「は、恥ずかしいよオカリーン……」
岡部「うるさいっ、自分の匂いは気づきにくい、というのであれば他人がチェックする他あるまい!」
まゆり「んー……じゃ、じゃあ……こ、こうかな?」 スッ
岡部(うおぉおおおおお!! これがまゆりの匂い! くんかくんか! ぐはぁ!)
岡部(すはぁ! すはぁ! くんかくんかっ! おいばか! 誰だスパイシーなんて言ったやつ! シトラス系のいい香りじゃないか!)
岡部(スーハスーハ! スハァァァ! んはぁぁぁ! 幼馴染の腋! 適度に運動し、良質な食事を取っている女子高生の腋の匂い! 健康! 健康そのもの!) グリグリ
まゆり「えっへへ、オカリーン、くすぐったいよぉ」
岡部(むはぁ!! たまらない! ここ最近スパイシーチキンの匂いをプンプンさせてただけにたまらない! これがギャップ萌え!) グリグリ
まゆり「だっ……だめだよオカリーン」
岡部(ぐぁぁ! くんかくんか! おうあぁぁぁぁ!! 灯台下暗し! なんてもったいないことをしてたんだ俺はぁぁ!)
カチャ
ダル「」
岡部「」
岡部(うおおおお、ダルに見られたぁぁぁぁあ!?)
岡部(でもやめない! くんかくんか! まゆりからはダルの姿は見られていないはず)
岡部(くんかくんか! うおおおお、俺のゲルバナがスカイクラッド! あぁぁっっ! すーはすーは!!)
ダル「」 スッ カチャ
ダル「ラボへエロゲしに来たらいつの間にかエロゲの中に入っていた」
ダル「な……何を言ってるのか わからねーと思うがおれも何をされたのかわからなかった」
ダル「頭がどうにかなりそうだった……」
ダル「パフパフだとかモフモフだとかそんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ」
ダル「もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……」
──「今の話、詳しく聞かせて欲しいんだが」
ダル「──ハッ!」
ダル「ま、牧瀬氏!?」
紅莉栖「いるのね……岡部が、この中に」
ダル「え? えええ? 今はちょっと……入らないほうが……」
まゆり「オカリーン、もうそろそろやめてほしいなーってまゆしぃは思うなー……」
岡部(やめてなるものかっ……! んはぁぁぁ!)
ガチャリ
紅莉栖「おーかーべぇぇ」
岡部「ひぃっ!?」
まゆり「く、クリスちゃん!?」
岡部「おい、助手……落ち着け! ひとまず落ち着け!」
紅莉栖「おーかーべええええ!」
岡部「よせっ! その腕を降ろせっ!!」
紅莉栖「あんたのために……マラソン行ってきたわ!
紅莉栖「さぁ私の腋の匂いを嗅ぎなさい!! これであんたも満足でしょ!?」
ダル「もう勘弁しろって」
おわれ
終始嫌な汗かきまくりだったよ
そして脇うp
おう、早くしろよ(催促)
Entry ⇒ 2012.06.30 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
岡部「もしも○○だったら!!」
まゆり「あー! オカリンってばまた夜更かししたでしょー!」
岡部「し、仕方なかろう! 混沌たる辺縁から忍び寄る刺客が、この俺を引きずりこまんと」
まゆり「オーカーリーン?!」
岡部「ゲームやってましたすいません」
岡部「お、お前に言われたくないわ! 夏休みの最後にヒーヒー言ってるのは誰だ!?」
まゆり「うっ……お、オカリンだって、まゆしぃと一緒の学校の頃は同じこと言ってたよね!?」
岡部「ぐぬぬ……」
岡部「む……す、すまん……」
まゆり「……もういいよー。ほら、ソファでちょっと寝たほうがいいのです」
岡部「ソファでって……お前が座ったままではないか」
まゆり「だ、だから、まゆしぃの、膝を……枕にすれば……」
岡部「なっ」
まゆり「その、まゆしぃはオカリンの人質なんだから、オカリンはまゆしぃが逃げないように、しっかり見張っておかなきゃ駄目なんだよ?」
まゆり「だ、だから、まゆしぃを枕にすれば、オカリンに押さえられてて、寝てる間もまゆしぃは逃げられないから……」
まゆり「べ、別に直に寝た方が楽なら、まゆしぃはどいてあげるけど!」
岡部「い、いや……別に、そのままでも構わんが……」
まゆり「そ、そっか……」
まゆり「ど、どうかな……」
岡部「ん……まぁ、悪くないな……」
まゆり「なんだかHENTAIさんみたいだねぇ」
岡部「う、うるさい。……はぁ。眠くなってきたではないか」
岡部「そうか……ならば、言葉に甘えて……」
まゆり「うん……おやすみ、オカリン」
岡部「ああ……」
A.まゆしぃマジ天使
A.「Steins;Gate 亡環のリベリオン」全3巻、好評発売中!
岡部「助手よ! 愛してるぞ!」 ガバッ
紅莉栖「ふえぇっ?! なっ、やめんかこのHENTAI!」 ドグゥッ
岡部「ぐふっ……」
岡部「被りまくっているぞクリスティーナ」
紅莉栖「う、うるさい!」
岡部「それに、これは俺の嘘偽りない本心だ! 何故認められんのだ!」 ずいっ
紅莉栖「ひゃぁっ!」
紅莉栖「ぇ、あ、ぅ」
岡部「お前が好きだ。愛している!」
紅莉栖「あ、うあう……」
岡部「お前はどうだ?」
紅莉栖「……」
岡部「ん?」
紅莉栖「ちゃんと、名前で……紅莉栖って、呼んで欲しい……」
岡部「……紅莉栖」
紅莉栖「はぅ////」
岡部「大好きだ。愛しているぞ紅莉栖!」
紅莉栖「お、岡部……!」
紅莉栖「おかべぇ……////!」 ぎゅう
岡部「お前は、どうだ?」
紅莉栖「……」
紅莉栖「……ど」
紅莉栖「どうにかしちゃえば、いいじゃない……////!」
A.チョロ助手
<<R-18>>
/: : : : : : : : : : : : : \
/,::'/i : : : : : : : : : : 、: :ヽ
i : {_{从: : : i }人 i| l: :|: :i|
|::小● \,リ'● 从: :|、i|
|::|l⊃ ⊂⊃: :|ノ:i|
.|::|ヘ r‐-、 j :: |i:! :i|
|:: /⌒l.,`ニ イァ: ::|::|:::i|
. .|:/ /.v只v´ {/ ヽ:::i|
.(:三:) j j 「 ̄ ヒミノ::::i|
_
/ \
|l^ ー ^l|
\\_/∠、
l ̄ __l
 ̄.-| |-- 、.
/ /| |`ヽ ) <アッー!
ヽ ヽ._|_ノ く ∧
`i ┬ へ \| |
.| | > . |
. ̄ <__| (当社比イメージ)
岡部「む、冷蔵庫が空ではないか! 助手よぉ! 早急にドクペを補充するのだ!」
紅莉栖「そう思ってケースで頼んどいたから。今日の夕方には届くはずよ」
岡部「そ、そうか。えらく根回しがいいな」
岡部「ふぅん! ようやく助手らしくなってきたではないか! これからも精進し、わがラボのために尽くすがよい! フゥーハハハ!」
紅莉栖「ま、いいけど。というか、別にラボのためというか、岡部のためにやってるわけなんだけど」
岡部「ハハハハハ! ……は?」
岡部「い、いや……別になにも」
紅莉栖「そう」
岡部「……」
紅莉栖「あー、岡部といちゃいちゃしたい」
岡部「?!」
岡部「や、おま、その、なんというか……」
紅莉栖「?」
岡部「その、さっきから不穏なワードばかりが聞こえてくるような気がするのだが……?」
岡部「あ、いや、気のせいならいいのだ、が……」
紅莉栖「あっそ。あーあ、岡部にキスした後ハグして押し倒しt」
岡部「それー! そうそれー!!」
岡部「おのれぇ……さっきから聞いてれば素面で聞くに堪えないような台詞ばかりいいおって……!」
紅莉栖「ああ、そのこと? だって仕方ないじゃない。岡部が好きなんだもの」
岡部「ぬあっ?!」
紅莉栖「仲間想いでここぞという時は必死になって、誰よりも格好よくて……」
紅莉栖「もう、好きになるしかないじゃない」
岡部「ぬあぁっ?!」
岡部「ぬうぅっ……お、俺だ。機関から尋常じゃない精神陵辱を受けている! このままでは俺の深層意識が奴らの手n」
紅莉栖「携帯禁止」
岡部「ぬおっ?!」 どさっ
紅莉栖「だからここで、もっと岡部のことを知りたくなっても……当然の結果でしょ?」 シュルッ
岡部「ぬあーっ!! ぬあーっ!!」
A.ED ひとりぼっちのツンデレ
岡部「フゥーハハハ! 今日も親御から引き離されし混沌とした迷い子を洗脳すべく、我が右腕の能力によr」
まゆり「おかりんといれー」
岡部「俺はトイレではない! そして鳳凰院だ!」 バタバタ
ふぇいりす「きょーまーおやつー」
岡部「俺はおやつではない! おやつは時間になったらだ!」
岡部「ん? うむ、手作りの甘味か。修行の成果が出てるなルカ子。褒めてやろう」ナデナデ
もえか「……」カチカチ カシャッ
岡部「ええい萌郁! お遊戯中は携帯にさわるでない! あとで写真コピーしてやるから!」
ダル「オカリンマジ保父さん」
ダル「そうは言っても、こういうの僕のキャラじゃないっつーか……」 くいっ
ダル「ん? なんぞ?」
すずは「……」
ダル「阿万音氏?」
すずは「……」
ダル「!!」 キュン
ダル「オカリン! 僕、今猛烈な父性愛に目覚めたお!」
岡部「わかったら危なくないように見張っていろ!」
ダル「オーキードーキー!」
くりす「……」ペラッ
岡部「クリスティーナではないか。お前は遊ばないのか?」
くりす「……べつに。みんなとはなしてても、つまんないし」
くりす「ひとりでべんきょうしてたほうが、たのしい」 ペラッ
くりす「あとてぃーなっていうな」
岡部「なんというか、お前ぐらいの年から知識を詰め込んでも、無駄にはならんが勿体無いと思うぞ?」
岡部「せっかく来てるのだから、どうせならあいつらと体でも動かすがいい」
くりす「うるさいばかおかべ」
岡部「ぬっ!」
くりす「?」
岡部「貴様が、俺の右腕の封印を解く鍵を握っていt……ぬおおおぉ?!」
くりす「?!」 びくっ
くりす「ふえっ?!」
岡部「フゥーハハハ! 貴様の命、この鳳凰院凶真が頂いた!」
まゆり「あっ、くりすちゃん!」
ふぇいりす「にゃにゃん、くーにゃんがだいぴんちだにゃん!」
くりす「……っ」 ガタガタ
るかこ「あわわわ、ど、どうしよう」
すずは「こらー! あくのそしきは、このすずはがゆるさないよ!」
岡部「ふぅん! たかが小娘一人何が出来るというのか!」
岡部「所詮一人では、なにかを為すには不十分すぎるといフゴォ?!」 ドゴォ
ふぇいりす「そうにゃ! みんながちからをあわせれば、あくのだいおうだろうがじごくのしはいしゃだろうがへっちゃらだにゃん!」
岡部「ぐふぅ……なんのこれしき……」
岡部「ま、まだ俺は負けてはいなオゴォッ?!」 ボゴォ
るかこ「ご、ごめんなさいおか……きょーませんせい……」
もえか「……たのしい」 カシャッカシャッ
くりす「べ、べつにこわがってなんか……」
ふぇいりす「にゃにゃん! くーにゃんはつよいこだにゃん!」
すずは「にひひ、めがまっかになってるよ」
くりす「う、うるさい!」
まゆり「でも、くりすちゃんいっつもむずかしいほんよんでるから、めいわくかなぁってはなしかけられなくて……」
まゆり「くりすちゃんも、みんなといっしょにあそべたら、まゆしぃはとってもうれしいのです」
くりす「……」
くりす「……」
くりす「……ぜんしょしてみる」
ダル「お疲れオカリン」
岡部「ふん……世話の焼ける奴だ」
A.オカリンマジ大人気
――夜、ラボにて
紅莉栖「ああもう、どうしてあんたと繋がれたまま一晩過ごさなきゃならないんだ……」
紅莉栖「全く橋田の奴、明日会ったらローランド裂引き裂いて、脳弓抉り出して蝶々結びしてやろうか……」ブツブツ
紅莉栖「そりゃあ、私と一晩中一緒にいるのが嫌なのはわかるけど……少しぐらい口を開いてもいいんじゃない?」
紅莉栖「ま、あんたが騒がしくならないのは結構だけど……」
岡部「……いや」
岡部「別に俺は構わん」
紅莉栖「ふぇっ?」
紅莉栖「なっ……?! なっ、ぬぁっ?!」
岡部「それよりも俺は……お前を失うほうがよほど怖い」 ギュウ
紅莉栖「お、おかっ、おかべっ?!」
紅莉栖「は、はいっ!」
岡部「好きだ」
紅莉栖「ひっ?!」
岡部「俺は、お前が好きだ」
紅莉栖「あっ……ぅ……」
紅莉栖「……」
紅莉栖「わ、たしは……」
紅莉栖「私、は……岡部が……っ!」
ピッ
紅莉栖「あ……外れちゃった……」
岡部「……」
紅莉栖「あ、はは……よ、よかったわね! あっさり外れてくれて!」
岡部「紅莉栖……」
岡部「……」
紅莉栖「多分、心拍数やバイオリズムがうまく一致してくれたんでしょうね。そうでなきゃ考えられないし」
紅莉栖「ま、私も清々したし! これでホテルに帰ってゆっくりできるわね!」
岡部「……紅莉栖」
岡部「紅莉栖!」 ぐいっ
紅莉栖「ふぇっ?!」
紅莉栖「や、やめろこのHENTAI!」
岡部「お前の返事を、まだ貰っていない」
岡部「違う。俺の、告白の返事をまだ聞いていない」
紅莉栖「っ、だから、それは……」
岡部「……こんなもの、今は関係ない」 ポイッ
紅莉栖「なっ、私のここ最近の努力の結晶だぞ?!」
岡部「紅莉栖」
紅莉栖「ひゃっ?!」
岡部「俺は、お前が好きだ」
紅莉栖「…………」
紅莉栖「おか……べ……」
岡部「ただ……お前の口から、答えが聞きたい」
岡部「お前は、俺のことをどう思っている……?」
紅莉栖「……わた、しは」
紅莉栖「私は……」
紅莉栖「岡部が……好き」ポロッ
紅莉栖「こっちが、どれだけ……っ、悩んでたか……!」
紅莉栖「それこそ……ぅっ、夢に、でるぐらいにぃ……!」
岡部「すまない……」
紅莉栖「な、で……っん、謝るのよぉ……うえぇ……」
岡部「紅莉栖……」 ナデナデ
紅莉栖「おが、べぇ……」 グスッ
A.ダル「マグマ」 ドンッ
もう許してやれよ
,.. --‐'"ヽ、
,.∠´,,.. -‐/ヾ_\
,,..-'" _,,..===,`' ,-、゙ヽ.
/, ,.. -‐<__,{ ,(´ `ヽ、
(´ォi ゙r-‐''"´ ̄ { ,/´' , ', ゙i
'ミーぅ∪' ∨ ヽ. σ ̄ λ
`ー'′ 人、,.-、..ヽ~~~~ / 並行世界のポシビリティ
/ ,' { r,( ´・ω・) <
/' !∨/:`ニニ´/ ̄ヽ. \ お わ り
i ゙i /`ヽ、_,,. `ヽ´ ヽ
.ハヽ ノ__,.-、 `Y´ `ヽ ',
!. { `,r-{´、 ,..ーヽ ヽ{. ,,..- 、:_ リ
/!ゝ、 ゝ_ヘ‐'_,..-'"ヽ、._/´_,,. _ ゙ヽ_,ハ
/ ハ.(`},、 `ヽ.-‐''',.ハ _ ̄ 、. ヽ、,リ
/', ヽ、゙i、ヽ. },`=彡ヾ、 、. 、 ∨
/ ヽヽ、 } ヽ}゙¨`)ヒニ彡>、 `` 、.ヽィノ
/: ヽ. ヽ. イ /´'''7´ \.ヽ `ヽ、_ノ
終始ニヤニヤしてたわ
Entry ⇒ 2012.06.30 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
岡部「鈴羽って半分はダルの精子なんだよな……」
ティッシュ「」
岡部「ふむ……そういえば」
ティッシュ「」
岡部「鈴羽って半分はダルの精子なんだよな……」
ティッシュ「」
岡部「……」
岡部「おい、バイト戦士よ、返事しろ」
ティッシュ「」
岡部「……なにをやってるんだ俺は。疲れてるのか」
ティッシュ「……オカリンオジサン」
岡部「!?」
続けたまえ
シーン……
岡部「気のせい、か……」
ティッシュ「オカリンオジサン!」
岡部「!?」
ティッシュ「コオダヨ!」
岡部「なっ!? ば、バカな……ティッシュが……声を発している!?」
ティッシュ「マタアエタネ」
岡部「このゆかりんボイスは……まさか、鈴羽なのか?」
ティッシュ「ソウダヨ」
続けてくれ
ティッシュ「タブン、リーディング・シュタイナーガゲンインダヨ」
岡部「り、リーディング・シュタイナーが!?」
ティッシュ「ウン、リーディング・シュタイナーハダレモガモツノウリョク、ソウダヨネ?」
岡部「あ、ああ。この世界線に辿り付いたときに紅莉栖に発現しているのを確認している」
ティッシュ「ナラ、ヒトノモトニナルセイシにハツゲンシテモオカシクハナイヨ」
岡部「そ、そうなのか?」
岡部「な、なるほど……だがどうやって声を出しているのだ?」
ティッシュ「アタシノカラダ、ヨクミテミテ」
岡部「うん?……こ。これは!?」
ティッシュ「ワカッタ?」
岡部「精子が超振動してティッシュを声帯代わりにして音を出しているのか……」
ティッシュ「ソウダヨ! こうやってあたしのコエダスノ、ケッコウムズカシインダヨネ」ブルブルブル
岡部「とりあえずは、全てリーディング・シュタイナーの影響、とういう訳か」
ティッシュ「ソウイウコト!」
岡部「しかし、形はどうあれ、7年待たずしてお前と再会できるとはな」
ティッシュ「アタシモ、ヨソウガイダッタヨ」
岡部「また会えたな阿万音鈴羽。ようこそ。我がラボへ」
ティッシュ「エヘヘ」
ティッシュ「キニシナイデ! それに君はミライヲ救ったキュウセイシュナンダカラ」
岡部「……そんな大層なことはしていない。俺は、自分のしたいことをしただけだ」
ティッシュ「デモ、ソノオカゲデアタシモスクワレタ、サンクス」
岡部「礼などいらん」
ティッシュ「エヘヘ、デモアタシッテコウシテキミトユックリオシャベリシタコトナカッタネ」
岡部「いろいろあったからな。だが、今はたっぷりと時間がある」
ティッシュ「ウン……」
ティッシュ「チョットダケネ、オジサンズットケンキュウバカリダッタカラ……」
岡部「そうか……」
ティッシュ「でも、アタシトアウトキハイツモヤサシクシテクレタヨ?」
岡部「お前は、大切な仲間だからな。当然だ」
ティッシュ「ありがと……ヤッパリ、ヤサシイネ。オカリンオジサンハ」
岡部「おじさんはよせ、俺はまだこの時代じゃ18だ」
ティッシュ「ソウミエナイケドネ」
岡部「うっさい」
岡部「だから、おじさんはよせと……なんだ?」
ティッシュ「オカリンオジサンハ……アタシノコト、スキ?」
岡部「なに……?」
ティッシュ「ドウナノ?」
岡部「……ああ、好きだ」
ティッシュ「ナカマトシテ、ダヨネ……」
岡部「……そうだ」
ティッシュ「ヤッパリ、マキセクリスノ「ホウガスキ?」
岡部「それは……」
ティッシュ「そっか……」
鈴羽「やっぱり、手ごわいね、牧瀬紅莉栖は」
岡部「!?」
鈴羽「やっほ」
岡部「す、鈴羽!? お、お前、精子じゃなったのか……?」
鈴羽「精子が喋るわけないじゃん」
岡部「で、では、なぜお前がここにいる!?」
鈴羽「えへへ、来ちゃった」
鈴羽「安心して、君が懸念するような出来事は未来では起きてないから」
岡部「だ、だが、タイムマシンは、存在すのか……」
鈴羽「まあね……」
岡部「……まあ、この世界線は未知の世界線、だからな。そういう事もありえるか」
鈴羽「そいうこと。それに、こういう事だってありえるんだよ?」
ぎゅ
岡部「な、なにえお!?」
鈴羽「えへへ、やっぱりオカリンおじさんの抱き心地は最高だね」ギュー
鈴羽「だが断る、ってね」
岡部「な、なにが目的なのだ?」
鈴羽「まあ色々と説明できない事情とかもあるけど、一番の目的はオカリンおじさんの攻略かな」
岡部「なん、だと……」
鈴羽「最初は精子だけで攻略できると思ってたんだけどね。さすがに上手くはいかなかったよ」
岡部「だ、だれが精子なんぞに攻略されるか!?」
鈴羽「だからこうやって、直接攻めにきたんだよ」
鈴羽「んっ、ちゅ……えへへ、この初心な感じ。この時代のオカリンおじさんのキスな刺激的だね。いっつもあたしがやられっぱなしだから新鮮でいいよ」
岡部「お、おま、な、なにを……んむっ!?」
鈴羽「んっ……はむ」
岡部「や、やめ……ンっ」
鈴羽「あむ……んむ」
岡部「……ん」
鈴羽「ぷはあーごちそうさま!」
岡部「……」
岡部「……」
岡部「……おい」
鈴羽「なあに?」
岡部「この時代の俺のキスは、とはどういう意味だ……?」
鈴羽「あっ……いっけね」
岡部「……」
鈴羽「分かる、でしょ?」
岡部「キス、したのか……?」
鈴羽「……うん」
岡部「」
鈴羽「えへへ、凄く……よかった」
岡部「……キス、だけか?」
鈴羽「……聞きたい?」
岡部「……やめとく」
鈴羽「なーんだ」
岡部「……」
鈴羽「違うよ。それに、未来で君とキスやその他諸々をする事になったのはあたしが原因だしね」
岡部「……もう一度言うが俺が好きなのは」
鈴羽「わかってる。だからあたしは今日、オカリンおじさんに宣戦布告しにきたの!」
岡部「せ、宣戦布告?」
鈴羽「7年後、あたしは生まれる。その後の18年間、あたしはありとあらゆる手を使ってオカリンおじさんを攻略しにいくから!」
岡部「はあ!?」
鈴羽「それが、そうでもないんだよ」
岡部「なに?」
鈴羽「あたしが言った精子のリーディンング・シュタイナー、あれ、あながち嘘じゃないんだよ」
岡部「えっ」
鈴羽「流石に精子の状態で記憶は維持できないけど、物心ついた頃には既にあたしはオカリンおじさんが好きだったよ」
岡部「ば、ばかな……そんなことが」
岡部「なっ……」
鈴羽「この中にどれか一つでもオカリンおじさんの性癖にヒットする姿があれば、あたしの勝ちだからね」
岡部「だ、だれがそんな! お、俺はダルではない! 26歳年下に発情する筈が……」
ぎゅ
鈴羽「でも、いまは同い年だから、体は反応してるんだよね」ムギュウ
岡部「だ、だから、やめ……」
鈴羽「もしかしたら、このタイミングが落とす絶好のチャンスかも」
岡部「や、やめろ!」
鈴羽「あはは、でも残念。そろそろもとの時代に帰らないと……」サッ
岡部「は、離れたか……」ホッ
鈴羽「えい! 隙あり!」
ちゅ
岡部「んむっ!?」
鈴羽「へへ、こんなに隙だらけだと、幼稚園児のあたしに落とされちゃうよ?」
岡部「だ、誰が落ちるか! 俺は断じてロリコンなどではない!」
岡部「お、俺はお前の色香なんかに惑わされない」
鈴羽「もう、強がっちゃって~」
岡部「強がってなどいない!」
鈴羽「まったく、素直じゃないんだから……だからこそ攻略しがいがあるんだけどね」
岡部「……改めて、お前がダルの娘だと実感できたよ」
鈴羽「あははっ、照れるな」
岡部「褒めとらん」
岡部「言っておくが俺は結構一途だぞ? そう易々とお前には攻略されん」
鈴羽「それはよく知ってるよ。だからこそ、必ず攻略してみせる」
岡部「ふん……またな鈴羽。会えて、良かった」
鈴羽「おっ、さっそくデレた?」
岡部「茶化すな!……まったく」
鈴羽「あはは、ごめんごめん。あたしも、楽しかった。じゃあね。オカリンおじさん」
バタン
岡部「行ったか……」
岡部「……」
岡部「7年後、か……」
――
ガチャ
紅莉栖「ハロー。あっ、今日は岡部だけか」
岡部「助手か……」
紅莉栖「助手じゃねーし。ってうわ、最悪、これ橋田の……あれじゃない。あのHENTAIめ」
岡部「……」
紅莉栖「どうかした?」
岡部「えっ?」
紅莉栖「なんか、ぼさっとしてたから……何かあった?」
岡部「何か……まあ、あったな」
紅莉栖「ふえ? い、いま名前で……」
岡部「26歳下の女の子に告白されたって言ったらどうする?」
紅莉栖「はあ……?」
岡部「26年か……それまでお前に一途でいられると信じたいがな」
紅莉栖「お、おま!? な、何を急に……!」モジモジ
岡部「……いや、なんでもない。気にするな」
紅莉栖「き、気になるわよ! バカ……」
岡部(……どうなるかは分からない。だってここはシュタインズゲートなのだから)
岡部「まあ、とりあえずは再開を楽しみにしてるぞ、鈴羽」
紅莉栖「誰よ……その女の」
おわり
読んでくれた人、ありがとニャンニャン
女子高生鈴羽か、想像しづらいなバイトばっかやってんだろうか
Entry ⇒ 2012.06.28 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
岡部「リア充になるぞ」 ダル「は?」
岡部「言葉通りの意味だ」
ダル「今日のお前にだけは言われたくないスレ立ててもよろし?」
岡部「貴様は後悔しないのか? 俺達はもう大学生……」
岡部「人生の夏休みとも言われる時期に研究やエロゲに精を出す……なんとも寂しい青春ではないか」
ドン!
岡部「お、おい……」
ダル「わりオカリン、ついカっとなって殴っちまったよ……壁」
ダル「つかおまいはすでに爆ぜてもいい状況にある件について」
岡部「俺が? 冗談を言うな」
ダル「それこそ冗談じゃねーよマジで」
ダル「おにゃのことチュッチュ」
岡部「お前はそれしか頭にないのかっ」
ダル「おにゃのことらんこ──」
岡部「却下だこのHENTAI!!」
ダル「じゃあどうしろってばよ」
岡部「ふむ……そうだな……リア充といえば……」
ダル「いえば?」
岡部「まずは身だしなみだな」
ダル「オカリン、やっとそこに気づいたか」
岡部「白衣こそが完璧な機能美であることには違いないのだがな」
ダル「あるあ……ねーよ」
岡部「という訳で服を買いに行く」
ダル「へいへい」
鈴羽「あたしも力になるよ!」
岡部「うむ、よろしく頼むぞ」
ダル「フェイリスたんに選んでもらうとか羨ましすぎだろ常考!!」
フェイリス「ちなみに予算はどれほどニャン?」
岡部「秘密兵器である諭吉を連れてきた!!」 ペラッ
鈴羽「おぉー!」
フェイリス「……い、一枚だけニャ?」
~しま○ら~
フェイリス「凶真は長身だから何を着てもそれなりに様になるのニャー」
岡部「そ、そうか?」
鈴羽「ほら橋田至。これなんか似合うんじゃない?」
ダル「ちょ、ゴテゴテしすぎじゃね? ポケットいくつ付いてんのこれ……」
ダル「僕に合うサイズの服がほとんどない件……」
シャー
岡部「ふん、デブにはまわしがよく似合う、とはよく言ったものだ」
ダル「ちょ、オカリンさすがにそれはひどくね──」
ダル「って驚いた、別人みたいだお」
鈴羽「おぉー、中々イカしてるじゃん岡部倫太郎!」
フェイリス「ニャッフフー、フェイリスのセンスを甘く見ないで欲しいのニャ」
岡部「シンプルなものでも組み合わせ次第では十分に見れるというわけか……礼を言うぞフェイリス」
フェイリス「お安い御用なのニャ」
ダル「……なんかガイアがもっと輝けと囁きそうな服装だお……」
岡部「気分がイイのでそのまま着て帰るぞフゥーハハハァ!!」 バサッ
フェイリス「ニャニャ!?」
ダル「だから白衣は着るなっつに」
ダル「なんよ」
岡部「車でワイワイ旅行計画だ!」
ダル「ちょ、マジ?」
岡部「燦然と輝く青い海、吹き抜ける風、仲間と歌い合う車の中、まさにリア充だ」
ダル「当然お泊りですよねわかります」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~メイクイーン~
ダル「で? なんでこうなってるのか説明がほしい件」 ワシャワシャ
岡部「車、免許、金必要」
フェイリス「ほらほら、ダルニャンはキッチン、凶真はホール、キッチリ働くのニャ!」
ダル「なんで僕まで……」
客A「ちょ、なんで男?」
客B「フェイリスたんだせオラー!」
岡部「ぐぬぬっ……!!」
岡部「オムライスです、おまたせいたしました」 カタッ
客A「あら男の子?」
客B「ちょっとー、マユシィちゃんはー? 私マユシィちゃんに会いに来たのよー!?」
まゆり「オカリン、ごめんね~、後はまゆしぃたちがやるから……」
岡部「ぐぬぬぅぅう!!」
岡部「だぁっ! やってられるかあんなん! フェイリスの口車に乗せられた俺がバカだったわ!」
ダル「じゃあ旅行どうするん?」
岡部「金がかかる、却下だ」
ダル「えー、オカリンひでーよ!」
岡部「案ずるな、俺に考えがある」
岡部「たった3日間のバイトとはいえそれなりに時給が良かったのもあり金は溜まった」
ダル「バーベキュー……だと?」
岡部「開放的な川辺、鼻孔をくすぐる焼けた肉、笑い合う仲間たち、まさにリア充だ」
ダル「肉……悪くない、悪くないよオカリン」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~どっかの川辺~
ザー
まゆり「わわー、見て見てオカリン! すっごく綺麗だよー、えっへへー」
萌郁「……綺麗」
ダル「おー、中々雰囲気出てんじゃん」
岡部「喜ぶがいい! この狂気のマッド・サイエンティストが野菜を提供してやるぞ!」
岡部「思えば今この瞬間のために俺は八百屋の息子として──」
ダル「よーし、パパ肉焼いちゃうぞー」
まゆり「おぉー、ダルくんかっこいいー」
萌郁「橋田君……さすが……」
岡部「生まれ……え?」
ダル「せっかくのバーベキューで肉食べないとかありえないだろ常考!」 ジュージュー
岡部「おい、お前ら……キャベツ……かぼちゃ……」
まゆり「……もぐもぐ」
萌郁「……もぐもぐ」
岡部「お、おのれこの肉食系女子どもめっ」
ダル「そう? 僕は楽しかったけど」
ダル「つかまゆ氏どんだけ食べても太らないとかすごすぎっしょマジで」
岡部「くっ……おのれ肉を焼いただけで調子に乗りおって……」
岡部「ええい! 次の作戦だ!」
ダル「へいへい」
岡部「次は紳士の社交場、バーに行く!」
ダル「いやいや、僕ら未成年っしょ」
岡部「心配するな、酒を頼むつもりはない、あくまで雰囲気を掴むだけ……」
岡部「流れるジャズ、薄暗い店内、まさにリア充だ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
岡部「なーぜ貴様までついてくる助手ぅ」
紅莉栖「あんたら未成年でバーなんて入っていいと思ってんの!?」
岡部「つべこべ言うなお子様セレセブ、酒を頼むつもりは無いと言っているだろう」
ダル「おぉ……暗いし……なんかそれっぽい雰囲気……」
紅莉栖「ちょ……ホントに入るの?」
岡部「ここまで来て後に引けるかっ、後裾を引っ張るな!」
岡部「これがバーというやつか……ん? あのモリモリは……」
天王寺「げっ、おめーら!」
岡部「なぜあなたがここにいるのだミスターブラウン!」
天王寺「そりゃこっちのセリフだ! つーかお前ここは……!」
バーのママ「あーらいらっしゃぁいお客さん、ゆうちゃんのお知り合い?」
ダル「ちょ!」
岡部「いいっ!?」
紅莉栖「ニュ、ニューハーフ……?」
バーのママ「あら、ここは”そういう店”よ、かわいい子たちねぇ……食べちゃおうかしら☆」
岡部「お……お……お断りしまーっす!」
紅莉栖「わわわわわ!」 ダル「ま、待ってよオカリーン!!」
ダル「ま、オカマバーはそっちの人だけが行くってワケじゃないし一概にも言えない希ガス」
岡部「……次の作戦だな」
ダル「もうバーは勘弁してくれお……」
岡部「次は飲み会をやるぞ!」
ダル「だから僕らは未成年だと小一時間」
岡部「こちらも雰囲気を試すだけだ、ノンアルコールのカクテルやビールを用意する!」
岡部「テーブルに乗り切らない程の料理、未知のドリンク、騒ぎ合う仲間たち、まさにリア充だ!」
ダル「ウェーイ! あ、ピザも頼んでおk?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~ラボ~
岡部「ではこれより、第159回円卓会議を始める!」
鈴羽「おぉー、豪華な料理!」
ダル「正直お酒なんかよりこっちがメインだろ常考」
萌郁「……私が買ってきた」
ダル「だからノンアルコールだろ常考!」
カンパーイ
岡部「いざ……オペレーションバッカス開始せりっ!」 グイッ
鈴羽「うぇー、まっずぅ……」
ダル「おぉ……桐生氏いい飲みっぷり」
萌郁「私は……いつも飲んでるから」 グイッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
岡部「なんか体が熱くなってきたぞフゥーハハハァ!」
ダル「ふひ、ふひひ……」
鈴羽「ちょっと、二人とも大丈夫ぅ?」
萌郁「……」 グイッ
ダル「オカリンなんで分裂しれるんすかマジうけるんれすけど!」
鈴羽「あはははは、これノンアルコールじゃ無いじゃん桐生萌郁!」
萌郁「……間違えた」 グイッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
岡部「萌郁、水くれ水! ってぶはぁっ! なんらよこれ!」
ダル「うへへ、オカリンそれ桐生氏が飲んでた焼酎じゃね!」
鈴羽「それあたしにもちょうだい!」
萌郁「……だめ……これは私の」 グイッ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
岡部「うげぇぇぇっ……き゛も゛ち゛わ゛る゛い゛……」
ダル「んがっ……ぐごご……んががっ……」
鈴羽「あはははは、父さんってばだらしないお腹! あははははは!」 ポンポン
萌郁「……酔っちゃった///」
ダル「まだ二日酔いなん?」
岡部「……お前はなんともないのか」
ダル「いや? 全然?」
岡部「くっ……次の作戦は夏祭りだ!」
ダル「当然おにゃのこは来るんだよな」
岡部「抜かりはない!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ワッショイワッショイ
まゆり「ねーねーオカリーン、金魚すくいやろーよー」
岡部「フゥーハハハァ! 金魚ごときっ! この俺鳳凰院凶真がすくい尽くしてやるわっ」
るか「凶真さん……かっこいい……」
ダル「……すくい尽くしてどうするんだってばよ」
岡部「ぐぬぬっ!」
パシュ
岡部「おのれっ……魚類の分際でちょこまかとっ!」
ダル「オカリン無茶しやがって……」
岡部「……」
岡部「お前らも手を貸せ」
るか「は、はい……」
マイドー*3
まゆり「よーし、取るぞー」
岡部「まてーい!」
るか「えっ?」
ダル「おいおいオカリンまさか」
岡部「フゥーハハハ! 1つより2つ、2つより3つだ!」
岡部「そらそらーっ!!」
ヒョイヒョイッ
まゆり「わわー、金魚さんがどんどんお椀にー」
るか「重ねるのって、ルール的に大丈夫……なんでしょうか?」
ダル「汚いなさすがオカリンきたない」
岡部「ハハフゥー!!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
まゆり「あ、見て見てー、ミス夏祭りだってー」
ダル「おぉ、可愛いおにゃの子の匂いがするお!」
るか「わー……皆綺麗……」
るか「えっ……ボクはそんな……」
ダル「るか氏なら十分グランプリ狙えるんじゃね」
岡部(だが男だ)
るか「で、でも……」
まゆり「ほらほらー、まゆしぃも一緒に出てあげるからー」 グイグイ
るか「あっ……ちょ、ちょっとまゆりちゃん……」
ダル「すごく…………百合です」
岡部(だが男だ)
──「漆原るかさんの手にぃぃぃ!!」
ワァァァァァァ
ダル「ちょ、オカリンオカリン、まじでるか氏優勝だって!」
岡部(だが……男だ)
ヒュー
ドォン
ダル「あ……花火」
岡部「そうだな」
ダル「……綺麗だなオカリン」
岡部「あぁ」
ダル「……」
岡部「……」
ダル「はぁ……これで隣にいるのがオカリンじゃなきゃな」
岡部「うむ……全力で同意してやるぞダルよ」
ダル「アッー」
岡部「くっ……次はカラオケにいくぞ!!」
ダル「カラオケとな? オフ会の締めはアニソンカラオケ三昧の僕をなめるなよ?」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
フェイリス「とまーらーないー未来をーめざっしてー」
ダル「フェイリスたんの美声はぁはぁ……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
紅莉栖「あおいーとりー もし幸せー」
岡部「助手風情が中々やるではないか……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
フェイリス「ニャフフ、皆中々やるのニャ」
フェイリス「ここらでゲームなんか……どうかニャ?」
岡部「ほぉう?」
紅莉栖「ふむん……」
ダル「おほー! なんでもありですかフェイリスたん!」
岡部・紅莉栖「「HENTAIは禁止だからな」」
ダル「えぇ……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
フェイリス「傷つくことは怖くないー!」 95点
紅莉栖「うわ……いきなり高得点……やるわね」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
岡部「広がるぅー闇の中ァかぁわしあぁた革命の契りぃぃ!」 85点
フェイリス「ニャフフ、浸りすぎで音程がバラバラニャ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
紅莉栖「消える飛行機雲~」 89点
岡部「ぐっ……助手め……」
岡部「な、なんだと!」
フェイリス「ニャフフ、それじゃあフェイリスは凶真になんて命令しようかニャ」
ダル「……全力で阻止するしかない。キリッ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ダル「ざーんこーくな天使のテーゼ! まーどべーからやがて飛び立つ!」
ドゥルルルルルルウルル
デン
97点
フェイリス「ニャニャ!?」
紅莉栖「や、やるわねあんた」
岡部「くっ……」
ダル「ふひひ、ざっとこんなもんよ」
フェイリス「じゃあダルニャンは凶真になんて命令するのかニャ?」
ダル「そうだなぁ……」
ダル「じゃあ牧瀬氏のことを今日一日名前で呼ぶでいいんじゃね」
岡部「な、なにぃ!?」
フェイリス「ニャニャ、そんなのでいいのかニャ」
紅莉栖「橋田、GJ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
紅莉栖「ねえ岡部、私の名前を言ってみて」
岡部「な、なんだその露骨な問は!」
紅莉栖「命令だろ? 早くしなさいよ」
岡部「だぁっ! 貴様に命令される筋合いはないわこのっ……」
フェイリス「凶真ー?」
岡部「く……紅莉栖めがっ」
紅莉栖「……ま、まぁよしとするわ///」
ダル「なにこれ」
岡部「まぁいい、次の作戦だ」
ダル「はいはい、つーかもうオカリンは十分リア充だっつーの」
岡部「次はジムに行って体を鍛えるぞ!」
ダル「だが断る!!」
岡部「ええい! そろそろお前もメタボリック症候群を解消しようと思わんのか!」
ダル「これが僕の完全体なんだお!!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ダル「はぁっ……ひぃっ……け、結局……付き合わされてる件に……ついて!」
岡部「うるさいっ、貴様はもっと運動したほうがいいのだ」
岡部「ふんっ……! くそ! 10kgのダンベルですら持ち上らん……」
ダル「オカリン貧弱すぎっしょ」
ダル「にしても……」
グッグッ
ダル「まゆ氏……ベンチプレス60kgって……おにゃのこが持ち上げる重さじゃないお……」
岡部「全くだ……あの細身の体のどこにあのような力が……」
まゆり「トゥッ……トゥルー……!」
まゆり「まゆしぃは……オカリンの……重荷には……なりたく……ないので!!」 ググッ
ダル「まゆ氏すげえ……」
まゆり「えっへへー」 ググッ
ダル「オカリン諦めろって、僕たちは肉体労働には向いてないお」
岡部「うぐぐ、筋トレを趣味にしてるリア充恐るべし……」
岡部「だが俺はリア充の夢を諦めない!」
ダル「だからオカリンはすでにリア──」
岡部「もうすぐ俺の誕生日だからな! 誕生パーティやるぞ!」
ダル「」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
岡部「フゥーハハハ! 今日は御足労頂き感謝するぞラボメンたちよ!」
るか「おか……凶真さんのためなら……ボク……」
まゆり「誕生日おめでと~、オカリーン」
ダル「つか自分で自分の誕生パーティ主催するってなんよこれ……」
岡部「細かいことはいいのだダァルよ!」
岡部「フハハ、またつまらぬ物を重ねてしまった!」
ダル「オカリン、正直その物言いは渡すのをやめるレベルだお……」
まゆり「そうだよー、皆オカリンのために一生懸命選んできたのにー」
岡部「ぐ……わ、悪かった、皆感謝しているぞ」
るか「凶真さん……どうぞ」
ダル「ほらよ」
まゆり「はい、どうぞー」
岡部「フゥーハハハ……ハ?」
白衣*3
ダル「ちょ、皆かぶるとかマジアリエンティ」
るか「その……白衣が汚れていたので……そろそろ必要かと思って……ごめんなさい……」
まゆり「皆オカリンが欲しい物はわかってるってことなんだね~」
ダル「白衣はオカリンのトレードマークみたいなもんだしな」
岡部「くそっ、知性と恍惚のファッションが裏目に出たというわけか……」
ダル「白衣はファッションとはいわねーだろ常考」
岡部「まあいい、次はクリスマスパーティだ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
岡部「メリークリスマスラボメン諸君!」
ダル「うほっ、ケンタッキーまじうます!」
まゆり「クリスちゃーん、久しぶりー、元気だった?」
紅莉栖「ええ、もちろんよ。まゆりはどうだった?」
まゆり「まゆしぃもいつも通りだったのでーす」
岡部「フゥーハハハァ! さてプレゼント交換やるぞお前ら!」
紅莉栖「ったく、久々にラボに来たけどほんっと騒がしいわね」
ダル「まっ、通常運転ってことで」
まゆり「おぉー、マフラーだー、あったかそー」
ダル「お、ニット帽ktkr」
紅莉栖「穴あき手袋……いらねー……」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~ブラウン管工房ベンチ前~
岡部「フゥ、今日も冷えるな……」
紅莉栖「ね、ねえ……」
岡部「ん? 助手か」
紅莉栖「その……」
岡部「なんだ?」
紅莉栖「な、なんでもない」
岡部「……」
岡部「うむ! よっぽどアメリカ暮らしは寂しかったと見える!」
紅莉栖「べっ、別に寂しくなんか──」
岡部「いつでも帰ってくるがいい、このラボこそ貴様の居場所なのだからなっ」
紅莉栖「あ……」
紅莉栖「ま、全く、ほんっとに衰えてないなこの厨二病!」
岡部「貴様のツンデレっぷりも同様だ」
紅莉栖「うっさい!///」 パッ
岡部「……これは?」
紅莉栖「……プレゼントよ」
紅莉栖「そ、それはそのっ……クリスマスじゃなくて……あんたのバースディっていうか……その……」
岡部「開けてもいいか?」
紅莉栖「す、好きにしなさいよ……」
ガサガサ
岡部「セーター……」
紅莉栖「感謝しなさいよ! この私が一生懸命編んでやったんだからなっ……!///」
岡部「フッ……ありがとう、紅莉栖」
紅莉栖「っ……! い、いきなり名前で呼ぶなんて……反則だぞこのバカ岡部……!///」
岡部「雪……か」
紅莉栖「あ、ホントだ……。予報では降らないはずだったのにね」
ダル「あ、まゆ氏まゆ氏、壁殴り代行お願いしても?」
まゆり「ダルくんダルくん、茶化しちゃだめだよー」
岡部「コミケだ!」
ダル「は? コミケ? リア充には程遠くね? つか言われなくても行くっつの」
ダル「つかもうオカリンは十分にリア充な件、クリスマスの夜牧瀬氏と──」
岡部「う、うるさい! いいから行くぞ!」
~コミケ会場~
紅莉栖「私はちょっと見て回りたい所があるから……」
岡部「フフゥッ! 早速BL物を買いに行くのだな? クリ腐ティーナよ」
紅莉栖「なっ──そ、そんなんじゃないわよ!」
まゆり「トゥットゥルー、オカリンもクリスちゃんもコスプレ会場いこーよー」 グイグイ
岡部「あ、おい、引っ張るなまゆり!」
紅莉栖「ちょ、ちょっと!」
まゆり「二人ともコス着てねー? まゆしぃはこの日のために準備してきたのです」 ズリズリ
ダル「さ、僕は僕できっちり仕事を果たさなきゃいかんね……待ってろよー、僕の嫁たち」
ダル「……むなしい」
ダル「あ……あれって阿万音氏? なんでこんなところに……」
ダル「おーーい、阿万音氏ー」
ダル「なんでこんなところに……ってあり?」
由季「えーっと……あなたは? なんで私の名前……」
ダル(よ、よく見ればすっげー似てるけど別人な件……やっべ、どうしよう)
由季「もしかしてさっきコスプレ会場にいた方ですか?」
ダル(あわわわ……どどどどうしたら……オカリン助けてー……!!)
岡部「ってあそこにいるのは……ダル! とあれは……」
岡部「固まってるな……くそ」
鈴羽「待って、大丈夫だから」
岡部「鈴羽!」
由季「私のコスを見てくれたのかな? どうだったかな……初めてだったんだけど」
ダル「き、き……」
由季「き?」
ダル「き……君に一生萌え萌えキュン!! 結婚してくれーっ!」
由季「え? あ、はい」
由季「って、ええええ!?」
鈴羽「あはは、父さんってば真っ赤になっちゃって」
岡部「全く……聞いてるこっちが恥ずかしくなる」
鈴羽「……ありがと、オカリンおじさん」
岡部「これでよかったのか?」
鈴羽「うん、父さんの願いは叶ったみたいだし」
岡部「”リア充を経験してみたかった”か……」
岡部「全く……こんな父親思いの娘と綺麗な嫁がいるのに、贅沢な悩みだ」
鈴羽「あはは、それって君が言えた口じゃないよー」
岡部「な、なんだと?」
鈴羽「それじゃあたしはそろそろ帰らないと」
鈴羽「父さんの一番の財産は君みたいな友達がいたってことかもね」
岡部「奴は俺の大切な右腕だからな」
鈴羽「じゃあオカリンおじさん、また未来で会おうね!」
岡部「……ああ、またな」
ダル「そんで男二人で花火とか見ちゃって、ふひ、ふひひ」
由季「あはは、君って面白いね」
岡部「これもシュタインズゲートの選択か、エル・プサイ・コング──」
紅莉栖「何カッコつけてんのよ!」 ガシッ
岡部「ぬわぁ!」
まゆり「トゥットゥルー、やっと見つけたよオカリーン」 ガシッ
岡部「お、おい!」
紅莉栖「あんたもコスプレしなさいっ!」
まゆり「ちゃんと用意してるんだからねー?」
岡部「よせ、何故この俺がコスプレなどっ──」
まゆり「オーカリン、これも」
紅莉栖「シュタインズゲートの選択」
まゆり・紅莉栖「なのです
なのだぜ」
おわれ
オレもオカリンみたいな友達がほしいお
Entry ⇒ 2012.06.26 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
萌郁「私は、岡部くん依存症だから」
萌郁は自らの命が消えようとしているにもかかわらず、俺にそう言った。
まゆりを殺したのは別の世界線の出来事だ。
それでも、萌郁は俺に謝ってきた。
こんな悲しいことがあっていいのか、死ぬ間際に自分のことを大切にできないなんて。
もし、ラウンダーなんかにならなければ、FBのメールなんかに返信しなければ――。
いや、そんなことを考えてもなにも変わらない。
俺にはどうしようもない。
それでも、今だけは考えられずにはいられなかった。
「もし……岡部くんに……会っていたら」
「もっと……違う生き方……が……でき……たのかも……」
その言葉に俺はなにも返せない。
確かめようのない仮想の世界、それを考えても何も意味はない。
「D……メール……」
「……何?」
そう言うと萌郁はパープル色のケータイを手に取り、少しずつ指を動かす。
「これ……を……」
萌郁が最後に打ったメールの内容、それは――。
『おかべくんがたすけてくれる』
「萌郁……お前」
「おね……が……」
最後まで言い切れないまま、萌郁は息絶えてしまった。
「……岡部」
紅莉栖が、おずおずと呼びかけてくる。
「Dメールを、送るべきだと思う。もう、準備はできてる」
「ああ……」
Dメールを送れば、この世界線は無かったことになる。
だが、このまま見過ごしてもいいのか。
萌郁のケータイに残された最後の願いを、無視してもいいのか。
「……少し、待ってくれないか」
「えっ……?」
「少しだけでいいんだ、一人にさせてくれ」
「……分かった、外に出てる」
紅莉栖の言うことは正しい、今すぐにDメールを送る以外は無い。
分かっている、分かってはいる。
だが、萌郁のケータイに残された最後のメールは、俺に助けを求めるものだった。
目の前には二つのケータイがある。
一つはFBのもの、これを送ればIBN5100が手に入る。
もう一つは萌郁のもの、これを送れば……何が変わる?
おそらく何も変わらない、萌郁もまゆりも助かることは無いだろう。
そう思いながらも俺は――パープル色のケータイを選んだ。
俺は萌郁の残したメールを書き換えた。
『池袋の岡部倫太郎を頼れ○○中学』
「ダル、俺だ。電話レンジの設定を変えてくれ」
「設定を変える? 何かあったん?」
「何も聞くな、今から五年前に送れるように変更してくれ」
「ご、五年前……? とりあえず設定はするけど……」
俺はいったい何をしている? 何を変えようとしている?
このメールを送れば、萌郁が俺ともっと前に出会うかもしれない。
過去の俺は何かしてやれるのか、何が変わるのか、それとも何も変わらないのか。
そう思いながら俺は、送信ボタンを押した。
岡部(萌郁の部屋に居たはずだが……ん? ここは……どこだ?)
岡部(さっき居た場所よりも広い。……移動した?)
岡部(いや、それよりも何か変わったのか? ともかく外へ……)
萌郁「岡部くん、どこに行くの?」
岡部(……萌郁! ……この世界線では生きているのか)
萌郁「岡部くん? どうかした?」
岡部「……いや、何でもない。なあ、指圧師」
萌郁「……指圧師? 何のこと?」
萌郁「私が、指圧師? ……マッサージ、して欲しいの?」
岡部「いや、そういう意味ではなくて……何をとぼけているんだ」
萌郁「ごめん……岡部くんの言ってること、よく分からない」
岡部「……分からない?」
萌郁「指圧師になった覚えは、無い」
岡部「そうではない、お前の異名だ。メールを打つ速さが驚異的だから閃光の指圧師と」
萌郁「私、そこまでメールを打つの速くないけど」
岡部「……何?」
萌郁「ケータイ依存症……そんなこと、無いと思う」
岡部「何……? 違うと言いたいのか?」
萌郁「うん。それに、ケータイじゃなくて」
岡部「ケータイでは無くて?」
萌郁「私は、岡部くん依存症だから」
岡部「へっ……?」
萌郁「岡部くんの方こそ、何を言っているの?」
岡部「いや、いやいや、おかしいだろ。どうして俺に依存ってことに」
萌郁「岡部くんから、離れられない」
岡部「離れられないって……」
萌郁「だから、いつもこうして――」
岡部「……っ!? い、いきなり抱き着いてきてな、何を!?」
萌郁「……? いつも通りだけど」
岡部「い、いつも通り?」
岡部「か、嗅ぐな! どうなってる……どうして俺と萌郁が」
萌郁「それは、恋人だから」
岡部「…………恋人?」
萌郁「うん。付き合って、もう四年位」
岡部「よ、四年!?」
萌郁「……日付は間違ってないはず。六月六日、忘れる訳が無い」
岡部「六月六日……」
萌郁「私の誕生日に、岡部くんから……告白してくれた」
岡部「俺が……告白!?」
岡部「……指圧師、色々と聞いてもいいか?」
萌郁「その呼び方、嫌。いつも通り、萌郁って呼んで欲しい」
岡部「あ、ああ。萌郁、質問してもいいか?」
萌郁「岡部くんになら、何でも答える」
岡部「そ、そうか。……一つ目、俺とお前が会ったのはいつだ?」
萌郁「今から、五年前。八月の終わりに出会った……覚えてないの?」
岡部(八月の終わり……俺がDメールを送ったのはちょうど五年前)
萌郁「うん。岡部くんに頼れってメールを見たから、頑張って探した」
岡部(本当にあのメールを信じたのか……。まあ、
得体の知れないメールに返信するようなヤツだからな……)
岡部「……萌郁、FBという言葉に聞き覚えはあるか?」
萌郁「FB……? ごめん、分からない」
岡部(FBを知らない……ということはラウンダーでは無いのか?
いや、嘘をついているという可能性もある……)
岡部(……待て、もっと先に確認すべきことがあるだろうが)
岡部(まゆりは無事なのか……? 電話に出てくれれば良いのだが……)
岡部(頼む……出てくれ、まゆり)
まゆり『トゥットルゥー♪ オカリン、どうしたの?』
岡部「まゆり! 無事なのか? 今どこに居るんだ?」
まゆり『まゆしぃは元気だよー。今はお家でのんびりしてたんだ』
岡部「そ、そうか。ラボには居ないのだな」
まゆり『らぼ? それ、何のこと?』
岡部「ラボはラボだ。我が未来ガジェット研究所のことだろうが」
まゆり『うーん……まゆしぃはさっぱり分からないのです』
岡部「分からない……?」
岡部「ま、まゆり? おい、まゆり! ……切れてる」
萌郁「まゆりちゃんに、何か用だったの?」
岡部「あ、ああ、……ん? まゆり、ちゃん? 何だその呼び方は」
萌郁「何って、五年前からずっと変わってないけど」
岡部「まゆりとも、長い付き合いなのか?」
萌郁「私を岡部くんに会わせてくれたのは、まゆりちゃんだから」
岡部「俺とお前を……? いや、それよりもラボのことだ……」
萌郁「ラボ?」
萌郁「……岡部くんが何の話をしてるのか、分からない。嫌、嫌……嫌」
岡部「も、萌郁?」
萌郁「岡部くんのことを知らないなんて、嫌……不安になる」
岡部(様子がおかしい……まさか、さっき言っていた依存症というのは本当なのか?)
萌郁「何かあったのなら、教えて。お願い」
岡部「……俺が今から言うことは全て真実だ、お前は信じないだろうが」
萌郁「岡部くんのことなら何でも信じる。だから、話して」
岡部「俺は、別の世界線から来た」
萌郁「別の、世界線?」
Dメール、ラボ、そして今の俺は記憶が上書きされたような状態だということを説明した。
岡部「――そして俺はDメールを送り、今に至る」
萌郁「…………」
岡部「信用してもらおうとは思わん。だが事実だ、今の俺にはお前との記憶が……無い」
萌郁「私との記憶が……無い」
岡部(ルカ子の時もお前は女だと言っても信じなかったんだ。……そう簡単には信じないだろう)
萌郁「……分かった、信じる」
岡部「信じるって……そんなにあっさり信じられるとは思えないが」
萌郁「五年間、岡部くんの言うことは全て信じてきた。それは今も、変わらない」
岡部(……ここまで信用されているとは。俺と早く出会っただけでこうも変わるものなのか?)
萌郁「分かってる。……悲しいけど、信じる」
岡部(……俺は萌郁と恋人、らしい。まゆりは生きている。では、他のラボメンは……?)
岡部「調べてみるしか……無いな」
萌郁「岡部くん、どこに行くの……?」
岡部「ラボだ。済まないが俺は出かけてくる」
萌郁「待って……置いて……いかないで」
岡部「な、なぜ泣きそうになるのだ?」
萌郁「……岡部くん。一人に……しないで」
岡部「わ、分かった! ……来るなら来い、好きにしろ」
岡部「おい、指圧師」
萌郁「その呼び方、嫌」
岡部「くっ……萌郁、一つ聞いても良いか」
萌郁「うん、何?」
岡部「……なぜ俺達は腕を組んで歩いているんだ」
萌郁「なぜって言われても、いつも通りだから」
岡部「いつも通りだと……? この世界線の俺は何をしているのだ……」
萌郁「嫌、だった?」
岡部「正直に言えば……恥ずかしいから止めてくれ」
萌郁「分かった……」
萌郁「岡部くん、どうかしたの?」
岡部「……なぜ手を繋ごうとする」
萌郁「いつも通り、だから」
岡部「恥ずかしいから止めろ」
萌郁「……分かった。じゃあ、これで」
岡部「ぬわっ!? う、後ろから抱き着くのも無しだ! というかこれでは歩けないだろうが!?」
萌郁「でも……いつも通りだから」
岡部「こ、これもなのか?」
萌郁「私は、これが一番好き」
萌郁「……っ!」
岡部「済まないとは思うが……その記憶は俺には無い。だから、その」
萌郁「……嫌」
岡部「えっ?」
萌郁「岡部くんと離れるなんて嫌……別れるなんて……絶対嫌、嫌、嫌嫌嫌!」
岡部「も、萌郁? いや、とりあえず落ち着いて」
萌郁「岡部くんと離れるくらいなら……死んだ方が良い」
萌郁「それでも、岡部くんの恋人じゃなくなるのは嫌……お願い、捨てないで……」
岡部「わ、分かった……捨てるとかそういうのは今は考えるな」
萌郁「……離れない?」
岡部「とりあえず……今は離れなくても良い」
萌郁「それなら、こうしても良い?」
岡部「……手を繋ぐのは無しだ、腕も駄目だからな」
萌郁「……寂しい」
岡部「近くに居るのに寂しいとか言うな……ほら、行くぞ」
岡部(俺はいったい何をしている……ついさっきまで、深刻な場面だったはずだ)
岡部(……ともかく、今は確認するのが先だ)
岡部(ブラウン管工房は……あった! 店内にもブラウン管が並んでいる、ということは)
天王寺「よっこらせ……ったく、歳っつうもんは嫌なモンだ」
岡部(ミスターブラウン……生きている? この世界線では死んでいないのか……)
萌郁「岡部くん、あの人がどうかしたの?」
岡部「萌郁、お前はあの男に見覚えは無いか?」
萌郁「……ごめん、知らない」
岡部「そうか……いや、知らなくていいんだ」
岡部(それよりもラボだ、ラボがどうなっているか確認しなければ……)
岡部「ど、どうも。相変わらずのようですね、ミスターブラウン」
天王寺「はあ? ミスターブラウン? 誰だそれ?」
岡部「……それは、冗談ですか? 俺のことを忘れたんですか?」
天王寺「冗談も何も……初対面の相手に忘れたのか、なんて言われてもな」
岡部「初対面……?」
天王寺「ああ、こっちが忘れちまってるってのなら謝るけどよ。悪いが覚えがねえな」
岡部(ミスターブラウンとは面識が無い……? ということは……)
岡部「すいません、この上の部屋はどうなっていますか!?」
天王寺「この上? どうなってるのも何も……空き部屋だよ」
岡部「空き部屋……何も、無い?」
岡部「……あの、本当に空き部屋なんですか? 何も無いんですか?」
天王寺「おう、ちゃんと掃除はしてあるから心配すんな。どうだ、見てくか?」
岡部「い、いえ……また今度、良かったらお願いします」
天王寺「そうか、気が向いたら来てくれよ。そこまで高い家賃は取らねえから」
岡部「ありがとうございます……それでは、また」
岡部(ラボが……無い。そして電話レンジも存在しない……?)
岡部「……いや、今のところ大丈夫では無いな」
萌郁「あの人と、何かあったの? それとも、あの部屋を借りたいの?」
岡部「そういうことでは無いんだ……」
岡部(何も変わらない、そう思って俺はDメールを送った。……それなのに、どういうことだ)
岡部(ラボも無い、これではDメールが送れない……そして、萌郁が恋人)
岡部(この世界線はどうなっている……い、いや、まだ他のラボメンが何か知っている可能性がある!)
岡部「……メイド喫茶だ。そこに行けば、あいつが居るはずだ」
萌郁「岡部くん……メイドさん、好きなの?」
岡部「……はい?」
萌郁「それなら……言ってくれれば、着るのに」
岡部「ち、違う! メイドが好きなのではない、そこに会いたい人物がいるというだけだ!」
萌郁「それ……女の子? メイドさん?」
岡部「女では無い、男だ……何でそんなことを気にする」
萌郁「……私より、他の女の人の方が良いのかなって不安になったから」
岡部「なっ……! と、ともかく女目当てでは無い!」
フェイリス「お帰りニャさいませ。ご主人様♪」
岡部「フェ、フェイリス! 良かった……お前はここに居てくれたんだな」
フェイリス「ニャニャ? 申し訳ないけど、ご主人様は初めて見るニャ」
岡部「何……? 俺のことが分からないのか?」
フェイリス「ニャー……ごめんニャさい、初めましてだと思うニャン」
岡部「そ、そんな……本当に、知らないのか?」
フェイリス「うーん、フェイリスと知り合いってのは間違いないのかニャ?」
岡部「……間違い無い、俺の目を見れば分かるだろう?」
フェイリス「どれどれ……ニャニャ! 言ってることは本当みたいだニャ……」
岡部「……ラボ、という言葉に聞き覚えは無いか? それかDメールという言葉は」
フェイリス「うーん、分かんないニャ♪ ご期待に応えられなくてごめんニャン」
岡部(くっ……フェイリスは駄目だったか。それでも、あいつならきっと……ん?)
岡部(何だ? 後ろから冷たい視線を感じ――ッ!?)
萌郁「…………」
岡部「も、萌郁? どうした……?」
萌郁「……やっぱり、女の子目当てだった」
岡部「ち、違う! 誤解だ! 俺が会いたかったのは……」
「おーい、オカリーン!」
岡部「この声は……! ダァル! どこだ、どこに居る!?」
岡部「ダル……お前に会えることがこんなにも嬉しいなんて思わなかったぞ!」
ダル「うへっ……そんなアッー!な展開はお断りします」
岡部「ええい、そういうことでは無い! ……ダル、お前に聞きたいことがある」
ダル「聞きたいこと? まあ、立ち話もアレだし座れば?」
岡部「ああ、そうさせてもらおう。フェイリス、アイスコーヒーを頼む」
フェイリス「お任せニャンニャーン♪」
ダル「……オカリン、フェイリスたんを呼び捨てとか許されることじゃないお!」
岡部「お、落ち着け! ともかく座って話そう、な?」
萌郁「これも、いつも通りだから」
ダル「相変わらずのバカップルっぷり。何それ自慢なの? 死ぬの?」
岡部「自慢では無い! その、色々あってだな」
ダル「まっ、高校の頃から有名なバカップルだったし今更感はあるけど」
岡部「こ、高校の頃から?」
ダル「それはもう、四六時中くっついてるから見ていられなかったお」
岡部「……萌郁、本当なのか」
萌郁「うん。でも、学校では我慢してたつもり」
ダル「あれで我慢とか……これは妄想が捗りますな」
岡部(……おそらく、聞いたら死にたくなるんだろうな)
岡部「ダル、お前はラボという言葉に聞き覚えはあるか?」
ダル「ラボ? 研究所のことなら、僕たちまだ一年だし」
岡部「そうではない、秋葉原にある俺達の未来ガジェット研究所だ」
ダル「未来ガジェット研究所? うーん……何もヒットしないお」
岡部「そ、そんな……Dメールはどうだ!? 鈴羽も覚えてないのか!?」
ダル「お、落ち着けってオカリン。……悪いけど、何も分からないのぜ」
岡部「……そうか」
萌郁「岡部くん……」
フェイリス「お待たせしましたニャ、アイスコーヒーになりますニャン♪」
岡部(……落ち着け、今はブラックコーヒーで頭を切り替えて)
フェイリス「ガムシロップとミルク、入れちゃうニャン♪」
岡部「……忘れてた。ああ……全部入れやがって、もう手遅れか」
ダル「出たー! フェイリスたんの奥義、目を見てまぜまぜー!」
岡部(世界線が移動したからといって、この辺は変わらないのか……)
萌郁「……む」
フェイリス「できましたニャ。ご主人様、ゆっくりしていってね♪」
ダル「はあ……フェイリスたん、マジ天使だお」
岡部「まったく……ん? どうした、萌郁」
萌郁「さっきの、今度やってあげるから……メイド喫茶には行かないで欲しい」
岡部「またどうでもいいことを……」
ダル「夏なのに心が寒い」
岡部「ああ……時間を取って済まなかった」
ダル「別に良いけど。でも、メイド喫茶にオカリンが来るなんて意外ですた」
岡部「ダルのことだ、ここに居るだろうと思ってな」
ダル「なるほど。まっ、彼女と来る場所では無いと思われ」
萌郁「メイド服……買った方が良いかな」
岡部「そんな心配せんでいい!」
ダル「それならドンキの上に行けばたくさん見つかるかと。あっ、是非とも写真を一枚」
フェイリス「それならメイクイーンのメイド服を着るのもアリだと思うニャン」
岡部「お前達も余計なことを言うな! まったく……」
岡部(世界線が変わり、ラボやその他の記憶も無い。……それなのに、性格は変わっていない)
岡部(いや、もしかすると……変わったのは、俺だけなのか?)
萌郁「岡部くん、今度はどこに行くの?」
岡部「柳林神社だ。そこには……あいつが居る」
萌郁「それ、あの子のこと?」
岡部「あの子って、ルカ子のことか? 知っているのか?」
萌郁「うん。何度か、岡部くんと一緒に会ってるから」
岡部「そうか、それなら話は早い。……だが、ダルの感じから言って、期待はできないがな」
ルカ子「あっ、岡部さんに桐生さん。こんにちは」
岡部「ルカ子、岡部でないと何度言えば分かるんだ。俺は鳳凰院凶真だ」
ルカ子「えっ? 鳳凰院凶真、ですか?」
岡部「何だその反応は。それより、妖刀・五月雨はどうした?」
ルカ子「妖刀……ごめんなさい、ボクには何のことだか」
岡部(まさか……鳳凰院凶真という名も、刀のことも知らないのか?)
萌郁「岡部くん、大丈夫?」
岡部「あ、ああ……大丈夫だ。ルカ子、俺とお前が知り合いなのは間違い無いな?」
ルカ子「えっ? は、はい、ボクが街中で男の方に絡まれていたのをお二人に助けていただいて」
岡部(二人……これは微妙に違っているのか。萌郁が一緒という位で他はあっている……)
ルカ子「ラボ、ですか? ……ごめんなさい、それも何か分からないです」
岡部「そうか……忙しいところ済まなかった。用件は以上だ」
ルカ子「分かりました。それで、今日も買っていかれますか?」
岡部「今日も、って何を買うというのだ?」
ルカ子「縁結びのお守りですよ。……でも、お二人には必要ないと思いますけど」
岡部「え、縁結び!?」
萌郁「今日は大丈夫。また今度、来る時に」
ルカ子「ええ、分かりました。ちゃんと用意しておきますからね」
岡部(ルカ子もラボに関しての記憶が無い……他のラボメンは)
岡部(紅莉栖、鈴羽……いや、ダルがあの調子ではおそらく)
萌郁「岡部くん、暗くなってきたから、そろそろ帰らないと」
岡部「……そうだな。今日は一度家に帰って、それから考えるしかなさそうだ」
萌郁「美味しいご飯、作ってあげるから……元気出して」
岡部「……ご飯? 何を言ってるんだ、俺の家まで来るつもりか?」
萌郁「何って、いつもみたいに私がご飯を作るつもり」
岡部「いつもみたい? お前……池袋の俺の家に通ってるのか?」
萌郁「違う。岡部くんは今――私と同棲してるから」
岡部「どう……せい?」
岡部「つまり……最初に居たのは萌郁の部屋でもあり、俺の部屋でもあったということか」
萌郁「一緒に住み始めて、五か月くらい」
岡部「五か月、大学に入る前か……」
萌郁「私と岡部くんは、一緒の大学に行ってる」
岡部「何……? お前は大学生なのか?」
萌郁「岡部くんと一緒に勉強して、一緒に入学した」
岡部「……お前はいったい、どこまで一緒に居るつもりなんだ」
萌郁「ずっと。岡部くんの近くに居たいから」
岡部「なっ……この世界線のお前は、ずいぶん物事をはっきり言うのだな」
萌郁「岡部くんが、そうするように言ってくれた」
岡部「俺が言ったのか。……厄介なことを言ってくれたものだ」
萌郁「岡部くん。ご飯、食べる?」
岡部「あ、ああ。料理はできるのか」
萌郁「お母さんに、教えてもらった」
岡部「母親? ……萌郁、お前には母親は居なかったはずでは」
萌郁「私のじゃなくて、岡部くんのお母さん」
岡部「お、俺の母親?」
萌郁「居候させてもらってた時に、教えてもらった。その時に、お母さんって呼んでって言われたから」
岡部「ま、待ってくれ……そうだな、まずはそこも確認した方が良いよな」
萌郁「確認?」
岡部「萌郁、俺とお前の今までの話、聞かせてくれないか」
萌郁「……分かった」
岡部「そこにメールが届いた。そうだな?」
萌郁「うん。最初は気にも留めなかった。……でも、段々気になってきたから」
岡部「死ぬ前にそのメールに従ってみよう、そう思ったのか」
萌郁「そして私は、岡部くんを探し始めた。学校はすぐに分かった」
岡部「……当然だ、俺が分かりやすい文章に変えてやったのだからな」
萌郁「あのメール、岡部くんが送ってくれたの?」
岡部「送ったのは俺だ。だが……送ろうとしたのはお前自身だ」
萌郁「私が、決めた?」
岡部「それはまたいつか話す。今は過去のことを教えてくれ」
萌郁「あれは、八月の終わり。池袋の街を歩いていて――」
萌郁「岡部……岡部倫太郎……頼る……」
萌郁(暑い……でも、今倒れたら……もう、会えない)
萌郁「池袋、岡部……どこ、どこなの?」
萌郁「……っ! お、岡部……りん……」
「お、オカリーン! 女の人が倒れてる!」
「何!? 本当だ……熱中症かもしれないな。とりあえず、救急車を呼ぶぞ」
「う、うん。オカリン、この人……大丈夫かなぁ」
「……まだ息はある。日陰まで運んで救急車を待とう」
萌郁(誰……? 誰かの……声が……)
「あっ、気が付いた! 大丈夫ですか?」
萌郁「あなたは……誰?」
まゆり「はじめまして、椎名まゆりです。ここは病室ですよ。オカリン、目を覚ましたよー」
岡部「本当だ。どうなるかと思ったが……無事で良かった」
萌郁「あなた達が……助けてくれたの?」
岡部「その通り……この、鳳凰院凶真が直々に救ってやったのだ! 感謝するが良い! フゥーハハハ!」
萌郁「ほうおういん、きょうま?」
まゆり「もうー、オカリン。ちゃんと自己紹介しなよー」
岡部「むう……仕方ない、特別に教えてやろう。……岡部倫太郎だ」
萌郁「岡部、倫太郎……? 岡部……倫太郎……っ!」
岡部「ど、どうした?」
萌郁「本当に、岡部倫太郎……なの?」
岡部「な、何だ……俺は岡部倫太郎で間違いないぞ」
まゆり「オカリン、そんな言い方しちゃダメだよー」
萌郁「……本当に、会えるなんて……思わなかった」
岡部「その言い方だと、俺のことを知ってい……な、なぜ泣いているんだ!?」
萌郁「ごめん、なさい……でも、不思議と……嬉しくて」
岡部「そ、そうか。まあ、この鳳凰院凶真に会えて感涙にむせぶのも無理はないがな、フゥーハハハ!」
岡部「ああ、それ以外にも栄養不足、寝不足、疲労、様々な要因で倒れたらしい」
まゆり「ごはん、食べてなかったんですか……? まだ暑いからちゃんと食べないと……」
萌郁「食べる気……しなかったから」
岡部「何も食べずに、いったい何をしていたのだ?」
萌郁「……メール」
岡部「メール? いったい何が――ッ!?」
『池袋の岡部倫』
『太郎を頼れ○』
『○中学』
萌郁「……私は、このメールを信じてここまで来た」
まゆり「信じて? えっと……何かあったんですか?」
萌郁「……私、死のうかどうか迷っていたの」
岡部「なっ……! じ、自殺するつもりだったのか?」
萌郁「生きてるのが、イヤになってきたから……多分、後少しで自殺するところだった」
まゆり「そ、そんなのダメだとまゆしぃは思います……」
岡部「じ、自殺など馬鹿げたことをするな! ま、まだ若いではないか!」
萌郁「……私の方が、年上だと思う」
岡部「そ、そういう問題では無い! 死んでも何にもならないぞ!?」
萌郁「……どうすれば、良いの?」
岡部「えっ……?」
まゆり「……そんなこと無いとまゆしぃは思うのです。きっと家族の人だって……」
萌郁「家族、居ないから……」
岡部「そ、そうなのか……」
萌郁「……何の希望も持てない。こんな性格だから……何もできない」
岡部「…………」
萌郁「だから、死んでも何も変わらな」
岡部「……黙れ! 黙れえ!!」
まゆり「オカリン……?」
萌郁「……桐生、萌郁」
岡部「桐生、萌郁。お前は誰にも必要とされないと言った、それに間違いは無いな?」
萌郁「……うん」
岡部「フッ……だが、それも今日で終わりだ。その存在、
この狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真が最大限生かしてやろうではないか!」
萌郁「どういう……こと?」
岡部「つ、つまり……俺やまゆりがお前を必要としてやるから、その、死のうなんて考えるな!」
まゆり「あっ……そうだよ! 萌郁さん、まゆしぃ達が居るから、もう一人じゃないのです」
萌郁「一人じゃ、無い?」
椎名まゆりが預かった。……今後、勝手に命を絶とうとすることは許さん!」
萌郁「…………」
岡部「な、何だ。急に黙られると……恥ずかしいというか」
萌郁「……私の命、岡部くんが預かってくれる?」
岡部「お、岡部では無い。鳳凰院凶」
まゆり「オカリーン?」
岡部「むっ……わ、分かった。お前の命、俺が預かる。だから、その……死んじゃダメだ」
萌郁「……分かった。私……岡部くんに従うよ」
岡部「い、いや、従うとかまではいかなくても……まあ、それでいい」
まゆり「萌郁さん、今日からよろしくね?」
萌郁「……よろしく」
岡部「あのメール一つが……ここまでお前を変えたのか」
萌郁「私は、岡部くんとまゆりちゃんに感謝している。……私を、世界と繋ぎとめてくれたから」
岡部(前の世界線では萌郁は世界との断絶を恐れていた。
だが、この世界戦では……俺とまゆりが居た)
萌郁「だから、私は岡部くんに従う。岡部くんの言うことなら何でも信じる」
岡部「……俺に、依存しているのか」
萌郁「そう。私は、岡部くんの居ない世界なんていらない」
岡部「そ、そこまで言うか」
萌郁「この数年間ずっと、こう思って生きてきたから」
萌郁「私が、岡部くんと離れたくないから……ずっと一緒に居ようとした」
岡部「ずっと一緒に?」
萌郁「食事の時も、お風呂も、寝る時も、全部一緒じゃないと落ち着かなくなってきた」
岡部「なっ……! そ、その辺は我慢するべきだろうが!?」
萌郁「我慢、できなかった。そうしたら、岡部くんも……我慢できなくなって」
岡部「……はあ?」
萌郁「押し倒されて、キス……されて」
岡部「ま、待て! その、それは……つまり」
萌郁「……うん」
岡部「この世界線の俺、何ということをしてくれたんだ……」
岡部「さっき言っていたな……六月六日だから、九か月近くは我慢したのか、俺」
萌郁「……もう少し、前から」
岡部「つ、つまり……押し倒す勇気はあったが、告白はできなかったと」
萌郁「……うん」
岡部「自分のこととはいえ……認めたくないものだな……」
萌郁「うん。この部屋は、二人でアルバイトをして借りてる」
岡部「アルバイト? 何のアルバイトを俺はしているんだ?」
萌郁「岡部くんは、レストランのホール。私はキッチン」
岡部「信じられん……だが、それが真実なのか」
萌郁「……何か、思い出した?」
岡部「……済まない。今、話を聞いても実感はわかない」
萌郁「……分かった。お腹減ってない? ご飯、用意するから」
岡部「ああ……頼む」
(だが、Dメール一つでここまで変わるものなのか?)
(まゆりも萌郁もミスターブラウンも死なない……それは確かに理想だ、しかし)
(本当に……誰も死なないのか。いつか、まゆりの様に倒れて……)
(……っ! そうなった時、誰が助けるんだ? 誰がそれを防ぐんだ?)
(そんなの、俺しかいない……タイムリープして解決の道を探すしかない)
(でも、今の俺には……何も無い。仲間も、ラボも、頼れる紅莉栖やダルも居ない……)
(……この世界線は、もしかしたら――後戻りができないのでは)
(まゆりが死んだら、もう戻らない。萌郁が死んでももう戻らない……そして)
(俺が死ぬ可能性も……ある)
岡部「あ、ああ……済まない」
萌郁「好きなだけ、食べていいよ」
岡部「おおっ……美味そうではないか」
萌郁「家事は、お母さんに教えてもらったから」
岡部「では、このハンバーグを……あむ、……うん、美味い!」
萌郁「……良かった」
岡部「やるな指圧師、これならいくらでも」
萌郁「指圧師じゃなくて、萌郁」
岡部「す、済まない……」
萌郁「満足してくれたみたいで、嬉しい」
岡部(不安な要素はいくつもある。だが、今は休んで明日に備えるしかない……)
岡部(電話レンジさえあればまだ何とかなる。ブラウン管は確認した、可能性はゼロでは無い)
萌郁「お風呂わいてるけど、入る?」
岡部「……思ったより汗をかいたから、入らない訳にはいかないな」
萌郁「それなら、先に入っていて」
岡部「ああ、そうさせてもらおう」
岡部(はぁ……ずいぶん広い浴槽だな。一人では大きすぎるくらいだ。……しかし)
(……冷静に考えると、俺はどうしてここまで萌郁を受け入れているんだ?)
(あいつはまゆりを……たとえ世界に決められていたとしても、何度も、あいつは)
(だが、この世界線の萌郁が俺に向ける感情は……全く違う。敵対とは程遠い……)
(……あれが、愛情とかいうものなのか? わ、分からん……ええい、どうすれば)
(考えても仕方ないか……。そういえば、何か忘れているような)
(萌郁は俺から離れない、と言っていた。それはどんな場合でも変わらない……)
(……! まさか!?)
萌郁「岡部くん。湯加減、どう?」
岡部「や、やっぱりこうなるのか!?」
萌郁「いつも、こうしてるから」
岡部「それは前の俺であって、今の俺は……」
萌郁「ダメ」
岡部「い、いや、ダメと言われても……」
萌郁「少し詰めてくれないと、入れない」
岡部「詰めなければお前は入れない? それならば、このまま――って、おい!? 結局入ってくるのか!?」
萌郁「んっ……狭いけど、密着できるから私はこれでも良い」
岡部(お、俺が良くない……というか何だこの柔らかさは!? この感じ、場所を考えると……)
岡部(……臀部、まさかこんな時に直に触れることになるなんて)
萌郁「……岡部くんにこうされてると、落ち着く」
岡部(俺は落ち着かん……そうだ、もう上がってしまえば良いではないか!)
岡部「す、済まないが俺はもうあがる。後はゆっくり入っていてくれ!」
萌郁「それなら、私も出る」
岡部「なっ!? ば、馬鹿、急に立ち上がったら……その、大事なところが……」
萌郁「……岡部くんには、いくら見られても良い。それに……もう何度も見られてるから」
岡部「だ、だが俺はまだ……って何を言わせるんだ!? ともかく……先にあがる」
岡部(はっ……!? お、落ち着け……こんなことをしている場合では)
岡部(もういい……寝よう。……うん?)
萌郁「……岡部くん? どうかしたの?」
岡部「萌郁、一応確認しておくが……ベッドはいくつあるんだ?」
萌郁「一つだけ」
岡部「そこで俺達は……どうやって寝ていたんだ?」
萌郁「くっついて、一緒に寝てた」
岡部「予想通り過ぎる……」
萌郁「岡部くん、一緒に寝るのは……嫌なの?」
岡部「嫌、というか……流石にそれは」
萌郁「大丈夫。岡部くん、私を抱いてるとよく眠れるって言ってくれたから」
岡部「それは前の俺だ! 今の俺はそれだと逆に眠れないんだ!」
萌郁「どうして?」
岡部「それは……ともかく、駄目なものは駄目だ」
萌郁「……私、岡部くんと一緒じゃないと眠れない」
岡部「そ、そう言われてもだな……」
萌郁「岡部くん……お願い」
岡部「…………」
萌郁「……こっちを向いて欲しい」
岡部「駄目だ、それでは寝られん」
萌郁「……じゃあ、こうする」
岡部「だ、だから後ろから抱きしめるのは止めろと……」
萌郁「こうしないと、不安で……眠れないから」
岡部「し、しかし……」
萌郁「……お願い」
岡部「……分かった、今晩だけだ。明日からは考えさせてもらうぞ」
萌郁「ありがとう……んっ」
岡部(萌郁の胸が、背中に……)
萌郁「まだ、起きてるの?」
岡部「……お前のせいで眠れん。なあ、離れても問題ないだろう?」
萌郁「……イヤ」
岡部「強情なヤツだ……仕方ない、そのままで良いから質問に答えろ」
萌郁「分かった」
岡部「数年間、一緒に居ると言っていたが……いつもこうだったのか?」
萌郁「うん。私は岡部くんの側にずっと居た」
岡部「それを俺は、受け入れていたということか?」
萌郁「俺の側に居ろ、って言ってくれた。いつまでも一緒だ、って言ってくれた」
岡部(……狂気のマッドサイエンティストが聞いて呆れるな)
萌郁「岡部くんは、岡部くんだから」
岡部「……答えになってないぞ。まあいい、その内お前も気づく」
岡部(いくら姿が同じだからと言って、中身はまるで違う。……いつか愛想が尽きるだろう)
岡部「しかし、その呼び方は何だ? 四年間も付き合って『岡部くん』のままなのか?」
萌郁「岡部くんって呼ぶと、安心する。……だから、このまま」
岡部「……お前が良ければそれでも良いが、名前や愛称で呼ばないのか?
いや、流石にまゆりみたいにオカリンとかは勘弁してもらいたいが……」
岡部「どんな時に呼ぶんだ?」
萌郁「……恥ずかしいから、言えない」
岡部「そ、そうか……まあ、そのままの方がこちらも楽だから良い」
岡部(恥ずかしいと言われても……この状況が既に十分恥ずかしいのだが)
岡部「……なあ、萌郁」
萌郁「…………すー」
岡部(寝てる……人の気も知らずにいい気なものだ)
岡部(……明日は別の場所も調べてみるか。ラボが無いとはいえ、まだ戻れないと決まった訳では無い)
萌郁「……おかべ、くん……んん」
岡部(寝言でも俺の名前か。……よし、俺も眠ろう)
岡部(……結局、一睡もできなかった)
萌郁「んっ……岡部くん? もう起きてたの?」
岡部「……お前のせいで早起きさせられたんだ」
萌郁「……? とりあえず、朝ご飯用意するから」
岡部(鈴羽と紅莉栖以外のラボメンが全員生きているというのは、昨日確認できた)
岡部(今日は何を調べれば良いのだろうか……。ラボが無い、つまりは電話レンジも無い訳だ)
岡部(それに、まだまゆりが死なないと決まった訳でもない……後で連絡してみるか)
岡部「トーストにウィンナーに目玉焼き……よし、冷めない内に食べてしまおう」
萌郁「お箸、どうぞ」
岡部「済まない。どれ……んっ! 美味いな……パリッとしたウィンナーなど久しぶりだ」
萌郁「岡部くん、それが好きだって言ってたから」
岡部「萌郁、この辺で古い家電が売っているところは無いか?」
萌郁「古い、家電? リサイクルショップとかなら」
岡部「そこで良い。今日は俺をそこまで案内してくれ」
萌郁「今日は……アルバイトだから」
岡部「そうか、それなら仕方ないな……俺一人で行くか」
萌郁「でも、一緒に行かないと」
岡部「俺が? ……ん? アルバイトって確か……」
萌郁「岡部くんも、今日はシフトに入ってる」
岡部「な、何? ということは――」
岡部(なぜだ……なぜ狂気のマッドサイエンティストがファミレスでバイトなどしなければ)
萌郁「…………」
岡部(厨房からの視線……? 萌郁……常に俺を見ていないと気が済まないのかあいつは)
岡部(しかし、ファミレスのバイトなどどうすれば)
「注文お願いしまーす」
「これ三番テーブルに」
「コーヒーお替りくださーい」
「早くしてくれますかー?」
岡部「は、はい! 今行きます!」
岡部(なぜだ……なぜこんなことになった……)
岡部「……疲れた」
岡部(こんなことをしている場合では無い……俺にはやるべきことが)
萌郁「岡部くん、大丈夫?」
岡部「萌郁……なぜ俺がファミレスでバイトしなければいけないんだ」
萌郁「働かないと、家賃とか払えないから」
岡部「そういうことではない。俺には大事な用がある、それを差し置いてバイトなど……」
萌郁「……明日は暇だから、大丈夫だと思う」
岡部「それならば明日はレンジを探す。……リサイクルショップに無かったとしても、秋葉原に行けば」
萌郁「レンジ? お家のはまだ壊れてないけど……」
岡部「……そうではない。だが、どうしても電子レンジが必要なのだ」
萌郁「分かった。岡部くんのために、私も協力する」
岡部(あの電子レンジ、X68000、それにブラウンがあればおそらく再現は可能だ)
岡部(それが揃えば……まだ十分、可能性はある)
岡部(夜飯を済ませ、疲れを癒すためにも風呂に入りたいところだ。
……しかし、昨日の様なことは避けねばならん)
萌郁「お風呂の準備、できたから」
岡部「……先に言っておくが、今日は一緒に入らんぞ」
萌郁「……じゃあ、先に入って良いよ」
岡部「その手には乗らん、昨日みたいにまた後から入ってくるつもりだろう」
萌郁「だって……一人で、入りたくないから」
岡部「こ、子供みたいなことを言うな! 一日位一人で入っても良いではないか……」
萌郁「……明日もそう言って、断られる気がする」
岡部「ぐっ……鋭いな」
萌郁「嫌って言われても、絶対一緒に入るから」
岡部(確固たる意志とはこういうことか……だが、このままでは――っ! そうだ!)
岡部「……分かった、一緒に入ってやろう。ただし、条件がある」
萌郁「条件?」
萌郁「……岡部くん、入るね」
岡部「ああ、いつ入ってきても良いぞ」
萌郁「……やっぱり、ちょっと恥ずかしい」
岡部「裸より恥ずかしいとは変なヤツだな。早く入って来い、俺はいつ出ても良いんだぞ」
萌郁「……いじわる」
岡部(そう、俺が出した条件とは……水着を着用しての入浴、これならば直視しても問題は無い!)
萌郁「…………」
岡部「やっと来たか、そこまで恥ずかしがる必要など……なっ!?」
岡部(い、いや、水着なら大丈夫とか思ったけど……これはこれでマズイのではないか?)
萌郁「湯船に入りたいから……少し、詰めてくれる?」
岡部「あ、ああ……」
萌郁「……これ、岡部くんが選んでくれた水着」
岡部(余計なことを……まあ、確かに似合ってはいるのだが)
萌郁「一緒に海に行ったことも……覚えてない?」
岡部「ああ……まったく記憶に無い。というか、俺達は海なんかに行ったのか」
萌郁「……私の水着姿が見たいって……言ったから」
岡部「そ、そうなのか……」
萌郁「今の岡部くんは……どう、思う?」
岡部「どうって……何がだ」
萌郁「私の……水着」
岡部「そ、それは……まあ、何だ、似合ってるとは……思う」
萌郁「……ありがとう」
岡部(何だこの雰囲気は……やり辛い)
岡部(いっそのこと実家に戻った方が……いや、萌郁も着いてくるだろうし無駄か……)
萌郁「そろそろ、寝る?」
岡部「……そうだな、今日は色々と疲れた。さっさと寝て明日に備えねば」
萌郁「あの……」
岡部「ん? 言いたいことがあるなら言えば良いだろう?」
萌郁「……岡部くん、今の岡部くんは……私と、その」
岡部「急にもじもじしてどうした、最後まで言え」
萌郁「私と……したくない?」
岡部「……へっ?」
萌郁「……これ」
萌郁が恥ずかしそうに取り出したのは、岡本さんの近藤さんだった。
岡部「なあっ!? お、お前は、いったい、な、何を考えている!?」
萌郁「……岡部くん、毎日……してくれたから」
岡部「ま、毎日……その、それを消費というか装備というか……」
萌郁「……したくないの?」
岡部「し、しない! それは前の俺との関係であって、今の俺とはその……と、ともかく無しだ!」
萌郁「……分かった」
岡部(……前の俺、どんだけ若かったんだ)
岡部「ああ……」
岡部(い、いかん……あんなことを言われたから意識してしまうではないか……)
岡部(確かにそういうのが盛んな歳ではあるが……いくら何でも毎日はどうかと思うぞ、俺)
萌郁「……岡部くん」
岡部「な、何だ?」
萌郁「電子レンジって、何に使うの?」
岡部「それは秘密だ。だが、それが無ければ何も始まらないんだ」
萌郁「……ねえ、岡部くん」
岡部「今度は何だ……」
萌郁「どこにも、行かない?」
岡部「……行くあてなど無い。とりあえずはここに居る」
萌郁「……分かった」
岡部(電話レンジができるまでの話だが……言わないでおいた方が良いだろう)
萌郁「……すぅ……おか、べ……くん」
岡部(お前のせいで寝られなくなったというのに……)
岡部(いや、ここで眠らなければ明日に響く……何としてでも睡眠をとらないと)
岡部(……精神を研ぎ澄ませ。感覚を集中させろ……そして――)
岡部(うーぱが一匹、うーぱが二匹……うーぱが三匹……)
『……私と、したくない?』
岡部(……くっ! 立ち去れ煩悩……! うーぱが四匹、うーぱが五匹……うーぱが……)
萌郁「んっ……えっ? 岡部くん……?」
岡部「IBN5100が5098台……IBN5099が5100台……いや、違うな……。
というかこれだけあれば5000億か……ふぅーははは……」
萌郁「お、岡部くん……大丈夫?」
岡部(また一睡も……できなかった……)
萌郁「デートって考えても、いい?」
岡部「で、デートなどでは無い!」
岡部(……浮かれている暇は無い、戻れなければ何も解決してないのと同じだ)
岡部(多くの想いを犠牲にしてここまで来たのに……俺はそれを台無しにしてしまった)
岡部(……萌郁がどうなるか、そんなことを考えてはいけなかった)
岡部(大丈夫だ、必ず戻れる。……今までもそうしてきたんだ)
萌郁「……岡部くん」
岡部「どうした、何かあったか?」
萌郁「本当に、どこにも行かない?」
岡部「あ、ああ、昨日もそう言っただろうが」
萌郁「……うん。それなら、良いの」
萌郁「ごめん……役に立てなくて」
岡部「いや、気にするな。秋葉原にならきっとある、すぐに見つかるはずだ」
萌郁「……うん」
岡部「そういえば、休日は何をしていたんだ? 俺と行動するというのはなんとなく分かるが」
萌郁「海に行ったり、お買い物したり、勉強とか、色々」
岡部「……ただのリア充では無いか。狂気のマッドサイエンティストが情けない……」
萌郁「今の岡部くんは、それをまだ言ってるの? あと、鳳凰院とか」
岡部「まだ……? 前の俺は鳳凰院凶真の名を捨てたと言うのか?」
萌郁「高校に入る位には……あまり言わなくなったと思う。だから、少し懐かしい」
岡部「な、懐かしいなどと言うな、鳳凰院凶真は死なん」
岡部「電子レンジ、X68000(ペケロッパ)、ともかくこの二つを探さなければな……」
萌郁「どこを探すつもり?」
岡部「ペケロッパなら、古いパソコンを置いてあるところを巡れば見つかるだろう」
萌郁「新しいパソコンじゃ、ダメなの?」
岡部「限りなく近い状態を再現したい。偶然をもう一度起こすにはそれが一番望ましい」
萌郁「……何を作るつもり?」
岡部「それは……遠隔操作ができる電子レンジだ」
萌郁「遠隔操作?」
岡部「ああ、携帯電話でレンジが作動するという最高の発明品である!」
萌郁「温めるものは、どうすれば良いの?」
岡部「それは……自分で中に入れてもらう」
萌郁「……それ、あまり意味ないと思うよ」
岡部「なっ……う、うるさい! ……ともかく、行くぞ」
岡部「ふ、フゥーフフ……フゥーハハハ! これも運命石の扉の選択か! 俺はやはり……望まれた存在なのだ!」
萌郁「二つとも、すぐに見つかって良かった」
岡部「ああ、まさか全く同じ電子レンジが手に入るとは……これで希望が見えてきた!」
萌郁「でも、岡部くん」
岡部「うん? どうした?」
萌郁「電子レンジとパソコン、どっちもは運べないと思う」
岡部「あっ……。ま、まあいい。ペケロッパはまだ必要無いだろう……ともかく電子レンジを持って帰る」
萌郁「……レンジならもっと良いのがあるのに」
岡部「そういう問題では無いのだ。……さあ、ここからが俺の力を発揮するところだ!」
岡部「はぁ……はぁ……重かった」
萌郁「……手伝うって言ったのに」
岡部「お前に持たせる訳にもいかないだろうが……いや、休んでる場合では無い」
岡部(電話レンジをもう一度作り、ブラウン管工房の上で実験を行う。そうすれば、きっと……)
萌郁「岡部くん……?」
岡部「済まないが、今から作業に入る。あまり相手はできないが悪く思うなよ」
萌郁「分かった。ご飯は、食べる?」
岡部「ああ、用意してくれれば助かる。必要な物は秋葉原で揃えた……よし、始めるぞ」
萌郁「ご飯、食べる?」
岡部「もうできたのか? いや、それだけ時間が経ったということか……」
萌郁「帰ってからずっとそうしてる」
岡部「少し休むか……。今日の夕飯は何だ? この匂いだと……」
萌郁「カレー、たくさん作ったから」
岡部「よし……すぐに用意してくれ。腹が減って仕方が無い」
萌郁「分かった、少し待ってて」
岡部(萌郁の料理は今まで感じからいって期待はできる。あの二人の様なことには……)
岡部(……そういえば、もう三日も経っているのか。たった一通のメールが、こんなことになるとは)
岡部(俺は、あの世界線に戻らなければならない。……萌郁には悪いが、その時はきっと前の俺が)
岡部(萌郁に悪い? ……そんなこと、少し前の俺なら絶対に思わなかっただろうな)
萌郁「五年間、岡部くんと一緒に居るから」
岡部「味覚も完全に把握している、ということか。まあ、前の俺とは少し違うだろうが」
萌郁「……そんなことは、無いと思う」
岡部「いや、流石に差異はあるはずだ。お前の料理が美味いというのに変わりは無いがな」
萌郁「ありがとう。岡部くん、……今日も水着、着た方が良い?」
岡部「そ、それは……なあ、もっと地味な水着は無いのか?」
萌郁「地味な水着……あるよ」
岡部「よ、よし、それにしろ。……もっとも、一緒に入らないのがベストなのだが」
萌郁「イヤ」
岡部「ぐっ……まあいい、食ったらさっさと風呂を済ませるぞ」
岡部「……おい、萌郁」
萌郁「どうしたの?」
岡部「地味な水着、俺はそう言ったよな」
萌郁「だから、これにした」
岡部「……スクール水着は、避けてほしかった」
萌郁「こういうの、好き?」
岡部「嫌いでは……ってそういう問題では無い!」
画像はよ
萌郁「まだ作業、するの?」
岡部「いや、俺一人ではただ時間がかかるだけだと分かった。……そこで、切り札を呼ぶ」
萌郁「切り札?」
岡部「そう、我が右腕(マイフェイバリットライトアーム)にしてスーパーハカー、橋田至に参戦してもらうのだ!」
萌郁「橋田くんを、この部屋に呼ぶの?」
岡部「ああ、済まないが許してくれ」
萌郁「別に良いけど……色々、隠さないと」
岡部「色々?」
萌郁「……下着、とか」
岡部「そ、そうか……」
岡部「ああ。しかし疲れた……今日は、ぐっすり眠れそうだ」
萌郁「今まで眠れてなかったの?」
岡部「……お前のせいでな。そんなに密着されては寝ることもできん」
萌郁「……ごめんなさい」
岡部「どうせ言っても変わらないのは分かっている。それに……少しは慣れた」
萌郁「それなら、向き合って寝ても良い?」
岡部「そ、それは流石に無理だ……ともかく、もう寝るぞ」
萌郁「……うん」
しばらくここには戻っていなかったな。ずっと俺は、萌郁の部屋に――萌郁?
「萌郁さん……?」
まゆりだ、どうしてここにまゆりが。 いや、ラボにいるのだから何も不思議では無い。
では、今目の前に居るのは。……萌郁? その黒い服は、何だ。
「椎名まゆりは、必要ない」
萌郁、お前は何をしようとしている。それは玩具か、いや、あれは。
誰か、止めろ。萌郁を、止めろ。
「……SERNのために……FBのために……SERNのために……FBの」
やめろ、やめろ……やめてくれ……。まゆりは何も関係ない……まゆりは――。
『……べくん、おか……ん、岡部くん……』
岡部「ぐっ……こ、ここは……?」
萌郁「私の部屋……岡部くん、うなされてたから……」
岡部「す、済まない……夢を見ていた」
萌郁「夢……? 怖い夢? 大丈夫……?」
岡部「……っ! さ、触るな! 近寄るな!!」
萌郁「えっ……? 岡部、くん……?」
岡部「あっ……ち、違うんだ……何でも無い」
萌郁「……夢、怖かったの?」
岡部「何でも無いんだ……だから、気にしないでくれ」
萌郁「……分かった」
岡部「……ダル、俺だ」
ダル『あれ? オカリンから電話とか珍しい件について』
岡部「ダル、今日は暇か? 時間はあるか?」
ダル『メイクイーンに行く位だけど、何か用?』
岡部「手伝って欲しいことがある、俺の家に来てくれないか?」
ダル『オカリンの部屋ということは……桐生氏の部屋ということでもある訳で』
岡部「……ダル?」
ダル『みなぎってきたお! オカリン、さっさと家まで案内してもらおうか』
岡部「一つ言っておくが、そういうのは隠してあるからな」
ダル『……ですよねー。とりあえず、外出たらまた連絡するから』
岡部「ああ、よろしく頼む」
岡部「メイクイーンに行くだけだと言っていたからな。要は暇ということだ」
萌郁「……多分、見られても大丈夫だと思う」
岡部「まあ、ダルのことだ。ああ言いながらも実際には、人の嫌がることはしないだろう」
萌郁「岡部くん……聞いても良い?」
岡部「……何だ?」
萌郁「……昨日の、夜のこと」
岡部「あれは……気にするな。何でも無い、悪夢を見てうなされて気が動転していただけだ」
萌郁「でも、私を見る目……怖かった」
岡部「……気のせいだ。そうだ、ダルが来るから菓子の一つでも用意しないとな」
萌郁「……岡部くん」
岡部「大丈夫だ、お前は何も関係ない。……お前はな」
岡部「そうか、今から外に出る。そこで待っていろ」
ダル『把握した。ハァ……暑いから早く来てほしいのぜ』
岡部「日陰で涼んでいろ、じゃあな」
岡部「迎えに行ってくる。お前はどうする?」
萌郁「一緒に、行きたい」
岡部「……よし、着いて来い。ダルが痩せない内に迎えに行かないとな」
萌郁「岡部くん……手、繋いでも良い?」
岡部「急にどうした……それ位は我慢できていただろうが」
萌郁「何となく……不安だから」
岡部「……分かった、今日だけは特別だ」
岡部「ダル、ここが俺達の部屋だ」
ダル「おお、ここが……拙者、女性の部屋に入るのは初めてでござる。ふひひ」
萌郁「……岡部くん」
岡部「ダル、自重しろ」
ダル「まっ、僕は変態という名の紳士だから、無粋なことはしないお」
岡部「その言葉、信じるぞ」
ダル「しっかし、こんな暑い中手を繋いで登場とか……オカリンマジぱねえっす」
岡部「う、うるさい! ……まあいい。期待しているぞ、ダル」
ダル「へいへい、何をするのかはよく分からんけど」
ダル「……レンジを遠隔操作? オカリン、何考えてんの?」
岡部「……色々事情があるのだ。頼む、ダル……お前の力だけが頼りなんだ」
ダル「そう言われると嫌な気分はしないけど……じゃあ、とりあえずやってみるお」
岡部「お前なら必ずできる、思う存分やってくれ」
ダル「オーキードーキー!」
岡部「ダルが好きなのはコーラだ。ダイエットコーラが冷蔵庫にあるから出してくれ」
萌郁「うん。橋田くん、ああいうのが得意なの?」
岡部「ダルは万能だ。……あいつと、もう一人居れば何も怖くは無いのだがな」
萌郁「もう一人……?」
岡部「……ああ」
岡部(紅莉栖が生きているのは確認できている。……ググってすぐに分かったからな)
岡部(……その能力は、記事を見た感じはまったく変わり無いようだ)
岡部(だが、今は連絡を取る手段が無い……いずれ時が来たら頼らねばならないだろう)
岡部(……その時に、すぐに協力してくれれば良いのだがな)
ダル「……オカリン」
岡部「どうしたダル。……ま、まさか」
ダル「……ミッション、コンプリート」
岡部「もうできたのか!? でかしたぞダル! 流石はマイフェイバリットライトアーム!」
ダル「そういえば、その呼び方何なん? つーか夏休み入ってから性格変わってね?」
岡部「何を言っているんだ? 俺は前からこうだろうが」
ダル「うーん……まあ、ともかくできたから試してみ」
岡部「ああ、これで……やっと……」
萌郁「…………」
ダル「そういえば、音声ガイダンスも付けろって言ってたから設定したけど、誰の声入れる?」
岡部「……よし、萌郁。お前の声を採用する」
萌郁「私……?」
岡部「ああ、合図を出したらここに向かって話してくれ。……ちょっと待ってろ、今紙に書く」
ダル「桐生氏、桐生氏」
萌郁「何?」
ダル「……なんか、最近のオカリン変じゃね? 何かあったん?」
萌郁「……そんなこと、無い。岡部くんは、岡部くんだから」
ダル「うーん、桐生氏がそう言うなら……」
萌郁「……うん」
ダル「じゃあ、録音開始するのぜ。……三、二、一、スタート」
萌郁「R・E・N・G。こちらは、電話レンジ……えっと、岡部くん」
岡部「どうした、そのまま読めば良いだけではないか」
萌郁「この……『(仮)』って、何?」
岡部「それはそのまま『かっこかり』と読め」
ダル「(仮)? 別にそのまま電話レンジでも良いと思われ」
岡部「……いや、そこは譲れん。ほら、再開するぞ」
萌郁「分かった」
萌郁「R・E・N・G。こちらは、電話レンジ(仮)です」
萌郁「こちらから、タイマー操作ができます」
萌郁「#ボタンを押した後、温めたい秒数をプッシュしてください」
萌郁「例えば、1分なら『#60』」
萌郁「2分なら『#120』……です」
ダル「オカリン……桐生氏の声、目覚ましにしたいんだけどおk?」
岡部「HENTAI発言は自重しろ」
ダル「ちえっ……」
ダル「もう僕が確認したから大丈夫だとは思うけど」
岡部「そう言うな、……電話レンジの番号を入力し、音声ガイダンスを呼び出す」
萌郁『R・E・N・G。こちらは、電話レンジ(仮)です』
萌郁「……私の、声」
岡部「そして音声ガイダンスに従い『#120』と入力。そうすると」
ダル「うんうん、問題なく動いてる」
岡部「よ、よーし! 後は……ブラウン管工房に行くだけだ!」
ダル「ブラウン管工房? 何ぞそれ?」
岡部「ダル、明日も俺に付き合ってもらうぞ。世紀の大実験にな」
ダル「……よく分かんないけど、面白そうだし行ってみるお」
ダル「べっ、別にオカリンに礼を言われても嬉しくなんかないんだからね!」
岡部「相変わらずだな……まあいい、明日も頼む」
ダル「じゃ、また明日ってことで」
岡部「……これでやっと、前に進める」
萌郁「岡部くん、何をするつもりなの?」
岡部「それは……まあ、明日になれば分かる」
萌郁「……少し、不安なの」
岡部「不安?」
萌郁「本当に、どこにも行かない? 約束……してくれる?」
岡部「……余計な心配はしなくても良い、何も起きん」
萌郁「……うん」
萌郁「ご飯、用意できたから」
岡部「あ、ああ、済まない……今日は何だ?」
萌郁「餃子、作ってみた」
岡部「ごま油の香りはそのせいか。……腹が減ってきた」
萌郁「今出すから、待っててね」
岡部「分かった、期待しているぞ」
岡部(……こうやって萌郁の料理を食べるのも、これが最後か)
萌郁「どう、美味しい?」
岡部「ああ、香りが良いな。夏バテも解消できそうだ」
萌郁「明日も、橋田くんと一緒に実験をするの?」
岡部「その通りだ。……お前も、来るのか?」
萌郁「岡部くんの行くところには、どこにでも行くから」
岡部「そ、そうやってお前はまた恥ずかしいを……」
萌郁「恥ずかしい?」
岡部「……気にするな」
岡部(このやり取りも、後少しか。……萌郁も前の俺の方が良いに決まっている)
岡部(……明日で、元に戻る。あの世界線に戻り……この萌郁とは、お別れだ)
萌郁「今日は、もう寝る?」
岡部「ああ、お前も寝るのか?」
萌郁「一緒に、寝たいから」
岡部「そ、そうか……」
萌郁「……岡部くん、お願いがあるの」
岡部「お願い?」
萌郁「今日は……向かい合って、寝てほしい」
岡部「む、向かい合って!? いや、それは流石に……」
萌郁「……お願い、今日だけで良いから」
岡部(今日だけ……最後くらいなら)
岡部「分かった、望みどおりにしてやる。……電気、消すぞ」
萌郁「……うん」
萌郁「…………」
岡部「……寝ないのか」
萌郁「岡部くん、正直に言って」
岡部「……何だ」
萌郁「明日……居なくなっちゃうの?」
岡部「いつ誰がそんなことを言った? どこにも行かん、俺はここに居る」
萌郁「嘘、つかなくても良いから」
岡部「……なぜ、嘘だと分かる?」
萌郁「岡部くん、最近……遠くを見るような顔してた。だから」
岡部「それで勘付いた、ということか」
萌郁「あの電話レンジが、関係あるの?」
岡部「ああ、あれは……Dメールを送るための装置だ」
萌郁「D、メール……」
……お前が五年前に受け取ったものも、その一つという話しはしたな」
萌郁「……明日、過去にメールを送るの?」
岡部「ああ、そのためにダルに協力してもらった。まさか、一日で完成させるとは思わなかったけどな」
萌郁「誰に、どんなメールを」
岡部「それは……」
岡部(……萌郁に送ったメールで世界線変動率は変わった。それを元に戻すには)
岡部(萌郁に……FBからのメールに返信しろ、と送らなければならない)
岡部(そして、岡部倫太郎とは会うな……そう送らなくてはいけない)
『岡部は詐欺師一年後FBが救ってくれる』
岡部(一度に送れる容量を考えれば、これで十分だ。だが、それはつまり)
岡部(萌郁と岡部倫太郎の関係は……なかったことになる)
岡部(だから、何も心配することは無い。……そうしなければ、元には戻らないのだから)
萌郁「……岡部くん?」
岡部「何も気にしなくて良い。……何も変わりはしない」
萌郁「今の岡部くんは……どこに行くの?」
岡部「元の世界線に戻る。お前が愛した男も戻ってくるはずだ」
萌郁「…………」
岡部「お前もその方が良いだろう? 愛情を向けても無駄な男なんかに気を遣う必要は無い」
萌郁「……嫌」
岡部「嫌……? 萌郁、お前はいったい何を……」
萌郁「岡部くんは、岡部くんだから……どこにも行かないで」
萌郁「……本当に戻ってくるかなんて分からない。岡部くんが、消えてしまうかもしれない」
岡部「安心しろ、元に戻るだけなんだ。今の俺も、前の俺も、必ず戻る」
萌郁「…………」
岡部「……そんな顔をするな」
萌郁「……ごめんなさい」
岡部「お前には世話になった。萌郁のおかげで助かった、感謝している」
萌郁「本当に、行くの?」
岡部「……ああ。止めるな、俺は戻らなければならないんだ」
萌郁「岡部くんの言うことには、従う。だから……もう何も言わない」
岡部「……済まない」
萌郁「……大丈夫、だから」
岡部(済まない……戻るなんて軽く言ったが、俺にも分からない)
岡部(だが……そう言わないと、お前は俺を止めるだろうからな)
岡部(俺の軽はずみな行動が全ての原因だ。……赦してくれ、桐生萌郁)
岡部「電話レンジは何とか運べそうだな……行くぞ、萌郁」
萌郁「……分かった」
岡部「ん? そのカバンは何だ?」
萌郁「お昼に食べられるものを、用意した」
岡部「準備が良いではないか。で、中身は何なんだ?」
萌郁「後で教えるから、今は秘密」
岡部「……そう言われると気になるな。まあいい……ブラウン管工房へ、出発だ」
ダル「おっ、来た来た。オカリーン」
岡部「はぁ……はぁ……ま、待たせたな」
ダル「いや、別に良いけど……何もしてないのにヘトヘトになってどうするん」
岡部「な、何もしてないとは……し、失礼な……はぁー……重かった」
ダル「桐生氏、こんなんで本当に大丈夫な訳?」
萌郁「……多分」
岡部「よ、よし……ミスターブラウンに話をしてくる」
ダル「いってらー。僕たちはここで待ってるお」
萌郁「……待ってるから」
天王寺「ん? ああ、おめえは確かこの前の……。今度は初対面じゃねえな」
岡部「ええ、それでお願いがあるのですが」
天王寺「お願い? ブラウン管の購入ならいつでも受け付けるけどよ」
岡部「いや、そんな物誰も欲しがら……あっ」
天王寺「……今、何つった?」
岡部「い、いえ! ブラウン管は本当に素晴らしく、残していくべき物だと言おうと」
天王寺「おっ、分かってんじゃねえか。どうだ、安くしとくぞ?」
岡部「それはまた今度で……今日来たのは、上の部屋に用があるからです」
天王寺「上の部屋?」
天王寺「上の部屋? いや、でもなあ……」
岡部「す、少しの間だけで良いんです! お願いします!」
天王寺「別に良いけどよ。ほら、鍵だ」
岡部「ありがとうございます。……では、お邪魔します。それと」
岡部「その奥のテレビ、点けておいてもらえますか?」
天王寺「あ、ああ、言われなくても点けるけどよ」
岡部(……準備は、整った。後は実行するだけだ)
岡部「ああ、鍵も借りてきた。……いよいよだな」
萌郁「……岡部くん」
岡部「どうした、何か用か?」
萌郁「……ごめん、何でも無い」
ダル「…………」
岡部「よし、上に行くぞ。……この重みもこれが最後だ、ふんっ……!」
岡部「……本当に何も無いんだな」
ダル「空き部屋なんだから当たり前だろ常考」
岡部「違う、本当はこの部屋には……いや、言っても分からないんだよな」
萌郁「ここで、何をするの?」
岡部「まずは、電話レンジを……この辺だな、ふんっ……」
ダル「えっと、電源は……あったあった。後は配線をちゃんとしてっと」
萌郁「コンセント、ここに刺す?」
ダル「桐生氏、今の台詞……もう一度言ってくんない? できれば誘うような感じで」
岡部「今は控えろ、ダル。……電源は確保した、動かすぞ」
岡部(電話レンジに電話をかけ……『#120』と打つ、そして)
ダル「おっ、動いた動いた。で、こっから世紀の大実験って何するん?」
ダル「それは?」
岡部「――過去にメールを送る実験だ!」
ダル「……はあ?」
岡部「信じられないのも無理はない。だが、事実だ……今からそれを見せてやろう」
ダル「ん? バナナなんか出してどうすんの?」
岡部「このバナナを、電話レンジの中に入れる」
ダル「バナナを中に入れる……桐生氏桐生氏」
岡部「控えろと言っているだろうが。そして電話レンジを使用するのだが……少し操作を変える」
ダル「操作を変える?」
岡部「普通なら『#120』と入力するのを、逆に『120#』とする」
ダル「ふんふん、それでそれで?」
岡部「見ていれば分かる。……電話レンジ、起動せよ!」
岡部「……今は待つのだ」
萌郁「…………」
ダル「……終わった」
岡部「さあ、見るが良い。これが……電話レンジの力だ!」
ダル「どれどれ……うん?」
萌郁「……?」
岡部「フゥーハハハ! どうだ、驚いたか!? バナナが見事に」
ダル「ほっかほかに温まってるけど」
岡部「……はあ? 何を言っている、こうすればちゃんとゲル状のバナナができて…………ない?」
ダル「オカリン、結局このバナナがどうなって欲しかった訳?」
岡部「そのバナナがゲル状になるはずなんだ……」
ダル「ゲル状? あるあ……ねーよ」
岡部「ほ、本当になるはずなんだ! いや、もう一度やれば必ず……」
ダル「そもそも、電子レンジで温めてゲル状になるなんて有り得ないだろ常考」
岡部「そんなことは無い……何かの間違いだ、そうだ、やり方が違ったのかもしれない……」
萌郁「……岡部くん」
ダル「桐生氏も彼氏に何か言ってあげた方が良いんじゃね?」
萌郁「私は……邪魔しないようにって言われたから」
ダル「…………」
ダル「……オカリン、もう諦めた方が良いと思われ」
岡部「いや、俺は諦めん……何が違う、どうすれば」
萌郁「岡部くん……一度、休んだ方が」
岡部「……うるさい! 俺に指図するな!」
萌郁「……っ! ご、ごめんなさい……」
岡部「あっ……す、済まん」
ダル「……オカリン、もう諦めろって。桐生氏のためにも」
岡部「萌郁のため……どういう意味だ」
ダル「オカリン本当にどうしたん? 高校の頃からずっと、桐生氏のことばっか考えてたじゃんか」
萌郁「……橋田くん、私は良いから」
ダル「いや、最近のオカリンはやっぱり何か変だお。……少し、冷静になった方が良いんじゃね」
岡部「……それは、俺では」
ダル「オカリンが彼女いて羨ましいとかリア充爆ぜろとか言ってたけど、
ちゃんと桐生氏を大切にしてたオカリンを僕はカッコいいと思ってますた」
萌郁「…………」
ダル「オカリン、何があったのかは知らんけど……少し頭、冷やそうぜ」
岡部「……違うんだ、俺は……実は」
ダル「今日はもう帰るから。また元に戻ったら協力でも何でもするお」
岡部「……ダル」
岡部「……元に戻ったら、か。……それができれば、こんな思いはしない」
萌郁「今日は……帰ろう?」
岡部「……分かった」
岡部(ダルは何も悪くない……あいつが言っていたことはすべて正しい)
岡部(だが、ダルの中の俺は……俺じゃない。萌郁を大切にしていたのは俺じゃない……)
岡部(……一人では、何も上手くいかない。それなのに……一人になってしまった)
天王寺「ん? どうした、さっきと違ってずいぶん元気がねえじゃねえか」
岡部「いえ、何でもありません……あの、また上の部屋を使わせて頂いても良いですか」
天王寺「いや、それなんだけどよ……実は、無理なんだ」
岡部「無理……? ど、どういうことですか!?」
天王寺「このビルも結構古くてよ、地震が来たら一発で潰れちまうかもって言われてな」
岡部「ま、まさか……取り潰す!?」
天王寺「そこまではいかねえけど、近い内にこのビルはしばらく閉鎖するんだよ。
俺も愛しのブラウン管ちゃん達を連れて、ちょっとの間お引越しって訳だ」
岡部「ブラウン管が……無くなる……」
天王寺「そういうことだ。残念だったら一台持ってくか? 大負けに負けてやるぞ?」
岡部「……失礼、します」
天王寺「おお、また会ったら買ってけよ」
岡部「……何も言わないでくれ。……帰ろう」
萌郁「……分かった」
岡部(ブラウン管工房が無くなる……それは42型ブラウン管が消えることを意味する)
岡部(数日の間にダルと関係を修復して……だが、それも数日間の間にだ)
岡部(もっとも、見たことのない現象を起こせと言ってできるのか……)
岡部(……甘かった。……失敗することなど、全く考えていなかった)
岡部(紅莉栖に頼るか? ……ただの学生が天才科学者と話ができると思うのか?)
岡部(いずれにせよ、俺一人では何もできない……元には、戻れない)
岡部「…………」
萌郁「……何か、食べない?」
岡部「……そんな気にもなれん、放っておいてくれ」
萌郁「でも……」
岡部「……このまま何もしないのも、楽かもしれないな」
萌郁「岡部くん……」
岡部「……済まない」
動かそうにも身体が動かない、そして動く気も起きない。
萌郁はただ俺を見守り続け、時折水と食事を口に入れてくれる。
しかし、その行為すら今の俺には邪魔で、無意識に手で振り払っていた。
どうしてこうなったのかは分からない。色々原因はあるだろう。
前の世界線の数々の出来事、止まる余裕など無かった。
心も身体もボロボロのまま、俺はこの世界線にたどり着いた。
それは、萌郁がもし俺と会っていたらどうなるか、というあってはいけない考えが生み出した結果だ。
ダルに俺が知らない岡部倫太郎の話をされたのも辛かった。
そのことで俺は、この世界で「俺」のことを分かってくれる者は居ないと知ってしまった。
……いや、もう認めよう。俺は、疲れてしまった。
もう、何も考えず、このまま消えてしまいたい。
そう考え始めた時――萌郁の顔がアップで俺の視界に入ってきた。
そして、
萌郁「んっ……。お水、飲まないと……脱水症状になるから」
岡部「……だからと言って、口で飲ませようとするヤツがあるか」
萌郁「岡部くん、やっとこっちを向いてくれた」
岡部「……何?」
萌郁「ずっと何もしないで、そのまま……消えてしまいそうだった」
岡部「……消えてしまえば良かったのにな」
萌郁「そんなこと、無い。……岡部くんが消えたら、私は生きてる意味なんて無いから」
岡部「それは以前の俺との記憶があるからだ……俺にはそこまでする様な価値は無い」
萌郁「岡部くんは、岡部くん。他の誰でも無い」
岡部「……またそれか。ああ、そういえば……お前は、俺としたかったんだよな」
萌郁「……岡部くん? ――っ!? な、何を……」
岡部「お前の望み通り……好きなだけしてやるって言ってんだよ」
あの時と同じように、完全に主導権を握る体勢だ。
「何を……するつもり?」
「もう、どうでもいい……このまま何も考えず、馬鹿なことをしてやろうと思ってな」
「……そんなことしても、何も変わらない」
「だが、お前は言ったではないか。性欲に従うまま、俺を誘っただろうが」
「……ごめんなさい」
「謝っても何も変わらない……大人しくしろ」
「……分かった。好きにして」
無抵抗になった萌郁に俺は少しずつ顔を近づけていった。
その距離は縮まり続け、目の前に萌郁の豊満な胸が現れた。
着ているブラウスを?ぎ取り、肌を露出させ――そんなことはしなかった。
萌郁の胸に顔を預け、そのまま俺は涙を流し始めた。
「岡部……くん?」
「……萌郁、俺は……どうすれば……っ……何も、このままでは……」
「……それなのにダルやまゆり、他の仲間のことを覚えている」
「だが、相手の記憶の中に居るのは俺ではない……別の岡部倫太郎だ」
「誰も俺が俺じゃないことなんて知らない……誰にも存在が認識されていない」
「この世界に一人……俺だけが急に取り残されたようだ。そして元の場所にも戻れない……」
「萌郁、俺はこのままなのか? このまま……世界から離れて生きていかなければならないのか?」
「……岡部くん」
「答えろ! 答えてくれ……俺は、一人で生きていくしか……」
崩れていく俺を、何かが優しく包み込んでくれた。
それは、萌郁の腕と体温だった。
「萌郁……」
「岡部くんは、一人じゃない……この世界から、断絶なんてさせない」
「……五年前、岡部くんがしてくれたのと同じことを、私もしてあげたい」
「そして、私なんかのためにDメールを送ってくれたことを……無駄にしたくない」
萌郁はそう言うと俺をさらに強く抱きしめた。
どこかへ行ってしまいそうな自分が、強く引き戻されたようだった。
「まゆりちゃんを何度も酷い目に遭わせて……それなのに、最後には赦してもらおうとして」
「……萌郁? お前……その記憶は」
「岡部くんと一緒に寝ている時に……夢を見た」
「その夢は、まさか……」
「……銃を持っていたり、車に乗っていた。そしていつも……まゆりちゃんを」
「それともう一つ……血だらけになった私の最後の願いを、岡部くんが叶えてくれる夢……」
「……あの時の記憶もあるのか」
「岡部くんはあんなことをしなくても良かった。それなのに……私のせいで、岡部くんをここに連れてきてしまった」
「……ごめんなさい、私は岡部くんを犠牲にして……幸せな時間を手に入れてしまった」
「私は幸せだった……でも、岡部くんは違ったかもしれない……」
「この世界線の俺はお前と居たことを後悔していた……そう言いたいのか?」
「……五年間も依存し続けて、岡部くんの自由を奪ってしまったから」
「萌郁、これだけは言える。……俺は、お前を幸せにしたいと本気で考えていたはずだ」
「どうして……そんなことが分かるの?」
「ダルが言っていたんだ。俺はお前のことばかりを考え、大切にしていたと」
「……でも、本当は一人の方が」
「ダルは……俺の右腕だ。あいつが言ったことは、間違いない……俺はダルの言葉を信じる」
間違いなく、以前の俺は萌郁を幸せにしようと考えていた。そして今、俺自身も萌郁の幸せを考えていた。
この世界線で数年間も側に居続け、そしてこの「俺」を迎え入れ、「俺」として扱ってくれた女性、桐生萌郁。
桐生萌郁、その大切な時間を、犠牲にはできない。だから俺は――。
「俺は――この世界線を、桐生萌郁との時間を選ぶ」
「……岡部くん」
「私に、岡部くんが……依存」
「ああ、お前はそれでも良いか? 俺が側に居ても良いのか?」
「……お願い。ずっと、私の側から離れないで……どこにも、行かないで」
「……分かった。どこへ行こうとも、お前からは離れない……何があっても」
俺は萌郁に依存することで存在を保ち、萌郁は俺に依存することで世界と繋がりを持つ。
互いに依存しあう関係、それがこの世界線での俺達の出した答えだった。
萌郁が今までしてきたことは、確かに赦されるものではないかもしれない。
だが、それ以上に俺がしたことは悪質で、誰にも赦されるものではない。
萌郁に託されたからといって、自らの好奇心で誰かの幸せを生み出したのは事実だ。
それをまた、自らの手でなかったことにしようとは思えなかった。
赦されず、依存しあう二人、それが岡部倫太郎と桐生萌郁だった。
まゆりやダルとは定期的に連絡を取っている。
また、ミスターブラウンとも縁が切れないように注意している。
誰も死なず、鈴羽も現れない。この世界線の未来は、まだ分からないままだ。
今も家にはこの世界線のダルが作った電話レンジが、改装されたブラウン管工房には42型ブラウン管がある。
そして、ある学者とのメールアドレスも用意してある。
全ては何かがあった時のための準備だ。
それでも、何も無いことを祈っているのは間違いない。
互いが依存しあい、自分を保つという弱々しい人間のままだった。
「萌郁。今、時間あるか?」
「うん。どうしたの、岡部くん?」
「……萌郁、その呼び方はいい加減に直せと言っただろうが」
「でも……呼びやすいから」
「自分も同じ苗字なのに、そんな呼び方をするヤツがどこに居るんだ……」
「……ごめん。それで、用は何?」
「俺は外に出るつもりだが、萌郁も出られるか?」
「すぐに準備する、ちょっと待ってて」
「ああ、早くしてくれよ」
俺の選んだ世界線が正しかったのかは分からない。
だが、目の前の女性を幸せにしたいという思いは、何があっても変わらない。
それは、世界が変わっても「俺」がそうしたのと同じように。
終わり
ありがとう
面白かったです
助手が出てこなかったのはちとさびしかったがまあ楽しめたぜ
Entry ⇒ 2012.06.24 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
紅莉栖「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」 後半
前→紅莉栖「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」 前編
~秋葉原・某ビル屋上~
岡部(…やはりここなら誰も来ないな。きょう偶然見付けた、俺を含めラボメンの誰にも縁もゆかりもない場所だ)
岡部(立ち入り禁止の立札があった気がするが知ったことじゃない。俺は一人になりたいのだ)
岡部(ラボを出て何日くらい経ったっけ? 携帯電話の電源を切りっ放しにしているせいで時間も分からん)
岡部(…まぁ時間なんて今はどうでもいい。まゆりが死ぬまでにはまだ時間があるはずだ…)
岡部「はぁー…」ゴロゴロ
岡部「……」
岡部(紅莉栖が死なない世界線では、まゆりが死ぬ)
岡部(まゆりが死なない世界線では、紅莉栖が死んでいる)
岡部(…ふざけてやがる。本当にふざけてやがる)
岡部(二者択一。紅莉栖かまゆり、俺は必ずどちらかを見捨てなければならない。…今時三流の糞漫画の中ですら滅多に見かけないようなシチュエーション)
岡部(…頭の隅では分かっている。『紅莉栖の命』か、『まゆりの命とディストピアの構築されない未来』か)
岡部(そんなもの天秤に掛けるまでも無い。俺は後者を取るべきだ。俺は後者を取らなければならない)
岡部(ここまで踏みにじってきた想いを無駄にしてはいけないんだ。そんなこと分かっている)
岡部(分かっているのに…)
岡部「…ッ!?」クラッ
岡部(…リ、リーディングシュタイナーが発動した!?)
ガチャッ
紅莉栖「そんなとこで寝転んでると白衣が汚れるわよ」スタスタ
岡部「紅莉栖!? なんでここが…」
岡部「…ああ。そういうことか」
紅莉栖〈106601回目〉「そういうこと。探した、本当に…」
紅莉栖「岡部とゆっくり話がしたかったから。…隣座っていい?」
岡部「…ああ」
紅莉栖「……」トスッ
紅莉栖「…ねぇ岡部、もう分かってるでしょ?」
岡部「……何をだ」
紅莉栖「とぼけたって無意味。私とあんたの付き合いがどれだけ長いと思ってるのよ」
岡部「…だよな…」
紅莉栖「…起き上がりなさい岡部。ちゃんとこっちを見て」
岡部「……」ムクッ
岡部「……」
紅莉栖「どちらを取るかなんて問題じゃない。あんたと私は、絶対に世界を改変しなければならない」
岡部「…そしてそのためにお前は死ななければならない、か」
紅莉栖「…ええ。そうよ」
岡部「そんなこと…できるかよ…!!」スック
紅莉栖「…岡部?」
岡部「…俺は…諦めない…!!」
紅莉栖「…ねぇ岡部」
岡部「黙れ!! 俺は諦めない!! この世界線でもまゆりを救う方法はあるはずだ!! あるはずなんだよ!! 無くちゃいけないんだ!!」タタタタタ…
紅莉栖「おかっ…待てこのバカ!!」
ガチャッ
岡部「はあッ…!! はあッ…!!」バタンッ
岡部「…げッほ!! …はあッ…!!」ゼェゼェ
岡部(…俺は…繰り返す…!!)
岡部「パソコンは…付きっ放しか。丁度いい…!」
岡部(…そうさ! 俺は繰り返すんだ!)カチッ
岡部(まゆりも紅莉栖も死なない未来を選び取るために、何度でも俺は繰り返すんだ!)カタカタカタカタ
岡部(まだ試みてない方法を! まだ見付けてない可能性を! まだ足りていない鍛錬を! 俺は繰り返――)
紅莉栖「――こ、の……!!」グイッ…
岡部(…あれ? 浮い…)フワッ…
紅莉栖「ゴミ虫があああああああああああああああああああああああッッッッッ!!!!!!」ズドオオオオオオン!!!! ミシッ!!
岡部「…ごッ…あああああああああああああああああ!!!??」(一本背負い!?)ズキズキ ジタバタ
紅莉栖「…初めて岡部から一本取った」
岡部「…なにをするのだ紅莉栖…」ズキズキ
紅莉栖「路上で柔道はマジヤバい。覚えときなさい」
岡部「いやここフローリング…いだだッ!?」ムクッ ズキンッ
紅莉栖「…大丈夫?」
岡部「…肩甲骨にヒビが入ったかも知れん」
紅莉栖「じゃあそのまま横になってなさい」
岡部「……」ゴロン
紅莉栖「この世界線ではまゆりが死なない可能性は万に一つも無いの。ゼロなのよ」
岡部「……」
紅莉栖「…ありがとう。私のためにここまで苦しんでくれて。だけど、もう充分」
紅莉栖「…岡部、あんたが世界を変えて。あんたが私を殺して」
岡部「……」
紅莉栖「せめて、岡部にやって欲しい」
岡部「…お前は納得しているのか?」
紅莉栖「まさか。だけど何度も言ってるでしょ? これは二者択一なんかじゃないって」
岡部「…そう、か…。……」
紅莉栖「……」
岡部「結局俺は、お前に『殺してもいい』と言って欲しかっただかなのかも知れないな」
紅莉栖「…そうかもね。それでいい。その方がいい」
岡部「…紅莉栖、俺がやる。俺がDメールを消す」
紅莉栖「…ありがとう。お願い」
紅莉栖「――これでよし。あとはエンターキーを叩くだけよ」
岡部「分かった」
岡部「……」
岡部「…なぁ紅莉栖」
紅莉栖「何?」
岡部「俺は、お前が好きだ」
紅莉栖「知ってる」
岡部「お前は?」
紅莉栖「知ってるでしょ?」
岡部「ああ。知ってる」
岡部「ああ」スッ
紅莉栖「…うん。ありがとう」ギュッ
岡部「……」ギュッ
紅莉栖「…ほら、早くエンターキーを押して」
岡部「ああ」スッ…
カチッ
紅莉栖「さよなら。…私も、岡部のことが――」
グ二ョォォォオォォォォォオォォオォォォオォン
岡部「…ッ」フラッ
岡部(……)
岡部(…紅莉栖の手の柔らかい感触が、消えた)
岡部(…最後の世界改変が、終わった)
まゆり「オカリン? そんなとこに突っ立ってどうかしたの?」
岡部「…いや? 何でもない。そうだまゆり、ラボメンナンバー004は誰なのか知ってるか?」
まゆり「え? うーん…004なんて居なかったと思うけどなぁ…」
岡部「そうだよな。004なんて居るわけないよな」
まゆり「?」
岡部「……」
ダル「…ん? オカリンどっか行くん?」
岡部「…ああ。少し泣く」
ダル「はあ?」
結局電話レンジ(仮)は分解して捨てた。あれは愚かだった俺たちが造り上げた偶然の産物。本来あってはならないもの。
時を支配する狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真が死んだように、電話レンジにもまた死んで貰わねばならないのだ。
永遠に思えた、ひどく長かったこの8月もそろそろ終わりを告げようとしている。
…なぁ、これで良かったんだろ紅莉栖?
世界は再構成された。世界はきっと救われて、まゆりは何事も無かったかのように今日も唐揚げを頬張っている。
少しだけ時間の流れが緩やかになったこのラボで、今日も俺は紅莉
プルルルル… プルルルル…
ダル「はいもしもし。…え? 父さん? 僕が? 君の? …何言ってんの?」
ダル「…は? 岡部倫太郎に代われ? …なぁオカリン、謎の女がオカリンに代われってさ」スッ
パシッ
岡部「…誰だ」
謎の女『お願い! 今すぐラジ館の屋上に来て!』
岡部「だから誰だよ?」
謎の女『あたしは2036年から来た、そこにいる橋田至の娘。名前は、阿万音鈴羽』
岡部「…ちょっと待て…! …鈴羽が何でここにいるんだ!?」
~ラジオ会館・屋上~
ガチャンッ!!
岡部「はあッ…! はあッ…!」ゼェゼェ
岡部(…嘘…だろ…?)
岡部「…タイムマシンだと!?」
まゆり「わー! すごーい!」
ダル「うお!? 何これ!?」
ヌッ
鈴羽「……」
岡部(鈴羽…!!)
岡部「…そうだが…」
岡部(…そうか、この鈴羽は鈴羽でも俺の知っている鈴羽では無いのだな)
岡部「…それより鈴羽、その迷彩服はなんだ? そもそも何故この時代に…」
鈴羽「それについては今から説明するよオカリンおじさん」
岡部(…お、オカリンおじさん!?)
まゆり「おじさんなのー!?」
鈴羽「あたしが2036年からここに来たのは、おじさんに未来を変えてもらうため」
岡部「…未来を、変える? …どういうことだ!?」
鈴羽「…この世界線では、未来に第三次世界大戦が起きるんだ」
岡部「だ、第三次世界大戦だと!? そんな…!!」
岡部「…未知の…世界線?」
鈴羽「そう。良くも悪くも何が起こるかまったく未知の世界線。通称『シュタインズゲート』」
岡部「『シュタインズゲート』…!!」
ダル「しゅ、シュタインズゲート!? オカリンの妄想じゃなかったん!? つーかまず2036年から来たってマジ? 釣りじゃなくて?」
鈴羽「父さんは黙ってて!!」
ダル「父さん…だと…!?」ホホウ…
鈴羽「あたしも父さんから聞いた話だから詳しくは分からないんだけど…とにかく『シュタインズゲート』に到達するにはオカリンおじさんの協力が不可欠なの」
岡部「SERNはどうなっているんだ?」
鈴羽「SERN? 何それ?」
岡部(…なるほど。やはりDメールの存在に気付かなかったことでSERNはタイムマシンの開発に失敗したのか)
岡部「何でもない。…それで? その未来を変えることで俺にはどんなメリットがあるというのだ?」
鈴羽「…第三次世界大戦勃発の原因を辿っていくと、2010年に発表されたとある文書に行き着く」
岡部「…?」
鈴羽「この年に学会に発表されたその文書、『中鉢論文』によってタイムトラベルの可能性が示唆されたことが第三次世界大戦のきっかけなんだ」
岡部「中鉢、って…」
岡部「牧瀬!? まさか…!!」
鈴羽「そう。牧瀬紅莉栖の実父」
岡部「…!!」
鈴羽「この『中鉢論文』がきっかけで各先進国でタイムマシン開発は過熱し、やがてそれは50億人を死に至らしめる大戦争にまで発展した」
鈴羽「…そして、この大戦が勃発するか否かは、牧瀬紅莉栖の命に掛かっている」
岡部「…それって、もしかして」
鈴羽「そう。言い換えれば牧瀬紅莉栖の死を回避すれば第三次世界大戦は起こらなくなる」
岡部「…救えるのか、紅莉栖を」
鈴羽「…可能性は限りなく低い」
岡部「…そうか。そうかそうか。そうかそうかそうか…!!」
鈴羽「…おじさん?」
鈴羽「!?」ビクッ
岡部「『可能性は限りなく低い』だと!? 上出来だ!! ゼロでないならば問題無い!!」
岡部「世界がどうなろうがどうでもいい!! だが鈴羽、俺はひょっとすると紅莉栖を救えるかも知れないんだろう!?」
鈴羽「…うん。そうだよ」
岡部「いいさ、例え僅かでも紅莉栖を救える可能性があるというのなら…ゴミ虫のように抗ってやるよ!!」
鈴羽「…もしあたしと一緒に過去に行ってくれるのなら、この手を取ってオカリンおじさん」スッ
岡部「はははははッッッ!!! いいだろう!! 過去へ行くぞ鈴羽ッ!!」スッ
ガシイッ!!
岡部「うおっとと…?」スカッ
鈴羽「…?」スカッ
まゆり「……」
岡部「何をするのだまゆり? 急に引っ張ると危ないだろう」
まゆり「…まゆしいは馬鹿だから今の話はちんぷんかんぷんだったけど…オカリンは今から危ないことをしようとしてるんだよね?」
岡部「…ああ。だが心配は…」
まゆり「まゆしいは、オカリンに行って欲しくないのです…」
岡部「…まゆり?」
まゆり「このまま行かせたら、そのままオカリンが帰ってこないような気がするから。だから…」
鈴羽「…椎名まゆり、オカリンおじさんは世界を救うために必要な」
まゆり「だからオカリンが行こうとするのを止めないのなら、まゆしいは全力で止めるよ」
岡部「ッ!?」ゾワッ
鈴羽「!?」(おじさんが臨戦態勢に入った!? …とにかくあたしも離れよう…!!)ザッ ザザッ
まゆり「……」
岡部「…まゆり、マシンの前からどいてくれ」
まゆり「……」
鈴羽(…マシンのすぐ前に椎名まゆり。そして椎名まゆりから見て12時方向におじさん、3時方向にあたし。距離はそれぞれ10メートル弱、か。…この構図はマズい)
鈴羽(椎名まゆりをかわして二人ともがマシンに乗り込むのは実質不可能。…つまり、椎名まゆりを無力化するしかない…)
鈴羽(…無力化? できるのか? 2010年とはいえ…『あの』椎名まゆりを相手に…!?)
鈴羽(…いや、やるしか…!!)
岡部(銃!?)「おい止せ!!」
まゆり「…撃つの?」
鈴羽「…君がそこからどかないならね」スッ…
まゆり「……」ニッコリ
岡部「止せ鈴羽ッ…!!」
鈴羽「……!」グッ…
鈴羽「ッ!!」ダァン!!
チッ
まゆり「…服に掠って左袖が少し破けちゃったよー♪ えへへー♪」
鈴羽(…違う…!! これは威嚇射撃、当たるはずなんて無かった…!! 今のは掠ったんじゃない…!!)カタカタ
鈴羽(…椎名まゆりは…わざと弾を掠らせに行った…!!)カタカタ
まゆり「やられたからにはお仕置きなのです♪」ダッ!!
鈴羽(来、る――!!)「…うあああああああああああああああああああああああ!!!!!」ダンダンダンダンダン!!!!!
まゆり「……」タンッ タタッ
鈴羽「そんな…!!」(当たらない!! 距離が詰められる!! 懐に入られ――)ダンダンダンダン!!!!!!
まゆり「銃口の向きさえ見てれば結構簡単だよ?」バシィンッ!!
鈴羽「づッ!!」(銃を真上に弾かれ…!!)
まゆり「ごめんね?」スウッ…
鈴羽(大振りのテレフォンパンチ――!! 避けなきゃ――!!)
まゆり「トゥットゥルー♪」ヒュッ…
鈴羽「ッ!!!」バッ
ヂッ! ビュオオオオオオオオオ…!!!!
ゴロゴロゴロゴロ…
鈴羽「……はあーッ!! はあーッ!!」ズザザザザー
鈴羽(死ぬかと思った…死ぬかと思った!! もし後ろに避けていたらアウトだった…!!)ガクガクガクガク
まゆり「外れちゃったよー♪ いいアドバイスだったねオカリン♪」ヒュゥゥン パシッ
鈴羽(!! 銃を取られた…!!)
鈴羽「お、おじさんっ!!」タタタッ
岡部「大丈夫か!?」ガシッ
鈴羽「…うん。拳が掠って肩口が破けたくらい…だけど、椎名まゆりに銃を…」ガクガク
まゆり「大丈夫だよ♪ まゆしいは銃は使えないのです」メキッ…バキ…
岡部「…素手で分解(バラ)してやがる」
鈴羽「…流石だね…」(まるで、星屑を握り潰すかのような…!!)
岡部「…鈴羽、いま『流石』と言ったか? まゆりは未来ではどうなっているんだ?」
岡部「…何だと?」
鈴羽「まるで焼き菓子を割るように全てをその手で砕き潰す蒼き怪物」
まゆり「……」メギ…パギィッ…
鈴羽「“クッキーモンスター”椎名まゆり」
岡部「…何だよそれ…!!」
まゆり「……」ポイッ ガラガラガラ…
鈴羽「彼女は銃器に頼ることなく異常なまでの戦果を挙げた人間として全世界から恐れられてるんだ。いくらおじさんでも敵わない。何か戦わずにここを切り抜ける方法を…」
岡部「…いや、俺が倒す」
鈴羽「…え?」
まゆり「…闘る気なのかなオカリン?」
岡部「……」
鈴羽「おじさん!? 無茶だよ!!」
まゆり「……」パキポキ
鈴羽「駄目だよ!! 勝てっこない!!」
岡部(集中しろ…!! 神経を研ぎ澄ませ…!!)フゥー…
まゆり「Too true―― Mad, your seed is death――(全く嘆かわしい事だ――狂科学者よ、君の希望は此処で潰える――)」
鈴羽(…二人とも本気だ…! …もうあたしの出る幕は無い。下がろう…!)ザザザッ…
岡部「……」スッ…
まゆり「……」
まゆり「……」ザカッ
鈴羽(…!? 何なのあの構え…!? 両手足を地面に付けてまるで蜘蛛…いや、むしろゴキブリのような…)
まゆり「……」ググッ…
まゆり「……トゥットゥルー!!!!」ヒュオオンッ!!!!
鈴羽(なッ!? 速――!?)
岡部(低空タックル――!! 受け流すッ!!!)
岡部「…らああああああああッッッ!!!」ズパァン!!
まゆり「!! ……」ダンッ ズザザザー
鈴羽(何だ今の――速過ぎて見えなかった――!!)ゾワッ…
岡部「…伊達に400回も殺されかけていないのでな」ニヤッ
まゆり「下手をするとまゆしいも軽くヒネられてしまいそうなのです。久々に本気を出せそうだよーえへへー」ユラァ…
タタンッ!!
岡部(来る!)バッ
まゆり「…ッふ!!」タタンッ ドウッ!!
岡部「うおおッ!?」(突きが鋭い!!)ヂッ!
まゆり「らッ!!」ビュオンッ!!
岡部「ッと!!」(一旦離れて体勢を整え直そう…!!)ザザザッ
まゆり「……」
鈴羽(おじさん凄い…! 回避が速い!!)
岡部(…それにしても相変わらず化け物染みた強さだな。その体躯からは想像できない脅威的な身体能力もさることながら、まゆりの真に恐ろしいのは『見抜く力』を持っているところだ)
岡部(いとも簡単に銃を分解したり、かつての俺を400回に渡って一撃で沈めたり…まゆりは人やモノの『弱い点』を本能的に理解している)
岡部(あらゆる事物にどうしても生まれてしまう脆い繋ぎ目。意識の死角。力の集中点。そういった部分をあいつは瞬時に察知してしまうのだ)
岡部(驚異的な身体能力を、脅威的な戦闘センスによって余すことなく使いこなせる天性の壊し屋。それがあの能天気な幼馴染み、椎名まゆりという人間だ…!!)
岡部「……」ジリッ
まゆり「…来ないのかなオカリン?」
岡部「…はッ! いいだろう…!!」タンッ! タタタッ…
まゆり(ミドルキックした右脚を軸に左踵蹴り…)「いい蹴りだけど…決定力に欠けるね」サッ パシイッ
岡部(打撃が…入らんな…!! 避けられるかガードされるかのどちらかだ…!!)ザッ ドウンッ!!
まゆり「降参したほうがいいと思うな。諦めも肝心だよオカリン」タタッ バシィンッ!!
岡部(…まゆりが『回避行動を取っている』ということはつまり『攻撃に当たりたくない』ということ。言い換えればまともに攻撃が入れば倒しようはあるということだ)
岡部(…だがその肝心の攻撃がまともに入らない。そもそもまともに貰えばヤバいというのは俺も同じ。むしろ向こうの攻撃力が馬鹿げている分俺の方がずっとキツいくらいだ)
岡部(頭部に貰えば戦闘不能。体に貰えば戦闘不能。手足に貰えば機動力が落ち次の一撃で戦闘不能…)
まゆり「後ろ回し蹴りなんて当たらないよ」タンッ タタンッ
岡部(しまった焦り過ぎた!! 早く下が――)
まゆり「大振りな攻撃は命取りだよオカリン!!」ヒュゴッ…
岡部「ッ!!」(来る!!)バッ!!
ズァンッ!!!
岡部(…ッぐ…早く体勢を立て直せ…!!)グラッ
まゆり「これで終わりにしよっかオカリン」タタタタッ
岡部(決めに来やがった!? 急げ!! 回避を――)カクンッ
岡部(…嘘だろ…? 膝が…ッ!!)ヨロッ…
まゆり「我慢してね」ヒュオッ…
岡部(終わっ――)
岡部「――ッ!!」ガシイッ!!
まゆり「…え?」
岡部「ッら゛ああああッッッ!!」グイィッ!!
ズダァァァン!!!
まゆり「ッぶァ!!」(鼻…がッ…!!)ミシッ…
タンッ タタタンッ!!
岡部「…はあーーッ!! はあーーッ!!」(き、距離を取れたッ…!!)ゼェーゼェー
まゆり「……!!」ドクドク…
岡部(何故一度しか見ていない技を使えるのだ俺は!? いやそ、れより初めて攻撃に成功し…)
まゆり「…く…はは……おああああああッッッ!!!!」タタタタッ!!
岡部(…やはり速い!! どうすれば…!!)
まゆり「オカリンッッ!!!!!」ビュオッ!!
鈴羽《じゃあこんなのはどう!?》
岡部「…らあッ!!」ヒュオンッ!! バキイッ!!
まゆり「…っか…!!」(可変蹴りッ…!? …離れなきゃ…!!)ザザッ
岡部(…まただ…!! また使ったことが無いはずの技を使えた…!!)
岡部(奥の手? …いや、これはそういうものではなく…)
岡部「…そうか。そうかそうかそうか…!! ふは…ふははははッッ!!!」
まゆり「…?」
岡部(…思ってはいた。以前から武術の習得だけはいやに早いなと思ってはいたんだ)
岡部(違和感。その正体は)
岡部(『イメージを直結する』力)
岡部(目で見たもの、体で感じたことを直接フィードバックする力)
岡部(理屈として噛み砕いて反復練習によって体に覚え込ませる作業を必要としない、曖昧なイメージをそのままに体が勝手に正解を選択してくれる力)
岡部(リーディングシュタイナーによって本来は未修得の技をいきなり獲得したかのようにさえ見える、そんな力)
岡部(それは、フィジカルには恵まれなかったこの俺に秘められていた…)
岡部(この俺に秘められていた、唯一絶対の武才ッッッ!!!!!)
まゆり「…分かってるよオカリン!!」ダダダッ
岡部「来い――!!」
まゆり「おおおおお……ッッッ!!!!」ヒュウッ…
フブキ《円の動きはすべてを受け流す――!!》
岡部「…るあ゛あッ!!」パシィン!!
まゆり「ッ!!」
ルカパパ《鳳凰院くん、カポエイラって知ってるかな?》
岡部「ふんッ!!」メキイッ!!
まゆり「ッぐ!!」(なんてトリッキーな蹴り…ッ!!)ヨロッ
岡部「るあ゛ッ!!」ドゴッ!!
まゆり「ッぶ!?」
カエデ《困った時のバックブロー、だよ》
岡部「はッ!!」メギッ!!
まゆり「づッ…!!」(この流れはマズい…!!)
フェイリスパパ《ははは、私の浴びせ蹴りは効いたかい?》
岡部「どらあああッ!!!!」ゴギイッ!!
まゆり「ごあッ…!!」(さっきから的確に急所をッ…!!)
岡部「お゛ッ…ご…!!」(…ヤバい…ッ!! 腹部にモロに蹴りを…!! 血が…!!)ドザザザザー ゲボッ
岡部(…いや違う!! これは…吐瀉物(ゲロ)だ!!)ビシャッ ビチャビチャッ ググ…
まゆり(…っと。一気に大技を貰い過ぎたかな。血がなかなか止まらないよ)フラッ… ダンッ
岡部(まゆりの蹴りは確かに入った!! それでこの程度の威力…まゆりはかなり消耗している!!)ペッ
まゆり(…お互いに、限界が近い…!!)フゥー…
岡部(今度まともな一撃を貰えば、今度こそ血を吐くことになるだろう…!!)
まゆり(だから…次で決める!!!)ググ…
岡部(叩き込む!!! 総てを!!!)ググ…
まゆり「うあああああああああああああああああああッッッッッ!!!!!」タタタタタッ!!
岡部「…ッどうだまゆりッ!! 今の気分はッ!!!」タタタッ
まゆり「最ッ高!!!」タタタッ
岡部「奇遇だなッ!!!」タタッ
まゆり「…づッあああああああああああああああああああッッッッッ!!!!!」メッギイイイイ!!!!!
岡部「ぐッ…!!」ゴブッ
まゆり(…入った!! お腹に重いアッパー!! これで止ま――)
まゆり(耐えた!? くそ、掴まれ――)
紅莉栖《路上で柔道はマジヤバい。覚えときなさい》
岡部「……これで……終わりだ……!!」ビチャビチャ グオッ…
まゆり(…え? 浮い――)フワッ…
岡部「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」ズドオオオオオオオオオオン!!!!!!!!
まゆり「…ッ…!! ……」
まゆり「……」ガクンッ…
まゆり「……」
岡部「……」
岡部「……勝った」
岡部「……はは。ははは…」
岡部「まゆりを……気絶(お)とした……俺が勝ったんだ……」
岡部「……うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!」
おい目的忘れるなよ?ww
『ひっく…ひっく…おばあちゃん…』
『何だい? 泣かずに言ってご覧?』
『…あのね? さっきね? まゆしいがすなばであそんでたらね?』
『うん、うん』
『…しょ…ぐすっ…しょうがくせいのひとたちがね? まゆしいのすなやまをこわしてね?』
『うん、うん』
『それでないてたらね? おかりんがたすけにきてくれてね?』
『うん』
『しょうがくせいをやっつけようとして、やっつけられちゃった…』
『いっしょににげてね? どろだんごなげてまたにげてね? いっしょにかえってきた』
『おかりん君は泣いた?』
『ううん。でもまゆしいはおかりんがいたかったからまたないた…』
『それで、まゆりはおかりん君を見てどう思った?』
『かっこいいなっておもって、おかりんがいたかったらやだなっておもった』
『そうかそうか。おかりん君に危険な目に遭って欲しくないって思ったんだね』
『きけん? まゆしいはおかりんをまもれたらいいなっておもったよ』
『なるほど。護りたい、か。…強くなりたいのかいまゆり?』
『…うん』
『辛い道のりかも知れないよ。それでもいいのかい?』
『いい』
『そうか。…分かった、いいだろう――』
まゆり「…オカリン」
岡部「良かった。なかなか起きないから心配した」
まゆり「…夢を、見てたよ」
岡部「体は、痛くないか?」
まゆり「肩甲骨が割れたかも知れないよー♪ えへへー♪」
岡部「えへへーって…」
鈴羽「…うん。これで二人とも応急処置は終わったよ。救急箱を持ってきておいて良かった」
岡部「…まゆり、救急車を呼んだ方がいいか? 鼻の負傷も軽くは無さそうだ」
まゆり「…大丈夫だよオカリン。足へのダメージはそんなに無いからね、いざとなったら歩いて病院まで行けば大丈夫なのです♪」
岡部「…そうか。じゃあここで寝てるか?」
まゆり「そうしようかなー♪」
鈴羽「うん。…それよりさっきおじさんに頼まれたものは買ってきたけど…本当にあれだけでいいの?」
岡部「ああ。十分だ。…ではまゆり、行ってくる。少しだけ待っててくれ」
まゆり「…ねぇオカリン」
岡部「…何だ?」
まゆり「…頑張ってね。まゆしいはここで応援してるから」
岡部「…ああ!」
ダル「……」
ダル「…え? 何これ」
~タイムマシン内部~
鈴羽「――それにしても凄い戦いだったね。おじさん怪我は大丈夫なの?」
岡部「ああ。外傷はそこまで無いからな。内臓にはダメージが溜まっているだろうが寝れば治る」
鈴羽「そんな原始人みたいな…まあとにかく作動させるよ。ハッチ閉めるね」カチッ ウィーン…
鈴羽「…あ、そうだおじさん! 携帯出して!」
岡部「携帯か? ほら」スッ
鈴羽「混線を防ぐためにこれは置いて行かなきゃ…って壊れてるじゃん。やっぱり返すよ」スッ
岡部「ああ、さっきの戦いの時に壊れたのか。まあこれが終われば新しいのに買い替えるさ」パシ
鈴羽「さて、じゃあシートベルトを締めて」
岡部「分かった。…ところで鈴羽、このマシンの性能について聞いておきたいのだが」
鈴羽「えっと、まずこれはおじさんと父さんが造り上げたマシンだよ。過去へも未来へも行けるマシン」
岡部「なるほど、未来の俺たちが…」
岡部「…2回失敗すれば終わり、か。構わん、1回で成功させてやる」
鈴羽「お、自信有りって感じだね。ところでCDは何がいい?」スチャッ
岡部「ブルーハーツにしてくれ」
鈴羽「分かった。っとその前にクーラー付けなきゃ」カチッ ブオオオオー
岡部「お、冷蔵庫があるではないか。ドクぺ貰うぞ」プシッ
鈴羽「そうそう、向こうに着くまでの時間は数分だよ。遠心力を相殺する装置が積まれてるからGに苦しめられることも無いはず」パカッ カチッ ウィーン… キュルルルルルー
岡部「分かった。ただ座っていればいいんだな。…では鈴羽、そろそろ出してくれ」ゴキュゴキュ
鈴羽「オーキードーキー!! じゃあそろそろ行くよ!!」ピピピピピピッ ピッ
キュイイイイイイイン… プンッ
ウィーン… プシュー…
岡部「…着いたか」ノソッ
鈴羽「だね」ノソッ
岡部「しかしこんなギリギリの時刻に着いて大丈夫なのか? 講演会が始まる直前ではないか」
鈴羽「直前じゃないと騒ぎになってマズいんだよ。おじさんこそスタンガンとハンマーだけで大丈夫なの?」
岡部「ああ。大丈夫だ」
鈴羽「ふーん…? とにかく何か考えがあるんならいいや。改めてこのミッションについて説明するね。目的は牧瀬紅莉栖の死の回避」
岡部「ああ」
鈴羽「おじさんは牧瀬紅莉栖をマーク、殺されるのを阻止して。あたしはおじさんのサポートに回る。終わったらタイムマシン前に集合ね」
鈴羽「なるほどね。そのためのハンマーか」
ガンッゴンッゴンッバキイッ!!
岡部(…たったの4回か。俺にも『壊れるやり方』と『壊れないやり方』がなんとなく分かってきたな…)
鈴羽「…そろそろ人が来るね。おじさんは隠れてて。あたしが囮になる」
岡部「分かった!」ギイィ…
鈴羽「あ、ハンマーは置いていったほうがいい! それだけで警戒されるよ!」
岡部「ああ! 任せたぞ!」ゴトッ タタタタタ…
鈴羽「自分との接触だけは絶対に避けてねー!! 深刻なタイムパラドックスが発生するかもしれないからー!!」
~ラジオ会館・7階~
ナンダ…コレ…? ハーイキケンデース! タチイラナイデクダサーイ!!
岡部「…はぁ…! はぁ…!」
岡部(…間一髪だったな。真っ先に階段を上ってきたのはたぶん『俺』だ)
岡部(さて、ここからどうする。動き過ぎるのもマズいと思って7階で止まっては見たが――)
岡部(…ん? あれは…雷ネットのガチャポンか)
岡部(そういえばまゆりの奴、あの時ここで当てたレアアイテムの『メタルうーぱ』を無くした、とか言ってしょげてたな)
岡部(…ちょうど財布は持ってる。どれ、ぶちのめした詫びににひとつくらい買っていってやるか)チャリッ ガションッ
コロンッ
岡部「お、メタルうーぱ。…なんだ、全然珍しくなどないではないか」
まゆり「あー! 雷ネットだー!」
岡部「ッ!!」(まゆりだ!! ということは俺も居る!! とりあえずここは離れよう!!)タタタタタ…
岡部(…危なかった…!! …ったく馬鹿か俺は!! 今は無駄なことをしている時間などないと言うのに!!)ゼェゼェ
岡部(…さて、これからどうする――)
紅莉栖「あの、お聞きしたいことがあるんですけど」
岡部「ッ!?」
紅莉栖「あなた、さっきこのビルの屋上から降りてきましたよね?」
岡部「…紅莉…栖…ッ!!」
岡部(…もう会えないと…思っていたのに…)ウルッ
紅莉栖「…私あなたと面識ありました?」
岡部「…いや」
紅莉栖〈0回目〉「…とにかく! さっき屋上で妙な音がしたし、ビルも揺れたように感じたんですけど一体何が――」
岡部「…紅莉栖」ガシッ
紅莉栖「ひっ!? 」ビクッ
岡部「俺はお前を絶対に助ける。じゃあな」タタタタタ…
紅莉栖「…え? ……あ、待って!」
岡部(…ここだ。ここで紅莉栖は殺されていた)
岡部(いつ誰が来るかは分からないが…とにかく段ボールの陰にでも隠れておこう)
岡部(……)
岡部(……)ブルッ
岡部(…恐れるな。すべては俺の思惑通りに行くに決まっているさ)
岡部(…俺を、俺自身を、信じろ――!!)
パチパチパチ…
岡部(――発表会が終わったか。ということはそろそろ…)
カツン カツン カツン カツン
岡部(…来た!! 誰だ!?)
紅莉栖「……」カツン カツン…
岡部(…紅莉栖!? まさか先に紅莉栖が来るとは…)
紅莉栖「……」ガサガサ
紅莉栖「……」ニコッ
岡部(…何だあの封筒? そういえば初めて会った時にも持っていたな…)
岡部(…とにかく、作戦の再確認だ。紅莉栖を殺す犯人は恐らく刃物を持っている。そこでこのスタンガンの出番だ)
岡部(犯人が確定したところで、正確には刃物を持っている人物が現れたところでここから飛び出し、犯人にスタンガンを当て気絶させる…!! 単純だが完璧だ!!)
岡部(…来た。二人目だ!)
ピタ…
岡部(…誰だ?)チラリ
紅莉栖「…話がある」
中鉢「……」
岡部(…ドクター中鉢。紅莉栖の実の父親。やはりこの男なのか…?)
中鉢「…それはなんだ?」
紅莉栖「パパがタイムマシンの発表会をするって聞いて、それで私も論文を書いてきたの。よかったら見て」
岡部(…論文? タイムマシンの発表会をすると聞いて? まさか…!)
中鉢「……」ペラペラペラペラ…
紅莉栖「…え? ど、どういう…」
中鉢「お前はアメリカに帰れ。二度と顔を見せるな」
紅莉栖「…!! …論文を、盗むの?」
岡部(…間違いない!! 『中鉢論文』の正体は…紅莉栖のタイムマシン理論だ!! そしてあの論文がドクター中鉢のものとして発表されたということはつまり…)
中鉢「何だと…?」
バチィンッ!!
紅莉栖「っ…!」ジンジン
中鉢「この…!」ガシッ ギリギリギリギリ
紅莉栖「!? …ぅ…!!」ジタバタ
岡部(首絞め!? …もう間違いない! 紅莉栖を殺したのは中鉢だ!)
紅莉栖「ぁ……!!」ジタバタ…
岡部(…いや待て!! まだ奴は刃物を出していない!! ここで飛び出すのは早計――)
中鉢「私はお前が憎い…存在そのものが疎ましいのだ!!」ギリギリギリギリ
紅莉栖「……っ!!」ガクガク…
岡部(――くそ、これ以上見てられるか!!)
岡部「止めろッ!!!!」バッ
中鉢「ん? …お前、さっきの…!!」パッ
紅莉栖「…ごッほ!! げほっげほごほげほっ!!」ゲホゲホ
岡部「さっき? …ああ、あの下らん発表会のことか」
中鉢「く…下らんだとッ!? …許さん…許さんぞガキ共ッ!!」パチンッ
岡部(折り畳みナイフ…!! 確定だ!! あとはスタンガンでこいつを気絶させれば…!!)
中鉢「ス…スタンガン!?」ビクッ
岡部「俺がこいつで…お前をブチ殺してやるッ!!」カチッ!!
シーン
中鉢「……」
紅莉栖「……」
岡部「……」
岡部「…あれ…」カチッ カチカチッ
岡部(…ででで電池が入ってないだと!? 鈴羽の奴肝心なものを忘れやがって!! それともわざわざ電池も買ってこいとは言わなかったからか!?)ブンッ ガシャンッ
岡部(…来るか…!!)ジリッ…
紅莉栖「!! パパ止めてッ!!」
中鉢「うるさいッ!! …そうだ!! まずはお前から殺してやろう紅莉栖!!」
紅莉栖「!? ひっ…!! こ、来ないで…!!」ガクガク
岡部(…考えろ俺ッ!! まだ何かあるはずだ最後の一手がッ!! とにかく何でもいいから奴を止めろッ!!)タタタタタッ
中鉢「死ねぇぇぇッ!!!」ダダダダダ
紅莉栖「嫌あああああああああああああ!!!!!!」
中鉢「ん?」ピタッ
岡部(…ッ!! そうか見つけたッ!! 最後の一手ッ!!)タタタタタタ… ザカッ!!
中鉢(…何だあの虫のような構え!? 一体何を――!?)ギョッ
岡部(最後の一手ってのは――俺自身がスタンガンになる事だ――!!)ググッ ヒュオオオンッ!!!!
中鉢「な――」(速――)
紅莉栖「パパ危ないッッ!!!」バッ
なん…だと…?!
紅莉栖「ゲッボアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!??」ボギボギバギィィィッ!!
ドヒュウウウウウ!! ゴガンッ!! ゴギンッ ドゴンッ ズザザザザー…
紅莉栖「」ゲボッ ゴボゴボボッ ピクピク
中鉢「」
岡部「紅莉栖ッ!? なぜ中鉢を庇うような真似を…!!」ズザザザー
紅莉栖「」ピチャッ コポコポ ピクピク
岡部「…待て。…吐血?」
岡部(…そうか!! これだ!! よく考えれば『血の海の中に倒れている紅莉栖』はこの日の俺が既に観測しているんだ!!)
岡部(…『俺と俺が出会ってはいけない』ように…『紅莉栖は血の海の中で倒れていなければならない』!!)
紅莉栖「」ガボッ ゴポポポッ
中鉢「…ッ!! …ッ!!」ガクガク パクパク
岡部「紅莉栖!! もっと!! もっとだ!!」ブンブン
紅莉栖「」ゴボッ ビシャッ
岡部「ほら! もう少し!!」ブンブン
紅莉栖「」コヒュー コヒュー ピクピク
岡部「くそっ…!! 血が足りない…!!」
殺す気だろオカリンwww
岡部「ん? …そうか、まだお前が居るじゃないか…!!」
中鉢「!? ひ…ひっ…!!」ガクガクガクガク
岡部「血を…寄越せ…!!」ユラァ…
中鉢「ひぎゃあああああああああああああああああああああああ!!!!!」パシッ ダダダダダ…
岡部「…ふん。それでもしっかり論文を盗んでいくとはな。本当に救えん奴だ」
岡部「鈴羽!! よく来てくれた!!」
鈴羽「うわ!? 大丈夫なのこれ!? 一応救急箱は持ってきたけど…」
岡部「大丈夫だ。ちゃんと『壊れないやり方』を使った」
鈴羽「え? これおじさんの仕業?」
岡部「そんなことより鈴羽、救急箱の中に輸血用の血か何か入ってないか?」
鈴羽「いや、無いけど…どうして?」
岡部「俺が観測した『血の海』はこの血の海よりももっと大きかったのだ。もう少し血を増やさないと…」
鈴羽「あそこに赤いペンキならあるよ。あれじゃだめなの?」
岡部「駄目だ。俺はあの時の血の匂いを『今でもはっきりと覚えている』。ペンキや血糊ではなく本物の血でないと…」
鈴羽「なるほど…」
岡部「何だ?」
鈴羽「これ使おうよ! 注射器!」スチャッ
岡部「…えっ?」
鈴羽「さぁおじさん! 腕出して!」
岡部「ば…止せ鈴羽ッ!!!! 俺は注射は死ぬほど苦手で」
鈴羽「ふん」プス
岡部「あああああああああああああああああああああああああああ――――!!!!!!」
鈴羽「…おじさん大丈夫?」
岡部「ああ…なんとか…」フラフラ
鈴羽「じゃあ早く座って。オカリンおじさんが元居た日に帰ろう」カチッ ウィーン…
岡部「…なぁ鈴羽…俺は確かに紅莉栖は救えたと思うが…第三次世界大戦を防ぐことは出来たのか…?」ストンッ フラフラ
鈴羽「…どうだろうね」
岡部「紅莉栖が書いた『中鉢論文』は中鉢が持って行ってしまった…。もしかすると失敗したのかも…」フラフラ
鈴羽「…分からないけどきっと大丈夫。あたしは牧瀬紅莉栖の生存がカギになる事しか知らないからね。このあとで牧瀬紅莉栖がドクター中鉢を糾弾したりするんじゃないかな」
岡部「ああ…なるほど…」フラッフラッ
鈴羽「…あんまり喋らない方がいいよおじさん。横になってて」
岡部「そうする…」ゴロン
岡部「…消える?」
鈴羽「ああ、死ぬわけじゃないよ? きっとあたしは2036年の『シュタインズゲート』で、父さんと母さんの子として幸せに過ごしてる」
岡部「…そうか…」
鈴羽「…『シュタインズゲート』では何があるか分からない。数日後におじさんは死ぬかも知れない。牧瀬紅莉栖も死ぬかも知れない」
岡部「……」
鈴羽「それに第三次世界大戦が起きるかも知れないし、SERNってとこに世界が支配されるかも知れない。両方起きたりするかも知れないし」
岡部「…それでも、構わん」
鈴羽「…うん。じゃあ行こう」
岡部「ああ…」
岡部「…ああ…」
鈴羽「さてと…」ピピピピピピッ
岡部「鈴…羽…」
鈴羽「何?」ピッ
岡部「エル・プサイ・コングルゥ」
鈴羽「エル・プサイ・コングルゥ」
キュイイイイイイイン… プンッ
戦闘におけるダメージや肉体的・精神的な疲労は思っていたよりも大きなものだったらしく、俺はラジ館の屋上に帰り着くとすぐに高熱を出して倒れ、そのまま5日間寝込んだ。
療養中、家まで見舞いに来てくれたたまゆりとダルが持ってきた週刊誌の記事によって、俺は中鉢がロシアに亡命したことを知った。
その記事によれば例の論文は事故によって綺麗に燃えてしまったそうだ。ラッキーというか滅茶苦茶というか…。とにかく中鉢が学会に相手にされることはもう無いだろう。
またダルとまゆりに「最近ラジ館で殺人事件は起きていないか」と聞いたが、二人とも首を横に振った。秋葉原周辺では殺人どころか死亡事故すら起きていないらしい。
そうして、8月が終わって、9月になって、退院して――
――そして今日は、9月13日。俺の体感ではまったくそんな事は無いのだけれど、最初にまゆりが死んだ8月13日からちょうど1ヶ月後でもある。
つまりは俺がエンターキーを押した、この世界線においては彼女のリーディングシュタイナーが発動したはずのあの日はとうに過ぎていて。
それでも、牧瀬紅莉栖がこのラボを訪れてくれることは無かった。
ダル「――リン。オカリン? 聞いてる?」
岡部「…ん? 何だ?」
ダル「聞いてねーのかお。さっきからメイクイーンの2号店ができるってフェイリスたんから聞いたんだって言ってんじゃん?」
岡部「済まんな。少し考え事をしていた」
ダル「ロダン乙」
岡部「もう少しマシな突っ込みは無かったのか? しかしまさかメイクイーンが2号店を出すとはな。場所はどこなのだ?」
ダル「中央通り沿いだってお」
岡部「フェイリスの奴…また権力を乱用したに違いないな…」ハァ…
ダル「またアキバに萌え系ショップ増えたしね。流石僕のフェイリスたん!」
ダル「お、マジで?」
岡部「ああ。まゆりが今日ラボに持ってくるそうだ」
ダル「るか氏のコスプレかぁ。僕あの日用事で行けなかったんだよね」
岡部「いやあ、なかなかのものだったぞ。老若男女が寄ってたかっての大騒ぎだった」
ダル「まさかのリアル男の娘だもんなぁ。そりゃ人気出て当然だお」
岡部「ファンクラブまで出来ているくらいだからな。一度ルカ子の名前でググってみるといい」
ダル「マジ!? ファンクラブまであんの!? そのうちテレビにでも出るんじゃね?」
岡部「冗談抜きで本当にそうなるかもな」
岡部「だが断る! あんな重いもの運んでたまるか! お前が運べ」
ダル「デブはみんな力持ちだなんて思うなよ? つーかオカリン最近筋トレしてるから丁度いいじゃん」
岡部「それとこれとは別だ! お前がブラウン管工房に行ってこい! 小動物も居るんだ、ロリコンのお前大歓喜だろう?」
ダル「YESロリコン、NOタッチだお! ロリ専門じゃないし。そういやブラウン管工房って最近バイトのお姉さん入ったよね。桐生氏だっけ」
岡部「ああ、萌郁か。あいつもラボメンだ」
ダル「オカリンマジ何なん? 厨二病のくせに女の子の知り合い多過ぎだろ常考!」
岡部「厨二病は余計だ! そもそもあいつとはレトロパソコン探しを手伝ってやった程度の仲でしかないぞ」
ダル「オカリンマジ紳士。結局見つかったん?」
岡部「いや? それにもう二度と手伝わん」
ダル「ちっちぇーっす! 狂気のマッドサイエンティストちっちぇーっす!」
岡部「やかましい! 探しても無いものは無いのだ! そもそもあいつはもう編プロのバイトを辞めてるからな。万が一見つけても教える必要は無いぞ」
岡部「小動物が怪我していたのを介抱して家まで付いていってやったらしい。それで無職だと言うので店長が雇ってやることになったそうだ」
ダル「ふーん。あの店はバイト居ても意味ない気もするけどね」
岡部「本人たちがいいならいいんじゃないか? 俺たちには関係のないことだ」
ダル「だね。とにかくこれでフェイリスたんにルカ氏に桐生氏の3人が加入。もうラボメンが6人か」
岡部「夏休みのころの2倍だな」
ダル「メイクイーン2号店ができたらラボメン全員で完成記念パーティーとかしたいけど…」
岡部「残念ながらそれは無理だろうな」
ダル「ですよねー。来月からだっけオカリンのアメリカ留学」
岡部「ああ」
岡部「コンドリア大の名誉教授が東京に講演に来ている、という情報をネットで調べてな。自ら売り込みに行ったのだ」
ダル「え? それマジ?」
岡部「マジだ。講演の質疑応答の時に教授を徹底論破してみせたらいたく気に入られた」
ダル「で、その後で声掛けられたん?」
岡部「ああ。控え室に呼ばれて軽く世間話をしていたらそのままトントン拍子に留学の話が進んだ」
ダル「そ、そんな簡単に行くもんなん? 世間話とやらの内容が恐ろしくて聞けないお」
岡部「行ったのだから仕方が無い。まだ本決まりではないが、俺はアメリカに渡るつもりでいる」
ダル「お、おう…! 割とマジでパネェっすオカリン」スゲェ
岡部「ふはは!! 褒めても何も出んぞ!!」フハハハ
ダル「でもやっぱりちょっと寂しくなる罠。なんだかんだでここオカリンのラボだし」
岡部「…お前がそういうことを言うとは思わなかった」
岡部「ラボについてはこれからお前がリーダー(仮)だ」
ダル「オーキードーキー」
岡部「まゆりについても心配は要らないさ。あいつはあれでとても強い子だ。…むしろ、俺の方が重荷になっていたのかもな」
ダル「重荷って。…にしてもこれからどうなるんだろうね。オカリンもまゆ氏も、それから僕もこのラボも他のこともさ」
岡部「さぁな。だが案外何とかなるもんだと思うぞ?」
ダル「そんなもんなんかなぁ」
岡部「そんなもんだ」
そう、きっとそんなもんなのだ。
その理由は分からない。単純にここに来たくないだけなのか、或いは何らかの理由でリーディングシュタイナーを失ったのか。
後者だとすれば『リーディングシュタイナーを持つ紅莉栖』の意識が『紅莉栖が死んでいる世界線』へと移動したことで行き場を無くして消えてしまった、などといったところか?
あえて探すことはしなかった。とにかく、彼女が今も生きていることに変わりはないのだ。
そして俺は紅莉栖が好きで、今更この気持ちを封印することなど到底できないと分かっていて、おまけにすぐにでも彼女に会いたくて仕方がないと来ている。
昔の俺なら、あれこれと理由を見付け出して彼女を諦めようとしていたのかも知れない。
だが生憎今の俺は、掛け違えたボタンだけ外しても何も変わらないことを知っている。俺はずっとここで夢だけを見て何もしないほどドジでは無いのだ。
生きているのなら、ゼロでないならば問題無い。彼女とはせいぜい離れて2万キロ。手が届かないのならば追い付けばいいだけの話なのだ。
と、ラボの入口の扉越しにまゆりの声が聞こえた。
なぜわざわざ了解を取るのだろう、と少し考えてすぐに思い付く。ダルの言っているように、まゆりは俺に対してなんとなく遠慮をしてしまっているのかも知れない。
あいつはあれで時々変に鋭いことがあるからな。俺の微妙な変化だとか、そういうものを感じ取っているのかも。そして、それの邪魔をしないように変に気を使っているのかも。
空気を読もうとするなんておおよそまゆりらしくないな。苦笑しながらゆらりとソファから立ち上がる。ここはこの俺が直々に扉を開けてやろう。
それでも俺は進まなければならないし、進むべきだし、進みたい。だから進む。
そんなことを考えている俺を、果たして君は受け入れてくれるのだろうか。
今まで無くしたものとこれから君が見るもの、それらをすべて取り換えた今ならば俺たちは変わっていけるのだろうか…
俺は玄関の扉を決然と見据えると、強く地面を踏み締めながらゆっくりと歩き出した――
おわり
~病院~
紅莉栖「…ここ…は…?」
看護師「…え?」
紅莉栖「ここ…どこ…?」
看護師「ま、牧瀬さん!? 意識が戻って…!?」アタフタ
紅莉栖「岡…いづッ!?」ズキッ
看護師「あ! 動いちゃダメです!」ワタワタ
看護師「あ、あのですね! ここは病院で、それで、お母様がさっきまでいらっしゃって、えっと…と、とにかく先生呼んできます! 寝ててくださいね!」タタタタタ…
紅莉栖(…生きてる。何でだろう? 確かにエンターキーは押されたはずなのに)ポスッ
紅莉栖(……)
紅莉栖(汚い天井だなぁ)
ママは私が意識不明のまま入院しているという知らせを受けてアメリカから飛んできたらしい。近くのホテルに宿を取って私の看病をしてくれていたそうだ。
状況がほとんど掴めなかった私は呆れるほどたくさんの質問をしたが、彼らは嫌な顔一つせずそれらに答えてくれた。
私がこの病院に運ばれたのは7月28日。目を覚ましたのは8月末日だったので、丸々1ヶ月も目を覚まさなかったことになる。
28日、私は内臓に大きなダメージを受けた状態で血の海の中に倒れているところを発見され、ここに緊急搬送された。
犯人は不明。ただ警察がその血の海を調べたところ、私のものとは別にもう一種類、私とは血縁関係にない何者かの血液が混じっていたそうだ。
また現場にはパパの指紋が付着したナイフが落ちていた。そしてそのパパは最近ロシアに亡命をしたらしい。
この世界線――発表会が中止にならない世界線では、私はパパにタイムトラベルについて書き上げた論文を見せに行っているはずなので、つまりはそういうことなのだろう。
これ以上パパの暴走を黙って見過ごす訳にはいかない。もし彼がまた何かとんでもないことをしようとするならば、私が全力で止める。
とにかく、こうしてなんとか私は生きているらしい。
そして、あの日ラジ館に居て、私と血縁関係に無く、死ぬはずだった私を何らかの方法で救うことのできそうな人なんて、私にはたった一人しか思い付かない。
……あの言葉、最後まで届かなかっただろうなぁ。
早く動けるようにになって、彼に会いたい。そして、そして――
――そして今日は、9月13日。
紅莉栖「――じゃあ柳林神社までお願いします」
タクシーの運転手「柳林神社ね」ブロロロロー…
紅莉栖「……」
タクシーの運転手「…お姉ちゃん、今日退院だったの?」
紅莉栖「え? …ああ、今日は外出許可が取れたんです。松葉杖さえあればあちこち動き回れる程度には良くなってきてるんですけどね」
タクシーの運転手「ふーん。じゃあこれから何かいい事でもあるの?」
紅莉栖「…もしかして顔に出てたりします?」
タクシーの運転手「出てる出てる。俺くらいのベテランになるとね、お客さんが何考えてるかがなんとなーく分かったりするんだよ。凄いでしょ」
タクシーの運転手「そりゃあ好きじゃないとこんなに長くやってらんないよー」
紅莉栖「お仕事が嫌になったりすることなんか、無いんですか?」
タクシーの運転手「そりゃあるよ。お客さんが困った人だったり、逆にちっともお客さんが捕まらなかったり。あと嫌な夢を見た時とかね」
紅莉栖「嫌な夢、ですか」
タクシーの運転手「人を轢いちゃったり後ろに乗せたお客さんが銃で撃たれたりする夢。馬鹿げてるけどすごいリアルでさ、そういう夢を見た日はやる気無くなっちゃうんだよ」
紅莉栖「……」
タクシーの運転手「ま、それでも結局俺は人を乗せるけどね。何が起こるか分からないからこそ楽しいんだと思うよ? 何事もさ」
紅莉栖「…そういうの、いいですね」ニコッ
~柳林神社~
ブロロロロ…
紅莉栖(…よいしょ、っと)カツンッ カツンッ
紅莉栖(…階段の上り下りも一苦労だな。早く松葉杖無しで歩けるようにならないと…)カツンッ カツンッ
紅莉栖(…あ、居た。掃除してる)
カツンッ カツンッ
紅莉栖「こんにちは」カツンッ カツンッ
ルカ子「え? あ、こんにちは」
紅莉栖「初めまして」ニコッ
ルカ子「? 初めまして」
紅莉栖(やはり確かに世界線は移動し、なおかつ私は命を救われたんだ)
ルカ子「…あの、お怪我されてるんですか?」
紅莉栖「ええ。内臓が少し傷付いてるのよ」
ルカ子「ええっ!? だ、大丈夫なんですか!?」アタフタ
紅莉栖「大丈夫よ。だってほら、今だって自由に歩き回れてるでしょ?」
ルカ子「で、でも…! …ち、父を呼んできます! 父に祈祷をしてもらいますからっ!」タタタタタ…
紅莉栖「え? いやだから大丈…行っちゃった」
~メイクイーンニャンニャン~
カランカラーン
紅莉栖(…つ、疲れた…。あのタクシーに待って貰ってればよかった)
フェイリス「お帰りニャさいませご主人様~!」
紅莉栖「こんにちは」
フェイリス「…ニャニャ? もしかしてご主人様お怪我してるのかニャ?」
紅莉栖「ええ。内臓をちょっとだけね」
フェイリス「ニャ、ニャンだってー!? そんなご主人様にはフェイリス特製猫まんま(無添加)をサービスしちゃうのニャー!! ささ、こちらの席にどうぞなのニャ」
紅莉栖(相変わらずだなぁ。…なんか安心しちゃった)
~ブラウン管工房前~
紅莉栖(…ついに、来た)
紅莉栖(ついに、ラボの前まで来た)
紅莉栖(…か、帰ろうかな。…いやいや! 何ビビってんだ私!)ブンブン
紅莉栖(…あれ? 工房の中に居るのって…)
紅莉栖(…桐生さん!? 何で!?)
紅莉栖(……まぁいいか。私が口を出す事じゃない。3人ともあんなに楽しそうなんだからいいじゃない)
紅莉栖(それより…)
紅莉栖(…そろそろ、行きますか)
コロンッ
紅莉栖「…ん?」(何か足に…)
まゆり「あー! まゆしいのメタルうーぱ落ちちゃった…」タタタタ ヒョイッ
紅莉栖「…まゆり!」
まゆり「え? …えっと、どこかで会ったことあるのかな?」キョトン
紅莉栖「あ、いや…はじめまして。私の名前は牧瀬紅莉栖。よろしくね」
まゆり「椎名まゆりだよーえへへー♪ 紅莉栖ちゃんって呼んでいいかな?」
紅莉栖「もちろんよ、まゆりさん」
まゆり達とは、また一から始める。
かつん。かつん。何度通ったか分からないこの階段を、本当に少しずつ上っていく。
不意に、思い出す。
ひどく遠回りをした思い出を。あなたと私が紡いだ想い出を。
本当に、いろいろなことがあった。
途端に、驚くほどさまざまな悪い想像が頭の中を駆け巡り始める。悪趣味なシミュレーションが幾度も繰り返されていく…
大きく、深呼吸をする。
…心配するのはもう止めよう。心配したって今更どうにもなりはしない。だから、そもそも心配する必要なんて無いんだ。きっと大丈夫。
そう、私たちはきっと大丈夫。
笑顔でドアノブを指差すまゆりに、無言で頷き返した。
…ねぇ岡部。過去を紐解けばいろんな事柄が、私たちの前にあったと思う。
けれどこの先は素晴らしい日々だけが残っているような、そんな気がする。
それでも、本当の事は分からない。
それでも、あなたの事だけは近くに感じていたい。
そして、最後まで言えなかったこの言葉を今度こそ伝えよう。
……私も、岡部のことが大好き!!
心臓がピンポン球のように跳ね始める。世界が色鮮やかに再構成されていく。
見慣れたそのドアノブに、今、まゆりが手を伸ばす――
完
おわったああああああああああああああああああああああああああああああ
ここまで見てくださった方、本当にありがとうございました。
好きなものや好きな要素を可能な限り詰め込んでやりたい放題できたのでもう満足。
さるさん6回も食らったときはもう駄目かと思ったけど私は元気です。
ありがとう
Entry ⇒ 2012.06.23 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (3) | Trackbacks (0)
紅莉栖「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」 前編
岡部「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
の続編です。
このSSに興味を持たれた中でまだ前作をご覧になられてない方は先にそちらからご覧になることをおすすめします。
大した時間も掛からずに読み終わられることかと思いますです。
岡部〈18457回目〉「……」ズーン…
紅莉栖〈5050回目〉「……」ズーン…
鈴羽「店長、お疲れー」ガラッ ピシャッ
鈴羽「…ってあれ? 君たちこんなところで何してるのさ?」
岡部「……今日のパーティーの買い出しだ…」
鈴羽「買い出しって…もうそろそろパーティーが始まる時間じゃあ…」
紅莉栖「……ああ…もうそんな時間か…宅配のピザがあるからダイジョーブイ☆」ビシッ…
鈴羽「…二人ともホントに大丈夫? なんだか目がヘン…」ジー
鈴羽「…………」
鈴羽「……そうか。そういうことか…」
岡部「……鈴羽? どうかしたのか?」
鈴羽「…いや、何でもないよ」ニコッ
岡部「…ならいいが」
鈴羽「ところで岡部倫太郎、ちょっと携帯を貸して貰えないかな? あたしの携帯さっき充電が切れちゃってさ」
鈴羽「ありがとう」パシ
岡部「構わん」
鈴羽「…ありがとう二人とも。ごめんね」ニッコリ
岡部・紅莉栖「?」
鈴羽「じゃ、あたしは一足先にラボに行くよ」タタタタタ カンカンカンカン…
紅莉栖「…なんで私まで礼を言われたんだろう」
岡部「…さぁ」
カンカンカンカン タタタタタ…
岡部「ん? ああ、まゆりか。一体どうし…」
まゆり「オカリーン!!! 紅莉栖ちゃーん!!! 喧嘩なんてしちゃダメなのです!!!」タタタタタ
ダル「ポカリ派とアクエリ派で喧嘩だなんて大人気ないおー」ドタドタ
岡部「はあ? 一体何の話だ?」キョトン
まゆり「え? だってスズさんがね、オカリンと紅莉栖ちゃんが殴り合いの喧嘩してるから止めるの手伝って、って…」
ダル「まぁ僕はダカラ派な訳だが?」
まゆり「えー? そうなの?」
岡部「…なぁ、鈴羽はどこだ?」
ダル「どこって…あれ? 付いてきてたと思ったのに」キョロキョロ
紅莉栖「…まさか…」
岡部「…気付いたのか!!」ガタン!! タタタタタ…
紅莉栖「あ、待って!!」ガタン!! タタタタタ…
岡部「おい鈴羽!! 開けろッ!!」ガチャガチャ
岡部「…駄目だ…!! 施錠されてる…!!」ガチャガチャ
紅莉栖「カギは無いの!?」
岡部「机の上だ…!!」
紅莉栖「…阿万音さん!! 開けて!!」ドンドンドンドン
岡部「開けろよ鈴羽ああああああああああああ!!!!!」ドンドンドンドン
岡部「…それしか考えられん…! 俺の携帯を持って行ったのも多分それだ…!」ドンドンドンドン
紅莉栖「…岡部のDメールを打ち消すため…?」
岡部「正確にはあの日の俺の尾行を阻止するため、だ…! 俺にDメールを送ってタイムトラベルを成功させる気なんだよ…!」
紅莉栖「!? 放電現象…!!」
岡部「…なぁ、開けてくれよ鈴羽…。他にも方法はあるはずなんだ…」
ピロリロリン♪ ピロリロリン♪
紅莉栖「メール!? こんなときに誰が…!!」パカッ
紅莉栖「…知らないアドレス…?」
岡部「!! 鈴羽のアドレスだ! 貸してくれ!」ピッ
[From:****** さよなら]
紅莉栖「……!!」
岡部「……止めろ…止めてくれよ…」
岡部「鈴羽ああああああああああああああああああああああ!!!!!」
グ二ョォォォオォォォォォオォォオォォォオォン
岡部「……ッ」フラッ…
紅莉栖「……ッ」フラッ…
岡部(…リーディングシュタイナーが発動した…。ということはつまり、鈴羽のタイムトラベルが成功して世界線が変わったんだ)
岡部(…世界線が変わったということは世界が再構成されたということ)
岡部(つまり、ここは鈴羽とラボメンのみんなの思い出も紅莉栖の何度ものタイムリープもすべて無かったことにされた世界線なんだ)
岡部(…鈴羽、紅莉栖。すまない。ありがとう。俺はお前たちの意志を継ぐ)
岡部(無かったことにされた全ての想いも、俺だけは決して忘れない…!)グスッ
紅莉栖「平気…とは言えないけど大丈夫よ。岡部は?」
岡部「俺も同じようなものだ。リーディングシュタイナーが発動したのは久し振…」
岡部「……んっ?」
岡部(…待て待て待て待て。 ついつい今までのタイムリープ時と同じように接してしまったが…)
紅莉栖「ん? どうしたの岡…」
紅莉栖「……あれっ? …マシンを使ってないのにタイムリープした…?」
岡部「……」
紅莉栖「…いや違う、時間は巻き戻ってない…ということは…えーと…えー…」コンラン
岡部「……まさか…リーディングシュタイナー?」
紅莉栖「…え?」
岡部・紅莉栖「……何イイイイイィィィィッッッッ!!!??」ガーン!!
紅莉栖「それは分からないけど…少なくとも今まで繰り返してきたタイムリープが原因なのは間違いないと思う」
岡部「…それはそうだろうな。時間遡行やごく僅かな世界線移動を『主体的に』何度も経験したため、とでもいったところか?」
紅莉栖「そんな感じでしょうね…。タイムリープが私の体――恐らく脳でしょうけど、に何らかの変化…あるいは順応? をもたらしたとでも考えるのが妥当じゃないかしら」
岡部「リーディングシュタイナーに関わる何らかの部位に、か…。もしそうだとするとこの力は誰でも持ち得るということになるな」
紅莉栖「理論上はそうなんだと思う。リーディングシュタイナーが超能力の類ではない以上、何らかの物理的な観測は可能のはずよ」
紅莉栖「そうなるわね。ただリーディングシュタイナーを持たせるのはとても難しい事だろうし、そうじゃなくても絶対にしない方がいいと思う」
岡部「分かっている。危険が伴うかも知れないし、そもそも記憶の引き継ぎがあると変化後の世界線で何かと不自由するからな。この場合は記憶の上書きと言うべきか」
紅莉栖「ええ。…それより、今考えるべきなのは…」ゴクリ
岡部「…この世界線でまゆりがどうなるか、だな…」ゴクリ
~ラボ~
チクタクチクタク…
岡部「……」
チクタクチクタク…
紅莉栖「……」
チクタクチクタク…カチッ
岡部「…午前0時…8月14日だ…」
紅莉栖「…まゆりが…生きてる…」
岡部「…はぁー…」ズルズルー
紅莉栖「……」グスッ
岡部「…やっと、か…」
紅莉栖「……」グスグス
岡部「……」フゥー…
岡部「…永かったな…」
ドンチャンドンチャン
岡部「ハッハッハ!! いやぁーハッハッハ!! 良かったな助手よ!! いやぁ良かった!!」ギャハハハ
紅莉栖「いやぁホントホント!! 何日振りの志村どうぶつ園かしらゲハハハハ!!」ブハハハ
まゆり「二人ともテンション高いねー♪ ケーキ買ってきて良かったのです♪」
ダル「テンション高すぎんだろ常考…ってこいつら酒飲んでんじゃねーか!!」
紅莉栖「何よー? いいじゃない酒くらい! ほら、そのロウソクふーってしていいから! ふーって!」グハハハ
ダル「いやだってこれスピリタス…」
岡部「ハッハー!! 細かいことを気にするなダル!! 何せ今日はめでた
ラウンダーA「t
岡部「エルボー!!」ドゴッ!
ラウンダーA「ぐっ!?」ドサッ
岡部「袈裟蹴り!!」バキ!
ラウンダーB「ぶっ!?」ドサッ
岡部「アンクルホールドォォォ!!」ギリギリギリギリ
萌郁「いだだだだだだだだ!!!!」ジタバタ
紅莉栖「Five‐seveN!? いい銃じゃない!!」タタタタ パシッ
ダル「え? 何これ」
岡部「次来るぞッ!!」ギリギリギリギリ
紅莉栖「分かってるッ!!」チャキッ
紅莉栖「右足!!」ダァン!!
ラウンダーC「ぐあっ!?」ドサッ
紅莉栖「右腕!!」ダァン!!
ラウンダーD「ぎあっ!?」ドサッ
紅莉栖「左腕ッッッ!!」ダァン!!
ラウンダーE「ごあっ!?」ドサッ
萌郁「…ッ!! …ッ!!」ピクピク
紅莉栖「次が来る!! まゆり!! 橋田!! シャワールームに逃げなさい!!」
ダル「え? …あ、分かったお!!」タタタタ コンッ
ガシャーン!
ダル(あ、酒の瓶が…ってそんなの気にしてる場合じゃねぇ!!)タタタタ
まゆり「ケーキ持って行かなきゃ…」ヒョイッ
岡部「まゆり!! 早くしろッ!!」ギリギリギリギリ
まゆり「あ、うん! 分かっt」タタタタ
ズルッ ステーン
紅莉栖「あ、ロウソクの火が酒に…」
ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオ
岡部・紅莉栖「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
紅莉栖〈5928回目〉「岡部!! まゆりが階段から落ちた!!」
岡部〈19335回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
………
岡部〈20319回目〉「ああっ!? まゆりが酒を一気飲みした!!」
紅莉栖〈6912回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
………
紅莉栖〈7669回目〉「おぎゃああああ人工衛星が落ちてきたああああ!!!!」ドゴーン!!
岡部〈21076回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
カエデ「ひいいいいいいい危ないいいいいいいい!!!!」キキイイイイイー ドガァン!!
紅莉栖〈8622回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
………
まゆり「わぁー!! 万里の長城ってこんなに長いんだねーえへh」ツルッ ヒュウウウウウン
岡部〈23809回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
………
まゆり「わぁー!! スフィンクスってこんなに迫力があr」ガラガラー プチッ
紅莉栖〈11253回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン
岡部〈25092回目〉「……ッ」ズキンズキン
紅莉栖〈11685回目〉「……ッ」ズキンズキン
岡部「…クソッ!! 駄目だ!! 何も変わっていない!!」バンッ!
紅莉栖「……」
岡部「もう駅でまゆりを倒すしか…!!」
紅莉栖「落ち着きなさい岡部!! 勇気と無謀を混同しないで!! まゆりの死が1日伸びただけでもかなりの収穫なのよ!?」
岡部「…だが結局まゆりは助からなかった!!」
紅莉栖「…待って! そうだ、よく考えて岡部! 確かに今まゆりが助かる可能性はゼロに近いかも知れない。だけど阿万音さんの言葉を思い出して」
岡部「…鈴羽の言葉?」
紅莉栖「そう。阿万音さんは『IBN5100が手に入る世界線へ行けばまゆりと未来の世界が助かる』と言ってたわよね?」
岡部「ああ…」
岡部「…まさか…」
紅莉栖「ええ。これはあくまで今思い付いた仮説だけど…もしあのDメールの打ち消しが『まゆりが13日の午後8時に死ぬ可能性』まで打ち消していたのだとしたら」
紅莉栖「そして阿万音さんの言葉が、『IBN5100を手に入れる事』ではなく『IBN5100のある世界線へ近付く事』がカギなのだという意味だったのだとしたら」
岡部「…!! そうか!! だとしたらこれまでに送ったDメールを一つ一つ打ち消していけば…!!」
岡部「なるほど、つまりIBN5100それ自体には意味は無いということか! さすがだな紅莉栖!!」
紅莉栖「この仮説が間違っていなければ、だけどね。それよりもしその線で行くならまずどのDメールを打ち消すべきか、それを考えないと」
岡部「確実なのは新しいDメールから順番に消していくパターンだな」
紅莉栖「まぁそれが無難ね。となると一番新しいDメールを送ったのは…」
岡部「…フェイリス! フェイリス・ニャンニャンだ!」
~UPX前~
紅莉栖『――そういうわけで私はラボで24時間待機してるから』
岡部「分かった。じゃあ切るぞ」ピッ
岡部(…ダルによれば、フェイリスは今日UPXで雷ネットの大会の決勝戦に出場するらしい)
岡部(またいつでも電話レンジの操作ができるように紅莉栖にはラボに待機してもらっている)
岡部(あとはフェイリスを見つけてDメールの内容を知り、それを打ち消すだけなのだが…)
岡部(…人が多過ぎてフェイリスがどこに居るのか分からんぞ。フェイリスの執事に聞いても要領を得なかったし…)ウーム
岡部(…誰かに聞こう。あの黒い二人組でいいか)スタスタ
岡部「すみません。お聞きしたいことがあるのですが」
4℃「あん?」
岡部「雷ネットチャンピオンのフェイリスさんが今どちらにいらっしゃるかご存知ですか?」
4℃「……」スック
岡部(ん?)
スカッ
4℃「…あれ? 外れた?」
岡部「やれやれ、随分なご挨拶だな」ザッ…
4℃「へ?」
手下「…はああああッ!!? 4℃さんの頭突きを避けやがったッ!?」
岡部「お前は要らん。少し寝てろ」ヒュオンッ!! メッギイイイイッ!!!
4℃「ごっあああああああああああああ!!!??」ドサッ
手下「4℃さああああああああああああん!!!??」(踵落とし!?)ガーン!!
岡部「やり過ぎたか? …まぁいいか。おいそこの貴様」
手下「ひいっ!?」ビクッ
岡部「俺は別に喧嘩をしに来た訳では無い。ただフェイリスの居場所が知りたいだけなのだ」
手下「は、はひぃ…」ガクガク
手下「し、しりりりりりりり」ガクガクガクガク
フェイリス「あ、凶真ー!!」タタタタタ
岡部「フェイリス! 探したぞ!」
フェイリス「こんなところで何して…ってこいつらヴァイラルアタッカーズ!! 決勝戦でフェイリスに卑怯な手を使って勝ったとんでもない奴らなのニャ!!」ムスー
岡部「卑怯な手? そうなのか?」
手下「はひっ!? え、あの…はい…やりました…」シュン…
岡部「まったく情けない奴らだな…。今からでも遅くない、運営に謝罪しに行くぞ。俺も一緒に謝ってやるから」
手下「う…はい…ごめんなさい…」シューン…
4℃「」ピクピク
フェイリス「――すごいニャ凶真!! フェイリスは繰り上げ優勝だしヴァイラルは改心したしでもう最高ニャーン!!」ダキッ!!
岡部「んなっ!? ままま待つのだフェイリス!! 一旦離れろ!!」グイッ
フェイリス「えー? 凶真のいじわるー」ブスー
岡部「そ、そうだ。そもそも今日はお前に訊きたいことがあってここに来たのだった」
フェイリス「聞きたいこと? 一体何なのニャ?」
岡部「…お前は自分が送ったDメールの内容を覚えているか?」
フェイリス「ニャニャ? Dメールって何かニャ?」
岡部(…やはり覚えていない、か)
岡部「詳しい説明は後でする。腹が減っただろう? とりあえず飯でも食いに行こう」
~ラーメン屋前~
フェイリス「凶真! 凶真! ここで食べたいニャ!」
岡部「ここか? …懐かしいな。昔はここにメイクイーンニャンニャンがあったのだが…」シミジミ
フェイリス「ニャニャ? 何で凶真がメイクイーンの事知ってるのニャ?」キョトン
岡部「な!? お前メイクイーンを知っているのか!?」
フェイリス「知ってるも何も、メイクイーンはフェイリスがここに作ろうとしてたメイドカフェの名前なのニャ。結局パパに反対されて…無かった…ことに…」フラッ…
岡部「!? 大丈夫かフェイリス!!」タタタタ
フェイリス「だ…大丈夫…」ガクンッ
フェイリス(あ…膝が…)
キュイイイイイイイイイイイイイイ
『フェリスちゃんトゥットルー♪』
『凶真、時間を川の流れに例えるのはおかしいのニャ』
『G・B・A・C・K!! G-BACK!!』
『みんなに幸せを届けるネコ耳メイドの使命ニャ!』
『過去にメールを送れるマシンを作ったお。主に僕が』
『凶真、できればDメールの中身は秘密にしときたいのニャ――』
イイイイイイイイイイイイイイ…
岡部「…フェイリス?」
フェイリス「…思い出した…。全部、全部思い出した…!」
~フェイリス宅~
紅莉栖『――準備完了。いつでも送れるわよ』バチバチバチバチ
岡部「…本当にいいんだな、留未穂」
フェイリス「…うん。マユシィだって大事な友達だもん、助けたいよ」
岡部「……」
フェイリス「ホントはね、パパが居ない世界なんて嫌だよ。だけど私ももう夢から醒めなきゃ。パパが生きてるこの世界は仮初めに過ぎないんだ」グスッ
岡部「フェイリス…」
フェイリス「…そのメールを送って。そしてマユシィを、世界を救って」ポロポロ
岡部「…ああ」ピッ
フェイリス「…ねぇ。世界線が変わっても、私は凶真のこと覚えていられるのかな」ポロポロ
岡部「…ああ。きっと覚えてるさ」ウルッ
フェイリス「…嘘付き。ありがとう、さよなら。私の王子様――」ニコッ
グ二ョォォォオォォォォォオォォオォォォオォン
~ラボ~
岡部「……ッ」フラッ
岡部(…リーディングシュタイナーが発動した…)
岡部「……」フゥー…
紅莉栖「岡部、お疲れ様」スタスタ
岡部「紅莉栖か。フェイリスは?」
紅莉栖「隣でまゆりと話してるわよ。さっき確認してみたけど…やっぱり前の世界線の記憶は無くなってるみたいね」
岡部「そうか…」
紅莉栖「…さて、気を取り直しましょう」
岡部「…ああ、だな。分かった」
岡部「とりあえずしばらくまゆりの様子を見てみるか?」
紅莉栖「確かにデッドラインの見極めはするべきだけど…その前に、さらに生存率を押し上げる方法も考えておきたい」
岡部「生存率を上げる方法、か。一度試して失敗したものはやはり駄目なんだろうな…」
紅莉栖「確かに信頼はできないわね。とはいえ他に方法はあるのかしら? たいていの場所には逃げてみたし…」ウーン…
岡部「この際誰かに相談でもするか? ダルなんか適任だろう」
紅莉栖「確かにあの妄想力は目を見張るものがあるけど…『二次元の世界に逃げれば万事解決だお!』とか言い出しそうね」フフ
紅莉栖「…岡部?」
岡部「…なぜ今まで考え付かなかったんだ…!!」
紅莉栖「…どうしたの岡部? まさか『絵の中に入るガジェットを作るのだーフゥーハハハー!!』とか言い出す気じゃないでしょうね?」ヤレヤレ
岡部「そうではない! いいか紅莉栖、よく考えてみろ。今まで俺たちが行った逃亡先はすべて東西南北右左に縛られた二次元方向にあるものだけだったんだ」
紅莉栖「…まさか…!!」
紅莉栖「…正気?」
岡部「正気だ!! さぁ、宇宙に逃げるぞ紅莉栖ッ!!」
紅莉栖「……ちょ、待ちなさいよ!! さすがにそれは突飛過ぎるというか…まずお金が足りない!!」
岡部「金は株でいくらでも作れる」
紅莉栖「…! でも、宇宙へ行く技術も知識も…」
岡部「タイムリープして勉強と研究を繰り返せばいい。現に俺はそうしてきた。…ま、お前の研究者魂が既に枯れ果ててしまったというのなら話は別だがな」
紅莉栖「」ピクッ
岡部「お前が反対なら仕方無い。考え直すとしよう」
紅莉栖「…は。はは。ははははははッ!!! 言ってくれるじゃない岡部ッ!!」ダンッ!!
岡部「おや? お前は地球外逃亡に反対なのだろう?」ニヤニヤ
紅莉栖「大賛成に決まってる!! 私は研究大好き女!! それは死んでも変わらないッ!!!」
岡部「うむ!! それでこそ紅莉栖だ!!」
紅莉栖〈14028回目〉「これ見て岡部! 太陽電池が完成した! エネルギー変換効率が70%を超してる…って何それ?」
岡部〈27435回目〉「ラジコンヘリだ」
………
紅莉栖〈15714回目〉「ちょっと見て岡部! 新型エンジンが完成した! ガソリン1ℓで軽自動車が300km走る…って何それ?」
岡部〈29121回目〉「小型飛行機だ」
………
紅莉栖〈18357回目〉「ねぇ見て岡部! 熱防護システムが完成した! 耐熱温度は2500℃オーバー…って何それ?」
岡部〈31764回目〉「人工衛星だ」
紅莉栖〈19625回目〉「ほら見て岡部! 宇宙服が完成した! 重量を65kgに抑えることに成功…って何それ?」
岡部〈33032回目〉「宇宙船だ」
………
紅莉栖〈22003回目〉「あれ見て岡部! 地中船が完成した! 地上からメソスフェアまで自由に移動可能…って何それ?」
岡部〈35410回目〉「潜水艦だ」
………
紅莉栖〈24566回目〉「見て見て岡部! 転送装置(ワープマシン)が完成した! 玄関開けたら2分でSERN…って何それ?」
岡部〈37973回目〉「反物質だ」
ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン
岡部〈40407回目〉「……ッ」ズキンズキン
紅莉栖〈27000回目〉「……ッ」ズキンズキン
岡部「…ふは。ふはは。フゥーハハハ!! 今度こそ完璧だ!! ついに未来ガジェット1349号『ぐんぐんワープくん』の設計が完成したぞ!!!」フハハハ
紅莉栖「何かとトラブルに見舞われそうな名前だな。とにかくあとは材料を集めて組み立てをするだけね! 設計は図に書き起こしたほうがいいかしら?」
岡部「必要無い!! すべて頭に入っている!!」
紅莉栖「それなら大丈夫ね!! 宇宙空間だけでなく深海や地中への進行をも可能にした脅威の未来ガジェット!! 燃費も異様に良いし完成が楽しみだわ!!」フハハハ
岡部「その機能もさることながら、最も恐ろしいのは材料さえあれば2日足らずで完成してしまう所だな」ウンウン
紅莉栖「飛行機能がある上にワープ機能で移動時間の短縮もできるしね。まぁ今はまだ一度に4万km弱の距離しかワープできないけど」
岡部「二重扉なので安全面でも問題無し! 真空や高温、高水圧にも難無く耐えられる宇宙服も搭載! さぁ紅莉栖!! さっさとマシンを完成させてまゆりを乗せるぞ!!」
まゆり「あー! 三葉虫の化石だー! ちょっと拾ってくるねオカリン!」パカッ パカッ
ガシッ グイグイー ガラガラー プチッ
岡部〈43221回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
………
まゆり「マリアナ海溝って深いんだねー♪ ちょっと水着でひと泳ぎしてくるよーえへへー♪」パカッ パカッ
クシャリ
紅莉栖〈32685回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
………
まゆり「わー見て見て! でっかいサメがいるよー! ちょっと触ってくr」パカッ パカッ
ガブリ
岡部〈49228回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
まゆり「宇宙遊泳って楽しいねー♪ あ! 見て紅莉栖ちゃん! おっきなデブリがこっちに飛んd」フヨフヨ
ドゴーン
紅莉栖〈39147回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
………
まゆり「わー! この宇宙服って小型ジェットが付いてるんだー♪ じゃあ太陽捕まえてくるねオカリン!」ゴオオオオオー…
ジュウウウウウウウウウウ
岡部〈55714回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
………
まゆり「わぁー!! 見て見て!! 宇宙ひもがあるよ紅莉栖ちゃん! ヘルメットが邪魔ではっきりと見えないy」ヌギヌギ
ウックルシッ
紅莉栖〈45319回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン
岡部〈61399回目〉「はぁッ…はぁッ…」
紅莉栖〈47992回目〉「はぁッ…はぁッ…」
岡部「くっそ!! 何故だ!! 何故助からない!!」
紅莉栖「『ぐんぐんワープくん』に欠陥は無いはず。…もう次のDメールを消すしかないみたいね」
~メイクイーンニャンニャン~
フェイリス「こちらアイスコーヒーですニャご主人様!」コトン
岡部「……まさかこんな展開になるとはな。助けてくれ紅莉栖…」グデー
紅莉栖「漆原さんのDメールの内容は分かってるからあとはポケベルの番号を調べるだけの簡単なお仕事だと思ったんだけど…」チューチュー
岡部「まさかルカ子とデートをすることになるとは思わなかった…」
紅莉栖「たったの数日間でしょ? 楽しませてあげなさいよ」チューチュー
岡部「とは言っても紅莉栖、俺にはそういう経験が全くないのだ。一体何をすればいいのか…」ウーン…
紅莉栖「自信付けたいなら今からおフロ屋さんに行って童貞卒業してきたら?」チューチュー ジュルルー…
岡部「そんな怖いことできるか!! コーヒーはブラックでも発想はヴァージンだな紅莉栖!!」
紅莉栖「ぶッ!? …何よ処女で悪い!? だからわざわざこんなデートマニュアル本まで買ってきたんでしょ!!」バサッ!
岡部「…なんだか悲しくなってきたな。醜い争いはやめよう紅莉栖…」ドヨーン…
紅莉栖「…ええ…」ドヨーン…
紅莉栖「さぁ…とりあえず平積みしてあったのを買ってきたんだけど」ペラペラペラペラ
岡部・紅莉栖「……」ペラペラペラペラ ヨミヨミ
岡部・紅莉栖「…これは無いな…」パタン…
紅莉栖「もう行き当たりばったりでいいじゃない。今のあんたに怖いものなんて無いでしょ?」
岡部「注射は死ぬほど怖いぞ」
紅莉栖「そういうこと言ってるんじゃないっつーの! ったく、こうなったら私が遠くからずっと見ておきましょうか? 何かあったら随時サポートするから」
岡部「そうしてくれると助かるが…さすがにバレないか?」
紅莉栖「その点は心配しないで! この未来ガジェット1350号『ピーピング・シタイナー』を使えば3km離れた地点までなら手に取るように分かるのよ!」ババーン
岡部「いつの間にそんなガラクタ双眼鏡を作ったのだ? しかし俺もお前も『ぐんぐんワープくん』の経験のおかげでやたら製作速度が上がったな」
紅莉栖「ガラクタ言うな! ま、こんな物があってもまずは岡部が頑張らなきゃ意味無いんですけどねー」
岡部「…結局俺はどうすればいいんだ…」ハァー…
岡部「え? ああ、一応な」
フェイリス「ニャーン!? 相手は誰なのニャ!? もしかしてマユシィ!? それともこの子だったりするのかニャ!?」ワクワク
紅莉栖「い、いや私じゃないわよ!? まゆりの友達!」
フェイリス「ほほう…女子高生に手を出すとはさすが凶真ニャ…!! それで何をそんなに悩んでるのかニャン?」
岡部「何をすれば楽しませてやれるのかが全く分からないのだ…」
フェイリス「そんなの簡単ニャ! 凶真はただ凶真らしくしていればいいのニャ!」
岡部「俺らしく、か?」
紅莉栖「…そうね。変に考えてもドツボに嵌まるだけかも知れない。あの子が惚れたのは普段の岡部なんだもの。デートでも普段の岡部のままでいればいいのよ」
フェイリス「その通り! とっとと未成年淫行でとっ捕まってくるのニャ凶真ー!」
岡部「なるほど! 普段の俺のままでいいのだな! 助言感謝するぞフェイリス!」
岡部「ふははは立ち去れチンピラ共めが!!」シュババババ
チンピラ共「ぐあああああああああああああ!!!!」ドサドサドサッ
ルカ子「すごいです岡部さん!」キラキラ
………
女「彼氏が車に轢かれた!! 誰か助けてください!!」ビエーン!!
岡部「不用意に動かすな! 俺が応急処置をするからお前は救急車を呼べ! ルカ子は今すぐハサミとライターを買ってくるんだ!」
ルカ子「すごいです岡部さん!!」キラキラ
岡部「ふははは立ち去れヤー公共めが!!」シュババババ
ヤー公共「ぐああああああああああああ!!!!」ドサドサドサッ
ルカ子「すごいです岡部さん!!!」キラキラキラキラキラ
………
フランス人「Parce que j'ai faim, veuillez l'aider.」ペラペラ
岡部「Mangez une pizza; un adipeux.」ペラペラ
ルカ子「すごいです岡部さん!!!!」キラキラキラキラキラ
岡部「ふははは立ち去れポリ公共めが!!」シュババババ
ポリ公共「ぐあああああああああああああ!!!!」ドサドサドサッ
ルカ子「すごいです岡部さん!!!!!」キラキラキラキラキラキラ
………
岡部「――以上の証拠から奥さん、犯人はあなたしか考えられないんですよ!!」ビシィッ!
奥さん「……ふふ。やっぱり悪いことはできないわね…」ガクリ…
ルカ子「すごいです岡部さん!!!!!!」キラキラキラキラキラキラ
~柳林神社~
ルカ子「ボク…本当は男の子に戻りたくなんか無いです…男の子に戻ったら…この気持ちを封印しないといけなくなるから…」ポロポロ
岡部「……」
ルカ子「…ねぇ岡部さん。ボクが男の子になっても覚えていてくれますか?」ポロポロ
岡部「…ああ」
ルカ子「女の子だったボクのこと、覚えていてくれますか?」ポロポロ
岡部「…ああ」ウルッ
ルカ子「ありがとうございます。…さよなら、ボクの好きな人――」ピッ
グ二ョォォォオォォォォォオォォオォォォオォン
~ラボ~
紅莉栖「――お疲れ様。結局私がサポートするまでも無かったわね」
岡部「…ああ、だな」
紅莉栖「今度こそまゆりが助かるといいんだけど…」
岡部「…念には念を入れよう。まだ生存率を上げる方法はあるはずだ」
紅莉栖「…2次元方向への逃亡は失敗で、3次元方向への逃亡もやはり失敗だった。となると残されたのは…」
岡部「4次元方向への逃亡」
紅莉栖「……『タイムリープマシン(改)』と『ぐんぐんワープくん』の技術を応用・改良すれば不可能ではなさそうね」
岡部「だな! 時間を移動するマシンを作るぞ紅莉栖!!」
………
岡部〈80647回目〉「…ふは。ふははははは。フゥーハハハハ!! 遂に完成したぞ!! 未来ガジェット1777号『轢き逃げ霊柩車(イビルデロリアン)』!!」
紅莉栖〈67240回目〉「もう少し名前は何とかならんかったのか? まぁとにかく完成ね!」
岡部「過去方向へはもちろん未来方向への跳躍も可能となった究極の未来ガジェット!! 」
紅莉栖「さらにワープくんの全機能を改良して付け加えたことで跳躍後の世界でも自由な移動が可能になっている!! …恐ろしい出来ね」
岡部「これにまゆりを乗せて逃げれば…ミッションコンプリートだ!!」
まゆり「わぁー! プテラノドンだよー♪ あ、こっちに来r」
ガシッ バッサバッサ アレー?
岡部〈84375回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
………
まゆり「見て見て紅莉栖ちゃん! カルタゴ軍もローマ軍もかっこいいね! さっきからすごい数の矢だよーえへh」
ヒューン サクッ
紅莉栖〈74797回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
………
まゆり「ねぇねぇオカリン! あそこで戦ってるおじさんって張飛さんじゃないかな? あ、こっちに来t」
ウオオオオオオ!! スパーン
岡部〈92921回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
まゆり「あー見て見て! 十字軍がいっぱいいるよ! すごいねーえへh」
ドドドドドドド ブスリ
紅莉栖〈82928回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
………
まゆり「ほら見てオカリン! 五稜郭で戦争してるよ! 土方さんどこにいるのかなー!?」キョロキョロ
パァン ドサッ
岡部〈100629回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
………
まゆり「わー見て紅莉栖ちゃん! ライト兄弟が飛行機を飛ばしてるよ! あ、こっちに来t」
ヒューン… ドガァァァン プチッ
紅莉栖〈91430回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
まゆり「レジスタンス? よく分からないけど秘密基地みたいでカッコいいね! それにしてもあのおじさんダルくんにちょっと似てr」
ラウンダーニココガバレタゾー!! ミサイルガクルゾニゲロー!! チュドオオオオオオオン!!
岡部〈108026回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
………
まゆり「あーすごーい!! 青い宇宙人がテレビで歌ってるよ!! 車も空を飛んでてびっくりなのでs」
キキイイイイイイー!! ドガアアアアン!!
紅莉栖〈99078回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
………
まゆり「わぁー!! 地球が大爆発したよ!! 星にも寿命ってあるんだねー♪ 暑さでだんだん宇宙服が蒸れてきたよーえへh」ヌギヌギ
ウックルシッ
岡部〈116703回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン
岡部〈119999回目〉「はぁーッ…はぁーッ…」
紅莉栖〈106592回目〉「はぁーッ…はぁーッ…」
岡部「…クッソ!! 何でだよ!! 何で何度繰り返しても助からないんだ!!」ダンッ!!
紅莉栖「気持ちは分かるけど落ち着いて岡部。これからどうするかを考えないと」
岡部「…少なくとも時間を超えるのは無駄なようだな」
紅莉栖「そうね。たとえマシンでデッドラインの時間を越えても、結局しばらくするとまゆりは死んでしまった」
岡部「…何故だ? デッドラインの時刻さえ回避すればいいのではなかったのか…?」
紅莉栖「…それは『所属』の問題なんじゃないかしら」
岡部「『所属』?」
岡部「ああ。当然だろう」
紅莉栖「これを『この世界線の時間に所属している状態』と捉えたとしたら。例えまゆりが過去や未来へ行っても、まゆりの中に『今この時間』が生き続けているとしたら」
岡部「…なるほど。『まゆりの中の時間』が一定の時刻に達した時、『その時居る時間』に関わらずまゆりは死んでしまうということか」
紅莉栖「そういうこと。イメージ的には体内時計…いや、いっそのこと時限爆弾のようなものをイメージした方が分かり易いかも知れない」
岡部「過去や未来への逃亡はまゆりの生存率を上げる上では何の意味も為さない、ということか。…生存率を上昇させるためには」
紅莉栖「最後のDメールを打ち消すしかない」
岡部「…桐生萌郁。かつて俺が閃光の指圧師(シャイニングフィンガー)と呼んだ女のDメール…!」
~萌郁のアパート前~
岡部「――じ、自殺?」
警官「そう自殺。アパートの自室で首吊ってたんだ。ちなみに事件性は皆無だよ」
岡部「…そう、ですか」
警官「遺体は総合病院の方にあるから、良かったら会いに行ってあげてね」
岡部「……」
~ラボ~
岡部〈120000回目〉「――と言う訳だ」カタカタカタカタ
紅莉栖〈106593回目〉「帰ってくるなり『タイムリープするぞ!』なんて言い出すから何事かと思ったら…なるほどね。そういうことはタイムリープする前に言いなさいよ」
岡部「先にある程度前準備をしておこうと思ったのでな」カタカタカタカタ
紅莉栖「前準備? さっきからやってるネットサーフィンのこと?」
岡部「ネットサーフィンでは無い…っとやっと見つけたぞ。紅莉栖、お前これ扱えるか?」
紅莉栖「どれどれ……ってはぁあ!? 一体何するつもりなのよ岡部!? よく見たらここ思いっきり違法サイトじゃない!!」
岡部「ただの通販サイトだ。そんなことより俺はこれを扱えるかと聞いているのだ紅莉栖よ」
紅莉栖「まぁ扱えないことは無いけど…ホントに何する気なの?」
岡部「扱えるのなら問題無い!! では只今よりッ!! 『地這う世界蛇』作戦(オペレーション・ヨルムンガンド)の開始を宣言するッ!!」ババーン
紅莉栖「いやちょっ待っ…ちゃんと説明しろ!!」
紅莉栖「なるほどね。…別に岡部だけでもなんとかなるんじゃない?」
岡部「念には念を入れておきたいのでな。下衆な考えかも知れないが、最後の手段として脅迫という方法も用意しておくべきだ」
紅莉栖「…それで? 私はどうすればいいの?」
岡部「明日の朝3時過ぎ、渋谷のとある雑居ビルに行って売人からこれを受け取ってもらう。金は既に振り込んであるから大丈夫だ」
紅莉栖「でもこれを一人で運ぶのはちょっと…」
岡部「そう言うと思ってダルとフェイリスの協力を取り付けておいた」
紅莉栖「なっ…橋田とフェイリスさんまで巻き込むの!? 冗談でしょ!?」
紅莉栖「……」
岡部「とにかくその後はただこれを持ってラボへ帰ってくればいい。そして、完全に日が落ちてから本格的な行動を開始する」
紅莉栖「日が落ちたらどこに行けばいいんだ?」
岡部「その辺りはお前に任せる」
紅莉栖「…随分とクレイジーな保険ね。構わないけど」
岡部「…出来ればお前がこれを使うことなく終わって欲しいんだがな」
~萌郁のアパート前~
岡部「――日が落ちたか。…ではこれより作戦行動を開始する!! 聞こえるかダル!!」
ダル『携帯だから聞こえて当然だお。んで、結局僕はここでエロゲしてればいいの?』
岡部「そうだ。ただし携帯は繋ぎっぱなしにしておいてくれ。俺が指示を出したらすぐにDメールを送る準備をするんだぞ」
ダル『え? そしたらエロゲのボイス聞けないじゃん。@ちゃんしながら待っとくお』
岡部「何でもいい。とにかく頼んだぞ」
萌郁「FB…FB…なんで返信してくれないの…?」
ガチャッ!!
岡部「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッ!!!!!」ダダダダダ…
萌郁「Fび
岡部「男女平等ドロップキック!!!!」ゴッギイイイイイィィィィ!!!
萌郁「めっごああああああああああああああああ!!!??」メギョッ ドサッ
岡部(…あった!! 萌郁の携帯!!)
岡部「ダル!! 今からDメールを送る!! 準備しろ!!」
ダル『早っ! まぁ了解』
岡部(携帯電話は買い替えるな…っと。文面はこんな感じでいいか)カチカチカチカチ
ダル『放電現象始まったおー』バチバチバチバチ
岡部「これで…終わりだ!!」ピッ
萌郁「」ピクピク
岡部「……」
岡部「…あれ? なぁダル、本当にマシンを起動したのか?」
ダル『してたって。電話越しにバチバチ聞こえたっしょ?』
岡部「…何故だ!? 何故リーディングシュタイナーが発動しない!?」
ダル『リーディングシュタイナーってあれ? なんかオカリンだけ世界の変化が分かるみたいなやつだっけ?』
岡部「そうだ!! 萌郁の携帯の機種変を止めるメールを送ったから世界線が変わるはずなんだ!! それなのに…」ハッ
岡部「…いや待て違うッ!! そうか、この携帯は…!! こいつ機種変なんかしてないんだ!!」
ダル『え? どゆこと?』
岡部「ふざけやがって!! こいつ俺たちの目を盗んでメールの内容を変えてやがったんだ!!」
ダル『ちょ、なんか知らんけど落ち着けってオカリン。携帯見てホントのメールの内容を調べれば済む話っしょ?』
岡部「…そうだな。少し取り乱した」
岡部「分かった。…それにしてもホントのDメール、か…。どこにあるんだ…」カチッ カチカチカチカチ
岡部「…あった!! これか!! …なるほどな。こいつDメールで先回りしてIBN5100を盗んでいたのか…」
岡部「…ダル!! マシンを起動しろ!!」
ダル『…オッケー。もう送れるぜオカリン』バチバチバチバチ
岡部「神社には行くな、それは罠だ…っと。送信!」ピッ
岡部「……」
ダル『……』
岡部「……」
ダル『…どう?』
岡部「…駄目だ」
岡部(…いや違う。それなら初めのDメールを送っても過去は変わらなかったはずだ。…何かあるはずなんだ、何か…)
岡部(…携帯からこれ以上の情報を引き出すのは無理そうだな。どこを見ても『FB』とのどうでもいいメールしか…)ピッピッピッピッ…
岡部(…いや、待てよ…?)
萌郁「う…」
岡部「……起きたか萌郁。空気が悪いな、窓を開けるぞ」ガラッ
萌郁「…携帯!! 携帯返して!!」
岡部「ほら」ブンッ
萌郁「ッ!!」バッ パシッ
萌郁「…え? え…? …メールが…消えてる…!!」カチカチカチカチ
岡部「ああ。メールデータならこのマイクロSDの中だ」スッ
萌郁「!! 返してッ!!」
岡部「構わん。ただし条件がある」
萌郁「条件…?」
萌郁「…!?」
岡部「言わなければこのデータは破壊する」
萌郁「!? 止めてッ!!」
岡部(…やはり、か。こいつが真に依存しているのは携帯電話ではなく、FB)
岡部(つまりFBの居場所を突き止めて携帯を奪い、その携帯からこいつにDメールを送れば…)
萌郁「…言、えない…!」
岡部「…ではカードはどうするのだ?」
萌郁「…返して貰う…!」
岡部「どうやって?」
岡部(…ブローニングハイパワー。部屋に銃を隠していたか。まぁ想定済みだ)
萌郁「返してくれないなら、撃つ…!!」グッ…
岡部「萌郁、銃を構えるときは両腕を真っ直ぐ伸ばせ。反動で顔の骨が砕けるぞ」
萌郁「…返せッ…!!」
岡部「…やれやれだな。まるで聞いていない」
萌郁「おかべえええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」グッ
ガァァァン!!
萌郁「…づあッ!?」(な――!? 銃が砕け――)
萌郁(…!! 窓が開いて…まさか…!!)バッ
ガァァァン!!
萌郁「ッ゛!? …あ゛ッ…」ガクンッ…
岡部「ハートショット。相変わらず見事な腕前だな紅莉栖」
フェイリス「ニャオーン! よく見える双眼鏡だニャ!」
紅莉栖「寝転がると砂が付いて嫌ね。フェイリスさんチェック」
フェイリス「ハートショット、ヒット。膝から崩れ落ち一時止まる」
紅莉栖「オーケー」
フェイリス「見事な狙撃テク…待って。左手に持っていた携帯が緩衝に。軽度の負傷、貫通せず」
紅莉栖「オーケー」チャキッ
フェイリス「ヘッドショット、エイム」
紅莉栖「ファイア」カキンッ
ダーン!!
キンッ コンッ コロロロー…
萌郁「……!!」ガクガク
ガギィン!! パリンッ
萌郁「ッ!! 眼鏡が…!!」ガクガクガクガク
岡部「今のは最終警告だ。情報を寄越さないなら次は当てる。…言え」
萌郁「…ッ…!!」ガクガクガクガク
岡部「言えッッ!!!」
萌郁「…わ、私にも、分からない…!」ガクガクガクガク
岡部「…どういうことだ。分かるように話せ。まずFBとは何者だ?」
萌郁「…え、FBは…私のお母さん…」ガクガクガクガク
岡部「――なるほどな。つまりお前はFBに会った事はおろか、電話で話した事すら無いという訳か」
萌郁「……」コクン
岡部「…なぜメール以外のコンタクトを取ろうとしないんだ?」
萌郁「…会ったら、幻滅されちゃう…」
岡部「……分かった。もういいぞ。これは返す」ポイッ
萌郁「!」バッ パシッ
萌郁「…こんなに、要らない」
岡部「いいから取っておけ。さっきも話したことだが…お前はあと数日も経たないうちに死ぬ。これは誰にも止められないこの世界線での決定事項だ」
萌郁「……」
岡部「その金で最後に好きなことをするといい」
萌郁「…岡部君は、これから何をするの…?」
岡部「FBを探す。時間はいくらでもあるからな。ゼロから手掛かりを見つけ出す」
萌郁「……」
ダル『おうオカリン。次は何?』
岡部「これで『地這う世界蛇』作戦は終了だ。もう休んでいいぞ」
ダル『分かったお。…つーか結局あのフルメタルジャケット撃ったん?』
岡部「三発だけな。もちろん人死にや重傷者は出してない」
ダル『出してたらドン引きじゃ済まないだろ常考!!』
岡部「そうだ、紅莉栖たちにも作戦終了を伝えておいてくれ微笑みダル」
ダル『あ? とにかくオーキードーキー』
岡部「今日はお前のおかげで助かった。では切るぞ」プツッ
~ラボ~
岡部「――という訳だ」
紅莉栖「なるほどね。それで見張りはいつ始めるの?」
岡部「もちろん今からだ」
紅莉栖「…『シタイナー』使う?」
岡部「いや、必要無い。ロッカーのすぐそばで張り込みをする」
紅莉栖「オーケー。私は何をすればいい?」
岡部「とりあえずはラボに待機だ。もしFBの携帯を手に入れたらDメールの送信を、携帯の入手に失敗したらタイムリープをするからそのつもりでいてくれ」
岡部(…もう朝か)
岡部(昨日の夜からずっと張り込みをしていたが一向に現れる気配が無い)
岡部(ロッカーにIBN5100が入っているのは確かなようなのだが…)
ガサッ
岡部「ッ!!」バッ
萌郁「!?」ビクッ
岡部「…なんだ萌郁か。何をしている?」
岡部「ん? …牛乳とあんパンか。差し入れか?」
萌郁「……」コクン
岡部「…そうか。有り難く貰っておこう」ガサッ
萌郁「…あの、岡部君」
岡部「何だ」
萌郁「…私も、手伝う。最期にFBに会いたい」
岡部「…邪魔だけはするなよ」
岡部「……来ないな」
萌郁「……」コクン
岡部「なぁ萌郁、もう取りに来ないなんてことは…」
ガラガラガラガラー
岡部(!! 誰か来た!!)
ガチャガチャ ガタン ガラガラー
岡部(IBNを持って行った…! あれがFBか!? …いや、萌郁はFBは女だと言っていたな)
萌郁「岡部君…!」
岡部「ああ! とにかくあの男を尾行するぞ!」ダッ
~電車の中~
岡部(あいつ、電車に乗ってどこまで行く気だ?)
ガコー
萌郁「…あ、降りる」
岡部「ああ、俺たちも降り…」
岡部(…いや待て。歩き方が微妙に変わった? まるで体が軽くなったような…)
岡部「…! …降りるな萌郁。IBNはまた電車の中だ」
萌郁「え?」
岡部「恐らく尾行を警戒して誰かに受け渡しを…」
萌郁「…あ、あの人」
岡部「…あった。次の運び手はあの女だな…!」
~秋葉原駅前~
岡部(…どういうことだ? 結局この駅に戻ってきたぞ…)
萌郁「…見て。あの人、白い車に近付いてる」
岡部(…ん? あの車どこかで…)
萌郁「…誰か車から出てくる」
ガチャッ
岡部「な――」
萌郁「?」
岡部(ミスターブラウン!? どういうことだ!? まさかSERNと繋がっているとでも言うのか!?)
プルルルルル… ガチャッ
紅莉栖『はろー』
岡部「紅莉栖!! 『轢き逃げ霊柩車』で今すぐ駅前に来てくれ!!」
紅莉栖『猶予は?』
岡部「30秒!」
紅莉栖『待ってなさい』
キキイイイィィィィー バタン
紅莉栖「お待たせ」
岡部「乗るぞ萌郁」
萌郁「……」ギッ
岡部「あの白い車を少し距離を開けて追ってくれ」ギッ バタン
紅莉栖「了解。ところで岡部、あれ店長の車でしょ? 一体何が起きてるのか説明してくれる?」
岡部「ああ…」
ブロロロロー…
~天王寺家前~
岡部「――結局IBN5100はこの家の前でラウンダーに引き渡され、そのまま飛行機でフランスに送られた」
紅莉栖「…そしてFBの正体は分からず仕舞い、か。困ったわね」
萌郁「……」
紅莉栖「IBNが着くころに『轢き逃げ霊柩車』でフランスに跳ぶ?」
岡部「…それは後からだ。とりあえずミスターブラウンの所へ行こう。少しでもいい、情報を引き出すんだ」
岡部「――今日俺たちがここへ来たのはお聞きしたいことがあったからです」
天王寺「なんだ? 聞きたいことって」
岡部「…先刻あなたはこの家の前で、ラウンダーの連中にIBN5100の引き渡しをしましたよね?」
天王寺「!! ……」
岡部「…まぁいい、単刀直入に聞きましょう。あなたは、FBという人物について何かご存知ですか?」
天王寺「……」
萌郁「……」
紅莉栖「……」
天王寺「……」フゥー…
岡部「…!!」
萌郁「…な…んで…!? そのコードネームは、私とFBしか…」
天王寺「…フェルディナントブラウン、って知ってるか?」
岡部「…カール・フェルディナント・ブラウン。ブラウン管の発明者。…そういうことか…!」
萌郁(銃!?)
紅莉栖「蹴って!!」
岡部「らあッ!!」バシィン!! ゴトンッ
天王寺「!? ってえな…」ザッ
紅莉栖「っの…!」ダッ
岡部「バカ待て――!!」
天王寺「遅ぇよ!」ガッ!
紅莉栖「く――」(襟首を掴まれ――)
紅莉栖「ッぶ!?」(叩き付け…!! 鼻が…ッ!!)メギッ…
岡部(襟首を下に引っ張って顔を床に叩き付ける、か。初めて見たぞ!)タタタタッ
天王寺「寝とけ」ヒュッ…
岡部(踏み付け!!)「させるかッ!!!」ビュオンッ!!
天王寺「うお!?」バッ
ズパァァァン!!
天王寺「……!!」ビリビリ…
岡部「……」(…良し。紅莉栖から離れさせた)
天王寺「…細いくせに意外といい蹴り持ってんじゃねぇか。力の乗せ方が異様に上手ぇ。基盤はコマンドサンボか?」
岡部「ほとんど原型は残っていませんがね。あなたは?」
天王寺「よく言えば自己流だな。よく言って自己流か?」
岡部「要は勘ですね。喧嘩慣れしているのか」
天王寺「まぁそうだ。馬鹿正直に突っ込んでくる軽い奴はただ襟首を引っ張って叩き付ければいいだろ、だとかそういうのが何となく浮かんでくる」
岡部「なるほど。野生型というやつですね」
岡部「下がって血を止めてろ。もうじき終わる」
紅莉栖「…任せたわよ…」タタッ…
萌郁「…あの、ハンカチ」スッ
紅莉栖「…ありがとう…」ピトッ
天王寺「…もうじき終わる、か。随分余裕だな?」スッ
岡部「はい。なにせあなたは既に攻略済みですからね」スッ
天王寺「既に? 何を…」
岡部「……」ヒュッ!
天王寺(避ける…までもない遠い前蹴り。このタイミングで牽制か?)
天王寺(来ないならこっちから…)
岡部「……」ストン…
天王寺(…あ? 岡部が沈ん――)
岡部「ふッ!!」ダッ!!
バシィン!!
天王寺「なあッ!?」(この距離から足を捕りに!?)グラッ…
ズダァン!!
天王寺「ぐッ…!!」(…そうか! さっきの前蹴りは距離を測って…)
天王寺(マウント!? 速――)
岡部「終わりだッ!!」ゴギィン!!
天王寺「がッ……ッ!!!」(掌底で…顎を…!!)
岡部「ははははははははははははッッッッッ!!!!!」ゴギンゴギンゴギンゴギンゴギィィィン!!
天王寺(……ん…)
天王寺「…ッづ!!」ズギン
岡部「気が付きましたか」
天王寺(…縛られてる。そりゃそうか)ギシギシ
天王寺「…岡部、俺は何分寝てた?」
岡部「2分ほどです」
天王寺「そうか。…しかしまさかお前にここまで一方的にやられるとは情けねぇ。師は誰だ?」
岡部「…橋田鈴さんです」
岡部「はい。俺は『バイト戦士』というあだ名で呼んでいました」
天王寺「…バイト戦士って…まさか――!! …岡部…お前…デタラメ…言ってんじゃ…」
岡部「…鈴羽の、MTB」
天王寺「……ああ、ああ。そうか、なるほどな…。全く、何で今まで気付かなかったんだか…」
岡部「……」
天王寺「…なぁ岡部。俺は鈴さんの恩を仇で返したのか?」
岡部「…それはこれから決まる事です」
天王寺「……」
岡部「ただ俺たちがこうしてここに来たのは鈴羽の意志もあってのことです。だから、もしあなたが俺たちに協力してくださるならとても嬉しい」
岡部「俺と紅莉栖の望みはあなたの携帯を借りる事だけです」
天王寺「携帯なら右ポケットに入ってる。好きに使え」
岡部「ありがとうございます」ゴソゴソ
天王寺「それだけか?」
岡部「…あとは、萌郁に本当のことを話してやってください」
萌郁「……!」
天王寺「分かったよ。…おいM4」
萌郁「……」
天王寺「…今まで悪かったな。俺がFBだ」
岡部「――萌郁、もういいのか?」
萌郁「…うん。…ごめんなさい」
岡部「何がだ?」
萌郁「私は、別の世界線で、あなたの大切な仲間を殺したんでしょ? それなのに、ここまでしてもらって…」
岡部「…気にするな。もう赦すさ」
萌郁「…岡部君と、天王寺さんに会えて、よかった」
天王寺「…そうか」
岡部「分かった。…ところでミスターブラウン、娘さんは今どこに?」
天王寺「綯か? あいつは今お仕置きで納屋に閉じ込めてある。昨日部屋でナイフ遊びしてやがったのを見つけてな」
岡部「…てっきりあなたは娘を溺愛しているのかと思っていましたが」
天王寺「だからこそだよ。知ってるか岡部? 可愛いからってガキ甘やかす奴はな、本当はそいつのことを喋るペット程度にしか思って無ぇんだよ」
岡部「…なるほど。勉強になります――」ピッ
グ二ョォォォオォォォォォオォォオォォォオォン
岡部「……ッ」ズキンズキン
紅莉栖「……ッ」ズキンズキン
岡部「…ふは。ふはは。フゥーハハハ!! ついに、ついにすべてのDメールを打ち消した!!」フハハハ
紅莉栖「私の仮説が正しければこれでまゆりは助かるはず…!!」フハハハ
岡部「これで…これで本当に終わりなのだな…」ニコッ
紅莉栖「ええ。きっとね」ニコッ
~ラボ~
ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン
岡部〈〉「はぁーッ…!! はぁーッ…!!」ズキンズキン
紅莉栖〈〉「はぁーッ…!! はぁーッ…!!」ズキンズキン
岡部「…何でだ!? 何でだよ!! ここはIBN5100がある世界線のはずだろッ!?」
紅莉栖「…きっとまだ何かあるのよ。考えてみるしかない…!」
岡部「…そうか、そうだよな…! いい加減取り乱すのはやめよう…! まだ何かある、か…!」
紅莉栖「初めから考え直してみましょう。まず阿万音さんは何と言っていたかしら…」
岡部「えーと…確か『IBN5100が手に入る世界線へ行けばまゆりと未来の世界が助かる』だったか…?」
岡部「…何か分かったのか!?」
紅莉栖「……私たちはこれまで『IBN5100が手に入る世界線へ近付くこと』を目的としてきた訳だけど…もしそれが間違いだったとしたら?」
岡部「…つまり、もしお前の仮説が間違っていたとしたら、か?」
紅莉栖「ええ。もし阿万音さんの言葉が『IBN5100に近付くこと』ではなく…」
紅莉栖「…『IBN5100を使うこと』によって目的が達成されるのだ、ということを意味していたのだとしたら…」
岡部「そうか…! …いや待て、だとしてもIBN5100を使う場面なんて存在するのか? …というかそもそも俺は何のためにIBN5100を手に入れたんだったっけ?」
紅莉栖「…えーと、それは確か…」
岡部「……あ」
紅莉栖「……そうか」
岡部・紅莉栖「…SERNのデータベース内の解読不能エリア!!」
ダル「ん? なんぞ?」
岡部「今からSERNのデータベースにハッキングしたらどれくらい時間がかかる?」
ダル「それなら3時間もあれb」
紅莉栖「1時間あれば十分よ」
岡部「30分でやってくれ!」
紅莉栖「任せて」カタカタカタカタ
ダル「(´・ω・`)……」
紅莉栖(これが以前見ることのできなかったデータか…)カチッ
ダル(た、たった25分で…)ズーン…
紅莉栖(えーと…中身は…)
紅莉栖「…あ!? …おかっ、岡部ッ!! これ見て!!」
岡部「…これは…!!」
紅莉栖「これって…あんたが偶然送ったっていうDメールよね?」
岡部「ああ、間違いない。…しかし何故ここに?」
紅莉栖「…恐らく俗に言うエシュロンかそれに近いものがあるんじゃないかしら」
岡部「そしてエシュロンに傍受されたこのメールをSERNの関係者が見て、この送信時刻と受信時刻のおかしさに気付いた、か。なるほどな」
紅莉栖「さらにそこからDメール、さらにはDメールを送る何らかの装置がラボに存在することに気付かれ、ここは襲撃されることになる…とでもいったところでしょうね」
紅莉栖「それはもちろん、このデータを消すためよ。それしか考えられない」
岡部「いや、今更消しても何の意味も…」ハッ
紅莉栖「気付いた?」
岡部「…そういうことか…! SERNの連中がこのメールに気が付くのはもっと先のことなのだな!」
紅莉栖「恐らくそうなんでしょうね。未来のSERNが、最初に電話レンジを手に入れた世界線から過去へDメールを送りラウンダーにここを襲撃させた」
岡部「そこまでして電話レンジ(仮)を手に入れようとしたということは、つまりあれこそがSERNのタイムマシン完成の鍵だったということか」
紅莉栖「ええ。つまり逆を返せば、このメールデータさえ消せばSERNがDメールの存在に気付くことは無くなり、結果タイムマシン研究は頓挫することになる」
岡部「そうすると結果ラボへの襲撃は行われず、よって電話レンジは奪われずディストピアが構築されることも無くなり…」
紅莉栖「…まゆりが死ぬことも、無くなる…!!」
ダル「(´;ω;`)オイテケボリダオ」
紅莉栖「…やっと、ここまで来たのね…」
岡部「…さぁ、とっととメールデータを消そう。その時こそが俺たちの真の勝利の瞬間だ!!」
紅莉栖「ディストピアの構築されない世界かぁ。どんな世界線なのかしら? 何か大幅に変わってたりするのかな」
岡部「ははは! お前はアホの子だな紅莉栖! このメールを消しても一番初めの世界線に戻るだけだぞ!」
紅莉栖「一番初めっていうとあれよね? 確かあんたが偶然このメール…を…送って…」
岡部「ああ。その通り…」
岡部「…あれ?」
岡部(…待て。ちょっと待て――!! 最初の世界線というのはつまり俺が偶然このメールをDメールとして送った世界線で…)
岡部(…それで、俺がこのメールを送った理由は…ラジ館で…)
岡部「…紅、莉栖」
紅莉栖「…な、何? 早くメールを削除しないと…」
岡部「…いや…ハッキングは一旦中止にしよう…」
紅莉栖「…そ、そうね。それもいいかも」プツンッ
岡部「…すまん。少し出掛けてくる」
ダル「(´;ω;`)カエッテネヨウ」
続きます
紅莉栖「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」 後半
Entry ⇒ 2012.06.23 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
岡部「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
まゆり「」
紅莉栖「あ…あ…まゆりが…死んじゃった…」ガクガク
ダル「ひいいいああああああああああああああ!!!!!」ガクガクガクガク
萌郁「FBのため…FBのため…」ブツブツ
萌郁「!?」
鈴羽「伏せて!」ヒュッ ドゴッ バキィッ
ラウンダーA「ぐあっ!?」ドサッ
ラウンダーB「ごふっ!!」ドサッ
鈴羽・萌郁「「動くな!」」ジャキン
鈴羽「…42、ブラウン管、点灯済み」
紅莉栖「…タイムリープマシン!」ダダダダダ…
岡部「…あっ!!」ダダダダダ…
岡部「急げ紅莉栖! 俺が跳ぶ!」スチャ
紅莉栖「岡部!? 駄目よ私が跳ぶ!! 失敗したら死んじゃうかも知れないのよ!?」
岡部「いいから急げッ!!」
紅莉栖「…っ! ねぇいいの岡部!? 本当にいいの!? 」カタカタカタカタ
岡部「ああ! やってくれ!」カチカチカチ
紅莉栖「…!」カタカタ ターン
バチバチバチバチバチバチバチバチ
ラウンダーA「くっ…!」パァン パァン
紅莉栖「あ゛ッ!!! ぐうッ…!」ドクドク
岡部「紅莉栖ッ!? くそっ!!」ピッ
岡部(――こんな結末、俺が変えてやる!)
岡部「……跳べよおおおおおおおおおおおおおッッッッッ!!!!!」
ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン
岡部「……ッ」ズキンズキン
岡部〈1回目〉「……ここは…?」
~ラボ(未来ガジェット研究所)~
紅莉栖「? 急にどうしたのよ岡部」
ダル「居眠りしてたのかお?」
岡部(…成功したのか…! タイムリープ!!)
ダル「まゆ氏ならるか氏の所に行くっつってたじゃん?」
岡部「! 分かった!」
紅莉栖「…岡部? 何かあったの?」
岡部「紅莉栖! ダル! 今日のパーティーは中止だ! 今すぐここを出て出来るだけアキバから離れろ!」ガチャ バタン
紅莉栖「は? ちょっと岡部!? ちゃんと説明してよ!!」
~アキバの街~
岡部「――はあっ…はあっ…」ダダダダダ
岡部(柳林神社はもう出た後だった…ラボにも帰っていない…どこにいるんだまゆり!)ハアッハアッ
まゆり「あれー? オカリンだー! トゥットゥルー♪」ブンブン
岡部「…ッ!! まゆりいッ!!」ダダダダダ
まゆり「? オカリンどうしたの?」キョトン
岡部「…お前…今までどこに…」ハァハァ
岡部「…なんだ。そんな下らないことだったのか…」ハァハァ
まゆり「あ?」
岡部「とにかく今すぐここを離れるぞまゆり! パーティーは中止だ!」
まゆり「えー? どうしたのオカリン? 何かあったのー?」
まゆり「…あのね、まゆしいには何が起きてるのかわからないけど」
岡部「……」
まゆり「だけどまゆしいはオカリンのこと信じてるから。だから全部終わったら、そしたら話を聞かせて欲しいな…」
岡部「…もちろんだ! 行こう!」
~路地~
岡部「はあっ…はあっ…」ダダダダダ
まゆり「はあっ…はあっ…」ダダダダダ
岡部「…もう少しだまゆり! もう少しでアキバを脱出…」
キキイイイイイイー
岡部「車ッ!? 危な――」
岡部「…ぐうっ…ま…まゆり…大丈夫か…?」ヨロヨロ
まゆり「」ドクドクドクドク
岡部「…まゆり? そんな…嘘だろ…」ユサユサ
岡部「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
ガチャッ バタン
萌郁「…岡部くん…いや、岡部倫太郎を確保。椎名まゆりは死亡しました」
岡部「…くそっ…くそっ…! うわあああああああああああああああ!!!!!」ダダダダダ
萌郁「!? 岡部倫太郎を追えッ!!」
~ラボ~
岡部(急げ――!)ハァハァ カタカタカタカタ
バチバチバチバチバチバチバチバチ
岡部(待ってろまゆり…今度こそ助けてやる!!)
ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン
~路上~
岡部〈2回目〉「すみません! まだ動かないんですか!?」
タクシーの運転手「ごめんねー。なんか検問やってるみたいでさ」
コンコン
まゆり「え?」
パァン
まゆり「」ドサッ
岡部「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
~駅~
岡部〈3回目〉「…もうすぐだぞまゆり」
プアアアアアアアアアア
まゆり「! 電車だー!」
綯「まゆりおねえちゃーーーん!!!」ドカッ
まゆり「え――」グラッ…
ドゴッシャアアアアア
岡部「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
チャーラーラーラーラー♪
岡部「ん? メール?」パカッ ピッ
[From:閃光の指圧師 話があります。ラボから動かないで。 〔添付あり〕]
岡部「…添付写真?」ピッ
岡部「…昔の新聞記事…?」
岡部「…なっ!? ゼリーマン!? …まさか…これ…!!」プルプル
岡部「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
~ラジオ会館・屋上~
岡部〈5回目〉「お、お前たちは一体何者なんだ!! なぜ俺たちのラボを襲う!?」
萌郁「…理由は3つ。1つ目に…」
………
~ラボ~
ガチャーン
岡部「まゆりいッ!!!」
紅莉栖「岡部!?」
まゆり「オカリン…!!」タタタ
岡部「馬鹿!! 動くなッ!!」
萌郁「チッ…!」パァン
まゆり「」ドサッ
岡部「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
~ラボ~
岡部〈10回目〉「……ッ」ズキンズキン
岡部(……初めにまゆりが死んでから、さまざまな事を試した)
岡部(しかしまゆりの救出はすべて失敗してしまった。代わりと言うわけでは無いが、タイムリープ繰り返して分かったことは2つ)
岡部(まず、ラボを襲ってくる連中の正体。次に、ラボが襲撃される理由)
岡部(……そして、もしかすると、何をしてもまゆりは死んでしまうのかも知れないということ)
岡部(つまり、まゆりの死は世界が望んでいる事なのかも知れないのだということだ)
岡部(そんなくだらないことを考えている場合ではない! まだだ! まだ俺は諦めない!)グスッ
岡部(そうだ! 俺は狂気のマッドサイエンティスト! 不可能などない! 絶対にまゆりを救ってみせるのだッ!!)ガターン!!
紅莉栖「きゃっ!? 急に大きな音出さないでよ岡部!」
岡部「あ、ああ。すまん」ズズー
紅莉栖「ん? もしかして泣いてるの岡部? 何かあった?」
まゆり「どうしたのオカリン?」
ダル「ブラクラでも踏んだん?」
岡部「…気にするな。何でもない」ズズッ
岡部「…今から鈴羽のところへ行ってくる! 今日は帰らないかも知れない!」ガチャ バタン
紅莉栖「え? ちょっと待……行っちゃった。一体どうしたのかしら?」
ダル「阿万音氏に愛の告白でもするんじゃね?」
紅莉栖「なっ…///」
岡部「おいバイト戦士! 居るか?」ガラッ
鈴羽「ん? どうしたのさ岡部倫太郎?」ヒョコッ
岡部「…頼みがある。俺に稽古を付けて欲しい。時間が無いんだ」
鈴羽「…理由を聞いてもいい?」
岡部「…すまない」
岡部「…すまない鈴羽。手取り足取り頼む」
岡部(…俺が戻ってくることができるのは、どんなに過去でもタイムリープマシンが完成する48時間前である今までだ)
岡部(だから『今』からラウンダーが襲撃をかけてくるまでの数十時間を何度でも繰り返す)
岡部(肉体が成長しないのは仕方がない。せめて技だけでもいい。じっくり時間をかけて身に付ける。そして萌郁たちをラウンダーの連中を残らずブッ飛ばしてしてやる!)
鈴羽「…いくよ?」スッ
岡部「…ああ」スッ
鈴羽「……ふんッ! せいッ! そりゃッ! はあッ!」ビュオ! ドヒュ! ドウッ! ブオン!
岡部「おっと! ふんッ! ふははッ! 遅いィッ!!」サッ ザザッ クルクルッ シュタッ
鈴羽「バク転っ!? 余裕だね…! じゃあこんなのはどう!?」ヒュオ…!
岡部(右のハイキック…いや軌道が馬鹿正直過ぎる! それに踏み込みが深い。これは…)
鈴羽「…なんてね!」クンッ!!
岡部「…フェイントかッ! 甘いッ!」サッ ガシイッ
鈴羽「なっ…!」(軌道変化を読まれた!? くそ、足首を掴まれ…)
鈴羽(まさかこのまま投げ飛ばす気か――!? まずい! 受け身が間に合わ…)
岡部「らああああああああああああああああああああああッッッッッ!!!!!」ブウンッ!! ドシャアアアン!!
鈴羽「づあッ!! ぐうううううッッッ………!!!」ズザザザザー ゴロゴロゴロ
鈴羽(…くっ、早く体勢を)ググ…
岡部「ふはははははッッッ!!! 甘いィィィッッ!!!」タタタッ タンッ
鈴羽(フットワークが軽いッ!? ガ、ガードを…)
岡部「これで終わりだな、バイト戦士」スイッ デコピンッ
鈴羽「あいたっ!? ……くそー、岡部倫太郎に負けちゃったよ…」ガシガシ
岡部「気を落とすなバイト戦士! 貴様が弱いのではない! ただ単にこの鳳凰院凶真が強過ぎただけなのだフゥーハハハハ!!!!!」ハハハハ
鈴羽「いやー、いきなり手合わせを申し込んできたと思ったら、まさか君がそんなに強いとはね。まさに天賦の才って感じ。誰に教わったのさ?」
岡部「…さぁ、誰だろうな?」ニコッ
鈴羽「?」ハテナ
岡部〈196回目〉(…鈴羽、お前には本当に感謝している。お前に教わったこの武術で、ラウンダー共を一人残らずぶちのめして見せる!!)
~ラボ~
キャスター「――爆弾を仕掛けたとの予告電話があり…」
鈴羽「…あたし、用事を思い出したから帰るね」タタタ…
岡部「…そうか、そろそろだな」(今回は武器も用意した…これでいけるはず!)
紅莉栖「え? 何が?」モシャモシャ
岡部「何でもない。クリスティーナ! まゆり! ダル! ピザを食い終えたらすぐにシャワー室に行くのだ!」
まゆり「えー? 何かあるのー?」モシャモシャ
岡部「いいから行くんだ。そして俺がいいと言うまで何があっても絶対に出てくるな」
紅莉栖「黙れこのHENTAI! というか岡部、理由を聞かせなせいよ」モシャモシャ
岡部「…今は言えない。だが頼む、俺の言う通りにしてくれ」
紅莉栖「変なことを考えてる訳じゃなさそうね。…信じていいのね?」モシャモシャ ゲフー
岡部「…ああ」(汚ねえ)
岡部(……装備はこれで良し)スチャッ スチャッ
岡部(…武器屋本舗の安物メリケンサックだが、まぁなんとかなるだろう)ガインガイーン
岡部(…目を閉じて集中しろ…神経を研ぎ澄ませ…)
岡部「……」フゥー…
岡部(…さぁいつでも来いラウンダー!! 俺がこの手で素数にしてやるッ!!)カッ!
ラウンダーA「うg
岡部「ブロー!!」ドゴッ!
ラウンダーA「ぐっ!?」ドサッ
岡部「アッパー!!」バキ!
ラウンダーB「ぶっ!?」ドサッ
岡部「ローリンソバットォォォ!!」メキィッ!
ラウンダーC「ごっ!?」ドサッ
ラウンダーD「ぎっ!?」ドサッ
岡部「跳びヒザ!!」メゴッ!
ラウンダーE「ぶっ!?」ドサッ
岡部「バックドロップゥゥゥ!!!」ガシッ! ドゴシャアアア!!
萌郁「あぎっ!?」ドサッ
ラウンダー達「うぅ…」ピクピク
岡部「……は…はははッ…」
岡部「…フゥーハハハ!! 他愛無い!! やった!! 俺はついにやったぞッ!!」ババーン
ガチャン!
鈴羽「伏せ…え? 何これ」スゲェ
岡部「ああ鈴羽か。もうとっくに片付けたぞ!」フハハハ
オカリン「な!? 馬鹿!! 戻――」
萌郁「…ぐっ…!」プルプル パァン
まゆり「」ドサッ
岡部「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
パパパパパパパパァン
ウ・・・イタイ・・・イタヨォ・・・
岡部〈197回目〉(…これでよし。ラウンダー達の手足は全て潰した。もうまゆりが撃たれることは無い…)
ガチャン!
鈴羽「伏せ…え? 何これ」スゲェ
岡部「遅かったな鈴羽! フゥーハハハ!!」
岡部「だから出てくるなと…」ハァ…
まゆり「わー! 何これ? 本物の銃?」ヒョイッ マジマジ
岡部「!? 馬鹿止せ――」
パァン
まゆり「」ドサッ
岡部「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
鈴羽「あ、間違って撃っちゃった」パァン
岡部〈202回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
………
鈴羽「ぎゃあああああ!? 触ってないのに暴発しだした!」パパパパパン
岡部〈209回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
………
紅莉栖「岡部! まゆりが風呂場で転んだ!」
岡部〈215回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン
岡部〈220回目〉「……ッ」ズキンズキン
岡部「はぁッ…はぁッ…」
岡部(…くそっ! 一体どうなってる!? 転んだだとかダルの下敷きだとか…)
岡部(…待て! そうだ、そもそもまゆりは『病気』で死ぬ可能性もあるんだ! 忘れるところだった。その可能性も潰さないと…)
岡部(…セカンドオピニオンは? 別の医者にも診せるのはどうだ)
岡部(…いや、それでもまだ確実ではない。二重の誤診だってあり得るし、最悪『未知の病気』に殺される可能性もある)
岡部(……こうなったら俺が直に『健康面において何の問題も無いまゆり』を観測するしかない)
岡部(…仕方無いな。現存のすべての医学を修めてやる。可能性を潰すにはこれしかない!)
~図書館~
岡部〈276回目〉「眼前暗黒感、か。右腕が疼くな」カリカリ
………
岡部〈996回目〉「エイリアンハンドシンドローム? 左腕が疼くな」カリカリ
………
岡部〈1401回目〉「…うーむ…やはり原書を読めるようにならねばダメか…」カリカリ
岡部〈2091回目〉「なんだこれ!! クオリア!? 楽しいなオイ!!」カリカリ
………
岡部〈2792回目〉「尖圭コンジローマか。 俺には無縁だな…」カリカリ
………
岡部〈3555回目〉「四色問題? なんだ、こんなもの簡単に証明できるじゃないか」カリカリ
ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン
岡部「……ッ」ズキンズキン
岡部〈4159回目〉(…フハッ!! フゥーハハハ!! これで医学は完全にマスターしたぞ!! ついでに脳科学や哲学、更には数学に生物学などもバッチリだ!! おまけに5か国語使い!! 俺完璧!!)ババーン
岡部「というわけでまゆり! 俺についてこい!」
まゆり「えー? 急にどうしたのオカリン?」
岡部「今から病院に行くぞ! お前にはそこで検診を受けてもらう」
まゆり「えぇ~? まゆしいは病気じゃないよ?」
岡部「いいから来てくれ! …頼む」
まゆり「…なんだかよく分からないけど分かったのです!」タタタッ
~病院~
医者「…というわけで以上は見当たりませんねえ」
まゆり「ほらねー? まゆしいは元気だよ?」
岡部「…もう一度カルテを見せてもらってもいいですか? 出来れば細かい測定データも一緒に」
医者「え? はい、どうぞ」スッ
岡部「ありがとうございます」パシッ ジー
まゆり「オカリン変わってるんだね~♪ えへへー♪」
医者「しかもやたらと正確でお詳しい。もしかして医大の方ですか? それともお家が病院とか?」
岡部「いえ、俺はただの大学生ですよ。…あ、先生。このカルテ」
医者「? どうかしましたか?」
岡部「ここ、綴りを間違えてますよ」
~病院・外~
岡部(…あらゆる部位を検査したが異常無し、か。俺が直に観測したので誤診もありえないな)
岡部(万が一まゆりが未知の病に罹っているとしても、少なくとも『健康面における問題が原因で例の時間にまゆりが死亡する』可能性はゼロになった)
岡部(あとはこの観測が無駄にならないように『この瞬間』以前に戻りさえしなければ大丈夫だ)
岡部「…ふは。ふはは。フゥーハハハ! これは大きな一歩だッ! さあ帰るぞまゆり!」タタタタタ
まゆり「オカリンは忙しいんだねー♪」タタタタタ
紅莉栖「…よし完成!」フイー
岡部(マシンが完成したか。では…)
岡部「実験はしない!!」
紅莉栖「え!?」
ダル「おう?」
まゆり「?」
岡部「今日はこれで解散だ。紅莉栖、ダル。お前たちは今から、可能な限りアキバから離れてくれ。まゆりは俺に付いてくるんだ」
紅莉栖「はぁ? ちょっと岡部!! どういうこと!?」
ダル「また中二病が発動したん?」
ダル「お前は一体何と戦ってるんだ」
岡部「運命…かな」キリッ
ダル「うわぁ…」
岡部「ゴミ虫を見るような目をするな!! では行くぞまゆり!!」ガシッ タタタタ
まゆり「えー? 行くってどこにー?」タタタタ
岡部「いいから来てくれ!」タタタタ…
紅莉栖「あ、ちょっと岡部!」
~路地~
岡部「はぁ…はぁ…」タタタタ
岡部(……ラボ内でラウンダーを退けるのは危険だ。ここは街中を逃げてまゆりの死を回避する!)タタタタ
岡部「…まゆり! 絶対に俺から離れるなよ!」タタタタタ
まゆり「うん…分かった」タタタタタ
ラウンダーA「止m」チャキ
岡部「ふんッ!!」バキャ!
ラウンダーA「ぐはッ!!」
岡部「どらぁ!!」ゴギッ!
ラウンダーB「おぶっ!!」
岡部「せっ!!」プリッ
ラウンダーC「目が!!」
岡部「ふはは、銃は全部貰っておくぞ」ヒョイヒョイヒョイッ
まゆり「わぁー!! オカリンすごーい!! 今のブラジリアンキックから目潰しの流れは素晴らしいの一言だよー!」パァアー
岡部「ふっ、そうおだてるでないぞまゆり」フフン
まゆり「だってすごかったよー? 下手をするとまゆしいも軽くヒネられてしまいそうなのです」
岡部「ははは。そもそもお前は喧嘩などしないだろう。なぜならお前は優しい子だからな」ニコッ
まゆり「えへへー♪」
岡部(! 例の車か…!)
岡部「…跳ぶぞまゆり! 俺に掴まれ!」ガシッ グイッ
まゆり「お姫様抱っこだー♪」ギュッ
岡部(っと重い…! やはり筋力が無いのはネックだな。…だが! 問題無いッ!)カッ!
岡部「う、おッ、らあああああああああッッッ!!」ピョーン ダンッ ダーンッ!
萌郁(な!? ボンネットを踏み台にした!? 正気の沙汰じゃない!!)
岡部「ぐッ…! 着地…成功ッ!!」ダンッ ズザザー
まゆり「わぁー!! わあぁー!!!」キラキラ
さてどうなる
萌郁「ぐあっ!!」
ラウンダーF「ぎえっ!!」
キキィー! ドガァァン!! プスプス…
岡部「安心しろ。死にはせん」フウッ
まゆり「ほあぁ…!」キラキラ
岡部「…さあ逃げよう! 降ろすぞまゆり」
まゆり「うん!」ピョンッ
キキイイイイイ!
岡部「なっ!?」
まゆり「!? オカリン危な――!」ドンッ
ドガアアアン! ゴロゴロゴロ…
岡部「……ぐッ…!!」ズキズキ
岡部(…もう一台…だと…?)ズギズギ
タクシーの運転手「ちょっと! 大丈夫か兄ちゃんたち!?」バタンッ!
岡部(あの時の運転手!? …はは…そうか、これは『事故』なのか…。畜生…!)ズギズギ
タクシーの運転手「……ああー…やっちまった…!!」ガクン
岡部(…まゆり!! まゆりは!?)バッ
まゆり「」ドクドクドクドク
岡部「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
4℃「うわあああああああああ危ないいいいいい!!!」
ドガアアン!!
岡部〈4432回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
………
ラウンダーD「ひあああああ看板が落ちてきたあああ!!!!」
ヒューン!! グシャッ!!
岡部〈4912回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
………
ラウンダーE「うわああああ隕石が落ちてきたああああ!!!!」
チュドォォォオン!!
岡部〈5266回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン
岡部〈5695回目〉「……ッ」ズキンズキン
岡部「はぁッ…はぁッ…」
岡部(…くそっ! 一体どうなってる!? 事故だなんだってレベルじゃないぞ!!)
岡部(ある一つの可能性Aを観測して潰すと観測していない残りの可能性Bに殺される…)
岡部(だからといってAの観測以前まで時間を遡りBを観測して潰せば、Aの観測は無効化してしまう)
岡部(退路にあるすべての死の可能性を一度のタイムリープで潰すのは無理だ! 時間が足りない!)
岡部(わざと捕まって、それから15年ほどタイムトラベルに関わる諸々について研究を重ね、それらについて完全に理解してからタイムリープを繰り返してここまで帰ってくるとか…)
岡部(…いや駄目だ! 危険すぎる! 無事に岡部〈15年振り5696回目〉を迎えられる保証はどこにもない!)
岡部(それどころか、奴らはそれだけは絶対に阻止しようとするだろう)
岡部(…もっと他の大胆な方法を試そう。借金をしてもいい。海外へ飛んだり、僻地に避難したり…)
まゆり「わぁー♪ ナイアガラだよオカリン! すっごく流れがはy」
ズルッ ドボン ゴゴゴゴゴー
岡部〈6266回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
………
まゆり「わぁー♪ モアイだよオカリン! 初めて生で見t」
グラグラ… ズズーン…
岡部〈7409回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
………
まゆり「凱旋門の上って涼しいんだねー♪ あー見てオカリン! 街並みがすっごく綺r」
ズルッ ヒュウウウウン
岡部〈8008回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
なにこのスペランカーまゆしぃ
まゆり「バングルバングル? 変わった名前だねー♪ えへh」
ズルッ ゴロロロロロロー
岡部〈9654回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
………
まゆり「わぁー!! うわぁー!! ウユニ塩湖ってすごーい!! 鏡みたいだねオカr」
ププー キキイイイイイ! ドガアアアアン
岡部〈10482回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
………
まゆり「あー!! コモドオオトカゲだー♪」
シャアアアアア! ドドドドドドド ガブリ
岡部〈11130回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
まゆり「グアムでスカイダイビングなんて贅沢だねー♪ さて、そろそろパラシュートを開かなきゃなのです」ビュオオオオオ カチッ
カチッ カチカチカチッ アレー? カチカチカチカチ
岡部〈11576回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」ビュオオオオオ
………
まゆり「釣りをしながらカヤックで太平洋横断だなんて粋だねオカリン♪ …あ! 大物が来たかm」グイッ
グイイーーン ドボン ブクブクブク…
岡部〈12336回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」キーコ キーコ
………
まゆり「わぁー! ゲルバナで釘が打てるよ! あー見てオカリン! あっちにはペンギンがいるよ!」タタタッ
ツルッ バシャーン ゴボボボボ
岡部〈12707回目〉「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」ブルブルブルブル
ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン
岡部〈13004回目〉「…はあーーッッ!!! はあーーッッ!!!」ズキンズキン ゼェゼェ
岡部(悪夢だ!! これはきっと悪夢なんだ!!! …ひは。 ひははははッッッ!!!)
岡部(……いや違う、落ち着け、落ち着け……!! 取り乱すな俺…!!)フゥー…
岡部(…電車だ! もう電車しかない!!)
~駅~
プアアアアアアアアアア
まゆり「! 電車だー!」
岡部(そろそろ綯が来る…! 確か真後ろからだったよな)クルッ
綯「まゆ…」タタタ
岡部「! 待て綯ッ!!」バッ
岡部「何ィィィ!!?」(急激に曲がった――ロデオドライブだと――!?)
綯「おねえちゃーーーん!!!」ドカッ
まゆり「え――」グラッ…
ドゴッシャアアアアア
岡部「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
~駅~
岡部〈13005回目〉(…今度は大丈夫だ。さっきは不意を突かれただけに過ぎない)フゥー…
岡部(…そう! 鈴羽に比べれば綯などどうということは無いッ!!)
プアアアアアアアアアア
まゆり「! 電車だー!」
岡部(…さぁ来い綯ッ!! 派手に蹴り飛ばしてやるよッ!!)カッ!
岡部「来たなッ!!」バッ
綯「り…」クンッ クンッ
岡部「靴を舐めろ…その全身でッッッ!!!!!」ビュオン!! ドゴッシャアアアアアア!!!
綯「おげべばあああああああああああああああ!!!??」ドヒュウウウウウ ゴガアアン!! ゴロゴロゴロー
オカリン鬼畜wwwwwwwww
綯「…があッ…!」ゲボッ フラフラ…
綯「…」ドサッ…
岡部「――ふん」パラパラ…
まゆり「えええ!? ねぇねぇオカリン、いま誰をサッカーボールキックしたの!? なんだか知らないけど脚の上がり方がすごかったよー♪」キラキラ
岡部「何でもないさ。さぁまゆり、もう電車が来る…」
女「あ、ごめんなさい」ドカ
老人「おっと、すみませんねぇ」ドカ
まゆり「え――」グラッ…
岡部「…は?」
ドゴッシャアアアアア
岡部「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
岡部〈13006回目〉(――今度こそ完璧だ)
岡部(今回は鈴羽に、綯を迎えに行ってくれるよう頼んだ。これによって綯が駅に来ることが無くなったので、俺は例の殺人タックルに気を配る必要が無くなった)
岡部(殺人タックルに気を配る必要が無いということはつまり、俺はまゆりにだけ全集中力を注ぐことができるということ)
岡部(更に念には念を入れ、電車を待つ位置もちゃんと線路から離れた場所を選んだ。さっきのようにまゆりが通行人によって殺されることは無いだろう)
岡部(…完璧だ)
岡部(…永かった――!)ツウッ
岡部(まったく、一体何度挫折しそうになったことか。一体何度諦めようと思ったことか…)
岡部(…だが! 今まさに! これまでの俺の努力がようやく、ようやく報われようとしている…!!)ツウウッ
岡部(……泣くな岡部倫太郎。泣いていいのはすべてが終わってから。まゆりの生存が確定してからだ――!)ゴシゴシ
まゆり「うん。…あ、ねえねえオカリン! あのねー、突然だけどねー」エヘヘー
岡部「うん? どうした? 何でも言うがいい」ニコニコ
まゆり「まゆしぃはなんだか自殺したくなってきたのです♪」
岡部「」
なんだと・・・
岡部「…いやいやいやいや待て待て待て待て待ってくれ!!! いくらなんでもそれはあんまりだろう!!?」ガシッ
まゆり「何で止めるのー? まゆしぃが死んだって誰にも迷惑はかからないのです」グググー
岡部「漏れなく大迷惑だ馬鹿野郎!! なんだその中学生みたいな理論は!!」ガシッ ブンブン
まゆり「う~あ~?」ガクンガクン
岡部「とにかくだ!! 今すぐ考え直せ!! 俺は絶対に行かせんからな!!」グググー
まゆり「えーそんなー! はーなーしーてー!!」グググー
岡部「…なぁまゆり!! もし『俺、未来から来た』って言ったら笑うか!?」グググー
まゆり「そんなことより聞いてよオカリン! うちの妹がバカでねー」グググー
岡部「聞けよ!! そもそもお前は一人っ子だろうが!!」グググー
まゆり「さっきからうるさいなぁ。そんなオカリンにはお仕置きなのです♪」グググー
岡部「お仕置き? 何を言って…」グググー
岡部「はあああああッッッ!!?」(消え――)
まゆり「後ろだよートゥットゥルー♪」ザザッ ドバギイイイイィィィィ!!!
岡部「ゴッハアアアアアアアアアアアアアアァァァァァ!!!??」メギメギメギイッ!!! ドザザザザザー ゴロゴロゴロ
岡部「…う…ゲッボ!! ごはッ…!」ゲボッ ビシャア
岡部(何だ今の――速過ぎて見えなかった――)ゴボッ ゲブッ ビチャビチャ
まゆり「えへへー♪ 内臓破裂(なかみわれ)ちゃったかなー? ごめんねオカリン♪」
ワラタ
まゆり「! あー電車だー!」
岡部「!! 待っゴボぁッ!!」(体が…言うことを聞かん…!)ビシャ ブルブル…
岡部「げほッ…待て…待つんだまゆり…! 待ってくれッ…!!」ガクガクガクガク…
まゆり「じゃあねーオカリン!! トゥットゥルー♪」
岡部「ま」
ピョーン ドゴッシャアアアアア
岡部「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」
~UPX前~
岡部〈13406回目〉(……)
岡部(…もう、駄目だ…)
岡部(…もう、俺には無理だよ…)
岡部「…もう…疲れた…」ズルズル
岡部「……」グスッ
岡部「……!」ゴシゴシ
岡部「……」
岡部「……」グスグス
岡部「……紅莉栖」
紅莉栖「…初めて私の名前をまともに呼んだ」
岡部「……紅莉栖…助けてくれ…」グスッ
紅莉栖「……」
岡部「助けてくれ…」グスグス
岡部「…どうして」
紅莉栖「電話に出たかと思ったら、急に泣きそうな顔して飛び出していったんだもの。そりゃ分かるわよ」
岡部「……なぁ、紅莉栖。所詮、俺はただの大学生だ。狂気のマッドサイエンティストだっていうのは俺が考えた厨二設定だ」ヘラヘラ
紅莉栖「……」
岡部「機関に狙われてるなんてのも、シュタインズゲート云々も全部設定だ。気付かなかっただろ?」ヘラヘラ
紅莉栖「いやそれは最初から……まぁとにかくだ! 何があったの? …いや、これから何が起きる?」
岡部「…まゆりが、死ぬ」
紅莉栖「! ……そうか、それで…」
紅莉栖「…は? 勝てない? 何に?」キョトン
岡部「師匠である鈴羽にも勝ったし、綯だって一撃で倒した。ミスターブラウンやルカパパも死闘の末撃破した。だけど何度やっても、何度試しても…」
紅莉栖「はあ? え? 死闘?」コンラン
岡部「まゆりに、勝てないんだ…」
紅莉栖(……何が何だか分からない…)ダラダラ
岡部「俺は馬鹿だ。ダルにハッキングしろなんて言わなければよかった。萌郁をラボメンにしなければよかった。電話レンジなんて作らなければよかったんだ」
岡部「……」グスッ
岡部「……」ギュウ
紅莉栖「え、ちょ!?」マジデ!?
岡部「……」グスッ
紅莉栖「………そっか。辛かったのね。そうだよね」ポンポン
岡部「うっ…ひぐ…」グスグス
紅莉栖「…ごめんね。今まで気付いてあげられなくて」ギュウ
岡部「……」ブンブン グスグス
岡部「うぐ…ぐすっ…」グスグス
紅莉栖「…泣き止めって言ったけど撤回する。今は気が済むまで泣いていい。鼻水でも何でも、溜め込んでたもの全部ブチ撒けなさい」サスサス
岡部「……」コクコク グスグス
紅莉栖「…それから、これだけは覚えてて。私はいつでも、岡部の味方だからね」ニコッ
岡部「……すまない。取り乱した」ズズッ ゴシゴシ
紅莉栖「気にしなくていい。…周りの視線はすごく気になったけどね…」チラチラ カァー///
岡部「…からかったりしないんだな」
紅莉栖「私だって空気くらい読む。…さて、それじゃあ話を聞かせてくれる?」
岡部「…ああ。何でも聞いてくれ」
岡部「13406回だ」
紅莉栖「………はい?」キョトン
岡部「13406回だ」
紅莉栖「」
~ラボ~
紅莉栖「…なるほど、そんなことが…」パネェ
岡部「そうだ。俺がどんなにまゆりを救おうとしても、結局は駄目だった」
紅莉栖「何をしてもまゆりが死ぬ結果になってしまう、ってことかしら」
岡部「馬鹿を言うな。それは運命論だろう」
紅莉栖「そっか。そうよね。うーん…」
紅莉栖(どうしよう…衝撃的過ぎて頭が働かない…)ダラダラ
岡部「紅莉栖、俺は一体どうすればいい…」
岡部「まゆり戦は回避、か…」
紅莉栖「話を聞く限りだとまゆりに勝つどころか、岡部がまゆり戦のあとに倒れず毎回タイムリープできたこと自体、奇跡みたいなものなのよ?」
岡部「…分かった。他には?」
紅莉栖「そうね…。…ねぇ岡部。あんたはリーディングシュタイナーとかいう力を持ってるのよね?」
岡部「? そうだ。Dメールで過去を改編した時、俺だけが改変前の記憶を引き継いでいた」
岡部「いや、そうではない。その場合はお前が1日前から『今』に、つまりこの瞬間へ戻ってきた時に初めて俺のリーディングシュタイナーは発動することになる」
紅莉栖「ああなるほど。そういうことになるのか」
岡部「それがどうかしたのか?」
紅莉栖「……」
岡部「…どうした?」
紅莉栖「私は今から、タイムリープをしようと思う」
岡部「…紅莉栖? いったい何を…」
紅莉栖「そしてタイムリープで戻れるギリギリの時間まで戻って、電話レンジを改良する」
岡部「改良って……まさか」
紅莉栖「ええ。…同時に二人まで飛べるようなタイムリープマシンを作る」
紅莉栖「材料さえあれば時間はそこまでかからないと思う。多く見積もってもプラス数時間あれば余裕、ってとこかしらね」フフン
岡部「…だが、お前は」
紅莉栖「?」
岡部「…お前は過去改変を嫌っていたんじゃなかったのか?」
紅莉栖「…私は岡部とまゆりを助けたいし、助けてみせる。そのためならポリシーなんていくらでも曲げてやるわよ」ニコッ
岡部「…紅莉栖、設定終わったぞ」カタカタカタ ターン
バチバチバチバチバチバチバチバチ
紅莉栖「オーケー。…これでよし、と」カチカチカチ
紅莉栖「じゃあ岡部、少しだけ待ってて。すぐに戻ってくるから。…いやこの場合は私が待つことになるのか?」
岡部「…紅莉栖、ありがとう。俺を信じてくれて」
岡部「…ああ」
紅莉栖「安心して。これからはいつも私が側にいるから。私も一緒に戦うから」ニコッ
岡部「ああ」
紅莉栖「知ってた? 仲間っていうのはそういうものなのだぜ」ピッ
ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン
~ラボ~
岡部「……ッ」フラッ
岡部(…リーディングシュタイナーが発動した…!)
岡部「…紅莉栖。 …紅莉栖!! どこにいる!?」
紅莉栖「…あんたの真後ろに居るわけだが?」ヒョコッ
岡部「…待たせたな、紅莉栖!」
紅莉栖〈1回目〉「!! リーディングシュタイナーが発動したのね!?」
岡部「ああ! そっちはどうだ?」
紅莉栖「ほら、ちゃんとできたわよ。名付けてタイムリープマシン(改)!」
岡部「おお、これが…!」
岡部「…これで設定は完了だ」カタカタカタ
紅莉栖「じゃあはい。これ被って」ポス
岡部「…跳ぶのはまゆりの診察の直後でいいんだよな? 完成直後じゃなくてもいいのか?」スチャ
紅莉栖「時間が多いに越したことは無いでしょ? それにほら、二回目以降ならもっと製作時間を短縮できるかも知れないし」スチャ
岡部「分かった。…じゃあ、行こう」
紅莉栖「うん。……あ、岡部! あの…えっと、さ」モジモジ
紅莉栖「…手、繋いでもいい? …い、いや別に変な意味じゃないのよ!? ただほら、タイムリープマシン(改)を使うのは初めてだからちょっと心細いというかなんというか…」ゴニョゴニョ
岡部「こうか?」キュッ
紅莉栖「…うん。ありがとう」キュッ
岡部「じゃあ起動するぞ」カチカチカチ ターン
紅莉栖「…ちょっと、怖いな」
岡部「……」
岡部「……心配するな紅莉栖。お前には俺が付いてる。俺にはお前が付いている。俺たちはもう無敵だ」ギュッ
紅莉栖「…小学生みたいな理論だな。…でも、うん。そうだよね。私たちはきっと大丈夫」ギュッ
岡部「行こう」ピッ
紅莉栖「うん」ピッ
ドゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン
岡部〈13407回目〉「……ッ」ズキンズキン
紅莉栖〈2回目〉「……ッ」ズキンズキン
岡部「…紅莉栖、大丈夫か?」
紅莉栖「平気。それより…成功したのね!?」ニッコリ
岡部「ああ!! 大成功だ!! やはりお前は天才助手だなクリスティーナよ!!」ニッコリ
紅莉栖「だから助手でもクリスティーナでもないって言っとろうが!!」ムキー!
岡部「これでまゆり救出計画はまた一歩成功に近付いたぞ!! フゥーハハハ!!!」
紅莉栖「…まぁ元気になったならよしとするかな…」ハァ
岡部「え? …あっ!」バッ
紅莉栖「あっ…いや違うのよこれは!?」バッ
ダル「クソックソッ!! オカリンマジ爆発しろよ!! うわあああああああああああ!!!!!」ダダダダダ
岡部「…行ってしまったな」
紅莉栖「…まぁ人払いできたって意味ではいいんじゃない? さて、とりあえず今までの要点をまとめましょう」
紅莉栖「…1回目の跳躍から13506回目の跳躍までの要点をまとめるとこんな感じかしら」カキカキ
岡部「まぁそんなところだな」
紅莉栖「…岡部、あんた何気に超絶ハイスペックね…負けた気がする…」ズーン…
岡部「褒めても何も出んぞ助手よ!」
紅莉栖「助手じゃないって言っとろう! …しかしどうしたらいいんだろう。 こうしてみると、それこそ見えない力がまゆりを殺そうとしているようにしか見えない」
岡部「その発想は安易過ぎるぞクリスティーナ。貴様は運命論大好きっ子だったのか?」
紅莉栖「…そうね。訂正する。確かに安易過ぎたかも知れない」
┌─────────────────┐..,r-宀- .┛┗
│ ・ナイアガラで溺死 ./ .,、 ,、┓┏
│ ・モアイの下敷き ...... . { イニヽ/ニ} l / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
│ ・凱旋門から落下 _人 バン!.. . | .ト, _-_ ,イ l, < お前助ける気無いだろ │
│ : ) .,-r---‐‐‐‐トリ .`Y´ .l ,イl \__________/
│ : ⌒Y .. ̄ ̄ ̄ ゙̄|T〈 ||- 〉l l
│ ・スカイダイビングで事故死 . . li| l .|| .l-|il
│ ・カヤック_、_.ってたら溺死 ..... .l l .^ _ l .リ
│ ・南極 z:::::::::::::ヽ して溺死 ...... .l l{ ̄, ̄}_l,
└────── チ:::::::::::::::∧.────── . `=_lト-:l:-イ-'
t::::::::::::廴) .l:::::l:::::l
ヽ::::::::イ/n l:::::l:::::l
イニニニヽ ) l::::l::::l
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| は、はい……申し訳ありません
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V ハ !
V :. .: i
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イ l
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_ ノ ::. ..::: .: ヽ_ /⌒ヽ/⌒ヽ
∠、__t____ ノ___/__> l、 l⌒ l l⌒l、
ヽヶぃぅ とヵっ' `ー─' ー─'
岡部「だが断る!! フゥーハハハ!!」ババーン
紅莉栖「……」ジー
岡部「……気が向いたらな」
紅莉栖「ま、とにかく当分は岡部が今までやってきた通りにしましょう。まゆりの死の原因になり得る全ての要素を徹底的に潰す作戦を継続…」
紅莉栖「!?」
岡部「鈴羽!? いつの間にそこに!? …いや、それより『その必要は無い』とはどういうことだ?」
鈴羽「だって、あたしが過去を変えれば済む話だから」
岡部「過去!? ……お前、まさか…」
鈴羽「…そう。あたしは2036年から来たタイムトラベラー。ジョン・タイターは、あたし」
~ラジ館屋上~
ダル「阿万音氏、そこのレンチ取ってー」カチャカチャ
鈴羽「ほい」パシ カチャカチャ
岡部「いやぁー、ハッハッハッハッハ!! フゥーハハハ!! 一時はどうなる事かと思ったなぁ助手よ!!」ハハハ
紅莉栖「いやーホントホント!! あはははは!! 正直どうすればいいか全然分からなかったもん私!! 継続て!! 継続て!! うぎゃははは!!」ブハハハ
岡部「そうかそりゃそうだブハハハハ!! もしこのタイムマシンが故障していたりしたら大変だな!!」アハハ
岡部「おいおい勘弁してくれ!! あんなのを全部覚えろというのか!! それはつまり物理学をマスターしろということとほぼ同義ではないのか!?」ブフッ
紅莉栖「あとはこのタイムマシンの仕組みを完全に頭に入れたりとか!? あ、そうなると工学にも精通してなきゃ!! そんなん気が遠くなるっつーの!!」ブフッ
岡部・紅莉栖「「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!!!!!」」ゲラゲラゲラゲラ
鈴羽・ダル(うるせぇ…)カチャカチャ
………
~ラボ~
まゆり「スズさんからの手紙だー!」
ダル「なんて書いてあるんだお?」
紅莉栖「……」
岡部「……」
『岡部りん太郎様へ。久しぶり。結論から書く。……失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した失敗したあたしは失敗した。
やけにタイムマシンに詳しい岡部りん太郎と牧瀬くりすの監修のもとで百数十回にわたってマシンの再点検を行い全身にプロテクターを付け
自身へのメッセージビデオや写真や手紙をいくつも作成し面倒な暗記術を学び胡散臭い祈祷をいくつも受けたにも関わらずあたしは失敗した……』」
まゆり「……え…」
ダル「……そんな…」
紅莉栖〈2091回目〉「……」
岡部〈15498回目〉「……す…すっ…」プルプル
岡部「鈴羽ああああああああああああああああああああああ!!!!!」
おわり
投げやり感はあるけど面白かったった
なかなか新鮮でおもしろかった
続き→紅莉栖「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」 前編
Entry ⇒ 2012.06.21 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
岡部「ラボメンガールズに六股がばれた……」
まゆり「……」
フェイリス「……」
ルカ子「……」
萌郁「……」
鈴羽「……」
岡部「……」
紅莉栖「こんな時に厨二秒で逃げるなんてどんな神経してるの?一度開頭して見てみたいものね」
岡部「………」
まゆり「オカリン、まゆしぃはね。別にオカリンが紅莉栖ちゃんたちと仲良くしてたって怒らないよ?」
岡部「まゆり……」
まゆり「だって、まゆしぃはオカリンの人質からお嫁さんにクラスチェンジしたから、そんな事で怒らないのです」
紅莉栖「はっ!?な、何言ってるのまゆり!岡部は私とアメリカで一緒に暮らすって約束したのよ!?」
まゆり「でも紅莉栖ちゃん、オカリンの事、怒ってるんでしょ?仲良くできない人と一緒に暮らすのは無理じゃないかなあ」
紅莉栖「許すもん!怒ってるけど、岡部とは将来を誓ったんだから!私が一番好きだって、キスさてくれたら許すわよ!」
岡部「あ、いや、その……」
フェイリス「止めるニャ、クーニャン。凶真が嫌がってるニャン」
紅莉栖「邪魔しないでフェイリスさん!それに岡部が私とのキスを嫌がる?デタラメ言わないで!」
フェイリス「嘘じゃないニャン。凶真が求めているのはクーニャンのキスじゃない」
ちゅっ
岡部「んむっ!?」
まゆり「……っ!」
紅莉栖「なっ」
ルカ子「ぼ、僕の岡部さんが……」
萌郁「……」ギリッ
鈴羽「抜け駆けなんて……!」
留未穂「岡部さんが求めて私のく、ち、び、る……そうでしょ?岡部さん」
フェイリス「メイクイーンはちゃんと公私を分けてるお店だニャン。それに、凶真と付き合ってるのはフェイリスじゃなくて……」スッ
留未穂「秋葉留未穂、私だよ?クーニャン」
紅莉栖「ぐぬぬっ、そんなのただの言い訳よっ!」
留未穂「クーニャンやマユシィには悪いと思ってる。でも、岡部さんはもう私と共に秋葉を継いで幸せになるの。だからごめんね、みんな。岡部さんの事は諦めて」
まゆり「フェリスちゃん。さっきも言ったけどまゆしぃはオカリンのお嫁さんなんだよ?オカリンの隣にフェリスちゃんはいないのです」
紅莉栖「岡部が住むのは秋葉原じゃない!私と一緒にアメリカに住むの!」
ルカ子「み、みなさん、いい加減にして下さい!お、岡部さんが困ってます」
岡部「ルカ子……」
岡部「うっ……」
まゆり「違うよ紅莉栖ちゃん。オカリンの本命はまゆしぃだから六股じゃないのです」
岡部「そ、それは」
フェイリス「マユシィも違うニャン。凶真はフェイリスの婿だニャン」
岡部「だ、だからそれは、その……」
岡部(そ、そもそもなんでこんな事になった……?)
岡部(俺はただ、ラボメン達と仲を深めただけの筈なのに……)
岡部「なあ、ダル。バイト戦士と助手の仲を見てお前はどう思う?」
ダル「えっ?そりゃ理系女子と体育系女子の濡れ濡れな百合を」
岡部「自重しろHENTAI!そうではない!あいつら、妙に仲が悪いと思わないか?」
ダル「う~ん、まあ、確かに。なんか阿万音氏の方が牧瀬氏を一方的に敵視してる感じだお」
岡部「これは由々しき事態だ!ラボメン同士で不仲の者が居るとガジェット開発に悪影響を与える可能性がある」
ダル「最近入ったばかりだから仕方ないんじゃね?桐生氏もまだラボに馴染めていないみいだし」
岡部「うむ、ここは一つ、ラボメンのリーダーたる俺が一肌脱ぐしかないようだな。この鳳凰院凶真がラボメン同士の不仲を解消してやろうではないか!フゥーハハハ!」
岡部(だから俺は直接ラボメン一人一人に話しかけてラボ内の不満などを聴き回った。確か最初は紅莉栖だったな)
――――
――
紅莉栖「っで、話って?二人きりで話したいなんて言い出すんだから大事な話なんでしょうけど……」
紅莉栖(お、岡部が私と二人きりで話!?ま、まさかこ、告白とかじゃ……)
岡部「うむ、お前に少し尋ねたい事があってな。ラボの事についてなのだが」
紅莉栖「はあ……」
岡部「何故ため息を吐いた」
紅莉栖「ううん、何でもない。少しでも期待した自分に呆れただけ。続けて」
岡部「……? まあいい、続けるぞ。お前がここにラボメンになってまだ日は浅いが……最近、ラボ内で不満などはないか?紅莉栖」
紅莉栖「……ふぇ?」
岡部「どうかしたか?」
紅莉栖「い、いま、あんた私のこと、な、名前で呼ばなかった?」
岡部「それがどうした。不満か?」
紅莉栖「ち、違うけど!その、調子狂うって言うか、なんというか」
岡部「ならこれからも助手と呼ぶ。さて、本題に入るが……」
紅莉栖「ま、待て!」
岡部「なんだ?」
紅莉栖「……でいい」
岡部「なに?」
紅莉栖「紅莉栖でいい……紅莉栖って呼んで。お願い」
岡部「あ、ああ。了解した……」
岡部(……ふ、不覚!この鳳凰院凶真が一瞬とはいえ助手風情にときめいただと!?)
紅莉栖「紅莉栖って呼ばれた……」ポー
岡部「おい、聞いているか?」
紅莉栖「ふぇ!?う、うん、大丈夫、聞いてるわよ」
岡部「ならいいが……」
紅莉栖「不満か……強いて言うならどっかの誰かさんが私にしょっちゅう、ちょっかい掛けてくる事かな」
岡部「バイト戦士か?」
紅莉栖「あんたよ馬鹿!」
岡部「お、俺!?」
岡部「……」
紅莉栖「それに前だって私のプリン勝手に食べたし……」
岡部「……」
紅莉栖「それに」
岡部「わかった」
紅莉栖「えっ?」
岡部「これからはなるべくお前との会話を控える。お前の買ったプリンも食べなし、お前の物には干渉しない。これで実験に専念できるか?」
岡部(まさか原因が俺だったとは……これでラボ内の不仲を解消できればいいのだが)
紅莉栖「……ばか」
岡部「は?」
紅莉栖「ばかばかばかばかばか岡部!あんたってホントばか!」
紅莉栖「なんでそうなるのよ!なんで私に干渉しなくなるのよ!」
岡部「いや、お前が不満だと言ったから」
紅莉栖「私が不満なのは私の扱いについてよ!まゆりほど大切にしろとは言わないけど、もっと、その……大切にして欲しいというか」
岡部「馬鹿はお前だ、助手」
紅莉栖「な、なにっ!?それにいま呼び方が戻ってた!」
岡部「大切に扱ってほしい?馬鹿を言うな、お前は既に俺の大切なラボメンだ」
紅莉栖「!?」
岡部「俺はラボメンの為なら何でもするつもりだ。これでも不満か……?」
紅莉栖「えっ?あ、と、ううん……不満じゃ、ない……」
岡部「なんだ?まだ不満があるのか?」
紅莉栖「不満とかじゃないんだけど、えっと、その……わ、私って来月にはアメリカに帰るじゃない」
岡部「……ああ」
紅莉栖「私がアメリカに帰った後も、岡部は私の事、覚えていてくれる……?」
岡部「……どうやらお前は勘違いしているようだから言っておく」
紅莉栖「か、勘違い?」
岡部「お前がアメリカに帰ろうとも、お前がラボメンであるのに変わりはない。ラボメンナンバー004はずっと牧瀬紅莉栖のものだ。」
紅莉栖「……っ」
岡部「だからいつでも帰ってくるがいい。ラボはお前の居場所なのだからな」
紅莉栖「岡部……」
紅莉栖「べ、別にそこまでしなくても」
岡部「言った筈だ。ラボメンの為ならなんでもすると。何ならかまってちゃんのお前のために俺が向こうに住んでお前を未来ガジェット研究所アメリカ支部の助手として雇ってやってもいいのだぞ?クリスティーナよ」
紅莉栖「あ、アメリカで一緒に住む!?」
岡部「なっ、誰も一緒にとは言っとらんだろーが!それに今のは例えだ、あまり本気にするな」
紅莉栖「岡部が、私と一緒に……」
岡部「っで、他に不満は何かあるか?」
紅莉栖「不満?ある訳ないじゃない。いま、最高に幸せよっ……ふふ」
岡部「うむ、ではこれからもガジェットの開発に励むがいい」
岡部(紅莉栖は俺に不満があったみたいだが……どうやら解消されたみたいだな)
――
岡部「……あれ?」
岡部(おかしい……いま思い返してみると俺、別に紅莉栖とアメリカに一緒に住む約束などしていないのでは……)
岡部(あれはあくまで例えであり、冗談のようなものだった筈だが)
岡部「ふむ……」
岡部(嫌な予感がする……まさか他の連中も)
岡部(とりあえず、次はまゆりの時の会話を思い返してみるか)
――
まゆり「トゥットゥルー♪オカリン、お話ってなあに?」
岡部「いや、あまり大した事じゃないんだがな」
岡部(まゆりがラボに不満を抱いているとは思えないが、一応聞いておくか)
岡部「最近ラボメンが一気に増えただろ?」
まゆり「うんっ、紅莉栖ちゃんに萌郁さん、ルカくんとフイリスちゃん、スズさんも!」
岡部「ああ、その影響で我がラボ内の環境が大きく変わった。その事でなにか不満なんな事はないか?」
まゆり「不満なこと~?う~ん、まゆしぃはラボが賑やかになって嬉しいかなあ」
岡部「そうか、ならいい」
岡部(やはり、まゆりならこう答えるな。昔から変わらないな、こいつは)
まゆり「あっ、でも一つだけ……」
岡部「な、なに!?」
岡部(あのまゆりが不満に思う事があるのが!?)
岡部「な、なんだ!あるのか!?誰が原因だ?ダルか?ダルのセクハラ発言か?それともイカ臭いゴミ箱か!?」
まゆり「ダルくんじゃないよ~」
岡部「じゃ、じゃあ何が不満なんだ?」
まゆり「う~ん、でもこれ、まゆしぃのワガママなんだけどね」
岡部「なんだ?」
まゆり「最近、オカリンと二人きりの時間が減ったなあって」
岡部「えっ?」
岡部「あの時はまだダルもいなかったな」
まゆり「……二人でずっと喋らないままラボに居た日もあったね」
岡部「……俺は別に嫌ではなかった」
まゆり「うん、まゆしぃも。オカリンと一緒に居る時間がゆっくり流れてるみたいで、心地よかったなあ」
岡部「……ああ、心地よかった」
まゆり「そういう時間、最近はなかったなあって思って」
岡部「まゆり……」
まゆり「昔みたいにオカリンと二人きりで居れる時間が減っていくのは寂しいのです」
岡部「……まったく、馬鹿だな。まゆりは」
ぎゃっ
まゆり「ふぇ?」
岡部「……確かにラボメンが増えた事により、二人きりになる機会は減った」
まゆり「………」
岡部「だがな、まゆり。二人きりの時間が減っのなら、どこかで埋め合わせればいい。俺たちはこれからもずっと一緒なのだから、それくらい、いくらでもできる」
まゆり「ずっと、一緒……?」
岡部「無論だ。お前はあの日からずっと俺の人質なんだ。大切な、掛け替えのない人質だ。勝手にどこかへ行ったら許さんからな」
まゆり「オカリンっ……」
ぎゅっー
岡部「なっ、お、おい……」
まゆり「オカリン、ずっと、ずっと一緒だよ?」
岡部「何度も言わせるな。分かっている」ナデナデ
まゆり「えへへっ、オカリン、あったかいのです」
岡部「こうやって抱き締めるのは、久しぶりだな……」
まゆり「うんっ」
岡部「……たまには、悪くないかもな」
岡部「あれ?」
まゆり「……お、お嫁さんだよ」
岡部「なっ!」
まゆり「まゆしぃはオカリンとちゅーした事もあるし、本当にお嫁さんみたいだねっ」
岡部「ば、ばか!あれはただのイタズラと言うか、何というか……」
まゆり「えっ…イタズラでまゆしぃとちゅーしたの?」
岡部「あ、いや、ち、違う!……あれは、その、んむっ!?」
ちゅっ
まゆり「んっ、えへへ。イタズラのお返しなのです」
岡部「なっ……」
まゆり「ええー?でも、まゆしぃにちゅーしたのもイタズラだったんだよね」
岡部「が、ガキの時のキスと今の俺たちでやるキスを一緒にするでない!」
まゆり「えへへ」
岡部「ったく、今の俺たちでやると本当に夫婦のようではないか」
まゆり「ふぇ?」
岡部「あ、いや、今のは単なる例えだ」
まゆり「ふうふ……オカリンと?まゆしぃはオカリンのお嫁さんになるって事だよね……えへへ」
岡部「ま、まゆり?と、とりあえず、もう不満はないのだな?」
まゆり「うんっ、まゆしぃは大満足なのです」
岡部「よ、よし、では話は以上だ!さらば!」バッ
岡部(い、いかん!まゆりとのキスで心臓がうるさい!こ、これ以上まゆりの顔を見てたら俺は、まゆりを……!)
――
岡部「あっるぇー?」
岡部(た、確かにまゆりとは抱きしめてキスをしたが嫁にするとは……)
岡部(いやいやいや!何を言っている!?)
岡部(年頃の少女にハグしたうえにキスだぞ!?そこまでしたのなら責任をとって嫁にすべきなのか!?)
岡部(お、お、落ち着け、れれ冷静になれ……)
岡部(ま、まゆりの件はいったん置いておこう。とりあえず、次だ。次は確かバイト戦士だったな)
――
鈴羽「うぃーっす、お邪魔するよー」
岡部「うむ、来たかバイト戦士よ」
鈴羽「二人きりで話がしたいって言ったけど、話ってなに?」ゴクリ
岡部「そう緊張するな。ラボに関する簡単な質問だ」
鈴羽「へっ?なーんだ、そんな事か。あたしはてっきり真面目な話だと思ったよ」
岡部「一応、真面目な話なのだが……まあいい、単刀直入に聞くが、バイト戦士」
鈴羽「なーに?」
岡部「お前、ラボに関して不満などはあるか?」
鈴羽「不満かー、う~ん。ないよっ」
岡部「はあっ?」
鈴羽「何でそんな期待外れでした、みたいな顔すんのさ。不満があった方が良かったの?」
岡部「いや、そういう訳ではないのだが……」
岡部(ふむ、ここはストレートに聞いてみるか……)
岡部「お前は紅莉栖に対して不満を抱いてそうだと思ったのだが……」
岡部「随分と仲が悪いようだから、その事に関して不満ではないのか?」
鈴羽「確かにあたしは牧瀬紅莉栖は嫌いだけど、それはあたし個人の感情だからね。ラボに関しては全く不満はないよ?」
岡部「むっ、そうか……しかし、お前が何故紅莉栖を嫌いかは知らないが、仲良くはできないのか?」
鈴羽「それはちょっと難しいかも……ごめん、もしかしてあたしのせいでラボの空気悪くしてた?」
岡部「いや、気にするな。誰にだって苦手な人物はいる。別に無理して仲良くしてくれとは言わん」
鈴羽「あはは……でもその件でこの前も椎名まゆりに心配掛けちゃったしね。やっぱり、あたしをラボメンに入れなかった方が」
岡部「そんな事はない」
岡部「お前はこの俺が選んだラボメンなのだ。不要な訳がない」
鈴羽「でも、あたし……君たちと会ってまだ日が浅いんだよ?このじだ、……この街の事も詳しくないし」
岡部「それなら紅莉栖や指圧師も同じだ」
鈴羽「でも……」
岡部「ええい!らしくないぞバイト戦士よ!」
鈴羽「……」
岡部「過ごした時間の多さなど関係ない。見知らぬ土地から来たとしても関係ない……お前はラボメンなのだ。俺の大切な仲間だ」
鈴羽「岡部倫太郎……」
岡部「ふんっ、馬鹿を言うな。俺は狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真だ!決していい奴などではない!覚えておけ」
鈴羽「はいはいっ、分かってるって」
岡部「ぐぬぬ、馬鹿にしおって」
鈴羽「ねえ、岡部倫太郎」
岡部「なんだ?」
鈴羽「君はさっき、過ごした時間なんて関係ないって言ったよね」
岡部「……ああ」
岡部「父親を探しているのだろ?」
鈴羽「うん……殆どあった事のないけどね」
鈴羽「あたしさ、不安だったんだ。父親とはいえ殆ど会った事のない人に会うために、大事な用事をほっぽりだして寄り道してていいのかなって」
岡部「大事な用事?」
鈴羽「……あっ、いけね」
岡部「話してはまずい事だったか?別に追求するつもりはないが」
鈴羽「……ありがと」
岡部「ああ」
鈴羽「一緒に過ごした時間が少ない父親だからさ。父親探し、諦めるつもりだったんだけど……」
岡部「前に言った筈だ。協力すると」
鈴羽「うん。君のその言葉であたしはもう一度父さんを探す気になれた」
鈴羽「それにさっきの気付いた。過ごした時間は少なくても、父さんは父さんだって」
岡部「当然だ、俺はラボメンのリーダーだからな!フゥーハハハ!」
岡部「だからこれからも頼るがいい。ラボメンナンバー008、阿万音鈴羽よ。お前はラボメンなのだ遠慮はいらん」
鈴羽「……本当に、君に会えて良かった」
岡部(……鈴羽は特に不満はなかったようだが、うむ、取りあえずはこれでよし、か)
鈴羽「ね、ねえ。岡部倫太郎」
岡部「なんだ?」
鈴羽「全部、もし全部終わったら、今度この街を案内して貰っていい?」
岡部「全部、が何を指すか知らんがいいだろう!秋葉原と言わず、お前が満足するまでずっと付き合ってやろう」
鈴羽「ず、ずっと!?」
岡部「あ、ああ」
岡部(食いつく所、そこか?)
鈴羽「本当に?」
岡部「無論だ。例えその全部が終わるのが何年先でも、その時はとことん付き合う」
鈴羽「やった!」
――
岡部(うむ、鈴羽は普通だったな)
岡部(普通だった筈だ……なのになんで)
鈴羽「ふふっ、全部解決して岡部倫太郎に会えるのは26年後か~まっ、その時代の頃には、これくらいの年の差結婚も普通だよね」
岡部(まるで意味がわからんぞ。あいつは何を言っているのだ……)
岡部(と、とりあえず次に行くか。次はフェイリスだったな)
岡部(確かあいつは……)
――
フェイリス「ニャニャ、凶真がフェイリスを呼び出すなんて珍しいニャン」
岡部「悪いな、忙しい中わざわざ来て貰って。少し聞きたい事があるのだが」
フェイリス「いないニャン!」
岡部「……はぁ?」
フェイリス「だから、フェイリスには今付き合ってる男性はいないニャン!凶真、チャンスだニャン!」
岡部「………そんなどうでもいい事は尋ねていない」
フェイリス「ニャ~どうでもいいって酷いニャン」
岡部「フェイリス、お前はラボで不満を感じる事はあるか?」
フェイリス「ニャあ?不満かニャ?」
フェイリス「ニャるほど、そういう事かニャ」
岡部「お前に限って不満などないと思うが、一応聞いておく」
フェイリス「不満ならあるニャン」
岡部「なに?言ってみろ。出来るだけ改善はするつもりだ」
フェイリス「凶真のフェイリスに対するツン度がやや高めだニャン」
岡部「……は?」
フェイリス「もっとフェイリスにデレてほしいニャン!」
岡部「……ダメだこいつ。早くなんとかしないと」
岡部「前にも言ったが俺はウソで塗り固めた女に興味はない。残念だったな」
フェイリス「うニャ~マユシィとの格差が酷いニャ~」
岡部「……助手も同じ事を言っていたが、そんなにも違うか?お前やクリスティーナへの接し方とまゆりへの接し方」
フェイリス「凶真はマユシィにデレデレだニャン!ツン:デレ比率が9:1だニャン、ツンデレ失格ニャン!」
岡部「誰がツンデレだ!ったく……」
岡部(しかし、フェイリスたちの言っている事にも一理あるな……)
岡部(ここは一度、接し方も考え直さねばな)
岡部「……了解した」
フェイリス「ふにゃ?」
岡部「お前が言うなら接し方を変えてみようと思う。どうだ?留未穂」
フェイリス「ええっ!?」
岡部「接し方を変えろと言ったのはお前だ。それに今はメイクイーンのメイドじゃないだろ」
フェイリス「フェイリスはオフの日でもフェイリスだニャン」
岡部「俺はまゆりを名前以外ではな呼ばん。まゆりと同じような扱いという事は、呼び名も名前で呼ぶという事だ
フェイリス「ニャニャ……」
岡部「フッ、まあそれがどうしても嫌なら今まで通り接してやってもいいがな!フゥーハハハ!」
岡部「条件?なんだ」
フェイリス「真名で呼ぶのは凶真と二人きりの時にしてほしいニャ」
岡部「さすがにメイクイーンでお前を本名で呼ぶつもりはないが」
フェイリス「それともう一つ」スッ
岡部「……? なぜネコミミを外す」
留未穂「留未穂って呼ぶのはネコミミを付けてない時に、ね?」
岡部「あ、ああ」
岡部(フェイリスなりの公私の区別の付け方なのだかろうか)
留未穂「ふふっ、女の子はみんな裏と表があるんだよ?」
岡部「まゆりに裏表があるとは思えんがな」
留未穂「そうだね。マユシィには裏表がないかも。だから私の大切な友達なんだけどね」
岡部「まゆりとは仲良くしているか?」
留未穂「もちろんだよ。マユシィはとってもいい子だし、それに私の本名を知ってる数少ない友達だし」
岡部「数少ない、か。留未穂、七人も仲間がいてまだ不満か?」
留未穂「えっ?」
留未穂「凶真……」
岡部「確かに萌郁や紅莉栖、鈴羽はまだお前とちゃんと顔を合わした回数も少ないだろうが、あいつらみんな良い奴らだ。まゆりに劣らず、お前の友になってくれるさ。俺が保証する」
留未穂「……」
岡部「……お前は、もう少し俺たちを頼っていい。フェイリスという仮面で俺たちと距離を置こうとするな」
留未穂「……でも、私はみんなの前ではフェイリスでいたい」
岡部「なら、俺の前だけでもフェイリスの仮面を脱げばいい。ずっと演じ続ける事が難しいのは、俺も知っている」
留未穂「……いいの?」
岡部「無論だ」
岡部「別に意識して接し方を変えているつもりはないのだがな」
留未穂「そっか。いいなあ、マユシィ。ちょっと嫉妬しちゃうかも」
岡部「何を言ってる。留未穂に対してはこれからもこういう風に接するつもりだが」
留未穂「えっ?」
岡部「お前が仮面を脱ぐのなら、俺もまた仮面を脱ごう。秋葉留未穂には鳳凰院凶真ではなく、岡部倫太郎として接するつもりだ。不満か?」
留未穂「えっ?、ううん、不満じゃないよ、で、でも……」
岡部「なんだ……?」
岡部「……お前に名字呼びされると何だか違和感があるな、っで、なにがだ?」
留未穂「あ、秋葉留未穂と岡部倫太郎として付き合うって、こと」
岡部(付き合う? 接する、という意味か)
留未穂「秋葉と付き合うって事は、凶真にも色々と覚悟が必要だよ。それでもいいの?」
岡部「そんなものは関係ない。俺はお前と、岡部倫太郎として向き合うつもりだ」
岡部(というか、何故留未穂と接するのに覚悟が必要になるのだ)
留未穂「そ、そっか。うん、分かったよ。凶真がそう言うなら……わ、私も凶真の気持ちは嬉しいから」
岡部「名前で呼ばれるのはさらに違和感がある……」
留未穂「これからも、ずっと二人でこの街に……ふふっ」
岡部(まあ、当分はこの土地を離れるつもりはないが……ずっと、二人で?)
留未穂「えいっ」
ぎゅっ
岡部「なっ、お、おいっ!留未穂!いきなりなにを」
スチャ
フェイリス「残念でしたニャン!いまはフェイリスだニャン!」ムギュー
岡部「こ、こら!離れろ!」ブンブン
フェイリス「断るニャーン」ギュー
岡部「ぐぬぬ、ネコ娘め!」
フェイリス「あははっ、フェイリスも凶真とずっと一緒だニャン♪」
岡部(……まあ、これでこいつも他のラボメンと距離を置くことなく接する事ができるだろう。抱き付くのは、今日くらいいいか)
――
岡部「ふむん……」
留未穂「ふふっ、大好きっ倫太郎さん」ムギュー
岡部(……あれれー?もしかしてあの時の付き合うってそういう意味だったんじゃ)
フェイリス「凶真っ、凶真っ」ペロペロ
岡部「み、耳はやめろっ」
フェイリス「にゃふふっ」
岡部(ま、まずい、では俺は秋葉を継ぐのか?フェイリスいや、留未穂と一緒に!?)
岡部(お、おおお落ち着け、とりあえずルカ子と萌郁の状況も思い出そう。こ、これは決して現実逃避ではないからな!)
岡部(た、たしかルカ子は……)
――
ルカ子「あっ、岡部、じゃなかった、凶真さんこんにちは」
岡部「ああ、ルカ子よ。よく来てくれた」
ルカ子「あの、大事なお話って何ですか?」
岡部「ラボの事についてだ」
ルカ子「ラボの事?」
岡部「うむ、ルカ子よ。最近ラボで不満などはあるか?」
ルカ子「不満、ですか?」
岡部「遠慮はいらん。言ってくれ」
岡部「ふむ、そうか……」
岡部(ここまで聞く限りでは、みんなあまりラボに不満を持っている訳ではないのか)
岡部「ではお前個人に悩み事はあるか?」
ルカ子「えっ?ぼ、僕ですか?」
岡部「そうだ。ラボメン抱える悩みは俺の悩みだ。あるなら言ってみろ。すぐさま解決してみせる」
ルカ子「えっと、その、僕、は……」モジモジ
岡部(悩みはあるみたいだが、中々話せないのか……? 恥ずかしい話題なのか、顔も赤い……んっ?これはもしや……)
岡部「フゥーハハハ!るぅか子よ。悩みを言えないのならお前の師である俺が当ててやろう!ズバリ!恋煩いだな!」
ルカ子「ふぇ!?な、なんで」
ルカ子「ええっ、そんなあ」ペタペアフキフキ
岡部「……冗句だ。お前の様子を見れはそれくらい分かる。俺はお前の師だからな」
ルカ子「そ、そうですか」
岡部「それで?」
ルカ子「ふぇ?」
岡部「相手はどんな奴だ?」
ルカ子「ええっ!?」
岡部「ほう、言えない、という事はその意中の相手は俺の知っている奴か?」
ルカ子「はひっ!?な、なんで……」
岡部(うむ、実に分かりやすい奴だ。しかしルカ子が恋煩いとはな。相手は誰だ?順当に考えると同じ学校に通うまゆりか……)
岡部(……ん?)
岡部「る、ルカ子よ、一つ聞くが……」
ルカ子「な、なんですか?」
岡部「お前は、男、だよな……」
ルカ子「えっ?」
岡部(な、泣いた!?し、しまった……この世界線のルカ子は女か!?)
岡部「えっ?あ、いや、違うぞ?その、お前の意中の相手は『おとこ』かと聞いたのだ」
ルカ子「は、はい……男の方です」
岡部「違う!性別を聞いたのではない!その意中の相手は『漢』なのかと聞いたのだ!」
ルカ子「へっ?」
岡部(くっ、誤魔化すにしても、少し無理やりすぎたか?)
岡部「男だとか女だとか、そんな事はどうでもいい!初めてお前に会って言った俺の言葉、覚えているか?」
ルカ子「は、はいっ」
ルカ子「中身、ですか?」
岡部「そうだ。ルカ子よ、その意中の相手の中身をちゃんと見た上で惚れたのか?」
ルカ子「えっ?」
岡部「見た目で人を選ぶなとは言わん。だがな、ルカ子よ。そいつの事をちゃんと知り、理解した上で好きだと言えなければダメだと俺は思う」
ルカ子「そっ、その人は……み、見た目もかっこよくて、中身も素敵な方です」チラチラ
岡部「な、なるほど、……完璧だな」
岡部(見た目がよくて、中身もいいか……まあ、ルカ子が上辺だけで人を好きにるとは思えないしな)
ルカ子「えっ?」
岡部「思いを伝えたのかと聞いたのだ。好きなのだろう?そいつの事」
ルカ子「こ、告白なんて無理ですっ、そ、そんな僕なんかが」
ペシ
ルカ子「あぅっ」
岡部「お前の悪いくせだ。すぐ自分なんか、と言って卑屈になる。もっと自信を持て」
ルカ子「岡部さんでも……」
岡部「それに何故そこまで弱気になる?お前に告白されて断る男なんて殆どいないぞ?」
ルカ子「ふぇ?」
どっちがいい?
岡部(あっ、て、手を……)
岡部「む、無論だ。美人で性格もよく、料理もできる。今時珍しい大和撫子だ。普通、告白を断る男などおらん」
岡部(ルカ子を虜にするとは……羨ましい奴だな)
ルカ子「で、でも……その方の周りには魅力的な女性がたくさんいて、僕なんかを選んでくれるかどうか」
岡部「なっ、に……!」
岡部(けしからん!実にけしからん!ルカ子に惚れられた上でさらに周りに女がいるだと!?エロゲの主人公か、そいつは!)
ルカ子「ま、まだ誰とも付き合ってないと思います……たぶん」チラチラ
岡部「ふむ、ではまだチャンスはある筈だ。その男の周りにいる女はどんな奴がいる?」
ルカ子「へっ?えっと……まゆ、あ、えっと幼馴染みのかわいい女の子と、まき、じゃない、科学者をしてる綺麗な人と……あと」
岡部(幼馴染みに科学者……? どこかで見た組み合わせだな)
ルカ子「かわいいメイドさんと、元気な女の方と、寡黙な大人の女性がいます……」
岡部「………」
岡部(えっ、あれ?なにこれデジャヴュ?)
ルカ子「は、はいっ」
岡部「お、お前のその意中の相手は……俺の身近にいたりするのか?」
ルカ子「……っ!」
ルカ子「……はい」
岡部「そ、そうか」
ルカ子「……」
岡部「すまない、ルカ子」
ルカ子「えっ」ジワッ
岡部「今まで気付いてやれなくて……」
ギュッ
ルカ子「ふぇ?」
ルカ子「へっ?」
岡部「確かに見た目より中身が重要だと言った!だが!ダルは中身がHENTAIだ!確かに良い奴ではある!だが、HENTAIだ!」
ルカ子「……違います」
岡部「えっ?違うのか?」
ルカ子「ぼ、僕が好きなのは岡部さんですっ!」
岡部「はっ?」
ルカ子「あっ……」
ルカ子「はぅ」
ルカ子「は、はいっ!」
岡部「そ、そうか……本気か」
ルカ子「お、岡部さんは、僕のこと、どう思ってますか?」
岡部「お、俺か!?俺は、その……」
岡部(ま、まさかルカ子から告白されるとは……! これも機関の仕業か!)アセアセ
ルカ子「岡部さんっ……」ウルウル
岡部「お、俺は……」
岡部(ど、どうする!?だいたいルカ子は男じゃ……あれ?男じゃない?問題ない、のか?)
ギュッ
ルカ子「ふぇ、あっ……」
岡部「急の告白だから、その……今すぐには返事はできない」
ルカ子「……そう、ですよね。迷惑、でしたよね」
岡部「違う!迷惑などではない!俺は、お前の想いに対して真剣に向き合うつもりだ!だから、その為に考える時間をくれ」
ルカ子「は、はいっ!」
ルカ子(真剣に向き合うってことは、お付き合いしてもいい、って事なのかな……?)
岡部(と、とりあえず考える時間が必要だ。こ、こんな事今すぐ答えられる訳がないだろ!)
岡部「その、だな……俺がどんな返事を出そうとも、お前は俺の側にいてくれるか?」
岡部(弟子として、そしてラボメンとして)
ルカ子「も、もちろんですっ」
ルカ子(本妻がダメなら……妾でも)
――
岡部「……Oh」
岡部(そ、そういえばあれきり、まだ返事を返していなかった……だ、だが!まだ一週間だ!大事な事だ。あと三日くらい考えてから返事を)
ルカ子「岡部さんの側にいられるなら、僕……それだけで幸せです」
岡部(い、いかん!何を言っているのだ俺はああああ!逃げるな!今日だ、今日必ずルカ子に返事を返す!)キリッ
岡部「……」
岡部(そ、その前に指圧師の事も思い返しておくか、フゥーハハハ……)
――
萌郁「……」カチカチカチ
岡部「来たか、指圧師よ。先に言っておくが、ケータイは見ないぞ?口で話せ」
萌郁「……」ションボリ
岡部「全く……それで、今日お前に来て貰った理由なんだが、少し聞きたい事があってな」
萌郁「……?」
岡部「最近、と言ってもお前はラボに加入したばかりだが……ラボで不満などはないか?」
萌郁「……不満?」
岡部「ああ、何か不満に感じる事はあるか?」
岡部「俺が?」
岡部(また俺に関する事か……ラボメン全員、ラボよりも俺に不満を抱いてないか?)
萌郁「メール、見てくれない……」
岡部「今言っただろうが!口で話せ!口で!」
萌郁「ごめん、なさい……喋るの、苦手だから……」
岡部「……お前はいつまでもメールに頼ったままでいるつもりだ? このままではダメな事くらい、分かるだろ」
萌郁「………」
萌郁「家族、は……いない……」
岡部「……すまない。余計な事を聞いたな」
萌郁「別に、いい……」
岡部「……」
萌郁「……」
岡部「しあつ、……萌郁」
萌郁「……!」
岡部「喋るのが苦手と言ったな」
萌郁「……」コクリ
岡部「苦手なものは努力で克服できる。だが、逃げていてはいつまでも苦手なままだ」
岡部「ラボメンは、他人ではないだろ?」
萌郁「……っ」
岡部「まゆりやダル。助手やフェイリス、ルカ子でも、誰だっていい。一度メールを使わずに会話をしてみたらどうだ?」
萌郁「……みんなと、会話……でも、話掛けるなんて、」
岡部「なら俺が付き合ってやろう」
萌郁「……えっ?」
岡部「ラボメンが抱える問題は全て俺が何とかする」
萌郁「でも」
岡部「最初は俺のほうから話しかけて、その返事を返すだけでいい。まだその方が楽だろ?」
岡部「なんだ?」
萌郁「……どう、して……そんなに、して、くれるの?」
岡部「言った筈だ。お前がラボメンだからだ」
萌郁「まだ、会ったばかり……なのに」
岡部「関係ない!ラボメンはラボメンだ。俺の、大切な仲間だ」
萌郁「なか、ま……」
岡部「そうだ。だからお前も遠慮する事なくいつでもラボに来るがいい。ラボは既にお前の居場所なのだから」
萌郁「居、場所……わ、わたし、の?」
岡部「も、萌郁!な、何故泣く!さっき言った中に不快な言葉があったか!?」
萌郁「ちが、う……違う、の……岡部、くん」グスッ
岡部「萌郁……?」
萌郁「私の、居場所……あったんだって、嬉しくて、それで……」グスッ
岡部「………」
ギュッ
萌郁「あっ……」
岡部「か、勘違いするなよ。今誰かが入ってきたら俺がお前を泣かしたように思われるからな!こうしておけば、泣き顔は誰にも見られないだろう」
萌郁「岡部、くん……」ムギュ
岡部「だから、今は思い切り泣くがいい、萌郁……」
萌郁「うん、ごめん、なさい……白衣、汚しちゃって」
岡部「気にするな」
萌郁「でも……」
岡部「気にするなと言った。泣きたい時に泣くのは一番だ」
萌郁「……ありがとう、岡部くん」
岡部「礼などいらん、ラボメンのリーダーとして当然の事をしたまでだ。だからこれからも頼ってくれていい」ナデナデ
萌郁「んっ……」
岡部「っ、す、すまない!……過ぎた真似をしすぎたな」バッ
岡部(昔はこうやってまゆりを抱き締めて頭を撫でる事があったが、その癖が残っていたか……)
萌郁「……っと」
岡部「……えっ?」
萌郁「岡部、くん、もっと……」
岡部「なっ!で、できるか!そんな恥ずかしい事、またやれなど」
萌郁「……だめ?」
萌郁「んっ……」
岡部「……なあ、そろそろ」ナデナデ
萌郁「もっと……」
岡部「しかしだなあ……」ナデナデ
萌郁「……だめ?」
岡部「くっ、し、仕方ない。これもラボメンの頼みだからな。これで最後だぞ?」ナデナデ
萌郁「うん……」
岡部(これではどっちが年上か分からないな……)
萌郁「岡部、くん……」
岡部「どうした?」
萌郁「私の、居場所……ずっとここに居て、いいの?」ムギュゥ
岡部(ここ、とはラボの事か)
岡部「もちろんだ。ここは、これからもずっとお前の居場所だ。俺が保証する」
萌郁「……岡部、くんが、私の、居場所……これからも、ずっと……」
――
岡部「……うむ」
萌郁「岡部くんは私の居場所、岡部くんはずっと一緒に居てくれる、岡部くんのためならなんだってする、岡部くん、岡部くん、岡部くん、岡部くん、岡部くん、岡部くん、岡部くん、岡部くん、岡部くん……」
岡部(ま、まさか……萌郁の言っていた『ここ』というのはラボではなく、俺を差す言葉だったのか?)
萌郁「岡部くんにまたナデナデしてほしい、抱き締めてほしい、私を抱いて、岡部くん岡部くん岡部くん岡部くん岡部くん岡部くん岡部くん」
岡部「……」
岡部(お、俺はそれに対して何と答えた? たしか、ずっとここがお前の居場所とか言ったような……)
岡部「……」
病んでらっしゃる
まゆり「オカリン……」
鈴羽「岡部倫太郎……」
フェイリス「凶真……」
ルカ子「岡部さん……」
萌郁「岡部くん岡部くん岡部くん岡部くん岡部くん岡部くん岡部くん岡部くん岡部くん岡部くん……」
岡部「お、俺はどうすれば……」
ダル「全員と付き合ったらよくね?」
岡部「!?」
紅莉栖「橋田いたの?」
ダル「いたお」
まゆり「ダルくんいたんだ」
ダル「最初からいたお!」
フェイリス「ダルニャンいたんだ」
ダル「フェイリスたんまで……」
ルカ子「いたんですか、橋田さん」
ダル「だ、だから最初から開発室に」
萌郁「気付かな、かった……」
ダル「……」
鈴羽「へーいたんだ、橋田至」
ダル「なんか、阿万音氏に言われるのが一番ショック……なんでだろ」
火 ルカ子
水 鈴羽
木 もえいく
金 フェイリス
土 まゆり
日 全員
お前…
天才じゃね?
岡部「だ、誰にも手を出しとらんわ!」
岡部(……あれ?ちょっと待て)
岡部(俺は確かに紅莉栖にアメリカに住んでもいいと言った。また、冗談みたいなものであるが……だが付き合ってはいない)
岡部(鈴羽やフェイリス、萌郁にだって……彼女になった訳ではない)
岡部(まゆりとはハグしてキスしただけだし、ルカ子には告白されただけだ)
岡部「……いや、最後の二人はまずいな」
岡部(だが、考えてみると……)
岡部「誰とも付き合ってないのだから、六股ではなくないか?」
まゆり「……」
鈴羽「……」
フェイリス「……」
ルカ子「……」
萌郁「……」
岡部「な、何故みんなそこで黙るのだ?じ、事実だろ?」
ダル「オカリン……」
岡部「な、なんだ……」
ダル「この場でその発言はバッドだお」
岡部「えっ?」
岡部「なっ!」
紅莉栖「わ、私と、あめりかに行ってくれるって、いっしょに住むって!うそだったのっ?」
岡部「あ、あれは例えの話だと言っただろ!」
紅莉栖「うそだったんだ……」ジワッ
岡部「いや、だから、それは……」
ギュッ
岡部「わっ!だ、誰だ!急に後ろから抱き付いてくるな!危な……まゆり?」
まゆり「オカリン……」グスッ
岡部「な、なんでお前まで泣いているのだ!?」アセアセ
まゆり「オカリンは、まゆしぃをお嫁さんにしてくれるんじゃなかったの……?」
岡部「お、お嫁さんだと!?」
まゆり「まゆしぃ、この一週間苦手なお料理の練習をしてお嫁さん修行してたのに……オカリンのお嫁さんになれないなんて」グスッ
まゆり「おばあちゃん……まゆしぃ、もうダメみたい。オカリンのそばに居られないならまゆしぃはおばあちゃんのそばに居た方が……」フラフラ
岡部「ば、馬鹿!早まるな!!まゆり!」
ガシッ
岡部「ええい誰だ!離せ!まゆりが…!」
フェイリス「凶真……ひどいニャン」スッ
留未穂「私と、秋葉を継いでこの街で生きていくって誓ったのは、うそだったの……?」グスッ
岡部「はああ!?そんな事、誓った覚えはないぞ!?」
岡部「そ、そんな目で見るな」
留未穂「凶真は、倫太郎さんはずっと一緒に居てくれるって、言ったのに……」
岡部「だ、だからそれはお前の勘違いであって……」
ガシッ
岡部「おぅ、だ、だれだ……わ、脇腹に思い切りタックルを食らわした奴は……」
鈴羽「失望したよ、岡部倫太郎……」
岡部「す、鈴羽……」
鈴羽「誰とも付き合ってないなんてウソだ。君はあたしと付き合うって、言ったじゃないか!」グスッ
岡部「そ、それは街の案内に付き合うという意味で……」
鈴羽「言い訳なんて聞きたくない!」
岡部「は?」
鈴羽「それでも私たちなら、きっと乗り越えていける筈だよ!だから岡部倫太郎、今からでも遅くない。さっきの言葉を訂正するんだ」
岡部「な、何を言ってるんだ、お前は……」
ギュッ
岡部「こ、今度はルカ子か」
ルカ子「お、岡部さん……」
岡部「な、なんだ?言っておくがお前とも嫁にする約束はしていない筈だが」
ルカ子「こ、この前の告白の返事、聞かせて下さいっ!」
岡部「えっ」
岡部(なっ、何故このタイミングで言うのだ!?)
紅莉栖「こ、告白……?」
まゆり「ルカちゃんが、オカリンに……?」
留未穂「聞いてないよ、倫太郎さん……」
鈴羽「あたしと付き合うって、言ったのに!言ったのに!」
萌郁「……」ギリ
ダル「うわあ……オカリン、骨くらいは残ってたら拾ってやるお」
岡部「お、俺は……んむっ!」
萌郁「返事は、させない…」
岡部(も、萌郁か!?くっ、口の中に手をを無理やり突っ込まれた)
岡部「もが、あが、……」
ルカ子「そ、そんなっ!桐生さん、岡部さんが嫌がってますっ、離して下さい」
萌郁「ダメ……岡部、くんは、私の居場所……私は、岡部くんの全て、私は岡部くんの、岡部くん岡部くん岡部くん」
岡部「もがっ、あっ、は、離せ!」バッ
萌郁「あっ……」
岡部「ふっ、」
岡部「ふふっ」
岡部「フゥーハハハ!」
ダル「オカリン……とうとう壊れたか」
岡部「壊れてなどおらん!お前たち!聞くが、そんなにも俺との関係を望むか?」
紅莉栖「だって、約束したも」グスッ
まゆり「まゆしぃはオカリンのお嫁さんになるって決めたのです」グスッ
鈴羽「当たり前だよ」
留未穂「倫太郎さんは、私と二人で秋葉を継ぐって誓ったよ?」
ルカ子「ぼ、ぼくは妾でも……」
萌郁「岡部くんは、私の、居場所……」
岡部「いいだろう……貴様たちのその願い、この鳳凰院凶真が全て引き受けた!」
紅莉栖「ふぇ?」
岡部「お前の望みはアメリカで俺と一緒に暮らす事だったな」
紅莉栖「の、望みっていうか、あ、あんたが言った言葉だから、その……どうしても、って言うなら、向こうに住んだ時は一緒の部屋で寝ても……」
岡部「単刀直入に言う。無理だ」
紅莉栖「えっ」ジワッ
岡部「最後まで聞け。俺の今の財力では共に住むのは無理だと言ったのだ」
紅莉栖「じゃ、じゃあ私の家に住めば」
岡部「俺はお前にそこまで頼るつもりはない。将来、俺が自分で向こうに住めるようになった時は……」
岡部「二人で一緒に暮らそう、紅莉栖」
紅莉栖「う、うんっ!」
岡部(これで紅莉栖の望みはクリア。次はまゆりだ)
まゆり「……」
岡部「そこでだ!お前は今日より人質から解放する!」ビシィ
まゆり「えっ?」
まゆり「もう、まゆしぃはオカリンの傍にいちゃダメなの……?」ウルウル
岡部「お前は鳳凰院凶真の人質ではない」
まゆり「そんなっ……」ジワッ
ギュッ
まゆり「ふえ?」
岡部「今日から椎名まゆりは、俺の、岡部倫太郎の嫁だ」
まゆり「ほえ?」
岡部「そ、その……これからもよろしく頼むぞ?我が嫁よ」
まゆり「う、うんっ!お料理いっぱい練習して、オカリンにおいしいご馳走を毎日食べさせてあげるねっ、えへへ」
岡部(まゆりの望みも叶えた!次ぃ!)
鈴羽「君は、あたしが満足するまでとことん付き合ってくれるって言った」
岡部「ああ。言った。だが、それは全部が終わってからだろう?」
鈴羽「うん、あたしの目的を全部終わったら、君はあたしと付き合ってくれるんだよね?」
岡部「無論だ。だが、その為にもお前の使命を果たさねばならん」
鈴羽「うん……」
岡部「鈴羽……」
ギュッ
鈴羽「えっ?」
岡部「その使命が終わったら、いくらでも付き合ってやる。その為には何年でも待ってやる」
鈴羽「し、使命を果たしたら次に会うのは随分先になるんだよ?それでも君は待ってくれる?」
岡部「無論だ。だからお前は自分の使命を果たしてこい。俺はずっと待っている」
鈴羽「うんっ、あたし、頑張るよ!こうしちゃ居られない!早く過去に戻らないと!」ビュー
バタン
岡部(行ったか。よく分からんが、これで鈴羽もクリアだ。これで三つ目!)
留未穂「倫太郎さんと一緒に秋葉を継ぐ。そう、言ったよね?」
岡部「……覚悟はあるかと問われて、そんなものは関係ないと答えたからな」
留未穂「倫太郎さん、今ならまだ引き返せるよ?」
岡部「馬鹿を言うな。お前の望みを叶えると言っただろう。二言はない」
留未穂「でも……」
岡部「留未穂……」ナデナデ
留未穂「あっ、きゅ、急になにするのっ?」
岡部「秋葉倫太郎か、悪くない響きではないか」
留未穂「ふえ?」
岡部「留未穂、共に継ごう、秋葉を」
留未穂「は、はいっ!」
岡部(四つ目もクリア。抜かりはない)
アメリカに第2の秋葉をだな
お前頭いいな
ルカ子「ぼ、僕は!岡部さんの気持ちが知りたいですっ」
岡部「つまりは告白の返事という事か……いいだろう聞かせてやる」
ルカ子「……」ゴクリ
岡部「ルカ子、お前の事は好きだ」
ルカ子「ほ、本当ですかっ!?」
岡部「だが、付き合う事は……」
ルカ子「構いません……僕は、僕は岡部さんの傍に居られるなら、岡部さんが僕を想ってくれてるって知れたから、それだけで十分です」
岡部「ルカ子……」
ルカ子「でも、一つだけお願いしてもいいですか?」
岡部「なんだ?」
ルカ子「これからも僕を……岡部さんの傍に置いてください」
岡部「当たり前だ。お前が望むなら、いつまでも俺の傍にいてくれて構わない……」ギュッ
ルカ子「ありがとう、ございます……岡部さん」
岡部(これでルカ子の願いも叶った。次で最後だ!)
萌郁「………ぃや」
岡部「なに?」
萌郁「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやああああああ!!」
岡部「……っ!」
萌郁「岡部くんは私の、岡部くんは私だけの、だからみんなのものになっちゃ、いや!岡部くんは私の」
ギュッ
萌郁「あっ……」
岡部「なんだ、指圧師よ。ちゃんと喋れるではないか」
萌郁「岡部、くん……」
岡部「萌郁、俺がお前の居場所になっても構わないない。だがな、一つ条件がある」
萌郁「な、に?」
岡部「俺はラボのリーダーだからな。お前にだけ構うというのは不可能だ。俺の傍には紅莉栖やまゆりたちがいる。それでも構わないか……?」
萌郁「岡部、くんが…そう、言うなら…」
岡部「そうか、ではこれからもよろしく頼むぞ萌郁」ナデナデ
萌郁「んっ……」
岡部(……ミッション、コンプリート)
まゆり「オカリンとの新婚生活たのしみだな~あっ、お家に帰ったらお料理の練習しなきゃ」
留未穂「パパ……私、倫太郎さんとなら頑張っていける。だからパパも天国で私たちの事、見守っていてね」
ルカ子「これからもずっと岡部さんと一緒……ずっと、ずっと……えへへ」
萌郁「私の、居場所……やっと、見つけた、私の岡部くん……」
岡部「ダル見てみろ。ラボメンたちに笑顔が戻った。これも俺だからこそ成せる所業だな!フゥーハハハ!」
ダル「……オカリン、今はこれで誤魔化せるけど、これからどうすんの?」
岡部「……」
岡部「さあな、その時はシュタインズ・ゲートが選択した答えに委ねるさ」
おわり
保守してくれた人、読んでくれた人、ありがとニャンニャン
>>1
乙
当人達が幸せならそれでいいんよ
なんも解決してねぇw
オカリンに未来はないな
Entry ⇒ 2012.06.20 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
紅莉栖「岡部に頭をなでられたい…」
紅莉栖(岡部に頭をなでられたい…)
紅莉栖(あの日の感触が忘れられない…(´д`)ハァハァ )
紅莉栖(でも、いい年した男女が…その…頭ネデナデとか…ありえない…)
紅莉栖(…いや! 私は天才処女、じゃなくて天才少女!)
紅莉栖(岡部にそれとなく、頭を撫でさせるなんて、朝飯前なんだぜ!)キラッ☆
.
紅莉栖「……」
ダル「あれ、牧瀬氏、遅刻かお?」
岡部「たるんでおるぞ、助手! ……ん?」
紅莉栖(フフフ…どうかしら、岡部? 私の頭に乗っているティッシュが気になるでしょ?)
紅莉栖(これを岡部に取って貰って、まだ紙屑付いてない? などと言って頭を撫でて貰う…)
紅莉栖(これぞ、オペレーション:戦乙女のオーロラ!! ああ、自分の天才が怖い!!)
.
ダル「牧瀬氏、頭にティッシュが付いてるお。取ってあげるお」ヒョイ
紅莉栖「だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!??」
岡部「流石、マイ・フェバリット・ライトアーム! 実に紳士だな」
ダル「ティッシュの始末ならお任せだお!」キリッ
紅莉栖「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!??」
.
ダル「それにしても、遅刻した上にティッシュを頭の上に乗せてくるとは…」
ダル「牧瀬氏、何してたん?」
岡部「……このHENTAI処女め!」ペッ
紅莉栖( Σ(Д゚;/) !? )
紅莉栖(うう…作戦失敗した上に、岡部に変な誤解された…鬱だ死のう)
.
紅莉栖(ううむ…思わぬ橋田の妨害によって、オペレーション:戦乙女のオーロラは失敗したが…)
紅莉栖(私の完璧な作戦は、まだまだあるのだぜ!)キラッ☆
紅莉栖「フォォォォフッハッッハッハーー!!」
ダル「オカリン…牧瀬氏の様子がなんだか変だお。まるでオカリンみたいだお」
岡部「失敬な」
.
紅莉栖「きゃああああ!」
岡部「ど、どうした、助手よ?」
紅莉栖「お、岡部! 虫! 私の髪の毛の奥に虫が!」
岡部「なん…だと?」
紅莉栖「取って、今すぐ! もしかしたら、致死性の毒を持つ害虫かも!」
岡部「待っていろ、助手よ! 今、狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院狂真が助けてやる!」
紅莉栖(これぞ、オペレーション:ニーズホッグ!! ああ、やっぱり自分の天才が怖い!!)
.
岡部「うりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」 バコーーーンッ !!!!
紅莉栖「ひでぶッ!!??」
ダル「おお、オカリンが分厚い辞書で、牧瀬氏ごと虫をブン殴った!」
ダル「流石オカリン、俺達にできない事を平然とやってのける! そこに痺れるゥ、憧れるゥ!」
岡部「大丈夫か、助手よ!?」
紅莉栖「う、うん…ありがとう…」グスッ
.
紅莉栖(ぐくッ…まさか、惚れた男に、辞書で頭部を強打されるとは思わなかったわ…)
紅莉栖(しかし、今の作戦は作戦中一番の小物…。これからが本番なのだぜ!)キラッ☆
紅莉栖「ファァァァァァァへッハッッハッハーー!!」
ダル「オカリン…ちょっと強く叩きすぎたんじゃね? 牧瀬氏、ほとんどオカリンだお」
岡部「だから失敬な!」
.
岡部「さあ、助手よ。『機関』のバイオテロも、この鳳凰院狂真が防いだ事だし、そろそろ作業を…?
紅莉栖「……」ジィィィィィィィ~…
岡部「……」ヒョイ
紅莉栖「……」ヒョイ
岡部(な、何だ? 助手が俺の手の動きに合わせて、頭を動かしてくる…だと?)
.
紅莉栖(フフフ…これこそ、最終手段にして、究極の解答…)
紅莉栖(岡部に頭を撫でて貰うのではなく、自分から頭を動かして、撫でて貰う…)
紅莉栖(何を言ってるか、自分でもわからねーがry)
紅莉栖(最終オペレーション…神々の黄昏…終末の戦争…ラグナロク!!)
紅莉栖(……あれ? もう最終だっけ?)
.
紅莉栖「……」ジリジリ…
岡部「……」ジリジリ…ドンッ!
岡部(むう…助手のおかしな動きに気圧され、いつの間にやら、本棚まで追い詰められた…)
岡部(助手め…。助手の分際で、この鳳凰院狂真に、これほどまでのプレッシャーを与えるとは…)
紅莉栖「……」ジィィィィィィィ~…
岡部(奴め…。何という殺気だ…まるで、獲物を狙う野生動物の如き、眼光よ…!)
.
紅莉栖「フフッ…岡部…そこまでの様ね…覚悟しなさい…」
岡部「甦りし者、ザ・ゾンビよ…。貴様の思惑は、すでに、この鳳凰院狂真が見抜いているぞ!!」
紅莉栖「……」
紅莉栖「ええッ!? 何で!? 私、完璧に自然体だった筈なのに!?」
紅莉栖「まさか、岡部!! タイムリープしてきたの!?」
ダル「いやさっき、覚悟しろとかはっきり言ってたおJK」
.
岡部「貴様の狙いは…」
紅莉栖「ゴクッ…」
岡部「この俺の手にあるドクトルペッパーだろう!!」
紅莉栖「違ァァァァァァァァァーーーーうッ!!!!」
.
岡部「先ほどから、俺のドクペを物欲しそうに凝視しおって! このイヤしんぼのセレセブが!」
紅莉栖「違うっつってんだろ!」
ダル「セレセブとセフレは、語感が似ている…(´д`)ハァハァ 」
紅莉栖「黙れ、HENTAI!!」
岡部「フ…まあ、同じドクペリアンとして、その狂おしいまでの熱意は、高く評価するがな…」
紅莉栖(クッ…話がどんどんおかしな方向に…)
.
岡部「しかし、このドクペは、俺が昨夜からキンキンに冷やした至高のドクペ…」
岡部「ドクペの素晴らしさを共有する同士としても、安々と譲るわけにはいかんな…」
紅莉栖「いや、だから違うって言って…」
岡部「三べん廻ってワンと言え…そうすれば、下賜してやらん事もないぞ? プライドが異様に高い貴様に、そんな真似は」
紅莉栖「クルクルクル、ワンッ!!」
ダル「速攻で言った―!?」
.
紅莉栖「ゴキュゴキュゴキュッ…プッハーー!!」
岡部「クッ…美味そうに飲みやがって…。そんなに喉が渇いていたというのか…!」
紅莉栖(お、思わぬところで、岡部と関節キスできるなんて…(´д`)ハァハァ )
紅莉栖(これは勝つる! 運命の女神は、私に微笑んでいる! ラグナロクの勝利を確信したわ!)
紅莉栖(にしても、ドクペ、ウメー)ゴキュゴキュ
.
岡部「さあ、ドクペも飲んだ事だし、今度こそ作業に…?」
紅莉栖「うりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!!」
岡部「うおっ!?」ヒョイ
紅莉栖「!!??」ドンガラガッシャーン !!!!
ダル「ああ、牧瀬氏が、怪鳥音と共に、本棚に突っ込んだお!」
.
紅莉栖「くぅぅぅぅ~いった~…」
紅莉栖(私の完璧な作戦が、悉く失敗するなんて…)
紅莉栖(ま、まさか、これがアトラクタフィールドの収束なの!?)
紅莉栖(だ、だとしたら、もう私は一生岡部に…)グスッグスン
岡部「じょ、助手!? 泣いているのか!? どこか強く打ったのか!?」ナデナデ
紅莉栖「……ふぇ?」
.
岡部「ま、まだ痛むのか!? 救急車を呼ぶか!?」ナデナデナデナデ
紅莉栖「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??」
岡部「いかん、ダル!! 相当の重傷の様だ!! 至急、救急車を!!
ダル「合点!!」
紅莉栖(ああ…ああぁぁ…岡部…岡部の手が、私の頭を…優しく……激しく…///)
.
紅莉栖「お、岡部ェェ…」
岡部「何だ!? しっかりしろ、紅莉栖!! 傷は浅いぞ!!」
紅莉栖「こ、これが…シュタインズゲートの選択ね……きゅう…」
岡部「紅莉栖!? 紅莉栖ーーーーー!!??」
ダル「うう…なんて、哀しいシーンだお…全俺が泣いた…」
ピーポーピーポー…
おわり
.
紅莉栖(ふふ♪ 昨日は一日、精密検査で潰れちゃったけど…)
紅莉栖(病院の先生に、脳には異常は見られないが、とか言われちゃったけど…)
紅莉栖(待合室で、クソガキにニヤニヤしてキモいなんて、ディスられたけど…)
紅莉栖「……」ナデナデナデナデ
紅莉栖「ふへ…ふへへへへへへへへへへへへへへへへ♪」ニヤニヤニヤニヤニヤ
.
紅莉栖(何ていうか、やっぱり私と岡部って…)
紅莉栖(……)
紅莉栖(う、運命で結ばれてる…?)
紅莉栖(いや、だって頭撫でるとか、まずありえないっしょ!)
紅莉栖(もう、これはシュタインズゲートの選択なんだってばよ!)
.
紅莉栖「はろー♪」
岡部「おお、助手!! もう大丈夫なのか!?」
紅莉栖「う、うん」
岡部「……」
紅莉栖「……」
ダル「リア充爆発しろ」
.
紅莉栖「あ、ごめんなさい。橋田にも心配掛けちゃったね」
ダル「別にいいお…その怒りのパワーを、新しい未来ガジェットの開発に注ぎ込んだから」
紅莉栖「新しい未来ガジェット?」
ダル「うん、その名も…」
ダル「未来ガジェット21号、『スカウター改』!!」ホンワカパッパー!
.
岡部「ダルよ…。その代物は、西遊記をモチーフとした、あの国民的マンガと何か関係があるのか?」
ダル「ぶっちゃけ、アレのパクリだお」
紅莉栖「…おい」
ダル「まあ、発想を頂いただけだお」
.
紅莉栖「でも、実現できたとしたら凄い発明よね」
岡部「ようし、ではこの世界の秩序を破壊せし者、狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院狂真の戦闘力を計ってみろ!!」
ダル「1だお」ピピピピピピピ…
岡部「ぬわぁぁぁぁぁぁぁぁにぃぃぃぃぃぃぃ!!??」
紅莉栖「プwww」
.
岡部「ス、スカウターの故障ではないのか?」
紅莉栖「じゃあ、私を計ってみて」
ダル「…やっぱり、1だお」ピピピピピピピ…
岡部「ほら見ろ、やっぱり壊れてる!」
紅莉栖「いや、ちょっと待ってよ…」
.
紅莉栖「確か、あの名作漫画だと、成年男子でも戦闘力5でしょ? 妥当な数値じゃないかしら」
ダル「…確かに、そうだったお。流石、栗ご飯にカメハメ波、よく読み込んでるお」
紅莉栖「栗ご飯言うなッ!!」
岡部「ま、待てい! この鳳凰院狂真が助手風情と同じなどと!!」
ダル「だって、オカリン体力ないっしょ」
岡部「ぐ…む…!!」
紅莉栖「どう見ても、貧弱貧弱貧弱です。本当にありがとうございました」
.
岡部「クッ…明日からランニングでもするか…!」
紅莉栖「もう、そんなにしょげないでよ…」
紅莉栖「お、岡部の強さって…その…体力とかじゃなくて、意志とか優しさだと思う…」
岡部「紅莉栖…」
ダル「リア充、大爆発しろ!!」
.
まゆり「とぅっとぅる~♪ 紅莉栖ちゃん、無事でなりよりなのです♪」
紅莉栖「あ、まゆり。はろー♪」
岡部「なんだ、その大量の食糧は?」
まゆり「へへ♪ 紅莉栖の全快祝いに、ちょっとしたお食事会をしようと思うのです♪」
ダル「まゆ氏、マジ天使」
.
まゆり「るか君や、フェイリスちゃんや、萌郁さんや、鈴羽ちゃんにも声を掛けて置いたよ♪」
岡部「人質のくせに勝手な真似を…まあ、そこがお前の良い所なんだがな…」ナデナデ
まゆり「へへー♪ まゆしぃ、誉められたのです♪」
紅莉栖「!?」
ダル「…うお?10?」ピピピピピピピ…
.
紅莉栖(お、岡部がまゆりを撫でた…?)
紅莉栖(い、いや、二人は幼馴染だし…)
紅莉栖(兄妹みたいなものだし…)
紅莉栖(か、家族のスキンシップみたいなものだし…)
紅莉栖(ど、動揺なんかしてないし…!)
.
るか「こ、こんにちわ…これ、鍋の材料の御野菜…差入です…」
まゆり「おおー♪ るか君、ありがとうなんだよ♪」
岡部「うむ、科学者たるもの、栄養バランスには気をつけんとな。でかしたぞ、ルカ子!」ナデナデ
るか「ひゃっ…! お、岡…狂真さん…///」
紅莉栖「!!??」
ダル「……416だと?」ピピピピピピピ…
.
紅莉栖(こ、今度は漆原さんを…?)
紅莉栖(い、いや、二人は師弟だし…)
紅莉栖(ロビンマスクとウォーズマンみたいなものだし…)
紅莉栖(だ、第一、漆原さん男だし…)
紅莉栖(し、嫉妬なんか全くしてないし…!)
.
フェイ「にゃにゃーん♪ 御呼ばれして、フェイリスきたにゃー♪」
ダル「フェイリスたん、ktkr!!!!」
フェイ「狂真!! お前に、フェイリスの頭を撫でる権利をやるにゃ♪」
岡部「…こうか?」ナデナデ
フェイ「にゃにゃーん♪ 気持ちいいにゃ~…ごろごろ…///♪」
紅莉栖「!!!???」
ダル「8千!! まだ上がっていくお!!」ピピピピピピピ…
.
紅莉栖(ちょっと、脈絡なさすぎだろッ!?)
紅莉栖(サ、サービス!? メイド喫茶のサービスの一環よね!?)
紅莉栖(つ、つまり営業とか、そんな感じの…)
紅莉栖(資本主義に堕した、萌えの退廃とオタク文化の特殊な方向性というか…)
紅莉栖(と、ともかく今のも、特別な意味なんてないんだからッ!!)
.
鈴羽「やあ、まだ始まっていないよね? バイトが中々引けなくて遅くなっちゃったよ」
ダル「娘、ktkr!」
紅莉栖「…まさか、貴女も岡部に頭を撫でて欲しいってんじゃないでしょうね?」ジロリ !
鈴羽「ハア? 何を言ってるんだい、牧瀬紅莉栖?」
紅莉栖(ホッ…)
鈴羽「……でも、せっかくだから撫でて貰おうかな♪」
紅莉栖「ブッ!?」
ダル「墓穴、乙」
.
鈴羽「ダメかな、岡部倫太郎? この時代に、君に会えた思い出が欲しい」
岡部「まあ、そういう事なら仕方ないな、バイト戦士よ」ナデナデ
鈴羽「へへ…オカリンおじさんの手、温かいな…///」
紅莉栖「グギギギギ…」
ダル「戦闘力12万…そろそろ、ヤバいお…」ピピピピピピピ…
.
岡部「何がヤバいんだ、ダルよ?」
ダル「気安く話しかけるなよ、倫太郎…。親友の娘に手を出すとか、貴様には仁義の欠片もないのか…?」
岡部「ちょッ!? おま、口調、口調!!」
.
岡部「手を出すって、頭を撫でただけだろうが!?」
ダル「……」ジトォォォォォ…
岡部「お前と、お前の未来の嫁を哀しませる様な真似は、俺は絶対しない! 俺を信用しろ、マイ・フェバリット・ライトアーム!!」
ダル「……ユダめ」ペッ
岡部「唾を吐き捨てられた!?」
.
ダル「…まあ、冗談はこれぐらいにして、いい加減にしないと、この『スカウター改』も、オカリンの命も危ないお」
岡部「は?」
ダル「リア充、自重しろって言ってるんだお!」
岡部「いや、お前が何を言ってるのか、俺にはさっぱり分からんのだが…」
紅莉栖「……」ゴゴゴゴゴ…
.
萌郁「……」
岡部「ぬお!? シャイニング・フィンガー!? 音もなく、背後に立つな!?」
萌郁「……」カチカチカチカチ…
岡部「む…またメールでか…」
萌郁『だって…あんな事があって…壁|▽//)ゝテレテレ 面と向かってなんて… 州ノ_-。州 ハズカシイ 』
紅莉栖「あんな…事?」ジトォォォォ…
ダル「……」ピーピー!!
.
萌郁「岡部君は……私の…初めての人…だから…///」
岡部「ぬおぉぉぉぉぉぉぉッ!? 何故、そんな事だけ、はっきり声に出すのだッ!?」
まゆり「……」
るか「……」
フェイ「……」
鈴羽「……」
紅莉栖「……」プチーン…
ダル「……」チュドーン !!
.
紅莉栖「お~~~か~~~べ~~~…」ゴゴゴゴゴゴゴゴ…
岡部「ク、クリスティーナ!? 何故、いきなり金髪逆立ちに!?」
ダル「普段は、ねらーの心を持ちながら、激しい怒りによって目覚めた超戦士…」
ダル「それが……それが、スーパーメリケン処女だおJKッ!!」
岡部「語呂わるッ!!」
.
ダル「ちなみに、今の牧瀬氏の戦闘力は、一億五千だお…」
岡部「何だ、そのヴァイマル共和国もビックリな、ハイパーインフレは!? 数分前は、1だったろーが!?」
ダル「ジャ○プ設定にマジレスとか、カコワルいお」
岡部「そんな機械を作るから、世界観のバランスが著しく崩れたんだ!!」
.
紅莉栖「……」ジリジリ…
岡部「……」ジリジリ…ドンッ!
ダル「オカリン…さよならだお…」
岡部(助手め…。助手の分際で、この鳳凰院狂真に、これほどまでのプレッシャーを与えるとは…)
紅莉栖「……」ジィィィィィィィ~…
岡部(な、何という殺気だ…まるで、ハゲの修行仲間の仇を討たんとする、侵略型宇宙人の如き眼光よ…!)
.
岡部「そ、そうだ!! 助手よ、これを見よ!!」
紅莉栖「ドクトル…ペッパー…?」
岡部「ほ、ほれ、取ってこーい」ポーン
紅莉栖「……」カツーン…コロコロコロ…
岡部「……」
紅莉栖「…何つもり? 何で、岡部の…口が付いてもいないドクペを…追いかけないと…いけないの?」
岡部「……」タラタラタラ~
.
紅莉栖「岡部…」ゴゴゴゴゴゴゴゴ…
紅莉栖「今のは痛かった…」
岡部「ヒッ、ヒィ…!?」
紅莉栖「今のは、私の心が痛かったぞーーーーッ!!!!」ドンッ !!!!
岡部「うおっ!?」ヒョイ
紅莉栖「!!??」ドッカァァァァァァァァァァァァン !!!!
ダル「ああ、牧瀬氏が、爆発音と共に、本棚に突っ込んだお!」
.
………
……
…
.
岡部「…それで、先生。クリスティーナ…もとい、紅莉栖の容体はどうなんですか?」
医師「ううむ…脳に異常はないのだが…」
医師「何故、彼女が目覚めないのか…現代医学では…」
医師「この病院に担ぎ込まれたから、時折、スカウターだの戦闘力だの、うわ言を呟くばかりで…」
岡部「そ、そんな!?」
ダル「一体、どんな夢を見てるんだお?」
.
岡部「先生!! 何とか彼女を目覚めさせられないのですか!? 俺は、何だってします!!」
医師「可能性があるとしたら…」
医師「意識を失う前に、彼女の心に強く残った行為を反復する…などだろうか…」
岡部「行為の反復?」
ダル「あ、それならオカリン、牧瀬氏の頭をさすってたお」
.
岡部「こ、こうか…?」ナデナテ
紅莉栖「……ふぇ?」
医師「おお!? 患者に反応が戻ったッ!?」
ダル「オカリン、もっと撫で続けるお!!」
.
岡部「紅莉栖…戻って来い!! お前は、この俺の助手なのだぞ!!」ナデナデナデナデ
紅莉栖「ふぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!??」
紅莉栖(ああ…ああぁぁ…岡部…岡部の手が、私の頭を…優しく……激しく…///)
紅莉栖「お、岡部ェェ…」
医師「き、奇跡だ…」
.
ダル「うう…なんて、感動のシーンだお…全俺が泣いた…」
紅莉栖「岡部…私…」
岡部「紅莉栖…これが…シュタインズゲートの選択だよ…」
岡部 ・ 紅莉栖 ・ ダル 「「「 エル ・ プサイ ・ コングルゥ 」」」
.
医師「…何だね、そのエル…なんとかとやらは」
岡部 ・ 紅莉栖 ・ ダル 「「「 意味は特にない 」」」
医師「……」
おわり
.
Entry ⇒ 2012.06.17 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
岡部「やはり年下は恋愛対象として見れんな」紅莉栖「」
まゆり「」
ルカ子「」
フェイリス「」
鈴羽「……よしっ」
萌郁「……」グッ
岡部(なんだ? ラボ内の空気が変わったような……)
ダル「ラボメン全員集まってる中でそれを言えるとか、さすがオカリン……」
ダル(オカリンに女性の好み聞いて牧瀬氏たちの反応を楽しもうって思ったけど……)
紅莉栖「……年下、い、い、一歳差はセーフよね。うん、そんなに変わらないし」
まゆり「お、オカリンとまゆしぃは幼馴染みだから、と、年の差とかあんまり関係ないのです」
ルカ子「ぼ、僕はおか、凶真さんの弟子だから、ね、年齢なんて関係ないよね」
フェイリス「だ、大丈夫ニャン。フェイリスは200歳以上生きた猫の化身だから、凶真より年上だニャン。だ、大丈夫、うん……大丈夫ニャン」
鈴羽「みっともないね(笑)」
紅莉栖「は?」
萌郁「……哀れ」
フェイリス「き、聞き捨てならないニャン」
ダル(これは思った以上に厄介になりそうだお……)
岡部「なんだ?」
ダル「なんで年下がダメなん? 確かに同い年や年上の女の子の魅力も分かるけど、年下もなかなかいいもんなのだぜ」
紅莉栖「橋田gj」
まゆり「ダルくん、ナイスなのです」
ルカ子「いいですよ、橋田さん!」
フェイリス「さすがダルニャン!」
鈴羽「……父さん、余計な事を」
萌郁「……」ギリッ
ダル(四人敵に回すより、二人敵にした方がましだお……)
紅莉栖「Ktkr」
まゆり「うんうん」
ルカ子「そうです岡部さん」
フェイリス「年下が年上に適わない通りはないニャ!」
岡部「だがな、やはり男なら包容力のある年上の女性に甘え、恋愛の価値観が近い同い年の異性と恋をしてみたいとは思わないか?」
ダル「禿同」
紅莉栖「は?」
まゆり「ダルくん……」
ルカ子「橋田さん……」
フェイリス「ダルニャンに裏切られたニャ……」
ダル(しまった……オカリンの言葉に思わず同意してしまったオワタ)
萌郁「橋田、くん……ないす」
ダル(こ、これで四人を敵に回してしまった……こ、このままじゃマズいお)
岡部「それにダル。お前の彼女、阿万音由季も年下ではないだろ?」
ダル「た、確かに……」
岡部「ならお前も存分に理解している筈だ。年下以外の魅力をな。寧ろ、彼女持ちであるお前の方が、よく分かっているのではないか?」
ダル「そりゃ、もうっ! 由季たんのお陰で毎日がウルトラハッピーだお!」
岡部「うむ、実に素晴らしいではないか。彼女は気兼ねなくお前と関係を築いている。俺も付き合うなら気兼ねない関係でいたいものだ」
紅莉栖「……橋田」
まゆり「ダルくん……酷いよ」
ルカ子「こ、このままじゃ岡部さんが、僕に振り向いてくれなくなる……」グスッ
フェイリス「岡部さん……」
鈴羽「諦めなよ、キミたちの負けだ」フフン
萌郁「諦めは、肝心……」
紅莉栖「はああしいいだああああ」
ダル(こ、このままじゃ牧瀬氏たちにロボトミーにされる……)ガクブル
ダル「で、でもさ、オカリン。その甘えたり~とか、恋愛の価値観が近い~云々は年下の女の子でも問題ないんじゃね?」
岡部「……なに? どういう事だ、ダル」
ダル「オカリンは年下とか、年上って概念に捕らわれすぎてる。おんにゃの子と付き合うならもっと見識を広める必要があるお!」
岡部「概念に捕らわれる……俺が?」
ダル「そうだお!」
紅莉栖「よしっ」
まゆり「そうです、その通りなのです」
ルカ子「頑張って、橋田さん!」
フェイリス「上手くいったら今度メイクイーンでサービスして上げるニャン!」
鈴羽「……父さん」
萌郁「……」ギリッ
ダル「だからお前はアホなのだああああ!!」ビシィ
岡部「だ、誰がアホだ!?」
ダル「年下に甘える……そのギャップ萌に気付かないオカリンをアホ呼ばずして何と呼べばいいの?」
岡部「ギャップ、萌……なるほど、盲点だった」
ダル「例えさ、オカリンに普段は自分がよく面倒を見る昔馴染みの年下の女の子がいたとする」
まゆり「ふぇ?」
岡部「ふむ」
ダル「昔から過保護なくらいその子に付きっきりで、その子はオカリンによく甘えてくる」
まゆり「ま、まゆしぃはそんなにオカリンに甘えてないよぉ」
ダル「その普段甘えてくる女の子に逆に甘えてみる。オカリン、想像してみるお」
岡部「逆、甘える……」
岡部「な、なあ。ちょっといいか?」
昔馴染み『うん? なあに、オカリン』
岡部「その、だな……」チラチラ
昔馴染み『ん~? どうしたの~?』
岡部「あ、いや、やっぱりいい……」
昔馴染み『うん? あっ! そっかあ。ねえ、オカリン。膝枕、していいよ?』ポンポン
岡部「なっ、別に俺はそんな事したいなど、一言も」
昔馴染み『いいから、いから、おいで~』
岡部「……ぐぅ、お、お前がどうしても言うなら仕方ない」ポスッ
昔馴染み『えへへ、オカリンは甘えん坊さんなのです』ナデナデ
岡部「そ、そんな事は断じて……んっ、」
昔馴染み『えへへ』ナデナデ
――――
ダル「……どう?」
岡部「……悪くはない、な」
岡部「……頭を撫でてもらえると尚、良し」
まゆり「ひ、膝枕!? こ、子供の時はよくやったから、いまやっても大丈夫だよね、えへへ」
ダル「ほらほら、甘えるのに年下なんて関係ないっしょ?」
岡部「今回の極端な場合だ。年上や同い年の優位性に変わりはない。甘えるのは……まあ、年下でも認めてやろう。だが、同い年での価値観の近い恋愛は年下にはできん」
ダル「ほう……んじゃ、また例え話なんだけどさ」
岡部「今度はなんだ」
ダル「年下だけど7月25日生まれで12月生まれのオカリンと年齢は同じで年度違い程度の年の差の女の子が居たとする」
紅莉栖「ちょっ!?」
岡部「ふむ」
ダル「オカリンとその子は普段からよく口論なったりするけど、妙に似てる部分もある。互いに童貞処女で恋愛の価値観が近い二人が恋人同士になった時の様子を想像してみるお」
岡部「価値観の近い年下と恋人同士……」
7月25日生まれ『ね、ねえ、岡部』
岡部「どうした?」
7月25日生まれ『その、私たちさ、付き合って結構経つと思わない?』
岡部「そうだな。もう半年くらいになるな」
7月25日生まれ『だからさ、その……そろそろいいかな、って』
岡部「そろそろって何が?」
7月25日生まれ『き、キス以上の事……』
岡部「なっ!?」
7月25日生まれ『な、なによっ、そんなに驚かなくてもいいじゃない……』
岡部「貴様、今まで散々渋っていたではないかスイーツ(笑)処女」
7月25日生まれ『う、うっさい! あんたも童貞のくせに! その、渋ってたのは、あんたとの関係を大事にしたいから、その……』
岡部「分かっている。俺もお前との関係は大切にしたいと思っている。だから、その……お前がいいと言うのなら」ギュッ
7月25日生まれ『岡部……』
岡部「紅莉栖……」
――――
ダル「どう?」
岡部「ふむ、こらはこれで中々……」
あ、あくまでオカリンの脳内での7月25日生まれがくりすで再現されてるだけだ
紅莉栖「つ、付き合える!? お、岡部と……ふふっ、ふふふ、ふぅーはははは! 岡部! 最初はキスだけだからなっ、ま、まあ? 勢い余ってキス以上ちゃったら仕方ないけど、ふふっ」
ダル(つーか、オカリンいい加減牧瀬氏たちの言葉に気付けお……いくらなんでも都合が良すぎるだろ、その耳)
岡部「ま、まあ……あくまでも、その条件なら付き合えるかもしれない、というだけで、別に実際に付き合う訳では……」チラチラ
紅莉栖「ふぅーはははは!」
ダル(……なるほど、オカリンは最初から現実逃避してたか)
岡部(恥ずかしいから止めてくれ、紅莉栖)
紅莉栖「阿万音さん、あなたのラボ唯一の同い年属性は確かに素晴らしかった! そのスパッツも! おさげも! だがしかし! まるで! 全然! この私には及ばないのよね! ふぅーはははは! 悔しいでしょうね」
鈴羽「……牧瀬、紅莉栖!」ギリッ
ダル「そ、そだね。オカリンの見識が広まった事だし、そろそろ……」
ルカ子「橋田さん……」ジー
フェイリス「へー、マユシィやクーニャンのステマはするのにフェイリスはしニャいんだ」ジー
ダル「ま、まだ年下の魅力は残ってるお! せっかくだしオカリンにはその魅力を余さず紹介するんだぜ」
岡部「そ、そうか、では年下の魅力とやら、是非ご教示願おうではないか!」
萌郁「……」ウンウン
ダル「ふっ」
岡部「な、なにが可笑しい!?」
ダル「年下に包容力がないと、いつから錯覚していた?」
岡部「なん、だと……?」
萌郁「……!?」
ダル「オカリン……そうやってまた年下、年上と区切って自分の見識を狭めているお。甘えるのと同じで、包容力に年上も年下も関係ないお!」
岡部「……それのどこに包容力があるのだ」
ダル「まあ、最後まで聞けって。その子とオカリンは同居してるんだお」
岡部「ふむ」
フェイリス「凶真とフェイリスの愛の巣だニャン!」
ダル「んで、オカリンはある日疲れて帰ってくる。そこでオカリンを迎えたのは猫耳を外した普段とは違う一面を持った女の子だったんだお」
岡部「ほぅ」
留未穂「岡部さんをお出迎えかあ……ふふっ」
ダル「明るいメイドの時の彼女とは違って一面で、オカリンを癒やしてくれる彼女。普段とのギャップを含めたその包容力を想像してみるお」
岡部「……普段とのギャップを含めた包容力か」
岡部「……ただいま」
猫耳を付けたメイド『お帰りニャさい、凶真っ。ウニャ? どうかしたのかニャ? 元気ないニャ』
岡部「ああ、今日は最近いろいろとあってな……少し疲れた」
猫耳を付けたメイド『お風呂とお夕飯はどうするニャ?』
岡部「今はいい……休ませてくれ」
『岡部さん……』ギュッ
岡部「……っ」
猫耳を外したギャップあるメイド『一人で悩まないで。あなたには、私が付いている』
岡部「……留未穂」
猫耳を外したギャップあるメイド『あなたがいつまでも私の王子様であるように、私はいつまでもあなたの味方だから』
岡部「すまない……」
猫耳を外したギャップあるメイド『もう、謝らないでよ』
岡部「そう、だな……ありがとう、留未穂。愛してる」
留未穂「私も、大好き。岡部さん」
――――
岡部「いや、確かに悪くない。寧ろ魅力的なのだが……」
ダル「なんか不満でもあるの?」
フェイリス「えっ?」
岡部「いや、これの場合……包容力云々の魅力よりも猫耳を付けたギャップ持ちのメイドの魅力ではないか?」
フェイリス「はにゃ!?」
ダル「……」
岡部「なるほど、ダル。お前がメイクイーンに入り浸る理由が少しだけ分かった気がする」
フェイリス「ふにゃ……お、おかべさん」
ダル(フェイリスたんが素の状態との境界線が崩壊してる……)
岡部「なるほど、年下にも包容力を持つ可能性があると認めよう。そしてそれは時にして年上の包容力すら上回る事があるのだと」
ダル「そ、そうだお。これで年下の魅力は伝わった?」
岡部「ああ、十分すぎるほどな」
ダル「そっか、それなら……」
ルカ子「……」ジー
ダル「つ、次は年下ならではの魅力を紹介するお!」
ダル「ひたむきに、素直に想いを寄せてくれる年下」
岡部「!?」
ダル「例えば、健気で素直で家事全般が出来て見た目も可愛い子がオカリンを慕っていたとするお」
岡部「……男か?」
ダル「もち」
岡部「うむ、続けろ」
ルカ子「!?」
ダル「自分は男だからオカリンに想いを伝えられない。でも好き。その子はいつしか我慢できなくなってオカリンに告白するんだお。そこを想像してみ」
岡部「健気な年下に告白か、ふむ……」
健気で素直な男の娘『岡部さんの事が、す、好きですっ』
岡部「ルカ子……」
ルカ子『ご、ごめんなさい、男なのに、気持ち悪いですよね。でも、ぼく、どうしてもこの想いだけは、我慢できなくて、うぅ……』ポロポロ
岡部「それがどうした」ギュッ
ルカ子『えっ?』
岡部「男とか、女とか、そんな事はどうでもいい。そう言ったの、覚えているか?」
ルカ子『も、もちろんです』
岡部「ならば言葉の通りだ」
ルカ子『じゃ、じゃあ』
岡部「ああ、俺も好きだ、ルカ子」
ルカ子『岡部さん……』
――
ダル「どう?」
岡部「いや、どう? と言われてもだな……」
ダル「健気な年下の子からの告白。なかなか来るっしょ?」
岡部「いや、まあ来る、というか……確かに、年下からの告白は悪くないな」
ルカ子「っ!?」
岡部「しかも、見た目も性格もいいのだから断る筈がない」
ルカ子「お、おかべさんっ」
岡部(女だった場合に限るが……)
岡部「長かったな」
ダル「んで、オカリン。感想は?」
岡部「ああ、お前のお陰で年下も例外的な場合、恋愛対象として見る事ができるようになった」
紅莉栖「岡部と付き合える……ふへへ」
まゆり「オカリンに膝枕かー懐かしいね~」
フェイリス「おかべさんが、これからはわた、フェイリスを恋愛対象に……ふふっ」
ルカ子「男とか、女とか、そんなの関係ないですもんね」
鈴羽「……」
萌郁「……」
ダル「あ~もうっ、今日は精神がすり減ったお! 帰って由季たんに慰めてもらお、ぐへへ」
まゆり「まゆしぃ、もうすぐバイトだから帰るね」
フェイリス「ニャニャ、フェイリスもお仕事ニャ。一緒に帰ろっか、マユシィ」
ルカ子「ぼ、ぼくも神社のお手伝いがあるので」
紅莉栖「私もそろそろ帰るわ。それじゃあね、阿万音さん。今日は楽しかったわ(笑)」
バタン
鈴羽「……」
萌郁「……」
鈴羽「……」
萌郁「……」
岡部「あ~、その、だな」ポリポリ
岡部「……確かに、ダルの言った通り年下も悪くないと思った」
鈴羽「うぅ……」グスッ
萌郁「……」
岡部「だが」
鈴羽「えっ?」
岡部「それでも俺が好みなのは年上と同い年だ。それに変わりはない」
萌郁「ほん、と……?」
鈴羽「じゃ、じゃあさ! 同い年の魅力とか、教えてよっ!」
萌郁「年上の、も……教えて」
岡部「それは言っただろう。年上は包容力、同い年は恋愛の価値観が近い同士で」
鈴羽「他には!?」
岡部「ほ、ほか!?」
鈴羽「うんっ、ほかにはなんかないの?」
萌郁「私も、他の、知りたい……」
岡部「きゅ、急にそんな事を言ってもだな」
鈴羽「一番の?」
岡部「俺が年上と同い年が好きな理由でもある」
萌郁「聞きたい」
岡部「どうしてもか?」
鈴羽「あたしも聞きたいなあ」
岡部「そうか、では覚悟して聞くがいい!」バサッ
萌郁・鈴羽「「……」」ゴクリ
萌郁「えっ?」
鈴羽「そ、それって、つまり……」
岡部「ふ、フゥーハハハ! これは最重要機密に値する情報だ。口外すれば命はないものだと思え! では、さらばだ!」
バタン
鈴羽「……」
萌郁「……」
鈴羽「桐生萌郁」
萌郁「……なに?」
鈴羽「言っとくけど、謙るつもりはないよ?」
萌郁「私も、……ない」
鈴羽「あはははっ」
萌郁「……ふふっ」
終わり
読んでくれた人、ありがとニャンニャン
自分が惚れた相手なら年齢なんて関係ないよね!
Entry ⇒ 2012.06.16 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
岡部「ラボメンガールズを抱きしめて愛してると囁いたらどうなるか」
紅莉栖「助手じゃねーし、なによ?」
岡部「ちょっとこっちに来い」
紅莉栖「はあ?なんでよ」
岡部「いいから、早く来い。クリスティーナ」
紅莉栖「ティーナって言うな。もう、何なのよ」テクテク
紅莉栖「ほら、これでいい?」
ぎゅっ
紅莉栖「ふえ?」
岡部「……紅莉栖、愛してる」
岡部「愛してる、紅莉栖」
紅莉栖「………」
紅莉栖「はああああああああ!!!?」
紅莉栖「な、なななな、な、なにを言っとるんだお前は!?」アセアセ
岡部「紅莉栖……」
ぎゅっ
紅莉栖「はうっ……」
岡部「……愛してる」
紅莉栖「わ、私も……」
ぎゅっ
紅莉栖「私も岡部の事が大好きっ!あ、愛してるんだからな!」
紅莉栖「う、うん……まさか岡部の方から告白してくるなんて思わなかった」
岡部「あ、ああ」
紅莉栖「えへへ……」
岡部「………」
岡部(……バカな)
岡部(想像以上にクリスティーナの好感度が高い……なぜだ)
岡部(……事の始まりはダルだった)
岡部(奴め、自分は美人の彼女を持ってるくせに、事あるごとに俺の事を腐れリア充だのリアルギャルゲ主人公だのと罵るのだ)
岡部(毎日罵られ続けた俺はついに限界を迎え、ダルに向かってこう言った)
岡部(そこまで言うなら俺が腐れリア充リアルギャルゲラノベエロゲ主人公だと証明してみせろ、と)
岡部(それを聞いたダルが提案した検証方法がこれだ)
岡部(ラボメンガールズを抱きしめ、愛してると囁いたらどうなるか)
岡部(売り言葉に買い言葉……俺はその提案に乗った)
岡部(この検証方法で三人以上脈ありな反応をすればダルの勝ち。それ以外なら俺の勝ち)
岡部(紅莉栖、萌郁、鈴羽は出会って間もない。まゆりは幼馴染みだし、フェイリスがそんな事にウブな反応をするとは思えない。ルカ子に関しては男だ。俺は自分の勝利を信じて疑わなかった)
岡部(あの時の俺に言ってやりたい、迂闊な事をするなと!)
紅莉栖「岡部には、その……まゆりや漆原さんが居るから、私から告白しないって決めてた」
岡部(ルカ子は男だ……)
紅莉栖「でもっ!」
ぎゅっ
岡部「っ!」
紅莉栖「岡部から、あなたからの告白なんだから、仕方ないよね……ふふっ」
紅莉栖「あ、でも、両思いになれたからって勘違いするなよっ!」
岡部「勘違い?」
紅莉栖「その……き、」モジモジ
岡部「木……?」
紅莉栖「き、キスは!三回目のデートからなんだからなっ!」
岡部「」
紅莉栖「そ、それまでは手を繋いだり、ハグするまでだから!分かった!?」
岡部「あ、ああ」
検証結果その① 助手
抱きしめて愛してると囁いたら、抱きしめ返されて告白された
――
岡部「……どうしてこうなった」
ダル「一番最初に好感度MAXどころかゲージ振り切ってる牧瀬氏に挑むとか、さすがオカリン!僕たちに出来ない事を」
岡部「うるさい!こ、今回は助手が、紅莉栖がスイーツ過ぎたのが原因なのだ」
ダル「わざわざ渾名を訂正してる辺り、オカリンも牧瀬氏の告白に相当動揺してるお」
岡部「くっ……だがまだ一人目だ!たまたま紅莉栖が俺に、その……こ、好意を抱いてたにすぎん。二人目などありえん」
ダル「あっ、タイムリープはなしだお。あとDメールも。電話レンジ使えないようにしといたから」
岡部「ふ、ふん、分かってる。誰がそんな卑怯な真似をするか。鳳凰院凶真に敗走はないのだ、フゥーハハハ……」
岡部(終わった……)
岡部(紅莉栖に告白された以上、二人目に脈ありの反応されるとまずい……)
岡部(次のラボメンガールズは慎重に選ばなければ……)
岡部(まゆり、ルカ子は危険すぎる。だが、紅莉栖のように一番安全だと思っていたら結果が真逆だった例もある)
岡部(一見、安全に見える指圧師やフェイリスが地雷である可能性もある……)
岡部(ならば……!)
鈴羽「あっ、岡部倫太郎!ちぃーすっ」
岡部「今日は一人で店番か?」
鈴羽「そだよ、店長は綯を連れてお出かけ。んで、あたしがいつも通り一人で店番してるんだ」
岡部「ベンチに座って空を見てるのが店番になるのか」
鈴羽「だってやる事ないんだししょうがないじゃん。お客さん来ないか、店の掃除も終わって、自転車の整備も済まして、やる事ないんだよ」
岡部「そうか」
岡部(大丈夫だ。この軽い感じなら、バイト戦士であれば成功する。ダルよ、勝つのは俺だ!)
岡部「鈴羽、隣いいか?」
鈴羽「えっ?」
鈴羽「君があたしの事、名前で呼ぶなんて珍しいね」
岡部「そうだったか?」
鈴羽「うん、なんか新鮮な感じ」
岡部「そうか、では改めてバイト戦士よ。隣座るぞ」
鈴羽「ちょ、ちょっと待って!」
岡部「な、なんだ?」
鈴羽「もー、なんでわざわざ言い直したのさ」
岡部「……名前で呼んだ方がいいか?」
鈴羽「そりゃあ、いつもの変な呼び名よりはずっといいよ」プイッ
岡部(呼び名を気にしているのは紅莉栖だけだと思っていたが……こいつもか)
岡部「分かった、鈴羽。これでいいか?」
鈴羽「うんっ」
岡部「さて、では隣座るぞ」
鈴羽「うん、……あれ?な、なんか近くない?」
岡部「気のせいだ」
鈴羽「そ、そうかな……うん、そうだね、へへ」
岡部(さて、位置に着いた。あとは検証を開始するだけだが……相手はあの鈴羽だ。下手をすれば迎撃される可能性がある)
岡部(隙を見計らって素早く、行動しなければ……)ゴクリ
岡部「……」
鈴羽「……」ソワソワ
岡部「……」ジー
岡部(鈴羽の動きを見ろ。隙を、隙を見つける……)
岡部「……」ジー
鈴羽「ね、ねぇ。岡部倫たr」
岡部(今だ!)
ぎゅっ
岡部(抱きしめたいなあ、鈴羽ぁ!!)
むぎゅー
鈴羽「えっ、ちょっ、岡部倫太郎!?ど、どしたの?」
岡部「鈴羽……」
鈴羽「あっ、……」ピクッ
鈴羽「み、耳元で喋らないでよ……な、なんかこそばい」
岡部「愛してる」
鈴羽「えっ?」
岡部「鈴羽、お前を愛してる」
岡部(この反応……大丈夫だ。紅莉栖の時と違う!いける!)
岡部「鈴羽……」
ぎゅっ
鈴羽「やっ、だ、ダメだって、ここ、外だよ……?」
岡部「愛してる……」スズハノオサゲニユビヲカラメル
鈴羽「ほ、本気……?」
岡部「俺は、お前を……」
鈴羽「嬉しい!オカリンおじさんっ……!」ガバッ
岡部「えっ……?」ドサッ
岡部(押し倒された……?)
鈴羽「えへへ、なあに?オカリンおじさんっ」
岡部「お、おじさんは止めろと言っただろう」
鈴羽「ごめん、でもなんだか興奮しちゃって」ハアハア
岡部(コーフン?あれ?なんでこの娘、息が荒くなっているのだ?)
鈴羽「安心して、オカリンおじさん」ハアハア
岡部「だ、だからおじさんは止せと言って」
鈴羽「未来じゃ26歳差なんて特に問題ないから!」ハアハア
岡部「は?」
鈴羽「父さんは反対するかもしれないけど、多分母さんはあたしの味方だから安心して!」ハアハア
岡部「だ、だから何の話だ……」
鈴羽「あたしね、物心付いた時からずっと、ずっと……オカリンおじさんが大好きだった」
岡部「……えっ」
鈴羽「でも、26歳も年が違うし、オカリンおじさんはあたしの事をずっと子どもだと思ってたから……」
鈴羽「でも違った!オカリンおじさんは、あたしを異性として意識してくれた!」
すごくいい
岡部「おい!なぜ俺の白衣を脱がすのだ!?」ジタバタ
鈴羽「えへへ、無駄だよ。オカリンおじさん。未来でもあたしはオカリンおじさんに腕相撲で負けた事がなかったからね」
岡部「す、鈴羽!?ま、待て!待つんだ!これ以上はマジでヤバい!」ジタバタ
鈴羽「もー無駄だって。それに据え膳食わなきゃなんとやらってね。オカリンおじさん、覚悟ー!」ガバッ
岡部「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
――
鈴羽「んっ……ふぅ」
岡部「」ビクンビクン
鈴羽「えへへっ……オカリンおじさんっ」ダキッ
岡部「はぅ」
鈴羽「……大好き」
岡部「うっ、あ……」
鈴羽「あはは、やっぱりオカリンおじさんって体力ないねー」
鈴羽「まっ、これからは毎日あたしとトレーニングするから問題ないか。ねっ、オカリンおじさん」
岡部「」ピクッピクッ
検証結果その② バイト戦士
抱きしめて愛してると囁いたら、襲われた
ダル「……」
岡部「あ、あの、だな」
ダル「もちろん……責任、取るよな?」
岡部「いや、その……」
ダル「お?」ダルノコノテガマッカニモエル!
岡部「む、無論だ!フゥーハハハ、は、は」
ダル「んで、次は誰いくの?」
岡部「ま、まだやるのか!?」
ダル「もうこの際、オカリンには自分の鈍感さを自覚してもらう必要があるお。じゃないとさらなる犠牲者が出るお」
岡部「……」
岡部(失敗した失敗した失敗した俺は失敗した失敗した失敗した失敗した失敗した鈴羽と性交した失敗した失敗……)
岡部(……次はよく考慮した上で選ぶ。まゆりとルカ子は除外だ。あまりに危険すぎる)
岡部(そうなると残りは萌郁か、フェイリスか……)
岡部(萌郁は表情から感情が読めんし、メールの文体もあれだから俺をどう思っているのか分からん……)
岡部(フェイリスの奴もあまり読めんが、俺にじゃれてくるのはフェイリス・ニャンニャンというペルソナを被っている際の設定だ。鳳凰院凶真というペルソナを被る俺にはよく分かる)
岡部(ならば、奴の正体である秋葉留未穂が俺の事を想っている事はないだろう)
岡部(よし、次の相手は決まった)
フェイリス「おかえりニャさいませ、あっ、凶真だ!今日はダルニャンと一緒じゃないのかニャ?」
岡部「ああ、たまには一人で来るのも悪くないかと思ってな」
フェイリス「ニャニャ~ん♪やっと凶真もフェイリスの魅力に気づいたのかニャ?嬉しいニャン!」
ぎゅっ
岡部「ええい、離れろ猫娘!」ブンブン
フェイリス「ウニャ~凶真はなかなかデレてくれないのニャン」
岡部(読み通りだ。フェイリスは自分からスキンシップしてくるような奴だ。こいつに抱きしめて愛してると囁いたところで大した反応はしないだろう)
フェイリス「フニャ?今日あと30分くらいで上がる予定だニャン」
岡部「ふむ、そうか」
フェイリス「それがどうかしたのかニャ?」
岡部「ああ、少しお前に用があってな。終わった後、少しいいか?」
フェイリス「フェイリスに用……?ま、まさか凶真、奴が復活したのかニャ!?」
岡部「ああ、今回は少々厄介でな。フッまさかこの俺が猫娘の手を借りねばならんとはな」
岡部(……奴ってなんだ)
フェイリス「ニャるほど、確かに奴に関しての会話はここでは危険だニャ……結界張った聖域で話すのが安全ニャン」
岡部(聖域ってどこだよ……)
岡部「ああ、そういう事だからまた後ほど打ち合おう」
フェイリス「了解だニャ……」
岡部「ふぅ」
岡部(……いけるな)
フェイリス宅
フェイリス「ささっ、凶真!ゆっくりしていくニャン」
岡部「お、お邪魔します」
岡部(……どうしてこうなった)
フェイリス「さあ、凶真。話すニャ!ここなら高度な結界が張っているから敵に感づかれる心配はないニャン」
岡部(結界の張った聖域……つまりフェイリスの家か)
岡部「あ、ああ。そうだな、何から説明しようか……」
岡部(……ちょっと待て、ここで検証をするのか?)
フェイリス「凶真……奴の復活は世界の終わりを意味してるニャ。フェイリスも力を貸すニャ!」
岡部(フェイリスの母親は今日はまる一日中留守にしているらしい)
フェイリス「凶真……?」
岡部(つまり、フェイリスと二人きり……)
フェイリス「………」トテトテ
岡部(どうする?ここは引くか?あまりにこの状況は危険すぎる。迂闊な事をすれば……)
フェイリス「……」ジー
岡部「って、うわ!?フェ、フェイリス!?いつの間に目の前に!?とううか近いぞ!」
フェイリス「フニャ~……ニャるほど。凶真の目的、しかと見極めたニャ!」
ぎゅっ
岡部「えっ?」
フェイリス「凶真……」ボソ
岡部「こ、こら、耳元で喋るなっ、と、吐息がかかって」
フェイリス「あむっ……」
岡部「はひっ!?」ビクン
フェイリス「ひょうまぁ……」ハムハム
岡部「み、耳たぶを、や、やめ……」
フェイリス「んっ」チュプ
岡部「はぅ」
フェイリス「凶真……愛してる」
岡部「!?」
フェイリス「フェイリスは凶真の事、愛してる」ぎゅっ
岡部(ば、馬鹿な!?なんだよこれ……なんだよこれ!!)
フェイリス「凶真は、フェイリスの事、どう思ってるのニャ?」
岡部「ど、どうって……」
フェイリス「ニャフフ、ここ赤くなってるニャン」ツンツン
岡部「つつくな!くっ……」
岡部(しまった……確かフェイリスは相手の考えを読む事ができると言っていたな)
岡部「なっ」
フェイリス「もうっ、凶真が悪いんだニャン。フェイリスを出し抜こうなんて100年早いなニャン」フフン
岡部「ぐぬぬっ……」
フェイリス「……でも、冗談っていうのは冗談だけどね」ボソ
岡部「何か言ったか?」
フェイリス「ニャーんでもないニャン。ニャハ、凶真は修行が足りないのニャン」
岡部「くっ」
岡部(……まあいい、これで一応フェイリスはなしだ)
岡部(だが、やられっぱなしでは鳳凰院凶真の名が廃る!)
岡部(これから先は検証ではなく、俺個人の仕返しだ。よって手段は選ばん!)
岡部「フェイリス」
フェイリス「ウニャ?ニャーに、凶真。いまから仕返しをしようとしたって無駄だニャン♪フェイリスには凶真の考えが手に取るように分か――」
岡部「では、秋葉留未穂で岡部倫太郎の考えは読めるか?」スッ
留未穂「あっ!か、勝手に猫耳取らないでよっ」
岡部「留未穂……」ぎゅっ
留未穂「ふぇ?」
岡部「岡部だ」
留未穂「えっ?」
岡部「今はただの岡部倫太郎だよ、秋葉留未穂」
留未穂「岡部、さん……」
岡部「ああ、そうだ」
留未穂「ど、どうして抱き付くの?」
岡部「……」ペロッ
留未穂「ひゃい!?」ビクン
岡部「……仕返しだ」ペロッペロッ
留未穂「ん、やっ、く、首筋はだめっ、こ、こそばいよぉ」ビクン
留未穂「そ、そういう問題じゃないよ」ビクン
岡部「ふふっ、お前も顔が真っ赤だな」フニフニ
留未穂「ひっ、ひっはらないへ~」
岡部「柔らかいな」フニフニ
留未穂「ひゃう……」
岡部「……留未穂」
留未穂「な、ま、まだやるの?」
岡部「愛してる……」ボソ
留未穂「っ!」
留未穂「り、倫太郎、さん……」キュン
岡部「……ふふっ」
留未穂「ふえ?」
岡部「冗談だ。さて、仕返しもこれくらいしてや――」
ちゅっ
留未穂「んっ……」
岡部「んむっ!?」
留未穂「ぷはっ、ふふっ、仕返しのし、か、え、し、だよ」ペロッ
岡部「……お前には適わんな」
検証結果その③ フェイリス
抱きしめて愛してると囁こうとしたら、抱きしめられて愛してると囁かれた
検証結果その④ 秋葉留未穂
ひたすらいちゃついた
――
岡部「ふふん、どうだ?ダル」ドヤァ
ダル「……なんでドヤ顔なの?」
岡部「フェイリスは『なし』だった。そうだろ?」
ダル「なし、というか先読みされるなんて予想外すぐる……つーか、オカリン。フェイリスたんに何キスしてんだお、僕の拳が光って唸るお?」
岡部「違うなあ、ダル。間違っているぞ!」ビシィ
ダル「なん、だと?」
岡部「俺がキスしたのはフェイリスではない!秋葉留未穂だ!フゥーハハハ!」
ダル「だめだこいつ……」
岡部(残っているのは、まゆり、ルカ子、指圧師の三人か)
岡部(今までまゆりとルカ子を避けていたが……俺の考え過ぎではないか?)
岡部(まゆりはあくまでも俺の幼馴染みで人質であるし、ルカ子は弟子だ。二人が俺を想っているなんて、少し自意識過剰ではないのか?)
岡部「ふむ……では次はあいつの所に行くか」
ルカ子「あっ、岡部さんっ!こんにちは」ペコリ
岡部「岡部ではない!鳳凰院凶真だと言ったら何度分かる」
ルカ子「す、すみません!凶真さん」
岡部「まあ、いいルカ子よ。それより今日は新しい修行をするぞ」
ルカ子「あ、新しい修行ですか?分かりました。直ぐに五月雨を持ってきます」
岡部「待て、ルカ子。五月雨はいい」
ルカ子「えっ?でも修行をするのでは……」
岡部「今日の修行は五月雨を使用せずにするものなのだ」
ルカ子「そ、そうだったんですか」
岡部(それに慕ってくれているとは言っても師弟関係としであり、決して恋愛感情などではない筈だ)
ルカ子「凶真さん、その新しい修行というのはどういう内容なんですか?」
岡部「うむ、五月雨を使った今までの修行は言わば外面を鍛える為の修行だ。しかし、今日行う修行は内面、つまり精神を鍛える修行なのだ」
ルカ子「精神を、鍛える修行……」ゴクリ
岡部「ルカ子よ、お前は毎日の鍛錬のお陰で確かに強くなった。だがしかし!まだその内面には不安な要素が残っている」
ルカ子「僕の内面にある不安な要素……」
岡部「今日の修行でお前のその要素を取り除く。いいな?」
ルカ子「は、はい!」
ルカ子「……」ゴクリ
岡部「ではルカ子よ!まずは俺の目の前まで来い」
ルカ子「はいっ!」スタスタ
岡部「よし、ではそのまま目を瞑れ」
ルカ子「こ、こうですか?」パチ
岡部「うむ、それでいい」
岡部(これで条件は全て揃った。これより検証を開始する!)
ぎゅっ
ルカ子「ふぇ?」
岡部「ルカ子……愛してる」
ルカ子「ええ!?」
岡部「俺は、お前を愛してる」ムギュー
ルカ子「あ、あの、その、ぼ、僕は」アセアセ
岡部(まあ、確かにいきなり同性に愛してるなどと言われたら動揺するか……どうやらルカ子もこの反応だと『なし』だな)
ルカ子「ぼ、僕はやっぱり受けがいいです!」
岡部「えっ」
岡部「う、うしろ?」
ルカ子「あっ、でも岡部さんが受けがいいって言うなら攻めでもいいですよ?ただ、前はあまり使った事がないのでちゃんとイけるかどうか……」アセアセ
岡部「」
ルカ子「あ、あの、ちゃんとローションとかは僕が持ってるので安心して下さい!初めてだと、やっぱり最初は辛いと思うので……」
岡部「」
ルカ子「ぼ、僕は一人でシててもうすっかり馴染んでいるので、いつでも岡部さんを受け入れますよ?えへへ」
岡部(あ、あれ、おかしいな……ルカ子を抱きしめてるとさっきからルカ子の何か固いものが俺の五月雨をつついてる)
ルカ子「んっ、はあ、はあ……は、初めては僕のお部屋で良いですか?」ユサユサ
岡部「る、ルカ子?なぜさっきから腰を揺らしているのだ?」
ルカ子「はぅ、んっ、そ、その方がい、色んな道具とかありますから、んっ、岡部さんも、はあ、はあ、きっと喜んでくれると、……うっ」
グチュ
岡部「……」
岡部「お、おかしいな、なんがスボンが湿ってる。残尿か?いやだなあーフゥーハハハ、は、は、は」
ルカ子「ふぅ…あ、また、くるっ…うっ」
ビチョ
岡部「……」
ぎゅっ
岡部「ぬあっ!ルカ子、な、何をする!?」
ルカ子「な、ナニって……はぅ、岡部さん大胆です」
岡部(こいつの恥じらいの基準が分からない……)
ルカ子「岡部さん、岡部さん」ユサユサ
岡部「だ、だから俺の股関にお前のをこすりつけるなっ」
岡部(は、袴の間からルカ子の五月雨がはみ出て……)
ルカ子「岡部さん、僕も岡部さんの事、愛してるます……」ユサユサ
岡部「ルカ子……」
ルカ子「岡部さん……うっ」ドビュ
岡部「……」ビチャ
検証結果その⑤ ルカ子
抱きしめて愛してると囁いたら、ヘッドショットされた
――
岡部「」
ダル「オカリン……」
岡部「何も言うな」
ダル「……現時点で三人以上。つまり僕な勝ちだお」
岡部「違うなダル」
ダル「お?」
岡部「貴様が提示したのはラボメンガールズを対象とした検証だ。つまりルカ子は含まれていない」
ダル「まあ、確かそうだお。でもそれだとオカリンがるか氏に検証した意味なくね?」
岡部「………」
岡部「つ、次だ!次の検証に移る!」
岡部(どちかか一方でも脈ありの反応をすれば俺の負け、か……)
岡部(俺は諦めない。最後まで抗い続ける)
岡部(次の相手はもう決まっている)
岡部(閃光の指圧師、桐生萌郁……)
岡部(俺を想っているとは思えないが)
岡部(……行くか)
ガチャ
萌郁「……」
岡部「うむ、来たか。指圧師よ」
萌郁「……」カチカチ
ブーブー
『こんちは(^o^)岡部くん(^^ゞ私に用事ってなにかな?(・・?』
岡部「相変わらずだな貴様は……口で話せ」
萌郁「……何か、用?」
岡部「まあ、大した用事ではないのだが」
萌郁「……」カチカチ
ブーブー
『ふふっ(^o^)用事って、もしかしてお姉さんと二人きりになりたかったとか?(^_-)岡部くんって、意外と大胆だね(>_<)』
岡部「……ああ、そうだ」
萌郁「………えっ?」
萌郁「……っ」カチカチ
ブーブー
『もうヽ(*`Д´)ノ岡部くん!お姉さえをからかっちゃダメだぞ?('-^*)ok』
岡部(このメールの態度なら特に行為を抱いている様子はない……いける!)
岡部「萌郁……」
ぎゅっ
萌郁「あっ……」
岡部「……愛してる」
萌郁「えっ」
岡部「俺はお前を愛してる、萌郁」
ブーブー
岡部「……」
萌郁「メール、見て……」
岡部「生憎だがこの体勢ではケータイを見れないな」ぎゅっ
萌郁「あっ……」
岡部「……」
岡部(さて、どうなる……?表情は特に変化ない。紅莉栖や鈴羽たちのような反応もない)
萌郁「……」
岡部(よし、勝ったな)
萌郁「わ、わた、し……うぅ」グスッ
岡部「なっ!?」
萌郁「私、も……岡部くんが、好き」
萌郁「岡部くん、が……私の事、好きになってくれるなんて」グスッ
岡部「な、何故泣く!?」
萌郁「分からない……嬉しい、から、かな?」グスッ
岡部「も、萌郁……」
萌郁「それに、誰かに……愛してるって、言われたの、岡部くんが初めてだから」
ぎゅっ
岡部「はぅ……」
岡部(ま、まずい!この感触はマズいぞ!早く離れなければ我が右腕が暴走してしまう!)
萌郁「もう、遅い……」ムギュー
岡部「おうふ」
萌郁「最初に、抱き付いてきたのは……岡部くん、でしょ?」
岡部「た、確かにそうが……」
萌郁「もっと、こうしていたい……岡部くん、と、ずっと」ムギュー
岡部「あぅ」
萌郁「岡部くん、岡部くん、岡部くん、岡部くん……」
ドサッ
岡部(ま、まずい!?押し倒された!このままでは鈴羽の二の舞に……)
岡部「くっ、俺は同じ轍は踏まん!」グルン
萌郁「あっ」ドサッ
岡部(よし形成逆転だ。上を取った!あとは起き上がって離れれば)
ガチャ
Mr.ブラウン「おい、岡部!さっきからドタバタうるせいぞ!?一体なにやって……」
岡部「あっ」
萌郁「あっ」
Mr.ブラウン「……わ、わりぃ、邪魔したな」
バタン
アア、タダノプロレスゴッコダ。サア、ナエジャマシチャイケナイシオトーサントデカケルカ
ワーイ
萌郁「………」
岡部「………」
萌郁「えい……」グルン
岡部「ぬわっ!?」ドサッ
萌郁「これで、問題ない……よね」
岡部「ま、待て萌郁、早まるな!これはその、検証だったんだ!」
萌郁「……えっ?」
岡部「確かにお前は大切なラボメンだ!掛け替えのない仲間だ!だが、その、さっき言った愛してるという言葉は……」
ちゃっ
岡部「んむっ!?」
萌郁「んっ、岡部くんが……私を、大切にしてくれるなら……問題、ない」
萌郁「だから続き……」ヌギヌギ
岡部「待て!それ以上はダメだ!」
萌郁「続き……」
岡部「だ、だから!」
萌郁「……だめ?」
岡部「………」
検証結果その⑥ 萌郁
抱きしめて愛してると囁いたら、押し倒されて依存された
――
岡部「失敗した失敗した失敗した性交した失敗した性交した失敗した性交……」ブツブツ
ダル「オカリン、これで分かったでしょ?自分がリアル鈍感ラノベギャルゲ主人公の腐れリア充だって」
岡部「……ああ」
ダル「やっと自覚したか」
岡部「ああ。お前の言うとおりだった……俺の負けだ。煮るなり焼くなり好きにしろ」
ダル「ん?いま好きしていいって言った?」
岡部「……お前、実は両刀とか言うなよ」
ダル「ショタや男の娘は余裕だけどオカリンはノーサンキュ!だお」
岡部「安心した」
岡部「無茶な要求は止めろよ」
ダル「はい、これ着けて」スッ
岡部「これは……タイムリープマシンのヘッドセット?」
ダル「オカリンには検証前の2日前に戻ってもらうんだお。今回の検証でオカリンが悔い改めて、これからは無自覚にフラグを乱立する事はなくなると思われ」
岡部「ダル……」
ダル(まあ、本音は今回の検証が牧瀬氏達にバレたら収拾つかなくなって僕にまで被害が及ぶから、それを避けるためだけど……)
ダル「さあ、オカリン。行ってこい。行ってリア充と自覚して安易なフラグ乱立を止めるんだお」
岡部「ああ、分かってる。ありがとう、ダル」
ダル「準備はできてる。いつでも跳べるお」
岡部「では、行ってくる。跳べよおおおおおおおお!!」
岡部「ぐうっ、……はあ、はあ」
岡部(今日の日付は……検証を行う前だ。よし、タイムリープは成功だ!)
まゆり「ど、どうしたの?オカリン、息が荒いけど……大丈夫?」
岡部「まゆりか、ああ。問題ない。少し機関からの攻撃を受けただけだ」
まゆり「よかった~いつものオカリンだ♪電話に出た瞬間急に顔色が悪くなったから、まゆしぃ心配したよ」
岡部「済まないな、心配をかけて」ポンポン
まゆり「えへへっ、オカリンが元気ならそれでいいのです」
まゆり「……? どうしたのオカリン」
岡部(まあ、いまさら試すつもりはないがな。大体、まゆりに抱き締めて愛してるなど……)
岡部「うん?」
まゆり「ん~?」
岡部(愛してる云々は兎も角、抱き締めるくらいなら、ガキの時散々していたな)
岡部「ふむ、まゆりよ。ちょっといいか?」
まゆり「なあに、オカリン」
ぎゅっ
まゆり「ほえ?」
岡部「あっ、すまん。少し確かめたい事があってな。嫌、だったか?」
まゆり「ううん、嫌じゃないです……えへへ」ムギュ
岡部「……ふむ」
まゆり「その、確かめたい事って、まゆしぃを抱き締めたら分かるの?」
岡部「まあ、な」
岡部(まゆりの顔が少し赤い……抱き締めてるとまゆりの鼓動が早くなってるのも分かる)
まゆり「きょ、今日のオカリンは少し大胆なのです」モジモジ
岡部(まゆりも俺の事を……好き、なのだろうか)
サッ
まゆり「あっ……」
岡部(ダルに自重しろと言われたばかりだからな。それに検証の経験もあ。これ以上、抱き締めるのはまずいだろう)
まゆり「んー……」
岡部(くっ、あからさまに不満そうな顔をしている……)
岡部「まゆり」
まゆり「なあに」
岡部「その、お前は俺の人質だ」
まゆり「オカリン……?」
岡部「そして大切な幼馴染みだ」
まゆり「!?」
まゆり「うんっ!まゆしぃは、これからもずっとオカリンの人質なのです」
岡部(まゆりは、もしかしたら俺の事が好きなのかもしれない)
岡部(だが、俺自身がまゆりの事をどう思っているか分からない以上、その想いに答える事はできない。それはあの検証で知った他のラボメンガールズも想いに対しても同じだ)
岡部(これからは彼女たちの想いを考え、接していかなければならない)
真面目というかヘタレだなオカリン
――
岡部「ダルよ、お前のお陰で俺は気付いた」
ダル「急にどしたん」
岡部「俺、リア充だったんだな……」
ダル「……えっ、なに?自慢っすか」
岡部「そうではない!俺は気付いたのだ!ラボメンガールズたちの想いに!」
ダル「えっ?オカリンいつから鈍感ラノベ主人公から狼系青年誌主人公にクラスチェンジしたん?」
岡部「あの検証の結果は無知だった俺が築いてしまった歪み……それをこの鳳凰院凶真が断ち切る!」バサッ
岡部「違う!そうではない。ラボメンガールズたちとの関係を再構築するのだ!」
ダル「つまり……どういう事だってばお」
岡部「……今、俺とラボメンガールズとの関係は非常に危ういバランスを保っている」
ダル「というと?」
岡部「俺が抱き締めて愛してると囁いた場合、そのまま押し倒されるレベルの危うさだ」
ダル「抱き締めて愛してると囁く時点でバランスも糞もないだろ常考……天秤に錘のせるどころか爆弾投げ込んでふっとばすレベルだろ」
ダル「どゆうこと?」
岡部「例えば、まゆりは俺にとって人質というポジションだ」
ダル「いや、幼馴染みポジションだろ」
岡部「人質というポジションで恋愛感情が育まれるか?否!断じて否!まゆり自らが人質ポジションだという事を改めて自覚すれば、これ以上フラグは立たない!」キリッ
岡部「ふんっ、既に実証済みだ!」
ダル「えっ、マジで?」
岡部「今日、まゆりに試したら昔のように人質の関係に戻った」
ダル「昔のようにって、どんな?」
岡部「どんなって、手を繋いで外を色々と出歩いただけだ」
ダル「………はっ?」
岡部「勘違いするなよ。人質が逃げないよう監視するのが俺の役目だからな。昔はそうして手を繋いで逃げられないようにしていたのだ」
ダル「………」
岡部「あと、家まで送ったりもしたな。人質だから、最後まで監視するのは当然だからな」
ダル「Oh……」
岡部「フゥーハハハ!いける、いけるぞ!この調子で他のラボメンガールズも自分の立場を改めて理解させてくれる!」
ダル「ここまで鈍いとは……やはり鈍感か」
――
ガチャ
岡部「紅莉栖!話がある!」
紅莉栖「なによ、急に大声出すなっ!……って、あれ、名前呼び?」
岡部「紅莉栖、お前は俺の助手だ!」
紅莉栖「だ、だから助手じゃないと言って」
岡部「いいや、助手だ!貴様が何を言おうとも、牧瀬紅莉栖は俺の助手なのだ!一生な!逃れることはできん!」ビシィ
紅莉栖「お、俺の助手!?そ、それに一生って……」
岡部「それだけだ。これからも俺の助手として励むがいい。ではな!」
バタン
紅莉栖(俺の助手=俺の嫁? ……つまり一生、俺の助手=一生、俺の嫁?)
紅莉栖「岡部の、嫁……」
紅莉栖「ふふっ、」
紅莉栖「ふぅーははは!」
――
ブラウン管工房前
鈴羽「あっ、ちぃーす。岡部倫太郎」
岡部「鈴羽か、ちょうどいい」
鈴羽「あれ? 君があたしの名前で呼ぶなんて珍しいね、へへ」
岡部「お前はラボメンだ!」
鈴羽「えっ?そ、そうだけど急にどしたの」
岡部「そして俺にとって大切な仲間だ」
鈴羽「た、大切な、仲間……」
岡部「時間の差など関係ない。どの時代においてもお前は俺の大切なラボメンだ。それを忘れないように、以上だ!ではな」サッ
鈴羽「あっ!ちょ、もう行くの?……ちぇ、暇だったから話相手が出来たと思ったのに」
鈴羽「……時間の差なんて関係ない、か」
鈴羽「えへへ……」
鈴羽「26歳差でも受け止めてくれるよね……オカリンおじさんっ」
――
フェイリス「ニャニャ、凶真!奇遇だニャン。仕事が終わったから、今からラボに向かうつまりだったニャン」
岡部「ちょうど良かった。お前を探していたところだ」
フェイリス「ニャ? フェイリスにご用かニャ? もしかして告白かニャン♪」
岡部「先に謝っておく、済まない」
フェイリス「ウニャ?ニャンで……」スッ
留未穂「わ、私の猫耳があ!お、岡部さん、何するの!?」
岡部「フェイリス……いや留未穂よ」
留未穂「えっ?」
岡部「ラボメンの称号はフェイリス・ニャンニャンにのみ与えられたものではない。お前も、秋葉留未穂も俺にとって掛け替えのないラボメンであり、大切な仲間だ」
留未穂「きゅ、急になにを……」
岡部「その事を肝に銘じておくがいい。用事はそれだけだ。ではな」サッ
留未穂「あっ!猫耳返してよっ……行っちゃった」
留未穂「……ふふっ」
留未穂「……秋葉留未穂があなたにとって大切であるように、私にとってもあなたはとっても大切な人なんだよ? 岡部さん」
――
ルカ子「あっ、岡部さん!こんにちは」
岡部「岡部ではない」
ルカ子「す、すみません!凶真さん」
岡部「うむ、そうだ。ルカ子よ、たまに俺とお前がどういう関係か忘れていないか?」
ルカ子「ええ!? ど、どういう関係って僕っ凶真さんは、その……」モジモジ
岡部「師弟関係だ!」
ルカ子「は、はい!凶真さんが師匠で、僕がその弟子です」
岡部「そうだ!お前はラボメンであり、そして同時に俺にとってたった一人の弟子……唯一無二の存在だ」
ルカ子「ぼ、僕が岡部さんにとって唯一無二の存在!?」
岡部「ああ、そうだ。その事を余りお前は自覚してなさそうだったから。改めてそれを教えにきたのだ」
ルカ子「唯一無二……」
岡部「ではルカ子、また日々の修行を続けるがいい。さらばだ!」サッ
ルカ子「は、はい!ご教示ありがとうございました!」ペコリ
ルカ子「……唯一無二、岡部さんにとっての」
ルカ子「そ、それってつまり……お嫁さん?」
ルカ子「……はぅ」ムクムク
――
萌郁「あっ、岡部、くん……」
岡部「萌郁……ちょうど探していたところだ。お前で最後だからな」
萌郁「……」カチカ
岡部「萌郁、お前に改めて伝えておく」
萌郁「………なに?」
岡部「お前は俺たちの仲間だ」
萌郁「……?」
岡部「ラボメンは仲間であり、そしてラボはお前の居場所でもある」
萌郁「っ!? 私の、居場所……」
岡部「そうだ。ラボはお前の居場所でもあるのだ。いつでも顔を見せにくるがいい」
萌郁「岡部、くん……」
岡部「伝えたい事は以上だ。ではな」サッ
萌郁「………」
萌郁「私の、居場所……」
萌郁「ラボは、私の居場所……岡部、くんは、私の居場所……」
――
岡部「フゥーハハハ!どうだダル!見たか!?俺の見事なラボメンガールズとの関係の再構築ぶりを!」
ダル「いやもう見事だお、オカリン」
ダル(そのフラグ建て能力はもう見事としか言いようがないお)
岡部「そうだろ、そうだろ!これも全てはあの検証結果の経験、そしてダル、お前のお陰だ。感謝している」
ダル(あれ?僕、オカリンに全力でフラグ建てろなんて言ったっけ)
岡部「見ておくがいい、数日後には全てが変わっている!まあ、俺にとっては造作もない事だったがな!フゥーハハハ!」
ダル(……帰って由季たんとデートしよ)
岡部「馬鹿な……どうしてこうなった」
まゆり「えへへ、ずっと人質ってことは……まゆしぃはオカリンのお嫁さんになるしかないよね。仕方ないね。えっへへ~♪」
岡部「あ、いや、ずっと人質ってそういう意味では……」
紅莉栖「わ、私から告白するつもりはなかったけど、岡部の方から一生嫁宣言されちゃったら、仕方ないわよね」
岡部「よ、嫁宣言!?し、知らん!知らんぞ俺は!?」
紅莉栖「ふふっ……ママに報告しないと。いつか、パパにも報告できる日がくるかな。ううん、大丈夫。岡部と、倫太郎と一緒ならきっと大丈夫」
岡部「いや、だから嫁宣言なんて……」
ぎゅっ
岡部「す、鈴羽!? きゅ、急に抱きつくでない!」
鈴羽「えへへっ、26歳差なんて未来じゃよくある事だから安心して」
岡部「は、はあ!?」
鈴羽「あたしの時代の父さん達にはまだ報告してないけど、この時代の父さん達にはもう報告しといたから!」
岡部「ど、どういう事だ……」
由季「岡部さん。未来の私たちの娘、よろしく頼むね」
ダル「オカリン、15年後に殺す」
岡部「」
フェイリス「きょーまっ」ダキッ
岡部「こ、今度はフェイリスか!?」
フェイリス「ニャハハハ、凶真お困りのようだニャン」
岡部(っ! フェイリスは他の連中と反応が違う……やはり、俺は間違っていな)
フェイリス「うにゃ……」ジー
岡部「な、なぜ俺の顔を凝視する……何かついているのか?」
フェイリス「もうっ、凶真ってば本当ににぶちんだニャン」
岡部「な、なにをっ!」
留未穂「でも、そんな岡部さんが、私は大好きなんだけどね」
ちゅっ
岡部「なっ」
留未穂「ふふっ」
岡部「こ、今度は誰だ!? 後ろから抱きつくな! 危ないだろ……ん?」
岡部(なんだ? 臀部のあたりに何かを押しつけられてる感覚が……)
ルカ子「岡部さん、岡部さん」ハア、ハア、ハア、ハア、ハア
岡部「る、ルカ子、だと……?」
岡部(で、ではまさかこの臀部を刺激する物体の正体は……!)
ルカ子「ぼ、僕嬉しいです! はあ、僕は、はあ、岡部さんの、くっ、唯一無二……お嫁さんになれるなんて」ユサユサユサユサヨサ
岡部「よ、嫁!?だ、誰がそんな事を」
ルカ子「うっ」ドプッ
岡部「」
つ、突き出すってナニを!?(ハァハァハァ
おまえだよ
岡部(アトラクタフィールドの収束とでも言うのか)
萌郁「……」
岡部「今度はお前か指圧師……」
萌郁「岡部、くん……」
岡部「もういい、好きしろ」
萌郁「んっ……」コクリ
ナデナデ
岡部「……」
萌郁「……」ナデナデ
岡部「何をしているのだ……? 萌郁」
萌郁「岡部くんの、頭……撫でてる」ナデナデ
萌郁「……元気、なさそう、だから」
萌郁「……」カチカチ
ブーブー
『お姉さんが岡部くんを励ましてあげるよヾ(^▽^)ノほら、あたまなでなで~( ´∀`)』
萌郁「なで、なでー……」ナデナデ
岡部「……」
岡部「……ふっ、お前と会って今初めて年上だと実感できたぞ?」
萌郁「……む」カチカチ
ブーブー
『ひど~いΣ( ̄□ ̄)!そんな悪いこにはお仕置きだぞっ('-^*)ok』
萌郁「わしゃ、わしゃー……」ワシャワシャ
岡部「おわっ!? こ、こら!止めろ!」
萌郁「わしゃ、わしゃー……」ワシャワシャ
岡部(これがアトラクタフィールドの収束なら、タイムリープでは結果は変えれない)
紅莉栖「け、けこーんはあんたが大学を卒業してからよね。こ、子供は二人くらい? ま、まあ倫太郎が欲しいって言うなら私も、ど、努力するけど」
岡部(Dメールを送れば、恐らくは今回の事態をなかった事にできるだろう)
鈴羽「26歳差かあ~やっぱり体力は今のうち付けておいた方がよさそうだね! オカリンおじさんの体、持ちそうにないし。それじゃ、早速明日から実技を兼ねた体力作りを二人でしよっか?」
岡部(だが、それは彼女たちの想いに対しての逃げだ)
留未穂「私の王子様なんだから、みんなには簡単には渡さないよ。ねっ、岡部さん♪」
岡部(俺はこいつらの、ラボメンのリーダーなのだ。その俺が仲間の想いから逃げるのか?)
ルカ子「男とか、女とか、そんなのは関係ない。岡部さんは僕にそう言ってくれました!だから、僕はもう性別に捕らわれません。ずっと岡部さんの弟子として、嫁としてお供しますっ」ムクムクムクビンビンカットビング
岡部(逃げだと? あってはならない。そうだ、俺はラボメンNo.001鳳凰院凶真! 逃げなど、ありえん!)
岡部「ふふっ、フゥーハハハ! そうだ! 何を迷っているのだ俺は!」
岡部「まゆりも紅莉栖も鈴羽も留未穂もルカ子も萌郁も! ラボメンが俺に想い向けているのだ! ならばっ! この俺が受け止めなくて誰が受け止めると言うのだ!」
岡部「いいだろう! 貴様たちの想い、全て受け止めてやる!」
まゆり「オカリン!」
紅莉栖「倫太郎……」
鈴羽「さっすが、オカリンおじさん! 悪徳非道だね~」
留未穂「みんな、私は負けないよ?」
フェイリス「譲る気はないニャ!」
ルカ子「凶真、さんっ……」ドプッ!!!
萌郁「岡部くん、と、一緒……これからも、ずっと」
岡部「そうだ! これが! これこそがシュタインズ・ゲートの選択だ!」
終わり
保守してくれた人、読んでくれた人、あるがとニャンニャン
でもこれだけは言わせてくれ。
この世界線のルカ子は早めに去勢すべき
だーりんのまゆしぃ可愛すぎワロワロホスピタル
たった今だーりん全ルート制覇したんだがまゆり可愛すぎるだろ常考
Entry ⇒ 2012.06.14 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
岡部「空から男が!」 ムスカ「私はムスカ大佐だ!」
それを送った途端周りの景色が歪み──
立っていられないほどの目眩
消えた人並み、パタリと止んだ雑踏
混乱して空を見上げれば
”それ”は浮かんでいた
いや、降りてきていた
時が歩むのを放棄したかのように
岡部「空から男が!」
ゴトッ
男「ウグッ・・・」
岡部「な、なんなのだこの男はっ!」
岡部(サングラス・・・首元にはスカーフ・・・そして・・・茶色のスーツ・・・だと?)
男「グ・・・ウゥ」
男「へぁっ!? ここは・・・ら、ラピュタは・・・ラピュタはどうした! どうなった!」
岡部「なぁにを言っている、おい貴様何者だ! なぜい──」
男「私はムスカ大佐だ! 政府の密命を受けてラピュタを調査中だったのだ!」
岡部「なにっ!?」
パカッ
岡部「俺だ! あぁ、ついに機関のエェイジェントに接触した! 奴は奇妙な力を持っている」
岡部「なに、心配するな・・・むざむざやられる俺ではない、分かっている、逃しはしないさ、必ず機関の陰謀を暴いてやる。 エル・プサイ・コングルゥ」
岡部「おい貴様ァ──」
岡部「って、あれ? いないではないか・・・」
ガチャリ
テレビ「秋葉原のラジオ会館に墜落した人工衛星についてはただいま調査中であり──」
岡部「ダル! 大変だ!」
テレビ「付近にも多数の瓦礫などが降ってきていて大変危険な状態となっているため──」
ダル「おー、オカリン! 今秋葉が大変なことになってるみたいすなー!」
テレビ「都は事態が収まるまで付近一帯を封鎖することを決定──」
岡部「さっきメールした通りだ!」
ダル「あぁ、あれっすか、牧瀬紅莉栖が何者かに刺されたとか」
岡部「違う! そうじゃない! ってそっちも大変だがそうじゃないんだ!」
岡部「空から男が降ってきた!」
ダル「はー? またそれっすか、妄想乙! っていうか空から男とか誰得、どうせなら女の子っしょ常考」
岡部「確かに見たんだよ! 俺は!」
ダル「オカリン・・・あなた疲れてるのよ、もういい休め・・・!」
岡部「ダルゥ!」
岡部「あれからずっと探しているがあの男は見つからない・・・」
岡部「やはりあれは幻覚か何かだったというのか?」
岡部「いやいや! あんなリアルな幻覚があってたまるか!」
岡部「@ちゃんで情報を探ってみるか」
1:最近ゲームがつまらない 32
2:全裸にされて放置食らった男だけど質問ある? 69
3:ジョン・タイターってどこいったんだよ 12
4:ID腹筋は正義、夏までにバキバキの体を手に入れろ 345
5:科学者だけど好きな人できたったwwww 8
6:本格的に夏が俺たちを殺しにかかってきてる件 265
岡部「あるワケないか・・・」 ボサボサ
岡部「ハッ! あ、あいつは!」
ムスカ「くそう・・・! ラピュタラピュタラピュタ!」
岡部「おい貴様ァ!」
岡部「貴様・・・この前のことを説明してもらおうか」
ムスカ「何のことかね」
岡部「とぼけるでない、俺は見たのだ! 確かに!」
岡部「貴様が空から落ちてくるのを!」
ムスカ「あれは飛行石の力。 石は持ち主を守り、いつの日にか天空の城ラピュタへ帰る時の道標となる」
ムスカ「私どもの機関はラピュタの調査を行なっていて──」
岡部「そんな・・・バカな・・・」
パカッ
岡部「俺だっ! 機関のエェイジェントに再び接触した!」
岡部「あぁ、奴はやはりとんでもない力を秘めていたようだ・・・」
岡部「そして何より、牙城ラピュタの存在が明らかになった」
ムスカ「なんだと?」
岡部「思った以上に事態は深刻・・・だが心配するな、今回も切り抜けてみせるさ」
岡部「エル・プサイ──」
岡部「コゾーではなぁぁい! 俺は鳳凰院凶真! 世界の支配構造の変革を望むものなり!」
ムスカ「なにぃ?」
ムスカ「言葉をつつしみたまえ! 君はラピュタ王の前にいるのだ!」
岡部「フハハァ! 面白い、貴様は今日からラボメンNo.009だ!」
ムスカ「ラボメン? 聞きなれない言葉だが」
岡部「ラボラトリーメンバーの略だ、貴様には我が研究所の一員となってもらい、我がラボに尽くしてもらう!」
ムスカ「ラピュタ王を使役するなど愚かしいにも程がある。どけ! 小僧にかまってる暇などない!」
岡部「フゥーッハッハッハ! 面白い男どぅあ、気に入ったァ!」
まゆり「オカリントゥットゥルー」
ムスカ「」
岡部「む、まゆりか」
岡部「機関のエェイジェントだ、今ラボへの勧誘を行なっている!」
まゆり「わわー、新しいラボメンさんー?」
まゆり「はじめましてー、ラボメンNo.002、椎名まゆりでーす」
ムスカ「・・・素晴らしい」
岡部/まゆり「ん?」
ムスカ「古文書にあった通りだ! この娘こそ聖なる娘だ!」
ムスカ「小僧! さっきの話、詳しく聞かせてもらおう」
岡部「だから小僧ではなぁぁい!」
ガチャリ
岡部「諸君! 話を聞けぃ!」
まゆり「ダル君、クリスちゃん、トゥットゥルー」
紅莉栖「はろー」
ダル「おぉ、まゆ氏にオカリン・・・ってその人はだれぞ?」
紅莉栖「あら、初めまして、牧瀬紅莉栖です」
岡部「機関のエェイジェントだ。だが改心しラボメンNo.009として──」
ムスカ「お静かに!」
ムスカ「私はムスカ大佐だ、政府の命によりラピュタの調査を行なっている」
ダル「は?」 紅莉栖「え?」
ムスカ「ラピュタ王として君臨し世界を支配するつもりだったが気が変わった」
ムスカ「チンケな研究所だが私の力を貸してやろう!」
岡部「なっ、チンケだとぉ!」
ダル「いや、僕も今初めて見たお・・・類友ってやつ?」 ヒソヒソ
ムスカ「もちろん、私が政府の密命を受けていることもお忘れなく」
岡部「ちなみにニーズヘッグ・ストーンの魔力により飛行能力を有している!」
紅莉栖「はぁ・・・なんだか岡部がもう一人増えたみたい」
ムスカ「このムスカ大佐が来たからにはこのラボの繁栄は約束されたようなものだ」
岡部「見ろこの溢れでるメァーッドを! このやる気を!」
岡部「これこそ我がラボに必要な存在! まさにシュタインズゲートの選択!」
ムスカ「期待してくれたまえ、はっはっはっはっは」
岡部「フゥーッハッハッハ!!」
ムスカ「はっはっはっはっは」
ムスカ「まゆり君、何を作っているのかな?」
まゆり「今度のコミマ用のコスだよー」
ムスカ「コス?」
まゆり「色んなお洋服着てポーズ決めたりするんだー」
ムスカ「ふむ、まゆり君は綺麗な服を着るのが好きなんだね」
まゆり「ちがうよー、まゆしぃは作るのせんも──あれれー、どっか行っちゃった」
ムスカ「来たまえ、ぜひ見てもらいたいものがあるんだ」
まゆり「んんー? わわー、お洋服がいっぱいだー」
ムスカ「君にプレゼントだ、気に入っていただけたかな?」
まゆり「で、でもぉ・・・」
ムスカ「流行りの服は嫌いですか?」
岡部「や、やめろっ! そんなことをしたら秋葉が・・・! 秋葉が血の海になるぞ!」
ムスカ「旧約聖書にあるソドムとゴモラを滅ぼした天の火だよ」
岡部「貴様というやつはぁぁぁ!」
ピッカー ガシャーン
ダル「雷厨乙、そんなん当たるわけないっしょ」 ガスッ ビカァァー \ キラーン /
ムスカ「なっ! ラーマヤーナではインドラの矢とも伝えられているラピュタの雷鎚が!」
紅莉栖「スマブラでブツブツ厨二病発言・・・なんかもう岡部そっくりですね」
岡部「おいクリスティーナ。俺をこんな厨二病と一緒にするでない」
ボシュウゥゥ
ムスカ「くそ~! スネーク何をしている!! 煙幕か!!」
ダル「オカリンの厨二病についていけるとかマジパネェッス」
ムスカ「終点とは上出来じゃないか!! ここへ来い!!」
紅莉栖「はぁ・・・ある意味岡部以上かも」
ダル「オーキードーキー、unk準備だお」
ムスカ「一人では戦えないというのかね、全く君というやつは」
グギャー ギャー
紅莉栖「あぁもうあっちいったりこっちいったり! おとなしくしててよね!」
ムスカ「立てクルペッコ亜種! 鬼ごっこは終わりだ!!」
グェッ グェッ グェッ グェッ グェッ
\ ピカーン /
ムスカ「あーがぁー!! 目がぁ、目がぁー!!」
紅莉栖「・・・静かにして欲しいんですけど」
岡部「フゥーハハハ! 狂気のメァーッドハントゥアー鳳凰院凶真ここに颯爽と登場せりっ!」
ムスカ「目がぁー! あーーー! あー!」
紅莉栖「また五月蝿いのがきた」 ガクッ
ムスカ「この体が金属なのか年度なのか、それすら我々の科学力では分からないのだ」
まゆり「んんー?」
ムスカ「・・・何だこれは! 木の根がこんな所まで・・・一段落したら全て焼き払ってやる」
ムスカ「ここもか、あっ、くそー!」
ムスカ「あった! おー・・・見たまえ、この巨大なライフエネルギーを」 ドヤァ
ムスカ「今からこれを──」 ティウンティウンティウンティウンティウンティウン
まゆり「あー、針に落っこちちゃったねー」
ムスカ「・・・」
岡部「では次は俺の番だな、コントローラーをよこせぃ!」 パッ
ムスカ「何をする! くそー! 返したまえ、いい子だから! さあ!」
岡部「こと・わる!」
ムスカ「まだか! 早くしろ!」
ムスカ「はっはっは」 シャー
ムスカ「はっはっは」 カサッ カサッ
ムスカ「はっはっは」 トポポポポポポ
ムスカ「はっはっは・・・」
ムスカ「3分間待ってやる!」
紅莉栖「カップラーメンくらい静かに作れないんですかあなたは」
ムスカ「安心したまえクリスティーナ君、ちゃんと君の分も作っている」 ピリリッ
紅莉栖「あ、ありがとうござ──じゃなくて、あなたまでティーナって付けないでください!」 シャー カサッカサッ
ムスカ「次はお湯だ!」 トポポポポポポ
紅莉栖「だめだこいつ、早く何とかしないと」
岡部「フゥーッハッハッハ! 見ろ人がゴミのようだ!」
ムスカ「ほう? あっはっは! 人がゴミのようだ! はっはっはっは!」
ダル「ちょ、まじあの二人シンクロしすぎ」
ムスカ「素晴らしい! 700年もの間、王の帰りを待っていたのだ!」
フェイリス「ニャフフ、凶真もムーニャンも高い所がお好きみたいだニャ」
ダル「いや、あれはただ単に厨二病が感染しあってる状態だと思われ」
ムスカ「岡部君、君を誤解していた、許してくれたまえ、君は実に話が分かる男だ」
岡部「おぉかべではなぁい! 俺の真名は、鳳凰院凶真だと何度いえば──」
ムスカ「私も古い秘密の名前を持っているんだよ、岡部君」
ムスカ「私の名前は、ロムスカ・パロ・ウル・ラピュタ」
岡部「長い、却下だ!」
ムスカ「へぁっ!?」
ガチャリ
鈴羽「ちーっす」
ムスカ「なんだ君は。ここから先はラボメンしか入れない聖域なのだ」
鈴羽「え? えーっと・・・あたしもラボメンなんだけど」
ムスカ「これは失礼、入りたまえ」
鈴羽「あたしは阿万音鈴羽、よろしくね?」
ムスカ「私はムスカ大佐だ」
鈴羽「む、ムスカ大佐ぁ!?」
ムスカ「さあ、何をためらうのです、中へお進み下さい」
鈴羽「う、うん」
岡部「みなのもの、宴であーる!!」
まゆり「わーい、お祝いお祝いー」
ダル「ピザうまっ、はふっあつっ!」
ムスカ「今日のために私の好物である赤ワインとカマンベールチーズを用意させて頂いた」
鈴羽「へぇー、美味しそうじゃん!」
ムスカ「はっはっはっはっは、諸君、思う存分味わいたまえ」
紅莉栖「ちょ、私たちは未成年だ!」
岡部「うおっほん・・・ムスカよ、粋な計らいではあるが助手の言うとおりだ」
ムスカ「脅えることはない、紳士の嗜みというやつだよ、さ、まゆり君、ついであげよう」 トポポッ
岡部「えぇーい! 堂々と飲まそうとするなっ!」
マキセクリスノバカー
チョーット ワタシガナニシタッテイウノヨー
ケンカハヤメタマエ
チョ マキセシモアマネシモ オサエテオサエテ
岡部「フッ・・・」
まゆり「ねーねー、オカリン・・・どうしたの?」
岡部「なんでもない、まゆりこそどうした?」
まゆり「なんだか不思議だね、春の頃はオカリンとっても寂しそうだったのに」
岡部「えっ・・・?」
まゆり「ラボはいつも静かで、オカリンのパソコンの音しか聞こえなくて」
まゆり「それが今では ダル君、クリスちゃん、るかちゃん、鈴さん、萌郁さんフェリスちゃん、ブラウン店長さんに綯ちゃん、後ムスカさん」
まゆり「もう大丈夫だね、まゆしぃが人質じゃなくても」
テレビ「爆破の予告があったため、現在運転を見合わせているのは次の路線です──」
一同「えっ」
ムスカ「爆破予告とは・・・せっかくの宴に水をさしてくれたな、品の無いことをしてくれる」
鈴羽「橋田至! ・・・SERNへのハッキングはどうなってるの!?」
ダル「えっ? SERNと直接回線でつながってるお?」
鈴羽「──! みんな! いますぐ・・・!」
鈴羽「・・・ごめん、あたし帰る」
ガチャリ バタン
紅莉栖「なんなの? 彼女」
ダル「ちょ、一体どうしたん?」
ムスカ「これからが楽しい時間だというのに」
まゆり「鈴さーん、途中で帰っちゃうなんて酷いよぉ」
思い浮かんだのは二通の脅迫メール
胸騒ぎ──
紅莉栖「ねぇ岡部? あんた顔色悪いけど──」
バタン ダダダダダダダ カチャカチャカチャ
男A「動くな!」
男B「全員両手をあげろ!」
岡部「え・・・」
コツッ コツッ コツッ コツッ
岡部「お、お前は・・・」
まゆり「萌郁・・・さん?」
萌郁「タイムマシンはSERNが回収する」
紅莉栖「SERN!? どういうこと!?」
萌郁「岡部倫太郎、牧瀬紅莉栖、橋田至、三名は一緒に来てもらう」
萌郁「必要・・・ない・・・」
萌郁「FBFBFBFBFBFBのため・・・」
萌郁「」
萌郁「FBの・・・」
パーン
乾いた銃声
女の手から舞い上がる黒い物体
誰もがその物体から目を離せないでいた
ただ一人を除き
それが銃だと分かる前に──
パーン
男A「ぐぁ!」
ムスカ「あっはっは、私と戦うつもりか」
萌郁「こ、殺せ!」
ガチャ
ガスッゴスッ
男B「ごはっ」
ムスカ「おや? これはこれは天は我らに味方してるのかね?」
ムスカ「これは僅かだが心ばかりのお礼だ、とっておきたまえ」
パーン
男C「がはっ」
岡部「モアッド・スネーク!」 ボシュウウウウウ
シュウウウウ
男D「くそ!」 ダダダダ
男E「く! なんもみえねえ!」
萌郁「殺せ! 殺せぇー!」
ムスカ「逃げるぞ、まゆり君」 ガシッ
まゆり「え? あ、ちょっと──」
ムスカ「バカどもにはちょうどいい目くらましだ」
岡部「ダル! 紅莉栖! お前らも早く!」
岡部「はぁ・・・はぁ・・・ま、待ってくれ」
まゆり「オカリーン・・・大丈夫? 怪我はない?」
岡部「俺は大丈夫だ、まゆりこそ大丈夫か?」
まゆり「まゆしぃなら大丈夫・・・ダル君たち大丈夫かなぁ・・・」
ムスカ「はぐれてしまったものは仕方がない、急ぎたまえ、追手が来るかもしれん」
岡部「なんなんだよあいつら・・・鈴羽も一体・・・」
ムスカ「携帯で連絡を取ろう、私は橋田君に、まゆり君は紅莉栖君、岡部君は阿万音君にかけてくれたまえ」
ムスカ「もっとも、電話に出られる状況であればいいがな」
岡部「くっ・・・!」
ピッピッ
岡部「出てくれ・・・!」
──「な、なんとか・・・阿万音氏とムスカ氏がいなかったら今頃みんちだお・・・」
まゆり「クリスちゃん! 大丈夫!? ねえどこにいるの?」
──「分からない・・・闇雲に逃げてきたから・・・ねえまゆりは大丈夫なの? 岡部は!? 皆は!?」
──「岡部倫太郎! 大丈夫だった!?」
岡部「鈴羽! 無事だったか!」
ムスカ「どうやら皆生きているようだな、携帯をスピーカーモードに切り替え情報を共有するぞ」
ピッ
ムスカ「私はムスカ大佐だ、謎の集団によりラボが強襲された、緊急事態につき私が臨時に指揮をとる」
ムスカ「集団は我々を狙っている、姿を表した瞬間を仕留めろ」
──「ちょっと・・・そんな無茶言わないでよ・・・」
──「詳しく説明すると長くなる、あいつらはラウンダー、SERNの手先だよ」
──「あ、阿万音氏・・・。 あいつらだ。 追手がきたお・・・」 ヒソヒソ
──「ゴメン、後で説明する! 橋田至、逃げるよ!」
ツーツー
岡部「あ、おい!」
──「ねえ、岡部たちどこにいるの? 一人じゃ心細いよ・・・」
ムスカ「○○小の近くだ、しかし我々と合流するより君は警察に行ったほうがいい」
ムスカ「いや待て、やはり御茶ノ水のホテルに戻りたまえ」
──「で、でも・・・じゃあ岡部達は・・・?」
岡部「俺達もなんとか逃げ切ってみせる、紅莉栖も早く逃げてくれ」
──「分かった・・・無茶だけはしないでね?」
ピッ
まゆり「ねえねえ、警察に行ったほうがいいんじゃないかなぁ・・・」
岡部「そんな・・・・・・いや! それよりなんでSERNにバレたんだ!」
ムスカ「橋田君が不用意に打った暗号を解読されたのでは?」
岡部「それは無いはず・・・ダルもハッキングがバレるようなヘマはしてないと・・・」
ムスカ「・・・ともかく、これを」 カチャ
岡部「じゅ、銃・・・っていうか、お前も何者なんだよ・・・」
ムスカ「私はムスカ大佐であり、ラピュタ王として君臨する男だ」
ムスカ「正確にはラピュタ王として君臨するはずだった、だがな」
まゆり「ねぇねぇ、まゆしぃ達どうなっちゃうの・・・?」
岡部「心配するなまゆり、お前は俺が命に変えても守ってやる!」
ムスカ「言葉を慎みたまえ、今は逃げることに集中した方がいい」
岡部「でも逃げると言ったってどこへ・・・」
岡部(柳林神社に匿ってもらうか?)
岡部(駄目だ! そんなことをしたらるか子まで巻き込むことになる!)
ラウンダーA「いたぞ! こっちだ」
ムスカ「くそ、見つかったか、逃げるぞ」
パーン パーン
ラウンダーA「うがっ!」
ラウンダーB「相手は発砲してきている! 殺しても構わん!」
岡部「くそっ! まゆりっ手を離すなよ!?」 ガシッ タタタタタ
まゆり「あっ」 タタタタタ
ムスカ「急げ!」
ダァン
パーン
パーン
ラウンダーC「グッ!」
ジュウセイ!?
エ、チョ、ナニ? エイガノサツエイ?
ザワザワ
岡部「おいムスカ! ここは人通りがある! 銃は駄目だ!」 タタタタタ
ムスカ「ちっ、仕方ない」 タタタタタ
まゆり「クリスちゃんとダル君・・・鈴さん・・・大丈夫かなぁ・・・」 タタタタ
ムスカ「今は自分の身の安全だけを考えたまえ」 タタタタタ
まゆり「オカリーン、大丈夫・・・?」
岡部「久しぶりに走ったから・・・はぁ・・・息が上がった・・・はぁ・・・だけだ」
ムスカ「撒いたようだな、人ごみに紛れてやり過ごすぞ」
ザワザワ
岡部「これからどうする・・・どこに逃げるんだ」
ムスカ「私は秋葉に詳しいわけではない、君たちに任せるしか無い」
まゆり「電車で遠くに逃げるのはどうかなぁ・・・?」
岡部「そ、そうだ! 電車で都内を出れば奴らも簡単には──」
ムスカ「待ちたまえ、先ほどの爆破テロ予告のせいで電車は止まっているはずだ」
岡部「──! そうだった・・・まさか爆破予告もあいつらの・・・」
ムスカ「かもしれんな」
岡部「ならばどこに逃げれば・・・」
岡部「この分では地下鉄にも奴らの包囲網が──」
カチャ
ラウンダーD「岡部倫太郎だな、黙って付いてこい、声を出したら撃つ」 ヒソヒソ
岡部(く、くそ・・・!)
ムスカ「どうした岡部君」
まゆり「オカリーン?」
男「おおい! 何立ち止まってんだよ!」 ガスッ
ラウンダーD「うぐっ」
岡部「逃げるぞまゆり! ムスカ!」 ガシッ ガシッ タタタタタ
まゆり「オ、オカリーン!?」
ムスカ「ま、待ちたまえ!」
岡部「あの雑居ビルに入ってやり過ごそう!」
──「いや、いない! だがここらへんにいるはずだ! 探せ!」
ヒョコッ
ムスカ「思った以上に敵さんの鼻は利くようだな」
岡部「まだうろついてるのか」
ムスカ「どうやらこの辺りに潜んでいると思われてるみたいだ」
まゆり「オカリン・・・ムスカさん・・・あのね・・・?」
まゆり「まゆしぃが足手まといになっちゃったら、その時は逃げてね?」
岡部/ムスカ「バカを言うな」
ムスカ「私をあまり怒らせない方がいいぞ! 当分三人で行動するのだからな」
岡部「そうだぞまゆり、俺達がお前を置いて逃げるなんて・・・そんなこと、絶対にありえない」
まゆり「そっかぁ・・・ごめんね二人とも。変なこと言っちゃって。まゆしぃも頑張らなきゃ、だよね」
──「分かった!」
ムスカ「まずい、こっちに来る」
岡部「えっ!?」
ムスカ「階段を登るぞ、隠れる所を探す」
カツカツカツ
カツカツカツ
カツカツカツ
ビュウウウウ
まゆり「屋上・・・まで来ちゃったね」
ムスカ「ろくに隠れるところもないとはな」
ラウンダーD「いたぞ!」
岡部「──!」
ラウンダーE「捕らえろ! もし抵抗するようなら殺しても構わんとの命令だ!」
ムスカ「食い止めろ!! まゆり君は床に伏せていたまえ!!」
パーン パーン
ラウンダーB「撃ってきてい─うがっ!」
ダーンダーン
岡部「く、くそぉぉぉ」
パーンパーンパーンパーン
ラウンダーD「うっ!」
ダーン
ムスカ「私の腕を舐めてもらっては困る」
パーン
ラウンダーE「がはっ!」
まゆり「オ、オカリーン・・・」
ダァン
まゆり「わわー!」
ムスカ「ラウンダーの残りだ、もう一匹隠れているぞ」
岡部「くっそぉ!」
パーン ダァン
ムスカ「」
パーン
──「くっ・・・」
カランカラン
シーン
ムスカ「ラウンダー出てこい! でないと目玉をくり抜くぞ!」
岡部「ラウンダーめぇぇぇ!」 ググッ
ムスカ「撃つな捕らえろ!!」
岡部「くっ」
ムスカ「これはこれは桐生萌郁ではないか」
萌郁「・・・」
岡部「桐生・・・萌郁・・・」
まゆり「萌郁さん・・・」
岡部「なぜだ! なぜ俺達を付け狙う!」
ムスカ「言え小娘!」
萌郁「・・・理由は3つ」
萌郁「ひとつ。君たちは知ってはいけないことを知った」
萌郁「ふたつ。タイムマシーンを作り上げた」
萌郁「みっつ。世間に公表しようとした」
タタタタタタタタタタ
ラウンダーFがあらわれた!
ラウンダーGがあらわれた!
ラウンダーHがあらわれた!
ラウンダーIがあらわれた!
ラウンダーJがあらわれた!
カチャ カチャ チャキ
まゆり「ひぅっ・・・」
岡部「くそ・・・」
萌郁「これ以上抵抗するなら・・・容赦はしない・・・」
ムスカ「相手は自動小銃、こちらは弾も少ない、負けだな」
ダル「ひぃっ・・・ひぃっ・・・ふぅっ・・・」
鈴羽「ちょっとぉ、頑張ってよ橋田至!」
ダル「あ、阿万音氏と違って僕はぁっ・・・体力がはぁっ・・・ないんだお・・・」
ラウンダーK「いたぞ! 橋田至と女だ! 一緒にいる!」
ラウンダーL「橋田至は捕らえろとのことだ、女は殺せ!」
鈴羽「見つかっちゃったみたいだよ」
ダル「え、ええー・・・? もうだめぽ・・・」
鈴羽「・・・分かった、橋田至はどこかに隠れてて!」
ダル「え、ちょ、阿万音氏? 阿万音氏ぃ!?」
ラウンダーK「うおっ!?」
ラウンダーL「速いぃ!?」
ダァン ダァン
鈴羽「そんなの!」
鈴羽「当たらないよっ!」
ゴッ
ラウンダーK「ぐぇっ」
鈴羽「はっ!」
ドォッ ガシャアン
ラウンダーK「」
ラウンダーL「こいつっ!」
ダァンダァンダァン
ゴシャッ
ラウンダーL「ぬわーーっっ!!」
鈴羽「止めっ!」
コキャッ
ラウンダーL「」
鈴羽「ふうっ、ざっとこんなもんかな」
鈴羽「さて、と。もう大丈夫だよ橋田い──」
ゴッ
男「おーおー、また派手にやらかしやがって」
鈴羽「げほっ・・・げほぉっ・・・!」
鈴羽「・・・そんっ・・・なっ・・・」
ガスッ
鈴羽「あうっ・・・!」
男「修羅場くぐってきてるみてーだけどよ、油断はだめだぜぇ? バイトォ」
ピッ
天王寺「えぇ、牧瀬紅莉栖、橋田至の両名は捕らえました。タイムリープマシンも確保しました。えぇ」
天王寺「・・・謎の女・・・ですか? えぇ・・・いえ、こいつはもう一人のターゲットを捕らえるための餌に使おうかと」
天王寺「えぇ、分かりました」
天王寺「──という訳だバイト、おめーにゃこれから──」
天王寺「って、どこ行きやがった、あいつ」
天王寺「おいおい、まだ動けたのかよ・・・」
ムスカ「相手は自動小銃、こちらは弾も少ない、負けだな」
萌郁「・・・岡部倫太郎・・・こっちに来て」
岡部「くっ・・・」
岡部(こいつらはまゆりとムスカを殺す気だ!)
岡部(しかし俺が行かなくてもいずれは・・・)
ムスカ「まゆり君、岡部君、私が”降参”と合図したら屋上から飛び降りろ」 ヒソヒソ
まゆり「えぇー・・・?」 ヒソヒソ
岡部「そ、そんな・・・ここは5階だぞ」 ヒソヒソ
萌郁「・・・早く、こっちに」
岡部「何か策があるのだな」 ヒソヒソ
ムスカ「分かった、認めよう」
カランカラン
ムスカ「”降参”だ」
岡部「まゆり! 捕まれ!」 ガシッ
まゆり「わわ──」
萌郁「──!」
岡部「うおおおお!」
ムスカ「あっはっはっはっは!」
バッ
トビオリヤガッタ!
岡部(くぅうう・・・!!)
まゆり(オ、オカリン!!)
ムスカ(飛行石よ! その力を示したまえ!) グッ
バシュウウウウウ
岡部「こ、これは・・・」
まゆり「う、浮かんでるー!」
ムスカ「前にも説明しただろう、石は持ち主を守る、と」
ウ、ウイテヤガル
ストッ ストッ ストッ
ナニシテル ウテー! オイカケロ!
ムスカ「急ぐぞ、すぐに奴らが降りてくる」
岡部「あ、あぁ・・・」
ブーブー
岡部「着信・・・鈴羽からだ!」
──「岡部倫太郎!」
岡部「鈴羽! 無事か!?」
──「あたしは大丈夫、それより聞いて!」
──「ゴメン! 橋田至が捕まった! 後・・・多分牧瀬紅莉栖も」
岡部「な、なんだと」
──「それとタイムリープマシンも取られたみたい」
岡部「くっ! タイムリープマシンがっ!?」
──「落ち着いて聞いて、あたしは──くっ・・・追手が!」
岡部「鈴羽ァ!」
──「お願い! 今すぐラジ館の屋上に行って」
──「そしてタイムマシンの中に──ウッ!」
鈴羽「た、タイムマシン!? お前何言って──!」
──カターン カラカラカラ
岡部「おい鈴羽! 鈴羽ァ!」
岡部「くそ・・・鈴羽・・・! 携帯落としたのか・・・!?」
まゆり「オカリーン、鈴さんどうしちゃったの?」 ジワッ
岡部「未来を変えるって・・・どういうことだ?」
ムスカ「彼女は何を言ってたんだね、事態は思わしくないようだが」
岡部「ラジ館にタイムマシンとか・・・未来を変えるとか・・・」
ムスカ「・・・罠だとしたらどうする? 彼女は明らかに何かを知っている」
岡部「馬鹿な! それなら最初の襲撃の時に俺たちを助ける意味はないじゃないか!」
岡部「俺はラボメンを信じ──」 ハッ
岡部(・・・桐生・・・萌郁)
岡部「鈴羽は・・・鈴羽は命がけで俺たちを守ってくれた」
岡部「そして今も必死に何かを俺に伝えようと・・・」
岡部「俺は鈴羽を信じる!」
ムスカ「君は人がよすぎる、岡部君の悪いクセだ」
岡部「それにダルと紅莉栖も捕まったらしい、放ってはおけない!」
まゆり「ダ、ダル君とクリスちゃんが?」 ジワッ
岡部「行くぞ! ラジ館屋上だ!」
ムスカ「・・・分かった、私が先導する、付いてきたまえ」
ムスカ「お前達はここで待て」
キョロキョロ
ヒョイッ ヒョイッ
ガチャリ
ムスカ「来い」
カツカツカツ
カツカツカツ
カツカツカツ
カツカツカツ
~ラジ館屋上~
岡部「人はいないみたいだな」
まゆり「鈴さん・・・大丈夫かなぁ」
ムスカ「油断はするな」
岡部「これ・・・タイムマシンだったのか・・・」
ムスカ「ともかく、中を確認するんだ」
岡部「あ、あぁ・・・確かハッチの横にスイッチが」
パカッ
岡部(あ、あった、ホントにあった!)
ガァン! ガァン!
まゆり「ひぅっ・・・」
岡部「!?」
ムスカ「まずい、もう追手か・・・岡部君、急ぎたまえ! ドアが持たない!」
岡部「え、えーっと、パスワード!?」
岡部「・・・そんなの聞いてないぞ!!」
ガァン! ガァン! ガァン!
ムスカ「まだか、早くしろ!!」
岡部「パスワードがわからないんだよ!」
ガァァン! ガランガラン
ムスカ「くそ、破られたか」
男「カギなんて掛けやがって、もう逃げられねぇぞおい」
岡部「そ・・・そんな、なぜあなたがここにいる!」
男「よぉ岡部、もう抵抗すんなよ? おめーらの仲間はもう捕まってる」
まゆり「そ、そんな・・・ブラウン・・・店長さん?」
岡部「まさか・・・」
天王寺「タイムリープマシンもSERNが回収した、後はおめーだけだ岡部」
岡部「まさかあなたがSERNの犬だったとはな!」
天王寺「あ? おめーに何が分かる」
まゆり「じゅ、銃・・・」
岡部「殺させない! まゆりは俺が! 殺させない!」
岡部「うわあああああ!」
天王寺「ちっ」
ゴスッ
岡部「ぐっ・・・!」
まゆり「オカリン!」
ガッ
ズサァ
岡部「」
天王寺「おっと、力入りすぎちまったな、生きてっか?」
チャキッ
ムスカ「彼なら安心したまえ、あの石頭は私のより頑丈だよ」
天王寺「てめえ・・・」
まゆり「オカリン! 大丈夫!?」
岡部「う・・・ぐ・・・だ、大丈夫だ・・・」
天王寺「ったくよぉ、うちのバイトといい、なんだってんだよおめーら」
天王寺「M4」
ダァン
ムスカ「へぁっ!?」
萌郁「・・・」
岡部「桐生・・・萌郁・・・!!」
ムスカ「ぐはぁっ・・・!」
岡部「く・・・そぉ!」 チャキッ
天王寺「やらせるかよ!」
まゆり「ダメ! オカリン!」
パーン
まゆり「お・・・かり・・・」
岡部「まゆり・・・なんだよこれ・・・」
岡部「なんだよこれぇぇぇっ!」
天王寺「ったく、手こずらせやがって」
天王寺「おい岡部、これ以上の抵抗はむい──」
ガスッ
萌郁「ぐっ!」
天王寺「M4!?」
鈴羽「パスワードはOSHMAM!!」
岡部「!?」
天王寺「てめえバイトォ!」
鈴羽「早く! 岡部倫太郎!」
天王寺「ちっ!」
鈴羽「させない!」
ガッ ガスッ
天王寺「ぐぁっ!」
プシュー
岡部「開いた!」
岡部「これが・・・タイムマシン! ハッ!」
岡部「これは・・・電話レンジ? いや・・・似てるけど少し違う」
岡部(やっぱりタイムリープマシンだっていうのか!?)
──「早く!」
ムスカ「・・・飛ぶ気か?」
岡部「ムスカ! 生きてたのか!」
ムスカ「・・・君にまゆり君が救えるかね」
岡部「こういう言葉がある”飛ばねぇ豚は、ただの豚だ”と」
バチバチバチバチ
岡部(まゆりは必ず・・・助けるっ!)
岡部「とぉべよぉぉぉぉぉぉ!!」
ブゥゥゥゥゥン
鈴羽の正体は分からない
しかし俺達の味方であることは確かなようだ
まずはあいつから話を聞かなくては
タイムマシンについて、鈴羽の正体について
SERNがラボを襲う前に・・・
まゆりが殺される前に・・・
~ラボ~
岡部「はうぁっ!」
紅莉栖「岡部・・・どうしたの? 変な声出しちゃって」
ムスカ「君のアホづらには心底うんざりさせられる」
ダル「ちょ、ムスカ氏毒舌すぎワロタ」
岡部「三人とも、今すぐラボから離れるんだ!」
紅莉栖「え、ちょ」
ムスカ「どこへ行こうというのかね!?」
岡部「いいから離れるんだ!」
岡部(電話もつながらない・・・! くそっ!)
岡部(どこにもいない・・・後数時間でラボが襲われるっていうのに!)
紅莉栖「こんなところで何してる?」
岡部「紅莉栖・・・ムスカ・・・」
紅莉栖「ちょ、初めて名前を呼んだな」
紅莉栖「聞かせろ、何があった? ──いや、何が起きる?」
岡部「えっ」
ムスカ「電話を取った直後の君の様子がおかしかったのでね、紅莉栖君と話しあった結果、こう推測した」
紅莉栖/ムスカ「未来からタイムリープしてきた、と」
ムスカ「ならばさっさと逃げればいいものを」
岡部「だめだ! どこへ逃げようとあいつらは追ってくる!」
岡部「電車も止められた・・・逃げ場はない・・・」
ムスカ「岡部君、君を誤解していた、許してくれたまえ」
ムスカ「君がまゆり君を守るために奮戦してくれたとは知らなかったんだ」
紅莉栖「じゃあ今からでもタイムリープすれば・・・」
鈴羽「それじゃあ未来は変わらない」
岡部「鈴羽! お前今までどこに!」
鈴羽「ゴメンね、話を聞くつもりはなかったんだけど・・・」
鈴羽「きっとあたしのせいだ、あたしが甘えてたせいで・・・」
岡部「鈴羽、一体お前は何者なんだ・・・」
鈴羽「あたしはジョンタイター、2036年から来たタイムトラベラーだよ」
Ω ΩΩ<な、なんだってー
鈴羽「2036年ではSERNが支配するディストピアが構築されている」
鈴羽「そんな未来を変えるためにあたしはタイムトラベルしたんだ」
鈴羽「ちなみに岡部倫太郎とムスカ大佐はテロリストとして有名」
岡部/ムスカ「なんだと!」
鈴羽「岡部倫太郎とムスカ大佐は飛行石の力を使用して空中要塞ラピュタを作り上げた」
鈴羽「レーダーにも観測されず、燃料も要らない、SERNですら容易に手を出せなかったみたいだね」
鈴羽「牧瀬紅莉栖は・・・タイムマシンの母として崇められていた」
紅莉栖「えっ・・・」
鈴羽「でも話を聞く限りでは、SERNに開発を強要されてたのかな・・・」
鈴羽「話が脱線したね」
鈴羽「・・・2036年ではアトラクタフィールド理論が提唱されていてね」
鈴羽「その理論によると──」
鈴羽「そうタイムリープじゃ未来は変えられない」
鈴羽「椎名まゆりを助けるには・・・未来を変えるには、ダイバージェンス1%の壁を超える必要があるんだ」
ムスカ「どういうことだね?」
鈴羽「岡部倫太郎、君がはじめに送ったDメールがSERNのエシュロンに引っかかったんだ」
岡部「あのメールか!」
鈴羽「それがきっかけでSERNは君たちに目をつけた」
鈴羽「でもSERNがそのメールに気づくのはもうちょっと後なはず」
岡部「未来は変わる! まゆりが助かるってことだな!」
鈴羽「うん、でもそれにはIBN5100が必要」
紅莉栖「どうして?」
鈴羽「SERNサーバー内のデータは独自のプログラムが使われていてIBN5100を使わないと解析できないんだよ」
鈴羽「だから今からあたしがタイムマシンを使って君たちにIBN5100を託すよ」
ムスカ「その必要はない」
一同「「「えっ」」」
ムスカ「私は暗号解読の天才であり、一瞬にして相手の暗号を解読する能力を持っているのだ」
鈴羽「暗号解析とはちょっと違うような気がするけど・・・大丈夫なの?」
ムスカ「言葉を慎みたまえ、君はラピュタ王の前にいるのだ」
ムスカ「君は黙って協力したまえ」
ムスカ「読める・・・読めるぞ! ここをこうして・・・へぁっ!?」
ダル「あった! オカリンマジであったよこれっしょ!?」
鈴羽「す、すごいね君たちって」
岡部「ダルの技術力は世界一だからな」
ムスカ「私の功績も忘れないでくれたまえ」
紅莉栖「にしても最初のDメールか・・・えーっと」
バルスバルス
ってちがうわ
!本当に人間
岡部/ムスカ「こ・・・これは」
ムスカ「立て、鬼ごっこは終わりだ!」
紅莉栖「こんなところにいたのね」
岡部「・・・」
紅莉栖「どうしたのよ、突然クラッキングをやめるなんて言い出して」
紅莉栖「タイーホフラグが立ったんでビビったんですね分かります」
ムスカ「説明してもらおう、なぜ君が・・・いや、なぜこのメール私の携帯に送られたのかを」
パカッ
バルスバルス
ってちがうわ
!本当に人間
岡部「!」
岡部「ムスカ・・・お前の携帯に送られていた・・・というのか」
岡部「俺はあの日・・・7月28日・・・」
岡部「ま、牧瀬紅莉栖が血まみれ・・・? どういう事だ・・・」
パカッ
宛先:ダル
本文:牧瀬紅莉栖が何者かに刺されたみたいだ
ピッ
岡部「しかも外へ出てみれば瓦礫やらなんやら降ってきている」
岡部「くそ・・・変なことに巻き込まれたな」
ブーブー
本文:はぁ? なんの冗談よそれ、また厨二病っすか?
ヒュウウウウウ
グシャアア
岡部「」
岡部(ひ、人!? 人が・・・空から・・・な、なんだよこれ)
岡部(茶色のスーツ・・・原型をとどめてない・・・肉の塊・・・)
岡部「うぇぇええぇぇっ」
岡部「はっ・・・はっ・・・」
宛先:ダル
本文:大変だ!空から人間が降ってきた!
ブーブー
本文:だから厨二病はいいっつに!
てゆか空から降ってくるなら女の子以外認めない
それとこれから電話レンジの調整あるんでオカリンの相手してる暇ないし
宛先:ダル
本文:バルスバルス
ってちがうわ!本当に人間が降ってきた!
なんなら証拠も見せる!
そう送ろうとして──
岡部「くそ、手が震えてアドレス消してしまった・・・」
ピッピッピッ
岡部「確か・・・これで合ってたよな?」
それを送った途端周りの景色が歪み──
岡部「空から男が!」
ムスカ「おー、見たまえ、この巨大な飛行石を、これこそラピュタの力の根源なのだ!!」
ムスカ「素晴らしい!! 700年もの間、王の帰りを待っていたのだ!!」
シータ「ムスカ・・・あなたは一体」
ムスカ「君の一族はそんなことも忘れてしまったのかね!?」
ムスカ「黒い石だ!!伝承の通りだ!!」
ムスカ「読める!! 読めるぞ!! はっ、へぁっ!?」 ブーブー
ムスカ「メール?」
ムスカ「なになに・・・バルスバルス・・・?」
飛行石「はいよ」
ピカーーーーー
ムスカ「うわぁぁぁぁ!」
ウウウーウ ウーウーウー
岡部「あの時落ちてきて死んだ人間はムスカ、お前だよ・・・そのスーツ・・・間違えるはずがない」
ムスカ「・・・私が死ぬ・・・だと?」
岡部「つまりDメールを消せば・・・あのメールをなかったことにすれば」
岡部「β世界線にたどり着くということは・・・紅莉栖とムスカが死ぬ」
紅莉栖「・・・」
岡部「まゆりを助けることは・・・二人を見殺しにすることなんだよ・・・」
ムスカ「にわかには信じがたい話だよ、この私が死ぬなんて」
紅莉栖「ホントよね」
紅莉栖「でも・・・」
ムスカ「君にも実感があるのかね」
紅莉栖「えぇ、夢にしてはあまりにもリアルすぎるというか・・・痛みとか絶望感が」
ムスカ「しかしこのままではアトラクタフィールド理論によりまゆり君の死が約束されている」
紅莉栖「そう・・・なのよね」
紅莉栖「岡部・・・」
岡部「答えは見つけられない・・・タイムリープマシンでもう一度やり直して──」
ガシッ
岡部「!?」
ムスカ「どこへ逃げようというのかね」
紅莉栖「逃げたって・・・逃げたって辛くなるだけよ!」
岡部「む、ムスカ! 紅莉栖!」
紅莉栖「ねえ岡部、まゆりを助けて」
岡部「それでいいのか! β世界線に行ったら・・・死ぬんだぞ!」
紅莉栖「ムスカとも話しあったけど、あんたはまゆりを助けるべきなのよ」
ムスカ「私にはもはやラピュタ王などに興味はない、私たちは元々死んでいた、元に戻るだけだ」
岡部「けど・・・けど!」
ムスカ「君も男なら、聞き分けたまえ」
岡部「聞けるかよ・・・! そんなこと!」
ムスカ「・・・分間待ってやる」
岡部「えっ?」
ムスカ「3分間待ってやる! その間に決めろ」
岡部(そんなこと・・・できるわけないだろっ!)
ムスカ「」 チラッ
ムスカ「時間だ! 答えを聞こう!」
ガターン
岡部「まゆり!?」
紅莉栖「まゆり・・・」
ムスカ「聞いていたのかね、悪い子だ」
まゆり「まゆしぃの代わりに二人が死ぬなんて絶対やだ・・・よぉ」
岡部「・・・俺はお前たちを・・・助けられない」
まゆり「オカリン!」
紅莉栖「それでいいのよ・・・」
ムスカ「私は滅びぬ、何度でもよみがえるさ」
岡部「分かっている」
岡部(紅莉栖、ムスカ・・・すまない・・・)
ピッ
ブゥゥゥゥゥン
岡部「ぐうぅうう!!」
岡部「はぁ・・・はぁ・・・!」
ダル「オカリーン、どうしたんだお?」
まゆり「だいじょーぶー?」
岡部「なあまゆり・・・ラボメンNo.4と9は・・・だれだ?」
まゆり「うーん、ラボメンは003までじゃないかなぁ?」
岡部「この俺狂気のマッドサイエンティストである鳳凰院凶真は! SERNのあらゆる攻撃に対し!」
岡部「時空を支配することによって完全に勝利したのだ! これこそがシュタインズゲートの選択!」
まゆり「オカリン・・・もういいんだよ、その口調続けなくても」
まゆり「オカリンはオカリンのために泣いてもいいんだよ・・・?」
岡部「電話レンジはもういらない・・・あの機械があったことでたくさんの人が傷ついた」
岡部「これでいいんだよな・・・」
\ ⊂[J( 'ー`)し
\/ (⌒マ´
(⌒ヽrヘJつ
> _)、
し' \_) ヽヾ\
丶_n.__
http://www.youtube.com/watch?v=LXoMgHR2BEc
 ̄ (⌒
⌒Y⌒
岡部「俺が・・・紅莉栖を殺した・・・」
鈴羽「オカリンおじさん、しっかりしてよ! たった一回の失敗で諦めちゃダメ!」
岡部「だめだよ・・・アトラクタフィールド理論で紅莉栖は死ぬ・・・もうだめなんだよ・・・」
──「探したぞ、こんな所にいたのかね」
ダル「だ、だれぞ?」
まゆり「え、えっと、誰かなぁ?」
岡部「!? なぜ・・・お前がここにいる!」
ムスカ「言っただろう、私は滅びぬ、何度でもよみがえると」
ムスカ「私は手荒なことはしたくないが、あの少女の運命は君が握っているんだよ」
ムスカ「君がなら、あの少女を自由の身にしてやれるんだ」
岡部「おまえ! もしかして記憶が!?」
ムスカ「おぼろげではあるがね」
ムスカ「それともその大砲で私と勝負するかね!?」
パズー「シータと二人っきりで話がしたい」
シータ「パズー!」
ムスカ「3分間待ってやる!!」
ムスカ(なん・・・だこれは・・・)
ムスカ(前にも言ったことがある・・・ような)
ムスカ「時間だ・・・答えを・・・」
カランカラン
ムスカ「聞く前に話すことがある。降参だ」
シータ/パズー「「えっ」」
兵士「あ、ムスカ! 貴様よくもこの俺を全裸放置しやがったな!」
兵士「てめーも味わえ! つーか服よこせ!」
ムスカ「構わん、贖罪になるのかは分からんが、服の一着や二着提供しよう」
兵士「おら! 後で返せっつっても返さねーからな!」
シータ「きゃっ、見ちゃダメェ!///」
パズー「シータ!」
兵士「けっ、いいスーツじゃねーかよ!」 ツルッ
兵士「」
ヒューーーー
岡部「ふふふ・・・ふはは・・・」
岡部「フゥーッハッハッハ!」
岡部「なるほど・・・アトラクタフィールド理論・・・やぶれたりっ!」
鈴羽「え、えっと?」
岡部「やはりこの俺、狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真に敗北の二文字はないようだな!」
ダル「おぉ、いつものオカリンに戻った」
まゆり「でもでもー、まゆしぃはこっちのオカリンのほうが好きなのでーす」
岡部「俺は狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真!」
岡部「世界を騙すなど、造作も無い!」
ムスカ「素晴らしい!! 最高のショーだとは思わんかね!?」
岡部「あえてもう一度いおう!」
岡部「世界を騙すなど、造作も無ぁい!」
おしまい
ムスカ「この石がラピュタの在り処を示すカギなのだ!」
岡部「うむ! 必ずや我がラボでラピュタを探し当ててみよう!」
岡部「なぜならっ! 機関はそこまで迫っているのだから!」
紅莉栖「厨二病二人・・・頭痛いんですが」
まゆり「ラボも賑やかになったねー、えっへへー」
ダル「1+1が2じゃないことを実感するお・・・」
ムスカ「石の使い方が分かればラピュタを探すなど造作も無い!」
岡部「フフフゥッ、石の呪文ならこの俺の頭の中に!」
ムスカ「どんな呪文だ、教えろ! その言葉を!!」
エル・プサイ・コングルゥ
そしてgdgdですまなかった
息がピッタリでワロタ
次は紅の豚とコラボだな
イイハナシカナー
Entry ⇒ 2012.06.13 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
岡部「デスノート?」
岡部「DEATH NOTE・・・ 直訳して死のノートか・・・下らん」
~五日後ラボ~
岡部「フフ、欲しい物は手に入った」
リューク「その様子だと随分気に入ってるみたいだな」
岡部「う、うわっ!?」
リューク「何故そんなに驚く。ノートの持ち主死神リュークだ」
岡部「し、死神・・・、ノ、ノート?」
リューク「ん? お前デスノート拾ったんじゃないのか?」
岡部「デスノート・・・あの黒いノートか!」
リューク「そうだ、使ってないのか?」
岡部「え、英語が読めんのだ、俺は」
リューク「ククッ、それは失敗したな」
岡部「死神・・・俺を・・・殺すのか?」
まゆり「トゥットゥルー」
紅莉栖「はろー」
ダル「あれ? オカリンなんで床なんかに座ってるん?」
岡部「──! に、逃げろ! 今すぐ逃げるんだ!」
紅莉栖「おい、いきなり厨二病はよせ」
ダル「朝っぱらから飛ばしすぎだろ常考」
リューク「気をつけろ、今ノートに触れた奴には俺が見える」
リューク「他の奴にばれたくなければ──」
岡部「ちょ、ちょっとこのノートに触れ! 早く!」
ダル「はー? ちょ、なんなん? マジで」
ダル「ってうわあああああああああああ!」
紅莉栖「え、ちょ・・・橋田まで何して──きゃあああああああああ!」
紅莉栖「ば、ば、ば、ばけっ──」
岡部「どうだ! これで俺を信じる気になっただろ! 死神なんだよ! 紛れもなく!」
リューク「ククッ」
まゆり「まゆしぃも見たいなー」
まゆり「わわー!」
まゆり「コスじゃないよねー? 本物の死神さんかなぁ?」
リューク「コス? 良く分からないが俺は本物の死神だ」
まゆり「そうなんだー、すごいねー、えっへへー」
岡部「お、おいまゆり!」
リューク「ククッ、俺を見て驚かない人間が居るとはな」
紅莉栖「ま、まゆり! だめ! 近づいちゃダメ! は、離れなさい!」
リューク「安心しろ、俺はお前たちに何もしない」
岡部「本物なのか・・・このノート」
紅莉栖「キラはこのノートを使って犯罪者を裁いていたのね・・・信じがたいけど」
ダル「でもこうして死神も居る訳だし、信じない訳には行かないっしょ」
まゆり「まゆしぃはあんまり危ない事しないでほしいなー」
岡部「ちなみに前のキラはどうなったのだ? 半年ほど前から犯罪者の裁きは止まったようだが」
リューク「前の持ち主は死んだ」
一同「えっ」
リューク「キラを追うSPKという組織に正体がバレてな、ククッ・・・」
紅莉栖「そ、そうだったのね・・・でもノートによる殺人の特定なんて恐れ入るわね」
ダル「すげー、SPKまじパネェっす!」
岡部「ま、まさかこの鳳凰院凶真が選ばれし者とでも言うのか!」
リューク「ククッ、自惚れ──」
岡部「違いない! これこそがシュタインズゲートの選択ッ!!」 バサッ
紅莉栖「んなわけあるか」 ダル「んなわけないっしょ」
まゆり「たとえ悪い人でもオカリンは人を殺したりなんかしないと思うなー」
ダル「そうそう、オカリンに人殺しなんて絶対できないっつの」
紅莉栖「岡部ってチキンだからね」 ドヤァ
岡部「ぐっ! う、うるさい! 貴様らこの俺をなんだと思っているっ!」
リューク「ふー、なんだこれ、こいつら面白」
岡部「む・・・ならば死神よ! 貴様・・・何故ノートを落とした」
岡部「ご丁寧に使い方まで書いて”間違って落とした”などとほざくのではあるまいな」
リューク「何故かって?」
リューク「退屈だったから」
岡部「退屈・・・だと?」
リューク「前の所有者が死んでからと言うもの退屈で仕方がない」
リューク「死神界はどこまで行っても不毛、毎日毎日同じ事の繰り返し」
リューク「死神が言うのもおかしいが、正直生きてる気がしないってやつだ」
リューク「俺はやはりこっちに居る方が面白いと踏んだ」
紅莉栖「し、死神界・・・興味深いわね」
ダル「死神界も案外人間界と似たようなもんなんすなー」
まゆり「ねーねー、死神界にもレイヤーさんっているのかなぁ?」
岡部「ふむ・・・」
リューク「ククッ、リンゴもこっちの方が美味いしな・・・」
紅莉栖「ちょ」
ダル「まじ?」
まゆり「おぉー、新しいラボメンだー」
リューク「ラボメン? なんだそれ、ラーメンの仲間かなんかか?」
岡部「ラボラトリーメンバーの略だ! 貴様にはこのラボのために働いてもらおう!」
岡部「貴様に拒否権はない! フゥーッハッハッハッハ!」
リューク「ククッ、強引なやつだな」
岡部「良いか、ラボの長であるこの鳳凰院凶真に忠誠を誓うのだフゥーッハハハ!」
リューク「おいダル、マリオテニスやんね?」
ダル「ちょ、見たら分かるっしょ? 今エロゲ中だっつに」
リューク「なんだよおめー、女の裸の絵なんて見てても面白くねーだろ」
ダル「まだまだリューク氏はわかってないでござる」
ダル「これは二次元の素晴らしさについて小一時間語る必要がありますな」
リューク「二次元? なんだそりゃ」
ダル「見たまえ彼女たちのこの表情を!」
リューク「ククッ、これがなんだってんだよ」
ダル「ロリ顔でちょいエロ、3次元には到底到達できない至高の領域!」
ダル「これぞ萌! ディスイズ萌! うおおおおおー!」
リューク「人間にも色んなのがいるな、面白!」
リューク「あぁ、これ? 禁断症状みたいなもの。 ここんとこリング食ってないから」 グググ
まゆり「リンゴー?」
リューク「そう、人間界のリンゴすげー・・・ジューシーっていうの? なぁ、リンゴないか?」
まゆり「んー、リンゴはないけど、バナナならあるよー? 食べる?」
リューク「バナナか」
まゆり「はい、どーぞ。 あーん」
リューク「・・・・・・」 モグモグ
リューク「おっ、美味い」
まゆり「でしょー」
リューク「リンゴほどじゃないけどいけるな、コレ」 モグモグ
まゆり「まだまだあるよー」
リューク「ククッ、助かるぜ」 モシャモシャ
紅莉栖「ちょ、あんたまでティーナってつけんな!」
リューク「でも凶真はそう呼んでるじゃないか」
紅莉栖「あれは勝手にあいつが・・・っていうか凶真じゃなくて岡部倫太郎だから」
リューク「ククク・・・そうなのか? 人間て面白」
紅莉栖「あんなのが普通だと思わないでくれる? あいつが特別変なだけよ」
リューク「その割にはお前ら仲いいじゃん、好きなんだろ? あいつの事」
紅莉栖「は、はぁーー!? そ、そ、そそんなわけなかろーが!」
紅莉栖「っていうか大体死神が人を好きだとか嫌いだとか語ってもらっちゃ困るんですけどー!」
紅莉栖「ホント困るんですけどー!! 大事なことなので二回言いました!」
紅莉栖「1回開頭して中身覗いてみたいわよほんっとに!」
リューク「ククッ、やっぱり人間て面白」
岡部「む、なんだ死神!」
リューク「お前、デスノート使わないの? せっかく俺が落としてやったのに」
岡部「バァカを言うな! この鳳凰院凶真、世界の支配構造の変革を望みこそすれ、殺人を犯すほど間抜けではなぁい!」
リューク「ふーん、そうなのか」
リューク「だったら目の取引について話しておく必要もないかな」
岡部「目・・・だと?」
リューク「あぁ、取引すると人間の名前が見えるようになる目だ」
岡部「魔眼・・・と言う訳か」
岡部「しかぁし! すでに俺には魔眼リーディングシュタイナーが備わっている!」
岡部「そんなものは必要なぁい!!」 バサァ
岡部「過去を改変しても記憶を保ち続ける魔眼、俺だけに備わりし特殊能力どうあ!」
リューク「ククク・・・なんだそれ」
岡部「羨ましいかー? 羨ましいだろー」
岡部「しかし翼だったら本気で取引を考えていたかもしれない」
岡部「翼を持って自由に空を飛ぶ、なんて実にメァッドではないかフゥーッハッハッハ!」
リューク「ククッ、やっぱり人間ってやつは面白!だ」
岡部「くどぉい!」
岡部「昨日も言っただろう」
岡部「この鳳凰院凶真、恐怖による独裁など望んではおらん!」
岡部「俺が望むのは支配構造の変革でありクァオス!」
リューク「ククッ、あいつとは大違いだぜ」
岡部「・・・前の所有者とやらか」
リューク「神世界の神になる、とかほざいてたが無様に死んでいった」
リューク「まっ、楽しませてもらったけどよ、ククク」
岡部「新世界の神・・・か。 フン、愚かな」
岡部「たとえそんな奴が現れたとしてもこの鳳凰院凶真が必ずや野望を打ち砕いて見せるわフゥーッハハハ!!」
リューク「おめーにゃ無理だ、凶真」
岡部「な、なにおうっ!」
リューク「Dメール? なんだそれ」
岡部「過去に送れるメールだ」
岡部「我々は人類史上初のタイムマシンの発明に成功したのだフゥーッハハハ!」
ダル「初じゃなくね? SERNに先越されてるし」
リューク「そんなものあるのかよ、人間ってすげっ」
岡部「ちなみに俺は魔眼の力で過去改変後も記憶を持ち続けることが出来る」
リューク「ふーん」
岡部「これぞ選ばれし者の特権、まさにシュタインズゲートのせん──」
紅莉栖「はいはい厨二病乙!」
リューク「ククッ・・・ちょっと待っててくれ」
岡部「む、なんだ死神! 実験の進行を妨げるなど──」
リューク「良いから待ってろ」
リューク「あった、まだ残ってるかな?」 パカッ
リューク「ククッ・・・残ってやがる」
~ラボ~
リューク「待たせたな」
岡部「遅いぞ死神っ!」
リューク「ククッ、悪いな」
リューク「なぁ、そのDメールってやつ、俺に送らせてくれないか?」
岡部「なんだと?」
リューク「良いじゃないか、俺もラボメンなんだろ?」
岡部「そうだが・・・しかし死神が過去を変えてどうするつもりだ?」
岡部「ほぉう?」
リューク「きっとお前の望んだカオスって世界とやらが訪れるぜ」
岡部「面白い! ならば送らせてやろうではないか!」
紅莉栖「放電始まった!」
岡部「いけい死神っ!」
リューク(ククッ・・・ライト、お前ならこのメールで何かしら悟るだろう)
リューク(それでもあいつらに負けるんであればそれまでの奴だったと言うまでだ)
リューク「じゃあな、凶真、色々面白かったぜ」 ポチッ
岡部「!?」
ブゥゥゥゥゥゥン
岡部「ぐぅうぅ!」
岡部「リーディングシュタイナーが発動した! 過去が変わったんだ!」
岡部「何が変わったんだ? ・・・おい! リューク!」
ダル「は? リュークって誰ぞ?」
岡部「死神リュークだ! 何を言ってる! さっきまでそこにいたではないか!」
紅莉栖「はぁー? 死神? 厨二病乙」
岡部「ま、まゆり・・・ラボメンNo.009は・・・誰だ?」
まゆり「んー? 009・・・はいないよー?」
岡部「リュ、リュークが消えた?」
岡部「バカな・・・」
紅莉栖「いくら犯罪者だからといって酷い話よね」
まゆり「まゆしぃもいけないことだと思うなー」
岡部「な・・・に・・・言ってる」
岡部「キラが復活している・・・だと?」
紅莉栖「何言ってるのあんた、今やキラは世界を支配しているといっても過言ではないじゃない」
岡部「そん・・・な」
紅莉栖「ちょっと岡部?」
岡部「リューク・・・もしかして前の所有者に?」
まゆり「オカリーン?」
岡部「ふふふ・・・」
ダル「オ、オカリン? どったの? マジで」
岡部「ふはは、フゥーッハッハッハ!!」
アリだな
岡部「この俺に挑戦状・・・と言う訳か」
岡部「ノートによる殺人・・・という手段は分かっている」
岡部「良いだろう、新世界の神とやら!」
岡部「この狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真が!」
岡部「貴様の野望を打ち砕いてやる!!」
岡部「世界を貴様の好きになど──させはしない!」
岡部「フゥーッハッハッハ!!」
紅莉栖「おわり」
まゆり「ちゃんちゃん」
前半のワクワクを返せ
頼むわ…
月(ニア・・・日本警察の者・・・SPK、そして魅上)
月(魅上は目として残しておいてやるつもりだったが、奴は明らかに僕の思考とズレていた)
月(しかし解せないのはあの日未来から送られてきた自分のメール・・・)
月(一体どういうことだ? 僕が送ったということなのか?)
リューク「おい月、キラを阻むものはいなくなった、これからは新世界の創造を見せてやるって言ってたが浮かない顔してるじゃないか」
月「あぁ、どうやらまだ解決しなくてはいけないことが残っているみたいだ」
リューク「ククッ、そいつは面白いじゃないか、ノートの存在を知る奴はもう居ないんだろ?」
月「まぁね、でも油断は出来ない」
月「キラが新世界の神として降臨し続けるためには少しでも不安要素はなくしておかなくちゃならない」
月(たとえ──どんな些細なことでも、だ)
岡部(殺人の方法がノート・・・と言うだけでどのような人間が裁きを行なっているのか全く検討もつかない)
岡部「ええーい! これでは拉致があかんではないか!」
岡部(どうすれば特定できる・・・いや・・・特定するとなればこちらも接近せねばいけない)
岡部(ある程度こちらの情報も向こうに渡すのは覚悟せねばなるまい・・・)
岡部(最悪Dメールを送れば過去改変・・・)
岡部「バカな! 心臓麻痺になってからでは遅いのだ!」
岡部「フフ、死神よ、中々面白い挑戦状ではないか!」
岡部「だが灰色の脳細胞を持つこの鳳凰院凶真を敵に回したことを後悔するのだなフゥーッハッハッハ!」
岡部「とりあえずは飯だ飯、腹ごしらえしなければどうにもならんからな」
岡部(俺が犯罪者になってみるか? 殺人に必要なのは顔と名前・・・)
岡部「いや、バカを言うな! 犯罪者になったらその時点で負けではないか!」
岡部「何かいい手は・・・」
岡部「思いつかん・・・」
岡部「暇つぶしに@ちゃんねるでも見るか」
1:キラ様応援スレだよ 123
2:キラって調子乗ってるよね 326
3:おはようと言えば今日一日幸せになれるスレだよ 25
4:おい!ここはID腹筋スレだ!早く逃げろ! 34
5:キラに殺して欲しいやつを書き込むスレ 502
岡部(なんだこれは・・・@ちゃんまでキラ一色ではないか!)
岡部(確かに半年前までキラが世界の法として成り立っていた感はあったが・・・)
岡部(人を殺し、恐怖による独裁など・・・ディストピアそのもの・・・! 許せん! キラ!)
岡部「・・・・・・試してみるか?」
リューク「なんだよ、パソコンの画面なんて覗いて」
月「ここにキラの殺人方法はノートだと断言している奴がいる」
リューク「へぇ・・・まだ知ってる奴がまだいたのか」
リューク「でも警察関係者の中にもノートの存在知ってる奴いるんじゃなかったか?」
月「抜かりはないよリューク、あの時の人間もちゃんと始末しておいた、彼らのせいでFBIやSPKにノートの存在を知られたからね」
月「仮に知っていたとしても・・・だ」
月「こいつの書き込んだ内容はあまりに詳しすぎる、あまりに知りすぎている」
月「これは一度ノートを手にしたことがある人間」
月「使ったことがあるのかは別として・・・ね」
リューク「ふーん、まぁお前が言うならそうなんだろ、俺にはよく分からんないが」
月「あのメールを送った奴と同一人物かどうかはまだ分からないが・・・」
月「こいつは確実に消しておかなきゃならない」 ギリッ
月「・・・警察の権限を使って書き込んだ奴の情報を開示してもらうよ」
リューク「良いのかよ、そんな事して」
月「こいつの意図はキラを探し出す事、でなければ自らを危険に晒すような事はしないはずだ」
リューク「探しだしてどうするんだろうな、そいつ」
月「分からない、ミサの時のようにキラに好意を抱いている可能性もあるが・・・」
月「こいつの書き込みを見る限りはキラについて嫌悪・・・そう、キラを憎む者」
月「断定は出来ないが、こいつはいずれ脅威になる、必ず潰しておかなきゃいけない」
リューク「ククッ、また顔も名前も分からない相手と戦うのか」
月「フ、エルの時もニアの時も勝ったじゃないか、今回も勝ってみせるよリューク」
リューク「まぁせいぜい面白いもんを見せてくれよ、ライト」
月「情報は集まった」
月「大檜山ビルの二階からアクセスされている」
リューク「お、早いな」
リューク「早速殺しに行くのか?」
月「バカだなリューク、アクセスの場所が分かっただけで誰が書き込んだのかすら分かっていない」
月「まだこいつの情報はほぼ0と言っていいほどだ、ここで動くのは早計すぎるよ」
リューク「じゃあどうするんだよ」
月「・・・」
月「ハッキングを仕掛ける」
リューク「へぇ、久々にライトのハッキングスキルが活かされるわけか」
月「まだまだ衰えてはいないよリューク」
月「さあ、観念して僕の前に晒すんだ」 カタカタカタ
ダル「はぁはぁ・・・ねねちゃんはぁはぁ・・・」
岡部(あれから数日経った・・・)
岡部(レスの流れは悪くなかった。今や世界の方であるキラを叩くようなレスばかりしたからな)
岡部(しかし、今日まで反応はない・・・やはり@ちゃんなど見てないということか?)
ダル「んお!?」
岡部「どうしたダル」
ダル「ちょ、今リアルタイムにハッキング受けてるお」
岡部「なんだと!」
ダル「ククク、僕を相手にするなんて飛んで火に入る夏の虫、返り討ちにしてやるお!」
岡部(キラか・・・? それとも@ちゃんにいた奴らか・・・? ともかく今はダルに・・・)
岡部「ダル! 頼んだぞ! なんとしても尻尾をつかむのだ!」 ガシッ
ダル「え? ええ? 突然どうしたん?」
岡部「良いから集中してくれ! 命にかかわる!」
ダル「良く分かんないけどオーキードーキー!」 カタカタカタカ
リューク「ククッ、相変わらずだなライト」
月「向こうも気づけてはいないはず」
月「@ちゃんねるの書き込み1つ取ってもプロクシーも使っていない、書き込んだ相手はほとんど素人と言ってもいいほどじゃないかな?」
リューク「そういうフリをしているんじゃないか?」
月「そうかもしれないね」
月「でもバレるようなヘマはしないよ」
月「仮にバレたとしてもこのPCには僕を特定するような情報もない」
月「さらに・・・」
ダル「くっこいつ手強いお・・・何十にもサーバー経由して上手く正体隠してる!」
岡部「ダル頼む! お前だけが頼りなんだ!」
ダル「わかってるお!」
岡部「相手を特定できたらなんでも言う事を聞いてやる! なんならフェイリスとの一日デートでも構わん!」
ダル「さすがオカリン! 僕が考えてることを平然と言ってのける! そこに痺れる憧れるぅ! ってこいつマジ手強い」
ダル「あ・・・逃げられたお・・・バグ仕掛けるのは失敗」
岡部「くっ! そんな・・・どうにかならないのかダル!」
ダル「この僕が・・・」
ダル「どんな敵にも負けるはずがない、そんな風に思ってた時期が僕にもありますた」
岡部(ラボのPCからのアクセスだと特定してハッキングを仕掛けてきた・・・そして今PCの内部を見られた・・・)
岡部(予め俺たちラボの皆の正体がばれるような情報はできるだけ消してきたつもりだが・・・)
岡部(すでに居場所も知られている・・・! 危険だ!)
岡部(Dメールを・・・送るか? あの書き込みをなかったコトにするか?)
岡部「だめだ! リスクは重々承知のはず・・・もう少し様子を見るしか無い・・・のか?」
ダル「でも転んでもただでは起きないのだぜ?」
岡部「なんだと!」
岡部「さすがダルだ! して成果は!」
ダル「うん、大元のアクセス先は特定できたと思われ」
岡部「本当か!」
岡部「ふふふ、ふはは、フゥーハハハ!」
ダル「ちょ、耳元で叫ぶなし!」
パカッ
岡部「俺だ! あぁ、やってくれたよ、さすがマイフェイバリットライトアームだ」
岡部「心配は要らない、いざとなればこの鳳凰院凶真、右腕の封印を解こう」
岡部「うむ、作戦は順調だ・・・そちらもくれぐれも苦労してくれ、エル・プサイ・コングルゥ」
ダル「嘘だろ・・・」
岡部「おい、どうした」
ダル「オカリン何やったん?」
岡部「おい、どうしたんだと聞いている!」
ダル「警視庁からだお・・・アクセス」
リューク「そうなのか?」
月「あぁ、あまり使えそうな情報はないな・・・」
月「いわゆる18禁ゲームのデータばかりだった」
リューク「ククッ、なんだそれ」
月「」
月「くそ! やられた!」 ガタン!
月「こんな屈辱は生まれて二度目だ・・・!」
リューク「お、落ち着けよライト・・・」
月(くそ・・・僕をおちょくっているのか・・・?)
月(素人丸出しかと思えばPCに情報を残すヘマをしない・・・)
月(油断はできない!)
岡部「と言うことは@ちゃんの書き込みをみて警察がハッキングを仕掛けたってことか!?」
岡部(今や日本警察はキラを全支持・・・、俺の書き込みでタイーホ?)
岡部「いや、そんなバカな! あんな書き込み程度で逮捕されてたまるか!」
ダル「ちょ、オカリンなんのことよ」
岡部「いや、キラに関して誹謗中傷の旨の書き込み・・・をしたのだが」
ダル「うへ、まじかよ、それはマズイってオカリン」
岡部「そ、そうなのか?」
ダル「僕もキラには反対だけどさ、今日本でキラの事否定した日には賛同派にフルボッコ確実だお、まじで」
ダル「つーか日本だけじゃないと思われ」
岡部「そこまでキラの考えが浸透しているとはな・・・半年前は半々くらいだったはずだが・・・」
ダル「でもよく考えてみればおかしな話かも」
岡部「ん・・・? 何がだダル」
岡部「それもそう・・・か」
岡部(と言うことはキラは警察内部にいて、今のがキラ! もしくはその手の者!)
岡部(決めつけは早計だが・・・そう考えるのが自然・・・)
ダル「オカリーン、やばくね?」
ダル「何にせよ警察からハッキングとか普通じゃないし、何より僕が勝てない相手とかやばすぎ」
岡部「中々言うではないかダル」
岡部「しかし俺も逃げるつもりはない」
岡部「キラについて再び勉強しておく必要がありそうだな」
ダル「っていうか何? オカリンキラ特定しようとしてんの? それこそやばくね?」
ダル「だってキラってどうやって人殺してるか分かんねーし、顔と名前だけで殺せるって話じゃん」
岡部「心配要らん」
岡部「殺人方法についてはもうすでに調べがついている」
ダル「うそー! まじかよ! どうやってるん?」
岡部「話せばお前も巻き込むことになる・・・」
ダル「水くさいのだぜ?」
岡部「ダル・・・」
ダル「僕だって一応キラ否定派だし。 それにさっきのハッキングのお礼もしてやんなきゃですしおすし」
岡部「フ・・・さすがはスーパーハカー、やられっぱなしでは終われんという訳か」
ダル「その通りだお! 傷付けられたプライドは10倍にして返す! 後ハッカーな!」
岡部「ならば話そう──」
リューク「ククッ、大分落ち着いてきたみたいだなライト」
月「あぁ、冷静さを欠いていたらやられる相手みたいだしね」
月「けど、こいつは必ず殺す」
月「キラを・・・僕を敵に回したことを公開させた後でね・・・」
リューク「で、どうするんだ? 大した情報は得られなかったんだろ?」
月「心配するなリューク、すでに手は打ってある」
ダル「今の話が本当だったらラノベ作家になれるお!」
岡部「だが事実だ、確かにDメールを送る前はキラは死んでいた」
岡部「そして死神もほんの少しの期間ではあったがラボメンだった・・・」
ダル「ちょ、死神までラボメンにしたんすか、オカリンまじぱねぇっす!」
ダル「でもノートに名前を書いたら死ぬ・・・とかチートすぎだろ常考」
岡部「俺も実際に試した事はない・・・がそれくらいではないとキラの殺人は不可能だ」
ピンポーン
岡部「!?」
ダル「!?」
ダル「ちょ、もしかしてキラ!?」
警官A「警察の者ですがー、いらっしゃいませんかー?」
岡部「け、警察!?」
ダル「ちょ、や、やばいってオカリン・・・僕達殺されちゃうお・・・」
岡部「馬鹿な事を言うな、ここは日本だぞ! あんな書き込み1つで殺されては──」 ガンガンガン
警官B「いらっしゃいませんかー?」
岡部「ヒィッ」
岡部(どうする・・・Dメールを送るか?)
岡部(銃で頭を吹き飛ばされようものなら・・・タイムリープもDメールも使えない・・・)
岡部(どうする・・・どうする!)
警官A「近くで爆破予告があったのでお話を聞きたいんですがー」 ガンガンガン
岡部「へ?」
ダル「へ? 爆破?」
警官A「あぁ、居たんですね」
警官B「えーっと、この部屋を借りてる方ですよね?」
岡部「は、はぁ、そうですが、さっき爆破って・・・」
警官A「えぇ、この付近を爆破するって予告あったんですよ」
岡部「は、はぁ!?」
警官B「いやね、イタズラの可能性は大きんだけど、万が一って事もあるからさ」
警官A「ちょっと避難ついでに話聞かせてくれないかな」
ダル「な、なーオカリーン・・・やばくね?」 ヒソヒソ
岡部(どうする・・・さっきの警察からのハッキング・・・関係あるのか?)
岡部(迂闊なことは出来ない・・・しかし爆破予告とは・・・もしかして大檜山ビルもろとも俺たちを吹き飛ばすつもりか?)
岡部(そんなバカな、そんなところにキラの正義はない!・・・いや正義などとは言いたくないが)
警官A「はい、できるだけ早くね、あ、避難場所は近所の小学校になるから」
ダル「ちょ、行くのかよオカリン!」 ヒソヒソ
岡部「万が一本当だったらどうしようもない」 ヒソヒソ
岡部(電話レンジも持って行きたい所だが・・・贅沢は言えないな)
岡部(大丈夫だ・・・キラに必要なのは名前と顔、以前は顔だけでも殺せるキラも存在したはずだが)
岡部(ダルの話によれば今のキラは顔だけでは殺せない・・・すなわち目を持っていないということだ)
岡部(偽名を使えば・・・)
岡部(ってバカか俺は! 警察相手に偽名なんてすぐバレる!)
警官B「おーい、早くしてくれ! 次の住宅も回んないといけないんだから!」
岡部「は、はい!」
リューク「お」
月「大檜山ビルの契約主は岡部倫太郎とかいう大学生」
リューク「じゃあそいつを殺すのか」
月「バカを言うな」
リューク「え?」
月「続きがある、おとなしく聞いてろリューク」
月「岡部倫太郎はあの部屋に未来ガジェット研究所という小さなサークルを立ち上げてる」
リューク「サークル?」
月「一言で言えば、ある目的を達成するための集まり・・・かな」
月「そしてそのサークルには複数人の出入りがある・・・!」
リューク「へぇ、そうなのか」
月「調書によればその人数は8人」
リューク「8人、結構多いじゃないか」
月「そうだな、サークルの所長、岡部のイニシャルからOと名付けよう」
リューク「Oって・・・半分決めつけてるな、良いのかよ」
月「構わないよ、名前なんてどうでもいい」
リューク「どうするんだ? 全員殺すのか?」
月「それはしない」
月「出来れば罪のない一般人にまで手を出したくないからね」
リューク「ククッ、ヨツバの社員はあっさり殺したのにな」
月「脅されてたとはいえ彼らは自社の利益のために罪のない人を殺したからね」
リューク「でもOが複数、もしくは8人全員だったらどうするんだ?」
月「その可能性は十分にある」
月「ノートの存在を知らない者は殺さないが・・・」
月「存在を知るものは・・・殺す!」
月「何がだ死神」
リューク「爆破予告であぶり出すなんて回りくどい事せずにビルごとふっ飛ばしちまえば良いんじゃないのか?」
月「おいおい、長い付き合いなのに分かってないなリューク」
月「Oはノートで殺す」
リューク「ククッ」
月「キラを・・・僕をおちょくった罰だよ」
月「必ずノートで殺してやる・・・眼の前でノートにそいつの名を刻み」
月「そいつが命乞いをする所を見てやる」
リューク「やっぱり悪趣味だぜライト」 ククク
月「だまれ死神」
月「もはやキラは法であり正義であり、神なんだ」
月「その神を侮辱するという事がどういう事か」
月「思い知らせてやる!」
岡部(何か関係があるのか?)
ダル「オ、オカリーン・・・今日は僕もう帰るお・・・」
岡部(ダルは憔悴し切っている・・・)
ダル「ま、なんか分かったら連絡くれお」
岡部「分かった、気をつけて帰れよ」
ダル「オカリンもあんま無茶すんなよ?」
ガチャリ バタン
岡部(向こうは俺の名前までたどり着いている可能性がある・・・)
岡部(思った以上にまずい・・・タイムリープするか?)
岡部(待て、ここでタイムリープしても正体は分からない、警察内部に居る可能性だけだ)
岡部(キラに必要なのは顔と名前・・・)
岡部(ならば少なくとも顔を隠していれば?)
岡部(待て待て! 顔を隠していたら俺がキラを追っている者だとばれるではないか! 考えろ・・・)
岡部(これだけ参ってるってだけでもまずいんだ! この俺の挙動が怪しければ一気に疑いが増す・・・! 普段通り・・・普段通りだ)
月「そして今日お前は警察の訪問、爆破予告でかなりのプレッシャーを感じたはず」
月「この僕が・・・キラが迫っていることに対してどれだけ持つかな?」
リューク「じわじわと追い詰めて反応見るってか」
リューク「仮にもお前をハメた奴がそんな簡単にしっぽを出すかね?」
月「く! 黙ってろリューク!」
月「今思い出しても吐き気がする・・・!」
月(あぁいう存在こそキラによる裁きを受けるべきなんだ!)
月(O・・・絶対僕が殺してやるからな・・・!) ギリッ
リューク「で、どうするんだ?」
月「彼らラボのメンバーに尾行をつける、爆破予告の犯人の可能性が高い・・・と」
リューク「いたずらで終わったんじゃないのか?」
月「まだ警戒態勢を取らせているよ」
月「後は・・・出来ればメールや電話の記録を通信会社に提示してもらいたいが現時点では難しい」
リューク「ククッ、まあ面白いものが見れるのを期待してるぜ」
パカッ
カチカチカチカチ
ダル「・・・今日はエロゲやる気にもならんお」
ダル「あ・・・メール、オカリンから?」
件名:くれぐれも普段通りでいろ
本文:奴が接触してくる可能性が高いからな
ダル「奴って・・・いつもだったら厨二病乙!で済ませる所が今はシャレになってないお・・・オカリン」
ダル「いつも通り・・・いつも通り」
ダル「エロゲですね分かります」
ダル「はぁはぁ・・・はぁはぁ・・・」
ダル「うん、なんだか頑張れる気がしてきたお!」
月「ラボのメンバーの情報が集まってきた」
リューク「へぇ、どんな奴らなんだ?」
月「岡部倫太郎、ラボの所長、東京電機大学一年生、たまにおかしな言動をする事がある」
月「椎名まゆり、私立花浅葱大学附属学園2年生、こいつもおかしな言動をする」
月「橋田至、東京電機大学一年生、卑猥な言葉を連発する」
リューク「そいつじゃないのか?」
月「可能性はある・・・がまだそうと決まったワケじゃない」
月「牧瀬紅莉栖、アメリカのヴィクトル・コンドリア大学脳科学研究所所属研究員、18歳にして飛び級で大学を卒業してる」
リューク「それってすごいのか?」
月「かなりな」
月「桐生萌郁、フリーター・・・みたいだがいつも街をうろついている、正直何をしているのか全く分からないそうだ」
月「漆原るか、私立花浅葱大学附属学園2年生、女のような容姿だが男だ」
月「秋葉留未穂、私立金糸雀学園2年生、秋葉一帯の大地主でメイクイーン+ニャンニャンというメイド喫茶も経営している」
月「そして・・・唯一尾行が取れなかった相手がいる」
>こいつもおかしな言動をする
>卑猥な言葉を連発する
あらためて酷いな
月「全くだよ! 一体どうやったらこんな濃い奴らが集まるんだ全く!」
月「クソ、これじゃあどいつがOだか分からない!」
月「全く不便だよ、日本の警察ってやつは! 盗聴器も仕掛けられないんだから!」
リューク(いつも冷静なライトが逆ギレか・・・相当きてるな)
月「ただの捜査員を必要以上に接近させるわけには行かない・・・」
月「爆破予告の容疑者として尾行といっても疑いが無ければ続けさせる事は難しくなってくる・・・どうすれば・・・」
月「何か・・・何か次の手を」
岡部「フゥーハハハハハァ! まゆりよぉ、今日はどうしたのだ?」
まゆり「トゥットゥルーオカリーン」
岡部「ハハフゥー! ジューシー唐揚げNo.1か! 今日もよく食べるなまゆりよ!」
まゆり「お、オカリーン・・・?」
岡部「オカリンではない、俺は鳳凰院だと何度言ったら分かるのどぅあフゥーハハハ!!!」
ワロタ
リューク「お?」
月「この中で一番Oの可能性が薄いのは・・・」
月「漆原るか!」 リューク「秋葉留未穂!」
月「何言ってるんだリューク」
月「秋葉留未穂は秋葉の大地主として都市開発にも携わっている」
リューク「そ、そうなのか?」
月「ただの高校生であるはずがない」
リューク「で、どうするんだよ」
月「漆原るかに僕自ら接触する」
リューク「ウホッ!」
※デスノートは人間の寿命をもらう設定なので収束さんの影響はうけないかな? どうなのかな?
なるほど
紅莉栖「ちょっとなにあれ、普段の3割増しくらいで鬱陶しいんだが」
ダル「まあオカリンにも色々あるんだお」
紅莉栖「なによそれ、あんたなんか知ってるの?」
ダル「し、知らないお! 僕は知らない、それでもやってないんだお!」
紅莉栖「・・・怪しいわね」
岡部「クリスティーナよ、どうした! 何!? ダルのプレイするエロゲをプレイしたいと!?」
紅莉栖「は、はぁ!?」
岡部「この天才HENTAI少女め! 素直に頼めばダルも貸してくれるぞ? ん?」
紅莉栖「んなわけあるか! っていうか堂々とセクハラはよせ!」
岡部「顔が赤いぞThe ゾンビ! バナナでも食べたいのかフゥーハハハ!」
紅莉栖「う、うっさい! あぁ・・・もう心配して損した・・・」
るか「ふんふーん・・・」 サッ サッ
るか「お掃除おしまい・・・」
るか「今日もいい天気・・・だなぁ・・・」
月「やぁ、こんにちは」
るか「あ、こんにちは・・・参拝の方・・・ですか?」
月「いや、違うんだ。僕はフリーのライターをしていてね」
るか「ライター・・・ですか?」
月「あ、申し遅れました、僕はこういう者です」 スッ
るか「天城 高雅・・・さん、ですか」
月「そう、東京の神社について色々記事を書いてるから、話を聞かせて欲しいんだ」
月「いや、出来れば君にお願いしたいな」
るか「え・・・ボク・・・ですか?」
月「そう・・・君みたいな綺麗な方にお願いしたいんだ」
リューク「ククッ、そいつ男じゃなかったのか?」
月(黙ってろ死神、気が散る)
月「だめかな?」
るか「え・・・えっとその・・・ボク・・・」
月(こいつは男なのに容姿も性格は女そのもの・・・そして岡部倫太郎に思いを寄せている・・・との報告があった)
月(つまりは同性愛者!)
月(フフフ、男だろうとオトしてみせるさ・・・)
るか「あ・・・あの顔が・・・ち、ちか──」
月「お願いだよ、君に頼みたいんだ」
るか(あ・・・この声・・・岡部さんの・・・)
いや男だから寝取りは出来ないよな
なんだこれ
月「──!」
るか「あ・・・ご、ごめんなさい・・・ボク・・・」
リューク「ククッ、完全に空回りじゃないか」
月(お、女を殴りたいと思ったのは二度目だ・・・いや、男だった・・・くそ、動揺するな!)
月「す、少しだけでいいんだ、頼むよ」
るか「わ、分かりました・・・それじゃあボクが答えられる事なら・・・」
月(万が一・・・万が一こいつがOだったらズタズタして殺してやる・・・!)
るか「あの・・・天城さん・・・?」
月「い、いやなんでもない、それじゃあ取材を始めよう!」
るか「はい・・・地元の方に感謝の意も込めて・・・」
月「ハハ、それじゃあこの神社は毎年参拝客でいっぱいなんだね」
──────────────────────────
月「このご神木? いたずらされたのって」
るか「そうなんです・・・去年の冬・・・くらいに・・・」
──────────────────────────
月「ふーん、じゃあラボにはあんまり遊びに行けないんだ」
るか「はい・・・勉強の方が忙しくて・・・中々」
月「その年じゃ仕方ないよね、僕にもそんな時期があったなぁ、ハハハ」
リューク「ククッ、いつまで三文芝居続けてるつもりだ?」
月(だから黙っていろ死神!)
月「さっき聞いた話じゃ結構ラボに人いるみたいだけど、何人いるのかな?
るか「は、はい・・・」
月「ハハ、困ったお父さんだね、僕の父さんだったら息子に女装なんか絶対させない、絶対殴られる」
るか「厳しい方・・・なんですね」
月「頭にクソが付くほどの真面目だったよ」
るか(あ・・・あれ? 今僕のことを男だって・・・)
月「あ、ごめんごめん、ついつい話し込んじゃったね、協力してくれてありがとう」
るか「い、いえ・・・お役に立てたのなら・・・」
月「助かったよ、必要な情報は手に入った」
るか「良かったです・・・」
月(クク、どうしてこう女ってやつはチョロいんだ・・・ってだが男か)
月「五月蝿いぞリューク」
月「だがその通りだ」
月「尾行を巻いた女の名前は阿万音鈴羽、これは後で調査に回す」
月「そして何より興味深い情報が得られたよリューク」
リューク「なんだ? 興味深い情報って」
月「あぁ、奴らは・・・」
月「タイムマシンを持っている」
月「あのおん・・・男から聞いた話では過去に送れるメールだ」
月「にわかには信じがたい・・・いや、以前の僕なら信じなかっただろう」
リューク「ククッ、未来から来たメール・・・か」
月「あぁ、何故あんなメールが送られてきたのか知らないが・・・」
月「恐らくは奴らが・・・奴らの中の誰かがメールを送り僕に助言した」
月(しかしそうなると分からない、何故僕を助けるようなメールを・・・?)
月(くそ・・・Oめ・・・また僕はおちょくっているのか! なんだってんだ!)
月「過去に送れるメール・・・か、一体どうやったらそんなものが」
リューク「ククッ、それよりマズイんじゃないのか?」
月「何がだ」
リューク「過去に干渉できるならそれこそ迂闊な行動は出来ないってことじゃないか」
月(確かに・・・)ギリッ
月(メールを送ることでどのようにして過去が変るのか・・・どれだけの変化が期待できるのか・・・)
月(それが分からないことには・・・)
ダル「オカリン飛ばしすぎだろ常考」
岡部「う、うるさいダルよっ」
ダル「なぁ、そこまで気を張らなくても良いんじゃね」 ヒソヒソ
岡部「馬鹿な事を言うな、今も奴の手がラボに及んでいるのかもしれんのだぞっ!」 ヒソヒソ
ダル「でも明らかにオカリンのテンションおかしいっしょ」 ヒソヒソ
岡部「ぐぐぐ・・・」
紅莉栖「・・・」 チラッ
月「阿万音鈴羽・・・戸籍なしだって?」
リューク「どういうことだ?」
月「そんなこと! 僕が聞きたい!」
リューク「わ、悪い」
月「クソ・・・どうなってる・・・」 ギリッ
月(次の手は・・・)
ブラウン管が好きなら大丈夫
フェイリス「おかえりニャさいませー、ご主人様ー!」
月「デュフフ、ただいまでござる!」
フェイリス「ニャフフ、今日のご主人様は初めてのご来店なのニャ」
月「ここがメイド喫茶でも有名なメイクイーンですね分かります!」
リューク「おいライト、お前自分のためならホントなんでもするよな」
月(黙れ死神! 僕だってこんな事はしたくないんだ!)
フェイリス「お席まで案内するニャーん」
月「よろしくお願いします! 全力で!」
月(クソ・・・変に思われないためにはこうするしか無い)
月(少しでも警察の人間だと疑われることがマズイんだ)
月(プレッシャーをかけるためにあえて警察内部の人間だとバラしたまでは良いが・・・こんな結果になるとは)
月「コポォ!フォカヌポゥ!」
月「アイスコーヒーおながいします!」
フェイリス「かしこまりましただニャ、しばらくお待ち下さいなのニャ」
月「はぁ・・・」
リューク「ククッ、楽しそうだなライト」
月「僕は楽しくない!」 ヒソヒソ
リューク「俺は色んなライトを見れて楽しいぜ」
月(メイド喫茶なんていつか規制してやる!)
フェイリス「どうぞー、おまたせしましたニャー、アイスコーヒーになりますニャ!」 カタン
月「あ、ありがとうだお!」
フェイリス「ニャフフ、素敵な笑顔をくれてフェイリスも嬉しいのニャ」
フェイリス「お名前はニャンて言うのかニャ?」
月「一ノ瀬トキヤです! トキヤって呼んでください! ふひひ!」
フェイリス「ニャフフ、ガッテンニャ、トキニャン!」
月(ガッテンしてないじゃないかこの女・・・!)
月(なんだよそれ!)
フェイリス「ニャニャ、どうかしたのかニャ?」 マゼマゼ
月「なんでもないですはい! 今日のアニメにフェイリスたんのような天使がいたのでそれを思い出してたんです!」
フェイリス「──!」 マゼマゼ
フェイリス「ニャフフ」
月「・・・?」
フェイリス「トキニャンは嘘が下手なのニャ」 マゼマゼ
月(は? なんだと?)
フェイリス「なんでそんな嘘を付くのかフェイリスには分からニャいけど・・・」
フェイリス「メイクイーンはご主人様にくつろいでもらうのが第一なのニャ」
月(しまった・・・キャラが濃かったか?)
フェイリス「トキニャンすごく疲れた顔をしてるのニャ」
月「──!」
フェイリス「でもこのコーヒーを飲んで癒されて欲しいのニャ!」
...ィ7'´:彡刈/ヽ乂ミ:ー.ミー.、_
///イ´:_/:/::::::://:i:!、:\:\::\
. //:::,/::::イ/:/:::::/://}:l:::lヽ:ヽ:::ヽ:::ヽ
. /::/:,:イ/'´::::,//:::/:/,:イ:::l:::l::::i::::i::i::!::i:li
〃::/:/:/:/::::/:!:l/:/:::/:::!:::;!:::l:::::!:::l::l:::i::l::l!
/:/:/;イ:/!::!:::/::!:l:://〃:/:/il::::l:::i:l:::l::l::::l::l::ll
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|:::::::l:!':l::ハ:l才:;ィ:!//:::::;イi::::/;イ::小:::ハ::l::lリ::i:!l:::ll
|:i::i::!l::!://!/ィ:! !〃::/::ハ//// i:::/:::!:l::!:::;':,:l:l:!! コポォ!フォカヌポゥ!
|:l:::!:!l::!':/弋ト、./'/',::::!.ィ弋:フ7;イ::::!//!//.}:i::!
!ハ:::!:!:!;' `  ̄/ ヾ! --´/ ;:::イ::!//.、j:l::!'
iト::!:::l ! /'´:/:/´〉.ノ:l:!
|| l:トハ // ´才i::!'
. ! ヾ!ハ ` ´ /'`T´l:l::!リ
ヽ 、 ‐- __ _ ' l:.:!!.l
ヽ 、_ / Ⅵ:!ーァ-、
ヽ / 才´ \
iヽ. ィ .‘ \
!: :  ̄ . イ /ー‐、_
.-‐、_',: : : : i '⌒ヽ. / `ー、_
/ ヾ.: : : .: l l:.:.:.:.:.入 / 才´ `ー、
/ i、: : : . . : : ! !:.:./ i `ー、 / _.才´ .. -‐--ミ、
/ /l ヽ: : : : : // ' / / / ヽ/ //./ / ヽ
/ _才⌒ヽ /: : } }: : : ノ/ / ' / !// / i
/:.:.´:.:.:.:.:.:.:.:::! l: : : : : . . . / / / l /// -‐ !
/:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::::::) !: : : : : : : i ! / ! //´ / !
:., -― ´`ー、_::::ゝ !: : : : : : :i .! ___ 〃 / l
やwwwwめwwwwwろwwwwwwww
AAにセリフ付けただけなのになぜこんなに笑えるのだろうか
フェイリス「そうだったのかニャ」
月(下手なことは喋らないほうが良い)
月「ある事を調べてまして・・・行き詰ってしまったから気分転換に新しい事をしてみようと思ったんです」
月「ほら、まず行動しないと変わらない・・・って言いますよね」
月(これが今の僕に言える限界!)
フェイリス「・・・」 ジー
フェイリス「トキニャンが何を調べてるのかはわからニャいけど」
フェイリス「フェイリスはトキニャンの事を応援するのニャ」
月「ハハ、ありがとうございます」
カタッ
月「これは?」
フェイリス「サービスニャ」
月(オムライス・・・か)
リューク「ククッ、世界がヤバい」
月「・・・」
リューク「もしかして思いの外あの猫耳メイドに情が移っちゃったとか?」
月「そんな訳ないだろ」
月「次の手を考えていたんだ、Oを潰すためのな」
リューク「なんだよ、あんなコト言われてぼーっとしてたから躊躇すると思ってたのに」
月「馬鹿な事を言うな、僕はもう女に振り回されるのはイヤなんだ」
月(それにしてもあの女・・・一体何者・・・)
月(僕の演技は完璧だったはず! いわゆるネット上やTV上のステレオタイプのオタクを完璧に演技した・・・!)
月(それなのに僕の・・・僕の嘘を見破った)
月(超能力者・・・?いや、そんなものあってたまるか!)
月(もしやすでに過去にメールが送られて・・・?)
月(くそ! 考えれば考えるほど頭がぐちゃぐちゃになる!) ボサボサ
ダル「グガガガー・・・ンゴッ」
まゆり「あれれー? オカリンとダル君寝てるの?」
紅莉栖「疲れて寝たみたい」
まゆり「なんだか今日の二人は・・・変だったよー」
紅莉栖「確かに・・・私も感じてた」
まゆり「どうしたのかなぁ・・・」
紅莉栖「なんだかいつもの厨二病って感じじゃないのよね・・・」
まゆり「まゆしぃ心配だよぉ・・・」
紅莉栖「心配してても仕方がないわ、二人が話してくれるの・・・待ちましょ?」
まゆり「そうだねー」
紅莉栖(岡部・・・なんで話してくれないのよ・・・)
リューク「ククッ、顔が怖いぞライト、ハンサムな顔が台無しじゃないか」
月「あまり外で話しかけるな、お前と違って僕の声は他の人間に聞こえるんだ」 ヒソヒソ
月「こうして小声で話してるだけでも・・・ハッ!」
リューク「お? どうしたんだライト」
月「あの女・・・確か桐生萌郁」
リューク「ん? あぁ、あの女も確かラボメンだっけ」
月(阿万音鈴羽に次いで正体が分からないラボメン・・・家族や身寄りはなし・・・)
月(こいつに接触するのは漆原るかや秋葉留未穂以上に危険だ)
月(接触するとしても椎名まゆりの方が断然可能性は──)
萌郁「・・・」 カチカチカチカチカチ
月「携帯・・・メール・・・」
萌郁「・・・」 カチカチカチカチカチ
リューク「おい、どうしたんだよライト)
月(見た所普通の携帯のようだけど)
月「確か桐生萌郁には携帯依存症の気があったはず」 ヒソヒソ
リューク「それがどうかしたのか?」
月「もしあれがDメールを送れる携帯だとして奴がOだとしたら・・・」 ヒソヒソ
月「あんな携帯・・・一時も手放したくはない」 ヒソヒソ
月「特にキラから追われている身であればなおさらだ。 僕と戦う上で絶対のアドバンテージになるのはDメールなんだから」 ヒソヒソ
リューク「へぇ、確かにありえなくはないかもな」
月(どういう原理でDメール・・・過去にメールが送れるのかは分からない)
月(しかし奴に接触・・・いや、接触はしないまでも後をつけて情報を探るくらいはしないとOには勝てない!)
月(尾行を巻いた阿万音鈴羽とは違い桐生萌郁に尾行は成功している、やってやるよO!)
リューク「あいつもオトせばいいじゃん」
月「バカを言うなリューク、あいつがOだったとしたらナンパだろうが怪しまれる!」 ヒソヒソ
月「今回ばかりは絶対に悟られてはいけない、これはそういう戦いなんだよ、分かったら黙って見とけ死神!」 ヒソヒソ
月(全く収穫がないじゃないか!)
月(何が目的なんだ・・・)
月(まさか既に過去にメールを送って僕を監視・・・!?)
月(いや、まだ僕はヘマをしていないはず! 大丈夫だ、バレてない) ゴクリ
月(違う、そういう考えじゃダメなんだ! 未来の僕がどういう行動をしたか・・・それすら考えて動かなくちゃいけないんだ!)
リューク「お、喫茶店に入ったな」
月「僕達も入るぞ」 ヒソヒソ
月(携帯依存症ならトイレに行った時も携帯を手放すことはしないはず)
月(さて、どうする)
萌郁「・・・」 カチカチカチカチカチ
月(またメールを打っているのか・・・しかしあんなにメールをして一体何を)
リューク「お、動くのかライト」
月(自然に・・・自然に・・・)
月(後もう少し・・・あの女の後ろから・・・)
月(画面を・・・)
リューク「ククッ、歩き方がたどたどしいぞライト」
月(見えた!)
──FBFBFBFBFBFBFBFBFBFBFBFB
FBFBFBFBFBFBFBFBFBFBFBFB
FBFBFBFBFBFBFBFBFBFBFBFB
FBFBFBFBFBFBFBFBFBFBFBFB
FBFBFBFBFBFBFBFBFBFBFBFB
FBFBFBFBFBFBFBFBFBFBFBFB
FBFBFBFBFBFBFBFBFBFBFBFB
FBFBFBFBFBFBFBFBFBFBFBFB
月「──!」
月(な、何をやっているんだこいつは!) グラッ
月(まずい・・・動揺するな、もし本当にOだったら・・・)
月(とにかくここはトイレに行く人間として自然な行動を取らなくては)
月「はぁ・・・はぁ・・・」
月「なんなんだ一体」
スゥ
リューク「ようライト、収穫はあったのか?」
月「それが全くといって良いほどだよ」
月(くそ! あれがDメールというやつなのか? 全く意味がわからない!)
月「とにかく、コレ以上接触してるのは危険だな、やはり桐生萌郁、あいつは怪しい」 ギリッ
月「帰って作戦を──」
ガチャリ
萌郁「・・・!」 ハッ
月(な、桐生萌郁!)
月(ば、馬鹿な・・・僕の行動に違和感を感じて──?いや、そんなはずは・・・!)
萌郁「きゃ、きゃあああ!」 ダダッ
月「なっ!?」
リューク「ウホッ!」
月「に、逃げるぞリューク! 痴漢で捕まるなんてキラとして捕まるより許せない!」 ダッ
ガチャッ
店員「あ、お客さ──」
月「代金ここ置いておきます!」 バン!
店員「ちょ、ちょっと!」
月「はぁ・・・! はぁ・・・!」
リューク「ククッ、いつも冷静なお前にしては珍しいミスだな」
月「バカを言うな・・・キラを追っているかもしれないOとの接触でプレッシャー、過去に送れるメール、さらにはあんなメールを見せられたらいくら僕でも・・・」
リューク「なんて書いてあったんだ?」
月「FBの二文字がいくつもだ、全く訳がわからない! クソ!」
リューク「聞いたことがあるぞ、それメンヘラってやつだな、ククク」
岡部「む・・・しまったいつの間にか寝てたみたいだな」
岡部「ん? 書き置き?」
起きたらコレでも食っとけ!
後くれぐれも無茶だけはすんなよ!
紅莉栖
疲れてるみたいだし起こさないでおくね?
あんまり危ない事しちゃだめだよ?
まゆしぃ☆
岡部「フ・・・あいつらめ、カップラーメンとバナナとは・・・全然合わんではないか」
ガチャリ
鈴羽「岡部倫太郎、大変だよ」
岡部「ど、どうしたバイト戦士! 何かあったのか!」
岡部「な、なんだと!」
岡部「キラなのか!?」
鈴羽「恐らく」
岡部「な、なんだと・・・くっ、皆が! 皆が危ない!」
鈴羽「待って! あたしの話を聞いて!」 ガシッ
岡部「離せ! まゆりが!紅莉栖が! 皆が!」
鈴羽「追いついてってば!」
鈴羽「お願い・・・話を聞いて」
岡部「わ、分かった、しかしお前・・・」
鈴羽「あたしは2036年から来たタイムトラベラーだよ」
岡部「な、なんだって!?」
岡部「ディストピア・・・2036年・・・だと!?」
鈴羽「そう、人々は支配に怯え死んだような目をしている・・・、あたしはそんな未来を変えるためにやってきたんだよ! 力を貸して岡部倫太郎!」
岡部「ば、ばかな、そんな事いきなり言われて信じる事など・・・」 グラッ
鈴羽「本当なんだ・・・本当なんだよ」
岡部「まさか俺が・・・俺がリュークにあんなメールを送らせたから・・・」
岡部「2036年もにもなってキラの支配が続いている・・・だと?」
鈴羽「心配しないで岡部倫太郎、策は・・・ある」
岡部「それは本当か鈴羽!」
鈴羽「うん君たちのラボの人たちに話を聞いてみて・・・」
鈴羽「今なら多分・・・遭ってるはずだから」
岡部「──!」
岡部「るか子!」
るか「あ、おか・・・じゃなくて凶真さん!」
岡部「るか子! 大丈夫か! 何かされてないか!?」
るか「え・・・それってどういう・・・」
岡部「怪しい奴に遭ってないか!?」
るか「怪しい・・・ですか?」
岡部「なんでもいいんだ!」
るか「えーと・・・」
るか「あ、そういえば・・・」
岡部「なんだ! 何か思い出したのか!」
るか「はい・・・あの・・・天城さんというフリーのライターだったんですが・・・」
るか「は、離れてください!」 ドッ
月「──!」
るか「あ・・・ご、ごめんなさい・・・ボク・・・」
リューク「ククッ、完全に空回りじゃないか」
月(お、女を殴りたいと思ったのは二度目だ・・・いや、男だった・・・くそ、動揺するな!)
月「す、少しだけでいいんだ、頼むよ」
るか「わ、分かりました・・・それじゃあボクが答えられる事なら・・・」
岡部(あいつなのか?) コソッ
月「あ、ごめんごめん、ついつい話し込んじゃったね、協力してくれてありがとう」
るか「い、いえ・・・お役に立てたのなら・・・」
月「助かったよ、必要な情報は手に入った」
るか「良かったです・・・」
岡部(ラボの情報を聞きだしている・・・だと?)
岡部「いや待て、尾行がばれたら元も子もない・・・相手はキラなんだ、もっと慎重に・・・だ」
~タイムリープ後メイクイーン・ニャンニャン~
岡部(あれからしばらく時間を潰しフェイリスにも話を聞きに行った結果・・・怪しい人物に接触したという話を聞けた)
岡部(来た! またあいつだ!)
フェイリス「おかえりニャさいませー、ご主人様ー!」
月「デュフフ、ただいまでござる!」
岡部(なんだあいつ・・・全然キャラが違うじゃないか!)
月「これは?」
フェイリス「サービスニャ」
月(オムライス・・・か)
岡部(間違いない・・・あいつはラボメンに接触を図っている・・・と言うことはあいつがキラか? 待て、キラかどうか決め付けるのは早い・・・キラに手下がいないとも限らんのだ)
萌郁「・・・」
岡部(またラボメンに近づきやがって・・・) ギリッ
岡部(少なくともキラに関わりのある者・・・それは間違いないはず)
月「──!」
月(な、何をやっているんだこいつは!) グラッ
月(まずい・・・動揺するな、もし本当にOだったら・・・)
月(とにかくここはトイレに行く人間として自然な行動を取らなくては)
岡部(萌郁の携帯を見て動揺・・・?)
岡部(ってあいつ今女子トイレ入りやがった!)
岡部(どうする・・・聞き耳を立ててみるか・・・?)
岡部(しかし女子トイレの扉で聞き耳というのも・・・)
岡部(男子トイレ! 運が良ければ聞こえるかもしれない!) タタッ
岡部(・・・聞こえる)
──「とにかく、コレ以上接触してるのは危険だな、やはり桐生萌郁、あいつは怪しい」 ギリッ
岡部(・・・まずいな、萌郁にノートを知る存在としての疑いが掛かっている!)
岡部(いや・・・そうじゃない、いずれは俺にも・・・それにダルにも疑いがかかってしまうはず)
岡部(ラボメンは俺が・・・守る!)
~ラボ~
岡部「・・・」
ガチャリ
鈴羽「岡部倫太郎、大変だよ」
岡部「分かっている」
鈴羽「へ?」
岡部「お前やラボメンに尾行がついてるのは既に分かっている。 だから教えろ、貴様の策というやつを」
岡部「あぁ、お前が未来から来たことも・・・2036年がディストピアになっている事も知ってる」
鈴羽「良かった、なら話は早いや」
岡部「あいつは・・・キラなのか? ラボの皆に接触したあの男は」
鈴羽「それは分からない」
岡部「なぜだ!」
鈴羽「なぜって・・・」
鈴羽「君は・・・2010年8月12日、明日には死亡してるんだ・・・」
岡部「な、なんだと? この俺が?おい、冗談だろ・・・?」
鈴羽「冗談なんかじゃないよ」
岡部「バカな・・・と言うことは俺はキラに負けたということではないか・・・」
岡部「フフ・・・何が世界の支配構造を変革だ・・・鳳凰院凶真だ・・・キラに屈して・・・いや、キラを復活させたのは俺じゃないか・・・」
鈴羽「ま、待ってよ岡部倫太郎! 諦めるのはまだ早い!」
鈴羽「キラ・・・あるいはキラの側近と対峙し一度ノートを奪ってる、それだけは確かなんだ」
岡部「俺が・・・ノートを?」
岡部「と言うことは俺はどうやって死んだんだ?」
鈴羽「・・・心臓麻痺」
鈴羽「キラは恐らく複数のノートを持っている、それは裁きが続いていることからも分かる」
岡部「なら俺がノートを奪ったとしても無駄死・・・だったのか・・・」
鈴羽「そうじゃない、そうじゃないよ」
鈴羽「ノートは・・・そう2036年まで・・・」
鈴羽「父さんと牧瀬紅莉栖・・・が保管していた」
鈴羽「そして今ここにあるのが・・・君が・・・明日ノートに書かれて死ぬ君が命がけで奪ってきたノート」 バサッ
岡部「──!」
岡部(確かに死神リュークが落としたのと同じ)
鈴羽「ここを見てよ岡部倫太郎」
岡部「──!?」
岡部「し、しかしこれでは・・・」
鈴羽「キラはノートによる殺人を正義としている、それは初めて現れた時から2036年まで変わってない」
岡部「・・・」
鈴羽「そして・・・キラは・・・キラに殺人を認めさせる方法でしか負けは認めない」
鈴羽「それに岡部倫太郎も人殺しなんて・・・したくないでしょ?」
岡部「あぁ、キラには・・・奴には死んでもらっては困るからな・・・」
岡部「奴には自分のした行為をじっくり後悔させてやらねばらならんっ!」
岡部「しかし・・・その前に」
岡部「俺を敵に回したことから後悔させてやるフゥーハハハ!!」
鈴羽「あはは、元気でたみたいだね」
岡部「フフ、この俺を・・・誰だと思っている!!」
岡部「俺は狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真!! キラを倒すなど造作も無い!! フゥーッハッハッハァ!」
リューク「どうした、小休止か?」
月「・・・」
リューク「にしても・・・メイドカフェとはな」
月「・・・」
リューク「なんだよ、結局ハマってんじゃねーか」
リューク「あれほどメイドカフェなんて潰してやるーとか言ってたじゃないか」
月「リューク、僕は次のターゲット、椎名まゆりを観察しにきたんだ、あまり話しかけるな」 ヒソヒソ
まゆり「こんにちニャンニャン、トキニャンだったかニャン?」
月(その呼び方はもうやめて欲しいんだけどな・・・吐き気がする!)
月「コーヒー、それとオムライスください」
リューク「ククッ、それにしてもラボの奴らはレベルの高い女ばかりだな、死神目から見ても美人が多くて羨ましいぞ」
月(死神目から見て美人ってどういう感覚だよ、全く笑えないよリューク)
まゆり「んー? どうしたのかなぁ?」
月「いえ、大したことじゃないんですが聞きたいことがありましてね」
まゆり「聞きたいことー? まゆしぃに答えられる事ならなんでも答えるよー」
月「そうですか、では──」
岡部「ちょっと邪魔するぞ」 ドカッ
まゆり「わわ、オカリンだー」
月(岡部・・・倫太郎・・・!)
リューク「おっ・・・ククッ・・・」
月(なんだ・・・このタイミングでこいつが・・・)
岡部「まゆり、コーヒーを頼む」
月「いきなりなんですか? 失礼な方ですね」
岡部「いや、何、俺の幼馴染に馴れ馴れしくしてもらっては困るのでね」
月(嫉妬故の行動か? くそ・・・一体どうなっている、狼狽えるな・・・ボロを出すんじゃない)
岡部「うるさぁぁい!」
月「──!?」
ザワザワ
岡部「この俺を誰だと思っている! 世界の支配構造を変革する男! 鳳凰院凶真だ!」
月(なんだこいつ・・・ふざけてるのか?)
月「言ってる意味がわから──」
岡部「ぬあらばぁ! 貴様は無能というわけどぅあ、この鳳凰院凶真の崇高な思想についていけない、これを無能と呼ばずしてなんと呼ぶのだフゥーハハハ!」
月「・・・」 ギリッ
月(こいつ・・・!)
リューク「ククッ」
まゆり「他のご主人様たちに迷惑がかかるのです」
岡部「うむ、それもそうだな」
岡部「おい貴様、場所を移すぞ」
月「な、なんで僕が──」
岡部「聞きたくはないのかぁ? ノート・・・について」
月「──!」
月(こいつ・・・Oだ)
月(しかし何故名乗ってきた・・・何かあるのか?)
月「ノート? ハハッ、なんだよそれ」
岡部「しらばっくれるな、貴様がキラ・・・いや、もしくはキラに近いものだという証拠は挙がっているぅ!」
月(──バカな! バレた・・・? この男には接触していないはず・・・クソ・・・Dメールの効果・・・なのか?)
月「やっぱり言ってる意味が分からない、僕がキラ? 冗談もほどほどにしてくれよ」
岡部「ここなら誰にも話は聞かれない」
岡部「さぁ、思う存分話しあおうではないかぁ!」
月「く、なんなんだよ僕をキラって決めつけて! いい加減にしろ!」
岡部「ならば一昨日ラボメンに近づいた訳を話してみるがいい、聞いてやらんでもないぞ」
月(やはりバレているのか・・・?)
岡部「ご丁寧に偽名まで使ってラボメンに探りを入れているのはすでに調査済みだ! フゥーッハッハッハ!」
リューク「クク・・・なあおい、完全にバレてるんじゃないのか? ライト」
リューク「Oが他にいるにしても、こいつもう殺した方がいいんじゃないか?」
月(うるさい!黙って見とけ!)
月「そこまでバレているとはね・・・分かった話そう、僕は警察の人間なんだ、偽名を使ったのは捜査の一環で」
岡部「フ、俺にも偽名を使おうとしうのか? ライトとやら」
月(馬鹿な──! 名前まで・・・? なぜだ)
岡部「俺にはお前がキラだと思っているよライト」
リューク「ククッ、ダメじゃん、もうキラってばれてる」
リューク「もう殺せってライト」
月(バカを言うな、O全てを殺すまで慎重に!)
岡部「今のは・・・ライトがキラだと見なしても構わんのだろう?」
岡部「なぁ、死神よ」
月「──!」
リューク「ウホッ!?」
月(馬鹿な・・・)
岡部「久しいなリュークよぉ! 貴様に俺の記憶があるのか分からんが俺には貴様の記憶、バッチリとあるぞ?」
月(リュークの名前まで・・・どういう事だ? リュークが裏切って・・・? いや、リュークは中立のハズ・・・)
リューク「お、俺お前のことなんか知らない」
岡部「それもそうだろう、貴様の魔眼は人間の寿命を見るものであって世界の記憶を保つものではないからなフゥーッハッハッハ!!」
月(目の取引も知っている・・・ノートを持っている!? まさか他に死神が!?)
リューク「お、おいどういう事だよライト」
月(僕に聞くな!) ギリッ
岡部「フ、良い加減口を開いたらどうだぁ? ん? キラ、もしくはその”下僕よ”!」
月「」 プチッ
岡部「下僕だとしたら哀れだな、キラにこき使われて、今お前はここで無様に醜態を晒すのだから!」
月「」 ブチブチ
リューク「えっ!? いや、そんなことしねーって」
岡部「フゥーハハハ! やっと口を開いたなライトよ!」
月「その笑い方・・・腹が立つ」
岡部「ん? そうか? だったらもっと言ってやろうフゥーハハハ!」
岡部「フゥーハハハ! 今ここにラグナロックの勝敗は決したのだ! このふぉうおういんきょうむぁが人類の悪、キラを打ち砕くことによってなフゥーハハハハハhげほっげほ」
岡部「あ、キラではなく下僕だったか? いやすまん、間違え──」
月「く・・・」
月「ふふ」
月「ふはは」
はははははははははははははははは
はははははははははははははははは
はははははははははははははははは
はははははははははははははははは
はははははははははははははははは
はははははははははははははははは
はははははははははははははははは
岡部「──!」
月「僕がキラだ」
月「ならばどうする」
月「今貴様は僕の前に顔を晒している」
月「それがどういう意味か分かっているのか?」
岡部「・・・もちろんだとも」
岡部「だがこの鳳凰院凶真! 貴様の野望を打ち砕くことなど造作も無い!」
月「ふん、まさかその”鳳凰院凶真”という偽名を使っているから大丈夫、とでも思っているのか?」
岡部「なに?」
月「お前の名前は岡部倫太郎、鳳凰院凶真なんてただの設定だ! もうとっくに調べは付いている! そんな事も気づかなかったのか!?」
岡部「気づいていたとも」
月「──なに!?」
岡部「さあ、どうした、書かないのか? 書けよ・・・所詮お前は負ける運命」
月「なら望みどおり書いてやるよO!!」 カチッ
月「岡部倫太郎岡部倫太郎岡部倫太郎!!」
月「どぉーうだ!! 僕の! ノートの切れ端に書いてやったぞ!」
岡部(だ、大丈夫だ・・・俺は・・・死なない!)
月「僕が切れ端を仕込んでるとは思わなかったのか! ノートは切れ端でも使える! そんな事も知らなかったのか!」
岡部「それは知らなかったよキラ」
月「さんじゅうはち」
月「さんじゅうきゅう」
月「よんじゅう!」
月「はははは! そうだ! キラに逆らうからそうなるんだよ!」
月「安心しろ、お前の仲間もいずれそっち側に送ってやる」
岡部「くぁ・・・」 ドサッ
月「ははははははははははは」
リューク「お、おいライト」
月「どうした死神、大体お前が僕のことをキラなんて呼ぶからこんな事態に──」
岡部「鈴羽! 今だ!」
ガシャーン
鈴羽「オーキードーキー!」
月「な、おまえは阿万音鈴──」 ゲシッガッガスッ
月「ぐぁ・・・」
鈴羽「コレ? コレあたしのタイムマシン、あたしは2036年から来たんだよ」
月「──!? にせんさんじゅ・・・馬鹿な!」
月「こいつら物理的タイムトラベルまで・・・」
月「そうじゃない、何故お前が生きている岡部倫太郎・・・!」
岡部「言っただろう、俺はお前の野望を打ち砕く、と」
月「そんな事を聞いてるんじゃない! ノートに名前を書かれても死なない人間なんていない!」
月「何かトリックが・・・トリックがあるはずだ・・・」
鈴羽「ちょっとー、静かにしなってー、君はもう現行犯なんだから」
月「う、うるさい! お前はいつまで僕を・・・こんな!」 ググググ
月「リューク、書け」
リューク「え?」
月「こいつらの名前を書けって言ってる!」
月「僕がキラだとばれたのはお前のせいでもある、さあ早く書け!」
リューク「しょうが無いな~」
リューク「まぁ、あんまり期待するなよ、ライト」
月「──? どういうことだリューク!」
リューク「だって岡部倫太郎は紛れもなく本名」
リューク「ということはあれを済ませてる可能性がある」
月「あれ・・・? あれってなんだよ!」
リューク「ククッ・・・」
リューク「ほらよ、書いたぜ」
橋田鈴羽
鈴羽「──! やっぱり本名ばれるんだ・・・」
リューク「さんじゅうはち」
リューク「さんじゅうきゅう」
リューク「よんじゅう」
鈴羽「・・・!」
鈴羽「良かった、成功したんだね」
月「な、なんでだよ! 何故死なない!」
岡部「このノートに書いてある」
月「そ、それはデスノート!?」
岡部「今日死ぬはずだった俺が未来のダル・・・紅莉栖に託し、そして再び俺の元へと帰ってきたデスノートだ」
岡部「そしてこのデスノートのルールには」
岡部・鈴羽・リューク「”顔を思い浮かべて4回名前を書き間違えられた人間に対し、以後デスノートは効かなくなる”」
岡部「と書いてある」
月「ば──!」
世界が変わるな
月「一歩間違えれば自分が死ぬんだぞ!」
岡部「俺はすでに一度死んだ身だ、ラボの皆を守るためなら命など惜しくはない、もっとも死ぬつもりなど毛頭も無かったがな」
鈴羽「あたしも、ディストピアが構築されているみたいが変われば自分の命なんて捨てる覚悟だったからね」
月「ばかな・・・ばかな・・・何故お前ら他人のために命を捨てられる・・・」
岡部「貴様にも仲間がいれば・・・あるいは」
リューク「ククッ、ライト、お前の負けみたいだな」
月「なんだと?」
リューク「デスノートは効かない、身動きは取れない、キラだと自白済み」
リューク「どう見てもお前の負けだよ」 ククク
月「な、ならばお前が殺せ! ノートじゃなく! お前の手で!」
リューク「バカを言うなよライト、それをやったら俺は死神界で罰が下る。それも特級だ」
リューク「つまり死ななきゃならない。とてもじゃないがライト、お前のために死ぬ気にはなれないぜ、ククッ・・・」
月「リューク!」
…
シーッ
月「ば──やめ──」
岡部「待てーい!」
リューク「ん?」
岡部「殺すのは駄目だ」
リューク「おい、なんでだよ、こいつはキラでお前らの敵なんだろ?」
岡部「こいつにはしっかりと罪を償ってもらう、死神であろうと殺すことを許さんっ!」
月「なんだと?」
岡部「いつになるか分からんが貴様がシャバに出た暁にはラボメンとして迎えてやっても良い」
月「バカなことを・・・言うなよ・・・」
岡部「仲間の素晴らしさ・・・知らずに死ぬのは惜しいだろ」
リューク「でもよー、こいつが死ぬまで待つなんて無理だぜ、さっさと殺──」
リューク「ってなんか前もこんなコト会った気がするな、ふーなんだこれ、面白?」
岡部「だったら所有権を無くさせればいい」
鈴羽「ちょっと岡部倫太郎ー、こいつは大量殺人犯で──」
月「捨ててやるよ・・・」
リューク「お?」
月「ノートなんか捨ててやる!」
リューク「はいよ」
月「良いか、岡部倫太郎、お前はいつか必ず僕が地獄に送ってやる、デスノートを再び手にして! その時はノートでなんて殺さないからな! ははははは!」
鈴羽「こんなコト言われてるよー? 大丈夫?」
岡部「やれるものならやってみろ」 フフッ
ぐにゃああああ
岡部「くっ・・・これはリーディングシュタイナー!」
岡部「そうか・・・ディストピアが・・・構築されない世界線へ・・・」
鈴羽「お別れみたいだね・・・岡部倫太郎」
鈴羽「ありがとう、未来・・・変えてくれて」
岡部「鈴羽!」
岡部「はっ・・・ここ・・・は」
月「何やってるんだよ倫太郎」
岡部「お前・・・ライト!」
月「何驚いてるんだよ変なやつだな、ハハッ」
月「さっきラボのメンバーとして入ったもらったのにもう忘れたのかよ」
岡部「ラボメンだとぅっ!?」
岡部(キラ・・・じゃないよな?)
岡部「おい、貴様・・・ノート・・・知らないか?」
月「ノート? なんのことだよ」
岡部「いや、分からなければいいんだ・・・」
月「じゃあとりあえず」
月「メイクイーン行こうぜ、ふひひ」
おしまい
まゆりがほとんど出なかったのもそうだよ
ごめんごめんね
乙っした
乙
Entry ⇒ 2012.06.12 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)