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白望「王様ゲーム?」
豊音「そうだよー」
白望「パス。ダルい」
塞「まあまあ、そう言わないでさ」
エイスリン「オウサマゲーム?」
胡桃「あ、エイちゃんは知らないんだ。王様ゲームっていうのは……」カクカクシカジカ
エイスリン「ホウ!」
エイスリン カキカキ
エイスリン「……シロ!」バッ!
白望「やりたいって?……しょうがないなぁ」
王様:>>11
5人以外を出されても困るので、断らない限りキャラは安価先のコンマ一桁目で判定します
被りとかは安価下で
0,1 白望 2.3 エイスリン 4,5 胡桃 6,7 塞 8,9 豊音
塞「ぬぎゃー、取れなかったかー」
胡桃「くっ」
白望(トヨネなら変な命令は……出さないよなぁ……?)
豊音「それじゃあ、>>15に>>16してもらおうかなー!」
>>16には命令をお願いしますー
豊音「そうだよー。きてきて!」ヒザポン
胡桃「じゃあ遠慮なく」ポスン
胡桃「充電充電!」
豊音「胡桃ちゃんあったかいよー」
胡桃(……胸が頭に乗るってどういうこと……!?)
塞「……完全に親子にしか見えないわあれ」
エイスリン「クルミカワイイ!」
白望(平和な命令でよかった……)
王様:>>24
塞「今度はシロが王様かー」
豊音「ちょーたのしみだよー」
白望「ん……じゃあ>>29に>>30してもらう」
安価なら対戦相手で気になった人のどんなところが気になったか告白
胡桃「えっ」
エイスリン「エッ」
豊音「えっ」
ALL「「「「えええええええええええっ!!!?」」」」
塞「シ、シロがそんな命令出すなんて……!?」
胡桃「予想外にもほどがあるよっ!」
エイスリン「デ、ダレガ……!?」
豊音「あ、わ、私だよー///」
豊音「う、うん///」
白望「そっか。じゃあ軽めにしよう」
白望(実は私も初めてだけど……)
白望「少しかがんで……」チュッ
豊音「んっ……///」
白望「……こんな感じかな」
豊音(わ、わー///)ドキドキ
エイスリン(oh……)ドキドキ
塞(うわわわわわ!?)ドキドキ
胡桃(本当にキスしたー!?)ドキドキ
王様:>>37
塞(次はどんな命令が来るんだろ……予測できない……)
豊音 ///
胡桃「トヨネはいつまで照れてるの!」
豊音「だ、だってファーストキスだったから///」モジモジ
白望「じゃあ>>40に>>41でもしてもらおうかな」
はいてない世界じゃないならスカートではなく下着脱ぐ
白望「マジ」
エイスリン「シロェ……」
豊音(シロを見る目が変わっちゃいそうだよー……)
胡桃「で、誰が脱ぐの……って、わ、私じゃん!?」
白望「胡桃になったかー」
胡桃「で、でも恥ずかしいし///」
白望「裸の付き合いは済ませた仲でしょ」
胡桃「お風呂でしょそれ!?」
白望「はやく」
胡桃「う、うぅ~」
胡桃「あーっ!ぬ、脱げばいいんでしょ脱げばっ!」バッ
胡桃「ほら脱いだよ!文句ある!?」
白望「ないよ、次行こう」
胡桃「……そこまでノーリアクションだとさすがに傷つくんだけど」
王様>>50
塞「胡桃の命令は普通だよね!信じてるよ!」
白望「普通の命令だとデンジャラス不足じゃない?」
塞「シロは黙ってて」
胡桃「じゃあ、>>53は>>54するっ!」
豊音「一安心だよー」
白望「デンジャラス不足……」
塞「で、誰が肩車するの?」
エイスリン「ワタシデス」
胡桃「じゃあエイちゃん、頭下げて」
エイスリン「リョウカイデス!」
胡桃「おー、高い高い!」
エイスリン「ハシッテミタリ!」
胡桃「ちょ、怖い怖い!エイちゃん怖い!」
塞「……どう見る、シロ?」
白望「久しぶりに親戚に会ってはしゃぐ子供」
塞「そんな感じか……」
白望「でも、トヨネじゃなくてよかったね」
豊音「え、なんでー?」
白望「トヨネだと天井にぶつかってたでしょ」
塞「あー、確かに」
王様:>>60
塞(これで王様してないの私だけか……)ズーン
塞(というか、命令すらされてない!?)
胡桃(エイちゃんの命令って、一番読めないよっ)
エイスリン「デハ、>>64に>>65シテモライマス!」
胡桃「あー、エイちゃんはそっち側だったかー」
白望「いいね、中々デンジャラス」
エイスリン「ワタシガチョコノホウ!」
エイスリン「サエ、カモン!」
塞「あわわわわわわわ///」
塞(え、エイスリンはやっ!?)ポリ…
エイスリン ポリポリポリポリ
白望「エイスリン選手果敢に攻めるー。塞選手は硬直気味ですねー。どう見ますか胡桃プロ?」
胡桃「誰がプロか!?私に振らないでよっ///」
豊音「見てるだけでドキドキするよー///」
次レスのコンマが偶数でポッキーゲーム成功、奇数で失敗
塞(うわわー!?)
エイスリン チュッ
塞 チュッ
白望「エイスリン選手行ったー。これは文句なし。いかがでしたか胡桃プロ?」
胡桃「だから私に振らないでよっ!?」
豊音「わぁー///」カァァ
エイスリン「エヘヘ」///
塞 ポケー
王様:>>76
塞「ここまで半分がシロとか……」
白望「王様の資質があるのかも」
胡桃「鬼畜王シロか……」
白望「じゃあ>>80に>>81してもらう」
白望「塞は中学生のときによく考えてたよね」
塞「な、なんで知ってるの!?///」
白望「国語のノートに書いてたでしょ。確か内容は……」
塞「わーっ!わーっ!」
胡桃「……で、誰が朗読するの?」
エイスリン「ワ、ワタシジャナイデスヨ!?」
豊音「私だよー」グスン
豊音「そ、それじゃあいくよー」
.r⌒ヽ /⌒ヽ
. / .\ / .i |
| \ \/| | 錆びつけば 二度と突き立てられず
._______ | .| ヽ ヽ_| .|
|. | | .ノ /\ ヽ 掴み損なえば我が身を裂く
|. | | / (__/ .\ i
|. /_) ̄ ̄ ̄ヽ) .| そう誇りとは
|________(___/ / |
\ / ./ / 刃に似ている
\__(⌒ヽ| /
 ̄ ̄ \ ''ー― ノ_____/
' 'ー――-'´
胡桃「ぶふぅっ!」
白望「く、胡桃、笑っちゃダメだよくふふっ!」
胡桃「シロもでしょぶふふっ!」
塞(トヨネのこと笑えないんだよなぁ……)
エイスリン「? ? ?」
王様:>>88
塞(また私じゃないなんて……)ズズーン
白望「デンジャラスな命令よろしくー」
豊音「ふ、普通の命令でいいよー!」
胡桃「じゃあ>>91に>>92してもらうよっ!」
>>1のでもいいよ(ニッコリ
胡桃「ちょっとはっちゃけたくなったのっ!」
豊音「い、痛いのはやだよー」
白望「誰がビンタするの……?」
エイスリン「ワタシデス!」
塞「どこで覚えてくるのそういう言葉……?」
エイスリン「トヨネ!」バチン!
豊音「い、痛いよー!」グスン
エイスリン「サエ!」バチン!
塞「いたぁ!?何でそんなに全力なの!?」
エイスリン「クルミ!」バチン!
胡桃「つぅ……いいビンタだよエイちゃんっ……!」
エイスリン「シロ!」バチン!
白望「……ナイスビンタ」
エイスリン「スッキリ!」
白望(色々溜まってたのかなぁ……)
王様:>>99
塞「シロだったのか」
白望「また引けなかったな」
塞「全くダメだったぞ」
白望「暇を持て余した」
塞「王様の」
白望・塞「あ・そ・び」
胡桃「何言ってんだこいつら……」
白望「じゃあ>>103に>>104してもらう」
白望「たまたま。はい、塞。着て」
塞「な、なんで私だってわかったの!?」
白望「今日はそういう流れだから」
塞「わーん厄日だー!!」
豊音「が、頑張ってー!メゲないでー!」
エイスリン「フムフムフムフムナルホドナルホドー」
白望「痴女がいるね胡桃」
胡桃「困ったもんだねシロ」
塞「シロの命令でしょぉ!?」
塞「ぐすん……」
豊音「塞、元気出して」
塞「トヨネ……」
豊音「今日はそういう日らしいから仕方ないよ」ニッコリ
塞「ちくしょー!」
王様:>>111
塞「知るかよもー勝手にしろ」
胡桃「塞がグレた……」
豊音「私でもグレると思うよー……」
白望「んー、>>115に>>116してもらおうかな」
白望「どちらかというと揉まれてるところを見たい」
胡桃「そっか……」
白望「んで、誰が……」
エイスリン「ハイ!ハイ!ワタシデス!」
塞「誰でもいーからはやくしろよ」
豊音「さ、塞、落ち着いてー」
白望「どうぞ」
エイスリン「エヘヘ」モミモミ
白望「んっ……」
エイスリン「ツギサエ!」
塞「さっさとして」
エイスリン「ハ、ハイ」モミモミ
塞「ひゃ……」
エイスリン「トヨネ!」
豊音「や、やさしくしてねー///」
エイスリン「ドリョクシマス!」モミモミ
豊音「はふぅ……」
胡桃「酷くない!?」
エイスリン「ハイハイ」モミモミ
胡桃「釈然としない……」
王様:>>124
塞「ケッ」
豊音「さ、塞ー……」
エイスリン(サエコワイ……)
エイスリン「デ、デハ、>>127ガ>>128スル!」
白望「……正直ここまでエグいのくるとは思わなかった」
豊音「わ、私やだよー!?」
胡桃「あ、トヨネなんだ」
エイスリン「トヨネ、ダイジョウブ!」
豊音「な、なにがー?」
エイスリン「ブロンドナカマニナレル!」
豊音「わけわかんないよー!?」
塞「さすがに同情するわ……」
エイスリン(実は洗えば落ちるんだけどねー)
豊音「こんな髪で帰ったら怒られちゃうよー……」
白望「……今日はうちに泊まっても良いよ」
豊音「ほ、ほんとに!?」
白望「うん、それじゃ帰れないでしょ……」
豊音「ありがとうシロー!」ダキッ
白望「ちょ、おもっ……ぷぎゅる」
胡桃「あ、シロ死んだ」
はっちゃん巫女服の塞
折り紙金髪の豊音
カオスになってきたな…
王様:>>137
気にしない気にしない
白望「んー、エイスリンの流れになってきたかな?」
胡桃「……なんかこの二人だけ無傷じゃない?」
豊音「本当だー」
塞「悪運の強いやつら……」
エイスリン「ジャア、>>143ハ>>144シテ!」
エイスリン「キンパツハヤリスギマシタ。ハンセイ」
胡桃「わかった。ちょっと待っててね」
胡桃「買ってきたよ」
エイスリン「ゴクロウ」
エイスリン「ウマイウマイ」モグモグ
胡桃「うん?」
白望「今、履いてないよね」
胡桃「え?」
胡桃「…………………………」
白望「…………………………」
胡桃「ちょっと首吊ってくるね」
豊音「だ、ダメだよ胡桃ー!!」
王様:>>152
エイスリン「ジャアクナフンイキヲカンジマス」
白望「そりゃそうだ」
塞(私ってまだマシなほうなのかも……?)
胡桃「じゃあ>>156は>>157してね」
胡桃「あ、シロなんだぁ?クスクス、もうあんたの時代は終わったんだね」
白望「んー、これは参ったなぁ」
豊音「し、シロの好きな人ってー?///」
白望「……>>162」
キャラの名前お願いします。キャラの名前が書いてない場合はコンマで判定します
コンマ判定がシロの場合は安価下
普通にコンマでお願いします
白望「うん……豊音」グイッ
豊音「わ、わ、わ、わ///」
白望「好きだよ……」(なんかすごく扇情的なポーズ(丸投げである))
豊音「シ、シロ……///」
エイスリン「イイハナシダナー」
胡桃「ちっ!罰ゲームになってないじゃん!」
塞「でも、あくまで"この中"での話だから、シロの好きな人がトヨネと決まったわけじゃないんだよね」
エイスリン「サエクウキヨメヤ」
塞「ええっ!?」
王様:>>170
胡桃「くっ」
塞「どこまで好き勝手すれば気が済むんだ……!」
白望「じゃあ、>>176に>>178してもらおうか」
塞「シロの命令にしては平和だね」
胡桃「正直安心したよ」
豊音「あ、わ、私だ///」
白望「では申告どうぞ」
豊音「えっと、93/66/93のCカップです///」
白望「そっか。今度一緒に下着見に行こう」
豊音「ええっ!?」
王様:>>184
胡桃「それは結構なことで」
塞「またかよクソッ!」
豊音「さ、塞……」
白望「うーん、>>188に>>189してもらおうかな」
塞「いやいやそんなオカルト……」
豊音「あ、本当だ、私だよー」
塞「ありえた!?」
エイスリン「スゲー……」
胡桃「どうなってるんだ……」
豊音「気持ち良い?」
白望「うん、気持ち良いよ」
豊音「そっか、よかったー」
胡桃「罰ゲームとはなんだったのか」
塞「知るかよもう」
エイスリン「ゲンキダシテサエ……」
塞「同情するなら私を王様にして!」
胡桃(切実すぎてきもちわるい!)
王様:>>196
塞 ツネリ
塞「……いたい。夢じゃない」
塞「っしゃああああああああああああああああっ!!!王様だあああああああああああああああ!!」
白望「よろこびすぎでしょ……」
豊音「まあ、あれだけ我慢してきたわけだからー……」
塞「じゃあ!>>201に!>>202してもらうよ!!」
塞「さあ!はやく!誰か知らないけどはやく全裸に!」
胡桃「こんなにも鬱憤が溜まってたんだね……」
エイスリン カキカキ
白望「ん?……ツキに見放されたギャンブラーの末路?」
エイスリン「ウン」
塞「さあ!誰が全裸になるの!?」
白望「私じゃないよ」
エイスリン「ワタシデモナイデス」
胡桃「私も違うよ」
塞「えっ、ということは……」
豊音「ぐすっ、塞、ひどいよー」
豊音「ううん、いいよ、王様の命令だもんね……」スルスル
塞「ト、トヨネ……ごくり」
豊音「ぬ、脱いだよ。これでいいんだよね?///」
塞「う、うん///」
白望「眼福」
胡桃「眼福」
エイスリン「ガンプク」
塞「あ、もうこんな時間なんだ……」
白望「行こう、トヨネ」
豊音「うん、シロ」
塞「……あの二人、明日の朝までには一線越えてたりしてね」
胡桃「普通にありうるからやめて」
エイスリン「ワタシタチモカエロウ」
塞「そだね」
白望「王様だーれだ……私か」
塞「またァ!?」
白望「じゃあ3番の人は王様にキスして」
豊音「はーい!」チュッ
エイスリン「バカップル!」
胡桃「砂糖吐きそう!」
豊音「王様ゲームちょーたのしいよー」
おわり
豊音→胡桃(豊音の上で充電)
白望→豊音(ちゅう)
白望→胡桃(スカートを脱ぐ)
胡桃→エイスリン(肩車)
エイスリン→塞(ポッキーゲーム)
白望→豊音(恥ずかしい自作ポエムを朗読)
胡桃→エイスリン(全員にビンタ)
白望→塞(たまたま用意してあった初っちゃんの服に着替える)
白望→エイスリン(全員のおもちを揉む)
エイスリン→豊音(髪の毛を折り紙みたいな色の金色に染め上げる)
エイスリン→胡桃(ファミチキ買って来る)
胡桃→白望(この中にいる一番好きな人に自分が思うもっとも扇情的なポーズをする)
白望→豊音(3サイズとカップ数を自己申告)
白望→豊音(膝枕)
塞→豊音(全裸)
白望7、1 エイスリン3、3 胡桃3、3 塞1、2 豊音1、6
おつかれさまでした
シロが強すぎてやばい
流石宮守の中心
Entry ⇒ 2012.10.31 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
ほむら「杏子、私が思うにハロウィンは先攻が有利過ぎない?」
ほむら「例えばここで私が先攻をとってあなたにトリックオアトリートと言うわ」
杏子「あぁ」
ほむら「そうするとあなたはお菓子を出さなくてはイタズラをされるわよね?」
杏子「そうだな」
ほむら「それを回避するためにあなたはポッキーを1本私にくれるとするわ」
杏子「あぁ」
ほむら「その後あなたが仕返しに私にトリックオアトリートと言うと…」
杏子「まさか!」
ほむら「そう、あなたがくれたポッキーを返すだけになってしまうのよ」
杏子「そ、そんなのずりぃじゃねぇかよ」
ほむら「でもお菓子を返されたとはいえお菓子を渡したのは事実」
杏子「クソッそんなのおかしいだろ…」
ほむら「先に言ったものが必ず勝つなんてもはや勝負が成立しない」
ほむら「まるで♯を描いてマルバツで埋めていく後攻の気分よ」
杏子「あぁ、真ん中をとられてどうしようもないんだよな…」
ほむら「というわけでこの事実を皆に伝えに行きましょう」
ほむら「皆にこの危険性を伝えるためにもトリックオアトリートしにいくのよ!」
杏子「ほむら…お前、また自分をお菓子を巻き上げる犠牲にして…」
ほむら「嫌われるのは慣れているわ」ファサ
杏子「へっいいよ、付き合ってやるよ、一人ぼっちはさみしいもんな」
ほむら「杏子…」
さやか「ふんふーん♪」
杏子「さやかだな、音楽を聞いてるけど気づくのかあいつ」
ほむら「任せなさい、ハロウィンでお菓子を巻き上げる側といえば仮装よ」
ほむら「この牙をつけてマントを羽織るのよ杏子」
杏子「これは…」
杏子「へっ教会の娘が魔女扱いされて末は吸血鬼なんて笑えねぇ」
ほむら「私はこれでいくわ」
杏子「ネコミミに尻尾で仮装になるのか?」
ほむら「あまり凝った仮装は時間がかかるわ」
杏子「それもそうだな」
ほむら「そこまでよ」
杏子「悪いがお前の楽しいお出かけはここまでだ」
さやか「…は?」ゴシゴシ
さやか「帰って寝た方がいいのかな…」
ほむら「トリックオアトリート」
杏子「トリックオアトリートだ」
さやか「え?あ、あぁ!ハロウィンね、あんた達がそんな仮装なんてしてるから何事かと思ったよ」
さやか「楽しいお出かけおしまいとか言うからそういう魔女でも出たのかと」
ほむら「御託はいいわ、トリックオアトリートよ」
さやか(そんなにお菓子が欲しいのかな?)
ほむら「え?えぇ…」
杏子「お、おう…」
さやか「んじゃねー」
ほむら「ってちょっと待ちなさいさやか!」
さやか「どうかした?」
杏子「なんか私達にいうことがあるんじゃないか?」
さやか「あんた達に?」
ほむら「…」
杏子「…」
さやか「うーん」
さやか「あ、そうだ」
ほむら「気がついたみたいね」
さやか「あんた達仮装似合ってるけど、そういうことする柄じゃないと思うよ」
杏子「そこじゃねぇよ!」
ほむら「もっと重要なことがあるでしょう」
杏子「そうそう」
さやか「…ごめん、わかんない」
ほむら「あなた、私達にお菓子を奪われたままでいいの?」
さやか「別に飴ぐらいいいけど?」
杏子「…」
ほむら「…」
さやか「よくわかんないけどんじゃね」
杏子「…」
ほむら「…」
杏子「いや、あいつがおかしいだけだって…」
ほむら「そうよね!それよりも次に行きましょう」
杏子「そ、そうだな!」
ほむら「さやかが行った方向に行ってまた会うのはなんだか気まずいから逆方向へ行きましょう」
杏子「マミの家がある方向だな」
ほむら「マミの家に乗り込むのもいいわね」
杏子「だな」
杏子「なんか買い物帰りみたいだけど」
ほむら「あれは……いいお菓子をもっていそうね」
杏子「あぁ、マミの家には必ずお菓子があるからな」
ほむら「そんないいお菓子を奪われたマミはきっと怒るわ」
ほむら「そして私達が伝えようとすることに気がついてくれるはずよ」
杏子「だな!」
マミ「それに…仮装?」
ほむら「マミ、先攻はいただくわ、トリックオアトリートよ」
杏子「トリックオアトリートだ」
マミ「あ、そっか、もうハロウィンの時期だったわね」
ほむら「さぁ、お菓子を渡さなければあなたに私達の本気のイタズラが」
マミ「そうねぇ、今持ってるのはそのお菓子の材料だから…」
マミ「あ、そうだわ、ちょうどこれからクッキーを焼く予定だったから食べてみない?」
マミ「普段は自分が食べて美味しかったものしか出したことはないけどたまにはね?」
杏子(マミのクッキー…)ゴクリ
ほむら(なんて誘惑なの、逆らえないじゃない…)ゴクリ
ほむら「えぇ」
杏子「あぁ」
ほむら「…」
杏子「…」
ほむら「おかしいわ」
杏子「あぁ」
ほむら「突然お菓子をよこせ、さもないとイタズラをすると脅されているのにどういうことなの?」
杏子「わからねぇ…あたしにはさっぱりだ」
ほむら「えぇ」
杏子「あぁ」
マミ「ふふっわかったわ、すぐに入れてくるわね」
ほむら「…」
杏子「…」
ほむら「どうしてかしら…」
杏子「どうしてだろうな…」
杏子「どうしたんだ?」
ほむら「マミもさやかも魔法少女、つまりそういうことだったのよ!」
杏子「な、なんだ?」
ほむら「マミは魔法で紅茶を出したりしていたわ」
ほむら「つまりマミもさやかもお菓子ぐらい魔法で作れるってことよ!」
杏子「そ、そうか、少しぐらい魔法をお菓子に使ったっておかしくねぇもんな」
ほむら「え?あぁ、食べるわよ」
杏子「あ、そうだった忘れるところだった」
マミ「?」
ほむら「あ、美味しい…」
杏子「だな」
マミ「本当?よかったわ」
杏子「にしてもマミのクッキーうまかったなぁ……」
ほむら「そうね、思わず全て食べてしまったわ」
杏子「で、まどかのいる場所に目処はあるのか?」
ほむら「えぇ、私レベルになるとまどかの居場所なんて常に把握できるわ」ファサ
ほむら「というわけでここを真っ直ぐ行くと」
まどか「うぇひひ、今日はいっぱい買い物しちゃった」
ほむら「いたわね」
杏子(やっぱり行動パターンとか知り尽くしてるのかこいつ)
杏子「ん」コロコロ
ほむら「何を食べているの?」
杏子「さやかの飴」コロコロ
ほむら「そういえば食べてなかったわね」
杏子「うめぇぞこのりんご味の飴」コロコロ
ほむら「私はグレープみたいだけど…まぁいいわ」コロコロ
ほむら「あ、美味しい…今度どこのメーカーのものか聞いておきましょう」コロコロ
ほむら「ってまどかを見失うじゃない!いくわよ杏子」コロコロ
杏子「んな急がなくてもまどか相手なら追いつけるって」コロコロ
杏子「悪いな、ここは通せねぇ」
まどか「え?え?ほむらちゃんと杏子ちゃん?」
ほむら「心苦しいけれどまd」
まどか「わぁ!ほむらちゃんの猫さんとっても可愛い!」サワサワ
ほむら「ちょ、ちょっとまどか///」テレテレ
まどか「杏子ちゃんもこの牙は作り物?」
杏子「お、おう」
まどか「杏子ちゃんはかっこいい感じでとっても似合ってるね!」
杏子「そ、そうか?」テレテレ
杏子「あ、そうだったそうだった」
まどか「あ、そっか!えっとトリックオアトリートだよね」
ほむら「!!」
杏子「!!」
まどか「?」
ほむら(先攻を奪われた…どうしよう…)
杏子(お菓子もってない…)
まどか「どうかしたの?」
ほむら「わかったわ、まどか、目を閉じてもらえるかしら?」
まどか「?うん、わかったよ」パチ
ほむら「食べかけで悪いけれど…」
杏子「ってちょっと待て!」
ほむら「離しなさい!このままだとまどかは望まないイタズラをしなくてはいけないのよ!」
ほむら「まどかは優しいからきっと心を傷つけながらイタズラをするのよ!」
杏子「落ち着け!ちょっと落ち着けって!」
まどか(どうしたんだろう?)
杏子「いや、まぁお菓子持ってないんだからしょうがねぇよ」
まどか「えっと、もう目を開けてもいいの?」
ほむら「えぇいいわよ」
まどか「えっと、どうしたの?」
ほむら「まどか、ごめんなさい…私たちはお菓子を持っていないわ…」
杏子「イタズラでもなんでも受け入れるよ悪いな」
まどか「え?え?」
ほむら「確か本場だと生卵を叩きつけるのよね、いいわ、存分に投げつけなさい」
杏子「食い物を粗末にするのはやめてくれ、そうだな、私達ならその辺の石でも死にはしないから」
ほむら「そうね、じゃあその辺の石でも投げつけなさいまどか」
まどか「とっても危ないよ!?」
ほむら「え?そ、そうなの?」
杏子「ど、どうしてだよ」
まどか「え?うーん、お菓子は皆で食べたほうが楽しいよね?」
杏子「まぁマミの家で皆で食べると確かに楽しいな…」
ほむら「…確かにまどかと食べると幸せね…」
まどか「こういうのも皆で楽しもうってしてるだけだから本気にしなくてもいいんじゃないかな」
まどか「あった!」
ほむら(途中まで食べたと思われるポッキー?)
まどか「はい、ほむらちゃんあーん」
ほむら「あ、あーん」パク
まどか「美味しい?」
ほむら「え、えぇ…」
まどか「うぇひひ、こうやって食べてもらって美味しいって言ってもらえても嬉しいんだよ」
まどか「杏子ちゃんもあーん」
杏子「い、いやあたしはあーんはいいって」
まどか「…」ジー
杏子「わ、わかったよ!あーん」パク
まどか「うぇひひ」
杏子「んでほむらと一緒にってわけだ」
まどか「えっと、ところでどうしてそんなふうに考えたの?」
ほむら「言われてみるとどうしてだったかしら…」
杏子「あたしはほむらに言われてそういえば本来はそういうイベントだったって思って」
杏子「元々そういうイベント参加してないしな」
ほむら「私も同じだけどどうしてだったかしら…うーん…」
ほむら「そういえばお菓子がもらえるイベントだったわよね、病院でもらっていたわ」
さやか「あーそっか、病院にいたから真のハロウィンを知らないんだね」
ほむら「真のハロウィン?」
さやか「そうそう、実はさ、その日は…」
ほむら「…」
まどか「ほむらちゃん?」
ほむら「さやかあああああああああああああああああ騙したわねええええええええ」
杏子(犯人がさやかならさやかから飴もらった時点できがつけよ!)
ほむら「え?」
まどか「仮装してるしママもパパもきっとびっくりするよ!」
杏子「いいのか?」
まどか「うん、大歓迎だよ」
ほむら「じゃ、じゃあ是非…」
杏子「あ、あたしも行こうかな…」
まどか「どうせならさやかちゃんや仁美ちゃん、マミさんも呼んでみようかな…」
ほむら「あなたのご家族がいいなら良いんじゃないかしら?」
ほむら(さやかに軽い復讐も考えておこう…)
杏子「だな、複数人で食べたほうがうめぇっていうなら呼ばない手はないし」
まどか「うぇひひ、そうだね!」
このあと流れでまどっちのお家にお泊りでまどっちの無防備さにほむほむがどっきどき
と言いたいけど眠いしハロウィン終わったし終わりにしましょうおやすみなさい
Entry ⇒ 2012.10.31 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
P「あずさ2号」
P「いえいえ、いいんですよ。そこまでがお仕事というか、あずささんを迎えに行くときのお約束と言いますか」
あずさ「そうですか……?」
P「むしろそれがなくなったら物足りなくなるという感じで!」
あずさ「私は、迷った方がいいんですか?」
P「あ、いやそういうわけじゃないんですよ? でも気にしなくていいんです、仕方ないですから」
あずさ「はい……」
あずさ「はぁ、本当に困ったわねぇ……」
律子「どうかしたんですか?」
あずさ「あ、律子さん。いえ、そのこの方向音痴がどうにか直らないものかと思いまして……」
律子「あー……でも、気にしなくていいんじゃないですか? あずささんのはその、いい方向に行くときもありますし」
あずさ「自分で迷う分には構わないんですけど、他の人に迷惑をかけてしまうのが、どうしても……」
律子「まあ、確かにそうですね……目的地に着くまでは頑張ってそのことだけ考える、とか?」
あずさ「なるほど……やってみますね。ありがとうございます、律子さん」
律子「いえいえ、頑張ってくださいね。逆に言ってしまえば、あずささんの弱点はそれくらいなんですから」
P「あ、おはようございますあずささん……ってあれ? 早いですね?」
あずさ「はい! 昨日律子さんに相談してアドバイスの通りやってみたら迷わずに来れたんですよ?」
P「おぉ、それはよかったです!」
あずさ「これでプロデューサーさんに迷惑を掛けなくて済みますね。あ、でも迷った方がいいんでしたっけ?」
P「あはは、それはそれですよ、確かにすんなり来てくれた方が楽ですしね」
あずさ「そうですよね。でも、もう大丈夫だと思います」
P「今日のあずささんは頼もしいですね! っと、まさに今日はそんなスケジュールでして」
あずさ「あら、そうなんですか?」
P「ちょっと長野まで行ってもらいたいんです」
あずさ「長野、ですか?」
P「あの、よくある散歩番組みたいな感じでやってほしいとのことなんです。それで、新幹線を使ってもらうんですけど」
あずさ「そうなんですか~」
P「生憎、俺他のところに行かなきゃいけなくてですね、できればお一人で現場まで向かって欲しいんです……」
あずさ「えっと、一人で……ですか」
あずさ「……わかりました、一人で行きますね」
P「大丈夫、ですか? とはいっても今日その後一旦撮影があったりと忙しいのでできればお願いしたいんですが」
あずさ「大丈夫だと思います、今日は自信ありますよ」
P「それなら大丈夫そうですね、と万が一と考えて1時間取ってありましたし、早くついてもらったので最悪2時間は大丈夫かな、と」
あずさ「はい、わかりました」
P「こっちも片付き次第合流して、次の仕事こなしていきますんで。お願いしますね!」
あずさ「えっと……こっちかしら」
あずさ「あっ、ここが駅ね」
「すみません、ちょっといいかしら……」
あずさ「あら? どうかされました?」
「765プロはどこでしょう?」
あずさ「あ、765プロなら……えっと、近くまで案内……で、でも」
あずさ(……一旦駅に来れたし、案内しても多分大丈夫、よね)
プルルルル……
P「おっと、はい765プロです。……はい、えぇ確かに今日これから向かわせて……えっ!? 時間が違った!?」
P「あ、それは……いや、多分もう駅について……えぇ、わかりました」
ガチャン
P「参ったなぁ……時間がずれるとは。まあ、最悪あずささんにはあっちで待機してもらっててもいいが……」
P「そうすると今日中に撮らないといけない写真といい、インタビューといい……どうする」
ガチャッ
あずさ「あら?」
P「えっ? あずささん!?」
あずさ「あ、私……」
P「ちょうどよかった! まだ乗ってなかったんですね!」
あずさ「あ、えっと……ごめんなさい」
P「いえ、今日ばっかりは助かります! それが実は……」
P「方向音痴がいい方向に行きましたね、っと気にしないでください! 結果が大事ですから!」
あずさ「あ、えぇ」
P「それじゃ、先に撮っちゃいましょうか」
あずさ「そうですね、お願いします」
あずさ「……」
――
「ありがとうございました」
あずさ「いえいえ! さてと……」
あずさ「あ、あら? ここは……変ねぇ確かこの辺だったと思うけれど」
あずさ「やっぱり引き返したのが間違いだったのかしら……」
あずさ「このままじゃ、遅れちゃうわ……」
あずさ「こんなに迷うなんて、私……あれ? ここ……事務所」
――
――
P「えっと、すみませんあずささん! 俺これ片づけるんで少しだけ待っててもらえますか?」
あずさ「えっと、この後はさっきの収録に向かうんですよね?」
P「そうなんですけど、これ終わらせてからじゃないと……あぁでもちょっと走ることになるかも……」
あずさ「でしたら私、先に行ってた方がいいですか?」
P「え? まあそうですけど……その」
あずさ「大丈夫です、さっきは迷っちゃいましたけど、今度こそ」
P「……でも」
あずさ「……信じてくれないんですか?」
P「……わかりました、でもちょっと怪しいなって思ったら電話くださいね?」
あずさ「はい!」
P「……片づけてから行くと30分、その分余裕があると言っても、さっき30分くらいで事務所に戻ってきたからなぁ……迷ったらアウトか」
P「まあ最悪あっちも悪かったと責任分割で……無理か」
P「……」
あずさ『新幹線、乗れましたので連絡しておきますね!』
P「……おぉ! 流石はあずささん!」
P「うん、やっぱりやるときはやる。って俺は何様だ」
P「でも、もう心配ないのかもな」
P「っと、そろそろ着いたかな?」
プルルル
P「おっと、はいこちらプロデューサー……えぇ、え? ちょ、ちょっとそれどういう!」
P「……わかりました、駅で待たせておきますので……はい」
ガチャン
P「どういうことだ……スタッフが時間変わったのを把握してなくて駅で待機してないとか、どうなってんだ」
P「まあおおかた名が知れてないからって適当にやってるんだろう……全く。あ、そうだあずささんに電話しておかないと」
P「……もしもしあずささんですか?」
あずさ「あ、プロデューサーさん。すみません、今着いたところで」
あずさ「え? ……その、収録現場についたんですけど、ダメでしたか?」
P「え? 収録現場って……あぁ! 地図を渡してましたけど、あ、あそこまでお一人で!?」
あずさ「あ、えぇ、まあ」
P「……すごいですよあずささん! 俺一回行ったとき迷ったくらいなのに! いやぁ、効果でてますね!」
あずさ「あはは、ありがとうございます。それじゃ、お仕事行ってきますね」
P「はい、頑張ってください!」
ピッ
P「ふぅ、いやぁあずささんには参ったな。でも、おかげさまであっちのスタッフにいい顔ができるってもんだ。あずささんには感謝しないとな」
P「収録は30分くらいで、すぐ帰ってくるとして……まあ2時間はかかるだろうけど、帰りもそんなすんなり……大丈夫だろう」
ガチャッ
P「っと、おかえりなさい……あずささん!」
あずさ「あ、あの……戻りました」
P「ホント、お疲れ様でした! うわぁ、きっかり電話から2時間! 流石ですね!」
P「どうしたんですか? 今日は流石、参りました! 方向音痴なんて言ってすみませんでした」
あずさ「す、すみません……私」
P「どうしたんですか? でも、迷わなくなったあずささんはもう完璧って感じですよね」
あずさ「ごめんなさい……プロデューサーさん」
P「何をそんなに、今日はすばらしかったですよ? 全部の仕事がスムーズに行って」
あずさ「い、いや……これからは気を付けますから……」
P「……あずささん?」
あずさ「ごめんなさい……きっと、きっと直しますから……」
P「いや、だからもう方向音痴なあずささんじゃないですよ。まあ正直、方向音痴だと手間はかかりますし、よかったです!」
あずさ「ぁ……っ!」
バタン
P「えっ? ちょ、ちょっとあずささん!?」
P「……俺、何か言っちゃったかな? やっぱり方向音痴うんぬん言わない方がよかったか……」
あずさ「……プロデューサーさんはもう私のこと見捨ててしまったのかしら」
あずさ「駅に向かったところまではよかったの。でも、道を聞かれて一旦戻って」
あずさ「その後すぐに駅に向かおうとしたけど、やっぱり迷ってしまって」
あずさ「もう、どうしようもないから携帯で連絡を取ろうと思ったら、ない」
あずさ「きっと、駅か、どこかで落としてしまった……」
あずさ「もう、遅刻……それどころじゃない、ドタキャンですもの」
あずさ「こんな、プロデューサーさんに会わせる顔がない……」
あずさ「なんて謝ったらいいのかしら……それでも、大丈夫ですって言ってくれるのかしら……」
あずさ「そう思っていたら、仕事が成功したって……そんな、皮肉を言わなくても……」
あずさ「私、次から頑張りますから……だから、許してください……」
「方向音痴は、手間がかかる」
あずさ「……私なんて」
「あの~すみません」
あずさ「……はい。……え?」
あずさ「……嘘」
「どうかしましたか?」
あずさ「どうして……私」
「あら、私ですよ?」
あずさ「い、いや……」
「……プロデューサーさんとお仕事をしてたのは、私ですよ?」
あずさ「……え?」
「それを言いに来たんです。よかった、迷わなくて~」
あずさ「そ、そんな……どうして、私、貴方は誰なんですか?」
「私ですか? そんな、三浦あずさですよ?」
あずさ「ち、違います! 私が三浦あずさです!」
「あらあら~? おかしいわねぇ……普通、同じ人って一人しかいないんじゃ、でも同姓同名なら」
あずさ「そんな、私は765プロの三浦あずさです!」
「でも、今日765プロでお仕事をしたのは私ですよね?」
「混乱しているようですから、私が教えてあげますね」
「AM8時、貴方が事務所に到着して、その30分後駅に向かいました」
「AM8:45に駅で会った人に道案内。その後貴方は迷子になりましたね」
あずさ「な、なんでそんなことを……」
「実はその人、私だったんですよ? それでちょうどプロデューサーさんが困ってたのでそのままお仕事をして」
「PM1:00、私は新幹線に乗って収録現場に。収録現場に3時位に着いて貴方が事務所に帰ってきたのが6時くらいですか?」
あずさ「私は……」
「あらあら、泣かないで? 私まで悲しくなってしまうから、ね?」
あずさ「どうして……それじゃあ携帯も……」
「そう、私がもらったんです」
あずさ「……そんな」
「だって」
「方向音痴な私は、いらないんです」
あずさ「え……」
あずさ「……」
「私は、貴方が憧れる方向音痴じゃない私」
あずさ「……」
「でも、直に私が三浦あずさになりますから」
あずさ「やめて……」
「そう思うなら、プロデューサーさんに言ってみたらどうかしら?」
あずさ「……それは」
「明日、来なくてもいいですよ? 私が代わりにお仕事しますから」
「でも、貴方はそうですね……さしずめ”あずさ2号”になるかしら」
あずさ「2号……」
「……それじゃ、また会いましょう。と言っても、貴方から私を探しちゃダメよ?」
「きっとまた、迷ってしまうから。……ふふっ」
あずさ「……」
――
「なんだかこのままどこかに迷い込んでしまいたい……」
「こうやって歩いている時だけ、迷わないんですけど」
「……明日、事務所にいけるのかしら」
「もし、あの人がいたら私は……」
「……なんだろう、この歌は。聞いたことがあるけれど、随分と古い曲……」
「あずさ、2号……ふふっ、そんな偶然があるのかしら」
「どうして、そんな歌が流れる場所に来ちゃうのかしらね」
「……今、7時……もう8時かしら」
「このまま8時ちょうどの列車にのって、どこか遠くへ……なんて」
「そんなことをしても、始まらない。か」
「……帰りましょうか」
「プロデューサーさん……」
あずさ「おはようございます」
P「おはようございます、あずささん。今日も早いですね」
あずさ「いえいえ、慣れてしまったらこれくらいは~」
P「ホント、別人みたいですよ! って、これは失礼ですかね?」
あずさ「そんなこと、嬉しいですそういってもらえて」
P「それじゃ、今日はレッスンですね。車出しますんでちょっと待っててください」
あずさ「大丈夫ですよ、あのレッスン場でしたら近いですし」
P「え? いいんですか?」
あずさ「はい、その……ちょっと歩いて運動ついでに」
P「あぁ、なるほど。それじゃ、すみませんお願いします」
あずさ「はい!」
P「いやぁ、ホントあずささんがこうなると怖いものなしって感じだなぁ」
あずさ「あ、おかえりなさい、プロデューサーさん」
P「あ、えぇ。どうも、帰ってらしたんですか」
あずさ「はい、早く着いたのでその分前倒しでやっていただきました」
P「それにしても……いやぁ、無駄な時間がないですね。流石としか」
あずさ「そんなこと言って、私は方向音痴じゃなきゃいけないんですか?」
P「あ、い、いえそういうわけじゃ!」
あずさ「……なんて、冗談ですよ?」
P「な、なんだ……あ、あはは、よかった~」
あずさ「ふふっ、それで次はどちらに?」
P「あ、えっと……あぁまたここですね。ちょっと遠いですが……」
あずさ「でも、ご近所ですから私一人で大丈夫ですよ?」
P「そうですか? いやぁ頼もしいなぁ。でも、たまには付き添いますよ?」
あずさ「私を信用してください、プロデューサーさん?」
P「あ、えぇ……それはもう。それじゃ、頑張ってきてください」
P「あぁ、そうか。あずささんの送り迎えがなくなったというのが」
P「……でもなぁ、なんか物足りないんだよな。いいことなんだけど」
P「っていかんいかん。いいことなんだしこれを機にもっといろんな仕事とってきますかね!」
P「……さて、そろそろ時間だが。うん、まあ帰りくらいはいいだろう、迎えにいくとしよう」
P「えっと、あずささんは……もう帰っちゃったかなぁ……」
P「あ、いたいた! あずささーん!」
あずさ「っ!」
P「あずささん、すみません迎えに来ちゃいました」
あずさ「……プロデューサー、さん」
P「あ、やっぱり迎えに来ちゃダメでしたか?」
あずさ「……いえ」
P「それはよかった、まあ帰りくらいは楽しましょうよ」
あずさ「……」
あずさ「……」
P「さっき気が付いたんですけど、やることが減ってて。なんでかなって思ったら昨日今日と送り迎えしてないんですよね」
あずさ「……」
P「まあ、本当はアイドルなんですから車で送迎! って普通でしょうけど、まだうちも小っちゃいのでね……あはは」
あずさ「……プロデューサーさんはやっぱり、迷わないで行ってもらった方が嬉しいですか?」
P「え? まあそれは、いくらでも楽っていうのもありますし」
あずさ「そう、ですよね……」
P「……でも、なんていうか。こうやって車でお話しながら行くのも必要かな、なんて」
あずさ「……え?」
P「あ、い、いやその……言ってしまうと、ちょっとさみしいかな、なんて。最低限自力でやってもらう分にはありがたいんですけど」
P「俺も、好きであずささんや他のアイドル達もプロデュースしてますから、やっぱり少しでも……何て言ったらいいんですかね」
P「今思うと、方向音痴だったあずささんが懐かしいですよ」
あずさ「方向音痴だった……私が懐かしい」
P「なんか変な話ですけどね、俺は迷ったあずささんを迎えに行くのもお約束って言ってたじゃないですか」
P「え、えっ? ちょ、ちょっとあずささんひょっとして泣いてます?」
あずさ「な、泣いてませんよ? 安全運転お願いしますね?」
P「あ、す、すみません……大丈夫ですか?」
あずさ「……えぇ、ちょっと」
P「……」
あずさ「……その言葉を聞けて安心しました」
P「……え?」
あずさ「この後、スケジュールは?」
P「あ、えっと事務所で少し打ち合わせを」
あずさ「……それじゃあ、その駅で下してもらえますか?」
P「え? あ、えっと」
あずさ「大丈夫ですよ。私はもう、迷わないんです。ちょっとやりたいことがあるだけなので。事務所には後で向かいますから」
P「わかりました、それじゃまた後で」
あずさ「……プロデューサーさん、ありがとう」
あずさ「でも、私は……やっぱりプロデューサーさんのためにこれを直したい」
あずさ「だから、少し旅にでますね? やっぱり、あの歌が響いたのかしら」
あずさ「……ふふっ、良く考えたらすごいラッキーよね」
あずさ「私はちゃんとお仕事をしたことになってるのに、一人旅なんて……ふふっ」
あずさ「……もしかしたら、迎えに来てくれるのかしら」
あずさ「私がいないことに気が付いて、いつもみたいに」
あずさ「嫌な顔一つしないで、ここにいたんですね、よかった。そう言っていつも迎えに来てくれる」
あずさ「……それじゃあ、待ちます。8時まで」
あずさ「……プロデューサーさん」
P「あの駅に何かあったかな、まあいいか」
P「戻りましたー」
あずさ「おかえりなさいプロデューサーさん」
P「あれ? もうお帰りになってたんですか?」
P「それは、まあ。駅で何かしてらしたんですか?」
あずさ「駅? ……あぁ、そうですね。少し見たいものがありまして」
P「なるほど、いやぁそれにしてもお帰りが早い。これなら本当に迎えはいらないですね」
あずさ「そういってもらえると~これでもうプロデューサーさんにご迷惑をかけることはないですから~」
P「いえいえそんな、迷惑だなんて」
あずさ「でも、やっぱり時間を割いてもらっていたのは本当だと思うので」
P「ま、まあ」
あずさ「その、プロデューサーさんも方向音痴な私より、今の私の方がいいですよね?」
P「え? あ……まあ、そうですね」
あずさ「……嬉しいです」
P「……あずささん」
あずさ「今日はもう終わりですか?」
P「あ、そうですね一応これで」
あずさ「わかりました、それじゃお先に失礼しますね」
バタン
P「ふぅ。……あずささん、変わったなぁ」
P「本当、迎えに行ってた頃が懐かしい」
P「おっと、7時過ぎ? もうこんな時間か。なんか適当に買って帰るか……ん?」
P「あっ、あずささん忘れ物」
P「あずささん!」
あずさ「あら?」
P「よかった、これを」
あずさ「……これは」
P「え? いや、お守りって言って持ってたじゃないですか」
あずさ「あ、あぁ! そうでした」
P「思えば、このお守りからでしたか? 迷わなくなったの」
あずさ「……」
P「そういえば、律子のアドバイスってなんだったんですか?」
あずさ「えぇと、そのことだけに集中して目的地に向かう、というお話で」
P「ほうほう、それは確かに効き目がありそうですね」
あずさ「どうしようかな、と思ったんですけどその時思いついたのがこのお守りで」
P「お守りを握りながら、ってことですね。確かにそうすれば他のことに気を取られなくて済みますもんね」
あずさ「はい、おかげさまで」
P「なかなか、普通な感じのおまもりですね。……ん? P?」
あずさ「あっ、それは、その……」
P「なんのPですかこれ? あずささん……だから、Aでもないし……」
あずさ「そ、その……プロデューサーさんの……」
P「え? お、俺ですか?」
あずさ「は、はい……迎えに来てもらってるので、やっぱり一番迷いにくくなるかなぁ、なんて」
P「あはは、それはそれは光栄です。……それじゃ、ちょっと貸してもらえませんか?」
あずさ「え? あ、どうぞ」
P「……はっ!」
P「俺の気を込めておいたんです! 迷わなくなるように!」
あずさ「……」
P「なんて、ちょっと子供っぽいですかね……お守りだから、なんて思ったんですけど……」
あずさ「……ぷっ!」
P「あっ、ちょ、ちょっと!」
あずさ「ご、ごめんなさい。でも、おかしくって……」
P「もうー……ひどいなぁ」
あずさ「ふふっ、そういうつもりじゃないですよ? でも……嬉しいです。ありがとうございます。これ、大切にしますね」
P「……はい、ぜひぜひ」
~~~
あずさ「……そう、でしたね」
P「本当に忘れてたんですか?」
あずさ「そ、その……もう迷わなくなったのでいいかなぁなんて」
P「……なるほど」
あずさ「今までお世話になりましたから。でも、もうプロデューサーさんに迷惑をかけることもないです」
あずさ「やっぱり、いつまでもこういうものに頼ってちゃダメですよね」
あずさ「だから、プロデューサーさんも気にしないで下さい」
P「……あずささん」
あずさ「はい?」
P「俺はあずささんのことを迎えに行くこと、迷惑だなんて考えたこと一度もないですよ」
あずさ「あ……えっと、それはでも私としては迷惑かな、と」
P「そうですね、いつもそういってくれます。でも、俺は嬉しいんです」
あずさ「……え?」
P「すみません、っていつも謝ってくれます。でも、最後にはありがとうございますって。そういってもらえると嬉しくて」
P「迎えにいくと、それだけ一緒にいる時間も長くて、いろんな話もできますし」
あずさ「……」
P「だから、迷惑だなんて思ってないです。むしろ今の方がなんとなくさみしい気もします」
あずさ「そういうことなら、たまにはお願いします」
P「……なんか、違うんですよね」
P「ごめんなさい、なんとなくなんで。でも、今のあずささんはなんとなく、違う」
あずさ「……」
P「今まで一生懸命迷わなくなるように努力してました。でも、実際無理でしたよね?」
P「それでも俺は構わなかったです。でも、やっぱりあずささんは頑張ってました。それで今回のお守りに」
P「それなのに……あのお守りを手放しちゃうような、たとえ俺のためだからと言ってやっと直った方向音痴」
P「そのきっかけになったお守りを……なんか、あずささんがそんな人だと、思えないんです」
あずさ「……」
P「俺の勘違いだったら、すみません」
あずさ「……私は、間違っていましたか?」
P「……え?」
あずさ「もし、プロデューサーさんの言う通り、私はプロデューサーさんのために。もう迷惑をかけないようにお守りは、大丈夫なんです」
あずさ「そう、言い切ったとしたら……私は、三浦あずさではないですか?」
P「……一つだけ、うかがわせてください」
あずさ「……はい」
あずさ「……いえ、それは。でも、やっぱりお守りは大切にしようって思います。いつそうなるかわからないので」
P「……そうですか」
あずさ「……プロデューサーさん」
P「今のが本当なら、俺は貴方をあずささんだと……認めたくない、っていうのはすこし傲慢かもしれませんけど」
あずさ「……」
P「ごめんなさい、なんだか俺も混乱してて。俺の方が、方向音痴になっちゃったみたいですね」
P「忘れてください、また明日から……」
あずさ「……迷っちゃってたのは、私の方でしたよ?」
P「え?」
あずさ「……やっぱり、私は”2号”だったみたいですね」
P「……あずささん?」
あずさ「私は、まっすぐ帰ります。でも、まっすぐ帰れてない、としたら。迎えに行ってあげないと」
P「……一体何を」
あずさ「……私は、あずさ2号なんです。もう、会うことはないでしょう」
あずさ「もしかしたら、ちょうどそんな曲が。……それじゃ失礼します」
P「……あずささん」
あずさ「私は、絶対に迷わない。……だから、もうあなたのところに迷い込むこともないですよ?」
あずさ「……私は、私だったみたい……あぁでも最後までこの想いは」
「迷ったままだった、かしらね」
P「あずささん……一体どういう……」
P「あれ? どうして俺こんなところ……あずささんが移った、ってそれは失礼だろ」
P「駅……そういえばさっきあずささんが……」
あずさ「……来ない」
あずさ「そう、来るはずなんてないわ……」
あずさ「あの私は迷う事はない。でも、私は……もう、迷い過ぎたの」
8時ちょうどの~
あずさ「あら、また……」
あずさ2号で~
あずさ「ふふっ、あずさ2号ね。できればそれに乗りたかったかな……」
あずさ「……私は私は貴方から旅立ちます」
「あずささん!!」
あずさ「……え?」
P「……どこに行くんですか? そこまで、方向音痴じゃないでしょう?」
あずさ「……プロデューサーさん」
P「……この曲は」
あずさ「……ごめんなさい、私。”2号”なんです」
P「……え?」
あずさ「方向音痴、ってわかっていてもずっとずっと直せなくて……」
あずさ「それでも迎えにきてくれるプロデューサーさんに甘えて……」
あずさ「もう、こんなことじゃいけない。迷惑なんて、とっくに通り越して……」
あずさ「わかってたんです……だから、私は……」
P「そんな、今更のことを言わないでください」
あずさ「……え?」
P「迷惑をかけたとか、今までの分を数えたらどれだけになると思ってるんですか?」
あずさ「そ、それは……」
P「だから、逃げるんですか? もう、諦めるんですか?」
あずさ「違います……私なんていなくても……私が……」
P「あずささんは、あずささんしかいません」
あずさ「……」
P「例え2号でも、あずささんに変わりはいないでしょう?」
あずさ「プロデューサー、さん……」
P「何度も何度も言ってきたじゃないですか、俺は迎えに行くことまでがお約束だって」
P「だったら……最後の最後まで、お迎えさせてくださいよ」
P「アイドルが終わるまで、ずっとずっと、迷子でいいですから。そのかわり、絶対に待っていてください」
あずさ「ぷろでゅーさーさん……」
P「……あずささん」
あずさ「ぐ、ぐすっ……プロデューサーさぁん……」
P「……おかえりなさい、あずささん」
あずさ「すみません……こんな、こんな格好で……」
P「……いいんです、これが俺の仕事ですから。今は、好きなだけ……」
あずさ「ごめんなさい……ごめんなさい……」
あずさ「……ごめんなさい、お恥ずかしいところを……」
P「だから大丈夫ですって。あ、そうだ、これ」
あずさ「……あ」
P「……あずささん、一つ聞いてもいいですか?」
P「このまま方向音痴でいいと思いますか?」
あずさ「……できれば、直したいですけど、このままでもいいかなって思いました」
P「……」
あずさ「……迎えに来てくれる人が、いますから」
P「そうですか……うん、やっぱりあずささんですね」
あずさ「……私からも、一つ聞いていいですか?」
P「えぇ、どうぞ」
あずさ「……さっきの、ずっと待っていてくれって……その」
P「え?……あ、あぁ!」
あずさ「……」
P「ち、違います! そ、そのプロポーズとかではなく迷子的な意味で! 俺ごときがそんなおこがましい!」
あずさ「……」
P「あ、あれ? 怒ってます?」
あずさ「……知りません。もういいです、一人で帰ります……」
あずさ「……また、ちゃんと言ってくれますか?」
P「え?」
あずさ「いいですよ、もう。……早く、帰りましょう?」
P「……そうですね」
あずさ「ふふっ……」
タタタ……
あずさ「プロデューサーさんの方向音痴!」
P「え? な、なんで?」
あずさ「知りません! ふふっ!」
あずさ「ずっとずっと、待ってますからね? プロデューサーさん」
完
Entry ⇒ 2012.10.31 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
春香「それでね、プロデューサーさんが!」 冬馬「そうなのか」
冬馬「へぇ」
春香「でもプロデューサーさんがお前なら大丈夫だって言ってくれて」
冬馬「ふーん」
春香「その一言ですっごく安心して、何とか乗り切れたんだ」
冬馬「なるほど」
春香「私って単純なんだなーって」
冬馬「別にプラス方向に働いてるなら良いんじゃねえの?」
冬馬「お前よく転んでるもんな」
春香「その時プロデューサーさんが私の腕を掴んで」
冬馬「あ、店員さんクリームソーダ1つ」
春香「私はこのチーズケーキお願いします」
冬馬「太るぜ」
春香「ちゃんと消費してます。えっと……あ、それでグイッって引き寄せられて」
冬馬「引き寄せられて」
春香「距離がすごく近くてもう……」カァー
冬馬「そりゃ大変だ」
冬馬(それもほとんどプロデューサーの話)
春香「冬馬君も何か話してよ」
冬馬「別に、特に話す事もねえな」
春香「翔太君とか北斗さんと何も無いの?」
冬馬「ああ」
春香「えー、あの2人と一緒なら絶対何かあると思ったんだけど」
冬馬「無い。一切無い。全然面白くも無い、少なくとも俺にとっては」
冬馬「……いきなりで悪いがお前プロデューサーの事好きだろ」
春香「えっ!?き、急にな、な、何言ってるの!?や、やだなー」ワタワタ
冬馬「分かりやすいやつ」
春香「そ、そういうのじゃ……」
冬馬「プロデューサーの話ばっかだし、話す時やたら生き生きしてるから丸分かりなんだよ」
春香「うぅ……ち、違うって……」
冬馬(……やっぱ好きなのか)
春香「だ、だから違うよ!」
冬馬「しかも相手はプロデューサー」
春香「あぅぅ……」
冬馬「トップアイドル目指してんのに何考えてんだお前は?馬鹿だろ」
春香「……」
春香「……」
冬馬「所詮上っ面の関係だ。信頼も愛情もあるわけねえよ」
春香「っ!」
冬馬「断言しといてやる。うまくいく確率は0%だ」
春香「そんなことないもん!!」
冬馬「うおっ」
春香「……ごめんなさい」
冬馬(この反応でもう確定だな)
春香「え?」
冬馬「俺も男だ。765プロの連中よりはプロデューサーの気持ちが分かるつもりだ」
春香「それって……」
冬馬「勘違いすんじゃねえぞ!無駄な努力してる馬鹿を見て楽しむだけだからな」
春香「……ありがとう」
冬馬「フン」
冬馬(……)
春香「うーん、結構送ってるつもりなんだけど」
冬馬「……意外と積極的なんだな」
春香「え?メールぐらい事務所の皆もしてるよ?」
冬馬「そ、そういうもんなのか……」
春香「……もしかして女の子とメールしないの?」
冬馬「ば、ば、馬鹿野郎!毎日100通ぐらいやり取りしてるっつーの!」
春香「ふーん」
冬馬「な、何だよ……てか他の連中ももしかしてプロデューサーが好きとか……?」
春香「うーん、はっきりとは言えないけどそうなんじゃないかな」
冬馬(765プロって……ファンに同情するぜ……)
冬馬(それにしても身内が全員ライバルとなると相談も出来ねぇって事か……すげえな……)
春香「あー、電話はあんまりしないかも」
冬馬「頻度は?」
春香「3日に1回ぐらい」
冬馬「十分だろうが!!お前らのプロデューサーはそんなに暇なのかよ!!」
春香「むっ、プロデューサーさんはちゃんと仕事してるよ!」
冬馬「他のアイドルも電話してると仮定したら大体1日4回お喋りしてる計算じゃねえか!」
春香「それはちょっと多いかも……」
冬馬(電話ってなんだよ……男と以外しねえだろ普通……)
春香「具体的には?」
冬馬「そりゃお前……ほらアレだよ」
春香「アレ?」
冬馬「えーっと、その、ほら、よくあるじゃん?」
春香「うん」
冬馬「だから、なんだ……うーん」
春香(冬馬君ってやっぱり恋愛経験少ないのかなぁ)
春香「ほほー!」
冬馬「お前よくお菓子とか作ってるんだろ?渡してみたら良いんじゃねえか」
春香「お菓子はよく渡してるよ?」
冬馬「ブホッ!!」
春香「ど、どうしたの?」
冬馬「い、いや……それでそのお菓子ってのはプロデューサーだけにあげてるのか?」
春香「ううん、皆にも」
冬馬「じゃあ、あいつのためだけに特別に作ったらいいと思うぜ。カードでも入れて」
春香「なるほど!プロデューサーさん専用のお菓子って事だね」
冬馬(手作りお菓子を日常的に渡してるって……カップルかよ!!)ワナワナ
冬馬「へぇ、良かったな」
春香「えへへ、頑張って作った甲斐があったよ」
冬馬「いつもは美味いって言ってくれないのか?」
春香「あっ、そう言われると毎回言ってくれてるような気も……」
冬馬「何だそりゃ……」
春香「で、でもプロデューサーさんに特別に作ったって事は多分伝わったから大丈夫!」
冬馬「ふーん」
春香「あっ、冬馬君もお菓子どうかな?作りすぎちゃったんだ」
冬馬「……じゃあ」
春香「どうぞどうぞ」
冬馬(複雑な気分だな……)
春香「ありがとう、それで男の人がされて嬉しい事って何だろ」
冬馬(って言われても、あんまり具体的なのは思い浮かばねえな……)モグモグ
春香「……」
冬馬「……フィギュアとか?」
春香「え゛」
冬馬「い、いやフィギュアあげるとかそういう意味じゃねえぞ!一緒に選びに行くとかな!」
春香「それってそういうお店に一緒に行くって事……?」
冬馬「そ、そうだ。いや、違う!一緒にワイワイ言いながら見たいとかじゃなくて買い物の一環として!……あれ?」
春香「……」
春香「落ち着いた?」
冬馬「ふぅ……とにかくデートにでも誘えば良いんじゃねえの」
春香「い、いきなりデートに!?」
冬馬「デートっつても別に公園をちょっと散歩するとか」
春香「……まあそのぐらいなら何とか」
冬馬「プロデューサーも忙しいだろうしあんまり時間かけられねえだろ」
春香「一理あるかも」
冬馬(それに公園はエロゲだと定番スポットだぜ)
春香「楽しかった!お弁当も褒めてもらえたし!」
冬馬「……手作りか?」
春香「うん」
冬馬「へ、へ、へぇー!そ、それじゃ……あ、あ、『あ~ん』とかやったのか?」
春香「そこまでは流石にまだ……」
冬馬「……」ホッ
冬馬「……」
春香「冬馬君のアドバイスのおかげだね」
冬馬「……そうか」
春香「もしかしたら成功率0%も覆しちゃったりして!」
冬馬「……そうか」
春香「……何か元気無いね、大丈夫?」
冬馬(嬉しそうなの見ると、……いや、落ち込んでるのを見るよりはマシか)ハァ
春香「!?」
冬馬「男なら誰でも喜ぶぜ」
春香「そ、そんなの嫌だよ!恥ずかしいもん!」
冬馬「別にいつもみたいにこけてパンチラしときゃ良いじゃねーか」
春香「い、いつもみたいに!?どういうこと!?」
冬馬「いや、だって……なぁ?」
春香「……」
冬馬「あっ!別に意識して見てるわけじゃねえからな!お前が撮影の時目の前でこけるのが悪いんだからな!」
春香「いやあああああああああ!!!」
冬馬「わ、悪かったって……じゃあ軽いボディタッチだ!」
冬馬「女に、それもアイドルに触られて嫌な気はしねえだろ」
春香「……そういうものなの?」
冬馬「男はそういうもんだ」
春香「いきなりベタベタしたら変じゃないかな?」
冬馬「そこはお前がごく自然な流れで」
春香「……」スッ
冬馬「おわぁ!?何しやがんだ!?」ガタッ
春香「やっぱり嫌がられそう……」
冬馬「アホか!俺にやってどうすんだよ!!いきなりやられちゃビックリするだろうが!!」ドキドキ
春香「難しいなぁ……」
冬馬(心臓止まるかと思ったじゃねえかちくしょう!!!!)
冬馬「何したんだよ」
春香「えーっと、プロデューサーさんがソファに座ってる時にもたれて」
冬馬「うぇ!?」
春香「あ!でも、そのまま話の流れで頭撫でてもらったのはラッキーかも!」
冬馬(どんな流れだよ!!!)
春香「すっごく気持ち良いし、嬉しかったなぁ。うまく言えないけど」
冬馬「……へぇ」
春香「それから後は、手の大きさを比べたり」
冬馬(まだあんのか……)
冬馬(もうお腹いっぱいだ……話聞く限りイチャイチャしてるようにしか……)
春香「でも反応薄いって事はあんまり私に魅力が無いのかな……」
冬馬「……そんなことねえよって言ってほしいのか?」
春香「そういうつもりじゃ……」
冬馬「安心しろよ、まともな男なら誰でも惹かれるレベルだと思うぜ」
冬馬「単純にプロデューサーとして感情を表に出さなかっただけだろ」
春香「えっ、そ、そうかな?」
冬馬「あくまで一般論だからな!!惹かれるってのは俺の意見じゃねえから!」
春香「弱い所……」
冬馬「あ!やらしい意味じゃねえぞ!」
春香「いや、それは分かってるよ」
冬馬「……とにかく男は女を守りたくなる。そういう生き物なんだよ」
春香「……迷惑じゃないかな?」
冬馬「大丈夫だ。お前みたいに普段絶対に弱い所見せない奴だと尚更な」
春香「……」
冬馬(ギャルゲーでもそういうシーンでキュンッってなるとは言えねえ)
冬馬(やっぱりこいつにも悩みはあったか。あいつにしか話せない悩みが……)
春香「思わずそのまま色々話しちゃって、プロデューサーさんは全部優しく聞いてくれたんだ」
冬馬(……別に俺だってそのぐらい)
春香「距離が縮まったかは分からないけど冬馬君の言う通り相談して良かった」
冬馬「距離も……縮まったんじゃねえか」
春香「そうだと良いなぁ」
冬馬「……」
冬馬「!!」
春香「相談に乗ってもらったお礼って形で」
冬馬「まだ早いだろ!!」
春香「やっぱりそうかな?」
冬馬「あ、ああ。もう少し慎重にやるべきだ」
春香「……あれ?でも最初の頃デートに誘えって……」
冬馬「よく考えたらあれは時期尚早だったんだよ!」
冬馬「ボディタッチに悩みの相談……後は一緒に飯食ったりカラオケ行くぐらいしか俺には思いつかねえよ」
春香「ずっと一緒にいる事なんて出来ないし……うちの学園祭もう終わっちゃってるからなぁ……」
冬馬「じゃあもう諦めるか?」
春香「冬馬君」
冬馬「……冗談だって」
春香「やっぱり……デートするしか」
冬馬「ま、まだだ!まだ肝心なイベントが起こってねぇ!」
春香「イベント?」
春香「そんなタイミング良く病気になるはず……」
冬馬「だからそれまで待つんだよ。忍耐だ」
春香「それじゃクリスマスに間に合わないよ……」
冬馬「っ……別に良いじゃねえか。来年でも再来年でも」
冬馬「今デートに誘っても怪しまれるだけだ。今までの努力がパーだぞ」
春香「怪しまれる……そうだよね」シュン
冬馬(……ちっ、一々凹みやがって)
バシャーン
P「!?つめたっ!誰だぁ!?」
タタタッ
P「ま、待て……うぅ、寒っ……」ガクガク
冬馬「悪いな」
冬馬「……本当、何やってんだ俺って」
冬馬「プロデューサー風邪引いたのか」
春香「数日で治っちゃったけどね」
冬馬「あいつの自宅よく知ってたな」
春香「事務所の人は皆知ってるよ?」
冬馬(765プロってやっぱりおかしいだろ……)
冬馬「へぇ……何も無かったのか?」
春香「え?」
冬馬「……だから、ガキじゃねえんだから分かるだろ?」
春香「……そ、そんなの無いよ!!無い無い!」
冬馬「だよなぁ、天海にそんな度胸ねえよな」
春香「むっ……で、でも雑炊作って食べさせてあげたもん!」
冬馬「は?」
春香「他にも身体拭いたり……ちょっと恥ずかしかったけど……」
冬馬「身体……拭いた……?」
春香「あ、って言っても上だけだよ。あとは寝るまで子守唄……とか……」ゴニョゴニョ
冬馬「……」
春香「それでプロデューサーさんからお礼がしたいって連絡が来たんだ」
冬馬「えっ……」
春香「今度のオフの日にどこか行こうって」
冬馬「……良かったな。デートじゃねえか」
春香「うん!色々アドバイス本当にありがとう!」ニコッ
冬馬(……俺も風邪ひいたら……来ないだろうな)
春香「冬馬君に好きな人が出来たら私に言ってね。お礼がしたいから」
冬馬「……そんなの出来ねえよ。俺はトップアイドルしか眼中にねぇ」
春香「恋なんてふとしたきっかけではじまっちゃうものだよ」
冬馬(……はじまってるのか終わってるのか)
冬馬「俺は……清楚な感じが良いな」
春香「ふむふむ、プロデューサーさんはどんなのが好きなんだろ」
冬馬「知らねえって……俺はあいつじゃねーんだから分かるはずないだろうが……!」
春香「あっ、……そうだね……つい……」
冬馬「……別にお前なら何着ても大丈夫だろ。もっと自信持てよ」
春香「……うん!私がんばる!」
冬馬(楽しそうにしやがって……)
冬馬「……」
冬馬「あ……アレは……」
春香「――。――」
P「―――――」
春香「――!――――――」
P「――」
冬馬「……」
冬馬(こういう時に限って何で見つけちまうんだ……)
冬馬(……天海のあんな嬉しそうな姿見た事ねえな)
冬馬「ははっ……」
冬馬「何ちょっと期待してたんだ俺は」
冬馬「最初から分かり切ってた事じゃねえか」
春香「プロデューサーさんとお買いもの――」
春香「今着てる服プロデューサーさんのプレゼント――」
春香「一緒に夜ごはん――」
春香「こうした方が暖かいって手を握ってもらって――」
冬馬(――――プロデューサー、プロデューサー、プロデューサー)
冬馬「……それで?」
春香「まだ……どうなるか分からないけど」
冬馬「どうせイブもクリスマスも仕事だろ」
春香「うぅ……そういう事言わないで」
冬馬「俺は事実を言っただけだ」
春香「でもでも!その日に手編みのマフラーだけは絶対に渡すよ」
冬馬「手編み……」
春香「うん!じゃーん!まだあんまり進んで無いけどね」ヒョイッ
冬馬「……」
春香「え?」
冬馬「アイドルとプロデューサーなんだ。恋人なんかになれるわけねーだろうが」
春香「と、冬馬君?」
冬馬「何夢見てるんだよ。ちょっと1日遊んだぐらいで舞い上がって馬鹿じゃねえの」
春香「ど、どうして急に……そんな……」
冬馬「プロデューサー、プロデューサー、プロデューサーうるせえんだよ……!」
春香「え……」
冬馬「もうこんな下らねえ事に付き合ってらんねえ……!じゃあな!!」
春香「冬馬……君……?」
冬馬「……」ハァハァ
冬馬(俺は何であいつに協力してたんだっけな)
冬馬(……)
冬馬(……)
冬馬(ああ……そうだった、俺は天海のためって事で自分を正当化してたが)
冬馬(心の奥底では……天海がフラれて……)
冬馬(そのままあわよくば俺と……とか考えてたんだっけ)
冬馬(問題無くあいつらが進展して)
冬馬(気に入らねえけど悲しむ顔は見たくないから協力して……)
冬馬(結局思い通りにならずに勝手にキレて)
冬馬(俺の行動矛盾だらけじゃねえか……)
冬馬(最後にはあいつの笑顔を奪って……最低だ)
冬馬「……」
春香「と、冬馬君、今日の撮影がんば」
冬馬「……」スッ
春香「あ……」
冬馬(何で俺は……逃げてるんだ)
冬馬(あいつの顔見て、謝る。そんな事すら出来ねえのか……!)
冬馬(こんなに臆病だったのか……)
冬馬(何が正々堂々だ……)
冬馬(結局あいつを避けて、自分を守って)
冬馬(あいつは……)
冬馬(傷つく事が怖くても……必死に逃げずに立ち向かって……)
冬馬(……クソッ!)
[Sub]ごめんなさい。
―――――――――――――――――――――――――
冬馬君の気持ちも考えず
本当にごめんなさい。
迷惑だったよね。
会うたびに恋愛の相談されたら
普通嫌だもん。
どうして気付けなかったんだろう……。
もう二度とこんなことしません。
こんな私だけど
またお話ししてほしいです。
冬馬「……何でお前が謝るんだよ。相談しろって言ったのは俺だ」
冬馬「調子に乗ってアドバイスしたのも俺だ」
冬馬「全部俺が悪いのに……」
冬馬「……馬鹿野郎」
春香「ぁ……」
冬馬「……」スー ハー
春香「……あの」
冬馬「悪かった、天海!」バッ
春香「えっ?何で冬馬君が謝るの!?」
冬馬「いきなりキレてお前に暴言吐いた事、マジで反省してる!勘弁してくれ!」
春香「そ、そんな!私がいつもいつも……」
冬馬「いや、俺が!俺なんだ!!」
春香「私のせいで!」
冬馬「俺だって!俺が100悪いんだ!」
春香「私が1000悪いんだってば!」
冬馬「何言い争ってんだ俺ら……」ハァハァ
春香「あははっ、本当そうだね……」ハァハァ
春香「!」
冬馬「トップアイドルになって結婚して引退した伝説のアイドルもいるんだ」
春香「あ、知ってるかも」
冬馬「まあ俺に否定されたぐらいであいつへの気持ちが揺らぐわけねえと思うけど」
春香「えへへっ、バレてた?」
冬馬「……とにかく、トップアイドルになれよ。トップに立って堂々と言え」
冬馬「私はこの人と結婚しますってな。そういうのカッコいいじゃねえか」
春香「け、結婚……トップ……」
冬馬「そんぐらいの気持ちでいかねえと、事務所のやつら皆狙ってるんだろ?」
春香「確かに激しい競争になりそう……」
春香「変な集団じゃないよ」
冬馬「その中でお前みたいな普通なやつがあいつをオトすには1番になるしかねえ」
春香「普通って……」
冬馬「まあ俺達ジュピターがいる限りトップアイドルになるのは無理だろうがな」
春香「……トップアイドルと結婚の関連性がよく分かんないけどそんな風に言われたらやるしかないよね」
冬馬「まあその前にクリスマスがうまくいくかどうかだな」
春香「うまくいくもん!見てよ、マフラーあれからこんなに進んだんだよ」バッ
冬馬「……家事出来るって聞いたけどお前って案外不器用」
春香「ちょっとぉ!?」
春香「うん、ありがとう」
冬馬「けりがついたら結果だけはちゃんと報告頼むぜ」
春香「残念な結果の時は慰めてね」
冬馬「ばーか」
春香「またバカって言った!バカじゃないもん!」
冬馬(心の底から……とは言えねえが頑張れよ)
おい、そのオチ…
乙
Entry ⇒ 2012.10.31 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
憧「コミック百合娘を読んでたらシズに見られた……」
憧「……」ペラッ
憧「……」ペラッ
憧「んふふふ」
憧(やっぱ”永水の巫女”はいいわよねー!)
憧(神代小蒔と石戸霞の二人が、雀神スコヤとその下僕に狙われて……)
憧(共に戦っているうちに愛が芽生える話……素敵よねー)
穏乃「憧ー!何読んでるのーっ?」
憧「えっ!?シズ!?」
『小蒔ちゃん……私……貴方の事が好きよ』
『霞ちゃん……嬉しい……』
穏乃「……な、なにこれっ!?女の子が抱き合ってる……っ」///
憧「」
憧「ち、違うのシズ……」
穏乃「え、えっと……!」
穏乃「……あ、憧も女の子だから!」
穏乃「そういうのに興味持ってても……おかしくないよね……ハハハ」
憧「し、シズっ……!」
穏乃「ご、ごめん憧!読書の邪魔しちゃ悪いよね、先帰るよ」
憧「ま、待ってシズ!」
憧「……」
憧(あれって完全に引いてたよね……)
憧(……)
憧(……え、それって)
憧(シズが私の事を嫌いになっちゃうってこと……?)
憧(……)
憧(嫌だ……)
憧(嫌だよそんなの……)
憧(シズに嫌われたくなんかないよっ……)
憧「……はぁ」
憧(明日からどんな顔をしてシズを会えばいいんだろ……)
憧(……シズ、私から避けるように帰ったよね……)
憧(……やっぱりおかしいのかな、女の子同士の恋愛って……)
憧(……)
憧(ううん、そんなことない!)
憧(たまたま好きになったのが同姓なだけだもん)
憧(何もおかしいことなんて無いよね)
憧(シズだってちゃんと話せば分かってくれるはず!)
憧(大丈夫だよね)
憧「あ、シズ!おはよー!」
穏乃「あ、憧っ……!?お、おはよう」
憧「おはよーって、どうしたの?」
穏乃「へっ!?な、なんでもないよ!」
憧「ふーん、そう?」
穏乃「う、うん……」
憧「……」
穏乃「……」
憧「……」
憧(す、すごい気まずいんだけど)
憧「ね、ねぇシズ」
穏乃「ご、ごめん憧!私日直なんだ!」
憧「えっ?」
穏乃「だから先急ぐね!」
憧「え、ちょっ、シズ!?」
憧「……」
憧(シズ……)
憧「……」
憧「はぁ……」
憧(結局、話す機会が無いまま放課後になっちゃった……)
憧(休み時間に話そうと思ったら、どっか行っちゃうし)
憧(ホームルームが終わったと思ったら、既にいなくなってるし)
憧(もしかしたらと思って部室に来てみたらまだ来てないし……)
憧(やっぱりシズ……あたしの事を避けてるのかな……)
憧(……)
憧「はぁ……」
憧「あれ……」
憧「コミック百合娘……なんでこんな所に」
憧(……あたし持って帰るの忘れてたっけ?)
憧(ううん、あたしはちゃんと持って帰ったし……)
憧(じゃあ誰のだろ……)
ギィイ……
憧「!?だ、誰!?」
灼「……」
憧「灼さん?」
灼「……見た?」
灼「その本」
憧「えっと……」
憧「見たって言えば……見たけど」
憧(昨日自分で買って読んだし)
灼「……そう」
灼「その本、私のだから。返して」
憧「えっ、この本灼さんのだったの?」
灼「……悪い?」
憧「いや、そうじゃなくて……灼さんも読むんだ、コミック百合娘」
憧「うん、まぁね……」
灼「へえ、意外」
憧「そう?」
灼「うん、あんまりこういうのに興味無さそうだったから」
憧「そういう灼さんこそ、あんまりこういうのは読まなそうだけど」
灼「そんなことない、私はこういう結構好き」
灼「こういうのって憧れるし」
憧「へえー」
灼「私は”少女ピンフ”とか”そのイーピンにくちづけを”とかが好きかな」
憧「うわ、結構濃いじゃんそれ」
灼「うん、真剣に恋愛してる女の子の物語だからね」
灼「それに教師と教え子が恋人になる珍しい作品でもあるし」
憧「そ、そうなんだ」
灼「憧はどうなの?」
憧「え?」
灼「どんな作品が好きなの?」
憧「あ、あたし?」
憧「”少女革命ノドカ”も好きだし、”麻雀性恋愛症候群”……”すばらきこと”とか……」
灼「”少女革命ノドカ”って……それもうとっくに終わってるやつ……」
憧「うん、昔から好きなんだよねー」
灼「ノドカが世界に革命する力を手に入れて、同姓結婚を認めさせちゃうやつだっけ」
憧「そうそう、灼さん詳しいじゃん」
灼「まぁね、私も小さい頃から読んでるから」
灼「そういう憧も結構詳しそうだね」
憧「私も中学ン時から読んでたから……」
灼「ふうん、やっぱり好きなの?穏乃の事が」
憧「ファッ!?」
灼「違うの?」
憧「ち、違うっていうか……」
憧「そ、そりゃ……シズの事は嫌いじゃないし、むしろ好きっていうか……」ゴニョゴニョ
憧「あ、灼さんこそどうなのさ!」
灼「私?」
憧「灼さんも好きな人とかいるんじゃないの?」
灼「うん、私はハルちゃんが好き」
憧「えっ、晴絵!?」
憧(というかあっさり答えたわね……)
憧「わからない……?」
灼「この気持ちが、好きなのか。それともただの憧れなのか」
憧「灼さん……」
灼「正直、この気持ちをハルちゃんに伝えるには怖い」
灼「今までの関係まで変わっちゃうんじゃないかって」
灼「私は今の関係でも十分満足してるし」
灼「それにもし、私がこういう本を読んでるってハルちゃんに知られたら……」
灼「……きっと嫌われる」
憧「……」
灼「憧……?」
憧「あたしもさ、シズに自分に気持ちを伝えて」
憧「それで関係が壊れちゃったりすると思うと……やっぱり怖いもん」
憧「……尤も、今は話す機会すらないんだけど」
灼「……?どういうこと?」
憧「実は……百合娘読んでるところをシズに見られちゃってさ……」
憧「なんか、すごい引いてたみたいで……」ハハ
憧「それ以来、上手く話せてないんだ……」
灼「そう……」
憧「灼さん……私、どうしたらいいんだろう」
憧「このままだと、シズと話せなくなるどころか」
憧「一生シズに嫌われたままになっちゃう……」
灼「……」
灼「……多分だけど」
灼「これは逆にチャンスだと思う」
憧「……え?」
憧「チャンス……?なんでよ?」
灼「憧は、お互い話せままの今の関係を続けたい?」
憧「いっ、嫌よ!そんなの!」
灼「なら、変えるしかない」
灼「百合娘を読んでる所も見られて、憧の趣味は穏乃にバレたから」
灼「これはもう正直に穏乃に話すしかないと思う」
憧「そ、それができたら苦労しないわよ!」
憧「今だって若干避けられてるのに……」
灼「呼び出しの手紙を机か下駄箱に入れておけば来るんじゃない?」
灼「穏乃は素直だから、なんだかんだで来そうだし」
憧(否定できないわ……)
憧「で、でも、何て言えばいいのよ」
灼「正直に言えばいいんじゃない?しずの事が好きですって」
憧「ていうか、なんでそこで告白する事になるのよ!」
灼「でも好きなんでしょ?穏乃の事」
憧「だ……だからって告白はさすがに……」
灼「今の穏乃は結構混乱してると思う、もしそこで誰かが穏乃を慰めて」
灼「その人が穏乃と恋人になったりしたら、どう思う?」
憧「シズに……恋人……?」
憧「嫌……嫌だよ、そんなの」
憧「あたしが……?」
憧(あたしがシズの恋人に……?)
灼「……まぁ別に、告白はしてもしなくても別にいいけど」
灼「部活の士気に影響が出るから、ちゃんとしずとの誤解は解いておいてね」
灼「じゃあ、私は帰るから」
憧「えっ、部活は?」
灼「聞いてなかったの?今日はハルちゃん用事あって部活に顔出せないから、部活はおやすみ」
灼「昨日言ったと思うんけど」
憧(そういえばそんな事も言ってたような……)
憧「あ、うん……おつかれ」
憧「……」
憧(あたしが……シズに告白……?)
憧(……できるのかな)
憧(……)
………
……
…
穏乃「みんなおはよー」
穏乃(結局、憧と顔が合わせ辛くて時間ずらしちゃった……)
穏乃(憧怒ってるよなー……)ガサゴソ
穏乃「……あれ?何か入ってる?」
穏乃「……手紙?なんだろ?」
穏乃(えっと……放課後、麻雀部部室に来てください……?)
穏乃(名前は書いてないし……誰からだろう)
穏乃(ま、どのみち部活があるからいいけど)
憧「……」
憧(……やばい、緊張してきた)
憧(シズ……来るかな?)
憧(……ううん)
憧(シズなら絶対に来る……!)
キィイ……
穏乃「……あれ?憧?」
憧「し、シズ……っ」
憧「うん……そうだけど」
穏乃「そ、そうなんだ……ハハハ」
穏乃「私、手紙に麻雀部の部室に来てって書いてあったから来たんだけど……」
穏乃「他に誰か来なかった?」
憧「……」
憧「……その手紙ね」
憧「あたしが、私が書いたの」
穏乃「へ?憧が?」
穏乃「どうして憧がこんな手紙を?何か用事があるなら直接言えばいいのに」
憧「それは……最近、シズが私を避けてるっていうか……」
憧「なかなか話す機会がなかったら……」
穏乃「あ……」
穏乃「……」
穏乃「……ごめん、憧」
憧「……なんでシズが謝るの?」
穏乃「なんだか私が避けてる感じになっちゃって……」
穏乃「本当にごめん!」
憧「シズ……」
憧「悪いのはあたし」
穏乃「憧……?」
憧「……あの時からだよね、私達がちょっと気まずくなったのって」
穏乃「あの時……?」
憧「シズが私の漫画を見ちゃったこと」
穏乃「あっ……」///
憧「……」
憧「シズ……前に言ったよね」
憧「あたしはそういうのに興味持っててもおかしくないって」
穏乃「……」
憧「百合が好きなの」
穏乃「ゆ……ゆり……?」
穏乃(ゆりってなんだろう)
憧「今まで黙っててごめんね、シズ」
穏乃「え、あっいや……別にいいけど」
穏乃「でもなんで急にそんな話を?」
憧「……」
憧「これ以上シズと気まずい関係になるのは嫌だったから……」
穏乃「えっ……?」
憧(やっばっ……めっちゃ緊張するんですけど~!!)
憧(どうしよう……!やっぱり言わない方がいいのかな?)
憧(……でも、もしシズに他の恋人ができちゃったりしたら……)
憧(ううん……いや!それだけは絶対に嫌!)
憧(言うのよあたし!がんばれっあたし!)
憧「し、しず……!」
穏乃「は、はいっ!」
――好きよ――
憧「~~~~~!!」///
穏乃「あ、憧……今なんて」
憧「だ、だから……っ……そのっ」///
憧「……好きなの!シズのことが!」///
穏乃「憧……」
憧「~~~……」///
穏乃「……うん」
穏乃「私も好きだよ!」
憧「えっ……」
憧「シズ……それ本当……?」///
穏乃「うん、憧も玄さんも宥さんも灼さんも大好きだよ!」
憧「……」
憧「えっ?」
穏乃「憧も好きだよね?みんなのこと!」
憧「……」
憧(そっか……シズはあたしの事だけが好きって訳じゃないんだ……)
憧(ばかみたい……一人で盛り上がっちゃってさ……)
憧(ほんと……情けないな……あたし)
穏乃「……憧?」
憧「あたしも好きだよ、みんなのこと」アハハ
穏乃「だよねー!やっぱり皆仲良しが一番だよ!」ハハハ
憧(……でも)
憧(なんか、シズらしいや)
憧「憧も急に変な事言うからびっくりしちゃったよー!」
憧(シズと恋人になれたら……なんて思ったけど)
憧(その必要はなさそうね)フフッ
穏乃「それよりみんな遅いなー、もう部活始まってる時間なのにー」
憧(……だって、あたしは今の関係でも十分幸せだから)
憧「……ふふ、はははっ」
穏乃「……?憧?」
憧「なんだか、無駄に緊張しちゃったね」
穏乃「へ?緊張?」
憧「あれ、シズは緊張しなかったの?」
憧「ついさっきまではお互い気まずかったのに」
穏乃「あっ……」
憧「ふふっ、でもそれも今日でおしまい!」
憧「シズ」
憧「あたしたち、これからも友達だよね?」
穏乃「……」
穏乃「ああ!憧とはずっと友達だっ!」
憧「……うん!」
憧(私はシズの事が好き)
憧(でも、あたしは今のままでいい)
憧(だって、シズと一緒にいれるだけで十分だから)
憧「……シズ」
――これからも
ずっと友達でいようね――
つづカン
. / /: :.,ィ: : : : : : : : : : : : : : : \i
/ / / i: : : : : : : : : :i: : : : : : : :.\
__i / /: : : : : : : ;ィ: :}: : : : : : : : : : :.
i 「`7 /!: : : :∠」_ ハ: i: : : : : : : : :i
=-x /// : :/ ! 「 卞}: : : : : : : : :} 雅枝「エロゲしとる所を娘に見られてしもた……」
::::i. / / ==ェx、_ i/i: : : : : : : :/
:C !::::::::::「ヾ' i: : : : :..:/
''′ |::::::::C /イ: : :/
∨::::ソ i,厶イ\ 10/31 20:00
 ̄` .!: : / \\
}: :.! )::)
/\ ノ|: .:| //
;,、  ̄ ̄ _,, < |: :.!// アカン……
| ̄ !: :|/
|∧ |: :| おかんがエロゲーしとる所を見てしもた……
ヽ_,/ ',__ |: :i
_/ ヘ .i \. !:/
》ェ≪ | \ /
.|| || 》__/ `ヽ
.|| |〃 ̄`ヾ ハ
おつです
本当すみませんっす
っす
Entry ⇒ 2012.10.31 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
淡「××××」
けどそれは激情的なものではなく、静かに芽生えた恋だったのは確か。
最初に麻雀部へ入って、テルに見蕩れて。
それからは、手段と目的が逆転していたんだと思う。
麻雀をやるために麻雀部に入ったのに、今はテルと会うために、会うためだけに麻雀をしてる。
私がもっと強くなれば、テルは私をもっと認めてくれると思ったし、それは事実らしかった。
いつしかそれは行きすぎて。
たったの数ヶ月で、私はテルの二番手、つまり、誰よりも強くなっていた。
それはとても嬉しかったけど、麻雀が強くなれた嬉しさなんか、欠片ほども持ち合わせていなかった。
私はただ、テルに認めてもらえたことが嬉しい。
それだけ。
テルに認めてもらうためなら、なんでもする。
麻雀の強さなんて、その道具でしかない。
本当に行き過ぎていると思うけど、そうやって考えが逆転した頃には、もう遅かった。
そして行き過ぎていたのは、どうやら私だけじゃなくて、テルもそうだったみたい。
それを知るのは、もっともっと、後のことだけどね。
別に、私達は付き合ってるわけじゃないし、まだ告白する勇気もない。
それでもお互いがお互いに対して行き過ぎてて――狂うだけの材料としては、十分だったらしい。
一番最初に狂うのは、自分でも私の方からかと思ったんだけど、実はテルの方からだった。
私は階段を歩いている時に、ちょっと調子に乗って揺れていたものだから、てっぺんの方から踊り場のところへ崩れ落ちてしまった。
あんまり高さはない癖に、体制が変だと、身体には予想よりもずっと重い負担がかかってくる。
菫「なっ……大丈夫か!?」
大丈夫――そう言おうとしたのに、その言葉が出てこなかった。
口から出す前に、私の身体が、脚に走る鈍痛を迎え入れてしまったからだ。
淡「あっ、だっ……がっ……」
そんな呻き声を上げたと思うけど、正直あんまり記憶にない。
落ちたこと、脚に走る痛み、揺れる意識。
痛みに奪われつつある思考で、これらの要素を繋ぎ合わせて骨折したという一つの現象を確認するのには、結構な時間がかかった。
昔から、骨折すると痛みが身体を支配するものと思ったのに、それに吐き気も混ざってきていた。
こいつらに集中するので精一杯で、スミレの心配には、あんまり返答できてなかったはず。
そうして、すぐに行動に移してもくれた。
菫「っ、救急車を呼んでくる! 照、お前は淡のことを……」
照「……ぃ」
菫「……照?」
スミレの言葉に、テルは反応しなかった。
それが一瞬だけ、見捨てられたように思えて。
それはこの骨折の痛みよりも、ずっと重い精神の痛みとなって具現化した。
指先が、急に寒くなった。
でも、それも一瞬のこと。
私は朧気な意識の中で、私よりも危ないテルの様子を見てしまったから。
目には涙が溜まって潤っていた、そうして、少し遠くの方を見ている。
手は震えて、歯も震えて、そのせいかカチカチと軽い音も聞こえていた。
やがて本当に寒くなったように、自分の両腕で自分の身体を抱きしめて――
照「あっ、ああぁあ!! い、ぃ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!」
菫「おい、照!」
照「いやあぁああああぁ!! ××××、××××!!」
――私の知らない、誰かの名前を口にした。
菫「照!」
照「××××××××××××××××××××××××」
もう言葉が交じり合って、なんて言っているのかよく聞き取れない。
それが私の名前でないことだけはわかっている。
テルの大声を聞いて、側の教室から生徒が数名かけつけてくるのが見えた。
野次馬根性からくるそれだと思うけど、私とテルの様子を目にして、心を変えたみたい。
焦燥が見て取れる表情でスミレにしきりに何かを聞いていて、スミレも生徒たちと同じ顔で、何かを返答している。
それから、スミレはテルを抱えたまま動かないで、生徒達の方が辺りに散らばっていった。
スミレに揺さぶられるテルは、もうどこを見ているのかよくわからない。
喘息のような音を最後に、テルの声は全く聞こえなくなっていた。
私もちょうど同じ頃、意識が激痛に覆い隠される。
テルが静かになったのか、私が気絶したのか、どっちだろ――。
そうだ、私は階段から崩れ落ちて、脚を打って、骨折して。
それから、どうなったんだろう。
尭深「起きた……!」
誠子「具合悪くない!?」
セーコとタカミが、目の前に立っていた。
二人の言葉で頭が冴えて、すぐにこの場所が病院だと理解できた。
理解したら、また脚に激痛が走る。
脚に意識を置くと、ぐるぐる巻きにして固定されているのが伝わってきた。
激痛で気絶して、病院に運ばれて、一通りの処置はされたみたい。
ただ一つだけ、気になるところがある。
激痛を強引に沈めて、私は二人に質問をした。
淡「……テルとスミレは?」
この場には、名前を挙げた二人がいない。
特にテルがいないのは、何よりも不安だった。
そんな様が、私の不安を更に加速させていった。
しばらくそんな停滞が流れた後、口を開いたのはセーコの方。
誠子「……ちょっと、色々あって」
色々。
踊り場で見えた、青ざめたテルを想起した。
身体の損傷で言えば、テルは無傷で、私は重傷なのにね。
それでも自分のことよりも、テルの方がどうなっているか心配になってるよ。
でも、特別変だとは思わなかった。
それが、私の自然だから。
だから私は、自分のことを二人の視界から遠ざけるように、テルの状態を深く聞くこととした。
淡「色々って、何」
誠子「…………」
尭深「…………」
二人とも、何も答えてくれない。
私は静かに、二人はやや大げさに、室内に入ってきたスミレを凝視する。
スミレは右手の手の平で顔を覆いながら、俯いて歩いてきた。
誠子「先輩は、どうしました?」
菫「ああ、大丈夫……それよりも、淡は……」
淡「それよりも、じゃないよ!」
スミレの言葉に、反射的に口が動いてしまった。
身体がそれについてこれずに、脚の痛みはまた強くなった。
でも今は、感情の方が、その痛みよりももっと強い。
淡「テルは大丈夫なの!?」
菫「……まずはお前の身体のことからだ」
ふと見えた菫の眼は、なんだか生気を失っているように感じ取れた。
私も釣られて、それ以上突っ込んで聞く勇気を喪失してしまった。
どうやら、私の担当医みたい。
その医者は色々と難しい言葉を並べていたけれど、よくわからなかったし、理解する気もなかった。
そんな言葉は、テルの様態がどうなっているのか気になる私にとって、ただの焦らしにしかならない。
だから医者に対する受け答えも、ほとんどスミレが行なっていた。
私はただ、最短で全治三ヶ月ほどになる、ということしか記録していない。
医者がこの場所を出てから、一目散にスミレに話を聞いた。
スミレならきっと、テルがどうなってるかわかるはずだから。
淡「テルは?」
スミレは、何も答えてくれない。
セーコもタカミも、おんなじ。
淡「……ねえ」
誠子「……大丈夫、でしょうか?」
菫「多分……な。 とにかく呼んでくる」
――何が、大丈夫なの?
ねえ。
後には、気不味い雰囲気の私達三人だけ。
淡「テルに、何かあったの?」
誠子「いや……」
セーコは私から目を逸らす。
反対に、タカミの方が、私に答えを教えてくれた。
尭深「先輩は、過去に……」
淡「……テル!」
照「……淡?」
その答えを聞き終わる前に、スミレがテルを連れて戻ってきた。
自然と、意識の全てがそちらに向いてしまう。
照「脚はともかく、元気そうで安心した」
すごい、テルがいるだけで、こうも安心できるなんて。
私はその言葉だけで、脚の痛みがいくらか和らいでしまったもの。
この安堵感に、タカミが言いかけていたテルの過去が、私の意識と一緒に呑み込まれてしまった。
この時に聞いていれば、まだ良かったのかも。
これが片足だけなら、引き摺ってでもテルのいる部活に、顔を出せたんだけどね。
両足だから、仕方ないかな。
でも、別に不満はない。
テルは麻雀部を早番してまで、毎日毎日、お見舞いに来てくれるから。
今この時だけは、テルの意識が私だけに向いている。
すごい、幸せ――だった。
ちょっと忘れるだけのつもりだった、テルの発狂。
私はそのことを、テルが毎日お見舞いに来てくれることの心地よさに、思わず長いこと忘れてしまっていた。
入院してから、幾分か経った頃。
医者に聞いた話では三ヶ月が治療期間の目安だったけれど、私はそれより一ヶ月ほども早く丈夫になった。
こればかりは、今でもテルのおかげだと信じている。
でもその先に待ち受けていた未来は、とても受け入れがたいものだった。
当時の私は、ひどく喜んでいた。
その喜びもやはり、退院できるその事実からではなく、テルに退院報告をできることから来ているものだと思う。
やっぱり私は、テルと打つ麻雀が好きで、テルと色々なところ――ってほど行ってないけど、一緒に行動するのが好きだもの。
それに退院後も、テルは入院時と等しい優しさを与えてくれると、無根拠に思っていたのもある。
さっきも言ったけど。
私を待ち受ける未来は、それらを全て拒絶するどころか、また新たな傷口を創りだしてしまった。
例の喜びを引き下げたまま、私はテルを病室に迎え入れた。
もちろん、いの一番に退院できることを伝えたよ。
そうして、もう動けるようになった脚を子供らしく、そしてわざとらしくぷらぷらさせても見た。
この様子を見たテルは、今まで目にしたことのない、眩しい笑顔を贈ってくれた。
クールな顔も素敵だけど、この笑顔もよく似合っている。
でもその笑顔は、どこか遠くの方を、あるいは別領域の方を見ている。
そのまま、テルはその笑顔を言葉に包んで、プレゼントしたんだ――
照「治ってよかったね、××××」
――私の知らない、誰かに対して。
私の怪我に見向きもせず、別の方を向くための名前。
私の激痛を想起させる名前。
私の知らない名前、私のじゃない名前。
自分の思考が、よくわからなくなった。
わかりたくもないのかもしれない。
血液の色が青色に染まっていく様だけは、皮肉にも鮮明に理解できた。
照「また、あの海に行けるといいね」
テル、海って、何?
私、そんなの知らない。
テルは一体、誰に話しかけてるの?
ここに、××××はいないよ?
ここにいるのは、私、大星淡でしょ?
輝かしいその笑顔から、一筋の曇を感じたのはどうしてだろう。
照「ねえ、××××?」
テルは確かに、私の目を見て話している。
確かに、私の口から、何かの返答を待っている。
外面、だけは。
照「……大丈夫?」
ねえ、テル。
なんでテルが、そんなに弱々しい顔をするの?
弱々しいのは私なのに、今ここで泣きだしたい、錯乱したいのは私の方なのに。
治ったらしい脚の骨が、触られた炭のようにボロボロと崩れていく錯覚にも陥っていた。
こんな状態でも、私は――テルの都合を、テルの精神を優先してしまったんだ。
淡「……うん、大丈夫だよ」
作った笑顔のしわ寄せかな。
身体のどこかから、崩れた瓦礫の声が聞こえてきた。
今こうしてテルに対応しているのは、必死になって拾い集めた破片を、無理矢理くっつけた、私の模型。
そんな私じゃない私は、テルの都合を案じる一心で、知らない誰かに演じた。
その誰かが、気を緩めればすぐにでも私の身体に貼り付いてきそうで。
気持ち悪くて、吐きそうになって、頭痛も目眩もした。
耐え切った私のことを、テルは褒めてくれなかった。
褒めてくれたとしても、それは多分、私に向けられたものじゃないだろうね。
淡「ありがとね、照さん」
照「昔みたいに、照お姉ちゃんって言ってもいいよ?」
淡「……そうだね、照お姉ちゃん」
別れ際の会話。
その時になって、知らない誰かが、テルのことをそう呼んでいるのがわかった。
テルが帰ってから、すぐに過呼吸を起こしてしまった。
実際私の肺は、物理的に四分の一くらいに縮まってたんじゃないかと思う。
それは身体だけでなく、精神も同じこと。
元来の図太い性格は、今や糸よりも細いものになっていたことを、過呼吸を通じてよく理解できた。
テルは終始、不思議がることはなかった。
それはきっと、ううん、確実に、テルは私のことなんて、認識していなかったことを意味している。
一度演じた、演じてしまった、でも、誰かは知らない。
その事実は、肥大しつつ私に重くのしかかってきていた。
テルに対して、これからずっと、知らない誰かとして、かき集めた破片の集合体として、接していかなければならないのかな?
テルの中から、私は消えちゃうのかな?
一度だけ譲ってあげた私の席は、知らない誰かに乗っ取られちゃうのかな?
私はテルに認めてもらうために麻雀部に入って、一軍になって。
骨折によって麻雀ができなくなって、それでも全く暗くならずに、最後まで笑顔のまま完治を迎えたのに。
テルの瞳は確かに私を捉えていたはずなのに。
本当は、どこを見ていたの?
私を見る振りをして、その実、反対の方向でも見ていたの?
テル、テル、テル――
菫「……ぃ、淡!」
――気が付いた頃には、スミレに肩を揺さぶられていた。
顔の真下に位置する毛布には、ひどい色の染みがついていた。
そんなこと、すぐにわかるはずなのにね。
淡「……スミレ」
菫「よかった、意識が戻ったか! 悪い、そっちに夢中になって、まだ医者を呼んでいない」
ただ一言、返事をしただけなのに、スミレは何もかもを世話してくれようとしていた。
それがなんだか、さっきまでテルに受けていた仕打ちとの対比に思えて。
菫「気分が悪いんだろう、すぐ呼んでやる。 脚の痛みが再発したのか? それか、別の部分……」
淡「……テルは?」
その思考を拭い去るように、スミレの手を止めようとした私は、きっとバカなんだろうね。
自分を解体してまで、スミレから目を逸らしてまで、テルを優位にしようとしている。
こればかりは、錯乱なんて言い訳はできそうにない。
私のテルに対する愛は、間違いなく病的なもの。
その所々には、何かを察した跡が見て取れた。
テルに関することに違いないと思った私は、さっきの行動を、無意識の内により強いものにしていた。
淡「私は大丈夫」
菫「いや、お前……」
淡「ねえ、テルには何かなかったの? すれ違ったと思うけど」
菫「……テルに、また何か言われたのか」
淡「……ぃ、……」
菫「……多分、脚のことだろうな」
やっぱり、察してた。
スミレの言う"何か"が、決していい意味を内包していないことはよくわかる。
だから思わず否定しようとしたけど、そのための言葉は、喉の辺りで自我らしいものに押し返されてしまった。
テルは一度、階段で私以外の誰かを心配していたこと。
今日もまた、私に向かって、でもやっぱり、知らない誰かと話していた。
淡「……教えてよ、テルのこと」
自然と、口に出ていた言葉。
好奇心から出たものでないことを、少し安静になった私の心中は、しっかりとわかっている。
私はとことん、テルのことばかりに夢中らしい。
菫「わかった、が……一つだけ、言っておく」
淡「何?」
菫「これを聞いたら、お前は絶対にショックを受ける、だから私としては言いたくない。 それでも……」
淡「それでも、いいよ」
私の口に、淀みはなかった。
ショックなら、一度受けている。
それに、テルに受け入れられてもらうためには、まず自分が、一つの傷を受け入れなきゃね。
それからは、斜め上の遠くの方を見つめている。
私はただ、スミレの方から何か言い出してくれるのを待っていた。
菫「……××××」
始めに出てきた言葉は、心中に根強く残っている、誰かの名前。
スミレまでその名前を言うものだから、心臓が動揺してしまったのも、無理はないと思う。
菫「照の、従姉妹に当たる人間でな」
淡「……そうだったんだ」
菫「やっぱり、何回か聞いたのか」
淡「うん」
不思議と、知らない誰かの正体がわかっても、何ともなかった。
むしろ、重力が少し和らいだような気もしていた。
さっきの心臓の重さが、正体を知ったことで、少しずつ解放されつつある。
私とその誰かは、あくまで別々の人間。
そのことを、第三者からの言葉で理解できたから、なのかな。
菫「私も、写真でなら見たことがある、綺麗な金髪の、長髪の子……その子」
その誰かは、私とあまりにも境遇が似ていたのだから。
菫「照の目の前で、転落事故を起こして、下半身付随になって……」
淡「…………」
何も言うことができなかった。
けど、思うことだけはあった。
私と同じ容姿で、私と同じ事故を起こして、やはり下半身を怪我して。
唯一違うのは、私だけが、こうして平常に戻ることができた点。
運命のいたずら? 気遣い?
あるいは――手助け、なんて考えちゃう私は、きっと相当に悪い人間なのかな。
とにかく、これが故意的な何かであると、疑わずにはいられなかった。
菫「それから……照が時折狂い始めたのは、それからだ」
淡「そんなとこ、今まで見たことなかったよ?」
菫「ああ、最近は治まってた。 淡が骨折するまでは……」
淡「フラッシュバック、しちゃったんだね」
菫「……そうなるんだろう」
知らない誰かのことを、少しだけ知った。
その誰かが、私と被っていることを知った。
知ったからこそ、スミレが教えてくれたテルの過去に対して、あんまり大げさな反応はしなかった。
運命の眺めたような、そんな、俯瞰的な心持ち。
不思議。
自分の心を綺麗に取り繕っても、その中身が何であるかなんて、本人の私が一番よく気が付いている。
私はきっと、その誰かのことなんて、大して気にもしていなかったのかもしれない。
だからこそ、大げさな反応をしなかったのかもしれない。
私が知りたいのは、私がテルに認められているかどうか。
テルの中での、私の立ち位置。
自分のどこから生まれたか知らない、ちょっとだけの異常性。
やっと、本当に自覚できた。
私は少しずつ、誰かのことを聞くことにした。
糸を手繰り寄せて、先のものを引っ張るように。
淡「その子は、今どうしてるの?」
菫「その後のことは、詳しく知らないが、まだ、入院中らしい」
彼女は、今の境遇すら私と同じ。
同じ枠の中から、私だけが先に脱出しようとしているらしい。
だから、私のことを「××××」なんて呼んだんだろう。
淡「テルがね、私のことを、××××って呼んだんだ」
菫「…………」
淡「ねえ、なんでだと思う?」
その答えは、わかりきっている。
それは私だけでなく、スミレも同様らしかった。
沈黙するスミレの表情から、疑惑の念は感じ取れない。
感じ取れるとするなら、それは私に対する哀れみ、気遣いといった負の感情だけ。
もっと言えば――そうだね、禁忌、かな。
テルの本心には、私に触れさせてはならない禁忌がある。
淡「テルはさ、私じゃなくて、ずっと、××××を見ていたんだね」
それをスミレは知っていて。
淡「私は、××××の代用品なんだ」
そして私も今、気が付いてしまった。
私の喋った内容が、禁忌そのものであることを証明するのに、十分すぎる材料だ。
淡「でもね、私はテルに大して、そんなに悪い感情を抱いてないんだ」
菫「…………」
やっぱり、スミレは黙ってる。
別に、何か喋ったらいいのに。
それが正解だと教えたくないから黙ってるんだろうけど、私はもう、気が付いてるんだよ?
淡「人をどう思うかなんて、その人の勝手だもん。 それでも私は、テルに認めてもらいたい」
そしてもう一つ、気が付いたこともある。
一度開けた禁忌は、また別の扉を開けてしまった。
淡「ねえ、スミレ、私はどうすればいいのかな? もう、一生認めてもらえないのに」
菫「……淡、もうやめろ」
淡「テルが私と××××を混ぜちゃったのは、骨折しているのが私で……」
菫「言うな!」
淡「……治ってるのが××××であってほしかったから」
釣られて自分の顔に手で触れてみると、爪を伝って、手の甲に涙が流れてきた。
さっきまで、あんなに平静だったはずなのに。
泣いている感覚なんか、全然なかったのに。
淡「……そうでしょ?」
できるだけ平静に加工しようとしたけれど、絞り出した声は、ひどい濁り具合。
濁ってるし、雑音も入っているし、ちゃんと届いたかすら怪しい。
ねえ、スミレ、何か喋ってよ。
嘘でもいいから、否定してよ。
菫「…………」
あの時みたいに、私の怪我に対して、迅速に対応してよ。
でないと本当に、答えが固まっちゃうじゃん。
ねえ、スミレ。
菫「……ごめん」
あ――固まっちゃった。
脚が治ったのは××××、下半身が動かないのが大星淡。
本当は逆なのに。
一度、テルのトラウマを起こしちゃった責任なのかな。
この骨折は運命の気遣いでも、手助けでもなんでもなく、生意気でテルに擦り寄った私に対する、お仕置きなのかな。
だとしたら、重すぎるよ。
どうして、私が一番テルのことを好きな時期に、こんな仕打ちを受けなきゃいけないの?
重い、寒い、怖い――スミレ、早く私を助けてよ。
その手際の良さで、私を誘導してよ。
でないと私、自分でこの怪我を治しちゃうよ?
下手な応急処置は、より傷を深くするだけ。
そんなこと、怪我の当事者はきっと、わかってるんだよ。
でも当事者にとっては、何かしないと落ち着かないんだよね。
菫「どうしたんだ?」
淡「気持ち悪いから、ちょっと、歩きまわりたいな……」
菫「……なら、付いてく」
淡「……ありがと」
それはきっと、今の私のこと。
明日には退院できる人間が、そんなことする意味ないと思うんだけど。
スミレも、そのことは知っている。
だから余計な心配はさせないように、利口に車椅子で移動することにした。
以前の私ならきっと、大丈夫大丈夫と言いながら、軽い気分でスキップでもしていたはず。
淡「ありがとね、スミレがいて助かったよ」
菫「……いいや、私ができることなんて、これくらいしかない」
嘘つき。
私の思考を、否定してくれなかったくせに。
私を騙し続けてくれなかったくせに。
病院内だと、確かに窓のある箇所なんていくらでもあるけど、やはり天然の空気を吸える場所はここだけ。
部長で特に忙しいスミレは、テルみたいに早番するわけにはいかない。
必然、お見舞いの回数も少ないのに、それでも病院の環境に気付いて、私を気遣ってもくれてる。
屋上の空気は、季節柄ずいぶんと冷え込んでて。
ふと横を見ると、空気がスミレの長い髪を持ち上げて、目立つように靡かせているのが目に入った。
私の髪は、車椅子に預けているせいで、前髪くらいしか靡いてくれない。
淡「もうちょっと、街の方がみたいな」
菫「わかった」
途端に強くなった風に抗いながら、私達は屋上の隅に向かった。
柵の向こう側は、不思議と吸い込まれそうなほどのいい景色に見えた。
少し目を強めると、私達が普段通っている、白糸台も見える。
もう二ヶ月も行っていない。
またあそこに通って、皆と勉強をして、皆と麻雀をしたいな。
やっぱり勝てないなんて呟いて、セーコが私を態度を弄って、タカミが休憩のお茶を入れてくれて、スミレがうるさいと注意して。
でもこっちに呼んだら、やっぱりスミレも仲間に入ってきて。
そんな形式美的ないつもの光景も、もう懐かしい。
あんなじゃれ合いを、またしたい気持ちは、確かにある。
菫「なんだ、やけに風が強くなったな……身体、大丈夫か?」
淡「ちょっと、寒いかも。 タカミのお茶が飲みたいな」
菫「……それは、今日は無理だな。 また明日、部活に来たら言っておこう。 退院祝いに、ケーキでも買ってやる」
淡「いつもは注意するのに」
菫「退院祝いをしないほど、頑固な人間じゃないつもりだ」
淡「……そっか」
淡「そうだね、お願い」
振り向いて見えたスミレの背中は、なんだか暖かく感じた。
逆に、私の身体はひどく冷たい。
でもねスミレ、私が寒がったのは、風が熱を奪ったからじゃないんだよ。
私が車椅子を使ったのは、医者にそう言われたからじゃないんだよ。
外に出たのは、新鮮な空気が吸いたかったからじゃないんだよ。
寒がったのは、テルに認めてもらえない恐怖と、もう一つの別の恐怖が混ざったから。
車椅子を使ったのは、私が少しでも脚が悪いままでありたいと願ったから。
外に出たのは、応急処置をするため。
スミレ、騙してごめんなさい。
私は確かにそう理解したし、それはスミレもわかってるでしょ?
でもねスミレ、私が気付いたのは、これだけじゃないんだよ。
それと、スミレはちゃんと私の応急処置を手伝ってくれた。
だから、言いがかりをしちゃったことも謝るよ。
スミレがいないと、ちょっと、調整が効かなかったからさ。
健常な人間の席は、確かに××××のだよね。
でも、その隣の席は、××××が座っていた席は、一体誰のかな?
そこってさ――今、空席だよね。
私は本来、元気な人間だったから。
柵を乗り越えるのは、そこまで難しいことじゃなかった。
スミレがこっちに気付いて、少しの目配せをして。
そんな、焦った顔しなくてもいいよ?
私は死ぬ気なんてないもん、テルに認めてもらいたいのに、それじゃあ本末転倒ってやつ。
私は戻ってくるよ――脚を失って、ね。
最低限の準備を整えて、治った足で最初の一歩を踏み出すのは、とても楽なことだった。
一つだけ違うのは、顔がやけにべたべたするところ。
菫「……淡、淡!」
スミレの顔を見て、気が付いた。
この顔に貼り付いたものは、スミレの涙だったんだね。
スミレの言葉は、掛け声になって、側にいたセーコとタカミを反応させた。
セーコなんて目が真っ赤になってたし、タカミも袖を目から離さなかった。
スミレに至っては、私のお腹のあたりに抱きついて、全く聞き取れない呻き声をあげている。
私の目だけが、濁っていた。
寝ぼけたような、光に慣れない真っ黒い目で室内を見渡しても、テルの姿だけがどこにも見えなかった。
一通り皆が泣き終えた後、その医者に、物凄い勢いで怒られてしまった。
飛び降りた後に、予定通りスミレが医者に連絡を取ってくれて。
そうしてすぐに、私の治療が始まったらしい。
治ったばかりの脚に与えた衝撃は、生半可なものではない。
私は三ヶ月の治療期間が、今回、五ヶ月に伸びてしまった。
でも、それでいい。
だって私の脚が使えない間は、テルが私を私と認識してくれるんだもの。
五ヶ月というと、ちょうど、テルが卒業して、少しした辺りかな?
なら、タイミング的にもいいよね。
皆の声は、もう、頭に入っていなかった。
私はただただ、テルが認めてくれるのを待っているだけ。
でもさ。
一度崩れた運命は、人の手では修復できないんだね。
テルはてっきり、脚を失ったのが私で、脚が治ったのが××××であればいい、と。
そう、考えていると思ってた。
それだけの、単純な話だと思ってた。
一度席を立って、それを××××に譲ってあげた。
そうして、空いた席に私が座る。
でもね、彼女は生きていて、そして脚を失う席が、生涯の定位置と決まってる。
それはテルがどう思っているか、なんて関係ない。
私も今は、脚を失う席。
治ったはずの××××は、再び脚を失ってしまった。
そうして、同じ席、××××の席に、二人が座ってしまった。
テルが後から入室してきて。
私を、怨霊だか妖怪だかを見るような、怯えたような目で見つめて。
それだけで、私はすぐに自分の過ちに気が付いた。
照「……どうして、なんで、脚……二人、なんで……?」
聞き取れたのは、ここまで。
それからテルは、また階段の時みたいに、狂いだしてしまった。
菫「おい、照!」
テルはひどく錯乱して、あの時と同じように、震える身体を自ら抱きしめていて。
私も自分の失敗に気が付いてから、視界が朧になる。
身体の芯がどこにあるのかわからなくなって、平衡感覚が崩れて、横に倒れそうになってしまった。
スミレの次に私と近かったセーコが支えてくれたおかげで、なんとか助かった。
今なら、テルがどうして寒がったのか、よくわかる。
私も、一度体験していたから。
最愛の人が離れていくのは、身体の体温を全て奪われるに等しいことなんだよね。
私はテルの側にいれないと気が付いてから、急激に体温を奪われた。
じゃあ、テルは?
テルは今どうして、寒がってるの?
なんて、もっと前からわかってるでしょ。
テルの隣に立てないのは、テルが発狂しちゃうからじゃない、認められないからじゃない。
そんなものは二次的なものに過ぎない。
テルの最愛の人が××××で、私は彼女ではない。
テルはずっと、××××の脚が治ることを夢見ていたから。
夢の具現化で、代用品の私が壊れる様に、気が狂っているだけ。
ただ、それだけの話。
でも、ここで気を失ったらダメ。
ここで何もできなくなったら、私は今度こそ、××××に席を奪われてしまう。
空になった席を見つけたテルが正気に戻った時。
動けない人間が二人いる、××××の役が二人いることに気が付いてしまうだろう。
そしてすぐに、どっちが本物かわかっちゃうはずだ。
テルが現実を理解してしまったら、××××の脚が治らないことにも、気が付いちゃうんだもん。
夢の代用品は、必要なくなってしまう。
そうなると、私はどうなるんだろう。
テルの視界の外に、ポツンと一つだけ席を作って、そこに一生座らなくてはならないのかな。
――絶対に、嫌だ。
テルが落ち着いて、少しずつ、声が聞き取れるようになってきた。
照「なんで、脚……わかんないよ……ねえ、誰、誰……?」
淡「忘れちゃったの? 照お姉ちゃん」
ねえ、私の知らない誰か。
一度、譲ってあげたんだからさ。
淡「××××」
今度は、私にその席を譲ってね。
ずっと狂っていたテルも、呼びかけていたスミレも、何も喋らない。
静観していたセーコとタカミ、テルに静かに対応していた医者の方なんて、心臓の音一つ聞こえない。
そんな静かな室内で。
私は、私の体内の音だけをよく聞き取れていた。
また、心が崩れる音がしている。
二回目なのに既に慣れちゃったのは、おかしい話だよね。
でも、心が崩れてくれたおかげなのかな。
身体は自然と軽くなって、セーコの腕から離れた後、自分で姿勢を直すことができていた。
私は、テルの隣にいられればいい。
大星淡じゃなくて、私がいられれば、それでいい。
照「××××?」
テルも同じく姿勢を持ち直して、私の方へと歩み寄ってきた。
スミレが唖然として、こっちを見ているけど、それももう関係ない。
そうやって、もっと近づいてよ。
私を見てよ、テル――
尭深「……やめて、ください」
――なんで、止めるの?
実際テルの腕を掴んで止めたのは、医者の方だった。
スミレだって、衰弱した表情で、テルの手を握っている。
セーコもまた、私の前に腕を伸ばして、手の平をこちらに向けていた。
尭深「いい加減、目を覚ましてよ……!」
タカミが、地面の方を見つめながら、そんな大声をあげた。
大人しいタカミがこれほどの声を出すのなんて、初めて聞いたと思う。
淡「……嫌だよ」
私も同じように、声を張り上げてしまった。
意地ばっかりが先行していたんだろうね。
淡「邪魔しないでよ! ねえ、私を見てよ……」
誠子「淡!」
そんな声を一緒に、セーコの方へと引っ張られてしまう。
誠子「もう、やめようよ……」
それぞれが、それぞれに抑えられて。
「二人とも錯乱していますし、皆さんも落ち着いていない。 今日は一旦、帰ったほうがいい」
最終的に、医者の一言で、この場は強制的にお開きになってしまった。
私はずっと、知らない誰かを演じている。
全然知らない癖に、もうこうしていることも、板についてきてしまった。
こう言うとわかると思うけど、テルはあれからずっと、私が××××であることを疑ってはいない。
テルはもう、誰かの病室に行く事がなくなったらしい。
これは看護師経由で聞いたことだけどね。
突っ込んで聞いてみると、テルのことを考えて、××××が同じ病院にいるのだとわかった。
聞いた後で、テルの来る時間が一時間程度早まっていることに気が付いてしまう。
私の推測は、やはり間違っていなかったみたい。
動けない席と同様に、テルの隣の席は、生涯彼女の定位置に決められているものだった。
私が座っているのは、××××だけの席。
座っている私も、今は、大星淡じゃない。
でも、時々、わからなくなることがある。
私はどうして、心のなかではテル、テル、なんてしつこく呼んでいて。
心の中のテルは、どうして私のことを淡、淡、なんて呼ぶんだろう、と。
最初の方はスミレがよくついてきたけれど、その回数は次第に減っていった。
今では、セーコとタカミが、大体同じくらいの回数。
テルがいつ狂っても止められるように。
それが、付き添いがついた原点らしい。
でも私からみたら、それは本末転倒にしか見えなかった。
セーコもタカミも、共通して、私とテルの会話から、表情から目を逸らしているのだから。
スミレが来なくなってしまった理由も、きっとそれに関連しているはず。
そっか、私は、スミレの目の前で飛び降りちゃったから。
下手したら、スミレもテルか、私のようになっちゃったかもしれないんだ――。
淡「入っていいよ」
ノックの音に反応して、そんな返事をした。
気付けば、テルの来る時間帯。
誰かは、私と似たような調子の人間らしい。
こうやって不自然なく応答できるのだけは、唯一、幸いなことだった。
付き添いは、今日はタカミみたい。
テルはいっつも、やや駆け足で私の方へ向かってきてくれる。
淡の方には、そこまで急いでくれなかったのにね。
そうして、学校のことを中心に、とにかく色々なことを話すのがいつものこと。
たまにテルが知らない本のことを話して、あんまり読書家じゃなかった私は、これに結構苦労する。
とはいえやっぱり、テルの話を聞いているのは楽しい。
見ることができる表情だって、格段に増えている。
私の状態の話なんて、一度もしたことがない。
だってそうでしょ?
私はもう、一生脚が動かない席なんだから。
でも、それはあくまで仮初で、いつかは元通りになってしまう。
その一瞬の間、私はテルの隣にいられなくなるのだろうと考えてしまうのが、最近は苦しくて仕方がないよ。
大星淡の席では、テルの柔らかい表情も、優しい声も、全て見ることも聞くこともできない。
そんなことを、考えていたせいだろうか。
あの時聞いた、タカミの言葉が、奥底から聞こえる気がしていた。
尭深「……やめようよ、こんなこと!」
――また今日も、聞こえてしまった。
聞き取ったのは、私の耳じゃなくて、奥の方の何か。
まだ、タカミは一言しか喋ってないのに、それが騒音のように身体に響く。
そのせいか、少しずつ、身体が震えているのを自覚した。
違う、そうじゃない。
私はきっと、こんなことをしていてはいけないと、もうとっくに気が付いてる。
気が付いていない振りをしていただけ。
でも、今身体を制御しているのは私だから。
強引に抑えることは、そこまで難しいことでもなかった。
内側、だけは。
尭深「弘世先輩だって、不眠症になっちゃったんだよ……! ねえ」
知らない、知らない――その先まで、言わないで。
尭深「淡ちゃん!」
照「……え」
私の名前を、呼び起こさないで。
ずっと突き通し続けた嘘は、内側の、簡単なイレギュラーで崩れ去ってしまった。
私がちょうど、最初に崩れ落ちたのと同じように。
テルの意識が、私に集中する。
遠くを見ていて、今やっと、近くを見つめてくれたテルの瞳。
一回遠くを見つめてから、また、近くに戻っていった。
その瞳は、紛れもなく"大星淡"を見つめていた。
なのに私の中では、嬉しさよりも、喪失感の方が優っているのだから。
私はどれだけ、この席に慣れてしまっていたのかな。
照「淡……?」
違う、淡じゃない。
違う、淡じゃなくていい。
だからこそテルは、私を見てくれていたんでしょ?
誠子「お待たせ。 納得してもらうのに、ちょっと時間がかかった」
尭深「……ありがとう」
扉の奥から、セーコともう一人――すぐに、理解した。
鏡写しのような、ドッペルゲンガーのような人間が、車椅子に乗っている。
私の体温は、めまぐるしく変化していた。
そっか。
最初は、狂ってしまったテルのことを意識していただけなのに。
いつの間にか、私の方が狂うようになってしまっていたんだ。
てっきり、テルはまた錯乱してしまうと思っていたのに。
私の予想よりも遥かに平静で、狂う兆しなんか、最初にちょこっと見えた切り。
タカミはこうして、私達を元に戻そうとしてくれている。
セーコもまた、タカミに協力してくれて、私の身を案じてもくれた。
スミレは自分が精神病になってしまったことを、どうあれ自覚している。
残りの、三人。
隣の席を私に奪われた彼女は、それでも平常心を保っている様子だった。
「あの……はじめまして」
照「……××××、なんだね」
テルはやっと、現状を受け入れ始めていた。
この明確な現実を突きつけられて。
それもそっか。
テルは本来、冷静な人間だったのだから。
「うん、照おねえちゃん」
――ああ、ダメだよ。
その呼び方が、破片の集まりだった私よりも、ずっと似合っているんだもの。
現実を受け入れていないのは、もう、私だけ。
狂った人間としてのテルも、私の奪った席の隣にいたテルも、私の側にはいなくなっていた。
最善だと思って取った行動、その全ては、いたずらに傷を生むだけに終わってしまったみたい。
それは奪われるといったような人為的なものじゃない。
もっと自然現象的な、予めそうなっていることが、決まっているような。
彼女の事故も、私の事故も、全部決まっていたことだと、思ったことがある。
だから今回も、きっとそう。
関係を修復することも、介入もできない。
テル、離れないでよ――
照「……淡、ごめんなさい」
淡「……え?」
照「ごめんなさい……ごめん、ごめんね……」
――なんでテルは、私に抱きついてるんだろう。
なんで、私を優先するの?
あの子をほっといていいの?
最愛の彼女と、偽物の玩具でしかない私との区別がついたんだよ?
だったら、彼女の方に行けばいいのに。
今日私に話してくれたこと、表情、全部あの子にあげればいいのに。
「……良かった」
唯一自由な顔が観測した、彼女の言葉と表情。
それを見て、私は彼女にはなれないんだと悟ってしまった。
そりゃ、バレちゃうよね。
私はテルが離れていく様を見た上で、あんな笑顔を作ることなんてできないから。
そしてその笑顔は、私の隣に、確かにテルがいるのだと教えてくれた。
予め用意されていた、ただ一つの席。
テルがその隣にもう一個席を用意して、私を座らせてくれた理由。
どうしても、わからない。
昔の私なら、きっとわかっていたのかな?
それとも、無根拠な調子にでも乗ったりしていたかも。
運動していない私が抱きしめられるには、少し強すぎる力。
でも、その痛さが、今はとても心地良かった。
それもそのはず。
彼女はただ、普通に過ごして、唐突にこのことを知っただけだもの。
狂っていたのは、テルと私だけ。
お互いが、訳の分からない幻影を追っていただけ。
淡「テルのことは、どう思ってるの?」
「……わかんないや。 優しいお姉ちゃん、かな」
淡「そっか、私は、テルのことが好きだよ」
「……そっか」
二人きりになって、こんな簡単な会話をした。
答え方まで同じなのは、なんだかくすぐったかったけど、声には出さなかった。
この会話は、自らに釘を刺すためのものでもあった。
もし彼女がテルのことを好きだと答えたら、私はきっと、それで諦めていたと思う。
私には、その権利がないから。
「頑張ってね」
それでも彼女は、またあの時の笑顔で、私に権利を与えてくれた。
テルは席を作ってくれて、彼女はそこへのチケットを譲渡してくれている。
今まで溺れていた私は、この時ようやく助かることができたんだと思う。
でもさ。
震災は何かを巻き込まずして解決しない、それと一緒だよね。
私とテルは今でこそ元に戻れたけど、代わりに他のものを喪失しなくてはならなくなった。
スミレは睡眠欲を失ってしまったし、後に聞いた話では、しばらく重度の鬱病に陥っていたらしい。
これは100%、私が原因のことだった。
一時的な睡眠障害は慢性的になって、今でもやはり、睡眠薬は必要らしい。
正気に戻った後、馴れ馴れしい口調じゃなくて、ちゃんとした敬語でスミレに謝罪した。
土下座をしようとした時に、肩を掴まれて止められてしまったのは鮮明に記憶している。
居た堪れなくなって、罪悪感と嫌悪感が混じり合って、スミレもやっぱり何か思ったんだろうね。
それから三十分くらい、ずっと二人でわーわー泣いていたんだもん。
テルもやっぱり、精神的な問題。
テルの場合は、昔から長く根付いていて、一体化しかけていた傷を今更修復しようという話になる。
それに、杭が刺さりっぱなしの傷があれば、それを引っこ抜く必要もあった。
数年単位の長期的な精神治療になるし、大きな杭が抜けた影響で、ちょっとしたパニック障害も発症していた。
もちろんそれだけじゃないけど、でもテルの名誉のために、一つ挙げるだけに留めておく。
今は、私が常に隣にいて、テルの状態を整えるようにしている。
それが私に科せられた責任だし、もしそうでなくとも、きっと同じ行動をとっているんじゃないかな。
最後に、私。
私のは、身体的な喪失。
端的に言うとさ。
長期の歩行と、走ることが、できなくなった。
といっても、時折車椅子も使うからかな。
医者が言うには、20分も通して歩いちゃいけないらしい。
今はもう、一日3時間も歩けば良い方だった。
一生治らない傷。
後一回似たような事故を起こしたら、間違いなく下半身不随になってしまうもの。
少しタイミングがズレていたら、私はきっと、喜んでそうしただろうと思う。
今では、その思考が恐ろしいものだとわかるだけ、正常になったんだろうね。
こうして歩ける許可を出された頃には、スミレもテルも、卒業する間近だった。
だからテルと付きっきりといっても、その期間は大して長くない。
後数週間、なんて、数えられるくらいの日数すら残っていない。
そういう意味ではさ。
貴重なテルとの時間も、全て病室で、狂いながら過ごしていたわけだから。
半年間、まるごと喪失していたと言ってもいいのかな。
彼女からもらったチケットは、まだ行使していない。
このチケットは、いずれ返すつもりでいる。
もちろん嬉しいことは嬉しいんだけど、私は何度も卑怯なことをした分、今度は自力で隣に居座りたい。
でも、その種類がいくらでもあることに、最近になって気が付いた。
例えばスミレとか、友人として、テルの隣に座っているよね。
私も、そうだな、テルの隣に座れるくらい、強くなりたい。
肩がくっつくくらいの席に座るのは、それからでも遅くないと思う。
いくらか、経過した頃の話。
ちょうどキリもいいから、退院祝いと卒業祝いを一度にやることになってしまった。
日時が退院祝いとも卒業祝いともつかない半端な日だから、なってしまった、だ。
また厄介なことに、脚が妙に軋んで仕方ない日でもあった。
こんな日は、ベットの上で寝っ転がっていろ、なんて医者に言われてるけど、そんなわけにもいかない。
もちろん、あの子も呼んでるよ。
準備も整って、さあ席に座ろうとなった時。
テルの隣にスミレが座ろうとして、なんだか面白くなった。
やっぱり二人は友人なんだと、さっきの考えがまた頭に浮かんできた。
でも、そこはダメかな。
だから私は生意気にも、先輩であるスミレに注意してやる。
淡「そこ、だめ!」
菫「なんでだ?」
淡「今は、この子の席!」
そうして、私は車椅子の、私にとても似た子を指差した。
テルの隣に座るべき、私じゃない、その子に。
チケットは、もう返したよ。
"今は"なんて、自力で座る予約も付け加えながら、ね。
おわれ
面白かった
救いがあるENDで個人的に安心した
Entry ⇒ 2012.10.31 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
P「気づいたらやよいと同棲してた」
P「あぁ、ありがとう」
やよい「はい、召し上がれ!」
P「おぉ、今日もまたうまそうだな」
やよい「えへへ、頑張って作っちゃいました!」
P「助かるよ、本当にやよいはいい子、というかいい嫁さんになるな」
やよい「そ、そんな! ま、まだそういうのは……は、早いっていうか……」
P「……」
P(でももうこれ、新婚みたいになってるんだが)
P(そもそもどうしてこうなったんだっけか……)
P「おぉ、やよいおはよう……とと」
やよい「だ、大丈夫ですかプロデューサー!?」
P「いや、ちょっとしためまいだ……」
春香「プロデューサーさん、どうかしたんですか?」
P「なんだろうな、疲れかもしれん」
美希「ハニー大丈夫? ミキのところで休んでもいいよ?」
P「いや、もうすぐ出なきゃならんし……ぐっ……」
やよい「わわっ! とりあえず座ってください!」
P「すまんな……」
春香「ちゃんとご飯とか、食べてるんですか?」
P「最近は抜くことの方がおおいかもしれん」
やよい「そんな! ダメですよ、ご飯はちゃんと食べないと!」
P「そうは思うんだが、忙しいとどうしても、食べてもカップめんって感じでな」
美希「それならミキがハニーにご飯を作ってあげるの!」
美希「ハニーさえよかったら、ハニーの家に行って作ってあげてもいいよっ!」
春香「なっ! だ、だったら私も!」
P「ど、どういうことだ……」
美希「ちょっと春香! ミキが先に言ったんだよっ!」
春香「私の方が料理は得意だもん!」
P「だったら両方交互にってわけにはいかないのか?」
美希「……それでもいいけど」
美希(ハニーとの時間が、半分になっちゃうの……)
美希(それにきっと、春香のことだからごめん曜日間違えちゃったー! とか言ってくるに決まってるの!)
春香「まあ、確かに……」
春香(でも、プロデューサーさんにアピールする絶好のチャンスが……)
春香(ミキのことだからプロデューサーさんの家に上がったら、何するかわからないし……)
美希「やっぱりそれはなんていうか……」
春香「そ、そう。なんかごっちゃになっちゃいそうで……プロデューサーさんはどっちがいいですか!」
P「えぇ……でも悪いだろ?」
春香「それくらいなんてことないです!」
美希「ミキも! ハニーのためならなんてことないの!」
P「でもなぁ……お前らは特に忙しいし、なかなかな。確かにありがたい話だから暇なやつに来てもらえるなら願ったりかなったりなんだが」
律子「何をやってるんですかまた」
P「あぁ、律子おはよう。いや、春香たちがありがたいことに飯を食わせてくれるって話でな」
律子「はぁ……アイドルに食べさせてもらうなんて、キャバクラにでも通ってるんですか?」
美希「えっ!? は、ハニーそれ本当!?」
P「そんなわけないだろう……違うんだ、実は……」
律子「なるほど、そういうことだったんですね」
P「まあ、誰かに来てもらっても申し訳ないことに変わりはないんだが」
律子「そうですね、でもまあ嬉しいじゃないですか」
P「そうだな、それじゃせっかくだし誰かに頼むとしようか」
やよい「は、はいっ!」
やよい「私も、プロデューサーのために何かできないかって思ったんですけど、お料理とか家のことなら!」
春香「なっ! ……でも、確かに」
美希「うん、やよいなら……安心なの」
P「あ、えっと……いいのか?」
やよい「はい! その、家のことをやってからになっちゃいますけど!」
P「もうそれは全然、ついでで構わないからな。それに、面倒くさくなったらいつでもやめていい」
やよい「はい!」
P「ってことなんだが、春香と美希もそれでいいのか?」
春香「は、はい」
美希「わかったの」
春香(やよい相手に家事はリスクが高すぎる……もうすこし別の案を)
美希(違うところで頑張るしかないの! 待っててねハニー!)
律子「……まあくれぐれも変なことにはならないようにお願いしますよ」
やよい「こんばんは! えっと……」
P「あぁ、いいぞ。散らかってるけど勘弁してくれ」
やよい「あ、は、はい! 失礼します!」
P「あんまりかしこまらなくていいぞ? くつろげって言っても難しいかもしれんが」
やよい「うわぁ……なんか、すごいですね」
P「そうかそうか」
やよい「あ、えっと一応作ってきました!」
P「おっ! ありがたいね。どれどれ……」
やよい「その、もやしですけど……」
P「うんうん、全然ありがたいよ。というか後で考えたらきっと野菜不足だったみたいだ」
やよい「そうなんですか~、でも確かに栄養のバランスは大切ですから!」
P「そうだな、じゃ早速いただきます」
やよい「……ど、どうですか?」
P「うん! 流石やよいだな。おいしいよ」
P「こんなものが食える奥さんは幸せだろうなぁ」
やよい「えっ!? お、奥さんですか!?」
P「あはは、まあまだまだ先の話だろうけどな」
やよい「あ、う……」
P「ふぅ、ごちそうさまでした。いや、久しぶりに飯という飯を食べたな」
やよい「もう、ちゃんと食べないとだめですよ?」
P「そうだな、これを機にできるだけちゃんと食べるようにするよ」
やよい「……その、また持ってきますから」
P「本当か? いいんだぞ無理しなくても」
やよい「無理なんてしてません! その、おいしいって言ってもらえたらすっごく嬉しいんで!」
P「そうか、うん。それならまた、お願いするよ」
やよい「は、はい!」
P「それじゃ、今日はもう遅いし。送るよ」
P「いやいや俺のセリフだ。ありがとうな」
やよい「はい! それじゃ! ……プロデューサー?」
P「ん?」
やよい「ちゃんと元気になってくださいね!」
P「……あぁ」
「はい、たーっち! いぇい!!」
P「今日も来てくれたのか」
やよい「はい!」
P「あ、そうだ。一応だな、お礼にとこれ」
やよい「わぁ! お肉と野菜と……こ、こんなにいいんですか!」
P「あぁ、もちろん。弟たちもさみしいだろうに、俺がとっちゃって。やよいも食材もな」
やよい「そ、そんなこと! でも、これ喜ぶと思います! あ、そうだ! よかったらこれで何か作りましょうか?」
P「え? いやいや悪いよ、全部持って帰ってくれていいんだぞ?」
P「……そういうことなら、ご馳走になるか」
やよい「はい、できました!」
P「流石手際がいいな、うわぁうまそう……」
やよい「どうぞ!」
P「それじゃ、いただきます。……うん、やっぱりうまいな」
やよい「ありがとうございます!」
P「ホント、これは毎日来てほしいって感じだ」
やよい「え、そ、そんな……」
P「いやいや、本気にしなくていいからな? それくらいおいしいっていうのもあるし、やっぱりいいもんだよな」
やよい「え?」
P「家で料理を作ってもらう、っていうのがさ。俺も年的に結婚とか考えた方がいいんだろうけどなぁ」
やよい「……プロデューサー、結婚しちゃうんですか?」
P「あはは、言ってるだけさ。俺みたいな仕事人間誰も引き取ってくれないさ。それこそ、やよいくらいのもんで」
やよい「……」
やよい「あ、はい……」
P「さてと、そろそろだな」
やよい「そ、そのプロデューサー!」
P「ん?」
やよい「次のお休み、朝から来てもいいですか?」
P「え? どうしてだ?」
やよい「その、なんていうか、もっとプロデューサーのために頑張りたいって思ったんです!」
P「それはありがたいけど……家はいいのか?」
やよい「長介もかすみも、最近は自分で頑張ってくれてるんです。ずっとあのままじゃかわいそうだけど、きっと大丈夫です!」
P「……そうか」
やよい「プロデューサーが嫌なら、私は……」
P「いやいや、嫌なわけはないんだ。それじゃ、お願いできるか?」
やよい「は、はい!!」
P「すまん、今の今まで寝てたんだ……」
やよい「いえ、いいんです! ついでにやっちゃいましょう!」
P「……ホント、すまないな。何から何まで」
やよい「いえ! 慣れてますから!」
P「俺の部屋が、部屋じゃないみたいだ……洗濯から全部やってもらって……」
やよい「喜んでもらえたら嬉しいです!」
P「そりゃもう、やよい様様って感じだよ。ありがとな」
やよい「えへへ……あ、お昼作りますね!」
P「あぁ。……なんか、すごい贅沢なオフだな」
やよい「できましたよー!」
P「へぇ、そういうことか」
やよい「はい! だから私も一緒になって……」
P「なるほどな。……あ、もうこんな時間か」
P「だな。どうする? 帰るなら送るけど」
やよい「大丈夫です! その、夕飯まで食べてくるって言っておいたので!」
P「……大丈夫なのか?」
やよい「長介も張り切っちゃって、留守は任せろ!なんて。だからいいんです!」
P「まあ、そういうことならいいんだけどな」
やよい「それじゃ、作っちゃいますね! あ、お風呂入れておきましたからどうぞ!」
P「なんといつの間に……」
やよい「あ、勝手にすみません!」
P「いやいや、もうこちらこそすみませんホント。それじゃ、甘えてしまおうか」
P「ふぅ……極楽極楽、って俺はいくつだ」
P「それにしても、至れり尽くせりといいますか。こんなの、どこのリゾートホテルでもないサービスだな」
P「さてと、上がるか……」
P「いや、もうなんて言ったらいいか。一生分の運を使ってしまったんじゃないかって感じだな」
やよい「そ、そんな!」
P「それじゃ、いただきます。……」
やよい「……どうですか?」
P「……これ以上ないくらいおいしいよ、やよい」
やよい「……えへへ、よかったです」
P「なんていうか、俺は幸せものだよ。一日中プロデュースしてるアイドルに世話してもらって」
やよい「私も嬉しいです! プロデューサーに喜んでもらえて、それに元気になったみたいで!」
P「もうそれはそれは、今ならダッシュで富士山を駆け上れる気がするさ」
やよい「あはは! あ、そろそろ……」
P「あぁ、そうだな。よし、送るよ」
やよい「……プロデューサー」
P「ん? どうした、やよい?」
やよい「……泊めてもらえませんか?」
やよい「その、せっかくお風呂に入ったのに……」
P「あ……いや、それくらいいいって。男だからそういうの気にしないっていうか」
やよい「だ、ダメですよ! せっかく良くなったのに、私のせいで……」
P「……だからって泊まるって……それに家はどうするんだ」
やよい「多分もう寝ちゃってると思います……その、長介には言っておいたので。一日中、プロデューサーの家に行くって」
P「でもなぁ……」
やよい「私一人で帰るのはちょっと怖い、ですし……」
P「それはもちろんダメだ、が……」
やよい「……プロデューサー」
P「……今日だけ、ならまあ。それ以降はあいつらも心配するだろうし」
やよい「ホントですか?」
P「あぁ、いいぞ」
やよい「ありがとうございます!」
P「……」
P「あぁ、そうか。着替えも何もないのか……」
やよい「……はい」
P「同じの履くのもあれだけど……俺のを貸すっていうのもな……ちょっと買ってくるか」
やよい「だ、大丈夫です!」
P「あ、そうか……やよいが心配してくれた意味がなくなるな」
やよい「……その、一日くらいなら大丈夫ですから!」
P「……でも、気持ち悪いだろ?」
やよい「……」
P「でも、俺のも同じようなもんだしな」
やよい「その……プロデューサーのでも、大丈夫です……」
P「……マジ?」
やよい「……はい!」
P「……わかった」
P「とはいいつつ奥底に眠っていた新品のを。でも……やっぱりでかすぎないか」
P「こんなのしかないから、好きにしてくれ。そのまま持って帰って捨てるなりしてくれていいから」
やよい「で、でも……」
P「いいんだ、安物だし」
やよい「……それじゃ、お風呂お借りします」
P「あぁ」
P「……何緊張してるの俺」
P「流石にこの年で独身には辛い状況、ってわけですかそうですか」
P「……情けない」
やよい「ありがとうございました~」
P「それはよかった……っと、ドライヤーがあったかな……おぉ、危ない危ない」
やよい「……その、プロデューサー」
P「ん? なんだ?」
やよい「やっぱり、迷惑でしたか……?」
やよい「……でも」
P「まあ、俺が心配してるのはこんなところに泊まってることが知れたらうんぬんと、やよいの兄弟のこと」
P「やよいが俺のことを気遣う必要はないから、それは安心していいぞ」
やよい「……はい、ありがとうございます」
P「さてと」
やよい「あ、あのやっぱり……」
P「いいっていいって、俺はそっちで」
やよい「大丈夫です! だから、こっちで……」
P「……でも」
やよい「……」
P「……わかった」
P「それじゃ、消すぞ」
やよい「は、はい」
やよい「……プロデューサー?」
P「……」
やよい「……私、嬉しかったんです」
やよい「兄弟のために何かするのは当たり前だったけど、他の人にすることってあんまりなくて」
やよい「おいしいって言ってくれたり、褒めてくれるのがすっごく嬉しくて」
やよい「……もっともっとプロデューサーのためにできること、したいなって」
やよい「だから、わがまま言っちゃいました……ごめんなさい」
やよい「……それじゃ、おやすみなさい」
P「……やよい」
P「あぁ、おはよう。こういう時は遅れて起きて朝食できてますよ! ってパターンなんだろうけど」
やよい「え?」
P「いや、なんでもない。あれだったら別に朝はいいぞ? というかこのまま事務所の行くのはまずいよな」
やよい「ダメなんですか?」
P「まあそりゃ、不自然だろ……律子なんかにばれたら……って他のメンバーでもダメか」
やよい「?」
P「それはともかく、朝は俺が作ろう!」
やよい「え、ホントですか!」
P「あぁ、料理ができないわけじゃないからな! 楽しみにしててくれ」
やよい「おいしかったです! プロデューサー、お料理上手なんですね!」
P「あはは、お世辞でも嬉しいな。やよいさんには負けますけどね」
やよい「そ、そんなことないです!」
P「さて、そろそろ……じゃあやよい、先に行ってくれるか?」
やよい「あ、わかりました! それじゃまた事務所で!」
P「……夢のような一日だったな」
P「……でも、この静かな部屋もまた恋しい。なんてそんなわけないですけど」
P「独り言言ってる場合じゃないな、そろそろ行かないと」
P「おはようございます……あれ? やよいは?」
律子「あ、おはようございます。やよいなら今日お仕事休みになったので、帰りましたよ」
P「あ、そうかそうか。それはちょうどよかった」
律子「え、なんて?」
P「あ、いやこっちの話だ」
律子「? ……まさか、やよいと何かしてるんじゃないですよね?」
P「バカな事言わないでくれ、シャレにならん」
律子「シャレにならないから釘を刺してるんです。ま、そこまでだとは思ってませんけど」
P「信用ないなぁ……ま、心に刻んでおきますよ、っとそれじゃ俺も仕事にかかりますか」
P「さて、仕事も終わったことだし帰りますかね」
P「おぉやよい。……今日は休みになったんじゃなかったか?」
やよい「あ、はい。だから家に行って、言ってきたんです」
P「何を?」
やよい「……その」
P「ん?」
やよい「これからはプロデューサーのおうちで暮らすって!」
P「……え?」
P「ちょっと待とう、やよい。それは一体どういう」
やよい「……プロデューサー、昨日起きてたんですよね」
P「……あ」
やよい「聞かれちゃってたなら、仕方ないです。でも、私本当にうれしかったんです」
やよい「だから、もっともっとプロデューサーと……」
やよい「ダメ、ですか?」
やよい「全部、やりますから! お願いします!」
P「……兄弟はどうするんだ」
やよい「……長介が、頑張ってくれるって」
P「……なんでまた」
やよい「……実は、喧嘩してるんです。反抗期、みたいで」
P「あぁ……」
やよい「だから、私が帰ってもしゃべらないし……かすみとかには何もしないんですけど」
P「まあ、年頃だもんなぁ」
やよい「だからこの前も……ごめんなさい」
P「あぁ、それも理由の一つだったわけか。……でもなぁ」
やよい「長介の機嫌が直るまででもいいです! ……長介はご飯があれば自分で作れますし、みんなはきっと大丈夫です」
やよい「もしものことがあったら、ってかすみにもプロデューサーの家、教えてありますから」
P「……本当に、長介が治ったら家に帰るんだな?」
やよい「はい!」
やよい「ありがとうございます!!」
P「というところから同棲生活が始まったわけだが」
P「なんだかんだで2週間目」
P「人間慣れてしまうと、怖いもので。……もしかしたらやよいが長介のことを忘れてるんじゃないかと思うほど」
P「それも、やよいはどんどんリアルな嫁さんポジションが似合う存在になりつつあるし」
P「……この先どうなるのやら」
P(すっかりうちのキッチンはやよいの縄張りというか、後片付けもさまになってるよな……)
やよい「……どうかしましたか?」
P「えっ? あ、い、いや。ちょっと考え事をな……」
やよい「考え事、ですか?」
P「あぁ」
P(俺が思ってたよりずっとしっかりしてて、それでいて幼さの残る可愛らしさ)
P「……なんでもない」
やよい「? 変なプロデューサー」
P(それでいて毎日誠心誠意込めて、ここまでやってもらったらさ。例えロリコンじゃなくても……)
P「……好きになるだろ」
やよい「え? 何ですか?」
P「あ、いや、独り言!」
P(やよいがどう思ってるか確証もない。けれど、善意でここまでやってくれてる、とも思いづらい……)
P(こういうときに経験不足が仇になるか。……なんて自虐してる場合じゃない。それより今気掛かりなのは……)
やよい「本当、今日のプロデューサー変ですよ?」
P「あ、うん。……ほら、一緒に暮らして結構経っただろ?」
やよい「……そうですね。すごく迷惑かけちゃって」
P「いやいや、そういう意味じゃない。これだけ長くここにいたってことは、やよいの家も」
やよい「……」
P「やよいはわがままだけでこんなことすると思ってないから俺もこうして一緒に暮らしてた」
P「でも、そろそろちゃんと話をしておいた方がいいと思ってな」
やよい「……たまに、帰ったりはしてました」
P「そうだったのか。それを聞いて少し安心したよ」
P(基本事務所に残って一緒に帰っていたが、やはり気になってたのか仕事の合間を見つけて様子を見に行ってたんだろう)
やよい「……はい」
P「……そろそろ話して欲しい。きっと、ただの喧嘩じゃないんだろ?」
やよい「……すごい私の勝手な話になっちゃうんです」
P「そうか」
やよい「それでも聞いてくれますか?」
P「あぁ、もちろん」
やよい「……それじゃ、これ洗っちゃいますね。プロデューサー、お風呂入って来て下さい」
P「わかった」
やよい「今日はもやし祭りだよー!」
かすみ「やったー!」
長介「……また?」
やよい「またって長介! 贅沢言うなら食べなくていいよ!」
長介「なんだよ俺ばっかり」
やよい「だってみんなは文句言わずに食べてるでしょ」
長介「自分は好きな事してるくせにさ……」
やよい「なっ!」
かすみ「あっ、それはちょっと……」
やよい「確かにそうだけど、違うでしょ! みんなにもっとおいしいものを食べさせてあげようって……」
長介「いつまでたっても食べられないじゃんか! それがこんなのだったらいらないよ!!」
やよい「あっ! 長介!」
やよい「……最近、ピリピリしてる気がする。少しくらい、おいしいもの食べさせてあげたいけど……」
長介「……」
やよい「確かに、今はまだ余裕がないけど、きっと! 少しずつお金も入るから!」
長介「……うん」
やよい「……それじゃ、食べよ?」
長介「その、さ。俺もやよい姉ちゃんが頑張ってるのは知ってる」
やよい「……うん」
長介「なのに、なんで? それって仕事がないってことだろ?」
やよい「それは……仕方ないんだよ! みんな一生懸命頑張って……」
長介「こんなに頑張ってるのに……きっとそのプロデューサーが悪いんじゃ……」
やよい「えっ……」
長介「もっとやよい姉ちゃんのために頑張ってくれるようなプロデューサーに変えてもら」
パシン
長介「っ……」
やよい「それ以上、プロデューサーのことを悪く言わないでっ!!!」
やよい「あっ……」
やよい(どうしよう……流石に叩いちゃダメだったよね……)
やよい(でも、プロデューサーは悪くない……私が、私がしっかりしてないから……ぐすっ)
やよい(ううん、これから頑張ればいいの! よし! ……でも、あの様子だと家に戻るのは)
やよい(プロデューサーは、おいしいって言ってくれるのに……)
やよい(長介のバカ……)
やよい「わぁ! お肉と野菜と……こ、こんなにいいんですか!」
やよい(プロデューサー、ありがとうございます! これを持って帰れば、きっと長介も……)
やよい「ただいま~」
かすみ「あ、おかえり!」
やよい「……長介は?」
やよい「……これ! お肉と野菜! 今日は贅沢にお肉入りのもやし祭りだよ!」
かすみ「え! ホント! ちょうすけー!!!」
長介「……」
「「「いただきまーす!!」」」
かすみ「おいしーい!!」
やよい「よかった~ ……長介、食べないの?」
長介「……この肉、どうしたんだよ」
やよい「え? そ、そのお給料日で!」
長介「こんなに……もらえるはずない。それに今日はいつもより遅かった」
やよい「……プロデューサーから分けてもらったの」
長介「……」
やよい「ね、プロデューサーは私のためにこんなに頑張ってくれてるの。だからもう少し」
長介「こんな、仕事がとれないからって肉で……」
やよい「ちょうすけ――」
やよい「……違う」
長介「俺のこと殴ってまでかばうんだ……そうだ、プロデューサーのことが好きなんだろ」
やよい「……やめて」
長介「そうやって楽しんでるのは姉ちゃんだけじゃないか。ねぇ!」
かすみ「ちょ、長介ダメだよ……お姉ちゃんのおかげで食べられてるんだよ?」
長介「……その気になれば俺だってこれくらい」
やよい「……だったら長介がやってよ」
長介「え?」
やよい「もう勝手にして!!!!」
バタン
長介「……」
かすみ「あ、お姉ちゃん……」
――
P「なるほど……」
やよい「私が、悪かったんです……長介を叩いちゃったから……」
P「……」
やよい「ごめんなさい、せっかくプロデューサーからもらったのに……」
やよい「私のわがままで迷惑かけちゃって……う、うぅ……」
P「……やよいだけのせいじゃないさ。でも、そうだな、よし」
やよい「プロデューサー……?」
P「明日、やよいの家に行こう」
やよい「え?」
P「俺もついていく、ちゃんと話をしよう」
やよい「……でも」
P「こういうのは誰かが入った方が話が進みやすいんだ。それに、俺も相当お世話になったからこれくらいはな」
やよい「……すみません、プロデューサー」
P「いいんだ、でもよく話してくれたな」
やよい「はい……」
P「大丈夫」
やよい「……はい!」
やよい「ただいま……」
かすみ「お姉ちゃん……おかえり」
やよい「かすみ、ごめんね?」
かすみ「ううん、大丈夫」
やよい「……今日は、お客さん連れてきたの」
P「こんばんは。やよいのプロデューサーだ、かすみちゃんかな? よろしくね」
かすみ「あ……お肉の人」
やよい「こ、こらかすみ!」
P「あはは、いいじゃないか。肉の人で十分。これは思ったよりなんとかなるかもな」
やよい「あ、あはは……すみません」
P「どうも、肉の人ことプロデューサーです」
長介「……ふん」
やよい「長介……」
P「それじゃ、長介君と呼んだ方がいいかな」
長介「……別に」
P「……それじゃ、やよい」
やよい「あ、はい。……その、長介」
長介「……なんだよ」
やよい「ごめんなさい。まず、叩いちゃったこと」
長介「……」
やよい「それだけじゃなくて私も、やっぱり悪いところあったな……って」
やよい「だから、もう仲直りしよう?」
長介「……」
やよい「長介……?」
P「ん? 俺?」
長介「……ずっと姉ちゃんと一緒だったんだろ?」
P「……まあな」
長介「……本当は殴りたいくらいだけど、許してやる」
P「……」
やよい「ちょ、長介!?」
長介「姉ちゃんは頑張ってるのに……」
P「……長介、君」
長介「……」
P「むしろ、俺を殴ってくれてもいい」
長介「え?」
やよい「プロデューサー?」
P「年頃だもんな、いろんな葛藤があるだろう。心のもやもやが」
P「なんていうか、言葉にするのが難しいんだよな。恥ずかしいっていうか」
P「俺はやよいのプロデューサーとして、できることをやってるつもりだし、やよいもそれに応えてくれてる」
P「長介君は俺といることでやよいがダメになってる。そう思ってるんだろうけど、それは違う」
P「ちゃんとしたタイミングさえ合えばやよいはきっと光るって俺も信じてる。それは長介君もそうだろ?」
長介「……」
P「それにさ、俺がたとえやよいが売れなくても見捨てる気なんてない」
P「あ、でもそれはそれで困るのか。見た感じ、お姉ちゃんが大好きって感じだもんな」
長介「なっ!」
P「よし、やっとしゃべってくれたな」
長介「……」
P「でも、ちゃんと言葉にしないと伝わらないぞ? 今は何言ってんだこのおっさん、って思うかもしれないけどさ」
P「いつか後悔する。家族ならなおさら、言いたいことを言い合えるけど、その逆言っちゃいけないことを言っても平気だったり」
P「そんなまま生きていくの、辛いだろう? だから、何かしたらちゃんと言わないとな。長介君だって、やよいのこと応援してるんだろう?」
長介「俺は……・」
やよい「長介……」
やよい「何?」
長介「ごめん、俺……ひどいこといって……」
やよい「……ううん、私こそ」
長介「でも、俺応援してるから。……だから、絶対」
やよい「……うん!」
長介「それと……プロデューサー、さん」
P「ん?」
長介「やよい姉ちゃんのこと、よろしくお願いします」
P「……あぁ、任せておけ!」
やよい「えへへ、これで元に戻ったかな……」
かすみ「よかったー! これでお姉ちゃん戻ってくるの?」
やよい「あ……そ、そう、だね」
P「……」
長介「……ちょっと、プロデューサーさん」
長介「あの、ごめんなさい。俺、結構ひどいこと言っちゃってて」
P「あぁ、それはいいぞ。言いたいこと言い合ってぶつかりあうのは、男同士の特権だからな」
長介「あ、う、うん」
P「よかったらタメ口でいいぞ? なんならそうだな、兄ちゃんとかでも!」
長介「え……あ、それじゃ、プロデューサーの兄ちゃん」
P「よし」
長介「……それで、ちょっと聞きたいんだけどさ」
P「ん、なんだ?」
長介「兄ちゃん、やよい姉ちゃんのこと好きなの?」
P「……はい?」
長介「いや、だってさ。普通こんな長く泊めたりするの嫌じゃないか?」
P「あー……た、確かにそうだが、ほら! やよいが全部家事とかやってくれ……あ、いや」
長介「……」
P「ち、違うぞ! 断じてそれだけが理由じゃない! な、信じてくれ!」
P「だから、何もしてないって!」
長介「そういえば兄ちゃん、とか呼ばせたし……」
P「それも偶然だって! なんならおっさんでも肉の人でもいいから!」
長介「……わかった」
P「はぁ、焦らせないでくれよ……」
長介「でも、やよい姉ちゃんのこと、大切に思ってるのはわかった」
P「……あぁ、それは本当だ」
長介「……よし」
やよい「できましたー! 今日はまた、お肉入りのもやし祭りですよー!」
P「おっ! 流石はやよいだな!」
やよい「皆いっぱい食べてくださいねー! これからもみんな仲良く頑張りましょー!!」
P「これにて一件落着、だな!」
長介「えと、ちょっといい?」
長介「……その、やよい姉ちゃんはいいの?」
やよい「え?」
長介「今まで兄ちゃん、プロデューサーの家に居たのに」
やよい「あ、それは……」
長介「なんていうか、兄ちゃんも姉ちゃんがいて助かったみたいだし」
P「ば、馬鹿! 余計な事を……」
やよい「……それで?」
長介「やよい姉ちゃんさえよかったら……またあっちで暮らせば?」
やよい「……え?」
P「長介……?」
長介「か、勘違いするなよ! 別に認めたわけじゃないからな! でも、姉ちゃんだってほら」
やよい「え?」
長介「兄ちゃんと暮らせなくなるってわかったらすごくがっかりし「わわわわわー!!」
P「え?」
長介「それじゃあ、いいの?」
やよい「それは……う、うん」
P「……」
長介「俺はその、いろいろ教えてもらった方が、仕事も増えるかなって思っただけで。だったら一緒に居た方がさ」
長介「嫌なら、別に。でも、うちのことは俺がやるから心配しなくていいぞ」
やよい「長介……」
長介「そのかわり! 今度はちゃんと食べるから、肉! 持ってこいよ!」
P「……あぁ、腹いっぱい食わせてやるさ」
やよい「本当にいいの、長介? 浩二の世話とか、大丈夫?」
長介「俺だっていつまでもガキじゃないんだから。姉ちゃんがいない2週間誰が面倒みてたと思ってるんだよ」
かすみ「え、それは私が「と、とにかく!」
長介「そっちで話合って決めればいいだろ」
やよい「……」
P「うむ……」
P「……」
やよい「……」
P「その、よかったな。仲直りできて」
やよい「はい、ありがとうございます……プロデューサーのおかげで」
P「いやいや、やっぱりやよいの頑張りあってこそだ」
やよい「い、いえ……」
P「……」
やよい「ぷ、プロデューサーは!」
P「ん?」
やよい「私と、暮らしてもいいんですか……?」
P「……」
P「……問題ないけど、問題があるっていうか」
やよい「問題、ですか?」
P「俺は構わないんだ。でも、やっぱりそれはアイドルとプロデューサーとしてどうなのか、っていう……」
P「……ごめんな、うまくいえなくて」
やよい「それじゃ、プロデューサーは私と暮らしたい、ですか?」
P「やよい……?」
やよい「答えてください……」
P「……」
P(やよいも、こんな目をするんだなと改めて気づかされた)
P(まっすぐで、いつものかわいらしさとは裏腹に真剣な。そんな顔されたら)
P「……俺だって、嫌じゃない。むしろ、来て欲しい」
P「もう一度、うちに来てくれるか? やよい」
やよい「は、はい! よろしくお願いします!!」
P(でも、俺たち)
P(お互いの気持ちは知らないんだよな……)
P「これなら同棲って言われない。……なんてうまい話にはならんよな」
P(かくしてやよいとの同棲生活が改めてスタートしたわけだが)
P(家族の了解済み、とは言え。俺たちがなんのために同棲しているのか……)
P(アイドル以上、コイビト未満……ってとこか?)
やよい「プロデューサー?」
P「あ、あぁ」
やよい「……えへへ」
P「どうしたんだ、急に」
やよい「……やっぱり、ここがおちつくなぁって」
P「そんな、1か月もいなかったのにか? 時間だけなら家の方が長いだろうに」
やよい「そうですけど、なんていうか……」
P「うん、でも確かに俺も落ち着く」
やよい「……プロデューサー」
P(”プロデューサー”、か)
P「ん……あぁ、朝か。おはようやよい」
やよい「……」
P「どうした?」
やよい「お願いがあるんですけど……」
P「おぉ、なんだ言ってみろ」
やよい「そ、その……今日は一緒に事務所に行きませんか?」
P「……ん?」
やよい「だ、ダメ、ですか……?」
P「どうしてか、理由を聞いてもいいか?」
やよい「せっかく一緒に暮らしてるのに、別々に家を出るっていうのが……ちょっと」
P「まあ、わからなくもないが……やはり怪しまれる恐れが」
やよい「……そうですよね」
P「……でもまあ今日だけならいいぞ」
やよい「ほ、ホントですか!?」
やよい「あ、は、はい」
P「よし、それじゃあ行くか」
やよい「あ、あの……」
P「ん?」
やよい「……いえ! 行きましょう!」
P「おはようございます」
やよい「おはようございます!」
律子「あら、珍しく同時に到着ですか」
P「あ、あはは! 偶然会っちゃいまして!」
やよい「……」
春香「おはようございます! プロデューサーさん! やよいもおはよう!」
やよい「あ、春香さんおはようございます!」
P「え? そ、それはだってほら! 春香と美希とやよいのグループなんだ、誰かと一緒に居たって変じゃないだろ?」
春香「あ、そういえば結構前にやよいにご飯作ってもらうって言うの、どうだったんですか?」
P「ど、どうっていうか……今も続いてるというか……」
春香「え、えぇ!? そ、そんな……やよい意外とすごいね……」
やよい「え、えへへ……ありがとうございます」
春香「私も負けないように頑張らなくちゃー……って、もしかして二人はそういう関係になってたり?」
P「なっ!? ど、どういう意味だそれ!」
春香「冗談ですって! やよいに限ってそんなこと。ましてやプロデューサーさんが手を出すなんてことはないと思いますし」
律子「ちょっと春香? 変な事言わないでよ少しでも噂にされたら面倒なんだから」
春香「あ、あはは。ちょっとした雑談ですって。でもいいなぁ、私もプロデューサーさんの家に行きたいです!」
やよい「……」
P「は、はは、まあそのうちな」
律子「プロデューサーもです、くれぐれも気を付けてくださいね?」
律子「え?」
やよい「私は……あの……う、うぅ……」
P「ど、どうしたやよい? 具合が悪いなら、こっちに」
やよい「……」
P「どうした、急に」
やよい「私、変なんです……」
P「え?」
やよい「……プロデューサー」
P「……なんだ?」
やよい「みんなに、話したら……ダメですか?」
P「……やよい?」
やよい「私……なんていうか……」
やよい「今プロデューサーの家にいるのが、偶然だとか思いたくないんです」
やよい「ごめんなさい、わがままですよね……わかってるんです。でも」
P「うん、やよいの気持ちはわかるよ。俺だって、偶然だなんて思ってない」
P「でも、今言ったからと言ってどうにかなるもんじゃない。それどころか一緒に住めなくなるかもしれない」
P「……苦しいかもしれないけど、もう少し我慢してくれるか?」
やよい「はい……すみません」
P「……」
P「やよいは俺が好きか?」
やよい「え?」
やよい「……あ」
P「……やよい」
やよい「……好き、です。プロデューサーのことが好きです。大好きです!!」
やよい「プロデューサー……」
P「俺もだ。ダメプロデューサーかもしれないけど、やっぱり好きになってた」
やよい「ぷろ、でゅー……」
P「なんで今まで言わなかったんだろうな。俺たち、こんなに近くにいたのに」
やよい「あっ、うっ、ぐすっ……」
P「やよい? どうした?」
やよい「あ、い、いえ……わかんない、ですっ……なんか、涙が……あぅ……」
P「……いいぞ、今は泣いてくれ」
やよい「う、うわぁ、うわああああん!!」
P「落ち着いたか」
やよい「は、はいっ……」
P「……でも、確かめられてよかった。そうとわかったら、俺もやることが決まったから」
やよい(私、自分で元気元気って頑張ってました)
やよい(でも、実はすっごく弱くって。迷惑ばっかりかけて)
やよい(私なんて、って思いながらでも頑張るぞ!って)
やよい(そうやって応援してくれたの、プロデューサーでした)
やよい(だから、私もプロデューサーに恩返しがしたかったから、お料理を作りに行ったんです)
やよい(でも、おいしいおいしいって喜んでくれるプロデューサーの顔を、声を聞いてるとどんどん心があったかくなって)
やよい(もっともっと聞きたい、もっともっと喜んでもらいたいって! 思ったんです!)
やよい(気が付いたら、泊まらせてもらってて。やっぱりプロデューサーは優しくて、私の弱いところを隠してくれたんです)
やよい(そうじゃなかったら今頃、長介とも仲良くなれてなかったと思うし、ありがとうございます)
やよい(でも、気が付いたら。プロデューサーが近くにいないと、不安になって。すごく、変な嫌な気持ちだった)
やよい(プロデューサーの家でまた暮らせるって思った時、すっごく嬉しかった!)
やよい(そして、プロデューサーに聞かれたとき、やっとわかったんです。私、プロデューサーのこと……)
やよい(えへへ、今頃わかるなんて私、やっぱり。……ううん、プロデューサーがいるから大丈夫)
やよい(これからも元気いっぱいで頑張りますから、よろしくお願いします! プロデューサー!)
P(それは、仲直りと同じだ)
P(いいたくても、相手が。それを理由に、言い訳に、自分から言おうとしない)
P(もし言って拒否されたら? 悪い方向に考え出してしまうともう止まらない)
P(なんて、格好つけて言ってみても、どこにでもあるような話か。うん、ただ俺はやよいに気持ちを伝えたかったそれだけ)
P(もちろんこのまま結婚! なんて馬鹿な真似はしないし、公表もしないさ)
P(だから、それまでの基盤づくりだ。もうやよいの言葉を聞いたときから決めたんだ)
P(俺がやよいを幸せにしてみせる、そのためにはまずトップアイドルにしてあげなければいけない)
P(しかもだ、同じグループのメンバーに影響が出ない程度に……あれ? そんなこと俺、できるのか?)
P(……とにかく、やよいとの生活は続けるが、それなりの覚悟を持って挑むってことだ)
P(やよいにもらったものは、数えきれない。それを返すために、俺は一生働いてみせるさ)
P(まずは、その一歩だ!)
P「それじゃ、やよい」
やよい「あ、はい!!」
「「ハイターッチ! いぇい!!」」 終わり
だから機会があれば続き書こうと思ってるこのままだとグダりそうだし一旦ね
メンバーに知られて軽い修羅場展開とか、新しい同棲生活とか
とりあえずここまで長々とお付き合い&支援ありがとう 乗っ取りだったけど楽しかった
Entry ⇒ 2012.10.30 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
照「咲のお誕生日会に呼ばれたい」
照 「だから、咲のお誕生日会にお呼ばれしたい」
淡 「妹さんだっけ? 長野の」
照 「そう。とても可愛い」ムフー
菫 「……いや、呼ばれるわけがないだろう」
照 「何故」キョトン
菫 「普段から『私に妹はいない』なんて言ってる姉だぞ? そんなのを誕生日に呼ぶヤツがいるか」
照 「遠回しな愛情表現で咲をやきもきさせる作戦」フンスッ
淡 「なるほどー。テルーは策士だねー!」
照 「それほどでもない」ドヤッ
菫 「……」ハァ
菫 「照。たとえ話をしよう」
照 「?」
菫 「お前に好きな人がいたとする」
照 「咲のこと?」
菫 「その人が『照のことなんて知りません』と言ったとする」
照 「!?」ガーン
照 「咲に嫌われた人生なんて価値が無い。もうダメ、死ぬしかない」ドヨン
淡 「ちょ、テルー! これたとえ話、たとえ話だから!」
菫 「そんな相手を誕生日会に誘おうと思うか?」
照 「無理、絶対無理。もっと嫌われそうで……」
菫 「…それが、今のお前の妹の状況だよ」
照 「!」
菫 「お前の作戦とやらは知らんが、すこし妹さんを遠ざけすぎだ。
そんなじゃ嫌われていると勘違いされても仕方ないな」
照 「…うぅ」ションボリ
淡 「……スミレー、なんとかならないの? テルーが可哀そうだよー」
菫 「…まあ、直接妹さんのところに行けば良いんじゃないか? 招待されてなくとm」
照 「菫は何も分かってない」ガバッ
菫 「うおっ!? 急に顔を上げるなッ!」
照 「招待状を貰ってこそのお誕生日会。招待状無しで遊びに行くなんて趣がない」キッ
菫 「趣なんて気にするのか、お前が……」
淡 「なるほどなるほどー」
菫 「……」
菫 「…淡。先日、お前の誕生日会をこの部室で行ったな」
淡 「? うん、すごく楽しかったよー!」
菫 「瑞原プロがサプライズゲストとして来てくれたことを覚えているか?」
照 「!」
淡 「うんうん! びっくりしたけど、とっても嬉しかった!」
照 「……サプライズゲスト」
菫 「そうか。招待状はいいのか?」
照 「……たまには、菫の案を採用するのも良い」
菫 「ん。分かった」
淡 (さすがだね、スミレー。テルーのコントロールはばっちりって感じ?)ヒソヒソ
菫 (まあ、もう3年の付き合いだからな。あいつの考えることは大体分かるさ)ヒソヒソ
淡 (アハハ、まるで夫婦だ)ヒソヒソ
菫 (……先輩を茶化すんじゃない)ヒソヒソ
照 「それじゃ、今から長野に行ってくるから。今日の部活は休むね」
菫 「ん、そうか。頑張ってな」
ガチャ バタン
菫 「……」
菫 「ちょっと待てぇッッ!!」
淡 「言ってたねー」
菫 「あの超ド級の方向オンチが一人で長野へ!? 行けるわけがないだろ!」
淡 「前言撤回、全然コントロール出来てなかったねー」ケラケラ
菫 「亦野! 亦野っ!」
亦野「サー! いかがなさいました!」
菫 「照は今どこに?」
亦野「サー! 宮永上官は正門を抜け、駅に向かって……」
菫 「! 駅の方向が分かっていたのか、アイツは!?」
淡 「あはは、ひどい言いぐさだねー」
亦野「…向かっていましたが、途中焼き芋屋のトラックを発見、そのトラックを追従しています」
亦野「白糸台部室より西南に500mの地点であります、サー!」
亦野「サー、サンキューサー!」
菫 「淡、私は照を追う。今日の部活は……そうだな、渋谷の指示に従うように」
淡 「はーい」
菫 「それじゃあ。 …まったく、アイツは……」ブツブツ
ガチャ バタン
渋谷「……? 淡ちゃん、今弘世先輩が出て行ったけど…何かあったの?」
淡 「あっ、タカミー! えっとねー、またテルーのことだよ!」
渋谷「そっか、宮永先輩か。 仲良いね、あの二人」
淡 「まったくもって!」
渋谷「…そういえば、宮永先輩に麻雀部宛てでこんなのが届いてたんだけど……」
淡 「?」
亦野「『宮永咲・お誕生日会 御招待状』……」
淡 「……どうしよー!」ケラケラ
【長野】
照 「やっと長野に着いた」
菫 「まったく…方向感覚ゼロのくせにうろうろするから迷子になるんだぞ、お前は……」
照 「長野の空気……」クンクンクンクン
照 「咲の匂いがする!!」キラキラ
菫 「人の話を聞いてるのか、お前は」ポコン
照 「ちゃんと聞いてる。菫も咲の匂いをかぎたいんだよね」
菫 「…はぁ……」
照 「でも、菫が来てくれて助かった。菫がいなかったら、ひょっとすると迷子になって咲の誕生日に間に合わなかったかもしれない」
菫 「……ふん」
菫 「妹さんの誕生日は明日だろう? いくらなんでも迷子でそこまで遅くなるということは……」
菫 (…函館行の新幹線に乗ろうとしていたコイツならあり得るか……)
照 「咲と一緒に寝る。当然」フンッ
菫 「…サプライズは?」
照 「……」
照 「…と、とりあえず、家の前に着いてから考える。うん、そうしよう」
菫 「分かった。じゃ、妹さんの家まで案内してくれ」
照 「お任せあれ!」
菫 「ふふ、冗談だよ。方向オンチのお前が道案内なんて出来るわけ……」
照 「クンクンクン…… …!」
照 「こっちの方が咲の匂いが強い! こっち!!」トコトコ
菫 「……冗談のつもりだったのだが」
菫 「表札に『宮永』……まさか、本当に到着するとはな」
照 「咲が関わることならざっとこんなもの」ドヤァッ
菫 「すごいな、照は」
菫 (……軽く引いてしまうが)
照 「…ん!」ズイッ
菫 「うん? どうした、頭突き出して」
照 「……ん。ほら」
菫 「…あー、なるほど」
ナデナデ
照 「……ふふふ」
菫 「まったく…これで良いか?」
照 「もうちょっと。私、褒められれば褒められるほど伸びるタイプだから」
菫 「はいはい…。 で、結局どうするんだ?」ナデナデ
菫 「お前なあ……」
久 (遅くなっちゃったなー…もうみんな、誕生日会の準備始めちゃってるかしら)
久 (…あら、あれは……)
菫 「やめろ照! インターホンを舐めまわすのはやめないか!」
照 「咲の触れたインターホンと一体化することで名案が思い付くかも」ペロペロ
菫 「うるさい馬鹿っ!」
久 (咲のお姉さんと白糸台の部長さん?)
久 (……なんだか面白そうじゃない!)ワクワク
菫 「コンクリートに頬ずりするのはやめろぉ!」
久 「ちょっといいかしら?」
菫 「!」
久 「白糸台の部長さんよね、アナタ。それとそっちの……」
照 「咲の足の匂いがする……」ポワーン
久 「……宮永照さん?」
菫 「すまない、ちょっと頭が残念なヤツで」
久 「アハハ……。もしかして、咲の誕生日会に?」
菫 「ああ。実は……」
久 「なるほど、サプライズゲストで……」
久 (招待状のこと、知らないのかしら? ……まあ、面白そうだから黙っておくけど)
菫 「そのつもりだったのだが、今日どこで一晩過ごすかを決めていなくてな」
久 「…なんだったらウチに泊る?」
菫 「……は? いや、だがそんな迷惑を……」
久 「いいっていいって! 私一人暮らしだから!」
久 (それにこんな楽しそうなこと、見逃せないわ!)キランッ
久 (まこ達には悪いけど……メールしておけばいいかな?)
・ ・ ・
ブブブブブ……
優希「染谷先輩、携帯鳴ってるじぇー?」
まこ「…部長からじゃ。えーと…?」
『今日の準備、行けなくなっちゃった! 悪いけど後はヨロシク、まこ!』
まこ「……相変わらず自由なヤツじゃねえ」
京太郎「部長来ないんですか? この辺りの飾りとか、どうしようか相談しようと思ってたんですけど」
優希「お前の判断に任せるじぇ! テキトーにやっちゃえばいいのだ!」
京太郎「そんなアバウトな……」
まこ「よっしゃあ! いっちょ頑張っちゃるけえ!」
優希「犬、お前も頑張るんだじぇ!」
京太郎「おう! …って、お前も働けっ!」ペチン
咲 「……」ハァ
和 「…咲さん? どうかしましたか?」
咲 「和ちゃん。 えっと……」
和 「お姉さんのことですか?」
咲 「……うん」
咲 「うん。 でも、来てくれるかどうか心配で……」
和 「きっと来てくれますよ」
咲 「でもでも、もし来てくれなかったら……私、私っ」ウルウル
和 「……失礼します、咲さん」
ギュッ
咲 「! の、和ちゃんっ……」
和 「大丈夫です。お姉さんだって、きっと咲さんと仲直りしたいはずですよ」
和 「私は……その。 ……明るい咲さんの方が、す…好きなので……」ゴニョゴニョ
咲 「…うん、そうだね。和ちゃんの言う通りだよ」
咲 「ちょっと元気出たかも。ありがとう、和ちゃん!」ニコッ
和 「!」キュン
和 「……いえ、どういたしまして。さ、誕生日会の準備を続けましょう」
咲 「うん!」
和 (……それにしても、さっきから外が騒がしいですね。誰かが表で騒いでいるような……)
・ ・ ・
菫 「照! いい加減にしろ! 早く行くぞ!」グイグイ
照 「あと3時間。久しぶりの咲成分、たっぷり補給していかないと」グググ
菫 「ドアノブから何が補給できるっていうんだ、このシスコン!」グイーッ
久 「アナタも大変ねー……」シミジミ
久 「さ、入って入ってー」
菫 「お邪魔します。 …いつまで拗ねてるんだ、照」
照 「……」ムスー
菫 「…まだ根に持ってるのか」
照 「菫のせいで私の必須咲成分、サキニウムとサキ酸が不足している」
照 「菫とはもう口をきかない。私は怒ってる」プンスコ
久 「チャンピオンって素はこんなだったのねー」カラカラ
菫 「まったく……」
菫 「照」
照 「聞こえない。菫の声が聞こえた気がするけど気のせい」
照 「……」ツンッ
菫 「外が騒がしいのを不審に思って、妹さんが家から出てきていたかもしれない」
久 「騒がしかったのは主にアナタだけどね」
菫 「玄関の戸を開けた妹さんの目に写るのは、ドアノブにむしゃぶりつく姉」
菫 「…これは嫌われても仕方ないよなぁ」
照 「! ……それは困る」
菫 「そうなってはマズいと思ったからこそ、私は無理矢理お前を連れてきたんだ」
照 「そうだったのか……」
照 「ありがとう、菫。危うく咲に嫌われるところだった」
久 「なんていうか…扱いに慣れてるわねぇ」
久 「うん。適当にくつろいでねー、ちょっと散らかってるけども」
菫 「本当にありがとう。 …ええっと……」
久 「あ、名前覚えてなかったかしら。竹井久、久でいいわよ」
菫 「ああ、ありがとう久。迷惑をかける」
久 「いいのよ、私も天下の白糸台の部長と話してみたかったし」ニコ
菫 「む…そ、そうか……」
久 「ねえ。私も、菫って呼んでいい? アナタのこと」
菫 「ああ、構わないが」
久 「ありがと。 …菫」
菫 「! ……ああ、いや、こちらこs」
照 「久、お腹すいた」
菫 「……」ハァ
菫 「…少しは遠慮というものを知れ、お前は……」
ハムッ モグモグ ングッ
照 「…とても美味しい。久は料理が上手い」
久 「あら、チャンピオンに褒められるなんて光栄ね」
菫 「悪いな、夕飯までいただくなんて」
久 「大丈夫よー、どうせ残り物だから。じゃんじゃん食べちゃって!」
照 「ん。おかわり」ズイッ
菫 「お前は……」
・ ・ ・
久 「ウチ、お風呂だけは広いのよねー」
菫 「3人同時に入ってなお余裕があるとは…」
照 「……」ブクブクブク
菫 「照。湯船でぶくぶくするのは行儀が悪いぞ」
菫 「ずるい? 何のことだ?」
照 「……」ブクブク
久 「…ははーん、なるほど」ニヤ
久 「確かに、菫のスタイルは同姓から見てもそそるものがあるわよねえ」
菫 「久? 何を言って……」
久 「えいっ!」ドンッ
菫 「うおっ!?」
バシャーン
久 「ねえ照。照が言うズルいって……これのことじゃない?」ムニッ
菫 「ひゃうっ!?」
照 「うん。私はこんなぺったんなのに、菫はズルい」
久 「…ねえ。提案があるんだけれど」
照 「…オーケー、大体分かった」
菫 「お、おい。久、何のつもりだ……。照、お前も何だその手は…」
菫 「馬鹿、バカ、やめろ、近づくな……。やめて、いやだ……イヤ……」
イヤーーーーッ
・ ・ ・
久 「いやー、いいお湯だったわ!」ツヤツヤ
照 「気持ち良かった」ツヤツヤ
菫 「……お前ら、覚えておけよ……」
久 「あら、覚えててもいいのかしら?」
菫 「…やっぱり忘れろっ!」
菫 「…なんで布団が人数分あるんだ……」
照 「寝床が違うと寝つきが悪くなる。ゆっくり眠れそうにない」
菫 「羊でも数えてろ」
久 「電気消すわよー?」
パチン
照 「ぐう」
菫 「早っ!」
久 「寝つきが良いっていいわねー」
菫 「ん、どうした」
久 「あは、良かった。起きてたんだ」
久 「…咲のことなんだけれど」
菫 「……」
久 「あの子、明日の誕生日を本当に楽しみにしてたの」
菫 「…照とのことか」
久 「そ。お姉ちゃんと絶対に仲直りするんだ、って。姉想いよねー」
久 「……咲の気持ち。大切にしてあげてね?」
菫 「…ああ、分かった。照にも伝えておくよ」
久 「んー。その必要はないかも、ね」
菫 「? どういう意味だ?」
久 「ふふ、別にー?」
照 「…ぐー」
久 「朝よー! さっ、起きて起きて!」
菫 「ん……あー、おはよう……」
照 「うーん……さ、咲ぃ……」
・ ・ ・
久 「さ、これからのことを決めていきましょうか」
照 「咲とちゅっちゅする。以上」
菫 「異議あり!」
照 「どうして。作戦はシンプルな方が良いはず。これ以上シンプルなプランはない」
久 「あはは……そうねぇ」
久 「照。アナタ、恋愛映画とかって観たことあるかしら?」
照 「? 当然。特に姉×妹系のジャンルが好き」
菫 「あるのか、そんなジャンルが…」
照 「そう。恋仲になるまでを見守るのがとてもドキドキする。まさに見せ場」
照 「……あっ」
久 「そ。そういうことよ」
久 「大抵のことはシンプルな方が良いけれど、恋愛っていうのは複雑な方が好まれるのよ」
照 「なるほど……奥が深い」
菫 (……久も慣れてきたな、照の扱いに)
久 「それじゃ、改めてこれからのプランについて」
久 「まず咲のお誕生日会の時間ね。13時から18時までを予定しているわ」
久 「場が盛り上がったりしたら、もう少し延長したりもするかもね」
菫 「特に気にするようなこともなさそうだな。 問題は我々がいつ入っていくか、ということだが」
久 「プレゼントを渡すときに、っていうのはどうかしら? 大体17時頃になると思うのだけれど」
菫 「プレゼント?」
久 「そ。タイミングを見計らって咲を部屋の外に連れ出して、その間にみんなからのプレゼントを準備して……」
久 「部屋の電気を消しておいて、咲が帰ってきたところで電気を点ける! プレゼントどんっ!」
久 「…っていうのを予定しているの」
菫 「なるほど。そしてそこに照を……」
久 「ええ。良いサプライズになるんじゃないかな、って」
菫 「良いアイデアだと思う。照、お前はどうだ?」
照 「咲といちゃいちゃ出来るならなんでもいいよ」
菫 「……。 …それで行こう」
久 「OK。じゃ、タイミングが来たらメールするから。それまで待機ってことでヨロシクね!」
照 「任せて。どんとこい」フンスッ
菫 「……不安だ」ハァ
菫 「……」
照 「菫、もうちょっとそっちに退いて。よく見えない」モゾモゾ
菫 「…なあ照。確かに待機とは言われたが……」
照 「ああ、やっぱり咲は可愛いなあ……」ウットリ
菫 「こんなところに隠れる必要はあったのか? 庭の垣根の中って……」
照 「中の様子はしっかりチェックしておかないと」
菫 「確かにそうだが…痛たたっ! 枝が、枝が刺さるっ!」
照 「静かに。気付かれたらすべてが台無し」
菫 (……正論なんだが、何でだろうな。コイツに言われるとイラッとくるのは)
・ ・ ・
衣 「咲ー! お呼ばれして来たぞー!」
咲 「あ、衣ちゃん。 いらっしゃい」
衣 「だーかーら! 衣は年上だ! 『ちゃん』ではなく!」
衣 「お前は風越の! …えー……」
池田「池田! 池田華菜ちゃんだし!」
衣 「すまない、凡俗どもの名前を覚えることには疎くてな」
池田「よっしゃ、その喧嘩買ったし!」ニャー
衣 「ん? 塵芥が衣に挑むつもりか?」ゴッ
まこ「はいはい、そこまでじゃ。せっかくの誕生日会を乱闘祭りにする気かいのう?」
福路「そうよ、華菜。私たちは一応、風越の代表として来てるんだから」
池田「キャプテンがそう言うなら……」
純 「衣も。今日は清澄の大将をお祝いに来たんだろ?」
衣 「…そうだな。せっかくの誕生祝いに喧騒で水を差すのも不粋だ」
池田「この喧嘩は次に持越しだし!」
衣 「ふん、いつでも来るが良い!」
久 「そうね。楽しそうで何よりだわ」
透華「……」ムスー
久 「あら、龍門渕さんは不機嫌そうね」
透華「…私が全然目立てていませんわ」
加治木「今日の主役は宮永さんだからな。仕方ないだろうさ」
透華「それはそうですけど……」
一 「大丈夫だよ、透華。ボクの視界には透華しか映ってないからさ」
透華「な、何を言ってますの! 貴方は……! ……もう」
久 「あら、自分にはそういう相手がいないような言いぐさね」クス
加治木「はは、あそこまで深い関係の相手はいないさ」
久 「そっか。じゃ、私が立候補してm」
モモ「先輩! 危ないっす!」
加治木「モモ!?」
モモ「ふー…危機一髪っすね。先輩、今この女に狙われてたっすよ!」
久 「狙うだなんて、そんな人聞きが悪い」
モモ「あ、ダメっす! 先輩に近づいちゃダメっすよ! 先輩は私のものっすから!」
加治木「お、おいモモ……」
モモ「さ、先輩! あっちの料理見に行きましょ、ほらほらっ!」グイーッ
加治木「こら、引っ張るんじゃない……。 それじゃ久、また後で」
久 「ふふ。うん、また後で」
京太郎「自分の胸に手を当ててよーく考えてみ」
優希「……?」サワ
智紀「まったいら」ボソッ
未春(…この人、やっぱり敵……!)
優希「さっぱり分からんじぇ!」
京太郎「お前が昨日のうちにほとんど食っちまったからだろーが!」
優希「むむむ……これもタコスが魅力的すぎるが故に……」
優希「よし、京太郎! お前に買い出しを命ずるじょ!」
京太郎「はあ!? 今からか!?」
優希「ほら、もたもたしないっ!」
蒲原「ワハハ、なんだったら車出そうかー?」ワハハ
京太郎「あ、鶴賀の……蒲原さん、でしたっけ?」
蒲原「あのタコスは私ももっと食べたいしなー。ほら、行くぞー!」
文堂「こんなにも……!」
和 「お二人とも、プロ麻雀せんべいが好きだと深堀さんと妹尾さんから聞いていましたので」
深堀「カードは2人にあげよう、ってことも決まってます」
妹尾「良かったね、2人とも!」
文堂「ありがとうございます! ではさっそく!」バリッ
睦月「うむっ!」バリッ
睦月「…うむ……」
睦月「藤田プロ……」
文堂「こっちもです……」
和 「そんなオカルトありえませんっ!!」
菫 「なかなか盛り上がっているようだな。 …照?」
照 「入りたい……今すぐあの中に入って咲と……」ハァーッ ハァーッ
菫 「照!? ストップ、落ち着け! まだだ、まだ久から合図は来てないぞ!」
照 「…うん、分かってる…。我慢、我慢……」プルプル
菫 「しかし、人の集まりがすごいな。人望がある、ということか」
照 「私の妹だから当然……」プルプル
菫 「……ん? あれは……」
・ ・ ・
咲 「……」ソワソワ
和 「咲さん」
咲 「あ、和ちゃん」
咲 「…お姉ちゃん、遅いね……」
和 「東京はすこし遠いですから。遅くなるのも仕方ないです」
和 「ですから…2人で、待ちましょう? お姉さんを」ニコ
咲 「…! うんっ!」
優希「咲ちゃーん! こっちの料理も美味しいじぇー!」
純 「お前にはこれがお似合いじゃねーのか?」ヘラヘラ
優希「焼き鳥……ってふざけんなノッポー!」ムキー
和 「もう、優希ったら…。 …行きましょ、咲さん」グイッ
咲 「わわっ、和ちゃんっ!」
・ ・ ・
照 「あのピンク…! 私の咲の手を……!」ギュルルル
菫 「おい馬鹿、落ち着け! その右腕を止めろ!」
久 (垣根がこれでもか、ってくらい揺れてるわ……。照はもう我慢できない、って感じかしら)
久 (もうちょっと待ってて欲しかったけれど、限界かしらね)
透華「…? どうかしましたの? 窓の外をぼけーっと」
久 「へ? ああ、いや……そろそろ、アレを始めちゃっても良いかなって」
透華「アレというと……」
透華(誕生日プレゼント、ですわね)ヒソッ
久 (そ。ちょっと早いけれど……こういうのは盛り上がってるうちに、ね?)ヒソヒソ
透華(分かりましたわ。 ……智紀)クイッ
智紀(…透華からの合図。了解、っと)スッ
智紀(……)カチャ カチャカチャ タンッ
福路「? 沢村さんは何をしてるのかしら?」
未春(アレですよ、誕生日プレゼントの。多分、PCで須賀くんに連絡を取ってるんです)ヒソヒソ
福路(! あのノートみたいなものはパソコンなの!?)
未春(…キャプテン……)
蒲原「たっぷり買えたなー。これでタコスがたくさん作れるぞー」
京太郎「ありがとうございます、車出してもらって。おかげで助かりましたよ」
蒲原「なーに、いいってことよー」ワハハ
ティロロンッ♪
蒲原「ん、メールかー?」
京太郎「そうみたいっすね。…あ、とうとう始めるみたいですよ」
蒲原「おっ、始めちゃうのかー。よーし、ガンガン電話しちゃってくれー!」
京太郎「それじゃ、失礼して……」
ピポパポ……
・ ・ ・
プルルルルル プルルルルル
和 「あ、電話ですね」
咲 「ごめんね、ちょっと電話出てくるよ」トトトッ
ガチャ バタン
透華「今のうちにプレゼントを準備しますわよ! 各自プレゼントをお出しなさいっ!」キラキラッ
衣 「おぉ、透華が溌剌と!」
一 「今まで全然目立ってなかったからねー」アハハ
純 「お前ら何持ってきた?」
衣 「衣はこれだ! 限定盤・アヒルちゃんプロペラ!」
一 「アヒルちゃんプロペラ?」
衣 「うむ。以前、智美からもらってな。趣深き品ゆえ、是非咲にも!」
一 「ボクは無難に服だよ。可愛いやつ」
純 (無難……ねぇ)
透華「私はアクセサリーですわ! 宮永さんはもう少しオシャレに気を遣うべきと思いましたから!」
智紀「本を数冊……」
透華「…何の本ですの?」
智紀「秘密」
透華「あら、良いじゃないですの。お菓子だなんて」
一 「わ、クッキーにチョコレートにマカロン!女の子してるねー」
純 「う、うるせえっ!」カァァッ
優希「ふっふっふ、ノッポじゃ所詮その程度しか持ってこれまい……」
純 「ほー、じゃあお前は何を持ってきたって言うんだ?」
優希「これだじぇ! 家庭で作れるタコスレシピ100選!」ドヤーッ
優希「これで咲ちゃんも呪われしタコスの血族の仲間入りだじょ!」
純 「……」
加治木「モモは何を持ってきたんだ?」
モモ「ちょっとしたハウツー本を持ってきたっす」
加治木「なになに……。…『百合のススメ』……」
モモ「一押しっす!」
モモ 「そういう先輩は何を?」
加治木「CDだ。以前、このアーティストが好きだという話を聞いてな」
モモ 「……いつ聞いたんすか? 私の知らないうちに、そんな好みまで教え合う仲に…?」ゴゴ
加治木「合同合宿のときに…。 …ってモモ? ど、どうした、何か怒らせるようなことを言ったか?」アタフタ
妹尾 「加治木先輩も大変だねー…。 …睦月ちゃんは何持ってきた?」
睦月 「うむ、これを」
妹尾 「わ、かわいいリボン! きっと喜んでくれるよー!」
睦月「佳織は?」
妹尾 「麻雀の戦術書だよー。私の愛読書!」
睦月 「う、うむ。なるほど」
睦月 (…アレに今更戦術書なんて役立つのだろうか……)
池田「キャプテン! 見てください、このネコミミ!」
福路「可愛いわね。これをプレゼントに?」
池田「はい! 宮永にきっと似合うはずだし!」
福路「さすが華菜ね。良いチョイスだと思うわ」ニコリ
池田「! キャプテンに褒めてもらったし! にゃあーっ!」
深堀「キャプテンは何を持ってきたんですか?」
福路「マフラーと手袋よ。これから寒い季節になるでしょ?」
文堂「わ、もしかして手編みですか?」
福路「ええ、ちょうど毛糸が家にあったから」
未春「すごい…しかもイニシャル入りだ」
福路「……華菜にも誕生日に編んであげるわね?」
池田「にゃっ!? ほ、本当ですかキャプテン!?」
福路「華菜にはいつもお世話になってるから」フフ
池田「……にゃ、にゃにゃ、にゃにゃにゃにゃーーーっ!!」ピコピコピコ
未春「華菜ちゃんのしっぽがものすごい動きを!?」
文堂「みんなは何を持ってきたんです?」
未春「私はこれだよ! 髪留めー!」
文堂(まさか吉留とかけた、なんてことは……)
深堀「私は小物入れを」
未春「文堂さんは?」
文堂「私のはすごいですよ! じゃんっ!」
文堂「今シーズンのトップレア、小鍛治プロのプロ麻雀せんべいカードです!」
未春「……わー、すごいねー」
久 「まこは何を持ってきたの?」
まこ「これじゃ! 増えるワカメ!」デンッ
久 「……」
久 「の、和は何をm」
まこ「冗談! 冗談じゃから! さすがにこんなもんプレゼントには出来んよぉ!」
久 「はいはい、それで、本当は?」
まこ「まあ、大したもんじゃないんじゃがねぇ。ほれ、これじゃ」
久 「色紙? …って、何これ!? 小鍛治プロに三尋木プロに戒能プロに……どうしたの、これ?」
まこ「ちょっとツテを頼ったんじゃあ」
久 「ツテ……ああ、靖子ね」
和 (これでは私のが浮いてしまいます。包装されてるからまだマシですが)
和 (……)
和 (…下着は失敗だったのでしょうか)
和 (いや、しかしこのエロ可愛い下着をつけた宮永さんを想像すると…!)
和 (……このチョイス、やはり間違ってはいませんね)キリッ
久 「のーどか」
和 「あ、部長」
久 「プレゼント、何持っt」
和 「ぶ、部長はプレゼントに何を持ってきたんですか!?」
久 「あら、私? うーん、そうねえ……」
久 「ま、もうバラしちゃっても良いかしら。みんな、外を見てもらえる?」
菫 「…おい、照。久からの合図が来たぞ」
照 「あと5分……」
菫 「起きろ」ポコン
照 「あうっ!?」
菫 「何寝てるんだ、お前は……」
照 「咲がいない場所なんて見張ってても仕方ない」
菫 「よだれを垂らしながら何を言ってるんだ。ほら」フキフキ
照 「ん」
菫 「…久からの合図だ。行くぞ」
照 「がってん」
透華「な……あれって」
加治木「おいおい、まさか……」
福路「上埜さん、こんなサプライズを……」
久 「じゃーんっ! 私のプレゼントは実の姉、宮永照ですっ!」
菫 「プレゼント扱い!?」
照 「~~~っ」テレテレ
菫 「お前も照れてるんじゃない!」
久 「で、おまけに白糸台高校麻雀部の部長さんの菫です」
菫 「私はおまけ扱いか!」
ワイワイ ガヤガヤ
久 「ほらほら、色々話したいことはあると思うけれど、もうそろそろ咲が戻ってくる頃よ!」
透華「! そ、そうですわよ! 電気を消す! みんなは隠れるっ!」
菫 「私たちはどうすれば?」
久 「菫は一緒に隠れて! 照はそこに立ってて!」
照 「えっ? えっ?」アタフタ
モモ「電気消すっすよー!」
パチン
咲 「京ちゃんったら、長電話すぎだよぉ……よくあんなに話題を作れるよね……」
咲 「みんなー、戻ったよー」ガチャ
咲 「あ、あれ? 真っ暗?」
咲 「み、みんなー……どこー…?」
咲 「…あれ、そこに誰か立ってる?」
照 「!」ビクンッ
久 「さー、どうなるかしら」ニヒヒ
菫 「さては久、お前これを見るためだけに協力してたな?」
久 「だって面白そうなんだもーん」
菫 「やれやれ……」
咲 「あ、あのう…みんなどこに行ったんですか…? どうして電気が消えてるんですか…?」
照 (咲の匂い……ああっ! 今私、咲と同じ空気を吸ってるっ!)ドキドキドキ
咲 (暗くてよく見えない…もっと近づかないと)
トコトコ
照 (! 咲の匂いがより一層強まって……!)
照 (かぐわしい咲の香り…! ダメだ、脳が蕩ける…っ!)ドキドキドキドキ
モモ(な、なんかヤバそうなんすけど……電気、まだ点けないんすか?)チラッ
久 (ま・だ)クイッ クイッ
モモ(…あれは絶対楽しんでるっすね)ハァ
照 (咲咲咲咲咲咲咲サキサキサキさきさき)
咲 (顔がよく見えない…もうちょっと)トコトコ
照 (! ……)プッツーン
咲 「あの……」
照 「……咲」
咲 「へ? ってその声、もしかs」
照 「咲ぃぃぃぃぃぃっっ!!」ガバァッ
咲 「わ、ひゃ、うわあっ!?」
ドテッ
『『『『『咲ちゃん! お誕生日おめでとう!!』』』』』
咲 「……」
照 「ぺろぺろぺろぺろぺろぺろ」
咲 「…おねえ、ちゃん?」
照 「ぺろぺろぺろぺろぺろぺろ」
菫 (お、おい。どうするんだ、この空気)
久 (さあ?)
菫 (さあ、って……)
咲 「……」
照 「ぺろぺろぺろぺろぺろぺろ」
咲 「……」
咲 「…ふふ」
咲 「くすぐったいよ、お姉ちゃん」ナデ
照 「ぺろぺろ…… …ん。ごめん」
咲 「ううん。 …あ、あのね」
咲 「お…おか……」ウルッ
咲 「おかえりっ…! おね、ちゃ……!」ブワワッ
咲 「! ……おねえちゃっ…! う、うわああああ……! ああぁぁん!」ボロボロ
照 「ん。咲は泣き虫だね」ナデナデ
アーン ウワーン
久 「…何とか良い感じに収まったんじゃないかしら?」
菫 「照が妹さんを押し倒したときはどうなるかと思ったがな」
久 「ま、ハプニングは付き物ってことで」
菫 「…まったく」
菫 (だが……こうして照が妹と仲直りできた。それは良いことだと思うよ)
菫 (良かったな、照)
・ ・ ・
和 「……」
和 「…ハッ!? あまりのことに思わず思考のヒューズを飛ばしていました!」
和 (!)
優希「アンタが咲ちゃんのお姉ちゃんかー。確かに似てるじょ!」
照 「そう? …えへへ」テレッ
咲 「似てるって! …えへへ」テレッ
まこ「仲が良いのう。とても喧嘩しとったとは思えんわ」
照 「別に喧嘩していたつもりはない」
咲 「えっ、そうなの?」
照 「私が咲を嫌いになるはずがない」
咲 「そっかー…。 …私も大好きだよ、お姉ちゃん」
照 「咲……」
イチャイチャ イチャイチャ
和 「……」ギリギリ
和 (久しぶりに会えた家族なんです。少しは仲良くしていても……)
イチャイチャ イチャイチャ
和 (…少しくらいなら……)
イチャペロ イチャペロ
和 (……)
咲 「それでね、お姉ちゃん! その時の京ちゃんったら……」
照 「ふふ、京太郎は相変わらずなんだな」
ずずいっ
照 「!」
咲 「あ、和ちゃん」
和 「はじめまして、お姉さ……いえ、お義姉さん」
優希「? なんで言い直したんだじぇ?」
和 「この1年間、咲さんと ふか~い 関係を築いています」
まこ(和……照に対抗意識燃やしすぎじゃ)
和 「よろしくお願いしますね。 お 義 姉 さ ん 」ニッコリ
照 「……」
照 (このピンク、さっき咲の手を汚した……)
照 (ここで××することも出来るけど…。 …今は咲が見てるし)
照 「ああ。よろしく、 原 村 さ ん 」ニッコリ
照 「握手しないか?」
和 「握手……いいですね」
ギュッ
和 「……咲さんは渡しません」ボソッ
照 「……潰す」ボソッ
ギュウウウウウウウッ
照 「く、ぬ、ぬ……」ギュウウウウッ
咲 「お姉ちゃんと和ちゃんも仲良くなってくれたようで何よりだよー」ホッコリ
まこ「いや、これは仲良くなっとるというより……」
照 「ふ、ふふ……! 聞いたか、咲はお前より先に私を呼んでくれたぞ……!」ギギギ
和 「お義姉さん……咲さんは私のことを『名前』で呼んでくれているんですよ……?」ゴゴゴ
久 「はいはい、ストップストップ! 今日は咲の誕生日なのよ?」
透華「貴方達まで目立ってしまっては私の立場がありませんわ!」
照 「……」
和 「……」
照 「それもそうだな」パッ
和 「それもそうですね」パッ
咲 「わ…すごい……! これ全部、私に?」
和 「そうですよ。それだけ咲さんがみんなに愛されてるということです」
照 「その中でも一番愛しているのが私」ドヤッ
和 「何年もほったらかしにしていた姉が言えた台詞ではありませんね」フフン
照 「! ……菫」グス
菫 「擁護のしようもない事実だな」
照 「うう……」
優希「さあ咲ちゃん! 気になるものを存分に手に取るのだ!」
咲 「うーん……これとか可愛いね」
衣 「お! それは衣が持ってきたのだ!」
咲 「衣ちゃ……衣おねえちゃんが?」
衣 「そうだ! 音に反応して飛ぶんだぞ」フンスッ
咲 「飛ぶの!? へー……ありがとう、衣おねえちゃん!」
一 「ああ、それはボクが持ってきた物だよ」
咲 「えっと……何ですか、これは」
一 「何って、見れば分かるじゃないか。服だよ服」
(((((服……? アレが……?)))))
和 (この場のほぼ全員の思いが一致した気がしますね……)
照 (しかし、服か……)
和 (アレを咲さんが着たとしたら……)
照和「……」ホワンホワーン
照和「ごぼぉっ!!」ブーッ
優希「わわ! のどちゃんと咲ちゃんのお姉ちゃんが吐血しながら鼻血を!!」
透華(わ、私のプレゼントがスルーされましたわ!)キーッ
純 (どうどう、俺のもスルーされてんだから落ち着け)
モモ「本だったら私が持ってきたヤツっすかね」
智紀「…私も」
咲 「こっちの本は……『百合のススメ』?」
和 「!」キュピーン
照 「!」キュピーン
モモ(2人とも、頑張るっすよ。私も陰ながら助力させていただくっす)グッ
和 (ありがとう、東横さん……!)
咲 「それでこっちはマンガかな? ……わわわ!」
咲 「誰ですかっ、こんなの持ってきたのはっ! もー……」カァァッ
和 (間違いありません、あれはえっちなマンガですね)
照 (ジャンルを確認しないと……。…『テルテルアイ』っ、倍率×10!)カシャシャシャッ
和 「…! 馬鹿な、姉妹モノですって……!?」カタカタ
照 「!」バッ
智紀(和×咲はもうお腹いっぱい。次は照×咲に切り替えていく)
和 (なんてことでしょう……彼女はお義姉さん派でしたか……)
咲 「もー…もっと普通なのは……」
池田「私の持ってきたネコミミはどうだ! 可愛いぞ!」
咲 「ネコミミ…あ、これだね」
まこ「せっかくじゃ、付けてみたらどうかいの?」
咲 「今ですか? んっと……」ゴソゴソ
咲 「こう、かな……?」テレテレ
照和「イエスッッッッ!!」ブバババッ
優希「うわああっ! 体中の穴という穴から出血!?」
池田「それはキャプテンが編んだものだし! キャプテンのまごころに感動しながら使うといいぞ!」
咲 「へえ……。あっ、イニシャル入りだ! S・Mって!」
照 「S!?」ピコーン
和 「M!?」ピコーン
菫 「お前ら仲良いな……」
咲 「わ、プロ麻雀せんべいのカードもあるよ」
文堂「それ、私が持ってきたヤツです! 小鍛治プロですよ!」
睦月「うむっ…! さすが星夏ちゃんだ。いつでもプロ麻雀せんべい魂を忘れていないな」
文堂「そういう津山さんだって、さっきからプロ麻雀せんべいの山を探る手が止まってませんよ」
ハハハハ……
照 「……」じーっ
菫 「そういえば、お前もプロ麻雀せんべいカードを集めていたな」
照 「……」コクン
菫 「だったら行って来ればいいだろう」
照 「でも恥ずかしいっていうか…その……」モジモジ
菫 「ああ、もう! うだうだ言ってないで行って来い!」ドンッ
照 「うわわ!」
文堂「…で、瑞原プロだけずっと出なくて困ってるんですよ」
睦月「うむ、確かに瑞原プロの出現率は他のスターカードより低めに設定されているな」
文堂「ですよね! 気のせいじゃないですよね! この前だっt」
照 「あの……」
睦月「うむァ!?」ビクッ
文堂「チャンピオン!? な、何か用ですか…?」ビクビク
文堂(え? 何これ、何で私、チャンピオンに話しかけられてるの?)
睦月(まったく分からない…チャンピオンの意図が)
照 「……!」スッ
睦月「…プロ麻雀せんべい?」
照 「……」コクン
文堂「…ひょっとして、チャンピオンも集めてたり?」
照 「!」パァァッ
菫 「…お、どうだった?」
照 「友達になれた! 星夏ちゃんと睦月ちゃんだって!」ウキウキ
菫 「そうか。良かったな」
照 「ん!」ニコー
和 (…良かった。どうやら私のプレゼントは触れられずに済みそうですね)ホッ
優希「咲ちゃん、まだその包みを開けてないじぇー」
和 (優希っ……! 余計なことを……!)
咲 「あ、ホントだ。これは誰からの物かな?」
シーン
咲 「あれれ……?」
和 (黙っていればバレないはずです。咲さんには悪いですが)
久 「それ、確か和の持ってきたのじゃなかったっけ?」
和 (ぶ、部長ーっ!!)
久 (ふふ、私も中身が気になるのよねー)ニヤニヤ
咲 「そうなの? 和ちゃん」
和 「え、ええ。まあ、一応……」
咲 「うん。開けちゃうね、和ちゃん」
和 「ま、待ってください!」
咲 「?」
和 「それを開けるのは、その……みんなが帰ってからにしてくれませんか?」
優希「どうしてだー? 何か問題でもあるのか?」
和 「そういうわけではありませんが……何となくです、何となく!」
照 (…あの反応。さてはピンクめ、恥ずかしいものをプレゼントにしたな)
照 (私だってこんな機会があれば同じことをする。間違いない)
照 (……と、なれば。あれを無理矢理開けてしまえばピンクの株を落とすことが出来る)
照 (そうすれば私の株が逆に急上昇、咲ルート一直線)
照 「…よし、やるか」ギュルルルル
和 「! ありがとうございます、咲さん!」
優希「ちぇー、つまんないじぇ……」
照 「……」ギュルルルル
照 「……ふんっ!」
ゴォォォォッ!!
まこ「な、なんじゃ!? 急に突風が!」
優希「咲ちゃんの持つ包みに向かって!」
咲 「うわっ!?」
久 「あら、上手い具合にラッピングが破れていくわね」
バリバリッ ビリッ
咲 「……ぱんつ?」
和 「 」
和 「さ、咲さん。違うんでs」アタフタ
照 「うわー なんだーこれはー!」
和 「!」バッ
照 「まさかたんじょうびにー ぱんつをぷれぜんとする へんたいがいたなんてー!」
照 「ひゃー これはびっくりだなー ひととしてどうなんだろうなー!」
照 「こんなへんたいはー さきのおよめさんにはふさわしくないなー!」
和 「……」ワナワナ
菫 (…うわあ)
久 (すっごい棒読みね、照……)
文堂(あれでも本人的には迫真の演技なんだろうなあ……)
睦月(うむ……)
モモ(お姉さん、さすがにそれは必死すぎっすよ……)
智紀(ぽんこつな姉のヘタレ攻め……アリかも)
和 (うう……)プルプル
咲 「……」
スタスタ
照 「これはもー わたしがかわりにさきのおよめさんになr」
パシンッ
照 「……」
咲 「…お姉ちゃん。」
照 「さ…さき……?」
咲 「いくらお姉ちゃんでも、和ちゃんを馬鹿にしたら怒るよ?」
クルッ
咲 「和ちゃん。ぱんつ、ありがとうね!」
和 「咲さん……」ウル
照 「…う……」
智紀(照NTRモノ……なるほど、これは盲点)
照 「う……うぐっ……」プルプル
照 「さ、咲ぃ……」グスッ
咲 「? お姉ちゃん?」
照 「ご、べん、なざいっ…私が、悪かった、がらぁっ」ヒック ズズッ
照 「私のごと……嫌いに、なっちゃ、やだぁっ……」グスンッ
咲 「……」
咲 「ちゃんと人に謝れるお姉ちゃんだったら、私は嫌いにならないよ?」
照 「…! う、うんっ!」
照 「ごめんなさいっ、咲!」ペッコリン
咲 「…お姉ちゃん」
咲 「謝る相手が間違ってるよ」ニコッ
照 「……へ?」
和 「……」
照 「…なんでこんな変態ピンクに」
咲 「お姉ちゃん?」ゴッ
照 「ぐ……」
照 「…メンサイッ」ピコッ
咲 「聞こえないよ、お姉ちゃん」
照 「……ごめんなさい」ペコリン
菫 「あの照が人に謝っている……!?」ワナワナ
菫 「馬鹿な、私は夢でも見てるのか? こんなことが実現するなんて……!」
久 「ひどい言いぐさねー」
和 「そうですね。あと土下座して私の足を舐めて『二度と咲さんに手を出しません』と誓えば」
咲 「……」ゴゴゴ
和 「…こほんっ。まあ、咲さんに免じて許してあげます」
咲 「良かったー! これで仲直りだね、2人とも!」パァァッ
照 (…ふふ。咲には敵わないな)
和 (やっぱり咲さんが一番ですね)
久 「さ! 良い感じの雰囲気になったところでお開きにしましょうか!」
咲 「あの、今日は本当にありがとうございました! とても嬉しかったです!」ペッコリン
パチパチパチ パチパチパチパチ
ヒューヒューッ ヒューッ
久 「それじゃ、解散っ!」
優希「そうか、もう帰っちゃうのかー……」
菫 「私たちも学校があるからな。今日中には東京に戻らなければ」
まこ「ま、またいつでも来んしゃい。歓迎するけえ」
久 「そのときはまたウチに泊っていく?」
菫 「それはお断りだ!」
久 「あら、残念ね」ヘラッ
菫 「……おい、照! そろそろ出発するぞ!」
照 「待って、菫。もう少しだけ咲とお話してから」
菫 「……」
優希「本当に妹想いだじぇー……」シミジミ
菫 「少しは妹離れすべきな気もするがな」
久 「まあ、久しぶりの再会なんだし。今日くらいはいいんじゃない?」
菫 「…まあ、そうだな」
照 「…それじゃ、そろそろ私は行く」
咲 「そう……」シュン
照 「大丈夫。咲が寂しくなったときは、また会いに来る」
咲 「本当?」
照 「ああ、必ずだ」
咲 「…うんっ! 絶対だよ!」キラキラ
和 「……もういいんですか?」
照 「…ピンク」
和 「ピンク呼びはやめてください。私には原村和という名前があります」
照 「ん。分かった、和」
照 「…私がいない間、咲のことをよろしく頼む」
和 「! それって……」
照 「ただ、私並みに咲のことを思っているのがお前だけということ」
和 「……お義姉さん」
照 「お義姉さん呼びは認めてない」
和 「…分かりました。照さんがいない間、私が貴方以上の愛情を持って咲さんと接していきます」
照 「ちょっと待って。その言い方じゃまるで、私より和の方が咲への愛が深いみたい」
和 「事実ですから」
照 「……」グヌヌ
和 「……」ムムム
照 「……はは」
和 「……あはは」
「「ははは、はーっはっはっは! あははははっ!!」」
照 「咲を任せた!!」ドンッ
和 「任されました!!」ドンッ
蒲原「ワハハ、もう待ちくたびれたぞー」
京太郎「買い出しから帰ったと思ったら既に終わってて、しかも即送迎に付き添えだなんて……」ヨヨヨ
久 「ごめんね、須賀くん?」
優希「まあこれも運命だじょ。受け入れるんだな!」
京太郎「やかましいっ!」
照 「…じゃあ、本当にもう行く」
和 「ええ。お気をつけて」
照 「でも、最後に一つ。 …咲、ちょっと来て」
咲 「ん? なあに、お姉ちゃん」トコトコ
和 「……って、それはちょっと待っt」
チューッ
咲 「…お、お姉ちゃん……?」カァァッ
照 「誕生日プレゼント。 じゃあね、咲」タッタッタッタ
ガチャ バタン
ブロロロロロ……
咲 「…えへへ」ポーッ
和 「……ず」
和 「ズルいですよ、お義姉さーん!!」ムガーッ
淡 「…へー。仲直り出来たんだ、テルー」
照 「うん。もう咲といつでも会える。文通もしてる」
淡 「メールじゃなくて文通ってあたりがいいねー。 …ところで」
照 「?」
淡 「ほら、お土産は無いの? お土産!」
照 「お土産。欲しいの?」
淡 「うんっ!」キラキラ
照 「仕方ないな。 はい、これ」スッ
淡 「…? 何コレ、ビニール袋?」
照 「中に咲の息が詰まってる。至宝」
淡 「…スミレー……」
菫 「…ほら、おやき」
淡 「! ありがと、スミレー!」モグモグッ
菫 (色々とムダな遠回りをしたような気がするな)ハァ
菫 (……まあ)
菫 (2人が仲直りできたことだし、すべて良しとしようかな)
菫 「なあ、照?」
照 「……サ……キ……」ピクピク
淡 「あわあわわ! テルーがビニール袋でで吸引しすぎて酸欠に!!」アワアワ
菫 「……」
カン
久々にこんなアホなシスコン照みた
また増えろ
Entry ⇒ 2012.10.30 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
える「古典部の日常」 4
だからと言って、どうなると言う訳でもないが。
そして、俺たち古典部は相変わらず何の目的も無しに部室へと集まっている。
える「今日は何をしましょうか」
奉太郎「いつも何かしている訳では無いだろ」
摩耶花「でも、折角集まってもする事が無いんじゃねぇ……」
里志「と言うか、全員のクラスが一緒になったせいで、集まる意味も……」
える「駄目です! 何か活動をしなければいけないんです!」
千反田の言う事も、もっとではあるのだが……如何せん、する事が無い。
奉太郎「……何だ」
里志の良い事と言うのは、基本的に俺にとっては悪い事である。
それはもう、嫌と言うほど経験していた。
里志「ちょっと待っててね、すぐに戻ってくる」
里志はそう言うと、駆け足で部室から出て行く。
それを見送った後、席を立つ。
奉太郎「さて、帰るか」
える「え、何故ですか」
奉太郎「決まっているだろ、ろくな事にならないからだ」
逃げるとはまた……随分と人聞きが悪い。
奉太郎「面倒な事を避けているだけだ」
摩耶花「……ふうん」
いかんいかん、伊原の挑発に乗ってしまっては思う壺だ。
える「駄目ですよ!」
しかしこっちの奴は、実力行使で俺を押さえに来る。
簡単に言うと、俺の腕を掴んで離さない。
奉太郎「何が、駄目、なんだ!」
える「福部さんは待っていてと言ったのです! 帰ったら駄目です!」
俺はグイグイと引っ張るが、千反田の方も負けじとグイグイ引っ張る。
える「諦めてください!」
今こいつ、諦めてと言ったか。
それはあれか、これから俺にとって良くない事が起きるだろうと言う事を、千反田も予想しているのだろうか。
奉太郎「い、や、だ!」
少しずつ、少しずつだが出口に近づく。
摩耶花「何してるの、二人とも」
そんな必死の戦いを繰り広げている俺と千反田を見て、伊原が冷静な一言を放つ。
しかしここで退いては駄目だ、千反田が持ってくる面倒事ならまだしも……里志が持ってくる物にまで巻き込まれる道理なんて無い。
もう少しで辿り着ける!
俺がそう思ったとき、静かに閉まっていた扉が開く。
里志「って、何してるの?」
ああくそ、タイムアップになってしまったではないか。
俺はようやく千反田を引っ張るのを辞め、若干上がった息を整えながら答える。
奉太郎「いや、まあ」
奉太郎「体を温めていた」
里志「それはちょっと、無理があると思うけど……」
える「あ、福部さん! お帰りなさい」
後ろから声が聞こえた、是非ともその勢いで俺に「行ってらっしゃい」と言って欲しい物である。
そうすればすぐに帰れるのに。
里志「ただいま、千反田さん」
里志は俺の後ろに居る千反田に向け、顔をずらしながら言った。
摩耶花「それで、どうして急に飛び出して行ったの?」
里志「よくぞ聞いてくれた!」
里志「実はね、ちょっと手芸部に行っていたんだ」
奉太郎「手芸部? 何でまた」
里志と千反田は席に着く。
俺もそれに習い、席に着いた。
待てよ……結局、流されてしまっているではないか。
くそ、今から扉まで走っていけば……逃げられなくも無いが。
なんだかそれすら面倒になってきてしまった。
そう言い、制服とワイシャツの間から何やら随分とでかい物を取り出す。
える「何故、そこから出てきたのか……気になります」
その疑問を解決できるのだろうか、俺にはとても解決できそうにない。
奉太郎「それで、それは何だ?」
摩耶花「ええっと……何々」
摩耶花「人生ゲーム、再現度70%! リアルな人生ゲームをあなたに!」
摩耶花「って書いてあるわね」
何だそれは……70%とは、また微妙な。
奉太郎「何でそんな物が手芸部にあるんだ?」
まあ、前に天文学部を訪れた時は何やらボードゲームらしき物をやっていたし、そういう部活は多いのかもしれない。
里志「それで、皆でやらないかい?」
える「是非!!」
摩耶花「いいね、やろうやろう」
奉太郎「……ちょっと気になるんだが、いいか」
俺がそう言うと、三人ともが俺の方を見る。
奉太郎「これって、古典部と関係あるのか?」
里志「じゃあまずは駒である車とお金を分けるね」
摩耶花「うん、よろしく」
える「福部さんが銀行役ですね、宜しくお願いします」
……今、無視されたか?
奉太郎「おい、聞いてるか」
里志「摩耶花は水色でいいかな?」
摩耶花「おっけー、ありがとう」
里志「千反田さんは……白って感じかな」
える「ふふ、ありがとうございます」
里志「僕は黄色を貰うとして……ホータローはどれがいい?」
奉太郎「いや、俺はだな」
里志「仕方ないなぁ、じゃあホータローはこれで」
……まあ、俺らしいと言えばそうかもしれない。
いや、違うだろ。
そんな車なんてどうでもいいだろうが。
奉太郎「おい、これって古典部と」
里志「じゃあお金を配るね」
駄目だ、明らかに俺が出す話題は無視されている。
奉太郎「……分かった、やればいいんだろ」
里志「はは、やりたいならそう言えばいいのに」
……やはりあそこで千反田を振り切れなかったのは手痛いミスだ。
だがまあ、俺のミスか。
える「私も、頑張ります!」
何やら女子達は盛り上がっている、ただのゲームだと言うのに、元気なこった。
そんなこんなで最初の持ち金、1500万円が配られる。
こうなってしまっては仕方ない……やるか。
里志「ホータローには前の豆まきでの借りがあるからね、しっかりと返させて貰うよ」
える「そう言えばそうでした! 負けませんよ」
随分と根に持つ奴等だな……
摩耶花「私も、今回はちょっと負けたくないかな」
そう言い、俺の方を伊原は睨んでいた。
……何故、俺なのだろうか。
順番を整理すると。
1番、伊原
2番、千反田
3番、俺
4番、里志
と言う事か。
まあ、たかがゲームだ、気楽にやろう。
摩耶花「じゃあ、回すね」
そう言い、伊原は数が10まであるルーレットを回す。
【5】
摩耶花「えっと、5かぁ」
里志「最初は職業決めだろうね、定番だ」
【あなたは漫画を描くのが大好き! そんなあなたには漫画家の職業を差し上げます!】
摩耶花「漫画家かぁ、ちょっと嬉しいかも」
里志「はい、職業カードを渡すね」
摩耶花「給料は……600万ね」
里志「職業が決まったら最初の給料日マスまで移動みたいだね」
摩耶花「うん、りょーかい」
それにしても伊原が漫画家とは、確かにリアルな人生ゲームである。
そう言うと、千反田はルーレットを回した。
【7】
里志「お、ラッキーセブンって奴かな」
える「ふふ、何の職業になるのでしょうか……気になります」
【あなたはどこにでも居る一般人! そんなあなたにはサラリーマンの職業を差し上げます!】
える「サラリーマンですか、いいですね」
何が良いのか俺には分からないが……本人がそう言っているなら良いのだろう。
里志「給料は300万だね」
える「そうですか……摩耶花さんよりは少ないんですね」
摩耶花「私の漫画もそこそこ売れてるみたいね」
よし、最初の職業が重要だと言う事は分かった。
なら良い職業を引く事が出来れば、それはかなり楽な人生となるだろう。
そんな事を思いながら、ルーレットを回した。
【10】
里志「10か、最初から飛ばすねぇ」
奉太郎「飛ばそうと思って飛ばしている訳では無いがな」
ええっと、それより職業だ。
【あなたは何事にもやる気無し! そんなあなたはフリーター! 頑張ってください】
……
える「……ふふ」
える「え、いえ……」
摩耶花「ちーちゃんが笑うのも無理ないって、だって似合いすぎてるもん」
里志「ぴったしだよ、ホータロー」
里志「見事だ!」
そう言われても、いい気は全くしないのだが。
える「あ、あの!」
える「私、良いと思いますよ!」
える「自由に生きる人生! 素敵です!」
千反田の必死のフォローが俺の心をきつく締め付ける。
奉太郎「……まあいい」
里志「給料は100万だね」
里志「フリーターにしては、頑張ってる方じゃないかな」
さいで。
里志「よっ」
【6】
里志「6は……お」
奉太郎「劇団員、となっているな」
里志「いいんじゃないかな、気に入ったよ」
里志「給料は……1500万! ホータローの15倍だね」
摩耶花「いいなぁ、私なんて6倍よ?」
える「私は3倍です……」
何故、俺を基準にするんだ、こいつらは。
里志「それじゃあ皆の職業も決まったし、ここからが本番だね」
奉太郎「保険?」
里志「生命保険と車両保険があるね」
里志「他にもあるんだけど、最初に入るか入らないか決めるのは、どうやらこの二つみたいだ」
……念の為、入っておいた方がいいだろう。
里志「どちらも500万、両方入るなら1000万だね」
奉太郎「随分と高い保険だな」
里志「まあ、ゲームだしね」
ふむ、ならば仕方ない。
どうやらそんな俺の考えと全員一緒の様で、それぞれが1000万を里志に手渡す。
里志「うん、この後はルーレットを順番に回して進むだけさ」
摩耶花「じゃあ」
摩耶花「負けないわよ!」
伊原はそう意気込み、ルーレットを回した。
【1】
摩耶花「うう……」
里志「はは、力みすぎだよ、摩耶花は」
里志「えーっと」
【宝くじにチャレンジ! 偶数なら500万、奇数なら-500万】
摩耶花「ギャンブルは苦手なんだけど……」
里志「そう言わずにさ、50%の確率で当たるんだし」
今度はあまり力を入れず、伊原はゆっくりとルーレットを回していた。
【4】
摩耶花「やった!」
える「おめでとうございます!」
里志「さすが摩耶花だ、500万だね」
それにしても、やたらと色々とイベントがある様だな……
ええっと、次は確か千反田か。
える「私の番ですね、よいしょ」
【1】
える「あ、摩耶花さんと一緒ですね」
摩耶花「ほんとだ、ってことはちーちゃんも宝くじにチャレンジかぁ……」
える「では、回しますね」
える「外れてしまいました……」
摩耶花「……ごめんね、私が当たっちゃったから」
える「いいえ、気にしないでください」
える「一緒にゴールを目指しましょう!」
仲がいいのは結構だが……何やら里志が言いたそうな顔をしているぞ。
里志「えっと、話中で悪いんだけど……」
里志「同じマスに止まるとね、追突扱いになるんだよ」
える「追突、ですか?」
里志「うん、追突したら相手に1000万の罰金……となっているね」
える「い、1000万ですか?」
おお、千反田が動揺している。
里志「車両保険の方は、回収されてしまうけどね」
える「は、はい……」
渋々、千反田は車両保険のカードを里志に手渡す。
える「……酷いです、摩耶花さん」
摩耶花「わ、私はそんなつもりじゃ!」
里志「はは、気を付けないと、千反田さんに追突した時が怖そうだ」
まあ、千反田も本気で酷いと言っている訳では無いのが俺なら分かるが。
里志も恐らく分かっているだろう、しかし伊原は全く気付いていない様子だった。
える「負けません!」
こいつもこいつなりに、楽しんでいると言う事か。
そのとばっちりが回り回って俺の方に向いてくるのは納得できんが。
奉太郎「言われなくても、回すさ」
【9】
里志「好調じゃないか、先行するのはホータローになりそうだね」
奉太郎「フリーターだがな」
える「それでもゴールまで辿り着けば億万長者ですよ!」
奉太郎「……そうか」
奉太郎「じゃあ、それなりに頑張るかな」
ええっと、それでマスは何だろうか。
摩耶花「フリーターからフリーターになったわね」
里志「職業に付いてないのにリストラされるなんて、どんだけやる気が無いんだい……ホータローは」
……俺に言わないで欲しい。
える「……将来が大変そうですね」
さっきゴールまで辿り着けば億万長者だと言ったのはどこの誰だったか。
ああ、そうそう。
この俺の将来を心配してくれている方では無いか。 ありがとうございます。
【6】
里志「6だね、良いとは言えないけど9よりはマシかな」
【仕事中に腰を痛めてしまいました、一回休み】
里志「開始早々これかぁ……」
奉太郎「腰を痛めるとは、もうお前も年だな」
俺がそう言うと、里志はいつもの笑顔のままこう返した。
里志「はは、クビにならないだけマシだよ」
……どう足掻いても、里志にだけは負けたくないな。
摩耶花「これから何が起こるか分からないし、仲良くやろう?」
える「そうですよ、私だって追突しても頑張っているんですから」
摩耶花「ち、ちーちゃん」
える「頑張りましょうね、摩耶花さん」
千反田はいつもの感じではあったが、何やら今日のこいつは随分と怖い気がする。
まあ……結局俺もこうして人生ゲームへと参加する事となったのだが。
なんだか出鼻を挫かれた感が否めない。
所持金 保険
摩耶花 2600万 生/車
奉太郎 600万 生/車
える 300万 生
里志 2000万 生/車
第9話
おわり
摩耶花「うん、回すね」
カラカラと音を立てながらルーレットは回る。
【3】
摩耶花「中々進まないなぁ」
摩耶花「えっと」
【特急券購入のチャンス! 100万を払えばルーレットをもう一度回す事が出来ます】
摩耶花「お、買う買う」
里志「100万くらいなら、摩耶花にとっては安い物だからね」
……俺にとって、給料一回分とは悲しい物だ。
【10】
摩耶花「やった! 買った甲斐があった!」
里志「10は……ここだね」
里志「あ、それと給料日を通過したから給料を渡すよ」
ふむ、どうやら10マス毎に給料日は設置されている様だ。
摩耶花「ありがと、ええっと……このマスは」
【ジェット機購入のチャンス! 500万を払えばルーレットをもう一度回す事が出来ます】
摩耶花「どうしよう……まあ、払おうかな」
奉太郎「随分と優雅な人生だな」
摩耶花「お金はあるしね」
える「……」
伊原は気付いていない様だが、現在所持金がもっとも少ないのは千反田なのだ。
摩耶花「じゃ、回すよ」
【4】
摩耶花「今回だけで17マスも進めたのは良かったなぁ」
摩耶花「何々」
【母親の危篤! 10マス戻る】
摩耶花「……」
奉太郎「7マス進めたの間違いじゃないのか?」
摩耶花「……っ!」
あまり無用心な発言は避けた方がいいかもしれない。
明日は我が身と言う言葉があるからな。
里志「と言う訳で、次は千反田さんの番だよ」
える「はい!」
える「では、行きますね」
【5】
える「ええっと、5ですね」
奉太郎「あ」
える「……?」
思わず声が出てしまった。
まあ、でもすぐに分かる事だし、いいか。
里志「ええっと……僕と一緒のマスだね」
える「え、と言う事はですよ」
える「追突、ですか?」
奉太郎「それに加えて一回休みだな」
える「……そうですか」
える「で、でも……私もう、お金ありませんよ」
里志「その点は大丈夫かな、借金が出来るから」
える「借金ですか……」
なんとも、現実とは非情な物だ。
……ゲームだが。
里志「千反田さんの手持ちは300万だから、足りないのは700万だね」
里志「約束手形が一枚1000万、これを一枚と現金300万を渡すよ」
える「はい、ありがとうございます」
……ううむ、千反田がとても物悲しそうな表情をしている。
それを見ていると、なんだが少し……こう、胸に込み上げてくるものがあるな。
……いかんいかん、さっきも思ったが、明日は我が身、忘れる所だった。
なんだか空気が若干重くなった中、俺はルーレットを回す。
【7】
奉太郎「7か」
奉太郎「ええっと」
【おめでとうございます、あなたはめでたく結婚しました。 他のプレイヤーから祝儀として300万ずつ貰えます。 結婚相手としてピンを一つ車に乗せましょう】
奉太郎「おお、結婚か」
里志「……おめでとう、頑張って稼がないとね」
摩耶花「フリーターで結婚なんて、いい身分ね」
そう言われながら、300万ずつ受け取る。
える「ど、どうぞ」
千反田からなけなしの300万を渡された時は、なんだかとても悪い事をしている気がした。
奉太郎「ん? そうだが」
える「い、いえ。 おめでとうございます」
奉太郎「ああ」
変な奴だな、まあいいか。
とりあえずこれで、一回100万の給料も貰い、ある程度手持ちは増えてきた。
次は里志の番だが、一回休みなので伊原か。
所持金 保険 マス
摩耶花 2300万 生/車 8マス目
奉太郎 1600万 生/車 16マス目
える -1000万 生 6マス目
里志 2700万 生/車 6マス目
里志「ううん……中々進めないなぁ」
奉太郎「腰を痛めているからな、安静にしとけ」
里志「……そうだね、それがいい」
摩耶花「それで、回すけど……いいかな?」
える「どうぞ」
摩耶花「……よっ」
【7】
摩耶花「あぶな、折木に追突する所だった……」
奉太郎「人が二人乗っているから、罰金も二倍だぞ」
摩耶花「え? そうなの?」
奉太郎「……さあ」
里志「安心して、何人乗っていても罰金は1000万だよ」
摩耶花「まあ、当り屋みたいな事しないと、生活厳しいもんね」
奉太郎「……むう」
何も言い返せない、確かに給料が100万ではその内底を尽きてしまうのは火を見るより明らかだろう。
奉太郎「それで、マスにはなんて書いてあるんだ」
摩耶花「はいはい、今見るわよ」
【一発逆転のチャンス! ルーレットに一つピンを指し、当たれば10倍! 3000万まで賭ける事が出来ます。 そしてこの賭けに勝てば、もう一度ルーレットを回せます】
摩耶花「またギャンブルかぁ……」
奉太郎「なんだ、負けるのが怖いのか」
摩耶花「……折木に言われたら、賭けない訳にはいかないわね……」
ここまで単純に引っ掛かってくれるなら、挑発し甲斐がある。
摩耶花「いいわ、1000万賭ける」
里志「いいのかい、本当に」
摩耶花「言ったからにはやるわ」
摩耶花「私が選ぶのは……3!」
里志「……仕方ないなぁ、それじゃあ1000万、受け取るよ」
そう言い、摩耶花は1000万を里志に手渡した、千反田の目の前で。
千反田が先程から、何かを願っている様な眼差しでルーレットを見ていた。
……何を願っているかは、聞かないでおこう。
しかし現実はやはり、非情な物。
主に、俺や千反田にとってと言うのが皮肉な物であるが。
【3】
摩耶花「うそ、やった……当たった!」
摩耶花「1000万の十倍だから……1億!?」
里志「はは、おめでとう」
……まさか当たるとは、とんだ強運だ。
千反田の顔は見ないでおこう、とても悲しそうな顔をしているだろうから。
【2】
摩耶花「2だと、ここかぁ」
摩耶花「あれ? 何も書いてない」
里志「そういうマスもあるみたいだね、じゃあ次は」
奉太郎「俺か」
里志「千反田さんは一回休みだから、そうなるよ」
奉太郎「んじゃ、回す」
【10】
奉太郎「また10か」
摩耶花「またってなんか、感じわる」
奉太郎「ゆっくり進むのも良い人生だと思うぞ」
摩耶花「……ふん」
奉太郎「ま、早く終わるに越した事は無いからな」
奉太郎「それよりマスだ、えっと」
【おめでとうございます。 結婚している場合、子供が一人生まれました。 そうで無い場合は、結婚する事ができます】
【お祝いとして、他のプレイヤーから100万を受け取ります。 結婚の場合、祝儀はありません】
奉太郎「悪いな、何回も貰って」
里志「まあまあ、祝い事だからね」
摩耶花「100万と言わず、500万くらいならあげてもいいんだけどなぁ」
是非欲しいが、俺のプライドが許さない。
……いや、貰っておこうかな。
駄目だ駄目だ、弱気になってしまっては勝ち目が無いではないか。
える「あ、すいません。 細かいのが無いです」
そう言い、千反田は里志から約束手形を更に一枚と、現金900万を受け取る。
いつもの元気は既に、どこか遠くへと行ってしまった様子だ。
える「はい、どうぞ」
奉太郎「あ、ああ……悪いな」
える「……いえ、いいんですよ」
頼むから、次のマスでは千反田から金を受け取る事が無いよう、お願いしたい。
里志「それと、また給料日を通過したから給料だ」
奉太郎「ああ、すまんな」
100万ずつだが、貰える物は貰っておこう。
里志「ホータローとは随分と離れちゃったからなぁ、頑張らないと」
【4】
里志「4かぁ」
里志「どれどれ」
【落し物を届けたあなた。なんとビックリ! その持ち主は大金持ち! 1000万を受け取ります】
里志「落し物を届けただけで1000万とは、随分と凄い落とし主だね」
奉太郎「俺が届けられたとしても、せいぜい飲み物一杯が良い所だな」
里志「そりゃ、僕だって一緒だよ」
そんな会話をしながら、里志は自分の給料と合わせて、2500万を自分の手元へと置く。
さて、次はまた伊原か。
所持金 保険 マス
摩耶花 1億600万 生/車 17マス目
奉太郎 1900万 生/車 26マス目
える -1100万 生 6マス目
里志 6100万 生/車 10マス目
奉太郎「9が出れば追いつけるぞ」
摩耶花「……追突するじゃない」
摩耶花「9だけは出ません様に……」
【10】
摩耶花「あっぶない」
摩耶花「さっきから、ひやひやしっぱなしなんだけど……」
奉太郎「惜しいな」
摩耶花「何がよ、えっと」
【突然の災害! そのせいで車はボロボロに……修理費として、500万を支払います】
摩耶花「車の修理に500万って……どんな車なんだろ」
奉太郎「いいんじゃないか? 金持ちなんだし」
摩耶花「そうね……別にいいけど」
摩耶花「それより、他人事みたいな言い方ね」
……おかしな事を言う奴だ、実質、他人事なのだし。
里志「ホータロー、ちゃんとこのマス、読んだ方がいいよ」
そう里志に言われ、目を通す。
先程の文の下に、小さくこう書かれていた。
【前後5マスの方も被害に遭います、同額の修理費を支払います】
しかしまあ、そう書かれているなら仕方ない。
巻き込まれる前に逃げろと言いたいが、それはもう手遅れか。
俺は手持ちから500万を里志へと渡す。
摩耶花「フリーターの癖に、随分と良い車に乗ってるのね」
摩耶花「生活をもっと見直した方がいいと私は思うかなぁ」
奉太郎「……さいで」
里志「まあまあ、二人とも仲良く仲良く」
里志「ホータロー、確かに受け取ったよ」
奉太郎「……他には何も書いてないな、次だ」
える「私の番ですね!」
奉太郎「……大丈夫か」
える「え? 私は大丈夫ですよ」
奉太郎「ならいいが」
える「では、回します」
【9】
える「ええっと、9ですか」
9……確か、あのマスか。
える「ギャンブルですね、先程、摩耶花さんがやっていた」
奉太郎「まあ、手持ちが無いなら関係は無さそうだな」
里志「……いや、ちょっと待って」
里志「ギャンブル系は、どうやら手持ちが無くても賭けられるみたいだよ」
里志「せめてもの救済なのかもしれないけど……これは随分と酷いルールだ」
奉太郎「借金まみれでギャンブルとはな」
やけにここだけ、現実じみている……恐ろしい。
える「ええっと、では何番にしましょうか」
奉太郎「おい、ギャンブルはしなくてもいいんだぞ」
える「ええ、分かっていますよ」
奉太郎「ならやめた方がいいと思うが」
える「……もう、今更いくら増えても一緒だとは思いませんか?」
何という事だ、千反田がギャンブラーとなってしまった。
……止めはしないでおく、外れて借金が増えれば、正気に戻るかもしれない。
里志「確かに難しい選択だ、何しろ1/10だからね」
里志「ならさ、まずは賭ける金額を決めたらどうかな?」
里志「千反田さんは1100万の借金があるから……200万なら負けてもそこまで大した損はしないよ」
える「そうですね、では3000万で」
駄目だ、もう手遅れかもしれない。
摩耶花「ちーちゃんが壊れた……」
里志「は、はは」
里志「まあ、僕はただの銀行員だからね……千反田さんの決定を止める事はしないよ」
そして千反田に渡される3枚の約束手形。
ふと、千反田と目が合った。
える「あ!」
……本日二度目の、嫌な予感がする。
える「折木さんに決めてもらいましょう!」
奉太郎「な、なんで俺なんだ!」
える「折木さんは結婚もして、子供も産まれて、幸せそうなので……」
える「そんな折木さんが選べば、当たる様な気がするんです」
か、簡便してくれ……
しかし、ここに俺の味方など居る訳が無い。
摩耶花「そうよ、選んであげなさいよ」
奉太郎「……外れても俺は知らんぞ」
える「大丈夫ですって、お願いします!」
参ったな……外れた時、俺はどうすればいいんだ。
さっきまでは外れて、千反田がギャンブルをしなくなる事を願ったが……今は逆。
ううむ……
単純に、行くか。
奉太郎「……そうだな」
奉太郎「じゃあ、6で」
える「6ですね、分かりました!」
里志「7を選ぶと思ったんだけど、何で6を?」
摩耶花「気になるけど……今はルーレットの結果の方が気になるわね」
奉太郎「外れても恨まないでくれよ、千反田」
える「ええ、分かっています」
える「それでは……回しますね」
そう言うと、勢いよく千反田はルーレットを回した。
クルクルと回り、その時間は少しだけ長くも感じた。
やがて、針が止まる。
える「……」
良かった……本当に良かった。
千反田は6を指して止まるルーレットをしばし、見つめていた。
そして数秒それを続けた後、隣に座る俺の方を見る。
える「す、すごいです! 当たりました!」
奉太郎「あ、ああ。 そうだな」
なんだか恥ずかしくなり、視線を千反田から逸らした。
える「ありがとうございます! 折木さん!」
横からそんな声が聞こえたが、俺は頬杖を付きながら反応を返す事はしなかった。
しかし、何かが近づいてくる。
気付いた時には遅く、近づいてきていた物は千反田本人であった。
奉太郎「わ、分かったから離れろ! 抱きつくな!」
奉太郎「里志も伊原も、見てるだけじゃなくて千反田をどうにかしてくれ!」
里志「いいんじゃない? 別に」
摩耶花「そうそう、折木が選んだ数字なんだしねぇ」
こいつら、他人事だと思いやがって。
それから数分、千反田を引き剥がすのに必死になり、随分と体力を使ってしまった。
ようやく千反田が落ち着きを取り戻したところで、千反田はマスの通り、もう一度ルーレットを回す。
える「3ですね」
える「少しだけ、私にもツキが回ってきたかもしれません」
千反田のその発言を受け、マスに目をやる。
【ランプの魔人が現れ、あなたにもう一度ルーレットを回すチャンスをくれました。 ルーレットを回せます】
ほう、まあ今まで散々な人生だったし、いいのではないだろうか。
える「では、もう一度回しますね」
【8】
える「……あ」
ああ、そこは俺が居るマスではないか。
しかし1000万くらい、今の千反田なら安い物か。
里志「この色のマスでは、追突は発生しないみたいだね」
摩耶花「え? じゃあさっきまで私がひやひやしてたのって……」
奉太郎「無意味って事だな」
摩耶花「ちょっとふくちゃん、次からもっと早く言ってよね」
里志「ご、ごめんごめん」
える「良かったです……追突してばかりでしたので」
それで確かマスは……結婚か。
える「結婚ですね、お祝いは貰えないみたいですが」
里志「とは言っても祝い事さ、おめでとう」
摩耶花「そうそう、おめでとう、ちーちゃん」
える「あ、ありがとうございます」
何故か、と言われると分からないが……何故かそんな気分だったのだ。
ようやく、次は俺の番か。
千反田もいつもの調子に戻ったようだし、良かった。
……にしても、もう半分は通過している。
どうやら全部で50マス、そんな所だろう。
奉太郎「さてと」
【2】
奉太郎「極端だな……」
【あなたの出した漫画作品が認められました。 漫画家の職業に就くことができます】
【現在、漫画家の職業に就いている方が居る場合、その方はフリーターとなります】
奉太郎「だそうだ、伊原」
摩耶花「……絶対に許さない」
……最悪のマスだったのかもしれない。
とにかく、これでようやく俺も職業に就けた。
伊原から奪った形にはなってしまったがな。
まあ、散々俺を馬鹿にしていた罰が当たったのかもしれない……でも少し、悪い事をしてしまったか。
里志「次は僕だね」
【10】
里志「お、良い数字だ」
里志「いいね、これで一気に進める」
そう言い、里志はテンポ良くルーレットを回す。
【7】 【4】 【10】
里志「21だ、一気にゴールまで近づけたよ」
里志「このマスには何も書いてないけど……次でゴールの可能性も出てきた」
里志「うん、満足だね」
奉太郎「そういえば、最初にゴールすれば何かあるのか?」
里志「ええっと、このルールブックによると……」
里志「現金1億円、生命保険に入っていれば更に1億円」
里志「これは1位だけが貰えるみたいだね」
里志「他の順位については特に書いてないから、1位だけの特典って訳だ」
ならば俺でも最初にゴールに到達できれば、まだトップになれる可能性がある。
……いよいよ勝負も終盤だ。
なんだかんだで俺が最下位だが……最後まで何が起きるか分からない。
ま、なるようになるだろう。
所持金 保険 マス
摩耶花 1億700万 生/車 27マス目
奉太郎 1400万 生/車 28マス目
える 2億8900万 生 27マス目
里志 1億600万 生/車 41マス目
第10話
おわり
里志「どうかな、何が起こるか分からないからね」
える「諦めませんよ!」
借金まみれから登り詰めた千反田は力強くそう言った。
奉太郎「そうだな……俺もギャンブルでもするか」
える「駄目ですよ、堅実に行くのが大事です」
……お前が言うのか、それを。
摩耶花「そろそろ回してもいいかな」
える「あ、どうぞ」
伊原はそれを聞き、ルーレットを回す。
【1】
摩耶花「1かぁ……って」
……ああ、そういう事か。
摩耶花「はい」
そう言い、伊原はこれでもかと言うほどの笑顔を俺に向け、手を差し伸べる。
漫画家の職業カードを渡せ、と。
奉太郎「短い職だった」
摩耶花「似合わないから、仕方ないわよ」
摩耶花「自分に合った職業も大事よ」
……それがフリーターと言う事なのか。
奉太郎「まあ、忘れては居ないと思うが追突だぞ」
摩耶花「分かってるわよ、でも私、保険があるしね」
摩耶花「ここまで終盤になってきたら保険も意味無くなる可能性もあるし……丁度良かった」
里志「このマスは追突無効だよ? さっきも言ったじゃないか」
……あまり、記憶に無いな。
摩耶花「えー……じゃあ保険に入らなくても良かったなぁ」
里志「そうでもないさ、最後まで持っていれば資産として計算されるみたいだしね」
里志「まあ、払った額と同額だけど」
ならやはり、1回以上の追突は避けた方がいいだろう。
される分には構わないが。
ともあれ、これで俺はまたしてもフリーターへと逆戻り。
次は……千反田か。
先程のギャンブルで大分勢いが付いている、一番危険なのはこっちかもしれんな。
【10】
える「10ですね」
える「ええっと」
【不思議な妖精が現れました。 願いを一つ叶えてくれます】
【全プレイヤーの中から一人を選び、その人の資産を10倍へとします】
える「10倍……ですか」
なんと言う事だ、こんなマスを考えた奴は碌な奴では無いな……
ええっと、今の千反田の手持ちは確か、3億くらいあった筈。
それが10倍になると……30億!?
摩耶花「2位争い、頑張ろうかな」
勿論、里志や伊原もその事実に気付く。
える「えっと、では折木さんの資産を10倍にしましょう」
奉太郎「え?」
思わず間抜けな声が出る、そしてその後に気付く。
これがもし、千反田の性質の悪い冗談だったとしたら……とんだ赤っ恥だ。
でも、俺は知っていたのかもしれない。
千反田はそんな冗談を言わない、と。
える「折木さんの資産を10倍に、と言ったんです」
える「先程のお礼です」
いや、女神か。
女神、チタンダエル……いい響きである。
摩耶花「ちょっと、優しすぎない?」
える「いいえ、折木さんが数字を当ててくれなければ、私は今も借金があった筈です」
える「それに、折木さんはそこまで資産を持っていないので……勝負が決まるという事も無くて、面白いと思いませんか?」
……最後の言葉は余計だ。
里志「あはは、ホータローのヒモ生活の始まりって所かな」
奉太郎「俺だって一応働いているぞ」
里志「ま、これで千反田さんには逆らえないね」
奉太郎「……」
確かに、里志の言う通り。
これで何かしらのマスを俺が踏み、千反田を蹴落としたらそれは酷い事になるだろう。
多分、人生ゲーム所では無くなるかもしれない。
そう言い、里志から金を受け取る。
今までの手持ちと合わせ、1億4千万。
最下位から一気に2位へと登り詰めた、なんとも大逆転の人生である。
そして回ってくる俺の順番。
奉太郎「よし、回すぞ」
【10】
里志「さっきから、10出すぎじゃない?」
奉太郎「1回、2が出たろ」
里志「それでもすごい確率だね……ホータローの早く終わらせたいって思いが届いてるのかもしれない」
奉太郎「それは嬉しい知らせだな」
奉太郎「えっと、マスは……」
奉太郎「外れたら旅行なのか? 意味が分からんな……」
里志「これ、ちゃんと最後まで読んだ方がいいよ」
【世界一周へと旅立ったあなたは、5回休み】
奉太郎「……くだらん」
里志「当てるしかないね」
里志「大丈夫さ、さっきも当てたじゃないか」
とは言っても……他人のだったから気軽に選べた、と言うのもあった。
それとは違い、今回は自分のである。
……それなら、そうか。
奉太郎「千反田、数字を選んでくれ」
奉太郎「さっきは俺が選んで当たったんだ、次は千反田が選べば当たる気がする」
える「大丈夫でしょうか……」
まあ、別に外れても千反田を責める事なんてしない。
える「では……7でお願いします」
里志「いいね、ラッキーセブンだ」
奉太郎「分かった、じゃあ回すぞ」
そして、俺はルーレットを回す。
出た数字は……
【1】
ううむ、やはり10%の確率と言うのは中々に手強い物だ。
奉太郎「いいさ、気にするな」
奉太郎「後は結果を見守るだけと言うのも、悪くないしな」
える「で、ですが……」
奉太郎「千反田、ルーレットを回したのは俺だ」
奉太郎「それに、お前に数字を選んでもらったのも俺だ」
奉太郎「お前は悪くない」
える「は、はい……」
俺がそう言うと、千反田は渋々と言った感じで頷いた。
これで俺のゴールは無くなったが……まあ、疲れていたし丁度良かったのかもしれない。
色々と頭を使うのは、もう終わりにしたかった。
里志「ホータローも動けない事だし、一発ゴールを狙いたいなぁ」
里志「……よし!」
【7】
里志「……ここで7とは、さっき出るべきだったのかもね」
奉太郎「いいじゃないか、マスには何て書いてあるんだ?」
里志「ちょっと待ってね、ええっと」
【本日は2倍デー! プレイヤー全員の資産はなんと、2倍となります!】
里志「うへ……厳しいなぁ」
里志「ちょっと千反田さんに追いつくのは無理かもね、これは」
摩耶花「ちーちゃんは無理にしても、ふくちゃんには負けないからね」
奉太郎「俺はここに居るだけで2位になれる可能性が上がっただけで満足だな」
俺がそう言うと、またしても伊原に睨まれる。
何もしていないのに、本当にただこのマスに留まっているだけなのに。
所持金 保険 マス
摩耶花 2億1400万 生 28マス目
奉太郎 2億8000万 生/車 38マス目
える 5億8400万 生 37マス目
里志 3億1200万 生/車 48マス目
【2】
摩耶花「……全然良いのがでないなぁ」
摩耶花「マス頼みね、これは」
【台風に巻き込まれる、しかし幸いな事に追い風となった! 1マス進みます】
摩耶花「たった1マスって……それに次のマスには何も無いし……」
里志「まあまあ、そんな事もあるさ」
摩耶花「ふくちゃんはいいかもね、次でほぼゴールできるから」
里志「あ、あはは」
怖い怖い、人生ゲームで仲違いとは……恐ろしいゲームだ。
える「次は私ですね」
【8】
える「ふふ、私にもゴールが見えてきました」
える「このマスも、何も無い様ですね」
える「ええっと、次は折木さんですが……お休みなので、福部さんですね」
里志「よし、流石にここでゴールしたい所だよ」
里志「後ろから千反田さんも追い上げてるしね」
里志「行くよ……!」
【1】
里志「……ちょっと酷いね、これは」
里志「自分の運の無さに驚きかな」
奉太郎「一つ一つ踏んで、人生を楽しんでいるって所が……里志らしいな」
里志「……それはどうも」
【一発逆転の大チャンス! ルーレットから数字を3つ選ぶ事ができます、当たれば資産が2倍になります!】
【しかし外れた場合、残念……資産は全て、消えて無くなります】
里志「ギャンブルマスかぁ……」
奉太郎「でも、今までのより確率的には良さそうだな」
里志「ううん、そうなんだけどねぇ」
奉太郎「なんだ、当たれば1位だぞ」
里志「……いいや、パス」
里志「僕にはギャンブルは向いてないからね、外れる気しかしないよ」
里志らしいと言えば、里志らしい選択だろう。
里志「ま、そういう事で次は摩耶花の番だよ」
摩耶花「私はもうゴールできる気がしないんだけど……まあいっか」
【9】
摩耶花「9だね、もっと早く出てくれればいいのに!」
【あなたは決闘をする事になりました! 一人を選び、ルーレットで勝負をします】
【数字が大きい方の勝利、勝てば相手から1億円を受け取ります】
【負けた場合、あなたは相手に1億円を支払います】
摩耶花「嫌なマスだなぁ……」
伊原は確か……今の資産は2億程だろうか?
なんだか途中から計算が面倒になってきて、数えるのをやめてしまったが……恐らくその程度だろう。
2位を狙うなら相手は里志、可能性は限りなく薄いが1位を狙うなら千反田、と言った所か。
俺も選ばれる可能性はあったが……勝ったとしても始めにゴールするだろう里志には勝てなくなってしまう。
だとすると、選ばれるのは先程挙げた2名の内どちらかだ。
ふむ……伊原も中々に勝負師だな。
える「受けて立ちます!」
千反田はそう言い、ルーレットに手を伸ばす。
える「最初は私でいいでしょうか?」
摩耶花「うん、いいよ」
える「では、回します」
そう言うと、ルーレットをゆっくりと回した。
【2】
なんと、ここで2を出すのか……
さっきのギャンブルやイベントマスで、運を使い果たしたのかもしれない。
える「2ですか……」
摩耶花「ごめんね」
そう言うと、伊原も続いてルーレットを回す。
【1】
摩耶花「……」
前言撤回、こいつの方が運は無いようだ。
える「……勝っちゃいました」
摩耶花「うう……ちーちゃん強すぎる」
奉太郎「千反田が強いと言うよりは、お前が弱いと言う方が正しいと思う」
摩耶花「なによ、じゃあ私と勝負する?」
奉太郎「お前がまたそのマスを踏めたなら、受けて立つさ」
摩耶花「……ふん」
俺がここまで挑戦的なのにも、理由がある。
里志は次でゴールするからである。
それならばもう、伊原に何を言っても俺に災いは降りかからない。
える「では」
【2】
える「やはり、ゴールは厳しかった様です……」
里志「はは、それだけは譲れないよ」
奉太郎「どの道、千反田の勝ちだろうけどな」
奉太郎「それより、マスには何て?」
える「ええっとですね」
【流れ星が降り注ぐ中、あなたはお願いをしました】
【そんな願いを星達は叶えてくれます、プレイヤーを一人選び、選ばれた方の資産を0にします】
いや、それは分かるが。
千反田がそんな願いをしない事くらい、ここに居る全員が分かっているだろう。
奉太郎「里志を選べば俺が2位」
里志「摩耶花かホータローを選べば僕が2位って事だね」
える「選べませんよ……そんなの」
難しい選択かもしれないが、選ばないとこのゲームは終わらない。
奉太郎「俺を選んで終わらせよう、別に俺は順位等気にしない」
える「それは……それは分かりますが」
……分かるのか。
える「でも、それでも出来ません」
俺はこの時、千反田が誰を選ぶのかが分かった。
それはもう、ほとんど確信と言っていいかもしれない。
そう言うと、千反田は何かを思いついた様に目を見開く。
える「プレイヤーと言う事は、人生ゲームをやっている人達ですよね」
える「それではですね、私は」
える「私を選びます」
……やはり、そうなるか。
奉太郎「お前ならそう言うと思った」
える「え、どうしてですか」
奉太郎「そういう奴だから……って思っただけさ」
える「ふふ、そうですか」
里志「やっぱり、千反田さんには適わないなぁ」
摩耶花「そうね、順位なんてどうでもよかったのかも」
える「駄目ですよ、ちゃんとゴールしてください」
里志「了解、じゃあ最後に……回すね」
里志「最後にようやく10とはね、僕も運が悪い」
える「そうでもないですよ、福部さんが1位です」
奉太郎「ま、あって無い様な物だろう」
里志「ホータローの言う通りさ、今回のは引き分けって所かな」
摩耶花「そうね、また今度……やろっか」
奉太郎「却下で」
摩耶花「何よ、もう」
とにかく、物凄く長い人生ゲームはこれにて終わり。
後は片付けて……帰るだけだ。
奉太郎「じゃあ、片付けるか」
奉太郎「手短に終わらせて、真っ直ぐ帰ろう」
里志「まー、結果よりは過程が楽しかったかな、僕は」
摩耶花「あ、それちょっと分かるかも」
える「ふふ、私もですよ」
奉太郎「俺は……ちょっと違うな」
摩耶花「違うって、楽しくなかったの?」
奉太郎「……そう言う訳では無いが」
奉太郎「どちらかと言うと……」
里志「ホータローは、結果も過程もどっちでも良い、ってタイプだから」
奉太郎「……そういう事だろうな」
奉太郎「付け加えると、とっとと片付けて真っ直ぐ家に帰りたいタイプだ」
摩耶花「じゃ、そんな折木の意見を尊重して片付けようよ」
摩耶花「私もなんだか疲れちゃった」
これにて一件落着……とは行かない。
里志「ちょっと待って」
里志「人生ゲームと言ったらさ、あれがあるじゃないか」
……あれ、とは何だろうか。
いやむしろ、まだやる事があるのか?
俺のした考えは、千反田や伊原もしていた様で、顔に困惑が浮かんでいる。
そう言いながら、里志が指を指すのは自分の手元にある紙。
正確に言うと、銀行の役目を担った里志が持っている金。
……まさか。
奉太郎「おい! やめろ馬鹿!」
どうやら千反田と伊原はまだ気付いていない。
それが手遅れとなってしまった。
里志は……そこにあった大量のお金を、宙へとばら撒いた。
奉太郎「とんだ災難だった……」
える「私も最初はびっくりしましたよ」
奉太郎「最初だけだろ、最後はお前も笑ってばら撒いてたぞ」
える「は、恥ずかしいのであまり言わないでください」
さいで。
奉太郎「にしても、本当に余計な時間を食ってしまった……」
える「たまにはいいじゃないですか」
奉太郎「ほとんど毎日の様な気がするんだが」
える「それでもいいじゃないですか」
奉太郎「……はあ」
そんな事を話しながら、千反田の家へと向かっていた。
何故かは分からないが、今年に入ってからと言う物、千反田を家まで送っていくのが習慣となっていたのだ。
真っ直ぐ帰る事が出来るのは……いつになるのだろうか。
突然、何かを思い出したかの様に千反田が口を開く。
える「少し、気になる事があるんです」
奉太郎「今からか? 明日にしてくれ」
える「いいえ、折木さんはもう答えを知っている事ですよ」
何だろうか……まあそれなら、いいか。
奉太郎「……何だ?」
える「私が、ギャンブルに勝った時……」
える「折木さんは何故、6を選んだんですか?」
える「何か、理由があった様ですが」
奉太郎「ああ、あれか」
奉太郎「……言わなきゃ駄目か」
える「はい、気になります」
……本当に単純に、浮かんできた数字なんだが。
まあでも、千反田に嘘を付く理由も……無いか。
奉太郎「千反田える」
える「え?」
奉太郎「それで、6文字だ」
奉太郎「だから6を選んだ」
える「ふ、ふふ」
える「そうでしたか……なるほどです」
奉太郎「単純な理由さ、特に意味も無い」
える「でも私は、他にも良い数字はあると思いますよ」
奉太郎「他にも良い数字?」
俺はしばし、腕を組みながら考える。
しかし答えは出ず、千反田に答えを求めた。
奉太郎「教えてくれるか」
える「ええ、勿論」
える「えっとですね……」
える「9や、5も良かったと思います」
9に……5?
千反田が言った数字の意味が俺には分からなかったが、わざわざ聞くのもあれだな。
家も見えてきた事だし、時間がある時にでも考えればいいか。
える「ふふ、折木さんには分かると思いますよ」
奉太郎「……そうだな、考えておく」
える「ええ、宜しくお願いします」
それから千反田と別れ、俺は家に帰る。
その数字の事を思い出したのは、風呂に入り……布団の中で目を瞑っていた時だ。
奉太郎「……9と5」
……まさか。
……いや、それしか無い。
俺はその数字の意味に気付き、顔に熱が篭るのを感じながら、目を閉じた。
第11話
おわり
第1章
おわり
Entry ⇒ 2012.10.30 | Category ⇒ 氷菓SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
咲 「この本なんだろ……。『まーじゃん部昔話』?」
『モモ太郎』
むかーしむかしのことです。
あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは山へ芝刈りに、
大沼プロ 「裏鬼門へ行ってくる」
おばあさんは――
小鍛冶 「アラサーだよっ!」
――川へ洗濯にいきました。
おばあさんが川でせんたくをしていると、
桃子 「ドンブラコっすよー。もひとつ、ドンブラコっすよー」
と大きなモモが川上から流れてきました。
たいへん立派なモモでしたが、おばあさんはその存在に気づくことなく、
桃子 「ドンブラコっすよー。ドンブラコっすよー……。ょー……」
川下へと流れて、消えてしまいましたとさ。
『モモ太郎』 了
『北風と太陽』
あるところに、いつも競っている北風と太陽がいました。
洋榎 「なあ太陽、ウチのほうが凄いのはわかっとるんやろ?」
胡桃 「私のほうが優れてるに決まってるでしょ!」
売り言葉に、買い言葉。二人は北風の提案により、
「旅人の上着を脱がせることはできるか」という勝負で決着をつけることにしました。
そして、早速二人の前に旅人がやってきました。
宥 「……」
洋榎 「ほな、うちからいくでー」
胡桃 「負けない……」
旅人は夏であるにも関わらず、上着を羽織り、マフラーをしています。
北風はそんな旅人の前に降り立ち、こう言いました。
洋榎 「北風がキタでー!」
宥 「さ、寒い……」 ブルブル
胡桃 (馬鹿みたい……)
北風のダジャレがよっぽど寒かったのか、
旅人は両腕を体に回し、しっかり上着を押さえ座りこんでしまいました。
洋榎 「なんで今のダジャレで笑わんのやっ!」
胡桃 「じゃあ、次は私がいくよー」
今度は、太陽の番です。
太陽は座り込んでいる旅人の前に立つと――
おもむろに旅人のひざの上に座りました。
胡桃 「充電! 充電!」
宥 「!」
胡桃 (一見、わけのわからない行動に見えるけど……)
胡桃 (体を寄せ合うことにより暑くさせて、服を脱がせる作戦!)
無鉄砲な北風の作戦に対して、策を擁した太陽でしたが――
宥 「あったか~い……///」 ムギュウウウウ
胡桃 「ぎゃー! あついよー!」
逆に抱きしめられ、暑さで慌てて退散したのでした。
洋榎 「今回は、引き分けのようやなー」
胡桃 「……次は負けない!」
今回の勝負は引き分けに終わってしまいました。
北風と太陽はきっと、またこうやって勝負を繰り返すのでしょう。
洋榎 「しかし、ウチのダジャレが滑るとはなー」
胡桃 「あれはないでしょー。私の作戦は良かったと思うんだけどなー」
洋榎 「策士策に溺れる、やな」
胡桃 「むぅ……」
洋榎 「まあ、なんや。勝負したら腹減ったなー。一緒に飯でも食いにいこか?」
胡桃 「うん!」
ただ、なんだかんだで、仲が良いようです。
喧嘩するほど仲が良い、まさにそんな関係の二人でした。
『北風と太陽』 了
『かさこ地蔵』
むかしむかし、あるところに貧乏なおじいさんとおばあさんがいました。
貧乏をしのぐために、おばあさんは笠をこさえ、大晦日におじいさんは街に売りにでかけました。
すると、おじいさんは道すがら、六体のおじぞうさまを見つけました。
おじぞうさまの頭には、雪が積もってしまっています。
副会長 「ああ、気の毒に。そうだ、笠はいっぱいあるからかぶせてあげよう」
衣 「……」
副会長 「……あり」 ポスッ ←笠をかぶせる音
衣 (わーい)
一 「……」
副会長 「……あり」 ポスッ
一 (あり、ってなんだろう……)
胡桃 「……」
副会長 「……あり」 ポスッ
胡桃 (……きもちわるい)
健夜 「……」
副会長 「……ババアはなし」
健夜 (まだアラサーだよっ!)
漫 「……」
副会長 「う~ん……」
副会長 「……なし」
漫 (な、なんでやっ!?)
晴絵 「……」 ドキドキ
副会長 「……チッ」
晴絵 (えっ)
マホ 「……」
副会長 「……ど」
マホ (……ど?)
副会長 「……どストラーイクッ!」 ポスポスポスポスポスポスッ!
マホ (きゃ、きゃああああああああああ!)
――――きゃあああああああああ!
―――きゃあああ……
――ぁぁ……
―……
副会長 「というわけで笠が無くなったんですけど」
副会長 「これ――緊急案件でOKですよね?」
久 「今すぐ出てって」
『かさこ地蔵』 了
『おおきなカブ』
ゆみ 「出席をとるぞ。蒲原」
智美 「あい」
ゆみ 「妹尾」
佳織 「はい」
ゆみ 「モモ」
桃子 「はいっす」
ゆみ 「津山」
睦月 「うむ」
ゆみ 「津山……返事が小さいぞ」
睦月 「……!」
ゆみ 「気合をいれろ! 津山!」
睦月 「……うむ!」
ゆみ 「もっとだ! 津山!」
睦月 「うむっ!!」
ゆみ 「やればできるじゃないか、さあ練習を始めるぞ」
桃子 (大きなウム、っすね)
『おおきなカブ』 了
『さるかに合戦』
むかーしむかしのことです。
あるところに、サルとカニがいました。
穏乃 「ウッキー!」
洋榎 「今度はカニかいっ! ……自分、ノリノリやな」
穏乃 「ウッキキー!」
ある日、サルとカニが一緒に遊んでいると、
カニはおにぎりを、サルは柿の種を拾いました。
洋榎 「おー、うまそうなおにぎりや!」
洋榎 「さっそく、頂くでー」
穏乃 「……」 ジーッ
洋榎 「……なに、こっち見てんねん」
穏乃 「……」 ダラダラ
洋榎 「ヨダレぎょーさん垂らして、これ食べたいんか?」
穏乃 「……!」 コクコク
洋榎 「すまんな、これはウチが拾ったんや。諦めてくれ」
穏乃 「あきらめるわけがない!」
洋榎 (……うざい)
そこには、とてもしつこいサルがいました。
サルがあまりにしつこいので、カニは柿の種とおにぎりを交換してあげました。
穏乃 「やったー! カニさん、ありがとうございます!」
洋榎 「ええよー。ウチは柿の種を育てて、ぎょーさん柿を食ーたるでー」
カニはサルからもらった柿の種を庭に埋めると、妹と一緒に丁寧に世話をし始めるのでした。
洋榎 「早くおっきく、おっきくなるんやでー」
絹恵 「秋にはいっぱい実をつけてるんやでー」
洋榎 「絹みたいにおっきな実をつけるんやでー」
絹恵 「お姉ちゃん、セクハラは柿ちゃんの成長に悪影響やで!」
二人の気持ちがしっかり届いたのでしょうか。
やがて柿の種は芽を出し、木へと成長し、豊かな実をつけました。
絹恵 「やったー! ウチらもやればできるなー」
洋榎 「せやろー! さすがやろー!」
二人はオレンジ色に彩られた、大きな柿の木を見上げます。
絹恵 「おいしそう……」
洋榎 「今から食べるんやで……」
絹恵 「ウチらはどう考えても……」
洋榎 「カニ組……!!」
絹恵 「そこは、勝ち組とちゃうんかい!」
しかし、二人はここで大変なことに気がつきました。
大きな柿の木を見上げ、そして自分たちの体を確認します。
洋榎 「甲殻類に、この木を登れっちゅーのはちょっときついで」
絹恵 「甲殻類の悲しいところやな……」
すると、打ちひしがれる二人のもとにサルがやってきました。
穏乃 「うっきー! カニさんたち、どうしたんですか?」
洋榎 「実はな、サルからもろーた柿が実になったんやけど」
絹恵 「ウチらじゃ、木に登ることができへんのや」
穏乃 「じゃあ、私に任せてください!」
そう言うと、サルはするすると木を登っていきます。
そして、ほどよく熟した柿をもぎとると、もぐもぐと食べ始めました。
穏乃 「ハムッwww ハフハフ、ハフッwwww」
絹恵 「サルさーん!?」
洋榎 「あいつ、ウチらが育てた柿をひとり占めするつもりやで!」
穏乃 「うめぇwwwwwwwwww」
サルの身勝手な行動に、カニさんたちは怒ります。
絹恵 「エテ公、しばいたるどっ!」
洋榎 「こらーっ! ウチらにも柿をよこさんかい! ウチらが育てたんやで!」
穏乃 「確かにその通りです。でも……」
穏乃 「食わせるはずがない!」
そこには、とても腹立たしいサルがいました。
穏乃 「そんなに柿が食べたいなら、これでもどうぞ!」
サルはそう言うと、カニたちに向かってまだ青い上柿を投げました。
恵 「あたしゃ、いつも通り食われて、栄養となりますよ」 ヒューッ
しかし、サルのコントロールが悪かったのか、
まだ青い上柿は、そのまま地面へとぶつかりました。
絹恵 「これはもう食われへんなぁ」
洋榎 「せやな」
恵 「えっ」
ふと冷静になった二匹でしたが、サルに対する怒りは収まりません。
そこで二匹はサルを懲らしめるために、友達に協力してもらうことにしました。
洋榎 「作戦はこうや。まずはクリ、あんたが高火力でサルを火傷させる」
玄 「おまかせあれ!」
洋榎 「するとサルは火傷を直すために、水がめのところへいく」
洋榎 「そこであんたの出番や、ハチ」
洋榎 「水がめに隠れて、おもっくそコークスクリューツモをくらわせたれ」
照 「……ああ」
絹恵 「最後はウスさんですね」
純代 「……」
絹恵 「サルが慌てて家から飛び出したら」
絹恵 「屋根の上からサルめがけて思いっきり飛び降りてください」
純代 「……わかった」
洋榎 「懲らしめるのが目的やから、みんなほどほどになー」
洋榎 「そしたら、作戦開始やで!」
クリとハチはそれぞれの位置につき、サルの帰りを待ちます。
そして、最後にウスが屋根に登りはじめました。
絹恵 「お、お姉ちゃん。大丈夫かな、家が揺れてるで」
洋榎 「ウスが思ってたより重いみたいやな……」
そして、とうとうウスが屋根の上にたどり着こうとしたとき――
純代 「どっこいっしょ……あっ」 バギッ
洋榎 「あっ」
絹恵 「あっ」
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ドガシャーン!
――サルの家が潰れました。
サルが家に帰ると、そこには木片の山があるだけでした。
穏乃 「なんだこれ……」
そのそばには、カニたちがバツの悪そうな顔をして立っています。
そして、二匹はサルに事の顛末を話します。
洋榎 「ちょっとあんたを懲らしめようと思っただけなんや……」
洋榎・絹恵 「ほんまに、ごめんなさいっ……!」
穏乃 「家が壊れた、寝床もない、食料もない。でも……」
穏乃 「……諦めるわけがない!」
サルはそう言うと、木片の山を黙々と片付け始めました。
カニさんたちはその姿を、唖然とした表情で見つめます。
穏乃 「家が壊れちゃったのはショックだけど」
穏乃 「もとはといえば、私のせいだから……頑張って、家を建て直すよ」
そこには、とても頑張り屋なサルがいました。
汗をたらしながら、サルはせっせと片づけを続けます。
その姿を見ていたカニさんたちは……一緒に片付けを始めました。
穏乃 「……!」
洋榎 「……ウチらにも、手伝わせてくれへんか」
絹恵 「せやせや、やっぱり家が壊れたのはウチらのせいやしな」
穏乃 「……ありがとうございますっ!」
三匹は満面の笑顔で、仲直りをすることができました。
――崩れた家の下
玄 「助けてお姉ちゃん……」 ブルブル
照 「暗いところ怖いよー……」 ガクガク
純代 「私だけ道具……」
※このあと助け出されました。
『さるかに合戦』 了
『ピノキオ』
むかしむかし、子どもの好きな時計職人のおばあさんがいました。
しかし、子どもがいないおばあさんは、かわりに木のあやつり人形をつくりました。
おばあさんは、人形にピノキオという名前をつけました。
そして、不思議なことにピノキオは自ら動き、自ら喋るのでした。
豊音 「おばーさん! おはようございます!」
トシ 「あら、ピノキオは今日も早起きねぇ。昨日は夜更かししなかった?」
ピノキオには、とても不思議な特徴がありました。
豊音 「うん! ちょーぐっすり寝たよー……って、うわわ!」 グィーン!
トシ 「あらあら……。昨日はオリンピックが放送されていたからねぇ」
ピノキオは嘘をつくと、背が伸びるのです。
ここ一年、ほぼ毎日嘘をついた結果、ピノキオの身長は30メートル程になってしまいました。
いくらなんでも酷過ぎるwww
そして現在、日本のシンボルとして聳え立っている東京ス○イツリー。
その支柱となっているのは、何を隠そう、背が伸び続けたピノキオなのです。
豊音 「今日も観光客がいっぱいだよー」
豊音 「昔は都会や有名人に憧れてたけど」
豊音 「今や私は見られる側なんだねー」
すると、そこへ四人の少女がやってきました。
エイスリン 「スカイツリー、タカイ!」
胡桃 「エイちゃん、走っちゃだめだよ!」
塞 「ほらシロ、しゃきっとして」
白望 「……だるい」
豊音 「なんだか楽しそうな子たちがきたね」
豊音 「友達になりたいなー……」
ピノキオは思い切って、少女たちに話しかけてみることにしました。
豊音 「あのー……」
塞 「今、誰か話しかけた?」
エイスリン 「?」
胡桃 「頭大丈夫?」
塞 「ひどっ! でも、確かに聞こえたんだけどなぁ」
豊音 「あの!」
胡桃・エイスリン・塞 「!」
塞 「今、確かに聞こえたよね!?」
胡桃 「う、うん……シロ?」
白望 「……そこ」
シロと呼ばれた少女が指さした先には、スカイツリーの中心部から顔を出すピノキオがいました。
四人はあまりの大きさに腰が引けてしまいましたが、話をするうちに打ち解けていました。
塞 「なんで、そんなに大きくなっちゃったの?」
豊音 「私、嘘をつくと背が大きくなるんだー」
胡桃 「!」
塞 「すごい特異体質だね……。胡桃、どうしたの?」
胡桃 「わ、わたし! 実は男の子なんだ!」
塞 「は?」
エイスリン 「?」
白望 「……」
胡桃 「……」 ドキドキ
胡桃 「……」 ズーン
塞 「胡桃はなんで落ち込んでるの?」
白望 「……背が伸びると思ったんじゃない」
豊音 「ちょーかわいいよー」
エイスリン 「ピノキオ!」
豊音 「エイスリンさん、どうしたの?」
エイスリン 「ピノキオ、シンチョー、イクツ?」
豊音 「身長かー。今は1000メートルぐらいかなー」
豊音 「って冗談だよ!」
塞 「あっ」
胡桃 「あっ」
エイスリン 「アッ」
豊音 「あっ」
白望 「……ダルい」
豊音 「ち、違うの! 今のはなしいいいいぃぃぃぃぃぃぃ……!」 グィーン
――2012年・東京ス○イツリーは崩壊し、日本は世紀末を迎えた。
『ピノキオ』 了
『おおきなカブ・2』
純代 「……」
華菜 「……大きなデブ」
純代 「ふんっ!」 バキッ!
華菜 「ぬぎゃー!」
『おおきなカブ・2』 了
『浦島太郎』
むかしむかし、ある村に浦島太郎というやさしい心をもった若者がいました。
智美 「蒲原太郎じゃないぞ~」 ワハハ
智美 「蒲焼さん太郎でもないぞ~」 ワハハ
今日は釣りをするために、海辺へとやってきました。
するとなにやら騒がしい声がします。
そちらを見ると、子どもたちが大きなカメをいじめていました。
緋菜 「えい! ひっくりかえしてやるし!」
菜沙 「とー! 棒でつっついてやるし!」
城菜 「とりゃ! まいったといえし!」
華菜 「いたいっ! 痛いからやめろしっ!」
智美 「なんか色々とおかしいな~」 ワハハ
カメが色々と可哀想だったので、浦島太郎は助けてあげることにしました。
智美 「おい、お前たち。カメをいじめちゃダメだぞ~」 ワハハ
緋菜 「おまえ誰だし!」
菜沙 「邪魔するなし!」
城菜 「代わりにいじめてやるし!」
智美 「……いじめられるのって辛いんだぞー」 ワハハ…
緋菜 「……なんかごめんだし」
菜沙 「……そのうちいいことあるし」
城菜 「SSでいじめられたぐらいでめげるなし!」
浦島太郎の大人の説得で、子どもたちもカメをいじめるのをやめて引き上げていきました。
華菜 「そろそろまぜろよ」
智美 「なんだ、1レス出番なかっただけなのにでしゃばりだな」 ワハハ
華菜 「……とりあえず、ありがとうだし」
智美 「なーに、気にするなー」 ワハハ
カメは助けてもらったお礼に、浦島太郎を竜宮城へ連れていくことにしました。
浦島太郎を背中の甲羅に乗せると、カメは海の底へともぐっていきます。
華菜 「竜宮城はとても綺麗なとこなんだ」
智美 「ごばばばばばば、ばぼっ」 ガババ
華菜 「姫様も仕え人もみんな良い人だから、楽しみにしてろし!」
智美 (い、息が……)
やがて、竜宮城へと到着しました。
浦島太郎は途中何度も気を失いましたが、
苦行には耐性があるのか、なんとかもちこたえました。
華菜 「ほら、竜宮城に到着だし!」
智美 (綺麗なとこだなー) ブクク
竜宮城はこの世のものとは思えない、とても美しいものでした。
見たこともないような色とりどりの魚が泳いでいたり、緑色のわかめが揺らいでいたり。
浦島太郎は、その光景を見れただけで満足してしまいました。
華菜 「姫様ー! 客人の到着だし!」
カメが叫ぶと、竜宮城の奥から女性があらわれました。
小蒔 「ようこそいらっしゃいました。カメを助けてくださったそうですね」
智美 (……!)
女性は――とても綺麗でした。
さきほど感動を受けた竜宮城ですら霞んでしまう、そんな美しさを備えていました。
智美 「がばっ! ごぼぼっ!」 ガババ
小蒔 「まだ水中に慣れていないみたいですね。これは失礼いたしました」
小蒔 「……えいっ」 パチッ
姫様が指をならすと、浦島太郎はたちまち呼吸ができるようになりました。
智美 「おおー、一気に楽になったぞー」 ワハハ
それからというものの、浦島太郎は竜宮城でとても楽しい時間を過ごしました。
姫様と語らい、
小蒔 「私、友達ができて嬉しいです!」
智美 「まだまだ、いっぱい遊ぼうなー」
従者たちと遊び、
霞 「ほら、水中だとおっぱいが浮くのよ」
初美 「浮かないですー」 グスッ
智美 「私もだー」 ワハハ
美味しいものを食べ、
巴 「今日はウミガメのスープですよ」
華菜 「にゃっ!?」
智美 「おー、うまそうだなー」 ワハハ
春 「……」 ポリポリ
智美 「春はなにを食べてるんだー?」 ワハハ
春 「……サンゴ」
素敵な海の底の景色を眺めて……。
智美 「綺麗だなー……」 ワハハ
しかし、馴れとは恐ろしいものです。
十日もすると、浦島太郎は竜宮城に飽きてしまいました。
智美 「おーい、姫様ー」 ワハハ
小蒔 「太郎さん! 今日はなにをして遊びましょうか?」 ニコニコ
智美 「いやー、実は……そろそろ地上に帰ろうと思うんだ」 ワハハ
小蒔 「えっ……」
智美 「そろそろみんなも心配しているだろうし、私も家族が恋しくてなー」
小蒔 「そうですか……。残念ですが仕方ありませんね、それではお見送りをしましょう」
浦島太郎の帰り支度が済むと、従者や大勢の魚たちがお見送りをしてくれました。
さらに姫様から「絶対に開けてはいけませんよ」、と大きな玉手箱をお土産にもらいました。
帰りもカメに送ってもらい、浦島太郎は十日ぶりに地上へと出ました。
しかし、辺りを見回すと以前と様子が違います。
智美 「おかしいなー。私の家がないぞー」 ワハハ
あるべき場所に浦島太郎の家はなく、
また、いるべき場所に浦島太郎の家族はいませんでした。
智美 「どういうことだ……。おっ、第一村人発見だ」 ワハハ
智美 「おーい!」
健夜 「……はい?」
村人に事情を聞くと、どうやら浦島太郎が竜宮城へ行ってから、十年の歳月が経っているようでした。
竜宮城での一日は、地上での一年だったようで、浦島太郎は大きなショックを受けました。
智美 「でも、十年しか経ってないのに、なんで私の家と家族はいないんだ?」 ワハハ
健夜 「あ、浦島さんでしたら、お父さんに問題があったみたいで」
健夜 「朝寝と朝酒と朝湯が大好きで、数年前に身上をつぶしたみたいです」
智美 「そりゃーもっともだー」 ワハハ
智美 「色々とありがとうございました。アラサーの村人さん」 ワハハ
健夜 「もうアラフォーだよ!」
帰る家もなく、迎えてくれる家族もなく、浦島太郎はとうとう一人ぼっちになってしまいました。
浦島太郎は海辺に座り、沈み行く夕陽を眺めながら、一人で「ワハハ」と笑い続けました。
そして、ひとしきり笑った頃には、空は満天の星空となっていました。
智美 「さーて、これからどうするかなー……」 ワハハ…
途方に暮れた浦島太郎は、そこでふと姫様から貰った玉手箱を思い出しました。
地上で孤独になった浦島太郎は、「絶対に開けてはいけない」という姫様の忠告など、もうどうでも良くなっていました。
智美 「どうせもう、私はひとりぼっちだしなー」 ワハハ…
智美 「開けちゃうか」 ワハ…
浦島太郎は意を決して、玉手箱に手をかけました。
智美 「なにが出るかな、なにが出るかな、ワハハッハッハ、ワハハハ」 パカッ!
睦月 「……」
智美 「……」
睦月 「……」
智美 「……お前も一人かー?」 ワハハ
睦月 「うむ」
智美 「それじゃあ、二人で暮らすかー?」 ワハハ
睦月 「うむ」
智美 「そうかー、ありがとうなー。家事はできるか?」 ワハハ
睦月 「うむ、私なりに精一杯……」
智美 「そうかー。それじゃあ、今日からよろしくなー」 ワハハ
睦月 「うむ」
それから十数年、浦島太郎と寡黙な少女は、
末永く、末永く、二人で仲良く暮らしていきましたとさ。
『浦島太郎』 了
『三年寝太郎』
星夏 「……」
久保 「……」
星夏 「……コーチ」
久保 「!!」
久保 「……な、なんだ、文堂」
星夏 「私、こうやって高校生活の三年間、両目を閉じてましたけど」
星夏 「寝てたわけじゃありませんからね」
久保 「……そ、そうか」
星夏 「……」
久保 「……」
『三年寝太郎』 了
『金のオノ 銀のオノ』
むかしむかし、ある森の中で木こりたちが木を切っていました。
未春 「……よいしょっ」 ギコギコ
星夏 「……よいしょっ」 ギコギコ
純代 「……」 バキッ バキキッ
久保 「手を休めるなよ! 特に……」
久保 「池田ァ!」
華菜 「は、はいぃぃ!」 ギコギコ
木こりたちは仕事に精を出し、せっせと木を切り続けます。
そしてしばらく経ち、お昼休憩を取ることにしました。
久保 「よーし、休憩だ。みんなでお昼を食べるぞ」
久保 「こんな木屑が舞ってるところでご飯を食べるのもなんだからな」
久保 「少し歩いて、景色の良い所にいこうか」
木こりたちはお弁当を手に持ち、森の中をてくてくと歩き始めました。
そしてしばらくすると……一面に水面が広がる、ひらけた空間に出ました。
久保 「これは……」
久保 「池だァ!」
未春 「湖ですね」
久保 「そ、そんなことはわかってる……///」
華菜 「……」
久保 「なに笑ってんだ池田ァ……」
華菜 「え!?」
星夏 (完全な言いがかりだ……)
久保 「お前、私がハイキングにいったら」
久保 「山田君の前で『山だァ!』って言うキャラだと思ってんだろぉ……?」
華菜 「は? え、いや、全然そんなこと思ってないです!」
未春 (意味がわからない……)
久保 「これはお仕置きだな! おい、深堀!」
純代 「……」
華菜 「え、ちょ、ちょっとまって! いや、に、にゃあああああああああ!」
深堀と呼ばれた少女は、片手で池田を掴むと、池に放り込みました。
湖は大きな水しぶきをあげ、一瞬で池田を飲み込んでしまいました。
未春 「か、華菜ちゃん……!」
すると次の瞬間――湖から、とても美しい女神が現れました。
美穂子 「あなたたちが落としたのは、この娘ですか?」
緋菜 「ひなちゃんだし!」
久保 (か、可愛い……///)
星夏 「いえ、ちが―― 久保 「それだァ!」
未春 「え?」
美穂子 「それとも、この娘ですか?」
菜沙 「なずなちゃんだし!」
久保 (か、可愛すぎて鼻血が……)
久保 「そいつも貰っておこうかァ!」
星夏 (もう滅茶苦茶だ……)
美穂子 「最後にもう一人、この子もいかがですか?」
城菜 「しろなちゃんだし!」
久保 (も、もう、可愛すぎて……だめだあああ!)
久保 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ジャバーン!!
未春 「自ら飛び込んだ!?」
久保 「池だァ! ガボッ、池田ァ! ガボボッ、ガボダァ!」 バジャバジャ
未春 「……」
星夏 「……」
純代 「……」
美穂子 「……」
美穂子 「あなたたちが落としたのは、この久b 未春 「いえ、違います」
『金のオノ 銀のオノ』 了
『かぐや姫』
むかしむかし、竹を取って暮らしている夫婦がいました。
働き者の、お父さん。
純 「俺は女だっつーの!」
しっかりものの、お母さん。
透華 「しっかり働いて、稼ぎますわよ!」
二人は決して裕福な暮らしをしているわけではありませんでしたが、
つつましく、幸せな生活を送っていました。
ある日のこと、お父さんが竹やぶにいくと、根元が光っている不思議な竹を見つけました。
純 「へー、珍しい竹だな。金銀財宝が眠ってたりして」
おじいさんは強欲な一面を見せると、斧を一閃――
純 「うおりゃああああああああ!」
衣 「うわああああああああああ!」
――竹を切り落としました。
衣 「ひぃぃぃぃ……」 ブルブル
純 「こ、こ、こここここここ」
衣 「こ、怖いよぉ……」 ブルブル
純 「子ども!?」
衣 「こ、ここここここ子どもじゃない! わ、私は――」
純 (どうする? 喋ってるし、放っておいても大丈夫か?)
純 「いや――放っておけねぇ!」
玉のように美しい子どもを見つけたお父さんは、大喜びで腕に抱えて家につれて帰りました。
子どものいなかったお父さんとお母さんは、たいそう喜びました。
そして二人はその子を「かぐや姫」と名づけ、たいそう可愛がって育てました。
幾年の月日が経ち、かぐや姫はすくすくと背は伸びませんでしたが、美しく成長しました。
そしてお父さんの家業も順調で、一家は使用人を雇えるほど裕福な家になりました。
裏は竹林、表には広がる海。そんなところに、彼らの家はありました。
衣 「智紀! 一! 今日も一緒に遊ぶぞー!」
一 「今いきますよ、姫様」
智紀 「……今日は何をする?」
透華 「ふふ、まるで三姉妹のようですわね」
純 「ああ、二人とも良い子で良かったなー」
衣 「純! 透華! 二人も一緒に遊ぼうぞ!」
純 「ほら、姫に呼ばれたぞ」
透華 「ええ、行きましょうか」
かぐや姫を中心として、五人は毎日仲良く暮らしていました。
しかし、お父さんとお母さんは、かぐや姫のことで憂慮していることがありました。
衣 「……月が近い」
かぐや姫は満月の夜になると、いつもの無邪気さを失い、
一転、冷たいまなざしを空に向けるのです。
透華 「……」
純 「……」
一 「……」
智紀 「……」
そんな日の姫には、誰一人近づくことすらできないのでした。
次の満月の夜のことでした。
とうとうかぐや姫が両親に、話を切り出しました。
衣 「……純、透華。話がある」
透華 「……なんですの」
衣 「実は私は……月の世界のものなのだ」
純 「……!」
衣 「今まで二人に育ててもらったが、今宵月が満ちたとき……」
衣 「私は、月に帰らなければならぬ」
透華 「そんなっ……!」
純 「……そんなこと、認められるかよっ!」
二人は悲しみ、怒り、嘆きました。
そして使用人とも話し合い、今夜四人でかぐや姫を守ることを決めました。
その日は、五人一緒の部屋で過ごしていました。
今までの思い出を語り合いながら、今生の別れとわかっているかのように。
かぐや姫を守ると決めていながらも、予期するところがあったのでしょう。
ふと、使用人の一が空を見上げました。
赤い空が、夕闇へと変わり、そして黒に染まっていきます。
一 (夜の帳がおりてくる……)
そのときでした。
衣 「……きた」
純・透華・智紀・一 「!!」
かぐや姫の呟きと同時に、夜空が金色に光ります。
やがて光が薄らぐと、月より黒服の使者がまいおりてきました。
ハギヨシ 「衣様、お迎えにあがりました」
衣 「出迎えの大儀、ご苦労であった」
ハギヨシ 「父君と母君が、衣様のお帰りを心待ちにしておられます」
衣 「……わかっておる」
純・透華・智紀・一 「……」
四人は動かなければいけない、とわかっていながらも、
月よりの使者の神々しさ、奇怪さに気圧され動くことができませんでした。
そして、そんな四人に対して、かぐや姫は惜別の言葉を紡ぎます。
衣 「純、透華、一、智紀……」
衣 「生まれてこの方、私は何も知らなかった」
衣 「父の力強さも」
衣 「母の愛も」
衣 「姉妹の触れ合いも」
衣 「家族の絆も」
衣 「それら全てを教えてくれたのは……四人だった」
衣 「四人と日々過ごしていく中で」
衣 「月の国で孤独だった衣にも――家族ができるかもっ、と思うことができた」
衣 「ほ、ほんとうに、ありがとう……」
かぐや姫はそこで言葉を止めました。
ハギヨシ 「衣様、そろそろ行きましょう」
それを見た使者は、もうこれで用は済んだと判断したのか、かぐや姫を連れて月へと登り始めました。
衣 「……」
そのときでした。
お父さんが月に向かって叫びます。
純 「かぐや姫ー! 家族ができるかもってお前は言ったけど!」
純 「俺らは、本当の家族だったんじゃないのかよ!」
衣 「!」
衣 「で、でも……私とみんなは血の繋がりもないし!」
智紀 「そんなの関係ない……!」
一 「僕たちは姫様のこと、家族だと思ってる……それじゃダメなのかな!?」
透華 「そうですわ! あなたは私たちの、大切な家族ですわ!」
衣 「み、みんな……!」
衣 「わ、私もみんなを家族だと思ってる!」
衣 「純も、透華も、一も、智紀も……」
衣 「いや、お父さんも! お母さんも! 智紀お姉ちゃんも! 一お姉ちゃんも!」
衣 「大好きだっ!」 ポロポロ
純 「へへっ、あいつ初めてお父さん、お母さんって呼んだな」 ポロポロ
透華 「本当に……これで、本当の家族ですわね」 ポロポロ
一 「おとーさんも、おかーさんも泣きすぎだよ……」 ポロポロ
智紀 「そういう、一も……」 ポロポロ
そして、かぐや姫は月へと帰っていきました。
かぐや姫が月に帰ってから、再び幾年の月日が経ちました。
あれからも、四人は家族として仲良く暮らしています。
背中には竹林が、前面には海が広がる家に今も住んでいます。
そんな四人は、かぐや姫のことを忘れないためにも、
満月の夜には欠かさずあることをしています。
純 「さーて、今宵も満月だな。衣に会いにいくか」
透華 「そうですわね、一! 平たい花器は用意したかしら?」
一 「もちろんだよ、おかーさん。さあ、行こうか」
智紀 「……」 コク
四人は家を出ると、前面に広がる海へと向かいます。
そして海に花器を傾け入れると――海に映る月をすくいとるのでした。
『かぐや姫』 了
『アリとキリギリス』
夏のある日、アリさんがせっせと食料を運んでいます。
胡桃 「よいしょっ、よいしょっ」
汗をかきながら、一生懸命に巣へと運んでいきます。
そんな様子を、一匹のキリギリスが眺めていました。
白望 「……ダルい」
夏の暑い盛りに飛び回るわけでもなく、冬に備えて食料を準備するわけでもなく。
するとそんな様子を見かねたのか、アリさんはキリギリスさんに忠告をします。
胡桃 「ちょっと、キリギリスさん! 今のうちに食べ物を蓄えておかないと、冬に困っちゃうよ!」
白望 「あー……。でも、動けない」
胡桃 「もー、知らないからね」
そして、寒い寒い冬がやってきました。
アリさんは夏にしっかり食料を溜め込んでいたおかげで、冬を越すことができそうです。
胡桃 「しっかり夏に働いて良かった! さて、キリギリスさんはどうしてるかな?」
胡桃 「きっと、食べ物がなくて困ってるはずだから……仕方ないけど、私が助けてあげよう!」
胡桃 「別に好きとか、そんなんじゃないんだけどね///」
アリさんは、暖かい家の中から白銀の世界を覗きます。
すると、そこには夏のときと変わらず、まったく動こうとしないキリギリスさんの姿がありました。
白望 「お腹空いた……」 グー
胡桃 「やっぱり!」
しかし、よく見るとキリギリスさんの周りには数羽の昆虫が集まっていました。
エイスリン 「パン、タベル?」
白望 「うん」
塞 「ほら、このままじゃ凍え死ぬから……毛布かけとくよ」
白望 「あー、ありふぁふぉ」 モグモグ
豊音 「動けないみたいだから、周りにかまくら作っておいたよー」
白望 「これで寒さをしのげる……」
胡桃 「あ、ありー……?」
予想外の状況に、不適切な発言をしてしまったアリさん。
アリさんはこれ以降、適度に手を抜くことを覚えたそうです。
『アリとキリギリス』 了
『花咲かじいさん』
むかしむかし、あるところにおばあさんとおばあさんが住んでいました。
和 「そういえば、iPS細胞というので同性の間でも子供ができるらしいです」
咲 「え、えぇ~……。う~ん……」
二人はとても仲が良かったのですが、なぜか子宝には恵まれませんでした。
そのかわり、エトペンという喋るペンギンの人形をとても可愛がっていました。
ある日、エトペンが畑で言いました。
エトペン 「ココホレペンペン、ココホレペンペン」
和 「エトペン……。ここを掘れといっているのですか?」
咲 「掘ってみようよ! 金銀財宝ざっくざくかもしれないよ!」
和 「そんなオカルトありえません。さ、畑仕事に精を出しましょう」
エトペン 「チョwwwww」
エトペンがあまりにしつこいのと、おばあさんのススメもあって、
二人は畑を掘ることにしました。するとどうでしょう、案の定、大判小判が出てきました。
咲 「ほらね!」
和 「こ、こんなの偶然ですっ! ……でも、エトペンありがとうございます」
エトペン 「ペンペン!」
すると、そんな様子をとなりの欲張りおじいさんが見ていました。
舞 (財宝ほり当ててやんよ!)
そして、欲張りおじいさんは二人に近づくとエトペンをよこすように交渉します。
舞 「なぁそのペンギンなんだけど うちのなんだ……返してくれないかなー?」
和 「は?」
舞 「実は遠い昔に……うちがそれ落としたこと知らなかった?」
和 「この人はなにを言っているのでしょうか?」
咲 「わ、わけがわからないよぅ……」
欲張りおじいさんは、その後も訳のわからないことを言い続けます
しかし、それを冷静に対応する二人に対して切れました。
舞 「いい加減に貸さんか!」
咲 「とうとう、貸せって言っちゃったよ」
和 「そうなんだ、じゃあ私畑仕事いくね」
舞 「キサマーーッ!!」
二人と一匹は欲張りおじいさんを無視して、畑仕事を再開します。
それを見た欲張りおじいさんは、内心、怒り心頭でした。
舞 (真鍋和の真似なんぞでウチの交渉を流しおってからに!)
舞 (大体なんだよそのクソみたいなペンギンは!)
そしてとうとう、強硬手段にでました。
欲張りおじいさんはエトペンを掴むと、無理やり引っ張りました。
舞 「いいから貸せって!」 グイグイ
咲 「あっ!」 グイグイ
和 「は、離してください!」 グイグイ
エトペン 「ファー…ブルスコ…ファー…ブルスコ…ファ-」
舞 「よこせ……って!! ……あっ!」 グイッ!
和・咲 「あっ!」
エトペン 「モルスァ」
両側から引っ張られた結果、エトペンの腕が千切れてしまいました。
ちぎれた部分から白い綿が畑に飛び散ります。
和 「エトペン!う、うわああああああああああん」 ポロポロ
咲 「の、和ちゃん……」
舞 「やばっ、逃げよっ」
悲しみに打ちひしがれる二人をよそに、欲張りおじいさんは逃げ出しました。
二人はエトペンの白い綿を全て集め、布地の部分は庭に埋めました。
次の日、おばあさんとおばあさんがエトペンの墓参りにいくと、
なんと、エトペンを埋めた部分から大木が生えていました。
そのとき、ちょうどふわりと風が吹きました。
おばあさんたちが抱えた白い綿が風に乗り、大木にフワリとかかりました。
すると――綺麗な淫r、ピンクの花が咲いたのです。
和 「わぁっ、綺麗ですねっ……!」
咲 「本当! 和ちゃん、きっとこれはエトペンが生まれ変わったんだよ!」
和 「そ、そんなオカルト……。いえ、そうかもしれませんね」
満開の花の前で、二人は手をつなぎ二人はにっこりと笑いました。
咲 「さてと、もう一つ花を咲かせなきゃね……」
その日の夜、お殿様が従者を引き連れて山を登っていました。
頂上にさしかかると、山の上にある一本の大木の前におばあさんがいることに気づきました。
衣 「こんなところに人が……。おい、皆の衆とまれ」
殿様は従者を引き連れながら、おばあさんへと近づいていきます。
衣 「おい、そこの……ひぃっ」
咲 「森林限界を超えた高い山でさえ、可憐な花が咲くことがあるんだよ」
咲 「お前もそんな花のように強く――」 ギュアッ!
舞 「サ、サキサマーーッ!」
その日、山の上の大木に満開の花が咲きました。
その見事な咲きっぷりに、お殿様たちは花の下で宴会を始めるほどでした。
咲 「汚ねえ花見だ……」
『花咲かじいさん』 了
『雉も鳴かずば』
照 (……冷蔵庫に入れておいた、私の『牛乳プリン・四個入り』が無い)
照 「なあ、みんな」
菫 「……」
尭深 「……」
誠子 「……」
淡 「……」
照 「……菫」
菫 「……なんだ」
照 「とろふわプリンはうまかったか?」
菫 「……」
淡 「え? あれって牛乳プリンですよn……あっ」
照 「ほう、淡よく知っているな」
淡 「あ、あ、あああああ……」
照 「覚悟はいいな……?」
淡 「あ……あ……」 ブルブル
菫 (淡よ、おまえも喋らなければ、ばれずにすんだものを)
誠子 (無用な発言をしたばっかりに……アーメン)
尭深 (牛乳プリンおいしかった……)
照 「コークスクリューツモッ!」 ギュアア!
淡 「うわああああああああん! ごべんなざーいっ!」
『雉も鳴かずば』 了
『シンデレラ』
むかしむかし、とても美しくてやさしい娘がいました。
しかし、悲しいことに母は若くして亡くなってしまいました。
今は父の再婚相手である新しいお母さんと、二人のお姉さんと暮らしています。
娘は今日も率先して家事をこなしていきます。
星夏 「掃除なら私たちもしますからっ……!」
未春 「それに、もっと綺麗なお洋服を着てください」
純代 「……」 コク
美穂子 「いいんですよ、私は。それより、みなさん今日も舞踏会ですよね?」
美穂子 「精一杯楽しんできてください、ドレスは綺麗にしておきましたから」 ニコッ
心の優しい彼女は、みんなからシンデレラと呼ばれています。
とても美しいシンデレラでしたが、自分に自信がもてなくてあまり外には出ませんでした。
なので、華やかな舞踏会に参加したこともありません。
ある日の事、お城の王子さまが、お嫁さん選びの舞踏会を開く事になりました。
シンデレラのお姉さんたちにも招待状が届きました。彼女らはおおはしゃぎです。
未春 「もしかすると、王子さまのお嫁さんになれるかも……」
星夏 「いいえ、絶対、必ずお嫁さんになりましょう」
純代 「……またうまい飯食べれる」 ジュルリ
シンデレラには招待状は届いていなかったため、
いつも通り、彼女たちの支度を手伝い、舞踏会へと送り出しました。
美穂子 「ああ、私も舞踏会にいきたかったわ。王子様に会いたかったわ」 シクシク
シンデレラが一人残された家で泣いていると、どこからか声がしました。
華菜 「泣いちゃだめだし!」
そこには、真っ黒なフードつきのローブを着た少女がいました。
頭からはネコ耳が、お尻からは尻尾が生えています。
美穂子 「あなたは誰……?」
華菜 「華菜ちゃんは立派な魔法使いだし!」
華菜 「華菜ちゃんの魔法で、シンデレラを舞踏会へといかせてあげるし!」
華菜 「まずは、お城へと向かう荷馬車と御者を用意するし!」
魔女はそう言うと、黄色く分厚い本を見ながら電話をかけはじめました。
そして十分後、彼女らはやってきました。
洋榎 「まいどおーきに!」
洋榎 「どこよりも速く! どこよりも安く! どこよりも荒く! がモットーの姫松運送です!」
絹恵 「おねーちゃん、荒くは余計やっ!」
華菜 「これで舞踏会に行けますね! 」
美穂子 「ありがとうございます、可愛い魔法使いさん」 ナデナデ
華菜 「にゃー……」
由子 「イチャついてるとこ悪いけど、先にお勘定お願いしますなのよー」
華菜 「えっ……」
華菜 「あっ……お金ないし」
美穂子 「大丈夫ですよ、ここは私が払いますから」 ニコッ
恭子 「おおきに、一万円になります」
華菜 (しかもたけぇっ!)
美穂子 「でも、舞踏会で踊るドレスがないわ……」
華菜 (ここが華菜ちゃんの腕の見せ所だし!) ピコーン
華菜 「安心してください! ちゃんと用意してあります!」
そういうと、魔女は白いドレスを取り出しました。
胸には「2-3 かな」と刺繍されています。
華菜 「このドレスはなんと、胸元の布で顔を隠すことができるし!」
華菜 「泣き顔も隠せる、超万能ドレスだし!」
美穂子 「ありがとう、小さな魔法使いさん。じゃあ早速……」
美穂子 「あら、ちょっと胸のあたりがきつくて……着れないわ」
華菜 「!」 ガーン!
漫 「それなら大丈夫ですよ。ウチでは冠婚葬祭用に、ドレスの貸し出しもしてますから」
美穂子 「あら、助かります。じゃあ、お願いしようかしら」
洋榎 「おおきにー。絹、適当に見繕っといてー」
絹 「オッケー」
そして、シンデレラの前に出されたのは、とても綺麗な純白のドレスでした。
美しい顔立ちのシンデレラに、映えることは間違いないでしょう。
美穂子 「素敵……。これにするわ」
恭子 「おおきに、三十万円になります」
華菜 (やっぱりたけぇっ!)
由子 「これで準備はバッチリなのよー」
美穂子 「ありがとうございます」
華菜 (全然役に立つことができなかったし……)
華菜 (それでも、これだけは言わなくちゃ!)
華菜 「シンデレラ、一つ守ってほしいことがあるし」
華菜 「必ず、十二時までに帰ってきてください」
美穂子 「それは何故ですか?」
華菜 「華菜ちゃんの魔法が解k 恭子 「ウチらの営業時間の関係ですね」
美穂子 「あら、それは大変。守らなきゃね」
華菜 「……」 グスン
装いを整えたシンデレラは、姫松運送の荷馬車に揺られてお城へと向かいます。
そして会場に到着したシンデレラを迎えたのは、煌びやかな世界でした。
美穂子 「すごい……」
シンデレラは初めての舞踏会に大興奮でした。
優雅に踊る男女、色鮮やかな装飾品、美味しそうな料理。
ハギヨシ 「お嬢様方、お料理はいかがですか?」
星夏 「あ、ありがとうございます!」
未春 「牛フィレ肉おいしい~」
純代 「私だけ焼き鳥……」
全てが新鮮でした。
そしてなにより――
久 「……」
美穂子 (……素敵な王子様)
王子に目が奪われてしまうのでした。
舞踏会はクライマックスを迎えます。
いよいよ、王子が会場の中から、一緒に踊る女性を一人選ぶのです。
久 (あんまり可愛い子がいないわねー……見つけたっ!)
美穂子 「……」 ドキドキ
久 「お嬢さん、良ろしければ私と一緒に踊ってくれませんか?」
美穂子 「……は、はいっ!」
幾人もの女性の中から、なんとシンデレラが選ばれました。
会場の注目を浴びながら、シンデレラは王子と夢のような時間を過ごします。
久 「あなたの目……綺麗ね」
美穂子 「……ありがとうございます///」
しかし、夢のような時間にも終わりはおとずれます。
時計の針は、間もなく12時を指そうとしていました。
久 「お嬢さん、この後もしよろしければ……」
美穂子 「あ、あのっ! 私帰らないと!」
久 「えっ、まだ12時よ?」
美穂子 「帰らないと、延滞料金が……ごめんなさい!」
シンデレラはそれだけ言うと、会場から走って飛び出していきました。
会場は騒然とし、王子様はその後姿を全速力で追いかけます。
しかし、結局シンデレラを捕まえることはできず、そこには小さなガラスの靴が残るだけでした。
王子様はその靴を優しく拾うと、こう言いました。
久 「明日……町に彼女を探しにいきましょう」
翌日、町の娘たちは大騒ぎでした。
王子様が結婚相手を探しにきている。ガラスの靴がぴったり履ければ、王子様と結婚できる、と。
王子様は順番に町の娘にガラスの靴を履かせようとしますが、
あまりに小さく、誰一人として履ける人はいませんでした。
そして、そろそろシンデレラたちの番です。
星夏 「履ければ、リーチッ……!」
久 「履けないな……次だ」
星夏 (王子様――!!!)
シンデラレの番は次の次です。
もし次の人が履けなければシンデレラだと、ばれてしまう――
純代 「……フンッ!」 バキィッ!
久 「えっ」
美穂子 「えっ」
――はずでしたが、なんと、ガラスの靴は、粉々に砕けてしまいました。
純代 「ずいぶん壊れやすい靴ですね」
純代 「まあ、でも壊れたものは仕方がないのですし」
純代 「恐らく私は履けたので、私と結婚しますか」
久 「えっ」
美穂子 (こんなのおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしい
あの靴を履けるのは、私なのに私なのに私なのに私なのに
王子様王子様王子様王子様王子様王子様王子様王子様)
純代 「それじゃあ、よろしく」
久 「えっ」
というわけで、王子様はシンデレラのお姉さんと結婚して、めでたしめでたし。
と、おもいましたが、おうじさまはさいわいなことにしんでれらのかおをおぼえていたみたいです。
すてきなおうじさまと、わt……しんでれらは、すえながく、しあわせにくらしたそうですよ。
『シンデレラ』 了
『三年峠』
あるところに、「三年峠」と呼ばれる美しい峠がありました。
しかし、そこにはこんな言い伝えがありました。
霞 「三年峠で転んではだめよ。そこで転んだら、三年しか生きられないから」
村人たちはこの言い伝えを恐れ、三年峠にさしかかると注意深く歩くようにしていました。
そんなある日のことでした。四人の少女が三年峠を歩いていました。
初美 「とうとう三年峠まできちゃいましたー」
春 「気をつけて歩く……」
巴 「特に姫様、気をつけてくださいよ」
小蒔 「大丈夫ですよっ!」
小蒔 「細心の注意を払って歩……き……ますか……ぐぅ」
初美・巴 「あっ」
少女は急に眠りに落ちると、そのまま崩れ落ち、三年峠で転んでしまったのでした。
小蒔 「うぅ……三年峠で転んでしまいました」
小蒔 「私はもうすぐ死んでしまうのでしょうか……」
少女は心配のあまり寝込んでしまいました。
不安で不安で、大好きなおやつも喉を通りません。
すると、その様子を憂慮した「ハルル」という少女がこう言いました。
春 「姫様、もう一度三年峠へ」
春 「一度転ぶと、三年生きることができる」
春 「それなら、二度、三度転べば、六年、九年」
春 「たくさん転べば、それだけ長生きできる」
それを聞いた少女は、もう一度三年峠にいきました。
そして何度もころん、ころん、と転び、すっかり元気を取り戻しました。
霞 「長生きねぇ……ふんふむ」
舞台は現代へと移ります。
20XX年、麻雀が空前のブームとなり、麻雀人口は一億人を突破しました。
恒子 「さあ、全国大会二回戦の大将戦がはじまります!」
恒子 「シードの永水女子、大将はもちろん、この人です!」
恒子 「永遠の17歳・石戸霞選手だーっ!」
霞 「よろしくお願いしますね」
恒子 「石戸選手は高校生とは思えない大人っぽさがありますね?」
健夜 「ええ……。石戸さんはこれで、37年連続の出場になりますね」
健夜 「私が高校三年生のときも、彼女と同卓になったことがあります」
恒子 「ということは、すこやんは今年で55歳だーっ!」
健夜 「37年前にあたったわけじゃないよ!?」
恒子 「さて、石戸選手の若さの秘訣はなんでしょうっ!?」
健夜 「三年峠がなんだか、とインタビューで読んだことはありますが……」
霞 「さて、また三年峠で転ぶ作業が始まるわ」 ニコッ
『三年峠』 了
『白雪姫』
むかし、ある城に女王が住んでいました。
女王は魔女であり、そして伝説(レジェンド)でもあります。
女王は今日も、魔法の鏡に向かってこう言います。
晴絵 「鏡よ鏡よ鏡さん、この世で一番美しいのは誰だ?」 ドキドキ
すると、魔法の鏡はこう答えます。
灼 「阿知賀の伝説(レジェンド)・晴ちゃんです!」
それを聞くと、女王は満足そうに頷くのです。
またある日、女王はいつものように、魔法の鏡に向かってこう言います。
晴絵 「鏡よ鏡よ鏡さん、この世で一番美しいのは誰だ?」 ワクワク
灼 「……」
晴絵 「……ん?」
すると次の瞬間、魔法の鏡は一人の可愛らしい少女を映します。
そして、鏡の中の少女はいたずら顔でこう言いました。
灼 「憧『晴絵だと思った? 残念! 阿知賀のアイドル・憧ちゃんでした~』」
晴絵 「……」
灼 「……はっ」
晴絵 「……」 グスッ
灼 「は、晴ちゃん!これは、ち、違うの!」
晴絵 「……鏡よ鏡よ鏡さん、この世で一番私服がダサいのは誰だ?」
灼 「憧 『ねぇ、シズ……。灼の服、ちょっとダサくない?』」
灼 「や、やめてええええええええええ!」
女王と魔法の鏡はお互い傷つけあいましたが、
やがて怒りの矛先は、阿知賀のアイドル・憧ちゃんへと向かいました。
女王は家来に阿知賀のアイドル・憧ちゃんを殺すように命令します。
しかし、阿知賀のアイドル・憧ちゃんを可哀想に思った家来は、
阿知賀のアイドル・憧ちゃんを殺すことができず、森の中に置いてきたのでした。
阿知賀のアイドル・憧ちゃんは、見知らぬ森の中をとぼとぼとさ迷います。
すっかり暗くなり、流石の阿知賀のアイドル・憧ちゃんも、森の中に一人でいるのは心細くなってきました。
憧 「も~、いきなりなんなのよ、最悪」
憧 「あ、家発見。事情を話して泊めてもらおう」
憧 「優しい人だといいな~」
運よく家をみつけた阿知賀のアイドル・憧ちゃんは、玄関をノックします。
しかし、返事はありません。仕方ないので、扉を開けて中に入ると、そこには7つの小さなベッドが置いてありました。
憧 「ちょっと小さいけど……寝させてもらおう……」 グー
阿知賀のアイドル・憧ちゃんは眠りへと落ちていきました。
すると、しばらくして陽気な歌声が聞こえてきました。
楽しげに歌うのは、七人のこびと達です。
衣 「ハイテー、ハイテー♪ 親番が好きー♪」
衣 「ペーポン、ペーポン、ペーポン、ペーポン♪」
衣 「ハイテー、ハイテー♪」
胡桃 「勝手に歌詞を変えない!」
マホ 「ハイテー、ハイテー♪」
胡桃 「そこ、真似しない!」
一 「まあまあ、それよりそろそろ家につくよ」
優希 「お腹ぺこぺこだじぇ! 早くタコスを食べるじぇ!」
淡 「食後のプリンも買ってあるしね~」
漫 (ウチは小人に入ってええんかな……)
七人の小人が家に到着し、扉を開けます。
すると、そこには阿知賀のアイドル・憧ちゃんがいました。
胡桃 「誰!?」
憧 「あ、お邪魔してまーす」
憧 「阿知賀のアイドル・憧ちゃんで~す」
七人は突然の来客に驚きましたが、
阿知賀のアイドル・憧ちゃんは、とても可愛かったのですぐに仲良くなりました。
わいわいと話しながら、夕ご飯を一緒に食べます。
時間は和やかに過ぎていきましたが、食後のデザートタイムに事件が起こりました。
淡 「さあ、みんなでプリンを食べよー」
優希 「待ってたじぇ~」
しかし、冷蔵庫を開けるとそこには――
空っぽになったプリンの容器が七つあるだけでした。
淡 「あ、あわあわ……」
マホ 「デザートなしになっちゃったのです!」
食後のとっておきのプリンが無くなり、七人は呆然としています。
すると阿知賀のアイドル・憧ちゃんは、舌をぺろっと出し、上目遣いでこう言いました。
憧 「ごめーん! 阿知賀のアイドル・憧ちゃんが食べちゃったんだ~」
憧 「許してほしいなっ! 阿知賀のアイドル・憧ちゃんからのお願いだよ?」
阿知賀のアイドル・憧ちゃん、かわいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!
そこらへんの男性諸君なら、そう言って許したことでしょう。
しかし、とっておきの楽しみを失った七人の小人は、それでは許しませんでした。
淡 「へ~……」
胡桃 「絶対許さないからね!」
衣 「この愚者に……裁きを下す!」
マホ 「マホ……今なら殺れる気がします」
優希 「とりあえず、こいつにプリンを買いにいかせるじぇ!」
一 「そうだね、ついでに皿洗いもしてもらおうか」
漫 「さあ、早速働いてもらうでー」
憧 「あ、あれ……?」
それからというもの、阿知賀のアイドル・憧ちゃんは七人の小人に厳しくしつけられました。
家事をこなし、山に木を切りにいき、一般常識の教育を受けます。
そして、一年後――
憧 「阿知賀女子麻雀部、新子憧と申します!」
そこには、立派に自立した新子憧がいました。
そう、七人の小人に出会ったことによって、かつてわがままし放題だった、
『阿知賀のアイドル・憧ちゃん』は死んだのです。
可愛ければなんでも許されるわけじゃない。
とても大事なことを、新子憧は教えてもらったのでした。
『白雪姫』 了
『鶴の恩返し』
むかしむかし、あるところにとても親切な少女が住んでいました。
彼女はとても心優しく、村人からも好かれています。
煌 「さあ、今日も頑張りますよ……おや?」
少女が見つけたのは、罠にかかっている二匹の鶴でした。
少女はすぐに駆け寄ると、すぐに罠を外してあげます。
すると、自由になった鶴は、二匹仲良く山のほうへと飛んでいくのでした。
煌 「今日もすばらな一日でしたね……ん?」
その晩、少女が家で晩御飯を食べていると、玄関を叩く音が聞こえました。
少女は腰をあげ、扉を開けます。するとそこには、美しい二人の少女がいました。
姫子 「こんばんはー」
哩 「道に迷ってしまいまして……今晩、泊めていただけませんか」
煌 「こんな狭苦しいところで良ければ、喜んで!」
姫子 「いいんですか?」
煌 「人助けができるなんて、すばらですっ!」
二人はこの言葉に喜び、そこに泊まることにしました。
次の日も、また次の日も雪は降り続き数日が過ぎました。
家主の少女は心優しく、二人のために炊事、洗濯、何でもやりました。
煌 「二人とも、お風呂が沸きましたよ!」
姫子 (あ~、人間に化けて恩返しするつもりだったのに、なんかどうでもよくなってきちゃった)
哩 (居心地がよか……)
ある日のこと、二人の少女はこう言いました。
姫子 「これから私たちは部屋にこもって話し合いをします」
哩 「話し合いをしている間は、決して部屋を覗かないでください」
煌 「わかりました!」
少女は二人の言いつけどおり、決して部屋を覗くようなことはしませんでした。
しかし、二人の話し声は大きく、薄い扉を隔てて声が漏れてきました。
哩 「ここは居心地が良いし、もう寄生しようか」
姫子 「そうですね! あの人もちょーお人よしですし、許可してくれますって!」
煌 「聞いてしまった、うわぁショック~」
煌 「なんってことはないですね!」
煌 (ヒモ扱いでも私を必要としていてくれる)
煌 (こんなすばらなことはないですねっ!)
煌 (二人のお世話――任されました!)
少女は二人と一緒に住むことを決めました。
一生懸命お金を稼ぎ、一生懸命に二人の世話をします。
そんな少女の噂は村をこえてたちまち広がっていきました。
そして今日もまた、彼女のもとには人が訪ねてくるようです。
咏 「なんか、ここで一生養ってもらえるって聞いたんだけど~」
煌 「これで60人目……すばらですっ!」
『鶴の恩返し』 了
『三匹の子豚』
あるところに、三匹の子豚の姉妹がいました。
長女は病弱ですが、頑張り者。
怜 「こほっ、こほっ……。さあ、今日も頑張るで……」
次女は天然ですが、頑張り者。
玄 「お姉ちゃん、疲れたら私にお任せあれ!」
三女は聖人のうえに、頑張り者。
煌 「お姉様、その心意気すばらですっ!」
怜・玄・煌 「ぶひぶひぶひ」
三匹はとても仲良しです。
怠け者は誰一人いないのですが、話も進まないので、
母親は三匹に家を出るように、と自立を促しました。
家を追い出された三匹は、それぞれ家を建てることになります。
怜 「なにも追い出さなくてもなー」
煌 「まあ、何事も経験がすばらですっ」
玄 「ふぅーむ、なるほどなるほどー」
みんな頑張りやさんなので、一日中せっせと働きます。
そして、三匹はレンガ作りの家を隣同士に並べて完成させたのでした。
怜 「やったでー。早速、お祝いや」
煌 「盛大にやりましょう!」
玄 「それじゃあ、私の家でやろっか!」
怜・玄・煌 「ぶひぶひぶひ」
三匹はとても仲良しです。
そんな様子を遠くから見つめるものがいました。
茶色い毛、大きな口、回転する右腕――そう、狼です。
照 「……うまそうな匂いがする」
狼は鼻をくんくん、と鳴らすと匂いの根源を探ります。
それは、さきほど完成した豚さんたちの家から匂ってくるのでした。
照 「……今夜は腹いっぱいになりそうだな」
狼は舌なめずりすると、迷わず子豚の家へと向かいます。
そして玄関の前に立つと、コンコン、とノックをします。
玄 「はい! どなたですか?」
照 「あ、狼です」
怜 「狼やて……!」
玄 「ど、どどどーしよー、おねーちゃーん」
煌 「あまりすばらくない状況ですね……」
三匹は突然の狼の来訪に慌てふためきます。
何度もノックの音が響きます。三匹は震えながら身を寄せ合いました。
照 「開けてもらえない……。しょうがない、これを使うか」
狼は右手でドアノブを掴むと、そのまま右手を回転させました。
するとどうでしょう! ドアノブが回転により破壊されてしまいました。
照 「よし、開いた」
一方、ドアノブが壊された三匹は恐怖で縮みあがってしまいました。
怜 「どーする、どーする……」 アタフタ
玄 「だ、誰かが止めにいきませんか……?」 アタフタ
怜 「え……ごほっ! ごほっ!」
煌 「わ、わざとらしい咳ですね」
怜 「なんや、仮病やないで。まあ、ええ。長女やし、ウチがいったるわ」
玄 「おねーちゃんに行かせるなら、私が行くよ」
煌 「それならばっ! 私が行きましょう!」
怜・玄 「どーぞどーぞ!」
煌 「……」
怜・玄 「ぶひぶひぶひ」
二匹はとても仲良しです。
煌 (まあ、仕方がないですね)
煌 (捨て駒――任されました!)
三女は意を決して、今にも開かれようとしている扉へと近づきます。
鼓動は高鳴り、手に汗が滲みますが、一歩ずつ扉へと近づきます。
煌 (大丈夫、大丈夫……。それに狼も客人、すばらな対応をすべきです)
そして扉まであと1メートルの距離となった瞬間――
照 「お邪魔します」
煌 「どひゃぁっ!」
狼さんがいらっしゃいました。
煌 「な、ななななななん、なん、何のようでしょうか!?」
煌 (用件ぐらいは聞いておくべきでしょう! もしかしたら、良い狼さんかもしれませんし!)
煌 (ただ、引越し祝いに粗品を差し入れにきただけかもしれませんしねっ!)
照 「腹減ったから、食いにきた」
煌 「ずばりですねっ!」
煌 (も、もうだめかもしれませんね……)
煌 (お姉様方、捨て駒すら全うできない私をお許しください)
三女が死を覚悟した、そのときでした。
照 「……この匂い」
煌 「え――」
子豚さんの家の中は、食欲をそそる匂いで満たされています。
裂かれた肉は、炎で焼かれ、食物連鎖のごとく強者の胃袋に入っていきます。
怜 「なんやー、狼さんも腹へってただけなんやなー」 ジュージュー
照 「焼肉の良い匂いにつられてしまった」 ジュージュー
玄 「私たち、ちょうど新築パーティーをしていたんですよ」 ジュージュー
照 「そうか……。せっかくのお祝いなのに、お邪魔して申し訳ない」 ヒョイパク
煌 「いえいえ、全然かまいませんよ。それに、人が多いほうがすばらですっ!」
照 「ありがとう。……このタレおいしい、なにを使っているの?」
煌 「エバラですっ!」
照 「なるほど、黄金の味というわけか。そして、このお肉は?」 ジュージュー
怜 「もちろん、牛にきまっとるやろ。ウチら、豚やで」
玄 「流石に共食いはちょっと……」
煌 「すばらくないですねっ!」
照 「なるほど、これは失礼した」
怜 「まあ、ええってことよ。牛肉焼いても、豚焼くな、ってな」
怜・玄・煌・照 「ぶひぶひぶひ」
四匹はとても仲良しになりましたとさ。
『三匹の子豚』 了
『赤ずきん』
むかしむかし、赤頭巾のよく似合う可愛らしい女の子がいました。
そのため、女の子はみんなから「赤ずきんちゃん」と呼ばれていました。
久 「おはよ~、赤ずきん」
咲 「おはよう、お母さん!」
決して、赤い血の色が似合うとかいう由来ではありません。
そんなある日のこと、赤ずきんちゃんはお母さんにお使いを頼まれました。
病気で寝込んでいるおばあさんのところへ、ケーキとワインを持っていくのです。
久 「いい、赤ずきん。森の中ではオオカミに注意するのよ?」
咲 「わかった! それじゃあ、いってきまーす!」
赤ずきんは元気よく出発します。
咲 「うぅ……。ここ、どこ……」 エグッ
そして、早速森の中で迷子になりました。
咲 「……うぅ」 キョロキョロ
照 「おや、あれは……赤ずきんちゃん?」
照 (って、なんでまた狼なんだ……まあ、いい)
そんな迷子の様子の赤ずきんちゃんを見つけたのは、オオカミでした。
赤ずきんちゃんの困っている様子を見かねて、オオカミは声をかけます
照 「赤ずきんちゃん、どうしたの?」
咲 「オオカミさん!実は迷子になっちゃって……」
赤ずきんちゃんは、これからおばあちゃんの家に行くことを話します。
照 「そうなんだ。じゃあ、私と一緒に行こうか」
咲 「ほんとっ!? 森の住人のオオカミさんと一緒なら、安心だねっ!」パァッ!
照 (赤ずきんちゃんかわいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!)
咲 「オオカミさん、鼻血でてるよ。大丈夫?」
照 「だ、大丈夫。じゃあ、一緒に行こうか!」
咲 「うん!」
赤ずきんとオオカミは元気よく出発します。
照 「迷ったよぅ……。ここ、どこ……」 エグッ
咲 「うええええええん! おかーさーん!」 ボロボロ
そして、結局森の中で迷子になりました。
夜もだいぶ遅くなった頃、迷子になった赤ずきんとオオカミをお母さんが見つけました。
久 「赤ずきん! 無事だった!?」
咲 「お、おかーさん……。怖かったよぅ……」 エグッ
久 「なにがあったの……? 怒らないから、言ってみなさい」
咲 「森の中で迷って、オオカミさんに会って、オオカミさんについていったらまた迷ったの」 グズッ
咲 「ごめんなざい……うええええええええええん!」 ボロボロ
久 「もう、だからオオカミに気をつけなさいって言ったでしょ」
照 「えっ」
久「でも、赤ずきんが無事で良かったわ」
咲 「うん!」
照 「ふぇぇ……」 エグッ
久 「じゃあ、一緒に帰りましょうか!」
咲 「うん!」
照 「うえええええええん!」 ボロボロ
森の中に、オオカミさんの大きな泣き声が木霊しました。
――おばあさんの家
京太郎 「きませんね……赤ずきんちゃん」
トシ 「そうだね」
『赤ずきん』 了
『走れメロス』
メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐な王を除かなければならぬと決意した。
メロスには手に豆ができぬ。メロスは、麻雀打ちである。日々、麻雀を打ち、楽しく暮らしてきた。
けれでも、にわかに対しては人一倍に敏感であった。
メロスは気晴らしに町へと出ていた。
猿に似た少女があんぱんを買うのを眺めながら、ぶらぶらと大路を歩いた。
メロスには竹馬の友があった。ハツセンティウスである。
その友を、これから訪ねてみるつもりなのである。
しかしメロスは歩いているうちに、町の様子を怪しく思った。
町全体の雰囲気が暗いのである。メロスは若い衆を捕まえて、なにがあったのか訪ねました。
美幸 「王様は、ドラを集めます」
やえ 「なぜ集めるのだ」
美幸 「カンドラが乗っている、というのですが、誰もそんなに、カンなどしませぬ」
やえ 「たくさんのドラを集めたのか」
美幸 「はい、はじめはツモドラ6を。それから、ノベタン片上がりで三色ドラ6を」
やえ 「驚いた。王様はにわかか」
美幸 「いいえ、にわかではございませぬ。ドラしか信ずることができぬ、というのです、もー」
聞いて、メロスは激怒した。
やえ 「呆れた王だ。仕方が無い、私が見せてやろう……」
やえ 「王者のうち筋を!」
メロスは単純な男であった。そのまま、のそのそと王城に入っていった。
たちまち彼は捕縛された。調べられて、メロスの手には豆が出来ていなかったので、騒ぎが大きくなってしまった。
そうして、メロスは王の前に引き出された。
関係ねーだろうそこwwwww
いやいや大きくなるだろ、知らんけど
玄 「なにをしにきたのですか?」
暴君クロニスは静かに、けれども威厳を以もって問いつめた。
やえ 「ドラをにわかの手から救うのだ」
玄 「何故ですか?」
やえ 「ドラを集めるのは、最も嫌われる打ち筋だ。王は、民の赤ドラでさえ疑って居られる」
玄 「むぅ~……」
王の打ち筋を批判したメロスは、王の命令によって磔とされてしまった。
王は怒り心頭で、すぐにでもメロスを刑に処すつもりであった。
玄 「詫びたって、もう許しませんからね!」
やえ 「ああ、王はにわかだ。自惚れているがよい」
やえ 「私は、ちゃんと死ぬる覚悟で居るのに。命乞いなど決してしない。ただ、――」
メロスは視線を落とします。そして少しばかり躊躇い、こう言いました。
やえ 「ただ、私に情をかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限を与えて下さい」
やえ 「今度、麻雀の県大会があるのです。三日のうちに、私は母校を全国へ導き、必ず、ここへ帰って来ます」
メロスの言葉に、王様はくすくすと笑いました。
そんなことは、とうてい信じられぬ、といわんばかりの顔です。
やえ 「私は必ず、帰ってくるのです。約束は守ります」
やえ 「私の友人に、ハツセンティウスがいます。無二の友人だ」
やえ 「あれを、人質としてここに置いて行こう。私がここに帰って来なかったら……」
やえ 「あの友人を絞め殺して下さい。たのむ、そうして下さい」
玄 「願いはききました。身代わりを呼びなさい」
玄 「……少し遅れてくるといいですよ、そしたら、あなたの罪は永遠に許されます」
やえ 「なんとにわかなことを……!」
メロスは口惜しく、地団駄を踏んだ。ものも言いたくなくなった。
竹馬の友、ハツセンティウスは、深夜、王城に召された。
暴君クロニスの面前で、二人の友は二年ぶりに再開した。
メロスが友に一切の事情を語ると、ハツセンティウスは無言で首肯うなずき、メロスをひしと抱きしめた。
初瀬 「メロス先輩、私は一度友に裏切られています」
初瀬 「一緒の学び舎に進もうと誓った友は、黙って違う学び舎に進みました」
やえ 「なんと、にわかな奴よ」
初瀬 「それでも私は、メロス先輩を信じています」
初瀬 「先輩、頑張ってください!」
やえ 「……ありがとう」
メロスはハツセンティウスに背を向け、左手をスッと挙げる。
友と友の間は、それでよかった。そしてハツセンティウスは、縄打たれた。
それを見たメロスは、すぐに出発した。
小走りで。
ワロタ
くそっ、こんなんでwwww
結果からいうと、メロスの罪は許された。
小走りで走り続けた結果、三日で町まで戻ってくることはできなかったのだ。
さらに言えば、麻雀の県大会では初戦敗退であった。
初見のドラ麻雀相手に、メロスは大幅なリードを許してしまったのだ。
ちなみに、こちらの罪は某所でも未だに許されてない。
そして、一週間ほどして、メロスは町へと戻ってきた。
ハツセンティウスは王より哀れみをうけ、彼は磔から免れていた。
メロスが町に姿を現すと、群集はどよめいた。
にっわっか、にっわっか、と口々にわめいた。
やえ 「ハツセンティウス。私を殴れ、力いっぱい殴れ」
初瀬 「はい」
竹馬の友、ハツセンティウスは躊躇うことなく、メロスの頬を殴りつけた。
それを見た群集は、歓声をあげた。
群集は次々と、メロスに王者の言霊を浴びせ続けた。
「ありゃ相当打ってる(笑)」
「見せてやろう……王者のうち筋を(笑)」
「私は小3の頃から、マメすらできてない(笑)」
「ニワカは相手にならんよ(笑)」
やえ 「……」 プルプル
髪を逆立てた少女が、壁をドンと拳で叩いた。メロスは、まごついた。
佳き友は、気をきかせて教えてやった。
初瀬 「メロス先輩、あなたやっぱりにわかじゃないですか」
初瀬 「尊敬していた先輩の醜態を、中継で皆に見られるのが、私はたまらなく口惜しいです」
にわかは、ひどく赤面した。
『走れメロス』 了
『一寸法師』
むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんがいました。
二人には子どもがいませんでした。なので、二人は神さまにお願いしました。
塞 「神さま! 親指くらいの小さい子どもでもいいから、どうか子どもをさずけてください!」
白望 「あんまり小さすぎてもダルい……」
すると願いが通じたのか、本当に小さな子どもが生まれました。
胡桃 「おぎゃー!」
ちょうど、おじいさんの親指くらいの男の子です。
あまりに小さいので、二人は一寸法師と名づけました。
二人は一寸法師を大層可愛がりました。
白望 「ほら、こっちおいで……」
胡桃 「ゎー!」 ピョンピョン
塞 「可愛いねー……って、あれ!? 見失った!」
白望 「……」
塞 「一寸法師、どこーっ!?」 プチッ
胡桃 「ぎゃー!」
塞 「あ」
あまりに小さいため、ときには潰してしまうこともありましたが。
やがて一寸法師も心が成長し、都へいって働くことになりました。
そして都で姫に出会い、姫のお守り役として働くことになりました。
胡桃 「姫さま、起きてください!」
エイスリン 「ンー……オハヨ。イッスン、ボーシ」
姫は愛用のホワイトボードの上に、一寸法師を乗せて歩きます。
二人はいつも一緒に行動していました。
ある日の、二人でお寺にお参りをしているときのことです。
道中、突然大きな鬼が二人の前に現れました。
豊音 「やっほー」
エイスリン 「ヒ、ヒィィ……」
胡桃 (すごいおっきいよぉ……)
胡桃 「でも、姫は私が守る!」
一寸法師は一本の針を取り出すと、鬼に向かっていきました。
胡桃 「とりゃあああああ!」
豊音 「ん?」
豊音 「なにこの小さい子……ちょー可愛いよー」
可愛さのあまり、鬼は思わず一寸法師を手で捕まえようとしました。
豊音 「えいっ」 プチッ
胡桃 「ぎゃー!」
豊音 「あっ」
エイスリン 「アッ」
豊音 「本当にごめんねー」
胡桃 「だ、大丈夫だよ……」
豊音 「お詫びに、これをあげるよー」
鬼がくれたのは、小さな木槌のようなものでした。
豊音 「これは打出の小槌といって、振るとなんでも好きなものが出てくるんだよー」
胡桃 「それじゃあ、私の身長を大きくすることもできる!?」
豊音 「もちろん! 背出ろー、背出ろー、って言えばオーケーだよー」
胡桃 「姫さま、お願いします!」
エイスリン 「ウン!」
姫は打出の小槌を握ると、大きく振りかぶります。
そして、ブンブンブン、と三回打ち下ろしました。
エイスリン 「セ、デロ! セ、デロ! セ、デロ!」 プチッ プチッ プチッ
胡桃 「ぎゃー! ぎゃー! ぎゃー!」
エイスリン 「アッ」
豊音 「あっ」
胡桃 「もー、ちっちゃいの嫌だー!」 ビエーン
『一寸法師』 了
『ウサギとカメ』
むかしむかしあるところに、足の速いウサギと、足の遅いカメがいました。
咲 「ねぇねぇ、カメさん」
恭子 「な、なんや、ウサギさん」
咲 「明日、向こうの山の頂上までかけっこの競争しませんか?」
恭子 「……え」
咲 「……だめ?」
恭子 「……べ、別にええよ」
咲 「やった~! 絶対ですよ!? じゃあ、明日の朝八時に山の麓に集合ですからね!」
恭子 「わかった……」
洋榎 「ええんか、恭子。あんな約束して」
由子 「カメのウチらじゃ、ウサギにかけっこで勝つなんて無理なのよー」
恭子 「ええんです、主将。それに――」
恭子 「凡亀のウチが、ウサギ相手にどこまでやれるか楽しみですわ」
――翌朝
咲 「あ、カメさん! おはよ~ございます!」
咲 「かけっこの話を友達にしたら、二匹も参加したいって」
霞 「バッファローです。よろしくお願いしますね」
豊音 「キリンだよー。よろしくねー」
恭子 「」
恭子 (なんやこれ……) カタカタ
咲 「それじゃあ、はじめよっか!」
恭子 (まて、考えるのをやめたら、それこそただのバカメや)
咲 「位置について……」
恭子 (諦めたらアカン……勝機はあるはずや!)
咲 「よーい……」
恭子 (甲羅を磨いて発想も磨くで!)
咲 「――ドンッ!」 ヒュッ!
霞 「――バッ!」 ドドドドドドド!
豊音 「――シッ!」 ダカダッ! ダカダッ!
恭子 「いくでー」 ノロノロ…
洋榎 「これは無理やろ……」
由子 「イジメなのよー」
正午になり、カメはやっと山の中腹部にたどり着きました。
すると、そこに広がる原っぱには先にいったはずの三匹がいました。
どうやら、お弁当を広げてランチをしているようです。
咲 「おいしいねー」
霞 「いっぱい食べてね」
豊音 「ちょーおいしいよー」
恭子 (なんや! なめやがって!)
恭子 (まあいい、この隙にウチがリードさせてもらうで)
恭子 (やっぱり、着実に努力を重ねるものに神様は味方するんや!)
カメさんは三匹に気づかれないようにしながら、一人だけ先に歩みを進めました。
そして、しばらく経つと三匹がいた原っぱは見えなくなりました。
恭子 「どや! 出し抜いてやったわ!」
豊音 「追っかけるけどー」
恭子 「どぅわっ!?」
気づけば、背後にキリンさんが迫っていました。
恭子 (こいつ、わざと先にいかせて後から仕留める――)
恭子 (背向のトヨネか!)
豊音 「おさきにー」
キリンさんは、あっという間にカメさんを追い抜いていきました。
日が傾きはじめたころ、カメさんは山の7合目まできました。
7合目まで来ると、頂上までは遠回りで緩やかな細道と、険しい近道にわかれています。
すると、さきほどカメさんを追い抜いていったキリンさんの姿を見つけました。
恭子 「キリンさん、どーしたんや?」
豊音 「これみてよー」
『バッファロー以外通行禁止』
なんと、近道にこんな札が立てられていました。
これでは、キリンさんとカメさんは遠回りをするしかありません。
恭子 (これは、バッファローだけに近道を限定する――)
恭子 (絶一門か……っ!)
仕方ないので、キリンさんとカメさんは遠回りの細道から行くことにしました。
二匹はゆっくり、ゆっくり進みます。
やがて、二つの道の合流地点にたどり着くと、今度はそこにはバッファローさんがいました。
霞 「あらら……」
よく見ると、落とし穴にはまって身動きがとれなくなっています。
恭子 「どうしたんやー、バッファローさん」
霞 「実はあっちの近道からきたんだけど、ここに着いたらカンされちゃったのよ」
恭子 「カンされた、ってどういうことや?」
霞 「そうねぇ……。どこからか『カン』って聞こえてきて、気づいたら穴に落ちてたわ」
豊音 「なんか怖いねー。今助けるよー」
恭子 (普通のかけっこさせてーな……)
二匹は頑張ってバッファローを穴から引っ張り挙げます。
なんとか穴から脱出できたバッファローでしたが、足を挫いてもう走れません。
三匹は一緒に頂上を目指すことにしました。
あたりはすっかり暗くなってしまっているので、ウサギさんはとっくにゴールしているでしょう。
三匹はゆっくり、ゆっくり頂上を目指し、とうとう山頂が見えてきました。
するとそこには、たくさんの観客がいました。
恒子 「おおーっと! ここで、カメ、キリン、バッファローがさんすくみで登場だーっ!」
恭子 「なんや、いつの間に実況なんておるんや」
豊音 「大事になってるねー。まあ、完走できたらいいんじゃないかなー」
霞 「そうね、ウサギさんに一位は取られちゃったけど、こういうのもいいわね」
ほのかな友情が芽生え始めた三匹ですが、直後思いもよらぬ言葉を聴きます。
恒子 「さー! 誰が一位となるのか! ウサギさんが迷子の今、優勝は誰の手に!」
恭子・豊音・霞 「えっ」
健夜 「ウサギさんはどうやら、山の八合目あたりで迷ってしまったようですね……」
恒子 「それは大変ですね! そして、三匹の中で頭抜けるのは誰でしょう!?」
実況と解説の言葉を聞いた後、三匹は顔を見合わせます。
そして、笑顔で頷くと、今までと変わらない歩調で進みます。
恭子 「ここまできたら、一緒にゴールしようや」
豊音 「そうだねー。盛り上がってるところわるいけどー」
霞 「さあ、いきましょう」
三匹が横並びとなり、ゴールテープの前に立ちます。
そして同時に足を踏み出した瞬間――
咲 「うぅ~……ここどこっ、ってみんな!」 パァッ
横の茂みから、迷子のウサギさんが飛び出してきて、
なんと四匹同時にゴールテープを切ったのでした。
恒子 「なんと! ここでウサギさんが迷子から生還! 奇跡の四匹同着だー!」
恭子 「なんや……ウサギさん、無事だったんかい」
豊音 「まあ、三匹でゴールも四匹でゴールも変わらないよー」
霞 「そうね、むしろこのほうが良かったかもね」
恭子 「せやな。とりあえず、みんなお疲れさん」
豊音 「ありがとうございましたー」
霞 「ありがとうございました」
咲 「ありがとうございました」 ピョッコリン
恭子 (ま、これで一件落着やな……)
恒子 「しかし、四匹同時ゴール! タイム差プラマイゼロとは珍しいですね!」
健夜 「そうですね。ただ、兎さんは過去に参加したレースで、二度同じようなことになっています」
恭子 (……え。ま、まさか……)
咲 「……カメさん」
恭子 「あ、あああ……」
咲 「かけっこって楽しいよね!」
恭子 「うわあああああああああああああ!」
洋榎 「トラとウマやな……」
由子 「タイトルとかけなくていいのよー」
『ウサギとカメ』 了
まだ主要キャラ出し切ってないし、
リクエストもらったごんぎつねも書けてないが
さて、このスレどうすっかな
きっちり区切りつけたかったけど、ちょうど日付も変わるし
これにてお開きということで。二日間ありやーした
怜以外の千里山面子といくのんを出せなかったのが心残りだったわ
楽しませてもらったよ
ちょーおもしろかったよー
Entry ⇒ 2012.10.30 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
P「貴音の髪の毛に絡まって取れなくなった」
響「うんうん、自分もあのもふもふは何度触っても飽きないし
いっそのこと絡みつきたいぞ!」
亜美「それはないっしょ我那覇さん」
響「えぇ!? そうかなー?」
真美「いくらなんでもそれはねー」
貴音「おはようございます」ズルズル
響「あ、おはよー貴音! ん? 貴音何か引きずってない?」
真美「た、大変だぁぁ! お姫ちんの髪の毛に兄ちゃんが絡まってるよ!」
亜美「うあうあ~! っていうかむしろ組み込まれ……」
真美「組み込まれ……」
真美・亜美「組み込まれてるーーー!」
響「ぷ、プロデューサー!? おーい! 大丈夫か!」
P「……」
貴音「プロデューサーが……?」クルッ
グイ
P「ぐぇ……ゲホッゲホッ」
貴音「……? 今、何か?」
貴音「ふふ、3人とも、プロデューサーが私の髪の毛に絡まっているなど
そのような世迷言……起こるはずがありません」
響「いやいやいや」
響「っていうか生きてるの……これ?」
貴音「あの……私、見えないのでなんとも言えないのですが、
それは真、なのでしょうか?」
真美「ほら、お姫ちん! 鏡! これで見てみてよ!」
貴音「……」
真美「ほら、髪の毛のあたりに何かいるっしょ!?」
響「自分と重なってて何にもわからないんじゃないのかな?」
P「俺はここにいるぞー」
貴音「 ――ッッ! 」ビクゥッ
貴音「」ドサッ
響「た、貴音ぇ!」
亜美「気絶しちゃったよ……どうすんのさこれ」
P「お、おいお前たち、ぐるじぃ……今のうちに外してくれ」
響「いや、早く自分で取りなよ」
P「そんな冷めた目で見るなよ! 取れないんだってば!」
もふもふしてみようかと思って触ってみたら……」
P「そのまま吸い込まれて……こうなった」
真美「ホラーや……」
亜美「じゃあじゃあ、もしかしたら亜美達だって触ったら吸い込まれちゃうかも
しれないってこと!?」
響「いくら貴音の髪の毛だからって……もちろん貴音は好きだけど
プロデューサーみたいに取れなくなるのはさすがに嫌だぞ」
P「おい、そんなこと言ってる場合か! トイレとか行きたくなったらどうするんだよ」
P「えぇー!」
亜美「ねえねえ兄ちゃん……段々お姫ちんの髪の毛みたいに体が
白くなって言ってない?」
響「確かに……。プロデューサーの顔はこんなに白くないぞ」
P「いや、それは貴音の髪の毛が首に巻き付いてもあるから
それで青白くなってるんじゃないのか?」
亜美「もしかして同化してるとか……!?」
真美「さながら、ダッチマン号の牢獄の壁に同化してた長靴のビル
みたいになってるよ……」
P「急にわかりづらい例えするんじゃないよ! なんでパイカリなんだよ!」
響「あの繰り返しを始めた瞬間はゾッとしたよね」
P「いや、パイカリの話はもういいから!」
単語「う、うぅ……」
亜美「あ、起きた」
貴音「わ、私は一体何を……」
響「貴音、落ち着いて聞いてね。実は貴音の髪の毛に
プロデューサーが吸い込まれて、そして組み込まれて取れないんだよ」
驚いてしまいました……」
P「なぁ、貴音、これ、どうにかなんねえの?」
貴音「ひッ! 自分のすぐ後ろから声がするというのは慣れないものですね」
響「さすがにその近さは慣れたくないけどな」
貴音「さながら真後ろに佐為がいて色々口出しされるヒカルの気持ちを
身を持って体験しているかのようです」
P「それは違うだろ! 今日はなんかすごい例えてくるな、みんな!
っていうかキャラ的にも貴音がヒカ碁知ってたらおかしいだろ!」
貴音「これでも年齢的には世代なのですが……」
P「嘘つけ! その世代はあずささんだ!」
P「…………」
P「……そうか、うん」
響「なんで受け入れたんだよ! 起きろよ!」
亜美「起きろ兄ちゃん!」
真美「寝たら試合終了だぞ兄ちゃん!」
貴音「プロデューサー、さすがにそれは私も困ります……。
私達をプロデュースしてくださる方がいなくなってしまうのは……」
P「そうだなぁ……って、レッスンの時間じゃないか! とりあえずレッスン上に向かおう!」
響「本当に受け入れ出してないか?」
P「くっ、よりによってダンスレッスンとは……」
トレーナー「あの……貴音ちゃん、後ろのソレは」
貴音「ソレとは! この方は私の一部。
そう、プロデューサーです」
トレーナー「えぇ!?」
響「なんで貴音も受け入れ出してるんだよ!」
貴音「何もお気になさらずに……さぁ時間がありません。始めましょう」
トレーナー「え、えぇ……それじゃあ今日はオーバーマスターだったわね」
P「そしてダンスの激しい曲……! 命の危険!」
……
…
貴音「お疲れ様でした」
真美「お疲れ、お姫ちん!」
響「あれだけ激しく動いてればそのうちスポーンって取れるかと思ったけど……」
亜美「見事にくっついたままだったね」
P「ぐぇぇええ……」
真美「うあうあ~! 白目むいてるよ!」
響「と、とりあえず事務所戻ろっか」
響「……で、あれから事務所帰ってきていろいろ試してみたけど」
P「だめだ……もうだめだ。取れねえ」
貴音「かくなる上は……切り落とすしか!」
P「やめるんだ貴音! それはダメだ!」
P「も、もう一日だけ考えよう。今日はもう帰って休むとしよう」
貴音「そうですね。では皆、今日はこれで」ズルズル
響「ちょっと待ったーー!」ガシッ
響「なんでさり気なく貴音の家にそのまま行こうとしてるんだよ!」
P「え? いや、それはしょうがないというか……」
しかも、髪の毛に絡まってて、こんなに密着した状態で!」
亜美「そうだそうだ!兄ちゃんのエッチ」
真美「兄ちゃん不潔」
響「プロデューサーのスケベ」
P「や、やめろ! そんな目で俺を! 俺を見るな!
ええい、これだからファンキーノートのロリ組は!」
響・亜美・真美「えへへへ」
P「褒めてねえよ!」
P「いや、それには及ばない。俺はどんなことがあっても貴音には手を出さない」
真美「イマイチ信用なりませんな~」
P「もう……手がどこにあるのかもわからないんだ」
亜美「……え?」
P「感覚がないんだ」
響「それって、どういうこと……?」
P「腕はさっきまでは感覚があったんだ」
P「だけど、結局腕も絡まっていて身動きが取れない状態になっていた」
P「そして段々と感覚が薄れていって、今じゃどこに自分の腕があるのかもわからない」
P「さぁ、どうだかな」
P「亜美がさらっといった同化してるってのはあながち間違いじゃないようだ」
亜美「そ、そんなぁ!」
P「首はもう固定されちまって全然動かない……」
P「同じ方向を見るしかないんだ」
P「首もさっきよりもどんどん締まってきている」
貴音「そ、そんな……!」
P「今夜中には俺はもう貴音の髪の毛の一部になっちまいそうだ」
真美「兄ちゃん、それ本当なの!?」
響「プロデューサー! 寝たらダメだぞ!」
貴音「私は……プロデューサーの最後の顔も見れないなんて……」
P「ごめんな、響、亜美、真美。そして貴音」
P「はは……貴音はこれからもよろしく、か」
亜美「そんなこと言ってる場合じゃないっしょ!」
P「トップアイドルにするって約束したのにな……だめだったな」
P「……本当にすまないと思っている」
貴音「この四条貴音、命をもって、プロデューサーの命を守る時!」
P「貴音。わかってるんだろう? そんなことをしても無駄だ」
P「今、俺は薄れゆく意識の中で貴音の生命エネルギーを吸って生きている
いや、生かされているようなものだ……」
P「だから、もう、もらった分だけ、俺は貴音になり、返さなくちゃいけないからな」
P「もう……ゴールしてもいいよな」
貴音「あ、あなた様ぁ!」
悪く……なかったぜ」
響「プロデューサー!!」
亜美「兄ちゃん……」
真美「そんな……嘘だよね、兄ちゃん! ねえ!」
貴音「……うぅ……プロデューサー……」
響「これからは……きっと貴音の中で生きてるんだよね……」
真美「ん?兄ちゃんの手、何か握ってない?」
亜美「もしかして遺言ってやつ!?」
『ドッキリ大成功』
亜美・真美・響「……え?」
P「いえぇぇえーーーーい!!」
貴音「ふふふ」
亜美「……え?」
響「えぇーーー!!」
真美「だ、騙したなぁ!!」
貴音「ふふふ、見事に成功しました」
真美「兄ちゃんのばかばかばか!!」
亜美「そうだぞ! 兄ちゃんアホタレー!」
P「ははは、いててて、ごめんごめん」
P「た、貴音、最後の聞いたかよ!
『これからは……きっと貴音の中で生きてるんだよね……』
だってよぉぉぉお!! あはははは!」
貴音「ふふふ、響らしくて可愛いではありませんか」
響「うぎゃーーー! やめてよーー!」
無茶苦茶悲しかったんだぞ!!」
P「ははは、ごめんごめんっと」
P「よっと」スポーンッ
P「ははは、それじゃあみんな帰る用意しないとな」
真美「はぁ……なんだか安心したらどっと疲れちゃったよ」
貴音「ふふ、騙す真似などしてしまってごめんなさい」
亜美「っていうかあれどうやってたの?」
真美「あー! 真美もやりたいやりたい!!」
響「こ、コラー、貴音が困ってるだろ……」
P「お前も素直に言ってこいよ」
響「う、うるさいなぁ! わかってるよ! た、貴音、じ、自分もー!」
貴音「で、では順番で……」
…………
……
…
響「えへへ~、もふもふだぞ」ズルズル
貴音「あの……私も少々つかれてきたのですが」
亜美「うあうあ~! もうちょっと頑張ってお姫ちん! 次は亜美の番なんだからね!」
P「ちょっと自業自得……なのかもな」
END
別のルートがあとひとつだけあるのでもう少しだけお付き合いください
>>61
の途中から別ルートです
無茶苦茶悲しかったんだぞ!!」
P「ははは、ごめんごめんっと、ん?」グイ
P「あれ? ん?」グイ
響「? どうしたんだ?」
P「あ、あれ? た、貴音さん? あの、取れないんですけど」
貴音「うふふ、ふふふふ」
貴音「ですから私は先程見事に成功しました、と言いました」
P「……はい?」
P「え? ちょ、え?」
貴音「うふふ、それでは帰りましょうか」
P「おい、響! 助けて!」
響「どうせ取れるんだろう!? もうだまされないからな!」
真美「そうだぞ! 真美達を騙した罪は重いかんね」
P「うわぁ、何それ! マジなんだって! ドッキリじゃないから!」
亜美「さてさて、真美さんや、もうご帰宅の時間ですぞ」
P「おいいいい! 聞いてくれよ!なぁ!」
貴音「ふふ、これからはずっと側にいてくれますね、あなた様?」
P「ぁぁぁああああ!」
BAD END
折角なんで書いてしまいましたすみません。
ではこれで終わりますね。ありがとうございます
貴音Pにとっては最高のHAPPY ENDだった
Entry ⇒ 2012.10.30 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
モバマスP「ついに仕事の依頼が来たぞ」
P「そうだ、やったな裕美!」
イヴ「おめでとうございます裕美ちゃん!」
あい「おめでとう、裕美」
裕美「そんな……私なんかに……」
P「おいおい……そんな卑下しなくてもいいじゃないか」
裕美「そんなこと言われても……」
P「約束、忘れたのか?」
あい「約束……?」
裕美「……そうだね、うん……やってみるよ」
裕美「うん、頑張るね」
がちゃ ばたん
あい「……裕美」
裕美「どうしました?」
あい「Pくんと約束? って何の話だろう……」
イヴ「ああ! あいさんはあの時まだ事務所に居ませんもんねぇ」
裕美「あっ、そうか」
イヴ「じゃあ、今夜はミーティングですね☆」
裕美「あのお店に行くの?」
あい「わかったよ」
がちゃ ばたん
P「裕美ー、今から軽い顔合わせに行くぞー」
裕美「うん、じゃあ2人とも……頑張ってくるね」
あい「いってらっしゃい」
イヴ「頑張ってくださぁい」
イヴ「裕美ちゃん、すごいですねぇ」
あい「……約束、か」
イヴ「あいさん? どうしたんですかぁ」
あい「私も、Pくんと約束の一つでもしておけば良かったかなってね……ふふ」
イヴ「あ、あいさんが微笑みましたぁ♪」
あい「……むぅ」
イヴ「♪」
――――――
――――
――
裕美「戻りました」
あい「お疲れ様、帰ってきて即行で悪いがPくん」
P「なんだ?」
あい「今日はミーティングをしようと思ってね」
P「ふむ、してその心は?」
あい「色々と聞きたいことがあるんだよ」
P「……お前何にジェラシー妬いてるの?」
P「わかった、わかったよ」
あい「最初からそう言えばいいんだよ」
イヴ「わぁ☆ じゃあ準備してきますぅ☆」
裕美「私も、親に連絡するね」
P「了解……んじゃ、俺はデスクワーク有るから適当に晩飯でも食べて来い」
あい「出前を頼もうじゃないか」
P「経費で落とす」
裕美「……いいの?」
あい「いいんじゃないか?」
P「事務員がああ言ってるだからいいんじゃない?」
ちひろ「混ぜるってのは晩御飯だけじゃなくてミーテングもですよー?」
イヴ「わぁ♪ 一緒にお話しましょう!」
裕美「……いいの?」
あい「いいんじゃないか?」
P「事務員だからいいんじゃない?」
P「ラーメンでいいな」
イヴ「ミソチャーシューメンでお願いしますぅ」
あい「塩野菜」
P「はいよ、裕美は?」
裕美「醤油ラーメンスープ薄め麺細め」
P「……そんなオプションあったか? 俺はチャーハンセット醤油で」
ちひろ「それでは電話かけちゃいますね」
・
・
・
ちひろ「食器は私が洗っておきますね」
イヴ「お手伝いしますぅ……というのは建前で、家事のお勉強です」
ちひろ「ふふっ……じゃあやってみましょう」
イヴ「はいっ♪」
裕美「……」
P「どうした?」
裕美「……うん、緊張するなって……」
P「大丈夫だって」
裕美「……本当にそう思う?」
なでなで よしよし
裕美「ん……わかった」
P「ああ、お前なら大丈夫さ」
裕美「……♪」
あい「……Pくん?」
P「なした?」
あい「今日は、Pくんの全面的なおごりだ」
P「は!? 何でそうなるよ!」
P「えー」
裕美「……??」
ちひろ「終わりましたよー」
イヴ「どんぶりの洗い方教えてもらいましたぁ」
P「よし、じゃあ移動するか」
イヴ「はぁい☆」
あい「……」
裕美「……あいさん?」
裕美「移動しますよ?」
あい「ああ、わかったよ」
社長「おお、ちひろ君まだ残っていたか」
ちひろ「え゛……なんでしょう?」
社長「ちょっと急務の事務作業が出来てしまってね、手伝ってもらうよ」
P「あ、じゃあ俺もですか?」
社長「君の手を借りるほど大きい仕事でもないよ、ちひろ君1人で十分だ」
ちひろ「そんなぁ~……」
P「南無」
P「今日もお邪魔します」
マスター「いらっしゃい、CD聞かせてもらったよ」
P「どうです? 良い出来だと思うんですが」
マスター「素晴らしかったよ、あらためて良いと思った」
P「練習場所を提供して頂いて本当ありがとうございます」
マスター「彼女らの素晴らしい歌が聴けるなら安いものさ」
イヴ「いやん☆ ありがとうございますぅ」
あい「照れくさいね、ありがとうございます」
裕美「……ありがとうございます」
P「わかりました」
あい「いつもありがとう、マスター」
マスター「いやいや……頑張るんだよ?」
あい「……何の事?」
マスター「はいはい、行った行った」
あい「……からかわれる事が最近増えた気がする」
P「打ち解けた証拠じゃないか?」
あい「そうかな」
あい「……むぅ」
P「まぁまぁ……で、ミーティングってのは?」
あい「それなんだが……」
P「あいにしては珍しく歯切れが悪いじゃないか」
あい「……えっとだな……」
イヴ「裕美ちゃんと何の約束をしたのか気になるみたいですよぉ☆」
裕美「え?」
P「……は?」
イヴ「あいさんたらですね、私もyもごもご」
あい「……」
P「……」
あい「……」
P「……まあ、なんでイヴの口を押さえたのかは聞かないでおくよ」
あい「賢明だね」
P「だからもう離してやってくれ」
※ 前々作の関ちゃんの口調には目をつぶってください><
ふりーまーけっと場
P「んー……」
「いらっしゃい」
P「あ、どうも」
「小物とかどう? うちの娘の手作りだよ」
P「へぇ……よく出来てる、これとこれくださいな」
「はい……ほら、裕美」
裕美「あ、ありがとう……ございます」
裕美「うん……」
P「……ねえ、ちょっとこっち見てくれない?」
裕美「……何?」
P「……うん! 顔立ちもいいしスタイルも悪くない……」
裕美「な……何なの?」
「あの……?」
P「アイドルやってみない?」
裕美「……あいどる?」
P「はい、私芸能プロダクションのプロデューサーをやっていまして、こういうものです」
裕美「……Pさん……」
P「うん、今日は名詞を渡すだけにしておくよ」
「ええ……はい」
P「気が向いたら電話してくれないかな?」
裕美「気が……向いたらね」
P「うん、それでいいんだ。 興味が沸いたらでいいよ」
裕美「……わかった」
「いえ、アクセサリー大事にしてくださいね」
P「はい……じゃあ、連絡待ってるよ?」
裕美「……」
「こらっ……すいませんね」
P「いえいえ、それでは失礼します」
「ありがとうございました」
裕美「私が……アイドル?」
「やってみる?」
裕美「こんな私が出来るとは思えないんだけど……」
「話だけでも聞いてみたら?」
裕美「……ちょっと、考える」
――――――
――――
――
P「忘れてた、すまん」
イヴ「もうっ 1人にしないでくださいぃ」
P「誤解を招くような事を言うんじゃありません」
イヴ「え~……そのブレスレット、どうしたんですかぁ?」
P「フリマで見つけてね、いいものだから買った」
イヴ「私もそれ欲しいですぅ」
P「実はここにもう一つブレスレットがある」
イヴ「きゃあ☆ Pさんは優しいですねぇ♪」
P「ふふふふ」
イヴ「じゃあ、帰りましょー」
P「そうだな」
Prrrrr...
P「はい、Pです……電話してくれてありがとう……うん……じゃあ、○○町前の喫茶店で」
Pi
イヴ「前スカウトした人ですかぁ?」
P「うん、話は聞いてくれるみたいだ」
イヴ「私のお友達が出来るんですねぇ☆」
P「一緒にコンビ組んでもらう予定だからな」
イヴ「私も一緒に行っていいですかぁ?」
イヴ「ぶー」
P「じゃあ、ちょっと出てきます」
ちひろ「わかりました、行ってらっしゃい」
イヴ「行ってらっしゃいですぅ☆」
P「お待たせ」
裕美「うん……」
P「とりあえず俺はアイスティー、君は?」
裕美「……レモネード」
「畏まりました」
P「ところで、親御さんは?」
裕美「1人で行って来いって……」
P「わー……」
P「ん?」
裕美「私は断りに来たの」
P「……何でだい?」
裕美「私なんかにアイドルは無理だよ……目つきも悪いし、ブサイクだし……」
P「……」
裕美「いつもにらんでるんじゃないかって言われて、髪もこんなだし……」
P「……」
裕美「そんな私に、アイドルなんか無理だよ」
P「そっか……」
裕美「だから、断りに来たんだ……私にアイドルは無理……アンタもそう思うでしょ?」
P「それなら、電話で断ればよかったんじゃないかな?」
P「電話までくれて直接来たってことは、ちょっとは興味あるでしょ」
裕美「興味はあるけど……私がなれるとは思わないんだ」
P「で、だ」
裕美「……え?」
P「掻い摘んで、アイドルの仕事を説明していくよ」
裕美「……う、うん」
・
・
・
裕美「……」
P「どうかな?」
裕美「……」
P「興味は、ある?」
裕美「……うん」
P「そっか」
裕美「でも……」
P「じゃあ、事務所まで来てみる?」
裕美「え?」
裕美「……わかった」
P「じゃあ、行こうか」
裕美「あ、お代……」
P「いいよ、俺持ちだ」
裕美「そんな」
P「話を聞いてくれたし、ここまで足を運んでくれたお礼だよ。 いい?」
裕美「……うん」
P「自己紹介がまだだったね、俺はP」
裕美「私は、関裕美」
P「じゃあ行こうか、裕美ちゃん」
裕美「うん」
――――――
――――
――
裕美「お……お邪魔します」
ちひろ「お帰りなさい、その子は?」
P「興味があって、見学です」
裕美「……こんにちは」
ちひろ「こんにちは、私はここで事務員をしている千川ちひろよ、よろしくね?……えーと」
裕美「あ……関裕美です」
ちひろ「裕美ちゃんね……プロデューサーさんは本当にすごい子を見つけましたね」
P「でしょう?」
裕美「……」
裕美「え?」
P「俺が今メインでプロデュースしてる子だよ、イーヴー、いるかー?」
イヴ「はぁい☆ お帰りなさいPさん☆」
P「ただいま」
裕美「……この人が?」
P「うん」
イヴ「イヴ・サンタクロースですぅ。 イヴって呼んでくださぁい☆」
P「どうしたのかな?」
裕美「イヴさん……日本人じゃないよ?」
P「日本人じゃなくてもアイドルになったっていいじゃないか」
イヴ「そうですよぉ! アイドルになっちゃうんです~! いやん☆」
裕美「……Pさん」
P「何だ?」
裕美「わたしも、イヴさんみたいに明るく笑顔になれる?」
P「裕美ちゃんは元々顔立ち整ってるし、笑顔もかわいいと思うよ」
P「裕美ちゃん?」
裕美「私はこんな性格な自分が嫌だったし外見も自信が無い、でもイヴさんみたいな笑顔になれるなら頑張ろうと思うんだ」
P「……そっか」
裕美「これから宜しくね? プロデューサーさん」
P「ああ、よろしく……裕美」
裕美「……うん、イヴさん」
イヴ「なんですかぁ?」
裕美「私、どんな事でも頑張る、イヴさんみたいな笑顔で皆を元気にしたいんです」
イヴ「私の笑顔ですかぁ?」
イヴ「私からもよろしくお願いしますぅ☆」
P「お前らには、ユニットを組んでもらうからな」
イヴ「2人ですかぁ?」
P「いや、トリオだ」
裕美「……あと1人は?」
P「……まだ探してる最中だ、バランスを取るとなると……大人びた落ち着いた人かな」
裕美「ねぇ、プロデューサーさん」
P「どうした?」
P「ああ、裕美はこんなブレスレットを作れる位器用なんだ、なんだってこなすさ」
裕美「……つけててくれてたんだ……」
P「うん、いいものだし……裕美との縁が出来たものだからね」
裕美「……ありがとう」
P「よし、レッスンに行くぞ!」
裕美「うん」
イヴ「はぁい☆」
裕美「プロデューサーさん……」
P「どうした?」
裕美「……私、アイドル辞め……ううん、なんでもない」
P「……」
裕美「……やっぱり……自信が無いよ……」
P「裕美はさ、レッスンが辛いか?」
裕美「うん……」
P「そりゃそうだな、トレーニングみたいなものだから」
裕美「笑顔の練習とかもしてみたけど、相変わらず顔はきついし」
P「……」
P「裕美」
裕美「……なに?」
P「お前はアクセ作ってる時すごく良い感じに笑顔になってるぞ?」
裕美「……そう?」
P「ああ、多分意識しないところで笑顔になってるんだろうな、そのほうが自然だからな」
裕美「……自然に、笑顔に?」
P「そう、自然に、笑顔にだ」
裕美「……うん。 私、頑張ってみるね」
裕美「……何?」
P「今、良い笑顔してるぞ?」
裕美「……私が一番笑顔でいられるのは……プロデューサーさんの前でだから……」
P「うおっ!?」
裕美「……ふふっ……プロデューサーさん?」
P「ど、どうした?」
裕美「私、何でも楽しんでみる。 そして、自然な笑顔でいられるようになる」
P「……」
裕美「だから、その時までアイドルやめない……約束する」
イヴ「一緒に頑張りましょう~☆」
P「イヴ!? いつからそこにいた?」
イヴ「ずっといましたよぉ!」
裕美「……イヴさん」
イヴ「はい?」
裕美「……可愛い」
イヴ「いやん☆」
裕美「プロデューサーさん、私、この笑顔をモノにするよ」
P「わ、わかった」
裕美「それまで、一緒にいてよね?」
P「……おう!」
P「……とまぁ、こんな感じ」
裕美「うん」
イヴ「そのブレスレットって、裕美ちゃんに会った時に買ったものだったんですねぇ」
P「ああ、そのときにどんな事でも楽しむって約束したんだ」
裕美「今は、アイドル楽しいよ……イヴさんもあいさんも良い人だし」
あい「そうか……嬉しいな」
裕美「プロデューサーさんもいるから、私は楽しめるんだ」
P「良かった、ありがとう」
なでなで よしよし
あい「……む」
P「ああ、魅力的だぞ」
イヴ「すごくかわいいですよ☆」
あい「私から見ても可愛いと思うよ」
裕美「良かった……そうだ、今度みんなの分のアクセも作るね」
イヴ「おそろいとかだと楽しそうですね☆」
裕美「うん、おそろいのブレスレットを作るね」
あい「それは楽しみだ」
あい「そういえば、仕事は何だったんだい?」
P「ハロウィンのイベントらしいよ、洋館でライブだ」
裕美「お客さんも私も、楽しめれば笑顔になるよね?」
P「勿論」
裕美「うん、楽しむ」
おわり
関ちゃんR昇格おめでとおおおおおおお!
心から望んでたよ!
お前らはもっと関ちゃんの魅力に気付くべき
それが感じられたら万々歳かな
雰囲気が好きって言ってくれるのはすごい嬉しい
ありがとうございました
Entry ⇒ 2012.10.30 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
涼「冬馬さんってかっこいいですね……」 冬馬「へっ!?」
冬馬(こ、こいつもしかして俺に惚れてる!?えっ!?)
涼「あっ、そろそろ私行きますね!それでは!」
冬馬「ぉ、ぉぅ」
冬馬「うぁぉおああああああああああああああ」
絵理「あの人ずっとこっち見てる……」
愛「あっ!!あの人はこの前も一緒に仕事した鬼ヶ島羅刹さんじゃないですか!」
涼「本当だ。何か用かな?」
冬馬「!!」サッ
絵理「……逸らした?」
冬馬(うわあああああああああ、やばいやばいやばいやばい!!!!)
冬馬「べ、別に見てねえよ!!」
北斗「もしかしてあの娘達かい?確かに皆可愛いね」
冬馬「そ、そんなんじゃねえし。ただ敵事務所の奴らはどんなもんかって見てただけだ」
翔太「ふーん……」
冬馬(神様、あの天使と巡り合わせてくれてありがとう……!)
冬馬「……」チラッ
涼「ん?」
冬馬「!」サッ
涼「……?」
冬馬「961プロからは当然俺が出るぜ!!誰が相手でも楽勝だぜ!」
涼「876プロからは私が!精一杯がんばります!」
冬馬(な、なにいいいいい!?こいつが出てくるなんて予想してなかった!!)
冬馬(ここは負けてやるべきなのか!?それとも勝って腕を見せつけるべきなのか!?)
冬馬(なんてこと考えてたら始まっちまった!)
冬馬(むこうは……)
涼「……」トントントントントントン サッサッ
冬馬(な、なにいいいいいいい!?かなり料理上手じゃねえかああああ!!)
冬馬(あれだけ可愛くて家庭的とか最強じゃねえかああ!!)
北斗「動かないな」
翔太「何ボケッとしてるんだろ」
絵理「楽勝……?」
愛「涼さんがんばれええええええ!!」
翔太「出たっ!!必殺技!」
北斗「これで勝つるっ!」
シューリョー
涼(冬馬さん、料理うまいんだ……前半何もしてなかったのにあれだけのものを)ジー
冬馬(うわっ!こっち見てる!!視線が突き刺さる!!うおおおおおお)
絵理「オリーブオイルをものともしない」
涼「ううん、今回はたまたま勝てただけだと思うな。冬馬さんが本気出してたら負けてたかも」
翔太「ちょっとー、あれだけ自信満々にやったのにダサすぎるよ」
冬馬(エプロンが似合う女って良いな……)ホッコリ
北斗「なんかイっちゃってるぞ」
冬馬(休みの日に2人で料理作るんだ……キャッキャしながら……)
絵理「あっ、どうも……」
北斗「エンジェルちゃん達、今日は楽しかったよ。また会えると良いな」
愛「はい!でもあたし達の中にエンジェルちゃんって名前の人はいませんよ!」
冬馬「お、お、おう!きょ、今日は負けたぜ。料理得意なんだな」
涼「そんな……私なんてまだまだです。冬馬さんの方こそあの短時間ですごいです」
冬馬「そ、そ、そ、そうか!?た、大した事ねえよ!」
冬馬「は?」
北斗「目線も泳いで、顔も真っ赤で声が上ずって」
冬馬「誰がだよ」
翔太「冬馬君しかいないじゃん。涼さんと話してる時かなり気持ち悪かったよ」
冬馬「な、なにいいいいいいいい!?」
北斗「自分で気付いて無かったのか?」
冬馬(や、やばい……このままじゃ童貞キモ男だと思われちまう……)
冬馬(もしかしてもう終わりか……!?)
涼(どうしたらあんな風になれるんだろ……)
涼(何かアドバイスもらえたら……)
冬馬(落ち着け、まだ挽回するチャンスはある)
冬馬(冷静になれ。要は普通に接したらいいんだ)
冬馬(そうだ、北斗や翔太を相手するみたいに自然な感じで)
冬馬(……それが出来たら苦労しねえええ!!)
冬馬「あ」
涼「どうも、こんな所で会うなんて思いませんでした」
冬馬「お、俺もだ。何してるんだ?」
涼「これから愛ちゃん達と買い物なんです」
冬馬「そ、そうか……じゃあ急がないとな」
涼「あっ、そうですね」
冬馬(ちくしょおおおおおおおおおおお!!)
涼「あの……よろしければメールアドレス教えて頂けないしょうか?」
冬馬「……あぇ?」
涼「そ、その!ご迷惑なら全然いいんです!ごめんなさい!急にこんな事!」
冬馬「あ、え、お、良いよ。うん」
涼「本当ですか!?ありがとうございます!」
涼(でも急にイケメンになるためにはどうしたらいいですかとか変だし……)
涼(うーん……)
冬馬「んおおおおおおおおおおお」ゴロゴロ
冬馬「なんだあああああああああ」
冬馬「やっべええええええええええええええ」
冬馬「これなんてエロゲ!?こんな事あんのか!?何!?俺もうすぐ死ぬの!?」
[Sub]秋月涼です
―――――――――――――――――――――
こんばんは、涼です。
急に失礼な事を申し訳ありません。
これからもっともっと冬馬さんとお話しできたら嬉しいです。
冬馬「ぬはああああああああああああああああああ」
冬馬「涼ちんマジアリス!」
冬馬「可愛さがギルティイイイイイイイイ!!」
[Sub]冬馬
―――――――――――――――――――――
全然迷惑じゃないから気にすんな!
お互いトップアイドル目指して頑張ろうぜ!
冬馬「やっぱりお友達からの関係が大事だよな!急に遊びに行こうとか変だもんな!!」
冬馬「黒井のおっさんの方向性とかもう関係ねえ!」
冬馬「こうなったら誰にも俺を止める事は出来ないぜええええ!!」
冬馬「ああ、専用コーナーまで出来るなんてな」
冬馬(最高のスタッフだな。うん)
涼「今日は負けちゃうかもしれません」
冬馬「ん、んなことねえよ。りょ、りょ、りょ、涼」
涼「?」
冬馬「ほ、ほら秋月って765プロの竜宮小町のプロデューサーと被るからさ!!だから涼の方がな!」
涼(律子姉ちゃんのことだぁぁぁ……)
涼(す、凄い迫力……僕にはあんな迫力出せない……)
冬馬「……」ジャッジャッ ジュワァァァ
涼(この前とは全然違う……これが冬馬さんの本気……)
冬馬「ここで追いオリーブ!!!」ダバダバ
涼(なんて大胆なんだぁぁぁあ!やっぱりイケメンアイドル冬馬さんはすごい!)
冬馬「いや、お前も俺に本気を出させるなんて大した奴だ」
涼「……私も冬馬さん……に……たら……」
冬馬「はぇ?」
涼「あっ……な、何でも無いです!今日はありがとうございました!失礼します!」タタッ
冬馬「あっ」
涼(女のアイドルの僕が『冬馬さんみたいになれたら』って言ったらおかしいじゃないか)
涼(あくまでさりげなく教えてもらわないと……危なかった……)
冬馬「あいつ何て言ったんだ!?冬馬さんに……たら……?」
冬馬「……冬馬さんにだったら抱かれて良い!?おおおおお!?」
冬馬「ま、まさかそんなわけねえよな!うん!何考えてるんだ!!!」
涼「大丈夫かな……?」
涼「……いっちゃえ!」ピッ
[To]天ヶ瀬冬馬
[Sub]失礼します
―――――――――――――――――――――
こんばんは、今日はお疲れ様でした。
冬馬さんの料理の腕には本当に驚かされました。
よろしければ、今度お暇な時に私に指導して頂けませんか?
涼(1日一緒に行動して……イケメンの秘訣をたくさん盗むんだ!)
涼(OKが出ればだけど……)
冬馬「これデート!?デートだよなぁおい!?」
冬馬「指導とか……指導とかいかがわしい響だな……」
冬馬「これ、もう俺の事好きなの!?あの天使!?」
[To]秋月涼
[Sub]分かった
―――――――――――――――――――――
向上心があるやつ俺は好きだぜ!
最近そういうやつが少ないからな。
そっちが空いてる日教えてくれないか?
冬馬「す、好きって別にそういう好きじゃないからな!」
冬馬「別にLOVEの方の好きじゃねえから!!だから良いんだ!!」ピッ
冬馬「……送っちまったあああああああああああ!!」
冬馬「あれ……何でこんなに早いんだ……絶対俺の方が先に着くと思ったのに」
涼「先輩をお待たせするのは流石にどうかと思うので」
冬馬「そんなに気を遣わなくても大丈夫だぜ?」
涼「そ、そうですか……?でも……」
冬馬「肩の力抜けって。とりあえず食材見に行こうぜ」
涼「は、はい!」
冬馬(うわああああああああああ服装可愛いいいいいいい!!清純な感じがたまらねええええええ)
冬馬(しかも俺より先に待ってるとかどれだけ健気なんだよ!!良い娘すぎる!!)
涼「そうなんですかー、知りませんでした」モゾモゾ
冬馬(そんなお尻突きだされて商品見るなよ!!目のやり場に困る!!)
涼「そ、そんな荷物は私が持ちます。付き合ってもらってる方なのに……」
冬馬「大丈夫だ。俺が持ちたくて持ってるんだからよ」
涼「で、でも……後輩の私が……」
冬馬「じゃあ先輩命令だ。俺に持たせろ」
涼(か、かっこいい!こういう所を真似しないと……今度やってみよう)
冬馬(デート!!!めっちゃデートっぽい!!こんなに可愛い娘とデート!!)
これはマジでかっこいいな。あまとうが言ったら惚れること間違いなしやろ
涼「あっ、そうですね。お昼にしましょう」
冬馬「食材持ったままだけどまあ大丈夫だろ」
冬馬「ハンバーグ……」ピッピッ
涼(い、イケメンはまずハンバーグを頼むんだ!子どもっぽいかなって思ってたけど……)
涼(冬馬さんが食べるぐらいだから業界ではカッコいいお寿司って事で有名なんだ!)
冬馬「何か食いたい物あるか?」
涼「じゃ、じゃあ私もハンバーグお願いします!」
冬馬「おっ、マジで!?趣味が似てるな!」
涼「私もえんがわで!」
冬馬「うーん、甘エビ」
涼「私も冬馬さんと同じのを!」
冬馬(さっきから俺と同じの食べてる……何、俺のハート崩壊させようとしてんの?)
涼(えーっと、何食べたっけ……ちゃんと覚えておかないと……)ムー
冬馬(一々仕草が可愛すぎるんだよ!!ああああああ、もうううう!!)
涼「はい」
冬馬「じゃあ先に出てくれ。後で金貰うからよ」
涼「分かりました」
涼「そ、そんな!そこまでしてもらうのは申し訳ないです!」
冬馬「いいから、気にすんな」
涼「うぅ……でも私結構食べちゃったんですよ?」
冬馬「じゃあ今度払ってくれよ。今日は俺の番」
涼「……はい。本当にありがとうございます」
冬馬(さりげなくまた会うような空気にしてやったぜええええええ!!俺天才じゃね!?)
涼(代金は黙って全部払う……これも覚えておかなきゃ)
涼「あ……」
冬馬「……」
涼(僕の家は……ダメだ!男だってバレちゃうかもしれない……)
冬馬「うーん……」
涼「あの……私、冬馬さんの家に行きたいです!!」
冬馬「え……」
涼「や、やっぱりダメですか……?」
冬馬「い、良いけど」
涼「ありがとうございます!わー、楽しみです!」
冬馬(な、何これ……これって……もう……マジで童貞卒業する五秒前だろ……)
冬馬「まあな。ちょ、ちょっと待っててくれ!部屋散らかってるから」
涼「分かりました」
冬馬(フィギュアを隠して……あと雑誌も……)ドタバタ ゴソゴソ
冬馬「……」キョロキョロ
冬馬(……良し!大丈夫だ!!)
冬馬「悪い、待たせた。入ってくれ」
涼「お邪魔します」
冬馬(お、俺の家に初めて女の子がきたあああああああああああああああああ!!)
涼「あっ、そうだったんですか……」
冬馬(何これ幸せすぎる……俺は今可愛い女の子と一緒に料理作ってるんだ……)
涼「あっ、冬馬さん。これちょっと味薄くないですか?」
冬馬「ん?……本当だ。おかしいな、俺分量間違えたかな……」ペロッ
涼「えへへっ、冬馬さんでもミスすることあるんですね。ちょっと安心しました」
冬馬「ぇ……ぅ、まあ……な」
冬馬(だって全然集中出来ねえんだよ!!こんなに近いと!!)
涼「血が……出てますね」
冬馬「ああ。ちょっと切っただけだから」
涼「痛そう……」
冬馬(俺ださすぎる……何でこんな失敗を……)
涼「救急箱とかありますか?」
冬馬「そこの棚にあった気が……」
涼(たまには良い所見せないと!カッコイイ男は迅速な行動を!)ガサゴソ
冬馬(おいおい、四つん這いになるなよおおおおおお!!俺の理性をどうしたいんだよおおおお)
涼「あれー……無い……」ガサゴソ
冬馬(神様ありがとう。そして指切った俺GJ)ゴクリ
冬馬「ああ、わざわざ悪いな」
涼「いえ、私なんかが少しでもお役に立てて私嬉しいです」
冬馬(健気ええええええええええええええ!!)キュン
涼(冬馬さんに認めてもらった……!)
冬馬「後はこのまま煮込めば完成だな」
涼「はい!ご指導ありがとうございました!」
冬馬「いや、俺が教える所なんかほとんど無かったぜ。お前の方が料理上手だろ」
涼「そ、そんな……全然ダメダメで……」
冬馬(謙虚な所もたまんねえなあ!!おい!)
涼「いただきます」
冬馬「……うめえな……」モグモグ
涼「冬馬さんの作ったドレッシングもすごく美味しいです」モグモグ
冬馬「俺のなんか大した事ねえよ」
涼「大した事ありますよ。あ、ほっぺたにソース飛んでます」
冬馬「うそ」
涼「動かないで下さいね」フキフキ
冬馬「……」ドキドキ
涼(ふふっ、気づかいが出来る男はイケメン……)
冬馬(うひょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお)
冬馬「俺もやるぞ」
涼「傷口に染みちゃいますよ?私に任せて下さい!」
冬馬「……サンキュー」
涼(今日一日で分かった事は冬馬さんは面倒な事も自分から積極的にやってる!)ゴシゴシ
涼(あと人に対する気遣いがすごい!僕も見習わないと!)ゴシゴシ
冬馬(ああ、涼は良い奥さんになれる……子供は何人が良いかな……)
涼「じゃあ今日はお世話になりました!」
冬馬「……へ?」
涼「こんなに遅くまでお邪魔してしまってすみません」
冬馬「い、いや……ちょっと」
涼「本当に今日はありがとうございました。お邪魔しました」
冬馬「う、うん……」
ガチャッ パタン
冬馬「……」
冬馬「NOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」ゴロゴロ
冬馬「なんだそりゃああああああああああああ」
冬馬「もっと必死に呼びとめればよかったじゃねえかあああああああああああああああ」
[Sub]こんばんは
―――――――――――――――――――――
今日は本当にありがとうございました!
とても楽しい1日でした。
後、迷惑かけてばかりですみません……。
今度会う時は今日の分お返しできるように頑張ります!
それではおやすみなさい。
冬馬「うん、楽しかったなら良いんだ……」
冬馬「俺も楽しかったし」
冬馬「……今度会う時……?また会える……?」
冬馬「いよっしゃああああああああああああ!!終わって無い!!」
[Sub]お疲れ
―――――――――――――――――――――
俺も楽しかった。
また遊ぼうぜ。おやすみ。
冬馬「ふぅ、こんなもんか」ピッ
冬馬「……」
冬馬「はぁぁ、今度いつ会えるんだ……」
北斗「ん?」
冬馬「かっこいいって言われてメアド聞かれて」
翔太「うん」
冬馬「メールをやり取りして遊んで」
北斗「うん」
冬馬「そのまま家に来たら、脈ありか?」
翔太「ブッ……ふ、そ、そうなんじゃない……?」プルプル
冬馬「な、何がおかしいんだよ!!」
翔太「だ、だってそんな具体的な例出すとか……冬馬君……あはははは!!」バンバン
冬馬「ばっ、別に俺の事じゃねえよ!!」
北斗「まあ少なくとも好意は抱いてると思うよ」
冬馬「そ、そうか!」
翔太(ただの友達としか見られてない可能性もあるけどねー)
涼「それじゃあ今日は私が全部払うね」
絵理「良いの……?」
涼「うん!任せて!」ドン
愛「わーい!!ありがとうございます!!」
涼「あれ……?足りない……」
涼「あ、冬馬さーん!」
冬馬「おっ」
涼「今日は遊園地に行くんですよね」
冬馬「そうだな、何か結構面白いアトラクションがあるって聞いたからな」
涼「そうなんですか。ワクワクします!」
冬馬(はぁぁあああああああああああん!!守りたいこの笑顔!!)
涼(冬馬さんチョイスのアトラクション!どんなのを選ぶんだろう)
涼「い、いきなり絶叫系ですか……」
冬馬「時間が経つと待ち時間が長くなるからな。最初に行っとこうぜ」
涼「そうですね……」
冬馬「どうした?怖いのか?」
涼「い、いえ……そういうわけじゃないんですけど」
冬馬「大丈夫だって、俺が隣にいてやるから」
涼(こういう事をサラッと言えるなんてすごい……僕にはとても……)
冬馬(ああああああああああああ!!しまったあああああ!!今のは流石にキモすぎる!!)
涼「そうですね……」
冬馬「俺ちょっとジュース買ってくる。何が欲しい?」
涼「そ、そんな大丈夫です」
冬馬「じゃあ適当にお前の分も買ってくるから待っててくれ」タタッ
涼「あ……」
冬馬(恋人の顔にいきなりジュースをピタッ!!やってみたかったんだよな!!)
涼(どうしてこんなに優しいんだろ……かっこいい人ってみんなこうなのかな)
チビ「お姉さん1人ー?」
涼「あっ、いえっ……、ちょっと」
チャオ「俺達とちょっと遊ばないかい?」
涼「そ、その……」
チビ「良いじゃん良いじゃん!絶対楽しいから!」
涼「私は……」
チャオ「さあ、俺達と共に楽園へ……」
涼(2人ともサングラスにマスク……怪しすぎるよ……)
涼「あ……」
チビ「あっ、逃げろ!!」
冬馬「待てコラ!!」
涼「だ、大丈夫です。何もされてませんから」
冬馬「チッ、あいつらどっかで見た事あるような……」
涼「そういえば……私もそんな気が……」
冬馬「……悪いな。俺が目を離したばっかりに」
涼「そんなことありません、その……とってもかっこよかったです。来てくれて嬉しかったです」
冬馬「あぇぇ……そ、そうかぁ?」
涼(僕にあんな勇気があったら、絡まれても何とかできたのに……)
冬馬(かっこよかった!!!俺はかっこいいのかああああ!!いえええええい!!)
翔太「はい、もう確定」
北斗「思ったより簡単だったな」
涼「ああああああああああああああああ!!」
冬馬(俺は悲鳴出したらダメだあああああああああああばばばば)
冬馬「だ、大丈夫か……?」
涼「ひゃ、ひゃい……」フラフラ
冬馬「ほら、さっき買った飲み物」
涼「ありがとうございます……」ゴクゴク
冬馬(……ペットボトルってエロイな。構造を考え付いた人に賞をあげたい!!)
涼「……あの、何か?」
冬馬「な、何でもないです!!」
涼「お、お化け屋敷!?」
冬馬「ジェットコースターよりよっぽど楽だと思うぜ?」
涼(お化け本当に苦手なんですけど……)
冬馬「まあどうしても嫌なら無理にとは言わねえけど」
涼「い、行きます!!行かせてください!!」
冬馬「お、おう?すごい気合だな」
涼(そ、そうだ!お化け屋敷なんかにビビってたら逞しい男の子になれない!今日僕は克服する!)
冬馬(お化け屋敷で抱きつかれる!!!これ定番かつ最強!!)
冬馬「うおぉ!?」
涼「ヒィッ!?」ビクッ
グアアアアアアアアアアア
冬馬「ほぁ……!!」
涼「あ……ぁあ……」ギュッ
冬馬(手を握ってくれたああああああああああああ)
ヌッ ダラーン
冬馬「うおあああああああ!?」
涼「ぎゃおおおおおおおおおおおん!!」ギュウウウウ
冬馬(だきつきいいいいいえあああああああああああああああああああああああ)
涼「みっともないところお見せしてしまって……」
冬馬「結構レベル高かったから仕方ねえって」
涼(はぁ……やっぱり僕はダメダメだぁ……)
冬馬「もうこういうのやめて楽しいアトラクションに行くか」
涼「はい……すみません……」
冬馬(あああああ、デートしてる感が半端じゃねえ!これぞカップルだろ!!!)
涼(かっこいい人とああいうアトラクション乗るって複雑な気分だなぁ……)
冬馬「やっぱりラストは観覧車だよな」
涼(最後は観覧車……これが冬馬さんの選択!)
冬馬「丁度今ぐらいの時間が夕焼けで一番綺麗に見えると思うぜ」
涼「そうなんですか、楽しみですね」
冬馬(確か北斗がこんな事言ってた気がする!!)
冬馬「お、おま、おま……」
涼「?」
冬馬(お前の方が綺麗だ!お前の方が綺麗だ!!)
涼「……」
冬馬(無理!!北斗の野郎、よくこんな台詞平気で喋れるな!!)
涼「……どうかしましたか?」
冬馬「い、いや!綺麗だよな」
涼「はい、この景色が見れるのも冬馬さんのおかげです!」
冬馬「別に俺は……」
涼「こういうの、大切な人と一緒に見れると幸せですよね」
冬馬(……ん!?今のって!?俺が大切な人!?そういうこと!?どうなの!?)
冬馬「良いんだよ。俺も楽しい!お前も楽しい!それで何か問題があるのか?」
涼「……冬馬さんは本当に優しいですね」
冬馬(……い、今言うんだ……俺……)ドキドキ
涼「あ、あの……」
冬馬「んぁ!?」
涼「その……良ければ!また少しだけ家にお邪魔してもよろしいですか!?」
冬馬(なんだああああああああああああ!?これはあああああああああああ!?)
涼(この前は料理に必死で忘れてたけど今日は冬馬さんがどんな家具を持ってるか覚えて帰らなきゃ)
涼(冬馬さんずっと車道側歩いてたな……やっぱり気遣いがすごい)
冬馬「お、おう!ついたぜ!」
涼「本当にごめんなさい。すぐに帰りますから」
冬馬「き、気にすんなよ!さあ入ってくれ!」
涼「それでは……お邪魔します」
冬馬(ついに俺は……今日……)
冬馬「そ、そうか!?何も考えてないけどな!」
涼「黒と白の家具で統一されてるのですごくかっこいいです」
冬馬(北斗とか翔太にはボロクソに言われたんだけどなぁ)
涼(物の配置は……ん?)
冬馬「ん?どうした?」
涼「それって……」
冬馬「ああ、これ俺達のライブの映像だ。反省点とか見直すためのな」
涼「……み、見たいです!その映像!」
冬馬「え?別に面白いもんじゃ……」
涼「お願いします!」
冬馬「……まあ、別に良いけどよ」
涼(これで冬馬さん達のステージのかっこよさの秘訣を……!)
冬馬(黙りこくってずっと見てる……)
涼「あの……」
冬馬「何だ?」
涼「どうして冬馬さん、こんなにかっこいいんですか?」
冬馬「は……?」
涼「……すいません。急に変な事言っちゃって……」
冬馬「……」
涼「……」
冬馬「……どうして涼はそんなに可愛いんだろうな」
涼「……えっ」
冬馬(俺……がんばれ俺!!)
涼「わ、私……」
冬馬(な、何でここまで言ったのに!……言っちまえよ!)
涼「その……あ!すいません!長居しちゃいました!」
冬馬「!」
涼「そろそろ……」
冬馬「……待ってくれ!」ガシッ
涼「!?」
冬馬(……ここで言わねえでいつ言うんだよ!!)
涼「冬馬さん……?」
冬馬「……涼、好きだ!!」
冬馬「涼が好きだ……!」
涼(そ、そんな僕は男で冬馬さんは男で……そんなありえない……)
冬馬「……お前の気持ちを聞かせてくれ!」
涼(も、もしかして今の僕が女の子だから!?でも僕なんかより可愛い人はいっぱい……)
冬馬「……」
涼「ぁ……ぅ……」
涼「ヒッ……」
冬馬「……」
涼「ぁ……あの……僕……」
冬馬「頼む、答えてくれ」
涼「……ご、ごめんなさい!!」
冬馬「ぇ」
涼「さよなら!!」ダダッ
ガチャッ バタンッ
冬馬「……」
冬馬「……」
冬馬「……」フラフラ バタッ
冬馬(いや、挨拶や共演する時は普通に接してくれる)
冬馬(だけど……明らかに怯えている……もう俺は……)
冬馬「……」
翔太「冬馬君あの日からずっとこの状態って事は……」ヒソヒソ
北斗「まあ、散ったんだろうね……」ヒソヒソ
冬馬「何ヒソヒソ話してるんだ……?」
翔太「い、いや!ただ冬馬君最近暗いなぁって!」
冬馬「俺はいつでも元気100%だぜ……」
北斗「そ、そうか……」
北斗「おい!冬馬、涼ちゃんが重大発表するらしいぞ!」
冬馬「は……?」
翔太「何ボケッとしてるの?ほら!早く早く!テレビ見て!」
冬馬「……」
涼『――――――。―――――――』
冬馬「……涼が……男……?」
冬馬「僕……か」
涼「……あんなにお世話になったのに……僕は……」
冬馬「……」
涼「冬馬さんを傷つけてしまって……」
冬馬「……俺の目が節穴だっただけだ。あんな変装も見分けられなくて何がトップアイドルだ」
涼「何度も……メールをしようとして……でも怖くて……」
冬馬「当たり前だろ。男に告白されたら俺でもビビるぜ」
涼「……僕は……僕は……」グスッ
冬馬「もう良いって言ってるだろ。男の癖にいつまでもウジウジしてんなよ」
涼「あ……」
冬馬「それなら問題ないだろ?俺も男に告白した過去があるとか嫌だからな」
涼「……」
冬馬「またどっか遊びに行こうぜ!もう遊園地は行かねえけどな」
涼「……はいっ」
涼「……」
冬馬「同じ男のアイドルとしてお前には絶対負けねえからな」
涼「ぼ、僕も冬馬さんみたいになって……きっと……!」
冬馬「俺を目指してどうすんだよ。頑張っても俺にしかならねえじゃねえか。トップアイドルになんだろ?」
涼「あ……」
冬馬「お前はお前のやり方でトップを目指すんだな。俺は俺のやり方を貫く」
涼「……分かりました。冬馬さんに勝って……そしてトップアイドルに!」
冬馬「良い度胸だ。俺を失望させんなよ」
涼(冬馬さん……ありがとうございます)
北斗「一時は目が死んでたからな……本当に良かったよ」
冬馬「けっ!いつまでもクヨクヨしてられるか!俺は涼だけには負けねえからな!」
翔太「へー、でも涼さんに惚れて……」
冬馬「うっせえええええええええ!もうその事は言うんじゃねえ!!」
―――――――数ヵ月後―――――――――
冬馬「なあ……」
北斗「どうした?また恋の悩みか?」
冬馬「……やっぱおかしいか?」
翔太「だから何が?」
冬馬「男でも……悪くないんじゃねえか?」
終わり☆
面白かったぜ
ついに目覚めてしまったかあまとう
Entry ⇒ 2012.10.29 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
蒲原「モモのにおいがするぞー」
蒲原「やっぱりいたか。ワハハ」
モモ「相変わらずすごいっすね蒲原先輩」
蒲原「そうだろー」
モモ「ちょっと引くっす」
蒲原「え」
モモ「あはは、ウソっすよ」
蒲原「なんだウソか」
モモ「はい、なんか用があるみたいでまだ学校らしいっす」
蒲原「学校で待たなくていいのか?」
モモ「む、いつもそんなにべったりじゃないっすよ」
蒲原「いやベッタリだろー」ワハハ
モモ「私は別に、待つのは全然いいんすけど……それで加治木先輩が私に気をつかうなら、そんなことはしたくないんっす」
蒲原「そういうもんかー」
モモ「そういうもんっす」
蒲原「?」
モモ「今日はどうしたんすか、こんなところで」
蒲原「帰り道だぞ」
モモ「……先輩の家、こっちの方角じゃなくないっすか」
蒲原「ワハハ。まあそうなんだけどな」
モモ「?」
蒲原「ふらふら散歩するのが好きでな。ちょっと足伸ばしてみた」
モモ「なんか先輩らしいっすねえ……」
モモ「山ばっかりっすよ」
蒲原「それがいいんじゃないか」
モモ「そうっすかねえ」
蒲原「そうそう。ワハハ」
モモ「はあっす」
蒲原「モモは?何してたんだ、こんなところでー」
モモ「え?いや、えーと」
蒲原「?」ワハハ
蒲原「ん?」
モモ「……帰り道だから、っす。加治木、先輩の」
蒲原「」ワハハ
モモ「……」
蒲原「やっぱり待ってるんじゃないか」
モモ「!」
蒲原「いや、この場合”待ち伏せてた”かー?」
モモ「蒲原先輩!」
蒲原「ワハハ」
モモ「……分かってるなら言わないでくださいっす……」
蒲原「わるいわるい」ワハハ
モモ「はあ……蒲原先輩にバレるなら、加治木先輩にもバレてるっすかね、これ……」
蒲原「ん?ああ、それは大丈夫」
モモ「え」
蒲原「ユミちんは特別鈍感さんだからなー」
モモ「ああ、それは確かに……」
蒲原「な?」ワハハ
モモ「ふふ。だから苦労するんすよねえ」
蒲原「ん?」
モモ「私のにおいって……どんなんすか?」
蒲原「んー、そうだなー」
蒲原「ちょっとすっぱい」
モモ「?!」
モモ(私汗くさい?!)
蒲原「でも甘い」
モモ「??」
蒲原「梅だなー。うん。梅のにおいだ」
モモ「う、梅っすか……」
モモ(汗くさいはないってことすか……)
モモ「へえ……私そんなにおいなんすか。別にシャンプーもせっけんも、梅っぽいの使ってるわけじゃないんすけどね」
蒲原「まあコレは私の感覚だから。他の人には分かんないかもなー」
モモ「あれ、ってことはっすよ?」
蒲原「?」
モモ「例えば私が梅の木の下に立って黙ってたら、蒲原先輩も私のこと気付かないってことっすか」
蒲原「ワハハ。そうかもなー」
モモ「へえ……」
モモ「それは私に言われてもっす」
蒲原「確かになー」
モモ「他のみんなはどんなにおいするっすか?」
蒲原「そうだなあ」
モモ「特に加治木先輩とか加治木先輩とか」
蒲原「じゃあ佳織から」
モモ「?!」
モモ「……においの話っすよね?」
蒲原「ワハハ。まあさっきも言ったけど感覚の話だから」
モモ「はあっす」
蒲原「冷たい空気を吸うと鼻の奥がツンとするだろ?佳織はその逆なんだ」
モモ「ああ、そういう言い方だとなんか分かるかもっす」
蒲原「だろー」
蒲原「むっきーはなー。そうだな、色で言うと」
モモ「……だからにおいの話っすよね?」
蒲原「だから感覚だよモモ」
モモ「うーん……」
蒲原「それでな、色で言うと……灰色、かな」
モモ「イメージカラーがそれなのは分かるっすけど」
蒲原「灰色を連想するにおいを嗅ぎ取れるっていうのかな」ワハハ
モモ「……よく分かんないっす」
蒲原「ん?清澄のとかはいいのかー?」
モモ「もういいっすよ、おなかいっぱいっす」
蒲原「そうかー」
モモ「はやくはやくっす」
蒲原「そう言われると焦らしたくなるなあ」
モモ「シャー」
蒲原「分かった分かった」ワハハ
モモ「もう」
モモ「ごくりっす」
蒲原(口に出して”ごくり”って言ったなー)ワハハ
蒲原「えーと」
モモ「?」
蒲原「わかんないんだな、それが」
モモ「?!」
蒲原「いや味はさすがに」
モモ「それじゃああれっすか、蒲原先輩は近くに加治木先輩がいても分から――」
モモ「――分からない、なんてことはないっすよね……」
蒲原「うん。そもそもにおいなんて、モモがいなきゃ意識もしなかったことだからなー」
モモ「……でも、なんで加治木先輩のにおいは分かんないんすか?」
蒲原「どうしてだろなー。もしかしたら、ユミちんのほうが嗅ぎ取らせまいとしてるのかもなー」
蒲原「?”じゃあ”?」
モモ「私が嗅ぐっす!加治木先輩のにおい!」
蒲原「そうかー」ワハハ
モモ「抱きついたときにこう、襟足のあたりをくんくんするっすよー」
蒲原「……そう詳しく言わなくてもいいんじゃないかー」
モモ「嗅ぐっすよー」メラメラ
蒲原「いつになく燃えてるなー」
モモ「?なんすか?」
蒲原「たまーにユミちんのにおい、分かることがあるんだ」
モモ「え、まじっすか?先言ってくださいよそういうのは」
蒲原「ワハハ。いやなー、残り香があるんだよ」
モモ「残り香っすか?」
蒲原「そう。梅のにおいがなー、たまにユミちんに残ってるんだ」ワハハ
モモ「……」
蒲原「ワハハ」
モモ「……」ボッ
蒲原「真っ赤だなー、モモ」ワハハ
蒲原「お、もうこんな時間かー」
モモ「こ、この時期はすぐ暗くなるっすからね……そろそろ帰るっすか」
蒲原「そうするかー」
モモ「なんかすいませんっす、付きあわせてしまって」
蒲原「いや、全然いいぞー。そもそも私のほうから来たんだからな。それに」
モモ「それに……?」
蒲原「一人でふらふら散歩するのも楽しいけど、誰かといるのも好きだからな。話せて楽しかったぞ、モモ」
モモ「それは……私もっす、蒲原先輩」
蒲原「そうかー」ワハハ
モモ「そうっすねえ」
蒲原「……」
モモ「どうかしたっすか、先輩」
蒲原「いやなー」
モモ「?」
蒲原「終わっちゃったなー、って」
モモ「そ、そうっすね」
蒲原「ごめん、白状するとな。ちょっと足りない。いや、ちょっとどころじゃなく足りないんだ」
モモ「……?」
モモ「はいっす、私が昔の加治木先輩のこと知りたいって言ったときっすよね」
蒲原「うん。それで夏は私の車で色んなところ行ったけど。正直まだまだ遊び足らないんだよなー」
モモ「私は遊び尽くしたなって思いましたけど……」
蒲原「私も分かってるよ、本当に遊び尽くしたっていうのは、あれくらいのことを言うんだって。でも子供みたいなんだけどなー、まだ未練みたいなこと思うんだよなー」
モモ「蒲原先輩……」
モモ「……先輩」ギュ
蒲原「お?」
モモ「私も、なんとなく……分かるっすよ。みんなと麻雀部として一緒にいられる夏は今年のたった一度きり……それならどれだけでも遊んでいたいって思うのも」
蒲原「……大人にならなきゃ、とは思ってるんだけどなー」
モモ「しょうがないっすよ……私だってそうっす、先輩たちと一緒にいられなくなるのは寂しいっす」
蒲原「ユミちんとだけ、じゃなくてか」
モモ「そうっすよ。来年、蒲原先輩がいなくなっちゃうのだって寂しいっす」
蒲原「優しいなー。モモは」
モモ「いいんす……蒲原先輩が、そういう風に思ってくれたのは嬉しいっすから」
蒲原「……こういう雰囲気だからさ、言うけどなー」
モモ「?」
蒲原「大好きなんだよなー、みんなのこと。そりゃ、たぶんモモがユミちんに思ってる好きとは違うものだろうけど」
モモ「先輩……」ギュ
蒲原「モモー」
モモ「……帰りたくないっすねえ」
蒲原「そうだなー」ワハハ
モモ「そうっすね……」
蒲原「帰ろう、今日はさ」
モモ「……はいっす」
蒲原「ライトライトっと」ゴソゴソ
モモ「持ち歩いてるんすか……」
蒲原「何事も備えが大事だぞー?」ワハハ
モモ「あははっす……」
蒲原「?どしたー」ワハハ
モモ「合同合宿のときにっすね、ちょっと加治木先輩と話したんすけど」
蒲原「うん」
モモ「夏も秋もその後も、みんなで一緒にいようって……先輩に、そう言ったんすよ、私」
蒲原「……そっか」
モモ「加治木先輩が”そうだな”って、言ってくれたら……できそうな気がするっすよねえ」
蒲原「……ああ」
蒲原「ヘタレのユミちんにそれを言わせるのはモモの役目だなー?」
モモ「えへへ。頑張るっすよー」
モモ「はいっす。こっちの道は街灯も比較的多くて明るいっすから大丈夫っす」
蒲原「そっか。それじゃまた、明日なー」
モモ「?明日は土曜っすけど……」
蒲原「ワハハ」
おしまい
ともあれ読んで下さった方はありがとうございます。
咲全国編アニメ化おめでとう!
またネタ思い浮かんだら咲SSかきますそのときまたお暇があればお相手したってください
それではまた
乙
乙
Entry ⇒ 2012.10.29 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (3) | Trackbacks (0)
憩「恋愛相談?」
憩「スクールカウンセラーとして尽力はさせてもらうけども……あの二人じゃあかんの?」
初美「衣と胡桃ですか? あんなちんまいのに何を相談するんですかー」
初美「二人とも恋愛経験とか無さそうだし」
憩「あはは……えらいボロクソ言うんやね……」
初美「本当のこと言ってるだけですよー」
憩(仲良いほど遠慮せえへん、ってことなんやろうなぁ)
憩「まあええわ。それで、恋愛相談って言ったけど……誰か好きになったの?」
憩「青春やなぁ。お相手は訊いてもいい感じ?」
初美「はい。先生になら言っちゃいますよー。3年生の臼沢さん、って知ってますか?」
憩「臼沢さんって……バスケ部で部長やってる臼沢塞さん?」
憩「確かこの前はっちゃんと一緒に保健室来たよな?」
初美「一ヶ月以上前のことなのに覚えてるとは……流石先生ですねー」
憩「まあ、結構印象深い出来事やったしなー。二人の組み合わせも珍しかったし」
憩「あ、もしかして……そのときに惚れてもうた感じ?」
初美「あ、あれはきっかけです……その日からちょっと気になりだして、バスケ部覗いたりしているうちに……って感じです」
憩「なるほどなぁ」
初美「そうなんですよー。あの時もすごく優しくしてくれたし、バスケしてるとことか特にカッコいいです……」ポケー
憩(初恋、って感じやなぁ……恋に恋してるような感もあるけど……)アハハ
憩「えっと、それではっちゃんは臼沢さんと具体的にどうなりたいの?」
初美「うーん……とりあえず、気兼ねなく話せるくらいには仲良くなりたいですね」
憩「そっかそっか。……付き合いたいとか思っちゃってる感じ?」
初美「そ、それは……まだ分からないです……」
初美「この気持ちが恋愛感情なのかも分からないので……」
憩「ただの憧れかもしれんしな」アハハ
憩「お近づきになりたい、ってことやんな?」
初美「それ! その通りですよー!」
憩「ふむふむ……しかし、話は分かったけど具体的にどう協力するかが迷うわ……」
初美「先生のコネとか使っちゃって、こう、ぐぐーっとばばーっとなりませんか?」
憩「ぐぐーっとばばーっと……」アハハ
初美「何か用事とか無いと、話しかけにくいし……」
憩「学年も違うしなぁ」
初美「はい……」
初美「おお!」
憩「だから臼沢さんと仲ええ子に事情を話して、ちょっと手伝ってもらおか」
初美「塞さんって誰と仲が良いんですか?」
憩「えっと……3年の小瀬川さんに、2年の鹿倉さんに」
初美「えっ……胡桃と仲良いんですか!?」
憩「臼沢さんと同じ部活入っとるやん。名前忘れたけど、学内ボランティア部みたいなん」
初美「そ、そうなんですか……初耳です。胡桃の部活、お遊びサークルだと思ってたんで……」
憩「まあ、暇な時はずっと遊んどるらしいけど」アハハ
このSSでは違うの?
はい。はっちゃんと胡桃が2年生設定です
初美「塞さんってそんな部活に入ってるんですか!? 初耳ですよー……」
憩「1年の時からバスケ部と兼任してるで? その部自体は小瀬川さんが部長やけど」
初美「そうだったんですかー……」
憩「まあ臼沢さんはバスケ部の方がイメージ強いからなぁ。部長でエースで有名やし」
初美「胡桃と仲が良いのは分かりましたけど、小瀬川ってのは誰ですか?」
憩「中学の時からの友達、とかそんなんやった気がするけど……詳しくは知らんわ」
初美「そうですか……」
憩「でも臼沢さんと一緒のクラスやで? 部活外ではほとんど一緒におるし」
初美「仲の良い友達ってことですかー……」
初美「東横さん……うーん、知らないですー……」
憩「バスケ部唯一の1年生レギュラーやから、名前だけやったら結構有名やと思うで?」
初美「ほ、本当ですか? 見学してたときそんな人見かけませんでしたよー」
憩「あの子クラスでも部内でもめっちゃ影薄いらしいからなぁ……」
憩「名前は知れてても実際に姿見た事ある人はほとんどおらんらしいわ」
初美「なんか都市伝説みたいですね……影薄いにも限度がありますよー……」
憩「まあとりあえず、ウチが把握してる限りやったらその三人かなぁ」
初美「なるほどなるほど……」
憩「どうする? とりあえず、身近なところで胡桃ちゃんあたりに頼んでみる?」
憩「普段一緒におるから逆に頼みにくいか」アハハ
初美「どうしても、ってなった場合はアレですけど……」
憩「ほんなら小瀬川さんか東横さんいってみる?」
初美「小瀬川って人は3年生ですよね?」
憩「うん、そやでー」
初美「学年が上の人に頼むのはちょっと気が引けるから……とりあえずバスケ部の1年生にお願いしましょう!」
憩「了解です。んじゃ早速来てもらおか」
初美「えっ? こっちから出向かないんですか?」
憩「東横さんには悪いけどな」
憩「ウチは保健室離れるわけにもいかんし、そもそもあの子見つけられる自信ないから……」アハハ
初美(み、見つけられる自信無いってどういうことですかー……)
キーンコーンカーンコーン
憩『バスケットボール部1年の東横桃子さん。校内にいましたら、至急保健室まで来てください』
憩『繰り返します。バスケットボール部1年の……』
―――――――――――
憩「ま、ゆっくり待ちましょ」ニコ
初美「流石先生ですよー! 頼りになる!」
憩「褒めても何も出えへんでー」
憩「まあこの時間やったらバスケ部もまだ練習中やと思うし、来てくれると思うわ」
初美「今日はお休み頂いてます。気になって部活にも身が入らなくて」
憩「そんなに思い詰めてるんや……」
初美「一つのことしか集中出来ないだけですよー」アハハ
憩「ふふ、そっか」
憩(もし上手くいかんくても、この子の性格やったら大丈夫そうやな……)
初美「このチャンス、絶対に活かしてみせますよー……!」ゴゴゴ
憩「燃えとるなぁ」アハハ
―――――――――――
初美「……来ませんね」
憩「まだ5分も経ってないでー」
初美「うぅー、そわそわしますよー……」
憩「せっかちさんなんやね 。でもまあ、もう言うてる間に来ると思うけど……」
モモ「あのー……」ユラ
初美「きゃあああ!?」
モモ「さっきノックして入ったっすよ? 返事なかったんで勝手に入っちゃいましたけど……」
憩「ごめんな東横さん。毎回気付けんくて。ウチは初めてやないのに……」
モモ「別にいいっすよ。馴れてるんで」アハハ
初美「ってことは……あなたが噂の……」
モモ「う、噂されてるんっすか私?」
憩「ふふ、さっき絶賛噂してたでー。東横さんの力が必要やってな」
モモ「私の力が? えっと……どういうことっすか先生?」
モモ「ここに呼びだれたのになんか関係してたり……」
憩「ちょっと東横さんに手伝って欲しいことがあってなー」
初美「東横さん! 塞さんのこと教えて欲しいですよー!」
モモ「塞さん? 塞先輩のことっすか?」
初美「ずばりその通りですよー!」
憩「意味分からんやろうから事情説明するわ」アハハ
モモ「は、はいっす……」
――――――――――――
モモ「なるほど……そんな甘く切ない事情が……」フムフム
憩(そこまで切なくはないと思うけど……)
モモ「塞先輩、相変わらずモテモテっすね」アハハ
初美「も、モテモテ!? ってことは、私以外にも……」
モモ「はい。クラスではどうか知りませんけど、部内では大人気っすよ?」
憩「まあ、部長でエースやしね」
モモ「はいっす。それでいて面倒見も良いし優しいし、絵に描いたような理想の先輩っすよ」
モモ「我がバスケ部の誇りっすね」キリッ
初美「それじゃあ塞さん、もう付き合ってる人とか……」
モモ「うーん……そういう話は聞いた事ないっすね」
初美「!」パァァ
モモ「誰々が告白したとか何々が好きらしい、ってのはよく聞くんすけど」
初美「これはもう勝利宣言出来るレベルですよー!」
モモ「あはは、落とせる気マンマンなんっすね。でも正直かなり難しいと思うっすよー?」
初美「な、なにゆえですかー……?」
モモ「塞先輩、高校入ってから今まで誰ともお付き合いしたことないらしいんで」
憩「今までの告白全部断ってきてるってこと?」
モモ「聞いた話では」
初美「そ、それは今までの女が雑魚だっただけですよー」
モモ「薄墨先輩なかなか言うっすねー。確かにそれはあるかもですけど……」
モモ「塞先輩、誰か好きな人がいるんじゃないか、ってのがバスケ部の推測なんすよ」
初美「す、好きな人!?」
憩「なるほどなぁ……そうなってくると難しなってくるね……」タハハ
モモ「本当に自分が好きだと確信できる人じゃないとお付き合い出来ない、とからしくて」
初美「うむむ……!」
憩「これは一筋縄じゃいかなさそうやね……」
モモ「塞先輩って見た目通り乙女っすから、かなり貞操観念が強いんすよ」
モモ「ちょっとエッチな話するとすぐ顔赤くするし、そのクセ恋バナには興味津々で」アハハ
初美「塞さんって初心なんですねー」
憩「めっちゃ普通に女子高生しとるんやね。この学校の子おかしい子ばっかりやからなんか安心するわ」
モモ「ましてや出会って間もない人と付き合う姿とか想像できないっすね」タハハ
初美「マジですかー……」シュン
憩「高嶺の花ほど手に入れるのは大変ってことやね」
モモ「本当に高嶺の花っすね。突撃しては玉砕していく人いっぱい知ってますし」
憩「そういえば、好きな人に振られたとかでたまにカウンセリング受けに来る人おるけど……」
モモ「そのうちの3割くらい塞さんじゃないんすか?」アハハ
初美「ほ、他の女の手垢が付いてないことは良い事ですよー」
憩「あはは。はっちゃんはポジティブやねー」
モモ「でもそれでいいっすよ薄墨先輩! 恋愛なんて諦めずに押しまくるのが一番っす!」
モモ「私の経験談では!」
憩(お相手誰ですかー)
モモ「ふふ、私なんかでよければ任せるっす」
モモ「塞先輩はそろそろ恋愛の一つでもするべきだと思うっすからね」
初美「おお……!」
憩「やったなはっちゃん。これで協力者一人目やで」
憩「バスケ部とのパイプも出来て数歩前進や」
初美「それじゃあ早速……どうすればいいんでしょう?」
モモ「体験入部でもしてみるっすか? あ、でも流石に塞先輩が構ったりは出来ないっすね……」
憩「まずはきっかけやなぁ……いやでも、顔見知り程度にはなっとるんやから、あとは親密になるためになんかして……」
初美「な、何をすればいいですか……?」
モモ「うーん、そうっすね……」
初美「えっ」
モモ「それは良い案っすね」
モモ「お互いに保健室に用事があって、それでいてたまたま一緒になったって言うのなら自然っす」
憩「そこから会話が始まって、親密になれるかどうかははっちゃん次第やな」
初美「な、なるほど……」
モモ「なんなら一日中保健室に閉じ込めるとかどうっすか! これで一気に距離を縮めて……!」
初美「それは素晴らしい案ですよー!」
憩「流石に先生としてそこは認められんかなぁ……」アハハ
初美「えー。ちょっとくらいダメですかー……?」
憩「ちょっとくらいダメですねー。1時間くらいは空けても大丈夫やから、その間に次のイベントに繋がるよう頑張ってや」
モモ「吊り橋効果を利用して距離をぐっと……」
憩「と、東横さん? あんましそういう穏便じゃないことはやめような」
初美「保健室に二人きりだけでも十分ですよー。何から何までお世話になるつもりはないです!」
モモ「それは心強いっすね」アハハ
憩「んじゃ、とりあえず早速今から始めよか」
憩「東横さん、臼沢さんここに呼び出したりって出来る?」
モモ「任せるっす!」
初美「よろしくお願いしますよー!」
憩「んで、はっちゃんはここで待機やけど……臼沢さん来るまでにちょっと細工しとこか」
初美「細工?」
憩「まあ、任せてや♪」
モモ「それじゃあ、とりあえず私は呼んで来るっすね」
初美「よろしくですよー」
―――――――――――
初美「うぅ……いざ保健室に一人にされると緊張するですよー……」
初美(でも、これは私自身のこと……協力してくれた二人のためにも、足がかりを……!)
コンコンコン
初美(き、来た!)
初美「は、入って大丈夫ですよー」
塞「失礼します……ってあれ? 先生は……?」ガラ
初美(塞さん……ユニフォーム姿……)
初美「なんか用事があるらしくて出て行っちゃいました。すぐに戻って来るそうですよ?」
塞「そっか。って……薄墨さん」
初美「お久しぶりですー。あの時はお世話になりました」ニコッ
初美「あはは、また怪我しちゃいました」
塞「だ、大丈夫? この前よりも酷く見えるけど……」
初美「体育の授業中にちょっと捻っちゃいました……」アハハ
塞「そっか……何かあったら私に言ってよ。先生帰って来るまでは手助けするから」
初美「ありがとですよー……塞さんはやっぱり優しいですね」ニッコリ
塞「そ、そうかな? 当たり前のことだと思うけど……」
初美「そんなことないですよー。塞さんは凄く優しいです」
初美「あの時だって、怪我した私のところに真っ先に向かって来て、保健室まで運んでくれて……」
塞「あ、あの時は私が一番近くにいたから……それに、怪我した人を放っておけるわけないし」アハハ
初美(ふふ、本当に素敵な人ですよー……)
塞「なんか健康診査? に不備があったとかで、荒川先生が呼んでるらしくて」
初美(また適当なことでっち上げたんですねー……)
塞「先生がいないから、少しの間ここで待つ事になりそうだけど……」
初美「そうなんですかー。それなら、その間は二人きりですね」ニコッ
塞「ふふ、そうだね」
初美(とりあえず、メルアドくらいは持って帰りたいですねー……)
塞「薄墨さんはどんな用事? って言っても、その足だよね……」
初美「いえ、この足もそうなんですが……実は今、ちょっと熱っぽくて」
塞「えっ?」
初美「体調もあんまり良く無いんですよー……」
塞「だ、大丈夫? 私先生探して来ようか?」
初美「いえ、そこまでしてもらわなくて大丈夫ですよ……」
塞「本当に……?」
初美「はい。一人のときは少し辛かったですけど……」
初美「今は塞さんがいるから大丈夫です」ニコッ
塞「っ……そ、そっか。あはは……なんかそう言われると恥ずかしい……」
初美(塞さん可愛いですよー)
初美「そういえば。聞いた話なんですが、塞さんって胡桃と仲良いんですか?」
塞「うん、昔からの馴染みだけど……薄墨さんは胡桃の知り合い?」
初美「私、胡桃とは同じクラスなんですよー。いつも一緒にご飯食べたりしてます」
塞「そうなんだ! そっか、胡桃、同学年の友達出来たのかー……」
初美「私と胡桃は1年の時から友達ですよ? まあ、腐れ縁ですけど」
塞「二人ともちっちゃいから気が合ったりするのかな」アハハ
初美「身長のことはいじらないでください」ジトー
塞「高校生で胡桃と同じくらいの身長の子なんて、この世にいないと思ってたから」アハハ
初美「私も初めて胡桃を見た時はビックリしたですよー」
初美「高等部の1年と中等部の1年間違えてるんじゃないかって思いました」
塞「ふふっ……薄墨さんがそれ言うとめちゃくちゃ面白いね……」
初美「バカにしないで欲しいですよー……」ジトー
初美「それでまあ、案の定胡桃に話しかけられたんですが……アイツ私になんて言ったと思います?」
塞「胡桃のことだから……ふふ、ここは高等部だよ、って注意されたとか?」
初美「その通りです。そっから互いに初対面なのに大喧嘩ですよー」
塞「薄墨さんと胡桃にそんな馴れ初めがあったなんて……面白いなぁ」
塞「高等部に上がった初日にそれってすごいね」アハハ
初美「まあ最初の印象が最悪だったせいか、今ではそれなりに仲良くさせてもらってますけどね」
塞「そっか。胡桃にそんなことがあったなんて……全然知らなかったなぁ」
塞「あの子、私たちといる時はクラスのこととか全然話さないから」
初美「そうなんですか?」
塞「うん。まあそれを言うなら、私とかもそうなんだけどね」
初美「塞さんはバスケ部とは別に胡桃と同じ部活に入ってるそうですが……何の部活なんですか?」
塞「ただのお遊びサークルだよ。名称は立派に校内ボランティア部ってなってるんだけど……」
初美「こ、校内ボランティア部?」
塞「そいつがただ自分の欲求を満たすためだけに作られたのが校内ボランティア部なの」
初美「めちゃくちゃふざけた成り立ちですねー……」
塞「最初は昼寝部っていうもっとふざけた名前にしようとかって言ってたんだけど、流石にやめさせて」
初美「あはは……」
塞「部として承認してもらうために名前だけでも偽ってるって感じだね」
初美「具体的にはどんな活動をしてるですか?」
初美「流石に遊んでるだけだと、先生たちが気付いて消滅させようとするんじゃ……」
塞「先生から雑用回されてそれやったり、一般生徒の依頼とか相談事を解決したり」
初美「要するになんでも屋みたいなものですかー?」
塞「うん、その例えが一番しっくりくるね」
初美「そんな部がこの学校にあったなんて……」
塞「案外有名だって聞いてるんだけどね」
塞「荒川先生に頼めないようなことはボランティア部に頼むとかって」
塞「まあ、部長は年中めんどいめんどい言ってるんだけど」アハハ
初美「ふふ、面白そうな部活ですねー……また何かあったときは利用させてもらうですよー」
塞「ぜひ。まあ、バスケ部もあるからそんときに私がいるかどうかは分からないけど」
初美「はい。毎日元気にすいすいしてますよー」
塞「すごく健康的な見た目してるもんね。綺麗に焼けてて……」
初美「塞さんの真っ白な肌も綺麗ですよー」
塞「そ、そうかな……」
初美「はい。一度でいいから触ってみたいです」ニッコリ
塞「あ、あはは。また機会があったらね」
初美(ガードが固い……)
塞「にしても、先生帰って来ないね……結構話し込んだと思うんだけど……」
初美「そ、そうですねー……きっと色々と立て込んでるんですよー」
塞「保健室の先生って忙しいって聞くしね……」
初美(今の感じだと、ここからキャッキャウフフなんて到底無理そうですねー……)
初美「あ、あの、塞さん!」
塞「ん、なに薄墨さん?」
初美「め、メールアドレス交換しちぇもらっていいですか?」
初美(か、噛んだ……)
塞「ふふ、喜んで」ニコッ
初美(やりましたよー!)
塞「あっ……携帯部室だ……」
初美「」
塞「ご、ごめんね薄墨さん……えっと、どうしよっか? 紙に書いて渡す?」
初美「そうしてもらえると嬉しいですよー……」
塞「あはは。ごめんね、出鼻くじくようなことしちゃって」
塞「えっと、紙と書くもの……」
塞「ありがと」ニコッ
初美(あぁ、塞さんすごく素敵ですよー……大人のお姉さんって感じで……)ポーッ
塞「はい、これ。連絡待ってるね」スッ
初美「ありがとうございます!」
塞「な、なんかそんなにも喜ばれると気恥ずかしい……」
初美「塞さんはシャイなんですねー」
塞「どっちかというとそうだとは思うかな」アハハ
初美(ああ、ずっとこのままいたいですよー)
塞(流石にそろそろ戻らないと……)
塞「薄墨さん、ごめん。私そろそろバスケ部戻るね」
初美「えっ……」
塞「練習の途中だし、あんまり長い時間放っておくわけにもいかないから……」
塞「荒川先生には後日訪ねるから、って伝えておいてくれる?」
初美「了解です……」シュン
初美(もう少し一緒にいれると思ったのに……)
塞(す、すごい落ち込んでる……)
塞「ご、ごめんね薄墨さん。一人にしちゃうけど、先生もすぐ来ると……」
初美「塞さん……行かないでください……」ウルウル
塞「へっ……?」
塞「え、ええっ……? そ、そんなこと言われても……」
初美「塞さん先生が戻って来るまでは一緒にいてくれるって言ったじゃないですかー……」
塞「き、記憶にないんだけど……」タハハ
初美「うぅっ……頭が痛くなってきましたー……体もぶるぶるですー……」
塞(し、白々しい……でも……)
塞「……分かった。先生が戻って来るまでは一緒にいるよ……」
初美「塞さん大好きですよー」ニッコリ
塞「あはは、取り繕う気はゼロなんだね……」
初美「約束させればこっちのもんですよー」
塞(この子、結構イイ性格してるなぁ……)
―――――――――――――
初美(話題がなくなっちゃいました……)
塞「……」ソワソワ
初美(なんかさっきからそわそわしだしてるし、このままじゃまずいですよー……)
塞(いくらなんでも遅すぎるような……早く戻りたいけど薄墨さんにはああ言っちゃたし……)
初美(な、なにかグッドなアイデアは……)
初美(……そうだ。この足を利用して……)
初美「塞さん」
塞「なに?」
初美「ちょっとトイレ行きたいんで、そこの松葉杖を……」
塞「あ、ああ。えっと、一人で行ける……よね?」
初美「そこまではお世話にはならないですよー」
塞「だよね。はい、これ」
初美「ありがとですよー」
初美「きゃっ!」ガクッ
塞「薄墨さん!」ガシッ
初美(ふふ、やっぱり。運動神経の良い塞さんなら抱きとめてくれて……)
塞「だ、大丈夫薄墨さん?」
初美「ごめんなさい……ちょっとバランス崩しちゃいました……」エヘヘ
塞「気を付けないとダメだよ? 怪我してるんだから、悪化させたら……」
初美「ふふ、やっぱり塞さんは優しいですよー……」
塞「もう、そんな調子の良いこと……」
初美「すみません……ちょっと、軽く怪我したところ捻っちゃったみたいで……」
塞「えっ!? だ、大丈夫なの!?」
初美「ちょっと足痛いですー……あそこにあるベッドまで運んでもらえれば……」
塞「分かった。えっと……肩とかは組めないし、どうやって運べば……」
初美「あの時みたいにおんぶすれば……」
塞「あ、そっか。……はい、身体預けて?」
初美「了解ですよー」ギュッ
初美(ふふ、計画通りなのですよー)
塞「少しの距離だから頑張ってね」
初美「はいですよー♪」
初美(こうやってぴっとりくっつくのはもっと……)ギュウ
塞(う、薄墨さんの吐息が……体も熱いし……)ドキドキ
塞「お、下ろすね、薄墨さん」
初美「えっ……」
初美(もう終わり……)
初美「は、はい……大丈夫ですよー……」
塞「よっと……足、楽にして」
初美「はい……」
初美(何の異常もないのにここまで心配されると、少し悪い気が……)
塞「……私、やっぱり先生のこと探して来るよ」
初美「えっ……」
塞「早く処置しないとどんどん悪くなるから……ちょっと待ってて」
初美「あっ……ま、待って……!」
塞「ごめん。すぐに戻って来るから」タタッ
初美(行っちゃいました……)
初美(塞さんの優しさがここに来て裏目に出ちゃいましたかー……)
初美「はぁ……もっとおんぶされたかったなぁ……」
―――――――――――
塞「それじゃあ先生、薄墨さんのことよろしくお願いします」
憩「了解しました。ウチがおらんかったせいで、色々とごめんな」
塞「いえ、いいんです。先生がお忙しい事は知ってますから……」
憩(うぅ……はっちゃんのためとは言え、臼沢さんの誠実さが胸に刺さるわ……)
塞「それでは、失礼しました」ガラ
憩「ふぅ……成果はどんなもん、はっちゃん」
初美「……本音を言えばちょっと物足りないかもですよー」
モモ「あれだけすれば十分だと思うっすよ?」ユラ
初美「きゃあ!? ってまたですかー……」
モモ「ふふ、ずっと中で見てたっすよ?」
初美「ほ、ほんとですかー……全然気付かなかったですよー」
憩「ウチは職員室おったけどなー」
モモ「バッチリっすよ薄墨先輩」
初美「もっとおんぶされてたかったですよー……私、アレかなり好きかもです」
憩「ふふ、はっちゃんは自分の気持ちハッキリ言うから好感持てるわー」
モモ「同感っす。ここまで好きって感情押し出す人も珍しいっすよね」
初美「隠す理由がないですよー」
初美「塞さんがオッケーしてくれるなら今すぐにでも告白したいです」
憩「はは、そっか」
モモ「塞先輩思われてるっすね……でも、今告白してもまだまだ厳しいと思うっす」
初美「やっぱりそうですかー……」
初美「今日いっぱい話して思ったんですけど、なんか恋愛対象に見られてない気がするんですよねー……」
憩「むしろ学年も違う部活も違うこの状態で、ここまで話せるようになっとるんやから十分すごいわ」
モモ「先生の言う通りっす。心配しなくても、もっと時間を重ねればいつか落とせるっすよ!」
初美「そ、そう言われるとなんか元気出てくるですよー!」
憩「ま、ゆっくり頑張って行こはっちゃん。時間はいっぱいあるんやから」
憩「とりあえず帰ってメールしてみたら」
初美「あ、そういえばアドレス……」
モモ「塞先輩メールするの大好きっすから、ウザいほどメール送っちゃってください!」
初美「了解ですよー!」
憩「いえいえ。まだ相談解決とまではいってないし、お礼言うのは早いで」
モモ「そうっすよ。本当の勝負はこれからっす」
初美「塞先輩と二人きりで話せただけでも幸せですよー」ニコニコ
憩「はは、まあはっちゃんが幸せそうにしとるんやったら、ウチはそれでいいんやけども……]
初美「では、また何かあったら相談しにきます。東横さんもその時はお願いするでよー」
モモ「任せるっす!」
憩(この子はなんでこんなにも協力的なんやろか……)アハハ
初美「それじゃあ、今日はこれで。水泳部の方に軽く顔出してくるですよー」
憩「お疲れ様。またなんかあったら遠慮なく来てや」
モモ「私も呼ぶっすよ!」
初美「よろしくですよー!」ニッコリ
憩(とりあえず一件落着……かな?)
――――――――――――
憩「あれからはっちゃんどんな感じなんやろなぁ」
憩「上手いことやってたらええけども……」
コンコン
憩「はーい、どうぞー」
初美「こんばんわです先生……」ガチャ
憩「噂をすれば……こんばんわはっちゃん。今日はどないしたん?」
憩「身長測りに? それとも……この前の続きとか?」
初美「続きなんですよー……先生、私どうしたらいいですかぁー……」ウワーン
憩(い、一体何が……?)
憩「とりあえず事情訊かせてや。何があったの?」
初美「実は……」
――――――――――――
憩(簡潔にまとめると。臼沢さんが3年生と思われる誰かとキスしてたとか)
初美「うぅ……」
憩「う、うーん……それって本当なん? 見間違いとかじゃ……」
初美「遠かったんでよくは見えなかったですけど」
初美「終始良い雰囲気で、空気が甘酸っぱかったというか……」
憩「なるほどなぁ……」
初美「あんな塞さん見たことないですよー……ジェラシーめらめらですー……」
憩(元気ないなぁ……そないショックやったんか……)
初美「先生、私、あれが塞さんの好きな人だと思うですよー……」
初美「あの雰囲気からして、ひぐっ、付き合っててもおかしく……」ウルウル
憩「は、はっちゃん……」
憩「う、うーん……具体的にどうしろと言われると……」
モモ「そんなヤツ刺しちゃえばいいんすよ!」ユラ
憩「うわぁ!? って東横さん!?」
モモ「元気無さそうなはっちゃん先輩の姿を見かけたんで付いて来たっす」
初美「ぜ、全然気付かなかったですよー……」
モモ「まあ私のことは置いといて……ダメっすよはっちゃん先輩! そんなことで落ち込んでちゃ!」
初美「モモちゃん……」
憩(い、いつの間に名前で呼び合うような仲に……)
モモ「恋に障害が多いのはあたりまえっす! 塞先輩のような人を狙うなら尚更っす!」
初美「で、でもキスしてたですよー……あれは絶対いかがわしい関係ですよー……これはもう、諦めるしか……」
初美「ね、寝取る……!」
憩(この子も例を漏れずにええ性格しとるなぁ……)
憩「って待ち待ち。刺すとか寝取るとか物騒なこと言わないの」チョップ
モモ「あうっ」
憩「話を聞いてる限りじゃ、諦めるんはまだ早いと思うで?」
初美「どういうことですかー……?」
憩「キスしてたんも確定やないし、本当に付き合ってるんかも分からんやから、まずはそこを調べんと」
憩「ただの誤解で刺されてたら命いくつあってもたまらんで」アハハ
モモ「確かにそれはそうっすね……ライバルがどんなヤツなのかを知るためにも、偵察は大事っす」
憩(過激な方向に持って行きたがるなぁ……恋愛事でなんか嫌なことでもあったんかな……)
モモ「塞先輩に直接訊いても答えてくれるわけないし……」
憩「そのキスしてたっていう相手の子に事情訊くのが一番早そうやね」
憩「名前とかって分かる? 分からんかったらその子の特徴とか」
初美「名前は分かんないですけど……たぶん、3年生だと思いますよー」
初美「特徴は……背が高くて、白髪で」
憩(背が高くて白髪って……)
初美「それでいて死んだ魚みたいな目してて、眉毛がにょろにょろーってなってて」
モモ「と、特徴的な方なんっすねー……」
憩(間違いなく小瀬川さんやん……)
初美「心覚えはあるですかー? 先生」
憩「うん、背が高くて白髪の時点で分かったわ……」
モモ「おお! 流石っす先生!」
憩(はっちゃんと対峙したらどうなるやら……)
初美「先生! この前みたいにお願いするですよー!」
モモ「ここに来たところを闇討ちっす!」
憩「闇討ちはやめたってな」アハハ
キーンコーンカーンコーン
憩『校内ボランティア部3年の小瀬川白望さん。校内にいましたら、至急保健室まで来てください』
憩『繰り返します。校内ボランティア部3年の……』
――――――――――――
憩「さて。あとは待つだけやね」
初美「き、緊張するですよー……」
モモ「はっちゃん先輩! 今のうちに戦闘態勢を整えるっすよ!」
憩「戦争するんやないんやから……」
憩(それが一番問題なんよなぁ……)
憩(あの小瀬川さんが恋愛ってホンマに想像付かんけど、臼沢さん相手やったらもしかすると……)
モモ「諦めたらそこで試合終了っすよはっちゃん先輩!」
モモ「もしそうだとしても、奪い取るくらいの気持ちで塞先輩にアタックするっす!」
初美「そうしたいのは山々ですがー……塞さんの幸せの邪魔するようなことは気が引けるですよー……」
モモ「なに言ってるすか! 自分がもっと幸せにすればいいんすよ!」
憩「逞しすぎるわ東横さん……」タハハ
――――――――――
モモ「来ないっすね」
初美「来ないですよー」
憩(あれから結構経ってるけども……校内におらんのかな?)
憩(いや、ちゃうな……たぶんあの小瀬川さんのことやから……)
初美「先生、もう一回呼び出してみて……」
憩「十中八九意味ないと思うわ。あの子の性格忘れてた」アハハ
モモ「どういうことっすか?」
憩「直接出向くしかないってことやね。小瀬川さん間違いなく部室におると思うから」
初美「それってつまり……呼びだれてるのに無視してるですかー?」
憩「まあ、そうやろね」アハハ
モモ「これは何か疾しいことがある証拠っす!」
憩「いや、あの子の場合はただ単に面倒くさいだけ……」
初美「りょ、了解ですよー!」
モモ「はっちゃん先輩、もしものために何か武器を……」
憩(ホンマは保健室離れたらアカンやけども、この二人だけに行かせるのは危ないやろなぁ……小瀬川さんの身が)
憩「二人とも先外で待っといてー。戸締まりしとくから」
憩「あとそのモップはちゃんと直しといてやー」ニッコリ
――――――――――――――
初美「ここが校内ボランティア部……」
モモ「部室棟にあったんすね。名前は何度か聞いた事あるっすけど、場所までは……」
憩「ウチは何度かお邪魔することあったわ」
憩「そんじゃま、行きましょか」
初美「ご、ごくり」
コンコンコン
シロ「どうぞー……」
憩「お邪魔しまーす」
やえ「って……荒川先生? それに……」
初美「お邪魔するですよー……!」ギラギラ
モモ「敵は一人じゃなかったすか……!」ギラギラ
やえ(な、なんだコイツら……)
憩「こらこら二人とも。そんな殺気立たんと」
やえ「えっと……ウチに何の御用でしょうか?」
憩「今日はちょっと小瀬川さんに話があって……」
シロ「私に?」
やえ「シロ、お前またなんか厄介事を……」ジトー
シロ「うーん……なんかしたっけなぁ……」
シロ「保健室遠いから……この学校無駄に広いし……」
やえ「あのなぁ……」
憩「まあそこまでにしといて」アハハ
憩「実はちょっと小瀬川さんに訊きたい事があってな。時間もらっても大丈夫?」
シロ「んー……まあ、はい。大丈夫です。暇なんで」
憩「それはよかったわー」
モモ(この人が、塞先輩の……?)
初美(小瀬川白望って言うんですねー……! 覚えましたよー……!)ゴゴゴ
シロ(なんか……ちっちゃい子から暑苦しい視線が……)
初美「小瀬川白望! あなたは塞先輩のなんなんですかー!」
憩「ちょっ……」
シロ「塞? 塞とは友達だけど……」
初美「ほ、本当にそれだけですかー!?」
シロ(なんかダルそうな雰囲気……)ハァ
憩「は、はっちゃんちょっと落ち着き。小瀬川さん意味分からんって顔してるから」アハハ
モモ「ここは私が出るっす。敵はなかなか手強そうっすからね」
シロ(もう一人出て来た……)
やえ(この子いつの間に……)
憩「と、東横さん?」
モモ「ずばりきくっす! 小瀬川先輩は塞先輩と付き合ってるっすか!?」
シロ「……は?」
やえ「お、お前ら……」
シロ「いや、してないから」
モモ「嘘付くっす! ネタはもうあがってるっすよ!」
初美「塞先輩に手を出すなんて許せないですよー!」
憩「二人とも人の話を聞きなさい」チョップ
「「あふっ」」
憩「ごめんな。いきなり来て意味わからんこと言って」アハハ
シロ「よくあることだから大丈夫です」
やえ(本当によくあるから困る……)
憩「えっと、つまりまあ何が訊きたいかと言うとな、……小瀬川さんと臼沢さんって付き合ったりしてるの?」
シロ「してないです」
モモ(そ、即答っすか……いやでもまだ……)
初美「!?」
憩「えっと、小瀬川さんの言葉は信じてもいい感じなん?」
シロ「信じるも何も、私なんかと勝手にくっつけられたら塞が可哀想だと思いますけど……」
モモ「むむむ……」
憩(これは白っぽいなぁ……)
初美「ほ、本当に塞先輩となんともないんですかー……?」
シロ「中学からの友達ではあるけど、そういうダルい関係じゃ無い」
憩「はは、ダルいときたかー」
やえ「3年間コイツらと一緒にいる私も断言するけど、この唐変木に恋愛なんてありえませんよ」
シロ「唐変木……木になったらどんな気分なんだろ……」
憩(なーんかうっすらと事情が見えて来たような……)
やえ(本当に何しに来たんだコイツら……)
初美「こ、これはどうしたらいいですかー……」
憩「どうするも何も、訊くこと訊いたんやから解決ちゃう?」
モモ「確かにあの人たちが嘘付いてるようには思えないっすけど……」
憩「疑う余地ないと思うで?」
憩「キスしてたんはたぶんゴミかなんか取ってたのがそう見えただけで、いい雰囲気なんは小瀬川さんと臼沢さんの付き合いが長いからで……」
初美「そ、それなら……」
モモ「終戦、っすか……」
憩(臼沢さんが小瀬川さんのこと好きなんは確定っぽいけど)アハハ
シロ「もういい感じ?」
初美「は、はいですよー!」
憩「ごめんな小瀬川さん。いきなりやって来てこんなこと訊いてもうて」
初美「同じくですよー」ペコ
シロ「何を謝られたのかよく分かんないんだけど……」
やえ「日頃の行いが悪いからこういうことが起こったりするのよ」ハァ
シロ「学校のみんなのためにダルいの我慢して頑張ってるよ?」
やえ「シロの場合は業が深すぎるの」
シロ「はぁ……意味わかんないダルい……」
憩「さて。相談解決ちゃう? 臼沢さんは晴れて独り身ってこと分かったし」
モモ「良かったっすね! はっちゃん先輩!」
初美「えへへ……」
やえ「えっと、その中等部? の子が塞のこと好きだったりするの?」
憩「まあ、そういうことです」アハハ
初美「失礼ですねー……私は高2ですよー……」ジトー
初美「まず制服が高等部のヤツなんですけどー……」
やえ「信じられない……高校生で胡桃以外にもこんななりした子がいるなんて……」
憩「はっちゃんはその胡桃ちゃんのクラスメイトで友達なんやでー」
シロ「そうなんだ……胡桃のクラスでの友達……」ジー
初美(は、初めて興味持たれた気が……)
モモ「私は塞先輩の後輩っすよー。バスケ部っす」
やえ「バスケ部? 何年生なの?」
モモ「華の1年っす」
シロ(1年……塞がよく話してるあの子かな……分かんないけど)
憩「ちゃんと気持ち受け取って返事しとるらしいし、誠実やと思うで?」
憩(あの子らに比べれば)
モモ「せっかくなんすから、この二人にも協力してもらうとかどうっすか?」
初美「それは名案ですよー! 塞先輩と仲が良い二人が手を貸してくれたら……!」
シロ「協力?」
やえ「ってことは、校内ボランティア部に対する依頼……」
憩(うーん、それってどうなんやろ……)
憩(臼沢さんは小瀬川さんのこと好きやのに、そんな小瀬川さんを協力させるって……)
シロ「……ごめん、私パス」
「「えっ?」」
シロ「いや、私は協力したくないってだけだから……」
シロ「やえと他の子で頑張ってよ。たまには顧問の戒能先生とか付き合わせてさ」
やえ「協力したくないって……今までそんなこと一度も言わなかったのに……」
シロ「うん、だから本当にごめん。こればっかりは私の我がままだから」
初美「そ、そんなぁ……」
モモ「部長の協力が得られないなんて想定外っす……」
憩(……ふふ、どういう考えかは分からんけど、小瀬川さんはやっぱしっかりしてるわ)
憩(この人の気持ちを汲み取るというか、気遣いが出来る子がもっと増えれば平和やのになぁ……)
やえ「シロ抜きでやるなんて今まで例がない……」
シロ「基本私とやえは固定で、その日部に来てる人を入れて依頼解決するのがスタイルだからね」
シロ「ん、なに?」
初美「今まで依頼を断ったこと……ないんですよね?」
シロ「私に関しては部が出来てから一度もなかったかなぁ……たぶん」
初美「……理由、聞かせてもらってもいいですか?」
シロ「んー……理由、か……」
シロ「……ちょいタンマ」
憩(これは正直、めちゃくちゃ気になるわぁ……)
憩(ま、ここにおる全員そうやろうけども)アハハ
やえ(もしかしてシロのヤツ、塞のこと……いや、ありえないとは思うけど……)
初美(まだまだ怪しくなってきたですよー……さっき言ったことも本当は嘘かも……!)
モモ(塞先輩の気になる人って……)
初美「お、面白くない……?」
シロ「いや、依頼に対して面白いとかつまんないとかでやったりしてないんだけど……」
シロ「こう、塞が誰かと付き合うための手助けをするのが……嫌、なのかなぁ」
やえ(シロ……)
モモ「な、なんかハッキリしない言葉尻っすね」
シロ「うん、自分でもそう思う……私自身よく分かってないから」
初美「つまり、私と塞さんの恋路は応援出来ない、ってことですかー……?」
シロ「申し訳ないけど」
初美「……」
憩(なんか、近い将来小瀬川さんの相談受けそうな気が……)
初美「え。そ、そうなんですかー……?」
シロ「塞と薄墨さんのことだから、私は関係ないよ」
モモ(小瀬川先輩が何を考えてるのかますます分からなくなってきたっす……)
憩(本人でも分からん言うてるくらいやし、かなり複雑な気持ち持ってそうやなぁ……)
やえ「……はぁ。ほんっと、昔から面倒くさいだから」
シロ「ごめん……」
やえ「謝らない! ……部長がこんなだし、申し訳ないけど断るわ」
シロ「やえ……?」
憩「うん、ウチもそれがええと思うわ」
憩「臼沢さんのためにも、ウチらと小瀬川さんたちは手を取り合うべきではないね」
初美「先生……」
シロ「うん。私もなんとなくだけど、そう思う」
モモ「……了解っす」
初美「分かりましたですよー……」
初美「それでは、お邪魔しました」ペッコリン
シロ「またなんかあったら来て。たぶん、手伝えるから」
初美「っ……」
初美「はいですよー!」ニッコリ
やえ「やれやれ……」フフ
憩(臼沢さんが誰とも付き合ってないってことは分かったし……一応は一件落着、なんかな)
モモ「なんかもやもやするっすー……」
―――――――――――
やえ「はぁ。なんか今日は珍しい日だったな……」
シロ「こういう日もあるよ」ハァ
シロ「……そろそろ出て来たら? 塞」
やえ「もう隠れなくてもいいよ」
塞「げっ……い、いつから気付いてたの?」
シロ「割と始めから」
やえ「あんなあからさまに部屋の中覗いてたら、そりゃね」アハハ
シロ「先生たちはこっち向いてたから気付けなかっただろうけど、ここからは丸見え」
塞「な、なるほど……」
シロ「軽く話しただけでも分かったけど、あの子本気で塞のこと好きだと思うよ?」
塞「そんなの言われなくても分かってるから……」
やえ「あはは、本気で困ってるし」
シロ「どうするの?」
塞「……ど、どうするって?」
シロ「告白されたら」
やえ「そう遠くはない未来だと思うよ?」
塞「……元気で明るくて、話してるとすごく楽しいんだけど……」
塞「今はまだ妹とかにしか思えないというか……」
やえ(あっちゃー)
シロ「……可哀想」
塞「ええぇっ!?」
やえ「塞の気持ちも変わるかもだしね」ニヤニヤ
塞「そ、そんなことっ……」
シロ「……」
やえ「さて、そろそろ下校時間だし帰るか。巽向かいに行ってくるよ」テクテク
シロ「いつもの場所で待ってるね」
塞(ちょっ、この状態でシロと二人きりにする気なの!?)
やえ(お前らもいい加減ハッキリさせろって)ハァ
塞(や、やえのヤツ……!)
シロ「……」ボケー
塞「……練習メニュー変わってね。3年は早く終わったから顔出しに来ただけ」
シロ「そっか……」
塞「あ、あのさ」
シロ「?」
塞「薄墨さんたちの依頼、断ってたけど……アレってつまり、その……」
塞「私が誰かとそういう関係になるのが嫌ってことだよね……?」
シロ「……うん」
塞「そ、そっか……あははー……そうなんだー……」
塞(ヤバい、めっちゃ嬉しいかも……)
シロ「自分の娘を嫁にやりたくないとか、そんな感じの気持ちだと思う」
塞「……は?」
シロ「飼ってる犬が他人に懐いてるの見たくないとか、そんな感じの」
塞「……」
塞「シロのバカ!!」ドゴォ
シロ「ぐふっ!?」
―――――――――――――――
初美「うふふー、今日はウキウキなんですよー」ルンルン
モモ「協力は得られませんでしたが、疑惑が晴れただけでも大収穫っすね」
憩「幸せそうで何よりやわ」
初美「塞さんと一緒に帰りたいですよー。あ、そうだ。メールしてみよう」
モモ「部活も終わってる頃ですし、きっとすぐに返信くるっす!」
憩(臼沢さんの気持ちを動かせるか……小瀬川さんがあの様子やから、まだまだ時間はあると思うけども……)
憩「ま、なにはともあれ。これからも頑張りやはっちゃん。押せ押せあるのみやで♪」
初美「はいですよー!」
モモ「私にも相談するっす! 偵察と闇討ちなら任せるっす!」
初美「二人とも本当にありがとなんですよー!」
初美「協力してくれた先生とモモちゃんのためにも、絶対に落としてみせます!」
モモ「その調子っす!」
憩(果たしてどうなるやら……)アハハ
終わり
お疲れ様でした
憩ちゃんええな~この学校の良心やな
続き期待してますで!
Entry ⇒ 2012.10.29 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (4) | Trackbacks (0)
ほむら「普通の時間軸に来てしまったわ」
まどか「でも… この子、ケガしてるんだよ」
ほむら「どうしても放さないというのなら…」
さやか「お~い、まどか! こんなとこにいたんだ」
さやか「ん、なに持ってんの? ねこ?」
まどか「そうみたい、なんだけど…」
ほむら「いいから早く放しなさい!」
さやか「そうだよ!」
ほむら「えっ」
まどか「え… でも、輪っか付けてるし…」
QB「確かに飼い猫ではないけど」
さやか「うおお喋った!? しかもやっぱ野良じゃん!」
ほむら「いや、そもそもねこじゃなくて…」
まどか「ごめんね」スッ
まどか「手、洗わなくちゃ。その前に動物病院へ…」
マミ「あら、その子を助けてくれたの?」
まどか「いえ… どういたしまして」
さやか(お友達!?)
ほむら(痛めつけたのは私なのだけど… 黙ってた方がいいかしら)
まどか「ケガしてたんです。すぐ病院へ」
マミ「平気よ。私の魔法で治してあげられるの」
まどか(ど、どうしよう、変なねこの次は変な子が来ちゃった……)
ほむら(何故か私も来てしまったわ…)
マミ「QBに才能を見込まれたあなたたちには、他人事じゃないものね。説明しておくわ」
・
・
・
さやか「願い事が何でも、ねぇ」
まどか「いざとなると、決まらないよね」
マミ「大事な事だから、ゆっくり考えた方がいいわ」
ほむら「だめよ」
マミ「あら、どうして?」
さやか「お、さては自分より強いライバル登場が怖いんだな~?」
マミ「そんな理由なわけないでしょう」
ほむら(……あなたに言われたくないわ)
ほむら(前みたいにマミが錯乱してもいいように、準備して…)
まどか「…ほむらちゃんのコスチューム、あんまり魔法少女らしくないね」
ほむら「そ… そうかしら」
まどか「今度新しいの考えてあげるね!」
ほむら「ありがとう」
さやか「ほむら、迂闊に誘いに乗らない方がいいよ」
まどか「さやかちゃん、それどういう意味!?」
ほむら(その言葉、あなたに言ってあげたいわ……)
マミ「戦わなければいけない、というのはもう話したでしょう」
ほむら「それ以外にもあるの。まず、私たち魔法少女は死んだも同然の身」
マミ「…それは初耳だわ」
ほむら「この体からは魂を抜き取られ、ソウルジェムに収まっているの」
まどか「そうなのQB?」
QB「その通りだよ。暁美ほむら、君はどこでそれを知ったんだい?」
さやか「どうしてそんなことするのさ?」
マミ「そうね」
ほむら「!?」
ほむら「で、でも… それじゃゾンビにされたようなものだって」
QB「脆弱な肉体で戦うより、よっぽどいいだろ?」
マミ「戦いでケガしても治りが早いと思ったら、そういう仕組みだったのね」
まどか「QB、気が利いてる~!」
ほむら「待って!」
まどか「ほむらちゃん、そういうの信じてたの?」
ほむら「え、信じてるって…?」
さやか「ああ~ スピリチュアルとか、パワーナントカ系の」
マミ「信じるもなにも、魔法少女は本当にいるわ。二人ともその目で見たでしょう」
さやか「うん、まぁ、確かに……」
ほむら「納得してくれたようね」
マミ「でも魂が体に入ってないとかは、正直それほど困らないような……」
ほむら「みんなQBに騙されていたのよ!」
QB「騙すという行為自体、ぼくたちには理解できないなぁ」
さやか「あんたねこにムキになってどうすんのさ」
マミ「でもどうして教えてくれなかったの?」
QB「聞かれなかったからさ。知っておかなきゃいけない情報だなんて、思わなかったんだよ」
ほむら「ほら見なさい! コイツはそういう…」
まどか「訊けばいいじゃない」
ほむら「はい」
ほむら(まずい……)
ほむら(しかしこっちの切り札はまだあるのよ!)
ほむら「ならこれは知ってる? ソウルジェムの濁りきった魔法少女がどうなるか」
マミ「魔法が使えなくなるわね」
ほむら「それだけじゃないわ。ソウルジェムはグリーフシードに変わり、私たちは魔女になるの」
QB「そうだよ。魔法少女が希望を与えた分、絶望をまくようになっているのさ」
まどか「何のために、そんなことを……」
QB「希望と絶望の帳尻を合わせるのさ」
ほむら「そうやって魔女になった魔法少女を、私はもう何度も…」
さやか「奇跡も魔法も、代金後払いってわけね」
ほむら「」
さやか「願いが叶うとかさぁ、正直ちょっとうさん臭いって思ってたんだ」
さやか「タダより高い物はないっていうし、そうなってた方がむしろ納得いくわ~」
まどか「なかなか甘い話ってないもんだよね」
ほむら(今まで話が通じなくて手を焼いてたけど、普通に通じても問題なのね)
マミ「どうにかして止める方法はないの?」
ほむら(それでもマミなら!)
ほむら「一つだけあるわ」
ほむら「魔女を生み出す前に、ソウルジェムを砕いてしまうの」
ほむら「食い止めるには死ぬしかないってことよ」
ほむら(これで……)
ほむら(いい加減にして!)ビキビキビキ
マミ「魔法が使えなくなったら、どの道魔女にやられてしまうもの」
ほむら「でも、死ぬまで戦い続けることに…」
QB「それはもう説明したじゃないか」
さやか「でもずっと続けるってのはキツいなぁ」
マミ「私はそのつもりでいるからいいけど」
マミ「決心が固まらないなら、二人とも私たちの魔女退治を見学してみるといいわ」
まどか「『たち』…?」チラッ
ほむら「……もういいわ。私も手伝うわよ」
まあ後払いなら仕方ないね
マミ「何かしら?」
QB「郵便受けに手紙が来てるよ」
マミ「どれどれ… 『え、こいつら元魔法少女を糧にしてることはスルーすんの?』」
ほむら(ありがとう! ありがとうナイスフォロー!)
マミ「……暁美さん」
ほむら「ええ、あなたにとっても辛いでしょうけど、それが」
マミ「もし私がソウルジェムを砕けなくて、魔女になったら、真っ先にたおしてくれないかしら」
マミ「やっぱり人を呪うより、グリーフシードになって使ってもらう方が役に立てるもの」
ほむら「…覚えておくわ」
ほむら(やっぱりそうなるのね…)
QB「この国では、成長途中の女性の事を『少女』というだろう」
QB「穢れを溜め込んで、魔女になりつつある君たちは、『魔法少女』というわけさ」
まどか「穢れ……」
マミ「穢れを溜めると少女は女になる、ね……」
一同「……」ゴクリ
まどか「マミさん今えっちなこと考えたでしょ///!」
マミ「か、考えてないわよ!」
QB「しかし、実際に成長途中の少女と大人の女性では…」
マミ「こらQB! 女の子の前でそんな話しちゃいけません!」
マミ「ふぅ… 暁美さん、平気だった?」
ほむら「勿論よ。あれくらいでやられるわけないもの」
まどか「マミさんかっこいい~!」
マミ「もぅ、見せ物じゃないのよ」
まどか「願い事も考えてるんですけど、なかなか決まらなくって」
ほむら「私としては、決めないでほしいのだけど」
さやか「その願い事なんだけどさ、自分のことじゃないとダメなの?」
マミ「確かにそういう前例もあるけど… やめておいた方がいいわ」
さやか「あるの?」
マミ「本当にその人のためになるかどうかなんて、わからないものよ」
さやか「それもそうだけど……」
ほむら「マミもこう言ってることだし、やめておきなさい」
さやか「明日、本人と相談してみます」
マミ「ちゃんと聞いておかないとね」
ほむら「止めなさいよ!」
恭介「さっきさやかが来たんだ」
仁美「今日もでしたの?」
恭介「なんだかワケのわからないことを言ってたよ… 魔法でケガが治るとか」
恭介「あたしは死んじゃうけど、奇跡って本当にあるの! とか……」
仁美「……さやかさん、学校では普段通り振る舞っていますのに」
恭介「うん… 実は僕もこの間、けっこうハデに八つ当たりしちゃって…」
仁美「お二人とも、あまり思い詰めてはいけませんわ」
恭介「このままだと面倒見る方が先に参っちゃうからね」
恭介「早いとこ新しい生き甲斐探さないと」
仁美「美樹さんに教えられてしまいましたね」
マミ「結局、その上条くんはなんて?」
さやか「夜電話があったんですけど、う~ん…… よくわからないなぁ」
さやか「バイオリンのことではもう悩んでないからいいよ、って」
まどか「上条くん、どうしちゃったの?」
さやか「不思議だよね。ともかく、これであたしはもう契約しないことにしとくわ」
ほむら「よかった……」
さやか「安心した?」
ほむら「あなたが契約すると、毎回ロクなことにならないから」
さやか「……『毎回』?」
・
・
マミ「ワルプルギスの夜ね。噂には聞いた事あるけど」
さやか「そのデッカい魔女って、そんなに強いの?」
ほむら「何度戦っても、倒せた事はないわ。よくて進路を少し逸らしただけよ」
まどか「ほむらちゃん、今までずっと私を助けるために……」
ほむら「これであたなに契約してほしくないというのが、わかってもらえたかしら」
まどか「わかったよ。QB! ちょっと来て!」
QB「なんだい?」
まどか「わたし、契約する! ほむらちゃんと一緒にワルプルギスの夜と戦うよ!」
ほむら「待ちなさい!」
ほむら「そうよ。でも契約してはいけないって、わかってくれたのではないの!?」
まどか「大丈夫。ほむらちゃんが頑張ってきたのを、無駄にはしないから」
QB「願い事は決まったのかい?」
まどか「『一ヶ月したら、魔法少女になる前の、元の体に戻る』それが私の願い!」
QB「いいよ」
ほむら「……は!?」
QB「何を言っているんだい?」
QB「普段は無理だけど、契約するときの願い事なら、そのくらい簡単さ!」
ほむら「そんな……」
まどか「へぇ~ これがわたしのコスチューム?」
QB「君がノートに描いてた通りにしておいたよ」
まどか「ありがとう! これから一ヶ月だけよろしくね、ほむらちゃんとマミさん!」
マミ「一緒に戦う仲間ができて嬉しいわ」
ほむら「じゃあ、私が今までしてきたことって……」
ほむら(ワルプルギスの夜をあっさり倒せたのはよかった)
ほむら(時間停止は使えなくなったけど、まどかが契約してた頃に使ってた弓矢を貸してもらっているし)
ほむら(残る問題は…)
まどか「ほむらちゃん、おっはよ~!」スリスリ
ほむら「おはようまどか、でも少し離れなさい」
まどか「えぇ~ 昨夜からずっと、ほむらちゃんに会いたかったんだよ!」
ほむら「たった一日でしょう」
ほむら(今までのことをわかってくれたうえに、一緒に戦ってから妙な連帯感がうまれてきたからか)
まどか「ほむらちゃんがいない時間は長く感じるものなの!」
ほむら「はいはい」
ほむら(まどかがずっとこの調子だわ……)
まどか「ほ~むらちゃ~ん」スリスリホムホム
ほむら(これはこれで違うような……)
仁美「お二人とも、朝からお熱いようで」
ほむら「まどかが放してくれないのよ」
さやか「そういうあんたも、最初の頃ほど抵抗しなくなってきたのね」
ほむら「あきらめただけよ……」
ほむら(教室でイチャイチャするなんて、端から見れば恋人同士じゃない!)
ほむら(女の子同士でそういうのは……)
まどか「あれ、ほむらちゃんどうしたの?」
さやか「急におとなしくなって」
ほむら(え、いや、でもだからといって)
ほむら(男の子とならしてみたいとか、そういうことでもなくて///)カアァッ
仁美「効いてるようですわ」
さやか「まどか、もう一押し!」
まどか「任せて!」ギュゥ
ほむら(この時間軸のまどかたちは、いつになく聞き分けがよかった)
ほむら(もしかすると、こういうのがけっこうマトモなのかもしれないわね)
キーンコーン……
ほむら「ほらチャイム鳴ったわよ! 早く席に戻りなさい!」
まどか「は~い…」
ほむら(あ… もしこういうのがおかしくないのだとしたら、今のは言いすぎだったかしら……)
ほむら(そうね。大体、私もよくわからないし…)
ほむら(詳しそうな人に相談してみましょう)
仁美「珍しいですわね。暁美さんが二人きりでお話したいなんて」
ほむら「他に相談できる人がいなくて…」
仁美「フフッ まどかさんに妬かれてしまいますね」
ほむら「そのまどかのことなのだけど…… このところ、おかしいと思わないかしら?」
仁美「あら、どこもおかしくなんてありませんわ」
ほむら「朝から抱きついて来るなんていつものこと」
仁美「大好物です」
ほむら「?」
仁美「続けて、どうぞ」
ほむら「その… 恋b、いや、少々行き過ぎではないかと……」
仁美「そうだとして、何が問題ですの?」
ほむら「私も線引きというか、加減がわからなくて」
仁美「どこまでなら一般的な範囲なのか、と」
ほむら「そうなるわね」
仁美「なら問題ありませんわ! 大事なのは暁美さんの気持ちではなくて?」
ほむら「……正直、鬱陶しいのだけど」
仁美「人からどう見えるか、などと意識する必要はないということですわ」
ほむら「なるほど…」
ほむら「そうね… ありがとう。参考にさせてもらうわ」
ほむら(あまり話したこともないけど、あの中では一番常識人らしい志築仁美が言うんですもの)
ほむら(まどかが間違ってるわけではないのね)
ほむら(なら私もまどかの気持ちに応えられるようにならないと)
ほむら(あの戦いに比べたらラクなものよ…… きっとね……)
まどか「ほむらちゃ~ん! 14時間ぶりのほむらちゃ~ん!!」ダキッ
ほむら「おはよう、まどか」スッ
さやか(手が!)
仁美(テガ!)
さやか「…ついに陥落ですかコレは」
仁美「大いなる一歩ですわね」
上条「……僕が入院してる間に何があったのよ?」
中沢「鹿目ちゃんに嫁が来た」
上条「だから何があったんだって」
ほむら「あら、何かしら?」
まどか「ティヒヒヒ、学校終わったら持って行くね」
——ほむ部屋——
マミ「鹿目さん、完成したんですって?」
ほむら「知ってたの?」
マミ「ええ、作り方を教えたのは私よ」
バサッ
まどか「これだよ! わたしとお揃いのコスチューム!」
ほむら「……」
まどか「そんなことないよ! ほむらちゃんは何着てても可愛いんだから!」
ほむら「それに、サイズが合うかしら」
まどか「ほむらちゃんのからだのサイズを間違えるわけないじゃない」
マミ「せっかく作ってもらったんだし、着てみたら?」
ほむら「でも、ほら… 変身したらいつもの服になるんだから」
QB「変身した時その衣装が出てくるように、ソウルジェムを改造しておくよ」
ほむら(どう考えても似合うわけないけど、このまどかが勧めて、しかもわざわざ作ってくれたんだもの)
さやか(マミさんがコスチュームの作り方を教えた辺りに突っ込んでいいんだろうか……)
ほむら「わかったわ。QB、お願いできる?」
まどか「やったぁ!」
ほむら「着るだけでそんなに喜んでもらえるなんて、私も嬉しいわ」
ほむら(やけに大げさに喜んでるようだけど)
ほむら(手作りだから、思い入れが違うのかしら……?)
ほむら「では早速着てみるわよ」
ホムン
さやか(うっわ……)
マミ(これは…… 背中押しといてあれだけど)
ほむら(この二人、絶対よからぬテレパシーを飛ばしあってるわね…)
さやか(マミさんこらえて!)
マミ(美樹さんこそ耳赤いわよ!)
さやか(だって、ほむらがアレ……)
ほむら(///)プルプルホムホム
さやか「えっ」
マミ「シーッ!」
ほむら「ほらほらまどか、そんなに強くしがみついてはいけないわ」
ほむら「せっかくの衣装にシワがついてしまうでしょう」
まどか「いいの! 今日だけいいの!」ムギュウゥゥ クニクニ
ほむら「もぅ… 甘えん坊さんなんだから」ナデナデ
さやか(ほむらが乗ってる……!!)
ガタッ
マミ「ご、ごめんなさい。私ちょっとお手洗いへ…」
さやか(マミさんずるい!)
まどか「いいんです! ほむらちゃんがわたしの作ったコスチュームで戦うところ、見てみたいから」
ほむら「あらたまって言われると照れるじゃない///」
さやか「あたしもまどかと同じ気持ちだよ!」
ほむら「いやあなたは帰りなさいよ」
さやか(マミさん、マミさん!)
さやか(戦ってる最中に笑わないでくださいね!)
マミ(わかってるわよ!)
まどか「そりゃあもう!」
さやか「ほむらのあの衣装、作るの大変そうだもんね」
まどか「そうでもないよ。サイズ変えただけだから」
さやか「最初から作ったんじゃないの?」
まどか「あれは私が契約してた頃のコスチューム」
まどか「QBに頼んで、とっておいてもらってたんだ」
さやか「ああ、弓矢と一緒に」
さやか「…正直言って、ほむらにはあんまり似合わないんじゃ……」
まどか「そういうことじゃないの」
まどか「ほむらちゃんが、わたしの着た服を着て、あんなに激しく動き回ってるなんて」
まどか「想像しただけでもう……」ウェヒヒフヘヘ
さやか「お、おう…」
マミ「そっちへ行ったわ! 暁美さん!」
ほむら「トドメをさすわ! 必殺必中、トゥインクル・アロー!!」
まどか「ほらほらほらほら見てよ見てよ!!」
さやか「うん…… 見てるよ」
さやか「もうちょっとほむらに合うヤツがいいんじゃない?」
まどか「えぇ~」
さやか「何が不満なのよ?」
まどか「ほむらちゃんが恥ずかしがってくれなきゃ」
さやか「そこまで狙ってんのかよ!」
魔女「ピギャアアァーーーーーッ!」
ほむら「やったね、マミさん!」
マミ「え? ええ……」
ほむら「どうしたの? 嬉しくないの?」
マミ(この子までおかしいわ…… そろそろやめさせた方がいいのかしら)
ほむら「佐倉杏子とも協力できないかしら」
マミ「できればそうしたいけど、あなたも彼女の事は知っている」
ほむら「ええ。何度となく一緒に戦ったわ」
まどか「誰なの?」
マミ「私が鹿目さんたちと出会う前に、一緒に戦っていた魔法少女よ」
マミ「ただ、いろいろあって、別れちゃったけど…」
ほむら「普段は隣町にいるけど、いざという時協力できるよう、連携をとっていてもいいと思うの」
さやか「マミさんも、何があったか知らないけど、ちゃんと仲直りした方がいいよ」
杏子「何の話だよ、いきなり?」
ほむら「戦力は不足していないものの、ワルプルギスの夜のようなことがまた起こるかもしれない」
杏子「非常事態のために、か… 他に何か狙いがあるんじゃないだろうな?」
ほむら「単刀直入に言うわ。巴マミと仲直りしてほしい」
杏子「ならお断りだね。誰があんなヤツと」
ほむら「私は本音で話したのよ。あなたのも聞かせてもらいたいわね」
杏子「……言ったろ。お断りだって」
杏子「ほぅ、わかるってのかい?」
ほむら「お見通しよ。あなたが本当はマミと別れたままでいたくないことも」
杏子「やめろよ」
ほむら「今でも心の一部でマミのことをひきずっていて、叶うなら昔のように甘えに行きたいことも」
杏子「いや… それはどうかなぁ…」
ほむら「マミの部屋で食卓を囲んだことを懐かしく思い出し」
杏子「そりゃあ、タダ飯はありがちけどさ」
杏子「なんだその具体的なのは」
ほむら「洗っているうちにふと首から下へ目が行ってしまい」
ほむら「あ、マミの背中って白いんだな、と……」
杏子「ちょっと待て」
ほむら「生まれかけた邪な思いを力ずくでねじ伏せるも、お風呂あがりに不意打ちでクラッときて」
杏子「おい、いい加減にしろよ!」
ほむら「もう早く寝てしまおうと言いたいところだけど、そのタイミングで寝ようというのも抵抗あって」
ほむら「余計な事考えないよう、いそいそとベッドに入るものの」
ほむら「もう頭の中では大変なことになってて、『マミ、起きてる?』とかやってしまうのもお見通しよ!」
杏子「いくら何でもそこまで行ってなかったぞ!」
ほむら(あれ?)
ほむら「もしかして、違うのかしら……?」
杏子「当たり前だろ!」
ほむら「そう… ごめんなさい。私とまどか… 見滝原の元魔法少女は、いつも大体そんな感じだから」
ほむら「あなたたちも同じようなものかと」
杏子「気味が悪いわ」
ほむら「見滝原では珍しくもないことよ」
杏子「それお前らの間だけで、だろ」
マミ「佐倉さん…」
杏子「ぬか喜びすんなよ。気に入らなかったらすぐ解消だからな」
マミ「それでもいいの。あなたとまた一緒に戦えるんだもの」
さやか(マミさんもけっこう意地っ張りなとこあるんだね)
まどか(素直が一番だよ。本当の意味で)
ほむら「杏子。私もマミも格闘戦は専門外だから、アテにしてるわよ!」
杏子「わかってるって。おいマミ、腕は衰えてないだろうな?」
マミ「誰に言ってるのかしら? さぁ、変身するわよ!」マミン
ほむら「するなら今のうちね」ホムン
杏子「ブフッ!!!」
マミ(しまった!)
杏子「ちょっ… ちょっと待って… なにその恰好……」ガクッ
マミ(立てないほど!?)
杏子「いやオマエのせいだろ! しかも変な呼び方すんなよ!」
ほむら「わ、わたし何もしてないよ!」
杏子「ご、ごめんマミ…… やっぱ二人で行って……」
マミ「それしかなさそうね……」
さやか「おかえり、早かったね」
まどか「杏子ちゃん一人だけ? ほむらちゃんとマミさんは?」
杏子「まだ中にいるよ。あいつら、いつもああなの?」
まどか「? そうだけど、どうかしたの?」
杏子「いやさ…… こりゃ尋常じゃない街に来ちゃったわ……」
まどか「そんなことないよ。普通だよ」
杏子「……普通って、難しいよね」
おわり
無性にバカみたいな百合スレを書きたかったんだ
普通ではなかったな
Entry ⇒ 2012.10.29 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
モバマスP「そろそろレッスンも終わる頃か。」
引用元: http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1349871686/
がちゃり
イヴ「お疲れ様でしたぁ☆」
裕美「お疲れ様ですっ!」
あい「お疲れ様……いやはや、アイドルというのも楽ではないね」
P「おうお疲れ。レッスンどうだった?」
イヴ「ダンスレッスンだったんですけど、今日はハードでしたぁ」
あい「足が棒だよ……ほぐしてくれない?」
P「ご遠慮願う」
P「あいが飄々としすぎなんだ」
裕美「セクハラになっちゃうものね」
あい「それは私が訴えたらの話だろう?」
P「男には肩身の狭い世の中だな」
イヴ「えっと……Pさんの今年のプレゼントは肩幅でいいですかぁ?」
P「だめ」
イヴ「……あれぇ?」
裕美「いくらなんでもそういうことじゃないと思うけど」
あい「日本語のニュアンスは難しいからね、覚えていくといいさ」
イヴ「はぁい……」
P「まぁそうしょげるなよ」
あい「うむ。P君が手取り足取り教えてくれるさ」
P「俺か」
あい「君はイヴの保護者だろう?」
P「まぁね」
イヴ「手取り足取り……!? セクハラですぅ~きゃぁ~☆」
裕美「イヴさんイヴさん!そういう意味じゃないよ?」
裕美「えっとね、マンツーマンで付きっ切りってこと」
イヴ「マンツーマンですか?それなら早くお家に帰りましょう!」
P「だめ」
イヴ「えぇー、どうしてですかぁ?」
P「今日はあの店でミーティングです」
あい「あの店では不服かな?それとも早くPくんと2人きりになりたいかい?」
裕美「イヴさんが怒った……」
P「珍しいこともあるもんだな」
あい「どうどう……」
裕美「あいさんが慌ててる……」
P「珍しいこともあるもんだな」
らうんじばー
からんからん ころんころん
マスター「いらっしゃい」
P「また来ちゃいましたよ」
裕美「お邪魔しますっ」
イヴ「お邪魔しますぅ☆」
あい「やあ、マスター」
マスター「じゃあボックス席でいいかい?飲み物は?」
P「ピーチアップル4つで」
P「1杯目くらい別にいいだろ」
あい「ぬう……」
マスター「了解」
P「お前も同じものを飲むの!」
あい「私は大人だからこう、格好いいものをだな」
P「はいはい。今は大人でもアイドルなんだから、少しは可愛らしく振舞いなさい」
あい「それは私には無理じゃないか?」
あい「Pくんがそう言ってくれるのは嬉しいんだが……」
イヴ「あいさんはすごく素敵な女性です!」
裕美「私もそう思いますよ?」
あい「ありがとう」
P「だからずっと前から言ってるじゃないか。可愛いって」
あい「むず痒いな……」
裕美「私も興味あるわ」
あい「はてさて、何を話そうかな?」
P「おいちょっと待て」
あい「なんだい?」
P「お前のことだから絶対誇張するだろ。悪いほうに」
あい「ばれたか」
P「………」
P「………」
あい「……ぷふ……」
P「ふんっ」
ぎりぎりぎり
あい「痛たたたたた……! Pくん、ギブだ、ギブ」
P「反省したかー?」
あい「した、したよ」
ぱっ
P「全く……」
裕美「……あのー?」
P「どうした?」
裕美「なんであいさんにアイアンクローを?」
P「昔の癖でな、あいが調子に乗ったらこんな感じで罰を」
あい「大人になったらしないと思ったんだ」
P「俺もあいが大人になって調子に乗らないと思ってたよ」
あい「人ってのはそう変わらないものだよ」
P「かもな。さて、話をしようか」
イヴ「わくわく」
裕美「てかてか」
マスター「期待age↑」
あい「流石に出会いの頃までは覚えてないかな。気付いたら一緒に登下校してたよ」
イヴ「あれ?それじゃあきっかけとか覚えてないんですかぁ」
あい「残念だけどね」
P「今回の出会いの方の衝撃のでかさが尋常じゃなかったからなぁ」
裕美「そういえば……」
あい「話が脱線したね。それで一緒の学校に通ってたわけだ」
P「俺とあいは同じクラスでね、大体一緒に行動してたかな」
あい「そうだね。班も一緒になることが多かったし」
あい「その頃かな」
裕美「前回話してた事ですか?」
あい「うん。昔から髪が短くて、パンツルックだったからね」
P「おまけにその頃のこいつの一人称は[ボク]だ」
あい「今は流石に直ってるし、昔の癖としても出てこないけどね」
P「そんなんだから、「おとこんなー」とか言われたり、無理やり男子の遊びに誘われたりが多かったんだよ」
イヴ「かわいそうですぅ……」
あい「私は別にそこまで気にしてなかったんだよ。でも私以上にそれが気に入らない人がいてね」
あい「うん。Pくんが「あいだって女の子なんだぞ!」ってからかわれる度に」
P「いや、限度ってものがあるだろう? 見過ごせなくて、ついな」
イヴ「やっぱりPさんは、優しいですね」
あい「うん」
P「照れるって」
あい「で、学校でそういうことがあって、下校する時によくバカをやったものだよ」
P「公園で対策会議したり、スカートを履いてきたらどうかと言ってみたり」
P「それで、あまりにもあいが調子に乗るから、お仕置きをね」
あい「あれは痛いんだよ……」
P「調子に乗るあいが悪い」
あい「そういうつきあいのおかげで、女らしさってのを学んだりね」
P「学んでたのか?あれで?」
あい「うん。バレンタインにチョコをあげたりしたじゃないか」
裕美「バレンタイン!」
あい「「かわいい女の人と言えばお料理だ!!」って力説するものだからね」
P「そりゃそうだろ?」
イヴ「耳に痛いですぅ……」
P「イヴはもうちょっと練習しようか」
イヴ「はいぃ……」
裕美「プロデューサー、私も一緒に習っていいのかな?」
P「構わないぞ。今度来るか?」
イヴ「ほうちょう……こわいですぅ」
あい「……ふむ。Pくん」
P「んー?」
あい「その日は私も行こう」
P「何でだ」
あい「作るのを一緒に教えるよ」
P「それは助かる。……てことは、料理上達したか」
あい「おかげさまでね」
P「それは良かった。女の子らしさに磨きがかかる日々だな」
P「でも10歳の時に家の都合で引っ越すことになっちゃってね」
あい「それで離ればなれ、そしてめでたく再会というわけさ」
P「親同士は電話も年賀状も送ってたみたいで連絡は取ってたらしい」
あい「私らは親がしてるからいいかって感じで連絡はしてなかったんだよ」
P「だから写真とかも見てなくてびっくりしたよ」
あい「こっちもだよ」
P「こんなところかな」
あい「こんなところだね」
あい「正直、もう会えないかもしれないと思ってたんだ」
P「それが何の縁がそうさせたのか、一緒の会社で頑張れるとはね」
あい「Pくんに全て任せるよ。私たちを好きにしてくれ」
裕美「あいさん!? 何か言い方がエッチですよ!」
イヴ「いまのってエッチなんですか……きゃぁ☆」
P「収集つかなくなるからそういうこと言わない」
あい「ふふ……」
P「やっぱりあいは微笑むと可愛いな」
裕美「本当にそう思う」
P「照れてるだけじゃないか」
イヴ「そうですPさんのせいですよぉ!」
あい「それじゃあ一曲頼むよ」
P「まぁマスターとの約束でもあるしな。じゃあお前ら、行くぞ」
あい「待った」
P「何がしたいんだよ……」
あい「今回はPくん一人で頼む」
P「えー……」
裕美「同上!」
P「仕方ないか。適当な曲をやってくるよ」
イヴ「やった☆」
裕美「がんばって!」
~~~~~~♪
~~~♪
裕美「プロデューサー……格好いい……」
イヴ「……で、あいさんはPさんの事好きなんですよね?」
あい「んー……」
裕美「あれ?考え込んじゃうんですか?」
あい「正直恋愛感情ってものをよく分かってないんだ」
イヴ「私もよくわかりませぇん」
裕美「私も……」
あい「ありゃ、議論にならないな」
イヴ「まぁ、今はPくんの音色に酔いしれようか」
裕美「ですねっ!」
~~~♪
ぱちぱちぱち
P「ありがとうございました」
あい「相変わらずすごいな……」
P「あいほどじゃないさ」
裕美「あいさんと同じくらいすごいよ!」
イヴ「透き通る感じが素敵ですぅ。Pさんがかっこよく見えますよ♪」
P「どうもどうも」
P「それなら仕方ないな。裕美、送って行くよ」
裕美「いつもありがとう」
P「いいって。ほれ、イヴも」
イヴ「はぁい。あいさん、それじゃまた明日ですぅ」
あい「うん、お疲れ様」
P「マスター、また来ます」
マスター「是非とも来ておくれ」
P「はい。あいはどうするんだ?」
あい「ここから直で移動するから問題ないよ」
P「そうか」
あい「ああ」
P・あい「「また、明日」」
ころんころん
end
Entry ⇒ 2012.10.29 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
える「古典部の日常」 3
俺はつい一週間程前に知ったのだが、どうやら二年生も参加しなければいけないらしい。
なんでも、次期最高学年として、とか。 三年生を一番知っているであろう君達に見送られ、とか。
そんな大層ご立派な理由があったからである。
勿論、それは今年から始まった事では無かった。
もっと言えば、つい一週間程前に決まった事でも無い。
ただ、俺が知らなかっただけだ。
そういう理由で、俺達二年生は学校へと来ている。
奉太郎「三年になったからと言って、何かある訳でも無いだろ」
里志「……もっとこうさ、何か思う事とかないのかい?」
奉太郎「無いな」
里志「はは、随分ときっぱり言う物だね」
……里志にはそう言ったが、俺にも少しくらい思う所はある。
しかしそれは三年生になるからでは無い。
……今日の事だ。
準備は全部終わっている、後はどう入須と話す機会を得るか、だ。
そこら辺を千反田は全く考えていなかった様で、仕方なく俺が入須に話しかける作戦を考える事になった。
える「おはようございます、今日はお二人とも早いですね」
噂をすればなんとやら、か。
奉太郎「俺はいつも早いつもりだが」
里志「そんな、僕だってそのつもりだよ」
俺と里志が千反田の言葉に待ったを掛けた所で、伊原が顔を見せた。
摩耶花「よく言えたわね、二人共」
摩耶花「それにふくちゃん、昨日も時間ギリギリだったよね」
里志「あ、あれは不可抗力だよ」
摩耶花「ふうん……」
える「あ、あの!」
そんな里志と伊原の口論を千反田が止めた。
える「お話、してもいいでしょうか?」
摩耶花「あ、ごめんね」
里志「そう言えば、今日一度集まろうって言ったのは千反田さんだったね」
える「ええ、少し大事なお話があるんです」
俺は内容を知っていたが、もう一度整理する意味も含めて耳を傾ける事にした。
える「実はですね」
える「入須さんに、プレゼントを用意しているんです」
里志「卒業祝いって奴かな?」
える「勿論、その意味もあります」
える「他にも、入須さんには色々とお世話になったので……」
摩耶花「いいんじゃない? 入須先輩も喜ぶと思うよ」
える「……はい」
える「それでですね、なんとか入須さんとお話する機会を得たいのですが……」
奉太郎「ああ、大体は考えている」
俺がそう言うと、里志と伊原はこちらに顔を向けた。
摩耶花「あれ、折木は知ってたの?」
奉太郎「……まあな」
里志「知っていて黙っているなんて、何か言ってくれれば良かったのに」
奉太郎「ただ言いそびれただけだ」
える「あのですね、プレゼントはこれです」
千反田はそう言うと、持ってきていた小さな袋から手袋とマフラーを取り出した。
摩耶花「うわっ! すごい」
摩耶花「これ、手作りでしょ?」
える「ええ、まあ……」
里志「へえ、さすが千反田さんって言った所だね」
里志「見事な出来栄えだよ」
える「……季節外れかもしれませんが」
摩耶花「そんな事ないでしょ、また寒くなったら使えるんだし」
える「……実は、折木さんと一緒に作ったんですよ」
言うとは思ったが、やっぱり言って欲しくなかった。
摩耶花「え、折木も作ったって事?」
える「今、そう言いましたが……」
里志「横で文句言ってただけとかじゃなくて?」
える「しっかり作っていましたよ……」
こうなるからだ。
摩耶花「……意外と、やれば出来るんだね」
里志「……そうだね、なんでもやってみる物だ」
奉太郎「俺をやれば出来る子みたいに言うな」
奉太郎「それよりも、入須と話す機会の話だったろ」
当の本人が忘れているとは、全く。
奉太郎「卒業式が始まる前は、流石に駄目だろうな」
里志「まあ、そうだろうね」
奉太郎「なら、終わった後だ」
摩耶花「でもさ、終わった後もクラスの人と話したり、どこかに遊びに行ったりあるんじゃない?」
奉太郎「……入須がわいわい皆とやると思うか?」
里志「……それは少し、想像し辛いね」
奉太郎「ならどうせ、終わったらさっさと帰るだろ、その時に声を掛ければいい」
える「入須さんはそこまで寂しい人じゃないと思いますが……」
だが、あくまでその前に声を掛ければ済む話だ。
それに俺達の用事と言う物はさほど時間を取らないだろうし、入須には少し悪いがクラスの用件を後回しにしてもらえばいい。
奉太郎「ま、とにかく終わった後に声を掛けよう」
奉太郎「誰も行かないなら俺が行くが、どうする?」
える「あ、私が呼びに行ってもいいでしょうか?」
恐らく千反田もどこか、入須と話す機会が欲しかったのかもしれない。
なら俺に、それを却下する理由は無かった。
奉太郎「じゃあそれは任せる、俺は部室で待っているよ」
里志「そりゃそうだ、ホータローが自ら動くのは似合わないよ」
里志「僕と摩耶花は、居てもいいのかな?」
える「ええ、お二人にも是非来て頂きたいです」
摩耶花「うん、分かった」
摩耶花「一緒にお祝いしよう、入須先輩を」
里志「あ、僕は委員会の関係でちょっと遅れちゃうから、もしかしたら居合わせられないかもしれない」
える「そうですか……」
里志「もし間に合いそうなら、すぐに行くよ」
える「はい! お待ちしていますね」
俺は卒業式が終わったら真っ直ぐ部室に行き、千反田が入須を連れて来るのを待っていればいい。
簡単な仕事である。
伊原もすぐに部室には来るだろうし、退屈はしないかもしれないな。
奉太郎「……そろそろ時間か」
里志「そうみたいだね、まずは卒業式」
里志「しっかりと、見送ろうか」
体育館にはかなりの人数が集まっていた。
二年生全員、三年生全員、三年の保護者達、それに教師、来賓の人ら。
数えたら切りが無いだろう。
一番前は三年、次に二年、そして保護者達、と言った並び方になっていた。
右から順番に、クラス毎に用意された椅子に着く。
こんなにも人が居なかったら本でも読みたい気分だが……さすがにここまで人が居るとそんな気にもなれない。
俺は仕方なく、行儀良く式が始まるのを待っていた。
思わずあくびが出てしまう、ばれないだろうし……いいか。
あくびが数回出た所で、校長と思われる人物が入ってきた。
辺りが静まり返る、ようやく始まるのか。
なんとも長ったらしい挨拶が終わると、中学生でもやっていた様な一連の流れが始まる。
まずは卒業生達が入場してきた。
うむ、ほとんど面識が無い。
入須は見当たらなかったが、多分群れの中にいるのだろう。
三年全員が席に着くと、早速卒業証書の授与が始まった。
その後は何やら、色々な代表達の挨拶が始まり、俺は特に誰かも分からなかったので聞き流す。
そして、在校生代表の挨拶がやってきた。
俺はこの時、多分誰とも知らない奴が挨拶するのかと思っていたが……代表として立ったのは、俺が見知った人物だった。
あいつ、在校生代表だったとは……全く知らなかったな。
まあでも、総務委員会に勤めているだけあって適任なのかもしれない。
そう、福部里志である。
少し遠かったが、いつもより幾分か緊張している様子だった。
里志『まずは、卒業生の皆様、おめでとうございます』
それが少しだけ面白く、俺は今日始めてその挨拶に耳を傾けていた。
里志はそのまま思い出等を語っていて、喋りだしてからは大分落ち着いている様に見えた。
あれは俺には出来ない、里志の持っている物だろう。
そして5分ほどで、里志の挨拶は終わった。
次いで、卒業生の挨拶が始まる。
呼ばれた名前は、入須。
……確かに入須なら、似合っているかもしれないな。
周りが一段と静まり返り、挨拶が始まった。
入須『そして、この様な盛大な卒業式を開いて頂き、ありがとうございます』
……さすがは女帝と言った所か。
緊張している様子も無く、しっかりと言葉を発していた。
まあ、いつもの口調とは違い、大分堅い感じがしていたが。
入須『思えば、私達が神山高校で過ごした三年間は、色々な方に支えられていました』
入須『文化祭、星ヶ谷杯、体育祭、球技大会』
入須『私達がこれらの行事に励めたのも、ここに居る皆様のお陰です』
入須『私達は今日、この学校で学んだことを胸に、それぞれの進路へと旅立ちます』
入須『卒業生を代表し、答辞とさせて頂きます』
入須『本当にありがとうございました』
中学の時なんかは、卒業生代表は最後まで言葉を言うのも辛そうな程、泣きそうだったが。
入須は違った、しっかりと最後まで、言葉を述べていた。
……しかし、何やら様子がおかしい。
答辞は終わった筈なのに、入須がそこを動こうとしなかったのだ。
それに先生や生徒も気付き始め、僅かに場がざわつく。
少しだけ、口が動いているのが見えた。
多分だが、私は。 と言ったのかもしれない。
入須『私には、謝らなければならない人が居る』
さっきまでの堅い感じは消えており、いつもの入須の口調へとなっていた。
それより、なんて事だ。
あの入須が、こんな形で俺と千反田に言葉を向けるとは。
入須『この場を借りる形になってすまない』
入須『ここで名前を呼ぶ訳にもいかない、だから』
入須『私の独り言だと思って、聞いてくれ』
しかし、ここに居る人全員が入須の意思を汲んだのか、やがて場が静かになった。
入須『私は間違いを犯した』
入須『あの時は、それしか無いと思っていたんだ』
入須『だがそれは違うと教えてくれたのは、二年生の子であった』
言わずもがな、俺の事か。
入須『……そして私のした事は、一人の人間を酷く傷付けた』
入須『本当に、申し訳ない事をした』
そう言うと、入須は深々と頭を下げた。
こんな大勢の中で、まさか謝られるとは……全く予想外であった。
俺はつい、そのまま入須は壇上から降りて、式は予定通り進む物かと思ったが……
どっからともなく、聞きなれた声が聞こえてきた。
あの馬鹿、そんなの後で言えばいいだろう!
「入須さんも、あなたも傷付いたではないですか!」
「顔を……顔を上げてください」
最後の言葉は消え入りそうな物だったが、辺りは静まり返っていた為か、入須までしっかりと届いていた。
入須『君も、彼と同じ事を言うのだな』
入須『……ありがとう』
そして、周囲の視線にやっと気付いたのか、千反田が慌てて席に着いているのがこちらからでも見えた。
入須『二年生諸君、時間を取らせてすまなかった』
入須『先生方、予定外の行動を取り、申し訳ありませんでした』
そう言い、二度頭を下げると、入須は壇上から降りた。
次に巻き起こったのは、盛大な拍手であった。
事情を知っているのは恐らく、俺と千反田に里志と伊原だけだろう。
しかしそれでも、入須の挨拶には人を惹きつける物があったのかもしれない。
……あいつは、最後の最後まで女帝だった。
奉太郎「あれには驚いたな」
える「入須さんの挨拶ですか?」
奉太郎「なんとなく、いつかしっかりと話してくるだろうとは思っていたが」
奉太郎「まさかあの場面でするとはな」
える「私も驚きましたよ」
える「つい、返してしまいました」
奉太郎「俺はそれにも驚いたぞ」
奉太郎「確かあの時、後で言えば良いだろって思った」
える「気付いたときには、言葉が出ていて」
える「そして、次に気付いたときには、周りの方が私の方を見ていて……」
える「……どういう意味ですか?」
奉太郎「千反田らしくて、いいんじゃないか」
える「あ、え、えっと。 ありがとうございます」
奉太郎「いや、別に褒めてはいないが」
える「……そうでしたか」
奉太郎「悪い事とも言ってないがな」
える「もう、はっきり言って欲しいです」
奉太郎「どっちかと言えば、良い方なんじゃないか」
奉太郎「俺からの視点だがな」
える「それだけ聞ければ、十分です」
それにしても、日が大分落ちてきている。
温度が少しだけ下がっているように感じた。
念のため何枚もシャツを重ねて、厚手の上着を着て来たのは正解か。
しかし千反田は簡単な物しか着ておらず、幾分か寒そうに見えた。
俺は本当にまだ寒いとは思っていない訳だし、上着を貸してやるのが普通だ。
奉太郎「……ほら」
える「え、悪いですよ」
奉太郎「去年は俺が風邪を引いて、今年はお前とかになったら笑い話にもならんだろ」
奉太郎「俺は大分暖かい格好をして来ているから、大丈夫だよ」
える「そうですか、ではお言葉に甘えて」
卒業式が終わった後の事。
終わり良ければ全て良しとは、いい言葉だと思う。
過程が悪くても、最後に笑っていられればいいのだから。
しかしそれも、今だから言える事か。
あの後、確か千反田はそのまま入須の教室へと向かったんだったな。
俺は古典部で、入須と千反田を待っていたんだ。
……少しだけ、悪い事をしてしまった。
第7話
おわり
思わず大声をあげてしまい、恥ずかしい限りです。
でも……とても、嬉しかったです。
入須さんも最後は笑っていましたし、これにて一件落着……
ではありません!
私にはまだ、役目があるのでした。
危うくそのまま帰ってしまう所でした……
える「入須さんは教室でしょうか」
卒業式が終わって、三年生の方達が退場した後に、私達は教室へと戻ったのですが。
時間的にはそこまで経っていない筈です。
それならばまだ、入須さんは教室に居るでしょう。
私はそう思い、三年生の教室へと少しだけ急ぎながら向かいました。
ええっと、入須さんは……
その時、後ろから声を掛けられます。
沢木口「あれ、君は確か……古典部の子だっけ?」
える「あ、ご無沙汰しています」
沢木口「それで、何か用事でもあったの?」
える「ええ、実は……」
私の用事をお話すると、沢木口さんは早速入須さんを呼び出してくれました。
……一年生の終わりに、迷惑を掛けてしまったというのに。
沢木口さんはそんな事は無かったかの様に、私に笑顔を向けています。
沢木口「いいって、気にしないで」
そう言うと、沢木口さんは友達の所へと向かっていきました。
その後、数分待った後、入須さんがやって来ます。
入須「千反田か、さっきはすまなかったな」
える「びっくりしましたよ」
入須「……そうだな」
入須「あの場面で、あの様に呼び掛けるのが一番効果的だと思ったから」
入須「と言うのはどうだろうか」
える「え、そうだったんですか」
入須「あれは私の言葉だ」
える「……そうですか、良かったです」
入須「にしても、千反田はもう少し人を疑った方がいいと思うぞ」
える「入須さんの言っている意味は、分かります」
える「でも、それでも」
える「私は、人を信じる方が好きですから」
入須「……そうだったな」
そこで一度会話が途切れ、示し合わせた訳でも無く、私と入須さんは教室内の喧騒を眺めていました。
入須「それで、用事とは何だ?」
顔をそのまま動かさないで、入須さんは言いました。
える「お時間は取らせませんので、付いて来て欲しい場所があるんです」
私がそう言うと入須さんは少しだけ困った顔をします。
入須「……実は、クラスの奴等と予定があってな」
える「……わ、分かりました」
だ、駄目です。
このままでは古典部の皆さんに合わせる顔がありません……
入須「申し訳ないが、別の日でもいいか」
える「え、えっと……」
それは、入須さんに向かって発せられていた声でした。
内容は、こっちを後回しにすればいい、との物で……
私はやはり、人に助けられていてばかりの様な気がします。
入須「……との事だ」
入須「なら断る理由が無くなったな、行こうか」
える「は、はい! ありがとうございます」
私は入須さんに頭を下げ、教室内に居る方達にも頭を下げました。
……良かったです、これで入須さんを驚かせる事が出来ます!
私の足取りは軽く、入須さんとお話をしながら古典部へと向かいました。
える「着きました、入須さん」
入須「ここは、古典部か」
える「はい、とりあえず中に入りましょうか」
入須「ふむ、そうだな」
古典部の前でそう話をし、私は扉を開けます。
中には既に、折木さんと摩耶花さんが居ました。
福部さんはまだ、来ていない様です。
……でも、何か変です。
……福部さんが来ていないからでしょうか?
いいえ、それは違う筈です。
摩耶花さんは分かりませんが、折木さんは例え福部さんが居ないとしても、ここまで分かりやすく暗い顔はしない筈です。
あくまでも、私の経験上……ですが。
える「あ、あの」
奉太郎「千反田か」
私が声を掛けた事でようやく、折木さんはこちらに顔を向けました。
……やはり、いつもと少し違う様な。
入須さんも異変には気付いた様で、扉の近くで待っていてくれました。
奉太郎「……ちょっとな」
摩耶花「ち、ちーちゃん」
摩耶花「そ、その……ごめん」
何故、摩耶花さんは私に謝るのでしょうか?
える「ええっと……」
私がそう言い、考えていると、折木さんが口を開きます。
摩耶花さんはまだ何か言いたい様な顔をしていましたが、それを遮るように折木さんは言ったのです。
奉太郎「手袋に穴が開いた」
える「……どういう意味ですか?」
奉太郎「聞くより、見たほうが早いだろ」
そう言い、折木さんは私に手袋を差し出します。
……それは確かに、少しだけですが、穴が開いています。
摩耶花「……それ、その」
奉太郎「部室の鍵が開いていたんだ」
奉太郎「それで、俺と伊原が来た時には既にこうなっていた」
奉太郎「そうだろ?」
折木さんはそう言い、摩耶花さんの方に顔を向けます。
摩耶花さんはその言葉に答えませんでしたが、折木さんが言うからにはそうなんでしょう。
なるほど、摩耶花さんが先程、私に謝ったのは恐らく……しっかりと見張っていられなかったからでしょう。
でも、一体誰が……
える「……酷いです、こんなのって」
える「あんまりです」
そこで、後ろで待っていた入須さんが声を掛けてきます。
入須「大体の事情は分かった」
える「……はい」
入須「だが、何者かによって手袋には穴が開けられた」
入須「そうだな?」
奉太郎「……ええ」
入須「それが何だ、縫えばすぐに治るだろ」
える「で、ですが!」
入須「もしかして」
入須「私に裁縫は無理だと言いたいのか?」
える「そ、そういうつもりではないです」
入須「ならいいじゃないか、是非渡してくれ」
その言葉を聞き、私は一度、折木さんの方へと顔を向けます。
える「……分かりました」
こんな形になってしまいましたが……入須さんは、喜んでくれるのでしょうか。
それだけが少し、心配です。
私はそんな事を思いながら、手袋とマフラーを入須さんに渡しました。
入須さんはそれを受け取ると、とても優しそうな笑顔で、こう言いました。
入須「最高のプレゼントだよ、ありがとう」
える「は、はい!」
える「あの、それは折木さんも作ったので……」
入須「そうなのか、ありがとうな」
入須さんはそう言うと、折木さんに頭を下げました。
口ではそう言っていましたが、照れているのはすぐに分かります。
そしてその後、入須さんはクラスの方達との用事もあり、教室へと戻っていきました。
なんだか、今日別れても、また入須さんとは会えるような……私にはその様に感じられました。
……それより!
える「折木さん」
える「私、気になります!」
奉太郎「……何がだ」
折木さんも、私が何に対して気になるのかは分かっていた様で、暗い顔をしながら答えました。
奉太郎「駄目だ」
える「何故ですか、私……どうしても」
そこまで言った時、古典部にまた一人、やってくる人物が居ました。
このタイミングで来るのは恐らく、福部さんでしょう。
里志「ごめんね、遅れちゃった」
える「お疲れ様です、福部さん」
里志「うん、疲れたよ……って」
里志「何かあったのかい? 皆」
やはり福部さんも、部室の空気に気付いたのでしょう。
……説明するのには、あまり慣れていないせいもあって、随分と回りくどい説明になっていまいましたが。
里志「なるほど、そういう事か」
里志「それで、ホータローは何か分かったのかい?」
奉太郎「……何も」
里志「本当かい? 僕が見た限り、何か分かっている顔だけど」
える「そうなんですか? 折木さん!」
やはり、折木さんは分かっていたのでしょう。
それならば、聞かない以外の選択はありません。
ですが……
奉太郎「……帰る」
そう言い、折木さんは鞄を手に取ると、部室を後にしようとします。
える「ま、待ってください」
私はそれを見て、付いて行きます。
一度、福部さんと摩耶花さんの方に振り返り、顔を見ました。
福部さんは困ったような顔をしていて、摩耶花さんは未だに暗い顔をしています。
福部さんと摩耶花さんを残して帰るのは気が引けますが……
折木さんがここまで答えない理由が、少し気になってしまうのです。
そして私は、折木さんの後に続きました。
学校から出て、前を歩いている折木さんを見つけます。
私は駆け足で近寄り、横に並んで歩き始めました。
奉太郎「悪いな、さっきは」
える「……いえ、気にしないでください」
奉太郎「いつも自分は気になると言うのに、気にしないでと来たか」
える「……あの」
奉太郎「気になるか、さっきの事」
える「気にならないと言えば、嘘になってしまいます」
える「……やはり、気になります」
える「折木さんには、嘘を付きたく無いんです」
える「どんなに小さくても嫌なんです」
奉太郎「……」
その後、私と折木さんの間を少しの沈黙が包みます。
奉太郎「……はあ」
奉太郎「……お前には、話しておくべきか」
える「えっと……」
奉太郎「さっきの事だよ、他言無用で頼むぞ」
える「それを決めるのは、聞いた後がいいです」
奉太郎「……ああ、分かった」
奉太郎「まず、俺と伊原が部室に行った時、鍵は閉まっていた」
える「でも、さっきは開いていたと……」
奉太郎「あれは嘘だ、すまんな」
える「では、一体何故?」
奉太郎「つまり……」
奉太郎「今日、古典部の部室を訪れたのは……卒業式が終わった後は俺と伊原だけになる」
える「……そうなりますね」
奉太郎「そして、俺と伊原は部室でお前が来るのを待っていたんだ」
奉太郎「いつもみたいに席に着いて、な」
奉太郎「その時、入須へのプレゼントは部室に置いていただろう?」
える「ええ、あれを持ち歩くのは少し、大変そうだったので」
奉太郎「それを断る理由なんて無い、俺は見ていいぞと言った」
える「……はい」
なんとなく、私にも分かってきました。
奉太郎「机は木で出来ているからな」
奉太郎「しかも結構古い、ささくれている部分がいくつかあった」
奉太郎「それにあいつは、伊原は手袋を引っ掛けてしまった」
える「……」
奉太郎「気付いた時には、あの状態になっていた」
奉太郎「……そういう事だ」
える「……そうでしたか」
奉太郎「結果的にお前には話してしまったが、まあ」
奉太郎「一番悪いのは、俺だろうな」
える「何故、そう思うんですか」
奉太郎「さっきも言っただろ、話すという選択もあったんだ」
える「違います、そんな選択はありませんでした」
奉太郎「……どういう意味だ」
える「私は、少なからず、折木さんについては知っているつもりです」
える「他の人なら分かりません、ですが」
える「折木さんにとっては、摩耶花さんを庇う以外に選択は無かった筈です」
奉太郎「……どうだかな」
える「ですが、今……この場なら、選択は他にもあります」
奉太郎「何が言いたい」
える「戻って、福部さんにも話すんです」
奉太郎「……それをしたら意味が無いだろ、元々千反田にも言うつもりは無かったんだ」
奉太郎「結果的に話してしまったが、お前が黙っていればそれで終わる」
える「……折木さんは、摩耶花さんの顔を見ましたか?」
奉太郎「……顔?」
える「何故、あんな顔をしていたのか……さっきまで分かりませんでした」
える「ですが、折木さんの話を聞いて、全て分かりました」
える「……皆で、話し合うべきです」
奉太郎「……そうだったのか」
奉太郎「余計な事をしてしまったのかもな、俺は」
える「だから、今ならまだ間に合うんです」
奉太郎「……まだ学校に居るとも限らないだろ」
える「いいから、行きますよ!」
私はそう言い、折木さんの手を掴みます。
そのまま後ろに向き直り、走りました。
奉太郎「お、おい!」
後ろで折木さんの声が聞こえましたが、気にしないで私は走ります。
……なんだかちょっとだけ、折木さんの前を行っている自分が嬉しかったのを覚えています。
似たような事が前に、あの時は逆でしたが。
いえ、状況も違いました……ですが。
それでも嬉しかったんです、折木さんの手を引いて走れたのが。
廊下を駆けて、古典部の前へとやってきました。
そのままの勢いで扉を開けます。
摩耶花「ちーちゃん?」
摩耶花「それに、折木も」
良かった……摩耶花さん達はまだ部室に居てくれました。
える「あ、あの!」
える「摩耶花さんは悪くないです!」
摩耶花「え、えっと?」
奉太郎「千反田、落ち着け」
奉太郎「俺が説明する」
しかし、摩耶花さんは先程の私の言葉をゆっくりと理解し、折木さんの言葉を遮りました。
摩耶花「……今日の事ね」
摩耶花「実は、それなんだけど」
里志「全部聞いたよ、摩耶花から」
摩耶花「……ごめんね、ちーちゃん」
摩耶花「折木も、ごめん」
奉太郎「なんだ……千反田の言う通りだったって訳か」
える「ふふ、だから言ったでは無いですか」
える「摩耶花さんは悪く無いですよ」
える「入須さんにも今度、お話しましょう」
そこで折木さんが、扉の傍に立ったままで言いました。
奉太郎「あー、それなんだが」
奉太郎「多分、入須は全部分かっていたんだろうな」
里志「入須先輩が? どうしてさ」
奉太郎「……あいつは場を収めようとしていた」
奉太郎「自分がそのままプレゼントを貰う事によって、これ以上話を掘り下げられない様にしたんだ」
奉太郎「だからあいつには、言う必要は無いだろう」
える「そうだったんですか、私は全然気付きませんでした……」
つまり入須さんは、全て気付いていて……
最後の最後まで、ご迷惑を掛けてしまった様ですね。
奉太郎「お前の考えている事が、俺には分からなかった」
摩耶花「別に、折木が謝る事は無いでしょ」
奉太郎「……少し、外の空気を浴びてくる」
折木さんはそう言うと、部屋の外に出て、どこか風に当たれる場所へと行ってしまいます。
える「……そう言えば」
える「私、まだ少しだけ気になる事があるんです」
里志「はは、ホータローが居ないとどうにもならないかもね」
摩耶花「私達で良ければ聞くけど……」
える「あのですね」
える「摩耶花さんは何故、そのお話を福部さんにしたのでしょうか?」
摩耶花「それはさっきも言ったよ、元から私は……話すつもりだった」
える「ええ、それは分かります」
える「ですが、皆さんが揃っていた場面でも言えた筈なんです」
摩耶花「……やっぱり、ちーちゃんには分かっちゃうのかな」
える「すいません、失礼な事を言っているのは分かっています……」
摩耶花「思い出したんだ」
摩耶花「ちーちゃんと入須先輩が来る少し前に、折木が言った事を」
える「……折木さんは何と言ったんですか?」
摩耶花「折木はね」
摩耶花さんはそう言うと、私の耳に口を近づけ、福部さんに聞こえないように教えてくれました。
その言葉を聞いた私は、やはり折木さんは折木さんだと感じる事になります。
折木さんの言葉を借りるなら、あくまでも私からの視線、ですが。
でもやはり、折木さんという方は……そういう方なのでしょう。
里志「千反田さんの気持ちが良く分かるよ、とても気になる」
摩耶花「……だめ、私とちーちゃんの秘密だから」
える「ふふ、そうですね。 秘密です」
そうでしょうか?
私にはとても似合っている台詞の様に思えますが……
える「私は、折木さんらしいと思いますよ」
摩耶花「ふうん、なるほどねぇ」
摩耶花さんは何故かニヤニヤとしていましたが……それよりも私には、行きたい場所がありました。
える「私……折木さんの所に行ってきますね」
私はそう告げ、部室を後にします。
える「見つけました」
奉太郎「千反田か、何でここに居ると思った?」
える「なんとなくです」
奉太郎「……そうか」
折木さんは屋上から景色を眺めていて、私も横に並び、一緒に景色を眺めました。
える「もう、日が暮れてきていますね」
奉太郎「結局、卒業生達より長く居残ってしまったな」
える「そうみたいです」
奉太郎「それで、どうして急に来た」
える「……折木さんの顔を、見たかったので」
える「あの、折木さん」
奉太郎「ん?」
える「……いえ、何でも無いです」
奉太郎「変な奴だな」
える「ふふ、帰りましょうか」
奉太郎「……ああ、そうだな」
私は先程、摩耶花さんから聞いた折木さんの言葉について、何か言おうと思っていましたが……
この事は、私の胸の内に、閉まっておく事にしました。
その言葉はとても優しい物で、きっと折木さんは……あまり人に知られたく無いと思っているでしょう。
奉太郎「あの時は……お前に助けられたな」
える「そうでしょうか?」
奉太郎「ああ」
える「お礼をまだ聞いていない様な気がするんですが……」
千反田はそう言い、自分の口元に指を当てた。
奉太郎「お前はそんな奴だったか」
える「いつも通りですよ?」
奉太郎「……ありがとうな」
える「ふふ」
なんだ、様子がおかしいぞ。
……まさか、コーヒーのせいなのだろうか。
千反田はただ、眠れなくなるだけと言っていたが……とんでもない。
恐らく自分では分かっていないのだろう、今度教えねば。
える「どうしたんですか? 折木さん」
とりあえず、今は千反田の言う通りにしておくのが無難か。
奉太郎「ありがとう、千反田」
える「そんな、見つめないでください」
……面倒だ。
奉太郎「そろそろ帰るか」
える「もっと一緒に居たいです」
奉太郎「い、いいから……帰るぞ」
える「……そうですか、残念です」
今後一切、コーヒーは飲ませない様にしようと強く誓った。
誰に誓った訳でもないが。
える「ふふ」
横を歩いている千反田が急に笑い出すのが少し怖い。
奉太郎「何がそんなに楽しいんだ」
える「折木さんの横を歩ける事です」
奉太郎「それはありがたいお言葉で」
える「では、お礼を言ってください」
奉太郎「……」
える「私たちも、もう三年生ですね」
える「皆さんと一緒に居られるのも、後一年ですか」
える「……寂しいです」
なんだ、さっきまでニコニコしていたと思ったら……今度は泣きそうになっている。
だがまあ……その千反田の気持ちも、分からなくは無かった。
奉太郎「なあ、千反田」
える「はい? どうしました?」
俺はそんな千反田を見ていると、こいつがどこかに行ってしまいそうな気持ちになって、それを振り払うために、言った。
奉太郎「手、繋ぐか」
える「……はい!」
多分いつも通りの千反田なら、俺はこんな事は言えなかったかもしれない。
それはまあ……コーヒーに少しだけ感謝と言う事で。
千反田の家までの時間、短い時間ではあったが……千反田と手を繋ぎ、歩いて行った。
第8話
おわり
Entry ⇒ 2012.10.28 | Category ⇒ 氷菓SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
P「貴音が裸族だった…」
今俺の前に担当アイドル、四条貴音が全裸仁王立ちで存在している。
貴音「あなた様、何かおかしいことでも?」
落ち着け。おかしいのはどっちなんだ。
そもそもなぜこんな状況になったのか頭を整理しよう。
うん、そうしよう。
ただ、音無さんから連絡が入って、
貴音が事務所に忘れたお財布を家まで届けるように言われたのだ。
貴音はセキュリティが徹底された家に一人で暮らしている。
あらかじめ電話で連絡を取り、玄関を開けるとそこには…。
貴音「お待ちしておりました。あなた様」
P「?!」
貴音「何を驚かれておいでなのですか」
P「いや、入っちゃまずかったかなと」
貴音「何をおっしゃっているのか分かりませんが…入って構いません」
貴音には羞恥心というものがないのだろうか。
銀色の髪をゆさゆさ揺らしながら彼女はドアを開け、俺を中に案内した。
立ったまま貴音が腕をこちらに伸ばす。
少しだけ太く白い腕、そして無駄な毛一本ない脇の下のチラリズム。
あらゆる身体の部位が目の毒だ。
貴音「あ、あの……」
P「あ、ああ。そうだな」
ごそごそとカエル型のお財布を引っ張り出し、貴音に渡す。
こんななりのお財布だが中にはクレジットカードがぎっしり入っている。
P「以後気をつけろよ」
貴音「申し訳ございません。いくら感謝してもし足りないくらいです」
P「まあ、大事なくてよかった」
貴音「あなた様には何かしらのお礼をしたいと思うのですが、いかがいたしましょう?」
P「?!」
いや待て待て。ここで「貴音が欲しい」とでも言って見ろ。
たちまち訴えられて人生あぼーんじゃないか。
裸族だからと言って油断はできない。
ここは様子を見よう。
P「ああ、いや別にいいよ。そういうのは」
貴音「そうですか。あ、少し失礼します」
そういって貴音は大きく伸びをした。
影になっていた大事なところが一気に丸見えになる。
大きな胸も揺れて、お腹や腰が少し動いて。
正直鼻血が出そうだ。
貴音「失礼いたしました。お見苦しいところを」
P「ああ、別に」
むしろ大満足だ。
P「ところでせっかく来たんだし、リビングに入ってもいいかな?」
貴音「もちろん問題はありません。さあどうぞお入りください」
貴音はドアを開けて俺が入るのを丁寧に待っている。
行動自体は普通なのだが、いかんせん格好が格好なので
すぐにはドアに入らず貴音の方を見てしまう。
貴音「あなた様?」
P「ああ、悪い悪い」
服を着てくれるのかと思いきやあろうことか、そのまま脚を組んで椅子に座ったのである。
貴音「ふぅ……」
大きな机に頬杖をついている貴音。
瞼が徐々に閉じられていく。
P「貴音」
貴音「あ、申し訳ありません。何分眠いもので」
P「まあいいけど……そもそも貴音はなんで裸なんだ?」
貴音「いけませんか」
P「いや悪いとは言わないけど」
貴音「なら問題ないでしょう」
なんだこの「裸になって何が悪い」的理論は。
P「でもさ、ほら、宅配便とかで人が来たとき裸見られるよ?」
貴音「いけませんか」
P(なん……だと……)
P「そんなもんかね」
貴音「なかなか開放感があって良いですよ。あなた様もどうですか?」
P「いや、やめておくよ。なんか色々怖い」
貴音「そうですか」
ふと、彼女の顔から目を離すと貴音の胸が机の上に乗っている。
P「すまん、貴音。どこかにティッシュはないかな」
貴音「てぃっしゅですか。少々お待ちを」
席を立ちあがり、近くの引き出しへ向かう貴音。
すると彼女は…四つん這いになって一番下の棚を開け始めたのだ。
つまり俺から見たら彼女のお尻どころか穴とか大事なとこまで丸見えなわけで……
貴音「はい、あなた様。どうぞ……いかがなされました?!」
P「いや……なんともない。ただ鼻血が……へんた……大変なことになっただけだ」
貴音「はぁ……大事ないならばよいのですが」
P「問題ない」
貴音「時間も時間ですので少し料理の支度をいたしますが……あなた様もお食べになりますか?」
P「お、いいのか?それじゃいただくよ」
貴音「分かりました。今日のお礼ということで腕を振るわせていただきますね」
パックから取り出してお湯をかけて何分かすれば完成。
ぶっちゃけ腕によりをかける必要が全くないのは内緒だ。
……が。
股も、いやまたも彼女、食器棚の前にかがんで色んなものを取り出し始めたのである。
胸が彼女の腕でギュッと潰されて形を変えている。
爪先立ちをした彼女の腰は少しくびれている。
P「見ちゃダメだ、見ちゃダメだ、見ちゃダメだ……」
目を背けるがタイミング悪く貴音が話しかけてきた。
貴音「お飲み物はいかがいたしましょう?」
P「何でもいいよ」
貴音「そうですか」
彼女は再び屈んで冷蔵庫の一番下から飲み物を取り出す。
だからなんでそう都合よくものが一番下にあるんだよ!
目を背けつついちいち「ありがとう」と言ってやる。
すると貴音は俺の肩を叩き……
貴音「お飲み物はこれでよろしかったでしょうか」
P「!!」
貴音の白い肌に触れている白い1リットルの牛乳パック。
巨乳に牛乳とかベタすぎるぞ!どういうことだオイ!
とりあえず脳内で素数を数えろ……落ち着け俺。
P「ああ、牛乳飲むのなんて久しぶりだな。ありがとう」
ここまで10秒。
俺の鉄壁の理性に、感謝を。
いかんな、口調が移ってきたぞ。
貴音「あなた様とらぁめんが家庭で食べられるとは……光栄です」
なんかすっごい家庭的な風景だけどこの人裸だからね。
P「いや、貴音はホントにおいしそうに食べるな」
貴音「そうですか?ふふふ、おだてても何も出ませんよ」
もう何もかも出てるけどな。
P「ところで貴音はその量で満足なのか?」
そう。この娘は765でも右に並ぶものはない大食らいなのだ。
こんなラーメンで満足するはずがない。
貴音「そ、それは!実は……」
P「ん?」
貴音「お恥ずかしながら、これで本日10食目なのです」
P「そいつはすごいな」
貴音「思ったより驚かれないのですね」
P「ああ、いやまあな」
今のあなたの服装の方がよっぽど恥ずかしいし驚きだよ。
貴音「あなた様、わたくしそろそろお風呂に入りたいのですが」
P「あ、そうか。それじゃ俺は帰ろうかね」
これ以上この家にいるのはマズい。
貴音「そうですか。それでは」
P「あ、そうだ」
貴音「なんでしょう?」
P「変な男には気をつけろよ」
貴音「問題ありません。護身術の類は一通り身につけておりますので」
ジャブのようなパンチモーションをとる貴音。
護身術よりも先に衣服を身に着けてほしいものだが。
事務所に着くと、貴音が待っていた。
流石にちゃんと服を着ている。
貴音「あなた様、昨日はどうも」
P「いやいや、大したことはしてないよ」
小鳥「もしかして、一夜を共にしたとか?」
貴音「小鳥嬢、そのような破廉恥な真似は断じていたしておりません」
いやしてただろ、と突っ込みたくなったがここはぐっと我慢。
P「そうですよ音無さん、勝手な妄想を押し付けないでください」
小鳥「す、すいません」
貴音「そういえばあなた様、少し頼みがあるのですが」
P「ん?なんだ?」
貴音「響にわたくしの本を貸しているのですが……
一向に帰ってこないので、仕事の後にお時間があれば催促していただけませんか。
わたくしが行っても響はどうしても先延ばしにしてしまうので、
ぷろでゅうさあの方から、がつんと言って下さいませ」
P「はぁ……なんだかよく分からんが、分かったよ」
貴音「恩に着ます」
確か、彼女も一人暮らしだったか。
貴音に負けないくらいの大きな玄関の呼び鈴を鳴らす。
響「お、貴音のプロデューサーか!入っていいぞー」
ドアを開けると、浅黒い肌、細い手足、大きなポニーテール。
響「貴音のプロデューサー、どうしたんだ?」
そしてまろびでた胸、開いた股倉……
P「響ぃ!お前もかぁぁぁ!」
おわり
短い間でしたがありがとうございました。
アイドル全員が裸族な続きを書くべきだな
Entry ⇒ 2012.10.28 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (2) | Trackbacks (0)
玄「彼女募集中」
宥「えっ……」
玄「えっ!?」
憧「だってこの前、駅前を手を繋いで歩いてたじゃん」
宥「いつのこと?」
憧「この前の日曜日だよ」
玄(日曜日……そういえばお姉ちゃん朝から居なかった……)ムムム
憧「確か白糸台で宥姉と戦った人とさ。見間違いじゃなかったらだけどね」
憧「てっきり付き合い始めたのかと思ったんだけど」
玄「ま、まっさかー。ね、お姉ちゃん」ハハハ
宥「……」
玄「……お姉ちゃん?」
憧「おお」
玄「え!?」
玄「わ、私初耳だよお姉ちゃん!」
宥「言うの恥ずかしくて……」
憧「とうとう宥姉に春が来たかー」
玄「そ、そんな……」ガクッ
憧「玄ショック受けすぎじゃない?」
玄「そんな……お姉ちゃんに……」
宥「そんなに意外かな?」
穏乃「?どうしたの玄さん」
憧「しずにはまだちょっと早い話」
穏乃「何?」
玄「だって……だって……」
灼「何?」
憧「宥姉に恋人が出来たって聞いて落ち込んでるの」
灼「宥さんに?ああ、だから」
穏乃「玄さん、宥さんのこと大好きだからね」
憧「少しはお姉ちゃん離れとかすれば?」
玄「……べ、別にいつもお姉ちゃんにベッタリなわけじゃないもん」プイッ
灼「姉妹仲が良いにこしたことは無いけど」
穏乃「うん」
憧「このままベッタリじゃ玄の為にもならないんじゃない?」
玄「うううう……ベッタリなんかしてないもん……」
憧「忘れがちだけど私たち花の女子高生だしね」
憧「玄も恋人作れば……」
憧「……」
灼「……」
穏乃「……」
憧「玄には早いか」
灼「想像できない」
玄「わ、私にだってコイビトの1人や2人……」
穏乃「え?玄さん居たの?」
玄「……う、うん」ボソボソ
憧「嘘!?いつのまに!?」
灼「意外」
玄(え?あれ?)
玄「今のはそのー……、」
憧「どんな人?この学校の人?」
穏乃「ここ生徒数少ないし」
憧「あ、そっか。じゃあ他校の人!?」
玄「え、いや、その」
玄「……そうだよ、うん」
憧「同い年?あ、もしかして年上?」
玄(何か嘘でしたって言えない雰囲気……)
玄「そうだよ」
灼「他校で年上ってことは宥さんと同い年か」
憧「何だー。宥姉より玄のほうが水臭いじゃん」
宥「私も初めて聞いちゃった……」
玄(うん、だって居ないんだもん!)
玄「あはははは……」
玄(嘘ついちゃったよー……)ガックリ
玄(で、でも皆本気にしてないよね?)
宥「玄ちゃんの恋人ってどんな子?」
玄「え!?えーっとさっき言ったとおりだよ?」
宥「そうなの……」
宥「なんだかホッとしちゃった」
宥「私が頼りないから玄ちゃんは私に付きっきりなのかな、って思ってたから……」
玄「そんなことないよ!」
宥「玄ちゃん良い子だから絶対に玄ちゃんの事好きになる子居ると思ったの」
玄(そんな人居るわけないよー……)
宥「大会が終わった後、会場で偶然会ったの」
宥「そこから仲良くなって、付き合い始めたのは本当に最近なんだよ」
玄「そうなんだ」
宥「菫ちゃんも玄ちゃんに会いたいって言ってたから紹介するね」
玄「うん」
玄「え″」
玄「で、でもちょっと距離のあるところに住んでる人だし……」アセアセ
宥「ダメかな?」
玄「だ、だめじゃないようん」
宥「お願いね?」
玄「うん……」
玄(どうしよー……)
玄「……」タメイキ
玄「約束までしちゃったよ」
玄「正直に言えない感じになっちゃった……」
玄「こ、こうなったら今から作るしかない!」バッ!
玄「……」
玄「どうやって作るの……」ガックリ
玄「他校で年上なんて制約自分で付けちゃったし」
玄「自分で自分の首を絞めてるよ私……」
玄「ドラが恋人で良いかなもう……」
玄「テレビで現実逃避をしよう」ピッ
「女子高生へのアンケートによると恋人の居る人の割合は」
玄「何てタイムリーな話題なんだろう……」
玄「そうそう、みんなどこで会ってるの?」
「クラスメイト」
「部活の先輩とかぁ」
「何か友達の友達?と付き合い始めた子も居るー」
玄「普通そうだよねえ」
「しかしこれは五割。残りの五割は交遊関係の外からという人が多いのです」
玄「ふんふん」
「ネットで知り合った人と外で会うとか最近多いっていうかー」
玄「見知らぬ人って怖いと思うんだけど……」
玄「でもそれくらいしないと無理って事かな」
玄「私には無理だよー……」ガクッ
玄「あー、どうしよう……」
玄「そんなこんなしている内に一週間……」
玄「皆忘れてくれるかなーとか思ったらそんなこと全然無いし」
玄「特に憧ちゃんなんて誰か聞き出そうとするし」
玄「居ないんだから答えられないよ……」
玄「今日もお姉ちゃん朝から居ないし……デートかな」
玄「秋なんて絶対炬燵から出てこなかったのになぁ……」ハァ
玄「……」
玄(街中のカップルがやたら目に入ってくるよ)
玄(これがクラスで流行っているリア充死ねってことなのかな)トボトボ
玄「あーあ」
玄「朝起きたらドラが人間になってないかなー」
「ねえどっちが良いかな?」
「どっちも似合うよ」
「もうちゃんと答えてよ」
玄「……」
玄「試着して早く決めちゃおう」トトトッ
ドンッ
??「わっ」
玄「あ、ごめんなさいっ」
竜華「あんた阿知賀の……松実玄ちゃん?」
玄「千里山の……清水谷さん?」
玄(だよね?)
竜華「こんなとこで会うなんて偶然やなあ」
竜華「玄ちゃんも服買いに来たん?」
竜華「そっかー」
竜華「秋服って地味に悩まへん?日によって寒かったりするし」
玄「いっそ早く冬になってくれれば良いんですけどねえ」
竜華「そうそう。あ、玄ちゃん試着するん?」
玄「あ、はい。どっちにするか迷ってて」
竜華「ほんなら選ぶの手伝うわ」
玄「良いんですか?じゃあお願いします!」
……
玄「どうですか?」
竜華「……」
玄「清水谷さん?」
竜華「玄ちゃんは白い服がよう似合うなぁ」シミジミ
玄「そうですか?ありがとうございます」テレテレ
竜華「めっちゃかわええわ。うちやったらそれ着てくれたら嬉しい」
竜華「適当にこん中見てまわろっかー」
バッタリ
宥「あ」
玄「ふぇ?」
宥「玄ちゃん?」
玄「お姉ちゃん?なんでここに……」
玄(あ、この人とデート中なんだ)
竜華(今日は他校の子とよく会う日やなあ)
菫「そっちは確か千里山の……」
竜華「どもー」
宥「玄ちゃんもしかして清水谷さんなの?」
竜華「?」
玄「?」
玄「!」
玄(わ、わ、わ、忘れてたよ!)
玄(どどどどうしよう)ワタワタ
菫「?」
竜華「?」
玄(よ、よし。ここは適当に話を合わせて貰おう)
宥「そうなんだ……」
宥「清水谷さん」
宥「玄ちゃんのことよろしくお願いします」フカブカ
竜華「へ?」
菫「ん?」
玄(ごめんなさい、今だけ話合わせて下さい)チラッチラッ
竜華(よう分からんけど話合わせろってことやんな?)
竜華「よろしく言われても私のほうこそお世話になっとるで」
玄「ほ、ほらお姉ちゃん顔上げてっ」
宥「でもせっかく玄ちゃんの、」
玄「良いから良いから!弘世さん!」
菫「うん?うん」
宥「く、玄ちゃん顔上げてよ」
竜華「似たもの姉妹やなあ」
菫「姉妹仲は良いに越したことは無いが」
菫「宥、上映まであと10分だ」
宥「え?た、大変……」アセアセ
宥「じゃあ、あの玄ちゃんのことお願いします」
玄(何とか切り抜けた……危なかったよー……)
竜華「さて玄ちゃん」
竜華「どういう事なんか教えてくれへん?」
玄「はい……」
竜華「半ば冗談で言ったら本気にされてもうて、雰囲気的にも嘘と言えなかったと」
玄「お恥ずかしながら……」
竜華「それで何とか皆に会わせんで済むように条件付けてってたらお姉ちゃんに頼まれて困り切ってた」
玄「はい……」
竜華「で、運悪く鉢合わせしたけど運良く条件ピッタリな私がたまたま一緒におった……」
竜華「まあ玄ちゃんの助けになったんならええけど」
竜華「これからどうするん?」
玄「これからとは?」
竜華「お姉ちゃん、私と玄ちゃんが付き合ってるって信じとるやん」
竜華「玄ちゃんのことよろしくされてもうたし」
玄「うーむ……」
玄(ダメダメ!余計心配かけるし、お姉ちゃんの中の清水谷さんへの心証も悪くなっちゃう)
玄(このまま押し通すしか……よし、協力してもらおう!)
玄「清水谷さん!お願いがあります!」
竜華「大体予想ついとるけど、どうぞ」
玄「名目上で良いので恋人になって下さい!」ガバッ
竜華「うん、ええよ」
玄「そ、そんなアッサリ……良いんですか?」
竜華「特に断る理由もあらへんし」
玄「でもでも、もし好きな人が居るとかなら……」
竜華「おらんなあ」
竜華「思い返すと青春の殆どを麻雀に捧げてきたようなもんやからな」
竜華「強いて言うなら麻雀に恋してた」ドヤッ
竜華「玄ちゃんがええなら」
玄「……じゃあ、その、よろしくお願いします」
竜華「うん、よろしくなー」
玄(ずっと思ってたけど軽いノリの人だなー……)
竜華「あ、でも付き合うにあたっていくつか」
玄「何ですか?」
玄「あ、それもそうですね」ワタワタ
竜華「あと清水谷さんって無しな?」
竜華「名字呼びはちょっと寂しいわ」
玄「じゃあえっと……竜華さん?」
竜華「呼び捨てでもええよ?」
玄「さすがにハードルが高いです……」
竜華「そう?残念」
玄「それじゃ……しばらくお世話になります竜華さん」
憧「ねえ玄ー、聞きたいんだけどさ」
玄「なに?」
憧「玄の付き合ってる相手って千里山の清水谷竜華?」
玄「え」
玄「ど、どうして?」アセアセ
憧「昨日しずと○○駅のところ歩いてたらさ、玄たちっぽいの見かけたんだよね」
憧「ね、どうなの?」
玄(一応名目上とはいえ恋人だから言っても平気だよね?)
玄「そうだよ」
穏乃「やっぱりあれ玄さんだったんだ……」
憧「それにしても姉妹揃って相手が名門校の部長とは……なかなかのなかなかだよね」
玄「あはは……」
玄「普段って……フレンドリーな人だよ?」
憧「ほらそういうのじゃなくてさ」
憧「2人っきり特有のってあるじゃん」
玄「……え″」
玄(そんなの分からないよ……)
玄(どうしよー竜華さーん……)
続
最近竜華があまりにも可哀想な扱いだから違う方面で対抗する
楽しみにしてるぜー
Entry ⇒ 2012.10.28 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
綾乃「……迷子?」 まり「うに~」
綾乃「今日は忙しくなると思って、折角プリンを奮発したのに」
綾乃「大室さんに、プリンを食べられちゃった……」グスン
綾乃「でも、いつまでもそんなことに悩んでいたら、副会長失格よ」
綾乃「ファイトファイトファイファイビーチよ!」
綾乃「あら……あの子、一人で何をしているのかしら?」
まり「」キョロキョロ
綾乃(もしかしたら、迷子なのかしら? だとしたら、ちゃんとお母さんを探してあげないとね)
まり「?」
綾乃(あら? この子、誰かに似ているような……)
まり「おねえちゃん、だ~れ?」
綾乃「私?」
まり「うん」
綾乃「それで、あなたのお名前は?」
まり「おねーちゃんが知らない人に、お名前言っちゃダメって言ってった」
綾乃「あはは、確かにそのとおりね」
綾乃「でも、私は怪しい人じゃないわよ」ニコ
まり「……」ジリッ
まり「自分で『怪しくない』という人ほど、怪しいって、おねーちゃん言ってったー」ジリッ
綾乃「うっ、それはそうなのだけど……」
綾乃(実際にやられると、ちょっと凹むわ)
まり「……」ジリッ
綾乃(やはり、警察に連絡するべきなのかしら?)
綾乃(でも、ここで待ち合わせをしているだけかもしれないわ)
綾乃(でもでも、もしかして逆に私が変質者として通報されたりしたら)ズーーーン
綾乃「え、ええ……し、心配ないナイナイアガラよっ!!」
まり「……」
綾乃「……」
まり「……」
まり「おねえちゃんは、おねーちゃんを知ってるのー?」
綾乃「へ?」
綾乃(ど、どういうことなのかしら?)
まり「そういえば、おねーちゃんとおそろいの服着てる」
綾乃「……おそろい?」
まり「……」ジー
綾乃(そういえば、この子……)
まり「?」キョトン
綾乃(なんとなくだけど、この子、船見さんに似ているわ)
まり「まり、おねーちゃんのこと、すきー」ニコッ
綾乃「そうなんだ」
まり「うん」
綾乃(ならば、船見さんに聞けば、安心アンコールワットね)
綾乃「えーと、船見さんの番号は……」
京子『あれー、綾乃?』
綾乃「とっとととととし歳納京子が何で船見さんの携帯に出ているのよっ!!」
京子『ああ、結衣はちょっと手を離せないからなー。だから、私が代わりに出ただけだぞ』
綾乃「そ、そうなの?」ホッ
京子『綾乃は結衣に用があるのか?』
綾乃「ええ、ちょっとね。だから、船見さんに代わってもらえないかしら?」
京子『ほ~~い。ちょっち待ってくれー』
綾乃「ううん……こちらこそ突然ごめんなさい」
結衣『いや、それにしても、綾乃が私に電話をくれるなんて珍しいね』クス
綾乃「そうかしら? ……うん、そうかもね」クス
結衣『それで、綾乃は私に何か用があるの?』
綾乃「ええ、実は――」
結衣『うん。綾乃と一緒にいるのは、多分まりちゃんかな』
綾乃「ほっ、よかったわ」
結衣『でも、どうしてそんなところにいるんだろう』
綾乃「そういえば、そうね」
結衣『後で、まりちゃんに電話代わってもらってもいいかな?』
綾乃「ええ、こちらこそお願いするわ! これで心配はノンノンノートルダムね」
結衣『ぶっ、くくく』
綾乃「何かしら、船見さん?」
結衣『疲れている所悪いけど、まりちゃんを私の家まで連れてきてもらっていい?』
綾乃「ええ、それは構わないけど……」
結衣『ありがとう。助かるよ、綾乃』
綾乃「でも、まりちゃんが納得してくれるかどうか心配だわ」
結衣『その点は心配しないで、綾乃。まりちゃんには、私から話をするから』
まり「うん」
結衣『それじゃー、綾乃お姉ちゃんに電話を代わってくれるかな』
まり「はーい」
まり「綾乃おねえちゃん、結衣おねーちゃんが代わってってー」
綾乃「ありがとう、まりちゃん」ニコ
まり「えへへ」ニコ
結衣『ごめんな、綾乃』
綾乃「別に、これくらい何でもないわよ」
結衣『だけど、綾乃は今日登校していたんだろ……』
綾乃「ええ、そうよ。でもね、そういう遠慮はしないで、船見さん」
綾乃「だって、私たち……友達でしょ」ニコッ
綾乃「だから、そんなこと言われると逆に困るわ」
結衣『ははは、そうだ。私たちは友達だよ』
結衣『それじゃー、私の家で待っているから、まりちゃんのことお願いします』
まり「お~」グゥゥゥ
綾乃「あらあら、かわいい音ね」
まり「まり……おなか、すいたもん」グゥゥゥ
綾乃「……そうね、お姉ちゃんも少しだけお腹空いたわ」ニコ
まり「おお~」キラキラ
綾乃「まりちゃんが好きな食べ物ってなぁに?」
まり「うにぃー♪」
まり「うにぃー♪」
綾乃「……」タラァー
まり「う~に~♪ う~に~♪ う~に~♪」
綾乃「まりちゃんは、うにが好きなの?」
まり「うに、大好き~。大きくなったら、うにになる!」
綾乃「え、えーと、た、食べられちゃうわよ」
綾乃「え///」カァー
綾乃(わ、私に食べられたいって……さ、最近の子はませているのね)アタフタ
まり「?」キョトン
綾乃「あ、あそこにコンビニがあるわよ」
まり「おお、コンビニ~」
イラッシャイマセー
まり「う~に~♪ う~に~♪」
綾乃「あのー、まりちゃん……」
まり「うにー?」
綾乃「まりちゃん、言いにくいけど……コンビニにうには売っていないわ」
まり「う、うに~~~ぃ!!」ガーン
綾乃(は、激しく落ち込んでいるわ)アセアセ
綾乃(そ、そういえば――)
生徒会室
櫻子「うにが食べたい!!」
向日葵「はぁ?」
綾乃「お、大室さん?」
千歳「いきなりやわな~」
りせ「…………?」
櫻子「食べたい、食べたい、食べたい」ジタバタ
櫻子「ぶ~、このおっぱい魔人めっ!!」
向日葵「お、おっぱいは関係ないですわ!」ポヨーンポヨーン
りせ「…………」ズーン
綾乃「……はぁ」ズーン
千歳「綾乃ちゃんは、まだまだ成長途中やから大丈夫やで~」
綾乃「……ありがとう、千歳」
櫻子「……なんでだろう?」
向日葵「相変わらず思いつきで行動しますわね」ハァ
千歳「そや、プリンに醤油をかけると、うにみたいな味になるらしいやで~」
綾乃「へぇー、そうなの?」
りせ「……」コクコク
千歳「そうやで~、安物のうにの味にしかならないやけどな~」
綾乃「ふ~ん」
櫻子「あ、そういえば、冷蔵庫の中にプリンがあったような……」キラーン
綾乃「!?」ビクッ
~~~~回想終了~~~~
まり「お、おねえちゃん、大丈夫?」
綾乃「ええ、大丈夫よ。ちょっと残念なことを思い出しただけよ」
綾乃(まりちゃんを元気付けようと思ったのに慰められるなんて、本末転倒よ!)
綾乃(私がお姉さんなんだから、しっかりしないとね)
まり「……」
綾乃「……」
まり「……」
綾乃(す、凄く考え込んでいるわ!?)
まり「……」
綾乃(そんなに、うにが好きなのかしら)
綾乃(やっぱり、アレを試してみるしかないのかしら? でも、その前に)
まり「かわいた~」
綾乃「うん。まずはお姉ちゃんと一緒にジュースを買いましょう」ニコ
まり「お~~」
綾乃「まりちゃんはどのジュースがいいの?」
まり「うーんとね……ぴっちょんグレープがいい~」
綾乃「ぴっちょんグレープね」
まり「うん。おねえちゃんは何飲むのー?」
綾乃「私? 私はねぇ……レモンティーかしら」
まり「おお」
まり「いいの?」キラキラ
綾乃「ええ、いいわよ」
まり「わ~~い」
綾乃「ふふふ、やっぱりこういう所は年相応よね。さてと、その隙に」コソコソ
綾乃「えーと、プリンは普通のでいいのよね?」
綾乃「醤油は確か……こっちに有ったような……。あ、有ったわ」
綾乃「それじゃー、レジに行きましょうか」ニコ
まり「うん」
アリガトゴザイマシタ
綾乃「流石に歩きながら食べるのはお行儀が悪いわ」
綾乃「何処か座れる場所はないかしら」
まり「さっきの公園でたべる~」
綾乃「そうね。あそこなら、ベンチもあるし……それじゃー、行きましょうか」
まり「お~~」
綾乃「はい、これがまりちゃんの分ね」
まり「わ~い」
綾乃(これは……出すべきなのかしら?)
まり「おねえちゃんはプリン好きなの?」
綾乃「ええ♪」ニッコリ
まり「……」ジー
綾乃「まりちゃん?」
綾乃「え!?」
まり「プリンが二つもあるー」ブー
綾乃「あ、あの、これはね……」アセアセ
綾乃(か、顔を膨らませているわ。ど、どうしよう東照宮!!)
綾乃(こ、これは、本当のことを言うべきなのかしら? で、でも……)
まり「……」ジー
綾乃「う、うぅ……」
綾乃(こ、これは、もう覚悟を決めるしかないのかしら……)
綾乃「え、えーと、このプリンはね……こうするのよっ!!」
まり「!?」
綾乃「はぁ、はぁ、はぁ」ゼェゼェ
まり「お、おねえちゃん?」
綾乃「……はい」
まり「……まり、に?」
綾乃「ええ、私はまりちゃんに食べてもらいたい」コクン
まり「うう……」
綾乃「わ、私を、信じて……」
まり「……」コクン
まり「……」オソルオソル
綾乃「……」ドキドキ
まり「………………う、ウニィ?」
綾乃「い、一応……ね」
まり「……」
綾乃「お、おいしく……ないわよね」ドヨーン
まり「………うん」コクン
まり(……人生って、しょっぱいことばかりだね)
綾乃(ちょっと前に戻ることができたのなら、私を殴ってでも止めたいわ)ズーン
まり(あ、おねえちゃんが落ち込んじゃった!?)
まり(おねえちゃんはきっとまりのためにしてくれた)
まり(だったら、ちゃんとお礼しないといけないもん)
綾乃「!?」
綾乃(こんな小さい子にまた励まされるなんて……私は何をやっているのよ!)
綾乃「いいえ、こちらこそ……ありがとう」ニコッ
まり「う、うんっ///」
まり「うんっ」
まり「あ、でも、これはどうするの?」
綾乃「……お、お姉ちゃんが責任を以って食べるわ」
まり「ま、まりもいっしょに食べるもん」
綾乃「まりちゃん……」ジーン
綾乃「それじゃー、半分っこにしましょう」ニコ
まり「うに~!」
結衣の家
結衣「ありがとう、綾乃。色々と助かったよ」
綾乃「どういたしまして」
京子「まりちゃん、綾乃に何かされなかった~」
綾乃「な、何もしてないわよっ!」
京子「あれ? あれあれ」ニヤニヤ
綾乃「な、ななな何よ、歳納京子!!」
京子「別に~」ニヤニヤ
結衣「おい、こら!」ペシッ
京子「ぶ~、何するんだよ~」
京子「へ~い」
結衣「悪いな、綾乃」
綾乃「別に歳納京子のことだから、気にしていないわよ!」
結衣「まぁ、確かにな」クスクス
綾乃「時間が時間だし、そろそろ帰るわ」
結衣「そっか、今日は助かったよ」
京子「綾乃~、また明日学校でな~」
綾乃「歳納京子、ちゃんとプリントを提出しなさいよ!」
京子「ほ~い」
まり「うんっ」トテトテ
まり「おねえちゃん、今日はありがと~」ニコ
綾乃「ううん。こちらこそ、ありがとう」ニコ
まり「えへへ///」
綾乃「ふふふ///」
京子(うん、綾乃って面倒見がいいからな)ヒソヒソ
結衣(だからか……まりちゃんが綾乃にあそこまで懐いたのは)ヒソヒソ
京子(うーん、それだけじゃないような気がするけど……)ヒソヒソ
まり「綾乃おねえちゃん、またね~」バイバイ
綾乃「まりちゃん、また今度ね」バイバイ
おしまい
まりちゃんの言葉遣いが難しかったけど、後悔はしていない。
もっと、綾まりが流行りますように。
というか、もっと綾乃と年少組のSSが増えるといいなー。
微笑ましくて口元が緩みっぱなし
ほのぼのしてて良かった
Entry ⇒ 2012.10.28 | Category ⇒ ゆるゆりSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
響「自分がプロデューサー? 完璧にこなしてみせるさー!」
美希「ふぅーん、頑張ってね」
響「美希も一緒に頑張るさー!」
美希「ミキ、疲れるの、や」
響「でも頑張らないとアイドルやっていけないさー……」
美希「あ、じゃあミキの代わりに頑張って?」
響「よし、自分に任せろってなんでさー!」
美希「むぅ、さっきから声大きいの。
事務所ではもうちょっと静かにした方がいいって思うな」
響「ご、ごめん……とにかく、一緒に頑張るさー」
美希「はいはい、頑張る頑張る」
美希「ねえ、まだ自己紹介してもらってないよ?」
響「あ、すっかり忘れてたぞ。じゃあ改めて、自分、我那覇響! うちなーからアイドルになる為に上京してきたぞ!」
美希「アイドルなの?」
響「アイドルのはずだったんだけど、なんでかプロデューサーやってるさー……」
美希「ね、この子は?」
響「慰めの言葉も何もなかったぞ。ええと、こっちはハム蔵! 自分の大切な家族だ!他にも、家にはイヌ美やネコ吉、沢山いるぞ」
美希「ふぅん、よろしくね、ハム蔵」
ハム蔵「ぢゅい!」
響「自分にはよろしく言わないのか?」
美希「あーうん、よろしくなの……あふぅ」
響「ついで扱いされてる気がするぞ……」
ハム蔵「ぢゅい!」
響「そうだな、電話! もしもし、美希かー!?」
美希「ん、ん~……声大きいの、普通に喋れば聞こえるよ」
響「美希、今どこにいるんだ!? 今日はレッスンだって言ったはずだぞ!」
美希「……何言ってるの? ミキ、今日の予定何も伝えられてないの。だからゆっくりお昼寝してたのに」
響「うぇえ!? だって一昨日、ちゃんとメールで……!」
美希「ちょっと待ってね……うん、やっぱりメールも電話も来てないの。そっちのミスだって思うな」
響「うぎゃー! ご、ごめんね美希! とにかく今日はレッスンだから、今から急いで行ってほしいんだ!」
美希「もう、だから声大きいってば。分かったの、じゃあ一応行くけど、間に合わなくても怒らないでね?」
響「うん、出来るだけ急いで!」
美希「ふんふふ~ん♪ あ、やば」
響「あ、美希! 今日はごめんな……自分のせいで美希のレッスン、一回無駄になっちゃったぞ」
美希「そ、そんなにしょんぼりしなくてもいいって思うな。誰にでもミスはあるってガッコの先生も言ってたの」
響「うう、美希は優しいなあ」
美希「元気出して、ね? ほら、イチゴババロア一口食べていいよ」
響「あむ……美味しいぞ」
美希「元気、出た?」
響「うん! もう今日みたいな失敗はしないぞ! 自分、もっともっと頑張るからね!」
美希「ミキ的には、あんまり頑張らなくてもいいよ?」
響「頑張るの! 一緒に!」
美希「あふぅ」
響「うが~~!!」
響「他人事みたいに言わないでよ、美希のオーディションだったんだぞ……」
美希「知ってるよ?」
響「うう、ごめん……自分の指示がまずかったのかなぁ」
美希「へこみすぎなの」
響「美希の初陣だぞ? 合格させてあげたかったんだ」
美希「ダメな時はダメだよ」
響「美希、もっとレッスン頑張ろうな。自分も、もっと色んなオーディション探して来るから。仕事も取ってくるから」
美希「……うん」
響「もっと腕は遠くに伸ばすんだ、こう、こう!」
美希「こうだね」
響「いい感じだぞ! で、ここでくるっとターンさー」
美希「ここはミキ、得意だよ。ほらっ」
響「うんうん、そこでジャンプ!」
美希「よっ」
響「上手いぞ! この調子なら通しもすぐ出来そうさー!」
美希「案外ダンス、上手いんだね。小っちゃいから苦手かなって思ったけど」
響「自分、小っちゃくないぞー! それにダンスは得意分野さー、一応今もアイドルは目指してるんだし」
美希「そう言えばそんなこと言ってたね。なんでアイドルやらないの?」
響「……なんでだろうなー、気づいたら社長に乗せられてたさー」
美希「な、なんかごめんなさいなの」
響「いいさー……気にしてないさー……今は美希のプロデューサーさー……」
美希「ほら、ダンスレッスンの続きしよ?
」
響「美希、ダンスだけじゃなくて歌も上手いね」
美希「そう? 簡単だよ?」
響「ま、まあ自分もそれぐらい出来るけどね! なんたって自分、完璧だからな!」
美希「あはっ、じゃあ一緒に歌おうよ」
響「今、今か!? 自分、完璧だけど準備は必要で」
美希「いいからいいから、ちょっと合わせてみるの! せーの、~♪」
響「……~♪」
美希「音、外れてるの」
響「今のはわざとさー! もう一回いくよ! ~♪」
美希「……ふふっ」
響「美希も歌うさー! ~♪」
美希「~♪」
響「可愛いぞ、次は悲しそう!」
美希「どう?」
響「バッチリだぞ、嬉しそうは?」
美希「あはっ」
響「美希はすごいなー、感情表現も自分と同じ位完璧だぞ」
美希「ね、そろそろご飯だよね? レッスン切り上げてお外行こ!」
響「駄目だよ、ちゃんと時間いっぱいはレッスン! ほら、困り顔」
美希「むぅ」
響「それは怒った顔だぞ」
美希「ミキ、怒ってるの!」
響(行ける、良い感じだぞ美希! そう、そこで……よし、きれいなジャンプ!)
美希「~♪」
響(ダンスに集中し過ぎて歌が、うがー! 頑張れ美希ー!)
美希「~♪ っ」
響「あ!?」
美希「ったぁ……ぁ、~♪」
響(……転んじゃった)
美希「~♪」
響(頑張れ、頑張れ……!)
美希「~♪……」
響「……だから、他人事みたいに言うの、やめてよ」
美希「他人事じゃないよ、ミキ、結構気合入れたつもりなの」
響「でも、転んじゃったな」
美希「うん……」
響「……ごめんね」
美希「? どうして謝るの?」
響「自分がもっと上手く教えられてれば、きっと」
美希「前にも言ったの。ダメな時はダメだよ」
響「ダメな時がないようにするのがプロデューサーの仕事さー、自分、もっと頑張るからね」
美希「……ミキも、頑張るね」
響「!? み、美希! 今、なんて? 頑張るって言った!?」
美希「うわ、びっくりした……うん、ミキ、頑張ってみる」
響「そっか……そっかあ! よーし、二人一緒に頑張れば、なんくるないさー!」
美希「何それ? ふふ、変なの」
響「……こう?」
美希「下手っぴだね、こうなの」
響「うぎゃー! 美希に下手っぴって言われたさー!」
美希「響、早く覚えないとミキ、置いてっちゃうよ?」
響「すぐに追いつくさー! ……ん? 今名前で呼んだ?」
美希「呼んだの」
響「初めて名前で呼んでくれたさー! 自分、いつまで経っても名前呼ばれないから嫌われてるのかもって、ずっと……!」
美希「はいはい、響響。で、ミキのダンスどう? カンペキ?」
響「完璧だぞ! ……じぶんには負けるけど!」
美希「響の方が下手っぴだよ?」
響「もー! 意地ぐらい張らせてよね!!」
美希「響って、時々めんどくさいの」
響「くさくないさー!」
響「すごかったぞ! 審査員の人もびっくりしてたさー!」
美希「ラクショーってやつだね」
響「勝手にレッスン切り上げて昼寝ばっかりしてたから心配だったけど、合格して良かったさー」
美希「ミキ、スプリンクラーだもん。瞬発力には自信あるの」
響「? スプリンターのことか?」
美希「スプリンクラーだよ? 100m走する人のことなの」
響「それ、スプリンターだぞ。あと距離は100mじゃなくても短かったらスプリンターさー」
美希「ふぅん。どっちでもいいや、ミキ、頑張ったから眠いの……あふぅ」
響「帰りの電車でゆっくり寝るさー、駅に着いたら起こすから」
美希「うん、おねがいー……」
響「あはは、もう電池切れかけさー」
響「そう! これでお仕事いっぱいさー!」
美希「へー、おめでと響」
響「美希のランクアップさー、美希が喜ばないで誰が喜ぶの!」
美希「ミキ、あんまりそういうの分かんないから響Pに任せるね、あふぅ……おやすみ」
響「起きろー! もうお仕事の依頼来てるんだぞー!」
美希「ん、響Pはカンペキなのー……それぐらい捌けるはずなの……」
響「まあ自分は完璧だからこれくらい余裕だけど、ってそうじゃないだろー!さっさとミーティングするさー!」
美希「響。響はランクアップしたの?」
響「じ、自分はプロデューサー業が忙しいから、その、うう、まだFランク」
美希「やっと静かになったの、おやすみ~」
響「起きるさー!」
美希「んー……もしもし、響。ミキ、ダンスカンペキだから、大丈夫なの」
響「ちょ、大丈夫じゃないさー! 美希のダンスは確かにすごいけど、それを維持するのも同じくらい大事なんだよ!?」
美希「あふぅ。でも、今から行っても間に合わないよ?」
響「それはそうだけど……うう、もう絶対こんなのダメだからね? 何があっても連絡はするさー」
美希「うんうん、分かった分かったなの。後のことはよろしくね、敏腕プロデューサー」
響「え、えへへ、褒めても何も出ないぞー?」
美希「じゃあおやすみなさいなのー」
響「あ……切れちゃったぞ」
春香「美希? 何の電話だったの?」
美希「何でもないの、響からギョームレンラク」
春香「ふぅん、やっぱりランク高くなるとお休みでも頻繁に連絡来るんだね。響Pも大変だ」
美希「今はミキのお腹の方が大変なの、早くケーキご馳走して?」
春香「あはは、はいはい。もうちょっとで焼き上がるからねー」
社長「おお、我那覇君! どうかね、調子は?」
響「あ、あはは……自分はプロデューサー兼任だからFランクも仕方ないって思ってるけど、美希の方がちょっと」
社長「ふむ? 少し詳しく聞かせてもらおうか」
響「実はかくかくしかじかさー……」
社長「ううむ、それは非常にまずいな。私の経験上、その内大きな失敗に繫がりそうだ」
響「うぎゃー! それは駄目だぞー! 美希は、美希はこんなとこでつまづいてる暇はないさー!」
社長「そこで私に考えがある。ごにょごにょというのはどうだろう」
響「おー、社長冴えてるさー! 自分も、美希の仕事に穴空ける前になんとかしたいと思ってたところだぞ!」
社長「うむ、力になれたようで何よりだよ。では頑張ってくれたまえ」
響「うん! 社長、にふぇーでーびるー!」
社長「うむ、元気良く飛び出して行ったな。自信に溢れ自分は完璧と言っていた我那覇君が、星井君はこんなところで、か。よきかな、よきかな」
美希「あ、え? でも、それってまだ先の……」
響「ちゃんとメールも打ったし電話でも話してたぞ!? 一体何を聞いてたんだ!!」
美希「ちょ、ちょっと、待ってね、ミキ、確認」
響「確認しながら走るさー! 下手するとCD中止もあり得るんだぞ!?」
美希「あ、ご、ごめんなさ」
響「自分に謝っても仕方ないさー!! 地図とかまとめて今メールしたから、早く来てスタッフさんに謝るさー!!」
美希「う、うん……ぁ、切れた。どう、どうしよう、急がなきゃ!」
響「遅いさー!! レッスンサボるだけじゃなくレコーディングまでサボる気だったのか!? 早くこっち来るさー!!」
美希「ごめ、ごめんなさい、ミキ、あの、あのね、ミキ……ぇ?」
社長「うむ」
美希「社長、え? ひび、き?」
社長「喝!!」
美希「きゃあ!?」
響「美希、姿勢を正して社長の有難いお言葉をしっかり聞くさー」
美希「う、うん……」
社長「星井君、最近仕事も増えて順風満帆だそうじゃないか」
美希「は、はいなの!」
社長「うむ、大変結構。これからも、頑張ってくれたまえ。私からは以上だ」
美希「……え、え? 終わりなの?」
社長「私からは以上だ。我那覇君、何かあるかね?」
響「じゃ、自分からも少しだけ」
美希「ごめんなさいなの、もうしませんなの……」
響「よし、もういいよ……ん? 3時間も正座して疲れたんだね。自分がマッサージしてあげるさー」
美希「ご、ごめんなさいなのー!反省してるのー!!」
響「遠慮しなくても体にじっくり教え込むさー!」
美希「ひゃうん!? だめ、足触っちゃダメなのー!?」
響「逃がさないさー!」
社長「うむ、仲良きことは、美しきかな」
美希「社長助けてなのー!」
響「観念するさー!!」
美希「やったの! これでミキ、もっとキラキラ出来るよね」
響「ランクアップしたのは美希じゃなくて自分さー! 横取りはダメさー!」
美希「ふぅん、おめでと響」
響「祝い方が雑!」
美希「ね、響。ミキね、早く次のランクに
上がって、もっとキラキラしたいの。出来る?」
響「美希……うん、自分に任せれば万事完璧さー!」
美希「ありがと、響! あ、でも……」
響「? 騒いだり静かになったり忙しいね」
美希「響が言うななの。響もまだまだ下の方だけど、ランクアップしたってことは響も仕事が増えるの? ミキ、邪魔になってる?」
響「し、下の方って……まあいいや。確かに自分の仕事も増えるけど、プロデュースなんて一人も二人も同じさー」
美希「? 響、ミキの他にもプロデュースしてるの?」
響「自分はセルフプロデュースさー。とにかく美希は何も心配しなくていいよ、なんたって自分は」
美希「カンペキだからな! なの!」
響「だから横取りはダメさー!」
響(安心して見られるさー)
美希「~♪」
響(歌、一緒に頑張ったもんね)
美希「~♪」
響(元々上手かったダンスもふらつきが更に減ったし、もう自分より上って認めなきゃかもね)
美希「~♪」
響(合間合間の表情や仕草、女の自分から見ても凄く魅力的さー……)
美希「~♪」
響(……)
美希「~♪」
響(……自分、何してるんだろう)
美希「~♪」
響「すごかったさー、生放送なのにいつも以上の力を出せてたぞ!」
美希「あはっ、ミキはまだまだこんなところじゃ止まらないの!」
響「そう、だね。あはは」
美希「そろそろBランクも見えてきたよね、ね? 響!」
響「あ、うん! なんたって自分がプロデュースしてるからな!」
美希「我那覇響プロデューサー様々なの!」
響「あは、ははは」
響「いてて、もう一回!」
響「はっ、はっ、ここ、っ!」
響「うう、美希みたいにはいかないぞ……」
響「当たり前だよね、美希は自分より練習してたもん。そんなにすぐには追いつけないぞ」
響「……美希はもう、Bランク。自分はまだ、EランクとFランクの間ぐらい」
響「……」
響「っ、俯いてる暇なんかないさー! すぐに追いついて、いや追い越してやるさー!」
響「美希ー! トップアイドル目指してるのは美希だけじゃないさー!」
響「うがーー!!」
響「美希、おめでとう! Bランクって言ったらもうトップアイドルの端くれさー!」
美希「これも響Pのおかげなの。あの時ちゃんとミキのこと叱ってくれたの、ミキ、とっても嬉しかったよ?」
響「っ、美希は大事なアイドルだもん、プロデューサーとして当然さー。それにしても美希の失敗で怒られるのも勘弁してほしかったさー!」
美希「あはっ、ごめんね響。でも、本当にありがとうなの。ミキ、響がいなかったらきっと今のミキになれなかったの」
響「……美希の、実力、だよ」
美希「ううん、響のおかげなの! 響がいっぱいいっぱい頑張ってくれたからミキ、こんなに……響?」
響「ん、ん? 何?」
美希「嬉しくて泣きそう、じゃないよね? 辛そうなの。ごめんね? ミキ、何かしちゃった?」
響「……ごめん、自分、嫌な奴だ」
美希「あ、響!? どこ行、ちょっと待ってなのー!」
響「……違う、自分、い、嫌な、奴だ。美希のこと、プロ、プロデュースなんか、しなきゃ、良かっ、うぐ、ひっ、ぐす、良かったって」
美希「……響」
響「美希、美希が頑張ってたの、知ってるのに、美希、ばっかりって、ズルいって、こんなの、自分、なんで、こんなぁ!」
美希「響、風邪引くよ? ミキのコートだけど、貸したげる」
響「んぐ、うあぁ……ひっぐ、けほっけほ、うぅ」
美希「ね、響。もっと聞かせて? ミキのこと、どんな風に見えてた?」
響「……最初は、全然大したことない奴だって、思ってて、全然頑張らない奴だから、自分の方が上だって」
美希「うん」
響「でも、美希、ちょっと練習しただけで、どんどん上手になって、失敗する度に伸びて、その内失敗なしで、上手くなって」
美希「うん、そうだね」
響「ランクもどんどん上がって、その辺のアイドルの中じゃ、一番星で、美希、美希が、どんどん遠くに、自分、自分ももっと」
美希「そっか」
美希「いいんだよ、響。ミキ、響がそんな風に思ってたなんて知らなかったの。でもね、嬉しいの」
響「え……?」
美希「今のミキ、響が認めてくれるくらいキラキラしてるんだよね。ねえ知ってた?
ミキ、響のこと、お日様って思ってるんだよ」
響「……?」
美希「小っちゃい体で沖縄から飛び出して、いっぱいの家族を養って、プロデューサーもアイドルもやって、ミキのことをいっぱいいーっぱい照らしてくれて」
響「そんなの……」
美希「大したことあるよ。響に出来ないこと、ミキは出来るかもしれないよ? でもミキに出来ないこと、響も沢山出来てるの」
響「……う、ぐす」
美希「響、響の周りにいる人ってみんな笑ってるんだよ。ううん、人だけじゃない、みんな。それって、ミキには出来ないの」
響「う、あぁ、ひっく、すん」
美希「でも、しんどいなら、いいんだよ。ミキのプロデューサーお休みしても、誰かに手伝ってって言っても、一人で背追い込まなくても。最初に響が言ったんだよ?」
響「っ、うん……ひぐ、うん……!
美希「一緒に、頑張るさー」
美希「ミキ、デビルじゃなくてエンジェルだよ?」
響「あはは! 自分でそんなこと言えるのはデビルさー!」
美希「あはっ、そうかも。じゃあそろそろ事務所、戻ろっか」
響「そうだな、すっかり体も冷えたさー……ねえ、美希」
美希「あふぅ……んー?」
響「自分、続けるよ。美希のプロデューサーも、アイドルも」
美希「ん、そっか」
響「しんどくなった時には美希にも手伝ってもらうから、覚悟してよね!」
美希「むぅ、もしかしたら失言だったかも知れないの……」
響「言質はばっちり取ったさー! とりあえず事務仕事から覚えてもらうさー」
美希「ミキ的には、お茶汲み方面で頑張りたいって思うな」
響「? お茶汲みも事務仕事も両方やるに決まってるさー」
美希「もしかしなくても失言だったの……」
響「ほっ!」
美希「ばっちりなの。やっぱり響、スジ良いね。練習した分目に見えて上手くなってるよ」
響「Bランクアイドル様のお墨付きなら安心さー」
美希「響は歌とダンスでいっぱいいっぱいになってることが多いから、いつもカメラがあるって意識した方がいいの」
響「……Bランクアイドル様の的確な指導、痛み入るさー」
美希「あとダンスも上半身の動きが大き過ぎるの。メリハリつけるためにももっと」
響「ぐぬぬ、絶対追い越してやるさー……!」
美希「最近調子良いね、あっという間にCランクまで登り詰めるなんて。おめでとう響」
響「これまでは練習量がネックだったけど、美希の手伝いで時間が空くようになったからね。ちょっと自主練習すればらこんなもんさー」
美希「ミキのお手伝いが役に立ってるようで何よりなの。次はBランクだけど、すぐに来る?」
響「勿論この勢いのまま一気に! ……って言いたいけど、一回この辺で基礎から確認しようと思ってるんだ」
美希「へえ、響ならそのまま行くって言いそうなのにね」
響「プロデューサー経験も伊達じゃないってことさー。目の前のことばっかりになって、トップアイドルが遠のかないようにしなきゃね」
美希「ふぅん、でもあんまりのんびりしてると、響がBに上がってもミキいないかもよ?」
響「うう、そういえば美希ももうAランク目前……ふ、ふん! すぐに追いつくさー、自分の完璧なプランに狂いはないさー!」
社長「お、やってるね。我那覇君、ランクアップおめでとう!」
響「社長! 自分、プロデューサーもアイドルもきっちりこなしてるぞ! このまま美希と765の二本柱になるかもね!」
社長「うむ、頼もしい限りだ。それはそうと星井君、そろそろラジオ収録の時間じゃないかね?」
美希「あ、ほんとなの。行って来まーすなのー」
社長「……さて、我那覇君。今日は少し話をしに来たんだ」
社長「うむ、本当はもう少し前からこの話はしようと思っていたんだが機会がなくてね。結局きょうまで伸ばしてしまっていた」
響「絶対、どっちか選ばなきゃなの?」
社長「両方きっちりこなせるのはこの辺が限界、いや、もう容量をオーバーしているんじゃないかと思うんだ」
響「……まぁ、正直ちょっと一人じゃ捌き切れない量にはなってるぞ。でも、その分美希やピヨ子に手伝ってもらってる」
社長「実は今度、正式なプロデューサーを雇おうと考えていてね。音無君にはその教育等に回ってもらう予定だ」
響「ってことは、もう自分はプロデューサーしなくていいのか!?」
社長「ん? 予想していたより随分嬉しそうな反応だね」
響「そりゃそうさー、そもそもセルフプロデュースなんてのは売れてて余裕のある人の……はっ、自分結構売れてるぞ!」
社長「そうだね。そして、星井君のプロデューサーを降りればその分余裕は出来るだろう。なので選択肢は実質三つ」
響「……」
社長「一つ、今後の業務をアイドル一本に絞る。二つ、星井君を新人君に任せ、セルフプロデュースする。三つ、星井君のプロデュースを君が、君自身のプロデュースを新人君に任せる」
響「……うん」
社長「星井君を新人君に任せてセルフプロデュースするならば、全てを自分のペースで行える利点がある。多くの仕事を受けるも良し、少ない仕事で質を上げるも良し」
響「……うん」
社長「そして、三つ目。これは私の経験上からなのだが……一度始めたプロデュースは最後までやり遂げたくなる、違うかね?」
響「その通りだと思う。自分、頑張ってプロデュースしてきたのに、簡単にぽっと出の他人に任せたくない」
社長「うむ。しかし君には、君と星井君の両方をプロデュースする余裕はない。どちらかを選ぶなら……」
響「……美希だぞ。これまで自分の下手なプロデュースについてきてくれたんだから、最後はちゃんと責任を持って一花を咲かさせてあげたい」
社長「私が同じ立場なら、同じ意見を述べるだろう……ふぅ、少し長くなってしまったね。答えは一週間以内ならいつでもいい、ゆっくり考えてくれたまえ」
響「う、ん……」
美希「響も春香のクッキーほしいの?」
響「う、うん、ありがと。ところで」
美希「うん」
響「自分がプロデューサー業辞めるって言ったら、どうする? あ、いや! 変な意味じゃなくて! 例えばの話だけど!」
美希「んー、ミキ、きっとびっくりするって思うな」
響「うん、そうだよなって違うさー! そういうことじゃないさー!」
美希「そんなの言われてみないと分からないの。例えばの話なんでしょ?」
響「ま、まあそうなんだけど……あ、レッスンの時間!? 行ってきまーす!」
美希「行ってらっしゃい、なんだか今日の響は慌ただしかったの……なんてね、嘘が下手っぴだよ、響」
美希(そりゃ、ミキは響のプロデュースで二人並んでトップに立ちたいっていうのが本音だけど)
美希(響は優しすぎるの。そんなことミキが言ったら、きっとボロボロになるまで頑張っちゃうの。それじゃ二人でキラキラ出来ないの)
美希(響が自分で考えてそうしたいって言ってくれたなら嬉しいし、二人で、なんて言えないけど)
美希(ミキの勝手な一言で響の大事な気持ちとかをどうこうするのは、ヤ。ミキはまだ響のアイドルだもん、響がP辞めるまでは、決断は響の仕事なの)
美希「……クッキー、あんまり味しないの」
P「はい、よろしくおねがいします」
響「自分、我那覇響さー。アイドルの副業にプロデュースやってるだけだから、そんなに畏まらなくてもいいぞ」
P「そう、ですか? でも、いきなりタメ口は」
響「先輩命令さー、年下にはきちんと相応の態度で接しなさい!」
P「あ、はい! 分かりまし、分か、った! よろしくお願、よろしく、響!」
響「ん、まだ固いけどそんなとこだね。よろしくさー。じゃ、ピヨ子のとこ行って色々習うといいさー」
P「うん、分かった」
響(順応性そこそこ、ルックスPヘッド、手際は……結構良いみたいだな、中々優秀そうだぞ)
響(きっとあの新人君も自分みたいな連絡ミスをして、アイドルとすれ違って、そうやって成長していくんだろうな)
響(オーディションに負けて、反省して、レッスンして、アイドルとミーティングを重ねて……)
響(アイドルとプロデューサー、二人で並んでトップアイドルを目指して……)
響「……ま、最初から答えは決まってたようなもんさー。社長ー!」
響「アイドルの我那覇響はトップアイドル一直線にしろーって言うんだけどね。自分はアイドルよりもプロデューサー歴の方が長いから」
社長「我那覇君、しっかりと考えて選んだ道に反省はあっても後悔はないのだよ」
響「まくとぅそーけーなんくるないさー。そんなの、うちなーじゃ赤ん坊だって知ってるよ」
社長「はっはっは、これは釈迦に説法だったね。では、アイドルの女の子に伝えてきたまえ」
響「美希、すごく怒るかも知れないからその時は社長も美希を止めてよね」
社長「星井君は君が思っているよりも、しっかりと考えているよ。心配はいらない」
響「分かってても保険は欲しいさー」
社長「はっはっは、ごもっともだ。うむ、もしもの時は私と音無君でなんとかしよう」
響「うん、分かってくれたみたいで良かったさー……美希?」
美希「全っ然分かんないの!! ミキだってセルフプロデュース出来るもん! なのに社長と響の二人だけで内緒話して!」
響「み、美希ー? 文句はないんじゃな」
美希「文句じゃないの! ただの独り言の愚痴なの! 響は黙ってて!!」
響「は、はい……」
美希「ミキのプロデュース続けてくれるのはとっても嬉しいの。でも響が犠牲になることないの! こんなのってないの!」
P「犠牲って……まぁそうだけど」
美希「なの! トップアイドル目前で新人プロデュースなんてまたFランク転落コースなの!」
響「いや、そこは自分がフォローするし」
美希「新人なんて失敗する時は失敗するの! 響も初めは連絡ミスしたでしょ!? 大きなオーディションでそんなのやらかしたら目も当てられないの!!」
響「うぎゃー! せっかく先輩風吹かせてるのに威厳がー!」
プロデュースすればいいの!」
響「いや、そこはPの教育も兼ねて自分が」
美希「そんなのミキたちがトップアイドルになるまで後回しで良いの! 響はさっきからPの肩持ちすぎなの! なんなのなの! なんなのなの!」
社長「あー、星井君。少し落ち着いて」
美希「ミキは落ち着いてるの! 社長も響にだけ内緒話するなんておかしいの! アイドルとプロデューサーは二人三脚なの! なんで話にミキも混ぜなかったの!!」
社長「いや、あの時はラジオの収録が」
美希「ならあの時に無理に話す必要なかったはずなの! 見苦しい言い訳はやめるの! それともまだシラを切るつもりなの!?」
社長「ごめんなさい」
響「しゃ、社長……」
美希「もういいの! 響なんて放っておいて勝手にミキはトップアイドルになるから! Aランクも飛び越えたSランクアイドルになって、響が追いつけないのを笑ってやるの!!」
響「ピ、ピヨ子……いない! 誰か美希を止めるさー!」
美希「誰のせいでこうなったと思ってるの! 響はそこに三時間正座! ついでにあの時のクツジョクも晴らすの!!」
響「うぎゃー!」
響「あの、美希さん、足には」
美希「触るに決まってるの!」
響「うぎゃー! P、先輩を助けるさー!」
P「音無さーん、書類のフォルダ分けのことなんですけどー」
響「危うきに近寄らない優秀さが恨めしいさー!」
美希「ほらほら響、ミキを仲間はずれにした罰を受けるの!」
響「今触るのはー! うぎゃー!」
社長「仲良きことは、美しきかな」
響「ボケるには早いさー!!」
響「ん? 美希、もしかして緊張してるの?」
美希「ねえ、響。ミキ、こんなにドキドキするオーディション、初めてだよ」
響「なんくるないさー。ただの武者震いだよ」
美希「で、でもこんなの初めてで」
響「自分とミキ、これまで色んなことを一緒に乗り越えてきたよね。全部が美希を支えてくれるさー」
美希「……あはっ、響の声聞いてたら緊張感がなくなっちゃいそうなの」
響「ただでさえないのに、それは困るぞ。全部なくならない内に行ってくるさー。美希なら絶対、勝てるよ」
美希「……うん、行ってくるね!」
響「……美希、いつのまにか頼もしい背中になってたんだな」
美希「1番、星井美希なの! 絶対、合格してみせるからね!」
美希「ま、このぐらい当然なの!」
響「ま、自分は完璧なプロデューサーだからな!」
美希「たかが二人分のプロデュースでヒィヒィ言ってたのに完璧はないって思うな」
響「それはそれ、これはこれさー! 自分は、美希をプロデュースすることにかけては世界一完璧さー!」
美希「本当にそう思う?」
響「当たり前さー! 自分と張り合えるような天才、そこらにはいないさー!」
美希「ここいるよ?」
響「え」
美希「ここにいるの」
響「え」
美希「ただプロデュースされてるだけだったと思う? 一緒に頑張るって決めた日から、本格的なプロデュースの勉強してたんだよ」
響「……」
美希「ミキ的には、響と同じくらいのクオリティでミキをプロデュース出来るって思うな」
美希「響はお役ごめんなさいなの、レッスンに力入れるなりテレビにいっぱい出るなりすればいいの」
響「美希」
美希「響、早くここまで登っておいで。一番星に笑われるお日様なんてかっこ悪いよ?」
響「ぐす……えへへ、美希! 自分、すぐにトップアイドルになるからね! Pもそろそろ一人で大丈夫そうだし、もう何も遠慮しないさー」
美希「うん」
響「手加減なしの本気の本気、完璧なアイドルがどういうものか教えたげる! 今日これから始まる、我那覇響の伝説さー!!」
「ごめんごめん、色々あってちょっとだけ遅れたさー」
「初めて失敗した時とは逆だね」
「あの時のことは忘れて欲しいぞ……」
「いいよ、今日ここで全力を見せてくれたら許してあげる」
「いいのか? 自分、完璧だから勝ち目ないぞ?」
「こっちも全力で行くの、全力以外じゃ相手にならないって思うな」
「ふふん、絶対に渡さないぞ!」
「あはっ、絶対に渡すわけないの!」
「「トップアイドルの頂点、Sランク!!」」
おわり
大体>>4のせい
おわり
ひびみきもいいね
Entry ⇒ 2012.10.28 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
菫「照が挟まっ照」
照「」ガチャ
照「……」キョロキョロ
照「誰もいない」
照「……」
壁壁 ↓
壁 照←
壁壁 ササッ
壁壁
壁照=3 ギュム
壁壁
照「……」
照「いい……」
菫「ん、誰もいないか」
菫「よっこらせと」
?「………………すみれー……」
菫「ひいっ!? おばけぇ!?」
?「こっち……」
菫「て、照の声? おどかすな……って」
照「助けて」ハサマッテル
菫「……」
照「……」
菫「は?」
照「助けて」
照「……」
菫「また?」
照「はい」
菫「はいじゃないが」
照「うん」
菫「そんなに好きなの?」
照「うん」
菫「挟まるのが?」
照「菫もやる?」
菫「やらん!!」
照「いいのに」
照「はい」
菫「お前何度目だよ、何でそこ入るんだよ、出られないの分かってて何で挟まるんだよ」
照「ごめん」
菫「はあ……全く、私が来たから良かったものの」
照「ところで話は変わるけど」
菫「話変えちゃっていいのその状態で!?」
照「『よっこらせ』はオバサンくさいと思う」
菫「……」
照「……」
菫「写メ」パシャパシャ
照「ごめんなさい消して」
照「お願い」
菫「ぬっ!」グイ
照「……」
菫「ぬぬぬ」グイグイ
照「……」
菫「抜けないな」
照「痛かっただけ」
菫「……」
照「すいません」
菫「前はどうやって抜いたんだったか……」
照「確か」
照「スポッ」
照「ってやった」
菫「お前はときどき物凄くヘタクソな説明をするな」
照「ギュルギュルの風圧でスポッっていけた」
菫「じゃあそれ試してみたらどうだ」
照「それは無理」
菫「何で」
壁壁
壁↓ ※矢印は照の向き
壁壁
照「こんな感じに挟まってたから、右腕ギュルギュルで抜けられた」
菫「ふむ」
照「今回は」
壁壁
壁↑
壁壁
照「こうなってるから、右腕ギュルギュルしたらもっと挟まる」
菫「確かに」
照「分かりやすかった?」
菫「まあ……うん……」
照「よかった」
照「……」
菫「自力じゃどうしても無理か?」
照「ガッチリホールドされてる。パーフェクト」
菫「何で挟まるんだよホントに……」
照「こんなに素晴らしい隙間はそうそうない」
菫「じゃあ一生挟まってようか」
照「それは困る。具体例を挙げるとお風呂が気持ち良くても一生お風呂に浸かってたらホヤホヤになっちゃうのと同じ」
菫「はあ……分かったよ……」
照「ありがとう」
照「ぜんぶ」
菫「真面目に答えろ」
照「真面目」
菫「もういい私が確かめる。この辺か?」サワッ
照「……」
菫「それともこっちか」サワサワ
照「……ンッ」
菫「ならばここか」サワサワサワ
照「…ア…ン……」ハァハァ
菫「……照」
照「なに」ハァハァ
菫「くすぐったいならくすぐったいって言いなさい、悪いことしてるみたいだから」
照「分かった」
照「んっ……ぅ……」
10分後
菫「……分かったぞ、照」
照「な、なに、が……」ハァハァ
菫「これは無理だ」
照「えっ」
菫「他の人に助けてもらおう」
照「や……やだ」
菫「やだってお前なぁ」
菫「照……」
照「知られたら『照が挟まっ照w』とか言われていじめられる」
菫「いや、それはないと思うぞ……」
照「くすぐったいのも、菫の手だから我慢できる」
菫「……」
照「こんな姿……他のみんなに見せたくない」
菫「……全く、しょうがないな」
照「菫……」
菫「誰か来る前に何とかするぞ」
照「うん」
小学生からお年寄りまで多くの人に親しまれている物理法則
少ない力でポッキーを折るなど実生活でも様々な場面で活躍している
照「釘を抜くのもてこの原理」
菫「なるほど。で、そのてこの原理でどうやって抜け出すんだ?」
照「……」
菫「考えてから発言しような」
照「はい」
動いている物体に掛かる摩擦力で、一般に静止摩擦力より小さい
静止しているニートよりも運動しているリア充の方が周囲との摩擦は少ないのである
菫「つまり、動いている状態を保てば抜けられる可能性はある」
照「動き続ける……」
菫「こっち側に力入れながら、こう、ブルブル細かく震えるとか」
照「ブルブル?」
菫「そう」
照「ブルブル……」
照「ブルブル……ブルブル……ブ、ブル、ブル」
照「ブルブルブルブr」
菫「照ストップだそれ以上はなんかやばい気がする!!」
なにが逆転の発想だ
コロンブスの卵って、とどのつまり力尽くだろ!?
菫「ふんぬッ!」グググ
照「ううう」
菫「ぬぬぬ」
照「ううう」
菫「ハァハァ……駄目か」
照「ダメ」
菫「くっ……今度は腰から引っ張るぞ! 照、お腹引っ込めろ!」
照「」ペコッ
照「大丈夫?」
菫「何とかいけそ……」
あっわい
あっわい
照「!」
菫「これは……淡の足音だ!」
照「あ、淡に見つかっちゃう」
菫「早く抜け出さないと! 照、お前も踏ん張れ!」グググ
照「んあっ……! す、すみ、れっ……!」
淡「いまさいこーのーきーせきに……ん?」
ハヤクシロ テル! アワイガ……
ダメッ スミレッ ン、ァ……
淡「……」
淡「のりこめーーーーー!!」ガチャ
菫「どわあ!」
照「わー」
ドンガラガッシャーン
淡「!?」
菫「いてて……」
照「抜けた」
淡「!! て、テルとスミレが……!!」
菫「え?」
淡「ハァハァいいながら乱れた制服でタイメンザイしてる!!」
菫「ちょっ」
照「リンシャンパイ?」
淡「タイメンザイだよね!? これタイメンザイだよね!? 二人でタイメンザイして何してたの!?」
淡「勢いでタイメンザイしてたの!?」
菫「だああ、対面座位はもう分かったから!」
照「……菫、ありがと」
菫「これに懲りたらもう二度と挟まるなよ」
照「うん」
淡「なになにー? 教えてよー!」
後日
菫「……で」
照「……」
菫「何をしているんだ、照?」
照「雀卓の下も、結構いい」
菫「自分の家でやれえええええ!!」
カン!
↓
狭いとことか好きそう
↓
隙間に挟まってそう
↓
いまここ
でした
乙乙
Entry ⇒ 2012.10.28 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
アムロ「ガンダム女子会……?」
シャア「噂によると、ガンダムの女子達が集まって色々やっているらしい」
ブライト「まんまじゃないか」
アムロ「……女子って呼べる人種がどれだけいるんだか」
シャア「だからだアムロ、こっそり見に行かないか?その貴重な女子会とやらを!」
アムロ・ブライト「………」
シャア「……なにか、言いたい事がありそうな目をしているな」
アムロ・ブライト「……別に」
シャア「ここが女子会の会場だという」
アムロ「……スイーツバイキングだと」
ブライト「いかにもそれらしいな」
シャア「入るぞ」
アムロ「な、なに!?」
ブライト「こ、こんな場所に入るのか!恥ずかしい!!」
シャア「その点に置いては心配ない。もうすぐ届く頃か」
アムロ・ブライト「届く?」
「お待たせしましたー!クワトロたいいー!!」
シャア「来たか」
アムロ「なぁ…………!?」
カミーユ「頼まれていたものです。ご一緒しても?」
シャア「ああ。準備万端だな」
アムロ「か、か、カミーユ!」
ブライト「ど……どうしたんだ、お前のその格好は………!」
カミーユ「え、女装ですけど」
アムロ・ブライト「 」
カミーユ「三人の分もありますよ」
アムロ「え、え、え」
ブライト「な、なに、私も着るのか?」
シャア「ハハハこれなら目立つまい」
アムロ・ブライト(……逆に目立ちまくりだよ)
カミーユ「お似合いですよ三人とも」
クワ子「あら、そうかしら」
アム美「………」
ブラ江「………」
アムロ(………若干セイラさんに似ているのがムカつく)
クワ子「ウフフ、さすがブライト艦長、ご婦人にそっくりだな」
ブラ江「……貴様はミライを貶しているのかしら」
アムロ(何気にノリノリなんだなブライト……)
アム美「そうだ、そう言えばカミーユは名前を変えないんだな」
カミーユ「元々女の名前ですから」
アムロ・ブライト・シャア(強くなったな……カミーユ………)
クワ子「大丈夫だ上手くやる……私が下手に立ち回ったことなどないだろう」
アム美「下手に立ち回ったことしかないだろう」
カランカラン
店員「いらっしゃいま」
アム美・ブラ江「………」
カミーユ「キャハッ☆高校生1人大人3人でーす☆」
クワ子「ウフフ!窓側の広い席にしてねん☆」
店員「………ハイ」
ヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソ
アムロ・ブライト(死にたい)
アム美「………」
クワ子「おいアムロ美!なんだそのデザートのセレクトは!葬式か!」
カミーユ「これだから素人はw」
アム美「……お前たち、さては初犯じゃないな」
クワ子「そんなことよりおかしいな。情報によればもう……」ムシャムシャ
ブラ江「……」
カミーユ「……あっ、来ましたよ」ムシャムシャ
カランカラン
店員「いらっしゃいませ」
ハマーン「予約していたカーンだが」
クワ子「帰る」
クワ子「話が違う!あれのどこが女子なんだ!ふざけるな!!」バンッ!
アム美「い、いや、それにしてもお前……」
ざわざわざわざわざわざわざわざわ
クワ子「げっ……」
カミーユ「…目立ってますよ」
ハマーン「………見た顔だな」
アム美「ほーらな」
クワ子「…………」
ハマーン「……」ジーッ
ハマーン「そうだ!お前は!」
クワ子(終わった)
クワ子「えっ」
ハマーン「そちらはお友達で?」
クワ子「え……まあ……」
アム美「……アム美」
ブラ江「ブラ江……よ」
カミーユ「カミーユです」
ハマーン「……カミーユ?」
クワ子「あの……カミーユの同名の妹だ」
ハマーン「ほぅ……」
カミーユ「はい。兄の母の旦那の子供の父親の妻の夫の長男のパパのママの孫の妹が私です」
ハマーン「………」
ハマーン「……確かにカミーユの妹だな」
カミーユ「はい」
クワ子「えっ」
カミーユ「それはいいですね!クワトロ大尉……のお姉さん!」
クワ子「えっ、ちょ……」
ハマーン「決まりだな、どうぞこちらへ。おい店員さん!席を用意しろ!」
クワ子「か、カミーユ!」
カミーユ「だって面白そうじゃないですか」
アム美「それもそうだな」
ブラ江「私も超面白そうだと思うわよ」
クワ子「貴様ら………!ここぞとばかりに!」
クワ子「しかしだな……ハマーンがこんなにまで厚かましい女だとは想像も………」
カミーユ「何もくるのがハマーンだけなわけじゃないですよ。もしかしたら大尉の好みの女子とお近づきに」
クワ子「いくわよ!!みんな!!!!!!」スタッ
アムロ(そんな姿でお近づきになってどうするんだよ、シャア……)
ハマーン「……妹君」モグモグ
クワ子「なんd……なにかしら」
ハマーン「あー……そのだな………」
クワ子「だからなんだ」
ハマーン「……シャアは最近どうしているか」
クワ子「なんでそんな事を気にする必要があるのd……かしら」
ハマーン「それは……」モグモグ
ハマーン「………すまん聞かなかったことにしてくれ」モグモグモグモグ
シャア(……なら初めから聞くなハマーン)
アムロ・ブライト・カミーユ(あー……………)
店員「いらっしゃいませー」
「フフフ……なんだか安っぽい店だねぇ……」パシッパシッ
店員「あの……ご予約のお客様で?」
「案内しとくれ」
クワ子「女子が来た!!!!」ガタッ!!
アムロ(シャア……)
ハマーン「……来たか」
クワ子「………」ソワソワ
「久しぶりだねぇ。ハマーン・カーン」
「いいや……」
シーマ「ヤッホーさね!ハマーンちゃーん!!」
ハマーン「シーマちゃーん!!私も超会いたかったぞー☆」
キャッキャッキャッキャッキャッ
アム美「 」
ブラ江「 」
クワ子「 」
カミーユ「 」
シーマ「そうさね。あたしゃ、まだまだ心は清純だからね」
クワ子「アワワワワワワ」
シーマ「フフフ、まさかこの宇宙の蜻蛉シーマ・ガラハウが成虫となって宇宙各地のスイーツバイキングを飛び回っているとは誰も思いもよらないだろうよ……」
ハマーン「やだシーマちゃんカーワーイーイー」
シーマ「アーリーガートー」
シーマ・ハマーン「アハハハハハハ!!!!!!」
クワ子「女子ジャナイ……女子ジャナイ………女子ジャナイ………」
カミーユ「大尉が白目になっちゃってますよ……」
アム美「俺も脳波レベルが落ちそうだ……」
ブラ江「なんてこった……コレに比べりゃ我々の女装なんてかわいいもんだ………」
アム美「そう言えばデラーズ紛争で死んだんだったな」
ブラ江「で、ではコイツは亡霊……」
シーマ「フフフ、そうさね。アタシは亡霊……」
「オイコラそこの白目なし!シーマ様が幽霊なわけないじゃないの!!!!!!」
一同「!?」
子ッセル「シーマ様はね神経も根性も図太いのよ!!!!伊達に40年も生きてないのよ!!なめんじゃないわよ!!!!」
シーマ「女子会についてくんなっていったろ!このウスラトンカチ!!!!!!「」」パシィッ!
子ッセル「いやーん……///」
アムロ・カミーユ・ブライト(うわあ………)
子ッセル「ごめんなさい、あたしシーマ様が心配で……」
シーマ「気持ち悪いんだよ!お節介な男はキライさね!!」
子ッセル「はああ…叱られちゃった……///」
クワ子「はぁ………はぁ………」
カミーユ「大尉!しっかりしてください!大尉!」
ハマーン「気にしないぞシーマちゃん。実はね私の部下もロクなものでは……」
マシュ美「やーね、ゴト江。シーマ艦隊ったら下品ねー」クスクス
ゴト江「流石は育ちがわるいですよねマシュ美さま。いやだわー」クスクス
ハマーン「ぞ…俗物……………」フルフル
シーマ・ハマーン「貴様ら出ていけーーーー!!!!!!」
コッセル(そうだな……)
マシュマー「ハマーン様………ハマーン様………」ペロペロ
コッセル「シーマ様………シーマ様…………」ペロペロ
ちなみに両方ともクワ子が使用したフォークである
カランカラン
クワ子「女子が来た!!!!!!」ガタッ
アム美「……お前さ、いい加減さ」
クワ子「次こそは……次こそは……」フルフル
「待たせたな」
クワ子「!」ガタッ!
「フフフ……」
カミーユ「え、誰ですアレ」
シャア「 」
アム美「カツラがズレたぞ!シャア!」
ハマーン「キシリア様……」
シーマ「……ご機嫌麗しく」
キシリア「ああ。久々だな、ハマーンにシーマ」
ハマーン・シーマ「はっ……」
キシリア「いつも通りで構わん」
ハマーン・シーマ・キシリア「キャー!おひさーーー!」
えらく後ろ向きな女子会メンバーが勢揃いした瞬間である
カミーユ「完全に白くなってますね……」
シーマ「またふけたー?キシリアちゃんw」
キシリア「シーマちゃんほどではないぞーw」
ハマーン「シーマちゃんもう40だもんねw」
シーマ「まだ30代だもんw」
ハマーン・キシリア「キャー!」
キャハハハハハハハ!!!!
アム美「………なんだろう、コレ」
カミーユ「………完全に見ちゃいけないものをみちゃいましたね僕ら」
アム美「ちょ!お前!落ち着け!」
カミーユ「バレたら多分僕たち弱味握られるどころか皆殺しですよ!」
キシリア「……ん?こいつらは」
ハマーン「シャアの妹と愉快な仲間達です」
キシリア「ふぅん……アルテイシアお嬢ちゃんね」
クワ子「………ドウモ」
キシリア「………」ジーッ
クワ子「…………」
アム美「ああ………」
キシリア「でさ、シーマちゃんって彼氏出来たのーw?」
シーマ「やだ、今じゃスイーツが恋人さねw」
ハマーン「シーマちゃんカーワーイーイーw」
クワ子「……えっ」
キシリア「やだwwくっさい毒ガスまきまくりwwwww」
シーマ「ちょ!やーめーてーwwwwwwwwwwwサイド3にコロニーぶつけちゃうぞwwwwwww」
キシリア「ジーク・ジオンwwwwwwwwww」
シーマ「やーだwwキシリアちゃん意地悪wwwwww」
キャハハハハハハハ!!キャハハハハハハハ!!
クワ子「………」
カミーユ「なんだか大尉のこと、眼中にもなさそうですね。バレなくて良かったじゃないですか」
クワ子「………ソウダナ」
アム美「……なんでちょっと泣きそうなんだよお前」
アム美「ブライト、お前は素に戻ってるぞ」
ブラ江「ウフフ、いけない、いけない。家じゃふりかけご飯だものね」
カミーユ「……大佐なのに貧乏なんですか」
ブラ江「………子供の塾にスイミング、ピアノ、そろばんに習字、バレエにサッカー、スケートにヒップホップ」
ブラ江「ミライのヨガ教室にジム通い、手芸教室にお茶にお花。これらの月謝にいくらかかるとおもう?」
カミーユ「……ご愁傷様です」
アム美「……居辛いというかな、なんだろうな……この気持ちは」
カミーユ「わかります。僕にも…なんだか胸が……チクチクする」
アム美「なんだこの感情の正体は………」
ハマーン「キシリアちゃんこそホントはお兄ちゃん大好きで行き遅れたくせにーw」
キシリア「ち、ちがうし!」
シーマ「キャーwwwwwwwwww」
キシリア「ハマーンちゃんこそ、好きな人いないのか?」
ハマーン「えっ」
シーマ「あいつかwwwwwwあいつなんだよねwwwwwww」
ハマーン「や、やめてよ!マジやーめーてー!」
アム美「………そうか」
アムロ(こいつら………ひどく無理をしているんだ)
アムロ(まるで普通の……普通の女の子を………こいつらは無理をして…………)
キャハハハハハハハ!!キャハハハハハハハ!!キャハハハハハハハ!!
アムロ(彼女達の部下が『心配』だと言っていた意味が今なら理解できる)
キシリア「あいつってだーれwwwwwwww」
シーマ「シャ………」
ハマーン「やだwwwwwwwwマジやーめーてーwwwwwwww」
アムロ(………普通の女の子に自分は決してなりきれないことに、いつかは気がついてしまうからな)
クワ子「なんか期待ハズレも甚だしい………もう帰る」
アム美「そうだな。俺もそうしよう」
カミーユ「………僕もそうします」
アム美「ブライト……いくぞ………」
カミーユ「というわけで僕達はおいとまします」
ハマーン「もう帰ってしまうのか」
ブラ江「そうよもうちょっといましょうよー」ムシャムシャ
シーマ「ブラ江ちゃんたべっぷり最高wwwwwwwwww」
キシリア「キャーwwwwwwww」
ブラ江「ウフフwwwwwww」
アム美「馴染むなよ………」
なかなか帰ることが出来ぬまま2時間が経った
ハマーン「ぞくぶつー!」プギャー
シーマ「キャー!そのポーズカーワーイーイー」
ブラ江「シーマちゃんのえくぼもカーワーイーイー」
シーマ「ヤダwwwwwwwこれシワさねwwwwwwww」
ハマーン・キシリア・ブラ江「キャー!!」
アム美「………」
カミーユ「………」
クワ子「………」
アム美「19の時から働きっぱなしだからな……」
クワ子「カエリタイ……カエリタイ……カエリタイ……カエリタイ……カエリタイ……」
カミーユ「こっちも相当なストレスかかってますけどね」
「プルプルプルプルー!」
クワ子「!!」ピキーン!!
アム美「なに、どうした……シャア………」
シーマ「……なにさね、急にあっちのテーブルが騒がしくなったねぇ」
ハマーン「本当だな。騒がしい」チッ
キシリア「文句を言ってやろうか!!」バンッ!
プル「えっと、それじゃあガンダム女子会をはじめるよ!プルプルー!」
ルー・エル「いえーい!」
ファ「アタシなんかが来てよかったのかしら……」
プルツー「遠慮するなよ。なあトゥエルブ」
「………」
プルツー「あれ、トゥエルブは」
キッカ「マリーダさんなら一目散にオードリーさんと一緒に『バイキングは数!』とか良いながら取りに行きましたよ」
プルツー「はぁ……」
リィナ「リラックスしてね。みんな良い人ばっかりだから」
オードリー「おいひいわへ!まひーら」もぐもぐ
マリーダ「ほうれふ。おいひいれすお」もぐもぐ
プルツー「……お前はリラックスしすぎだトゥエルブ」
プル「リィナ!一緒にとりにいこう!」
リィナ「よーし競争よ!」
キャッキャッキャッキャッキャッキャッキャッキャッ
クワ子「これだ!これなんだ!これなのだよ!」
アム美「シャア………」
ハマーン「………」
シーマ「………」
キシリア「………」
ハマーン「………っ」
キシリア「どうしたハマーン……」
ハマーン「うぐっ……ぅぅっ……うっ……」
シーマ「ちょっと情けないね。一国の摂政が…あれ、なんかアタシも……ぅっうっうぅっ……」
キシリア「や、やめい……二人とも………ウグッ………うっ………」
ハマーン「ぅぅっ……ぅぅっ…ふぇっ………」ポロポロ
シーマ「ぅぅっ……ぅぅっ…ふゎっ…」ポロポロポロポロ
キシリア「ぅぅっ……ぉぅっ……ぉぅっ……」ポロポロ
ハマーン・シーマ・キシリア「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!!」
アムロ「ああ………」
ハマーン「………」ごしっ
ハマーン「興醒めだ!帰る!」
シーマ「ふんっ!不愉快な会だった!」ごしっ
キシリア「もう二度と催すものか!」ごしっ
ハマーン「仕方ないから、少しばかり下々の気持ちを理解してやろうと努力してみたが」
ハマーン「我々が愚民同様に振る舞うなどハリボテにしか過ぎぬということだ!」
シーマ「女子会なんてアホらしい!アタシ達は老け役の汚れ役がお似合いってこったね!」
キシリア「もうピンクのマスクなんてするものか!」バシッ
シャア(本当だな……気がつかなかった……)
アムロ(一番張り切ってたのかコイツ………)
一同「!?」
アム美「急にどうした……お前」
ハマーン「慰めはいい!ブラ江ちゃん!」
シーマ「そうさねブラ江ちゃん!」
キシリア「ブラ江ちゃん!」
チェーミン(隣のあの人ブラ江ですって。なんて下品な名前……)
ブラ江「私は…私の正体は……本当は………」バッ
ブライト「ブライト・ノアだ!」
ハマーン・キシリア・シーマ「!?」
チェーミン「………えっ」
ハマーン「き……貴様!破廉恥な!!」
ブライト「私は男だ!お前たち同様女子ではない!しかし!」
ブライト「……貴様達とガールズトークを繰り広げるうちに……なんか、こう……自分がだんだん女の子になっていく事を感じた」
アム美「ぶ、ブライト……?」
ブライト「………形からと言うが……今は我々は偽物の女子かもしれない!しかし!」
ブライト「重要なのは、普通の女の子になりたい、その気持ちではないか?」
ハマーン・シーマ・キシリア「…………」
アム美「え、なんだコレは」
カミーユ「感動しました艦長!!!!!!!!!!!」ガタッ
アム美「………カミーユ?」
カミーユ「僕はカミーユ!!!!男です!!!!!!」
ファ「えっ」
カミーユ「僕も……本当は女の子になりたかったのかもしれない。その裏返しで……女っていわれてイライラしていたのかもしれない」
カミーユ「……でも!なんていうかあなた達の会話にウキウキしていた僕がいるんです」
ハマーン「カミーユ・ビダン……やはり……」
カミーユ「ハマーン、今なら僕はあなたと分かりあえるかもしれない!」
ハマーン「………嬉しいよ、少年」
ファ「えっ」
セイラ「いいのよ。わたしもひとりじゃこんなところ来られないから……」
セイラ「それにしても騒がしいわねぇ……隣が」
シャア「私はかつてシャア・アズナブルと呼ばれた男である!!!!!」ガタッ
アムロ「まさかシャア!お前も!!!!」
オードリー・セイラ「えっ」
シャア「さっき……悲しみを覚えた事も……キシリア様達に混ざりたかった……その思いなのだ……アムロ………」
アムロ「えっ」
シャア「ハマーン!女子としてなら私は君と分かり合えるかもしれない!」ヒシッ
ハマーン「…………シャア大佐!」ヒシッ
シャア「キシリア様とも……」ヒシッ
キシリア「キャスバル坊や!!」ヒシッ
アムロ「………何だコレ」
アムロ「い……いたのかよ……」
ハヤ江「ごめんなさい実はあたしも……」ガタッ
キッカ「お父さん………」
ジェリ子「あたしも!」ガタッ
デラ美「あたしも!」ガタッ
ガト江「デラ美閣下がそうなら私も!」ガタッ
デラ美・ガト江「あの時はごめんねシーマちゃん!!!!」
シーマ「気にしてないよ!!!!!あたしは嬉しいさね!!!!!!」
キシリア「キャーお兄ちゃん!!!!!!!!」
ジュド子「あたしもアレから病みつきになっちゃって……///」ガタッ
イー乃「ぼくも………///」
私も私も私も私も私も私も私も俺も僕も
アムロ「……」
アムロ「あたしも?」
シャア「これが…人類の……革新の光………!!」
カミーユ「ニュータイプって…こういうことだったんですね………」
アムロ「ああ………人は分かり合える!」
俺が………俺たちが
女子《ニュータイプ》だ!!!!!!!!!!
本物の女子一同「ふぇぇ………」ガクガク
色んな意味でおしまい
ハマーン様ばんざああああああああい!!!!!!!!
シーマ様ばんざあああああああああい!!!!!!!!!!!!
でもハマーン様は普通に女子だと思うの!
v
Entry ⇒ 2012.10.27 | Category ⇒ ガンダムSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
モバP「綺麗になった猫を家で飼うことになった」
ガチャッ
P「今日も一日がんばりまっしょい……て」
P「誰もおらんのかな、ちひろさーん?」
P「んー、おらん……お? 書置きが」カサカサ
『おはようございますプロデューサーさん
私はこれから巴ちゃんのご両親に近況報告をしに
広島へ行ってきますね。それとATMにも寄ってから帰ります。
プロデューサーさんには今日みくちゃんのご両親に近況報告をしに
行って頂いていいでしょうか? 先方へはご連絡済みなので
みくちゃんを連れて行ってください ちひろ』
P「ふむ、みくのご両親に挨拶か……ってか何でわざわざ広島でATMなんだろうか」
P「まぁとりあえずみくに連絡入れてみっか、今の時間なら寮に居るだろう」
―――――その頃のちひろポン―――――――
ちひろ「うふふ……人間って凄いですよねぇ、中身がお金なんですもの……お値段つきますねぇこれは」
―――――――――――――――――――――
みく『はいにゃーん、Pチャンどうかしたにゃん?』
P「おーみく、今日はみくOFFだったよな? ちょっと今日開いてるか?」
みく『にゃにゃっ? デートのお誘いかにゃ?』
P「んな訳あるか。みくのご両親に近況報告へ行こうと思っててな、そっちも連れていきたいんだ」
みく『にゃるほどー。今日は大丈夫にゃん、まずは事務所へ行けばいいのかにゃん?』
P「いや、俺が車出して出がけに拾っていくから、寮でそのまま待っててくれ」
みく『了解にゃー。お支度だけしておくにゃん』
P「あいよー、んじゃXX時ぐらいに門の前でな」ピッ
P「んじゃこっちも支度して行くかいね」
―――――――――――――
―――――――――――
――――――――
P「到着ー。あっこにおるな……おーい」パッパー
!……テテテッ…ガチャッ、バタン
P「あいよ、お待たせさん」
みく「大丈夫にゃん、時間よりちょっと早いくらいだったし待ってないにゃん」
みく「それじゃあ、れっつにゃー!」
P「しゅっぱつしんこーっと」
ブロロロロロロ……――――――
P「みくのご両親に挨拶すんのもちょっと久しぶりってとこだな」
みく「いつもはちひろにゃんが連れていってくれてたからにゃー。今日は違うの?」
P「ちひろさんは今日は巴んとこのご両親に近況報告へ広島。だそうだ」
P「んで一日おらんぽいので俺が頼まれたってことだ」
みく「にゃるほど、でも今日だと多分……えーっとお父さんはお仕事で居ないかもにゃ」
P「ん、そうなると母上殿に挨拶になるか。それでいいんかな、話通してるってちひろさん言ってたけど」
P「そか…まぁとりあえず向かうとするか」
――――――――――
―――――――――
――――――――
~みく宅前~
ピンポーン
P「どうもー。モバプロのPと申しますが」
インターホン「あら! 今日はお越し頂いてお手数お掛け致しますー。ささ、上がってください~」
P「はい、それではお邪魔致します」
ガチャッ
P「どうもどうもご丁寧に。いつもお世話になっております」
母「いえいえこちらこそ、家の娘がお世話になっておりますー、どうぞどうぞ上がって居間の方へ」
みく「たっだいまにゃーん、お母さん元気してたー?」
母「あら、おかえりなさいみくちゃん、お母さんは大丈夫よ。そっちも元気そうでよかったわ」
みく「うんっ」
P「ええと、それで今日伺ったのはみくさんの近況についてですが―――――」
アレヤコレヤト……モンダイアリマセン……トテモヨイジョウタイデス……
P「――と、まあここ最近も頑張っている所であります」
母「そうですか。こうやってたまに顔も見せてくれますし、こちらとしては安心してこのままお願いしたいと思っております」
母「ところで……話は変わるのですが」
P「? 何かおありでしょうか」
母「仕事と周囲の人間関係は良好とのお話でしたが……その、Pさんとの間はどうなのでしょうか?」
P「ええと……自分との間、ですか?」
P「どう仰ればよろしいでしょうか……うーん……信頼関係は十分に築けていると自分では思っておりますが」
母「うーん……そういう事ではなくてですね……ちょっとPさんこのままお待ちになってくださいね。ちょっとみくちゃんー」
みく「はいにゃー、何かにゃ?」
母「ちょーっとこっちいらっしゃい?」
みく「?」
母「ね、みくちゃん。Pさんとはどこまでいったの?」
みく「にゃっ!? ど、どこまでって……」
母「おかあさんを甘くみちゃ駄目よー? 何でもお見通しなんだから。Pさんの事気になってるでしょ?」
みく「う”っ……にゃ、にゃんのことかにゃー?」
母「とぼけても無駄よ? みくちゃんがPさんの事じーっと見続けてたの分かるんだから」
みく「…………」
みく「え、えっと……な、なんにもないよ?」
母「ふーん、そっか。まだ何もないのね?」
みく「う、うん……」
母「……わかったわ。お母さんが一肌脱いじゃう、みくちゃんは安心して任せて!」エヘン
みく「に”ゃっ!? 何をするつもりなのかにゃ!?」
母「いいからいいから。じゃあPさんの所に戻りましょう?」
・・・……―――――――――
母「ごめんなさいねぇお待たせしちゃって……さ、みくちゃんそっちにお座りなさい」
P「あ、いえいえお気になさらずに」
母「あぁそれならもう大丈夫ですよ。それよりも少しご相談したい事があるのですけど、よろしいかしら?」
P「……? どういった内容でしょうか」
母「ええ、その……」
P「?」
母「家の娘をPさんの家で預かって頂けないでしょうか?」
みく・P「「ぶっ!?」」
みく「お、おかーさん!?」
母「みくちゃんはちょっと黙ってましょうねー?」ニコッ
みく「に”ゃっ…………」
P「と、突然何を仰るかと思えば……今はちゃんと寮に入って生活していますが……」
母「娘のアイドル生活を支えるにもお金がちょっと足りなくて」
母「寮の月賦も嵩んで大変なんですよ~」
P「ええと……それならばご実家から通わせるようにすれば良いのでは……?」
母「それも勿論考えたんですが、寮に入ってそのあと」
母「娘の生活できるスペースを削ってしまっちゃって、今更戻せなくて困ってしまってるんです……」
母「ですから! いっそのこと安心してお任せできるPさんのお家にご厄介できればと」
P「は、はぁ……ですが仮にも男一人の家に住まわせるというのはさすがに……」
母「それは勿論! 大切な娘を預けるなんてこんな事、信頼してお任せできるのは」
母「Pさんが今まで娘の面倒をとても良く見て頂いたからなんですよ?」
母「是非お願い致しますね~」ニコッ
デスガ……アーデモナイコーデモナイ……――――――
みく(にゃ……Pチャンすごく必死に食い下がってるにゃ……)
みく(Pチャンはみくと一緒に住みたくないのかにゃ……)シュン
母「前向きに、が抜けてますよ~。よい返事しか耳に入りませんので~」ニコニコ
~~~~~~~
バタンッ
P「はぁ……何故こうなった」
みく「にゃー……」
P「みくは何も聞いとらんのか」
みく「一緒にびっくりしてたにゃ、初ネコ耳にゃ……」
P「とにかく……ちょっと寮の皆にも話してみよう、いい案があるかもしれん」
みく「…………」
――――――――――
―――――――――
――――――――
女子寮・正門前
P「よし、着いたっと」バタン
みく「…………」パタン
サッサッサ……サッサッサ……
P「お。玄関前の掃除か、ご苦労様だな。藍子」
藍子「あ、おはようございますプロデューサーさん。今日はどうかしました?」サッサッサ……
P「あぁ、ちょっとな。ちょっと中に入って何人かと話をしたくてな」
藍子「え”っ……」ピタッ
P「どうした? 俺なんかまずい事言ったか?」
藍子「あっ、いえ。ちょ、ちょーっとだけ。プロデューサーさんは」
藍子「ここで待っててもらっていいですか?」
P「ん? まぁ構わんけども……何かあったか?」
藍子「い、いえそういうんじゃないですけど……と、とにかく待っててください!」タタタタッ!
バタンッ!
タイヘンヨー! プロデューサーサンガハイッテクルッテ!! エー!!! イソイデカタヅケナイト!!! バタバタバタッ!
P「…………何があった」
――教訓:女の園を期待してはいけない――
P「なんか息上がってっけど……大丈夫か?」
藍子「は、はい私は大丈夫ですっ」
P「ん……まあ談話室を使わさせてもらうぞ、それとちょっと木場さん呼んできてくれるかな」
P「あと何人か来れそうな奴もおったら頼む」
――談話室――
P「うっし、みくもちょっとそこに座りな。あとホレ、クッション」
みく「にゃ……」ポスン
藍子「はい、プロデューサーさんお茶をどうぞ」コトッ
P「おおすまん、どれぐらい人が来てくれそうかな」
藍子「えっと……私はこれから用があるので難しいですけど……」
藍子「木場さんと、桐野さんと、中野さんと、十時さんと、智絵里ちゃんですね」
P「ふむ……まぁ一気に皆に話してもアレだし丁度いいかもな」
藍子「それじゃあ私はこれで失礼しますね」ペコリ
P「あいあい、また仕事んときよろしくな~」
桐野アヤ(19):格闘技(観戦)アイドル
中野有香(18):空手アイドル
十時愛梨(18):イフクハナゲステルモノ
緒方智絵里(16):チョップチョッパーチョッペスト
P「急にすまんな集まってもらって、ちと相談したい事があってな」
愛梨「一体どうしたんですか? ……因みにここ暑くないですか?」ヌg
P「はえーよ脱ぐな」
木場「ふむ、用件があって呼んだんだろう。恐らく呼ばれていないがここに居る」
木場「前川君の事に関係するのかな」
みく「…………」
P「ええ、何人かに相談したいって事と」
P「木場さんが寮でまとめ役してもらってるんで集まってもらった、と」
木場「寮に関係する事だな、言ってみるといい」
P「智絵里はみくと仲良く遊んだりしてたよな、ちょっとみくの事だから」
P「聞いてもらった方がいいかもしらん」
桐野「まぁ知恵欲しいってんならアタイもできる事ならするけど」
有香「押忍! 他ならぬプロデューサーの為なら何だってやります!」
P「おう、助かる……んで率直に言うと」
P「みくを俺の家で預かって欲しいと親御さんから頼まれた」
ビシッ……
桐野・有香・愛梨・智絵里「「「「ええええっっっ!!??」」」」
P「あぁ、うん……やっぱ驚くわな」
P「あちらさんの都合で寮に預ける事が厳しくなってきた」
P「且つ実家から通わせる事も難しい」
P「んじゃ俺の家ならいいんじゃね? って思ったらしくお願いされた」
愛梨「ど、同棲するときってどこで脱いだらいいんだろう……」
有香「いつでも稽古をつけてもらえる……!」
桐野「別に住むとこ無くなんならテント張ればいいんじゃ……」
P「相談相手として間違えた気がする」
木場「ふむ、それで君の家に住まわせる以外の手段はあるか模索したいと」
木場「そういう事だな?」
P「うぃ、仮に寮を出る事になるなら寮のまとめ役をやってもらってる木場さんにも」
P「話をしないとならんので、このまま相談に乗ってもらったと」
木場「しかし難しいね、寮の部屋は一人用だけだから相部屋なんて無理だし」
木場「他のアイドル達の実家組に頼るとなると親御さんが反対されそうだな」
P「えぇ……ひたすら『Pさんのご自宅で面倒を見て下さい』って言われて」
木場「…………」チラッ
みく「…………」
木場「……ふむ、前川君はどう思ってるのかな?」
木場「思うままに応えていいんだぞ、何よりこれは君自身の事なんだからね」
みく「……みくは……Pチャンと一緒に住むの、嫌じゃないにゃ……」ギュッ
木場「……で、これは相談をする必要あったのか?」
P「え?」
木場「今前川君が了承したことで、家族共々了承されたという事になるワケだが」
P「しかしこれは親御さんにも言ったんですが男の家に住まわせるなんて……」
木場「君とて立場を弁えているだろう。責任を持って面倒を見ると思えるから不安は感じないが」
P「…………」
木場「それを共に寮生活していたとは言え、外部の人間がとやかく言える事は無いな」
木場「寮も空き部屋ができればそこに実家通いが大変な子を改めて迎えてあげれる」
木場「安部君辺りなら喜んで入ってくれるんじゃないかな」
みく「Pチャン……」
P「………あー分かった。相談なんてする必要なかったわ」
みく「……!」
P「まぁちっといきなりの事でびっくりしちまって」
P「どうすんべ、と皆に聞いてもらおうとしてたけど」
P「別に決まりきってた事か、いい案あるかなーってちと期待もしたが」
木場「君が責任感ある人間だという事はこの場に居る全員がよく分かっている事だ」
一同「うんうん」
P「んじゃあ決まりか」
木場「そういう事になるな」
P「まぁよくよく考えりゃこないだ泊めた事もあるしなぁ」
一同「…………………えっ」
P「ん?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ………
木場「ほう。その話は初めて聞いたな?」
木場「前川君が寮に戻ってこない日があってね。寮が大騒ぎになったんだが」
木場「因みに泊めた時、連絡入れたか?」
P「あっ………」
一同「………………………」
木場「まあその後戻ってきたからよかったものの」
木場「連絡ぐらい、入れてもよかったんじゃ……ないのかね?」スッ
P「ええと、はい、すんませんっす……因みにその人差し指は……?」
木場「少し君にお仕置きが必要だと思うんだ、今後の事を肝に銘じる事も踏まえてな」
ドスッ ピキーン!
P「ぐはっ!? か、体がうごかな……!!??」
木場「そして」グリッ!
P「ちょっ!? なんで俺勝手に立ち上がんの!?」シュタッ
みく「は、はいにゃ…」
木場「じゃあ、まずはスーツの上着が邪魔だな。愛梨君」
愛梨「はいっ。ジョインジョインと……終わりました」スッ
P「!?」
P「今何をした!? 気づいたらジャケットが脱げてて愛梨の手元に!?」
木場「うむ、相談相手としては実にいい選択だったなこれは」
木場「次はそうだな……中野君、好きな技をかけたまえ」
有香「押忍! 真さんから教わった………『正中線五段突き』ッ!!!」
ズドンッ! ズドドドンッ!! ズドンッ!!!
P「ご……ふっ……!」ドシャッ
木場「まだダウンするには早いぞ」スッ グリッ!
シュタッ!
P「ぐはっ……また体が勝手に…!」
桐野「おう! アタイも打撃だけど一味ちがうぜー? 『幻突』!!」
バスンッ!
P「がっ……見えん何かが……」
木場「決めは緒方君だな、手加減は無用だぞ」
智絵里「は、はいっ」
智絵里「か、かか、か………『カラミティエンド』です。えい」
シュパッ!
P「ぐわああああーーーッ!!」
――――――――――――――――
P「すんません……マジすんません……」ボロッ
木場「まぁ今後はきちんと面倒を見るように」
木場「それと、たまには二人の様子を見に行く事にするよ」
P「ぁい………」
木場「前川君、部屋へ入れてもらっていいかな」
みく「……はいにゃ」
――――――――
―――――――
――――――
P「とりあえず上がって一息ついたら片付けとか生活スペース作ったりするか」ガチャッ ススス…
みく「にゃ……えと、おじゃまします」
P「んー……はいやり直しー。玄関の前から!」チャリ、ポイッ
バタンガチャッ!
みく「に”ゃっ!? にゃ、にゃんでー!? 鍵まで閉められたー!?」
みく「開けてにゃーー!!」
ピンポンピンポンピンポーン
インターホン「はーいどちらさまですかーって違うわ! 連打すなやかましい
お前は家に帰るときに『開けてもらう』のか?
そのポケットの中身は何だろうなぁ? んん?」
みく「にゃ……? あれっ、この鍵……」チャリッ
インターホン「さぁそれを持って鍵穴に通し捻るがいい! そしてオープンセサミと!!」
カチッ、カシャン
ギィッ……
みく「えと……た、『ただいま』にゃ……」
P「おう、『おかえりなさい』だ。ようこそ我が家へ、歓迎するぞ」
P「それと鍵は予備で持ってたもんだからみくにやる。好きに使っていいぞ」
みく「…………グスッ」
P「お、おい?」
みく「……ふぇぇぇん!!」ダキッ!
P「急に泣き出したりして……どうした」
みく「みく……Pチャンが一緒に住みたくないって思ってて」
みく「嫌われちゃったのかなって……グスッ」
P「…………」ナデナデ
P「……んな訳あるか。家族と暮らせないってのがよくねーって、そう思っただけだ」
みく「……にゃ?」
P「我が家、ってありゃもう違うな」
P「これからは俺とみくの家って所だな」
みく「……うんっ!!」ギュー
みく「えへへ……Pチャンー……えへへへ…ぎゅー♪」スリスリスリ
P「とりあえず、一旦抱きつくのやめようか? 色々当たってる……」
みく「駄目……もう離さないんだからにゃん♪」
みくメインの筈が出番少なくてすんません……
また書き溜めできたら投下致します故
みくにゃんマジみくにゃん
にゃんにゃんにゃん!
にゃんにゃんにゃんにゃん!
乙
Entry ⇒ 2012.10.27 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
P「伊織恐怖症になった」
伊織「お疲れ」
P「!!」
P「ぎ……ぎぁあああああ水瀬伊織だぁあああああ!」
春香「え、え!?」
P「ひいいいいぃ……!!」
伊織「はぁ……まったくホント情けないわねこのヘンタイは」
春香「い、伊織、プロデューサーさんに何かしたの!?」
伊織「別に大したことじゃないわよ」
伊織「ただ三日間監禁してキス漬けにしただけ」
春香「……なんだと?」
伊織「ええ、言ったわ」
春香「監禁、キス!? 何がどうなればそんなことになるの!?」
P「イオリコワイイオリコワイイオリコワイ」
伊織「落ち着きなさい春香。私が悪いわけじゃないわ。全部この男が悪いのよ」
P「コワイオリ……コワイオリ……」
春香「ちゃんと説明して!」
伊織「じゃあもったいぶっててもしょうがないから言ってあげるけど」
伊織「私、先週この男に告白したの」
春香「!」
伊織「俺は年下は守備範囲外だから無理だ、だって」
伊織「あとプロデューサーとアイドルの関係だから普通に無理だ、だって」
春香「あ、ちょっと……」
伊織「ムカつくでしょ?」
春香「うん……」
伊織「そうしたら監禁するのが世のため人のためってもんでしょ?」
春香「うん……いや! そんなの間違ってるよ! それ全部伊織のためだよ!」
春香「フラれた腹いせに監禁だなんて、非道義的!!」
P「コワイ……コワスギイオリ……」
伊織「まあちょっと落ち着きなさいよ春香」
伊織「ちゃんと有給扱いだから大丈夫よ」
春香「そういうことじゃない! 監禁だなんて……それにキス漬け!? どういうこと!?」
伊織「ハァ……ならいい? よく考えてもみなさいよ」
伊織「目の前には私をフったことで監禁されたプロデューサー」
伊織「この男を何とかして自分に振り向かせたい」
伊織「壁は社会通念と嗜好。言葉で押したって何の意味もない。ならこの場合の最善手は?」
春香「キス」
伊織「だったら純真さを活かして唇に頼むのが常道、でしょう?」
春香「うん……いや違う! そこはフられちゃったんだから潔く退くべきだよ!」
春香「監禁してる前提もおかしいし!」
伊織「潔さが常に美徳とは限らないわ。いい春香、世の中を常に疑ってかかりなさい」
伊織「『潔く退け』、『決して諦めるな』――世の中はこの二律背反を平気で強いてくるの」
春香「ううぅ、何が正しいの……!?」
伊織「今の春香は正解よ。人は真理に直面すれば思い惑うものなの」
春香「うん……違う絶対違う! そうだとしてもやりすぎだよ!」
春香「だってプロデューサーさんこんなに怖がってる!」
P「コワイ……」
春香「キス漬けって、何をしたの!?」
春香「ぐっ……」
伊織「冷静にならなければ見えるものも見えなくなるわ」
伊織「紅茶でも淹れましょうか」
春香「要らない! 早く答えて!」
伊織「そうカッカしないでよね。私は春香と敵になんてなりたくないの」
春香「いいから答えて。キス漬けって具体的に何なの!?」
伊織「あまり大きな声を出さないでほしいわ。人に聞かれて気持ちのいい話じゃないんだし」
伊織「小娘でもあるまいし」
春香「そっちだって小娘のくせにっ……」
伊織「キス漬けが何かって? そのままの意味よ」
伊織「今のあなたはお腹を空かせた小動物。目の前にはずっとずっと追い求めてきた甘美な果実」
伊織「歯を立てれば、舌をくるみこむほどたっぷりの甘い汁」
春香「……ごく」
伊織「口にすれば本能をふやかし、脳髄をとろめかすような刺激の洪水」
伊織「麻薬そこのけの勢いで、あなたはみずみずしく蹂躙されるの」
春香「やだ……やだぁ……」
伊織「ならその果実がもし、プロデューサーだったら?」
伊織「甘く狂おしく焦がれる初恋。その目当てが拘束され無防備にさらされていて」
伊織「それが今あなただけのものだとしたら?」
春香「めっちゃキスする」
春香「え? あ……あああ……っ!!」
伊織「くす、春香、あんたってもしかして」
春香「やめて! 言わないで!」
伊織「くすくす」
春香「………っ!」
伊織「良いわねその『眼』。そんな闘気がみなぎった視線を向けられたら」
伊織「――たかぶっちゃうわ」
春香「卑怯者……奸佞の徒!」
伊織「春香……あんたまだ『理性』なんて人間の負の遺産にとらわれてるの?」
伊織「ヒトの歴史なんて生命の歴史に比べれば刹那にも満たない寸陰の出来事」
伊織「そして、かつて広がっていたのは『理性』なき『ケダモノ』たちの世界」
伊織「そこにはルールも秩序もない。ただ『喰らう』か『喰らわれるか』だけ」
春香「伊織……あなたまさか」
伊織「ええ、そうよ。私が望むのはその『ケダモノ』たちのための世界」
伊織「世界をかつての姿に戻す」
伊織「私はそのためにアイドルになったの」
春香「なんてこと……!」
伊織「何ですって?」
春香「そんなの、絶対にさせない!」
伊織「……できるのかしら、あんたに?」
春香「伊織の考えは間違ってる! 私たちは立ち止まって、考えるから進めるんだよ!」
春香「思いやりや反省が私たちを成長させるの!」
伊織「前時代的で化石のような考え方だわ。何の面白みもない」
春香「たとえプロデューサーさんにキスしちゃっても! もし『立ち止まる』ことができれば」
伊織「ところが」
春香「え……?」
伊織「でもそれは『理性的であれ』という意味ではない」
伊織「『本能の声を聞け』という意味よ」
伊織「『内なる無我を啓発しろ』『耳を澄ませて主体を明け渡せ』」
春香「そんなこと……!」
伊織「私はアイツにキスをしたわ」
伊織「でもアイツは残された『理性』で抵抗するの。『やめろ、やめてくれ』」
春香「っ……」
伊織「私の唇に必死に身をよじらせて抵抗する、あまりに脆弱な成人の男」
伊織「さっきまで小動物だった私は、この瞬間、自分が捕食者にすり替わっていることを自覚する」
伊織「美しい弦楽器を奏でているような錯覚。陵辱の愉悦。享楽の底なし沼」
春香「いや……いやぁっ……」
伊織「普段、辣腕をふるってアイドルたちを指揮する面影はどこにもない」
伊織「口元からは私の唾液が泡立ちながら滴って、両目はとろんと据わっていて」
伊織「身体は刺激を悦ぶようにぴくぴくと震えているの」
春香「ううぅ……」
伊織「私はその姿を見て、今が絶頂にあるような多幸感に包まれると同時に」
伊織「崖から転がり落ちるような背徳の螺旋に身をゆだねた」
春香「私も」
春香「あああぁっ……いやぁあああ……!!」
伊織「春香、あんたそろそろ自分でも気がついてるんじゃないの」
春香「もうやめてぇっ!!」
伊織「――あんたも『こちら側』の人間だということに」
春香「ウソ……嘘っ……!」
伊織「人間は理性的な生き物なんかじゃないわ……」
伊織「大多数の人間は『脳が身体を従えている』と考えがちだけれど」
伊織「本当に究極的な局面では、『身体が脳を支配する』のよ」
伊織「何故ならそれこそが、『種』の偽らざる姿なのだから」
春香「違うっそんなの……!」
伊織「だから絶望することなんてないわ。春香がそう考えてしまうのも詮無いことなんだから」
伊織「目を背けるんじゃないわよ!!!」
春香「―――」
伊織「……本当にそう?」
春香「……え?」
伊織「自分は違うって、自分の心に誓って言えるのかしら?」
春香「そ、そんなの決まって……」
伊織「愛するプロデューサーに恋心に押されるまま告白して、断られて」
伊織「本当に愛していたからショックも計り知れなくて」
伊織「同じ経緯をたどって、同じ状況に立って、同じことをしなかったと言えるの?」
春香「正直五分五分」
春香「あああぁっ……いやぁあああ……!!」
伊織「理性なんて無意味なのよ、春香」
伊織「大いなる大義のもとに並べば、理性なんてまず始めに消し飛ぶもの」
伊織「文明は研鑽を重ねた理性の産物とか考えてるなら、唾棄しなさい」
伊織「平和も、戦争も、略奪も――すべて『本能』のみが成し得るものよ」
春香「あああぁっ……いやぁあああ……!!」
伊織「ねえ春香、何が悪いの?」
伊織「よく考えて。内なる声に耳を澄ませて」
伊織「アイツを監禁することの何がいけないっていうのかしら」
伊織「何かしらその屁みたいなトートロジーは」
春香「いけないからっ……そう、法律でっ、犯罪だから……!」
伊織「まだそんな『くびき』に縛られているの? 法律? 犯罪?」
伊織「ヒトが均整に見せかけて作ったものなんて、圧倒的な力の前では無力よ」
伊織「水瀬財閥が警察に圧力をかける……そんなちょっとした力学で崩れる」
春香「だとしても、プロデューサーさんが傷ついてる!」
伊織「傷ついて? ええそう……そうでしょうね」
伊織「あんたにはそう見えるんでしょうね」
春香「――!?」
伊織「でも、幸福って多角的に検証されるべきだと思うわ」
伊織「しかし彼自身は幸福であることを自覚できないように」
伊織「真の幸福は、一つの視点で、一つの瞬間で、一つの極では決まらない」
伊織「もしかしたら破滅の先にあるかもしれないじゃない?」
春香「いやぁあああ……!!」
伊織「じゃあ春香、私とプロデューサーの間を遮るものって何?」
伊織「プロデューサーが私の元に堕ちるのが真の幸福だとすれば」
伊織「誰がそれを止める権利を持ってるっていうのかしら?」
春香「おそらく誰も持っていないのではぁあああ……?」
春香「え……?」
伊織「これはあんたにとっても悪い話じゃないわ。むしろ幸せにしてあげられる」
伊織「だって私たちは同胞でしょう?」
春香「わたし……私、はっ……」
伊織「私があんたに望むことはたった一つ。簡単なことよ」
伊織「この部屋からしばらく出て行ってちょうだい」
春香「!?」
伊織「私とプロデューサーを少しのあいだ二人きりにしてほしいのよ」
伊織「その代わりあんたには望むものを与えるわ。私にはアイツ以外に価値なんてないし」
伊織「いくら積めば出て行ってくれる?」
春香「っ! バカにしないで!」
伊織「五千万? 一億?」
春香「そんな大きいお金のこと言わないで!」
伊織「ふふ、じゃあどうすれば出て行ってくれるの? 頭の悪い私に教えて?」
春香「私はそんな伊織になんて屈しない! プロデューサーさんを守るんだから!」
伊織「そう……そうなの」
伊織「じゃあやっぱり……『ケダモノ』らしく、本能に訴えかけるべきかしら?」
伊織「そう警戒しないで。こっちに近づきなさいよ。話ができないでしょ?」
春香「何する気――」
伊織「嫌ね。これよこれ」
春香「そ、れって」
伊織「メモリーカードよ。ある一部始終をおさめた記録」
春香「―――」
伊織「今春香が思い浮かべた内容で正解よ」
春香「ちがっ、わたっ」
伊織「これにはプロデューサーを監禁していた時の映像が入っているわ」
伊織「ほしくない? 欲しいはずよね? だってさっきまでありありと思い浮かべていた情景が」
伊織「この中に再現されているんだもの」
伊織「快楽のるつぼに堕ちたプロデューサーの姿が、ほとばしる煩悶が」
春香「ほしいわけない……!」
伊織「本当は私が愉しむために撮っておいたんだけどね」
伊織「特別に同志の春香にはプレゼントするわ。きっと最高の映像でしょうね」
春香「やめて……同志なんてっ」
伊織「常識だの理性だのいうベールを剥がされて喜悦にまみれた男を観る、極上の視覚体験」
伊織「そんな映像をおさめたメモリーカードがあんたは欲し……?」
春香「い……くない!」
春香「欲しくない!」
春香「当たり前!」
伊織「認めてしまえば楽になるのに。自分の内なる『ケダモノ』を」
春香「そんなものいない! 惑わされない!」
伊織「そう……残念ね……」
伊織「少し挑発しすぎたかしら。ここまで強情になられると困ったわ。どうしようかしら」
伊織「打つ手無しね。じゃあ、最後に一個だけ」
春香「………」
伊織「これに一億円もつけるって言ったらどうする?」
春香「そんな大きいお金のこと言わな――んむっ!!??」
伊織「ん、ちゅ……」
春香(何これ、私っ、キス? ……キスされてるの!?)
春香(しまった、距離をとることを忘れて、許してしまった――)
伊織「ちゅるっ、ちゅむ……」
春香(伊織、伊織っ! キスで私を手篭めにしようっていうの!?)
伊織「あむん……ちゅるる」
春香(こんな下劣な手段をとるなんて、相手も困窮している証拠!)
春香(無理やり引きはがしたっていいけど、私はアイドル、そんなことしない)
春香(正々堂々受けて立つんだから!)
伊織「ちゅりゅるっ」
春香(絶対にキスになんて屈したりしない!)
春香「んほおおおおおおキス気持ちいいのぉおおおおおおおお」
春香「………」
春香「……結局、部屋から追い出されちゃった」
春香「ごめんなさいプロデューサーさん……私、何て弱い……」
春香「『プロデューサーさんを守る』だなんて言っておいて」
春香「ううっ……ぅっ……」
春香「でも伊織の尋常ならざるテクニックが私の想定を超えていたから致し方ない部分もある」
春香「!?」
春香「いまの、プロデューサーさんの声!?」
春香「中でっ、いったい何が!」
ガチャンガチャン!
春香「くっ、開かない……当然ながら鍵が……!」
春香「今度こそ助けなきゃ、でもどうすれば」
春香「……思い返せ、私はアイドル」
春香「ヒトの感情を知らない『ケダモノ』なんかに負けちゃいけないんだ……!」
春香「冷静になれ、『理性的』に……」
春香「私はアイドル、こんな小さな壁につまずいてる場合じゃない!」
ガチャンガチャン!
春香「ひらけっ、開けぇっ!」
ガチャンガチャン!
春香「自分のやってきたことを今ぶつけるんだ!」
ガチャンガチャン!
春香「プロデューサーさんを助けるんだ!」
春香「ひらけっ」
春香「開けぇっ!!!」
春香「開いた――!!」
伊織「プロデューサーぁあ/// すきっ、だいすきぃ///」
伊織「ちゅっちゅ/// ちゅっちゅ/// いおりんのちゅっちゅ///」
春香「………」
伊織「いおりんはね、プロデューサーのことがだいだいだいだい……」
伊織「だぁあーーーいすきなのよぅっ、にひひっ/// ちゅっちゅ/// ちゅっちゅ///」
伊織「にひ……ひ……」
春香「………」
伊織「くっ……何故!? 施錠は完璧だったはずなのに」
春香「確かに施錠は完璧だった。でも伊織、最も単純にして重大な事実を見逃してない?」
春香「閉まった扉を開けるのは――鍵だよ」
伊織「それは……合鍵……!」
春香「ここ最近、私は早めに事務所に来て歌の覚えこみをしていたの」
春香「だから小鳥さんが融通して私に合鍵を渡してくれていたんだよ」
伊織「なんてこと……すごいガチャガチャ言わせて『開け』って連呼してたのに」
伊織「実際は鍵を回していただけなんて……!」
春香「積み重ねてきたものの証。自分自身を律してきた努力がくれた突破口」
伊織「理性が……」
伊織「あんたの『理性』が……私の『ケダモノ』を出し抜いたとでも言うの!?」
春香「伊織が思うならそうなんだよ」
春香「あなたは一時の感情に流されてアイドルを捨てた。私は捨てなかった、それだけ」
伊織「認めるわけないじゃないそんなの!!」
春香「伊織ィっ!!」
伊織「はるかぁッ!!」
伊織「まだ――まだやれる!」
伊織「まだ私は終わったわけじゃ――」
「いいや、終わりだよ」
春香「!!」
P「もう終わりだ」
P「伊織……お前の負けだよ」
伊織「なに、を……」
ガチャッ!!
ドタドタドタドタ!!!
伊織「ッ!?」
「警察だ! 水瀬伊織は手を上げろ!!」
伊織「いつの、間にっ……!」
伊織「やってくれるじゃないプロデューサぁあ……」
「動くな! それ以上動くと水瀬財閥の令嬢といえど血を見るぞ!」
伊織「何ですって?」
「水瀬伊織……監禁罪および淫猥接吻罪、瑕疵ツンデレ取締法違反により逮捕する!」
伊織「自分の言っていることを自分で認識できてるのかしらこの猿は」
伊織「その水瀬財閥が動けばアンタたちなんて……」
P「無駄だ、伊織」
伊織「何を言って……」
P「何故なら、お前を通報したのは」
P「他ならぬ君のお父様だからだ」
伊織「―――」
伊織「あのクソジジィッ……!!」
P「伊織、お前ほど才覚のある人物なら、焦らず落ち着いて事を進めれば何だってできたはずだ」
P「トップアイドルになることだって、一人の男を手に入れることだって」
P「ただお前に欠けていたのは、今この世界と向き合う姿勢」
P「夢や幻ばかりじゃなく、周りの小さな現実を見ることを教え忘れた、俺のせいでもあるがな」
P「………」
伊織「私がこうなったのは全部――!!」
「連行しろ」
伊織「うぁああああっ! 終わりじゃないっ、終わらせなんかしないわ!」
伊織「私を捕まえても何の意味もない! もう賽は投げられた! 『種』は蒔かれた!」
伊織「『ケダモノたちの世界』はすぐそこまで――」
伊織「プロデューサー! 春香! 見てなさいッ」
伊織「私は必ず――」
バタン……
P「………」
春香「プロデューサー、さん……」
P「あとで事情聴取があるぞ、これからも忙しくなる」
春香「あの、私っ」
P「そのメモリーカードはダミーだ。俺がすり替えておいた」
P「本物は……伊織の父親のもとへ」
春香「あ……」
P「伊織の言っていた通り、水瀬財閥にはもみ消されてしまう恐れがあった」
P「ならば逆に、そちらから押さえておく必要があると思ったんだ」
P「騒ぎにならないような根回しも済ませてあるんだろう」
P「俺にできることはそれまでの時間稼ぎだったんだが」
P「春香にほとんどその役目を負わせちゃって、俺は見守るだけだったな……すまん」
春香「いえっ、私こそ、ほんと情けなくて……」
春香「じゃあ、あの怖がりぶりは」
P「ああ、演技だよ」
P「アイツは俺が激しく反抗しない限り、強硬な押さえつけはしてこなかったからな」
P「やっぱり、根は優しいんだ」
春香「………」
P「なあ春香……俺は正しかったのかな」
春香「プロデューサーさん……」
P「もっとじっくり『対話』してやっていれば、違う救いもあったんじゃないのか?」
P「なあ、春香……」
春香「プロデューサーさん」
春香「二人で、手紙を書きましょう?」
春香「伊織が安心して帰ってこれるように、伊織がいない765プロでも元気にやっていますって……」
春香「だからあなたが、また事務所の扉を開けて来られる日を、楽しみに待っていますって」
P「ぅっ……うぅううっ……!!」
春香「いいんですよ……」
P「俺、はっ……ぐぅ、ぅううっ……!!」
春香「いいんです、プロデューサーさん……」
P「ぅうううあああっ!!」
春香「プロデューサーさん……」
春香「大丈夫……大丈夫ですからね……」
春香「今は、このまま……」
『認めてしまえば楽になるのに。自分の内なる「ケダモノ」を』
『春香、あなたそろそろ自分でも気がついているんじゃないの』
P「ぅうっ、ううぅっ……」
『本能の声を聞け』
春香「………」
『内なる無我を啓発しろ』『耳を澄ませて主体を明け渡せ』
P「……」
『ねえ春香、何が悪いの?』
P「春香……?」
『内なる声に』『本能を』
――『種』は蒔かれた
P「おい春香! 春香!? 大丈夫か――」
P「なんだ、何が……いつっ」
P「いたいぞ……腕……そんな、強く……」
P「―――」
P「やめっ、おい……や、やめてくれ、春香! 春香ぁあ!!」
P「うぁ……ああああ……」
「ぎぁああああああああああああああああああああ!!!」
「な、何をしているんだ、君っ、君!!!」
天海春香の身体からは微量の薬物が検出されたらしい
媚薬や興奮剤の一種――
おそらくは、水瀬伊織と唇を交わした際に摂取されたものだろう
しかしそれはほんのきっかけにすぎない
水瀬伊織が蒔いた『種』は、それ自体は大きな作用を持つものではないのだ
何故ならあらかじめ『土壌』がなければ、『種』は芽を出さないのだから
あなたの心の中にも、『ケダモノ』は潜んでいるのかもしれない……
END
極上のサスペンスだったと自分でも思います
せ、せやな…
深いようで原因はキスってところとかな…
乙
お、おう…
乙
Entry ⇒ 2012.10.27 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
怜「演技の練習……?」
怜「昨日の様子見た感じで言わせてもらうと、出来れば辞退したいんやけども……」
久「クラスのためだから」ニコ
菫「昨日は私と竹井だったから……今日は照と園城寺か」
照「あの、私は照明がしたいって何度も……」
怜「どうせそんなこと言うても聞いてくれんやろ。諦めた方がいいで」
久「ふふ、聞き分けが良い人って好きよ♪」
菫「まあ、園城寺には役者でもやらせないとサボりそうだし」
怜「うっ」
菫「照の照明なんて不安すぎるからな」
照「そんなぁ……」
怜(めんどいなぁ……)
照「演技なんて出来ないのに……」
菫「だから練習するんだろ」アキレ
久「委員長命令ってことで、二人とも頑張りましょう」アハハ
久「今回は園城寺さんから行ってみましょうか」
怜「はいよー」
久「宮永さんは長くなりそうな気がするからね」
菫「練習相手はどうするんだ? 私たちの誰かか?」
久「それでもいいけど……昨日みたいに通りがかった人でもいいかもね」
練習相手>>10
菫「人を待つにしてもなかなか人が来ないし、そもそもやってくれるかどうか分からないだろ」
怜「照か久あたりでええんとちゃうん? それか演劇部の誰か引っ張って来るとか」
久「うーん、そうねぇ……宮永さんか演劇部の誰かでもいいんだけど……」
照「……誰か来る」
「「えっ?」」
久「あ、そこのあなた!!」
竜華「は、はい!?」
久「素敵だわ! あなたみたいな綺麗な人が演劇を……って」
怜「竜華……」
竜華「ど、どないしたん竹井さん……? それに、怜……」
久「文化祭に向けて演劇の練習をちょっとね」
照「ちなみに清水谷さんは何の用でここに?」
竜華「ウチはゴミ捨ての帰りやで」
怜「どんだけ人気あるねん、このゴミ捨てルート……」
菫「私もよく使っているぞ? 三年棟からなら一番近いからな」
久「清水谷さん、そういえばあなたのとこのクラスも確か演劇だったわよね?」
竜華「よう知ってんなぁ竹井さん。って言ってもまだ内容も何も決まってないんやけども」アハハ
久「そうは言っても大体みんな何やるかくらいは考えてるんでしょ?」
久「清水谷さんは何するの?」
竜華「ウチは役者したいかなぁ。どうせ演劇やるんやったら、小道具とかよりかは面白そうやし」
久「ほうほう……」ニヤリ
竜華「演技の練習?」キラーン
怜(アカン、竜華興味津々や……)
久「実はねー……」
―――――――――――
竜華「なるほど……面白そう!」
久「でしょ?」フフン
菫(ここまで乗り気な人間も初めてだな……)
久「ってことだから園城寺さんの練習に付き合ってもらえない?」
久「二人とも幼馴染みで仲も良いし、互いに良い練習になると思うんだけど」
竜華「うん、別にええよー。断る理由がないわ」ニッコリ
照(断る理由がない!?)
怜(まあ、照とかとは別の人種……でもないか)
竜華「1年生の時はほぼ病院で、2年生の時はやさぐれてて……学校の行事なんか参加する素振りすら見せてなかったから……」ウルウル
怜「な、なんでそこで竜華が泣きそうになってんねん……」
竜華「ウチめっちゃ心配やったんやで?」
竜華「暇があれば年中保健室行って、クラスではウチくらいとしかロクに話さんくて……」
照「怜っと不良だったんだね……」
怜「不良言うな。ってか昔の話すんのやめてくれへんかな……?」
怜「そない嫌な思い出ってわけでもないけども、掘り返されるのはちょっと……」
竜華「三年なってウチとクラス離れて、だんだん学校に馴染んで来てた怜がまたやさぐれてまうと思うと、夜も眠れんかったから……」
怜「りゅ、竜華。ホンマに恥ずかしいからやめて……」
久「園城寺さんの保護者なのは相変わらずね」アハハ
菫「こんなにも思ってくれてる人がいるのに、どうしてお前は……」
竜華「どういうこと弘世さん? もしかして、怜がまた迷惑を……」
菫「掃除はサボるしゴミ捨ていかないし、授業中はたまに消えるし体育に関してはまったく参加する素振りがないし……」
竜華「怜……?」ゴゴゴ
怜「ホンマにやめて委員長……」
照「あと、この前女たらし序列2位になった」
竜華「女たらし? それはどういう……」
怜「ひ、久。そろそろ始めよや。みんなも本来の目的思い出して」
菫「くく、まるで三者面談だな……」
照「怜は相変わらず清水谷さんには弱いんだね」
久「そんじゃまあ、園城寺さんの要望通り始めましょうか」
久「時間も勿体ないしね」アハハ
竜華「……怜。あとで話訊かせてや」
怜「うぅ……」
―――――――――――
怜『ただいまー』
竜華『……』
怜『いやぁ、今日も疲れたわ……竜華、今日のご飯なにー』
竜華『……』
怜『竜華……?』
竜華『……』
怜『どないしたん竜華? 無視せんといてや。もしかして体調悪かったり』
竜華『……怜。これなに』
怜『えっ?』
竜華『この髪の毛、ウチのちゃうよな……?』
竜華『怜の髪の毛でもないよな……? だってこんな赤い髪の毛、あり得へんもん……』
怜『りゅ、竜華。待って。落ち着いてや。それは友達をここに呼んだときのヤツで……』
竜華『ウチに内緒で誰かここに呼んだってこと……?』
竜華『ここ数ヶ月でそんなこと知らされてないんやけど……』
怜『ご、ごめんな。竜華がおらんかったときに、この家で遊ぼうってことになって、たぶんそんときに……』
竜華『誰か呼ぶ時は互いにちゃんと知らせような、ってゆったやん……』
竜華『この前も早く帰って来るって行ったのに結局帰ってこんくて、また朝帰りやったし……』
竜華『なんで約束守ってくれへんの……? 付き合う前はしっかり守るって言ったてのに……』
怜『それに朝帰りは大学での付き合いとかで友達の家に泊まる事も多いから、しょうがないねん……この前も言ったやろ?』
竜華『そやけど……』
怜『心配させてホンマにごめん。でも、竜華が思ってるようなことは絶対にないから』
怜『ウチを信じてや。疑われるんは……ちょっと辛いわ』
竜華『と、怜……』
怜『ウチが好きなんは竜華だけやのに、信頼されてないなんて……』
竜華『そ、それは怜が最近怪しいことばっかしてるから……!』
怜『付き合いで友達の家泊まったり、知り合いをここに呼ぶことが怪しいことなん……?』
竜華『そ、それは……』
怜『ちょっと疑心暗鬼すぎると思うで……?』
竜華『そんなことないよ……だって怜、帰って来たらすぐお風呂入ったり、ウチと一緒におるのに携帯で誰かとメールしてたり……』
怜『……』
竜華『そういうことが日常的にあるんやから、ウチやなくても疑うよ……』
竜華『その友達のこと教えてって言っても、言葉濁すだけで教えてくれへんし……』
怜『竜華……』
竜華『ウチやって辛いよ……怜が浮気してるなんて考えただけで耐えられへんもん……』
竜華『大学で他の女の子と一緒におるの見るだけでも辛いのに、そんなん……』
竜華『と、怜……?』
怜『最近あんまし一緒にいてなかったもんな……ごめんな、寂しい思いさせて』
竜華(え、演技でも怜に抱きしめられてるって……なんかドキドキする……)
怜『これからは竜華のために早く帰ってくるし、一緒におる時間もいっぱい増やすようにするから……』
竜華『怜……』
怜『ウチが好きなんは竜華だけやで』
竜華『う、ウチも……ウチも怜のこと好き……世界で一番好き……』
菫(なんだこの脚本)
久「ふふ、ここからが面白くなるところよー」
菫「お前が一筋縄でいくような台本を用意するなんて思ってはいないが……」
怜『そうや竜華、久しぶりに膝枕してや。ちょっとしんどい話して疲れてもうた……』
竜華『あっ……大丈夫? ごめんな、ウチのせいで……はい、頭貸して』
怜『ありがとー……やっぱり竜華の膝枕は気持ちええな……』
竜華『またそんなこと言って……でも、こうするのホンマに久しぶりやね……』
怜『最近は大学でも家でも一緒におる時間少なかったからな……』
竜華『でも、これからは高校の時みたいにこうやって過ごせるんやんな?』
怜『うん。みんなには悪いけど、竜華の方が大事やから……』
竜華『ふふふ、もう、そんなこと言って……』
竜華『別に寝てくれていいでー。ウチもこうやって怜の頭撫でるの好きやし』ナデナデ
怜『そんじゃお言葉に甘えさせてもらうわ……良い時間になったら教えて……』
竜華『はいはい。おやすみ』
怜『……』
竜華『……』
竜華『……怜? 寝てもうた?』
怜『すぅ……すぅ……』
竜華『ふふ、ホンマ、怜は可愛いなぁ……』
竜華『ウチのこと大好きって言ってくれたし、高校から付き合ってるんやし……浮気なんてあり得へんよな』
竜華『……あっ、怜の携帯……』
竜華『と、怜? 起きてる?』
怜『すぅ……むにゃむにゃ……』
竜華『ね、寝てる、よな……』
竜華『……う、ウチら恋人同士や……携帯見るくらい、ええよな……?』
照「し、清水谷さん……」
久「宮永さん、これ演技だからそんなにも緊迫しないで」アハハ
菫(リアリティがありすぎるんだよ……)
怜『うーん……りゅうか……』
竜華『……ご、ごめん怜、ちょっとだけやから……』
竜華『……』スッ
竜華『いっぱいあるけど誰が誰か分からへん……』
竜華『着信履歴は……』
竜華『ウチ、○○さん、ウチ、ウチ、××さん、ウチ……』
竜華『ん……? この宮永照って……誰やろ……?』
照「!?」
久「くくく……」
菫「竹井……」
竜華『なんで、怜からこんなにもいっぱい電話かけてるんやろ……?』
竜華『ウチ、こんなにもいっぱい怜に電話かけられたことなんて……』
竜華『そ、そうや……メールボックス見れば……』ピッピッピ
竜華『!』
竜華『ロック、かかってる……』
怜『んぅ……すぅ、すぅ……』
竜華『怜……どういうこと……? 宮永照って……誰……?』
照「こ、怖い……」ブルブル
菫「演技上手いな……本当にそれっぽく見えるぞ
久「感情移入しちゃってるのかもね」アハハ
菫「?」
ブーブーブー
竜華「きゃあ!?」
竜華(こ、こんなところまで台本通りにするんや……)
竜華『ちゃ、着信……しかもこれって……』
怜『ん、んぅ……竜華……?』
竜華『!』
怜『ウチの携帯鳴ってない……?』
竜華『だ、誰かから着信きてるで? はい』
怜『ありがとう……誰やろ……』
怜『……』
怜『ごめん、ちょっと』スッ
竜華『えっ? あ、うん……』
怜『どないしたん? ……うん……いや、大丈夫やけど……うん……』バタン
竜華『……さっきの着信、宮永照ってなってた……』
竜華『怜……?』
照「な、なんで私の名前なの?」
久「いや、リアリティ出るかなって……ふふっ」
菫「照……お前、まさかとは思うが……」
照「ふ、二人とも何言ってるの……? な、なんか清水谷さんこっち見てる……」
久「くくく……」
竜華『怜、なんの話してるんやろ……電話、ちょっと長いし……』
竜華『……盗み聞きしてみよ』スッ
怜『……うん、え? そんなことないよ……』フフッ
竜華『怜、あんなにも楽しそうに……』
怜『うん……ふふ、なんやそれ……急にどうしたん? なんか変やで』
竜華『……』
怜『もう……いつも言っとるやん……好きやで、照』
竜華『!!』
怜『今、彼女と一緒におるから……うん、ごめんな。えっ? もう一回? ふふ、今日はホンマにどないしたん……?』
竜華『と、き……』
竜華『……』
怜『うん……分かってる……もう、だから今彼女と一緒に……』
竜華『怜……?』
怜『!!』
竜華『どういうことなん……?』
怜『りゅ、りゅうか……!?』
竜華『さっきのなに……? ホンマに好きなんは照だけって……』
怜『ち、違うんや竜華……こ、これは……』
竜華『照って誰……?』ギロ
怜『ひっ』
怜(え、演技迫真すぎるんやけど……)
久「すごく良いわね、ぞくぞくするわ……玄さんもそうだけど、ここまでの逸材が……」
菫「相手が園城寺だからあそこまでなってるんだと思うぞ……止めなくて大丈夫なのか……?」
怜(ってここからアドリブ!?)
怜「て、照は、その、竜華が知らんウチの友達で……」
竜華「トモダチ……? ってことは、あの赤い髪……」
怜「あっ」
竜華「そっか……そいつがここに来たんやな……」
怜「お、落ち着いて竜華……違うんや、これは、誤解で……」
竜華「何が誤解なん……怜、さっきハッキリと言ってたよな……そいつに好きやって」ユラユラ
怜「りゅ、竜華ぁ……」
怜(ホンマに怖い)
怜「えっ……?」
竜華「ウチと怜の大切な場所で……何したん……?」
怜「べ、別に何もして……」
竜華「嘘つかんとって!!」
怜「ひっ」
竜華「寝たんやろ……?」
怜「……」ガクガクガク
竜華「えっちなことしたんやろ……!? そいつと二人で……ウチらのベッドで……!!」ギリリ
怜「りゅ、竜華……これ、演技のれんしゅ……」
竜華「……怜が汚れてもうた」
怜「は……?」
竜華「ウチが、綺麗にせな……汚された怜のこと、綺麗に……」
怜「ひゃっ……!?」
竜華「怜……怜……」サワサワ
怜「や、やめてや竜華! これ、演技っ……」
竜華「綺麗にせな……体も、唇も……全部……」チュッ
怜「きゃあ!? 」
怜(竜華、今、本気でキスしようと……!?)
竜華「なんで避けるん……? いつもしてることやのに……やっぱりその女に……」
怜(め、目にハイライトが……)
怜「だ、誰でもいいから助けて!! 今の竜華ホンマにやばい!!」
久「よし、行って来なさい宮永さん!」
照「えええぇ!?」
菫「園城寺を救えるのはお前だけだ」ボウヨミ
照「菫までなんでそんなこと!?」
久「だいじょーぶだって。所詮お遊びの演技なんだから。ほら、これも練習だと思って!」ドンッ
照「きゃあ!?」
照「と、怜……」
怜「きゃっ……ちょ、竜華どこ触って……!」
竜華「怜……好き……怜……」サワサワ
怜「あっ……た、助けて照!!」
竜華「照……?」
照「ひぃ!?」
竜華「アンタが、怜を唆した女か……」
久「宮永さん! 盛り上がってるんだから空気読んで!」
照「ええぇ!? え、えっと……と、怜を離して!」
照「ひぃぃ……!」ガクガク
怜「て、照! 頑張って! あの畜生二人助ける気なしや!」
菫「お前に言われたく無い」
久「今最高に面白いからね♪」
竜華「なんなん……? 怜はウチの恋人なんやで……? 付き合ってるんやで……?」
竜華「それをぽっと出のアンタが何をする気なん……?」
照「わ、悪いのは全部私! 怜は何も悪く無い! だから離してあげて!」
怜「照……」
竜華「悪いと思ってるんやったら今すぐウチらの前から消えろ……!」
照「」
怜(アカン)
菫(清水谷が演技なのかネジが飛んだのかが分からない……)
照「そ、そういうわけにはいかない! 私がいなくなったら清水谷さんは怜に酷いことする!」
竜華「酷いこと……? ウチらが愛を確かめ合うのが酷いことや言うん……?」
照「む、無理やりはよくない」
竜華「ウチと怜は恋人なんやで……? 恋人同士がこういうことして何が悪いん……?」
照「と、怜は嫌がってる! 私としたときはそんなんじゃなかった!」
竜華「は……?」
怜「ノリに任せて適当なこと言うな!」
竜華「やっぱり、二人で寝たんやないか……ウチの怜に……ウチの怜にそんなこと……!!」
照「あわわわ……」
照「ひぃぃぃ!?」
怜「や、やめて竜華! これは演技であって、フィクションで……」
竜華「なんで怜……? なんでその女庇うん……?」
怜「庇ってないから!? ただ目覚ませと言ってるだけで……」
竜華「ウチよりその女が大事なん……? ウチら、中学の時からずっと一緒やったのに、なんで……!!」
照「と、怜は愛が重い清水谷さんのこと面倒臭いって言ってた!」
怜「おいコラ!!」
竜華「面倒臭い……? う、嘘やんな怜……? そんな、そんなこと……」
久「くくく……清水谷さんも宮永さんも最高……」
菫(アイツは本当に……)
照「わ、私は怜に清水谷さんみたいな人がいるなんて聞いていなかった!」
照「怜に言われるがまま誘われるがまま、その、そういうことしちゃって……」
怜「照……頼むから黙って……」
照「怜、私と会うたびに清水谷さんの悪口ばっか言って……ご飯がまずいとか早く別れたいとか……」
菫(こいつが一番酷いな……)
竜華「嘘や、そんなん、嘘や……お前の言うことなんか、そんなん……!!」
照「とりあえず私は謝ります! 本当にごめんなさい! だから、あとは怜とゆっくりしていって……」
怜「お前なにしにきたねん!!」
竜華「怜……嘘やんな……? ウチのこと重いとか、別れたいとか……」
竜華「好きって言ってくれたやん……竜華だけやって……言ってくれたやん……!」
怜「お、落ち着いて竜華……これはフィクションで、ウチはそもそも竜華と付き合ってないし……」
竜華「付き合って、ない……?」
竜華「ウチと怜が、付き合ってない……」
竜華「全部ウチの勘違いで、怜が好きって言ってくれたんも一緒に住もう言ってくれたんも全部嘘で……」
怜「いや、ウチそんなこと一言も言ってないんやけど……」
竜華「……怜」
竜華「一緒に死のう?」ニッコリ
怜「ひぃぃぃ!?」
久「清水谷さん! パス!」ポイッ
カランカラーン
竜華「……そうやん……怜がウチのこと好きやないんやったら……全部嘘なんやったら……」スッ
竜華「死ぬしかないやん」ギラリ
怜「」
久「小道具に決まってるでしょ。本物なんてこんな場所にある訳ないじゃない」アハハ
照「本当に怖かった……」グスン
菫(こいつもちゃっかり帰って来て……)
怜「りゅ、竜華……ホンマに、目覚まして……」ガクガクガク
竜華「怜……これで一生一緒におれるな……」ユラユラ
竜華「二人一緒に……幸せに……」
怜「いやや……やめて……竜華、お願いやから……」ナミダメ
竜華「大好きやで怜。ウチもすぐに行くから」ドスッ
怜「りゅう、か……」
怜「……」バタッ
菫「んなわけないだろ」
久「いやー、迫真の演技だったわ。これにて終了ね」
竜華「……ふふ、くふふ……」
怜「……え。りゅ、竜華? ってウチ、別になんとも……」
竜華「怜、演技やのにあんな本気で怖がって……くふふ……めっちゃおもろいお腹いたい……!」
怜「……」ポカーン
竜華「はいこれウチの台本。ここ読んで」
怜「浮気をした恋人を刺して終了って……」
竜華「ウチの演技そんなに上手かった?」
竜華「本気で狼狽える宮永さんと怜が面白くて、途中で何回か笑ってたしまいそうになってたんやけど」クスクス
怜「はぁ……」
竜華「ふふ、おおきに♪」
久「いや、改めて。素晴らしい演技だったわ清水谷さん。演劇部入らない?」
菫「竹井と遜色ないレベルだったな……私も演技なのか本気でおかしくなったのか分からなかったよ」
竜華「もう、そんな褒めても何も出えへんで?」ニコニコ
照「あ、あれが、演技……」
竜華「でも、怜のことやから感情移入出来ただけやと思うで?」
怜「それはそれで怖いんやけども……」
菫「電話で浮気相手と話すシーンは、本当に誰かと話しているようだったしな」
竜華「良かったやん怜。二人とも褒めてくれてるで?」
怜「喜ぶ体力も残ってないわ……」
久「さて。練習付き合ってくれてありがとうね、清水谷さん」
竜華「いえいえ。ウチもめっちゃ楽しかったし、こっちがお礼言う方やで」
照「清水谷さんのクラスの劇、すごく楽しみです」キラキラ
菫「こんな天才がいるんだ。私たちもしっかり練習しないとな」
竜華「もう、ホンマお上手なんやからー」ニコニコ
怜「はぁ……ウチはちょっと休ませてもらうわ……」
竜華「膝枕する?」
怜「……お願い」
怜「」
―――――――――――
久「さて、ラスト宮永さんね」
照「わ、私はさっき練習参加したし、もう今日はこれくらいで……」
菫「いいわけないだろ」
照「あうぅぅ……」
怜「みーんな辛い思いしてるんやから、照もやってもらうに決まっとるわ」
竜華(さっきの宮永さんのアレ根に持っとるんかな……)アハハ
久「さーてお相手は……ふふ、誰になるやら。楽しみだわー」ワクワク
>>149
―――――――――――
菫「まあ、分かってはいたが……」
怜「誰もけえへんな」
照「こんなにも時間が経ったのに誰も来ない。これはもう今日は終わろうって神様が……」
菫「んなわけあるか。それに時間が経ったとは言ってもまだ10分くらいしか経ってないぞ」
久「でもこのまま待ちぼうけってのもアレだし……来ないならこっちから呼びましょう」キュピーン
照「よ、呼ぶって……」
竜華「どういうことなん竹井さん?」
久「まあ見てて♪ ……あ、もしもし? 今大丈夫? えっとね……」
菫(一体誰に電話を……)
怜(うーん。なんか嫌な予感が……)
久「これでよし」
竜華「誰に電話してたん?」
久「優しい後輩♪」
菫(一声かけただけですぐに人を動かせるなんて……本当に恐ろしい……)
照「だ、誰が来るの?」
久「私たちみんなが知ってる人」フフン
竜華「ウチらが知ってる人……同級生の誰か?」
久「ふふ、違うわ」
菫「3年以外で私たち全員が知ってる人なんて、教師くらいしか……」
怜(教師? ま、まさか……)
憩「大怪我した人はどこにおるの!?」ガラッ
久「きたー」
菫「荒川先生……」
憩「へ? 宮永さんに弘世さん……それに……」
久「うふふ……」
怜(よりによって……)
竜華「はは、どうも……」
憩(こ、この面子はなに……? 見事なまでに問題児だらけなんやけど……)
久「こんばんは、荒川先生。演劇しましょう」
憩「……な、なに言うとるの竹井さん?」
憩「ウチは大怪我したって人がおるって聞いたからここまで飛んで来たんやけども……」
照「本当に早かった。久が電話し終えて30秒後くらいにきた」
竜華「保健室の先生の鏡やね」アハハ
菫「先生、本当にすみません……実は……」
―――――――――――
憩「帰らせてもらいます」ツーン
菫(そりゃそうだ)
久「ま、待ってください先生」
久「確かに嘘をついたのは謝りますが、これにはさっき説明したとおり事情があって……」
憩「クラス演技の練習に付き合わすために養護教師呼び出すなんて言語道断です。ほとんどイタズラやないの」ジトー
久「あはは……」
憩「本当やったらちょっと説教するところやで?」
菫「まあ、確かに非常識的だな」アキレ
怜「そうやな。荒川先生も忙しいはずやし、ここは帰ってもらお。あかんあかん」
照「先生にやらせるなんてダメ」
久「みんながそんな常識的な反応するなんて……」
憩「し、清水谷さん……?」
久「そうよね清水谷さん! 学校一の人気教師荒川先生が演技するところなんて、このチャンスを逃せば一生見れないものね!」
菫「そう言われれば確かに……」
照「気になる……!」
怜「な、何言うてんのみんな。保健室の先生ってこう見えて忙しいんやで?」
怜「こんなくだらんことに付き合わせたらアカンに決まってるやろ」
照「不良の怜がまともなこと言ってる……」
菫「明日は槍でも降るのか……?」
憩「ウチも驚きやわ……」
怜「どういうキャラやねんウチは……」
憩「確かに……将来保健室で働きたいとか言い出すほどウチのとこに入り浸ってた頃のこと考えるとだいぶマシにはなったけども……」
照「怜……」
怜「おのれらぁ……!」
久「園城寺さんの素行不良の話題は置いといて」アハハ
久「お願い出来ませんか荒川先生? これも生徒のためだと思って」
憩「せ、生徒のためとかずるいこと言われても出来んものは出来ません」
竜華「先生忙しいんですか?」
憩「いや、忙しいってわけではないけども……」
照「暇じゃないと30秒でここまで来れませんよね」
憩「いつもは宮永さんらのおかげで忙しいんですけどねー。今日は大人しいから暇ですわー」ジトー
久「あはは……」
久「まあ、交渉してる感じだとねー……」
菫「ここはもう諦める方が早いと思うんだが……」
久「うーん……穏便に済ませたかったんだけど、しょうがないか……」
菫「た、竹井……?」
久「荒川先生、ちょっちナイショの話が」チョイチョイ
憩(内緒の話て……)ハァ
憩「……なんですか、竹井さん」
久「荒川先生って……園城寺さんとすごく仲良いですよね」ボソッ
憩「!?」
久「ただならぬ関係だという情報をつかんでいるんですが……」ニヤ
憩(こ、この子はホンマに……!)
久「本当にそれだけですか? 聞くところによると、およそ教師と生徒がするようなこととは思えないことをしているらしいですが……」
久「ここにこんな写真が……」ピラ
憩「!!」
竜華「二人とも、さっきから何の話してはるの……?」
菫(まさか竹井のヤツ……)
憩「な、なんでもあらへんよ? すぐに終わるから」アハハ
憩「……その写真渡しなさい」ギロ
久「もちろん等価交換、ですよね?」ニコ
憩「はぁ……ホンマ、あんたには一回痛い目遭わせなあかんらしいな……」
久「もう、そんなこと言って。痛い目なら常に遭ってますよ♪」
久「ふふ、ありがとうございます……みんな、荒川先生やってくれるって!」
照「えっ?」
竜華「すごいすごい!」
菫「本当ですか……」
怜(憩……ネタは分からんけど脅されたか……)
憩「で、演技の練習って言っても具体的になにしたらええの」ハァ
久「簡単に説明すると、宮永さんと一緒に寸劇をしてもらいます」
憩「宮永さんと?」
照「よろしくお願いします」キリッ
怜(なんでやる気になってんねん……)
久「途中から台詞がなくなるんで、そっからはアドリブで」
憩「エチュードみたいな練習しとるんやね……」
久「流石先生、博識ですね」
憩「まあウチもテレビで軽く見たくらいやけど……」
竜華「ウチ、先生の演技とかめっちゃ楽しみわ!」
菫「確かに興味深いな……」
久「私は宮永さんがこの脚本でどんな演技するのかが気になるわ」
憩「当事者置いてけぼりでえらい盛り上がって……」
照「緊張するけど……頑張る」
菫(照が意外と演技上手そうだな……)
怜「憩が演技なぁ……」ボソッ
憩「ちょ、ちょっと!」
久「ふふ、それじゃあ、早速スタートで」
――――――――――――
コンコンコン
照『どうぞ』
憩『失礼します、宮永先生』
照『……荒川さん』
憩『まだ働いてはるんですか? もう勤務時間も過ぎてるんですから、お帰りになった方が……』
照『……まだ書類仕事が残ってるから。それを終わらせたら、帰ろうと思う』
憩『終わらせてからって……昨日もそんなこと言って結局病院に泊まってましたやん……』
憩『あんまり無理せんとってください。宮永先生が倒れたりしたら、患者さんにしわ寄せが来るんですから』
照『……私は倒れたりしない』
憩『5日も家に帰ってないんですよ……? 顔色も悪いし……ホンマに無理せんとってください』
憩『3時間って……』
照『それに、夜は急患が多い。人が足りなくて夜勤の人たちだけじゃ手が回らなくなってるときもよくある』
照『緊急のときに対応出来る人間がいないと……人命に関わることだってある』
照『そんな命を救うためにも、私がこうやって待機しておかないと……』
憩『それは確かに、そうですけど……』
照『それに、叩き起こされるよりかは起きている方がマシ。だから心配しないで』
憩『宮永先生……』
照『ナースをこんな遅くまで働かせるわけにはいかない。早く帰って休んで』
照『荒川さんは今日は休みのはず。ここにいることはまずおかしい』
憩『宮永先生がこんなにも遅くまで働いてるのに、ウチが休める訳わけありません……!』
照『……私と荒川さんじゃ立場が違う。これは上の人間の務め』
憩『そんなこと……』
照『帰ってください。上司命令です』
憩『……!』
照『お願いします。荒川さん』
憩「ウチは……先生のお力にはなれないんですか……?』
照『……あなたが辛そうにしている姿は、見たくないです』
照『自分では気付いていないかもしれませんが、荒川さんも相当に顔色が悪いです』
照『まだまだ経験の浅いあなたには……夜勤の仕事は負担が大きすぎる』
照『私としては、あなたに倒れられる方がよっぽど困ります』
憩『先生……』
照『だから、無理をしないでください』
照『休める日にはしっかり休んで、遊ぶときにはたくさん遊んで息を抜いて……』
照『そして、働くときには一生懸命働いてください』
照『患者さんのためにも……私のためにも』
憩『……』ウルウル
憩『駄々をこねて、勝手な事をして……申し訳ないです』
憩『ただ……ここに、宮永先生と一緒におるだけでもダメですか……?』
憩『……!』
照『本当なら、今すぐにでも帰って欲しいですけど……』
照『……言う事、聞いてくれそうにないから』ハァ
憩『宮永先生……ありがとうございます……』
照『こんなところで寝ても、疲れなんて取れないのに……あなたも物好きですね』
憩『……宮永先生が、好きなんです』ボソッ
照『えっ?』
憩『な、なんでもありません! それじゃあ、何か用があったら声かけてください!』
照「了解です。それじゃあ、ゆっくり休んで』フフ
憩『は、はい……おやすみなさい……』
照『おやすみなさい』ニコッ
憩『宮永先生のベッド……ふふ……』
久「緊急病棟で働く外科医とナースよ」フフン
菫「照に白衣まで着せて……」
菫(似合ってるのがまたなんとも……)
竜華「荒川先生も本物のナースみたいやし、話に引き込まれるわ……」
照『荒川さん……荒川さん……』ユサユサ
憩『んぅ……ふぁ……?』
照『起きてください。そろそろ勤務時間ですよ』
憩『ふぇっ……う、うそ、もうそんな時間……!?』
照『はい。あっという間に朝です』
憩『ってことは……宮永先生は……!』
照『まあ、一日くらい寝ないってのは、よくあることですから』
憩『そ、そんな……ウチのせいで……!』
照『深夜に来た急患の対応とかもしてましたし……今日は元から眠れない日した』
憩『宮永先生、ダメです……こんな生活繰り返してたら本当に……』
照『仕事ですから。生き甲斐でもあります』
照『この生活が命を縮めていたとしても……それで死ぬなら本望です』
憩『そんなっ……死ぬなんて、言わんとってください……』
照『お、大げさに言っただけですから。だから、その、そんな顔しないで……』
照『それに、今日の昼頃には仮眠も取れますから……』
照『ほら、呼ばれてますよ荒川さん。早く行ってください』
憩『宮永先生……』
照『命に関わる仕事です、気を引き締めて。それじゃあ』テクテクテク
憩『このままじゃ……いつかホンマに……』
久「フィクションなんだから、あんまりツッコミ入れ過ぎるのは無粋よ?」アハハ
竜華「そろそろ一波乱ありそうやね……!」
菫(清水谷もこういう点は照に似ているな……)
憩『失礼します……宮永先生、いますか?』
照『……』
憩『宮永先生?』
照『すぅ……すぅ……』
憩『寝てる……昼頃に仮眠取る言うてたけど、やっぱり……』
照『……』
憩『全然眠ってないんやろうな……死んだみたいに寝てる……』
憩『仕事には熱心で、院内での信頼も厚くて……患者さんからは好かれてて……』
憩『すごく、綺麗で……』
怜(な、なんやねんこの雰囲気……ま、まさか……)
竜華「……」ドキドキドキ
憩『宮永先生……』ギュ
憩『好きです……宮永先生……』ギュウゥ
照『ん……』
怜「……なんやねんこの脚本」イライラ
久「ふふ……」
竜華「うわぁ……職場恋愛や……甘酸っぱぁ……」
照『すぅ……ん、んぅ……』
憩『ずっと、このまま……』
憩(……宮永さん良い匂いするなぁ)スンスン
照(む、胸があたって……)ドキドキ
憩(っとアカンアカン。話進めな……)
憩『……宮永先生、起きてますか?』
照『すやすや……』
憩『寝てます、よね……』
憩『……』
照(な、なにされるんだろ……)
照(……? 間が長いような……)
憩『……宮永先生。き、キス、してもええですか……?』
照「っ……」
照(き、キス……)
憩『ウチ、ずるいですよね……寝てる宮永先生に、好き放題して……』
憩『でも、ごめんなさい……我慢、できないんです……』
憩『宮永先生……』スッ
照(目、閉じてるから分からないけど……け、気配が……!)
憩(……この子、黙ってたらめちゃくちゃ美人やよな……)
憩(カッコいい系というか、凛としているというか……)
憩(な、何考えとるんやウチは! 生徒に対してこんなっ……でも、本当はこの人年上で……)ドキキドキ
久「くくくっ……」
竜華「き、キス、してまうんかな……」
菫(荒川先生……?)
照「あ、あの……先生……」ボソッ
憩「ご、ごめん……話進めるな」
憩『……んっ』チュッ
照「……!」
照(ほ、ほっぺた……)
憩『う、ウチ、一体なにを……』
照『うぅん……荒川、さん……?』
憩『わわっ……』
憩『ま、まだまだ大丈夫です! お、起こしてしまってごめんなさい……』
照『そう、ですか……それならまだ眠れる……』
照『目覚ましが指定した時間より早く作動したような気分です……』アハハ
憩『ごめんなさい……宮永先生、疲れてはるのに……』
照『気にしないでください……ところで、何か用でも……?』
憩『……!』
憩『ほ、ホンマにごめんなさい! 失礼します!』タタッ
照『あっ……』
照『荒川さん……』
怜「延々とイチャついてるの見せられるってあんましいい気分やないんやけど……」
久「うーん、今で半分くらいかなー……アドリブ次第ではもっと長くなるかもだし」
竜華「荒川先生の片思いが実るんか気になるわ……!」
菫「しかし、照のヤツ普通に役をこなせてるな……」
怜「普段とあんまし変わらん感じやからやろ……てか医者はいつの間に敬語キャラなっとんねん……」
竜華(怜イラついとるなぁ)アハハ
照『まさかあなたの問診をすることになるとは……』
憩『すみません……お手間かけさせてもうて……』
照『別に大丈夫です。こういうことがまったくない、という訳でもないので』
照『足、見せてください』
憩『はい……』
憩『考え事してて、ぼーっとしてた時に……階段、踏み外して……』
照『しっかり者の荒川さんらしくないです……何か悩み事でも?』
憩『えっ……そ、それは……』
照『私には言えないこと?』
憩『っ……』
照『そうですか。……なら、言わなくていいです』
憩『……』
照『軽く固定しときますね。大事を取って、3日は松葉杖を使ってください。もちろん、仕事も休んで』
憩『宮永先生は……気にならないんですか?』
憩『……ウチの悩み事』
憩『……!』
照『でも、無理に聞き出そうとは思いません』
憩『……宮永先生。少しだけ、質問してもええですか?』
照『質問……なんでしょうか?』
憩『……恋人とか、いますか?』
照『……えっ?』
憩『それか、好きな人、とか……』
照『すみません……何の話でしょうか……?』
憩『……ウチの悩みごとに関係ある話です』
憩『それで……どうなんですか? おるんですか? そういう人……』
憩『!』
照『学生時代から勉強ばかり。医師になってからも恋愛をする暇なんて無くて……すみません』
憩『な、なんで宮永先生が謝るんですか!?』
照『その……私は恋愛相談を受けられるような人間じゃないから……』
憩『そ、そんなこと……』
照『そういう話なら、私なんかよりもっと適任な方がいると思いますよ……』アハハ
照『少なくとも、今まで恋愛経験のない私よりかは確実に……』
憩『こんなにも素敵な人やのに、恋愛経験ないなんて……』ボソッ
照『あ、荒川さん?』
憩『もっと、好きになってしまいました……』
照『……えっ?』
照『こ、こんな年にもなって、恥ずかしいですが……』
憩『ってことは、そういう経験も……』
照『さ、察して欲しいです……』
憩『すみません!』
憩『でも、嬉しいです……』ボソッ
照『あの、私の恋愛経験と荒川さんの悩み事になんの関係性が……?』
憩『……ま、また今度お話させていただきますね! ありがとうございました!』
照『あっ……』
照『一体なにを……?』
怜「医者なるってことは大学は確実に出とるから、22以上で……」イライライラ
久「お、園城寺さん。これフィクションだから落ち着いて」
竜華「でも、ホンマにあんなお医者さんおったら素敵やわ……」
菫「アイツに人命なんて間違っても任せられないがな……」
憩『み、宮永先生』
照『どうしました荒川さん? なにか御用ですか?』
憩『明日は、その……お休みですよね?』
照『そうですね……久しぶりに家でゆっくりしようと思います』
憩『もしよければ……今日の夜、一緒にお食事でもどないですか……?』
照『私と……?』
憩『ほ、他に予定があるんやったら大丈夫です! もしよろしければの話で……!』
憩『そ、そんなことありあません! 宮永先生ほど素敵な人なんて他には……あっ。う、ウチは何を……!』
照『ふふ、荒川さんは相変わらず面白い方ですね……』
憩『あぅぅ……』
照『それじゃあ、今日の夜、よろしくお願いします』
憩『は、はい!』
怜「……なんやねんこれ。少女漫画か」
怜「どうせこのあとどっちか酔っぱらって家送るついでにそこに泊まる事になってー、とかっていうべったべた展開やろ……」
竜華「と、怜落ち着いて……」アハハ
久「園城寺さんが暗黒面に堕ちかかってる……ふふっ……」
菫(とっくの昔にお前と一緒に堕ちてるだろ……)
憩『だ、大丈夫ですか宮永先生……?』
照『大丈夫じゃ、ないかもです……』
憩『ご、ごめんなさい……ウチ、宮永先生がこんなにもお酒弱いなんて知らんくて……』
照『言わなかった私が悪いんです……荒川さんは、関係ない……うぅ……』
憩『もうすぐ部屋ですから、頑張ってください……!』
照『はぃ……』
憩『にしても、すごい綺麗なマンション……』
憩『宮永先生、こんな場所で住んでるのにほとんど帰らずに……』
照『うぅ……』
憩『えっと、部屋何階ですか?』
照『3階です……301号室……』
憩『か、鍵もらっときますね』
照『はい……』
照『すぅ……すぅ……』
憩『ね、寝とるの……? この状態で……?』
憩『と、とりあえずベッドまで……電気どこ……?』
照『んぅ……すぅ……』
憩『……やっぱり、日頃の疲れが溜まってるんやろうな……』
憩『台所も洗い物溜まってて……ウチが支えてあげたいわ……』
怜「……チッ」
久「くくく……」
竜華(と、怜不機嫌すぎるわ……もしかして、ホンマに宮永さんのこと……)
菫(園城寺がここまで感情を出してる姿は初めて見るな……)
照『すぅ……すぅ……』
憩『寝かせますね……よっと』
照『ん……』
憩『ふぅ……これで一安心やな』
憩『あとは、帰るだけやけど……』
照『すぅ……すぅ……』
憩『ちょっとくらい、ご褒美もらってええよな……?』
憩(よりによってこの台詞のあとにアドリブ開始って……)
憩(……憧れの宮永先生と一つになって終了)
憩(ホンマにあの子はなんちゅう脚本を……)
久(さーて、どうなるやら)
憩「……宮永先生」ギュゥ
照「ゃっ……」
憩(そ、そんな声出さんとってや……)
憩「ウチ、頑張って家まで送ったんやから……添い寝くらいはいいですよね……」
照(これ、話の流れ的に寝たフリしか出来ない気が……)
憩「だ、大好きです……宮永先生……」ギュー
憩(ウチは一体生徒に何をして……)
久「なんて書いたかなぁ……確かナース役が憧れの先生と一つになって終了で」
怜「」
久「医者役がナースと既成事実を作って終了だったかな」
竜華「そそ、それってつまり……!」アワワ
菫「言い方が違うだけで同じ意味じゃないか……」
久「せっかく先生に参加してもらうんだから、一番難しいの渡したわ」ニコ
憩(てかここからどないしよ……)
憩(ほ、本当に一つになるわけにはいかんし……)
憩(でもこのままじゃ終わられへんし……)
照(既成事実ってなんだろう……)
照(一人で作れるもの? それとも二人で作るもの?)
照(わからない……ここは先生に任せよう……)
憩(一つになる……あかん、どう曲解してもキスくらいしか納得させられそうなんがない……)
憩(……演技なんやし、キスしたフリでええか)
憩「……宮永先生。起きてますか?」
照「!」
照(せ、先生が動いた……)
照「……すやすや」
憩「寝てます、よね……」
憩「寝てる先生にしか何も出来へん臆病なウチを、許してください……」
憩「……」スッ
照「!!」
照(け、気配が……たぶん、今、顔が近づいてきてるような……)
憩「……ん」
怜「っ……!!」
竜華「あわわっ……」
久(キスしてるフリだと思うけど……)
菫(ここから見れば正直わからないな……)
憩(フリとは言え、こんなにも顔近づけてこんなこと……!)
照(め、目を開けられない……)
憩「これからも、ちゃんと支えていきますから……よろしくお願いしますね」ギュッ
照「ん、んぅ……すぅ……」
憩(これ以上は教師として何も出来んのやけど……)
久(うーん、正直、ここからがクライマックスなんだけど……)
久(荒川先生と宮永さんじゃ、ここまでが限界そうね)
久(てかこれ以上やらせると園城寺さんが絶対に止めに入りそうだし)アハハ
怜「……」ゴゴゴゴゴ
竜華「と、怜……」アワワ
久「うん、二人ともお疲れ様です。これにて終了ね」
憩「はぁ……」
照「お、終わり……」
照「ほ、本当に……?」
菫「園城寺の言う通り、普段とそこまで変わりがなかったおかげかもしれないがな」
菫「まあそれを言うなら、竹井以外の私たち三人にも言える事だが」
竜華「いや、でも宮永さんの先生役めっちゃはまってたで。不器用で優しい先生みたいな感じがよく出てたというか」
照「うへへ……」
久「荒川先生もお上手でしたしね」クスクス
憩「褒めても何もでえへんで」ハァ
怜「ホンマお上手でしたね。まるでプライベートでの先生見てるような気分になりましたわ」ジト
照「プライベート?」
竜華「それってどういう……」
憩「な。何を言っとるの園城寺さん?」
憩(もしかして妬いてる……?)
菫「しかし、もうこんな時間か……」
久「今日はここまでね。いやー、昨日と今日、すごく楽しかったわ」
久「ついでに良い練習にもなったでしょ」
((今ついでって言った……))
久「宮永さんなんてあんなにも嫌がってたのに」フフ
照「自分の隠された才能を見つけた」ドヤ
菫「調子に乗るな」
怜「隠された才能見つけた言うんやったら竜華やろ……」
竜華「ふふ、照れるわ♪」
久「ってことで今日はこれにて解散ね。また集まってもらうかもだけど……ま、そんときはよろしくね♪」
照「今から咲たちのところ行かなくちゃ……それじゃあみんな、また明日」
菫「私も待ち合わせがあるから……これで失礼するよ」
久「私は生徒会にでも行ってみようかしら」
怜「ウチは保健室にでも行こうかなー」
憩「帰りなさい」
怜「……ケチ」
竜華「ふふ、先生も付き合わせたせいで忙しいんやって。ほら、帰るで」
怜「ちょ、竜華……」
竜華「で、女たらし序列2位ってなに? ウチそんな話知らんやけど」
憩「ウチが教えたるわ清水谷さん。この子、くじ引きで引いた女の子にキスするっていうふざけた遊びを……」
怜「ちょっ……」
終わり
乙ー
面白かった
>
>憩「……何度も言っとるけど、年齢について他の子に話したら怒るからな」
>
>怜「ウチと憩だけの秘密やな」
>
>憩「先生方は知っとるけどな」
>竜華「誰に電話してたん?」
>
>久「優しい後輩♪」
部長って物知りなんですね
普通に感心した
>>215に関しては部長が知り合いの後輩に指示して先生呼んでもらった、って感じの意図でしたが
後輩=荒川先生の発想はすごく感心しました。思いついてたらそう書いたと思います
では、お疲れ様でした
Entry ⇒ 2012.10.27 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (2) | Trackbacks (0)
あかり「ドッペルゲンガー?」
あかり「うう、すごい雨だよぉ」
ドカーン
あかり「うわっ! 凄く近くに落ちた!」
あかり「おへそ隠して早く帰ろう」コソコソ
――――――――――
――――――――
――――――
――――
――
???「ふふっ…………あっかりーん……」
ちなつ「近くに落ちた跡が残ってたんだって」
あかり「そうなんだ、でも今日は晴れて良かったよぉ」
櫻子「あ、あれ? あかりちゃん?」
あかり「どうしたの? 櫻子ちゃん」
櫻子「おっかしいなー、さっきあかりちゃん教室の前にいたと思ったんだけど……」
あかり「あかりはちょっと前からここにいたよ」
ちなつ「私も一緒だったよ」
櫻子「うーん、見間違いかな?」
櫻子「確かにお団子も二つあったし......」
あかり「あかりの識別そこだけなの!?」
櫻子「あっ、私生徒会の頼まれ事の途中だった!」
あかり「じゃあまた明日」
ちなつ「バイバーイ」
――――――――
あかり「あかりと見間違いなんて珍しいよぉ」
ちなつ(流行ってるのかなこの髪型? いや、そんなバカな……)
結衣「あ、……あかり?」
京子「…………」
あかり「どうしたの? 二人共?」
京子「どうしたの? ……だって?」ガバッ
あかり「キャッ!」
京子「私のラムレーズンを返せ~!」ガクガク
あかり「ちょっ、京子ちゃん!?」
京子「楽しみにとっておいたのをよくも~!」
結衣「京子、落ち着け」ペシ
結衣「それが……」
京子「あかりが私のラムレーズンを食べちゃったんだよ!」
あかり「ええっ! あかりそんなことしてないよ!」アッカリーン
京子「嘘つけ! この~」ムニムニ
結衣「やめろって」ペシ
あかり「そ、そうだよぉ、ずっとちなつちゃんといたんだからそんな時間なかったよ!」
京子「でも見たもん! あの髪型はあかりだった」
ちなつ「クマでも見間違えたんじゃないですか?」
あかり「そっちのほうが大問題だよね!?」
結衣「多分生徒会の誰かが来て食べたんだろ」
京子「そうかなあ……」
結衣「何の『じゃあ』だよ」
ちなつ「櫻子ちゃんもあかりちゃんに似た人を見たらしいですよ」
京子「流行ってるのかなあかりの髪型」
あかり「え、そうなのかなあ……」テレテレ
結衣「なぜ照れる」
あかり「ただいまー」
あかね「あら……あかり?」
あかり「ん? どうかした? お姉ちゃん」
あかね「あかり……さっき帰って来たわよね?」
あかり「今帰ったばっかりだよぉ」
あかね「変ね……確かに……」
あかり「もー、変なお姉ちゃん」トテトテトテ
あかね「私があかりの声を聞き間違えるなんて……」ブツブツ
あかり「さーて宿題を……」
あかり「あ、あれ? あかりこの本出しっぱなしだったけ?」
あかり「それになんか……」
あかり(部屋に違和感が)
あかり(机とか……ベッドの感じとか……なんか……)
あかり(それにこの部屋の空気……)
あかり(さっきまで……誰か……いた?)
ゾクッ
あかり「そ、そんなわけないよね! 気のせい、気のせい」ガラガラ
あかり「よ、よーし、宿題がんばるぞー」
櫻子「まったく、こんなに早くいかなくてもいいじゃん」ブーブー
向日葵「ダメですわ! 私達は今日は日直ですのよ」
櫻子「あ、あかりちゃんだ」
向日葵「聞きなさい!」
あかり「…………」タタタタタ
櫻子「朝早くから何してたんだろ?」
向日葵「さあ? 教室から出て行ったみたいですけど」
櫻子「何か用事かなー?」ガラガラ
ポスッ!!
向日葵「これは……黒板消しトラップ?」
櫻子「うがー! 誰だー、こんなことしたのはー!!」
向日葵「誰って、私たちより早く来た人なんて……」ハッ
向日葵「まさか、赤座さんが?」
櫻子「はー? あんたまだ寝ぼけてんの? あかりちゃんがこんなことするわけないじゃん!」
向日葵「わ、私だってそんなこと思っていませんわ! 日ごろの行いが悪い天罰ですわ、きっと」
櫻子「なんだとー!」
あかり「あ、おはよう二人とも、今日は早いね」アッカリアッカリ
あかり「櫻子ちゃん髪が真っ白だよ! どうしたの?」パタパタ
向日葵「ほっといて良いですわ、それより今日は何かありましたの? 随分早く登校されてたようですけど」
あかり「え? あかり今来たところだよ」
櫻子「え?」
あかり「?」
結衣「あれ? あかりじゃん」
あかり「……」バサバサ
結衣(お菓子をぶちまけてる、……一体何を?)
向日葵「赤座さん?」
あかり「……」ガシャーン
向日葵「い、いつも水をあげてる花瓶を……!!」
京子「あかり! 私の隠してたお菓子取っただろ!」
櫻子「あかりちゃん! 私の漫画どこに持っていったの!」
ちなつ「あかりちゃんが私の手紙隠したんでしょ(ゴゴゴゴゴ)」
あかり「あ、あかりそんなことしてないよ!」
櫻子「絶対あかりちゃんだったよ! 見間違いなわけないもん!」
京子「往生際が悪いぞ! あかり」
あかり「ふぇ、えーん、結衣ちゃ~ん」
結衣「え、えーっと……」
あかり「まさか、結衣ちゃんまで」
結衣「何か悩みがあるなら聞くよ……」
あかり「う、うわーん! みんなのバカー!!」タタタタタ
結衣「悪いことしたかなこれは……」
京子「でも間違いなく、数々の悪行はあかりだったよね」
向日葵「しかしこの目で見たとはいえ、赤座さんがあんなことするなんて考えられませんわ」
櫻子「わかった! あかりちゃんは双子だったんだ!」
向日葵「バカはほっといて……」
櫻子「なんだとー!!」
京子「あかりもストレス溜まってんのー?」
結衣「そういう感じじゃなかったけど」
櫻子「そういえば昨日もあかりちゃんに似た人がいたよね?」
ちなつ「でもそれはあかりちゃんじゃないよ、同じ時間に私といたもの」
京子「同じ時間にそっくりの人間がいた?」
向日葵「それってなんだか……」
結衣「ドッペルゲンガーみたいな話だね」
京子「結衣~、お前ゲームのやりすぎだぞ」
結衣「私だって本気で言ってるわけじゃない」
櫻子「ドッペルゲンガー?」
向日葵「自分とそっくりの人間のことですわね」
ちなつ「自分がみると死んでしまうんでしたっけ?」
櫻子「大変じゃん!」
京子「本当にドッペルゲンガーなんていると思う?」
結衣「そうじゃなくてもやっぱりおかしいよ、あかりも心配だし」
ちなつ「そうですね、じゃあ探しに行きましょうか」
綾乃「まったく歳納京子は、まーたプリントを……」
綾乃「あら?」
あかり「うう、ぐすっ……」トボトボ
綾乃「あなた……赤座さん? どうしたの? 何かあったみたいだけど」
あかり「あ、杉浦先輩……」グスッ
綾乃「あ、赤座さん?」
あかり「うわーん」ダキッ
綾乃「ちょ、ちょおおおお!」
あかり「はい……」
綾乃「それは不思議な伏見稲荷ね、赤座さんには身に覚えはないんでしょう?」
あかり「そうなんです、あかりもう何が何だか……」
綾乃「大丈夫よ、私からみんなに言って分かってもらうから」
あかり「私のこと信じてくれるんですか?」
あかり「杉浦先輩……」ジワッ
綾乃「ま、まあこれくらい生徒会としてはとーぜんのことよ」
あかり「ふふっ、杉浦先輩は優しいんですね」
綾乃(それにしても赤座さんそっくりな人がいるとは……これはなんだか不穏な空気ね)
あかり「杉浦先輩……」ピトッ
あかり「こんなに優しくしてくれたの、杉浦先輩がはじめて……」
あかり「『あかり』は杉浦先輩ともっと仲良くしたいなー」スリスリ
綾乃「な、ななななな」
あかり「真っ赤になる杉浦先輩、可愛い」
綾乃「そ、そんなふしだらなことはいけません!」
あかり「でも杉浦先輩だって京子ちゃんと……」
あかり「あかりは分かってますよ、それに『あかり』だってみんなと仲良くしたいんです」
綾乃「仲良くって、みんな仲が良いじゃない」
あかり「うーん、もっと言うと……」
あかり「『あかり』のモノにしたいんです」
綾乃「!?」
ガラガラ
京子「綾乃ー、あかり見なかった……って」
綾乃「と、歳納京子ぉー!! ちょっと待って、これはちがっ……」
あかり「ふぅ……京子ちゃんは本当にお邪魔虫だよぉ」ギュー
綾乃「赤座さん! ふざけないで!」
あかり「ふざけてなんていません」
あかり「『あかり』は、もっと杉浦先輩と仲良くしたいんですよ」
あかり「だから……」
綾乃「な、な、な]
チュッ
結衣「探すにしたって手掛かりなしだな……」
ガサガサ
あかり「……あ、結衣ちゃん」
結衣「あかり、ごめん、みんな心配してるし戻ろ」
あかり「うん、あかりも大人げなかったよぉ」
結衣「みんなもあかりを探しに行ったから、とりあえず部室に……」
櫻子「あ、船見先輩! 歳納先輩があかりちゃんみつけ……た……」
結衣「え? あかりはもうここに」
ウワー アヤノ ノ クチビル ガー!! コレハ チガウ ノ トシノウキョウコー
櫻子「まじでドッペルゲンガーだったってこと?」
あかり「うわー、本当にそんなことあるんだね~」
結衣「いや、軽いな」
あかり「う~ん、でも何でイタズラなんか……」
結衣「心当たりはある?」
あかり「さっぱりだよぉ~」
櫻子「実はあかりちゃんがしたかったことなんじゃないの~?」
あかり「もー、あかりそんなことしないよぉ~」プンスコ
結衣(なんか嫌な予感がする……)
ちなつ「あかりちゃんどこに行っちゃたの?」
ちなつ「存在感が無いとこういう時に困るわねー」
あかり「ちなつちゃん」
ちなつ「あ、あかりちゃん、良かった、急に出ていくから……」
あかり「……『あかり』はちなつちゃんのことが好きだよ」
ちなつ「は? 急に何言ってるの、あかりちゃん」
ちなつ「え、え?」
あかり「でも、もっと仲良くなればそんなこと気にならないよね、あかりもそう思うよぉ」
あかり「さあ、もっと『あかり』と仲良くしようよ、ちなつちゃん」
ちなつ「ちょっと、やめてよ!」ドンッ
あかり「キスまでした仲なのに……ひどい、ちなつちゃんひどい」
ちなつ(あかりちゃんじゃない……!)
ちなつ「あ、あなた……誰?」ゾクゾク
あかり「あかりは……『あかり』だよ、何言ってるの?」
ちなつ「ちがう、あかりちゃんはそんなこと……」
あかり「本当にそうなの? ちなつちゃんは『あかり』のこと本当に分かってる?」
ちなつ「え……?」
京子「ちなつちゃん! そのあかり捕まえて!」
あかり「チッ……」タタタタタ
ちなつ「京子先輩、あのあかりちゃん」
京子「どうやら本当にドッペルゲンガーみたいだよ」
ちなつ「そ、そうですよね!」
ちなつ(あれがあかりちゃんなもんですか)
綾乃「…………」ポケー
京子「ちょ、ちょっとね……」
結衣「今京子たちが追っかけてるって」ピッ
あかり「ドキドキするねー」
櫻子「わくわくするねー」
結衣「ははは、でもあかりが戻ってきてよかった、これで二人のあかりがいるってちゃんとわかったし」
櫻子「でも一体どうしてこんなことになったんでしょーか?」
結衣「分からないな、あかり、心当たりある?」
あかり「うーん……」
ドタドタドタ
あかり「え? 何」
あかり「あっ!」
あかり?「…………」ニヤッ
京子「追い詰めたぞ! ドッペルあっかりん!」
あかり×2『なにその名前!!』ドッペリーン
京子「うお……どっちだ?」
結衣「こっちに座っていたのが……」
あかり?「必殺……チョーク煙幕!!」ボフッ
モクモクモクモク
ちなつ「う、げほっごほっ」
向日葵「何も見えませんわ!」
結衣「しまった、これじゃあ……」
あかり2「み、みんな~大丈夫……?」
櫻子「混ざった」
京子「これじゃ、どっちがあかりか判断できないぞ!」
あかり1「うわ、本当にあかりそっくりだぁー」
あかり2「うわ~なんだか不思議な気分」
あかり1「はじめまして、赤座あかりです」
あかり2「こちらこそはじめまして、同じく赤座あかりです」
結衣「本当に見分けがつかないぞ……」
あかり1「ちょっと櫻子ちゃ~ん、やめてよぉ」
櫻子「う~ん」サワサワ
あかり2「くすぐったいよぉ、櫻子ちゃん///」
櫻子「全然わかんないや」
向日葵「意味ありましたの? それ」
あかり1「もう……あ、あかりお茶淹れてくるね」トテトテ
あかり2「あかりもお菓子出してくるよぉ」トテトテ
結衣「でもどちらかがイタズラをするドッペルあっかりんだ」
京子「そう! 綾乃の唇を奪ったあかりがこの中にいる」
京子「待ってろ綾乃! お前の仇は私が取る!」
結衣「死んでねーだろ」
ちなつ(でも、たしかにどちらかが『あの』あかりちゃん……)ゾクッ
みんな「ズズー」
櫻子「けどどうしたらいいんだろ?」
京子「本物のあかりしか知らないことを質問したらいいんじゃない?」
結衣「本物のあかりしか知らないこと?」
向日葵「例えば……前のテストの点数とか」
あかり1・2『78点だよぉ』
櫻子「うっわ、私より全然高い」
向日葵「当たり前ですわ」
ちなつ「あってるなー」ガサガサ
あかり2「ちょ、勝手に見ないでよぉ~」
あかり1「ちなつちゃんひどーい」
結衣「それ私たちも知らないだろ」
あかり1・2『えーっと、今日はクラゲパンツだよぉ///』
櫻子「確かめよう!」
京子「おりゃー!!」
あかり1・2「いやああああ!!」アッカリーン
向日葵「やめなさい!」
結衣「二人が同じこと言った時点で意味ねーだろ」
あかり1「うう、ひどい……」
あかり2「あんまりだよぉ……」
結衣「しかしまいったな、この感じだとあかりと同じ記憶を持っているみたいだし」
ちなつ(そういえばキスのことも知ってたな……)
あかり1「どうしよー京子ちゃん」
あかり2「どっちが本物か分かるのかなぁ……」
京子「そもそも、もとから特徴が無いあかりを見分けるのは難しいんだよ!」
結衣「おまえなぁ……」
京子「てゆーかこのままでいいんじゃね? なんか問題ある?」
向日葵「イタズラばかりされたら困りますわ」
京子「二人一緒にいれば大丈夫だろ? イタズラした方がドッペルあっかりんって分かるし」
結衣「綾乃の仇は?」
京子「綾乃はもう犬にかまれたとでも思ってさー……」
あかり2「もう! 京子ちゃ~んひっど~い」プンスコ
あかり1「ひどいよ……京子ちゃん……」
あかり1「ひどいよ、京子ちゃんひどい」
あかり1「『あかり』のこと何にも考えてない」
あかり1「みんなだってそう」
あかり1「だれも『あかり』のことなんて分かってないんだ!!」バンッ
結衣「あかり……?」
あかり1「結局いつもないがしろにされて……」
あかり1「これじゃ『あかり』が可哀想だって、あかりは思ってるよぉ」
あかり1「だからあかりは『あかり』がしたいことをするの」
あかり1「『あかり』が本当にしたいことをね」
結衣(なんだ急に眠気が……)
櫻子「ぐー」zzz
向日葵「うーん」zzz
ちなつ・京子「zzz」
結衣「まさか……お前、お茶に……」
あかり1「さすがは結衣ちゃんだね、西垣先生のところから色々持ってきてよかったよぉ」ニッコリ
あかり1「『あかり』がしたいことだよ」
結衣「く……」ガクッ
あかり(ド)「やっぱり結衣ちゃんは凄いな、『あかり』もずっと頼りにしてたし……あかりも大好きだよ」
あかり「み、みんな……」
あかり(ド)「改めてはじめましてかな?」
あかり「あなたは……誰?」
あかり(ド)「あかりは『あかり』だよ」
あかり(ド)「ちがわないよ、『あかり』とあかりは同じだよ」
あかり「そんなわけないよ! 『あかり』はずっと……あかりだけだよ」
あかり(ド)「うーん、ちょっと考えてみてよぉ、あかりとあかりちゃんで何が違うのかな?」
あかり「性格が違うよ! あかりはイタズラなんてしてないし」
あかり(ド)「性格なんて変わるものだよ、それにあかりちゃんは今まで一度もイタズラしたことないの?」
あかり「それは……」
あかり(ド)「性格の違いだけなら子供の頃の『あかり』は今のあかりちゃんとは別人だよねぇ」
あかり(ド)「けどあかりは、あかりちゃんとそっくりそのまま同じ姿で、同じ記憶も持ってるよ」
あかり(ド)「私が今までの『赤座あかり』は、あかりだったって言えば、それを違うなんて言える人はいるのかな?」
あかり「あかりが証人だよ!」
あかり(ド)「あかりだって同じように言うよ、『あかり』は私、私だけが『赤座あかり』であるってね」
あかり「そんな!」
あかり(ド)「それにあかりちゃんは自分が『本物』って信じてるみたいだけど……」
あかり(ド)「本当にそうなの?」ニヤッ
あかり(ド)「例えばあかりちゃんは私のように同じ姿、同じ記憶で昨日突然生まれたとして……」
あかり(ド)「自分がニセモノだという記憶を忘れちゃったとしたら?」
あかり「!?」
あかり(ド)「それで例えば『本物』はどこかで行方不明になっていたとしたら?」
あかり(ド)「きっとニセモノだっていう自覚のないあかりちゃんはいつもと同じように学校に行って、部活をして、家に帰って」
あかり(ド)「普通に生活してると思うよ」
あかり?「そんな……そんなこと……」
あかり(ド)「あかりがあかりちゃんの真似をしたら誰も分かんなかったもんね~、断言するけど他人は絶対気付かないよ」
あかり(ド)「ねぇ、もし今扉が開いて、もう一人赤座あかりが現れたとしたら? それで『昨日の雨で崖から落ちちゃったよ~』って言ったとしたら」
あかり(ド)?「あかりちゃんは自信をもって『私が赤座あかりだ』と言える?」
あかり?「ねぇ、例えば私が今あかりちゃんを殺して……」グイッ
あかり?「んんっ」
あかり?「ドッペルゲンガーは消えちゃったって言えば……」スッ ボクトウー
あかり?「い、いやっ……」
あかり?「どうなると思うっ!!」ブンッ
あかり?「いやあああああああああああああああ!!」
あかり「え…………?」
あかり(ド)「ふふっごめんね、冗談だよ」ギュッ
あかり「なっ、何を?」
あかり(ド)「あかりは別に本物になりたいわけじゃないよ、もちろんあかりちゃんが本物」
あかり(ド)「あかりはあかりちゃんとも仲良くしたいんだよぉ」スリスリ
あかり「そ、そうなんだ……」ホッ
あかり(ド)「あかり、あかりちゃんにもっと幸せになってほしいんだ」
あかり「じゃあ、どうしてイタズラなんかしたの?」
あかり(ド)「あかりちゃんがしたいことをしたんだよ」
あかり(ド)「京子ちゃんや櫻子ちゃんにイタズラしたのは、いっつも無茶を言うお返し」
あかり(ド)「お菓子はアリさんにもっと美味しいものをあげようと思ったから」
あかり(ド)「花瓶はもっときれいなモノの方がお花さんもいいかなと思ったし」
あかり(ド)「ちなつちゃんともっと仲良くしたいから、結衣ちゃんと恋人さんにならないように手紙は隠しちゃった」
あかり(ド)「もちろん結衣ちゃんとも仲良くしたいし、他の人とも、もっともっと仲良くなりたいな」
あかり「でも、他の人に迷惑かけちゃダメだよぉ……」
あかり(ド)「あかりちゃんも望んでいることでしょ?」
あかり「あかりはそんなこと望んでないよ!」
あかり(ド)「本当に? 心の底ではそうしたかったんじゃない?」
あかり「そ、そんなこと……」
あかり(ド)「もっと素直になろうよ、あかりちゃん……」スルスル
あかり(ド)「あかりちゃんも本当はもっといろんなことをしたいと思ってる、だから私が代わりにしてあげる」チュッ
あかり「んんっ///」
あかり(ド)「ひとつになろうよ……あかりちゃん」レロ
あかり「やだ……怖い……」フルフル
あかり(ド)「気持ちよくしてあげるよぉ、大丈夫、あかりに任せて……」
あかり「助けて……みんな」
あかり(ド)「どうしてあかりを拒否するの? あかり悲しいよぉ」
あかり「こんなの間違ってるよ……、あかりたち、女の子同士……」
あかり(ド)「そんなこと気にしなくていいよぉ……」
あかり(ド)「京子ちゃんも結衣ちゃんもちなつちゃんも櫻子ちゃんも向日葵ちゃんも杉浦先輩も池田先輩もお姉ちゃんも」
あかり(ド)「みんなで仲良くなって、気持よくなって」チュパチュパ
あかり(ド)「とっても幸せだよね」ニコッ
あかり「あ、んんっ……はぁ、はぁ……」
あかり(そうかな……そうなのかな? ダメ、あかりもう、何も考えられない)
あかり(ド)「あかりに任せてひとつになろうよ、あかりちゃん」
あかり(きもちいい……幸せ……)
ザー ザー ゴロゴロ
ドカーン
結衣「……うっ」
結衣「何? 雷……あかり、そうだ、あかりは!?」
みんな「う、うーん……」
結衣「あかり! しっかりしろ」ペシペシ
あかり「う、ううん、あ……結衣ちゃん」ムニャムニャ
櫻子「ああれ? もう一人のあかりちゃんは?」
向日葵「大丈夫ですの? 赤座さん、服がはだけてますわよ」
結衣「あかり、あいつは……」
京子「消えちゃったのかな?」
ちなつ「うーん……それより、あかりちゃんは本物のあかりちゃんだよね?」
あかり「え?」
(あかりちゃんは自信をもって『私が赤座あかりだ』と言える?)
あかり「……うん、あかりはあかりだよぉ」ニッコリ
ちなつ「そう、良かった……」
あかり「もう大丈夫だと思うよ……なんとなくそんな気がするの」
京子「まあ、あかりが言うなら……」
向日葵「けど結局なんでしたの?」
櫻子「ドッペルゲンガーか……」
あかり「それよりみんな、この雨だと帰れないよぉ」
向日葵「しばらく雨宿りするしかありませんわね……」
あかり「じゃああかりお茶を入れてくるよ」
ちなつ「動いて大丈夫なの?」
あかり「動いてた方が楽なんだ~」ガラガラ
京子「けど本当になんだったんだ?」
結衣「みんなあかりに迷惑かけ過ぎなんだよ、本物がああなっても私は驚かないよ……」
櫻子「そうかなぁー?」
向日葵「あなたに関して間違いありませんわ!」
あかり「ふふっ……」
あかり「待っててね『あかり』ちゃん、すぐみんなと仲良くなるよぉ」
あかり「心配しないで、みんな気持ちよくって、幸せになれるからね」
あかり「ふふふふふふふふふふふふふふ……」
おわり
我ながらわけのわからんものが出てきたなと思う
見てたと人とか支援してくれた人はありがとう
良い電波でした
Entry ⇒ 2012.10.27 | Category ⇒ ゆるゆりSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
美希「ただいま戻りましたなのー!」
765プロダクション――
ガチャリ
美希「……あれ?だれもいないの?」
P「すぅ……すぅ……」
美希「あっ、ハニー!」
美希「小鳥も律子、さんもいないし……」
美希「起こすのも悪いよね。とにかくソファーでゆっくりしようっと。あふぅ」
美希「……ん?ハニーの目の下……クマができてる……」
美希「そういえば顔色もあんまりよくないの……疲れてるのかな……?」
美希「ということでまずはお掃除なの☆ ハニーを起こさないように気をつけなくちゃ」
美希「ふんふんふーん」サッサッ
美希「ソファーの下も埃だらけなの」
美希「んんーっ!このソファー思ったより重いの……」
ガタッ!
美希「あっ!」クルッ
P「すぅ……すぅ……」
美希「よかった~。起きてないの」
美希「……これでよしっと」
美希「ライブの企画書を書いてる途中なの」
美希「パソコンつけたまんまだから、居眠りだよね……どうしよう。ハニー……」
美希「美希たちのために、こんなに疲れ果ててまで……」
美希「……よーし!決めたの!事務所のザツムを手伝うの!」
美希「意外と整理されてるの。雪歩がお掃除でもしてるのかな」
美希「……うわあ、と思ったら生ゴミがすごいの……」パカッ
美希「どうしよう。これは小鳥に任せた方が……」
美希「……ううん、ダメなの。もしハニーが先に見つけたら捨てに行くに決まってるの」
美希「この袋ごと捨てていいんだよね?」ドサッ
美希「端っこを結んで」ムスビメギュッ
美希「たるき亭の小川さんに捨てる場所を聞いてみよっと」
■数分後
美希「なるほど。ここがゴミ捨て場所なの」
美希「生ゴミはここかな?」ドサッ
美希「ふうっ。一件落着なの」
再び事務所へ――
トテトテ、ガチャリ
美希「ふふっ。まだハニーはお休み中なの」
美希「みんなが帰ってくる前にいろいろ準備しようっと」
美希「そういえば、ハニーは起きたらいつもコーヒーを飲んでたよね」
美希「目が覚めた時のために今度はコーヒーを作るの!」
美希「……ミキコーヒーメーカー使ったことないの。でもなんとかなるよね」
美希「……コーヒーの粉ってどこにあるのかな」
美希「あ、小鳥?」
小鳥『美希ちゃん?どうかしたの?』
美希「コーヒーの粉って、どこに置いてあるか教えてほしいの」
小鳥『コーヒー?美希ちゃんコーヒー飲むの?』
美希「んーまあそういうことにしてほしいの」
小鳥『わ、わかったわ。でも、ちょうど今切れちゃってるのよ。帰りに買って行こうって思ってたところで』
小鳥『あら、じゃあお願いしてもいいかしら。ちなみにコーヒーメーカーを使うときは、豆から買ってきてね』
美希「粉じゃダメなの?」
小鳥「粉だと酸化が早いから保存がきかなくてね。それに、味も美味しいし」
美希「わかったの!」
小鳥『ありがとう。帰りにおにぎり買っていくわねー』
美希「うん、待ってるね。バイバーイ」ピッ
美希「いざ、しゅっぱーつ、なの」
美希「ハニー、もう少し待っててね」
P「すぅ……すぅ……」
美希「行ってきますなの!」
近所のスーパー――
美希「うわあ、主婦でイッパイなの……」
美希「もやし、特売セールかあ。やよいが喜びそうなの」
やよい「あれ?もしかして美希さんですか?」
美希「あ、やよい!」
やよい「こんにちは!美希さんもお買い物ですか?」
美希「うん。コーヒーの豆を買いに来たの!」
やよい「コーヒーですか?それでしたら、あっちにありますよー!ついてきて下さい!」
美希「おおー、やよい頼りになるの!」
美希「やよいはよくここのスーパーに来るの?」
やよい「はい!いつも晩ご飯のおかずはここで買うんですよー!」
やよい「今日はもやし祭りですー!」
美希「美味しそうだね。今度美希も招待してほしいな」
やよい「うっうー!美希さんならいつでも大歓迎ですよ!」
美希「じゃあ楽しみにしてるね?」
やよい「はい!」
やよい「……と、それより、美希さんはどうしてコーヒーを買いに来たんですか?」
美希「ちょっとお使いなの。コーヒーの粉がなくなってて、ハニーのコーヒーが作れなかったから買いに来たの」
やよい「なるほどー。美希さんはプロデューサー思いなんですね!」
やよい「うっうー!私も負けてないですよー?」
美希「ふふっ。それじゃミキと勝負だね。ハニーは渡さないの」
やよい「私も頑張りますー!」
美希「のぞむところなの!……あ、あったの!……豆はコレしかないみたいだね」
やよい「あ、それプロデューサーが飲んでたコーヒーと一緒ですー」
美希「やよい、知ってるの?」
やよい「はい!プロデューサーが豆を挽いてた時に見た袋なんです」
美希「ホント?じゃあちょうどいいの。これにしようっと。一つでいいかな?」
やよい「予備もあった方がいいと思いますよー!」
美希「分かったの!」
やよい「えへへー、どういたしまして!それじゃ、また明日ですー!」トテトテ……
美希「さてと。急がないとハニーが起きちゃうの」
■PM:4:54
三度事務所へ――
ガチャリ
美希「ハニー?」
P「すぅ……すぅ……」
美希「よかった。まだ起きてないの。よほど疲れてたんだね……」
美希「よーし、早速コーヒーを作るの!」トテテ
小鳥『もしもし?美希ちゃん?』
美希「豆を買ってきたんだけど、どうやって粉にすればいいの?」
小鳥『それなら、棚に豆を挽くコーヒーミルっていう機械があるから、それを使って挽くのよ』
小鳥『豆をセットして、上についてるハンドルを回して使うの』
美希「……あ、コレかな。ありがとうなの」
小鳥『どういたしまして。でも、急にコーヒーなんて珍しいわね』
美希「ハニーのためなの!」
小鳥『あ、そういうことだったのね』
美希「うん。それじゃ、小鳥も早く帰ってきてね」
美希「早速やってみるの」
美希「豆をセットして、っと」
美希「わあ、結構面白いの!」ガリガリ
美希「あ、でも、あんまり音を立てるとハニーが起きちゃうかも……」ソロソロ
~数分後~
美希「できたの!」
美希「えーと、ここにお水をいれて、フィルターはここかな?」
美希「粉をいれて……」
美希「このボタンでいいのかな?」ピッ
美希「おおー、動き出したの。コーヒーメーカー、いい仕事するの」
美希「コーヒーの匂いがする……。いい匂いなの」
美希「こっちは律子、さんの書類で、こっちがハニーので。これは全部小鳥の書類かな」
美希「わあ、すごいの。ライブの記録が全部残ってる」ペラッ、ペラッ
美希「これはオールスターライブの時で、あ、これはミキの初めてのライブ!」
美希「全部、ハニーのおかげで成功できたんだ……ありがとう、ハニー」
美希「……はっ!感傷に浸ってる場合じゃないの。片づけないと……」
ドン、ドサッ、バラバラ
美希「わあっ!」ドンガラガッシャーン
P「うん?……うぇ、なんじゃこりゃ!」バッ
P「美希!大丈夫か?」
美希「いたた……段ボール箱乗せたらバランスが崩れて本棚が倒れてきたの……あ、ハニー!」
P「怪我はないか?」
美希「うん、ミキは大丈夫だよ。でも、ハニーが……」
P「え?俺は何ともないぞ」
P「あ、ああ。なんだそんなことか。ていうか、寝ちまってたのか俺」
美希「そんなことじゃないの。ハニー、クマが出来てるの……」
P「え、マジで?」
美希「それに、顔色も悪いの。ハニー、正直に答えて。寝てないんでしょ?」
P「……い、いや、寝てるぞ?」
美希「ウソなの。ハニー、とっても疲れた顔してるの」
P「……まあ、ここ4日ほどは仮眠を1時間とるくらいしか寝てないな」
美希「やっぱりなの。ミキたちのために、こんなに……」
美希「よくないの。ミキは……ミキはそんな疲れてる顔、ハニーにしてほしくないの……」
P「美希……」
美希「ミキ、少しでもハニーに楽してもらおうと思って、事務所のザツムをやってみたの。でも、本棚の整理が大変で……。逆にハニーに迷惑かけちゃったの……ごめんなさい」
P「……いいや、迷惑じゃないさ。他にはどんなことをしてくれたんだ?」
美希「お掃除したり、ゴミを出したり、ハニーのコーヒーを作ったりしたよ」
P「そっか。十分だよ、ありがとな。俺も体調管理は気をつけるから」
美希「ハニー……!」
P「さて、みんなが帰ってくる前にコイツを片づけるぞ」
美希「うん。でもハニーは休んでて。これは美希が片づけるの」
美希「でもハニーは寝てなきゃダメなの」
P「……そうだなあ。じゃあ二人で片付け終わったら、美希に膝枕でもしてもらおうか。その方がゆっくり休めそうなんだけど、ダメ?」
美希「……! もちろんいいの!」
PM6:31
765プロダクション
小鳥「ただいま戻りましたー」
律子「おかえりなさい。そういえばどこ行ってたんですか」
小鳥「あ、社長と一緒に、新しく業務提携を結ぶレコード会社に挨拶に行ってたんです。最近はみんな人気が出て、あちこちからお仕事が舞いこんできますから」
律子「なるほど。てっきり仕事をさぼって飲んでたものとばかり」
小鳥「ピヨ!私どんなイメージなんですか!」
律子「冗談ですよ。それより、あんまり大きい声出さないでくださいね」
小鳥「え?何かあったんですか?」
律子「アレですよ、アレ」ユビサシ
P「すぅ……すぅ……」
美希「すぅ……すぅ……んぅ、はにぃ……」ムニャムニャ
小鳥「あら、すてき」
律子「美希がソファに寝てるのはいつもの事ですけど、その膝でプロデューサーが寝てるのは珍しいですね」
小鳥「やっぱり、疲れてらしたんですね」
小鳥「あ、そういえば……。律子さん、コーヒーあります?」
律子「ポットに沸いてますよ。帰ってきたらコーヒーの匂いがしたんですけど、プロデューサーが淹れたんですかね?」
小鳥「ちゃんと作れたのね……ふふっ」
律子「? どうかしたんですか?」
小鳥「いえ、それより、美味しかったですか?」
律子「ええまあ、いつも通りのコーヒーですよ」
小鳥「それじゃ、後で美希ちゃんにお礼、言ってあげてくださいね?」
律子「え?美希にですか?」
小鳥「じつはですね――」カクカクシカジカ――
スヤスヤ……
美希「はにぃ……大好き……なの」ムニャムニャ
Fin
おまけ
PM10:27
P宅
P「ふー、さっぱりした~」ゴシゴシ
P「ん、もう10時半か。ちょっと長風呂しすぎたか」
P「さて、今日は美希のおかげで体力バッチリだ。もう少し残った書類を――」
グッバイ、メモリーズコノオーモーイデーハルカゼマウヒーダマリノー♪
P「ん?美希から着信?こんな時間にどうしたんだ?」
P「もしもし?」
美希『あ、ハニー!こんばんはなの』
P「どうかしたのか、こんな時間に」
美希『ハニー今何してる?』
P「え?風呂上がったところだけど……」
美希『そっか。今日はもう寝なきゃダメだよ?』
美希『もしかしてまたお仕事の続きやろうとしてたでしょ?』
P「はあ……美希には適わないな、まったく」
美希『やっぱりなの。最近ハニーは頑張り過ぎだって思うな。体調管理は大事だよ?』
P「あはは、まさか美希から説教を食らう日が来ようとはな。わかった。今日からゆっくり休むよ。心配してくれてありがとう」
美希『ううん、ハニーが倒れちゃったらヤだから。ハニーにはいつも元気でいてほしいの!』
P「そうだな。ちょっとばかり働きづめてたよ。これから気をつける」
美希『うん。ならいいの』
P「ありがとう。さ、もうこんな時間だ。明日も仕事なんだから、早く休めよ?」
美希『それはお互いさまなの』
P「あはは、だな。じゃ、切るぞ」
P「おう、おやすみ」ピッ
P「……仕方ない。こいつは明日にするか」
P「つけたばっかだけど、シャットダウンだな」
ピロリーン、ユーガッタメールナノー
P「ん?今度はメール?」
From:美希
subject:無題
一つ言い忘れてたの。もしハニーがまた眠くなったら、いつでもミキの膝、使っていいからね?ここはハニー専用なの!あはっ☆ (^_-)v
それじゃ、おやすみ!
P「……かわいいやつめ」
P「わかったよ、っと」ソウシン
P「さてと、今日はいい夢が見れそうだ」
一度でもここを開いてくださった方、支援して下さった方、ありがとうございました!
美希はかわいいなぁ
でもせっかくミキが作ったハニーの為のコーヒーを律子、さんが飲むなんて酷いって思うな
Entry ⇒ 2012.10.27 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
星空みゆき「獅子咆哮弾?」響良牙「ハッピーシャワー?」
キャンディ「楽しみクルー!」
あかね「ええ天気や!絶好のアウトドア日和やで!」
なお「早く山頂を目指そうよ!みんなでお弁当を食べよう!」
やよい「待って、なおちゃんゼーゼーわたしそんなに速く、歩けない......」
れいか「焦らずゆっくり行きましょう。お昼までもう少しありますから」
あかね「それにしても、ウチら以外にもピクニックに来てる人結構おるんやなぁ」
みゆき「ほんとだね。あ、見て。すごく大きなリュックサックを背負ってる人が居るよ。あの人もピクニックかな?」
良牙「風林館高校はどこだー!?」
やよい「あの人は多分ピクニックじゃないんじゃないかな......」
れいか「なにやら道を探しているようですが」
みゆき「迷子なのかな。でもこの登山道一本道だよ?」
あかね「なんにしても困ってるんやったら助けてやらんとな。おーい兄さーん!そんなに焦ってどないしたんやー!?」
良牙「ん?あんたたち地元の人間か?」
良牙「いや、ちょっと道に迷ってしまってな」
れいか「どちらに行かれるおつもりなのですか?」
良牙「風林館高校を目指してるんだが、お前たち知らないか?」
なお「風林館高校?聞いたことないなぁ」
やよい「わたしも分かんないや」
良牙「簡単な地図ならここに」
あかね「これ東京と違うか?」
みゆき「ここ栃木だからもっと南だよ」
良牙「そうか南か。ありがとう、助かる」
なお「というかお兄さんの荷物大きすぎない?旅でもしてるの?」
れいか「どこか遠方から来られたんですか?」
良牙「いや、風林館高校の隣町から出発したはずなんだが気づいたらこんなところに」
一同(極度の方向音痴なんだ......)
良牙「とりあえず目指す方向が決まって助かった。それじゃ」スタスタ
やよい「なんだか怖そうな人だったね」
れいか「そうでしょうか?真面目な好青年といった印象でしたが」
なお「でも威圧感はあったよね。体格が良かったし」
あかね「せやな。荷物も軽々かついどったしな」
みゆき(なんだか、どこか寂しい感じのする人だったなぁ......)
子ども「パパ!ママ!早くー!」
男「最初に張り切りすぎると後でバテちゃうぞ~」
女「ママ腕によりをかけてお弁当作ってきたから山頂で食べましょうね」
アカオーニ「ただ山に登るだけなのにみんな幸せそうオニ!ムカつくオニ!」
アカオーニ「バッドエンドに染めてやるオニ!」
良牙「ん?なんだあの変な格好をした大男は?」
アカオーニ「世界よ!最悪の結末、バッドエンドに染まるオニ!白紙の未来を黒く塗りつぶすオニ!」
良牙「な、何だこれは!?ち、力が…」
アカオーニ「人間どもの発したバッドエナジーが悪の皇帝ピエーロ様をよみがえらせていくオニ!」
キャンディ「あそこクルー!」
子ども「ピクニックなんていいから部屋に引きこもりたい…」
男「家族サービスめんどくせぇ…」
女「海外旅行とか行きたい、今時ピクニックって…」
れいか「アカオーニ!これはあなたの仕業ですね!」
やよい「見て、さっきのお兄さんもいるよ」
良牙「どうせまた道に迷ってしまうに決まってる…」
アカオーニ「いっつもいっつもしつこいオニ!この青っ鼻で片づけてやるオニ!出よ、アカンベー!」
リュックアカンベー「アッカンベ~!」
あかね「あ、兄さんのリュックが!」
良牙「あ、かね…」ピク
一同「プリキュア!スマイルチャージ!!」
中略
一同「輝け!スマイルプリキュア!」
アカオーニ「アカンベー!プリキュアどもをやっつけるオニ!」
良牙「あかね、さん…」
サニー「うわ!頭からリュックサックの中身を取り出して手当たり次第投げつけて来おる!」
マーチ「く、この攻撃のせいで迂闊に近寄れない」
ビューティ「わたしが何とかします。プリキュア!ビューティブリザード!」
パキィン
ハッピー「うまい!足下を凍らせて動きを封じた!」
ピース「いや、待って!」
アカンベー「アッカンベ~」シュボ メラメラ
サニー「ライターを取り出して氷を溶かしおった…」
アカンベー「アッカンベ~」 ビュンビュン
ピース「今度はバンダナを取り出して振り回し始めたよ!?」
良牙「あかねさんは、乱馬と結婚を…」ズズズ
サニー「兄さん何でバンダナなんか持ち歩いとるんや?」
アカンベー「アッカンベ~」ビュン
マーチ「うわああああああ!」
ハッピー「マーチ!」
アカオーニ「いいオニ!もっとやるオニ!」
良牙「俺は、あかねさんとは、結ばれない…」ぐももももも
良牙「気が重い…」
サニー「でもどうやってや?青っ鼻には技も効かへんで!?」
良牙「俺は…」
ハッピー「みんなあきらめないで!何か手があるはずだよ!」
良牙「不幸だ…!」シュウウウウウウウウウ
良牙「喰らえ!獅子咆哮弾!」
ドオオオオン
一同「!?」
アカンベー「ア、アッカンベ~!」 スザアアア
アカオーニ「な、なんだオニ!?アカンベーが吹き飛ばされたオニ!」
ハッピー「な、なに今の?」
ビューティ「今、ハッピーシャワーのような技が…」
マーチ「アカンベーを吹き飛ばした?」
ピース「でも、青い鼻のアカンベーに技は効かないんじゃ…?」
サニー「今の、兄さんがやったんか?」
ハッピー「う…ごめーんお兄さん。わたしたちがさっきの五人組かどうかは秘密なの~」アセアセ
サニー「って、それをいったらバラしとるんと同じやないか!」
アカオーニ「どうなってるオニ!あの男は何者オニ?青っ鼻に技は効かないんじゃないオニ?」
ビューティ「説明は後です。アカンベーを倒すのに協力していただけないでしょうか」
良牙「あの化け物のことか」
ビューティ「そうです。さっきの技をもう一度撃っていただくことはできますか?」
良牙「ああ、いけるぜ」
ビューティ「その技を、もう一度アカンベーにたたき込んでほしいのです」
サニー「それならレインボーヒーリングを奴にたたき込めるな!」
ピース「お願いしますお兄さん!平和を守るためなんです!」
良牙「いまいち飲み込めないが、あの化け物は放置するのはマズそうだ。いいぜ、もう一度獅子咆哮弾をお見舞いしてやる」
キャンディ「わーい!ありがとうクルー!」
キャンディ「キャンディは人形じゃないクル!」
良牙「人形じゃない、ってことは…可哀想に、おまえはどの呪泉郷で溺れたんだ?」
キャンディ「じゅせんきょうって何クル?」
アカオーニ「何をごちゃごちゃ言ってるオニ!アカンベー、今の内にやっちゃうオニ!」
アカンベー「アッカンベ~」シュッ
キャンディ「キャンディは人形じゃないクル!」
良牙「人形じゃない、ってことは…可哀想に、おまえはどの呪泉郷で溺れたんだ?」
キャンディ「じゅせんきょうって何クル?」
アカオーニ「何をごちゃごちゃ言ってるオニ!アカンベー、今の内にやっちゃうオニ!」
アカンベー「アッカンベ~」シュッ
サニー「あれはウチらでくい止めるんや!兄さん、頼んだで」
サニー「プリキュア!サニーファイヤー!」チュドーン
ピース「プリキュア!ピースサンダー!」チュドーン
マーチ「プリキュア!マーチシュート!」チュドーン
良牙「うお!おまえらこんな技まで使えるのか!?」
ハッピー「プリキュア!ハッピーシャワー!」チュドーン
良牙「なにぃ!?俺の獅子咆哮弾そっくりだ!」
キャンディ「今クルー!」
良牙「お、おう!ん゛~~~(あかねさん…)」
良牙「獅子咆哮弾!」 ドゴオオン
ビューティ「今ですみなさん!」
中略
一同「レインボーヒーリング!」
アカオーニ「悔しいオニ!次はこうはいかないオニ!」
やよい「やったぁ!アカンベーを倒せた!」
良牙「おまえら、いつもあんな化け物と戦ってるのか?大変だな」
なお「そうだよ、アカンベーを吹き飛ばすなんて」
あかね「凄かったなぁ!ハッピーシャワーみたいやったで 。なぁみゆき」
みゆき「そ、そうだね…」
みゆき(確かに、構えや技そのものはそっくりだったけど、)
みゆき(なんだか、いやな感じのする技だった…)
やよい「それだったら一緒にピクニックしませんか?」
なお「それいいね!山頂でお弁当でも食べながら話そうよ」
良牙「いいのか?」
あかね「遠慮はいらんで!ウチのお好み焼き分けたるわ」
あかね「そうや。ウチのお好み焼きは美味いで!」
良牙(右京みたいな奴だな)
良牙「じゃあ山頂を目指そう。俺は響良牙、よろしくな」
キャンディ「キャンディはキャンディクル!」
やよい「黄瀬やよいです」
なお「緑川なおです」
れいか「青木れいかと申します」
あかね「日野あかねや」
良牙「あかね!?」
あかね「どうしたんや、びっくりして?」
あかね「兄さんは良牙さんやな。ウチらの名前は覚えてくれたか?」
良牙「ああ。そっちからキャンディ。みゆき。やよい。なお。れいか。あかね、さん…」
あかね「って、なんでウチだけさん付けなんや!?」
良牙「す、すまん。だがこればかりはちょっと…」
良牙(だああ!他人とは言えなんか呼び捨てできないぜ!)
良牙「へぇ。変身して戦う伝説の戦士プリキュアねぇ」
キャンディ「そうクル!世界がバッドエンドに染まるのを阻止するクル!」
れいか「それで響さんにお伺いしたいのですが、先ほどの技は一体?」
良牙「獅子咆哮弾のことか」
みゆき「獅子咆哮弾?」
良牙「あぁ。不幸な気分を溜めてそれを撃ち出す技だ」
良牙「嫌なこと考えて重くなった気分を闘気に変えて撃つだけの簡単な技だ」
れいか「なるほど。バッドエンド空間での不幸な気持ちを撃ち出したというのですね」
良牙「あぁ。凄く嫌なことを思い出してしまったからな。気づいたら撃ってた」
なお「てことは浄化の力じゃないんだ」
あかね「凄い技やな。やるやん良牙さん!」
みゆき「あれはね、スマイルパクトっていう道具に力を込めるとでてくるの」
良牙「スマイルパクト?」
れいか「変身したり技を使ったりするためのアイテムです」
良牙「なるほど。さっきの技はこのアイテムがないとでてこないわけか」
やよい「そう。だからなくしちゃうと大変なの」
良牙「特定の感情に依存しない点は便利そうだが対価もあるんだな」
あかね「その獅子咆哮弾っちゅう技には対価はないんか?」
良牙「特にないぜ。極端に疲れることもないし道具もいらねぇしな。ローリスクハイリターンってやつだ」
みゆき(本当にそうかな...?)
みゆき(そんなの絶対ハッピーじゃない)
みゆき(なにをリスクに感じるかなんて人それぞれ)
みゆき(でも、わたしならそんな技はいやだ)
みゆき(できれば、良牙さんにあの技は使ってほしくないな…)
良牙「ちなみにおまえ等の技はどんな技なんだ?」
なお「わたしの技は『マーチシュート』、風の球をだしてそれを蹴って相手にぶつけるんだ」
やよい「わたしの技は『ピースサンダー』、両手をピースの形にしてそこから雷を発射するの」
あかね「ウチの技は『サニーファイヤー』、炎の球をだしてそれをアタックして敵にぶつけるんや」
良牙「ハッピーシャワー?おい、みゆきのだけなんか路線が違わないか?」
みゆき「う、それは言わないで...」
良牙「ま、いいや。最初は獅子咆哮弾に似てるから興味があったがどうでもよくなった」
みゆき「え?」
良牙「もし俺にもできる技なら教えてもらおうと思ったが無理なようだな」
みゆき「良牙さんハッピーシャワー使いたいの?」
良牙「俺も武闘家の端くれだからな。強くなれる可能性があるなら使いたかったんだ」
良牙「それじゃ俺はそろそろ旅を再開する。お好み焼き美味かったぜあかねさん」
あかね「店にきてくれたらいつでもご馳走するで!」
やよい「今度はまよわないようにね」
なお「無事着けるといいね」
みゆき「無理しないでね」
キャンディ「また遊ぼうクル~!」
良牙「あぁ、また会えたらな」
テレビ「北海道に生息していたエゾオオカミは人間による駆除や気候、病気などが原因で絶滅したと考えられており…」
ウルフルン「く~なんて可哀想なんだエゾオオカミ!」
テレビ「本日は絶滅したエゾオオカミの特集でした。また来週お会いしましょう」
ウルフルン「くそー人間どもめ!自分たちの都合でエゾオオカミにひどいことを!」
ウルフルン「よーし!北海道に行ってエゾオオカミたちの弔いをしてくるぜ!」
ウルフルン「エゾオオカミの敵は討ってやるぞー!」
-北海道某公園-
キャンディ「涼しいクル~」
やよい「ホント、北海道は涼しいね~」
あかね「厳しい残暑なんか忘れてまうな」
みゆき「ふしぎ図書館があれば暑いの我慢しなくてすむね」
なお「あれ?あそこにいるのって?」
良牙「風林館高校はどこだー!」
良牙「む、おまえたちはこの間の。何でこんなところに?」
あかね「それはこっちの台詞やで」
良牙「俺はただ東京目指して南に向かって旅をしていただけだ!」
れいか「南…?ここは日本の最北端、北海道ですけど…」
良牙「なんだって!?そんなバカな!」
一同(想像以上の方向音痴なんだなぁ…)
あかね「ちょっと涼みにな」
キャンディ「ふしぎ図書館のワープを使って来たクル」
良牙「ワープ?」
れいか「わたしたちはある方法を使って瞬間移動することができるんです」
なお「今年は残暑が厳しいから涼しいところでのんびりしたかったんだ」
良牙「そいつは便利だな。心底うらやましいぜ」
れいか「どうしたのですか?」
良牙「なんでもない、行こう」
なお「良牙さん私のお弁当も少し分けてあげるよ」
やよい「わたしの卵焼きもあげる」
れいか「わたしの焼き魚も分けてあげます」
みゆき「わたしのタコさんウインナーも」
あかね「今日もお好み焼き弁当持ってきてるから分けたるで」
良牙「本当か!?最近ろくなもん食ってないから助かるぜ」
なお「じゃあどこかでお弁当広げて食事にしようか!」
やよい「じゃああそこのため池の近くなんてどう?」
みゆき「いいね、あそこで食べよう!」
良牙「うっめー!久しぶりだぜこんな美味い飯!」
キャンディ「みんなお料理上手クル~」
あかね「よろこんでもらえてなによりやで」
やよい「っていうかなんで傘さしてるの?」
良牙「ね、念のため…」
一同「?」
みゆき「あれ、水筒のふたが硬くて開かないや」
あかね「どれ貸してみ。おりゃー!」ギリギリ
あかね「ぜーぜー、ホンマや。ビクともせんで…」
なお「大丈夫?わたしがやろうか?」
あかね「なんの!どりゃあーーー!!」
ギュル スポーン
みゆき「良牙さんあぶなーい!」
良牙「なんの!」サッ
ビシャアー
なお「おお!傘で受け止めた!」
やよい「すごーい!早速傘が役に立ったね!」
良牙「ふっ。危ないところだったぜ…」
子ども「食らえー!水鉄砲攻撃ー!」キャッキャ
子ども2「そんなの当たらないぜー!」キャッキャ
良牙「ん?」
ビシャアー
一同「あ」
子どもたち「ごめんなさーい」
あかね「あーあ良牙さん、せっかくお茶は受け止めたのになぁ、ってあれ?良牙さんは?」
やよい「え?ほんとだ、いない」
なお「急にいなくなっちゃったね」
れいか「でも衣服や所持品はここにありますよ。もぬけの殻ですが」
キャンディ「服の中が動いてるクル。何かいるクル」
みゆき「本当だ。これは…」
Pちゃん「…」
みゆき「豚さんだー!?」
Pちゃん「ぴー!ぷぎー!」
みゆき「どういうことー!?」
やよい「かーわいー!」
なお「おーいしそー!」
れいか「みなさん落ち着いてください!敵の攻撃という可能性も…」
キャンディ「良牙クル~!」
一同「え?」
キャンディ「この豚さん、自分が良牙だって言ってるクル」
一同「えー!?」
キャンディ「わかるクル!」
Pちゃん「ぷぎぷぎ!ぴーぷぎー?(そいつは助かる!ちょっと通訳をたのめないか?)」
キャンディ「おやすいご用クル!」
みゆき「キャンディ、ほんとにこの豚さんが良牙さんなの?」
キャンディ「ほんとクル。今から通訳してあげるクル」
キャンディ「良牙はとある事情で、水をかぶると豚さんに変身しちゃうらしいクル」
やよい「それでさっき傘さして水を警戒してたんだ」
あかね「なんや可哀想な体質やなぁ」
Pちゃん「ぴーぴー。ぴーぷぎゅ」
キャンディ「お湯をかぶると元の姿に戻れるらしいクル」
みゆき「よーしわかった!」
なお「そういうことなら助けてあげないと!」
キャンディ「リュックの中にカセットコンロと鍋があるらしいクル」
れいか「ではそれを使ってお湯を沸かしましょう」
あかね「水はため池の水でええな」
やよい「今の姿の方がかわいいのにな~」
子ども「まてー!」
子ども2「つかまらないぞー!」
ウルフルン「どいつもこいつも浮かれ騒ぎやがって」
ウルフルン「エゾオオカミはこの地で人間どもにひどい仕打ちを受けたというのに!」
ウルフルン「決めた!この公園の人間どもをバッドエンドに染めてやるぜ!」
ウルフルン「白紙の未来を黒く塗りつぶすのだ!」
子ども「水鉄砲なんておもしろくない…」
子ども2「おいかけっこも疲れるだけだ…」
ウルフルン「人間どもの発したバッドエナジーが、悪の皇帝ピエーロ様をよみがえらせていくのだ!」
みゆき「これは、バッドエンド空間!?」
キャンディ「良牙もバッドエンドに染まっちゃってるクル!」
れいか「あそこです!」
ウルフルン「プリキュア!?チィ、また邪魔しに来やがったのか!」
あかね「公園にいる人をむやみにバッドエンドに染めるなんてゆるさへんで!」
やよい「そうだよ!良牙さんもこんなに元気をなくしちゃったじゃない!」
ウルフルン「あぁん?そんな小汚ぇ豚なんざどうだっていいんだよ!」
ウルフルン「しゃらくせぇ。今日はこの赤っ鼻で相手してやるぜ。出よ!アカンベー!」
ガスコンロアカンベー「アカンベー!」
みゆき「行こうみんな!」
一同「プリキュア!スマイルチャージ!!」
一同「輝け!スマイルプリキュア!」
ウルフルン「しゃらくせえ!やっちまえアカンベー!」
アカンベー「アカンベー!」
カチッ ボワッ
サニー「うわ!こいつ火をおこしおったで!」
アカンベー「アカンベー!」
ボォォォォ
ビューティ「熱くて迂闊に近寄れませんね」
マーチ「いや、近寄れないどころか…」
メラメラメラ
ハッピー「飛び火してる!」
ピース「まずいよ!公園が焼けちゃう!」
マーチ「ここは私のマーチシュートで」
ビューティ「待って!風は火の勢いを強めてしまいます!ここはわたしが!」
ビューティ「プリキュア!ビューティブリザード!」
マーチ「うまい!吹雪で炎を消した!」
ピース「でもどんどん飛び火してて消火が追いついてないよ!ピースサンダーも火を起こしちゃうから消火はできない」
アカンベー「アカンベー!」メラメラ パチパチ
サニー「アカンベーを食い止めるんはウチに任しとき!」
ハッピー「ならわたしは消火を!プリキュア!ハッピーシャワー!」
ビューティ「なるほど、爆発で炎を消したのですね」
ハッピー「でもまだ消火しきれてない!」
サニー「とりゃー!」ドカ ドゴ
アカンベー「アカンベー!アカンベーー!」パチパチ
サニー「あかん、飛び火までは防ぎきれん!」
ハッピー「このままじゃ勝てないよ!」
ビューティー「今回も良牙さんの力さえ借りられれば…」
マーチ「私たちは!」
ピース「池の水でバケツリレーくらいしかできない!」
ビューティ「池…そうだわ!サニー、あのため池にサニーファイヤーを!」
ビューティー「考えがあるのです!お願いします!」
サニー「何やようわからんけどわかった!プリキュア!サニーファイヤー!」
ジュワ ゴポゴポ
ビューティ「今です!マーチ、あのため池にマーチシュートを!」
マーチ「わ、わたし?うん、わかった!プリキュア!マーチシュート!」
バシャア ビュオオォ
ビューティ「そうです。これはお湯の雨です!」
シュワァァァァァァ
ウルフルン「なに!?チクショー、炎が消えていきやがる!しかしなんでわざわざお湯に?」
ビューティ「それは」
良牙「獅子咆哮弾!」
ドゴオオォォ
ウルフルン「なに!何なんだ今のは!?」
良牙「俺を不幸にしたのは貴様か…」
ビューティ「そう、わざわざお湯にしたのは彼を元の姿に戻すためです!」
サニー「良牙さn、って何で裸なんちょっと///」
ハッピー「うわぁ!服!服を着てー!」
マーチ「キャンディ、ドレスデコルをはやく///」
キャンディ「了解クル!」レッツゴー ド レ ス
ピース(うは、いい体だった///)
ビューティ「不覚、これは想定外でした///」
ウルフルン「てめぇさっきの小汚ぇ豚か!?何で人間に?あの技も一体なんだ!」
良牙「全て貴様のせいだな、許さん!」
ウルフルン「く、アカンベー!やっちまえ!」
アカンベー「アカンベー!」
良牙「獅子咆哮弾!」
ピース「今だ!プリキュア!ピースサンダー!」チュドーン
アカンベー「アカン…ベ~」
キャンディ「やかんデコルゲットクル~!」
ウルフルン「くそ!覚えてやがれ!」
なお「ありがとう良牙さん!」
やよい「眼福、じゃなくて、ありがとうございました」
あかね「相変わらず凄いなぁ獅子咆哮弾、ほんまおおきに!」
良牙「あぁ、そいつはよかった…」
みゆき(なんだろう、良牙さん元気がなくなってる気がする)
キャンディ「豚さんの格好もかわいかったクル!」
良牙「そのことは忘れてくれ、頼む…」
なお「でも何でそんな不思議な体質に?」
良牙「中国に呪泉郷という呪の泉があってな。そこで溺れたらこうなっちまったんだ」
みゆき「そうなんだ。可愛そう…」
やよい「気にすることないですよ!本当に可愛かったですから!」
良牙「お前それ慰めになってないぞ…」
良牙「男になる呪泉郷に入れば元に戻れる」
あかね「一応手はあるんや。戻れるとええなぁ」
良牙「そうだな。お前らも中国に行くときは気をつけろよ」
なお「そうだね。何かと不便になりそうだし気をつけるよ」
良牙「それじゃ俺はまた旅に出るぜ」
良牙「あぁ。なんだか疲れた。早めに目的地を目指すことにする」
あかね「そっか。今度は迷いなや」
良牙「あぁ。またな」スタスタ
やよい「行っちゃった」
れいか「少し落ち込んでらっしゃるようでしたね」
なお「でも不思議な泉もあるもんだね。溺れるとあんな体質になるなんて」
やよい「呪いかぁ。おっかないね」
みゆき(元気がなかったのは体質のせいだったのかな?)
みゆき(わたしは、)
みゆき(あの獅子咆哮弾っていう技のせいに思うんだけど…)
長らくvipにきてなかったからこんなに文字制限と秒数規制に手間取るとは思わなかったorz
諸事情で再開が数日先になるかもしれん
まとめられ(ることはないと思うけどもしまとめられ)たら後日続きを投下させていただきます
これほど続きが気になるSSは久々だ
Entry ⇒ 2012.10.26 | Category ⇒ プリキュアSS | Comments (1) | Trackbacks (0)