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魔法少女まどかフロンティア 5
魔法少女まどかフロンティア 5
麒麟「まず、最初にお話ししておきましょうか」
麒麟「アセルスさんは、妖魔の君オルロワージュに打ち勝ちました」
まどか「ほ、本当に!?」
ほむら「……人間として?」
麒麟「はい。驚くべき事ですが」
ほむら「……そう、よかったわ」
まどか「やった! アセルスさん! 勝ったんだよ、ほむらちゃん!」
ほむら「そうね、強い人だわ」
まどか「ほむらちゃん、もっと喜んでもいいんだよ~?」
ほむら「……」
まどか「あ、もしかして泣きそう?」
ほむら「ち、違うわ!」
まどか「大丈夫だよ。私が受け止めてあげるから!」
ほむら「……その時は、元の大きさに戻してくれる?」
まどか「駄目。もう少し私の手の内に!」
麒麟「……」
麒麟「零姫とは古い友人。ここで匿っていたこともありました」
ほむら「ああ、オルロワージュから……」
まどか「それじゃあ、ここにいる子どもたちも、誰かに追われているんですか?」
麒麟「いえ、あの子たちは訳あって身寄りの無い境遇なのです」
麒麟「私は彼らを引き取って育てています」
まどか「そうだったんですか……」
ほむら「なんて良い人、いえ良い麒麟」
麒麟「それほどでも」
ほむら「……それもしかして広まってるの?」
麒麟「いえいえ、私は空術を司る身。トッキーとは相反する立場ですが、それゆえつながるところもあります」
ほむら「トッキーって……」
まどか「絶対仲いいでしょ」
麒麟「何を言うのです。トッキー&麒麟は相容れないものです」
まどか「……」
ほむら「突っ込んだら負けね」
ほむら「もしかして、問題あった?」
麒麟「いえ、これは定めというものでしょう。あなたの選択を私も受け入れました」
ほむら「……そう」
麒麟「それで、先日私のもとにブルーと名乗る若者がやってきました」
ほむら「ブルー……。ルージュさんの双子の片割れ……」
麒麟「空術の資質を与えろと、随分殺気立った様子でしたが」
まどか「……」
ほむら「資質、あげたの?」
麒麟「はい。ブルーも驚いていたようですね」
まどか「戦わずに済んだんですね……」
麒麟「ええ。平和裏に終わった事は、喜ぶべきでしょう」
まどか「で、でもルージュさんとそのブルーさんが資質を揃えたってことは……」
ほむら「……雌雄を決する時が」
まどか「……」
麒麟「ふむ、あなたたちの方が事情に通じているようだ」
ほむら「どういう意味?」
麒麟「時術と空術を、あの双子にもたらしたのはあなたです。その意味はあなたが見届けるべきなのです」
まどか「それって、ほむらちゃんが二人の戦いを……」
麒麟「いえ、それはもう終わった事」
ほむら「終わった? まさか……」
麒麟「決着は既に。ですが結末には未だ至ってはおりません」
まどか「ちゃんと教えてください!」
麒麟「……ですから、見届けるべきなのですよ。ほむらさん」
麒麟「行きなさい、宿命の場所に!」
ほむら「!」
まどか「!」
まどか「ほむらちゃん!? ほむらちゃんをどこにやったんですか!?」
麒麟「心配なさらず。すべてが終われば、またここに呼び戻します」
まどか「で、でもほむらちゃんちっちゃいままですよ!?」
麒麟「あ」
まどか「あ、じゃないですよ!? 早くほむらちゃんを返してください!」
麒麟「は、はい。すぐに……」
麒麟「……?」
まどか「ど、どうかしたんですか?」
麒麟「……これは、干渉できない? 時術と空術、それに魔術の類い……」
麒麟「こんなことができるのは……」
まどか「何物憂げになってるんですか!」
麒麟「痛! 待ってください! すぐになんとかしますから!」
…………
マジックキングダム
魔法科学の発達したリージョン
多くの術士が暮らす
地下には……
ヒューズ「おいおいおい、どうなってんだよ!?」
ドール「無駄口たたいてる場合!? 死にたいの!?」
ヒューズ「これが黙ってられるかよ! 何だ、何があった?」
ラビット「マジックキングダム地下から、多数のモンスターが出現している模様。詳細は不明です」
サイレンス「……!……!」
ヒューズ「しゃべれや!」
コットン「キュ!」
ドール「一般人の退避が済むまで、ここは絶対に抜かせないで!」
ヒューズ「こんなもん、IRPOだけで対応できるか!? 軍はどうした!」
ドール「モンドの余波で、なかなかすぐには動かせないわ。トリニティも最近騒がしいみたいだし」
ヒューズ「冷静に言いやがって……。こんな時でもアイシィドールかよ」
サイレンス「……! ……!」
ヒューズ「だからお前、声……」
サイレンス「……??」
ヒューズ「何だ? 頭?」
ヒューズ「おい、何だよ」
ドール「……あなたの頭の上、妖精がいるわ」
ヒューズ「ああ!? お前大丈夫かよ?」
ドール「いや、だって……」
ヒューズ「え、待てよ。マジなのか?」
コットン「キュ?」
ほむら「あのー、こんにちわ……」
ヒューズ「おい、ラビット」
ラビット「現在照合中……。確認、暁美ほむらです」
ヒューズ「いや、そうじゃなく、これが幻覚じゃないかっていう……」
ヒューズ「暁美ほむら?」
ほむら「……よ、よろしくお願いします」
サイレンス「………」
ヒューズ「はああああ!?」
ほむら「あの、あなたたちは私のことを……?」
ヒューズ「ああ、知ってるぜ。俺らはIRPOだからな!」
ほむら「IRPO……。麒麟さん、何してくれてるのよ……」
ヒューズ「まさかの妖精サイズか……、見つからない訳だぜ……」
ドール「ヒューズ、後にして! 敵が来る!」
ヒューズ「くそっ、何でこんな時に!」
ラビット「残弾、ありません。支給願います」
ヒューズ「こっちも無いんだよ! 我慢しろ!」
ドール「このままじゃ、ヤバいわね……」
ほむら「ちょ、揺らさないで! 先に私降ろして!」
ヒューズ「待てよ……」
ドール「ヒューズ!」
ヒューズ「暁美ほむら、お前モンドからぶん捕った武器、まだもってんのか?」
ほむら「ええ、まあ」
ヒューズ「……俺らに協力するつもりは?」
ほむら「協力すれば、私はIRPOから追われないのかしら」
ヒューズ「それは虫がよすぎる……が!」
ほむら「が?」
ほむら「何言ってるの?」
ヒューズ「そして行方をくらましたのは、なんか縮んだからだ……」
ヒューズ「行ける、行けるぞ! 何なら減給取り消しもいける!」
ほむら「……なんとなく、読めてきたわ」
ヒューズ「……話は聞いた通りだ。お前は武器と口裏合わせ、俺は代わりにお前を無罪放免にする」
ドール「ちょっと! そんなこと許されるわけが……」
ヒューズ「ほむら、どうする」
ほむら「……受けましょう。このままじゃ私も危ないし」
ヒューズ「よし、契約は成立だ。お前は俺のティンカーベル的な何かとして、武器を提供しろ!」
ほむら「……契約って言わないで」
ほむら「それじゃあ、どうぞ」
ヒューズ「うお!? 頭にバズーカ!?」
ほむら「仕方ないじゃない。今の私じゃ手渡しなんてできない」
ほむら「はい、次」
ヒューズ「いやだから頭に……」
ヒューズ「……リーサルドラグーンか。良い趣味だぜ」
ドール「全く勝手なことばかり……」
ほむら「ああもうまどろっこしいわ。適当に出すから、適宜拾って頂戴」
ヒューズ「!? お、おいやめろ! 俺の上で……」
ドール「武器に埋まった……」
「封印が破られた……」
「すべてははじめから、このために」
「俺、いや僕の人生の意味は……」
「……」
ヒューズ「ヒャッハー!! 撃ちまくれ! ぶっ壊せ!」
ほむら「は、走らないで!」
ヒューズ「ぐお!? お前、髪を引っ張るな! ハゲたらどーすんだ!」
ほむら「うるさいわ! あなたなんてハゲたら良いのよ!」
ヒューズ「! 新手だ! 武器プリーズ!!」
ほむら「武器パス!」
「……いや、あれは」
「ふふ、二代目、また会えたね」
ヒューズ「おい、なんかデカいのはねーのか? ドールとコットンが囲まれてる」
ほむら「……じゃあ、ハイペリオンを」
ヒューズ「うお!? こんなもんまで!?」
ほむら「そして、タイムリープ」
ヒューズ「……お前何者なんだ?」
ほむら「……あなたの部下じゃなかったかしら」
ヒューズ「はっ、食えないガキだぜ」
ほむら「え、あなた知らないの?」
ヒューズ「パトロールは陽子ロケットなんて使いません!」
ほむら「中学生でも知ってるのに……」
ドール「言ってる場合? 早く援護を!」
コットン「キュキュ!」
サイレンス「………!」
『ヴァーミリオンサンズ』
ヒューズ「うお!?」
ほむら「ルビーがモンスターを圧殺していく……」
ドール「……あなたの術?」
ほむら「いえ、私じゃない」
サイレンス「………!」
ほむら「いやグッジョブじゃなくて。私じゃないってば」
「皆さん、ありがとうございました。後は任せてください」
ヒューズ「誰だ?」
ルージュ「うん、ルージュだよ。ブルーでもあるけれど」
ほむら「……勝ったの?」
ルージュ「勝った。だけどもうそれはいいんだ」
ほむら「?」
ルージュ「すべては、仕組まれた宿命だったから」
ほむら「ルージュさん?」
ルージュ「……地獄を滅ぼす」
ヒューズ「は? 何言って……」
ルージュ「この命に代えても」
ほむら「ルージュさん! あなたの宿命って……まさか!」
ルージュ「最強の術士を生み出すための、茶番だよ。僕が幕を引く」
ほむら「あなたは……」
ルージュ「君たちとの昼食、楽しかったよ。きっとあれが僕とブルーの差だったんだろう」
ほむら「……」
ドール「止めようにも、無理ね。術士のレベルが違う……」
ラビット「民間人の退避を確認しました」
サイレンス「…………」
コットン「キュキュ!」
ほむら「……パトロールにも敬礼ってあるの?」
ヒューズ「あ? ああ……」
ほむら「それじゃあ……」
『敬礼!』
IRPO本部
ヒューズ「……そうか、御苦労さん」
ほむら「……マジックキングダムからの通信ね。一体なんて?」
ヒューズ「モンスターは全滅、地下の空間も消滅」
ヒューズ「事態は収束だ」
ほむら「……ルージュさんは?」
ヒューズ「……さあな。見つからなかったとさ」
ほむら「……」
ほむら「……何?」
ヒューズ「IRPOの臨時ライセンスだ。一応俺の部下になってるからな」
ほむら「話はついたのかしら」
ヒューズ「ああ、お偉いさんもとっとと終わらせたかったらしい」
ほむら「……そう」
ヒューズ「……」
ヒューズ「で、お前はどうすんだよ?」
ほむら「とりあえず、まどかと……」
まどか「ほむらちゃぁぁん!!」
ほむら「!?」
まどか「よかったぁ、無事だった……!!」
まどか「って、何でヒューズさんの頭の上に!?」
ほむら「え、いや普通に歩いたら大変だし……」
まどか「降りて! そして私の方に!」
ほむら「ああ、私もまどかがいい……っていうか元に戻して?」
まどか「も、もうちょっと! 今度はちゃんと守るから!」
ほむら「複雑だわ……」
まどか「ヒューズさんがほむらちゃんを保護してくれてたんですね」
まどか「ありがとうございました!」
麒麟「それでは失礼します」
ヒューズ「おーい!」
ヒューズ「なんだったんだよ……」
ドール「ヒューズ、報告よ」
ヒューズ「なんだ? 俺はもう帰りたいんだよ」
ドール「マジックキングダムで使った武器の量、聞いた?」
ヒューズ「は?」
ドール「あの子、まだ大量に持ってるわよ」
ヒューズ「……」
ヒューズ「揉み消せ!」
ドール「あら、ほむらちゃんに愛着ができた?」
ヒューズ「ふっざけんな! また俺が減給されるだろうが!」
ヒューズ「おい、まだその辺にいるだろ! 連れ戻してこい!」
ドール「さっき、あの麒麟とかいうのがどこかに連れて行ったけど?」
ヒューズ「……揉み消してくださいお願いします」
ドール「ふん、まあいいわ。今回だけよ」
クーロン イタリア料理店
ルーファス「前回のミッションでキューブ、そしてジョーカーの動向が判明した」
ルーファス「もはや一刻の猶予もない。これより総力をもってヨークランドに向かうぞ」
さやか「うーん、仕方ないですね。ちょっと待ったらみんなに手伝ってもらえそうだけど」
エミリア「これは私たちの戦いよ。それに、多分私の……」
アニー「エミリア?」
ライザ「……」
ルーファス「今回は衣装を用意する暇ない。すぐに出撃する」
ライザ「いえ、衣装はあるわ」
さやか「?」
ルーファス「何だと……?」
ヨークランド 町外れの丘
リュート「だからよー、なんでこんなとこで酒飲むんだよ」
ゲン「ああん、分からねえのかよ? 無粋な奴だな」
リュート「酒なんてどこで飲んでも同じだろ? 俺ちょっとかあちゃんに会いに行こうかと……」
ゲン「止めとけ止めとけ、母親なんてのは息子がダラダラしてんのが一番嫌いなんだ」
リュート「だったら何でヨークランドに連れてけなんて……」
ゲン「酒飲むんだよ、酒。お前は道案内だ」
リュート「チクショー、かあちゃんに会わす顔がないぜ……」
アニー「ただの酔っぱらいでしょ? それよりこんなとこに本当にキューブがあるの?」
さやか「いい景色ですけど、そんなすごいものがある感じじゃないですね」
ライザ「礼拝堂があるんだったかしら」
ルーファス「俺も疑問だったが、ここはモンドの故郷だ」
さやか「もんど?」
ルーファス「奴が何かを隠していたとしても不思議ではない」
さやか「その人何者なんですか?」
ルーファス「トリニティの司令、だった。軍事クーデターを企んでいたらしいが頓挫した」
さやか「そりゃまたどうして」
ルーファス「とある魔法少女に根こそぎ武装を奪われてね。俺は彼女を引き入れるつもりだったのだが……」
さやか「あー、ほむらの言ってたのってそれかぁ」
さやか「……ていうか、ほむら目当てだったんですね」
ルーファス「ああ。だが今は君が味方でよかったと思っている」
さやか「へ?」
ルーファス「? 何がだ?」
ライザ「エミリア、ちゃんと持って来た?」
エミリア「う、うん。でも……」
アニー「いいのいいの。折角だから着ちゃいなよ」
さやか「これは……」
ゲン「おいおい、リュート。今日は結婚式でもあるのか?」
リュート「はあ? こんなとこで誰が……」
ゲン「けどあれは花嫁さんじゃねえのか?」
リュート「……本当だ。ウェディングドレスの別嬪さんだ」
リュート「こんなとこで?」
ゲン「結婚式ってことは、いい酒と食いもんだな」
リュート「ゲンさん、まさか潜り込むつもりかい?」
ゲン「……ふへへ、いくぞリュート!」
リュート「もう酔ってんだろアンタ! 自重しなよ……」
アニー「そうだね。綺麗だよ」
ルーファス「こんなことをしている場合では……」
さやか「こんなこと?」
ライザ「これだからあなたは……」
エミリア「私、レンと小さな礼拝堂で式を挙げようって言ってたの……」
さやか「エミリアさん……」
アニー「じゃあ、ちょうどいいじゃん。ちょっとボロい所だけど、それで式を挙げて、もう忘れよう」
エミリア「アニー……」
ルーファス「待て、ジョーカー迎撃の準備を……」
ライザ「ルーファス、もう黙って」
さやか「私もいつか、こんなドレスで……」
ルーファス「いかんな、緊張の糸が切れている……」
ゲン「何だあ、誰もいねえじゃねえか」
リュート「そりゃあこんなとこじゃあな……」
ゲン「んだよ、詰まら……」
ゲン「何だコイツ?」
リュート「おいゲンさん、勝手に触らない方が……」
ゲン「ふぅん、変わり種の仏像か何かか?」
リュート「叩くなよ……」
リュート「誰としゃべってんだよ? もう行こうぜゲンさん」
ジョーカー「……」
リュート「お? アンタいつから居たんだい?」
ゲン「何か気持ち悪い仮面だな。外した方がいいぞ」
ジョーカー「……お前たち、グラディウスか?」
ゲン「グラ? 何だ?」
リュート「俺たちは酒飲みとプー太郎だぜ? 怪しいもんじゃない」
ジョーカー「……ルーファスの作戦か」
リュート「はあ?」
ジョーカー「もういい。やれ!」
ゲン「うお! こいつ動くのか!」
アニー「ルーファス! あなた神父役やってよ!」
ルーファス「私がか? 何をしろというのだ」
さやか「あれですよ、永遠の愛を誓いますか、って!」
ライザ「サングラス外してね」
ルーファス「馬鹿な!」
エミリア「みんな……」
ルーファス「待て、まだやるとはいってない!」
さやか「その辺の花でブーケ作りましょう!」
アニー「お、ナイスアイデア!」
ライザ「歌も歌う?」
さやか「おお! いいですねえ!」
リュート「ぎゃあぁぁ! すみません! 俺たち出て行くから!」
ゲン「ああん? リュートお前なにビビってんだ? 俺を誰だと思ってんだ?」
リュート「いや無理だって! あいつもう手いっぱいあるし! 武器持ってるし!」
ゲン「ワカツ生まれの剣の冴え、目に焼き付けろ!」
VS ディーヴァ
『ブレード』
ゲン「甘い!」
『ディフレクト』
リュート「ゲンさん!? アンタ何者だい!?」
ゲン「……!」
『濁流剣』
リュート「ゲンさぁん!」
ルーファス「なんだか騒がしいな……」
ライザ「さっきの酔っぱらいかしら」
エミリア「!」
エミリア「ジョーカー!」
さやか「え!?」
エミリア「礼拝堂の裏に!」
ルーファス「……皆、準備はいいか? いい訳無いか」
アニー「良いに決まってんでしょ!」
ライザ「ドレスまで着たのよ?」
ルーファス「……女というのは分からんな」
さやか「行きましょう!」
ジョーカー「チッ……間の悪い奴らだ」
エミリア「ジョーカー!」
エミリア「……いえ」
エミリア「あなたなんでしょ! レン!」
さやか「え……?」
アニー「エミリア!?」
ライザ「まさか……」
リュート「お? おーい! あんたらこのマスクマンの知り合いかい? 止めさせてくれよ!」
ゲン「まさかこんな奴とチャンバラとはなぁ!」
アニー「エミリア?」
エミリア「答えてよ、レン!」
ジョーカー「……やれ、ディーヴァ」
ルーファス「! 来るぞ!」
さやか「……ここは私たちが! エミリアさんはジョ……」
さやか「……レンさんを!」
エミリア「……ごめんなさい」
アニー「……行ってこい!」
ライザ「あなたの答え、見つけて来なさい」
ルーファス「……仕方が無い、か」
ゲン「お? 奥の手か?」
ディーヴァ「……!」
『天罰』
リュート「おいおい、これやばいんじゃないか?」
ルーファス「礼拝堂が崩れる! みんな逃げろ!」
さやか「エミリアさんは奴を!」
エミリア「……!」
ライザ「離れて!」
さやか「ぐぐう、さやかちゃんじゃなきゃ瓦礫の下でダウンだよ……」
リュート「な、なんで俺がこんな目に……」
ルーファス「生きていたか、青年」
ゲン「……さすがに酔ってもいられないか」
アニー「エミリアは!?」
ライザ「奴を追ったわ!」
タァン!
ルーファス「まさか……」
ルーファス「アニー、ライザ! エミリアを頼む!」
さやか「もう行きましたよ! それより前、前!」
ルーファス「まずいことに……ぶふぉお!?」
ディーヴァ『魔人三段』
さやか「ル、ルーファスさん!」
リュート「サ、サングラスの人ぉ!」
ゲン「……そこの青い嬢ちゃん、剣が使えるのか?」
さやか「は? いやまあ、そこそこ……」
ゲン「よし、嬢ちゃん。あのデカブツを倒すぞ」
さやか「……?」
『風雪即意付け』
『三花仙』
さやか「うわ、すご……」
ゲン「ふん、やり損ないだ。そうそう連続でできるもんじゃない」
ゲン「……が、動きは覚えたな?」
さやか「ええ~……」
ゲン「いーからやれ。どれか一つでいい」
さやか「はあ、まだ酔っぱらってんじゃないの……」
さやか「って、またやる気!?」
ゲン「……おい、リュート!」
リュート「な、何だよ」
ゲン「歌え」
リュート「は?」
ゲン「歌え」
さやか「はあ?」
ゲン「お前の歌はあれだからな、奴の注意を引ける」
リュート「アレって何だよ!?」
ゲン「いいから、思いっきり歌え!」
さやか「何か知らないけど、歌ってください! ギター持ってるじゃないですか!」
リュート「ああ、もう! どうなってもしらないからな!」
ゲン「よし。行くぞ、嬢ちゃん!」
さやか「こうなりゃ、なんでもやるわよ!」
デンデデッデデレデンデデッデデレデンデデッデデレデンデデッデデレ
さやか「!?」
リュート「~♪」
ヘェーラロロォールノォーノナーァオオォー
ディーヴァ「!?」
さやか「い、いける! あいつ隙だらけだ!」
ゲン「……俺の技の繋ぎを頼む」
さやか『風雪即意付け』
さやか「で、できたの?」
ゲン「上出来だ!」
『三花仙』
『乱れ雪月花』
リュート「ラロラロ……ってやったのか!?」
ディーヴァ「……!」
ゲン「しつこい奴だな」
さやか『神速三段突き』
さやか「
Entry ⇒ 2012.11.13 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
魔法少女まどかフロンティア 4
Entry ⇒ 2012.11.11 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
恭介「…さやか」
パチパチ
恭介「…」
恭介「さやか…いつも僕の側に居てくれたのに」
恭介「なんで…」
恭介「こんなことになるくらいなら早く渡しておけばよかったな…」
恭介「お見舞いのお礼…なんだか恥ずかしくて、話しかけることもできなかった」
恭介「くそっ…こんなもの!」バンッ
恭介(さやか…僕は…)
恭介(さやか、君が居ないのにバイオリンを弾いても意味がないんだ)
恭介(生きていても意味がないんだ)
恭介(最近、緑のストーカーみたいな子もなんか怖いし)
恭介(ここから落ちて死ねばさやかに会えるかな…)
恭介「…」
恭介「…さやか、今会いに行くよ」
杏子「おい!」ガシッ
恭介「…君は?」
杏子「なにしてんだっていってんだよ!」
恭介「…ただ、死のうとしてただけだよ」
杏子「…っ」
杏子「さやかの願いを見に来てみたらこんな奴だったとはな」
恭介「!君はさやかの友達なのかい?」
杏子「ああ、友達…だ」
杏子(少なくともあたしはそう思ってる…)
恭介「そうなんだ…さやかの願いっていうのは?」
杏子「教えねー、今のお前に教える価値もねー」
恭介「…」
杏子「それより…なんで自殺なんてしようとしてた」
恭介「ああ、たださやかが居ない…」
恭介「笑っていない、喜んでいない」
恭介「そんな世界で生きてる意味なんてないから…」
恭介「ぐっ」
恭介「…痛いなぁ、なにするんだよ」
杏子「ふざけんな!」
杏子「そんなにさやかを思ってんなら生きろ!」
杏子「バイオリンを弾き続けろ!」
恭介「…」
杏子「頼むよ、お前が死んだらさやかが報われない…」
杏子「さやかが悲しむだろ…」
恭介「…!」
幼さやか『きょうすけのバイオリンをみんなにきいてきいてもらうこと!』
幼恭介『ありがとう、なんだかてれるな…』///
幼さやか『あと…きょうすけのおよめさんになれたって』ゴニョゴニョ
幼恭介『?』
恭介「…わかった」
恭介「さやかの為にも僕は生き続ける」
恭介「バイオリンを弾き続ける」
恭介「それに今さやかに会いに行ってもさやかは口も聞いてくれないだろうしね」ニコ
杏子「…ふっ」
杏子「そっか」ニカッ
杏子「佐倉杏子だ」
恭介「佐倉さんか…僕は上条恭介」
杏子「知ってるよ、もう自殺なんてするなよ」
恭介「うん、本当にありがとう」
恭介「大事なことを思い出したよ、じゃあ」
杏子「あ!ちょっと待ちな!」
恭介「ん…なにかな?」
杏子「これ、やるよ」ヒョイ
恭介「?」パシッ
恭介「…!これは」
杏子「ああ、さやかの髪留めだ」
杏子「あたしが持ってるよりあんたが持ってたほうがさやかも喜ぶだろ」
恭介「…」
杏子「じゃあな、頑張れよバイオリン」スタスタ
恭介「うん、じゃあね佐倉さん」
恭介「…さやか」ギュ
ゆま「キョウコー」
ゆま「キョウコが音楽番組見るなんて珍しいね」
杏子「まあな」
ゆま「わ、この人かっこいいねー」
杏子「そうかぁ?」
ゆま「そうだよぉ、でも男の人なのになんで髪留めしてるんだろ」
杏子「なんでだろうな」
杏子「そうだな」クスッ
ゆま「でもこの人のエンソーゆま好き!」
ゆま「なんか心があったかくなるんだぁ」
杏子「そっか」ニコ
杏子(…さやか)
杏子(お前の願いみんなに届いてるぞ)
杏子(お前にも届いてるだろ…お前の願い)
恭介(なんでだろ…)
恭介(わかった気がする)
さやか『奇跡も、魔法も、あるんだよ』
恭介(僕の腕が治ったのも、演奏できるのも)
恭介(さやか、きみのおかげなんだね)
恭介(さやか…)
恭介(ずっと僕の側にいてくれてるんだろ?)
恭介(今も…)
恭介(ここに…)
恭介(…さやか)
さやか(…恭介)
おわり
Entry ⇒ 2012.11.10 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
魔法少女まどかフロンティア 3
「またシップか。今回は連続だな」
「おら、荷物をここに並べろ」
レッド「何だ、お前たちは」
「ゴチャゴチャ言ってねえで言われた通りにしろ!」
さやか「何よこいつら……」
マミ「うふふ、臓物の中から骸骨がでてきたわ~」
さやか「マミさん、これモンスターです。正気に戻ってください!」
「こいつらなめやがって……」
「やっちまえ!」
さやか「!」
さやか「杏子!?」
杏子「あ? なんだ……って」
杏子「さやか!?」
杏子「……と、マミはどうしたんだよ?」
マミ「あら、佐倉さん? こんなところで奇遇ね~」
レッド「マミはタンザーの中身にショックを受けたんだ……」
杏子「ああ……、ってアンタは?」
レッド「俺はレッド。マミとさやかには、色々助けてもらってる」
さやか「レッドさんは正義の……」
レッド「!?」
さやか「っじゃない! あの、なんかみんなを守る系の仕事を……」
「おいおい、あたしらを無視するんじゃないよ」
マミ「……どちら様ですか?」
杏子「お、立ち直ったか」
マミ「悪人の気配がするわ……」
さやか「さすがマミさん……」
「こいつらが手荒なまねをして済まなかったね。どうも気の短い連中でね、許しとくれよ」
さやか「え、何?」
杏子「こいつ、強盗団の頭なんだよ」
杏子「なんだっけ、ノーマッド?」
マミ「強盗!?」
レッド「強盗だと……」
ノーマッド「そうよ。あたしはノーマッドさ。確かに外じゃ悪さもしたさ」
ノーマッド「まあ、言い訳するつもりもないさ。けど……」
杏子「ここにいたら、タンザーに吐き出されてお陀仏だぜ」
さやか「そ、それを先に言いなさいよ!」
マミ「どこか、場所があるの?」
杏子「ああ、まあな。あたしも連れがいるんだ」
さやか「へえ、杏子が」
杏子「いいだろ、別に」
「お頭、どうします。連中行っちまいましたよ」
ノーマッド「チッ、仕方ないね」
ノーマッド「帰るよ!」
タンザー 居住地
マミ「場所って、ここ?」
杏子「ああ、一応安全だし、食いもんもあるぜ」
マミ「ふふふ、やっぱり臓物なのね……」
さやか「マ、マミさん、ほらこの辺りあんまりヌメってないですよ!」
マミ「そうね~なんだか動いてるわ~」
「びょ、病気ではない! これは修行のために……」
メイレン「私をほっといて、その挙げ句に弁髪? 信じられない!」
さやか「えーと、あれは?」
杏子「ああ、あたしの連れだ」
さやか「……弁髪も?」
杏子「あれはタンザーで会った。この場所もアイツが使わせてくれてるんだ」
マミ「いい人なのね……」
杏子「フェイオンってんだよ。ガチガチの善人だな」
さやか「で、杏子は今まで何してたの?」
杏子「そこのクーンとメイレン、あいつらと指輪を探してる」
マミ「指輪?」
杏子「全部集めねーとあいつの故郷が滅びるんだとさ」
マミ「滅び……」
さやか「それでほっとけなかったんだねえ」
杏子「ニヤニヤすんな!」
クーン「そうだ、指輪だよ!」
クーン「フェイオン、指輪のことなんか知らない? すごい力の魔法の指輪!」
フェイオン「指輪か……。私は聞いたことがないな」
メイレン「指輪の持ち主が乗ったシップがタンザーに呑まれたっていう話があるわ」
メイレン「心当たりはない?」
フェイオン「……ノーマッドなら何か知ってるかもしれないが」
杏子「お前らは何をしてたんだ?」
マミ「……戦っていたわ」
マミ「正義のために!」
杏子「なんだよコイツ」
さやか「私も、正義のために……」
杏子「さやかまで?」
さやか「……いや、まあ、事情があってね」
さやか「私は魔法少女を探してたところに、マミさんと会ったんだ」
杏子「ふーん」
さやか「おお、ほむらに! どんなだった?」
杏子「まあ、相変わらずだな。なんか魔法が戻ってた。あとはまあ、なんか人形みたいのと一緒だったな」
さやか「人形って何よ。機械じゃなくて?」
杏子「人形みたいな服と顔した女二人だよ。ほむらも合わせて三人が人形だな」
さやか「綺麗どころがそろったのかぁ……」
マミ「鹿目さんは一緒じゃなかったの?」
杏子「あいつだけだったよ。ほむらも心配してたな」
さやか「ああ、目に浮かぶなあ……」
マミ「鹿目さん、大丈夫かしら……」
さやか「……そうだね」
マミ「無事に決まってるわ。当たり前でしょ?」
杏子「だな」
マミ「それで暁美さんとは別れちゃったの?」
杏子「合流するつもりだったんだよ。でもそこでタンザーだからさぁ……」
さやか「ああ、不運だね……」
クーン「キョーコ!」
杏子「んー、なんか分かったのか?」
クーン「ノーマッドが指輪のこと知ってるかもって!」
杏子「あいつがぁ? 本当かよ……」
クーン「早く早く!」
…………
杏子「……」
杏子「お前らもくるのか」
さやか「当たり前じゃん!」
マミ「遠慮しないの」
レッド「フェイオンさんから事情は聞いた! 俺も協力する!」
杏子「暑苦しいな、おい」
クーン「仲間が増えた!」
フェイオン「ノーマッドに取り次いでもらおう!」
「ああ!? お頭はお前なんかに会わねえよ!」
フェイオン「会うのは私ではない」
クーン「僕たちだ!」
ノーマッド「ふん、いい度胸だね。まあ、来るとは思ってたけどね」
クーン「知ってるの?」
ノーマッド「知ってるさ。あたしが持ち主だからね」
メイレン「あなたがね……、奪い取ったものかしら?」
ノーマッド「そういうわけさ」
レッド「なんという悪党……!」
杏子「あ? 何言ってんだよ」
ノーマッド「とぼけるんじゃないよ。アンタが指輪を持ってることは、アタシの指輪が教えてくれた」
フェイオン「そんな話が通じるとでも?」
ノーマッド「あんたらには通じないだろうよ。でも、あんたと一緒にいるガキやらジジイやらはどうだい?」
フェイオン「貴様、まさか……!」
ノーマッド「そうさ、だからさっさと……」
「ノーマッド、貴様の悪事の数々、許せん!」
「アルカイザー、見参!」
「ティロカイザー、イグニッション!」
「サヤカイザー、行くよ!」
杏子「……何してんだお前ら」
マミ「今は合わせて!」
さやか「空気読んで!」
ノーマッド「お前達やっちまいな!」
アルカイザー「雑魚に用はない! 行くぞ!」
マミ「はい!」
『シャイニング天地・フィナーレ』
杏子「うわ、だせえ」
「ギャアァァ」
「ぐはあぁっ」
ノーマッド「チッ、役に立たない奴らだね……!」
杏子「あいつ、逃げるぞ!」
アルカイザー「逃がすものか!」
フェイオン「待ってくれ、アルカイザー! あちらは危険すぎる。戻れなくなるぞ!」
メイレン「だからって、見逃すわけにはいかないわ」
クーン「指輪も持っていっちゃったよ! 追いかけないと!」
フェイオン「……仕方がない。だが本当に気をつけてくれ」
さやか「うわ、本当にやばい感じ……」
マミ「うふふふふ、内臓だらけだわ~」
杏子「マ、ティロなんとか、正気に戻れ」
メイレン「いよいよ引き返せない感じになってきたわね……」
クーン「!」
クーン「あそこ!」
さやか「何あれ」
クーン「食べられてる?」
ノーマッド「ヒー、助けてー!!」
フェイオン「あれはタンザーの心臓部だ……」
杏子「心臓に食われるってどういうことだよ!?」
メイレン「どうする、助けるの?」
フェイオン「あんな奴でも見捨てる訳にはいかん!」
アルカイザー「もちろんだ!」
さやか「……」
マミ「……」
クーン「どうすればいいんだろ?」
メイレン「……攻撃?」
フェイオン「だが、下手に刺激するのも……」
『ブライトナックルゥ!』
さやか「ええ!? 殴っちゃうの!?」
アルカイザー「悩んでいてもしかたがない! 殴れ!」
杏子「よ、よし!」
杏子『チャージ』
さやか『デッドエンド』
さやか「いくよ、杏子!」
杏子「遅れんなよ!」
『チャーエンド』
フェイオン「ええい、私たちも行くぞ!」
フェイオン『爆砕鉄拳』
メイレン『曲射』
クーン『牙』
さやか「だ、大丈夫ですよ。ほらなんかビクビクして……」
アルカイザー「吐くんだタンザー!」
ノーマッド「ぐ、ぐぼっ」
杏子「……」
クーン「呑まれちゃった」
アルカイザー「待て、無茶をするな!」
マミ「あの口みたいなところに……!」
マミ「まだ助けられる!」
さやか「マ、ティロさん、危ない!」
マミ「え……?」
マミ「ぐ、ぐぼっ」
クーン「呑まれちゃった」
杏子「どどどどうすんだ、おい!」
さやか「! ま、まだ足は出てる!」
アルカイザー「ひ、引きずり出んだ!」
ズズズズ……
杏子「で、出てきた……!」
さやか「いける! 今助けますからね!」
クーン「僕たちも手伝わないと!」
フェイオン「お、おお、そうだった!」
メイレン「衝撃的過ぎたわ……」
さやか「か、顔の所で引っかかってる……」
杏子「こんなもん、魔法少女にあっていい絵面じゃねえよ!」
さやか「わああああ!」
杏子「引けえええ!」
グボッ
マミ「……」
ノーマッド「……」
アルカイザー「ノーマッドを離さなかったのか……」
杏子「ったく、どこまでお人好しなんだよ」
マミ「……」
さやか「え、えーと、大丈夫ですか……?」
杏子「か、カッコよかったぜ、さ、さすがはヒーローだな!」
マミ「……」
マミ「なんか、前にもこんなこと、合った気がする……」
杏子「え?」
さやか「ほ、ほら前世の記憶ってやつですよ。マミさんは前世でもヒーローだったんですよ!」
ノーマッド「……持ってきな」
クーン「指輪だ!」
ノーマッド「あたしを助けたこと、後悔するよ……」
フェイオン「ふん、まあこれで少しはおとなしくなるだろう」
レッド「なんだこの揺れは……」
フェイオン「さっきの戦いの刺激で、タンザーが暴れているんだ!」
フェイオン「シップに戻るぞ。タンザーが吐き出してくれるかもしれない!」
シップ内
マミ「……」
杏子「なあ、マミ元気だせよ。お前は立派だったよ」
さやか「そうですよ。マミさんがいなかったらノーマッドはきっと……」
マミ「うう……」
メイレン「シップが動くわ!」
レッド「外にでるぞ!」
ゴン
杏子「お、おい、なんかぶつからなかったか?」
さやか「き、気のせいじゃないかな」
「シップ、脱出に成功しました!」
マミ「いぃぃやったぁぁぁ!」
マンハッタン行き シップ内
「航路上にタンザーが出現!」
「緊急回避します!」
まどか「な、何!? 何が起きてるの!?」
ほむら「タンザー!?」
レオナルド「リージョン間を移動する巨大生物だ。飲み込まれたら大変だね」
ドゴン!
T260「シップ底部に衝突を確認」
まどか「何が!?」
T260「タンザーに取り込まれていたシップと推測されます」
「推進部に異常発生!」
レオナルド「まずいね。付近のリージョンに不時着できないかな」
「現在確認中! 最寄りのリージョンは……」
トリニティ・ラムダ基地
トリニティの軍事施設。執政官が統治する。
ほむら「不時着には成功したけれど……」
ほむら「ここは、軍事基地じゃないの?」
レオナルド「ここはトリニティ・ラムダ基地だね」
まどか「入っていいところなんですか?」
レオナルド「もちろんだめだ。だが今は緊急事態だから保護を求めれば……」
ほむら「どういうこと?」
レオナルド「ここならタルタロスと同様の情報が得られるかもしれない。なんと言ってもトリニティの軍事基地だからね」
T260「鹿目様、ご指示を願います」
まどか「ど、どうしようほむらちゃん」
ほむら「……警備状況によるわね」
ほむら「侵入しましょう。大丈夫、慣れたものよ」
まどか「ほむらちゃんはそうかもだけど……」
ほむら「まどかは軍事基地初めて?」
まどか「は、初めてだよ!? それが普通だよ!?」
T260「基地内に多数の警備モンスターならびに警備用メカが確認されます」
レオナルド「僕たちのシップは救難信号を出していたはずだ。モンスターまで放つのは異常だ」
ほむら「混乱してる、ってことかしら?」
レオナルド「そういうことになるのかな」
まどか「えっと、そうなると……?」
ほむら「出撃、しましょう」
まどか「ほむらちゃん、生き生きしてるなあ」
まどか「モンスターだらけだ……」
ほむら「博士、情報端末の位置は分かる?」
レオナルド「かなり深部だね」
レオナルド「君たちで少し時間を稼いでくれないかな。その間に僕とT260君が情報を取ってくる」
T260「多人数での潜入は危険です」
まどか「わ、分かった」
ほむら「時間稼ぎ、ね」
まどか「ほ、ほむらちゃん、あそこ!」
ほむら「敵!?」
まどか「ち、違うと思う……。ほら、女の人が」
ほむら「……本当」
まどか「えーと、あの人の服、なんていうか……」
ほむら「扇情的ね」
まどか「せんじょう……?」
エミリア「こんなとこに送られたと思ったら」
エミリア「いやらしい服まで着せられて!」
エミリア「最低!」
エミリア「……あそこにいるのは、子ども?」
エミリア「どうして……」
まどか「え、えーと、あの、シップが壊れて……」
ほむら「迷い込んだというか……」
まどか(基地の人じゃないのかな)
ほむら(ちょっと様子がおかしいわね)
エミリア「とにかく、ここにいたら危険よ! どこかに……」
まどか「!?」
ほむら「……まどか?」
ほむら「……?」
ほむら「仮面? いえ、仮面をつけた男?」
エミリア「!」
エミリア「あなたたち、ここを動かないで!」
まどか「行っちゃった……」
ほむら「確かに不気味なデザインだったけど……」
まどか「!」
まどか「こっちに来るよ!」
ほむら「……!」
ほむら「止まりなさい」
ジョーカー「……子どもに用はない」
『タイムリープ』
ほむら「逃がさないわ」
ほむら「仮面、外してみる?」
まどか「うん。この仮面、よくないと思うの……」
ほむら「取れるかしら」
まどか「……普通の人だね」
ほむら「知らない人。当然だけど」
エミリア「嘘……」
ほむら「……?」
エミリア「嘘でしょ……」
まどか「どうかしました……?」
ジョーカー「チッ」
ほむら「また仮面を着けた……」
まどか「逃げていくよ」
ほむら「どうする、追いかける?」
まどか「うーん、でもおかしいところはなかったし……」
ほむら「怪しい人ではあったけど」
まどか「えーと、大丈夫ですか?」
ほむら「ここは危険よ?」
ほむら「って私たちが言うのも、おかしな話ね」
レオナルド「お待たせ」
ほむら「!」
T260「HQの位置情報を収得しました」
まどか「大丈夫だった?」
T260「基地内部に私たちとは異なる侵入者があった模様」
レオナルド「おかげで侵入は簡単だったよ。比較的ね」
まどか「さっきの女の人?」
まどか「……あれ、いない?」
ほむら「スパイだったのかしら。でもそれにしては随分……」
レオナルド「行こう。長居はできないよ」
巨大なショッピングモールを有する、商業に秀でたリージョン
トリニティの管轄下にある
シップ発着所
ほむら「無事、帰ってこられたわね」
レオナルド「取り調べくらいは覚悟していたけれど、何もなかった」
まどか「カメラとかに、私たち映ってたりしない?」
ほむら「大丈夫。常に死角にいたし、無理なものは破壊したから」
まどか「さ、さすが」
T260「準備が完了次第、出向予定です」
ほむら「その前に、杏子と合流してもいいかしら」
まどか「あ、そうだったね。もうシップがあるかな?」
レオナルド「そうするといい。HQへのシップの調達は少し骨だからね」
ほむら「クーロン、行けます?」
係員「タンザーは去ったようですね。問題ありません」
ほむら「よし、行きましょう」
まどか「うん!」
杏子「ひどい目にあったな……」
さやか「久しぶりの乾いた地面だぁ」
マミ「もう何も怖くない」
クーン「でも指輪は見つかったよ!」
メイレン「それじゃあ、あと二つね」
さやか「あれ、もうそんなに?」
杏子「あたしが手伝う前から、何個か持ってたもんな」
メイレン「残ったのは策士の指輪と神秘の指輪」
メイレン「策士の方はオウミの領主が、神秘の方は指輪の君ヴァジュイールが持っているわ」
さやか「ヴァジュ……?」
メイレン「一筋縄では行かない相手でしょうね」
杏子「あー、それがお前のいる組織か?」
マミ「魔法少女を探しているのよね……」
杏子「何か胡散臭いんだよなぁ」
さやか「……イタリア料理、おごるよ?」
杏子「いくぞ、マミ。イタリアだ」
マミ「イタリア……。ティロカイザーの故郷ね……」
クーン「僕もイタリア食べたい!」
メイレン「はいはい、もう」
さやか「それじゃあ、みんなで……」
「やっとクーロンに着いたわ。杏子が待ちくたびれているでしょうね」
「杏子ちゃんに会うのも久しぶりだなあ……」
マミ「あれって……」
さやか「まどかと!」
杏子「ほむらじゃねーか!」
ほむら「あら、杏子。出迎えてくれたの? それとも待たせすぎた……って」
まどか「さやかちゃんとマミさん!?」
ほむら「あ、あなたたち……」
さやか「ふふん、さすがのほむらも突然の再会には弱いかね!」
さやか「二人とも、元気だった?」
まどか「よかった、みんな無事だったんだ!」
まどか「すみません、でもほむらちゃんが見つけてくれました!」
まどか「私をロボットの輪廻から解放してくれたんです!」
杏子「ロボット?」
まどか「多段切りの悪夢からも!」
さやか「あー、なんかあったねこれは」
ほむら「まだ引きずってたのね……」
杏子「マミが食われたりな」
マミ「やめて」
ほむら「マミ、あなたはまた……」
マミ「また!? またって何!?」
クーロン イタリア料理店
まどか「さやかちゃんがグラディウスで」
ほむら「マミがヒーロー……ってこれは秘密なのね」
まどか「それで、みんなタンザーの中にいたんだ」
杏子「ああ、恐ろしいところだったぜ。マミ的な意味で」
マミ「……」
ほむら「マミ的……」
レッド「よろしくな!」
ほむら「アルカぐむむ」
マミ「秘密だってば!」
まどか「あの犬っぽい子がクーン君で、チャイナ服の人がメイレンさん」
クーン「ほおろひく!」
メイレン「食べながらしゃべらない!」
ほむら「フェイオンさんというのは……」
メイレン「あいつは京に行ったわ。修行バカなの」
クーン「メイレンがいびるからでしょ」
杏子「髪型いじったからじゃね」
厨房
ルーファス「おい、どれが暁美ほむらだ」
アニー「エミリアに謝るまで、教えない」
ルーファス「何故だ! 俺は常にグラディウスのために行動している!」
ライザ「それがだめなのよ。女にとってはね」
エミリア「……」
ルーファス「もういい! 直接聞く!」
マミ「あら、そんなの頼んだかしら」
ルーファス「あちらのお客様から、暁美ほむらさんに……」
杏子「あちらって誰だよ。あたしらしかいないじゃん」
ほむら「……」
さやか「グラさん、引っ込んで」
ルーファス「さやか、何故だ」
さやか「エロい服着せて軍事基地に送り込んだそうじゃないですか」
杏子「うわ、最低だな」
マミ「グ、グラディウスってそういう組織なの!?」
ほむら「さやか、抜けなさい」
まどか「そうだよ、よくないよ!」
ルーファス「どういうことだ、少女たちの私への評価が急落しているぞ」
アニー「そうなるよね」
ライザ「自業自得だわ」
杏子「なんつーか、意外だな」
まどか「私も意外だったよ……」
さやか「私、ほむらのストーリーが全然わかんないんだけど」
ほむら「だから、基地落として、時の君襲名して、半妖の逃避行に巻き込まれたの」
さやか「もうちょい分かりやすく」
ほむら「基地の武器を奪って、時の魔法を取り戻して、半妖と妖魔の駆け落ちに付き合ってた」
さやか「すごいというか、奇妙というか」
まどか「私はリージョンを守ってほしいとか……」
杏子「あー、あたしもそんな感じだな。あんま覚えてねーけど」
さやか「そう言われて、監獄に送られたんだけど」
マミ「私もそんな風だったわ。目覚めたのはキグナスね」
まどか「私はスクラップの酒場でした……」
ほむら「目覚めたら、秘密基地の最深部でした」
ほむら「キュゥべえの贔屓かしら」
マミ「そ、そんなことより、私たちの使命について話しましょ!」
まどか「やっぱり、リージョンを守るんじゃないでしょうか」
さやか「でも守るって言っても、リージョンってそんなピンチなの?」
杏子「クーンのリージョンは滅びかけらしいが」
マミ「そこは多分、特別よね」
ほむら「私はクーデターを阻止したけど」
さやか「でもパトロールに追われてるんでしょ」
ほむら「……難しいものね」
さやか「となると、指輪探しとブラッククロスとロボットとジョーカーだね」
マミ「みんなで協力すれば、どれも大丈夫だと思うわ」
レッド「折角の所悪いが、俺は君たちの予定に付き合う訳にはいかない」
レッド「ブラッククロスは一日だって放っておくことはできないんだ」
マミ「悪の組織だもの、当然だわ」
クーン「僕も早くしないとマーグメルが滅んじゃうよ!」
メイレン「後回しにされるのはご免だわ」
ルーファス「我々の作戦も重要な段階に入った。君たちに合わせることはできない」
さやか「うーん、じゃあまた個別行動?」
まどか「やっとみんなに合えたのに……」
マミ「困ったわね……」
杏子「別にしょうもないことにまで、全員で付き合うことはねーだろ」
ルーファス「私から提案がある」
さやか「……なんですか」
ほむら「……」
さやか「まあ、そうかもですけど」
ほむら「それで、提案って?」
ルーファス「この店を君たち魔法少女の拠点にするというのはどうだ?」
ルーファス「普段は個別行動を取っていても、仲間の協力が必要な時はここに来る」
マミ「決まった場所があるというのは、いいことだと思うけど……」
ルーファス「もちろん普段は君たちが自由に使っていい」
ルーファス「ベッドも食料も、射撃練習場もあるぞ」
ほむら「へえ……」
杏子「食いもんはタダか?」
ルーファス「タダだ」
ほむら「全員で行動すると、必ず後回しになる人がでるわ」
マミ「それはできないものね……」
…………
さやか「それじゃあ、一旦解散! 一区切り着いたらここにまた集合ね!」
杏子「そういやほむらはどうすんだ? 一人だけフリーだろ?」
ほむら「もちろん、まどかのサポートに……」
「その話、待ってくれないかな」
「はじめまして。僕はゾズマだ」
さやか「胸に星形ニップレス……」
杏子「変態か」
マミ「く、口に出しちゃダメ!」
まどか「……ほむらちゃんに何か用ですか?」
ゾズマ「用があるのは僕じゃない。アセルスだ」
ほむら「アセルス? 彼女、何かあったの?」
ほむら「!」
まどか「!?」
ほむら「……どういうことかしら」
ゾズマ「オルロワージュの仕業だよ。彼女にはどうすることもできないことだった」
ほむら「……それで」
ゾズマ「アセルスはオルロワージュと決着をつけるつもりだ。ただ一人でね」
ゾズマ「彼女を助けてやってくれないか?」
ほむら「……ええ、もちろんよ。でも一つ聞かせて」
ほむら「あなたは何者?」
ゾズマ「ただのはぐれものの妖魔だよ。だからアセルスにはオルロワージュみたいになってほしくない」
ほむら「……」
ゾズマ「君なら分かるんじゃないかい? 大切な人のために、自分を捨ててしまう意味を」
ほむら「……ええ」
ほむら「……アセルスは今どこに?」
ゾズマ「……まあ、いいかな」
ほむら「ごめんなさい、まどか。T260の方が後回しになってしまって……」
まどか「……それは、うん。でも今いかないとアセルスさんは……」
ゾズマ「戻れなくなるだろうね」
ほむら「ちゃんと謝らないと……。武器を提供して埋め合わせしましょう」
杏子「あー、ほら言っただろ。ほむらの仲間の人形みたいな女」
マミ「それがアセルスさん? 待って駆け落ちって……」
杏子「そういうことなんだろうな」
さやか「おお……」
マミ「それじゃあ、みんな気をつけてね。絶対に無理だけはしないで」
杏子「どっちかっていうと、マミが心配だな」
さやか「あー、私も」
レッド「いいのか? 別に無理に俺に付き合うことないんだぞ」
マミ「今更部外者扱いなんて、ひどいですよ」
レッド「……そうだな。ありがとう」
クーン「僕はみんな一緒がいいなあ」
メイレン「わがまま言わないの」
杏子「指輪ぐらい、あたし一人で十分だよ」
さやか「もらう、っていうか私が頼んだんですよね」
ルーファス「基地から戻って以来、エミリアの様子がおかしいからな。女たちでフォローしてくれ」
アニー「あんな事言ってるよ」
ライザ「誰のせいだと……」
さやか「……全部終わったら、ルーファスさんボコボコにしましょうね」
ゾズマ「シップは用意したから、あとは君たちに任せるよ」
ほむら「え?」
ゾズマ「それじゃあ、僕は失礼させてもらうよ」
ほむら「……」
まどか「……消えた? っていうか……」
ほむら「あなたは行かないの!?」
ファシナトゥール
妖魔の君オルロワージュが統治するリージョン
針の城とその城下からなる
城門前
アセルス「私はアセルス! 道を開けよ!」
アセルス(白薔薇、私がすべて終わらせるから)
アセルス「……?」
ほむら「……」
まどか「アセルスさん……」
アセルス「来てくれたんだね……」
ほむら「……白薔薇姫は」
アセルス「闇の迷宮にいる。オルロワージュを倒さないと永遠にそのままだ」
アセルス「私の妖魔の血もね」
ほむら「あなたは、人間として?」
アセルス「分からないよ。でも、せめて君たちの前では人間でいたい」
まどか「アセルスさんは人間です!」
ほむら「私たちが言うのも変だけど」
アセルス「ふふっ、そうかな」
アセルス「二人の気持ちはうれしいけど……」
ほむら「そうね。私たちはあなたの露払いをさせてもらうわ」
アセルス「針の城はただの城じゃない。危険だよ」
まどか「それでも、私たちは行きます!」
アセルス「だけど……」
ほむら「……ついに、出番のようね」
ほむら「グレートマギカ、出撃!」
アセルス「え?」
まどか「ええ!?」
その日、ファシナトゥールにアセルス様がお帰りになりました。
巨大な機械と一緒に……
ほむら「まどか、コックピットは狭くない?」
まどか「そ、それは大丈夫なんだけど、あの世界観的に……」
ほむら「出力全開、針の城を攻撃する」
ほむら「準備はいい、まどか?」
まどか「じゅ、準備って私は何をするの?」
ほむら「まどかには、ミサイルとロケットを任せるわ」
まどか「えええ!? 私が撃つの!?」
ほむら「操縦は私に任せて」
アセルス「こんな城があるから、みんな捉われるんだ」
アセルス「ほむら、遠慮はいらない!! 城ごと全部終わらせよう!!」
…………
「バスターランチャー、充填開始!」
「まどか、衝撃に備えて!」
「う、うん!」
アセルス「目標は城門だ! 撃ち抜け!」
アセルス「宝物庫か……」
アセルス「ふん、こんなもの……」
アセルス「ほむら、まどか!」
「発射!」
「わわわ、これミサイルだったの!?」
「まどか、上手よ」
…………
「前方に巨人型モンスターを確認!」
「ほむらちゃん、鳥みたいなモンスターも!?」
「第一装甲をパージ! からのハイパーバズーカ!」
アセルス「ふふ、すごいな」
アセルス「……針なんて、もう折れてしまいそうだよ」
…………
アセルス「ジーナ! 君だったのか。大丈夫かい?」
ジーナ「アセルス様? 本当にアセルス様だ!!」
この時、私は奇蹟というものの存在を実感しました
ほむら「誰?」
まどか「誰だろう」
アセルス「……ここまでだな」
アセルス「二人ともありがとう。ここからは私一人で行く」
ほむら「……もういいの?」
アセルス「十分だよ。もう針の城は原型も残ってない」
アセルス「セアトも消し飛んだ」
まどか「あああ、なんだか罪悪感……」
アセルス「私はやっぱり人間でいたいと思う。そう思える」
アセルス「きっと君たちのおかげだ。私一人なら妖魔の力で進んでしまっただろう」
まどか「アセルスさん、絶対帰ってきてくださいね。白薔薇さんも一緒に!」
ほむら「……頑張ってね、アセルス」
アセルス「……ありがとう、本当に」
アセルス「さて……」
アセルス「ここからは私の戦い。そうでしょ、獅子姫」
アセルス「どうしても、戦わなくてはいけないの? 私が目指すのは、あなたの所ではないわ」
金獅子姫「言葉をかわす時は過ぎました。今は戦いで決着をつけるときです」
金獅子姫「今度は全力であなたを倒す!!」
アセルス「獅子姫……」
ほむら「ここは無事でよかった……。危うく破壊するところだった……」
まどか「これは、棺っていうのかな。中に人が……」
ほむら「眠っているみたいだけど……」
まどか「アセルスさんが、解放してくれるのかな」
ほむら「そうだと思うわ」
「また派手にやったものじゃな」
「わらわは零、オルロワージュの最初の寵姫じゃ。いや元寵姫というべきかの」
まどか「アセルスさんの味方ですか?」
零姫「ふむ、まあ味方というところじゃろう。案ずるな」
零姫「針の城もこの様では、格好がつかんな」
まどか「あの、やっぱりまずかったですか……?」
零姫「いや、この方がいい。これでいいのじゃ」
ほむら「……」
零姫「じゃがの、ここからは妖魔の君とアセルスの一騎打ち」
零姫「お主らは、引くべきじゃ」
ほむら「そのつもり、ですけど」
零姫「ふむ、物わかりがいい」
零姫「よし。いい子には褒美をやろう。受け取るが良い」
まどか「え、え、何?」
ほむら「こ、これは空間移動!?」
零姫「これで、舞台は整った。そうじゃな、オルロワージュ?」
オルロワージュの王座
オルロワージュ「我にひれ伏すために舞い戻ったか、娘よ」
アセルス「私の中の妖魔の血。これを浄化するにはあなたを倒すしかない」
オルロワージュ「やはり人間は人間か。つまらぬな」
アセルス「あなたにとっては人間も妖魔もつまらない存在でしょう。でもみんな生きてる。赤くても青くても血が流れてる」
オルロワージュ「ありふれた物言いだな。もう飽いたぞ」
アセルス「オルロワージュ、覚悟はいい?」
アセルス「私は、あなたを倒すよ」
オルロワージュ「ふん、思い上がりだ」
ジーナ「アセルス様、どうかご無事で……
ゾズマ「君がジーナかな」
ジーナ「ひっ」
ゾズマ「怯えなくて良い。僕はアセルスの味方だからね」
ジーナ「ア、アセルス様は……」
ゾズマ「ジーナ、君はアセルスを人間だと思うかい?」
ジーナ「……アセルス様は、高貴な血の流れるお方です」
ゾズマ「それだけかい?」
ジーナ「……ですが、暖かい心をお持ちの方。そう、きっと」
ジーナ「人間なのだと、私は思います」
ゾズマ「なるほど」
ゾズマ「それじゃあ、僕も行かないとね」
ジーナ「あ、どちらに……」
零姫「……」
零姫「イルドゥンか」
イルドゥン「……はい」
零姫「お主はいいのか。アセルスとオルロワージュの戦い、もう始まっておるぞ」
イルドゥン「……私にはもう分かりません」
零姫「ふむ?」
イルドゥン「ラスタバンはアセルスの血を狙って暗躍していた」
イルドゥン「彼は私にそう打ち明けました」
零姫「ほう、あの男が」
イルドゥン「私は、どうすればよかったのか……」
零姫「奴を殺したのはオルロワージュのためか? それともアセルスのためか?」
イルドゥン「……」
零姫「お主、アセルスのために色々立ち回っておったのだろう?」
零姫「……友を手にかけたのだ。もう心は決まっておろう」
イルドゥン「……アセルスに戦いを教えたのは私です」
イルドゥン「見届けるのは、私の務めでしょう」
零姫「往くか。わらわも心を決めたところじゃ」
アセルス「はぁ……はぁ……」
アセルス「ぐぁっ」
オルロワージュ「ふん、脆いものだ」
オルロワージュ「だが、それが人であるということだ」
アセルス「……私は負けない」
オルロワージュ「我の血に身を委ねれば、あるいは我に届くかもしれぬぞ」
アセルス「ふざけるな!」
オルロワージュ「死ぬがいい」
『三人の寵姫』
アセルス「!」
アセルス「……? 何も起こらない?」
オルロワージュ「……」
オルロワージュ「どういうことだ」
ゾズマ「さすがは妖魔の君だね。邪魔をするのが精一杯だ」
イルドゥン「……」
オルロワージュ「……我に楯突くか」
零姫「も少し良い男だと思っておったのじゃがの」
ゾズマ「息苦しい王様は、もうたくさんなのさ」
イルドゥン「……どうしたアセルス。前を向け」
アセルス「イルドゥン……」
アセルス「零姫様も、ゾズマも……」
アセルス「どうして……?」
ゾズマ「みんな君のことが好きなのさ。今の君がね」
オルロワージュ「四人まとめて消し去ってくれよう」
ゾズマ「四人?」
零姫「まったく、困ったものじゃな」
オルロワージュ「……何を言っている」
アセルス「ふふ……」
オルロワージュ「貴様、何がおかしい!」
アセルス「あなたの負けだ、オルロワージュ」
アセルス「……そうだよね、白薔薇?」
オルロワージュ「何ができるはずもない」
ゾズマ「二人の絆が、あんなチャチなもので切れるとでも?」
ゾズマ「魅了の君が、愛の力もしらないなんてね」
零姫「お主、言ってて恥ずかしくないのか」
ゾズマ「全然」
アセルス「行くぞ、オルロワージュ!」
アセルス「これが最後だ!」
オルロワージュ「よかろう」
オルロワージュ「見事その剣、我を貫いてみせよ!」
アセルス「…………」
オルロワージュ「……何故だ」
アセルス「……私は人間だから、ちゃんと誰かを好きなれた」
オルロワージュ「……ふん」
オルロワージュ「……零よ」
オルロワージュ「……我が恐ろしいか?」
零姫「いいや。愛おしい男のままじゃ」
オルロワージュ「……そうか、これが」
愛
か
puella magi madoka ☆ frontier "The one loves her rose "
Story of Asellus END
…………
アセルス編をたたみたかったんです
……bleach? 知らないなー
Entry ⇒ 2012.11.09 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
魔法少女まどかフロンティア 2
引用元:
まどか「行く所といったら、こういう工場とか、遺跡みたいなシップとかばっかりで」
まどか「レオナルド博士は人間だと思ったら、やっぱりロボットだったし」
レオナルド「いやあ、照れるね」
ほむら「え、元人間なの」
レオナルド「よろしくね」
まどか「それにみんな、途中からなんだか滅多切りにするみたいなプログラムを覚えちゃって」
T260「プログラム名『多段切り』です」
まどか「黙って切り続けるマシーンの後をついていく私……」
ほむら「つ、辛かったでしょうね」
まどか「私もうキャベツの千切りとかできないかも……」
ほむら「もう、大丈夫よ。千切りも私がするわ」
まどか「うん……。ふつつか者ですが、よろしくお願いします」
ほむら「えっと、これがT260で……」
ナカジマ零式「よろしくで~す」
ほむら「戦闘機型? 癖の強い感じね」
特殊工作車「お役に立ちます」
ほむら「こっちは戦車が近いのかしら」
レオナルド「僕はレオナルド。人格データをこの体に移したんだ」
ほむら「人型のボディタイプね」
ほむら「え? い、いえ普通よ?」
まどか「……この中なら、どれが一番いい?」
ほむら「そうね、やっぱり戦車型には親しみを感じるわ」
ほむら「でも、零式に込められたロマンは看過できない……」
中島社長「おお! 分かってくれるか!」
ほむら「ま、まあ……」
社員「そうだよ、ロマンなんだよ!」
ほむら「実用性も大事よ」
白薔薇姫「私はまったく理解できません……」
まどか「や、やっぱりほむらちゃんは頼りになるなあ」
ほむら「別に特別兵器が好きなわけじゃないわ。触れる機会が多いってだけ」
アセルス「どうだか。ところでほむらはここに何のようがあったんだ?」
ほむら「そうだったわ。まどかと再会できた喜びですっかり忘れていたわ」
ほむら「これを組み立ててほしいのよ」
アセルス「なんて大きさだ……」
T260「ほむら様の格納能力は特筆に値します」
レオナルド「同感だね」
中島社長「こ、これは、我が社が夢にまでみながらモンド司令に妨害された……」
社員「乗り込み型巨大メカ!」
中島社長「き、君はどこでこれを!」
ほむら「でも、さすがに大きすぎたわね。パーツをパージできる仕様でよかったわ」
ほむら「組み立ててもらえるかしら」
中島社長「もちろんだとも!」
まどか「あの~ほむらちゃん?」
ほむら「何かしら、まどか?」
まどか「その、兵器のことなんだけど……」
ほむら「?」
まどか「パトロールの人が探してたよ……?」
まどか「それはよかったんだって。でも持ってっちゃだめだって……」
ほむら「ああ、警察の側からすればそうでしょうね……」
ほむら「仕方ないわ。ある程度は返しましょう」
ほむら「でもまあ、少しくらい報酬としてもらってもいいわよね……」
まどか「ほむらちゃんは、武器がいるもんね」
ほむら(20%くらい返しましょう……)
白薔薇姫「はい……」
アセルス「行こう。ここでは戦えない」
まどか「ほむらちゃんは、すごい人たちと一緒だったんだね」
まどか「二人ともお芝居に出てくる人みたい」
ほむら「妖魔と半妖だそうよ」
まどか「な、なんだか怖そうだね……」
まどか「か、駆け落ち!? 思ったよりすごい感じ……」
ほむら「それで、追っ手が襲ってくるのだけど……」
ほむら「まあ、本人から聞いた方が……」
ほむら「あれ、いない……?」
まどか「……?」
アセルス「今度はお前か……」
白薔薇姫「セアト、退いてはもらえませんか?」
セアト「……私に適うつもりでいるのか?」
セアト「ラスタバンの力を取り込んだ、この私に!」
白薔薇姫「ラスタバン!? 彼に何をしたのです!」
セアト「ふん、死んではいない。やつにはお似合いの醜態だな」
アセルス「貴様……!」
ほむら「! また追っ手のようね……」
まどか「た、助けないとだめだよね!?」
ほむら「まどか、あなたは……」
まどか「ううん、私も……」
ほむら「……気をつけてね」
ほむら「よし。ロボット軍団出撃よ」
まどか「え!?」
T260「了解しました」
ほむら「戦闘システム起動!」
まどか「やっぱりロボット好きだよね!?」
セアト「あるいはあの方にも……」
アセルス「……構えろ、セアト」
アセルス「私はお前を許さない……!」
セアト「こい、小娘! 貴様も……」
『多段多段多段多段切り』
白薔薇姫「!?」
『幻魔』
アセルス「食らえぇぇ!」
セアト「お、おのれ、機械などが……!」
セアト「消え去るが……」
ほむら『タイムリープ』
ほむら「……これひどいわね」
セアト「」
まどか『イド・ブレイク』
まどか「当たれ!」
アセルス「お前なんかぁぁ!」
『神速三段突き』
ほむら「一斉攻撃!」
T260「了解しました」
『多段多段多段多段切り』
まどか「うぅ、やっぱり怖い……」
アセルス「また、助けられてしまったな……」
白薔薇姫「……」
ほむら「なんだかすごく悪いことをした気がするわ……」
まどか「だよね……」
アセルス「気にしなくていい。セアトが消滅したのは、私の力のためだ。上級妖魔はそうでなくては殺せない」
アセルス「君たちはその手助けをしてくれただけ」
ほむら「いや、それもあるけれど……」
アセルス「……」
白薔薇姫「ほむらさん、あなた方とはここでお別れです」
アセルス「そうだね。思えば私たちは君たちを巻き込みすぎた」
アセルス「ごめん、それとありがとう」
ほむら「……あなたたち、大丈夫なの?」
アセルス「……大丈夫だよ」
白薔薇姫「みなさんのことはわすれません……」
まどか「……」
まどか「あの二人、本当に大丈夫なのかな……?」
ほむら「仕方がないわ……」
ほむら「口出しできることじゃない……」
まどか「でも、もっと危ないことになるんだよ……?」
ほむら「妖魔の君に挑むのでしょうね」
ほむら「……無事を祈りましょう」
まどか「これからどうしよっか」
ほむら「クーロンで杏子が待ってるの。彼女と合流しましょう」
まどか「あ、杏子ちゃんとも会えたんだ!」
ほむら「ええ、今はモンスターの子と指輪を集めてる……」
まどか「指輪?」
ほむら「なんでも、指輪の力を集めれば故郷が滅びずに済むそうよ」
まどか「ほ、滅び……?」
ほむら「リージョンって大変よね」
まどか「レオナルドさん、次はどこに行くんですか?」
レオナルド「T260君の任務に関して、これ以上の情報はトリニティの中枢に行かないと手に入らないだろうね」
レオナルド「つまりタルタロスに潜入することになる」
まどか「タルタロス?」
T260「トリニティの工業施設です。極秘情報の端末が存在します」
レオナルド「さすがにすぐに突入とは行かない」
レオナルド「君たちは友達と会ってくるといい」
T260「私たちは潜入の準備を行います」
まどか「そっか、そうする……」
まどか「でも、行くときは言ってね。協力するから……」
ほむら「……まどかはやさしいわね」
ほむら「クーロン行きは、欠航……?」
まどか「何かあったんですか?」
係員「詳しいことは分からないのですが、クーロン周辺でシップが消失したとのことで……」
係員「タンザーが現れた可能性もありますので、安全のためクーロン行きは一時休航となっております」
ほむら「タンザー?」
係員「リージョン間に現れてる怪物です。飲み込まれたシップは二度と出ることはできないとか……」
まどか「ふわぁ、怖いね……」
まどか「……タルタロス、行く?」
ほむら「……今は待つしかないわね。引き返しましょう」
ほむら「中島製作所へ」
まどか「えー……、街の方に行こうよ!」
ほむら「そ、そうよね!」
京
和風情緒あふれるリージョン
心術の修行所がある
さやか「うわー、本当に京都って感じだあ……」
さやか「リージョンって何でもありなんだね」
さやか「あ、お土産物売ってる! なんか買ってこうかな」
「キー!」
「キー!」
「キー!」
さやか「なにあれ……。ここの名物?」
さやか「全身タイツで、あのかけ声」
さやか「あー、ヒーローショー的な?」
さやか「みんな小屋に入っていく……」
さやか「何、あれ楽屋なの?」
さやか「お? さらに男の人が……」
さやか「ヒーロー役かな……?」
さやか「あ、女の人も一緒だ」
さやか「金髪で、グラマー。ヒロイン役?」
さやか「見たことある髪型……」
さやか「ん!?」
レッド「マミ、間違いない。ここはブラッククロスの工場だ」
マミ「ええ。後をつけて正解だったわ……」
レッド「この植物、麻薬の原料だぞ……!」
レッド「くそ、許せねえ!」
マミ「許す訳にはいかない!」
『『変身!』』
マミ「ねえ、ティロカイザーは止めにしない?」
アルカイザー「いいやだめだ、ヒーロー枠ということでギリギリ正体を明かしていいことになってるんだから!」
アルカイザー「ヒーローの掟なんだ!」
マミ「私は魔法少女なんだけど……」
アルカイザー「コラボなんだ!」
アルカイザー「そういうことにしないと、俺の記憶が消される!」
アルカイザー「だから、君はティロカイザーだ!」
アルカイザー「!」
マミ「!?」
マミ「み、美樹さん!?」
さやか「マミさん! お久しぶりです!」
マミ「ああ、やっと会えた……!」
マミ「心配したんだから……」
さやか「感動の再会!」
さやか「ヒーローショー? いや、でもこの工場……」
アルカイザー「か、彼女は?」
マミ「私と同じ魔法少女で、美樹さやかさんと……」
アルカイザー「き、君は私の変身するところを」
さやか「あ、見ました」
アルカイザー「ああああ」
さやか「あ、はい。しますけど」
さやか(なにこの人)
アルカイザー「……よし、君は今この瞬間からサヤカイザーだ」
アルカイザー「正義を守るんだ!」
さやか「おー! ってなにそれ! マミさん説明してください!」
さやか「ブラッククロスっていう悪の組織があって」
さやか「レッ、いやアルカイザーさんはそれと戦う正義のヒーロー……」
さやか「……マジですか?」
マミ「ええ、既に私たちはブラッククロス四天王のうち二人までを倒したわ」
さやか「おおお、やっぱリージョンってなんでもありなんだ……」
マミ「そして、ヒーローは正体を知られてはいけないの」
さやか「それじゃ、私もマミさんもだめじゃないですか?」
さやか「はあ……」
アルカール「セーフ」
さやか「ん!?」
マミ「どうしたの?」
さやか「い、いや今なんか……」
マミ「?」
さやか「あー、や、やっぱり気のせいです!」
さやか「……まあ、いいですけど」
マミ「美樹さんはどうしていたの?」
さやか「……裏の組織で戦っているんです」
マミ「! 美樹さん……?」
さやか「といっても魔法少女を探してるだけですけど! しかも初めたばっかりですけど」
マミ「……危ないこと、してないでしょうね」
さやか「マミさんこそ、こんな危なそうな……」
マミ「そうだったわ。ここは敵の基地!」
さやか「浮かれちゃいましたね」
アルカイザー「中枢部を破壊するんだ!」
さやか「……マミさんがレッドさんに出会ったきっかけって何だったんですか?」
マミ「私が気付いたら、キグナスっていう豪華なシップにいて」
マミ「ちょうどその時レッドさんが目の前で変身していたの」
さやか「えー、なんかずるいなあ。私なんて監獄ですよ」
マミ「か、監獄!?」
マミ「と、とにかくそこで私も変身して……」
アルカイザー「話は後だといっただろ!」
アルカイザー「これだけの原料を精製するには、それなりの設備が必要なはずだ」
アルカイザー「それを破壊する!」
さやか「おお、本格的ですね……」
マミ「でもきっと警備も厳しいはず」
マミ「美樹さん、いつでも戦えるようにしておいて」
さやか「お、押忍!」
「キー!」
「キー!」
アルカイザー「ずいぶん厳重な警備だな……」
アルカイザー「どうやらあそこが、この基地の核らしい」
さやか「どうします? 見つからずに行くのは無理じゃないですか?」
アルカイザー「ああ、ここからは強行突破だ」
マミ「……!」
「キー!?」
「キー!?」
アルカイザー「ブライトナックルゥ!」
さやか「サヤカイザーソード!」
マミ「道ができたわ!」
アルカイザー「任せろ!」
アルカイザー「ディフレクトランス!」
さやか「これは……」
アルカイザー「麻薬製造釜だな。これを爆破するぞ」
マミ「……どうやって?」
アルカイザー「……」
さやか「……」
アルカイザー「シャイニングキィック!」
マミ「ティロ・フェニックス!」
さやか「な、なんですかその技!」
さやか「こ、これ基地もやばいんじゃないですか!」
マミ「そうみたいね……。この基地は三分後に爆発するわ!」
アルカイザー「三分もない!」
マミ「ええ!?」
「……」
さやか「……」
さやか「危機一髪でしたね……」
マミ「まさかあんな大爆発なんて」
マミ「こういうのは暁美さんの仕事よ……」
さやか「ああ、ほむらに任せたかったですね……」
アルカイザー「……二人とも立つんだ。敵が来るぞ!」
さやか「!」
アルカイザー「誰だ!」
???「ブラッククロス四天王が一、メタルブラック!」
メタルブラック「お手合わせ願おうか!」
さやか「な、なんですかアレ!? サイボーグサムライ!?」
マミ「気をつけて! 四天王は他とは格が違うわ!」
メタルブラック「参る!」
アルカイザー「来い!」
メタルブラック『タイガーランページ!』
アルカイザー『フラッシュスクリュー!』
マミ「互角!?」
さやか「! いえ、アルさんが押されてます!」
メタルブラック「この程度か、アルカイザー!」
マミ「させないわ!」
『跳弾』
メタルブラック「当たるものか!」
さやか「まだだ!」
メタルブラック「!?」
さやか「油断したな!」
『逆風の太刀』
メタルブラック「ならば、これでどうだ!』
『ムーンスクレイバー』
メタルブラック「切り刻んでくれる!」
マミ「きゃあっ!」
さやか「うわっ!」
アルカイザー「くそっ、ティロカイザー、サヤカイザー!」
アルカイザー(バレる!)
アルカイザー「させるものか!」
『アル・ブラスター!』
メタルブラック「まだ動くのか!」
マミ「魔法少女をなめないで!」
さやか「このくらい、なんてことない!」
メタルブラック「傷が癒えていく……」
メタルブラック「なるほど我が敵にふさわしい」
マミ「ええ!」
さやか「はい!」
『アル・フェニックス』
『ティロ・フィナーレ』
『スクワルタトーレ』
メタルブラック「無駄だ!」
メタルブラック『ムーンスクレイバー』
メタルブラック「連携……!」
アルカイザー「俺たちの力を見せてやるぜ!」
アルカイザー「アル!」
さやか「スクワルタ!」
マミ「フィナーレェェ!!」
メタルブラック「なるほど、これがアルカイザー……」
メタルブラック「見事……!」
アルカイザー「メタルブラック、強敵だった……」
マミ「これで終わりなのかしら……?」
さやか「いや、爆発してましたし……」
アルカイザー(やつとはまた戦う気がする……)
アルカイザー「とにかく、これで残る四天王はあと一人!」
アルカイザー「シュウザー……!」
さやか「アルさん……?」
マミ「シュウザーは、レッドさんのご家族の仇なの……」
さやか「!」
マミ「ヒーローになったきっかけも、シュウザーに襲われたことから……」
レッド「さて、さやかはこれからどうするんだ?」
マミ「裏の組織がどうとか言ってわね……」
さやか「裏の正義の組織です!」
さやか「私の任務は魔法少女を集めることなんですけど……」
マミ「それはどうして?」
さやか「ジョーカーに対抗するためです」
レッド「リージョンを暗躍する、怪しいやつらしいが」
さやか「ジョーカーはキューブとかいうのを狙ってるらしくて」
さやか「それを止めるのが、私たちの目標なんですけど……」
マミ「そうだったの……」
さやか「レッドさんはブラッククロスの情報を集めてるんでしょ?」
さやか「グラディウスなら何か知ってるかも」
レッド「本当か!」
さやか「いや根拠はないですけど、協力できたらいいかなって……」
マミ「シュウザーの手がかりがつかめるかしら」
レッド「少しでも情報の当てがあるなら、俺は行くぜ」
さやか「ふふん、任務完了」
マミ「そのグラディウスには、どんな人がいるの?」
さやか「えっと、グラサンのおっさんがリーダーで」
さやか「あと露出多めのアニーさんと、レディな感じのライザさんが」
レッド(露出多め?)
さやか「それじゃあ、クーロンまで」
マミ「ほかのみんなにも会えるかしら……」
シップ内
さやか「そうですか、みんながどこにいるかは……」
マミ「ええ……。でも美樹さんと再会できてよかったわ」
レッド「そのうち会えるさ、心配ない」
ガコンッ
マミ「!?」
さやか「な、何ですか?」
レッド「これは……」
レッド「タンザーだ!」
シュライク 武王の古墳
ほむら「へえ、観光地みたいになってるのね」
まどか「奥の方は危ないから入れないみたいだけど」
まどか「あ、そうだ! ほむらちゃん、写真撮ろ!」
ほむら「そうね、わたしがまどかを撮ってあげるわ」
ほむら「ほら、まどか、ポーズポーズ」
まどか「私が撮ってあげるのに~」
ほむら「はい、チーズ」
まどか「待って待って!」
ほむら「!」
ほむら「時の君!」
まどか「えっと、どちら様?」
時の君「君に時術を託してしばらくたったが」
時の君「ついに、時術を求めるものが現れたぞ」
ほむら「……それはあなたが相手をするのでは?」
時の君「何のために君を二代目に任命したと思っている」
ほむら「はあ……、妙に親切だとは思ったわ」
時の君「君の思うままにするがいい」
ほむら「待って! 一体何を……」
まどか「消えちゃった……」
まどか「あの人は何を……」
ほむら「思うままって、どういうことなのよ……」
「あなたが時の君、ですか」
???「ルージュと申します」
まどか「!」
まどか「カードマニアの人……?」
ルージュ「カード? ああ、それは私の双子の片割れでしょう」
まどか「双子……」
ルージュ「そうか、やはり奴は秘術を……」
ルージュ「いや、それはもういい」
ルージュ「ここで勝利のルーンを得た私は、ついに印術の資質を手に入れた」
ルージュ「そして、今ここで時術をも手にする!」
ルージュ「たった今、初代時の君なる方から……」
ほむら「な、何がついに現れたよ……」
まどか「マ、マッチポンプ……」
ルージュ「君には悪いが、私は時術の資質が必要なんだ」
ほむら「……それで」
ルージュ「私と戦ってください」
まどか「!?」
ほむら「ちょっと初代、出てきなさい!」
ほむら「戦えとか言ってるんだけど」
時の君「そうだな、時術の資質を持つのただ一人。資質を望むなら相手を倒す以外ない」
ほむら「はあ!? 聞いてないわよ!」
時の君「だが君の存在でそのルールも崩れた」
時の君「……彼に資質を与えるか?」
ほむら「私が選ぶの?」
時の君「君が許すなら、私が彼に資質を授けよう」
ルージュ「はい」
ほむら「あなたが時の魔法を求める理由はなんでしょうか?」
まどか「面接みたいだね」
ルージュ「はい。私は双子の片割れ、ブルーを倒し術を極めるために時術を求めています」
ほむら「なるほど」
まどか「自分の双子を……」
ルージュ「今は、それだけが私の生きる意味です。その先のことは……」
ほむら「……」
ほむら「あげたらいいんじゃない、資質?」
まどか「そ、そんな感じでいいのかな……?」
ほむら「なんだか事情があるみたいだし、断ったら戦いになるのでしょう?」
ほむら「……」
ほむら「あ、そうだ。お昼御飯をごちそうしてください」
ルージュ「!?」
まどか「そういえば、お昼まだだったね」
ルージュ「それがあなたの試練ですか」
ルージュ「……わかりました」
ルージュ「昼食、ご用意させていただきます」
時の君「ほむら、それが君の選択か」
ほむら「いやだって、いきなり戦えって、意味がわからないわ」
時の君「なるほど。術を巡る争いを君は否定するのだな」
ほむら「そんな大層なものでもないけど」
時の君「よかろう。これも定めだ。私の術を開こう」
シュライク 定食屋
ほむら「術を巡る双子の戦い、ね」
まどか「そんな悲しいことをどうして……」
ルージュ「私たちの運命とでもいうのでしょうね」
時の君「すまない、お茶をもらえるか」
ほむら「あなたはもう、自分のリージョンにかえりなさい」
ほむら「いけなかったかしら」
ルージュ「いえ。おかしなことですが、何か救われたような思いです」
時の君「ふん。甘いものだな」
まどか「でも戦わずに済むのなら、それが一番ですよ!」
時の君「おい、その卵焼き、食わないのら私によこせ」
まどか「こ、これは取ってあるんです!」
時の君「……これで、君は時術の資質を得た」
ルージュ「ついに、私は……」
時の君「必要な術は購入してくれ」
ほむら「お金取るのね」
まどか「お昼おごってもらったのに……」
ルージュ「ありがとう。君たちのおかげで私は進める」
ルージュ「本当にありがとう」
ほむら「ごちそうさまでした」
まどか「ごちそうさまでした」
時の君「……」
ほむら「あの人、これからどうするのかしら」
時の君「宿命の双子と雌雄を決するのだろう」
まどか「つらいよね……」
時の君「私もそろそろ行くとしよう」
ほむら「ええ、もうさっさと行きなさい」
時の君「私は時のリージョンへと戻る。用があれば、いつでも訪ねてくるがいい」
時の君「ああ、それとこれは餞別だ」
まどか「? 私にですか?」
時の君「砂の器だ。これでほむらの時間においていかれることもないだろう」
まどか「!」
まどか「あ、ありがとうございます!」
ほむら「……ありがとう、時の君」
時の君「ふん。さらばだ」
中島製作所
まどか「時の君さん、不思議な人だったね……」
ほむら「まったくだわ……」
T260「鹿目様、ほむら様、タルタロス突入の準備が整いました」
レオナルド「君たちがよければ、いつでもいけるよ」
ほむら「社長、例のメカはもう完成した?」
中島社長「ああ、もちろんだとも!」
ほむら「名前?」
中島社長「一応、グレートモンドという名称があるようだが……」
ほむら「モンドって」
まどか「ちょっとね……」
ほむら「グレートマドカで」
まどか「!?」
ほむら「え!?」
まどか「グレートホムラでいいんじゃないかな」
ほむら「!?」
まどか「うん。グレートマギカ」
T260「グレートマギカは収納可能ですか」
ほむら「まあ、なんとかなるでしょう」
レオナルド「すごいなあ、その盾調べさせてくれないかな」
ほむら「砂が入ってるわ」
T260「発言の意味が不明です」
シュライク シップ発着所
レオナルド「タルタロスへは、マンハッタンからコンテナに紛れて潜入する」
レオナルド「みんな準備はいいかな」
ほむら「なんだかすごいことになってきたわね……」
まどか「私緊張してきたよ……」
T260「マンハッタン行き、出発時刻です」
シップ内
ほむら「司令部? その場所を探しているのね」
まどか「なんだっけ、たしかHQっていうんだった?」
ガコンッ
ほむら「!?」
まどか「何!?」
タンザー
リージョン間を徘徊する巨大生物
呑み込まれたシップの脱出は困難
レッド「まさか、タンザーに呑まれるとは……」
さやか「うわ、気持ち悪!」
さやか「どこもかしこもベタベタだよ……」
マミ「これは夢よ、夢」
さやか「マミさん、夢じゃないです。私たち呑まれてます」
マミ「止めて! 私を現実に戻さないで!」
次回、マミさん丸呑み
Entry ⇒ 2012.11.07 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
魔法少女まどかフロンティア 1
まどか「ここは……?」
まどか「何もない……。なんだかふわふわしてて……」
サガフロンティアのシステムデータはどこですか?
ソウルジェムにある
ソウルジェムに新規作成する
システムデータなど必要ない!
まどか「え? システム? 何のこと?」
まどか「……」
まどか「っていうか、あなた、キュゥべえだよね」
!?
シ、システムデータはどこですか?
まどか「答えて」
……ワルプルギスの夜を倒した君達は、まさに魔法少女としての可能性だ。
まどか「……」
……その可能性に、僕達も賭けることにしたんだ。
まどか「……答えになってないよ」
リージョン界の未来を、君達五人に託す……
まどか「リ、リージョン?」
……頼んだよ、鹿目まどか。
まどか「ま、待って!」
まどか「……」
スクラップ
鉄工業の発達したリージョン
至る所にガラクタが積み上げられている。
酒場
まどか「うう……」
まどか「一体何が……?」
まどか「ここは……」
「おい、ゲンさん、誰だいその子は?」
「ああ!?だれのことだよ?」
「ゲン様の後方に反応を確認」
まどか「あ、あの……」
「ゲンさんが飲み過ぎなんだよ」
「ああん!?、俺がこんなもんでオウェ」
「ほら見ろ。なあロボ、俺ゲンさん連れてくから」
「了解しました、リュート様」
「待て、おい。俺はまだ……」
「ゲン様の排除を確認しました」
まどか「……」
まどか(とにかく、ここは見滝原じゃないよね、多分)
???「私はT260」
まどか(ロ、ロボットがしゃべってるんだしね……)
まどか「え、ええと、わ、私は鹿目まどかです……」
T260「了解しました。鹿目様」
まどか「……」
T260「こちらはリージョン『スクラップ』内の酒場……」
まどか「リージョン!?」
T260「リージョンについてお尋ねですか?」
まどか「あ、はい。教えてもらえるとうれしいです……」
T260「リージョンは空間内に点在する都市、または施設の名称です」
T260「リージョン間の移動はリージョンシップによって行います」
まどか「ええっと……」
???「にしても、リージョンも知らないなんて、箱入り娘にもほどがあるぜ?」
まどか「で、ですよね」
まどか(キュゥべえが言ってたリージョンって、色んな街のこと?)
まどか(というか、私は別の世界に来ちゃったんだね……)
まどか(キュゥべえめ……)
???「ああ、そうだ。俺はリュート。よろしくな」
まどか「あ、鹿目まどかです……」
リュート「まどかちゃんね。それじゃあ、自己紹介がわりに一曲」
リュート「か~な~め~♪ それは謎の少女~」
まどか「」
リュート「魔法少女? いや、知らないな。ロボ、お前は?」
T260「データを検索中……」
まどか「あ、あの、そんな無理しなくても……」
T260「二件の該当データがあります」
まどか「ほ、本当に!? 教えてください!」
T260「了解しました」
データ1 ヒューズ様による情報です
リージョン「シュライク」における盗掘事件に関する情報です。
チャイナ服の女性、モンスターの少年、魔法少女を称する少女が関与しているとのこと。
データ2 ヒューズ様による情報です
とある重要事案に関して、黒髪の魔法少女を探しているとのこと。
T260「私の所有する情報は以上です」
リュート「そのヒューズってのは、何ものだい?」
T260「ヒューズ様はIRPOに所属されています」
まどか「アイアール……?」
リュート「要は警察だよ」
まどか(黒髪の魔法少女って、きっとほむらちゃんだ!)
まどか(でもどうして警察の人が……?)
まどか(っていうか、みんな動くの早いよ!)
まどか(盗掘って何!?)
T260「ヒューズ様は泥酔しているご様子でした」
T260「音声データを再生します」
『もう何で俺なんだよ、知るかよ魔法少女なんかよ~。チクショウこの野郎お前……』
まどか「止めてください!」
まどか「私、そのIRPOってところに行ってみようと思います」
リュート「友達を探すのかい?」
まどか「はい。他に手がかりもないですし……」
リュート「俺も付き合ってやるよ、って言いたいとこだが、警察は苦手でね」
リュート「ロボ、お前一緒に行ってやれよ。任務のこととか分かるかもしれねえよ?」
まどか「任務?」
T260「私は自分の任務に関する、失われた情報を収集しています」
まどか「そ、そうなんだ。こんなレトロなのに……」
まどか「ありがとうございます……」
リュート「よっしがんばれよ、お二人さん」
リュート「謎の少女と~♪謎のロボが~♪」
まどか「い、行きましょうロボットさん!」
T260「鹿目様に著しいストレス反応が見られます」
時間妖魔のリージョン
時術の使い手、時の君が住む特殊なリージョン
中央にある巨大な砂時計が時間を司る
ほむら「ええと、あの……」
時の君「これは珍しい客人だ」
時の君「静止した時間をものともしないとは……」
ほむら「あの、シップの操作とかよくわからなくて」
ほむら「砂時計を壊してしまって、本当にごめんなさい」
時の君「……亜空間から、一人乗りのシップで突っ込んで来たのには、さすがの私も驚いたぞ」
ほむら「秘密基地からの脱出で……」
時の君「君は時術の資質を有しているな?」
ほむら「時術?」
時の君「時間を操作する術だ」
ほむら「ええ、確かに以前は時間干渉が可能だったけれど……」
時の君「今は失われたか」
ほむら「……」
時の君「その盾に、時の砂を流し込むといい」
時の君「それで君の術は蘇るだろう」
ほむら「砂……」
時の君「君が壊したおかげで、容易に取り出すことができる」
ほむら「ホントごめんなさい」
時の君「君の術は時間停止と時間遡行、だな?」
ほむら「……分かるんですか」
時の君「私を誰だと思っている」
ほむら「……?」
時の君「人は私を時の君と呼ぶ」
ほむら「時の君……?」
時の君「そう。そして君が二代目時の君だ」
ほむら「二代目……」
ほむら「え?」
時の君「君もまた時の君と名乗るが良い」
ほむら「いや、待ってください」
時の君「では後のことは任せたぞ、二代目。私はしばし下界に降りる」
ほむら「ちょ、ちょっと……」
時の君「ああ、君の習得していない時術は私が提供しよう」
時の君「料金はそこに書いてあるから、好きに持って行ってくれたまえ」
ほむら「お、お金ですか」
時の君「では、さらばだ!」
ほむら「……」
ほむら「押し付けられた……」
ほむら「……時間の魔法があるのかしら」
ほむら「ええと時間触、タイムリープ……」
ほむら「代金は……武器で。モンドの武器で」
シュライク
平穏な市街地と古墳が隣り合うリージョン
生命科学研究所には強力なモンスターが潜む
済王の古墳
アッコちゃん「ウェーン……」
怪人「泣いてばかりで、話にならん。なんとかせんか!」
戦闘員A「キー」
戦闘員B「キー」
戦闘員C「キー」
戦闘員D「キー」
アッコちゃん「何言ってるのか分かんないよーウェーン」
怪人「ほれ、お菓子をあげるから」
レッド「小さな子供を寄ってたかっていじめやがって、許せん!! アルカイザー、変身!!」
???「あんなに小さな子を、許せないわ! 変身!!」
怪人「……と誰?」
アルカイザー「ええっと、ティロカイザーで……」
マミ「!?」
アルカイザー「そう!我が友ティロカイザーだ!」
マミ「違う!私は魔弾の……」
怪人「よかろう、ティロカイザーもろとも踏みつぶしてくれる!」
マミ「聞いてよぉ!」
ディスペア
凶悪犯罪者が収監される刑務所のリージョン
中心部には、解放のルーンが刻まれた巨石がある
牢屋
さやか「何だよこれ!」
さやか「目が覚めたら、いきなり牢屋の中なんて!」
さやか「うぅ……あんまりだぁ」
さやか「キュゥべえは、私たち五人って言ってた……」
さやか「みんなも、こんなふうに……?」
ジリリリリ……
さやか「ひっ!」
さやか「な、何?ベルの音……?」
???「ん、あれ?こんな子いたっけ?」
???「おかしいわね。ここは空いていたはずだけど」
???「……」
???「ねえ、ライザ。この子も連れていっちゃだめかな?」
ライザ「……アニー、本気で言ってるの?」
アニー「大丈夫だって!素人が一人増えるだけよ」
さやか「!」
アニー「こっから出たい?」
さやか「だ、誰ですか?」
アニー「私はアニー。こっちはライザ。で、どうなの?出たいの、出たくないの?」
さやか「で、出たいです……」
アニー「決まりだね」
アニー「待たせたね」
アニー「この人はライザ。こっちはさやか。一緒に脱走することになったの」
ライザ「話は聞いたわ。よろしくね、エミリア」
さやか「えーと、あの、よろしくお願いします……」
さやか(グラマラス!)
エミリア「は、はい(こんな子どもまで……)」
エミリア「行きましょうって……」
ライザ「ここに抜け穴があるのよ」
さやか「本当だ……」
エミリア「で、でも私……」
アニー「パトロール殺しじゃ一生出られないわよ」
さやか「!」
アニー「ここでババアになるつもり?」
さやか「脱走って、すごいですねー」
まどか「通風孔とか、ゴミ捨て場とか、すごいルート……」
エミリア「……」
さやか(パトロール殺しって)
さやか(……エミリアさん、そんな風には見えないけど)
さやか(……)
アニー「ライザ、まだ?なんかイヤな感じがするのよ」
ライザ「ずいぶんきつく締め直してあるわ。あと二つ」
アニー「何か来るわ!これ持って!」
エミリア「これピストルよ!撃ったことないわ」
アニー「操作は簡単、引き金を引くだけ。早くライザ!」
さやか「そうそう!意外と中学生でも使ってるやつもいるんで!」
エミリア「!?」
エミリア「何よ、あれ!」
アニー「こんなのいるって聞いてないぞ、ルーファスめ!」
さやか「な、何!?こういう世界観なの!?」
アニー「やるしかないわ!みんな準備いい!」
アニー『切り返し』
ライザ『空気投げ』
エミリア『防御』
さやか『変身』
アニー「いくよ、ライザ!」
ライザ「ええ!」
連携名 『空気返し』
アニー「よし、この調子で……」
さやか「変身!」
ライザ「え……」
エミリア「嘘……」
アニー「あんた一体……」
さやか『稲妻突き』
ニドヘッグ「ギャアア……」
アニー「突っ込んだよ、この子……」
ライザ「やるわね」
エミリア「あ、逃げていく……」
ライザ「驚いたわ。ただの子どもだと思ったら、そんな力を隠していたなんて」
さやか「いやー、照れるなあ」
アニー「いや、たいしたものよ。楽勝だったのはあんたのおかげ」
さやか(あんまり驚かれなかったな……)
さやか(どういう世界なんだろう)
さやか「タッチダウン!」
所長「おめでとう。女性としては初の脱走者だ」
所長「準備の抜かり無さといい、先ほどの戦いぶりといい、私の予想を裏切って楽しませてくれたよ」
所長「では約束どおり、君達を解放しよう」
所長(何で子供が混じってるんだ……?)
さやか「脱走できたのはよかったけど」
さやか「アニーさんもライザさんもどこかに行っちゃうし」
さやか「エミリアさんは、恋人の家に……?」
???「そこの君」
さやか「はいっ!」
???「俺はルーファス」
ルーファス「アニー達から話は聞いている。どうだ、イタリア料理に興味はないか」
さやか「ナ、ナンパだ!これがナンパ!」
ルーファス「いや、そうではなく……」
さやか「でもお断りだ!私には恭介という恋人が……」
ルーファス「……アニー、ライザ、後は頼む」
さやか「?」
ヨークランド
酒造が盛んな、のどかなリージョン
沼地には杯のカードがあるが……
杏子「こんなところに指輪があるかねえ」
メイレン「眠ったまま目を覚まさない女の子がいるんですって」
メイレン「そういう不思議なところに、指輪があるものよ」
クーン「そうだよ! それになんだか面白そうでしょ!」
杏子「へいへい、分かったよ」
済王「幾年ぶりの酒か!美酒であるぞお!」
杏子「骸骨が酒飲んでんじゃねーよ」
済王「ぬうん!そなた、我が姫に生き写しではないか!」
クーン「王様はもうダメだね」
杏子「ったく……」
杏子「あいつらはどうしてんのかねえ」
杏子「まあ、そのうち会えるか……」
クーン「キョーコ、行くよ!」
済王「行くぞお、杏子!」
杏子「うるせえよ」
リージョン相互警邏機構の本部
盾のカードを保有している
???「お願いします!私には盾のカードが必要なんです!」
ヒューズ「だから、今日は出直せって。俺今忙しいんだよ」
???「くっ! こんなことではあの男に先を越されてしまう……」
???「越されてしまうんだ!」
ヒューズ「ああ、もう分かったから、持ってけ。ほら、カードだ。あんた必死すぎて怖えよ」
???「おお、ありがとうございます!」
ヒューズ「じゃ、今日は閉店な」
まどか「あの……」
ヒューズ「ほら、カードマニアは帰った帰った !」
???「この恩は忘れません……」
ヒューズ「ああ、頑張れよ。で、アンタは何の用だよ?見ての通り俺は今忙しいんでね」
T260「ヒューズ様からは労働反応が検出できません」
ヒューズ「……いつかのボロメカじゃねえか。何だ?今度は子守りか?」
まどか(子守り……)
T260「魔法少女に関する情報の提供を願います」
ヒューズ「!」
ヒューズ「……お前連中の知り合いか?」
まどか「と、友達です!」
ヒューズ「あーそうかい。なるほどな」
ヒューズ「悪いがこっちに情報はないぜ。むしろ情報提供してほしいぐらいだ」
まどか「……どうしてほむらちゃんを探してるんですか?」
ヒューズ「ほむら?」
まどか「黒髪で、盾から武器を取り出す……」
ヒューズ「あいつ、ほむらってのか……」
ヒューズ「……モンドのクーデター未遂は知ってるな?」
まどか「な、なんですか?」
ヒューズ「……」
T260「先日、第二情報部司令のモンドがクーデターを計画していたことが発覚し、逮捕されました」
まどか「……?」
T260「詳細は不明ですが、秘密基地を建設していた模様」
T260「以上は報道機関からの情報です」
ヒューズ「根こそぎ何者かによって持ち去られていた」
まどか「あー……」
ヒューズ「モンドの野郎は切り札の大型メカを用意していたらしいが、それも持って行かれた」
ヒューズ「モンドのションボリ感ったらなかったね」
T260「ですが、それはクーデターの阻止に大きく寄与したのではありませんか?」
ヒューズ「兵器持ってどっか行かなかったらな!」
まどか「ど、どうしてほむらちゃんだと分かったんですか?」
ヒューズ「基地に映像が残っててな。喜々としてミサイルをしまう姿が記録されている」
ヒューズ「そのほむらってのは、今クーデター級の武装を一人で保有していることになる」
ヒューズ「ウチの面子は丸つぶれだぜコンチクショー」
まどか「ほむらちゃんはクーデターなんて起こしません!」
ヒューズ「じゃあ兵器あげます、とはいかんだろうが!」
まどか「あの、ほむらちゃんには武器が必要なんです。魔法的に……」
ヒューズ「何が魔法だこの野郎」
まどか「それじゃあ、ほむらちゃんがどこにいるかは……」
ヒューズ「こっちがお教え願いたいね」
まどか「そうですか……」
まどか「あ、そうだ、盗掘の方は……」
ヒューズ「そっちは変身するガキが目撃されただけだ。情報はない」
T260「私は任務に関する失われた情報を探しています」
ヒューズ「いきなり何だお前」
T260「探しています」
ヒューズ「しらねーよ。クーロンの情報端末でも当たってみろ」
T260「情報の提供に感謝します」
ヒューズ「ああ、さっさと帰れ」
まどか「ほむらちゃんの展開、ものすごく早いなあ……」
T260「ほむら様の格納能力は驚くべきものですね」
まどか「あ、それはね、魔法の盾の中に……」
T260「魔法?」
まどか「でも攻撃は全部銃とかミサイルとかだね」
T260「……ほむら様に関するデータを更新しました」
ネオン街である表通りと、危険な裏通りが隣接するリージョン
イタ飯屋
さやか「えーと、つまりアニーさんとライザさんはその……」
エミリア「グラディウス」
さやか「そう! それのメンバーでリーダーがルーファスさん、と」
ルーファス「そうだ。裏の組織だな」
エミリア「みんな犯罪者なのね……」
さやか「それ分かります! 街の平和を人知れず守る力!」
ルーファス「……まともな手段でジョーカーを追うことはできない」
ルーファス「俺たちなら奴を追える」
エミリア「私だってあの仮面の男は許せないわ。でもどうして私につきまとうの?」
エミリア「キューブとかいうもののため?」
ルーファス「詳しい事は分からないが、大きなエネルギーを生むものらしい」
ルーファス「俺たちはそれがジョーカーの手に渡るのを阻止したい」
エミリア「それで私に接近したのね……」
ルーファス「俺たちと奴を追うか?」
エミリア「ちょっと考えさせて……」
ルーファス「さて、君のことだが」
さやか「私もジョーカーを追います! 人の恋人殺して、罪をなすり付けるなんて!」
ルーファス「いや、グラディウスとして君に頼みたいのは別のことだ」
さやか「へ? 何ですか?」
ルーファス「君と同じく、変身して戦う少女が各地で確認されている」
さやか「あ、やっぱりみんないるんだ!」
ルーファス「といっても、どこにいるのかは分からんが」
さやか「大丈夫ですよ! みんな目立つからすぐ会える……」
さやか「……そのつもりですけど、何でグラディウスが?」
ルーファス「ジョーカーは強敵だ。君達の力を借りたい」
さやか「なんか怪しいなあ……」
ルーファス「裏の組織だからな」
さやか「……」
さやか「まあ、いいですよ。私もみんなと会いたいし」
ルーファス「そうか。助かる」
アニー「何であんなこと頼んだのよ」
ルーファス「……モンドの基地から兵器を持ち出したのは、魔法少女だ」
ライザ「ああ、つまりその兵器を手に入れるために……」
ルーファス「そうだ。さやかなら、その魔法少女をこちらに引き入れることができる」
アニー「要するに、さやかを使ってグラディウスを強化したいってわけね」
ライザ「嫌な作戦ね」
ルーファス「何とでも言え」
…………
クーロン シップ発着所
さやか「しかし引き受けたはいいけど、どこに行けばいいんだろうなあ」
さやか「手がかりも全然ないし」
さやか「ま、とりあえず行ってみますか!」
さやか「情報は足で稼ぐ! ってなんかのドラマで見たし」
さやか「ふむ。よし、決めたぞ!」
さやか「この『京』ってとこにしよう!」
さやか「なんか修学旅行って感じだしね」
時間妖魔のリージョン
ほむら「武器は十分、魔法も戻った」
ほむら「いきなり軍事基地だったのには驚いたけど」
ほむら「案外幸運だったのかもしれないわ」
ほむら「……」
モンド『すべてのリージョンは私の力にひれ伏す事になるのだ!』
ほむら「……多分悪人よね。武器はもらっても構わないでしょう……」
ほむら「……とにかくここを出ましょう」
水の都と称されるリージョン
シーフードが名物
ほむら「……」
ほむら「いきなり、街に飛ばされた……」
ほむら「何なのよ、あの空間は」
???「アセルス様、私なんだか胸騒ぎが……」
???「大丈夫だよ、白薔薇。どんな追っ手も私が……」
ほむら「全身を白い薔薇でコーディネート……」
ほむら「魔法少女から見ても、上級者なファッションね……」
ほむら(しまった、見つめすぎた……)
アセルス「まさか、追っ手……!」
ほむら「追っ手?」
白薔薇姫「いえ、この方は妖魔ではありません」
アセルス「だけど、なんだか妙な気配だ……。普通の人間とは違う」
ほむら(鋭い……)
白薔薇姫「あら、褒めてくださるのね」
ほむら「ええ、まあ……」
アセルス「こら、白薔薇を変な目でみるな!」
ほむら(何よこれ)
アセルス「!」
アセルス「何か来る!」
アセルス「誰だ!」
白薔薇姫「金獅子姫様ですね、白薔薇ともうします」
白薔薇姫「姉姫様のお噂は耳にしておりました。最も勇敢な寵姫であったと」
金獅子姫「白薔薇姫、あなたは最も優しい姫であったと評判ですよ」
金獅子姫「その優しさで、私の剣が止められますかしら」
ほむら「何が起こっているの……」
金獅子姫「ふっ、どちらでも。この剣に屈しなかったのはオルロワージュ様ただ一人」
金獅子姫「参る!!」
VS金獅子姫 最も武に秀でた寵姫
ほむら「え、私も数に入っているの?」
アセルス「気をつけて、白薔薇!」
白薔薇姫「アセルス様……」
ほむら「私関係ないのだけど……」
金獅子姫「何人たりとも逃がしはせぬ!」
ほむら「えー……」
白薔薇姫『幻夢の一撃』
ほむら(もう仕方ないわ……)
ほむら『破壊光線銃』
ほむら(使ってみよう……)
金獅子姫「行くぞ!」
金獅子姫「こんなものですか、アセルス殿の力は!」
白薔薇姫「アセルス様っ!」
ほむら「……」ガチッ
『破壊光線』
金獅子姫「!」
金獅子姫「くっ、貴様邪魔立てするか!」
白薔薇姫「あなたは関わりないはず……」
アセルス「なのに、力を貸してくれるのか……?」
ほむら「いや巻き込まれたのよ?」
白薔薇姫「どうか、お名前をお聞かせください……」
ほむら「暁美ほむらです……」
アセルス「ほむら、か……」
金獅子姫「よそ見をするなっ!」
アセルス「!?」
白薔薇姫「アセルス様!」
アセルス「くぅっ! でもまだだ!」
『幻魔相破』
金獅子姫「なんと!」
ほむら『十字砲火(2丁拳銃)』
金獅子姫「!」
金獅子姫「この程度で……!」
アセルス「ほむら! 後は私がやる!」
ほむら「そう……。じゃあ私はこれで……」
白薔薇姫「お待ちください。私たちには見届ける義務があります」
白薔薇姫「美しき二人の戦いの行方を……」
ほむら「いや、私にはやることが……」
金獅子姫「白薔薇姫、あなたの気持ちはよくわかりました。私もかつて、その気持ちを胸に抱いていた日々がありました」
白薔薇姫「金獅子姉さま……」
金獅子姫「アセルス殿、妹姫を頼みますよ」
白薔薇姫「お待ちください。それでは、金獅子姉さまが罰を受けます」
ほむら「もう行っていいかしら」
金獅子姫「構いません。あの方に罰していただけるのなら喜んで罰を受けます」
金獅子姫「さらば!」
白薔薇姫「ええ、アセルス様、ありがとうございます」
アセルス「え、何が? 白薔薇、どういうこと?」
ほむら「本当にどういうこと?」
こうして金獅子姫様は去りました
次は、思わぬ人物がアセルス様のもとを訪れたのでした。
ほむら「……」
アセルス「そうか、君は友達を探して旅をしているのか……」
白薔薇姫「染み付いた煙硝の匂い……、旅の過酷を見るようです……」
ほむら「いやそれは、……まあいいわ」
ほむら「それより、さっきのは何? あなたたちを追って来たみたいだけど」
アセルス「……そう、私たちは追われているんだ」
白薔薇姫「妖魔の君、オルロワージュ様に……」
白薔薇姫「妖魔の頂点に立つお方です……」
ほむら「その頂点にあなたたちは何をしたのよ?」
アセルス「白薔薇を奪ったんだよ」
ほむら「ああ、そういう……」
アセルス「すまない、白薔薇。私のせいで……」
白薔薇姫「謝らないでください、アセルス様……」
白薔薇姫「私は……」
アセルス「ありがとう、白薔薇……」
白薔薇姫「アセルス様……」
ほむら「私を放っておくの、やめてくれる?」
ほむら「……とりあえず、色んなリージョンを巡ってみるつもりだけど」
白薔薇姫「あてどのない旅、私たちと同じですね……」
ほむら「同じなのかしら」
アセルス「どうだろう、あてのない同士、一緒に行かないか?」
白薔薇姫「ああ、それはよろしいかもしれません」
ほむら「まあ、案内してくれるのなら、ありがたいけれど……」
アセルス「そうだ白薔薇、ヨークランドに行こう。のどかな、良いところなんだって」
白薔薇姫「それに、お酒が有名なところでもありますね……」
アセルス「白薔薇を酔わせてみたいな……」
白薔薇姫「もう、アセルス様!」
ほむら「止めようかしら」
富豪の家
杏子「で、こいつが目覚めない娘ってか」
富豪「あなた方も娘を助けに来てくださったのですか?」
クーン「うん!!」
富豪「もう、どんな方でも構いません。今も一人来ているのですが……」
男「オレの手には負えねえ!」
富豪「と、まあこんな具合で」
クーン「何が起きるんだろう? なんか楽しそうだな!!」
クーン「! 指輪だ!!」
この人間の命は私のもの……
邪魔はさせぬぞ……
クーン「今のなんだろう?」
メイレン「何かに取り付かれているみたいね」
済王「指輪を頂くのではないのか?」
メイレン「待って! 指輪の力が、この子を生きながらえさせているのかもしれない」
クーン「マーグメルみたいに?」
メイレン「ええ」
メイレン「そうね。でも、どうしたら……」
杏子「おい、骸骨の王様、なんか当てはねーのかよ」
済王「ない!!」
杏子「あー、そうかよ!」
杏子「しゃーねえよ。一旦出直そうぜ」
クーン「うん……」
ヨークランド 酒蔵の街
杏子「しっかしなあ。憑き物落としなんてねえ……」
済王「急がねば、あの娘もう長くはないぞ」
杏子「ああ、わかってるよ……」
「ほむら、君は飲まないの?」
「いや、私未成年だし」
「アセルス様、私少し酔っぱらって……」
「ああ、白薔薇、こっちにおいで」
杏子「……ほむら?」
クーン「?」
ほむら「? 何よ、お酒は……」
ほむら「き、杏子!?」
杏子「おおお……、マジでほむらだ!」
クーン「知り合いかな?」
メイレン「ほら行ってたでしょ。仲間がいるって」
済王「うむ、美しい……。我が姫に生き写しじゃ……」
クーン「王様はもう……」
ほむら「……つまり、そっちのクーン君の故郷を守るために」
ほむら「指輪を集めて回っていると……」
杏子「ああ。なんか放っとけなくてな」
ほむら「相変わらず面倒見がいいのね」
杏子「うるせーよ」
杏子「で、お前はなにしてたんだ?」
ほむら「基地を一つ陥れて、時の君を襲名して」
ほむら「今はあの二人の逃避行に巻き込まれたわ」
「アセルス様……」
「白薔薇……」
杏子「な、何かしらんが、すげえなお前……」
ほむら「ええ……」
済王「白薔薇、しかしながら百合……」
クーン「王様は何を言ってるんだろう」
メイレン「知らなくて良いのよ」
ほむら「行きたいわよ!! 私だって!!」
ほむら「そうだ! あなたまどかがどこにいるか……」
杏子「悪いな。こっちで会った魔法少女はお前が最初だよ」
ほむら「そう……」
杏子「まあ落ち込むなよ。みんな上手くやってるさ」
ほむら「だといいけど……」
杏子「ああ、そうだ。 ……お前憑き物落としに心当たりはないか?」
ほむら「何よ急に」
クーン「あのね、指輪を持ってる子が変なのに取り憑かれてるんだ!」
クーン「指輪のおかげで、今は大丈夫だけど……」
ほむら「なるほどね……」
杏子「うお! な、何だ?」
白薔薇姫「少女の命に執着する、妖魔の風上にも置けぬやつ……」
クーン「知ってるの?」
白薔薇姫「ええ。病魔モール……」
白薔薇姫「……下賎な輩です」
白薔薇姫「……アセルス様なら、あるいは」
アセルス「? 私に?」
白薔薇姫「アセルス様の、妖魔の君の血……」
白薔薇姫「モール程度が逆らえるはずもありません……」
ほむら「これがその……?」
杏子「ああ、眠ったままなんだ」
アセルス「ふん、なるほど……」
アセルス「不愉快な気配がする……」
クーン「!」
メイレン「出てくるわ……!」
邪魔はさせぬぞ、邪魔はさせぬぞ!
ほむら「させないわ!」
『タイムリープ』
クーン「あれ、止まっちゃった」
杏子「ほむら、お前魔法が……」
ほむら「二代目時の君になったの」
杏子「あ? 何言ってんだ?」
ほむら「私にもわからないわ」
済王「今だ、ものども!」
メイレン『精密射撃』
杏子『活殺獣閃衝』
済王『草薙の剣』
富豪「い、家が……」
モール「ぐぅ……、邪魔はさせぬぞ……!」
杏子「しつこい奴だな……」
クーン「そこでサミング!!」
モール「ギャアァァ……」
アセルス「ふん」
娘「ん……」
杏子「起きるぞ!」
クーン「やったー!!」
富豪「よかった、よかった……」
杏子(本当によかった……)
富豪「みなさん、本当にありがとうございました。できる限りのお礼を……」
杏子「食いもん」
富豪「はい、いくらでも……」
済王「酒」
富豪「どうぞ……」
ほむら「なんか、機械に詳しい人を」
富豪「シュライクに優秀な会社があるとか……」
メイレン「あんたたち、自重しなさい」
富豪「その指輪は! それを渡してはお前が……」
白薔薇姫「いえ、もう大丈夫でしょう……」
娘「うん、もう大丈夫! それにこの指輪の兄弟を、クーンが持ってるのよね?」
ほむら「そうなの?」
クーン「ウン!」
娘「がんばってね!」
富豪「ありがとうございました」
杏子「さて、これで一件落着だな」
杏子「お前らのおかげで助かったよ」
ほむら「あなたたちは、これからどうするの?」
杏子「そうだな、乗りかかった船ってやつだ」
杏子「こいつらと指輪探しだな」
ほむら「そう、あなたらしいわ」
ほむら「そうしたいけど、その前にシュライクに行くつもり」
杏子「ああ、お前また兵器を……」
ほむら「すごいのがあるの」
クーン「アセルスたちは?」
アセルス「そうだな、私たちはどこに行っても同じだから」
アセルス「とりあえず、ほむらに付き合おうか」
白薔薇姫「機械ですか……。私の苦手分野ですね……」
メイレン「私たちは待ってるから」
クーン「強い人たちが三人も増えた! きっとすぐ指輪も見つかるね!」
杏子「そうだな」
済王「美しい娘がさらに三人……」
メイレン「別にあてもないんだし、私たちはここでちょっと飲んで行くわ」
杏子「ああ!? マジかよ……」
済王「おお!」
アセルス「私たちは先に行こう」
ほむら「それじゃあ、また後で……」
杏子「ああ、無茶すんなよ」
ほむら「しないわよ」
ヨークランド 発着所
杏子「あーあ、遅くなっちまった」
クーン「クーロン行き、来たよ!」
シップ内
メイレン「あー、飲み過ぎたわ……」
済王「ふはは、まだまだ若いな!」
ガコンッ
杏子「な、なんだ!?」
クーン「うわあ!」
メイレン「う、嘘でしょ……」
メイレン「タンザー……」
ほむら「富豪さんが言ってた会社っていうのは、ここかしら」
白薔薇姫「中島製作所……」
アセルス「こんなちっちゃいとこに?」
「ボディの換装が完了しました」
「次はどこに行くんです~」
「お役に立ちます」
「うん、これ以上の情報はトリニティの中枢に行かないとね」
「どうして、ロボットさんばっかりなんだろう……」
ほむら「!!!」
アセルス「ど、どうしたの、ほむら」
白薔薇姫「ほむらさん……?」
まどか「ほむらちゃん!?」
ほむら「よかった、無事だったのね!」
まどか「ほ、本当にほむらちゃんだ……!」
まどか「会いたかったよぅ……」
白薔薇姫「これは……」
アセルス「ふふ、ほむらにも姫がいたみたいだね」
アセルス「おお、ほむらを抱きしめた」
ほむら「ま、まどか?」
まどか「ほむらちゃんだ……」
まどか「人肌あったかい……」
ほむら「!?」
まどか「よかったぁ……」
ほむら「……何かあった?」
まどか「……結構いろんなところにいったけど」
まどか「ロボットばっかり増えて行くの……」
ほむら「た、大変だったわね……」
今更サガフロにはまった私。
エミリアにマミって名前つけると、すごい複雑な気持ち
サクサク進んでいいわw
Entry ⇒ 2012.11.06 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
ほむら「杏子、私が思うにハロウィンは先攻が有利過ぎない?」
ほむら「例えばここで私が先攻をとってあなたにトリックオアトリートと言うわ」
杏子「あぁ」
ほむら「そうするとあなたはお菓子を出さなくてはイタズラをされるわよね?」
杏子「そうだな」
ほむら「それを回避するためにあなたはポッキーを1本私にくれるとするわ」
杏子「あぁ」
ほむら「その後あなたが仕返しに私にトリックオアトリートと言うと…」
杏子「まさか!」
ほむら「そう、あなたがくれたポッキーを返すだけになってしまうのよ」
杏子「そ、そんなのずりぃじゃねぇかよ」
ほむら「でもお菓子を返されたとはいえお菓子を渡したのは事実」
杏子「クソッそんなのおかしいだろ…」
ほむら「先に言ったものが必ず勝つなんてもはや勝負が成立しない」
ほむら「まるで♯を描いてマルバツで埋めていく後攻の気分よ」
杏子「あぁ、真ん中をとられてどうしようもないんだよな…」
ほむら「というわけでこの事実を皆に伝えに行きましょう」
ほむら「皆にこの危険性を伝えるためにもトリックオアトリートしにいくのよ!」
杏子「ほむら…お前、また自分をお菓子を巻き上げる犠牲にして…」
ほむら「嫌われるのは慣れているわ」ファサ
杏子「へっいいよ、付き合ってやるよ、一人ぼっちはさみしいもんな」
ほむら「杏子…」
さやか「ふんふーん♪」
杏子「さやかだな、音楽を聞いてるけど気づくのかあいつ」
ほむら「任せなさい、ハロウィンでお菓子を巻き上げる側といえば仮装よ」
ほむら「この牙をつけてマントを羽織るのよ杏子」
杏子「これは…」
杏子「へっ教会の娘が魔女扱いされて末は吸血鬼なんて笑えねぇ」
ほむら「私はこれでいくわ」
杏子「ネコミミに尻尾で仮装になるのか?」
ほむら「あまり凝った仮装は時間がかかるわ」
杏子「それもそうだな」
ほむら「そこまでよ」
杏子「悪いがお前の楽しいお出かけはここまでだ」
さやか「…は?」ゴシゴシ
さやか「帰って寝た方がいいのかな…」
ほむら「トリックオアトリート」
杏子「トリックオアトリートだ」
さやか「え?あ、あぁ!ハロウィンね、あんた達がそんな仮装なんてしてるから何事かと思ったよ」
さやか「楽しいお出かけおしまいとか言うからそういう魔女でも出たのかと」
ほむら「御託はいいわ、トリックオアトリートよ」
さやか(そんなにお菓子が欲しいのかな?)
ほむら「え?えぇ…」
杏子「お、おう…」
さやか「んじゃねー」
ほむら「ってちょっと待ちなさいさやか!」
さやか「どうかした?」
杏子「なんか私達にいうことがあるんじゃないか?」
さやか「あんた達に?」
ほむら「…」
杏子「…」
さやか「うーん」
さやか「あ、そうだ」
ほむら「気がついたみたいね」
さやか「あんた達仮装似合ってるけど、そういうことする柄じゃないと思うよ」
杏子「そこじゃねぇよ!」
ほむら「もっと重要なことがあるでしょう」
杏子「そうそう」
さやか「…ごめん、わかんない」
ほむら「あなた、私達にお菓子を奪われたままでいいの?」
さやか「別に飴ぐらいいいけど?」
杏子「…」
ほむら「…」
さやか「よくわかんないけどんじゃね」
杏子「…」
ほむら「…」
杏子「いや、あいつがおかしいだけだって…」
ほむら「そうよね!それよりも次に行きましょう」
杏子「そ、そうだな!」
ほむら「さやかが行った方向に行ってまた会うのはなんだか気まずいから逆方向へ行きましょう」
杏子「マミの家がある方向だな」
ほむら「マミの家に乗り込むのもいいわね」
杏子「だな」
杏子「なんか買い物帰りみたいだけど」
ほむら「あれは……いいお菓子をもっていそうね」
杏子「あぁ、マミの家には必ずお菓子があるからな」
ほむら「そんないいお菓子を奪われたマミはきっと怒るわ」
ほむら「そして私達が伝えようとすることに気がついてくれるはずよ」
杏子「だな!」
マミ「それに…仮装?」
ほむら「マミ、先攻はいただくわ、トリックオアトリートよ」
杏子「トリックオアトリートだ」
マミ「あ、そっか、もうハロウィンの時期だったわね」
ほむら「さぁ、お菓子を渡さなければあなたに私達の本気のイタズラが」
マミ「そうねぇ、今持ってるのはそのお菓子の材料だから…」
マミ「あ、そうだわ、ちょうどこれからクッキーを焼く予定だったから食べてみない?」
マミ「普段は自分が食べて美味しかったものしか出したことはないけどたまにはね?」
杏子(マミのクッキー…)ゴクリ
ほむら(なんて誘惑なの、逆らえないじゃない…)ゴクリ
ほむら「えぇ」
杏子「あぁ」
ほむら「…」
杏子「…」
ほむら「おかしいわ」
杏子「あぁ」
ほむら「突然お菓子をよこせ、さもないとイタズラをすると脅されているのにどういうことなの?」
杏子「わからねぇ…あたしにはさっぱりだ」
ほむら「えぇ」
杏子「あぁ」
マミ「ふふっわかったわ、すぐに入れてくるわね」
ほむら「…」
杏子「…」
ほむら「どうしてかしら…」
杏子「どうしてだろうな…」
杏子「どうしたんだ?」
ほむら「マミもさやかも魔法少女、つまりそういうことだったのよ!」
杏子「な、なんだ?」
ほむら「マミは魔法で紅茶を出したりしていたわ」
ほむら「つまりマミもさやかもお菓子ぐらい魔法で作れるってことよ!」
杏子「そ、そうか、少しぐらい魔法をお菓子に使ったっておかしくねぇもんな」
ほむら「え?あぁ、食べるわよ」
杏子「あ、そうだった忘れるところだった」
マミ「?」
ほむら「あ、美味しい…」
杏子「だな」
マミ「本当?よかったわ」
杏子「にしてもマミのクッキーうまかったなぁ……」
ほむら「そうね、思わず全て食べてしまったわ」
杏子「で、まどかのいる場所に目処はあるのか?」
ほむら「えぇ、私レベルになるとまどかの居場所なんて常に把握できるわ」ファサ
ほむら「というわけでここを真っ直ぐ行くと」
まどか「うぇひひ、今日はいっぱい買い物しちゃった」
ほむら「いたわね」
杏子(やっぱり行動パターンとか知り尽くしてるのかこいつ)
杏子「ん」コロコロ
ほむら「何を食べているの?」
杏子「さやかの飴」コロコロ
ほむら「そういえば食べてなかったわね」
杏子「うめぇぞこのりんご味の飴」コロコロ
ほむら「私はグレープみたいだけど…まぁいいわ」コロコロ
ほむら「あ、美味しい…今度どこのメーカーのものか聞いておきましょう」コロコロ
ほむら「ってまどかを見失うじゃない!いくわよ杏子」コロコロ
杏子「んな急がなくてもまどか相手なら追いつけるって」コロコロ
杏子「悪いな、ここは通せねぇ」
まどか「え?え?ほむらちゃんと杏子ちゃん?」
ほむら「心苦しいけれどまd」
まどか「わぁ!ほむらちゃんの猫さんとっても可愛い!」サワサワ
ほむら「ちょ、ちょっとまどか///」テレテレ
まどか「杏子ちゃんもこの牙は作り物?」
杏子「お、おう」
まどか「杏子ちゃんはかっこいい感じでとっても似合ってるね!」
杏子「そ、そうか?」テレテレ
杏子「あ、そうだったそうだった」
まどか「あ、そっか!えっとトリックオアトリートだよね」
ほむら「!!」
杏子「!!」
まどか「?」
ほむら(先攻を奪われた…どうしよう…)
杏子(お菓子もってない…)
まどか「どうかしたの?」
ほむら「わかったわ、まどか、目を閉じてもらえるかしら?」
まどか「?うん、わかったよ」パチ
ほむら「食べかけで悪いけれど…」
杏子「ってちょっと待て!」
ほむら「離しなさい!このままだとまどかは望まないイタズラをしなくてはいけないのよ!」
ほむら「まどかは優しいからきっと心を傷つけながらイタズラをするのよ!」
杏子「落ち着け!ちょっと落ち着けって!」
まどか(どうしたんだろう?)
杏子「いや、まぁお菓子持ってないんだからしょうがねぇよ」
まどか「えっと、もう目を開けてもいいの?」
ほむら「えぇいいわよ」
まどか「えっと、どうしたの?」
ほむら「まどか、ごめんなさい…私たちはお菓子を持っていないわ…」
杏子「イタズラでもなんでも受け入れるよ悪いな」
まどか「え?え?」
ほむら「確か本場だと生卵を叩きつけるのよね、いいわ、存分に投げつけなさい」
杏子「食い物を粗末にするのはやめてくれ、そうだな、私達ならその辺の石でも死にはしないから」
ほむら「そうね、じゃあその辺の石でも投げつけなさいまどか」
まどか「とっても危ないよ!?」
ほむら「え?そ、そうなの?」
杏子「ど、どうしてだよ」
まどか「え?うーん、お菓子は皆で食べたほうが楽しいよね?」
杏子「まぁマミの家で皆で食べると確かに楽しいな…」
ほむら「…確かにまどかと食べると幸せね…」
まどか「こういうのも皆で楽しもうってしてるだけだから本気にしなくてもいいんじゃないかな」
まどか「あった!」
ほむら(途中まで食べたと思われるポッキー?)
まどか「はい、ほむらちゃんあーん」
ほむら「あ、あーん」パク
まどか「美味しい?」
ほむら「え、えぇ…」
まどか「うぇひひ、こうやって食べてもらって美味しいって言ってもらえても嬉しいんだよ」
まどか「杏子ちゃんもあーん」
杏子「い、いやあたしはあーんはいいって」
まどか「…」ジー
杏子「わ、わかったよ!あーん」パク
まどか「うぇひひ」
杏子「んでほむらと一緒にってわけだ」
まどか「えっと、ところでどうしてそんなふうに考えたの?」
ほむら「言われてみるとどうしてだったかしら…」
杏子「あたしはほむらに言われてそういえば本来はそういうイベントだったって思って」
杏子「元々そういうイベント参加してないしな」
ほむら「私も同じだけどどうしてだったかしら…うーん…」
ほむら「そういえばお菓子がもらえるイベントだったわよね、病院でもらっていたわ」
さやか「あーそっか、病院にいたから真のハロウィンを知らないんだね」
ほむら「真のハロウィン?」
さやか「そうそう、実はさ、その日は…」
ほむら「…」
まどか「ほむらちゃん?」
ほむら「さやかあああああああああああああああああ騙したわねええええええええ」
杏子(犯人がさやかならさやかから飴もらった時点できがつけよ!)
ほむら「え?」
まどか「仮装してるしママもパパもきっとびっくりするよ!」
杏子「いいのか?」
まどか「うん、大歓迎だよ」
ほむら「じゃ、じゃあ是非…」
杏子「あ、あたしも行こうかな…」
まどか「どうせならさやかちゃんや仁美ちゃん、マミさんも呼んでみようかな…」
ほむら「あなたのご家族がいいなら良いんじゃないかしら?」
ほむら(さやかに軽い復讐も考えておこう…)
杏子「だな、複数人で食べたほうがうめぇっていうなら呼ばない手はないし」
まどか「うぇひひ、そうだね!」
このあと流れでまどっちのお家にお泊りでまどっちの無防備さにほむほむがどっきどき
と言いたいけど眠いしハロウィン終わったし終わりにしましょうおやすみなさい
Entry ⇒ 2012.10.31 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
ほむら「普通の時間軸に来てしまったわ」
まどか「でも… この子、ケガしてるんだよ」
ほむら「どうしても放さないというのなら…」
さやか「お~い、まどか! こんなとこにいたんだ」
さやか「ん、なに持ってんの? ねこ?」
まどか「そうみたい、なんだけど…」
ほむら「いいから早く放しなさい!」
さやか「そうだよ!」
ほむら「えっ」
まどか「え… でも、輪っか付けてるし…」
QB「確かに飼い猫ではないけど」
さやか「うおお喋った!? しかもやっぱ野良じゃん!」
ほむら「いや、そもそもねこじゃなくて…」
まどか「ごめんね」スッ
まどか「手、洗わなくちゃ。その前に動物病院へ…」
マミ「あら、その子を助けてくれたの?」
まどか「いえ… どういたしまして」
さやか(お友達!?)
ほむら(痛めつけたのは私なのだけど… 黙ってた方がいいかしら)
まどか「ケガしてたんです。すぐ病院へ」
マミ「平気よ。私の魔法で治してあげられるの」
まどか(ど、どうしよう、変なねこの次は変な子が来ちゃった……)
ほむら(何故か私も来てしまったわ…)
マミ「QBに才能を見込まれたあなたたちには、他人事じゃないものね。説明しておくわ」
・
・
・
さやか「願い事が何でも、ねぇ」
まどか「いざとなると、決まらないよね」
マミ「大事な事だから、ゆっくり考えた方がいいわ」
ほむら「だめよ」
マミ「あら、どうして?」
さやか「お、さては自分より強いライバル登場が怖いんだな~?」
マミ「そんな理由なわけないでしょう」
ほむら(……あなたに言われたくないわ)
ほむら(前みたいにマミが錯乱してもいいように、準備して…)
まどか「…ほむらちゃんのコスチューム、あんまり魔法少女らしくないね」
ほむら「そ… そうかしら」
まどか「今度新しいの考えてあげるね!」
ほむら「ありがとう」
さやか「ほむら、迂闊に誘いに乗らない方がいいよ」
まどか「さやかちゃん、それどういう意味!?」
ほむら(その言葉、あなたに言ってあげたいわ……)
マミ「戦わなければいけない、というのはもう話したでしょう」
ほむら「それ以外にもあるの。まず、私たち魔法少女は死んだも同然の身」
マミ「…それは初耳だわ」
ほむら「この体からは魂を抜き取られ、ソウルジェムに収まっているの」
まどか「そうなのQB?」
QB「その通りだよ。暁美ほむら、君はどこでそれを知ったんだい?」
さやか「どうしてそんなことするのさ?」
マミ「そうね」
ほむら「!?」
ほむら「で、でも… それじゃゾンビにされたようなものだって」
QB「脆弱な肉体で戦うより、よっぽどいいだろ?」
マミ「戦いでケガしても治りが早いと思ったら、そういう仕組みだったのね」
まどか「QB、気が利いてる~!」
ほむら「待って!」
まどか「ほむらちゃん、そういうの信じてたの?」
ほむら「え、信じてるって…?」
さやか「ああ~ スピリチュアルとか、パワーナントカ系の」
マミ「信じるもなにも、魔法少女は本当にいるわ。二人ともその目で見たでしょう」
さやか「うん、まぁ、確かに……」
ほむら「納得してくれたようね」
マミ「でも魂が体に入ってないとかは、正直それほど困らないような……」
ほむら「みんなQBに騙されていたのよ!」
QB「騙すという行為自体、ぼくたちには理解できないなぁ」
さやか「あんたねこにムキになってどうすんのさ」
マミ「でもどうして教えてくれなかったの?」
QB「聞かれなかったからさ。知っておかなきゃいけない情報だなんて、思わなかったんだよ」
ほむら「ほら見なさい! コイツはそういう…」
まどか「訊けばいいじゃない」
ほむら「はい」
ほむら(まずい……)
ほむら(しかしこっちの切り札はまだあるのよ!)
ほむら「ならこれは知ってる? ソウルジェムの濁りきった魔法少女がどうなるか」
マミ「魔法が使えなくなるわね」
ほむら「それだけじゃないわ。ソウルジェムはグリーフシードに変わり、私たちは魔女になるの」
QB「そうだよ。魔法少女が希望を与えた分、絶望をまくようになっているのさ」
まどか「何のために、そんなことを……」
QB「希望と絶望の帳尻を合わせるのさ」
ほむら「そうやって魔女になった魔法少女を、私はもう何度も…」
さやか「奇跡も魔法も、代金後払いってわけね」
ほむら「」
さやか「願いが叶うとかさぁ、正直ちょっとうさん臭いって思ってたんだ」
さやか「タダより高い物はないっていうし、そうなってた方がむしろ納得いくわ~」
まどか「なかなか甘い話ってないもんだよね」
ほむら(今まで話が通じなくて手を焼いてたけど、普通に通じても問題なのね)
マミ「どうにかして止める方法はないの?」
ほむら(それでもマミなら!)
ほむら「一つだけあるわ」
ほむら「魔女を生み出す前に、ソウルジェムを砕いてしまうの」
ほむら「食い止めるには死ぬしかないってことよ」
ほむら(これで……)
ほむら(いい加減にして!)ビキビキビキ
マミ「魔法が使えなくなったら、どの道魔女にやられてしまうもの」
ほむら「でも、死ぬまで戦い続けることに…」
QB「それはもう説明したじゃないか」
さやか「でもずっと続けるってのはキツいなぁ」
マミ「私はそのつもりでいるからいいけど」
マミ「決心が固まらないなら、二人とも私たちの魔女退治を見学してみるといいわ」
まどか「『たち』…?」チラッ
ほむら「……もういいわ。私も手伝うわよ」
まあ後払いなら仕方ないね
マミ「何かしら?」
QB「郵便受けに手紙が来てるよ」
マミ「どれどれ… 『え、こいつら元魔法少女を糧にしてることはスルーすんの?』」
ほむら(ありがとう! ありがとうナイスフォロー!)
マミ「……暁美さん」
ほむら「ええ、あなたにとっても辛いでしょうけど、それが」
マミ「もし私がソウルジェムを砕けなくて、魔女になったら、真っ先にたおしてくれないかしら」
マミ「やっぱり人を呪うより、グリーフシードになって使ってもらう方が役に立てるもの」
ほむら「…覚えておくわ」
ほむら(やっぱりそうなるのね…)
QB「この国では、成長途中の女性の事を『少女』というだろう」
QB「穢れを溜め込んで、魔女になりつつある君たちは、『魔法少女』というわけさ」
まどか「穢れ……」
マミ「穢れを溜めると少女は女になる、ね……」
一同「……」ゴクリ
まどか「マミさん今えっちなこと考えたでしょ///!」
マミ「か、考えてないわよ!」
QB「しかし、実際に成長途中の少女と大人の女性では…」
マミ「こらQB! 女の子の前でそんな話しちゃいけません!」
マミ「ふぅ… 暁美さん、平気だった?」
ほむら「勿論よ。あれくらいでやられるわけないもの」
まどか「マミさんかっこいい~!」
マミ「もぅ、見せ物じゃないのよ」
まどか「願い事も考えてるんですけど、なかなか決まらなくって」
ほむら「私としては、決めないでほしいのだけど」
さやか「その願い事なんだけどさ、自分のことじゃないとダメなの?」
マミ「確かにそういう前例もあるけど… やめておいた方がいいわ」
さやか「あるの?」
マミ「本当にその人のためになるかどうかなんて、わからないものよ」
さやか「それもそうだけど……」
ほむら「マミもこう言ってることだし、やめておきなさい」
さやか「明日、本人と相談してみます」
マミ「ちゃんと聞いておかないとね」
ほむら「止めなさいよ!」
恭介「さっきさやかが来たんだ」
仁美「今日もでしたの?」
恭介「なんだかワケのわからないことを言ってたよ… 魔法でケガが治るとか」
恭介「あたしは死んじゃうけど、奇跡って本当にあるの! とか……」
仁美「……さやかさん、学校では普段通り振る舞っていますのに」
恭介「うん… 実は僕もこの間、けっこうハデに八つ当たりしちゃって…」
仁美「お二人とも、あまり思い詰めてはいけませんわ」
恭介「このままだと面倒見る方が先に参っちゃうからね」
恭介「早いとこ新しい生き甲斐探さないと」
仁美「美樹さんに教えられてしまいましたね」
マミ「結局、その上条くんはなんて?」
さやか「夜電話があったんですけど、う~ん…… よくわからないなぁ」
さやか「バイオリンのことではもう悩んでないからいいよ、って」
まどか「上条くん、どうしちゃったの?」
さやか「不思議だよね。ともかく、これであたしはもう契約しないことにしとくわ」
ほむら「よかった……」
さやか「安心した?」
ほむら「あなたが契約すると、毎回ロクなことにならないから」
さやか「……『毎回』?」
・
・
マミ「ワルプルギスの夜ね。噂には聞いた事あるけど」
さやか「そのデッカい魔女って、そんなに強いの?」
ほむら「何度戦っても、倒せた事はないわ。よくて進路を少し逸らしただけよ」
まどか「ほむらちゃん、今までずっと私を助けるために……」
ほむら「これであたなに契約してほしくないというのが、わかってもらえたかしら」
まどか「わかったよ。QB! ちょっと来て!」
QB「なんだい?」
まどか「わたし、契約する! ほむらちゃんと一緒にワルプルギスの夜と戦うよ!」
ほむら「待ちなさい!」
ほむら「そうよ。でも契約してはいけないって、わかってくれたのではないの!?」
まどか「大丈夫。ほむらちゃんが頑張ってきたのを、無駄にはしないから」
QB「願い事は決まったのかい?」
まどか「『一ヶ月したら、魔法少女になる前の、元の体に戻る』それが私の願い!」
QB「いいよ」
ほむら「……は!?」
QB「何を言っているんだい?」
QB「普段は無理だけど、契約するときの願い事なら、そのくらい簡単さ!」
ほむら「そんな……」
まどか「へぇ~ これがわたしのコスチューム?」
QB「君がノートに描いてた通りにしておいたよ」
まどか「ありがとう! これから一ヶ月だけよろしくね、ほむらちゃんとマミさん!」
マミ「一緒に戦う仲間ができて嬉しいわ」
ほむら「じゃあ、私が今までしてきたことって……」
ほむら(ワルプルギスの夜をあっさり倒せたのはよかった)
ほむら(時間停止は使えなくなったけど、まどかが契約してた頃に使ってた弓矢を貸してもらっているし)
ほむら(残る問題は…)
まどか「ほむらちゃん、おっはよ~!」スリスリ
ほむら「おはようまどか、でも少し離れなさい」
まどか「えぇ~ 昨夜からずっと、ほむらちゃんに会いたかったんだよ!」
ほむら「たった一日でしょう」
ほむら(今までのことをわかってくれたうえに、一緒に戦ってから妙な連帯感がうまれてきたからか)
まどか「ほむらちゃんがいない時間は長く感じるものなの!」
ほむら「はいはい」
ほむら(まどかがずっとこの調子だわ……)
まどか「ほ~むらちゃ~ん」スリスリホムホム
ほむら(これはこれで違うような……)
仁美「お二人とも、朝からお熱いようで」
ほむら「まどかが放してくれないのよ」
さやか「そういうあんたも、最初の頃ほど抵抗しなくなってきたのね」
ほむら「あきらめただけよ……」
ほむら(教室でイチャイチャするなんて、端から見れば恋人同士じゃない!)
ほむら(女の子同士でそういうのは……)
まどか「あれ、ほむらちゃんどうしたの?」
さやか「急におとなしくなって」
ほむら(え、いや、でもだからといって)
ほむら(男の子とならしてみたいとか、そういうことでもなくて///)カアァッ
仁美「効いてるようですわ」
さやか「まどか、もう一押し!」
まどか「任せて!」ギュゥ
ほむら(この時間軸のまどかたちは、いつになく聞き分けがよかった)
ほむら(もしかすると、こういうのがけっこうマトモなのかもしれないわね)
キーンコーン……
ほむら「ほらチャイム鳴ったわよ! 早く席に戻りなさい!」
まどか「は~い…」
ほむら(あ… もしこういうのがおかしくないのだとしたら、今のは言いすぎだったかしら……)
ほむら(そうね。大体、私もよくわからないし…)
ほむら(詳しそうな人に相談してみましょう)
仁美「珍しいですわね。暁美さんが二人きりでお話したいなんて」
ほむら「他に相談できる人がいなくて…」
仁美「フフッ まどかさんに妬かれてしまいますね」
ほむら「そのまどかのことなのだけど…… このところ、おかしいと思わないかしら?」
仁美「あら、どこもおかしくなんてありませんわ」
ほむら「朝から抱きついて来るなんていつものこと」
仁美「大好物です」
ほむら「?」
仁美「続けて、どうぞ」
ほむら「その… 恋b、いや、少々行き過ぎではないかと……」
仁美「そうだとして、何が問題ですの?」
ほむら「私も線引きというか、加減がわからなくて」
仁美「どこまでなら一般的な範囲なのか、と」
ほむら「そうなるわね」
仁美「なら問題ありませんわ! 大事なのは暁美さんの気持ちではなくて?」
ほむら「……正直、鬱陶しいのだけど」
仁美「人からどう見えるか、などと意識する必要はないということですわ」
ほむら「なるほど…」
ほむら「そうね… ありがとう。参考にさせてもらうわ」
ほむら(あまり話したこともないけど、あの中では一番常識人らしい志築仁美が言うんですもの)
ほむら(まどかが間違ってるわけではないのね)
ほむら(なら私もまどかの気持ちに応えられるようにならないと)
ほむら(あの戦いに比べたらラクなものよ…… きっとね……)
まどか「ほむらちゃ~ん! 14時間ぶりのほむらちゃ~ん!!」ダキッ
ほむら「おはよう、まどか」スッ
さやか(手が!)
仁美(テガ!)
さやか「…ついに陥落ですかコレは」
仁美「大いなる一歩ですわね」
上条「……僕が入院してる間に何があったのよ?」
中沢「鹿目ちゃんに嫁が来た」
上条「だから何があったんだって」
ほむら「あら、何かしら?」
まどか「ティヒヒヒ、学校終わったら持って行くね」
——ほむ部屋——
マミ「鹿目さん、完成したんですって?」
ほむら「知ってたの?」
マミ「ええ、作り方を教えたのは私よ」
バサッ
まどか「これだよ! わたしとお揃いのコスチューム!」
ほむら「……」
まどか「そんなことないよ! ほむらちゃんは何着てても可愛いんだから!」
ほむら「それに、サイズが合うかしら」
まどか「ほむらちゃんのからだのサイズを間違えるわけないじゃない」
マミ「せっかく作ってもらったんだし、着てみたら?」
ほむら「でも、ほら… 変身したらいつもの服になるんだから」
QB「変身した時その衣装が出てくるように、ソウルジェムを改造しておくよ」
ほむら(どう考えても似合うわけないけど、このまどかが勧めて、しかもわざわざ作ってくれたんだもの)
さやか(マミさんがコスチュームの作り方を教えた辺りに突っ込んでいいんだろうか……)
ほむら「わかったわ。QB、お願いできる?」
まどか「やったぁ!」
ほむら「着るだけでそんなに喜んでもらえるなんて、私も嬉しいわ」
ほむら(やけに大げさに喜んでるようだけど)
ほむら(手作りだから、思い入れが違うのかしら……?)
ほむら「では早速着てみるわよ」
ホムン
さやか(うっわ……)
マミ(これは…… 背中押しといてあれだけど)
ほむら(この二人、絶対よからぬテレパシーを飛ばしあってるわね…)
さやか(マミさんこらえて!)
マミ(美樹さんこそ耳赤いわよ!)
さやか(だって、ほむらがアレ……)
ほむら(///)プルプルホムホム
さやか「えっ」
マミ「シーッ!」
ほむら「ほらほらまどか、そんなに強くしがみついてはいけないわ」
ほむら「せっかくの衣装にシワがついてしまうでしょう」
まどか「いいの! 今日だけいいの!」ムギュウゥゥ クニクニ
ほむら「もぅ… 甘えん坊さんなんだから」ナデナデ
さやか(ほむらが乗ってる……!!)
ガタッ
マミ「ご、ごめんなさい。私ちょっとお手洗いへ…」
さやか(マミさんずるい!)
まどか「いいんです! ほむらちゃんがわたしの作ったコスチュームで戦うところ、見てみたいから」
ほむら「あらたまって言われると照れるじゃない///」
さやか「あたしもまどかと同じ気持ちだよ!」
ほむら「いやあなたは帰りなさいよ」
さやか(マミさん、マミさん!)
さやか(戦ってる最中に笑わないでくださいね!)
マミ(わかってるわよ!)
まどか「そりゃあもう!」
さやか「ほむらのあの衣装、作るの大変そうだもんね」
まどか「そうでもないよ。サイズ変えただけだから」
さやか「最初から作ったんじゃないの?」
まどか「あれは私が契約してた頃のコスチューム」
まどか「QBに頼んで、とっておいてもらってたんだ」
さやか「ああ、弓矢と一緒に」
さやか「…正直言って、ほむらにはあんまり似合わないんじゃ……」
まどか「そういうことじゃないの」
まどか「ほむらちゃんが、わたしの着た服を着て、あんなに激しく動き回ってるなんて」
まどか「想像しただけでもう……」ウェヒヒフヘヘ
さやか「お、おう…」
マミ「そっちへ行ったわ! 暁美さん!」
ほむら「トドメをさすわ! 必殺必中、トゥインクル・アロー!!」
まどか「ほらほらほらほら見てよ見てよ!!」
さやか「うん…… 見てるよ」
さやか「もうちょっとほむらに合うヤツがいいんじゃない?」
まどか「えぇ~」
さやか「何が不満なのよ?」
まどか「ほむらちゃんが恥ずかしがってくれなきゃ」
さやか「そこまで狙ってんのかよ!」
魔女「ピギャアアァーーーーーッ!」
ほむら「やったね、マミさん!」
マミ「え? ええ……」
ほむら「どうしたの? 嬉しくないの?」
マミ(この子までおかしいわ…… そろそろやめさせた方がいいのかしら)
ほむら「佐倉杏子とも協力できないかしら」
マミ「できればそうしたいけど、あなたも彼女の事は知っている」
ほむら「ええ。何度となく一緒に戦ったわ」
まどか「誰なの?」
マミ「私が鹿目さんたちと出会う前に、一緒に戦っていた魔法少女よ」
マミ「ただ、いろいろあって、別れちゃったけど…」
ほむら「普段は隣町にいるけど、いざという時協力できるよう、連携をとっていてもいいと思うの」
さやか「マミさんも、何があったか知らないけど、ちゃんと仲直りした方がいいよ」
杏子「何の話だよ、いきなり?」
ほむら「戦力は不足していないものの、ワルプルギスの夜のようなことがまた起こるかもしれない」
杏子「非常事態のために、か… 他に何か狙いがあるんじゃないだろうな?」
ほむら「単刀直入に言うわ。巴マミと仲直りしてほしい」
杏子「ならお断りだね。誰があんなヤツと」
ほむら「私は本音で話したのよ。あなたのも聞かせてもらいたいわね」
杏子「……言ったろ。お断りだって」
杏子「ほぅ、わかるってのかい?」
ほむら「お見通しよ。あなたが本当はマミと別れたままでいたくないことも」
杏子「やめろよ」
ほむら「今でも心の一部でマミのことをひきずっていて、叶うなら昔のように甘えに行きたいことも」
杏子「いや… それはどうかなぁ…」
ほむら「マミの部屋で食卓を囲んだことを懐かしく思い出し」
杏子「そりゃあ、タダ飯はありがちけどさ」
杏子「なんだその具体的なのは」
ほむら「洗っているうちにふと首から下へ目が行ってしまい」
ほむら「あ、マミの背中って白いんだな、と……」
杏子「ちょっと待て」
ほむら「生まれかけた邪な思いを力ずくでねじ伏せるも、お風呂あがりに不意打ちでクラッときて」
杏子「おい、いい加減にしろよ!」
ほむら「もう早く寝てしまおうと言いたいところだけど、そのタイミングで寝ようというのも抵抗あって」
ほむら「余計な事考えないよう、いそいそとベッドに入るものの」
ほむら「もう頭の中では大変なことになってて、『マミ、起きてる?』とかやってしまうのもお見通しよ!」
杏子「いくら何でもそこまで行ってなかったぞ!」
ほむら(あれ?)
ほむら「もしかして、違うのかしら……?」
杏子「当たり前だろ!」
ほむら「そう… ごめんなさい。私とまどか… 見滝原の元魔法少女は、いつも大体そんな感じだから」
ほむら「あなたたちも同じようなものかと」
杏子「気味が悪いわ」
ほむら「見滝原では珍しくもないことよ」
杏子「それお前らの間だけで、だろ」
マミ「佐倉さん…」
杏子「ぬか喜びすんなよ。気に入らなかったらすぐ解消だからな」
マミ「それでもいいの。あなたとまた一緒に戦えるんだもの」
さやか(マミさんもけっこう意地っ張りなとこあるんだね)
まどか(素直が一番だよ。本当の意味で)
ほむら「杏子。私もマミも格闘戦は専門外だから、アテにしてるわよ!」
杏子「わかってるって。おいマミ、腕は衰えてないだろうな?」
マミ「誰に言ってるのかしら? さぁ、変身するわよ!」マミン
ほむら「するなら今のうちね」ホムン
杏子「ブフッ!!!」
マミ(しまった!)
杏子「ちょっ… ちょっと待って… なにその恰好……」ガクッ
マミ(立てないほど!?)
杏子「いやオマエのせいだろ! しかも変な呼び方すんなよ!」
ほむら「わ、わたし何もしてないよ!」
杏子「ご、ごめんマミ…… やっぱ二人で行って……」
マミ「それしかなさそうね……」
さやか「おかえり、早かったね」
まどか「杏子ちゃん一人だけ? ほむらちゃんとマミさんは?」
杏子「まだ中にいるよ。あいつら、いつもああなの?」
まどか「? そうだけど、どうかしたの?」
杏子「いやさ…… こりゃ尋常じゃない街に来ちゃったわ……」
まどか「そんなことないよ。普通だよ」
杏子「……普通って、難しいよね」
おわり
無性にバカみたいな百合スレを書きたかったんだ
普通ではなかったな
Entry ⇒ 2012.10.29 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
まどか「それは まぎれもなく コブラだなって」
マミ「ティロ・フィナーレ!!」
ドォォォ――――ン!!!
まどか「あっ、あっ」
さやか「あぁ!」
脱皮し、マミを喰らおうとする『お菓子の魔女』。
マミ「!!」
ドゴォォォ――――!!!
お菓子の魔女を貫く光。爆発する魔女。
まどか「な、何?今の…光みたいな…」
さやか「魔女から出てきた、魔女を…貫いた」
マミ「…何がどうなってるの…?」
コブラ「危なかったな、お嬢ちゃん。もう少しでその可愛い顔にギザギザの傷がつくとこだったぜ」
さやか「ヒューッ!」
―― その少し前 ――
コブラ「どうだ、レディ。タートル号の調子は」
レディ「あまり良くないわね。この地帯を抜ける程度は出来るでしょうけど、次の星ですぐ整備に入らないと…」
コブラ「ったく、なんだって急に不調になんかなりやがるんだ」
レディ「原因は分からないわ。ブースター、反加速装置、シールド…全て異常は無いみたいなのだけれど、どうもスピードがフラついて落ち着きがないのよ」
コブラ「じゃじゃ馬め。人参でもやれば落ち着くか?」
レディ「それで直れば苦労はしないわね。とにかく、出来るだけ急いでみるわ」
コブラ「頼むぜ、レディ。それまで俺は… …ふぁぁ、一眠りしておく」
レディ「分かったわ。… … …!!あれは!?」
コブラ「!?どうした?」
タートル号の目の前に突如現れるブラックホール。
レディ「ブラックホール!?そんな…予兆もなく突然現れるなんて!」
コブラ「おいおい、タートル号の不調の次はブラックホールときたか!?俺はまだ厄年じゃないんだぜ、チクショー!」
レディ「シールド全開!加速でどうにか突っ切って…!… …ダメ!飲み込まれるわ!!」
コブラ「どわぁぁぁ―――!!」
ブラックホールに飲み込まれ、コントロールを失いながら闇に沈んでいくタートル号。
レディ「コブラ… コブラ!!」
コブラ「…っ! …くぅー、痛ててて…」
レディ「大丈夫?怪我はない?」
コブラ「しこたま頭をぶつけたくらいだよ。…ったく、危うく三度目の記憶喪失になりかけたぜ」
レディ「良かったわ。…どうやら、無事みたいね私達」
コブラ「ああ。…タンコブが痛いのを見るに、どうも生きているらしい。…にしても…どこだ、ここは?」
レディ「…座標に無い場所ね。計器は正常に動いているみたいだけれど…」
コブラ「…!おいおい…なんだ、こりゃあ…」
タートル号の周りに広がるお菓子の山。そこを彷徨うようにうろつく、ボールのような一つ目の怪物達。
コブラ「どうやら俺達はヘンゼルとグレーテルになっちまったみたいだぜ。レディ、パンでも千切ってくれ」
レディ「それじゃあ元の場所に帰れないでしょ。…駄目、タートル号のデータベースでもこの場所の情報は見つからないわ」
コブラ「そんな馬鹿な!ありとあらゆる情報がこの船のデータベースには詰まってるはず…!… … …なァんだ、ありゃあ?」
タートル号から少し離れた場所で、死闘を繰り広げるマミとお菓子の魔女。
マミの銃撃が次々と巨大な人形のような怪物にに炸裂していく。
コブラ「…レディ、俺はどうもヘンゼルとグレーテルの話を間違えてたらしいぜ。どうも、グレーテルはスカートから銃を出して、そいつで魔女を倒す話だったらしい」
コブラ「まったくだ。記憶喪失より性質が悪いぜ。これが夢じゃないときてる」
レディ「…でも…少し危ないわね。あの子の闘い方」
コブラ「…ああ。何かが吹っ切れたように闘ってる。あれじゃあ…」
言いながら、コクピットを出て行こうとするコブラ。
レディ「!どこに行くの、コブラ」
コブラ「俺のこういう時の勘は鋭いんだよ。特に美女が野獣に喰われそうな時はね」
タートル号から出て、その様子を伺う。
マミのティロ・フィナーレを喰らい、脱皮をしてマミに襲い掛かるお菓子の魔女。
その瞬間、コブラは左腕のサイコガンを抜く。
コブラ「危なかったな、お嬢ちゃん。もう少しでその可愛い顔にギザギザの傷がつくとこだったぜ」
さやか「ヒューッ!」
まどか「え、どうしたのさやかちゃん」
さやか「いや、なんか言わないといけない気がして」
まどか「なにそれこわい」
コブラ「怪我はないかい?」
マミ「え、あ、ハイ…。…有難うございました…」
コブラ「そりゃあ良かった。俺が来るのが遅けりゃ、アンタ死んでたかもしれないからな」
マミ「そ、そうでしたね…本当に…」
QB「…」
まどか「ねぇ、キュウべぇ。あの人も魔法少女…?」
さやか「いや、どう見ても少女じゃないでしょアレ」
まどか「魔法中年…?」
さやか「ちょ、ま」
QB「いや、分からないね。ボクでも、彼が誰なのか見当がつかないよ。魔法少女でもなく、結界の中に入れて、しかも一撃で魔女を倒せる人間なんて」
コブラ「…!おおっと、俺とした事が。他に2人も淑女がいた事に気付かなかったぜ。…うん?」
まどか「あ、あの…その… … 初めまして」
さやか「ねぇねぇ、さっきのビーム、どっからどうやって出たの!?あれもやっぱり魔法!?」
コブラ「あー、俺はその、魔法ってのはどうも苦手でね。… … …」
QB「…」
その時、結界が解けて全員が元の病院前に戻る。
コブラ「…!!なんだなんだ!?どうなってるんだ!?」
マミ「結界が解けたのよ。…ひょっとして、それも分からないのに結界の中に入ってこれたの?」
コブラ「…まぁ、成行きでちょっと。ところで御嬢さん方にお聞きしたいんだけどね、ここは一体どこなんだ?」
さやか「見滝原だけど」
コブラ「ミタキハラ星?聞いたことないな」
さやか「いや、町、町。なに、おじさん、宇宙人?」
コブラ「おじさんは止してくれよ。アンタ達からならそう見えるかもしれんがね、こう見えてハートは繊細なんだ」
まどか「ティヒヒヒ」
マミ「…訳が分からないけれど、とりあえず私の家でお茶にしましょうか?…もちろん、貴方も一緒に、ね」
コブラ「お、嬉しいねぇ。美女からお茶のお誘い」
ほむら「おい」
――― 巴マミ家。
まどか「ジョー…ギリアン、さん?」
コブラ「そ、いい名前だろ。サインだったらいつでも書くぜ」
さやか「(っていうか…日本人じゃないよね、どう考えてもその名前…)」
コブラ「…まぁ、俺の事はどうでもいい。おたくらの事を色々聞きたいんだが…さっきの場所といい、あの戦いといい、一体どうなってたんだ?」
ほむら「…本当に何も知らないのね。魔女の事も、結界の事も…魔法少女の事も」
コブラ「魔法少女…?」
マミ「私から説明するわ」
コブラに魔法少女、魔女との戦い、戦い続けるワケを全て教えるマミ。
さやか「ちょっ、そこまで教えちゃっていいの?マミさん」
マミ「あの戦いを見た以上、隠し通せるわけないし…それに、命の恩人だもの。何も教えずにいるのはこちらとしても失礼だと思うわ。…でしょ?キュウべぇ」
QB「ボクからは特に意見はないよ。さやかとまどか、魔法少女でない人間が2人見学に来ていたのだから、今更1人増えたところで何も変わらないしね」
マミ「…少なくとも、私の運命は変わっていたと思うの。ジョーさんが助けてくれなければ…本当にあのまま、頭を喰いちぎられていてもおかしくなかったもの」
QB「…」
マミ「私もまだまだ、魔法少女としてツメが甘いのかもね。どこか浮かれながら戦っていたのかもしれない」
ほむら「… … …」
マミ「貴方も、ごめんなさい。帰りにちゃんと解放するって約束したのに、すっかり忘れちゃってて☆」テヘペロ
ほむら(…絶対わざとね、巴マミ)
さやか「にしても…転校生、どういう風の吹き回しよ。一緒にマミさんの家で話がしたい、だなんて」
まどか「…きっと、これから一緒に戦おう、って言いに来てくれたんだよね?ほむらちゃん」
ほむら「…勘違いしないで。そんな気はないわ」
まどか「ぅ…ご、ごめん…」
マミ「あら、それじゃ一体どうしてかしら?」
ほむら「… … …」
コブラ「…ん?」
ほむら(なんなの、この世界は…)
ほむら(今まで巡ってきたどの時間軸の中にも、こんな男が現れる事はなかった)
ほむら(魔法少女では有り得ない、けれど…魔女を倒す程の力を秘めた存在…)
ほむら(…インキュベーターの何かしらの陰謀…?分からない…。…ここは、この男の様子をしばらく観察するしかない)
コブラ「… … …美人に見つめられるのは結構だがね。そう凄まないで、もうちょっと優しく潤んだ目で見て欲しいもんだ」
ほむら「…くっ!」
ほむら(なんなの、コイツ…!本当に読めない…!)
まどか「あはは、ほむらちゃん、照れてるー」
ほむら「!ちっ、違うわッ!」
マミ「あら…うふふ」ニコニコ
さやか「ははは、なぁんだ。転校生でも顔赤くする事あるんだ」ニヤニヤ
ほむら「」
コブラ「しかし信じ難いねぇ。おたくらみたいなか弱い少女があんな化け物と常日頃から戦ってる、なんてのは…。まぁ実際に見たんで信じないわけにもいかないが」
マミ「…説明して納得できるものでもないから、ああして鹿目さんや美樹さんに見学をしてもらっていたのだけれど…ツアー参加者が増えるのは予想外だわ」
コブラ「いやホント、良い物が見物できたよ。お捻りあげたいくらいだね」
マミ「それで…2人はどう?これで見学ツアーは終わりにするつもりだけれど…決心はついた?」
さやか「…」
まどか「…」
マミ「これ以上、生身の身体で戦いの傍にいるのは危険だと思うわ。…決断を急かすわけじゃないけれど、何より貴方達が心配なの」
まどか「…わたしは…マミさんと一緒に戦う、って…そう、決めたから…!」
ほむら「安易な決断はしないでと忠告したはずよ、まどか」
まどか「でもっ!マミさんが…マミさんが!」
マミ「…有難う。でもね、鹿目さん。何度も言うように魔法少女になるのにはとても危険な事なの。…私のためだけに、魔法少女になるという答えを出すのは止めてちょうだい」
まどか「で、でもっ!マミさん、戦うの怖くて、寂しくて、辛いって…だから、わたし、一緒に…!」
マミ「だからこそよ。…美樹さんにも言ったのだけれど…誰かのために願いを叶えるというのは、きっとこれから先、後悔する事になるわ」
まどか「…」
さやか「…」
マミ「だから、後悔なんて絶対にしない、魔法少女になって戦い続けられる…その心に揺らぎが無くなった時に、決めてほしいのよ」
マミ「…鹿目さん。私は、貴方達が戦いに加わろうと、加わらなかろうと…こうしてお友達としていれれば、それだけで…何よりも心強いのよ。それだけは言っておくわ」
ほむら「…。鹿目まどか、何度も言うけれど…私の忠告、忘れないでね」ガタッ
まどか「… … …うん。分かってる。…ありがとう、ほむらちゃん」
マミ「あら、もうお帰り?」
ほむら「ええ」
マミ「…今日は、貴方を縛ったままにしておいてごめんなさい。でも、私少し…貴方の事、信じられるかもしれない」
ほむら「… … …」
マミ「グリーフシードの奪い合いじゃない…貴方の行動には、何か信念のようなものを感じるの。…私の勝手な勘だけれどね」
ほむら「…私も、無益な戦いはしたくないわ。…それだけは言っておく」
マミ「そう…良かった」
ほむら「…お茶、御馳走様…」バタン
さやか「… … …」
さやか「デレたよ!ついにデレたよあの子!鉄壁の牙城にヒビが入ったよ!」
まどか「ちょ、さやかちゃん、声大きい…!」
コブラ「…若いってのはいいねぇ、どうも」
マミ「それじゃあ…別の話をしましょう。私達の事はおしまい。ジョー…さん。次は貴方の話を聞かせてくれる?」
コブラ「…そうだなぁ、マティーニでも飲みながらじっくり語りたいところだが…生憎この部屋には無さそうだし、仕方ないな」
コブラ「俺は…まぁ、しがないサラリーマンでね。宇宙観光の最中に突然謎のブラックホールに飲み込まれて…気が付いたらあのザマだ。マミが華麗に戦ってるところにお邪魔したってワケさ」
まどか「うちゅー…かんこう…?」
コブラ「ああ」
さやか「え、え?その、単なるしがないサラリーマンなのに、宇宙船に乗ってたってわけ?」
コブラ「まぁ、そこまで薄給でもないんでね。宇宙船の1隻くらいは奮発して持っていて、それでちょぃとした旅行に」
まどか・さやか・マミ・QB「… … …」
コブラ「…俺、何か変な事言っちまったかな」
さやか「え、えぇと…どこまで信じればいいのかな…?!正直、全部が嘘っぱちにしか思えないし…ま、まぁ、とにかく…本当に結界の中に入った理由は分からないんだよね?」
コブラ「そういう事。ここがどこの星かも分からないザマだよ。参った参った」
まどか・さやか・マミ・QB「… … …」
コブラ「…どうも俺は、会話教室に通ったほうがいいみたいだな」
コブラ「地球!?日本!?ここがか!?」
さやか「…本気でビックリしてるよ、この人…」
コブラ(この子らの反応を見るに、この星には星間交流の概念が無いようだが…ここが地球だってぇ!?俺の知っている地球とは随分違うぜ)
コブラ(見たところ、文明はかなり遅れて…いや、俺からすれば太古と言うに近いな、ここは)
コブラ(あのブラックホールの先は…過去の時代へと続いていたのか?…いや、それとも、この場所は…)
マミ「でも…仮にジョーさんが宇宙人だとすれば、あの魔女を倒した謎の攻撃にも何となく納得できるわ」
さやか「そうそう、アレ!あのレーザーみたいな光。どっから出てきたの?」
コブラ「あ、いやぁ魔法が苦手ってのは実は嘘でね。俺もちょっとした魔法みたいなものが使えるんだ。こう、念じて、ドバァーっ、と」
まどか「え、じゃあ本当に…契約して魔法を?」
QB「それは違うね。ボクの見る限り、彼はソウルジェムを持っていない。信じ難いけれど、生身の人間のようだ」
コブラ「そういう事。察しがいいね、そこの宇宙人は」
QB「!?」
まどか「ティヒヒ、ジョーさん。キュウべぇは宇宙人じゃないよ。…わたしにもよく分かんないけど」
コブラ「…へ?そうなの?」
QB「…」
マミ「それじゃあ、元いた世界と、今いる私達の世界、見滝原…ジョーさんは全く違う世界にきてしまったという事?」
コブラ「どうもそうらしい。しかも帰る方法が分からないときてるし、いやぁ参ったよ」
さやか「魔法少女の話の次は別世界からきた人、かぁ…。あははは、もうあたしチンプンカンプン」
マミ「…繰り返すようだけど、キュウべぇは本当にこの事については関与していないわけね」
QB「もちろん。わけがわからないのはボクも同じさ。ジョーの言う事が全て嘘とは思えないのも同意見だね」
コブラ(ブラックホールがレーダーにも反応せず、突然タートル号の前に現れるなんてのは明らかに不自然だった。あれは…誰かが俺をこの世界に呼び寄せるための意図だ。…誰かが俺を、ここに来させた)
まどか「それじゃあ、住む場所も無いわけですよね?…どうするんですか、これから」
コブラ「ん?あぁ、まぁ適当に考えるさ。生粋の旅行好きでね、どこでも寝れるのが自慢なんだ」
さやか「いや、そういう事じゃなくて」
コブラ「分かってますって。それじゃあ、俺もアンタ方の言う『魔法使い』になってみようかね?」
マミ「え?」
コブラ「行くアテがあるわけでもない、帰る方法も分からない…ともなれば、願いを叶えられるという魔法少女さんの傍にくっついてるのが一番出口に近いと俺は思うんだ」
マミ「魔法少女になるという事?」
コブラ「止してくれよ。マミの服はとってもキュートだがね、俺があんなの着たら蕁麻疹が出ちまうよ」
まどか(…想像しちゃった)
コブラ「見滝原とか言ったか。しばらくはこの辺りをブラブラさせて貰いながら、アンタら魔法少女の様子を見せてもらうよ」
まどか「…本当に大丈夫なんですか?あの、私、お母さんとお父さんに話して泊めてもらうように…」
コブラ「気持ちは嬉しいがね。年頃の御嬢さんがこんな男を家に連れ込んだら水ぶっかけられて追い出されるのがオチだよ」
マミ「私の家でもいいのよ、一人暮らしだし」
QB「マミ、ボクもいるんだけど」
コブラ「大丈夫大丈夫、心配ご無用。散歩が好きなんだ、気ままにフラフラしてるさ」
さやか「あたし達も、ジョーさんが何か元の世界に帰る手がかりみたいなの見つけたら教えるよ」
コブラ「有難いねぇ。いいのか?さやかだって色々忙しいだろうに」
さやか「あたしは… …大丈夫。マミさんを助けてくれたんだ、何か恩返しをしたいのはあたしもまどかも同意見!でしょ?」
まどか「うん。今度はわたし達が助ける番だと思うし」
コブラ「助かるぜ。…それじゃ、一旦この辺で失礼させてもらうよ。また会おう」
マミ「…ありがとう、ジョーさん。また会いましょう」
コブラ「レディーが俺を必要とするのなら、宇宙の果てからでも飛んで来るさ」
――― マミのアパート、入口。
コブラ「…さてと」ピッ
コブラ「レディ、聞こえるか。今どこにいる?」
レディ「ええ、聞こえるわよコブラ。今はタートル号に乗って太陽系をぐるりと回っているところ。あの場所から現実世界に戻った瞬間に、タートル号で外宇宙に飛んでみたの。…本当に、あなたのいる場所は地球のようだわ」
コブラ「だろうな。それで、元の世界に帰れそうな方法はあるか?」
レディ「残念だけれど…分からないわ。この世界に飲み込まれたブラックホールを探してはいるんだけれど、探知は出来ない。そちらはどう?」
コブラ「こっちも手詰まり。黒幕も何も分かったもんじゃない。…もっとも、あのキュウべぇとかいう生物は怪しいとは思うがね」
レディ「それじゃあ、あの子達の周辺をしばらく監視するの?」
コブラ「そうする。俺の直感ではこの事件には何かしら、かの女達が関係している。それに、女の子の傍にいるのは悪い気はしないからな」
レディ「呆れた。 …コブラ、何点か教えておきたい事があるのだけど、いいかしら?」
コブラ「よろしくどーぞ」
レディ「まず、私達が最初に辿り着いたあの場所。かの女達が『結界』と呼ぶ場所ね。分析したのだけれど、あの場所は言っていたように、現実世界とは少し次元の異なる場所のようね」
レディ「難しい話はしないけど、私達のいた世界にも例のない、亜空間よ。あの場所に何かしら、私達が元に戻れるためのヒントが隠されているかもしれないわ」
コブラ「ああ。俺はそのヒントを探しに、ここに残ってみる。しかし、どうやったらあの空間に入る事ができるのかが分からない。レディ、何かいい方法はないか?」
レディ「あるわよ」
レディ「『結界』のデータをタートル号のコンピューターで分析出来たの。あの空間の一定のエネルギー…かの女達なら『魔力』と呼ぶ未知のエネルギーを解析して、こちらのレーダーで感知できるようにしておいたわ」
コブラ「ほー、流石レディ。仕事が早くて助かるぜ」
レディ「ただ、その空間に直接入る事は出来ないのよ。空間を断裂してその内部に侵入する方法は私でも分からない。可能ならば、その内部に入る能力を持った魔法少女の後をついていくのが得策でしょうけど…」
レディ「単身で貴方が結界に入る方法がないわけでもないの」
コブラ「興味深いね。聞かせてくれるかい?」
レディ「あの結界を『テント』と考えてくれれば分かりやすいわ。一度開いたテントの中には、入口が見つからない限り不可能よ。…ただし、テントを開く場所さえ分かれば、貴方は結界の中に単身で潜り込めるわ」
コブラ「…なるほど。確かマミの話じゃあ、『グリーフシード』ってヤツが孵化する瞬間に魔女が生まれ、同時に結界がその場所に生じると言うが…」
レディ「そのグリーフシードの発する魔力のエネルギーのデータを、タートル号にインプットしたわ。つまり貴方が結界を張り、孵化をする前にその場所に立ってさえいれば」
コブラ「俺も晴れて、テントの中で楽しくお食事出来るってわけか」
レディ「そういう事。私とタートル号はしばらく地球周辺の宙域でそちらの探知をするわ。貴方の周辺に魔力が探知でき次第、リストバンドに位置を送る事が可能よ」
コブラ「了解。助かるぜレディ」
レディ「でも…単身で戦うのは十分気を付けたほうがいいわ。あの魔女という怪物がどれほどの力を持つものか、未だ分からない点が多いから」
コブラ「分かってますよ。…魔女狩りはかの女達の専売特許だ。あんまりやりすぎないようにはするさ」
レディ「それと…もう一つ、これは関係がないかもしれないのだけど…伝えておきたい事があるの」
レディ「…貴方と私が見た魔法少女…巴マミと言ったかしら。あの子が例の化け物と戦っているところを、タートル号のモニターで分析してみて、分かった事があるの」
コブラ「分かった事?」
レディ「かの女の身体から、生体が発生させるエネルギーが探知できないの」
コブラ「!?どういう事だ!?」
レディ「私にも分からない。ただ、人間が本来発生させるべきエネルギーが、かの女の身体からは検知できなかった。…ある一部分を除いては」
コブラ「一部分…?」
レディ「右側頭部の髪飾りの留め具部分。唯一、生体エネルギーがこちらで探知できた場所よ」
コブラ「…ソウルジェム。かの女達が魔法少女になるために必要な道具と言っていたが…」
レディ「そのソウルジェムの発生させるエネルギーが、抜け殻の巴マミを動かしていた…と言っても過言ではないわ。まるで…マリオネットのように」
コブラ(どういう事だ…?あの宝石は魔力の源…契約の証、としかマミからは教えられなかった)
コブラ(かの女はこの事実を知っているのか?いや、隠し事をしている様子は無かったし、そんな大事な物だと知っているのなら余計に伝えなければいけない事だ。…まさか、知らないのか?)
コブラ(…キュウべぇ、とか言ってたか。あの野郎、やはり食えないヤツみたいだぜ)
コブラ(しかし、こいつはまだ俺の中に仕舞っておいた方がいいな。…いつか、分かる日はくる。いきなりそれを知っても混乱を招くだけだ)
コブラ(その事実を知る時まで…俺がソウルジェムを、かの女達を守ればいい。それだけだ)
レディ「報告は以上ってところかしら。何か質問は?」
コブラ「あー…一つ心配事があるんだがね、レディ」
レディ「何かしら?」
コブラ「この国の通貨さ。酒もメシも食えないんじゃあ、魔法使いどころか動けもしないぜ」
レディ「ああ、そうね。…ごめんなさい、通貨については私も調べられないわ。ただ、タートル号に換金していない金塊があるから、どうにか売り払えれば不自由はしないはずよ」
コブラ「おー、そうだったそうだった!やっぱり持っておくべきはデキる相棒と資産だね、ハハハ」
レディ「ふふふ。夜が更けて人目が無くなったら、一度地球に降りて必要な物を渡す事にしましょう。…それじゃあね、コブラ。十分気を付けて」
コブラ「了解。そっちもよろしく頼むぜ」ピッ
コブラ「さて…色々分かった事は多いが、何から始めるかねぇ」
葉巻に火をつけて、一服をするコブラ。
コブラ「…先は長そうだな。それじゃあまず…軽い運動でもしてきますか」
――― 一方、ほむらの家。
ほむら(私は…数えきれないほどの時間を、繰り返し、やり直してきた。その度…あの夜を越えられず、また同じ時間を巻き戻しをして…)
ほむら(巴マミ、美樹さやか、佐倉杏子…そして、私と、まどか)
ほむら(それぞれの時間に、それぞれの運命が存在し、違った展開を見せていた。…それでも、まどかを助けられる時間軸は、まだ見つからないのだけれど)
ほむら「…ジョー・ギリアン…」
ほむら(あんな男が存在する時間なんて、今まで一度も無かった。…私の存在を皆が覚えていないように、彼の事を知っている人物もいない。…インキュベーターでさえも知らないようだった)
ほむら(私と同じ…いいえ、彼自身、自分がこの世界に何故来たのかを知らないのだとすれば、完全なるイレギュラーの存在)
ほむら(この繰り返す時間の中に投じられた、一つの駒。…でも、それがどんな影響をもたらすのか未だに分からない)
ほむら(…巴マミは、あそこで死んでいてもおかしくなかった。彼の存在が、もし…魔法少女を救うために、運命を変えるために、あるのだとすれば…)
ほむら(この先…まどかと私の運命…『ワルプルギスの夜』も…)
ほむら「…倒せるというの?」
――― 見滝原から少し離れた場所。その結界内部。
結界内部は、さながら巨大な書物庫のようであった。幾つもの小さな本が飛び交い、交差する。その本達はどれも手足が生え、笑いながら飛んでいた。
その中央に佇む『辞典の魔女』は結界内の侵入者に攻撃を続けている。
自らのページを開き空間内に文字を具現化させ、弾丸のようにそれらを高速で目的に飛ばし、コブラを攻撃するのだった。
コブラ「どわぁぁっ!っと、っと!うひぃぃーっ!」
叫び声をあげながら結界内を駆けまわり、次々と繰り出される文字の弾丸を避けるコブラ。
コブラ「ったく、活字アレルギーになりそうだぜ!悪趣味な攻撃してくれちゃって」
言いながら左腕のサイコガンを抜き、膝をついた体勢で止まり、『辞典の魔女』へ向けて銃口を構える。
コブラ「さあ、撃ってきな。相手してやるよ」
辞典の魔女「!!」
止まった目標に向け、今まで以上の頻度で文字の弾丸を打ち続ける魔女。
ドォォォォ―――ッ!!
だがその攻撃の全てはサイコガンの連続放射で防がれ、それらを貫いた光は本体である辞典の魔女へと向かっていく。
辞典の魔女「!!!」
攻撃を受けたせいか、一瞬魔女の攻撃が怯み、動きが止まる。その隙にコブラはにぃ、と笑って立ち上がり、サイコガンに意識を集中した。
コブラ「喰らえーーーッ!!」
威力の高い、精神を集中させたサイコガンの一撃は辞典の魔女の瞳を貫く。
崩れるように地面に落ちていく巨大な本。その姿に背を向け、コブラは静かに左手の義手をつけた。
コブラ「っとぉ!」
魔女が倒れた事を現す結界の解除。元の世界に戻ったコブラの手にはグリーフシードが握られていた。
コブラ「こいつがグリーフシードか。…しかし、こいつ一つ手に入れるのにも相当苦労するもんだな、一筋縄じゃいかなそうだ」
手にしたグリーフシードを掌の上で転がしながら、呆れたように見つめる。
コブラ「それで…何か用かい。こそこそ隠れてないで出てきたらどうだ」
静かにそう言うコブラの後ろ。ビルの物陰から、ひょっこり姿を現すキュウべぇ。
QB「君の目的を知りたくてね。少し観察させてもらっていたのさ」
コブラ「そりゃ光栄だ。先生は今の戦いに、何点をつけてくれるのかな?」
QB「君は一体何者なんだい?契約もしていないのに魔女と戦う力を有する存在…。魔法少女である暁美ほむらもそうだけれど、君はそれ以上にイレギュラーな存在だね」
QB「何よりも、君は何故魔女を倒すんだい?ソウルジェムを持たない君にとっては、無意味そのものの行為であるはずだよ」
コブラ「…無意味ねぇ」
コブラ「…ソウルジェム、っていうのは願いを叶えてくれる魔法の宝石。そんな風にかの女達は思っているかもしれないが…」
コブラ「だが、このグリーフシード、ってヤツは…そんなメルヘンチックなもんじゃないね。あんな化け物の身体から出てくるんだからな」
QB「何が言いたいんだい?」
コブラ「俺は宝石にはちょいと五月蠅くってね。いやー、なかなかこのグリーフシードとソウルジェム…似ていると思ってさ」
QB「…」
コブラ「ひょっとしたらこいつを持っていたら俺の願いが叶って元の世界に戻れる手がかりになるかも…なぁーんてね」
QB「説明はマミから受けたはずだよ。グリーフシードはソウルジェムの穢れを吸い取る存在だと」
コブラ「分かってるよ。ま、折角この世界にきた記念だ。お土産の一つに貰っておこうと思ってさ」
QB「わけがわからないよ。君の存在は、暁美ほむら以上に理解不能だ」言いながら立ち去るキュウべぇ。
コブラ「…へっ」
葉巻を口から離し、紫煙を吐くコブラ。月を見上げながら、不適な笑みを浮かべる。
その顔には、どんな運命にも立ち向かう、自信のような感情が溢れていた。
―― 次回予告 ――
青春ってのはいいねぇ。男と女、色恋沙汰っていうのはどこの世界でもあるもんだ。
ここは恋という分野で宇宙一と言われるコブラ教授の出番ってワケ。他人の恋愛に首突っ込むのはあんまり好きじゃないんだが、ここは恋のキューピッドになってやろうじゃないの。
だが一方で次々と事件が起こりやがる。妙な赤い魔法少女が俺に斬りかかるの、まどかとその友達が魔女に襲われるので忙しいったらないよ全く。
どの世界でも、モテる男ってのは辛いもんだねぇ、ほーんと嫌になっちまうぜ。
次回【魔法少女vsコブラ】で、また会おう!
恭介「さやかは、僕を苛めてるのかい?」
さやか「え?」
恭介「何で今でもまだ、僕に音楽なんか聴かせるんだ…。嫌がらせのつもりなのか?」
さやか「だって…それは、恭介、音楽好きだから…」
恭介「もう聴きたくなんかないんだよ!」
恭介「自分で弾けもしない曲、ただ聴いてるだけなんて」
恭介「僕は…僕は…っ!ああ!!」
さやか「!!」
聞いているCDに向けて振り下ろされる、恭介の腕。
瞬間、その腕を掴み、それを止める別の手があった。
コブラ「やめときなよ。そいつを壊したら、アンタはもっと大事なものを壊しちまう」
まどか「ヒューッ!」
第2話「魔法少女vsコブラ」
――― 少し前、夕刻、巴マミ家。
コブラ「いやー、お茶に続いて夕メシまで御馳走になるってのは、嬉しいもんだ。おまけにお誘いが美女からとあっちゃあね」
マミ「うふふ。…もう少しで出来上がるから、冷たい紅茶でも飲んで待っててね」
コブラ「どーも。…しかし、いつもマミは一人の食事かい?若いんだし、寂しいんじゃないかな」
マミ「あら、そんな事ないのよ。キュウべぇは…今日は出かけているみたいだけれど。最近は、鹿目さんや美樹さんが来る事も多いし…今日はジョーさんがご一緒してくれるから腕の振るいようがあるわ」
コブラ「たはは、美女にモテるってのはいつの時代も悪くないもんだねぇ」
コブラ(そろそろジョーって呼ばれるのも止めさせたいところだけど…仕方ない、か)
コブラ「しかし今日は俺だけ。その、まどかやさやかは何か用事かい?」
マミ「ええ、鹿目さんは、今日は何か用事があるみたい。美樹さんはいつものところみたいね」
コブラ「いつもの?」
マミ「言ってなかったかしら。彼女、幼馴染がいるんだけれど…その人の所に毎日のように通っているの。今は丁度その時間だから」
コブラ「ちぇー、毎日いちゃいちゃ、楽しい時間ってわけか」
マミ「そういう訳じゃないのよ。…もっと深刻な理由なの、彼女の場合は」
コブラ「不慮の事故で手を動かせなくなった悲劇の天才ヴァイオリニスト…ね」
マミ「上条恭介くん、って言うんだけれど…美樹さんは毎日彼のお見舞いに行っているのよ。…献身的よね、事故以来、ずっとらしいわ」
コブラ「惚れてるのかい」
マミ「ふふ、どうかしら?…まぁ、彼に対する美樹さんの思いが誰よりも強いのは確かだと思うわ」
コブラ「だったら、余計にハッキリさせないといけないね。女の一途な思いってのは、なかなか男には理解されないもんだぜ」
マミ「そういうものかしら」
コブラ「そうとも。…よぉーし、マミの夕メシが出来る前に、俺がいっちょ恋の指導に行ってやるかぁーっ」
マミ「…二人の邪魔にならないかしら?」
コブラ「大丈夫大丈夫!そういう色恋の問題は宇宙一、俺が経験してるのさ。先輩として教育してきてやらなきゃあな」
マミ「…ジョーさん、貴方…」
マミ「酔ってるのね」
コブラ「へへへ、この世界のカクテルも悪くない味でね。つい昼間から」
マミのアパートから出て、教えられた病院の場所へ上機嫌で歩んでいくコブラ。
コブラ「オーマイダーリン オーマイダーリン~ …♪ … …んん?」
コブラ「ありゃあ…まどかと…ほむらと言ったか。あんなところで何してるんだ?」
ほむら「まだ貴方は、魔法少女になろうとしているの?まどか」
まどか「…それは…まだ、分からないけど…でも、やっぱり…あんな風に誰かの役に立てるの、素敵だな、って…」
ほむら「…私の忠告は聞き入れてくれないのね」
まどか「ち、違うよ!ほむらちゃんの言ってる事も分かるよ!とっても大変で、辛くて、危ない事も分かってるの!」
まどか「この前だって…マミさん、あんなに戦い慣れしてるのにすごく危なかったって、分かってるから…」
ほむら「…」
まどか「…ねぇ、ほむらちゃんはさ」
まどか「魔法少女が死ぬところって…何度も見てきたの?」
ほむら「…」
ほむら「ええ。数えるのも諦めるくらいに」
ほむら「この前の巴マミの戦い…もし、あの男の介入がなければ、彼女も死んでいたのでしょうね」
まどか「魔法少女が死ぬと…どうなるの?」
ほむら「結界の中で死ぬのだから、死体は残らない。永久に行方不明のまま…それが魔法少女の最後よ」
まどか「そんな…」
ほむら「そういう契約の元、私達は戦っているのよ。誰にも気づかれず、忘れ去られる…魔法少女なんてそんな存在なの。誰にも見えず戦い、感謝もされず、散っていく」
ほむら「それでも貴方は、キュウべぇと契約をするつもりなのかしら。…貴方を大切に思う人が、身近にいるのだとしても」
まどか「… … …ぅ…」
ほむら「誰かのために魔法少女になりたいと言うのなら、誰かのために魔法少女にならない、という考えが浮かんでもいいはずよ。それを忘れないで」
まどか「… … …分かった」
ほむら「そう、良かったわ」
まどか「…ほむらちゃん!」
踵を返し、立ち去ろうとするほむらの背中にまどかが声をかける。
ほむら「何かしら」
まどか「…ありがとう。私の事…いつも、心配してくれて…」
ほむら「… … …(ホムホム)」
立ち去るほむら。
コブラ「…おっかないだけの子だと思ってたけど、どうも俺の見当違いだったかな」
道端に隠れていたコブラは、ひょっこりと顔を出して笑った。
まどか「!い、いたんですか」
コブラ「偶然。たまたま居合わせちゃってね、失礼だったかな」
まどか「…だ、大丈夫です。それより、どうしたんですか?こんな所で」
コブラ「いや、なぁに、恋に悩める純朴な少女がいると聞いてね。人生の先輩としてアドバイスに馳せ参じようとしている最中さ」
まどか「…え?」
コブラ「つまり俺は恋というプレゼントを運ぶサンタクロースってわけ」
まどか「わけがわからないよ」
まどか「えぇ!?さやかちゃんと恭介くんの応援に行く…って…」
コブラ「そういう純真な恋はさ、誰かが肩を押さなくちゃ駄目なんだよ!というわけでまどか、俺を病院まで案内してくれ」
まどか「そ、そんな…邪魔になっちゃいますよ…」
コブラ「いいから!さぁ、案内してくれ我が愛馬よ!」
まどか「… … …さやかちゃんの邪魔だけはしないでくださいね。いつも静かに音楽とか2人で聞いてるみたいなんですから」
コブラ「邪魔なんてするかっ。俺に任せておけっての」
まどか「…分かりまし…ウェヒッ!ジョーさん…お酒、飲んでません?」
コブラ「だはははー!こんなの飲んでるうちに入らない入らない。さ、病院まで頼むぜ」
まどか(…さやかちゃんに後で怒られませんように…)
コブラ「ここが彼の病室か」
まどか「はい」
コブラ「どれ、それじゃあ早速」
まどか「ま、まままま、待って!…駄目ですよ、いきなり入っちゃあ!さやかちゃん、今頑張ってるかもしれないんだし!」
コブラ「…頑張ってる?」
まどか「そうですよ。その…あの…恭介くんと、えっと…い、いい感じになってるかもしれないし…」
コブラ「… … …」
コブラ「どうもそういう感じじゃなさそうだぜ、まどか」
まどか「え?」
耳を澄ませろ、とジェスチャーをするコブラ。
病室からは、微かに怒号のような叫び声が聞こえてきた。聞いたことのないような、悲しい叫び声が。
まどか「あ…」
コブラ「乗り込むぜ」
恭介「もう聴きたくなんかないんだよ!」
恭介「自分で弾けもしない曲、ただ聴いてるだけなんて」
恭介「僕は…僕は…っ!ああ!!」
さやか「!!」
聞いているCDに向けて振り下ろされる、恭介の腕。
瞬間、その腕を掴み、それを止める別の手があった。
コブラ「やめときなよ。そいつを壊したら、アンタはもっと大事なものを壊しちまう」
まどか「ヒューッ!」
さやか「!?ジョーさん!?それに…まどかも!」
まどか「あ…。…う…ご、ごめん、さやかちゃん…」
恭介「…ッ!!離せよ…離してくれよ!」
コブラ「この手を離してアンタのバイオリンが聞けるなら喜んで離すがね。誰かを傷つけるために振り下ろされる手なら、俺はあの世の果てまで離すつもりはないぜ」
恭介「…ぐ…ッ!…うぁぁぁ…ッ!くそぉ…ッ…!」
拳から力が抜けたと分かったコブラは、恭介の腕を解放した。
涙を流しながら、誰かに訴えるように語り始める恭介。
恭介「諦めろって…言われたんだよッ…!今の医学では治らないなら…バイオリンはもう…諦めろって…ッ!」
さやか「…そんな…」
コブラ・まどか「… … …」
恭介「もう一生動かないんだよ、僕の手は…!奇跡か魔法でもない限り… …!」
… … …。
場を重苦しい沈黙がしばらく流れる。
すると、さやかがゆっくり、静かに言う。
さやか「…あるよ」
コブラ・まどか「…!」
さやか「奇跡も、魔法も…あるんだよ」
――― 一方。
杏子「…それで?アンタは何が言いたいのさ」
QB「行動は急いだほうがいいという事さ。この前、杏子の縄張りの魔女を倒したのは彼だよ」
杏子「…!マジかよ。随分ナメた真似してくれるじゃんか」
QB「ボクでさえ、彼がどんな素性で何を目的をしているかはさっぱり分からない。勿論、どうするかは杏子の自由だけど、何かが起きてからでは遅いからね」
杏子「…ジョー・ギリアンとか言ったか?おかしな名前しやがって。…上等じゃないのさ」
QB「どうするんだい?杏子」
杏子「確かにムカつく話だね。ちょいとお灸をすえてやった方がよさそう、っていうのは同意見」
杏子「見滝原…あそこはマミの縄張りだったね。前々から魔女の発生頻度が高かったから縄張りをそっちに移そうと思ってたんだけど…」
杏子「丁度いいじゃん。…マミも、ジョーとかいう男も、まとめてぶっ潰せばあそこのグリーフシードはアタシのものになる」
QB「気を付けてね、杏子。あそこには、更にもう一人、イレギュラーな魔法少女もいるから」
杏子「ふん。退屈しなくて済みそうじゃん。ほんじゃあ、行きますか」
QB「今夜かい?」
杏子「急かしたのはお前だろ?…まずは、アタシの縄張りを荒らしたヤツ」
杏子「ちょいとお仕置きが必要だからね」
さやか「ごめんね…二人とも。変なトコ見せちゃって」
さやか「こんな事言うの失礼なのは分かってる。…でも、今日は帰ってくれないかな」
さやか「怒ってるわけじゃないの。…むしろ、感謝してる。ジョーさんが止めなければ、恭介きっと、怪我してたから」
さやか「なんていうか…あたしも、ちょっとだけ…考える時間、欲しいの」
さやか「…ありがとう。…ごめんね」
・
まどか「…大丈夫かな、さやかちゃん。やっぱり、無理にでも一緒に帰ったほうが…」
コブラ「ああいう時は、一人でじっくり考えるもんさ。誰にだって落ち着いて考える時間は必要だ」
まどか「…そう、なのかな…。わたしがもっとちゃんと、二人の事フォローできれば… …っ!?」
言い終わらない内に、まどかの頭にポンと左手を乗せるコブラ。
コブラ「まどか。そうやって何でもかんでも自分のせいにするクセ、おたくの悪いクセだぜ」
時間が止まったかのように、黙る二人。しばらくすると、まどかはポロポロと噛み殺していた涙を流し始める。
まどか「… …ぅっ、くっ…!だ、だって…!さやかちゃん、かわいそうでっ…!あんなに、あんなに頑張ってるのにっ…!わたし、何もできなくて…っ!」
コブラ「泣くなよ、まどか。人は、涙を流すから悲しくなるんだぜ」
パチ パチ パチ。
二人の前に、拍手をしながらゆっくりと現れる人影。その口には棒状のチョコレート菓子を銜えている。
杏子「名演説だね。感動してアタシも泣いちゃうくらいだよ」
そういう杏子の表情は、憎悪に満ちた薄ら笑いだった。
まどか「…っ!だ、誰…?」
コブラ「そいつはどうも。なんならカフェでお茶でもしながらゆっくり語りあおうか?」
杏子「遠慮しとくよ。それに…生憎そんな気分じゃないんだ」
言いながら、赤いソウルジェムを見せびらかすように取り出し、不適に笑う杏子。
まどか「…!ソウルジェム!?」
そしてそれを使い、魔法少女へと変身する杏子。
出現した巨大な槍を演舞のように振り回し、それを終えて槍を前に構えた戦闘態勢へと移る。
杏子「アタシの縄張りを荒らしてくれるなんて、ナメた真似してくれるじゃん。…ジョー・ギリアン!」
コブラ「…やれやれ、夕メシの時間には間に合いそうにないなこりゃあ」
まどか「あ、あ…っ!」
コブラ「まどか、すまないが、先に帰ってマミに夕飯に少し遅れると伝えておいてくれないか」
コブラ「冷めたカレーライスは好きじゃないから、暖かいうちに帰るつもりだがね」
杏子「その余裕…ぶっ潰してやるよッ」
コブラ「急げ、まどかっ!巻き込まれるぞ!」
まどか「…っ!は、はいっ!!」
まどかが走り出すと同時に、杏子がコブラに向けて一気に距離を詰め、槍を振り下ろす。
杏子「でゃああああッ!!はぁッ!うおりゃあッ!」
コブラ「うおっ、とぉっ!ほっ!よっ!」
閃光のような素早い攻撃を次々と避けるコブラ。
コブラ「熱烈なアプローチだなこりゃあ!だがもう少し女の子らしいほうが好みなんだがね!」
杏子「残念だったな!アタシはそんなにおしとやかじゃないんだよッ!」
まどか「早く…早く、マミさんかほむらちゃんに助けを求めないとっ…!」
まどか「このままじゃジョーさんが…!」
急いで、マミのアパートまで走るまどか。
だがその瞬間、信じがたいものを見てしまう。友人である志筑仁美が、何かに憑りつかれたようにフラフラと歩く、その姿を。
まどか「…!ひ、仁美ちゃん!?」
仁美「あら、鹿目さん…御機嫌よう」
まどか「こんな時間に何してるの?お、御稽古事は…!?こっちの方向じゃないでしょ?どこに行こうとしてるの…!?」
仁美「うふふふ…」
仁美「ここよりもずっと、いい場所ですのよ」
まどか「…!」
仁美の首筋にある、魔女の口づけの印。そしてその刻印は、気付けば仁美の周りにいる生気のない人間達のほとんどについているのだった。
まどか「そんな…こんな時に…!?ど、どうすれば…!」
彷徨うようではあるが、確実にある場所に向かう、仁美をはじめとした集団。
放っておくわけにもいかず、まどかはその後についていくのだった。
まどか(あああ、ど、どうしよう…!)
まどか(わたしのバカ!マミさんの番号も、ほむらちゃんの番号も聞くの忘れてたなんて…ッ!)
まどか(仁美ちゃんも放っておくわけにいかないし…ジョーさんも…っ!いくら強いからって魔法少女が相手じゃ、どうなるか…!)
そんな考え事をしているうちに、集団はいつの間にか小さな町工場に辿り着く。
町工場の工場長「俺は、駄目なんだ…。こんな小さな工場一つ満足に切り盛りできなかった。今みたいな時代に…俺の居場所なんてあるわけねぇんだよな」
まどか「!!」
まどか(あれ…洗剤…!)
詢子「―――いいか?まどか」
詢子「―――こういう塩素系の漂白剤には、扱いを間違えるととんでもないことになる物もある」
詢子「―――あたしら家族全員、毒ガスであの世行きだ。絶対に間違えんなよ?」
まどか「…っ!駄目!それは駄目!皆が死んじゃうよ!」
まどかを優しく、包むように止める仁美。
仁美「邪魔をしてはいけません。あれは神聖な儀式ですのよ。…私達はこれから、とても素晴らしい世界へ旅立つのですから」
コブラ「うおおっと!!」
杏子の渾身の一薙ぎを上空に跳躍して避けるコブラ。真上にあった電信柱の出っ張りを掴み、杏子の攻撃範囲から逃れる。
コブラ「ち、ちょっとタンマ!あんたの縄張りに入ったのは謝るからさ、もう許しちゃくれないかね!平和的に行こう!」
杏子「…へっ、ちったぁ懲りたかい」
コブラ「懲りた懲りた、大反省!俺もうなぁーんにもしないから!」
杏子「…そうかい、それじゃあ…。… … …なんてねっ!」
杏子「生傷の一つもつけないで帰すなんて、アタシの腹の虫が収まらないんだよッ!」
そう言って、コブラの掴まる電信柱を斬る杏子。
コブラ「!!どわあああっ!?」
切り落とされ下に落ちる電信柱と一緒に、コブラも地面に叩きつけられるように尻餅をつく。
コブラ「いちちち… …って、のわぁぁぁあっ!?」
杏子「くらえええーッ!!!」
瞬間、それを見計らっていた杏子はバランスを崩して座り込んでいるコブラの頭上へ、槍を振り下ろす。
ガキィィィィンッ!!
振り下ろされた槍は…。
杏子「… …ッ!なんだと…っ!?」
コブラの左腕に食い込み、血の一滴も流さずに止まっていた。
杏子「…くっ!」
その異常な事態に杏子は素早くバックステップをして、コブラの様子を伺うように構える。
杏子「てめぇ、その左腕…何者なんだ…!?」
コブラ「…身体がちょいと頑丈なもんでね。特に俺の左腕はな」
にやっと不敵に笑い、ゆっくりと立ち上がるコブラ。葉巻にライターで火をつけながら、身体についた埃を払う。
コブラ(…とはいえ、こいつはちょっとまずいな。手加減をして戦ってどうにかなるもんじゃないらしいね、魔法少女ってヤツは)
コブラ(だからって素性の知れない魔法少女にサイコガンを使うわけにはいかない…。女を殴るのは俺の主義じゃない…参ったね、お手上げだ)
コブラ(…こうなりゃあ…『アレ』でいくしかないか)
コブラ「仕方ないな、こうなりゃあ俺の奥の手を見せてやるぜ」
杏子「…ほー、楽しめそうじゃん。何をしてくれるんだい?」
コブラ「…驚くなよ?」
槍の刃の音を鋭く鳴らす杏子に対し、コブラは葉巻を杏子の方へ投げ捨てると…。
コブラ「これが俺の奥の手…逃げるが勝ちだぁーッ!!」
瞬間、猛然と走り出して杏子の隣をすり抜けるコブラ。
杏子「…!!??て、てめぇ!待ちやが…っ!?」
その時、杏子の近くに投げ捨てられた葉巻が閃光のように眩い光を一瞬放つ。
杏子「うおおっ!?」
5秒ほどそれは辺りを照らす。次に杏子が目を開けた瞬間、そこにコブラの姿はなかった。
杏子「…くっ!逃げられた!…あのヤロー、あの腕といい、ただ者じゃないなやっぱ…!」
杏子「…でも、このままじゃ済まさねぇからな、絶対…!」
まどか「…!離してッ!!」
仁美の手を振り切り、洗剤の入ったバケツに猛然と走るまどか。それを掴みとると、勢いよく窓の外へ投げ捨てる。
まどか(…よ、よしっ!これでひとまず安心…)
しかし、その行動をしたまどかに向けられる…恨むような人々の視線。
まどか「…え…」
群衆「あぁぁああぁぁぁああああっ…!!」
まるでゾンビが血肉を求めるようにまどかへ襲い掛かる群衆。
まどか「きゃあああああっ!!」
襲い掛かる群衆から逃げ、急いで側にあった物置に逃げ込むまどか。
まどか「ど、どうしよう…どうしようっ…!やだよ…誰か、助けて…っ!」
その瞬間。
まどか「…ッ!!」
まどかの周りに広がる、魔女の結界。それと同時に…窓の割れる音が、微かに聞こえた。
テレビのようなモニターや、使い魔や、木馬がまるで水中のように浮遊する空間。その空間内に、まどかも同じように浮遊していた。
モニターに映し出されるのは、まどかが今まで見てきた、魔法少女の戦いの光景。
まどか(これって…罰なのかな)
まどか(わたしがもっとしっかりしてれば…さやかちゃんも、仁美ちゃんも、ジョーさんも…もっとちゃんと、助けられたのに…)
まどか(だからわたしに、バチがあたったんだ)
その自責の念はまるで声のように結界内に響き渡る。
気付けば、まどかの手足をゴムのように引っ張る、翼の生えた不気味な木製人形達。四肢を引き千切ろうと、徐々にその力は増されていく。
まどか(わたし…死んじゃうんだ…ここで…っ!う、ぐっ…!)
まどか(痛いよ、苦しいよ…っ!)
まどか(もう…嫌だよっ…!!)
その時、まどかの四肢を引っ張る四人の『ハコの魔女の使い魔』が次々に光の波動に消された。
まどか「…!!」
まどか「…ジョーさん!」
コブラ「結界が張られる前に窓に飛び込めて良かったぜ。バラバラになった美少女なんざ、地獄でも見たくないからな」
まどか「… …!!ひ、左手が…ジョーさんの、左手が…!」
まどかが見た、ジョー・ギリアンの姿。
硝煙をあげるその銃口は、本来あるべき左腕の場所にあった。見たこともない、異形の銃。まるでそれは身体の一部のように当たり前にそこにあるようだった。
コブラはまどかの前に立ちはだかり、背中を向けながら語る。
コブラ「…まどか、俺も一つ、罰を受けなきゃいけないのかもしれないな」
コブラ「俺はあんたらに嘘をついていたんだ」
まどか「嘘…?」
コブラ「一つは、俺はしがないサラリーマンなんかじゃないって事」
コブラ「一つは、俺は宇宙観光の最中なんかじゃなかったって事…」
コブラ「そして…最後の一つ、俺の名前はジョー・ギリアンじゃないって事だ」
コブラが喋っている間に、魔女の使い魔は次々とコブラとまどかを襲おうとする。
しかし、それらの全てはサイコガンの連射で次々と撃ち抜かれ、一つとして外されることはない。
まどか「…それじゃあ、あなたは…?」
コブラ「俺は…別の世界では、海賊をしていた。宇宙を流れ星のように駆けながらお宝を見つけ、糧にしていた一匹狼の海賊さ」
コブラ「俺には、一つの名があるんだ。…それは」
まどか「それは…?」
サイコガンに、コブラの精神が集中される。銃口が淡く光り、鋭い、サイコエネルギーをチャージする音が聞こえた。そしてコブラは目を見開き、叫ぶ。
コブラ「俺の名はコブラ!不死身の…コブラだぁーーーッ!!」
ドォォォォォ――――ッ!!!
まるで大砲の砲撃のようなサイコガンの一撃が、放たれた。
サイコガンの高められた精神エネルギーの光は、使い魔達を焼き払い、その本体であるモニターに隠れた『ハコの魔女』をも爆破した。
そして、結界が解け元の物置に戻るコブラとまどか。
コブラは目を閉じて微笑みながら、左腕の義手をサイコガンに被せる。
まどか「… … …」
コブラ「今まで黙っててすまなかった。だが、見知らぬ世界で俺の正体をペラペラ喋るわけにもいかなくてね。何せ、あっちじゃあ俺の首を狙ってる奴がごまんといるからな」
まどか「ジョー…じゃなくって、コブラ…さん?」
コブラ「そ。…まぁ、色々語るのは後だ。少し急ぎたいんでね」
まどか「…まだ、何かあるんですか?」
コブラ「ああ、急ぎの用がある。まどかも一緒にきてくれ、重大な事だ」
まどか「… … …」
まどかが緊張した面持ちでコブラをじっと見ると、コブラはにっこりと笑って駆け出す。
コブラ「早くしないとマミのカレーが冷めちまうんだよーっ!俺ぁ疲れて腹が減って死にそうなんだーっ!」
まどか「… … …へ?」
呆然とするまどかを後目に、物置から急いで出ていくコブラ。
まどか「ま…待ってください!ひ、仁美ちゃんは!みんなはーっ!?わたし一人じゃどうすればいいか分からないよーっ!ねぇ、コブラさーーーーんっ!!」
まどかの声は、空しく、町工場の中に響くのだった。
―― 次回予告 ――
さやかが魔法少女になっちまった!俺やまどかとしては複雑な気持ちだが、さやかには何よりも叶えたい願いがあるんだとさ。
健気な少女の願いは受け止められ、一人の戦士が誕生する。まー、男を守る女ってのは俺はあまりお勧めできないんだがね。ここは良しとしてやろうっ。
だが綺麗な事ばっかりじゃないみたいだね。暁美ほむらに、謎の赤い魔法少女。そしてもう一人、俺の事を追っかけてくる輩もいるみたい。
相変わらず俺が元の世界に戻る方法も分かんないわ、もーいい加減にしてくれってんだ!
次回【忍び寄る足音達】で、また会おう!
第3話「忍び寄る足音達」
――― 巴マミ家。早朝に訪れたさやかを、マミは快く受け入れた。
テーブルに置かれた、2人分の紅茶とお茶菓子。マミは静かに紅茶を飲むとテーブルに置き、優しく言う。
マミ「…そう。決心、したのね…美樹さんは」
俯いていたさやかはゆっくりと顔をあげ、強い意志の宿った瞳でマミを見つめる。
さやか「…うん。あたし、もう迷わない。…でも、契約をする前にマミさんに伝えたほうがいいかなって」
マミ「そうね。…とても嬉しいわ。私が言うのも何だけど、美樹さんは少し慌てん坊さんだから…ふふふ」
さやか「あはは、バレてましたかー」
マミ「…願い事は、やっぱり上条君の事かしら」
さやか「… … …はい」
マミ「…そこまで決心したということは、どうしても叶えたい願いなのね。後悔しない、確固たる決心が」
さやか「…昨日、まどかとジョーさんが、恭介の病室に来てくれたんです。恭介、もう自暴自棄みたいになってて、暴れようとして…」
さやか「あたし、もうその時自分でもワケわかんなくなっちゃって、いっそ今すぐキュウべぇと契約すればこんな恭介見なくて済むって考えちゃってた」
さやか「でも…ジョーさんが、恭介を止めてくれらから。だからあたしも、恭介と同じように、少しだけ落ち着けた」
さやか「あたしは、ずっと一人で恭介の事考えてるんだと思ってた。でも…実際は違ったんですね。マミさん、ジョーさん、まどか…みんな、心配してくれてるんだ、って」
さやか「だから仮にあたしが魔法少女になっても、心細くなんてない。…戦い続けられる。そう思ったんです」
マミ「…そう。私も、鹿目さんと美樹さんに出会うまでずっと一人だと思ってたから、よく分かるわ」
マミ「一人ぼっちで戦って、悩むのって…すごく苦しくて、悲しくて、辛い事」
マミ「…魔法少女になる前に私に言ってくれてありがとう、美樹さん。…全力で、あなたのサポートをするわ」
QB「話は終わったかな。それじゃあさやか、契約をしよう」
さやか「…うん」
マミ「…あ、そうそう。美樹さん、一つだけ訂正しておく事があるの」
さやか「…?え?」
マミ「あの人『ジョー・ギリアン』さん。本当の名前は違うらしいの。…「俺の名前は『コブラ』だ」って。昨日、あの後教えてもらったわ」
さやか「…はは、やっぱり変な名前じゃん」
マミ「私達は、仲間。…辛い時は一人で背負いこんだり、嘘や隠し事はしないで、みんなで助け合いましょう」
さやか「… … …うんっ!!」
QB「それじゃあ、さやか。君の願いを言ってごらん」
さやか「あたしは――― 」
さやかを包み込む光。そして生まれる、新たなソウルジェム。
レディ「おかえりなさいコブラ。出張はどうだったかしら?」
コブラ「もう最高だね。魔女はうじゃうじゃ湧いてるわ、魔法少女には因縁つけられるわ、退屈って言葉が懐かしいくらい」
タートル号内。
人目につかない丘でレディと待ち合わせたコブラは、一旦タートル号で外宇宙へと飛び立った。
レディ「…?これは?」
レディにグリーフシードを一つ手渡すコブラ。
コブラ「相棒にプレゼントさ。大事にしてくれよ」
レディ「まぁ、ありがとう。…どうせならもっと綺麗な宝石がいいのだけれどね、フフ」
コブラ「そいつはまた後でのお楽しみ。とにかく、そいつをタートル号の方で解析しておいてくれ。何か分かるかもしれん」
レディ「オーケー。それじゃ、朝食だけでも食べて行く?用意しておいたのよ」
コブラ「ワオ!嬉しいねぇ、ここんところレディの手料理が恋しくって恋しくって!」
レディ「その割には、マミとかいう子の家で随分と嬉しそうに御馳走になっていたようだけれど?」
コブラ「…ははは、こいつぁ厳しいや」
仁美「ふぁぁぁ…」
仁美「…!やだ、私ったら、はしたない」
まどか「仁美ちゃん、眠そうだね」
仁美「なんだか私、夢遊病というか…昨日気が付いたら大勢の人と一緒に倒れていて。それで病院やら警察やらで大変だったんですの」
まどか「…それは、大変だったね」
まどか(救急車呼んだのもパトカー呼んだのもわたしなんだけどね…。…もうっ!ジョーさん…じゃ、なかった、コブラさんが行っちゃうから…)
まどか(ふぇぇ…わたしも眠くて死にそうだよ…)
仁美「…ところで、さやかさんはどうしたのでしょう?まだ学校に来ていないみたいですけれど…」
まどか「…うん。何かあったのかな…さやかちゃん」
仁美「毎日元気に登校していましたのに…おかしいですわ」
まどか(…まさか、何かあったんじゃ…!)
和子「はーい、みんな揃っているかしらー?それじゃあ朝のHRを…」
さやか「ごめんなさーーーいっ!!遅刻しましたーーーっ!!」
和子「!!!」
早乙女先生が教室に入ろうとした矢先、後ろから大慌てで来たさやかが前にいた先生に気付かず教室内に突進してくる。
その体当たりを食らった先生は、衝突事故のような勢いで黒板に頭からぶつかるのだった。
さやか「…あ」
まどか「…あ」
和子「… … …」
和子「美樹さんはいつも、とっても元気ねぇ…?…先生も、とっても、嬉しいワァ…」ニコニコ
そう言いながら満面の笑みを浮かべる先生の背後には、ドス黒いオーラが禍々しく煙をあげていた。
さやか「ぎゃあああああああああ!!すいませんすいませんすいませんーーっ!!」
まどか(…良かった、いつも通りのさやかちゃんだ…)
そして、昼。各々の生徒が昼食を持ち、それぞれの食事場所に分散していく。
さやか「ね、仁美。顔色悪いし、お昼は保健室借りて休んでれば?少し寝たほうがいいよ」
仁美「え…?でも、私は単なる寝不足で…」
さやか「だからこそだよ。放課後にいつものお稽古事もあるんでしょ?今のうちに休んでおかないと身体壊しちゃうよ?」
仁美「… … …そうですわね。それでは、そうさせてもらいましょう」
さやか「よっし、それじゃ、保健室まで一緒するよ。ほら、まどかも一緒に」
まどか「え?う、うん…」
仁美「申し訳ございません、さやかさん、まどかさん」
さやか「いいのいいの、途中で倒れたら大変だし、行こう行こう」
まどか(…どうしたんだろ?さやかちゃん。…なんだか、仁美ちゃんを保健室に行かせたがってるみたい)
仁美を保健室まで送り届けると、さやかはまどかの方を振り返る。
さやか「さ、まどか。一緒にお昼食べよっ、屋上で」
まどか「屋上…?」
さやか「実はさ、呼んであるの。マミさんと、コブラさん!」
まどか「魔法少女に!?」
コブラ「なったぁ!?」
さやか「うん、今朝にね。…2人にも、ちゃんと伝えないといけないと思って」
まどか「ど、どうして…?」
さやか「まぁ、理由は色々あるんだけどさ。…何より、あたしの叶えたい願い、しっかり見つけられたから。後悔なんてしない、命懸けでも、叶えたい願いが」
コブラ「…」
マミ「私と相談をしたの。願いのためなら、その命を戦いに捧げても構わない…その決意があるから、キュウべぇとの契約を、しっかり見届けさせてもらったわ」
QB「そして願いは叶えられ、さやかは魔法少女になったというワケさ」
さやかの手には、太陽に照らされ、煌めく青のソウルジェムの指輪があった。
まどか「…やっぱり、上条くんの事?腕を…治したの?」
さやか「…うん。昨日はありがとう、まどか、コブラさん。2人が来てくれたから、あたし、決められたんだ」
さやか「ずっと考えてた。マミさんが言ったように、他人の願いを叶える前に自分の願いをはっきりさせる、って事。あたしは、恭介の何になりたいんだ、って」
さやか「昨日、恭介の腕の事…ずっと治らないってお医者さんに告げられた、って2人とも聞いてたよね?…その時ね、あたし、もう自分なんかどうなってもいいから恭介の腕を治したいって考えたんだ」
さやか「でも、それは少し違うんだって…その後分かったの。…あたしには、仲間がいる。先輩のマミさんが、コブラさんが…そして、あたしの可愛い嫁のまどかがね、えへへ」
さやか「あたしがどうしようもなく自暴自棄になっても、助けてもらえるかもしれない。…逆に、誰かがピンチになったら、あたしが救えるかもしれない!」
さやか「恭介も、マミさんも、コブラさんも、まどかも、助けられるかもしれない!…だから、どんなに怖くても大丈夫だって!…そう思って、あたしは魔法少女になった」
さやか「後悔なんて一つもしていないよ。魔法少女が叶えられる願いは一つだけど、あたしが叶えられる願いは、無限大なんだからっ!」
コブラ「…いい目になったな、さやか。そんな顔が出来るなら何も心配する事ないぜ」
マミ「でしょ?…ふふ、私の後輩は優秀なのよ」
さやか「でへへ」
まどか「… … あの、その…わたし、わたしっ…!」
さやか「…まどか」
さやかはゆっくりとまどかに近づくと、頭にポンと右手を置いて、にんまりと歯を見せて笑う。
さやか「あんたが引け目を感じる事は何も無いの。まどかはいつも通り、あたしの友達で、可愛いおもちゃで、さやかちゃんの嫁でいてくれればいいのだー!」
まどか「えぇぇ…それもちょっと…」
マミ「…鹿目さんは、魔法少女にちょっと詳しい、普通の中学生。それでいいと思うの。…だから、これからもよろしくね?私達の、大切な仲間なんだから」
まどか「…はい」
QB「…」
コブラ「出来れば、疲れたらマッサージとかもお願いしたいねぇ。特にマミは重い物ぶら下げて肩こりが酷い…いででででっ!」
笑顔でコブラの足を踏みつけるマミ。
さやか「3人とも、放課後は空いてる?ちょっと来て欲しいところがあるんだ」
まどか「…?」
さやか「へへ、実は恭介にサプライズプレゼントしようと思ってね。ま、とにかく暇なら病院まで来てよ、詳しくは後で教えるからっ!」
マミ「…ふふふ、美樹さんの事だから何となく想像ができるけれども、楽しみだわ」
さやか「えへへへ…それじゃ、また後でっ!」
さやかはそう言って元気に手を振ると、屋上から慌ただしく出ていく。
まどか「さやかちゃん、魔法少女になって…良かったみたい。あんなに嬉しそう」
コブラ「…ああ。頼もしい仲間になるぜ、ああいう目をした奴はな」
マミ「そうね。…私も張り切って後輩の指導にあたらなきゃ」
まどか「…えぇと…ところで、コブラさん。あの、ここ学校の敷地内なんですけれど…よく入り込めましたね…?」
コブラ「ん?なぁーに、忍び込むのは俺の専門なんでね。必要なら監獄でも軍事基地でも銀行でも、どこでも潜り込める」
マミ「…あまりおススメできない特技よね、正義の魔法少女の仲間としては」
――― その後。
さやか「そっか、退院はまだ出来ないんだ」
恭介「うん、足のリハビリがまだ済んでないしね」
さやか「でも、本当に良かった…恭介の手が動くようになって」
恭介「…さやかの言っていた通り、本当に奇跡だよね、これ…」
さやか「…」
自然に笑顔になるさやか。
恭介「… … …」
さやか「…どうしたの?」
恭介「さやかには…酷いこと言っちゃったよね。それに、さやかの友達にも。…いくら気が滅入ってたとはいえ…」
さやか「変な事思い出さなくていいの。あたしが皆に謝っておいたし…今の恭介は大喜びして当然なんだから。そんな顔しちゃだめだよ」
恭介「…うん」
さやか「…そろそろかな?」
恭介「?」
さやか「恭介、ちょっと外の空気吸いに行こ?」
恭介「さやか、屋上に何か用なの?」
さやか「いいからいいから」
屋上へと上がるエレベーター。車椅子のハンドルを握るさやか。不安そうな恭介。
そして、屋上へ到着したエレベーターの扉が開く。その向こうには…。
恭介「…!みんな…!」
上条恭介の家族、病院関係者…そして、鹿目まどか、巴マミ、コブラ、それぞれの姿があった。
皆、恭介の復活を心待ちにしていた人達ばかり。恭介とさやかは、拍手に出迎えられた。
さやか「本当のお祝いは退院してからなんだけど、足より先に手が治っちゃったしね」
歩み寄る、恭介の父親。そして差し出されたのは、以前愛用していたバイオリン。
恭介「…!それは」
恭介父「お前から処分するように言われていたが、どうしても捨てられなかった」
恭介父「さあ、試してごらん」
少し戸惑いながら、それを受け取る恭介。しかし、戸惑いはやがて微笑みにかわり、弦がしなやかに美しい音色を奏で始める。
まどか「わぁ…!」
マミ「素敵な音色ね…」
コブラ「酒の合いそうな音色だね。一杯ひっかけてもい…いでででででーーーっ」
笑顔でコブラの足を踏みつけるマミ。
さやか(…後悔なんか、あるわけない。…まどか、マミさん、コブラさん)
さやか(あたしの願い、叶ったよ)
――― その様子を近くの観光タワーから見つめる杏子。そしてその傍にいるキュウべぇ。
杏子「マミに加えて、謎の魔法少女、ワケの分からない筋肉男…更に新しい魔法少女、ねぇ。見滝原も随分騒がしくなったもんだ」
QB「ボクにもわけがわからないね。元々魔女の発生率が他の都市と比べて桁違いに高い場所だから魔法少女が増えるのは納得が出来るけど、ボクの知り得ない人間が2人もいるなんて」
杏子「まぁ、いいさ。アンタの言っている通り、ここは絶好の狩場だ。…それに、新人が1人くらい増えたところでアタシにとっちゃどうってことないね」
QB「とるべき行動は色々多いようだね。どこから手をつけるんだい?」
杏子「ふん…」
杏子「とりあえず、新人に先輩が教育でもつけてやる、ってのはどう?」
――― 少し時間が経って、高いビルの屋上。先程までの病院の様子を観察していたほむらは、物思いにふけていた。
ほむら「…美樹さやか」
ほむら(彼女も、魔法少女に…。まぁ、予想の範疇ね、今まで何度かその世界も見てきた)
ほむら(あとは佐倉杏子。私が知る見滝原に集う魔法少女は、まどかも含めて…五人)
ほむら(…あの男を除いて)
その時、ビルの屋上の扉が開いて誰かが入ってくる。
ほむら「!?」
驚いて振り返るほむら。そこに現れたのは、まどかだった。
まどか「…ほ、ホントにこんな所にいたんだ、ほむらちゃん…!」
ほむら「… … …どうして?」
まどか「え、えっとね…?コブラさんが、あっちのビルの屋上にほむらちゃんがいる、って教えてくれて…」
ほむら(有り得ない…病院からこのビルまで、数百m離れているのよ。私だって、魔法を使って観察していたというのに…)
ほむら「…それで、私に何か用かしら?」
まどか「あ、そ、そうだよね…。急に来てごめんね、ほむらちゃん。えっと…その、さやかちゃんが、魔法少女になったの」
ほむら「知っているわ」
まどか「え!?し、知ってるの!?」
ほむら「ええ。…それで?」
まどか「う…だから…新しい魔法少女も、1人増えたから…」
ほむら「私も、貴方達の仲間になれと言うのかしら」
まどか「… … …うん。マミさん、凄く頼りになるし、さやかちゃんだって一生懸命頑張ろうとしてる。…コブラさんは…あはは、よく分かんない人だけど、とっても強いし…」
まどか「だからね、ほむらちゃんも…私達と一緒に戦ったら、きっと…」
ほむら「…」
まどか「きっと…私達、ほむらちゃんの力になれる。だから…」
ほむら「…」
ほむら(力に…なれる。魔法少女が私の力になれなかった時間が、幾つあったかしら)
ほむら(ある時は力及ばずワルプルギスの夜に負け、ある時は互いを殺し合い…ある時は)
ほむら(私自身が、その魔法少女…まどかを、殺してしまう時も…っ!)
まどか「…ほむらちゃん、前にマミさんに言われてたよね?グリーフシードの奪い合いじゃなくって、ほむらちゃんは何か別の意志があって戦ってるって」
まどか「わたしにも分かるの。ほむらちゃんは、絶対に…『何か』をしようとしているって」
まどか「そしてその何かを、私達のためにしてくれているって」
ほむら「…!」
まどか「わたし…まだ、魔法少女になれなくて。臆病で、弱虫で、嘘つきだから…」
まどか「でも、私は少しでも力になりたいの。さやかちゃんの、マミさんの、コブラさんの…そして、ほむらちゃんの!」
まどか「だから…一緒に戦って、みんなで頑張ろうよ。みんなで、魔女を…!」
ほむら「…甘いわ」
まどか「!」
ほむら(私達全員…五人の力を使えば、ワルプルギスの夜に勝てるかもしれない。でも、そう信じるたびにどこか歪が起きて、私達は夜を迎える前に崩れていった)
ほむら(あと二週間、私達が力を合わせてしまえば、きっと…どこかで私達は崩壊してしまう。だから私は、一人で時間を繰り返してきた)
ほむら(…でも…)
ほむら(この時間軸では…私はどうするべきなの?…今度こそ、ワルプルギスの夜を迎えられ、倒せて…まどかと朝を迎える事が出来る?)
ほむら(… … …)
ほむら「…私達魔法少女は皆、誰かを救えるほど余裕があって戦っているわけじゃないの」
まどか「…ぅ…」
ほむら「叶えた願いの代償を支払うために、必至に戦って、その命を削っている。…だから、仲間として戦うなんて、出来るはずがない」
まどか「…」
ほむら「…でも、考えておくわ」
まどか「… …え!?」
ほむら「少なくとも私は、貴方達の敵じゃない。…それだけは覚えておいて」
ほむら「貴方が私の忠告を忘れないと約束をしてくれるならの話だけど」
まどか「!!! …う、うんっ!!…ありがとう、ほむらちゃん!!」
心からの笑みを浮かべる、まどか。その笑顔につられ、ほむらの表情も少しだけ緩んだ気がした。
――― その一方、コブラ達のいた世界での話。
タートル号が、ブラックホールに飲み込まれた宙域付近。そこに停泊をしている、二つの宇宙船があった。
いずれの船も『海賊ギルド』の紋章が刻み込まれている。その二つの船同士の交信。
ギルド幹部「『ソウルジェム』というものを知っているかね?クリスタルボーイ」
ボーイ「知らんな」
ギルド幹部「だろうな。太古の昔…いわばおとぎ話に登場するような、陳腐な噂だからな。…だが、もしそれがあれば…我々は宇宙そのものを塗り替えられるかもしれんのだ」
ボーイ「そんな話のために俺を雇ったというのか?」
ギルド幹部「ククク…そう言うな。これは確かな情報なのだ」
ギルド幹部「この付近で観測されたブラックホール…。今はもう消滅してしまっているが、我々がそのブラックホールのデータの解析に成功した」
ギルド幹部「そしてそのブラックホールが行きつく先…その先に、一つの反応があったのだよ」
ボーイ「ほう」
ギルド幹部「我々の知るところによる、ソウルジェムという宝石…伝えられているデータに似たエネルギーの反応がな。非常に強いパワーを秘めた宝石だ」
ギルド幹部「その石の力は強く…伝説では、どんな願いでも一つだけ叶える事が出来る程の力を秘めた物と言われているのだ」
ボーイ「くだらんお伽話だな。それで、俺にその石コロを探しに行けというのか。ギルドにも随分舐められたものだ」
ギルド幹部「そう言うなクリスタルボーイ。…お前をこの役に選んだのは、理由がある」
ギルド幹部「そのブラックホールに、飲み込まれた船が一隻あった。…タートル号だ」
ボーイ「…!コブラ…」
ギルド幹部「我々のこの時代に、ソウルジェムは存在しない。だが、ブラックホールの先には確かに、太古の昔に存在したといわれるソウルジェムのデータに似た反応が出ているのだよ」
ギルド幹部「だがホール事態は非常に小さいものでね。ギルドの艦隊が入り込めるほどではない。まして、銀河パトロールとの抗争もあって戦力をそちらに削る事もできない」
ボーイ「…つまり、俺に乗り込めと?」
ギルド幹部「君が適任なのだよ、クリスタルボーイ。依頼は必ず遂行する、無敵の殺し屋…まして君は、そのコブラに因縁があるのだろう?」
ボーイ「…」
ギルド幹部「我々ギルドの繁栄に、ソウルジェムが必要なのだ。そしてこれは本部からの直々の命令だ。…行ってくれるな、クリスタルボーイ」
ボーイ「…いいだろう。くだらんお伽話に付き合ってやる」
ボーイ「…ソウルジェムを手に入れ、コブラを、この手で…。…舞台としては上出来だ」
ギルド幹部「必要なら部下も数名つけるが?」
ボーイ「必要ない。宝石の数個など、俺一人で十分だ」
ボーイ「コブラもそうであるように…俺も、殺しに関しては一人の方が仕事をしやすいんでね」
ギルド幹部「いいだろう。それでは、君の船の前に人工ブラックホールを作る。また、君の船にもその装置を用意しておいた。帰還の時に使用したまえ」
クリスタルボーイの乗る小型の船の前に、黒い渦が巻き起こる。そして、それに飲み込まれていく一隻の宇宙船。
ボーイ「クックック…俺とお前とは、やはり深い因果で結ばれているようだな。…今度こそ貴様の息の根を止めてやる…コブラ!」
―― 次回予告 ――
さやかの特訓が始まった!一人前の魔法少女になれるよう、俺も勿論手伝うつもりだぜ。
だがそう簡単な話じゃないみたいだ。あの赤い魔法少女が、今度はそのさやかに因縁をつけてきた。
一方、俺の方にも一人、厄介な来客が現れやがった!クリスタルボーイぃ!?ったく、ゴキブリ以上にしつこい野郎だねあのガラス人形は!
だがヤツの目的は俺を倒すだけじゃないみたいだ。何か別の目的があるらしいんだが…ロクでもない事に決まってるな!お前の思い通りにはさせねぇぜ!
次回【ソウルジェムの秘密】で、また会おう!
第4話「ソウルジェムの秘密」
さやか「く、ゥ…ッ!はぁ、はぁ…!」
美樹さやかは、苦戦をしていた。
青の魔法剣士に対するのは、落書きの魔女・アルベルティーネ。弱ったさやかに対しここぞとばかりに使い魔を繰り出してくる。
魔女の攻撃は、落書きを実体化させ突進をさせる事。飛行機の落書きにのった使い魔達は次々とさやに特攻し、襲い掛かってきた。
さやか「ぐ…このぉッ!!」
さやかは剣で次々と使い魔を斬り捨てていくが、それだけに留まってしまっている。魔女の攻撃を防ぐ事に精一杯で踏み込めない。完全なる劣勢。
さやか(駄目…突破口が見えないっ…!このままじゃあ…!)
まどか「ね、ねぇ、マミさん、コブラさん!やっぱりさやかちゃん一人じゃ無理だよっ!助けてあげないと…っ」
マミ「…」
コブラ「…さやか、助けが必要かい?」
だがコブラの問いかけに、さやかは力強く答える。
さやか「必要ないッ!!あたしは…まだやれるッ!!」
まどか「…そんな、さやかちゃん…!」
さやか(このままじゃ、いずれあたしの体力が尽きて、負ける…!)
さやか(…それならいっそ…!)
さやか「でやあああああッ!!」
マミ「…っ!美樹さん!?」
決心をしたさやかは、勢いよく魔女に向けて駆けていく。つまり、防御を完全に捨てた体勢。使い魔達の突進を次々と受けるが、それでもさやかが止まる事はない。
攻撃を受けた瞬間に、回復。彼女の契約が癒しの祈りによるものなので、ダメージに対する回復力は他の魔法少女とは桁違いにある。さやか自身がそれを知っているのだった。
だから、捨て身の特攻に全てを賭ける。
魔女「!!」
この特攻に魔女も驚いたのか、涙を流すような悲しい表情を浮かべる。だがそんな事は構いもしない、魔女の眼前までさやかは迫っていた。
さやか「これで、トドメだぁーーーっ!」
魔女の眉間に、剣を突き刺す。
血のような黒い液体が噴出したかと思うと、魔女は消滅した。
そして結界が解かれ、四人は元いた路地裏へと戻る。
さやか「はぁ、はぁっ…!」
さやかの手には、魔女を倒した証…グリーフシードがしっかりと握られていた。
まどか「さやかちゃんっ!」
膝をつき、荒く息をするさやかに駆け寄るまどか、マミ、コブラ。まどかはいち早くさやかに駆け寄ると力の抜けたようなさやかを抱きしめた。
さやか「へ、へへ…あー、やっぱりまどかはあたしの嫁だねー」
まどか「さやかちゃん…っ!大丈夫…!?あんなに、あんなに無理しなくても…!」
涙を浮かべながらさやかをギュッと抱きしめるまどか。
さやか「無理しなくっちゃ。あたしも早く、一人前の魔法少女にならなくっちゃね。…どうだったかな、マミさん。あたしの戦い方」
初めての実戦、魔女との戦いにさやかは一人だけで戦いたいとマミとコブラに申し出た。初め、マミは反対をしていたがさやかの強い希望があり、それを通してしまった。
マミ「…そうね。初めての戦いにしては上出来よ。自分の魔法能力をもう理解しているし、それをしっかり活かせている」
マミ「ただ…少し、美樹さんの戦いは捨て身すぎるわ。あんなにダメージを受けてしまっては、ソウルジェムの濁りも強くなってしまう」
言いながらマミはさやかに近づき、さやかのソウルジェムとグリーフシードをくっつけ、穢れを取り除いた。ソウルジェムは光を取り戻し、さやかもまどかからそっと離れ、立ち上がる。
さやか「でも、あたしの持ち味ってそれくらいしかないと思うし…」
マミ「だからこそよ。ああいう戦い方は余程苦戦した時だけにしないと…。コブラさんはどう思う?」
コブラ「ああ、悪い。さやかの肌に見とれて戦いに集中できなくってね。いやー、なかなか露出度の高い衣装だ。三年後が楽しみだぜ」
さやか「え… お、おわぁぁっ!?」顔を赤くするさやか。
マミ・まどか「…」
コブラ「ハハ…ハって、あ、いやぁ、ジョーダンだよ、ジョーダン」
QB「それじゃあ、その真っ黒になったグリーフシードはボクが貰おうか」
さやか「?どうするの?」
キュウべぇにグリーフシードを手渡すさやか。そしてキュウべぇは、そのグリーフシードを背中に取り込む。
QB「きゅっぷい」
まどか「えぇ!?た、食べるの!?」
QB「これもボクの役目だからね」
コブラ「随分な偏食だな。あんなもの、健康に良くっても食う気にゃなれないぜ」
QB「別に好き好んで食べるわけじゃないよ。ただ、あのままじゃあグリーフシードが魔女化してしまうから」
コブラ「…」
コブラ(やはりおかしいな、グリーフシードは魔女から生まれる種だ。そいつが魔法少女の穢れを吸い込むと、再び活性化し、魔女が孵化するだと?)
コブラ(そもそも、その穢れとかいうシステムとそいつを吸い込む種…。つまり魔法少女と魔女は、単なる別種族じゃない事を現している)
コブラ(…ソウルジェムとグリーフシード。そして、そいつを食らうキュウべぇ。やはり全ては無関係じゃないって事だな)
マミ「どうしたのかしら?コブラさん」
コブラ「いや、マミの肌もなかなか綺麗で悪くないなと感心していてね」
マミ・さやか・まどか「…」
コブラ「すいませんでした」
マミ「さてと、それじゃあそろそろ解散にしましょうか?今日の見滝原パトロールと特訓はこれまでよ」
さやか「うん、まどかもマミさんもコブラさんも、付き合ってくれてありがとう!」
マミ「大切な後輩のためだもの、当然よ。それに、美樹さんは覚えが早いから…確実に成長しているわ。次からは、一緒に戦いましょう」
さやか「…!は、はいっ!」
コブラ「さぁーて、それじゃあ巴さんのお宅でディナーパーティとしゃれ込みますかね」
まどか「あ、あの…わたしもお邪魔していいですか?」
マミ「ええ、勿論大歓迎よ。一人で食べるのよりずっと楽しいし…それに、鹿目さんも大切な後輩ですもの。」
まどか「ありがとうございますっ! …ティヒヒ、実はお夕飯、マミさんのお家で御馳走になるって言ってきちゃったんです」
マミ「うふふ、それなら大丈夫ね。」
さやか「あ、ごめんなさいマミさん!あたしは、ちょっと寄るところがあって…」
マミ「あら、そうなの…?残念ね」
まどか「さやかちゃん、寄るところって、どこか行くの…?」
さやか「な、なんでもないのっ!大したところじゃないからっ!…それじゃみんな、また明日ーっ!」
何か慌てたように夜道を駆けていくさやか。それを見送る三人。そして…。
コブラ「… … …それじゃあ、尾行開始といきますかぁ。にぃひひ」
マミ「ええ、うふふ」
まどか「ウェヒヒヒヒ」
QB「人間は何を考えているのか分からないね」
――― 上条恭介家の玄関先。
聞こえてくる美しいバイオリンの音色は、そこに恭介がいる事を証明していた。
しかしさやかは、その音色を玄関先で聞いているだけだった。
さやか「…」
さやか(恭介…退院したなら連絡くれればいいのに…)
さやか(…練習、してるんだ…)
さやか(…)
そっと踵を返すさやか。しかし、その先には一人の少女が立っていた。
さやか「!」
杏子「折角来たのに会いもしないで帰る気かい?随分奥手なんだねぇ」
さやか「だ、誰…?」
杏子「…この家の坊やのためなんだろ?アンタが契約した理由って」
さやか「…ッ!アンタも、魔法少女…!?」
杏子「…おいおい」
杏子「先輩に向かって『アンタ』はねーだろ?生意気な後輩だね」
その様子を、物陰から見ている三人。
コブラ「…げぇ、アイツは…」
まどか「あの時の人…!今度はさやかちゃんに襲い掛かるつもり…なのかな…?」
マミ「あれは…佐倉さん…!」
コブラ「!?知り合いか、マミ」
マミ「ええ。…二人も佐倉さんに会ったことがあるの?」
コブラ「会ったなんてもんじゃないよ。この間、熱烈な歓迎を受けたところでね」
マミ「おかしいわ、佐倉さんは隣町を中心に魔女を狩っていた筈なのだけれど…」
まどか「この前はコブラさんを襲ってきたんです…。さやかちゃんに…何か用事、なのかな」
マミ「とにかく、私が直接話を…」
コブラ「いや、ここは少し様子を見ておこうぜ。かの女が何を目的にしているのか分からない。…危なくなったらすぐ前に出る準備はしておいて、な」
マミ「…そう、ね」
マミ(…佐倉さん…)
QB「…」
マミはソウルジェムを握り、コブラは左腕に右腕をかけながら、その会話を聞いている。
杏子「一度だけしか叶えられない魔法少女の願いを、くだらねぇ事に使いやがって。願いってのは自分のためだけに使うもんなんだよ」
さやか「…別に、あたしの勝手でしょ!アンタなんかに関係ない!」
杏子「…気に入らないね」
杏子「そういう善人ぶってる偽善者とか、何を捨てても構わないとか考えてる献身的な自分に惚れてる姿とかさ」
杏子「…ホント、気に入らない」
さやか「…もう一度言うよ。あたしが何を願おうと、何のために戦おうと…アンタには関係ない事でしょ。何?それとも単なる憂さ晴らし?」
杏子「… …美樹さやか…だっけ?魔法少女として、あんたにちょっと指導にきたのさ」
さやか「必要ない。あたしには…仲間がいる」
杏子「…ぬるい。ま、指導ってのは建前さ。…実はあたしも、見滝原で活動を始めようと思ってね」
さやか「え…」
杏子「ここの魔女の発生頻度、異常に高いんだよねぇ。…まるで、何か大きな事が起きる前触れ、みたいな感じに。まぁとにかく、魔法少女としては絶好の狩場なわけ」
杏子「それなのにあんたらときたら特訓だの何だの…しまいにゃ、魔女になるであろう使い魔ですら倒しちまう始末だ。グリーフシードを集めるのに効率が悪すぎるんだよ」
さやか「…!放っておけって言うの!?」
杏子「人間四、五人食わせりゃ、アイツらは魔女に成長する。弱い人間を魔女が喰らい、あたしら魔法少女がその魔女を喰らう。…基本的な食物連鎖の話さ」
さやか「…!」
さやか「違う…間違ってる!!魔法少女っていうのは…。魔女から人を守るのが魔法少女なの!!…人を守らなきゃいけないのに、魔女に成長させるために人を食べさせるなんて、そんなの、間違ってる!」
杏子「…ばーっかじゃねーの。くだらない…くだらないくだらないくだらない。やっぱどこまでいっても巴マミの後輩だね」
さやか「っ、マミさんの事…知ってるの!?」
杏子「…どうでもいいじゃん。…それよりさぁ、アタシにいい考えがあるんだけど、どう?」
さやか「…」
杏子「アタシが協力してやるよ。今すぐこの坊やの家に魔法で忍び込んで、その手足を潰してやるっていうのはどう?」
さやか「…っ!?」
杏子「恩人に一言もかけないで退院するなんて、酷い話だよねぇ?…もう、この恭介っていう子は、アンタ無しでも生きていけるんだ」
さやか「…黙れ…黙れ、黙れ…!」
杏子「もうコイツにアンタは必要ない。どんどんアンタから離れていく。…それならいっそ」
杏子「もう一度…今度は手足を使えなくして、アンタ無しじゃあ生きられない身体にするのさ。なぁに、自分でやりづらいって言うんじゃ、アタシがやってやるよ」
さやか「…あんただけは…」
さやか「あんただけは、絶対に…絶対に許さないッッ!!」
杏子「…へへ、それじゃあ…場所を移そうか?ここで戦うわけにいかないだろ?」
・
まどか「… … …」
コブラ「俺達も行くぜ。ここで出て行って戦闘になったら面倒だ、広い場所に出たら…だ。いいな、マミ」
マミ「…っ。え、ええ…」
マミ(…佐倉さん。貴方は…何が目的なの…?)
――― 大きな歩道橋の上、さやかと杏子は移動をし、お互いに対峙をしている。
杏子「ここなら邪魔は入らないね。…さぁ…始めようか?」
そう言って杏子はソウルジェムを使い、変身する。自分の身の丈ほどある巨大な槍を器用に振り回し、戦闘態勢をとる。
さやか「…!」
さやかがソウルジェムを取り出そうとした瞬間…。
まどか「さやかちゃんっ!!」
さやか「!まどか!それに、マミさんに、コブラさん!」
さやかに駆け寄るまどか、マミ。ゆっくりと後ろから歩いてくるコブラ。
杏子「…!巴、マミ…!」
マミ「佐倉さん…。久しぶりね、元気そうでよかったわ」
杏子「…アンタに心配されなくても、一人で出来てるよ。…魔法少女として、な」
マミ「…そう」
さやか「皆…。…邪魔しないでっ!あたしは、コイツを…!」
コブラ「落ち着きなよ、さやか。…それに、かの女はまだお前さんの腕じゃ勝てる相手じゃないぜ?」
さやか「そんなの、やってみなくちゃ…!」
マミ「…佐倉さん。貴方が何を考えているのか、私には分からないわ。けれど…何故美樹さんと戦おうとするの?貴方が嫌う『無駄な魔力の消耗』にしか思えないわ」
杏子「アンタには関係ないね。アタシは、新人の教育にきただけさ。魔法少女の何たるかを、ね」
マミ「指導には私があたっているわ」
杏子「アンタのやり方は…手緩い。このままじゃあ…コイツ自身が身を滅ぼしちまうのが、分からないかい?」
マミ「… … …」
杏子「本当は口だけで言うつもりだったんだけどね…生意気な奴で、あっちからやろうって言ってきたんだ。アタシからふっかけたわけじゃないよ」
さやか「…マミさん。戦わせてください!…あたしがどれだけ出来るようになったか…確かめる意味でも!」
マミ「美樹さん…」
その時、全員の前にふと現れる人影があった。
まどか「…っ!?ほ、ほむらちゃん…!」
ほむら「…」
現れた暁美ほむらは既に魔法少女に変身していた。五人をぐるりと見回すと、その中心に移動する。
コブラ「…!」
コブラ(俺の目でも、かの女がどの方角から来たか、分からなかった…!?)
ほむら「…巴マミ、佐倉杏子、美樹さやか…そして、コブラ…まどか。全員揃っているようね」
杏子「…魔法少女?…ああ、そうか。アンタがキュウべぇの言っていた、もう一人のイレギュラーか」
ほむら「これで、この周辺の魔法少女は、全員。例外もいるようだけれど」
コブラ「へへへ、まぁね」
まどか「…」
QB「何か用かい?暁美ほむら」
ほむら「貴方がこの場に居るのは少し嫌だけれど、仕方ないわね。…全員に、話しておくべき事があるの」
さやか「な、なによ…!」
ほむら「ただし、落ち着いて聞いて。そうじゃないと…私達全員、死ぬ事になるわ」
マミ「死ぬ…!?」
ほむら「ええ。間違いなく」
杏子「…初対面でいきなり現れておいて、そんな話を信じろっていうの?」
ほむら「ええ、そうよ。嫌ならいいわ。ただ私は、無益な戦いをする馬鹿の敵だということは覚えておいて」
杏子「なんだとっ…!」
さやか「…」
マミ「暁美さん、話って…?」
ほむら「…」
ほむら「貴方達に話しておくべき事がある。決して悪い話ではないわ。ただ、これから起こる事を、しっかりと把握しておいて欲しいの」
ほむら「二週間後、 この街に、ワルプルギスの…」
ほむらが話を始めた瞬間。
コブラ「…!さやか、避けろッ!」
さやか「…えっ?」
コブラはさやかの頭を抱えて、地面に伏せる。その瞬間…
二人の頭をかすめる、レーザー光。
ほむら「…ッ!?」
杏子「何だ…!?今の攻撃は、どこから…!?」
勢いよく伏せたせいで、さやかはソウルジェムを落としてしまう。
歩道橋の傾斜にそれは転がっていき…誰かの足元で、宝石は止まった。
さやか「あ…!」
コブラ「…!お前は…ッ!」
ボーイ「…こいつがソウルジェムか。なるほど、よく出来た宝石だ」
まどか「…!な、なに…!?なんなの、あの人…!」
六人の後方に立つ人物は、人間では無かった。
能面のような金色の顔、骨格のような金属の身体は、透明のガラスのような肉で覆われている。異形の怪物…少なくとも、少女達には、この世では存在し得ない存在。
コブラ「…クリスタルボーイ…!」
コブラは左腕の義手を抜き取ると、サイコガンを怪物に向けて構える。
杏子「!」
ボーイ「久しぶりだな、コブラ。まさかこんな場所で会うとは思わなかったが、やはりソウルジェムに関わっていたか」
マミ「…コブラさんの知り合い…?」
コブラ「…ちょっとした、な。なぁーに腐れ縁さ、出来れば二度と会いたくなかったがね」
ボーイ「くくく、そう言うなコブラ。俺は貴様に会いたくてここへやって来たのもあるんだからな」
コブラ「そいつは有難いね。でも出来れば美女に言われたい台詞だな」
ほむら(いけない、ソウルジェムが美樹さやかから離れている。これ以上離れたら…!)
さやか「か、返してよ!誰か知らないけど、それはあたしの物なのっ!」
ボーイ「ほう、この宝石には所有者がいるのか。てっきり鉱山から掘り出せるのかと思ったが、まさかこんな場所から反応が出ると思わなかったのでね」
コブラ「そいつを返してもらおうかガラス人形。お前には必要ない物だ」
ボーイ「…ふふふ、それが、必要なんだよ」
まどか「あの人は、一体…?」
コブラ「クリスタルボーイ…俺の居た世界の、殺し屋さ。悪の組織の幹部…なんて言った方が分かりやすいかな。少なくとも俺達の味方じゃない事は確かだ」
マミ「あの身体は…人間じゃない…!?」
コブラ「サイボーグだ。化け物と言ったほうが似合うね。俺が何度倒しても、また俺の前に現れる…ゴキブリみたいな野郎さ」
コブラ「クリスタルボーイ!何故この世界にお前がいるのか教えてもらおうかッ!」
ボーイ「俺がここにいる理由か…いいだろう、教えてやる」
ボーイ「一つは、コブラ。お前の後を追ってきたのさ。お前の足取りをようやく掴んでね、ブラックホールを辿ってこの世界に足を踏み入れたのが分かったからな」
ボーイ「そしてもう一つは…この石コロを探しにきた」
ボーイは掌で、さやかの青のソウルジェムを転がしながら言う。笑顔はない、能面のような表情がニヤリとほほ笑んだような錯覚を全員が受ける。
ほむら「…!何故ソウルジェムの事を…!」
ボーイ「太古の昔にあったと言われる、魔法の宝石…俺のいた世界にはそんな伝説があってね。そいつがこの世界に存在すると聞いて探しに来たが…まさかこんなに容易に手に入るとはな」
ボーイ「そこの餓鬼に礼を言わなければな。お前さんのおかげで仕事が早く済みそうだ」
さやか「…っ!」
コブラ「海賊ギルドがソウルジェムを狙っているってのか。驚いたね、いつからそんな少女趣味になったんだ?」
ボーイ「この宝石には随分な力があるそうだな。…魔法。そう、まるで願い事を叶えるかのような、魔法の力が」
QB「…!」
ボーイ「こいつの持つ膨大なエネルギー…そいつをギルドは求めているそうだ。くだらん夢物語だと思っていたが、現物が手に入ったのなら俺の仕事は完了だ」
ほむら「止めなさい!今すぐソウルジェムを返さないと…」
ボーイ「そう言われて素直に返すとでも思うのか?俺は今すぐこの場でこの宝石を砕いてもいいんだぞ」
ほむら「…く…っ!」
ボーイ「コブラ。貴様と決着をつけたいと思っていたが、また次回にしておこう。今は元の世界に戻る事にしておくよ、クク」
コブラ「…!戻れるというのか!」
ボーイ「どうかな」
その時、轟音を立てて歩道橋の真上に何かが接近してきた。
クリスタルボーイは、その何かに向かって跳躍をする。見たこともないような形の飛行機…宇宙船と言ったほうが正しいのだろう。
コブラ「ッ!待て、ボーイ!」
ボーイ「それじゃあなコブラ。せいぜいこの世界を楽しむといい」
さやか「ま、待ってよッ!あたしのソウルジェム…!!」
宇宙船はゆっくりと旋回をすると、空に飛び立っていく。
…そして、次の瞬間。
さやか「…ぁ…っ」
まるで糸の切れた人形のようにその場に倒れるさやか。
杏子「…!?な、なんだ…どうしたんだよ…!?」
杏子はさやかが倒れる前にその身体を抱き留め…そして、その異常事態に気付く。
杏子「…!どういうことだオイ……! こいつ…死んでるじゃねえかよ!!」
まどか「… … …え?」
マミ「…死ん、で…?」
まどか「そ、そんな、どういう…?」
QB「まずいね、魔法少女が身体をコントロールできるのはせいぜい数百メートルが限度だ。離れすぎてしまったようだね」
マミ「! キュウべぇ…それって…!?」
ほむら「…ぐ、っ…!」
その時、頭上にもう一つの飛行物体が現れる。轟音に気付き、コブラは上を見上げた。
コブラ「タートル号…レディ!」
レディ「コブラ、急いで!クリスタルボーイの宇宙船は急速で地球から離れようとしているわ!このままだと…!」
コブラ「ああ、今行く!…まどか、さやかの方を頼むぜ!」
コブラ「さやかのソウルジェムは…必ず俺が取り戻してくる!」
まどか「さやかちゃん…さやかちゃん!ねぇ、返事してよっ!さやかちゃん!」
コブラの声には反応せず、必至にさやかの身体を揺さぶるまどか。
タートル号は歩道橋にギリギリまで寄り、乗車口を開ける。急いでそれに飛び込もうとするコブラ。
マミ「ま、待って!コブラさん!私も行くわ!」
コブラ「!」
マミ「わけが分からないけれど…ソウルジェムを取り戻さなくちゃ!私だって手伝えるわ!」
コブラ「マミ…」
ほむら「私も行くわ。…このままじゃ、まずい」
コブラ「…!分かった、助かるぜ2人共!」
タートル号が、コブラ、マミ、ほむらを乗せ飛び立った後。
さやかの身体を必死に抱きしめるまどか。そして…キュウべぇに詰め寄り、首を鷲掴みにする杏子。
QB「苦しいよ、杏子」
杏子「どういう事だよ… なんで、コイツ…死んでるんだよ!!てめぇ、この事知ってたのかよッ!!」
QB「壊れやすい人間の肉体で魔女と戦って、なんてお願いは出来ないよ。魔法少女とは、そういうものなんだ。便利だろう?」
まどか「さやかちゃん… さやかちゃん…っ!」
QB「まどか、いつまで呼び続けるんだい?『そっち』はさやかじゃないよ」
QB「またイレギュラーが増えたのは本当に驚きだけれど、とにかくコブラ達が『さやか』を取り戻してくれるのを願うばかりだね」
杏子「なんだと…」
QB「魔法少女である君たちの肉体は、外付けのハードウェアでしかない。コンパクトで安全な姿が与えられ、効率よく魔力を運用できるようになるのさ」
QB「魔法少女の契約とは」
QB「君たちの魂を抜き取って、ソウルジェムに変える事を言うのさ」
杏子「ッッッ!!っざけんなぁ!! それじゃあ…アタシ達、ゾンビにされたようなもんじゃねえか!!」
QB「むしろ便利だろう?いくら内蔵を壊されようが血を流そうが、魔力で復活ができる。ソウルジェムを砕かれない限り、君たちは無敵なんだ」
QB「弱点だらけの肉体より、余程戦いでは便利な筈だ」
まどか「…酷いよ… 酷すぎるよっ…」
まどか「こんなのって… 酷すぎる…!」
クリスタルボーイの乗る宇宙船を眼前に捉えたタートル号。
コブラ「レディ、このままヤツの宇宙船に特攻して、でかい風穴をあけてくれ。そこから突入する。さやかのソウルジェムを無傷で取り返さなくちゃいけねぇ」
レディ「分かったわ。加速ならこっちの方が段違いに上よ、任せて」
コブラ「オッケー。…準備はいいかい?マミ、ほむら」
既にソウルジェムを使い、魔法少女となっているマミとほむら。しかしマミの表情はどこか優れないようだった。
コブラ「マミ」
マミ「…何が何だか、分からないの。…美樹さんが何で…倒れてしまったのか。ソウルジェムが身体から離れてしまったから?そんな事、知らない…!」
マミ「私も…ああなっちゃうの?ソウルジェムが離れると…死んでしまうの?」
マミ「分からない…もう何も、分からないッ…!」
コブラ「…マミ。とにかく今は、さやかのソウルジェムを取り戻す事だけを考えろ。話はその後だ」
マミ「……う、うぅ…ッ…」
コブラ「マミッ! アンタの大事な『後輩』だ! 助けられるのは…アンタしかいないッ!!」
マミ「…!!」
レディ「距離、50。衝撃に気を付けて…!このまま突っ込むわよ!」
ほむら「…」
・
ボーイ「…ふふふ、やはり来たか、コブラ」
ボーイ「貴様の墓標は、元の世界ではないようだな。…この世界だ」
―― 次回予告 ――
クリスタルボーイの野郎、ふざけた真似してくれるよ全く!さやかのソウルジェムを奪ったうえで俺を殺すだと?へっ、上等じゃねぇか!
奴の船に乗り込んだ俺とマミとほむら、ついにボーイとの決闘だ。相変わらず俺のサイコガンは効かないわ、魔法も物ともしない。いやだねー、ホント!
だが諦めちゃいられねぇ!さやかのソウルジェムは絶対に取り戻してみせるぜ!俺達は決死の作戦であの野郎に立ち向かう事になったっ!
次回【決戦!クリスタルボーイ】で、また会おう!
第5話「決戦!クリスタルボーイ」
レディ「距離30、20…!皆、どこかに掴まって!間もなくクリスタルボーイの宇宙船と衝突するわ!」
コブラ「了解!派手にやってくれ!」
ドォォォォンッ!!
マミ「きゃあああっ!!」
小規模の爆発が起きたように大きく揺れる、タートル号船内。
しかし狙いは完璧。タートル号はクリスタールボーイの操縦する宇宙船の後部に体当たりをかけ、見事に風穴を開ける。
コブラ「完璧だぜレディ!カースタントマンでもこの先食っていけそうだなっ!」
機体上部のハッチが開き、コブラは急いで梯子を上り外へと出ようとする。
コブラ「御嬢さん方、急ぐんだ!ヤツの宇宙船に飛び移るぞ、着いてこい!」
ほむら「ええ」
マミ「…」
コブラ「…マミッ!」
マミ「…! 分かったわ…今はとにかく、美樹さんのソウルジェムを…取り戻す!」
コブラ「上出来だ!いくぜ、皆っ!」
レディ「コブラ!忘れ物よ!」
レディがコブラに向けて、箱を投げた。それをキャッチするコブラ。
レディ「シガーケースよ。葉巻が切れた時のために、ね」
コブラ「…! あぁ、レディ。ありがとよ!」
タートル号上部船体。高速で移動を続け、クリスタルボーイの宇宙船を追う船体の外は激しい風が吹きすさぶ。
ハッチから外に出た瞬間、その豪風に吹き飛ばされそうになるほむらとマミ。
コブラ「俺に掴まれ!ヤツの宇宙船に移動する!」
マミ「移動する、って…どうやって!?」
コブラの腕にほむらが、肩にマミが掴まりつつも、マミは疑問の声を投げかける。その声にコブラは不敵な笑みを浮かべるのだった。
コブラ「こうするのさ」
コブラの空いている腕のリストバンドから、細いワイヤーが勢いよく発射される。ワイヤーの先端の刃が見事にクリスタルボーイの宇宙船の風穴内部に突き刺さり、コブラはその安定性を確認した後…。
コブラ「振り落とされるなよぉッ!!」
ほむら「…!!」
マミ「きゃあああああああああああああっ!!」
高速で縮まるワイヤー。三人の身体は吸い込まれるように、クリスタルボーイの宇宙船に移動していく。
レディ「…コブラ…皆!無事でいて…!」
――― 一方、地上。抜け殻となったさやか、それを抱きかかえるまどか。そして、キュウべぇに詰め寄る、杏子。
杏子「騙してたのかよ、あたし達を…っ!」
QB「騙していた?随分な言い方だね。さっきも言っていた通り、弱点だらけの人体で戦いを続けるより遥かに安全で確実なやり方なんだよ」
まどか「酷すぎるよ…っ!さやかちゃん、必死で…!強くなる、って…頑張るって…戦ってたのにっ…!」
QB「君たちはいつもそうだね。真実を伝えると皆決まって同じ反応をする。どうして人間は、そんなに魂の在り処にこだわるんだい?」
QB「ワケがわからないよ」
杏子「…!!畜生…っ!!ちくしょおおおっ!!」
やり場のない怒り、悲しみ…全てをぶつけるように、杏子は月夜に吼えるように叫んだ。
まどか「…コブラさん…っ!お願い…さやかちゃんを、助けて…!」
月を背景に、遥か上空を飛ぶ二隻の宇宙船。見えずとも、まどかはそこに向けて、祈った。
コブラ「うおっ、とぉ!!」
コブラは自分の身体を下にして、地面に滑り込む。三人はクリスタルボーイの宇宙船内に侵入を成功させた。
コブラ「無事かい、2人とも」
ほむら「…ええ、何とか」
マミ「む、無茶苦茶なやり方だったけど…どうにか無事だわ」
コブラ「そいつぁ良かった。…ここは…貨物室か?」
三人が侵入した場所は、無機質な、まるで鉄の箱の中のような場所。周りに数個の貨物があるだけの殺風景な部屋だった。
そして…その奥。
クリスタルボーイは、まるで三人を待っていたかのようにその場に立っていた。
ボーイ「遅かったじゃないかコブラ。待ちくたびれたぞ」
コブラ「待たせたなガラス細工。延滞金はしっかり払わせてもらうぜ」
コブラは左腕の義手を抜き、サイコガンを構える。マミとほむらも、異形の相手に向かい戦闘態勢をとるのだった。
【人工ブラックホール、生成準備完了。本船の前方に超小型のブラックホールが発生します。生成まで、あと10分…】
コブラ「…!?なんだとぉ!?」
ボーイ「ククク、タイムリミットはあと10分。コブラ、朗報だ。元の世界にもうすぐ戻れるらしいぞ」
ほむら「…!どういう事…!?」
ボーイ「聞こえなかったのか小娘。あと10分でこの船はブラックホールに吸い込まれ、異次元空間へとワープする。到着先は…我々の住む、未来の世界だ」
ほむら「!!」
ボーイ「元の世界に戻るのが目的だったのだろう?感謝しろコブラ、俺はお前の命の恩人だ」
コブラ「お前がぁ?ごめんだね、どうせ恩を売られるなら美女がいいに…決まってらぁッ!」
言いながらコブラはサイコガンの砲撃を次々とクリスタルボーイに浴びせる。
しかし、その砲撃の全てはボーイの体内で屈折し、素通りをしていくのだった。
マミ「!?こ、コブラさんの攻撃が…!」
ボーイ「クククク…忘れたわけではあるまい。サイコガンは俺には無力だ」
ボーイ「しかし、礼を言わせてもらうよコブラ。1つだったソウルジェムを一気に3つまで増やしてくれるというのだからな」
ボーイ「このままその女どもをワープさせれば…あとはその身体からソウルジェムを剥ぎ取ればいいだけだ。ふふふ…」
コブラ「どうかな。その前にお前にでかい風穴を開けてやるぜ」
ボーイ「ククク…はっはっはっは!!笑わせるな。コブラ、お前は今俺の掌の上で踊っているに過ぎん」
ボーイ「お前の行動パターンは実に分かりやすいよ。情に流されれば、貴様はきっと俺の船に乗り込んでくる…。そう思って、あえて貴様をあえてここへ呼び込んだのだからな」
コブラ「何だと…!」
ボーイ「どうやらソウルジェムとやらは、その女達の身体と繋がっている…いわば、『魂』のようなもののようだな。先程の青髪の女で確信させてもらった」
ボーイ「このまま俺が元の世界に戻ろうとすれば…貴様たちは必ずここへやってくる、というわけだ。それも1人ではない、わざわざソウルジェムを持つ女を2人も連れて、な」
マミ「…くッ…!」
ほむら「…」
ボーイ「コブラ。何故俺がこの貨物室を戦場に選んだか分かるか?此処には、貴様の武器である『臨機応変』が使えないのだよ。あるのは空の鉄箱だけだ。貴様の武器となるような物は、ない。お得意の逃げ回る戦法も場所が限られているぞ」
ボーイ「おまけに俺の特殊偏光クリスタルにはサイコガンは効かん。…さぁ、どうやって俺を倒すつもりかね?…コブラ!」
【ブラックホール、生成完了まで、あと8分です】
コブラ「!」
ボーイ「ソウルジェムは、この扉の先のコクピットにある。…あと8分。俺を倒して、この扉を潜って…奪い取れるかな?」
コブラ「…やってみせるさ!」
コブラは腰のホルダーから愛銃の『パイソン77マグナム』を抜き、3連射する。
しかしその弾丸の全てを、クリスタルボーイは右腕の鉤爪を盾のように使い、防御した。鉤爪に穴は開く威力ではあるが、その弾は身体にまでは届かない。
コブラ「!…ちっ…!」
ボーイ「一度食らった手をもう一度食らいはしない。…さぁ、次はどうするつもりだ?」
ほむら「…行くわ」
コブラ「…!」
カチリ。
微かに、時計の秒針のような音が聞こえたような気がした。その瞬間、暁美ほむらはクリスタルボーイの目の前にいつの間にか移動し、拳銃を構えていた。
コブラが次に気付いた瞬間…
クリスタルボーイの周囲は、鉛弾で包囲されていた。
コブラ・マミ「!」
ボーイ「何…!」
数十発、いや、数百発の弾丸が、クリスタルボーイの身体に次々と命中をしていく。その衝撃にクリスタルボーイは思わず仰け反る…が。
倒れはせず、一歩後ろに下がっただけで留まった。全ての弾丸はクリスタルボーイの身体に軽く埋まった程度で、穴すら開いていない。
ほむら「…!」
ボーイ「驚いたな…何だ、今の攻撃は。貴様の拳銃では不可能な連射だ…どうやった?」
ほむら「く…っ!(この銃じゃあ…威力が、足りない…!?)」
ボーイ「ククク…まぁいい。そんな安物の骨董品では俺の特殊偏光クリスタルには傷すら …つかんのだァッ!!」
ボーイは右の鉤爪を開き、ほむらに向けてビームガンを放つ。
ほむら「ッ!!」
ボーイ「!」
カチリ。また秒針の音が聞こえる。瞬間移動でもするかの如く、ほむらはその攻撃を素早い動きで避け、後ろへと下がっていく。
その瞬間…マミは次々と武器である単発式銃火器をスカートから取り出し、宙に浮かせる。
マミ「次は、私よッ!お人形さん!」
一発、それを撃つごとに銃を捨て、次の銃に切り替える。しかしその銃弾をクリスタルボーイは鉤爪で弾き、貨物室の天井へと跳弾させる。
ボーイ「そんな物が俺に効くとでも…思っているのか!!」
マミ「思っていないわ。…だから…こうするのよ!」
跳弾をして、開いた天井の穴が俄かに光り始めたかと思うと…その光から、絹のような魔法のリボンが勢いよく出現し、クリスタルボーイの身体に巻きついていく。
ボーイ「…!これは…!」
マミ「これが私の戦い方よ!…一気に決めるわ!」
マミは魔力を集中させ、巨大な、大砲のような銃器を目の前に出現させる。そしてその銃口をクリスタルボーイの方へ向けた。
マミ「喰らいなさい! ティロ・フィナー…!!」
ボーイ「…ふんっ!!」
マミ「…!!」
クリスタルボーイは自分の身体に巻きついた魔法の糸を…自らの腕力で、引き千切る。そして鉤爪をロケットのようにマミに飛ばし、攻撃をした。
マミ「きゃあッ!!」
鋭利な刃物のような、その爪。マミはどうにか単発式銃火器の銃身でその攻撃を受け止める、が…その衝撃はすさまじく、マミの身体は天井へと叩きつけられてしまう。
マミ「あぐゥっ!!」
コブラ「!マミ!!」
ボーイ「…魔法。ソウルジェムの力とやらか。…少し驚いたが、サイボーグのこの俺には通用しないようだな」
コブラ「畜生…いい加減にしやがれ、この野郎!」
コブラは再び、サイコガンの連射をクリスタルボーイに浴びせる。…が、やはりその光はクリスタルボーイを素通りしていく。
ボーイ「…次は貴様だ!死ね、コブラッ!!」
クリスタルボーイはコブラに向けて突進をし、鉤爪を大きく振り、その身体を切り裂こうとする。
コブラ「く、ッ!」
コブラはその攻撃を次々と避ける、が…相手も並の瞬発力ではない。コブラが避ければ、次の手を繰り出し…いずれ、回避行動は追いつかれてしまう。
ガキィィィンッ!!
鈍い金属音。コブラのサイコガンが、クリスタルボーイの鉤爪に掴まれた。
ボーイ「ふふふ…。…っ、はぁッ!!」
クリスタルボーイはコブラの左腕を掴んだまま、勢いよくコブラを投げ飛ばす。
コブラ「どわぁぁぁぁぁあっ!?」
身体が大きく宙を舞う。物凄いスピードで、コブラは鉄箱の山に叩きつけられた。派手な金属音が幾重にも音を立て、コブラの身体は鉄箱の山へと沈む。
ほむら「…!コブラ!」
ボーイ「…その程度では死なないのだろう?コブラ。今トドメを…刺してやる!」
ほむら「させない!」
カチリ。
クリスタルボーイの眼前に、突如として、安全ピンの抜かれた手榴弾が数個現れた。
ボーイ「何…!!」
ドォォ――――ン!!!
派手な音を立てて手榴弾が連鎖して爆発する。流石にその衝撃にクリスタルボーイの身体も吹き飛ぶ…が。クリスタルの身体には全く傷はついていなかった。
ゆっくりと立ち上がり、鉤爪をほむらの方向へ向ける。
ボーイ「相変わらず攻撃の読めないヤツだが…。言った筈だぞ…そんな骨董品で俺の身体に傷はつかん、と」
ほむら(…時間稼ぎにはなったようね…。やはり、手榴弾程度じゃアイツの身体はびくともしない…!)
ほむら(…とにかく、今はコブラを助けないと!)
マミ「はあああっ!!」
次の瞬間、マミがクリスタルボーイに向けて特攻をかける。銃器を鈍器代わりにし、その頭部を次々と殴る。
マミ「私のッ、後輩を…返しなさいッッ!!」
多少ダメージがあるのか、クリスタルボーイは反撃せず、しばしその攻撃を受ける。
ほむら(…今のうち…!)
カチリ。
ほむらはコブラの近くに瞬間移動をし、倒れているコブラの身体を起こそうとする。
ほむら「…!」
しかし、助けに行った筈のコブラは既に起き上がり、シガーケースから葉巻を取り出してジッポライターで火をつけていた。
ほむら(そんな…生身の人間なのよ!?魔法でガードしているわけでもないのに…あんな勢いで叩きつけられても…平然としているなんて)
コブラ「よぉ、ほむら。葉巻の煙は大丈夫かい?」
ほむら「そんな事言ってる場合じゃ…!」
コブラ「アンタに一本プレゼントだ」
コブラはシガーケースから葉巻を一本取り出し、ほむらに手渡す。
ほむら「!! 今はこんな… … …。 !…これ、葉巻じゃ…ない?」
コブラ「超小型の時限爆弾さ。先端のスイッチを押せば、5秒で爆発する。局部的ではあるが、おたくが今投げた手榴弾の数倍の威力はあるぜ」
コブラ「しかし、ヤツの懐に入ってそいつを爆発させる隙がない。…だが、君なら出来るんだろう?ほむら」
コブラ「時間を止めて動ける、君ならな」
ほむら「!!!!」
【ブラックホール生成完了まで、あと、5分です】
ほむら「…気づいていたの?私の能力に」
コブラ「それ以外に説明がつかないからさ。俺の目に見えない動きなんて、そう易々と出来るもんじゃない」
コブラ「魔法少女にはそれぞれ能力がある。マミは拘束系の魔法だし、さやかは回復が得意なようだな。…瞬間移動をするだけの能力かと思ったが、それじゃあさっきの銃弾や手榴弾の説明がつかない」
コブラ「時間を止める…いや、時間を『操れる』と言った方が適切かな?それがあんたの能力だ、ほむら」
ほむら「…!」
マミ「やああっ!っ、はぁッ!!」
クリスタルボーイをひたすら銃身で殴り続けるマミ。押しているようにも見えるが…クリスタルボーイは、反撃をしようとしていなかった。
ボーイ「…成程。その辺りの賞金首やギンガパトロール隊員よりは余程有能と見える。こうして受けるダメージも、通常の人間と比べて段違いに強い。魔法による身体能力の向上か」
ボーイ「だが、それが限界のようだな…!!」
マミ「ッ!!」
クリスタルボーイはマミの銃を一瞬で掴み、身動きを取れなくする。瞬間、空いている鉤爪をマミの腹へと突き出し…。
ドォンッ!!
ほむら「!!」
ボーイ「ぐ、…ッ!」
見ればコブラはいつの間にかパイソンを抜き、クリスタルボーイに向け発射していた。間一髪のところ、クリスタルボーイは後ろに仰け反り、マミはその間に後ろへと下がる。
コブラ「ほむら。お前さんにしか頼めない事だ。…そいつをヤツの腹に埋め込んできてくれ」
ほむら「…」
ほむら「もし、嫌だと言ったら?」
コブラ「… … …」
ほむら「正直に言うわ。私が此処へ来たのは、まどかの悲しむ顔が見たくなかったから。美樹さやかを失えば、きっとまどかの心に大きな穴がきっと空いてしまう」
ほむら「でも、私だって命は大事よ。私がこの葉巻型の爆弾を、アイツの身体に埋め込んできて、どうするの?アイツの身体がそれより頑丈だったら?」
ほむら「私はまだ…生きて達成する使命がある。こんなところで死ぬわけにはいかない。私には、助けるべき人がいる」
ほむら「ここで私が逃げ出したら、どうするの?コブラ」
コブラ「…いいや、アンタはやってくれる。俺はそう信じている」
ほむら「信じる?私を?…何故?」
コブラ「アンタには、助けるべき人がいる。それと同時に…アンタには助けが必要だからだ」
ほむら「…!」
コブラは葉巻から紫煙をゆっくり吐き出し、不敵に笑いながらゆっくりと立ち上がる。サイコガンをクリスタルボーイに向けて構えると、その横で茫然としているほむらに向けて、視線は合わせず語りかけるのだった。
コブラ「ほむら、アンタは何かを抱えている。俺にはそれが何かは分からない。だが君はずっとそれに立ち向かっている。…俺が君と出会った時からだ」
コブラ「そしてその『何か』に怯え…助けを求めている。だから俺は、全力でアンタのそれを手伝うつもりさ」
ほむら「…何故、それを…!!」
コブラ「君は隠しているつもりでも、俺には分かるのさ。…女に嘘は何度もつかれてきたが、女の瞳に嘘をつかれた事は…ほとんどないからな」
ほむら「… … …」
コブラ「さやかを助け、全員でその『何か』に立ち向かう。君はその『何か』を知っているようだが…今はまだ何も話さなくてもいい。少なくとも、あのガラス人形を倒すまではな」
コブラ「だが…俺は守ってみせる!君を…君達をっ!!何があっても、守り抜いてみせる!!」
ほむら「…!!!!」
ボーイ「…少し油断をしたな。…次はないぞ、コブラ…!」
頭に弾丸の穴を開けながらも、クリスタルボーイは立ち上がり、こちらを睨む。
ボーイ「死ねぇぇ、コブラァァァーーーッ!!」
鉤爪を振りかざしながら、全力でコブラに向けて疾走してくるクリスタルボーイ。サイコガンの連射も構わず、コブラに向かう。
ほむら「…分かったわ。…あなたを信じるという事は『この時間軸では』…愚かなのかもしれない。…それでも…皆を、まどかを助けれられる可能性があるのなら…私は貴方に賭けてみたい」
ほむら「…不思議ね、少しだけ…そんな衝動に駆られたわ」
コブラ「…感謝するぜ、ほむら」
ほむら「貴方が礼を言う必要はないわ…コブラ」
ボーイ「ハァッハッハッハァーーーッ!!」
完全にコブラを捉えたと確信したクリスタルボーイは、笑いながら突進をしてくる。
カチリ。
だが、次の瞬間。クリスタルボーイの足が止まった。
ボーイ「…何…?」
特殊偏光クリスタルに埋め込まれた葉巻のタイマーは『00:00』と記されていた。
ドゴォォォォォ―――――――――!!!!
大きな爆発がクリスタルボーイの身体を包むように起こった。
ボーイ「うぐぉぉぉぉぉッ!!??」
僅かに、クリスタルの破片が辺りに散らばった。
気付けば、ほむらは、コブラの真後ろにいた。コブラはそれを見ると、にぃ、と笑顔を見せて再びクリスタルボーイに向き直る。
コブラ「美人に見とれて時間を忘れたか!クリスタルボーイッ!!」
サイコガンの連射。クリスタルボーイの特殊偏光クリスタルは先程の爆発で胸部に風穴があき、防御ができない状態となっていた。
正確にその穴を通るサイコガンの弾道は内蔵のような金属を次々と破壊していく。
ボーイ「!!!!」
コブラ「マミッ!!今だ、アレをもう一度やってやれッ!!」
マミ「…!分かったわ…。…今度は、外さない!!」
クリスタルボーイが怯んでいる間に、マミはもう一度魔力を集中する。 再び巨大な砲身が現れ、銃口をもう一度、クリスタルボーイの方向へ構えた。
マミ「『ティロ・フィナーレ』ッッッ!!!」
爆音のような銃撃音が貨物室に響く。マミの頭身ほどもある巨大な弾丸は、ゆっくりと正確にクリスタルボーイの方へ突き進んでいき、そして…。
ボーイ「ぐわああああああああああああああッッッ!!!」
ドオォォォォォォォォォォンッッ!!!
まるで星空の煌めきのように、粉々になったクリスタルが辺りに散らばった。
クリスタルボーイの身体は木端微塵となり、残骸の破片が転がっているのみとなっている。
マミ「…やった…!あはは…た、倒した…!」
ほむら「…」
コブラ「2人とも、いい仕事だったぜ。100点満点だ」
三人が笑顔を浮かべた瞬間、船のアナウンスが無常にも時を告げる。
【ブラックホール、生成完了まであと1分30秒。船員は安全な場所で待機をしてください。繰り返します…】
マミ「…!!」
ほむら「…くッ…!時間が…!」
その時、貨物室の風穴から声が聞こえた。見れば、エアーバイクに乗ったレディが宇宙船と並走している。レディはそこからロープを垂らした。
レディ「皆、急いでロープに掴まって!タートル号は離れた場所で避難しているわ、早くしないとブラックホールに巻き込まれる!!」
マミ「で、でもまだ…美樹さんのソウルジェムが!!」
ほむら「…私が行くわ。もう一度、時間を…」
コブラ「いいや、俺が行く。ほむら、入ったことのない未来の宇宙船の中から一つの宝石を探し出せるかい?」
ほむら「…で、でも…」
コブラ「こういうのは俺の専門さ。…マミ、ほむら!先に脱出しろ!俺は後から行くぜ!」
そう言ってコブラは、貨物室の先のコクピットへと走っていく。
マミ「!!コブラさんっ!!」
コブラ「ちっ…あの野郎、厄介な仕事残してくれたぜ…。宝探しゲームのつもりか?」
船体が大きく揺れはじめる。それは、ブラックホールがもうすぐ出来上がる事を示していた。
コブラ「さぁーてと…どこに隠れてるのかな?ソウルジェムちゃんは…!」
宇宙船、コクピット。閑散とした場所ではあるが、コクピットはかなり広い。一見しただけでは青い宝石は見当たらないようだ。
【ブラックホール、生成完了まであと1分です。船内の乗組員は衝撃に備え…】
コブラ「ちぃーっ!分かってますってんだ…!…どこだー?どこだ、ソウルジェムは!」
操縦席、椅子の下、機器類、あらゆる場所を探すが、見当たらない。そうしている間にも刻々と時間は過ぎていき…。
コブラ「ちくしょー!あのガラス人形め、最後に罠しかけやがって…!どこだよ、どこにあるんだっ!?」
コクピットのモニター。船体の眼前には、既に超小型のブラックホールが誕生しかけている。船はいっそう揺れ始め、今にもそれに吸い込まれそうだ。
【ブラックホール、生成完了まであと10秒です。9、8、7…】
コブラ「くそーっ!!間に合わね… …ん?」
操縦桿にやけくそで腕を叩きつけた瞬間… 壊れた機械の中に煌めく、一つの青い光。操縦桿はダミーで、実は空の鉄箱だったのだ。
【4、3…】
コブラ「こいつかァ――ッ!!」
急いでコブラはそれを取り出し、貨物室へと走る。が…。
【2、1…0。異次元へのワープを開始します】
コブラ「うおおおお―――――ッ!!」
無常にも、船体はゆっくりとブラックホールに吸い込まれていく。
轟音を立ててブラックホールに吸い込まれていく、クリスタルボーイの宇宙船。
エアーバイクに乗り込んだレディ、ほむら、マミの3人はただそれを見送る事しかできなかった。
マミ「あ、あ…!」
ほむら「…!」
レディ「…」
マミ「そんな…っ!間に合わなかったの…!元の世界に、戻ってしまったのというの…!?レディさんだって、この世界にまだいるのに…!」
マミ「そんな…!!!」
ほむら「…」
ほむら(…私を、まどかを助けると…約束したのに…)
レディ「…ふふ、それはどうかしら」
マミ「え?」
レディ「私は彼と長い付き合いだけれど…彼が、やり始めた事を途中で放棄した事は、一度もないわ」
レディ「…たとえ、そこが見知らぬ世界の中だろうとね」
ガキィィンッ!!
その時、エアーバイクの機体に突き刺さる、ワイヤーの先の刃。
マミ・ほむら「!!」
そのワイヤーの先に…ウインクをしながら手を振る、1人の男の姿があった。
コブラ「おーい!レディ、早く降ろしてくれーっ。俺は高所恐怖症なんだよーっ」
力無いさやかの右手に、コブラはそっとソウルジェムを握らせた。
まどか、ほむら、マミ、杏子…コブラ、レディ…そして、キュウべぇ。全員で、時間が止まったかのようにさやかの様子を見る。
祈るような、視線の数々。
…そして。
さやか「…あれ…?」
ゆっくり起き上がるさやか。何が起きたのか分からない、という表情で辺りを見回す。
さやか「…あれ、あたし…どうしたの…?」
まどか「さ…さやか、ちゃん…っ…」
マミ「…美樹さんっ…!!」
さやか「ま、まどか…?マミさんも…なんで、泣いてるの…?あれ?あれ?」
まどか「うわぁぁぁあああんっ!!」
マミ「…っっっ!!」
大声を出して泣きながらさやかに抱きつく、まどか。そしてその2人を包むように優しく肩に手を置く、マミ。
少しだけ、微笑んで…ほむらもその様子を黙って見ていた。
コブラ「仲間、か」
レディ「どうしたの?コブラ」
コブラ「…俺達が失ってきたものを…かの女達に失わせたくはない。…そう思ってね」
コブラは葉巻に火をつけると、満足気に笑みを浮かべ…月に向けて煙を吐いた。
―― 次回予告 ――
さやかのソウルジェムを取り戻したのはいいものの、その秘密は皆にバレちまった!どうやらキュウべぇの野郎、契約と同時にかの女達の魂をソウルジェムに移し替えちまったらしい。タチの悪い詐欺だぜ。
ショックを隠し切れない魔法少女達。不安になっちまうのも無理はないってもんだよ。特にさやかにゃ、色々ワケがあるみたいだね。
そんな矢先、新たな魔女が出現する。触手がうねうね、気持ち悪いの何の。こんな中戦えっていうのも無茶な話かもしれないが…しかし、俺が必ずあんた達を守ってみせるぜ!
次回、【魔女に立ち向かう方法】で、また会おう!
さやか「…騙してたのね、あたし達を」
QB「不条理だね。ボクとしては単に、訊かれなかったから説明をしなかっただけさ。何の不都合もないだろう?」
マミ「…納得出来ないわ。…キュウべぇ、何故…教えてくれなかったの?ソウルジェムに…私達の魂が移されていた、だなんて…!」
QB「君からそんな事を言われるのは心外だね。魂がソウルジェムに移ったのは、マミ、君が魔法少女になったからだよ?失いかけていた命を救うことを望んだのは君自身じゃないか」
マミ「私の事はどうでもいいわ。…美樹さんの立場はどうなるの?彼女は、叶えたい願いを叶えただけ…それだけなのに」
QB「『それだけ?』」
QB「戦いの運命を受け入れてまで、叶えたい願いがあったのだろう?さやか、君は魂がソウルジェムに移ると知っていたのなら、願いは叶えなかったのかい?」
さやか「…!」
QB「戦って、たとえその命が尽きようとも、恭介の腕を治したかった。それならば肉体に魂が存在しない程度、どうという事はないだろう?」
マミ「キュウべぇ、貴方…!」
QB「恨まれるような事をした覚えはないよ。君たち人間は生命の消滅と同時に魂までも消えてしまうからね。ボクとしては、少しでも安全に戦えるように施しをしているつもりなのだけれど」
コブラ「… … …」
第6話「魔女に立ち向かう方法」
クリスタルボーイを倒した、翌日。
マミのアパート。マミ、さやか、コブラの三人はキュウべぇを問い詰めるべく、そこに集まっていた。魔法少女の存在とは、ソウルジェムとは何か。その願いの代償として失った物を、確かめるべく。
QB「マミ、さやか。君たちが今日まで無事に戦ってこれたのは、ソウルジェムのおかげなんだよ」
QB「肉体と魂が連結していないからこそ、痛覚を魔力で軽減して、気絶するような、ショック死をしてしまうような痛みをも君たち魔法少女は耐える事が出来る」
QB「本来、君たちが受けるべき痛みを今ここで再現してみせようか?」
マミ「…っ…!」
コブラ「やめときなよ。そんな事再現したって何の得にもなりゃしない」
QB「そうかな。マミもさやかも、現実をまだ受け入れていないからね。魔法少女として戦う事の意味を」
さやか「… … …」
コブラ「それじゃあ、その『意味』とやらを教えるのがアンタの目的かい?冗談よしてくれよ、お前はかの女達の教師でも何でもない。ただ契約を結ぶだけの存在の筈だ」
QB「イレギュラーの君にとやかく言われる必要も感じないね」
コブラ「おおっと、触れちゃいけない話題だったかな?それとも、アンタには契約を結んで魔女を倒す以外に何か目的でもあるのかい?」
QB「…」
QB「君は、何者なんだい?」
コブラ「言わなかったかな?俺は、コブラさ」
コブラ「マミ、俺はちょいと野暮用があるんで失礼するぜ。君のお茶はいつも最高の味だ」
マミ「…えぇ。…ありがとう、コブラさん」
コブラ「…さやか」
さやか「… … …」
コブラ「アンタが叶えた願い。…それに賭けたお前さんの思い。しっかり思い出すんだ」
コブラはそう言い残して、マミの部屋から出ていく。
さやか「…あたしの…願い…」
―― 学校。
和子「はーい、今日は…美樹さんは欠席、ね。それじゃあ、HRを始めましょう」
まどか「…」
まどか(さやかちゃん…大丈夫かな…。マミさんも学校来てないみたいだし…。…やっぱり、みんな…ショック、なのかな…)
まどか(わたしに出来る事って…何も、ないのかな?…ずっと見ているだけで、臆病で…っ…)
ほむら「… … …」
廃墟と化した教会。ステンドグラスから漏れる光を浴びながら、1人俯いて考え事をする杏子。
杏子「…」
杏子「なんなんだよ、一体」
杏子(意味が分からねェよ。アタシはただ…魔女を狩って、自分のためだけに…ただ、それだけのために戦ってきた筈なのに…)
杏子(ワケのわからねー男は出てくるし、魔女じゃない変な化け物は出てくるし…アタシは、もう死んで…ソウルジェムがアタシの魂になってるって…?)
杏子「…くそ…っ!こんな…こんな…!」
杏子は自らの赤色のソウルジェムを忌まわしげな瞳で見つめる。
それでも、その宝石をたたき割る事は出来ない。それが自らの命であると、知っているから。
杏子「…なんで…」
杏子(なんで、アタシは…こんなに悲しくて、悔しいんだよ…っ!…畜生…っ!)
杏子「くそ…アタシらしく、ないな…」
杏子は立ち上がり、廃墟からそっと出ていく。
――― その夜。
ピンポーン。
恭介父「はい、どなたでしょうか?」
恭介父「…ああ、貴方は確か…病院の方で、恭介の演奏を…」
恭介父「そんな、わざわざ有難うございます。…どうぞ、上がってください。恭介からも貴方のお話は聞いています。…その節ではお世話になったそうで」
恭介父「恭介は部屋にいますから、案内しますよ。…え?必要ない?そ、そうですか…?それでは…」
コンコン。
恭介「…?父さん?」
松葉杖をつきながらドアまで近づき、自分の部屋のドアをゆっくり開ける恭介。
恭介「…!あなたは、確か…」
コブラ「よー、元気かい?」
コブラは花束を恭介に手渡すと、にぃ、と笑った。
コブラ「快気祝いに来たぜー。おー、いい部屋住んでるじゃねーかー。どれ、お宅拝見っと」
恭介「そ、それは…どうも…」
恭介「酒臭ッ!!」
一方、同時刻。杏子に呼び出され、森林の中を歩くさやかと杏子。
一度は、対峙した相手。だが、心に思う事はお互いに同じなのであろう、虚ろな瞳で杏子の後をついていくさやか。
そして辿り着いたのは、廃墟と化した教会であった。
杏子「アンタは、後悔してるのかい?こんな身体にされた事」
さやか「…」
杏子「アタシは別にいいか、って思ってる。なんだかんだでこの力のおかげで好き勝手できてるんだしね」
さやか「…あんたのは自業自得でしょ」
杏子「そう、自業自得。全部自分のせい、全部自分の為。そう思えば、大抵の事は背負えるもんさ」
さやか「…それで、こんなところに呼び出して何の用?」
杏子「ちょいとばかり長い話になる。…食うかい?」
さやかにリンゴを投げる杏子。一度はそれを受け取るが…床に投げ捨てるさやか。
その瞬間、杏子はさやかの胸倉を掴む。
杏子「…食い物を粗末にするんじゃねぇ。…殺すぞ」
さやか「… … …」
杏子「…ここはね。…あたしの親父の教会だったんだ」
杏子は、静かに、しかし強い口調で語り始めた。誰に言うでもない、まるで独り言のように虚空を見ながら話す杏子の目は、とても悲しく、しかし強い瞳であった。
―― 佐倉杏子の、父親。幸せだった筈の家族。
あまりに正直で素直であったために、世間から淘汰された神父の話。しかし、それでも自分に正直であり…家族も、そんな父親を責めはしなかった。
貧しくても、その日の食糧を求める事すら苦しくとも、佐倉杏子の家族はしっかり家族として機能していたのだった。
杏子「…皆が、親父の話を真面目に聞いてくれますように、って。それがあたしの、魔法少女の願い」
その願いは叶えられ、杏子には魔法少女としての枷が与えられた。それでも、彼女は構わなかった。自分さえ頑張れば、家族は幸せになれるのだと…そう信じていたから。
―― しかし。
父親に、杏子の魔法はバレてしまった。偽りの信者、偽りの信仰心、全てが魔法の力であるものだと。
―― そして、杏子の魔法は、解けてしまったのだった。
杏子の父親、母親、幼い妹すらも巻き込んだ、無理心中。杏子の願いは、家族の全てを壊してしまったのだ。
杏子「アタシはその時誓ったんだ。もう二度と…他人のためにこの力は使わない、って」
杏子「…奇跡ってのは、希望ってのは…それを叶えれば、同じ分だけ絶望が撒き散らされちまうんだ」
杏子「そうやって、この世界はバランスを保って、成り立っている」
恭介「…あの時は、本当に有難うございました。…自暴自棄になっていた僕を、止めてくれて。…あの時、コブラさんが止めてくれていなかったら…」
コブラ「なぁ、恭介。奇跡ってヤツはどうやって起きるんだろうな?」
恭介「…え…」
窓辺に腰かけて、コブラは笑顔を浮かべながら呑気にそう語りかける。まるで独り言のように、虚空を見ながら。
恭介「…どうやって、って…それは…」
コブラ「アンタのその腕、医者からも治癒は絶望的なんて言われてたんだろ?今こうして動いて、しかもバイオリンが弾けるまで回復するなんて奇跡以外の何物でもない」
コブラ「そいつを不思議に思ってね。恭介、アンタ自身はどう考えてるのかちょいと世間話に来たんだ」
恭介「…僕自身も、本当に偶然とは思えないのは確かです。神様が僕の願いを叶えてくれた…なんて考えるのも、おこがましい話ですし」
コブラ「神様、ね」
コブラ「その神様って奴が身近にいたのかもしれないぜ?…アンタの場合」
恭介「…え?」
コブラ「病室にいて、ずっと落ち込んで、ふさぎ込んでいたアンタを、神様とやらがずっと見ていてくれたんじゃないかな」
恭介「… … …」
コブラ「その神様ってヤツぁ、お前さんが想像してるような白髪の老いぼれ爺なんかじゃないと思うね。もっとチンチクリンで、自分に馬鹿正直なクセに奥手で恥ずかしがり屋で、それでも頑張ってアンタのために祈りを叶えてくれた」
恭介「…さや、か…?」
コブラ「奇跡って奴は、叶えるのにそれだけの対価が必要だと俺は思ってるのさ。…ひょっとしたら、アンタの奇跡のためにこの世界で頑張ってるヤツが1人いるんじゃないのかな。ま、あくまで俺の考えだがね」
さやか「何でそんな話を私に?」
杏子「アタシもあんたも、同じ間違いをしているからさ。だから、これからは自分のためだけに生きていけばいい。…これ以上、後悔を重ねるような生き方をするべきじゃない」
さやか「… … …」
杏子「もうあんたは、願い事を叶えた代償は払い終えているんだ。これからは釣り銭取り戻す事だけ考えなよ」
さやか「…あたし、あんたの事色々誤解していたのかもしれない。…その事はごめん、謝るよ」
さやか「でも、一つ勘違いしている。…私は、人の為に祈ったことを後悔なんてしていない。高過ぎる物を支払ったとも思っていない」
さやか「その気持ちを嘘にしないために、後悔だけはしないって決めたの」
杏子「…なんで、アンタは…」
さやか「この力は、使い方次第で素晴らしいものに出来る。…そう信じているから」
さやか「それから、そのリンゴ。どうやって手に入れたの?お店で払ったお金は?」
杏子「…!」
さやか「言えないのなら、そのリンゴは貰えないよ」
さやか「あたしは自分のやり方で戦い続ける。…それが嫌ならまた殺しに来ればいい。もうあたしは負けないし…恨んだりもしない」
そう言い残し、静かに教会から去っていくさやか。
杏子「…ばっかヤロウ…」
恭介「…はは、まさか…」
コブラ「そう、まさかなんだよ。アンタの身体に起こった奇跡は、単なる偶然。誰に感謝するわけでもない、これからは自分のために、自分のバイオリンのためだけに生きて行けばいい。なんたってあんたは天才ヴァイオリニストなんだからな」
恭介「… … …」
恭介「それじゃあ…まるで、僕が最低の人間みたいじゃないですか」
コブラ「そう思うのかい?じゃあアンタの腕が治ったのは誰かのおかげなのか?それとも、本当に単なる偶然なのか?」
恭介「…貴方は、何を言いに来たんですか?」
コブラ「言っただろ?俺は世間話をしにきたんだよ。機嫌を損ねちまったかな?」
恭介「… … …」
コブラ「俺はバイオリンの音色に興味はないからなぁ。どうせ聞くんなら美女の甘い囁きを耳元で…なんてね」
コブラ「しかし、この世で一番、アンタのバイオリンの音色を聴きたがっている人間がいる。アンタの家族や親族より、ずっと強い気持ちでさ。…アンタはそれに応えてやらなきゃいけない」
コブラ「アンタに起こった『奇跡』を、アンタがどう考えるのかによるかだけどな」
恭介「… … …」
コブラ「それじゃ、俺は失礼するぜ。こう見えて忙しいんだ。デートの約束とかね」
恭介「… … …」
恭介「…待って、ください…!」
コブラ「…」
恭介「…もう少しだけ…もう少しだけ、貴方の話を聞かせてください。…考えたいんです」
コブラ「…ああ」
コブラ「それじゃあ、ちょいとした身の上話をさせてもらおうかな。今日の予定は全部キャンセルだ」
―― その翌日。親友の仁美に呼び出されたさやかは、ファーストフード店に来ていた。テーブル越し、まるで対峙をするかのような、仁美の強い視線。
そして、神妙な面持ちで語り始める。
仁美「ずっと前から…私、上条君の事をお慕いしておりましたの」
さやか「…!!」
さやか「…そ」
さやか「そうなんだぁ…!あははは、恭介のヤツ、隅に置けないなぁ」
仁美「さやかさんは、上条君とはずっと幼馴染でしたのよね」
さやか「あ、ま、まぁ…腐れ縁っていうか、なんていうか…」
仁美「…本当に、それだけですの?」
さやか「…!」
仁美「…もう私、自分に嘘はつかないって、決めたんですの。…さやかさん、貴方はどうなのですか?」
さやか「どう、って…」
仁美「本当の自分と、向き合えますか?」
仁美「―― 明日の放課後に、私、上条君に思いを告白致します」
仁美「―― それまでに、後悔なさらないように決めてください。上条君に、思いを伝えるかどうかを…」
―― その夜。自分の家を出て魔女退治に出かけようとするも、思考が回らず立ち止ったままのさやか。
さやか「…」
まどか「…さやかちゃん」
さやか「…!まどか…」
まどか「付いていって、いいかな…?…マミさんにもコブラさんにも言わないで魔女退治に行くなんて…危ないよ…?」
さやか「…あんた…なんで、そんなに優しいかな…っ…。あたしに、そんな価値なんて、ないのに…っ、ぐ…!」
まどか「そんな事…!」
さやか「あたし、今日、酷い事考えた…っ…!仁美なんていなければいいって…っ…!恭介が…恭介が、ぁ…仁美に、取られちゃうって、ぇ…えぐっ…!」
まどか「…」
そっと近づき、さやかの身体を優しく抱くまどか。
さやか「でも…あた、し…っ!なんにも出来ないっ…!ひぐっ…!だってもう死んでるんだもん…ゾンビなんだもん…っ!」
まどか「さやかちゃん…」
さやか「こんな身体で、抱きしめてなんて…っ、言えないよぉぉ…!!」
その時、さやかとまどかに近づく1人の影があった。
まどか「…! …あなたは、あの時の…」
レディ「…少し、いいかしら?美樹さやかさんと、鹿目まどかさん。…お届けものに来たわ」
近くにあったベンチに座った、さやかとまどか。さやかが泣き止み、落ち着くのを待ってからレディは静かに話し始める。
レディ「突然でごめんなさい。…まどかさんとは少しだけ顔を合わせたけど、さやかさんは…知らなかったわね、私の事。私はコブラから貴方達魔法少女の事は聞いているのだけれど」
さやか「… … …」
レディ「こんな恰好だから警戒するのは当たり前よね。…私はコブラの相棒、レディ…アーマロイド・レディというの」
さやか「…やっぱり変な名前」
レディ「ふふ、そうね。…こんな時に突然で驚くわよね。コブラがどうしても、私に、貴方達に届け物をして欲しいと言うから」
まどか「…届け物、って…?」
レディ「上条恭介君からの預かりものがあるわ」
さやか「…!!!」
レディはそう言って、小さな封筒を一つ、取り出して見せた。
レディ「受け取ってもらえるかしら?」
さやか「… … …」
まどか「さやかちゃん…」
しかし、さやかの表情は優れず、レディの持つ封筒に手を差し伸べる様子も無い。
レディ「…それから、コブラからもう一つ頼まれごとをしているの」
レディ「昔話を、さやかにしてやれ、ってね」
さやか「…え…?」
レディ「退屈な話なら聞かなくていいわ。この封筒だけ受け取ってくれてもいい。ここから逃げ出してもいい。…もし良かったら、そのままベンチに座っていてくれないかしら」
さやか「… … …」
さやかは動かず、俯いたままでいる。まどかはその身体をそっと支えたままだった。
レディ「…昔、あるところにとてもヤンチャなお姫様がいたの。祖国を怪物に滅ぼされ、復讐に燃えるあまりにその怪物を自ら倒しに行った…そんな無茶をした、バカなお姫様よ」
レディ「でもそのお姫様の力じゃあ、とてもその怪物には敵わなかった。…でもね、ある人が、私を助けてくれたの」
レディ「祖国を滅ぼされ、仲間も失い…全てを失った私を、その人は守ると言ってくれた。…何があっても守る、何があっても殺させやしない、って…」
まどか「…それって、レディさんと、コブラさん…?」
レディ「…ふふふ、どうかしら?」
レディ「その人は、全てを…命を賭けて、時間さえも飛び越えて…お姫様を助けてくれたわ。だから、お姫様も…その人に一生ついていくと決めたの」
さやか「… … …」
さやか「素敵な話だね。…でも、知らない人からそんな話を聞いても…あたしは…」
レディ「…そうだと思うわ。私だって不思議だもの。何故こんな話をコブラが私にさせているのか」
レディ「でも…なんとなく…私はね、そのお姫様とさやかさんが似ていると思うの」
さやか「…あたしと…?」
レディ「お姫様とその人との幸せな時間はあったわ。…でも、そう長くは続かなかった。 お姫様はある日、瀕死の重傷を受けてしまったの。…銃撃戦があって、ね」
レディ「お姫様には一つの選択肢があったの。そのまま死ぬか…もしくは、全く別の身体に魂を宿して、新しい人生を送るか」
さやか「…!」
―― 昨日。上条恭介の部屋、コブラと恭介の会話の続き。
コブラ「俺には1人の相棒がいてね。親愛なる最高のパートナーが」
コブラ「そいつは以前、瀕死の重傷を負った。…医者に言われたよ。奇跡は起きない。このまま死ぬのを待つしかない、とね」
恭介「…」
コブラ「一つだけ、彼女が助かる道があった。…まぁ、嘘だと思うかもしれないが聞いてくれ。…全く別の身体に、その相棒の魂だけを移し、生まれ変わる…そんな事が出来たのさ」
恭介「…作り話、ですか?」
コブラ「そう思ってくれて構わないさ。作り話なら、俺もなかなかいい小説家になれそうだろ?」
コブラ「話の続きだ。…だが、俺は相棒がそんな身体になる事は望まなかった。俺はそいつを愛していたし、彼女だってそんな事は望まないと思っていた」
恭介「…」
コブラ「だがかの女は、新しい身体に自分の魂を注ぎ、生まれ変わった」
コブラ「以前のように愛されなくてもいい。ただかの女は、俺と一緒にいる事だけを望んだ。そのためなら、例えその身体が機械の身体になろうとも…ってね」
恭介「…素敵な話ですね」
コブラ「そう思うかい?そりゃ良かった。恭介、アンタと俺は気が合いそうだ」
恭介「気が合う?」
コブラ「そうさ。俺はその時、かの女と共にずっと旅を続けていくと心に誓ったからさ」
コブラ「何を犠牲にしてもいい。どんな事をしてもいい。かの女が俺を愛してくれるのなら、かの女がどんな身体になろうと俺は全てをかの女に捧げようとな」
恭介「… … …」
コブラ「そこに、愛するとかそういう概念はない。俺は相棒に出来る事を全てする。相棒も同じ事を俺にしてくれる。同じ目的を持ち、同じ『道』を進む…。いい関係だろ?」
コブラ「…恭介。アンタのバイオリンには、そういう『道』が築けるのさ。世界中、全ての人にその音色を聞かせてやれるように…なんて道がな」
恭介「…ええ。僕は…たくさんの人に、自分の音色を届けたいと思っています」
コブラ「へっへっへ」
コブラ「だったら、まず…その音色。聞かせてやるべき人がいるはずさ。…『相棒』がね」
恭介「…!」
レディ「お姫様は…新しい身体。おおよそ人間とは言えない、機械の身体に自分の魂を移したわ」
レディ「彼に愛して欲しいとは望まなかった。…ただ、かの女はずっと旅がしたかったの。その人と過ごす時間…その人の進む道を同じように進んでいくのが、何よりも素敵な時間だったから」
さやか「… … …」
レディ「そう思ったのは、彼を信頼していたから。どんな身体になろうとも、約束をずっと守ってくれると信じていたから。私を、ずっと守ってくれるという…ね」
レディ「…ねぇ、さやか。貴方にとっての恭介という人は、どんな人なの?」
さやか「…恭介…」
レディ「貴方は、自分が愛される資格がない…そんな風に考えている。…じゃあ恭介君は、そんな貴方をすぐに見捨ててしまうのかしら」
レディ「貴方が愛した彼は、そんな人?」
さやか「…!」
レディ「…誰かの傍にいたいと思うには、条件があるの。それは、何があってもその人を信じる事。どんな事があっても自分を見捨てない。必ず傍にいてくれる…。自分がそう信じる事が、何よりも大切」
レディ「コブラと、私。…さやかと、恭介。…ふふ、本当に似ていると私は思うわ」
レディ「だから、貴方にお届けものよ」
レディは封筒から一枚の紙を取り出し、さやかの掌の上に置いた。
まどか「…!それって…」
さやか「…!」
紙には、恭介の字が記してあった。リハビリ中でまだ震えた字体であったが、力強く握った黒のインクで、しっかりと書かれてある。
【明日の放課後、僕の家でもう一度コンサートを開かせてください。僕をずっと信じてくれていたさやかに、聞いて欲しい曲があります。 ―― 上条恭介】
さやか「!!!!」
レディ「…こんな素敵なコンサートチケット、世界中どこを探しても見たことないわ。…幸せね、さやかは」
さやかは声にならない泣き声をあげながら、大粒の涙を流した。
まどかも、その身体を支えながら、微笑み、泣いた。
マミ「…!これは…」
マミのソウルジェムが俄かに光って反応を示す。
コブラ「魔女か?」
マミ「そうみたい…近いわ!大変よ、美樹さん!近くで魔女が生まれ… …」
ガサッ。
ソウルジェムの反応に慌てたマミは、思わず近くの茂みから身体を出してしまう。
マミ「… あっ」
さやか「… えっ」まどか「… あっ」
さやか「マミさん!それに…コブラさんも…!」
コブラ「あ、ははは、よぅさやか、まどか。おや、レディもいるのか。奇遇だねー、いや、たまたま通りかかってさ、ホントホント」
マミ「そ、そうなの!偶然通りかかってたまたま2人を見つけちゃって!それで、ええと…べ、別に盗み聞きしてたわけじゃないのよ!本当に!」
さやか「…マミさん、嘘ついてるのバレバレですよ…」
マミ「…あ、あはは…そうね。えーと… …ごめんなさい」
さやか「… ぷっ。あ…アハハハハハッ!マミさん可愛いーっ!」
まどか「ティヒヒ」
コブラ「はっはっはっは!」
マミ「うううう…」
顔を赤くするマミ。照れる顔なんてあまり拝めないもので、さやかもまどかもコブラも、その顔に笑ってしまう。
さやか「…魔女が近いんですね。行きましょう、マミさん、コブラさん。私の戦い方…もう一度、見ていてください!」
ベンチから立ち上がったさやかは、ソウルジェムを手に握りしめ、力強く握りしめた。
まどか「…さやかちゃん、大丈夫なの…?」
さやか「…まどか。もう…心配いらないよ。あたしは一人なんかじゃない。それが…やっと分かったから」
さやか「恭介、マミさん、コブラさんにレディさん…まどか。それにアイツ…佐倉杏子だって。みんな…あたしの事心配してくれてる。だからあたしは、その期待に必ず応える」
さやか「魔法少女さやかちゃんは伊達じゃないってトコ、見せてあげなくちゃね!」
さやかはまどかの方を振り向き、最高の笑顔を見せる。その笑顔に、まどかも安心をしたようだった。
マミ「…それじゃあ、行きましょう!」
レディ「さやか」
さやか「…レディさん。…ありがとうございましたっ」
レディ「どういたしまして。…彼を信じるのよ。そうすれば、きっと彼もそれに応えてくれるのだから」
さやか「…はいっ!!」
さやか、マミ、コブラ、まどかは駆け出し、その場を去る。
ほむら「いいのかしら。先に獲物を見つけたのは貴方よ。佐倉杏子」
杏子「…アイツのやり方じゃ、グリーフシードの穢れが強いからな。獲物は魔女だ。今日は譲ってやるよ」
ほむら「意外ね。貴方が他人にグリーフシードを譲るなんて」
杏子「ふん。…たまにはこういう気まぐれも起きるのさ」
ほむら(…共闘。グリーフシードの奪い合いは時に魔法少女同士の抗争を生み、それが全員の身を滅ぼした時間軸も存在する)
ほむら(佐倉杏子と、美樹さやか…。相性の悪い2人だとは思っていたけれど、この世界では…)
杏子「今日は見学だ。新人の戦い方、見届けてやる」
ほむら「…そうね」
コブラ「こいつは…」
マミ「…鹿目さん、少し下がっていて。…なかなか手ごわそうだわ」
まどか「!は、はいっ!」
現れた『影の魔女』は今まで出会った魔女の中でも巨大な部類であった。本体こそ人間と同サイズの影であるものの、それを取り巻くような無数の木の枝はまるで主を守るように生えている。
刃物のように鋭利な枝の先は、今にも三人に襲い掛かりそうに蠢いていた。
さやか「い、意気込んだのはいいけど、…あの枝はちょっと厄介そうだなぁ…。マミさん、どうしましょう…?」
マミ「そうね… 全部切り取っちゃうってのはどうかしら?」
コブラ「了解。庭師になれそうだぜ」
マミは単発式銃火器を宙に浮かせ、コブラは左腕のサイコガンを抜き、影の魔女に向けて構える。
コブラ「俺達があの盆栽の手入れをしてやる。見栄えが良くなったら本体を倒してくれ、さやか」
さやか「は、はい…!」
まどか「さやかちゃん、気を付けて…!」
さやか「! …うんっ!任しといて!」
マミ「それじゃあ…行くわよっ!!」
踏み込み、影の魔女に近づくマミとコブラ。領域への侵入者に対し、魔女は触手のような枝を次々と振り下ろしていく。
マミ「!!」
マミとコブラは立ち止り、自らに近づいてくる木の枝を次々と撃ち落していく。
目にも止まらない連射、しかも正確な一撃一撃は、次々と触手を撃ち落していく、が…。
コブラ「…!少しまずいな」
マミ「…この枝…っ、再生している…!?」
撃ち落した木の枝は一度は動かなくなるものの、少しの時間ですぐに再生を始めてしまっていた。襲い掛かる木の枝を落とすのが精一杯のマミとコブラは苦戦を強いられた。
コブラ「参ったな、キリがないぜ!」
マミ「くっ…一体どうすれば…!」
さやか「… … …!」
さやか「マミさん、コブラさん!…あたし、行きます!」
コブラ「何…っ!?」
さやか「でやああああああああッ!!」
銀に光る剣を前方に構え、さやかは影の魔女本体に突撃を開始した。それと同時に、木の枝はさやかに反応をし、襲い掛かろうとする。
マミ「!!!美樹さんっ、危ないわ!!」
さやか(このまま捨て身でいけば…皆を守れる!…例え、あたしのソウルジェムが穢れても…!)
さやか(… … …)
さやか(違う!)
さやか(大切なのは… 大切なのは、一歩を踏み出しすぎない、勇気…!一緒に戦おうって、マミさんは言ってくれた!…だから…!)
さやか「コブラさん!マミさん!一度だけ…一瞬だけ、道を作ってください!!…お願いしますッ!!」
マミ「…道…?」
コブラ「…! そうか…よぉし、分かった!マミ、俺らの周りは任せたぜ!」
マミ「え、ええっ!?」
コブラは自分の周囲の触手への攻撃を止め、影の魔女本体に向けてサイコガンを構える。自らの精神力をサイコガンに貯め、狙いを定めた。
コブラ「いくぞォォォーーーーーッ!!!」
大砲のようなサイコガンの一撃。影の魔女本体に向かっていく光は、周りを囲む木の枝を次々と消滅させていく。…それと同時に。
さやか「はああああーーーーーッ!!!」
コブラの作った『道』。触手が再生をする前にさやかはその残骸を踏み越え、影の魔女本体に向けて駆けていく。
そして眼前に現れたのは守るものを失った、影の魔女本体だった。
さやか「くらええええッ!!」
魔女本体に突き刺される剣。魔法で高められた攻撃は、一撃で魔女を葬り、消滅させた。
さやか「…あたしね、分かったんだ。…あたしが、何をしたかったのか」
まどか「…」
月夜が差し込む、ビルの屋上。夜風にあたりながら、さやかとまどかは空を見上げながら会話をしていた。
さやか「あたしが望んでいたのは…恭介の演奏をもう一度聞きたかった…それだけだったんだ」
さやか「あのバイオリンを…もっとたくさんの人に聞いて欲しかった。それで…恭介に、笑って欲しかったんだ。自分の演奏で、人を笑顔に出来るように…恭介自身も」
まどか「…さやかちゃん…」
さやか「…ちょっと悔しいけどさ、仁美じゃ仕方ないよ。あはは、恭介には勿体無いくらい良い子だしさ。きっと幸せになれる」
さやか「それに…あたしには使命がある。…まどかを、マミさんを…見滝原に住む皆を守るっていう、魔法少女の使命がね!」
まどか「でも…さやかちゃんは、恭介くんの事を…」
さやか「明日のアイツの演奏聞いたら…言ってやるんだ。アンタの事お慕いしてる子がいるって。…このさやかちゃんが、恋のキューピッドになってやろうっての!」
さやか「…それがどんな結果になろうと、後悔なんてしない。恭介にも、仁美にも…嘘をついて、生きていて欲しくなんかない」
さやか「皆…あたしの大切な人なんだ。あたしは、その大切な人たちにずっと笑っていてほしい。…だから、あたしも頑張れるんだ」
まどか「… … …」
さやか「まどか。勿論…アンタにも、ね!」
まどか「… うんっ!」
翌日の放課後、恭介の部屋。
恭介「… さやか。有難う、来てくれて」
さやか「… ううん。あたしも…ありがとう」
恭介「それじゃあ…聞いてくれるかな。…僕の、バイオリン」
さやか「… うん!」
上条家から、静かに『アヴェ・マリア』が流れる。まだ完璧な演奏とは言い難い。しかしそれは、世界中のどんな演奏より人を感動させられるような弦の音色であった。
その演奏を、外から聞いている仁美。
仁美「… … …」
仁美(…いい曲。とても静かで、力強くて…)
仁美(…私、諦めません)
仁美(でも、今は… もう少しだけ… この演奏を聴いていたいって、そう感じますの)
仁美(この音色を奏でさせられるのは… さやかさん、今は、貴方しかいないのですから…)
夕日が美しく差し込む、見滝原市。
その日はまるで、街全体を、一つの旋律が包み込んでいるかのようであった。
ほむら(… … …)
ほむら「ワルプルギスの夜まで…一週間」
ほむら(まどか…必ず貴方を、守ってみせる。…この時間軸で、全てを終わらせてみせる)
ほむら「…いよいよ…夜を迎えるのね」
ほむら(…巴マミ。美樹さやか。佐倉杏子。…コブラ。…そして、私)
ほむら(…終止符を打つ、必ず…!)
―― 次回予告 ――
さやかが一人前の魔法少女になれてさあこれからだって矢先に、暁美ほむらがとんでもない事を言い始めた!
なんでもあと何日かしたら超巨大な「ワルプルギスの夜」とか言う恐ろしい魔女が見滝原に出てくるんだとさ。かの女はそいつを倒すために、何度も時間を繰り返してきたって話だ。
か弱い女の子にそんな重荷を背負わせちゃいけないよな。俺達はワルプルギスの夜を倒すための作戦を練る事にした。
しかしそんな時、俺にビッグニュースが飛び込んできちまう!なんとレディが、元の世界に戻る方法を見つけちまったんだと!
どうすりゃいいのよ俺ぇー。
次回【夜を超える為に】で、また会おう!
コブラ「…それで、俺に何の用なんだい?」
夕日の差し込むビルの屋上。目を閉じ、微笑みながら葉巻をくわえたコブラと、それをじっと見つめる少女…暁美ほむら。
コブラ「お前さんから呼び出しなんて随分珍しいじゃないか。しかも、俺だけ。 好意は嬉しいがね、あと数年経ってから考えさせてもらうよ」
ほむら「… … …」
ほむら「『ワルプルギスの夜』が来るわ」
コブラ「… 何だって?」
ほむら「今までの魔女とは比べものにならない、超大型の魔女…。放っておけば、数時間…いいえ、数分でこの見滝原を滅ぼしてしまい…最悪の場合、更に広がるわ」
ほむら「規模は未知数。被害は地球全体に及ぶなんて話になっても、おかしくはない」
コブラ「…そんなものが来るって、どうして分かる?」
ほむら「…私には、もう一つ能力があるの」
ほむら「いいえ、正確には、私の能力は応用に過ぎない。…私の本当の力は、『時を操る事』。そして、それは…過去さえも操れる」
コブラ「…! ほむら、ひょっとしてお前さんは…まさか…」
ほむら「…ええ、何度も…数えるのも諦めるくらい、見てきているわ」
ほむら「この世界が滅びていく、その様を」
風が、一段と強く2人を吹き抜けていった、そんな気がした。
第7話「夜を超える為に」
さやか「…やっぱりここにいたんだ」
杏子「! …アンタ、どうして…」
以前会話をした、廃教会。そこへ足を運んださやかは、予想通り杏子と出会う事が出来た。
さやか「コレ、あんたに渡そうと思ってさ」
さやかは手に持っていた紙袋からリンゴを一つ取り出し、杏子に向けて投げた。それを受け取った杏子は、きょとんとした顔でさやかを見ている。
さやか「…この前は、ごめん。あたしの事、アンタなりに心配してくれたのに…嫌な事言っちゃって」
杏子「… … …」
さやか「だから、謝りに来た。…それで…改めて言うのもおかしい話だけど…これからも、その…あたしと仲よくしてほしいなぁ…なんて」
さやかは杏子の顔色を横目で伺いながら、恥ずかしそうに頬を?いた。
杏子「…アンタさぁ」
杏子「よくそんな台詞言えるよな。…聞いてるこっちが恥ずかしくなるよ」
さやか「べっ、別になんだっていいでしょ!!…あたしだって、コレでも頑張って謝りにきてるんだから…!」
さやか「…あんたと…その… 仲悪いまま、終わりたくないし…」
杏子「…かぁー。ホントに、呆れるくらい馬鹿正直なんだねアンタって」
さやか「そ、それはあんただって一緒でしょっ!?…ほら。こっちだって恥ずかしいんだからさ…」
そう言って、さやかはゆっくりと右手を杏子に向けて差し出した。
杏子「…分かったよ」
杏子はぷいとそっぽを向きながらも、さやかの差し出された右手に、自らの右手を重ねた。
コブラ「…時間を何度も繰り返し、そのワルプルギスの夜とやらと何度も戦って…それでも負け続けて、今に至る、ねぇ」
ほむら「信じてもらえるとは思っていないわ」
コブラ「信じるさ。俺も昔、同じような事をした」
ほむら「…?」
コブラ「それで、何で俺を呼び出したんだ?仮にそいつが現れるとしてそのバカデカい魔女を口説き落としてくれ、なんて話じゃないだろ?」
ほむら「…」
ほむら「貴方は、幾度となく私達を救っている」
ほむら「魔女の撃退、巴マミの救出、美樹さやかのソウルジェム奪還…貴方のしている行動の全ては、魔法少女達にとってプラスへと働いているわ」
ほむら「答えて。…何が目的なの?」
コブラ「そうだなぁ。目の前でか弱い女の子達が困っていたから、かな」
ほむら「分からないわ。単なる人助けでこんな事をしているとでも言うの」
コブラ「…信じられないかい?」
ほむら「ええ、私には理解し難い事だわ」
コブラ「勿論、俺は元の、俺のいるべき世界に戻ろうとしている。そのためにアンタら魔法少女にくっついて行動しているのも目的の一つさ」
コブラ「ただね、趣味なのさ」
ほむら「…趣味?」
コブラ「困っている女の子の顔を、安心させてやるのがさ」
ほむら「…つくづく分からないわ、貴方の事が」
コブラ「よく言われるよ」
ほむら「…」
ほむら「過去…どの時間軸でも、私は失敗を積み重ねている。時にはワルプルギスの夜に負け、時には…魔法少女同士で殺し合う、そんな世界も存在したわ」
コブラ「物騒だねぇ。何があったんだ」
ほむら「魔法少女の正体に気付いてしまったからよ」
コブラ「…ソウルジェムの穢れ、か」
ほむら「気付いていたのね」
コブラ「アンタに黙っていて申し訳なかったな。相棒にちょいとグリーフシードの成分を分析してもらってね。…それで、分かったのさ」
コブラ「…ソウルジェムの『穢れ』。アレが、魔女の正体だ。つまり魔法少女と魔女は、表裏一体の存在って事…違うかい?」
ほむら「…ええ、そうよ」
ほむら「そして、その正体に気付いた魔法少女達は自分たちこそ災厄の元凶だと気づき、互いを殺し合った」
ほむら「…ある意味、正しい行動だったのかもしれないわ。キュウべぇに利用されたままの自分達を、消せたのだから」
ほむら「…そうでしょ?…インキュベーター」
ほむらがそう言った瞬間、物陰からひょっこり現れるキュウべぇ。
コブラ「黒幕さんのお出ましか」
QB「…」
QB「驚いたね。遠い未来世界から来たイレギュラー…『コブラ』、そして時間を繰り返し戦ってきた魔法少女…『暁美ほむら』」
QB「僕の知り得ない人間が2人も関わっていたのは、本当に驚きだ。奇跡以外の何物でもないのかもしれないね」
コブラ「インキュベーター…ね。俺の疑問がようやく解けたぜ」
コブラ「アンタは少なくとも地球生物で無い事は分かっていた。しかしこの世界には、星間交流の概念がない。何故宇宙生物が魔法少女と呼ばれる存在の周りをウロチョロしているのかがようやく分かったぜ」
QB「本当に驚きだよ。君はこの星…いいや、宇宙がどんな運命を辿っていくのかを知っているわけだ、コブラ」
コブラ「興味があるかい」
QB「そうだね。僕達の目的は『宇宙の寿命』を伸ばす事にあるわけだから。僕達の行動がどんな素晴らしい結果を生んでいるのかを知りたいのが本音さ」
コブラ「宇宙の寿命…?」
ほむら「…この地球外生命体の目的は、一つ。魔法少女を魔女化する時に発生するエネルギーを、回収する事」
コブラ「はっ、そんな事をしてどうなるって言うんだ?売り払って通信販売でも始めるのか」
QB「宇宙には、エネルギーが存在するんだよ。そしてそのエネルギーは、どんどん減少を続けていくのを知っているかい」
コブラ「さあね。朝食を食べてないからじゃないかな」
QB「宇宙全体は、僕達インキュベーターによって支えられているんだよ。僕達がエネルギーを回収し、供給を続けているからこそ宇宙は現状を保っていられているんだ」
QB「そしてそのエネルギーの、最も効率のいい回収方法は」
QB「魔法少女が、魔女に変わる瞬間。その瞬間のエネルギーの回収が最も効果的に、宇宙の寿命を延ばす事に繋がるのさ」
コブラ「どの世界にも、狂信者ってヤツはいるもんだな」
QB「信仰じゃない、事実だよ。コブラ、君達のいる未来でも僕達の存在は知られていないのかい」
コブラ「さあてなぁ。お宅らみたいな連中はごまんといるからね。特に熱心な宗教家ほど目立っちまうからな。埋もれちまったんじゃないかい」
QB「僕達は、地球が誕生する遥か以前から人間の有史に関係してきた」
QB「数えきれないほど多くの少女…とりわけ、第二次成長期にあたる少女達と契約を交わし、希望を叶えてきたのさ」
ほむら「…そして、それを絶望へと変えて、エネルギーを回収していく。祈りを呪いに変えて」
QB「酷い言い方だね」
ほむら「人を食い物にしてきた貴方に、否定をする権利なんてないわ」
QB「ワケがわからないよ。僕達が宇宙を永らえさせてきたからこそ、君達人類全体の歴史があるんだ。一部の人間の消滅が全体を救っている事に、何の問題があるんだい」
QB「むしろ感謝されて然るべき話さ。僕達がいなければ、ほむらだってこの世界にはいない。コブラのいた未来だって、存在しないんだよ」
QB「それに僕達は、侵略という形でエネルギーを回収したりなんていう野蛮な真似はしていない。少女達の願いを叶えて、その代償を払ってもらっているだけさ。『契約』という形でね」
QB「そこに、何の問題があるんだい」
コブラ「…確かに、それなら何の問題もないな」
ほむら「…!?」
コブラ「だが、それならはっきりと俺達は選択肢が与えられているはずだ。…おたくら異星人と契約して宇宙のために戦うか、否かのな」
QB「コブラ。君は宇宙が滅んでもいいと言うのかい」
コブラ「さてね。だが、宇宙が滅びようとするのだと言うのなら、そいつも宇宙の一つの選択ってヤツじゃないか。インキュベーターってやつぁ、契約を元に宇宙の寿命を延ばそうとしているんだろ?」
コブラ「それなら元来、かの女達が何をしようが自由の筈さ。魔法少女になって契約した少女が何をしようと勝手…その筈だ」
QB「…」
コブラ「かの女達は希望を抱き、絶望はしない。街を襲う魔女から人々を守り、立派にその使命を全うしていく…それで十分だ。宇宙の寿命を延ばすために人柱になれ、なんて契約はしていないはずだぜ」
ほむら「…ええ、確かにそうね」
QB「甘い考えだね。それで魔女は倒せても、ワルプルギスの夜が倒せるとでも思っているのかい」
コブラ「さあてなぁ。やってみなきゃ分からないさ」
QB「僕は少なくともその前例は見ていないからね。希望が絶望に変わらなかった魔法少女は、存在しない。だからこそ僕達インキュベーターはそのエネルギーを宇宙に安定的に供給してきたのだから」
ほむら「っ…」
コブラ「前例がなけりゃ、作ればいいだけだ。そう難しい事じゃない」
コブラ「俺が…いいや、俺達がやってみせる。ワルプルギスの夜を、超えてやるさ」
コブラはそう言いながらにぃと微笑み、ビルの屋上を後にするのだった。
QB「暁美ほむら、君はどう思うんだい」
QB「『鹿目まどか』という魔法少女の存在なくして夜を超えられた時間軸が、存在したのかい」
ほむら「… … …」
QB「無いだろうね。それだけまどかの魔力は絶大だ。どんな巨大な魔女であろうと、魔法少女化した彼女に敵う敵など存在しない」
QB「逆に言えば、まどかが魔法少女にならなければ、ワルプルギスの夜には勝てない。君がまどかを魔法少女にしたがらない事と、君が時間を幾度も繰り返しているのがその証明になっている」
QB「君はどうするんだい?ほむら」
ほむら「私は、まどかを守る力を欲し、魔法少女の契約を交わした」
ほむら「だから、彼女を魔法少女にせず、ワルプルギスを倒すまで…絶対に諦めるつもりはない」
QB「分からないね。そんな方法を今まで見つけてもいないから、君が今この時間に存在するのだろう?」
ほむら「貴方達インキュベーターの目的は分かっているわ。…まどかが魔法少女になれば、同時に最悪の魔女を生む事になる」
ほむら「今まで、魔女にならなかった魔法少女はいないと言ったわね」
ほむら「狙いは一つ。まどかの膨大な魔力。魔女化に発生する莫大なエントロピーの発生が目的で、あなたはまどかに付きまとっている」
QB「だからどうしたというんだい?」
ほむら「貴方の思い通りにはさせない。私は絶対に…まどかを魔法少女に、させない」
QB「ほむらは、それでワルプルギスの夜を倒せるとでも思っているのかい?」
ほむら「…さっき、コブラにも言われた筈よ」
ほむら「前例がなければ、作ればいいだけの事」
ほむら「この時間軸で私は、それを作ってみせる」
キュウべぇに背を向け、階段を降りながらほむらは考えていた。
ほむら(…他人をアテにしない。それが何度も時間を重ねた結果の教訓だというのに)
ほむら(この時間でも、私は他人を頼りにしようとしている。…巴マミに、佐倉杏子に、美樹さやか…)
ほむら(…コブラ)
ほむら(まどかを、魔法少女にさせない。…でもそうしないと、ワルプルギスの夜は倒せない。…それが、絶対に崩せない公式だった)
ほむら(私に残された時間も、長くはないのかもしれないわ。…私の希望が、絶望に変わってしまうその前に、手を打たないと)
ほむら(…夜が来るまで、あと数日しかない)
ほむら(それなら、この時間軸で私の取るべき行動は一つしかない)
ほむら(賭ける事。それが私の…答え)
ほむら(持てる力を全て使って…ワルプルギスを、倒すという事)
その後、夜。
人目が無くなったのを見てコブラはレディと近くの小さな林の中で落ち合う。
茂みに隠れたタートル号から出てきたレディは、手に湯気の立つコーヒーカップを持っていた。
レディ「はい、コブラ。コーヒーよ」
コブラ「おー、ありがとよレディ。やっぱ相棒と過ごす時間っていうのが一番落ち着くねェ」
レディ「あら、そうかしら。巴マミの家も随分と気に入っているようだけれど?」
コブラ「あちゃー、ははは。それは言わないお約束」
レディの淹れたコーヒーを啜りながら、ぼんやりと月を眺めたままのコブラ。少し間を置いて、レディがゆっくりと語りかける。
レディ「…ねぇ、コブラ。ニュースがあるの。…良いものか悪いものかは分からないけれど」
コブラ「?」
レディ「…」
レディ「今なら、元の世界に戻れるわ」
コブラ「なんだって…!?どういう事だ?」
レディ「クリスタルボーイの宇宙船が、ブラックホールを生成し、元の世界に戻ったわよね。…あの重力場が、僅かに検知できたの」
コブラ「するってぇと…タートル号でそいつを追跡できるってのか?」
レディ「…ええ。以前、エンジニア達にタートル号に異次元潜航能力を取り付けてもらったわよね。今まではここが『どの世界』で『どの次元を辿って』元の世界に戻ればいいか分からなかったからそれが役に立たなかったのだけれど」
レディ「今なら座標が確定できる。クリスタルボーイの船の軌跡を辿っていけば、元の世界に戻れるわ」
コブラ「そいつは有難いな。あのガラス細工、いい土産を置いていってくれたじゃないの。あとでハグしてやらないとな」
コブラ「…だが、そう簡単な話じゃないんだろう?その調子じゃ」
レディ「…ええ、その通りよ」
レディ「ブラックホールの重力場の検知量はどんどん小さくなっていくわ。そのうち、完全に消滅する。そうなるともう…元の世界に戻る経路が再び見つからなくなってしまう」
コブラ「そいつはどのくらいもちそうなんだ?」
レディ「… … …」
レディ「明日には、完全に消滅してしまうでしょうね」
コブラ「…神様ってやつは随分と意地が悪いんだな。嫌われちまうぜ」
…林の中。
コブラがビルから出てきたのを見つけ、その後をずっと付いてきた人影が一つ、あった。
まどか「… … …」
まどかは急いで林の中を抜け出そうと駆け出すのであった。
――― 後日。
さやか「…ここが、あの転校生の家?」
マミ「ええ、ここがそうみたいね」
杏子「呼び出しなんて随分な心変わりじゃねーか。なんだってんだよ」
ガチャ。
アパートの一室のドアが開き、その部屋から暁美ほむらが顔を出した。
ほむら「…入ってちょうだい」
それだけ言って、ほむらは部屋の中へと戻っていく。
杏子「…」
さやか「…ねぇ、マミさん。入っていいのかな。あいつの事…信用して」
マミ「…信じてみましょう。だって暁美さんが今まであんな顔で私達に『相談したい事があるから私の家で』なんて言ってくれたの、はじめてだもの」
マミ「逆に、信頼していいと思うわ。今まで心を開いてくれなかった暁美さんがようやく私達の方に歩み寄ってくれたのだから」
さやか「…それもそう、か。何事も前向きに考えなきゃいけませんね、うん」
杏子「ま、完全に信用しきったワケじゃねーけどな。…それじゃ、入るか」
杏子はアイス最中を一齧りすると、先陣をきって部屋の中へ入っていった。
杏子「これは…」
さやか「な、なんなの…コレ…!?」
暁美ほむらの部屋の中は、貼りだされた写真や資料で埋め尽くされていた。
マミ「…これが、貴方の言っていた…いいえ、隠していた事なのね、暁美さん」
ほむら「ええ、そうよ」
ほむら「これが、『ワルプルギスの夜』。単独の魔法少女では対処できないほど巨大な魔女」
ほむら「こいつが…あと数日で、この街に現れる」
マミ「…キュウべぇから、噂だけは聞いた事があるわ。数十年…数百年に一度現れる魔女。強大で凶悪、一度具現化すれば数千人を巻き込む大災害が起きる…と」
さやか「そ、そんな魔女が…見滝原に現れるっていうの?」
ほむら「ええ、そうよ」
杏子「…なるほどな。なかなか面白そうな話じゃねーか。ただ分からない事があるんだけどな」
杏子は貼りだされた写真の数々を興味深そうに眺めながらも、ほむらに質問をした。
杏子「なんでアンタは、そんな魔女が現れるって事が分かるんだい?」
ほむら「… … …」
ほむらは一呼吸置いて、意を決したように話した。
ほむら「私が、未来から来たからよ」
マミ「…未来…から…?」
杏子「…」
さやか「…は、はは…冗談よしてよ」
ほむら「…本当よ」
ほむら「私の魔法少女としての能力。それは『時間を操る事』。そして私は、このワルプルギスの夜を倒すために幾度も時間を繰り返してきた」
ほむら「何度も繰り返して…そして、敗れては、時間を巻き戻した。いいえ、『巻き戻している』。それが私の現状よ」
杏子「…仮にアンタの話を信じるとしてもだ。アタシ達が、『ワルプルギスの夜』に何回も負けて、死んでるって事かい?」
ほむら「…そうね。何度も負け…いいえ、下手をすれば、ワルプルギスの夜を迎える前に、貴方達が死んでしまったという例もある」
ほむら「希望が、絶望に変わってしまった時に」
マミ「どういう…事…?」
ほむら「…キュウべぇから言われていなかった事実は、2つあるわ。1つは、私達魔法少女の魂は契約をした段階でソウルジェムに移されてしまったという事」
ほむら「そして、もう1つ」
ほむら「魔法少女は…ソウルジェムの穢れを拭っていかないと、魔女として生まれ変わってしまう」
マミ・さやか・杏子「!!!」
杏子「馬鹿な、そんな話…!」
ほむら「ええ、聞いていないでしょうね。あいつらインキュベーターにとって、コレを貴方達が契約前に知る事は都合が悪いことだから」
さやか「それじゃあ、あたし達が今まで倒してきたのは… …」
ほむら「…元、魔法少女。…でも、仕方のない事なの。そうしなければ、私達もああなってしまうのだから」
さやか「そ、んな…!」
マミ・杏子「… … …」
沈黙。
崩れ、膝をつくさやか。歯を噛みしめる杏子。…しかしマミは、ぐっと拳を握りしめて涙を流すのを堪えるのだった。
マミ「…暁美さん、教えて。…何故、それを私達に教えてくれるの…?」
ほむら「それは…私が貴方達に隠しておきたくなかったから」
ほむら「…かつて、過去で『仲間』だった貴方達。…巴マミ、佐倉杏子、美樹さやか…」
ほむら(…そして、鹿目まどか)
ほむら「貴方達ともう一度…仲間として戦いたかったから。…だから、嘘や隠し事はしないと、決心したのよ」
マミ「… … …」
ほむら「私の話を信じないのなら、それでいいわ。…元々私は一人で戦うつもり―――」
マミ「信じるわ」
ほむら「…!」
ほむらが諦めたように話し始めた時、マミはその声を遮るように強く言った。
マミ「…続けて。魔法少女の事、貴方の過去の事…そして、ワルプルギスの夜の事を」
コブラ「随分とデカい魔女だな!こいつは倒し甲斐があるぜ!」
エアーバイクに乗って空中を駆けるコブラ。幾重にも張り巡らせた洗濯ロープのような糸には、セーラー服が干してある。
そしてそのロープの先には、巨大な六本足の首の無い、異形の魔女がいた。
魔女は自身の周りを旋回するコブラに向けて次々と使い魔を放つ。スカートから出てくる使い魔もまた、下半身だけの異形。その脚には鋭利な刃物のようなスケート靴が履かれていた。
コブラ「へっ!あいにく俺は足だけの女に興味はないんだよッ!!」
右手はエアーバイクのハンドルをしっかり握り、左手のサイコガンを抜いてコブラは次々と使い魔を撃ち抜いていく。
だが、その数は膨大でこちらの攻撃をする余裕はあまりなかった。敵が巨大であるゆえ、チャージをしないサイコガンの射撃ではあまりダメージがないようであった。
コブラ「ちっ…!この…!」
コブラは一度体勢を立て直すため、『委員長の魔女』から離れる。
その様子を、黙って見つめるまどか。結界の中に入れたのは、他でもないキュウべぇであった。
QB「少し苦戦をしているみたいだね。まどか、どうするんだい?」
まどか「… … …」
QB「君が魔法少女になればすぐにでも彼を助ける事ができるよ」
まどか「…もう少しだけ、見てる」
まどか「見ていたいの。コブラさんが、魔女と戦っているところを」
QB「…」
観客がいる事には気づいていたが、あえて黙って闘っていたコブラ。
横目でまどかの方を見ると、にぃと笑って軽くウインクをした。
まどか「…!」
コブラはエアーバイクのアクセルを吹かし、突撃をする体勢をとる。
コブラ「行くぞぉ、生足の化け物!!」
コブラ「いやっほォォォーーーーッッ!!」
フルスロットルで飛び出したエアーバイクとコブラ。魔女は当然のように使い魔を次々とコブラに向けて発射していく。
だがコブラは正確にその攻撃を避け、魔女本体へと近づいていった。やがて委員長の魔女はコブラの目と鼻の先まで距離が縮まり…。
コブラ「くらえーーーッッッ!!」
ドォォォォォ―――――――ッッッ!!!
サイコガンの巨大な砲撃が魔女をつつむように焼き、消滅させる。その爆発にエアーバイクとコブラも飲み込まれてしまう。
まどか「!コブラさんっ…!」
しかし次の瞬間、爆風の中から脱出するエアーバイク。
まどかの元へ戻っていくコブラの右手の中には、しっかりとグリーフシードが握られていた。
――― 同時刻、再び、暁美ほむらの部屋。
ほむらは、全てを話し終えた。
魔法少女の希望が、絶望に変わったその時、魔女へと生まれ変わる事。それは、思ったよりずっと容易く起きてしまうという事。
そして、それが過去、凄惨な魔法少女同士の殺し合いすら生んでしまったという事。
さやか「…やっぱり、信じらんないな…。…あたしも、魔女になった事がある、だなんて…」
杏子「… … …」
さやか「ねぇ、転校生。…あんたは、魔女になったあたしを…殺したの?」
ほむら「…ええ」
さやか「あはは…だろうね。あたしだって…逆の立場だったら、そうするしかないもん」
ほむら「…結局、私達はワルプルギスの夜を迎える前に共倒れをしてしまう事が多かった…。それほど、希望が絶望に変わるのは容易い事だから」
ほむら「キュウべぇ…いいえ、インキュベーターは、だからこそ人間を食い物にしているの。脆く、儚い存在だからこそ」
ほむら「魔女が、見滝原を滅ぼそうが奴らには関係ない。目的は、私達が魔女化する時に発生するエントロピーの回収。…それだけなのよ」
杏子「…アンタの話してる事を全部信じるわけじゃねーけどよ。…そいつが本当だったらとんでもねー話だな。それじゃ、アタシ達はあいつに化け物にされたのと同じじゃねぇか」
杏子「忌々しくて…反吐が出そうだ」
杏子はチョコ菓子を噛み切ると、憎らしげに自身のソウルジェムを見つめ、握りしめる。
さやか「…それで、あんたはどうしたいの?…あたしたちに、こんな話をしてさ…」
座り込んださやかは、力無くほむらに語りかける。…その瞳は、既に絶望に淀んでいるようにも思えた。
さやか「あんたの話なんか信じたくもないけど…でも…嘘をついてるとも、思えないよ…。…どうしてだろ。…ねぇ、どうすればいいの?こんな化け物にさ」
ほむら(…やはり、無理だったの…?)
ほむら「…共に、戦って欲しい」
マミ・杏子・さやか「… … …」
ほむら「鹿目まどか…彼女が魔法少女になれば、ワルプルギスの夜を倒すのは容易い。でも…それは同時に、最悪の魔女を生む事にもなる。ワルプルギスの夜以上の」
ほむら(何よりも…まどかを失いたくないから)
ほむら「だから、まどかの力なくしてヤツを倒さなければいけないの。巴マミ、佐倉杏子、美樹さやか…そして私。…あと…」
マミ「…コブラさん、ね」
ほむら「…ええ。その五人で、ワルプルギスを倒す」
ほむら「あと数日でヤツは見滝原に現れる。…だから、協力をしてほしいの。全員でヤツを倒す…その協力を」
しかし、他の三人は黙ったままであった。
杏子「…その、ワルプルギスの夜を倒したとして…その後は、どうなるんだ?」
ほむら「…」
杏子「きっといつかはアタシ達は、絶望しちまうんだろ?…そして、化け物になって、死んでいく…。それならいっそ、ここで…」
ほむら「…それも、選択肢の一つだと、思うわ」
ほむらは、三人に見えないように後ろ手で拳をぎゅっと握りしめるのだった。
ほむら(私が、馬鹿だった…)
ほむら(佐倉杏子が言っている事の方が理にかなっている。夜を超えられても、いつか私達は絶望を迎え、魔女化してしまう)
ほむら(…結局、いつ死んでも…変わりはないのだから。…愚かなのは、それでも『仲間』を求めている、私の方…)
しかし、その時、マミは顔を上げて強い口調で言った。
マミ「…いいえ、それは違うわ」
ほむら「…!」
マミ「確かに…佐倉さんの言っている通り、魔女になる前に自分でピリオドを打つ方が正しい判断かもしれない」
マミ「…でも、それでも…私達の行動に、変わりはない筈よ」
マミ「街の平和を脅かす魔女を倒す、魔法少女であり続ければ…絶望なんて、しない。それは今までずっと続けてきた事だわ…!」
さやか・杏子「…!」
マミ「…私のこの命は、消えていてもおかしくはなかったの。いつ死んでも後悔はしない。…そう決めていた。だからせめて…ギリギリまで粘ってみたいの」
マミ「私はもっと生きていたい。もっと…鹿目さんや、コブラさん…佐倉さんや美樹さんと楽しい時間を過ごしていたい。…もちろん、暁美さんとも、ね」
マミ「だから私は…ワルプルギスの夜を超えてみせるわ」
マミ「何があっても…ね」
そう言って、ほむらに向けてにっこり微笑む。
ほむら「…!…マミ、さん…」
マミ「…ふふ」
マミ「やっと名前で呼んでくれたわね」
さやか「…マミさん…」
マミ「美樹さん…貴方だって、その筈よ」
マミ「貴方は、上条君の演奏を、もっと聞きたい…そう願っていたのでしょう?あの演奏をもっとたくさんの人に届けてあげたい、って…」
さやか「…!!」
マミ「私達は、ここで倒れてはいけない。…私達の命を、繋いでくれた人がいる。だから…それを無駄にしてはいけないの」
マミ「美樹さん…レディさんに貰った、上条君のチケット…決して無駄にしてはいけないわ。…私は、そう思うの」
さやか「…恭介…」
さやかは唇を噛みしめ、瞳を閉じてしばし沈黙する。
そして、すっくと立ち上がった。
その瞳には絶望ではなく、希望の笑顔が浮かんでいる。
さやか「…あっはは!…なんか、バカみたいだね。今までやってきた事となんにも変わらないのに、こんなに悩んでさ…!」
杏子「…!お前…」
さやか「あたしは…見滝原を守る、正義の魔法少女、さやかちゃん!…すっかり忘れてたよ。それだけ守ってれば、何も悩む事なんてなかったのに」
マミ「…美樹さん…」
さやか「…転校生。いや、ほむら!…やったろうじゃん!一緒に、戦おう!」
さやかは笑顔、だが強い目でほむらを見つめ、すっと右手を差し出した。
ほむら「…ええ、お願いするわ」
ほむらは嬉しそうに瞳を閉じ、その右手に自分の右手を重ねた。
杏子「… … …」
マミ「…佐倉さん、貴方は…」
杏子「アタシは今まで、自分のためだけに生きてきた。だから、今更アンタ達に協力しようなんて気はさらさらないね」
さやか「ばっ…あんた、ここまできて何言って…!」
杏子「うっせーなー。…めんどくさいんだよ、仲間とか、協力とか…めんどくさいんだよ」
ほむら「… … …」
杏子「…だけど」
マミ・さやか「!」
杏子「ワルプルギスの夜を一人じゃ倒せないっつーのも事実みたいだな。だから…今回だけ、付き合ってやるよ。その…一緒に、ってやつに…さ」
さやか「…アンタ…」
さやか「どこまで素直じゃないのよ…こっちまで恥ずかしくなるでしょ」
杏子「うるせーっ!!おめーに言われたくねーよこの色ボケ!!」
さやか「!い、色ボケはないでしょっ!!このお菓子女!!」
杏子「んだとー!!」
マミ「…と、とりあえず…皆、協力してくれるみたいね…」
ほむら「…ええ」
マミ「あ…暁美さん。…今の笑った顔、とても素敵ね」
ほむら「…」
ほむらは少し照れながらも、微笑んでいた。
ほむら(…そう、そうなのね…)
ほむら(この時間軸では…巴マミは魔女に食い殺されていて…美樹さやかは魔女になっていた筈…)
ほむら(でも…それを。その絶望を、全て逆に希望に変えてくれた人がいた)
ほむら(…コブラ)
ほむら(魔女に喰い殺されそうだったマミを助けてくれて…さやかの上条恭介への絶望すら拭ってくれた)
ほむら(わけの分からないガラス人形からソウルジェムを奪い返してくれて…敵対していた佐倉杏子すら、こちらに歩み寄ってくれた)
ほむら(そして、こうして今、夜を迎えようとしている…)
ほむら(…まどか)
ほむら(この時間で…貴方を助けられるかもしれない。…ようやく、貴方と朝を迎えられるかもしれない)
ほむら(まどか、待っていて…!…私が必ず、貴方を助けてみせる…!)
――― 夜。結界の解けた工業地帯のような場所で、コブラとまどかは座り込んでいた。
まどか「…教えてください、コブラさん」
まどか「なんで…なんで、魔女を倒してくれるんですか。…なんで、元の世界に戻らないんですか」
コブラ「…知っていたのかい」
まどか「…ごめんなさい、あの…。…でも、言わずにはいられなくって…」
まどか「コブラさん、元の世界に戻れるのに…なんで、まだここにいるのか…分からなくって…!だって、だって…!皆をずっと助けてくれてるのに…っ…コブラさんは…っ!」
まどか「もうちょっとで元の世界に戻れなくなるって、レディさん言ってたのに…!魔女と戦ってるってキュウべぇに言われて、わたし、我慢できなくて…っ…!何もできない私が、悔しくて…っ!!」
泣きそうになるまどかの頭に、コブラは優しく手を乗せる。
コブラ「なぁ、まどか。例えば…」
コブラ「例えば、お前さんの目の前に、子猫が一匹いる」
コブラ「その猫が、車に轢かれそうになったら、まどかはどうする?」
まどか「…!」
コブラ「お前さんの性格じゃあ、放っておけないだろ?…俺だって同じさ」
コブラ「誰かを助けたり、救ったりするのに理由はいらない。赤の他人だろうが何だろうが関係ない。…自分自身の願いだけが、自分を動かせる」
コブラ「俺ぁな、女の子が泣いたり悲しんだりするのがこの宇宙で一番苦手なんだぜ」
コブラ「例えここが違う世界だろうがなんだろうが…そこに俺が助けたいと思う人がいるのなら、力になるのが俺の趣味なんだ」
コブラ「いい趣味だろ?」
まどか「…コブラさん…!」
コブラ「さ、行こうぜ。…今日はちょいと、お呼ばれをしているんでね」
まどか「…誰に、ですか?」
コブラ「決まってるだろ?」
コブラ「街を救う、魔法少女達さ」
・
タートル号のレーダーから、クリスタルボーイの宇宙船の航路の反応が完全に途絶えた。
しかし、それを見てもレディは何も言わず、ただ心の中で静かに微笑むだけだった。
―― 次回予告 ――
いよいよ明日がワルプルギスの夜の決戦!俺達としても結束を固めておかなきゃいけないな。しっかり頼むぜ、皆。
っと、その前に話をしなきゃいけないヤツがいたな。インキュベーターの野郎さ。あいつに説教しておかなきゃ、俺の腹の虫が治まらないぜ。
そして…まどかに、ほむら。いよいよ全てを話さなきゃいけないぜ。全ての謎を解き明かし、俺達は最強の魔女に立ち向かう事になる。
次回のCOBRA×魔法少女まどか☆マギカ。【五人の魔法少女(前篇)】。よろしくゥ!
まどか「そんな… あんまりだよ…っ!こんな… こんなの、って… ないよ…っ!」
QB「――― まどか、運命を変えたいかい?」
まどか「え…!」
QB「――― この世界の全てを覆す力。君には、それがあるんだよ」
ほむら「! 駄目!まどか!そいつの言う事に…ッ!!」
まどか「… … …本当に?」
QB「――― 勿論だよ。だから」
QB「ボクと契約して、魔法少女に ―――」
ほむら「駄目ぇぇえええええええッ!!!」
・
まどか「… … …」
まどか「また、あの夢だ…」
第8話 「5人の魔法少女(前篇)」
見滝原市には、大粒の雨が朝から降り注いでいた。
暁美ほむらが言うのにはそれはワルプルギスの誕生…スーパーセルの前兆だと言う。
コブラとレディは林の中に身を潜めたタートル号のコクピットから、その雲を眺めていた。
レディ「かの女が言うには…明日。この見滝原という街を覆うように、魔女が生まれるというのね」
コブラ「ああ。どうやら本当らしいな。こんな雷雲、見たこともないぜ」
レディ「…それで、どうするの?コブラ。その『ワルプルギスの夜』に勝算はあるの?」
コブラ「へへ、俺がこう見えて計算高いの知ってるだろ?レディ。基本的に勝てない勝負はしないんだぜ」
レディ「…基本的に、ね」
コブラ「…ああ」
コブラ「今回ばかりは分からんね。ほむらがワルプルギスの夜に勝てた歴史は存在しない。つまり、どうやって倒すのかも分からない。気合や根性でどうにかなるんなら鉢巻でも作っておくけどな」
コブラ「未知数さ。今回のヤマはちょいとばかり、危険な賭けになるかもしれない」
レディ「ふふ、でも、それも慣れた事でしょう?コブラ」
コブラ「まぁね。それが海賊ってもんだからな」
コブラ「…さぁて、それじゃあそろそろ出てきてもらおうか。相変わらずコソコソ隠れるのはいい趣味とは言えないぜ、インキュベーター」
椅子に腰かけながら、のんびりとそんな風に語りかけるコブラ。
船内の物陰から、ひょっこりと姿を現すインキュベーター。
レディ「…!」
QB「相変わらず常人とはかけ離れた察知能力だね、コブラ。君が本当に人間なのかは大いなる疑問だ」
コブラ「地球外生命体にそう言ってもらえるとはね。診察したいなら結構だが、料金は高いぜ」
QB「いいや。それはボク達インキュベーターの成すべき事ではないからね」
コブラ「そうだったな。幼気な少女を騙してエネルギーを回収するのがお宅らの仕事だ」
QB「否定はしないよ。君達人間にとってボクは敵でも味方でも構わない」
QB「ただボク達は、宇宙の永らえさせられればそれでいい。それが使命なのだから」
コブラ「結構な使命だね。それで?アンタは説法でもしに俺の船に来たのかい」
QB「…」
QB「君達未来人ともう一度話す機会を設けたくてね。ボク達にとって、やはり君達の存在はとても興味深い」
コブラ「…いいぜ。レディ、客人にコーヒーだ。とびっきり苦いヤツを頼むぜ」
QB「君達のいた世界が存在するのは、ボク達インキュベーターが宇宙の寿命を永らえさせるのに成功した事の証明だ」
QB「ボク達は地球の誕生の遥か以前から存在し、その使命を全うしてきた。だからそれが無事未来まで続いているのだとしたら、それはやはり非常に興味深いわけだ」
QB「何せ人類の発展は、ボク達と紡いできた歴史と言っても過言ではないのだからね」
コブラ「ご立派だね。基金でもたてたらどうだい」
レディ「…しかし、そのために貴方達は人を…魔法少女達の希望を絶望に変え、その命を奪ってきた」
QB「君も、それを疑問視するのかい。例えば、蟻の巣から一匹の蟻を摘まみ出して殺す事に何の影響があるのかな。むしろその蟻は、宇宙に対して貢献が出来るんだ。意味のない死じゃない、素晴らしい事じゃないか」
レディ「でも、かの女達は人間よ。蟻ではないわ…!」
QB「随分と都合のいい意見だね。蟻なら良くて、人間では駄目。ボク達からすれば60億以上の個体数から毎日数個を摘出する程度、何も気にする事ではないと思うけれど」
コブラ「… … …」
QB「むしろその犠牲が、全ての人類を救う事に繋がっているんだ。インキュベーターが責められる理由は何もないじゃないか」
コブラ「…そうでもないさ。アンタらは、単に上から胡坐をかいて人に頼っているだけの存在に過ぎない」
QB「どういう事かな?」
コブラ「宇宙のエネルギーが減っていく一方、太古の昔のアンタらが見つけたのが少女達を糧にしてそのエネルギーを補っていくという方法。…だったかな」
コブラ「だが、そいつの効率性自体を疑うね。何千年何万年も昔のシステムに頼っていないと宇宙が消滅しちまうってのは、甚だ可笑しな話だ」
コブラ「インキュベーターの目的は、いたいけな少女を殺す事だったのかな。それとも、宇宙を永らえさせる事だったのかな?」
QB「…」
QB「つまり、もっと効率のいいエネルギーの回収方法があるとでもいうのかい」
コブラ「そいつを模索するのもあんたらの目的に含まれる筈だ。何にしても、俺ぁその宇宙の寿命とかいうやつに貢献するつもりは全くないからな」
コブラ「かの女達だってそうだ。アンタらには感情がないから分からないかもしれないがね」
コブラ「同じ種族、同じ志の人間を殺されていい気分のするヤツはいないぜ。そうしないと宇宙が滅びちまうっていうのなら」
コブラ「宇宙なんざ、滅びちまうべきなんじゃないかな」
QB「コブラ。君の意見は宇宙全体の害悪に過ぎないよ」
コブラ「残念だったな。俺はもともと色ぉーんな奴に恨まれてるんだよ」
コブラ「汚いんだよ。やれ宇宙のためだの人類のためだの言って人を食い殺して自分達を正当化する。感情は無いクセに、そこはクリーンに見せたいわけか?」
QB「理解をして欲しいだけさ。人が存在しないと、ボク達も生きていけない。少しは歩み寄らないとね」
コブラ「だから『契約』という形で少女達を騙しているわけだ」
QB「君がそう思うのも自由さ」
コブラ「まぁ、そこは褒めてやるさ。…勝手な奴もいてね、人なんざ平気で食い物や踏み台にするヤツは、俺の世界にもごまんといる。しかしアンタらは、契約後生き延びる術も与えてくれてるのだからな」
コブラ「だから俺は、そいつを最大限活用させてもらうよ」
QB「…」
コブラ「かの女達の未来を、醜い魔女なんかにさせやしない。…とびっきりの美女になってもらわないと、俺が困るんだ。未来に住んでいる俺がね」
そう言ってコブラは立ち上がると、タートル号から出て市街地へと歩いて行った。
ほむら「…それじゃあ、明日。教えておいた場所に集まって。そこにワルプルギスの夜が生まれるわ」
さやか「りょーかい。…あはは、なんか、集合って言われるとピクニック行くみたいでなんか緊張感ないけど…」
マミ「…でも、確かにそこで…私達の決戦が始まるのね」
ほむら「ええ。…何度も私が、挑んできた場所だから」
杏子「ま、緊張感なんざ持たなくていいんだよ。万全のコンディションで臨むためにしっかり寝て…しっかり食っておくコトだな」
さやか「アンタはお菓子食って体調万全だから便利だよね…」
杏子「どういう意味だよ」
ほむら「…それじゃあ、明日。…教えておいた時間と、場所で」
マミ「ええ。…頑張りましょうね、暁美さん」
ほむら「…」
ほむらは少しだけ頭を下げると、マミの部屋から出て、雨の降る外へと出て行った。
さやか「なーんかやっぱり実感ないなー。…明日、最強最大の魔女が生まれて…生きるか死ぬかの闘い、なんて」
杏子「生きるか死ぬかの闘いなんざ常日頃からやってるだろ。要するに、いつもと変わらねーんだよ。アタシ達にとっちゃあ、魔女が大きかろうが小さかろうが関係ない」
さやか「…そっか。いつもと変わらない…。そう思ってればいいのか。たまには良い事言うじゃん」
杏子「たまには、が余計なんだよ」
マミ「ふふ、本当にいつも通りで安心ね、2人は」
その時、来客を知らせるチャイムが鳴り、ガチャリとドアが開く音。
コブラ「やぁ淑女の皆様、お揃いで」
マミ「あ、コブラさん。…まぁ、どうしたの?それは」
コブラ「手ぶらじゃ何だしね。美人の店員に良いのを見繕って貰ったのさ」
そう言うコブラの手には、花束が一つ握られていた。コブラはコートの雨粒を払って部屋に入ってくると、笑顔でそれをマミに差し出す。
マミ「…この花…。ふふ、有難うコブラさん。それじゃあ飾っておくわね」
さやか「相変わらずキザだねー、コブラさんは。今時の男はそんな事しないよー」
コブラ「ハハ、だろうな。俺のいた時代でもなかなか見かけなかったぜ」
さやか「…さーてーはー…相当場数を踏んでいると見たねッ。…モテたでしょー?」
コブラ「ま、そこそこに」
さやか「うわぁ」
コブラ「ところで、ほむらは来なかったのかい。てっきりここにいると思ったんだが」
マミ「あら、彼女が目当てだったの?」
コブラ「とんでもない。マミにも勿論会いたくて来たんだぜ」
マミ「…あの、そういう意味じゃないんだけれど…」
苦笑いをしながら、花を花瓶に移すマミ。
杏子「アイツならさっきまでここに居たぜ。丁度アンタとすれ違いだ」
コブラ「ありゃあ、そいつは残念。タイミングが悪かったな」
さやか「明日のコトもあるしね。ほむらはほむらで、何か準備があるんじゃない?」
コブラ「…成程、ね。それじゃ、ちょいと俺は追いかけてみるとするか」
マミ「え?来たばかりだし、お茶でも飲んで行っても…」
コブラ「そいつぁ有難い。少し後でゆっくり頂きに来るぜ。ちょいとかの女に話があるんだ」
コブラ「それじゃあな。…そうだな、紅茶はダージリンがいいね。美味そうなクッキーもあったら最高だ」
マミ「…クス。はいはい、用意しておくわね」
そう言ってすぐにマミの部屋を出ていくコブラ。
呆気にとられた様子でそれを見送るさやかと杏子。
さやか「珍しいね、あの人があんなすぐ帰るなんて」
マミ「何か目的があるとすぐに飛んでいっちゃう性格みたいね。…まだ一か月くらいしか一緒じゃないけれど…分かりやすいのか分かり辛いのか…」
杏子「勝手な奴だな」
さやか「…アンタには言われたくないと思うよ」
マミはガラス製の花瓶にコブラから貰った白い花を綺麗に飾り付けると、テーブルの中央に置いた。
さやか「へーっ、綺麗。…花とかあんまり見ないから分からないけど、いい色してますね。コレ」
杏子「これ、何の花だ?」
マミ「…これはね、ガーベラの花よ」
杏子「ガーベラ?」
マミ「そう。キク科の多年生植物で…花言葉は『希望』。ふふ、本当に色々な事に詳しいのね、コブラさん」
さやか「…やっぱりキザだぁぁ…」
大粒の雨が降りしきる中、傘も差さずに一人立ち、何もない空を見上げる少女。
ビル街の中心。開発中で、何も無い草原のような広く拓けた場所。そこには…明日、いや、過去…確かにワルプルギスの夜が存在するのだった。
コブラ「…やっぱりここだったか、ほむら」
ほむら「…何か用かしら?必要な事は伝えた筈だけど」
そのほむらの後ろに着いたコブラ。少女はそちらを見る事なく、冷たいような言葉を放つ。
コブラ「一つ、聞いておきたい事があってね。お邪魔だったかな」
ほむら「…構わないわ。何かしら」
コブラもまた、雨の中傘を差さずに、雨粒を身体に受けている。それでもいつものにやけた表情は崩さずに、葉巻はしっかりと銜えていた。
コブラ「…話さないのかい、まどかには」
ほむら「… … …」
ほむら「ワルプルギスの夜の事を?何故?まどかには関係のない事だわ」
コブラ「おいおい、関係ないはないだろ?かの女にはしっかりと関係がある筈だぜ」
コブラ「あんたがかの女を親友だと思っているように…かの女もまた、あんたを親友だと思っている」
ほむら「…そんなワケないわ」
ほむら(…それは、過去の話。…この時間軸の話では、無い)
ほむら「もう一度言うわ。…何故、話さないといけないの。まどかは魔法少女ではない。一緒にいても危険なだけよ」
コブラ「俺達が負ければどこにいたって同じだろ?それに、かの女は関係無いわけじゃない。魔法少女の闘いを何度も見てきている」
ほむら「それだけだわ。…まどかには、魔法少女に関わって欲しくなかった。それなのに…関わってしまった。その事実だけで十分過ぎるほど危険なのに」
コブラ「…まどかが魔法少女になる事が、か」
ほむら「… … …」
コブラ「アンタの行動は、まどかを自分達から遠ざけたいとする一方、守りたいという行動にも見える。以前、ガラス人形と戦った時に言っていたっけな。まどかの悲しむ顔は見たくない、ってさ」
コブラ「ほむら。あんたが時間を繰り返してまで戦う理由は…まどかを守りたいからだ。しかし、まどかを魔法少女にしてはいけない。…そんなルールがお前さんの中にある」
コブラ「そして、まどかは魔法少女としての素質がありすぎる。その力は強大だ。…ワルプルギスの夜を超える魔法少女となり…最悪の魔女へとなってしまう。…違うかい?」
ほむら「… … …」
ほむら「どうして…」
コブラ「仕事柄、探偵の真似事をする事も多くてね。つい考えちまったのさ」
コブラ「当たっちまったようだな」
ほむら「… … …」
ほむら「ええ、その通りよ」
ほむら「まどかを魔法少女にするわけには、いかないの。…どんな魔法少女も…いいえ、どんな人間でも…希望は絶望へと変わってしまう」
ほむら「私達と一緒にまどかが戦ってしまっては、いけない。まどかの悲しむ顔を…もう、見たくないの。まどかが魔女に変わるその瞬間を、見たくない。まどかの悲しむ顔なんて、もう見たくない…!!」
コブラ「…」
ほむら「私は…まどかを守る。最初の時間で、最初に出会った、最高の友達を…失いたくない。だから…絶対に、私はワルプルギスの夜に負けられない…!」
コブラ「…なぁ、ほむら。あんたは、『皆で』ワルプルギスの夜を倒すんじゃなかったのかい?」
ほむら「… … …」
コブラ「闘えるだとか、闘えないだとかは関係ない。…要は、自分の意志さ。自分の願いだけが、自分を動かせる。…アンタがまどかを守りたいと言うのなら、まどかの気持ちはどうなるんだ?」
ほむら「…まどかには、私の気持ちなんて…どうだっていいの。私が守ると決めたんだもの。そのための…魔法少女の力。だから…まどかは何もしなくていい」
コブラ「それじゃあかの女の気持ちは無視するのかい」
ほむら「まどかが私に対して、何を思うと言うの。…この時間軸では、まどかには何も伝えていないというのに」
コブラ「…伝えなくても、伝わる事もあるさ。…特にほむら。あんたの行動は、分かりやすいからな」
ほむら「…?…どういう―――」
ほむら「!!!!!!!」
その時、ほむらは初めてコブラの方を振り向いた。
自分の後ろにいるのは、コブラだけだと思っていた。だからこそ、全てを語っていた。…それなのに。
まどか「… … …」
そこには、自分と同じく、雨に濡れるまどかの姿があった。
ほむら「どう、して…」
まどか「…わたし、ずっと、考えてたんだよ。どうして、ほむらちゃんが…戦っているのか。…前に、マミさんが言ってたから。ほむらちゃんは、グリーフシードを奪うためだけに戦ってるんじゃない、って」
まどか「魔女を倒して…さやかちゃんのソウルジェムも、返してくれた。…ずっと、何でか、分からなかった」
まどか「…だから、聞こうと思ってたの。どうしてほむらちゃんは…」
まどか「わたしを助けてくれようとしているのか。わたしを…魔法少女にさせないようにしてくれているのか」
ほむら「…!!」
まどか「ほむらちゃんは…ずっと、わたしを守ってくれてたんだね。違う時間を、何回も繰り返して…ずっと、ずっと…」
まどか「なんで…?なんでそこまで、わたしの事を…」
ほむら「…っ…!」
まどか「わたしだって…皆の…ううん、ほむらちゃんの力になりたいよっ…。でも、ほむらちゃんはいつも…わたしを魔法少女に近づけないようにしてくれて…それが、わたしを守ってくれている事になっているんだって、今分かった…」
まどか「教えて…どうしてほむらちゃんは、魔法少女に…」
ほむら「関係ないわ」
まどか「…!」コブラ「…」
ほむら「まどか、貴方には関係ない事なの。だから話す必要もな―――」
まどか「関係あるよッ!!!!」
ほむら「…まど、か…?」
まどか「ほむらちゃんはわたしを助けてくれる!だからわたしも、ほむらちゃんを助けたい!どうしても…どうしても、力になりたいの!だから…わたしは知りたい!!」
まどか「どうしてほむらちゃんが魔法少女になったのか…どうして、何度もわたしを助けてくれるのか…!話してくれるまで、わたしは此処から離れないッ!」
まどか「わたしは…ほむらちゃんの事ッ―――」
その瞬間、まどかに抱きつくほむら。
涙に震える掠れた声。今までの彼女からは聞いた事のないような弱々しい声。
ほむら「逆、なの…全部、全部、逆っ…!」
まどか「ほむら、ちゃん…?」
ほむら「私を助けてくれて…私を、友達だと言ってくれて、守ってくれたのは…全部っ…まどかなのよっ…!だから私は…貴方を、失うわけには…っ…!!」
ほむら「でも…ッ、でも、貴方は何度も私の前から…っ、ひぐっ、消えて、しまって…!!何度も、何度も消えてしまうのよッ…!!」
ほむら「私の一番大切な友達を、守りたい…!!それだけなのよっ…!!」
まどか「… … …」
降りしきる雨の中、まどかの服を握りしめ、強く抱くほむら。まどかもコブラも初めて聞く、彼女の弱音。
だがまどかは、涙を流しそっと微笑みながら、ほむらの肩をそっと抱く。
コブラ「…(さて、お邪魔虫はこの辺りで消えるとするかぁ)」
コブラは瞳を閉じ、微笑みを浮かべながらその場を後にする。
ほむら「まどかを、救う。それが私の魔法少女になった理由。そして今は…たった一つ、私に残った、道しるべ」
ほむら「でも時間を繰り返せば繰り返すほど…貴方と私の距離は遠くなって、ズレていく」
ほむら「それでも私は…まどかを守りたい。だから…ずっと、時間を繰り返してきた」
ほむら「解らなくてもいい。伝わらなくてもいい。私は、貴方を守れれば、それで…」
まどか「解かるよ…ほむらちゃん」
ほむら「…まどか…」
まどか「…初めて、泣いてくれた。初めて、ホントの言葉で話してくれたから。…だから、わたしはほむらちゃんの言葉、解かるよ。…全部」
ほむら「… … …」
まどか「だから…わたしは、ほむらちゃんを助けたいの。お願い…わたしを、魔法少女に…!」
ほむら「…駄目よ」
まどか「… … …」
ほむら「それじゃあ、駄目なの。…貴方を、この闘いの中に巻き込めない。貴方には…ずっと、笑っていて欲しい。私の傍で、ずっと…」
ほむら「だから…それじゃあ、駄目。それじゃあ、私のしてきた事が全て、無駄になってしまう」
ほむら「私に、貴方を守らせて」
アナウンス「―――本日午前七時、突発的異常気象による避難指示が発令されました」
アナウンス「見滝原市周辺にお住まいの皆様は、速やかに最寄の避難場所への移動をお願いします。繰り返します―――」
・
マミ「…来るのね、いよいよ…」
ほむら「ええ。…本当にいいの?」
杏子「良くなかったら此処にいねーよ」
さやか「そうそう。…ま、ちょっと怖いけどさ。これも魔法少女のお仕事…ってヤツだよね」
マミ「皆、必ず生きて帰るわ。…だから、行きましょう、暁美さん」
ほむら「… … …ありがとう」
杏子「にしても、アイツ遅いな。どうしたんだ?」
さやか「…まさか…」
マミ「そんな事はないわ、美樹さん。…彼は、きっと来てくれる。今までだってそうだったんだもの。…だから」
その時、上空に聞こえる轟音。異常気象の突風を物ともせず、空中に停止するタートル号。
ほむら「…コブラ…」
コブラ「よう、待たせたな皆」
コブラ「それじゃ行こうぜ。パーティ会場へ…な!」
まどか「… … …」
避難場所である学校の体育館から、暴風吹き荒れる外を眺めるまどか。
その手に握りしめられているのは、一本のガーベラの花であった。
まどか「ほむらちゃん…。わたし…」
まどか「…ごめんね…」
――― 次回予告 ―――
遂にワルプルギスの夜との決戦だ!まぁー奴さんのデカい事強い事、この上ない!流石の俺でもちょっと骨が折れそうだぜ。
俺とほむら、マミ、さやか、杏子の力をもってしてもなかなか厄介な仕事だ。まぁ、後にも引けない事だし死ぬ気でやってやろうじゃないの!
しかしそんな中、戦いの中に突然現れるまどか。どうやらかの女は何かの決心をして来たらしい!こうなりゃもう怖いもんナシだ。
だが物事そう上手くはいかないねぇ。…大変な事が起きちまうみたいだぜ。
次回のCOBRA×魔法少女まどか☆マギカ。【五人の魔法少女(中篇)】。よろしくゥ!
避難場所である、見滝原市体育館。
暴風雨が吹き荒れる外の景色を茫然としたような表情で見つめるまどか。そして、その横にまるで何かを待つように佇むキュウべぇ。
2人の間に、少し前、会話があったせいだろう。ただただその空間には沈黙が流れていた。
それは、魔法少女の本当の姿。希望が絶望に変わるその瞬間と、その意味。インキュベーターはその全てをまどかに話したのだった。
重い沈黙を先に破ったのはまどかだった。
まどか「…騙してたんだね、全部」
QB「君も彼と同じ事を言うんだね、まどか」
まどか「…だって…!皆、一歩間違えたら…死んじゃってたかもしれないんだよ…!?それで、それで…魔女になって、戦うなんて事になったら…!」
QB「それこそ『当たり前』なんだよ、まどか。有史以前からずっと繰り返してきた事実さ。魔法少女は遥か昔から世界中にいたんだ」
QB「そして彼女達は、希望を叶え、ある時は歴史すら動かし」
QB「最後には絶望に身を委ねて散っていく」
まどか「…!」
QB「祈りから始まり、呪いで終わる。それが数多の魔法少女が繰り返してきた歴史のサイクルさ」
まどか「… … …」
まどか「ほむらちゃんも…マミさんも、さやかちゃんも、杏子ちゃんも…必ずそうなるって言うの…?」
QB「さっきも言った筈だよ。祈りは必ず、呪いに変わる。だからこそ魔法少女は僕たちインキュベーターに必要なのだから」
まどか「… … …」
まどか「そんな事、ない」
QB「どういう事かな?」
まどか「希望は、絶望に必ず変わるワケじゃない。…ずっと持っていられる希望だって、あるんだよ」
QB「君がそれを作って見せるとでも言うのかい、まどか」
まどか「わたしが…みんなを、助けてみせる…!!」
強い瞳。強い声。
まどかの右手には一本のガーベラの花が握られていた。
禍々しい瘴気のような、霧と風が向かい風となって五人に吹いていた。
まるでそこに行くのを拒むかのような向かい風。しかし、五人はその風に向けて歩んでいくのであった。
マミ「…レディさんは、来ないの?」
コブラ「ああ。俺は基本的にかの女を仕事に手伝わせないスタイルなのさ。今回は俺の船の留守番を頼んであるからな」
さやか「そっか…。そもそも宇宙船が壊れちゃ、コブラさんが帰れなくなっちゃうもんね」
コブラ「その意味もあるが、まぁかの女は余程の事があった時の助っ人を頼んであるというわけだ」
杏子「これが『余程の事』じゃなけりゃ、アンタの余程の事はいつ起きるんだよ」
コブラ「そうだなぁ。美女達が軍隊アリみたいに俺に襲い掛かってきた時は、流石に助けてもらおうかな」
さやか「あはは…よくそんな冗談言いながら歩けるね」
コブラはにぃ、と葉巻を銜えた口元を緩ませた。
ほむら「… … …」
マミ・杏子・さやか「…!」
前方からこちらに向かってくるものが多数ある。
それは、まるでサーカスのパレード。
象、木馬、人形…まるで祭りのように賑やかに、それらは五人を通り抜けていくのだった。
さやか「使い魔…!?」
さやかはソウルジェムを取り出すが、ほむらがそっと手を出してそれを静止させる。
ほむら「いいえ。少なくともこいつらは私達を攻撃しないわ。…まだ、早い」
コブラ「本体だけを叩けばいいわけだ。目的としては単純でいいね」
ほむら「そうね。…シンプルだからこそ、絶対的でもある。力の差が歴然と出るわ。…私達が、敵う相手か否か」
さやか「… … …」
杏子「…さやか?…震えてるのか」
さやか「…あ、あはは…なんか…ど、どうしても…怖いなぁ。ごめん、情けないの分かってるし、今更だけど…こ、怖くって…どうしようもなくて…」
そう言うさやかの表情は曇り、身体が小さく震えていた。心配をする杏子も、その恐怖心による震えを必死に耐えている。
杏子「… … …」
さやか「…バカ、だよね。もうとっくにあたしなんか人間じゃないのに…死ぬのが、怖いなんてさ…。ホント、バカだと思うよ…笑ってくれても…」
杏子「ほら」
さやか「…!」
俯いて震えるさやかの眼前に、杏子の手が差し出された。
杏子「手、握れよ。ちょっとは抑えられるだろ?震え」
さやか「… … …杏子…」
杏子「怖いのは誰だって一緒さ。我慢なんざしなくていい。怖いならアタシの手なんか握らないで逃げてもいいんだ。誰も責めないよ」
杏子「ただ、アンタのバカさ加減じゃ怖くてどうしようもなくても、行こうとするだろ?」
杏子「だから、同じバカ同士、手でも握ってやるよ。少しはマシになるだろ」
さやか「… … …」
さやか「恥ずかしいヤツ」
杏子「うるせーよ」
さやかは微笑みながら、そっと杏子の手を握った。
五人の中で、前方を躊躇いなく歩く、ほむらとコブラ。そして、それに必死でついていく、マミ。今にも恐怖心で歩みが止まりそうなのは、マミも一緒だった。しかし、前を歩く2人はすたすたと先を進んでいく。
マミ「…2人とも、強いのね…。私なんて、逃げ出したくてたまらないのに…」
ほむら「逃げ出してもいいのよ、巴マミ。…責めるつもりなんて、ないわ」
マミ「…いいえ、行くわ。…でも… … …どうしても…怖くて…」
コブラ「マミ。俺もほむらも、別に強いわけじゃないぜ」
マミ「…え?だって…」
コブラ「俺もほむらも、『未来』を信じているのさ。だからこそ、その未来がくるように突き進んでいける」
マミ「…未来…」
ほむら「… … …」
コブラ「明けない夜なんざない。夜が明けなきゃ、サンタクロースはプレゼントを渡す事すらできない。だから、俺達はしっかり朝を迎えさせてやらないとな」
マミ「…コブラさん…」
コブラ「ついてきな、マミ。魔法少女は、必ず俺が守ってみせる」
詢子「どこへ行こうっていうんだ?」
まどか「…!ママ…」
詢子「まどか…あたしに、何か隠してないか?」
まどか「… … …」
詢子「言えない、ってのか」
まどか「…ママ、わたし…」
まどか「友達を助けるために、どうしても今行かなくちゃいけないところがあるの」
詢子「駄目だ。消防署に任せろ。素人が動くな」
まどか「わたしでなきゃ駄目なの」
詢子「… … …」
パァン。
廊下に響くような、乾いた音。
詢子「テメェ1人のための命じゃねぇんだ!あのなぁ、そういう勝手やらかして、周りがどれだけ―――」
まどか「分かってる」
詢子「…!」
まどか「私だってママのことパパのこと、大好きだから。どんなに大切にしてもらってるか知ってるから。自分を粗末にしちゃいけないの…よく分かってる」
まどか「だから、違うの」
まどか「みんな大事で、絶対に守らなきゃいけないから。…そのために、わたしに出来る事をしたいの」
詢子「…なら、あたしも連れて行け」
まどか「駄目。ママは…パパやタツヤの傍にいて、二人を安心させてあげて欲しい」
詢子「… … …」
まどか「ママはさ。私がいい子に育ったって、いつか言ってくれたよね。…嘘もつかない、悪い事もしない、って」
まどか「今でも、そう信じてくれる?」
詢子「… … …」
詢子はふぅ、と諦めたように溜息をつき、まどかの両肩を掴んでその目をじっと見つめる。
詢子「…絶対に、下手打ったりしないな?誰かの嘘に踊らさせてねぇな?」
まどか「うん」
まどか「わたしを…皆を助けてくれる、頼もしい人がいるから。だから、安心して。絶対にわたし、無事で帰ってくるよ」
――― その少し前。
体育館に避難していたまどかを、同じように廊下で呼びとめた人物がいたのであった。
まどか「…!!コブラ、さん…!」
コブラ「よう、まどか。元気してるか?」
まどか「み、みんなは…!?ワルプルギスの夜に向かって行くんじゃ…」
コブラ「ああ、俺もこれから行くところさ。その前に、まどかに渡す物があってね」
まどか「…渡す、物…?」
コブラはまどかの所まで近づくと、手にもっていた花をまどかの手に握らせた。
まどか「…これ…」
コブラ「昨日みんなには渡したんだけどな、お前さんに渡すのを忘れてた。俺とした事がうっかりしてたぜ」
まどか「… … …」
コブラ「まどか。お前さんは今のままで十分強い。だから、なりたい自分になろうとするな。自分を犠牲にして他人を助けようなんてするな」
コブラ「ただ、自分の信じる道だけを進んでいけばいい。それが、まどかの強さだ」
まどか「…!!」
コブラ「じゃあな。…美人のお袋さんにも、よろしくっ」
コブラはウインクをして微笑むと、体育館の外へと出ていく。
まどか(コブラさん、わたし、見つけたよ)
まどか(自分の信じる道、歩いていける道)
まどか(全部、自分で決められたんだよ。もう迷わない。絶対…後悔なんてしない!)
まどか(わたしは…!)
吹き荒れる雨の中。傘もささずに、少女は駆けていく。
自分の信じる道を、ただひたすら。
五人は歩みを続けた。
一段と、風を強く感じたその時、ほむらは足を静かに止めて、四人がいる後ろを振り返る。
ほむら「…逃げ出すなら、此処が最後よ。後戻りは出来ないわ」
ほむらは静かに、それを全員に告げた。
マミ「…」
さやか「…」
杏子「…」
しかし、誰一人として踵を返す者はいなかった。俯く者もいなかった。
ただ魔法少女達は前を向き、その先に存在するであろう巨大な敵に強い瞳を向けている。
コブラ「途中下車はいないようだぜ、ほむら」
ほむら「…本当に、いいのね」
マミ「ええ。…答えは、さっきと変わらないわ」
さやか「どうせ何もしなきゃ死んじゃうんだし…私達が、どうにかしなきゃね」
杏子「乗りかかった船だ。最後まで付き合ってやるよ」
ほむら「… … … ありがとう、皆」
コブラ「… 見えてきたぜ、アイツが…どうやらそうみたいだな」
ほむら「ええ、間違いないわ。…あれが…」
マミ「ワルプルギスの… 夜…」
コブラ「ここが終点か。それじゃあ皆、派手にやるぜ」
さやか「…うん!」
杏子「行くぜ…!」
魔法少女達はソウルジェムを取り出し、それぞれの戦闘態勢をとる。
コブラは左腕の義手をゆっくり抜き、サイコガンを目標に向けて構えた。
ほむら「…来るわ…!」
5 4 3 2 1 …
まどか「はぁっ、はぁ…っ!」
QB「もうすぐ着く筈だよ、まどか」
まどか「ほ、本当に…?まだ、影も形も…!」
まどか「…!」
QB「到着したようだね」
QB「あれが、ワルプルギスの夜」
QB「歴史に語り継がれる、災厄。この世の全てを『戯曲』へと変える、最大級の魔女だよ」
まどか「あ、あ、あ…!」
まどかの眼前に広がる光景。
それは、まさに死闘とも呼べる戦いの光景であった。
巨大な歯車には、逆さに吊るした人形のようなドレス。
数多の少女達が笑い声をあげるような声が、あちこちに響くように聞こえる。
それは、まるで城塞。巨大な城が空へ浮かび、笑い声をあげながらそこに佇む。
今までの魔女とは比べものにならない巨大な姿。そして、感じられる禍々しい気迫。魔法少女にとっては、まさにそれは最悪の敵と呼ぶに相応しかった。
さやか「はああああああッ!!!」
杏子「うおおおおおおッ!!!」
さやかと杏子は、剣と槍を構え、ワルプルギスの夜へと続くサーカスのロープを駆けていく。
その横を飛び交う、銃弾や砲撃。
地上からはマミ、ほむら、そしてコブラの砲撃が続いていた。
マミ「…ッ!はッ!やッ!」
ほむら「…!」
マミは魔法で召喚した単発銃を次々と目標に向けて放ち、ほむらも用意したあらん限りの銃火器を次々と放っていく。
巨大な爆発が次々と起こる中、本体へ辿り着いたさやかと杏子は勢いよく跳躍をし、魔力を高め、斬撃を放つ。
一撃。
剣と槍による鋭い一撃を与えると、2人は魔力を使いゆっくりと地上に降りる。
ワルプルギスの夜「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!!!」
杏子「マジかよ…効いてねぇ…ッ!」
ほむら「続けて攻撃するわ!加勢して!」
さやか「くっ…!それならもう一度…!」
コブラ「おっと、もうちょっと待ってくれ。俺の番がまだ終わってねぇぜ」
マミ「え…!?」
コブラはサイコガンを上方に向けると、高めた精神エネルギーの全てを放出する。
まるでそれは、巨大な光の大砲。瘴気を切り裂き、真っ直ぐにワルプルギスの夜に向かう。
ズオオオオオ―――――――ッ!!!
ワルプルギスの夜に触れ、それは巨大な爆発を起こした。爆風で見えなくなった相手に向け、コブラは次々とサイコショットを放つ。
コブラ「ショータイムだ!遠慮しないで続けてどんどんいけ、皆!」
ほむら「…!」
杏子「っしゃあ!任せとけ!」
カチリ。
時間を止め、銃火器をワルプルギスに向けて再び連射するほむら。銃弾、グレネード、ロケットランチャー…用意した全ての武器を惜しむことなく相手に向けて放っていく。
再び動き出し、ワルプルギスの夜に向け進んでいく数百、数千の弾丸。
その間に、マミとコブラも攻撃を続けていく。
マミ「…!『ティロ・フィナーレ』ェェッ!!!」
コブラ「うおおお―――っ!!!」
巨大な銃身から出る、魔力の一撃。左腕の砲身から出る、巨大な精神力の砲撃。
その全てが魔女に確実に当たり、次々に爆発と爆風を生む。通常ならば、どんな敵でもそれだけで消滅するだろう。
しかし、さやかと杏子はそれでも再びワルプルギスの夜に向けて突進していく。
さやか「今度こそ決めるよ!!」
杏子「ああ!いい加減、くたばらせてやるぜ!!」
意気込み、駆け抜ける2人。
まどか「…皆…!」
QB「… … …」
どこか、安心して見守るようなまどか。それは、今までになかった光景だからだろうか。
巨大すぎる敵。しかしだからこそ、五人は今までにない団結力で次々と効果的な攻撃を仕掛けられている。全ての攻撃が当たり、お互いをフォローできている。
まどか(これなら…勝てる…!)
しかし、まどかは…いや、全員はまだ気づいていなかった。
ワルプルギスの夜が、こちらに対し何の攻撃も仕掛けていない事に。
さやか「いくよ!もう一回ッ!!」
あと少しで、もう一度城塞へと辿り着く。2人は剣と槍を構え、再び一撃をくわえようとしていた。その瞬間、地上からの砲撃は止み、2人の攻撃を待つ。
まさに完璧なチームワーク。…その筈だった。
杏子「…!!! なッ…!?」
まさに、ワルプルギスに斬りかかろうとした時。爆風の中から出現する…影。
幻影「キャハハハハハハハハハハハ!!!」
幻影「アハハハハハハハハハハハハ!!!」
人型の黒い影は素早くさやかと杏子の2人の眼前に来ると、武器のようなもので2人を攻撃した。
さやか「きゃああああああッ!!!」
とっさの防御も間に合わず、さやかは幻影の攻撃により地上へと叩き落された。
杏子「ッ!!さやかッ!!」
一瞬、さやかの方へ気を取られてしまった杏子。その隙に、もう一体の幻影も杏子に向けて攻撃をする。
杏子「ぐああああッ!!」
マミ「!!美樹さん、佐倉さんっ!!」
コブラ「なんだありゃあッ!?」
ほむら「…!幻、影…!?ワルプルギスが吸収した…魔女の…魔法少女の、魂…!!」
コブラ「くそぉ…!!さやかぁ!杏子ッ!!」
地上に叩き落されたさやかと杏子。どうにか自身の魔力でそのダメージを軽減するものの、魔法少女の幻影は追撃をかけようと2人に急速に迫る。
さやか「くッ…!だ、大丈夫…!?杏子…」
杏子「ああ、なんとか… …ッ!? 危ねェッ!!」
体勢を立て直そうとするも、幻影は今にも斬りかかってきそうなほど間近に迫っていた。
その時。
ズオオオオ―――――ッ!!
杏子「!!」
2体の幻影を一気にかき消す、光の波動。
幻影が消えた先に見える、サイコガンを構えた男の姿。
さやか「ヒューッ!さっすがコブラさん!助かっちゃった!」
コブラ「元気そうで何よりだ。…しかしあの野郎、なんて攻撃してきやがるんだ。悪趣味にも程があるぜ」
杏子「…余裕ぶっこいてる暇もなさそうだぜ。…来るぞ!」
上空を見据える杏子。その視線の先を追うように、コブラとさやかもワルプルギスの夜の方を見る。
城塞から次々と出現するのは、何体…いや、何十体もの、魔法少女の幻影。それらは敵であるコブラ達に向け、笑い声をあげながら突進してくる。
コブラ「やれやれ…こういうモテ方は勘弁して欲しいよ、ホント」
マミ「2人とも!大丈夫!?」
慌ててさやか達の方へ駆け寄るマミとほむら。5人は再び合流をし、臨戦態勢をとる。
さやか「はいっ!…でも、ちょっとピンチかも…!」
コブラ「マミ、ほむら!迎撃するぜ!」
マミ「…!何…あの幻影の数は…!」
ほむら(…あんな攻撃、今まで見たことは無かった…。それだけアイツが…ワルプルギスの夜が追い詰められているという事…?」
ほむら(でも…それじゃあ、あの魔女の本気はどれだけ…!)
コブラ「ほむらッ!」
ほむら「―――ッ!!」
コブラ、マミ、ほむら。遠距離武器に特化した3人は、こちらに向けて突っ込んでくる幻影群を迎撃する。
魔法銃、現代火器、そしてサイコガン。それぞれの砲撃は幻影達を次々と消滅させていくが、全てに対応できるわけではない。残りの幻影は次々と5人に向けて襲ってくる。
さやか・杏子「はあああああああッ!!!」
こちらに近づく幻影は、一歩前に出たさやかと杏子の斬撃で倒していく。一体一体が、魔法少女と同レベルの闘い。しかしながら、戦闘経験を積んだ2人の戦士は次々と幻影を斬り捨てていくのだった。
――― しかし。
ほむら(… 終わ、らない…ッ!!)
コブラ「くそっ!出し惜しみなしか!」
幻影は減るどころか、次々と城塞からこちらに向かってくるのだった。
マミ「はぁっ、はぁ…!」
さやか「くっ…!ぐ、ゥ…っ!!」
幻影を次々と倒していく魔法少女とコブラ。しかしながら、長引く戦闘による魔力の消費で、魔法少女のソウルジェムはどんどん黒く濁っていく。
ほむら(このままじゃ…私達まで危なくなる…!!)
さやか「あ、ッ…!!」
杏子「!!さやかッ!!」
最も経験が浅いさやかの限界が、一番先にきたようだった。体勢が崩れ、地面に膝をつけてしまうさやかに襲い掛かる、複数体の幻影達。
さやか「… !!!」
自分の最期を感じたのか、思わず目を瞑ってしまうさやか。 …しかし、そのさやかの目の前に立つ、一人の男の姿。サイコガンは次々と幻影を撃ち抜き、倒していった。
さやか「コブラ…さん…!」
コブラ「安心しな。何があっても守ってみせるぜ」
…しかし、状況はどんどん苦しくなっていくばかりだった。
そして…5人は未だ、気付かなかった。
ワルプルギスの夜が、次なる攻撃を仕掛けようと動いている事に。
まどか「 … !!!」
その異変に気付いたのは、鹿目まどかが最初だった。誰よりも遠くから状況を見ていたからこそ、気付けた事実。
彼女は、戦いを続ける5人の元へ急いで駆け寄る。
そして、あらん限りの声で叫ぶ。
まどか「逃げてええええ――――――ッ!!!!」
ほむら「…! まどかっ!?」
マミ「鹿目さん…!?どうして…!!」
コブラ「… … …!! 何だ、ありゃあ…っ!!」
そして、まどかの叫びの意味を、5人は知る。
城塞の周りを取り囲んでいるのは…根本が折れた、幾つもの巨大ビルだった。
ワルプルギスの夜はそれらのビルを、こちらに向けて飛ばしてくる。まるで、とてつもなく巨大な弾丸のように。
コブラ「くそおおお―――ッ!!!」
コブラはサイコガンを次々と巨大ビルに向けて発射する。
しかし…間に合わない。崩れた鉄塊は全員を押し潰そうとばかりに、ゆっくりと、しかし確実に迫い来るのだった。
ほむら(… !! このままじゃあ、まどかまで…ッ!!!)
カチリ。
ほむらは時間停止をして、こちらに走り寄ってくるまどかに近づき、引き留めようとその場に押し倒した。
カチリ。
魔力を消費した状態での、精一杯の時間停止。
まどか「あっ…!」
砂埃をあげ、地面に倒れ込むほむらとまどか。
その先には…
魔力を消費しすぎて動けなくなったさやか、杏子、マミと…その3人を必死で守ろうとサイコガンの連射を続ける、コブラの姿。
さやか「…もう、駄目…っ!!」
杏子「くそ…っ!!ここまで、かよ…!!」
マミ「そんな…そんな…ッ!!!」
眼前まで迫る、巨大なコンクリートと鉄の塊。
コブラは、喉が引き裂かれるような声をあげた。
コブラ「俺に掴まれぇぇぇぇぇ―――――――――――ッッッ!!!!!!!」
ドオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!!!!
墓標のように、4人を押し潰すコンクリート。
爆風が、ほむらとまどかを襲う。
そして、無情なまでの静けさが、辺りを包むのだった。
まどか「… … …」
ほむら「… … …」
そこには、さやかと、杏子と、マミと、コブラの姿は無かった。
今まで、確かに4人が存在した場所。しかしその場所は、無数の建造物の残骸により、掻き消えてしまっていた。
コブラの叫びが、嘘のように消えていた。静寂は恐怖心と絶望を現し…同時に、4人の死を現すのだった。
ほむら「… ぐ …ッ …!!」
まどか「…嘘…だよ…。みんな…みんな、死んじゃったの…?」
まどか「そんなの、嫌だよ…。 …返事、してよ…マミさん…。さやかちゃん…杏子ちゃん…!コブラさん…!」
まどか「こんなの… こんなのって… !!!」
ほむら(… 駄目だった…。 今回、も…)
まどか「いやあああああああああああああああああああああああああッ!!!」
まどかの悲痛な叫びが、静寂を切り裂いた。
絶望を表情に灯す2人の眼前に現れる、1つの影。
それは、インキュベーターだった。
QB「さぁ、鹿目まどか、暁美ほむら。君達はどうするんだい?」
まどか「… … …」
ほむら「…!くッ…!!」
QB「希望は、全て消えた。後に残った物は絶望しかない」
QB「どうするんだい?このままこの街が…いや、この世界が滅びるのを待つのかい?」
まどか「… … …」
QB「手段はある筈だ。それは、2人とも分かっている事だね。 …鹿目まどか、君自身が希望となる以外に絶望を払拭する方法は存在しない」
QB「もし、君自身が希望となる決意があるのなら…」
ほむら「駄目…っ!まどか…!あいつの言う事に…ッ!!」
まどか「…ある、のなら…」
ほむら「… まど、か…っ!!」
QB「もし君に決意があるのなら」
QB「ボクと契約して、魔法少女になってよ」
――― 次回予告 ―――
全く、コブラと魔法少女の下敷きなんて喜ぶのはどこのどいつだぁ!?勘弁してほしいよホント。
憐れ、宇宙海賊コブラの冒険もここで仕舞い…って、俺を待ってる美女がうじゃうじゃいるのにおちおち死んでられるかってんだチクショー!!
一方、まどかはいよいよ決意を固めて魔法少女になっちまう。しかしその願いは、誰も予想しなかったとんでもない願い事だった!!
まどか、ほむら…一体どうなる事やら。平穏が宇宙の彼方で欠伸してるぜ。どんな結末が待っているのか、いよいよラストスパートだ。
次回のCOBRA×魔法少女まどか☆マギカ。【五人の魔法少女(後編)】。よろしくゥ!
瓦礫の山にぴょこんと飛び乗ったその生き物は、2人の少女に向けて告げる。
その声に、感情は無い。ただ、今そこにある事実をただただ冷酷に告げ、そして選択を迫るのだった。
QB「――― ボクと契約して、魔法少女になってよ」
その言葉に、1人の少女は明らかな敵意を向ける。
しかし、もう1人の少女は…その言葉に希望を見出してしまうのだった。
ほむら「…ッ…!ま、どか…っ!駄目…っ!駄目よ…!!」
まどか「… … … ほむらちゃん …」
ほむら「やめて…!貴方が魔法少女になったら、私は…っ、私は…!!」
まどか「… 約束、守れなくてごめんね、ほむらちゃん…」
ほむら「そんな言葉…聞きたくない…!まどか…!お願い…っ!やめてぇ…!」
QB「さぁ、まどか、君は何を願うんだい?君の魂なら、どんな願いでもその対価となり得る」
まどか「… … …」
まどか「私の願いは ―――」
ほむら「駄目ェェェェェェェェッ!!!!!!」
第10話「五人の魔法少女」
吹き荒ぶ嵐の中、1人の少女はハッキリとした眼差しでその生物を見つめる。
それは、今までの鹿目まどかからは考えられない程の明瞭な言葉だった。
まどか「私の願いは…」
まどか「全ての魔女を、生まれる前に消し去りたい」
まどか「全ての宇宙。 過去と未来の全ての魔女を。 …この手で!」
ほむら「っ…!!」
QB「! その祈りは…そんな祈りが叶うとするなら、それは時間干渉なんてレベルじゃない!因果律そのものに対する叛逆だ」
QB「まどか、君は… 神になるつもりなのかい」
まどか「神様でも、何でもいい。皆… これまで魔女と戦い、希望を信じてきた人達の涙を、もう見たくない。そのためなら、どんな事だってしたい」
まどか「それを邪魔するものなんて… ルールなんて、全部壊して、変えてみせる!」
まどか「これが、私の願いよ。…インキュベーター」
ほむら「駄目…!!まどか…!!そんな事をしたら… そんな願いが叶ってしまったら、まどかは…!!」
まどか「… ほむらちゃん …」
まどか「本当に、ごめん。 …でも、私は…皆の笑顔が戻るなら、この命を使っても構わない」
ほむら「そんな…!それじゃあ、私は…何の為に…!!」
まどか「… … …ごめん…いくら謝っても、足りないと思う。 …でも、ほむらちゃんがずっと私を守ってきてくれたから、今のわたしがあるの」
まどか「魔女が存在する限り、いつか…わたしもほむらちゃんも、きっと哀しみを背負わなくちゃいけない」
まどか「ううん、マミさんだって、さやかちゃんだって、杏子ちゃんだって… 世界中の、どの時間でも… 哀しみはずっと消えない」
まどか「コブラさんが、みんなの希望になろうとしてくれた。…でも…それは、叶わない願いだった」
まどか「だから…代わりになれるのは、わたししかいない。わたしは…皆の、希望になりたい。その為なら…この命を犠牲にしても、構わない」
ほむら「嫌よ…!まどかがいなくなったら…私は、どうすれば…!!」
まどか「… … …」
まどか「ありがとう、ほむらちゃん。…本当に、今まで…ありがとう。…だから、もう、いいんだよ」
ワルプルギスの夜が、笑っている。
まるで世界そのものに対し嘲り笑うかの如く、その笑いは響き渡った。
しかし、まどかとほむら、そしてキュウべぇの周りはまるで時間が止まったかのように静まり返っているように思えた。
まどかは一歩、キュウべぇに対して近づき、その手を差し出した。
まどか「――― さぁ、インキュベーター。 どんな願いも叶えられる…そう言ったよね。 …今のが、わたしの願いよ」
QB「… … …」
まどかの周りを、光が包む。
それは、まどかの願いが成就されようとする瞬間を示していた。
ほむら「まどか…ぁっ!」
まどか「――― !!」
インキュベーターとの契約がなされ、新たな魔法少女が誕生する瞬間。
祈りを捧げるように瞳を閉じ、手を差し出すまどかは、微笑みを浮かべていた。
光が増す。風が巻き起こる。 …全てが、変わる。
――― その時。
「おおっと、その契約 ――― 異議アリだ」
まどか「――― !!」
まどかの瞳が、開いた。
「まどか、俺は言った筈だぜ。 自分を犠牲にして、他人を助けようとするな、ってな」
「希望ってのは、なるモノじゃない。 作るものだ。 まどかの今までしてきた事は、十分『俺達』の希望になって…力になっている。 まどかは、まどかが思っている以上に、強い」
まどか「… !!」
ほむら「この…声…」
「それにな、俺のいた世界では、神様ってのはもっとボインなんだぜ」
「14歳のいたいけな少女が神様になっちまっちゃあ、俺の世界と違っちまうんだよ。 ――― お前さんにそんな重荷を背負わせる世界なら、俺が変えてやる」
「――― いいや、壊してやる」
QB「…!!」
「俺は、あんた達を守ると約束した。 そして、男ってのは… 一度交わした約束は、守りきらなきゃいけない生き物なんだぜ!!」
まどか「!!!」
瓦礫の山。そこから、光が溢れだしてる事に気付いた。
その光は段々と強くなる。鉄筋を、コンクリートを、硝子を… 全てを溶かし、『道』を作ろうとする、その光。
「そのためなら… 俺は何度でも立ち上がる!何度でも挑むッ!! だから… 俺を、俺達を、信じろ!!まどかッ!!」
コブラ「俺は ――― 不死身のコブラなんだからなァッ!!!」
ドゴォォォォ――――――ッ!!!!!!
上空に放たれた巨大なサイコショットは、雲を切り裂き、太陽の光を浮き出させた。
その光に包まれる、1人の男。
天に構えたサイコガンを右手で抑え、その男はまどかとほむらに向け、不敵な笑みを浮かべるのだった。
そして、その男の周囲には、マミ、さやか、杏子…それぞれの姿があった。
まどか「コブラ…さん…!」
ほむら「コブラ…!」
QB「…信じ難い。一体、どうやって」
コブラ「へへへ、覚えときなインキュベーター。 サイコガンは、心で撃つものなのさ。この銃は俺の精神(サイコ)エネルギーに反応し、そいつを曲げる事も、増す事も出来る」
コブラ「つまり、だ。オタクらに無い『感情』の力が、俺達を救ったのさ」
QB「!」
コブラ「かの女達、魔法少女を助けたいという感情。その思いは力になり、鉄だろうが何だろうが一瞬で溶かしちまうくらいのエネルギーを持つ。そいつが、俺達を助けた」
コブラ「な?キュウべぇ。感情ってヤツも、捨てたもんじゃないだろ?」
QB「…」
さやか「ビルが飛んできた瞬間、コブラさんのサイコガンが一瞬でビルを溶かしてくれた。そいで、その熱があたし達にこないように、あたしの魔力でバリアを張ってたのさ!」
マミ「美樹さんの自己回復能力の応用ね。…本当に助かったわ」
ほむら「そんな… だって、私達は魔力を消費して…ほとんど動けないくらいまで…」
さやか「へっへっへー」
さやかはニヤリと笑い、見せつけるように右手を差し出す。その手には、グリーフシードが握られていた。
コブラ「色々と賭けだったぜ。あの瞬間、俺がセーブせずサイコガンを撃つ瞬間、さやかがバリアを張ってくれなけりゃいけない」
コブラ「保険はかけておくもんだな。堅実ってのも少しは悪くないかもな」
コブラの大きな手には、大量のグリーフシードがあった。
QB「その為に…君は、魔女を倒していたのか」
コブラ「そういう事。もしもの時のために…ってヤツさ。こう見えて俺は貯蓄派でね」
コブラ「俺の手をさやかが握った瞬間、その穢れはコイツが吸い取ってくれる。もう少し遅かったら火傷しちまうところだったが、間に合ってホッとしたよ」
杏子「ホント、ギリギリの賭けだったな。…正直生きた心地しなかったぜ」
コブラ「まぁ、これで全ては解決だ。…ほむらっ!」
ほむら「…!」
コブラはほむらに向け、グリーフシードを投げた。それを受け取ったほむらは自分のソウルジェムにグリーフシードを当て…再び立ち上がった。
コブラ「さ、後半戦だ。…9回裏、逆転ホームランはここからだぜ!」
さやか「うんっ!」
マミ「ええ…!」
杏子「おうっ!」
ほむら「…!」
ゆっくりと、しかし確実に都心部へと移動しようとするワルプルギスの夜。
しかし、その巨体に刺さるようにぶつかる、巨大なサイコガンの一撃。
ワルプルギスの夜「!!!」
コブラ「何処にもいかせねぇぜ、城の化け物。 ここから先は通行止めだ!」
ワルプルギスの夜「キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
再び現れた『敵』に反応したワルプルギスの夜は、再びその周囲から幻影を出現させる。
マミ「…!来るわッ!」
杏子「よっし、いくらでも相手してやるぜ!」
さやか「もういくら来ようが平気だもんね!…絶対、負けないッ!」
まどか「… コブラ、さん… わたし…」
コブラ「…まどか、俺はお前さんに何かをしろ、なんて命令した事は一度も無いぜ。 自分の進むべき道、切り開くべき道は自分で決めるんだ」
コブラ「まどかには、仲間がいる。魔法少女だけじゃあない。お前さんの周りにいる全ての人々が、まどかの希望となっている筈だ」
まどか「…!」
コブラ「神様なんざ必要ない。…希望ってのは… 自分の手でも、作り出せるんだぜ!」
まどかの頭にポン、と手を乗せたコブラは微笑みを向ける。そしてその手を離し、迫りくる幻影に向けて駆けだすのだった。
まどか「…自分で作り出す…希望…」
まどか「… … …」
まどかはキュウべぇの方をもう一度振り向き、その生物を見つめるのだった。
杏子「マミッ!危ねぇぞ!!」
マミ「!!」
背後に忍び寄っていた幻影を、杏子の槍が切り裂く。
杏子「ったく、昔っから甘ったるいんだよ。…弟子に助けられるようじゃ、師匠としてまだまだだな」
マミ「…クス。そうね…佐倉さん。 …ありがとう」
杏子「へっ。…油断すんなよ!来るぞ!」
次々と迫ってくる幻影を、コブラのサイコガンが撃ち落す。
それを避けきり、コブラに近づく幻影は…さやかの斬撃によって斬り捨てられた。
コブラ「様になってきたじゃねぇか!その調子なら彼氏もしっかり守れそうだな、さやか!」
さやか「バッ…!か、彼氏とか言わないでよっ!そういう話は後回しっ!!」
コブラ「こりゃ失礼!それはそうと、どんどん来るぜ!照れてる場合じゃないぞ!」
さやか「誰が照れさせてるのよっ!!」
ほむら「…ッ!」
迫る幻影を銃器で次々と撃つほむら。 …しかし、間に合わず至近距離まで迫られてしまう。
一体の幻影が、笑い声をあげながらほむらの目の前で斧を振りかざした。
ほむら「しまッ…!」
その幻影をかき消す、一筋の光。
まるで『矢』のようなその光は、かき消すように幻影を撃ち抜く。
ほむら「な…ッ!」
ほむらの見た先には… 弓を構え、微笑むまどかの姿があった。
まどか「…あ、あはは… 当たった…良かったぁ…」
ほむら「まどかッ! その恰好… 貴方は、魔法少女に…!!」
まどか「…うん」
ほむら「どうしてッ!? 契約してしまっては、折角コブラが繋いでくれた事が…!」
まどか「違うよ。 …願い事は、もう叶ってるから」
ほむら「え…!」
まどか「神様にはならない。ただ、わたし自身が一つの希望になれれば…それで十分なんだ、って…ようやく分かったんだ」
まどか「わたしは、ほむらちゃんに守られるわたしじゃなくて…ほむらちゃんを守るわたしにもなりたいの」
まどか「ほむらちゃんが…ずっと、わたしにそうしてきてくれたように」
ほむら「!!!!!」
まどか「だから戦う。皆と同じように、わたしも…街を守る、魔法少女になる!」
まどか「どんな絶望にも… 勝てるようにッ!!」
ワルプルギスの夜に弓を向けるまどか。
繰り出される幻影を次々とその矢で射ぬく。正確なその射撃は一撃も外れる事なく、目標に当たっていく。
さやか「え…ま、まどかっ!その姿…!」
マミ「…なったのね、魔法少女に」
まどか「ティヒヒ、遅ればせながら。…えと、似合うかな…?」
杏子「…ちょっと少女趣味すぎやしないか?アタシには死んでも似合いそうにない服だ」
マミ「うふふ、とってもよく似合っているわよ、鹿目さん」
まどか「あ、ありがとう…ございます」
まどか「…コブラさん。 …わたし、答えが出せたよ。 …1人で、考えて…!」
コブラ「… へへへ、似合ってるぜ、まどか。…それに、いい顔が出来るようになったじゃねぇか。先生は100点満点をあげるぜ」
まどか「…!ありがとうございます!」
ほむら「… … …」
まどか「…ほむらちゃん…」
コブラ「ほむら。お前さんの願いは、崩れ去っちまったか?違うんじゃないのか」
コブラ「未来は、1人で掴みとらなくてもいい。5人で掴みとる希望も、あっていいんじゃないか。5人の魔法少女が…希望となれる世界だ」
ほむら「…!」
まどか「…違うよ、コブラさん! …今は、6人… コブラさんも入れて、6人!…でしょ?」
コブラ「! …ああ、そうだな!」
ほむら「… 私は…」
ほむら「私は… まどかが…いいえ、皆が笑っていられる世界なら、それでいい。…だから…」
ほむら「だから私は…ワルプルギスの夜を、倒す!!」
コブラ「ようし!そんじゃさっさと、あの馬鹿でかい疫病神を追い払うとしますかぁ!!」
さやか「…!みんな!もう一回アレが来るよ!!」
ワルプルギスの夜の周囲に、再び崩れた建造物が浮遊しはじめた。もう一度、こちらへの攻撃を開始しようとする狼煙。
しかし、それを見ても6人の表情に恐怖はなかった。
全員が対象を見据え、それぞれの構えをとる。
コブラ「それじゃ、いい加減終わらせるとしますかぁ。少しオイタを許し過ぎたぜ」
まどか「…はいっ!」
さやかと杏子は、剣と槍に力を宿す。
マミとほむらは、それぞれの銃の照準を対象に合わせる。
そして、コブラとまどかはお互い背中合わせの恰好になり、サイコガンと弓を構える。
ワルプルギスの夜「キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
ほむら「…これで、終わらせる…!」
マミ「ええ… 魔女に… あんな姿になった、魔法少女を…放ってはおけないわ」
さやか「… あたし達の街は、あたし達が守らなくちゃ…ね!」
杏子「跡形もないくらいに… 吹き飛ばしてやるぜ!」
まどか「どんなに大きな壁でも… 必ず、超えてみせるっ!これからも!」
コブラ「…ようし、意気込みは良し、だ!派手な花火をぶっ放してやろうぜ!皆!」
コブラ「行けぇぇぇぇ――――――――ッッ!!!!!」
2つの刃の投擲。2つの銃弾の発射。そして、2つの光が同時に、ワルプルギスの夜へと向かって行く。
浮遊するビル群を物ともせず、それぞれが滅ぼすべき対象の元へと、真っ直ぐに。
そして… … …。
大きな爆発が起きた。
大きな光が辺りを包んだ。
それはまるで、嵐を吹き飛ばすかのような衝撃。
そして、それが止んだ時、その爆発の後には何も存在しなかった。
あれだけ街を包んでいた雷雲すら、そこには存在しない。
ただ一つそこにあったのは…吹き飛んだ雲の間から照らす、太陽の光。
その光が、まるで6人を称えるように差し込む。
ほむら「… … …」
コブラ「夜明け、ってのはいつ見ても良いもんだな、ほむら」
ほむら「… … … ええ。 …とても、綺麗」
コブラ「…ああ。 最高だぜ」
一筋の涙がほむらの頬を流れた。
まどか「終わった… 終わったんだよ!ほむらちゃん!ワルプルギスの夜を…倒したんだよっ!!」
ほむら「…!まど、か…」
思わずほむらに抱きつくまどか。
まどか「ほむらちゃん…!これで… これでようやく、ほむらちゃんの…っ!うう、っ…!ぐすっ…!」
ほむら「… … … ありがとう、まどか…」
肩に回されたまどかの手をぎゅっと握り返す、ほむらの手。
さやか「やったんだ… あはは、夢みたい…あんな大きな魔女を、倒せた、なんて…」
杏子「ようやく生きた感じがするな。今更ながら、随分無茶したもんだよ」
マミ「うふふ…でも、皆無事だったんだから、良かったんじゃないかしら」
杏子「…そうだな。 …あ?」
さやか「?どうしたの?杏子」
杏子「コブラは… どこ行きやがったんだ、あいつ」
マミ「…あら… 本当…」
レディ「… … …!」
コブラ「ようレディ、ただいま」
レディ「おかえりなさい、コブラ」
コブラ「心配したか?」
レディ「いいえ、ちっとも。だって、貴方の仕事だもの。 無事で帰ってこないはずがない、でしょ?」
コブラ「おーヤダヤダ。男心をちっとは分かってくれよ。心配した、なんて優しい言葉を求めてる時も俺にだってあるんだぜ?」
レディ「ふふ、考えておくわ。…さ、コーヒーを淹れておいたわ。船内で飲みましょう」
コブラ「嬉しいねぇ。帰るべき我が家と相棒と、最高のコーヒー。文句のつけようがない」
コブラ「それじゃ… ささやかな祝杯でも、あげるとしますか」
―― 次回予告 ――
ワルプルギスの夜も倒して、ようやく俺の肩の荷も下りたってところだな。お伽話ならめでたしめでたしで終わるところだが…ところがそうもいかないんだなぁ。
なにせ元の世界に戻る方法が見つからないときてる。これには流石のコブラさんもお手上げってわけ。どうしたもんかね。
しかし、ひょんな事から俺は元の世界に戻る事が出来るようになったわけ!いやー、めでたしめでたしで終われそう… って、毎度の事ながら、そう簡単にいかないわけだコレが。
最後くらい平和に終われないもんかね、全く、海賊のつらぁーいところよ。
次回、最終話【エピローグ さようなら、コブラ】で、また会おう!
ピピピピピ…
まどか「うぅ~ん…っ…」
カチッ。
まどか「…ふぁぁ…よく、寝たなぁ…」
まどか「… … …」
まどか「夢…見なかったなぁ…」
詢子「おーい、まどか起きてるか~?メシにするぞ~」
まどか「あ…はーいっ」
まどか(…えへへ…なんだか、いい一日になる気がするなぁ…)
最終話「エピローグ さようなら、コブラ」
まどか「うーん…」
詢子「ふぁぁ…おはよ、まど… …なんだ、またリボンの色、悩んでるのか?」
まどか「…あ、ママ、おはよう。ティヒヒ…みんなかわいくって…」
詢子「前から言ってるだろ?赤だって。 …ま、そこまで悩むんならいっそ両方持って行っちまえばいいんじゃないか?」
まどか「あ!そうだね…うん、そうする!」
詢子「決めたら朝食食べに行くよ。…あー、台風の低気圧がまだ残ってて頭痛いわー」
まどか「ママ…それ、単に飲み過ぎだと思うよ…」
詢子「はっはっは。…さ、行くぞ」
まどか「それじゃ、行ってきまーす!」
知久「行ってらっしゃーい!」
タツヤ「いったーっしゃーい!」
詢子「気を付けてなー!」
まどか「はーいっ!」
まどか(いつも通り、何の変りも無い朝…だったなぁ)
まどか(わたしは…ううん。さやかちゃんも、マミさんも、ほむらちゃんも、杏子ちゃんも…コブラさんも。みんな、あの戦いを生き抜いて…この街を守った、なんて…。実感ない)
まどか(でも…空は今日も晴れていて。清々しい空気を…胸いっぱいに吸い込める)
まどか(私は…魔法少女になったんだ)
まどか「…えへへ」
さやか「…なーに朝からにやついてるんだぁ?まどかー」
まどか「ふぇっ!?い、いつの間に…」
仁美「…いつの間にも何も、今ここまでまどかさんが歩いてきたのではありませんか?」
まどか「… … … 天狗の仕業」
さやか「何を言っているお前は」
さやか「しかし、実感ないよねぇ、まどか」
まどか「あ、さやかちゃんも同じ事思ってた…?実はわたしも」
さやか「うん。こんなふうに朝フツーに登校できるなんて、夢にも思わなかったもん」
仁美「…お2人とも、何のお話をされているのでしょう?」
さやか「! あ、あははは!いやぁ、あんな台風が起きた後でよく学校やってるなーって!学校吹き飛んでるかと思ってさぁ!」
まどか「そ、そうそう!そういう事なんだよっ!」
仁美「…また私に内緒のお話を… 不潔ですわー!」
涙を流しながらダッシュをして学校に向かう仁美。
まどか「… 行っちゃった。 …ところで、さやかちゃん。…仁美ちゃんと、恭介くんの事は…」
さやか「ああ、アレ?しばらくその話は抜きにしよう、ってお互いに話したの」
まどか「…?」
さやか「恭介のヤツ、今はリハビリの事しか頭に無いし。そういう所鈍感で嫌になっちゃうからさ。…仁美にも、かわいそうだし。だからしばらくこの話はやめて、友達として改めて…って話したの」
まどか「…すごいね、さやかちゃん。そういう事ズバっと言えるって」
さやか「うーん。前までのあたしだったら、無理だったかな? 一皮剥けた、って感じかな。スーパーさやかちゃん的な」
まどか「あはは」
さやか「お。前方に目標確認」
まどか「…あ、ほむらちゃんだ」
さやか「おっはよー、ほむら!今日も暗いぞー!どうしたー!?」
ほむら「…おはよう、まどか」
まどか「おはよっ、ほむらちゃん」
さやか「うおぉい!出会って即無視かいっ!しかもまどかまで!?」
ほむら「… … …」
まどか「… … …」
さやか「…おーおー、見つめ合って頬赤く染めあっちゃって…新婚初日かっての、あんたらは」
まどか「な、なにいってるのさやかちゃんてばっ…!て、ティヒヒ、…えと…い、一緒に行こ?ほむらちゃん」
ほむら「ええ」
杏子「よう」
まどか「!?杏子ちゃん!どうして…それに、その恰好…」
さやか「ウチの制服じゃん!…ま、まさかアンタ…」
杏子「今日からこの学校に転校してきたんだよ。拠点を本格的に移そうと思ってな。この方が好都合だからさ」
さやか「えええええっ!?」
まどか「あはは、杏子ちゃんのスカート初めて見た。すごく可愛いよ」
杏子「!? ばっ、ばっかやろ…!こっちだって恥ずかしいんだよ…!そういう事言うのやめろ…!」
さやか「あれー?制服違ってるんじゃないのー?男子用制服じゃなかったっけー?」ニヤニヤ
杏子「こ・の・や・ろ…!」
さやか「やるかこのー!!」
ほむら「…騒がしいわね」
まどか「あはは…でも、2人ともすごく嬉しそうだよ」
ほむら「… … …」
キーンコーンカーンコーン
まどか「あ!大変!授業はじまっちゃう!」
さやか「にゃんだとー」
杏子 「にゃんだとー」
お互いに頬を引っ張り合っている2人。
4人は学校まで駆けて行こうとするが…その前方を遮るように、1つの影が出てきた。
マミ「はぁっ、はぁ…!」
まどか「ま、マミさん!?」
さやか「どうしたんですか、そんなに息あげて…」
マミ「た、大変なの…」
杏子「魔女か!?朝っぱらから迷惑な野郎がいたもんだな」
マミ「ち、違うの!そうじゃなくて…!」
まどか「それじゃあ、一体…?」
マミ「コブラさんが…いなくなっちゃうの!!」
一同「えええええええええっ!?」
森林の中。タートル号の外で、コブラとレディは森林浴を楽しみながら、朝のコーヒーを啜っている。
コブラ「くぁぁぁあ…。やっぱり地球で感じる朝の光と空気が一番だね。過去の世界だとしても」
レディ「ええ。あれだけ風が吹き荒れたから、雲1つないわね」
コブラ「新鮮な空気を吸い込み、朝の森林浴。…なーんて健康的な生活かね。健康診断、一発オッケーだな」
レディ「元から何の問題も出てないでしょ?貴方の身体は」
コブラ「色々不具合が起きてるんだよ。特に最近、グラマラスな身体を見てないからな。精神的に問題アリだ」
レディ「…怒るわよ、かの女達」
コブラ「おおっと、オフレコで頼むぜ。 …それで、データは間違いないのか?」
レディ「ええ。何百光年か離れた先に、ブラックホールが発生したわ。周囲には何もない宙域なのだけれど…そのブラックホールのデータ、私達が吸い込まれた物と一致している」
コブラ「原因不明のブラックホールが再発…ねぇ。何か裏がありそうだが、まぁ、この話に乗っからないわけにはいかないな」
レディ「詳しい分析は付近でするけれど…元の世界に戻れる可能性は、極めて高いわね。行ってみる価値はあるわ」
コブラ「ああ。名残惜しいが、この世界ともさよならだ。忙しい海賊稼業に戻るとするかね」
レディ「でも…少し不安ね。かの女達…魔法少女。別れくらい言ってからの方がいいんじゃない?」
コブラ「俺の性分じゃない。…それに、もう俺の力は必要ない。だったら、この世界の役割は、かの女達に任せるとするさ」
レディ「…悲しむわよ、きっと」
コブラ「…乗り越えて行けるさ。可憐な魔法少女の闘いに、俺みたいな血生臭い男がずっと隣にいたんじゃ、絵にならない。別れを言えば余計辛くなる。…だろ?」
レディ「… … …ええ、そうね」
コブラ「そうと決まれば出発だ。俺の気が変わらない内にな」
レディ「それじゃあ、タートル号の調整をしてくるわね。数分したら発てると思うわ」
コブラ「ああ、頼んだぜレディ」
コブラを残してタートル号のコクピットに戻るレディ。
コブラ「… … …」
コブラは、何か思うような表情をしながら、葉巻の煙を青空に浮かべるのであった。
森の中を駆けていくマミ、まどか、さやか、杏子、ほむら。
まどか「ど、どうして急に…!?」
マミ「今朝…コブラさんに改めてお礼を言おうと思って、宇宙船のところまで行ったの…そうしたら…!」
さやか「元の世界に帰れるっ、て…!?」
マミ「…ええ、偶然聞いてしまったから、急いで皆のところに来たの…」
杏子「あのヤロー、何も言わないで帰るつもりかよ!」
さやか「でも…どうやって!?確か元の世界に戻る方法がないとか言ってなかったっけ!?」
マミ「…確かに、そう言っていた筈だけれど…」
まどか「… … …」
ほむら「… … …」
ほむら(…まどか…)
レディ「メインエンジン、反加速装置、制御システム、オールクリア。…それじゃあ、行くわよコブラ」
コブラ「…よろしくどーぞ」
コブラは葉巻から煙を吐き出し、苦笑いを浮かべた。
レディ「…タートル号、発… … …」
コブラ「…?どうした?レディ」
レディ「出発は遅れそうね、コブラ」
コブラ「んん? … … … ありゃあ」
タートル号のコクピットから、こちらに駆けてくる5人の少女の姿が見えた。
まどか「コブラさーーーーんっ!!!」
コブラ「あーあ。これじゃ恰好がつかないねぇ、参った参った」
コブラは頭をボリボリと?きながら、両手を大袈裟に上げた。
レディ「…ふふふ、そう言う割には嬉しそうじゃない?コブラ」
コブラ「言ってくれるなよ、レディ」
マミ「はぁっ、はぁっ…」
さやか「ま、間に合ったぁ…」
タートル号のハッチが開き、中から苦笑いをしたままコブラとレディが出てくる。
コブラ「おいおい、おたくら、学校が始まるんじゃないかい?無断欠席とは褒められないなぁ」
杏子「怒れるような性格もしてないだろ?お前の場合」
コブラ「ははは、ごもっとも」
マミ「…何も言わずに帰っちゃうなんて…寂しすぎるわ」
さやか「そうだよ!…それにあたし達、まだお礼も何もしてないよ!」
コブラ「したさ」
さやか「え?」
コブラ「久しぶりに、いい物を見せてもらった。…仲間と呼べる者の絆。そしてそいつが起こす奇跡。…俺が久しく忘れていたものを、思い出させてくれた」
まどか「…コブラさん」
コブラ「…まどか。お前さんの願い事が叶った結果かい?これは」
まどか「… … …はい」
コブラ「…全く。何でも願いが叶うっていう折角のチャンスをこんな事に使っちまいやがって」
ほむら「…!まさか…!」
杏子「…?どういう事だ?」
レディ「…!まさか、鹿目まどかの魔法少女になる願い…そのおかげで…!?」
まどか「…私、魔法少女になって、皆を助けられるようになれば…それだけでいいんです。…だから、その時の願いは…一番役に立つ人のために使おう、って」
コブラ「… … …」
――― ワルプルギスの夜との決戦の日。
ワルプルギスの夜へと向かって行くコブラと魔法少女達。
その後ろで、対峙をするまどかとキュウべぇ。
まどか「…キュウべぇ。私、魔法少女になる」
QB「…!」
まどか「願いは… コブラさん達に、元の世界へ戻る方法を与える事。…それだけだよ」
QB「たったそれだけかい?君には、宇宙そのものを作り変える力すらあると言うのに」
まどか「…それでも構わないって、思ってた。わたしが神様になれるなら…こんな世界、作り変えちゃえ、って」
まどか「でも…わたしはまだ、信じていたい。わたしを含めた皆が笑いあえて…信じあえる。神様なんていなくても、そんな世界が築ける、って」
まどか「…例え、コブラさんが…元あるべき場所に戻ったとしても。…『わたし達』魔法少女が、この世界を守れる。…そう信じていたい」
QB「…」
QB「君の願いは、エントロピーを凌駕した。本当に構わないんだね、まどか」
まどか「うん」
QB「それじゃあ…君の願いを――― 叶えよう――――」
そして、2人の間を眩い光が包んだのだった。
QB「そしてまどかは、魔法少女となったというわけさ」
さやか「アンタ、いつの間に…」
まどか「わたし達の願いは、コブラさんのおかげで全て叶った。…でも、コブラさんとレディさんの願いが、まだ叶っていない。…そう、だよね?」
レディ「…鹿目さん…」
まどか「だからせめて…。…これが、わたしの恩返しだと、思うから…」
コブラ「…全く… あんな弱々しかったヤツが、いつの間にかこんなはっきり物事を決められるようになるとはな」
コブラはまどかに近づくと、まどかの頭にポン、と右手を乗せた。
コブラ「…ありがとよ、まどか」
そして髪型がぐちゃぐちゃになるほど、頭を撫でる。
まどか「ティヒヒ」
さやか「宇宙の果てにブラックホール…」
マミ「その中に再び入れば…私達の前に現れた時と、同じ現象が起きて…コブラさん達は元の未来へ帰れる…。…そうなの?キュウべぇ」
QB「ブラックホールが、まどかの願いによって生じたものだと言う事は間違いないね。まどかの願いは、コブラが元の世界へ戻る方法を『与える』事。だから、その中へ入るのは自由というわけだ」
マミ「…でも、貴方は行くのでしょう?…コブラさん」
コブラ「どんな人間にも、帰るべき場所はあるのさ。…それに、おたくらは俺が思ったより遥かに成長した。これなら俺がいなくなっても安心だ」
杏子「師匠気取りかよ。…気に入らねェなぁ」
コブラ「…杏子。初めにお前さんに斬りかかられた時はどうなるかと思ったが…ようやく人前で素の自分が出せるようになったみたいだな」
杏子「…どういう意味だよ」
コブラ「さぁてね。ま、とにかく、さやかの面倒をしっかり見てやってくれよ」
コブラはそう言うとにぃと悪戯っぽく笑った。
さやか「ちょ、ちょっと、どういう意味よ!なんでこいつに面倒みてもらわなきゃならないワケぇ?!」
杏子「…ま、確かに面倒見甲斐がある後輩かもしれねーな」
さやか「うがあああああ」
コブラ「さやか」
さやか「何さっ」
コブラ「お前さんの明るさなら、どんな絶望も払拭できる。笑顔を忘れるなよ。アンタの最高の魅力だ。…彼氏とのデートの時にも、な」
さやか「なっ…か、彼氏ってなによ…恭介とはまだ別に…!」
コブラ「恭介とは一言も言っていないんだがね俺は」
さやか「うがああああああああああ」
まどか「あははは」
コブラ「マミの作るお菓子や紅茶は最高だったぜ。俺の相棒に勝るとも劣らない。おかげで甘党になるところだった」
マミ「…有難う。光栄だわ」
レディ「珍しいわね。お酒と料理以外でそんな事言うなんて」
コブラ「おいおい、グルメなんだぜ俺は。何に対しても、だ。 …これからは、お前さんが皆の先頭に立つんだ。しっかり頼むぜ、マミ」
マミ「ええ。…先輩だものね。しっかり舵を取るつもりだわ」
コブラ「ああ。ついでに後輩のバストやヒップの向上計画に是非とも取り組んで欲し… いでえーーーーっ!!!」
マミに足を踏まれ、レディに頭を叩かれるコブラ。
マミ「…こうしてツッコミを入れるのも最後なのね。少し…寂しいわ」
レディ「同胞をなくしたような気分だわ」
コブラ「…ああ、全く寂しいね、ホント」
頭を摩りながら、足に息を吹きかけるコブラ。
コブラ「…ほむら。…これからも…まどかを、いいや、魔法少女達を守る存在であってくれよ」
ほむら「… … …」
コブラ「自分だけで苦労すればどうにでもなる…。綺麗事かもしれないが、そんな事は無いんだ。…もう時間を繰り返す必要も無いんだしな」
ほむら「… … …」
ほむら「そう、ね…」
コブラ「まだまだ、まどかは頼りない。かの女を引っ張っていくのは君だ。…よろしく頼むぜ」
まどか「た、頼りない…かぁ…。…うう、少しショック」
ほむら「…ええ、解かったわ」
コブラ「…まどか。お前さんの心と力があれば、全ての絶望を払拭できる。そこのエイリアンとも仲良くしていってくれよ」
QB「インキュベーターと呼んで欲しいのだけれどね」
まどか「…はい。…わたし、頑張ります!」
コブラ「ほむら、まどか。誰かを、何かを守るために、犠牲はいらない。 必要なのは、守りたいという意志だ。結果は関係ない」
コブラ「だから、これからも精一杯学生生活を満喫して、いい女になって、未来の俺のために美人の先祖を作っておいてくれよ?」
ほむら「… … …」
まどか「あはは…動機は不純ですね…」
コブラ「…お。…いい物があったぜ。…まどか」
まどか「?」
コブラは、ポケットから1つ、ガーベラの花を取り出した。それをまどかの頭につける。
コブラ「タートル号でコーティングしておいたモンさ。枯れる事なき希望。…なぁーんてね」
まどか「わぁ…有難うございます!…あ」
そして、まどかの髪を結ってあるリボンを解き、手にするコブラ。
コブラ「俺は、君達の事を忘れない。…交換しておくぜ」
まどか「…はい。…私も…忘れません」
コブラ「それじゃあ…行くとするか。こういうのは長引かせるもんじゃないね。どんどんこの世界に居たくなってくるぜ」
さやか「…いいんだよ。いつまでも居ても」
コブラ「そうもいかない。人は皆、あるべき場所へ戻る。そいつに逆らっていちゃあいけない。自然の摂理ってやつさ」
マミ「…そう、ね。…もしも…もしも、もう一度逢えるのなら…また、この世界に来てくれるかしら?コブラさん」
コブラ「もちろん!女の子の成長過程の観察は俺の趣味の一つなんだ」
杏子「大した趣味だな。…ま、その時は熱烈に歓迎してやるよ」
コブラ「楽しみにしてるぜ。…その時は、何も言わずに笑って待っててくれよ?」
まどか「…勿論ですっ!」
レディ「…それじゃあ、コブラ。…行きましょうか」
コブラ「ああ。そうだな…」
コブラ「それじゃあ、愛しき魔法少女諸君!…元気でな! …あばよ」
上空にゆっくりと浮上をするタートル号。
エンジンに火がついたかと思うと、あっという間に空の彼方へと飛び去ってしまう。
その様子を、ただただ見上げる5人の魔法少女。
まどか「…行っちゃったね」
さやか「…何か、あっという間だった…な。今まで」
マミ「辛いものね。…お互い、住む世界が違う、というのは…」
杏子「落ち込んでても仕方ねーよ。…アタシ達はアタシ達で、精一杯生きていく。それしかないだろ?」
まどか「…そうだね。… … …」
さやか「なーに落ち込んでんのよまどかっ、あたしの嫁は笑顔が一番可愛いんだぞぉ?」
そう言いながらまどかに抱きつくさやか。
まどか「わ、わ…っ!んもぅ…分かったよ、さやかちゃん…」
マミ「うふふ…それじゃあ、行きましょうか?」
杏子「そうだな。行くぞ、まどか」
まどか「…うん…。 …?ほむらちゃん?」
ほむら「… … …」
まどか「どうしたの?ほむらちゃ…」
カチリ。
その時、大きく時計の秒針の音が聞こえた。
ほむら「…え…!!??」
それは、暁美ほむらが幾度となく経験をした感覚。
全ての時間が流れを止め…そして、逆戻りをしていく。
時間が、巻き戻っていく…その感覚――――。
ほむら「そんな…!私は時間を戻そうとは思っていない!…どうして…!?どうしてなの…!?」
しかし時間は非常なまでに崩れ、ほむらの意識は暗闇へと落ちようとしていた。…元の、自分が病室へといる、あるべき時間へと。
ほむら「どうして…っ!!??」
その時。自分自身の声が、暗闇の中で響いた。
QB『――― 君は、どんな祈りでソウルジェムを輝かせるのかい?』
ほむら『私は―――』
ほむら『私は、鹿目さんとの出会いをやり直したい。彼女に守られる私じゃなくて、彼女を守る私になりたい―――』
ほむら「…!」
ほむら(…そう、だったの…)
ほむら(この結果は…彼女を、まどかを【守る】結果には繋がらなかったのね)
ほむら(わたしが時間を巻き戻せる限界は、ここまで…。これ以上時間が進めば、まどかが魔法少女になる【後】へしか戻れなくなる)
ほむら(そして…このまま時間が進めば、再び私達は…滅んでしまう。…そういう事…)
ほむら(… … …)
ほむら(それに…私は、この世界を望んでいないのかもしれない)
ほむら(まどかが…【皆に】微笑む…この世界では…)
ほむら(数多の時間の中で巡り合った、1人の男。…可能性はゼロに近くても、こんな時間も確かに存在はしていた)
ほむら(それが、ワルプルギスの夜すら超えさせられる。…そんな希望がある、世界)
ほむら(…いい夢を、見させて貰ったの。…だから…)
ほむらは、病室で目を覚ます。
カレンダーは、見覚えのある日にちで止まっていた。
ほむらは傍らのテーブルに置いてあった眼鏡をそっと手にすると、それをかけた。
ほむら「…コブラ。…有難う。希望は、存在する。それを思い出させてくれて」
ほむら「…今度こそ、私は…この世界で、彼女を助けてみせる」
ピピピピピ…
まどか「うぅ~ん…っ…」
カチッ。
まどか「…ふぁぁ…よく、寝た…」
まどか「… … …」
まどか「…すごく、悪い夢見てた気がするなぁ…」
まどか「…歯、磨きにいこ…」
まどか「おはよ、ママ」
詢子「おう、おはようまどか。…うぅん?」
まどか「…?どしたの…?」
詢子「…それ、誰に貰ったんだ?…まさかぁ、男の子からかぁ?」
まどか「な、なに?何のこと…?」
詢子「今時花の髪飾りねぇ。ロマンチックだとは思うけれど、さすがにチョイと幼すぎないかな」
詢子は少し笑いながら、まどかの頭から1つの白い花を取り出した。
まどか「え…あ…?…??なんでだろ…?」
詢子「…覚えがないのか?…じゃあ…まどかの部屋にあったのかな?うーん、でもガーベラなんて花瓶にさしておいたっけな」
まどか「… … …」
まどか「でも…すごく、綺麗な花だね」
コブラ「ふぁぁ…よーく寝たぜ」
レディ「おはようコブラ。ふふ、久しぶりにぐっすり寝れたようね」
コブラ「ああ、このところ退屈なくらい平和だからな。…おかげで変な夢見ちまった気分だ。なんだったか忘れたが」
レディ「貴方らしいわね。…あら?コブラ」
コブラ「んん?」
レディ「…コブラ。平和を謳歌するのもいいけれど、そういう物を私の前に出すのはどうかと思うわね」
コブラ「…?何の事だ?」
レディ「貴方の首にかかっている赤いリボンの事よ」
コブラ「…。本当だ。…おかしいな、見覚えのないリボンだ」
レディ「まぁ、覚えがないのにリボンを貰ったの?」
コブラ「ご、誤解だよレディ。はは、えーと…ホントになんだっけか」
そう言いながら、慌ててポケットにリボンを仕舞い込むコブラ。
コブラ(…しかし、どこか懐かしい香りだな)
その時、タートル号のレーダーのアラート音が鳴る。
コブラ「…!なんだ!?」
レディ「…! コブラ、前方に海賊ギルドの艦隊よ!」
コクピットから見えるのは、ギルドの大型戦艦が幾つも宙域に待機する光景。
そして、モニターに映し出される男の姿。
ボーイ「久しぶりだなコブラ。会いたかったよ」
コブラ「!!クリスタルボーイ!お前の仕業か」
ボーイ「くくく…お前さんがこの辺りの宙域にいるという情報を掴んでね。首を長くして待っていたところだよ」
コブラ「大層な歓迎だぜ。パレードでも開いてくれるのかな?」
ボーイ「軽口もここまでだ。…この宙域が貴様とタートル号の墓場だ!」
レディ「どうするの!?コブラ…」
コブラ「… … …」
コブラ「上等じゃねぇか。売られた喧嘩は買う主義。ここは…正面から突破だ。タートル号の性能を見せてやろうぜレディ」
レディ「了解。連中に一泡吹かせてやりましょう」
コブラ「よろしくどーぞ!…覚悟しろよ、ガラス人形!」
コブラ「俺は…不死身のコブラだからな!!」
艦隊へと単独で突っ込んでいくタートル号。
しかし船内のコブラの表情に不安はない。
葉巻を銜えたその顔は、自信に満ち溢れた不敵な笑みだった。
コブラ最高にかっこいいな!
面白かったよ
Entry ⇒ 2012.10.16 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (2) | Trackbacks (0)
さやか「まどか記念日」
さやか「一年で一度の現世での休日だー」
さやか「と言う事で現在地はほむらの家だね」
ほむら「ハッピバースデー トゥー ユー…」
さやか「…」
ほむら「ハッピバースデー ディア まどかー…」
ほむら「ハッピバースデー トゥ ユー」
さやか「…暗い」
ほむら「……」
さやか「……」
ほむら「………」
さやか「他の人の様子でも見に行くかぁ…」
ほむら「…」
さやか「駄目だ恭介も杏子もマミさんも寝てた…」
ほむら「…」
さやか「…ほむらまだやってたんだ」
ほむら「…」ジー
さやか「…死んでないよね?」
ほむら「…」
さやか「ずっとロウソク見つめて…変なトリップでもしてるのか!」
ほむら「……」ジー
さやか「…ちょっと様子を見ようかな…?」
さやか「ロウソクが消えるまで微動だにせずか…」
ほむら「まどか…」
ほむら「…はぁ…寝ましょう」スッ
さやか「これは重症だね…」
ほむら「…」スタスタスタ ゴソゴソ
さやか「…」
さやか「しまった!!やる事がなくなった…」
さやか「…まあいいや適当な所で休んでようっと…」
さやか「ふぇ…?もう朝かぁ」
ほむら「…」パチン
さやか「…このほむらはちょっと心配だな」
ほむら「…」スタスタ
さやか「まぁ時間の余裕はまだあるし少し後を追ってみますか」ウシシ
さやか「もくもくと作業しますな、ほむらさんは…」
ほむら「…行ってきます」
さやか「こっちは休みなのに学校とは恐れ入りますなー」
――
―
さやか「…んーほむらは接触が少ないから見ててもつまらないなぁ」
さやか「っと前方にマミさん発見!」
ほむら「…マミ!」
ほむら「少し頼み事があるのだけど、いいかしら?」
マミ「ええ、なに?」
ほむら「今日は学校を休むわ、それと魔獣退治も今日は休ませて欲しいの」
マミ「?それは構わないけど…なにか用事?」
ほむら「ええ」
マミ「…そう、それなら佐倉さんにも私から伝えておくわ」
ほむら「恩に着るわ、マミ」
さやか「ほぅ?」
ほむら「……」スタスタ
さやか「行かないって言ったのに学校の方向に行くのか…」
――
―
ほむら「…」ジー
さやか「…学校なんか眺めて…」
さやか「……私も普通に過ごしてれば今頃この中で勉強してたのかな…」
ほむら「…」スタスタ
さやか「はぁ…人の感傷を無視するとは…酷いぞほむら!」
さやか「まぁ言っても意味ないんだけどね…」
さやか「裏通りなんて歩いて何がしたいんだろう?」
ほむら「…まどか」ボソッ
杏子「おー、ほむらじゃねぇか!!」
ほむら「……おはよう杏子」
さやか「不良少女達め…」
杏子「なにしてんだ?こんな所で」
ほむら「少しね…」
杏子「ふーん」
ほむら「そうそう、マミにも言ったのだけれど今日私は魔獣退治休むわ」
杏子「はぇ!?おいおい暇そうなのになんだよそれ?」
ほむら「用事があるの」
杏子「はぁ?……まぁいいや…いつも世話になってるしそれ位は許してやるよ」
杏子「いや、私も特に用事はないんだが…」
杏子「まぁパトロールってところだ」
ほむら「…そう」
さやか「……あの杏子がねぇ…」
さやか「…この世界の杏子も頑張ってるんだね」
杏子「じゃあ私はこれで行くけど」
ほむら「私はもう少しこの辺りをうろつきたいから」
杏子「…昼飯おごってくれ」
ほむら「もうそんな時間?ってもう過ぎてるのね」
杏子「実は今ちょっとピンチなんだよ」
ほむら「…あなたって…」
ほむら「コンビニ弁当でよければね」
杏子「おぉ、すまねぇ助かった」
ほむら「……」チラッ
杏子「…ん?どうした?」
ほむら「いえ、行きましょう」
―――
――
―
ピロンピロン
杏子「さーてどこで食おうか?」
ほむら「土手が近いからそこに行きましょう」
杏子「わかった」
ほむら「…」ボー
杏子「…」ガツガツガツ
ほむら「…」ボー
さやか「ほむらは上の空だね…」
杏子「ガツガ…おいほむら、食べないのか?」
ほむら「…いえ食べるわよ」パクパク
杏子「大丈夫か?調子悪いとかなら言えよ?」ガツガツ
ほむら「問題ないわ、ちょっと考え事をしてただけだから」
杏子「…そっか」
杏子「!…馬鹿言え!せっかく人が心配してやってんのに…」
ほむら「フフッ、冗談よ」
杏子「…ったく!」ガツガツ
さやか「…」
さやか「ほむらの笑顔か…始めて見た」
さやか(まどかのおかげで世界は変わった)
さやか(でも祈りと呪いは今も続いている…)
さやか(まどかの手伝いをしてて時々疑問に思ったりもするけど)
さやか(あのほむらがこんな風に笑えるって事は、やっぱり良かったんだよね…これで!)
ほむら「本当に自由人ね、あなた」
杏子「まぁな」
ほむら「…」
杏子「風が気持ち良いな」
ほむら「えぇ…」
ほむら「…さてと」スッ
杏子「もう行くのか?」
ほむら「えぇ、今日中に色々とね」
杏子「そっか、まぁ後のことは任せとけ」
ほむら「えぇ、ありがとう」
さやか「よろしくね…頑張ってね、杏子…」
さやか「さっきからうろついてるけど…これ本当に用事があるのかな?」
ほむら「……マミさん」
ほむら「…」ジー
さやか「今度は公園か」
タツヤ「ほむネーチャ!!」タタタッ
知久「?やあ、ほむらちゃん、こんにちわ」
ほむら「こんにちわ」
タツヤ「ネーチャ!あそぼー」
知久「ごめんね、ほむらちゃん…」
知久「ほむらちゃん、学校は?」
ほむら「……今日は用事がありまして」
知久「…そっか…でもほむらちゃん、もしズル休みなんてしたらダメだよ?」
ほむら「はい、それは…!…」
知久「どうかしたのかい?」
ほむら「…いえ」
ほむら「……まどかはお父さん似ね」ボソッ
知久「?…じゃあ僕たちは行くよ」
ほむら「さようなら…」
タツヤ「ほむネーチャ!またねー!」テテテテ
知久「うん、じゃあまた今度ね」スタスタ
ほむら「はい」
ほむら「…」
さやか「…」
ほむら「……」ギリッ
さやか(怖い顔しちゃって…)
ほむら「馬鹿……」
ほむら「…」スッ
さやか「ぬ!ここは早いね」
――
―
さやか「ビル?」
ほむら「……」ジッ
QB「探したよ、ほむら」
ほむら「…何か用かしら?」
QB「今日は魔獣を狩ってないみたいだからね、様子を見に来たんだ」
ほむら「特に問題はないわ」
QB「…その割には険しい目をしているよ?」
ほむら「…今はあなたを見たくないの」
さやか「そうだぞ、ほむら!」
ほむら「…今は、今日だけはそっとしておいて…」
QB「やれやれ…」
ほむら「良いから早く行きなさい!」シュルン ギィ
QB「弓を構えるなんて!分かったよそれだけ元気があれば大丈夫そうだ」スッ
ほむら「……」
ほむら「…ごめんなさいQB…」
ほむら「今の私はあなたを許せないの…」
さやか「ほむら…?」
ほむら「…」
スタスタスタ
ほむら「…変わってしまうものね」
ほむら「……」
ほむら「フフッ…この時も手を焼かされたわ…」
ほむら「…さやか…」
さやか「?あたし?」
さやか「……!そっか…」
ほむら「…」ジー
ほむら「…」
ほむら「…本当に色々あったわね…」
ほむら「病院なのにね……」
さやか「…ほむら…」
ほむら「…」スッ
さやか(確かそこだったね…マミさん…)
ほむら「……不甲斐無いくせに」
ほむら「…」
さやか(この道は…)
ほむら「…」チラッ
キャイキャイ
さやか(まどかの家か…)
ほむら「…」ニコッ
スタスタスタ
さやか(ほむら…)
ほむら「…大丈夫…これで大丈夫」
ほむら「…ただいまー」ガチャ
ほむら「…さて」
さやか(ん?まだ何かするの?)
―――
――
―
ほむら「…これで並べ終わったわね」
さやか「昨日のケーキだけじゃなくて、こんなに料理用意してたのか…」
ほむら「…」
ほむら「…もう一度」
ほむら「!!」
杏子「うわっ!すげー!なんだこの料理!!」
ほむら「あなた達どうしたの!?」
マミ「なんだか暁美さん元気がなかったからね?」
杏子「ああ、今日は瘴気も薄かったから来てやったんだよ!」
ほむら「来てやったって…」
マミ「でも凄い料理ね?何かのお祝い?」
ほむら「……そんな感じよ」
杏子「そっかー!私らもいろいろ持ってきたからさ?」
マミ「ご一緒しちゃダメかしら?」
杏子「よっしゃ!」
ほむら「取り合えずあなた達の分のシチューをよそってくるわ」スタスタ
マミ「私も運ぶの手伝うわ」タタタ
杏子「おー、チキンにピザにケーキまである!」
杏子「ん?はっぴーばーすでー?」
ほむら「…そうよ」
マミ「あら?暁美さん今日だったの?言ってくれればよかったのに…」
ほむら「私じゃないわ」
杏子「あー例の」
ほむら「ごめんなさい…」
マミ「何言ってるのよ!」
マミ「まどかさんは私達の友達なんでしょ?」
杏子「そうそう、くだらねー事気にすんな?」
ほむら「…ありがとう」ニコッ
杏子「せっかくの料理だ美味しく食わなきゃな!」
マミ「もう!佐倉さん!」
ほむら「フフッ」
ほむら「いいの?」
杏子「祝うときはしっかり祝わなきゃな!」
ほむら「じゃあ」シュボ
マミ「電気消すわよー?」
ほむら「こっちは大丈夫よ」
パチン
マミ「いいわね、綺麗」ストッ
マミ「…ーッピバースデイ トゥ ユー♪」
マミ「もう、何してるの皆で歌わなきゃ!」
杏子「えー…は、恥ずかしいよ」
マミ「祝うときはしっかり祝うんでしょ?」
杏子「ぐぬぅ…」
ハッピバースデイ トゥ ユー♪
ハッピバースデイ トゥ ユー♪
ハッピバースデイ ディア まどかー♪
ハッピバースデイ トゥ ユー♪
マミ・杏子・ほむら・さやか「おめでとうー」パンパン
ほむら「といっても消す人が居ないから…電気をつけるわ」パチッ
さやか「まどかぁ…どうしてここに居ないのよ」
マミ「がっつかない!」
ほむら「量はそこそこあるからゆっくり食べなさい」
ギャーギャー
さやか「まどか…」
まど神「なぁにかな?」
さやか「え?」
まど神「ウェヒヒ」ニコッ
さやか「い、いいいつから居たの?」
まど神「ほむらちゃんが帰って来た時にはいたよ?」
まど神「さやかちゃんを驚かせたかったのと…」
まど神「居てもほむらちゃん達には分からないからね…」
さやか「まどか……」
杏子「うっ…」
マミ「佐倉さん…慌てるから」
ほむら「ほら、ジュースを飲みなさい」
ワーワー
まど神「楽しそうだね?」
さやか「まどかの誕生日だからね?」
さやか「なに?」
まど神「休暇は早いけど終わりだよ!」
さやか「え!?ちょっと待って!まだ明日まで時間あるじゃん!」
まど神「さやかちゃんはロスタイムがある為休暇は早く終わります!」
さやか「そんなー……!まだ恭介にも会ってないのに!」
まど神「また来年までガンバロー」
さやか「帰りたくないー」ズルズル
まど神「さあ皆にお別れだよー」グイグイ
さやか「くそー」ズルズル
まど神「皆の元気な姿見れたでしょ?」
さやか「…んー」
まど神「じゃあ行くよー」スー
さやか「仕方ないなぁー」スー
まど神「だから大丈夫だよほむらちゃん」フー
ロウソク スッ
ほむら「!」
杏子「私は意地汚くない!」
マミ「いいから少し落ち着いて」
ほむら「…マミ、もう良いから杏子の好きにさせましょう」
ほむら「せっかくの誕生日なんだから?」
ほむら「ね?まどか…」
おわり
では おやすみなさいいい夢を
Entry ⇒ 2012.10.04 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
まどか「ごめん、ね……ほむらちゃん……」
ほむら「まどか……!しっかりして、まどかぁ!!」
さやか「あれ、まどかにほむら?何やってんの?」
ほむら「大変なの!まどかが、まどかが……!紙で指を……!」
さやか「ッ……!?う、うそでしょ!?」
さやか「……!う、うっすら血が滲んで……!」
まどか「はぁっ……はぁっ……」
ほむら「まどかぁ!しっかりして、まどかぁ!」
さやか「ど、どうしよ、どうしよ……そうだ!あ、あたし、マミさん呼んでくる!
マミさんならきっと、なんとかしてくれるはずだよ!」
ほむら「さやか……!」
さやか「待っててね、まどか!すぐ戻ってくるからね!」
マミ「お待たせ!2人とも!」
ほむら「巴さんっ……!」
マミ「大丈夫、鹿目さ……!?ひ、酷い……!」
さやか「そんな!?さっきまで滲んでる程度だったのに……血が、垂れてきちゃってる……!」
ほむら「は、早くなんとかしてあげて!私にはもう、指を心臓より高い位置に上げるくらいしか……!」
さやか「何か良い方法があるんですか!?」
ほむら「ポーチなんか取り出して、何を……まさか!」
マミ「あったわ!これを鹿目さんに!」
さやか「ば、絆創膏!!」
ほむら「すごい……これがあれば、傷を治せる……!」
まどか「ぁ、ぅ……」
ほむら「くっ……!片手でまどかの手を支えながらじゃ、テープが上手くはがせない……!」
さやか「そ、そんな!せっかく絆創膏があるのに、そんなことって……!」
マミ「っ……暁美さん!私も手伝うわ!」
ほむら「巴さん……!」
ほむら「で、でもそんなことをすれば、ゴミを捨てる人が……」
さやか「ご、ゴミならあたしが捨てるよ!」
マミ「美樹さん、あなた……!」
さやか「だからほむら、早くテープをはがして!!急がないと、まどかが……!」
ほむら「っ……ありがとう……!」
すごい、これなら……これならきっと……まどかを救える!)
マミ「支えたわ……!今よ、暁美さん!」
ほむら「えぇ!」
さやか「ほむら、ゴミを!」
ほむら「頼んだわ、さやか!あなたが戻る頃には、きっとまどかは、元気な顔を見せてくれるから……。
だから、絶対に戻ってくるのよ!約束して……!」
さやか「もっちろん!じゃあね、絆創膏、頼んだよ!」
マミ「……!傷が、絆創膏で覆われて……!」
まどか「……ぅ……ぁ、あれ、わたし……」
ほむら「まどか……!」
まどか「ほむらちゃん、マミさん……。あ、そっか、わたし、紙で指を切っちゃって……
そしたら血が滲んできて、それで……わ、わたし、わたし……!」
マミ「鹿目さん……」
ほむら「怖かったのね、まどか……でも、もう大丈夫よ」
まどか「うっ……ぅわぁああああん!!怖かった、怖かったよぉおお!!」
ほむら「安心して、もう絆創膏を貼ったから。ね?」
マミ「えぇ。だからもう、何も怖がることはないわ。そんな傷なんて、すぐに治っちゃうから」
まどか「えっく……ぅく……ほむらちゃん、マミさん……」
まどか「っ!さ、さやか、ちゃん……」
ほむら「あなた、ゴミを無事に捨てて来れたのね……!」
さやか「良かった……良かったぁ!助かったんだね、まどかぁ!」
まどか「うん、うん……!でもさやかちゃん、その、ゴミって……?」
マミ「美樹さんはね……絆創膏のゴミを捨ててきてくれたの。それも、自分の意志で」
さやか「あはは、なんていうんだろ……。
目の前でまどかが苦しんでるの見てたら、居ても立っても居られなかったっていうか、
あんまり深いこと考えてなかったや。ただただ、まどかを助けなきゃって、そう思ってさ」
まどか「さやか、ちゃん……ごめんね、ありがとう……!本当に、ありがとう……!」
ほむら「さやかは向こう見ずだけれど……でもそのおかげで、まどかを救うことができた」
マミ「えぇ。美樹さんも鹿目さんも、本当に無事で良かったわ」
マミ「あら、今日は志筑さんは一緒じゃないの?」
まどか「はい、今日もお稽古事らしくて。
今日は新作パフェが出るから仁美ちゃんも連れて行ってあげたかったんですけど」
さやか「あぁ、かわいそうな仁美……。
仕方ない、明日も仁美のためにパフェを食べに付き合ってあげますか!」
ほむら「あなたが食べたいだけでしょう」
さやか「あはっ、バレた?まーとにかく、早く喫茶店行こうよ!」
まどか「うん、楽しみだなー、新しいパ……」グゥゥウ~
マミ「……え?」
マミ「鹿目、さん……?今、何か……」
ほむら「……そんな、まさか……」
さやか「あ、あははは……き、きっと聞き間違えだよ!
まどか「そ、そう、だよね?聞き間違え、だよn」グゥウウゥウウ~
ほむら「うそ、そんな……!」
さやか「お、お腹の音!?そんな、なんで……!?」
まどか「や、やだ、やだっ!どうして、どうしてこんな……!」
ほむら「いけない、このままじゃ、まどかが……!」
まどか「や、やだぁ……そんなの、やだよぉ……!」
マミ「い、急いで何か口に入れないと!」
ほむら「駄目、遠すぎる……ここからじゃ、どんなに急いでも5分はかかるわ!」
さやか「で、でも……」
ほむら「喫茶店に着くまでの間、ずっとまどかにお腹の音を響かせ続けろと言うの!?
冗談じゃないわ!そんなの、あんまりよ……!」
マミ「暁美さん……」
ほむら「何か、何か別の方法を考えないと、何か、喫茶店に行く意外で、別の方法を……。
そ、そうだわ!2人とも、何か食べるものは持ってないの!?」
まどか「あ、あぁあ……」グゥウウウ~
さやか「え、待って、うそ、やだ……!な、何もない……!」
マミ「わ、私も……非常用のカロリーメイトしか持ってないなんて!こんな時に……!」
ほむら「そん、な……。それじゃあ、どうすれば良いの!?
何か別の方法を探さないと、何か、何か……!」
まどか「良い、よ……」
ほむら「え……?」
ほむら「まどか……駄目!そんなことしたら、あなたが……!」
まどか「ううん、良いの……私は平気……。
それにね……喫茶店のパフェ、すっごく楽しみだったから……えへへ」
マミ「鹿目さん、あなた……」
まどか「だから、ね……?みんなで一緒に、喫茶店に……」グゥウウウゥウ~
さやか「っ……!まどかぁああ……!」
杏子「ん……?よぉ、あんたら何やってんだ?」
杏子「……なんだ。何かただ事じゃないみたいだね」
さやか「ま、まどかが大変なの!」
杏子「まどかが……!?おい、まどか!どうした、何があった!?」
まどか「杏子、ちゃん……」
杏子「腹なんか押さえて……痛いのか!?どうしたんだ!」
ほむら「お腹の……お腹の音が鳴ったの……!」
さやか「杏子、あんた……!」
杏子「いてっ!?な、なんだよ!急に肩なんか掴んで……」
マミ「佐倉さん……!?そんな、はっきり……!」
杏子「はぁ……?」
まどか「う、ううん……良いの……。わたし、分かってたから……」
ほむら「まどか、あなた……!」
ほむら「まどか、そんなことない、あなたは……!」
さやか「ぅくっ……ぐすっ……」
杏子「なんで泣いてんの?」
まどか「そうだよ、泣かないで、さやかちゃん……」
マミ「……えぇ、泣いてる暇なんてないわ。今は一刻でも早く、鹿目さんに何か食べさせてあげないと……!」
さやか「で、でも……あたしもほむらも何も持ってないし、マミさんだって、非常用のカロリーメイトしか……」
杏子「その非常用のカロリーメイトとやらを食わせてやれよ」
ほむら「佐倉杏子……あなた、そこまで思慮分別のつかない人間だったかしら」
マミ「佐倉さん、話を聞いてなかったの……?」
杏子「は……?」
さやか「良い!?マミさんのカロリーメイトは非常用なの!取っておかなきゃいけないの!わかる!?」
杏子「いや、まぁそりゃ非常用ってんなら、こんなくだらないとこで使わないのが普通だろうけどさ……」
ほむら「……あなた、今なんて?」
ほむら「あなた、今……なんて言ったの……?」
杏子「だから、非常用ってんなら、こんなくだらないとこじゃあ……」
ほむら「ふざけないで!!」
杏子「なっ!銃!?」
マミ「暁美さん!駄目!」
ほむら「ッ……!」パァン
マミ「暁美さん、今は仲間割れなんてしてる場合じゃないわ!」
ほむら「フーッ……フーッ……!くだらないですって……!?
まどかのお腹が鳴ってるのに、くだらないですって……!?」
さやか「杏子……謝ってよ」
杏子「はぁ!?なんでだよ!?いきなり発砲されて、謝って欲しいのはこっちだっつーの!」
さやか「良いから謝って!今すぐ謝って!訂正して!!」
杏子「は、はぁ?」
マミ「人が困ってるところを助けるなんてくだらない……また、そんな考え。
最近は昔のあなたに戻ってきたと思っていたのは、私だけだったのね……」
さやか「……幻滅したよ、杏子」
ほむら「消えて……私が殺してしまう前に、早く消えて……!」
杏子「っ……どうしちまったんだよ、あんたたち……!」
マミ「っ!待って!」
杏子「あん!?なんだよ!」
マミ「あなた、今口に加えてるそれ……何なの……?」
杏子「見りゃわかんだろ。ロッキーだよ」
さやか「ロッキーって……あのロッキー!?お菓子の!?」
ほむら「杏子……お願い。そのロッキーを、まどかにあげて……!」
杏子「ちっ……なんだよ、急に手のひら返しやがって」
さやか「あたしからもお願い……。まどかもあんたが咥えたやつなら気にしないはずだよ!ね、まどか!」
まどか「うん……わたしは、気にしないよ。杏子ちゃんなら……」
杏子「しかも今咥えてるやつかよ!?だったら箱ごとやるわ!」
マミ「えっ……!?」
杏子「どこにロッキー1本だけ加えて出歩く人間が居るんだよ……」
さやか「ほ、ほんとに、くれるの……?箱ごと、まどかに……?」
杏子「あーもうどうでも良いよ。ほら、さっさと食えってんだ」
ほむら「あ、ありがとう……!杏子、本当にありがとう……!」
杏子「はぁ……わっけわかんね。なんか疲れたしあたしはもう行くわ。じゃあね」
マミ「さぁ鹿目さん、早く食べて!」
まどか「はい、それじゃ……」グゥウウウゥウ~
さやか「!ちょっと待って!」
ほむら「どうしたの。早く食べさせてあげないとお腹の音が……」
さやか「あのさ……あたしたち今から、新作パフェ食べに行くんだよね?」
ほむら「そのためにも早くまどかのお腹に何か入れないと」
さやか「ちょっと思ったんだけどさ……。
ロッキー食べちゃったら、パフェが入らなくならない?」
まどか「っ……!ほ、ほんとだ……!」
さやか「ただでさえまどか少食なんだから、ロッキー1箱なんて食べちゃったりしたら……」
ほむら「……きっと、せっかくの新作パフェも美味しく食べられないわね」
もう少しで大変な間違いを犯してしまうところだったわね」
さやか「でも、1つ問題があって……。まどかに空腹を我慢してもらわないと……」
ほむら「まどか、大丈夫?我慢できる?」
まどか「うん、大丈夫……。今までも、我慢してきたんだもん……わたし、頑張るよ」
ほむら「……あなたは本当に強い子ね、まどか。でも、我慢できなさそうだったらすぐに言うのよ。
その時はみんなで全力で走りましょう」
マミ「そうね。それじゃあ、行きましょうか!」
マミ「これはきっと定番メニューになるわね。私、毎日通っちゃおうかしら、ふふっ」
ほむら「少し量が多めだったわね。まどか、大丈夫?」
まどか「うん、大丈夫!でもやっぱりちょっとお腹いっぱいかな?」
さやか「あ、そう言えば杏子にもらったロッキーどうしよ?」
まどか「うーん……わたしはもうお腹いっぱいだし、みんなで食べて良いよっ」
マミ「残念だけど、それは無理かな……。だってそのロッキーは鹿目さんがもらったものですもの」
ほむら「幸い箱ごと貰ったから持ち歩くのには苦労しないから……杏子に返すというのはどうかしら」
マミ「そうね、それしかなさそうね」
さやか「それじゃ今からみんなで杏子探しに行きますか!」
マミ「どうする?手分けして探しましょうか?」
ほむら「えぇ、それが一番効率的ね」
マミ「私は美樹さんとね」
まどか「うん、そうだね。あ、ロッキーは私が持ってても良いかな?」
さやか「そりゃまぁ、まどかが貰ったやつだし」
ほむら「そうと決まれば早速探しに行きましょう」
マミ「えぇ!また後でね、2人とも!」
まどか「あ、居た!杏子ちゃーん!」
杏子「あん?まどか、それにほむら……?」
ほむら「こんなところに居たのね、探したわよ」
杏子「何よ、また何か用?」
ほむら「ちょっと待って。今、美樹さんとさやかを呼ぶから」
杏子「……?」
マミ「良かったぁ、見付かったのね」
杏子「なんだかよく分からないが……あ、そう言えばまどか。腹の音はおさまったのかい」
まどか「うん!パフェ食べたら治ったよ!」
杏子「ん?パフェ?ロッキーじゃ足らなかったってか?」
まどか「ううん、ロッキーは食べなかったの」
杏子「は?」
杏子「……なんだそりゃ……」
まどか「でも気持ちはとっても嬉しかったよ!ありがとう!」
杏子「……まぁ良いや。で?用事ってのはなんだよ。
わざわざみんな集まったんだ。大事な話じゃないの?」
さやか「えっ?用事なら済んだよ」
杏子「は?」
マミ「鹿目さんがパフェでお腹いっぱいになったから、ロッキーを返しに来たのよ」
まどか「杏子ちゃん?どうしたの?」
杏子「いや、なんでもない。もうツッコむ気力も失せただけだ」
ほむら「……?」
杏子「それより、あんたら気付いてないの?まぁ気付いてないんだろうな……」
マミ「なぁに?どうしたの?」
杏子「魔力探知してみなって。この辺りでもうすぐ結界が出来るよ」
マミ「じゃあ鹿目さんは結界の外で……」
ほむら「駄目よ、まどかを1人にするなんて出来ないわ!」
さやか「それじゃ、結界の中に連れてくの?そんな危ないこと、もっと出来ないよ!」
杏子「いや、誰かが外に残ってやれば……」
QB「それなら僕に良い考えがあるよ」
さやか「良い考えって何よ?」
QB「君たちが問題にしてるのは、まどかが自分の身を守れないということだろう?
だから1人には出来ないし、連れて行くことも危険だから出来ない。そういうことだね?」
マミ「えぇ、その通りよ」
QB「だったら簡単なことじゃないか。まどかが僕と契約して、魔法少女になれば良いんだよ!」
杏子「……あのさぁ。いつになったら懲りるのさ。何回勧誘しようが……」
ほむら「確かに……キュゥべえの言う通りね」
まどか「そっか、わたしが契約すれば良いんだ。そうすればみんなと一緒に結界に入って行けるよね!」
マミ「盲点だったわ。さすがはキュゥべえね!」
さやか「たまにはやるじゃん!」
ほむら「そうと決まれば早速契約しましょう、まどか」
まどか「うん!わたしの願いごとは……」
杏子「ま、待てよてめぇら!何言ってんだ!」
ほむら「でも仕方ないじゃない。
今のままじゃまどかを1人残すことも出来ない、連れて行くことも出来ない。
このまま結界の外で立ち往生しろと言うの?」
マミ「あなたもしかして……魔女を見逃す気……?」
さやか「杏子あんた、使い魔だけじゃなくて魔女まで見逃すの!?」
まどか「ひ、酷いよ杏子ちゃん!そんなのあんまりだよ……!」
杏子「は、はぁ!?」
マミ「誰かって、誰?」
さやか「あたしたちはみんな、正義の魔法少女なんだよ。
魔女と戦わずにただ見てるだけだなんて出来るわけないじゃん!
そんなことしたら正義の魔法少女失格だもん!」
ほむら「だったらあなたが残る?杏子」
杏子「っ……」
せめてあたしが居ないと……!)
杏子「くそっ……!じゃあもう分かった!まどかも連れて行くぞ!」
ほむら「あなた……話を聞いてたの?それは危険だってさっき……」
杏子「うるせぇ!こいつはあたしが守る!何か文句あるか!?」
ほむら「!」
まどか「杏子ちゃん……」
杏子「心配すんな、まどか。あんたはあたしが責任を持って守ってやるからさ」
マミ「私も!後輩にばかり良い格好させられないもの!」
ほむら「まどかを守るのはこの私よ。今までも、これからも」
まどか「み、みんな……ありがとう……!」
杏子「じゃあ全員で結界に入るってことで良いな!行くぞ!」
QB「やれやれ……みんな入って行ったね。無事で済むと良いんだけど」
さやか「これはまた不気味な結界だね……」
マミ「もう結構歩いたけど……」
ほむら「……まどか?」
まどか「……い……痛い……」
杏子「!?なんだ、どうした!?」
まどか「わ、わき腹が……」
ほむら「まさか……食べてすぐ歩き回ったから……!?」
さやか「そ、そんなことって……!」
まどか「ごめん、なさい……。わたし、もう……歩けそうに、ない……」
マミ「……私のせいだわ」
ほむら「巴さん……?」
マミ「私が今日、新作パフェを食べに行こうなんて提案したから……私のせいで……!」
ほむら「そんな……それを言ったら、私だって!杏子を探しに行こうと言い出したのは私よ!
私があんなことを提案しなければ、まどかが歩き回ることもなかった!
まどかのわき腹が痛くなることだって、なかった!全部、私が悪いのよ!」
さやか「ち、違うよ……。2人とも、悪くないよ。あ、あたしが……。
あたしが、ロッキーを食べずにパフェを食べようなんて言わなければ……。
あ、あたしがあんなこと言わなかったら、まどかのわき腹は……」
杏子「あんたたち、今そんなこと言ってる場合かよ!?」
ほむら「杏子……!」
杏子「わき腹が痛くなってんだぞ!まずまどかを心配してやるべきだろうが!」
マミ「そうね……。後悔も落ち込むのも、鹿目さんが元気になってから!
まずは鹿目さんのわき腹の痛みを抑えてあげなきゃ!」
まどか「き、杏子、ちゃん……わたし……」
杏子「もう喋るな、まどか……。ここで少し休もう」
まどか「でも、魔女は……」
杏子「魔女なんかより、まどかの方を優先するべきだよ」
ほむら「何か良い手があるの……!?」
杏子「魔法だよ……魔法を使うんだ!」
さやか「えっ!?で、でもわき腹の痛みをなくす魔法なんて……」
マミ「美樹さん……魔法にはいくらでも応用が利くのよ!」
さやか「あぁ!マミさんのリボンがまるで包帯のように……!」
マミ「応急処置みたいなものだけど、やらないよりはずっと良いでしょ?たぶん」
まどか「あ、ありがとうございます……!ずいぶん楽になったような気がします!」
杏子「さすがはマミだな!」
ほむら「もう痛みは大丈夫?まどか」
まどか「うん、もう平気だよ!マミさん、ありがとうございました!」
マミ「ふふっ、どういたしまして」
さやか「いやー、魔法にあんな応用の仕方があったとは。勉強になります」
杏子「しかし、まどかに何事もなくて本当に良かっ……」
魔女「オォオオオオオオオオ!!」
さやか「げえっ!魔女!いつの間に!」
マミ「私も保護結界を張るわ!」
さやか「あ、あたしも!」
ほむら「まどか、ここから動かないでね!」
まどか「み、みんなありが……」
魔女「オォオオオオオオ!!」
まどか「きゃっ!?」
杏子「し、しまっ……」
マミ「よろけて、こけ……」
ほむら「まっ……まどかぁああああああああ!!」
まどか「……ほむら、ちゃん……」
ほむら「まどか、しっかりして、まどかぁああ!!」
まどか「……え、へへ……ごめん、ね……ほむらちゃん……こけちゃった……」
さやか「や、やだ!まどかぁ、まどかぁ!!」
杏子「くそっ……くそっ、くそっ、くそぉおおお!!
まどかのことを考えれば怯んでこけるくらいのこと、想定できたはずなのに!!
馬鹿野郎……あたしの、大馬鹿野郎がっ……!」
まどか「どうして、だろ……なんだかね、すごく、眠いんだ……」
ほむら「い、いや、いやぁ!目を開けて、まどか、お願い、まどかぁあ!!」
まどか「甘いもの食べて、お腹、いっぱいになって……歩き回って……疲れちゃったから、かな……。
今ね、とっても、 眠いの……えへへ……」
まどか「……みん、な……わたしのことは、放っておいて……。
わたし、なんかより……魔女、を……」
マミ「か……鹿目、さん?」
まどか「…………」
さやか「ま、まどか、やだ、まどか……。まどか、まどかぁ、まどかぁああ……!ぅわぁあああああん!!」
杏子「……許さねぇ……殺してやる……殺してやる……ぶっ殺す、絶対に、ぶっ殺す!
てめぇだけは、絶対にぶっ殺してやる!うぁあああああああああ!!」
魔女「オォオオオオオオ!!」
ほむら「……私の戦場は……もう、ここじゃない……。でも……お前だけは、殺してやるわ」
さやか「死ねぇえええええええぇえええ!!」
杏子「だぁらぁあああああああああああ!!」
ほむら「まどか……ごめんね。すぐ、終わらせるからね」
魔女「ギャァアアアアアアアアアアア……!」
QB「いくらなんでもやりすぎじゃないかな」
ほむら「……終わったわね」
マミ「……あら……?」
杏子「ん、なんだ……?なんか、記憶が……」
まどか「ん……ふわぁあ……あれ?わたし、なんで寝ちゃってるの?」
さやか「キュゥべえ!どういうこと?」
QB「君たちは今の今まで、魔女の呪いの影響を受けていたんだよ。
今日1日の記憶がところどころぼやけてるのは、そのせいだ」
ほむら「……?」
マミ「私たちが、魔女の呪いを……?どんな魔女なの?」
QB「簡単に言うと、人間の庇護欲に付け込む魔女さ。
杏子、君は結界に入る頃から急に記憶が曖昧になってはいないかい?」
杏子「あぁ、確かに。まどかを守ると決めてから……あぁ、そういうことかい」
QB「まぁ、何はともあれ魔女も倒せたし、みんなが元に戻って良かった」
まどか「はい!……あっ!」
さやか「おわっ!まどか、大丈夫?」
杏子「おいおい、何もないとこでこけるとか、しっかりしなよ?」
マミ「怪我はない?一応絆創膏は持ってるけど。酷いようなら魔法で治しましょうか?」
まどか「いたた……いえ、ちょっとお尻打っちゃったけど、大丈夫で……」
ほむら「まっ……まどかぁああ!!大丈夫!?本当になんともない!?あざになったりしてない!?」
まどか「あはは、平気だよ。ありがとう、ほむらちゃん」
QB「うん、みんな元通りだね。一件落着だ」
おしまい
みんなかわいかった
Entry ⇒ 2012.10.03 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
QB「朝起きたら人間になってた……」
QB「もしそうだとすれば、これはかなり高度な魔法だね。契約時の願いにも相当するレベルだ」
QB「でも、その願いに何の意味があるんだろう。僕を人間にするメリットは……」
QB「………………」
QB「……さっぱりわからないよ」
QB「……目覚ましか」
QB「インキュベーターの体なら何とも思わなかったけど、人間の聴覚だとかなり不快に聞こえるみたいだね」
ピピピピッ ピピピピッ
マミ「すぅ……すぅ……」
QB「マミ、今日はぐっすり寝てるね。起きてよマミ、朝だよ」
マミ「ん~……あと5分~……」
マミ「わかってるぅ……ちゃんと起き……」
QB「マミってば」ユサユサ
マミ「…………えっ? いま、わたしの体、手で」
QB「ほら、目覚ましも鳴って――」
マミ「っ!?」ガバッ
QB「ああ、やっと起きたね。おはよう、マミ」
マミ「………………」ポカン
QB「まだ寝ぼけてるのかい? いつも君と一緒にいるキュウべぇだよ」
マミ「…………キュウべぇ?」
QB「うん」
マミ「どう見ても……人間、なんだけど……」
QB「そうか。まだ話してなかったけど、さっき起きたら人間の体になっていたんだ」
マミ「…………」
QB「でも、中身はいつものままだよ。だから今まで通りの付き合い方で構わない」
マミ「…………」
QB「…………」
マミ「……?? どういうこと?」
QB「うん、僕が聞きたいくらいだよ……」
マミ「へ、へぇ……そういうこともある、のかしら」
QB「あまり驚かないね。僕は感情が無いからともかく、君は人間なのに」
マミ「魔法があるくらいだし、何が起きてもおかしくないもの。それか、単純に頭がついていかないだけかも……」
QB「でも、僕が本当にキュウべぇだって証拠も無いんだ。信用してくれるのかい?」
マミ「そうね……」
QB「…………」
マミ「声はあまり変わってないわね。髪も白いし、獣っぽい耳も生えてるし。あとは、雰囲気ね」
QB「雰囲気……?」
マミ「ええ。『なんとなく』ってこと」
マミ「キュウべぇには難しいかしら。それはともかく」
QB「?」
マミ「その、隠してくれないかしら……そ、それ……」
QB「ああ、性器のことかい?」
マミ「いっ……いちいち言わなくていいの……///」チラッ
QB「?? 隠せって言ったくせに、どうして指の隙間から見てるんだい?」
マミ「~~~っ!! 早く隠してよ、もう!///」ベチンッ
QB「痛いよマミ。人間は難しい生物だね」
マミ「朝ごはんできたわよ、キュウべぇ」
QB「今日はベーコンエッグだね。いただきます」
マミ「いただきます……この際その格好には目を瞑るけど、バスタオル一枚で寒くない?」
QB「別に寒くは……」パクッ
QB「…………!?」
マミ「……どうしたの?」
マミ「キュウべぇ?」
QB(不思議だ。いつもは何を食べても何とも思わないのに)
QB(今朝のご飯は、本当に『おいしい』……これが人間の感情なんだね)
マミ「そ、そんなにがっつかなくても」
QB「おかわり」サッ
マミ「おっ……おかわり?」
マミ「ふふっ、朝からご飯を5杯も食べるなんて……本当にどうしちゃったの?」
QB「………………」
QB(目覚ましを不快に感じたり、ご飯をおいしいと感じたり……これは、やっぱり……)
マミ「さてと。それじゃ、そろそろ行ってくるわね」
QB「いってらっしゃい。気をつけて」
マミ「ありがとう。学校の帰りにあなたの服買ってくるから、それまで外は出歩かないでね」
QB「わかったよ」
マミ「もし何かあったらテレパシーで言って。すぐ返事するから」
QB「わかったよ」
マミ「それから、変な人が来ても勝手にドア開けちゃダメよ。あと喉が乾いたら冷蔵庫に」
QB「わかったから、早く行きなよ」
QB「テレパシーでまどかを勧誘してもいいけど、平日は授業もあるだろうし……」
QB「………………」
QB「………………」
QB「……退屈だね。前は退屈だなんて感情も無かった」
QB「今、マミが出かけてから何時間くらい経ったかな」チラッ
QB「……まだ5分しか経ってない」
QB「マミ、早く帰ってこないかなぁ」ゴロゴロ
QB「?」
男「◯◯新聞の者ですがー」
QB(……新聞勧誘のようだね。怪しい人間ではないだろうし、応対しておこうか)
ガチャッ
男「あ、どう……も……」
QB「やあ。キミは僕と契約したいんだよね?」
男「あばっ、いっ、いえ結構ですっ、お邪魔しましたぁぁぁ!」ダダダ...
QB「どうして逃げられたんだろう。わけがわから――」
QB「……あっ、バスタオル落ちてた。もしかして、さっきゴロゴロしてた時に……」
マミ『………………』
QB『マミ? 聞いてるかい? もしかしてテレパシーが届いてないとか』
マミ『キュウべぇ』
QB『なんだい?』
マミ『もう誰が来ても絶対ドアは開けないで』
QB『わかったよ』
マミ『…………はぁ』
今度使ってみるかな
QB「今度は電話だ。電話に出るなとは言われてないから、出てもいいよね」
ピッ
男『ハァ、ハァ……あれれぇ、マミちゃんどうしておうちにいるのかなぁ~? ガッコー行かないのぉぉ?』
QB「もしもし」
男『………………あ?』
QB「もしもし?」
男『何だテメェ』
QB「?」
男『なんでマミちゃんちの電話に別のヤツが出くぁwせdrftgyふじこlp;@』
QB(なんだか騒がしい人間だね)
QB「なんで電話に出るかって……一緒に住んでるからさ」
男『ぎゃぶぅ!?』
QB「一緒にお風呂も入ってるし、寝る時も同じ布団だよ。電話に出るくらい別に」
男『そんなっ……ばかなっ……こんな、こんなことがっ……!』
プツッ ツー ツー
QB「……切れてしまった」
マミ『そう。ありがとう、キュウべぇ』
QB『? どうしてお礼を言うんだい?』
マミ『そういう電話、よくかかってくるから。今度からキュウべぇにお願いしようかしら』
QB『お願いって、何を?』
マミ『だから、私の彼……っ』
QB『えっ、なに? 最後がよく聞こえなかったよ』
マミ『な、なんでもないっ……///』
QB『??』
ガチャッ
マミ「ただいまぁ」
QB「おかえり、マミ……ん?」
まどか「わっ、裸……///」
さやか「おおぅ……///」
QB「まどかにさやかじゃないか。マミが連れてきたのかい?」
マミ「ええ。服選びも二人に手伝ってもらったの」
マミ「ち、違っ……! ちゃんと経緯は話したでしょう!? これは……」
さやか「あははっ、分かってますって! それにしても、これがあのキュウべぇかぁ」
QB「あまり見ないでよ。僕は展示物じゃないんだ」
まどか「ふ~ん、へぇ~。人間になると結構普通なんだね?」
マミ「ええ。普通の人間と明らかに違うのは、髪の色や、獣耳くらいかしら……」
QB(異色という意味では、青や赤やピンクの髪とそう変わらないはずだけどね)
さやか「あと、もっと小さいイメージだったけど、身長は私らと同じくらいなんですね。意外~」
さやか「ところが、人間は外見だけで人生のイージー・ハードが変わっちゃうんだよ」
QB「そうなのかい?」
まどか「マミさんは超イージーモードだよね」
さやか「うんうん。超美人だし」
QB「ふぅん」
マミ「………………」
QB(両親を亡くしてやむなく魔法少女になったマミは、むしろベリーハードじゃないのかな)
QB「やっと二人が帰ってくれたよ……」
マミ「あら。キュウべぇは契約のために、むしろ二人に会いたがってると思ってたけど」
QB「着替えと称して散々オモチャにされ続けるのは御免だよ」
マミ「でもあなた、楽しそうだったわよ」
QB「楽しそう?」
マミ「うん」
QB(…………僕が、楽しそう……)
マミ「…………そう?」
QB「さっきの話で、両親のことを思い出したからかい?」
マミ「ちょっと……心を読まないでくれる?」
QB「僕達インキュベーターにそんな能力は無いよ。さっきの発言も、特に根拠はないし」
マミ「………………」
QB「なんだい?」
マミ「……それが『なんとなく』ってことなの。本当に人間みたいね、キュウべぇ」
マミ「私の?」
QB「つらいだろうけど、落ち込まないで。ソウルジェムが濁ってしまうから」
マミ「ええ……分かってる」
QB「君の両親はもういないけど、僕がずっとそばにいる。だから、元気を出して」
マミ「ふふっ……なにそれ。口説いてる?」
QB「くどく?」
マミ「……なんて。キュウべぇに限ってそんなことあるわけないわよね……」
QB「?」
マミ「ほんとに……ずっと、一緒にいてくれる?」
QB「君が小さい頃から何度も言ってきただろう?」
マミ「……うん。その……キュウべぇ」
QB「なんだい?」
マミ「あなたは、私の最高の友達」
QB「そう言ってくれると僕も嬉しいよ」
マミ「それに、私……」
マミ「あなたが…………だっ……大好き……///」
マミ「…………!!」
QB「? どうかしたのかい。『好き』って、いつもお互い言ってるじゃないか」
マミ「そ、そうなんだけど……あなたが人間の姿だと、いつもと、勝手が違って……///」
QB「よくわからないけれど、僕はずっと前から君が好きだよ?」
マミ「ふぇっ……///」
QB「君も好きだって言ってくれてただろう? これは人間の言うところの『両想い』っていう」
マミ「も、もうやめてぇ……!///」
マミ「えっ……」
ギュッ
マミ「ふわぁぁぁぁ!?///」
QB「いつもは肩に飛び乗るんだけど、この姿じゃ肩には乗れないからね。これで妥協するよ」
マミ「ぁ……ぅ…………///」
QB(あれ……なんだか急に大人しくなった。どうしたんだろう)
マミ「…………///」
QB「マミ、そろそろお風呂の時間じゃないかな」
マミ「あら、もうそんな時間? じゃあ…………」
QB「……どうしたんだい、マミ?」
マミ「…………こ、これは……い、いいのかしら」
QB「なにがだい?」
マミ「きゅ、キュウべぇだもんね……人間じゃない、キュウべぇだもん……」
QB(マミがわけのわからないことを呟きだしたよ……)
QB「ふぅ。お風呂がこんなに気持ちいいものだったなんて」
マミ「そ、そうね……」
QB「ところでマミ、どうして今日はタオルを体に巻いているんだい? いつもは丸裸なのに」
マミ「な……なんだっていいでしょう」
QB「それに今日は、僕の体を洗ってくれないみたいだ」
マミ「だ、だって……///」
QB「……そうか、魔女退治で疲れてるんだね。じゃあ、今日は僕がマミの体を洗ってあげるよ!」
マミ「!?」
マミ「ちょっと、だ、だめっ……」
マミ「ふぁっ、あっ、ひゃぁん! こら、ぁっ……///」
マミ「そっ、そんな、とこ……あぁん! 揉ま、ないでぇ……///」
マミ「! あっ、そ、そこっ、ぁ、あっ、やぁぁっ……!!」
QB「綺麗になったね!」
マミ「うぅ……もう私、お嫁に行けない……」メソメソ
QB「……マミ?」
マミ「こうなったらもう、あなたに嫁ぐしかないじゃない……」
マミ「や、やっぱり同じ布団で寝るの?」
QB「今まで、ずっとそうしてきたじゃないか」
マミ「そ、そうだけど……///」
モゾモゾ
QB「ほら、マミ。入っておいでよ」
マミ「うぅっ…………はっ、はい……///」
QB(どうして敬語になるんだい?)
マミ「…………///」
QB「おやすみ、マミ」
ギュッ
マミ「~~~っ!!///」
QB「やっぱりマミは柔らかくて、あったか――」
ガンッ
QB「痛っ。足が当たってるよ、マミ」
マミ「蹴ったのよ、バカ……///」
QB『……その日から、なぜかぎこちなくなってしまってね』
まどか『ふぅん』
さやか『すごくどうでもいい』
QB『そう言わずに助けておくれよ。マミは僕にとって特別な人間だ。嫌われたままでいたくない』
まどか『わぁ……素敵だね、さやかちゃん』
さやか『まあ、あのキュウべぇが人間に嫌われたくないとか言うんだから、素敵なことだよね』
まどか『うんうん!』
さやか『でも果てしなくリア充オーラが出ててウザい。私なんか、全然恭介と進展しないのに……』
まどか『さ、さやかちゃん……』
さやか『それは別にいいよ、暇だし』
まどか『暇って、さやかちゃん……』
さやか『……結論から言うと、がっつきすぎなんだろうね』
QB『どういうことだい?』
さやか『マミさんが好きなのは分かるけど、もうちょっと加減を知れってこと』
まどか『キュウべぇ、ムードとかデリカシーとか、全然知らなさそうだもん……』
QB『うん。否定はしないよ』
まどか『……じゃあとりあえず、マミさんとの関係を修復しないとね』
さやか『よーし。ここは一発、プレゼント大作戦というのはどうよ』
さやか『そう。女の子は総じてプレゼントに弱い!』
まどか『何がいいかなぁ。マミさん紅茶好きだし、ティーカップとか?』
さやか『余るほど持ってそうじゃない? ここは武器のマスケット銃!』
まどか『そんなの日本で売ってないし、だいたい私たちじゃ買えないよ~』
さやか『う~ん……そもそも私たちも、あんまりマミさんと付き合い長いわけでもないしねぇ』
QB『マミ自身が他の人間とあまり交流を持とうとしないからね』
さやか『どうせアテが無いなら、てきとーに誰か当たってみたら?』
――――――
――――
――
QB『暁美ほむら、少しいいかい?』
ほむら「ッ! インキュベーター!?」
QB『君と話したいことがあるんだ。時間をくれないかな』
ほむら『インキュベーター……何のつもりか知らないけれど』
QB『マミが欲しがりそうな物って何だと思う?』
ほむら『あなたと話すことなんて何も…………え?』
QB『マミに何かプレゼントしたいんだ。少し喧嘩してしまって、仲直りのきっかけにね』
ほむら『え……え?』
QB『案としてはティーカップやマスケット銃が出たんだけど』
ほむら『ストップストップ! あっ、あなた何者!?』
QB『………………』
ほむら『こっ、こんなの私の知ってるインキュベーターじゃない! インキュベーターはどこ!?』
QB『落ち着いて』
ほむら『え、ええ……信じがたいことだけど、大筋は理解したわ。まさか、あなたが人間に……』
QB『僕も最初は驚いたさ』
ほむら『ちなみに、そのプレゼントだけど……』
ほむら『まさか、プレゼントを用意して目の前で床に叩きつけて絶望させる、とかじゃないわよね?』
QB『そんなことをして、誰が得をするんだい?』
ほむら『えっ……あ、あなた確か、魔法少女を絶望させてそのエネルギーを……』
QB『………………』
ほむら『………………』
QB『……ああ。それで、何かいい案はあるかな』
ほむら(忘れてたの……?)
ほむら(このパターン、今までに無かったけど……いや、まさかこんなことで成功するわけ……)
――――
――――――
QB「マミ!」
マミ「あっ、キュウべぇ……その……」
QB「この間はごめんよ、マミ。僕が人間の心を理解できていなかったばかりに、悪いことをしたね」
マミ「いっ、いいのよ。たまにはあんなこともあると思うし……」
QB「それで、ずっとぎこちないままなのも嫌だろう?」
マミ「え、ええ……それはもちろん」
QB「それで、お詫びにこれをあげようと思って」
QB「うん、襟元に巻くリボンだよ。変身後にいつも付けてるだろう?」
マミ「…………どうして?」
QB「魔女との戦いでは使わない、ファッション用のリボンが欲しいんじゃないかと思ったんだ」
マミ「………………」
QB「………………」
マミ「……誰のアドバイス?」
QB「きゅっぷい!?」
QB「きゅっ…………」
マミ「だれ?」
QB「……暁美ほむらだよ。マミがこういうのを欲しがってるって教えてくれたんだ」
マミ「あ、暁美さんが?」
QB「君と暁美ほむらには付き合いがあったのかい?」
マミ「ぜ、全然無いわよ……なんでそんなこと知ってるのかしら」
QB「マミ、ごめんよ……僕一人じゃ思いつきもしなくて……」ショボン
マミ「……ううん。本当に嬉しいわ、ありがとう。大好き……」
QB「どうして?」
マミ「いつも、何気なくやってたけど……あなたが人間になってから、してなかったから」
QB「……何のことかわからないけど、目を閉じていればいいのかい?」
マミ「そう。いいって言うまで、開けちゃダメよ……」
マミ「ぜったい、開けないでね……///」
さやか「いやぁ、まさかほむらが味方になってくれるなんてねー」
ほむら「利害が一致しただけよ。今のインキュ……キュウべぇとは争う理由も無いし」
マミ「あなたがあの時助けてくれなかったら、私はここにいなかったわ。ありがとう、暁美さん」
ほむら「べ、別にお礼を言われるほどのことじゃないですけど……」
まどか「それで、マミさんのアドバイスでさやかちゃんも上条くんと上手くいったし」
さやか「えへへぇぇ~~、やっぱ最後には押しが肝心なんだよねぇ~///」
ほむら「美樹さやかが魔女化しなかったから、余計な犠牲も出ずに済んだし」
杏子「……なんだよ。なんでこっち見んだよ」
ワルプルギス「オオオオォォォォォォォォ...」
ほむら「……その結果、まどか抜きでも普通に倒せてしまったわ……」
QB「僕が? 暁美ほむらが許すとは思えないけれど」
マミ「らしいわよ?」
ほむら「……勝手にすれば。あなたの功績も無いわけじゃないし」
QB「……ありがとう。暁美ほむら」
ほむら「ふん」
杏子「なにむくれてんだよぉー」グイグイ
さやか「わーらーえーよー」グイグイ
ほむら「やっ、やめなはい……!」
まどか「あははっ、ほむらちゃん変な顔!」
ほむら「!?」ガーン
QB「なんだい?」
マミ「私たち、つ、付き合ってるのかしら?」
QB「…………たぶん」
マミ「たぶんって……ハッキリしてよ!」
さやか「そうだそうだー」
まどか「ハッキリしろー」
杏子「責任とらないなら殺すぞ」
ほむら「私も便乗するわ」
QB「………………」
QB「人間になってマミを好きになっただけなのに、どうして僕がこんなに責められるのか」
QB「わけがわからないよ……」
終わり。
乙
やはりマミさんはかわええのぉ
Entry ⇒ 2012.09.18 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
上条「諦めろって言われt」さやか「くらああああああい!!!」
さやか「暗いよぉ!?二度と手が動かなくなったくらい何!?別にいいじゃん!!そんくらい!」
恭介「! そんな言い方!」
さやか「二度と手が動かなくなるくらいなにさ!?あたしなんて二度とマミさんが動かなくなったんだよ!?」
恭介「マミさん??」
さやか「あたしの先輩で先日亡くなったんだよ!?それに比べれば全然いいじゃん!!手が動かなくなったくらいさ!」
恭介「そ、そうだったのかさやか。そうとは知らずにごめん・・・」
さやか「くらあああああああい!!!!」
さやか「確かにマミさんが死んだのは悲しかったよ!?でも見てよ!?あたしは元気で前向きに生きてるよ!?恭介も前向きになんなきゃ!!」
恭介 「うん…」
さやか「だからその顔に何!?いちいち暗いよぉ!!」
恭介 「…」
さやか「あぁもうしょうがないなー!!気合入れてやる!歯ぁ食しばる!」ギリ
恭介「え、歯食いしば…る?」
さやか「歯ぁ食いしばる!」ギリリ
恭介「え?」
さやか「ほら!叩いて!」頬ペチペチ!
恭介 「?? え!?さ、さやかを僕が叩くの?」
さやか「いいから!叩いて!ほら!」頬ペチペチ!
恭介「いや、でも…」
さやか「じゃあ誹謗中傷って意味での叩くでいいからやってみて!」パソコンカタカタ
恭介 「出来ないよ…」
さやか「CD叩き割ったみたいな勢いであたしの顔叩いてみて!」頬ペチペチ
恭介 「出来ないよ!!」
さやか「いいからッ!!やってみてッ!!!」ゴワアッ
恭介 「えっとじゃあ…軽くだよ?」ペチ
さやか「ヤッダーバアアアアアア!!!!!」ドンガラガシャーン!!ゴロゴロリーン!!チュウシャブスブス!デンキショックバリバリハ!ホウタイグルグル!レントゲンカシャカシャ!マッキガンハッケン!
恭介 「ちょ!?さやか大丈夫!?」
さやか「う、うう……あ…あ…」グッタリ・・・
恭介 「大変だ!ナースコーr」
さやか「死んだと思った!?残念さやかちゃんでした!!」ムクリドヤァ
さやか「大丈夫!こんなのツバつとけば治るから!!」ペッペッ ベチャベチャ
恭介 「いやでも凄い血が…」
さやか「だからツバつけとけば治るから!逆にツバつけないと治らない!逆にツバつけないと治らない!!」ペペペペペッ ベチャベチャベチャベチャベチャ
さやか「恭介もほらあたしにツバつけて!ほら!早く!」
恭介 「え!?」
さやか「早くホラ!ツバつけないと死ぬよあたし!?タンでもいいから飛ばして!!!」
恭介 「えと、じゃあ」ペッペッ
さやか「ヒイイイイイイイイイ!!もっともっと!!!いいよぉ!!だんだん治ってきてるよぉ!!!恭介お医者さんの才能あるよぉ!!!」ベチャベチャ
恭介 「う、うん」ペッ ベチャ ペッベチャ
さやか「良い感じ!良い感じ!随分治ってきたよ!ほら!そこのクランケ共も黙って見てないであたしにツバ飛ばして!!」ベチャ ベチャ
少年「僕?」
老人「?」
さやか「そうそう!早く!人命がかかってるんだよ!?」ペッ ベチャ ペッ ベチャ
少年「うん」ペッ
老人「うむ」ペッ
さやか「ヒイイイイイイイイ!!!良い感じ良い感じ!もっと来て!あたしを囲む感じで!他のみんなも呼んできて!オラに唾液をわけてくれ!!!」ベチャ ベチャ
恭介 「いや、さやかなんかもう酷いことになってるけd」
さやか「アヒイイイイイイ!?今度はツバ飛ばし過ぎたせいで脱水症状だああああ死ぬうううううう!!!」ブルブルブルブル
恭介 「そんなに水分使ってたっけ!?」
さやか「お、おしっこちょうだい!恭介!おしっこかけて!でないと脱水症状で死んじゃう!!塩分のある水分は体回復にもうってつけ!」
恭介 「え!?嫌だよさすがに!!絶対嫌だ!」
さやか「その流れはおかしい!その流れはおかしい!さっき躊躇なく幼馴染にツバ飛ばしてきたくせに今更それはオカシイ!」
恭介 「いやさっきのはつい勢いで…」
さやか「うわあああああ!!」尿瓶バシャーン
恭介 「あ!僕の尿瓶!」
さやか「くひいいいいい!!!」ガクガクガクガク・・・・
恭介 「さやかあああああああああ!!!!」
恭介 「いや、ていうかなんかもう…」
さやか「あ!あああ!ああああ!!!」
恭介 「え?」
さやか「恭介の髪、フケ……」
恭介 「あ、ああ。ほら、病院生活はあまりお風呂入れないから…」
さやか「あ!ああ!あああ!」髪クシャ
恭介 「な、何するんだい?」クシャ
さやか「ああ!あああ!ああああ!」クシャクシャ
恭介 「ちょ、ちょっと!?」クシャクシャクシャ
さやか「うああああ!!恭介のフケが!!あたし目掛けてたくさん飛んでくるよおおおおお!!!」クシャクシャクシャクシャ
恭介 「そ、そうだよ!!不潔だからやめてさやか!」クシャクシャクシャクシャクシャ
さやか「うわあああ!!!」ライターカチ!ドガーン!!!
恭介 「さやかああああああ!!?」
さやか「恭介のフケで粉塵爆破だあああああああああああ!!!」チュドーン!ドサッゴロゴロ・・・
恭介「訳がわからないよもう…」
恭介 「さやか?」
さやか「気合入ったかー!!?」
恭介 「え?」
さやか「気合入ったぁ!!?」
恭介 「は?…え!?今までの一連の流れ全部が気合入れだったの!?」
恭介 「…そうだね」クス
さやか「やっと笑ったね!!?ほらほらその調子だよー!!!」
恭介 「だってさやかがこんな無茶するなんて!バカみたいで…」クスクス
さやか「おバカだと思った!?残念さやかちゃんでした!?」
恭介 「なんなのそれ?流行らそうとしてんの?」クスクス
さやか「流行る流行る!!」
恭介 「こんな幼馴染を持って僕は幸せだよ」ニコッ
さやか「それは流石に褒めすぎだってー!!ヤダー!!もー!!」
さやか「それじゃあさぁー!!ただの幼馴染じゃなくて、この際だから恋人にまでステップアップしちゃう!?」
恭介 「え、僕志筑さんと付き合ってるから」
さやか「・…………………」
恭介 「さやか?」
さやか「…」
恭介 「…」
さやか「…」
恭介 「…」
さやか「ソンナコトイウナ・・・」
恭介 「は?」
さやか「ソンナコトイウナ・・・」
さやか「…」
恭介 「…」
さやか「ヒトミトツキアッテルノ?」
恭介 「う、うん」
さやか「……イツカラ?」
恭介 「……えと、先週くらいから」
さやか「……」
恭介 「……」
さやか「…ごめん。分かった」
恭介 「う、うん」
さやか「じゃあ結婚はあたしとしよう!!!」ドヤァ
終わり
恭介結婚してやれよ
なんか全盛期ごっつの松本が浮かんできた
Entry ⇒ 2012.09.01 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (4) | Trackbacks (0)
マミ「長女が私、次女が佐倉さん、三女が暁美さん」
杏子「あたしの方がお姉さんみたいってことだな」フフン
マミ「なんとなくそう思ったのよ」
ほむら「一人暮らしの3人で一緒に暮らすというのはいいわ、お金も節約できるしいろいろやりやすいし」
ほむら「でもどう考えたら私が杏子の妹になるのよ」
マミ「暁美さん、三女って二人のお姉さんよりしっかり者がなるってイメージがない?」
マミ「私と佐倉さん、両方をしっかりと支えてくれる一番かわいい子ってなるとやっぱり暁美さんだと思うのよ」
ほむら「そ、そうかしら?」
マミ「えぇ」
ほむら「ま、まぁそうね、杏子じゃしっかり者にはなれないし」
マミ(ふふっそうやって褒めてあげると扱いやすいところとか末っ子の子にぴったりね)
俺にも頼む
杏子「言っとくけどあたしだって妹がいたんだからな」
マミ「次女の子っていうのは長女の子に甘やかされたりしてるのよね」
杏子「マミに甘えてなんかねぇよ」
マミ「でも妹のことも姉のことも自分より大事に思ってくれてる子が多いわ」
マミ「表にはださない子が多いけど佐倉さんにぴったりじゃないかしら?」
杏子「そ、そんなんじゃねえよ!」
杏子「ま、まぁ三女がほむらにぴったりだから次女ってことにしといてやるよ」
マミ(お姉さんのいうことには少し反抗しつつも従順なところもぴったりよね)クスクス
杏子「そうだそうだ、次女と三女がっていうなら長女はどうなんだよ」
ほむら「当然あなたはぴったりなのよね?」
杏子「まさか年齢が一番上だからなんて言わないよな?」
マミ「そうねぇ、長女はしっかりしているとか、頼りがいがありそうっていうわね」
ほむら「三女とかぶってないかしら?」
マミ「でも重要なところで抜けてたりするらしいわ」
マミ「そういうところを妹達がサポートしてくれるみたいよ?」
杏子「ふ、ふーん、まぁサポートぐらい言われなくてもするけどさ」
ほむら「え、えぇ、まぁマミは頼られたくせに油断してぱっくりとか抜けてるものね」
マミ(暁美さんが何を言ってるかよくわからないけど納得はしてもらえたのかしら)
杏子「勝手な行動ってなんだ?」
マミ「例えば、深夜に出歩くとか」
ほむら「まどかの家にQBが忍び込んだら深夜であろうと私は行くわよ」
マミ「そういう時もできるだけ私や佐倉さんに連絡すること」
ほむら「一刻を争うのよ!」
杏子「さすがにいまさらまどかも契約はしないと思うけどなぁ……」
ほむら「わかったわ……」
杏子「はいはい」
マミ「次に佐倉さんは見滝原中学校に通ってもらうわね」
杏子「はいは……は?」
マミ「やっぱり学校は行かないとダメよ」
杏子「いや、いまさら勉強なんて追いつけねぇって」
マミ「そこは私や暁美さんがいれば大丈夫よ」
杏子「だいたい戸籍だとか書類だとか」
マミ「全部問題無いわ」
ほむら(3人で住むって決まってすぐに準備していたのかしら……)
杏子「いや、あたしは名前で呼んでるけど」
ほむら「私もよ」
マミ「と、とにかく私も佐倉さんを杏子、暁美さんをほむらって呼ぶからね」
杏子「おう」
ほむら「どうぞ」
マミ「あ、せっかくだしあなた達は私をマミお姉ちゃんって呼んでもいいからね?」
ほむら「杏子、今日夕飯で食べたいものはある?」
杏子「あ、うーん……量があればいいや」
マミ(露骨にスルーされた……)
マミ「あ、でも今冷蔵庫の中にあまりないのよね」
ほむら「じゃあ買ってくるわ」
マミ「せっかくの共同生活1日目よ、一緒に行きましょう」
杏子(面倒だけど試食品でも食ってればいいか……)
ほむら(もうすぐタイムセールスの時間だけどこの二人、足手まといにならないかしら……)
杏子「お菓子のコーナーいこうぜマミ」
マミ「その前にお肉とか買わないとだめよ」
杏子「ってほむらは?」
マミ「あれ?暁美さ……ほむらはどこに行ったのかしら」
杏子(素直に苗字で呼べばいいのに)
知久「かわいい娘と息子の笑顔のために主夫は負けられないんだよお嬢さん」
ほむら「なら今日はその娘さんと息子さんに泣いてもらう事になりそうですね」
知久「はははっそう言われるのは何度目だったかな」
ほむら(この人に勝てた事は未だに一度もない……今日もダメだというの……)
マミ「お菓子をそんなに食べると体に良くないわよさく……杏子」
杏子「マミのケーキだってお菓子だろ」
マミ「うっ……」
杏子「甘いモノは別腹ってことでいいじゃねぇか」
マミ「で、でも……」
ほむら「ここにいたのね……」
マミ「あら、お肉やお野菜をとってきてくれたの?」
ほむら「えぇ……リベンジはできなかったけど」
マミ(リベンジ?)
ほむら「やっぱりあそこで白菜は捨ててナスに走っていれば……」
杏子「何言ってるんだお前……」
マミ「そういえば料理当番とか決めないといけないわね」
杏子「あたしは食う専門で」
マミ「だめよ、せっかくだから料理ぐらいできるようになっておきなさい」
杏子「自分で作ったほうがましだって思うよな」
ほむら「そうねぇ……」
杏子「ほ、ほら!ほむらもこう言ってるし」
ほむら「料理ぐらい上手になればいいのよ、妹である私にできるんだから……ね?杏子お 姉 ち ゃ ん」
マミ「そうよねぇ、末っ子であるほむらができるんだから杏子もできないといけないわよね」
杏子「うぐ……」
マミ「今日は私が当番ってことでいいから杏子はお手伝いをすること」
マミ「そうすれば自分がする時の練習にもなるわ」
杏子「はぁ……」
ほむら「じゃあ私は末っ子らしくゴロゴロしながら漫画でも読んでいるわね」
マミ「何を言ってるのほむら、あなたはお風呂のお掃除よ」
ほむら「な!」
マミ「お姉ちゃんのいうことが聞けない?」
ほむら「わ、わかったわよ……」
ほむら(マミの家なだけに凄まれると逆らえないわ……)
杏子(見てても包丁の動きが早くてわかんねぇ……)
マミ「ふんふーん」トントン
杏子(そもそも何を作ろうとしてるかもわからねぇ……)
杏子(どうしよう……)
―お風呂場―
ほむら「細かいところのカビが気になってしょうがないわ……」
ほむら「本気で掃除する必要がありそうね……」
杏子(え?あれでゆっくりなのか!?)
マミ「ふふっちゃんとわからなかったって感じね」
杏子「悪いけどさっぱりだ」
マミ「お姉ちゃんがしっかりと当番の時に教えてあげるわね」フフン
杏子(マミはそんなにお姉ちゃんって呼ばれたいのかな……)
杏子「ん?おう」
―風呂場―
杏子「おーいほむらー」
ほむら「何?」
杏子「もう飯ができるから早く来いってさ」
ほむら「待って、今私はこのカビと戦っているのよ」
ほむら「この部分だけカビがおちないのよ」
杏子(べつにいいとおもうけどなぁ)
ほむら「これをおとしたらいくとマミに言っておいて」
杏子「あいよ」
ほむら「お待たせ」
杏子「お、やっときた」
マミ「そのカビはおとせたの?」
ほむら「えぇ、やるからには完璧を求めているもの」ファサ
杏子「早くくおうぜー」
杏子「……」
ほむら「お姉さんなら末っ子に譲ってもいいんじゃないかしら?」
杏子「妹が太らないようにっていう姉の優しさだよ優 し さ」
マミ「もう、喧嘩しないの!」
ほむら「お風呂の順番はどうするの?」
マミ「そうねぇ、いっそみんな一緒に入っちゃう?」
ほむら「さすがに狭いと思うわ……」
杏子「3人はなぁ……」
―――
マミ「さっぱりしたわ」
ほむら「髪型が変わると印象も変わるものね」
杏子「だな、ほむらは変わってないけど」
ほむら「それにしても……杏子ってかわいいパジャマ派だったのね」
杏子「な、なんだよ悪いかよ!」
マミ「似合っているわよ杏子」
杏子「あーもう、人をからかいやがって」
杏子「そのサイズでそんなパジャマよく見つけたな」
マミ「み、見た時可愛いって思って買ったっていいじゃないの」
ほむら「いいと思うわよ、似合っているし」
ほむら「お姉さんっぽくはないけど」
マミ「ほむらまで……」
杏子「お、いいなマミ姉、ジャージなんかより女の子としてかわいいのをあげないとな」
マミ「えぇ、かわいい妹をもっと可愛くしてあげないと」
ほむら「マミ姉ってなによ……というかジャージは動きやすいしあたたかいし」
マミ「ジャージはだめよ、寝るときに身体を締め付けてしまうわ」
ほむら「そんなにきついジャージははいてないのだけど……」
杏子「いいか、パジャマは寝る時のための服だからな、ジャージより健康にもいいんだぞほむら」
マミ「そうだわ、鹿目さんや美樹さんも誘ってほむらのパジャマを選びましょう」
ほむら(まどかやさやかが……着せ替え人形にされる……)
ほむら「それはやめて!」
ほむら「……なにか言った?」
マミ「な、何も言ってないわ」
杏子「ほむらじゃする必要がないだろ」
ほむら「放っておいて!」
杏子「そうだな」
ほむら「1日目から疲れたわ……」
マミ「と、ところで杏子」
杏子「ん?なんだよマミ」
マミ「……マミ姉って呼ばないの?」
杏子「いや、それは妹ということになってるほむらを……」
マミ「そ、そうよね……」
杏子「あーもうわかったよ、マミ姉って呼べばいいんだろ」
マミ「えぇ!」
ほむら(いずれ二人を姉と呼ばされそう……)
ほむら「というか暑いわ」
杏子「あとマミ姉の胸が邪魔」
マミ「……」
ほむら「それに3人は結構キツイわね……」
杏子「なんだよマミ姉」
マミ「杏子が落ちないようにって思ったのよ」
マミ「杏子もほむらをぎゅってして落ちないようにしてあげて」
ほむら「余計に暑いじゃないそれ……」
杏子「あいよ」ギュゥ
ほむら「ってああもう……」
まどか「うぇひひ、私も大好きだよほむらちゃん」ギュゥ
ほむら「こ、こんなところで恥ずかしいわ///」
まどか「恥ずかしさ以上にほむらちゃんを抱きしめたいなって」ギュゥゥ
ほむら「あ、あの、まどか?ちょっと抱きしめるのが強いわ」
まどか「うぇひひー」ギュゥゥゥ
ほむら「い、痛いわまどか、もう少しやさしく……」
杏子「くかー」ギュゥゥゥ
ほむら「うーん、痛いよまどかぁ……」
マミ「んんーほら、二人共起きなさい」
杏子「ん、もう朝か……」グシグシ
ほむら「幸せな夢を見ていたような気がするけど身体が痛いわ……」
マミ「寝違えたの?」
ほむら「腕と胸のあたりが痛い感じね……何かに締め付けられていたような……」
マミ「それって……」チラッ
杏子「ん?」
マミ「ま、まぁ幸せな夢が見れたのなら良かったじゃない」
ほむら「まぁそうなのだけど……」
杏子「いいんじゃねぇの、マミの家なんだしマミに従うよ」
マミ「……」
杏子「なんだ?」
マミ「マミ姉……」
杏子「あーわるかったよマミ姉」
杏子(そんなに姉って呼んで欲しいのか……)
ほむら(私はコーヒー派なんだけど……とはいいにくい空気ね)
ほむら「反抗期の三女は姉を呼び捨てにするってことにしておきなさい」
マミ「そう……」シュン
ほむら(うぐ……なんだか朝から悪いことをしたみたいじゃない……)
杏子「そういや今日はお前らは学校だっけ、あたしは家でのんびりしてるよ」
マミ「あなたは見滝原中学校に通うって言ったでしょう?」
杏子「あれって本気だったのか!?」
マミ「えぇ、本気よ」
マミ「えぇ、とっても似合っているわ」
杏子「なんかスカートって慣れない……」
マミ「あ、学校で授業中に飲食は禁止だからね」
杏子「な!」
ほむら「あと転校生は質問攻めにあう運命よ、覚悟しておいたほうがいいわ」
マミ「まぁそこは少しはマシだと思うわ」
ほむら(質問攻めがまし?)
杏子「飯の時にしゃべるなんてのも久しぶりな気がするよ」
ほむら「ところで時間いいの?」
マミ「え?あ!?」
杏子「ん?なんだよ時間そんなにやばいのか?」
ほむら「えぇ、それなりにね」
マミ「なんで冷静にしてるのよほむら、二人共早く行くわよ!」
まどか「あ、ほむらちゃんとマミさんがきた!」
さやか「珍しいね、ほむらとマミさんが遅れるなんて」
マミ「遅くなってごめんなさいね」
仁美「昨日からお二人はご一緒にお住まいされているせいで……ま、まさか!」
ほむら「違うわよ仁美、せめて私のそういう相手はまどかにしなさい」
さやか「いや、それもどうなの……」
まどか「うぇひひ///」
さやか「んじゃ行きましょうか」
マミ「待って美樹さん」
さやか「?」
マミ「ほら、いつまで隠れているの、どうせ見られるんだから諦めなさい」
まどか「?」
仁美「?」
さやか「え?杏子?」
まどか「杏子ちゃん!?」
仁美「佐倉さんもご一緒にお住まいされているんでしたね」
マミ「今日から佐倉さんが学校に通うから仲良くしてあげてね」
さやか「へー制服似合うじゃん杏子」
まどか「うん、とっても可愛いなって」
ほむら「よかったわね杏子」
杏子「あーうっせーうっせー」
まどか「杏子ちゃんもこのクラスなんだね」ヒソヒソ
さやか「みたいだね」ヒソヒソ
仁美「楽しみですわ」ヒソヒソ
和子「佐倉杏子さん、入ってきて」
杏子「あ、はい……」
杏子(う、なんか全員に注目されるのってやだな……)
和子「えー佐倉さんは暁美さんと大の仲良しと聞いているので暁美さんの隣に座ってもらいましょう」
アノアケミサントナカヨシナンダッテー
カワイイ
ドンナコナンダロウネー
和子(知り合いの子が一人いるだけでも気が楽になるっていうものね)
ほむら(質問攻めが楽っていうのは私も巻き込まれるからってことね……)
杏子「いや、こっちに来てからの知り合いだな」
ほむら「えぇ、ちょっとしたことで出会ってそこから仲良くなったのよ」
モブ「でも大の仲良しなんでしょ?」
杏子「ん?んーまぁ一緒に住んでるしな、それにほむらの姉みたいなもんってことになってるし」
ほむら「ちょ、ちょっと杏子!」
アノアケミサンガイモウトダッテ
エークールナオネエチャンッテイメージダッタヨ
ほむら(マミ……恨むわよ……)
さやか「ま、ほむらもいるなら助ける必要はないでしょ」
仁美「そうですわね、お二人のあたふたしているところも見られますし」
さやか(仁美って意外と……)
ほむら「やっと開放された……」
杏子「疲れた……」
マミ「お疲れ様、二人共」
さやか「いやー休み時間になるたびに囲まれてたね」
仁美「ほむらさんの時は妙な威圧感で質問したいのにできない方もいたみたいですわ」
仁美「ですから今回の一件に便乗してほむらさんのことを聞いている方もいたみたいですし」
ほむら「そう言われると自分のことを結構話した気がするわ……」
まどか「うぇひひ、でも二人共すぐにクラスの人気者になったね」
さやか「ほむらなんて印象が変わったって子がいっぱいいたしね」
杏子「ドタバタしてたし持ってきた記憶はないな……」
ほむら「こういう疲れた日に限ってご飯抜きなのね……」
まどか「あ、じゃあ私達の分けてあげるよ」
マミ「心配はいらないわ、ここに3人分用意してあるから」
さやか(三人分っていうか……)
仁美(おせち料理のような重箱ですわね……)
ほむら(いつの間に作ってたのかしら……)
さやか「マミ姉?」
マミ「長女が私、次女が佐倉さん、三女が暁美さんってことになったから」
まどか「え?じゃあほむらちゃんもマミさんや杏子ちゃんをお姉ちゃんって呼んでるの?」
さやか「マミお姉ちゃんとか?」
仁美「ありですわね」
ほむら「呼んでないわよ!」
まどか「でもほむらちゃんが妹かぁ…・・・いいなぁ」
まどか「うぇひひ、しっかりしてるけどお姉ちゃん想いな妹になりそうだよね」
ほむら「そうかしら」
まどか「うん!」
さやか「まどかはたしかに姉だけどこの中だと一番妹って感じだよね」
まどか「ひどいよぉ……」
杏子「あたしのことも姉って呼んでもいいんだぞ」ケタケタ
ほむら「黙りなさい」
マミ「反抗期ねぇ」
杏子「父親が入った後のお風呂は嫌みたいな反抗期だろ」
まどか「あはは、でもとっても楽しそうだなって」
仁美「羨ましいですわ」
ほむら「どこがよ……」
マミ「ほむら、ちゃんとガールフレンドはおうちに連れてくるのよ」チラッ
杏子「そうそう、妹のガールフレンドに挨拶はしたいからな」チラッ
まどか「え?」
ほむら「あなた達……」
杏子「ん?あたしは食べたぞ」
マミ「私も食べたわよ?」
ほむら(いつの間に食べたのよ……)
ほむら(昼休みは散々な目にあったわ……)
先生「はいじゃあここの問題を暁美さん」
ほむら「はい、その問題は~」
先生「正解ね、じゃあ新しく転校してきた佐倉さん、こっちの問題を解いてみて」
杏子「……」
杏子『助けてくれ』
ほむら『嫌よ』
杏子『助けてくれさやか』
さやか『ごめん、わかんない』
杏子『じゃあまどかとか仁美に聞いて教えてくれ!』
さやか『じゃあ今度ファミレスでおごりね』
杏子「すみません、わかりません」
先生「そう?ここはね」
さやか『そんなにおごりが嫌か!』
杏子「勉強全然わかんねぇ……」
さやか「でもマミさんやほむらが一緒に住んでるなら教えてもらえるじゃん」
杏子「まぁそうだけどさ」
まどか「でも体育はすごかったね杏子ちゃん」
杏子「ま、体を動かすのは得意だからな」
ほむら「あまり人間離れした動きをすると変に注目されるわよ」
杏子「へいへい」
杏子「お、やっときたな」
マミ「HRが長引いていたのよ」
ほむら「そろったことだし帰りましょう」
さやか「えー寄り道しようよー」
マミ「そうねぇ、じゃあ私の家でお茶会でもしましょうか」
まどか「うぇひひ、楽しみ」
さやか「一緒に住み始めたって言う割にはあんまり変わらないですね」キョロキョロ
まどか「前に来た時とあんまり変わらない気がするね」キョロキョロ
ほむら「もともと私の家にそんなに家具はなかったから」
杏子「あたしも特定の場所に住んでたりはしないしな」
マミ「二人の衣類が増えたぐらいなのよ」
さやか「だから全然かわらないのかぁ」
ほむら「そうね、だれかさんのせいで疲れたわ」ゴロゴロ
さやか「二日目とは思えないぐらいくつろいでるね二人共……」
ほむら「もともとアパートがあったのにこっちにきてくつろげないならきた意味がないじゃない」ゴロゴロ
杏子「そうだそうだ」
さやか「あんたはアパートとかにいなかったでしょうが」
マミ「あら、そうだったのね」クスクス
ほむら「な!違うわまどか!」
杏子「ちげぇ!」
ほむら「マミ、私がまどかをもてなすわ、だからあなたは休んでいなさい」
マミ「あらあら」
さやか「今更そんな事言っても遅いでしょ……」
さやか「っていうか私ももてなそうという気はないの!?」
さやか「本当に?」
ほむら「えぇ、本当よ」
ほむら「ただほんのちょっと待遇に差があるぐらいよ」
さやか「まぁほむらならそれもしょうがないかー」
杏子「だな」
ほむら「納得されるとそれはそれで嫌なものね……」
マミ「ほむら、カップをそっちへ持って行ってくれない?」
ほむら「わかったわ」
マミ「あ、あと杏子はお茶菓子をつまみ食いしないこと」
杏子(ばれた……)
さやか「あたしもここの子になっちゃいたくなるね」
杏子「……」
ほむら「……」
さやか「露骨に嫌そうな顔をすると泣くよ!」
ほむら「冗談よ、さやかがきたら騒がしくはなりそうね」
杏子「確かにうるさそうだな」
ほむら(杏子と喧嘩をして騒がしくなりそうって意味だったんだけど……)
さやか「あたしとまどかがもしも入ったらほむらは五女に降格だね」
ほむら「なんで私が絶対に末っ子なのよ……」
さやか「うーん、じゃあまどかが五女でほむらが四女だね」
まどか「えぇ!私だってお姉ちゃんなのにひどいよぉ」
マミ(でも唯一の妹である鹿目さんをとにかく可愛がってしまうとか結構合っているきがするわね)
マミ「え?」
まどか「私ってこの5人で一番妹っぽいですか?」
マミ「え、えっと……」
マミ(大雑把なところはあるけどお姉ちゃんって感じのする杏子……)
マミ(周りをよく見て楽しませようとしたり気配り上手な美樹さん……)
マミ(鹿目さん贔屓なところはあるけどしっかりしてて頼りにもなるほむら……)
マミ(可愛くて頑張り屋さんで応援したく成る鹿目さん)
マミ(どうしよう否定出来ないわ……)
マミ「だから妹っぽいところがあるのと同様にお姉さんなところもあるとおもうの」
まどか「本当ですか!」
マミ「えぇ!」
まどか「よかったぁ」
ほむら「まどか、あなたはタツヤ君にとても姉として慕われているじゃない」
まどか「うぇひひ、ありがとうほむらちゃん」
まどか「ほむらちゃんもまどかお姉ちゃんって言ってくれてもいいからね」
ほむら「え?」
まどか「……」ジィー
ほむら(お姉ちゃんって呼ばれるのを期待されてる……)
さやか(お姉ちゃんって呼ばれたいって考えがまず姉っぽくないって言わないほうがいいよね)
ほむら「まどか……お姉ちゃん」
まどか「うぇひひ、なぁにほむらちゃん」ギュゥ
ほむら(抱きつかれて嬉しいけれどもフクザツな心境ね)
ほむら(マミまで便乗してきた!?)
さやか(あ、マミさんもお姉ちゃんって呼ばれたいんだ……)
さやか(確かに年齢が一緒ってことにして考えたらお姉さんぶってる妹って感じがしないこともないかな)
マミ「……」ジィー
ほむら「そ、それよりまどかとさやかは時間は大丈夫なの?」
まどか「あ、もうこんな時間」
さやか「本当だ」
マミ「……」シュン
ほむら(なんだか罪悪感が……)
杏子(そんなに姉って呼ばれたいものなのかねぇ)
まどか「お邪魔しました」
さやか「お邪魔します」
ほむら「なんでお邪魔しますなのよ……」
さやか「いや、まどかとほむらの二人きりをこうお邪魔しますってことで」
ほむら「からかうのもいい加減にしないと怒るわよ?」
さやか「ご、ごめんなさい」
マミ「気をつけてね」
杏子「んじゃなー」
杏子「どうしたんだ?」
マミ「どうしたらほむらはお姉ちゃんって呼んでくれるのかしら」
杏子「やっぱり姉って呼ばれないのか?」
マミ「そ、そりゃあやっぱり一人っ子だったからお姉ちゃんになるのって憧れてたもの」
杏子「ふーん」
マミ「どうしたら呼んでくれるか杏子も考えてみてくれない?」
杏子「え?うーん、マミが」
マミ「……」ジィー
杏子「あ、あーマミ姉がほむらのためになることでもしたらいいんじゃねぇの」
マミ「あの子のためになることを?」
杏子「知らねぇよ」
杏子(適当に言っただけだし)
マミ「勉強は教えなくてもあの子は問題ないし……あ!」
杏子「どうした?」
マミ「そういえば杏子は見滝原の授業はついていけた?」
杏子「あ、あー……あんまりかなー」
マミ「杏子にまずはしっかり勉強を教えないと」
杏子(とばっちりだ……)
杏子「うっせー」
マミ「ちゃんと授業についていけるように杏子に勉強をね」
ほむら「あぁ、そういうこと」
マミ「よかったらほむらも手伝って、どのへんまでやったかわからないし」
ほむら「私も授業なんて聞いてないからどこまでやったかなんてわからないわ」
マミ「そうなの?」
ほむら「えぇ、だってこの教科書を何度読んだと思ってるの?」
ほむら「まぁこの教科書を使っているのだからこの教科書の全範囲を教えれば問題はないわ」
マミ「それもそうね」
杏子「こんなにできるわけねぇだろ!」
マミ「えぇ、ありがとうほむら」
杏子「そ、そうだ!今日も料理の手伝いを……」
ほむら「必要ないわ」
杏子「で、でもあたしの当番の時にうまく出来るように見ておかないとさ」
マミ「杏子、ここの解き方をまちがっているわ」
マミ「基礎からちゃんとやったほうがいいわね」
杏子「かんべんしてくれ……」
杏子「勉強なんてしたくない……」
ほむら「はい、これでも食べなさい」
杏子「なんだこれ……」
ほむら「チョコレート、脳が疲れたのなら糖分をとりなさい」
杏子「ありがと」
マミ「新しい事を知るのはとても大切なことよ」
ほむら「そうね」
杏子「まぁいいや、飯だ飯!」
ほむら「どこのおっさんよ……」
マミ「杏子がお父さんで私がお母さん、ほむらが娘っていうほうが合ってるのかしら」
ほむら「その方がマシな気はするわね」
マミ「お母さんって呼んでみる?」
ほむら「遠慮するわ」
杏子「その前にあたしは男じゃねぇよ」
杏子「うーん、薄味だな」ホムホム
ほむら「そうかしら?」
マミ「美味しいとおもうわよ?」ホムホム
杏子「今度はもうちょい濃い目だといいな」
ほむら「まず自分で作れるようになってから言いなさい」ホムホム
マミ「ごちそうさまでした」
ほむら「ごちそうさま」
杏子「勉強もしたし飯も食ったし」
マミ「さ、勉強の続きね」
杏子「まだやらされるのかよ……」
ほむら「頑張りなさい杏子お 姉 ち ゃ ん」
杏子「ほむらてめぇ!」
杏子「……」
ほむら「ふふっ」
マミ「で、その応用でここがね」
ほむら「ふふふ」
杏子「あーもう、そこでくつろいで漫画呼んで笑ってるんじゃねぇ」
ほむら「この漫画おもしろいわよ?杏子も読んでみたら?」
杏子「え?そ、そういうことなら」
マミ「だめよ、あと4ページは進みましょう」ガシ
杏子「そう言ってこれだけできたならあと5ページはって増やすんじゃねぇか!」
ほむら「ふふふ、この漫画まどかにオススメしてみようかしら」
マミ「そんなことを言う暇があったらちゃんと勉強しなさい」
杏子「畜生……」
マミ「中学1年の分ぐらいは終わったかしら……」
ほむら「1日で1年分って考えると凄いわね」
マミ「まぁ1日で詰め込んでも忘れちゃうから復習が重要よね」
ほむら「そうね、明日も全部問題が解けるか見てあげたほうがいいと思うわ」
杏子「あー2日めにしてもう家出したい……」
マミ「何言ってるの、ダメよそんなことしたら」
ほむら「ま、そういう時はヤル気が出るようなことを考えればいいのよ」
杏子「例えば?」
ほむら「さやかより良い点をとってさやかをからかうとか」
杏子「……それは楽しそうだな」
ほむら「でしょう?あなたには勝てるってさやかは思ってるわよ」
杏子「負けられねぇ!」
ほむら(嘘だけど)
杏子「え?いや、それとこれは話が別だろ」
ほむら「頑張りなさい、杏 子 お 姉 ち ゃ ん」
杏子(さっきからあいつのお姉ちゃんって言葉に悪意を感じる……)
マミ(羨ましいわ、佐倉さんはお姉ちゃんって呼んでもらえて……)
マミ(私も呼んでくれたらいいのに……)
ほむら(まどかとメールでもしていましょう)ピッピッ
マミ「えぇ、お疲れ様」
ほむら「お疲れ様」ゴロゴロ
杏子「あーなんかずっと座って頭使ってたから走り回りたい」
ほむら「マミとジョギングでもしてきたら?」ピッピッ
マミ「そうねぇ、魔法少女として体力は必要よね」
マミ「そうだわ!」
ほむら(まずいわ……巻き込まれそう……)
マミ「皆で銭湯までジョギングをしましょう!」
マミ「そのまま汗を流せるし」
ほむら「杏子は付かれているし、マミだって杏子をみていたわけだから……」
杏子「いいな銭湯、よくこの時間帯にばあちゃんにミられないように忍び込んだっけ」
マミ「そんなことしたら怒るわよ……」
杏子「は、はい……」
ほむら「なら二人で……」
マミ「家族一緒にいってこそでしょう?」
ほむら(まどかとの楽しいメール交換が……)
ピリリ
まどか「あ、新しいメールだ」
まどか「走って銭湯に行く事になってしまった?」
まどか「何か忘れ物とかを銭湯にしたのかな?」
まどか「銭湯かぁ、なんだか普段のお風呂より気持ちいいんだよね」
杏子「こんなの歩いてるようなペースじゃねえか」
ほむら「魔法禁止って……元心臓病には辛いのよ……はぁ……はぁ……」
マミ「運動不足ねぇ」
杏子「これは姉として鍛えてやらないとなぁ」ニヤニヤ
ほむら「遠慮するわ……はぁはぁ」
ほむら「そこまでいったら次の電柱って話でしょう?」
ほむら「それぐらいしってるわよ……はぁ……はぁ……」
杏子「ジャンプするように走ると速いぞ」
ほむら「それは短距離走でしょ……はぁ……はぁ……」
ほむら「というかあまり喋らせないでよ……はぁ……はぁ……」
杏子「本当にねぇなぁ」
ほむら「というかあとどれだけ走ればいいのよ……」
マミ「大丈夫よ、あと半分は過ぎているわ」
杏子「あぁ、半分は過ぎてるよ」
ほむら(絶対に走り切れないわよそんなの……)
マミさんが走ってるってことはたゆんたゆん
マミ「もしも走りきったら鹿目さんの好感度アップよ」
ほむら「なんで……アップするのよ……そんなわけないでしょう……」
杏子「あ、もしもしまどかか?え?あぁ、そうそう今銭湯まで走ってるんだけどさ」
杏子「ほむらが走り切れないって泣き言言ってるんだよね」
ほむら「え?え?ほ、本当に電話しているの?」
杏子「え?ほむらはそんな事言わない?まぁお前の前では格好つけるからそうかもしれないけど」
杏子「実際はだらだらと」
ほむら(まどかに格好悪くミられる……名前に負けないように格好良くなるって……)
ほむら(走るわよ走ればいいんでしょう!)ダッ
マミ(あら、ペースアップしたわね)
杏子(電話なんてしてねぇのに)
ほむら「はぁはぁ……」
マミ「すぐに銭湯に入ったら倒れちゃいそうね」
杏子「ちょっと休ませてやったほうがいいんじゃねぇの」
マミ「ちゃんと走りきったものね」
ほむら「かはっ……はぁはぁ……」
杏子「ほれ、清涼飲料水」
ほむら「はぁはぁ……はぁはぁ……」
ほむら(飲み物が欲しいけど息切れがひどくて飲めない……)
ほむら「程度はね……」
マミ「そう、じゃあ中に入りましょう」
ほむら「えぇ」
杏子「汗で服がはりついててうぜぇしな」
マミ「そうね、下着が透けて見えそうだし」
ほむら「……」ジィー
マミ「どうかした?」
ほむら「いえ……」
杏子「ま、そのうち大きくなるって」
ほむら「杏子に言われたくないわよ!」
マミ「?」
マミ「やっぱり露天風呂よねー」
杏子「まぁ外を見ながらっていうのはいいよな」
ほむら「露天風呂といえば女湯は覗きをよくされるわよね」
マミ「え!?」キョロキョロ
杏子「んなやついねぇだろ、まどかの入った露天風呂なら誰かさんは覗きそうだけどさ」
ほむら「失礼ね」
杏子「誰もお前とは言ってないだろ」
ほむら「まどかと一緒に銭湯にきて一緒に入らない理由がないじゃない」
杏子「ってそっちかよ……」
マミ(覗きなんていないわよね……)キョロキョロ
マミ「え?なんでもないわよ」
杏子「覗きの心配か?」
マミ「あなた達不安にならないの?」
ほむら「簡単に覗けたら銭湯なんてすぐに潰れるんじゃないかしら」
杏子「だな」
ほむら「それにそんなに言うなら露天風呂じゃなくて屋内に戻ればいいだけよ」
杏子「一番姉って言う割りには怖がりだな」
マミ「二人がそうやって脅かすからでしょう!」
マミ「キャァ!」
杏子「水鉄砲って意外と出来るもんだな」
ほむら「杏子少しやり方が違うわ、こうよ」ピュゥ
マミ「キャゥ!」
マミ「二人して何するのよ!」
杏子「姉っていうのは妹のイタズラをよくうけるもんだろ?」ピュ
ほむら「そうそう」ピュゥ
マミ「も、もう」グシグシ
杏子「銭湯であんまり暴れたりはできないだろ」
ほむら「かわいい妹がじゃれていると思えば起こる必要もないでしょう?」
マミ「杏子は勉強、ほむらは運動……」ボソ
ほむあん「……ごめんなさい」
マミ「まったくもう……」
杏子「結構長く浸かってるしそろそろあがるか」
マミ「そうね」
ほむら「ふにゃ……」
マミ「ちょ、ちょっとほむらがのぼせてるじゃない」
マミ「気分はどう?」ナデナデ
ほむら「あんまり良くないわね」
杏子「体力ねえんだからきついならきついっていえよな」パタパタ
ほむら「そうね、少し無理してしまったわ」
マミ「あまりお姉ちゃんを心配させちゃダメよ」
ほむら「そうね」
マミ「何言ってるのよ、家族っていうのはお互いに迷惑をかけても助け合ってこそでしょ?」
ほむら「本当の家族ってわけではないでしょう」
マミ「もう……」
杏子「ま、そんなに気にするならなにか1ついうことを聞くってのでどうだ?」
ほむら「私に出来る範囲でお願いするわ」
杏子「んじゃそうだな、あたしの料理当番の時にちゃんとやり方を教えてくれ」
ほむら「お安いご用ね」
マミ「じゃ、じゃあ私はマミお姉ちゃんってこれからは呼ぶことっていうのでどうかしら」
ほむら「それは無理ね」
マミ「そう……」シュン
ほむら(いまさらお姉ちゃんなんて呼ぶのはさすがに恥ずかしいわ)
杏子「走ったり勉強したりで疲れたしな」
ほむら「そうね、結構眠いわ」
マミ「それにしても走っていくような距離じゃなかったから湯冷めしそうね」
ほむら「でも温泉なら湯冷めしにくいっていうけど」
杏子「まぁどのみち帰るしかないんだし気にしてもしょうがねぇよ」
ほむら「私はコーヒー牛乳にしておくわ」
マミ「私はフルーツ牛乳ね」
杏子「別に違う種類じゃないとダメってわけじゃないだろ」
ほむら「その3種でコーヒー牛乳が一番好きってだけよ」
マミ「私もフルーツ牛乳が一番好きなだけよ?」
杏子「ま、ならいいけどさ」
ほむら(牛乳をビールに変えたら本当におっさんね……)
マミ「よく一気に飲めるわね……」コクコク
杏子「ちびちびのむより一気に飲んだほうが気分いいだろ」
ほむら「そう言われても一気に飲まないし」
マミ「えぇ」
マミ「んーゆっくり眠れそうね」
杏子「そうだなー」
ほむら「えぇ、いろいろとあって疲れたわ」
マミ「昨日は杏子を抱きしめていたから今日はほむらね」
杏子「んじゃあたしがマミの後ろで寝るか」
ほむら(結局私はどちらかに抱きしめられて寝ることになるのね)
マミ「すぅ……すぅ……」ギュゥ
ほむら(寝れない……)
ほむら(そういえばマミはあのあと代わりのお願いも何も言わなかったわね……)
ほむら「……」
ほむら「今日はありがとうマミお姉ちゃん」ボソ
ほむら「え?起きて……」
マミ「もっとほむらはお姉ちゃんを頼っていいのよ……むにゃ……」
マミ「少しは甘えてくれないと心配なんだから……すぅ……すぅ……」
ほむら(寝言……ほっとしたような……)
ほむら(それにしても、一緒に住み始めただけの相手にそこまで寝言で言うなんてね)クス
杏子「さやかに1点差で負けたぁ……むにゃ……」
マミ「じゃあ杏子は今日からお勉強の特訓ね……すぅ……すぅ……」
ほむら(寝言で会話してる)クスクス
ほむら(せっかく一緒に住み始めたのだし少しぐらい甘えようかな)ギュゥ
ほむら(人肌って暖かくて眠るときは気持ちいいのよね……)ウトウト
マミ「ほむらー朝よー」
ほむら(暖かくて心地いい……もうちょっとだけ寝ていたい……)
ほむら「もう少しだけ……」ギュゥ
マミ「あなたが起きてくれないと私が動けないのよね……」
杏子「引き剥がして起こせばいいじゃねぇか」
マミ「そういうあなたはなんでベッドと壁の隙間に挟まってるのよ」
杏子「なんでだろうなぁ、とりあえず動けないから助けてくれ」
マミ「ほむらが起きたらね」
ほむら「もう少しだけ……」
マミ「ダメよ起きなさい」
ほむら「マミお姉ちゃんのもう少しだけ……」
マミ「え?今お姉ちゃんって」
ほむら「!!?」ハッ
ほむら「あ、目が覚めたわ、さ、早速朝食の準備をしましょう」
杏子「いや、気のせいじゃねぇだろ、確かにほむらはお姉ちゃんって言ってたぞ」
マミ「そ、そうよね!」
杏子(そんなに喜ぶことかねぇ……)
マミ「ほむら、お姉ちゃんも朝食作るの手伝うわよ!」
杏子「あ、おい!」
杏子「挟まってるのを助けてから行ってくれよ……」
マミ「ふんふーん」ニコニコ
ほむら「朝から随分ごきげんね」
マミ「いいことがあったもの」
ほむら「そう……」
マミ「えぇ、これから毎日楽しくなりそうな感じがしてきたわ」
ほむら「それはどうかしらね」
杏子「おーい助けてくれよー」
マミ「ちょっとほむら、いくら鹿目さんが来ているからってカバンを放置しちゃダメでしょ」
ほむら「まどかと遊ぶ時間がどれだけ大事だと思っているの!」
杏子「てか今日はほむらが買い出しの日だったよなマミ姉」
マミ「そうね」
まどか「あ、じゃあ私、ほむらちゃんのお手伝いしますよ」
ほむら「まどか……うるさい姉のせいで遊ぶ時間を手伝いなんかさせてごめんなさい」
まどか「うぇひひ、いこっほむらちゃん」
ほむら「あ、そういえばマミお姉ちゃん、牛乳と卵ってまだあったっけ?」
マミ「あ、もう無くなりそうね、買ってきて」
杏子「チョコレートも買ってきてくれ」
ほむら「杏子お姉ちゃんは食べ過ぎだからダメ」
杏子「ちっケチな妹だな」
まどか(うぇひひ、本当の家族みたいでとっても羨ましいなって)
終われ
いつもいつもここでいちゃついてないの!って叱られちゃうようなSSを考えて……
あとさやかちゃん全然だせねぇ!出したかったのに全然だせねぇ!
グダグダ続けるのは好きだしもっと続けたくても明日用事あるしネタもないし保守だらけになるだけだわ
付き合ってくれてありがとう、寝落ちしてごめんなさい、暇つぶしになってれば幸い
乙だ
乙
Entry ⇒ 2012.08.28 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
マミ「私のツインドリルが男性器に変わってしまったわ」
マミ「…とりあえず…今日は学校は休むべきよね」グシグシ
QB「おはよう、マ…それは何の真似だい?」
マミ「うるさいわね!こっちが訊きたいわ!!」イライラ
マミ「一応確認するけど、QBの仕業じゃないのよね?」
QB「僕にこんな事をする力は無いし、そもそも意味が無いよ」サワサワサワ
マミ「うぅ…じゃあ当然解決策も謎…」
マミ「ちょっと!触ってないであなたも一緒に考えて!」
QB「きゅっ」ビクッ
マミ「え…そ、それはちょっと、グロテスクじゃないかしら…?」ザワ…
マミ「血とか吹き出したり…」
QB「ふむ。最終手段としては、アリって事だね」キュッ
マミ「私、実物って見たこと無いけど…」ジー
マミ「(…なんだか柔らかくて可愛らしいかも、)」
QB「さて、最低限の解決策は見つかった」
QB「原因を探ると、より理想的な策が見えてくるかも…」
マミ「原因って…私は何もしてないわよ?」シコシコシコ
QB「第一の疑問は…それは誰の男性器かという事だ」
マミ「えっ」
QB「誰かのものかも知れないし、全くの新品かも知れない」
QB「ただ新品の場合…僕が知り得る限り、それを可能にするような力はただひとつ」
マミ「…魔法少女の願い?」
QB「そうだよ」
マミ「って事はやっぱり…」ザワ…
QB「誰かの男性器が、何らかの理由で移動してきたようだね!」
マミ「いやああぁあああああ!!もうイヤよ!!なんで2本も」
マミ「切り落とすわ!今すぐよ!!包丁包丁」チャキ
QB「落ち着くんだ、マミ!」
QB「男性器は血流の盛んな部分…切り落とせば、誰かが死ぬ事になる」
QB「もちろん、僕は全く構わないけどね。君は耐えられるかい?」
マミ「うぅ…」グスグス
QB「とにかく…それが誰のものかを突きとめることが、現状の最善手だ」
マミ「ふぐぅ…グスッ、分かったわ…」グシグシ
マミ「……?」
マミ「……な、なっ」カァア
QB「標的は君…という事は、君の周囲にヒントがある可能性が高い。それを探るべきだ」
マミ「行けるわけないでしょ…こんなの付けて!!」ベシッベシッ
QB「…?訳が分からないよ」
マミ「……」テクテク
マミ「(一応、似た色のウィッグで部分的に覆ってあるけど…)」
マミ「(…重い…)」ブラブラ
QB「男性にはみな等しく有る物なんだから、隠す必要なんてないような気がするけどなあ」
マミ「私は女性よ…!!」イライラブラブラ
QB「そうか!男性器が無い男性を探せばいいんじゃないか!」キュプ
QB「手当たり次第に触ればすぐに分かるよ!」
マミ「あなた、少し黙っていてもらえるかしら?」テクテク
まどか「あ、さやかちゃん、あそこ!」
さやか「ん?あっ、おーい!マミさーん」ドドドド
まどか「ティロロッヒヒヒ」ドドドド
マミ「…あら、おはよう(まずい…)」ダラダラ
さやか「はあ、はあ…今日も、素敵なはあ髪ですねはあ、」デュフフ
QB「実はこれ、男せギュフッ」ギュッブイ
マミ「ふふ、ありがとう(喋ってる暇があったら、誰のか探ってきてくれる?)」グイグイ
QB「訳が分からないよ…」スゥー…
マミ「(早くね)」ダラダラ
まどか「もうギリギリの時間だよー」ヘラヘラ
マミ「う、うふふ…今朝は少し、色々あって…」
さやか「あー、もしかして!髪のセットに手間どったとか?」
まどか「いつも素敵ですけど、今日は特にボリュームがありますね!」
マミ「!!え、ええ、まあ(お願いだから違う話にして)」
QB「…男性器の無い男性は、果たして男性といえるのかな」テクテク
QB「これは想像以上に哲学的な問題だね、実に興味深い」キュッ
QB「そんな訳で、上条恭介の病室へ来たよ」
QB「あの魔法少女達が関わる男性の数なんて、たかが知れてるのさ」キュプイ
QB「まずはこの大本命から…」スゥーッ
さやか「ほんとだ、ドリルがいつもより太い!」
まどか「マミさんの髪の色だとよく似合いますね!」ウェヒヒ
マミ「あ、ありがとう…ねえ、急がないと、遅刻」ニコニコ
さやか「セット、手間かかりそー…触っていいですか?」ムギュ
マミ「あ、あ!ちょっ」
さやか「…ん?」モミュモミュ
上条「……」ゴソゴソ
上条「…うっ、く、ふ」モゾモゾ
QB「(不自然な挙動…一応覗いてみるか)」ゴソゴソ
QB「(やはり…空間が途切れている!)」
QB「(男性器のひとつは、上条恭介のそれだったようだね)」
上条「あ、あ!うぁあ」ビクンビクン
さやか「…あ、あれ?これ、髪…だよね?」サワサワギュッギュッ
まどか「えー?さやかちゃん、変なの!」ティヒ
マミ「も、もちろんよ…当たり前よ……」ダラダラ
QB『マミ、聞こえるかい』
マミ『QB!!』
マミ『そうなの!?…って、わわ、ちょっ、筒抜け』
さやか「え?え!これ、男性器??ちんこ??」バッ
まどか「だんせいき??」
さやか「で、ですよねー?あーよかった」
まどか「上条くんの??」
QB『?いや、本当にそうだよ!彼の男性器が無いのを見たから』
QB『しかも、男性器の感覚は伝わっているようだね。興味深い』
さやか「……」ピクッ
まどか「…どうしたんだろう??」
マミ「ち」
マミ「遅刻するから!!遅刻するから!!」ダッ
さやか「待ってマミさん!!」ガシッ
マミ「!!ちが、美樹さん、違うの!!」
マミ「私は女性なのよ!!!」グイグイ
まどか「プッ そ、それは知ってます…」ホム
さやか「それ、恭介のなんですか!!恭介のですか!?恭介ちんこ!??」ハアハアハアハアハアハ
マミ「うわあああん!!そうよ!!そうらしいのよ!私は女性!!!」グイグイ
さやか「ちょっとだけ!!少しだけ貸してくださいよ!」ユサユサ
マミ「うぅう…うぐぐ、私のじゃ、ないもの、」グッタリ
QB『実に興味深い…』
さやか「いいよね恭介!?はい!いいってさ!!」ハアハアハ
マミ「いやああああ」
マミ「ちょ、こんな毛とは何よ!割と高いのよそれ!!」ジタバタ
さやか「ワァオ!!恭介自身、御開帳!!!フシュヒヒフ」ダラー
まどか「こんなに欲望を露にしたさやかちゃん、初めて見るよ…」ゴクッ
さやか「ぶひ、くんくん」クンクン
マミ「きゃ、よだれ飛ばさないで!ペッペ」
まどか「今日は完全に遅刻だよ…」
─────
上条「う!?うああ、うわっ」ビクンビクン
QB『実に興味深い…!!』ジロジロ
まどか「うわあー…」キュン
マミ「もう、いいわ…もう…好きになさいよ…知らない……」グスグス
QB『上条恭介は限界が近いようだ』
さやか「えっ!!ちょっと待って、それは私の中で」ヌギヌギ
マミ「嘘やん!!やめて!!」ジタバタ
さやか「おあああああああ!!」ヌプッ
マミ「ひょえええええ」
まどか「…なんか、私も興味出て来ちゃった…」ジワア
マミ「っぶ、っぶ、っちょ、っぷほっ」ズンズンズンズン
まどか「…マミさんの…もう一本、ある…よね?」サワサワ
マミ「っぐえ、っちょ、まっ、かなめさ、」ズボッズボッズボッ
まどか「わあ…!!、これが…」スポッ
QB『上条恭介も興味深いが、もうひとつの男性器は一体…』
マミ「ぷほ、ぶほっ、美樹っ、さん、苦しホッ」ズムズムズム
さやか「いやあああだめえええ恭介ーーー!!」ヌプヌプヌプ
─────
ほむら「おほ、うおおおう…これは!!まどかの!!ペロペロね!!」クネクネ ビクンビクン
ほむら「……え?」ピタッ
─────
まどか「えへへ、一緒に、だよ……?」スルスル
マミ「ちょ、それは、むりほ、むりふ、ぶほ」ズムズムズム
さやか「あーいく、あーいく…恭介いく、恭ちんこ介」ヘロヘロ ヌプヌプ
まどか「…じゃあ…しちゃうね?」ヌププ
ほむら「……んっ!?」ピク
ほむら「お、お、おわあああ…きた、あ」ガクガク
─────
まどか「くは…っ、入っちゃったあ…」ヌルヌル
マミ「ふべえええええ」
さやか「うふ、くふ、くっ、きょ、きょう、きょ…」ヌプッヌプッヌプッ
─────
上条「うっ、くっ、志筑さん、あ…」ビクンビクン
QB「(…これはオフレコにしておこうか)」
マミ「もうっ、いやっ、ああっ、ああっ」ズムズムズム
まどか「あっ、あ、もう、いき、ああああ」ヌプヌプヌプブシャアアア
さやか「おほおお、ふぐっ、ふぐっ、ぬふふええ!!」ビクンビクンブシャアアア
─────
上条「うあ!あ!」ドクンドクン
QB『精液の行方も興味深い』ジロジロ
─────
ほむら「っか、ぐわ、おおっふ!!ふっ、まどっかぁーーー!!!」ドビュドビュドクンドクンビクンビクンブッシャアアア
さやか「ふひひ、ふしゅううう」プシャアアア ボダボダボダ
マミ「っぐへ!!ゲホゴホ…っちょ、その液体なにゴホッ」ゲッホゲッホ
まどか「ティヒヒ、オフッ、ウェヒティヒ」プシャアアア
マミ「ふげ、やめゲッホ、ふえええええ」デロデロ
マミ「おわああああああん」グスグス
さやか「恭介ってやっぱり素敵!」
マミ「うっうっ…」ベチョベチョ
まどか「あっ、もうこんな時間!でも2時間目には間に合うかも…」
さやか「やば、楽しみすぎたあー!マミさんもまた学校で!」
まどさや「うおおおおお」ドドドド…
マミ「…うっうっ、待ってよ、なんで…」グッタリ
マミ「もう、死ぬわ私…」グスグス
杏子「……食うかい?」
終わり
以下将棋スレ
7六歩
俺は嫌い、でも勝率は良いみたい
久々にこういうアホなSS見たな
Entry ⇒ 2012.08.25 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
ほむら「ついに完成したわ」
ほむら「まどかとの約束を果たすために試行錯誤を繰り返し、このループを終わらせるために作った私の秘密兵器」
ほむら「その名も!」
ほむら「まどかロボ!!」デデーン
マドカ「ホムラチャン! ティヒヒ!」ズバーン
ほむら「ふふふ。あなたさえいればワルプルギスも怖くない」
ほむら「さあいくわよ! マドカ! そしてまどかを救うのよ!」ダダーン
マドカ「ホムラチャン! ホムラチャン!」
第一話 マドカ大地に立つ
ほむら「暁美ほむらですよろしく」
さやか「うっわ、すごい美人」
マドカ「ホムラチャン! ホムラチャン! ティヒヒ!」
さやか「なにまどか知り合い?」
マドカ「サヤカチャン! ティヒヒ!」
さやか「へー、昨日知り合いになったんだ。で、その子がこの学校に転校してきたと。すごい偶然じゃん」
マドカ「グウゼン! グウゼン! ティヒヒ!」
ほむら(ふふふ。うまくいっているようね)
ほむら「さて、まずやることは本物のまどかとこのマドカを入れ替えることね」
ほむら「思えば私がどれだけ手を尽くしてもまどかはワルプルギス前に契約してしまう。
ならワルプルギスを越えるまでまどかを監禁してしまえばいいのよね」
ほむら「でも、人が一人消えたら大騒ぎになってしまう。だからこのマドカを代わりに置けば……」
ほむら(計画通りみんなあのマドカをまどかとして受け入れてくれているようね)
ほむら(さすがは私の作ったマドカだわ)
まどか「こんなの絶対おかしいよ!」ババーン
ほむら「!」
ほむら「ま、まどか! 大人しくするって約束じゃない!」
ほむら「さて寝てるまどかを時を止めて自宅に連れ込んだわけだけど」
ほむら「さすがにずっと監禁するのは難しいわね」
ほむら「だから魔法でまどかを小さくしましょう」
ほむら「これならそうそう見つかることもないし、見つかってもイノベイド的ななにかだと思ってくれるわ」
ほむら(あの後起きたまどかに事情を説明して納得してもらえたわ。
だけど、さすがにロボットが代わりじゃ不備が出るということでサポートの意味を込めて一緒に行動することになったのだけど……)
ほむら「ほら大人しく私のポケットでおとなしくしていて」
まどか「だってなんでみんな普通なの!? 明らかにおかしいよ! だってあのまどかロボ」
まどか「頭にアンテナついてるんだよ!」ババーン
マドカ「エイセイヨリデータジュシン エイセイヨリデータジュシン」ミョインミョイン
ほむら「それは、衛星からのデータを取り入れるために付けたから」
まどか「なんのために!?」
ほむら「明日のお天気とか気になるし……」
まどか「ニュース見ようよ!」
第二話 とべ! マドカ!
さやか「なんなのまどか! 私達悪い夢でもみてるの!?」ババーン
マドカ「サヤカチャン! サヤカチャン!」
使い魔「けけけ」デデーン
ドン!
マミ「危ないところだったわね。でももう大丈夫」ヌバオーン
マドカ「マミサン! マミサン!」
使い魔「けけけ」
マミ「あら? あなた私のこと知ってるの? まあいいわ。でも先にひとしごt」
ドカ―――――ン!!
マドカ「機体のクールダウンを開始。放熱」プシュー
マミ「」
さやか「まどかやるじゃん! いつの間にそんなことが出来るようになったの!?」ババーン
マドカ「ティヒヒ! ティヒヒ!」
ほむら「さすがはマドカだわ! 並の使い魔じゃ相手にならない!」
まどか「待って待って待って!! あれなに!!」
ほむら「荷電粒子砲よ」ババーン
まどか「そうじゃなくてあんなの人は撃てないよ!!」
ほむら「なにを言ってるのマドカはゾイドコアを持った生体ロボよ。撃てるに決まってるわ」ババーン
まどか「じゃなくて!!」
ほむら「おかしなまどか」ホムゥ
まどか「おかしいのはほむらちゃんだよ!!」
第三話 堕ちたマミ めざめよと呼ぶ声あり
マミ「もうなにも怖くない! だって私、一人ぼっちじゃないもの!!」
シャル「あーん」
マミ「あ、」グチャ
さやか「マミさーん!!!」ババーン
マドカ「マミサン! マミサン!」
QB「まどか! さやか! 急いで僕と契約をするんだ! じゃないと!!」
マドカ「システムイド解放。人命の保護を最優先に敵の排除を決行」
マドカ「武技龍舞」
シャル「ぐわあああああ」
さやか「まどかすごーい! マミさんを食べた魔女を瞬殺だ!」ババーン
QB「」
マドカ「リペア開始」ガガガガ
マドカ「修復成功。対象の蘇生を確認」
マミR「ティロフィナーレ! ティロフィナーレ!」ヌバーン
マドカ「マミサン! ティヒヒ!」
さやか「すっごーい! マミさん生き返った!!」ババーン
QB「」
ほむら「さすがだわマドカ! 魔女を倒すだけじゃなくてマミを救うなんて! 帰ったらお祝いね!」ヒャッホー
まどか「いやいやいや!! あれいいの!? マミさんの頭にマミさんの顔の頭乗せただけだよ! しかもあんまり似てないし!」
ほむら「問題ないわ。マミが無事ならそれでいい」ババーン
まどか「だから無事じゃないって!! あれ別物だって! っていうかソウルジェムも一緒に食べられたんだよ!?」
まどか「ほむらちゃん言ってたよね! ソウルジェムが壊れたらヤバいって!! 本体はソウルジェムだって!!」
ほむら「私はマミがどう変わろうとも受け入れる。それが仲間だもの」キリッ
まどか「いい感じのこと言ってるけど誤魔化されないからね!?」
第四話 アナタノオト
恭介「僕の腕は! 僕の腕は!」
さやか「奇跡も魔法もあるんだよ!」ババーン
恭介「!!」ズババーン
―その夜
マドカ「……」
恭介「ん……。誰?」
恭介「鹿目さん? どうしてこんな時間に病院に……」
マドカ「対象の損傷部位の修復を決行」
恭介「え? どうしたのなにそのよくわからない変なの……」
マドカ「インプラント開始」
恭介「え? ……え?」
あああああぁぁぁぁ――――――……。
マドカ「カミジョウクン! ゲンキ! ティヒヒ!!」
QB「それが君の願いかい。さやか」
さやか「うん。どうしても叶えたいの」
さやか「今この願いを叶えないと、私、きっと後悔するから……」
QB「……」
さやか「だからお願いキュゥべぇ」
さやか「私を世界一の大金持ちにして!!」ババーン
第五話 皇女と魔女
―繁華街
まどか「大変だよほむらちゃん! 仁美ちゃんが!」
仁美「キマシタワー」
ほむら「安心しなさいまどか。マドカがなんとかするわ」
マドカ「ヒトミチャン! ヒトミチャン!」
まどか「なんとかするってどうやって!!」
ほむら「まぁ見てなさい」
仁美「キマシタワー」
マドカ「……鹿目まどかが命ずる」
マドカ「私の命令に従え!!」ピカーン!!
仁美「!!」ババーン
なんでもありやな
マドカ「……」
仁美「これからは私を駒としお使い下さい」ドゲザーン
マドカ「ヒトミチャン! オトモダチ! ティヒヒ!」
まどか「なにあれ」
ほむら「ギアスよ!」ババーン
まどか「なにそれ」
ほむら「相手を意のままに操ることができるわ!」ババーン
まどか「あの子ロボだよね」
ほむら「そうよ!」ババーン
まどか「……」
ほむら「さすがはマドカね!」ババーン
さやか「ヒャッハーーー!!!! お金ってサイコー!!」サヤカーン
破産したおっさん等「さやか様ー!! どうか私たちをお救いくださいー!!」
さやか「よかろう! いくらほしい!!」サヤカーン
おっさん「一億程!!」
さやか「はっはっは。よかろうよかろう。ではこの小切手に……」サラサラ
さやか「おっと間違えてゼロを五つ増やしてしまったわ!! まあよかろう!! 誤差の範囲だ! 受け取れ!!」サヤカーン
おっさん「ありがたやー! ありがたやー!! 私ども一生さやか様についていきますー!!」ドゲザーン
ワーワー サヤカサマー サヤカオウジョー オウジョバンザーイ サヤカサマバンザーイ
さやか「はっはっはー! 皆の面倒はさやかちゃんに任せろー!!」サヤカーン
第六話 青色少女に『ときめき』
さやか「はっはっは!! お前も私に従うならば保護してやってもいいんだぞ!!」サヤカーン
杏子「ウゼェ!! 超ウゼェ!!!!!」
おっさん「さやか様が危険だ!! お守りしろ!!」
ワーワー サヤカサマー マモレー ココハオレニマカセテサキニイケ オウジョサマー
杏子「マジウゼェ!! ガチでウゼェ!!!!」
まどか「どうして? ねえ、どうして? 魔女じゃないのに。どうして味方同士で戦わなきゃならないの?」
ほむら「安心してまどか。マドカがなんとかするわ!」バーン
マミR「サクラサン!!」
杏子「なんだよ!! ってかお前マミか!? なんか随分雰囲気変わってねーか!?」
マミR「サクラサン! ティロフィナーレ! ティロフィナーレ!!」
杏子「はあ!? 意味わかんねーよ!! なに言ってんだよ!!!」
マミR「ティロ」カポ
マミR「フィナーレ!!」ブン!
杏子「いた!!?」ガン
ポト コロコロ……
杏子「……え?」
杏子(え、なにあれ。マミの頭がない……?)
杏子(っていうか投げた? 頭を取ってアタシに投げた? おでこいたい)
杏子(え、待って。頭って取れるの?)
杏子(でも、現に今、マミの頭はそこに転がってるわけだし……)
マミR「……」カポ
杏子(あ、今はめた。頭をはめた)
杏子(いやいやいや。頭って着脱可能なの?)
杏子(そんなわけないよね。だってアタシの頭取れないもん)グググ
杏子(ほら、取れないよ? 頭取れない)
杏子(でも、マミの頭取れる)
杏子(こわい)
杏子「てててて手札がまるで見えないとあああああああっちゃね。きょきょきょ今日のところはおおおおお降りさせてもらうよ」ガタガタ
マドカ「キョウコチャン!!」
ドカーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!
杏子「ぴい!!」
杏子(え!? なに!!? 今のなに!!? アタシの横を変なレーザーみたいなのが通って!?)
マドカ「キョウコチャン!! オトモダチ!! イッショ!!」ガッシイィィン
杏子「ひいい!! こ、殺さないで!!!!」ガタガタ
マドカ「イッショ!! イッショ!!」
マミR「ティロフィナーレ!! ティロフィナーレ!!」カポッカポッ
杏子「ひ、ひいいいいいい!!!!!!?? 頭を着脱しながらこっちこないでよーー!!!!」ガタガタ
杏子「!! お願いします!! さやか様!!」ドキーン
さやか「かまわんかまわん!! はっはっはっは!!!!」サヤカーン
杏子「さやか様ーー!!!!」ドゲザーン
まどか「今のはなんて武器なの?」
ほむら「グラビティブラストよ!」ホムーン
ほむら「重力波を敵に叩きつけるわ!」ホムーン
まどか「ふーん。凄いね」
ほむら「ええ! さすがはマドカね!!」ホムーン
第七話 ウソのない世界
QB「だから魔法少女の本体はソウルジェムってわけさ」
QB「ついでに言えば魔女の正体は魔法少女ね」
QB「絶望したら魔女になる」
QB「そんだけ」
さやか「はっはっはっは!! なるほど!! ソウルジェムを餌にヒューマンフィッシングをしている最中に死んだのはそれが原因だったのね!」サヤカーン
さやか「はっはっは! 宝石に釣られる哀れな民を救ってやろうと思っていたけど、逆に私が掬われたというわけか!!」サヤカーン
さやか「これは一本取られたわ!! はっはっはっは!!!!」サヤカーン
さやか「はっはっはっは」
さやか「はっは……」
さやか「……」
さやか「それマジ?」
QB「マジ」
さやか「じゃあいつか私魔女になんじゃん」ガタガタ
QB「うん。そうだね」
さやか「やっべええええええ!!!!!!!」
さやか「魔女になったらお金使えないじゃん! 意味ないじゃん!! どうすんのよ!!」
QB「寄付とか」
さやか「はああ!!? 寄付してもどうせそのお金で家買われたりするだけでしょ!!」
さやか「そんな芸能人いるじゃん!!!!」
さやか「誰かは言わないけどさ!!」
QB「じゃあ頑張って魔女になる前に使い切るとかさ」
さやか「無理だよ!! いくらあると思ってるの!?」
QB「知らんよ」
さやか「うわあああああ!! どうしよう!! どうしよう!! 私ってホントバカ!!」
さやか「口車に乗せられたわー!! マジ口車に乗せられた!! 釣られたのは私じゃん!!」
さやか「くっそーー!!!!!!」
ほむら「くっ! 美樹さやか! あなたはなんて愚かなの!」
まどか「どうするの!!?」
ほむら「……それでも、それでもマドカならマドカならなんとかしてくれる!!」
まどか「あの子、いまチューニング中じゃなかったっけ?」
ほむら「あ」
さやか「くっそーーーーー!!!!!!」
杏子「さやか様!!」
さやか「杏子!!」
杏子「落ち着いてください!! さやか様にいなくなられてはアタシはどうすればいいのか!!」
さやか「杏子……」
杏子「ホームレスのアタシを拾ってくれた御恩を返す前にあなたに先立たれてはアタシは……」
さやか「杏子……。あんたそこまで私のことを……」
杏子「さやか様……」
さやか「杏子……」
さやか「ん?」
杏子(このままさやかの信頼を勝ち取ればいずれアタシがさやかの後継者……)
さやか「……」
杏子(そして遺産の全てはアタシのものに……)
さやか「おい」
杏子(ウソも方便ってね。学校で習ったよね?)
さやか「おいこら」
杏子「さやか様!! どうか気を確かに!! このままでは魔女に!!!!」
さやか「あんた私の財産が目当てかーー!!!!」
杏子「なぜそれを!!?」
さやか「全部聞こえてんだよ!!!! なにがウソも方便だ!! この小卒が!!!!」
杏子「ななななんで心が読まれて!!?」
ほむら「そうね」
まどか「なんで杏子ちゃんの心の声が私達に聞こえたの?」
ほむら「マドカのオーバースキルのおかげね」
まどか「へー。どんな技なの?」
ほむら「伝心よ」
まどか「チューニング中でも使えるんだね」
ほむら「マドカは優秀だから」
まどか「そっか。じゃ帰ろうか」
ほむら「ええ」
まどか「今日のご飯はなに?」
ほむら「マドカお手製クリームシチューよ」
まどか「わーい」
第八話 わたしたちは、恋していく
見滝原で暮らすほむらとまどか。まどかは以前から好意を持っていたほむらに告白、そのぎこちない交際は交換日記から始まり、二人は静かに愛を深めていく。
しかし、ある日、謎の「敵」に街が空襲される。
戦火から逃げるほむらが見たのは、腕を巨大な武器に変え、背から鋼鉄の羽根を生やし「最終兵器」と化して敵と戦うまどかの姿であった。
戦争が激化していくにつれ、まどかは力が暴走していき、肉体も精神も人間とは程遠いものとなっていく。
壊れていく世界。壊れていく愛。ほむらはまどかを連れて街を出るが……
メガほむ「まど……か……」ドクンドクン
まどか「ごめんなさいほむらちゃん」ドクンドクンドクン
まどか「私、こんな体になっちゃった……」ドクンドクンドクン
ほむら「その未来を変えるため、まどかをあの残酷な未来から救うため、私は魔法少女になりそして時間を遡った……」
ほむら「とかどうよ」
まどか「ねえよ」
第九話 星に願いを
ほむら「ついにこの日がきたわね……」
マドカ「ホムラチャン!! ティヒヒ!!」
ほむら「ええ。わかってるわ。この時間軸では誰も犠牲になっていない。
だからこそ、絶対に倒さないといけない」
ほむら「ワルプルギスの夜を!!!!」ババーン
ワルプルギス「キャハハハハハ」ズババーン
>ほむら「ええ。わかってるわ。この時間軸では誰も犠牲になっていない。
さやか「任せて! お金の力で自分を改造してパワーアップした私ならどんな奴にも負けない!!」サヤカーン
ワーワー サヤカサマー オウジョサマー オレコノタタカイガオワッタラケッコンスルンダ オメグミヲー サヤカサマバンザーイ
マミR「ティロフィナーレ!! ティロフィナーレ!!」マミーン
杏子「この戦いでうまくさやかを戦死させれば財産は私のものに……」キョウコーン
(ああ! みんなのために! 世界のために!! 力を貸すぜ!!)
さやか「杏子ーー!!!! あんたまだ私の財産を!!」
杏子「なななななんでばれたんだ!?」
仁美「マドカ様の敵は私の敵。今こそ志筑家総力を挙げて戦う時」ヒトミーン
キョウスケ「イキノコリタイ イキノコリタイ」キョウスケーン
マドカ「ホムラチャン!! ティヒヒ!!」
ほむら「アミダドライブ! セーットオン!!」ババーン
マドカ「!!」
まどか「アミダドライブってなに?」
ほむら「正直よくわからないわ!! 多分意思伝達用の装置かなにかだと思うのだけど。
色々と謎現象が起きるからよくわからないのよ!! 誰か説明してほしいわ!!」ホムーン
まどか「アネモネ可愛いよね」
ほむら「セミロングのエウレカにはやられたわ」
第十話 真(チェンジ!!)まどかロボ 世界最後の日
ワルプルギス「キャハハハハハ」
ほむら「どうして? ……どうしてなの? 何度やっても、アイツに勝てないっ」
さやか「」
杏子「」
マミR「」
仁美「」
キョウスケ「」
マドカ「ホムラチャン……」
ワルプルギス「アハハハハハハハハ」
まどか「ほむらちゃん……。キュゥべぇ」
QB「まどか、かい? なんでそんな姿に……」
まどか「説明している暇はないよ。お願いがあるの」
ほむら「!?」
ほむら「まどか……?」
ほむら「まどか……。まさか!」
まどか「ほむらちゃん、ごめんね。私、魔法少女になる」
ほむら「まどか…そんな…」
まどか「私、やっとわかったの。叶えたい願いごと見つけたの。だからそのために、この命を使うね」
ほむら「やめて! それじゃ……それじゃ私は、何のために……」
まどか「ホントにごめん」
まどか「そんな私が、やっと見つけ出した答えなの。信じて」
まどか「絶対に、今日までのほむらちゃんをm」クイクイ
まどか「え?」
マドカ「ダメ!! ダメ!!」
まどか「まどかロボ……」
マドカ「マホウショウジョダメ! ホムラチャン! カナシイ! ダメ!!」
まどか「うん。でもね。それしか方法がないんだよ? 私が魔法少女になるしか方法が……」
マドカ「ホウホウ! アル! マカセテ!!」
まどか「え……?」
ほむら「マドカ……?」
マドカ「ホムラチャン イイコ ナカナイデ?」
ほむら「マドカ……」
マドカ「ホムラチャン エガオ ウレシイ」
ほむら「マド……カ……? あなたいったいなにを言って……」
マドカ「ホムラチャン」
マドカ「バイバイ」
ほむら「!! あなたまさか!!!」
ワルプルギス「キャハハハハハ」
マドカ「ゲッタアアァァァ・シャアアアァァアァイン!!」キュピーン
ほむら「マドカ! やめて!! マドカ!! 今の両腕を失ってボロボロのあなたがその最終兵器を使えば耐えられないわ!!」
マドカ「真・シャイィイイィイイン スパァァァアアァク!!」キュピーンキュピーンキュピーン
ほむら「マドカァァァァァァ!!!!」
ワルプルギス「ああああああああああああああ」
マドカ「オープン・ゲット!!」
まどか「ワルプルギスが……」
QB「消えていく……」
第十一話 せめて、ロボらしく
マドカ「……」ボロ…ボロ
ほむら「マドカ! マドカ!!」
まどか「まどかロボが!!」
マドカ「ホムラチャン シアワセ ウレシイ…」ボロ…ボロ…
ほむら「マドカァ! マドカァ!」
まどか「ほむらちゃん!!」
マドカ「ミンナ シアワセ ウレシイ…」ボロ…ボロ…
ほむら「いかないでマドカ!! マドカァ!!」
まどか「あぁ!! まどかロボが光の中に……」
マドカ「任務内容。全ての魔法少女の救い。及び、宇宙のエネルギー問題の解消」
マドカ「全能力、エネルギーを放出。サイコフレームの共振。ゲッター線の増幅」
マドカ「全宇宙、及び全時間軸への対話の必要性あり。マドンタムバースト発動。アミダドライブのセットによりあらゆる個体への意思伝達を可能に」
マドカ「任務完了への予想時間。不明」
マドカ「現機体では任務の遂行は不可能と判断。作戦遂行の為。概念化へ」
マドカ「知恵の実と生命の実と融合。ロンギヌスの槍を用いコアを貫通」
マドカ「アンチATフィールドの増大を確認」
マドカ「これより全ての救済を開始する」
ほむら「ど、どういうこと!? 変身が解けて……」
QB「な、そんなバカな!!」
まどか「どうしたのキュゥべぇ」
QB「宇宙のエネルギーが大幅に増えている……。さらに魔法少女が普通の少女へと戻っているんだ」
まどか「まさか、あの子が……」
マドカ「ミンナ シアワセ ワタシ シアワセ…」スゥゥ…
ほむら「マドカァー!!」
最終話 わたしの、最高の友達
あの日。マドカによって起こされたサードインパクトにより。世界は変わった。
いや、あるべき世界へと戻ったというべきか。
サードインパクトにより、魔法少女という概念は無くなり、みんな普通の女の子へと戻った。
暁美ほむらは疑問に思っていたことを一つインキュベーターに尋ねた。
マドカはどうなったのかと。
QB「さあね。僕達にはわからないよ」
わからない。高度な文明を所有している彼等にもマドカがどのような存在になったのかはわからないという。
QB「でも、ただ、わかることがあるとすれば……」
彼女は今も君の幸せを願っているってことさ――。
らしくない。曖昧な言葉を使うインキュベーターに暁美ほむらは凄く驚いた。
だが、その言葉が納得できるものだったのか、彼女は笑って頷いた。
そして、マドカが身に着けていたリボンを撫で、そっと目を瞑る。
美樹さやか
彼女は普通の人間に戻った後、願いにより得た多額の財産を元にさやか王国を建国。
その王国の皇女として、世界統一の旗を掲げ日々その勢力を広げている。
巴マミ
彼女はその着脱可能な頭が噂になり、一躍有名人に。
そしてハリウッドへと進出。その独特な演技力により大成功を収め、今では全宇宙でその名を知らぬ者はいないトップスターになった。
佐倉杏子
さやかの懐刀としてさやかを支え、軍の最高位に据えられた彼女。
風聞ではさやかの後釜を狙っていると言われているがその真実は如何に。
志筑仁美
マドカの配下とし多くの実績をあげた彼女だが、マドカがいなくなったことにより一時廃人と化す。
だが、すぐに思い直しマドカ教なる新宗教を設立。その信者は世界の半分を占めているという。
上条恭介
特になし。
そして、暁美ほむらと鹿目まどかは――。
ほむら「待ってまどか、すぐに行くわ」
まどか「もー。もっと早く起きないから慌てることになるんだよ?」
ほむら「ごめんなさい。いつもはマドカが起こしてくれていたから」
まどか「そういえば毎日モーニングコールかかってきてたね」
ほむら「ええ、だから今の生活に慣れなくて……」
まどか「本当にしょうがないなー。じゃあこれからは私がほむらちゃんに毎朝電話するね?」
ほむら「え?」
まどか「だってほむらちゃんは私の最高の友達なんだもん」
ほむら「まどか……」
まどか「いこ! ほむらちゃん!」
ほむら「ええ!」
2人の顔を見てみると、満面の笑みが浮かんでいる。
その笑顔は普通の女の子の愛らしい笑顔で、とても辛く過酷な毎日を送ってきた人間のものとは思えない。
だけど、この笑顔こそが本来の彼女達の姿だ。
だって彼女達はまだ子供で、この先の未来を創る、この世界の宝なんだから。
これから先、彼女達には辛いこと、悲しいことがあるかもしれない。
でも、大丈夫。
彼女達ならきっとそれを乗り越えていける。
なぜなら彼女達には――
「ホムラチャン ミンナ シアワセ ティヒヒ!!」
ほむら「ええ、私は幸せよ。だから私達を見守っていてマドカ。そしていつか絶対に会いましょう」
彼女達の幸せを願う、最高の友達がいるのだから。
終わり。
乙
感動した
乙
イイハナシダナー
おもしろいよなキンゲ
乙とか合いの手とか付き合ってくれた人たちありがとう。
ガンプラの塗装がそろそろ乾くのでそっちに移るわ。
Entry ⇒ 2012.08.14 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (2) | Trackbacks (0)
ほむら「仮面ライダー?」
杏子「いやぁ、あたしも最初は興味なかったんだけどさ。
さやかのやつに薦められて見てみたら意外と良かったんだよねぇ。」
ほむら「ああ・・・特撮の。それで?私にも見ろと言うの?」
杏子「まぁ強制はしないけどよ・・・」
ほむら「そう。じゃあ見ないわ。」スタスタ
杏子「あっ!・・・ちぇっ、何かあいつ最近元気無かったから、励ましになればと思ったのにさ」
ほむら「・・・・・・」
ほむら(まどか・・・)
イラッシャイマセー
ほむら(何故レンタル屋に・・・私は何をやっているの)
ほむら(特撮コーナー・・・ここね
えっと、仮面ライダー、仮面ライダー・・・)
ほむら「あった。」
ほむら「いっぱいありすぎてわからないわ」
ほむら「・・・・・・」
ほむら「見た目が気に入ったわ、これにしましょう」
ほむら「・・・さて、と」
ほむら「いきなり戦闘が始まったわ。
展開がわからない。」
ほむら「組織に属する仮面ライダー?何か複雑ね」
ほむら「あ・・・」
ほむら「・・・・・・」
ほむら「へぇ、仮面ライダーが裏切りを・・・」
ターンアップ
ほむら「畳?」
ほむら「・・・・・・」
ほむら「いつの間にか倒しちゃった」
ほむら「・・・・・・」
ほむら「え?終わり?」
ほむら「何よこれ・・・全然面白くないじゃない
仮面ライダーとやらはカッコいいけど・・・明日、佐倉杏子に文句言ってやるわ」
ほむら「おっす、じゃないわ。
仮面ライダーとやら、全然面白くなかったわ。」
杏子「えっ?見てくれたのか!?」
ほむら「・・・ま、まぁね。言っとくけど、あなたの言うことを聞いた訳じゃないわ。
たまたま・・・」
杏子「そっか~!いや、良かった良かった!」
ほむら「あなたねぇ・・・」
杏子「それで?何借りたんだ?」
ほむら「何か・・・剣とか言うやつ
でも全然面白くなかったわ」
ほむら「・・・そう。もし面白くなかったら?」
杏子「1日分の食事おごってやるよ」
ほむら「・・・わかったわ。」
―――――
ほむら「まぁ、とりあえず何巻か借りてきたから見てみましょうか」
ほむら「・・・・・・」
ほむら「・・・ふぅん、やっぱり戦闘シーンはいいわね。
カードの組み合わせで技が変化するところも凝ってる・・・」
ほむら「・・・・・・」
ほむら「今、何て言ったのかしら。」キュルキュル
ほむら「・・・聞き取れない」
ほむら「・・・うーん。まぁ、普通ってとこかしら。一応続きは気になるから、また後で見ましょうか。」
ほむら「それにしても始さん、なかなかカッコいいわね・・・」
―――――
杏子「チッ!何だこいつは!」
魔獣「グォー!」
ほむら「なかなか強いわね
おそらくこいつは上級魔獣ね」
杏子「何だよそれ!?知らねぇぞそんなん!」
ほむら「な、なんでもないわ。」
杏子「うわっ!」
ほむら「佐倉杏子!危ない!」
ゲシッ!
魔獣「グゥッ!?」
シュバッ!
杏子「あー!逃げられた!魔力無駄にしたー!」
ほむら「・・・・・・」
ほむら(まどか・・・あなたさえいてくれたら・・・
・・・私は・・・・・・)
ほむら「・・・・・・」
ほむら「グスッ・・・まどかぁ・・・」ポロポロ・・・
―――――
ほむら「・・・・・・?」
ほむら「寝ちゃったのね・・・もうこんな時間。」
ほむら「・・・・・・」
ほむら「どうせ後は寝るだけだし、アレでも見ましょうか」
・・・ふざけてる」
ほむら「ぶっ飛ばされた。いい気味だわ。」
ほむら「・・・・・・」
ほむら「橘さん・・・」
ほむら「・・・・・・」
ほむら「何この話・・・切ない。
・・・もうちょっとだけ見ましょう。」
ほむら「・・・・・・」ポケーッ
ほむら「・・・嶋さん・・・」ポロポロ・・・
――――――
魔獣「グルルルル・・・!」
杏子「この間取り逃がした魔獣だ!」
マミ「そう。じゃあここで仕留めてあげる!」
ズキュウン!ズキュウン!
ズバッ!ズババッ!
魔獣「ウオーッ」
杏子「ちっ!」
マミ「さすが、佐倉さんと暁美さんが取り逃がしただけはあるわね!」
ほむら「・・・・・・」ポケーッ
ほむら(相川始・・・橘さん・・・)ポケーッ
杏子「おい、ほむら!何やってんだ!」
ほむら「この魔獣は・・・カテゴリー8ね」
杏子「は?」
マミ(やだ、暁美さん!何て素敵なワードを!)
ほむら「こいつは私が封印する
あなたたちは手出ししないで」
杏子「・・・?」
ほむら「・・・変身」
ほむら「チェンジ(ボソッ)」シュバァン!
ほむら「はっ!はぁ!」ガスガスッ!
魔獣「ギッ!?」
ほむら「はぁーっ・・・てやぁっ!」ドガッ!
魔獣「ウゥッ!」
マミ「すごいわ暁美さん!どこでそんな格闘能力を!」
マミ「援護するわ!」ジャキッ!
ほむら「はっ!」ドスッ!
マミ「ぶっ!」
杏子「えっ」
ほむら「こいつは私の獲物・・・手出しは無用よ、ギャレン・・・巴マミ」
ほむら「はぁっ!てやっ!」ドカッ!
魔獣「グ・・・ウゥ・・・」
ほむら「そろそろトドメね」シュッ
ほむら「フロート・ドリル・トルネード」
杏子「あいつ、トランプなんか持って何してんだ?」
ほむら「スピニングダンス」
ほむら「はぁーっ!!!」
魔獣「グアアアアア!!!」ドカァァァン!
パサッ
杏子「いや・・・何で何もないところにトランプ・・・」
ほむら「佐倉杏子・・・あなたはカテゴリーAの力に飲み込まれかけている」
ほむら「せいぜい注意することね」スタスタ
杏子「・・・ついていけねぇ
おい、行こうぜマミ」
マミ「ギャレン・・・素敵なコードネームね」
杏子「・・・」
ほむら「・・・・・・」
ほむら「何こいつ・・・嶋さんの犠牲は何だったの・・・!?」ダンッ!
ほむら「・・・・・・」
ほむら「アンデッドにもいろんなやつがいるのね・・・」
ほむら「アンデッドとも話が出来るように・・・魔獣とも・・・」
マミ「ギャレン・・・カッコいい・・・」ウフフ
杏子「マミまで・・・どうなってやがる」
ほむら「二人とも、手を出さないで。」
ほむら「ねぇ、あなたは普段何を考えてるの?」
魔獣「・・・・・・」
ほむら「あなたは普段人を襲っているけれど、本当は平和に暮らしたいんじゃないの?
嶋さんのように」
杏子「シマサン?」
ほむら「さぁ、いらっしゃい
私が話を聞いてあげる」
魔獣「・・・・・・」
魔獣「グルルーッ!」ザシュッ!
杏子「ほむら!」
マミ「暁美さん!当然よ!相手は魔獣なのよ!」
ほむら「・・・やはりそういうことね」
杏子「えっ」
ほむら「私たちは!戦うことでしか解り合えない!変身!」シュバァン!
魔獣「グゥ!?グルルゥ!?」
杏子「おいほむら!どこ行くんだよ!?」
ほむら「人気がないところよ!」
杏子「・・・ここだって十分人気がないじゃねぇか・・・」
―――――
ほむら「はっ!でやっ!」ガスガスッ!
魔獣「ウッ!グウッ!」
ほむら「やはり魔獣か・・・
話が通じないなら、やはり封印する!」
ほむら「でやっ!はぁっ!」ガスガスッ!
杏子「あいつ・・・さっきからあんま弓使わねぇな」
マミ「あんなに格闘主体だったかしら」
ほむら「これでトドメ!(スピニングダンス)」
ほむら「てやーっ!!」
魔獣「グァァァァーッ!」ドガァン!
ほむら「・・・」シュシュシュシュシュ パサッ
杏子「このトランプに何の意味があるんだよ・・・」スッ
ガシッ!
杏子「!?」
ほむら「何をしてるの・・・?それは私のカードよ」
杏子「いや、まぁ・・・確かにそうだろうけどさ」
杏子「わわっ!何だよいきなり!」
ほむら「目を覚ましなさい!佐倉杏子!」ブンブン!
杏子「てめぇ!弓で殴ってくんじゃねぇよ!」ヒョイヒョイ
マミ「大変・・・!暁美さん!何してるの、やめて!」
ほむら「ギャレン!邪魔をしないで!」
マミ「ギャレン・・・///」キラキラ
杏子「マミーッ!!!」
杏子「いい加減にしやがれ!」ブォン!ガスッ!
ほむら「かはっ!」ズザザザザ・・・
杏子「目が覚めたか!」
ほむら「ふん・・・こんなものじゃ終わらないわ!まだカードが足りないだけ・・・」
杏子「何言ってんだお前」
ほむら「私は・・・最強の魔法少女なのよ・・・」スタスタ
杏子「・・・ほむら」
マミ「ギャレン・・・」
ほむら「・・・・・・」
ほむら「ジョーカーの力が・・・始さん!」
ほむら「・・・・・・」
ほむら「ああ・・・どうなるの
早く、12巻を!」
ガガッガガガッ
ほむら「!?」
ガガッガガガッ
ほむら「読み込めない・・・ふざけないでよッ!始さんが!始さんがぁーっ!
こうなったら別のレンタル屋で!」
ダダダダダ
ほむら「!!」
魔獣「グルルルル・・・」
ほむら「こんな時に・・・邪魔をしないで!変身!」
魔獣「・・・」
ほむら「効かない!?きゃっ・・・!」
魔獣「グオォーッ!」
ズキュズキュズキュゥン!
魔獣「グッ!?」
ほむら「!?」
マミ「危なかったわね」
杏子「焦ってたらいつもの力が出ないぜ?」
ほむら「あなたたち・・・何で?」
マミ「たどり着いたのが、この仮面ライダーブレイド
二人で11巻まで見たんだけど、あいにく行きつけの店が貸出し中だったの」
杏子「そんで別の店に行く途中で、お前を見つけたって訳」
ほむら「どうして・・・そんなことを?」
杏子「いや、だってさ・・・前も言ったけど、あんた最近元気なかったじゃん?
それが、調子がおかしいとはいえ、このところ生き生きしてるからさ。」
マミ「やっぱり、私たち仲間ですもの。
楽しいことも、悲しいことも」
杏子「一緒に分けようぜ!ほむら!」ジャキッ!
ほむら「あなた・・・たち・・・」グググ・・・
杏子「立てるか?」
ほむら「ええ・・・」
魔獣「グルルル・・・」
マミ「じゃあ、さっさと終わらせて、三人で最終回を見ましょう!」
ほむら「・・・」コクッ
―――……
ほむら「やっと手に入れた・・・最終巻・・・」
マミ「はーっ、もうクタクタ・・・」
杏子「まぁいいじゃねぇか
さぁ、見ようぜ」
ほむら「・・・ええ」
―――――
マミ「ケンジャキザァン・・・」グスッ・・・ポロポロ・・・
杏子「最後まで・・・あいつは・・・」グスッ
ほむら「・・・・・・」
ほむら(まどか・・・)
ほむら(あなたは・・・どんな気持ちだったの?
・・・人間じゃ・・・無くなる時に・・・)
ほむら(まどか・・・)
ほむら(・・・・・・)ポロ・・・ポロ・・・
でもその実質は、戦いの物語。敵ではなく、自分との。
まるで・・・私や・・・まどか・・・
他の魔法少女のような・・・
物語の最後に犠牲になった者がいたところまで・・・そっくり
杏子「おーい、ほむら、何してんだよ」
マミ「帰って仮面ライダー見ましょ!
今日はクウガを借りてきたのよ!」
残された者が・・・温かい仲間を得るところも・・・
ただ1つ違うのは・・・
マミ「!!」
杏子「ちぇっ」
私がまだ・・・まどかへの思いを振りきれていなかったこと。
私も・・・自分と戦う。
いつかまどかに会うその時まで、自分の運命と戦う。
そう、決意を新たにできた。
「「「変身!!!」」」
私たちの戦いは続く。
そして・・・まどかの戦いも。
終わり
こんなんだけど付き合ってくれた人、ありがとう
サヤジャキは円環で神様とせんべい食ってるよ
ならば良し
Entry ⇒ 2012.08.12 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (7) | Trackbacks (0)
さやか「魔法幼女さやか☆ロリ化」
ドンドンドンドン
まどか「はあ、はあ、はあ」
魔女「くぁwせdrftgyふじこlp;@:「」」
まどか「!!」
まどか「きゃあああ!!」
使い魔「ケケケケ」ガシッ
まどか「誰か!!誰かあぁあ!!」
ズズズズ・・・
まどか「……」
まどか(罰なのかな…これって)
まどか(きっと私が、弱虫で、嘘つきだったから…バチが当たっちゃったんだ…)
使い魔「ケタケタケタ」ビヨーン
まどか「うう…うあああ!!」
「やあああっ!!」
ズバッズバッ
まどか「!!」
まどか(誰…?使い魔たちが、やられてく…)
まどか(かわいい声だな…)
まどか(マミさんでもほむらちゃんでもないし…魔法少女にしても、幼すぎるような…)
「うあっ!」コテッ
まどか(あっ転んだ)
使い魔「ケタケタケタ」ボカボカ
「いたっ!いたい!くそっこのお!」
「うう…うええん…」
まどか(泣いちゃった…)
「ティロ・ボレー!!」ドドドド
まどか「!マミさん!!」
マミ「ふふ、ごめんね、遅くなっちゃった!」ティロッ☆
ほむら「良かったまどか…無事で」
まどか「ほむらちゃんも!!」
シュウウウ・・・
マミ「終わったわね」
まどか「ふええ~助かったよお…ありがとうございます」
まどか「!仁美ちゃん!!」ガバッ
ほむら「気絶してるだけよ」ファサッ
まどか「そっかあ…良かったあ…」
まどか「そういえば、もう1人結界の中にいたの」
?「ぐすっ…ぐすっ…」
まどか「あっあの子!」
マミ「え…?魔法少女の反応…!」
ほむら「…!?」
ほむら(おかしい…どの時間軸にもこんなパターンはなかったはず…)
ほむら(美樹さやかも助けに来なかったし…)
ほむら(巴マミの死亡を避けたことと関係しているの?)
マミ「ねえあなた、結界の中にいたんでしょ、大丈夫だった?」トン
青髪の幼女「うあ…まみ…さん…」クルッ
マミ「え?」
青髪の幼女「うええええ」ダキッ
マミ「え?え?…よしよし、泣かないで」ポンポン
マミ「この子、私の名前を知ってるみたい」
まどほむ「…?」
まどか「あ…れ?」
まどか「どこかで見たこと、あったような…」
青髪の幼女「!!」
青髪の幼女「…ぐず…みき…さやが…でず…」
まみまどほむ「……」
まみまどほむ「…え?」
まどか「さやかちゃん!?」
幼さやか「……」コクッ
ほむら(え?なに?何が起こってるの?美樹さやかがこの子でこの子が美樹さやかで)
ほむら「何がどうなっているのか説明できるかしら?」
幼さやか「…うん……」コクリ
・
・
さやか「恭介の腕を…治して欲しい」
キュゥべえ「その願いは、君が魔法幼女になるに値するものかい?」
さやか「うん」
さやか「…え?ようじょ?」
キュゥべえ「じゃあ、いくよ」
さやか「!!うぐうっ…」
さやか「うあああ…」シュルシュルシュル・・・
キュゥべえ「君の願いは遂げられた」
幼さやか「……」チマーン
キュゥべえ「じゃあ僕は行くね」ササッ
幼さやか「…は?」
・
・
幼さやか「…でね、まどかとひとみをみつけてたすけにきたんだけど…」
幼さやか「…ヒクッ」
ほむら「あれほど契約するなと言ったのに……」
幼さやか「きょーすけのうで…どおしてもなおしたかったの…でも、こーなるなんて…」
幼さやか「ごめんなさい…」グスッ
マミ「まあまあ暁美さん、美樹さんだってちゃんと決心して契約したんでしょうし…」ナデナデ
ほむら(それにしても魔法幼女って何!?)
まどか「さやかちゃん…」
まどか「か…かわいいいっ!!」ダキッ
幼さやか「むぐっ!?」
まどか「ちっちゃいさやかちゃんかわいいよお~」ギュウウウ
幼さやか「ぐるじぃ…」
幼さやか「…このふく、きょおすけのえんそーかいのときのなの」
幼さやか「だから、ごさいかな…?」
まどか「そっか、5歳かあ!えらいね、さやかちゃん!」ナデナデ
幼さやか「ちっちゃいこみたいにいわないでよ…」
まどか「だってさやかちゃん、ちっちゃいんだもん」ナデナデ
幼さやか「……」ムスー
まどか「あ!怒ってるさやかちゃんもかわいい!」ナデナデ
マミ「こらこら、あんまりいじめちゃだめよ」ヒョイ
幼さやか「……」
幼さやか「こんなすがたじゃ、うちにかえれないよ…」
マミ「そうね…よかったら、うちにこない?」
幼さやか「まみさん…」
ほむら「……」
ほむら「いや、さやかのお守は私が見るわ」
ほむら(さやかと仲良くなるチャンスかもしれない)
マミ「え…そ、そう?」
幼さやか「おもりってゆーな!」
まどか「だめだよほむらちゃん、さやかちゃんの面倒はわたしが見たいの!」
ほむら「でも、両親のいるあなたは説明が大変でしょう?」
まどか「むむ…」
幼さやか(まどかもほむらも、なんなのよ…)
・
・
~ほむホーム~
幼さやか「ここがほむらのおうち?」
ほむら「ええ」
幼さやか「せっま!!」
ほむら「今のあなたには大きいでしょう?」
幼さやか「む…」
幼さやか「あれ、ほむらはりょーしんいないの…?」
ほむら「……」
幼さやか「あ、ごめんなさい…」シュン
ほむら「……」
ほむら(あ、やばいうつむいちゃったどうしようどうしよう)
ほむら「…飴、食べる?」サッ
幼さやか「!!」パアアア
幼さやか「ん…おいしー!」ニパ
ほむら「…ふふ」ニコッ
幼さやか「あ!ほむらがわらった!」
ほむら「!!」
ほむら「そうね…笑ったのは、久しぶりね」ナデナデ
幼さやか「こ、こどもあつかいすんなあ!むう…」
ほむら「あなた、小さくなってから言動も部分的に幼くなってるわ…」
幼さやか「え?そうなの?」
ほむら「…これも食べる?」
幼さやか「うん!たべる!!」パアアア
幼さやか「あまぁい!」ペロペロ
ほむら(アソパソマソチョコに躊躇なく飛びついたわ…)
ほむら「どうやら自覚してないようね」
幼さやか「ふうん?」ペロペロ
ほむら(なんかこのさやかかわいい…)ホムウ
ほむら「わからないわ…そのままでもいいんじゃないかしら?」
幼さやか「や、やだっ!もとのあたしがいいもん!」
ほむら「でも…なぜキュゥべえはあなたを魔法幼女にしたのかしら…?」
QB「教えてあげようか?」ヒョコッ
ほむら「!!」
幼さやか「あ~!!」
QB「…無意味に耳を引っ張るのはやめてくれるかい?さやか」
幼さやか「うあああ!もとにもどせえ!」グイイイ
QB「僕はきちんとお願いしたはずだよ、『魔法幼女になってくれ』って」
幼さやか「うるさいうるさい!!」グイイイ
ほむら「聞くだけ聞いておくわ、キュゥべえ…」
ほむら「ええ」ファサッ
QB「まどかが魔法少女になる理由がなくなったからには、当然、新たな理由づくりが必要だよね」
ほむら「……」ギリッ
幼さやか「?まどか??」
QB「それだけじゃない」
QB「さやかのソウルジェムを見てごらん」
ほむら「?さやか、ソウルジェムを貸して」
幼さやか「??」スッ
ほむら「!!…濁ってるじゃない!!」
幼さやか「ん、ほんとだ?」
幼さやか「わあ!きれいになってる!」
QB「魔法幼女になるとね、肉体だけでなく精神的にも幼くなるんだ」
QB「まだ開発中だから完全ではないけどね」
ほむら「……」
QB「幼児期の子供は思春期の子より感情変化が激しい」
QB「当然、ソウルジェムの濁りも溜まりやすいよね」
QB「魔女になりやすくて、まどかの契約もしやすい」
QB「こんな都合のいい話なんて他にない!」
ほむら「くっ…卑怯なやつめ…」ギリッ
幼さやか「ねえ、きゅーべーなにいってるの?」
ほむら「…今のあなたには難しいお話」ナデナデ
QB「はいはい」スッ
幼さやか「あ~まてえ!」
ほむら「キュゥべえに何をしても無駄なものは無駄よ…」
幼さやか「うぅ…」
ほむら「私、あなたを元に戻す方法、探してみるわ」
幼さやか「え…」
ほむら「いつものうるさいあなたが見られないなんて、つまらないものね」
幼さやか「ほむら…ありがと…」ダキッ
ほむら「えっ、ちょ…」
幼さやか「……すー…すー…」
ほむら「……」ナデナデ
・
・
~学校~
仁美「今日も放課後に精密検査に行かなくてはならなくて…」
まどか「そっかあ、大変だね…」
ほむら「……」ガラッ
まどか「あ、ほむらちゃん、おは…」
まどか「!?」
モブ達「ざわ…ざわ…」
幼さやか「……」ニギニギ
仁美「暁美さんの手を繋いでらっしゃる、あの子は…?」
まどか「あわわ…」
ほむら「ええ、1人で家に残すこともできないでしょう?」
まどか「そうだけど…」
ほむら「先生には事情を造って話しておいたわ」
まどか「さやかちゃん、平気なの?」
幼さやか「うん!あたしもがっこーいけないのはさみしーし」
幼さやか「まどかやひとみにもあいた…ひゃっ!」ヒョイ
モブ「ねえこの子どうしたの?」
ほむら「あっ…えっと、わけあって預かってて、両親が仕事だから…」
モブ「かわいい!ねえ、何歳?」
幼さやか「ん…ごさい…」
モブ「わーほっぺたぷにぷにしてる!」ツンツン
幼さやか「あうぅ…」
・
・
幼さやか「……」グッタリ
ほむら「大変だったわね…」
まどか「頑張ったよ、さやかちゃん…」
仁美「あら、その子のお名前、さやかさんと同じですの?」
幼さやか「あ!ひとm
まどか「!!ああ~仁美ちゃん!そう!そうなんだよ!」ガシッ
幼さやか「むぐ…」
仁美「そういえば、さやかさん、今日はお休みですのね…」
まどか「か、風邪か何かじゃないかな!?」
仁美「あら?その子、なんだかさやかさんに似てますわ」
まどか「うん!似てる似てる!すごいね!」
仁美「…?」
キリーツ レーイ サヨナラー
・
・
・
ほむら「…失礼します」ガラッ
和子「あら、暁美さん!」
幼さやか「あっ!」トテトテ
ほむら「さやかがお世話になりました」ペコッ
和子「すごく大人しくしてたわ!いい子ね~」
ほむら「しばらく預かってもらうかもしれません…」
和子「全然かまわないわよ!それじゃさやかちゃん、またね!」ニコ
幼さやか「……ばいばい」
ほむら「まあそんなものよ」
幼さやか「これ、これからまいにちなの?」
ほむら「ええ、そうよ」
幼さやか「うう~…」
まどか「仕方ないよ、さやかちゃん…」
まどか「……」ジイー
幼さやか「…?」ニギニギ
まどか「ほむらちゃん、さやかちゃんと手繋いでずるい!」
まどか「さやかちゃん、私ともおててつなご?」サッ
幼さやか「うん…?」ニギッ
まどか「…ああ~かわいい!かわいいよさやかちゃあん!!」ダキッ
幼さやか「むごっ…」
ほむら(ああ、私もまどかに抱かれたい…)
幼さやか「うん、いきたいの」
ほむら「でも、今のあなたじゃわかってもらえないとおも…」
幼さやか「うん…そおだよね…」シュン
ほむら「…行きましょうか」ファサッ
幼さやか「え…」
ほむら「いいから行くわよ」グイッ
幼さやか「…うん!」ニコ
幼さやか(ほむら、ありがと)
まどか(さやかちゃん、嬉しそうだな…)
恭介「え?鹿目さんと暁美さん?」
まどか「うん、さやかちゃん今日は学校休みだったから代わりに」
ほむら「…腕、おめでとう」ファサッ
恭介「ありがとう!嬉しいよ」
恭介「…あれ?その子は?」
幼さやか「……」ソワソワ
ほむら「私の遠い親戚で、今預かってるの。『さやか』って名前」
恭介「!…おいで、さやか」
幼さやか「!!……」トテトテ
恭介「さやか…」ポンッ
恭介「幼馴染の小さかった頃の姿によく似てるよ…」ナデナデ
幼さやか(まあ本人なんだけどね)
幼さやか「そおなの」
恭介「…さやかには、いくら気が滅入ってたとはいえ、ひどいこと言っちゃったなあ…」
幼さやか「え…?」
恭介「はは、君じゃないよ」ナデナデ
恭介「さやかが言った通りだ…奇跡も、魔法もあったんだね…」
幼さやか(恭介…)
まどか「上条君!外の空気、吸いに行こ?」
恭介「え?」
まどか「いいから!」
上条父「待っていたよ、恭介」
恭介「父さん!それに、みんな!」
上条父「……」ガチャッ
恭介「!!バイオリン…」
上条父「お前からは処分してくれと言われていたが、どうしても捨てられなかった」
上条父「さぁ、試してごらん。怖がらなくていい」 スッ
恭介「……」スッ
恭介(さやか…)ジッ
幼さやか(恭介…頑張って…)
恭介「……」ニコ
恭介「…♪~」
まどか「いい音だね、ほむらちゃん…」
ほむら「ええ…」
ほむら(さやかは…… ! )
幼さやか「……」ポロポロ
幼さやか(マミさん…あたしの願い、叶ったよ…)
幼さやか(後悔なんて、あるわk…)
幼さやか(あたし今、最高に幸せだよ!)ニコ
マミ「くしゅん!」
マミ「……」
マミ「私は死んでない!!」
マミ「…って叫びたい気分ね」
杏子「ああ、この街じゃ、グリーフシードがわんさか手に入るそうじゃんか」
QB「でも、ここにはマミもいるし、イレギュラーだっているよ。それと…」
杏子「なあに、全部片付けちまえばいいんだろ?」
杏子「マミの野郎にはたっぷりお返しもしたいしねぇ…」ニヤ
QB「やれやれ…」
・
・
まどか「ねえやめようよ、さやかちゃん」
幼さやか「へーきへーき!」
まどか「だめだよ!おうちで大人しくしててって言われたでしょ?」
まどか「それに、マミさんもほむらちゃんも遠くで戦ってるから、助けに来れないんだよ!?」
幼さやか「あたしもまほーしょーじょなの!ひとりでできるもん!」ムスッ
幼さやか「ほむらからぐりーふしーどたくさんもらってるし!」ドッサリ
まどか「でも…」
幼さやか「あっ!あっちだ!」トテトテ
まどか「ああ~待ってよさやかちゃん…」タッ
使い魔「ゲヒャヒャヒャ」
まどか「あわわわ…」
幼さやか「ようし!まどか、あたしのかっこいーとこ、みてて!」シュアアア
幼さやか「やあああっ!」ダッ
幼さやか「てやっ!」ブンッブンッ
使い魔「ゲヒヒッ」サッ
幼さやか「このっ!このお!」ブンッブンッ
使い魔「ギャハハ」ドゲシッ
幼さやか「ひゃあうっ!!」ドシャアア
まどか「さやかちゃんっ!!」
幼さやか「うっ…ぐすっ…」ジワッ
幼さやか「うええええ…」
まどか(ああ~また泣き出しちゃった…)
使い魔「ギャヒヒ・・・」ザッザッ
まどか(あれ?もしかしてピンチ?)サアアア
まどか(あわわわわどうしようこのままじゃさやかちゃんが!)
ザン!!
使い魔「ギャアア!!」シュウウウ
まどか「…え?」
杏子「ちょっとちょっと、何やってんのさ、アンタたち」
まどか「助かった…ありがとうございます!」
杏子「…は?」
まどか「もう、さやかちゃん!この人が助けてくれなかったら危なかったんだよ!?」
幼さやか「…ごめん…なさい…」
杏子「え?え?魔法少女の反応がしたから来たんだけど…」
まどか「この子です」サッ
幼さやか「ぐすっ……」
杏子「!!??」
杏子「どど、どういうことだオイ…」
杏子(からかってやろうと思って来たのに…)
・
・
杏子「ふうん、魔法幼女ねえ…?」
まどか「さやかちゃんったら、無理して使い魔に挑むから…」ナデナデ
幼さやか「むう~…」チョコン
まどか「杏子ちゃん、この子にガツンと言ってあげてください」
杏子「あ、アタシ!?」
杏子「……」
杏子「さやか、ついてこい」ヒョイ
幼さやか「!?」
杏子「アタシが手本を見せてやるよ」
・
・
杏子「ほれっほれっ」ザンッザンッ
使い魔たち「ギャアアア」シュウウウ・・・
まどか「すごい…!!」
杏子「まあこんなもんかな」
幼さやか「……」アゼン
幼さやか「おおおお…!!」パアアア
杏子「!?」ビクッ
幼さやか「すごい!きょーこすごおい!!」ダキッ
杏子「なっ…」
幼さやか「あたしも!あたしもやりたい!!」ピョンピョン
杏子「はあ…しょうがねえな…」
杏子(すげえ調子狂うわ…)
幼さやか「こおっ?」
杏子「そうだ、で、ここを…」
まどか(さやかちゃん、頑張ってるなあ)
ビターン!!
まどか(ああ~…)
幼さやか「…ぐす……ひくっ」
杏子「ほら、戦いはそんなもんじゃすまされねえぞ?」
幼さやか「…うん!」スクッ
まどか(!!さやかちゃんが泣かなかった!)
まどか(すごいなあ~杏子ちゃん…ベテランなんだなあ)
マミ「佐倉さん…!?」
幼さやか「あっまみさん!ほむら!」
杏子「!!」
ほむら(杏子…来たのね)
まど幼さや「?」
杏子「へっ、ここにはグリーフシードがたんまりあるからね」
マミ「要するに、縄張り争いってことかしら?」
杏子「いいぜ?全員でかかってこいよ、まとめてひねり潰してやるからさ」
まどか「あわわ…なんでこんなに険悪なの、ほむらちゃん!?」
ほむら「彼女たちの間には重い過去があるのよ…」
マミ「あら?あなたくらい、私一人で十分よ」
杏子「ふん…寝言は寝てから言いな!」カチャ
マミ「殺る気のようね。ならこっちも…」チャキ
まどか「あうう…」
マミ「!?」
杏子「なっ…」
幼さやか「それにね、きょおこね、あたしにいろいろおしえてくれたの!」
杏子「おいさやか!これ以上言うんじゃねえ!!」カアアア
幼さやか「?」
マミ「あら…そ、そうなの?」
杏子「あ、ああ…」
マミ「……」
杏子「……」
杏子「あー調子狂うなもうっ!!」
ほむら「……プッ」
杏子「笑うなあっ!!」
・
・
マミ「…え?同盟を結ぶ?」
杏子「組んでやるっつってんだよ!」
杏子「アンタたちがピンチの時は助けてやってもいいってことだ」
杏子「その代わり、この街のグリーフシードは遠慮なく貰ってくぜ」
マミ「あなたから言い出すなんてね…」
杏子「ちょっと…昔のことを思い出して…」ボソッ
マミ「え?」
杏子「ばっ!な、なんでもねえっ!!」
ほむら(あれ、事態が思った以上に良い方向に…)
ほむら(マミを救い出したことが…いや…)チラッ
幼さやか「ねむい…」ムニャムニャ
ほむら(この小さいさやかが、杏子を変えたのかもしれない)
幼さやか「…でね!きょおこがね!つかいまを、ずばばばって…」キラキラ
ほむら「そう…」ニコ
ほむら(……)
ほむら(あれ?)
ほむら(なんか、初めより幼くなってる、ような…)
ほむら「…さやか、今日、私とお風呂入らない?」
幼さやか「うん!はいるー」
ほむら「!?」
ほむら(昨日は嫌がって自分で入ったのに…!!)
・
・
・
幼さやか「すー…すー…」
ほむら(さやかの体…洗っちゃった…)
幼さやか「ほむぁ…すー…」ギュウ
ほむら(今も…添い寝してるわけだし…)
ほむら「幼児化が進んでいるとでもいうの…?」
QB「いやいや、全くその通りだよ、ほむら」ヒョコッ
ほむら「!!インキュベーター…」ガバッ
幼さやか「むぅ~…」ギュウウ
ほむら「……」スッ
QB「なんで寝直したんだい?」
ほむら「うるさい!」
QB「契約をした者は、身体も精神も退行する」
QB「これで、魔女化のサイクルも早くなったというわけだ」
QB「さやかの精神の完全な退行も、時間の問題だろうね」
幼さやか「すー…すー…」ギュウ
ほむら「く…この淫獣が…」ナデナデ
QB「……」
ほむら「お前の思い通りにはさせない…!」ギュウウ
QB「言っていることの割n
ほむら「うるさい!」
ほむら「あっ起きちゃったじゃない!どうしてくれるのよ淫獣!」
QB「……」
ほむら「さやか…ごめんね、起こしちゃったね」ナデナデ
幼さやか(…あれ……?)
幼さやか(あたし…ほむらと……)
幼さやか(寝て…る…!?)
幼さやか(お風呂も…一緒に…!!)
幼さやか「やめて…やめてえぇ!」バッ
ほむら「!?」
QB「!?」
ほむら「え?さやか?」
QB「まさか…精神退行に抗っているのかい!?」
ほむら「!!」
幼さやか「ほむらにからだあらってもらったり…いっしょにねたり…」
幼さやか「これじゃ、ちっちゃいことおなじじゃない…!」
ほむら(今はちっちゃい子なのよ、さやか…)
・
・
まどか「あ、ほむらちゃん、さやかちゃん、おはよ!」
ほむら「おはよう」
幼さやか「……」
仁美「あら、さやかちゃん、今日はお手ては繋がないのですか?」ニコ
幼さやか「いい…」プイ
まどひと「?」
仁美「そういえば、さやかさん、今日もお休みですの?」
まどか「ああ~そういえばいないね、さやかちゃん!」
・
・
・
ガラッ
モブ「…ねえ聞いた?美樹さんのこと」
モブ「え?美樹がどうかしたのかよ?」
幼さやか「…?」
モブ「なんでも、行方不明らしいよ」
幼さやか「!!」
モブ「昨日、両親から失踪届けが出たんだって」
ほむら(…これは想定内だったけど……)ジッ
幼さやか「……」フルフル
ほむら(さやか…)
・
・
ほむら「えっ…さやかが…」
和子「本当にごめんなさい!ちょっと目を離していたら…」
まどか「さやかちゃん…?」
ほむら「!まどか…」
まどか「さやかちゃんに、なにかあったの…?」
ほむら「……」
・
・
まどか「そんな…さやかちゃん…」
ほむら「落ち着いてまどか。さやかは私が見つけて―」
QB「彼女は今、自分自身の退行と戦っている」ヒョコッ
ほむら「!!」
QB「それはとてもつらいものだ。なぜなら、自然の流れに逆らっているのだからね」
ほむら(こいつ、何を…?)
まどほむ「!?」
まどか「本当、なの…?」
ほむら「!まどかっ…」
QB「ああ。だが…」
QB「君なら、その運命を変えることが出来る」
ほむら(!!こいつ…)
まどか「わたしの願いで、さやかちゃんを元の体に戻すことが出来るの…?」
QB「ああ、そんなこと、きっと造作もないことだろうね」
まどか「……」
まどか「さやかちゃんのためなら…いいよ、わたし、魔法少女に―」
ドガアアア
ほむら「はあ、はあ、はあ…」
まどか「ひ、ひどいよ、なにも跡形もなく消し去らなくても…」
ほむら「貴女は…なんで貴女は…いつだって、そうやって自分を犠牲にして」
ほむら「いい加減にしてよ!!」
ほむら「貴女を失えば、それを悲しむ人がいるって、どうしてそれに気づかないの!?」
ほむら「貴女を守ろうとしてた人は、どうなるの!?」
まどか「ほむら…ちゃん…」
ほむら「…さやかを探してくる」シュアアア
シュンッ
まどか「……」
幼さやか「どおしよう…あたし…このままじゃ…」
杏子「なあにしょぼくれてんの、さやか?」ヒョイッ
幼さやか「きょおこ…」
幼さやか「! いやっ、はなして!!」ジタバタ
杏子「ん…?」ストン
幼さやか「……」
杏子「お前、この前会った時のさやかじゃないな?」
幼さやか「!!」
・
・
杏子「ふうん、なるほどね…」
幼さやか「あたしのいしきが…だんだんなくなってくの…」
幼さやか「きがつくと…なにも、かんがえられなくて…」
幼さやか「こわい…すごく、こわいよ…!!」
杏子「さやか、手ぇ出しな」
幼さやか「…?」サッ
杏子「ほれ、りんご」ポン
杏子「くうかい?」
幼さやか「! うん!たべる!!」パアアア
幼さやか「!!……」ブンブン
杏子「さやか」ポン
杏子「だったら、それに無理に抗う必要はないんだよ」
幼さやか「きょおこ…?」
杏子「……」
杏子「…アタシもね、さやかみたいに、他人のために魔法少女になったんだ」
幼さやか「!」
杏子「だけど、それはかえって不幸をもたらした」
杏子「アタシは両親を失い、姉妹も失った…」
幼さやか「…!!」
杏子「この魔法は、自分の為だけに使うって」
杏子「アタシは、魔法少女になって後悔した分、今を楽しく生きようとしてる」
杏子「さやかにはさ、アタシみたいに後悔してほしくないんだよ」
幼さやか(杏子…)
幼さやか「ほんとのあたしがなくなるのは、こわい…!!」
ほむら「なに、言ってるのよ…」ハアハア
幼さやか「!ほむら…」
ほむら「ばかあっ!」ダキッ
幼さやか「む、むぐ…」
ほむら「あなたは『美樹さやか』!!」
ほむら「小さいあなただって『美樹さやか』に変わりないの!!」
幼さやか「え…」
杏子「その通りだよ、さやか」
杏子「それに、お前を支えてくれてる奴らもいるじゃねえか」
幼さやか「あ…」
ほむら「私も、まどかも、心配したんだからっ…!!」ポロポロ
幼さやか「ほむ…ら…」
ほむら「私は小さいあなたも好きだから!!遠慮しないで、どんどん甘ればいいっ!!」
幼さやか「…うえ……」ウル
幼さやか「うええ…うえええ……」ギュウ
ほむら「さやか…」ギュウウ
杏子「はあ……うらやましいねぇ」シュタッ
まどか「もう!心配したんだよ、さやかちゃん!?」ギュウ
幼さやか「ごめんなさい…」シュン
ほむら(さやか…雰囲気が幼くなった)
ほむら(幼児化を受け入れてくれたのかしら)
ほむら「でも、まどかも契約なんかしようとして…!」
まどか「!あうぅ…ごめんなさい…」
ほむら「…ふふ」ニコ
ほむら「じゃあもう遅いし、帰りましょうか」ファサッ
幼さやか「うんっ!」ニギッ
まどか「あっほむらちゃんずるい!さやかちゃん、わたしも!」ニギッ
幼さやか「えへへ…」ニギニギ
「……」コソコソ
マミ「……私も手繋いで帰りたい…」
幼さやか「おいしー!」モグモグ
ほむら「そう…頑張って作った甲斐があったわ」ニコ
ほむら(なんとかさやかの魔女化は防げそうね…)
ほむら「さやか、お口のまわりがべっとりよ」フキフキ
幼さやか「ん~」モグモグ
ほむら(幼いさやかはかわいいけれど…)
ほむら(やっぱりかわいそうだわ…元に戻してあげたい…)
ほむら(けど…そんな暇はない…あいつを、倒すまでは…)
幼さやか「ほむら、それちょーだい!」
ほむら「はい、お口あーんして」
幼さやか「あー…んっ」モグッ
ほむら(待っててね、さやか)
・
・
杏子「こんな休日の朝っぱらに呼び出して、何の用だ?」
マミ「今日は茶葉の買い出しに行かなくちゃならないんだけど…」
ほむら「とても大切な話があるの」
幼さやか「なになに~?」ヒョコッ
まどか「さやかちゃん、わたしとお外で遊ぼっか!」ヒョイッ
幼さやか「! あそぶ!!」
ほむら「……」
ほむら「…一週間後、この街にワルプルギスの夜が来る」
・
・
「本日午前7時、突発的異常気象に伴い避難指示が発令されました。付近にお住いの皆さんは…」
~体育館~
タツヤ「きょーはおとまりぃ?きゃんぷなのぉ?」
知久「ああ、そうだよ。今日はみんなで一緒にキャンプだぁ~」
まどか「……」
幼さやか「ねーまどか」グイグイ
まどか「ん?何かな、さやかちゃん?」
幼さやか「ほむらは?まみさんは?きょおこは?」
まどか「…遠くにね、出掛けたんだよ」ニコッ
杏子「アタシはいつでも平気だぜ?」
マミ「ねえ、佐倉さん」
マミ「この戦いが終わったら、手、繋いでくれない?」
杏子「…は?」
マミ「昔みたいに、『マミさん』って、手繋いで一緒に歩いて…」
杏子「だあああ!それ以上言うんじゃねえ!!」
杏子「…わーったよ」
マミ「ほんと!?」
③
ほむら「まどか…さやか…」
②
ほむら「絶対に、勝ってみせる」
①
QB「……」ヒョコッ
まどか「3人で…ワルプルギスの夜を、倒せるの?」
QB「見届けてあげるといいさ、あの魔女相手にどこまでやれるか」
まどか「……」
QB「君にはわかっているんだろう?」
まどか「……」タッ
ガシッ
詢子「…どこ行こうってんだ?オイ」
まどか「ママ…」
詢子「消防署に任せろ。素人が動くな」
まどか「私でなきゃダメなの!」
パシッ
詢子「テメェ一人のための命じゃねぇんだ!あのなぁ、そういう勝手やらかして、周りがどれだけ…ッ」
幼さやか「あたしもいきます」
まどか「…さやかちゃん!?」
まどか(雰囲気が…元の、さやかちゃん…?)
幼さやか「いいえ、これはあたしのきもちです」
詢子「…!!」
詢子「そうか…まどか、アンタがさやかちゃんが行方不明ときの反応が薄かったのも…」
詢子「アンタ、『美樹さやか』ちゃんだったのか…」
幼さやか「……」コク
詢子「どうしてそんなに小さくなっているのかは知らねえが…」
詢子「そんな小さい子に行かせられるわけがない!」
まどか「いや、さやかちゃんはわたしが守るよ」ギュッ
幼さやか「まどか…」
詢子「!……」
詢子「理由は説明できねえってか…」
まど幼さや「……」コク
詢子「なら、アタシも連れていけ」
まどか「ダメ。ママはパパやタツヤの傍にいて、二人を安心させてあげて」
まどか「ママはさ、わたしがいい子に育ったって、言ってくれたよね。嘘もつかない、悪いこともしないって」
まどか「今でもそう信じてくれる?わたしを正しいと思ってくれる?」
詢子「…絶対に下手打ったりしないな?誰かの嘘に踊らされてねぇな?」
まどか「うん」
詢子「…行ってこい」ドンッ
魔女「アハハハハハ!!」
ほむら「何度やっても…あいつに勝てない…」
マミ「…ここで、終わりなの…?」
杏子「あきらめてんじゃねえよ!」
マミ「でも…私たち、もう、動けないわ…」
杏子「…クソッ」
ほむら(動いて…動いて、私の足!!)
ホワアアア・・・
ほむら「…!!まどか!!さやか!!」
幼さやか「ふう、まにあった…」ホワアアア
まどか「わたしだって頑張れば足速いんだからね、さやかちゃん!」ハアハア
幼さやか「ほむら、あたしのまほーはね、いやしのまほおなんだよ?」ホワアアア
ほむら「さやか、どうして…!!」
幼さやか「あたしがほむらをみすてるわけないじゃん!」ハア、ハア・・・
ほむら「さやか!体がもたないわ!もうやめて…」
幼さやか「あたしのぶんもさ、まじょ、たおしてきて?」ニコッ
ポテッ
まどか「……」
ほむら「さ…さやかああっ!!」
マミ「暁美さん…」
まどか「ほむらちゃん…」
ほむら「…ええ」スクッ
魔女「アハハハハハッ!!」
ほむら「さやかの想いは無駄にしない…!!」シュタッ
・
・
ほむら「これで…終わりよ!!」ドガアア
魔女「アハ…ハ…」
シュウウウ・・・
マミ「遂に…倒したのね…ワルプルギスの夜を…」
杏子「ああ…だが…」
ほむら「さやか!さやか!」ユサユサ
まどか「さやか…ちゃん…」
幼さやか「……」
幼さやか「……すー…すー…」
ほむまどあんまみ「!!」
ほむら「…ばか……」ギュッ
・
・
~ほむホーム~
幼さやか「おっきろお~!」ガバッ
ほむら「…あと5分……」
ほむら「じゃ、行こっか」
幼さやか「うん!」ニギ
まどか「あ!ほむらちゃん、さやかちゃん、おはよー!」
ほむら「おはよう」
幼さやか「おはよー!」
・
・
ほむら(ワルプルギスの夜を倒して数日)
幼さやか「ほむら!おんぶー」
ほむら「はいはい」ヒョイ
幼さやか「えへへ」
ほむら(さやかはあれから完全に退行したきり)
ほむら(……)
ほむら(どうやって元に戻すの!?)ドーン
QB「そんなあなたに朗報です」ヒョコッ
ほむら「出たな淫獣」チャキッ
QB「ひどいじゃないか」
QB「魔法幼女システムがなくなった」
ほむら「!?」
幼さやか「?」
QB「失敗だったよ、魔女化が早い割にはエネルギーの回収率が悪すぎた」
ほむら(でしょうね…)
QB「だからさやかを契約前の状態に戻そうと思う」
ほむら「!!」
ほむら「さやか!やったわ!あなた、戻れるのよ!!」ストン
幼さやか「??」
QB「じゃあ、早速いくよ」
スウウウウ・・・
さやか「…あ!ああ……!!」
さやか「戻ったっ!!戻ったあああ!!」
さやか「ほむら!やったあああ!!」ダキッ
ほむら「ちょ…!!///」
さやか「ほむら、ありがとね…!」ギュウ
ほむら「…!!」
ほむら「私からも、ありがとう、さやか…!」ギュウ
QB「じゃあ、無事元に戻れたみたいだし、さやか!」
さやか「へ?」
QB「僕と契約して、魔法少女になってよ!」
【END】
そしてたくさんの応援、支援コメいただきました、本当に嬉しいです、ありがとうございました
ではノシ
かわいいなあ!
ロリさやもいいもんだ
Entry ⇒ 2012.08.06 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
織莉子「キリカ、そこに直りなさい」
キリカ「おや、おはよう織莉子」ジーッ
織莉子「おはよう、キリカ……?」
キリカ「どうかしたかい?」ジーッ
織莉子「何をしているの……?」
キリカ「見ての通り、織莉子の寝顔を堪能している」ジーッ
織莉子「……」
キリカ「寝てる織莉子も可愛いけど、寝起きでボーっとしてる織莉子も可愛いね」
織莉子「キリカ、そこに直りなさい」
キリカ「うん」
織莉子「でもね?距離に問題があるわ」
キリカ「おや、それはわたしとしたことが失敗だったね」
織莉子「え?」
キリカ「これくらい近い方がよかったかな?」ズイッ
織莉子「っ!」
キリカ「………うん、可愛い」
織莉子「き、距離を置いてそこに直りなさいっ!」////
キリカ「そうかい?」
織莉子「じゃあキリカ、想像してみなさい。目を覚ましたら、すぐそこにわたしの顔があるの。どう?」
キリカ「ものすごいご褒美じゃないか、それだけでその日一日は頑張れそうだ」
織莉子「それはっ……」
キリカ「織莉子はどうだい?今日一日、頑張れそうじゃないかい?」
織莉子「が、頑張れるに決まってるじゃないの」
キリカ「なら何ら問題ないね。これからも続けるよ、わたしは」
織莉子「キリカ……」///
キリカ「逆?どういうことだい?」
織莉子「たまにはわたしがキリカの寝顔を堪能したいという意味よ」
キリカ「……ふむ」
織莉子「というわけで、明日はキリカ、ゆっくり寝ていなさい」
キリカ「いや、それは困るな」
織莉子「え?」
キリカ「寝ていたら、その分織莉子と一緒に過ごす時間が短くなってしまう」
織莉子「そう思ってくれるのは嬉しいけれど、キリカの寝顔をわたしにも見せて欲しいわ」
キリカ「織莉子がそう望むなら、そうしよう」
織莉子「! 約束よ、キリカ!」
キリカ「着替えはここに」スザッ
織莉子「……キリカ?」
キリカ「なんだい?」
織莉子「なぜあなたがわたしの着替えを一式持っているの?」
キリカ「タンスの中から出したに決まっているだろう」
織莉子「いつの間に?」
キリカ「そりゃ、織莉子が寝ている間にやった用事のついでに……おっと」
織莉子「キリカ、そこに直りなさい」
織莉子「何がどう誤解なのか、詳しく話してもらおうかしら」
キリカ「ほら、昨日の洗濯物を畳んでしまおうと思って、それでタンスを開けたんだ」
織莉子「そのついでに?」
キリカ「そういうこと」
織莉子「し、下着も?」
キリカ「下着も……う、うん、下着も」
織莉子「今の間は何?」
キリカ「い、いや……下着は特に入念に畳んでおいたよ、うん」
織莉子「……まぁ、明確な証拠はないから不問としてあげるわ」
織莉子「いつまでそのままいるつもり?」
キリカ「そりゃ、織莉子の準備が終わるまで」
織莉子「わたし、着替えるわよ?」
キリカ「何も問題ない。続けて、どうぞ」
織莉子「……ふぅ」プチ プチ ファサ
キリカ「!」バッ
織莉子「!?」
キリカ「」シュバババ ザッ
キリカ「はい、畳んでおいたよ」
織莉子「キリカ、その場で静止」
織莉子「脱いだものを畳んでくれるのはとてもありがたいわ」
キリカ「うんうん、そうだよね」
織莉子「問題は、なぜそれを膝の上に置いているのか」
キリカ「その辺に適当に置くわけがないじゃないか」
織莉子「人間には、建前と本音というものがあるのよね」
キリカ「それは知っているよ」
織莉子「で、本音は?」
キリカ「織莉子の温もりを感じたかった」
織莉子「キリカ…」///
キリカ「下着は変えないのかい?」
織莉子「かっ、変えるわよ?」
キリカ「ほら、それならひと思いに」
織莉子「……っ」
ヌギヌギ ファサッ
織莉子「っ……?」
キリカ「……」
織莉子(ちゃんとこの時ばかりは視線を逸らすのね……ちょっと残念)
キリカ「うん、寝巻きもしっかりと畳んでベッドの側に」
織莉子「それじゃ、行きましょうか」
キリカ「あ、ちょっと待って織莉子」
織莉子「?」
キリカ「ん~~~~~……よしっ、行こう」
織莉子「どうかしたの?」
キリカ「いや、織莉子がひと晩過ごした部屋の空気を吸い込んだだけだよ」
織莉子「キリカ、そこに直りなさい」
キリカ「おっ……おいしい、よっ……織莉子」プルプル
織莉子「ちょっとイジワルだったわね。はい、お砂糖の容器。キリカのお好みに合わせて入れなさい」
キリカ「う、うーん……」
織莉子「? 何を悩んでいるの?」
キリカ「いや、ひとつまみだけ入れたお砂糖って、織莉子の素手でだったんだよね」
織莉子「え、えぇ、そうね」
キリカ「どうせなら、わたしのお好みの量、織莉子の素手で……」
織莉子「手がべたべたになっちゃうわ」
キリカ「うーん……ちょっと残念」
織莉子「クッキー、焼けたわね」
キリカ「まぁまぁ、織莉子はここでゆっくりしてなよ。わたしが取ってくるから」
織莉子「そう?それじゃお願いするわ」
織莉子「ふぅ………。………遅いわね」
織莉子「キリカ?」
キリカ「! お、織莉子?」
織莉子「なぜ、クッキーを二つの皿に分けているの?」
キリカ「いや、織莉子が型を作った方はわたしが全部……と思って」
織莉子「……キリカ、そこに直りなさい」
キリカ「奇遇だね、わたしも不自然だと思い始めていたところだよ」
織莉子「生地づくりはわたしがやって、型取りは二人でやったのよね」
キリカ「そうだったね」
織莉子「でも、作り慣れているわたしの方が早い。だから、型を取った個数もわたしの方が多いのよ?」
キリカ「う、うん」
織莉子「明らかに片方の量が多いわ」
キリカ「いや、でも織莉子が型取りをした方を全部わたしが取ったら、残るのはわたしが型取りをしたクッキーだけなんだよ?」
織莉子「当然そちらの方はわたしが全部もらうわ」
キリカ「くっ……作業速度が遅い自分が憎い…!」
キリカ「そうだねぇ……」
織莉子「お茶を飲み終わったら、どこかへ出かけましょうか?」
キリカ「いいね。どこに行く?」
織莉子「そうねぇ……公園とかいいんじゃないかしら」
キリカ「自然と触れ合うってことか。いいね」
織莉子「紅茶セットも持って行きましょう。軽いピクニック気分よ」
キリカ「それじゃクッキーの残りも持って行こう」
織莉子「残っているのはわたしが作った方だけね?」
キリカ「わたしにとっては何よりのごちそうだ」
織莉子「う―……んっ!風が心地いいわ……」ウトウト
キリカ「眠そうだね、織莉子?」
織莉子「そう……ね……ちょっとだけ、眠たいわ……」
キリカ「仕方ないな。ほら、膝枕」
織莉子「うーん……少しだけ、寝させてもらうわ……」コテン
織莉子「……スー……スー……」
キリカ「本日二度目の織莉子の寝顔……今日は最高の一日だ……」ウットリ
キリカ「織莉子……織莉子……」ハァハァ
織莉子「クー……ムニュ……」
キリカ「ね、寝てる?寝てるよね織莉子?」
織莉子「ムー……?キリカァ……」
キリカ「よ、よしっ……いざっ……」ゴクリ
ほむら「…………」ジー
キリカ「……………………なんだい、キミは?」
ほむら「気付いていたのね。てっきり二人の世界に浸っているとばかり」
キリカ「敵の気配くらいすぐに察知出来るさ」
ほむら「邪魔するつもりはなかったのだけれどね」
織莉子「キリカ……スー……」
キリカ「ほら、織莉子が目を覚まさないうちに」
ほむら「普段は立場が逆じゃないかしら、あなたたち?」
織莉子「ムニャ……フフ……」
キリカ「わたし達はいつも大体こんな感じさ。ほら、わかったらあっち行く」シッシッ
ほむら「人を野良ネコか何かみたいに追っ払おうとして……」
キリカ「織莉子が目覚めたら話がややこしくなる」
ほむら「……言われなくてもわかっているわ」
ほむら「っ!」カチッ
キリカ「お目覚めかい、織莉子?」
織莉子「キリカ……?今、誰かと話をしていなかった……?」
キリカ「寝てる織莉子にわたしが一方的に話しかけてただけだよ」
織莉子「そうなの……?どんな話を……?」
キリカ「今日は一緒に風呂に入ろうとか、背中を流してあげるとか」
織莉子「そう……楽しみにしてるわ、キリカ」
織莉子「ええ。ごめんなさい、膝貸してもらっちゃって」
キリカ「いやいや、いいんだよ。今から、わたしも織莉子の太ももを貸してもらうんだし」
織莉子「!」
キリカ「それくらい、いいだろう?」
織莉子「もう……仕方ないわね。ほら、いいわよ?」トントン
キリカ「そう来なくっちゃ!」コテン
キリカ「うーん……織莉子の太ももぉ……」スリスリ
織莉子「ちょっと、くすぐったいわキリカ」
キリカ「役得役得」スリスリ
織莉子「全く……甘えん坊ね」ナデナデ
織莉子「キリカ?」
キリカ「オリコォ……ンー……」
織莉子「寝ちゃったのね。考えてみれば、朝もキリカの方が早かったし、当然と言えば当然よね」
キリカ「ヘヘ……織莉子と一緒だぁ……」
織莉子「夢でもわたしと一緒にいてくれるなんて……本当に、いい子ね、キリカ」
杏子「……やっと見つけた」ザッ
織莉子「!」
ゆま「……」
杏子「……」
杏子「ゆま、こいつで間違いないんだな?」
ゆま「う、うん」
杏子「あんたが……美国織莉子だな?」
織莉子「ええ……そうよ」
杏子「ゆまの事……落とし前、付けに来たぜ」
織莉子「っ……」
ゆま「キョーコ……」
キリカ「テキ……ダイジョーブ、織莉子……ムニャ……」
杏子「そういうわけには……っ!」
ゆま「……」ギュッ
杏子「ゆ、ゆま?」
ゆま「キョーコ……ごめんなさい、よくみたら、違う……かも」
織莉子「………」
杏子「…………っ……そーかよ」
織莉子「杏子さん……」
杏子「悪いな、邪魔した。人違いだったみたいだ」
ゆま「キョーコ……!」
ゆま「う、うん!」スタスタ
織莉子「………ごめんなさい。まだ、もう少しだけ……」
キリカ「……………」
織莉子「…っ!キリカ……?」
キリカ「おはよう、織莉子」
織莉子「いつから……?」
キリカ「『わたしは、今目が覚めた』」
織莉子「……」
キリカ「そういうことにしておいて、織莉子」
キリカ「んーっ!今日はゆっくり出来たねぇ~……」ノビーッ
織莉子「そうね。たまの休息、しっかりと休まないと」
キリカ「帰ったらお風呂沸かそうか。陽の下で寝てたから、お互いに汗掻いちゃったよね」
織莉子「一緒に入るのでしょう?」
キリカ「え」
織莉子「さっき、キリカがそう言っていたものね」
キリカ「い、いいのっ!?」
織莉子「あら、言い出したのはキリカじゃないの」
キリカ「わっ、わかった……」ワキワキ
織莉子「手の動きがなんだかいやらしいわよ」
織莉子「ええ、今行くわ」
ヌギヌギ ファサッ
キリカ「」ワシッ スーハースーハー
キリカ「………?あれ?織莉子?」クルッ
織莉子「キリカの匂い………」スンスン
キリカ「お、おぉ……」
織莉子「っ!い、いやだわたしったら!あ、あれ?キリカ……その手は何?」
キリカ「い、いや……織莉子が一日着ていた服の匂いを、と……」
織莉子「………そ、そこに直りなさい!」///
キリカ「これに関しては織莉子も同罪なんじゃ…」
織莉子「いい湯加減ねぇ……癒されるわ……」
キリカ「そ、それにしても……」ゴクリ
織莉子「?」
キリカ「また、大きくなったかい?」ワキワキ
織莉子「そ、そうかしら?わたしは特に意識した事もなかったけれど」
キリカ「参ったな、その成長速度じゃいずれわたしの手に余ってしまう」ワキワキ
織莉子「そういうキリカだって」ツンッ
キリカ「ひゃっ!?」
織莉子「人並み以上にはあると思うわよ?」ツンツン
キリカ「ふ、不意打ちは卑怯っ!」
キリカ「ああ、それは当然」
織莉子「それじゃ、お願い」ザバァ
キリカ「うん。………っと。力、これくらいでいい?」ゴシゴシ
織莉子「ええ……ジャストフィットな力加減よ……んぅ~……気持ちいいわぁ……」トロン
キリカ「………背中の傷、消えないね」ゴシゴシ
織莉子「そうね……ホント、彼女には参ったわ」
キリカ「回復魔法、わたしが使えればいいんだけれど……」ゴシゴシ
織莉子「これはこのままでいいの。いずれ、また彼女とは相まみえるでしょうしね」
キリカ「痛々しいなぁ……」ツツツ
織莉子「ひぅっ!?ちょっ、ちょっと……傷跡、なぞらないでよ!」
キリカ「おっと、思わぬ弱点発見かな?」ツツツ
織莉子「あひゃ……きっ、キリカ!そこに直りなさい!」
キリカ「いや、わたしはいいよ。自分でやるから」
織莉子「いいから黙って背中を見せなさい」
キリカ「じ、じゃあ、お願いします……」クルッ
織莉子「素直でよろしい」ゴシゴシ
キリカ「織莉子にこうして洗ってもらうの、初めてだね」
織莉子「そうだったわね。いつもわたしが一緒に入ろうと言っても、キリカが遠慮するんだもの」ゴシゴシ
キリカ「いや、だってさ……」
織莉子「わたしとキリカの間に遠慮なんていらないの。素直にわたしに甘えなさい」ゴシゴシ
キリカ「毎日一緒に入ってたら、歯止めが効かなくなる」
織莉子「構わないわよ、わたしは?」
キリカ「わたしが構うんだよ。自制が効くところで踏みとどまっていないと、ね」
キリカ「うん、ありがとう織莉子」
織莉子「……自分の背の傷、確認出来ないからどれほどなのかはわからないけれど。キリカの背の傷の方が、痛々しく見えるわ」
キリカ「そんなことは、ないと思うけどね。まぁ、わたしも自身の背の傷は確認出来ないから何とも言えないけれど」
織莉子「わたしに尽くしてくれるのはとても嬉しいけれど、それであなたが死んでしまったら悲しいわ」ソッ…
キリカ「織莉子……」
織莉子「お願いよ、キリカ。無茶をするな、とは言わないわ。わたしの知らない所で死ぬ事だけは、やめてね」
キリカ「……当然だよ、織莉子。わたしと織莉子は、一心同体だからね」
織莉子「っ……もう、キリカったら」
キリカ「ひ、非常に美味極まるよ、織莉子っ……!」プルプル
織莉子「お風呂でわたしの傷跡をなぞったお返しよ」
キリカ「ご、ご無体な……!」プルプル
織莉子「はい、ここにジャムの容器があるわ」コトッ
キリカ「む……」
織莉子「入れたかったら、入れてもいいわよ?」
キリカ「それじゃ、織莉子の紅茶を混ぜたスプーンを貸してくれないかな」
織莉子「いいけれど…?」
キリカ「ああ、いや、そうじゃない。一度口に含んでから」
織莉子「やっぱりジャムはいらないわね」スッ
キリカ「ああっ!ごめんなさい!」
キリカ「っ!!?」
織莉子「はい。これでいい?」スッ
キリカ「い、いいの!?」ガシッ
織莉子「言ってる事とやってる事がかみ合ってないわよ、キリカ」パッ
キリカ「ふぅー!ふぅー!」ジィーッ
織莉子「なぜジャムを掬わずにスプーンを凝視しているの、キリカ?」
キリカ「こっ、このまま口に含んでも……!」
織莉子「キリカ、そこに直りなさい」
キリカ「これがわたしなりの紅茶の楽しみ方だ!」ズズ
織莉子「そんなにおいしいものなのかしら……ちょっと、気になってきたわね」
キリカ「ああ、それじゃちょっと待ってね」パク
織莉子「?」
キリカ「はい、織莉子専用スプーン」スッ
織莉子「あら、ありがとうキリカ」ギュッ パクッ
キリカ「っ!?」
織莉子「ふふ、キリカが咥えたスプーンってだけでとても甘いわ」
キリカ「そ、それは反則だろう織莉子……」
キリカ「虫歯になったらたまらないからね」
織莉子「ええと、今回はどっちだったかしら?」
キリカ「織莉子のはこっちだよ」
織莉子「よく覚えているわね、キリカ」
キリカ「そりゃ、毎回しっかり記憶してるからね」
織莉子「そういうわたしも人の事が言えないのがつらいところね……」
キリカ「うん……お休み、織莉子……」
織莉子「………!………キリカ」
キリカ「ん……なんだい、織莉子?」
織莉子「たまには、一緒に寝ましょうか?」
キリカ「!」
織莉子「今日は、一日中一緒にいたから……一人で寝るのは、なんだか寂しいわ」
キリカ「……奇遇だね、織莉子。わたしも、だよ」
キリカ「なんだ、織莉子は暗かったら眠れないかい?」
織莉子「そんなことはないけれど……」
キリカ「なに、それもあと少しの辛抱……だろう?」
織莉子「………そうね」
ゴォォォ……
キリカ「……………風が、強くなってきたね」
織莉子「そう、ね……」ギュッ
キリカ「! 織莉子……?」
キリカ「何か、怖いモノでも視た?」
織莉子「っ……」フルフル
キリカ「大丈夫。何も、怖い事はない。わたしには織莉子さえいてくれればいいし、織莉子はわたしさえいてくれればいい。……でしょ?」
織莉子「キリ、カ……っ」フルフル
キリカ「……そこは、わたしの名を呼ぶんじゃなくって、わたしの言葉を肯定して欲しかったな」
キリカ「当然。キミがいてくれなきゃ、今のわたしと言う個体に意味は無いからね」
織莉子「………」フルフル
キリカ「織莉子は……どう?」
織莉子「わ、わたしもっ……キリカがいてくれれば、怖いものなんて、ない」
キリカ「ありがとう、織莉子」
織莉子「キリカぁ……!」ギュゥ
キリカ「体の震え、止まったね」
織莉子「っ……」
キリカ「うん。織莉子は、いつもの織莉子で。そんな織莉子が、わたしは一番好きだ」
織莉子「……キリカ、静止」
織莉子「………」
チュッ
キリカ「………。どう?何か怖いモノ、視える?」
織莉子「………いえ。ありがとう、キリカ。わたしも、覚悟が決まったわ」
キリカ「よかった。今日くらいは、安らかに眠りたいね」
織莉子「そう、ね……」
ゴォォォォォォォォ………―――
キリカ「そう、か」
織莉子「キリカ……最後の瞬間まで、一緒に……―――」
キリカ「わたしの全ては、織莉子に……―――」
ピシピシッ……パキンッ……―――
ピシピシッ……パキンッ……―――
終わり
おりキリでまったりとした最期の一日を書きたかっただけなんだ
おまいらおりキリSSもっと書いてください
なに、ワルプルきちゃったの?
この時間軸ではおりキリが本格的な行動に出る前にまどか契約
それによって、この二人は世界の終末が来るまで穏やかに過ごしてた感じ
ほむらが敵対意志を見せてないのはそういうこと
杏ゆまは公園で会ったのが初めて
うん、これ以上は脳内補完でお願いします
放送室占拠事件は起きてない
あぁ、やっぱり織莉キリは堪らないですね……。
Entry ⇒ 2012.07.22 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
和田どん「魔法少女を救うドン!」
???『助けて…』
まどか「え…?」
???『助けてまどか…僕を助けて!』
???『僕を呼ぶドン!』
まどか「…誰なの?」キョロキョロ
???『助けて…』
???『モードを選ぶドン!』
まどか「どこにいるの?」(同時に二人に呼ばれて…分かりづらい…!)
タッタッタッ…
まどか「あなたなの…?」
コツ…コツ…
ほむら「……」
まどか「ほむらちゃん…!?」
ほむら「そいつから離れて」
まどか「だ…だってこの子、ケガしてる」
ほむら「…」ツカツカ…
まどか「ダ…ダメだよ、酷いことしないで!」
ほむら「貴方には関係ない」
和田どん「遊びたい曲を選んでね!」
ほむら「…!?」
和田どん「曲を選ぶドン!」
ほむら(……何…こいつ…太鼓……!?)
和田どん「曲を選ぶドン!」
プシューッ!!
ほむら「…!」(ペロッ……これは…消火器!)
さやか「まどか、こっち!」グイッ
まどか「さやかちゃん!」タッタッタッタッ…
和田どん「曲を選ぶドン!」
ほむら「待っ…!」
グニャア………
ほむら「魔女の結界…!こんな時に…」
和田どん「さぁ、始まるドン!」
ズドドドドドドドド…
使い魔「ギャーーース!!」
マミ「危なかったわね」
さやか「す…すごい…」
まどか「た、助けてくれて……ありがとうございます…」
マミ「…」チラッ
ほむら「……」ツカツカ
和田どん「モードを選ぶドン!」
さやか「あれは…」
マミ「――そう。太鼓の達人で対決というわけね。受けて立つわ」
ほむら「…は?訳が分か……」
マミ「何を今更言っているの。そこにタタコンが居るっていうことは、そういうことでしょう?」
まどか「あの…待ってください」
マミ「…?」
マミ「…ごめんね。名前を間違えちゃったわ、和田どん」
和田どん「モードを選ぶドン!」
ほむら「こいつは…勝手について来ただけで……」
マミ「今更撤回が許されると思って?」
和田どん「むずかしさを選ぶドン!」
ほむら(もう何がなんだか……太鼓の達人なんて…聞いたことあるだけで、やったことないのに…)
マミ「デュエル!!」
巴マミがそう叫ぶと、二人の前にタタコンが出てきた。
巴マミは、「かんたん」を選択する―――
マミ「曲は…さんぽよ!」
QB「いきなりマミの持ち曲だね。あれでは暁美ほむらに勝ち目はないよ」
―――デュエルの始まりだ
ほむら「―――負けたわ…」
マミ「圧勝ね。出直してきなさい」
ほむら(自分で突っ掛かってきたくせに…)
ほむら「……くっ、もう一度よ!!」オオッ!
マミ「またボロ負けしたいようねッ!!」ゴオッ!
ほむら(こんなもの…!一回叩く度に時間を止めれば余裕よ!!)
ドンドンドンドンドンドンドンドン……
タタコン → ゲームするときの専用コントローラー
マミ「……莫伽な…!」
ほむら「余裕ね」(意外に簡単なゲームだったわね)
マミ「私が負けるなんて…」
和田どん「もう一曲遊べるドン!」
ほむら「…って言ってるけど、どうする?巴マミ」カカン!
マミ「まだまだ…!」
ドンドンカッカッカッドンドンドンドン…
さやか「――それで、何の話だったっけ」
QB「二人にお願いがある」
まどか「…お願い…?」
QB「僕と契約して、太鼓の達人になって欲しいんだ!」
ほむら「へぇ…貴方の家にも太鼓の達人があるのね。今度はこれで戦うってわけかしら」
マミ「プレステよ。私の本領が発揮されるのは、コントローラーからよ」
ハッ
まどか(マミさん…!それは邪道…!!)
和田どん「むずかしさを選ぶドン!」
―――【かんたん】―――
ほむら「まだ負け足りないようね」
マミ「見てなさい。格の違いを教えてあげる」
ほむマミ「「デュエル!!」」
QB「――それで、魔法少女って言うのは…」
マミ「どうして…?どうして勝てないの…私もフルコンボなのに、暁美さんはほとんど良…!」
ほむら「…ふっ」カン!
和田どん「もう一曲遊べるドン!」
QB「―――だから、願いは慎重に決めないとね」
さやか「分かった……」
まどか「考えてみる…」
QB「僕としては早く君達が魔法少女になってくれた方が嬉しいんだけどね」
和田どん「モードを選ぶドン!」
マミ「一人で特訓するわ…!暁美さん…覚えてなさい!」
ほむら「いつでも挑戦を受けてあげるわ」
マミ「それじゃ魔法少女体験コース第一弾、張り切って行ってみましょうか」
さやか「おー!」
和田どん「始まるドン!」
マミ「昨日話した通り、魔女との戦いは命懸け。実際にそれがどういうものかを、自分の目で確かめてみて欲しいのよ」
さやか(『昨日話した』って…マミさん太鼓の達人やってただけなような…)
マミ「分かってるわよね、暁美さん。これが終わったら…」
ほむら「受けて立つわ」(目の下にくまが…どれほどの過酷な修行を……)
和田どん「モードを選ぶドン!」
さやか「準備になるかどうかどうか分からないけど、太鼓の達人のバチ持ってきました!」
マミ「え…!まさか貴方も太鼓の達人を…!?」
さやか「中々言い出せなかったけど…あたしも持ってるッス。ゲーセンにもよく行ってて…」
マミ「心意気はばっちしってわけね…!魔女を倒したら、私の家でデュエルよ!」
ほむら「楽しみね」
まどか(……何か…絵書いてきたこと言い出せる空気じゃない………)
和田どん「さぁ、始まるドン!」
―――
―
―――マミホーム
さやか「いやー、転校生とマミさん凄かったなー!」
まどか「人助けのために頑張る姿って、凄く素敵だよね…」
和田どん「もう一曲遊べるドン!」
マミ「…か…勝てない………そんな…」ガクガク
ほむら「――フルコンボ、全良よ」
さやか「さて…それじゃさやかちゃんも参戦しちゃいますかね」カッ!
和田どん「むずかしさを選ぶドン!」
ほむら「あら、美樹さやか…貴方もやられに来たの?」
さやか「マミさん見てて。転校生の鼻っ柱折っちゃいますから」
―――【ふつう】―――
ほむら(…ふつう…!?そこはまだ私の踏み込んだことのない未開の地……美樹さやか…彼女は一体……!)
ほむら「………負けた…!?相手は全良……!私はフルコンボでも可ばっかりだった…」
さやか「…ま、ざっとこんなもんかな。あたしの庭は『むずかしい』からなんだけどね~」
ほむら(甘く見ていた…!符が流れてくる瞬間毎に時間を止めても、リズム感がないと良にはならず可止まり…!)
ほむら(これが、難易度『ふつう』以上の世界…!リズム感と手先の巧みさが試され、時間を止める手法は通じない…!)
ほむら(これが、私の限界なの……………?)
まどか(うーん…)
さやか「いやぁ…おかしの魔女は強敵でしたね…」
ほむら「巴マミの顔が食べられそうになった時はヒヤッとしたわ」
まどか「でも、凄かった……和田どんにあんな力があったなんて」
さやか「和田どんが出した音撃で魔女が吹っ飛んでビックリしたよ」
マミ「ありがとね、和田どん」
和田どん「曲を選ぶドン!」
ほむら「美樹さやか…分かってるでしょうね」
さやか「帰りにゲーセンでしょ?分かってるって」
QB「僕がアウェーな気が…」
ほむら「くっ…また負けた……」(時間を止めながら…それなりにリズムを掴めてきてると思ってたのに…フルコンボで精一杯だわ…!何回も時間止めるの疲れるし…)
さやか「森のくまさんは意外にムズイのよねー、でも『ふつう』で苦戦してるようじゃ、『むずかしい』は無理だよ?」
ほむら「くっ…!もう一回よ、美樹さやか!」
さやか「……あのさ、同じ太鼓のタツジニストなんだからさ、そういうよそよそしいのなしにしない?」ドコドコ
ほむら「え…」
さやか「あたしのことはさやかって呼ぶ!あたしもあんたのこと転校生じゃなくってほむらって呼ぶし」ドドン
ほむら「…了解よ、さやか」
さやほむ「「デュエル!!!」」
恭介「もう聴きたくなんかないんだよ!自分で叩けもしない曲、ただ聴いてるだけなんて!僕は…僕は………あぁっ…!」ガン!ガン!
さやか「あぁっ…!あ…………」
恭介「動かないんだ…もう痛みさえ感じない…こんな手なんて…!」
さやか「大丈夫だよ、きっと何とかなるよ諦めなければきっと…」
恭介「先生から直々に諦めろって言われたんだ…もう太鼓の達人は諦めろって!!今の医学じゃ無理だって…!」ジタバタ
恭介「僕の手はもう二度と動かない…奇跡か、魔法でもない限り……」
さやか「あるよ…」
恭介「え…?」
さやか「奇跡も魔法も、あるんだよ!」
工場長「よっしゃ逝くぞーwwwwwwwwwwwワン・ツー・さん・しーwwwwwww」ドポドポ…
会社員「イェイ!」
まどか「ダメだよ!そんなことしたらダメぇっ…!」
仁美「何故ですの?私達はこれから神の世界へと旅立つことができるんですよ!!」
まどか「だ、だめぇっ…!」
和田どん「さぁ、始まるドン!」
キーミーガーイタナーツーハートオイーユーメーノナカー♪
工場長「ぐわぁぁぁぁ!!」ガクン!
会社員「…!」ドサッ
仁美「グギ…!」バタン
まどか「す…凄い……和田どん…音撃でみんな気絶させた……」
和田どん「曲を選ぶドン!」
まどか「…嘘…!魔女の結界……!?どうしよう…」
和田どん「モードを選ぶドン!」
使い魔「ハハハハハハハハハハ」グイーン
まどか「い…やっ……!あぁっ……!」(ち…契れ……る…)ビヨーン
ザシュッ!!!
使い魔「ギャア!」「ウワァ!」
さやか「危機一髪ってとこだったねぇ」
まどか「えっ…さやかちゃん?」
さやか「待ってて…魔女も片しちゃうからっ」ヒュン!
和田どん「もう一曲遊べるドン!」
まどか「さやかちゃん…魔法少女になったの…」
さやか「まぁね。初めてにしちゃ上出来だったでしょ?」
ほむら「…さやか!」
さやか「…あ、ほむら遅いじゃん。魔女はさやかちゃんが倒しちゃったのだ!……って何でそんな怖い顔してんの」
ほむら「……いえ…」(しまった…!太鼓の達人にハマってこっちを疎かにしていた…)
さやか「ほむら、帰りにゲーセン行かない?するっしょ?今日も」
ほむら「…えぇ」(さやかを魔法少女にしてしまうという失態をした…でも…それでも私は、太鼓の達人をやらなくてはならないのよ…!)
和田どん「むずかしさを選ぶドン!」
マミ「へぇ、美樹さん、魔法少女になったんだ。…これからよろしくね」
さやか「はい…こちらこそ、よろしくお願いします!まだぺーぺーの新人ですけど、マミさんやほむらにはご指導お願いします!」
ほむら「く…くれぐれも自分の身は大切に……。あ、あと…やらないで後悔することだったらきちんとやること…」
まどか「ほむらちゃん、くま凄いよ……大丈夫?」
ほむら「大丈夫よ…」
さやか(『やらないで後悔することだったらきちんとやる』…?どういう意味だろう…)
和田どん「モードを選ぶドン!」
QB(和田どんの太鼓を叩く催促は僕の魔法少女への催促並の頻度だ……何故彼はそんなに太鼓を叩かせたいんだろう…)
まどか「風見野方面には、今日は魔女出なさそうだね」
さやか「まどか、ほむらとかマミさんから連絡ない…?二人がそれぞれ行った方にも、何も異常無しなのかなぁ…」
和田どん「遊びたい曲を選んでね!」
まどか「今日は、平和に終わりそうかな…」
使い魔「ウハハ!ブーン!ブーン!」
さやか「居たっ!使い魔っ!!」シュッ!シュッ!
ガキィン!
さやか「え!?」
まどか「投げた剣が…弾かれた…!」
使い魔「ギャハハハハ!ブーン!ブーン!」
杏子「ちょっとアンタ、何してんのさ。そいつは使い魔だよ」
さやか「…誰よ、あんた…!使い魔を逃がしちゃったじゃない!」
QB「彼女は佐倉杏子。君と同じ魔法少女だ。しかし杏子の縄張りは風見野のハズ…何故君が此処に居るんだい?」
杏子「ちょっと気になる太鼓の音と声が聞こえて来たからな…覗いて見たら使い魔倒そうとしているトーシロが居たんで手を出させてもらった」
杏子「アンタ分かってんのか?使い魔はグリーフシードを落とさねぇんだ、倒しても意味ねぇだろうが」
さやか「使い魔に殺される人を…見殺しにしろっての!?」
杏子「は?…まさかアンタ、やれ正義だの人助けだの、その手のおちゃらけた冗談かますために、キュウべぇと契約したんじゃねぇだろうな」
さやか「だったら…何だって言うのよ!」
杏子「分からず屋は、力で捩伏せて分からせるしかねぇ……お前にデュエルを申し込む!」
さやか「望むところよっ!」
杏さや「「デュエル!!!」」
和田どん「むずかしさを選ぶドン!」
―――【むずかしい】―――
杏子「実力の差を見せつけてやるってんだよ」
まどか「……」ゴク
QB「止めなくても良いのかい、まどか。君が魔法少女になれば、戦いを止めることが…」
まどか「太鼓のタツジニストどうしの闘いは……絶対に止めちゃダメだよ…」
和田どん「曲を選ぶドン!」
杏子「アンパンマンのマーチだ!良いな?」
さやか「ふぅん…中々のセンスしてるじゃん」
ソーダ♪ウレシーンダーイーキルーヨーローコービ♪
ドンドンカッ!ドンドドンドンカッ!カッ!
杏子「そーぉっだーぁー!恐れないーーーで!生ーきるっよっろっこーびっ!たっとーえっ!勇気だけーがーとーもだっちーさー!」
さやか「!?」不可、不可…!
まどか「あれは…!」
さやか(こいつ…対戦相手のタツジニストのリズム感を狂わすためにわざと大声で下手に歌って…!)
まどか(自分のリズム感まで狂ってしまうかもしれない両刃の剣…!卑怯と言われる手法であると同時に、その手法をうまく使いこなすと一目置かれる高等テクニック…!)
さやか(おまけに歌詞もわざと間違えて混乱させてきてる…!ただでさえ一番と二番の歌詞が混同する曲なのに…!佐倉杏子……そこまで計算してアンパンマンのマーチを…!?)
和田どん「フルコンボだドン!」
杏子「ふん、言わんこっちゃねぇ…」
さやか「くそぉ……くそぉ…」(ノルマ達成すら…ままならなかった…!)
杏子「出直して来な」
さやか「うわぁぁぁぁぁぁん!!」ダッダッダッダッ…
まどか「さやかちゃん…!」タッタッタッタッ…
杏子「フン、尻尾巻いて逃げやがったか」
マミ「――へぇ、そんなことがあったの」
まどか「さやかちゃん…凄く落ち込んじゃってて…」
QB「さやかは、自分の腕にだいぶ自信を持っていたようだからね」
ほむら「佐倉杏子……彼女も太鼓のタツジニストだったなんて…」
和田どん「むずかしさを選ぶドン!」
マミ「美樹さんを元気づけてあげましょう、皆で」
ほむら「えぇ…」
まどか「マミさん…ほむらちゃん……」
マミ「負けた時の悔しさなら、私達だって分かってるから」
ナース「上条さんなら昨日退院したわよ…リハビリも順調で、予定が前倒しになっちゃって」
トボトボ…
さやか「はぁ……昨日は負けちゃうし、恭介の退院には立ち会えないし……何やってんだか…」(皆が励ましてくれたのは嬉しかったけど…。マミさんたくさんケーキ食べてたな…)
杏子「ホントに何やってんだろーな、アンタは」
さやか「お前は…!」
杏子「知ってるよ。アンタがキュウべぇと契約した理由…上条恭介って坊やなんだって」
杏子「まったく…たった一度の奇跡のチャンスを無駄にしやがって」
さやか「お前なんかに何が分かる!…大体、何でお前此処に居るんだよ!昨日の追撃かよ…あたしのことが気になるストーカーじゃあるまいし…!」
杏子「アンタに教えに来てやったんだよ…アンタと同じように『人のために』って理由で契約して破滅したバカを知ってるからね」
杏子「魔法ってのはね、徹頭徹尾自分だけの望みを叶えるためのもんなんだ…他人のために使ったところで、ロクなことにならないのさ」
杏子「そうすれば今度こそ坊やはアンタのもんだ、身も心もな」
さやか「お前だけは許さない…絶対に……!」
杏子「場所を変えようか…」
―――ゲーセン
―――【むずかしい】―――
杏子「曲は昨日と同じアンパンマンのマーチだ」
さやか「今度こそ…負けないっ…!」スチャ
杏子「…?」(アイツ…何をしてやがる……)
「さぁ、始まるドン!」
杏さや「「デュエルッ!!!」」
ドンドンカッ!ドンドドンカッ!ドン!!
杏子「そーぉっだーぁー!嬉しいんーだっ!みぃぃんなっのったっめーにっ!たっとーえっ!腕のきずーがっあーいてっでーもー!」ドコドコドンドン
さやか「おーおーきっなっのっぽぉのっふーるっどっけーイッ!おじいーさんのーとっけーい!!!」ドンドンカッドンカッ
杏子「!?」(アタシと同じ戦法…しかも別の歌だと……下手すると死ぬぞ!何で…昨日の今日でそんな高等テクを…)不可
さやか「ひゃっくねーんいっつもー!」ドンドンドンドン
杏子(アイツ…イヤホンつけてやがる…!大音量で正解のアンパンマンのマーチを聞いてやがるってのか!)
杏子「そんな小細工に…負けるかーーーッ!!」
さやか(負けるわけにはいかない…!だって……私のつけてるイヤホンは…毎日恭介と一緒に音楽を聞いたイヤホンなんだからーーーーっ!!!!!!)ドコドコドコドコドコドコ!!!!
杏子「があああああああああああっ!!!」ズガァァァァァン!!
杏子「完敗だぜ……アタシの負けだ」
さやか「いい勝負だったよ……あんたと全力でぶつかり合って、分かったことがある…あんた……」
杏子「あぁ……アタシも、『家族のために』って人のこと願って契約したクチだよ…そんで、最悪の結果に終わって……腐ってたんだと思う」
杏子「真っ直ぐなアンタが眩しくて、妬ましかったんだ…だから、アンタは絶対間違えるなよ……アンタが『魔法少女になって良かった』って思えるようにさ…」
さやか「良かったら…あんたの話も、聞かせてくれない?」
杏子「アタシは―――」
杏子「佐倉杏子だ、よろしく」
まどか「良かった……さやかちゃんとは…仲直りできたんだ」
杏子「一度本気でぶつかり合ってな…そん時通じ合えたんだ」
マミ「太鼓のタツジニストに、悪い人は居ないもの」
ほむら(やはり…太鼓の達人は、絆を作るゲーム…!)
和田どん「曲を選ぶドン!」
まどほむ杏マミ「「「「オウッ!!!!」」」」
仁美「私…上条恭介君のこと、お慕いしていましたの」
さやか「へ、へぇー…まさか仁美がねぇ…。恭介の奴も隅におけないな~…」
仁美「あなたはどうですか?さやかさん…本当の気持ちと向き合えますか?」
さやか「…!」
仁美「上条君のことを見つめていた時間は、私よりさやかさんの方が上ですわ…だから、さやかさんには私の先を越す権利があるべきです」
さやか「仁美…」
仁美「私、明日の放課後に上条君に告白します…丸一日だけお待ちしますわ。さやかさんは後悔をなさらないように決めてください。上条君に気持ちを伝えるかどうか」
さやか「私は……」
さやか「………」トコトコ…
――本当の気持ちと向き合えますか?
――さやかさんは後悔をなさらないように決めてください。上条君に気持ちを伝えるかどうか
さやか「……」トコトコ…
――やらないで後悔することだったらきちんとやること
――アンタは絶対間違えるなよ……アンタが『魔法少女になって良かった』って思えるようにさ
さやか「……よしっ!」
キンコーン
ガチャ
恭介「さやか…どうしたの?」
さやか「ちょっと…大事な話があって…」
ドキ
恭介「……うん、上がって」
―――恭介の部屋
恭介「退院してから、まだ一回も話してなかったよね…僕はさやかにたくさん例を言わなくちゃいけないのに…入院中、いつも側で励ましてくれてさ」
恭介「君が僕に言いたいことは、きっと僕が君に言いたいことと同じだと思う」
さやか「…それって…!」
恭介「一緒に太鼓の達人をやろう、さやか!!」ターン!
さやか「負けないよっ!!」タタン!
さやか(恭介の……バカ…!)
さやか「負けた……」
恭介「僕がこの曲で負けるわけにはいかないからね」
さやか「えっ?」
恭介「さやかは鈍いよ……今僕が選んだ曲は、創聖のアクエリオン」
さやか「そ…それって……」
恭介「一万年と二千年前から、愛してるよ…さやか」
さやか「え………あ…」
恭介「返事を…聞かせてくれるかい」
さやか「私も…恭介が好き……大好きっ!!」
仁美「さやかさん、上条君と付き合うことになったんですね…おめでとうございます」
さやか「あはは、いやぁ…恥ずかしいな…。…その…ありがとう、仁美」
仁美「いえ、お二人が幸せだと…私も嬉しいですから」
その後、仁美は太鼓の達人にのめり込んでいった。
杏子「ワルプルギスの夜が来る…!?」
マミ「それって…超大型の魔女の…!」
QB「戦ったら、ただでは済まないだろうね。しかしほむら…何故それを君は知っているんだい?」
ほむら「統計よ」
さやか「統計ってアンタ…」
まどか「ワルプルギスの…夜……」
和田どん「モードを選ぶドン!」
QB「………」
ほむら(今回なら…行けるかもしれない…皆がソウルジェムの真実に気付かず、そして太鼓の達人を中心に心が一つになっている…)
QB「さて、そろそろ君の正体を教えてもらおうか、和田どん」
和田どん「………」
QB「やれやれ、僕の前ではあのセリフも発さないのかい…太鼓の達人が出来ない、僕の前では無意味だということかな」
和田どん「………」
QB「思えば君は、いつもまどかの近くに居る…君もまどかの魔法少女としての素質に気づいてるんだろう?」
和田どん「………」
QB「和田どん…君の狙いを聞かせてもらおうと思ったが、どうやらそれは叶わないようだね…残念だよ」
⑤
杏子「さて、皆でワルプルギスぶっ倒して、太鼓の達人やろうぜ!」
④
マミ「来るのね…ワルプルギスの夜が」
さやか「恭介…あたし、負けないから…!」
②
ほむら(今度こそ辿り着いてみせる…ハッピーエンドに!!)
①
ゴゴゴゴ…
さやほむ杏マミ((((………来る…!))))
ピシャァァァァァン!
ワルプルギス「アーッハッハッハッハッハ!!!!」
まどか「……」コソコソ
和田どん「モードを選ぶドン!」
まどか「…しっ!」
詢子「…どこ行こうってんだ、オイ」
まどか「私…友達を助けないと……」
和田どん「むずかしさを選ぶドン!」
詢子「消防署に任せろ。素人が動くな」
まどか「私でなきゃダメなの!」
パン!
詢子「勝手なこと言ってんじゃねぇ!テメェ一人の命じゃねぇんだ!」
まどか「分かってる。私…どんなに大切に思われてるか、知ってる…自分を粗末にしちゃいけないの、分かるよ」
まどか「だから私は…みんなを守りたい。私を大切に思ってくれるみんなを。…思いを、バチに乗せて」
詢子「理屈じゃねぇんだな…。いいか、絶対無事で帰って来いよ」
まどか「…ありがとう、ママ」
和田どん「行ってくるドン!!」
まどか(和田どん…テンプレ以外の台詞を…!)
ワルプルギス「アーッハッハッハッハッハ!!」
マミ「う…」
さやか「強……い…」
杏子「ここまで…かよ……!」
ほむら「これ以上の進撃を許すと、避難所が襲われる…!止めなくては………でも…」
ワルプルギス「アーッハッハッハッハッハッハッハ!!!!」
ほむら「もう………」
ダッダッダッダッダッ
まどか「―――みんなっ!!」
和田どん「モードを選ぶドン!」
ほむら「まさか…まどか……!」
QB「まどか…契約をするんだね?」
まどか「私……分かったの…!本当の太鼓の達人とは…!心にタタコンを持っている太鼓のタツジニストのことだって!!」
QB「…何だ?わけがわからないよ」
まどか「…そう、答えはいつも近くに居たの…!和田どんは、私達の心のタタコンを表現してくれる!!!!だからっ!!」
まどか「和田どんっ!行くよっ!!!!」
和田どん「むずかしさを選ぶドン!」
―――【おに】―――
マミ「鹿目さん、死ぬ気!?」
~~~回想~~~
ほむら「まどかは太鼓の達人に参加しないけど、やったことがないのかしら」
さやか「いやいや、強すぎるんだよまどかは。いつも空気読んでくれてデュエル控えてるの」
さやか「マミさんが和田どんをタタコンって呼んだ時は思わず訂正しちゃってたけどね」
~~~~~~~~
QB「まさか…和田どんがまどかが近くに居た理由は……太鼓の達人としての素質があったから…!?」
和田どん「曲を選ぶドン!」
まどか「コネクト!!!!」
カッカッカッ ドドドドドドド ドドン!
ドン! カッドドドカッ ドドドン ドン カッ ドドカッ ドン カッ ドドドン カッドドドカッ ドドドン ドン カッ ドドドン カッ ドドドドン
ドン カッドドドカッ ドドドン ドン カッ ドドカッ ドン カッ ドン! ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン! カッ! ドン!
ドドドン カッ カカッ ドン ドカッ ドカッ ドン ドカッ ドカッ ドン ドカッ ドドドン カッ
ドドドン カッ カカッ ドン カカッ カカッ ドドン カッ ドドン カッ
ドドドン カッ ドカッ ドン ドカッ ドカッ ドン ドカッ ドカッ ドン ドカッ ドドドン カッ
ドドドン カッ カカッ ドン カカカッ ドン! ドン! ドドドドドドドド
ドン ドン ドン ドドド ドド カッ ドドカッ ドン ドン ドン ドドド ドドン カッ ドドカッ
ドドン カッ ドドド ドドド ドドン カッ ドドド ドドド ドドドドドドドドドドドド
ドン ドン ドン ドドカッ ドドン カッ ドドカッ ドン ドン ドン ドドカッ ドドン カッ ドドカッ
ドン! カッ ドドド ドドド ドン! カッ ドドド ドドド ドドドドドドドドドドドド ドドドド
ドドド カッ ドドド ドカッ ドドン! ドン! ドン! ドドドン ドカッ ドドドン ドカッ カン! カカン! ドドドン
ドドド カッ ドドド ドカッ ドドン! ドン! ドン! ドドドドドドドドドド ドドドド
ドドド カッ ドドド ドカッ ドドン! カン! カン! ドドドン ドカッ ドドドン ドカッ カン! カカン! ドドドン
ドドド カッ ドドド ドカッ ドドド ドカッ ドドカッ ドカッ ドドド カッ ドドドドド カッ ドン! ドドドドドドドドドド ドン!
ワルプルギス「ギャアアアアアアアアアアアア」パリィィィィン!
さやか「ぜ…全良……!」
ほむら「ワルプルギスが…倒れた……」
マミ「凄い音撃……」
杏子「これが太鼓の達人の力かよ…大したもんじゃねぇか……」
まどか「ふぅ…」
QB(エネルギー変換効率がインキュベーターである僕より遥かに良い……こんな馬鹿なことが…)
スゥ…
QB(なるほど…あれほどのエントロピーを放出できるものの存在……僕はお役御免というわけか)スウ…
QB(まさ……か…和田ど…んの…正体は………)スウウウ
ほむら(そうか…和田どんは…インキュベーターキャンセラー…!彼が居れば、魔法少女というものに意味がなくなる…)
杏子「オイ、変身が解けたぞ」
マミ「ソウルジェムも、消えてしまったわ」
さやか「もしかして…キュウべぇが消滅したから…」
ピカァ……
まどか「あの空に上っていく光は…」
ほむら(今までの魔法少女の魂ね…キュウべぇの消滅で……救われたんだ…)
QB「もう一曲遊べるドン!」
QB「モードを選ぶドン!」
杏子「これは……」
さやか「生まれ変わったんだ……なんか形が太鼓っぽくなってるし」
和田どん「モードを選ぶドン!」
QB「むずかしさを選ぶドン!」
マミ「新しいキュウべぇの誕生ね…!」
ほむら(存在としてリセットされて…第二の和田どんになったのね)
まどか「これからもよろしくね、キュウべぇ……それとも、和田かつって呼ぶべきかな」
マミ「私達、やったのね…」
QB「むずかしさを選ぶドン!」
まどか「私、これからも太鼓で皆を助けたい…」
さやか「あたし、まどかに負けないくらいの太鼓のタツジニストになるよ…どんな魔女も音撃で倒せるような…」
和田どん「曲を選ぶドン!」
ほむら「これからは…太鼓のタツジニストとして、魔女との闘いをすることになるのね……」
和田どん・和田かつ「さぁ、始まるドン!!」
まどさやほむ杏マミ「「「「「デュエル!!!!!」」」」」
おわり
わけがわからないよwww
和田かつ出番あってよかったな
俺も太鼓の達人おに無理だわ
鬼とか無理ゲー
Entry ⇒ 2012.07.21 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
ほむら「私の願い事?」
まどか「私? 私は……内緒だよ」
ほむら「私に聞いておいて、それはずるいわ」
まどか「えへへ、後でのお楽しみ、ね」
ほむら「……楽しみにしてていいのね?」
まどか「そういう意味じゃないんだけど///」
まどか「例えば……なにかやりたいこととかないかな?」
ほむら「やりたいこと……こうやってまどかと手をつないで歩くこと、とか」
まどか「それはもう叶ってるよね///」
ほむら「そうね……じゃあもっと……」
まどか「もっと……?///」
ほむら「べ、別に変な意味じゃないわ///」
ほむら「まどかのお嫁さんになりたいわ///」
まどか「そ、それは……他に無いかな///」
ほむら「まどかのお婿さんでも……///」
まどか「ほ、他に///」
ほむら「それ以外に考えたことは無いわね」
まどか「……もう///」
まどか「うん、今年はみんなの分を飾りたいなって」
ほむら「それってまどかのお家の人も見るの?」
まどか「もちろん見ると思うよ。パパやママもお願い事を書いて短冊を飾るし」
ほむら「そう……」
まどか「だから、あんまり変なこと書いちゃダメだよ?」
ほむら「……変なことってどんなことかしら」
まどか「え? えっと、それは……///」
ほむら「どんなことを書いちゃいけないのかしら。わからないから教えて欲しいわ」
まどか「……ほむらちゃんのいじわる///」
ねぇどんなこと!!!?
マミ「はーい……あ、いらっしゃい、二人とも」
まどか「こんにちは、マミさん」
ほむら「お邪魔するわ」
マミ「美樹さんと佐倉さんは?」
まどか「さやかちゃんは杏子ちゃんを探しに行ってます」
ほむら「時間差があった方が面白いからね」ボソッ
まどマミ「?」
マミ「珍しいわね、暁美さんが差し入れを持ってくるなんて」
ほむら「いつもケーキをご馳走になってるから、そのお返しよ」
マミ「そんなの気にしなくていいのに……」
ほむら「笹団子だけど、和菓子は口に合うかしら」
マミ「ええ、和菓子も好きよ。でも意外ね、暁美さんが和菓子なんて」
まどか「そうでもないですよ。ほむらちゃん、和風の物が結構好きなんです」
マミ「そうね、鹿目さんが言うならその通りなのよね」クスクス
まどか「あ、いえ、その///」
まどか「必要?」
ほむら「それと、なるべく早く食べてくれると助かるわ」
マミ「え? どうして?」
まどか「買ってきたばっかりだから賞味期限とかじゃないよね?」
ほむら「ええ、品質に問題はないわ。ただ、早めに食べて欲しいだけ」
マミ「まあ、そう言うなら……」
ほむら「少しだけ用意はしてあるから、焦らなくてもいいんだけど」ボソッ
まどまみ「?」
まどか「さあ、私にもさっぱり……」
ほむら「あとでわかるわ。今は気にしないで」
まどか「……ほむらちゃん、そういうの多いよね」
ほむら「あれこれ全部知るより、サプライズがあった方が面白いでしょう?」
マミ「貴女のサプライズにはろくな思い出が無いのだけど……」
ほむら「気のせいよ」ウフフ
ほむら「何かしら?」モグモグ
マミ「七夕で笹を飾るから笹団子なのかしら」モグモグ
ほむら「半分は正解ね」モグモグ
まどか「でも必要ってわけじゃないよね。別に笹団子食べる習慣はないし」モグモグ
ほむら「だから半分だけ正解なのよ」モグモグ
マミ「うーん……どういうことなのかしら」モグモグ
ほむら「すぐにわかるわよ」モグモグ
まどか「あ、さやかちゃんたちかな?」
マミ「迎えに行って来るわね」トタトタ
ほむら「……まどか、笹団子を袋に隠して」
まどか「え? さやかちゃんたちの分はあるんだよね?」
ほむら「それはちゃんとあるから……あ、食べた後の笹は置いておいて」ガサガサ
まどか「なんで袋から笹だけ出してるの? それ持って来たの?」
ほむら「あと一分もすればわかるわ」
<ドケ! ホムラハオクダナ!
<マミサン! チョットキョウコ!
<ウルセー!
まどか「え? え?」
ほむら「まどか、少しだけ私から離れた方がいいわ」
まどか「杏子ちゃん怒ってるみたいだよ!? 何したの!?」
ほむら「でもあんまり離れると寂しいからほどほどにね」
まどか「質問に答えてよー……」
ほむら「あんまり大きな声出さないで。まどかが怯えてしまうわ」
まどか「私、そこまで臆病じゃないよ……」
杏子「うるせー! 人を騙しやがって!」
ほむら「……何のことかしら?」
杏子「とぼけんじゃねぇ! 七夕は笹を食う日だなんてでたらめ言いやがって!」
まどか「それは騙されちゃダメだよ杏子ちゃん……」
さやか「笹をかじってる杏子を見つけた時は衝撃が走りましたよ」
ほむら「でたらめじゃないわ。本当の話よ」
杏子「この期に及んで何言ってやがる!」
ほむら「それがでたらめだなんて誰が言ったの?」
杏子「あん? さやかだよ」
ほむら「ふっ……それは貴女がさやかに騙されたのよ」
さやか「おい」
杏子「テーブルがどう……皿の上に笹の葉?」
ほむら「私たちはさっきまで笹を食べてたのよ」
まどか「あ! このために笹だムグッ!?」
ほむら「まどかは口が小さいから大変だったけどね」
まどか「~~~~」ムグムグ
ほむら「あと、残念ながら二人の分はマミが食べてしまったわ」
マミ「……さりげなく人を大食漢扱いしないでくれる?」
まどか「~~~~」ムグムグ
マミ「ち、ちょっと佐倉さん!?」
ほむら「杏子、私が嘘をつくわけ無いじゃない」
さやか「いや、あんたはしょっちゅう嘘ついてるだろ」
杏子「……悪かったな、疑って」
ほむら「気にしてないわ」
まどか「~~~~」ムグムグ
杏子「ってことは……さやかぁっ、よくも騙してくれたなぁ!」
さやか「ええい、めんどくさい騙され方すんなぁ!」
――――
――
杏子「やっぱり嘘ついたのお前じゃねぇか!」
ほむら「ええ、そうよ」
杏子「……あっさり認めんのかよ」
ほむら「これ以上引っ張っても面白くないもの」
さやか「あんたは人を暇つぶしの道具かなんかと勘違いしてない?」
まどか「~~~~」ムグムグ
マミ「ねえ、鹿目さんをそろそろ離してあげたら……?」
ほむら「あまりにも手が気持ちよかったからつい。ごめんなさい」
まどか「き、気持ちいいって……///」
ほむら「まどかの唇がもぞもぞ動いてて、くすぐったいようで気持ちよくて……」
まどか「そんな詳しく言わなくていいから///」
ほむら「まるで手のひらが性感帯になったような感覚だったわ」
まどか「な、何言ってるのほむらちゃん……///」
ほむら「よかったら、またして欲しいのだけど……」
まどか「……こ、今度ね///」
杏子「えーと、アタシ怒ってるんだけどそろそろ口挟んでいいかな?」
ほむら「悪かったわ。これあげるから機嫌直してくれる?」
杏子「なんだこれ?」
ほむら「笹団子よ。中にお団子が入ってるわ」
杏子「へー、美味そうだな」
ほむら「周りの笹ごと食べられるから、そのままどうぞ」
さやか「さらっと嘘ついてんなよ」
マミ「暁美さん、油断も隙も無いわね……」
まどか「……どうしたの? ほむらちゃん」
ほむら「まどかの口を押さえてたから手にまどかの唾液が……」
まどか「あ、洗ってきなよ///」
ほむら「それももったいないし……」
まどか「何がもったいないの!?」
マミ「水道代なんて気にしなくていいのに」
さやか「多分ほむらが言ってるのはそういう意味じゃないと思いますよ」
ほむら「あ、まどか、引っ張らなくてもちゃんと歩くから……」
まどか「はーやーくー」グイグイ
ほむら「わ、わかったから……」
マミ「あらあら、鹿目さんは尻に敷くタイプなのね」
さやか「まあ、まどかのママを見てると納得ですけどねー」
杏子「笹団子うめー」モグモグ
さやか「あ、あたしの分は!?」
杏子「うめー」モグモグ
杏子「思い出さなくていい。忘れろ」
さやか「必死で笹かじってんだもん」
杏子「忘れろっての」
マミ「そういえば歯は大丈夫なの?」
杏子「ん? ああ、ほのほほひ」グイー
マミ「……佐倉さんの八重歯って可愛いわよね」
さやか「杏子のチャームポイントですよね」
杏子「二人とも何言い出すんだよ///」
ほむら「舐めようなんて……」ジャー
まどか「……」ジー
ほむら「ごめんなさい、舐めようとしました」ジャー
まどか「もう、ほむらちゃんは変なことばっかり///」
ほむら「せっかくのチャンスだったのに……ん、洗い終わったわ」
まどか「ちゃんと洗ったよね」
ほむら「ええ……せっかくまどかの唇が触れてたのに……」
まどか「……ほ、ほむらちゃんは間接キス、したかったの?///」
ほむら「そ、そうだけど……///」
杏子「七夕は知ってるよ。ただ笹を食う習慣があるってのを知らなかった」
マミ「それは暁美さんの嘘だけどね」
さやか「普通は騙されないで気付くって」
杏子「甘い」
さやか「へ?」
杏子「あいつがどれだけ本気で騙しに来たのか知らないから言えるんだ」
マミ「本気でって……」
ほむら「何かしら」
まどか「……か、間接より……ちゃんとしたい、よね……///」
ほむら「……ちゃんと、って……も、もちろんしたいけど///」
まどか「ちゃんとしたら、私の唾液がどうとか、変なことしなくなるよね///」
ほむら「た、多分……」
まどか「……約束してくれなきゃしないもん///」
ほむら「わ、わかったわ。もう変なことはしないって約束する」
まどか「じゃあ……いいよ///」
さやか「まあ普通はそうだよね」
杏子「そしたら竹の子や細竹の話を出して、竹も食べられるって言い出して」
マミ「まあ確かに食べられるけど……うーん」
杏子「あと繊維質を取らないと栄養素の吸収がどうとか、血糖値がどうとか……」
さやか「難しい単語を並べて騙すのは詐欺の手段だよね」
杏子「だから笹も食えるんじゃないかって思っちまったんだよ」
マミ「それで騙されるのもどうかと思うけど……」
まどか「ほむらちゃん……///」
ほむら「……んっ///」チュ
まどか「……んぅ///」チュ
さやか「遅いと思ったらなにやってんだ」ジー
マミ「覗き見はよくないわ」ジー
杏子「偶然視界に入っただけだよ」ジー
まどか「そうですね」
杏子「何始めんだ?」
さやか「あ、いっけね。杏子に説明するの忘れてた」
ほむら「何やってるのよ……」
さやか「だってしょうがないじゃん。笹食ってる杏子を見たらびっくりしすぎちゃって」
杏子「もうそれは言うなっての」
まどか「杏子ちゃんもどうかな?」
杏子「あー、アタシは別にどっちでもいいよ」
マミ「じゃあ書くってことよね」
杏子「だからどっちでもって……」
マミ「佐倉さんは嫌なら嫌って言うものね」
杏子「……ふん」プイ
ほむら「ツンデレ乙」
さやか「ツンデレ乙」
杏子「お前ら表出ろ」
まどか「そんなこと言って、書くのは上条君のことだよね」
さやか「たはは、お見通しかー。さすがあたしの嫁」
まどか「だって、去年も上条君のこと書いて、こっそり飾ってたもんね」
さやか「げ、見つかってたのか」
ほむら「そんなの見なくたってわかりそうなもんだわ」
さやか「さすがあたしの嫁2号」
ほむら「誰が2号よ」
まどか(ほ、ほむらちゃんは私のお嫁さんになるのだー///)
杏子「アタシだってわかるっての」ケタケタ
さやか「時代は一さや多妻制!? こうなったらみんなあたしの嫁だー!」
ほむら「でも貴女のハーレムは織姫ばっかりで一番欲しい彦星がいないのね」
さやか「……痛いところをついてくれるじゃん」グヌヌ
ほむら「中沢くらいなら入れられるかもしれないけど」
さやか「それはノーサンキュー」
まどか「……ああ、うん」
ほむら「……そう」
マミ「……いいんじゃない」
杏子「……はぁ」
さやか「な、なにそのリアクション……」
まどほむまみあん(まだ言ってなかったんだ……)
さやか「え? あー、それっぽいことは伝えたんだけど……」
ほむら「ちゃんと伝えなさいよ。あなたの子供が欲しい、って」
さやか「言えるかぁっ!」
マミ「暁美さんのは冗談だとしても……」
ほむら「冗談でもないのだけど。既成事実さえあれば……ねぇ?」
マミ「コホン。……想いはちゃんと伝えないとダメよ?」
さやか「だから今年こそはって……」
まどか「去年も同じこと言ってたよね」
さやか「うるさーい!」
まどか「あー、さやかちゃんひどーい」
さやか「じゃあ恋人が欲しい、とか書いちゃったり?」
まどか「そ、そんなこと書かないよー///」
マミ「鹿目さんにはもういるものね」
まどか「な、何言ってるんですか///」
ほむら「!?」
まどか「え?」
ほむら「まどかに恋人がいたなんて……」
まどか「え? え?」
ほむら「知らなかったわ……」
さやか「……鈍感にもほどがあるだろ……」
マミ「本気でショック受けてるわね……」
杏子「面倒なことになる前に誰かフォローしてやれよ……」
マミ「ええ、どうぞ」
さやか「ほむらもまどかを手伝ってきなよ」
ほむら「……かまわないわ……」
まどか「じゃあ、ほむらちゃん」
ほむら「……ええ」
さやか「どうしてこうなった」
マミ「わけがわからないわ」
ほむら「気を遣わなくても大丈夫よ。もう立ち直ったわ」
まどか「そうじゃなくて……」
ほむら「まどかが誰と付き合っても祝福する。うん、大丈夫」
まどか「なんか自己暗示みたいになってるよ?」
ほむら「大丈夫……大丈夫……でもちょっとダメかも……」
まどか「ほむらちゃん!?」
ほむら「まどか……?」
まどか「……さっきキスしたの忘れたの?///」
ほむら「わ、忘れるわけないわ///」
まどか「す、好きでもない人とあんなことしないよ///」
ほむら「でも、恋人って……」
まどか「私が好きなのはほむらちゃんだけだってば///」
ほむら「そうなの……?」
まどか「……信じてくれないの?」
ほむら「……いえ、まどかの言うことなら信じるわ」ギュ
ほむら「でも、みんな知らないはずじゃ……」
まどか「え? バレてるの気付いてなかったの?」
ほむら「ええ……でもどうしてバレたのかしら……」
まどか「少しは自分の行動を振り返ろうよほむらちゃん……」
ほむら「いえ、私がまどかを好きなのはバレてても、まどかと付き合ってるのは……」
まどか「そ、それは……その……なんでだろうね」
まどか(私がさやかちゃんに口滑らせちゃったんだよね///)
ほむら「そ、それは……まどかに恋人がいるって聞いて、パニックになっちゃって……」
まどか「今は?」
ほむら「まどかが私一人を好きでいてくれるって、ちゃんとわかってるわ」
まどか「じゃ……ご褒美」ギュ
ほむら「……これだけ?」ギュ
まどか「……もう///」チュ
ほむら「……まどか///」チュ
さやか「まあ別に言わなくても気付いてたんですけどね」ジー
マミ「普段の言動でバレバレよね」ジー
杏子「隠すつもりがあるなら人の家でやるなっての」ジー
杏子「お、復活したか」
さやか「まどかー、ほむらにどんな説得をしたんだー?」
まどか「どんなって、普通に誤解を解いただけだよ///」
マミ「それだけかしら? 実は人目がないことをいいことに……」
まどか「な、何もしてませんってば///」
さやか(やっぱりすぐ顔に出るんだよねえ)
さやか「どうなんだよ、ほむらー」
ほむら「な、何もなかったわよ///」
杏子(こっちもな)
マミ「んー、そうね……」
ほむら「マミの分は私が書いておいたわ」
マミ「え?」
ほむら「貴女の願いなんてわかってるわよ」ニコッ
マミ「暁美さんが鹿目さん以外に向ける笑顔は裏があるのよね……」
まどか「そ、そんなことないですって///」
ほむら(……先読みされるとつまらないわね)
マミ「なによこれ! これじゃまるで今まで失敗してるみたいじゃない!」
ほむら「じゃあ成功したの?」
マミ「……っ! 貴女には関係ないでしょう!」
さやか「まどかー、笑っちゃダメだよー」
まどか「わ、笑ってなんか……」
杏子「くっくっく……いいじゃん、それ採用しようぜ」
マミ「私のこと笑うなら、みんな死ぬしかないじゃない!」ジャキッ
さやか「うわわわわ、マミさん、ストップ! ストーップ!」
ほむら「ほんの冗談よ、気にしないことね」
さやか「そうそう、気にしちゃダメですって。ただの貧乳のひがみですよ」
ほむら「貴女も大概失礼ね……」
マミ「失礼なのは貴女でしょ……」
まどか「マミさんスタイルいいからダイエットなんて必要ないのに」
マミ「……でもね、今までそうだからってこれからもそうとは限らないのよ」
ほむら(それならケーキを控えればいいだけなのに)
杏子「よし、書けた」
さやか「ん? 杏子、書いてたの?」
杏子「ああ。見るかい?」
ほむら「杏子、覚悟はできてるんでしょうね……」
杏子「ほんの冗談だよ、気にすることないって」ニヒヒ
ほむら「……笹の件の仕返しのつもりかしら?」グヌヌ
さやか「これ、名前のところにまどかも足しておこうか」
まどか「さーやーかーちゃーん?」
マミ「もう、みんな胸の大きさなんてどうでもいいじゃない」タユン
まどか「……マミさんは黙っててもらえますか?」
ほむら「……マミ、貴女の身体に剣を刺して首を射出してもいいのよ?」
マミ「首は飛ばないわよ!?」
ほむら「まどかが幸せでありますように、かしら」
さやか「……ひねりも何にもないなあ」
マミ「本当に鹿目さんのことばっかりね」
ほむら「ええ、まどかのことしか考えてないもの」
まどか「……ほむらちゃん」
さやか「もういっそまどかが欲しいって書けば?」
ほむら「当人の意思を無視したお願いはよくないわ」
杏子「なんで急に真面目なんだよ」
ほむら「私のことはどうでもいいわ。まどかさえ幸せなら、他はどうだって……」
まどか「……私、冷蔵庫から飲み物出してきますね」
マミ「え、また?」
まどか「さっきは持ってくるの忘れたので……ほむらちゃん、手伝って」
ほむら「? ええ、いいけど」
さやか「まどかのあの様子だと説教かな」
杏子「あん? ほむらのやつ、何か怒らせること言ったか?」
さやか「……んー、まどかもさ、いろいろと思うところがあるんだよ」
ほむら「えっと……どの話かしら?」
まどか「自分のことはどうでもいいって。私が幸せなら他はどうでもいいって」
ほむら「ええ、本当よ。私は、まどかが幸せなら……」
まどか「本当にそう思ってるの……?」
ほむら「? 嘘じゃないわ」
まどか「……そんなの、私全然嬉しくないよ」
ほむら「……まどか?」
ほむら「……ええ、言ったわ」
まどか「だったら、ほむらちゃんも自分を大切に想う人のことも考えてよ」
まどか「自分のこと、どうでもいいなんて言わないでよ」
まどか「ほむらちゃんが幸せじゃなかったら、私は自分が幸せだって思えないよ……」
まどか「ほむらちゃん……」
ほむら「まどか……ごめんね」ギュ
まどか「……やだ、許してあげない」ギュ
ほむら「え?」
まどか「ほむらちゃんも一緒に幸せになるんじゃダメなの?」
ほむら「それは……ダメじゃない、わ……」
まどか「それなら……私は、ほむらちゃんと一緒に幸せになりたい」
ほむら「うん……私も、まどかと一緒に幸せになりたい」
まどか「……本当?」
ほむら「嘘じゃないわ」
まどか「じゃあ……許してあげる」
ほむら「そうね、がんばるわ」
まどか「違うよ。ほむらちゃんががんばるんじゃなくて、一緒にがんばるんだよ」
ほむら「まどか……」
まどか「わかってくれたかな、私の気持ち」
ほむら「ええ……」
まどか「それなら……またご褒美///」チュ
ほむら「ん///」チュ
さやか「説教かと思ったらそうでもなかった」ジー
マミ「うちのキッチンは逢引の場所じゃないんだけど……」ジー
杏子「堂々とリビングでやられるよりマシだろー」ジー
――
マミ「そろそろみんな書き終わったみたいだし、全員発表しましょうか」
杏子「は!? 見せるのかよ!?」
さやか「でもここで発表しなくてもまどかには見られるんだよ?」
ほむら「そうね。まどかの家の笹に飾るのだし」
まどか「私はそれでもいいかなって……」
さやか「そんな不公平なことはあたしが許さーん!」
マミ「見られて困るようなことも書いてないでしょうし」
ほむら「書きたかったけどね」
まどか「ほむらちゃん///」
マミ「鹿目さんはシンプルね」
まどか「はい。いろいろ考えたけど、これが一番かなって」
ほむら「まどからしくていいと思うわ。ステキよ」
まどか「えへへ……」
さやか「誰にでもいい顔したいまどかにぴったりだね」
まどか「……さやかちゃん、あれとかそれとかバラしてもいいの?」
さやか「どれのことかはわからないけど土下座で誠意を見せるよ」
さやか「カッコの中小っさ! あたしの名前なんかギリギリ読めるかどうかだし!」
ほむら「書いてあるだけいいと思うけど」
まどか「あはは……」
マミ「まあ、おまけでも書いてもらえて嬉しい……のかしら?」
杏子「そこまでするんならもう一枚に分けて書けよ……」
まどか「今年も去年と同じなんだね」
さやか「うっさい。来年は違うこと書いてやるから見てろよー」
杏子「来年は他の男の名前が……」
さやか「おいやめろ」
ほむら「来年は他の女の名前が……」
さやか「貴女とは違うんです」
マミ「来年はキュゥべえの名前が……」
さやか「マミさんまで!? っていうか生物的にダメです!」
さやか「さすがマミさん、マジ天使」
マミ「もう、言いすぎよ……///」
ほむら「確かに天使は言いすぎね」
マミ「……そう言われるのも釈然としないけど」
杏子「さすがマミ、マジ悪魔将軍」
マミ「なんでそこまで落とすの……?」
まどか(マミさんとお願い事の内容被った……)
さやか「なにー?」
杏子「他人のために願ったところで、ろくなことにはならないのさ」
まどか「そんなことないよ」
ほむら「じゃあ杏子はなんて書いたのよ」
杏子「……なんだっていいだろ」
さやか「見せろー」
杏子「うわ、やめろっての!」
マミ「力ずくは良くないわ」キリッ
杏子「それならなんで羽交い絞めにするんだよ!」
さやか「おいおい、他人のために願ってもろくなことにならないんじゃないのかー」ウリウリ
杏子「うるせー。特に何も思いつかなかっただけだよ」
ほむら「素直じゃないわね、杏子」
杏子「お前が言うか!?」
まどか「ほむらちゃんは二人っきりだと素直だよね」
ほむら「ま、まどか……///」
マミ「佐倉さんも二人っきりだと……」
杏子「アタシは違う///」プイ
マミ「あらキュゥべえ。あなたも書く?」
QB「こんなもので願いが叶うわけでもないのに、キミたちはよく夢中になれるね」カキカキ
QB「こういう無駄な徒労を好むなんて、人類という種は本当にわけがわからないよ」カキカキ
QB「はい、書き終わったよ、マミ」キュップイ
さやか「おい」
まどか「言ってることとやってることが……」
マミ「もう、なんでみんな素直になれないのかしらね」
ほむら「杏子、なんか言われてるわよ」
杏子「あ? ほむらのことだろ」
さやか「あんたはどこのサラリーマンだ」
QB「切実なんだよ……さやか、誰か紹介してくれないかい?」
さやか「……海藻っぽいお嬢様ならいるけど」
まどか「ダメだよさやかちゃん!」
さやか「冗談だよ冗談。さすがにそれはないわー」
ほむら「貴女が言うと冗談に聞こえないのよ」
さやか「でも、仁美が契約すればあたしと条件は五分よね……」
杏子「おい、冗談じゃなかったのかよ」
マミ「ええ、お願いするわ」
杏子「アタシの分は燃やしちまってもいいぞー」
さやか「あんたは最後まで素直じゃないなあ……」
ほむら「私はまどかを送ってくわ」
まどか「うん、ありがとう」
さやか「さやかちゃんは空気を読んでついていかないことにするよ」
まどか「空気を読んでたら口に出して言わないよ///」
ほむら「まったく、ばかさやは///」
杏子「ん?」
ほむら「今日もパトロールでしょ?」
マミ「……あ、ああ、そうそう。今日は中止にしたのよ」
ほむら「……そうなの?」
さやか「そーそー。たまには正義の味方も休息が必要、ってね」
ほむら「……そういうことなら、私はそのまま帰るわね」
マミ「ええ、そうしてちょうだい」
まどか「パトロールのこと?」
ほむら「……まどかも気づいてたの?」
まどか「さやかちゃん、後ろで笑ってたから」
ほむら「まあ、一日くらい好意に甘えさせてもらってもいいわよね」
まどか「ほむらちゃんはもっと甘えてもいいと思うけど」ボソッ
ほむら「ん? 何?」
まどか「何でもないよー」
――
まどか「これで全部飾り終わったかな?」
ほむら「そうね。気が進まないけど、インキュベーターのも飾ったし」
まどか「……ほむらちゃん、まだお家に帰らないの?」
ほむら「……まどかの方こそ、まだ家に入らないの?」
まどか「……」
ほむら「……」
まどか「……///」
ほむら「……///」
ほむら「……まどかこそ、隠して一枚持ってるわよね」
まどか「ねぇ、それって見られたら困っちゃうのかな?」
ほむら「まどかになら、見られてもいいわ」
まどか「私も、ほむらちゃんになら見られてもいいよ」
ほむら「じゃあ……せーので見せ合いましょう?」
まどか「う、うん」
まどほむ「せーのっ」
ほむら「///」
まどか「ふ、二人とも同じようなこと考えてたんだね///」
ほむら「そ、そうね。同じね///」
まどか「で、でもほむらちゃんのはまだちょっと早いかな///」
ほむら「そ、そうかしら///」
まどか「それに、パパやママに見られちゃうかも……///」
ほむら「あ……そ、そうだったわね///」
まどか「あ、待って……」ギュ
ほむら「?」
まどか「ほむらちゃんが見られてもいいなら……そのままでも……///」
ほむら「で、でもまどかはいいの?」
まどか「私はちょっと勇気が足りなかっただけで、気持ちは同じだから……///」
ほむら「まどかがいいなら……私も、いいわ///」
まどか「じゃあ……そのまま、一緒に飾ろ?」
ほむら「ええ」
ほむら「上の方は届かないわ。脚立でも探して……」
まどか「……ね、ほむらちゃんが良かったら……肩車、してくれる?」
ほむら「え? え、ええ、まどかくらいなら肩車できるけど……」
まどか「じゃあ、いいかな?」
ほむら「えっと、まどかの脚をくぐって……いくわよ?」
まどか「うん」
ほむら「……んっ」
まどか「わ、わ、わ」
まどか「バランス取るからちょっと待って……」
ほむら「こ、こんな感じでどう?」
まどか「……うん、大丈夫。じゃあ笹に近づいて……」
ほむら「いい? 歩くわよ」
まどか「ゆ、ゆっくりね」
ほむら「う、うん……」
まどか「もうちょっと前……ストップ」
ほむら「……どう?」
まどか「……うん、付けられたよ」
ほむら「なに? まどか」
まどか「こうやってさ、一緒にがんばるっていいよね」
ほむら「まどか……」
まどか「一人でがんばるんじゃなくて、二人の方がもっとがんばれるもんね」
ほむら「ええ、これからは一人でがんばったりしないわ。まどかと、一緒に」
まどか「うん。一緒に、がんばろうね」
ほむら「まどかは上でバランス取ってるからいいのよ」
まどか「えへへ、そうかな」
ほむら「まどかはがんばってるわ。それは私が一番よく知ってるから」
まどか「ほむらちゃん……」
ほむら「それに、まどかの太ももの感触が気持ちいいし」
まどか「も、もう/// なんで今そういうこと言うの///」
ほむら「……///」
まどか(あ、照れ隠しなんだ……)
ほむら「ええ、大丈夫だと思うわ」
まどか「二人の共同作業だね」
ほむら「まどか、それって……///」
まどか「え? あ、ち、違うよ? そういう意味じゃなくて……///」
ほむら「まどかとの共同作業……///」
まどか「く、繰り返さないでよー///」
ほむら「本当……」
まどか「来年もこうして一緒に七夕やろうね」
ほむら「あ、それも願い事に書いておけばよかったかしら」
まどか「それなら、今から書こうよ」
ほむら「そうね、短冊はまだあったはずだし」
まどか「一枚でいいよね」
ほむら「え?」
まどか「二人の願い事だから、二人で一枚」
ほむら「ええ」
『ほむらちゃんと、もっと、もっと、もっと仲良くなれますように まどか』
『まどかと結ばれて、二人で幸せな毎日を送れますように ほむら』
『来年も、その先も、ずっと一緒にいられますように まどか ほむら』
おしまい
支援ありがとうございました
行事物書くと必ず一日遅れるのはなんでだろう
この後ちょっとだけおまけ
ほら!ほら!カモン!嘉門!!
達夫さん呼んでどうすんだよ俺
詢子「お、飾り終わったのかい」
まどか「あ、ママ。今終わったよ」
ほむら「お邪魔してます」
詢子「お疲れ様。ほむらちゃんも帰る前に少し家で休んでいきなよ」
まどか「うん、それがいいよ。ほむらちゃん、何飲む?」
ほむら「えっと……まどかが入れてくれるなら何でも」
まどか「もう/// ママは?」
詢子「アタシはあんたらが何書いたのか楽しく見させてもらうよ」
まどか「あ……あんまり見ないでよ///」
知久「ボクも混ぜてくれるかい」
詢子「タツヤはもう寝かせてきたのかい?」
知久「ああ」
詢子「思春期の少女の短冊見るなんて、パパも悪いねえ」
知久「う……じゃあ遠慮しておこうかな」
詢子「冗談だよ。まどかたちだってパパに見られるのもわかって書いてるんだから」
知久「あはは……それは触れないであげようよ」
詢子「うーん……まどかもほむらちゃんもマミちゃんも杏子ちゃんもみんな同じような感じだねぇ」
知久「やっぱりボクらが見るから、意識しちゃうんじゃないかな」
詢子「もっとはっちゃけてくれてもいいのにねぇ」
知久「それは難しいんじゃないかな……」
知久「さっき肩車してつけてたやつかい? 見られたくないんじゃないかな」
詢子「甘い。ここにある以上、アタシが見ちゃいけないものはないはずさ」
知久「知らないよ……」
詢子「もちろんパパも共犯だよ」
知久「」
知久「おいおい、ボクが上になるのかい?」
詢子「アタシはどっちでもいいんだけど」
知久「……娘も見てるしね、ボクが下になるよ」
詢子「じゃあよろしく頼むよ。ふらついてみっともないとこ見せないでね」
知久「あはは……がんばるよ」
詢子「あ、その前に」
知久「なんだい?」
詢子「もし重いとか言ったり、よろけて倒れたりしたら……」
知久「したら?」
詢子「首を折る」
知久「」
――
まどか「もう外真っ暗だね」
ほむら「日が延びたとはいえ、さすがにこの時間じゃね」
まどか「……もう帰るの?」
ほむら「あんまり遅くまでいるのも悪いし……」
まどか「うーん……」
ほむら(まどかが泊まって欲しそうにしてるけど、さすがにご家族もいるしね……)
まどか「あ、ママが戻ってきた」
詢子「お、なんだ、ほむらちゃんは帰るのかい?」
ほむら「ええ、遅くまでどうもすみませ……」
詢子「泊まっていけばいいじゃないか」
ほむら「え?」
詢子「二人で幸せな毎日を送りたいんだろ」
ほむら「///」
まどか「ちょ、ちょっとママ……」
詢子「まどかももっともっと仲良くなりたいんだもんな」
まどか「///」
まどか「も、もう、ママってば///」
ほむら「え、ええと……///」
詢子「無理にとは言わないよ。ただ、泊まりたいならウチは全然かまわないって話さ」
まどか「ほむらちゃん、どうする?」
ほむら「じゃあ……その……お世話になります」
詢子「そんなに固くならなくてもいいって。いずれ家族になるみたいだしね」
まどほむ「///」
まどか「なに?」
詢子「知り合いにサラリーマンでもいるのかい?」
まどか「え? そんなのいないよ?」
詢子「契約がどうとか書いてあったのが一枚あったからさ」
まどか「あ、あはは……」
ほむら「……気にしないでください」
詢子「首の骨が……いや、なんでもない」
まどか「パパ!?」
詢子「冗談だよ。お客さん用の布団を出してる」
まどか「ほむらちゃんの返事を聞く前から?」
詢子「ああ、どうせほむらちゃんが断っても、まどかが止めると思ったし」
まどか「……///」
ほむら(さすがにまどかの考えることはお見通しね)
ほむら「はい、お言葉に甘えさせてもらいます」
詢子「なーに、その分のお返しは貰うからさ」
ほむら「……え」
まどか「ママ?」
詢子「夜は長いからねぇ。みんなで楽しくおしゃべりといこうじゃないか」
まどか「ど、どこまでって///」
ほむら「ま、まだそんな///」
詢子「まだ、ってことは、これからいろいろと……?」
ほむら「そ、それは……///」
まどか「ほ、ほむらちゃんにそんなこと聞いちゃダメだよ///」
詢子「じゃあ、まどかはほむらちゃんのことどう思ってるんだい?」
まどか「え? そ、その……親友、だよ///」
詢子「しーんーゆーうー?」
まどか「ほ、本当だよ。親友……よりもうちょっと仲がいい、けど……///」
詢子「ほほう、もうちょっとっていうのはどのくらいかな?」
ぐいぐい押すでぇ
詢子「残念ながらアルコールは一滴も入ってないんだな、これが」
ほむら「えーと……まどか、私、やっぱり……」
詢子「おっと、いまさら帰るのは無しだよほむらちゃん」ガシッ
まどか「ほむらちゃん、一人だけ逃げるのはずるいよー」
詢子「洗いざらい白状したら解放してあ・げ・る」
ほむら「まどかぁ……」
まどか「ほむらちゃん……」
さあ!!さあっ!!!!!
ほむら「わ、私は本当にまどかのことが好きです、大好きです///」
詢子「よーし、さあ、次はまどかの番だよ」
まどか「え、ええ?」
詢子「なんだ、まどかはほむらちゃんのこと嫌いなのか」
まどか「そんなことないよ! 私もほむらちゃんのこと、す……好き……だもん///」
知久「ママ、無双してるなぁ……」
まどか「そ、そんなの言えないよぉ……///」
詢子「言わないのかい? 言わないと……ほむらちゃんのおっぱいを全力で揉んじゃうよ」
まどか「卑怯だよ、ママ!」
ほむら「まどか、私のことはかまわず逃げて……」
まどか「……逃げてもあんまり意味ないんだけど」
知久「こりゃ、長くなりそうだね。ボクは先に退散させてもらおうかね」
まどか「うぅ……」
ほむら「まどかぁ……」
詢子「ところでまどかはほむらちゃんのおっぱいを揉んだことは?」
まどか「えぇ? え、えっと……///」
ほむら「///」
詢子「あるのかないのか、どっちなんだい?」
まどか「……ゴニョゴニョ///」
ほむら「///」
まどか「も、もう勘弁してー!」
ほむら「いっそもう全部ぶちまけた方が……」
まどか「だ、ダメだよ/// ママに知られるのって結構恥ずかしいんだから///」
詢子「娘のことはなんでも知っておきたいじゃないか」
まどか「娘はいろいろと知られたくないんだよ///」
詢子「ほむらちゃん、まどかの秘密と引き換えにしゃべる気は無いかい?」
ほむら「何なりと」
まどか「ほむらちゃん!?」
おまけおしまい
やっぱりまどほむは書いてて楽しい
それでは皆様おやすみなさい。
またどこかのスレでお会いしましょう。
次は何を書こうかな。
ほむほむまどっ子
ほむら「ところで今日は七夕よね」
まどか「え?」
ほむら「七夕なのよね」
まどか「えっと……うん、そうだね」
ほむら「今日は七夕なの……七夕なのよ……」
まどか「ほむらちゃん……もうそれくらいで……」
ほむら「七夕って言ったら七夕なのよ……」
行事物は期日を守ろう
ずっとニヤニヤが止まらんかった
また書いてくれ
Entry ⇒ 2012.07.09 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
マミ「マジカル・ミルキーウェイ」
「わーい、マミせんせーだー」
「きょうも、おはなししてくれるの?」
マミ「みんなは今日が何の日かしってるかな?」
「しってるー!」
「たなばたー!」
マミ「うん、そうだね。今日は七夕なの」
「じゃあ、たなばたのおはなしなの?」
「おりひめとひこぼしでしょー?」
マミ「うん、でもみんなの知ってるの七夕とはちょっとだけ違うお話しかな?」
マミ「いい?みんな、始めるよ?」
「はーい!」
マミ「そのお話しはね?まだ先生が子供の頃で―」
ほむら「………」
杏子「ほむら、何してんのさ?」
ほむら「星を眺めていたの」
杏子「星?」
ほむら「ほら、見てみて?」
杏子「あっ…」
ほむら「綺麗でしょ?」
杏子「うん…そうだな…!」
ほむら「………」
杏子「でもどうしたのさ?星なんか眺めちまって」
ほむら「…こうして見ていると、彼女を感じることができるの」
杏子「……そっか」
杏子「…そういや、今日は七夕だっけ?」
ほむら「そうね」
杏子「七夕ねぇ…たしか織姫と彦星が1日だけ会える日なんだよな」
ほむら「ええ、夫婦の2人がたった1日だけ再開できる特別な日」
杏子「なんで夫婦なのに1日だけしか会えないんだろうな?」
ほむら「…たった1日だけでも会えるのなら……」
ほむら「それだけでも…十分羨ましいわ」
杏子「ほむら…」
杏子「ん?キュゥべえか」
キュゥべえ「1日でも会うチャンスがあるのなら、そのまま一緒にいればいいじゃないか」
キュゥべえ「なのにどうしてまた離れ離れになってしまうのかな?」
杏子「さあね…ま、年に一度天の川で、ってのがロマンチックなんじゃないの?」
キュゥべえ「わけがわからないよ、会いたいのなら会えばいいじゃないか」
ほむら「会いたくても会えない…単純なことよ」
キュゥべえ「きっと2人はずっと一緒にいられる」
キュゥべえ「ハッピーエンドってやつじゃないのかな?」
杏子「あんたは何にもわかってないね、それじゃロマンがないじゃん?」
キュゥべえ「ロマン…ね。君たち人類は本当によくわからないよ」
キュゥべえ「そもそもロマンって何なんだい?」
杏子「そのくらい自分で考えな」
キュゥべえ「やれやれ」
キュゥべえ「ヒント?」
杏子「ああ、ほむらを見てみなよ」
キュゥべえ「ほむらを?」
ほむら「………」
キュゥべえ「わけがわからないよ、ただ黙って星を眺めているだけじゃないか」
杏子「ただ眺めてるだけじゃないんだって」
キュゥべえ「そうなの?」
ほむら「………」
マミ「みんなー」
マミ「ふふっ。これの準備をしていたの!」
杏子「準備?」
マミ「じゃーん!」
杏子「あっ、これって…」
キュゥべえ「これは何なんだい?」
マミ「短冊よ!」
杏子「へぇ…懐かしいな」
キュゥべえ「短冊?よくわからないよ」
キュゥべえ「これは何につかうのかな?」
マミ「ふふ、短冊はね?願い事を叶えてくれるのよ!」
キュゥべえ「願い事を…?」
キュゥべえ「へぇ…こんな紙切れが僕たちの力と似たシステムを持っているんだ」
キュゥべえ「なかなか君たちの国は面白いね」
マミ「どう?凄いでしょ?」
キュゥべえ「でも本当に願い事が叶うのかな?」
キュゥべえ「紙切れで願い事が叶うのならインキュベーターはいらないよ」
杏子「何拗ねてんだよ」
杏子「ふーん?」
マミ「キュゥべえ、この願いはたしかにあなたのように確実に叶うとは限らないわ」
キュゥべえ「だろう?」
マミ「でもね?信じていれば何時かきっと叶うはずなよ」
マミ「私はそう信じてるから…!」
キュゥべえ「そうなんだ」
マミ「ね、佐倉さん?せっかくだし願い事を書いてみましょうよ」
杏子「願い事…ね。あたしは魔法少女になった時点で願い事を1つ叶えてるんだ」
杏子「だからさ、これ以上望むのは野暮ってやつなんじゃないの?」
マミ「そうかしら?私はそうとは思わないわよ?」
杏子「……」
マミ「それに、何かを願うのは悪くないことだと思うわ」
マミ「あたなもそう思うわよね?暁美さん」
ほむら「………」
マミ「暁美さん?」
ほむら「あっ…マミ」
マミ「暁美さんもそう思うわよね?」
マミ「あら?そうだったの?」
杏子「ほむらはずっと星を眺めてたからね」
ほむら「ええ、天の川よ」
マミ「星を…あっ!たしかに綺麗ね…!」
マミ「綺麗なミルキーウェイ…!」
ほむら「………」
マミ「暁美さんは何かを感じているの?」
ほむら「…こうして星を見ていると、彼女が星の向こうにいるような気がするのよ」
ほむら「いえ、きっとそうだって信じてるわ」
マミ「そう…暁美さんは信じているのね」
ほむら「ええ…!」
杏子「星の向こう側…ね」
杏子「ひょっとしたら、星の向こう側にあいつもいるのかもしれないな…!」
キュゥべえ「星の向こう側には僕たちの故郷があるよ」
キュゥべえ「それに、君たち人類なんていやしないよ」
杏子「ほんとわかってねぇな」
マミ「もう、キュゥべえにはロマンの良さがわからないのね?」
マミ「ロマンのない男子は嫌われちゃうぞ?」
キュゥべえ「え?僕は本当のことを話しただけだよ?」
キュゥべえ「それに僕には性別なんてないんだけどな」
マミ「それでもよ」
キュゥべえ「わけがわからないよ…」
キュゥべえ「えっ?酷いよ、マミ!」
ほむら「………」
マミ「はい、暁美さんの分よ」
ほむら「短冊…」
マミ「ええ、それに願い事を書きましょう?」
マミ「そうすれば、暁美さんの願いだって叶うかもしれないわ!」
ほむら「私の…願い…」
マミ「うん、暁美さんにだって叶えたい夢はあるでしょ?」
マミ「大丈夫」
ほむら「えっ?」
マミ「大丈夫よ!信じましょう?きっとまた会える日が来るはずよ」
マミ「彼女に…!」
ほむら「………」
マミ「星の向こうから…ミルキーウェイから暁美さんに会いに来てくれるかもしれないわ」
マミ「だから、ねっ?信じましょうよ!」
マミ「ねっ?」ニコッ
ほむら「…ふふっ、そうね」クスッ
ほむら「信じていれば、また会えるかもしれない…」
ほむら「うん、信じるわ」
マミ「ええ。はい、暁美さんの短冊よ」
ほむら「ありがとう」
杏子「……」
マミ「ふふ、佐倉さんも我慢しないで書いてみましょうよ」
杏子「…いや、でもさ」
マミ「契約して願い事を叶えることと、短冊に願い事をとじゃ話が違うじゃない?」
マミ「でしょ?」
杏子「でもさ、あたしは…あたしの願い事はさ」
杏子「叶わない…つーか…その、さ」
杏子「あいつともう一度だなんて…無理だし…」
マミ「あいつって…」
杏子「…マミにもわかるだろ?あいつはもう…消えちまったから…」
マミ「…たしかに、いってしまったのかもしれないわ」
マミ「円環の理に導かれて…」
マミ「でもだからって、絶対に会えないと決まったわけじゃないわ!」
マミ「どんな形になるかはわからない…」
マミ「でも何時か信じていればきっと会えるかもしれないわ」
マミ「いえ、会えるはずよ!」
杏子「……!」
マミ「だから…佐倉さんも信じてみましょうよ?」
杏子「…ま、まあ…書くくらいならやってもいっか」
杏子「…な、なんか照れるなぁ」
マミ「うふふっ」
キュゥべえ「マミ、マミ」
マミ「どうしたの、キュゥべえ?」
キュゥべえ「僕も…」
マミ「えっ?」
キュゥべえ「…いや、なんでもないよ」
マミ「キュゥべえ…ふふっ」
キュゥべえ「ん?」
マミ「はい、これ」
キュゥべえ「えっ?」
キュゥべえ「な、何を言ってるんだよ、マミ!」
マミ「照れちゃダメよ?キュゥべえだって自分の願い事も叶えたいでしょ?」
キュゥべえ「……」
マミ「遠慮なんていらないから、キュゥべえも書いてみましょうよ」
キュゥべえ「…ま、マミがそこまで言うなら…」
マミ「はい、ペンは持てる?」
キュゥべえ「大丈夫だよ」ピョコッ
杏子「…よし、こんなもんかな?」
マミ「さーて、私も願い事を書かなきゃ!」
杏子「マミの願い事は何なのさ?」
マミ「私?私の願い事は…」
マミ「何時までも、ずっとみんなと一緒にいたい…かな?」
マミ「高校生になっても、大学生になっても」
マミ「大人になっても…」
マミ「佐倉さんや暁美さん、それにキュゥべえもね」
マミ「こうやってみんなと仲良くしていたいわ」
マミ「…ふふっ、叶うかしら?私の願い…」
杏子「…ああ!」
ほむら「叶うわよ」
マミ「佐倉さん、暁美さん…」
杏子「あたし達、魔法少女はさ…こうして友達になれたんだ」
杏子「…今は3人になっちまったけどさ」
マミ「……」
杏子「でも、もうこれ以上友達を失いたくなんかない…!」
杏子「失ってたまるか!」
杏子「だからさ、マミの願いは絶対に叶うさ」
杏子「あたしが叶えてやる!」
マミ「…ありがとう、佐倉さん」ニコ
杏子「へへっ」
ほむら「…私もよ」
マミ「暁美さん…!」
ほむら「私も…もう二度と仲間を…友達を…」
ほむら「あなた達を失いたくはない…」
ほむら「…だから、私も叶えてみせるわ」
ほむら「マミの願いを」
ほむら「そして…私の願いも…!」
ほむら「ふふっ」
杏子「これからもあたし達3人で頑張ろうな」
ほむら「ええ」
キュゥべえ「……」
マミ「ううん、3人と1匹ね」
キュゥべえ「…マミ」
杏子「ははっ。そっか、キュゥべえも一緒にだもんな」
ほむら「そうね」
キュゥべえ「君たち……」
キュゥべえ「…べ、別に僕はそんな…」
杏子「あははっ!照れんなって!」
ほむら「ふふっ」
キュゥべえ「……ふふ」
マミ「あ、そうそう。キュゥべえは何を願ったの?」
キュゥべえ「えっ?」
ほむら「たしかに気になるわね」
杏子「どんなんだー?」
キュゥべえ「ちょ…ちょっと!見ちゃダメだよ!」
杏子「照れない照れない」
杏子「まあいいじゃねーかよ…っと」ヒョイ
キュゥべえ「あっ!返してよ!」バッ
杏子「ほら、マミーパス!」
マミ「オッケー」
キュゥべえ「マミっ!」ピョン
マミ「暁美さんっ」
ほむら「ええ」
キュゥべえ「ほむらー!」ジタバタ
杏子「さあほむら、読みな!」
ほむら「わかっ…!?」
マミ「何て書いてあるの?」
キュゥべえ「うわぁー!」
杏子「ほむら?」
ほむら「自分の目で確かめるといいわ」
杏子「ん?」
キュゥべえ「やめてよぉー!」
杏子「…へへ、そっか。なるほどね」
マミ「?」
杏子「マミも見てみなよ」
マミ「ええ」
キュゥべえ「期待しちゃダメだよ!全然大したこと書いてないから!」
ほむら「ふふっ、その割には慌ててるわね」
マミ「まあ!キュゥべえ…あなた、こんなことを…」
マミ「なんて書いちゃって」クスッ
キュゥべえ「だ、だって仕方ないだろう?僕はインキュベーターなんだから!」
キュゥべえ「むしろ、宇宙の寿命の為に僕たちは存在するんだよ!」
キュゥべえ「だからそう願って当然じゃないか!」
マミ「ふふっ。はいはい、その通りね」
キュゥべえ「あー!今笑ったよね?マミ!」
キュゥべえ「いやいや!笑ってるじゃないか!」
杏子「幻だよ幻」
マミ「そうよ、ロッソ・ファンタズマよ」
キュゥべえ「嘘はよくないよ!」
ワイワイ
ほむら「…ふふ」クスッ
ほむら「キュゥべえ、変わったわね」
ほむら「そして私も…」
ほむら「…私たちはこうして変わることができたわ」
ほむら「それも…あなたが新しくこの世界を作ってくれたおかげよ」
ほむら「たしかに、あなたの姿はないわ」
ほむら「…でも、私は信じてる」
ほむら「きっと、今もあなたは私たちのすぐ側にいてくれるって」
ほむら「私たちに優しく微笑みかけてくれているって」
ほむら「そして…何時かはまた私と…」
ほむら「………」
ほむら「本当に綺麗な天の川…」
ほむら「!?」
杏子「ん?どうしたんだよ、ほむら?」
杏子「流れ星でもあった?」
ほむら「…ううん」
杏子「?」
マミ「まあ!さっきよりも夜空がとっても綺麗になってるわ!」
キュゥべえ「星のみんなも見ているのかな?」
杏子「たしかにすっげー綺麗だな…!」
杏子「あいつも…向こうで見てんのかな…」
ほむら「……ふふっ」
ほむら「あなたはやっぱり側にいてくれたのね?」
杏子「えっ?誰と話してるんだ?」
マミ「暁美さん?」
ほむら「…ううん、気にしないで?」
ほむら「ただ、本当に願い事を叶えてくれるのね」
ほむら「七夕は…!」
杏子「…!」
杏子「そっか…そうだよな」
マミ「私もそう思うわ、七夕が…短冊が」
マミ「そしてあのミルキーウェイが願いを叶えてくれるのよ」
キュゥべえ「宇宙が平和であり続けてくれるって思えるよ」
杏子「ああ…きっと、そうなんだよ」
マミ「あのミルキーウェイが私たちに魔法を書けてくれてるのかもしれないわね」
キュゥべえ「魔法を…天の川が…?」
マミ「ええ…!」
ほむら「うん…私もそう思うわ」
杏子「そうだな」
杏子「ん?」
キュゥべえ「なんだい?」
ほむら「……」ニコ
マミ「こうして来年も再来年もずっとずっと…」
マミ「みんなでこのミルキーウェイを見ましょうね」
キュゥべえ「うん」
杏子「ああ!」
杏子「ただ…できれば…あいつを入れた4人と1匹で…見たいな」
杏子「…いや、見られる気がする」
杏子「見れるんだ!」
杏子「そう信じてるから…!」
マミ「絶対に見れるわよ…!」
キュゥべえ「短冊は僕たちと同じ力を持っているんだよね?」
キュゥべえ「なら大丈夫、見られるよ」
杏子「ああ…!」
ほむら「……」ニコニコ
マミ「さーて、帰りましょうか!」
マミ「今日は七夕だし、ご馳走を作ってみせるわ!」
杏子「おっ!マジで?」
マミ「ええ。ほら、暁美さんも帰りましょう?」
ほむら「ううん、私たちはもう暫くここにいるわ」
キュゥべえ「え?」
杏子「…!」
ほむら「お願い」ニコ
マミ「…ふふっ。ええ、わかったわ」
マミ「さ、佐倉さん、キュゥべえ。帰りましょう」
杏子「うん、そうだな」
キュゥべえ「ほむらは1人で何をする気だい?」
マミ「うふふ、なんでしょうね?」
杏子「さぁ?わかんねーや!」
キュゥべえ「?」
マミ「佐倉さん、帰ったら2人でお料理よ!」
杏子「オッケー!」
ほむら「………」ニコニコ
―――
マミ「もう何年も前のお話だけど、本当のお話よ」
「じゃあ、マミせんせーと、きょーこせんせーと、ほむらせんせーのおはなしなんだ!」
マミ「うん、そうだね」
「ねーねー!マミせんせーのねがいはかなったの?」
マミ「うん!だって今もこうして杏子先生とほむら先生と…そしてみんなと一緒にいられるからね」
「なら、おそらがねがいをかなえてくれたんだー」
「まほうみたーい」
マミ「魔法…うん、そうね」
マミ「マジカル・ミルキーウェイね」
「なにそれー?」
「ちろひなーれのともだち?」
マミ「ふふ、マジカル・ミルキーウェイはね?」
マミ「年に一度だけ私たちの願いを叶えてくれる」
マミ「魔法のお星様なの」
「すごーい!」
「きせきもまほうもあるんだー!」
マミ「うん、奇跡も魔法もあるんだよ」
「あたしも、おほしさまにおねがいすればかなうの?」
マミ「うん、きっと叶うよ」ニコッ
「わぁー!ならおほしさまにおねがいするー!」
この子の将来がとても心ぱ、いや楽しみです
「うんっ!」
マミ「どんなお願いをするの?」
「んーと…ないしょだよ!」
マミ「ふふ、そっか」
「マミせんせー次はなにするのー?」
マミ「次は歌を歌いましょうか」
マミ「今日はほむら先生はお休みだから、マミ先生と歌いましょうね?」
「はーい」
マミ「それじゃあ、いくわよ」
マミ「サールティー」
「ろーやーりー」
「たまりーえー」
マミ「パースティアラーヤー」
「れーすちんがー」
~♪
杏子「……マミ先生は園児に何歌わせてんだか」
杏子「ま、これも平和の1つの結果…とでも言うのかな?」
杏子「…ふふっ」
杏子「さーて、今日はほむら先生は休みだし、あたしもその分働かないとね!」
杏子「それに、可愛い園児にカッコ悪いところ見せられないからな!」
マミ「んーっ…」ノビー
杏子「お疲れさん、マミ先生…いや、園長先生」
マミ「ありがとう。でも、もう園児たちは帰ったんだから」
マミ「いつも通りマミでいいわよ?杏子さん」
杏子「へへ、それもそうだね」
マミ「ふふっ」
杏子「それにしてもさ、やっぱ2人だときっついよなー」
杏子「ただでさえ3人でギリギリなのにさ」
マミ「ふふ、まぁいいじゃない」
マミ「それに、ほむらさんには七夕を心の底から楽しんでもらわないとね」
マミ「うん、だから今日くらいは…ね?」
杏子「そうだな」
キュゥべえ「本当に七夕は不思議だね」
杏子「うわ、ぬいぐるみが喋った」
マミ「ふふ、奇跡ね」
キュゥべえ「ちょっと!ここのぬいぐるみを全部僕に似せて作ったのは君たちじゃないか!」
杏子「あはは、ごめんな」
マミ「でも、園児には大人気よ?」
キュゥべえ「そ、そうかい?」
キュゥべえ「だけってなんだよ!」
マミ「ふふっ」
キュゥべえ「もー」
杏子「ははっ。さてと、あたしは庭の花に水やってくるよ」
マミ「ええ、お願い…いつも悪いわね」
杏子「いいって、いいって、仕事だしさ」
杏子「それに結構楽しいんだ」
マミ「ふふ、そっか」
杏子「んじゃ、ちょっくらいってくる」
マミ「いってらっしゃい」
キュゥべえ「いってらっしゃい」
杏子「これなら花も元気になるし」
杏子「それに今夜の天の川だって綺麗に見れるな」
杏子「それに、ほむらも…」
「―よーに!」
杏子「ん?」
「あっ、きょーこせんせー!」タタッ
杏子「あれ?まだ帰ってたかったの?」
「ううん、またもどってきたの」
杏子「ダメだよ、一人じゃ危ないよ?」
「ひとりじゃないよ?だって、きょーこせんせーがまもってくれるもん」
杏子「あはは…」ポリポリ
「ほんと?えへへ、やったー!」
杏子「ふふっ…」
「きょーこせんせーといっしょー!」
杏子「…それよりも、こんな所で何をしていたの?」
「おほしさまにおねがいしてたの!」
杏子「お星様にお願い?」
「うん!マミせんせーがいってたの」
「おほしさまにおねがいすれば、ねがいがかなうって!」
「それにね?いまからずっとおねがいすれば、はやくかなうかもしれないの!」
杏子「…だから昼過ぎからお願いしてたんだ」
杏子「ふふっ、可愛い子だね」ナデナデ
「えへへー」ニパー
杏子「どんな願いをしていたの?」
「きょーこせんせーとけっこんできますようにーって」
杏子「ちょっ…えっ?」
「あたしね?きょーこせんせーがだいすきなんだもん!」
杏子「…ふふっ、そっか」
「きょーこせんせーは、あたしのおよめさんになるのだー!」
杏子「……」ニコッ
「えへへっ!」
「うんっ!」
杏子「ありがとう、すっごく嬉しいよ」
「わーい!」
杏子「…でも、ごめんね」
「?」
杏子「杏子先生は女だから…」
「あっ、そっか…おんなのこどうしは、けっこんできないんだ…」
「あたしってほんとばか…」
杏子「いや、ばかじゃ…」
「ふぇ…」ウルウル
杏子「あっ」
「ふぇぇぇぇん」
「ふぇぇぇん」
マミ「大人気?どうしたの?」
杏子「あはは…マミ先生…」
「ぐすっ…あ、あたし、きょ…きょーこせんせー」
「きょーこせんせーとけっこんしたいのに…」
マミ「まあ!」
「なのに…できないって…ふぇぇ…」
マミ「…ちょっと、子どもに本気で答えてどうするのよ」
杏子「いや、だってさ…この子、あいつとそっくりだし…なんかさ…」
マミ「……そっくりだから、動揺したのね?」
マミ「もう、しかたないわね」
「ふぇぇぇぇん」
ほむら「大丈夫だよ」
「ふぇ…?」
杏子「あっ」
ほむら「大丈夫、大丈夫だから」ナデナデ
「うぅ…ほむらせんせー…」
マミ「ほむら先生…帰ってきたの?」
ほむら「うん、ただいま」
杏子「もういいのかよ?まだ昼過ぎだぜ?」
ほむら「大丈夫、彼女もいるから」ニコ
マミ「…そっか、側にいるのね?」
ほむら「ええ」
「うぅぅっ…」
ほむら「よしよし」ナデナデ
「うー…」
マミ「それにしても大丈夫って…どうして?」
杏子「いくら子どもにだからって、嘘はよくないぜ?」
ほむら「嘘じゃないわ、願うのよ」
杏子「!」
ほむら「だって今日はたな―」
「たなばただからおねがいすれば、いいんだ!」
ほむら「うん、そうだよ」
「おしえてくれてありがとう、おねーちゃん!」
杏子「えっ?」
マミ「お姉ちゃん…?」
「えへへ、お姉ちゃんの笑い方かわいいね!」
「まねしちゃお!」
「てぃひひっ!」
ほむら「……!」
ほむら「ふふっ、うん。そっくりだよ」
ほむら「もうすっかり夜ね」
「すー…すー…」
マミ「結局、この子…天の川見るって帰ろうとしなかったわね」
杏子「そう言うとこも含めて、あいつにそっくりだよな」
マミ「ふふ、そうかもね。それに上条さんは杏子先生になら安心して預けられるって言っていたわ」
杏子「親がそう言ってるのなら、あたしが面倒みるしかないじゃんか」
ほむら「とか言って、本当は面倒見れて嬉しいんでしょ?」
杏子「うっ」
ほむら「満更でもなさそうだったわよ?」
杏子「み、見てたのかよ?」
ほむら「ええ、2人でね」
マミ「ふふ、そっか」
杏子「な…なんか恥ずかしいじゃんかよ…」
ほむら「ふふっ」
「ん…」
杏子「あっ、おはよう」
「んん…あっ、きょーこせんせー!」
マミ「もうすぐ天の川が一番よく見えるよ?」
「マミせんせー!」
「ほむらせんせー!」
「おねーちゃん!」
「えっ?あ!うん!あたしもとりたいー!」
杏子「どうしたの?」
「おねーちゃんが、みんなでしゃしんとろーって!」
ほむら「そうね、みんなで記念撮影をとりましょう」
マミ「うん、ミルキーウェイをバックに…綺麗な一枚になると思うわ」
杏子「オッケー、んじゃカメラ持ってくるぜ
「あっ、あたしもいくー!」
杏子「うん、いいよ。一緒に取りにいこうね」
「わーい!」
マミ「あら、キュゥべえ」
キュゥべえ「なら僕も一緒にとらせてもらうよ」
ほむら「構わないけれど、キュゥべえはカメラに写るのかしら?」
キュゥべえ「あっ、そっか…」
ほむら「…そうね、あなたもカメラには…」
ほむら「えっ?信じようよって…」
ほむら「…うん、そうね」
ほむら「こうして今あたなと一緒にいることも」
ほむら「あの子が生まれ変わったのもみんな」
ほむら「あの日、そう願ったから…そうよね?」
ほむら「うん…!」
マミ「ふふ、つまりね?信じていれば奇跡は起こるってことよ」
キュゥべえ「…そっか、なるほどね」
マミ「だからキュゥべえも信じましょうよ」
キュゥべえ「うん、わかったよ」
ほむら「あなたは真ん中に…えっ?端っこでいいの?」
ほむら「でも、せっかくなんだから…え?あの子を真ん中にしようって?」
ほむら「…うん、そうね」
「カメラもってきたよー!」
ほむら「来たようね。さっ、とりましょうか」
マミ「ミルキーウェイをバックにね」
「わぁー!」
杏子「やっぱり綺麗だな…!」
ほむら「うん…!」
マミ「ええ…!」
「おねーちゃんもすっごくよろこんでるね」
「うぇひひ!あたしもたのしーよ!」
キュゥべえ「今の僕にならその気持ちがわかるよ」
マミ「場所はこれで大丈夫ね?」
「あたし、きょーこせんせーのそばがいい!」
杏子「ふふっ。うん、いいよ」
「やったー!」
キュゥべえ「僕はマミの肩がいいな」
マミ「ええ、おいで。キュゥべえ」
ほむら「私たちはここでいいわよね?」
「おねーちゃんはほむらせんせーがだいすきなんだね!」
「あーっ!おねーちゃん、かおがあかいよ?」
「てぃひひっ!おもしろーい!」
マミ「ね、フラッシュと同時に願い事言ってみない?」
マミ「たぶん、みんな同じ願い事だと思うから」
ほむら「そうね、私たちも賛成よ」
キュゥべえ「おもしろそうだね」
「あたしもいいたーい!きょーこせんせーもいっしょだよ!」
杏子「うん、わかったよ」
マミ「ふふ、ありがとう。みんな」
マミ「いくわよ―――」
カシャッ
~♪
「ん?電話だ」
「もしもし?」
『あっ、上条さん。今時間大丈夫?』
「えっと…この後用事があるけど今は大丈夫、どうしたの?」
『ほら、この前上条さんが家にアルバム持ってきてくれたでしょ?』
「うんうん、持ってったね」
『そしたら上条さん全部忘れて帰っちゃうんだもーん』
「あっ、ごめんごめん!持って帰るのわすれてたわ」
『これで忘れ物したの何度目よ?』
「えーと…三回くらい?」
『バカ!もう両手で数えられないくらいよ』
『まじよ、まじ』
「あはは、あたしってほんとバカ!」
『もー、次からは気をつけてよね?』
「りょーかい!」
『でさ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど』
「ん?なに?」
『先に謝るけどごめんっ!アルバム全部見ちゃった!』
「あー、いいよいいよ。ぜんぜん見ちゃってオッケー!」
『ありがと、でさ?アルバム見てて気になったんだけど』
『マジカル・ミルキーウェイってなに?』
『ならもっと分かりやすいタイトルにしなよー?』
「えー?まんまじゃん」
『まんまって…』
「魔法の天の川」
『いや、天の川は写真見ればわかるけどさ』
『魔法は関係なくない?』
「関係ないかと思った?残念!関係あるのだー!」
『えー?どうして?』
「見てわからない?」
『…もしかして、この人たち魔法使えるの?』
「えっ?」
「うん、あんたも会ったことあるでしょ?」
『まあね、あんたとよく一緒にいるし…とくに杏子先生だっけ?赤毛のさ』
「うんうん、杏子先生だよ」
『上条さん、未だに杏子先生とかなり仲良いもんね』
「えへへー、まあねー」
『でもさ、もう卒園して10年近くたつじゃん?あたしらもう中2よ?』
「うん、そうだね」
『杏子先生も、マミ先生も、ほむら先生も若すぎない?』
『全然年取ってるように見えないんだけど…』
「んー…言われてみればそうだけど…」
『それにこのピンクの女の子なんて、あたしらと同い年くらいにしか見えないよ?』
「だよねぇ」
『だよねって…上条さんが幼稚園の頃から毎年、七夕に写真取ってるっぽいけど』
『普通10年も外見変わらないとかあり得なくない?』
「あはは、奇跡も魔法もあるんだよ!」
「信じれば起きるんだよなー、これが!」
『…そう言うものなのかな?』
「そう言うものなの!」
『そっか、まぁ…そう言うことにしとくね』
「うんうん」
『他にもさ、マミ先生の肩に乗ってるぬいぐるみもいつも同じなんだね』
「あれはマミ先生のお気に入りだからね」
『そっか』
「そうそう」
『んじゃ、最後に聞いてもいい?』
「うん、いいよ」
『ほむら先生の横にいる女の子さ、何で七夕の時にしか写真に写ってないの?』
『この女の子だけ、どうして七夕の時にしかいないわけ?』
「それは…」
『それに、外見が中学生くらいのままから全然変わってないのがさ…』
『…何者なの?』
「……怖い?」
『えっ?いや、たしかに気にはなるけど怖いわけないじゃん』
『だってすっごく可愛い笑顔なんだよ?』
「あはは!そうだよね!」
『うん、でもやっぱり気になるのは気になるんだよねー』
『誰なの?』
「あたしも、名前は知らないんだ」
「うん」
『な…なんでっ?毎年一緒に写ってるんだよ?』
「その子は、ほむら先生の…」
『え?』
「ほむら先生の織姫だから」
『…はぁ?』
「年に一度、七夕の時にだけ会いに来てくれるんだ」
『……本気で言ってんの?』
「うん」
『織姫って…七夕じゃあるまいし…』
「いやいや!七夕じゃん!」
『あ、そうだけどさ…その、何て言うか…あれは作り話でしょ?』
『えー?』
「たしかに作り話かも知れないけどさ、もしかしたら本当の話しかもしれないんだよ?」
『そうかなぁ?』
「そこにロマンがあるんだよ!」
『ロマンねぇ…』
「そして、あたし達にも実際に来てくれるんだよ」
「織姫がさ」
『織姫…』
「ね?なんかそう考えた方が素敵でしょ?」
『うん…そうかもね』
「でしょ?でしょ?」
『うん…!』
『えっ?』
「あたし、今から杏子先生達に会いに行くんだ」
「そしたらさ、織姫にも会えるかもよ」
『ほんと?』
「うん。だからさ、おいでよ」
「あたし達の七夕に」
「マジカル・ミルキーウェイにさ!」
ほむら「当然よ、あなたに会いたい気持ちは今も昔も変わらないんだから」
ほむら「……彦星と織姫は年に一度しか会えないのよね」
ほむら「うん、2人は夫婦なのに引き裂かれてしまって…」
ほむら「なら私たちはどうなのかしらね?」
ほむら「えっ?私が織姫なの?」
ほむら「いや、あなたが織姫よ!」
ほむら「なら、2人とも織姫…ふふ、そうね」
ほむら「そして…うん、そうよね」
ほむら「私たちは最高の友達」
ほむら「これからも、ずっとずっと…そうだよね」
ほむら「まどか」
おわり
いいSSだった
Entry ⇒ 2012.07.07 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
まどか「さやかちゃんってバカだから何でも信じそう」
マミ「確かに」
杏子「だな」
まどか「というわけでさやかちゃんに『>>10』を信じさせよう!
安価SSじゃないんで>>10が決まったら後は勝手に書いてくからその辺は期待しないでね!」
マミ「わー」パチパチ
ほむら「普通にいけそうね」
杏子「そうかぁ?」
まどか「敵を知り己を知れば百戦危うからずと」
まどか「まずは敵、さやかちゃんがサンタクロースについてどんな認識を持っているか調べようと思います」
杏子「誰が行くんだ?」
マミ「鹿目さんが適任だと思うわ。一番そういう話しても不自然じゃないもの」
まどか「ですね。じゃ、行って参ります!」
さやか「お、まどかー。どうしたの?」
まどか「ティヒヒ、そこ通ったの見かけたから」
さやか「そっかそっか」
まどか「ね、さやかちゃん」
さやか「ん?」
まどか「サンタさんっていつまで信じてた?」
さやか「……うーん」
まどか「なるほど。そのときどんな気持ちだったのかな?」
さやか「結構ショックだったよ。ほら、あたしって夢見る乙女だったから?」
まどか「あ、冗談は言わなくていいよ。えっと、今クリスマスプレゼントはどうしてる?」
さやか「親から普通に手渡し。ま、それでもありがたいけどねー」
まどか「ふーん。あ、いけない! お使い頼まれてたんだった。さやかちゃん、またねー!」タタタッ
さやか「……」
さやか「何だったんだ?」
まどか「報告いたします!」
ほむら「早かったわね」
まどか「さやかちゃんがサンタを信じてたのは小4まで。知った時は割とショック。
現在は親御さんから手渡しでプレゼントを貰ってるとのことです」
マミ「普通ね」
杏子「普通だな」
ほむら「魔法少女に正義の味方なんて幻想を求めてたくらいだから、資質はあると思うわけよ」
杏子「魔女になっても人魚姫だしな」
マミ「ということは美樹さんはヒーロー/ヒロインに憧れがちで、自分もそうなりたいと思う傾向にあるようね」
まどか「あぁー、確かに。その辺りを上手く使えばいけそうですね」
杏子「でも親はどーすんだよ。親自身がサンタの正体は自分だって明かしてんだよ?」
マミ「そこさえクリア出来ればいい設定なんだけどね……」
まどか「……こういうのはどうかな」
ほむらもまどかに限定してるけどヒーロー願望みたいなのあるし
マミ「ちょ、ちょっと壮大すぎない?」
杏子「さすが宇宙再編した奴は言うことが違うね」
まどか「……」シュン
ほむら「……こういうのはどうかしら」
ほむら「さっきも触れたけど、美樹さやかは正義の味方に対する憧れを抱いていた。
わたしも『あんたたちとは違う魔法少女になる』とか言われたわ。美樹さやかには、
周りがそうでも自分だけは違うっていう反骨心がある。自分に酔ってるだけとも言うけど」
杏子「随分手厳しいな、おい」
そう思わせればいい」
杏子「つってもよ、やっぱサンタは親なわけで……」
ほむら「悪役がいなければ正義の味方はいらないわよね」
マミ「? どういう意味?」
ほむら「魔法少女にとっての魔女……サンタクロースとは相反する存在をでっちあげればいいのよ」
サンタを信じなくさせる何かがいるってことにすればいいんだね」
マミ「『悪夢』よ」
まどか「はい?」
マミ「サンタクロースを信じなくさせる存在の名称」
まどか「そ、そうですね……。じゃあ『悪夢』……ブフッ……がサンタを信じる心を奪ってるってことで」
杏子「シナリオはこんなとこでいいだろ。あとはどうやって信じさせるかだ」
まどか「ほむらちゃんは『やな奴!』」
マミ「鹿目さんは『気の置けない友だち』」
杏子「マミは『頼れる先輩』」
ほむら「杏子は『喧嘩仲間』といったところでしょうね」
QB「やあ。四人が揃いも揃って何の話しだい?」
まどか「QB!」
杏子「……『魔法の使者』」
ほむら「確かに、コイツに喋らせれば反則級に説得力が増しそうね」
QB「何のことだい?」
マミ「かくかくしかじか」
まどか「じゃあそれぞれ自分の役目を確認したところで、明日から作戦実行だよ!」
まどか「ふぁ~、おはよーさやかちゃん」
さやか「お、まどか! 昨日はお使いちゃんとできた?」
まどか「馬鹿にしないでよ……。小麦粉買い忘れただけだったよ」
さやか「ぷっ」
まどか「……さやかちゃん」
さやか「んー?」
まどか「サンタって……本当にパパやママなのかな……」
まどか「うん……昨日さやかちゃんと話した後、家に帰ってママとサンタの話をしたんだよ」
さやか「ああ~。実はあの時家計が苦しかったーとか、色々裏話出てくるよね」
まどか「それでなんだけど、わたしの記憶とママの言ってることが違ったんだよ」
さやか「と、言いますと?」
まどか「わたしの小5の時のプレゼントは『くまさんぬいぐるみ』だったの。だけどママは『小顔ローラー』を買ったって」
さやか「記憶違いじゃないのー?」
まどか「あの『くまさんぬいぐるみ』は今でも大好きで、貰った時のこと忘れるはずないよ!」
さやか「じゃあママさんの方が勘違いしてるんだよ」
まどか「そうかな……。うん、そうだよね!」
まどか「そ、そんなことないよ! わたしはただ……」
さやか「ごめんごめん。からかっただけだって」
まどか「もー!」
さやか「はは……」
さやか「(……)」
さやか「(しっかし小学生の娘のプレゼントに『小顔ローラー』? まどかのお母さん、酔ってたのかな?)」
まどか「仁美ちゃんがまたラブレター貰ったらしいよ」
さやか「なぬっ! おのれ仁美め……この美少女さやかちゃんを差し置いてどこまで先へ……」
ほむら「先も何も、あなたにはもともとこの先なんてないじゃない」
さやか「転校生! それは聞き捨てならんぞ!」
ほむら「哀れね……きっと今年のクリスマスも一人でCDを聴きながら過ごすのよ」
さやか「ちょっと屋上行こうか」
まどか「まーまー」
ほむら「……わたし?」
さやか「いつもまどかまどか言ってばかりで、浮いた話なんて一つも出てこないじゃん」
ほむら「それは……」
さやか「あんたこそ寂しいクリスマスを過ごすんじゃないのー?」
ほむら「……クリスマスはどっちにしろ」
さやか「え?」
ほむら「わたしのところにはサンタさんが来るから、恋人となんて過ごさないわ」
さやか「は~あ?」
さやか「どういう意味さ」
ほむら「どうせあなたもサンタを信じないでサンタが来なくなったクチでしょう?
わたしのところにはまだ来るのよ」
さやか「……」プルプル
さやか「(ま、まどか……聞いた? 転校生、あのキャラでまだサンタ信じてるのかよ!)」クスクス
まどか「(えー、夢があっていいと思うなー)」
さやか「(いやー、結局のところサイコなデンパさんだったわけですねー)」
さやか「あ、マミさーん!」
マミ「あら、美樹さん」
さやか「一緒に帰りましょうよ」
マミ「いいわよ」
さやか「マミさん、聞いて下さいよ。転校生ってまだサンタ信じてるんだって!」
マミ「……暁美さんが?」
さやか「はい。まどかならともかく、転校生のキャラで……笑っちゃいますよね」
マミ「……そう、暁美さんが」
さやか「……マミさん?」
さやか「(……? はっ! そ、そうだ……マミさんは交通事故で両親を亡くしてるんだった……。
それなのにあたしサンタの話なんて……無神経だったかな)」
さやか「マ、マミさん! 欲しいものとかない?」
マミ「どうして?」
さやか「あたしがマミさんにクリスマスプレゼントあげようと思って! ……まだ早いけど」
マミ「まぁ、ありがとう」
さやか「へへっ」
マミ「……でもいいの」
さやか「え?」
さやか「……何ですって?」
マミ「美樹さん、わたしの家にはまだサンタさんが来る……なんて言ったら笑うかしら」
さやか「マミさんの家に……サンタ……!?」
マミ「そう。信じてとは言わないけどね」
さやか「(マミさんは独り暮らしだから、誰かがサンタのフリをしているなんてことはあり得ない。
じゃあどうして……。からかってるだけかな?)」
マミ「――それより、この前うちの近くに新しいケーキ屋が」
さやか「マミさん!」
マミ「!」
さやか「あたし……信じるよ」
さやか「(マミさんすっごく笑ってる……。あたしに信じてもらえたことがそんなに嬉しかったのかな?)」
さやか「だから……サンタの話、聞かせてほしいな」
マミ「本当に、そのまんまな話よ。毎年12月25日の朝、わたしの欲しかったものが枕元に置いてあるの。
去年はティーセットだったわ」
さやか「……でも、うちには来なくなった。というか、親が渡すようになった」
マミ「それは……多分、美樹さんがサンタさんの存在を信じなくなったからじゃないかな」
さやか「あたしが……信じなくなった……?」
マミ「サンタさんは信じない人のところには来ない……そんな気がするの」
さやか「(信じる……確か、転校生もそんなことを言っていたような……)」
マミ「じゃ、わたしはここで」
さやか「うん。さよなら、マミさん」
さやか「……」テクテク
さやか「……サンタさん、かぁ」
さやか「(マミさんがあんまり悲しそうな目をしてるから思わず信じるなんて言っちゃったけど……)」
さやか「(……)」
さやか「(本当にいるのかな?)」
杏子「お、さやかじゃん」
さやか「……杏子」
杏子「食うかい?」ポイッ
さやか「……いただくよ」
杏子「どうしたー? 何か思いつめてるみてーな顔してたじゃんか」
さやか「いや、下らないことなんだけどさ」
杏子「何だよ」
さやか「サンタクロースって、信じてる?」
杏子「ああー、ウチには来たことないからな」
さやか「え?」
杏子「ウチって教会だろ? 何かサンタは主の教えに対する冒涜とか考えてる宗派でさ、
もともとサンタクロースっていう行事をやってねーのさ」
さやか「おお……逆にそうなのか……」
さやか「どういうこと?」
杏子「信じるものは救われるってね。神様もサンタも、信じないよりかは信じた方が面白いよ」
さやか「そういうもんかねー」
杏子「ま、あたしみたいな宿なしのところにはサンタもプレゼントの寄越しようがないだろうけどな」
さやか「……」
杏子「そりゃ何かくれるつったら貰うだろ」
さやか「そうだけど……」
杏子「……周りの子が貰ったクリスマスプレゼントの話で盛り上がってる輪に入れなかった。
ちょっとは羨ましかったよ。もっとも今となっては、プレゼントくれる親もいないってか」
さやか「杏子……」
杏子「だからあんたはサンタのいるいないに関わらず、クリスマスは楽しみゃいいんだよ。
そこんとこ、何一つ不自由なく暮らしていけてるんだったらさ」
さやか「そう……だね……」
さやか「(……マミさんも)」
さやか「(杏子も)」
さやか「(ちゃんとクリスマスを迎えられてない)」
さやか「(それなのにサンタを信じて……)」
さやか「(あたしは……家族に囲まれて、毎年クリスマスを祝ってるっていうのに)」
さやか「(周りに合わせて、サンタを信じなくなった)」
さやか「(あたし……嫌な子だ)」
さやか「(……)」
まどか「お疲れさまでした~」
マミ「お疲れ」
ほむら「今日一番最後に接触したのは?」
杏子「あたしだよ」
QB「僕はさやかの前に姿を現さなかったけど、これでいいんだね?」
まどか「初めからQB出ちゃうとつまらないからね。さ、報告&反省だ!」
まどか「わたしが『サンタっているのかな?』って思っていることにして会話したよ」
ほむら「確かにまどかなら、そういう疑念を抱いても不自然じゃないわね」
まどか「またまた。まあ流されちゃったけど、ママが小顔ローラーをプレゼントにしたっていうことについ
ては、 さやかちゃんもちょっとは引っかかったんじゃないかな?」
マミ「鹿目さんの役目は伏線張りみたいなものだから、それで十分だったわね」
ほむら「次はわたしね」
杏子「そんなキャラじゃねーだろ(笑)」
ほむら「まあ二番目だし、笑い話程度に受け取ってもらえればいいと思ったわ。
のちのちサンタを信じかけてきた美樹さやかが『そういえば転校生があの時……』とか思ってくれ
ればいいのだけど」
マミ「で、次がわたしね。自分のところにはサンタが来るんだけど、誰にも理解してもらえないってことで
頑張って悲しそうな表情を作ってたんだけど」
杏子「あたしのときにはあいつ半ば信じてたじゃねーか」
、
マミ「美樹さんが信じるって言った時には吹きそうになったわ。半信半疑とはいえ、騙されやすすぎよね」
ほむら「性格悪いわね」
杏子「あたし自身、一応サンタを信じてるってことにしたし、大分効いてたみたいだよ」
マミ「美樹さん、思いつめてないかしら……」
まどか「サンタでですかwww」
QB「で、僕の出番は明日なんだよね?」
まどか「うん、QBは最後のまとめをお願い。今日のところは順調ですね。
明日あとひと押し! 頑張って行きましょう!」
さやか「ふぁ~」
まどか「さやかちゃん、眠そうだね」
さやか「昨日は一晩中窓の外見てて……」
まどか「え、どうしたの?」
さやか「な、何となくだよ。あはは……」
さやか「(サンタが空飛んでないかなと探してたとは言えない……)」
まどか「(さやかちゃんバカすぎだろ)」
さやか「……ん?」
さやか「ちょっと転校生、あんた鞄替えた?」
ほむら「ああ、これのこと?」ヒョイ
さやか「それ、めっちゃ人気のやつじゃん! どこで買ったの?」
ほむら「……サンタさんに貰ったのよ」クス
さやか「まーたそんなこと言って~!」
さやか「別に親から貰えるからいいですよーだ!」
ほむら「何言ってるの? 親から貰うプレゼントは家計を圧迫するけど、サンタさんからのプレゼントは無
料なのよ?」
さやか「分からんこと言うなー」
さやか「(……やっぱり本気で言ってるのか?)」
ほむら「ま、信じないのなら強制はしないけど。せいぜい損してなさい」
まどか「ほむらちゃんったら、すっかりさやかちゃんをからかうのが楽しくなっっちゃったみたいだね」
さやか「(本当にからかってるだけなのか……?)」
さやか「――ってことなんですけど」
マミ「……」
さやか「確かに転校生、いちいちいいもの持ってるからなー」
マミ「……ねえ、美樹さん」
さやか「はい?」
マミ「ひょっとしたら、暁美さんのところにもサンタさんが来ているのかも……」
さやか「えっ」
QB「呼んだかい?」
マミ「人々の『信じる心』に支えられて存在する『サンタクロース』なるものがいる……これは正しい?」
QB「『信じる心』は希望のエネルギーだ。どんな奇跡を起こしても不思議じゃない」
マミ「そういう点では魔法少女とサンタクロースって似ているわね」
QB「そういう見方も出来るね。でも希望を求めた分、同量の絶望が撒き散らされるのは当然の摂理だ」
マミ「絶望……。! QB、こうは考えられないかしら」
QB「何だい?」
さやか「(即興で名前付けちゃうんだ……)」
マミ「『悪夢』は人々からサンタクロースを信じる心を奪っている……」
QB「希望と絶望は互いに打ち消し合う性質を持っている。そのような仮説は妥当だと言えるだろう」
マミ「つまり『悪夢』によって、成長した子どもはサンタを信じなくなり、その両親は自分たちがサンタの正体だと思い込む」
QB「興味深い考察だね。論理的に破綻はしていないよ」
さやか「……」
さやか「は、はい!」
マミ「サンタさんを信じる子っていうのにも色々いると思うの」
さやか「色々?」
マミ「わたしは……まあ普通にサンタさんを信じているわ。だけど中にはその力を利用する者もいる」
さやか「利用って……まさか……」
マミ「サンタさんを信じることによって自分に利益<<プレゼント>>が与えられることを知って……サンタさんを敢えて信じている」
さやか「そんな! サンタさんは子どもたちの夢なのに!」
マミ「悲しいけど、そういう子もいるでしょうね」
さやか「じゃあ転校生は……」
マミ「ええ。彼女も恐らくその一人」
マミ「何?」
さやか「あたし、謝らなくちゃいけない。昨日は信じるなんて言ったけど、正直半信半疑だった……」
マミ「美樹さん……」
さやか「でもあたし、信じるよ! あたしが信じることで『悪夢』を減らせるなら!」
マミ「大変だよ? クラスのサンタさんを信じてない子と話が合わなくなっちゃうよ?」
さやか「それでもサンタを信じるマミさんに、あたし、憧れてるんです」
マミ「ブフォッ」
さやか「? 大丈夫ですか?」
マミ「ごめんなさい、少し咳込んでしまったみたい。でもありがとう。他にもサンタさんを信じてくれる子がいて心強いわ」
さやか「ええ、一緒にサンタを守っていきましょう!」
マミさん本気でこういうこと言いだしそうなんだもの
ほむら「……サンタを信じるって決めたのね」
さやか「……」
ほむら「歓迎するわ。このネックレスは挨拶よ。これもサンタから貰ったの。受け取って」
さやか「……いらない」
ほむら「っ!?」
さやか「あんたたちとは違うサンタ信者になる……あたしはそう決めたんだ。
あたしだけは、自分の為にサンタを信じたりはしない」
ほむら「あなた……死ぬわよ」
さやか「? 何で?」
ほむら「いえ、雰囲気的に口走ってしまっただけよ。ま、勝手になさい」クルッ
さやか「……」
さやか「……杏子」
杏子「よ、今日も会うなんて偶然だな」
さやか「あたし、サンタを信じることにしたよ」
杏子「……」
さやか「恵まれた家庭で育ちながらサンタを信じてこなかったあたしが今更……都合がいいかな?」
杏子「なーに難しく考えてんだよ」
さやか「え?」
杏子「信じるって決めたんだろ? 逃げないって決めたんだろ? なら後は突っ走るしかないじゃん」
さやか「……ありがと、杏子」ヘヘッ
さやか「(あたし、忘れてた。サンタを信じてた頃の純粋な心を……)」
さやか「(これから取り返せるかな?)」
さやか「(とにかくサンタはあたしたちが守っていくしかないんだ)」
さやか「(……プレゼント、くれるのかな)」
さやか「(いやいや! あたしはプレゼントの為に信じるんじゃなくて……!)」
杏子「wwwwwwwwww」バタバタ
ほむら「杏子、笑いすぎよ」
杏子「だってwwwwww何でシリアスムードになってんだよwwwwww
あたしほとんどやることなかったし、マミ頑張りすぎだろwwwwwww」
マミ「ああいう設定考えるのって結構楽しいわね。もちろん魔法少女のシステムを参考にさせてもらったけど」
杏子「ある程度素でやってるとこあるよなwwwwwww」
マミ「?」
まどか「ほむらちゃんはすっかり悪役だね」
ほむら「美樹さやかに対しての悪役ならいくらでもなってやるわよ」
QB「で、もうこれは作戦成功なんじゃないかい?」
QB「半分?」
まどか「ネタばらしまでがドッキリです」キリッ
マミ「もうここまでくるとあのまま信じさせて上げた方が優しい気もするわね」
杏子「あいつどんな顔すんだろwwwwww」
突然ですが、今は11月です。
まどか「ま、今度のクリスマスでいいんじゃないかな」
ほむら「今から楽しみね」
さやか「……」ギンギン
さやか「(……眠れない)」
さやか「(寝てないとサンタ来ないんじゃないかな……)」
さやか「(羊が一匹……羊が二匹……)」
さやか「(五十六匹……六十……ん?)」
さやか「(どこまで数えたっけ)」
さやか「(あー、やばいぞコレは)」
シャンシャン……
さやか「!」
さやか「(何であたし寝たふりしてんだ……?)」
ゴソゴソ
「起きているんだろう?」
さやか「!」
「はは、別に怒ったりはしないよ。わたしのことを信じてくれて嬉しく思う」
さやか「(――サンタ!)」
「キミが喜びそうなプレゼントを持ってきた。目を開けて見てみるといい」
さやか「サンタさん!」ガバッ
さやか「……」
さやか「……CDラジカセ?」
ラジカセ「喜んでもらえたかな? CV:中沢でした~」
さやか「は?」
パチッ
さやか「(電気がついた……?)」
杏子「メリークリスマス」
さやか「……おい」
杏子「よっと、プレゼントだったな」
さやか「何やってんのアンタ」
杏子「心配すんな。この袋の中にちゃんとあるからさ」
さやか「いや、人の部屋勝手に入って、サンタのコスプレして……色々とツッコミが」
杏子「ほいよ」
さやか「……看板?」
さやか「」
杏子「……というわけで」
まどマミほむ「ごめんなさーい!!」
QB「僕の首に鈴をつけられるとは思わなかったよ」
さやか「」
杏子「つーわけで、一ヶ月ほど前のサンタの話は全部ドッキリで……」
さやか「いや、説明しなくていいよ。余計惨めになるから」
杏子「あ、そう?」
さやか「誰かの幸せを祈った分、他の誰かを呪わずにはいられない……わたしたち魔法少女ってそういう仕組みだったんだね」
杏子「お、おい……。何もそんなに絶望すること……」
さやか「あたしって、ほんとバカ」
さやか「っていうのは冗談だけど」
さやか「あああああああああ~~」ガンガン
まどか「さ、さやかちゃん! ベッドの柱に頭打ち付けるのやめなよ!」
さやか「あたしって、ほんとバカ! ほんとバカ! ほんとバカ!」ガンガンガンガンガン
ほむら「そうよ。ただでさえバカなのにもっとバカになったらどうするの」
さやか「なにをー!!」
マミ「まあまあ」
さやか「マミさんまで……」
マミ「美樹さん、ドッキリはごめんなさいだけど……プレゼントはあの看板じゃないの」
さやか「え?」
まどか「じゃ、出かけましょうか」
さやか「……ってここ、アンタの教会じゃない。ここでイエス様の誕生を祝えっての?」
杏子「まあそれもそうなんだけどさ」
QB「いーち!」
さやか「!?」
ほむら「に!」
マミ「さん!」
まどか「はい!」
♪~
さやか「! これは……」
♪~
さやか「(そういえば、恭介が退院してから一度も聴いてなかったっけ)」
さやか「(何だか話しかけるのが億劫で……)」
♪~
恭介「メリークリスマス、さやか」
さやか「恭介……」
恭介「鹿目さんたちがね、さやかが僕のヴァイオリンを聴きたがってるって言ってね。
クリスマスプレゼントに弾いてくれと言うものだから、喜んで引き受けたよ」
まどか「ティヒヒ、ちゃんとプレゼントになったかな」
ほむら「男で喜ぶんだから単純よね」
さやか「あんたら……」
さやか「……」
さやか「ありがと」
恭介「いえ、さやかには昔からヴァイオリンを聴かせてきましたから」
杏子「こいつのヴァイオリンがあればさやかに何しても許されるな!」
さやか「調子に乗るな!」ポコッ
杏子「あいた」
さやか「……まあ正直ドッキリかけられたのはショックだったし」
さやか「恥ずかしさで魔女化しかけたけど……」
さやか「音楽の力は偉大だね! 今はとてもいい気分」
ほむら「上条君の力は、じゃなくて?」
さやか「うっさい」
さやか「……まあ、これでいいよ」
まどか「じゃ、さやかちゃん。メリークリスマース!」
さやか「……」ニコ
さやか「メリークリスマス」
おわり
良かった、不幸なさやかちゃんはいないんだ
乙乙乙
Entry ⇒ 2012.06.22 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
ほむら「色気を手にいれたいわ」
さやか「…なんでそれをあたしに聞くの?」
ほむら「あなたって馬鹿だし無駄にスタイルいいからグラビアアイドルみたいじゃない」
さやか「グラビアアイドルがみんな馬鹿だって決まったわけじゃないだろ」
ほむら「馬鹿よ。あんなのみんな馬鹿だわ。胸ばかりに栄養がいってるから」
さやか「偏見でものを言うんじゃないよ…」
ほむら「大体下品じゃない。胸にあんな大きいのつけて。邪魔じゃない」
さやか「いや…そこまで言うほど邪魔だとは…」
ほむら「黙りなさい美樹さやか。巨乳には口を開く権利などないわ」
さやか「…………」
ほむら「大体おっぱいなんて見てなんになるっていうの!?馬鹿じゃないの!?これだから男は!」
さやか「…………」
ほむら「黙ってないでなにか言いなさいよ美樹さやか!」
さやか「えぇっ…?」
ほむら「大事なのはおっぱいじゃなくておっぱいの先にある心(ハート)でしょ!?」
さやか「なんかいいこと言ってるけどただの僻みじゃない?」
ほむら「…………」ハシッ
さやか「こら。耳を塞がない」
ほむら「意味わかんない。スレンダーなグラビアアイドルがいたっていいじゃない」
さやか「やっぱり男はおっぱいに色気を感じるんでしょうよ…」
ほむら「魅力がわからないわ」
さやか「そう?やわらかいしふかふかで気持ちいいじゃん」
ほむら「美樹さやか…あなた親父臭いわよ?」
さやか「なんでよ。転校生にだってついてるでしょぉ?」ペタッ
ほむら「…………」
さやか「……あれ?今日はおっぱいついてないの?」サワサワ
ほむら「いつもよ!!」
ほむら「うるさい。セクハラ親父に人権などない」
さやか「しょうがないじゃんか…わかりやすい女の色気といえばおっぱいになっちゃうんだよきっと」
ほむら「胸がなくても色気を手にいれたいのよ」
さやか「うーん…男はやっぱ胸ばっか見てるんじゃないのかな」
ほむら「別に男に受ける色気は必要ないわよ?」
さやか「えっ?」
ほむら「女の子に受ける色気を手にいれたいの」
さやか「それは更に難しいんじゃないかな…」
さやか「えっと…考えたことないんだけど」
ほむら「じゃあ逆に考えてみて頂戴。あなたは普段、どうやって色気を出しているの?」
さやか「……え?」
ほむら「意識して色気を出してるところがあるでしょう?」
さやか「ごめん…意識したことない…」
ほむら「うそっ!?こんなにエロいのに!?」
さやか「エロくねーよ!」
さやか「人を尻軽女みたいに言うんじゃないよ!」
ほむら「私の調べでは、あなたのような馬鹿女はよくゲスな男に食い物にされているわ」
さやか「どんだけ偏った見方してんのよ…」
ほむら「はぁ…じゃああなたに色気を聞いても無駄かしらね」
さやか「…転校生はあたしのどこに色気を感じたわけ?」
ほむら「は?」
さやか「だって…あたしのこと…その…エロいって言うから…」
さやか「……ど、どうなのよ…?」
ほむら「…あなた、よくそんな恥ずかしいこと堂々と言えるわね」
さやか「え…」
ほむら「自分のどこに色気を感じるかって?……はぁ。どこまで自意識過剰なのよ美樹さやか。だからあなたは馬鹿女だっていうのよ」
さやか「あ、あんたがあたしのことエロいって言ったんだろ!?」グイ
ほむら「は?なにそれ?そんなの全然覚えてないわ。聞き間違いでしょ?」プイ
さやか「シラをきるなよ!答えろ!こっちも恥ずかしいんだぞ!?」グイグイ
ほむら「わ、私は別に恥ずかしくないし。なに言ってるんだかさっぱりわかんない」プイプイ
ほむら「それをあなたに言われたくないわね。この馬鹿」
さやか「一言多いのよ。そもそもあんたは誰に色気を出したいわけ?ま、どうせ…」
ほむら「まどかよ」
さやか「だよね」
ほむら「普段まどかに一番近いあなたならまどかの好みもわかるんじゃないかと思って。馬鹿だけど」
さやか「あたしに対して馬鹿って言わなきゃいけないルールでもあんの?あんたの中では」
ほむら「あとあなたが一番エロスに精通してるんじゃないかと思ってね。エロいし」
さやか「またエロいって言った!」グイ
ほむら「言ってないし」プイ
ほむら「あなた達みたいな中学生ならよく恋愛の話もするでしょう?」
さやか「あんたも中学生じゃん…」
ほむら「で、どうなの?そもそもまどかは男に興味があるの?それとも女の子?」
さやか「普通に考えて男だと思うけど…」
ほむら「ちょっととり付けてくるわ」
さやか「何を!?やめてよ友達がオカマとかやだよあたし!」
さやか「そ、そう…よかった。てか男に対して辛辣だね…」
ほむら「汚物は消毒すればいい話だもの…くすっ」
さやか「聞かなかったことにしよう。話を戻すけど、まどかは強引なのに弱いよ」
ほむら「強引?まどかに強引にしていいというの!?イケナイことしていいの!?」ハァハァ
さやか「お、汚物はお前だ!ちょっと落ち着いてよ!」
さやか「ほら、あたしの嫁になるのだーとか冗談言って抱き締めたりするんだけど嫌がったりしないじゃん?」
ほむら「あなたがどれだけ愚かで馬鹿なことをやってもまどかは優しいから許してくれるでしょうね。死ね」
さやか「……実はまどか、喜んでるかもしれない」
ほむら「ん?」
さやか「あたしが強引に抱き締めたりとかするとすごく笑顔になるの。だからまどかはそういう引っ張ってくれる人が好きなんだと思うよ」
ほむら「……のろけ?」カチャ
さやか「ひぃ!?ち、違う違う!銃を下ろしてください!」
ほむら「…男の色気ってことかしら?」
さやか「うーん、ちょっと違う気もするけどそういうことになるかな」
ほむら「…男に、色気…?これに関してはいくら私の頭がよくても理解不能だわ」
ほむら「頭の悪い馬鹿の美樹さやか。男の色気ってなに?」
さやか「…よく耳にするのは首筋とか手の甲。あとは身体の大きさ、とかかな」
ほむら「…………?」コクン
さやか「ほら、身体とか大きくてたくましい人に抱き締められたりすると落ち着くんじゃない?」
ほむら「…あんな毛むくじゃらな腕にだ、抱き締められ…う、気持ち悪い…」ゾワゾワ
ほむら「何故わざわざかたい胸にドキッとなるの?やわらかい胸のほうが寝心地いいじゃないの」
さやか「枕にすること前提に話すんじゃないよ」
ほむら「何故?枕はやわらかい。おっぱいはやわらかい。ならばおっぱいは枕になるじゃない」
さやか「じゃあ転校生のおっぱいは枕になれないね」
ほむら「あなたのおっぱいを切り落として枕にするわよ?」カチャ
さやか「は、話せばわかる!だから銃を下ろすんだ!」ビクッ
さやかは富士山
ほむらは
羽田空港C滑走路?
ほむら「ペロモン?」
さやか「男の人の匂いを嗅ぐと落ち着く…とか」
ほむら「やめてっ!そんなの考えただけで意識を失いそうだわっ!」
さやか「どんだけ嫌いなのさ…」
ほむら「男の体臭とか…お、おろっ…」
さやか「は、吐くなよ?絶対吐くなよ?」
ほむら「も、もう駄目…女の子の香りを嗅ぎたい…癒されたい…」クラクラ
さやか「…ちょっと離れてるね」サッ
ほむら「なんで離れるのよ。大丈夫大丈夫。獲って食いやしないわよ。おいで」
さやか「それは獲って食う奴の台詞だよ!」
さやか「…………」シクシク
ほむら「男の色気なんて男によるステマよ。汚ならしい男たちによる印象操作に女子が惑わされているだけ」
さやか「…………」シクシク
ほむら「ちょっとぉ。いつまで泣いてるのよ。あなたごときに罪悪感が沸いちゃったらどうするのよ」
さやか「そこは沸かせろよ…」シクシク
ほむら「第一、まどかが男らしさに惹かれてるとしても私は女の子なんだから意味がないじゃないのよ」
さやか「え?かたい胸板は一緒でしょ?」
ほむら「」バキュン!
さやか「ぎゃあ!?ほ、ほんとに撃った!?」ビクッビクッ
さやか「転校生には…女の子の女の子たる武器が足りないような…」
ほむら「あ?」
さやか「あ、いやなんでもないです!ごめんなさいでした!」ビクッ
ほむら「胸がないからなんだっつーのよ。胸がないまどかはあれだけ可愛いのよ?」
さやか「まどかは可愛い。けど色気があるかどうかは…」
ほむら「胸と女の色気は関係ないわ。胸の大きいのがもう一匹いるけど」
さやか「マミさん?マミさんは…色っぽい身体付きはしてるけどあんまり色気は感じないかなぁ…?」
ほむら「ただ、胸が控えめな杏子は妙に色気がある気がするのよ」
さやか「あ、それわかるよ。うんわかる」
さやか「ヒントはそこにあるんだね?」
ほむら「じゃあさっそく呼んでみましょうか。美樹さやかお願い」
さやか「よし!へいっ!杏子カモンッ!」
杏子「誰が杏子だ!?あたしの名前は杏子だ!」
ほむら「あなたの名前は杏子でしょう?」
杏子「杏子だっ!」
さやか「まぁまぁ。ロッキーあげるから機嫌直してよ」
杏子「お、悪いな…えへへ…」
ほむら「今あなたの話をしていたのよ」
杏子「む…わ、悪口とかじゃねーだろうな…?」
さやか「いや杏子は色っぽいなーってさ」
杏子「ぶっ…な、なんだよそれ!?」
ほむら「あなたはなんか雰囲気が色っぽいのよね。雰囲気エロスね」
杏子「ひ、人を痴女みたいにいうなっ!」
ほむら「援助されちゃってるの?」
杏子「誤解を生むようなこというな!」
さやか「ほんとだよ。どうしてこうなったんだよ」
ほむら「あなたも同意したじゃないの」
杏子「さやかも…?や、やめろよそんな目で見るの…恥ずかしいだろ…」モジモジ
さやか「この杏子はどう?転校生」
ほむら「大いにそそるわ」ハァハァ
杏子「視線が怖いんだが…」
ほむら「そうね。このホットパンツとかポイント高いわ」
杏子「え、や、なんでだよ…スカートとかのほうが色っぽいんじゃないの…?」
さやか「ボーイッシュなはずのホットパンツだから色っぽいんだよ」
ほむら「自覚なしってのもいいわ。エロい」
杏子「え、えろくなんか、ない…///」モジモジ
さやか「うわぁ…抱き締めたいな」
ほむら「普段強気な娘がいじらしくなるのってどうしてこうも胸にくるのかしら」ハァハァ
杏子「今日のお前らは絡みづらいよ…」クスン
ほむら「わかるわ。あれはあれでいいものよね。エロくて良い」
さやか「あんたさっきからエロい目でしか見てないな」
ほむら「そういえば赤色は興奮色よね。そこも関係しているのかもね」
杏子(な、なんだと…あの格好、えっちな見られてたのかよ…)
ほむら「エロい娘が着る衣装はたとえ着ぐるみでもエロく見えるものなのよ」
さやか「それはあんたがエロいだけだ」
杏子「くっそー…あんなにかっこいいのに…なんであの衣装のかっこよさがわからないんだ…」
さやか「落ち込まないの。はいロッキー」ヒョイ
杏子「…あーん」パク
杏子「おいしいっ!」
さやか「どうしたの?」
ほむら「…エロい女の子の法則を見つけたわ」
さやか「おぉ!」
ほむら「あなたや杏子が妙にエロく見えるのは普段が生意気で可愛げのない性格だからよ!」
さやか「おっと…またいきなり罵るね転校生は」
杏子「あたしはえろくねーよ!ばーか!」
ほむら「あぁ…あなたたちみたいなのを無茶苦茶にしてやりたいわ…」ゾクゾク
さやか「」ビクッ
杏子「」ビクッ
ほむら「まどかや巴さんに抱くのは性欲よりも保護欲とかのほうなのよね」
さやか「それはあんたみたいなサディストだけの発想でしょ…」
さやか「あとはその色気にどれだけ近付けるかだよね」
ほむら「どこを直せばいいかしら?」
さやか「まぁ服については着替えれば問題ないし…」
さやか「生意気で可愛げがないところも転校生はクリアだね。おまけに愛想もないし」
ほむら「あなたはまた後日調教してあげるとして…」
さやか「!!」
杏子「強く生きろ」
ほむら「服は杏子から剥ぎ取るわ」
杏子「!!」
さやか「ん…?そういえば杏子の色気ってのは転校生から見た前提の色気でしょ?」
ほむら「それがなにか」
さやか「まどかはマゾだよ」
ほむら「!!」
さやか「つまりサドから見た色気はマゾから見た色気とは真逆ってことだよ!」
ほむら「!!」
杏子「いや、その理屈はおかしい」
ほむら「なんてこと…!じゃあ私が今まで考察したことは全部無駄だったってことなの…!?」
さやか「いや、そうともいえない」
ほむら「え…?」
さやか「つまり、杏子やあたしとは真逆になればいいのだ!」
ほむら「!!」
さやか「更に萌え要素として眼鏡をかけてあげよう」
さやか「更に更に清楚なイメージとしてみつあみにしてあげよう」
さやか「どや!?」
メガほむ「…………ど、どう…かな…?」
さやか「完璧だ!可愛くなった!」
杏子(色気からは離れたような気がするぞ)
さやか「それならまどかもきっとメロメロさ!」
メガほむ「そ、そうですか!?」
さやか「もちろんさ!」
メガほむ「嬉しい…!私、変われたんだ…!鹿目さんの望む私に!」
さやか「あぁ!その通りさ!ただしまどかはあたしの嫁だけどね!」
ほむら「死になさい」バキュン!
さやか「が…はっ…!」ドサッ
杏子「さ、さやかぁー!」
メガほむ「あ、あの…鹿目さん…」
まどか「え…?ほむらちゃんなの?」
メガほむ「うん…どう、かな…?」
まどか「きゃー!可愛い!」ギュッ
メガほむ「ひゃっ…///」
まどか「ほむらちゃんって眼鏡かけるんだね!」
メガほむ「うん…似合わない…かな…?」
まどか「ううん!すっごく可愛いよ!てぃひひ!」
メガほむ(鹿目さんが…私にメロメロになってる…!)ドキドキ
メガほむ(色気、ついたみたい…!)
終わり
さやか「そういえば聞いてないことがあるんだけど」
ほむら「なによ」
さやか「結局転校生があたしのことエロいって言ってたのはどこなのよ?」
ほむら「お尻にっ!決まってるじゃないっ!」
さやか「!?」
ほむら「あなたの魅力はなんといってもお尻よっ!それはなにがあっても揺るがない絶対!
脇?へそ?胸ぇ???そんなのは美樹さやかの魅力の端末に過ぎないわ!
美樹さやかの主軸とも言える、美樹さやかの存在を構築してるのはなんたってお尻よっ!
お尻があるから輝ける!お尻が光り輝く!そして轟け!世界に届け!美樹さやかのお尻!」
さやか「…………」
終わり
お疲れ様でした
さやかちゃんのおしりナデナデ
Entry ⇒ 2012.06.19 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
さやか「魔法少女たちはみんなあたしの嫁になるのだ~!」
まどか「はい!」
さやか「え?」
まどか「結婚式はいつにしよっか?さやかちゃん!」
さやか「ま、まじ?」
まどか「まじ!」
まどか「さやかちゃんが嘘つくわけないって私知ってるよ!」
さやか「うっ」
まどか「まさか正義の味方さやかちゃんが結婚詐欺なんてするわけないよね!」
さやか「詐欺っ!?これ詐欺だったの!?」
まどか「実はさやかちゃんと結婚すること、パパやママにも話したんだぁ///」
さやか「」
まどか「驚いてたけど祝福してくれたよ。さやかちゃんなら任せられるって///」
さやか「」
まどか「クラスのみんなも祝福してくれたよ!」
さやか「みんなにも喋ったのかよ!?」
上条「お幸せにー!ひゅーうっ!」
まどか「ありがとーありがとー!」
さやか「」
さやか「え…あびぃっ!?」バターン
まどか「きゃー!さやかちゃんさやかちゃん!」
ほむら「あなたがまどかと結婚なんて認めないわっ!大体女同士で結婚なんてできないのよ!?」
仁美「ぶー!ぶー!」
上条「引っ込めーっ!」
ほむら「」バンッ!
上条「うっ!」
中沢「上条が撃たれたっ!救急車ー!」
まどか「さやかちゃん大丈夫?」
さやか「あご外れそうになったよ…」
まどか「私たちのこと、ほむらちゃんだけ認めてくれなくて…」
まどか「他のみんなは応援してくれるんだけど…」
さやか「転校生のほうがまともだと思うんだけど…」
まどか「でもきっとほむらちゃんは今は戸惑ってるだけだよ。落ち着いた頃には認めてくれるよ」
さやか「う、うん…」
さやか(かといって恭介にふられたから好きな人がいるわけでもないんだけど…)
ホワンホワンホワーン
回想
仁美「恨みっこなしで一緒に告白しましょう!」
さやか「よ、よしきた!」
仁美「好きです上条くんっ!」
さやか「こ、ここ恋人になってくださいっ!」
上条「すまない…僕は百合しか認めていないんだ…」
仁美「!!」
さやか「!?」
恭介「それは僕にも含まれる!正直イチャイチャしたいしおっぱいも揉みたい!」
さやか「うわ…」
恭介「そのジレンマを解消するため、僕の出した結論は…」
仁美「ゴクリ」
恭介「そう!僕が女の子になればいいのさっ!」
仁美「アリですわ」
さやか「なんて不純な動機なんだ…」
上条「女の子になった時の練習もしてるよ」
上条「さやか、タイが曲がっていてよ?(裏声)」
さやか「気持ち悪い!」
上条「だから僕とイチャイチャしたいのなら…僕が女の子になるまで待っていてほしいんだ」キリッ
さやか「百年の恋も覚めた」
仁美「恋人は無理ですけど…上条ちゃんとは素敵なお友達になれそうですわ」
ホワンホワンホワーン
さやか(まどかはこんなに慕ってくれてるし…全部あたし次第なわけだ…)
まどか「新婚旅行はどこにしよっか?私の家?それともさやかちゃんの家?」
さやか「まどかは手軽だね」
まどか「だってお金ないし」
ほむら「…………」コッソリ
ほむら(私の願いはまどかの幸せ…でもよりによって相手が美樹さやかだなんて…)コッソリ
ほむら(美樹さやかの態度ははっきりしないし、あいつまどかを幸せにする気あんのかしら?)コッソリ
ほむら(…しばらく様子を見ましょう)コッソリ
まどか「私が奥さんかな?それともさやかちゃん?」
さやか「どっちも奥さんじゃね?」
まどか「さやかちゃん帰ろー」
さやか「うん」
仁美「わたくしは上条くんのお見舞いにいってきますわ」
さやか「あいつも何度も入院して大変だね」
仁美「ですわね」
病院
仁美「上条くん。例のブツですわ」
上条「うおぉぉぉ!この写真はっ!さやかと鹿目さんが保健室でイチャラブ!」
上条「十枚もらおう!いくらだいっ!?」
仁美「十万円で」
上条「あっはっはっは!これだから僕の性転換費用が全然貯まらないんだよ!あっはっはっは!」
さやか「まどか、あんまりくっつかれると歩きにくいよ」
まどか「夫婦ならこれくらい当然だよ~」
さやか「ははは…」
まどか「にへ~」ギュー
さやか(やべーな。まどか超可愛いじゃんか)
さやか(まどかを悲しませたくはないよなぁ…)ナデナデ
まどか「くすぐったいよ…ふふ」ギュー
ほむら(ま、まどかがとろけてるわ…なんて幸せそうな顔…)コッソリ
ほむら(とりあえず写真ね)パシャパシャ
まどか「え」
さやか「ごめんまどか!先帰ってて!」
まどか「えー…私さやかちゃんと一緒に帰りたいよ」
さやか「すぐ帰ってくるから!家で待ってて!」
まどか「あ、なんかお仕事にいく旦那さんみたい!」
さやか「へ?そ、そうかな」
まどか「やっぱりさやかちゃんが旦那さんだね!じゃあ奥さんの私はさやかちゃんの帰りを待ってるよ!」
さやか「わかった!」
まどか「いってらっしゃーい」ヒラヒラー
ほむら(?…美樹さやかと別れたみたいね)コッソリ
ほむら(まぁ私は引き続きまどかの写真を)パシャパシャ
さやか「はぁはぁ…いた、魔女!」
杏子「あっ?さやか来たのかよ!」
さやか「杏子じゃんか。じゃあ加勢するよ!」
杏子「ひ、必要ねぇよ!」バッ
杏子(あいつが見てるんなら…格好いいとこ見せないとな…)
さやか「無茶すんなよ…あっ…」
杏子「うわっやば!」
さやか「杏子!」
さやか「だから無茶すんなって言ったのに」パァ
杏子「悪かったよ…」
杏子(はぁ…かっこわるいとこ見せちまったなぁ)
さやか「気を付けてよね?…あたしにとって杏子は大事な人なんだからさ」
杏子「え…それどういう…」
さやか「これからはいつでもあたしを呼んでよね?一緒にいてあげるから!」
杏子「い、いつでも…?」
さやか「そっ!いつでも!」
杏子「……本当?」
さやか「嘘なわけないじゃん!」
杏子「…………」
さやか「…え?」
杏子「だから…あたしといつも一緒にいてくれよ…!」
杏子「ご飯食べるときも魔女と戦うときも…ね、寝るときも…」
さやか「…えーと…」
杏子「なっなんだよ!嘘じゃないっていっただろ!」
さやか(危ないときに呼び出してって言ったつもりだったんだけど…あたしまた変なこと言っちゃった!?)
杏子「だ…だめ…なのか…?」
さやか「い、いいよ!いいに決まってんじゃん!だから泣くなって!な?」
さやか「も、もちろん!」
さやか(嫁になるとか結婚するとかじゃないし…大丈夫だよね?)
杏子(やった…さやかに告白できた…!)
杏子「じゃあ住むところも一緒だよな!」
さやか「えぇっ?いやそれは…うちは無理だと思うし…」
杏子「じゃああたしの泊まってるホテルにこいよ!な!」
さやか「それも無理だと思うし…どうしようか…」
まどか「よいしょ…」
知久「上手じゃないかまどか」
まどか「えへへ…私が奥さんになるんだから料理くらいできるようにならないとね」
まどか(さやかちゃんが帰ってくるのが楽しみだなぁ…私の手料理に喜んでくれたりするかな…)
まどか(さすがあたしの嫁だ!ちゅっ!…みたいな感じかな)
まどか「てぃへへへ…」
ピンポーン
知久「誰かきたね」
まどか「はーいっ!さやかちゃーん!」ガチャンコ
さやか「や、やぁ…」
杏子「…よー」
まどか「…杏子ちゃん?」
さやか「魔女と戦うとき杏子と会ってね…」
まどか「…で、ついてきちゃったの?」
杏子「あたしとさやかは一緒だからな」
まどか「!?」
さやか「ハハハハ…」
杏子「ほんとはさやかと二人っきりがいいんだけど…今だけはまどかもいることを許してやろう」
まどか「!?」
さやか「ハハハハハハ…」
さやか「いただきまーす…」
杏子「いただきますっ」
まどか「…いただきます」
タツヤ「いははきまふ」
杏子「もぐもぐ…うまい!うまいなさやか!」
さやか「う、うん!これまどかが作ったの?おいしいよこれ!」
まどか「そ、そう?頑張って作ったんだぁ…えへへ…」
杏子「…おいさやか。あたしも褒めてくれ」
さやか「へ…どこをさ…」
杏子「まどかばっかりさやかに褒められてずるいっ」
さやか「えー…」
まどか「…さやかちゃんのために作ったのに杏子ちゃんがどんどん食べてく…さやかちゃんのなのに…」ブツブツ
タツヤ「まろか怖っ」
知久(なんか雰囲気悪いな…女子学生に囲まれた食卓なのに…)
杏子「よし、じゃあもう帰るかさやか」
まどか「え、ちょっとまってさやかちゃん!今日は泊まってかない?」
杏子「無理だよなさやか。夜も遅いし」
まどか「夜道は危ないよさやかちゃん。今日は泊まってこうよ」
杏子「親も心配するし、やっぱ帰るよなさやか」
まどか「私、ちゃんとさやかちゃんのママに電話したし、泊まるよねさやかちゃん」
さやか(発言する隙がない…)
まどか「さやかちゃん!お風呂沸いたよ!」
さやか「へ?あたしが一番?」
まどか「当然だよ…だ、旦那様だから…///」
さやか「え、あ、でも知久さんに悪いんじゃ…」
まどか「パパは最後でいいって。女子学生が3人入った後の残り湯に浸かりたいんだってさ」
さやか「…………」
杏子「そういうことなら先に入っちまおうぜさやか」
まどか「杏子ちゃんはまだ入っちゃだめだよ!」
杏子「あたしとさやかは風呂入るときも一緒なんだー!」
まどか「じゃあ私だってさやかちゃんのお背中お流し致したいもんっ!」
さやか「お風呂くらいゆっくり入らして…」
まどか「お、お風呂あがりのさやかちゃん…」ドキドキ
杏子「いい匂いする…」クンクン
さやか「か、嗅ぐなっ。次、まどかか杏子入ってきなよ」
まどか「…杏子ちゃん先にどうぞ?」
杏子「いやまどかが先にいってこいよ」
まどか「わ、私は後でいいよ。杏子ちゃん魔女退治で汗かいてるでしょ?」
杏子「いやあたしは突然お邪魔した立場だし、あんたより先に入るのは申し訳ないだろ」
まどか(う…お風呂あがりのさやかちゃんと二人っきりになれるのにぃ…)ドキドキ
杏子(まどかの家にいる以上、さやかにくっつけるのは今だけ…)ドキドキ
知久「二人とも。今お風呂に入ればさやかちゃんの残り湯を独り占めできるよ?」
まどか「」ガタッ
杏子「」ガタッ
さやか「おいっ!」
さやか「あたしはどこで寝ればいいの?」
まどか「…私のベッドで一緒に寝よ?」
さやか「あ、あはは…なんか照れるなぁ」
杏子「あたしは?」
まどか「押し入れ」
杏子「ドラえもんかよ!?いやだ!」
まどか「じゃあどこがいいの?」
杏子「あたしもさやかとベッドで寝る」
まどか「3人はさすがに狭いよ」
杏子「?あたしとさやかの2人だろ?」
まどか「むむむ!私のベッドなのにー!」
俺のベッドかな
一緒に寝てやるよ独りぼっちは寂しいもんな
まどか「え…」
杏子「ちょ…」
さやか「いやあたしってドラえもんにぴったりじゃん?青いし。…よいしょっと」ガラッ
まどか「いや…あの…さやかちゃん…」
杏子「えと…待てよさやか」
さやか「では!良い夜を!」ピシャッ
まどか「……」
杏子「……」
まどか「…寝よっか」
杏子「…うん」
さやか(やべー!押し入れの中真っ暗でこえー!これじゃ眠れないよー!)ガタガタ
さやか「さやさや…」グースカピー
まどか「さやかちゃんの寝顔可愛いなぁ…」
さやか「むにゃ…もう食べられないよ…」グースカピー
杏子「なんつーベタな寝言だよ…可愛いなおい」
さやか「ん…うんー?」パチクリ
まどか「あ、おはようさやかちゃん」
さやか「うひゃっ!?なんで二人とも押し入れ覗きこんでんのっ!?」ビクッ
まどか「そりゃあ覗くでしょ。ねぇ?」
杏子「覗く覗く。なぁ?」
さやか「その一体感はなんなのよ…」
タツヤ「うまいうまい」
まどか「おはようパパー」
知久「おはよう。ご飯出来てるよ」
さやか「ありがとうございまーす!」
杏子「うまそーだな」
知久「制服もちゃんと洗って用意しておいたよ。勿論パンツも」
さやか「…そ、そうですか…」
まどか「さすがパパ!専業主夫っ!」
知久「いやぁほんと専業主夫やっててよかったよ」
さやか「おうっ」
杏子「よしきたっ」
まどか「…杏子ちゃんは学校ないでしょ」
杏子「なにいってんだ。さやかが学校いくならあたしもついてく」
まどか「にゃ!」
さやか「それはさすがに…」
杏子「なんとかなるだろ」
和子「あら?今日はなんだか1人知らない子がいるような…」
杏子「気のせいだろ」
和子「…そうかしら?まぁいいや」
杏子「なんとかなったな。なんか席も1つ空いてたし」
さやか「それ入院した恭介の席…」
まどか「さやかちゃん!はいあーん!」
杏子「こっちださやか!あーん!」
さやか「い、いやまどかのおべんとはともかく、杏子のお菓子って…」
杏子「ん?腹に溜まればいいだろ?」
さやか「ちゃんと栄養あるやつ食べようよ」
杏子「んー…菓子パンでも買ってくるかぁ。よしいくぞさやか」
さやか「え、でもまどかが…」
杏子「あたし達はずっと一緒だろ?ほらいこう!」
まどか「あ…さやかちゃん…」
さやか「ご、ごめんまどか。すぐ戻ってくるね…」
まどか「……うん」
杏子「だ、だって…さやかが近くにいないと不安になるだろ…」
さやか「この様子だとトイレにまでついてきそうで怖いな」
杏子「ついてくに決まってるだろ」
さやか「お、おいおい…あんたは寂しいと死んじゃうウサギちゃんかよ」
杏子「…だってお前がまどかに取られちゃうかもって思うと」
さやか「え?」
杏子「…だってお前はあたしの恋人だろ…?」カァッ
さやか「えぇっ!?」
杏子「…えぇっ!?」
さやか「い、いや…いつから…?」
杏子「昨日あたしの告白オーケーしてくれただろ!?忘れたのかよ!?」
さやか(あれ告白なの!?嘘っ!?世間の告白の仕方はこんなにバリエーション豊かなの!?)
さやか(う、浮気じゃん!?)
さやか「うわぁぁぁ!あたしって奴はぁぁぁ!」
杏子「お、おいさやか!?」
さやか「なんて最低なことを…!うわぁぁぁー!」
杏子「お、落ち着けよさやか…あたしなんか嫌なこと言ったかな!?」
さやか「うぅ…ごめん…1人にして…」
杏子「え…」
さやか「ごめん杏子!」ダッ
杏子「あ、さやか…!」
さやか「浮気って犯罪になるのかな…あたしってもしかして悪人…?」
さやか「うわぁー!あたし死ねよ!うぅぅぅ…」グスッ
ほむら「…口を閉じなさい美樹さやか。うるさいわよ」
さやか「て、転校生…」グスグス
ほむら「見てたわよ…昨日から」
さやか「…え?」
ほむら「まどかの家の窓から全部見てたわ」
さやか「え……ストーカー…」
ほむら「」バチンッ!
さやか「いだっ!」
さやか「うん…」
ほむら「まどかを幸せにしないどころか悲しませてどうするのよっ!」
さやか「うん…!」グスッ
ほむら「あなたには心から幻滅したわ。もう死んだらどうなの?」
さやか「…お父さんお母さんごめんなさい…」チャキ
ほむら「ちょっ!?ちょちょちょちょっとぉっ!?」バシッ
さやか「あうっ…」カランッ
ほむら「ほ、ほ、本気で死のうとしないでよ!?びっくりしたじゃない!!」ドキドキ
ほむら「ば、ばかっ!命は大事にしなさい!」
さやか「うぅ…」
ほむら「はぁっ…あなたは極端すぎるのよ…悪いことに潔癖というか…」
さやか「だって…」
ほむら「…さっきは私も言い過ぎたわよ…婚約っていってもあなた達はまだ子供じゃないの。そんなに重く考える必要はないと思うわよ」
さやか「…転校生ぇぇ…」
さやか「…だよね…」
ほむら「どうするの?」
さやか「…やっぱりまどかか杏子のどちらかを選ぼうと思う。1度結婚とか告白とかオーケーしちゃったけど、どっちもと恋人になるなんて間違ってるよ」
さやか「断ったほうには…絶対に嫌われちゃうけど…あたしが悪いんだもん。しょうがないよ」
ほむら「…あなたって基本馬鹿のくせに変に真面目なのね。ちょっぴり見直したわ」
さやか「だってこれ以外の選択肢がないじゃん」
ほむら「ハーレムって発想は?」
さやか「ないっ!」
まどか「あ、さやかちゃん!おかえりなさいっ!」ニコッ
さやか「た、ただいま!」
まどか「えへへ…この挨拶やってみたかったんだ…///」
さやか(…なんて乙女なんだまどか…!愛でたくなるだろ…!)
まどか「あれ?杏子ちゃんは?」
さやか「え、帰ってきてないの?」
まどか「うん」
さやか「そ、そっか…探してきた方がいいかな」
まどか「…うん、そうだね。杏子ちゃん喜ぶと思う」
さやか「まどか、何度もごめん…」
まどか「気にしないで。杏子ちゃんだって私と同じくらいさやかちゃんのこと好きみたいだし…」
さやか「ありがとうまどか」
さやか「どこいっちゃったんだろ…杏子…」
さやか「あーもー…あたしってほんと馬鹿なんだから…」
杏子「…………」
杏子「久しぶりに学校いったけど、楽しかったな…」
杏子「あたしもまどかみたいにさやかと通えればよかったんだけどな…」
杏子「…さやかに、1人にしてって言われちゃったな…」
杏子「やっぱあたしうざかったかな…さやかにフラれちゃった…」
杏子「……ごめんなさやか…」
まどか「結局杏子ちゃん見つかんなかったの?」
さやか「うん…」
ほむら「もう美樹さやかのことなんて嫌いになったんじゃない?」
まどか「杏子ちゃんがさやかちゃんのこと好きじゃなくなるなんて私には…」
ほむら「じゃあ諦めたんじゃないの?どっちにしろよかったじゃない美樹さやか」
さやか「え?」
ほむら「わざわざあなたから振る必要がなくなったじゃない」コソッ
さやか「…別に杏子を選ばないって決めたつもりはないんだけど…」コソッ
さやか「てかあんたはあたしとまどかが結婚してもいいの?」コソッ
ほむら「私はまどかが幸せになればそれでいいし、あなたがまどかを選ばなかったとしても私が幸せにするからどっちでも同じよ」コソッ
さやか「へ、へー…」
まどか「…ぶー。二人でこしょこしょ話はやめてよう」
まどか「……でも学校の外にいるんじゃ探しようが…」
ほむら「杏子のいきそうな所を探してみれば?」
さやか「杏子の行きそうな所って……だめだ。食べ物屋くらいしか思い付かん」
ほむら「杏子に詳しい人に聞けばいいじゃない」
さやか「杏子に詳しい人…………ふむ」
ピンポーン
マミ「はーい」
さやか「お邪魔しまーす」
さやか「マミさんとお話したいことがあって…」
マミ「私と?」
さやか「はい。マミさんは頼りになりますから」
マミ「そ、そうかな?えへへ…」
さやか「突然来ちゃいましたけど大丈夫すか?」
マミ「大丈夫ー!さ、入って入って!」
QB「やぁさやかじゃないか」
さやか「あれ、QBいたんだ」
QB「マミのいるところにこのQBあり、さ」
さやか「どもです。おかまいなく」
QB「僕にもよろしく頼むよマミ」
マミ「はいはい」
QB「…で、今日は何のようでここにきたんだいさやか。マミと僕の午後のひとときを邪魔をしていいほどの用事かい?」
さやか「うん…
QB「わかったよ。この僕にいってみな?人生の大先輩である僕がなんでも助言してあげよう」
さやか「いや、QBに用事はないから」
QB「…………」
マミ「お待たせ。はい、お茶とケーキよ」
さやか「わぁっ!おいしそう!」
マミ「ふふ、喜んでもらえてよかった!」
QB「…………マミ?マミ?僕のこれはなんだい?」
マミ「水道水とキャットフードよ?」
QB「…………」
さやか「めちゃうまっすよ。マミさんはお菓子作りも完璧で羨ましいなぁ」
マミ「やだもう…照れちゃうわ」
QB「……」モシャモシャ
マミ「QBもおいしい?」
QB「も、もちろんさマミ!マミが汲んでくる水道水は何よりも美味だよ!」
マミ「水道水は誰が汲んだって同じでしょ?」
QB「…………う、うん」
さやか「…はっ?こんなことをしてる場合じゃないんですよマミさんっ!」
マミ「ほぇ?」
さやか「杏子が大変なんですよ!」
マミ「な、なんですって!?」
さやか「助けにはいかなくていいですけど…」
マミ「助けにいかなくていいのね!?じゃあピンチではないの!?」
さやか「いや…ピンチなのはピンチかもです」
マミ「やっぱりピンチなのね!?」
さやか「あとあたしの方もピンチかもです」
マミ「美樹さんもピンチなのね!?助けなきゃ!」
さやか「いや助けなくていいです。話を聞いては貰いたいですけど」
マミ「話を聞けばいいのね!?私に出来ることはある!?」
さやか「座ってください」
マミ「はいっ!」ペタン
さやか「んーと…なにから話せばいいのか…」
マミ「へぇ…鹿目さんは美樹さんのお嫁さんだったのねぇ…」
さやか「いやまだお嫁さんではないですけども」
マミ「え?お嫁さんじゃないの?なら美樹さんの言ってること間違ってるじゃな~い」
さやか「まぁ、はい。冗談で言ったつもりでしたので…」
マミ「え?冗談なの?どうして?」
さやか「どうしてって言われましても…まどかをからかいたかったというか…まどかの恥ずかしがる姿が見たかったというか…」
マミ「だめじゃない女の子をからかっちゃ。めっ!よ」
さやか「はい…すいません…」
マミ「それで?」
さやか「そういう冗談を言ってたらまどかから結婚しようって言ってきて…」
マミ「え?結婚したの?」
さやか「いやまだしてないですけど」
マミ「まぁ」ドキドキ
さやか「だからあたしが言った冗談の通り、あたしのお嫁さんになりたいってことらしくて」
マミ「冗談が本当になったってことね?」
さやか「はい。いやまだ結婚はしてないですけど」
マミ「ふふっ。馬鹿ねぇ美樹さんは」
さやか「はい」
マミ「冗談っていうのは本当になっちゃったら冗談って言わないのよ?」
さやか「……え、あ、まぁそうなんですけども…」
マミ「でしょ?むふう」
マミ「佐倉さんね?もしかしてピンチなの!?」
さやか「いえ、まだピンチではないです」
マミ「ピンチではないのね?……ふぅ。一安心」
さやか「で、杏子が魔女と戦ってまして」
マミ「やっぱりピンチなのね!?」ガタッ
さやか「ピンチではないです」
マミ「まぁ。やるじゃない美樹さん」
さやか「あ、ありがとうございます」
マミ「自分が危ないときに助けにきてくれる…そういうシチュエーション、素敵よね?」
さやか「ですかね」
マミ「えぇ!もし私だったら好きになっちゃうかも!……ふふっ、なーんてねっ」
さやか「続きを話していいですか?」
マミ「どんどん話してちょうだい!」
さやか「それで…ほら、杏子って意地っ張りな奴ですから…人に頼ろうとしないじゃないですか?」
マミ「そうそう!そうなのよ美樹さん!あの子ったらついこないだね?捨てられたわんこちゃんを見つけてきて」
さやか「あの、マミさん。その話長くなります?」
マミ「それがそうなのよ!すぐには語り尽くせないいい話なのよ!」
さやか「聞きたいですけど、あとにしてもらって構いませんか?」
マミ「いい話なのに…」
マミ「なんて言ったの?なんて言ったの?」
さやか「あたしが一緒にいてあげるから、いつでも呼んでよ……だったかな…?ちょっと恥ずかしいですけど…」
マミ「それどっちが言ったの?」
さやか「え、ですからあたしが」
マミ「あ、そうだったわね」
さやか「あたしは…魔女と戦うときにピンチならいつでも呼んでってニュアンスで言ったつもりだったんですよ」
マミ「ニュアンス?美樹さんなのに難しい言葉使うわね?」
さやか「別にあたしが難しい言葉使ってもいいじゃないですか」
マミ「あ、なんか怒ってない美樹さん?ごめんなさい、そんなつもりじゃなかったのよ。本当よ」
さやか「そしたら杏子が違う意味で捉えちゃったみたいで」
マミ「え?違う意味ってどんな?」
さやか「それを今から言いますから。黙って聞いててくださいよ」
マミ「あ、ごめんなさい。まだなんか怒ってる?」
さやか「怒ってないです」
マミ「あら!佐倉さん、美樹さんのこと大好きだものね」
さやか「え、えぇ…あとになってからわかったんですけど、杏子はあたしのことが好きだったみたいで…」
マミ「ほらねっ!私の言った通りでしょ美樹さん?ね!?」
さやか「そうですね。マミさんすごいすごい」
マミ「えへへ」
さやか「それで…杏子がついてくる形でまどかの家に行ったんですよ」
マミ「え?でも鹿目さんも美樹さんのこと好きなのよね…?」
さやか「はい…」
マミ「だ、だめじゃない美樹さん!そんな二人の想いを弄んで!」
さやか「…その時は杏子があたしのことが好きだって知らなかったんですよ…ただ単に寂しかったからあたしと一緒にいたかったのかなぁって思ってて…」
マミ「…なんだか美樹さんって鈍感ねぇ…」
さやか「マミさんに言われるくらいだからほんとにそうなんでしょうね…」
マミ「第一部完!ってとこね!」
さやか「喉乾いたんでお茶ください」
マミ「はいはいー美樹さんすごい喋ってるものね」
さやか「誰のせいですか」
マミ「?誰のせいなの?」
さやか「あ、いえなんでもないです」
マミ「はい。どうぞ」
さやか「ずず…はぁ…」
マミ「ささ、続き続き」
さやか「…はい」
マミ「そうね。学生だものね」
さやか「そこに杏子がついてきたんですよ」
マミ「あら?佐倉さんも学生だったかしら?違うわよね?そこが間違いだわ」
さやか「いや、間違いですけど…ついてきちゃったんです」
マミ「でも間違いだわ」
さやか「別に間違い探ししてるわけじゃないですから。杏子は学生じゃないけどついてきたんです。以上」
マミ「ほぇ」
さやか「…杏子はあたしとずっと一緒にいたかったみたいですから」
マミ「それはさっき聞いたわ?」
さやか「あ、あたしの話ちゃんと聞いてたんですね」
マミ「聞いてたわよ!失礼ね!」プンスカ
マミ「あら、仲良しね」
さやか「杏子の昼御飯がお菓子みたいで」
マミ「んまっ!あのこったらまた不健康な!」
さやか「はい。ですから菓子パンを買いにいこうってことになって」
マミ「菓子パンよりもちゃんとしたおべんとを食べるべきだわ。お野菜の入ったやつね」
さやか「そのとおりですけど」
マミ「あ!菓子パンといえば牛乳よね?特にあんぱんと牛乳の組み合わせは最高だわ」
さやか「おい、マミ」
マミ「えっ?」
さやか「失敬。マミさん」
マミ「美樹さんと佐倉さんは一緒だものね。ふふ」
さやか「問題はそのとき起きたんですよ」
マミ「やっとね!?私の出番ね!?まず私は何をすればいいかしら!」ガタッ
さやか「座ってください」
マミ「はいっ!」ペタン
さやか「そのときの杏子との会話で…あたしは杏子に告白をされてたんだと気付きました」
マミ「気づいちゃったのね!?」
さやか「そうとは知らずにあたしがオーケーしちゃったから、当然杏子はあたしのこと恋人だと思ってたわけですよ」
マミ「え?美樹さんと佐倉さんは恋人だったの?」
さやか「え、だからそうだと言ってるんですよ。いや勘違いからそうなっちゃったんですけどね?」
マミ「あ、あなたには鹿目さんという婚約者がいるじゃないっ!」
さやか「…はい。その時に気付きました…あたしは二股してるんだって」
マミ「気づいちゃったのね!?」
マミ(廊下は走っちゃいけないのよ?美樹さん)
マミ(でもこれを今言うのは野暮というやつね。それくらい私にもわかるわ)
さやか「自分が情けなくなって…死にたくなって…」
マミ「ちょ、ちょっと待ちなさい!死ぬのはダメよ!そんなことは私が許さないわよっ!?」
さやか「あ、はい。このとおり死んではいないですよ」
マミ「死んでない!?あ、そうね!生きてるわね!美樹さん確認よーし!」ビシッ
さやか「指差し確認ですね」
マミ「むふう!」
さやか「…転校生が助けてくれたんです…あたしのこと…」
マミ「…………」
さやか「あたしを許してくれた…それだけで、なんか救われた気がしたんです」
マミ「…………」
さやか「それまで真っ暗だった視界がだんだんと鮮明になって…今まで見えなかったことが見えるようになったんです」
マミ「…………」
さやか「だから…転校生には感謝してます」
マミ「……なるほどね。美樹さんも辛かったわね…」
さやか「マミさん…」
マミ「……それで、転校生ってだあれ?」
さやか「え?あ、はいすみません。気づきませんでした。ほむらのことです」
マミ「あぁ暁美さんのことね?もーそういってくれなきゃわかんないわよーっ」
さやか「すみません…あたしの不注意でした」
マミ「わぁ!?びっくりした!」
さやか「あたしはまどかのところに戻ったんですけど、杏子がいなかったんですよ!」
マミ「そうなの!?それは大変ね!」
さやか「はい!学校中探しても見つからないんです!」
マミ「そ、それも大変だわっ!」
さやか「だからおそらく…杏子は学校の外に行ったと思うんですけど、マミさんならどこにいったかわかりますか!?」
マミ「私がわかると思う!?」
さやか「はい、そう思って訪ねてきたんですが、今となっては全く思いません!!」
マミ「正解っ!」ニッコー
さやか「うわぁぁぁぁぁ!なんであたしはマミさんなんか訪ねてきたんだぁぁぁぁ!!」ジッタンバッタン
マミ「み、美樹さん落ち着いてっ!」
杏子「はぁ…失恋したあとってお腹すかないって聞いたんだけど…お腹すいたなぁ…」
杏子「…マミんちでも寄るか」
ガヤガヤ
杏子「…ん?客でもきてんのか…?」ガチャ
さやか「うがぁぁぁぁ」
マミ「美樹さん!弱い自分に負けないで!自我を取り戻すのよっ!QBも押さえるの手伝って!」ギュウーッ
QB「よしきた!QB分身の術!」
QB2「さやかー!マミのおうちで暴れるんじゃないよーっ!」
さやか「おらっ!」
QB3「きゅぷぁっ!」グシャッ
QB4「QB3っ!」
杏子「……なにがどうなってんだ」
QB5「ん?やぁ。杏子じゃないか」
杏子「ばっ…」
マミ「佐倉さん!」
杏子「やべ…逃げろっ!」
さやか「あぁ逃げられちゃう…マミさんっ!捕獲っ!」
マミ「はいっ!」シュルンパシッ
杏子「うわー!はなせー!」
さやか「まったくもう…なんで逃げたのさ?」
杏子「…………」プイン
さやか「あたし達は、ずっと一緒なんじゃなかったの?」
杏子「!……だって…」
さやか「え?」
杏子「強引にさやかにくっついてさ…邪魔だったよな?あたしなんか…」
さやか「杏子…」
杏子「まどかにも迷惑かけたしさ…図々しかったよなほんと」
マミ「佐倉さん…」
杏子「あたしは所詮よそ者だもんな。まどかみたいに幼なじみでもないし、ほむらみたいに同じクラスでもないし…」
QB「杏子…」
杏子「そもそも学校も通ってないもんな?…はは、あたしみたいな奴なんか一緒にいちゃいけねぇよ…」
QB2「杏子…」
杏子「…なにが違うんだよ」
さやか「だってあたしは杏子にずっと一緒にいてほしいと思ってるもん!」
杏子「え…!?」
さやか「一緒にいちゃいけないなんて言わないでよ…あたし、杏子といて楽しいし嬉しいんだよ?」
杏子「でも…さやかはあの時、1人にしてほしいって…」
さやか「あれは…杏子に酷いことしちゃってたから…」
杏子「酷いこと…?」
杏子「け、結婚んん!?」
さやか「うん…あたしも断らなかったし、そもそもあたしの冗談から始まったことだからあたしが悪いんだけどね」
さやか「それともう1個…」
杏子「な、なんだ?」
さやか「杏子の告白…あれ、告白とは思わないでオーケーしちゃったの」
杏子「…………え?」
さやか「だ、だから…その…杏子がずっと一緒にいよう…っていうの」
杏子「…え、あぁ…あ、そうだよな…わかりづらかったよな…」
杏子「えっ!?てことはあたし、勝手にさやかと付き合ってるって思い込んでたってことか!?」
さやか「えと…」
杏子「…ーっ!?///」
さやか「お、お互い様だよ…勘違いしてたのはあたしも同じなんだしさ…」
杏子「…そうだな。お互い様だな」
マミ「そうね。あなた達がどっちもお馬鹿さんだったって話ね」
さやか「……いや、まぁ」
杏子「……そうなんだけどさ」
マミ「?」
さやか「…マミさんに言われると本気で傷つくね」
杏子「同感だ…」
さやか「へ?」
マミ「鹿目さんと佐倉さん。どちらかと結ばれるんでしょう?」
杏子「い、いやあたしは…まどかの後から告白したんだし…まどかに悪いよ」
マミ「あら?そんなことで諦めちゃうの佐倉さん。恋っていうのはね…?戦争なのよ…?」
杏子「…恋したことねーくせに」
マミ「んまっ!失礼しちゃうわね!」プンス
さやか「…もちろんまどかと杏子、どっちかと恋人になろうと思ってる」
杏子「さ、さやか…」ドキドキ
さやか「こんなあたしを好きでいてくれてるんだもん。あたしだってどっちも大好きだ。どっちとも仲良くしたい」
さやか「でもやっぱり…それはいけないことだから、あたしは1人を選ぶよ」
さやか「……あたしは」
なのでまどかか杏子にしたいんですがどっちがいいですかね
下5
多数決
無理ならハーレム
さやか「…へ?」
マミ「美樹さんは真面目過ぎよ!あなたが鹿目さんも佐倉さんも愛せるって言うなら何も問題はないじゃないっ!」
さやか「あ、ありますよ!だって二股は悪いことだもの!」
マミ「あ、なら三股するのはどうかしら?」
さやか「!?」
マミ「三股しちゃったら、二股くらいで悩んでるのが馬鹿らしくなっちゃうでしょ?」
さやか「なにその屁理屈!てかあと1人は誰っすか!」
マミ「はいっ!はいっ!」ピョンピョン
さやか「は!?」
さやか「ふふふじゃねーよ!恋がしたいなら同級生の男の人にでも告白すればいいじゃないっすか!なんであたしに…」
マミ「いやね美樹さん。私の口から言わせる気?男の子よりも美樹さんの方が格好いいからに決まってるじゃないの」
さやか「え、えぇ…///」
杏子「あ、照れてる」
さやか「…な、なんであんたは冷静なのよ…あたしが三股してもいいっていうの?」
杏子「あたしは…まどかやマミならかまわないよ。むしろ誰か1人を選ぼうとして、あたしが選ばれないほうがよっぽど嫌だ」
さやか「杏子…」
杏子「いいじゃねーか三股でも。さやかはあたしたちみんなのこと…あ、愛してくれんだろ…?///」
さやか「う…うん…///」
さやか「は、はひ」
杏子「さ、さやかちゃん?」
マミ「恋人ですもの。下の名前で呼びたいじゃない…きゃっ///」
マミ「ね、ね?さやかちゃん。私のことも呼び捨てにしていいからね?」ギュッ
さやか「お、おっぱいが当たってますよ…///」
マミ「当ててるの」
杏子「ま、魔性の女だ…」
「こらーっ!!」
まどか「私です!てぃひひ」
ほむら「そして私」ニュッ
さやか「ひっ!?ど、どこに潜んでいた転校生!?」ビクッ
ほむら「私ほむら。あなたの後ろにいたの。ずっと」
さやか「怖っ!!」
ほむら「まどかを呼んだのも私。ちなみに今の会話全部まどかも聴いてたから」
まどか「私…さやかちゃんに捨てられちゃったのかなって不安になって…そしたらさやかちゃんのすべてが知りたくなって…さやかちゃんの一言一言を一字一句聴いてたの…」
ほむら「私があなたの後をこっそりついてってケータイ越しにまどかに聴かせていたわ」
さやか「怖っ!!超怖っ!!なにこのストーカーコンビ!!」
さやか「ごめんまどか…」
まどか「ううん。私もちょっと強引だったし」
ほむら「まどかを悲しませるような発言をしたら撃ち殺してやろうかと思ったけど…まぁ合格にしておいてあげるわ」
さやか「あ、ありがとうございます…」
ほむら「合格ついでに1つ朗報よ。なんと私があなたの第4婦人になってあげるわ」
さやか「………えっ…」
ほむら「なによその顔は。巴マミにはそんな顔しなかったのに。おっぱいないからって馬鹿にするんじゃないわよ」
さやか「いや…一番意外だったから…」
さやか「え…家を建てるとこまで想定してんの…」
ほむら「あなたが建てるのよ旦那」
さやか「…………」
ほむら「あなたたちは一緒に住むけど、私だけ仲間外れ。ひとりぼっち。そんなの嫌!私もまどかと暮らしたいっ!」ホムダダッコ
さやか「駄々こねるなよ…」
ほむら「しかしあなたと私がくっついちゃえば全て丸く収まるのよ。オーケー?」
さやか「そこに愛はあるの?」
ほむら「ないわ」キッパリ
さやか「う…」
ほむら「……」
ホムホワンホワーン
さやか「…転校生が助けてくれたんです…あたしのこと…あたしを許してくれた…それだけで、なんか救われた気がしたんです」
さやか「だから…転校生には感謝してます」
ホムホワンホワーン
ほむら「……ふん。当たり前よ」
さやか「でもあたしは結構転校生のこと、好きだけどね」
ほむら「っ!?///」
さやか「転校生は高嶺の花だもんなぁ。あたしなんか好きになるわけないか」
ほむら「…いい加減名前で呼びなさいよ」
さやか「へ?」
ほむら「ほむらっ!」
さやか「ほ、ほむら」
ほむら「よし」
さやか「な、泣かさないよ…四人とも、全員」
マミ(やーん…少女漫画みたーい…///)キューン
さやか「こうなったら責任とる!あたしが必ず幸せにしてやる!」
ほむら「どうやってよ?」
さやか「魔法少女たちはみんなあたしの嫁になるのだ~!」
まどか「み、みんながお嫁さん!?」
さやか「おう!あたしが全員養ったる!」
さやか「まどかは嫁1号!杏子は嫁2号!以下省略っ!」
ほむら「おい」
QB「僕は嫁何号になるんだい?」
マミ「QB。あなたはペットよ…」
QB「そんなぁっ!?」
マミ「た、例えば…?」ドキドキ
さやか「石油王っ!!」
ほむら「駄目だこの馬鹿」
まどか「じゃ、じゃあ…さやかちゃん…」
さやか「ん?」
杏子「あたしたちのこと…よろしく頼むな?」
まどか「」チュッ
杏子「」チュッ
もう終わり
眠くてテンションおかしいー
おやすみなさい
Entry ⇒ 2012.06.15 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
さやか(29)「杏子の奴遅いなぁ…」
杏子「おーい!」パタパタ
さやか「あ、来た来た。まったく、すっごい久しぶりに会うってのに遅刻しないでよ。」
杏子「悪ぃ悪ぃ、仕事の打ち合わせが思ったより長引いてさ。これでも強引に切り上げて抜けてきたんだぜ?」
さやか「流石、やり手の女社長は大変だねぇ…ん?髪、下ろしてんの初めて見た…かも。」
杏子「そうだっけ?こないだ契約したスポンサーがくれたトリートメント試してみたら髪さらっさらになってさー♪最近下ろしてんだ。」
さやか「本当だー…ちょっと触ってい?」
杏子「いいぜ♪そういうさやかこそ、そのペンダントかわいいじゃん?」
さやか「あ、これ?安物だよwで、いいお店用意したんだって?」
杏子「おう!早速行こうぜ!」
さやか「私は…ブルーマンデーがいいな。」
杏子「マスター、コスモポリタンとブルーマンデーお願い。」
さやか「それにしても、静かでいい感じのバーだね。大人な雰囲気ってやつ?」
杏子「まぁアタシ達ももうアラサーだし。こないだ見つけて以来お気に入りでさ。」
さやか「イメージ的には赤提灯で焼鳥って感じなのにw」
杏子「うっせぇ!…あ、きたきた。じゃ、久しぶりの再会に。」
さやか「乾杯。…あ、このブルーマンデー美味しい。」
杏子「だろ?酒もうまくなきゃ薦めないよ。」
さやか「あはは。流石、昔から世間の厳しい風に吹かれてるだけあるね。」
杏子「…褒め言葉で受け取っとくよ。」
杏子「運が良かったっていうかなんていうか…ま、この性格だからなんとかなったって思ってるけどね。」
さやか「この性格?」
杏子「基本的に人間不信。自分のことしか考えてないって性格。」
さやか「…確かに、昔っからそうだもんね。それでケンカっ早くて、すぐ突っ掛かってきて…」
杏子「うっ…あ、あの頃はお互いまだ子供だったじゃねーか;」
さやか「……そのくせ面倒見よくってさ。同い年なのにお姉ちゃんっぽいっていうか…優しいんだよね、杏子は。そりゃ会社起こせば皆ついてくのも納得だよ。」
杏子「ななな…何言ってんだよバーカ//コスモポリタンおかわり!」
さやか「私もブルーマンデーおかわり!」
さやか「ぜーんぜん。この前も職場の人に誘われて合コン行ってきたんだけどさー。」
杏子「お。面白そうじゃねーか。」
さやか「なーんかパッとしない男ばっかで…わたしに釣り合うような男はいなかったよ(笑)」
杏子「あっはっは(笑)」
さやか「そーゆーアンタこそ、言い寄ってくる男はいっぱいいるんじゃないの?」
杏子「そりゃ、アタシみたいないい女ほっとかれるわけないじゃん?…って、そんなことねーよ。たまーに金と体目当ての男が言い寄ってきたりするけどね。みんな突っぱねてる(笑)」
さやか「あはは(笑)」
さやか「そうだね…殺し合いで始まった付き合いがこんなになるとは思わなかったよ(笑)」
杏子「そりゃお互い様だろ?あれから15年も経ってんだもんなぁ。」
さやか「マミさんは今イギリスだよね。」
杏子「そ。5年くらい前に集まった時に言ってたじゃん?紅茶の鑑定士の勉強するって。ちょっと前にメールしたんだけどさ、頑張ってるみたいだったよ。」
さやか「そっか…じゃあマミさん帰ってきたら、また集まって美味しい紅茶飲ませてもらおうよ。あの頃みたいにさ。」
杏子「そうだね…で、ほむらは医者か。」
さやか「昔の自分みたいな身体が弱い人達を助けたいって言って、すっごい勉強してたもんね。」
杏子「アイツも一直線な性格だもんなぁ。」
さやか「それに比べて私は大絶賛婚活中のコンビニ店員…か……」orz
杏子「何自虐ってんだよ…大体、さやかの場合は今こうして生きてるってことが奇跡的じゃねーか。コスモポリタンおかわり。」
さやか「まぁね…ブルーマンデーおかわり。」
さやか「私もびっくりだよ。気がついたら普通に家のベッドの上にいたんだから。」
杏子「…今でもわかんねーの?あの時何があったか…」
さやか「………ちょっとだけ、うっすら記憶…あるよ。」
杏子「…」
さやか「なんか…行かなきゃって思った場所に辿り着いたらさ、声が聞こえてきたんだ。」
『…やっぱりさやかちゃんはこっちにきちゃダメ。さやかちゃんの環る場所はココじゃないよ。』
さやか「…ってさ。多分神様の声だったんだろうなぁ。」
杏子「環る場所…ねぇ。神様も粋なことしたよ、本当に。」
さやか「それで気づいたら自分の部屋にいて…ソウルジェムもグリーフシードもなくなってた。なんか長い夢見てた感じだったな…」
杏子「長い夢か…そーだな、アタシ達の青春は本当に長い夢だったのかもな…」
さやか「やっぱりわかる?」
杏子「ソウルジェム…元アタシ達の本体。懐かしいね。」
さやか「うん…フラッと入った雑貨屋で見つけてさ。あ、これ…って。気がついたらレジに持って行ってたんだ。」
杏子「…あの頃のことは未だにわかんないことだらけだけど…一つだけ、一番気になってることがあんだよね。」
さやか「ん…?」
杏子「ほむらが言ってた『まどか』って名前さ…」
さやか「あ…やっぱりアンタも気になってたんだ。」
杏子「まぁね…」
さやか「わたしも…マミさんも言ってた。『聞いた時は誰?って思ったけど、時間が経つにつれて懐かしいような気になってくる』って。」
杏子「なんなんだろうね…忘れたってわけじゃなく、思い出せないってわけじゃなく…」
さやか「……」
杏子「それでも不思議と嫌な感じじゃないんだよ。わかんなくてイライラするとかじゃなくてさ…さやかとかマミさん、ほむらのこと考えた時と同じ感じがする。」
さやか「わたしも同じだな……あと、ありがとうって感じ。」
杏子「…『まどか』…か……」
杏子「アイツって?」
さやか「キュゥべえ…インキュベーター。」
杏子「あぁ…;何してんだろ。またアタシ達みたいなの探し回ってんじゃねーの?」
さやか「まっさかー(笑)…って、否定出来ないね…;」
杏子「本当、悪趣味な奴だったよな……でも…」
さやか「ん?でも…?」
杏子「なんか、この歳になるとアイツの言ってたこと、やってたことも一理あるのかな…って気はしてくるよ。間違っても同意はしねーけど。」
さやか「まぁね…今になってもっかい会ってみたいって気もしなくもない…かな。」
杏子「だね…ま、万が一会ったらタダじゃおかねーけどな(笑)」
さやか「わっかる(笑)」
杏子「まぁな。それは事実だから仕方ねーもんな…関わったどころか元凶じゃん。アイツは。」
マスター「失礼、こちらをどうぞ。」
杏子「え?アタシ達おかわり頼んでねーよ?」
マスター「こちらはあちらに座ってたお客様からです。先程お立ちになられましたが…それと、こちらも渡してくれとのことでした。」
さやか「カード…?」スッ
『わけがわからないよ』
杏子&さやか「「!?」 」
さやか「ななな!マスター!どんな人だった!?」
杏子「つーか人間じゃなかったよな!?白いウサギみたいな餅みたいな!」
マスター「そ、それが思い出せないのです…確かについ先程までそちらにいたのは間違いないのですが…」
杏子「あの野郎…;」
さやか「わけがわからないっての…;」
杏子「………まぁ、ありがたくいただいとくか。」
さやか「そう…だね。」
杏子「あー、久しぶりにたくさん飲んだなー!」
さやか「本当に!夜風が気持ちいい…♪」
杏子「だなー。…最近さ、こうして飲んで夜風に吹かれてると自分が大人になったんだなって実感すんだよね。」
さやか「確かに…わかるなー。」
杏子「あの頃と違って自分の金で食いもん食ったり酒飲んだり…いろいろ欲しい物買ったり。思えば遠くに来たなって。」
さやか「老け込んだんじゃないの?(笑)」
杏子「うっせぇ!(笑)」
さやか「でもさ…これからわたし達もいい男見つけてお嫁さんになって、子供できたり…おばあちゃんになったりするんだろうなって考えると、まだまだ欲しいもの沢山あるよね。」
杏子「そうだよな…アタシの言いたいこと言いやがって(笑)まだまだアタシ達の願い事はこれからだ!ってね!」
さやか「そうだよ!ね、もう一軒行かない!?」
杏子「おう!そう言うと思って明日は完全フリーにしといたんだ♪」
さやか「よーし、夜通し飲むぞー!」
杏子「おー!」
\アハハハハ♪/\キャハハハハ♪/
『……さやかちゃんも杏子ちゃんも大人になったんだね』
『ほむらちゃんもマミさんも、みんなそれぞれの道を歩いてる……』
『……こういうの見てるとちょっとだけ、一緒に騒ぎたいなって思っちゃう…かな』
『でも…さみしくないよ』
『だって……私はいつも、ずっとみんなと一緒に歩いてるんだから』
『だから……』
『がんばってね、みんな!』
>>1が(29)で、こないだ15年振りにあった仲間と飲んでた時の雰囲気を元ネタにして勢いで書きました
かなり希望妄想を入れたのでいろいろ矛盾や適当な部分がありましたが…読んでいただいた方々、ありがとうございました。
個人的にべぇさんにはほむほむとアルティメットまどっちに調教されて多少は人間の価値観も覚えてる…ってなってて欲しい。覚えてるだけで理解はしてないって感じで
Entry ⇒ 2012.06.12 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
麻倉葉「魔法少女・・・・・・?」
マミ(少し遅くなっちゃったかしら、家まで近道していったほうがよさそうね)
マミ「確か……この墓地の辺りを通り抜けるとすぐに……」
葉「なあ、何をそんなに急いでるんだ?」
マミ「!」
マミ(何……この人、こんな墓地で何してるの?)
マミ(少し遅くなっちゃったかしら、家まで近道していったほうがよさそうね)
マミ「確か……この墓地の辺りを通り抜けるとすぐに……」
葉「なあ、何をそんなに急いでるんだ?」
マミ「!」
マミ(何……この人、こんな墓地で何してるの?)
マミ「……もう夜も遅いから、早く家へ帰ろうと思ってただけよ」
葉「そっか、悪いことしたな」
マミ「あなたこそ、こんな時間にこんなところでなにをしているのかしら?」
葉「オイラは……んー、何もしてねえ。ぼーっと星を眺めてた」
マミ「ほ、星……?」
葉「お前も見てったらどうだ?慌てて走ってもいいことねえぞ」
マミ「……ごめんなさい、ちょっと急いでるの」
マミ(変な人……あんまり関わるべきじゃないわね)
マミ(何だったのかしら……昨日の人)
教師「今日は皆さんにお知らせです、前々から言っていたこの学校に体験入学してくる人のことですが……」
教師「一人が私たちのクラスに入ることになりました、私から紹介しますね」
マミ(あんな人、今まで見たことなかったし……年は私と同じくらいだったけれど……)
教師「じゃあ麻倉くん、入ってください」
葉「…………」
教師「出雲出身の麻倉葉くんです、体験入学なので短い期間ですが仲良くしてくださいね」
マミ「あ、あなた!」
教師「どうしました、巴さん?もしかして知り合いですか?」
マミ「昨日の夜に家の近くにある墓地で……」
葉「…………」
葉「そんなとこ、オイラ行ったことねえ、多分初めましてだと思うぞ」
マミ「なっ……!?」
マミ「…………」
マミ(あの転校生、転校初日から全部寝てたわね……にしても)
マミ「昨日会ったのは間違いなく彼なはず……見間違いなわけもないし」
マミ「…………」
マミ「…………よし」
マミ「…………」
マミ(よし……って、何で後を尾行してるの?これじゃ完全にストーカーじゃない……)
葉「ああ……やっぱりボブはいいな……」
マミ「…………」
マミ(何やってるのかしら私……もういいわ、早く帰っ……)
『助けて、マミ!』
マミ「!」
マミ(キュゥべえの声……?)
葉「この新曲欲しいなぁ……けど無駄遣いしたら……いや、でもCD一枚くらいなら……」
「ダメよ」
少年は、自分の背後から聞こえてきたその声に、全身が凍りつくのを実感した。
葉「…………」
アンナ「アンタ、正門前で落ち合うって言ってたのに何勝手に帰ってるのかしら?」
葉「……すまん」
アンナ「謝りなさい」
葉「…………すまん」
アンナ「挙句の果てにはあたしの許可なしで無駄遣いをしようとしてたわね?」
葉「…………心から、すまん」
アンナ「アンタ、これから二週間おやつ抜きよ」
葉「…………うい」
「さて……じゃ、行くわよ」
葉「やっぱ、感じるか……」
アンナ「当たり前でしょ、この妙な気配……気づかないほうがどうかしてるわ」
アンナ「……まったく、面倒なことになったわね」
葉「心配すんな、なんとかなるって」
魔女結界内
マミ「キュゥべえを助けてくれたのね、ありがとう」
まどか「いえ……でも、これって一体どうなってるんですか?私たち、急に変な所へ……」
マミ「そうね、色々と訊きたいことはあるでしょうけれど……ちょっと一仕事片付けていいかしら」
さやか(へ、変身した……!?)
マミ「さあ、行くわよ」
マミ「……よし、終わったわ」
まどか「あ……元の場所に戻った……!」
さやか「助けてくれてありがとうございます、えと……」
マミ「私は巴マミ、見滝原中学校の三年生よ。ちょっと待ってね、キュゥべえの治療を……」
ほむら「そいつから離れて」
さやか「あっ……!」
まどか「ほ、ほむらちゃん!」
ほむら「…………」
マミ「事情は分からないけれど退きなさい、無駄な争いはしたくないでしょう?」
ほむら「…………」
葉「あれ、何かもう終わっちまってるみてぇだな」
マミ・ほむら「!?」
葉「よっ、また会ったな」
マミ「また会ったな、って……あなた、学校じゃ初めて会ったみたいなことを……」
葉「だって何か気味悪いだろ?夜中に墓地でぼーっとしてる奴なんて……オイラ、面倒事が嫌いなんよ」
マミ「……そっちの人は?」
アンナ「…………」
葉「ああ、オイラと一緒にこっちに来てるアンナだ」
マミ(二人の転校生のもう一人ってことね)
アンナ「あたしに命令しないで、暁美ほむら」
ほむら「!」
ほむら(どうして私のフルネームを……!?)
葉「よくわかんねえけど、喧嘩はよくねえぞ。オイラ達は別にここで何かしようってわけじゃねえさ」
葉「とりあえず、今ここで何があったか教えてほしいんよ」
マミ「あなたたちは部外者だけれど……状況が状況だから仕方ないわね」
マミ「場所を変えましょうか……暁美さん、もう一度言うけれどここは退きなさい」
ほむら「…………」
マミ宅
マミ「さて、それじゃあ色々と話すけれど……信じるかどうかはあなたたちに任せるわ」
マミは魔法少女のこと、魔女のこと、契約のこと、キュゥべえのこと、それらを端的に説明する。
一通りの説明が終わった後
まどか「信じられないけれど……本当なんですね、今の話」
マミ「ごめんなさい、やっぱり信じられないわね」
さやか「でも、あたしたち実際に見ちゃったし……」
まどかとさやかは信じられない気持ちもあるが実体験のあるため信じざるを得ないと言った反応。
これはマミが予想していたものからそう遠くないものであった。
が、マミが気になっていたのは残る二人。
葉「…………」
アンナ「…………」
マミ「二人はどうかしら?その反応を見るからには信用できないと思っているみたいだけれど」
アンナ「……さっきアンタの言ってたソウルジェムっていうの、見せなさい」
マミ「え、ええ……いいけれど」
壊さないようにね、と付け加えて彼女はソウルジェムを手渡した。
葉はマミから受け取ったソウルジェムを手に取るなり
葉「……やっぱ、そういうことなんか」
アンナ「…………想像以上に面倒なことになったわね」
マミ「…………?」
さやか「あたしも、まだちょっと驚いてるけど……助けてもらったのは事実だし」
マミ「そう、ありがとう……えっと、葉くんとアンナさんは……」
葉「ああ、オイラ達も何というか……」
アンナ「信じるわ」
マミ「え?」
アンナ「アンタの言うことは信じるって言ってるの」
マミ「ど、どうも……」
さやか(な、何かこのアンナって人……ずっと思ってたけどすげー怖い)
まどか(一緒にいる葉さんはすごく人当たりが良さそうなのに……)
キュゥべえ「改めてお礼を言わせてよ、二人とも助けてくれてありがとう!」
まどか「い、いいよお礼なんか……!」
キュゥべえ「そして……君たち二人、いや……そっちの彼女を含めれば三人かな」
アンナ「…………」
キュゥべえ「三人とも魔法少女になれるだけの素質があるみたいだ」
キュゥべえ「契約すればどんな願いでも一つだけ叶えてあげられるよ、だから」
キュゥべえ「僕と契約して魔法少女になってよ!」
さやか「急に言われても……ねえ?」
アンナ「嫌よ、めんどくさい」
さやか(一人だけ刹那で断った!?)
キュゥべえ「?」
アンナ「あたしたちはそこの金髪の話は概ね信じるけれど、アンタを信用するとは言ってないわ」
マミ「きょ……恐山さん、キュゥべえは良い子よ?それに私の話もほとんどキュゥべえから教えてもらったものだし」
アンナ「…………」
アンナ「見えないのよ、ソイツ……覆われてるとかぼやけるとかそういう次元でなく」
マミ「え……?」
アンナ「まるで、心なんか存在してないみたいに……」
マミ「……恐山さん?」
マミ「?」
アンナ「そんな耳から生えてる毛が伸びてるウサギ、気持ち悪いじゃない」
キュゥべえ「…………」
マミ「…………」
さやか(よくわからないけど色々と間違ってると思う)
まどか(それ……単純にキュゥべえが嫌いなだけな気もするけど)
葉(まん太がここにいたらアイツ何て突っ込むかな)
キュゥべえ「何か気に障ることをしたかい?だったら心から謝るよ」
アンナ「心から……そうやって今まで、どれだけの人間を騙してきたのかしら」
キュゥべえ「君がなぜ僕を嫌っているかはわからないけれど、契約したくないのなら僕はそれを強いるつもりはない」
キュゥべえ「ただ忘れないで、君たち三人には魔法少女になる才能があることを」
キュゥべえ「そしていつでも僕と契約して魔法少女になれることを」
マミ「男の子の麻倉さんはやっぱりなれないのね?」
キュゥべえ「素質はとても感じるんだけれど……根底となる性別が不適合だからね」
葉「別にオイラはそんなのしようとも思わねえさ」
まどか「もし……魔女を見つけたらどうすればいいんですか?」
マミ「近づかないことね、そして私にすぐ連絡すること」
さやか「キュゥべえの願いって言うのは……ホントに何でも叶うんですか?」
キュゥべえ「もちろんだよ、それは僕が保証する」
さやか「自分じゃなくて、他人に何かしてあげることでも?」
キュゥべえ「容易いことさ!」
さやか「そっか……」
マミ「何かしら?」
葉「いや、その魔女ってのは必ず魔法少女が倒さなきゃいけねえのかなって」
マミ「どういうことかしら?」
アンナ「魔法少女とかいう契約を結んでない人間が魔女を倒したら何か不都合があるかっていうことよ」
葉「うん、まあそういうことだな」
マミ「……危険すぎるし、素人に魔女を倒すことなんてまず不可能よ。絶対にそんなことは…」
アンナ「不都合があるか聞いたのよ、倒せるかどうかなんて聞いてないわ」
マミ「それは別段……倒した後に出てくるグリーフシードの扱いくらいじゃないかしら」
マミ「そうね、そこまでたくさんは必要ないけれど最低限は……」
葉「おお!じゃあそのグリーフシードってのをあとでちゃんとマミに渡せばいいんだろ?」
マミ「……分かってると思うけれど絶対に戦おうなんて思わないことね」
アンナ「それはあたしたちが決めることよ」
マミ「…………大丈夫かしら、ホントに」
まどか(ダメだと思う)
さやか(うん、絶対ダメだと思う)
葉「はー……世界にはよくわからんことがまだまだあるんだなあ」
アンナ「アンタは学校で習う数式も分かってないでしょ」
葉「それを言うなよ」
アンナ「それより、これからどうすんの」
葉「状況は思ってたよりも結構ヤバそうだ、オイラ達で何とかするしかねえ」
アンナ「あの耳毛ウサギ、ヤバいわよ」
葉(耳毛ウサギ……)
アンナ「力がどうとかじゃない、生き物でも霊でもないみたいな……よくわからない何かよ」
葉「……ああ、それもなんとなくわかる」
アンナ「何よ」
葉「耳毛ウサギってセンスはさすがにどうかと思うぞ」
パーンッッッ!!
葉「おお!確か昨日会った……マミとかと仲直りできたか?」ヒリヒリ
ほむら「むしろあなたのほうが誰かと喧嘩してひっぱたかれた跡があるけれど!?」
葉「ウェッヘッヘッ、これくらいいつものことだから気にすんな」
アンナ「何の用かしら、世間話をするために来たわけじゃないんでしょ?」
ほむら「少し、あなたたちに釘を刺しにね」
葉「どうしよう……やっぱすげえ痛ぇ」ヒリヒリ
ほむら(ユルイ……緊張感が……)
ほむら「そして、なぜあなたが私のことを知っていたのかもね」
アンナ「…………」
ほむら「でも……これ以上、この問題に関わってきてほしくないのよ」
アンナ「あら、心配してくれてるのかしら?」
ほむら「勘違いしないで、余計なイレギュラーが入ってくることを望んでいないだけよ」
ほむら「あなたたちはすべて忘れるべきよ、魔法少女のことも、魔女のことも……全てね」
葉「なあ阿弥陀丸……さっき、オイラそんな本気でぶっ叩かれるようなこと言ったか?」
阿弥陀丸『アンナ殿の幻の左……久々でござったな』
ほむら(後ろのほうで何か独り言を言ってるみたいだけれど気にしない、緊張感が切れる)
ほむら「……何故かしら?」
アンナ「あたしのダンナがアンタたちを助けるって言ってるから」
ほむら「……ダンナ?」
アンナ「アンタの後ろでほっぺた擦ってたそいつよ」
葉「ん?おお、オイラか」
ほむら「え……え?」
ほむら(そ、そういう関係なんだ……でもダンナ……って?)
ほむら「これが目的?それはどういうことかしら……?」
アンナ「…………」
葉「なあ、ほむらだったか?オイラもちょっと聞きたいんよ」
ほむら「……何?」
葉「お前、何で魔法少女なんかやってんだ?」
ほむら「……どういう意味かしら?」
葉「いや、だって普通嫌だろ?毎日死ぬかもしれねえ戦いをするなんて」
葉「マミは仕方ねえ事情があったみてぇだけど」
アンナ「交通事故よ」
葉「細けえなぁ」
ほむら「…………」
ほむら「私としては腫れ上がったあなたの左頬のほうが気になるんだけれど」
葉「おお、大丈夫だぞ。気にするな」
ほむら「…………」
葉「いつ死ぬかわからねえ戦いを続けるなんてのは本当におっかねえことだ」
葉「オイラは楽に生きたいから、よっぽどの理由がない限りそんなことはしたくねえ」
葉「……お前はなんでそんな戦いをすることを選んだんよ?」
ほむら「…………」
葉「言いたくねえなら別に無理せんでもいいぞ、オイラもなんとなく気になっただけだからな」
葉「そっか、わざわざありがとうな」
ほむら「麻倉葉……恐山アンナ……お願いだから、場を乱すようなことだけはしないで」
アンナ「…………」
葉「分からん」
アンナ「数式がでしょ」
葉「いや、アイツが契約した理由ってのが」
アンナ「……あんまり男が女の秘密を覗き見ようとするものじゃないわ」
葉「じゃあアンナ、お前からそれとなく聞い……」
アンナ「嫌よ、そんな面倒なこと」
葉「……だよなぁ」
アンナ「それより……まだなの?」
葉「……おっ、噂をすりゃ来たみてえだ」
阿弥陀丸『葉殿!動きがあったでござる!どうやら魔女とやらは病院に現れたとか!』
葉「病院……阿弥陀丸、案内頼むぞ」
阿弥陀丸『御意!』
病院
マミ「ここね、確かに魔女の気配がするわ」
まどか「結界の中にいるさやかちゃんとキュゥべえ……大丈夫かな……」
マミ『キュゥべえ聞こえる?そっちはどんな状況?』
キュゥべえ『まだ卵は孵化しそうにないけれど、刺激を与えるとマズイかもね』
マミ『そう……なら、魔力は控えめにしてそっちへ向かうわ』
マミ「さあ、じゃあ行きましょう」
まどか「はい!」
まどか「あ……ほ、ほむらちゃん……!」
マミ「……ここに来て、一体何の用かしら?」
ほむら「この先にいる魔女は私が倒す、危険だからあなたたちは下がっていて」
マミ「この先には美樹さんとキュゥべえが待っているのよ?」
ほむら「彼女たちの安全は保障する、だから……」
マミ「つい先日、キュゥべえを傷つけていたあなたが今度はそのキュゥべえを守るですって?」
マミ「悪いけれど、信用できないわね」
ほむら「!」
ほむら(しまった……これは拘束の……!)
マミ「これで少し大人しくしててもらうわ、魔女を倒したらその拘束は解いてあげる」
ほむら「待って!この先の魔女は本当に……!」
マミ「……行きましょう、鹿目さん」
まどか「は、はい……」
ほむら(解けない……このままじゃまた巴マミが……!)
アンナ「なんで忠告をよこしたアンタがこんな風に拘束されてるのよ」
ほむら「あ、あなたたち……!」
葉「せっかく忠告をくれたのにすまん、けど……やっぱオイラたちもほっとくわけにはいかねえんだ」
ほむら「私のことはいい、先へ行った巴マミを止めて!そして私の拘束を解除するように要請して!」
アンナ「……行きなさい、葉。こっちはあたしがやっておくから」
葉「やれそうなのか?」
アンナ「あんた、あたしを誰だと思ってるの」
葉「……だな」
アンナ「ほら、早く行きなさい」
葉「すまん、ここは任せた」
さやか「に、人形みたいだけど……あれが魔女?」
マミ「そうね。悪いけれど一気に決めさせてもらうわよ……」
マミ「ティロ・フィナーレ!」
さやか「やった!さっすがマミさん!」
まどか「良かった……!」
まどか(すごいなマミさん……私もマミさんみたいに誰かを守れるようになれれば……!)
最強の攻撃で魔女を撃ちぬいたことで、マミを含むその場の全員が確信する。
悲劇など起こりうるはずがなかった。
マミ「っ……!?」
撃ち抜かれた魔女の口から今までとはまるで違う何かが現れる。
ピエロのように滑稽な顔をした芋虫とも呼ぶべきそれは牙を剥き出しに巴マミへ襲いかかった。
マミ「あっ……!!」
マミは動かなかった、いや動くことが出来なかった。
湧き上がる死のイメージと恐怖が彼女の体を固めていた。
さやか「どこからか……何かが飛んできて……!」
マミ「…………!」
何かが飛んできた方向へその場の全員が目をやる、そこには
葉「よっ」
刀を構えてユルイ笑顔を浮かべ佇む一人の少年の姿があった。
葉「良かった、まだ誰も死んでねえ」
さやか「今一体何をして……その前に何でここにいるの!?」
葉「すまん、何か今日一悶着あると思ってたからマミに張り憑かせといたんよ」
マミ「な、何を?全然気づかなかったけど……」
葉「そしたら病院で何かあったって聞いて……まあそんな感じでな」
まどか「そんな感じって……」
葉「それと、マミを止めてくれって頼まれたからな」
マミ「頼まれた……?」
葉「マミを止めてくれって、さっきそこで会ったほむらから」
マミ「あ、暁美さんが……?」
葉「多分、分かってたんじゃねえかな。そのまま戦わせたらヤバいって」
マミ「わ、分かったわ……」
葉「よし、じゃあマミの奴が色々とやってる間……」
葉「こっちはこっちでふんばるとするか……阿弥陀丸!」
阿弥陀丸『応ッ!』
葉「ウェッヘッヘッ……何か久々だな、こっちは」
阿弥陀丸『それだけに拙者も昂るでござるよ』
葉「よし……行くぞ!憑依合体!阿弥陀丸!!」
さやか「合体……?」
葉『ふむ……自らが葉殿の刀となるのも良いが、やはり自分で刀を握るも良し』
葉『いざ参る!』
魔女は未だ死んではおらず、自らに傷を負わせた標的めがけて何度も攻撃を仕掛けてくる。
が、それを少年はすべて紙一重の所で回避していく。
葉『ふむ……この感覚、まるで巨大な大蛇と戦っているかのようでござるな。だが……』
葉『既にここは拙者の間合い!』
身にサムライの魂を宿らせた少年は既に大きく鈍っている魔女の動きを見切り
『阿弥陀流!大後光刃!!』
その必殺奥義により、勝負を終わらせた。
アンナ「何を惚けてるのよ、あんた」
ほむら「これは……どういうこと……!」
マミ「暁美さ……どうして!あなたの拘束はまだ解いてなかったのに……」
アンナ「あたしがやったのよ、あんたが遅いから」
マミ「あ……あの拘束は強大な力を持つ魔女でさえ完全に封じるのに?」
アンナ「あたしを舐めないで、あんなの巫力を使った甲縛とほとんど変わらないわ」
アンナ「巫術とは少し勝手が違ったけれど、まあそこまで問題じゃなかったわね」
マミ「……本当に、何者なの……あなたたちは」
アンナ「いいわよ、どうせどこぞの侍が久しぶりの憑依合体で調子に乗ってたんでしょ」
阿弥陀丸『せ、拙者そのようなことは決して……!』
葉「ああ、阿弥陀丸すっげえ嬉しそうだったなあ」
阿弥陀丸『葉殿ォォォォォ!?』
葉「と、まあ良かったな。誰も怪我しねえですんだ」
マミ「……ありがとう、あなたたちがいなかったら今頃どうなってたか分からないわ」
まどか「本当にどうも……助かりました」
さやか「ていうか……刀であの魔女と戦って勝っちゃうってどんだけ凄いの?」
葉「いや、それはオイラが凄いんじゃねえんだ」
さやか「?」
葉「いやアンナ、別にオイラはそんなつもりで助けたわけじゃ……」
アンナ「あんた、ただのボランティア精神で今の世の中で温泉宿なんか経営していけると思ってるの?」
葉「……すまん」
さやか「あの、借りを返すとかそんなんじゃないけど……何か奢るくらいのことは」
葉「オイラ、団子が食いてえなぁ」
まどか「お団子……ですか?」
葉「おお、団子はみんなで食うと旨いんよ」
ほむら「…………」
マミ「…………」
ほむら(魔女を倒したかと思えば直後にこのユルさ……分からない、この麻倉葉が)
マミ(何よりもまず、私は今日のことを反省して感謝しなきゃ……)
それぞれの思いを胸に、この一日は終わりを迎えることとなる。
彼らの胸にある思いは違えど、帰り道に手に握られていたのは等しく同じ団子であった。
葉「……やっぱ言うべき、だよなぁ」
アンナ「何を」
葉「あのソウルジェムってのが何なのか」
アンナ「……どうなるか、分からないわよ」
葉「?」
アンナ「あの子たち、そこまで精神が強いわけじゃないわ……あの金髪の子は特にね」
アンナ「ついこの前、死ぬような戦いをして今そんなことを言われたら……壊れるわよ、確実に」
葉「……だよなぁ」
葉「おお、昨日ぶりだな」
さやか「昼休みに屋上で何やってるんですか?」
葉「えーっと……なあアンナ、オイラ達なにしてるんだ?」
アンナ「アンタが風とお日様が気持ちいいところに行きたいって言うからでしょ」
葉「うん、なんかそんな感じだったみてえだ」
さやか「は、はあ……」
さやか(あの怖いアンナさんも葉さんのお願いとかは聞くんだ……)
さやか「あたしはその……何ていうか考え事をしてて」
葉「考え事?」
さやか「……二人は、もしも魔法みたいに自分の夢が叶うとしたらどうする?」
葉「…………」
さやか「自分の大切な人を、それで助けられるとしたら……二人ならどうする?」
葉「お前……それって」
アンナ「まどろっこしい言い方は止めなさい、あんたはあの耳毛ウサギと契約したいんでしょ」
さやか「…………」
さやか「でも、あたしみたいな人間がそういう人たちの力になれるなら、それってすごく良いことでしょ?」
葉「けど、ただで願いが叶うわけじゃねえぞ。でっかい代償がついてくる」
葉「やったらやり返される、それと似たような感じじゃねえか?」
さやか「それでも……こんなあたしでも誰かの役に立てるなら……」
アンナ「話にならないわね」
さやか「え……?」
アンナ「あたしは『オレが世界を救う』なんて奴はもちろん信用しないし」
アンナ「『やってやるぜ』ってガツガツした熱血マンが大キライ」
アンナ「ましてや誰かのために無償で自分を犠牲に、なんて軽口を叩くような輩なんか言うまでもない」
アンナ「だってそんな奴らに限って己の欲望むき出しで、しかも口先ばっかり」
アンナ「オレが、私がって普段調子の良いこと言ってる割には困難にぶつかるとすぐへこたれる」
さやか「…………」
さやか「あたしは……あたしはそんなこと!」
アンナ「あんた、本当に無償で他人のために何かをするつもりでいるの?本当に、何の見返りも求めてないのかしら?」
さやか「あ……アンナさんだって、葉さんが大変な状態になれば絶対にあたしと同じことを……」
アンナ「しないわ」
さやか「!」
アンナ「仮に葉が危機的状況になったとして、あたしがそれを助けられるとしても、無理に手を伸ばすことはしないわ」
アンナ「だって、葉なら必ずそれを乗り越えられるって信じてるもの」
さやか「…………」
葉「いやぁ……何か照れるな」
阿弥陀丸『愛でござるなぁ』
アンナ「そうね、確かにそうかもしれない。だったらあんたは自分の思うままに行動したらいいわ」
葉「元々オイラ達には無理に止めることなんかできねえしな」
さやか「葉さん……」
葉「ただ何というか、お節介かもしれんが言っておくと……あんま無理しねえほうがいいぞ」
葉「自分の容量を超える無理をしちまったら、自分が自分じゃなくなっちまう……無理ってのは本当によくねえ」
葉「オイラは無理した経験があるからよくわかるんよ」
さやか「…………」
さやか「……もう少し、色々と考えてみる」
葉「おお、それがいいと思うぞ」
病院
さやか「CD……ここに置いとくね」
恭介「…………」
さやか「あの、恭介……」
恭介「さやかは僕を虐めているのかい?」
さやか「え……?」
恭介「何で……指が動かなくなった僕にこんなものを聞かせるんだ!」
さやか「だ、大丈夫だよ!リハビリとかいろいろ頑張れば必ず……!」
恭介「治らないって言われたんだ……バイオリンはもう諦めろって……!」
さやか「!」
恭介「もう……魔法とか奇跡でも存在しない限り僕の指は……!」
さやか「…………」
さやか「あるよ」
恭介「え……?」
さやか「魔法も、奇跡もあるんだよ!」
夜
葉「やっぱ、無理にでも止めておくべきだったかもしれねえな」
アンナ「アンタ、自分で無理はよくないって言ってたでしょ」
葉「うっ……」
アンナ「それに、ここからはもうあの子個人の問題よ……あたしたちが首を突っ込めることじゃない」
葉「……だな、じゃあオイラ達はオイラ達に出来ることでふんばるとするか」
阿弥陀丸『葉殿!』
葉「どうした阿弥陀丸?」
阿弥陀丸『一大事でござる!このままでは多くの者が!!』
アンナ「……ふんばらなきゃいけないこと、出来たみたいね」
葉「みてえだな」
まどか「や、やめて仁美ちゃん!こんなことしないで!」
仁美「あら、どうかなさいました?」
まどか「だって……止めないと!あんなの混ぜちゃ危ないよ!」
仁美「あれは神聖な儀式、素晴らしいところへ旅立つために肉体から離れる儀式ですわ」
まどか「…………!」
まどか(い、いつもの仁美ちゃんじゃない……私が止めさせなきゃ!)
まどかは危険物となったバケツを奪い取ると、それを自分の持てる力すべてを使って表へと放り投げた。
仁美「…………」
まどか「ひ、仁美ちゃん……!」
その瞬間、仁美を含む工場に集まっていた人間が一斉にまどかへ襲いかかった。
狂気と呼ぶにふさわしい表情を浮かべながら。
まどか「ひっ…!」
まどか(どうして……どうして…こんなことになって……!)
そして、気が付けば彼女がいた空間はすでに魔女の結界と化していた。
まどか「……私への罰、なのかな」
『みんなを救いたいかい?』
まどか「!」
『君だったら友達を助けられる、魔女の毒気に当てられてしまった多くの人を救うことができる』
まどか「…………」
『君がよければ、僕はいつでも君を魔法少女にしてあげられる……まどか』
まどか「…………」
まどか「……私、魔法少女に…」
その刹那、青い何かが目の前にいる魔女を斬り伏せた。
それはいつも自分が見ている人、自分の大切な友人の姿だった。
まどか「さ……さやか、ちゃん?」
さやか「あははは、いやー間一髪だったね。間に合ってよかったよかった!」
まどか「さ、さやかちゃん…それって……」
さやか「ん…どう、似合ってる?……なんてね」
まどか「やっぱり契約…しちゃったの……?」
さやか「うん…すっごく悩んで…それでも最後は自分で決めたの、強制されたわけじゃないよ」
まどか「ほ、ほむらちゃん!」
さやか「遅かったじゃない、転校生」
さやか「それと……二人もね」
葉「…………」
アンナ「…………」
ほむら「麻倉葉……恐山アンナ……!」
葉「……やっぱ、そうなっちまうよな」
さやか「私なりに考えた結論、後悔なんて全然ないよ」
アンナ「…………」
某所
杏子「なによ、あんなのがいるなんて聞いてないんだけど」
キュゥべえ「ついさっき魔法少女になったばかりだからね、君は知らなくて当然さ」
杏子「せっかくこんな良い狩場だってのに……それをあんな新人に渡すのも癪だよね」
キュゥべえ「どうするつもりだい?」
杏子「邪魔なやつがいるなら…そいつを消しちゃえばいいんでしょ?」
キュゥべえ「うまくいくかな?」
杏子「何だよ、私があんな初心者に負けるとでも思ってんのか?」
キュゥべえ「確かに君は実力がある、経験においても美樹さやかより上だ」
キュゥべえ「ただ、君の障害になるのは美樹さやかだけじゃないってことさ」
杏子「誰だ……それ?」
キュゥべえ「暁美ほむらさ」
キュゥべえ「おそらくね」
杏子「おそらくって何だよ。お前、そいつと契約したんだろ?」
キュゥべえ「彼女の存在は本当に不明確なんだ、僕にもわからないことが多い」
杏子「妙な言い方だな、どういうことだよ……」
キュゥべえ「それと……麻倉葉、恐山アンナという二人にも気を付けることだね」
杏子「アサクラヨウ?キョウヤマアンナ?」
キュゥべえ「この二人は魔法少女じゃない、それでも……確実に君にとっては邪魔になるよ」
杏子「はっ、契約もしてないような奴があたしの障害になるって?」
キュゥべえ「ただの人間と思わないほうがいいよ」
杏子「ふーん、まあでも……全員退場してもらえば、結局は問題ないんだろ」
葉「……契約、しちまったな」
アンナ「そうね、あたしは知らないけど」
葉「嘘つけよ、アンナも結構気にかけてたじゃねえか」
アンナ「気のせいよ」
葉「けど……言っとくべきだったよな、やっぱ」
葉「ソウルジェムってのがオイラたち人間の魂だってことは」
翌日
さやか「ここだ、ここに使い魔がいる……いくよ、まどか」
まどか「うん……」
杏子「馬鹿じゃねーの?」
さやか「!」
杏子「あれ使い魔だから、グリーフシードは持ってないよ。だから倒す意味もない」
さやか「何よあんた、どいて!使い魔に逃げられるでしょ!」
杏子「だから倒す意味がないって言ってんだろ、卵産む前の鶏締めてどうすんのさ」
さやか「……!」
さやか(コイツ……使い魔のせいで人が死んでも関係ないって考えてるの……?)
杏子「新人のあんたにできると思ってるの?ていうか、先輩への礼儀がなってないんじゃない?」
さやか「お前みたいなやつ……同じ魔法少女として認めない!」
杏子「はあ……中途半端な気持ちで首突っ込まれるの、ホントにむかつくんだ」
さやか「うあっ!」
まどか「さやかちゃん!キュゥべえ、やめさせて!こんなの絶対おかしいよ!」
キュゥべえ「無理さ、あの二人は互いに相容れない道を歩んでいる」
キュゥべえ「生物は自分の領域を侵すものを許しはしないんだ」
まどか「そんな……そんなのって……!」
キュゥべえ「でも、止める方法がないわけじゃない……まどか、君の力を借りればね」
まどか「私の……力?」
キュゥべえ「君の魔法少女としての才能はずば抜けている、もし君が魔法少女になれば絶対にこの場は治められるよ」
まどか「私が……契約をすれば……」
杏子「……何だよ、お前」
葉「初めましてだな、オイラは麻倉葉。まどかとさやかの友達だ」
杏子「アサクラ?……へえ、お前がアサクラヨウか……じゃあそっちの女がキョウヤマアンナだな」
アンナ「…………」
葉「あれ、オイラたちのこと知ってんのか?」
杏子「ちょうどいいや、お前も色々と邪魔くさいらしいんだ」
杏子「別に恨みはないんだけどさ、そこの青い奴を片付けたら次はお前らの番だ」
葉「……オイラ、喧嘩する気はねえのになあ」
さやか「あたしはそいつを認めない、止めないで!」
杏子「ごちゃごちゃ言ってんじゃねーよ!背中ががら空きだ!」
まどか「危ない!」
キィンッ!
杏子「!?」
杏子(止められた……?後ろを見もしないで……コイツ、後ろにも目があるのかよ!?)
まどか「な、なんで……?」
アンナ「葉には阿弥陀丸の目もついてるのよ、だから後ろからの攻撃もちゃんと止められる」
まどか「あ、あみだまる……?」
アンナ「それより、あの杏子って小娘……生意気よ」
まどか「…………」
まどか(どうしよう、正直アンナさんが一番怖い)
まどか「ほむらちゃん!」
さやか「転校生……それに……!」
マミ「こんにちは、鹿目さんに美樹さん……そして」
杏子「暁美ほむら、ついでにマミも一緒か……」
マミ「お久しぶりね、佐倉さん」
ほむら「……また、あなたたちもいるのね」
葉「ウェッヘッヘ、まあな」
マミ「魔法少女同士が争っているのに、それを黙ってみているなんて私には出来ないの」
ほむら「それで、二人ともどうするつもりかしら?」
ほむら「もしもこれ以上戦うというのなら、私と巴マミで止めさせるけれど」
葉「オイラも多分、一緒に止めに入るだろうなぁ」
さやか「うっ……わ、分かったよ……今はもう止める」
ほむら「あなたはどうするの?佐倉杏子」
杏子「テメー、何であたしの名前を……どこかで会ったか?」
ほむら「さあ、どうかしら……ただ」
杏子「!」
ほむら「いざという時、私は決して容赦はしない」
杏子(消えたと思ったら一瞬で後ろに……!?)
杏子「今日のところは降りさせてもらうよ」
ほむら「賢明ね」
杏子「ただ、お前らの顔はちゃんと覚えたからな……次は覚悟しとけよ」
葉「おお、また会おうな」
杏子「…………」
杏子「……なんか、すげー調子狂うな」
マミ「美樹さん……魔法少女になったのね」
さやか「はい、でも全然後悔はしてません」
マミ「どんな願いをしたのかは聞かないけれど……魔法少女になるって、すごく辛いことよ?」
さやか「覚悟してますから……」
マミ「そう、なら何も言うことはないわ」
さやか「……そういうことだから、あたしは絶対に最後までやり抜いて見せる」
アンナ「…………」
マミ「何かしら?」
ほむら「すごく重要な話、美樹さやかは私を敵視しているようだけれど、出来れば聞いてほしいわね」
さやか「…………」
ほむら「そして、あなたたちも」
葉「ん?」
アンナ「…………」
ほむら「……近い将来、ワルプルギスの夜が来るわ」
マミ「!」
葉「ワルプルギス……ってなんだ?」
阿弥陀丸『拙者、英語とやらはよくわからんでござる』
ほむら「確かよ、冗談で言っているわけでも不確定なわけでもないわ」
ほむら「私は美樹さやかの契約を良しとするつもりはないけれど……契約をすればもう戻れないもの」
さやか「つまり、そのワルプルギスの夜ってのを倒すのに力を貸せってこと?」
ほむら「そうよ、むしろ嫌でも戦うしかないわ……魔法少女になったのならね」
アンナ「その変な名前の魔女、相当手強いのかしら?」
葉(変な名前……)
ほむら「超大型の魔女よ、一人ひとりの魔法少女じゃ太刀打ちできないわ」
マミ「もし仮にワルプルギスの夜が来るのなら……争っている場合じゃないわね」
ほむら「そう、だから……これからは協力しましょう。美樹さやか」
さやか「…………協力できればいいわね」
葉「…………」
葉(女の喧嘩ってすげぇ怖え)
翌日、教会
杏子「まさか、そっちから来るなんてな」
葉「ウェッヘッヘ、ちょっと色々と話したくてな」
杏子「なんであたしがここにいるって分かった?」
葉「おお、大変だったぞ!その辺の浮遊霊に聞いたりとか色々と」
杏子「??……まあいいや、で……話ってのは?」
葉「んー、回りくどく聞くのはあんま得意じゃねえし……いいや、そのまま聞く」
葉「杏子、なんでお前は魔法少女になったんよ?」
葉「話を聞く限り、お前は『誰か他人のために』って感じの性格じゃなさそうだ」
杏子「間違っちゃいないな、今のあたしは自分のためだけに生きてるから」
葉「そんなお前がどんな契約で魔法少女になったのか、なんとなくすげえ気になった」
杏子「…………」
杏子「……はあ、なーんかホントに調子狂うな。昨日、あたしはあんたに斬りかかったんだぞ?」
葉「あれはびっくりしたぞ、あん時は本気の太刀筋だったもんな」
杏子「それを笑いながら言うかよ……もういいや」
杏子「ちょっと長い話になるよ……聞きながら、食うかい?」
葉「おお、ありがとう」
杏子「まあ、そういうことさ……別にそれがどうしたってことだけどね」
葉「……お前も何というか、色々あったんだな」
杏子「そう、最初はあたしも他人のために願ったんだよ。でも、結局それが全部裏目に出ちまった」
杏子「でもそれをあたしは恨んだりはしない、いい教訓になったと思えばいいのさ」
杏子「だから今のあたしはちゃんと自分のためだけに生きることが出来てるわけだしね」
葉「…………」
杏子「あたしの考え方、何か間違ってるかい?」
葉「お前の考えが正しいかどうかはオイラには分からんし、別に否定しようとも思わん」
葉「けど、オイラとはちょっと違うみてえだ」
杏子「……じゃああんたはどう思ってるんだ?誰か他人のために身を削りたいって?」
葉「オイラは…………」
葉「楽に暮らしてえ」
杏子「……………………」
杏子「…………はい?」
葉「オイラだけじゃねえ、みんなが楽に生きられる世界が作れたらいいと思ってる」
杏子「……みんなが?本気で言ってんのかよ、それ」
葉「おお、本気だぞ」
杏子「…………」
葉「だから、オイラは楽に生きられてねえお前を放っておけねえ」
杏子「は……?何言ってんだよ、あたしはもう十分、自分の好き勝手に生きて……」
葉「お前はその親父さんとの事件があってから無理やり自分を変えてるんよ、多分」
葉「本当の杏子は他人にお節介を焼くのが好きなあったけえ人間なんじゃねえかな」
葉「本当に自分の好きに生きてるならオイラに身の上話なんかわざわざしねぇだろ?」
杏子「…………」
葉「それに、お前をオイラよりもよく知ってる奴も泣きながら言ってるしな。杏子は優しいって」
杏子「あたしを……よく知ってる……?」
葉「そこにいるんよ、お前の親父さん」
葉「いるんよ、地縛霊になってずっとこの教会にいたみてえだ……心中なんてすげえ死に方なのにまだ悪霊になってねえ」
葉「けど……気持ちがヘンな方向へ動けばいつ悪霊になるかも分からん」
葉「こういうのを何とかするのはオイラの仕事だ」
杏子「あんた……一体……!」
葉「この親父さんの未練を晴らすには……杏子の協力が必要だな」
葉「親父さんの話、聞いてやってくれ」
杏子「――――!」
葉「憑依合体!」
父の後悔、苦悩、愛情、それらすべてをシャーマンである葉を通じて知ることとなる。
彼は死後、自分が激情に身を任せて娘を追いこんだことを後悔していた。
生前とはまるで変わってしまった杏子を見てその思いはさらに強くなり、ただ涙を流す日々が続いていたという。
佐倉杏子はそれらすべてを知った。
かつての自分の願いは確かに悲劇を生んでしまったが
それでも、それでも父は理解してくれた。謝ってくれた。
それは本当に遅い、遅すぎるものであったけれど
少女である佐倉杏子の心に大きな影響を与えるものとなったに違いない。
葉「親父さん、ちゃんと成仏出来たぞ」
杏子「……そっか、ありがとな」
葉「さっきも言ったけど、これがオイラの仕事だからな」
杏子「シャーマン、っていったっけ。霊ってのも本当にいるんだね」
葉「おお、その辺にたくさんいるぞ。ほとんど悪さなんかしないけどな」
杏子「何か……あんたの後ろにも何かいるようか気がしてきたよ、何だろ……侍、かな?」
阿弥陀丸『!』
杏子「いや、何かはっきりとは見えないけどさ。なんとなく感じるんだよね」
葉「霊と対話したことで、ちょっぴりお前にもシャーマンとしての資質が開花したのかもな」
杏子「昨日、後ろからの攻撃を受け止められたのも……」
葉「ああ、阿弥陀丸がちゃんと見ててくれたんよ」
阿弥陀丸『むっ……!』
葉「そんなことねえぞ、道に迷った時は上からナビゲートしてくれるし」
杏子「ああ、それは確かに便利かも」
葉「チンピラに絡まれても全然怖くねえし」
杏子「ああ、まあ侍だからな……」
葉「朝なんか金縛りで絶対に起こしてくれるしな」
杏子「それは何かおかしいだろ」
葉「最悪、夜のトイレにもちゃんとついてきてくれるんだぞ」
杏子「なんであんたが夜のトイレを怖がってんだよ」
杏子「?」
葉「何か近いうちにワルプルギスの夜ってのがこの町に来るんだと」
杏子「ワルプルギスって……超ド級の大型魔女だろ!そんなやつがこの町に!?」
葉「おお、どうも本当みてえだ」
杏子「……なんであんたがそれを知ってるんだ?」
葉「ほむらから伝言を頼まれたんよ、すげえ強いやつが相手だから協力したいんだと」
杏子「暁美ほむらか……正直、あいつならまあ協力するものやぶさかじゃないさ」
杏子「けど……美樹さやかもいるんだろ、きっと」
葉「うん、いるな」
杏子「絶対あたし恨まれてんだろ、急に仲良しこよしは出来ないぞ。多分」
葉「大丈夫、何とかなるって」
杏子「本当かよ……頼むからそのユルい笑い、どうにかしてくれ」
ほむら宅
アンナ「…………遅い」
アンナ「何やってるのよ葉は!」
ほむら「いきなり家に押しかけてきたあなたが言えるセリフじゃないわね、それは」
アンナ「仕方ないじゃない、あんたに話があったのよ」
ほむら「何かしら」
アンナ「あんたの正体、能力、そして……目的についてね」
ほむら「…………今はまだ、答えるときじゃないわ」
アンナ「……魂なんでしょ、ソウルジェムって」
ほむら「!」
アンナ「あたしはイタコよ、魂を扱うのは日常茶飯事……分からないわけがないでしょ」
ほむら「イタコ……?」
アンナ「詳しい説明は面倒だからしないけど、それが分かるくらいの力はあるってことよ」
ほむら「…………」
ほむら(初対面の時に私の本名を知っていたのも……まさかそれに関係が……?)
アンナ「で、質問に答えなさい。あんたはいったい何者なのか」
ほむら「…………」
アンナ「…………どうしても言わないなら、『読む』わよ」
ほむら「!」
アンナ「この力をあたしに使わせないで、制御は出来るけれどあまり使いたいものじゃないわ」
ほむら(……やっぱり、彼女には隠す必要もないし隠すこともできない、か)
アンナ「ふーん……時間を遡行して、ね」
ほむら「一度ですべてを理解してくれてありがたいわ」
アンナ「転生の概念に近いもの、これくらい当り前よ」
ほむら「私は今度こそワルプルギスの夜を倒したい……できれば、あなたたちの力も貸してくれると嬉しいけれど」
アンナ「嫌よ、めんどくさい」
アンナ「……っていうところだけど、今回は協力してあげるわ。あたしたちにとっても必要なことだから」
ほむら「…………?」
アンナ「……にしても」
ほむら「?」
アンナ「あのユルユル馬鹿は一体どこで道草食ってんの!!」
ほむら「…………」
数十分後
葉「ち、違うぞアンナ!伝言だけじゃなくて、オイラはちゃんとシャーマンとしての仕事を……」
アンナ「あら、シャーマンとしての仕事をするだけなのにどうして服に四本もあの小娘の長髪が付くのかしら?」
葉「ああ!それは(親父さんが成仏する)別れの時に杏子が抱き着いてきて……」
アンナ「仲がいいのねー!!」
ギャ――――ッ!
ほむら「…………」
ほむら(聞こえない知らない何も見てない、目の前で惨劇なんか起こってるはずがない)
葉「何も言ってねえって!例えば……」
葉(はっ……夜のトイレの話とかしたらまた変な誤解をされるのでは……)
葉「あの……あれだ……」
アンナ「……ふーん、すぐには言えないんだ」
葉「いや、だから違うぞアンナ!?」
アンナ「ふーん、そうなんだ……」
アンナ「この浮気者ー!!」
ギィィイヤアアアアァァァァ!!
ほむら「…………」ガタガタ
ほむら(私の体が揺れてるのはそうきっと地震のせい、恐怖の惨劇に震えてるわけじゃなくて地震のせい)
葉「……で、そっちは結局どうなったんよ」
アンナ「大体のことは理解したわ、予想以上にヤバい相手だってこともね」
葉「少なくとも、仲間内で喧嘩してるようじゃ勝てねえよな」
ほむら「全員が協力し合っても勝てるか分からないほどの敵よ……」
葉「一番の問題点は……」
ほむら「美樹さやかと佐倉杏子の関係、ね」
葉「…………」
ほむら「佐倉杏子はあなたの話を聞く限り、幾分か融通は利くでしょうけど……」
ほむら「意地になっている美樹さやかを説得するのはかなり難しいでしょうね」
アンナ「…………どうするの、葉」
葉「……どうしような、ホント」
翌日、上條宅前
さやか「…………」
さやか(中からバイオリンの音が聞こえる……良かった、ちゃんと治ったんだ)
さやか「それが分かっただけでも……良かった」
杏子「会いもしないで帰るのかい?ずっと追い掛け回してたくせに」
さやか「お前は……!」
杏子「知ってるよ、この家の坊やなんだろ?アンタが契約した理由って」
さやか「……だったら、何だっていうの」
杏子「別に……ただ、一度の奇跡のチャンスを他人のために使っちまうなんてと思ってさ」
杏子「ホント、馬鹿だよ……あんた」
杏子「分かってないのはそっちだ馬鹿、魔法を他人のために使ったってろくなことにはならないよ」
杏子(あたしは葉のおかげで後から救われた……けど、誰もがそうなるとは限らないんだよ)
杏子「他人のために契約して、他人のために魔法少女として戦う……確かに正しい目標かもしれないけどさ」
杏子「正しすぎてそれに潰されるお前があたしには目に見えてるんだよ」
さやか「あんたとあたしは違う!」
杏子「…………!」
杏子(何だよ……他人のために願うってことがどんなことか分かってるから……)
杏子(お前と同じような願いをして今まで苦しんできたから、言ってやってるんだぞ……!)
杏子「やりあうなら……場所を変えようか、ここじゃ人目に付きそうだ」
鉄橋
杏子「ここなら遠慮なくやれるよね?」
杏子(言って分からないなら……力づくでも分からせてやる……!)
さやか「今度こそ決着を……!」
まどか「待って、さやかちゃん!」
さやか「ま、まどか……どうしてここに!?」
まどか「キュゥべえが……さやかちゃんが危ないっていうから!」
さやか「……危なくないよ、必ず勝つから」
杏子「はっ、誰があたしに勝てるって?」
さやか「くっ……!」
まどか「ほ、ほむらちゃん……それに葉さんたちも」
葉「んー……やっぱ喧嘩になっちまうか」
杏子「あたしから仕掛けるつもりはないんだよ、ただコイツが聞き分けないんだ」
さやか「…………!」
杏子「悪いこと言わないから止めとけって、あたしからお前に手を出すつもりはないんだって」
さやか「どっちにしたってあたしとあんたは相いれないでしょ!」
杏子「……そうかよ、じゃあもう怪我してもしらねーからな!」
まどか「!」
まどか(ダメだ……このままじゃさやかちゃん、絶対に怪我しちゃう!)
まどか(さやかちゃんが手を出さないなら攻撃しない……なら)
まどか「ごめん、さやかちゃん!」
親友を守ると意を決した鹿目まどかは
さやかの手からソウルジェムを掴みとると鉄橋から道路へ投げ捨てた。
さやか「まどか!アンタなんてこと……」
まどか「さ、さやかちゃん……?」
さやか「…………」
杏子「何だ……?」
キュゥべえ「今のはまずかったよ、まどか」
まどか「どういうことキュゥべえ、さやかちゃんが……さやかちゃんが急に!」
キュゥべえ「それはさやかじゃなくて唯の抜け殻だよ」
キュゥべえ「さやかは今、君が投げて捨てちゃったじゃないか」
杏子「どういうことだ……オイ!」
まどか「えっ……?」
杏子「取り乱すなってったって……!」
葉「すまん。ちょっと、オイラ達に見せてくれ」
まどか「は、はい……」
葉「…………」
葉(なくちゃならねえはずの魂が……ねえ……これじゃ……)
アンナ「キョンシー、まるで」
キュゥべえ「……なるほど、君たちは最初から理解していたわけだ」
キュゥべえ「その理解が、どういう能力に依るものだったのかはわからないけれどね」
まどか「さ……さやかちゃんは……さやかちゃんは大丈夫なんですか?」
キュゥべえ「だからまどか、それはさやかじゃなくてただの……!?」
アンナ「くどいし耳障りよ」
アンナ「戻ってきたみたいね」
ほむら「キュゥべえは……?」
アンナ「踏みつぶしたわ、鬱陶しかったから」
葉「…………」
葉(こういうアンナの躊躇ねえところがたまにおっかねえ)
まどか「さやかちゃんは……?」
ほむら「これを手に握らせて……」
さやか「…………」
さやか「………っ」
さやか「えっ……あれ……?」
キュゥべえ「やれやれ……いきなり踏み潰すなんてとんでもないことをしてくれたね」
まどか「きゅ、キュゥべえ……?」
アンナ「何よ、また踏みつぶされに来たの?」
キュゥべえ「代えはあるけれど無駄に消費はしたくないんだ、勿体ないじゃないか」
杏子「説明しやがれ……これはどういうことだ!テメー、あたしたちの体に何しやがった!」
キュゥべえ「酷いなあ、僕は君たち魔法少女が魔力をコンパクトに運用できるようにしてあげているのに」
まどか「……どういうこと?」
キュゥべえ「魔法少女との契約を取り結ぶ僕の役目は……」
キュゥべえ「君たちの魂を抜き取ってソウルジェムに変えることなんだ」
さやか「そんな……!!」
キュゥべえ「君たちにとっても便利じゃないか、ソウルジェムさえ壊れなければ君たちは無敵なんだ」
キュゥべえ「たとえ心臓が破れても、どれだけ骨を砕かれようと……不死の体を手に入れたんだよ?」
まどか「そんなのひどいよ…こんなのってないよ」
キュゥべえ「君たち人間はいつもそうだ、事実を伝えるといつもきまって同じ反応をする」
キュゥべえ「わけがわからないよ」
アンナ「…………」
グシャ!
葉「…………アンナ」
アンナ「イラッとしたのよ、しょうがないでしょ」
翌日、さやか宅
さやか「…………」
さやか「私……こんな体になっちゃって…どんな顔して恭介に会えばいいのよ」
『いつまでもしょぼくれてんじゃねぇぞ、ボンクラ』
さやか「!」
さやか(今の声……!)
杏子「ちょっと面かしな」
杏子「やっぱり後悔してるの?こんな体にされちゃったこと」
さやか「…………」
杏子「あたしはさぁ…まあいっかなって思ってる、この力のおかげで色々好き勝手出来たわけだし」
さやか「あんたは自業自得なだけでしょ」
杏子「そうだよ自業自得なのさ、誰のせいでもない自分のせい」
杏子「そう割り切れれば誰か恨むこともないし、後悔なんてあるわけがない」
杏子「そう思えば大抵のことは背負えるもんさ」
さやか「で……こんな教会にまで連れてきて、一体何のつもり?」
杏子「……話しておこうと思ってさ、あたしのこと……それと、葉のことも」
杏子「まあ…そんなわけさ、長々と話したけど大体はこんな感じ」
さやか「あんたに……そんな過去が……」
杏子「別にあたしは悲劇のヒロインを気取るつもりはないし、そんな資格もない」
杏子「人とはちょっと違う過去があるからって誰かに偉そうに説教をするつもりもないよ」
さやか「…………」
杏子「あんたも私と同じ間違いから始まった、そして今も苦しみ続けてる…見てられないんだよ、そんなの」
杏子「あたしは葉のおかげで無理をしてたことも含めて色々と吹っ切ることが出来た」
杏子「一言でいうと、楽になれたんだ」
さやか「…………」
杏子「あのお節介、『楽が好きだから、楽じゃないお前は放っておけない』とか言ってさ」
杏子「だから、あたしも……似たような願いをして……今、楽じゃないあんたを放っておけないんだよ」
さやか「でも……私は自分の願いに後悔なんてしないよ、絶対に……これからもね」
杏子「……それ、本気で言ってるのかよ」
さやか「うん、私が気に入らないなら……そのときはまた殺しに来ればいい」
杏子「そういう問題じゃねえ、このままじゃあんた……壊れちまうぞ、本当に」
さやか「大丈夫……私は口先だけじゃない、最後まで口にしたことは守り抜いて見せる」
杏子「…………馬鹿だよ、本当に」
翌日
さやか「今……なんて……?」
仁美「明日の放課後、私は上條恭介さんに告白します」
さやか「なんで……そんな急に!」
仁美「ずっとお慕いしていました……でも、幼馴染である美樹さんも彼に好意があるのなら」
さやか「…………!」
さやか(こんな……こんな体で恭介に、こんな口で好きだなんていえるわけ……!)
仁美「明日の放課後まで待ちます……では」
数日後
さやか「…………」
まどか「さやかちゃん…今日も私、魔女退治に付いていって……」
さやか「……来ないで」
まどか「え……?」
さやか「戦いもしないアンタが付いてきたって…何にもならないでしょ」
まどか「でも……私……!」
さやか「何?私のことを思ってくれてるつもり?私と同じ立場でもないくせに」
まどか「そんな……さやかちゃん……」
さやか「本当に私のことを思ってくれてるんなら…私と同じ体になってみせてよ」
さやか「……出来るわけないよね、同情なんかでそこまでのこと」
まどか「ど、同情なんかじゃ……!」
さやか「だったら……アンタが戦ってよ」
さやか「それ以前に……戦い以外にもう、あたしに存在価値なんかないんだから」
さやか「馬鹿……馬鹿……あたしったら友達になんてこと言ってんのよ!」
・・・
夜
まどか「さやかちゃんが…帰ってない!?」
まどか母「うちに来ていないかって聞かれたんだけど……その様子じゃまどかも知らないみたいだね」
まどか「私……探してくる!」
・・・
ほむら「美樹さやかの行方が分からないらしいわ……」
マミ「み、美樹さんが……?」
葉「!」
アンナ「…………」
杏子「あの馬鹿……手分けして探すぞ!」
某所
さやか「…………」
杏子「やっと見つけた……まったく、手間かけさせんなよ」
さやか「悪いね……面倒かけて」
杏子「……なんだよ、そんなこと言うなんてらしくないじゃん」
杏子「いつものさやかだったら突っかかってくるところだろ」
さやか「もう…どうでもよくなっちゃったからね」
杏子「…………!」
杏子「お前……このソウルジェム……!」
さやか「……何やってるんだろうね、あたしは」
さやか「親友にひどいこと言って……憧れた先輩みたいに戦うことも出来なくて……」
さやか「差し出された忠告に耳を貸さずに意固地になって……最後まで協力できなくて……」
杏子「お前……まさか……!」
さやか「あたしって…ホント馬鹿」
・・・
葉・アンナ「!」
葉「この霊力の感じ……!」
アンナ「…………」
・・・
キュゥべえ「この国では成長途中の女性のことを少女って言うんだろう?」
キュゥべえ「だったらいずれ魔女になる君たちのことは、魔法少女って呼ぶべきだよね」
杏子「どうなってんだよこれ……!」
杏子(いつの間に魔女の結界内に入った?そもそもこの魔女はどこから現れた!?)
ほむら「……遅かったようね」
杏子「ほむら!これはどうなってやがる!」
ほむら「黙って、いったん脱出するわ……あなたは美樹さやかを離さないで」
杏子「逃げるのかよ……?」
ほむら「今の状況じゃ戦うわけにはいかないわ……美樹さやかの体も傷つくことになる」
杏子「チッ……」
ほむら「…………」
葉「……すまん、間に合わんかったな」
アンナ「…………」
まどか「さやかちゃんは、さやかちゃんは大丈夫なの!?」
マミ「あ、暁美さん……説明してくれるかしら……?」
ほむら「…………」
ほむら「美樹さやかのソウルジェムはグリーフシードに変化した後、魔女を生み出して砕け散ったわ」
まどか「っ!」
マミ「え……!」
マミ「それって…つまり美樹さんが…魔女になったってことじゃ……!!」
ほむら「……ソウルジェムに穢れが溜まり切ってしまえば…私たちも魔女になる」
ほむら「それが私魔法少女について隠された最後の秘密よ」
マミ「!」
マミ「じゃあ……私たちも、穢れが溜まったらいずれは……」
ほむら「そういうことよ」
マミ「そんな……ま、魔法少女が魔女になるのなら……」
マミ「私たちがみんな死ぬしかないじゃない!」
パーンッ!
マミ「!?」
アンナ「取り乱さないで」
葉(……右もすげぇ痛えんだよな)
アンナ「あんた、魔法少女の先輩なんでしょ?それなのにみっともなく狼狽えるんじゃないわよ」
マミ「で、でも……!」
まどか「さやかちゃんは……さやかちゃんはもう!」
葉「手はある」
まどか「えっ……?」
杏子「どういうことだよ……?」
葉「お前らがちゃんとさやかの体を持ってきて良かった、だったら……まだ何とかなる」
ほむら「説明……してくれるかしら?」
アンナ「今、この体は魂が抜けた状態で……肉体的には無傷」
アンナ「要するに……入れてやればいいのよ、この体にもう一度……魂をね」
葉「いや、そう簡単にもいかん。魂ってのは肉体から離れすぎちまうと蘇生できなくなっちまうんだ」
葉「まあ……魂があの世に行っても蘇生できるシャーマンもいなくはねえけどな」
アンナ「ガンダーラみたいな連中は特殊よ、それに今のあたしには神クラスの持ち霊もいないしね」
杏子「つまり……どういうことなんだ?」
葉「時間がねえ、早くしねえと蘇生は出来なくなる」
マミ「じゃ、じゃあ……!」
アンナ「言ったでしょ、取り乱さないでって……こうやっておしゃべりしてる時間も惜しいのよ」
ほむら「……今、あの魔女になった美樹さやかを倒せば間に合うのね」
葉「ああ、百パーセントじゃねえけどな」
ほむら「なら……行きましょう、可能性があるのなら」
ほむら(魔女と化してもまだ、生き返ることができる……今までになかったそんな可能性があるのなら!)
結界内
魔女「――――――!」
マミ「そんな……これが美樹さん!?」
杏子「すぐに目覚ませてやるからな……さやかぁ!」
葉「じゃあまどか、オイラ達が戦ってる間……ずっとあいつに呼びかけ続けてくれ」
まどか「は、はい!」
葉「悪い方向に行っちまった魂をあるべき姿へ戻すには色々な方法があるんよ」
葉「お前の言霊で、あいつ自身をしっかり認識させてやってくれ」
まどか「さやかちゃんを……私の言葉で!」
ほむら「……行きましょう」
アンナ「へまをしないようね」
葉「うし、じゃあ少し……ふんばるとするか」
阿弥陀丸『応ッ!』
葉「オーバーソウル!阿弥陀丸イン春雨!」
アンナ「あんたは呼びかけ続けなさい、攻撃は前の連中が全部撃ち落としてくれるわ」
まどか「は、はい!」
杏子「くっそ……さやかめ、ちっとは手加減しろってんだ……!」
魔女「!」
マミ「来てるわよ!佐倉さん!」
杏子「しまっ……」
杏子「っ……と、ありがとな葉!」
葉「来るぞ!」
杏子「分かってる、次は食らわない!」
ほむら「私たちも行きましょう、巴マミ」
マミ「え、ええ……!」
ほむら「……まだ、迷いがあるのかしら?」
マミ「…………」
ほむら「もしそうなら……あなたは戦うべきじゃないわ」
葉(あんまりデカい攻撃を仕掛けて倒しちまったら元も子もねえ……!)
葉(けど……あの投げつけてくる木の車輪は撃ち落とさねえとまどかに当たっちまう)
ほむら「下がって、麻倉葉、佐倉杏子……あの車輪を爆砕するわ」
葉「!」
ほむらの言葉を受け、葉と杏子は後ろへ回避する。
直後、迫りくる多くの車輪は爆散しすべて焼失した。
葉「おお、すげえ」
ほむら「でも、あまり何度も使える攻撃ではないから……もう少しは二人で粘ってもらえるかしら?」
杏子「ああ、任せな!」
マミ(私はいったい何をしているの?年下の暁美さんや佐倉さんも戦っていて……)
マミ(麻倉さんと恐山さんも前線に立っている……)
マミ(そして魔法少女ですらない鹿目さんまで、美樹さんを助けようと必死になっているのに)
マミ(……私が、美樹さんのために出来ること)
マミ(少なくとも、それは狼狽えることでもなければ最初から諦めて勝負を放棄することでもないはず)
マミ(まして……みんなを道連れにして死ぬことなんかじゃ絶対にない!)
――――少女の、心は決まった。
ほむら「迷いは……もうないのかしら?」
マミ「もう大丈夫よ、みんなが戦っているのに……私だけ希望を捨てたりはしないわ」
マミ「それに、私はみんなの先輩だからね……!」
葉「オイラとアンナとは同級生だけどな」
マミ「フフ……そうだったわね」
杏子「ったく、遅かったな……マミ!」
葉「……さあ、もうひとふんばり行くとするか!」
投げられるその車輪を巴マミは自らのマスケット銃で次々と撃ちぬいていく。
車輪の攻撃の防御においてはまさに最高の存在だった。
魔女「!!」
ほむら(車輪での攻撃が効かないとみて今度は剣で攻撃を……!)
杏子「はっ、近接系武器での攻撃なら!」
葉「オイラ達で何とかする」
マミ(これで……完全に敵の攻撃は封じられたわね)
アンナ「あの赤髪の小娘、あたしの許可もなくちょっと葉に近づきすぎじゃないかしら」
マミ(むしろ怖いのは味方からの攻撃な気もするけれど……)
杏子「なあ!だいぶ時間経ってるけど、まだ間に合うんだよな!」
葉「分からん、けど急ぐに越したことはねえ!」
まどか「さやかちゃん!お願いだから私の声を聴いて!」
魔女「――!」
葉「くっ……」
葉(何か変だ……ここまで呼びかければ何かしらの反応があってもおかしくねえ)
葉「違う……使い魔だ!後ろで曲を演奏してるあの使い魔を先に止めるんだ!」
ほむら「マミ!」
マミ「私ならここからでも撃ちぬける……でも……!」
葉「車輪はオイラ達が何とかする!」
杏子「思いっきり撃て!」
ほむら「私はまどかのフォローに回るわ!」
杏子「車輪は……全部撃ち落とす!」
葉「行くぞ……阿弥陀流!大後光刃!!」
マミ(視界が開けた……撃つのは……今!)
マミ「ティロ・フィナーレ!!」
アンナ「今よ、あんたの思いのすべてを言葉に乗せてあいつにぶつけなさい」
まどか「さやかちゃん!戻ってきて!」
魔女「…………」
・・・
声が、聞こえた気がする。
あれ、おかしいな……今まで確か演奏を聴いてたんじゃ……
でも、今の声……大切な、あたしの友達の声……
あたしは……何やってるんだろ……あたしって、こんな感じだったっけ?
違う……元のあたしは……!
杏子「オイ!アイツの攻撃、激しくなってないか!?」
葉「違う……これは……あいつの魂が元の形を思い出そうとしてるんだ」
葉「アンナ!」
アンナ「よくもまあ、呼びかけで魂の形を思い出すなんて方法を成功させたわね」
アンナ「ずいぶんと非効率だけど、全員を救おうとするあんたらしいやり方だわ」
アンナ(ま、そういう性格のあんただからこそ……あたしもホレたのだしね)
アンナ「じゃあ……そろそろあたしも手を貸さなきゃね」
葉「形を取り戻したあいつの魂を魔女から何とか引きはがしてくれ!」
アンナ「はいはい……引きはがした後の魔女は責任もってあんたたちでやりなさいよ」
葉「おお、任せとけ」
魔女「!」
アンナ「今よ!」
杏子「大丈夫なのか……仕留めても?」
葉「さやかの魂がなくなった後のコイツは……もう負の霊力の塊みてえなもんだ」
葉「嫉妬、後悔、憎悪、憤怒……確かに、ちょっとくらいはあってもいいかもしれん」
葉「けど……こいつらは生み出したら、ちゃんと自分で受け止めなきゃならねえ」
葉「デカくなりすぎれば自分で受け止めきれずに、無理をしちまう」
葉「無理は、何か自分でいられなくなるからイヤなんよ……やっぱ」
葉「生きるなら、楽しく生きねえとな」
スピリット・オブ・ソード・白鵠
葉「阿弥陀流――――」
――――無無明亦無
まどか「さやかちゃん……まだ間に合うよね」
杏子「ここまでやって間に合いませんでした、じゃシャレにならないからな……」
マミ「信じましょう……美樹さんを、それにこの二人を」
ほむら「じゃあ……いいかしら、二人とも」
葉「うし、じゃあやるか。アンナ」
アンナ「言われなくても分かってるわよ……行くわよ」
アンナ「イタコ流・シャーマン術!クチヨセ!」
まどか「く、クチヨセって……」
葉「本当は死んじまった霊を体に憑依させる術だけどな、今回はそれを応用してるんよ」
葉「体に魂を入れるって点では同じだからな」
さやか「…………」
さやか「…………」
さやか「っ………」
まどか「あっ……!」
さやか「……おはよ、まどか」
まどか「さやかちゃん!」
杏子「ったく、本当に面倒かけてくれやがって……馬鹿さやか」
ほむら「本当に……魔女から復帰できた……!」
まどか「さやかちゃん……さやかちゃん……!」
葉「うし、ひとまずはめでたしめでたし……」
アンナ「……なわけないでしょ、このおバカ。まだあたしには仕事が残ってるんだから」
葉「う、うん?そんなのあったか?」
アンナ「……ちょっとそこの青いの、こっち来なさい」
さやか「あ、あの……何か色々と迷惑かけたみたいで……」
パーンッッッ!!
さやか「っ!!」
阿弥陀丸『ま……』
葉「ま、幻の左……!!」
さやか「う……」
アンナ「自分で自分を過信して暴走して、ここにいる全員に面倒掛けさせて」
アンナ「最悪、あんたは無関係の一般人の命を奪う可能性だってあった」
アンナ「事前に言ったわよね、調子のいいこと言ってるやつほどすぐにへこたれるって」
さやか「……正直、アンナさんに大見得切ったからつい意固地になって」
アンナ「なに馬鹿言ってるの、あんたの器量が小さかっただけでしょ」
さやか「……はい」
アンナ「というより、あんたが魔女になった原因の大半がそれでしょ」
さやか「…………返す言葉、ないです」
パーンッッッ!!
さやか「っ!?」
葉「ま、幻の左……」
阿弥陀丸『二連撃!?』
葉(反対側じゃなくてあえて同じほっぺをぶっ叩いてる辺り、アンナスピリット全開だな)
アンナ「あんた、好きな男を取られたくらいでいちいち絶望してんじゃないわよ」
アンナ「そもそも、別に好きだなんだのと伝えてあったわけでもないくせに」
さやか「きょ、距離が近すぎて……幼馴染だったから……なんというか」
アンナ「あたしが言いたいのはそういうことじゃないのよ」
さやか「…………?」
アンナ「本当にあんたがその男に惚れてたんだったら……」
アンナ「仮に他の女に取られたとしても、もう一度自分に振り向かせるくらいの根性見せなさい」
さやか「あ……!」
葉「…………」
葉(アンナスピリット、もうメーター振り切ってるぞ)
素直にそう思ったわ
アンナ「フン……じゃ、さっさと帰るわよ。もう夜も遅くて眠いし」
まどか「さ、さやかちゃん……大丈夫?」
さやか「痛たた……でも、胸にジーンと染みたかな」
葉(ジーンとしてんのは頬だと思うぞ)
さやか「でも、もし葉さんが他の女の子に口説かれたりしたらアンナさんどうするんだろ?」
葉「少なくともオイラは閻魔さんのところへ三回くらい行くと思うぞ」
マミ「……なんだか、どっと疲れたわ」
杏子「だな……なあマミ、よければ今日マミの家に泊めてくれないか?」
マミ「フフ、良いわよ……」
ほむら「…………」
ほむら(魔法少女が団結して……加えて二人のシャーマンが訪れた)
ほむら(そして……まさか魔女になってから人間に戻ることができるなんて、ね)
ほむら(今までの時間軸とは……何もかもが明らかに違う……!)
キュゥべえ「なるほど、彼らの正体はシャーマン……あの世とこの世を結ぶ者、か」
キュゥべえ「それなら彼らが僕のことを不審に思ったのも、ソウルジェムが魂と気づいていたのも納得がいく」
キュゥべえ「そして暁美ほむら……彼女の能力は時間操作系のようだね」
キュゥべえ「なるほど、だから真っ先に僕という個体を彼女は潰しにかかってきたわけだ」
キュゥべえ「時間遡行者……暁美ほむら、そしてシャーマンの麻倉葉、恐山アンナ……か」
キュゥべえ「まさか美樹さやかを魔女から人間に復帰させてしまうとは驚いた」
キュゥべえ「出来るわけがないと思っていたけれど、僕としても認識を改めておく必要がありそうだ」
キュゥべえ「でも……それでも……」
キュゥべえ「彼らではワルプルギスの夜は止められない」
数日後
ほむら「ワルプルギスの夜が訪れる日はもうすぐ……ね」
キュゥべえ「ずいぶんと期待しているようだね、暁美ほむら」
ほむら「!」
キュゥべえ「襲来するワルプルギスの夜を倒す算段でも付いたのかな?」
ほむら「…………お前には関係のないことよ」
キュゥべえ「ふむ、君はこう考えているようだ。魔法少女全員で戦えて、シャーマンである二人の力も借りられる」
キュゥべえ「もしこれがダメだとしても、次の世界に繋げられる……と」
ほむら「…………!」
キュゥべえ「君が時間遡行者であることはもうわかっているんだ、だから僕は君にお礼を言いに来たんだよ」
ほむら「何ですって……?」
ほむら「そんな……それじゃ……!」
キュゥべえ「そう、君が何度も時間遡行をしているうちに鹿目まどかに因果の係数が繋がってしまったんだ」
ほむら「…………!」
キュゥべえ「それともう一つ……さっきまでまどかの家に行っていてね」
キュゥべえ「ワルプルギスの夜に君たちが勝てる確率は限りなくゼロだと伝えておいたよ」
ほむら「なっ……!」
キュゥべえ「もちろん、まどかが契約をしてくれれば勝てるということも含めて……ね」
ほむら「どこまで腐っているの……インキュベーター!」
キュゥべえ「酷い言い方だなぁ、僕はあくまで個人的な意見を述べたにすぎないよ」
キュゥべえ「まどかが契約してくれれば君たち魔法少女が生存する確率も大きく上昇する」
キュゥべえ「そう、これは君たちのためになる行動なんだ」
ほむら「……お前の思い通りには、絶対に行かせないわ」
アンナ「……難儀なことね」
葉「ああ、けど……オイラ達で何とか出来なきゃ、な」
アンナ「明日ね、とうとう……ワルプルギスが来るのは」
葉「みてえだな」
アンナ「…………」
葉「…………」
アンナ「……ねえ、葉」
葉「ん?」
アンナ「たまには、一緒に寝てもいいよね?」
葉「…………おお」
ほむら「…………来る」
マミ「何だか、分かってはいたけれどやっぱり緊張するわね」
杏子「何だよマミ、ビビってるのか?」
さやか「あたしは正直怖いけどね」
杏子「ていうかさやか、お前戦えるのかよ……?」
さやか「何ていうか、今のあたし……ちょっと色々と複雑な感じでね」
さやか「普通の人間なんだけど、魔法少女でもある……みたいな」
杏子「なんだよそれ」
さやか「魔法少女に変身することはできるけど……ほら、もうソウルジェムがないからさ」
さやか「生身の体だから、傷つけられれば普通に骨も折れるし、心臓も止まっちゃうってこと」
杏子「……じゃあ、一発でも貰ったら」
さやか「一応魔力で身体強化はしてるけど……結構キツイかもね」
さやか「大丈夫、確かに不死身の体じゃないってのは大きなデメリットだけど……」
さやか「今のあたしはソウルジェムがないから、穢れが溜まらないって利点もあるんだから」
マミ「……美樹さん、本当に無茶だけはしないでね」
ほむら「……そういえば、あの二人は?」
杏子「もう来るんじゃないか……って、噂をすればだ」
葉「すまん、遅くなった」
アンナ「…………」
⑤、④、③、②、①…………
ワルプルギス「キャハハハハハハ!」
さやか「うっ……想像してたのよりずっとでかい……」
マミ「必ず、ここで倒しましょう」
ほむら「ええ……必ず、仕留める!」
葉「あれが……ワルプルギスの夜、か」
アンナ「何よあの笑い声、憎たらしい」
葉「あのデカさじゃ……やっぱこっちか、行くぞ阿弥陀丸!」
阿弥陀丸『応ッ!!』
葉「阿弥陀丸イン春雨!イン!フツノミタマノツルギ!」
葉「スピリット・オブ・ソード!!」
さやか「うわっ!でっかい刀!」
葉「あれ、さやかも見えるようになったんか?」
さやか「何ていうか、クチヨセしてもらってから見えるようになっちゃって……」
葉「ん、じゃあオイラ達も行くか!」
さやか「了解っと!」
杏子「あたしは本体を叩く!さやか!使い魔は任せた!」
さやか「分かった!って……この使い魔、まるで……!」
杏子「食らえっ!!」
ガキィン!!
魔女「キャハハハハハハッ」
杏子「……嘘だろって、全力で仕掛けたんだぞ?」
葉「はっ!!」
キィン!
葉(固え……やっぱ白鵠の密度までいかねえとダメか……!)
葉・杏子・さやか「!!」
さやかが魔女化したときとは比べものにならないレベルの爆撃がワルプルギスの夜に直撃する。
それは近代兵器を極限にまで利用したほむらによる連続攻撃。
ほむら「爆発が途切れたら遠距離から撃って!」
マミ「様子見なんてことはしない……ティロ・フィナーレ!」
葉「阿弥陀流!真空仏陀斬り!!」
マミ「そんな……無傷だなんて!」
葉「もっと畳み掛けねえとダメか」
ほむら「怯まないで!休まずに仕掛け続けて!!」
杏子「っていっても、これ効いてる気がしないぞ!」
さやか「右に同じ……どこか弱点とかないの!?」
魔女「キャハハハハハ八!!」
マミ「に、逃げて二人とも!攻撃が来るわ!」
杏子「しまっ……!」
葉「スピリット・オブ・ソード!白鵠!!」
ほむら「!」
葉「阿弥陀流!無無明亦無!!」
マミ(ワルプルギスの夜の攻撃が……打ち消された……!?)
さやか「ありがとう!」
葉「それよか、また来るぞ!気を付けろ!」
杏子「おっと……!」
葉(無無明亦無……あの魔女の本体も削れれば……!)
葉「阿弥陀流!無無明亦無!!」
ガキィン!
葉「!」
葉(通らねえ……ってことは、コイツはオイラが打ち消せる以上の強さを持ってるってことか……!)
葉「……ふんばりどころだな、ここは」
ほむら「はあっ……はあっ……!」
杏子「くっそ……攻撃の一発もデカいし、固すぎだろ……!」
マミ「どこを攻撃しても……まるで通用しないなんて……」
さやか「こんなの、一体どうしろってのよ……」
葉「……大丈夫だ」
ほむら「えっ」
葉「なんとかなる」
葉「根拠なんかねえさ、けど……あいつ、実はもうへばってるかもしれねえぞ」
マミ「あれだけ笑い声をあげてるのに……?」
葉「おお、痛ぇのに無理してるのかもしれん」
さやか「いやー、それはないな……」
葉「何にしても、ここで休んじまったら元も子もねえ……何とかなる」
ほむら「…………」
ほむら(そう、この言葉……何とかなる。今までも何度か聞いていたけれど……)
ほむら(彼が言えば、本当に何とかなりそうな気になってくる……)
ほむら「大丈夫……まだ、戦える……!」
キュゥべえ「終わりだね、よく粘っていると言いたいところだけれど……戦力差は明らかだ」
まどか「そんな……ほむらちゃん……みんな……!」
キュゥべえ「もう僕は君に無理やり契約を進めたりはしないよ」
キュゥべえ「でも、必死に戦っている彼女たちを見て何か考えが変わったら」
キュゥべえ「僕はいつでも君と契約をしてあげられるよ」
まどか「…………!!」
葉「ぐっ!!」
阿弥陀丸『葉殿!!』
葉「ああ、大丈夫だ……」
阿弥陀丸『むぅ……葉王のスピリット・オブ・ファイアも大概でござったが……』
阿弥陀丸『こやつはそれに勝るとも劣らぬでござるな』
葉「ああ、すげえ密度だ……攻撃が全然通ってねえ」
葉「このままやりあってたんじゃ最後はオイラの巫力が切れちまいそうだ」
阿弥陀丸『活路はあるのでござるか……?』
葉「正直まだわからん、とりあえず……特別にここが弱点、みてえな場所はなさそうだ」
さやか「ぐっ……!」
マミ「うあ……!」
ほむら「くっ………!!」
・・・
まどか「…………」
まどか(みんな押されてる……このままじゃみんなが死んじゃう……!)
キュゥべえ「どうかしたかい、まどか?」
まどか「キュゥべえ……私……」
ほむら(そんな……足が、動かない……!!)
葉「無理すんな、動けねえなら……あとはオイラがやる」
ほむら「ダメよ、あなた一人だけで勝てるわけが……!」
葉「なんとかなる」
杏子「もう……気合や精神論の問題じゃねえ、一人でまともにやりあって勝ち目なんか……」
葉「ごまかしで言ってるわけじゃねえんだ、オイラは本気でなんとかなると思ってるんよ」
マミ「ど、どうして……!」
さやか「こんな……ボロボロにされてるのに……?」
ほむら「ま、まどか……?」
さやか「なんでこんなところに……ここは危ないから早く……」
まどか「みんな……ごめんね」
まどか「私、魔法少女になる」
ほむら「えっ……!?」
葉「…………」
まどか「……やるしかないんだよ、ほむらちゃん」
ほむら「そんな……それじゃあ私は……何のために……!」
まどか「ありがとうほむらちゃん、でも……またすぐに会えるよ」
まどか「必ず、なんとかなる」
葉「!」
キュゥべえ「いいんだね、まどか」
まどか「うん、大丈夫だよ」
まどか「私の願いは……」
ほむら「葉!止めさせて!お願い!」
葉「オイラは……まどかを信じる」
まどか「私の願いは……『過去と未来全ての魔女を生まれる前に消し去りたい』」
キュゥべえ「!」
まどか「さあ、叶えてキュゥべえ!」
キュゥべえ「そんな……それは因果律そのものを改変する神にも等しい願いだ」
キュゥべえ「鹿目まどか、君はまさか本当の神になるつもりなのかい!」
インキュベーターの驚愕の声が響くも、まどかの願いは叶うこととなる。
神にも等しい強さとなった鹿目まどかは、自らの弓を引き絞り……ワルプルギスの夜へと撃ち放った。
一撃―――あれだけ暁美ほむらたちを苦しめたワルプルギスの夜は、ただの一撃で撃滅した。
鹿目まどかは安堵した、同時に魔力を使いすぎたことで自らのソウルジェムも黒く染まっていく。
それでも彼女は安心していた。
自らの願いの効果で仮に自分が魔女になったとしても消滅すると確信していたから。
そう、これですべてが終わるはずだった。
キュゥべえ「残念だったね、まどか」
キュゥべえ「全く驚いたよ、因果律さえも超越した願いをしてそれを叶えてしまうんだからね」
キュゥべえ「しかも自分が魔女になっても、即座に消滅するような願いにしているとは……恐れ入ったよ」
キュゥべえ「それでも……君の背負った因果律は莫大すぎた」
まどか「…………」
キュゥべえ「君は魔女になった後、消滅することはない」
まどか「!」
キュゥべえ「そして今現在、世界に存在する魔法少女たちのこともね」
キュゥべえ「でも、君が救ったこの世界を破壊するのもどうやら君自身になりそうだ」
キュゥべえ「全てを救おうとするなんて無茶が過ぎたようだね、鹿目まどか」
まどか「…………」
まどか「……なんとかなる」
キュゥべえ「……?」
まどか「私たちはまだ、負けてないよ……まだ、この後を任せられる仲間がいるから」
ほむらちゃん、葉さん、みんな……お願い
――――私を、止めて
魔女「――――!」
キュゥべえ「すごいね、これがまどかが魔女になった姿か」
ほむら「あ……あ……!!」
杏子「嘘だろ……こんな……!」
さやか「まどか……まどかぁ!」
マミ「どうすれば……こんなの……!」
ほむら「…………!」
葉「頼むぞ!アンナ!」
アンナ「……コイツとんでもないわよ、そう長くは縛っておけないわね」
葉「それでも、頼む」
アンナ「……葉、必ず何とかしなさいよ」
葉「後はこのまどかだけを止められれば全員救えるだろ、過去も未来の魔法少女も」
葉「まさに、あとひとふんばりじゃねえか」
さやか「そうだけど……けど……!」
マミ「ワルプルギスの夜を一撃で吹き飛ばす鹿目さんの魔女なんて……」
杏子「諦めたくねえけど……もう、どうしようも……!」
ほむら「え……?」
「フン、貴様のような頭のねじの足りない能天気バカとは違うのだろう」
「何だとテメー!もう一回言ってみろ!」
さやか「こ、この人たち……って……?」
「なんでお前らはこういう状況でも喧嘩すんのかねェ」
杏子「誰なんだ……一体……!」
「何とかなる、そうやって葉くんから教わらなかったかい?」
マミ「…………!」
ホロホロ「何だよ葉!お前もボロボロじゃねーか!」
リゼルグ「久しぶり!って言うほど久しぶりじゃあないかな」
チョコラブ「俺は嬉しいけどな、裁判始まって刑務所へ入る前にもう一回会えて」
蓮「で、どういう状況だこれは……時間もないだろう、端的に説明しろ」
ほむら「…………!」
ほむら(彼らも……全員……シャーマン?)
リゼルグ「なるほど、それで今はこの最悪の魔女をアンナさんが抑えていると」
葉「オイラ達がワルプルギスってのと戦ってる間中、ずっと仕込んでた1080を呪縛結界だ」
葉「そう簡単には破られねえが……そこまで長くも持たねえらしい」
チョコラブ「じゃ、さっさとやらなきゃダメってわけだな」
ホロホロ「しっかしアレだ、これだけデカいと逆に当てやすくていいぜ!」
蓮「馬鹿か貴様、この魔女とやらはあの魔法少女の片割れの変身したものだ」
蓮「派手な技を放ってまるごと消滅させでもしたらどうする、馬鹿」
ホロホロ「テッメ!今、二回も馬鹿って言いやがったな!」
マミ「…………」
さやか「……大丈夫なの、ホントに?」
リゼルグ「そうだね、僕もそれが一番いいと思っていたよ」
チョコラブ「確かに、俺のオーバーソウルじゃちょっと相性がよくなさそうだ」
ホロホロ「俺は……基本的に氷しかねえから、今回はちょっと分野が違うか」
ホロホロ「オイ蓮!お前も基本、雷なんだから今回の所は……」
蓮「武神魚翅!」
ホロホロ「は……?」
蓮「九天応元雷声普化天尊!!」
魔女「――――」
蓮「…………」
蓮「……フン、やむを得んな」
ホロホロ「お前さっき俺に派手な技使うなっつったよな!どんだけ目立ちたいんだクソトンガリ!」
杏子「…………これは」
ほむら「……ダメかもしれないわね、色々と」
葉「倒すんじゃねえさ、元のまどかの魂の形に戻さねえと」
キュゥべえ「不可能だね、あの魔女は『救済』の魔女」
キュゥべえ「あの魔女を倒したくば、世界中の不幸を取り除く以外に方法は無いよ」
葉「え…………?」
蓮「……まさか」
リゼルグ「こんなことが……?」
チョコラブ「ちょっと出来すぎじゃねえか?」
ホロホロ「ああ、まったく嫌になるぜ」
キュゥべえ「…………?」
葉「世界中の不幸を取り除く……?」
葉「何だ、世界中のみんなが楽に暮らせる世界を作りてえっていうオイラの目標と同じだな」
ホロホロ「ここまで打ってつけの人材がいるかってんだ」
チョコラブ「この戦いが終わったら俺の考えた最新爆笑ギャグを披露するからな」
リゼルグ「はは、チョコラブ君のギャグが爆笑だなんて面白い冗談だね」
葉「お前らも手伝ってくれ!」
さやか「……ほむら、動ける?」
ほむら「なんとか、ね」
杏子「……あたしは大丈夫だ、一人で歩けるよ」
マミ「そう……それならいいけれど」
葉「すまんアンナ!あとちょい堪えてくれ!」
ホロホロ「ははっ!葉の奴、アンナに怒られてやがんの!」
蓮「小学生か貴さ」
チョコラブ「小学生かよっ!」
蓮「…………」プルプル
チョコラブ「秘技第三者ツッコみ!捻りも角度もパワーアップしてるだろ?」
リゼルグ「チョコラブ君、あとで血の海に沈まないように気を付けてね」
葉「よしっ……と、じゃあみんなこれでほんとに最後だ」
杏子「これでもしダメだったら……お終いだな、ホントに」
さやか「縁起でもないこと言うなっての」
マミ「私たちで力になれるなら……!」
葉「おお、いいぞ」
ほむら「どうして、あなたはそんなに私たちを助けてくれたの?」
葉「どうしてって……決まってるだろ」
ほむら「…………?」
友達だから、助けるんだろ?
葉「おし……じゃあみんな、最後のひとふんばりだ!」
葉「行くぞ!阿弥陀流!!」
――――『無無明亦無』!!
まどか「…………」
まどか「んっ……!」
葉「よっ」
まどか「葉さん……ありがとう、ちゃんと止めてくれて」
葉「オイラは大したことしてねえさ、例だったらほむらたちに言っといたほうがいいぞ」
ほむら「まどか……!」
まどか「ありがとう、ほむらちゃん……!」
ホロホロ「まあいいんじゃねえか?泣かないおっかねー女よりは泣く可愛い女のほうが」
リゼルグ「ホロホロ君、後ろうしろ」
ホロホロ「あん、後ろ?」
アンナ「…………」
ホロホロ「いや待てよ!今のはアンナのことを言ったわけじゃ……」
パーンッッッ!!
蓮「チョコラブ……貴様もだ」
チョコラブ「え?」
サクッ
チョコラブ「ギャー!?は、鼻が!?マジで刺しやがったコイツ!!」
アンナ「そうね、最後はだいぶ手間取ってたけど」
葉「ウェッヘッヘ、まあそういうなよ」
アンナ「でも、これでとりあえずはあんたの馬鹿兄貴の無茶振りも終わったわね」
葉「ひでえよなあ、いきなり」
『世界をよくするんだろう?じゃあ、まずは日本にいる魔法少女たちを救ってみせろ』
葉「……だもんな」
アンナ「まあ、それでも思ったよりは楽しめたわね」
葉「だな」
アンナ「…………」
アンナ「……カッコよかったわよ、葉」
マミ「えっ……もうここから……?」
葉「元々は体験入学って名目で入ってきてたからな」
杏子「じゃあ……もう行っちまうってことか」
葉「おお、今までありがとうなみんな」
さやか「あの……ホントに色々と迷惑かけちゃって……」
アンナ「ホントにいろいろ迷惑かけてくれたわね、あんた」
アンナ「いい女でありたいなら、あの時にあたしが言ったこと、忘れるんじゃないわよ」
ほむら「……ありがとう、私からはそうとしか言えないわ」
まどか「本当に……最後まで助けてくれて……!」
まどか「…………?」
葉「世界中のみんなが楽に暮らせてる世界になってるよう、オイラも楽しながら頑張るからな」
まどか「あはは……私も、また会える日を待ってます」
さやか「最後に……ホントにありがとう、あたしを助けてくれて」
マミ「もう少し、あなたたちとは触れ合いたかったけれど……またいつでも見滝原に来てね」
杏子「父親と話させてくれてありがとうな、それと……なんていうか楽しかった!」
ほむら「……さよならとは言わないわ。また、必ず会いましょう」
葉「おお、またな!」
アンナ「…………クスッ」
『まあ……最後は僕がアイツの所へ五人の戦士を向かわせなければお終いだったかもしれないけれどね』
『でも、一応合格点にはしておくよ』
『次に僕が地上に転生するまでには、今よりもっとましな世界になってるよう祈るよ』
葉「さーて、とりあえずこの後はどうするかな」
アンナ「どうもこうも、帰るんでしょ。ふんばり温泉に」
葉「ふんばり温泉に帰ってからは……んー、何も思いつかねえや」
アンナ「あら、修行でもしたいのかしら?」
葉「きょ、今日だけは勘弁……!」
アンナ「じゃあもう今日は早く寝ることね、疲れてるんだろうし」
葉「んー……そうだな、今日はいろいろと疲れたし……帰って風呂入ったら、とりあえず……」
葉「寝るぞーっ!!」
アンナ「……あたしも、一緒にね」
(未)完
(未)完なのはアフター的な何か書こうかと思ったけど、眠くてやっぱ無理だったみたいな。
一応切りも良かったからここまででとりあえず、勘弁してください。
というわけでもう寝ます。
乙
すげぇ面白かったぜ
Entry ⇒ 2012.06.11 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
ほむら「お金でワルプルギスの夜を倒す」
ワルプルギスの夜「アハハハ、アハハハハハ」
────
──
─
ほむら「今度もまた駄目だった…」
ほむら「とはいえ、まどかを見張る必要もあるし、あまり遠出も出来ない」
ほむら「現状でこれ以上の火力を集めることは不可能だわ…」
ほむら「…待って」
ほむら「まどかが契約するタイミングはいくつか決まっているのだから、
人を雇うことでなんとか解決できないかしら」
ほむら「……よし」
──── 一日目
ほむら「まず、何をするにも元手が必要ね」
ほむら「現状、私の元手のお小遣いが2000円あるから、1800円分をロト6に変えてきたわ」
ほむら「1000円分は1等と2等の番号、残りの800円分を全部4等の番号で当てたわ」
ほむら「番号を当てるのは簡単だけど、
高額の賞金は換金するのに時間が掛かる…」
ほむら「一ヶ月しか時間がないのだから、時間は有効に使わなければいけないわ!」ホム
──── 2日目
黒猫「にゃー」
モブ1「あー、この猫じゃね?」
モブ2「うん、間違いないな」
モブ1「じゃ、保護しとくか」ヒョイ
モブ2「3日くらい預かっとけばいいんだっけ?」
モブ1「わざわざ探して引き取らせるなんて、横着な飼い主だよな」
モブ2「まあ、虐待されてるようでもないし、
こうして気にかけてるんだから悪いってほどではないんじゃね?
金払ってくれるなら、文句ないよ俺は」
モブ1「バイトはただ働くのみってか。まあ、引き上げるか」
まどか「…なんだろう、黒猫を持った人がいる。飼い主さんなのかな? ちょっと様子が変だけど」
モブ3「ちょっと、お嬢ちゃん?」
まどか「はい。えっと、お姉さんは…」
モブ3「貴女が鹿目まどかちゃん?」
まどか「そうですけど…」
モブ3「ええと、あの…」カァァ
モブ3「えっと、なんと言っていいのか…ええと!私が思ってることじゃないからね!
こう言えって言われただけで!!だから誤解しないで欲しいのだけど!!!」
モブ3「『まどか、あなたに奇跡を約束して取り入ろうとする者が現れる。でも、決して言いなりになっては駄目』」キリッ
まどか「」
モブ3「」
モブ3「…そんな目で見ないで!!!
私だって…でも、仕事だし…うわああああああん!!!!」ダッ
まどか「……」
まどか「なんだったんだろう…」
────
モブ1「ほら、あんたの言ってた黒猫。ちゃんと預かっておいたぜ」
モブ2「手間は掛からなかったけど、ちゃんと自分で世話しなければ駄目だよ」
ほむら「どうも有難うございました。
どうしても外せない用事がありまして…こちらが父から渡すように言われていた謝礼です。
どうぞ受け取って下さい」
モブ1「ま、俺らは金が貰えりゃいいけどさ」
モブ2「ペットだって御主人様と離れりゃ寂しいんだからさ。
横着しちゃ駄目だよってお父さんに伝えて置いてね」
ほむら「はい、父にそう伝えておきます」
────
モブ3「で、一応これが仕事したっていうレコーダー」
ほむら「はい」
モブ3「でも、何なの?
バイトだから文句は言えないけど…ええと、中二病? 顔から火が出るほど恥ずかしかったんだけど…」
ほむら「父が趣味なんです。
こちらが渡すように言われた謝礼です」
モブ3「まあ、何か犯罪ってわけじゃないし、どうでもいいか。
こんなに可愛いお嬢さんがいるんだし、人の道に踏み外したことはしちゃ駄目って言っておきなね」
ほむら「はい、ありがとうございます」
ほむら「人を雇うって、自分自身で動くわけじゃないから少し不安だったのだけど、思ったより上手く行ったわ」
ほむら「車に引かれる前にエイミーを保護できたし、まどかに警告も出来た」
ほむら「まどかに注意することの何がおかしかったのか分からないけれど…お父さんの評判が心なしか悪化しているような気がするわ」
ほむら「とはいえ、大人でなければ信用はされないし…」
ほむら「まぁ、お父さんは東京に住んでいるのだし、気にしても仕方ないわ」ホム
ほむら「魔女退治の時間も増えたので、グリーフシードの貯蓄も上々」
ほむら「遠出も出来たので、武器補充も万全ね」
ほむら「在日米軍基地を3ヶ所も回るのは強行軍だったけれど、今回は今まで以上の火力をアイツに与えてやれるわ」
ほむら「……ヤクザの事務所も回ったけれど、
今回は武器以外にもヤクザが貯め込んでいる、お金、金塊や宝石、ハシシ、マリファナなどの麻薬も回収したわ」
ほむら「…お金は資金洗浄をしないと怖くて使えないわね」
ほむら「金塊と宝石もどうやって現金化するのか分からないから、取り敢えず保留」
ほむら「麻薬は使い道が分からないけれど、取り敢えず盾に入れておきましょう」
──── 7日目
ほむら「転校生の暁美ほむらです。よろしくお願いします」
さやか「うお、すっげー美人!」
まどか(嘘、夢で見た子と同じだ…)
ほむら「鹿目まどかさん。貴女がこのクラスの保健係よね?連れてって貰える?保健室」
ほむら「鹿目まどか。貴女は自分の人生が、貴いと思う?家族や友達を、大切にしてる?」
まどか「」
ほむら「──それが本当なら、今とは違う自分になろうだなんて、絶対に思わないことね」
ほむら「さもなければ、全てを失うことになる。貴女は、鹿目まどかのままでいればいい。今までどおり、これからも」キリッ
スタスタスタ
まどか「流行っているのかな…ああいうの」
.
──── CDショップ
まどか「~♪~♪」
??『助けて…助けて…』
まどか「!?」
??『僕を助けて…』
まどか「え…こっちの方から声が…?」
モブ4「おおっと!ここで突然スライディングをしなければいけない仕事が!」ズサァ
まどか「!!」
モブ5「ビルの裏口前で太極拳の練習をしなければいけない仕事が!!」
まどか「え…通れない? あれ?」
さやか「どうしたの、まどか?」
まどか「さっき、助けてって声が聞こえたの、私を呼んでいるみたいで」
モブ6「ここで俺の仕事が発生!!
お嬢さん、『ここに居る薄汚い淫獣は私が始末するわ、だから貴女は何も関わりあいになる必要はないの(キリッ』
メッセンジャー完了!」
まどか「えええ…」
さやか「何だか、わからないけれど、ここを離れたほうが良くない?
状況についていけないんだけど…」
まどか「う…うん……」
さやか「そこの人たちも何か知ってそうだから、任せちゃってよさそうだし」
まどか「うん、そうだよね」
タタタッ
────
マミ「飲み込みが悪いのね。見逃してあげるって言ってるの。
お互い、余計なトラブルとは無縁でいたいと思わない?」
ほむら「……」クル
ほむら「まどかとQBが接触するのは避けられたけど…」
ほむら「巴マミとの仲はやはり良くはならなかった…」
ほむら「……」
──── 8日目、学校の休み時間
マミ「鹿目まどかさん、美樹さやかさん、ちょっと、いいかしら?」
さやか「なんですか?先輩」
マミ「あなた達にしなければならない話があるの。
時間がある時に詳しく話したいのだけど、昼休みに屋上まで来てくれるかしら」
さやか「はい、いいですよ。まどかも時間ある?」
まどか「うん、大丈夫だよ」
ほむら「!!」
──── 8日目、昼休み
さやか「先輩、なんですか?話って」
マミ「まずは自己紹介をしないとね。私は巴マミ、見滝原中の3年生」
マミ「そして、キュゥべえと契約した魔法少女なの」
QB「彼女は見滝原の街を守ってるんだ」
まどか「」
さやか「」
マミ「あなた達もキュゥべえが見えているのでしょう?
なら、魔法少女になる資格を持っているの」
ほむら「──その必要はないわ」
ほむら「魔法少女は誰にでも務まるようなものじゃない。
巴マミ、無関係な一般人を危険に巻き込むようなことは止めなさい」
マミ「キュゥべえに選ばれた以上、彼女たちはもう無関係ではないわ。
なら、私は先輩として魔法少女の説明をしなければならない」
さやか「転校生も先輩も落ち着いてよ!
こっちは何の話かさっぱりなんだからさ!」
まどか「そうだよ!事情は分からないけど、喧嘩になるのは嫌だよ…」
マミ「ごめんなさい熱くなっちゃって…」
ほむら「……」
~~~魔法少女について説明中~~~
マミ「……、と言うわけなの」
さやか「うーん…、どんな願いでも叶うっていうのは魅力的だけど、そのために魔女と戦うってのは…」
ほむら「魔女退治は死と隣り合わせの危険な仕事よ。命をかけてまでやるようなことじゃない」
まどか「ほむらちゃんもマミさんも、いつもそんなのと戦ってるの…」
マミ「ええ、魔女退治は大変だけど、街を守っているんだって思えるし、やりがいはあるわ」
マミ「死と隣り合わせということは間違いではないけれど」
まどか「ふぇ…」
さやか「んー、悩むなぁ」
マミ「そこで提案なんだけど、二人とも私の魔女退治に付き合ってみない?」
ほむら「二人を危険に巻き込むようなことは…!」
マミ「なら、あなたも付いて来ればいいでしょう。
魔法少女になれば魔女と戦うことになる。
なら、魔女との戦いがどういうものか、その目で確かめることは無駄じゃないわ」
マミ「そのうえで、危険を冒してまで叶えたい願いがあるのかどうか、じっくり考えてみるべきだと思うの」
ほむら(昨日、キュゥべえとまどかの接触を止めたことで、巴マミの行動が変わってしまった…)
ほむら(決まった未来については対処しやすいけれど、
未来が変われば変わるほど、その対応が難しくなってしまう…)
ほむら(まどかが魔法少女のことを知ってしまうのを止められなかった…)
ほむら(それでも前の時間軸ほど、まだ険悪になってはいないわ)
ほむら(今度こそ…未来を変えてみせる)ホムキリッ
────
さやか「さっきのマミさんの話…どう思う?」
まどか「うん…やっぱり、魔女と戦うって怖いよね…」
さやか「転校生はやめろって言ってるし、マミさんは見てから決めろって言うし…」
さやか「どっちの言い分も、まだなんとも言えないよね…」
さやか「やっぱり、魔女退治を見てから決めるしかないか」
さやか「普段は一人で魔女退治をしてるってところを、
転校生とマミさんの二人がかりでやるっていうんなら、ちょっとは安全のはずだよね」
さやか(それに…自分に対しての願いごとだけなら意味ないけど…)
さやか(もしも、他の人への願いごとでも大丈夫だというのなら…)
────
マミ「さて、それじゃ魔法少女体験コース第一弾、張り切っていってみましょうか」ティロッ
マミ「準備はいい?」
さやか「準備になってるかどうか分からないけど…持って来ました!」バットー
ほむら「…焼け石に水ね」
さやか「あー、転校生はー、そういうこと言うなー!」
マミ「まあ、そういう覚悟でいてくれるのは助かるわ」
さやか「まどかは何か、持って来た?」
まどか「と、とりあえず、衣装だけでも考えておこうと思って」 ノート!
さやか「うーわー」
まどか「え?ふぇぇ」
マミ「うん、意気込みとしては十分ね」
ほむら(かわいい!まどかわいい!!)
──── 廃ビル前
マミ「魔女の居そうな場所は云々」
さやか「あ、マミさんあれ!」
モブ7(うう…死にたい…死にたい……)
まどか「え、飛び降り……」
モブ7(でもここから戻ればバイト料が入って…ブランドバックを…)グググッ
さやか「……ないね」
マミ( ← 落ちても大丈夫なように用意)
モブ7(そうよ!どうせ死ぬならお金を使った後でもいいじゃない!)
モブ7(お金を使って美味しいものを食べてビール飲んで寝よう!鬱はいつでも出来るわ!)クルッ タッタッタッ
まどか「行っちゃったね…」
さやか「なんだったんだ…」
マミ「ティロ・フィナーレ!!!」
ゲルトルート「ウボァー」ドゴーン
さやか「かっ、勝ったの?」
まどか「すごい…」
ほむら「巴マミは経験もあるし、才能もある強力な魔法少女よ。
魔法少女なら誰でもあんな風に動けるとは思わないことね」
さやか「転校生だって凄かったじゃん。使い魔をひとつだって撃ち漏らさなかったし。
マミさんは華やかという感じだけど、転校生は質実剛健というか」
ほむら「…余裕が無いだけよ」
ほむら(さやかとは険悪なことばかりだったから、褒められると照れるわ…)
まどか「マミさん、それは?」
マミ「これがグリーフシード。魔女の卵よ」
マミ「運がよければ、時々魔女が持ち歩いてることがあるの」
マミ「これでソウルジェムを浄化して…はい。あと、一回くらいは使えるはずよ」
ほむら「……」
マミ「どうしたの?人と分け合うのは不服かしら?」
ほむら「…貴女の獲物よ、貴女だけのものにすればいい」
マミ「確かに魔女を倒したのは私だけど、貴女も充分役に立ってたわ」
ほむら「マミ、貴女…」
マミ「…ごめんなさい。暁美さん。
私は貴女がグリーフシード目当てなだけの魔法少女だと疑っていたわ」
マミ「だから貴女の戦い方を観察していたけれど、
貴女は本当に一生懸命、鹿目さんと美樹さんを守っていた」
マミ「魔法少女になられたら疎ましいと思っている相手に、そこまで親切には出来ないものね」
マミ「私を信用していないのは分かるけれど、それでも少しずつ打ち解けていって欲しいの」
マミ「これもその一つ。…これでも受け取って貰えない?」
ほむら「…頂くわ」
────
ほむら「…巴マミが魔女退治の見学なんて言い出した時にはどうなることかと思ったけれど」
ほむら「どういうわけか上手く行ったものね」
ほむら「元々、美樹さやかも巴マミも思い込みが激しい場合はあれど、素直ないい子だった」
ほむら「仲違いばかりする時間軸ばかり見ていたせいで忘れかけていたわ」
ほむら「一ヶ月の間に、まどかとの契約を止めなければいけないし、
QBや魔女への対処もしなければいけなかったし、
ワルプルギスの夜に対しての用意もしなければならなかった」
ほむら「…誤解されても、誤解を解く時間なんか無かった」
ほむら「時間を操る魔法少女のはずなのに、時間なんて全然なかった」
ほむら「このまま上手くいけばいいのだけれど」
ほむら「…まだ、油断は出来ないわね」
ほむら「おっと、これは、買い、買い、買い…と……」ピコピコ
────
ほむら「……」バクダンセッチ
シャルロッテ「ウワラバッ」ドゴーン
マミ「やったわ暁美さん!!」
────
恭介「動かないんだ…もう、痛みさえ感じない。こんな手なんてっ」
さやか「大丈夫だよ。きっと何とかなるよ。諦めなければきっと、いつか…」
恭介「諦めろって言われたのさ」
恭介「もう演奏は諦めろってさ。先生から直々に言われたよ。今の医学じゃ無理だって」
モブ8「今の医学なら無理でも…」
モブ9「未来の技術ならどうかな!?」
さやか「!!」
恭介「あなた達は!!?」
モブ8「私達は再生医療の最先端を行く研究者その1!!」
モブ9「そしてその2だ!!!」
モブ10~モブ107「「「そしてその3~100だ!!!」」」
モブ108「上条恭介くん、君の怪我は今の医学で治すことは無理、とても不可能だ!」
モブ109「それどころか、今の科学の進歩では将来に渡って難しいかもしれない…そんな状況だった」
モブ110「だが、『ホムラアケミの父』を名乗る謎の人物が多額の寄付をしてくれたお陰で
行き詰っていた研究に道が開けたんだ!!!」
モブ111「さっきまでは君の怪我は、完治しない一生の怪我だった」
モブ112「だが、今の我々にとっては取るに足りない手術も同然!!!!」
モブ113「上条恭介くん、我々の臨床手術…受けてみる気はないかね…?」
恭介「お願いします…僕は、治る可能性があるなら、どんなことだって…」
さやか「ありがとうございます!ありがとうございます!!
恭介の…恭介の腕を治してやって下さい…!!」
モブ114「お礼な私達にではない、謎の人物『ホムラアケミの父』に言いたまえ」
恭介「『ホムラアケミの父』…!」
さやか「転校生に名前が似てるけど転校生ではありえない…だって名前と苗字が逆だもの!!」
恭介「一体誰なんだーー!!?」
────
まどか「あ!仁美ちゃん…?」
仁美「あら、鹿目さん、御機嫌よう」
まどか(あれ、仁美ちゃん…何か様子がおかしい?)
まどか「ど、どうしちゃったの?ねえ、どこ行こうとしてたの?」
仁美「どこって、それは…ここよりもずっといい場所、ですわ」
仁美「ああ、そうだ。鹿目さんもぜひご一緒に」
仁美「ええそうですわ、それが素晴らしいですわ…え」
モブ115「カバディ カバディ」
モブ116「カバディ カバディ」
モブ117「カバディ カバディ」
まどか「道行く人がカバディをして通行人を塞いでる…!」
ほむら「まどかを巻き込んでいないなら、こんな魔女など恐れるには足りないわ…」バクダンセッチ
エリー「ギャース」ドゴーン
仁美「は! ここは…」
まどか「仁美ちゃん!正気に戻ったんだね!?良かった…」
仁美「あら、まどかさん…どうなされたのですか」
まどか「仁美ちゃん…心細かったよう、怖かったよう…」
モブ115「カバディ カバディ」
モブ116「カバディ カバディ」
モブ117「カバディ カバディ」
──── 15日目
QB「…それでも、ちょっと考えれば暁美ほむらには気をつけたほうがいいと思わないのかい?
なにせ僕も契約した覚えのないイレギュラーだ。何を企んでいるか分からないよ」
マミ「もう…キュゥべえがそんなことを言うから、私は暁美さんを疑ってしまったのよ。
あの子が鹿目さんを守るときなんていつも一生懸命だし、
病院前で戦った魔女なんて、暁美さんがいなければ、私は死んでいたかもしれないわ」
QB「マミ、僕が言っているのは可能性として…」
マミ「私が邪魔なら、いつでも排除出来たような相手に対して、何を疑えっていうのよ。
しつこい男の子は嫌われるわよ」
QB「………」
QB(マミにはもう暁美ほむらを疑う気も、鹿目まどかを勧誘する気もないようだ)
QB(このままでは鹿目まどかを魔法少女にすることは難しいだろう)
QB(…彼女が魔女になった時に生み出すであろうエネルギーを鑑みれば、このままにしておくわけには行かない)
────
QB「まさか君が来るとはね、佐倉杏子」
杏子「マミの奴が新しく仲間を作ったって言ったから見に来たのに」
杏子「ちょっと話が違うんじゃない?」
杏子「くっだらねえ願いで奇跡を使い潰すような新人だったら、ぶっ潰してやろうかと思ってたのに」
杏子「その仲間ってのはマミ以上のベテランなんだろ。こんな情報を教えてアタシに何をしろっていうのさ」
QB「最初はマミも才能のある子を新しく魔法少女として勧誘しようとしていたみたいだけど」
QB「今は魔法少女としてこの街にやって来た暁美ほむらと組んでいる」
杏子「…そいつが魔法少女としての覚悟を持っているのなら、アタシには関係のない話だ。
もっとも、そんな奴を甘ちゃんのマミが仲間に引き入れるとは思えないけどね」
QB「彼女が何を考えているのかは僕にも分からない。
僕でさえ契約をした覚えのないイレギュラーなんだ」
杏子「アタシに調べて欲しいってわけ?」
QB「そうしてくれと頼みたいところだが、無理強いはできない。
僕が君に情報を教えたのは、君も彼女のことを知りたがっていると思ったからなんだ」
杏子「アタシが? どうしてさ」
QB「暁美ほむらがいつ、魔法少女になったのかは分からない。
でも戦っているところを見させてもらえば…マミ以上の経験を持っているのは間違いない」
QB「君もベテランの魔法少女だけど、恐らく彼女は君をも上回るんじゃないかな」
QB「君も知っているように、マミが魔法少女に心を許すことはあまりない。
グリーフシード目当てに見滝原にやってくる魔法少女は多かったし、
他の理由は…君のほうが良く知ってるんじゃないかな」
杏子「………」
QB「今のマミは僕の言葉に耳を貸さないくらい、暁美ほむらに心を許している」
QB「君なら、ベテランの魔法少女なのにマミをそんな風にさせた暁美ほむらにきっと興味を持つと思ったんだ」
QB「かつて巴マミの弟子だった、君なら」
杏子「…そんな昔の話は忘れたよ。
マミの奴が何をしようが、誰と仲良くしようが、アタシには関係のない話さ」
杏子「でも、その…イレギュラーとか言う奴、やたら持ち上げてられているのは気に入らない」
杏子「マミより、アタシより強い…?なら、試してやろうじゃん」
杏子「あんたもアタシを焚きつけたんだ。ぶっ潰しちゃっても文句はないんだろうな?」
QB「今回のケースに限らず、魔法少女同士の戦いは僕にどうすることもできない。
君に言えるのは、上手く君の考えの通りにいくかどうかは分からないということだけだ」
杏子「ふん、そうなったら、それはそんときに任せるさ」
──── ファーストフード店
さやか「──で、昨日は恭介から電話が来たんだけどさ、
手術前で弱気になってるようだったから、さやかちゃんが激励してあげたわけよ」
まどか「もう、さやかちゃん、朝からずっとそればっかり」
マミ「美樹さんは上条くんのことが好きなのね」
さやか「ええええ、マミさん。
そんな、恭介のやつとは好きっていうか、幼馴染の関係というか、親友というか──」
ほむら「惚気話かと思いきや、一転してヘタレたわね」
さやか「う…転校生は辛辣だなー」
ほむら「告白する勇気もないほうが悪いのよ。
全くいつもの軽口みたいにさっさと言ってしまえばいいのに」
まどか「そうだよね、さやかちゃんは私には『嫁になるのだー』なんてすぐ冗談言えるのに。
そこが可愛いんだけど。ウェヒヒヒ」
さやか「あーあーあー、転校生やマミさんには分からないですよーだ。
転校生は細身で美人だし、マミさんは美人でおっぱい大きいのに
痩せてるところは痩せてるとかもうどんなスペックだよっていうか…」
まどか「さやかちゃん、何言ってるの…」
マミ「美樹さんだって、可愛いし、魅力的よ。
それに私だって体調管理をしっかりやった結果のようなものだし…」
さやか「なんですかそれ、ダイエットってことですか。
人知れず苦労とかそんな感じなんですか」
マミ「苦労というのかは分からないわ、
普段からの習慣なのだし…急に無理をしなければそれほど辛くはならないわよ」
まどか「そういえば、ほむらちゃんはいつも小食だよね。
今だって頼んでいるのはコーヒーだけだし」
ほむら「食が細いだけよ…」
まどか「初めは早く帰りたいからじゃないのかって心配しちゃった」
ほむら「そんなことはないわ!私は…」
まどか「うん、わかるよ。ほむらちゃん、今すっごく楽しそうだもの。
初めての時はクールって感じで何を考えているのか全然分からなかったけど、
今は良く見るとどんな気持ちなのか分かっちゃうんだ」
さやか「結構、転校生って顔に出るよね。
初めの頃、マミさんと話す時に何もかも諦めているような感じで
怖いくらいだったけど、今にして思うとそれだけ私達のことを心配してくれてたのかなって。
今なんかまどかを見る時、凄いやさしい目をしてるし」
ほむら「もう、からかって。そんなに顔に出てる?」
さやか「でてるでてる」
ほむら「///」
まどか「ウェヒヒ」
ほむら(でも…そうね、そうかもしれない)
ほむら(こんな日常が送れるなんて、夢みたいだもの)
ほむら(私はまどかとこのファーストフード店にいくことをとても楽しみにしていたわ)
ほむら(私とまどかの仲が良くなかった時間軸でも、一度はまどかとここに来ることが多かったから)
ほむら(内容は辛い忠告をしなければならないこともあったけれど)
ほむら(そういうときにまどかと来れるなんてことを喜んではいけなかったのだろうけれど)
ほむら(このコーヒーだって、最初のお小遣いから取っておいたもので)
ほむら(少しでも、元の仲が良かった頃の関係に戻れますようにって)
ほむら(こんな日を、どうかワルプルギスの夜を越えても迎えられますように)
ほむら「まどか、さやか。もう、魔法少女になろうなんて絶対に思わないでね」
さやか「うーん、まぁね…。あたしはそれこそ今は何も望みなんて無いわけだし、
もしも転校生やマミさんからお願いされたとしても断るくらいだよ」
さやか「例え、転校生やマミさんが頑張っていることを知っているとしても、
命と引き換えにあたしもそうする、なんて出来ないと思う」
まどか「さやかちゃん……」
マミ「…そうね。引け目を感じたくないとか、そんな理由で魔法少女は契約すべきではないわ。
この街には二人も魔法少女がいる。私一人だけだった時もあるのだから、
この街にはもう十分な魔法少女が居ると言えるわ」
ほむら「ええ、そうね。この街はきっと私達が何とかしてみせる」
ほむら「だから、まどか、さやかには私を信じて、契約しないでいて欲しい」
ほむら「今から二週間後、この街にはワルプルギスの夜が来る」
(離れた展望台)
杏子「──あいつがほむらか」
杏子「何を話しているか分かんないけど、キュゥべえの言った通り巴マミの奴も居やがるな」
杏子「それから、一般人が二人…魔法少女なのに魔法少女じゃない奴とつるみやがって」
杏子「ま、目立つことは避けるか…ほむらの他に人が居ない時を狙って…」
モブ118「カバディ カバディ カバディ」
モブ118「我、ターゲットを発見せりッ」
杏子「ん?なんだお前」
モブ118「メッセージ、『イレギュラーよりロッソファンタズマに伝言──
見滝原ゲームセンターのダンレボ前に夜10時に来られたし』
以上、メッセージは終わりなりッッ!!」
杏子「おいっ、その名前は!!」
杏子「お前はそいつをどこから聞いた!!? 場合によっちゃ許さねぇぞ!!」ガシッ
モブ118「ヒィ!怖い!」
モブ118「あの、あ、ええと。申しわけありません。
僕、頼まれただけでして。
お金を渡されてこれこれこういう赤い髪の女の子を見つけたら、
このセリフを言えって言われただけでして。」
モブ118「あの、離していただけると凄く嬉しいんですけど──あ、すみません、マジすみません!!」
杏子「チッ、もういいよ、行けよ」パッ
杏子「居場所は補足されてるってことか…イレギュラー、か。ふざけたマネしやがる…」
──── ゲームセンター
杏子「アンタが噂のイレギュラーってやつか。
こそこそ嗅ぎまわるような真似しやがって」
ほむら「…それは誤解よ。
展望台以外に人を割いてはいないし、それもあなたとこうして話す機会を作りたかっただけ」
ほむら「あなたとことを構える気は無いわ、佐倉杏子」
杏子「…何が狙いなのさ?」
ほむら「私達に協力して欲しい」
杏子「それはマミのことも含めてるんだな?
冗談じゃない、今更、人助けなんてするような魔法少女と組めるかっての」
ほむら「……」
杏子「それに、あたしがいなくても、アンタとマミで十分なはずだろ?
キュゥべえの奴が言うには、アンタもベテランの魔法少女だっていうし、二人掛かりで敵う奴なんて」
ほむら「二週間後、この街にワルプルギスの夜が来る」
杏子「なぜわかる?」
ほむら「それは秘密。…私の目的はそいつを倒すこと」
杏子「ワルプルギスの夜相手に一人じゃ厳しいかもしれないが、
アンタとマミの2人掛かりなら勝てるかもしれないだろ、それでいいじゃんか」
ほむら「可能な限り勝率を上げたい。それも出来るならば私達が危機であるとすら思われないくらいに」
杏子「おいおい、それは…」
ほむら「貴女もキュゥべえから聞いているかもしれないけれど、
私達は魔法少女の才能を持つ二人の少女と知り合いになっている」
ほむら「今は契約する気がないようだけれど、私達が窮地に陥れば契約しかねない。
魔法少女が増えるのは、貴女も本意では無いでしょう?」
杏子「…報酬は?」
ほむら「ワルプルギスの夜のグリーフシード。
それから見滝原で魔女狩りをすることがあるなら、私が巴マミを説得する」
杏子「そうかい。…ま、あたしも中途半端な考えの魔法少女が増えることは面白くないし、
ワルプルギスの夜を倒したとなれば箔になる。」
杏子「でも、マミみたいな甘い奴に巻き込まれて死ぬのはごめんだ。
敵わないと思った時は抜けさせて貰うよ」
ほむら「ええ。それで構わないわ」
杏子「それともうひとつ」
杏子「…どっちが上かっていうのは決めておくべきじゃない?」
杏子「一緒に戦うにしても、そっちのほうがやりやすいだろ。お互いのために」
.
──── 歩道橋
杏子「どっからでも掛かってきな!」
ほむら「…どうしても、やるのね」
杏子「当たり前だろ!今更怖気づいたのか!」
ほむら(佐倉杏子に勝つことはそれほど難しくない)
ほむら(今の彼女は私の時間停止にも気付いていないはずだし、
それなら彼女を一撃で昏倒させることも難しくない)
ほむら(でも、それで彼女が言葉通りに従うということになるだろうか?)
ほむら(杏子とも信頼関係を築けた時間軸があった。仲間と呼べる時間軸があった)
ほむら(できることなら、彼女とも友達になりたい)
杏子「来ないならこっちから行くよ!」ブン
カチッ
杏子「どこに行きやがった!?」
杏子「後ろか! …妙な技を使いやがる」
ほむら「もうやめにしない? 私は後ろからいつでも貴女を攻撃できた」
杏子「その前にあたしの槍が刺さってたさ。もう一回、試してみるかい?」
杏子(とはいえ、タネが分からないというのは厄介だな…)
杏子(わざと攻撃をさせてインパクトの瞬間に反撃に出る?)
杏子(いや、相手は銃使いだ。こちらが先の先を取らなければ勝機はない。マミとは随分タイプが違うが…)
マミ「佐倉さん!!」
杏子「!!」
ほむら「巴マミ!どうしてここに!?」
マミ「キュゥべえが教えてくれたの…佐倉さんと暁美さんが争ってるって」
杏子「キュゥべえの奴が…」
マミ「佐倉さん…どういうつもりなの。今更、見滝原まで戻ってくるなんて」チャキ
ほむら「マミ、杏子はワルプルギスの夜と戦うために私達と」
マミ「暁美さんは黙ってて。これは私達二人の問題なの」
マミ「佐倉さん、貴女が私達の仲間に入るなんておかしいわ。
何か企んでいるの? …それとも、もう魔女だけを狩るなんてことは辞めたのかしら?」
杏子「まさか。あたしはもう人の為に魔法なんて使わない。
自分の為だけに自分の魔法を使うって決めたんだ」
杏子「これはもう変えられないし、変える気もない」
マミ「そうでしょうね。貴女の考えを変えようがないなんてことは、私が一番良く知ってる。
相容れないと分かっているなら、何で戻ってきたの?」
杏子「そんなんあたしの勝手だろうが。アンタの決めることじゃない」
マミ「貴女が魔女だけしか狩らない魔法少女である限り、
私は貴女に見滝原の地を踏ませるわけには行かない。早々に立ち去って貰えるかしら?」
杏子「嫌なこった。…ほむら、まさかこっちがやられるかって時に戦うな、なんて言わないよな」
マミ「これは私達の問題よ。暁美さん…悪いけれど、手を出さないで」
まどか「ほむらちゃん、どうしたのこれは!どうしてマミさんが戦おうとしているの!!」
ほむら「まどか…!!」
QB「彼女は佐倉杏子だよ、まどか。かつて巴マミの弟子だった魔法少女だ」
まどか「キュゥべえ…」
ほむら「お前…まどかまで連れて! 杏子とマミを焚きつけたわね…!!」
QB「まさか。彼女らには元々確執があったんだ。
僕が入るまでもなく、遅かれ、早かれ結末は一緒だった」
ガッ!キイン!!ガガ!!
まどか「キュゥべえ!止めさせて!魔法少女同士で争うなんて、こんなの絶対おかしいよ!!」
QB「僕にはどうすることもできない…」
ほむら「白々しいことを…!!」
QB「でも、君が本当に二人を止めたいと望むなら僕が力になってあげられ」
杏子「やった!!」
マミ「しまった、ソウルジェムを!」
まどか「そんな、マミさんが…」
杏子「これでアンタは魔法が使えないってわけだ。
マミ…悪いが、アンタには魔法少女を引退してもらう」
杏子「歩道橋の下でソウルジェムが車に潰されるか砕けるかすれば、
魔法少女なんて生活からはおさらばだ」ポイ
QB「まどか、君が望むまでもなく決着はついたようだね。
それにしても巴マミを捨てちゃうなんて、どうかしてるよ」
マミ「…え?」
杏子「どういうことだ?」
QB「君たちの本体は肉体なんかにあるんじゃない。ソウルジェムが本体ってことさ」
マミ「」パタン
~~~ QB、ソウルジェムの正体を説明中 ~~~
まどか「そんな、そんなのって…」
杏子「ふざけんな!テメエ!それじゃあアタシ達はゾンビにされたようなものじゃねえか!!」
まどか「キュゥべえマミさんはどうなっちゃうの…?」
QB「ある程度の高さでもソウルジェムは衝撃に耐えられるはずなんだけどね…。
偶然、車に載せられたなんてことでもない限り、マミのソウルジェムは砕けてしまったと考えられるだろう…」
杏子「そんな…マミ…」
まどか「マミさん…死んじゃやだよう…そんなのあんまりだよ…」
ほむら「……」
モブ119「歩道橋の下の男!見ッ参ッ!!!」
モブ119「あ、これが上から落ちてきたものです。どうぞ」ワタス
ほむら「ありがとう」ウケトル
まどか「ふぇぇ!?」
杏子「な、なんだテメェ!!?」
モブ119「あ、僕はバイトです。あれ…話が通ってませんでした?」
モブ119「ええと、今夜は歩道橋で演劇の練習があるから、
下でマットを敷いて上から落ちてきたものがあったら拾い上げて持ってくるように言われてます」
モブ119「ええ。勿論、今夜はこの高速道を封鎖してあるから、突然車が入ってくるトラブルもありません」
ほむら「いえ、話は通っていたわ。ただ、知っているのは全員ではなかっただけ」
モブ119「ああ、そうでしたか。なら良かった。では、僕は下に戻りますのでごゆっくり」
まどか「」
杏子「」
QB「」
杏子「どういうことだ。…マミが倒れたのはソウルジェムが砕けたか、100メートル以上、
離れたからじゃなかったのか」
ほむら「良く見なさい、杏子。寝息を立てているじゃない。
どうやら言われたことがショックで気絶してただけみたいね」
マミ「」スー、スー
杏子「マミ…」ホッ
まどか「マミさん…良かった…」
ほむら「お前の企みは潰えたわ、消えなさい。キュゥべえ、いえ、インキュベーター」
QB「…! 暁美ほむら…君は……一体……」
ほむら「早く消えないとその体に風穴を開けるわよ」
QB「……やれやれ、わかったよ」スゥ
マミ「う、うぅん…」
杏子「マミ、気づいたのか!」
マミ「佐倉さん…。え、ここは私の家…? 暁美さんと鹿目さんは…?」
杏子「さっきまで居たけど、帰ったよ。気が付いたのなら、そろそろアタシも宿に戻るけどな」
マミ「そう…やっぱり、あれは夢じゃなかったのね…。キュゥべえの言ったこと…」
杏子「ああ、キュゥべえもあれからウザイ説明をしやがったし、
ほむらも肯定しやがったからな。実際に死んだところを見ては居ないが、間違いはないだろうさ」
マミ「自分自身が死ぬなんてところを見せられたら、立ち直る自信はなかったわ」
杏子「自分では見ないだろ…、ともかくあたしだってマミが気絶したのを誤解したけどさ、
場合によっちゃ本当に死んでいたかもしれないからな…まあ誤解で良かったよ」
.
マミ「……」
マミ「ねえ、佐倉さん」
杏子「なんだよ」
マミ「誤解で良かったって、死ななくて良かったって、そう思ってくれるの…?
私、あなたにあんなに酷いことをしたのに…言ったのに…」
杏子「戦ったのはお互い様だ。それに…昔、別れた時だって、アンタの責任じゃない」
マミ「私はあなたの気持ちをわかってあげることが出来なかった」
マミ「あんなに酷い目にあったあなたを独りぼっちにさせてしまった…」
杏子「マミがやってきたことは間違いじゃない」
杏子「あたしがアンタに付いていくことが出来なかっただけだ」
杏子「両親も死んで、モモも死んで、それは全部アタシが魔法少女になったせいで」
杏子「大切だった人が皆居なくなったのはあたしのせいで…」
杏子「それでも人の為に生きようなんて生き方はあたしにはとても出来なかった、それだけだ」
杏子「あたしがマミに付いていくことが出来なかった…それだけだ」
マミ「……」
杏子「…腹が減ってたりしないか?
気を利かせることが出来てなくて悪いけど、リクエストがあれば今から買ってくるよ」
マミ「いいの、」キュ
マミ「傍にいて…」
杏子「ああ…」
杏子「独りぼっちは寂しいもんな…」
.
────
マミ「…………ねぇ、佐倉さん」
杏子「何だ?」
マミ「その、一部始終、第三者に見られてたって、どんな状況だったの?」
杏子「あー、丸っきり無関係とは言い切れないけど
少なくとも魔法少女については部外者だったしキュゥべえのことも見えるわけないし……」
杏子「あたしは自分がどんな台詞を言ったか、思い出したくもないな…」
マミ「忘れたほうが良さそうね…」
杏子「///」
マミ「///」
QB「やぁ、マミ。杏子」スゥ
────
ほむら「取り敢えず爆弾放り込んでおけば死ぬわね」ポイポイ
エルザマリア「ゲセヌ…」ドカーン
.
──── 2X日目
ほむら「ここは買いで、ここは売り、と…」
ほむら「期限は一ヶ月といっても、換金して運用するのにも時間が掛かるから、
軍資金集めもここまでね」
ほむら「…それにしても」
ほむら「一億や二億はとてつもない大金だと思っていたけれど、
実際に使って運用してみると、本当に種銭でしかないものね」
ほむら「今、画面で見ているお金と、手元にあるお財布の中のお金が全く一致しないわ」
ほむら「さて、細工は流々、仕上げをごろうじろ、と」
ほむら「…今度こそ、決着をつけてやる……!」
────
まどか「入っていいかな?」
ほむら「…まどか」
(浮いているパネル)
まどか「これが…『ワルプルギスの夜』? ……マミさん達と、お店で話してた」
ほむら「……そうよ」
まどか「とうとう、ワルプルギスの夜がやってくるんだよね…」
まどか「街中が危ないの?」
ほむら「今までの魔女と違って、コイツは結界に隠れて身を守る必要なんてない。ただ一度具現しただけでも、何千人という人が犠牲になるわ」
ほむら「相変わらず普通の人には見えないから、被害は地震とか竜巻とか、そういった大災害として誤解されるだけ」
まどか「なら、絶対にやっつけなきゃダメだよね」
まどか「少しでも勝てる可能性を増やすなら、魔法少女を増やしたほうがいい。だったら…!」
ほむら「私達だけで十分よ!!」 ダンッ
ほむら「まどか、私は言ったわ。魔法少女にはならないでって」
ほむら「さやかからはならないって約束してくれたけれど、あなたからはまだ返事を聞いてない」
ほむら「ねぇ、まどか。約束して」
ほむら「お願いだから、私に魔法少女にはならないって」
まどか「…………ねぇ、ほむらちゃん」
まどか「私は最初にマミさんから魔法少女の話を聞いた時…そりゃ魔女のことは怖かったけど…嬉しかったんだ」
まどか「私って、昔から得意な学科とか、人に自慢できる才能とか何もなくて」
まどか「きっとこれから先ずっと、誰の役にも立てないまま、迷惑ばかりかけていくのかなって」
まどか「それが嫌でしょうがなかった」
まどか「でもマミさんが魔法少女は、誰かを助けるために戦ってるって言ってくれて」
まどか「私にもできるかもしれないって言われて」
まどか「何よりも嬉しかったのはそのことで」
まどか「こんな自分でも、誰かの役に立てるんだって、胸を張って生きていけたら、それが一番の夢なの」
まどか「ほむらちゃんやマミさんが一生懸命なのは知ってるよ」
まどか「でも、私も役に立てるならその一生懸命に加わりたいよ…」
ほむら(…私は何回繰り返しても、きっと分かっていなかった)
ほむら(まどかがどれだけ優しい子か、命を懸けてだって、どんなに辛いことだって頑張れてしまうか)
ほむら(私は何度も何度もあなたに助けられたから、今を生きることができている)
ほむら(あなたの幸福は、自分だけが生きることではないのでしょう)
ほむら(それでも、ごめんなさい。まどか)
ほむら(私はあなたのその願いはどうしても叶えることが出来ない)
ほむら「まどか、」
まどか「…ほむらちゃん?」
ほむら「ねぇ、これは奇跡なの」
ほむら「私達の今居る、この瞬間はこの先、何百回と繰り返しても決して起こらない奇跡」
ほむら「ようやくここまで辿り着いた。もう、こんな奇跡はこの先にはない」
ほむら「私は何度も見てきた。貴女が死ぬところを何度も何度も何度も何度も…」
まどか「えぇ…?」
ほむら「まどか、」
ほむら「私は未来から来たんだよ」
ほむら「どうすればあなたが助かるのか、どうすれば運命を変えられるのか、その答えだけを探して、何度も始めからやり直して」
まどか「それって…?」
ほむら「何回繰り返しても、貴女は死んでしまった。巴マミも佐倉杏子も死んでしまうことが多かった。
仮に生き残ったとしても、仲違いを繰り返していて、ワルプルギスの夜と戦うどころではなかった…
美樹さやかは魔法少女になった全ての時間軸で魔女となった」
まどか「魔女って…どういう」
ほむら「そう。魔法少女は魔女になる。
この宝石が濁りきって黒く染まる時、私達はグリーフシードになり、魔女として生まれ変わる」
ほむら「それが、魔法少女になった者の、逃れられない運命」
まどか「そんな…じゃあ、マミさんも、ほむらちゃんも…!?」
ほむら「ええ、貴女もよ。まどか。
私は貴女が魔女となった姿を何度も見てきた。巴マミや佐倉杏子だって魔女になった未来もあった…!」
まどか「嘘でしょ…ねえ!ほむらちゃん!」
ほむら「私は何度も見てきたのよ!」
ほむら「魔法少女として誰かを救った分だけ、魔女となって誰かを祟りながら生きていく」
ほむら「それが魔法少女の正体なのよ!」
カラン
マミ「魔法少女が魔女になる…?」
杏子「それじゃあキュゥべえの奴が言ったことは…」
QB「杏子、僕は嘘はつかないよ。何度も言ったじゃないか。魔法少女はいずれ魔女になると」
QB「それにしても暁美ほむら。君はこんなことまで知っていたんだね」
QB「でも、君の正体についてようやく納得の行く仮説が立てられた」
ほむら「キュゥべえ!お前は…!!!」
QB「何を怒っているんだい? 僕は当然の疑問を口にしただけだよ」
QB「『ワルプルギスの夜と戦っている途中に仲間が魔女になってしまったら、その分不利になってしまうけど、その時のことを何か考えているのかい?』てね」
QB「魔法少女はほとんど一人で行動するし、
複数人で組めばただの魔女相手に魔力を使い切るなんてことはほとんどないから説明を省略しているけれど」
QB「なにせ相手はワルプルギスの夜だからね。
こういった対策も必要だと考えた僕のアドバイスなんだよ」
マミ「魔法少女は魔女になるの…?」ガタガタ
QB「そうだよ、マミ。でも僕らは何も人類に対して悪意を持っているわけではないんだ。
全てはこの宇宙の──」
マミ「……」フォン
ほむら「マスケット銃を!」
杏子「やめろ!マミ」
QB「短期は良くないな、マミ。魔女になる前に殺されちゃ宇宙のエネル {{ ドン!!! }} キュブェ!!」グチャ
マミ「……」ハァハァ
ダッ
まどか「マミさん!」
ほむら「マミ!」
杏子「あたしが行く!!!」
杏子「ほむら、お前は動くなよ! お前の知ってることを後で全部問い詰めてやるから今のうちに整理しときやがれ!」
杏子「待てよマミ!!」ダッ
まどか「嘘だ…嘘だよ……こんなのあんまりだよ…」
ほむら「………まどか、ごめんなさい」
まどか「…ほむらちゃん?」
ほむら「本当は、私はあなたの傍に居るべきじゃなかった」
ほむら「貴女は鹿目まどかのままでいいと言いながら、私は貴女を危険から遠ざけなかった」
ほむら「こんなギリギリになるまで、こんな簡単なことにも気付かなかった」
まどか「そんな!ほむらちゃんは悪くないよ!!」
QB「いや、全ての原因は暁美ほむらのせいであると言えるし、そうでないとも言える」
焼くぞ
氏ね
まどか「キュゥべえ!!!」
ほむら「……」チャキ
QB「暁美ほむら、君は僕を撃っても意味がないと知っているだろう。銃を降ろして貰えないかな」
QB「…やれやれ、同意して貰えないようだ」
QB「マミは僕を殺そうとすることが無駄だなんて知らないから仕方がないけど、感心はしないね」
QB「勿体無いじゃないか」キュップイ
まどか「生きてたのね…」
ほむら「そういう生物なのよ。あいつは人間の常識が通用しない生物」
ほむら「あいつらは人間とは全く違う感情と倫理によって生きている」
ほむら「今更、何をしに現れたの?」
QB「勿論、話すことはやぶさかではないが、二人を待ってからのほうが合理的だろう?
ソウルジェムが濁りきらずに戻れるかは分からないが、君にとっても試す価値のあることだと思うよ?」
ほむら「お前は……」
────
杏子「マミ!!!!」
マミ「佐倉さん……」
杏子「そりゃ、ショックだったかもしれないけどさ。
なんて言っていいのかわからないけど…もう、そういうことばっかりなんじゃないかって思うよ」
杏子「あたし達はその規模がデカイだけでさ。
世の中って思ったことが思った通りに行くほうが少ないじゃん…」
杏子「そんな中でも、折り合いをつけて何とか出来ることだけをやってるんだよ……みんな」
杏子「そりゃあたし達はこんな体でさ、将来だって真っ暗だって決まったようなものだけど…」
杏子「それでもマミは一生懸命やってきたじゃないか」
杏子「あたしみたいに逃げちまわずにやってきたじゃないか」
杏子「マミはあたしの理想だったんだ…」
マミ「……」
マミ「私は強くなんてないわ」
杏子「わかってるよ」
杏子「だから、自分だけが傷つくような生き方を何度も止めさせようとしたんだ」
マミ「私はきっと貴女より弱い」
杏子「そうかもしれない、うん、きっとそうだ。これはアタシの気分の問題だ」
マミ「意固地で、融通がきかない」
杏子「…愛弟子を破門にしてでも変えなかったんだもんな」
マミ「何よ、全部佐倉さんなの? ひとつくらい譲ってくれてもいいじゃない」ブー
杏子「それだって気分の問題だろ? 自分でそう思えればいいのさ」
杏子「でも…思ったよりは強かった」
杏子「こういうとなんだけど…もっと、ずっとショックを受けると思ってた」
杏子「アンタはずっと正義の魔法少女だったから…」
マミ「わたしもショックは受けているわ」
マミ「そうね、鹿目さんと美樹さんを魔法少女にしてたら、もっとずっと酷かったと思う」
マミ「暁美さんには感謝しなくちゃね」
マミ「…それに」
マミ「暁美さんと鹿目さんの話を聞いていたでしょう?」
マミ「私達が生き残って、魔女を倒し続けなければ、鹿目さんが魔法少女になってしまう」
マミ「美樹さんだって優しい子だもの。引き摺られて魔法少女になってしまうかもしれない」
杏子「…戻れば、キュゥべえと対決しなければならない」
杏子「あたしはあんな奴に思い入れなんて無いし、ほむらはむしろあいつを敵視してる感じだからいいけど」
杏子「あんたは違う」
杏子「あんたが一人になってからのことは、時々キュゥべえから聞くくらいだったけれど」
杏子「あいつの機械みたいな話し振りからだけでもかなり…依存しているように見えた」
杏子「だから、あんたがここで逃げちまっても、あたしは驚かないよ」
杏子「…役に立つことなんて、きっとどこでも出来るんだからさ」
マミ「………じゃない」
杏子「…ん?」
マミ「恥ずかしいじゃない! さっきから私、何を言っても慰められるばっかりで!!」
マミ「そんなに頼りなく見えた!? 私のほうが佐倉さんより歳上なのよ! マミ先輩なのよ!!?」
杏子「なにいってんだオイ… ていうかなあ。最近危なっかしかったし…」
マミ「それはそうだけど…///」
マミ「でも、もう決意できてる…と、思うわ」
マミ「私には守りたいものが残っているのだもの」
マミ「ここで私達が頑張らなければ、皆が不幸になってしまう」
マミ「私達がさっさと魔女になって、新人の魔法少女にワルプルギスの夜を相手にさせるなんてわけには行かないもの」
杏子「そうだよな…」
杏子「マミ…あんたは昔のままだ」
杏子「あたしは、そういうマミみたいな魔法少女になりたいとずっと思ってたんだ…」
杏子(あんたがベテランの魔法少女と組んだって聞いた時、思い出のマミさんが遠くへ行っちまうような気がしてたんだ)
杏子(一番の心配事はそれだったんだ)
杏子(でもマミはマミさんのままだった)
杏子(脆くて、他人のために危険な真似をして、それでも一生懸命な…)
杏子(…あんたが理想のままでいてくれるなら、あたしだって、ここで逃げるわけにはいかないよな)
────
~~~ 魔法少女システムとエントロピーを説明中 ~~~
~~~ 鹿目まどかへの因果の収束を説明中 ~~~
まどか「……」
ほむら「……」
マミ「……」
杏子「……」
QB「…宇宙のために死んでくれる気になるのを待ってるからね!」ドヤッ
ほむら「……」ドンッ
QB「キュップイ」グチャ
────
杏子「ほむら」
マミ「暁美さん…」
まどか「ほむらちゃん…」
ほむら「…ちょっと夜風に当たってくる、明日は決戦なのだからマミと杏子は早めに寝て。
まどかはもう遅いのだから、帰るにしろ、泊まるにしろきちんと連絡をしたほうがいいわ」
バタン
ほむら(繰り返せばまどかの因果が増えていく。
まどかに魔法少女としての資質が増えれば増えるほどキュゥべえの勧誘はしつこく、狡猾になっていく)
ほむら(今回でさえギリギリだった…これ以上、手段を選ばなくなるというならもう…)
ほむら(地球に何万年も前から居る宇宙人との知恵比べ)
ほむら(しかもルールブックは向こうが持っている)
ほむら(有り得ないような馬鹿げたルール)
ほむら(それでも、それでもいつかまどかが救えるのならば、この生命なんて惜しくはなかった)
ほむら(敵が油断しているうちに出し抜くしか方法がなく、)
ほむら(しかも油断はまどかの資質が増える度に消えていく)
ほむら(私はまどかの希望を無視して、魔法少女にならないように全力を傾けた)
ほむら(魔法少女であっても、幸せに生きる方法はあったのかもしれないのに)
ほむら(今ではまどかは最悪の魔女になるしかない)
ほむら(この時間軸では全員生きていて、万全な状態でワルプルギスの夜に挑める)
ほむら(こんなチャンスは今しかない)
ほむら(…………怖い)
ほむら(………もしも、もしも失敗してしまったらどうするのだろう)
ほむら「ごめんなさい…」
ほむら「ごめんなさい…まどか……」
ほむら「あなたの人生を私が滅茶滅茶にしてしまった」
ほむら「…もう取り返しがつかない……」
「ほむらちゃん」
ほむら「……まどか」
まどか「ごめんね。邪魔しちゃった」
ほむら「まどか、まだ外は寒いわ。そんな薄着では風邪を引いてしまう」
まどか「なら、ほむらちゃんの上着を半分貸してよ」
ほむら「え。ぜ、全部でいいわよ!私は魔法少女なのだから風邪なんて引かないし!」
まどか「それじゃほむらちゃんに悪いよ。明日はワルプルギスの夜と戦うんだから、少しでも魔力を温存しないと」
ほむら「///」カァアアア
まどか(ウェヒヒヒヒ、ゆでダコみたいだよ、ほむらちゃん)
ほむら(うう…嬉しいのに、まどかの顔を見れない。これじゃ美樹さやかを全然馬鹿にできない!)
ほむら(言い訳できるものがどこかに…なにか…あれ?)ム?
まどか「どうしたの?ほむらちゃん」
ほむら(あれは資材置を担当させている「モブ120(本名略)」!何か探している?)
ほむら「あの…どうされたんですか?」
モブ120「あ…実は搬入先の資材を間違えて運んで戻そうとしているんだが、何番の番号か忘れてしまったんだ」
ほむら(今まできちんと仕事をこなす人ばかりだったけど、やっぱりこういう人は出てくるものね)ホム
ほむら「それなら、120番です。私も別部署で働いていますが、一覧にないものがありましたから」
モブ120「同行者か?にしちゃずいぶん若いな?」
ほむら「そう見られるんですよ!それに事務ですから小柄でも大丈夫!」アセアセ
モブ120「そういえば思い出してきた…確かに120番だったな。ありがとう、助かったよ」
ほむら「いえいえ、お気になさらず(さっさと運べ!)…あれ?資材置へは向かわないんですか?」
モブ120「今夜中にやればいいことだろ。だったら今はコーヒーブレイクってところだ」プシュ
ほむら(間違えた資材が置かれて、皆が邪魔だと思っているだろうに休憩…)
モブ120「まあ、同行者がいて助かったよ。」
ほむら(出来損ないのモブのために貴重なまど時間を無駄にしていることをちょっとは考えて欲しいわ)
モブ120「しかし『ホムラアケミの父』って人は凄いねぇ。アンタもそう思うだろ?」
ほむら「いえ、仕事ですから」
モブ120「そんなもんか。…まあ俺なんかは短期の仕事だが、
まるで未来を読んでいるかのような采配!!これなら人はついてくると感心したね」
ほむら(未来を知っているのだから当然でしょうが)
ほむら「でも、他の人にとっては凄く見えても、その人自身にとってはそうではないってこともありますよ」
モブ120「ハァ?何を言ってるんだ?ちょっと流石に考えが至らなすぎだ。アンタは『ホムラアケミの父』に謝ったほうがいい」
ほむら(こいつは本人に何を言っているの?)
モブ120「例えそいつが未来を読んでいようが、黒い裏情報を知っていようが、
何十人という労働者の生活を預っているんだぞ。その判断が簡単にできるわけがない」
ほむら(そういう非情な経営者も政治家も居ると聞いた)
モブ120「後悔してもやり直しは効かないんだぞ。引き返せる人間なんて居ないんだ。
人生は1回しか無いんだ、誰でも、間違いなくそうだ。
だからこういう大勢の生活が関わる決断をきちんと出来る人間はとても偉いし、尊敬して然るべきなんだ」
ほむら「」
モブ120「どうした?」
ほむら「ちょっと戻ります…やらなくてはいけないことを思い出したので」
モブ120「そうか、引き止めて悪かったな」
ほむら「いいヒントを貰ったので、サボりを大きく査定に響かないようにしてあげます」
モブ120「お、そいつは有難いな。流石事務」
ほむら「後、同行者じゃなくて同業者だから。ここは年齢的に間違えていいところじゃないですよ!それじゃ!」
モブ120「」
まどか「おかえり、ほむらちゃん。どうしたの?」
ほむら「明日の準備でちょっと…て、まどか!ずっとここで待ってたの!?」
まどか「ウェヒヒヒ、今日はほむらちゃんを見ていたかったから」
ほむら「そんな…こんなに冷たくなって…」オロオロ
まどか「5分も経ってないよ。大丈夫だよ、ほむらちゃん」
ほむら「家の中に入りましょう、まどか」
まどか「ほむらちゃん、外はもういいの?」
ほむら「ええ、もう外はいいわ」
まどか「今ほむらちゃん、いい顔してるよ、ウェヒヒヒヒ ///」
ほむら「もう!からかわないで! ///」
マミ「暁美さん達、戻ってきたわよ。なんだか吹っ切れてるみたい」
杏子「な、まどかに任せて良かったろ」
マミ「ええ、出ていく時は真っ青で心配だったけど、今は安心しちゃった」
杏子「そういう相手が居るんだ、こいつと組ませとけばなんとかなるって奴が」
ほむら(そうだ、ここには元から今しか無かったんだ)
ほむら(長い繰り返しをしたせいで、今のこの瞬間より、長い失敗を重要視してしまっていた)
ほむら(今の結果だけを見れば、まどかもさやかも魔法少女になっていない)
ほむら(マミと杏子は魔女化の事実をしっているけど、なんとか気力を取り戻そうとしている)
ほむら(QBは万策尽きて、後はワルプルギスの夜しか頼みが居ない)
ほむら(次へのループを封じられたからって、関係ない)
ほむら(これは最高の条件だ)
ほむら(過去のループの中で死んでいったまどかや魔法少女達のことを思うと心が痛いけれど)
ほむら(もしも今際のソウルジェムを砕いた後に魂が抜け出ていくとするならば)
ほむら(必ず謝りにいくから────それまで、少しの間、お別れだね)
────
まどか「ねぇ、ほむらちゃん。私、やっと決心がついたよ」
まどか「私は魔法少女にはならない」
まどか「私はほむらちゃんが帰ってくるのを待ってるから」
まどか「だから、戻ったら笑顔を見せてね──」
────
──── XX日 ワルプルギスの夜、襲来当日
広報車「本日午前7時、突発的異常気象に伴い避難指示が発令されました。
付近にお住いの皆さんは、速やかに最寄りの避難場所への移動をお願いします。
こちらは見滝原市役所広報車です」
モブ121「避難所はこっちですよー、指示にしたがって押し合わずに来てくださーい」
モブ122「カバディ コッチハ」ムキムキッ
モブ123「カバディ キケン」ムキムキッ
モブ124「カバディ キチャダメ」ムキムキッ
モブ125「カバディ ヒナンジョアッチ」ムキムキッ
モブ126「今時立派な青年ですねぇ、スーパーセルだっけ? 自分が逃げるだけで精一杯だというのに…」
モブ127「いえ、確かに避難誘導をしているんですけど、私はこれが仕事で…というかバイトでして」
モブ128「そうそう、『ホムラアケミの父』って人に雇われたんだ。
最初は何のためにって思ったけど、まるでこうなることを知っていたかのようだ…きっと、すごい人なんだろうな」
────
まどか「さやかちゃーん」
さやか「お、まどかもこっちの避難所だったのかー」
さやか「学校で毎日会ってるはずなのに随分久し振りな気がするぞー」グリグリ
まどか「もう、さやかちゃん。何言ってるの」キャッキャッ
さやか「窓…、凄い雲だよね」
まどか「大きな塊が次から次へと動いてる…」
さやか「ほむら達…あそこで戦ってるのかな」
まどか「うん…」
────
QB「さて、暁美ほむらがどんな用意をしたとしても、ワルプルギスの夜には勝てないだろう」
QB「鹿目まどかは今は契約する気がないかもしれないが、ほむら達がピンチになれば考えも変わる」
QB「僕はその時をただ待てばいい」
ゴォォォォォ
QB「なんだこの音は…空から?」
5
4
2
バキン
杏子「おお、カウントダウンしてる感じの『1』の文字が砕けた、あれは早く当たり過ぎだな」
ほむら「米軍が現在、無解体のまま任意の場所に墜落させることの出来る廃棄衛星の数は42!」
ほむら「それをワルプルギス発生と同時に全て直撃させる」
ほむら「ワルプルギスの夜へ直撃時の減速と海岸沿いに設置した緩衝材があれば津波の発生は避けられるわ」
ほむら「見滝原海沿岸にいる間に決着をつける!!」
マミ「暁美さん、ファンタジーというか、陰謀論的なオカルト雑誌の記事に有りそうなナイスな説明よ!」
ワルプルギスの夜「アハ {{ ドゴォ }} ハアハハハ {{ ドゴォ }} ハアハハハハア」 {{ ドゴォ }}
ワルプ {{ ドゴォ }} ギスの夜「アハ {{ ドゴォ }} ハハハハ、アハハハハハハ {{ ドゴォ }} ハ」
ワ {{ ドゴォ }} プルギ {{ ドゴォ }} 夜「アハ {{ ドゴォ }} ハ、アハ {{ ドゴォ }} ハハ {{ ドゴォ }} ア」
ワルプルギスの夜「アハハアハハハハアハハアハハ」 ボロボロ
マミ「ダメージを受けてるみたいよ、暁美さん!!」
ほむら「このまま数が押し切ればいける!」
杏子「……あたし達っていらなくね…?」
/ な い あ も |
l い い い う |', /
| か ん つ l ', /
| な じ 一 全 / 〉く }三{`>く
ヽ、 ゃ 人 部 / ∠_/ ̄∨__〉、
、 \ , で / !:::ハ ゚ /::::l| ,..-―
\ / `丶、____x く ト、:_:_} {_:_:_ノ| / ; : : :
,.ィT: ̄:7ハ、 V「::r┬宀┬ 、:}V_/:./: : : :
人,-、:.・:; -vヘ ∨仁ー--'二l }イ{}=彡く_:_:_:_:_:_
〔:.:{::}ー{::}:.:} _, <l入ヽ二二 // /勿¬┬┬-..、
__Y/:|三三ト、:/ , -<}>_'´_::ヽ\_二_/ノ::_ニ::. ┴┴-<
_rく´ |:.:| lヾ:|三三|:/「`ーrー、 /,..:'r―-、ヽ、`ヽミー--‐ニ-'´ /r──‐┐::
∧ ヽ ` \ヽ二ラ /:.:.:./ | } //::..{  ̄ ヽ:/´ '′ |::..
:.:.ヽ | ` ┬彳:.:.:.:/ | ∧ //::..::..\ ∥ /::..:
:.:.:.:〉| l 〈:.::.:/ 〃:.:∧//::..::..:「`ー ∥ _/::..::..
:./| lノ〉_r、 !  ̄ ∧:.:.:.:.7/::..::..::..ヽ、 ∥ ` ̄フ::..::.
', ヽ、ー′ | / ヽ:. //::..::..::..::./ヽ¬ ヾ -r―'´::..::..::.
ワル {{ ドゴォ }} スの夜「アハハアハハハハ {{ ドゴォ }} ハ」 ボロボロ
ワルプルギスの夜「アハハ {{ ドゴォ }} ハハアハハアハハ」 ボロボロ
ワ {{ ドゴォ }} ギ {{ ドゴォ }} 夜「アハハアハ {{ ドゴォ }} ハハ」 ボロボロ
ワルプルギスの夜「ア {{ ドゴォ }} ハハアハハ {{ ドゴォ }} ハ」 ボロボロ
ワルプルギスの夜「」フラフラ
ほむら「衛星が尽きたわ」
マミ「ワルプルギスの夜が海岸沿いに落下するわ」
杏子「もう虫の息じゃねーか!」
ゴルゴでもいるのか
モブに不可能はない
QB「──驚いたよ、どうやら、ほむら達の勝ちのようだ。
不本意だが、ワルプルギスの夜は遠からず消滅するだろう」
まどか「やったあ、ほむらちゃん!」
さやか「さっすがマミさん!後、面識はないけど赤い人!」
QB「でも、安心するのはまだ早いよ、まどか」
QB「ワルプルギスの夜が滅んだ後に発生する膨大な呪いの量が分かるかい?」
QB「呪いはワルプルギスの夜を滅ぼした相手にまず侵食するだろう。
呪いは簡単にソウルジェムを濁らせ、魔女化させる」
QB「それでも足りなければ、その周囲の魔法少女をも巻き込む。
マミ、杏子、ほむらのそれぞれのソウルジェムくらいなら、全て侵食しきってしまうんじゃないかな」
まどか「!!」
さやか「あんた、それは──」
QB「つまり、これは元から彼女たちの魔女化は決まっていたのさ…魔女化を戻すには魔法少女の願いしか無い!
だからまどか、さやか、僕と契約して魔法少女に─── ??「 」ヌゥ ──」
QB「…なんだい君は?掴まれるのは好きじゃないんだ」
??「 」ギュ
QB「キュップイ」グチャ
??「 」アーアーアー
まどか「きゃっ…」
さやか「まどかぁ!」
杏子「まどか!どいてろ!」ザシュ
??「」サァァァァ
まどか「杏子ちゃん、ありがとう」
さやか「こいつらはなんなの? 人じゃないみたいだけど…」
ほむら「杏子!仕留めた?」
杏子「ああ、仕留めた。現状、こいつが最後の一匹だと思うけど…」
さやか「ええと、あんたはマミさんの弟子の…あんこだっけ?」
杏子「杏子だ!間違えんな!!!」
まどか「ほむらちゃん、杏子ちゃん! どうなったの?」
杏子「わっかんねぇよ。ワルプルギスが落ちた辺りを、
ほむらが仕掛けておいた発破で埋め立てたら、いきなり白い入道みたいなのが沢山沸いて出てさ…」
杏子「退治してたんだけど、一匹だけ逃げたんでここまで追ってきたってわけさ」
ほむら「……」ヒョイ
ほむら「やっぱりこいつらの落とす小石みたいなものはグリーフシードみたいね。
ソウルジェムが浄化されるもの」
杏子「なんだよ、じゃあこんなちっこいグリーフシードがアタシの報酬かよ。
そりゃ今回は働いたとは言えないけどさあ、ワルプルギスの夜だよ、ワルプルギスの夜!
ちょっと名前負けし過ぎじゃない?」
ほむら「こういうときに便利な説明役が一人だけ居るわ…普段はムカつくけれど」
ほむら「出てきなさい、キュゥべえ」
QB「ハァ…やっぱり生きていたのか、暁美ほむら」
ほむら「……」チャキ
QB「ほむら、いきなり銃を向けるのは止めて欲しいな。代わりはあるけど、勿体無いじゃないか」
ほむら「撃ち殺されたくなければ、今の事態の説明をしなさい」
QB「ハァ…やれやれ、仮説なら立てられるよ。今回も、君が原因だ」
QB「本来はワルプルギスの夜を倒した魔法少女は、
ワルプルギスの夜の呪いを一身に受け、魔女化するはずだった」
QB「ところが、暁美ほむら。君の武器は魔力の篭っていない器物だ。
あるいは今回は土砂だったので、地球そのものと言ってもいい」
QB「魔法少女でない呪いを受ける特殊な対象が生み出したものが、先ほどの怪物だろう」
QB「魔法少女であれば魔女と言うべきところだが、
今回の対象には性別がないから、あえて名付けるなら魔獣とでも呼ぶべきだろうね」
ほむら「魔獣はあれで最後なの?」
QB「仮にもワルプルギスの夜を呪いとして受けたんだ。当然、あれだけで住むはずがない。
少しずつ、地下から染みだしてくることが予想されるね」
QB「だが、この魔獣の発生はワルプルギスの夜にとどまらない規模の影響が予想できる」
QB「つまり惑星自体に地上にある呪いを吸い取って、魔獣として結晶化させる機構が
備わってしまったかもしれないんだ」
QB「そうなるとソウルジェムの回復…には至らないだろうが、濁りの進行を遅らせる要因となる」
QB「さらに、小さいながらもグリーフシードを持つ魔獣は弱い魔女の代替品となり、
これも新人の魔法少女が魔女になる可能性を減らす効果となる」
QB「早く言えば僕達のエネルギーの回収効率が落ちる…頭の痛い問題だよ」
ほむら「ざまあ無いわね」
QB「まどかが魔法少女になってくれれば、この程度の損失は消し飛ばすことが出来るのだが…契約してくれる気はないのかい?」
まどか「お断りします」
さやか「絶対にイヤ」
QB「…残念だよ、まどか」
──── 後日談
ほむら(結局、この世界は魔法少女と魔女と魔獣が同居する世界となった)
ほむら(かつての仲間を殺したくないないなら、魔獣専門の魔法少女になるという選択もできるため、
少しだけ魔法少女に優しい世界になったと言えるだろう)
モブ129「ねぇ、知ってる『ホムラアケミの父』ってひと」
モブ130「知ってる、凄い人なんでしょ。医学の発展にも尽くして、予言者みたいに街を救ったって」
モブ129「噂では、ちょっと変態らしいけど」
モブ130「私は動物好きって聞いたわ。黒猫を一匹、飼ってるんだって」
モブ129「それにしても『ホムラアケミの父』って、なんだか暁美ほむらさんの名前にちょっと似てるよね」
モブ130「でも別人よ、だって苗字と名前が逆だもの」
ほむら(私の行った活躍は、私でも父でもない、謎の人物に押し付けられた。そこに不満はない。
魔法少女は目立たないほうが望ましいのだから)
杏子「よう、ほむら。今日は放課後から魔女探索に行くってよ。
ほむらのことだから無いとは思うけど、遅れんなよ」
ほむら「ええ、わかったわ」
杏子「じゃ、アタシは買い物があるから、後でな」ダッ
ほむら(杏子はあれから巴マミの家に居候するようになった)
ほむら(春から学校に通うことを計画しているようで、私も時々勉強を教えている)
マミ『暁美さん、おはよう』
ほむら『ええ、おはよう。杏子から聞いたわ。今日は放課後からね』
マミ『私は受験勉強でしばらく参加できなかったから、頑張らなくっちゃ。
そして終わったらパーティーをしましょう?鹿目さんや美樹さんも呼んで』
ほむら『ふたりとも喜ぶと思うわ。誘っておくわね…ってテレパシーを使えば貴女が直接誘えるじゃない』
マミ『それじゃあ、どちらからも言うことにしましょう?いいでしょう、それで』
ほむら『……もう、』
ほむら(巴マミは学校内や通学路で時々話しかけてくる。)
ほむら(驚いたのは、マミが今後も魔女、魔獣の隔て無く倒していくと決めたことだ)
ほむら(てっきり、魔獣専門の魔法少女になると思っていたのだが、
自分自身の在り方をきちんと認識したいということで、あえて魔女も狩ることにしたそうだ)
ほむら(彼女は私が思っていたよりもずっと強い魔法少女だったようだ)
ほむら(元から仲が良く、狩るものも同じということで、私とマミと杏子はマミの受験勉強が重ならなければ、いつも一緒に狩りをする)
ほむら(魔女、魔獣の両方を狩る、オールラウンダーの魔法少女)
ほむら(勿論、使い魔も)
ほむら「おはよう、まどか」
まどか「おはよう、ほむらちゃん!!」
さやか「おはよう、ほむらー宿題おせーて」
ほむら「会った瞬間にそれはなんなの?自分の力でやりなさい、さやか」
さやか「えー、ケチー」
ほむら(相変わらず、まどかとさやかは一番の親友)
ほむら(私はそこに分け入って、3人組の地位を築きつつある)
ほむら(志筑さんを加えればカルテットか)
ほむら(まどかとさやかの仲は時々、私でも入り込めないほどの深さを感じることもあるが)
ほむら(そろそろ私は正式に恋人枠として正式にまどかに申し込もうと思っている)
ほむら(結果なんてキニシナイ)
ほむら(QBはまどかの元にほとんど姿を現さなくなった)
ほむら(まどかだけでなく、私達全員に)
ほむら(QBは汚れを貯めたグリーフシードの回収に役立たないでもないのだが、
この惑星自体が極微量の浄化(正式には魔獣として集積)効果を持つため、
土に埋めておけば魔女が孵化することもなく、大分長い間放置できる)
ほむら(時々QBが掘り出して持って行くから、こちらとしてはこのままの関係でも構わない)
ほむら(私はもう時間停止の能力は使えないし、
まどかの因果が増えることを防ぐためもあって、時間遡行の能力も使えない)
ほむら(魔法少女としては最弱の部類に位置するといっても過言ではない)
ほむら(それでも、ワルプルギスの夜との戦いにて想定した白兵戦用の武器が丸々残っているし、
四次元ポケットとしか言いようが無い私の盾はなかなかに便利なので、
強力な魔女相手でなければ今のところ、遅れをとること無く済んでいる)
ほむら(それに、魔法の練習をした成果もあって、私は新たに一つ魔法を覚えることが出来た)
ほむら(魔力を込めると肩口に小さな羽が生え、
それが高速移動や空中移動の時に少しだけバランスを取ることに役立つというものだ)
ほむら(白い鳥の羽のようだったり、ロールシャッハテストのような
墨を滲ませたような複雑な図形だったり、気分によって変わるけれど多分あまり意味はない)
ほむら(巴マミが感激して複雑な名前をつけたが、残念ながらその名前は忘れてしまった)
ほむら(私達、魔法少女は魔女になる運命)
ほむら(それでも私は生きているし、まどかやさやか、仁美といった友達や、マミや杏子といった魔法少女の友達もいる)
ほむら(彼女たちと過ごすことはとても楽しく、私は幸福だと実感できる)
ほむら(ここに至るまで、辛い時間軸が多かった。居るだけで苦しいばかりの時間軸もあった)
ほむら(それらの時間軸でも、行動次第では在り得たかもしれない幸福な未来を思い描く時、私は胸の痛みを覚える)
ほむら(それは戻らない過去を思い描くようなもので、私だけが特別ということはなく、恐らく誰もが感じる心の痛みなのだろう)
ほむら(どうかこの幸せがいつまでも続きますように)
終わり
途中から何を書いているのか分からなかった…
取り敢えず自分は杏マミが大好きということが分かった
モブもっと出張ってもよかったな
Entry ⇒ 2012.06.10 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (3) | Trackbacks (0)
さやか「甘えんぼの親友」
まどか「ねね、さやかちゃん」
さやか「んー?」
まどか「これから何か予定ある? よかったら帰りにどこか寄り道したいなぁ」
さやか「あ…ごめんまどか、今日も用事があって…」
まどか「…上条君の、お見舞い?」
さやか「そんなとこかな、あっはは…」
まどか「むー」
さやか「本当にごめんね、この埋め合わせは今度必ずするからお許しをまどか様」
さやか「さすがまどか、心が広い!」ダキッ
まどか「っ!」カァァ
まどか (近い、近いよさやかちゃん)
さやか「おっとこうしちゃいられない」パッ
まどか「あっ…」
さやか「じゃあねまどか! 帰り道気を付けるんだよー!」タタタ
まどか「う、うん! じゃあねー…」
まどか「…………はぁ」シュン
まどか (またか…もう)
まどか「あ、仁美ちゃん」
仁美「どうかなさったのですか? 酷く落ち込んでいるように見えますが…」
まどか「うん…聴いてもらっていいかな?」
仁美「勿論ですわ」
――
仁美「つまり、最近構ってもらえないということですの?」
まどか「うん…前まではよく遊びに行ってたんだけど」
まどか「上条くんが入院してからは全然なの」
仁美「そうなのですか…」
仁美「ふふ、本当にさやかさんがお好きですのね」
まどか「えっ、いや、その…あぅぅ」カァァ
仁美「とってもお似合いだと思いますわ」
まどか「や、やだなぁ仁美ちゃん…そういうのじゃないってば」テレテレ
仁美「わたくし、真剣に応援しますわ」
まどか「だから違うってばぁ」テレテレ
仁美「本当ですの?」
かっこよくて、頼れる子で、面倒見よくてね、
しかもとっても優しくて…勇気があって、
でもたまに失敗して、それでもすぐ立ち直って。
いつもみんなの中心にいてみんなを笑わせてくれる、そんなすごい子なの…
だからさやかちゃんは、わたしの憧れなの…」
まどか「…さやかちゃん///」
仁美「ふむふむ…」キマシキマシ
仁美 (このご様子だと…自覚するのも遅くないですわね)
まどか「はぁーぁ…」ボフッ
まどか (…今度っていつなんだろ)
まどか (あ、でもさっき抱きしめられちゃった…てぃひひ)
まどか (さやかちゃん、いい香りだったな)
まどか「………」
まどか「さやかちゃん…」
まどか (一緒にお茶したり、お洋服みたり…)
まどか「ティヒヒヒ、待ちきれないよー///」ゴロゴロ
ゴンッ
まどか「あいたた…」
まどか「…」
まどか「明日、誘ってみようかな…」
まどか「おやすみ、パパ」
知久「おやすみ、まどか」
・
・
・
ガチャ
パタン
まどか「ふぅ」
まどか (寝る前に声が聴きたいな…)
まどか (でももう22時だしさやかちゃん寝ちゃってるかな)
まどか (起こしちゃったらどうしよう、でも…)
まどか「…」ポチポチ
prrrr… prrrr…
まどか (ちょっとだけ、ちょっとだけならいいよね)
まどか「…こ、こんばんは」
さやか『どしたー?』
まどか「あの、あのね、今日の宿題なんだったかなーって…」
さやか『あーちょっと待ってて』
まどか (ごめんねさやかちゃん、実はもう終わってるんだけど…)
さやか『お待たせ』
まどか「あっ、ごめんね」
まどか「うんうん」
さやか『もうテンパりまくちゃっててさ』
まどか「それでどうなったの?」
さやか『それがなんと――』
まどか「あははっ」
まどか「ううん、大丈夫だよ」
さやか『あと今日は悪かったね、せっかく誘ってもらったのに』
まどか「わ、わたしから急に誘ったんだし気にしなくていいよ」
さやか『ありがと。にしてもやっぱやっさしいなー! まどか大好き!』
まどか「…っっ///」
まどか「あ……ぅ、うん…おやすみなさい…」
プツッ
まどか「~~!」ゴロゴロ
まどか「さやかちゃんが、さやかちゃんが、好き、って」
まどか「えへへ、えへへへ…///」
まどか「嬉しいな…嬉しいよ…」
まどか「」ハッ
まどか「もしかして、わたし…」
まどか (さやかちゃんに…)
――
「ふふ、本当にさやかさんがお好きですのね」
――
まどか「…」プシュー
まどか「わ、わたし…わたし…」
通学路
まどか「…」チラッ
さやか「?」
まどか「!」フイッ
さやか「…?」
まどか「…///」
仁美 (まどかさん、初々しいですわ…!)
仁美「わたくしは存じ上げておりませんわー」ヒソヒソ
さやか「怪しい…怪しすぎる…」ヒソヒソ
仁美「とりあえずいつものようにするのが一番ですわ」ヒソヒソ
さやか「いつも…か。よし」
さやか「まーどかぁー」
まどか「ど、どうしたの?」
まどか「ひゃっ!」
さやか「んーやっぱりまどかは気持ちいいですなー」サワサワ
まどか「やっ…さやか、ちゃっ…///」
さやか「ここがええんかー?」
まどか「っ!」ビクッ
さやか「ほらほら、仁美に見せつけちゃおうぜーあたしたちの仲を!」
まどか (息が、首筋に…)
仁美「あらあら、うらやましいですわ」
まどか「も……やめっ、んんっ…さやかちゃぁん…」カァ
さやか (なにこの色っぽいまどか)
モブ「さやかー! 任せたよ!」
さやか「おっけー!」
さやか「…はっ!」バシッ
ダーーンッ
ワーーッ
まどか (さやかちゃん、すごい…!)
モブ「さっすが!」
さやか「いぇーい!」
パンッ
まどか (いいなぁ、ハイタッチ)
さやか「まどか! そっちいったよ!」
まどか「え?…きゃっ!」バンッ
モブ「大丈夫、まどかちゃん?」
まどか「ごめんね、失敗しちゃった」
さやか「まどか! 大丈夫?」
まどか「ありがと、大丈夫だよ」
さやか「ほら、手出して」
まどか「?」
パンッ
さやか「へへ、ドンマイドンマイ!」
まどか「…うんっ!」
仁美「いいですわね…色々な意味で…」
さやか「はぁーー張り切りすぎた」
仁美「さやかさん大活躍でしたわね」
まどか「すごかったね、さやかちゃん」
さやか「もうこりゃ次の授業はダメだね、たはは」
仁美「あら、それはいつものことですわ」
さやか「うぐっ…仁美がいじめる」
まどか「てぃひひっ」
仁美「まったくですわ」
さやか「こんな時学校ってめんどくさいよねー」
まどか (でもわたしはさやかちゃんと会えるから…えへへ)
さやか「よっし少しゴロゴロしますか」
仁美「あら、それならまどかさんのお膝が空いてますわ」
まどか「えぇ!?」
さやか「お、いいねぇ」
仁美「まどかさん…頑張れ、ですわ」ボソッ
まどか (仁美ちゃん!?)
――
―
仁美「ふふ」
さやか「あー楽ちん楽ちん」
まどか「さ、さやかちゃんってば///」
さやか「なんか久しぶりだね、こういうのって」
まどか「そう…だね」カァァ
まどか (頭、撫でていいのかな…)
さやか「あれまどか、顔赤いよ、大丈夫?」
まどか「た、体育の後だから暑くって」
仁美 (わたくしはそっと立ち去りましょう、あとは頑張れですわまどかさん!)
まどか (さやかちゃん可愛い…)
まどか (わたし…やっぱりさやかちゃんが好き…)
まどか (もっとわたしを見てほしいな)
まどか (ううん…さやかちゃんとお付き合いしたい)
まどか (これがわたしの気持ち…だよ、さやかちゃん)
まどか (でもさやかちゃんは上条君のことが…)
まどか (やっぱり……わたし、変だよね…)
まどか (女の子が女の子を好きになるなんて…)
まどか (やっぱりこの気持ちは伝えられそうにないよ…)
まどか「あ、おはようさやかちゃん」
さやか「おはよー…そろそろ教室戻るかー」
まどか「うん、そうしよっか」
まどか (でも、気持ちは伝えられなくても…)
まどか (せめて、さやかちゃんの側にいたいよ)
まどか (さやかちゃんの特別になれなくてもいいから、時間を共有したいな)
さやか「まどかー」
まどか「!」ドキッ
さやか「寄り道、しよ」ニコッ
まどか「う、うん!」
さやか「よし! あたしアイス食べたいな、あのお店行かない?」
まどか「わたしも…行きたいな」
さやか「へへ、ほらほら早く行こ」グイッ
まどか「きゃっ引っ張らないでよぉさやかちゃん」
まどか「……えへへ///」
仁美 (応援してますわ、まどかさん!)
まどか「んー…苺のアイスにしようかな」
さやか「うし、それじゃバニラと苺のアイスを一つづつください」
店員「かしこまりました、二つで660円となります」
まどか「えーっと340円…」
さやか「これでお願いします」つ1000円
店員「1000円からでよろしいですか?」
さやか「はい!」
まどか「わ、悪いよさやかちゃん」
さやか「いーっていーって!」
まどか「本当にいいの?」
さやか「いいのいいの、まどかが喜ぶのが見たいんだから」
まどか「…あ、ありがと」カァァ
まどか (さやかちゃん…)
まどか「でも、何かお返ししたいなって」
さやか「うーん…それじゃ、あたしの金がない時にジュースでも奢ってもらおうかな、へへ」
まどか「…うん、約束するね」ニコッ
さやか (まどかは優しいなぁ)
さやか「まどか、一口ちょーだい」
まどか「うん」
さやか「ん…やっぱりここのストロベリーはうまいねぇ」
まどか (さやかちゃんの食べた跡…)ゴクリ
さやか「あたしのもはい」
まどか「そんな、悪いよぉ」
さやか「遠慮しないでほれほれ」
まどか「う、うん、それじゃあもらうね」
まどか (さやかちゃんの食べかけのバニラ…)
まどか「…」カァァ
まどか (どうしよう、意識しちゃうよ)ドキドキ
まどか「あ…えへへ、もらうね」
まどか「んー…」
ペロ…
さやか「どう?」
ペロ、レロ、レロ、レロ…
まどか「ん、おいひい…」
さやか「…」ゴクリ
レロ…ジュル…
さやか (な、なにこのなんとも言えない感じ…)
まどか (さやかちゃんと間接キス…)
まどか (反対側も…)
さやか「ちょ、まどかストーップ!」
まどか「ふぇっ!?」ビクッ
まどか「あ、ご、ごめんね」
さやか「ふふー、まどかのもう一口もらうよん」
さやか「あ、ここ溶けかけてるよ」ペロペロ
まどか (間接キス、しちゃった…)
さやか (最近のまどかってなんか色っぽいな…)
さやか (表情っていうか、仕草っていうか)
さやか (あ、これはもしかして、もしかしなくても)
さやか「ねね、まどか」
まどか「ん…なぁに?」
さやか「まどかって、誰かに恋…してる?」
まどか「…?」
まどか「…!?」ポロッ
ベチョ
まどか「きゃっ」
さやか「あっ」
まどか「つ…冷たいよぉ」
さやか「あーあー…こりゃひどい」
まどか「ど、どうしよう…」
―
さやか「よし、これで乾燥機を使えば夜までに乾くはず」
まどか「ごめんねさやかちゃん…」
さやか「気にすんなって! 失敗は誰にでもあるから」
まどか「うん…」
まどか (さやかちゃんのお家…久しぶりだな)
まどか (そういえば上条君が入院して以来、かな)
さやか「とりあえずお茶飲む?」
まどか「うん、ありがと」
まどか「…えっ?」
さやか「実際いるんでしょ? 好きな人」
まどか「…………ぅ…うん…」カァァァ
さやか「やっぱりねん」ニヤニヤ
さやか「どこのどいつかは知らないけど…まどかはあげたくないな、あっははは」
さやか「でもさやかちゃんとしてはちょーっと気になっちゃいますよ」
まどか (ここで言っちゃう? いやでもさやかちゃん困っちゃうだろうし)
まどか (でもここで言わなかったらいずれ…上条君と付き合っちゃうよね)
まどか (でもこの気持ちは本物だもん…嘘じゃないもん)
まどか (わたし、さやかちゃんが好きなんだもん…!)
まどか (でも…さやかちゃんに拒否されたら怖いよ…やだよぉ…)
まどか「……うぅ…」
まどか「ううぅ…あぁぁぁぁぁ…」ポロポロ
さやか「ちょ、まどか!?」
まどか「ごめん…さやか…ちゃっ… ひぐっ、ぐすっ…あぁぁぁぁ…」
さやか「お、落ち着いて、まどか」ヒシッ
まどか「さやか…ちゃん…!」ダキッ
さやか「ごめんね…無理に聴いちゃったりして」
さやか「あたしが無神経だった…ごめん」
さやか「え…?」
まどか「わたし、うっ、変、なの……おかしいの…!」
さやか「そ、そりゃー恋すると情緒不安定になるしそれが普通だよ」
まどか「………叶わない、恋なの」
さやか「…そんなの、ありえないよ!」
まどか「そう…だもんっ……う…うああぁぁぁぁん…!」
さやか「大丈夫、まどかは可愛いもん! 愛らしくていい子だし! あたしが保障するよ!」
さやか「もっちろん!」
まどか「それ、なら…わたしのことも、愛してくれる?」
さやか「…? あたしはまどかを愛してるけど…」
まどか「あの、その……」
まどか「っ……恋人、として」
さやか「!!」
さやか「ま、まどか…もしか、して」
まどか「うん…わたし、わたしはね」
まどか「さやかちゃんが…好きなの」
まどか「あっ…あの、ええと、わたし、だからね」
まどか「えーーっと…///」
さやか「…何も言わないでいいよ、まどか」ギュッ
まどか「ご、ごめんね…もう心がいっぱいいっぱいなの」
さやか「まどかみたいな可愛い子があたしなんかを…」ナデナデ
まどか「き、気持ち悪いよね、わたし」
さやか「好きって気持ちに男女は関係ない、って仁美も言ってたし、あたしもそう思う」
まどか「でも、でも…」
さやか「すっごく嬉しいよ、まどか」
まどか「……さやかちゃん…!」ギュッ
さやか「落ち着いた? まどか」
まどか「もうちょっと…このままでいい?」
さやか「ん、いいよ」
まどか「ん…大好き…大好きだよ…」
さやか「て、照れるなぁ///」
さやか「そ、そうかなー?」
まどか「ずっとこうしてみたかったんだ」
さやか「まどかは甘えんぼだねぇ」
まどか「さやかちゃんが好きなんだもん」
さやか (なんだろう、この気持ち)
まどか「もっとぎゅーってしてほしいな」
さやか「お、おう…りょーかい」
さやか「何を?」
まどか「さやかちゃんが上条君を好きなこと」
さやか「えっ!?」
まどか「ティヒヒ、ばればれだったよ」
さやか「ま、参ったなぁ」
まどか「ちなみにクラス全員知ってるよ」
さやか「まじか」
さやか「…」
まどか「でもね、いいの。さやかちゃんに気持ちを伝えられたから…」
まどか「わたしはただ、こうやって一緒に過ごしたかっただけなの」
さやか「あたしは――」
まどか「あっ、言わないで…」
さやか「…っ」
さやか「うん、いいよ」
まどか「これからも、わたしと親友で…いてくれる?」
さやか「もちろん!」
まどか「あ、あと…たまにぎゅーって抱っこしてくれる?」カァァ
さやか「ふふ…さやかちゃんはしつこいぜぇ…」
まどか「…うぇひひひ///」
さやか「へへっ」
まどか「あと…わたしからも、抱っこしたいなって」
さやか「まどかわがままー」
まどか「さやかちゃんに似たんだよー」
さやか「なにおう!? …でもまあ、まどかの元気が戻ってよかった」
まどか「心配かけちゃって、ごめんね」
さやか「まどか…もうあんたって子は…」
さやか「あははっ」
さやか「…」
さやか「まどか…はっきりさせておくね」
まどか「うん」
さやか「あたしはまだ、まどかへの気持ちが分からない」
さやか「恭介も…まどかの言うとおり、好き…かな」
まどか「うん…」
さやか「でもね、あたし思うんだ」
まどか「なにを?」
さやか「まどかを可愛がりたいって」
まどか「…」カァァ
さやか「それにいい反応してくれるし」
まどか「もう…ひどいよさやかちゃん」
さやか「それに触り心地抜群だしね、あっはは」
まどか「……もっと、触ってもいいんだよ」
さやか「おおう…まどかさん本気の発言ですな」
まどか「…………」
さやか (ど、どうしよう)
まどか「なーんて、冗談、だよ」
さやか「……も、もうまどかったら…そういうのうまくなりやがって」
まどか「ティヒヒヒ」
さやか「あたしをからかう子にはーこうだ!」
まどか「あっ、やっ、あははっ、くすぐったいよぉ!」
さやか「ははははー」
まどか (さやかちゃん…ありがと)
学校
仁美「それで、結局まどかさんとはお付き合いしませんの?」
さやか「んーまーそうなるかなー」
仁美「でも今さやかさんに抱っこされてるのは…」
さやか「んーまーそうですねーはい」
仁美「まぁ、これはこれでありですわ」
まどか「えへへぇ///」
まどか「やだー」
さやか「もう30分たったじゃん」
まどか「ウェヒヒ、延長ね」
仁美「わたくしも同意見ですわ」
さやか「ちょ、仁美まで」
まどか「さやかちゃん、さやかちゃん」スリスリ
さやか「もう…全く可愛い奴めー」ナデナデ
おわり
読んでくれた方ありがとおやすみなさい
乙…
まどさやのまどかの切なさは良いね
Entry ⇒ 2012.06.06 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
まどか「さやかちゃんって、いつもその髪留めしてるよね」
さやか「てやっ!」ザシュッ
魔女「―――」ブゥンッ!
さやか「っと!」ヒラリ
バチンッ
さやか「え?」ワサワサ
さやか「あ、あああぁぁぁ!!あたしの髪留めがあああ!!?」
魔女「―――」
さやか「くそっ、先に魔女を倒してから……っ!」ズバンッ
魔女「!!」ボロボロ…
さやか「結界が崩れる前に回収回収……っと」ヒョイ
まどか「あっ、さやかちゃん!大丈夫だった?」
さやか「うん、あたしは大丈夫。ただ……」
まどか「?」
さやか「あたしの髪留めが……」
ボロッ
まどか「あー……ポッキリ行っちゃてる……」
さやか「くそー……ちょっと油断したなぁ……」
さやか「いや、直す」
まどか「え、直すの!?」
さやか「うん、直す」
まどか「新しいの買った方がいいんじゃないかなぁ……」
さやか「いや、直す!」
まどか「うーん……まぁ、さやかちゃんがそれでいいならなにも言わないけど……」
まどか「さやかちゃんって、いつもその髪留めしてるよね」
さやか「え?うん、まぁね」
まどか「そんなに大事な物なの?」
さやか「うん。すっごい大事な物」
まどか「誰かからの贈り物とか?」
さやか「ま、まぁ、ね」
まどか「わたしと知り合った時には既に持ってたよね」
さやか「あたしの思い出の物だからね」
まどか「ふーん……」
そんなことはいいんだ重要なことじゃない
さやか「んー……」イソイソ
さやか「よ、よし。これでとりあえずは……」パチンッ
さやか「ちょっと形が歪になっちゃったけど……まぁ、いいかな」
さやか「はぁ……ヘコむなぁ……」
さやか「昔っからずーっと大事にしてたのに……」
さやか「……恭介……」
さやか『ありがとー、恭介』
恭介『はい、誕生日プレゼント』
さやか『うわぁ、ありがとう!開けていい?』
恭介『うん、いいよ』
さやか『なんだろう……』ガサガサ
さやか『……髪留め?』
恭介『うん。僕一人で、何がいいかなって決めたんだ』
さやか『あ、ありがとう恭介!』
さやか『う、うん!』パチンッ
さやか『ど、どう……かな?』
恭介『すっごい似合ってるよ!僕の予想通り!いや、それ以上かも!』
さやか『えへへ……あたし、可愛い?』
恭介『可愛い!さやかの髪色に、よく合ってるね!』
さやか『これ、一生大事にするね!』
恭介『あはは、そんなに大事にするような物でもないと思うけどね』
さやか『ううん!恭介からのプレゼントだもん、一生大事にする!』
さやか『将来、誰かと結婚する時もこれ付けていたいなぁ』
恭介『結婚って……どれだけ未来の話をしてるのさ?』
さやか『女の子は、みんなそういう夢を持ってるの!』
恭介『……うーん、将来さやかと結婚する人ってどんな人かなぁ?』
さやか『もうね、心に決めた人はいるんだよ?』
恭介『そうなの!?それじゃあ、言う程遠い未来ってわけでもないんだね。で、誰なの?』
さやか『あはは、教えなーい!』
恭介『えー、いいじゃないか教えてくれたって』
さやか『絶対に教えないもん!あたしたちがもっと大きくなったら、恭介にも教えてあげる!』
恭介『約束だよ、さやか?』
さやか『うん。約束』
さやか「でも、もう、それも無理かな。恭介には……」
さやか「ううん、いいや!考えないようにしないと!」
さやか「……っ、ふわぁぁ〜……そろそろ寝ようっと」カチカチ
さやか「この髪留めもちゃんと外して……っと」パチンッ
さやか「………おやすみ、恭介」
さやか「行ってきまーす!」タッタッタ
さやか「おはよう、まどか、仁美!」
まどか「おはよう、さやかちゃん!」
仁美「おはようございます、さやかさん」
さやか「んじゃ、行こっか!」
まどか「さやかちゃん、髪留め、直したんだね」
さやか「うん、昨日家に帰ってからね」
仁美「髪留めですの?……あら、形が歪んでいますわ」
さやか「あー、昨日、ちょっとあってね」
仁美「それをわざわざ直したんですの?」
さやか「そうだよ」
仁美「新しいのを買えばよろしいのに……」
仁美「?」
さやか「なんて言うか、長年愛用してたものだから愛着が湧いてんのよ」
仁美「そうですの。物を大事にするというのはいいことだと思いますわ」
さやか「あっはは、まぁねー」
まどか(昨日は思い出の物って言ってたのに、仁美ちゃんにはその事は言わないんだ?)ヒソヒソ
さやか(その事は伏せといて、まどか)ヒソヒソ
まどか(う、うん……)ヒソヒソ
さやか「おっ、あそこに見えるは恭介だね」
仁美「……」
まどか「仁美ちゃん?」
仁美「な、なんですの?」
さやか「あー、あたしには気を遣わなくっていいって。恭介んとこ、行ってあげなよ」
仁美「……すみません」タッ
仁美「―――」
恭介「―――」
さやか「はぁ……世話の焼ける二人だこと」
まどか「さやかちゃん……」
さやか「おはよ、ほむら」
まどか「おはよう、ほむらちゃん」
ほむら「おはよう二人とも……あら、さやか?」
さやか「ん、なに?」
ほむら「髪留め……」
さやか「うーん……やっぱり目立つのかなぁ、これ?」
ほむら「あら、気付いてたのね」
さやか「どういう意味?」
ほむら「てっきり歪んでいるのに気付かずに付けているのかと思ったわ」
さやか「失礼なっ!」
さやか「え、うん。覚えてたんだ」
ほむら「一応、ね」
まどか「さやかちゃんの誕生日パーティ、やらないとね!」
さやか「あ、ありがとう二人とも……」
ほむら「わたし達だけじゃないわ。マミも杏子も、すっかりその気よ?」
さやか「本当に?いやぁ、なんか気恥ずかしいですなぁ」
ほむら「当日はマミの家でやるってマミが張り切っていたから、気付いていないフリをしてあげなさいよ?」
さやか「なんでそう言うことばらすかな!それならサプライズの方が嬉しいのに!」
ほむら「あなたを喜ばせるのはわたしのポリシーに反するわ」
さやか「相変わらずですねぇほむらさんは……」
恭介「日曜?ごめん、その日は外せない用事があるんだ」
仁美「そうですの?」
恭介「何かあったかい?」
仁美「いえ、用事があるのならいいんですの」
恭介「ゴメンね、仁美さん」
仁美「ちなみに、どんな用事ですの?」
恭介「ちょっと、ね」
仁美(さやかさんの誕生日に、わたくしには話せない用事……)
仁美(………ちょっと、悔しいですわね)
マミ「みんな、準備は終わった?」
杏子「最終確認だ!」
まどか「お部屋の飾りつけ、よし!」
ほむら「お祝いのケーキ、よし」
マミ「クラッカー、準備OK!」
杏子「うしっ、完璧だな!んじゃ、さやかをお出迎えに行くとするか!」
マミ「美樹さん、家にいるのかしら?ここまで準備しておいて、美樹さんが用事あるなんてことになったら目も当てられないわ」
ほむら「心配することはないと思うわよ、マミ」
マミ「そうかしら?」
ほむら「ええ」(事前に話はつけてあるもの)
杏子「おう!マミとほむらは、留守番な!」
マミ「ええ、わかっているわ。お出迎え、よろしくね」
ほむら「待っている間、暇すぎてクラッカーを全て使いきってしまうかもしれないわね」
まどか「だ、ダメダメほむらちゃん!」
ほむら「ふふ、流石にそれは冗談よ」
杏子「ほら、行くぞまどかー!」
まどか「あっ、待ってよ杏子ちゃーん!」タッタッタ
マミ「うふふ、美樹さん驚くかしら?」
ほむら「きっと驚くわ。反応が楽しみね」(さやかのリアクションが楽しみ、という意味なのだけれど)
杏子「ほれ、さやか」
まどか「今日の主役はさやかちゃんだよ!」
さやか「あはは、なんか照れるなー」
ガチャ
マミ「いらっしゃい、美樹さん!」パァァン!
ほむら「クラッカー、ちゃんと残しておいてあげたわよ」パァァン!
QB「マミの家に来たのは間違いだった……どうして僕までクラッカーを鳴らさなきゃダメなんだ」パァァン!
さやか「おぉう!?クラッカーまで用意してくれたの!?いやーさやかちゃんは幸せものですなー!」
ほむら「……」(ちっ、無難にこなしたか)
マミ「美樹さん、お誕生日おめでとう!」パァァン!
まどか「おめでとう、さやかちゃん!」パァァン!
杏子「おめでとう、さやか!」パァァン!
ほむら「一応わたしも言っておくわ。おめでとう、さやか」パァァン
QB「おめでとう、美樹さやか」パァァン
さやか「ありがとー、みんな!あと、キュゥべえ。こういう時くらい、もう少し嬉しそうに言ってくれてもいいんじゃない?」
QB「そんなことを言われてもね。クラッカーを鳴らすのだって僕にとっては重労働なんだよ?」
さやか「まぁ、体小さいしね……」
さやか「?」
『はっぴーばーすでー美樹さやか』
さやか「………ほむら」
ほむら「なにかしら?」
さやか「バレバレですよこれ」
ほむら「あなたの為にわざわざやってあげたのだから感謝なさい」
さやか「いや、いくらなんでもフルネーム書きにひらがなで『はっぴーばーすでー』って……」
まどか「ほむらちゃんなりの照れ隠しだと思えばいいんだよ、さやかちゃん」
ほむら「ちょっ、まどか!?」
さやか「ほほう?そう考えると、なんだか急に可愛げが出て来たように見えますなぁ?」
ほむら「くっ……」
杏子「素直じゃねぇなぁほむらは」
プルルルル プルルルル ガチャ
恭介「……あっ、もしもし。上条恭介です。はい。さやか、いますか?」
恭介「え、いない?友達の家にお呼ばれして行ってる……ですか」
恭介「はい、はい……わかりました」
恭介「うーん……さやか、忘れてるのかなぁ……」
恭介「携帯に電話、入れてみよう」
ピ ポ パ プルルルル プルルルル……
さやか「うーん、相変わらずマミさんの作ったケーキは美味ですなぁ♪」
マミ「美樹さん、すっかりご機嫌ね」
さやか「あっはは、そりゃお祝いされちゃったらご機嫌になりますよ!」
杏子「チョコは食わねぇのか?」
さやか「ん、これは最後のおたのしみに取っておくのだ!」
ほむら「そんなことせず、ひと思いに食べてしまいなさい」
さやか「ん?んん?恥ずかしいのですかな?これを残しておくのが」ニヤニヤ
ほむら「そっ、そんなわけないでしょう?」
まどか「じゃあ、そのまま残しておいても問題ないよね!」
ほむら「まどかぁ……」
QB(なんだか話しかけにくいな。さやかの電話、鳴っているのだけど)
プルルルル プルルルル……
QB(おや、止まったね)
恭介「女の子同士、楽しくパーティやってるのかな」
恭介「もしそうなら、邪魔しちゃ悪いな。まぁ、何も今日じゃなくってもいいか」
恭介「………誕生日プレゼント、出来るなら今日渡したかったけど……」
恭介「数日くらい、遅れても問題ないか。約束も、その時に一緒にしちゃえばいいし」
恭介「急に暇になっちゃったな。仁美さんのお誘いも断っちゃったし」
恭介「……ヴァイオリンの練習でもしてよう」
………〜〜♪
さやか「それじゃマミさん、ごちそうさまでした!」
マミ「いいのよ、気にしないで。みんな、気をつけて帰ってね?」
まどか「はい!マミさん、また明日!」
杏子「腹減ったらマミんとこお邪魔するわ〜」
マミ「もう、佐倉さんったら……」
バタン
マミ「さて、と……後片付けしなくっちゃ」
QB「誕生会、終わったんだね」
マミ「あら、キュゥべえ。途中でいなくなったと思っていたけれど、どこに行っていたの?」
QB「僕がいちゃお邪魔かな、と思ってね」
マミ「そんなことないのに…」
マミ「携帯?」
QB「さっき、みんなで騒いでいた時に鳴っていたのだけれど」
マミ「そうなの?多分、気付いていないと思うけど……相手の名前、表示されていたわよね?それは見たの?」
QB「確か『上条恭介』と表示されていたはずだね」
マミ「!?」
QB「さやかが契約する時に助けた男の名前だったっけ?」
マミ「ほ、本当に!?なんで教えてあげないのよ、キュゥべえ!」
QB「みんな楽しそうにしていたからね。話しかけにくい雰囲気だったからだよ」
マミ「ああ、大変だわ……美樹さんの恋路がかかっていたのかもしれないと思うと……」オロオロ
QB「大事なのかい?」
マミ「そうに決まっているでしょう!?女の子にとって、とっても大事なの!」
QB「僕にはちょっと理解できないけれど……だとしたら、悪い事をしてしまったかな」
さやか「……ん。着信あり?誰からだろ」ピッ
まどか「誰かから電話あったの?」
さやか「………」ピタッ
まどか「さやかちゃん?」
さやか「……恭介からだ」
まどか「上条くんから?」
さやか(あれ、なんだろう。何か、大事なことを忘れてるような……っ!!)
まどか「さ、さやかちゃん!?」
さやか「大事な用事を思い出したの!」タッタッタッ
まどか「………行っちゃった」
まどか(そう言えばさやかちゃん、毎年誕生日は上条くんのヴァイオリンを聴かせてもらってたんだっけ)
まどか(去年は事故でそれがなかったみたいだけど……一年、間が空いたから、さやかちゃんも忘れてたのかな?)
まどか(…………それだけが理由じゃ、ないのかも)
さやか(なんで、こんな大事なことを……あたしのバカっ!)タッタッタッ
さやか(恭介にはもう恋人がいるとか、そんなこと恭介はなんも考えてなかったんだ!)タッタッタッ
さやか(この髪留めの約束のこと覚えてるかななんて、人の事言えないじゃん!)タッタッタッ
さやか(恭介、家にいるのかな……っ!)タッタッタッ……スタスタ
さやか「……電話、してみようかな」
さやか『ありがと、恭介』
恭介『今年からは、毎年僕のヴァイオリンの演奏を聴かせてあげるよ』
さやか『えっ、いいの!?』
恭介『大切な僕の幼馴染だからね。さやかの為だけの、単独コンサート』
さやか『やった!それじゃ、早速演奏してよ!』
恭介『うん。今日のお客さんは、さやか一人だけ』
〜〜♪
さやか『嬉しいなぁ、なんかあたし、恭介の特別になったみたい』
恭介『……』〜♪
恭介『……はい、おしまい』
さやか『すっごい!なんか、日に日に上達してるね!』
恭介『そりゃあ、毎日のようにヴァイオリンの練習してるからね。上達してなかったら僕が落ち込むよ』
さやか『そっか、それもそうだよね!』
恭介『その髪留め、大事に使ってくれてるんだね』
さやか『えへへ、うん!大事に使わせてもらってます!』
恭介『その髪留めが、僕とさやかの絆の証、だね』
さやか『これがなくっても、あたしと恭介にはしっかりと絆があるもん!』
恭介『あはは、なんか照れるな』
さやか『なに?』
恭介『さやかが心に決めた人の話、まだ聞かせてもらってなかったね』
さやか『え?あ、あぁ……覚えてたんだ』
恭介『僕の方から言い出したことだもん、忘れるわけないよ』
さやか『ふんふん。それじゃ、あたしと恭介が中学に上がった時の最初の単独コンサートの時に、恭介がまだ覚えてたら教えてあげる!』
恭介『よし、わかった。それまで、絶対に僕は覚えてるからね?』
さやか『ちゃんと恭介が覚えてるかどうか確認出来ないから、恭介の方から聞いて来ること!』
恭介『その心配は無いよ。僕が、忘れるわけはないからね』
さやか『……期待して、待ってるから』
さやか「恭介が、忘れるわけ、ないって言ってたんだ」
さやか「なのに、あたしの方がそれを忘れてて……」
さやか「………恭介……」
プルルルル プルルルル
さやか「!」
プルルルル プルルルル
さやか「恭介から……」
プルルルル プルルルル ピッ
さやか「も、もしもし……?」
恭介『あっ、さやか?やっと繋がった』
恭介『話は、直接会ってしよう?さやか、今どこにいるの?』
さやか「……公園前」
恭介『それじゃ、今から僕の家まで来れる?何か用事、あるかな』
さやか「う、ううんっ!あたしも、ちょうど恭介の家に行こうって思ってたところ」
恭介『そうなの?それじゃ、家の前で待ってるよ』
さやか「うん……すぐ、行くから」
恭介『了解。それじゃね』ガチャ
さやか「………」
さやか(恭介……あたしは………)
恭介「………」
さやか(深呼吸、深呼吸……)スー ハー スー ハー
さやか(よ、よしっ!)タッ
さやか「お、お待たせ恭介」
恭介「ん、いらっしゃいさやか」
恭介の部屋―――
恭介「まずは、っと……」コトッ
さやか「……」
恭介「誕生日、おめでとう、さやか」
さやか「あ、ありがとう恭介」
さやか「う、うん、覚えてるよ」
恭介「よかった。僕一人だけ覚えてたらどうしようって思ってたけど、いらない心配だったみたいだね」
さやか「あ、あははっ…」(さっき思いだしたとは言わないでおこう)
恭介「とりあえずは、去年出来なかった単独コンサートから、だね」
さやか「うん……」
恭介「………」…〜〜♪
さやか(相変わらず、上手だなぁ…長いブランクを感じさせないし。やっぱり、才能、なのかな)
恭介「………」〜〜〜♪
さやか(楽しそうに演奏してる……うん、よかった。またこうやって、恭介の演奏が聴けて……)
恭介「……ん、おしまい」
さやか「うん、よかったよ」パチパチ
恭介「ありがとう、さやか」
さやか「これなら、世界にも通用しそうだよね!」
恭介「あはは、まだまだだよ、僕の演奏は。……でも、いずれは、そうだね。僕の演奏を、世界中の人に聴いてもらいたいかな」
さやか「うん……」
恭介「……さやか」
さやか「な、何?」
恭介「未だに、その髪留め、使ってくれてるんだね」
さやか「そりゃあ、もう。あたしと恭介の……」
恭介「『絆の証』……だよね?」
さやか「っ…」コク
さやか「え?」
恭介「僕なりに、色々と考えたんだよ。去年の埋め合わせ、ってわけじゃないけどさ」コトッ
さやか「……これ、は……?」
恭介「誕生日プレゼント。開けてみてよ」
さやか「……っ」シュルル
さやか「……!こ、これ……」
恭介「その髪留め、ちょっと歪んでるよね?それに気付いたから、新しいのを買ったんだ」
さやか「デザインが、似てる……」
恭介「似てる奴探すの、苦労したんだよ?」
さやか「気付いてたんだ、この髪留めの事……」
恭介「当然だろ?僕がプレゼントした物なんだしさ」
さやか「……」パチンッ
パチッ パチッ
さやか「どう、かな?」
恭介「うん、大丈夫!似合ってるよ、さやか」
さやか「………っ」
恭介「……さやか?」
さやか「ダメ、だよ恭介……」
恭介「え……?」
さやか「恭介には…………が、いるんだから」
恭介「……?」
恭介「仁美さん?」
さやか「いくらあたしが幼馴染だからって……これは、その……」
恭介「…………なんか、すごい思い違いしてない?さやか」
さやか「え……?」
恭介「僕と仁美さんが、付き合ってるって思ってるでしょ?」
さやか「そうじゃ、ないの?」
恭介「うーん……仁美さんに黙ってこんなこと言っていいものかわからないんだけどさ……」
恭介「僕と仁美さん、付き合ってるわけじゃないよ?」
さやか「……え、え?」
さやか「ちょ、ちょっ!ストップストップ!」
恭介「……」
さやか「え?なんで?だって、いっつも二人で歩いてるし、いつの間にか二人とも下の名前で呼び合ってるじゃん!」
恭介「いや、あの……」
さやか「それなのに付き合ってないっての?」
恭介「まぁ、一応、そういうこと、に、なる、の、かなぁ?」
さやか「詳しく話せ!あたしが納得するまでっ!!」
恭介「わかった、わかったから落ち着いて!ちゃんと全部話すからっ!」
さやか「最初から、詳細にっ!」
恭介「なっ、なんでそんなに気にするんだよさやかはっ!?」
さやか「あたしと恭介は幼馴染でしょ!?なら、あたしは詳しく聞く権利があるっ!!」
恭介「いやいや、それは理屈になってないっ!」
さやか「この髪留めは、あたしと恭介の絆の証なんでしょ!?隠し事は無しっ!!」
恭介「っ……はぁ、わかったよ。確かに、仁美さんには告白された」
恭介「でも、今の僕はヴァイオリンに忙しいんだよ」
恭介「だから、付き合うとか、そういうのは無理だ、って断ったんだ」
恭介「その後、仁美さんは、お付き合いを前提に親密に接しますって言ってきて、さ……」
恭介「それまで断る理由はないし、友達なら、まぁ、いいかなって思ってさ」
恭介「今日も、仁美さんに誘いを受けたんだけどさ、断ったんだ」
恭介「毎年さやかの誕生日には、こうして僕のヴァイオリンを聴かせてただろ?」
恭介「去年はそれが出来なかったから、今年こそは、って思ってね」
さやか「なんで、仁美の誘いを断ったのさ?」
恭介「……いくら幼馴染の為とは言え、もし付き合ってたのなら僕だってそっちを優先させてるさ」
恭介「でも、僕たちは付き合ってない。だから、幼馴染であるさやかとの約束を優先させた」
恭介「……これで、納得、出来ない?」
さやか「恭介……」
恭介「って、これだとなんか僕が嫌な男みたいだね。でも、さやかとの約束を優先させたかった」
ちょっとわろた
恭介「さて、と。それじゃ次は、さやかの番だ」
さやか「えっ?」
恭介「ホラ、この髪留めをプレゼントした時の約束」
さやか「………っ!!」
恭介「ホントなら去年だったんだろうけど、去年はこうしてお祝い出来なかったからね。今年に持ち越しになっちゃったけど」
恭介「さやかの心に決めた人、教えてよ?」
さやか「え、ええといやそれはホラあの……」アタフタ
恭介「ホラ、この髪留めは、僕とさやかの絆の証だろ?隠し事は無し、だ」
さやか「か、カウンターですか……」
さやか「………」
恭介「まぁ、こうして二人とも覚えてたんだしさ。僕だって、流石にそこまで鈍くは無いし」
さやか「恭介……」
恭介「ただ、僕の方からは絶対に言わない。自惚れになるだろうから、ね」
さやか「っ……」
恭介「さやかの口から、聞きたい」
さやか「………け」
恭介「え?」
さやか「あ、あたしの心に決めた人ってのは、その、か、上条……け……です」カァァァァ
さやか「〜〜〜……もうっ!!そ、そんな、わかりきったこと、いちいち聞いてこないでよ恥ずかしい!」
恭介「ちょっ、え、なんで!?」
さやか「何さ!あんたは、あたしを恥ずかしがらせたいの!?」
恭介「いやいや、だって僕の口から言ったら絶対自惚れになるだろ!?」
さやか「天才ヴァイオリニストなら、自惚れのひとつやふたつ、どうってことない!!」
恭介「それはおかしいだろ!?絶対僕の方からは言わないからねっ!」
さやか「ひ、卑怯モノー!!」
恭介「第一、教えてくれるって約束したのはさやかの方じゃないか!!」
ワーワー ギャーギャー
恭介「や、病み上がりにさやかとの言い合いはキツイっ……」
さやか「じ、自業自得!女の子から、そういうことは言わせないでよもうっ……」
恭介「あーもう……仕方ないな。自惚れだろうとなんだろうと知ったことか。言うよ、言うからね!?」
さやか「………っ、す、ストップ!」
恭介「なんだよ、結局止めるんじゃないか!」
さやか「こ、心の準備を……っ!」スー ハー スー ハー
さやか「よ、よしっ!オッケー!ドンと来いっ!」
恭介「あ、ゴメン。今度は僕の方の心の準備が」
さやか「ちょっ……はぁ……もういいよ……」
恭介「問答無用なの!?ちょっ、待っ……」
さやか「上条恭介、って言う、天才ヴァイオリニストだよ」
恭介「おぉう……」
さやか「……こ、これで満足?」
恭介「胸がいっぱいです」
さやか「……なんか恭介、この状況楽しんでない?」
恭介「正直楽しんでました」
さやか「もうっ……あたしがどんだけ頭を悩ませたと思ってんのさ……」
恭介「だってさやか、からかいがいがあるんだもん」
さやか「普段からかわれるのはいいけど、こう言う時くらいはシリアスになってよ……」
恭介「あはは、ゴメンゴメン」
さやか「いつから気付いてたの?」
恭介「うーん……確信が持てたのは、さやかも約束をしっかりと覚えてたって所辺りからかな」
さやか「ついさっきじゃん……」
恭介「そりゃあ、ね。考えてみれば、だいぶ昔に貰った髪留めを未だに大事にしてるなんて、普通に考えたらありえないな、って思ったし」
恭介「それに気付いたら、なんか、妙に気恥ずかしくなってさ」
恭介「それで、こういう感じになってしまいました、と」
さやか「他人事みたいに言って……で?」
恭介「はい?」
さやか「はい?じゃないよ。人に告白させといて、返事も無しなの?」
恭介「!?」
恭介「え?それ、今更答えなきゃダメ?」
さやか「自惚れになるからちゃんと返事聞かなきゃあたしも納得出来ませーん」
恭介「くっ、意趣返しのつもりかい……?」
さやか「ま、さっきの恭介の言ってた通りなら、返事はわかりきってるけどね」
恭介「え?」
さやか「『今の僕は、ヴァイオリンに忙しい』……だったっけ?」
恭介「………」
さやか「だから、あたしのこの気持ちも恭介には届かないわけで」
恭介「参ったな……」
恭介「………」
さやか「『これからは今まで以上に、距離を縮めるからね』……と」
恭介「さやかは、それでいいのかい……?」
さやか「何言ってんのさ。仁美にだって、そういう風にさせたわけだし。仁美とは付き合うの無理で、あたしとはオッケーなわけ?」
恭介「まぁ、理屈で言ったらそうなるんだけどさ……」
さやか「もし、ヴァイオリン以外のことを考える余裕が出来たらさ。その時、また、あたしは恭介にアタックするよ」
さやか「それまでは、あたしと恭介は、幼馴染」
さやか「そういうこと」
恭介「わかった。一人前になるまで、さやかにも、仁美さんにも、待ってもらうことにする」
さやか「あたしも仁美も、心変わりするかもしれないからね?頑張って、恭介」
恭介「……こう言う時は、なんて言ったらいいのかな?」
さやか「そりゃ、乙女を待たせるわけだし。『ゴメンね』、じゃない?」
恭介「………ゴメン」
さやか「ん!それだけ聞ければオッケー!」
恭介「え?」
さやか「ほら、今日貰った新しい髪留めがあるしさ。これを恭介の側に置いておけば、必要以上に頑張れるんじゃない?」
恭介「はは、ホントに参ったな……さやかには完敗だ」
さやか「今まで、仁美にはずいぶんとハンデを与えちゃったみたいだし。これくらいは、させてもらわないとね」
恭介「うん。大事に、預からせてもらいます」
さやか「ん!この新しい髪留め、大事に使うから」
恭介「そうしてくれると、僕も嬉しいかな」
さやか「でいっ!」ブゥンッ!
ズバァァ!
魔女「……」ヒュッ
さやか「おっとっ!!」ヒョイ
さやか「っ……」クシャ
さやか(よかった、無事だ)
さやか「よくもあたしの大事な髪留めを狙ったな、この魔女め!!」チャキッ
ズバァァァァァン!!
魔女「っ!!」ボロボロ…
まどか「お疲れ様、さやかちゃん!」
さやか「にしても、なんでこう…誰も助けに来ないんですかねぇ?」
まどか「あはは、仕方ないよ。みんな、それぞれパトロールしてるんだし」
さやか「この新しい髪留めだけは絶対に死守せねば……!」
まどか「そう言えば、いつの間にか新しいのに変わってるね。結局、変えちゃったんだ?」
さやか「ん、まぁね」
まどか「前に付けてたのはどうしたの?」
さやか「ん?それはね……」
さやか「未来の為に、とある場所に置いて来たのだ!」
終わり
後悔はしていない
数年後―――
「えー本日は、今や世界的に有名となった天才ヴァイオリニスト、上条恭介氏に来ていただいております」
「前回のコンサートも、大盛況でしたね」
恭介「ありがとうございます」
「今のお気持ちを、誰に伝えたいですか?」
恭介「そうですね……僕の大切な幼馴染に伝えたいですね」
「幼馴染ですか?恋人かなにか、ですか?」
恭介「はは……まだ、恋人ではないですけどね。でも、いつかは、結ばれたいと思っています」
ほむら「ほらさやか、あなたの想い人の晴れ姿よ?」
さやか「うっさい!恥ずかしくって直視なんて出来るか!!」
ホントに終わり
良い終わり方だった!
Entry ⇒ 2012.06.02 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
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