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やすな「ソーニャちゃん!私たち一心同体だよ!」
ソーニャ「はぁ?」
やすな「そう!私たちは一心同体!」
やすな「何をするにも二人一緒じゃないとダメなんだよ!」ビシッ
ソーニャ「さて帰ろうっと」トテトテ
やすな「……」
やすな「とぉりゃあー!」
グギッ
やすな「ああ~……」
やすな「酷いよ、ソーニャちゃん……」
ソーニャ「お前が飛び蹴りしてくるからだろ!」
やすな「だってぇ、ソーニャちゃん一人で帰ろうとするんだもん」
ソーニャ「だからって飛び蹴りするやつがあるか」
やすな「ねぇ~ねぇ~一心同体ごっこしようよ~」
ソーニャ「なんだそれ……」
やすな「ええ~?ソーニャちゃん殺し屋なのにそんなことも知らないの~?」
ソーニャ「ムカッ」
ソーニャ「そんなこと知らなくても仕事はできる」
やすな「分かったよ。私が一心同体ごっこ教えてあげる!」
ソーニャ「いらん。私は帰るぞ」
やすな「お願い~!一回だけ!一回だけでいいから~!」ダキッ
ソーニャ「うわっ!まとわり付いてくるな!」
ゴンッ
やすな「あいたぁ!」
ソーニャ「ったく、一回やったら帰っていいのか?」
やすな「うんうん!」ハァハァ
ソーニャ「で?一心同体ごっこって何をするんだ?」
やすな「まずソーニャちゃんが私を肩車します!」
ソーニャ「ハァ?」
やすな「さあ、早く早く!帰れないよ?」
ソーニャ「ぐっ……全く何をしているんだ私は」
ソーニャ「ほら、つかまれ」ヒョイ
やすな「キャー!ソーニャちゃん力持ち~!」
ソーニャ「こらあんまり動くな!バランスが崩れる!」
やすな「やっほぉーい!うおー!高ーい!」
ソーニャ「ぐほっ!足をばたつかせるな!」
やすな「よーし、このまま行けぇ!ゴーゴーソーニャ!」
ドガッ、バキッ、ザシュッ
やすな「ギャー!」
やすな「酷いよ~、これが一心同体ごっこなのに~」
ソーニャ「知るか!付き合ってやったんだから私はもう帰るぞ!」
やすな「あっ、もう行っちゃうの?」
ソーニャ「私は忙しいんだ」
やすな「あ!もしかして殺しの仕事!?」
やすな「だめだよソーニャちゃん!殺しは犯罪の始まりだよ!」
ソーニャ「はいはい私は犯罪者ですよ」
やすな「ぐっ、開き直った!」
やすな「最低~!人でなし~!この人殺し~!」
ソーニャ「満足したか。じゃあな」
やすな「ああ、本当に帰っちゃうし……」
~~~
私が帰ると言うと、あいつはとても悲しげな表情を見せた。
まるで今生の別れとでもいうような、そんな顔をほんの一瞬だけ見せる。
ずっと前から気づいていた。
しかし私は気づいていない振りをしていた。
あいつは私と別れてから私を尾行し始めた。
勿論私はそれに気づいている。
あんな馬鹿の尾行を巻くなんて簡単なことだった。
今回のターゲットは敵対する組織のヒットマンだった。
私が行動しているエリア内で何やらこちらの組織について調査しているようだった。
何をしているのかは知らないが、組織の邪魔になる人間は消す。
それが私たち殺し屋の考えだ。
私は腕には自信がある。
それでも今回のターゲットは少し厄介な相手だった。
私はなんとか敵を倉庫街の袋小路まで追い詰めた。
その代償として太ももに深く長い切り傷を負っていた。
ナイフを片手に敵と睨み合っていると、足を伝った血が赤い水溜りを作った。
刺客「はぁ……はぁ……ここまでのようだな……」
ソーニャ「観念したか。大人しくしていれば楽に殺してやる」
敵も手負いだった。
ここまでに右の足にナイフ3本のダメージを与えている。
ここから全力で逃げようとしても私の追撃を交わすことはできないはずだ。
何もこんなことは初めてではない。
躊躇はなかった。
ただ相手を殺すだけ。ただ相手を死に至らしめるだけ。
ただ相手の生命機能が停止するまでダメージを与えるだけ。
そうすれば相手は勝手に死んでくれる。
別に私が殺しているわけではない。
刺客「クッ……誰がこんな所で死んでたまるものか!」
ソーニャ「そうか、それならこちらも本気に――」
その時私は別の方向から殺気を感じた。
この感じ、誰かが私を狙っている!?
コンテナの上にもう一人の刺客がいる!
気づいたときにはもう遅かった。
それでも私は後ろへ飛び退く動きを取ったが、やはり間に合わなかった。
真っ直ぐに飛んでくる敵のナイフは私の胸に突き刺さった。
刺客「やったっ!」
やった。ついにやってしまった。
胸に突き刺さったナイフは痛くも痒くもなかった。
私はなす術もなく背中から地面へ落下していく。
ただ私は死ぬんだなと思った。
分かっている。今日こそはこの日が来るんじゃないかと毎日思っていた。
別に相手を恨んだりはしない。
敵が放ったナイフが突き刺さり、私は勝手に死んでいくだけだ。
さっきまで私が追い詰めていた刺客の顔が目に入った。
疲労と痛みと緊張で汗だくになり、強張った顔。
その中に勝利を確信し緩んだ表情が見え隠れした。
もう少しで――もう少しで今日の仕事をやり遂げられたのに。
そうすれば――
明日もあいつと会えたのに。
背中が冷たいコンクリートに着地した瞬間、やすなの顔が夜空に浮かんだ。
なんでだろう……?
どうしてこんな時にあいつのことなんか思い出しているんだろう?
何もこんなときに……。
他にいくらでももっと大切なことがあるだろうに。
――他に大切なものって、なんだ?
地面に溜まっていた血溜りが飛沫を上げた。
無数の赤い粒々が夜空の中のやすなに降りかかる。
私はその血飛沫を手で振り払おうとしたが、体が言うことを聞かなかった。
あいつだけは汚したくない。
私たち一心同体だよ!
バカだなぁ……やすなは。
こんな私がお前と一心同体になれるわけがないんだ。
だってお前は星空の中でこんなに輝いている存在なんだから。
そうだ。そうなんだ。
私にとって大切なものなんて一つしかない。
ソーニャちゃん!
あいつの声が聞こえる。
私もとうとうダメみたいだ。
やすな「ソーニャちゃん死んじゃだめ!」
目の前にいたのは紛れもないやすなその人だった。
ソーニャ「やす……な……」
私はなんとか声を振り絞ってやすなの名を呼んだ。
どうしてこいつがここに?
遠ざかる意識の中で考えることなんてできなかった。
刺客「おい誰だお前は!?」
やすな「ひぃぃ!」ビクッ
刺客「そいつの仲間か!それならお前も一緒にっ!」ギラッ
刺客2「気をつけろ!倒れてる方もまだ息があるぞ!」
刺客「そうか、まずは金髪の方から――」
やすな「やめて!ソーニャちゃんを殺さないで!」
やすなが大の字になって私の前に立ちはだかった。
何をやっているんだこのバカは。
相手は殺し屋だぞ!
そいつは私みたいに手加減してくれたりしない。
くそっ、こんなことなら普段からもっと殺し屋の恐ろしさを教えておけば良かった。
ソーニャ「やすな……だめだ……!」
やすな「ソーニャちゃんは殺させない!」
刺客「何を勝手なことを!そいつは俺を殺そうとしたんだぞ!」
刺客「反対に殺されそうになったらやめてくれなんて、そんな都合のいい話があるか!」
やすな「でも……殺すなんて良くないよ!」
刺客「貴様ずっと隠れて見ていたくせに!」グワッ
刺客「私が殺されそうになってもお前は出てこなかったじゃないか!」
刺客「お前は私が殺されてもただ傍観しているだけだっただろう!」
刺客「殺しが良くないなんてどの口が言うか!」
やすな「うぐっ……でも……でも……」ポロポロ
刺客「泣いても無駄だぞ!」
やすな「うわあああああん!」
やすなは敵に頭を下げ、その場で土下座した。
やすな「ごめんなさあああい!ごめんなさあああああい!」
やすな「どうか許してください!お願いします!」
刺客「な!何をしている!?」
やすなは泣きじゃくって何度も地面に頭を付けて謝り倒した。
やすな「ごめんなさい!ソーニャちゃんを殺さないでください!」
やすな「どうかお願いします!私の友達なんです!」
刺客「バカかお前は!そんなことで済むと思っているのか!」
刺客「いいから退け!」ジャキィィン
やすな「だめええええええええ!」
やすなは私の体に覆いかぶさった。
やすなは涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにし、体をがくがくと震えさせていた。
ぎゅっとつぶったその目尻からこぼれだす涙を、私は拭ってやった。
するとやすなの涙は赤い血の色に染まった。
いけない。やすなを汚してしまった。
血を拭おうとさらにやすなの顔をこすると、ますます血で汚れていった。
やすなが目を開いて潤んだ眼で見つめてきた。
ソーニャ「綺麗だよやすな」
刺客2「おい早くやろう!ここに長居すると良くない!」
刺客「……」
刺客2「おいどうした!」
回りの状況は何も見えなくなっていた。
刺客はまだそこにいる。
頭では分かっているが、そんなことはどうでも良くなっていた。
私には目の前のやすなしか見えていない。
私は自分の人生の最期において、やすなに残すべき言葉だけを探していた。
この気持ちを伝えたい。
しかし頭にはそれを表現するにはあまりも陳腐で物足りない言葉しか浮かんでこない。
私は小説家ではなく殺し屋なんだから当然か。
だから私は一番簡単で稚拙な言葉を選んだ。
愛してる
私の意識は途切れた。
~~~
いつの頃だろうか、私が初めて言葉を喋ったのは。
覚えていない。
そんなことを覚えている人間はいないか。
私が初めて喋った言葉って「ちくわ」なんだよ~
おかしいでしょうと、あいつがケラケラ笑う。
お前は自分が最初に喋った時のことなんて覚えているのか?
あいつは一瞬きょとんとした表情をしてまたすぐに笑い始めた。
やだなぁ~、お母さんに聞いたんだよ~
それからあいつは自分が覚えてもいない幼い頃の話をべらべらと話し続けた。
こんな時に私は深い「溝」を感じていた。
そして自分が酷く「劣った」「不完全」な人間であると感じていた。
今まで私は一人で生きてきた。
しかし人は自分の本当の姿を見ることができない。
自分がどんな歩き方をしているのか、どんなスープのすすり方をしているのか、
どんな笑い方をしているのか、それを知る手立てがない。
私を補完してくれる人間がいなかった。
ソーニャちゃん!
~~~
目を開いたとき、目の前にはまだやすなの顔があった。
やすなは心配そうに私の顔を覗きこんでくる。
気づくと私は抱きしめられていた。
頭の中が明瞭に晴れ渡るにつれ体に力が入ってくると、私はやすなの背中に腕を回した。
やすな「良かったあああソーニャちゃん!うわああああん!」
ソーニャ「やすな……私……」
私は必死に頭を回転させて状況を整理しようとした。
あれからどうなったのか。
ここはどこなのか。
私はどうして生きているのか。
あぎり「あら~お目覚めですか~」
あぎりがトレーに水を乗せて部屋に入ってきた。
ソーニャ「あぎり、私は一体……?」
あぎり「ソーニャが失敗するなんて珍しいですね~。もう3日くらい寝てましたよ~」
私はコップ一杯の水で喉を潤した。
あぎり「敵はあなたを見逃したんですよ~」
あぎり「やすなさんの土下座が効いたんですかね~」
あぎり「そりゃあもう、おでこから血が出るくらいの必死の頼み込みでしたから~」
私の胸に抱きついているやすなの顔を確認すると、額に絆創膏が貼られていた。
ソーニャ「お前見てたのか?」
あぎり「いいえ~やすなさんから聞いただけです~」
あぎりはまるでいつもの調子でそう言った。
当然だ。こんなことは私たちにとって日常的な出来事だ。
しかしやすなにとっては違う。
普通の人間にとって殺しなど映画かテレビニュース中の出来事でしかない。
今回は誰も殺されなかったが、その寸前の所まで行った。
それだけでもやすなにとっては十分衝撃的な出来事だ。
やすな「わ゛たし、わ゛たしっ……!」エグッ
やすな「ソーニャちゃんが死んじゃうんじゃないかと思って……!」
やすなが初めて見せる反応に私は戸惑い、心を痛めた。
本当ならこいつはこんな思いなどさせてはいけない存在だった。
それなのに私と関わったことでこんなことに――。
ソーニャ「すまない。お前にも迷惑をかけたな」
やすな「だっでぇ……!私も愛してるもん!」
あぎり「あらあら~」
ソーニャ「バッ……!何を言ってるんだ!?」
やすな「ソーニャちゃん言っでくれたじゃん~!愛してるっで~!」
ソーニャ「いや!あれはもうダメだと思って!」
やすな「酷いよ~!嘘だっだの~!」ジュルジュル
ソーニャ「うるさい!いいから忘れろ!」
あぎり「私はお邪魔みたいなので消えますね~」
あぎり「末永くお幸せに~」スゥー
ソーニャ「おいあぎり!」
ソーニャ「ったく、ていうかお前どうしてあんなところに?お前の尾行はまいたはずだが」
やすな「え?私の尾行気づいてたの?」
ソーニャ「当たり前だ」
やすな「うんとね、ソーニャちゃんを見失った後、散歩に出かけてたらたまたま……」
ソーニャ「お前……悪運だけはついてるな」
やすな「そうだ!ソーニャちゃんお腹すいたよね!私何か作るから!」
ソーニャ「お前が?」
やすな「大丈夫大丈夫!ここ私の家だからゆっくりしてて!」
やすなはそう言って勢い良く部屋を飛び出て行った。
その夜は大人しくやすなの世話になることにした。
やすな特製のお粥をあいつは食べさせようとしてきたが、私は全力で阻止した。
その過程で私がその頭に一発パンチをお見舞いしてやると、やすなはいつになく嬉しそうに笑った。
その笑顔を見た私は安心した。
こいつとまだ友達でいられるんだと思った。
だからこそここでの長居は無用だ。
私はあいつが作った夕食を食べ、あいつが沸かした風呂に入った。
そんなことをしているとあいつが「なんか新婚さんみたいだね」と言ってきた。
私はまた一発あいつの頭を殴ってやった。今度は少し弱めに。
あいつは少し恥ずかしそうに笑った。
ソーニャ「私はそろそろ帰るぞ」
やすな「え!?泊まっていきなよ!まだ怪我治ってないよ!」
ソーニャ「このくらいの怪我どうということはない。お前が手当てしてくれたしな」
やすな「まだダメ!今帰ったら湯冷めしちゃうよ!」
ソーニャ「とにかく私は帰る。今まで世話になったな」
やすな「行っちゃだめ!」ガッ
やすなは玄関のドアの前に立ちはだかった。
ソーニャ「どけ!お前には感謝してるが、これ以上世話になるわけには行かない」
やすな「世話するもん!明日も明後日もずうーっとソーニャちゃんの世話するもん!」
ソーニャ「はぁ?お前一生私の世話をするつもりか?」
やすな「そうだよ!」
ソーニャ「バカかお前は。そんなことしてどうする?」
やすな「ソーニャちゃんを守りたいんだよ!」
心臓がどきっと鳴った。
思いも寄らぬ言葉だった。
そしてすぐにその言葉の意味を理解した。
やすな「ここを出て行ったらあの人たちを殺すの?」
あの人たち、というのは私を見逃してくれた敵の刺客のことだ。
ソーニャ「お前には関係のないことだ」
やすな「だめだよ!あの人たちいい人だよ!だって私たちを見逃してくれたもん!」
ソーニャ「そうかもな。だが殺し屋としては甘すぎる」
ソーニャ「私なら容赦はしない。ターゲットは必ず仕留める」
やすな「絶対ダメ!」
やすなは私に突進してきた。
しかしあいつの攻撃など私に効くわけもない。
私は闘牛士のごとく身をひるがえしてやすなを床の上に押し倒した。
やすなは観念したように抵抗しなかった。
ソーニャ「やすな、世話になったから今日は特別に私の本心を話してやる」
ソーニャ「私はお前を一番の親友だと思ってるよ。本当だ」
ソーニャ「今までお前のようなやつは一人もいなかった」
ソーニャ「だから私のようにはなってほしくないんだよ」
ソーニャ「私の人生はもう壊れてしまった。だがお前はまだ自分の生活がある」
ソーニャ「何かあったら私が守ってやる。だが絶対じゃない」
ソーニャ「だから私にあまり深入りするな。お前は自分の人生を歩むんだ」
私は倒れたやすなをそのまま置いて玄関のドアを開けた。
やすな「ソーニャちゃん!」
その声に私は立ち止まる。
やすな「明日も学校で会えるよね?」
やすな「明日も一緒に遊べるよね?お昼も一緒に――」
ソーニャ「だめだと言ってもまとわりついてくるくせに」
私はそう言ってやすなにニヤリと笑って見せた。
やすなの不安な表情が一瞬でゆるんだのが分かった。
やすな「ああー!絶対明日はいっぱい遊んでやる!」
ソーニャ「ふんっ、なんだそれ」
ソーニャ「じゃあまたな」
私はそう言ってやすなの家を後にした。
名残惜しさを残す言葉は言わなかった。
これでいいんだ。
私たちの関係はこのままでいい。
学校で会って、一緒にお昼を食べて、一緒に帰る。
まるで普通の女子高生の友達同士。
これが私とやすなが近づけるギリギリの距離だ。
私たちは坂に置かれた引き合う磁石のS極とM極だから、これ以上近づけばやすなをこちらの世界に引きずり込んでしまう。
ソーニャちゃんの家に行きたい!
行きたい!行きたい!行きたい!
やすながそう言ったことがあったっけ。
だがごめんやすな。お前を家に招待することはできない。
あの時私はお前を家に連れていこうだなんて本当は思っていなかった。
だって私には帰る家なんてないんだから。
私の寝床はいつもどこかのホテルの一室だ。
居所がばれないように毎月2、3箇所を転々と「引越し」をする。
私には自分の生活なんてどこにもないのだ。
このことはやすなには言うつもりはない。
私はなんとしてでもあいつを守りたい。
だから私たちはいつまでも本当には一緒になれないままいなければならないのだ。
~~~
数秒後、私は全力疾走していた。
向かう先はやすなの家だ。
やすなの家の方向で黒い煙が上がっていた。
まさかと思った。
信じたくなかった。
やすなの家は巨大な炎に包まれていた。
ソーニャ「やすな!」
家の敷地に入って行くと、燃え盛る炎のすぐ脇にやすなはいた。
ソーニャ「熱い……!」
ソーニャ「やすな!無事だったか!」
やすなの傍らには犬の死骸が2体横たわっていた。
それはあいつが飼っていた2頭の犬だった。
火事に焼かれて死んだのではない。明らかに何者かに殺されていた。
やすなは両手を地面に着いてそれをじっと見つめていた。
ソーニャ「やすな!」
私はやすなの正面に回ってあいつの両肩を掴んだ。
ソーニャ「どうした!?何があったんだ!」
ソーニャ「両親は?お父さんとお母さんはどうした!」
やすなはぼーっと私の顔を見つめてきた。
あいつは驚きもせず、悲しみもせず、また取り乱しもしなかった。
どうしてそんなに落ち着いていられるんだ!?
お前の家が燃えているんだぞ!
次の瞬間私ははっと息を呑んだ。
あいつはただ無表情のまま涙を流した。
肩を掴む手が震えた。
やすなは壊れてしまったんだ。
電池が切れたカラクリ人形のように気の抜けた顔で、あいつはただ涙を流していた。
やすなは泣くことができなかった。
取り乱すことも、驚くことも、みんな誰かに奪われてしまったんだ。
私が守るべきだったのに、守ると言ったのに――
やすなから何もかも奪い取ったのは私だ。
ソーニャ「やすな……やすなあああああああああ!」
私はやすなをぐいと引き寄せて抱きしめ、顔をぐしゃぐしゃにして泣いた。
ソーニャ「やすなああああああ!うわあああああ!」
やすな「……」
遠くから消防車の音が聞こえた。
このままだとやすなは救急車で運ばれるか、警察に保護されるだろう。
家に火を点けた敵は、今頃やすなが死んでいると思っているのかもしれない。
もしかしたら私も一緒にこの家にいたと思っているかもしれない。
とにかく私たちの存在がばれてはいけない。
私は一旦やすなの体を離し、その手を掴んだ。
ソーニャ「逃げよう」
~~~
そうは言っても私たちに逃げられる場所などほとんどない。
頼れる場所はあぎりの家しかなかった。
ソーニャ「悪いな」
あぎり「いいえ~仲間ですから~」
あぎりはいつもと変わらぬ様子で私たちを家に上げてくれた。
一人分だけ布団を貸してくれると言うので2階の部屋でやすなを寝かせた。
やすなは何も言わず、大人しく布団に入った。
居間で一息ついていると、あぎりは麦茶を持ってきてくれた。
あぎり「そうですか~、やすなさんも敵のターゲットになってしまったんですね~」
ソーニャ「そうですかって……私のせいであいつを巻き込んだんだぞ!」
ソーニャ「それであいつの家も……家族も……」
あぎり「それで、ソーニャはやすなさんをどうするんですか~?」
ソーニャ「……」
ソーニャ「私はあいつを守ってやりたい。こうなった責任は私にある」
あぎり「そうですね~確かに責任はあなたにあります」
あぎり「あなたはただの一般生徒と親しくなりすぎました」
あぎり「でもその責任の取り方はどうでしょ~」
ソーニャ「どういう意味だ?」
あぎり「あなたはやすなさんを一生守り続けて行くつもりですか?」
ソーニャ「それは……」
あぎり「それは組織が快く思わないんじゃないでしょうか~」
あぎり「組織はあなたにず~っと殺し屋として働いて欲しいと思っていると思いますよ~」
ソーニャ「殺しの仕事は続けられる!」
あぎり「さあ~それはどうでしょうか~」
あぎり「お荷物を抱えたあなたが今まで通りの仕事をこなせますか~」
ソーニャ「私にどうしろと言うんだ!」
ソーニャ「あいつは何もかも失ったんだぞ!」
ソーニャ「私が守ってやらなくて……どうするんだ!」
あぎり「それは自分で考えてください~あなたの人生ですから~」
あぎり「それじゃあ私はそろそろ寝ますね」
あぎりはそう言ってそそくさと部屋を出て行った。
自分の人生なんて――私にはないんだ。
組織のために自分を犠牲にする毎日だ。
仕事の邪魔になるものは何も持たなかった。家族さえも。
私はやすなが寝ている2階の部屋に行った。
やすな「ソーニャちゃん」
私が部屋のふすまを開けるなりあいつの声が聞こえた。
ソーニャ「まだ起きてたのか」
やすな「うん」
私は布団の横に腰を下ろした。
やすな「ソーニャちゃんは寝ないの?」
ソーニャ「一応今夜は寝ずに見張っているつもりだ」
やすな「ありがとうね、ソーニャちゃん」
ソーニャ「やすな……」
私には礼を言われる資格なんてないんだ。
やすな「さっき私のために泣いてくれたよね」
やすな「突然のことだったから私気が動転しちゃって、どうしたらいいか分からなかった」
やすな「泣けばいいのにそれが分からなくなっちゃった」
やすな「でもソーニャちゃんが私を抱きしめて、泣いてくれて」
やすな「あの時私嬉しかったよ」
やすな「そうだよね、思いっきり泣いたら良かったんだよね」
やすな「だってお父さんもお母さんも死んじゃって」
やすな「ちくわもちくわぶも死んじゃって、家もなくなって」
やすな「私……私……」ヒック
やすな「うわああああああああああああああ!」
やすな「お父さああああん!お母さああああああん!」
ソーニャ「やすな!」
私は泣き叫ぶやすなをすぐに抱きしめてやった。
やすなも私に抱き付いて思い切り泣いた。
ソーニャ「泣けやすな。それでいいんだ。泣いていいんだよ」
やすなは決壊したダムのように泣き続けた。
それが収まるまでには2時間以上の時間が経過していた。
とうとう眠くなったやすなは再び布団の中に戻った。
やすなが私を離そうとしないので、仕方なく一緒に布団に入った。
ソーニャ「やすな、こんな言葉で私の罪が洗われるとは思わない」
ソーニャ「でも言わせてくれ。ごめんやすな。私のせいでこんなことになって」
ソーニャ「私はお前の人生の責任を取る。私のこの命と人生を全てお前に捧げよう」
ソーニャ「私が一生お前を守ってやる。組織には邪魔させない」
ソーニャ「組織を抜けてお前と一緒に逃げる」
ソーニャ「どこまででも逃げてやる。絶対に捕まったりなんかしない」
ソーニャ「おい寝てるのか?」
やすな「……」
ソーニャ「愛してる、やすな」
~~~
朝の5時だった。
やすなはぐっすりと眠っている。
私はもちろん一睡もしていない。
普段から鍛えている私にとっては、一晩寝ずに過ごすことなど朝飯前だ。
私は布団から出て一階のトイレに行った。
トイレを出て階段を登ろうとすると、突然私の目の前に人影が現れた。
とっさにナイフを出して後ろに引いた。
よく見ると相手はあぎりだった。
ソーニャ「なんだあぎりか。驚いたぞ」
あぎり「あら~ごめんなさ~い」
私は一度出したナイフを仕舞おうとした。
あぎり「あ、そのナイフ、まだ仕舞わない方がいいですよ~。きっと使いますから」
ソーニャ「は?」
ソーニャ「あぎり!?お前なんで手裏剣なんか……」
あぎり「盗み聞きはよくないと思ったのですが~、聞いちゃいました。あなたの決断」
ソーニャ「あぎり……」
あぎり「組織から逃げられると思ったんですか~?」
ソーニャ「ぐっ」ギリッ
ソーニャ「私を殺すのか!?」
あぎり「悪く思わないでくださいね~。これでもちゃんと説明してあげてから殺すんですから~」
あぎり「大丈夫ですよ~。あなたの後にやすなさんも殺してあげます」
ソーニャ「あいつを殺させなんかしない!」
あぎり「じゃあいきますよ~いちにーのー……」
~~~
私は一面のバラとチューリップの花畑を見ていた。
どうやってあぎりを殺したかなんて思い出したくもない。
ただ最後に私はあぎりの体に何回もナイフを突き立てていた。
こいつが変わり身の丸太でないことを確かめるためにその体を引き裂き、血を舐め、内蔵を掴み取った。
気が付くと階段下の廊下は血の川となっていた。
ふと階段の上を見るとやすなが立っていた。
時間は7時になっていた。
見られた。
やすなには見られたくなかった。
やすなが冷たい目で私を見ているような気がして、思わず目線をそらした。
私はずたぼろになったあぎりの横で膝を付いた。
やすなは殺しに関わってはいけないんだ。
きっとやすなは人殺しなんてものを受け入れることなんてできない。
ひどいよ!あぎりさんを殺すなんて!
私は軽蔑されるんだ。
見損なったよ!人殺しなんて最低!
こんな間違ったことをしている私を心の中では糾弾しているのだ。
やすなが勢いよく階段を下りてきた。
私はやすなに殴られるのかと思った。
しかし予想に反してやすなは私に後ろから抱き付いてきた。
ソーニャ「やすな?」
やすなは何も言わずに私の血に汚れた、ナイフを持った手を握ってきた。
まるで自分も一緒にナイフを持っているとでも言うように、ぎゅっと力強く握られた。
やすなは泣いていた。
やすな「ソーニャちゃん……、ソーニャちゃん……!」
ソーニャ「やすな……」
やすな「ソーニャちゃん一人だけじゃないよ」
やすな「私も……私も一緒だから……!」
そうか。
そうだったんだ。
どうして気が付かなかったんだろう。
この手はもはや私だけのものではない。
私が自らの手であぎりを殺したこと、それはやすなにも同じ罪を着せることになるのだ。
ソーニャ「やすなぁ……」ポロポロ
やすな「大丈夫だよソーニャちゃん……」
やすな「私も……一緒に背負うから……」
人は時としてあえて辛く悲しい道を選択するときがある。
私が組織との決別を誓ったのと同じように、やすなも私と共に生きるという生半可ではない決断を下したのだ。
私たちはまた大声を上げて泣いた。
~~~
私たちはあぎりの家を出た。
外は雨が降っていた。
私たちの足跡を消してくれる恵みの雨だ。
私はやすなの手を引き、走った。
途中で学校の横を通るときにやすなが歩みの速度を緩めるのが分かった。
やすなは私の手を離して立ち止まった。
ソーニャ「やすな」
やすなは私たちの通っていた教室の方をじっと見て、一体何を思っているのだろうか。
ソーニャ「やすなお前――」
やすな「ううん、大丈夫」
あいつは私の言葉をさえぎった。
やすな「もう私大丈夫だから」
やすな「忘れ物がないかなと思って」
やすな「でももうここには何もない」
やすな「行こうソーニャちゃん」
やすなは私の手を握ってきた。
ソーニャ「ああ」
私たちは再び走り出した。
まずはこの町を去らなければならない。
その後はなんとか国外へ脱出する方法を考えるのだ。
しかしそう簡単にはいかないようだ。
私たちは追われる身となった。
追う方も私たちを消すために必死だ。
刺客2「また会ったな」
ソーニャ「貴様は……」
あの時私が追っていた敵の刺客の仲間だった。
私に重傷を負わせたあいつだ。
やすな「ソーニャちゃん……!」
ソーニャ「お前は下がっていろ」
やすな「でもっ……」
ソーニャ「素人に出る幕はない」
ソーニャ「大丈夫だ。私は死なない」
刺客2「お前だけは絶対に殺してやる!」
ソーニャ「そうはいくか。私にはやらなければいけないことがある!」
刺客2「知るか!私にはもう何もないんだ!」
相手はそう言ってナイフを素早く3本飛ばしてきた。
私はそれがやすなに当たらないように自分のナイフで全て弾いた。
ソーニャ「やすな!隠れていろ!」
私はナイフを両手に走り出した。
片方のナイフを敵の胸めがけて飛ばした。
敵は後ろにジャンプしてそれを避ける。
私は相手が地面に着地する瞬間を狙って、力いっぱいナイフを突き立てた。
ガキンと大きな音を立てて両者の刃がぶつかり合った。
刺客2「あいつを返せ!」
ソーニャ「何のことだ!」
刺客2「お前のせいであいつは死んだんだ!」
ソーニャ「なんだと!」
私は一旦後ろに飛び退いた。
すかさず敵に向って無数のナイフを投げつけたが、相手は全てかわした。
今度は敵の方から向ってきた。
強力な一撃を私は自分のナイフで防いだ。
ソーニャ「どういうことか説明しろ!」
刺客2「あいつは殺し屋になるには優しすぎた」
刺客2「お前を見逃したあいつは組織によって消されたんだ!」
刺客2「お前らさえいなければ!」
敵の膝からナイフの刃が突き出した。
敵はその膝で私にキックを入れてきたが、私は素早くそれを回避した。
刺客2「まだまだあ!」
今度は敵のかかとからナイフの刃が現れた。
敵は豪快な回し蹴りで私を狙ってきた。
その長い足は完璧に私を捉えていた。
真っ直ぐに私の顔めがけて飛んでくるキックを見て思わず腕で顔を庇った。
ゴツンと、私の足元が地面に突き刺さっていたナイフに引っかかった。
そのお陰で私は地面に尻餅を突いて倒れ、相手のキックを避けることができた。
しかし状況は好転しなかった。
無様に地面に手を付いた私の目の前に敵が立ちはだかった。
殺気だった目が私に「少しでも動いたら殺すぞ」と警告を出していた。
私は一歩も動けなくなった。
刺客2「私は彼を愛していた」
刺客2「本当は彼に殺しなんてして欲しくなかった」
刺客2「でも組織から逃げることなんてできない」
刺客2「いや違うかな。殺人という行為そのものから逃げられないんだ、私たちは」
刺客2「なあそうだろう?」
本当にその通りなのかもしれないと思った。
私の目の前に立っているのは敵ではなくやすなだった。
敵はやすなの足元に倒れていた。
その背中にはナイフが突き刺さっている。
やすなは不安そうな表情で、小さくなって震えながら私の方を見ていた。
これでいいんだよね?と私にすがるような目で言っていた。
敵が突然苦痛に満ちた表情をしたかと思うとその場に倒れこんだ。
後ろに立っていたのはやすなで――
私はその状況を飲み込むのに時間が掛かった。
その間約1秒間。
戦闘中の殺し屋としては長すぎる長考だった。
私は立ち上がり、やすなの手を取ってその場から駆け出した。
ソーニャ「よくやったぞやすな」
私はそれしか言えなかった。
ソーニャ「よくやった」
それ以外の何を言ったとしても、私たちは耐えられなくなってしまうのだと思った。
この時の私たちは決して後ろを振り返らず、毅然としていた。
この時やすなの手が震えていたように感じたのは全力で走っていたせいで、
私の頬に涙が伝ったような気がしたのは雨が降っていたせいなんだ。
選択した道に間違いなんてなかった。
~~~
あれから数年経った。
私たちはロシアの田舎にある小さな村に隠れ住んでいた。
ここには外国人を拒否するやつもいるが、私と一緒にいる限りはやすなに危害が加えられることはなかった。
やすなも言葉が分からないなりに近所と打ち解けようと努力していた。
私たちの家は木で作った小さな小屋だった。
窓を開ければ朝の清清しい空気があっという間に家の中を満たした。
私がテーブルの上を布巾で拭いている間、やすなは朝食の支度をしていた。
花瓶のある台には写真が飾られている。
それはまだ日本にいた頃の写真だ。
私たちがいつも使っていた学校の空き教室で、私とやすなとあぎりの3人で撮ったものだ。
それは私があの頃いつも持ち歩いていたものだった。
やすなが写っている写真はこれ1枚しか持っていなかったのだ。
この写真を見るとあの頃の平和で楽しかった時間が蘇ってくる。
そして同時にあぎりを引き裂いた時の花畑が鮮明に頭の中に再現されるのだ。
私の罪はやすなの罪でもある。
二人で背負えば罪は半分に軽くなる。
コンコンと玄関のドアが叩かれた。
ソーニャ「私が出る」
いたのは近所に住んでいる老婆だった。
老婆は訛りの強い言葉で私に話しかけ、カゴいっぱいの野菜を渡してきた。
私はごく標準的なロシア語で礼を言った。
老婆は家の奥にいるやすなに小さく手を振ると帰っていった。
ソーニャ「ほら、近所のおばあさんが野菜をくれたぞ」
やすな「わあ!」
やすなの表情はぱっと明るくなり、すぐに暗く不安そうな顔になった。
やすな「……あのおばあちゃん何か言ってた?」
ソーニャ「お前あのおばあさんが野菜を運んでいるところを手伝ってやったらしいな」
ソーニャ「すごい助かったって言ってたぞ。これはそのお礼だってさ」
私はそう言いながら自分も誇らしい気持ちになった。
やすな「本当に!?」
やすなの表情がまた一気に明るくなった。
やすな「早速切って朝のサラダに入れるね!すごい新鮮そうだもん」
やすなの愛は私の愛でもある。
二人で分ければ愛は何百倍にも大きくなる。
やすなは野菜を抱えて台所へ入って行った。
その朝のサラダはおばあさんのお陰でやけに大盛りだった。
やすな「おいしいねソーニャちゃん」
そう言うやすなの笑顔は私には眩しすぎるくらいだ。
でも私は気づいている。
あいつは昔と変わらない笑顔を今でも作っているのだと思っているのかもしれないが、
今のあいつの笑顔は昔とは確実に違う。
あいつの頬を流れたいくつもの涙が、あいつの顔を変えたのだ。
星空で輝いていたやすなはもういない。
でも今はこうして私の傍らにいてくれる。
そのことが私には最高に幸せなことなんだ。
やすな「ねえ、ソーニャちゃんはどう?」
ソーニャ「ああ、おいしいよ」
私たちは一心同体だよ。いつまでも。
おわり
最後に野菜を持って来たおばあさんがあぎりさんなのかと思った
秘密(はぁと
Entry ⇒ 2012.07.29 | Category ⇒ キルミーベイベーSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
ソーニャ「武器商人と旅をした」
ほうかご
やすな「ソーニャちゃん一緒にかーえろ!」
ソーニャ「断る」
やすな「えぇ〜?ねぇ帰ろうよぉ〜」ギュッ
ソーニャ「今日は用事がある!離せバカ!」
やすな「用事・・・!」ピキーン
ソーニャ「じゃあな」
やすな「ちょ、ちょっと待ってソーニャちゃん!」
ソーニャ「その手には乗らない」
やすな「違うよ!行く前にその肩の虫はらった方が・・・」
ソーニャ「へぇっ!?」バッ
やすな「とぅえ!!」シュビ
ソーニャ「あぁ!バッグ!」
トトンッ
やすな「ひいいいいいい刺さる刺さる」ガクブル
ソーニャ「あんまり私をてこずらせないでくれ・・・」
やすな「ま、まだ諦めない!」
やすな「くらえ必殺!クマをも倒したやすなハイパーヘッドアタック!!」ビューン
ソーニャ「・・・」スッ
ガッシャンガラガラ
やすな「ひぎゃあああああ!避けるなんて卑怯な!」
やすな「ま、待ってよソーニャちゃん!ダメだよ!もう殺し屋なんか辞めようよぉ!」
ソーニャ「今更辞められないっつってんだろ!物分かりの悪い!」
やすな「そこをなんとか!今日だけは!」
ソーニャ「だから・・・ハァ」
ソーニャ「だーーーーーもう!!」
ソーニャ「どっかにコイツに邪魔されずに仕事のできる世界はないのか!!」
ココ「さぁヨナ急ぐぞ!この先の港でみんなと合流だ!」
ヨナ「・・・」
キャーキャーワーワー
ヨナ(・・・公園か、気付かなかった)
ヨナ(僕と変わらなそうな歳の子が遊んでる)
ココ「・・・おぉっ!?ヨナがいない!」
ココ「なんだ、あんなとこで立ち止まってる」
ココ「フフーン・・・公園かぁ」
ココ「もうちょい余裕がある日ならなぁ・・・遊んで来い!とも言えたんだが」
ココ「生憎今はそんな余裕ないんだよなぁ」
ココ「ほらほらヨナ隊員!急ぎたまえよ!」
ヨナ「ん、あぁ」
ヨナ(僕はこれから仕事で、また武器を握る)
ヨナ「・・・はぁ」
ヨナ(もし、もし武器から遠く離れた場所へ行けたら、僕は・・・)
キン...
ココ「うん?なんだこの音」
ココ「ねぇヨナ!聞こえた?今の・・・」
ソーニャ「えっ」
ココ「・・・うん!?」
やすな「なんか今すごい高い音が・・・ねぇソーニャちゃん」
やすな「あっ、あれ・・・?ソーニャちゃん・・・?」
ヨナ「・・・?・・・??」
やすな「ソ、ソ、ソ」
やすな「ソーニャちゃんが男の子に変身した!?」
ヨナ(夢・・・?スレトスの溜まり過ぎで幻覚でも見てるのか?)
やすな「何!?病気!?病気かな!?」
あぎり「ど〜したの〜?」スッ
やすな「あ、あぎりさん!」
やすな「大変なんですよ!ソーニャちゃんが男の子に変身する病気に!」
しえ
あぎり「でも、ただの別人だと思いますよ〜?」
やすな「べ、別人!その手があったか!」
やすな「しかしちょっと目をはなしたスキに別人と入れ替わるなんて」
やすな「ソーニャちゃんも変わり身の術を習得していたんですね!」
あぎり「それはどうでしょうか〜・・・、う〜ん」
あぎり「案外異世界人と入れ替わったとかかもしれませんよ〜?」
やすな「いやいや!そんなバカな!」
ヨナ「異世界・・・」
ヨナ「・・・その人の言ってること、正しいかもしれない」
やすな「!?」
あぎり(あっれ〜?冗談のつもりだったんですけどね〜)
ヨナ「ここがどこだか全く分からない、気付いたらここにいたんだ」
やすな「じゃあまさかソーニャちゃんも今頃別世界!?」
あぎり「SFみたいになってきましたね〜」
ソーニャ「・・・確かに私はさっきまでやすなに絡まれてて」
ソーニャ「静かに仕事ができる世界はないものかと思った瞬間に目の前が真っ白になって」
ソーニャ「ここは一体どこなんだ・・・わけが分からない」
ココ「わけ分かんないのはこっちだよ!変な音がしたと思ったらヨナの代わりに君が・・・あれ?」
ココ「ちょっと待って、君もう一回喋ってくれる?」
ソーニャ「は?な、何言ってるんだ急に・・・」
ココ「やっぱり!フフー、これは面白い現象だ!」
ココ「凄いな、完全一致だよこれは」
ソーニャ「だから何が!」
ココ「しかもこの子は仕事がしたい、そして平和に暮らしたいヨナ・・・」
ココ「かなり不思議な話ではあるが、辻褄は合うか」
ソーニャ「お、おい!」
ココ「あーごめんね!でもなんで君がここに来たのか、大体目星はついたよ」
ソーニャ「はぁ・・・?」
ココ「ついといで!まずは仲間と合流したい、詳しくはそこで話すよ」
ソーニャ「あぁ・・・」
ソーニャ(嵐のような奴・・・)
やすな「色々考える前にまずは自己紹介!」
やすな「私は折部やすな!賢くて気品のあるパーフェクトお姉さんだよ!」ドヤッ
やすな「ひゅー!ツッコミがないっていいね!」
ヨナ(一人で漫才してるみたいだ、この人)
あぎり「呉織あぎりです〜、はいこれ名刺」
ヨナ「十字型の・・・刃物?」
あぎり「手裏剣って言うんですよ〜」
ヨナ「しゅりけん・・・、この世界ではこれを名刺にする文化があるのか」
やすな「普通しないよ!」
あぎり「忍者の間では常識ですよ〜?」
ヨナ「あぎりはニンジャなのか?」
あぎり「あれ、忍者をご存知ですか〜」
あぎり「照れちゃいますね〜」
やすな「ちょっと胡散臭いけどね・・・」ボソッ
やすな「それはさておき君の名前は?」
ヨナ「・・・ジョナサン・マル。ヨナでいいよ」
やすな「ヨナ君ね!よろしく!」ニコー
ヨナ「・・・よろしく」
やすな「なんか君とは初めて会った気がしないな、凄い親近感」
やすな「なんでだろ・・・外人さんだから?」
やすな「うーん、ヨナ君どっかで会った?」
ヨナ「いや、全然」
ヨナ「?」
やすな「そっか!分かった!」
ヨナ「何が」
やすな「気にしないで、こっちの話だから!」
ヨナ「・・・?」
あぎり「やっぱり気が付きました〜?」
やすな「凄いですね、そっくりです!」
ヨナ「・・・」
輸送船内
ココ小隊一同「えええええええ!?ヨナが消えた!?」
ココ「そう!一緒に歩いてたのにだ!」
ココ「そしてヨナの代わりに現れたのがこの子」
ソーニャ「どうも・・・」
一同(女の子だ!しかもなんか聞き覚えのある声だ!)
ココ「ありえない話だが、私はこの子が別世界から来たのではないかと考える」
レーム「なんだなんだ、ドッキリでも仕掛けようとしてんのかい?」
バルメ「私はどんなにありえなくても、ココの言うことなら何でも信じます!」
ココ「ありがとバルメ。続きを話すよ」
ココ「そこで現れたこの子は、静かに仕事がしたいと願っている」
ココ「そこでこう、神の力みたいなものがバァーーーーッと働いて、別世界のこの子と入れ替わりに!」
一同「・・・」ポカーン
トージョ「・・・ダッハハ!ロマンティストだなココさんは!」
アール「そこまで真剣に言われたら信じるっきゃないじゃん?」
ルツ「で?ヨナ坊の抜けた穴はどうすんのさ」
ココ「何言ってるかルツ!私達はもともとヨナ無しで戦ってたじゃないか!それくらい気合いでなんとかせい!」
ソーニャ「ちょ、ちょっと待ってくれ」
ココ「そうか、一番重要なことを言いそびれていたな!」
ココ「私は世界を飛び回る武器商人!そしてこの一見グダクダな彼らが実は・・・」
ココ「私を殺し屋なんかから護衛してくれる頼もしい奴らなんだ!」
ソーニャ「!?」
ソーニャ「そ、そうか、殺し屋から護衛、な・・・」
ココ「どーした?急に顔色が悪く・・・あぁ、怖がることはないよ!君の安全は必ず守ると約束しよう!」
ソーニャ「ならいいんだ、ありがとう」
ソーニャ(ヤバいな・・・もしかすると)
ソーニャ(バレたら殺される・・・!?)
やすな「じゃあヨナ君!事情聴取を始めるよ!」
ヨナ「・・・この電気スタンドと食べ物は何?」
やすな「カツ丼です!この世界では人から何か聞き出す時はみんなこうするのです!」
ヨナ「面白い世界なんだな」
やすな「それじゃあヨナ君、正直に答えたまえよ」
ヨナ(嘘ついても仕方ないけど・・・)
やすな「まず君はここに来る前、何をしておったのかね」
ヨナ「・・・仕事に行く途中。ココと・・・上司と一緒だった」
やすな「仕事!?その歳で!?」
ヨナ「仕方ないんだ。僕にはそれしかないから」
やすな(可哀想に・・・きっと小さい頃に両親を亡くして自分で働いて食べていくしかないという設定が・・・)ジーン
やすな「そ、そうだよね!子供なんだから遊ばなきゃ!」
やすな「全く、ソーニャちゃんとは正反対だよ!ソーニャちゃんもこんな感じなら苦労しないのに!」
やすな「・・・ん?正反対?」
やすな「ああー!だから入れ替わったとか!?」
やすな「きた!謎は解けた!犯人はお前だ!」ビシッ
ヨナ「・・・急に何?」
やすな「一回やってみたかったの!」
ヨナ「・・・」
ココ「何にせよ、このままではダメだ!」バンッ
ココ「緊急会議!どうすれば再びこの子とヨナを入れ替えることができると思う!?」
トージョ「無難だけど、その子がまた元の世界に戻りたいと思えばいいんじゃないか?」
ココ「採用!じゃあちょっとやってみてくれ」
ソーニャ「分かった・・・」
ソーニャ「・・・」
やすな(脳内)「ソーニャちゃーん!あっそぼーうよー!」
やすな(脳内)「殺し屋なんかやめちゃいなよ!いけないよそういうのは!」
やすな(脳内)「ひゃっはー!騙されてやんのー!」
やすな(脳内)「何言っちゃってるの?もしかしてバカ?」
ココ「うおっ!?・・・こりゃダメだ、しばらく戻りそうにないね」
ソーニャ「す、すまん・・・」
ココ「しゃーない!長い付き合いになるなら名前を聞いておこうか!」
ソーニャ「ソーニャだ、しばらく世話になる」
ココ「私はココ!よろしく!」
バルメ「バルメです!好きなものはトレーニングとココです!」
レーム「レームだ。変な奴ばっかだが、まぁいい奴揃いだから気楽にな」
ワイリ「ワイリだよ。このメンバーの中じゃ穏便派だ」
一同「ウソつけ!」
トージョ「俺はトージョ。主に情報収集担当。力くらべの方はまぁ・・・そこそこ!」
ルツ「ルツだぜ!小隊随一のスナイピング能力!俺の遠距離射撃が火を吹くぜ!」
アール「スナイピング以外はいいとこないがな!あ、俺はアール。女の子は大歓迎だぜ!」
マオ「マオです。子供の面倒を見るのは得意です・・・けど、もう面倒見てもらうって歳でもないかな?」
ウゴ「ウゴっす。主に操縦担当。車詳しくないお嬢の代わりやってます」
ココ「あとは・・・まあいいや、とりあえず解散!いつまでみんなして1人の女の子囲んでても意味ないし!」
ココ「各自武器の手入れでも何でもしてること!」
一同「ウェーイ」
ダラダラ...
ココ「・・・さてね、それじゃあ君の仕事を教えてもらおうか」
ソーニャ(来た!)
やすな「さて、ヨナ君がここに来た理由も大体分かったので」
やすな「次は元に戻す方法を考えます!」
あぎり「お〜」パチパチ
ヨナ「・・・」パチパチ
やすな「2人が入れ替わった理由はズバリ、2人の考えが正反対だったこと!」
やすな「ということは、ソーニャちゃんが仕事に飽きてヨナ君が遊びに飽きれば戻るかも!!」
あぎり「ソーニャが仕事に飽きることはほぼ無いと思いますよ〜?」
やすな「ハッ!!しまった・・・」
やすな「で、でも!奇跡が起きるかもしれないし!そうなったらこっちもこっちで準備しとかなきゃ!」
あぎり「つまるところ、飽きるまで遊びたいわけですね〜」
やすな「そうで・・・いやいや!そんな聞き捨てのならない!私はただヨナ君を早く元の世界に戻してあげたいだけです!」
あぎり「そうですか〜♪」
やすな「そうと決まれば公園にGO!!」
やすな「よっしゃあヨナ君!君はかくれんぼを知ってるかい!?」
ヨナ「・・・隠れるのは得意。隠れて授業をさぼるんだ」
やすな「何ぃ!?私も隠れる側だった!」
あぎり「私は忍者なので〜、当然隠れる方が得意ですね〜」
3人「・・・」
やすな「・・・かくれんぼはやめた!おにごっこしよう!」
ヨナ「いいけど・・・大丈夫?」
やすな「おにごっこの女王ことやすな様をなめるなよ!?」
やすな「す、ストップ!ストオオーップ!」ゼェゼェ
ヨナ「もうやめるのか?」
やすな「君は一体・・・何でこんなに速いの・・・」ハァハァ
ヨナ「元山岳兵だから」
やすな「はぇ?」
ヨナ「元山岳兵だからだよ。足腰が強くなきゃやっていけない世界だったんだ」
やすな「あ、あぎりさん・・・サンガクヘーって何ですか?」コソコソ
あぎり「山の中で戦う兵隊さんのことですよ〜」
やすな「へ、兵隊!?」
やすな「えっ、えっ、じゃあ」
やすな「自分の仕事が好きじゃないって・・・そういうことだったの・・・?」
やすな「私、子供がやらされる仕事なんて新聞配達くらいだと思ってて・・・」
あぎり「残念な話ですが、少年兵なんてよくありますからね〜」
あぎり「特にヨナ君の見た目から察するに、そういうことがよくある地域の方なんじゃないかと〜」
やすな「・・・」
やすな「・・・よし!」
ヨナ「?」
やすな「ヨナ君に一つ言い忘れてたことがあるの!」
やすな「私にも仕事があってだね・・・それは!」
やすな「アブナイお仕事をしてる友達を辞めさせて、一緒に遊ぶことです!」
ヨナ「!」
やすな「ブルータスお前もか!!」
ヨナ「?」
ヨナ「・・・でも、嬉しいよ。」ニコ
やすな「ほんとっ!?お世辞じゃない!?」
ヨナ「ほんとだって。今日会ったばかりなのに、やすなは友達になるのが早いな」
やすな「私は世界中、いや別世界までどんな人とでも友達になれることに定評があるのです!」エッヘン
やすな「ところでヨナ君今日初めて笑ったね!やった!」
ヨナ「・・・///」フイッ
ココ「君の年齢からして、仕事と言ってもよくてバイトくらいだと思うけど」
ココ「何だっていいよ!出来るだけうちの隊で有効に働けるように考えるから!」
ソーニャ「・・・」
ココ「何々!?言えないような仕事!?君金髪で可愛いしなぁ、まさかソッチ系の仕事!?」
ソーニャ「・・・本当に」
ソーニャ「本当に何でもいいんだな?」
ココ「おう、任せなさい!」
ソーニャ「・・・アンタは武闘派には見えないし、言ってしまおう」
ソーニャ「私は殺し屋、組織の殺し屋だ」
ココ「!!」
ソーニャ「分かってると思うが私は何故ここに来たのかも分からないんだ!」
ソーニャ「そもそもアンタがいなきゃ私は全く知らない世界で路頭に迷うことになるし・・・」
ココ「・・・プフ!フフー・・・ フ、フ!アッハッハッハッハ!!」
ソーニャ「!?」
ココ「面白い!面白いよ君!必死すぎ、殺し屋なのに!カワイイ!!」
ソーニャ「は・・・?///」ポカーン
ココ「私達は相手が殺し屋でした、はいズドン!なんて気の短い奴らじゃないよ!」
ココ「君に殺意が無いのは明らか!むしろ戦えるなら好都合じゃないか!」
ココ「でも殺し屋が好きじゃないのも確か。だから・・・」
ココ「ここにいる間は殺し屋忘れない?」
ソーニャ「!」
ソーニャ「それでも辞めろ辞めろとうるさい奴もいたが・・・」
ソーニャ「ま、今は殺し屋である意味も無いしかまわないぞ」
ココ「おっ!交渉成立!」
ソーニャ(アイツ、私が殺し屋辞めてたって知ったらどんな反応するかな)
ソーニャ(もういつも通り殺し屋だよ、なんて言ったら悔しがるだろうなぁ)
ココ「フフフ・・・ウフッ、アーハハハハハ!!」バンバン
ソーニャ「またか!?今度はどうした!」
ココ「フハッ、だ、だって!殺し屋忘れるってなった瞬間に凄い良い表情するんだもん!」
ココ「実は内心辞めたくてしかたなかったのかもね!」
ガチャッ
ルツ「おいおい、解散した途端に随分楽しそうじゃねーか!ズルいぜお嬢!」
アール「新顔ちゃんのことがメチャクチャ気になっててさ!ついみんなで立ち聞きしちまった!悪りぃ!」
ココ「もー!プライバシーのかけらも無い奴らだな!コラ!」
ガヤガヤ...
ソーニャ「・・・表情変わってたか?おかしいな・・・」
ゆうがた
やすな「さーて!やっと打ち解けてきたことだし、今度は何して遊ぼうか!」
ヨナ「・・・もう遅いよ」
やすな「へ?」
カァー...カァー...
やすな「いつの間に!!」
あぎり「あ、私そろそろ用事が〜」
あぎり「最後にこれ、今日は特別サービス、無料お試し配布ですよ〜」
ヨナ「?」
あぎり「それじゃあこれにて、どろん〜♪」ボフンッ
やすな「ひょえ!急に忍術使わないで下さい!・・・ってやっぱりもういないし!」
ヨナ「・・・!」キラキラ
やすな「しょうがないな、ヨナ君これからどう・・・」
ヨナ「すごい!ニンジャすごい!今のどうやって消えたんだ!?」
やすな「凄い食いついてる!!」
やすな「結局流れでヨナ君うちに泊めることになっちゃったなあ・・・」
やすな「お母さんになんて説明しよう・・・」
ヨナ「なぁやすな、これまだ開けちゃダメか?」ワクワク
やすな「開けてもいいけど後悔するよ、多分」
ヨナ「?」ガサガサ
「アリの巣観察キット!」テッテケテッテッテー
ヨナ「」
やすな「お母さんがヨナ君のこと海外旅行客だと思ってくれたから助かったけど」
やすな「ヨナ君めちゃくちゃガッカリしてるなぁ・・・」
やすな「まるで初めて忍法グッズ買わされた時の私を見てるようだ・・・」
やすな「あ!いいこと思い付いた!!」
トントン
やすな「ヨーナ君っ!」
ヨナ「?」
やすな「ピョン助4号だよ!ソーニャちゃんに次々と敗れ去って4号だよ!」
ヨナ「!」
ヨナ「・・・あは!」
やすな「あー!笑った!」
ヨナ「っ・・・///」
ソーニャ「くそっ!」シュッ
バルメ「なかなか良い動きをするじゃないですか!」ザッ
ソーニャ(なんなんだコイツ、こんな重そうなもの2つもくっつけてなんでこんなに速く動ける!?)
バルメ(この子、どう見てもこんな力があるようには思えない!どこにこんな・・・)
ビッ
ソーニャ「うっ!」
ソーニャ「・・・私の負けだ、勉強になった」
バルメ「こちらこそ!もう少しでやられるところでした、危なかったです!」
一同「うおおおおおーっ!すげええええええ!!」
トージョ「アネゴに危なかったと思わせるとか、ハンパじゃねーよ!」
ルツ「るせぇ!まだ分かんねえだろ!」
一同「決まったようなもんだ!」ワッハハハハ
ルツ「そこまで言うなら見てろよ!かかってこい新入り!」
ココ「いよっ!既に疲れてる相手に大人げないぞー!ルツファイトー!」
〜数十秒後〜
ルツ「おかしいって!なんでこんなちっこい女の子がこんなに強いんだよ!」
ソーニャ「スキだらけじゃないか・・・」ビュッ
ビリィ
ルツ「こええええええ!!ゴムナイフでズボン破かれた!!」
一同「またケツかよ!!」ギャハハハハハ
ソーニャ「・・・!」
ココ「さて!」スタッ
ココ「うちの隊では新入りに必ずやってもらう儀式があってね。君にももちろんやってもらう!ついて来い!」
食堂
ココ「君にはこれから卵料理を作ってもらおう!」
ソーニャ「それが儀式?」
ココ「そうだよ!腕によりをかけて作ってくれたまえ!」
ソーニャ「料理はあまりやらないんだが・・・パンばっか食ってたし・・・」ブツブツ
ソーニャ「まぁ・・・見た目はそこそこ・・・」
ソーニャ(そういや味見してないな・・・まあいいか)
ココ「ソーニャ、ヨナのいない間この隊の一員として働く者よ」
ココ「殺し屋であることを忘れ、護衛として一から出直した君は今、卵だ。」
ココ「それでは頂こう!」
一同「・・・マッズゥ!!」
よる
やすな「あり合わせの服でごめんね・・・お父さんのTシャツなんかワンピースみたい!」
ヨナ「問題ない。それより、仮眠じゃなくてちゃんと寝られるのは久しぶりだ」
やすな「兵隊さんって大変なんだなぁ・・・」
やすな「子供なんだからよく寝てよく遊ばなきゃダメだと思うんだよね!」
やすな「ということで、明日の土曜日は遊園地に行こうと思います!」
ヨナ「ほんとっ?」キラッ
やすな「まかせなさい!あぎりさんも誘ってまた忍法見せてもらおう!」
ヨナ「ニンジャも来るのか!」
やすな「おう!ヨナ君のためなら引きずってでもついてこさせちゃうっゼェーーーーイ!」ビシッ
ヨナ「わかった」
ヨナ(・・・と言っても、昨日の今日で急に気を抜いて寝ようと思っても無理だな)
やすな「ZZZ...」
ヨナ(ココ、平気かな。みんながいるし心配ないと思うけど)
ヨナ(考えてもどうにも出来ないし、寝よう・・・)
ココ「ソーニャ臨時隊員と親睦を深めるためにも今日は」
ココ「一緒にお風呂に入りたいと思います!!」
ソーニャ「はぁ!?///」
ココ「せっかくだからバルメも!福眼!福眼!」
バルメ「喜んで!!」オッホー
アール「おいおい!楽しそうじゃないか!」ハァハァ
ココ「あ、男性陣も一緒に入りたいなら入っていいよ。男だけで。」
アール「エンリョします・・・」ズーン
ソーニャ(結局入らされた・・・)
ソーニャ(っていうか)
バルメ「ココー!お背中流しましょうかー!」キラキラ
ソーニャ(おかしいだろあれ・・・)
ココ「どうだ?デカいだろー、あれはもうスイカだよ!スイカ!」スイー
ソーニャ「あ?あ、あぁ」
ソーニャ「・・・」チャプン
ココ「・・・気にするなソーニャ隊員!あれだけ巨大だと困る事もある!」
ココ「その点私達はほどよい!ほどよいことはいいことだ!ってバルメが言ってた!」
ソーニャ「ほ、ほどよい・・・!」
ココ「バルメー!揉ませろ!揉ませろ!」スイー
バルメ「どうぞお好きに!!」
ココ「私のシャツ。ちょっと大きいけど大丈夫そうだね」
ソーニャ「ああ、悪いな」
ココ「私とバルメ、ソーニャはこの部屋。見回りは男共に任せるが、警戒は怠るな」
バルメ「了解です!ではおやすみなさい、ココ!」
ココ「おやすみ!」
ソーニャ「・・・おやすみ」
ココ「うーん・・・ヨナ、大丈夫?ヨナ・・・」ブツブツ
ソーニャ「? どうした?」
ソーニャ「・・・なんだ寝言か」
バルメ「ココ、あんなに明るく振舞ってましたけど、ヨナ君がいなくなったんで相当ショック受けてると思いますよ」
ソーニャ「え?」
バルメ「ヨナ君とは、隊の中でも特にベッタリでしたから。そりゃもう、嫉妬しちゃうくらい」
ソーニャ「そのヨナっての、どんな奴なんだ?」
バルメ「山岳部隊出身の少年兵。強くて無表情。でも子供っぽくて可愛いところもある、まぁ隊のマスコットみたいな子でしたよ」
バルメ「あと貴女と声が似てました」
ソーニャ「? そ、そうか」
バルメ「・・・これは勝手な想像ですけど、ココが武器商人なんて心の荒む仕事をしながらなお、あれだけ気丈に振る舞えるのは」
バルメ「ヨナ君という拠り所があるからだと思うんですよ」
ソーニャ「・・・」
ソーニャ「少なくとも、アンタがいるおかげで助かってると思うぞ?ココは」
バルメ「ほんとですか!?ココ〜っ!私はいつでもあなたの味方ですよ〜っ!」ギュウウウウウウウ
ソーニャ「じゃ、じゃあ私は寝るぞ」
ソーニャ(心の安らぎ、か)
やすな(脳内)「ずっと友達だよ、ソーニャちゃん!」ニコー
ソーニャ(いやいや、それはない)
よくじつのあさ
やすな「グーテンモルゲーン!」
ヨナ「・・・はよ」
やすな「今日は何の日っふっふううううう?」
やすな「ゆーーーーえーーーーんちいいいいいいい!!」
ヨナ(ウザい・・・)
やすな「さーてあぎりさんも呼んじゃおっかなー!?呼んじゃうかなー!?」
やすな「あっ・・・」
やすな「あぎりさんの電話番号知ってるのソーニャちゃんだった・・・」
ヨナ「・・・」
やすな「い、いや!まだ手はある!ついて来て!」
やすな「スゥーーーー・・・」
やすな「あぎりさぁーーーーーん!!」サァーン...サァーン...
しーん・・・
ヨナ「・・・いや、さすがにそれじゃ来な」
あぎり「お呼びですか〜?」
ヨナ「えっ」
やすな「ほんとに来るとは!!」
あぎり「忍者ですから〜!行くんでしょ〜?遊園地〜」ニコニコ
ヨナ「ニンジャすごい!」キラッ
やすな「いやー来たなぁ!」
あぎり「来ましたねぇ〜」
ヨナ「来た。」
やすな「何したい!?何したい!?私メリーゴーランド!」
あぎり「マジックハウスがいいですね〜」
ヨナ「射的。」
やすな「わ、分かれたなぁ・・・」
ココ「起きろ、起きろソーニャ臨時隊員!」
ソーニャ「ん・・・暗っ、てまだ5時じゃないか」
ココ「みんな寝てるよ。バルメとトージョ以外」
バルメ「ココの声はこの世で一番の目覚ましです!」
トージョ「くそー、ねっみぃ!情報係はこれだからキツいぜ」
ココ「今から2時間車で移動。国軍のお偉いさんと××ホテルで7時半から商談。」
ソーニャ「なんでそんなに急ぐんだ?」
ココ「この国は、隣国との間柄がピリピリしっぱなし。一触即発。」
ココ「つい先日、隣国の方が大量に武器を輸入したと情報が入った。早く対抗したくて仕方ないはず。」
ココ「そしてこの国の国防の方針として、一回の紛争につき一社のみから武器を買い続けることが有名。」
ココ「一度この国に武器を売ってしまえば、しばらくはお客様には困らないってわけだ。」
ココ「結論を言ってしまえば、早い者勝ち!きっとたくさんのライバル武器商がこのチャンスを狙ってる!だから急いでいるのであーーーる!」
バルメ「はい!」
トージョ「って、よく考えたら俺ハーレムじゃん!?俄然気合い入るぜ!」
ココ「あぁ、トージョは留守番だよ。この2人強いし、戦力は間に合ってるから」
ココ「そう簡単にハーレム体験できると思うなよ?」
トージョ「ぐあああああああああ」
やすな「間を取ってジェットコースターにしてみました!」
あぎり「絶叫系は平気なんですか??」
やすな「もちろんですよ!あまりの余裕さに係員さんがガッカリするところが目に見える!」
やすな「ひゃーーーーーーーーーーーーー!!」
あぎり「速〜い♪」
ヨナ「・・・」
やすな「ま、まあまあでしたね!もう少し速くてもよかったですよ!」
ヨナ「本当にね。ウゴの本気の運転の方がよっぽど怖いよ」
やすな「ヨナ君終始無表情だったなぁ・・・」
やすな「次は絶対楽しませるよ!ついて来て!」
ココ「女性しかいないのにこんなに頼もしいことってないな!」
バルメ(ほんとはココと2人がよかったですけど、トージョが来なかっただけマシです)
ソーニャ「聞きたいことがあるんだが」
ココ「なになに?何でも聞いて!」
ソーニャ「もし私がこのまま帰れなかったら、ココはどうする?」
ココ「唐突だねぇ!」
ソーニャ「アンタ、ヨナって奴のこと相当気に入ってたんだろ?」
ココ「まあね。でも、うーん・・・」
ココ「帰れなかった時のことは考えてないよ!帰れるって信じてなきゃ、帰れるものも帰れない!」
ココ「・・・まぁいざとなったら君を正式に雇うよ。ソーニャ、ヨナばりに可愛いしな!」
ソーニャ「そりゃどうも・・・」
バルメ(敵がいなくなったと思ったらまた増えた!)
ココ「お、トージョから連絡」ピッ
ココ「はーい」
トージョ『やべーよココさん!最初にココさんが7時にアポ取ろうとした時、半にしてくれって言われたろ?』
ココ「そうだったね、んでそれがどうした?」
トージョ『それが・・・ココさんの前に既に一社、商談の予定が入ってるらしいんだ!』
ココ「なぬ〜〜〜っ!?」
ココ「ムーン・・・仕方ない、先回りして武力で帰らせよう!!」
トージョ『ダハハ、やめとけココさん。それにココさんとの商談を断らなかったってことは、まだ決めかねてるってことだろ?』
トージョ『ようは相手の商品よりこっちの商品が魅力的であればいいんだ。自信無いのかい?』
ココ「フフーフ!馬鹿言ってんじゃないよ。絶対うちのを買わせてみせるから!」
トージョ『言うね。期待してるぜボス!』
ココ「おうよ!」
ココ「ちょっとヤな予感すんだよね〜・・・」
バルメ「どういうことです?」
ココ「ここの軍人さん、陸軍・・・特に歩兵隊に力入れてるんだよ」
ココ「てことはつまり、欲しいのは小火器なんだよね。小火器と言えば・・・」
バルメ「あ。」
バルメ「い、いや、さすがにそれはないでしょう!」
ソーニャ「?」
やすな「コーヒーカップ、フリーフォール、バイキング・・・色々行ったけど全く反応なし!慣れっこですけど何か?みたいな顔!」
やすな「彼の笑顔を再び見るためには・・・ムムム」
ヨナ「・・・」パンッ
係員「僕うまいねえ!ほら人形だよ」
ヨナ「ありがとう」
ヨナ「・・・♪」ニコニコ
やすな「あれだぁ!任せなさいヨナ君!やすなお姉様が人形を2つにしてあげよう!」
ヨナ(持ちきらないからいらないのになぁ)
やすな「どりゃあああああああああ」パンッ
やすな「はずしたあああああああああ」
やすな「よし!もう1回!」
やすな「くそう!またはずした!」
やすな「オゥ!まただよ!」
あぎり「破産するタイプですね〜」
××ホテル前
ココ「や、やっぱり貴様らかぁーーーーー!」
ミルド「ココちゃんまた会ったぁー!」
カリー「いやはや、こんなところで会えますとはな!お先に失礼しますよ!」
ココ「こんのタヌキやろ・・・おっと。言葉が悪いですね」
ココ「負ける気がしませんよ、カリー社長。ジャンケンと一緒です。後出しの方が強い。」
カリー「この商談をジャンケンと同じに考えてはいけませんよ?」
ルー「社長、そろそろ」
カリー「おっと、それでは時間なので」
ミルド「ファイト社長ぉーーーっ!」
ココ「私達の商売敵!カリー社長率いるCCAT社の奴らだよ!」
バルメ「できれば会いたくなかったですけど。これぞ腐れ縁。」
ミルド「バルメェー!アンタと会えんの待ってたんだよ!」
バルメ「ウザいです。というか、貴女はついて行かないんですか?」
ミルド「社長がついてくんなってさ。それよりリベンジさせろー!」
バルメ「お断りします。こんな街中で何考えてるんですか」
ミルド「えぇー!いいじゃんいいじゃん・・・あれ?」
ミルド「あんな子いたっけ?また新入り?」
ココ「事情でヨナの代わりに入ってもらってる。ソーニャだよ」
ミルド「ヨナの・・・ってことは戦闘要員!?あの可愛い子が!?ブハッ」
ソーニャ「何だあの異様にムカつく奴は・・・いやああいうのには慣れてるが」
バルメ「ぶちのめしたくなるでしょう?」
ミルド「おっ、やる気満々!?いいね!好きだよそのノリ!返り討ちにしてやる!」
バルメ「ハァ・・・仕方ない、片付けちゃって下さい。ほっといてもずっとうるさいですし。」
バルメ「ただし街中なんで、なるべく静かに」
ソーニャ「言うまでもない。静かに仕留めるのが私達の仕事だからな」シャキッ
ミルド「アンタもナイフ使い?なんか知んないけど、ソイツで私に挑もうなんて100年早いよお嬢ちゃん!」
やすな「お金もう無い・・・」
ヨナ「結局1個も取れなかったね」
やすな「くそう!くそう!」
あぎり「じゃあ〜、お金のかからない観覧車にでも行きましょうか〜」
やすな「行きます!」
やすな「ひゅーーーーっ!高ーーーーい!」
あぎり(ソーニャだったら絶対言いますね、バカは高いところが・・・)
ヨナ「凄いな!海が見える!」
あぎり(おやおや〜、ヨナ君もですか〜)
やすな「今日はだいぶ遊んだね!ヨナ君楽しかった?」
ヨナ「何も気にしないでゆっくり遊べたのは久しぶりだ。」
ヨナ「もし元に戻れた時、自分が駄目になっちゃうんじゃないかってくらい・・・楽しかった」
やすな「そっかあ!よかったあーーー!」ニッコー
やすな「あんまり素直に喜ばれるとムズムズするね!特にその声だと!いつも完全にスルーだったから・・・こんな感じで」
やすな「ねぇソーニャちゃん!殺し屋なんか辞めて私と遊ぼうよ!」(高音)
やすな「ぞんなごどやっでられっがー!殺ずぞー!」(低音)
ヨナ「・・・!」
ヨナ「・・・ずっと言ってたソーニャって奴、殺し屋だったのか?」
やすな「へ?」
ミルド「ハァッ、ハッ、な、なんでこんなちっちゃい女の子がこんなに強いワケぇ!?」ビュンッ
ココ(面白っ!ルツと同じ事言ってるよ!)
ソーニャ「話にならないな、100年早いのはどっちだ」スッ
ガキィンッ
ミルド「あっ・・・」ヒュルヒュルヒュル...
ソーニャ「ちゃんと握ってろ、ナイフ」
ミルド「すげぇ悔しい!こんなお子様に負けるなんてー!!」
ソーニャ「子供だと思って余裕こいてたのが運の尽きだ」
カリー「何をやっとるか!ミルド!」
ミルド「社長!ルー!」
カリー「そんな子供相手に負けたのか!」
ミルド「だってぇー!この子超強いんですよぉー!聞いて下さい社長ぉーーーー!」
ココ「あれっ、もう帰るんです?結果は?」
カリー「電話でのちのち。もう間違い無さそうですからな。」
カリー「分かり切った結果を待つよりは、時間を有効に使いますよ」バタムッ
ヴゥゥゥーーーーーン...
ココ「嘘付け!ほんとは私と鉢合わせした時点で諦めてたくせに!!・・・って、もう聞こえないか」
ココ「あいつら、私達が敵だと分かってしっぽ巻いて逃げたんだ!タヌキのくせにチキンとは!」
バルメ「自信満々ですね、ココ」
ココ「当たり前!あんなオッサンに負けてたまるかー!」
ヨナ「じゃあやすなは殺し屋と友達だっていうのか」
ヨナ「危ない仕事を辞めさせるっていうのもそういうこと・・・」
やすな「そーだよ!ヨナ君も同じようなものだし」
ヨナ「違う!!」
やすな「!?」ビクッ
ヨナ「僕らと殺し屋は敵同士なんだ!だからって僕らが正義で殺し屋が悪なんて言わないけど・・・」
ヨナ「ごめん、でも・・・やすなは殺し屋なんかと一緒にいるべきじゃない」
ヨナ「殺し屋と友達になるにはやすなはちょっと、綺麗すぎる・・・」
あぎり「・・・」
やすな「・・・それはやだよ!ソーニャちゃんと私は大親友だもん!」
ヨナ「!」
やすな「殺し屋にもいい人はいる!ソーニャちゃんはすっごく優しいよ!」
やすな「文句ばっかり言うけど、結局私の遊びに付き合ってくれて!」
やすな「お化けが嫌いだったり、犬が嫌いだったり、女の子らしくて可愛い所もたくさんあるんだよ!」
やすな「だから」
パンッ
3人「!?」
ヨナ「伏せて!狙撃だ!」
ココ「それでは、我が社から武器を買っていただけるということですね!」
バルメ「やりましたねココ!」
ココ「おっしゃあーーー!ざまあ見やがれタヌキ親父ーーー!!」
ココ「・・・おっと。失礼しました、ではここにサインを・・・」
車内
バルメ「楽勝でしたねココ!流石です!」
ココ「余裕余裕!」
ソーニャ「この後は何するんだ?」
ココ「うーん・・・船に戻って、武器の準備が出来るまではちょっと暇になるかな。」
ソーニャ「そうか」
ココ「何?物足りない?もっとバンバン銃撃戦とかやりたい?」
ソーニャ「・・・いや、遠慮しておく」
キャーキャー...
あぎり「下の方、騒がしくなってきましたね〜」
ヨナ「なんで狙われた!?全く分からない!」
あぎり「おそらく、やすなさんでしょうね〜」
やすな「私!?」
あぎり「ソーニャと一緒にいすぎたんですよ〜。そう、敵に人質に使えると判断されるくらいに〜」
やすな「にしてもなんでこんな時に限って!・・・ごめんねヨナ君」
ヨナ「僕はいいんだ。でも、殺し屋と友達でいたいならこれくらい覚悟しなきゃならない」
ヨナ「やすなはそれは分かってるのか?」
やすな「もちろんだよ!ちょっとくらい怖くても大丈夫!」
ヨナ「・・・」
やすな「了解!」
やすな「せーの!」ガチャ
グッ
やすな「っ!?」
ヨナ「やすな!!」
刺客「まんまと出てきたな・・・?」
船内
ソーニャ「・・・」
バルメ「元の世界のことでも考えてるんですか?」
ソーニャ「うおっ!?・・・いたのか」
バルメ「私に気付かないとは、相当考え込んでましたね」
ソーニャ「も、元の世界のことなんか考えてない!」
バルメ「嘘。私も時々昔の事を考えますけど、ココ曰く、どこか遠くを見ている目をしているらしいです」
バルメ「ちょうど今の貴女みたいに。」
ソーニャ「・・・駄目なんだ」
バルメ「えっ」
ソーニャ「アイツから離れたくてついに別世界まで来てしまったというのに、結局気が付くとアイツの事を考えてる」
ソーニャ「・・・浸食されまくってるな、私」
バルメ「その子のこと、どう思ってるんです?ソーニャは。」
ソーニャ「ウザい!絡んで来んな!バカ!そんな簡単に殺し屋辞められるか!・・・って感じだ」
バルメ「アッハハ、素直じゃないんですねぇ!」
ソーニャ「・・・?」
ヨナ「くっ」チャキッ
あぎり「あ、駄目ですよ〜」
ヨナ「どうして!はやく殺らないとやすなが危ない!」
あぎり「・・・ソーニャはやすなさんの前で人を殺したことが無いんですよ」
ヨナ「!」
あぎり「何回か刺客の襲撃にも遭いましたけど、敵を殺さずやすなさんを救ってたんです」
あぎり「何故だか分かりますか〜?」
ヨナ「・・・なんでだ?」
あぎり「目の前で人が死ぬのなんて見たら、普通おかしくなっちゃいますよ〜」
あぎり「ソーニャはやすなさんの綺麗な心を守りたいと思ってるんです」
あぎり「あの子は優しい子ですよ〜、殺し屋には似合わないくらいに・・・」
ヨナ「・・・」
やすな「助けてぇ!ソーニャちゃあーーんっ!」
ヨナ「・・・世の中、まだまだ知らない人間がたくさんいるんだな」
バルメ「それはつまり、愛です!!」
ソーニャ「は!?」
バルメ「羨ましいくらいに愛し合ってますね!気付いてないみたいですけど!」
ソーニャ「愛っ・・・て、そんなわけないだろ!!何考えてんだ!!///」
バルメ「正直愛は言い過ぎましたけど、仲が良いんですよ結局。うすうす勘付いてたんじゃないですか?」
ソーニャ「・・・まぁな」
ソーニャ「いればウザいがいないと寂しい、そんな奴だよ。アイツは」
ソーニャ「クソウ!何言ってんだよ私は!」
バルメ「・・・もう答えは出たみたいですね。帰ってあげたらいかがです?」
ソーニャ「はぁ・・・ったく、仕方ないな」
ソーニャ「帰ってやるか!アイツ今頃寂しくてピーピー泣いてるだろうからな!」
ヨナ「ごめん、やすな・・・僕じゃ君を守れない」
ヨナ「ココの言った通りだ、僕は銃を捨てられなかった」
ヨナ「僕と友達になるには、君は綺麗すぎる・・・」
キン...
ソーニャ「・・・やっぱり泣いてるじゃねーか」
やすな「ソーニャちゃん!!」
ソーニャ「のこのこ捕まりやがって・・・手間のかかる奴だ」ダッ
グキッ
刺客「ぐあっ・・・」
ココ「ヨ、ヨナ?ヨナだよね!?」
ヨナ「ただいま、ココ」
ココ「ヨナ〜っ!会いたかったよぉ!」
バルメ「ココ!いたんですか!」
ココ「結構前からね!んもー、心配したよヨナぁー!」グリグリ
ヨナ「・・・ごめんココ、勝手にいなくなって」
ココ「フフーフ!いいっていいって!それより聞く?可愛い殺し屋さんの話!」
ヨナ「いい。もうたくさん聞いたから」
ココ「君にそっくりな声しててさ!金髪でちっちゃい女の子なの!」
ヨナ「・・・人の話聞いてる?」
やすな「ねー入ろうよお化け屋敷!」
ソーニャ「断わる!そもそもさっきまで怪奇現象に見舞われてたようなもんじゃねーか!」
やすな「えぇー?言い訳でしょそれ!言い訳していいわけ?」
ソーニャ「ウザい!」バキッ
やすな「ぎゃふなっ!!」
HAPPY END
久々に良いもの見れたよ
寝る前に良いもん見れた
ソーニャ「お前がヨナか」
ヨナ「じゃあ君がソーニャ?」
ソーニャ(声が似てるってこういうことか・・・自分と話してるみたいで気持ち悪い!)
ヨナ(聞いてた通りの金髪ツインテール・・・どう見ても強そうには見えないが)
ココ「ヨナ可愛かったろー!うちの自慢のマスコットだからな!」
やすな「ソーニャちゃんも可愛かったでしょう?うちの自慢のマスコッ・・・」
ソーニャ「マスコットじゃねーーー!!」ヒュンッ
トトトッ
やすな「ひえーーーーー!!」
ヨナ(ナイフだらけ・・・)
ソーニャ「愛し合ってねぇよ!!」ギリギリ
やすな「ぐええええ!!こ、この掛け技も愛の結晶ですよ!」
ソーニャ「てめぇ!その口2度と変な事言えないように縫い合わせてやろうか!!」
やすな「暴力はんたーい!!」
バルメ「ココ!私にも愛の掛け技を!」
ココ「ほんとにやっていいの!?じゃあお言葉に甘えて・・・それーーーっ!」モミモミモミモミ
バルメ「おっほー!テクニカル!テクニカルです!」
ヨナ(収集つかないな)
おわりんこ。
乙
面白かったわ
Entry ⇒ 2012.05.22 | Category ⇒ キルミーベイベーSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
やすな「ソーニャちゃんを無視してみる」
通学路。
前夜に降った雪がくるぶしのあたrまで積もっている。
ソーニャ、一人で歩いている。
そろそろやすなと合流するころだな、と思っている。
ソーニャ「・・・ん?」
しかし通学路を半ばまで歩いてもやすなはやってこない。
いつもなら背後から急接近してきてソーニャに勢いよく挨拶するのだが。
風邪でも引いたかな、と思う。
それともこの積もった雪でテンションがあがってどこかで転んでるのか、と思う。
ありそうだな。ソーニャ自身は気づいていないが口元がちょっぴり笑っている。
なんとなく後ろを振り返ってみる。今まさに駆けて来るかもしれないな、という風に。
10メートルばかり後ろを歩いてるやすなが目に入る。
やすなに変わった様子はない。風邪を引いてる感じでもない。
ただクリーム色のマフラーが顔を隠しいているように見える。誰かの視線を遮るかのように。
ソーニャの頭に軽い閃き。なるほど、今朝はそういうことか。
ソーニャ「(大方、私に気づかれないように接近でもして、後ろから襲うつもりだったんだろうな。バカめ)」
やすなの行動パターンは読めているつものソーニャ。毎日毎日、あのバカのバカ騒ぎに振り回されてるからな・・・。
ふふん、とほくそ笑む。今日は私からやすなにアプローチしてみようか、そんな気持ちが湧き起こる。
ソーニャ、やすながこちらに歩いてくるのを見計らって、声をかける。
ソーニャ「どうしたんだ?風邪でも引いたのか?」
やすな、ソーニャのその声を無視して、脇を通り過ぎる。
ソーニャ、停止。
前を見て、雪をさくさくと踏みながら、いつも通りという風に。
ソーニャ「おい・・・」
ソーニャ、やや低めの声が我知らず出ている。思わず手を伸ばす。
肩、に置こうとした手は、すっと空を切る。
肩を掴めずに引きとめられなかった分だけの距離が、ソーニャとやすなの間に生じる。
ソーニャ「おい!聞こえなかったのか!」
通学路に居た他の生徒達や通行人が軽く驚くほどの強い声がでる。
ソーニャ、なんだかイラついた気持ちになる。やすなの悪戯に振り回されている時とは違う、せっぱつまったような苛立ち。
やすな、止まらず。足を動かし続ける。遠く離れる。
ソーニャ、不意に身体が動き出す。
やすなに駆け寄ろうとして、しかし雪に足を取られて、無様にひっくり返る。
ソーニャ、勢いよく転んで身体が痛くて、雪がとても冷たい。
だがやすなの視線が自分に向けられているのを感じて、他の事はなんだかどうでもよくなるような気がしないでもない。
やすな「・・・・・・(もごもご)
やすなの口元を覆うマフラーがもぞもぞと動いたように見える。
顔をあげる。やすなはもう前を向いている。
足が、動き出す。やすな、転んだままのソーニャから遠ざかる。
ソーニャ、心の中に猛烈な怒りがいきなり炎のように燃え盛るのを感じる。
素早く立ち上がり、雪も払わず走り、今度こそやすなの肩を掴んだ
ソーニャ「や・・・」
何かを言う前に、その手を邪険にふり払われた。
まるで虫にまとわりつかれたかのように。
やすな「・・・」
やすな、無表情でソーニャを見ていたが、興味を失ったかのように通学を再開する。
ソーニャ、怒りが萎え、代わりによく分からない、何だかしょんぼりしたような気分になる。
やすなの後ろをやや離れてついていく。
言葉もないまま、学校につく。
結局、昼休みまでやすなとの間に交流はない。
やすな、授業中はじっと黒板のほうを見つめて勉強に励み、休み時間もふらりと何処かへ行き、ソーニャには一瞥もくれない。
ソーニャ、何だかこちらも依怙地になり、決してやすなの方へと視線を向けない。
(ふん・・・やすなの奴、どういうつもりだ?いつもは鬱陶しいぐらいにまとわりつくくせに。なんだ、そういう遊びか?)
(あえて私を無視しているのか?それで私の反応を見て楽しもうという、そういう遊びか?)
(ふん。まぁ、やすなの、考えそうな、ことだな?)
(別に私にそんなふざけた遊びに付き合う義理はないんだが・・・まぁしょうがないな、やすなに、あえて、付き合ってやろう)
(あえて。そうあえてだ。いつもの私なら、やすなが何か遊びに誘ってきても、まずはそれに反発してみた。文句をつけてきた)
(でもまぁ、たまには・・・何も言わずに、やすなにどういうつもりなのか、問いたださずに、付き合ってやろう)
(他意は、ない・・・)
ソーニャ、そんなことをぐちぐち考えながらいつの間にか昼休みになっていることに気づかない。
実はクラスメイト、いつも周りが這入りこめないぐらいに仲良しの二人が今日は一体どうしたんだ、
喧嘩でもしたのか、とざわざわしているが、それは別の話。
ソーニャ、思わず時計を見上げ、今が昼休みだと知る。
やすな、教室のドアを開けて廊下にでる。
ソーニャ、その背中を何もせずに見送る。昼食をとりにいくんだな、とぼんやり思う。
教室、開放的なざわめきに溢れている。
ソーニャ、自分も鞄から弁当をとりだす。といってもコンビニで買ったカツサンドだが・・・。
サンドイッチの包装を開けようとして、今日は一人なのか、と思い、なぜ一人なのかと言えば、
やすなに無視されているからだと思い、すべての動きが止まる。
ソーニャ「(やすなに・・・無視されている・・・?)」
ソーニャ、その言葉の意味を考える。
人が無視されるのはどういう状況だろうか?
という問いに、真っ先に浮かび上がってきた答えは。
ソーニャ「(嫌われているから・・・?)」
ごん、と大きな音がした。
クラスメイト、びくりと震えて、音源に目を向ける。
頭の両脇に結った金色のツインテールが特徴的で、白い肌と冷たい青い目がとてもクール、
ミステリアス雰囲気で人をなかなか寄せ付けず、だが折部やすなとは微笑ましいぐらいn仲良しな美少女が、
机に顔面を押し付けて震えている。
ソーニャ「(・・・・・・・!!!)」
ソーニャ、そう思うだけで何故か心臓が早鐘を打った、脈が乱れた、背筋がわざわさした。
ソーニャ「何故だ・・・)」
その何故だは、何故やすな如きにまぁ嫌われたぐらいでこんな風に取り乱しているのだの何故だであり、
何故私はやすなに嫌われてしまったんだの何故だであり、つまりはとっても心が痛くなる何故だなのであった。
ソーニャ「(待て・・・遊びの可能性もあるぞ・・・さっき私が自分で考えたように・・・)」
思い浮かべる。
やすな『そーだ!ソーニャちゃんを無視したらどういう反応が返ってくるか試してみよう!』
やすな『ははぁん。ソーニャちゃんったら、慌てちゃうかも。私に嫌われちゃった、なんて思っちゃったりして!』
などと楽しそうに言っているやすなの姿があまりにもリアルに想像できる。
ソーニャ、ほっとするぐらいに身体の力が抜ける。そうだ、そうに違いない。これは遊びだ。やすなのいつもの気まぐれ、
しょうもないイタズラ。私がため息をつきながら、あきれながら、それでもしぶしぶ付き合って、最後にはドーンとぶん殴っておしまい。
いつものパターン。いつもの日常のありふれた光景。ソーニャの心に平穏が戻る。
落ち込んでいた体勢を直し、しっかりと頭をあげる。
ふぅ、私としたことが、危うくやすなの思惑にはまってしまうところだったな、と思いながら、
昼食を再開しようとして、カツサンドは右手の中で握りつぶされている。
やすな、昼休み終了5分前の予鈴がなったところで戻ってくる。
ソーニャ、ちらりとやすなに目を向ける。今朝と同じ無表情。冷たい表情、とも言える。
こいつにこんな顔は似合わないな、とナチュラルに思う。ナチュラルすぎて自分でも気づかない。
やすな、自分の席に座る。弁当箱を鞄にしまい、教科書をとりだす。次は英語。
ソーニャ、ふふんと内心でほくそ笑む。むしろこいつは。
むしろこいつは、やすなは、私がこの『無視ゲーム』に対して反応を見せないことに戸惑ってるはずだ。
なかなか堂に入った無表情だが、なに、すぐに崩れるさ。放課後になるころには辛抱を切らすか、
ゲーム自体に飽きて、いつも通りに、ソーニャちゃーん、なんて馴れ馴れしく話しかけてくるはずだ。
私は殺し屋なのにな。むしろ私がやすなを無視するべきなんじゃないのか?そうだ、そうしたら今度は私が無視してやるのも面白いな。
ふふっ。
ソーニャ、真相を看破したような気分なので鷹揚と構えている。
昼の授業開始の鐘、教師が入ってくる。
授業開始、しばらくして教師が告げる。
教師「隣の席の人とお互いに、英語でしゃべってみてください」
ソーニャ、停止。
そんな和やかな雰囲気の中、しーんと静まり返った一画。
ソーニャ、何も考えられずに停止したまま、横目でちらちらとやすなを伺う。
やすな、じっと前方を見つめている。
ソーニャ、先ほどまでの余裕はどこへやら、どうするんだどうするんだ、でも授業だしな、などとわさわさ考えてる。
このまま黙っててもしょうがな、授業態度に問題があってはいけないだろう、うんそうだ、意を決しやすなに声をかける。
ソーニャ「や・・・」
やすなはそれを待っていたかのように席を立つ。ソーニャの方を見向きもせずにすたすたと歩くと、
ある一人のクラスメイトに声をかける。
やすな「ねぇ、一緒にやらない?」
そのクラスメイトも隣の席の人が欠席していたので相手が見つからなかったのだろう、すぐに頷く。
やすなとクラスメイト、楽しげにお互いに拙い英語でしゃべりはじめる。
ソーニャ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
夕暮れの太陽の光がなんだか切なくソーニャの影を伸ばしている。
結局、英語の相手は、一人で呆然と席に座ったままのソーニャに声をかけた教師だった。
やすなは笑っていた。あのクラスメイトと一緒に。
今日、決してソーニャが見ることがなかったあの笑顔。
聞くことのなかったあの声。
それをあのクラスメイト(名前は・・・知らなかった)に向けて・・・。
そのクラスメイトといえば、いいの?という戸惑った表情をソーニャに時折、向けていた。
こうして自分がやすなの相手をしていていいのか、それはソーニャだけの役目なのでは、と言いたげなその目に、
しかしソーニャは何と答えればいいのか分からず、ただ下を向いていただけだった。何かに耐えるように。
ソーニャ「(やすな・・・)」
授業が終わると、やすなはすぐに教室を出て行った。
ソーニャちゃーん、なんて声をかけてこなかった。
それどころか一瞬でもソーニャを観ようとすらしなかった。
ソーニャは悟った。
ソーニャ「(私はやすなに・・・嫌われてしまったんだ)」
何か嫌われるようなことをしてしまっただろうか。
思い返してみる。
回想は5秒で終わる。
心当たりしかなかった。
真冬だというのに、全身から汗が噴き出そうだった。
やすなを殴った記憶ばかりが脳裏を流れては消えていく。やすなの親しげな言葉を鬱陶しいと
無遠慮に切り捨てている自分。名前を呼びかけられても面倒くさげにしか答えない自分。やすなの
持ってきた玩具をバカらしいと壊す自分。ただ朝の挨拶をしようとしただけのやすなの腕を脱臼させている自分。
ナイフなどの凶器を得意げに振り回してやすなを怖がらせている自分。殺し屋なんかダメだよとおちゃらけた
態度の下で本気の心配をしていたやすなを邪険にあしらってた自分。
ソーニャ、自分で自分の事をこいつは酷いと思う。
嫌われて当然だ、とも。
やすなが鬱陶しいのは事実だ。周囲の目も何も気にせずに無遠慮に大きな声で人の名前を呼ぶし、
こっちの気分などお構いなしで子供じみた遊びに付き合わせようとするし、それを拒否すればやっぱり
子供じみた挑発をしてきてイラッとさせるし、じゃあ遊んでやるかとなると大抵はロクな結果にならない。
というか殆ど私だって酷い目にあってきただろう。池に落ちたり、犬に追い掛け回されたり、落とし穴に転落したり・・・。
ソーニャ、私がやすなを、ぞんざいん扱ってしまうのも当然だ、と思う。
ソーニャ、でも・・・と思う。
でも、何だろうか。
次に続く言葉。
それは。
ソーニャ、前方不注意により、朝と同じように雪に足をとられて転ぶ。
雪。
ソーニャ、もし今日がいつもと同じ日だったなら、と思う。
やすなはきっとこの雪を使った遊びに、私を誘ったんだろうな。
雪合戦か、雪だるまを作ろうと言い出すか、やすなは手先が意外に器用だから、
雪で何か別のものを作るかもしれない。きっと私を呆れさせる何かを作って、私はそれに実際に呆れてみせて、
やすながバカな事をして、私はそれに怒って、なんだろう、雪玉を思いっきり投げたりするのだろうか、そして投げ合いになって、
お互い雪まみれになったところで、なんだか笑えるようなおかしな気分になる、でも私はそれを顔に出さないように冷静に振る舞って、
最後にはうざったいやすなに痛い目を合わせるのだ。そこでやすなが、うぅ酷いよソーニャちゃん、と言って、ここで私は初めて
ニヤリと笑って見せる。お前はバカだなという風に、本当は。
本当は。
ソーニャ、目元に水のような感触。
ソーニャ、顔についた雪が溶けて水になって、目元から流れていくに違いないと思う。
その液体の、雪解け水ならばちょっと考えられないような温かさ、熱さはあえて無視する。
不意に頭の後ろに衝撃。
ざらざらした何かが髪の毛にからみ、耳の穴のはいり、頬を伝って顔を滑り落ち、服の隙間から背中に侵入してくる。
そして冷たさがざらざらに触れた部分に襲い掛かってくる。
雪だ。
ソーニャ、瞬時に跳ね起きて、とりわけ背中に入った雪に四苦八苦する。
誰かに雪をぶつけられたのだ、と頭がおいつくと、辺りをきょろきょろと見渡す。
ソーニャの前方5メートルぐらいにいる。
地面からすくった雪を両手でぎゅっと丸めている、やすなを発見する
ぐらり、と身体が傾ぐ。が、何とか踏みとどまる。
頭を振ると髪に付着した雪が、夕暮れの光をあびる。金色の髪がキラキラと光っているみたいだ。
やすなはすかさず三発目の雪玉の製作にとりかかるべく、足元の雪をすくおうとして、ソーニャが怒鳴る。
ソーニャ「おい!何のつもりだ!」
見れば、顔から足元まで漏れなく全身雪まみれだ。ぶるぶると頭をふる姿は子犬を連想させて、やすなは思わず、ぷっ、と吹き出す。
ははぁこいつはどうやら私にぶっ飛ばされたいようだな、とこちらもいつも通りの怒りが湧いてくる。
本当にいつも通りのあの感じ。言いたいことはあるけれど。
ソーニャ、すかさず足元の雪をかき集めて素早く雪玉を作る。
やすな、慌てて自分も同じようにする。
ほぼ同時に雪玉を完成し、ほぼ同時に投げられ、しかし命中するのはソーニャの剛速球だけ。
やすな、後頭部から勢いよく倒れこむ。
ソーニャ、あ、と声を漏らす。
やすな、立ち上がる。
ソーニャ、内心ドキドキだが、顔は、ふふん、という感じ。
やすな、ちょっと間を置いて、そして満面の笑みを浮かべると、
やすな「やったなーーー!ソーニャちゃーーーーん!!」
下から上へと両手を振り回し、除雪車のようにソーニャに雪をばら撒いてきた。
ソーニャ、あとは言葉にならず、やすなと遊んだ。
場所、川沿いの広場のベンチ。
二人、遊び疲れてベンチにお互いの身体を寄せ合うようにして座っている。
服越しに、身体の柔らかさと仄かな体温が伝わってくるが、荒い息を整えるので精一杯でそれどころではない。
雪玉をさんざん投げ合った後、めぼしい雪を投げつくしたのに気づいた二人は場所を変えると、雪がまだ誰にも踏み荒らされていない
この広場を発見、テンションがハイになったやすなは哀れな新雪を転がることによって蹂躙した。その転がる動作から雪だるまの製作を思いつき、
ソーニャちゃん、雪だるまつっくろーよっ!と声をかけ、やれやれやすなは子供だな、というお約束のような事をいうソーニャと一緒に雪だるまを
6つ作成した。作成している最中、やすなのどうしようもない思いつきと気まぐれ、それに対するソーニャの手痛いツッコミ(ナイフは出さなかった)によって作業はしばしば中断、
そしてようや製作が終わり、6つは作り過ぎだよぉ!いくらなんでも!とやすなが自らツッコミをいれたところで体力が空っぽになる。
でもちょっと微笑むぐらいの体力はあった。
やすな「ソーニャちゃん・・・ニヤニヤ笑っちゃって。どうしちゃったの?」
やすな「はっ、もしかして!そんなに雪だるま作るの楽しかったんだ!ははーん、ソーニャちゃんてば子供だなー!」
ソーニャ、その快活なやすなの言葉になんだか嬉しくなりながらも、腕を極めた。
やすな「いたたたたたたた!ごめんなさいごめんなさい!」
やすなの服装、コートを着込んでいるので離れているときは分からなかったが、コートの下は制服ではなかった。
ソーニャも何度かしか見たことのないやすなの私服。
一度、家に帰ったの「いたたたたソーニャちゃん腕放してよぉ!」だろうか?とりあえず腕を放した。
やすな、ふーっふーっと大袈裟に腕に息を吹きかけながら、くそぅくそぅ、と小声で毒づいている。
ソーニャ、率直に聞いた。
ソーニャ「お前、一回、家に帰ったのか?」
やすな、その言葉に、?、を頭に浮かべた。
何を言っているのか分からないと言う顔。
ソーニャ、不意に物凄く嫌な予感に襲われた。
なんだろうか・・・私は何かとんでもない馬鹿げた勘違いをしていたような・・・。
それでも聞いた。
ソーニャ「お前・・・制服をどうしたんだ?」
やすなは今日一日を引っ繰り返した。
やすな「制服?今日は学校に行ってないから来てないよ?あ、言ってなかったっけ。風邪ひいてさ、家で寝てたんだよ!」
まさか。
あのオチか。
まさか・・・。
今日これまで一度も姿を見せなかったあいつか?
あいつが。まさか。でもそんな。いいのか?そんな安直な答えで。
ソーニャ、とんでもなく険しい顔で沈黙する。
やすな、それに気づかず今日の己の行動を説明する。
今日朝起きたらちょっと体調が悪かったんだ。昨日の夜、アイスを食べまくったのがいけなかったのかも。でも炬燵に入りながら食べるアイスって美味しいよね。
でも窓から外を見ればもう一面の銀世界!これは学校に行かねば、と準備万端で家を出たのはいいんだけど、いつもソーニャちゃんと合流するあたりの
ちょっと手前で倒れちゃって、頭もなんだかふらふらするし、あーどうしようかなーって、でも雪が冷たくて気持ちいいなーって思ってたら、
大丈夫ですかー
って声をかけられて。
ソーニャ、心の底から聞きたくなかったけど、聞いた。
ソーニャ「・・・・・・・・誰に?」
やすな「え?あぎりさんだけど」
ふざけるな、とソーニャは思う。
時間を返せ、という気分になる。
それであーもう学校にいけないなー、ソーニャちゃんと遊べないなー、そういえばソーニャちゃんであれやってみたかったなーって、
自分でも気づかないうちに独り言を言ってたみたで、あぎりさんが、
あぎり「あれってなんですかー?」
って聞いてきて。こう言ったの。
ソーニャ、どっと疲れる。いやもう本当に疲れたとう感じ。
やすなが何て言ったか?それはもう分かっている。
やすな「ソーニャちゃんを無視してみようかなーって」
あぎりさん、首を傾げて、なんで無視するんですかーって聞いてくるから、うーん、なんでっていうか、
昨日アイスを食べながら何となく思いついたことだからよく分からないけど、
やすな「ソーニャちゃんがどんな反応するのか見てみたいかなー・・・」
って、そしたらあぎりさん、分かりましたーって部屋を出ていって、何が分かったんだろうって思ったけど
そこで疲れて寝ちゃって、それで起きたらもう夕方で、なんだか身体の調子もいいし、これは雪で遊ばなければ!
って外に出て歩いてたら、なぜかソーニャちゃんが倒れてて、思わず頭に雪をぶつけちゃった。ごめんねソーニャちゃん。
ソーニャ、どうやらあの時、私は無意識のうちにやすなの家のあたりを目指していたらしい、と思う。
今思い返してみれば、今日の学校でのやすなには違和感をずっと覚えていた。
たぶん・・・。
マフラーで顔を隠していたとか、声をソーニャに聞かせようとしなかったとか、関わってボロを出さないようにしてたとか、そういう感じの・・・。
ただ、私は。
通学路でやすなに無視されたときに、私はきっと酷く動揺してしまったんだろうな、と思う。
正確にはやすなに化けたあぎりだが・・・。
それで今日はずっと戸惑って、悩んで、迷って、馬鹿みたいに落ち込んで、空回って。
強がって。
そして英語の授業の時の、あれで、私は決定的に。
決定的に・・・。ソーニャちゃん?
ソーニャ「え?」
やすな「ソーニャちゃん・・・どうしたの?」
鼻がくっつきそうなほど間近にやすなの顔があった。
やすなも同様。
ソーニャ、さりげなく頭を後ろに引いた。
ソーニャ「お前、倒れている相手に雪をぶつけるなよ」
やすな「うっ。ごめんね、ソーニャちゃん。痛かった?」
ソーニャ「冷たかった。背中にもろに入ったからな」
やすな「どれどれ」
ソーニャ「あ?」
やすな、ソーニャの背中に腕を回して、コートの上から背中を撫でまわした。
自然、さっきよりも二人の距離は近くなる。やすなの頭は今、ソーニャの頭のすぐ横にあり、顎は肩に載っている。
ソーニャ、その抱きしめられているような体勢に、髪の毛が跳びあがりそうになる。
やすな「どう?溶けた?あたたかくなった?」
ソーニャ、答えられない。
ただ己の頬にあたるやすなの髪の意外なほど柔らかさしか考えられなかった。
ソーニャ、ほっとする。なんだか危なかった気がする。
不意に二人とも押し黙り、静けさが訪れる。
ソーニャ、私もやすなの背中に手を回した方がいいのかな、と思うが、ちょっと手が動くけれども、
それは出来ない、とぐっと手を下ろす。
やすな「ねぇソーニャちゃん?」
ソーニャ「・・・何だ?暑苦しいから、離れろよ・・・」。風邪がうつる」
やすな「本当に無視しちゃったどう思う?」
ソーニャ「・・・ふん。お前にはさんざん迷惑をかけられてるからな。せいせいする・・・かもな」
やすな「えー酷いよー」
ソーニャ「間違っても怒ったりなんかしない。落ち込んだりもしない」
やすな「ソーニャちゃんらしいねー」
ソーニャ「・・・できるものならやってみろ。無視してみろ」
やすな「あはは。やんないっよ!」
やすな、ぴょんという風にソーニャから離れる。
それからニンマリと笑う。
やすな「じゃあねソーニャちゃん!また明日。・・・今日はごめんね」
え、と思う間もなくやすなは広場の外へと向かっていく。
その背中は暗さに紛れてすぐに見えなくなった。
ソーニャ、やすなの背中が消えて行った方をじっと見つめている。
その先には夜の黒さしか無い。
ソーニャ、少し考える。
果たして今日のやすなはあぎりが化けたものだったのか、
あるいは誰も化けてなどおらず、本物のやすなだったのだろうか、と。
あぎり化けていたのだとしたら、まぁ風邪を引いてダウンしたやすなの意を汲んだ、というかあの忍者らしい悪ふざけだろう、
私の無様な姿を見て笑っていたのだと思うと殺意めいた感情が沸き起こってくるが、まぁいいだろう、などなどと思う。
では本物のやすなだとしたら?
どういう意図があって?
何故?
・・・分からない。
・・・最後、やすながソーニャから離れる間際、やすなはソーニャの耳元に、ぼそっ、と小さくこういったのだ。
やすな「・・・はっきりしないソーニャちゃんが悪いんだよ・・・」
ソーニャはベンチから立ち上がり、歩き出した。
今日のこれは、やすなの仕返しだったのかもしれない。
だが仕返ししてはちょっと辛かった。痛すぎた。
それを認めよう。
私はやすなに無視されて辛かった。
嫌われたと確信した瞬間は決定的に傷ついた。
その後、帰り道でやすなの笑顔が自分に向けられているのを知ったとき、大いに胸が暖かくなったのを。
というわけでソーニャは密かに誓う。
やすなが無視という強硬手段をとってまで必死にソーニャに伝えたかったこと。
今日、今、己の胸にあるこの暖かさも。
そしてやすな自身を。
明日、一日ぐらいは、無視してやろうか、と。
その傑作な思いつきに、ふふんと笑いながら、ソーニャは自分の家に向かって歩き続けている。
終わり
安易な思いつきでSSなんて書くもんじゃねーわ
寝る
寝る
次は入れ替えてだな…
Entry ⇒ 2012.05.08 | Category ⇒ キルミーベイベーSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
あぎり「にんぽぉ〜百合百合の術を、教えてほしぃ〜んですねぇ〜」
やすな「はい!お願いしますあぎりさん!」
あぎり「じゃ〜ぁ〜、さっそく始めましょぉ〜」
やすな「ヒドイ!ソーニャちゃんだって百合百合の術使いたいでしょ!?」
ソーニャ「私は興味ない」
やすな「私が使えるようになっても教えてあげないんだかんねぇーだ」
ソーニャ「勝手にしろ」
あぎり「まぁま、いいじゃないですかぁ〜」
やすな「で、なにをどうすればいいんですか、あぎりさん!」キラキラ
ソーニャ「教える気ないだろ・・・」
やすな「適当じゃ分からないですよ〜。もっとこう、手っ取り早い方法はないんですか?」
あぎり「お気に召さない・・・困りましたねぇ〜・・・」
ソーニャ「大体やすなが忍法なんか使えるわけがない」
やすな「ヒッドーイ!その言葉覚えといてよね!忍法を使えるようになってビックリさせてやるんだから!」
ソーニャ「あぁ、覚えとく努力はしとく」トテトテ
やすな「あ、ちょっとどこ行くの」
ソーニャ「つまらなさそうだから先に教室に帰ってる」ガラガラ
ピシャン
やすな「ねぇー」
あぎり「じ ゃ〜ぁ〜、しょうがないので私がにんぽぉ百合百合の術を覚えられるの術をかけてあげましょぉ〜」
やすな「やったぁ!すっごぉい!」
あぎり「普通なら800円取りますけどぉ〜、今回だけ、特別ですよぉ〜?」
やすな「結構安いんですね」
やすな「なんだか緊張するな・・・よし!こい!!」
あぎり「にんぽぉ〜百合百合の術を覚えられるのじゅつぅ〜」
やすな「・・・・」
あぎり「はい、かかりましたよぉ〜?」
やすな「あれ?何も変わってないですよあぎりさん」
あぎり「忍法なのでぇ、外見には影響は出ないんですよぉ〜」
チョー「根拠、無し」
あぎり「でぇわぁ、さっそくにんぽぉ百合百合の術を使ってみましょぉ〜」
やすな「え、今ですか?」
あぎり「ためしてみないと、使えるかどうかわかりませんよぉ〜?」
やすな「それもそうですね・・・じゃ、行きますよ!」
あぎり「いつでもどうぞぉ〜」
やすな「忍法!ロボやすな百合ビーッム!!」カッ
あぎり「あぁぁれぇぇぇ〜」
やすな「か、かかりましたか!?」
あぎり「はぃ〜、それはもう十分すぎるほどぉ〜」
やすな「やった!これでソーニャch・・・モゴォ!?」
やすな「あ、あぎりさん、ちょ、どうしたんですかいきなり」
あぎり「だって、かけたじゃないですかぁ〜百合百合の術を〜」
やすな「はっ!しまった!ソーニャちゃんにかけるつもりが!」
あぎり「ソーニャなんかより、私のほうがいいと思いませんか?」フニフニ
やすな「うぅわぁぁ・・・やわらかぃ・・・・」トローン
あぎり「ウフフフフフ」
ガララ
ソーニャ「はやく終わらせないと授業が・・・」
やすな「あ、ソーニャちゃん」
ソーニャ「や、やすな、いったいこれは」
やすな「百合百合の術だよソーニャちゃん!私だって忍法が使えるんだよ!」
ソーニャ「そんな馬鹿な・・・あぎり!また二人して私をだまそうとしてるんだな!」
あぎり「騙すぅ〜?そんなことしても、何の得もありませんよ?」
やすな「本物の忍法ですよねぇー」
あぎり「ねぇ〜」
やすな「えぇ〜せっかくあぎりさんと仲良くなれたのにー」
あぎり「ちょっと、嫉妬してるんじゃないですかねぇ〜」
ソーニャ「馬鹿!そんなこと絶対ない!ほら、行くぞ!」グイグイ
やすな「あぁ、ちょっと、ソーニャちゃーん!」ズルズル
ピシャン!
あぎり「ウフフフフ・・・・」
やすな「もう!ソーニャちゃん強引すぎるよ」
ソーニャ「うるさい。それに私はお前が遅刻して怒られないように迎えに行ってやったんだぞ。少しは感謝しろよ」
やすな「ま、いっか。忍法も使えるようになったしね!」
ソーニャ「ホント かぁ?どうも信じられない」
やすな「言ったね!それじゃソーニャちゃんを私の魅力で虜にしちゃうんだから!」
ソーニャ「こ、コラ、今は授業中だぞ!静かにしろ!」
やすな「忍法!百合やすなビーッム!!」カッ
ソーニャ「ビームかよ!」
やすな「・・・・プハァ、かかった?」
ソーニャ「期待して損した・・・」
チョー「そこー、うるさいぞー」
やすな「す、すいません・・・」
ソーニャ「ほら怒られた」
ソーニャ「ムカー!!」
ゴンッ
やすな「いたたた・・・ヒドイよソーニャちゃん・・・」
やすな(おかしぃなぁ・・・あぎりさんにはかかったの に・・・不発だったのかな・・・)
ソーニャ「忍法なんて馬鹿馬鹿しい」
やすな「待ってました!お昼の時間です!」
ソーニャ「毎日同じこと言ってるよな」
やすな「今日は特別だよ!だって私が忍法を習得したんだから!」
ソーニャ「さっきかかんなかった」モグモグ
やすな「それは・・・たぶん不発弾だったんだよ!」
ソーニャ「忍法に不発なんてあるのか?」
あぎり「ありますよぉ〜?」スルル
やすな「あぎりさぁん!ふぁ!?」
あぎり「ウフフフ〜、寂しかったですよぉ〜?」ギュッ
やすな「ふぁ、やわらかーい・・・」トローン
ソーニャ「・・・ック、コラ!!離れろ!!」
あぎり「怒りんぼさんですねぇ〜」
やすな「ねぇー」
ソーニャ「とにかく離れろ!ほらほら!」グイグイ
あぎり「あれれぇ〜?どぅしたのソーニャー?」
あぎり「そうみたいですねぇ〜」
ソーニャ「違う!」
やすな「じゃあ何で怒ってるの?」
あぎり「何ででしょ〜ねぇ〜?」フニフニ
やすな「うわぁ・・・すごい・・・」トローン
ソーニャ「馬鹿!はやく離れろ!」
ピシャン
あぎり「焼きそばパン持ったまま行っちゃいましたねぇ〜」
やすな「ソーニャちゃん・・・ハッ!たぶんソーニャちゃんはおなかがすいてイライラしてたんだ!」
あぎり「じゃぁ、私たちも、お弁当を食べましょぉ〜」
やすな「やったぁ!」
あぎり「ウフフフフ〜」
ソーニャ「クソゥ!何なんだよやすなのヤツ!あぎりと馴れなれしくしやがって!」モグモグ
ソーニャ「大体あぎりもあぎりで人が良すぎるんだよ」モグモグ
ソーニャ「変なことやすなに教えやがって・・・」モグモグ
ソーニャ「大体やすなと絡んでいいのは私だけって決まってるじゃないか」モグモグ
ソーニャ「クソゥ!」モグモグ
あぎり「お困りですかぁ〜?」ヌルン
ソーニャ「あ、あぎり?・・・なんだよ、もう終わったのか」
ソーニャ「とぼけるな!やすなと・・・やすなと付き合ってるんだろ!」
あぎり「言ってる意味が、ち ょぉっと分からないけど、付き合ってはいませんよぉ?」
ソーニャ「自分で自分の忍法にかかるなんて、あぎりらしくないよな」
あぎり「フフフフフ、ソーニャ、私は、忍法になんかかかっていませんよ?」
ソーニャ「え?」
あぎり「ちょっとかかった振りをして、遊んでいただけです」
ソーニャ「ホントなのか?」
あぎり「疑い深いですねぇ」
ソーニャ「お前もたちが悪いな」
あぎり「まぁま、そんなに怒らないで。いいことを教えてあげますよ?」
ソーニャ「いいこと?」
やすな「もう、みんなどこ行っちゃったんだろ・・・ソーニャちゃんは怒ってどっか行っちゃうし、あぎりさんは気づいたら変わり身になってるし・・・」
ガララ
ソーニャ「・・・ただいま」
やすな「あ、ソーニャちゃん!聞いてよ!いきなりあぎりさんが
ソーニャ「そ、それよりだな!その、なんだ、せっかくだからお前の忍法をもう一回私にだな、その、かけてもだな、今なら許してやる」
やすな「はぁ?いきなり何言ってるのソーニャちゃん?」
やすな「えぇー、あれ疲れるからもういいよー」
ソーニャ「あれだけがんばってやってたのにもうおしまいか!?」
やすな「もう、しょうがないなぁ。これで最後だからね?」
ソーニャ「よし、こい」
やすな「いくよー、ロボやすな百合ビーッム!!」カッ
ソーニャ(来た!)
やすな「そ、ソーニャちゃん大丈夫!?だから言ったのに!私の忍法はソーニャちゃんには強すぎるって!」
ソーニャ「そんなこと一言も言ってなかったぞ」
やすな「なんだ、大丈夫じゃん」
ソーニャ「いや、でもなんだろうな、少し気分が違うというかなんというかだな、その」
やすな「ほらね!やっぱり私には忍者の才能があるんだよ!ほら!ソーニャちゃん!遠慮しないで私の胸に飛び込んでおいで!」
ソーニャ(チャンスなんだ・・・この一回限りのチャンスを逃しちゃダメなんだ・・・!)
やすな「ほら!カモン!ソーニャ!!」
ソーニャ「ゃ・・・やすな・・・」トテトテ
ポフッ
やすな「オーホッ ホッホッホ!ついにソーニャちゃんを虜にしちゃいましたー!」
ソーニャ「あったかぃ・・・」トローン
ちょっとまえ
ソーニャ「やすなと遊んでたってことは、もしかして演技してたのか?」
あぎり「相手の話に合わせるのも、忍者の仕事の内ですからぁ〜」
ソーニャ「ということは忍法なんて最初からウソだったんだな!?」
あぎり「はぃ〜」
ソーニャ「クソゥ!少し信じた私が馬鹿だった!」
あぎり「かなり嫉妬してましたねぇ〜」
ソーニャ「そんなことない!」
あぎり「ソーニャも、やすなさんの忍術にかかった振りをすれば、いろいろと楽しめるんじゃないでしょうかぁ〜?」
ソーニャ「それは・・・」
あ ぎり「かかった振りをすればいいだけですよ?」
ソーニャ「ちょっと無理があるだろ」
あぎり「でも、やすなさんは、完璧に私の演技に騙されてましたよぉ〜?」
ソーニャ「・・・」
やすな「ソーニャちゃん!一緒に帰ろ!」
ソーニャ「あ、あぁ」
やすな「エヘヘぇ、ソーニャちゃんがいつもより優しくってとてもうれしいよ!」
ソーニャ「やすな///」
やすな「ほら、手」
ソーニャ「へ?」
やすな「まさか忍法のショックで手のつなぎ方忘れたの?」
ソーニャ「そ、そんなことない!」ギュムッ
やすな「いたたたた!ギブギブ!!」ダンダン
ソーニャ「あ、ごめん。つい・・・」
やすな「もういいよ・・・手つなぐ のは」
ソーニャ(しまった・・・せっかくのチャンスが・・・)
ソーニャ「へっ?」
やすな「もう!腕の組み方も忘れるなんてどうかしてるよ!」プンプン
ソーニャ「いや、ちがくて」
やすな「いい!?ソーニャちゃんの腕をこうして、私の腕をこうすると」
ソーニャ(うぁぁぁぁぁぁ!)
やすな「こういう具合にカップルのようになります」
ソーニャ「カカカカ・・////」
やすな「じゃ、いこっか、ソーニャちゃん」ニコ
ソーニャ「は、はい////」
あぎり「ウフフフフ〜」
やすな「こうしてると暖かいね!」
ソーニャ「まぁそうだな」
やすな「 今日は忍法が使えるようになってホントによかったよ!」
ソーニャ「あぁ、私もそう思う」
やすな「またまたぁー」
没キャラ「フフフフ・・・待っていたぞこの時を!」
没キャラ「このままやすにゃとソーニャがまっすぐ進めば私が先にしかけておいた落とし穴にはまって・・・主役の座はこの私が引き受けることになるのだ!!」
やすな「ふぇ?何が?」
ソーニャ「その、忍法・・・」
やすな「あぁー、それは決まってるじゃん。ソーニャちゃんが好きだから!」ニコッ
ソーニャ「やすな///」
ズボッ
ソーニャ「いった・・・クッソォ!誰の仕業だ!!」
ソーニャ「馬鹿!これはあきらかに私たちを狙って・・」
やすな「あ!UFOだ!!」
ソーニャ「こんな時になに言って、ハッ!」 キャプキャプキャプキャプキャプキャプキャプ
没キャラ「ニャハハハハ!引っかかったな、やすにゃ!ソーニャ!今日こそ主役の座を、イタタタタ!やめろ!なんだこれ!」 ミョォォォォォン
没キャラ「痛い!おろせぇぇ!うあぁぁぁぁ!助けてぇぇ!やすにゃぁぁ!ソーニャァァ!!!」 キャプキャプキャプキャプキャプキャプキャプ
ソーニャ「なんだあれ・・・・」
やすな「あぎりさんのUFOだよ!」
やすな「もう、こんな罠に引っかかるなんてプロ失格だよソーニャちゃん!」
ソーニャ「なぁにぃ!?この馬鹿やすな!!」ゴン
ソーニャ「お前が腕なんか組ませるから咄嗟に動けなかったんだ!」
やすな「うぅ・・・ひどいよソーニャちゃん・・・」
ソーニャ「まったく・・・これじゃ誰かに助けてもらわないと出れないぞ」
ソーニャ「クソゥ・・・お前のお遊びに付き合ってやったのが間違いだった!」
やすな「それじゃもう一回!ロボやすな百合ビーッム!!!」
ソーニャ「馬鹿!」ビシッ
ソーニャ「最初からそんなの効いてないんだよ!」
やすな「えぇぇ!でもさっきまでかかってたじゃん!」
ソーニャ「それは・・・」
やすな「演技だったんだ・・・クソォクソォ・・・・」
ソーニャ「演技だけじゃなくて・・・その、やすなが・・・・」
やすな「まぁいいや・・・忍法なんて興味ないもんね」
ソーニャ「飽きるのが相変わらず早いな・・・」
やすな「それに忍法になんかに頼らなくても、ソーニャちゃんは私の虜だからね」
ソーニャ「・・・やすな」
やすな「あぎりさん、はやく助けに来るといいね」
ソーニャ「・・・あぁ」ムスッ
やすな「すねないでよソーニャちゃん」
やすな「安心して。ソーニャちゃんは私の一番大好きなお友達なんだから」ニコ
ソーニャ「か、勝手にしろ!」
やすな「なにそれ、ソーニャちゃん照れてるぅ〜!」
ソーニャ「うるさーい!!」バキッ
やすな「ひどいよソーニャちゃーん!」
あぎり「あら〜、なんだか違うものがひっかかってますねぇ〜」
没キャラ「おろせぇぇ!やすにゃぁぁ!ソーニャァ!!助けてくれぇぇ!!」
あぎり「それでは、あなたには、忍術の練習につきあってもらいましょぉ〜」
没キャラ「やぁぁぁぁぁぁ!!!」
あぎり「ウフフフフフフ〜」
「教える嘘は百合の味」
Entry ⇒ 2012.05.03 | Category ⇒ キルミーベイベーSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
やすな「やすニャ短編3本だよ!」ソーニャ「4本だ、バカ」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1334326075/
サワッディカーップ!私、折部やすな!実はソーニャちゃんの恋人!
色々あってめでたく結ばれたわけなんだけど、ソーニャちゃんにはある癖があって…困ってるんです!
やすな「ソーニャちゃーん!」
ソーニャ「おう」
やすな「おはよ!」
ソーニャ「おはよう」
やすな「もうー元気ないなぁ…朝なんだからシャキッとしなきゃ!」
ソーニャ「朝からうるさいなお前は…」
やすな「そんなこと言ってーそんな私が好きなくせに!」ウリウリ
ソーニャ「うっ…」カァッ
やすな「照れてる!かっわいー!」ギュッ
ソーニャ「ば、ばか!くっつくな!」
ソーニャ「バカかお前は!こんな道端でなに考えてるんだ!」
やすな「えー…じゃあ一回ぎゅってしてくれたら離してあげる」
ソーニャ「……………」
ぎゅっ
やすな「あ…えへへ…」
ソーニャ(か、かわいい…)キュンッ
やすな「ソーニャちゃーん…」ギュッ
ソーニャ(かわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいいかわいい)ギュウウウウウウウウウウウッ
やすな「あああああああああ!!!痛い!痛いよソーニャちゃん!」
ソーニャ「で、でもお前が可愛いからっ…!」ハァッハァッハァッハァッ
ぎゅうううううううううううううううううう!!!!!!!
やすな「離して!死んじゃう!死んじゃうううううううう!!!!」ジタバタ
ソーニャ「し、死ぬ?死ぬのか?私に殺されるのか?私のこの手でお前を殺せるのか!?いいのか!?いいだろ!?いいよな!?好きだぞやすな!それはもう殺したいぐらいに好きだ!!!愛してる!!!!!」ハァハァハァハァハァハァ
やすな「しまった!逆に興奮させちゃっ…あああああああああああああああ!!!!!!!」
やすな(こうなったらあの魔法の呪文を…!)
やすな「ソーニャちゃん!離さないと嫌いになるよ!!!」
ソーニャ「!」パッ
やすな「うっ!げほっ!けほっ!っ…はぁっはぁっ………ふぅ…」
ソーニャ「あ…す、すまん私また…」
やすな「………ソーニャちゃん」ジトッ
ソーニャ「う…」
やすな「めっ!」
ソーニャ「…」シュン
そう、ソーニャちゃんの癖とは…
好きって気持ちが高ぶると、相手を殺したくなっちゃうらしいのです。
ソーニャ(いくつも命があれば何回でもやすなを…)ジュルッ
やすな「……今変なこと考えなかった?」
ソーニャ「い!いや!?」ビクッ
やすな「ふぅん…?」ジー
ソーニャ(くっくそ!バカのくせに“女の感”だけは鋭い…)キョドキョド
やすな「ま、いっか」
ソーニャ(やっぱりバカはバカだな)フゥ
やすな「でもさーソーニャちゃん私でよかったね」
ソーニャ「なにがだ?」
やすな「私丈夫だから平気だけど普通の子だったらさっきので死んでるよ」
ソーニャ「ふーん(いいんだか悪いんだか…)」
ソーニャ「!」キュンッ
ソーニャ「や、やす…!」チャキッ
やすな「めっ!」
ソーニャ「!」ピタッ
やすな「嫌いになるよ」
ソーニャ「………分かってるよ」シュン
やすな(やだかわいい)キュン
ソーニャ「病気みたいな言い方するな」
やすな「好きな人殺したいなんて病気だよ…」
ソーニャ(正論っぽいがこいつに言われるとすげー腹立つ!)
やすな「そもそもなんでそんな歪んだ愛情持つようになっちゃったの?」
ソーニャ「私に聞かれても知らん」
やすな「ソーニャちゃんのことなんだからソーニャちゃんに聞かなきゃ誰に聞くのさ!」
ソーニャ「そう言われてもなぁ…」
やすな「分かった!殺し屋なんてやってるからいけないんだよ!だからそんな歪んだ子になっちゃったんだ」
ソーニャ「誰が歪んでるって!?」
やすな「ごめんなさい!」
ソーニャ「まったく…」
やすな「ねぇー殺し屋やめようよー」
ソーニャ「簡単に言うな。辞める=死だ」
やすな「じゃ、じゃあ組織の人間全員殺してから…」
やすな「そんなぁ…」
ソーニャ「私が殺し屋なのが嫌なのか?」
やすな「嫌だよ!普通嫌だよ!」
ソーニャ「でもビンのフタ開けるのに栓抜きいらないし、殺したい奴いたら殺せるし、便利だろう?」
やすな「そんな便利さいらないよ!」
ソーニャ「なにがそんなに嫌なんだ?」
やすな「ソーニャちゃんが誰かを傷つけることも嫌だけどソーニャちゃんが危ない目にあったりしたらやなんだもん…」
ソーニャ「やすっ…!」キュンッ
やすな「めっ!」
ソーニャ「………」シュン
ソーニャ「パン買ってくる」
やすな「あ、待ってソーニャちゃん」
ソーニャ「?」
やすな「はいこれお弁当!」
ソーニャ「え…わ、私に?」
やすな「うん!お母さんに頼んで作ってもらった!」
ソーニャ「そ、そうか…」ジーン
やすな「ごめんね、本当は私が作ったのあげたかったんだけどあんまり料理したことないから…」
やすな「料理勉強して上手になったらソーニャちゃんに私の手作りのお弁当毎日作ってきてあげるね!」
ソーニャ「やすな…」ジィィィーン
ソーニャ(………殺したい)ウズウズ
やすな「さ、食べよ!」
ソーニャ「あっ」
やすな「え?」
やすな「なに?なんかあるの?」
ソーニャ「いや、髪が赤と黒色したおさげの奴がいた気がしたんだけど気のせいだった」
やすな「髪が赤と黒ー?変なの!」ケラケラ
やすな「じゃ、たべよっか!いただきまー…す?」
ソーニャ「………」ソワソワ
やすな「………ソーニャちゃん」
ソーニャ「な、なんだ?」
やすな「お弁当になにか入れたでしょ」
ソーニャ「……しらない」
やすな「じゃあなんでタコさんウィンナーが紫なの!?おかしいよ!」
ソーニャ「それは…その…だから…」キョドキョド
やすな「…ソーニャちゃん」
ソーニャ「……なんだ?」
ソーニャ「う…」シュン
やすな「もー!食べ物無駄にしたらだめでしょお!?」
ソーニャ「す、すまん……じゃあこれ…」
やすな「だめ!それは私がソーニャちゃんにあげたんだから!」
ソーニャ「じゃあ購買で何か買ってくるよ…何がいい?」
やすな「やきそばパンとメロンパン。あとトマト牛乳も!」
ソーニャ「分かった…」トボトボ
ソーニャ「すまん…」モグモグ
やすな「ね、それでお弁当作るとしたらなにがいい?」
やすな「あ、パンがいい?ソーニャちゃんいつもパンだもんね。サンドウィッチとか?」
ソーニャ「…お前が作るならなんでもいい」
やすな「なんでもいいが一番困るってお母さんがいつも言ってる!」
ソーニャ「でも…お前が作ってくれるなら何でも嬉しいし…」
やすな「ソーニャちゃん…」キュン
ソーニャ「たとえ毒入りでも私は食べる」
やすな「ソーニャちゃんじゃないんだからそんなことしないよ!」
ソーニャ「んー……やきそばパン」
やすな「いつも食べてるじゃん…でもやきそばパンなら私にもできそう!」
ソーニャ「おぉ」
やすな「ペヤ○グ作ってパンに挟めばいいだけだもんね!」
ソーニャ「待て」
やすな「え?あ、U○O派?それとも一平○ゃん?それともニューフェイスのジャ○ジャン?」
ソーニャ(………なんでこんなにバカなのに殺せないんだろう)
ソーニャ「行儀悪いぞ」
やすな「んもぉー!堅いこと言わないの!誰だってお腹いっぱいになったらぽんぽんするんだから!ソーニャちゃん女の子に幻想抱きすぎなんじゃないの~?」
ソーニャ「私も女なんだが」
やすな「ふぁ…食べたら眠くなっちゃった…」
ソーニャ「まんまガキだな…」
やすな「とゆーわけでお休み」
ソーニャ「おい、もう授業始まるぞ」
やすな「だって眠いんだもん…ノートよろし…く…」
ソーニャ「あ、コラ……ったく」
やすな「…」スースー
ソーニャ(寝付き良すぎだろ…)クスッ
やすな「…」スースー
ソーニャ「………」
ソーニャ(な、なんて可愛い寝顔してやがるんだこいつは…!)キュンッ
ソーニャ(殺したい!)ブルブル
ソーニャ(いやっだめだ!そんなことしたらやすなに嫌われ…)
やすな「んん……ソーニャちゃぁん…」ムニャムニャ
ソーニャ「!?」キューンッ
ソーニャ(だっ…だめだ!もう我慢できない…!)ハァーッハァーッ
やすな「むにゃ…」ムニャムニャ
ソーニャ「愛してる!愛してるぞ!やすなあああああああああ!!!!」チャキッ
やすな「めっ」
ソーニャ「!!!!??」ビクゥッ
やすな「めっ…」
ソーニャ「う…」シュン
やすな「めっ……め……めんつゆ…あぎりさん秘伝のめんつゆ…飲んじゃだめだよソーニャちゃん…」ムニャムニャ
ソーニャ「寝言かよ!っていうか飲まねぇよ!」
ザワザワ
「折部さんに向かって言ってたわ!」
ヒソヒソ
「百合ですね~」
ギリギリ
ソーニャ「うっ…!」カァッ
ソーニャ「うわあああああああああああ!!!」ダッ
やすな「………んー…?ソーニャちゃん…?」ムクッ
やすな「ソーニャちゃんなんで早退しちゃったの?それも私が寝てる間に!」キィッ
ソーニャ「い、色々あったんだよ…(くそっ…!明日からどんな顔して教室にいけばいいんだ!)」
やすな「ふーん?あ、ねぇねぇ!クレープ食べに行こうよ!」
ソーニャ「またか…好きだな」
やすな「ソーニャちゃんのが好きだけどねー」
ソーニャ「っ…」キュンッ
やすな「いこっ!」グイッ
ソーニャ「ば、ばか!あんなこと言ったあとすぐに手なんか握って…!……ほ、本当は私に殺されたがって…?」
やすな「ないよ」
ソーニャ「………」
やすな「めーっ」
ソーニャ「…」シュン
やすな「さーいこいこ!」グイグイ
ソーニャ(2、3、5、7、11、13、17、19、23、29…)
やすな「私はちみつクレープ!ソーニャちゃんは?」
ソーニャ(739、743、751、757…)
やすな「ソーニャちゃん!」
ソーニャ「!」ハッ
やすな「何味がいい?」
ソーニャ「あ…お、同じので」
やすな「はちみつクレープ二つください!」
クレープ屋のおっちゃん「あいよー」
ソーニャ「…」ハムハム
やすな「ソーニャちゃんのも一口ちょーだい!」
ソーニャ「同じ味だろ」
やすな「チッ…気付かれた」
ソーニャ「お前じゃないんだから気付く」ハムハム
やすな「どういう意味?」
ソーニャ「そういう意味」ハムハム
やすな「???」
ソーニャ(バカだな)ハムハム
やすな「むー…いいもーん!私のもあげないんだから!」ハムハムハムハム
ソーニャ「いらん」
やすな「でも間接ちゅーできるよ?」
ソーニャ「…」ピクッ
ソーニャ「………」ソワソワソワソワ
やすな「へっへーん!残念でした!もう食べちゃったもんねー!」
ソーニャ「あ…」
やすな「え?」
ソーニャ「………」シュン
やすな「も、もしかして本当にしたかった?」
ソーニャ「……べつに」プイッ
やすな「え、えっと………間接じゃなくて…いいなら…」カァッ
ソーニャ「……いいのか?」
やすな「う、うん…」ドキドキ
ソーニャ「じゃあ…」ソッ
やすな「っ…」ギュッ
ちゅ
やすな(うわ…ソーニャちゃんの唇あったかい…やわらかいし…なんか甘い味が…)ドキドキ
やすな「!?」
やすな(ソ、ソーニャちゃんのべろが私の中に!)アワワ
ソーニャ「ちゅ……ん……っ…」
やすな「んっ…んっ………っふ…」
やすな(……きもちいい)トロン…
ソーニャ(…………………)
がぶっ!
やすな「!?」
ソーニャ(やすなやすなやすなやすなやすなやすなやすなやすなやすなやすなやすなやすなやすなやすなやすなやすなやすなやすなやすなやすなやすなやすな…!!!)
ソーニャ(やすなの唇やわらかいやすなの口の中あったかいやすなの舌エロいやすなの唾液おいしい一生やすなの唾液だけ飲んで生きていたい可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い!!!!!!)ハァハァハァハァハァハァ
やすな「いひゃい!!!ホーニャひゃんいひゃい!!!!!!!」バシバシ
ソーニャ(このエロ可愛い舌噛み切ればやすなは死んで私だけのものになるし噛み切ったらしばらく口の中でもごもごさせてから飲み込もうそしたらまたやすなにキスして血だらけになった口の中の血と唾液がなくなるまで飲み干してそしたら一旦家に連れて帰って…)ハァハァハァハァハァハァ
やすな(な、なんかすごくおぞましい予感が…!!!!)
ドンッ
ソーニャ「わっ!?」
やすな「うわ…口の中血の味がする…」グスッ
ソーニャ(………)ポワーン
やすな「ソーニャちゃん…」キッ
ソーニャ「…」ハッ
やすな「めっ!!!!!!」
ソーニャ「う…」シュン
やすな「もー!!!!危なっかしくてソーニャちゃんとなんかちゅーできないよ!!!!!」
ソーニャ「え…」
やすな「ちゅーしたかったら早急にその癖治して!はい!今すぐ!」
ソーニャ「無茶言うなよ…」
やすな「治るまでちゅーしないよ!」
ソーニャ「…」シュン
ソーニャ「………」シューン
やすな「だっ…だまされない!だまされないぞぅ!」
やすな「その癖治すまで本当にちゅーしないからね!ほっ本当だからね!」
ソーニャ「………じゃあ」
やすな「え?」
ソーニャ「…抱きしめてもいいか」
やすな「い、いいけど…」キュン
ソーニャ「やすな…」ギュッ
やすな(う…)ギシッ
やすな(ソーニャちゃんから来られると恥ずかしい…)カァッ
やすな(ちゅーのときもそうだったけど恥ずかしがり屋なのに…こういうとき肉食系に戻るんだ…)
やすな(……………ん?肉食系?)
やすな「あああああああああ!!!忘れてた!!!!危険なのはちゅうだけじゃあいだだだだだだだだだ!!!!!!」
やすな(これ…完全に捕食だ…!!!!)
ソーニャ(やすなやすなやすなやすなやすなやすなやすなやすなやすなやすなやすなやすなやすな)ハァハァハァハァハァハァ
やすな「くっ…食われ…あいたあああああああああああああああああ!!!!!!」
ぎゅうううううううううううううううううう!!!!!!!
やすな「めっ!ソーニャちゃんめっ!めっ!めえええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!」
女の人「まほうのじゅもんむらさきるぺや○ぐへんたいばかっぷる」
あと3本。
ソーニャ「また別の組織の人間か…?」ペラッ
【女子きです。付き合ってください】
ソーニャ「なんだ恋文か。名前は…書いてない。内容もそうだが頭の悪そうな字だな」ポイッ
ソーニャ「ん?また手紙が…」
【昨日書き忘れちゃった。放科後空き教室まで来てくだい】
ソーニャ「またこいつか…誤字脱字が更に頭の悪さを強調してるな」ポイッ
やすな「あー!ソーニャちゃんゴミ捨てたー!」
ソーニャ「(そしてまた頭の悪い奴が寄ってきた…)チッ」
やすな「舌打ちしたってダメだめだよ!怖くないよ!ゴミはゴミ箱に!」ビシッ
ソーニャ「そのゴミは私の下駄箱に入ってたんだよ」
やすな「え…イジメ?ぷっー!プロの殺し屋のくせに学校でイジメられるなんて!」ゲラゲラ
ソーニャ「お前も苛めてやろうか?」チャキッ
やすな「あ…ごめんなさいごめんなさい…!イジメ、カッコワルイ!」
ソーニャ「………ふん」パッ
やすな「ふぅ…」ホッ
ソーニャ「お前のなかであぎりの印象どうなってるんだよ…」
ソーニャ「というか、私の下駄箱に入ってたときはゴミじゃなかったんだ。私の手に渡ったときにゴミになった」
やすな「へ???なにそれ、なぞなぞ?」
ソーニャ「違う」
やすな「もー!なに?分かんないよ!」
ソーニャ「ゴミ見てみれば分かる」
やすな「えー?そんなこと言って私にゴミ捨てさせる気じゃ…」カサッ
やすな「………これラブレターじゃん!」
ソーニャ「そうだな」
やすな「信じらんない…ラブレターをゴミだなんて…このひとでなしー!」
ソーニャ「あぁ?」チャキッ
やすな「あ…ごめんなさいごめんなさい…イジメ、カッコワルイ!」
ソーニャ「………ふんっ!」パカッ
やすな「あいたっ!」
ソーニャ「軽くしてやっただろ」
やすな「そっちもだけど…ラブレター捨てるなんて酷い!」
ソーニャ「私はそんなものに興味はない」
やすな「なにそれ、カッコいいと思ってんの?」
ソーニャ「ふんっ!!!」ボカッ
やすな「あひぃっ!」
やすな「痛い…っていうかそれ!」
ソーニャ「あん?」
やすな「それだよ、それ!その暴力キャラが知れ渡ってからソーニャちゃんにラブレター書く人いなくなったのに、それでも書いてきたってことはこの人よっぽどソーニャちゃんが好…!」
ソーニャ「誰が暴力キャラだって!?」ガシッ
やすな「ほら!現に今いたいけな少女を羽交い絞めにしいたああああああああああ!!!!」
ソーニャ「………」ギリギリギリギリ
やすな「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」ジタバタ
ソーニャ「………ふんっ」パッ
やすな「そんなんだから最初は見た目だけに騙されてラブレター書いてた人もいなくなったんだよ!」
ソーニャ「…」イラァッ
やすな「落ち着いて。落ち着いてソーニャちゃん。どうどう…」
ソーニャ「………まぁいい」
やすな「ほっ…」
ソーニャ「私としてはそんなのいなくなって清々してる。毎朝毎朝下駄箱のゴミ掃除される身にもなってみろ。いい迷惑だ」
やすな「くそぅくそぅ!ちょーっとモテるからっていい気になって!くそぅ!」
ソーニャ「いい気になってない。むしろ不快だ」
やすな「敵に回したね!今の発言で全国のモテない紳士淑女達を一斉に敵に回したよ!」
ソーニャ「お前筆頭にか?」
やすな「なっ…!やっぱりいい気なってる!」
ソーニャ「なってない」
やすな「ふ、ふぅーんだ!私だってモテるんだからね!」
ソーニャ「ほう」
ソーニャ「あるのか?」
やすな「……あ、あるよ?」キョドキョド
ソーニャ「いつ?」
やすな「き、昨日…?」ドギマギ
ソーニャ「誰に?」
やすな「と、通りすがりのイケメンに…?」ソワソワ
ソーニャ「見せてみろ」
やすな「だっ!だめだよ!私はソーニャちゃんみたいに人の気持ちをゴミ扱いする人間じゃないんだからそんなことできません!」
ソーニャ「ふぅーーーーん」ジトー
やすな「う…」
やすな「うそですごめんなさい!」ガバッ
ソーニャ「まぁ分かってたけど。お前なんかにラブレター書く奴いるわけないからな」
やすな「くそぅ!くそぅ!」
ソーニャ「先教室行くぞ」スタスタ
やすな「あっ待ってよソーニャちゃん!」タタッ
ソーニャ「あ?」
やすな「手紙!ちゃんとお返事しなきゃ!」
ソーニャ「しらん」
やすな「最後かもしれないよ!?いくら可愛いからってその性格じゃもう誰も寄ってこな…」
ソーニャ「ふんんんんっ!!!」バキッ
やすな「いーーーー!!!?」
やすな「うぅっ…絶対寄ってこない…」
ソーニャ「まだ言うか!?」
やすな「だってそうだもん!もうその人が最後の人だよ!」
ソーニャ「それならそれでいい」
やすな「いいのぉ~?一生一人だよ?最期は一人虚しくアパートで孤独死して家族も身よりも、友達もいないソーニャちゃんは死んでから3ヵ月後とかに大家さんに発見されるんだよ~?」
ソーニャ「構わん」
やすな(あれ?殴ってくるかと思ったのに…)
やすな「………」
ソーニャ「なんだよ?」
やすな「どーん!」ドンッ
ソーニャ「んなっ!?」
やすな「どーん!どーん!!どぉーん!!!」ドンドンドンッ
ソーニャ「やめろうっとおしい!急になんだ!?」
やすな「どー!」
ソーニャ「うるさいドーン!!!!」バキッ
やすな「フォリシッ!」バタッ
ソーニャ「なんなんだお前は!?」
やすな「…」ムクッ
やすな「はい、ラブレター」
やすな「だって返事出すとき手紙もいるでしょ?」
ソーニャ「いらん。返事も出さん」
やすな「なーんーでーよー!」ジタバタ
ソーニャ「お前しつこいぞ。……まさかこれ、お前が?」
やすな「は?私がソーニャちゃんにラブレター?自意識過剰なんじゃない?」
ソーニャ「…」イラァッ
ソーニャ「ふんっっっっ!!!」バキッ
やすな「あぁーん!!!」
【今日こそ来てください。来るまで待ってます。来なかったら明日もラブレター出します。】
ソーニャ「チッ…またこいつか」
ソーニャ(字の汚さは相変わらずだが今日は誤字脱字ないな…)
ソーニャ「………しょうがない」
ソーニャ(明日もゴミ箱にされちゃたまらんからな)
ソーニャ(恋文に見せかけた敵かもしれないから一応気をつけなければ…)ササッ
ソーニャ「…」ソーッ
ガラッ!
ソーニャ「ハッ!」ゴロゴロ
ソーニャ「…」スタッ キョロキョロ
やすな「あ、来た!」
ソーニャ「お・ま・え・かぁ!!!!」ガシッ
やすな「あっ!痛い!痛いよソーニャちゃ…ああああああああ!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!」
ソーニャ「懲りもせずアホなこと繰り返しやがって!!!!」ギリギリギリギリギリギリ
ソーニャ「どーせ浮かれて喜ぶ私を見たかったんだろうが、残念だったな!私はそんなもんに現を抜かしたりしない!!!!」ギリギリギリギリギリ
やすな「分かった!分かったから放してええええええええええ!!!!!!」
ソーニャ「もうしないか?」
やすな「しない!しないですぅ!!!」
ソーニャ「………ふん」パッ
ソーニャ「次はないからな!」
やすな「はい…」グッタリ
ソーニャ「ったく…」
やすな「………」
やすな「べつに、からかおうとしたわけじゃないんだけどな…」ポソッ
ソーニャ「あぁ!?なんか言ったか!?」
やすな「言ってません!ごめんなさい!」
ソーニャ「ふんっ。もう帰るぞ」
やすな「あっ待ってよぉ」ガバッ
ソーニャ「早くしろ」スタスタ
やすな「待っててばー!ソーニャちゃーん!」タタタッ
ほんとのきもちはひみつだよ。
あと2本。ちょいシリアス入るから書き方変わるよ。
いつも行くクレープ屋で3割引セールがやっているらしく、今日はバカが帰りを急かした。一人で行け、と言う私の声なんかではバカの制止にはならない。
結局は行ってやったのだが、そのおかげで私は教室に忘れ物をした。バカやすなが帰り支度してる間にちょっかいかけてくるから…。
忘れ物に気付いたのはやすなと別れた後で、学校は既に遠くなっていた。ここまで来てしまったら家に帰ったほうが近いのだが、忘れ物がよりによって携帯電話なのがまずかった。
あの電話は組織から支給されたもので、着信の殆どが依頼電話だ。即ち、あれを携帯していないと組織と連絡が取れない。
もし急ぎの仕事ならば他の奴が私の代わりをすることになるだろう。同じ組織の人間とは言え私を蹴落とそうとしている奴もいる。仕事中の自分のミスならともかく、電話を忘れたぐらいで評価がさがるのはごめんだ。
そういうわけで、私は今こうして学校にいる。
まだちらほらと部活の生徒が残っているが、そろそろ空も暗くなる時間。おそらく教室には誰もいないだろう。…と、思っていたのだが。
「折部ってうざくね?」
気配を消し、こっそりと中を覗く。
中には女生徒が二人。多分、私とやすなのクラスメイトだ。
これからご出勤でもするのか、女子高生とは思えない二人の女は派手に塗られた化粧の上からまた更に化粧を塗りたくる。
名前は…なんだったか。
いや、思い出せるわけがない。興味のない奴の名前なんか私は最初から知らない。
「えーそう?」
「うるさいじゃん」
「あー確かに」
「あとあの能天気な顔もムカつく」
「あー!ちょっと分かるー」
「でしょ?」
ケラケラと楽しそうに笑う馬鹿二人。今私が教室に入ったらこいつらはどんな顔をするだろう。
「あっくんって彼氏だっけー?」
「そうだよ。っていうか覚えとけよ」
「ごめーん」
「あっくんさ、ヤバい友達多いんだよね」
「へぇー」
「だからあっくんに頼めば折部のあの能天気な顔見なくて済むかも」
「どうすんのー?」
「んー…ヤっちゃうとか?」
「えーウケるー」
また、二人楽しそうにケラケラと笑う。自分達が言ってる内容、理解しているのだろうか。
「マジで言うのー?」
「だってうざいんだもん。動画とか撮ってネットで流そうか?」
「それ超ウケるー!」
吐き気が、した。
「おい」
「「え?」」
緊急で開かれた全校集会。
「もう既に知っているかもしれませんが、○日に△組の××さんと□□さんが亡くなりました」
「自殺だったようです」
ザワッ。
「本当だったんだ」
「いがーい」
「そんな感じに見えないのにね」
「うっ…うぅっ…」
「二人で自殺ってどういうこと?一緒に死んだってこと?」
「たまたま同じ日っていうのは…」
ザワザワザワザワ。
皆それぞれ思うように喋っていく。その様子は身近で起こった非日常を楽しんでいるようにも見えた。泣いている者も何人かいたが、それすらも友達が死んでしまった可哀相な自分を楽しんでいるようだ。
校長のしゃがれた声が体育館に響き渡る。
「年頃のみなさんのことですから様々な悩みがあると思います。しかしそんな時は一人で悩まず周りの人に相談してください。また、友達からそのような相談を受けたら前向きな方法で力になってあげてください」
ヒソヒソ。
「やっぱり二人で死んだんだ」
「仲よかったみたいだから」
「でもさぁ…」
ヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソ…。
そんな中。やすなは誰の話題にも入らず一人窓辺で空を見上げていた。
無言で近づき、隣に立つ。
「…ソーニャちゃん」
空を見上げながらやすなが私に話しかける。
「なんだ」
「空が、きれいだね」
「……あぁ」
「真っ青だ」
「あぁ」
「きれいだねぇ」
「あぁ」
轟きが耳にはっきりと届くぐらい、風が強い。
一緒に帰ろう、と誘うあいつを一人で帰し、あいつがきれいだと言った空を見上げる。
青い空。白い雲。ありがちな、風景。
近いようで遠く。遠いようで、近く。
手を伸ばせば届きそうな雲。
雲を取ってやったらあいつ、喜ぶかな。わたあめみたいってはしゃぐかな。
でもきっと雲なんか甘くないぞ。
軽々しく飛び交う噂や戯言。哀れむ振り。嘘の涙。
人間が俗物だと言うことがよく分かる。
でもあいつはきっと不器用で。純粋で。素直で。
ヒソヒソと噂話も楽しめない。悲しんでいます、とアピールもできない。ただ静かにそれに触れないように。そんなことしかできない。
あいつは、バカだ。
噂話も。哀れむ振りも。涙も。そんなものは午前中でとっくに終了して、皆各々の日常を取り戻していると言うのに。あいつだけはただのクラスメートが死んだくらいでまだ落ち込んでいる。
それも…自分がどう思われていたのかも知らずに。
そもそも交流すらなかったはずだ。あいつと奴らが話しているのを私は見たことがない。
なのに。
あんな奴らのせいであいつが能天気な顔を見せないことが腹立たしい。
考え込んでいたから、気付かなかったのか。それとも気配を消していたのか。
「あぎり」
「はい~」
振り返るまでもない。気配で誰がいるのかぐらい分かる。
それと…。
「…なんだ?」
何か言いたそうにじっとこちらを見つめているのも、分かる。
「………いいえ~」
「うそつけ」
「うそじゃありませんよ。私はあなたがどんな理由で“そんなこと”をしても咎める気も、その資格もありませんからね」
「…嫌な奴だな」
あぎりの思うところはなんとなく予想できる。
私達はプロで、殺人鬼じゃない。世間から見たら変わりはないだろうが、それでも。この仕事に誇りをもっている。
私もあぎりも、依頼以外では“そんなことを”したことがない。少なくとも私は…なかった。
手順も、後処理の仕方も、仕事と何も変わらない。相手に対して罪悪感も感じていない。
けれど…。
あいつを、言い訳にしてしまったことが辛い。
「そういえばやすなさんはどうしてますか~?」
「………本当、嫌な奴だ」
ごめんな、やすな。
でも私にはこんな特技しかないから。
こんなことでしかお前を守ることができないんだ。
ごめんな。
次ラスト。
ボンジュール!私、折部やすな!もしかすると高校生!
ソーニャちゃんとの帰宅途中で忘れ物に気付いて、今取りに戻ってます。
もっちろんソーニャちゃんも一緒!
…………なんてことはなく。一緒に行ってって言ったのに、知らん。私は帰る。…だって!冷たい!
私も忘れたのがお財布じゃなきゃわざわざ取りに戻らなかったのに。ソーニャちゃんと一緒に帰りたかったなぁ…。
でもダメ!今日はお財布に入ってる13円でチョコ買うんだもん!13円って言ったらチョコ買ってもお釣りが来る!わぉ!リッチ!お小遣い日までまだ10日以上あるけど先のことなんか気にしないもん!
何味買おっかなーっ!いちご豆腐?アボカドバター?きなこ抹茶?ふぅー!迷っちゃう!
これから口の中で踊り散らされる幸せを想像するだけで私はもうるんるん。ちょっとした鼻歌交じりで人気のなくなった学校の廊下をスキップスキップ!
「…あれ?」
多分もう誰もいないだろうなーと思ってた私の目的地である教室から話声が聞こえてきた。誰だろう。部活やってた人が今から帰るところかな?
「ソーニャってうざくね?」
………えっ?
しかもそれが…。
「うざいっていうか感じ悪いよねー」
ソーニャちゃん…のこと。
「話しかけても別に、とかしか言わないし」
「口調もなんか上から目線じゃない?」
「分かるー。あたしお前とか言われたんだけど」
「はぁ?なにそれ」
中にいる二人は私とソーニャちゃんのクラスメイト。同じクラスだから話したことはあるけど、学校にお化粧をしてくる子たちで、冬に唇が乾燥したときだけリップクリームを塗るぐらいの私とはなんていうか色々違う子達。
「あーそれあるわ。絶対自分のこと可愛いとか思ってる」
「外人だから日本で目立つだけのことだよね」
「実際大したことないよね」
「てかソーニャが金パ許されてあたしたちが金パすると怒られるのが納得いかないんだけど」
「ソーニャのは天然だからいいんだ、だって。うざすぎ!日本にいるんだから黒髪に染めてこいよ!」
「きゃはははは!それ!そうすべき!」
「でしょ!?絶対そうだし!」
ゲラゲラゲラゲラ!
まるでお笑い番組でも見て笑ってるみたいに、おかしそうに、楽しそうに響く笑い声。
人の笑い声でこんなに嫌な気持ちになるなんて、私は知らなかった。
「「え?」」
教室のドアを思い切りスライドさせ、私は叫ぶように怒鳴っていた。
「ソーニャちゃんはとってもいい子だよ!!!」
「はぁ?」
「あたし達の話聞いてたの?」
「聞こえてきたの!」
聞きたくなんかなかったのに。
「ていうかあんたいつも殴られたり、うざがられたりしてるじゃん。なんで庇う訳?」
「あれはソーニャちゃん流の照れ隠しだよ!文句言いながらも、うざがりながらも、私のやることにちゃんと付き合ってくれるもん!」
「殴るのもちゃんと加減してくれるよ!入院しない程度に!」
「いやそれ加減してるって言わないし」
うっ…まさかここで突っ込まれるとは…。
「照れ屋さんだから素直になれないだけで本当はとっても優しいんだから!」
「さっき感じ悪いって言ってたけど、ソーニャちゃんは恥ずかしがり屋でちょっぴり人見知りだからぶっきら棒になっちゃってるだけだよ!」
「口調は…ちょっとキツいけど…でも人を本当に傷つけることは言わないよ!言ったとしても相手を傷つけたって知ったらちゃんと謝るよ!」
「それにソーニャちゃんは本当に可愛いもん!外人さんだからってだけじゃなくて!」
「中身だって可愛いところいっぱいあるんだよ!」
「動物がダメだったり、ゴキ○リが嫌いだったり、おばけが怖かったり!あと実はクレープとか好きで甘いもんなんか興味ないぜってカッコつけてるけどご飯食べるときなんかよりずっと早く完食しちゃうんだから!」
「こんなに可愛いのに自分の可愛さを鼻にかけるようなこと、ソーニャちゃんはしないよ!だってソーニャちゃん自分が可愛いの気付いてないんだもん!外人さんってだけじゃなくて本当に可愛いのに!!」
「あ、あと髪も!サラサラで綺麗な金の糸みたいな髪も!あれを黒く染めちゃうなんてもったいないよ!ダメ!それに染めたりなんかしたら痛んじゃう!」
一人でぶぁーっと喋りつくす。今思ったけどなんだか自慢気になっちゃってたかな?でもこれできっと…。
「……誰の話してんの?ってぐらいピンとこないんだけど」
「えっ…」
「思った!誰の話?みたいな!」
「ね。あんたの妄想?」
「だからあんたの話と結びつかないって言ってんの。優しい?照れ屋?ありえねー!」
ゲラゲラゲラゲラ!
やめて。その笑い声。やめて……。
「そっちが…」
「は?」
「そっちが勝手にソーニャちゃんのこと感じ悪い奴だ、嫌な奴だって決め付けてるから態度悪く見えるんだよ!!」
「そんなんじゃソーニャちゃんだって仲良くしようって思えるわけないじゃん!」
「自分達が相手を認めようとしてないだけなのにソーニャちゃんを勝手に嫌わないで!!!」
「はぁ?」
「なに?私たちが悪いって言いたいの?」
「そうだよ!」
「ソーニャといつも一緒にいるからうざいのうつったんじゃない?」
「ソーニャちゃんはうざくない!!!」
「あーもう行こうよ。うるさい」
「だね。マジでうざすぎ」
「あっ待って!」
「うざいもん同士仲良くしてろ、バーカ」
「きゃははははははは!」
スタスタスタスタ。
「あっ…」
「…………あぅ」
昨日のことが気になって、ずっとそのことを考えてる。あの二人は昨日のことなんかなかったみたいに今日もゲラゲラゲラゲラ。なにで笑ってるのかは、分からない。
でもその笑い声を聞くたびに、またソーニャちゃんの悪口を言ってるんじゃないか、って嫌な気持ちになる。
「…なんだ、大人しいな?腹でも壊したのか?」
教室で一人空を見上げてる私の隣にそっと来て、ソーニャちゃんが声をかけてくれた。
ほら、ソーニャちゃんはこんなに優しい。
普段口が悪くても。突っ込みが激しくても。ちょっと、意地悪でも。
私の元気がないのを気にして、心配してくれる。
どうして分かってあげないんだろう…。
鼻がツンとして。ジワって涙が滲んで。耳が熱くなる。
「なっ!?なんだ!?」
泣きそうな私に焦り、狼狽えるソーニャちゃん。
「ごめんね…」
「はぁ?」
ソーニャちゃんの照れ屋なところ。恥ずかしがり屋なところ。とっても可愛いところ。すごく、優しいところ。
それをちゃんと教えてあげられなくて…。
「ごめんね…ソーニャちゃん」
素数調べたのバレて吹いた。
キルミー前期で一番好きだったから二期オナシャス!!!!!!
俺が見た中で最高でした!!
おつかれした!!
すごく良かった
またかいてくれ
素晴らしいよ
Entry ⇒ 2012.04.22 | Category ⇒ キルミーベイベーSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
あぎり「にんぽぉ~ソーニャがヤンデレになります」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1333180350/
あぎり「はぁぃ、かかりましたよぉ~」
やすな「やった!これで夢にまで見たソーニャちゃん尽くしの毎日が!」キラキラ
やすな「ひぃぃ!違うよソーニャちゃん!」
ソーニャ「何が違うんだ?!」ギリギリ
やすな「ソーニャちゃんがいきなり倒れるから、あぎりさんの部屋まで連れて来てあげたんだよぉぉ!!ウソだけどね」モガモガ
キュッ
チーン
ソーニャ「そうなのか、あぎり」ドサッ
あぎり「ホントですよぉ~」
ソーニャ「そうか...」
ソーニャ (おかしいな...なんだかやすなの首を締めると...なんというか、こう幸せな気分が...)グッパ グッパ
ソーニャ「な!なんでもない!それじゃ私は行くからな!あとやすなも連れてくから!」
あぎり「あれれぇ~?邪魔だから置いて行かないんですかぁ~?」
ソーニャ「そ、それはぁ...」
あぎり「なんだったら、私が面倒見ておいても、いいですよ?」
ソーニャ「ダメだ!!!」ドン
あぎり「そうですかぁ~」
ソーニャ「あ、その...つい、すまなかった...やすなは私が面倒を見る。じゃ、また後でな」ガタン
あぎり「ウフフフフ...」ニヤニヤ
やすな「さー、待ちに待ったお弁当の時間がやってきましたー!」
ソーニャ「うるさいな。毎日あるじゃないか」
やすな (あぎりさんの忍法効いてないのかな...せっかくヤンデレソーニャちゃんに付きまとわれると思ってたのに...)
やすな「あ、ソーニャちゃん。今日はね、花瓶割った子とご飯食べる約束してるから今日は一緒に食べられないの」
ソーニャ「...!!っふ、ふーん...」
やすな「今日は静かにお弁当食べれるよ?よかったねぇ~ソーニャちゃん!」キラキラ
ソーニャ「よくない!!」ドン
やすな「っひ?!ソーニャちゃん?」
ソーニャ「あ、いや...なんでもない...はやく行けよ...あいつのことのほうが大事なんだろ?!はやく行けよ!!」
やすな「変なソーニャちゃん...じゃ、また後でね」タタタタ
やすな (付いて来ると思ったんだけどなぁ...やっぱり効いてないみたい)
ソーニャ「...クソ...なんなんだよ...人のやすなを横取りしようなんて...」
ソーニャ (絶対に許せない...やすなは...私だけのやすなだ...!)
あぎり「ウフフフフ....」ニヤニヤ
やすな「ごっめぇーん!ちょっと遅れちゃったよぉー」ヘラヘラ
花瓶「いいですよー気にしなくて。じゃ食べましょうか」
やすな「うん!お腹ぺっこぺこだよぉ~」ムシャムシャ
花瓶「あ、やすなさん、ご飯粒がついてますよ」
やすな「あーどこどこ?取ってー」
ソーニャ「やすなのヤツめ...また後でとか言っておいて、もう4分23秒も経ってるじゃないか!!」
ソーニャ「...大丈夫かな...あいつドジだからコケて膝擦りむいてるのかも...は!、もしかしたら私の刺客に?!」
ソーニャ「まったく!心配ばっかりかけやがって!!探しに行こう!!」
ソーニャ (やすな...やすな...やすな...)
花瓶「えー自分で取れるじゃないですか」
やすな「こういうのは気分が大事だよ!ほら、彼氏だと思ってさ」
花瓶「やすなさんはおもしろいですね。じゃ、取りますよー」
シャキン
ソーニャ「お前...何をしようとしている?」
花瓶「あ、やってしまったーやってしまったぞー」
やすな「ちょっ!ソーニャちゃん!何してるの?!」
ソーニャ「あ、やすな」ニコ
やすな「...ソーニャ...ちゃん?」
ソーニャ「おい、お前...やすなに何しようとした?」ギロッ
花瓶「ごごごご飯粒を取ろうとして」ガクガク
花瓶「はいぃぃぃ」シクシク
やすな「ソーニャちゃん!ちょっとひd
ソーニャ「やすな、ご飯粒がついてるぞ」サッ
パクッ
ソーニャ「うむ、美味」ニコ
やすな「ソーニャちゃん/// って!!誤魔化さないで!」
ソーニャ「誰だよコイツ?殺していいか?」ニタァ
花瓶「お友達ですぅ」シクシク
ソーニャ「ふーん...」サッ
ソーニャ『今度やすなに触ったら死ぬからな』コソコソ
花瓶「うわぁぁぁぁぁん」タタタタ
やすな「あ、いっちゃった...」
ソーニャ「トイレ我慢してたらしい」
ソーニャ「やすな...私の心配してくれるなんて...」ギュッ
やすな「えぇ?あ、うひょぃぉ!?」
やすな (なんだかソーニャちゃん今日はおかしいよ...顔も赤くなっちゃって...)
ソーニャ「やすなぁ...寂しかったんだぞ」ウルウル
やすな「しゃいこぉぉぉ!!」
やすな (あぎりさんありがとぉぉ!)
あぎり「ウフフフフ...」
ソーニャ「やすな!帰りはどこに行くんだ?」
やすな「えーとねー、じゃーあぎりさんに会いに行こうよ!」
ソーニャ「あぎり...どうしてもか?」
やすな「えーいいじゃーん!あぎりさんおもしろいしキレイだし!」
ソーニャ「...」グッ
やすな「おぁっ、く、苦しいよソーニャちゃん...」ギリギリ
ソーニャ (やすなやすなやすなやすなやすなやすな)
ソーニャ「っっは!」パッ
やすな「ヒドイよソーニャちゃん!わたしなんにもしてないのにぃ!」
ソーニャ「ご、ごめん...つい...」シュン
ソーニャ「うん...」
ソーニャ (あぎりに取られるあぎりに取られるあぎりに取られる)
やすな「あれ?どしたのソーニャちゃん?」
ソーニャ「あ、あぶないから!て...」サッ
やすな「え?」
ソーニャ「手!繋げよホラ!あぶないだろ!こけたりしたら!!」ギュッ
やすな「もう、子供じゃないんだから」
ソーニャ「...」ウルウル
やすな (ちょっとめんどくさいな...でもいっか!かわいいし!)
あききょうしつ
ガララ
やすな「あぎりさん居ますかー?」
ソーニャ「今日は居ないみたいだな帰ろうか」
やすな「ちょっと待ってみようよ」
ソーニャ「どうせ隠れてるんだろ?!そこか!」シュッ
ザクッ
あぎり「...」バタッ
やすな「あぎりさぁぁぁん!!!」
やすな「ソーニャちゃんヒドイよ!!」
ソーニャ「大丈夫だ。またどうせ変わり身の術だろ」
ガララ
あぎり「どぉ~もぉ~」
やすな「あぎりさん!」
ソーニャ「ほらな」
あぎり「今日はやけに殺気立ってますねぇ~」トテトテ
あぎり「よぃしょ、かもん」ズルズル
ソーニャ「あぁ、殺しても殺しても出てくるからキリがない」ニタァ
やすな (目が笑ってない...)
あぎり「それでぇ、今日は何の御用でしょうかぁ~?」
やすな「あぎりさん!一緒に遊びましょう!」
あぎり「そうですねぇ~、じゃ~ぁ~、手裏剣の投げ方を特別におしえましょぉ~」ジャラン
やすな「うわぁ!やったぁ!!」
ソーニャ「ふんっ、そんなもの投げても楽しくない。私は行くぞ」
やすな「へーんだ!ソーニャちゃんよりうまくなっちゃうもんねーだ!」
ソーニャ (あぎりは正面からでは倒せない...)
ソーニャ (かわいそうなやすな...あぎりに誘惑されてるのに気付いてないんだ...)
ソーニャ「私がやすなを守るんだ...」
ちょっとあと
あぎり「こうやって、よいしょっと投げるといいですよぉ~」
やすな「こうですか?」
あぎり「もうちょっとぉ~肩をこうやって上げ...!」
やすな「こうですか?」
ッキューーーーーン...
あぎり「...」べローン
やすな「あぎりさん!!!」
ソーニャ「どうした?!」バタバタ
やすな「あぎりさんがぁぁぁ!」
ソーニャ「あぎり...クソっ!こんな事でやられるなんて...」
あぎり「どぉしたのぉ~?」
やすな「あぎりさん!」
ソーニャ「...ッチ...」
あぎり「なんだか、あぶない感じがしたので、ちょっと留守してましたぁ~」
やすな「あぎりさんすごい!!」
ソーニャ「...」ムスッ
ソーニャ「死ねなくて良かったなあぎり」
あぎり「おかげさまでぇ~」
やすな「まったく誰がこんなことを!」
あぎり「そうですねぇ~、以外と近くに居る人かもしれませんよ?」チラッ
ソーニャ「かもしれないな」
やすな「あ、もうこんな時間。そろそろ帰ろうかソーニャちゃん、あぎりさん!」
ソーニャ「先に校門で待っててくれ。ちょっとあぎりと話があるんだ」
あぎり「そのようなのでぇ~、先に行っててくださいね~」グイグ
ポロッ
あぎり「あ~さいふ~」
ガララ バタン
あぎり「...行きましたねぇ~...」
ソーニャ「そうだな」
あぎり「で、どぅしたのぉ~」
ソーニャ「お前、よけるの上手かったな」
あぎり「そうですねぇ~。でも、あんな距離で外すなんて、考えられませんよぉ~」
ソーニャ「どこの組織のスナイパーだ?」
ソーニャ「お、やっぱりあぎりも見えたか」
どっかのビルのおくじょー
?「クッソー!双子だったのか?!」
没キャラ「これじゃ殺しても殺しても出てくるからキリがないぞ!」
没キャラ「こうなったら直接やってやる!」グッ
あぎり「はぃ~。それでぇ?話って何でしょうかぁ~?」
ソーニャ「これ以上やすなと関わるな。変な誘惑しやがって」
あぎり「なんのことぉ~?」
ソーニャ「とぼけるな!さっきやすなを手裏剣投げに誘って腕触ってただろ!」
あぎり「そうですかぁ~?」
ソーニャ「もういい!とにかくこれ以上関わるな!」
あぎり「なんだかわからないけど、わかりましたぁ~」
ソーニャ「...違う組織だったら今頃は息してなかったぞ」
ガララ バタン
あぎり「まじめな人ほどかかりやすいんですよねぇ~」
あぎり「でも、これはちょっと効きすぎですねぇ~...」
やすな「どうしよう...ホントは置いてけぼりで、皆もう帰っちゃったんじゃないかな...」
ソーニャ「やすな!」タタタタ
やすな「ソーニャちゃん!ちゃんと来るなんて珍しい!」
ソーニャ「あぁ、これからはもう離れないよ」
やすな「ソーニャちゃん...ありがと!」
ソーニャ「だから安全な私の家に来ないか?」ニタァ
没キャラ「ここだなー!忍者め!!お前を消して私がレギュラーになってやる!!」
ガララ
没キャラ「忍者!出てこい!!今度は外さないぞ!!」
没「...どこだ?」キョロキョロ
デルルン
あぎり「どぅしたのぉ~?」
没キャラ「あ...はっ...あぁぁ...」ドサッ
あぎり「あらあら、隙だらけですねぇ~」
没キャラ「逆さまなのに毛が下がってない!!」
あぎり「にんぽぉ~ですからぁ~」
没キャラ「クッソぉ!降りてこい!正々堂々と戦え!!」ドンッ
イタッ!
あぎり「あ~、そのダルマはぁ~」
シューーーーーーッ
あぎり「まったく...(シュコー) しょがないですねぇ...(シュコー)」
没キャラ「うぅ...やすにゃ...ソーニャ...」スヤスヤ
あぎり「...」ジーッ
あぎり「...」ジュルリ
やすな「あ、あぎりさんの教室に財布忘れて来た!!取りに行かなきゃ!!」
ソーニャ「財布なんてどうでもいいから家に来いよ。前来たがってたじゃないか」
やすな「えー、でももう遅いよー」
ソーニャ「じゃ泊まっていけばいい」
やすな「なんだかおかしいよ...」
ソーニャ「私はやすなから離れないって言っただろ。だからやすなも私とずっと一緒に居なきゃダメなんだ」
やすな「えぇ...ソーニャ...ちゃん」
ソーニャ「やすなはドジで馬鹿だから私が全部面倒を見てやらないとな。でも、ずっと一緒に居るんだからそう大変なことでもないだろ?」
ソーニャ「そうだ!やすなは犬の真似がうまいから私の家の座敷牢で飼えばいいんだ。これならやすなも安全だし、穢されることもない!」
やすな「ソーニャ...ちゃん?」
ソーニャ「ずっとずっと一緒に居ような、やすな」ニコッ
やすな「/// ソーニャちゃんったら...って!ごまかさないでよ!なんか変だよソーニャちゃん!落ちてた物でも食べたの?」
やすな「やった!わたし米沢牛のステーキね!!って!ちがうよソーニャちゃん!」
ソーニャ「朝から晩まで面倒みてやるからな。髪をといたり、お風呂に入ったり、歯を磨いたり。あと、その...気が向けば...その...ゴニョゴニョ」モジモジ
やすな「もうわけわかないよ!独り言ばっかじゃん。私もう帰るね、バイバーイ」トテトテ
ガシッ
ソーニャ「離れるなって言ってるだろ!こけたりしたらどうするんだ!」
やすな「やだ!離してよっ!」
ソーニャ「えーと、このゴミ箱だったな」ゴソゴソ ポイポイ
やすな「あバナナの皮!滑るよソーニャちゃん!」
ソーニャ「ん...あった、手錠」ジャラ
やすな「えっ...」
ガシャン
ソーニャ「学校の回りじゃこんなもの使えないからな。ここからなら大丈夫だ。私も」ガシャン
ソーニャ「よくわかったなやすな。えらいぞー」ナデナデ
やすな「もう好い加減にしてよ!冗談キツすぎ!私もう帰るから!」ジャラ
ソーニャ「ダメだ!!一緒に来い!!」グイグイ
やすな「ヤダ!」ズルズル
ソーニャ「なんで?こんなにやすなのこと大切にしてるのに、なんで?」
やすな「怖いよ...ソーニャちゃん、怖い...」
やすな「...」
ソーニャ「やすなは私の物なんだ!なのに皆私のやすなを取ろうとする!許せない!やすなは私だけの恋人なんだ!」
やすな「ソーニャちゃん...うわっ!!バナナの皮っ」ツルッ
クルクル バキッ!!
ソーニャ「がぁっ!」ドサ
やすな「あー!!ソーニャちゃんごめん!」
やすな「ふぇぇぇぇぇ...」
ソーニャ「あー!!また手錠かかってるじゃないか!!お前だなー!!」
やすな「ちがうよ!ソーニャちゃんがやったんじゃん!」
ソーニャ「そんな嘘誰が信じるかぁ!!」
ソーニャ「は?」
やすな「どうしてこうなったか覚えてる?」
ソーニャ「んー...そういえばお前を殴る以前の記憶が飛んでる...」
やすな「ほら!もう、ソーニャちゃんが治って安心だよー。心配させないでよね!」
ソーニャ「は?」
ソーニャ「何言ってんだお前?」
やすな「クソぉ!分かってもらえない!」
ソーニャ「私を助けた結果がこれか?」ジャラ
やすな「...ま、いっか...でも、今日はずっとソーニャちゃんと一緒にいれて、私嬉しかったよ」ニコ
ソーニャ「やすな...」
やすな「どうして?」
ソーニャ「わからない。でも、やすなが居たことは覚えてる」ニコ
やすな「えへへ...ソーニャちゃん大好き!」
ソーニャ「でも鍵がどこにあるのか思い出せないんだ」
やすな「キルミーベイベー!!」
あぎり「じゃぁ~今度はこっちの忍具を使ってみましょ~」
没キャラ「やー!!帰してくれー!!」バタバタ
あぎり「あらあら、動くとあぶないですよぉ?」ブィーン...
没キャラ「やすにゃ!ソーニャ!!助けてえぇぇ!!!」
「やんでつないでゆりがさく」
Entry ⇒ 2012.04.09 | Category ⇒ キルミーベイベーSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
ソーニャ「この広い青空の下」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1333102871/
後日談っぽい話なのでやすなとソーニャは20代ぐらい
「はぁ……、はぁ……」
くそっ……。こんなへまをするなんて迂闊だった……。
「がはっ……。うぅ……」
腹部に受けた傷がぎりぎりと痛み、口から血の臭いがしてきた。
打ち所が悪いみたいだ……。意識が……。
よたよたと歩いていると、後ろの方からどかどかと足音が近づいてくるのが聞こえてきた。
もう追い付かれたのか……。武器もまともに残っていないし、これじゃあ……。
くそっ、こんなときにこいつの顔が浮かぶなんて……。
──ソーニャちゃんって意外と小心者なんじゃないのぉ~?
しかも、何だかイライラしてきた……。最期なのに何でこいつのことばっかり……。
──や~い! ソーニャちゃんのぶああああぁか! ぶああああぁか!
「……いい加減にしろおおおぉ!」
──ふふふ、腕が鈍ったんじゃないのぉ?
手ごたえはあったはずなんだが、逃げられた!?
「何だとぉ……! こいつっ……!」
自分の粗い息づかいだけが聞こえる中、闇雲にやすなを追いかけては虚空に手を伸ばしていた。
「こいつ……! いつも調子に乗りやがって……!」
いつもいつも私をおちょくって、殴っても蹴っ飛ばしてもうっとうしく纏わりついてきたバカ……。
私は……、私は……。
「はっ……!」
気がつくとやすなの影は無く、私は空を仰いで倒れていた。
横を見てみると、私を追いかけて来たたくさんの敵が倒れていた。
何だ? 私がやったのか……。
「へへっ……」
やすなの幻影で助けられるとは、私もいよいよだめかもしれない……。
とにかく任務は完了している。あとは撤収するだけだ……。
「はぁ……! はぁ……! うぐぅ……!」
揺らぐ視界の中で、ぽたぽたと体にあたる何かを感じていた。
「雨、か……」
どうやら体に当たるのは雨らしい。ぽたぽたと私の体を濡らしている。
雨は匂いとか足跡を消してくれる。好都合だ。
私は震える足を何とか動かして、先へと進んだ。
が……。
「うぅ……」
体が前のめりになるのを感じ、踏ん張ろうとしたがそれもできなかった。
足がもつれて、そのまま体は重力に引かれていった。
あぁ、落ちていく……。
何もできないまま宙を舞い、そんなことをぼんやりと考えていた。
ドボンッ。グルグルグルグル……。
ひどい衝撃と共に耳と鼻がキンと痛くなり、海水が口の中に入ってきた。
もう、死んでしまうのだろうか。
冷たい。体が寒い……。
体の感覚も時間の感覚も無くなってしまい、ただ流れに漂うだけ……。
人間なんて、死ぬときはみんなこんなものなんだろうか。
……。
光……? 何か、光っている……。
それに、温かい……。
天国、か? いや、私がそんな所に行くわけがない。
──大丈夫ですか?
誰だ……?
──立てますか?
何だろう。またあいつの声が聞こえる気がする……。
「……」
ほんのりと漂う温かい匂い。そうだ、これは太陽の匂いだ。
目を開いて見ると、辺りは真っ白な光が溢れていた。
「うっ……!」
意識がはっきりしてきて身じろいでみると、体中が痛く重かった。
どうやらここは天国ではないらしい。
頭を動かすと、真っ白な部屋に真っ白な棚がずらりと並んでいるのが見えた。
中には茶色い瓶が整頓されており、薬を入れておくものに見えた。
ここは一体どこだ?
更に頭を振ってみると、レースが風に揺られていてさんさんと注ぐ日光を弄んでいた。
「……温かい」
太陽って、こんなに温かかったんだな……。
生きてもう一度太陽が見られるとは思ってもみなかった。
「ソ、ソーニャちゃん……!」
誰かの声が聞こえてきたので視線をずらすと、白衣を着た同じ歳ぐらいの女性が入口に立っていた。
「目が覚めたんだね!?」
私が目が覚めたことを確認すると、弾けんばかりの笑顔を見せて駆け寄ってきた。
「よかった……! 本当によかった……!」
動く気力も無く、私はその女性に痛いぐらいに抱きしめられていた。
……あれ? 何でこいつが私の名前を知っているんだ?
ようやく頭が回り出し、私は警戒しながらその女性を見つめた。
私の名前を知っているやつなんてほとんど同じ稼業の奴しかいない。
だけど、こいつからはそんな雰囲気は無い……。こいつは誰だ?
「あれ? もしかして私が誰かわからない?」
一体誰なのか考えていると、涙目のまま私の顔を覗き込んできた。
何だか妙に馴れ馴れしい奴だな。それに、この雰囲気は……。
ま、まさか……。
「お、お前……、やすなか?」
「そうだよ、ソーニャちゃん!」
「ほ、本当にやすなか?」
目の前にいるやすなは白衣を着ていて、その姿は誰がどう見ても医者の格好だった。
やすなが医者だと? 悪い冗談だろう?
私の中にあるやすなと、目の前のやすながまったく一致しなかった。
「本当も嘘も無いよ。ソーニャちゃんの友達の折部やすなだよ」
疑っている私を見つめて、涙を拭いながらやすなはにっこりと笑った。
その笑顔はあの時のままで、何も変わっていなかった。
それに少しだけほっとしつつ、私は状況を確認した。
「やすな……、ここは……」
「無理しないで。ソーニャちゃんあれから一週間も寝ていたんだから」
「一週間……?」
まさか、あれから一週間以上も経っているのか……。
「おう、やすなちゃん。お友達が起きたかね!」
「あ、どうも!」
声のする方を見ると、初老ぐらいのおじいさんが入口でにこにこしながら立っていた。
「勝手に道具を使ってすみませんでした。費用は私の給料から引いておいてください」
「そんなの構わんよ」
「でも、悪いですよ」
「いいんじゃよ。それより、目が覚めてよかったのぉ」
「本当にありがとうございました」
やすなとのやりとりを聞いて、どうやら本当にここの医者らしいことはわかった。
「私は仕事に戻るけど、ケガが酷いんだから勝手に動いちゃだめだよ?」
しばらくここに残っていたいそぶりを見せたが、そう言い残すとやすなは出て行ってしまった。
正直こんな状態になっていると、この隙を突かれて襲われそうで不安だ。
しかし、体は重いし痛みもある。それにとてもだるくて何もする気が起きなかった。
仕方がない、ここはひとまず眠るか……。
「……」
私が目を覚ますと、ほとんど日は沈んでいて部屋が暗くなっていた。
こんなに寝たのは風邪で寝込んだ時以来だな。夢らしい夢も全く見た覚えも無く気持ちよく眠れた。
体はまだ痛いが、ようやく自分の置かれている状況を見渡せる余裕ができた。
さっきは気付かなかったが、どうやらここは診療所の奥の方にある部屋らしい。
向こうの方からやすなとさっきのおじいさんが話しているのが聞こえてきた。
「私が責任もって面倒見るので、心配しないで下さい」
何だかやすなにそう言われると癪にさわるが、実際に面倒を見てもらう側なので仕方がない。
「その方が良いかもしれんがなぁ……」
おじいさんは唸って悩んでいるようだったが、仕方がないなと笑った。
「何かあったらすぐにいいなさい」
「ありがとうございます」
「それじゃあ、頼んだよぉ」
「わかりました」
おじいさんはそう言い残すとドアの音を残して出て行った。
「あ、ソーニャちゃん起きた?」
「あぁ、今起きたところだ」
「ごめんね、電気つけるよ」
やすなは部屋の電気をつけると、ペットボトルとコップを持ってベッド脇の椅子に座った。
「はい、喉乾いているかと思って」
「すまない」
コップに注がれた水を少しずつ流し込むと、それに体中の傷が疼いた。
「大丈夫?」
「なんてことは無い」
少し強がって言ってみたが、水を飲むのにも苦労するとは思っていなかった。
「あ、ソーニャちゃん起きた?」
「あぁ、今起きたところだ」
「ごめんね、電気つけるよ」
やすなは部屋の電気をつけると、ペットボトルとコップを持ってベッド脇の椅子に座った。
「はい、喉乾いているかと思って」
「すまない」
コップに注がれた水を少しずつ流し込むと、それに体中の傷が疼いた。
「大丈夫?」
「なんてことは無い」
少し強がって言ってみたが、水を飲むのにも苦労するとは思っていなかった。
「ソーニャちゃん、ご飯食べられる?」
「少しぐらいなら何とか」
「ごめんね、本当なら点滴とかですませるんだけどここには無くて……」
「気にするな」
「さてと、それじゃあ何かスープのようなものでも作ってあげるね」
「え? お前が……?」
あからさまに嫌そうな顔をしたら、やすながふくれてしまった。
「そんな嫌そうな顔しなくてもいいじゃん……」
「じ、冗談だよ……、ははは……」
確かこいつの作ったものをいくつか食べた気がするんだが、味は悪くなかったな。
「絶対ソーニャちゃんがおいしいって言うものをつくってやるぅ!」
くそぅ! くそぅ! なんて懐かしい言葉を叫びながらやすなは台所へ行ってしまった。
やすなは昔から変なところで器用だったなぁ。
パペットだっけ? あの人形を作ったり、弁当もたまに自分で作ったものを持ってきていたりしていた。
あ、輪ゴム鉄砲とか作ったこともあったな。
しばらく待っていると、いい匂いがしてきてやすながお椀を持ってきた。
「じゃーん! 特製やすなみそ汁です!」
「……もっとケガ人に食べさせる食事ってあるだろう」
「結構気を使って作ったつもりなのに……」
「いや、みそ汁って違うと思うぞ?」
「そ、そうかな……」
まぁ、食べやすいと言えばそうだが……。
「まぁ、食べるよ。せっかく作ってくれたしな」
「自分で持てる?」
「大丈夫だ」
私はお椀を受け取ると、少しだけ飲んでみた。
「どう? おいしい?」
「……まぁまぁだな」
「もう、素直じゃないんだから」
みそ汁というのはあんまり飲んだことがないから一概には言えないが、これは不思議な味がするな。
辛くも無いし甘くも無い。おいしいといえばおいしいのだが味噌が入っているからもっと塩味がすると思っていた。
具は油揚げと豆腐とわかめが入っている。みそ汁ってこういうものなのか。
「あ、ソーニャちゃんってお箸使えたっけ?」
「い、一応は……」
日本に来た時は箸を使って食べるものが多くて閉口してしまったが、今ではそれなりに使えるつもりだ。
「でも、手もケガしているからスプーンにしようか」
やすなが銀色のスプーンを手渡してくれたが、みそ汁にスプーンってミスマッチじゃないか……?
しかし、この手ではそうも言っていられず私は仕方が無くスプーンでみそ汁を飲んだ。
みそ汁を飲み終えてようやく人心地がついたところで、私は気になっていたことを聞いてみた。
「やすな、ここは一体どこなんだ?」
「ここ? 華津穂島だよ」
「か、かづ……?」
「まぁ、聞いたことも無いような小さな島だよ」
島の名前を聞く限り、どうやらここは日本らしい。
しかし、あんな状態でよく助かったものだ。
海に落ちて漂流してきたのだろうか。泳いでくるほど体力は無かったし……。
「診療所に行こうと思ったら海に誰か倒れていてさぁ、助けに行ったらソーニャちゃんなんだもん」
やすなの話を聞きながら、私は未だに自分が生きていることが信じられなかった。
しかし、今はそれよりも信じられないことがある。
あのやすなが。あのやすなが!
大事なことなので2回言ったぞ。
ただでさえあんなにおバカだったのに医者だぞ?
夢だと思いたいような、どこか嬉しいような……
「ソーニャちゃんはここで休んでいて。片づけてくるから」
「お前、こんなに遅いのに家に帰らないのか?」
「あ、今日はここに泊まることにしたから安心して?」
「別に心配なんかしていない」
「またまたぁ~。ケガ人の世話は医者の仕事ですから安心してください!」
「……安心できん」
でも、今までの行動を見る限りだと少しは信用してもいいかもしれないな。
ベッドの横にある窓を開けると、潮の匂いとともに夜風が吹きこんできた。
周りはほとんど真っ暗で、家の明かりも遠くの方にしか見えない。
「……あ」
真っ暗だなぁと思い見まわしていると、空には数えきれないぐらいの星が輝いていた。
あれは、冬の大三角か。こんなにたくさんの星に囲まれているのにその存在はとても大きかった。
「すごいでしょ……」
片付けを終えたやすなが後ろからそっと囁いた。
「ここは人が少ないから星が良く見えるんだ」
「……そうか」
「ソーニャちゃん、ガーゼ取りかえてあげる」
「あぁ、頼む」
やすなは慣れた手つきでベッドの上で服を脱がし、体中に巻かれている包帯をするすると解いていった。
「ちょっと痛いかもしれないけど、我慢してね」
お湯を張った洗面器を用意して、ガーゼを取りかえるのと並行して体を拭いてくれた。
「こんなに傷だらけで、自分をもっと大事にしなくちゃ……」
「なぁ……」
「何?」
「何でお前、医者になったんだ……?」
「あ、聞きたい? 聞きたい?」
私が聞くと、やすなは待ってましたと言わんばかりにニヤニヤした。
「……やっぱいい」
あの頃と全く変わっていないウザさに内心ホッとしつつ、私はやすなの話に耳を傾けた。
どうせこいつは私が止めても話し始めるだろうし。
「まぁ、私にも色々あったんだよ」
「どうせろくでもない理由だろ?」
「そんなことないもん!」
……ほらな?
「お金持ちになりたいなぁとは思っていたんだけど、やっぱり人の為になるほうがいいじゃない」
「……そんな事でよく医者になれたな」
「それだけじゃないよぉ!」
失礼しちゃうとか言いながらやすなは拗ねてしまった。
「で、何でこんなところにいるんだ?」
「医大を出てから就職先が決まらなくて、やっと仕事が見つかったと思ったらここだったんだ……」
「……お前なぁ」
全く、行き当たりばったりもいいところだ。やすならしいと言えばそうなんだけど……。
「でもね、ここもすごくいいところだよ。みんな優しいし、海もきれいだし、それに……」
「それに?」
言葉が詰まったので不思議に思って気にかけていると、一息いれてからやすなが震える声で言った。
「……ソーニャちゃんに会えたし」
「お、お前、どこ触って……!」
やすなの手があらぬ方向を触ってきたので一発殴ってやろうかと思い振り返ると、やすなが肩を震わせていた。
「……やすな?」
「本当に、心配したんだから……! えっぐ……」
やすなは……、泣いていた。
「ずっと連絡も、できなくて……! 二度と会えないって、思ってた……!」
「せっかく会えたと思ったら、ボロボロで……、死んじゃうんじゃないかって……!」
そのままやすなは私に寄りかかると、声を上げて泣き始めてしまった。
「……悪かった」
謝ることじゃないのに、私の心に少しだけ芽生えた罪悪感が口から漏れていた。
それから私は、しばらくはここで治療に専念することにした。
それしかすることはできなかったし、体が無ければこれからのことは何もできない。
しかし、傷が癒えていくにつれて私の中にある不安が募ってきた。
この傷が癒えたら私はどうするのかという漠然とした不安だ。
組織に戻るのが普通なのだろうが、その考えが少しずつ薄れていた。
あの時のように……。
「ほら、包帯変えるから服脱いで?」
「も、もう自分でできるからしなくていい」
「そういわずにさぁ」
あれからもうすぐ一ヶ月になろうというこの時には、傷もある程度塞がったので診療所からやすなの家にお邪魔していた。
やすながどうしても来てほしいと言うので仕方なく来たのだが、そこには捨ててきた日常があった。
ぎりぎりとした殺気に体を晒す必要もないし、精神をすり減らす必要もない。
そして、何よりここには……。
それを知らないやすなはいつものように接してくる。それは今の私にとって挑発以外の何物でもなかった。
「……だめだ!」
溜まった気持ちが爆発してしまい、包帯を変えようとするやすなの手を振りほどいていた。
「ど、どうしたの……?」
「あ……」
少し強くし過ぎたせいで、やすなは何か悪い事でもしたのかと不安そうな顔をした。
「ち、違うんだ。その……」
そろそろけじめもつけなきゃいけない時期だと思い、私は自分の気持ちをありのまま話すことにした。
「……お前はこんなにもしっかりとやっているのに、私なんかと関わっちゃいけないんだ」
「何でさ?」
まるで何も考えていないような顔しやがって……。もしかしたら何も考えていないのか?
「なぁ、お前は怖くないのか?」
「何が?」
「私のせいで、お前が怪我したり最悪死んだりするかもしれないんだぞ?」
「大丈夫だよ」
やすなは何の不安も無い顔で笑った。
「何でそう言い切れる」
「だって、そうなったときはソーニャちゃんが守ってくれるもん」
「やめろっ!」
私は堪え切れなくなって、ついに叫んでしまった。
「私は、そんなに強くない……。自分すら守れない奴が、お前なんて守れるわけだろう……?」
私は弱い。組織に戻らなくてはいけないのにたったひとりのこんなバカに心を乱されて、今ではこんなに……。
「お前を、失いたくないんだ……」
そう、高校を卒業する辺りに異動の為に日本を離れることになった時からずっと思っていた。
刺客に一緒に狙われて、命の危険にさらされたことも一度や二度ではなかった。
だから、だから……。
「……私だって、ソーニャちゃんを失いたくない」
タオルを握りしめて、いつになく低いトーンでやすなが呟いた。
「学校を卒業してから突然いなくなっちゃって、携帯でも連絡できなくて寂しかったの!」
「やすな……」
「このままだったら、ソーニャちゃんがまたいなくなっちゃう……」
いつもと違うやすなの顔にドキドキして、私は動けなくなっていた。
「どこにも行っちゃ、いや……」
まるで大切な宝物でも守るように優しく、しかし力強くやすなは私のことを抱きしめた。
いつもと違うやすなに戸惑いを隠せず、私はただ受け止めることしかできなかった。
包帯も巻き終わり、私たちはどうにか寝る準備をしていた。
「……寝ようか」
「……あぁ」
だが、変に意識をしてしまって一体何を話していいのかわからず気まずい雰囲気が流れていた。
「ねぇ、ソーニャちゃん」
「何だ?」
「一緒に寝て、いい?」
「えっ!?」
やすなと、一緒に寝る……!?
「もう、そんなにびっくりすることないじゃない」
「だ、だって……」
「ソーニャちゃんってば意外と初心なのねぇ~」
「早く寝ろ!」
「あだぁ……!」
いつもの調子を取り戻そうと、照れで威力二倍増しのげんこつを喰らわせてやった。
布団をかぶると、やすなも大人しくなって布団に入った。
「……ソーニャちゃん」
「ん?」
少し静かになったと思ったら、不意にやすなが話しかけてきた。
「……ごめんね」
「何だよ、急に」
「ケガが治ったら、組織に戻るんでしょ?」
「……」
「わかってるよ……。でも、行っちゃいやだ……」
それだけを言うと、やすなは布団を深く被ってそっぽを向いてしまった。
「……」
私だって、お前と一緒にいたいと思っている。
お前は心の底から安心していられるんだ。
硝煙の臭いも、血の臭いも、殺気もない普通の関係でいてくれる。
でも、私は色々と背負いこみ過ぎたんだ。お前と違う世界の人間なんだ……。
「おはよう」
「お、おはよう……」
くそっ、あれからこいつの顔がまともに見れないぞ……。
自分でも不思議だが、こんなアホ面のどこにドキドキしたんだろう。
「そろそろ診療所に行こうか」
朝食を済ませて準備をすると、検査の為に少し違和感の残る体を動かして診療所へ向かった。
「……」
「……」
いつもならやすなが話しかけてくるのだが、今日に限ってはずっと無言で歩を進めていた。
まぁ、昨日あんなことを言ったしな。こっちも考えるので精いっぱいだから助かる。
お互い無言のまま診療所につき、やすなはそのまま仕事に移った。
私は誰もいない待合室の椅子に腰かけて、自分の番を待った。
「はぁ……」
私以外の患者がいないせいか早速呼ばれて、私は診察室へ入った。
「おぉ、待っとったぞ。どうじゃ、調子は?」
「おかげさまで順調です」
「そうかそうか。しかしすごい回復力じゃのぉ」
傷口のあたりを確認し聴診器による診察を終えると、おじいさんはカルテを書きながら笑った。
「そうなんですか?」
「あぁ。やすなちゃんのおかげじゃな」
「……まぁ、そうですね」
「あの時、わしは助からんと思っとったんじゃが、やすなちゃんが大切な人なんですと言うてな、そりゃあ必死にやっとったわ」
「た、大切な人!?」
あのバカ、そんなことを言っていたのか……!
「絶対助けるからと何度も言うて、仕事そっちのけであんたに付き添っていたんじゃ」
向こうの方で薬の充填をしているやすなを見やり、仕事らしいことなんてここにはあまりないんじゃがな、と自虐的に笑った。
「ったく、あのバカ……」
「おやおや、ずいぶんな言い草じゃなぁ」
まぁ、バカは否定せんがなとおじいさんは失笑した。
「でも、やすなちゃんはいい子じゃ」
「……そう、なのかな」
「おや、そう思わんかね?」
「……あいつは単なるおせっかい焼きのバカですよ」
「そうかもしれんが、そういうことは言っちゃだめじゃ」
おじいさんは笑いつつも私を見据えて強く言った。
「人の善意を無視する奴は一生後悔するからのぉ」
「……」
「おっと、長く生きていると人におせっかいをしたくなるようじゃ。すまんすまん」
おじいさんは言いすぎたようだと私に謝りつつ、今日の診察を終えた。
善意、か……。
でも、それが本人にとっては辛いこともあるんだ。
「ソーニャちゃん」
晩ご飯を食べ終えて片づけていると、やすなが話しかけてきた。
「何だ?」
「あのね……」
そこまで言って、やすなは言い渋り言葉を濁した。
一体何をためらっているんだ? そんなに言いにくいことなのか?
しばらくもごもごしていたが、やすなは私と目を合わせないようにしながら話し始めた。
「……ソーニャちゃんは、私といるの嫌?」
やすなの口から出たのは、思いもよらない質問だった。
「何でそんなこと聞くんだ……?」
こいつは私が予想もつかないことをいつもしてくるが、これはまた種類が違う。
「またあの時みたいに突然いなくなったりするんじゃないかって、不安になるの……」
「一緒にいてほしい。ずっといてほしい。でも、ソーニャちゃんが嫌なら……!」
やすなは俯いたまま吐き出すように言った。それだけで相当思いつめていることは見てとれた。
「嫌……、じゃない。けど……」
「……けど?」
「こんな、こんなことはやっぱり間違っている……」
お前と私は普通なら関係を持つことすらなかったんだ。
誰が殺し屋と好き好んで友達になったりするというのだ。
「……私ね、ソーニャちゃんとなら怖くないよ」
「お前……」
「はっきり嫌だって、言ってくれないと……、私……」
答えを求めるように、やすなが私に寄り添った。
「ねぇ、私じゃ嫌なの?」
そのやすなの質問には色んなものが交じっているように思えた。
私だって子どもじゃない。それがどういう意味を持っているのかも、どういう答えを待っているのかも見当はついている。
やすなのことを思えば答えは決まっているはずだった。
しかし……、
「嫌……、じゃ……」
素直なやすなの瞳に射抜かれて、建前も言えなくなり言葉を濁してしまった。
それどころか見つめ合う瞳に吸い込まれるままに距離は縮まって、お互いの唇が触れ合っていた。
「……」
「……」
少し息苦しくなってそっと離れると、顔が燃えるように熱かった。
唇に残った感触がくすぐったくて、微笑むやすながとても……、とても……。
「キス、しちゃったね……」
「わざわざ言うな……」
「……じゃあ、もう言わない」
やすなはいたずらっぽく笑うと再びキスしてきた。
「ちゅっ……、はぁっ……、んんっ……!」
キス、キス、キスの応酬……。
始めは触れ合うだけだったのに、いつしかもっと深く、もっと濃密に、もっと淫らに私たちは絡み合っていった。
キスって、こんなふわふわした気持ちになるんだ……。
「ソーニャちゃん、好き……! 大好き……!」
キスの合間にうわ言のように繰り返しては、やすなは私を求めて舌を伸ばし絡めてきた。
やすなの言葉はまるで呪いのように私を絡め取って、動けなくしていった。
「ねぇ、ソーニャちゃんは……?」
唇を解放してやすなが私に問いかけてきた。
今までの私だったらこんなことまともに答えたりしなかっただろう。
でも、こんな状況で少しだけお前に甘えてみたくなったのかもしれない。
「……言わなくてもわかっているくせに」
「……ちゃんと言って欲しいな」
恥ずかしいからあまり言いたくないんだがな……。
「……好き、だよ」
「……えへへ」
私がそっと囁くと、珍しくやすなは頬を赤くして照れた。
「ちょっと、やすな……」
キスを続けていると、やすなが徐々に私のことを押し倒してきた。
「えへへ……。ソーニャちゃん……」
やすなはすっかりその気になっていて私の服を脱がしにかかっていた。
予測できなかったわけではないが、少し強気なやすなに戸惑ってしまった。
「ま、待て。いきなりこんな……」
「やだ、待たない。待てない」
「やすっ……、んんっ……!」
私が止めるのも聞かずに、やすなは焦った様にキスを繰り返してはボタンを外していった。
「……ちょっと待てって!」
肩を掴んで思い切り引き離すと、やすなは呆然とした顔をした。
「ソーニャ、ちゃん……」
「ちょっと落ち着け……」
乱れた息を整えながら制すると、やすなは不安そうな顔をして黙っていた。
そんな顔をするなよ……。どうしていいかわからなくなるだろ……?
「ソーニャちゃん……」
「……もう、嫌だなんて言っていないだろう」
「でも……」
「いきなりは、嫌だってだけだ……」
それを聞くと、やすなは嬉しそうに笑って服を少しずつ肌蹴させていった。
「肌、きれいだね……」
「あ、あんまりじっと見るな。バカ……」
確かにやすなよりは白いとは思うが、私の肌は人並みじゃないのだろうか?
それに、今までの傷跡がちらほらと見えているというのに……。
「本当にきれい……」
それでもうっとりとした声を漏らし、やすなは私の首筋に舌を這わせ始めた。
「あっ……、お前っ……、あぁっ……!」
やすなの舌が光る跡を残しながら降りて行く中で、両手で胸を大事そうに包んで優しく触れた。
今まで感じたことのない感覚に戸惑い、変な声を出してしまった。
「ちゅうううぅ……!」
「んあっ!?」
舌で私の肌を弄んでいたと思ったら、吸血鬼のように首筋に吸いついてきた。
「あ、あああああぁ……!」
じんじんと熱い感覚が首筋に沸き起こり、やすなの唇が離れる頃にはそこに真っ赤なキスマークが刻まれていた。
「えへへ……。つけちゃった」
「お前、ふざけんなよ……! こんなところにつけやがって……」
今のはまずかった。私の理性がぐらぐらと揺れて、崩れていきそうだった。
いや、もしかしたらすでに崩れてしまっているのかもしれない。
やすなは私が怒っていると言うのににこにこ笑いながら首筋を舐めていった。
「あ、あああぁ……!」
やすなの舌がぬるぬると首筋をつたって鎖骨に降り、軽いキスをしながら私の胸を揉み始めた。
「んっ……! そ、そんなに揉むなよぉ……!」
「ソーニャちゃんのおっぱい、ぷにぷにで柔らかいよ」
自分でもそんなに触ったことないのに、他人に揉まれるなんて恥ずかしくて死にそうだった。
それに、何かむずむずとしたものが体中を駆け巡っていくのが耐えられなかった。
「気持ちいい?」
「し、知らん……!」
そういう知識で言えば胸を揉まれたら気持ちいいのだろうが、そんなことは全くなかった。
こんな感覚が気持ちいい訳が無い。こんなに背筋をぞわぞわとさせる感覚が……!
胸の間あたりを舐めていたやすなが乳首の方へ移動を始めると、敏感に反応して震えてしまった。
「はむっ……」
「んきゅぅ……! ち、乳首は……!」
固く充血した乳首をくわえられると、そこから何かが電撃のように走った。
「く、うあああぁ……! な、な、なああぁ……!」
ぬるぬるでざらざらなやすなの舌が乳首を舐め上げると、体中の力が抜けていくような感覚に襲われて怖くなった。
腰にも力が入らず、ふるふると震えることしかできなかった。
それがおもしろいのか、やすなは私を見上げてにやにやしながら乳首を責め続けた。
私は抵抗するにもどうしていいのかわからず、ただされるがままになっていた。
それをいいことにやすなは私の胸をリズミカルに吸い上げたり、乳首を唇で挟んでしごいてきたりしてきた。
「ちゅぱ……、ちゅる……、んっく……、はぁむっ……」
「や、やめろ……! だめっ……! おかしくなるっ……! や、やあぁ……!」
自分の胸なのに自分の思い通りにならず、それどころか私の心をこれでもかと掻き乱していった。
「ちゅぽん……。はぁ……、ソーニャちゃんってかわいい声出すんだね……」
散々胸を愛撫し尽くすとやすなは舌舐めずりをしつつ口を放し、すっかり呆けてしまった私を見て笑った。
「はぁ……、っはぁ……! はぁ……」
あのバカが、こんな顔になるのか?
その顔はあまりにもいやらしく、純粋だった。
「ソーニャちゃん、すごい顔しているよ……?」
「はぁ……! お、お前にいわれたくない……! はぁ……!」
出来る限りの威圧を持って睨んでみても、やすなは怖気づくどころかさらに嬉しそうに笑った。
「……変態」
「何とでも言いなさい」
やすなは全く動じていない様子で、私の胸から下半身に手を滑らせていった。
やすなの指が秘所に近づくにつれて疼きも大きくなり、腰の奥の方が熱くなった。
「ぴくんぴくん跳ねて、そんなに気持ちいいの?」
「ち、違う! ちょっとびっくりしているだけだ……」
やすなの指が秘所に触れるとぞくぞくとした感覚が腰に走り、今まで出したことのない声が鼻に抜けていった。
こんなあられも無い声を出すなんて恥ずかしくて堪らないが、やすなの指はそれを欲して私の体を愛撫してくる。
「あっ……! そ、そこ……! だめぇ……!」
くりくりと撫でまわすように動くやすなの指が敏感なところに触れて、私は一段と大きな声を出してしまった。
「くっ……! はぁ……! お前……!」
やすなにいいように弄られているのに耐えられなくなり、私は意を決してやすなの秘所に手を伸ばしてみた。
「あっ……! ソーニャちゃん。ゆ、指……!」
ショーツの上から指で触ってみると、じんわりと熱が滲んで絡んできた。
「お、お前……」
「ソーニャちゃんを見ていたら、こうなるよ……」
指先で軽く引っ掻いて見ると、息があがってきたやすなが恥ずかしそうに悶えた。
私に、そんなに興奮しているのか……?
意識してみると何だか変な感じだった。
「はぁ……! あっ……! そこっ……!」
やすなと同じように指を動かして見ると、あっという間に甘い吐息を漏らし始めた。
「はぁっ……! ソーニャひゃん……! んっ……!」
「うあっ……!? くぅ……! やすなぁ……! あっ……!」
反撃に出た私をあざ笑うかのように、やすながショーツに手を突っ込んで直接愛撫を始めた。
下半身の感覚があっという間に熱く濡れそぼった秘所だけに集中して、やすなの指の動きに反応してしまった。
私も負けじとやすなのショーツに手を突っ込み、秘所に指を這わせた。
「……ちょっといい?」
「な、何をするつもりだ」
「脱がないと気持ち悪いでしょ」
そういうとやすなは私のショーツに手をかけてするすると脱がしていった。
「ソーニャちゃん、ここぬるぬるだよ……」
「や、やめろっ……。恥ずかしいだろ……」
「そうだね。じゃあ……」
そう言うとやすなは目の前でショーツを脱ぎだした。
「ソーニャちゃん……」
「み、見ていないぞ……」
「……ソーニャちゃんのえっち」
「見ていないって言っているだろ!」
ちょっと怒鳴ると、やすなはくすくすと笑った。
「嬉しいな……」
「は?」
「私で興奮してくれたんだよね?」
「えっと……、その……」
今すぐにでも否定したいが、私の体はそれを裏付けるかのような反応がそこかしこに見られていた。
私は観念して小さく頷いた。
「電気、消そうか……」
「あ、あぁ……」
部屋の電気を消して、月明かりの中でやすなは私の横に並ぶように寝転がった。
「続き、しよう?」
艶めかしく笑うやすなの体を抱き寄せて、私は暗闇の中でその存在を確かめるかのようにキスをした。
産まれたままの体は熱く火照って、隅々まで痛いほど痺れていた。
「んちゅ……! んっ……! はぁ……! んっふ……!」
「はうぅ……! ちゅぅ……! ちゅく……! れろ……!」
淫らな舌の絡み合いの中で、私たちは曝け出されたお互いの秘所に手を伸ばした。
指先が触れると、熱い愛液がとろとろと出迎えてもっと欲しいとねだった。
「はぁ……、はぁ……、あうぅ……! あぁっ……!」
「くぅ……! うあっ……! はぁ……、はぁ……」
月明かりが差しこむベッドの上で、お互いの荒い息遣いと秘所から漏れだす淫らな水音だけが響いていた。
頭が真っ白になりそうだった。
自分がやすなとこんなことをしているなんて、考えらないことだった。
しかし、そんなことを考えている暇があればやすなの指がそれを吹き飛ばしてしまう。
私だけを見てと、指の動きを速めたりキスをせがんだりしてくるのだ。
それに呑み込まれそうになり、私は必死にやすなにしがみついていた。
「ソ、ソーニャちゃん……! そ、そこぉ……! あぁん……! はぁ……!」
偶然指が当たったところがやすなの弱点らしい。指がそこを擦るたびに体が強張り腰が跳ねた。
「ここが、いいのか?」
確認するように指で撫でつけると、やすながびくんと大きく跳ねた。
「そ、そこらめぇ……! あぅぁ……! あっ! あぁ……!」
かなり刺激が強いようで、すっかり私への愛撫をやめてしまい指の動きに翻弄されて嬌声を上げ始めた。
溢れだす愛液に助けられながら、私は指の動きを速めていった。
「ソーニャちゃん……! 私っ……、来ちゃうぅ……!」
肩に噛みつく様に堪えていたやすなが弱弱しく呻いた。
必死にしがみついてくるやすながとてもかわいくて、私はさらに指の動きを速めた。
激しく飛び散る愛液の音が部屋に響き、やすなの声が次第に高くなっていくにつれて私もなにかこみ上げてくるものを感じた。
「ひゃあぁ! らめぇ! ふあぁっ!? あぁっ! っ───!」
一際大きく跳ね上がった後、やすなは糸が切れた人形みたいにぐったりとベッドに沈んだ。
「あああぁ……! い、いっひゃっらぁ……!」
ぐちょぐちょになってしまった秘所から指を引き抜くと、どろりとしたやすなの愛液が絡みついてきた。
すっごいな……、これ……。
やすなは荒い息をがんばって整えようとしていたが、まったく収まる気配が無かった。
「大丈夫か?」
「う、うん……。はぁ……、はぁ……」
やすなが落ち着くまで待っていたが、その間にも私の体はじんじんと疼きに侵食されていた。
胸の鼓動は収まらないし、体温も高いままだ。
どうしたものか……。
すると、やすなが荒い息のまま私を抱き寄せてきた。
「な、何だ?」
「ソーニャちゃん、まだ、だよね……?」
私の体から火照りが抜けず、奥の方で渦を巻いているのをやすなは感じ取っているようだった。
「いいよ……、ソーニャちゃんの好きなようにして……?」
ベッドに横たわったままやすなは私を迎え入れる準備をすると、おねだりを始めた。
火照った私の体がそうさせるのか。それとも私を誘うやすながそうさせるのか。
一瞬ためらったものの、私はそのままやすなにのしかかり首筋に顔を埋めていた。
この疼きを鎮めたい。お前をめちゃくちゃにしてやりたい。
そのまま指を絡め合いベッドに組み伏せると、やすなの体が月明かりに白く浮かんだ。
白いシーツの上に広がる亜麻色の髪の毛と、私を射抜く亜麻色の瞳。
そして、小ぶりだがきれいな胸が息をする度に上下に揺れ動いていた。
「はぁ……、はぁ……、きて……?」
官能的な顔を見せながら、やすなは笑った。
その姿は、私の理性を完全に破壊するのに十分すぎた。
「……!」
一気に溢れだした自分の本能に身を任せて、私はやすなの唇を吸い舌をねじ込んでいた。
「んむぅ……! ちゅっ……! はぁ……! ソーニャ……、ひゃん! ソーニャちゃん……!」
「うあぁ……! あむっ……! やすな……! やすなぁ……!」
ベッドの上で足を絡め合い、腰を振っては体を抱きしめて激しいキスの応酬を繰り返した。
お互いの秘所はいやらしい水音を立てて糸を引き、お前が欲しいと口を開いていた。
私を縛るものはすっかり壊れてしまい、理性を失った獣のようにやすなに喰らいついては貪った。
何度も、何度も、何度も……。
「あぁん! や、ああぁ! あんっ! 気持ち、いいよぉ! ソーニャひゃぁん!」
ベッドに組み伏せた獲物を貪りながら、私は優越感に浸っていた。
私が動けばそれに合わせて嬌声を上げる、いやらしい獲物だ。
お前の唇、声、吐息、匂い、全部が私を狂わせるんだ。
もっとちょうだい、もっとちょうだいと私を欲して誘惑するんだ。
だから私は貪る。お前を、どこまでも……。
「そんなに激しくしちゃぁ! わたしっ……! 来ちゃうぅ!」
「はぁ……! やすなぁ……! わたしも、来るっ……!」
息も絶え絶えに喘いで限界が近いことを知ると、その先を目指してさらに動きを速めた。
「んああぁ! ソーニャちゃん! わらひ、またいくぅ! いっちゃうぅ! いっちゃううううぅ!」
「うあっ! あぁ! はぁ! やすなぁ! やすなあぁ!」
やすなの熱と私の熱が混ざっては離れて、混ざっては離れて……。
絶頂への荒波の中でお互いの体を固く抱き合い、真っ白になる意識を超えて高みへと登りつめた。
「「あああああああああぁ───!」」
そして、狭いベッドの上で私たちの体は絶頂に震えた。
「……はぁ」
こんなことをして何になるのだろう。
熱が冷めて我に返り、その思いが罪悪感のように湧いては私の心に溜まってぐるぐると渦を巻いていた。
人肌に触る機会なんて、生死の境でぐらいしかなかった私が人を抱いているのだ。
おかしいったらありゃしない。
血でまみれた私の手が、人を抱くなんて許されるのだろうか。
そんな私なのに、やすなは……。
「……どうしたの?」
「起こしたか?」
「ううん。……また考えていたでしょ」
「……何を?」
「ごまかしちゃってさ」
人肌の、いや、お前の温かさを求めるように私は抱く力を強めた。
「今だけは、忘れてほしいな」
「そうもいかない」
「……私じゃ忘れられない?」
「……」
少し難しい顔をしたら拗ねてしまったようで、私の胸に顔を埋めてきた。
「ソーニャちゃん、もうどこにも行かないで……」
「……」
私だって、今ぐらいは忘れたい。お前とずっと一緒にいたい。
でも、硝煙と血の匂いが染みついたこの体が忘れさせてくれない。やはり私は殺し屋なのだ。それはどうやっても変わらない。
私はやすなをさらに抱き寄せると、眠ることに努めた。
お前を抱いている時は忘れていられそうなんだ。
今は、今だけは、お前とふたりきりでいたい。
それから私はやすなと愛し合うようになった。
始めは戸惑いもあったり迷ったりもした。それに、私が組織に見つかるかもしれないという不安が常に付きまとっていた。
その不安を振り払うように、自分がまだ生きていることを確かめるように私たちは肌を重ね合った。
でも……、私はどこまでも弱い人間だった。
「やすな、言っておきたいことがある」
「何? 改まって」
眠りにつこうとしていたやすながもぞもぞと私の胸から顔を上げた。
「もしも、組織から逃げられなくて私が死んでも、殺した奴のことを恨まないでくれ……」
「えっ……?」
やすなは酷くびっくりしたようで、私の顔を見つめて息を呑んだ。
「それでお前の人生を狂わせたくない。無理かもしれないが……」
そこまで言いかけて、やすなの唇がその先を奪った。
「それ以上言わないで……」
「でも、これ以上私に付き合わなくていいんだ。ずっと平和な世界で生きていてほしい」
「……無理だよ。こんなにも愛しているのに」
ここまで深入りしておいてこんなことを言うなんてかなり酷なことだと思ったが、これも本心なんだ。
「嬉しいけど、わかってくれ……」
せめて、私がいなくなった後ぐらいは迷惑をかけたくないんだ……。
そんな日々が少し経った頃。
すっかり傷も癒えて最期の検診も終わった帰り道でのことだった。
「相変わらず隙が無いですねぇ」
「!?」
やすなと過ごす日々が勘を鈍らせていたのか、私の後ろからどこか抜けたような声が飛んできた。
背筋に嫌な汗が流れていくのを感じつつ、私は後ろにいるであろう人物の名前を呼んでみた。
「あ、あぎり……」
「どうも~。このまま気づかれなかったらどうしようかと思いましたぁ」
後ろに立っていたおばあさんがべりべりとマスクを剥がし、おっとりとしたあぎりの顔が現れた。
「お前、何でこんなところに……」
「それはこっちが聞きたいですぅ。組織には戻らないんですかぁ?」
「……」
「ソーニャちゃん、どうしたの?」
「どうも~」
「あ、あぎりさん! いつここに?」
懐かしい顔を見て笑顔を見せたやすなだが、私は到底そんな気分になれなかった。
「戻る気は、なさそうですね」
「な、何を……」
「顔に書いてありますよぉ」
一体何を考えているのかわからないその笑顔に、私は覚悟を決めた。
「ソーニャがそういう気持ちなら、私はあなたを消さなくてはいけませんねぇ」
「ちょ、ちょっと一体何の話!?」
いつもと雰囲気が違うのを感じ取り、やすなも何かおかしいと気づいたようだ。
「仕事の中で機密情報など知り得ている可能性もありますしねぇ」
「やすな、下がっていろ……」
「ソーニャちゃん……! あぎりさん……!」
やすなはこの状況がどういうことなのか気付いたらしい。すがるような声であぎりに呼びかけた。
だが、あぎりはそんなに甘い奴じゃない。それは私が一番よく知っている。
「あぎり……、手間をかける」
「……もっと抵抗らしい抵抗をすると思っていました」
「今の私は丸腰だ。それに、お前と戦う気なんて無いよ」
遅かれ早かれいつかはこういう時が来ると思っていた。ターゲットが組織から逃げるなんてできないんだ。
「お前で、よかったと思う」
「そんなこと言っても何も出ませんよぉ?」
あぎりはそういうと懐から何やら怪しげな道具を取り出し、それを私に向けた。
「やすな……」
顔を見ない様にして呼びかけると、泣いているのかひどく息を詰まらせた声が聞こえた。
「今まで、ありがとう」
「ま、待って……! 待ってよぉ……!」
涙でぼろぼろな声を絞り出して引き留めてくれたやすなに別れを告げて、あぎりの前に立った。
私が死んで泣いてくれる人がいるなんてな……。
私はそれだけで十分幸せだよ。
「これでいいんだ……」
目を瞑り、私は最期の時を迎える準備を終えた。
「それじゃあ、さようならぁ」
あぎりが構える音が聞こえて、乾いた音が響いた瞬間に私はこの世から消えた。
……はずだった。
「……?」
体に何も感じず、私は違和感を覚えた。
何だ? もう終わったのか?
恐る恐る目を開いて見ると、そこには色とりどりのカラーテープを撒き散らしたクラッカーを持って笑っているあぎりがいた。
「あ……、あぁ……!」
緊張が解けたのか、やすなが震えたまま地面に座り込んで泣き出してしまった。
これは一体どういうことなんだ?
答えを求めてあぎりを見つめると、相変わらずにこにこ笑っていた。
「ど、どういうことか説明しろ」
「都合の悪い人間の存在を消すのが、殺し屋の仕事ですから」
「……?」
焦る私をのほほんとかわしながら、あぎりは散らかったクラッカーを片づけながらいつもの調子で話し始めた。
「ここに来たのは組織の命令ではないんですよぉ」
「何だと!?」
「偶然立ち寄ったらソーニャがいただけです」
「ぐ、偶然……?」
「あ、組織ではソーニャはもう死んでいることになっていましたよぉ。状況が状況でしたし」
クラッカーのくずを集め終わると、どこから取り出したのかゴミ袋につめて一息ついた。
「ソーニャに戻る意思があるのなら連れ戻してもよかったんですけど、驚かせすぎましたかね?」
「……やすなにはやり過ぎたかもな」
未だに体が震えてへたりこんでいるやすなを立たせると、私もようやく力を抜いた。
「このことは報告しませんからご安心を」
「あぎり、いいのか……?」
「殺し屋のソーニャはもういませんしねぇ」
とぼけた感じでウィンクすると、あぎりは背中からカイトを引っ張り出すとワイヤーを張って広げていった。
「それじゃあ、私はそろそろ行きますねぇ」
「あ、あぎりさん!」
立ち去ろうとするあぎりをやすなが呼びとめた。
「あ、あの! もし組織を抜けられたら、ここで一緒に暮らしませんか!?」
あぎりは少し黙ると、振り向いて低いトーンで話し始めた。
「……人を知らず、世も知らず、影の中に生きる。それが忍者です」
「あぎりさん……」
「……でも、考えておきますねぇ」
あぎりは嬉しそうに笑うと、そのままカイトを使って飛び立ってしまった。
それから……。
私はここでやすなの仕事を手伝っている。
仕事柄薬剤の知識はあったからそれなりに仕事はできた。
最近ではやすなに仕事をとらないでと怒られることもしばしばだ。
「はぁ……」
船で運ばれてきた薬の充填も終わり、私は青空を仰いで一休みしていた。
「あ、また考えてる」
一緒に作業をしていたやすなが私の顔を覗き込みながら少し不満そうに言った。
「いきなり何だ」
「自分が幸せになるなんて悪いなぁ~、って顔してるよ」
……本当にこいつは変に鋭いな。
「いいじゃん。他人なんてさ」
そばにあった椅子に腰かけると、やすなは元気に言った。
「ソーニャちゃんの人生なんだから、好きなように生きなきゃ損だよ」
「……そうかもな」
この広い青空の下、私はまだ生きている。
どうしようもなく愛おしいバカと一緒に。
おわり
こんなに長く、そして遅くまで付き合ってくれてありがとう。
保守してくれた人もありがとう。
いい話をありがとう
乙!よかった
Entry ⇒ 2012.03.31 | Category ⇒ キルミーベイベーSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
やすな「またあえるよね?」ソーニャ「さあな」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1333029810/
ソーニャ「もう決まったことだ……」
やすな「ソーニャちゃんは…… ソーニャちゃんは……」
ソーニャ「……」
やすな「ソーニャちゃんは私と離れても寂しくないんだ!?」
ソーニャ「っっ……」
やすな「だからそんな態度とって……」
ソーニャ「うるさいっ!」
やすな「えっ?」ビクッ
やすな「ソーニャちゃん……」ジワァ
ソーニャ「初めて出来た友達だぞ…… 最初は友達なんかいらないと思ってたし、ウザイと思ってた…… でも……!」
ソーニャ「楽しくないわけ無いじゃないかっっ!!!!」ポロポロポロ
やすな「ソーニャぢゃん…… ひっく……」ポロポロ
ソーニャ「あぁ…… だから嫌だったんだ…… ずびっ……」
ソーニャ「こんな…… 人前で泣くなんて…… ぐすっ…… 殺し屋失格だ……」
いよいよアニメ最終回だと思うとどうにも寂しい気持ちになる
ソーニャ「今更やめれないんだよ…… 今更やめたって組織に消されるだけなんだよっ……」
やすな「ソーニャちゃん……」
ガラガラ
あぎり「時間です 行きますよ、ソーニャ」
ソーニャ「あぁ…… じゃあな、やすな」
やすな「うぅ…… ソーニャちゃあああああああああああん」
ソーニャ「やすっ…やすなっ…… ぐすっ……」
あぎり「あれ~? ソーニャ、泣いてる?」
ソーニャ「泣いてねぇ!!」
あぎり「今だけ…… 泣いてもいいですよ」
あぎり「……」ニコッ
やすな「ぞーにゃぢゃああああああああん うわあああああああああああん」ポロポロポロ
ソーニャ「っっ…… やすな…… ありがとな、ありがとな」
やすな「やだよおおおおおお!! ソーニャちゃんと離れたくないよおおおおおおおおおおお!!」
ソーニャ「ごめん…… やすな……」
やすな「謝らなくていいよっっ…… 謝らなくていいから一緒にいてよ……」
ソーニャ「ごめん…… ごめん……」
やすな「やだよっ…… やだよっ……」
ソーニャ「ごめんな…… やすな……」
ソーニャ「……」ボソボソッ
やすな「えっ!?」
ソーニャ「あぎり…… やってくれ……」
あぎり「……もう、いいんですね?」
ソーニャ「ああ……」
あぎり「フッ!」
やすな「いっ……」プス
やすな「そー……にゃ……ちゃ…………」バタッ
ソーニャ「これで…… 忘れてるんだな……」
あぎり「はい……」
ソーニャ「行こう……」
あぎり「ソーニャ、最後なにを言ったんですか?」
ソーニャ「な、なんでもいいだろ……///」
あぎり「ソーニャ……」
あぎり「お目覚めですか~~?」
やすな「あ、あぎりさん! 私いつの間に寝てたんですか?」
あぎり「私が来た時はもうぐっすり~」
やすな「そう…… ですか……」
やすな(なんだろう…… 胸におっきな穴があいたみたい…… なにかが足りない……)
やすな「じゃあ、私、帰ります」
あぎり「さようなら~~」
やすな「……」トボトボ
やすな「……!」
やすな「あれ…… 私……泣いてる? なんで?」グジュ
やすな「いつも……一人で帰ってたっけ……」
やすな「なんだろう…… なんなんだろう……」
一週間後
やすな「…………」
女「折部さん、一緒にご飯食べない?」
やすな「あ……ごめん…… わたし屋上で食べなきゃ……」
女「なんで?」
やすな「なんで…………だろう……」
女「なんなのよあの子っ! せっかく一人ぼっちで可哀想だから誘ってあげてるのに!」
男「そうだよな、前からあいつ一人だったけど最近なんだか妙だよな……」
屋上
やすな(ここにきたらなんだかとても寂しい気持ちになる…… なんでだろう……)
やすな(それなのにいつも来てしまう……)
やすな(なんで…… なんなんだろう……これ……)
やすな(あぁ…… 最近これ口癖だな……)
やすな(学校ではほとんど喋らないけど……)
あぎり「おねむですか~~?」
やすな「っは!? あ、あぎりさん……」
あぎり「目の下のくまがすごいですよ~」
やすな「最近、同じ夢ばかり見るんです」
あぎり「どんな夢?」
やすな「誰かが…… 耳元で呟くんです」
やすな「『大好きだったぜ』って行った後に……」
やすな「とても低い声で……『キルミーベイベー』って……」
やすな「その声が怖くて…… いつも目が覚めるんです……」
あぎり「では~ 天然由来の安眠グッズを差し上げますよ~」
やすな「あ、ありがとうございます……」
あぎり「ではこれで~~」
あぎり(ソーニャ…… 貴女って人は……)
やすな(なんなんだろう…… この気持ち……)
教室
ガラガラ
オイッ オリベガキタゾッ メヲアワセルナッ… アイツヤベェヨナ…
やすな(もう…… なれた……)
女「おっとぉ! ごめんなさぁい」ドンッ
やすな「っつ……」コケッ
女「ぼーっとしてると危ないわよ!」
やすな「……」パタパタ
女「チッ……」
やすな(これにも…… なれた……)
やすな「……」ガタッ
やすな(私の隣だけ…… 空席……)
やすな(なんでだろう…… これだけは……なれない……)
やすな(なんてことないことなのに…… なんでだろう……)
家
やすな「…… 寝れない……」
やすな「あぎりさんに貰った薬、飲んでみよう……」
やすな「……」ゴクリ
やすな「これで…… 寝れるかな……」
あぎり(眠り…… ましたね……)
あぎり(ごめんなさい…… それを飲むとソーニャのことを、完璧に忘れてしまう……)
あぎり(でも…… 最近の貴女は…… 見ていられなかった……)
あぎり(あのころの…… 明るいあなたに戻ってほしい……)
あぎり(ごめんなさい…… ソーニャ……)
やすな「クー… クー…」
あぎり(これで…… もう……)
やすな「っっぁ!!」ガバッ
あぎり(なっ!?)
あぎり(な、なんで……!?)
やすな「だめだ…… 寝ちゃったら…… 何か大事なものがなくなっちゃう気がするっ」
やすな「ハァ… ハァ…」
やすな「ハァ…… ハァ………… カクンッ…………」
やすな「クー… クー…」
あぎり(すごい精神力…… 薬に打ち勝とうとするなんて……)
やすな「ソー…ニャ……チャン…………」クークー
女「あたし髪染めたんだよーー みてー金髪ーー」
男「すげーー きれーじゃん」
ガラガラ
やすな「……」
女「あっ、折部さんじゃーーん おはよーー」
やすな「っ!! ぁう……」ビリビリ
女「あぁ? なに無視ってんだよ?」
やすな「っつぅ…… 頭が……」ビリビリ
男「保健室っ……! いやっ、救急車っっ!!」
やすな「っっうぅ……」ビリビリ
ピーポーピーポー
病院
やすな「…… ここは……?」
先生「病院だ 朝お前が急に倒れたからな、男と女が助けてくれたんだぞ」
やすな「そう…ですか……」
先生「感謝しとけよ じゃあ先生は学校戻るから」
やすな「はい……」
先生「ハァ……」
やすな(私っていらない子なのかな……)
家
やすな(学校は休めっていわれたけど…… もう頭は何ともないし、ひまだなぁ……)
やすな(なにかないかな……)ゴソゴソ
やすな(……あれ? これは……)ゴソゴソ
やすな(人形……?)
やすな(こっちは私に似せて作ったやつだ……)
やすな(じゃあこっち…… 誰……?)
やすな「…………」
やすな(かわいいっ)ギュウウ
やすな「っ!? いっっづぅ……」ビリビリ
やすな「あ゙ぁ…………」
やすな(痛すぎて…… 声がでない……)
やすな(私…… 死ぬのかな……)
やすな「ああああああああああああああああああああああ」
やすな(ああああぁぁ……ああぁ…………あぁ……ぁ…………………………)
『大好きだったぜ』
やすな「っっ!? この声はっ……」
プツンッ――――
やすな「……なきゃ…………」
やすな「…ろさなきゃ……」
やすな「殺さなきゃ」
やすな「殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ
殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ
殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ
殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ
殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ
殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ
殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ
殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ
殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ」
やすな「キルミー……ベイベー…………」
ガラガラ
やすな「……」フラフラ
先生「おっ、折部っ!? お前家で寝てろって……」
やすな「……」フラフラ
女「ひっ!? こ、来ないで!」
やすな「…………」フラフラ
ガシッ
女「うぐっ……」
キャアアアアアアアアアアアアアアアア
先生「お、折部っ! なにしてるっ!!」
やすな「きん……ぱつ…………」
先生「えっ!?」
あぎり「ハッッッ!!!」ドヌッ
やすな「ぐっ!!」
やすな「」バタッ
女「げほっ、げほっ…… なんなのよ…… こいつ……」
あぎり「私が責任を持ってつれて帰りますので~~」
あぎり「お騒がせしました~~」
ガラガラ
やすな「あれっ…… ここは…… っつ……」ビリビリ
あぎり「気が付きましたか……」
やすな「最近目を覚ましたら知らない場所、って展開が多い気がする……」
あぎり「…………」
やすな「あぎりさん? なにか知って…… っうがぁっ」ビリビリ
あぎり「寝ててください、最低限のことは説明します」
やすな「やっぱり何か知ってるんですね…………」
やすな「はい…… 半信半疑みたいなところもあるんですが……」
あぎり「私は本物の忍者なんです で、ある組織に所属しています」
やすな「ほ、本物なんですか……」
あぎり「まぁ、信じるか信じないかは自由ですが」
やすな「で、その組織とは?」
あぎり「殺し屋育成機関です」
やすな「殺……し屋…………? ぁうぅっ」ビリビリ
あぎり「本当は他言無用なんだけど…… 私はたぶん…… もう……」
やすな「どうなるん…… ですか……?」
あぎり「そして、見習から一流になるにはある『試験』を受けなければなりません」
やすな「その、『試験』とは……?」
あぎり「自分と親しい人を殺すことです」
やすな「なっ…………!?」
あぎり「自分に親しい人をためらいなく殺すことで『覚悟』を試すのです」
あぎり「そしてそれは同時に自分の害になりうる情報源をつぶすことになります」
やすな「な、なるほど……」
やすな「それは……」ゴクリ
あぎり「ソーニャ、という金髪の殺し屋です」
やすな「あっ―――――――――」
あぎり「なにか、思い出しましたか?」
やすな「うぐぅ――――――――」
やすな「……あっ」
やすな「だから……ソーニャちゃん、友達はいらないって……」
あぎり「さすがですね……」ニコッ
あぎり「常人なら絶対に思い出すことなんてありえないはずなのに……」
やすな「私とソーニャちゃんの絆の力だねっ!!」
あぎり「はい……」
やすな「ってことはあぎりさんも?」
あぎり「はい…… 私はこれまでの試験の成績でソーニャに劣っていたんです」
あぎり「もし、返り討ちに出来れば私が合格なんですけど……」
あぎり「ソーニャ相手では無理です♪」ニコッ
やすな「あぎりさん……」
あぎり「でも、ソーニャは貴女にお土産を残していきました」
やすな「お土産……?」
やすな「この頭の痛みは……」
あぎり「そうです、リミッターをはずすには脳に負担がかかるようですね」
やすな「……」
やすな「ソーニャちゃん失敗したらどうなるんですか?」
あぎり「組織に消されます」
やすな「っ……」
あぎり「もし、ソーニャが自害しても私たちは消されます」
あぎり「もちろん、わざと失敗してもダメです」
あぎり「もう、誰かが死ぬしかないんです」
やすな「そんなの…… わたし、ソーニャちゃんのためなら、しムグッ」
あぎり「それ以上はダメです♪ そんなこと言うとソーニャが悲しむだけです」
やすな「そんな…… せっかく思い出せたのに……」
あぎり「しょうがないですよっ♪」
やすな「あぎりさんは…… なんで……」
あぎり「ん……?」
やすな「なんでそんなに軽いんですか? ソーニャちゃんが自分の命と引き換えに護ってくれるんですよっ!?」
あぎり「……」
あぎり「わたしは……」
やすな「へっ……?」
あぎり「もし返り討ちにしたらわたしは貴女を殺さなければいけません」
あぎり「それが『試験』ですから……」
やすな「あっ……」
やすな「ごめんなさい……」
あぎり「別にいいですよ~ この世界に入ったときから覚悟してたことですから それはソーニャも同じです」
やすな「あぎりさ……」
あぎり「っっ…………」ドヌッ
やすな「あ、あぎりさんっっ!?」
あぎり「頑張って……ね…………」
やすな「あぎりさんっっっ!!!!」
??「キルミーベイベー」
やすな「ぬがっ……」ビリッ
やすな「ソー…ニャ……ちゃん…………」
ソーニャ「なっ!? お前、記憶が……!?」
やすな「当たり前だよ、ソーニャちゃんのことは忘れるわけないよ」
ソーニャ「くっ…… キルミーベイベー!!」
やすな「ぅぐっ……」ピリリッ
ソーニャ「くっ…… あぎりのヤツッ…… 思い出させやがったな!」
やすな「ソーニャちゃん……」ギュッ
ソーニャ「なっ……!?」
やすな「やだよソーニャちゃん…… わたしだけ残されてもどうすればいいかわかんないよ……」ギュウウ
ソーニャ「離れろっ!! このっ!!」
やすな「わたし、ソーニャちゃんがいなくて寂しかった…… 辛かった……」ギュゥ
やすな「でも、わたし……あの言葉のおかげで頑張れた……」
ソーニャ「あの…… 言葉……?」
ソーニャ「なっ……/// あのっ……/// それは……///」
やすな「わたしだって大好きだよ…… 言い逃げなんてずるいよ……」ギュウウウ
ソーニャ「だからっ…… だからこそっ! やすなには生き抜いてほしい!!」
やすな「やだっっ!!」ギュッッ
ソーニャ「ナイフでわたしの腹を刺せ!」
やすな「わたしね…… こんなことに巻き込まれたけどね、ソーニャちゃんと出会えてよかったと思ってるよ」
ソーニャ「わ、私はお前なんかと出会いたくなかったっっ……」ポロポロ
ソーニャ「こんな悲しい思いをするのなら!!」ポロポロポロポロ
ソーニャ「うるさいっっ!! 殺せっ、キルミーベイベー!!!!」ポロポロ
やすな「私はソーニャちゃんと出会うまで、ずっと一人ぼっちだったんだよ」
ソーニャ「…………」
やすな「死のっ、うと… ヒック… 思ったことも… ズズッ あるんだよ……」
やすな「でもっ、ね…… グスッ… ソーニャちゃんっ…と…… ズビッ 一緒にいるときはねっ……」ポロポロ
やすな「最高に楽しかったよっっ!!!!!!!!!!」
ソーニャ「あたしだって!!!!!!!!!」
ソーニャ「好きだ好きだ好きだ!! やすなが大好きだ!! お前みたいな最高に面白いやつ他にはいない!!」
ソーニャ「楽しかった!!!!!!!!」
やすな「……」ズズッ
やすな「ソーニャちゃん、顔ぐしゃぐしゃだよ…… ぶっさいくぅ……」
ソーニャ「うるせぇ…… お前もだろ……」
やすな「ねぇ、ソーニャちゃん……」
ソーニャ「なんだ?」
やすな「一緒に死のうよ」
ソーニャ「…………いいのか?」
やすな「うん…… ソーニャちゃんも、あぎりさんもいない世界なんて息苦しくて生きていけないよ」
ソーニャ「そうか…… ごめんな……」
ソーニャ「でも…… 謝っても謝りきれないっっ……」
やすな「お別れは笑顔で、感謝の言葉と共に そのほうが幸せでしょ?」
ソーニャ「あぁ…… ありがとな……」
やすな「ありがとう、 ねぇ、また会えるよね?」
ソーニャ「さあな」
やすな「来世でもよろしくね! ソーニャちゃん!」
ソーニャ「仕方ないから付き合ってやるよ」
やすな「もー ソーニャちゃんったらいじっぱりぃーー」
ソーニャ「うるせぇ!!」
やすな「じゃあ、ソーニャちゃん……」
ソーニャ「あぁ……」
やすな・ソーニャ『キルミーベイベー』
終わり
乙…
Entry ⇒ 2012.03.30 | Category ⇒ キルミーベイベーSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
やすな「ソーニャちゃん、わたし留年しちゃうかもwww」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1332818386/
やすな「だーかーらー!わたし留年しちゃうかもwwwww」
ソーニャ「・・・・・」
やすな「てへ☆」ペロッ
やすな「ソーニャちゃん!人間の頭の良さは勉強だけで決まるものじゃないよ!」
ソーニャ「勉強以外でも馬鹿なやつが何を」
やすな「わたし馬鹿じゃないよ!だって英語喋れるしね!ペラペラだよ!」
ソーニャ「高校生にもなったらそれ位みんな多少は喋れるだろ」
ソーニャ「バカバカしい・・・何でわたしがそんなこと」
やすな「あー!日本語使った!ソーニャちゃんの負け!敗者!俗物!」
ソーニャ「あぁ!?お前も日本語使ってるだろうが!!」バキボキ
やすな「ぎゃあ!痛い痛い!二本!指が二本折れちゃう!!」ジタバタ
ソーニャ「チッ・・・I want to kill you.」
やすな「Pardon?」
ソーニャ「・・・I want to ki」
やすな「Pardon?」
ソーニャ「・・・・・・・・I w」
やすな「Pardon?」
ソーニャ「うがああああああああああああああああああああああ!!!!」ドカッ バキッ
やすな「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!!!!」
ソーニャ「いや、わたし日本人じゃないが」
やすな「細かいことは気にしないの!」
ソーニャ「全然細かくねえよ やっぱ馬鹿なんだな」
やすな「あぁー!また馬鹿って言った!馬鹿って言った方が馬鹿なんだからね!」
ソーニャ「・・・・・なぁ・・・やすな・・・」
やすな「ん?」
やすな「えっ・・・?」
ソーニャ「お前・・・このままじゃ留年しちゃうんだろ」
やすな「・・・・・・かもだよ・・・」
ソーニャ「でも、こないだのテストで赤点だったんだろ だったら補修試験でいい点取らないと・・・お前ホントに・・・」
やすな「わかってるよ!!」クワッ
ソーニャ「!?」ビクッ
ソーニャ「・・・やすな・・・」
やすな「だから・・・だから勉強なんてしてらんないよ!」
ソーニャ「・・・・・・・・」
やすな「・・・・・・・あっ!そうだ!そういやこないだテレビで・・・」
ソーニャ「うるさい!!黙れ!!!」
やすな「!?」ビクッ
やすな「ソ・・・ソーニャ・・・ちゃん・・・?」
ソーニャ「大体毎日毎日絡んできやがって!うっとうしいんだよ!!」
やすな「・・・・・・・」
ソーニャ「いつも面倒くさいことばっか言って!くだらないことばっかして!」
ソーニャ「もうたくさんだ!もうこりごりだ!もう我慢ならない!!」
やすな「ソーニャちゃん・・・ひどいよ・・・グスッ・・・何でそんなこと言うの・・・?」
ソーニャ「・・・・・・・っ・・・・・!!」
ソーニャ「う・・・うるさい!さっさと勉強でもしろ!馬鹿!!」
やすな「・・・ソーニャちゃんの・・・・ソーニャちゃんの馬鹿!!!絶交だ!!」タタタッ!
ソーニャ「・・・!!・・・・・」
ソーニャ「・・・・・やすなは・・・いないか・・・帰ったか?」
ソーニャ「・・・ふん」
ソーニャ「・・・・・・・・・・・」
ソーニャ(これでよかったんだ・・・これで・・・)
あぎり「何してるの~?ソーニャ?」ヌッ
ソーニャ「うおっ!?」ビクッ
やすな「・・・・・はぁ・・・」
やすな「ソーニャちゃん・・・いつもあんな風に思ってたのかな・・・」
やすな「・・・いやいや!!もう絶交したんだし!関係ないよね!!」
やすな「・・・・・・・・・・・・」
やすな「・・・関係ないよ・・・」トボトボ
あぎり「実は~事の顛末は忍法でしっかり見てました~」
ソーニャ「・・・ずっと見てたのか いい趣味してるな」
あぎり「まあ~忍者ですから~」
ソーニャ「意味が分からん・・・まあでも見てたなら話は早い
この問題はお前には関係無いから余計なことはするなよ じゃあな」スタスタ
あぎり「ソーニャは優しいですね~」
ソーニャ「あ!?」キッ
ソーニャ「・・・馬鹿言うな アイツのことはいつもウザったいと思ってた
あれはわたしの・・・紛れもない本心だ」
あぎり「・・・そうですか~ わかりました~」
ソーニャ「ふん わかったらさっさと帰・・・」
あぎり「一つ言っておきま~す」
ソーニャ「・・・?」
ソーニャ「・・・お前わたしの話聞いてなかったのか?いい加減怒るぞ」
あぎり「しっかり聞いてましたよ~だから言ってるんです~」
ソーニャ「・・・・・早く消えろ 今のわたしは機嫌が悪いんだ いくらお前でも・・・」
あぎり「・・・それでは失礼します~」
ソーニャ「・・・何なんだよ・・・くそっ・・・」
やすな「プハーッ!!お風呂上りの牛乳ってサイコー!!」
やすな「これはきっと何かしらの魔法がかけられてるね!温度差マジックだよ!」
やすな「・・・・・そういや・・・補修試験まであと3日かー・・・」
やすな「留年しちゃったら・・・ソーニャちゃんともう遊べないのかな・・・」
やすな「・・・いやいや!!もう絶交したんだし!関係ないよね!!・・・ってあれ?何かデジャヴ・・・?」ゴクゴク
やすな「プハーッ!にしてもホントにこのめんつゆ美味し・・・ブーーッ!!」ゲホゲホ
やすな「あ、あぎりさん!?どうやってここに!?っていうか変わり身!?」
あぎり「ご満足いただけない?」
やすな「いただけませんよ!!」
やすな「というか、何しに来たんですか?あ、その前に何でわたしの家知ってるんですか?」
あぎり「まあまあ、わたしは一つ聞きに来ただけですよ~」
やすな「?」
やすな「えぇっ!?何で知って・・・」
あぎり「答えてくださ~い」
やすな「・・・・・・・・それは・・・・・・・・」
あぎり「・・・・・・・・・・」
やすな「・・・・・・・・・・」
あぎり「・・・・・・・・・・」
やすな「わたしは・・・ソーニャちゃんといるのが楽しかったけど・・・もしかしたら
ソーニャちゃんはわたしといても楽しくなかったの・・・かも・・・」
あぎり「・・・そうですか~」
やすな「・・・・・はい・・・」
やすな「・・・え・・・?」
あぎり「あなたならソーニャの本心に気づいてあげられてると思ってたんですけどね~」
やすな「ソーニャちゃんの・・・本心・・・?」
あぎり「・・・ここ最近のソーニャは随分変わりました~」
やすな「・・・?」
あぎり「あなたに出会ってからはまるで心を吹き込まれたかのようですよ~」
やすな「そ、そうなんですか・・・」
あぎり「まあそんなものは殺し屋にとっては足枷でしかないんですけどね~」
やすな「・・・わたしは・・・邪魔だったってことですか・・・?」シュン
やすな「わ・・・わたしが練習台になってるからかな?」
あぎり「違いますよ~言ったじゃないですか~あなたに心を吹き込まれたからだって」
やすな「で・・・でもそれは邪魔だって」
あぎり「殺し屋にとってはそうですけど~人間にとっては違います~」
あぎり「人間の思うままに動かされる機械なんかよりも~自分の心が思うままに動く人間の方が強いんですよ~」
あぎり「あなたがソーニャを強くしてあげられたんですよ~ 自信もってくださ~い」
やすな「・・・・・・でもわたし別に特別なことなんて何も・・・」
あぎり「あなたにとっての普通はソーニャにとっては特別だったんですよ~」
あぎり「間違いなくあなたはソーニャにとって一番の親友です~」
やすな「あぎりさん・・・」
あぎり「わたしが保証します~」
やすな「わたしはソーニャちゃんを親友だと思ってます!だから・・・だからきっとソーニャちゃんもわたしを親友だと思ってくれてるはずですよね!」
あぎり「はい~」
やすな「あぎりさん!ソーニャちゃんの家教えてください!」
あぎり「いや~それはさすがに~本人の許可がないと~」
やすな「そこを何とか!クレープおごりますから!!」
あぎり「安心してください~連れて行かないとは言ってませんよ~」
やすな「ホントですか!?」
あぎり「忍法で連れて行くんで~ちょっと眠っててください~」プシュー!
やすな「何か嗅いだことある気がするガスが!? うぅ~・・・」ガクッ
ソーニャ「・・・・・・・・・・・・・・・」
ソーニャ「・・・・・・・・・・あぎりか?」
やすな「・・・ソーニャちゃん・・・」
ソーニャ「!? や、やすな!?何でここに!?」
やすな「あぎりさんに連れてきてもらったの あっでも寝てたからここがどこかは知らないよ」
ソーニャ「・・・・・・・・・そうか」
やすな「・・・ごめんねソーニャちゃん」
ソーニャ「・・・は?」
やすな「ソーニャちゃん・・・わたしが留年しないようにわざと突き放してくれたんだよね」
ソーニャ「そっ・・・そんなことは・・・」
やすな「だから『一緒にいても楽しくない』とか『うっとうしい』とか嘘ついてくれたんだよね」
ソーニャ「・・・・・・・・違う」
やすな「ソーニャちゃんはわたしのためにつかなくてもいい嘘を・・・」
ソーニャ「違う違う違う!!」
ソーニャ「あれは・・・あれはわたしの本心だ!!」
ソーニャ「本当だぞ!いつもお前のことはうっとうしいと思ってたし!面倒くさいやつだと思ってたし!もう我慢ならないと思ってる!!」ジワッ
ソーニャ「本当だ・・・本当なんだよ・・・」グスッ エグッ
やすな「ソーニャちゃん・・・」
ソーニャ「うぅ・・・うっ・・・・何で・・・何で涙が・・・」ヒクッ ズズッ
やすな「あぎりさん・・・!」
ソーニャ「な・・・何だよ・・・何がだよ・・・っ」グスッ
あぎり「あなたは~自分のことをまだ冷徹で非情で残忍な殺し屋だと思ってるんですか~?」
ソーニャ「あ、当たり前だろ!わたしは・・・」ゴシゴシ
あぎり「じゃあ~あなたの方がよっぽど馬鹿ですよ~」
ソーニャ「!?」
ソーニャ「そ・・・そんなことは・・・」
あぎり「あなたはいつも彼女と・・・やすなさんと一緒にいるじゃないですか~」
ソーニャ「そ、それはこいつにつきまとわれてるだけで・・・」
あぎり「だったら~無視でもなんでもしたらいいじゃないですか~
・・・それこそ~二度とあなたに近寄れない位のトラウマを与えたり~」チラッ
やすな「ひぃっ!?」ゾクッ
あぎり「・・・以前のあなたならそうしてたんじゃないですか~?」
あぎり「・・・・・・認めてください、ソーニャ ホントはわかってるはずです」
あぎり「あなたはもう、冷徹で非情で残忍な殺し屋なんかじゃありません」
ソーニャ「・・・・・・・・・・・」
あぎり「いや、正確にはもうそれだけじゃありません」
やすな「・・・・・・・・・・・・」
あぎり「あなたは・・・ただの一人の女の子で、やすなさんの友達です」
やすな「・・・うん・・・友達だよ・・・親友だよ・・・ソーニャちゃん・・・」
ソーニャ「・・・やすな・・・」
やすな「ソーニャちゃん・・・」
やすな「・・・え?」
ソーニャ「ホントに面倒くさくて・・・ウザったくて・・・馬鹿だ・・・」
やすな「・・・・・・・・・・・・」
ソーニャ「でも・・・」
ソーニャ「でも・・・大好きだ・・・やすな・・・」
やすな「ソーニャちゃん・・・!!」パァァァ
やすな「え?」
ソーニャ「・・・馬鹿って言った方が・・・馬鹿だった・・・」
やすな「・・・・ふふっ そうだね」
ソーニャ「わたしたちは・・・どっちも馬鹿で・・・親友だ」
やすな「・・・うん!!」
やすな「えぇーーっ!?せっかく親友になったのに!?遊ぼうよ!!」
ソーニャ「馬鹿か!?いっ・・・一緒に進級できないと来年一緒に遊べないだろ!?」
やすな「ソ、ソーニャちゃん・・・!」
ソーニャ「もう時間はない・・・気休め程度かも知れないがまだ望みはある」
ソーニャ「試験までは・・・日付が変わったからあと2日か やれることをやるぞ わたしも協力する」
やすな「あ、ありがとう!じゃあ今日は泊まってくね!!」イソイソ
やすな「え!?な、何言ってるんですか!?あぎりさんも一緒に泊まりましょうよ!」
あぎり「え~?」
やすな「あぎりさんもわたしの大切な友達ですよ!だから泊まっていってください!」
ソーニャ「お前・・・勉強教えてもらう人手増やしたいだけだろ」
やすな「な、何言ってるのかな~?ソーニャちゃんは全くもう~!」アセアセ
ソーニャ「はぁ・・・」
あぎり(どうやら~馬鹿だったのはわたしも同じだったようですね~)
やすな「あぎりさん!早く来てください!あっ、忍法でいい点取れませんかね?」
ソーニャ「楽しようとすんな!ていうか足踏んでんだよ馬鹿!!」ボカッ
やすな「いったぁー!!何すんのソーニャちゃん!!」
あぎり「ふふっ・・・では~英単語を覚えられる忍法道具を~」スッ
やすな「ただの単語カード!?しかも白紙!!」
ソーニャ「あぁーもう!時間の無駄だ!今夜は寝かさないぞやすな!!」
チュンチュン パタパタ
ソーニャ「・・・いい天気だな」
あぎり「そうですね~」
あぎり「・・・やっぱり寂しいですか~?親友がいないというのは~」
ソーニャ「ふん そんなことはない うるさいのがいなくて清々する」
あぎり「またそんなこと言って~・・・それにしても残念ですね~」
ソーニャ「・・・・・・あぁ」
あぎり「新学期早々お腹をこわすなんて~ やすなさんせっかく進級したのに~」
ソーニャ「大方拾い食いでもしたんだろ 馬鹿だからな あいつは」
やすな「ソーニャちゃん!また一緒のクラス!しかも隣同士だね! 何か大きな力が働いてるかのようだよ!」
ソーニャ「ええい やかましい 少し黙ってろ」
やすな「またまたそんなこと言って~?ホントは親友のわたしと一緒で嬉しいんでしょ?
親 友 の わたしと!!」
ソーニャ「うるさいっつってんだろうが!!」ギリギリギリギリギリ
やすな「いだだだだだだだだだだ!!取れる!腕取れちゃう!」ジタバタ
やすな「あ!あぎりさん!ホントにありがとうございました!おかげで進級できましたよ!」
あぎり「ふふっ、ちょっと忍法で試験のヤマが当たっただけですよ~」
ソーニャ(・・・ホントにヤマだったのか・・・?)
あぎり「あっそうだやすなさん クレープ、今日おごってくださ~い」
やすな「は、はい!そうだ!・・・ソーニャちゃんも行こうよ!」
ソーニャ「面倒くさい いい」
やすな「ええーっ!?行こうよ!ね?ね?」
ソーニャ「チッ・・・仕方ないな」
あぎり「ふふふっ」
あぎりさんとは別のクラスになっちゃったし、二人は相変わらず殺し屋の仕事を続けてるみたいだけど毎日がとっても楽しいです
もちろん今までもソーニャちゃんたちと過ごす毎日は楽しかったけど、もっともっと楽しくなった気がします
やすな「よし!じゃあ早速行こう!!」
ソーニャ「放課後に決まってるだろ、馬鹿!」
おわり
あぎりさんは学年一つ上
まあ別にスレの伸びとかはどうでもいいけどやっぱり安価とかの方がウケるんだろうか
一応もう一つキルミーで書き溜めてるのがあるから近いうちに投下したい
>>67
そんな設定あったっけ?ごめん
ですよね 次のもこんな感じなんでひとつ
確認しました ホントですね 今まで知らなかった
次も期待してる
Entry ⇒ 2012.03.28 | Category ⇒ キルミーベイベーSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
古畑「キルミーベイベー……?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1330867251/
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古畑「ミルキィホームズ……?」
古畑「IQ1300……?」
何かあったんじゃないかと気にしてあげてください。
もしかしたら何か悩みがあるのかもしれませんし、
あるいは身体の具合が悪いのかもしれません。
ひょっとしたら、人を殺した後なのかも……」
やすな『やあ、やすな。実は私は、海外に住んでいたことがあるから外国語を話せるんだ』
ソーニャ「……」
やすな『へー、すごいねソーニャちゃん。まるで私のオサイフみたいだね』
ソーニャ「…………」
やすな『え、やすな。それはどういう意味だい?』
ソーニャ「………………」
やすな『ペラペラってことさ!』
ソーニャ「………………おい」
やすな『あははははははははははははははは』
ソーニャ「いい加減にしろ、まだそのパペット持ってたのか!
しかも面白くないし!」ぐいっ
やすな『いたっいたたたた、首が、首が折れる!』
やすな「ちょっ、本当に痛いっ、指が折れちゃう!」
ソーニャ「だいたいなんだよさっきの声は。
妙に甲高い声しやがって」
やすな「へっへ~ん。知らないの?
吸い込むと声が変わるガスがあるんだよ。
パーティーグッズだよ、パーティグッズ。
元々は別の用途に使われていたんだけど……」
ソーニャ「あーそう」
やすな「ソーニャちゃんも使ってみたい?
でも残念でしたー、もう使い切っちゃったから残ってませーん」
ソーニャ「……いや、別に興味ない」
やすな「またまたそんなこと言ってー
本当は興味津々なくせにー」
ソーニャ「ないって言ってるだろ!」
やすな「ふんふんふ~ん♪」
ソーニャ「あれ、お前携帯変えたのか?」
やすな「そうなのです。最新の超薄型スマホに機種変しました!
どう、ソーニャちゃん。スマートでしょ」
ソーニャ「使ってるお前はバカっぽいけどな」
やすな「ひどい!」
ソーニャ「だいたい、お前がスマホを使いこなしている図が想像できない。
むしろ機械に使われるタイプだろ」
やすな「そんなことないよ!
今もこうやってケータイ向けの
お得なサービスを使ったりして……あ」
やすな「ソーニャちゃん。帰り、カラオケ寄って行かない?」
ソーニャ「メルマガの割引クーポンか。
まあ、お前にしては使いこなしてるな」
やすな「えへへー、このカラオケボックス、よく行くんだー♪」
……。
?「ふふふ、アイツら油断してるな。隙だらけだ」
やすな「キルミーベイベー♪ どしたのワサワサ」
ソーニャ「キルミーベイベー♪ なんでもナーミン」
やすな「キルミーベイベー♪ やるならカモカモ」
ソーニャ「キルミーベイベー♪ あんだとドーン!」
やすな「ふー、次は何歌おうかなー」
ソーニャ「待て、次は私の番だ。『アナザー・ウェイ・トゥ・ダイ』を……」
やすな「えい、割り込みー」ピッ
ソーニャ「貴様……」
やすな「ええっ!? 銃を抜くほどお怒りに!?」
やすな「はい……と見せかけて、ていっ!」ヒョイッ
ソーニャ「あ、お前、銃を!」
やすな「へへーんだ! って何この銃。
よく見ると可愛いー。オモチャみたい」
ソーニャ「可愛いとか言うな!
大統領暗殺に使われた銃がルーツになってる
由緒ある暗殺用の拳銃なんだぞ!
って言うか返せバカ!」ばっ
やすな「ダメだよ、没収だよ没収!
こんなの女の子が持ってちゃダメだよ!」ジタバタ
ソーニャ「お前が持ってる方がもっとおかしいだろ!」ぐぐぐ
やすな「痛い痛い離してー」ジタバタ
没キャラ「やいお前ら、ここであったが百年……」
パァン!
没キャラ「め……?」
――バタリ。
やすな「え……?」
ソーニャ「ば、バカ! お前なんで撃つんだよ!!」
やすな「だ、だってソーニャちゃんが掴みかかってくるから……」
ソーニャ「おい、アンタ大丈夫か!?
しかっりしろ――」
没キャラ「……」
ソーニャ「ダメだ、死んでる」
やすな「ええ――っ!?」
やすな「あわわわ、どうしよう……。
人を殺しちゃうなんて……」
ソーニャ「まあこうなったら仕方ないな。
……自首してこい」
やすな「殺し屋に自首をすすめられた!?」
ソーニャ「だって撃ったのお前だし」
やすな「ひどいよ、ソーニャちゃんは知らんぷりなの!?」
ソーニャ「知らない」
やすな「あれれー、良いのかなそんなこと言っちゃってー。
凶器の拳銃は誰のものなんでしょうねー」
ソーニャ「ちょ、お前……」
やすな「警察に捕まったら、拳銃についてあることないこと言っちゃうかも」
ソーニャ「じゃあ、口封じをするしかないな」
やすな「ああ、目が仕事をする人の目にっ!」
ここでやすなを殺すのはまずいな」
やすな「そう思うなら私の首から手を離してください……」
ソーニャ「とりあえずドアを開けっ放しで死体をそのままってのはマズイ。
部屋の中に引っ張り込むぞ」
やすな「へへーん、一蓮托生だからねソーニャちゃん」
ソーニャ「くそ、なんでこんなことに……」
今泉「キルミーベイベー♪ あそぼよワサワサ」
西園寺「キルミーベイベー♪ だまってナーミン」
今泉「キルミーベイベー♪ どしてもカモカモ」
西園寺「キルミーベイベー♪ うるさいドーン!」
古畑「…………なんなのその歌」
今泉「え、古畑さん知らないんですか?
今流行ってるんですよ、キルミーのベイベー」
古畑「ああそう」
今泉「いつもオールライト♪ だけどソータイト♪」
古畑「……私お手洗い行ってくるよ。
あ、『サントワマミー』入れておいて」
西園寺「承知しました」
ソーニャ「しかし、どうしたものか……」
やすな「このまま帰る……ってわけには
いかないよねー……」
ソーニャ「そりゃ死体置きっぱじゃな……」
やすな「…………」
――コンコン
ソーニャ「っ!」ビクゥ
やすな「はいっ!」
「あのー、ちょっとよろしいでしょうか」
ソーニャ「やばい、隠せ隠せ!」
やすな「あわわわわわわわ……」
「すみません、警察の古畑と申します」
誰かが通報を……?」
ソーニャ「いいから隠せ!
ソファーの影に押し込んで、荷物でも前においとけ」
やすな「あわ、あわわわわ」
「あのー」
ソーニャ「はいはい、どうしたっ?」
「いやー、ドアの前にですね、血の跡が……
この部屋のすぐ前なので気になりまして……」
ソーニャ「しまった。血痕を拭き取ってなかった。
もはやこれまでか……」
やすな「どんだけドーン!」ドガッ
ソーニャ「!?」
ガチャ――
古畑「あ」
やすな「すいません、古畑さんでしたっけ?」
古畑「どうされたんですか、ティッシュで鼻を抑えて。
なんというかその、赤く染まっていますけど」
やすな「さっき転んだ時に鼻血が……
えーと、それで何の用ですか」
古畑「えー、ドアの前に血の跡があったので気になったんですが」
やすな「……うわ! こんなところにも血が」
古畑「んーふふふ、相当派手にぶつけられたみたいですね」
やすな「ううう……部屋に入るときに垂れたのかな。
恥ずかしい」
古畑「あっはっは……いや、失礼しました。
私、殺人が専門なもので血を見るとつい気になってしまって」
古畑「いえいえ、そんなことはないのでご安心ください。
今日はプライベートで遊びに来ているだけで」
やすな「そうですかー、あっはっは……」
ソーニャ「お、おい、次の歌始まるぞ」
やすな「あ、ゴメンねソーニャちゃん。
じゃあ失礼します。すいません、なんか驚かせてちゃって」
古畑「いえいえ、とんでもない。
こちらが勝手に気になっただけですから。
失礼しましたー。
……あれー?」
やすな「……ど、どうかしました?」ビクッ
古畑「いえー、なんか匂いませんか?
火薬の匂いがするような」
やすな「あ、さっきクラッカー鳴らしたからかな?」
古畑「クラッカー?」
やすな「そう、パーティーとかで使うあのクラッカー。
盛り上がるかなーと思ってパンパン鳴らしたんですよ。
ね、ソーニャちゃん?」
ソーニャ「あ、ああ、そうだな」
古畑「なるほど、だから火薬の匂いが……
それは楽しそうだー。
あ、すみませんでした、邪魔してしまって」
やすな「いえいえー」
――バタン。
やすな「行ったね……」
ソーニャ「行ったな……」
やすな「心臓止まるかと思ったよー」
ソーニャ「カラオケに来る前に止まってればよかったのにな」
やすな「ひどい!」
ソーニャ「それにしても、血痕の件はお前の鼻血ってことで
なんとかごまかせたみたいだな……」
やすな「何しろ体張ったからね!
でも痛かったよおおおおお」
ソーニャ「ああ、お前はよく頑張ったよ。
急に壁に向かって思いっきり顔をぶつけた時は
ついにおかしくなったのかと思ったけど」
やすな「怪我までしたのにこの言われよう!」
咄嗟によく思いついたな。
そう言えば、銃規制のない国では
実際に銃で事件を起こした犯罪者が硝煙反応を
クラッカーのせいだと主張することもあるらしいが……」
やすな「ふっふっふ、それには理由があるのです」
ソーニャ「?」
やすな「えい」パンッ!
ソーニャ「うわあああああああああっ!?」
やすな「えへへー、びっくりした? びっくりした?
実は本当にクラッカーを持っていたのでしたー。
昨日買ったんだよ!」
ソーニャ「そんなもんばっか買ってるから、
いつも金欠になるんだろ!」
クラッカー鳴らしたくらいでそんなに驚いちゃって。
あ、もしかして銃声だと思った?」
ソーニャ「うるさいっ!!」パンパンパン!
やすな「ぎゃー!! 人に向けてクラッカーを鳴らさないでー!!」
ソーニャ「全くお前は本当に懲りない奴だな……」
やすな「うう……」
ソーニャ「……ちょっとトイレ行ってくる。
余計なことするなよ」
やすな「はい……」
ソーニャ「……ん、このトイレ窓があるのか。
ここから死体を運び出したりできないかな」
――ガラッ
ソーニャ「ダメそうだな……5階から下まで降りるのは無理だ。
せめてロープか何かあればな……。
掃除用具入れに使えそうなものはないか?」
ガチャ――
ソーニャ「モップにバケツにゴミ袋にホース……
ホースは10メートルくらいか?
ロープ代わりに使うには……長さはギリギリだな」
ウロウロ……
ソーニャ「でも待てよ、窓からなんとか下に降りても、
この構造じゃその後どうすればいいんだ……?
それに、エレベーターホールに監視カメラもあったし、
トイレに死体を運び込む時にホールを通るから映っちゃうよな……」
――ピシャン
ソーニャ「ダメだ。出よう」
ソーニャ「やっぱりエレベータホールに監視カメラがあるな……
でも、角度からすると映してるのはホールだけか?
廊下までは映っていないみたいだ」
スタスタスタ……
ソーニャ「廊下の先には外の非常階段に続くドア……
ここからなんとかできないか……?」
ガチャ――ガチャガチャ――
ソーニャ「なんだ? ドアが開かない?
ドアの外に何か置いてあるみたいだな……
くそ、消防法違反だろっ!!」
ガンッ
ソーニャ「結局、いい方法はなさそうだな……
しょうがない、部屋に戻るか。
ん……あれは?」
ソーニャ「あの部屋は……空き部屋か?
何やってんだ、あの店員?」
古畑「あのー、どうかされました?」
ソーニャ「っ!」ビクッ
店員「ああ、すみません。
この部屋にお客様をご案内したはずなのですが、
なぜかいらっしゃらないみたいで」
古畑「お客さん……? 部屋に誰もいないの?」
店員「誰も……と言うか一人です。
赤っぽい髪の、元気そうな女子高生が一人」
古畑「一人でカラオケに? んー、なんというか寂しい子だね」
店員「いえ、ヒトカラ……つまり一人でカラオケに来るお客様はそれほど珍しくはありません。
現に他にも一人で来ているお客さんはいますし。
あの、ところで失礼ですが、アナタは?」
店員「え、警察の方? 何か事件でも?」
古畑「いや、部下と遊びに来ただけ。
それより、そのお客さん本当にこの部屋に来たの?」
店員「間違いありません」
古畑「じゃあトイレに行ってるんじゃない。
あのー、ソーニャさん?」
ソーニャ「え、私!?」
古畑「ええ、ソーニャさん、ソーニャさんですよね?
さっき、そう呼ばれてました」
ソーニャ「ああ、アンタさっきの……
私がどうかしたか?」
古畑「いやー、聞こえていたと思いますけど、
この部屋のお客さんがどっかに消えちゃったみたいで。
もしかしてトイレにいなかったかな……と」
ソーニャ「なんで私に聞くんだ?」
今トイレから戻ってきたところですよね?
だってそのー……手に水滴が」
ソーニャ「……なるほど、アンタ目ざといな」
古畑「んーふふふ、仕事柄細かいとこに目が行くたちでして。
えー、それで、トイレで見かけませんでしたか?
赤っぽい髪の元気そうな女子高生らしいんですが」
ソーニャ「えーと……ど、どうだったかなー……
いなかったと思うけど……」
古畑「だってさ。やっぱり勘違いんじゃない?」
店員「そんなことありませんよ!
あ、そうだ。エレベーターホールの監視カメラに姿が映っているはずです。
そこまで言うなら、管理室で確認してみますか?」
古畑「んー、お願いできる?」
店員「では、こちらへどうぞ。
管理室は一階です」
古畑「ありがと。じゃ、行こう」
ソーニャ「…………」
やすな「あ、ソーニャちゃんお帰りー」
ソーニャ「なんでそんな呑気な声が出せるんだよお前……
それよりマズイことになったぞ。
客が行方不明になってるって店員が騒いでて、
さっきの古畑って刑事が監視カメラを確認しに行った」
やすな「え、えーと……つまりどういうこと?」
ソーニャ「その客を本格的に探そうという話になったら、
この部屋も調べられるかも……」
やすな「え、ええーっ!?
どうしよう、死体あるのに」
ソーニャ「と、とりあえず死体を運び出すぞ。
向かいの部屋が今、誰もいないはずだ」
やすな「そんな行き当たりばったりな……」
ソーニャ「うるさい! 誰のせいでこんなことになってると思ってるんだ!」ぐぐぐ……
やすな「ギブ! ギブギブ! ギブ!」タップタップ
ソーニャ「だいたい私たちの部屋で死体が見つかるよりはいいだろ!
ほら、行くぞ!!」
ソーニャ「とりあえずなんとか隠したが……」
やすな「あんなんでバレないかなあ……」
ソーニャ「しょうがないだろ!
監視カメラのせいで死体を持ち出すのも無理そうだし、
他に良い方法も思いつかないんだから!」
あぎり「お困りですかー?」
やすな「うわっ!! あぎりさん!?」
ソーニャ「なんでこんなところにいるんだよ!?」
あぎり「カラオケボックスですから、歌いにきたんですよー」
ソーニャ「ああ、そうか。一人で?」
あぎり「はいー。そこの部屋ですー」
ソーニャ「私たちの隣の部屋じゃないか」
死体を隠す忍術とかないですかウプッ!?」
ソーニャ「お前、聞きかたがストレートすぎるだろ!!」
あぎり「えー、何を隠すんですかー?」
ソーニャ「いや、こいつの言うことは気にしないでくれ!!」
やすな「ムグーっ! ムグーっ!」
あぎり「隠れると言ったら遁術セットがありますけどー?」
ソーニャ「へ、へえ……? 火遁とか、水遁とか?」
あぎり「はい。これが火遁の術ですー」
やすな「ぷはっ! 火遁ってそれ、爆弾じゃないですか!!」
ソーニャ「そんな物騒なもの出すな!」
実はただのライターですからー」
やすな「ああ、全然忍術じゃなかった!」
あぎり「色んな武器の形したライターを売っているお店があるんで、
そこで買いましたー」
やすな「しかも市販品!?」
ソーニャ「ほ、他にはないのか?」
あぎり「次はこちら、水遁の術ー」
やすな「ゴーグルにアクアラング!」
あぎり「今なら水かきも……あ、水グモの術もついてきますよー」
ソーニャ「今、水かきって言ったぞ!」
あぎり「はい、土遁の術ー」
やすな「棺桶っ!?」
ソーニャ「ある意味ではタイムリー!!」
あぎり「今ならセットでお安くしますよー」
ソーニャ「気が向いたらな……」
あぎり「では、気が向いたらいつでもどうぞー」
ソーニャ「…………」
やすな「…………」
ソーニャ「とりあえず、やれるだけのことはやったな……」
やすな「…………」
ソーニャ「あとは、死体が見つからないことを祈るしかないな……」
やすな「ねえ、ソーニャちゃん。
拳銃もどこかに捨てておいた方がいいんじゃないかな。
ほら、凶器を持ちっぱなしなのもマズイでしょ?」
ソーニャ「でも、この銃手に入れるの苦労したから手放したくないんだよ……
特殊な軽量金属でできていて結構高かったし。
それに、凶器を処分しようにも、監視カメラのせいで
ばれずに持ち出すのがまず無理そうだしな」
やすな「そっか……」
ソーニャ「…………」
やすな「ごめんね、ソーニャちゃん。
こんなことになっちゃって……」
……気にするな」
やすな「ううん、気にするよ。
私のせいでソーニャちゃんを巻き込んじゃってさ……」スッ
ソーニャ「お、おい。やすな……!?」
やすな「でも、ソーニャちゃんって優しいよね。
こんな私のことも見捨てないで助けてくれてるし」ダキッ
ソーニャ「……っ!!」
やすな「ありがとね。感謝してるよ」ギュッ
ソーニャ「き、気にするなって言ってるだろ!///」
ソーニャ「……あ」
やすな「あれ、どうしたのソーニャちゃん?
もっと抱きしめてて欲しかったー?」
ソーニャ「ば、馬鹿! そんなワケあるはずないだろっ!!」
やすな「ぎゃー! 痛いっ、暴力反対!!」
ソーニャ「全くお前は……」
やすな「てへへへ……あ、そうだ。私もトイレに行ってくるね」
ソーニャ「わかった」
店員「ほら、確かに映ってるでしょ?」
古畑「んー、本当だ。
あの階には他に出入り口はないの?」
店員「非常口があるにはありますけど」
古畑「うーん、お客さんが非常口から出ていくとは考えにくいなあ」
店員「ええ、それに……」
古畑「何?」
店員「いやー、その……
まあ、実際にその場で説明します。
こちらへどうぞ……」
ソーニャ「やすなの奴、ずいぶん遅いな……
ちょっと様子見に行ってみるか……」
ガチャ――
~カラオケ店・5階廊下~
ソーニャ「あ、やすな」
やすな「…………」
ソーニャ「戻ってくるのが遅かったから、
ちょうど今、様子を見に行こうとしてたところだったんだ」
やすな「…………」プイッ
ソーニャ「え、おい。ちょっと、どこに行くんだ?」
やすな「…………」スタスタスタ
ソーニャ「おい、待てって――」
ソーニャ「ん、エレベーターが……」
古畑「ここの監視カメラってさー、
エレベーターホールしか映してないの?」
店員「はい」
古畑「で、非常口はこの廊下の突き当りだっけ……
ん、あれ。ソーニャさん?」
ソーニャ「うわっ、あ、アンタか……」
古畑「あのー、どうされたんですか?
こんなところで突っ立って……」
ソーニャ「い、いや、何でもない」
古畑「……?」
ソーニャ「私は部屋に戻る。じゃあな」バタン!
店員「……何だったんですかね?」
店員「いや、そのー……」
ガチャガチャ
古畑「あれ、この非常口開かないじゃない。
外に何か置いてあるの?」
店員「ええ、その、荷物がですね……
ダンボールに入って幾つも積んでありまして……」
古畑「それじゃ非常口にならないじゃない。
ダメだよちゃんと片づけておかなきゃ」
店員「すいません……」
古畑「んー、でもおかしいなあ。
ここが開かないんじゃ、結局あの女の子、
どこに消えちゃったんだろうね」
店員「ええ、ですから、変なんですよ」
古畑「うーん……」
今泉「あらーしーがすぎたーあとにー♪ かーたーるーにもおちていくー♪」
ガチャ――
西園寺「あ、古畑さん」
今泉「めーまいーをふりーほどいてー♪ いちにーさんでおーどりだすー♪」
古畑「ちょっといい?
実は、この階で女子高生が一人行方不明になってるんだけど……」
今泉「しーごーろくでもおーどりだすー♪」
古畑「……」ピッ
今泉「ああ、なんで止めるんですか!? 歌ってたのに!!」
古畑「真面目な話してるんだからちゃんと聞きなさいよ」ペチンッ
今泉「あ痛っ」
古畑「そう。赤っぽい髪の元気そうな娘」
西園寺「外に出て行ったのでは?」
古畑「それが妙なんだよ。エレベーターホールにある監視カメラには、
この階に来たところは映っていたんだけど、出て行くところは映っていないんだよ。
非常口は外に荷物が積んであって開かないし」
西園寺「他に出入口はないんですか?」
古畑「店員さんに確認したんだけど、ないみたい」
古畑「でしょ? 悪いんだけど二人でこの階を探してみてくれる?」
西園寺「わかりました。行きましょう、今泉さん」ガチャ
今泉「え? あ、ちょっと待って……」
――バタン
古畑「……」
古畑「…………」
ピッ
古畑「キルミーベイベー♪ どしたのワサワサ♪」
桃井かおりの回好きだ
西園寺「我々の503号室以外にも504号室、505号室にはお客さんがいるみたいですね」
今泉「ねえねえ、どこから探すの?」
西園寺「空いている個室から調べてみましょう。
店員さん、そのお客さんは本来どの部屋を使う予定だったんですか?」
店員「501号室です」
西園寺「では、その部屋から」
~カラオケ店・501号室~
西園寺「別に変ったところはありませんね」
今泉「本当はさ、アンタの気のせいなんじゃないの?」
店員「そんなことありませんよ!
さっきの方にも監視カメラの映像を確認して貰ったんですから」
西園寺「やっぱり何もないな……
今泉さん、そちらには何かありますか?」
今泉「何もないと思うよ」
西園寺「この部屋には何もないみたいですね。次の部屋に行ってみましょう」
今泉「この部屋にも何もなさそうだけどなあ」
西園寺「念のため、隅々まで調べてみましょう」
今泉「めんどくさいな。僕、座って待ってるよ。
……ん? うわ!?」
ガターン!
西園寺「今泉さん、どうされたんですか?」
今泉「知らないよ! ソファーに座ったら、座席の部分が外れて……」
店員「ちょ、ちょっと、それ!」
西園寺「……中に人が!?」
今泉「ひいっ!! し、死んでる!!」
西園寺「赤っぽい髪の女子高生……
店員さん、この人で間違いありませんか?」
店員「は、はい……」
古畑「死んでいた?」
西園寺「はい。胸を拳銃で撃たれていました。
死体は隣の部屋のソファーの中に」
古畑「拳銃……拳銃?」
西園寺「はい、傷口からすると小型の拳銃と思われます」
古畑「その拳銃はあったの?」
西園寺「いえ、死体のあった502号室からは発見できませんでした」
古畑「署への連絡は?」
西園寺「既に」
古畑「うーん……私も、その部屋の様子見てみるよ」
西園寺「はい、ではこちらへ」
古畑「んー……確かに、これは銃創だね」
西園寺「古畑さん。確か、古畑さんは管理室で監視カメラの映像を確認されたんですよね?」
古畑「確認した」
西園寺「被害者がここに来た後、人の出入りはあったんでしょうか?」
古畑「いいや。少なくとも私が確認した範囲では」
西園寺「と言うことは、犯人はまだ、この階にいるのではないでしょうか」
古畑「だろうね。ん、これは……?」
西園寺「どうされました?」
西園寺「紙の切れ端……ですか? 黄色いですが」
古畑「……」
西園寺「古畑さん。僕は今泉さんと一緒にこの階を調べてみようと思います。
どこかの部屋に犯人が隠れているかも知れませんし」
古畑「西園寺君さー、署に連絡して用意して貰いたいものがあるんだけど」
西園寺「はい、なんでしょう?」
ソーニャ「なあ、さっきから外が騒がしくないか?
もしかして、死体が見つかったんじゃ……」
やすな「もー、ソーニャちゃんってば、本当に小心者だなー」
ソーニャ「何だと!?」
――コンコン
ソーニャ「っ!?」ビクッ
やすな「やーい、ビビってやんのー!
はいはいー、今開けます」
ソーニャ「お、おい」
ガチャ――
古畑「どーも、先ほどは」
やすな「あ、さっきの刑事さん。
えーと、確か……」
古畑「古畑です」
私は折部やすなです。よろしくー」
古畑「んーふふふ。よろしくお願いしますー」
ソーニャ「な、何か用か?」
古畑「はい。えー……その、どうか落ち着いて聞いて欲しいんですが。
えー、その……」
ソーニャ「な、何だよ……勿体ぶるなよ」
古畑「はい、実は向かいの部屋で死体が発見されまして」
ソーニャ「っ!」
やすな「ええ!?」
古畑「ソーニャさんはご存知かと思いますが、この階で女子高生が一人行方不明になりまして……」
ソーニャ「あ、ああ……さっきそんなこと言ってたな」
古畑「本格的に探してみたら、向かいの部屋で死んでいたというわけで」
ソーニャ「そうなのか……犯人は見つかったのか?」
古畑「いえ、それがまだでして――あれ?
んー、おかしいなあ……」
古畑「いえ、今ソーニャさん、『犯人は見つかったのか?』と仰いましたよね?
確かに、その女子高生は胸を拳銃で撃たれて殺されていました。
でも私、殺されたなんて一言も言っていないんですよ?」
ソーニャ「う……」
古畑「なぜ、犯人なんていると思ったのか、
理由を説明していただけるとありがたいのですが」
ソーニャ「いや、それは……」
ソーニャちゃんは殺し屋だから、人が死んだって聞くと、
まず殺しと結び付けて考えちゃうんです」
ソーニャ「おいっ!!!」
古畑「え、殺し屋?」
やすな「話を合わせてください古畑さん。
ソーニャちゃんはこの年で厨二妄想をこじらせて
自分のことを殺し屋だと思い込んでいるちょっと痛い子なんです。
でもそれを真っ向から指摘すると泣き出しちゃうんです」(ヒソヒソ
ソーニャ「おい聞こえてるぞ」
古畑「え? あー……」
ソーニャ「……」
古畑「これは失礼しました。
殺し屋じゃ仕方ないですね」
ソーニャ「(ああっ、人を憐れんだ目に!!)」
もう帰ろうか、ソーニャちゃん」
ソーニャ「え、あ、ああ……」
古畑「いえ、申し訳ないんですが、それはちょっと困ります。
犯人はまだこの階にいる可能性が高いんです。
せめて、安全が確保されるまではここにいて貰わないと」
やすな「えー、でもー」
古畑「今、私の部下がこの階を調べています。
そんなに時間はかからないと思います。
お二人の安全のためにも、どうかご協力を」
やすな「まあ、そこまで言うなら」
ソーニャ「……」
古畑「んーふふふ、ご協力感謝しますー」
やすな「どういたしまして」ニコッ
古畑「おや、私の部下かな? ちょっと失礼」
ガチャ――
西園寺「古畑さん、一通りこの階を調べ終えました」
古畑「ご苦労様。外で話そうか」
――バタン。
ソーニャ「……」
やすな「……」
ソーニャ「誰が厨二妄想をこじらせた痛い子だって……?」ぐぐぐぐ……
やすな「しょうがないじゃん、他に言い訳思いつかなかったんだから……」ジタバタ
西園寺「隅々まで探したんですが、どこにも怪しい人間は隠れていませんでした」
古畑「だろうね。拳銃は見つかった?」
西園寺「いえ。この505号室以外は徹底的に探しましたが、どこにも」
今泉「もう犯人は逃げちゃったんじゃないかな。
いつまでも犯行現場にいてもしょうがないだろうし」
西園寺「でも今泉さん。この階から出て行った人間はいないんですよ」
古畑「西園寺君さー、じゃあ犯人はどこに隠れていると思う?」
西園寺「はい。考えてみたんですが、犯人は隠れてなんかいないんじゃないでしょうか。
個室の中で、客として堂々と振る舞っているのでは?」
古畑「んーふふふ」
この中の誰かが犯人……そう言えば、古畑さんはなぜ、505号室の二人と話していたんですか?」
古畑「さて、何だと思うー?」
西園寺「もしかして、この二人を犯人だと考えてらっしゃるのでは?」
古畑「んーふふふふ」
西園寺「そうなんですね?」
古畑「ところで、さっき頼んだものはある?」
西園寺「はい、こちらに」
古畑「ありがと。ちょっとここで待機してて」
ガチャ――
古畑「すいません、お待たせして――」
やすな「犯人は見つかったんですか?」
古畑「いえ、それが見つからなかったんです。はい」
やすな「えー……それじゃあ、もう逃げちゃったんじゃないですか」
古畑「……」
やすな「何にしろ、犯人が近くにいないなら、もう帰ってもいいですよね?」
古畑「ええ、私としましてもお二人をお帰ししたいのは山々なんですが――
私の部下がですね、お客さんの中に犯人がいるんじゃないかと言い出しまして」
やすな「え、それってもしかして私たちも疑われてるってことですか?
どうしよう、ソーニャちゃん。私たち容疑者だって」
ソーニャ「……え、どうしようって、その――」
お気に障ったのなら申し訳ありません。
ただ部下がですね、死んだ赤毛の子がこの部屋に来ていないか
確認するべきだと言っていまして……」
やすな「やだなー、知りませんよ。
ね、ソーニャちゃん」
ソーニャ「……ああ、知らないな。
何でそんなこと言ってるんだか」
古畑「ええ、それがですね。死体の服にこんなものがついてまして」
やすな「何ですかそれ、紙切れ?」
古畑「はい、えー黄色い紙の切れ端です」
ソーニャ「それがどうかしたのか?」
古畑「はい。この紙切れ何なのかと考えてみたところ、
一つ思い浮かぶことがありまして……
これ、クラッカーの紙ふぶきじゃないでしょうか?」
ソーニャ「あ……」
折部さんがクラッカーを鳴らしたと言っていたことを思い出しまして。
そのことを部下に話したら、
被害者はこの部屋に来ていたんじゃないかと言い出しましてね」
ソーニャ「それは……」
やすな「えー、でもそんな人、来てませんよ?」
古畑「しかし、クラッカーの紙が……」
やすな「はあ。あの、それが?」
古畑「……」
やすな「え? だってクラッカーなんて日本中どこでも売ってるし、
紙切れがついてたからって、
その人がこの部屋に来たってことにはならないですよね?」
古畑「えー……はい。私も部下にそう言ったんです。
ところが部下は頑固な奴でして、念のためこの部屋と
お二人の荷物を調べるべきだと言って聞かないんです。
凶器の拳銃が見つかるかも知れないと」
やすな「やだなー、私たち、ただの女子高生ですよ?
拳銃なんて持ってるわけないじゃないですか」
んーふふふ、拳銃ぐらい持ってるんじゃありませんか?」
ソーニャ「う……それは」
やすな「やだなー古畑さん。ソーニャちゃんが殺し屋って言うのは
あくまで本人がそう思い込んでいるだけですよ。
別に本当に殺し屋なわけじゃないんだから銃なんて……」(ヒソヒソ
古畑「はい、承知してます。でも殺し屋だと思い込んでるなら
ここで私が疑わないのも不自然かと思いまして……
んーふふふ。ご協力お願いできませんか?」(ヒソヒソ
やすな「…………」
ソーニャ「おい、やすな……?」
どうぞ好きなだけ調べてください!」
ソーニャ「おい!」
古畑「ご協力ありがとうございます」
やすな「ほら、ソーニャちゃん。
ここにいると邪魔になるから私たちは外に出てようよ」グイグイ
ソーニャ「わ、こら。引っ張るな!」
古畑「廊下で立ちっぱなしと言うのもなんですから、
我々の部屋で待っていてください。
ご案内します、こちらへどうぞ」
ガチャ――
今泉「黄色いサクランボ♪ 黄色いサクランボ♪」
古畑「ちょっと……何やってるの?」
今泉「え、カラオケを……」
古畑「そんなこと聞いてるんじゃないよ。
なんでこんなとこで遊んでるのかって聞いてるんだよ。
ほら、西園寺君を手伝ってきなさい。
ほら、早く!」
今泉「うわ、ちょっと、押さないでくださいよ古畑さん!」
古畑「バイバイ」バタン
ソーニャ「……」
やすな「…………」
古畑「いやー、すみません。お見苦しいところを。
今の奴、今泉って言うんですがどうにも役に立たない奴で――
あ、どうぞおかけください。何でしたら何か歌っていただいても」
やすな「あ、今の人の歌の点数が出てるよソーニャちゃん。
すごい、96点だって!」
ソーニャ「ああ、そうだな。すごいな……」
古畑「では、折部さんどうです。一曲」
やすな「えー、前の人がこんな高得点だと歌いにくいなー。
それより古畑さんこそ何か歌ってくださいよー」
古畑「え、私ですか? あ、いや参ったなー……
それじゃ失礼して」ピッ
やすな「イエーッ!」
ソーニャ「……(まあ銃はポケットに入ってるから
さっきの部屋を調べられても大丈夫だが……)」
古畑「あなたの好きな人と♪ 踊ってらしていいわ♪」
ソーニャ「……(持ち物調べられたら終わりだよなあ……)」
古畑「ラスト・ダンス♪ 忘れないで♪」
やすな「さあさあ、点数はー?」
ソーニャ「……58点」
やすな「さっきの人より低い……
古畑さん、歌ヘタですね」
古畑「んー……マイマイクじゃないと調子が出ない」
――コンコン
古畑「あ、終わったのかな。
ちょっと失礼します」
ガチャ――
古畑「どう、見つかった?」
西園寺「いえ、荷物も部屋の中も徹底的に探しましたが、見つかりませんでした」
古畑「……そう」
やすな「古畑さーん。どうでした、何か見つかりました?」
やすな「だから言ったじゃないですかー、
私たち、ただの女子高生なんだから銃なんて持ってるわけないって。
さ、もう帰ってもいいですよね?」
古畑「いえー、まだです」
やすな「えー、何でですか?」
古畑「いやー、部下がですね、
ボディチェックもするべきだって言ってまして」
ソーニャ「……っ!!」
古畑「申し訳ないんですがご協力願えませんか」
やすな「いい加減にしてくれませんか古畑さん。
あんまりしつこいと、ソーニャちゃんの暗殺拳が火を吹きますよ?」
ソーニャ「そ、そうだ……私の暗殺拳が火を吹くぞ!」
ソーニャ「何でそんなに私たちを疑うんだよ!
犯人は逃げちゃったって考えた方が自然だろ!」
古畑「いやー、それがですね。エレベーターホールの監視カメラには、
この階から出て行った人間は映っていないんです」
ソーニャ「非常口から逃げたのかも知れないだろ!」
古畑「いえ、ありえないんです。非常口、外に荷物が置いてあって開かないんですよ。
だから犯人はまだこの階にいるはずなんです。
お願いです、ご協力ください」
ソーニャ「うぐぐ……で、でもほら、あんまり身体とか触られるの嫌だし……」
古畑「ご安心ください。署から金属探知器を持ってきて貰いました。
指一本触れずにチェックできます」
ソーニャ「ううう……」
ソーニャ「おい、やすな――」
やすな「しょうがないよソーニャちゃん。
良いって言うまで帰してくれなさそうだしさ。
でも古畑さん。これで最後にしてくださいよ?」
古畑「はい、お約束します」
やすな「では、私からどうぞ」
古畑「はい、では失礼して――」
…………。
やすな「……どうですか?」
古畑「んー、何も反応しませんね」
古畑「はい、ご協力ありがとうございます。
それでは、ソーニャさんも」
ソーニャ「ちょっと待て、私は――」
古畑「失礼」サッ
ピー! ピー!
ソーニャ「……(……終わった)」
お手数ですが、そのポケットの中のものを取り出して貰えませんか」
ソーニャ「ああ……」スッ
古畑「これは……ナイフ?」
やすな「ほら、何しろソーニャちゃんは殺し屋ですから」
古畑「んー、あんまりこういうものを持ち歩くのは
褒められたものではないんですが、刃渡りが短いので今は不問としましょう。
えー、続けます」
ピー! ピー!
ソーニャ「……」ガサゴソ
古畑「んー、またナイフだ……
あのすいません、まだナイフ持っていたら全部取り出してください」
古畑「んー、随分ナイフを持ち歩いてますねー……」
やすな「何しろ殺し屋ですから」
古畑「これで全部ですか?」
ソーニャ「ああ……。(銃を取り出すわけにはいかないし……
でもこのままじゃ見つかるし……どうすれば……)」
古畑「では、また失礼します」
ソーニャ「……(ダメだ。打つ手がない……終わった……)」
古畑「んー……」
やすな「反応ないみたいですね、古畑さん」
ソーニャ「え……」
古畑「うーん、確かに反応がありません」
ソーニャ「(え……何でだ? 銃はこのポケットに入れてたはずなのに……)」ガサゴソ
やすな「じゃあもういいですよね。私たちいい加減に帰りたいんですけど」
ソーニャ「(……ない。あれ、銃がないぞ……どこに行った?)」ガサゴソ
古畑「うーん、おかしいなあ……他のところは全部探したんですが」
やすな「やっぱり、犯人はもう逃げちゃったんじゃないんですか?」
やすな「それ、私も考えてみたんですけど、
やっぱり犯人は非常口から出て行ったんじゃないかなー」
古畑「しかしですね、ドアの外には荷物が……」
やすな「きっと犯人が出て行った時には塞がっていなかったんですよ」
古畑「店員さんの話では、結構前から荷物が置きっぱなしだったみたいですが」
やすな「だったら、犯人は荷物をどかして非常口から入ってきて、
その後に非常口から出て行ってまた荷物を積みなおしたんじゃないかなー」
古畑「……」
やすな「それで説明はついてますよね?」
古畑「…………んー、はい」
さ、行こっか。ソーニャちゃん」グイッ
ソーニャ「あ、ああ……」
古畑「すいません、最後に一つ確認しておきたいことが」
やすな「……まだ、何か?
さっきこれで最後だって言ってましたよね?」
ソーニャ「……」
古畑「そんな怖い顔しないでください。
一応、連絡先だけ教えて頂きたいなと思いまして。
ご自宅か、携帯電話の番号、よろしいですか?」
ソーニャ「……ああ、ちょっと待て、確認する」ガサゴソ
やすな「……」
ソーニャ「私の携帯の番号はXXX-XXXX-XXXXだ」
古畑「……メモしました。ありがとうございます。
あ、折部さんも教えて頂けますか?」
ソーニャ「……?」
やすな「あれ、どこ行ったかな……
ソーニャちゃん、悪いんだけど私の番号、
古畑さんに教えてあげて」
ソーニャ「ああ……分かった。
えーと、やすなの番号はXXX-XXXX-XXXX……」
古畑「…………。
はい、ありがとうございました」
やすな「それじゃあ、私たちはこれで失礼しますね。
さようなら、古畑さん」
古畑「……はい、ご協力ありがとうございました。
それでは、また」
やすな「……行こ、ソーニャちゃん」
ソーニャ「あ、ああ……」
――バタン。
古畑「…………」
ソーニャ「……なあ、やすな。私の銃、どうしたんだ?」
やすな「え、何のこと?」
ソーニャ「とぼけるな! さっき私に抱きついた時にすりとったろ!」ぐぐぐ……
やすな「だ、大丈夫、大丈夫! 後で取りに行けると思うから!」ジタバタ
ソーニャ「本当か……?」
やすな「……タブン」
ソーニャ「……」ぐぐぐぐぐぐぐ……
やすな「痛い! 外れちゃう外れちゃう!」
古畑「…………」
――コンコン
古畑「どうぞ――」
ガチャリ――
西園寺「失礼します。もう一度この階を調べてみましたが、
やはり拳銃は見つかりませんでした」
古畑「うーん、そう」
西園寺「また、監視カメラの映像も確認し直してみましたが、
やはり5階で人の出入りは無かったみたいです」
古畑「そう」
西園寺「ただ、人の出入りではないんですが、
非常に気になる映像が映っていました」
古畑「何?」
西園寺「はい、古畑さんが管理室にカメラの映像を確認しに行っていた間、
折部やすながエレベーターホールを何度も横切っているんです。
個室と女子トイレの間を往復していたみたいなんですが、
その回数が異常に多くて」
西園寺「百往復以上です」
古畑「ひゃく……え、何往復だって?」
西園寺「百往復以上です」
古畑「百往復以上!? 何でそんなに」
西園寺「そこなんです。彼女は一体なぜそんなことをしていたのでしょう」
古畑「何か手に持っていなかった? 例えば、拳銃を持ち運んだりとかは」
西園寺「いいえ、手ぶらでした。
ただ、凶器の拳銃は恐らく小型のものですから、
服の下に隠して持ち運ぶことはできたと思いますが――」
古畑「うーん……」
西園寺「もしかしたら、拳銃をトイレの排水溝から流したのかと思って
調べてみたんですが、それらしい痕跡はありませんでした」
西園寺「ありました。ただ、そこから持ち出すのも無理です」
古畑「何で?」
西園寺「女子トイレの窓の外はビルの裏側に繋がってるんですが、
そこは他のビルにも囲まれていて、外には繋がっていないんです。
ちょうど、中庭みたいな形になっていると言えばいいでしょうか」
古畑「そこにも拳銃は無かったの?」
西園寺「はい。ありませんでした。
女子トイレの窓から拳銃を投げ捨てたのなら、
ビルに囲まれたスペースの中で見つかるはずなんです。
しかし、見つからなかった以上は
ここに捨てられたわけでもないということになります」
古畑「他のビルの窓の中に投げ捨てられたってことは」
西園寺「他のビルは、その空間に面した壁に窓がついていませんでした」
古畑「うーん……」
荷物をどかして非常口から侵入した後、
また非常口から出て行ったのでしょうか……」
古畑「いやー、違うと思うんだけどなあ」
今泉「あ、何の話してるんですか?」
古畑「何でもないよ」
今泉「そんな、仲間外れにしないでくださいよ。
どしたのワサワサ? どしたのワサワサ?」
古畑「うるさいドーン!」バチンッ!
今泉「痛っ!! そんな強く叩かなくてもいいじゃないですか!」
西園寺「今泉さん。504号室のお客さんに話を聞いていたのでは?」
今泉「そうなんだけどさ、なんか変な娘なんだよ。
自分のことを忍者って言っててさ……」
古畑「うーん、ちょっと話を聞いてみようか」
あぎり「呉織あぎりですー。
あ、これ、名刺代わりの手裏剣です。どうぞー」
古畑「えー、頂戴いたします。
その、呉織さんは忍者でいらっしゃるとか?」
あぎり「はいー。あ、これ忍法の遁術セットですー。
お安くしときますよー」
古畑「遁術?」
あぎり「はい、右から火遁の術、水遁の術、土遁の術ですー」
今泉「ね、古畑さん。何だか変な娘でしょ?」
古畑「うーん……今日は殺し屋に会ったり、忍者に会ったり、
変な日だなあ」
古畑「あれ、お知り合いなんですか?」
あぎり「ええー。同じ学校に通ってますよー」
古畑「ひょっとして、折部やすなさんもご存じで?」
あぎり「はいー、知ってますよー」
古畑「あのー……ちょっとお聞きしたいことがあるんですが……」
あぎり「…………はい、そうですけどー?」
古畑「なるほど、ありがとうございます。
ちょっと失礼……」
古畑「えー、ようやく拳銃がどこに消えたのか分かりました。
これでこの事件も無事、解決しそうです。
皆さんは、折部やすながどうやって
拳銃を消してしまったのか分かりましたか?
ヒントは……、忍法ぉ~! んーふふふ。
古畑任三郎でした」
途中でさるくらった時はどうしようかと思ったけど、すぐに再会できて良かった。
>>159で、けすなってなってるのは単なるミスで、あぎりさんの変装だったからじゃないぞ。
また、しばらくトリック当ての時間をとる。
推理をどうぞ。
前回の小衣ちゃんが一時間くらいだったから、とりあえず二時までとろうかと思うけど、
正解が出たら前倒しで解答編に入る。
さすがに棺桶はないだろ
どうにかして分解した後ホースに詰めて水流で吹き飛ばしたとか?
特殊な軽量金属がミソだと思うんだがなあ、こころちゃんの時も理科的トリックだったし
↓
限界まで入ったら零さないように残った方にも栓をする
↓
10M の棒完成
↓
ゴミ袋に証拠品を入れて棒にくくりつける
↓
窓から屋上に投げ飛ばす
と考えたがヒント完全無視だな…
拳銃はデリンジャー?
問題文中で言及されていないけど、【屋上にも凶器は存在しない】
>>201
そう。デリンジャー。
デリンジャーってよくある2発のやつ?
それともリンカーン大統領暗殺に使われ単発のやつ?
単発。なぜなら2連式より軽いから。
あぎりさんの忍具:爆弾型ライター、アクアラングとゴーグル、水かき、棺桶
やすなの持ちもの:クラッカー、携帯電話(取り調べ時点では紛失)
・個室とトイレを100往復以上したやすな
・凶器の拳銃は隠し持てるほど小型で、特殊な軽量金属でできている
他になにかあったっけ?
やすなが返事をしなかった理由
すごく納得したけど、>見直したら>9で使いきっちゃったって言ってるぞ
超薄型のスマホを使いこなすやすなというのはヒントなのか
やすなはヘリウムを入れられるような容器も持ち運んでないんだぜ。
後で回収できると思うという確信のない返事はGPSたどって探しに行かなきゃいけないってのと合うし
風船で飛ばすのは忍術の凧で飛ぶ奴っぽい
なんとなくつじつまあってきたかな?
それほど大きいもの、つまり棺桶!
いや割とマジで関係ある気がしてきた
アクアラングってボンベ含む?
解答編入る。
>>251
含む。
やすな「うわあ……暗いよー」
ソーニャ「そんなにくっつくな! 歩きにくいだろ」
やすな「そう言いながらソーニャちゃんだって、
私の服をつかみっぱなしのくせにー。
やーい、怖がりー」
ソーニャ「うるさい! お前が迷わないようにしてやってるんだ!
ほら、こっちだ。行くぞ」
やすな「うう、暗くて怖いー」
ソーニャ「何だよ、お前だって怖がってるじゃないか。
……ついたぞ、この辺りだ。手分けして探すぞ」
やすな「あ。ソーニャちゃん、電話かけてみればすぐに見つかるかも」
ソーニャ「……それもそうだな。それじゃ」ピッ
キルミーベイベー♪ どしたのワサワサ♪
ソーニャ「……あそこか。
ふー、一時はどうなることかと思った」
ガサゴソ……
ソーニャ「ようやくこの銃も手元に戻ったな」
やすな「うおっ、眩し!!」
ソーニャ「なんだこの光!? サーチライト!?」
古畑「えー、お待ちしておりましたー」
ソーニャ「この声、さっきの刑事か!? 何でここに……」
古畑「んーふっふっふ。
いやー、危ないところでした。あのまま拳銃が見つからなかったら、
完全犯罪になってしまうところでした」
ソーニャ「くそ、近づくな!
こっちには銃があるんだ。撃つぞ」チャキッ
古畑「あーあー、行けませんそんな。
未成年者が喫煙なんかしては」
ソーニャ「……何言ってるんだ?」
そういうライターを売っている店があるので、買ってきてすり替えておきました。
そこにあった拳銃は――あ、見えますか? はい、これですー」ヒラヒラ
ソーニャ「……」カチッ
やすな「あ、火が……」
古畑「んーふふふ。残念でした」
やすな「何でここが……」
古畑「えー、それにお答えする前に私からも質問を。
お二人は何でここに拳銃があると分かったんですか?
私の答えは、それと全く同じです」
やすな「……」
結局拳銃は見つかりませんでした。
ただですね、女子トイレには窓がありました」
ソーニャ「……」
古畑「窓の外は付近のビルで囲まれた空間になっていて、
そこからも拳銃は発見できなかったんですけれども……
その空間は空に繋がっていました。
ふふふ……拳銃は、そこから空へ飛んで行っちゃったんですねー」
やすな「……うう」
古畑「引っかかったのはですね、折部さん。
あなたが個室と女子トイレを百回以上も往復もしていたことです。
まあどう考えても異常ですからねー。
一体なんでそんなことをする必要があったのか……
それを考えたら謎が解けましたー」
やすな「……」
えー、お二人もご存知ですよね? 彼女がいました。
そして、彼女は水遁の術と称して潜水用のアクアラングを持っていました。
アクアラング……酸素ボンベです」
ソーニャ「……」
古畑「ただ、酸素ボンベの中身って、100%酸素というわけではないんです。
そんな高濃度の酸素を吸ったら死んじゃいますからね。
酸素自体の濃度は20%程度で……じゃあ他は何なのかと言うと、
ボンベのタイプにもよるんですが、彼女の持っていたボンベは
残りの80%がヘリウムでした。
ヘリウム、ヘリウムと言えば声が高くなるパーティグッズに使われたり、
んーふふふ、風船を浮かせたりします」
やすな「……」
古畑「風船用のヘリウムは純度が100%なので吸い込むと酸欠になりますが、
酸素が20%混じった混合ヘリウムなら吸い込んでも大丈夫です。
で、この混合ヘリウム、風船に入れると浮くんです。
えー、細かい計算は……ああ、ちょっと待ってください、メモしてきたんです」
古畑「はい、1モル、つまり22.4リットルあたりの重さが空気の場合は約29グラム。
酸素20%ヘリウム80%の混合気体は9.6グラム。
空気の重さから混合ヘリウムの重さを引いた約20グラムの浮力が発生します。
1リットル辺りに直すと約0.9グラムの浮力ですね。
一方、人間の肺活量は平均して3リットルくらいで……んーふふふ。
いや、面白いことを考えたものです」
やすな「……」
古畑「折部さん、あなたは肺の中に混合ヘリウムを入れて運搬することにより、
女子トイレで風船を膨らましたわけです。
実際に風船として使ったのは、掃除用具入れにあったゴミ袋ですか?
一回辺り、3グラム程度の浮力を発生するヘリウムを運搬して……
んーふふふ、百回以上も。いや、ご苦労様でした」
やすな「……くそう、くそう」
しかもこれ、素材のせいか随分軽い。
200グラムくらいしかないんじゃないですか?」
ソーニャ「……」
古畑「そのまま消えちゃえば証拠もなくなっていたかも知れませんが……
この銃を回収しようとしたのは失敗でしたね。
連絡先を確認したとき、折部さんが携帯を持っていなかったのを思い出しまして……
それで気づいたんです。
携帯も一緒に飛ばして、GPS機能を使って回収するつもりなんだと。
私も先ほど聞いた折部さんの電話番号から、
携帯の位置を特定してここで待っていたわけでして」
ソーニャ「私があの銃を手放したくないって言ったせいで……」
古畑「えー、以上です。
こんな山の中にいつまでいるのもなんですし、
こちらへどうぞ」
古畑「ただ、私にも一つだけ分からないことがありまして……
結局、なんで銃なんか持っていたんです?」
やすな「いやー……それは……」
ソーニャ「殺し屋だからだ」
古畑「…………ああ、それはさきほど聞きました」
ソーニャ「殺し屋だから」
古畑「…………はあ」
ソーニャ「殺し屋だから」
古畑「……まあ、それについてはゆっくり話をお聴きします。
君、パトカー出して」
(おしまい)
まあ、どうにかして現場から凶器を持ち出さないとアウトだったから一か八か空にリリースしたと思って貰えれば……
以上、お疲れ様。
よくこんなマジキチじみたトリック解けたな。
推理物のトリックなんてたいていマジキチじみてますから
てかトリックってどうやって考えるの?
できれば教えて
古今東西のトリックを研究して分解して組み合わせる。
あと、見聞きした情報をトリックに応用できないか考えてみる。
今回はフロッグボイスと風船に入っているのが両方ともヘリウムってところから、色々調べてこのトリックにした。
スマフォごと風船に付けて飛ばした、って解いた人の奴見てそれっぽかったから
アクアラングってスキューバダイビングの事だっけ?だったらボンベの気体がヘリウムと関係あるんじゃね?
って思って調べたらビンゴだった
よくこんなトリック思いついたな
トリックすげーな、面白かった。乙
自分が何かマズイことをしたんじゃないかと考えてみてください。
口に出さなくても心の中では、とても怒っているのかもしれません。
ひょっとしたら……殺してやりたいとか思われているのかも」
今泉「ちくしょう! いつもいつも、古畑のやつ、俺をいじめやがって!」
桑原「今日はいつになく荒れてるねー」
今泉「だってひどいんだよ! 今日も人の額をぺチぺチぺチぺチとさ!
まったく、俺をなんだと思ってるんだ!」
桑原「それにしても今日の事件は変わった事件だったみたいだね。
犯人、女子高生で現役の殺し屋だって?」
今泉「うん、そうなんだよ。信じられないよね」
桑原「いやー、殺し屋って本当にいるんだねえ」
今泉「俺もビックリしたよ。
裏には巨大な組織があるかもしれないって話になってた」
桑原「うわあ……怖いなあ……」
確かメモを貰ったような……」ガサゴソ
桑原「ちょっと、オタクそんな物騒なもの持ち歩いてるの?
落としたりしたらどうするの」
今泉「大丈夫大丈夫。
あったこれだ。この番号に電話すればいいんだな」
桑原「って、何かけようとしてるの!?」
今泉「いや、依頼しちゃおうかと思ってさ。
これで古畑の奴を……」
桑原「ちょっとちょっとやめなさいよ今泉さん!!」
今泉「えい」ピッ
桑原「ああ!?」
今泉「……あ、もしもし。
はい、依頼をお願いしたいんですけど……」
桑原「ちょ、ちょっと!」
きっと声変えてるんだよ」(ヒソヒソ
桑原「うわー、何だか本格的だねえ」(ヒソヒソ
今泉「あのねえ。横暴な上司に悩まされてるんだけど、何とかして貰えませんかねえ」
桑原「…………」
今泉「うーん、まあ、命は勘弁してやってもいいんだけど、
ちょっと脅かすくらいしてやりたいんですよ」
桑原「殺し屋に何頼んでるのアンタ」
今泉「はい、はい、じゃあ報酬はそれで……
そうです。古畑って奴です……
え、なんであんた古畑さんの名前知ってるの?」
桑原「……?」
はい、はい……はい、お疲れ様でした!!」
桑原「ちょっと、どうしたのよ今泉さん!」
今泉「……電話の相手、古畑さんだった」
桑原「…………」
今泉「…………」
桑原「…………」
今泉「…………うわあああああん!!」ダキッ
桑原「…………」
(おしまい)
楽しかったよ
Entry ⇒ 2012.03.11 | Category ⇒ キルミーベイベーSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
やすな「くそっ、よりによってやすなと入れ替わるなんて」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1330509713/
ソーニャ「そろそろ帰るか」
ソーニャ「……」
ソーニャ「いつまでそうしてるつもりだ」
やすな「ナンノコトカナー」
ソーニャ「とぼけるな。なんでコソコソ隠れたりしてるんだ」
やすな「だって、こないだは結局ソーニャちゃんの家まで行けなかったんだよ?」
ソーニャ「別にいいじゃないか」
やすな「よくない! というわけで、今日こそ連れてって」
やすな「また殺し屋の仕事? そんなの聞いたら、邪魔しない訳にはいかないじゃん!」
ソーニャ「声がでかい! それに、何回も言うけど、お前には関係ないだろ」
やすな「関係あるよ! もう今夜はソーニャちゃんを帰さないからね」
ソーニャ「離せバカ」
やすな「やだ」
ソーニャ「このっ!」ブンッ
やすな「あっ」
ソーニャ「わ……あぶな」ガシッ
ゴロゴロゴロゴロ
ソーニャタチガカイダンカラオチタゾー
「……保健室か? 私は、確か…」
「そうだ、やすな! あいつと一緒に階段から転げ落ちたんだ! やすなは大丈夫なのか……」
「やっと目が覚めたんですね~」
シャッ
「あぎり。お前が運んできてくれたのか?」
あぎり「違いますけど、そんなとこです~」
「そうか。ところで、やすなはどうした? 先に帰ったのか?」
あぎり「えぇ?」
あぎり「…えーと……」
「なんだよ。まさか、病院沙汰に」
あぎり「……この鏡をご覧あれー」
「鏡がどうしたと……」
あぎり「……」
「……」
あぎり「……ソーニャ?」
やすな「ちょ、ちょっと待て。わた、私今やすなになって」
「ふああ……んっと」
やすな「!!」
やすな「夢じゃない……嘘だろ……」
「あれ、ソーニャちゃんは? おーい、ソーニャちゃーん」
あぎり「お目覚めのようですね~」
やすな「バカ! まだ何もまとまってないだろ!」
「あっ、あぎりさん。ソーニャちゃん見ませんでしたか?」
やすな(私よりまず自分の体を心配しろよ)
「……そ、ソーニャちゃん!? いつの間に鏡に閉じ込められちゃったの!?」
あぎり「大丈夫ですよー。この魔法は、王子様のキスで簡単に解けますから~」
「じゃあ、王子様じゃないけど、私が…」
やすな「おいっ!」
あぎり「あ」
「……」
やすな「…し、しまっ」
「きゅう」
あぎり「あらー、また眠ってしまいましたねー」
やすな「……どうしてこうなった」
「うん……」
あぎり「あ、おはようございますー」
「…あれ、ここ、たしかあぎりさんの家じゃ」
あぎり「そうですよぉ」
「なんか変な夢を見てたみたいなんです。私とソーニャちゃんが入れ替わっちゃったりしてて」
やすな「おい、飯買ってきt」
「……」
やすな「……お前、やすなだな?」
ソーニャ「…そ、ソーニャ、ちゃん…?」
ソーニャ「どうしよう」
やすな「さっき階段から落ちたのがきっかけなら、またやってみれば治るんじゃないか」
ソーニャ「そんな痛そうなのやだよぉ」
やすな「そんなこと言ってる場合か。あぎり、ちょっと階段借りるぞ」
ソーニャ「け、怪我しちゃったらどうすんの!」
やすな「お前の体だから別にいい」
ソーニャ「ひどい! じゃあ私だってソーニャちゃんのパンツ見たりするから」
ソーニャ「あれ、痛くない」
やすな「くそっ、なんだこのひ弱な体は」
ソーニャ「はっはっは、どうやら形成逆転のようだねソーニャくん!」
やすな「」ガシッ
ソーニャ「いたいいたい!」ギリギリ
やすな「技術は肉体関係なく使えるからな」
あぎり「ソーニャ」
やすな「ん?」
やすな「ちっともよくない」
あぎり「任務……どうするの?」
やすな「あっ」
ソーニャ「?」
やすな「いいかやすな。今回のターゲットはな、某社の重役」
ソーニャ「え、もしかしてそれって」
やすな「……仕方ないだろ。お前が私の代わりに任務をこなすんだ」
ソーニャ「無理無理無理無理! ぜーったい無理! ソーニャちゃんがやってよ!」
やすな「この体でやれるか!」
やすな「そういう意味じゃない。もしこの体で暗殺をしたのがバレたら、危ないのはお前だぞ」
あぎり「まぁ、そうですねぇ。組織からしてみれば、どこの誰とも知れない人間に獲物を横取りされたわけですから」
ソーニャ「そ、そんなぁ」
やすな「そんなの嫌だろ。だからお前が、『ソーニャ』がやらなきゃならないんだよ」
ソーニャ「……その任務って、いつ取りかかる予定なの?」
やすな「3日後の夜8時……ちょうど72時間後だ」
ソーニャ「じゃあ、それまでになんとか元に戻るしかないよ!」
ソーニャ「まだ何にもしてないのに、諦めるなんてダメ! 痛いのも我慢するから、一緒に頑張って方法を探そうよ」
やすな「……そう、だな」
ソーニャ「ね。大丈夫、きっとすぐ元に戻れるって。もしかしたら、明日起きたら治ってるかもよ? ちゅーしたら呪いが解けるとか」
やすな「せやぁっ!」グイッ
ソーニャ「極ってるから……ソーニャちゃんの本体に著しい破損が予想されるから」
やすな「ん」
あぎり「そろそろご飯にしませんか?」
ソーニャ「そういえば、もうこんな時間かぁ」
やすな「焼きそばパンは私が貰うから、後は適当に分けろ」
ソーニャ「ソーニャちゃん! 私の体なんだから、ちゃんと野菜も食べて!」
やすな「キャベツとかニンジンが入ってるから大丈夫だ」
ソーニャ「また屁理屈言ってー」
やすな「そのセリフ、お前には言われたくなかった」
やすな「じゃあ、これからのことだが」
やすな「私がやすなの家に行くのは当然として、お前はどうするんだ?」
ソーニャ「家に帰るよ」
やすな「私の?」
ソーニャ「私のに決まってるじゃん」
あぎり「確かに、二人一緒なら何か思いついたときにもすぐに試せますからねぇ」
ソーニャ「まあ私は、ソーニャちゃんの家が分かるならソーニャちゃんちに寝てもいいけど」
やすな「お前の家にしよう」
やすな「た、ただいまー」
ソーニャ「大丈夫、お父さんもお母さんも今日は帰るの遅いから」
やすな「そ、そうか」
ソーニャ「ソーニャちゃんはお風呂派? シャワー派?」
やすな「私はいつもシャワーだ。湯船に浸かったことはほとんどない」
ソーニャ「じゃあお風呂入れるね」
やすな「なんでそうなる」
ソーニャ「せっかくのお泊まりなんだし、普段出来ないことを体験させてあげようかと」
やすな「今日は疲れたんだよ。早く布団に入りたい」
ソーニャ「だったらなおさらだよ! ゆっくりお風呂に入って、日頃の疲れを癒さなきゃ」
やすな「……勝手にしてくれ」
やすな「先に入っていいぞ」
ソーニャ「え? 一緒に入るんじゃないの?」
やすな「お前……」
ソーニャ「そんな目で見ないで下さい……」
やすな「さっさとしろ」
ソーニャ「仕方ない、一人でソーニャちゃんの体にいろいろするか」
やすな「!!」
ソーニャ「さあどうする、ソーニャ!」
やすな「くっ……」
ソーニャ「こっちの方が良かったって。ソーニャちゃんが一人でいる間にお母さんたちが帰ってくるよりさ」
やすな「……」ぶくぶく
ソーニャ「ところでソーニャちゃん」
やすな「……なんだよ」
ソーニャ「この目隠しはいつになったら外れるのかな?」
やすな「風呂上がりには取ってやる」
ソーニャ「お風呂で目隠しなんて、転んだりしたらどうなると思ってるの!」
やすな「大丈夫だろ、お前なら」
ソーニャ「今はソーニャちゃんの体なんだけど」
やすな「今度はなんだよ」
ソーニャ「体を洗いたいんだけど」
やすな「勝手に……いや待て。私に洗わせろ」
ソーニャ「やっぱりね」
やすな「……」ゴシゴシ
ソーニャ「あ゛ー……もっと力を入れてくれたまえよソーニャくん」
やすな「こうかぁ!?」ガシガシ
ソーニャ「ああ、そのくらい」
やすな「く、全力なのにこの程度か……」
やすな「やめた。自分でやれ」
ソーニャ「あれあれ? いいのかなー? じゃあ遠慮なく」
やすな「お前の体がどうなるか、よく考えて洗えよ?」
ソーニャ「はっ」ピタッ
やすな「あーあ、湯船も案外悪くないなー」
ソーニャ「くそう! くそう!」
やすな「へぇ、結構片付いてるな」
ソーニャ「当たり前じゃん。ところで、ソーニャちゃんの寝床だけど」
やすな「ああ、それは布団でも大丈夫だ」
ソーニャ「……それがね、お客さん用の布団という布団にカビが生えてて…」
やすな「えっ」
ソーニャ「明日お母さんに頼んで洗濯しといてもらうから、今夜だけ同じベッドでもいいかな?」
やすな「」
ソーニャ「もう無理だよ」
やすな「毛布くらい無かったのか!」
ソーニャ「タオルケットくらいしか……」
やすな「……まあいい。やっと休めるな」
ソーニャ「……」
やすな「……」
ソーニャ「ソーニャちゃん」
やすな「やすな」
『!』
やすな「な、なんだ。お前から言えよ」
ソーニャ「……あのさ、もしも、どうやっても、私たちが元に戻れなかったら」
ソーニャ「……頑張って、殺し屋になるから」
やすな「!」
ソーニャ「それに、ソーニャちゃんに人殺しなんてさせるくらいなら、私がやる」
やすな「……お前には無理だ」
ソーニャ「練習すれば出来るよ。ソーニャちゃんの体だし…」
やすな「……」
ソーニャ「うん……それだけ。で、ソーニャちゃんの話は?」
やすな「…何だったかな。忘れた」
ソーニャ「そう……分かった、おやすみ。ソーニャちゃんも早く寝てね」
やすな「ああ」
やすな(多分やすなは死ぬことになる)
やすな(どんな理由であれ、組織からの任務はこなさなきゃならない。それが出来ない奴には『死』だ)
やすな(いくら蓄えがあったって、あいつ一人で組織から逃げ切れるはずもない)
やすな(一方私は、多少の息苦しさは感じるとしても、組織との手も切れてなんの問題もない生活を送ることができる)
やすな(足がつくとしたらあぎりだが、仮に組織に報告されたとして、私なら逃げ延びられる可能性はある)
やすな(死ぬのは、あいつ一人……)
やすな(いや)
やすな(あいつがいなくなったら、私だって……)
やすな(……なに考えてるんだ私は。もう寝よう)
やすな「もっと引っ張れやすな!」
彼女らは考えられるだけの解決法を試した
ソーニャ「もっと赤くした方がいいかな?」
しかし、そのいずれも二人を治すには至らず
あぎり「ショック療法ですー」
毛虫『恐縮です』
やすニャ「わーっ!」
とうとう、要人暗殺決行日の前夜を迎えた
やすな「……で、ターゲットの帰宅ルートが…」
ソーニャ「……はぁ、はぁ…」
やすな「大丈夫か、やすな?」
ソーニャ「…ソーニャ、ちゃん……」ブルブル
ソーニャ「…怖いよ、どうしよう、ソーニャちゃん…」
やすな「……私がやるか?」
ソーニャ「……だめ…私、が…やらなきゃ……」
やすな「…そうだな、やすな。大丈夫、この計画なら、必ず逃げ切れる。帰ってきたら、今度こそ元に戻れる方法を探そう。時間はたっぷりあるんだ」
ソーニャ「……帰って、これたら」
やすな「なんだ?」
やすな「そうか……」
ソーニャ「…もう、寝るね。明日は朝から準備があるんでしょ?」
やすな「ああ」
ソーニャ「……おやすみ」
やすな「……おやすみ、やすな」
やすな「……行ってくるね」
ソーニャ「ああ。心配なことがあったら、すぐに連絡をよこせよ。いつでも出てやるから」
やすな「うん」
ソーニャ「……じゃあ、また後でな」
やすな「……うん、またね」
ソーニャ「……」
やすな(それなりの企業の人間だから、もし殺されたらニューステロップくらいは出るはずだ)
やすな(あるいはTwitterで流れるか……いずれにしろ、成否はすぐに伝わる)
やすな(あとは、やすな……)
KMB緊急ニュース速報
やすな「!!」
K県M市で発砲事件 一名死亡
やすな「や……やった!」
キャスター「番組の途中ですが、ニュースをお伝えいたします」
キャスター「先ほどK県M市の某社前にて、何者かによる発砲事件が発生しました」
キャスター「犯人と思われる人物は捕まっていません。付近にお住まいの方はしっかりと戸締まりをし、事件現場周辺を通行中の方は、速やかにその場を離れて下さい」
やすな(ここまでやれば、あとは組織がもみ消してくれる。大丈夫だやすな。お前の心の傷も、私が一生かけたって癒してやる)
キャスター「……えー只今入ってきた情報です。犯人が出頭した模様です」
やすな「……え?」
やすな「嘘だ」
やすな「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ」
prrrr!
やすな「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで」
prrrr!
やすな「は」
ピッ
あぎり『ニュース……もうご覧に?』
やすな「なんで、なんであいつ助かったのに成功したのになんで」
あぎり『落ち着いて下さい、ソーニャ。まだ情報が錯綜している状態』
ピッ
やすな「」
やすな「」
やすな「」
やすな「ばいばい
M市狙撃事件のソーニャ容疑者は、その後の調べにより過去の要人殺害事件にも関与していた可能性が浮上。しかし、事件内容と本人の証言が一致しないことや、現場に残された証拠品などから、検察はこれらの事件については不規則処分とする。
狙撃事件についてはソーニャ容疑者に9年の実刑判決が下った。
――
9年後
「折部家……と、ここだ」
「懐かしいなあ、全然変わってないや」
「え? うん、大丈夫だよ」
「『折部やすな』は、ここに眠ってるはず」
「いや、やっと眠れるのかな」
「まあいいや。じゃあ、痛くないように殺してね」
「ただいま、ソーニャちゃん」
パン
BAD END
―深夜:やすなの部屋―
やすな
↓
〇
ソーニャ| ̄ ̄ ̄|
↓ | |
〇 |ベッド|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄床
やすな「うーん……うーん…」ゴロン
←
〇
| ̄ ̄ ̄|
| |
〇 |ベッド|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄床
〇
| ̄ ̄ ̄|
→ | |
〇|ベッド|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄床
やすな「うん……そっちのソーニャちゃんはぁ……あんまり痛くないほうだから…」ゴロン
←
〇
| ̄ ̄ ̄|
| |
〇|ベッド|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄床
やすな「――うわぁっ!?」
ソーニャ「ぐふぅっ!」
やすな「」
ソーニャ「」
やすな「」
ソーニャ「」
やすな「はっ」
やすな「……そうだ、今日は、私…」
やすな「…起きてよ、ソーニャちゃん。学校遅刻……」
やすな「……あれ?」
やすな「ソーニャちゃん! 見てみて!」
ソーニャ「後で……あれ? やすな?」
やすな「元に戻れたよ、私たち!」
ソーニャ「……お、おう」
やすな「あれ、なんかあんまり嬉しそうじゃない? もしかして夢じゃないかとか思ってる?」
ソーニャ「いや、唐突すぎて」
やすな「ほっぺ叩いて痛かったら現実だからね、せーnはひぃん!」
ソーニャ「なるほど、この手応えは……」
やすな「いたぁい…でも夢じゃなかった……」
やすな「どしたの?」
ソーニャ「私が私に戻ったんだから、こんなことしてる場合じゃない! さっさと準備に――」
やすな「」グッ
ソーニャ「なんだよ?」
やすな「あのね、ソーニャちゃん。私、昨日まで『生きる為に人を殺さなきゃならない』っていう立場にいてね」
やすな「私は初めてでソーニャちゃんはベテランだから、恐怖心とかはともかく、ソーニャちゃんも『好きで殺し屋なんてしてるんじゃない』って所は私と変わらないとおもったんだ」
やすな「だから……前みたいに殺し屋なんてやめろって、あんまり強く言えないけど」
ソーニャ「……」
ソーニャ「」キョトン
ソーニャ「なにいってんだお前?」
やすな「学校卒業したら、すぐ仕事探す。ううん、今からアルバイトもする。それで、私がソーニャちゃんを養ってあげるの」
ソーニャ「はぁ?」
やすな「ソーニャちゃんは家にいて、好きなだけTV見ててもいいし、どっか遊びに行っててもいいよ。ご飯の支度もお風呂の準備も、ぜーんぶ私がやる。だから」
やすな「……ね」
ソーニャ「……バカだな」
やすな「ちょちょ、ソーニャちゃん?」
ソーニャ「お前の稼ぎだけで、私を養えるわけないだろ」
やすな「そんなことない…」
ソーニャ「それに」
ソーニャ「……もう、私一人じゃダメなんだ」
やすな「え?」
ソーニャ「怖かったんだよ、お前がいなくなるのが」
ソーニャ「こういうことがなかったら、考えもしなかっただろうけど……お前が私を心配する気持ちが、少し分かった気がする。少しだけな」
やすな「ソーニャちゃん」
ソーニャ「思い出したよ、やすな」スッ
やすな「ソーny」
ソーニャ「…………」
やすな「…………ん」
ソーニャ「…ぷは」
やすな「……ソーニャちゃん、意外と大胆なのね」
ソーニャ「う、うるさい」
ソーニャ「殺し屋辞めるなんて、私は一言も言ってないぞ」
やすな「えっ」
ソーニャ「そもそも、お前に食べさせてもらうなんて屈辱以外の何物でもない」
ソーニャ「じゃあ、そろそろ行くか」
やすな「待ってソーニャちゃん!」
ソーニャ「ええい、離せ!」
やすな「」チュ
ソーニャ「」
やすな「今のは、行ってらっしゃいのちゅーだからね」
ソーニャ「……ど、ど」
やすな「?」
ソーニャ「どんだけドーン!!」
やすな「どっせぇぇーい!」
HAPPY END
これからやすなとソーニャは愛をたしかめあうんじゃないのか?
続けてもいいのよ
Entry ⇒ 2012.03.07 | Category ⇒ キルミーベイベーSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
ソーニャ「今日もやすなで抜くか・・・」
ソーニャ「やす・・・な・・・」クニクニ
ソーニャ「あんっ・・!」ビクンビクン
ソーニャ「ふぅ・・・」
ソーニャ「やすな・・・」
ソーニャ「zzz」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1328286639/
ソーニャ「今日もやすなで抜くか・・・」
やすな「ソーニャちゃん!」
ソーニャ「やすなか」
やすな「えへへ、おはよう」
ソーニャ「おはよう」
ソーニャ(朝から可愛いな・・・)
やすな「ソーニャちゃん、昨日ね・・・」
ソーニャ「うん・・・うん・・・」
ソーニャ(犯罪的な可愛さだな・・・)
ソーニャ「へぇ」
ソーニャ(柔らかそうな唇だな・・・)
やすな「あっ、ソーニャちゃん宿題やった?」
ソーニャ「うん」
やすな「みせて~」
ソーニャ「だめだ、自分でやれ」
ソーニャ(やすなの為だ・・・くそっ)
やすな「そんな~・・・」
ソーニャ「当然だ」
ソーニャ(がっかりした顔も天使みたいだな・・・)
ソーニャ「えっ・・・」
ソーニャ(お、教えてだと・・・2人っきりで!?)
やすな「ねえソーニャちゃん」ユサユサ
ソーニャ「ゆらすな」
ソーニャ(抱きしめたいよやすな・・・)
やすな「お弁当のオカズあげるからさ、ねっ?」
ソーニャ「ちょっとくらいならみてやる」
ソーニャ(オカズはお前だよ・・・)
ソーニャ「や、やめろ!」バシッ
ソーニャ(我慢できなくなるだろ・・・)
やすな「いたっ、酷い!ソーニャちゃんの馬鹿!」
ソーニャ「お前が抱きつくからだろ」
ソーニャ(はぁ・・損な性分だな・・)
ソーニャ「な、なに言ってんだ」
やすな「まぁいいや、後で宿題教えてね」
ソーニャ「はいはい」
ソーニャ(くそっ、こんなに近くにいるのに・・・)
ソーニャ(はぁ・・・今日もやすなにキツく当たっちゃったな・・・)トボトボ
ソーニャ(本当は抱きしめてイチャイチャしたいのに・・・)トボトボ
あぎり「あれー、なにかお悩みですかー?」
ソーニャ「!?」
あぎり「もしかしてー恋愛とかーですかー?」
ソーニャ「ど、どこから出てきたんだ」
あぎり「秘密ですーでも否定しないということはー」
ソーニャ「ち、違う!私はそんなんじゃ・・・」
あぎり「せっかく良い物があるのに・・・」
ソーニャ「良い物・・・?」
あぎり「でも関係ないですよ、これは恋愛でお悩みの女子高生が使うものですから」
あぎり「ただし女の子同士の恋愛でね」
ソーニャ「なん・・・だと・・・」
あぎり「だからソーニャには関係ありませーん」
あぎり「えー、なんでですかー?」
ソーニャ「し、仕事に使えるかもしれない・・・しな」
あぎり「・・・まぁ見せるだけなら」パッ
ソーニャ「お、おう」パシッ
あぎり「効果は書いてる通りですー」
ソーニャ「へ、へぇ・・・こんなのがあるのか・・・」
あぎり「あーる、ルートからの特別な薬でーす」
あぎり「もちろん天然由来ですけどね」
ソーニャ「そうか・・・」
あぎり「・・・1万円でいいですよ」
ソーニャ「だ・・・だれがこんなもの・・・あっ」ピラッ
ソーニャ「私の一万円がたまたま風で・・・」
あぎり「ふふふ」パシッ
ソーニャ「こ、こらー。こんな物を押し付けるんじゃないー」
ソーニャ「・・・///」
ソーニャ「はやく帰ろう・・・」
ソーニャ「よ、よし・・・飲むぞ・・・」
ソーニャ「・・・ごくっ」
ソーニャ「ふぅ・・・これで明日の朝には効果が出るはずだ・・・」
ソーニャ「今日は大人しく寝るとするか」
カチッ
ソーニャ「ん・・・朝か・・・」
ソーニャ「・・・!?」ガバッ
ソーニャ「ほ、本当に効いてる・・・」
ソーニャ「アレってこんな風になってるのか・・・」
ソーニャ「しかし・・・これでやすなと・・・」
ソーニャ「///」
ソーニャ「考えたらムラムラしてくるな//
」
やすな「ソーニャちゃん、今日はどこよってく~?」
ソーニャ「好きにしろ」
ソーニャ(しかしどうすればいいのやら・・・)
やすな「あ、そういえば~」
やすな「ソーニャちゃん私の家来たことないよね?」
ソーニャ「あぁ、そうだな」
ソーニャ(家・・・だと・・・!?)
やすな「じゃあ今日は私ん家で遊ぼっか~!」
ソーニャ「まぁそれぐらいなら」
ソーニャ(これは・・・チャンスだ・・・)
やすな「ただいまー!!さぁ上がって上がって~」
ソーニャ「お邪魔します」
ソーニャ(これがやすなの家か・・・やすなの匂いがする)
やすな母「おかえり・・・あれっ、あんた友達つれて来たの?」
やすな「うん、ソーニャちゃんだよ」
やすな母「あら、あなたがソーニャちゃんね、いつも娘がお世話になってます」
ソーニャ「いえ・・・そんなこと・・」
ソーニャ(これがやすなのお母さんか・・・似てるな)
やすな「ソーニャちゃんロシア人なんだよ」
やすな母「あら、そうなの」
やすな「うん、いまは殺し・・・むぐっ」
ソーニャ「あははは!そうなんですよ、留学に来てるんですよ・・・ハハハ」
やすな母「あら、大変ね~」
ソーニャ「ふぅ・・・危ないとこだった」
ソーニャ(しかしここがやすなの部屋か・・・天国だな)
ソーニャ(そしてあれがやすなが毎日寝てるベット・・・)
ソーニャ「ちょっと匂いを・・・」
ガチャ
やすな「ソーニャちゃん、お菓子もってきたよ」
やすな「あれ、眠いの?」
ソーニャ「ちょ、ちょっと横にな・・・ハハ」
ソーニャ(あ、あぶないあぶない・・・)
ソーニャ「いや、そこまで眠いわけじゃ・・・」
やすな「よいしょ」ゴロン
やすな「えへっ、ソーニャちゃんと添い寝だぁ・・・」
ソーニャ「ななな・・・なにを///」
ソーニャ(や、やすなの柔らかい身体が・・・)
やすな「なにって添い寝だよ~ソーニャちゃんとお昼寝するの嬉しいな~」
ソーニャ「べ、別に私は寝ないぞ・・・」
ソーニャ(や、やすなの匂いが・・・)
やすな「ん?なんか固いのが当たってる・・・携帯?」
ソーニャ(もうどうなってもいいや・・・)
やすな「そう・・・ってくすぐったいょお!スリスリしちゃだめぇ!」
ソーニャ「し、してねぇよ///」
ソーニャ(あっ・・・ついやっちゃった)
やすな「もーっ、ソーニャちゃんがそんな事するなんて思わなかったよ」スリスリ
ソーニャ「やっ、足からめるなっ・・・あんっ」
ソーニャ(やっ・・・やすなの足が・・・)
やすな「えっ、どうしたの?」
ソーニャ「く、くすぐったかっただけだ・・・!」
やすな「ねぇ、やっぱこれなに?携帯じゃないよね?」ぐにっ
ソーニャ「あっ」ビクン
やすな「え?ぐにってしたよ?」ぐにぐに
ソーニャ「ば、馬鹿・・・やめ」
やすな「えっ?どうしたの」バサッ・・・
やすな「えっ、なにこれ・・・」
ソーニャ「・・・」
やすな「えっ・・・」
ソーニャ「じ、じつは・・・かくかくしかじかで・・・」
やすな「そう・・・なんだ・・・」
ソーニャ「・・・」
ソーニャ「うぅ・・・」
やすな「そっか~えへへ」
ソーニャ「い、嫌じゃないのか?」
やすな「うん」
ソーニャ「・・・やすなは私の事どう思ってるんだ」
やすな「えっ、好きだよ?」
ソーニャ「い、いつも酷い事してるのに・・・それでもか」
ソーニャ「ごめん・・・」
やすな「でも今日からは私に怒らないでね?」
ソーニャ「う、うん」
やすな「えへへっ・・・ソーニャちゃん大好き」ギュッ
ソーニャ「・・・!!」ビクッ
ソーニャ「や、やすな・・・!!」チュッ
やすな「んっ!んん~!!」
ソーニャ「やすな、好きだ」ガバッ
やすな「あっだ、駄目ぇ」
ソーニャ「優しくするから・・・な?」ナデナデ
やすな「え、ええ~・・・」
やすな「・・・ハァ」
やすな「しかたないか・・・いいよ、けど優しくしてね」
ソーニャ「・・・やすな」チュッ
ソーニャ「ふぅ・・・やすな、可愛いかったぞ」ナデナデ
やすな「うう~、ソーニャちゃんったら6回も中に出して・・・」ぎゅっ
やすな「赤ちゃんできちゃうよぉ・・・」
ソーニャ「ん~?嫌なのか?」ナデナデ
やすな「嫌じゃないけど・・・」
ソーニャ「なら大丈夫だな」
やすな「もう・・・」スリスリ
やすな「ねぇ・・・ソーニャちゃん」
ソーニャ「ん、どうした?」
やすな「あの・・・出来ちゃったみたい」
ソーニャ「なにが?」
やすな「私とソーニャちゃんの赤ちゃん・・・」
ソーニャ「ほ、ほんとか・・・」ガタッ
やすな「どうしたらいいのかな・・・」グスッ
ソーニャ「う、産めよやすな・・・私が責任とるからさ」
やすな「ほ、本当?」
ソーニャ「あぁ・・・結婚しよう・・・やすな」
やすな「う、う~ん・・・」
やすな「ああああああああ・・・!」ニュルッ・・・オギャーオギャー
ソーニャ「!!」ガタッ
医者「あー!よしよし!元気な女の子だ!」
看護師「おめでとうございます!」
やすな「わ、私の赤ちゃん・・・」グスン
ソーニャ「や、やすな・・・よくやった」ウルウル
ソーニャ「ああ・・・やすなにそっくりで可愛いだろ?」
やすな「えへへ・・・でも目元はソーニャちゃんと同じだよ」
ソーニャ「ああ・・・間違いなく私とやすなの子だな・・・」
あぎり「いやーほんとに産まれるとはー・・・」
あぎり「まぁ2人が幸せならそれでいいねすかねー」
ソーニャ「やすな・・・」
あぎり「うわあーみせつけてくれますねー」
ソーニャ「やすな・・・愛してるぞ・・・」チュ
やすな「んっ・・・んん・・・私も」チュッ
やすな「っていうお話を幼稚園でやるんだけどどう?」
ソーニャ「いや、駄目に決まってんだろ・・・」パシッ
やすな「あ!返してよぉ!」
ソーニャ「これは没収だ」
やすな「そ、そんなぁ・・」シクシク
ソーニャ(後でじっくり読み返そう///)
終わり
ソーニャちゃんがアニメでデレるのはいつだろう
Entry ⇒ 2012.02.17 | Category ⇒ キルミーベイベーSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
ソーニャ「やすなは私のモノだ」やすな「へ?」
ソーニャ「何だ」
やすな「おでこに“ソーニャ”って書いたった!」
ソーニャ「は?」
やすな「これで私はソーニャちゃんのものだよ!だから大事にしてね!」
ソーニャ「意味が分からん」
やすな「ソーニャちゃんてばいつも私のことぞんざいに扱うんだから、こうすれば何か大事にしたくなるでしょ??」
ソーニャ「ならん……」
やすな「ソーニャちゃーん♪」ピト
ソーニャ「……」
やすな「おおっソーニャちゃんが私を受け入れてくれてる!」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1328542780/
ソーニャ「やすなは私のモノだ」やすな「へ?」
やすな「そうそう」
ソーニャ「ちゃんと手入れもしないとな」
やすな「うんうん」
ソーニャ「まずは髪のチェックだな」
やすな「わーい」
ソーニャ「特別きれいでもないけど明るい色でいい髪だな」
やすな「そうかな~それほどでも~」
ソーニャ「ここんとこはねてるぞ」クシクシ
やすな「ああっ大事にされてる……大事にされてるよお……」
ソーニャ「ん? 櫛が引っかかる……ぬん!」ブチッ
やすな「あいだー!!?」
ソーニャ「ちゃんとケアしとけ」
やすな「あい……」
やすな「か、顔!?」
ソーニャ「」ガシッ
やすな「ひい」
ソーニャ「お前は垂れ目だな」ジロジロ
やすな「ううっ」
ソーニャ「肌の調子は良し」ナデナデ
やすな「ああん///」
ソーニャ「ん? 何か勝手に頬が赤くなってきたぞ? 不良か?」ペチペチ
やすな「仕様です///」
ソーニャ「唇は」フニ
やすな「ふへ」
やすな「へひ」
ソーニャ「うるおしてやろうか」
やすな「へっ///」
ソーニャ「……」
やすな「だだだめだよソーニャちゃん私たちそんな関係じゃあ」
ソーニャ「私の物をどうしようが私の自由だろ」
やすな「あわわ」
やすな「うぇ」
ソーニャ「」ペロ
やすな「!!!」
ソーニャ「」チュー
やすな「んー、んー!」
ソーニャ「これで滑らかになったな」
やすな「あ、あ、あ……///」
やすな「///」
ソーニャ「脱げ」
やすな「えっ」
ソーニャ「」ガシ
やすな「えっ」
ソーニャ「この梱包を剥がないとな」
やすな「そそそーにゃちゃん冗談だよね」
ソーニャ「あん?」
やすな「ひっ」
ソーニャ「面倒くさいからナイフで切るか」
やすな「らめえー!」
やすな「何だ夢か」
ソーニャ「ん?」
_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_
\/ /
キュッキュ
やすな「見て見てソーニャちゃん!」
ソーニャ「何だ」
やすな「おでこに“ソーニャ”って書いたった!」
ソーニャ「は?」
やすな「これで私はソーニャちゃんのものだよ!だから大事にしてね!」
ソーニャ「そうか、なら心おきなく痛めつけられるな」
やすな「ヒイッやっぱり本物はこうだよね!!」
ソーニャ「は? 本物?」
やすな「やっぱり可愛げがない方が好きだなあ」
ソーニャ「良く分からんがバカにされていることは分かった……」
やすな「あっやめてそういう意味じゃないです!」
ソーニャ「可愛げがなくて悪かったな」
やすな「ソ、ソーニャちゃんはそのままでいいんだよ! ありのままの君でいてほしい!」
ソーニャ「ふん……まったく」
やすな「あ、そうだソーニャちゃん! 私今ソーニャちゃんの物だから好きなことしていいよ」
ソーニャ「まだやるのかそれ」
やすな「何でもご自由にどうぞ あっ痛いのは無しで」
ソーニャ「アホくさい」
やすな「はっはっは怖がらずに思いのたけをぶつけてきなさい」
ソーニャ「……本当に何でもいいんだな」
やすな「いいよいいよ! 今すぐカモカモ!」
やすな「?」
ソーニャ「」チュ
やすな「!?!?!?」
ソーニャ「ま、まだあっち向いてろ!」
やすな「う、うん……!?」
ソーニャ「お前が……あんまり私に付きまとうから……」
やすな「……」
ソーニャ「私だって……構ってくれて嬉しいって思う気持ちくらい……ある」
やすな「ソーニャちゃん……」
ソーニャ「お、おら! もうあっち行けバカ///」ゲシッ
やすな「あいた!」
夢のソーニャちゃんはちょっと強引だったけど……
現実のソーニャちゃんは素直になれないウブな子でした!
終
乙
キルミーSS増えてくれ
Entry ⇒ 2012.02.14 | Category ⇒ キルミーベイベーSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
ソーニャ「やすなって、私のほかに友達いないよな」やすな「え?」
やすな「お言葉を返すようだけど、それはこっちに台詞だよ」
ソーニャ「あ?」
やすな「ソーニャちゃんも友達いないじゃーん!!」
ソーニャ「……」
やすな「やるか!?」
ソーニャ「いや、どうでもいい」
やすな「あれ?」
ソーニャ「ふん……」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1327691033/
ソーニャ「やすなって、私のほかに友達いないよな」やすな「え?」
ソーニャ「なんだ?」
やすな「お弁当たべよ」
ソーニャ「私、今日は他の友達と食べるから」
やすな「え……」
ソーニャ「じゃあな」
やすな「またまたー!!ソーニャちゃんのジョークは全くおもしろくないんだからぁ!」
ソーニャ「……」
やすな「……」
ソーニャ「バイバイ」
やすな「ま、まって……」
やすな「あぎりさんでしょ?あぎりさんなんだよね?」
ソーニャ「違うけど」
やすな「うっそだー!!ソーニャちゃんが他の子と話しているとこなんてみたことないしー!!」
ソーニャ「……どけ」
やすな「だから、そんな空想友達とかやめようよ。ソーニャちゃんが哀れに見えてくるから」
ソーニャ「……」
やすな「さ、わたしと―――」
ソーニャ「……」スタスタ
やすな「あ、あれ……」
ソーニャ「私の友達はお前だけじゃない」
やすな「ソーニャちゃん……」
ソーニャ「一緒にすんな」
やすな「ソーニャちゃんのアホー!!バカー!!」
やすな「ツンデレー!!!」
やすな「……」
やすな「よいしょ……」
やすな「今日のお弁当はなにかなー?!」
やすな「あける瞬間が一番ドキドキするんだよねー」
やすな「あけるよー!!あけちゃうよー!!」
やすな「はい!あけたー!!!」パカッ
やすな「わぁお!!今日はからあげべんとうだよー!!!」
やすな「すっごーい!!いただきまーす!!!」
やすな「おいしいー!!!」
やすな「何個でもいけるー!!!」
やすな「美味しい!!おいしい!!!」
やすな「……」
ソーニャ「……」トコトコ
やすな「あ、ソーニャちゃん。おかえり!!!じゃあ、昼休み恒例になりつつある『あぎりさんに会おうのコーナー』だよぉ!」
ソーニャ「そんなコーナーがいつできた?」
やすな「さ、いこうよ!!」
ソーニャ「うるさい。いくなら一人で行けよ」
やすな「なんで?ねえ、なんで!?」
ソーニャ「ちょっと用事」
やすな「あ、わかった!!お仕事でしょ!?やめなよぉ!!」
ソーニャ「……」
やすな「ねえねえ。殺し屋なんて流行らないしぃ」
ソーニャ「いいから一人でいけよ。私はいけない」
やすな「……あ、あとで一緒にいきたいっていっても遅いんだからー!!!」
ソーニャ「言うかよ」
やすな「べーっだ!!」
やすな(用事とか絶対に嘘だ……!!)
やすな(私のストーキング能力をフル稼働させて後を……)
やすな「あれ……いない!?」
やすな「ソーニャちゃん!!ソーニャちゃん!!どこー!!」
ソーニャ「おい」グキィ
やすな「おぉぉぉ!!!!いたぃ!!!その関節はそちらに曲がりませんからぁ!!!」
ソーニャ「尾行する気、ないだろ?」
やすな「あるよぉ!!もう10ガロンぐらいあるよ!!」
ソーニャ「そうか。ま、別につけてもいい。本当に用事だから」
やすな「じゃあ、お言葉に甘えて……後をつけさせてもらいます」ギュゥゥ
ソーニャ「はなれろ!!!」ドガァ
やすな「あん!!」
ソーニャ「ったく」
やすな(どこに向かっているのか……)
ソーニャ「……失礼します」ガラッ
やすな(職員室に……)
やすな(どれどれ……?)
ソーニャ「―――」
先生「―――」
生徒「―――」
やすな(なんか話してる……)
やすな(なんだろう……きこえない……)
あぎり「なにしてるんですかぁ~?」
やすな「おぉぉ!?あぎりさん!!」
あぎり「ん~?」
やすな「あのえっと……」
あぎり「わかりましたぁ~。ソーニャの素行調査ですねぇ~?」
あぎり「じゃあ……はいこれ」
やすな「これは?」
あぎり「ソーニャの通信簿です」
やすな「え?」
あぎり「全項目五段階評価になってます。愛嬌・服装・授業態度・交友関係。これらを全て評価したときソーニャが丸裸になりま~す」
やすな「なるほど」
あぎり「これぞ忍法他人評価のじゅつぅ~」
やすな「おぉ!!」
あぎり「一冊500円でぇす」
やすな「お金……取るんですね」
あぎり「デザイン料が結構かかってますから」
やすな「そうですか……では、これで」
あぎり「まいどぉ」
やすな(よし……ソーニャちゃんを徹底的に調査してやる……!!)
やすな(ふふ……まずは愛嬌から調べるとしますか)
やすな(ソーニャちゃんは正直超絶無愛想だから……0でもいいと思うけど)
ソーニャ「……あ」
生徒「ソーニャ、どうしたの?」
やすな(ちゃんす!!)
ソーニャ「ちょっと先生に呼ばれて」
生徒「あ。わかった。この前の委員会のやつでしょ?」
ソーニャ「そうそう。全く、しつこいんだよなぁ」
生徒「でも、意見を出したのはソーニャだし」
ソーニャ「あはは。確かに」
やすな(あれ……笑ってる……)
やすな(しかもソーニャちゃんが委員会!?)
やすな「ソーニャちゃん!!!そんな話、知らないよぉ!!!」
ソーニャ「あ?」
ソーニャ「何を言ってる?」
やすな「そんな可愛い笑顔されたら五段階評価なのに10ぐらいあげたくなるじゃん!!!」
ソーニャ「意味分からん」
やすな「なんでよぉ!!私と話してるときは殆ど……つーか、一切笑わないのにぃ!!!」
ソーニャ「そりゃそうだ」
やすな「え……」
ソーニャ「だって、やすなが私をイラつかせるからな」
やすな「……」
ソーニャ「笑うところなんてどこにあった?言ってみろ」
やすな「いっぱいあったよぉ!!!」
ソーニャ「ねーよ」
やすな「……」ウルウル
ソーニャ「……」
やすな「ソーニャちゃんのばかぁぁ!!!!」ダダダッ
やすな「……」カキカキ
やすな「ソーニャちゃんの愛嬌……10っと」
やすな「あ……レーダーチャートもあるんだ……大幅にはみ出すけどいっか……」カキカキ
やすな「よし」
やすな「次は……服装かぁ」
やすな「……」
ソーニャ「……つかれた」ガタッ
やすな「ソーニャちゃん、立って」
ソーニャ「今、座ったばかりだ」
やすな「いいから立って!!」
ソーニャ「やだよ」
やすな「なんで!?」
ソーニャ「立つ理由がない」
やすな「私には立たせる理由があるの!!」
やすな「じゃあ、そのままでいいよ」ゴソゴソ
ソーニャ「なんだ……お前……?」
やすな「ちょっと失礼……」ペラッ
ソーニャ「おまえ!!!」
やすな「ソーニャちゃんのパンツ……意外とこども―――」
ソーニャ「ヘンタイかっ!!!」ドガァ
やすな「がぎぃ!?!?」
ソーニャ「全く……とんでもないな」
やすな「あごが!!あごがぁ!!!われる!!!われたぁ!!!これ、われたよ!!!」
ソーニャ「割れてないから安心しろ」
やすな「うぅ……」
やすな「じゃあ、次はブラを……」
ソーニャ「死にたいならそういえ。楽にしてやるよ」
やすな「ブラジャーも見ないと服装チェックできないじゃん!!!」
やすな「お願いします!!見せてください!!!」
ソーニャ「耳かせ」
やすな「え、なになに?」
ソーニャ「わぁぁぁ!!!!!!」
やすな「きゃぴ!?!?!」
ソーニャ「アホか……」
やすな「おぉぉ……耳がキーンてする……」
ソーニャ「……」
やすな「わかったぁ!!ソーニャちゃん、ブラしてないでしょ!?」
ソーニャ「……」
やすな「そーなんだ。そーなんだ。ふへへへへ」
ソーニャ「……」グイッ
やすな「暴力反対宣言!!!」
ソーニャ「私の友人に変態はいらない。それ以上言うなら絶交だぞ」
ソーニャ「……」
やすな「ごめんね……」
ソーニャ「もういい」
やすな「……」
やすな「……」カキカキ
やすな「ソーニャちゃんの服装は5でいいよね……」
やすな「あ、でもパンツは高校生って感じじゃなかったから……4でいいや」カキカキ
やすな「次は授業態度か……」
ソーニャ「……」
やすな「……」
やすな「……いつも真面目に受けてるし」
やすな「……5でいいや」カキカキ
やすな「これはもうあれだよね。確実に1以下だ」
ソーニャ「……あ、おい」
生徒「どうしたの?」
ソーニャ「これ、借りてたCD。結構良かった」
生徒「だよねー!!」
ソーニャ「私は2曲目が気に入った」
生徒「私も2曲目好きなんだー」
ソーニャ「そうか」
やすな「……」
ソーニャ「なんだよ?」
やすな「べ、べつに羨ましいとかおもってないからぁ!!!」
ソーニャ「知らん」
男子「あ、いたいた」
ソーニャ「なんだ?」
男子「ちょっといいか?」
ソーニャ「いいけど……この前の話なら断ったはずだ」
男子「ど、どうしても駄目か……?」
ソーニャ「悪い」
男子「……そうだよな。ソーニャ美人だし……もう彼氏ぐらいいるよな……」
ソーニャ「そうじゃない……」
男子「じゃあ……」タタタッ
やすな「ソーニャちゃん……今の人は?」
ソーニャ「三日前に私に付き合ってくれって言ってきたんだよ」
やすな「告白されたの!?」
ソーニャ「でも、私は殺し屋だから恋人とかは邪魔なだけだな。友人も本当はいらないぐらいだ」
やすな「ソーニャちゃんが大人の階段をうなぎ上りしていく……!!!」
生徒「ソーニャ!!」
ソーニャ「どうした?」
生徒「この前の話しなんだけど」
ソーニャ「部活の助っ人か。いいけど、ギャラはもらうからな」
生徒「いいよ!アイスバー一本でいい?」
ソーニャ「……まあ、いいか」
生徒「ありがとう!!」
ソーニャ「他の部員にもよろしくな」
生徒「みんな、ソーニャがくるの楽しみにしてるから!!」
ソーニャ「ああ」
やすな「……」
やすな「ソーニャちゃん!!!」
ソーニャ「なんだよ?」
やすな「友人はいらんキリッってしてたのに!!!いっぱいいるじゃん!!どういうこと!?」
やすな「……」
ソーニャ「学生ならある程度は顔を広げてないと」
やすな「顔なんてひろげても不細工になるだけだよー!!!」ムニー
ソーニャ「……」
やすな「……」ムニー
ソーニャ「じゃあな」
やすな「これじゃあ五段階で20くらいあげなきゃならないよ!!どうすんの!?」
ソーニャ「……」スタスタ
やすな「ソーニャちゃんの八方美人!!!」
やすな「みんなに愛されろちくしょーめ!!!」
やすな「……交友関係……20っと」カキカキ
やすな「レーダーチャート……これもはみ出すなぁ」カキカキ
やすな「できたぁー!!」
やすな「―――ソーニャちゃんの完璧超美人め!!!!」ビターン!!
やすな「あぎりさん……一応……」
あぎり「どれどれ……?あらぁ?すごい……五段階評価と天元突破しちゃってますぅ」
やすな「そうなんです……ソーニャちゃんってすごいんですね」
あぎり「ソーニャは基本的に手を抜かないからぁ」
やすな「はぁ……私、すごい人と友達だったんだぁ」
あぎり「でもぉ、ソーニャはそう思ってないとおもいますよ」
やすな「え?」
あぎり「ソーニャの交友関係は全て上辺のつきあいですからぁ」
やすな「……」
あぎり「それではぁ」
やすな「そっか……」
やすな「友達って思ってるの……周囲だけで……ソーニャちゃんはなんとも思ってないんだ……」
やすな「私も……そうなんだ……」
やすな「……友達じゃないんだ、私」
やすな「……」ガタッ
ソーニャ「……」
やすな「はぁ……」
ソーニャ「やすな、おはよう」
やすな「……うん。おはよう、ソーニャちゃん」
ソーニャ「お前が元気ないと不気味だな」
やすな「そう?私は元気だよ?」
ソーニャ「ふーん」
やすな「……」
ソーニャ「……」
ソーニャ「静かだな」
やすな「そうだね」
ソーニャ「ま、いいけど」
やすな「……」ガタッ
ソーニャ「どこいくんだ?」
やすな「あぎりさんとお弁当食べてくる……」
ソーニャ「ふーん……」
やすな「……」トボトボ
ソーニャ「……なんだ、あいつ?」
やすな「はぁ……」
やすな「もうソーニャちゃんとまともにお話できる気がしない……」
やすな「……」
あぎり「……」トコトコ
やすな「あぎりさ―――」
生徒「あぎりー!!購買いこ!!」
あぎり「はぁい」
やすな「そうだよね……あぎりさんも友達ぐらいいるよね……」
やすな「……」キョロキョロ
やすな「教室には戻りにくいし……」
やすな「……」
やすな「……」トコトコ
やすな「ここしかないかな……」
やすな「……」ガチャ
やすな「いただきます……」
やすな「……」パクパク
やすな「……トイレでごはんなんて……はじめて……」ポロポロ
やすな「うぅ……」
やすな「……おいしくないなぁ」
やすな「……」トボトボ
ソーニャ「……おかえり」
やすな「うん」ガタッ
ソーニャ「……」
やすな「……なにかな?」
ソーニャ「いや、どこで飯食ってたんだ?」
やすな「だから、あぎりさんと―――」
ソーニャ「あいつなら、私と一緒に食べてたぞ?」
やすな「?!」
ソーニャ「やすな……?」
やすな「……ど、どこでもいいでしょ。ソーニャちゃんには関係ないよ」
ソーニャ「ま、確かに」
やすな「……」
ソーニャ「次は数学か……。準備しとこ」
ソーニャ「やすな、かえ―――」
やすな「ば、ばいばい、ソーニャちゃん!!」
ソーニャ「あ、おい!!」
ソーニャ「……」
ソーニャ「なんだよ……もう……」
あぎり「あらら~ソーニャ、ひとりー?」
ソーニャ「そうだけど?」
あぎり「……ふふ」
ソーニャ「なんだよ?」
あぎり「忍法で貴女の心を覗き見~」
ソーニャ「やめろ。気持ち悪い」
あぎり「そうですか」
ソーニャ「じゃあな」
あぎり「はぁーい」
ソーニャ「……」
やすな「……」トボトボ
ソーニャ「おはよ」
やすな「うん。おはよ」
ソーニャ「……」
やすな「……」ガタッ
ソーニャ「なんかあったのかよ?」
やすな「なにもないよ」
ソーニャ「昨日から様子が変だぞ。また、つまらんことでも画策してるんじゃないだろうな?」
やすな「……」
ソーニャ「どうなんだ?」
やすな「……してないよ」
ソーニャ「そ、そうか……なら、いいんだ」
やすな「……」
やすな(今日もトイレにいこう……)
ソーニャ「あ、おい―――」
生徒「ソーニャ!!」
ソーニャ「え?」
生徒「助っ人のことなんだけど」
ソーニャ「あ、えと……いまは……」
やすな(いいなぁ……色んな人に頼られて……)
やすな(考えてみたら私……ソーニャちゃんばっかりと話してたし……当然だよね……)
やすな「……」トボトボ
ソーニャ「あ……」
生徒「あの……取り込み中だった?」
ソーニャ「あ、ううん。そうでもない」
生徒「ならいいんだけど……」
ソーニャ「やすな……」
やすな「……」トボトボ
ソーニャ「やすな」
やすな「なに?」
ソーニャ「……なにかあったんだろ?」
やすな「ないよ」
ソーニャ「嘘付け。お前がそんな四六時中俯いてるのはおかしい」
やすな「……」
ソーニャ「話せよ。友達だろ?」
やすな「……!?」
ソーニャ「ほら、言いにくいなら帰りながらでも―――」
やすな「そんなことちっともおもってないくせに!!!!」
ソーニャ「な……なんだよ!!私は心配していってるんだぞ!!」
やすな「うそつき!!!」
ソーニャ「お前……その冗談は全然面白くないぞ……」
ソーニャ「それは……」
やすな「学生として怪しまれないようにしてるだけなんでしょ!?」
ソーニャ「……」
やすな「そんなこと聞いたら……普通にできないよ!!」
ソーニャ「言い方が悪かったな……あれは―――」
やすな「バイバイ!!」ダダッ
ソーニャ「やすな!!おい!!!」
ソーニャ「まて!!!」ガシッ!!
やすな「離して!!」ドンッ!!
ソーニャ「……!?」
やすな「あ……ごめん……」
ソーニャ「もういい……じゃあな」
やすな「あ……」
やすな「……」
やすな「あぎりさん……」
あぎり「珍しいですねぇ。ああいう別れ方は」
やすな「……」
あぎり「忍法仲直りセットはいりますかぁ?」
やすな「いりません……」
あぎり「そうですか。ざんねん」
やすな「さようなら……」トボトボ
あぎり「……」
あぎり(私が余計なこと言った所為かしら……)
あぎり(だとしたら、何とかしないと……)
あぎり「うーん……」
あぎり「思いつくまで時間がかかりそうですねぇ」
ソーニャ「あ……」
やすな「……」トボトボ
ソーニャ「ふん……」
やすな「……」ガタッ
ソーニャ「……」
やすな(謝らないと……。ソーニャちゃんと突き飛ばしたこと……謝らないと……)
やすな「……あ、あの」
ソーニャ「……」
やすな「……」
生徒「ソーニャ!いるー?!」
ソーニャ「おー」
生徒「ちょっときてー」
ソーニャ「わかった」スタスタ
やすな「あ……はぁ……」
やすな「……」ガタッ
ソーニャ「……おい」
やすな「……」
ソーニャ「……どこで食べるんだよ」
やすな「ど、どこでもいいでしょ……」
ソーニャ「……まぁな」
やすな「友達じゃ……ないもんね……どうでもいいよね……」
ソーニャ「おまえ!!!」
やすな「な、なに……本当のことでしょ……」
ソーニャ「……好きにしろよ!!」
やすな「するもん!!!」
ソーニャ「バカやすな……!!」
ソーニャ「くそ……」
やすな「……」トボトボ
ソーニャ「……」
ソーニャ(声をかけなきゃ……このままじゃあ……)
やすな「……」トボトボ
ソーニャ「……っ」
ソーニャ(声をかけるだけなのに……)
ソーニャ「……ちっ!」
あぎり「あれてますねー?」
ソーニャ「あれてねーよ……!!」
あぎり「仲直りセットいりますー?500円で―――」
ソーニャ「いらん……!うせろ……!」
あぎり「じゃあ、自力で仲直りできるんですねぇ?」
ソーニャ「……別に友達とかいらないから」
あぎり「そうですかぁ……」
ソーニャ「……」
やすな「……」
「あの二人どうしたんだろう……?」
「なんか最近、あんまり喋ってないよな」
「喧嘩でもしたんじゃない?」
「この前、大声でなんかいってたしな」
「心配だよね」
ソーニャ(くそ……聞こえるようにヒソヒソ話してんじゃなねえよ……)
やすな(謝らないと……でも……謝っても……別に友達じゃないし……)
ソーニャ「……」
やすな「……はぁ」
ソーニャ(そのうち、やすなからなんか言ってくるだろ……多分)
やすな(もうこのままでもいいかな……どうせ、もうすぐ席替えだし……)
ソーニャ・やすな「はぁ……」
ソーニャ「……ん?」
やすな「……」トボトボ
ソーニャ「……」スタスタスタ
やすな「あ……」
ソーニャ(前を歩けばやすながいつものように触れてくるはず)
ソーニャ(そのときに関節極めないで……)
ソーニャ『やすな……お前は私の唯一の友達なんだ!!』
やすな『ソーニャちゃん……すきっ』
ソーニャ(やすなは単純だからこうなるはずだ……!!)
ソーニャ「……」スタスタ
やすな「……」トボトボ
ソーニャ「……」
ソーニャ(なんで触れてこないんだよ……!!)
ソーニャ「……」
やすな「……」ゴソゴソ
ソーニャ「……」チラッ
やすな「……」カキカキ
ソーニャ(宿題か……?)
やすな「……」カキカキ
やすな(ごめん、ソーニャちゃん。今まで通り友達でいてください……)
やすな(こんなんじゃ駄目だ……)
やすな「……」カキカキ
やすな(だーいすき、ソーニャちゃーん!!)
やすな(謝ってないし……だめ……!!)
やすな「はぁ……」カキカキ
ソーニャ(真剣だな……)
ソーニャ(声、かけられない……)
ソーニャ「……」
やすな「……」トボトボ
ソーニャ「……お、おい、や、やすな……」
やすな「……なに?」
ソーニャ「一人で食べても……お、美味しくないだろ……?」
やすな「……」
ソーニャ「……」
やすな「一人で食べる……」
ソーニャ「なんでだよ……」
やすな「……」トボトボ
ソーニャ「……」
ソーニャ「もう!!!しるかぁ!!!」
「ソーニャ……あれてるなぁ」
「怖いよな」
やすな「あぎりさん……」
あぎり「折角、ソーニャが歩み寄ってくれたのに、それは酷いとおもいますぅ」
やすな「……」
あぎり「ほら、戻りましょう?」
やすな「でも……私は友達じゃないし……ソーニャちゃんもきっと……ただ体裁を保ちたいだけ……」
あぎり「本気でそうおもってますぅ?」
やすな「え……」
あぎり「……」
やすな「お、思ってますよ……だって、ソーニャちゃんが言ってたし……」
あぎり「……そうですか」
やすな「……」
あぎり「なら、もうなにもいいませーん」
やすな「それじゃあ……」トボトボ
あぎり「はぁ……」
あぎり「ソーニャ」
ソーニャ「なんだよ?」
あぎり「仲直りセットいりますぅ?」
ソーニャ「いらん」
あぎり「でも、あげますぅ」
ソーニャ「いらないっていってるだろ!!」
あぎり「どうぞ」
ソーニャ「な、なんだよ……これ……?」
あぎり「ソーニャ通信簿です」
ソーニャ「はぁ?」
あぎり「ふふ……では、さようなら」
ソーニャ「お、おい……!!」
ソーニャ「……なんだよ、これ……」
ソーニャ「……」ペラッ
やすな「ごめんね……ソーニャちゃん……」
やすな「ごめんね……」ポロポロ
やすな「これだけなのに……これだけなのに……」
やすな「なんで言えないんだろ……」
ソーニャ「……トイレでご飯か」
やすな「!?」
ソーニャ「交友関係は0でいいか?」
やすな「……」
ソーニャ「……いや、違うか」
やすな「え?」
ソーニャ「私がいるから1か」
やすな「……何のよう?」
ソーニャ「お前の通信簿、つけることにした。あぎりが私とお前の通信簿渡してきたからな」
やすな「……」
やすな「……」
ソーニャ「ま、いつも乱れてはいないから5だな」
やすな「……やめてよ」
ソーニャ「授業態度は……寝てることが多いし2かな」
やすな「やめて……」
ソーニャ「うわぁ、ひっでぇ。なんだこりゃ」
やすな「やめてよ!!!」
ソーニャ「……」
やすな「……」
ソーニャ「んじゃ、お前の通信簿渡すわ。ドアの下から渡すぞ?」
やすな「……」
ソーニャ「置いとくから。じゃあな」
やすな「……」
やすな「……」ペラッ
ソーニャ「天才美人です、か。……なんてこと書いてんだ」
ソーニャ「やっぱ、あいつバカだな……」
ソーニャ「レーダーチャートも突き抜けてるのがふたつもあるし……」
ソーニャ「ほんとに……」
やすな「ソーニャちゃん!!」
ソーニャ「……」
やすな「な、なにこれ……」
ソーニャ「あ?客観的に見てもお前の成績なんてそんなもんだろ」
やすな「……なんで愛嬌が……100もあるの?」
ソーニャ「それは……ほら……あの……」
やすな「……」
ソーニャ「……お前のバカな笑顔……はそれだけのもんだと思うからで……」
やすな「ソーニャ……ちゃ、ん……」ポロポロ
ソーニャ「な、泣くなよ……おい。別にバカにはしてないぞ……」オロオロ
ソーニャ「お前も私の愛嬌、突き抜けてるじゃないか」
やすな「だって……ソーニャちゃん……笑うとかわいいんだもん……!!」
ソーニャ「そ、そうか……」
やすな「なんで私には笑ってくれないの……?」
ソーニャ「それは……やすながいつもむかつくこと言うからだろ……」
やすな「友達じゃないから……?」
ソーニャ「違う!!」
やすな「……!?」
ソーニャ「あ……えと……友達だから……」
やすな「え……?」
ソーニャ「友達に決まってるだろ……。なんで信頼できないやつに素性を話さなきゃならないんだよ……バカ……」
やすな「ソーニャちゃん……ソーニャちゃぁぁん……」ポロポロ
ソーニャ「だ、だから、なくなって……おい……」オロオロ
やすな「ごめん……ご、めんね……わたし……ひどいこといっぱい……してたのに……ごめんね……」ポロポロ
やすな「うぅ……」ゴシゴシ
ソーニャ「なんか友達いないっていわれて……なんか頭にきて……嫌なこといったよな」
やすな「ううん……だって本当のことだもん……」
ソーニャ「違う」
やすな「え?」
ソーニャ「私のことをずっと気にかけてくれてたからだろ?」
やすな「それは……」
ソーニャ「お前だけだったよ。上辺だけの付き合いでよかったのに、あしらっても深く突っ込んでこようとするのは」
やすな「それはソーニャちゃんと仲良くなりたかったからで……」
ソーニャ「それが嬉しかったんだよ」
ソーニャ「だから、こいつだけは本当に友達でありたいって思ったんだ」
やすな「ソーニャちゃん……」
ソーニャ「ほ、ほら!!もうトイレで飯とか食うな!!教室で、私の隣で食え!!いいな!!」
やすな「うんっ!」
やすな「ソーニャちゃん……これ、いる?」
ソーニャ「いいよ。食えよ」
やすな「いいから、食べてよ」
ソーニャ「はいはい……あーん」
やすな「え?」
ソーニャ「あ……パンの上にのせてくれ……」
やすな「あはは、いいよ。はい、あーんして」
ソーニャ「い、いや……なんか意識すると恥ずかしい……」
やすな「あーん」
ソーニャ「あ、あーん……」
やすな「はい」
ソーニャ「……うん、うまいな」
やすな「えへへ」
ソーニャ「ふん……」
ソーニャ「……やすな」
やすな「なに?」
ソーニャ「私は……友達だと思ってる……」
やすな「私は親友だと思ってるよ?」
ソーニャ「……そうか。なら、私も親友だと思うことにする」
やすな「むー……親友だと思う、の?」
ソーニャ「うるさいなぁ!!親友だ!!文句あるか!!」
やすな「……ない!!」
ソーニャ「……ったく」
やすな「ソーニャちゃーん!!アイス買ってかえろうよぉ!!」ギュゥゥ
ソーニャ「ふん!!!」グキィィ
やすな「あん!!!いたい!!!いたいよ!!!ソーニャちゃん!!!」
ソーニャ「いい加減、触れようとするな」
やすな「別にいいじゃないのー!!!」
やすな「え?」
ソーニャ「ほら、手ぐらいなら」
やすな「やったぁ!!」
ソーニャ「お前は本当にバカだな」ギュッ
やすな「バカでいいよーだ!」ギュッ
ソーニャ「……」
やすな「こうしてソーニャちゃんと手を握れるなら馬鹿でいいもん……」
ソーニャ「はいはい」
やすな「えへへ。ほら、ソーニャちゃんもスマイル!スマイル!!」
ソーニャ「やだよ……」
やすな「じゃあ……ひっひっひっひ」
ソーニャ「脇に触れようとすんなぁ!!」グキィィ
やすな「いたい!!!指がマッチ棒みたいに折れちゃうからぁ!!!」
ソーニャ「ふん……!!」
やすな「あ……ソーニャちゃん!」ギュゥ
ソーニャ「なんだ、やすなか」ギュゥ
やすな「……」
ソーニャ「なんだ?」
やすな「手は繋いでくれるんだ……」
ソーニャ「まあな」
やすな「……」
ソーニャ「なんだよ?」
やすな「ううん!!なんでもなーい!!」
ソーニャ「……」
やすな「ねえねえ!!昨日、刑事ドラマみたんだよね!!」
ソーニャ「それで?」
やすな「私、刑事になろうと思うんだ!!」
ソーニャ「あーはいはい。がんばれ」
あぎり「あら~二人とも、仲良くなりましたねー」
ソーニャ「ああ……」
やすな「あぎりさんの仲直りセットのおかげです!!」
あぎり「それはよかったぁわぁ~」
ソーニャ「……ま、感謝はしてやる」
あぎり「ふふふ~、ただの遊び道具が役に立ってよかったですぅ~」
ソーニャ「……なんていった?」
あぎり「だからぁ~、通信簿はただの遊び道具のつもりで提供をしたんですよね~」
ソーニャ「単なる思い付きかよ!!!」
あぎり「あらぁ。口がすべったぁ。忍法隠れ蓑のじゅつぅ~」ダダダッ
ソーニャ「まて!!」
やすな「ソーニャちゃん、もういいじゃない」
ソーニャ「……まぁな」
やすな「ほら、もうすぐ授業始まるよ?」
やすな「ソーニャちゃん、ごはんは!?」
ソーニャ「今から買いに行く」
やすな「ふふ……はい!!」
ソーニャ「なんだ、それ?」
やすな「お手製の焼きそばパンだよ!!どーだ!!感謝しろ!!」
ソーニャ「いただきます……」モグモグ
やすな「はやっ!?」
ソーニャ「……まずい」
やすな「えぇぇぇ!?!?ひどいぃぃ!!!」
ソーニャ「普通に買いにいく」
やすな「ソーニャちゃん、ひどいよぉぉ!!」
ソーニャ「また明日も頼むぞ」
やすな「……ソーニャちゃん……」
ソーニャ「作ってきたら食ってやる。もったいないからな」
やすな「明日も作ってくるからね!!」ギュゥ
ソーニャ「はいはい」ギュゥ
やすな「えへへ……」
ソーニャ「なんだよ、気持ち悪いな」
やすな「ソーニャちゃん、大好き!!」
ソーニャ「……そうか」
やすな「嬉しい?ねえ?嬉しい?」
ソーニャ「うぜえよ」
やすな「てれかくしー?」
ソーニャ「うぜえ」グキィィ
やすな「いたぁ!!!!いたぁ!!!!関節が変な方向にまがってますよぉぉ!!!!」
ソーニャ「―――私も大好きだよ、やすな」
やすな「―――ソーニャちゃぁぁぁぁん!!!!」
ソーニャ「あーうぜえ。ほんとにうぜえな……私の親友は……」
おしまい。
いい話だった
ええ話やなぁ…
泣けるはニヤけられるはすげえ楽しかった
乙乙でした
Entry ⇒ 2012.02.11 | Category ⇒ キルミーベイベーSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
ソーニャ「キルミーベイベー」
幼い頃から殺し屋として働いていたのもあるが、今の私には目的があった。
ある殺し屋を殺す。
それが高校の頃からの私の目的だった。
部屋にはベッドと机、そしてパソコン以外には何もない。
私は重いドアの鍵を何重にも閉めるとベッドに横になりそっと目を閉じた。
組織の間ではキチガイとか、悪魔とか死神とか……いろいろな呼ばれ方をされているらしい。
以前のプライドの高い私ならば怒っていただろうが、今の私はそんな気が起きない。
明日のターゲットを殺す方法を考えながら目を閉じるとすぐに眠気が襲い掛かってきた。
明日も朝から従の整備をしなければいけない。その後すぐにターゲットを殺す。そして余った時間で……。
||:: | ヘ) ヘ) .| ::| <キルミーベイベー
||:: | く く .| ::|
||:: └──────┘ ::|
|| ┌────┐ .| ∧∧
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ( _) なんだこりゃ
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄旦 ̄(_, ) アホか氏ね
/ \ `
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|、_)
 ̄| ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄| ̄
| .( ( | |\
| ) ) ) | | .|
|________(__| .\|
/― ∧ ∧ ――-\≒
/ ( ) …キルミーベイベー
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
|_____________|
私のことを友達と呼んでくれた少女が語りかけてくる。
やすな「ひどいよ、ソーニャちゃん! いい加減に学習してよ!」
そいつは、馬鹿で、アホで、やっぱり馬鹿で……。
やすな「大丈夫、ソーニャちゃん。私がついてるよ!」
……私の、唯一の親友だった。
夢を見た。
いやな夢だった。
私は銃の整備をした後、固いパンを食べ、そのまま仕事に向かった。
今回の仕事はマフィアのボスの暗殺だった。
邪魔する兵士をナイフで殺し、ターゲットを銃で撃ち殺した。
仕事を終えるとシャワーを浴び、知り合いの情報屋に会いに行く。
私に頼まれている情報はまだ見つかっていないそうだ。
このターゲットは組織からの依頼ではなく、国からの依頼だった。
よくある大統領の息子や娘を暗殺させる自作自演だ。
下手な殺し屋は捕まるであろうが、私は違う。
無邪気にはしゃぐ子供の心臓をためらいもなく銃弾で打ち抜くと黒服の男たちが騒ぎ出す前にその場を後にした。
昔の私なら殺すことを躊躇っただろう。
だが、これも仕事だ。仕方がない。
今日も、何の罪もない人間を。
いや、何の罪もないというのはおかしいか。
本当に何の罪もないのなら、依頼なんてくるはずがない。
その罪を償うために、死ぬんだ。
だから私が引導を渡しているんだ。
昔の私の「いいわけ」だった。
自分の罪から逃れるための……。
やすな「ありがとう、ソーニャちゃん!」
やすな「ひどいよ、ソーニャちゃん!」
やすな「あそぼーよ、ソーニャちゃん!」
夢の中で、またあいつが騒いでいる。
やめろ。その名前で呼ぶな。
やすな「……ソーニャちゃんは、私に命令できる立場なの?」
ソーニャ「え……?」
うわあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
親友の夢。
汗がひどい。
服を脱ぎ捨てシャワーを浴びる
黒い部屋の中で音がした。
あの音はメールの届く音だ。
一糸纏わぬまま部屋へ戻ると情報屋からメールが届いていた。
赤い髪の殺し屋が、見つかったそうだ。
私は銃の整備をすると懐にナイフを忍ばせた。
防弾チョッキも用意した。
情報屋に今までためた大金を払いそいつの情報をすべて受け取った。
明日、計画を実行に移す。
この数年、待ち望んでいた最初で最後のチャンスだ。
絶対に、あの殺し屋を殺す。
ソーニャ「私は忙しいんだ。またにしてくれ」
また、あの夢だ。
やすな「またまたー、ほんとは私と遊びたいくせに!」
ソーニャ「誰がお前なんかと……もういい、帰るぞ!」
せめて、あのときに遊びにいってやればよかった。
やすな「ひどっ! ……! ソーニャちゃん、危ない!」
ソーニャ「誰がそんな言葉に騙されるかっ! ……って、うわっ!!?」
いつにない、やすなの本気の体当たりで、私はバランスを崩し倒れた。
ソーニャ「お前、何考え……っ!!?」
やすな「……ソーニャちゃん……だい、じょーぶ……?」
やすなの背中に、ナイフが刺さっていた。
確かに心臓にでもよっぽど深くでも刺さらない限り死なない気がする
毒のにおいがした。なぜ、その瞬間まで気がつけなかったのだろうか。
ソーニャ「大丈夫か!? すぐに病院に……!」
私の手がどんどん赤く染まっていく。
やすな「……えへへ……こんなに……やさ、しい……そー、にゃ、ちゃん……はじ、めて……」
ソーニャ「しゃべるな!」
やすな「……もう、いえなく、なっちゃうから……だから、これだけは、いいたいんだ……」
ソーニャ「そんなわけない! 言えなくなんてならない! だから……」
やすな「……ありがと……」
そういうと、あいつは目を閉じた。
ソーニャ「……や、すな……? うそ、だよな……おい、やすな!!! うわああああああああああああ!!!!」
その日、私の親友は……この世を去った。
高校をやめ、情報のために金を集める日々。
毒のついたナイフ、そしてその日学校で目撃された赤い髪の不審者。
これだけの情報だったが、ついにやすなを殺した殺し屋を見つけ出すことが出来た。
私は、仕事をするための服に着替えると、黒い部屋を出た。
銃撃戦も、接近戦も、終始私が優勢だった。
皮肉なことに、今までの経験が役に立っているのだ。
そいつは、自分が何をしたのかわかっていないようだった。
ソーニャ「……お前が、3年前に殺した女子高校生のことを覚えているか?」
殺し屋「そ、そんなもの、いちいち覚えているわけがないだろ!!!」
私は、両足を打ち抜き、腕をナイフで刺し、そのままそいつを拘束した。
簡単に殺しはしない。もっと、もっと苦しませるんだ。
最初で最後の会話から数時間後、そいつは苦しみながら死んだ。
目的が達成できた瞬間、私はとても虚しい気持ちになった。
以前の私のような殺し屋が組織にとって邪魔な存在らしい。
私はその高校の制服を着ると、その殺し屋を殺すために高校に潜入した。
殺し屋は簡単に見つかった。友達と喧嘩をしているようだった。
私はその背後にそっと忍び寄り、ナイフを出した。
殺し屋の友達が、私の前に現れた。
あまりに突然の出来事で手を止めることができず、私はそいつをさしてしまった。
そして、あの日の出来事がフラッシュバックする。
殺し屋は泣きながら私に銃を向けた。
私は頭が真っ白になったまま走って逃げ出す。
屋上まで逃げるが、ついに追い詰められてしまった。
「なんで……なんであいつを刺したんだよ!!!」
泣き声の混ざった叫びが屋上に響く。
あのときの、私がそこにいた。
私のように復讐だけを考えて生き続けるのだろうか。
私のように、何人もの人を殺すのだろうか。
その時、親友の声がした。
やすな『そういう仕事は、いけないと思うな』
そうだ。
私が今までやってきたことは、罪なのだ。
いまさら、気づいた。
私は、あの殺し屋と同じだった。
救われたいと思った。
もし、救われるとすれば、方法はひとつだった。
ソーニャ「キルミーベイベー(殺してみろ、可愛い子ちゃん)」
銃声が、木霊した。
「当たり前だ!!! なのに……なんで……」
ソーニャ「急所は、外れてる……私の、胸ポケットの……薬を、飲ませれば……毒も、抜ける……」
「……え……?」
ソーニャ「……私のターゲットは、お前だ……あの子じゃ、ない……」
多分、私は少しでも救われたかったんだろう。
でも、こんなことで罪を消せるわけではない。
私の胸ポケットからカプセルを持ち出すと、その殺し屋は走り去って行った。
空の青さが、目に染みた。
ソーニャ「なんだ……まだ、色が見えるんだ……私……」
ソーニャ「……なんだよ、迎えに来たのか」
……言ったでしょ。ずーっといっしょだよって。
ソーニャ「なら、もっと速く会いに来てくれよ」
……わっ、素直なソーニャちゃん、初めてだ!
ソーニャ「……やすな、これからは……ずっと一緒だ」
……うん。
青い空の下。
死神と呼ばれた優しい殺し屋は、その短い生涯を閉じた。
だが、その死顔は……とても穏やかなものだった。
まるで、暖かい優しさで包まれているかのように。
終わり
個人的にキルミーベイベー好きだから成功して欲しいな
よく一話だけでここまで思いつくな
キルミーベイベーと殺し屋だけど根は優しい感じの女の子とアホだけどいい子
これが妄想の発端
Entry ⇒ 2012.01.18 | Category ⇒ キルミーベイベーSS | Comments (0) | Trackbacks (0)