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隣人「ちょっとかくまってください」
隣「困っているんです」
男「急に言われても」
隣「あ、これからお出かけですか?」
男「いえ昼食ですけど」
隣「えっ」
男「なにか?」
隣「お隣さん、昼食とかとられるんですか?」
男「そりゃまあ……人間なんで……」
隣「はー……なるほど。もりもり食べますか?」
男「まあ、男なんでそれなりにもりもり食べますけど」
隣「おおー、もりりん……」
男「えっ。なんですか」
隣「いえなんでも」
男「今もりりんっt隣「言ってないです」男「いやでm隣「言ってないです」
男「そうですね。なんでしたっけ」
隣「かくまってください」
男「逃げてるんですか」
隣「逃げてます」
男「なにからですか?」
隣「それはまあ……ちょっと冷えてきたのでお茶でもしながらじゃだめですか?」
男「はあ、まあいいですけど」
隣「お邪魔します」
男「はいどうぞ」
隣「あの、私が言うのもなんですけど」
男「なんですか」
隣「人がいいですね!」
男「よく言われます」
隣「できたら紅茶がいいです」
男「ありません」
隣「あらー。じゃあマンゴーラッシーでお願いします」
男「ありません」
隣「むう……あっ、シャトーマルゴー!?」
男「ありません。ありませんし、そんな名案思いついた! みたいなノリで出てくる飲み物ではないです」
隣「コーヒーでお願いします」
男「わかりました。砂糖は?」
隣「甘いです」
男「正解です。でもそういうことを聞いてるわけじゃないです」
隣「? …………あっ、いりません」
男「時間かかりましたね」
男「そうですね。なんでしたっけ」
隣「かくまってください」
男「逃げてるんですか」
隣「逃げてます」
男「なにからですか?」
隣「それはまあ……ちょっと冷えてきたのでお茶でもしながらじゃだめですか?」
男「はあ、まあいいですけど」
隣「お邪魔します」
男「はいどうぞ」
隣「あの、私が言うのもなんですけど」
男「なんですか」
隣「人がいいですね!」
男「よく言われます」
隣「困っているんです」
男「急に言われても」
隣「あ、これからお出かけですか?」
男「いえ昼食ですけど」
隣「えっ」
男「なにか?」
隣「お隣さん、昼食とかとられるんですか?」
男「そりゃまあ……人間なんで……」
隣「はー……なるほど。もりもり食べますか?」
男「まあ、男なんでそれなりにもりもり食べますけど」
隣「おおー、もりりん……」
男「えっ。なんですか」
隣「いえなんでも」
男「今もりりんっt隣「言ってないです」男「いやでm隣「言ってないです」
隣「ありがとうございます」
男「お口に合えばいいですが」
隣「あちっ」
男「あ、気を付けてください」
隣「もうちょっと早く言ってくれれば助かりました」
男「それはすみません……」
隣「もう一度お願いできますか?」
男「え?」
隣「もう一度、気を付けるようにわたしに言ってくれますか?」
男「はあ……熱いので気を付けてください」
隣「おっけーです!! ばっちりです!!」
男「それはよかったです」
隣「あちっ」
男「ダメだこの人」
隣「まったく同感です」
男「こうやって午後の時間をまったりするの、好きなんですよね」
隣「いいですね。ところで」
男「なんでしょう」
隣「聞かないんですか」
男「ん…………?」
隣「すごくのんびりされた方ですね」
男「…………!」
隣「思い出しましたか?」
男「はい。えっと、かくまってくださいってなんですか?」
隣「まあ端的に言うと、これくらいの時間になると嫌な来客がくるもので」
男「え、毎日ですか?」
隣「はい」
隣「聖書もったおじいちゃんですね」
男「ああ、宗教勧誘」
隣「え、あれわたし勧誘されてたんですか」
男「多分ですけど」
隣「すこしお話をさせてください、なんて最初は言うからわくわくしてたんですけど」
男「面白いお話でしたか」
隣「足しびれちゃいました。長くって」
男「正座して聞いてたんですか」
隣「最初は立ってたんですけど。疲れちゃって」
男「なんかお隣さん、簡単に宗教勧誘されちゃいそうですね」
隣「騙されやすいってことでしょうか」
男「そういう感じです」
隣「わかります」
男「わかっちゃいますか」
男「どんな顔ですか」
隣「こんな顔です」
男「なるほど」
隣「よく見てください」
男「はい」
隣「……」
男「………」
隣「………あの」
男「?」
隣「近いです……」
男「あ……失礼しました」
隣「恥ずかしいです」
男「かわいい顔ですね」
隣「!?」
男「はい」
隣「ありがとうございます……」
男「? ああ」
隣「結構誰にでも言っちゃう感じですか」
男「あ、いえ。初めて言いました」
隣「初めてですか……」
男「ええ、多分」
隣「焦っちゃいました」
男「そうなんですか」
隣「はい。あまりこういうシチュエーションで言われたことがなかったので」
男「自分も初めてです。こういうシチュエーションは」
隣「まあいきなりお隣が押し掛けてくるとか、ないですよね」
男「自覚あるんですね」
隣「それなりには」
隣「おじいちゃんはラブリーなんですけど」
男「ラブリーなんだ」
隣「でもなんかこう、お話聞くのって苦手で」
男「なるほど」
隣「校長先生の話とか、聞くの得意なタイプですか?」
男「校長先生の話聞くの得意なタイプっていなそうだなあ」
隣「ですよね」
男「ですね」
隣「とにかく、留守なら回避できるだろうということで」
男「結構必死だったんですね」
隣「死にもの狂いって言葉が頭をよぎりました」
男「っていうか居留守使えばよかったんじゃないですか」
隣「あ」
隣「居留守……なんか禁じ手……って感じですね!」
男「いえ正攻法だと思いますけど」
隣「あう」
男「でもいいですよ」
隣「?」
男「これからもたまに、避難してきていいですよ」
隣「! 優しい言葉!! どうしたんですか」
男「いえ、お隣にこんなかわいいひとが住んでたの知りませんでしたし」
隣「!! もしかして恋心ですか」
男「いえ下心です」
隣「!!! あの、失礼だったらすみません」
男「なんでしょう」
隣「馬鹿正直って言われたことないですか?」
男「よく言われます」
男「よかったです」
隣「多分もうおじいちゃん行っちゃったと思うので、今日は帰ります」
男「あ、行っちゃいますか」
隣「あまり長居してもご迷惑かと」
男「急に押し掛けてきた人のセリフではないですね」
隣「う……それはすみません」
男「いえいえ。どうせ一人でもコーヒータイムでしたので」
隣「好きなんですね」
男「話し相手がいるだけですこし充実してました」
隣「お役に立ててよかったです」
男「一つお願いしていいですか」
隣「なんでしょう」
男「今度来るときは肩出しとかニーソとか、微妙な露出がある服でお願いします」
隣「美徳域ぶっちぎりの正直さですね!」
男「あれ、お隣さん」
隣「あ、お隣さん」
男「いやお隣さんはあなたですけど」
隣「わたしからしたらお隣さんはあなたです」
男「ややこしいですね。男です」
隣「隣です。男くんって呼びますね」
男「いいですね。どうしたんですかうちの前で」
隣「いえ、昨日の言葉に甘えてお邪魔しようと思ったんですけど」
男「ああ、すみません。学校のほうに長居しちゃって」
隣「そうなんですか。ちょっと凍死寸前でした」
男「もしかしてずっと待ってたとか?」
隣「待ってたというか、ちょうどここで例のおじいちゃんと鉢合わせちゃって」
男「ああ」
隣「今日もありがたいお話を頂戴しました」
隣「わあ、いいんですか」
男「寒かったんでしょう?」
隣「とても」
男「多分寒かった責任僕にもありますし」
隣「?」
男「あれ、違うんですか? その肩出し、僕が昨日言ったからなのかと」
隣「あ……うん……そうです」
男「似合ってますよ」
隣「ありがとうございます。でもこの時期に肩出しはないですよ」
男「そうなんですか。女性のファッションには疎くて」
隣「安い女みたいです」
男「身持ち固いんですか?」
隣「固いつもりです。知り合ったばかりの男の人のうちにほいほい上り込むくらいの身持ち固さです」
男「結構アウトですね」
男「今日は紅茶も買ってきましたよ」
隣「わあ、わざわざありがとうございます。優しいんですね」
男「コーヒーは、苦かったかと思いまして」
隣「いえ、とてもおいしかったですy……ひゃっ」
男「あ、すみません。綺麗な肩だったのでつい」
隣「……いきなり指でなぞらないでください」
男「ほんとにすみません」
隣「次からは事前に言ってください」
男「事前に言ったらオッケーなんですか」
隣「気分次第ですね」
男「はい!」
隣「なんでしょう」
男「肩ペロペロしていいですか」
隣「全力で遠慮してください」
男「いい季節になりましたねえ」
隣「女性の露出は少なくなりましたが」
男「肩か太ももが出てればいいんですよ」
隣「フェチですか」
男「多分そうなんでしょうね」
隣「全身太ももの人が好みなんですねえ」
男「全身太ももの人はさすがに愛せない気がしますが」
隣「全身肩のほうがいいですか?」
男「全身肩ってどんなんですか。なんかごつごつしてそうなんですけど」
隣「もやっとボールみたいな形ですかね」
男「あーもやっとボールかあ……」
隣「です」
男「……あり、かな」
隣「!?」
隣「いえ、働いてますよ」
男「えっ、もしかして年上?」
隣「男くんは大学生ですか?」
男「はい」
隣「それじゃあきっと、同じくらいですね」
男「萌えますね」
隣「えっ」
男「社会人萌えですね」
隣「そういうのあるんですか」
男「制服とか」
隣「残念ながら、ほとんどおうちにいてできる仕事なので私服が制服です」
男「じゃあ今も制服ってことですか」
隣「ああ……その発想はなかったなあ……」
男「萌えますね」
男「なんにでも萌えていく覚悟です」
隣「わたし耳たぶとか触るの好きなんだけど」
男「ありがちですね」
隣「なんかそういわれるとちょっと辛い」
男「いえでも素敵です。さあどうぞ」
隣「触らせてとか言ってないのに耳たぶを差し出してくるあたり男くんって感じ」
男「さあ」
隣「急かすね。ではちょっとだけ失礼して」
男「………」
隣「………」
男「………あっ……」
隣「!?」
男「あ、すみませんつい」
隣「変な声出すの禁止!!」
隣「こんなピンク色の雰囲気の中耳たぶさわれない」
男「結構至福だったんですけどね」
隣「続けてたら、変な雰囲気になりそうです」
男「それ狙いだったんですけど」
隣「きみはあざといな……」
男「そうだ。お風呂入っていきます?」
隣「露骨すぎ!! こんな会話した後にお風呂なんて入れません!!」
男「残念です」
隣「男くんはアレだね。女の子を引っ掻き回すのが上手だね」
男「隣さんは引っ掻き回されるの上手ですね」
隣「うれしくない、うれしくないよー」
男「あれ、もう帰るんですか」
隣「なんかとてつもなく恥ずかしいので」
男「顔真っ赤ですもんね」
隣「うそっ!?」
男「なんかちょくちょく素がでるようになってきましたね」
隣「うう……」
男「かわいいですよ」
隣「男くんのかわいいがなんだか信用できなくなってきました」
男「馬鹿正直がとり得なんですけどね」
隣「世間一般では男くんみたいなのを、たらしといいます」
男「不名誉ですね」
隣「ではまた」
男「また来てくれるんですね」
隣「う………」
男「あ、どうも」
隣「すみません。今日も図々しく」
男「いえいえ、待ってました。上がってください」
隣「お邪魔しまーす…………ん?」
女「…………?」
隣「…………」
女「…………」
隣「……こ、こんにちはー」
女「あ……ど、どうもー」
男「女はコーヒー、隣さんは紅茶でいい?」
隣「あ、はい」
女「あ、お構いなくー」
男「りょうかーい」
隣・女(誰…………!?)
女(こんなナチュラルに家に上げるってことは……彼女!? 男、彼女できたんだ!?)
隣(でも修羅場っていってもわたし男くんとはコーヒー飲んだだけだし……)
女(今日いきなりきたのまずかった? いやでも約束してるなら一言言ってくれれば……!)
隣(あ、でもわたし肩触られたりしてる……セーフ!? いやアウトかな!? え、どっちだろ!?)
女(うわあどうしよ私帰ったほうがいいかな!? いやでもここでいきなり帰るとかそれはそれで気まずい……)
隣(いきなり頬ひっぱたかれたらどうしよう……なんかずっとこっち見てるよねこの子……)
女(かわいい人だなー……こんな人が男の彼氏に……あの変態が………)
隣(ああもうなんか考えてる間に時間経っちゃった。なんて声かければいいんだろ?)
女(男台所から戻ってこないし!! 彼女なら彼女と一言紹介してけ!! 馬鹿!!!)
隣(彼女さんですか? かな。やっぱりそうだよね! わたしはただの隣人です……これでいいのかな……)
女(付き合ってるんですか? いつから? どれくらい? キスはしましたか? これはさすがに聞き過ぎかな)
隣(考えててもしょうがない……! とりあえず第一声を!!)
女(自然に……まだ浮気とかそういう誤解を解くには遅くないはず……自然に自然に……)
隣・女「あのっ………」
隣「あ、えっとどうぞ……」
女「え、いや、全然……そちらが……」
隣「あ……」
女「う……」
隣・女(また沈黙してしまった…………)
男「あれ? 二人ともなんで黙ってんの?」
女「あっ男!!」
隣「男くん!!」
男「ごめん、ちょっとフィルター切れてたから買ってくる。二人で留守番しといてくれる? それじゃ」
バタン
女「え」
隣「え……」
隣・女(えええええええええええ………)
隣「あ、はい……」
女「お名前聞いても?」
隣「と、隣です」
女「隣さん……」
隣「はい」
女「あの……なんかすみません!!!!!!」
隣「!? えっ……ええ!?」
女「男に彼女できたとか全然知らなくて!! その……今日約束してたとかも全然……」
隣「かっかのじょっ!?」
女「はいだからその、私は別にそういうのじゃなくて……その、ただ男朝弱いから起こしたげたりとか」
隣「朝起こしたり……」
女「男低血圧だから……あとたまにご飯つくってあげたりくらいのものでええ……」
隣(それ……彼女なんじゃ……)
女「!?」
隣「わたしもそんなんじゃなくて!! ただ午後一緒にコーヒー飲んだり、肩いきなり触られたり!!」
女「肩……」
隣「なんかよくじろじろ肌見られたりしてるくらいでっ!! 別にそんな深い仲じゃ……!!!」
女(いやそれはもうそういうプレイの一種なのでは)
隣「とにかく! か、かか彼女なんかじゃ……!!」
女「ん……?」
隣「え……っと?」
女「彼女じゃないんですか?」
隣「彼女じゃない……?」
男「ただいまー」
隣「男くん!!」
女「男っ!!!」
男「うおお……なんで二人ともそんな食い気味に俺の名前呼ぶの」
女「はい。男、すぐお隣の部屋にこんなかわいい人住んでたんだねー」
男「あげないよ」
女「いやどういう状況想定してんの」
隣「正直最初超焦っちゃいました。来てはいけないところに来ちゃったかと」
女「いや私もいてはいけないところにいちゃった感がすごかったです……」
男「ちゃんと自己紹介すればよかったのに」
隣「いや男くんが紹介してくれればスムーズにいったと思う……」
女「うん……」
男「いや悪い悪い。コーヒーミルの刃見つめてるの面白くって」
女「私たちが右往左往してる間そんなどうでもいいことしてたのね……」
女「料理はできないのに、お茶いれるのだけはすごくうまいよね男」
男「料理はほらなんていうか……難しい……」
女「でも紅茶いれるときお湯が何度とかやってるじゃん。あれよりは楽だと思うけど」
男「温度はほら触ればわかるから」
女「温度計いらずだ!!」
男「料理はほら、塩と砂糖触ってもわかんないじゃん」
女「なめろ」
隣「……ん? わあ!!?」
女「こらこらこらこら!! 隣さんの肩舐めようとしない!!!」
男「しゅん」
女「落ち込んだフリしない!!」
男「じゃあもう女の太もも舐める」
女「叩くよ? 机で」
隣(こわい……)
女「いえーほっとくと男なにもできないんで」
隣「ここまで尽くしてくれる子なかなかいないよ? お嫁さんだねー」
女「!! お嫁さん……? って、ないないないですよー……! 別に全然そんなんじゃ……」
隣(うわあ女ちゃんわかりやすっ!! 好きなの顔に出過ぎだ!!!)
男「いやほんともう二千回くらいプロポーズしてるんですけどね。いつもお茶を濁されちゃって」
女「男の言葉は心こもった感じがしないの!」
隣(うん……それに引き替え男くんは何考えてるかほんとにわかんないなー……)
男「おお、悪いないつも」
女「はいはい。今度またご飯おごってねー」
隣「あ、よかったら手伝わせて!」
女「あ、ほんとですか? よかった助かりますー」
男「じゃあ俺は二人の後ろでミニ四駆走らせて鼓舞する役するね」
女「いやここでおとなしくしててくれる?」
男「御意に」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
女「あの、隣さん……」
隣「はい……」
女「カレーを作ってます」
隣「はい」
女「なんでジャガイモも人参も野菜スティック状なんですかね」
隣「…………」ニコッ
女「かわいい笑顔ですね。ごまかせてないですよ」
男(ああ……追い払われたんだな)
隣「っていうか男くんミニ四駆とかしてるの?」
男「いえ、この前実家帰った時にたまたまコース見つけまして」
隣「持って帰ってきたんだ」
男「まだ売ってるんですね。一台買っちゃいましたよ」
隣「へえ……かっこいいねー」
男「お! でしょでしょ!! このバンパーがいいでしょ!! バンパーってダサくて嫌いなんですけどつけないとコースアウトしちゃってー云々」
隣(うれしそうだ……)
男「走らせてみます?」
隣「あ、みたいみたい」
男「いきますよー」
シャーーーーーーーーー
男「………………………」
シャーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
隣「……………………………これ、たのしい?」
シャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーガゴッ……ウィィィィィィィィィィィィィンッ
女「いただきます」
隣「いただきまーす」
男「相変わらずうまい……けどなんでこれフライドポテト入ってんの?」
女「ああそれは………ね」
隣「ごめんなさいでした」
男「なんだー、隣さんも料理できない組なんですね」
隣「ち、違うんだよ。なんかちょっと遊び心が出ちゃうだけなの」
女「料理中は制御するとおいしいご飯ができますよ」ニコリ
隣「わあ……」
男「含みのある笑顔だ」モグモグ
隣「でもおいしいねー。どこのルー使ったの?」
女「ルーは使ってないですよ。カレー粉とか」
隣「えっ………ルー使わずにカレー作れるのって作り話じゃなかったんだ……」
女「隣さん……遊び心抑えても料理できなさそうですね」
隣「ふぁああ……疲れたー」
隣(でも今日は楽しかったなー。カレーすごくおいしかったし)
隣(男くん、あんな幼なじみいるんだーいいなー。美人で料理もうまくてしっかりしてて)
隣(仲良きことは美しきかな……わたしにいたっけ? 幼なじみなんて……)
隣(あんな子が近くにいたらわたしだったらほっとかないね! 男くんも隅におけないなあ)
隣(…………………? 今わたしもやっとした?)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
女on帰路
女(今日は焦ったなー。あんなかわいい女の子部屋に連れ込んでくるなんて)
女(男いつのまにお隣さんと仲良くなんて……あいつ変態だけど妙にモテるからなー)
女(隣さん、かわいかったな……女の子ーって感じで。ふんわりしてて)
女(男ああいうの好きそうだもんなー。ラッキーなやつ、ああいう子がお隣さんとかもう)
女(どっちから話しかけたのかな? お隣さんと仲良くなる機会なんてそうそう……)
女(ん……………なんかちくちくするな……なんだろ)
女「おーい」
男「…………」
女「授業終わってるよー」
男「……? ??」
女「おはよ」
男「お、おおー。女」
女「女です。そんなんじゃまた試験前苦労するよ」
男「だいじょぶだいじょぶ聞いてたよ。上底たす下底かける高さ割る2……だろ?」
女「台形の面積は求めないよこれ民法の講義だよ」
男「ああ……台形を二重に転売したときの直角二等辺三角形の気持ちを答えよみたいなやつだ」
女「法律なのか数学なのか国語なのか全然わかんない問題だね」
男「答え:つらい」
女「まとめたなあ。直角二等辺三角形さん何者なの」
男「お、ツーデイズか? いいよいいよー」
女「っていうか男普段なに食べて生きてるの?」
男「学食とか……」
女「家では?」
男「マヨネーズ」
女「マヨネーズ!!?」
男「たまに味噌も」
女「あー……もう」
男「おいしいよ」
女「おいしいよ、じゃないでしょ! 死ぬよ!」
男「それは薄々感じてた」
女「言いなよ……」
男「ん?」
女「ご飯ないときは、言いなさい。作りにいってあげるんだから」
女「え、なにが?」
男「今日はやけに優しい」
女「わ、私はいつも優しいでしょ?」
男「それもそうか」
女「ね?」
男「助かってる」
女「う……急に素直になんな」
男「じゃあツンデレっぽく対応する」
女「それはちょっとうざそうだから遠慮する」
男「どうしろって言うんだ」
女「普通にしてて」
男「そうか。それならやっぱり、ありがとうだ」
女「!! もー……こいつは……」
男「?」
男「どうぞどうぞ」
隣「今日は女ちゃん来ないの?」
男「夕食の買い物に行ってくれてますよ」
隣「そうなんだー」
男「つまり今は二人きりですね」
隣「!! そ、そういうこと言わない!!」
男「ちょっ、大きな声出さないでくださいよ。なんか恥ずかしくなるじゃないですか」
隣「え、あ、え、ごめん……ってこれわたしが悪いの……?」
男「いや俺が全面的に悪いですけど」
隣「だよね……知ってたよ………」
男「紅茶淹れますね」
隣「いつもありがとね」
隣「んー? なーにー?」
男「今日も素敵な首筋ですね」
隣「あ、ありがとう……」
男「なめてもいいですか?」
隣「えっ……!!」
男「いや大丈夫です。ひとペロするだけなんで」
隣「なにその単位!?」
男「ひとペロ……」
隣「う………い、いい…よ………?」
男「えっ! 断られるかと思った」
隣「ひ、ひとペロだけだよ!!」
男「わかってますわかってます」
隣「えっ」
男「いえ首にかかっちゃってるので」
隣「あ、わたしかきあげよっか?」
男「いえできれば俺がやりたいです」
隣「なんか並々ならぬこだわりがあるんだね……」
男「それほどでも……」
隣「褒めてないからね」
男「じゃあちょっと」
隣「ん……」
男「…………」
隣「…………」ドキドキ
男「…………」ペロッ
隣「んっ……!」
隣「え?」
男「終わりましたよ」
隣「あ………え? あ、もう?」
男「? ひとペロですから」
隣(うわあめっちゃ満足そうだ……)
男「最高でした」
隣「そう……それはまあ、よかった……のかな」
隣(ほんとにひとペロだけって……まあある意味本物…………)
ガチャ
女「お邪魔しまーす」
隣「!」ビクッ
男「おー、サンキュー」
女「スーパー近いよねここー」
男「うらやましいだろー」
隣「」ギクッ
男「まあいつものようにお茶してた」
女「いつものように、ってまた隣さんにセクハラしてたんじゃないの」
隣「っ!」
男「おー、してたしてた」
女「懲りないなこいつ……」
隣(あああ……女ちゃん男くんのこと好きなんだよねえ……)
隣(わたし……邪魔者? っていうかやなやつ……?)
隣「最低だあ……」
男「ん?」
女「え?」
隣「いや、なんでもないです……」
女「コロッケだよ」
男「なにコロッケ?」
女「肉じゃが風味」
男「おお! いいねえ!!」
女「男のは段ボールしか入ってないコロッケだけどね」
男「マジかよそれっておいしいのか」
女「できるだけおいしくなる努力はしたよ」
男「その努力で普通のコロッケ作ってくれてもよかったんだよ」
女「はい。これ持って行って」
男「任せろ」
隣「男くん、段ボール好きなの?」
男「段ボール工作は好きでしたね」
隣「食材としての段ボールは?」
男「そんな段ボールがさも存在するかのように聞かないでください」
隣「いただきます!」
女「いただきまーす」
男「フイッフゥー!」
女「いやフイッフゥって」
男「ホワッホォー! のほうがよかった?」
隣「なんか、そっちのほうがいただきますのニュアンス伝わるね」
男「でしょう?」
女「そんなわけないでしょ」
隣「そんなわけないよ男くん」
男「えええええええ……今のは隣さんが………」
女「テレビつけてい?」
男「あ、どうぞ」
男「あれ、お前ワイン好きだっけ?」
隣「あ、わたし大好き!」
女「えっ」
男「えっ」
隣「えっ、なにその意外そうな顔」
女「隣さん……お酒飲めるんですか?」
隣「飲めるよ!! 成人したよ!!」
男「よしんば飲めたとしてもほろよいとかカロリとか、そっち系一本飲んだら寝ちゃうキャラじゃないですか」
隣「そんなキャラ付けなの!?」
女「この子酔わせてお持ち帰りしちゃおう! って近づいてきた輩が若干ひくレベルのお酒の弱さっぽい」
隣「ひくレベルってなに!? リバース!? リバースしてるよね!!?」
男「飲み会行って朝起きたら家じゅうのふすま全部外れてるタイプ……ですよね?」
隣「なんか確定事項の確認みたいになってる!? っていうか何があったわたし!!」
女「隣さんがお酒を……」
隣「なにわたしそんなロリかな。そんなつもりはまったくないけど」
男「いやまあ半ば冗談ですけどね」
女「かわいいけど子供っぽくはないですよ」
隣「あ……やった。よかった……」
男「それにほら」
女「ああ、うん。だよね」
隣「えーなにー?」
男・女「いやおっぱいあるし」
隣「おっぱい!!?」
女「やー、すみません……おっぱい触らせてください」
隣「さりげなくなにいってんの!? だめだよ!!?」
男「なめるだけでいいんで」
隣「ハードル上がってるよ!!?」
女「ごちそうさまでしたー」
男「ごちそうさまー」
隣「あ、ごちそうさま……」
女「食器洗ってくるー」
隣「あ、わたしもー」
女「食器は洗えるんですか?」
隣「そ、それくらいなら……」
男(うわあ自信なさげだ)
隣「あ、好きー」
女(もしかして酒好き?)
隣「二人も一緒に飲もうよー明日土曜日でしょ?」
女「えっ」
男「いや……」
隣「ん?」
男「お前はやめとけよ」
女「男こそ。すぐつぶれる癖に」
隣「二人とも弱い感じだ?」
男「いや弱いっていうか……」
女「好きなのは好きなんですけどね……」
隣「じゃあちょっと付き合ってよー。一人で飲むの寂しいな……」
女「う……まあちょっとだけなら………」
隣「やっ……もうっ! 女ちゃんどこ触って……」
女「まあまあ、いいじゃないですか!! あはっ! 隣さんやわらか……」
隣「もうううぅ……うあっ男くんあんま動かないでっ!」
男「んん? んんんんんー……」
女「あはは、いいなあ男。隣さんにひざまくらしてもらえてー」
隣「ひざまくらしてあげたっていうか男くんが腰にしがみついて離れない感じなんだけど……」
女「酔うと男、そんな感じなんですよねえ。ああもううらやましいなあ。隣さんちゅーしましょうちゅー」
隣「だっ、あっ、だめっ! んっ!!」
隣(ものすごい絡み酒だ……男くんはともかく女さんもこうなるもんなの……!?)
隣「お、男くん……スカートまくれちゃう………」
男「………ギニア」
隣(ギニア!? ギニアってなに!!?)
女「ほっぺ! ほっぺならいいですよね!?」
隣「わっ、もっ、もおお……たすけてええぇぇぇ………」
隣(あーー………やっと落ち着いた…………)
女「あがりましたー」
隣「あ、はーい」
女「すみませんお風呂までもらっちゃって」
隣「んーん。というか立ち直り早いねー……」
女「意外とケロっとすぐ」
隣「記憶とかあるの?」
女「それが全然……でもご迷惑かけた空気を肌で感じてます」
隣「いやいいんだけどね……でも女ちゃんはお酒気を付けたほうがいいね」
女「よく言われます……というか隣さんはまだ飲んでるんですね」
隣「あ、うん。なんか飲み足りなくて」
女「あ! 男どうしたんですか?」
隣「なんとかベッドにおいてきたよ……」
女「ご苦労様です……」
女「懐かしいですね」
隣「毎日飲んでるんだ」
女「なんか毎日ヤクルト飲んでそうなおっぱいですもんね」
隣「またおっぱい!? そろそろおっぱいネタやめようよ!!」
女「あはは、すみません……でも正直な話、カップはいくつですか?」
隣「えっ」
女「いいじゃないですかー。女同士」
隣「でぃ、D……?」
女「負けた……C」
隣「で、でも女ちゃんスタイルいいよ!」
女「そんな猥褻な身体の人に言われても……」
隣「わいせつ言うな!!」
女「褒めてますよ?」
隣「うれしくないよ!!!」
隣「? なんだろ」
女「この部屋一人暮らしですか?」
隣「そうだよー」
女「なんか端々に、二人暮らしっぽい気配が見え隠れするんですけど」
隣「あー……ちょっと前までね」
女「!! 同棲とかですか!!!」
隣「そんな色っぽいものじゃないよー。歯ブラシとかカップとかでしょ?」
女「そうそう。二つずつあるから」
隣「お兄ちゃんのだよ。今はもういないけどね」
女「!!! す、すみません……」
隣「?」
女「なんか……聞いちゃいけないことを……つらいですよね………」
隣「! いや、死んでないよ!?」
女「え、そうなんですか! てっきり」
隣「何年かね。急に決まっちゃったみたいで、ばたばたと出てったよー」
女「それで結構生活の痕が」
隣「ねー。わかるもんだねそういうの」
女「仲良かったですか?」
隣「うーん、どうだろ。喧嘩も結構してたけど、いなくなったら寂しいし、やっぱり仲良しだったのかなあ」
女「寂しい……んですか?」
隣「あ、でも最近は全然平気だよ! 女ちゃんも、男くんとも知り合えたし……」
女「あんなのでも役に立ってるならよかったです」
隣「あはは、きついねえ……なんか似てるんだ、男くん」
女「お兄さんとですか?」
隣「そうそう。人が良いところとか、ポーカーフェイスなとことか」
女「変態なとことか?」
隣「それはないけどね……」
女「ん?」
隣「最初から警戒もなにもせずに男くんの家に自然に居ちゃったのって、きっと男くんがお兄ちゃんに似てるからなんだなあって」
女「ああそういうことかあ……なんかお兄さんにあってみたくなりますね」
隣「普通のお兄ちゃんだけどねー」
女「隣さんは男のことお兄ちゃん的な感じに思ってるんですか?」
隣「それはないないー。よくも悪くも男くんはわたしを女として見てくれてるしね」
女「性的な目で……」
隣「いやまあそれはそうなんだけど……その表現は語弊があるよね……」
女「私もよくわかんないんですよね」
隣「なにが?」
女「男と一緒にいて長いけど、長すぎたのかなあ……それこそ兄弟姉妹みたいな」
隣「ああー……」
隣(いや女ちゃん、多分男くんのこと好きだと思うよ……結構…………)
男「女ー、隣ー……」
隣「男くん!!」
女「起きてきた!!」
男「太もも…………」
女「あっこいつまだ膝枕中毒モードだ!! 逃げてください隣さん!!」
隣「えっ? えっ?」
男「いや、だいじょぶだよ?」
女「ふらふらじゃん!!」
男「女……太もも」
女「触るなーーー!!!」
隣(仲良いなあ……)
隣「おいし」
男「よかったです」
隣「今日女ちゃんは?」
男「今日はやらなきゃいけない課題があるそうです」
隣「そっか。二人きりだね」
男「!」
隣「ん?」
男「いえ、隣さんからそういうこと言うとは思ってなかったので」
隣「ふふー仕返しだよー」
男「お茶目かわいいですね」
隣「でもやっぱり顔にはでないね男くん」
男「そんなに出ませんかね、俺……」
男「なんか高校生みたいですね。最高です」
隣「さっそく興奮しないで」
男「すみません」
隣「男くんはさ、女ちゃんのことどう思ってるの?」
男「脚がエロい」
隣「それだけ!?」
男「いいやつですよ。俺の心配ばかりしてくれて」
隣「恋愛感情とかないの?」
男「さあどうでしょう……」
隣(表情からは読み取れないなあ、やっぱり)
隣「わたしお兄ちゃんいるんだけど、男くんに似てるんだあ」
男「あ、それ女から聞きました」
男「海外勤務でしたっけ。え、読んでいいんですか?」
隣「読んでみて」
男「……………………………これ、お兄さんのところに隣さんが行くみたいな前提で書いてあるんですけど」
隣「せいかーい!」
男「海外住まいになるんですか?」
隣「んー……もともとそういう予定だったの。わたしの仕事はネットさえあればできるし、両親もお兄ちゃんと暮らしとけってさ」
男「これ、二週間前の手紙ですよね?」
隣「うん、返事してない」
男「まずいんじゃないですか?」
隣「まずいよーお兄ちゃんからばしばしメール来るよー。離れてわかったけど、お兄ちゃん若干シスコンみたい」
男「だったらなおさら連絡とらないと」
隣「迷ってるんだもん」
男「え?」
隣「海外いくの」
男「どういう意味ですか」
隣「寂しくてしょうがなかったのに、そういうの全然なくなっちゃったから」
男「お兄さんは寂しがってるかもしれませんよ」
隣「そこなんだよねえ……お兄ちゃんもわたしと似て、寂しがり屋」
男「シスコンなんですねえ」
隣「もう毎日すっごいよ! メール見る?」
男「遠慮しときます」
隣「面白いのにー」
男「寂しいですね」
隣「寂しい?」
男「せっかく仲良くなれたのに」
隣「もう見送りムードなんだね」
男「だってそれは、俺が口を出せるようなところじゃ……」
男「えっ……だって家族の問題じゃないですか」
隣「それでも男くんには、口を出せる権利があるんだよ」
男「?」
隣「もお………察してよ」
男「いや難しすぎますって」
隣「わたしが………男くんのこと好きになっちゃったからだよ」
男「!?」
隣「多分だけどね」
男「そ、そうなんですか?」
隣「あ、動揺してる! やった! 初めてみたよ男くんのそういう顔」
男「もしかしてからかわれてます?」
隣「ううん、これは本気のやつだよ」
男「いつから……?」
隣「最初からなのかなー」
男「隣さんもブラコンですね」
隣「それを言わないで……まあきっかけはどうあれ、そうこうしてる間にどんどん親近感が募っていったわけです」
男「んー、でもそれって恋愛感情なんですか?」
隣「さあ……正直わかんない! でもね、なんか意識したら言いたくなっちゃってたまんなかったの」
男「うわあ……隣さんがそんな素直な感じだと、さすがに照れます………」
隣「照れて照れて!!」
男「顔見ないでください」
隣「だって珍しいんだもんー」
男「不覚だ…………」
隣「それじゃあ、今日は帰ろうかな」
男「えっ、ここでですか?」
隣「うん、それじゃあね」
男「あ、え、はい」
隣(…………………………………………………………………死ぬほど緊張したぁ!!!!)
隣(あとはがんばれ女ちゃん!)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
翌日
女「今日隣さん来ないの?」
男「え、あ、ああ……隣さんね。どうなんだろ」
女(動揺してる……珍しいな。まあ告白されたら無理もないか)
男「今日はもしかしたら来ないかも」
女「どうして?」
男「それはまあ……その………」
女「うそうそ。なにがあったか知ってるよ」
男「えっ……なんで!?」
女「それはまあおいといて、私も男に話があります」
男「?」
女「…………ああ、恥ずかし。一度しか言わないからね?」
隣「それで女ちゃんは振っちゃったんだ」
男「はい」
隣「なんかわたしがけしかけちゃったみたいだ……正直女ちゃんと付き合うだろうと思ってたのに………」
男「隣さんがいけないんですよ」
隣「わたしー?」
男「正直一目ぼれしてもおかしくないくらいに、隣さんのこと気になってたんですから」
隣「わ……それはうれしいな」
男「あんな顔真っ赤にして告白されたら誰でもおちます」
隣「うそっ!? わたし超余裕な大人の女顔してたはず!!」
男「強がり大失敗でしたね」
隣「うわああああああ………聞きたくなかったよー……」
男「っていうかほんとに行っちゃうんですか」
隣「うん、もう荷物いくらか送っちゃったしねー」
隣「ごめんね。これでも最後のけじめのつもりなんだ一応」
男「どういうことですか」
隣「わたし告白したときに、多分好き! って言ったよね」
男「言いましたっけ」
隣「言ったよー。それってつまり、親愛と恋愛を勘違いしてない自信がないってことなの」
男「俺をお兄さんの代わりと思ってるかも、ってことですか?」
隣「そういうこと! 今日は察しがいいね。だから、確かめたいの」
男「わざわざ離れる、ってことですか」
隣「あっちに行ってお兄ちゃんと過ごして、それでも男くんに会いたくて会いたくてしょうがないようなら、それは本物の恋愛かなあって」
男「なんか回りくどいですね。本末転倒な気もします」
隣「回り道も本末転倒もいろいろ許してよー。わたしこれ一応、初恋だからね?」
男「初恋は実らないっていうけど……」
隣「だいじょぶ! 男くんへの愛が本物だとわかったら文字通り飛んで帰ってくるよ!!」
女「あのー………」
女「ご飯できたよ! あと台所に声聞こえる!」
隣「うそっ」
女「ふられた私にそのイチャイチャトークは結構くるよ……」
男「いやそういうつもりは……」
女「まあ、その分開き直ったけどね。隣さんが余裕綽々であっち行ってる間に、男、私のこと好きにさせるからね!」
隣「ここまですがすがしく略奪宣言されるとなあ……」
女「あとで泣いても知りませんよー」
隣「色仕掛けはやめてね!!」
男「ああ、絶対ひっかかるわ」
隣「ひっかからないの!! おっぱいわたしのが大きいよ!?」
女「足は私のほうが長いけどねー」
男「幸せな状況だけど、迫られると躊躇するタイプだわ俺……」
女「では、明日から隣さんの前途を祝して!」
男・隣・女「「「いただきます!」」」
隣「ちょっとかくまってください」
男「…………どうしたんですか?」
隣「いやしばらく離れてた後の兄の愛情って重たいね……」
男「逃げてきたんですか?」
隣「日本に帰るーって言ったらなんかお兄ちゃんついてきちゃって」
男「シスコン重症化したんですね……ていうかどうするんですか?」
隣「?」
男「隣の家、引き払っちゃったじゃないですか」
隣「あ」
男「あ、って……」
隣「それじゃあ、一生かくまってください」
男「! …………いいですよ」
隣「人がいいね!!」
男「よく言われます」
おわり
和んだ
こういうの好き
Entry ⇒ 2012.11.10 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
女「だって、君はボクの友達だろう?」
男「……あのなあ」
女「ん? なんだい」
男「なんでいるんだ?」
女「君が起きるのを待っていたのさ」
男「勝手に帰れよ……ふわぁ……もう夕方か」
女「うん、太陽も沈みかけてる」
男「だいぶ寝てたみたいだな……」
女「部活でもないのに、放課後に残っているのはボク達ぐらいかもね」
男「そうだな」
男「あくまで一緒に帰るのか?」
女「うん、嫌かい?」
男「別にそうじゃないんだが、先に帰ってても良かったんだぞ?」
女「ふふ、そうもいかないよ。君はここ最近お疲れ気味だったからね。眠くなるのも当然さ」
男「確かに、文化祭の企画、未だにできてないんだよなぁ」
女「手伝おうか?」
男「いや、いい」
男「手伝いたいのか?」
女「もちろん」
男「ほぼ雑用だぞ、こんなの進んでやるのは……」
女「変かい?」
男「んー、ドMに近い印象だな」
女「なんだ、それならボクはうってつけじゃないか」
男「……お前、ドMなのか!?」
男「おお……あっさり暴露したな」
女「痴女と行っても、触ると言うよりは見せる、方だけど」
男「聞きたくない情報だった」
女「だからクラスの女の子と同じくらいスカートが短い」
男「そういうことだったのか……」
女「今日は下に何も穿いていない」
男「えっ」
女「嘘、だけどね」
女「期待しちゃった?」
男「しないけどな」
女「見ないとわからないよ?」
男「見せるなよ、放課後のこんな時間に変なことをするな」
女「んー、盛り上がってきたね」
男「きてねえよ」
女「おや、どうしてだい?」
男「俺はあと少しだけ企画考えてから帰るから」
女「ふむ、そうか」
男「……」
女「……」
男「なんで改めて席に座るんだ?」
女「待ってるからさ」
女「君は色んな顔をして面白いね」
男「……バカにしてんのか?」
女「そうじゃないよ、とても素敵だって、言ってるのさ」
男「……はぁ、お前いると集中できないんだけどなあ」
女「ボクのことは、何もないと考えてくれてもいいよ」
男「本気で無視するぞ?」
女「うん、構わないよ。その代わりここで脱ぎ始めるけど」
男「いや、無視できるはずがねえだろ」
女「なにか、問題が?」
男「……どうして俺のこと、待つんだ?」
女「そんなこと、決まってるじゃないか」
男「……なんだよ?」
女「言わなくてもわかると思うけれど」
男「言わんとわからんだろ」
女「じゃあ、言うよ」
男「ああ」
女「君の、友達だからさ」
……友達ねえ。
男「友達って言っても、俺がつるんでるおとこどもはみんな帰っちまったぞ?」
女「彼らよりも友達なのさ。体ごとつるんでるからね」
言い方おかしいな。
男「お前とは体ごとではないと思うが」
女「おや、違ったかい? あの日、ボクと君は過ちを犯してしまったではないか」
なぜ目を潤ませる。
女「犯し……?」
男「字が違う!」
女「そうか、君が一方的に犯し……」
男「話を続けるな」
こんがらがるだろう。
女「ボクも、抵抗することはできなかった……」
男「あー……そろそろ戻ってきてください」
女「いや、しなかった、痴女だから」
男「しなかったのかよ!」
思わずツッコんじまったじゃねえか。
女「いやいや、ついついやってしまうんだ」
反省をしているように、頭を掻いた。
女「……んっ?」
男「ど、どうした?」
女「ついつい、ヤってしまった?」
男「いや、それは俺言ってねえぞ!?」
あっという間に外は暗くなり、部活の喧騒も、少しずつ小さくなっていく。
男「け、結局全然進められなかった……」
女「それは大変だ。文化祭に支障をきたしてしまう」
誰のせいだ、誰の。
女「それじゃあ、ボクが人肌脱ごうか?」
そう言って、彼女は静かにブラウスの一番上のボタンを外す。
男「そっちかよ!」
彼女はゆっくりと、第二のボタンに手を移動させていた。
男「痴女になるぞ!」
女「痴女だが?」
そうでした。
女「襲われてしまうかもしれないね」
誤解されるんだ。
ふふっ、と彼女は軽く笑って、
女「驚いた顔、とっても危機迫る感じがあっていいね」
男「そりゃな……」
いきなり同じクラスのおんなが、目の前でボタンを外し始めたら。
それはそれは驚く、困る、怖い。
周りの目が、怖い。良かった、放課後で。
女「酷いなあ。一緒に帰るっていうのに」
男「家そんなに近くないだろ」
女「同じ方向じゃないか」
まあ、そうだけども。
女「ふふ、ボクみたいな痴女と、一緒に帰りたくないかい?」
男「逆にお前が一人で帰って露出しないか心配だ」
女「おや、ボクを心配してくれてるのかな?」
俺がバッグに荷物を入れていると、彼女は椅子から立ち上がり、スカートのしわを伸ばした。
男「なんだよそれ」
痴女じゃないじゃないか。
それは嬉しい。いや、見せないことではなく。
俺以外に見せないことが嬉しいわけではない。
断じて。
女「言い方を変えると、限定痴女、かな?」
彼女はキメ顔をして、こちらを見た。
俺は、何も言えなかった。
女「ははは、ここはお世辞でも『今からその限定のモノを見せてもらう』って言ってくれなきゃ」
お世辞でも言えない。
そう言って、胸を隠すような仕草をする。
女「これから育ち盛りだから、もうしばらくの辛抱を」
男「辛抱って……」
女「もうしばらくの待望を」
男「待ち望んでねえよ!」
どんだけ俺はお前の成長に期待してるんだよ。
男「全然意味違うじゃねえか」
成長するか、しないかみたいに使うな。
女「確かに、ボクは胸も……ミニマムだし、お尻も大きくない。身長も、あまり高くない」
男「そういうの好きな人もいるんじゃねえか?」
女「君は好き?」
男「……んー」
胸はでかい方が好きだし、尻もちょっとは大きい方がいいと思う。
女「微妙な反応だね」
女「うん、それはそうだと思う。ボクも、大きな胸と、大きなお尻は大好きだ」
もちろん女の子のだけどね。
と、付け加えた。
男「レズ?」
女「ふふっ、それはどうでしょう」
ぼかすな。
男「えっ?」
腕時計を見てみる。
男「! もうこんな時間なのか!?」
女「疲れたからホテルにでも行こうか? もちろんラブだが」
男「んな冗談に付き合ってる暇はねえ、さっさと出るぞ」
女「ああ、わかった」
女「ふふ、怒られてしまったね」
男「誰のせいだ、誰の」
女「君が企画を考える、と言ったんじゃないか」
男「お、俺のせいなのか?」
女「君の責任だよ。……責任、取ってくれるかい?」
なんのだ。
女「なるほど、自慰か」
職員室の前で堂々と言うな。
男「帰るぞ」
女「ああ」
まったく、困った奴だ。
女「やっと帰れるね」
そう言うなら先に帰ればよかったのに。
女「ああ、これは皮肉じゃないよ。勘違いしないでくれ」
女「おや、機嫌を損ねてしまったかな?」
別に。
そんなことで損ねるようなこどもじゃない。
まあ、とりあえず黙っておくか。
女「ふむ、これは困ったな」
顎に手をあてて考えているようだ。
そして、彼女は考えた結果、次の行動に移った。
女「よしよし、機嫌直してね」
背伸びをして、頭を撫でてきた。
男「俺はこどもか!」
居ても立ってもいられなくなり、つい叫んでしまう。
男「ああ、それならお前は赤ちゃんだな」
女「赤ちゃんプレイがお好みかい?」
男「ちげえよ!」
身長とか、そういうの鑑みてだ。
女「それにしても、大きいね、君」
男「下を見て言うな」
勘違いされるだろ。
男「明らかに誤解されるな、それ」
女「でも、何センチくらいだい?」
背伸びをして、頭に触れようとする。
女「おっと」
体勢を崩して、俺にもたれかかってきた。
女「あはは、ごめん」
少し顔を赤くして、微笑んだ。
何やってんだ、こいつは。
男「離れろ、暑苦しい!」
女「ふふっ、ちょっと発情してるから暑苦しいかもね」
発情中かよ。
女「君には勝てそうにないなぁ、身長」
ここから俺を越したら流石に引く。
女「何を食べれば、そんなに大きくなるんだい? おかずは?」
下を見るな。おかずってどういう意味だ。
女「へえ、巨乳は?」
男「基本的には、やっぱり牛乳かな」
女「タンパク質を分泌してるんだ、タンパク質を摂ったほうがいいんじゃないかな?」
話が噛み合ってねえ!
ドッジボールみたいだ!
男「あのなあ、いちいち下品にするなよ」
女「そうだね、おタンパク質をもっと……」
『お』をつければいいってもんじゃないけどな。
女「うむ、それよりも一番驚いたのは巨乳より牛乳ということだ」
男「いや、そのおかずじゃねえからな!?」
女「『その』おかずって?」
ニヤリと笑って、彼女は顔を近づけてきた。
しまった。
女「どんなおかずだい? ボクに教えてくれないかな」
トンッ、と軽く頭に手刀。
女「うっ……」
ボケーッとした顔をして、直立不動に。
男「何してんだ」
女「俗にいう、賢者タイムを体感してみた」
なんか嫌な予感はしてたんだ。
女「賢者タイムって、どんな気分なんだい? どうして、賢者になるんだい?」
知りたがりめ!
女「そうだ、ボクは初めて電気を開発した自家発電大好きな、エジソンさ!」
自家発電は違うだろ!
女「そういえば、男の子も自家発電をするらしいね」
関連付けて話が広がっていく!
男「あー! もうこの話なーし!」
男「しねえよ、こういう話は終わりが見えねえから」
女「君もよく、教室で話をしているじゃないか」
……聞こえてるのか!?
女「今日はクラスの女子を見て品定めをしていたようにも見えたけれど」
男「ああ……」
やべえ、筒抜けだ。
女「君はその時、胸の大きい人がいい、と言っていたね」
知ってたのかよ!
ならなんでさっき質問したんだよ!
男「いや……えっと……」
やばい、なんだこれ。
めちゃくちゃ恥ずかしい。
身内でがやがや笑って話してるのに。
すげえ恥ずかしい。
女「……だから、ボクとこういう話をするのも、別に構わないんじゃないかな?」
男「な、なんでだよ……」
女「ボクは友達だからさ、そうだろう?」
下を向いた俺を、覗きこむように伺っている。
女「ふふっ、顔が真っ赤だよ。熱でもあるのかな?」
女「ずるい? バイバイありがとうさようなら?」
ネタが古い。
男「上手く誘導するのが、ずるい」
女「誘導なんてしてないよ。ボクはただ、君とありのままに話がしたいのさ」
にっこりと笑ったように思えたが、顔が見えないのでわからなかった。
あたりが、もう本当に暗い。
男「ああ、そうだな」
照明のない道を、歩いて行く。
暗ければ、少しずつ目も慣れてくるだろうから、それまでの辛抱だ。
女「ふふっ、何も見えないと、都合がいいね」
男「どういう意味だよ」
女「実は、既にボクはブラウスを脱いだ」
男「は!?」
男「お前マジか!?」
女「おっと、こちらを見ないでくれ、ボクが痴女だとはっきりとわかってしまうからね」
嘘だな。
きっと、嘘だ。
いつものことのように、冗談だろう。
男「ったく、流石にそんなことできないだろう」
女「ふふっ、そうだね」
そう言って。
彼女は俺の手を持って、彼女の体を触らせた。
男「……」
ぬ、脱いでね?
女「どういうことって、こういうことだろう?」
この感触は、生身の体……?
ブラウスの感触じゃない。
まさか、本当に……?
確認しないと、やばい。
主に、隣を歩いている俺は、やばい。
しかも触ってるし、やばい!!
しかし、こちらを見てニッコリと笑う、やつの顔が一瞬見えた。
まずい、監視されてる。
女「ふふっ、手が汗ばんできたよ」
そりゃそうだ。
色んな気持ちがぐるぐると体の中をかき乱していく。
男「お前、何やってんだよ」
女「ふふっ、ナニも?」
言い方おかしいって。
男「……」
もう、我慢できん。
俺のためにも、こいつのためにも。
男「おい、いいかげんにしろよ!」
俺は思い切って、彼女の方を向いた。
すると。
女「ふふっ、どうしたんだい?」
ブラウス姿の、彼女がいた。
男「お、お前……は、裸は……?」
女「ふふっ、引っかかったかい?」
どうやら、嘘だったようだ。
でも、肌の感触は……?
暗闇に慣れてきた目でよく見てみると、ブラウスがスカートからはみ出している。
まさか、そこに手を入れたのか?
女「とっても驚いているね。さっきとはまた、違う顔だ」
彼女は口の両端を軽くつりあげた。
女「あはは」
彼女は珍しく、すこし声をあげて笑った。
いつもは小さく一笑なのだが。
男「そういう、本気で騙そうとする冗談はやめろ」
女「怒ってるのかい?」
男「怒ってはいないけど」
それに、なんだろう。
男「……普通に、体とか触らせるなよな」
彼女は、言葉を失った。
さらに、顔もいつもと違っている。
女「ああ、そうだね」
静かに、そうポツリと言った。
男「? どうした」
女「いや、なんでもないよ」
男「……?」
いつもの余裕が、なくなった?
男「ん?」
女「暗すぎて、ビックリだ」
確かに、今日はいつになく、暗い。
まだ真っ暗になるのには、ちょっと早すぎる時間。
女「何か過ちがありそうな予感だね」
男「ねえよ」
即答した。
そりゃもう、すぐに。
どうなってるんだ。
男「あのな、確かに周り何も見えないけど、あくまで外だからな?」
女「わかってるさ」
だからこそだよ、と。
堂々と宣言する。
女「青姦なんて、素晴らしいじゃないか」
何がだ。
ゾクゾクっと、体を震わせた。
女「考えただけで、ダメだ」
男「ああ、ダメだ」
相当ダメだ。
女「ボクのやってみたいことリストに入っているよ」
男「実にいや響きのリストだな」
他のは聞きたくない。
女「ふふっ、応援してくれるのかい?」
男「いや、しないけどな」
女「そう言うと思ったよ」
彼女はゆっくりと伸びをした。
女「ふぅ」
息をもらして、ニッコリと笑った。
女「君があの日、話しかけてきてくれなければ、こんな日も、なかったんだよね」
俺とこいつがこうやって話をするようになってのは、数ヶ月前のことだ。
女「あれが初めて、君の優しさに触れたところかな?」
男「なんか、その言い方照れるな」
女「君がボクの初めてを奪ったんだからね」
なんの初めてだ。
男「どんな成り行きだったか忘れちまったなぁ」
女「そうなのかい? それは残念だなぁ」
そう言って、彼女はすこし、顔をふくらませた。
男「そうなのか」
女「まあ、言わないけどね」
男「言わないのかよ」
言う流れじゃねえか。
女「ふふっ、あっという間に家だね」
男「ああ、本当だ」
女「今日は、一緒に帰ることができて、とっても楽しかったよ。また」
男「おう、また明日」
女「うん」
手を振って、別れた。
なんだか、濃い帰り道だったな……。
ポツーンと、声が響いた。
親は、まあ基本的には夜中まで仕事だしな。
妹は寝ちまったかな?
男「腹減ったな」
これならあいつと一緒に食えばよかったかな。
まあ、そうも言ってられないな。
しかし、何かあるだろうか。
ゴツっと、何かに当たった。
男「うおっ、なんだ?」
妹「……」
頭をぶつけたように見える、妹がいる。
男「おう、ただいま」
妹「……どこに行ってたの」
男「学校」
妹「なわけないじゃん、遅いじゃん、どう考えてもおかしいじゃん」
すげえご機嫌斜めだ。
男「は、はい」
妹「当てたら怒らないであげる」
男「おそらく4時間前くらい?」
妹「……」
あれ、合ってたか?
妹「合ってたけど不正解だよ!」
理不尽な!
妹「ご飯作っといたげたのにさ」
男「おお、お腹ペコペコだから食べさせてくれよ」
妹「はぁ!? 『あーん』とか絶対にしないからね!」
いや、頼んでない。
男「とりあえず、それはどこに?」
妹「ん」
顎で示すなよ。酷い扱いだ。
妹はふいっ、とそっぽを向いた。
男「いただきます」
妹のやつは、怒りながらも、料理の出来を気にしているらしく、
妹「どうなの?」
と、聞いてきた。
男「ああ、美味しいよ」
すると、顔がにやけて、「でしょでしょ?」という顔になった。
男「なるほど、いつもがそんなでもないから今日は美味いのか」
妹「その言い方は酷いよ?」
男「わるいわるい」
結局妹は笑顔になった。
まだまだ子どもだな、こいつも。
料理は、俺以上だが。
男「ん?」
妹「クラスの女の子とは、どんな感じで話してんの?」
男「どんな感じって?」
妹「んー、ほらさ。私みたいな接し方とかしてない?」
男「こんなに愛でた接し方してないよ」
妹「は、はあ? バカじゃないの?」
凄く嫌な顔をして、引かれてしまった。
男「んー、別にあんまり変わらないかな。お前と」
妹「あー……そうなんだ」
男「?」
少し深刻そうな顔をして、俺の様子を窺っていた。
妹「それじゃあ、なんか彼女はできなさそうだね」
男「は?」
いきなり極論を言われた。
妹「だって、それじゃあ平行線って感じだしさ」
男「……と、いうと?」
妹「だからさ、お兄ちゃんの付き合いは、ただの友達ってこと」
男「友達」
妹「うん、友達」
男「別にそれでいいじゃねえか」
悪いこと、あるのか?
大げさに、大きめにテーブルを叩かれた。くそ、ビビっちまった。
妹「好きな人ができても、そのままずっと平行線のままなんだよ?」
悲しくないの? と、強い瞳に気圧される。
男「……まあ、そりゃ困るだろうけど」
妹「だから、少しは改めるべきだよ」
男「改めるっつってもなぁ……」
妹「私が教えたげよっか?」
妹「なんでさー!」
男「妹に教わることなんかなにもないね!」
そう言って、ご飯を口に放り込む。
全部食べきって、俺は椅子から立ち上がった。
男「じゃあ、後片付け頼んだ!」
妹「あー! また私にさせるの!?」
さっきの笑顔はなくなり、一気にぷりぷりと怒った顔になった。
ベッドに横たわって、今日のことを思い出す。
男「文化祭、どうしようかなぁ」
目を伏せて、すこし考える。
駄目だ、何も浮かばない。
男「やっぱり、みんなの意見を聞くのが最善かな」
一人の考えより、みんなの多数決の方が決まるのは早い。
男「……それよりも」
さっき、妹に言われた言葉が引っかかる。
それのどこが悪いんだ。
しかし、あの妹の呆れた顔は、正直悔しかった。
男「……つってもなぁ」
いきなり態度変えることも、できねえし。
いつもは、みんなでワイワイするのが好きなわけで。
別に、好きだとか嫌いだとかは、どうでも良くて。
男「まあ、苦手なやつが苦手なんだが」
気にすること、ないか。
いつも通りにしておけば、別に。
今なにか支障がでてるわけじゃないし。
男「風呂入るかな」
妹は既にパジャマだったので、おそらく風呂はもう入っている。
さっさと入って寝よう。
今朝は、放課後に寝ていたせいか、あまり眠くなく、起きるのは苦ではなかった。
ただ寝付きが悪かったのが、少し嫌なところだ。
男「……ん」
食卓に500円がある。
多分、昼食代だ。
男「飲み物代も込みで頼むぜ……」
ため息をつき、500円をポケットに入れる。
妹「おはよう」
男「おう、おはよう」
男「ほい、もう行くのか?」
妹「うん、日直だから」
男「了解」
妹「今日はしっかり帰ってきてね、あと、朝食の感想もよろしく」
小さな紙を俺に差し出して、妹は早々と家を出た。
毎回感想を書かせるのは、どうかと思うんだが。
既に制服に着替えていた俺は、朝食をすませて、外に出た。
ドアを開けて、他には誰もいないので鍵を閉める。
ツーロックなので、二つとも施錠。
自分でドアを閉めたことを指を差して確認していると。
「とても、用心深いんだね」
と、そんな声が聞こえた。
男「この声は……」
女「やあ」
平然と、俺の家の前に、彼女は立っていた。
男「なんだその変な名詞は」
言いたいことはわかるんだが。
肉体……?
男「というか、どうしてここにいるんだ」
女「一緒に行こうかと思ってね」
男「おいおい、お前遠くなってるじゃねえか」
女「そういう考え方もあるかもしれないね」
他の考えがあるのか。
女「でも、君と会うには最高の近道だ」
女「それに、君がボクの家を素通りする可能性も、あるからね」
男「誘って行くことなんてないからな」
女「確かに、いなかったら大変だね」
男「逆に、俺がいなかったらどうするつもりだったんだ?」
女「ふふっ、それはありえないから」
サラッと言い切られた。
男「なんで知ってんだよ」
女「君が教室に来る時間から逆算すれば簡単さ」
恐ろしい。
確かにこいつ、いっつも俺より先に来てるな。
それで、決まったようにニヤリと笑って「おはよう」と言ってくる。
男「とりあえず、行くんなら行くぞ」
女「ああ」
女「眠そうだね」
男「いや、なんか気が緩んだ」
女「ボクに会ったからかい?」
男「そうなのかね」
女「ボクも、君に会ってからここがやけに締まってるんだ」
どこを指さしてるんだ。
女「やれやれ、といったところだね」
自分にやれやれと思う奴がこんなところにいたとは。
男「ああ」
きっと文化祭のことだろう。
男「でも、まったく思いつかなかったな」
女「そうか」
珍しく、話が途切れた。
女「ふふっ、初めてというのは緊張するものだね」
男「初めて?」
女「下校は何度かあるけれど、一緒に登校するのは初めてだろう?」
男「ああ……確かに」
別に、あんまり変わらないと思うけど。
きょろきょろと周りを見渡して。
女「ボクの色んなところを、みんなが見てる……見られている」
男「自意識過剰すぎるぞ」
女「それくらいがちょうどいい」
いや、良くないだろ。
女「教室でも一番前の席だと、誰かが自分の後頭部を凝視しているかもしれない……」
男「あんまり考えねえけどな、そんなこと……」
女「ボクは君の後頭部をよく凝視することはあるけど」
お前かよ!
女「だから、誰かがやっていてもおかしくないだろう?」
まあ、そう考えることもできるか。
女「ボクが自慰をしているのがいつバレるかとても怖いよ……」
お前は授業中になにをしてんだ!?
男「嘘をつくな」
女「君はボクの監視下にいるから、そんなことできないよね」
いや、しねえよ。
女「友達の行動を見るのは、普通のことだろう?」
君は見ていて飽きないからね、と。
にっこりと笑った。
男「……俺はお前のこと見てないぞ」
女「見てくれたら、笑顔で応えるよ」
手も振っちゃうと、本当に手を振りながら言った。
女「怒られて職員室に連行はいやだね」
男「ならやるなよ」
女「ふふっ、怒られることより君に応える方が最優先だよ」
俺、だいぶ比重があるのか。
女「文化祭、今日も考えるのかい?」
男「いや、今日は放課後にささっとみんなに意見を聞くことにした」
女「それはいいね。君にしては名案だ」
俺にしては、だと?
女「ボクは構わないけどね」
男「お前が構わなくても、他は困るだろ?」
女「ボクは構ってしまうね」
男「……?」
女「君のことを、かまわないことなんてできないよ」
……意味が違うようだな。
男「ああ」
学校が見えてきた。
話をしていると、すぐに終わってしまう。
女「文化祭、何になるか楽しみだね」
男「そうだな。色々と会議とかもあってだるいんだけどな」
女「委員になっただけでも、偉いよ。ボクはエロいだけだし」
言いたかっただけだろ、それ。
女「君が頼むのなら、いいよ」
男「すげえ上から目線だな」
女「そうでもないよ、友達の頼みは、聞かなきゃ」
男「じゃあ、フォロー頼んだ」
女「フェラーね」
いや、無理があるだろ、それ
女「ボクはまだしたことがないから、下手なのは大目に見てくれ」
期待してねえし、させねえよ。
女「ふふ、テクが凄いからね」
話術のテクか。
女「おや」
男「どうした?」
ある、一通の手紙が彼女の下駄箱に入っていた。
女「これは?」
男「そ、それはまさか……」
いわゆる、ラブレター?
女「ラブ、レター?」
キョトンと、首を傾げた。
女「ラブホテルみたいなものか?」
男「なわけないだろ」
そんなの下駄箱に入ってたら恐ろしい。
女「……恋文?」
男「そう、そう」
なんか古い言い方だな。
男「お前の下駄箱に入ってるんだからそうだろ」
女「そ、そうか……そうなんだね」
いきなり顔を赤くして、慌てふためいた。
女「でも、ボクなんかで、いいのかな……」
男「とりあえず、読んでみろよ」
女「ああ、その前に教室に行こう」
そうしないと、ゆっくり読めないからな。俺はさっさと了解した。
机に座って、丁寧にラブレターを読んでいる。
男「誰からだ?」
女「学年が同じようだが、知らない人だね」
男「へー」
こいつ、わりと人気あるのか。
女「違うクラスの人が、どうしてボクに?」
男「知らねえよ」
女「こんなド淫乱雌豚野郎に?」
卑下しすぎだろ
女「屋上に来てくださいと書いてある」
男「屋上か、それっぽいな」
女「それっぽいって?」
男「告白する時とかって、屋上とか、校舎裏がセオリーだからな」
女「君は、告白されたことがあるのかい?」
なんでそんなに焦った感じなんだ。
男「されたことねーよ、悪かったな」
ホッと息を吐かれた。畜生。
俺に先越されるのは嫌か。
男「で、どうするんだ?」
女「うーん……」
唇に人差し指をあてて、思いふけっている。
女「ふふっ、どうするんだろうね」
他人事みたいに言うなよ。
男「なんだよ、それ」
女「ちょっと、顔が近いかな」
男「んっ……」
確かに、近くになっていた。
すこし、熱中してた。
女「危うく唇を奪うところだったよ」
奪われるんじゃなくて、奪うのかよ。
強引だな。
まあ気にすることはない。
こいつと付き合うやつの顔が見てみたいが。
放課後になればわかることだ。
女「さて、そろそろみんなが来るね」
男「そうだな」
ホームルーム手前に来る奴が多いので、まだ全然来ていない。
しかし、数分すると、一気に全員集合する。
俺はできるだけ、遅刻ギリギリは避けようと早めに来ているから、そんなことないけどな。
問題を出されて焦ったりしていると、授業はあっという間に過ぎていった。
昼食は500円しっかり使って食べれるものを食べた。
珍しく、やつは食べている最中、あまり話さなかった。
やっぱり、ラブレターを気にしているらしい。
男「って、わけで、みんなに色々と意見出して欲しいんだけど……」
ホームルームに、時間をもらって、文化祭の出し物を決める。
たくさんの意見の結果、メイド喫茶になった。
しかし、メイド喫茶は他のクラスも何個かあった気がするんだが……参ったな。
まあ、当然だろう。
やつを見ても、笑顔にならない、手も振らない。
早速嘘をつかれた。
男「それじゃあ、メイド喫茶でいいな。もしも通らなかったら、また今度決めるから、みんな協力頼んだ」
そう言って、ホームルームは終わった。
女「いい指揮だったよ。とてもスムーズに事が運んでいたね」
男「で、お前はいいのかよ、屋上行かねえのか?」
女「ああ、今から行くよ」
男「ついていってやろうか」
冗談で言ってみた。
女「ははは、いいよ」
きっぱりと断られて、
女「これは、ボクの問題だから」
女「だから、ボク一人で解決したい、かな」
なんだか、煮え切らない。
男「まあ、結果は教えてくれよ。今日は先に帰るぞ」
女「待っててくれてもいいんだよ、別に」
男「いや、いい。OKされたらそいつと一緒に帰れよ」
女「……そうか、そうなるんだね」
男「じゃあな、健闘を祈る」
女「はは、まるでボクが告白するみたいだね」
実際は逆だけど、な。
男「ああ」
そう言って、俺は教室を出た。
男「……」
気持ちが、変だ。
なんだか胸騒ぎがするというか、なんというか。
男「なんだよ、あいつ」
友達だって、言い張るくせに。
自分の問題は、自分一人で解決かよ。
なんか、納得いかねえな。
昨日とは違って、長く感じた帰り道だった。
黙々と帰ると、歩けど歩けどたどり着かないような気持ちになる。
妹「おかえり、今日は早かったんだね」
男「お前に会いたかったからさ」
妹「だったら昨日も早く帰ってきてよね」
軽く流されたが、まあいい。
妹「ん?」
妹「お兄ちゃん、なんかあった?」
男「えっ、なにがだ?」
妹「なんか変な顔してる」
いつもだけど、と。
余計なことを付け加えてきた。
男「悪かったな」
妹「それはいいから、何かあったんなら言ってよ」
男「いや、ないよ」
妹「もしかして、朝食まずかった?」
妹「感想が『びみ』ってひらがなで書いてあるから、美味なのか微味なのかわかんなかったよ……」
男「それはお前を悩ませるために無理にそうしたんだ」
妹「なによそれ、不安になるからやめてよ」
男「不安なもんを食べさせるなよ」
妹「うっさいなー、作ってもらってるだけ感謝してよね」
まあ、確かに。
妹「……で、なにがあったの?」
男「あくまで聞いてくるんだな……」
男「……えーっとだな」
そして、とりあえず今日あったことを話した。
やつが告白されたこと、文化祭の出し物がメイド喫茶に決まったこと……など。
妹「確実にお兄ちゃん、それって……」
男「お前に言及される気はない、話したから部屋に行くぞ」
妹「えー待ってよー!」
俺は無視して、階段を登った。
あいつは携帯を持っていない。
だから、結果を今メールで聞くことはできない。
電話するほどでもないと思うし。
男「寝るか」
上手くいかない気持ちを抑えこんで、俺はまぶたを閉じた。
男「!」
妹「晩御飯まだでしょ、それに制服のまま寝たらシワになっちゃう!」
男「お前……俺より年下なのにしっかりしてるな」
妹「ダメなお兄ちゃん持つとこうなるのよ!」
と言って、部屋を退出する間際に、
妹「あ、ちゃんとご飯食べて風呂入んなきゃダメだよ。気分もすっきりしないんだから」
男「……あー」
まるで母親みたいな妹だ。
まあ、妹の言う通りかもしれない。
まだ残暑が残る日、ベタリとした体のままだと気持ちもジメジメしちまう。
どうやら、少し寝ていたようだ。
飯を食って、風呂に入ろう。
それでももやもやするなら、寝よう。
男「よいしょっと」
俺はのんびりとベッドから立った。
「気にしなくてもいいぞ」と言ったが、聞いちゃいない。
妹「そんな顔されたら、気にしないなんてできないから」
そんな、大人みたいなことを言う。
なんか、情けない。
妹「お兄ちゃんにはいつも迷惑かけてるんだから、こういう時ぐらいね」
良い妹を持ったなあと、痛感する。
だが、気分は晴れない。
晴れるわけ、ない。
男「……」
ちゃぷんと、小さく波紋が広がる。
男「はぁ……」
汗のジメジメはなくなったのに、気分はスッキリしない。
男「なんなんだ、この気持ちは」
頭をくしゃくしゃと掻いた。びしょ濡れの髪の毛は、そのまま形を保っている。
男「……駄目だ」
呟いて、風呂を上がった。もう、寝よう。
いつになく、ベッドから起き上がれない。
男「あー……」
今日は休もうか、というくらいに体が重い。
男「つっても、そりゃ無理か」
変に学校を休んでちゃまずい。
ただでさえ、文化祭まで時間がありそうでないんだから。
男「ふぅ……」
一度、深呼吸をして、ゆっくりと上半身を起こした。
男「おう、おはよう」
妹「お兄ちゃん、昨日は寝れなかったみたいだね」
男「ああ……」
小さく俺がそういうと、妹はニッコリと笑って、
妹「まあ、お兄ちゃんもそういう気持ち、味わった方がいいと思うよ」
男「どういうことだ?」
妹「なんでもなーい」
すこし無邪気に言葉を伸ばして、妹は食パンを頬張った。
腫れ物に触るような感じで接されると逆に困るというか。
男「いただきます」
妹「今日はお弁当作ってみました」
男「おお」
妹「さらに、今日は自信作なので不安じゃないです」
そりゃ珍しい。
妹「今珍しいと思わなかった?」
男「いいや、まったく」
心が読まれている気がした。
男「ん、今日は何かあるのか?」
妹「なにもないけど、早めに行ったらお得な気がするから」
得……するのか?
妹「じゃあ、いってきます」
男「ああ、行ってらっしゃい」
俺も用意された朝食を食べる。
妹のやつ、俺は味噌汁とかなのに自分は食パンなのか。
なんか、悪い気がするなぁ。
飯を食い終え、片付ける。
男「俺も行くか」
時計をみると、いつもより少し早い。
男「……」
さて、学校に行くか。
振り返っても、誰もいない。
男「当然、か」
何を期待していたんだ、俺は。
期待する必要なんて、ないだろう。
男「いってきます」
小さく、家に向かってひとりごち、学校に向かった。
昨日は聞こえなかったように思える。
それもこれも、話をしていたからかもしれない。
男「……早いな」
平均より、10分くらい早い。
男「こんなに雰囲気、変わるもんなんだな」
まったく違うところに来たみたいだ。
教室には、誰もいなかった。
男「鍵取りに行かねえと」
職員室に行こうと、方向転換したが。
その必要は無くなった。
女「やあ」
男「お、おう」
彼女が鍵を握りしめて、やってきた。
女「どうぞ」
男「すまんな」
女「いつものことだから」
確かに、この前もそうだった。
「鍵取ってくるから、先に行っててくれ」と、ラブレターをいそいそとバッグに入れながら、職員室に行っていた。
男「……」
女「ふふ、入らないのかい?」
男「お前が先に入れよ」
女「そうか、わかった」
男「……」
バッグを机に置いて、少し間があった。
俺もやつも、静かに何も言わない。
切り出そうにも、切り出しづらい。
女「文化祭はメイド喫茶に決まったけれど、やっぱりメイド服を着ることになるのかな」
と、ぽつりと俺に向けて彼女は口を開いた。
男「まあ、これから色々と話を決めていかないといけないから、まだわかんねえよ」
女「そうか。雑用か、料理がいいのだけれど」
男「料理? お前、料理できるのか?」
女「多少は、ね」
女「ふふ、そういう話、しないからね」
いきなり変なネタに突入するせいでな。
男「……」
今なら、聞ける。
女「よいしょっと」
男「ん?」
バッグの中身が、やけに膨らんでいる。
男「なんか、持ってきたのか?」
女「あ、ああ……」
男「……」
女「お弁当をね」
女「うん、ちょっと多めに」
こいつの弁当は、あまり大きくなかったはず。
女の子が食べるような、小さめの弁当箱だ。
女「……まあ、そんなことは置いとこうよ」
置いとけるかよ。
男「なあ、昨日のことなんだけど」
俺は、思い切って、聞いた。
男「返事……どうしたんだ?」
男「……」
女「OKしたよ」
男「……」
女「だからこその、弁当なんだから」
そう言って、大きいサイズの弁当箱と。
いつものやつの弁当箱を出した。
女「どれほど食べるかわからないから、とりあえず量は多めにしたんだ」
男「……」
女「どうしたんだい?」
男「いや、なんでもない」
なんでもない。
わけが、ない。
ニコッと笑った。
その笑顔が、なんだか違う笑顔に見えた。
幸せのような、なんというか。
形容しがたい、何かに。
男「そ、そうか……そうだったのか……」
彼女は、告白されて、OKをした。
つまり、彼女には彼氏がいる。
そういうことになる。
男「えっ……」
女「ボクと君は友達なんだから」
『友達』。
そうだ、『友達』だ。
それ以上でも、それ以下でもない。
俺は、何を考えてたんだ。
バカみたいだ。
女「……」
にんまりと、彼女は笑っていた。
男「……じゃあ、そろそろ席に着くわ」
女「まだ、時間はあるよ、お話でもしようじゃないか」
男「いい。ちょっと、寝る」
女「今日はいつもより早かったからね、了解した」
机に突っ伏して、俺は目を閉じた。
このまま、目を開ければ何もなければいいと。
心から願った。
男「……」
チャイムの音で、目が覚める。
今日も授業がはじまるのだ。
何も変わらず、何も起こらず。
ただ淡々と、時が流れていくのだ。
人の気持ちも知らないで、ゆっくりと、着実に。
そのまま、ずっと流れなければいい。
男「……」
でも、何も変わらないのは嫌だ。
男「くそ」
小さく、声を漏らす。
男「くそ……」
そして、また机に突っ伏した。
静かに頭を上げて、軽い口調で詫びる。
ふいに、やつを見た。
なぜか俺の方を見ていて、笑顔で応えて、手を振ってきた。
俺はすぐに目をそらした。
なんだか、嫌だった。
男「なんでだよ」
変にかまうなよ、俺に。
こっちはどう反応すればいいか、わからないだろう。
男「……」
ノートに落書きをはじめる。
しかし、駄目だ。
何故か、文字ばかりを書いてしまう。
落書きすらできないくらいに、気分が良くなかった。
勉強に身が入るわけがない。
ただでさえ、真面目にうけてないのに。
今の状態で受けられる奴なんて、相当破滅願望のあるやつだ。
破滅……?
なんで俺は、破滅したと思ってるんだ?
そんなこと、ないだろう。
勝手に気落ちして、勝手に複雑な気持ちになっているだけじゃねえか。
男「……馬鹿馬鹿しい」
自分に嫌気がさす。
男「別に」
どんな想いでも、ねえだろ。
ただ話かけてくるから、話をしていただけじゃねえか。
特別、何かを求めているわけでもない。
そうだろう、男。
男「……」
うんざりする。
平然とした顔で、通りすぎていく。
男「……飯、食うか」
ふと、周りを見てしまう。
やつは、教室を出ていく途中だった。
男「……」
関係ないことだ。
これから、離れていく存在なんだから。
俺には、関係ない。
どうして俺は。
あいつを追いかけているんだろう。
男「……」
やつは二つの弁当箱を持って、屋上に向かっているようだった。
どうして俺は、やつについていってるんだ。
バカだ、本当に。
自分を本当の絶望に沈めないと気がすまないみたいだ。
本当に、終わってやがる。
男「……やめるか」
そう口では言っているのに、歩みは止まらない。
止まる気配は、まったくない。
屋上への階段を、やつとだいぶ間をあけて、歩く。
もう、どう思われてもいい。
最悪なやつだと、
最低なやつだと、
絶好と言われても、構わない。
確かめたかった。
どんな結果になろうとも。
手が震える。
何を弱気になってるんだ。
終わらせようぜ、全部。
決心して、俺は勢い良くドアを開けた。
女「やっぱり、来てくれたんだね」
満面の笑みをした、やつがいた。
男「……えっ」
女「ふふっ、驚いた?」
男「ど、どういうことだ?」
女「どうもこうも、こういうことだよ」
弁当を差し出して、彼女はハニカむ。
女「昨日弁当が無かったから、作ってきたんだ」
男「それ、彼氏のじゃ……」
女「あー……やっぱり本気で信じてたんだ」
嘘、だったのか?
女「ふふ、君を驚かせようとしたんだ。あんなにビックリした顔してたから、すこし、面白かったな」
男「な、なんだよそれ……」
俺は、こいつに騙されてたのか。
強ばっていた肩の力が、一気に抜ける。
女「でも、やっぱりやりすぎちゃったかな」
ああ……まったくだ。
女「はは、ごめんごめん」
手を合わせて、頭を下げてきた。
男「……」
女「いくらなんでも、友達にするには少し酷すぎることをした、謝ろう」
男「……友達じゃねえよ」
女「……え?」
彼女は戸惑った声をだす。
女「だって、君はボクの友達だろう?」
男「俺はお前のこと、友達として見てねえ」
俺は、
男「俺は、お前のことが、好きなんだから」
俺は今何を口走った?
自分で、いったいどんな馬鹿げたことを、漏らした?
女「えっ……ええっ……?」
顔を真っ赤にして、驚いている。
男「い、いや、なんでもない、今のは……」
『嘘だ』とは、言えない。
嘘でも冗談でもない。
正真正銘、俺の本音だ。
女「ボクのことが……好き?」
俺は頭を下げて、腹に力をグッと押し込んで、
男「お前が、大好きだ。変な口調も、変に下品なとこも、貧乳も、小さい尻も、短い髪も、全部含めて」
女「……」
自分の気持ちに嘘をつくことは、できそうになかった。
もう、どうなってもいいから。
女「……ふふっ」
彼女は笑って、
女「貧乳とか、ちょっと余計かな」
と、俺の頭を撫でた。
頭を撫でながら、彼女は言った。
男「……それは」
女「うん、ボクは君のこと、君以上に大好きだよ」
男「……!」
俺が頭をあげた瞬間、彼女は俺に抱きついてきた。
女「ほらね、君を離したくないって、思ってるみたい」
女「うわっ……!」
驚いて、ビックリしている。
女「ふふふっ、君もボクを、離したくないのかい?」
男「離したくないに決まってんだろうが」
女「熱い言葉だね……嫌いじゃないよ」
むしろ大好きだよ、と。
涙を流して、笑った。
彼女は自分が涙を流していることに気づくと、とてもあたふたとしはじめた。
女「どうして、嬉しい時に、涙が出ちゃうんだろう」
男「……嬉しい、のか?」
女「うん、当たり前だよ。君と、両想いだったんだから」
ゴシゴシと、涙を拭いて、笑い直す。
女「ごめん、変な顔、しちゃってるかも」
そんなこと、ない。
男「いつもとなんか雰囲気違ってて、可愛いぞ」
女「か、可愛い!?」
ボッと顔を真っ赤にした。
男「彼女になるやつ以外に、逆に使いづらいと思うんだが」
女「そ、そうなのかな……」
顔をうつむかせて、彼女は一つ小さく咳払いをした。
女「……それじゃあ、ご飯、食べる?」
男「ああ」
女「……きっと、美味しいよ」
俺に弁当を渡して、
女「すっごく、気持ちが入っているからね」
女「うん、やましい気持ちと、いやらしい気持ちと、すさまじい気持ちが入ってます」
うわ、食いたくねえ。
女「もしかしたら、体の一部が入ってるかもね」
男「食う気を削ぐなよ……」
女「ふふっ、残さず食べてくれよ?」
男「もちろんだ」
一口食べただけで、こいつの料理は相当うまいことがわかる出来だった。
女「やっぱり、男の子だね、全部食べ切っちゃうなんて」
男「そうか、これくらい普通だぞ」
女「じゃあ、もっといるかい? ボクは少しお腹いっぱいなんだけれど」
というよりは、気持ちがいっぱいになってる、と。
恥ずかしいことを言ってくる。
男「じゃあ、食べてやるよ、貸せ」
女「ううん、はい」
あーん。
男「……美味い」
女「そうか、それは良かった」
……どうしよう。
やべえくらい恥ずかしい。
男「……」
なんか、放心状態だ。
色んなことを体験しすぎたせいか、体が熱い。
女「これからも、作っていいかな?」
男「ああ、いいぞ」
いつもパンとかを買って食ってるからな。
それは凄く嬉しい。
……ん。
男「あっ!!!」
男「……」
妹の弁当、忘れてた。
今日は自信作だって言ってたのに……。
これはやばいな、とりあえず、帰るまでに食うしかない……!
女「相当まずいことに気づいてしまったみたいだけど、ボクは力になれる?」
男「難しいかもな」
はぁ、どうしよう。
教室は何も変わらず、いつも通りだ。
そして、友人達に報告してみた結果、
「お前たち、まだ付き合ってなかったのか」
という言葉が返ってきた。
女「はは、なんだか、恥ずかしいね」
頭を掻きながら、彼女は照れくさそうに言った。
男「なあ、女」
女「なんだい、男」
男「この大量の弁当はいつになったら、終わるんだろうな」
妹の弁当は、女の以上に量があった。
女が作ってくれた弁当と、女が残した弁当を食べた俺には、相当な、莫大な量だった。
男「し、死ぬ……」
女「死んだら、困るよ」
いや、冗談だから、今そんな真剣な顔しないでくれ。
男「また先生にこっぴどく叱られた……」
女「ふふっ、先生に渡す時にゲップを何度もするからね」
男「うるせー……」
でもまあ、食べれたのは正直びっくりした。
吐くこともなく、なんとかなったしな。
そして、二人で夜の道を歩いていると、
女「あ、そういえば」
口を開いたのは女。
女「まだキス、してないね」
確かに、俺も気にしていたけれど。
女「……君に、まかせようかな」
男「……」
俺にまかせる!?
ど、どうしよう。
初めてだから、どうすれば、わからない。
女「あ、でも」
彼女は離れて。
女「お弁当食べたばっかりだから、遠慮するね」
男「な!」
なんだよそれ!
女「ふふふっ」
俺のドキドキを返せ!
男「酷い言いようだな!」
なんか悲しくなってきた!
女「キスは、おあずけにしようよ」
男「ん、あ、ああ」
別に、俺も今すぐしたい、ってわけじゃないしな。
女「だから、さ」
ギュッと手を繋いで。
女「こうして、帰ろう」
男「……ああ」
彼女はニッコリしながら俺をみて、うんうんと頷いた。
月がとっても綺麗な、そんな日だった。
END
男「おう、遅くなった、悪い」
妹「いいよいいよ、それより今日のお弁当はどうだった? 美味しかったでしょ!」
男「……うぷっ」
妹「!?」
男「あ、ああ、美味かった……」
妹「……? そ、それなら良かった。それじゃあ晩御飯食べよ」
男「晩御飯……いらない」
妹「は、はあ!?」
男「俺、食ってきた……」
妹「……もー、なんなのよー!!」
終
面白かった
Entry ⇒ 2012.10.02 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
少女「・・・おなか空いたわ」男「いやお前吸血鬼なんだろ?」
男「いや吸血鬼目の前にして『おなか空いた』なんていわれた日にゃ生きた心地がしないと思うんだけど・・・」
少女「ああ、血を吸われるかも、的な?」
男「まさにそれ」
少女「大丈夫よ・・・あなた不味そうだもの」
男「・・・ええと、喜ぶところ、なのだろうか」
少女「どうかしらね。価値観によると思うわ」
男(価値観・・・?)
少女「なにかしら」
男「吸血鬼、なワケなんだよね」
少女「そうだと何度言えば分かるのかしら。人間はここ数年で言葉すら理解しなくなったの?」
男「いやその、なんというか、確かに吸血鬼っぽくはある、っていうか、その片鱗は見たけどさ」
少女「信じられないのね、吸血鬼が」
男「・・・まあありていに言えば」
少女「人間というのは昔からこう・・・見たものしか信じないというか、見ても信じないというか・・・」
少女「あなたの目は何のためについているの?自分の目すら信じられないなんてどうかしているわ」
男「いやそうはいっても・・・」
少女「ならもう一度、今あなたの目の前で起きたことを説明してあげましょうか?」
男「いや、あの、それは、多分大丈夫・・・だと思います。いやそう思う」
少女「どうかしら。あなたお世辞にも頭のよさそうな人間には見えないけれど」
男「大きなお世話だけど、なんという高飛車な・・・」
少女「へえ、それが命の恩人に対する態度なのね?礼儀のれの字も知らないバカなのかしら」
男「うぐ・・・」
男「あの・・・実はペットに逃げられて・・・」
少女「ペット。よほど人望が無いのね」
男「いや相手鳥だし・・・」
少女「鳥も自由を手にしたということでしょう。無理に引き戻すなんて残酷だとは思わないのかしら」
男「・・・」
少女「さて、と。多少鬱憤も晴れたわ。たまには気まぐれを起こすのも悪くないわね」
男「ええと・・・」
少女「そろそろ、なんだったかしら。ああそう、警察が飛んでくるはずだわ。後の説明は自分で何とかするのね」
男「いや、それはちょっと無理だと思うんだけど・・・」
男「あの・・・実はペットに逃げられて・・・」
少女「ペット。よほど人望が無いのね」
男「いや相手鳥だし・・・」
少女「鳥も自由を手にしたということでしょう。無理に引き戻すなんて残酷だとは思わないのかしら」
男「・・・」
少女「さて、と。多少鬱憤も晴れたわ。たまには気まぐれを起こすのも悪くないわね」
男「ええと・・・」
少女「そろそろ、なんだったかしら。ああそう、警察が飛んでくるはずだわ。後の説明は自分で何とかするのね」
男「いや、それはちょっと無理だと思うんだけど・・・」
少女「無理?ありのまま説明したらどう?吸血鬼がやったことだ、って」
男「それで警察が納得すると思うのかよ・・・」
少女「そう、まったくどこの国の人間も同じね。融通が利かないというかなんというか。それじゃどうするのかしら」
男「そりゃ・・・逃げるしかないんじゃないかな」
少女「それは大変ね。せいぜい頑張ってお逃げなさいな」
男「そうするけど、あの、本当に吸血鬼、なんだよね」
少女「・・・しつこいわね。なんなら、あなたの喉元に噛み付いて証明しましょうか?」
男「勘弁。・・・。一つだけ聞いてもいい?」
少女「・・・」
少女「・・・誰に断って質問しているのかしら。まあいいわ。その質問に答える義務でもあると思って?」
男「・・・」
少女「・・・違うわ。私は吸血鬼だけど、そういう下賎なことはしないし、そもそもここに来たのもつい最近のことよ」
男「・・・そう、かい」
少女「信じるの?片手でトラックを投げ飛ばした、得体の知れない吸血鬼を?」
男「少なくとも、今俺を助けてくれただろ」
少女「・・・まったく、たまに余計なお世話をするとろくな事にならないわね」
・・・ファンファンファン・・・
男「あ、そうだ逃げないと・・・。お前も早く逃げ・・・、・・・消えた」
男「・・・という話、信じるか?」
友「キミを撥ねかけた、どう見積もっても一トンはあるトラックを、金髪の少女が投げ飛ばした、って話をか?」
男「・・・我ながらなんというこっけいな話」
友「そうだな、普段の私なら間違いなく笑い飛ばすだろうが。しかしどうもそういうわけにもいかないだろう」
男「今朝の話か?」
友「正確にいえばそれこそ昨晩の話だ。また血抜き遺体が見つかったそうだ」
男「今朝ニュースになってたよ。これで八人目か?」
友「驚くね。そしてここにきてキミのいう吸血鬼だ。偶然だと思うか?」
友「可能性としてはある。しかしトラックの件が本当なら、幻覚でもない限りそれはないな」
男「じゃあ本物の吸血鬼?」
友「まさか。そんなものは御伽噺だ。・・・しかしこれでもトラックの件は説明できない」
男「・・・」
友「そんな危険な奴がこの街に入り込んでいるのは不気味だ。彼女が犯人だった、という可能性もある」
男「まさか・・・なあ」
男「・・・それは同感」
女「あれれ、二人とも何の話?真面目な顔しちゃってー」
男「まあその、来るべき大学受験について、少し」
女「ダウト一億」
友「最近物騒だ、という話だ。この辺一帯の学校も集団下校だし、早く営業をやめる店も出てきているくらいだからな」
女「あー、それは思うねー。怖い話だよ、今朝ので八人目でしょ?」
男「ああ。だから気をつけないと、って話だ」
男(・・・嘘ではないよな)
男(集団下校とはいえ、最終的にはこうやって一人になるわけだろ?あんまり意味無いよな・・・)
男(・・・)
男「・・・あれ、鍵どこやったかな・・・」
少女「鍵なら鞄の中よ。さっきからチャリチャリとやかましいわ」
男「ああ、そうだったサンキュ・・・のわ!?」
少女「人を化け物みたいに見るなんていい度胸じゃない。・・・まあ当たってはいるけれど」
男「お前、昨日の・・・」
少女「昨日の吸血鬼よ。思い出したかしら?」
男「それで、今度は一体何のようだ?」
少女「随分怯えているのね。心拍数が跳ね上がったわよ。初心な女の子じゃないんだから、少しは冷静になったらどう?」
男「なんのようだよ・・・?」(回りに人影ねえ・・・、襲われでもしたら・・・)
少女「これでもあなたを見つけるのには苦労したの。別に取って食いはしないわよ」
男「え?」
少女「ちょっと聞きたいことがある・・・というか、何がどうなっているのか、説明してほしいわけ」
男「ええと・・・?」
少女「鈍いわね。この町で『吸血殺人事件』とかいう事件、起きているでしょう?」
少女「・・・」
男「ええと、起きてる、けど」
少女「それについての話よ。この新聞とかいうやつは漢字が難しくていまいちよく分からないの。だから説明なさい」
男「あの、それってどういう・・・」
少女「一体何が起きたのかを全部説明しなさい、と言ってるの」
男「・・・なんで俺が」
少女「昨日の貸し、忘れていないでしょうね」
男「ぐ・・・」
少女「なんですって?」
男「だから、お前吸血鬼なんだろ?だったら、その、八人の血を吸ったとか・・・」
少女「・・・妥当な推測だわ。無礼は特別に許すけれど、反論するとしたら、私は昨日あなたを助けるためにあなたと一緒にいたわね」
男「・・・そうだな」
少女「今朝の死体の発見場所はあそこからは随分遠いわよね。私には不可能だし、そんな下賎なこともしないわ」
男「いや、でも吸血鬼なんだからそれくらいは・・・」
少女「はぁ・・・。いいかしら、吸血鬼は招き入れられないとその家や敷地には入れないの。私も例外じゃない。そいつが見つかった場所を調べればすぐにわかるわ」
男(・・・話がまったく読めん)
男「招き入れられないとは入れない・・・?」
少女「だからもし私が犯人だとしたら、被害者本人に招き入れられる必要がある。そんな時間があったかしら」
男「でもお前は瞬間移動したじゃないか、昨日俺の目の前で」
少女「見た目のとおりバカなのね。消えたんじゃなくてすぐそばの路地に入ったのよ。あなたが勝手に見失っただけ」
男「・・・」
少女「それにもし私が犯人なら、昨日あなたを餌にしていたでしょうね、間違いなく」
男「・・・」
少女「質問は終わりかしら?なら今度は私が質問するわよ」
少女「そう。まず最初の被害者はどこでいつ見つかったのか、教えてもらうわ」
男「・・・確か一ヵ月半くらい前だ、夏休みが終わる頃に最初の事件が起きた。地元の男子中学生がその、体液をなくした状態で見つかった」
少女「中学生・・・」
男「その次は確か・・・爺さん。ちょっと待って、今スマホで検索する」
男「・・・あった。次はまた中学生、婆さん、OL、女子高生、サラリーマン、だそうだ」
少女「全員が血を抜かれた状態で?」
男「ああ。そうだ、ここに書いてある」
少女「・・・」
男「あの・・・」
少女「何かしら」
男「いや、あまりに気難しい顔してたから」
男「なあ、確認するけど、本当に吸血鬼なのか?」
少女「・・・くどいわ」
男「いや、考えてみるとさ。俺お前の怪力しか見たことないし、それだけで吸血鬼です、っていわれても・・・」
少女「・・・ハァ。人のことを怪力女扱いとは、怖いもの知らずもいい加減にするのね」
少女「まあいいわ、そこまでいうなら、少なくとも私が化け物だということを教えてあげるわ」
男「え」ゾワッ
少女「―――!!」
男「!!」
男(なん、だこれ・・・、体が動かな・・・)
男「」
少女「その気になれば肺の動きも止められるのだけれど、その必要はなさそうね」
男「」
少女「さて、と。私はもう行くけれど、何かの縁だから言っておくわ。多分この町では今とても不味いことが起きている。死にたくないなら、逃げた方がいいわ」
男「」
少女「じゃ、もう会うこともないでしょうけど。もうすぐ金縛りは解けると思うから、安心するといいわ」
男「」
男「・・・プハッ!?あ、動ける・・・!」
男(くそ、なんだってんだよ昨日から・・・。頭がどうにかなっちまったのか・・・?)
男「・・・吸血鬼、か・・・」
男(まずい事がおきている・・・。この殺人事件が?本物の吸血鬼が出てくるよりも?)
男「・・・わけわかんねー・・・」
通話 男→友
友『金縛りについては科学的に色々研究されていたが、しかしこれは面白いな。聞く限りでは催眠術の一種にも思える』
男「どっちでもいいけどよ、あいつやっぱり本物だと思うか?」
友『もしそうだとしても、今一番問題なのは、彼女が犯人なのかどうか、という点だろう。そのことについては、』
男「違うって言ってたな、招き入れられないとどうとか」
友『興味深いな。確かに吸血鬼伝説の中にはそんな逸話もあるが』
男「そうなのか?」
友『有名どころでは、流水をわたれないだとか、杭で心臓を打ち抜けば死ぬとか』
男「ああ、それは聞いた事ある」
男「どうした?」
友『いや、杭で心臓を打ちつけられたら死ぬ、というのはどうなのだろうな。そんなことされたら吸血鬼じゃなくとも死ぬと思うのだが』
男「ああ・・・なるほど確かに」
友『ああ、すまんな話が逸れた。よし、では彼女が仮に本物の吸血鬼だとしよう。なぜこの町に現れたのだろうな』
男「・・・分からん。吸血鬼の知り合いは他にいないし」
友『同感だ。推測するならば、例えばこの町が吸血鬼たちの狩場になった、とかどうだろうか。マニアが喜びそうな設定だと思うが』
男「勘弁してほしい」
友『そうだな。しかし実際、この事件は不謹慎ながら、マニアにはウケているようだ』
男「そうなのか?」
男「・・・それもそうだ」
友『今片手間にインターネットで検索してみているが、英語、フランス語、ロシア語、多くのサイトがヒットする。やはりあちらの人たちの関心は高い』
男「吸血鬼だもんな、日本で」
友『ふむ、嘘かホントかは分からないが、アルバニアからはヴァンパイアハンターが日本に向けて多数出動しているそうだ。ヴァチカンからもだ』
男「ヴァチカン?それってアンデルs、」
友『あそこはキリスト教カトリックの総本山だからな、宣教師や調査隊の一つや二つは派遣するだろうさ』
男「あ、ああ。そうだよな。あれは漫画の話だからな・・・」
男「それは言えるな。少なくとも吸血鬼、らしいやつも入り込んでることだし」
友『そういうことだ。ではまた明日な。私はもう少し吸血鬼について調べてみるよ。興味が沸いてきた』
男「・・・ほどほどにな」
(通話終了)
男「・・・ハァ。寝よう・・・なんかすごく疲れた」
女「おっはよー!」
男「おっと・・・。毎度驚かされるな、お前の元気いっぱいな声には」
女「元気が取り柄ですからねー」
男「それは間違いない」
女「ん?何だか疲れた顔してる?」
男「え?ああ、最近ちょっと、な・・・。お疲れ気味というか、お憑かれ気味というか」
女「?」
男「あ、気にするな。寝不足なだけだ」
女「あー、ここのところぶっ続けだったから、今日はお休み。放課後はあるんだけどね」
男「この物騒なときに・・・」
女「でも大会直前だからね、大丈夫、部員で出来るだけまとまって帰ってるし。先生も途中まで来てくれるしね」
男「・・・ま、大会なら仕方ないな。勝てるといいな、試合」
女「うん、頑張るよ勝利のために!」
男(薙刀ってどういう大会なんだか、俺にはよく分からないけどな・・・)
男「・・・飯食わなくていいのか?」
友「ああ・・・。少し熱が入りすぎて今日は徹夜だ・・・。少しでも寝たい」
男「ずっと調べてたのか?」
友「気がついたら朝で・・・」
男「・・・言わんこっちゃ無い」
友「・・・姉にも呆れられたよ。姉の彼氏にも」
男「ああ、隣に住んでるんだっけ?」
友「姉の幼馴染だ・・・ってそんなことはどうでもいいんだ、一つ気になることがある」
男「?」
男「吸血鬼についての?」
友「うん。吸血鬼に血を吸われた者がどうなるか書いてあるだろう?」
男「吸血鬼になるんじゃないのか?」
女「グールというのを聞いた事は無いか」
男「ああ、それは知ってる。漫画にも描いてある、確かゾンビみたいなのに変わっちまうんだよな」
友「それによると、非童貞非処女はグールになると、そんなに気恥ずかしそうにするな、真面目な話だ」
男「あ、ああすまん」
友「気になるのはそこだよ、被害者は吸血鬼はおろかグールにすらならないで見つかっているだろう?」
男「・・・そうだな」
男「・・・けど、後者は吸血鬼が存在している、て仮定の話だろ?」
友「キミのいう少女が吸血鬼ならば、現実味を帯びてくるがな・・・」
男「どうだろうな・・・。だって吸血鬼だぞ。突拍子無いだろ?」
友「まあ、な。あくまで可能性の話だ。・・・いかん限界だ・・・」
男「まったく・・・」
女「ただいまー・・・て、あれ、寝ちゃったの?」
男「たった今な。次の授業、理科室だよな」
女「うん。移動まで寝かせてあげようよ」
女「ただでさえ、次の授業は眠くなるのに。居眠りしちゃうんじゃない?」
男「あり得る・・・。今日はレーザーと水を使った光の屈折実験、だったか?」
女「ううん、それは前々回やったから、今日はええと、食塩とレーザーだね」
男「どんだけレーザー好き何だか・・・。確かにあの光は暗闇にははえるけど」
友「う・・・やはり少しでも寝ると違うな・・・」
男「なんだもう起きたのか」
友「寝つきと寝起きはいいからね・・・。次は理科室、だったか?」
男「ああ。あ、これ返すぞ」
女「?何のプリント?」
友「ああ、今度演劇部がやる演劇についての資料だ。しかしやはりこの案は没だな、他の案を提供しないと」
男「んあ・・・?なんだよ、インク切れか?」
男「参ったな、このレポート、提出日明日なのに・・・。なんでわざわざボールペンで清書しなきゃなんねえんだか・・・」
男「・・・仕方ない、コンビにまで買いに出るしかないか・・・」
男(・・・すぐそこだし、まさかな・・・)
移動中 自宅→コンビニ
男(さすがに人通りもまばらだな・・・。まあ当然のことか)
?「そこのキミ」
男「え!?」
警察官「こんな時間に何をしてるのかね?今夜中に一人で出歩くのは危ないだろう!」
男「あ、ああすいません。でもちょっとコンビニに用事があって・・・」
男「で、でも」
警察官「でもじゃない!」
?「では、私が一緒ならよろしいですかな?」
男「!?」
警察官「なんだねキミは」
老紳士「なに、そこの少年とはちょっとした知り合いでしてね。コンビニに私もちょうど行こうとしていたところですゆえ」
警察官「身分証を出しなさい、身分証を」
老紳士「これでいいですかな?」ス・・・
警察官「なんだねこの石は―――」
男「・・・え?」
警察官「」
老紳士「さ、参りましょう。今のうちです」
老紳士「そのまま自然に歩いてください。見つかったらまた面倒です。今この町で何が起きているか、知っておいででしょう」
男「だ、だからこそ信用できないんじゃないか」
老紳士「さっきのをご覧になられましたね?やろうと思えばあなた様をあの警官のごとく身動きを取れなくしてもいいのですが、そうしない理由を酌んでくだされば・・・」
男(こいつ・・・?)
老紳士「・・・さてここまで来れば撒いたでしょう」ススス・・・
男(・・・今右手の指が奇妙な動きをしたような・・・)
老紳士「さて、改めて申し上げますが、私はあなた様に手荒な真似はいたしません。しかし質問に答えていただきたい」
男「質問・・・?」
老紳士「なに、コンビニに着くまでには済みます。あなた様は―――」
老紳士「吸血鬼、という存在を信じられますか?」
男「!」
老紳士「ああいえ、もちろん私は吸血鬼ではございません。ただの質問ですので」
老紳士「ふふ、老人の勘でございます。あなたは吸血鬼ではないが、吸血鬼の臭いがかすかにする」
男(こいつ・・・何者なんだ・・・?)
老紳士「ゆえに、ひょっとしたら吸血鬼と接触したのではないかと考えました。思い違いでしたでしょうか」
男(思い違いでそんな質問するやついないだろ・・・!待てよ、まさか・・・)
友『ヴァンパイアハンターが日本に向けて・・・』
男(・・・間違いない、こいつはそうだ。そういうタイプの人間だ・・・)
老紳士「沈黙が答えですかな?」
男(くそ・・・こういう時、あいつなら・・・!)
男「―――思い違いかもしれないのに、そんな確信じみた質問をするんですか?」
男「いえ。でも、吸血鬼ですか。確かにこの町では今そんな名前の殺人が起きてます」
老紳士「ええ。いまや世界中が知っております」
男「その犯人が吸血鬼だ、と?」
老紳士「さあ・・・。その辺は分かりませぬな」
男「もしそうだとして、なら、俺の周りにその吸血鬼がいる、と?」
老紳士「最近接触した、そのような気がいたしましたので」
男「・・・思い違いです。もし犯人が吸血鬼でこの辺にいるのなら、俺がすれ違った誰かがそうだっただけでしょう」
老紳士「そうかも知れません。ですから、その確認を今しているところでございます」
男「吸血鬼なんてのは、西洋の御伽噺だ。ここは日本だ、まだ雪女や天狗の方が真実味があります」
老紳士「・・・ふ、度胸のあられる若者です。しかしその可能性も否めないわけでしたな。いかんせん、私の急ぎすぎでした」
男「え?」
老紳士「歳は取りたくありませんな。頭の回転すら遅くなる。しかしいささか時間がありませぬゆえ、失礼をいたしました」
老紳士「化け物、というのは今もどこかで生きているのでしょう。我々が多くを隅に追いやってしまいましたが、恐らくはまだまだ健在だ」
男「何の話ですか?」
老紳士「爺の独り言でございます。さて、目指すコンビにはあれですな。さすれば、私はこれで失礼をいたしますゆえ・・・」
男「失礼って、あんた結局何者―――」
男「・・・またいない。最近こんなのばっかりだ」
男「・・・あれ、何しにここに来たんだっけ。・・・ああ、そうだボールペンだボールペン・・・」
男(・・・まずい事、時間が無い。吸血鬼、ハンター。ああもう。漫画じゃないんだぞまったく・・・)
男「・・・ダメだ、まったく集中できん。これも全部あの吸血鬼とハンターのせいだ・・・」
男「あー・・・。もうこの辺適当でいいかな・・・。ん・・・?」
男 携帯(着信) 友
男「こんな時間に・・・。もしもし、ああ、ちょうど良かった。一つ聞きたいんだけど、明日提出のレポートの、」
友『バカ、レポートどころの騒ぎじゃない!!』
男「・・・?どうした、そんな切羽詰ったような声出して」
友『女が死んだ!!殺された、例の殺人事件に巻き込まれた!!』
男「見つからなかったか?」
友「そんなことどうでもいい。彼女が死んだ。殺されたんだ。自宅待機が知ったことか」
男「・・・夕べは寝れなかった」
友「私もだ!彼女が九人目だなんて・・・!!」
男「ッ・・・」
友「・・・もう泣かないぞ私は。昨日一晩泣いたんだ、それよりも絶対に犯人をとっ捕まえてみせる」
男「犯人・・・」
友「吸血鬼なら心臓をくり貫いてそこにニンニクをぶち込んで太陽光で炙ってやる。もし人間なら―――」
男「もういいやめろ。・・・あいつが殺されたのは間違いないんだな」
友「・・・ああ。警察からの電話でたたき起こされた」
友「・・・彼女と最後に連絡を取ったのは私だった。だからだそうだ。午後から事情聴取の予定だ」
男「連絡取ったのか?」
友「メールの履歴がある。見ろ、最後の送信が17:48だ。その三分前に部活が終わって、私にメールをしてきた」
男「なんだっていうメール?」
友「レポートについて。こんなくだらないやり取りが最後になるなんて私は・・・ッ」
男「・・・確かあいつは部活メンバーで集団下校してるって言ってたが」
友「あんなものはザルだ。家が近くなったら、必然的に一人になるだろう!」
男「ああ、それはわかってる。見つかった場所は、どこだか聞いたか・・・?」
友「・・・彼女の自宅から少し外れた、小さな路地だそうだ」
男(路地・・・)
友「・・・そいつに吸血鬼は狩らせない。私がやる」
男「やめろ!しっかりしろよ、女が死んだのは別にお前のせいじゃないだろ!」
友「・・・」
男「・・・吸血鬼が犯人なのだとしたら、俺たちにはどうすることも出来ないだろ」
友「・・・そうかもしれない。いや、そもそも吸血鬼が存在するのなら、という前提で、だが」
男「・・・」
友「・・・」
男(・・・他に手はない。杭はなかったけど、十字架はあった。杭の代わりにナイフも持った。あの吸血鬼を探すしかない・・・)
男(でもどこを探せばいいんだ・・・?見当もつかねえ・・・)
男(闇雲に動いて見つかるのか・・・?)
男「あ・・・」
警察官「・・・」ウロウロ
男(昨日の警官、またここにいやがる・・・。市民的にはありがたいけど、今は邪魔でしかねえっての、クソ真面目)
男(仕方ない、こっちには行けないから、他を探すしかねえか・・・)
男(・・・そうだ・・・)
男「ここが遺体発見現場、か。やっぱりまだ入れそうにないよな。警官が二人もたってるし。・・・ん?」
警官A「」
警官B「」
男(・・・なんかすげえボーっとしてないか?寝不足、ってわけじゃなさそうだけど・・・。それに、あんだけ騒いでたマスコミが一切いないのはおかしくねえか?)
男「・・・もしかして・・・」
遺体発見現場
男「ッ・・・。分かっていたけど、気分は最悪だな・・・。ここであいつが死んだなんて・・・」
男「・・・いるんだろ吸血鬼。出て来いよ!!」
少女「・・・やかましいわね。誰かと思ったらいつぞやのバカ犬じゃない」
男「・・・お前、ここで何してんだ」
少女「現場検証、といって信じるかしら。もっとも、これ以上は何も分かりそうに無いけれど。それで、こんなところにノコノコ現れて、何がしたいのかしら?」
男「・・・ここで殺されたのは、俺の親友だ」
少女「!」
男「お前がやったんじゃないのか」
少女「・・・」
男「答えろよ」
少女「・・・何を言っても、信じないのではなくて?それでもあえて答えるわ。私はやっていない」
男「・・・」
少女「・・・」
男「じゃあ、誰がやったんだ?」
少女「それは、私にも分からない。でも少なくとも。人間の仕業じゃあないわね」
男「・・・吸血鬼がやったとでも?」
少女「おそらく」
男「お前以外の吸血鬼が、この町にいるって?お前以外の吸血鬼が、あいつを殺したって?」
少女「ええ、そうよ」
少女「私としては、それで信じてもらうしかないわね。証明も証拠もないけれど。・・・いいや、違うわ。ひとつだけ、証拠がある」
男「証拠?」
少女「童貞と処女は吸血鬼になる。それ以外は生ける屍になる。これも吸血鬼のルール」
男「知ってる」
少女「ぶっきらぼうになる前に聞きなさい。これ以外にもう一つ、ルールがある」
男「なんだよ」
少女「・・・」
少女「・・・犯されながら血を吸い尽くされたものは、そのまま、死ぬ」
少女「・・・」
男「・・・おい、待てよ」
少女「・・・」
男「それじゃ、それじゃああいつは・・・」
少女「・・・女である私にはそれが出来ない。男なら出来たでしょうね。獲物が男でも、女でもね」
男「」ガクリ
少女「最初の吸血鬼はドラキュラいう男の吸血鬼だった。ゆえに、吸血鬼の中では男のほうが有利なこともある。・・・これがその一つ」
男「じゃあ、今までの被害者は全員、全員、あいつ含めて、・・・」
少女「それを信じるか否かはあなたに任せるわ。けど私は今のあなたのような人間に嘘をつくほど堕ちていない」
男「じゃあ・・・じゃあ吸血鬼は男・・・。男の吸血鬼・・・」
少女「そういうことになるわ」
男「いくら、化け物とはいえ、そんなことを、平気で―――」
少女「するわ、平気で。それが化け物なのよ。おそらくそれが鬼の本質。理性を失った吸血鬼の成れの果て」
男「・・・どうすればいい」
少女「え?」
男「どうすれば止められる?どうすればあいつの敵を討てる!?」
少女「・・・無理よ。いくら暴走しているとはいえ、相手は吸血鬼。人間の敵う相手じゃないわ」
男「関係ない。そんなのもう関係ない。俺は、絶対に、そいつを斃す。絶対に」
少女「・・・この先に、彼女が倒れていた現場がある。・・・それを直視できる?」
男「!!」
少女「できるのなら、あなたは鬼になるわ。私たちと同じ力を持つ化け物に。出来る?」
少女「・・・」
男「・・・!!!!!」
男(血まみr・・・あの線は、人型の線は・・・いや、あいつはそんなに小さかったか・・・!?)
男「ぐ・・・うぅぅぅ・・・!!」
男「うあああああああああああああああああ!!!!!」
少女「・・・見れなかったわね」
男「ぐ、ゲホゲホ・・・。うぁ・・・っ・・・」
少女「血を吸われればあの位に体はしぼむわ。あれだけの所業を、するのが鬼よ」
男「ぐぅう・・・」
少女「・・・でも、それでいいわ。人は鬼になる必要は無いわ。人は人として不可能と戦わないとならない。鬼を倒せるのは、人間の魂だけなのだから」
男「聞いていいか」
少女「何かしら」
男「もし俺が、あの光景を直視できていたとしたら、どうしてた」
少女「あなたを殺して、去っていたわ。これ以上厄介ごとを増やしたくは無いもの」
男「・・・」
少女「でもあなたは人間のままであり続けた。それだけで十分だわ」
男「・・・さ、上がってくれ。散らかっているけど」
少女「いいのかしら。私は招かれないと家には入れないけれど、一度入れるようになったらもう死ぬまで追い出せないわよ」
男「いいさ。その時は、お前を殺して去るだけだ、これ以上厄介ごとが増えるのはごめんだからな」
男「死んだ。今は、裏に住んでる叔母ちゃんが面倒見てくれてる」
少女「・・・そう」
男「それで、犯人の目星は?」
少女「まったく不明。そもそもこんな島国に突然理性を失った吸血鬼が現れるなんて妙な話だわ」
男「どこかから渡ってきたんじゃないのか」
少女「それでも妙よ。普段私たちは、ヨーロッパの城とか大きな屋敷に悠々と暮らすのに、なんでこんな島国にわざわざ行くのか」
男「何か理由がある?」
少女「それも理性を失っていることに関係あるかもしれないわね」
男「・・・」
少女「いずれにせよ、これ以上の狼藉は許さない。まったく不愉快よ」
男「ああ・・・」
少女「・・・ひどい顔だわ。ねえ、ちょっとこっち向いてくれるかしら」
少女「いいから。私の目を見なさい」
男「・・・」
少女「―――!」
男「!!」ゾクッ
男「また金縛りか!!・・・あれ、動ける。・・・それに・・・」
少女「ちょっと心の中を整理したわ。少なくともトラウマや、ええと、心的外傷何とかにはならないと思うわ。感謝しなさい」
男「・・・元はといえば、お前が見ろってけし掛けたんじゃないのかよ」
少女「仕方ないでしょう、そうするしかなかったのだし」
男「それで、今後の計画は」
男「あ!?何の計画も無いのか!?」
少女「あのね、計画なんか立てられるのなら私はとっくに不逞の輩を締め上げているわ。なまじ暴走してる分、次の計画が読めないのよ」
男「そんな、じゃあ手詰まりじゃねえか」
少女「・・・今夜一晩で考えをまとめるわ。とりあえず、あなたは腹ごしらえでもなさいな。少なくとも胃が受け付けないことはないはずよ」
男「あんな光景見た後にか・・・?」
少女「いずれにせよ考えをまとめる必要があるわ。その間暇でしょう?」
男「・・・ああ、わかったよ」
少女「ああ、少しは手伝うわよ。何か作業していたほうが雑念が消えてやりやすいし」
男「意外とマメな奴だな・・・」
少女「ふん」
男「じゃあ俺は野菜を切るから、お前はご飯炊いてくれ。・・・出来るか?」
少女「なめられたものね・・・」
少女「いい加減年下扱いはやめてくれないかしら。こうみえてあなたの何百倍も生きてるのだけれど!」
男「違うそれは予約ボタンだ、それじゃなくてその下の、」
少女「ああもう、面倒だわ!!」
男「だからここを―――イテッ!!」
少女「・・・え?」
男「いたた、指先切っちゃったよ・・・。まったく、気が散るんだよな・・・」
少女「」
男「絆創膏どこだったかな・・・。ん?おいどうかしたか?ただの切り傷だぞ?」
少女「」ドクン・・・
男「・・・?あれ、お前って目赤かったっけ・・・?」
男「え!?お、おいどうした!?何かの攻撃か!?」
少女「近、寄るな・・・!!離れて・・・!!」
男「お、おい?」
少女「うかつだった・・・。人間、少し、席を外すけど、気にしないで・・・」ヨロ・・・
男「おま、どこ行くんだそんな具合悪そうで!!」
少女「忘、れ物を取りに、ね・・・。いいから、そのまま、離れて、うぐっ!?」
男「おい!!」
少女「ッ・・・!!」ダダダッ・・・
男「あ、・・・行っちまった・・・。もう姿見えないし・・・。でも、なんだったんだいきなり・・・」
男「・・・ダメか。まだ事情聴取中かな、出ない」
男「あいつも戻ってこないし、一人でいると余計なことばっかり考えるし・・・」
男「・・・あの爺さん、やっぱりハンターだったのか・・・?だとすれば、あいつやっぱり襲われてたんじゃ・・・」
男「・・・あり得る。あの警察官をどうやったか手玉にとってたし。漫画的に言えば、精神系の技か・・・?」
ガタン
男「ッ!!」ビクッ!!
男「・・・」
男(気のせいじゃない・・・。今玄関から音がした)
男「・・・。誰だ?」
男「!お前・・・」ガチャリ・・・
少女「・・・そうやってすぐに疑わないで開けないことね・・・。私がもし敵の変装だったら、あなた死んでるわよ」
男「あ、そうか・・・じゃなくて!!お前今までどこ行ってたんだ!!襲われたのか!?」
少女「・・・違うわ。言ったでしょう、忘れ物を取りに、行っただけだと・・・」
男「大丈夫か?その割にはなんかこう、やられてないか・・・?」
少女「・・・平気よ。余、計な詮索は無用だわ・・・。それより、浴室を借りれるかしら・・・」
男「え?ああ、いいけどお前、なんか体中濡れてないか?」
少女「ああ・・・。通り、雨に打たれ、たのよ・・・。だから風呂に入りたいの。もういいかしら?」
男「着替えは?」
少女「そこにまとめて持ってきたから、平気よ・・・」
男(棺桶じゃないのコレ・・・)
男「え!?このでかい棺桶を!?」
少女「言う、とおりにしなさい下僕・・・」
男(俺いつから下僕なんだ・・・?)
少女「ああ・・・。おなか空いたわ・・・」
男「え?」
少女「・・・」テクテク・・・
男(・・・)
男(あ、やっぱりあいつの目は青だよな・・・。さっきのは見間違いだよな・・・?)
男「命がけの風呂覗きなんかするかよ、昭和じゃあるまいし・・・。棺桶、ここにおいておくからな」
少女「ええ。中見てないでしょうね」
男「命がけの下着泥も遠慮する」
少女「賢明ね」
男「さて、と・・・。あ、」
携帯電話 着信あり 友
男「やっと取り調べ終わったか。どれ・・・」
友『・・・もしもし』
男「俺だ。終わったか」
友『ひとまずは、な。おかげですこし落ち着くだけの時間があった』
男「災難だったな」
友『とはいえ、さすがに退屈だった。そっちに何か動きは』
男「ああ、例の吸血鬼少女と合流した」
友『正気か?彼女は容疑者筆頭だぞ!?』
男「ああ、・・・理由は話せないんだけど、彼女は犯人じゃない。協力し合えることになった」
友『二人の吸血鬼、か』
男「どう思う?」
友『キミが彼女を信頼するというのなら、その男の吸血鬼が暗躍しているのだろうな。しかしよく男だと断定したな』
男「ああ、まあ、色々調べて、な」(いえるわけあるか・・・。乱暴されながら殺されたなんて・・・)
友『とにかく、例のハンターのこともある。キミは用心してくれ』
男「お前はどうする?」
友『・・・すまないが、私はその吸血鬼をそこまで信用できない。会った事もないしな。私は別な手段で事件を調べなおしてみる』
男「・・・わかった。お互い連絡は取り合えるようにしよう」
友『了解だ。定期的に連絡を入れる』
男「ん、ああ。それで、考えはまとまったか?」
少女「少し。まだちゃんとした計画には至っていないわ」
男「具合、少しは良くなったか」
少女「・・・そうね。だいぶマシよ。人間に心配されるとは、私もヤキがまわったのかしら」
男「・・・ところで、その高飛車な日本語は誰に習ったんだ?」
少女「あら、独学よ。時間は死ぬほどあったもの。他にも世界中の言葉を」
男「羨ましいね。人間の寿命は短いからな」
少女「そうかしら。長生きすればいいっていうのではないでしょう。私はそう思うわ」
男「そりゃ、死ぬほど長い時間生きてたらそうも思うだろうさ」
少女「・・・死ぬほど長い時間だわ、本当に」
少女「ええ。この家の周りを少し調べてみるわ。安全性とか、犯人の痕跡とか」
男「こんな夜中に?」
少女「お忘れかもしれないけれど、私吸血鬼なのよ。知ってた?」
男「・・・」
少女「すぐ戻るわ。それまで、私以外の誰も入れないことね。私の偽者も、いるかもしれないわ」
男「どうやって見分ければいいんだ?」
少女「それくらい自分で考えなさいな。私とあなたしか知りえないことを聞けばいいじゃない」
男「そんなのあったっけ、って、行っちまったよ・・・。最近話し聞いてもらえないな俺・・・」
男「ふわぁ・・・。いかん眠い・・・。いつまで待てばいいんだ・・・?」
男「・・・しかしこの棺桶邪魔だな。まさか本当に棺桶に寝てるとは思わなかった」
男「ん?」
かんおけ の ふた が すこし ずれて なかみ が みえそうだ !
ニア開ける
開けない
男「俺が開けたんじゃない。開いてたんだ。なら見えちゃっても仕方ないよな」
男「蓋、意外と重いな・・・ブッ」
男「無造作に下着投げ入れてんじゃねえよ・・・。水入りの小瓶に、なんだこれ、洋書?読めないな」
男「同じ服が数着・・・。枕?あとは・・・」
男「古い写真だ・・・。真ん中に写ってるのは・・・ぼやけて見難いけど、多分あの吸血鬼だ」
男「横に若い男と、猫・・・。いつの写真だろう」
?「・・・帰ったぞ」
男「!!」ビクッ!!
?「私はそう思うけれど」
男「・・・俺との初めての出会いはどんなだった」
?「愚かにも前方不注意でふらふらしていた駄犬をわざわざ助けるために、他ならないこの私がトラックを片手で放り投げた」
男「運転手はどうなった」
?「トラックが空中一回転して着地したとき、ぽかんとした顔で私を見てから、糸が切れたように気絶」
男「・・・風呂に入る前に穿いていたパンツの色は」
?「ブッ!?」
男「何色だ」
?「ぐ・・・。く、黒よ」
男「遅かったじゃないか心配したぞ」ガチャリ
少女「人間、少し話があるのだけれど」
男「・・・」
少女「油断も隙もないわねこのエロ犬。調教が必要かしら・・・」
男「不、可抗力」
少女「ええ、ちょっと開いてたのはそうかもしれないけれど。開け放したのは万死に値するわ」
男「・・・」
少女「・・・他には何か見たかしら」
男「・・・いいえ、何も・・・」
少女「・・・まあいいわ。とりあえずこの辺に痕跡はなし。明日以降本格的に調べるしかないわね」
男「zzz・・・」
少女「・・・」
少女(やはり妙だわ。なぜこんな島国で、この数百年起きなかった吸血鬼の暴走が起きるのかしら・・・)
少女(それも、こんなに吸血鬼とは関係の無い場所で・・・)
少女(・・・何か、とても大事なことを間違えているような気がするのだけれど)
少女(それにしても、もう時間が無いわ・・・)
男「すると、やっぱり手がかりなしか」
友『被害者の共通点があるようでない。中学生二人は随分前に失踪したって記事があったが』
男「失踪?殺される前にか」
友『みたいだな。その後で遺体となって発見、らしい』
男「・・・」
友『分かったのはその二人くらいだ。二人は元々同じクラスだったらしいな』
男「そうか、わかった」
男「今のところ何も。昼間はあいつが動けないから、何も出来ないし」
友『下手に動くと警察に捕まるし、か』
男「とりあえずまたコンビニに行こうとは思う。妙なのに会わなきゃいいけどさ」
友『ああ、気をつけろよ』
通話終了
男「さて、じゃあコンビニ行くか・・・」
男(さてこれで食料は確保できた)
男(・・・そういえばあいつは何か食わないのか?昨日も結局何も食わなかったみたいだし)
男(あれ、そういえば卿はあの警察官いないな。運がいいのかもな)
男「・・・そういえば、あいつの葬儀ってどうなってんだろ・・・。まさか遺体を見せるわけにも行かないだろうし・・・」
男「・・・くそ、早くなんとかしないと・・・」
少女「寝不足だわ」
男「昼間中寝てただろ」
少女「吸血鬼ですからね」
男「それで、作戦は」
少女「少々危険な賭けだけれど。この辺に確か空き地があったわね、大きな奴」
男「ああ、三年前まででかい病院があったんだ。もう移転したけど、そこがどうした?」
少女「そこを中心に、私の臭いをばら撒くわ。いいえ、そういう臭いじゃなくて吸血鬼的な」
男「あ、ああ」
少女「いくら理性崩壊とはいえ、同じ吸血鬼の臭いは分かるでしょう。縄張りを主張しに来たら、そこで叩く」
男「それでうまくいくのか」
少女「神にでも聞きなさいな。私は嫌われているだろうけれど」
友『なるほどな。理にはかなっている』
男「そう思うか?」
友『その吸血鬼の臭いとやらがどんなものか、私たちには理解できないが。きっと同属ならば・・・』
男「そっちは?」
友『ああ、少し気になることがあってね。今はそれを調べている。はっきりと分かったら伝えるよ』
男「分かった。すこしでも手がかりがほしいからな・・・」
友『うむ・・・。それは私も同じだ。吸血鬼は帰ってきたか?』
男「いやまだだ。多分そろそろ帰ってくると思う」
友『分かった。幸運を祈る』
男「なあ、変な意味じゃなくて聞くんだけど、吸血鬼の臭いってどんななんだ」
少女「そうね・・・。血と、あとは人間と大差ないわ。独特な香りというかなんというか」
男「それを付着させてきたのか」
少女「犬じゃないのよ。まあ撒いてきた、の方が正しいかしらね」
男「ふうん・・・。吸血鬼の臭い、ねえ」
男(あれ?最近どこかで聞いた様な気がするな・・・)
男(臭い・・・。吸血鬼の臭い・・・?)
男「あれ、待てよ。もしそうなら・・・」
少女「?何事?」
男「やばい!!今すぐ逃げ、!!」
男「!!」
少女「お前は・・・!!」
老紳士「吸血鬼の臭いを撒くというのは賛同いたしかねます。私のようなものをも呼び寄せてしまう」
男「あんた・・・」
老紳士「いったでしょう。吸血鬼の臭いがすると。迂闊ですぞお若いの」
男「く・・・」
少女「・・・私を止めにきたようね」
老紳士「いかにも。これ以上は見ておれませぬゆえ」
男「知り合い!?」
少女「古い、ね。離れていないと死ぬわよ」
老紳士「老いたとはいえ、今のあなたには十分でしょう」
少女「どうかしら。なめられたものだわ」
少女「愚問ね。お互い分かっていることでしょう?」
老紳士「・・・なれば、私は本気であなたにかかっていくしかありませぬな」
少女「元よりそうしないと死ぬわよ」
老紳士「・・・では、本気で行くぞ」
少女「上等・・・!!」
老紳士「!!」ヒュン!!
シュパン!!
男「えっ!?な、何で今、プ、プレハブが真っ二つに!?」
少女「相変わらず非現実な糸ね・・・!!」
老紳士「外したか・・・。やはり昔のようにはいかないか。なら、こちらはどうだろう?」
少女「ぐッ!?」
老紳士「一発掠めただけとは、こちらも鈍ったようですな」
男(こ、これがヤムチャ視点・・・。今何かがものすごい速度で吸血鬼に飛んでいったのは分かるけど・・・!!)
少女「相変わらずの切れ味ね・・・。そうやって何人を切断したのかしら。そのトランプのカードで」
老紳士「覚える必要の無いことは覚えない主義でしてね。少なくとも、ポーカーでは負けたことが無いですな」
少女「相手を切り刻むポーカーなんて」
老紳士「やはり、それでもあなたの方が弱っている。そんな状態で何が出来るというのです?」
少女「それでも、私はコレを放っておくことはできないわ」
老紳士「約束だから、ですか」
少女「誓いだから、よ」
少女「こんな体だからこそ」
老紳士「・・・最早言葉では通じないか」
少女「かもしれない。それでも私は・・・」
老紳士「・・・ッ。次は外しませんよ」
少女「望むところよ」
老紳士「・・・!!」
少女「・・・」
男「・・・?」
老紳士「・・・やはり・・・やはり私にあなたを討つなど・・・」
少女「道を正すのが、役目なのではなかったのかしら」
老紳士「他ならぬあなたが選んだ道です。それを、誰が過ちだといえましょうか」
老紳士「五十年前の約束です。それをあなたは完遂しようとしている。・・・私などは到底及びますまい」
少女「かつての切り裂きジャックの二つ名が泣くのではなくて?」
老紳士「名などに意味はないと教えてくれた猫がおりましたゆえ・・・」
男「ええと・・・?」
少女「もういいわ。これ以上私たちが戦うことは無い」
男「ごめん、はなしがさっぱり」
少女「この男は、私の城の執事で、元ヴァンパイアハンター。切断が大好きだったわ」
老紳士「お恥ずかしいところを・・・。しかしいても立ってもおられませずに、こうして参陣したしだいでございます」
男「ええと、じゃあ・・・そもそも敵じゃないの?」
少女「敵というか、昔からの目付け役というのかしら・・・。全盛の頃は私と互角くらいの力があったわ」
老紳士「持ち上げすぎです、お嬢様」
男「臭いに反応しなかった、てこと?」
老紳士「お恥ずかしながら、私がとお嬢様の戦闘に感ずいたのやも知れませぬ。責任は全てこの私に・・・」
少女「バトラー、時間が無いわ。次の手を考えないと」
老紳士「は。しかし、なぜこのような島国にかような吸血鬼が現れたのでしょうか」
女「・・・それは私も考えていたわ。考えれば考えるほど辻褄が合わない」
男「吸血鬼が日本で自然発生する、て可能性は」
老紳士「ゼロでしょうな、ほとんど」
女「だからこそおかしいと思うのよ。何なのかしら、この違和感は」
老紳士「しかしながら、敵の戦力は巨大。こちらは老いた私目と弱ったお嬢様、それに人間のみとなれば、正面衝突は避けねばなりませぬ」
男「弱った・・・?」
老紳士「失礼、失言でした。とかく、早く敵を捕捉しないことには始まりませぬ」
女「同感だわ」
男「そうか、やっぱり。でも、誰に・・・?」
老紳士「失礼ながら、実は一つ気になることが。あなた様から、別の吸血鬼の臭いがいたします」
男「俺が、え?」
少女「確か?」
老紳士「確かです。かすかにですが、最近接触した何者かが犯人の可能性があります」
男「とはいえ、誰だ・・・?」
少女「昼間歩き回らない、あるいは暗い室内にいる人物が怪しいわ。心あたりは?」
男「そんなこと言ったって・・・」
老紳士「ノン。それならば私があの時気づいております。もしそうならとうに切断いたしました」
少女「他ね。電話の相手は?」
男「いや、あいつは女だ」
少女「これも却下ね。あとは?」
男「あと、暗いところとか夜とか・・・?」
老紳士「そうでございますね、あるいは直射日光の当たらないようなターバンですとか」
男「・・・」
男「・・・、まてよ?」
友「・・・やはりそうか。違和感の正体はコレだ。考えてみればこれしかない」
友「なぜ吸血鬼がこの日本に侵入して来たのか。多分みんな根本的な勘違いをしてる。そうじゃないんだ」
友「侵入したのではないとしたら。元々そこにいたのだとしたら。そこにいたモノがそれと化したのだとすれば・・・」
男「・・・分かったかもしれない。誰が吸血鬼か」
生徒A「今日全校集会だろ?」
生徒B「ああ。多分校長から説明だよな・・・」
男「・・・」テクテク・・・
男「・・・失礼します」トントン・・・
理科教師「・・・」
男「ああ、先生に用があって来ました。お訊ねしてもいいですか、理科の実験のことで」
理科教師「・・・いい、だろう」
男「ありがとうございます。・・・実験中でしたか?カーテンを開けたいのですが」
理科教師「・・・ダメだ」
男「そうですか、いい天気なのに。先生、もう一つ世間話を。薙刀について聞きたいのですが」
理科教師「なぎなた・・・」
男「ええ。どうにも分からないんですよ、薙刀の大会ってどうやって勝敗がつくのか。先生はご存知ですよね」
男「まさか知らないはず無いでしょう。女率いる薙刀部の顧問でしたものね、先生は」
理科教師「・・・」
男「完全下校の時間には空は暗くなる。だから引率のフリをして、獲物を探した。昼休みのたび、薙刀部の連中をここに集めて」
理科教師「・・・」
男「大方うまそうな子を狙ったんだろう。かつ処女で、お前のお眼鏡にかなう子だ。なあおい」
理科教師「・・・」
男「―――生きて帰れると思うなよ、腐れ外道」
バケモノ「ニヤァ・・・」
バケモノ「飲ンダ、飲ンダナア・・・。旨イ味、シタ・・・。アノ女ハシカモ、・・・イイ女ダッタ」
シュパパパッ!!
老紳士「それだけ聞ければ十分だろう。切断して太陽にさらしてくれようぞ・・・!!」
老紳士「昼間にたかがカーテンだけでこんなところにいるとは、間抜け以外の何者でもない。さあ、溶けて消えるがいい」
バケモノ「ヌアアアアアアアアア!!!!」ジュウジュウ・・・!!
男(これで・・・)
老紳士「!?違う!!」
男「!?」
???「ヨクモ・・・アノ外見ハ気ニ入ッテイタノニ・・・!!」シュウウウウウ・・・・!!
男「化け物の下から!?」
老紳士「これは・・・!?」
鬼「貴様ラハ、肉ヲ直接食ッテヤル・・・!!」
老紳士「いかん、プレイングカード、『トランプ』ッ!!」
・・・老紳士『あらかじめ説明しておきますと、五十二枚のトランプのカードを特殊に加工したものでございます。これらが一挙に襲い掛かれば、相手は必ず切断されます』
少女『さすがに私でも避けられないでしょうね、全枚飛ばす『切り札』、トランプって技は』
老紳士『光栄でございます』・・・
鬼「ナンダ、コンナモノ・・・」
男「ま、まったく効いてない・・・!!」
老紳士「いけません!!下がってください!!」
鬼「ウオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
男「こ、鼓膜が・・・!!」
老紳士「切れない・・・、なんという怨念の塊か・・・!!」
男「こいつ・・・!!」
鬼「腹ガ減ッタ・・・。オ前、食ウ・・・!!」ガシッ!!
男「うおわっ!?」
老紳士「ダメだ、物理的な攻撃がまったく効かん!!」
男「く、食われ・・・!!」
友「私の目の前で、そんなことが出来ると思うのか?」
老紳士「!!」
男「お、前・・・ぐ・・・!?」メキメキ・・・
鬼「オ前、旨ソウナ・・・」
友「やはりそうか。根本的な勘違いだ、吸血鬼がこの町に来たんじゃない。元々この国にいたものが、生き血を啜る鬼に変化したんだ・・・」
老紳士「いかん!!」
男「逃げ、ろ・・・!!」
友「いいや。ならば、こういうのは、どうだ!?」パシィ!!
鬼「・・・ウギャアアアアアアア!!!!?」
男「掴みに行った手が、溶けた・・・!?」
老紳士「これは・・・!?」
友「簡単なことだ、この国の化け物ならこの国なりのやり方で斃せばいい。・・・例えば、こういう符でな」
老紳士「神道か!!」
鬼「ウオオオオオオオオオオオオン!!」ダダダッ!!
老紳士「おのれ逃がすか・・・!!」
友「いいや、大丈夫だ。やつがどこへ逃げるか、見当は付いている」
男「本当だ・・・、枯れ果ててる」
少女「山の守り手が消えた?いや、違うわ、守り手が守るのを放棄したのかしら?」
友「半年ほど前、最初の被害者である中学生ともう一人は、実はとある問題に絡んでいた」
男「問題?」
友「いじめに関する自殺問題だ。一時期盛んになっただろう?あれだよ。殺害されたサラリーマンは、そのいじめられていた子の実の父親だった」
少女「では・・・?」
友「奴の本来の目的は恐らく彼らの殺害だ。彼がまだ、元の意思をもっていた頃の」
友「彼がまだ、山の守り手―――天狗だった頃の、な・・・」
友「・・・擁護するわけではないが、恐らく一線は越えていないのだろう」
男「え?」
少女「そうね、まず肉を食わなかった。血は飲んだけれど、そこは守り抜いた・・・」
男「そういう問題かよ!!たくさん人が殺されてんだぞ!!」
友「・・・そしてもう一つ。女は、女は辱めは受けていなかった・・・」
少女「・・・やつは吸血鬼ではないから。私の臭いにも反応しなかった」
老紳士「すべての辻褄が、合いましたな」
男「・・・」
少女「・・・あとは私の仕事だわ。鬼には鬼同士、譲れないものがある。人間のあなたたちが見せてくれた魂の強さは、私が戦うのには十分な理由ね」
老紳士「お嬢様・・・」
少女「大丈夫よ、まだ、ね」
友「・・・行こう。この上に、古い祠がある。恐らく奴はそこだ」
少女「・・・悲しい生き物ね、私もお前も」
鬼「・・・」
少女「他に道はなかったかもしれないけれど、それでも私はあなたの行き方を容認は出来ないわ」
鬼「人間ナド・・・生キル価値ハ無イ・・・。未来アル子供ガ死ンデモ、タダ空シク、何モ変ワラナイ日常ガ続ク・・・ソコニ意味ナドアルノカ?」
少女「そこから先に進めないのが化け物。先に進めるのが人間よ。だからこそ、私たちは去らねばならないの。先に進むのに、私たちは障害なのよ」
鬼「オ前ハ・・・」
少女「・・・覚悟はいいかしら?」
鬼「私ハ・・・。・・・ああ、少年、私は・・・」
シュッ ドサッ!!
男「最期は、呆気なかったな」
少女「・・・そんなものよ、化け物の最期なんて」
男「・・・これでお終い、か」
少女「いいえ。まだやることが残っているわ」
男「え?」
少女「人間。私と戦いなさい。この町を賭けて、私と、一対一で」
男「・・・」
少女「・・・」
男「・・・え」
少女「あなたが負けたら、この町は私が支配する。血も吸うわ。でもあなたが勝ったら、私は今後二度とこの国に足を踏み入れないわ」
男「ちょ、ちょっと待てよ、何で俺がお前と!?」
少女「私は化け物。あなたは人間。・・・これ以上の理由はいらないわ。明日のこの時間。空き地で待つわ。来なくてもいいけど、不戦敗とみなす」
男「そんな、勝手すぎるぞ!?」
男「お前、なんで、」
少女「私は化け物よ。この町がほしいの、・・・血がほしい!!あの子やあなたからもね!!」
男「な、」
少女「いいのよ、戦わないで逃げても。他の住人を全員差し出すのなら、見逃してあげるわ」
男「―――お前本気で・・・」
少女「見せしめに一人殺そうかしら?それで理解する?あの子なんてどうかしら?」
男「・・・」
男「分かった・・・。もう行けよ、・・・この化け物が」
男「・・・ああ」
少女「・・・じゃ」
男「・・・ああ」
男(・・・)
男(所詮は化け物・・・相容れない存在・・・)
男(でも・・・それでも・・・)
少女「・・・逃げなかったのね」
男「ああ」
少女「相手は吸血鬼。対するあなたはタダの学生。勝ち目が万に一つもあると思うのかしら」
男「・・・」
少女「武器はナイフ?それとも十字架?」
男「・・・」
少女「何でもいいわね。今じゃおたがい敵同士なのだから。・・・始めましょうか」
男「お前、死ぬ気じゃないのか?」
少女「・・・」
男「考えてみたけど、それしか思いつかない。不自然だ、あまりにも」
男「お前、なんでそんな頑ななんだ?死なないといけない理由があるのか?」
少女「答える必要があるのかしら?」
男「なんでだ?妖怪や吸血鬼だって、人間と共存できるんじゃないのかよ」
少女「・・・知ったような口を・・・!!私は化け物だ!!人間を食い物にする哀れな下衆だ!!それがなぜ人間と共存できる!!」
男「方法はいくらでもあるはずだろ!!今まで考えなかっただけで、」
少女「違う!!そんなのは楽観だ、そんなのは夢だ幻想だ!!私はもうこんな体、こんな人生・・・!!」
男「そうやって何もかも放り出せば満足するのかよ!!」
少女「違うわ、私は、こうやって死ぬしか道がないの!!これ以外に゛っ!!?」ドクン!!
男「・・・おい、どうした?」
少女「う、ぐあぁぁ・・・!!早、く私を、殺して・・・!!」
男「何だと!?」
少女「抑えられているうちに・・・!!この衝動を、抑え。られているう、ちに・・・!!」!!
男「あんた、これ、どうなってるんだ!?前にもこんなことあったけど!?」
老紳士「限界なのです最早・・・。これ以上本能を押さえつけられない・・・。本来吸血鬼は我々よりも生存本能が強いのです」
男「本能!?」
老紳士「生き残ろうとする本能が、お嬢様の意思とは関係なく、吸血行為を強要する・・・。もう時間切れなのです」
男「!?」
少女「う、ぁああああっ!!」
老紳士「お嬢様は五十年前の誓い以来、血を一滴も召していない・・・。だからこうなる前にこの決闘で・・・」
男「そんな・・・」
老紳士「これまではこうなったとき、薄めた聖水を自らにかけることで押さえ込んできましたが、もはやそうはいきますまい」
男「じゃ、じゃあどうしたら・・・」
老紳士「・・・このままでは、お嬢様はただの血に飢えた吸血鬼と化します。そうなれば、老いた私やあなた様には止めようがなくなる」
男「なんで、少しなら俺の血を、」
老紳士「少しでも吸われれば吸血鬼かグールとなります。お嬢様はそれを良しとしなかった。それゆえです!」
男「じゃあもう方法がない・・・?」
少女「ああああ!!」
老紳士「今しかありません!!私ではなく、彼女はあなた様にそれを頼んだ!為すのは今です!!」
男「!!」
少女「っ、ぐぁああう!?」
老紳士「少しの間なら、私の糸で彼女の動きを止められます!その間に、どうか!!」
男「そ、そんなこと・・・」
女「うぐ、うああ」
老紳士「押さえました、どうか、今のうちに・・・!!」
男「・・・ッ!!」
女「早、く・・・これ以上は、もうこれ以上は・・・!!」
男「・・・」
女「気が、狂いそう・・・。化、け物には、相応しい、最、期、だわ・・・」
男「お前・・・」
女「さあ、やる、の・・・!!怖気づ、いた、のかしら・・・!?」
老紳士「むぅ!!いかん、糸が断ち切られる!!これ以上は!!」
男「・・・一生」
男「一生恨むぞ」
女「構わないわ・・・私、こう見えて、化け物な、のよ・・・。知ってた?」
男「ああ・・・」
男「今、痛いほどに・・・ッ!!」
―――
男「ハァ・・・ハァ・・・」
少女「辛いことを、させたかしら?」
男「・・・ああ」
少女「そうよね・・・。ああ・・・。ごめんなさい」
男「・・・」
老紳士「お嬢様・・・」
少女「いいのよ・・・。私はもう、死ぬほど生きたのだから・・・」
男「お前、最初から死ぬ気だったのか」
少女「・・・ええ。誰かを、吸って、ガボッ・・・しまう前にね・・・」
老紳士「ついに・・・成し遂げられましたな。あの日の誓いを」
少女「死ぬまで、血を吸わない・・・。ふふ・・・。言うは易し、半世紀、か・・・」
男「・・・」
少女「ああ、やっと・・・やっと空腹が・・・みち、た・・・」
少女「・・・ありが、・・・」
男「ッ・・・!!」
老紳士「・・・感謝致します。これで、お嬢様の悪夢は終わりました」
男「・・・」
男「こんなのって、な・・・」
老紳士「・・・」
数週間後―――
友「すっかり魂が抜けていないか」
男「・・・ああ」
友「処置なしだな。・・・まあ、仕方ない部分もあるのだろうが。すみませんが、こいつ頼みます」
老紳士「あなた様は?」
友「私は、その、今回のことと似たようなことが起きないように、何とかしようと思う。漠然としてるけど・・・」
老紳士「左様ですか・・・。幸運をお祈りいたします」
友「ああ。・・・では」
男「・・・」
男「・・・」
老紳士「最初の吸血鬼、最強の男。彼は一人の人間に斃されました」
男「・・・」
老紳士「ですが、彼は死んでなお吸血鬼は死に絶えなかった。私は思うのですが、ドラキュラは死を越える何かを持っていたのではないでしょうか」
男「死を超える・・・」
老紳士「そうでなくては、吸血鬼が繁栄したことの説明がつきませぬ」
男「・・・それが?」
老紳士「何、老人の戯言でございます。しかし・・・」
老紳士「死を超える者のことを、我々は化け物と、そう呼ぶのでございましょう・・・」
男「・・・」
男「殺した、か・・・」
男「そういう意味じゃ、俺は鬼や化け物と何も変わらない・・・。助けることが殺すことだ、それで納得が出来るか?」
男「俺には、そう割り切れない・・・」
男「死を超越した者、化け物・・・。超えるって何だ?死んだら終わりじゃないのか」
男「死んで終わりになるのが人間・・・。そうじゃないのが化け物・・・。俺は、俺は・・・」
?「・・・いつまで、そうやってふ抜けているつもりなのかしら。地獄の底からでも見ちゃいられないわね」
男「―――え?」
「化け物は、死すら乗り越えるからこそ、そう呼ばれる―――」
保守には足りないくらいの感謝を
最後何が起きたのかは、解釈しだいです
良かったよ
Entry ⇒ 2012.09.27 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
雪女「いつまで暑いんだよ溶けるだろ!」男「冬まで冬眠してろよ」
男「だって溶けるんだろ」
雪女「エアコンの設定温度を十度くらいにすれば平気だぜ」
男「寒いわ。もう冷蔵庫の中にでも入ってればいいじゃんか」
雪女「狭いじゃん魚とか野菜とかと一緒じゃん」
男「ていうか何で夏に雪女がここにいるんだよ…」
雪女「てへぺろ」
雪女「そりゃ雪女も溶けるよねぇ」
男「うわ床が水だらけに!?お前マジで溶けてるぞ!!」
雪女「それ汗だよ」
男「きたねっ!!滝のような汗って言うかこれ失禁したみたいなレベルだぞ!?」
雪女「ひとに向かって失禁とか失礼だとは思わんのかね」
男「妖怪だろ」
雪女「溶解だけに」
男「やかましいわ」
男「普通ならもうそうなってないとおかしいんだけど。今年は連日三十度越えだな」
雪女「あたしら向けに溶解警報が出てるもんなぁ」
男「…どこから」
雪女「妖怪の気象庁的なの。天気予報とかもしてる」
男「意外と進んでるんだな…」
雪女「予報って言うか予言かも」
男「的中率百パーセントか?」
雪女「雷神の気まぐれ以外は当てます」
男「妖怪すげえな…」
雪女「山からフライングして出てみたらこれだよ」
男「フライングしすぎだろ。溶けるんだろ」
雪女「いやもう溶けてるんだけどさ。このままいくと冬までにロリ化しちゃうよね」
男「そういうシステムなのか?」
雪女「需要はあると思うんだけど」
男「どうだろ」
雪女「あー…暑いなぁ」
男「いや知らんけど。俺溶けないし」
雪女「体積が小さくなるから」
男「で幼女化すると?」
雪女「あたしのないすばでえがダメになるのは悲しいね」
男「…和服はスレンダーな方が似合うというが」
雪女「あー胸はもう縮んだわーここに来る前に縮んでるわー」
男「ああそう…」
男「サキュバスとな」
雪女「あの種族エロいからなー。そういう身体になるんだろうねー」
男「そりゃ是非お近づきになりたいねぇ」
雪女「メルアドなら知ってるけど」
男「メルアド!?妖怪ってメールすんのか!?」
雪女「メルアドどころか、ツイッターもしますね」
男「妖怪のイメージが崩壊したわ…」
雪女「絶賛妖怪溶解中」
男「とけろ」
雪女「そ、そうやって罵倒されるのも嫌いじゃないわ…」
男「お前変態だったのかよ…」
雪女「ネタにマジレスかよー。空気読めよー」
男「…あ、そういえば冷凍庫にアイスあったな…」
雪女「あざーす」
男「…なぜお前が食う気なんだ」
雪女「お前よー、女子校に憧れちゃうタイプ?そんなわけないじゃんかよー」
男「妖怪って…」
雪女「そりゃ涼しくすることも出来ますよー。なんなら氷漬けにして凍死させてやれんこともないでー」
男「凍死は嫌だ。このクソ暑い中で完全に変死だろ」
雪女「でも透視はさせてあげないぞ☆」
男「お前への闘志は湧き上がるなー…」
男「エロくない男がいるかボケェ」
雪女「うわー、断言しやがったよ…」
男「うるせえな、そういうもんだろ」
雪女「…」
男「…」
雪女「…でも、嫌いじゃない…///」
男「変態はお前だこのなんちゃって妖怪が」
男「ハァ…。もういいや、いくつか入ってるから取ってこいよ」
雪女「やだよ暑いもん。動きたくないわ」
男「てめえ…なけなしのアイスくれるんだから少しは働け」
雪女「だって他人の家の冷蔵庫開けるなんてはしたないじゃん」
男「…」
雪女「正論だろー。論破だろー」
男「…不法侵入はいいのか」
雪女「なにはともあれ」
男「贅沢抜かせこの妖怪が」
雪女「…妖怪に妖怪って、それ人間に人間っていうくらい意味分からなくね」
男「…それもそうだな」
(風鈴)「チリーン・・・」
雪女「…妖怪に、用かい?」
男「しばくぞてめえ」
雪女「あんまり変わらなくね?相変わらず残暑なうだぜ」
男「そりゃお前みたいなのには暑いのかもしれんけどな…。俺は少しはマシになった」
雪女「人間て単純だなぁ」
男「うるせえな。お前が思ってる以上に人間は繊細だ」
雪女「…ダメだ暑い。溶ける」
男「山に帰ればいいじゃんかよ」
雪女「…帰ったら、寂しくなるじゃん…」
男「!?」
雪女「…ほら単純じゃんかー」
男「オーケー、てめえ表に出ろ」
雪女「エアコン希望」
男「却下だ。…ああ、やっぱり無いよりはいいな」
雪女「なんでエアコンつけないんだよー。訴えるぞ」
男「つーか妖怪がエアコンエアコンいうのすげえ違和感あるんだけど…」
雪女「せっかくあるのに使わないで何が文明の利器か!」
男「誰だてめえ…」
男「すげえステレオタイプな…」
雪女「…よ~う~か~い~だ~」
男(お、変化つけてきた)
雪女「え~あ~こ~ん~を~つ~け~な~い~と~」
男「…次にお前は「溶解する」という」
雪女「よ~う~か~い~す~る~…ハッ!?」
男「お前本当は妖怪じゃないだろ!!」
男「またか…」
雪女「え~あ~こ~ん~を~つ~け~な~い~と~」
男「今度は何だよ」
雪女「呪うッ!!」クワッ
男「こええよ!!洒落になってねえから!!その顔でこっち見んな!!」
雪女「さあエアコンを。あたしが幼女かしてぺろぺろされる前に!!」
男「何言ってんだてめえ…」
雪女「ハッ!?まさかそういうのが好きなのか!?目の前で幼女化した知り合いの女の子がぺろぺろされるの見て興奮するのかッ!!」
男「すごい想像力だ…」
雪女「見られてる・・・!!見られてるのにあたしぺろぺろされちゃってる…!!…的な」
男「お前バカだろ」
雪女「もうだめだ…。これ汗に見えるだろうけど、マジで溶けてます、はい」
男「とはいえ、何か九月中旬にエアコンつけるのは負けのような気がして…」
雪女「あー…あるよね、そういう変なプライドみたいなの…」
男「まさか賛同されるとは…」
雪女「三月入ってまで大雪を降らせるのはあたしもプライドが許さないわ…」
男「春が来るのってそういう理屈なのか…」
雪女「あー…あたしの身体が縮んでいく…」
男「冷蔵庫行けよ…」
雪女「見た目は子ども・・頭脳は妖怪…その名は、名探偵コナ
男「言わせねえからな…」
男「そういう喉に優しくない感じの名前はよせやい」
雪女「あかん…ちょっと氷もらうよ…」
男「ああ、暑い時なめると少し体温下がるよな…」
雪女「少しでも体温下げないと、冬になる頃には手のひらピ●チュウ並になってしまう…」
男「微妙に古いものを…」
男「歌いきる気力ももう無いか…」
雪女「ふたあああありのおおおおおぉお心を包んで空にかァァァァエスカラ…」
男「なぜこのクソ暑い中無理して謳い切ったんだ」
雪女「ノリって…大事だよね…」
男「命がけのノリか…。若手芸人かお前は」
雪女「ワイルドだろゥ?」
男「若くないぞ彼」
男「おいおい…。マジで子どもみたいになっちまうぞ」
雪女「山から下りたときはもっと、大人びた感じだったのに…」
男「大人びた、ねえ…」
雪女「…信じてないな」
男「いや、別にそういうわけじゃ」
雪女「ええと、あ、あった。ほら証拠写真。数日前に撮ったプリ」
男「妖怪がプリクラ撮ってんじゃねえよ…」
雪女「あたしらが見えない人には、何も写ってないように見えるから大丈夫…」
男「たまにある無人のプリクラってそういうことなのか…。どれどれ…」
雪女「それあたしだから…。隣にいるのは妖孤のいなりちゃんね」
男「いやこれどう見てもお前じゃないから…。いくらプリクラといえど、これは別人だろ…」
雪女「あたしだっての…。これでもだいぶ縮んだんだってば」
男「まーなんでもイイか…。ほら返すよ…」
雪女「あ、こいつ信じてねえな」
雪女「まだ二十五度はあるな…」
男「そろそろ晩飯作らないとだ…」
雪女「カキ氷とアイスと液体窒素なんかあると嬉しいかな」
男「最後のに至っては最早食い物ですらねえ」
雪女「でもいい加減何とかしないと、溶けて死んでしまいます」
男「山に帰ればいいと思うよ。手遅れになる前に」
雪女「それは…諸般の事情によりできません」
男「はぁ…?」
雪女「なにさー」
男「お前マジで妖怪?」
雪女「え?今更根本的なところ?」
男「だって妖怪だろ?あり得なくね?」
雪女「失礼な…。妖怪は存在するんだぞ…」
男「平安時代じゃないんだからよ…」
雪女「あの頃は、まぁ妖怪全盛期だしねえ…」
男「今平成じゃん?」
雪女「まあねぇ」
男「これお前が溶けてなかったらただの電波話なんだけどなー」
雪女「ああ、妖怪って点は信じるんだ」
男「まあね…。それは分かるわ。何かこう、本能的な部分で」
雪女「え、厨二病?」
男「溶かすぞこら」
雪女「だ、抱きしめられたら、溶けちゃうからね!!」
男「ドライヤーだな」
雪女「愛が無い!」
雪女「ああ、あの獣人なら今はなんだっけ、あのでかい山」
男「富士山?」
雪女「外国の」
男「エベレスト?」
雪女「ああそれ。そことか他の雪山にこっそり住んでるはず」
男「そうなのか…」
雪女「ああ…どんどん幼女になっていく…。ハッ!?まさか幼女になったあたしを襲うのが目的!?」
男「バーカバーカ」
雪女「…で、でも、別に嫌なわけじゃ、その…」
男「この変態妖怪が…」
男「分かりにくい例えだな…。あー、面どくせえけど買い物行かないとだ…」
雪女「こ、この炎天下の中外に出るなんて自殺行為だ」
男「極端な…」
雪女「…液体窒素て売ってる?」
男「大学か科学館に忍び込めばあるんじゃないか?」
雪女「ぶー…」
男「で、お前いつまでここにいる気だよ。溶けたら死んじまうんだろ」
雪女「せ、SEGAが新ハードを出すまでは…」
男「一生ここにいる気か!?」
男「はぁ、汗だくだよ…疲れた、っと…」
(風鈴)「チリーン・・・」
男(…さすがにどこか行ったか。まったくなんだったんだろうな、さっきの…)
男「ま、夢でも見てたのかもな。暑さで朦朧として」
男「…多めに買ったから、しばらくアイスは買わなくていいな。さてシャワーでも浴びるか」
「・・・し、これで・・・」
男「・・・この声は…」
雪女「あ、張り付いてる…しかしそれに敗北するあたしではない!!これにつかれば元の身体に戻れるはず!!」
男(風呂場から聞こえるんだが…。あいつ湯なんか浴びたら死んじまうよな…)
雪女「よしいざ尋常に…!!」
男「おい待て早まるな!!」
男「あ」
風鈴「チリーン・・・」
雪女「…ここは悲鳴の一つでも上げたほうがいいのだろうか」
男「…テンプレなら」
雪女「しかしあたしも常識はある…。鍵をかけなかったことについてはあたしが悪い」
男「はい…」
雪女「したがって不問にしましょう。平和的に」
男「ハイ」
雪女「出来れば早いところ出てくれると助かるかなー、と」
男「男らしい!!実に男らしいけど前は隠してせめて隠してっ!!」
男「なんじゃないかと一瞬…」
雪女『どんだけだよ…。もう少しマシな死に方がいいわ。獣の槍に刺されるとか』
男「お前なんでそういうのには詳しいんだ」
雪女『まあ暇だからねー。冬以外は劇的に暇』
男「なるほどね…。で、お前風呂に入ってるわけ?」
雪女『まあそんなところ?お湯じゃないけど』
男「水か」
雪女『甘いね。さっきちょっと遠出して、液体窒素を拝借してきた』
男「ブバッ!!」
雪女『ふいー、お帰りあたしのないすばでえ。…あ』
男「」
雪女『あっという間に蒸発しちゃったわ。あれ、なんかバスタブ割れてるなあ』
男「…そりゃあねえ…」
雪女「いや正直すまんかった」
男「修理費どうしよう…」
雪女「ああ、これくらいならあたしの妖力でなんとかなるよ」
男「マジで?」
雪女「今のあたしは、久しぶりに本調子バリバリだぜ」
男「助かった」
雪女「で、どうよ、あたしのないすばでえは」
男(…あのプリクラ、詐欺じゃなかったのか…)
雪女「大丈夫、このくらいなら…」
男「さらに、床にもひび割れがある。それからガスの給湯システムもダメだ」
雪女「え?」
男「ああ、シャワーもダメか。管が割れたな。壁もボロボロじゃねえか…」
雪女「あれ、そんなにひどいことになってる?」
男「…レベル的には、新しくリフォームした方がいいレベルだな」
雪女「あらら…。よ、妖力でなんとか!!…なるかなぁ…」
男「するんだよなんとか」
雪女「…」
雪娘「な、なんとかなったね…」
男「ああ、これで元通りだな…。て、お前なんか無理してないか?」
雪娘「いやぁ、これくらいなら平気ですよ平気。もう妖怪なめないでいただきたいな!」
男(明らかにさっきよりも小さくなってる)
雪娘「はぁ、なんかすごく疲れたなぁ…」
男「身を削ったな文字通り…」
雪娘「え?」
男「鏡見てみろよ」
男「そ、そんなにショックか?」
雪娘「さっきより悪化してるし…」
男「まぁそれはいえてる。さっきまで女子高生→大人だったのに、今はどう見ても中学生だわ」
雪娘「妖力が足りないのか…」
男「壊しすぎなんだろ。方法が無茶だ」
雪娘「はぁ…」
男「…あ、そういえば。いいものがある」
雪娘「え?」
雪娘「…」
男「…いや、いらないならこのまま水に入れて捨てるけど」
雪娘「へえ」ニヤニヤ
男「な、なんだよ」
雪娘「しっかりその辺まで考えてくれてるとは、意外と紳士なんだなーと」
男「ば、そんなんじゃねえっての!」
雪娘「へへへ、これで風呂の一件はチャラでいいよ」
男「あ、あれだってわざと見たわけじゃ…」
雪娘「ええと、これ食べればいいかな」
男「ど、どうなんだろうな…。見たことも聞いたことも無いけど…」
男「ドライアイスをそれだけ食べればねえ…」
雪女「でもこれも応急処置にしかならないか…」
男「相変わらず暑いからなあ」
雪女「うーん。真面目に考えないとねえ」
男「溶けると」
雪女「うん。日が暮れたから少しは楽だけど」
男「…あの、大変言いにくいんですがね」
雪女「ん?」
男「今夜は九月なのに熱帯夜だそうで…。相当暑いとさっきニュースが」
雪女「」
男「それは俺もつくづく思うけどさあ…」
雪女「あ…、言われてみれば確かに暑い…。寝苦しいとか言うレベルじゃないぞ…」
男「エアコン入れるしかないかねえ…」
雪女「それで負けた気がしないならそれでいけど…」
男「そうも言ってられんだろ。朝起きて水たまりが出来てたら俺が困る」
雪女「寂しい的な意味で?」
男「後片付け的な意味で」
雪女「…」
雪女「へいへい。…て、妖怪をパシるなよ」
男「気にするな。ええと、リモコンの電池生きてるよな?ポチッとな」
エアコン「・・・ヴーン・・・」
男「うわー、何この『季節じゃねえんだから働かせんなよ』的なエアコンの音」
雪女「そして風鈴が寂しそうだ…」
風鈴「・・・」
男「あ、でも涼しいなさすがに」
エアコン「ヴーン・・・」
男「…なんで俺電化製品に話しかけないとならんのだ」
雪女「いや、あながち間違いでもないんだけどね」
男「は?」
雪女「そもそも妖怪って、物とかがなる場合も多いのよ。強烈な念を受けた人形が動き出すとか、今もある話でしょ」
男「髪が伸びる奴とか?あんなのトリック・・・て、目の前に妖怪がいる以上、そうでもないのか…」
雪女「今は廃れたけどさ、神棚ってある家があるでしょ。あれも家を妖怪、というか神として祭ってるものだしね」
男「なるほどねえ…。なら、おいエアコン、残業だと思ってしっかり働け」
エアコン「ヴーン・・・」
雪女「うわ、電化製品に話しかけちゃってるよあの人…」
男「燃やすぞてめえ」
雪女「願わくば一日中十度以下なら助かりますね」
男「アホいえ。さて寝るぞ。て、妖怪って寝るのか?」
雪女「まあ寝なくても平気だけど…。することもないし寝ようかね」
男「じゃその布団使え。かけるのは…いらないな」
雪女「夜中にむらむらして襲ってこないようにね」
男「違う意味で襲い掛かってやろうか」
雪女「そ、そういう激しい感じも嫌いではないです…///」
男「寝ろこのあほ妖怪!!」
雪女「…」
男「…」
雪女(うーむしかし…。なんであたし見えるんだろうなこの人…)
雪女(見えること自体は珍しいことじゃないんだけど、適応力高すぎでしょ…)
男(しかし…。完全に驚くタイミング逃したなぁ。最初あまりにも自然と会話してたからな…)
男(つか最初はまさか本物の妖怪だなんて思わなかったしな…。でも色々見ちゃったし…)
男(って、見たって身体じゃないからな!!妖怪的な部分を、だからな!!)
雪女(でも実際、このままじゃまずいかもなぁ…。溶けちゃうのは予想外だわ…)
二人(はぁ…。眠れんなぁ…)
男(…んむ…。暑い。エアコン切れたかな…)
男(まぁ…寝れないほどではないか…。大丈夫だな…)
雪女(zzz…)
男「む…。朝か…。暑、窓開けないと…」
男「う…窓開けても暑いな…。今日もこの調子かよ…」
男「ん?」
雪子「…」
男「…あの、どちら様でしたっけ…?」
雪子「…起きたらこうだった」
男「…ええと」
雪子「…溶けました」
男「oh…」
雪子「…」
男「これはひどいな…。まじで幼女じゃんか。うわ布団びしょびしょ…」
雪子「困った」
男「確かに幼女はまずいな…。心情的にも、社会的にも」
雪子「じゃなくて。幼女自体は需要あるからいいんだけど」
男「あれ!?」
雪子「このままじゃ死んでしまうなぁ…」
男「うーむ…。それはまずいな」
雪子「どうだろ、あれ意外と重いからこの身体じゃきついかも」
男「ドライアイスは?」
雪子「不可能じゃないけど…相当な数がいるよ、元に戻るには」
男「参ったな…。こうしてる今も溶けてるわけだろ?」
雪子「水も滴る…」
男「いってる場合か。なんとかしないとだろ」
雪子「うーん…。…幼女が汗をかいている…ように見える姿って、需要あるのかな」
男「何考えてんだてめえ!?」
男「知るか!俺は絵についてはまったく才能が無いし、その気も無い!」
雪子「うーん…」
男「俺の書く絵は『人類には早すぎる』といわれているくらいで・・・」(実話)
雪子「あ、もうその話じゃなくて。あたしの話」
男「切り替えが早すぎてついていけない…!」
雪子「それがベターかな…。問題はこのまま溶け続けたら、歩くこととかしゃべる事が難しくなることかな」
男「つまりあんまり時間が無いわけだ」
雪子「yes,I am」チッチッチ
男「おちょくってるのかてめえは」
雪子「とりあえずドライアイスなんだけど…。さすがにこの暑さの中を歩くのはもうきついわ」
男「だろうな。とりあえずエアコンガンガンにして、あとアイスでも食って待ってろ。ドライアイスもらってくる」
雪子「すまんね。ちゃんと後でお礼するから。…身体で///」
男「冷蔵庫にぶち込むぞ」
スーパー
男「ドライアイス休止中!?昨日はあったのに…」
おばちゃん「ああ、ごめんなさいね。昨日機械が壊れちゃったみたいで。氷ならあるんだけど」
男「それじゃ意味ない…。すいません、失礼しました!」ダッ
男(どうする、コンビニにドライアイスはないだろうし、このスーパーにもない…)
男(坂道昇ったところにもう一軒スーパーあるけど…。この暑さで自転車…。いけるか?)
男「…くそ、行くしかねえじゃねえかよ。死にはしないだろ…!」
男『…なぜそんなに頑張る。相手は昨日あったばっかりの妖怪だぞ。死んだとしてもお前は困らない』
男「…そうかもな…」
男『諦めて自転車降りようぜ。で帰って謝れよ。ドライアイスは無かったって』
男「…それはすごい楽だろうね」
男『なぜそんな頑張るんだ?』
男「…あいつが可愛いから、以外の理由が要るのかよ」
男「あった…。ドライアイス…。三袋もいっぱい貰えば十分だろ…」
店員「…」
男(そんな目で見るなっての…。俺だって恥ずかしいんだ…)
男(もどらねえと…)
雪子「くそぅ…。一回のフライングでこんな目にあうなんて…」
雪子「ダメだ、溶ける…。アイスもやけ石に水だよ…」
雪子「…あいつおそいな。大じょうぶかな。今日すごくあついけど…」
雪子「…アイスもう一こ…」
10kg以上注文すると戸口まで配達してくれるよ
数年前で確か¥5000/10kg(送料込)
これ、雪女が家に来たときの豆な
男「おい、バカ妖怪…。どこ行った?ドライアイス、貰ってきたぞ…」
男「…床こんなにびしょびしょじゃねえか…。おいどこ行ったんだよ」
エアコン「・・・ヴーン・・・」
男「…おい、まさか…。嘘だろ?」
男「…はぁ…」
男「まったく…。うんざりする…」
男「最低、だ。こういうのは最低だろ…」
男「うおおおおお!?」
雪子「せまい!!すごくくるしい!!とけるのはとまるけど!!れいぞーこのなかはいや!!」
男「び、びっくりした…。おま、溶けて死んじまったのかと…」
雪子「ようかいだぞー。そうかんたんにしんだりしないからようかいなんだぞ。うしおととらよみなおせー」
男「さ、さらに幼児化してる…。ほら、とりあえず三袋分のドライアイスだ。食え」
雪子「おそかったからしんぱいしたんだぞー」
男「あ、ああ。そいつは、すまん…」
雪娘「ん…。まあこれだけ戻れば拝借するくらいの力はあるかな。服着なおすから後ろ向いてて」
男「あ、ああ…」
雪娘「んむ。幼女化する前に帰れるだけの力は戻ったかなー。でもさ、どこで液体窒素浴びればいいのさ。風呂壊したら元の木阿弥だよ」
男「…外さ。日陰の方がいいんだろ。家出たところに、いい場所がある…」
雪娘「なるほど名案。…大丈夫?顔色悪いけど」
男「あ?あ、ああ…。少し、疲れたかな…。大丈夫だ…」
雪娘「…。まあともかく、ちょっと行ってくるよ。すぐ戻るからなー」
男「…ああ」
雪娘「あったあった、液体窒素…。拝借しますよっと」
雪娘「!」
雪子「…ッ…。いそがないと…」
生徒「教授!!また液体窒素が無くなっています!!」
教授「なにぃ!!貴様、命がけで探せぃ!!」
男「…」
雪子「ねてる・・・?ああ、つかれたっていってたねそういえば…」
雪子「ね、おきてよ。はやくもとにもどらないと」
雪子「…?ねえ…?どうしたの?」
雪子「むりしすぎだよ、しんじゃうのはそっちじゃん!!」
雪子「どうしよう、まずはみずを…」
男「…」
雪子「…ええと、つぎは・・・」
雪子「ああ、もう!!あたまもまわらないしからだもちいさい!!」
雪子「こーなったら・・・!!たしかそとでてすぐだよね!!」
雪子(ちょっとでもみちまちがったら、いまのあたしにはちめいてき…。たぶんとけちゃう…けど!)
雪子「まっててよ、バカにんげん!!」
?「キミはなぜそこまで妖怪のために尽くしたのだ。自身を命を危機にさらしてまで」
男「…さあ。わからないけど、あいつが可愛かったのと、何だろう、初めて会ったような気がしなかったから」
?「…なるほど。本来ありえないことだが、起きたのだから仕方が無いか」
男「?」
?「キミと彼女は初対面だがそうでない。キミは彼女を知らないが、違うキミは彼女を知ってる」
男「どういう…?」
?「いつか分かる日が来るかもしれないぞ。いつか、な」
男「え…。猫…?」
雪女「間に合うか…。今からで…」
雪女「…妖力を使ってでも、キミを死なせはしないから…」
雪女「…ッ!!」
男「…」
雪女(間に合え…!!)
雪娘「…」
男「…」
雪娘(諦めないからね、あたしは…)
男「…ぅ…」
雪娘(戻って来い…!!)
男「あれ、俺…。そうだ、急に意識が…。でも、もうなんともない…?」
男「…床が水浸し…。あの妖怪、どこ行った…?」
男「・・・!!まさか、あいつ…。また冷蔵庫か!?…違う…。」
男「…今度こそ、俺、やっちまったのか・・・!?」
雪子「あぶねえとけるギリギリ!!」
男「うおおおおおおお!!!??」
雪子「おお、おはよう。あぶなかった、こんどこそダメかとおもった…」
男「お前…」
雪子「へへへ、またはいしゃくしてきた」
男「…あ、そう…。ひょっとして助けられた?」
雪子「おたがいにね。ああ、ちょっとひとっぷろあびていい?」
男「…外でなら、な」
男「暑いなあ」
雪女「うん…。地球どうかしてるぜ」
男「確かに…。エアコン、入れるか」
雪女「いいのかい?」
男「またああいうのはご免だからな」
雪女「…同感。結構ヘビーだったしねえ」
男「お互い死にかけた」
雪女「セーフセーフ」
男「…あれ。何か忘れてるような…」
雪女「え?」
男「あの時、何か妙な夢を見たような気がしたんだけど…。何だったかな」
雪女「?」
男「まあ…いいか」
TV『次は天気予報です。明日からようやく秋の気温です。長かった真夏のような暑さも今日が最後でしょう…』
男「夏も終わりだなあ」
雪女「さあ、いよいよあたしの季節ですよ。今年は冬は冬で大変な目にあわせますよ」
男「もう勘弁してほしいんだけど…」
雪女「もう妖怪天気予報ではそういう予報です。妖怪用のスマホで見れるんだけどさ。ほら」
男「妖怪にもスマホあるのか…。まあメールするくらいだしな…。…あ」
雪女「ん?」
男「…あのさ、お前が溶けかかった時さ。その電話で他の妖怪とか雪妖に助け求めればよかったんじゃ…」
雪女「…あ」
男「…」
雪女「…さーせん」
男「締める」
雪女「いやあの、その…」
男「結局諸般の事情ってなんだったんだよ」
雪女「…。実は。他の仲間と、「そろそろ下界に降りる」「まだ早い」で口論になって…」
男「…は?」
雪女「見栄張って飛び出した分、戻りづらいといいますか…」
男「…え、なにその小さなプライド!?しょぼ!!くだらない!!」
雪女「め、面目ない…」
男「はあ…。それで、お前いつまでここに居候するつもりだ?」
雪女「そりゃあ、そういう事情で帰れないので…。冬までは間違いなくここに…」
男「…だよな…」
男「はぁ…。触るだけで溶けるような奴と同棲してもなぁ…」
雪女「あれ、言ってなかった?あたしね、妖力さえもてば一晩くらい余裕ですよ///」
男「…なに?」
雪女「ま、キミにそんな度胸があれば、だけどねー。あ、それともやっぱり中学生とか幼女化したあたしの方が好み?」
男「…教えねえ」
雪女「ケチー」
雪女「…」
男「なあ妖怪」
雪女「なんだい人間」
男「聴きたいことがあるんだけど」
雪女「あたしも一つあるんだ。多分おんなじことだと思うぜ」
男「お前の」
雪女「名前、なんていうの」
男「正解」
雪女「あたしも。あたしの名前はねえ、――――」
?「うむ…。困った。あの雪女と青年はこちらでも相変わらずだったが…。はやく彼女を見つけないと」
?「…む?こちらでもまた違う妖怪と人間が…」
少年「この葉っぱ、天狗が持ってるやつだよねー」
友「バカだなお前、天狗なんているわけないだろ」
少年「…」
友「ほら行くぞ、みんな先に行っちゃったぞ」
少年「…この山には、天狗、いると思うんだけどなあ」
天狗「…」
完
というか、続く(?)
多分近いうちに天狗のやつを書くかと思いますが、雪女の話はこれで
見かけたら生暖かい目で見てくれるとありがたい
面白かった
この話の前作とかあったの?
これぶっちゃけ以前書いた雪女のやつのやり直しの話なんだわ
アッーー!!は勘弁
それはないw
イメージはうしとらから取るつもりだしね
Entry ⇒ 2012.09.18 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
男「お、お願いがありまして……」 少女「復讐」
少女「驚くことないじゃない? ここを訪ねる人間って大概そういうのだし」
男「……」ゴク
男「わかってくれているのなら話が早いです」
男「復讐をお願いしたいんです」
少女「理由は?」
男「学生時代に私を虐めていた連中に対してです……」
少女「代金は?」
男「成功報酬は私の命でもなんでも」
少女「……じゃあ、死ぬ覚悟があるなら自分で復讐すれば?」
男「……」
少女「……まあ、詳しい話は中で聞くとして…」
少女「おじさん、割りと好みのタイプだから引き受けてあげる」ニィ
男「……」
少女「ああ、その身体の所有権は前払いで貰っておくから」ニコッ
男「……?」
少女「そう、文字通りの意味」
少女「今からその身体は私の好きにさせて貰うから」ニコ
男「……」
少女「飲み物は? 温かいお茶? 冷たいお茶? 苦くて黒いお茶??」
男「……冷たいので」
少女「ん……じゃあ相手の人数だけど…」
男「……」
男「本当に、貴方みたいな……その…」
少女「『子供に可能なのか?』って?」
少女「可能です。ええと、復讐方法は希望があれば…」
男「……」
少女「……」ハァ
少女「信じられないなら引き返してもいいけど?」
少女「実行に移すだけの能力があるって証拠ならみせてもいいかな」
男「……お願いします」
少女「……とりあえず"ひとでなし"とでも頭に入れてちょうだい」フワァ
男「"人で無し?"」
少女「色々な事が出来るわ。透明になったり、不死だったり……」
男「……透明…」
少女「証拠が見たい? ……はい。」
スケー
男「……」
少女「どう?」
男「あ、あの…」
男「……スカートを履いているのに、その…下着が見えます」
少女「でしょう。はい、証拠見せお仕舞い」
スゥ…
男「……」
少女「けど、出来ない事もあるの」
男「?」
少女「人の心は読めない。だから、お仕事を実行するかどうかはもう少し調べてから決めるから」ニコ
男「……はあ…」
カラン
男「……どうも…」
少女「理由は……虐めだったかしら?」
男「アイツらのせいで様々なモノを失いました……学生生活、友達…家族までが被害を被って」
少女「具体的には?」
男「……そうですね。私自身の恨みはどうでもいいのかもしれません」
少女「……」
男「家族です。父は冤罪を着せられ、会社を首に。母は嫌がらせでノイローゼに。妹は引きこもりになってしまい…」
男「……姉は、殺されました」
少女「事実ならとんだ外道ね」
少女「殺人事件が起こったなら警察が動くんじゃないの?」
男「……証拠が見つからず、犯人は捕まっていません」
男「犯人は、主犯格の男が一人に、手下が10人以上です……」
少女「大所帯ね……」
少女「その犯人全員殺して欲しいとかなら、おじさんの命だけだと足りないかも」ウーン
男「……」
少女「まあ、対価を貰うのはなんとなくで必要性は無いんだけど…」
少女「……なら、おじさんが一生 精の尽きない性奴隷になるなんてどう?」
男「……そ、それは…」
少女「だめだよね……残念」フム
少女「朝、私が騎乗位で起こしてあげて。昼には食後や食中に、テーブルに体重を預けてバックで…夕方には、私が帰ってきたら夜までずっとエッチ」
男「……たしかに、なんでもするとは言いましたが…」
少女「私はまだ綺麗な身体だし、ピンときたからおじさんにお願いしたいんだけど…」
少女「……精力って、身体に入れてもらうと能力も強くなるらしいし…」
少女「嫌ならいいよ、おじさんが帰ってから自分で慰めるし……」
男「……君が成人しているなら承諾したんだが」
少女「……前払いでおじさんの身体は既に私のものなんだけどぉ」
少女「ご家族の復讐って、命がけでも成し遂げたいんじゃなかったんだ」
男「……」
男「そうだ…俺に断る余裕なんて……」
少女「……さあ、決断。早急にどうぞ」ニコ
男「……アイツが、主犯格の男です」
少女「どれどれ」
ヒョコ
主犯『~~』ゲラゲラ
少女「見るからに悪童上がりね。体格もストリートを腕一本でのしあがった黒人みたい」
男「アイツのせいで……」
少女「じゃあ、行こうか」ニコ
男「え?」
少女「直接会って話をしないと、アイツが本当に悪い人間かこの目で確かめられないし」
男「俺は……それに、君だって危険だ」
少女「大丈夫。私強いから」
男「……」
――…
スタスタ…
少女「……」
主犯『……?』
主犯「……おっ」
主犯「懐かしいな、まだ生きていたのか」ハッハッハ
男「……」
主犯「アレがお前の車か、おいナンバー控えろ」
手下「はいっス」
主犯「ナンバーがわかれば住所も割れるからな…お前、急に消えるから探したんだぜ……ん?」
少女「……」
主犯「なんだ? お前のガキか……へへっ、うまそうなガキだな…」ジュルッ
少女「……流れるように見事なゲスね」
男「……私の言った通りでしょう…くそ」
少女「……」
主犯「お前のガキにしては上玉だな……俺は年下だろうが気にしねえんだ。少し遊ばせてくれよ男、俺ら友達だったろう……?」ニヤニヤ
男「……くっ」
少女「……ごめんなさい」
ダキッ
男「?」
少女「私、男さんの囲っている女で……もう、この人のアレ無しだと生きていけないの…」カァ
男「ちょっ……」
主犯「……へえ、暫く見ない内に立派になったんじゃねえか」
男「私は……子供に興味は…」
少女「今日も朝から何ラウンドも……」ポッ
少女「付いていってあげる」ニコ
男「!」
主犯「よしよし……じゃあ、そこの車でいこうか」
少女「ああ、ちょっと待って」
少女「イケメンが多いなら私の友達も呼びたいんだけど良い? それもとびっきりの美少女」
男「なにを考えているんだ……」
少女「……貴方は少し黙って」
主犯「ああ構わないぜ。じゃあ連絡先の交換だ」
少女「ええ、いいわ」クス
男「何を考えているんですか……」ハァ
――…
男「……30分後におちあう話になりましたけど…」
男「そのお友達はどこに?」
ポンッ
男「?」
少女「あら、美少女なら数秒後にはここにいるわよ」ニコ
男「……??」
女(男)「……な、な…」
少女「セクシュアルイメージっていうの? 性別くらい瞬く間に変えられるわ」
女「戻せるんでしょうね……?」
少女「戻すのも瞬く間。心配しなくていいよ」
少女「せっかく可愛くしてあげたのに……目に隈があるけど、ポニーテールにすることで元気さをアピールしてみました」
女「私には倒錯趣味なんてないんだ……足がうすら寒い…」
少女「似合っているわよ、そのスカート。スタイルだって華奢にして…まあ、胸は薄いけど。そこは私以上だと面目が立たないし」
女「……そうだ、私は何だってやると決めたんだ」グッ
少女「お洒落にヘッドホンはどうかしら」ムゥ…
女「遅刻しますよ、行きましょう……」ハァ
ブロロロロロロロ…
手下♂『お友達はモデル? スラッとしてるね』
女「はあ……」ヒク
手下♀『仕草は男みたい……』
女「……直らなくて」ハハ…
少女「人目に出すのが憚れるくらい可愛いわ……その姿のまま戻すのをやめようかしら」
女「約束したじゃないですか……」ヒソ
主犯「確かに美少女だが…」
主犯「……なぜかピンと来ないな、珍しく俺の趣味と合わないらしい」
女「それは…………よかったです」
少女「そうそう言い忘れていたから今伝えるけど…」
女「?」
少女「とりあえず手下の男と行動を共にするから。倒しちゃっても良いけど、出来る限り穏便にいきたいし」
女「? 了解です……」
主犯「着いたぞ。俺は他のやつらに顔見せしてくるから適当にくつろいでいてくれや」
少女「じゃあ……この人と一緒に回ります」チラ
手下♂「俺?」
女「……」コク
手下♀「……」
手下♂「あの姉ちゃんに付いていけよ……俺はボスのところに行くから」
少女「いえ、人が良さそうなのでお兄さんにしました」ニコ
女「(……だから、どうしてこの男なんですか?)」
少女「(貴方が女性になっても主犯の男に目を付けられないように、相手の性癖やら覗いてみたんだけど…)」
少女「(……その時ついでにこの手下さんも確かめたらあることがわかったから)」
女「?」
少女「(この人……ゲイね。間違いなく)」
女「っ」ブッ
手下♂「? だからボスの所に行きたいんだけど……」
少女「そういえば、主犯さんってどういう人なんですか?」
手下♂「……ボスに気があるとか?」
少女「いえ。私もこの子も同性にしか興味が無くて……」
女「そ、そう……です」コク…
手下♂「あーそれなら仕方ないな。わかるわー十年くらい前からその気持ちわかるわー」ウンウン
手下♀「……」
少女「オーラがあったので、武勇伝があればお聞きしたいな…と」
手下♂「そうだな……ならさっき君といた渋めのお兄さんとの話だけど」
女「っ」
少女「……気になります」ニコ
手下♂「あれな……実は犯人が別にいるんだけど、ボスが身代わりになって汚名を被ってる…ってワケ。格好良いだろう」
女「!」
女「う、嘘だ……」ボソ
少女「……それは、興味深いお話ですね」フム
少女「大丈夫です、耳にはしていましたから」
女「……」サアァ
手下♀「どうしたの? 気分が優れないみたいだけど」
女「い、いえ……少し休んだら落ち着きます…平気です」
手下♀「倒れてからじゃ遅いわよ。一緒に休憩室に行きましょう?」
少女「……」チラ
手下♀「……」
少女「……なるほど」
手下♀「……お友達、看病して良いかしら?」
少女「ええ、どうぞ」ニコ
少女「その子の身体は私のものだから……よろしくお願いします」
女「(待って……危険に巻き込まれるかもしれません)」
少女「(大丈夫、少しなら未来視も出来るから。悪いようにはならないわ……頑張ってね)」クス
手下♀「それじゃあ行きましょう」ヒョイッ
女「この歳で抱っこされるなんて……」ズーン
手下♀「どう? 少しは落ち着いた??」
女「……はい、ありがとうございます…」
女「(悪い人じゃないみたいだ…悪人ばかりじゃないってことか)」
手下♀「……綺麗な肌ね」
女「はは……どうも」
手下♀「髪もサラサラで…結ってるゴム、取って良い?」
女「? はあ……」
手下♀「小顔で、身体の線も細くて……」
スゥッ…
女「あっ、あの……」
手下♀「……本当は、ボスのお下がりを貰うんだけど…」
手下♀「……貴方には興味が無いって言っていたから、良いわよね?」ハァハァ
女「ひっ……だ、誰か…」
手下♀「ここには誰も来ないわ……貴方の彼女にはわるいけど…」
手下♀「……そこのベッドに行きましょう?」クス
女「(何が未来視だよっ、ペテン師め……)」アセ
手下♂「それでボスがさあ……」
少女「……」
手下♂「? どうかした??」
少女「ああ、いえ…」
少女「向こうは上手くやっているかな、って」ニコ
手下♂「……なにか気づいた?」
少女「少しは……」
手下♂「お友達、危険な目に合ってるかも」
少女「それは……残念」
手下♂「あのお姉さんはさ、ボスの古くからの友人でここでも幹部クラスに偉いんだ」
少女「……」
手下♂「それで、ボスの好きな食べ物がさ……っ!」
少女「……もういいです…」ハァ
――…
手下♀「はぁ……すごく、よかったわよ…」ウットリ
ナデ…
女「(ひどい……)」ウル
手下♀「お詫びといっては何だけど…」
手下♀「……ボスのあの事件について教えてあげるわ」
女「……?」
女「……どうしてそれを」
手下♀「向こうの子については、前から少し知っていてね。何かあるんじゃないかと思ったけど…」
手下♀「……貴方は、わかりやすいというか…反応からしてバレバレよ」ハァ
女「……それで、真相があるんですね?」
手下♀「ええ……あっちのお兄さんじゃ教えてもらえないような悪い話をたくさん…ね」
女「……お願いします」
手下♀「その代わりといってはなんだけど」
女「?」
手下♀「これからも、定期的に私の相手をしてくれること。どう? 悪い話じゃないと思うんだけど」ニコ
女「……」
女「…………」グッ
女「わかりました。その代わり、本当の事を教えてください……」
手下♀「そろそろボスも首が回らなくなってきたから切り所だったのよね。天誅屋まで来たなら尚更終わりが来たって事だし……」
女「(天誅屋……?)」
女「お待たせしました……」
少女「やあ、どうだった?」
女「ええ……わかりましたよ。やはり、あの男は… 少女「そうじゃなくて…」
少女「女の身体は良かった?」ニィ
女「!」ハッ
女「そ、そうですよっ…ああなるってわかっていたのなら……」パクパク
少女「……」チラ
手下♀「? ああ、最高だったわ」ニコ
少女「そう……それは良かったわ」
少女「じゃあ、入手した話は家で聞くから…」
手下♂「悪いけど、君らを返すワケにはいかないんだ」
手下♀「大丈夫。私が監視しておくから、貴方はボスのところに行っていて良いわよ」クス
手下♂「そういう事なら……お任せします!」
タッタッタ…
手下♀「……さて。逃げても良いわよ」
女「え……?」
手下♀「私はアンタらに片付けられた事にしておいて…少し雲隠れするから」
手下♀「あと……あのお兄さんも悪いことには加担していないから、見逃してあげてほしいな」
女「……」
少女「了解。良い情報をくれたワケだし…この子との情事はサービスにしとく」
女「思い出すと悲しくなります……」
男「……以上が事件の真相です」
少女「証拠隠滅はほぼ完璧っと…」
少女「……まっ黒だとわかった以上、私も本腰入れるし」
男「よろしくお願いします…」ペコ
少女「……ただ裁きたいだけなら適当に自首でもさせるけど?」
男「いえ……あの男には相応の罰を受けて貰いたいんです」
男「それこそ……この命と引き替えでも」
少女「……冷たいアイスと温かいアイス…どす黒いアイスならどれが良い?」
男「? ……冷たいアイスで…」
少女「……じゃあどうしようかなぁ」
少女「お姉さんがされた用に痛めつける? 辱しめる?? 自殺させる??? 」
男「……死なせてはいけない」
男「出来るだけ長く、苦しみを味あわせたい…」
少女「……あむ」パクリ
少女「……やっぱりアイスは半溶けが美味しいよね…」
少女「……天誅に、半端なんてないけど」クス
主犯「……ん?」
主犯「誰もいないのか…おかしいな、このクラブには誰かしら…… 『残念。誰もいないんだなそれが』
少女「お久しぶりです。中国語ならハオジュウブージエンラ?」ニコ
主犯「……どういう事だ?」
少女「さあ……」チラ
主犯「?」キョロ
主犯「っ」
男「……」
主犯「なるほど……そういうことか」
主犯「どうやって人払いしたかは知らないが、電話を鳴らせばすぐに集まるぜ」クク
主犯「まあ……お前相手なら人を呼ぶまでもねえか」
男「……」
ドガッ!!
男「!?」
男「っ……」ゲホッ ゲホ
主犯「ああ……どうすっかなコイツ…」
少女「確かに……私の方も『どうすっかなコイツ』って気持ちだよ」
少女「さあそろそろお時間だ」
主犯「?」
少女『天誅タイムです。死ねないから死ぬまで苦しんでください――…クロさん』クス
ワイワイ ガヤガヤ
少女「さあさあギャラリーは今までクロが殺め・間接的に殺してきた皆様です」
ワーーー!! ガヤガヤッ!!
主犯「……ずいぶん凝ってるな…」
主犯「それで、今からリンチでもするってか?」
少女「考え中です ナウ リーディング……」
主犯「俺くらい恨まれていると、緊急用の呼び出し装置を持っていてな……」
カチッ
……
少女「ああ、それ壊れてるから」
主犯「ハッタリぬかすなっ、数分後には仲間が集まってくるからな! ……姦してやるよ嬢ちゃんの家族まで洗って…」
少女「Niceゲス。殺すには惜しいくらい」
少女「なので殺さないであげます。優しいでしょう? ギャラリーの皆様」
ブーブー!!
少女「おやお気に召さない…」ウーン
少女「……ではこうしましょう」
少女「まずはクロが犯した罪の一つ。万力で一本ずつ両手足の指を潰してさしあげましょう」ニコ
ワーワー!!
主犯「な、なんだお前……?」
主犯「聞いてんのかよおい!」
少女「……刑事罰で被害者は納得するのか…」
主犯「?」
少女「遺族の復讐で恨みが消え、成仏出来るのか…」
主犯「……」
少女「やっぱり。"自らの手でやり返す"これに限りますね」ニコッ
ワーワー!! ワイワイ!!
主犯「イカれてんのか……?」
主犯「っ?」
ギチッ
少女「動けません。金縛り? NO、普通に紐で縛ってます。すみません地味で」クスン
ワイワイ!!
主犯「くそっ、アイツら早く助けに……っ!」
少女「来ません。残念です」
少女「さあ皆様列を作って…」
少女「……十本潰したら、次の罰に移りまーす!」
ワーーー!! ガヤガヤッ!!
主犯「おいやめろ……俺に手を出したらどうなるか…」
少女「ああそれも残念。皆様既に他界しておりますので」クスン、クスン
ブチッ
主犯「~っ!!」
主犯「……わかった、俺が悪かった。謝る」
少女「返す手が無いとわかればプライドを捨て、謝罪ですか……懸命賢明」
少女「さあ二本目!」
ワイワイ!!
主犯「……っ」
――…
少女「はい十本目ー」
ブチッ
主犯「……っ」
男「……」
主犯「なあ、謝る……反省した。もう許してくれ…」
男「……」
少女「じゃあラストはお姉さん。ドウゾー」
男「十一本目……?」
少女「頭が残ってるから、良いタイミングで回ってきましたね?」
姉『……』
主犯「や、やめてくれっ!」ヒィッ
男「……」グッ
姉「……」
主犯「もう言い訳もしねえ! 全て俺の責任だ!!」
主犯「反省した……これからはもうしない…約束する…………」
姉「……」
少女「……さあお姉さんは何も言いませんよ?」チラ
男「……」
主犯「被害者の家族全員に頭を下げて謝る。警察にもいく……だから殺さないでくれ」
男「……」
少女「警察にいけばどちらにせよ死罪は免れないと思うけど……本人も口では立派に反省してるよ、どうするぅっ?」
男「……」
主犯「…………すまない……」ウッ…
男「……」
男「頼む。やってくれ」
少女「……………………了解」ハァ
主犯「っ…………」ウッ… グスッ
主犯「悪かった……悪かった…」
少女「いつもは優しいんですけど、酒が入るとこうなんですよ……なにか良い家庭の医学ありますかね?」
姉「……」
男「……姉さん」
男「……」
主犯「すまない……俺が、悪かった…」
男「姉さんにはやらせない。俺がとどめをさす」
ジャキ…
少女「殺さないんじゃなかった?」
男「殺しても死なせない事が出来るんだろう……この空間は」
少女「鬼畜冷酷残酷だ。鬼だねまさに」
少女「けど……おじさんが危害を加えるなら話は変わってくるよ」
男「……構わない」
主犯「……わかった、もう諦める…」
男「悪いな、私も命をかけて来てるんだ。お互い地獄行きだな……」
少女「……覚悟を決めたのなら止めないよ」
バチンッ!!
少女「……」
手下♀「あら、久しぶり」
少女「……」
手下♀「あら…なにやら意気消沈みたいだけど……例の件は首尾通り上手くいったんじゃなかったかしら?」
少女「……」ハァ
少女「最近、お店も休業して…なぜかやる気が出ない」
手下♀「……ボス…あの男はどうなったの?」
少女「ああ、それは伝えてなかったね」
少女「あそこまで罪を重ねていたら反省しようがどうしようもないんだ」
少女「決めるのは全て私だけど……アレに救いは与えられない」
手下♀「……ふうん」
手下♀「天誅屋も"罪"には厳しいわね…生前、とても酷い事をされたとか」
少女「……私はこうして生きてるよ」
手下♀「それで、その"救いの無い結末"って?」
少女「……ああ」
少女『魂が消えるまで続くから……今度、痔に効く薬持っていってあげようかな』シラ
手下♀「……最近、手下♂君の姿も見えないんだけど…」タラ
手下♀「それで、例の男さんはどうなったの?」
少女「……」
手下♀「確か…彼が最後の一撃を与えたのよね」
少女「……私も、最後の最後で踏み留まると思っていた」
少女「けど、彼は葛藤しながらも…手を汚した」
手下♀「……その後は?」
少女「……私の手の届かない所にいった…」
手下♀「…………そう」
手下♀「彼も覚悟の上だったんでしょう? 後悔はしていないと思うわ」
少女「……そう」
少女「貴方が言うのなら…そうなのかもしれないね」シュン
手下♀「……」
『あ、あのー……』
手下♀「ああ、すぐに戻るからシャワーを浴びて待っててね?」ニコッ
女「はあ……憂鬱です…」
少女「そ、そろそろ期限だろう。返してもらう!」
手下♀「だめだめ、まだ満足していないから」ニコニコ
女「……」ハァ
女「貴方には感謝しています」
少女「経緯については話しておいたよね?」
女「ええ、若干ですが記憶も残っていますし…」
女「……あの空間にいた時とは大分、テンションに差があるみたいですが」
少女「まあ、アレは場を盛り上げるためだったし…」
少女「……本当は、死者なんて一人もあの場にいなかった」
少女「そもそも死者を呼べるのなら、始めから呼び出して真相を聞き出すし」
女「……」
女「とにかく。ありがとうございました、約束…したという通りに死ぬまでお尽くしします」ニコ
少女「……待っているから」
女「それと…遺族の仇討ちのために今回の計画を実行したと聞きましたが……それ以前に…」
少女「?」
女「どうして私をおじさんと呼ぶんでしょうか……」ハハ…
少女「……んーと」
少女「…教えない。私は意地悪だから」クス
女「はあ……」?
少女「それじゃあ、またね」
女「はい。本当に、ありがとうございました」ペコ
少女「貴方の期間限定ご主人様にもよろしく伝えておいて」
女「はい、わかりました」ニコ
少女「……」
少女「前払いの身体だけ残して…勝手に死んじゃって……」
少女「……私らしくないか、うん」
(本当に、感謝しています。 ……それと、透過させるならスカートではなく他の物にした方が――…)
少女「?」
クルッ
女「?」
少女「……最後に伝えるのがソレ…? まあ、遺言として受け取っておくわ」
少女「……もし次に会う機会があれば…そうね、その時は――…」
少女『……冷たいお茶でも、出してあげるわ』ニコ
<了>
短くまとめる事が出来たと思っていただけたら幸いです。
わるい癖で、エピローグなんかも考えたりしますが今回はこの辺で。乙です。
乙
乙
乙
Entry ⇒ 2012.09.16 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
女友「私に監禁されて、必死で抵抗してる女ちゃん可愛い」女「」
女「ここ…どこ……?」
女「体が動かないし、なんか…足の間がすごくむずむずする……」
女友「おはよ?女ちゃん♪
すごくいい抱き心地だったよ」
女「そうだ…私、女友ちゃんに監禁されてるんだっけ…」
いつもは元気なのに、朝はけっこう無防備なんだね」
女「…」
女友「なんか無防備な女ちゃん見てたらちょっとドキドキしてきちゃった…
ねぇ?いますぐ逝かせてあげようか?」
女「いっ…いや…」
女友「もう。いい加減素直になればいいのに♪
昨日からずっと逝かせてもらえなくって…
結局睡眠薬で寝かされちゃって、寝てる間ずっと足の間にローター入れられてて…
そろそろ限界なんじゃない?」
女「そんな事…ないよぉ……」
女友「もう。朝からそんなに切なそうな声出しちゃって…
あっそっか。まだローター入ったままなんだっけ?」
女「…」
女「っっ…!!」
女友「やっぱり…パジャマのここ、こんなに湿ってる…」
女「っ…!!」
女友「寝てるあいだにこんなに濡らしちゃったんだ…」くすくす
女「…ぁぁ…」
女友「もう…これ私のパジャマなのに…いけない娘♪」
女「ん…」
女友「だけど、これからは女ちゃんが濡らしちゃったパジャマを毎晩着れると思うとすごくうれしいな♪」
女「……」
とつぜん女のパジャマのズボンを下げる女友
女「いやぁ…!」
女友「くす…
びしょびしょ……」
女「ぁぁぁ……」
女友「こっちも私の下着なのに…
私の下着に女ちゃんの汁がいっぱいしみ込んじゃった…」
女「んん……」
女「……」
女友「じゃあ、しょうがないからそのローター取ってあげる」
女友「それとも逆に強くして、いまここで逝かせてあげようか?」
女「…と…って…」
女友「そっか。残念♪」
女「…」
女友「ねえ?、この汁舐めてもいい?」
女「だっダメ…!」
女友「えーっいいじゃない。昨日も舐めさせてもらえなかったんだよ?」
女「…」
女友「こんなに甘くて美味しそうなのに…一回だけ舐めるだけでもダメ?」
女「だめ…!」
女友「そっか。やっぱり直接舐めてほしいんだね」
女「…」
女友「じゃあ、朝ご飯作ってくるからちょっと待ってて?
それとももう少し後の方がいいかな?」
女「もう少し後がいい…。わたし、朝弱いから…」
女友「そっか。わかった」
女「やめて…!」
女友「だって時間が勿体ないじゃない」
女友「だけど…昨日から一回も逝けなくって、寝てるあいだもローターで責め続けられて、
そろそろ心も体も限界のはずの女ちゃんが必死にがまんしてるんだから…無理矢理ってのも可哀想かな?」
女「…」
女友「そうだよね…今までずっと頑張ってきたんだもんね…。
どうせ、逃げられないのに♪」
女「……」
女友「いいよ?もっと頑張ってがまんして?
がまんしてた時間が長いほど…がまんできなくなっちゃて私に『おねがい逝かせてぇー』っておねだりする女ちゃんは、
きっとすごく可愛いと思うから♪」
女「……」
女友「匂いだけでも嗅がせて?」
女「…」
女友「だけど女ちゃんが今着てるのは私のパジャマだから…
このパジャマの匂いは女ちゃんだけの匂いってわけじゃなのか…」
女友「って事はやっぱり、女ちゃんのために新しい服も買ってあげないとダメかな?」
女「…」
女友「そうだっ 朝ご飯が終わったら女ちゃんの服を買いに行ってあげる。
だからその間、留守番しててね?」
女友「大丈夫。女ちゃんが退屈しないように、逝けない程度に気持ちよくなるような状態で
放置して出かけてあげるから♪」
女「…」
女「…」
女友「ねぇ?女ちゃん的にはどう?」
女「どういう事よ…?」
女友「私の匂いがしみ込んだ服を全身に着させられて、私にあんあん言わされるのと、
新しい服を着て、私に女ちゃんの匂いを堪能されながら、私にあんあん言わされるのるのどっちが好き?」
女(どっちも嫌に決まってるじゃない…!!)
女(だけど、女友ちゃんが服を買いに行ってるあいだに逃げられるかもしれない…。)
女(って事は、女友ちゃんの服を着る方を選ぶと、女友ちゃんが出かけなくなっちゃうかもしれない…)
女「やっぱり、自分の服はほしい、かな…?」
女友「そっか。匂い嗅がれながらあんあん言わされたいんだね
私も可愛い服着ながらあんあん言ってる女ちゃんが早くみたいな♪」
女「…」
女友「だって朝ご飯までもうちょっと時間があるし…それまで暇じゃない」
女友「だから女ちゃんの体の匂いでもかいで待ってようかと思って…」
女「ちょ…ちょっと…!!」
女友「」すんすん
女友「やっぱり寝てるあいだにちょっと汗かいた女ちゃんって、すごくいい匂いがする…」
女「やめて…!」
女友「暴れたってだーめ。いくらもがいても、ベットに縛り付けられてるんだから逃げられないよ?」
女「うぅ…」
女「…なっ何言ってるの…!?」
女友「だーかーらー、体中舐め回していいかって聞いてるの♪」
女「だっダメに決まってるでしょ…!」
女友「どうして?私に舐め回されると気持ちよくなっちゃうから?」
女「そんなこと…ない…!!」
女友「くすっ…ほんとうかなぁー♪」
女「…」
女「えっ…?」
女友「もしウソツキだったら、逝かせちゃうよ?
一回逝ったあとも、『もうやめてぇー』っていってもやめてあげないで、気絶するまで何回も何回も逝かせちゃうよ?」
女「…!」
女友「だけどウソツキじゃないんだからいいよねー?」
女友「じゃあ舐めてあげる。別に気持ちよくないんだから、いいよね??」
女「……」
女「っっ…!!……!」
女友「んんっ…女ちゃん…すごく美味しい…」ぺろぺろ
女「……」
女友「ずっと女ちゃんってどんな味がするんだろって考えてたけど…こんなに甘くて美味しいかったんだ…
こんなことならもっと早く監禁しちゃえばよかった…」ぺろぺろ
女「っっ…!」
女友「あれ?今、声出しちゃった?」
女「出してないよ…!」
女友「そっか。残念♪」ぺろぺろ
女「……」
女「…」
女友「そうだ、腋、舐めていい?」
女「やだっ!やめて…!」
女友「いいじゃない。だって女ちゃんの腋、甘い匂いがするんだもん。
舐めなかったら勿体ないじゃない♪」ぺろっ
女「…!」
女友「あっ。ぴくってなった」
女「……」
女友「」ぺろぺろぺろぺろ
女「…。っっ…!」
女友「うんっ。すごく甘くて美味しい…」
女「…」
女友「女ちゃんの甘い匂い、もっと嗅ぎたいなぁ」
女「……」
女友「じゃあ、女ちゃんにドキドキしたり興奮してもらえばいいんだよね」すっ
女「…!
ちょっと!そんな所に手入れないで!」
女友「えーっ せっかくここを直接触ったら、女ちゃんが興奮してくれると思ったのに…」
だけど女ちゃんが嫌なら仕方ないか」
女友「じゃあ、服の上から撫で回してあげる♪」
女「いやっ…!やめなさいっ…!」
女友「うん。やっぱり。
服の上からでもあったかい。それにこんなに湿ってる…」さわさわ
女「あっ…ああっっ…!!!」
女友「あんなに一生懸命がまんしてたのに……」さわさわ ぺろぺろ
女「ぁぁっ…いぁ……!!」
女友「だけど腋を舐められながら、いちばん気持ちがいい所までさわさわされたんじゃしょうがないか…」さわさわ ぺろぺろ
女「んん…!っっ…!」
女友「だけど服の上から触られただけでこんなにあんあん言っちゃうのは、少し減点かなぁ…?」さわさわさわさわ
女「っっっっっ……!!!!」
女(このままじゃ女の人に…しかも友達に逝かされちゃう……!)
女(だけどすごく気持ちがいい…!!)
女「いやだぁ…もういやぁ…!」
女(逝きたくない……逝きたくないよぉぉぉぉ…!!!!)
女友「ん…女ちゃんの腋、すごくいい匂いがする♪」ぺろぺろ
女「…っっっ!!! ……!!」
女(いやだぁ…逝きたくないよぉぉぉ……。)
女友「もうそろそろ、限界なのかな?」
女「っっ…!!」
女(どうしよう…すごく気持ちがいい……。)
女友「じゃあ…そろそろ朝ご飯作ろうかな?」
女(え…!?)
とつぜん女から手を離す女友…
女「なんでも…ないよ…」
女友「そっか。じゃあ朝ご飯作ってくるから待っててね?
くすっ…女ちゃんの腋、ごちそうさま♪」
女「……」
女友「じゃあ、ばいばいっ」
女(って私は何考えてるのよ…!)
女(…。)
女(早く逃げないと、このままじゃ本当に女ちゃんに抵抗できない心と体にされちゃうかも…。)
一人で逝けないように両手を後ろで縛られるけど一人にしてもらえる…)
女(もしトイレのなかに抜け道があるかもしれない…)
女「女友ちゃん…!」
女友「あ、今そっち行くからまってて?」
とてとて
女友「どうしたの?」
女「トイレ行きたいんだけど…」
女友「わかった。じゃあ、この薬飲んでね?」
女(やっぱり抜け道なんてない…)
女(窓は開かないようになってるし、換気扇から叫んでも多分聞こえないしすぐに女友ちゃんに気づかれちゃう…)
女「おまたせ…」
女友「あっおわった?じゃあまたベットに縛り付けてあげるね?」
女「うん…」
女「そのあと私はベットに縛り付けられたまま朝ご飯ができるのを待ちました…」
女「そして、女友ちゃんと同じスプーンで手を縛られたままカレーライスを食べさせてもらって、
(ちなみにカレーの味はすごくおいしかった。こんな状況じゃなかったら、女友ちゃんのお嫁さんになって毎日食べさせてほしい!っていいたいくらい…)
少したった後、女友ちゃんが私の服を買いに行くために出かける事になりました」
女友「だけどその前に…そろそろあお向けに大の字で縛られてるの、疲れちゃったんじゃない?」
女「…!」
女友「じゃあ、違う縛り方にしてあげるね?」
女「……」
女友「あれ?ちょっと残念そう?」
女友「わかった。縄ほどいてもらえると思ったんでしょ?
いい加減あきらめちゃった方が楽になれるのに…」
女「…そう言うと、女友ちゃんは、いつもの力が入らなくなる薬を私に飲ませて、
両手と両足を縛って、私をベットの上に転がしました」
女友「大の字になってる女ちゃんも可愛いけど…こんな感じで転がされてる女ちゃんもすごく可愛い…///」
女友「じゃあ、行ってくるね?帰ってきたら、可愛い服着せてあげるから、もっと可愛いところ私に見せてね?」
女「…」
女友「あ、これ入れるの忘れてた」
女「いやぁ…!」
女の足のあいだにリモコン式のローターを入れてスイッチをいれる女友
女「…っっ!!」
女友「じゃあ、今度こそ行ってくるね
私がいないあいだに逃げようとしたら、ふふっ…」
女(…!!!)
女友「あ、でもそんな風に縛られてたらこの部屋からも出られないかな…?」
女友「じゃあ、ばいばいっ」
女「女友ちゃん…家から出て行ったよね…?」
女友が見えなくなるまで窓の外を見ている女…
女「今のうちに、どうにかして逃げないと…!」
なんとかドアの所まで這って行く女…
女「よいしょ…開けられた…」
部屋の外に出る女…
「……」
女「やっぱり女友ちゃんって一人暮らしなんだ…」
女「だけど玄関から外に出れば…」
女「もう少し…!」
女(あれ?なんかむずむずする…)
女(なんかローターの動きが激しくなってない…?)
女「いっ…いや…!!!ぁぁぁぁああああああ!!!」
女(どうしよう…腰に力が入らなくってうごけない…!!)
「あれ?どーしたの?女ちゃん♪もうちょっとで逃げられるんだよ?」
女「!!!!!!!」
女の上にまたがる女友…
女「女友ちゃん…!?ぁぁあ…なんで……!?」
女友「女ちゃんが逃げちゃうと困ると思って出かけたふりして裏口から入ってたの♪」
女「そん…なぁ…!!」
女友「もーっ逃げちゃダメっていったのに…♪」
女「いっ…いや……」
女友「涙目になってる女友ちゃん可愛い…
だけど許してあげないからね?」
女「…」
女(女友ちゃんがこわい…)
女友「ほら?これ飲んで?」
女「いやっ…んんん…!!!」
女の口が開いたすきに薬を口に入れて、鼻と口を塞ぐ女友…
女友「気がついた?」
女「あれ…?部屋じゃない…?」
女友「くすっ…恥ずかしい格好させられちゃって可愛そう…」
女「…!!」
いつの間にかスクール水着を着せられて、手を後ろで縛られて、
足を折り曲げたまま開いた状態で大きい椅子に縛られている女…
女友「もがいたってだめだよ?絶対にほどけないんだから…」
女「ほどいてよ…!」
女友「無理に暴れると、疲れちゃうだけだから止めた方がいいと思うなぁ…
私的には必死で無駄な抵抗をしてる女ちゃんの、微笑ましい姿が見られるからいいんだけど…」
女「…」
女「…っ!!」
女友「女ちゃんの胸にある可愛いふくらみが両方とも2つのローターで挟まれてるのが分かる?」
女「…!」
女友「それに、一番気持ちがいいところの周りにも4つ入れておいたから…
あ、でも、中に入れたわけじゃないから、逝く事はできないんじゃないかな?」くすくす
女「……!!!」
女友「あ、ちなみにその水着、私のだから、すきなだけ汚しちゃっていいからね?」
女友「今私が持ってるスイッチを押すと、水着の中に入ってるローターが一斉に動き出しちゃうわけなんだけど…
これなら退屈して逃げようなんて思わないでしょ?」
女「おねがい…やめて…女友ちゃん……。」
女友「女ちゃん可愛い♪だけどダメだよ?勝手に私から逃げようとしちゃった女ちゃんが悪いんだから♪♪」
女友「そうそう、この部屋、いくら可愛い声で叫んでも外に聞こえないから、
安心して可愛い喘ぎ声出しちゃっていいよ?」
女友「そうだ、折角だし女ちゃんの可愛い喘ぎ声、録音しちゃおうかな…
だけどそれは今度でいっか」
女友「じゃあ、今度こそ行ってくるね?」
女友「私が帰ってくる前におかしくなってちゃダメだよ?」
スイッチを入てから、部屋を出て行く女友……
女(どうしよう…すごく気持ちがいい…!!!)
女「あぁぁぁあああああ…」
女(女友ちゃんにこんなに気持ちよくしてもらってるんだ…)
女「いっ…いやあああああぁぁぁ…」
女(ダメ…ここで堕ちちゃったらこの後何されるかわからない…!!)
女(だけど何されてもいい、かな…?)
女(やだ…私何考えて…!!?)
女「ひゃあっ…ぁあああああああぁぁぁ…」
女友「おかえりー女ちゃん!可愛い服いっぱい買ってきてあげたよ?」
女「あぁぁぁぁぁ…ひゃあぁぁぁぁぁぁあああ……」
女友「ふふっ…幸せそう…だけど一回スイッチ切ってあげるね?」
女「うぅ…女友ちゃん…ひどいよぉぉ…」ひっくひっく
女友「すっかり甘えた声になっちゃって…///
あ、涙拭いてあげるね?」ぺろっ
女「女友ちゃん…」とろーん
女友「こんなに汗かいちゃて…ここもこんなにびしょびしょ…
水着から汁があふれちゃってるよ?
女「うぅ…見ないでぇ……」
女「…ぅ…ぅん…」
女友「だけどその前に…もう一回スイッチ入れちゃおうかな…?」
女「……」
女友「ねぇ?もう一回スイッチ入れてほしい?全身気持ちよくなりたい?」
女「っ…」
女友「あっ、否定できなくなっちゃった♪」くすくす
女「ぅぅ……」
女友「だけど女ちゃん私が出かけてる間ずっと頑張ってたから…
可哀想だからスイッチは入れないでいてあげる♪」
女「…」
女友「女ちゃん、可愛い♪」
女友「そろそろ休めた?」じゃあ、着替えさせてあげる。ほら?これ飲んで…?」
女「うん…」
――数分後
女友「可愛い…!女ちゃんすごく似合ってるよ?」
女「…」
女友「白いワンピース着た女ちゃん…すごく可愛い
いますぐ壊しちゃいたいくらい…」
女「…!!」
女友「もう、そんなに怖がらなくったっていいじゃない。
女ちゃんが気持ちよすぎて壊れちゃっても、ちゃんとなおしてあげるから♪」
女友「じゃあ、私の部屋にもどろ?またベットに縛ってあげる。
私はそのあとお昼ご飯作るから、ゆっくり休んでてね?」
女友「じゃあ…折角可愛い服買ったんだから、その服着て一緒に遊ばない?」
女「やだっ…!」
女友「えーいいじゃん。女ちゃんの可愛いところもっとよく見せて?」さわさわ
女「やめてっ…」
女友「そういえば気になってたんだけど…」さわさわ
女「…なにがっ?」
女友「女ちゃんってこうやって両手と両足を縛られた状態で転がされて触られるのと、
さっきみたいにあお向けに縛られて触られるのどっちが好きなの?」
女「…」
女友「もう…さっきはあんなに可愛くあんあん鳴いてたのに…」
女「えっ…」
ベットの上に寝て、後ろから女を抱きしめる女友…
女友「やっぱり女友ちゃんって柔らかくって抱き心地がすごくいい…
それにすごくいい匂いがする…」
女「…」
女友「あっだんだん抵抗できなくなってきちゃったみたい」
女「…」
女友「うしろから抱かれると、すごく落ち着くでしょ?」
女「……」
女友「大丈夫。怖くないよ?」
女「だっだめ…!」
女友「そっか…じゃあ足触ってあげる」
女「えっ…?」
女友「スカートをちょっとあげるだけなら、別にいいでしょ?」
女「う、うん…」
女友「やったぁ!ありがとう、女ちゃん!」
女「そんなこと…ないよ…!」
女友「そっかぁ…残念♪」すりすり
女「やっ…いつまで触ってるの…!?」
女友「女ちゃんが気持ちよくなってくれるまで♪」
女「やめて!はなしてよぉ…」ばたばた
女友「だーめっ♪」ぎゅっ
女友「あれ?足触ってるだけなのに可愛い声が出ちゃってるよ…?」
女「ちっちがうっ…!」
女友「」さわさわ
女「っっ…!!」
女友「あっ、こんどはびくってなった♪」
女「…」
女「……」
女友「」さわさわ
女「っっ…!!」
女友「わかったっ
女ちゃんって太ももの内側さわられると、気持ちよくなっちゃうんだ♪」
女「…」
女友「他のところだとがまんできるのにねー♪」くすくす
女「……」
女友「そしたら毎日逝かせまくって…そのあとこうやって優しくしてあげられるよ?」
女「いやっ…!なにいってるの…!?」
女友「」さわさわ
女「っ……!!」
女友「あんなに元気がよかったのに、私に触られてだけでおとなしくなっちゃうなんて
女ちゃん可愛すぎるよ…///」
女「…」
女友「ねえ?女ちゃん見てたら私こうふんしてきちゃった…///」
女友「キス…してもいい?」
女「だっダメに決まってるでしょ…!何考えてるの…!?」
女「…」
女友「今までだってさんざん恥ずかしい事私にされちゃったんだから…」
女「……」
女友「どうしてもダメ…?」
女「ダメ…!」
女友「そのあといっぱい気持ちよくしてあげるって約束しても?」
女「ダメ…!!!」
女「…」
女友「じゃあ…耳の中に舌入れて舐めるだけ!これならいいでしょ?」
女「ダメ…」
女友「どうしてもダメ…?」さわさわ
女「ダメっ…!お願いやめてぇ…!!!」
女友「もうっ…
だけどこんなに可愛い声で涙目になられながらお願いされちゃったらしょうがないか…」
女友「せっかく女ちゃんの味が堪能できると思ったのに…」
女「なっ何やってるの…!?」
女友「何って…耳の回り噛んでるだけだけど?」
女「やめてよ…!」
女友「えーっいいじゃない
だって私、キスもさせてもらえなかったし、耳の中も舐めさせてもらえなかったんだよ?
これくらいやらせてくれたっていいじゃない♪」
女「やめて!くすぐったいよ…!!」
女友「あれ?くすぐったくって気持ちがいいの?」
女「…!そんなの事…!!」
女友「そっか。残念」
女友「じゃあ…このままじゃ女ちゃんが可哀想だから、気持ちよくさせてあげる♪」さわさわ
女「っっ…!」
女友「こらっ暴れちゃダメでしょ?」ぎゅっ
女「いやっ…!」
女友「もう…いくらベットに縛り付けられてないっていっても
両手と両足縛られてるんだから逃げられるわけないのに…」
女友「あんまり暴れると、また恥ずかしい格好させてローターまみれにして放置しちゃうよ?」
女「っっ…!!!!」
女友「もう…そんなに怖がらなくってもいいのに…」なでなで
女「…」
女友「そうだ!女ちゃんが私に完全に堕とされちゃったら、
こんどは放置しないであの状態のまんま一番気持ちいいところも触ってあげる♪」
女「……」
女友「それならいいでしょ?」
女「絶対イヤぁ…!」
女友「そっか。残念♪」
シてあげるけど♪」
女「やめて…!」ふるふる
女友「じゃあ、堕とされないように頑張ってね♪
私的には、はやく女ちゃんにいっぱい気持ちよくなってもらって、
逝きまくりながら可愛い声であんあん言ってるとこ見せてほしいんだけど…」
女「…」
女友「だけど女ちゃんがイヤって言うならしょうがないよね…」
女「…」
女友「あっだけど私に逝かされまくりたくなったらいつでも言ってね?
すぐに壊れちゃうほど気持ちよくさせてあげるから、ね?」
女「…」
また必死に声出すのをがまんしてる女ちゃんを堪能しようかな?」
女「…」
女友「私的には女ちゃんが暴れまくって、睡眠薬を無理矢理飲まされちゃって、
またローターまみれにされて私の水着を汚しちゃうって展開もよかったんだけど…」
女友「やっぱり女ちゃんが必死に抵抗してるところは今のうちに見ておかないと後で後悔しちゃいそう…」はむはむ さわさわ
女「っっ…! っっ…!!!」
女友「くすっ♪」
女「はぁ…はぁ…」
女友「おつかれさまー
必死にがまんしてたから、疲れたでしょ?」
女「…」
女友「服の上から触ってあげたり、足触ってあげたり、耳噛んであげたりしただけなのに、
すごく汗かいちゃってるよ?」
女「……」
女友「あっ だけどトイレ行ったりお水飲んだりするとき以外はずっと触られてたんだからしょうがないかな…?」
女友「じゃあ、夕ご飯作ってきてあげるから、ちょっと待ってて?」
女友「こんどは逃げられないように両手縛ってるところとベッドの端を結んでおいてあげるから…
逃げちゃダメだよ?」
女「…」
台所近くだから、のどかわいたりトイレ行きたくなったら言ってね?」
女「うん…」
女友「お食事が終わったら、お風呂はいる前にもう一回体中の匂いかがせてね?」
女「いっいやっ…」
女友「えーっ
せっかくそのために誰の匂いもついてない新しい服買ってきたんだから嗅がせてよ!」
女「やめて…」
女友「そうだよね!いやがる女ちゃんを押さえつけて、無理矢理匂いかいじゃうってシチュもいいもんね♪」
女「…」
女友「それとも私におとなしく匂いかがれたい?」
女「…」
女友「そっか。じゃあ必死で暴れてるとこ無理矢理押さえ込んでかいであげるね♪
せっかく無理矢理かぐんだから、恥ずかしいところも念入りにかいであげようかな…?」
女「…」
女友「じゃあ、行ってくるね♪」
女友「じゃあ早速…女ちゃんの匂いかいじゃおうかな…」
女「やめて…!」ばたばた
女友「もう…そんなにいやがらなくってもいいのに…
だけどいやがってる女ちゃんを押さえつけて匂いかいじゃうのって…逆にそそる♪」
女「…」
女友「ふふっ。こんどはおとなしくなっちゃった…」
女友「じゃあ、無抵抗な女ちゃんの匂いを、思う存分かいじゃおうかなぁ♪」
女友「何って…スカートめくってるだけだよ?」
女「やめて…!」
女友「えーせっかく女ちゃんのパンツに顔うずめてすんすんしようと思ったのにー!」
女「いやっ…やめてよ!そんな事!!」
女友「スカートめくられるの、そんなにいや?」
女「いやよ…!」
女友「しょうがないなぁ…」
女「いやっ何やって…」
女友「何って…女ちゃんがスカートめくられたくないって言うから仕方なく…」
女「いや…!!」
女友「こらっ暴れちゃだーめ♪」
スカートの中に頭を入れたまま、足を両腕で抱きしめるように押さえる女友
女「いっいやぁ…」
女友「こらっおとなしくしてっ!」
女友「くすっ…女ちゃんのここ、すごくいい匂いだよ…?」
女「やめてぇ…」
女「だめっ…やめて…!!」
女友「何で?すごく汚れちゃってるよ?」
女「…」
女友「一回だけかるくぺろっって舐めるだけ。それでもダメ?」
女「ダメっ…!!」
女友「えーっ女ちゃんの汁の味、絶対甘くて美味しいと思うのに…」
女「いやっ…!!!」
女友「だって昨日も今日も、ローターについた汁舐めさせてもらえなかったんだよ?
ずっとお預けにされてたんだから、そろそろ舐めさせてくれたっていいじゃない♪」
女「だめっていってるでしょぉ…!!!」
女「…」
女友「じゃあその代わり、もっと匂い嗅がせてね?」すんすん
女「っっ…!」
女友「あれ?ぴくってなったよ?」すんすん
女「…!!っっ…!」
女友「またぴくってなった…。私に匂い嗅がれて、嬉しかったんだ…」すんすん
女「……っっ!!」
女友「くすっ…」
女(うぅ…すごく、はずかしい…)
女(女友ちゃんにこんなところの匂いかがれてるなんて…)
女(だけど…なんだろう…腰のあたりがちょっとあつい…)
女友「ねぇ?パンツのしみがだんだん広がってきて、甘い匂いもどんどん強くなってきてるけど…
もしかして私に匂いかがれて興奮しちゃってる?」
女「してない…してないよぉ…」
女友「びくびくしながら可愛い声出しちゃって…
もっと可愛い声ききたいから、もっと嗅いじゃお♪」
女「いや…そんなところで喋らないで…!」
女友「分かった、私の息がくすぐったいんでしょ?」
女「ちっちがうよぉ…!」
女「もう…っっ…!やめてぇ…!!」
女友「あれ?どうしたの?そんな切羽詰まった声だして…?」すんすん
女「いやぁ…お願い…ゆるしてぇ…っっ…!!!」
女友「くすっ…そんなにびくびくしちゃって…甘い匂いこんなに出してる…」すんすん
女「いやっ…!!いやぁ……!!!」ビクビクッ
女友「あれ?どーしたーの??」
女「……」
女友「もしかして今、逝っちゃった?」
女「そんなこと…ないっ…」
女友「そっか。残念。
匂いかがれただけで逝ちゃう女ちゃんも見てみたかったんだけどなあ」すんすん
女「もう…やめてぇ…」
女友「しょうがないなぁ…じゃあもうちょっとだけかいだらここはもうおしまいにしてあげる♪
だから他のところも嗅がせてね?」
女「…」
女友「じゃあ、女ちゃんの匂いも堪能したいそろそろお風呂はいろっか♪」
女「…」
女友「じゃあこれ飲んで?」
女友「今日は私に脱がされるのがいい?
それとも私にじっくり見られながら脱ぐのどっちがいい?」
女「…」
女友「じゃあ、今日は脱がせてあげる♪
ほら、ばんざいして?」
女「…」
ワンピースを脱がせてあげる女友
女友「女ちゃんってやっぱりすごく奇麗な体してる…
ねぇ?今すぐここで体撫で回してもいい?」
女「だめっ…!」
女友「どうせお風呂で体洗ってもらうときに撫で回されちゃうんだから、結局同じだよ?」
女「いや…」
女友「そっか。残念♪」
女「…」
女友「そうだ、媚薬が入ってるボディソープと入ってないボディソープあるけどどっちがいい?」
女「入ってない方…」
女友「くすっ…ちょっとだけ弱々しい声って事は…
本当は媚薬入りが良かったんだけど恥ずかしくって言えなかったんだ…」
女友「じゃあ、可哀想だから媚薬が入ってる方で洗ってあげるね?」
女「やめっ…っっ…!!」
女友「石けんがついた手で、全身撫で回されるの気持ちいい?」
女「気持ちよくなんてない…よぉ…」
女友「だんだん声が弱々しくなっちゃってる…可哀想…
だけどこうなっちゃったら、堕とされちゃうのも時間の問題かな?」
女「っっ…!」
女友「もう…私しかいないんだからがまんしないであんあん言っちゃっていいのに…
ここはお風呂場だから、ここであんあん言っちゃたら、外に聞こえちゃうかもしれないけどね♪」
女「…」
女友「女ちゃんが可愛くおねだりしさえしてくれれば、いくらでも逝かせてあげるよ?」
女「いや…」
女友「そっか。じゃあ頑張ってね♪」
女「うぅ…」
女(どうしよう…このままじゃ本当に女ちゃんに堕とされちゃうよ…!)
女「…!」
女友「じゃあ、シャワーかけてあげるね?」
立ち上がって、わざとシャワーを高い位置にもっていって、女にみずをかける女友
女「あっ…ああっっ…!!」
女友「ふふっ…女ちゃん可愛い…///
体の感覚が敏感になってるから、ちょっと高いところからシャワーかけられただけですごく気持ちいでしょ…?」
女「んんっ……ぁぁぁぁ…」
女「ぁぁぁぁ…」
女友「ほら?ちゃんと前向いて?」
女の体を前に向ける女友
女友「じゃあ、シャワーかけてあげるね?」
女「……!!!っっっ…!」
女友「どう?すごく気持ちがいいでしょ?」
女「…ぃ…ゃ…」
女友「くすっ…可愛い声♪」
女友「ねぇ?もっとその可愛い声聞かせて?」
女「ぁぁぁぁ…」
女友「女ちゃん大丈夫…。そんなに気持ちがよかったんだねっ」
女「……」
女友「だけどその格好…すごく可愛いよ?」
女友「ほら、またシャワーかけてあげる」
女「ぁぁぁぁぁ…んんんぁぁ…」
女友「恥ずかしい格好しながら恥ずかしい声出しちゃってる女ちゃん…すごく可愛い…///」
女「っっっっ…!!」
女友「ねぇ?」
女「んんっ…!!」
女友「このまま逝かせてあげようか?」
とつぜんシャワーを止める女友
女「えっ…?」
女「…」
女友「私も昨日からずっと監禁されて、いろいろ恥ずかしい事されちゃって、
お風呂場で媚薬を体中に塗られて、だんだん私に抵抗できない体になっていっちゃう女ちゃんを
逝かせられたらすごく嬉しい…」
女友「ねぇ?『逝かせてくださいっ』ってお願いするだけで気持ちよくしてもらえるんだよ?」
女「いや……」
女友「えー。もしたった一言『逝かせてくださいっ』って言ったら、
全身をシャワーで責めながら、私の指でちょくせつ気持ちがいいところ弄って逝かせてあげられるのになぁっ♪」
女「やだ…やだよぉ…」ふるふる
女友「そっか。残念♪
この様子だと、もうちょっとだと思うんだけどなぁ…」
女「…っ!」
女友「怖がらなくっていいよ?絶対に逝かせたりしないから」
女「…」
女友「あれ?ちょっと切なそう…」
女「そっそんなことないよ…!」
女友「そっか。じゃあ軽く洗ってあげる」
女友「うーんやっぱりなかなか取れないなぁここの石けん♪」
女「…」
女友「ねぇ?手で直接触って洗っちゃダメ?」
女「だめっ…!」
女友「そっか。女ちゃんがいやだって言うならしょうがないよね」
女友「だけど触ってほしくなったらいつでも言ってね?
女ちゃんが可愛い声で『もういやぁ』って涙目になりながら可愛い声を出しちゃうくらい
いっぱい触ってあげるから♪」
女「…」
女「…」
女友「じゃあ先に湯船に入ってて?」
女「うぅ…」
女友「どうしたの?もしかして湯船に入るとくすぐったくなっちゃうのが嫌なの?」
女「うん……」
女友「大丈夫。あんまりくすぐったくないように、今日はお湯少なめにしておいたから」
女「…」
女友「ほら。からだ支えててあげるから入って?」
女「うん…」
ちゃぽん
女(なにこれ…お湯がとろとろしてる…しかも…よく見ると薄いピンク色…?)
女友「ごめん、女ちゃんって入浴剤嫌いだった?」くすくす
女「なっなによこれ…!?」
女友「何って…見ての通り入れるとお風呂の水がとろとろになる入浴剤だけど…」
女友「全身敏感になっちゃてる女ちゃんには、ちょっと刺激が強すぎたかな…?」
女「っっ…」
女友「じゃあ、私も体洗うからちょっとまっててね?
そしたら一緒に入って、その中でいっぱい楽しもうね♪♪」
女「…!!」
女(だけどやっぱり女友ちゃんずっとこっち見てるから一人で逝けない…!)
女友「ん?シャワーの水欲しいの?」
女「っっ…!!」
女友「もうちょっとで一緒にはいってあげるから、もう少し待っててね?」
女(こんな状態で襲われたら断れないかも…)
女(って私は何考えてるの…)
女(どうしよう……このままじゃ本当に女友ちゃんに…)
女友「おまたせっ」
ちゃぽん
女「っっ…!」
女(水がくすぐったい…)
女(こんな事ならもう思い切って好きにして…って言っちゃうかな…そのほうが楽に……)
女(だけどやっぱりイヤ…!!)
女友「あれ?女ちゃんどうしたの?そろそろ観念しちゃったとか?」
女「ちがうよっ…」
女友「『私にだったら好きにされていいかなー』って思っちゃったとか?もう、女ちゃんって本当に可愛いなぁ!」だきっ
女「ちっちがうって言ってるでしょ…!!」
女友「ほんとうかなぁー」
女「っ…!」
女友「別に気持ちがよくないんならいいよねー?」
女「そんなっ…!」
女友「じゃあ、いくよー?」くすくす
女「っっっ…!!!!」
女友「必死でがまんしてるんだ…だけどもう、時間の問題だよ?」さわさわさわさわ
女「ぁぁぁぁぁ…!!」
女友「大丈夫。女ちゃんよく頑張ったよ!
監禁されてから2日、ずっと私に責め続けられてたのに心が折れなかったもんね♪
だからもう、楽になっちゃっていいんだよ?」
女「……っっ!!」
女友「あっ、女ちゃんの胸ってすごく柔らかいんだね…
ずっと触りたかったんだけど…服の中に手入れられるのいやがるから…」
女「ぁぁ…」
女友「ほら…胸の真ん中にある、ちいさくって可愛いふくらみも触ってあげるから…」
女「いやっ…やめ……てぇ…!!!」
女友「えーっダメ?しょうがないなぁ…
じゃあ太ももでがまんしてあげる?」
女「…!っっ…!!」
女「そんな事…あぁっ…!」
女友「私ね、こんな風に女ちゃんのことを、堕としてあげるのがずっとゆめだったんだ…///
そのゆめがもうちょっとでかないそうなの…」
女「やめて…もうやめてよぉ…!!」
女友「じゃあしょうがないなぁ…そんなに抵抗するんなら…」
女「…っっ!」
女友「一回だけ唇にキスしていい?大丈夫。舌入れたりしないから♪」
女「いやぁ…」
女「あぁっっ…!」
女友「そのまま逝かされまくっちゃう方がいいかな…?」さわさわさわさわ
女「んんっっ…!!」
女友「大丈夫だよ。力が入らなくなる薬のまされて、体中に媚薬塗られて、
とろとろのお風呂に入れられて、全身さわさわされちゃって堕とされったんらなしょうがないよ」さわさわさわさわ
女「ひゃぁ…!!!!」
女友「また可愛い声出しちゃったね…♪
じゃあもっと出させてあげようかな…?」
女「いやだぁ…!!」
女友「こらっ逃げようとしちゃだーめ♪どうせ力が入らなくって逃げられないんだから…」ずいっ
女「うぅぅ…」
女「…」
女友「キスしてお風呂からでる…?それとも力が入らなくなる薬が切れるまでさわさわされ続ける…?
もちろんさわさわされ続けて堕ちちゃったら、そのまま逝かせまくってあげるけど?」
女「薬って…どれくらいで切れるの…?」
女友「うーん。あと30分くらいじゃないかなぁ」
女(それなら…がまんすれば何とかなりそう…!)
女「いやっ…キス…したくない…」
女友「そっか。じゃあ全身触ってあげるね♪」
女「っっ…!!ぁぁぁぁああ!」
女(気持ちいい…)
女(だけどあと30分くらいがまんすれば逃げられる…!)
女友「ふふっ頑張ってね?女ちゃん?」さわさわさわさわ
女「ぁぁぁぁあああ…!」
女(どうしよう…触り方がどんどん激しくなってる…)
女(普通のところ触られてるだけなのに、すごく気持ちがいい…!!!)
女「ひゅっ…!」
女友「『ひゅっ』ってなあにー?必死であえいでるの隠そうと思って、おもわず声が出ちゃったの…?」さわさわさわさわ
女(あぁぁぁ…気持ちいいよぉ…)
こんな調子なら、30分経ったら、体、どうなっちゃってるんだろうね?」さわさわさわさわ
女「いやぁぁぁ…ぁぁぁぁ…!」
女友「だけど、逝っちゃダメだよ?逝っちゃったら、私に堕とされちゃったってことだから、そのまま逝かせまくっちゃうからねー?」さわさわさわさわ
女「……!!!っっっ…!!」
女友「くすっ…可愛く必死に抵抗してるところ…もっとよく見せて?」さわさわさわさわ
女「もうだめぇ…ゆるしてぇーー!!」
女友「『ゆるしてぇー』だって♪女ちゃん可愛い♪」さわさわさわさわ
女「あぁぁぁぁぁぁああああ…!!」
女(いやだぁ…!!女友ちゃんに逝かせられたくないよぉ…!!!)
女「っっっ…!! ぁぁぁぁぁ…」
女友「じゃあ、キスさせてくれたら止めてあげる♪♪」さわさわさわさわ
女「ぅぅ…」
女友「私はどっちでもいいんだよ?
女ちゃんの唇の感触が味わえるのも、堕ちていく女ちゃんが味わえるのも、どっちも嬉しいから…」さわさわさわさわ
女「んぁぁ…! …してぇ…」
女友「なぁーに?聞こえないーい?」さわさわ
女「キス…して…」
女友「もう…本当に可愛いんだからーっ」チュッ♪
女友「じゃあ…約束通り許してあげる♪」
女「うぅ…」
女友「ほら、湯船から出してあげる。そしたらかるくシャワーで流してあげるから」
女「…」
女友「うんっやっぱりそのパジャマに合ってる♪」
女「…」
女友「可愛いパジャマで私のベットに両手両足をベットの4墨に縛られてる女ちゃんって…
すごくそそる…///」
女友「ねぇ…今すぐ襲っていい?」
女「だめ…」
女友「くすっ…冗談よ♪」
そう言いながら自分もベットに横になって、女を抱きしめる女友
女友「もう少しで逃げられると思ったのにねー♪」
女「……」
女友「私的にはあそこで女ちゃんが逝かされちゃってもよかったんだけどねーっ」
女友「じゃあ、今日はそろそろ寝よっか?」
女「んんっ…!」
突然、女の口に睡眠薬を入れる女友
女「」zzz…
そう言いながら、寝ている女の足のあいだにローターを入れてスイッチを入れる女友
女友「うんっ これでよしっと。いい夢見てね?女ちゃん?」おでこにチュッ♪
女友「じゃあ、おやすみなさい」
そのままベットに横になって、女を抱きしめてねむる女友…。
―――監禁2日目。 おしまい。
ここまで読んでくださった方、支援してくださった方、
本当にありがとうございました!!
Entry ⇒ 2012.08.20 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
女友「女ちゃんを監禁して死ぬまで逝かせ続けたい」女「」
女友「あっ気がついた?」
女「というか、何で私ベットの上に寝てるわけ…?」
女友「大丈夫。それ、私のベットだから。」
女「そういう問題じゃなくって…! っ…! なんで私縛られてるの!?」
女友「だってそうしないと女ちゃんを思う存分堪能できないないじゃん♪」
女「えっ…ちょっと?何言って…!?」
女友「大丈夫。女ちゃんの心も体も、全部私の物になっちゃったらちゃんと解放してあげるから、ね?」
女「…!!」
みたいな。
女「ちょっと…!やめてよ…!」
女友「ふふっ」さわさわ
女「いやっ…ちょっとこれほどいてよ…」
女友「女ちゃんって、とっても柔らかいんだね…///」さわさわさわさわ
女「ちょっと!変な所に手入れないでよ!」
女友「えーっいいじゃん♪」
女「やめて!!」
女友「女ちゃんの手触り凄くいいのに、もったいないよ」
女「いやっ…!」
女友「あっわかった、服の上から触られるのが好きなんだ♪そっちの方が、恥ずかしくないもんね♪」
的な。
女「だからやめてって…!!」
女友「ふふっ…女ちゃんが必死にもがいてる…いくらもがいても逃げられるわけないのに…///」さわさわ
女「はなし…てっ…!」
女友「すごい…服の上からでも女ちゃんの手触りとあったかさがすごく伝わってくるよ?」さわさわ
女「いやっ…だれかっっ…!!!」
女友「可愛い声♪」さわさわ
女友「だけどいくら可愛い声出したって、誰も来ないよ?だから安心して、もっと可愛い声聞かせて?」さわさわさわさわ…
とかさ。
女友「あれ?今ちょっとだけぴくっってなったでしょ?」
女「なっ何言ってるの…!?」
女友「もうっ素直じゃないんだからぁ♪こんなに可愛いんだから素直になっちゃえばいいのに…♪」
女「…。」
女友「そうすればもっと気持ち良くしてあげるのに…
あっ、女ちゃんの胸ってすごく柔らかいんだね。」
女「なっ何やってるの…!?」
女友「胸を触ってるの♪ ふふっ…見れば分かるのに…そんなに言ってほしかったの?」
女「そんなわけないでしょ…!」
女友「もうっあんまり抵抗してると、私に抵抗できない体にしちゃうよ?」
女「っ…!」
女「なっ何言って…!?」
女友「だって、体だけ抵抗できなくなっちゃって、『もういやぁ』って言いながら
私に無理矢理逝かされまくってる女ちゃんもすごく可愛いし…」
女友「心も体も抵抗できなくなっちゃって、『もっとシてぇ』って言いながら
私に幸せそうに逝かされまくってる女ちゃんもすごく可愛いと思うから…///」
女友「ねぇ?女ちゃん的にはどっちのシチュがいいの?」
女「どっちも絶対イヤっ!!」
女友「くすっ 女ちゃん、可愛いっ♪」
とりあえずいっぱい触ってあげる♪」
女「なんでそうなるの!?」
女友「だって…今必死に抵抗してるのは、私にすこしづつ、時間をかけて堕としてほしいって事なんだよねっ」
女「意味が分からないんだけど!」
女友「もうっ必死で抵抗しちゃって本当に可愛いんだから…///
抵抗できなくなっちゃった時が本当に楽しみ…。」
女「…。」
女友「じゃぁまたあちこち触ってあげるね?時間はいくらでもあるんだし…。」
女「!」
女友「だって女ちゃん、私に監禁されちゃってるんだから♪
私が縄をほどいてあげるまで、ずっとこのままなんだよ?」
女「…。」
女友「ふふっ…女ちゃんが観念しちゃったところで…また体を触りまくってあげたらどうなるのかしら♪」
女「……。」
女友「あれ?ちょっとおとなしくなっちゃった?」
女「そんな事…!」
女友「もしかして、『あれ…だけどちょっと気持ちがいいかもー』とか考えちゃってるのかな?」さわさわ
女「そんなこと…ないからっ…!!」
女友「声がちょっとだけ震えてる…?必死に抵抗してるんだね♪
いいよ?もっと頑張って抵抗して?だって、必死に抵抗してる女ちゃん、すごく可愛いんだもん♪」
女友「…女ちゃんの足ってすごくすべすべしてて奇麗だね…」さわさわさわさわ
女「っ…!やめて!!」
女友「あれ?いままでずっと大人しくしてたのに…」
女「…。」
女友「」さわさわさわさわ
女友「…っ!!」
女「あれ?どうしたの?」
女友「…。」
女「…ちがぅっ!!」
女友「あせってるあせってる♪」
女「…。」
女友「もう…本当に可愛いんだから…///」すりすり
女「…っ!!」
女友「もうっ女ちゃんって本当に可愛い…!
必死に我慢してるのにたまにぴくってなっちゃうところとか…」
女「……。」
女「…。」
女友「そうだ、ここにしよっと♪」さわさわ
女「ちょっと…何考えてるの…!?」
女友「何って…?足の間触ってるだけだけど…?」さわさわ
女「やめなさいっ…! っ…!」
女友「ふふっ女ちゃんのここ、あったかいんだね♪ズボンの上からでもあったかさが伝わってくる…。」さわさわ
女「いやっ…やめて…!」
女友「あれ?いまちょっと体が反応しちゃった?」
女「しっしてないよ!!」
女友「そっかぁ残念だなぁ…
女ちゃんが切ない気分になってるなら、もっと気持ちよくしてあげられたのになぁ」(上目遣い
女「なってないよっ…!」
女友「ほんとにー?」さわさわ
女「ほんと…よ!」
女友「そっかぁ…残念♪」
女「…。」
女「…。」
女友「大丈夫。女ちゃんに食べてもらおうと思っていっぱい練習したから♪
あ、女ちゃんは縛られちゃってて手が使えないから…私が食べさせてあげるね♪」
女友「だけど…本当にそのまえに逝くかせてあげなくって大丈夫?体、ちょっと熱くなってきてるよ?」
女「だ、大丈夫よ!」
女友「そっか♪じゃあしょうがないね。
あ、台所すぐそこだから、トイレとか行きたくなったら呼んでね?連れて行ってあげる。
もちろん暴れられないようにその前に体に力が入らなくなる薬を飲んでもらうけど。」
女「…。」
女友「もちろん、口移しで飲ませてあげるから期待しててね♪」
女友「せっかく女友ちゃんがいい感じになったのに、このまま何もしないのはもったいないわよね…。」
女「なっ何もしなくていいわよ!」
女友「だーめ♪せっかく捕まえたんだから、思う存分女ちゃんを堪能しなきゃ損でしょ?」
女「…!」
女友「大丈夫。すぐに終わるし絶対に触ったししないから。だから、ね、いいでしょ?」
女「本当に…!?」
女友「うんっ可愛い女ちゃんを騙したりなんかしない。
…あっでも…騙されてそのままあんあん言わされちゃう女ちゃんも可愛いか…」
女友「ごめんっ今のなし!!」
女友「だけど今回は本当!ちょっとだけ服に手を入れるだけ!それならいいでしょ?」
女「うっうん…」
女友「ふふっやったぁ!」
女「ちょっどこに手入れてるの…!?いやっパンツの中に手、入れないで…!!!」
女友「はいっおしまい♪ね?ちょっとだけだったでしょ?」くすくす
女「ちょっと…これ…まだ何か入って…!?」
女友「じゃっスイッチオンっと…」
ブブブブブ…
女「…!!!」
女友「じゃっ美味しい手料理作ってきてあげるから楽しみにしててね?」
女(だけどここで声を出したら……!!!)
女「…っ!……んっ……」
女(そんなに強く震えてないから逆にすごくもどかしい…!)
女「ああぁ……ん………。」
女「女友ちゃん…?これ…取ってよ…!!」
女友「あれ?もしかして取ってもらえないと気持ちよくなっちゃって困るの…?」
女「…!」
女「…そんなこと…ないよ…!! ぁぁっ…!!」
女友「そっか♪残念♪」
女「それより……夕ご飯…できたの……?」
女友「ううん、まだ。ちょっと忘れ物しちゃって戻って来たの。」
女「…?」
女友「はいっこれっ。
女(目隠し…!?)
女友「さっきなんとなく思いついたの♪これつけたあげた方が女ちゃん喜んでくれるんじゃないかなって♪」
女「やっやめて…!! ぁぁぁ……。」
女友「いま、付けてあげるね♪」
女「ぁぁぁ…」
女友「何も見えない方が気持ちいいでしょ?」
女「そんなこと……。。。」
女友「すごく切なそうな声♪
それに、目隠しをされたまま縛られてる女ちゃんって…すごくそそる…///」
女友「このままめちゃくちゃに襲っちゃたいくらい…。」
女(うぅ…ここで襲ってもらえれば私は嫌がってるのに無理矢理ってことに出来るかも…。)
女(って私はなんて事を考えて……!!!)
女友「だけど、女ちゃんが嫌ならしかたないよね♪」
女「……。」
女友「じゃあ、夕ご飯の続き作ってくるね♪後一時間くらいかかるから、それまでゆっくりしててね?」
女友「大丈夫。その強さなら勝手に逝っちゃう事もないはずだし。」
女(…!!)
女友「じゃぁ、ばいばいっ」
女友「おまたせー♪
オムライス作ってきたから、一緒に食べよ?」
女「ぁぁぁ…んんっっ……」
女友「あれ?どうしたの?そんなにはぁはぁしちゃって…?」
女「なんでも……ないよぉ…」
女友「もうっこんなにはぁはぁしちゃって♪本当に可愛いんだから♪♪」
女友「そんなにはあはあしちゃってたら食べられないからこれ、いったん切ってあげるね。
目隠しも外してあげる。」
女友「あんなに気持ち良さそうにしてたのに…
それに、涙目になりながら『ひどいよぉ』って…女ちゃん、可愛すぎ♪」くすくす
女「…。」
女友「そんなに可愛い顔で私を誘惑すると…またスイッチ入れちゃうよ?」
女「……。」
女友「あれ?否定しないの?もし入れて欲しいんなら、今度はもっと強くしてあげるよ?」
女「ぃっ…ぃゃ…。」
女友「そっか♪残念♪♪」
女友「だけどあお向けじゃ食べられないから、体起こせるようにしてあげる。」
手を縛っている縄を外して、女の体を起こして、すぐに後ろで縛る女友。
女友「くすっ…体に力が入れば手が自由になったときに逃げられたかもしれないのにね♪」
女「うぅ…。」
女友「うん。上手く作れたかも!じゃあ女ちゃんにも食べさせてあげる。」
女「…。」
同じスプーンでオムライスをすくって女の口元に持って行く女友。
女友「はいっあーん♪」
女「」ぱくっ。
女「おいしい…」
女友「ありがとう!
くすっ…これから毎日ご飯作って食べさせてあげるからね♪」
女「…。」
女友「女ちゃんは絶対に私から逃げられないのに…可愛そう♪」
女「そんなぁ……。」
女友「そんな悲しそうな顔しないで?また気持ちよくしてあげるから。ほらっ♪」
スイッチを入れる女友
女「…! ぁぁ…!!」
女友「うん。とっても気持ちよさそう♪」
女「やめてぇ…。」
女友「可愛い声♪こんなに可愛い声を聞きながらお食事ができるなんて…!
ほら、あーんして…?」
女友「ごちそうさま♪ひっしにあんあん言うのを我慢してる女ちゃんに同じスプーンで食べさせてあげながら
たべる夕ご飯…とっても美味しかったよ♪」
女「あっあの…トイレ……行きたいんだけど…。」
女友「分かった、ちょっと待ってて?」
女友「じゃあこれ飲んで?」
女「…これっ…なに…?」
女友「力が入らなくなる薬♪暴れられたら困るでしょ?大丈夫。トイレに行く時は肩かしてあげるから。」
女「……う、うん…。」
薬を飲む女…。
あ、これは取ってあげるね。」
女「んっ…」
女友「くすっ…こんなにとろとろになってる…
気持ちよかったんだ♪」
女「ちっちがうよ…!」
女友「ねぇ?この汁舐めてもいい?」
女「だっダメ…!!」
女友「そっか。残念。やっぱり直接舐めた方が美味しいもんね。」
女「…。」
女友「じゃあ連れて行ってあげる。」
女「うっうん……。」
女(…!)
女友「でもよく考えたら…手後ろに縛られたままだっけ?
じゃあ、水流したりウォッシュレットスイッチ押したりはできるけど…逝けないか♪」くすっ
女「……。」
女友「あれ?もしかして逝きたいの?もし可愛くおねだりしてくれたら、いますぐ逝かせてあげてもいいんだよ?」
女「いい…。」
女友「そっか。残念♪ じゃあトイレから出たら一緒にお風呂はいろっ♪私が洗ってあげるから。
その体じゃ、自分で洗うの大変でしょ?」
女「うっ…うん…。」
女友「じゃあ脱がせてあげる♪」
女「いやぁ…」
女友「だって、力はいらないんだから脱ぐの大変でしょ?」
女「い、いいよ…。」
女友「そっか。じゃぁ自分で脱いでいいよ。」
女友「女ちゃんって上から脱ぐんだ…」
女「ちょっと…見ないでよ…!」
女友「見ないでって…学校のプールの着替えの時とかいつも見られてるじゃない。
それとも…私に見られると興奮しちゃう?」
女「ちっちが…!」
女友「女ちゃんって可愛い下着つけてるのね…無防備な腋もすごく奇麗…」
女「…!」
女友「あっあかくなってる。可愛い♪」
女「…。」
女「っ…!!!」
女「なんでもないよ…。」
女友「ってことは…その下はどうなってるなかな…?」
女「…。」
ちょっと待て、何のだよwww
>>82は女なんだろ。あとは察してやれ
あっ、だけど、力はいらないからフォック外すのはちょっと大変かな?
じゃあ取ってあげる。」
女「えっ…ちょっと…!」
女友「奇麗な胸…もっとよく見せて?」
女「いやっ…」
女友「いいじゃない。お風呂に入ったらどうせ見られちゃうんだから。
そんな事より、はやくパンツも脱がないとお風呂に入れないでしょ?」
女「…。」
パンツを脱ぐ女…
女友「くすっ…トイレで洗ったはずなのに、まだ汚れちゃってるんだ♪」
女「うぅ……。」
女友「大丈夫。ちゃんとお風呂で奇麗にしてあげるから♪」
女友「じゃあ…ここ座って?」
女「うん…」
女友「じゃあボディソープ付けてあげるから、じっとしててね?」
女「あっ…!」
女友「くすっ…気持ちいの?ボディソープ塗ってるだけだよ…?」
女「そんな事ないよ…。」
女友「女ちゃんって本当に柔らかいんだね…」さわさわ
女「ああっ…」
女友「じゃあ、ちょっとだけお尻浮かせて?」
女「…!!」
女「ちょっと…!!どこ洗って……!?」
女友「どこって…お尻だけど?
ここもきれいにしておいた方が、お風呂から上がった時にいろいろ便利だし♪」
女「何考えて…んんっ…!!」
女友「」くすっ…
女「そこは自分で洗うよぉ…」
女友「だーめ♪
大丈夫。ちゃんと気持ちよくなるように洗ってあげるから♪」
女「んんっっ…!!!」
女友「あれ?いますごくびくっってした?そんなに気持ちよかったの?」
女「」ふるふる
女友「そっか。もし気持ちがよかったんならこのまま逝かせてあげようとおもったのに…
残念♪」さわさわさわさわ
女「…!!…っっっ!!」
女友「必死で我慢してるんだ…そんなに私に逝かされちゃうのが嫌なの…?
どうせ逃げられないんだし、もう時間の問題だし、私に堕とされちゃった方があとあと楽だと思うんだけどなぁ」さわさわさわさわ
女「っっっ…ぁぁぁ……。」
女「はぁ…はぁ…」
女友「あれ?どうしたの?
もしかして観念しちゃった?」
女「ちが…うよ…。」
女友「そっか♪じゃあシャワーかけてあげるね」
女「う、うん…」
女友「よかった。」
女友「…さて、これでだいたい流れたかな?
あれ、だけどまだ一カ所だけぬるぬるしてる…」
女「…!!」
女友「ごめん、ちゃんと洗えてなかったみたい。
今きれいにしてあげるね♪」
女「…。」
女友「あれ…どうしたのー?」
女「なんでも…ないよ…」
女友「もしかしてこのぬるぬる、石けんじゃないの?」
女「石けんだよ…」
女友「そっか。じゃあ体に良くないから、石けんが取れるまで洗ってあげないと行けないよね♪」
女「んん…っ…」
女友「んーなかなか取れないなぁ石けん。もっとごしごし洗わないとダメかなぁ?」
女「やめてぇ…!」
女友「切なくって可愛らしい声出しちゃって…
だけどそんな声でお願いされたらしょうがないか…」
女「んん…ぁぁ……」
女(どうしよう…気持ちがいい…)
女(いっそこのまま逝かせてもらおうかな……)
女(たぶん女友ちゃんならお願いすればすぐに逝かせてもらえる…!)
女友「はいっおしまい♪」
女「……。」
女「なんでもない…」
女友「そっか。なんかしてほしい事があったら何でも言ってね♪
私にできることなら何でもしてあげるから♪」
女「うっうん…。」
女友「もうすぐ堕ちちゃいそうなのに、もうちょっとってところで素直になれない女ちゃん可愛い♪」
女「……。」
いったんここまでという事で…
とりあえずここまで読んでくれた方、保守してくれた方、ありがとうございました!
女「うん…」
女友「そっか、力はいらないんだっけ?じゃあ手伝ってあげる」
女「…。」
ぽちゃん。
女友「じゃあ、体洗うから、ゆっくり入っててね?」
女(からだがあついよ…)
女(お風呂の水もくすぐったい…)
女友「あっ、いけない。さっき女ちゃんに使ってあげたボディソープは媚薬入りだから
こっち使わないと…ちなみにちょっとだけ効き始めるのが遅いやつだたから…
ちょうどそろそろ効いてきた頃かなぁ?」にやにや
女「…!」
女(どうしよう…お風呂の水の感覚がすごくくすぐったい…)
女友「ん?女ちゃんもシャワー浴びたいの?いいよー?」
女「っっっっっっ…!!!」
女友「どうしたの?シャワーかけてあげただけだよ?」
女「…。」
女友「もうちょっとで体洗い終わるから、そしたら一緒にはいろ?」
女「……。」
女(そうだ…いまこっそり一人で逝ったら少し楽になるかも…)
女(だけど見られたらおしまいだよね…)
女友「ん?」
女(だめだ…。女友ちゃんずっとこっちを見てる…)
女(きっとお見通しなんだ…)
女(湯船から出て水の感触がなくなれば少しは楽になるかも…!)
女「そうだ女友ちゃん、背中ながしてあげるよ。」
女(…!!)
女(…力が入らなくて出られない…!!!)
女友「あれ?湯船からでたいの?だけど力が入らなくって出られないよね?」
女「…。」
女友「だいじょーぶ。私は一人で洗えるからゆっくり入ってて?」にやにや
女「……。」
どぼんっ
女「っっ!!」
女友「あれ?女ちゃんどうしたの?」
女「…。」
女友「わかった。水が動くとくすぐったいんでしょ♪」
女「…。」
女友「可哀想に…媚薬入りのボディソープを全身に付しみ込ませられちゃったんだから
しょうがないよね?」
女友「ほらっくすぐったいでしょ?」
女の周りの水を、てでわざと動かす女友
女「っっっっ…!!!」
お水、ぬるめなのに汗かいちゃってるよ?」
女友「しかもここもまたぬるぬるになっちゃってるみたい…」さわっ
女「ひゃぁっ!」
女友「あれ?今の声なに??」くすくす
女「うぅ…」
女友「いまとっても可愛い声出さなかった…?」
女「…。」
女友「『ひゃぁっ!』だって…♪」
女「…。」
女「やだぁ…」
女友「いいじゃない♪私女ちゃんの可愛い喘ぎ声聞きたいなっ♪」さわさわ
女「んんんん……ぁぁぁぁぁ……!!!」
女友「あ、がまんしてるがまんしてる」くすくす
女「っっっっ…!!! ぁぁあ!!!」ピクッ
女友「あれ?こんどはぴくってなったよ?
わかった♪ほんとは気持ちいいんだ…♪」
女「うぅ……。」
女友「そんな顔しないで?もう触らないから。
それとも触ってほしくってそんなに可愛くって切なそうな顔してるのかな…?」
女「…!」
女友「いいよ?私今、女ちゃんの汗とかぬるぬるがいっぱい混じったお湯に、女ちゃんと入れててすごくうれしいの…」
女友「ずっとこんなお風呂に入りたかったんだ…♪」
女「もう、やめてぇ…!」
女友「あれ?もうでちゃうの?折角なんだし、もうちょっと入ってようよ?」ずいっ
女「らっ乱暴にしないで…!!」
女(水がくすぐったい…!)
女友「もう。私が力ずくで襲ってるみたいな言い方しないでよ」
女友「…だけどそれもアリね…!」
女友「ねぇ?
女ちゃん的には無理矢理逝かされるのと、『お願い、早く逝かせてぇ!』って状態にされて逝かされるのどっちが好きなの?」
女「どっちも…いや…。」
女友「もぅ。結局は逝かされちゃうんだから好きな方選んだ方がお得なのに…」
女友「あっ いいコト思いついた!ちょっとまってて!」
ばしゃん!
女「っっ…!」
女(女友ちゃんが水から出るだけでくすぐったい…!)
シャワーのノズルを持って湯船に入る女友
じゃぼん!
女「っっっっ!!!!」
女友「じゃあ、これでぬるぬる取ってあげるね♪」
女「いやっ…くすぐったいからシャワーの水かけないで…!」
女友「ほら?これでぬるぬる洗ってあげる♪」
女「ぁぁぁぁ……。」
女(なんかすごくくすぐったい…)
女友「これなら逝く心配はないでしょ?」
女(うぅ…だけど変な感じがする…)
女友「どお、きもちい?」
女「うぅ…」
女(だけど逝かされちゃうしんぱいはなさそう…)
女友「ふふっ…もうちょっとかな?」
女(あれ…この感じって…。)
女(…もしかしておしっこ…!)
女(どうしよう…湯船の中なのに…!!)
女友「あれ?どうしたの?そわそわしちゃって?」
女(うぅ…ここは正直にいうしかないか…(泣)
女友「なぁに?」
女「トイレ…」
女友「おしっこしたいの?」
女「」こく…
女友「じゃぁ、ここでしていいよ?」
女「えっ…」
女友「だって、おしっこ漏らしちゃって、死ぬほど恥ずかしそうにしてる女ちゃん、
絶対可愛いもの♪」
女「やだっ…ゆるしてぇ…!!」
女友「大丈夫。お風呂の中でおしっこ漏らしちゃう恥ずかしい娘は私がもらってあげるから、ね?」
いやぁ…!ぁぁ…!!!」
女友「こらっ湯船の中からでようとしちゃだーめ♪」
女の後ろに回って、足で女の体を挟んで女を押さえたまま、シャワーを押し当てる女友
女友「つかまえた♪」
女「いやっ」ばしゃばしゃ
女「…!」
女友「ほら、暴れるとくすぐったくなってよけいにおしっこしたくなっちゃうよ?
暴れないとシャワーが当たりっぱなしでやっぱりおしっこしたくなっちゃうんだけど…。」
女「いや…」
女友「ほらっ、あきらめて漏らしちゃいなさい♪」
女友「ほら…そろそろ限界でしょ?」
女「放して…でちゃうよ…」
女友「もうっ泣きそうになっちゃって…可愛いんだから♪
いいよ?好きなだけ漏らしちゃって?」
女「いやぁぁ…もうだめぇぇ…」
女友「あーあ漏らしちゃった♪」
女「やだ…見ないでぇぇぇぇ……」
女友「ふふっ女ちゃんのおしっこあったかい…♪」
女「……。」
女友「お風呂の水…ちょっと黄色っぽくなっちゃったね。」
女「…。」
女友「大丈夫。こんな事で私は女ちゃんを嫌いになったりしないから。
それに、ずっとゆめだったんだ…女ちゃんの体液がいっぱい混じったお風呂に女ちゃんと一緒に入るのが。」
女友「私のゆめをかなえてくれて、ありがとっ♪」
女友「じゃあ、10数えたら出よっか?大丈夫。ちゃんとシャワーでながしてあげるから♪」
女「…。」
女友「このお湯は…もったいないけど捨てるしかないかな…」
女友「こんな事ならお風呂を念入りに洗ってから、私は湯船に入らないで女友ちゃんだけ入れればよかったかな?
そしたらこの水飲めたのに…。」
女「…。」
女友「じゃあ、シャワー浴びたら部屋に戻ろうか。肩かしてあげるから♪」
ベットの上に転がされる女…
女友「さてと、もうそろそろ寝る時間ね。」
女友「お風呂上がりだし、飲み物持ってきてあげる。」
女友「だけどその前に…」
女「んっ…んんんんーー!!!!」
女の口に薬を入れて、すぐに口と鼻を塞ぐ女友
女「こくん。」
女友「逃げられないように、もう一回力の入らなくなる薬を飲ませといてあげるね♪」
女「じゃあ、ちょっと待ってて?パジャマとか持ってくるから。」
女「…。」
女友「私の手作りのオレンジジュース持ってきたよ?
あと体につけるクリームとか下着とかパジャマとか…もちろん全部私が使ってるやつ」
女「…。」
女友「じゃあまず、クリーム塗ってあげる」
女「んっ…っっ!!」
女友「もう…普通にクリーム塗ってあげてるだけなのに必死でがまんしてるの…?
ちょっと媚薬が効きすぎちゃったのかな…?」
女「ああっっ……!!」
女友「そんなに気持ちがいいなら、今すぐ逝かせてあげてもいいんだよ?」
女「」ふるふる
女友「そっか。残念♪」
女「…。」
女友「全身に塗り終わったら、こんどは下着とパジャマ着せてあげるね」
女友「私の下着とパジャマを着た女ちゃん…とっても可愛い♪」
女友「それに女ちゃんが、いつも私が着てた下着と服を着てるってだけで…すごく興奮する。」
女友「…ねえ女ちゃん?いますぐ襲ってもいい?」
女「やめて…。」
女友「そっか。残念。」
女友「だけど一週間もしないうちに、女ちゃんは私が『襲いたい』って言ったら、『私をめちゃくちゃにしてぇ』っておねだりするような娘に
されちゃうわけだし…そう考えると貴重な女ちゃんが見られるって事で、これはこれでアリだよね!」
女「……。」
女友「じゃあ最後にジュースを飲ませてあげるね。」
ストロー付きのジュースを、ベットの上で壁に寄りかかってる女の口の近くに持って行く女友
女「おいし…い…。」ぱたん
女友「ごめんっ今度は睡眠薬いれちゃった」
女「すーすー…」
女友「今日はいろいろあったから早く寝かせてあげる♪
明日から毎日ずっと私に弄ばれちゃうわけだし…」
女友「じゃあ、私も女ちゃんを抱き枕にして寝ようかな。」
女友「だけどその前に…朝になったら薬が切れてるはずだから、また手足をしばっておいてあげないとね!」
女友「だってこの娘は…私の可愛いお人形さんなんだから♪」
ローターを女の足の間にいれて、スイッチをいれる女友
女友「これでよしっと
くすっ…気持ちよくなってるのに起きられないって、どんな気分なのかしら?」
女友「私にいろんな事されちゃった後だし…
ゆめの中でも私にいろんな事されちゃったりするのかな…」
女友「ゆめの中でも私にいろいろされちゃう女ちゃん可愛い…///」
女友「じゃあそろそろ私も寝よっと♪」
女友「お休み、女ちゃん」
女が縛られているベットに横になって、女を抱きしめたまま眠る女友……。
―――監禁1日目。 おしまい。
ここまで読んでくれたから、支援してくださった方、
ありがとうございました!
続きにも期待
次→2日目
Entry ⇒ 2012.08.13 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
兄「エアコン買っちゃった」妹「体に悪いですよ」
妹「それはまぁそうですけど」
兄「よーし、起動」ピコン
妹「……」
ブオーン
兄「おお、涼しいな……なんて快適なんだ」
妹「……暑いからって冷房に頼りすぎるのもどうかと思いますよ」
兄「ふふん……よし、18度に設定したれ」
妹「あーあ、寒いですね」
兄「……」
妹「……」
兄「……なぁ、お前」
妹「何ですか?」
兄「いつまでここに居るんだ?」
妹「えっ」
兄「いや、悪くないけど……寒いんだろ?」
妹「寒いですけど、兄さんの買ってきたエアコンがちゃんと動くか見届けようと」
兄「もう確認したろ、ちゃんと動いてるよ」
妹「……」
兄「……」
妹「……」
兄「なぁ、お前」
妹「何ですか?」
兄「本当は涼みたいんだろ?」
妹「またおかしなことを」
妹「お金がもったいないですから」
兄「その心は?」
妹「本当に暑いのなんて、一年のうちほんの何週間かですよ」
兄「それはまぁ、そうかもしれないけど……」
妹「人間、古来から今までいろんな方法で涼を取ってきたんです」
兄「それも認める」
妹「……だから、エアコンなんて本来必要のないもののはずです」ゴロン
兄「なんで横になるんだよ」
兄「兄貴に向かってなんて言い草だ。お前エアコン嫌いなんだろ」
妹「嫌いですよ、なんか臭いし」
兄「独特の匂いはあるかもしれないけど……それは仕方ないだろ?」
妹「……もういいです。さようなら」
兄「お、おい……」
兄「……ま、いいか」
兄「グフフ、冷房の効いた部屋でAVでも見るか」ガサゴソ
妹「……っ!」ガチャ
兄「うぉっ!!」
妹「ふぅ……」ゴロン
兄「おい、お前」
兄「お前自分の部屋に戻ったんじゃないのか?」
妹「お菓子とジュースを取りに戻っただけです」
兄「……さては暑くて部屋にいられなかったんだな?」
妹「そ、そんなことないですからっ!」
兄「いや、100パーそうだろ……」
妹「ふー、寒い寒い」ゴロゴロ
兄「あのさ、俺テレビ(AV)見たいんだけど」
妹「見ればいいじゃないですか。邪魔はしませんよ」
兄「居るだけで邪魔なんだが……」
妹「兄さん、マンガ取ってください」
兄「ほれ……」ヒョイ
妹「ありがとうございます」
兄「夜になれば多少涼しくなるだろうから、その時は戻るんだぞ?」
妹「分かってますよ」ポリポリ
兄「俺にもくれ、そのお菓子」
兄「ふー、夜もちょっぴり暑いな……」
兄「でも、これくらいならエアコンつけずに済みそうだな」
兄「四六時中つけてると、それこそ体に悪いからな」ピ
兄「さ、寝るか……おやすみなさーい」
兄「……」
ガチャ
妹「…………」ピッピッピ
ブオーン
兄「おい」
妹「ひぃっ!」
兄「起きてたんですかじゃない。お前何してくれちゃってんの」
妹「こ、これはですね」
兄「さては、エアコンの涼しさにハマったな?」
妹「ちちち違いますっ!」
兄「だったら何だ」
妹「ちょっと寝苦しいから、兄さんが汗かいて臭くなったら大変ですから」
兄「お前俺を傷つけたいのかバカにしてるのかどっちなの?」
ブオーン
妹「あー、寒いですね」
兄「話をそらすんじゃない」
妹「何を根拠にそんな」
兄「その手の枕と毛布は何だ?」
妹「あ、あうぅ……」
兄「全く……エアコンつけたいならそういえばいいのに」
妹「……もういいです、戻って寝ます」
兄「いいよ、ほら。ベッド使っても」
妹「えっ」
兄「涼みたいんだろ?俺は床で寝るからさ」
妹「……本当にいいんですか?」
兄「おう、気にするなよ」
妹「床、いたくないですか?」
兄「痛いに決まってるだろ、背中もケツも痛いよ」
妹「……」
兄「まぁいいよ。おやすみ」
妹「い、一緒に寝てあげてもいいですよ兄さん」
兄「それは、遠慮しとこうかな……」
妹「……」ピッピッピ
兄「おい、なんでリモコン弄ってるんだ?」
ブオーン
兄「さぶっ!」
妹「……一緒に寝てあげてもいいですけど」
兄「なんて奴だ……」
妹「家主を床で寝せるのは可哀想ですからね」ピト
兄「やっぱり、くっつくとちょっと暑いかな……」
妹「…………」ピッピッピ
兄「おい、温度下げすぎ」
妹「丁度いいくらいですよ、兄さん」
兄「……」
妹「おやすみなさい、兄さん……」ウツラウツラ
兄「さ、さぶいっ……」
兄「ただいまーっと」
ブオーン
妹「ぐー……すぴぴぴぴ……」
兄「あーあ、だらしない格好で昼寝して……パンツまで見えちゃってるじゃないか」
妹「すーすー……涼しい……です……すや……」
兄「すっかり冷房にハマってしまったようだな」
妹「あ……兄さん、おかえりなさい……」
兄「エアコン使うのはいいけど、あんまり温度下げない方がいいぞ?」ピッピ
妹「あっ!何するんですかっ」
兄「うわわ」
妹「最適な温度に設定してるんですから、勝手にいじらないでください」ピッピ
兄「もはや誰の所有物かもわからなくなってるな」
兄「うん、冷房代入れることがエアコン買う条件だったし」
妹「兄さんのそういうところ、いいと思います」
兄「つーか、なんか部屋が狭くなってるような……なんだよこれ」
妹「私のタンスとベッドも、ここに置かせてもらいました」
兄「なんてことしてくれてんだよ」
妹「汗だくになって着替えるの嫌なんです」
兄「涼を取るのがどうのこうの言ってなかったか?この前まで」
妹「エアコンほど効果的に涼を取れるものもないですよ?」
兄「ダメだこいつ……はやくなんとかしないと」
妹はついてこないぞ
ブオーン
兄「うーん……涼しいな……ちょっと寒いくらいだ」
妹「これこそ日本の夏ですね」
兄「風情がないけどな……」
妹「風情なんて後からついてくるものですよ、兄さん」
兄「それっぽいこと言ってるけど、全然中身のない発言だな」
妹「はー、涼しいですっ」
兄「あ、時間だ……」
妹「またアルバイトですか?」
エアコンはついてこないぞ
おかね が たりない!
妹「頑張ってきてくださいね、応援してます」
兄「お前はどうするんだ?夏休みなのに出かけないのか?」
妹「ここより外に一歩も出ようと思いませんね」
兄「友達いないの?」
妹「い、いますからっ!ちゃんとっ!」
兄「ならいいけどな……じゃ、行ってくる」
妹「今日も暑くなりそうですね♪」ピッピ
兄「完全に乗っ取られたな……俺の部屋」
妹「エアコンっていいですね……」
妹「もう、エアコンの無い生活には戻れそうもないです」
妹「……えーっと、たまにはドライにしてみましょうか」ピッピ
ブオオオオーン
妹「うーん、あんまり変わりないですね……」
ブオオオオオオオオオオ
妹「きゃー!涼しいですねっ♪」
妹「ふむふむ、『リズミカル送風』……」ピッピ
ブオオオブオオブオブオ
妹「なるほど、自然の風に近い感じなんですね……」
妹「意表をついて暖房を入れてみたり♪」ピッピ
フィイイイイイ
妹「……と、ここで『パワフル冷房』をっ」ピッピッピッピ
ガコンッ……!
妹「えッ……」
妹「あの、もしもーし……」ピッピ
…………
妹「もしもーし、さっきまでのは冗談ですよー……」ピッピ
シーン……
妹「……こ、これはまさか……」ピッピッピ
妹「壊れた……?ひぃいいいいいいいッ!」ピッピッピピッピッピ
妹「う、動かないですっ!全然反応が無いです……」
妹「ど、どうしましょう……これ……」
妹「動いてっ……動いて下さいぃいいいい」ピピピピピ
フィイイイイイイイイ
妹「!?」
妹「う、動いた……っ?やりましたっ……」
妹「って、なぜ暖房が……冷房は……」ピッピッピ
妹「て、『点検』マークってなんですか!?取扱説明書はっ!?」
妹「兄さんが帰ってくる前に……何とかしないとっ!」
妹「幸い夜までは時間があるはずです……」
兄「ただいまー」
妹「!?」
妹「お、お帰りなさい兄さん」
兄「おう」
妹「(まずいです……非常に)」
兄「あれ?なんでエアコンつけてないんだ?」
妹「」ドキ
兄「我慢しなくていいんだぞ?俺が買った奴だけど別にさ」
妹「(さっきまでいいようエアコンで遊んでました……)」
兄「ちゃんと電気代も払うことになってるし、えーと、リモコンは」ガサゴソ
妹「だめぇえええええええっ!」
兄「うぉっ!」
妹「えーと、そのぉ……ですね」
兄「あんなにエアコンお気に入りだったじゃないか」
妹「そ、そうでしたか?」
兄「今日は暑いし、俺もうるさい事言わないからつけようぜ。俺もう汗かいちゃって……」ガサゴソ
妹「だめですぅううううっ!!」
兄「うわわっ!なにするんだ」
妹「はぁはぁ……」
妹「(ど、どうしたら……一体どうしたらこの場を)」
兄「そんなに汗かいちゃって、暑くないのか?」
妹「(汗と冷や汗でベトベトに……うぅ、暑いです……)」
兄「もしかして具合悪いとか?」
妹「そ、それですっ!あぅう……」ヘナヘナ
兄「だ、大丈夫かおいっ!」
兄「だ、大丈夫か?」
妹「こ、これがうわさに聞く冷房病かも……知れないです」
兄「マジで」
妹「少し横になってれば治りますから……部屋に連れてってください」
兄「わかった、しっかりつかまれ」
妹「(ほっ……兄さんが天然で助かりました)」
兄「あ、でもお前、布団俺の部屋に持ってきてるじゃん」
妹「ギョギョ」
兄「ここで横になってろよ。今エアコンもつけてやるから」ピッピ
妹「エアコンはダメですぅううううっ!」
兄「そういうもんなのか?」
妹「そうです……ですから、どこか風通しの良いところに私を置いて下さい」
兄「うーん、それじゃあ居間で休むか?」
妹「は、はい……お願いします」
兄「その前にエアコンを入れて部屋涼しくしておこうっと」ピッピッピッピ
妹「いやぁあああああああああっ!」
兄「あれ、なんだ点検って……?」
修理屋「それでは失礼しまーす」
兄「どもども」
妹「はぅう……」
兄「……」
妹「……」
兄「こら」コツン
妹「痛いですー……」
兄「壊したんなら初めからそう言えよな」
妹「保証書なんて便利なものがあるんですね……はぁ」
兄「もしかして怒られると思って隠してたのか?仮病まで使って」
妹「うぅ……ごめんなさい、兄さん」
妹「はい……ごめんなさい」
兄「……」
妹「これで、今日からまた蒸し暑い日々が続くんですね……」
兄「……」
妹「あせもができたり、睡眠不足になったり、一日に何度もお風呂に入ったり……」
兄「反省してる?」
妹「結構、してます」
兄「……ならいいよ、好きなだけ使っても」
妹「わ、わかりましたっ!」
兄「急につけたり消したりすると故障の原因になるっていってただろ、さっきの人」
妹「タトゥーのように心に刻まれました」
兄「よし、じゃあさっそく」ピッピッピッピ
妹「兄さんっ!」ギュ
兄「こら、暑いんだからあんまりくっつくなよっ……と」ピ
ガコンッ……
妹「えッ……」
兄「なんでやねん」
第一話~敬語妹エアコンにハマるの巻~完
第二話はよ
※dat落ち
Entry ⇒ 2012.08.04 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
女「なぁ、ボーイズトークをしないか?」男「んん?」
女「最近知り合いに”ボーイズトーク”という単語を聞いてな。ガールズトークならわかるが、ボーイズトークだぞ?」
男「ほうほう、動気はそれか」
女「ああ。気になるだろう、異性の会話というのは」
男「まぁな」
女「では、私にボーイズトークを教授してくれるかな?」
男「仕方ないな。――さて、まあ先ず椅子ではなく床に座ろう」
女「床か。了解した」
男「そして俗に言う胡座で座ってくれ」
女「こう・・・か?」
男「うむ・・・いい眺めだ」
女「ふむ。君はそんなに下着が見たいのか?」
男「まてまて、違うぞ。そういう時は『今日の下着は白色なんだぜ!』と言って盛り上がるところだ。ボーイズだとな」
女「そうなのか」
男「そうだ」
男「ああ。清楚で綺麗な感じが似合ってるぞ」
女「そうか。照れるな」
男「生地はシルクか?」
女「そんな馬鹿な。多分ナイロンだ」
男「シルクに見えるほど似合っているね」
女「それは褒め言葉なのか?」
男「褒め言葉さ」
女「――というよりこれでボーイズトークというのは合ってるのか?」
男「ああ、滞りなく順調に進んでいる」
女「ならいいのだが」
男「では次のステップに進もう」
女「お願いしよう」
女「何をだ?」
男「男の性質というものについてだ」
女「ほうほう。興味深いな」
男「男というものは元来、戦・・・要するに戦いをする生き物だ」
女「ああ。狩りなどを請け負う凄い者だと思っている」
男「その認識で間違いはない。で、だ。その名残として、男同士のコミュニケーションというのは女性のそれと違う」
女「というと?」
男「内面から外面まで、さらけ出してからの友情・・・というところかな」
女「内面から外面まで・・・?」
男「赤くならないでいい」
女「別に赤くなってはないないぞ」
女「うむ」
男「男には”裸の付き合い”という言葉が存在する」
女「おお、聞いたことがあるぞ」
男「これは外面からさらけ出すパターンだな」
女「ふむふむ」
男「そして修学旅行の夜のピロートークだ」
女「それは女子のほうが強いんじゃないのか?話す時間とかそういう意味では女性のほうがやってる感じが強いが」
男「それは誤解だ。女性は赤裸々に話し合ってはいない。建前だけだ」
女「そうなのか」
男「それに比べ男というのは言わなくていいことまで話す」
女「ほう。その根拠は?」
男「経験だ」
女「ああ」
男「先述した事を踏まえ、ここに言えることは、だ」
女「内面も外面もさらけ出しての会話という事か?」
男「察しがいいな。教え甲斐がある」
女「光栄だよ」
男「さて、ここでボーイズトークをするとしよう。何を話すべきか・・・わかるかな?」
女「何を話すべきか・・・か」
男「その関門をクリアしなければ、ボーイズトークへの道は門前払いということだ」
女「ううむ。難しいな」
男「ヒントをやろう」
女「おお、有難い」
男「―――男は性欲の塊だ」
女「ほう。それがヒントか」
女「ううむ。過度の期待はプレッシャーとなるぞ」
男「覚えておこう。で、見つけられたか?」
女「自信はないが」
男「オーケーだ。何事も失敗は次への糧となる。恐れてはならない」
女「――鎖骨」
男「鎖骨とな」
女「鎖骨というのは性的魅力があると思わないか?」
男「良いセンスだ」
女「合格か?」
男「ううむ。及第点と言ったところだろう」
女「ふふっ、良かった。これで先生の授業を受講できるな」
男「よし。では話題も決まったことだ。鎖骨についての話をしよう」
女「了解した。鎖骨・・・ね」
男「そう、鎖骨だ」
男「ほうほう」
女「確かにほかの骨も常に形を露わにしているものがあるが――」
男「まて、ストップだ」
女「何だ?ここからが盛り上がるのに」
男「性的魅力のある鎖骨について・・・だったよな?」
女「ああ」
男「只の骨マニアのレポートにしか聞こえなかった」
女「うう・・・単刀直入に言うな」
男「言う時は言う。それがモットーだ」
女「時と場合を考慮してほしかったかもしれない」
男「時には厳しく言うことも必要なのさ」
女「ううむ・・・。では、では、だ。私の意見がダメならば」
男「任せるがいい。本当のボーイズトークを見せてやろう」
女「ほう。自信満々だな」
女「問いかけか。いい会話のパターンだ」
男「答えは?」
女「そうだな。曲線的なところか?」
男「違うな。見えるようで見えない、神秘的な部分というところだ」
女「ほう」
男「男というのは女性の見えそうで見えない部分。もしくは見えない部分というのに性的欲求を示す」
女「ほう」
男「普段見えない部分というのは凄く唆られる」
女「分からないな」
男「女性の感性で居るからさ。男になったつもりで考えて欲しい」
女「うむ・・・」
男「鎖骨というのは首の下・・・詰まりは胸の上部にあることになる」
女「ふむふむ」
女「股間部と胸部だ」
男「ということは必然的に鎖骨も隠れがちになる・・・分かるかな?」
女「ああ。成る程、少しは分かってきたぞ」
男「ではそのまま付いてきて貰おう。――隠れがちな鎖骨。しかし、だ。隠されるのは胸部であって鎖骨ではない」
女「その通りだな」
男「と言うことは、鎖骨というのは無防備になりやすいということだ」
女「まぁ、必然的に、な」
男「服の構造上、鎖骨は立った状態から前かがみになると鎖骨付近が露わになりがちである」
女「前かがみになる事は少なくはないな」
男「そう。そこがポイントだ。隠されているのに日常的に見えがちな部分・・・それが鎖骨なのだよ。それこそが鎖骨の魅力なのだ」
女「でもそれは他の部分にも言えることではないのか?」
男「そう。太腿などにも十分この説が通用する」
女「だろうと思ったよ」
女「ん? どういうことだ」
男「鎖骨等が顕になる時・・・それは隠されるべきところが見えそうになる瞬間でもある」
女「ほうほう」
男「その二つの魔力に導かれて男は視線が釘付けになるのだ」
女「・・・ふむ。勉強になるな」
男「いや、受け身になってはいけないぞ」
女「? と言うと」
男「受け身にならず、反論や修正論を言うべきだと言っているのだよ」
女「反論と言われてもね」
男「男の感覚で考えるんだ」
女「ううむ・・・」
男「まぁ、女性が一朝一夕で分かるようなものでもないと思うがな」
女「確かに難しいみたいだよ、私には」
女「ガールズトークを織り交ぜるというのはどうだい?」
男「いい案だ。早速話題を振ってくれ」
女「それでは。――最近暑いな」
男「そうだな。夏めいた風が吹いて憂鬱になるばかりだよ」
女「そうだな。私も夏は嫌いだ」
男「汗を流すのがなんともね」
女「汗を流すのは常日頃やっていることじゃないか」
男「流す量が半端じゃなくなるだろう? 家で涼んでいたくなる季節だよ」
女「そうか。ここで私の話題だ」
男「何だ」
女「暑くて汗をかくような夏の日はどういうスタイルで寝る?――と言ったところかな」
男「ほうほう。では先ず話題提供者から話してもらおうか」
女「私は下着にキャミソールかな」
男「ほっほう・・・」
男「食いつくさ、食いつくものだよ女性の私生活というのは。男にとっちゃ神秘も神秘だ」
女「ボーイズトークの融合か。いい傾向にあるみたいだ。さあ話を続けるといい」
男「ピンクか?ピンクのフリフリか?」
女「いいや。男で言うランニングシャツみたいなものを着用してるね。着やすくていいんだ」
男「ほう・・・それもそれで有りだな」
女「ちなみに今も着てる」
男「見せて欲しい。見せて欲しい」
女「即答な上に二回も言うとは・・・。やれやれ困った性欲の塊だ」
男「何と言われても性欲には勝てない。それが男だ」
女「困った性別だな」
男「ああ。日々愕然としているよ。なんで男に生まれたんだろうと」
女「・・・それはもう精神学的な話になってくるんじゃないだろうか」
男「それはさて置き。キャミソールだキャミソール」
女「ええい、急かすんじゃない。まだ見せるとも言ってないのに」
女「いや、見せないとも言ってないが」
男「見せてくれないのか・・・」
女「そんな世界の終わりみたいな顔をするんじゃない。――全く、見せてやらなきゃいけない気がしてきたじゃないか」
男「作戦通りだ」
女「真顔で言うな。私の母性が泣いている」
男「しかし母性には抗わないほうがいい。女性の象徴とも言える母性だ。」
女「こんな形で利用されてはかなわないよ」
男「まぁまぁ。別に全裸になってくれと言ってるわけでもなく、キャミソールを見せて欲しいと言ってるだけだ」
女「ううむ。そう言われると別に恥ずかしくもないな」
男「というわけで頼む」
女「やれやれ。仕方がないね」
女「・・・ブラウスのボタンを全部外すとかはやめてくれよ」
男「そんなわかってないやり方はしない」
女「わかってない・・・?」
男「チラリズムだよチラリズム。全体像が見えるより、一部から全体像を想像するほうが興奮を覚えるのだ」
女「鎖骨への性的魅力もそれにはいるのかな?」
男「そうだったな。忘れていた」
女「――で、どうするんだ?」
男「先ずはそのスカートに入っているブラウスの裾を出してもらおう」
女「裾下から見るのか?」
男「ああ」
女「よくわからないな」
男「分かるようになればボーイズトークも軽々とできるようになるだろう」
女「ほう・・・。じゃあ分かるように善処しよう」
男「ああ、そうするといい」
男「ああ。これだけでも興奮を感じ得ないな」
女「そういうものなのか?」
男「そういうものなのだ」
女「で?」
男「で?」
女「いや、私がこれからどうすればいいのか聞きたくてな」
男「ブラウスの裾を上にあげて欲しい」
女「こうか?」
男「――ふむ、良い絵面だ」
女「褒めているのか?」
男「褒めるだなんてとんでも無い。感動してるんだよ」
女「興奮の間違いじゃないのか?」
男「ははは、一本取られたね。これは」
男「腹部だ」
女「女性の体を触るのに無許可でいいのかな?」
男「ああ・・・悪かった。あまりに綺麗でね。キャミソールの上からでもよく分かる」
女「ふむ、何ならキャミソールを上に上げてもいいんだぞ?」
男「なんとも嬉しい提案だな」
女「腹部を見せるぐらいどうってことはない」
男「じゃあお言葉に甘えて――――」
女「どうだ?それなりに運動はしているから醜くは無いはずだが」
男「良いものだと思うぞ」
女「有難う。素直にその言葉は受け取っておくよ」
男「おおっと。やれやれキャミソールを見るつもりが腹部の観察ばかりしてしまっていた」
女「本当にね。本来の目的と違うとこをしているなんて良くあることではあるけど」
男「ちょっと脱線しすぎたかな」
女「やっと自分のを話すつもりになったか」
男「ああ。と言っても全然面白くもなんとも無いぞ」
女「ああ。構わない」
男「パンツ一丁だ」
女「私と変わらないな」
男「そうだな。しかし上半身裸というのは男性ならではだぞ」
女「そうか?女性も別に上半身裸で寝るのも珍しくはないが」
男「そうなのか」
女「そうだが」
男「止めておいたほうがいい・・・乳房が垂れてしまう」
女「ううむ、まぁ確かに」
男「そんなに全裸で寝たいのなら、ブラジャーの役を引き受けたいね」
女「ブラジャーに役なんてあるものか」
女「どうした?」
男「ブラジャーというのは元々、女性の乳房を支える職業の事を指していた。これは常識だよ?」
女「そうだったのか」
男「ああ。ルネサンス運動と称してこの職業をどうにか復活させて欲しいものだよ」
女「ふぅむ。しかしそれはそれで手が疲れないか?」
男「しかし手に感じられる幸せと差し引き零だと思うよ」
女「それが職業となり、日常となればその幸せも一般化するんじゃないかな?」
男「確かに。慣れてしまえば幸福は感じられないかもしれないな」
女「先程言ったように、見れないからこそ興奮するんだろう?」
男「ううむ・・・」
女「復活しないってことは多分そういう事なんだと私は思うよ」
男「やれやれ、優秀な生徒を請け負ってしまったものだ」
女「照れるよ」
女「携帯か?随分と俗物なものを持っているんだな」
男「携帯なんて今や誰でも持ってしまってる時代だよ。個人的には好きじゃないけど連絡用に持たされている」
女「と言うことは、今のメールは連絡じゃあないのか?」
男「まぁ・・・多分、妹からのメールだろう」
女「妹さんと二人暮らしだったんじゃあなかったか?何か急用かもしれない。見たほうがいい」
男「じゃあとりあえず。――――やれやれ、普通に帰宅を促す催促だったよ」
女「一人で心細いのさ。帰ってあげるといい」
男「しかしな、帰ると一人になる人間が居るものでね」
女「・・・ん?私か?私なら気にしないでくれよ」
男「女性を一人置いて帰るほど、まだ廃れちゃいない」
女「変なプライドは捨てたほうが身のためかもしれないぞ?」
男「意味深な忠告だな」
女「一般論を言ったまでさ」
男「それでも、まだ帰るつもりはないけどね」
男「まぁ・・・ほら、なんて言うんだ」
女「なんだ。はっきりと言うがいい」
男「―――一緒にいる時間が楽しいから、だな」
女「なんだ。そんな理由か」
男「そんな理由?ちょっと言い方が悪くないか?」
女「――ああ、悪い悪い。そういうつもりじゃなかったんだが」
男「じゃあどういうつもりだったんだ?」
女「――――私たちは、いつも一緒じゃないか」
男「ははは、そうだったな」
女「ふふっ。少しの間、離れるだけじゃないか。ね?」
男「ん?何をだ?」
女「隠れているもののほうが性的魅力を感じられるって」
男「ああ、言ったな」
女「――じゃあ、少しの間隠されていようかな?」
男「・・・やれやれ、本当に困った生徒だよ」
女「ふふふ、良い生徒と言ったり困った生徒と言ったり忙しいな」
男「誰のせいだ」
女「私のせいかな?」
男「確信犯か」
女「確信犯かも」
男「全く・・・」
女「ふふふっ」
女「さようならじゃなくて、おやすみかな?」
男「そうだな。それがいいだろう」
女「では」
男「おやすみ」
女「おやすみ」
〜fin〜
矛盾点、誤字脱字等有りましたら脳内補完でお願いします。
二人結婚しろ
乙
Entry ⇒ 2012.05.24 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
男「ミッション、スタート」
男「…………」
タッタッタ
女「男君お待たせー、なあに?話って」
男「つきあってください」
女「ふぇ?!」
男「つきあってください」
女「あの、その……気持ちはうれしいんだけど…………ごめんなさい」ダッ
男(ステージ1、成功 ステージ2に移行する)
このSSはSS深夜VIPのSSです
女「ふふふーん♪ふんふふーん♪」
男「つきあってください」
女「ふえ?!男君…だから昨日断って…」
男「つきあってください」
男「つきあってください」
女「だからだめだって…」
男「つきあってください」
女「お断りします」
男「つきあってください」
女「だめです」
男「つきあってください」
女「いやです」
男「つきあってください」
女「ごめん」
男「つきあってください」
女「……」
男「つきあってください」
女「迷惑です」
男「つきあってください」
女「いやだ」
男「つきあってください」
女「イヤ」
男「つきあってください」
女「しつこい」
男「つきあってください」
女「気持ち悪い」
男「つきあってください」
女「キモい」
男「つきあってく…」
女「やだ」
男「………」
男「つきあってください」
女「やめてください」
男「つきあってください」
女「やめて」
男「つきあってください」
女「やめろ」
男「つきあってください」
女「ひとを呼びますよ?」
男「つきあってください」
女「ストーカーじゃないですか」
男「つきあってください」
女「訴えたら勝ちますよね」
男「つきあってください」
女「もう訴えます」
男「つきあってください」
女「いいんですか? ほんとに訴えますよ?」
男「つきあってください」
女「あーあ、訴えよう」
男「つきあってください」
女「どうなっても知らない」
男「つきあってください」
女「冗談とかじゃないから」
男「つきあってください」
女「わかったから、訴えないから」
男「つきあってください」
女「ね? もうやめて?」
男「つきあってください」
女「もうやめようよぉ」
男「つきあってください」
女「………………」
男(ステージ2、完了 3へ移行する)
男「……」
女「…………」ソワソワ
(なんか、落ち着かない)
男「……」ニヤリ
女「あの……男君? その、どうかした?」
男「つきあってください」
女「!! ……あ、ごめんなさい」ホッ
(よ、よかったぁ)
(ん? ……よかった?)
男「……」
女「…………」ドキドキ
(あ、あれ? まただ……)
男「……」
女「…………」オロオロ
(なんで? こないだは1日したら……)
男「……」
女「…………」オドオド
(私なんかしちゃったかなぁ……)
(って、何で私が悩んで)
男「……」
女「…………」ドキドキドキ
(どうすればいいの……)
男「……」
女「…………」バクバク
(嫌われちゃったのかな……)
(いや、それなら……いいじゃない)
(いい……じゃん)
男「……」
女「…………」オロオロ
(訴えるなんていったからかな)
(違う違う、やっとやめてくれたんだから……ね)
男「……」
女「…………あの……男君?」
男「…………」ツーン
女「…………」オドオド
(もうだめだぁ……)
男「……」
女「………………シクシク」ポロポロ
(うわーーーん、きらいにならないでぇ……)
男「……つきあってください」
女「ひぐ、えぐ……きらいにならな……え?」
男「つきあってください」
女「!! ……ひっく、本当?」
男「つきあってください」
女「! ……ごめんなさい♪」ニコニコ
男(S,3 大成功 4を飛ばし5へ移行)
男「つきあってください」
女「おはよう! 男君」
男「つきあってください」
女「今日も元気だね!」
男「つきあってください」
女「宿題やってきた? わたし終わってないんだ」
男「つきあってください」スッ
女「見せてくれるの? ありがとう!」
男「つきあってください」
女「男君は私のどこが好きなの?」
男「つきあってください」カキカキ
女「え! 可愛いとこ? そうかなぁ?」テレテレ
男「つきあってください」
女「他にはなにかある?」
男「つきあってください」スラスラ
女「明るくてげんきなとこかぁ」ニヤニヤ
男「つきあってください」スッ
女「なに? 好きなとこリスト?」カァァ
男「つきあってください」
女「……なんにでもがんばるとこ……ニコニコしてる……」
「ちっちゃくて可愛い……肌がきれい……むっ、胸が小さい」
(ちっちゃいほうが好きなのかなあ……)
女「うぅ……髪切りすぎちゃったかな?」
男「! ……つきあってください」カキカキ
女「へ? 今日の髪型可愛い? そ、そう?」
(男君はショート好きっと)
男「つきあってください」
女「どーしよっかなぁー」
男「つきあってください」
女「でも、好きな人いるしなー」チラッ
男「…………」
男「…………」
女「お、男君……その、昨日のはうそだからね?」
男「つきあってください」
女「でもなー」ホッ
男「つきあってください」
女「うーん……」
(あ、あれ?わたしもしかして 男君のことが……)
女「あー、傘忘れちゃった……どうしよ」
男「つきあってください」ソッ
女「男君? え、でも男君のは?」
男「つきあってください」ダッ
女「あっ! 男君? ……いっちゃった」ドキドキ
(やさしいなぁ、男君)ポッ
女「ん〜〜♪ ふふーーん♪」
バカ「ねえねえ、そこの可愛い子? 俺らと遊ばない?」
女「ふえ?!」
アホ「うわっ、超可愛いじゃん! タイプだわ」
女「あの……結構です」
ドジ「そんなこと言わないでさあ」ガシッ
女「や、やめてください」ビクビク
男「つきあってください」バキッ
ドジ「ぐはっ!」
女「男君!」
バカ「ドジ! なにすんだテメぇ!」
男「つきあってください」ギロッ
アホ「な、何だテメぇ……」ビクッ
男「つきあって! ください!」ギロッ
バカ「お、おい行くぞ……なんか変だこいつ」ビクビク
ダダダ
男「つきあってください」キリッ
女(け、結構かっこいいんだね男君って……)ドキドキ
男(思わぬ形でS,5 完了 6に移行する)
男「つきあってください」
女「昨日のカッコよかった男君はどこ行っちゃったのかな?」チラ
男「つきあってください」
女「あーあ、かっこよかったなー」チラチラ
男「つきあってください」
女「……」ドキドキ
(わたし、明日はきちんと答えよう!)
男「……」
女(あ、あれ? どうしたのかな…)
男「……」
女(ま、また? ……だったらもうわたしから)
男「……」
女(つ、つきあって って言えばいいだけだよね……)
男「……」
女(あーもう! 聞かれたら即オッケーするのにぃ!)
男「……」
女「あの、その……」
男「……」
女(だー! もういいや!)
男「…………」
女「つ、つきあってください!!」
男「……よろこんで」ニコ
男(ミッション コンプリート)
完
なお、皆さまがこの『男』を模倣し
何らかのトラブルを引き起こしたとしても
筆者は責任を取りかねますので
ご了承ください
さーて、煎茶のんで新しいの書くかな
※
元スレ:男「ミッション、スタート」
Entry ⇒ 2012.05.20 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
友「俺が好きなのは美少女ちゃんだ」 男「ふーん」
男「そうみたいだな」
友「で、おまえは誰が好きなんだよ?」
男「……小学生みたいな会話だな」
このSSはSS深夜VIPのSSです
男「おまえが勝手に言い出したんだろが」
友「クラスのやつらにバラしたりしないからさ、な?」
男「はあー……」
友「ほら、教えろって」
男「……秀才女さんだよ」
男「なんで驚くんだよ」
友「いや、たしかに秀才女ちゃんは美少女ちゃんに並ぶほどかわいいけど……なんかあんま表情もかわんないし、何考えてるのかわかんなくないか?ハブられてるわけじゃないけど、友達いないっぽいし」
男「まあそんな感じだけどさ……」
男「またベタベタだな……そうじゃねえよ」
友「じゃあなんで?」
男「なんていうか……あんまり人と接するのに慣れてないだけに見えるんだよな。好きで孤立してんじゃなくてさ」
友「ふむふむ」
男「はあ?」
友「俺は明日勇気を出して美少女ちゃんに話しかけてみる。だからおまえも秀才女ちゃんに話しかけるんだ」
男「はあ!?」
友「二回も同じリアクションとんなよ」
男「なんで俺までおまえに付き合わなきゃいけないんだよ!」
男「なんだよ親友って」
友「正直、俺は美少女ちゃんをもう遠くから見つめるだけでは満足できない。美少女ちゃんと、付き合いたいと思ってる」
男「真剣モードか?」
友「真剣も真剣だ。おまえはどうなんだ?」
男「…………」
男「そりゃ俺だって……付き合いたいよ」
友「だろ?」
男「うるせー」
友「このままじゃ告白なんてしないまま、この恋が終わりそうだ」
男「…………」
男「…………」
友「まあお互いの問題だからな。さすがに無理強いはしないが……」
男「……わかったよ」
男「のるよ。その作戦」
友「おお!マジか!」
男「俺だって、本気で好きだしな」
男「なんだよ誘っておきながら」
友「いやさ、美少女ちゃんは人見知りとかしないけど、秀才女ちゃんは本とか読んで自分話しかけんなオーラまとってんじゃん」
男「話しかけんなって実際思ってはなさそうだけどな。ただ暇だから本読んでるって感じ」
友「どちらにしろ、おまえのほうが難易度高いぞ?話しかけるだけでも」
男「いいよ、もうのったんだからやってやるよ」
友「それでこそ男だ!じゃあ明日はお互いがんばろうぜ!」
男「おう、どうせならほんとに付き合うまでいってやる」
友「その意気だ!」
友「…………」ガタ
男(行くのか……)
美少女「あはは、それでねー」
友「な、なあ美少女ちゃん」
美少女「ん?なに友くん?」
友「あーえーっと……」
男(しどろもどろになってるな……)
秀才女「…………」
男(やっぱり本読んでる相手にたいしては話しづらいな……)
秀才女「…………」
男「お、おーい?」
秀才女「……え?」
秀才女「わたしに何か用……?」
男「い、いや何の本読んでんのかなーと思ってさ」
秀才女「これ……」パラ
男(た、タイトルから意味わからん……なんかの専門用語使われとる)
男「えっと、おもしろいのか?それ?」
秀才女「最近読んだ本の中では……」
男「へ、へえー」
秀才女「うん……」
男「…………」スタスタ
秀才女「…………」パラ
友「それで終わりかよ!」
男「そう言うなよ……」
友「まあ俺だって緊張したけどよ」
男「おまえはどうだったんだよ?」
友「ふふん、俺はな、美少女ちゃんと共通の好きなマンガの話で盛り上がることができたぞ!」
男「え……マジで?」
友「マジで!」
男「なんだこの敗北感……」
友「それに比べておまえはまたほとんど振り出しのままだな」
男「はあ……」
友「お、誰か来た……っ!」
友「おい!おい!」
男「なんだよ?」
友「あそこ」チョイチョイ
男「ん?……あ!」
秀才女「…………」
男「ああ……」
友「話しかけろよ」
男「冗談だよな?」
友「そんなだから今日おまえは振り出しのまま」
男「わかったわかった!」
秀才女「あ……」
男「本探してるのか?」
秀才女「うん……暇だったから」
男「昼休み読んでた本は?」
秀才女「さっき読み終わったわ」
男「そ、そっか」
秀才女「うん……」
男「え、あれか?」
秀才女「うん……少しおもしろそう」スッ
男(難しい本だってタイトルだけでわかる……)
秀才女「ん……しょ」プルプル
男「届かないのか?」
秀才女「もうちょっと……ん……」プルプル
男「よっと」スッ
秀才女「あ……」
男「ほら、とれたぞ」
秀才女「あ、ありがとう……」
男「ん……」
秀才女「うん、もう遅いし……」
男「じゃあ俺もそろそろ……あれ?」
男(友がいない……どこ行ったんだ?)
男(鞄の上にメモが)カサ
せっかくだから一緒に帰れ!できなかったら学食おごり!
男(くっそ!またあいつ……)
秀才女「ふう」スタスタ
男「あーっとさ、秀才女さん」
秀才女「?なに?」
男「その……」
秀才女「?」
男「方向同じならさ、一緒に帰らないか?」
秀才女「え……?」
男「ほら、もう暗いし……」
秀才女「…………」
男「…………」スタスタ
男(か、会話がない……)
秀才女「え?な、なに?」
男「その、秀才女さんってさ、いつもどんな本読んでるんだ?」
秀才女「え、えーっと……科学関係の本とか、いろいろ……」
男「小説とかは読まないのか?」
秀才女「推理小説なら少し……」
男「そ、そうなんだ」
秀才女「うん……」
男「あ、ああ、気をつけて」
秀才女「うん……送ってくれて、ありがとう」
男「ど、どういたしまして……」
秀才女「それじゃあ」
男「うん……」
友「へえ、じゃあけっこう話せたのか」
男「けっこうってほどかな……」
友「まあ普段あんま喋るコじゃないし、及第点だろ」
男「ちなみにおまえは?」
友「聞いて驚け、ついさっきアドレスを交換した」
男「……うわあマジかー……」
友「やはり俺のほうが一歩リードだな」
友「あれ、秀才女ちゃんいねーや」
男「今日はもう帰ったんだろ」
友「せっかくまた一緒に帰らせようと思ったのに」
男「おまえ……」
友「睨むな睨むな、何だかんだで幸せだったろ?」
男「……まあな」
男(はー、でも今日は話せなかったか……)
男(やっぱり会話はあんま続かないけど……話してると嬉しいんだよな)
男(明日はまた自分から話しかけてみるか……)
男(とりあえず本屋寄って帰ろ)
男「うーん、まだ発売してなかったか」
男「あっ」
秀才女「あ……」
秀才女「そ、そうね……」
男「す、ストーカーじゃないぞ!?」
秀才女「……ふふっ」
男「え?」
秀才女「わかってるよ……」クスクス
男(わ、笑ってくれた……!)
秀才女「うん」
男「オススメとか、ある?」
秀才女「うーんと……」
秀才女「こっち」スタスタ
男「あ、待って待って」スタスタ
男「うーん、そうだな」
男(それ以外だと多分読んでもわからないの渡されそうだしな……)
秀才女「じゃあ、これかな」スッ
男「あ、ありがと」
秀才女「この作者さんのは、全般的におもしろいよ。トリックはかなり難しいけど」
男「ああ、読んでみるよ」
秀才女「うん」
男「うーん」
男(読めないほどじゃないが……やっぱり難しいな)
男(当然ギャグもないし……あ)
男(そういえば、今日笑ってくれたんだった……)
男(……すっげーかわいかったな、やっぱ)
男(ギャグとかで笑ったりしないのかな……あ)
男(よし、やってみるか)
男「お、おはよ」
秀才女「あ……おはよう」
男「昨日はありがと。まだ途中までしか読んでないけど、おもしろいよあの本」
秀才女「そう……よかった」
男「だからその……お返しにこれ」スッ
秀才女「え?」
秀才女「あ、ありがとう……じゃあ借りるね」
男「あ、そろそろ授業始まるな」
秀才女「あ……」
男「引き留めてごめんな、それじゃ」
秀才女「う、うん」
秀才女「…………」パラ
秀才女「ふふっ……あははっ」
秀才女「この本、おもしろい……」パラ
秀才女「ふふっ……あはははっ」
友「え?本貸したのか?」
男「ああ」
友「へえー、なんだけっこううまくやってんじゃん」
男「おもしろいと思ってくれるといいんだけどな」
友「この土日の二日間、そればっかり心配してたろ?」
男「お見通しかよ」
友「へっへっへ」
友「おう、毎日メールしてるぜ。俺と美少女ちゃんが好きなマンガはマイナーなやつだら、案外前から話せる相手欲しかったのかもな」
男「いいなぁおまえ。何気にかなり順調じゃん」
秀才女「あ、男くん」
男「あっ……」
秀才女「これ、ありがと」スッ
男「えっ?ああ、いやいや」
秀才女「すっごく面白かった」
男「え……ほんとか?」
秀才女「うん、お腹痛くなるくらい笑っちゃった」
男(ああ!すげー見たいそれ!)
男「そ、そっか。それはよかった」
秀才女「うん、ありがとう」
男「あの、よければさ……」
秀才女「?」
男「他に俺がおもしろいと思ったのも……貸そうか?」
秀才女「……!うんっ」
秀才女「あ、男くん、これ借りてた本」
男「あ、こっちもちょうど昨日読み終わったから返すよ」
秀才女「おもしろかったなあ。あの後どうなるんだろ」
男「教えてもいいけど」
秀才女「あ、待って待って教えないでっ」バタバタ
男「あはは」
男「え?あーまあ……」
男(たしかに最初と比べると、かなり進歩してるかな……)
クラスメイト女子「えー?どうやったの男ー?」
男「普通に話してただけだよ。よく喋るわけじゃないけど、無口でも気むずかしいわけでもないよ、秀才女さんは」
クラスメイト女子男子「「へー」」
男「…………」
男「うーん」ゴロン
男(そうだよな、やっぱり俺以外のクラスメイトとも、仲良くできたほうがいいよな)
男(友にも相談してみるか……あ)
男(そうだ、いい事思いついた!)
男「その事なんだが友よ……」
友「なんだ?」
男「今日は諦めてほしいんだ」
友「はあ!?せっかく気合い入れたのになんで!?」
男「二人きりってのを諦めてほしいんだ。頼む」
友「だからなんでだ?おまえの事だからちゃんと理由があるんだろ?」
男「実はさ」ゴニョゴニョ
友「ふむふむ」
男「すまんな、せっかく二人きりになれたかもなのに」
友「いや、実をいうとさすがにちょっと不安だったからな。ちょうどいいさ」
男「ありがとう。じゃあ昼休みに」
友「ああ、まかせとけ」
秀才女「あ、おはよう、男くん」
男「あーっとさ、秀才女さん」
秀才女「?なに?」
男「ちょっとお願いがあるんだ」
男「うん、昼休みさ、一緒に飯食べない?友と美少女さんと四人で」
秀才女「え……」
男「ごめん、嫌かな?」
秀才女「ううん、嫌じゃない……けど……」
男「そんな事ないよ。秀才女さんと仲良くしたいやつ、沢山いるよ。ほら、みんなノリのいいやつらだし」
秀才女「でも、わたしどういう事話せばいいかわからないよ……」
秀才女「小さい頃から、お父さんの影響で、理科とかすごく楽しくて……」
秀才女「お父さんと一緒にいろんな実験ばかりしてたら、他のコとどんどん遊ばなくなって……」
秀才女「それ以来、どういうふうに人に接すればいいのか、わからないの……」
男「…………」
秀才女「え……」
男「だから、俺と仲良くなってくれた時と同じように、ゆっくり時間をかけてやればいいんだ」
秀才女「あ……」
男「でも、秀才女さんが嫌なら無理強いは」
秀才女「ううん」
男「え?」
秀才女「わたし、やってみる」
男「じゃあ……」
秀才女「お昼、お邪魔させてください」ペコ
友「おう、来たか」
美少女「待ってたよー」
男「ごめん、ちょっと遅くなった」
秀才女「…………」ドキドキ
男友「「いただきます」」
秀才女「いただきます……」
美少女「あ、秀才女ちゃんのお弁当かわいいね!自分で作ってるの?」
秀才女「う、うん。そう」
美少女「すごいなあ。私は朝起きれないからお母さんに頼りきりだよー」
秀才女「そ、そうなんだ」
男友「「…………」」
秀才女「う、うん。男くんから借りた小説とか、自分のとか」
美少女「小説かあ。マンガは読まないの?」
秀才女「マンガはあんまり……」
美少女「マンガもおもしろいよー。よかったら今度オススメ貸してあげるけど」
秀才女「う、うん。読んでみようかな」
男友(おっ)
美少女「じゃあ明日持ってくるね」
秀才女「あ、あの……」
美少女「ん?なに?」
秀才女「よかったら……わたしもオススメの小説……貸そうか?」
男友(よし!よく言った!!)
友「わかってはいたがさすが美少女ちゃん。まったく人見知りしなかったな。よしよし」
男「ありがとな、友」
友「いいってことよ、こっちもこれでさらに二人きりの昼飯に誘いやすくなったしな」
男「おう、がんばれよ」
男(秀才女さん、今日はがんばってたな)
美少女「秀才女ちゃん、この小説すごい感動したよ!ありがとう!」
秀才女「うん、美少女さんのマンガも、すごく面白かった」
美少女「私、小説って今まで読まなかったけど、いいものなんだねー」
秀才女「わたしも、これからはマンガも読んでみようかな」
男(よし、うまくいってる)
秀才女「あとは、これもおもしろいかな」
男「これね」スッ
秀才女「ここの図書室だと、オススメはこれくらいかな」
男「うん、ありがと」
男「え?なんで?」
秀才女「男くんのおかげで、最近すごく楽しいよ」
男「ん、そっか……」
秀才女「美少女さんとも仲良くなれたし……美少女さんの他の友達とも、最近たまに話すの」
男「あはは、美少女さん友達多いからね」
男「秀才女さんだって、がんばったよ」
秀才女「うん……ありがとう」
男「…………」
秀才女「…………」
男(お、思いきって、こ、告白……)
図書委員「あれー?この本どこの棚だったかなー?」
男(無理か……)
男(くそう……まあ図書室だから図書委員いるのは当然たけどさ……)
図書委員「んっ……と、届かな……」プルプル
図書委員「きゃっ!?」ドテッ!
男(あ、パンツ丸見え……)ジー
秀才女「…………」
男「あ!」ビク!
男「い、いや違うんだよ、怪我とかしてないかなって……」
秀才女「…………」ツカツカ
男「あ、あの、秀才女さん……?」
秀才女 スッ
ギュウウウ!
男「いっ!いで!ひで!ひでででで!」
秀才女 ギュウウウ!
男「ほ、ほっへはひぎれる!ひぎれるうぅ!」
秀才女「……あ」パッ
男「い、痛かった……!」ヒリヒリ
秀才女「…………」
秀才女「男くんが悪いんだもん……」
タタタ
男「え!?あっ、ちょっと!」
バタン
男「はあぁあ……」
男(嫌われたかな……告白寸前で……)
秀才女「はあ……」
秀才女(どうしてあんな事したんだろ……)
秀才女(なんか、男くんがあのコの下着見てた時、すごく嫌だった……)
秀才女(やっぱり男の子だから、そういうの好きなんだよね……?)
秀才女(好き……)
秀才女「…………」ドキドキ
秀才女(あ……これ、まずい……)ドキドキ
秀才女(わたし、男くんの事、すごい好きだ……!)ドキドキ
男「あ……」
秀才女「あ……」
男「お、おはよ」
秀才女「うん、おはよう……」ドキドキ
秀才女「ううん、わたしこそ、ほっぺつねったりして……」
男「…………」
秀才女「…………」
秀才女「う、うん」
男「今日新しい小説の発売日だからさ、帰り本屋行かないか?」
秀才女「う、うん。わたしも美少女さんがすすめてくれたマンガ見たいから、いいよ」
男「そ、それじゃ、放課後に」
秀才女「そ、そうだね」
秀才女「よ、よかったね。売り切れてなくて」
男「あ、ああ、秀才女さんもたくさんマンガ買ったな」
秀才女「う、うんマンガは早く読み終わるから、買いだめしても大丈夫かなーって」
男「そ、そっか」
秀才女「うん……」
秀才女「…………」
男(うおお……まさかここまで来て振り出しに戻るとは……俺のアホ)
ポツ…ポツ…
男「あれ?」
ポツ…ポツ…ザアアー
秀才女「きゃっ!?」
男「うわっ、いきなり降ってきた!」
男「とりあえずあそこの公園に入ろう、雨宿りできそうな遊具がある!」
秀才女「う、うん!」
男「いきなりだったなぁ」
秀才女「雲行きあやしいな、って思ってたけど、こんなに降るなんて」
男「だな」
ザアアー
秀才女「な、なに?」
男「昨日はごめん……ほんとに」
秀才女「ううん、気にしてないよ。わたしのほうこそ、ごめんなさい」
男「ん……」
秀才女「…………」
秀才女「さっき買った本、読む?」
男「いや……」
秀才女「?」
男「秀才女さんと、話してたいな」
秀才女「うん……」
男「なに?」
秀才女「男くん、なんでわたしに声をかけてくれたの?」
男「…………」
男「それは……その……」
秀才女「うん……」
男「…………」
男「俺が、秀才女さんのことを、好きだからだよ」
男「最初は、全然知らないのに、好きだったけど……」
男「仲良くなって、どんな女の子かを知ったら、ますます好きになってた」
秀才女「あ、あう……///!」
男「本当に、すごく好きです。俺と付き合ってください」
男「…………」
男(言った!言ったぞ!)ドキドキ
男(あとは、返事を待つだけだ……)ドキドキ
男「うん」
秀才女「男くんがいなきゃ、友達もできなかったし……」
秀才女「何より、男くんといる時、すごく楽しいから……」
男「…………」
秀才女「だから、わたしも好きだよ、男くんのこと」
秀才女「わたしも、ありがとう」
男「じゃあこれからは……恋人同士で」
秀才女「うん……えへへ///」
秀才女「雨、やまないね」
男「そうだな……」
秀才女「んー……」
男「…………」
秀才女「っ」ピクンッ!
男(や、やっぱ急すぎたか!?)
秀才女「…………」
秀才女 コテ
男「あ……」
秀才女「んん……」ギュ
男「…………」ギュ
男「…………」
男(誰だこんな時に……)ピッ
友「お、おい男!聞け!聞いてくれ!」
男「なんだよ」
友「帰ってたら急にどしゃ降りになったから急いで学校に引き返したんだ!そしたら教室に美少女ちゃんがいて、俺の事好きだって!」
男「ごめん、友」
友「それで……え?」
男「今、彼女と一緒にいるからさ」
友「えっ!?おまえ」
ピッ
男「いいんだよ、あいつ今幸せ絶頂だろうから」
秀才女「あ……雨、やんだね」
男「じゃあ、帰ろっか」
秀才女「うんっ」
秀才女「だから、ここはこうやって解くの。わかった?」
男「わ、わかりません……」
秀才女「もー、テストまでもう日にちないよ?」
男「面目ない……」
男「遊びほうけた結果ゆえ、言い訳すらございません……」
秀才女「まったくもう。もう一度最初から説明するよ?ここはね……」
男 ジー
秀才女「?なに?」
秀才女「っ///!」カアアー!
男「へへへ」
秀才女「……つむって」
男「え?」
秀才女「……目つむって」
秀才女「は、早く……」
男「わ、わかった!」
男「…………」ドキドキドキ
男「!?いってえ!?」
秀才女「うー……!」
男「な、なんでデコピンなんだよ!?」
秀才女「勉強中なのに、変なこと言うからっ///」
秀才女「…………///」
秀才女「そ、そんなにしてほしいなら……」
男「え?」
男「……マジですか?」
秀才女「そ、そのかわり、がんばるんだよ?」
男「命をかけてがんばります」
秀才女「そ、それならよろしいっ。じゃあ勉強再開するよっ」
おわり
最初から最後までニヤニヤが止まらなかった
Entry ⇒ 2012.05.11 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
男「大掃除したら幼女が出てきた.....」幼女「」ゾロゾロ
幼女ABCD「ふぇぇ.....」
男「お名前言えるかな?...」
幼女ABCD「ふぇぇ.....」
男「・・・」
幼女ABCD「ふぇぇ.....」
男「お菓子食べる?」
幼女ABCD「たべる〜♪」ワクワク
ドッサ.....
幼女A「わ〜お菓子いっぱい〜♪」ニコニコ
幼女B「ボクこれにする〜」
幼女C「あ〜それわたちの〜....」
幼女D「い、いただきます....」ボソボソ
幼女B「いいよ〜」モグモグ
男「住所は?」
幼女A「ひみつ〜♪」モグモグ
男「な、名前は?....」
幼女B「とくめいきぼぉ♪」モグモグ
男「.....」イラ
男「年齢.....は?....」
幼女C「れでぃーにとしきいちゃダメだぞ〜」モグモグ
男「おい‼」ドン!!....
幼女ABCD「!?」ビク
警察「幼女の泣き声がすると通報を聞いて来ました。話は署できこう、つーか死刑」
男「ちょ」
幼女ABCD「やったあ!これでここはわたしたちのおうちだよ!」
めでたしめでたし
幼女D「ふええ・・・」アセアセ
男「(早くなんとかしないと・・・)」
男「は!?」
幼女ABC「お姉ちゃんありがとうー♪」
幼女D「ありがとうございます・・・」ボソボソ
幼女A「すき焼き!」
幼女B「焼肉!」
幼女C「しゃぶしゃぶ!」
幼女D「え、えーと・・・」
幼女A「すき焼きー!!」
幼女B「焼肉がいい!!」
幼女C「わー!!」
男「うるさい!」ドンッ
幼女B「やきにくーーーーーー!!!」
男「お前ら!うるさっ・・・」
C「わーーーーーーーー!!!」
幼女D「うっ・・・グスッ・・・」ポロポロ
幼女ABC「わー!」
男「Dちゃん、俺と一緒にラーメン食べにいこっか」
幼女D「・・・グスッ・」コクッ
男「好きなもの注文していいよ」
D「・・・チャーシュー麺///」
ヘイッオマチッ
男&幼女D「いただきます」
ズズズ
男「Dちゃん聞いてもいいかな」
幼女D「・・・」オロオロ
男「餃子も食べる?」
幼女D「・・・いただきます・・・///」
男「・・・」
幼女D「うちの押入れで、みんなでいっしょにかくれんぼしてたら、知らないうちに・・・」
男「俺の家の押入れに・・・いたと?」
幼女D「・・・」コクッ
幼女D「うん」
男「(お隣さんの押入れと繋がってんのかな・・・)」
幼女D「・・・」
幼女D「・・・ただいま」ボソボソ
姉「おかえりー」
男「あれ?幼女ABCは?」
姉「お風呂入ってるよ」
幼女D「ありがと・・・ございます」モジモジ
姉「男ー、せっかくだからDちゃんといっしょに・・・あれ?男ー?」
〜男の部屋〜
男「さて、押入れの前にいるわけだが」
ガラッ
男「特に穴らしきものは見当たらないな・・・」
男「娘が4人もいたら気付かないはずがないし・・・」
男「あの4人はどっから来たんだろ」
幼女A「なにしてんのーー!」
男「わっ!?」
男「あっ!裸じゃないか!?体も拭いてないし!床濡れちゃうでしょ!」
ドドド
幼女BC「わーーーー!」
姉「こらー!B!C!体拭きなさい!」
姉「男ー!Aちゃん捕まえて体拭いてあげてー!B!待ちなさい、」
男「わかった!あれAちゃんがいない!?」
男「こらっ!10年早い!ほら体拭こうね!」フキフキ
幼女A「お尻も拭いてー」グイ
男「はいはい」フキフキ
幼女A「ねえお姉ちゃん!えるおーってどういう漫画?」
男「!?」
姉「LO?」
男「姉!銃夢の続編のことだよ!銃夢LO!」
姉「ああ、あのプリン好きの」
幼女A「がんむってなーに?」
男「姉がいっしょに入ってくれよ」
姉「あんたにこの3人が寝かしつけれたら変わってあげる」
男「・・・。Dちゃん入ろっか」
幼女D「・・・///」コクッ
幼女D「うん・・・」
カポーン
男「あー、気持ちいい。Dちゃんは偉いなあ。3人と比べてしっかりしてるし」
幼女D「・・・///」
幼女「・・・あの///」
男「ん?」
幼女D「・・・あたま、1人だと洗えない・・・」
男「熱くないですかー」
幼女D「だいじょぶ…」
ワシャワシャ
男「痒いとこありませんかー」
幼女D「だいじょうぶです…」クスッ
姉「(警察に電話するべきなのかな...)」
姉「(でも押入れから急に現れたなんて信じてくれるかしら...)」
姉「(最悪、私たちが誘拐犯にされるなんてことは...)」
幼女C「ねえ、お姉ちゃーん」
姉「ん、いいよ」
〜風呂〜
男「いーち、にーい、さーん…」
幼女D「きゅうじゅきゅ、ひゃーく」
男「よっし、あがろっか」
幼女D「うん!」
男「ふう、気持ち良かったね」
幼女D「うん!」
ダダダ
幼女C「男くーん!いまね!お姉ちゃんにね!えるおー読んでもらってるの!」
男「?!」
男「やばい!」
〜リビング〜
男「姉!ストップストップ!」
姉「『キャハハプリンおいちい!』」
幼女AB「キャッキャッ」
男「え?」
姉「『業子力学が云々』」
男「ふええ、ノヴァ教授?」
姉「『私はそんな この世のすべてを 憎む!
熱力学第二法則を憎む!!』」
幼女AB「ノヴァせんせーかっこいい!」
姉「ふう、ちょっと休憩」
幼女A「まだ起きてるー!」
幼女B「あたし絶火やるね!」
幼女C「わたしムバディ!」
幼女D「…」オロオロ
幼女C「男くーん!ぜったいしんしょくー!」
男「ぐわああ!」
幼女D「…」
幼女D「あたし、お兄ちゃんと寝…」ボソボソ
幼女B「お兄ちゃん!一いっしょに寝よー!」
幼女A「あたしお姉ちゃんとねるー!」
幼女C「だもくれすのけん!しょうしゃー!」
幼女D「お兄ちゃん、いっしょに…」グイグイ
姉「男ー、今後のことなんだけど、ちょっと来てくれるー?」
男「Dちゃん、ごめんね、すぐに行くから先に寝ててね。ごめんね」
幼女D「…うん、わかった」
男「えらいえらい」ナデナデ
幼女D「…グスン」
姉「さて、今後のことなんだけど」
男「うん」
姉「どうしよっか…」
男「…やっぱ警察?」
姉「やっぱりそうなっちゃうよね」
男「明日、みんなにもう一回聞いてみるよ」
〜リビング〜
幼女A、C「zzzz」
幼女B「ねえD、男くんとおふろ入ったの?」
幼女D「うん…」
幼女D「スースー」
幼女B「ふんっ!…スースー」
〜男の部屋〜
男「とりあえず、今日は寝ようか」
姉「そうだね、じゃ、あたし部屋戻るね」
男「幼女達、起こさないようにな」
姉「うん、おやすみ」
姉「やっぱり子どもは可愛いわね」
姉「おやすみ、ちびちゃんたち」ガチャ バタン
ムクッ
幼女D「…おしっこ…」
ガチャ
幼女D「…ここかな?電気…届かない…」
幼女C「ぜったいしんしょくぅ!ムニャムニャ」
ビクゥ
幼女D「!!…ふぇぇ…」ジョロロ
幼女B「うーん、D、どうしたの?」
幼女D「!? なんでもないの!」
ピチャ
幼女B「あっ…」
幼女D「うっ…うぅ…グスッ」
幼女B「お姉ちゃん呼んでくるよ」
B→お姉さんタイプ
C→元気いっぱい
D→口下手な甘えん坊
Aどんな感じ?
>>141お姉ちゃん大好きな天然元気タイプだと思う
幼女B「(せっかく気持ちよく寝てたのにDの声で目がさめちゃったじゃないのよ!これは貸しだかんね!)」
幼女AC「zzz」
〜姉の部屋〜
幼女B「お姉ちゃん、お姉ちゃん」ユサユサ
姉「…ん?どったの?」
幼女B「かくかくしかじかで」
姉「なるほどね、Bちゃんありがとう」
〜トイレ前〜
幼女D「グスン…」
姉「Dちゃん大丈夫?」
幼女D「お姉ちゃんごめんなさい…グスン」
姉「もう大丈夫だよ」フキフキ
姉「はい、これ。替えの下着とパジャマだよ」
幼女D「ありがとう…」ございます…」
幼女BD「(おやすみなさい)」バタン
幼女D「(あのね…Bちゃん、ありがとう…)」
幼女B「(いいってことよ)」
幼女D「(ふええ…?)」
幼女B「(明日はあたしが男くんとおふろはいるんだからねっ!)」
幼女D「zzz」
幼女B「ふええ…」
男「みんなおはよー」
幼女ABC「おはよー!」
幼女D「おはよう…ございます…」
姉「みんなー、朝ごはんだよ」
幼女D「ふぇ?…」オロオロ
姉「(まずい…)」
幼女B「さっきお水飲もうとして、Dちゃんのパジャマにこぼしちゃったの」
幼女C「ふーん、そうなんだ。あたし、その色のパジャマがよかったなー」
姉「もう一着あるか探してみるよ」
姉「おそまつさまでした」
男「さて、幼女ちゃん達、ここに並んでください」
ゾロゾロ
幼女A「なにするのー?」
幼女D「…」
幼女ABCD「ふぇぇ.....」
男「お名前言えるかな?...」
幼女ABCD「ふぇぇ.....」
男「・・・」
幼女ABCD「ふぇぇ.....」
男「お菓子食べる?」
幼女ABCD「たべる〜♪」ワクワク
ドッサ.....
幼女A「わ〜お菓子いっぱい〜♪」ニコニコ
幼女B「ボクこれにする〜」
幼女C「あ〜それわたちの〜....」
幼女D「い、いただきます....」ボソボソ
男「って、そうじゃなくて…姉、なんとかしてくれよ。このままじゃこの子達のペースになってしまう」
幼女A「あーん、わたしのチョコビー!」
幼女BC「モグモグ」
幼女C「…」
姉「改めて聞きます。君たちはどこから来たの?」
幼女A「みんなで押入れに隠れたんだよねー」
幼女B「押入れが開いて、鬼に見つかったと思ったの。そしたら押入れあけたのが男くんだったの」
幼女C「…」コクコク
男&姉「…」
姉「まさか…どこから?」
男「そうだ、この子達の服になにか住所が分かるような物はなかった?」
姉「…やばっ、洗濯機に入れちゃった!」
ダダダ ピッ
姉「ふう、危なかった…」
幼女A「ううん、違うよ。鬼をやってくれるロボットがいるの」
男「へ?」
幼女B「わたしたち以外にこどもなんていないもの」
男「???」
幼女D「…」オロオロ
姉「幼女ちゃんたちの服、ポケットになにか入ってないかな…」ゴソゴソ
姉「ん?なんだろ、これ」
〜リビング〜
男「幼女ちゃんたちがいた所って、西暦何年かわかるかな?」
幼女C「せいれきってなーに?」
男「どうしたの?」
姉「これって、なんかパソコンに付けるやつじゃない?あんた詳しいでしょ」
男「USBメモリじゃん。もしかして幼女ちゃんたちの服に?」
姉「うん、そうだよ」
男「姉ー、gj、なにか手がかりがあるかも」
幼女D「あ…」
幼女C「お父さんがくれたお守りだよー」
男「Cちゃんの?」
幼女C「ううん、Dちゃんのだよ。いつももってるのはDちゃんだけだもん」
幼女A「あたしのは、机のおくにたいせつにかくしてるよ!」
男「Dちゃん、ちょっとだけ借りてもいいかな?」
幼女D「…うん」
姉「開けそう?」
男「うん、大丈夫そう」カチッ カチッ
幼女A「あたしも見たーい!」
幼女C「あたしも!」
幼女D「あたしも…」
カチッカチ
男「なんだろうこれ、動画ファイル?」
姉「再生できる?」
男「多分」
男「再生…」
ビデオに映ってる男『あ、あー、聞こえてるかな』
幼女C「あっ、お父さん!」
幼女A「お父さんだ!聞こえてるよ!」
幼女B「Aちゃん、ビデオだから向こうには聞こえてないよ」
幼女D「(お父さん…)」
男「…」
幼女父『単刀直入に申し上げると、私は西暦2xxx年の人間です」
姉「ふええ…」
幼女父『しかし、私の家系は代々、科学者をしており、そして、私の祖先は早い段階からそのことを予想していました』
幼女A「おとうさーん、むずかしいおはなしはわかんなーい」
幼女父『先祖代々、研究は続けられ、私の代で完成しました。」
男「それがこのUSBメモリに入ってるのか…?」
幼女父『設計図は完成しましたが、一つ問題がありました』
姉「ふええ?」
幼女父『データの量が膨大になり、私の時代に残っている記憶装置を全部使っても収まり切らない量でした」
男「伝染病のワクチンかもしれないぞ」
幼女『最後の手段として、娘の体を記憶媒体とする他、手段がありませんでした』
幼女父『このUSBメモリには、もう一つ、動画ファイルがあるはずです。その動画ファイルと娘四人を、今から記す住所に連れていってほしいのです。そこに私の先祖の研究所があります』
幼女父『娘四人の受け入れの準備はできてるはずです。あとは、この動画を見ているあなたに人類の未来は託されました』
男「ふぇぇ」
男「住所、グーグルマップで調べてみるよ…」カチッカチ
幼女A「ねー、お父さんなんて言ってたのー?」
姉「へ?なんていうか…幼女ちゃん達が地球を救うんだって」
幼女C「ほんとー!かっくいい!」
なんか世界を救うとか展開
幼女父『どうか、娘を、人類をお願いします』
プツン
男「終わった…」カチカチッ
男「姉、さっきの住所検索してみたけど、でっかい施設がある」
姉「じゃあ本物なんだね」
姉「そうだ、あたし、さっきの住所に電話かけてみるよ」
男「そうだな、いきなり訪問するのもなんか怖いし」
幼女C「あたしがうちゅうひーろー・むばでぃだー!」
姉「あのすいません、ひとつお伺いしたいんですけども」
姉「家の押入れに急に女の子が現れて、なんか未来から来たらしくて、その子が持ってたUSBメモリの中身がかくかくしかじかで、はい」
姉「そうですか、ありがとうございます。では近日中に伺わせていただきます。はい、失礼します」
ガチャ
男「ふぇぇ、どうすればいいのお…」
姉「とりあえず訪問のアポ取ったから、ゴールデンウイーク中に向かうことになったよ」
幼女A「お姉ちゃんかっこいいー!」
幼女C「おでかけするのー?」
男&幼女ABCD「ごちそうさまでしたー」
姉「おそまつさまでしたー」
幼女B「お兄ちゃん!お風呂はいろー!」グイグイ
男「Bちゃん、わかったから…そんな引っ張らないで…」
幼女B「はやくー!」
カポーン
男「気持ちいいねえ」
幼女B「うん!あたしのおうちだと、お風呂なんてめったに入れないんだよ!」
男「へえ、お水が貴重なのかな」
幼女B「ロボットがスースーするタオルでからだふいてくれるの!お湯のおふろは誕生日の時だけなんだよ!」
男「(研究所に引き渡したあとは、この子たちどうなるんだろ。やっぱり施設暮らしかな)」ブクブク
幼女A「お姉ちゃん、テレビに映ってるあれなーに?」
姉「あれはねー、遊園地っていうんだよ」
幼女A「楽しそうー!」
姉「幼女ちゃんの住んでた所には、あーいうのないの?」
幼女A「家の外はなーんにもないのー。石ころがあるだけなんだよ」
姉「へえ、そうなんだ。・・・」
姉「ねえ、幼女ちゃん達、遊園地行ってみたい?」
LO読者は紳士しかいないからな。
〜リビング〜
男「ふう、気持ちよかった」
幼女B「喉かわいたー」
幼女A「ねーBちゃん!お姉ちゃんがね!ゆうえんちに連れてってくれるんだって!」
幼女B「ゆーえんち?」
男「遊園地!?」
しえ
姉「この子たちのいた未来の世界って、活発な娯楽がなんもないらしいじゃない?だから私たちが連れていける間だけでもと思って。ダメかな」
幼女ABC「ゆーえんちいきたーい!」
幼女D「あたしも…いってみたい」
姉「幼女ちゃん達、寝たわね」
男「旅行のプランなんだけど、遊園地に行ったあとにホテルで一泊、帰りの足で、この家には戻らず研究所に連れて行く、でいいかな」
姉「それでいいと思うよ。明日、新幹線の切符とホテルの予約しておくね」
男「頼んだ」
幼女A「あれなにー!?すごーい!」
男「あれはね、新幹線っていうんだよ」
幼女A「しんかんせん!?なににつかうの!?」
男「今からあれに乗って遊園地に行くんだよ」
幼女A「あれにのるのー!?すごーい!?」
姉「ニコニコ」
ゴォォォォ
幼女D「お兄ちゃん...なんか耳が...」
男「ははは、耳鳴りか。唾をごっくんしてみな」
幼女D「ゴックン...少しよくなりました...」
チラッ
幼女B「男くーん、あたしも耳が痛いー!」
男「Bちゃんも?めちゃくちゃ元気そうだけど」
幼女B「ふぇぇ」
幼女AB「いただきまーす」
姉「美味しいねえ」
幼女A「えきべんもおいしいけど、お姉ちゃんのつくったご飯もおいしいよ!」
幼女C「うん!」
姉「ちびちゃんたち...ウルッ」
姉&男「(この旅行が終わったらこの子たちともお別れになるのかな...)」
アナウンス「間もなく○○駅、間もなく○○駅、お降りの方は〜」
男「さあ、次は遊園地だぞう」
幼女A「すごーい!」
幼女C「お姉ちゃん!あれ入ろう!」
姉「え!?お化け屋敷はちょっと...」
幼女A「おばけやしきはいりたいー!」
姉「ふぇぇ...」
男「ジェットコースターか。なんか意外...」
幼女B「...Dちゃん、男くんと二人で乗ってきてもいいよ」
幼女D「ふぇ?いいの?」
幼女B「今回は男くんの隣、ゆずってあげる」
男「とか言って、本当は怖いんじゃないの〜?」
幼女B「ふぇぇ...なんのことかよくわからないよぉぉ」
ゴオォォ
幼女たち「スヤスヤ」
男「みんな寝ちゃったね」
姉「ホテルに着いたら起こすの可哀想だね」
男「...こんなに可愛らしい娘を手放さないといけなかったなんて...この子達の親父さんも気の毒だな」
姉「しょうがないよ。私たちの子孫の命だってかかってるわけだし」
男「...」
姉「みんないい寝顔だね」
男「楽しい夢見てるといいね」
姉「...。ねえ、記念写真撮ってあげるよwww」
男「ふぇぇ?記念写真?」
姉「幼女ちゃん達の横に寝て...そうそうwww」
パシャッ
ザワザワ
幼女A「ばいきんぐー!」
幼女C「ばいきんぐってなーに?」
男「食べたいおかずを取って食べていいんだよ」
幼女D「ふぇぇ、届かないよぉ...」
幼女A「あたしすきやき!」
幼女B「あたしやきにく!」
幼女C「しゃぶしゃぶがいい!」
姉「ふぇぇ...あるかなぁ...」
男「Dちゃんはなにがいい?」
幼女D「あたし...ラーメン...」
男「うーん、ごめん、ラーメンはなさそうだなあ...」
幼女D「...」
男「よし、帰り道でお昼はラーメン食べよう!!」
幼女D「うんっ!///」
駅前のラーメン屋〜
男「好きなもの頼んでいいよ」
姉「あたし、カニミソチャーハンと餃子!にんにくはみ出で!」
幼女A「あたしも!かにみそちゃーはん!」
幼女B「とんこつ!」
幼女C「しお!」
幼女D「...えっと...ちゃーしゅー...」
幼女D「うん///」
男「この前もチャーシュー麺だったし」
幼女B「このまえ!?いつー!?」
男「幼女ちゃんがうちにきた日の晩だよ」
幼女B「Dだけずるいー!今日の夜は私とラーメン屋だよ男くん!」
男「あっ...そのことなんだけど...」
姉「...」
男「今日は、みんなは家には帰りません。違う場所に行きます...」
幼女D「...」オロオロ
姉「君たちのお父さんからのメッセージあったよね。お父さんは、幼女ちゃん達を、ある場所に連れてってほしいって言ってたの」
幼女A「いつお姉ちゃんと男くんのおうちに帰れるのー!?」
姉「それは、まだわからないの...ごめんね...」
幼女D「...」ウルウル
男「(Dちゃん、そんな目で見ないで...)」
姉「それも詳しくは教えてもらえなかったの...ごめん...」
男「でも、幼女ちゃん達のお父さんが言うには、君たちは地球を救うことができるらしい。幼女ちゃん達4人に地球の未来がかかってる」
幼女「...」
男「難しい話でごめん...でも!終わったら必ず迎えに行く!そしたら6人で暮らそう。約束する」
幼女ABCD「...」
男「(こんな小さい女の子に人類の存続とか、重荷だよな...)」
〜新幹線〜
幼女D「(お兄ちゃん...)」グイ
男「(どした?)」
幼女D「(また一緒に暮らせるよね...)」
男「(ああ、絶対に迎えにいくから。心配すんな!)」
幼女D「(約束だよ)」
ゆびきりげんまん嘘ついたらはりせんぼんのーます。ゆびきった
男「ふぇぇ、すごい大きい建物だよぉ」
姉「えっと、どっから入ればいいのかな」
男「あそこじゃないか?守衛さんの」
姉「あのー、すいません。三日くらい前にアポとったものですけど・・・」
守衛「少々おまちください」
幼女父の先祖「どうも、お待たせしました。所長というものです」
男「どうも(どことなく幼女父さんの面影があるな)」
幼女A「ふぇ?おとうさん?」
所長「こんにちは。僕は君たちのお父さんのずうっと昔のお祖父ちゃんかな。」
幼女C「ということは、あたしたちのおじいちゃん?」
所長「はっはっは、そういうことにもなるね」
所長「簡単なことです。採血をするだけです」
男「本当ですか!それが終われば!幼女ちゃん達は自由になるんですか!」
所長「ここに今回のような形で子供が来ることは計算していましたので、すぐに受け入れてくれる施設の手続きは整っていますが...」
姉「なら!私たちがこの子達を引き取っても構わないのでしょうか!?」
所長「もちろん、構いません」
採血した血液からそれを取り出すというわけです。
しかし、万が一ということもありえるので、幼女ちゃん達には、分析が終わる一週間後まで、
この施設にいてほしいのですが...」
男「わかりました!一週間後、迎えにきます!」
幼女ABCD「うんっ!」
男「幼女ちゃん達、元気かなあ...心配になってきた」
姉「子を持つ親ってこんな気分なのかな。あんたと夫婦なんていやだけどねwww」
ジリリリン
姉「電話だ。 ガチャ もしもし?」
姉「あっ、所長さんですか?え?設計図の取り出しに成功したんですか!えっ?あっすいません、弟に変わりますね」
男「電話変わりました、男です!幼女達は・・・わかりました。すぐに向かいます!」
〜応接室〜
所長「お待ちしておりました」
男「この一週間、気が気じゃありませんでした。知り合って日が浅い子でもこれほど辛いのに、これが自分の子だったらと思うと...」
所長「お気持ちはよくわかります。ところで、
未来はどんなところだったか、幼女ちゃんや幼女父さんは何か言ってましたか?」
男「たしか、人間は幼女ちゃんと幼女父以外は死に絶えた、と言っていました」
男「そうそう、押入れに隠れていたら、今の時代にやってきた、と言ってました。押入れの中がタイムマシンになってたのでしょうか」
所長「あなたの協力のおかげで、その最悪の未来を避けることができました。あなたは英雄です。公にするこはできませんが...」
男「名誉が欲しくて協力したわけじゃありませんよ。それに、幼女父さんは固唾を飲んで幼女ちゃん達を現代に送ったはずです。それを僕たち姉弟の感情だけで台無しにするわけにはいきません」
姉「あ、あのっ、幼女ちゃん達は無事なんですよね?」
所長「幼女ちゃん達は」
姉「...」
所長「まず、謝らなければならないことがあります」
所長「私は、あなた達に、嘘をつきました...」
男「え...それが嘘ということは...幼女ちゃん達はどうなったんですか...無事なんですよね!?」
所長「設計図のデータは遺伝子ではなく、身体中の分子構造に刻まれています。そこから設計図のデータを取り出すには、体を装置に固定し、全方向からニュートリノを照射しなければいけません...」
姉「(ふぇぇ、わけがわからないよぉ...)」
男「...わかるように、説明してください...」
所長「...ニュートリノは身体を突き抜け、肉体の構造をデジタル化していきます。始めはなにも感じません、が、完璧な情報を手に入れるには細胞を破壊するほども照射が必要になります」
姉「...」
所長「あなたたちの協力で人類は救われました...」
男「...幼女ちゃん達はいまどこに...?」
姉「...え...」
男「うわあぁぁ!」
所長「仕方なかったんです!仕方なかったんです...」
所長「ですが...彼女たちの分子構造は、この研究所にあるスーパーコンピュータで生きています。そして、人類を救うんです」
何もない未来からやってきた4人の女の子達。
新幹線を見ただけで、駅弁を食べただけで、遊園地に連れて行っただけであんなに喜んでくれた幼女たち。
彼女の目に写る21世紀はさぞ新鮮だったのだろう。
〜家〜
姉「あ...あれから、布団、敷きっぱなしだったね」
姉「片付けなきゃ...」
男「姉、ちょっと待って...」
姉「え?」
男「ほら、この毛布、かすかだけどAちゃんの匂いが」
姉「そんなこと...悲しいだけだよ」
男「この枕は...Dちゃんだ...うっ...グスッ」
姉「うっ...うわあぁぁぁん!うわぁぁ!」ボロボロ
姉「わかんないよ、うっ...グスン」
男「...あの子達のおかげで、これからも俺たち人類は生き続けて...」
姉「...」
男「...これ...髪の毛?Aちゃんのかな...」
姉「ふぇぇ?」グスン
男「...あの子達のおかげで、これからも人類は続いていく...」
姉「え?」
男「姉、俺、決めた!」
姉「ふぇぇ?!」
男「姉!落ちてる全員の髪の毛を集めるんだ!約束したんだ!絶対に全員を迎えに行く!幼女父が成し遂げたように、何世紀かかっても!」
〜2xxx年〜
男の子孫「やっと完成しましたよ。おじいさん。いざ!」
カチッ
プシュー
ドタドタッ
幼女ABCD「ギャッ!」
男の子孫「わっ、しまった!」
幼女B「あれ?男くん!?ラーメン食べる約束は!?」
男子孫「え!?」
幼女C「あれ?ここどこー?男くんの家じゃなーい!」
幼女D「お兄ちゃん...着るものちょうだい...」グイッ
完です
上にも書かれてる通り、小説版のリング、らせん、ループの設定をパクりましたごめんなさい
幼女A「あれー?男くん、ちょっと老けた?」
幼女B「ていうかなんであたしたちはだかなの!?」
幼女C「窓の外すごーい!がんむみたーい!」
幼女D「あれ...お兄ちゃん?」
男子孫「えーと、僕は男くんじゃありません!」
男子孫「しかも、今は西暦2xxx年です!」
幼女C「せいれきてなーに?」
男子孫「僕のじいさん、つまり男くんが僕たち子孫に遺した君たちの髪の毛が、君たちが男くんの家で寝た時の髪の毛だから、記憶がその時で止まって...」
幼女C「ふぇぇ、おなかへったよぉ」
男子孫「ふぇぇ...」
男子孫&幼女ABCD「いただきまーす」
モグモグ
幼女A「ということは、あたしたちが男くんの押入れから出てきてからxxx年経ったっていうこと?」
モグモグ
男子孫「そうだよ」
モグモグ
幼女D「ということは...あたしたちは...お兄ちゃんの押入れに行く前のじだいに戻ってきたの...?」
男子孫「食べ終わったら計算してみよっか」
男子孫「男くんの髪の毛一本でもあれば再生できるんだけどなあ...」
幼女D「...」
幼女A「男くんの持ち物はここないの?」
幼女ABC「見てきてもいーい!?」
男子孫「うん、いいよ」
男子孫「ふう...じゃDちゃん、年数、計算してみよっか」
幼女D「...」こくっ
幼女A「すごいほこりだらけ!」
幼女B「こんなところに男くんの手がかりなんかあるのかな」
ゴソゴソ
幼女C「ああ!お姉ちゃんに読んでもらったやつだ!」
幼女B「'銃夢LO'ってやつ?」
幼女A「ほんとだ!LOって書いてあるからきっと同じやつだよ!男子孫くんのところに持っていってみよーよ!」
幼女D「ふええ」
ドドドド
幼女A「男子孫くーん!男くんの持ってたまんが見つかったよー!」
幼女C「こみっくえるおー?がんむえるおーじゃないのー?」
男子孫「あのな、こりゃ男くんがいた時代に流行ってた、小さい女の子が好きな紳士が読む漫画...!?」
幼女B「どうしたのー!」
男子孫「喜べ!お前ら!男くんを再生できるかもしれないぞ!」
幼女A「髪の毛が挟まってたのー!?」
男子孫「いや...表紙の女の子の顔に付着したシミ...これきっとじーさんの!?」
幼女ABCD「男くんの!?」
男子孫「ザーメn...」
幼女ABCD「ふえぇ、ザーメンってなーに?」
男「(俺は夢を見てるのか?)」ボー
じいさーん?コンコン
男「(たしか、俺の部屋の押入れに幼女が4人現れて...)」
男くーん おきてー
男「(抜きたきても抜けない日が三日くらい続いてい...)」
男くん、ラーメン食べに連れてってくれるんだよね!
男「(幼女とお風呂入ったりして生殺し状態で悶々...)」
男くん!がんむのつづきおしえて!
男「(みんなが寝たあとにLOの表紙の女の子に顔射...)」
あの...えーと、お兄ちゃん...?
男「(...この声は...Dちゃん!?)」
プシュー ザバー
ドタッ
男「痛いっ!」
幼女A「男くんおはよ!」
幼女B「今日はあたしとお風呂入ってもらうかんね!」
幼女D「男くん、絶火とゼクスってどっちが勝ったの?!」
男「いってて...え...幼女ちゃん達?」
男子孫「こんにちわ、俺のご先祖さま」
男「え、一体どうなって...」
幼女D「...あの...お兄ちゃん...」
幼女D「... うっ..グスン......おかえり!お兄ちゃん!」
男「グスッ ただいま!」
後日、Cちゃんが銃夢LOという漫画を蔵から発見し、お姉ちゃんがそれを朗読した時に本に付着した唾液から、お姉ちゃんも再生できた。今では、男子孫くんも合わせた7人でお父さんを探す旅をしています。
終わり?
上でも書きましたが、一応もう一回書いときます。銃夢、リング、ループの設定パクりましたごめんなさい。
駄文を読んでくれた方、スレ立てた>>1、本当にありがとうございました。
Entry ⇒ 2012.05.08 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
妹「お兄ちゃん、女の子になってみたくない?」
妹「私、お兄ちゃんが女の子だったらなーってずっと思ってたの」
兄「残念ながらこれまでもこれからも男だけども」
妹「お兄ちゃんが女の子なら、一緒に洋服とか買いにいけるし」
兄「あークラスの女子も彼氏女装させたいとか言ってたわ、そういうやつ?」
妹「お風呂も一緒に入れるし」
兄「女装でお風呂は無理だろ」
妹「私が女子中行くことになっても、転入すれば一緒に行けるし」
兄「いやだから」
妹「ねえ、お兄ちゃん、女の子になってみたくない?」
兄「人の話を聞けよ!!」
兄「何もうじゃないだろ、何の話をしてんだよ」
妹「だから、お兄ちゃんを女の子にしてもいい? って話」
兄「嫌だよ! つーか、お前もう六年生だろ!」
妹「うん」
兄「お兄ちゃんは女の子にはなりませんしできません、物理的に」
妹「チッチッチッ、ところがどっこい」
兄「ところがどっこい?」
妹「そう思うのがお兄ちゃんのあさはかさ」
兄「お前、平成二ケタ生まれだよね?」
兄「何それ、SF? ファンタジー?」
妹「どっちかって言うとファンタジーかも」
兄「ファンタジーかよ!」
妹「話すと長くなるんだけど」
兄「良いよ話せよ」
妹「ひいおばあちゃんがね」
兄「ひいおばあちゃん?」
妹「夢に出てきて」
兄「待て待て待て」
兄「俺も顔知らないし、お前もひいおばあちゃんなんか知らないだろ」
妹「そうなんだけど、夢に出て来たから」
兄「俺の妹、こんなにアホだったかなあ」
妹「いや、私だってまさかと思ったけど、繰り返し出てくるし。
それでほら、お母さんとかおばあちゃんとか、親戚の伯父さんとかに話聞いたの」
兄「こないだの連休、一人でばあちゃんち出掛けてたのそれか」
妹「そしたらなんと」
兄「なんと?」
妹「つじつまが合わないのよ」
兄「本格的にアホだった」
兄「は?」
妹「三十年くらい前に、ひいおじいちゃんの後を追う様に死んじゃった、
っていうのはみんな同じなんだけど、その前後の話がね、どうも、ちぐはぐなの」
兄「まあ、三十年前っつったら大昔だし、色々忘れてるんじゃね?」
妹「伯父さんは、ひいおばあちゃんの所に何度かお見舞いに行ったらしいのね。
でもおばあちゃんは看病できた一週間くらい、ずっと病院にいたんだって。
で、お母さんには、ひいばあちゃんのお見舞いに行った覚えがないらしいの」
兄「えーと、つまり?」
妹「伯父さんはお見舞いに行った。おばあちゃんは何日か病院にいた。
でもお母さんは、お見舞いに行かなかった。そん時、お母さん5才くらいだよ」
兄「伯父さんって母ちゃんの兄ちゃんだよな……」
妹「お兄ちゃん、5才の私を家に置いて、一人で病院にお見舞いしに行く?」
兄「いや、連れてく」
妹「だよねー、えへへ」
兄「連れてかなきゃ絶対泣くし」
妹「うん泣く。って言うか、今でも泣く」
兄「堂々と言うな」
お兄ちゃんを女の子にする方法を教えてもらったんだよ」
兄「はしょりすぎだろ!!」
妹「だって何か長くなったしお兄ちゃんを女の子にする事に関係ないんだもん」
兄「気になるわ! 知らなきゃ気にもしなかったけど、
半端に聞いたらどういう事か気になるわ!」
妹「もー、じゃあこうしよ。お兄ちゃんが女の子になるなら、教えたげる」
兄「え」
妹「お兄ちゃん、女の子の裸見た事ある? あってもヤだけど」
兄「いや、ないけど……」
妹「自分の裸なら見放題」
兄「……お前な」
妹「それどころか、触り放題」
兄「おま……」
妹「断ったら、二度と聞かないよ。女の子になってみる、一生で一度のチャンス」
妹「さあ、どうするー?」
兄「…………………………………………………………………………………戻れる?」
妹「え?」
兄「女になった後、俺、男に戻れんの?」
妹「あ、大丈夫。なりっ放しだと面倒な事もあるだろうし、戻し方も聞いといたから」
兄「…………」
妹「…………」
兄「……わかった」
妹「!」
兄「ちょっとだけ! ちょっとだけだからな!! えーと、寝る前には、絶対戻せよ!」
妹「うわー、絶対お風呂入った後って事じゃん、それ」
兄「お、う、お前が言い出した事だろ!」
妹「えっへっへ、まあいいけどー」
妹「あ、うん。えーと……あ、そうだ、ベッドに仰向けに寝っ転がって」
兄「? ……こうか?」(ゴロン
妹「そうそう。んで、ちょっと足開いて」
兄「ん」
妹「で、ちょっと足上げて。私が両手で足首持てる様に」
兄「ほれ」
妹「オッケー」(ガシッ
兄「ん? これって」
妹「よいしょ」(踏み
兄「ちょっ……! お前、これ」
妹「じゃ、電気あんまー」(グニグニ
兄「待て、おい、やめっ」
妹「行くよーっ」(グリッ
兄「いぎっ……!」
兄「うおっ、ふぁ、あがががががががが」
妹「えいえいえいえいえいえい」(ムニムニグニグニグリグリ
兄「お、ふぉっ、おぅ、おおおおおお……」
妹「女の子になれー、女の子になれー」(グリュッ グリュグリュッ
兄「お、ふぁ、うぉ、やめ、妹、ちょ、待ってっ……!」
妹「……お? ……ちょ、女の子になるどころか……」(グリッ サスサス
兄「……は、はなせ……」
妹「お兄ちゃん……うわ、硬く、なってる……?」(グリュッ
兄「ふぁっ、だ、だからはなせって……!」
妹「え、こんなんされて……うわ、うわー」(グリグリ
兄「だ、だったらやめろお……」
妹「うふふふ、お兄ちゃんって、私の足が気持ちいいんだ」(グリュグリュ
兄「いやっ、これは何か、違っ……!」
妹「えいえい」(グリィッ
兄「あふっ……!」
兄「あ、ひゃっ……!」
妹「それとも、こうとか?」(ズリュゥッ グニュッ
兄「ひ、妹、ダメって……!」
妹「分かった、こうだ!」(ズリュッズリュッズリュッ
兄「あ、ひ、あ、だ、はな、だめ、はなせ、うあっ……!」
妹「えー、聞こえなーい」(ズリュズリュッ
兄「あっ、あっ、あ、あっあっ、あっ……! ひっ……!!」
妹「んっ……! なんか、足の裏がぬくく……?」(グニグニ
兄「ひ、はああ……あー……」
妹「……え? お兄ちゃん、もしかして……」(ズリュズリュ
兄「ひぁ、妹、ごめん、離して……」
妹「……兄ちゃん、シャセーしたの? 電気あんまで? その、チンチン踏まれて?」
兄「ごめん、離して、ごめん……」
妹「…………!!」(グリグリグリッ
妹「どうしよ、お兄ちゃん、ごめん!!」(グッグッ グニッグニッ
兄「あっ、ひっ、ぎっ、あ、ぎぃっ」
妹「今、私、すっごい楽しい!」(グリッグリッグリッ
兄「えっ、やっ、うくっ、あっあっ……!」
妹「ほら、お兄ちゃん! また硬くなってるし!」(ズリュズリュッ
兄「あっ、ひぃっ、今、なのに、なんでっ」
妹「普通はこうはならないの!?」(サスサスサス
兄「あ、ひぅ……ふつう、出て、すぐは……って、やめろぉ……」
妹「あは、そうなんだ、じゃあコレ、すごいんだ!」(グリュグリュッ
兄「ひぃいっ、ひ、いいっ、いっ……!」
妹「踏まれて硬くなるなんて、すごいね、お兄ちゃんっ」(グリグリグリッ
兄「あ、ひ、いっ……! ぎ、いっ……! ひ……」
妹「あ、また……! えへへ、また出てる……!」(グチュグチュ
妹「うわー、お兄ちゃん、ズボンに染みちゃってるよ」(ヌチュヌチュ
兄「あ、ひゃ、やめ……」
妹「ばっちいから脱がしていい?」
兄「だ、ダメ……」
妹「脱がすねー」(グイグイ
兄「話聞けぇ……」
妹「よい、しょっと」(ズルリ
兄「うあ……」
妹「うお!」
兄「な、何」
妹「お兄ちゃんのチンチン、小っさ!」
兄「……! よ、余計なお世話だよ! っつーか、クラスじゃ大きい方!」
妹「違うよ! そうじゃなくて、前見た時よりって事!」
兄「前っていつ、って、え!?」
兄「え、えっ……!? 嘘、これ、何で、ウソ」
妹「今、硬くなってるよね?」(グリッ
兄「ひきっ……!」
妹「私の足の、人差し指くらい?」(キュッ
兄「ひ、足、の指、で、挟むなっ」
妹「下の袋もすごい縮んでるよ、ひいおばあちゃん、すごいなー」(コシュコシュ
兄「あっ、ひっ、こする、の、電気あんま、ちがっ」
妹「ね、お兄ちゃん」(グリグリ
兄「あっ、ひっ、いっ、何っ」
妹「お兄ちゃんのばっか見て不公平だから、言うけど、キライにならないでね」(グリッ
兄「え、い、何」
兄「…………」
妹「実はさっき、ズボン脱がした時、セックスしちゃうかも、ってちょっと思った」
兄「お前、それは……」
妹「でも、お兄ちゃんのチンチン、こんな小さかったらムリだよね!」(グリグリグリッ
兄「あっ!? あっ、ひっ、あぎっ……!」
妹「こんな残念チンチン、セックスなんて絶対出来ないもん!」(ズリュズリュッ
兄「あっ、あっあっ、あっ……!」(ピュッ ピュウッ
妹「うわ、もう……? しかも、少なっ……」(グニグニ
兄「ひあ、あー……」(ヒクッ ヒクッ
兄「妹……もう、やめて……」
妹「……やめていいの?」
兄「……え……」
妹「お兄ちゃん、自分のチンチン、もう一回見てみて?」
兄「…………」(チラッ
妹「ほら、もう、私の足の指で挟んだら、皮の先っぽしか見えないんだよ?」(クリクリ
兄「あ……あ……」
妹「袋もね、ほとんど縮んで、もう中身がないの。足どかすから、自分で触ってみる?」
(ヒョイ
兄「ウソ……チンコ、俺の……」(ペトペト
妹「やめていい?」
兄「元、妹、元に戻して」
妹「え、女の子から男にする方法しか知らないよ、私」
妹「お兄ちゃん、そんなチンチンになっても、まだ一応男でしょ? 戻せないよ、私」
兄「え、っと、それじゃあ」
妹「あー、でもお兄ちゃんがやめろって言うし、ここでやめとこうかなあ……」
兄「あの、妹」
妹「お兄ちゃん、一生、そのゴミみたいなチンチンで生きるのかあ……
かわいそうだし残念だけどお兄ちゃんが選んだことだしなあ……」
兄「その、妹、ええと、じゃあ、一旦女にしてからなら戻せるんだな?」
妹「え? あ、ごめん、聞こえなかった」
兄「……!!」
兄「その、ごめん、妹、頼む……」
妹「頼む、って聞こえた気がするけど、頼み事の言い方じゃなかったなー」
兄「お前……」
妹「何をどういう方法でどうして欲しいのか具体的に言ってお願いしろって
大好きなお兄ちゃんが、前に私に教えてくれたっけなー」(チラッチラッ
兄「う……」
妹「聞こえないから、もう部屋戻ろうかな。
お兄ちゃんを女の子にするなんて、バカな事はもう二度としないぞ、うん!」
兄「ま、待って……待って、ください」
妹「ん? 何、お兄ちゃん?」
妹「うん」
兄「女の、子、に」
妹「おっと、どうやって?」
兄「……チンコ、を、ふ、ふんで……」
妹「あ、最初忘れちゃった。……つなげて言って?」
兄「お……お、俺を……俺の、チンコを、ふ、ふんでぇ……女の子、に、して……」
妹「……!!」(ゾクゾクゾク)
兄「……くださ、い……」
妹「……うへ、えへへ」(ウットリ
兄「うぅ……」(プルプル
妹「えっとねえ、ヤダ!!」
兄「!?」
妹「なんだろうなー、私は一回、やめて、って聞いてるじゃない?
で、その上、今のお願い聞いたら、私ばっかり言う事聞いてるよね?」
兄「う、な、何か違う気がするけど……」
妹「お願い聞く前に、私の言う事も一個、聞いてもらわなきゃ」
兄「……嫌だって言えないよな、これ」
妹「えへ、聞いてくれる?」
兄「……分かったよ」
妹「オッケー、そんじゃあねえ」
兄「何だよ」
妹「お兄ちゃんの、オナニーしてる所、見せて」
兄「は!?」
兄「え、でも、今……?」
妹「今」
兄「この、チンコで……?」(チマッ
妹「うん」
兄「………」
妹「あ、そろそろお母さん帰ってくるし、こんな事してる場合じゃ」
兄「……分かった! 分かったよ!」
妹「あは、やった!」
兄「えと、じゃあ」
妹「うん」
兄「するよ……」(クニクニ
妹「あ、ねえ、どんな事考えてするの?」
兄「え、どんなって、ええと……」
妹「うんうんっ」
妹「……あは」
兄「う、うるさいな、良いだろ別に」(クニュクニュ
妹「お兄ちゃん、それでボッキしてるの?」
兄「し、してる……」(クリクリ
妹「いつも、そうやって指でつまんでしてるの?」
兄「これ、は、今、ちっちゃいから……普通は、手でにぎって……」(コシュコシュ
妹「そっか、お兄ちゃんのチンチン、ちっちゃいもんね」
兄「お前のせいだろお……」
妹「うん。そうやって指の先でなぞったり、はさんでみたり……」
兄「んっ、あ、んっ……」(クリュクリュッ
妹「あ、今想像したでしょ、エッチ」
兄「だって、そりゃ、お前」
妹「くすくす、足開いたげる。ジーパンだけど、想像していいよ」
兄「はっ……あっ……」(コリュコリュ
妹「気持ちいい?」
兄「気持ち、いい……」(ニュルニュル
妹「そんな役立たずのチンチンでも、気持ちいいんだ」
兄「あっ、ひ、あっ……!」(コシュコシュッ
妹「お兄ちゃん、今、何想像してるの?」
妹「お兄ちゃん、今、何想像してるの?」
兄「まん、マンコ、妹のっ……!」(クリュクリュクリュッ
妹「お兄ちゃんのも、マンコになるんだよ」
兄「あっ、ひっ、いっ、くっ……!」(ビクンッ ビクンッ
妹「……! お兄ちゃん、イってる? イってるんだ?」
兄「ひ、う、うんっ……!」(ビクッ ビクッ
妹「あは、可愛いー……セーエキ、出てないよ?」
兄「う……だって、だって……」
妹「えへへ、袋の中身、なくなっちゃったもんね。
早くゴミチンコ踏み潰して、女の子になんなきゃねー」
兄「うう……」
妹「さ、足開いて」
兄「うん……」
妹「うわ、いきなりヘンな声出さないでよ」
兄「ご、ごめん。今したばっかだったから」
妹「ふーん……。じゃ、いきなりこんな風にしたら?」(ズリュズリュッ
兄「あひっ……! ……! ……ひ……!!」(ビクンッ
妹「え、まさか、今のだけで?」
兄「は……あ、ウソ……」(ヒクヒク
妹「まだもうちょっと掛かりそうなのに、大丈夫ー?」(グリグリ
兄「あっ……! あっ……!!」(ビクッ ビクッ
ええいっ、お兄ちゃん、一気にいくよっ」
兄「えっ」
妹「えいえいえいえいえいえいえいえいえいえい」(グリュグリュグリュグリュグリュズリュ
兄「あふぃっ!? あっ、あっあっあっあっ、あ、あああっ、あああああっ!」
妹「うりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃうりゃっ!」(ズリュズリュズリュズリュズリュ
兄「あは、あ、はあ、あ、か、ひい、い、い、いきひ、ひ、ひぬ、ひいいっ……!」
妹「とどめーっ!」(ズリュウッ
兄「うひああああ……!!」(ガクガクガクガク
妹「っふうっ、足つかれたー」
兄「あひああああ……」(チョロチョロチョロ
兄「あひ、い、ちか、力、はいらない……」(ヒクヒク
妹「もー、はい、ティッシュ! ちゃんと拭いて!」
兄「ごめ、はー、ひい……」(ゴシゴシ
妹「あーもう、シーツもだけど、先に自分の体ー」
兄「え、あ」
妹「かぶれちゃうよ? もう、振って切って終わりって訳にいかないんだから」
兄「あ……あ、あ……」
妹「ようこそ、女の子の世界へ!」
兄「ま、まん……これ、まんこ……?」
妹「ほら、早く拭く。カユくなっても知らないよ?」
兄「あ、う、うん」(モゾモゾ
妹「えへへ、触るの初めてでしょ? どんな感じ?」
兄「な、何かムニムニしてて、ヘンな感じ……」
兄「…………」(ジワ
妹「あ、興奮してる、変態だ」
兄「ちが、違うっての!!」
妹「あはははっ」
母「ただいまー」
妹「あ、お母さん帰ってきた」
兄「あ」
妹「お楽しみはまた後だねー」
妹「?」
兄「あ、いや」
妹「胸?」
兄「い、いや、何、何でも」
妹「女子として十二年生きてきても、まだブラつけてない子もいるんだよ?」
兄(……妹……)
妹「女の子になって数分のお兄ちゃんに、まだ胸育つ訳ないじゃん」
兄「え、じゃあ、ずっとこのまま?」
妹「私が教わったのは、まずチンチンを変えるの。そうすると、段々女の子になってくんだって」
兄「何だそりゃ」
ひいおばあちゃんも言ってた。実際、これだけの事でこんだけの騒ぎだし……」
兄「そりゃ、お前が途中で調子乗ったからじゃねえか?」
母「お風呂、先もらうねー!」
妹「あ、ほら、お母さんお風呂行っちゃった。ご飯準備しなきゃ」
兄「あ、ちょっ、先行ってろよ、俺後始末してから行くから」
妹「わかった、早く来てね!」
妹「ちょっと待って、魚ひっくり返すから。……よいしょ。 うん、何?」
兄「ひいばあちゃんの話」
妹「ああ、忘れてた」
兄「おい」
妹「いや、だってあんなすごい事になると思わなかったし」
兄「それも含めて、説明しろよ説明」
妹「そうね、結論から言うと、ひいおばあちゃん、悪魔だったんだって」
兄「あ?」
妹「悪魔」
妹「っていう事に、なるの、かな? 悪魔だったけど、ひいおじいちゃんに一目惚れして……」
兄「死ぬまで一緒にいた、みたいな?」
妹「でも、悪魔って基本的に死なないんだって。だから、魔法で上手い事ごまかして……」
兄「どっか行ったと。だから、みんな記憶がチグハグなんだな」
妹「そうだと思う、たぶん。調べたんだけど、ひいおばあちゃんの親戚っていないんだもん」
兄「さっきんのがなきゃ、信じねえけど……あ、つう事はさ」
母「上がったよーい」
妹「あ、お母さん! ごめん、今盛り付けるから!」
兄「おっとと」
妹「良かったー」
兄「昨夜から仕込んどいたもんなー、西京漬け」
母「いつも晩御飯作らせて、ごめんねえ」
妹「お母っさん、それは言わない約束でしょ」
兄「母ちゃん、忙しいんだからさ。メシくらい作るよ、俺ら」
母「……アンタ達産んで良かったよぉ、私ゃあ」
妹「ほらほら、泣かないの」」
母「ぐすっ、立場がアベコベだね」
兄「あれ、泣き真似じゃない」
妹「ちょっと、ほら、お母さんいなかったら、私たち生まれてないんだから」
兄「母ちゃん、そんな参っちゃうくらい、今忙しいの?」
母「うん……この後また、会社行かなきゃ……あれ? 兄、アンタちょっと太った?」
兄「え!? ……あ、いや、気のせいじゃないかな?」
母「そうかい? ならいいけど、兄も妹も、私あんまり家に居れないけど、体に気をつけて……」
妹「大丈夫、分かってるから! ほら、食べないと冷めちゃうよ」
母「うん、ごめんね、いただきます」
戸締りと火の元、ちゃんと気をつけるんだよ!」
兄「分かってるー!」
妹「行ってらっしゃい!」
兄「ふー」
妹「行っちゃったね」
兄「罪悪感やべえ」
妹「私らがあんな事してたなんて、思わないよね」
兄「…………」
妹「…………」
兄「妹、俺、肉付いてきてる?」
妹「あ、うん、割と。肩とか腰とか、丸っこくなってきてるよ」
兄「…………」(プニプニ
妹「…………」(プニプニ
兄「うわ、こら、突付くな」
妹「ごめんごめん、気になっちゃって」
妹「あ、良いよ、今日は少ないし私やっとく」
兄「ええ?」
妹「作ってる間、使い終わったボウルとか洗ってもらったし」
兄「ん、でも」
妹「良いから良いから。先、お風呂入っちゃってよ」
兄「良いのか?」
妹「うん!」
兄「じゃ、お言葉に甘えるかあ」
妹「行ってらっしゃーい」
兄「…………」
兄「確かに、肉付いてんなあ……」
兄「段々、女の体になってくっつってたけど……」
兄「よく言う、『くびれ』ってこういう事かな……」
兄「腰が細く見えるっつーか……」
兄「尻がでかく見えるっつーか……」
兄「…………」(モゾモゾ ズルリ
兄「……まんこ……」
兄「お、俺の、まんこ……」
兄「……うっわ、恥ずかしい! なんか俺のチンコって言うより、すげえ恥ずかしい!!」
兄「やべ、アホみたいだ、早く風呂入ろう風呂」(ガチャリ
兄「…………」(モゾモゾ
兄「…………」(ゴソゴソ
兄「…………」(バシャバシャ
兄「……お、落ち着かねえ……」
兄「お湯の中で、股間に浮力を感じないのがこんなに落ち着かないなんて……」
兄「うー……」(スルリ
兄「落ち着かないからって、足の間に手はさんだら、スカスカして尚落ち着かない……」
兄「…………」(ペト
兄「まんこ、まんこかあ……」
兄「んっ……」(ムニュウ
兄「んぶうっ!?」(バシャアッ
妹「お背中流しましょうか?」
兄「な、なな、何、なんっ、何だよ!?」
妹「久しぶりに、一緒にお風呂入ろうかと思ってー」
兄「あほ、アホか!!」
妹「えー、アホじゃないよ」
兄「アホじゃない子が、兄ちゃんの入ってる風呂入ってくんな!」
妹「え、何で?」
兄「なんでって」
妹「良いじゃん、女・同・士、なんだしさー」
兄「おん、女……」
妹「あはは、照れてる! お兄ちゃん、かーわいー」
妹「へー、じゃ、チンチン付いてるんだ?」
兄「うわ、おま、お前、入ってくんな!」
妹「男の子なら、ここんとこに、チンチン付いてるはずだよねえ?」(ザプン
兄「やっ……!」
妹「チンチンって、こんな割れ目だっけ?」(ムニュ
兄「やめ、離して」
妹「お兄ちゃん、これ、なあに?」
兄「…………」(プイ
妹「なあに?」(クニクニ
兄「っ……! ひ、ま、まんこ……!」
妹「ん?」
兄「お、俺の、まんこぉ……」
妹「うふふ、良く出来ました」
兄「っはーっ……はーっ……ふ、普通に入られた……」
妹「んーっ……」(ジーッ
兄「な、何だよ、じっと見るなよ」
妹「いや、私が言うのも何なんだけどさ」
兄「おう」
妹「お兄ちゃんなのに、体が女の子で、不思議だなあって……」(ジィーッ
兄「や、やっぱ出てけ、変態!」
妹「あ、ごめんごめん。でさ、そうじゃなくてさ」
兄「何だよ」
妹「さっきの話の、続き」
兄「話の続き?」
兄「あ、ああ、えっと……ひいばあちゃんが悪魔だとして、えーと」
妹「うん」
兄「……つまり、俺たちは、その、悪魔の力を受け継いだ、みたいな」
妹「カッコ良く言えばそうだね……って言うかお兄ちゃん」
兄「何だよ」
妹「話してるんだから、こっち見なよ」
兄「見れるか!!」
妹「分かった、じゃあ手で隠してるから」
兄「…………」(チラッ
妹「ほら、これなら」
兄「……尚悪いわ」(プイ
妹「うわ、顔赤くなってる。へー、お兄ちゃん、こういうのツボなんだ、へー」
妹「ん? ああ、それは簡単」
兄「なんだよ」
妹「お兄ちゃんが、男だから」
兄「は?」
妹「あ、こっち見た。やん、えっち」
兄「うおっ、とっ、……で、どういう事だよ」
妹「ひいおばあちゃんね、これは直接聞いたんだけど、
女しかいない……ええと、サッキュバス、っていう種類の悪魔なんだって
兄「サキュバス!?」
妹「知ってるの?」
兄「……男子中学生なら、多分、結構知ってる」
妹「ふーん。だから、私にだけ力が目覚めたんだって」
兄「サキュバスの力が?」
妹「そういう事になるかな」
兄「……何てこった」
兄「……まあ、確かにキケンかもな」
妹「だから、ね、お兄ちゃん」
兄「ん」
妹「サキュバスって、どういう悪魔か知ってるんでしょ?」
兄「え、あ、まあ、何となくは」
妹「じゃ、私がつい、こういう事したくなるのも、仕方ないってわかるよね?」(フニフニ
兄「んっ……む、胸っ……!」
妹「育ってきてるよ、気付いてなかった?」
兄「は、話に夢中になって……何かむずむずするなとは思ったけど……」
妹「……おお、薄いけど、やわっこい」(ムニュムニュ
兄「あ、ふ、あ、あんまり、揉むなあ……!」
妹「撫でるのは?」(サワサワ
兄「撫でるのも、やめろ、お……!」
妹「……感じすぎじゃない? サキュバスの魔法で女の子になったから?」
妹「うわわ、乳首ピンピンになってる」
兄「お前が、揉むからあ……」
妹「……せっかくだし、いただきまあす」(パク
兄「んっ……!」
妹「んふ……」(チュッ チュウチュウ レロレロ
兄「あっ、ああ、あ、や、やめろお……!」
妹「ぷは、えー、なんで?」
兄「な、何か、ヘンになる……」
妹「ヘン?」
兄「胸触られてんのに、下の方までずーんって来て、ヘンな感じになる……」
妹「ふうーん……お兄ちゃん、ちょっとあがろ」
兄「え」
妹「良いから良いから、ほらほら」(ザパァ
妹「で、はい、椅子座る」
兄「はい」(ペタン
妹「よいしょ」(ムニュ
兄「あっ……!」
妹「おっぱい、後ろから揉むね」(ムニムニ
兄「待っ、てっ……んっ……!」
妹「気持ちいい?」
兄「わか、分かんないぃ……」
妹「ところで、私もちょっとはあるんだよ、ほら」(ピト
兄「……!!」
妹「くっ付いたら流石に分かるでしょー?
お兄ちゃんの方がちょっとだけおっきいけど、すぐ追い越すからね」
兄「う、ふぁ、妹……」
兄「う、うん……」
妹「そろそろ良いかな」
兄「え」
妹「んしょ」(クチュッ
兄「んっ……!」
妹「うわ、すご」(ヌリュゥ...
兄「や、妹、そこ、触っちゃ……!」
妹「あ、何だ、ひょっとして気付いてた?」(ニチャニチャ
兄「あっ、ひっ、あっ」
妹「自分のおまんこ、濡れてるの」(ネトォォ
兄「ひょ、ひょっとして、って思ったけど……分かんないし……」
妹「ふーん、そうなんだ」(ナデナデ
兄「あっ、あ、あっ……!」
妹「じゃ、教えてあげる。すごい濡れてるよ、お兄ちゃんのおまんこ」(ズリュッ
妹「ほら見て、私の手。もう、ぐっちょぐちょ」
兄「あ……あ……」
妹「女の子になったばっかりなのに、おっぱい揉まれて、興奮したんだ」
兄「いや、違、だって……」
妹「何が違うの?」
兄「う、ちが、うう……」
妹「ほら、お兄ちゃんが出したお汁だよー」(ヌチュゥゥ
兄「や、やめろぉ……」
妹「んふふ、やだ」(クチュクチュ
兄「あっ、あっあっ……!」
妹「ほら、お兄ちゃん、ここだよ」(クリュッ
兄「んくっ!?」
兄「あっ、あっあっ、あぎぃ……!」
妹「ビリビリしちゃうでしょ?」(クリュクリュ
兄「……! ……!!」(コクコク
妹「声も出ない? 分かるよー、私も初めて触ったとき、そうだったもん」(ズリュ
兄「……!!」
妹「あ、想像した。……ね、お兄ちゃん、右手、後ろにして」
兄「っはぁ……え……」(グイ
妹「振り向いちゃやだよ、触るだけね」(クイ
兄「あ……!」
妹「んっ……! 場所、分かるよね……?」
兄「お、お前……」
妹「お兄ちゃんばっかりじゃ、ズルいもん」(クニュクニュ
兄「あっ、あああっ、あっ……!」(サワサワ
妹「んっ、あっ、お兄ちゃんの手ぇ……!」(グリッグリッ
妹「あっ、やあ、止めちゃダメぇ」(キュッ
兄「あ、ひ、はあっ……」(クリュッ クリュッ
妹「んっ、あ、は……!」(ニチュニチュッ
兄「ひっ、あっ、ああっ、い、や、何かぁっ」(ヌリュヌリュヌリュヌリュヌリュヌリュッ
妹「んっ! 急に早くっ、あっ、お兄ぃ、お兄ちゃんっ、やあっ……!」(クリュクリュクリュクリュ
兄「あ、やだ、ダメ、何か、何かくる、来る、来る、来るぅっ……!」(ビクゥンッ
妹「あ、ひ、あ、イく、イっちゃう、イ、あ、イいっ……!」(ギュウウウウ
兄「うぅふぅぅっ……」(ヒクッ ヒクッ
妹「……っちゃっ、たあ……」(グタァッ
兄「はああぁぁ……」
妹「ふぅぅうー……」
兄「妹ー……」
妹「ん、なぁに……?」(ギュッ
兄「何か、何だろ……笑うなよ……?」
妹「ん、言ってみてー」
兄「なんか……前から、抱っこしたい」
妹「……あは」
兄「わ、笑うなって言ったろ!」
妹「えへ、ごめんー、じゃ、前行くね」(クルン
兄「うわっ」
妹「えへー」(ギュウゥ
兄「んっ……」(ギュウッ
妹「ね、お兄ちゃん、シャセーしてた時はこういう気持ちになってなかったよね」
兄「ん、まあ……うん、そうだなあ……」
妹「えへへ、じゃあ、女の子になったからだ」(スリスリ
兄「うわ、こら」
妹「良いじゃん、お兄ちゃんの抱っこ、久しぶりー」
妹「えへへ……。そっか、女の子同士なら、抱っこも普通にしてもらえるんだ……」
兄「ん?」
妹「ううん、えへへ」
兄「ふー、とにかく体洗うか」
妹「洗いっこしよー」(パッ
兄「ええ?」
妹「お背中流しますねー」(ワシュワシュ
兄「お前人の話を」
妹「よっと」(ゴシゴシ
兄「うひゃうっ、ひゃ、あははっ」
妹「ちょっと、動いたら洗いづらいよ」
妹「えー? くすぐったいってこうじゃないの?」(コチョコチョ
兄「ひゃっ、あはっ、あは、あははははははっ!」
妹「うひひ、えいえい」(コチョコチョコチョコチョ
兄「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!」
妹「っふー、あー、楽し。お兄ちゃん、こんなくすぐったがりだったっけ?」
兄「……妹」
妹「なに?」
兄「洗えてない」
妹「はい」
妹「はい」
兄「やめよう」
妹「うん」
兄「兄ちゃん、自分で体洗うから。お前はあったまってなさい」
妹「えー」
兄「えーじゃないの。風邪引いちゃうでしょ」
妹「ちぇー」
兄「ちぇーじゃなくて」
妹「ふー」(ザパー
兄「まったく……」(ゴシゴシ
妹「お兄ちゃん、首から洗うんだ」
兄「何見てんだ」
兄「はいはい」(ゴシゴシ
妹「洗い布で強くこすると痛いかも」
兄「ッ……!」(ビクンッ
妹「って言ったのに」
兄「だ、大丈夫だよっ……」(サワサワ
妹「腋の下もちゃんと洗うんだよー」
兄「いちいち口出さなくてよろしい」
妹「はーい」
兄「…………」(ピタッ
妹「さてやってまいりました」
兄「えーと……」
妹「そこの洗い方、分かるー?」
妹「聞いてくれたら教えるよー」
兄「う」
妹「女の子としては、私の方が十二年、お姉ちゃんだからね」(ニヤニヤ
兄「ど、どうやって、洗ったら良いんだ……?」
妹「『教えて、お姉ちゃん』って言って」
兄「……はぁあ……」
妹「深い溜め息ついてないで、ほらほら早く」
兄「……教えて、妹姉ちゃん」
妹「まったく、しょうがないなあ!」(ニッコニッコ
兄「はああ……」
妹「教えてあげる。布を足に挟んで、前後に動かして擦るの」
兄「絶対ウソだろ」
妹「ノータイムでバレた」
兄「外側だけ?」
妹「ググったんだけど、中に石鹸とか入ると、かえって体に悪いんだって」
兄「へー……」(コシュコシュ
妹「って言うか、男子って洗い布で、その、あそこ洗うの?」
兄「……何で今さら代名詞なんだよ」
妹「いや、何かこう、今普通の気分だから……で、どうなの?」
兄「まあ、俺はそう、かなあ」
妹「つまり、私はお兄ちゃんがあそこ洗った洗い布で体洗ってた訳か……」
兄「う、ちゃんとゆすいでるし石鹸使ってんだし清潔だぞ」
妹「ドキドキしてきた……」
兄「変態か!!」
妹「今さらでしょ」
兄「……今さらだな」(ザパー
妹「ね」
妹「私は結構、前からだけどねー」
兄「何?」
妹「あ、ううん。えーと、ほら、ひいばあちゃんが夢に出る様になって」
兄「……ふーん。ほら、交代」
妹「うん」(ジッ
兄「こら、どこ見てんだ」
妹「いや、本当に女の子のだなあって思って」
兄「お、お前がやったんだろ」
妹「今さら手で隠してもー」
兄「良いから、ほら、早くどけって、体洗えっての」
妹「はあーい」
妹「ん、なあに?」(ゴシゴシ
兄「何でひいばあちゃんは、俺を女にする方法なんてお前に教えたんだ?」
妹「え? そりゃ、私が頼んだから」
兄「おい!!」
妹「魔法使って何したい? って考えたら、それが一番最初に思いついたの」
兄「なんか、他に色々あるだろ! 大金持ちになるとか、美味しい物食べたいとか!」
妹「おこづかいは別に困ってないしなあ、美味しい物はお兄ちゃんとご飯作れば良いし」
兄「モテたいとか、頭良くなりたいとか、世界に潜む悪と戦うとか!」
妹「お兄ちゃん、そんな事考えてたの?」
兄「あ、いや……えーっと……」
こんな風に一緒にお風呂入ったり、抱っこしてもらったり出来ないじゃん」
兄「いや、そりゃまあ……っつーか、この状態も問題ないとは言えないけど……」
妹「だから、私にはこれが正解」(ザパー
兄「今さらだけど、ブラコンか」
妹「ごめんねー? はい、入るからちょっと詰めて」
兄「はいはい」
妹「っふー」(ザプー
兄「ふー……」
兄「はー、すっかり長湯になっちまった」
妹「お兄ちゃんに色々レクチャーしたからねー」
兄「明日もあるんだし、早く着替えて寝ないとな」(ゴソゴソ
妹「え、お兄ちゃんトランクス穿くの?」
兄「……他に何穿けってんだよ」
妹「むー、こういうの穿きたくない?」
兄「自分のパンツ見せびらかすな! 恥じらえ! 穿きたくない!」
妹「ちぇっ、まあ穿きたいって言われてもお兄ちゃんの分ないけど」
妹「あ、そう言えばお兄ちゃん、布団どうしたの?」
兄「あ? あー……」
妹「お兄ちゃんが、中学生にもなっておもらしして、汚したお布団」
兄「分かってるから良いよ言わなくて! 一応、ベランダに干してるけど……」
妹「まだ乾いてないよねえ、多分」
兄「そうだなー、まあ掛け布団に包まって」
妹「仕方ないから私のベッドで一緒に寝ない?」
兄「ちょっとくらい迷え」
兄「結局、こうなっちゃうのか……」
妹「えへへ、お兄ちゃんが私の部屋来るの久しぶりだよね」
兄「未だにカービィ好きなのか、お前」
妹「可愛いでしょ」
兄「可愛いけど」
妹「こちらがお布団になります」(ポンポン
兄「なあ、やっぱり」
妹「とーう」(グイッ ドンッ
兄「うおっ」(ボフッ
妹「さー、寝よ寝よ。明日は学校だよー」(バサァ
兄「おーい、電気消せ」
妹「あ、いっけない。消してくるけど、逃げないでね?」
兄「もう良い、あきらめた」
兄「やれやれ……」
妹「えへへ、おやすみなさーい」(ゴソゴソ
兄「はいはい、おやすみなさい」
妹「んー」(ギュウ
兄「うお」
妹「おお、抱きやすいー」
兄「妹さん、何してんの?」
妹「抱っこ」
兄「あのね」
妹「やわらかくて、良いにおい……」(ギュウウ
兄「ちょ、寝づらいんだけど」
妹「ちょっと、お母さんみたいなにおいかも」(クンクン
兄「……さすがに母ちゃんみたいではないだろうけど」
妹「良く寝れそうー……」
兄「甘えたかったのか、ひょっとして……」
妹「ん……お兄ちゃん……」
兄「ん?」
妹「あったかくて、眠い……」
兄「ん、もう話してないで寝な」
妹「うん……」
兄「……俺も、素直に寝よ」
*
妹「お兄ちゃん、お兄ちゃん」
兄「……ん、ん?」
妹「あ、起きた」
兄「うお、もう朝?」
妹「ううん、まだ寝てるとこ」
兄「は? どういう……」
兄「うおっ!?」
妹「あ、ひいおばあちゃん」
兄「ひいおば……え? この人?」
妹「こんばんはー」
淫魔「こんばんは、妹。兄には初めましてね」
兄「あ、は、はじめまして。 え?」
淫魔「母に似てんのねえ、賢そうな顔してるわ」(ナデナデ
兄「うわ、え? ひいばあちゃん? どう見ても二十歳くらいじゃ……」
妹「そこはほら、悪魔だし」
淫魔「見た目が気になるなら、ひいおばあちゃんらしい格好にもなれるけどねえ」
兄「あ、いや、是非そのままで」
妹「お兄ちゃん、そんなにおっぱい好き?」
妹「えへへ」
兄「……確かにばあちゃん見たいな可愛がり方だわ」
淫魔「妹ちゃんと一緒に、私の夢見れるなんてね」
妹「どういうこと?」
淫魔「アタシが妹ちゃんの夢に出れんのは、
妹ちゃんが私の力を受け継いでるからっていうのは、前にしたでしょう?」
妹「うん」
淫魔「じゃあ、この夢をお兄ちゃんも一緒に見れているのは、どういう事だと思う?」
兄「あ……!」
妹「そっか! お兄ちゃんが、女の子になったから……」
淫魔「そういうこと。やっぱり、私の血を受け継いでんのね」
兄「って事は、俺にも悪魔の力が……?」
妹「何かうれしそうね、お兄ちゃん」
淫魔「力ってほどじゃないけど、男の子にはモテモテだろうねえ」
妹「あ、くずおれた」
淫魔「サキュバスだからねえ、そもそも男の精を集める種族だし」
妹「私はそんなに、モテてる感じしないけどなあ」
淫魔「妹ちゃんは才能があるからね。無意識にかわしてるのよ」
妹「えへへ、才能があるなんて生まれて初めて言われた」
兄「お、俺は?」
淫魔「兄ちゃんは女の子になりたてだからねえ。迂闊な事すると、まずいかもねえ」
兄「迂闊って」
淫魔「たとえば思わせぶりな仕草をするとか、男の前で肌を出すとか、そういう事だね」
兄「……しようとも思わないけど」
兄「うーん……。つうか、起きたら元に戻してもらえば良いんだけど」
妹「そうだね、学校で女の子じゃ困るでしょ」
兄「すげー困るよ」
妹「帰ってきたら、また女の子になれば良いんだし」
兄「おい」
淫魔「まあともかくね、今日は妹ちゃんの首尾を見に来ただけだから」
妹「へへー、上手く行ったよ」(ギュウッ
兄「こら、妹、苦しい」
淫魔「うんうん。練習したら魔力も上がって、色々出来る様になるからね」
兄「あ、その事なんだけど」
淫魔「うん?」
妹「え、そんなの気にしてたの?」
兄「だって、他にやりようありそうなもんじゃん」
淫魔「あー、それはね、妹ちゃんがまだ上手く力を使えないからだよ」
兄「どういう事?」
妹「んーとね、だからつまり、私、足でしか魔法使えないの」
兄「は?」
妹「魔法を使うには、ぎゅーって気持ち集めるんだけど、私が出来るの、まだ足だけなの」
兄「何でまたそれが足なんだ……」
淫魔「あれだよ、力のない女子供がうどん作るのに、足で踏む要領だよ」
兄「俺、うどん!?」
妹「うんっ」
兄「えー、いいのか……?」
淫魔「やらしい事もね、二人でやってる分には良いとして」
兄「おいおい」
妹「えへへ」
淫魔「誰か巻き込むなら、きっちり堕とすんだよ」
妹「わかった!」
兄「うおい!!」
淫魔「そんじゃあ、またね。妹ちゃん、兄ちゃん」
妹「うん、またねー!」
兄「さ、さようならー……」
兄「……んにゃ……とんでもねえことを……」
妹「……きっちり……ううん……」
兄「…………」(パチ
妹「…………」(パチ
兄「……ん、朝か……」
妹「ふぁ……お兄ちゃん、おはよー……」
兄「妹……? え、夢……だよな?」
妹「夢だけど、ホントのことだよー」
兄「……良く分かんないけど……とにかく、妹」
妹「あ、ああーっ!!」
兄「うお、何!?」
妹「お兄ちゃん、時間!! 七時四十五分!!」
兄「うおおお!? やべえ、遅刻する!」(バタバタバタバタ
妹「朝ごはん! ええいシリアルだー!」
兄「ひいばあちゃんと長話しすぎたかな……」
兄「結局、元に戻るヒマ無いまま出て来ちまったし」
兄「昨夜みたいな事になるんじゃ、やってるヒマないもんなあ……」
兄「うう、今日一日、何とかごまかすしかないか……」
兄友「おう、兄がギリギリなんて珍しいな、おはよう!」(ポンッ
兄「うひぃ! お、おはよ!」
兄友「あはははっ、尻はたいた位で、何ヘンな声出してんだよ、『うひぃ!』って」
兄友「朝練が無い日はつい、寝坊しちまうんだよー」
兄「むしろ良く、朝練寝坊しないなあ」
兄友「部活はなんつーか、別腹なんだよ。兄も部活しようぜー、一緒にバスケ」
兄「ウチは家が留守がちだしなー」
兄友「家事やって、妹の面倒見て、偉いよなー、お前」
兄「まあな」
兄友「女だったら、良い奥さん、ってやつ?」
兄「!?」
兄友「な、何だよ、いきなり飛びのいて」
兄「あ、いや、何でもない……」
日直「ではこれで、朝の会を終わります。起立! 礼!」
「「「ありがとうございましたー」」」
ザワザワガヤガヤ>
兄「ふー……今朝はちょっと意識しすぎたな……」
兄「普通にしてりゃ良いんだ、うん、学ラン着てりゃバレようがないだろ」
兄「よし、普通、普通」
兄「あ、落ち着いたら……今朝、トイレも行ってねーじゃん」
兄「今のうちに行っとこ」
[男子トイレ]
兄「…………」
兄友「あ、兄。どうしたんだよ、便器の前で固まって」
兄「……ま」
兄友「ま?」
兄「間違えたーッ!!」(ダッ
兄友「何が!?」
兄「う、どうしよ、出すつもりだったから……」(モジッ
兄「二日続けてもらすとか勘弁だよ、どうしよう……」
兄「……アイツ、追いかけて来てたりしないよな?」(チラッ
兄「よし。 えーと、校庭の隅っこの方に……」(タタタタッ
兄「あ、あった。記憶の通り……」
兄「……この植え込みの中なら、見つからないだろ」(ガサガサ
兄「朝の会の後の休み時間なんか誰も来ないよな……来るなよー……」(ゴソゴソ スルリ
兄「んしょ……」(シャガミ
兄「んっ……」(シャァァ...
兄「ふぅう……」(チョロチョロ
?「? 誰か、そこにいるんですか?」(ガサガサ
兄「えっ!?」
眼鏡「……!」
兄「……!!」
兄「え、あ、だっ……!」(ワタワタ
眼鏡「どうぞ、後ろを向いていますのでズボンを上げてください」
兄(え、見られた? ……見られた、見られたよな!?)(フキフキ
兄(うかつな事……マジでうかつな事してどうすんだよ、俺!)(モゾモゾ
眼鏡「どなたかは存じませんが」
兄「は、はいっ!?」
眼鏡「僕は何も、見てはいませんので」
兄「……見たって事じゃん、それ」
眼鏡「見ていた方がよろしかったですか?」
兄「いや……それは困るけど」
眼鏡「もうそちらを向いても?」
兄「ん、あ、ああ、いいけど」
眼鏡「やっぱり、男子の制服ですよね、それ」(クルリ
兄「え、あ、うん、まあ」
兄「え、ええと、まあ」
眼鏡「なるほど。僕も、あなたが女性である事は黙っている事にしましょう」
兄「あ、ああ、うん。そういう事にしてくれると……助かる」
眼鏡「ですが、そのためにはギブアンドテイクが必要です」
兄「!!」
(淫魔「男の子にはモテモテだろうねえ」「迂闊な事すると、まずいかもねえ」)
兄「な、なな、何だよ……」
眼鏡「……恥ずかしながら、僕、転校生でして。その、職員室の場所を教えて頂けませんか?」
兄「は、な、何だ……はああ……」
兄「あ、いや、何でもない。……わかったよ、職員室な」
眼鏡「すいません。 あ、そうだ、その前に」
兄「な、何だよ、まだ何か?」
眼鏡「ハンカチです。良かったら使ってください」(スッ
兄「……! も、持ってるよ! 慌ててて、手拭くの忘れてただけ!」(ゴシゴシ
眼鏡「そうですか」
兄(何だコイツ、調子狂うなあ)
*
兄「ほら、ここが職員室だよ」
眼鏡「ありがとうございます」
兄「どういたしまして。……絶対、別の奴に言うなよ」
眼鏡「言いませんとも」
兄「じゃあな!」(タッタッタッタッ
眼鏡「あ、そうだ、お名前を……ああ、行ってしまった」
兄(薄茶色の髪とか、目の色も灰色だったし、ハーフ? 外国人?)
兄(無闇に顔も綺麗で……いや、そんな事よりやばいよな、どうしよ)
眼鏡(サッパリした性格の女の子だったなあ)
眼鏡(あんな所に出くわしたのに罵るでも泣くでもなく、僕を案内までしてくれた)
眼鏡(同じ学校だし、また会えるかな。……会えるといいな)
*
先生「あー、この時間は予定を変えて、転校生を紹介する。入って来てくれ」
眼鏡「はい」(ガラガラ
兄「……あっ!?」
眼鏡「あっ!!」
先生「何だお前ら、知り合いかー?」
眼鏡「ええ、さっき迷っている所を案内してもらったんです」
兄(やばいやばいやばいやばい)
妹「あ、お兄ちゃん、お帰りー」
兄「妹! 俺を戻せ元に戻せすぐ戻せ!」
妹「え、何、何なの藪から棒に」
兄「めんどくさい事になった!」
妹「待ってよお兄ちゃん、落ち着いて」
妹友「そうです、順序立てて説明すべきです」
兄「落ち着いてる場合じゃないんだって、見られちゃったんだよ」
妹「何を?」
兄「その、女になってるとこ」
妹友「何でそんな事に」
妹友「うわ、思い切った事しますね」
妹「まさか、そこ見られたの? ばっちり?」
兄「そうなんだよ、ごまかしようがー……って、ちょい待ち」
妹「うん」
妹友「男子の人って、本当に学校のトイレの個室、使えないんですねー」
兄「いやいや、妹友ちゃん、来てたの?」
妹友「はい、おじゃましてます」
兄「」
いや、大をしていると思われたくないだけだろ
中学生かよww
中学生なんだな
いや中学生だろ
これは赤っ恥だぜフヒヒ
妹「だから言ったじゃん」
兄「いや……妹、その、何を……」
妹「妹友ちゃん、私の親友じゃない」
兄「ああ、うん」
妹「だから、その、話しちゃった」(ペロ
兄「妹ー!? 迂闊な事するなって言われたじゃん!!」
妹友「ウカツじゃないですよ、私、ヒミツはしっかり守ります」
妹「そうだよお兄ちゃん、妹友ちゃんなら大丈夫だよ」
兄「いや、あの、あのなあ」
妹「それに、もう一つの方もきっちり守ってるし」
兄「もう一つって」
妹「しっかりおとせ」
兄「お、お前……親友だろ」
妹「親友だからだよー」
妹「あ、そうそう。お兄ちゃん」
兄「やな予感」
妹「とりあえず、下脱いで?」
兄「とりあえずで脱がそうとすんな!」
妹「えい、しょうがない、実力行使だ」(ギュウッ
兄「あ、うわ、こら、やめろ!」
妹「妹友ちゃん、脱がしちゃえ」
妹友「あっ、うん!」
兄「この、離せ! くっ、お前、力強くなった?」
妹「違うよー、兄ちゃんが弱くなってるの。背もほら、縮んでるし」
妹友「では、失礼しますね」(カチャカチャ
兄「あっ、駄目っ」
妹友「えい」(ズルリ
兄「あっ……」
妹友「うわあ……本当に、女の子のアソコだー……」
兄「あっ、くっ、こら……!」
妹友「お兄さん、毛、ちょっとだけ生えてるんですね」
兄「あっ、息……息掛かってるっ……」
妹「妹友ちゃん、ボッキしてきたんじゃない?」
妹友「うん、してきた……」
兄「な……!?」
妹「お兄ちゃんを男の子に戻す前にって思って、妹友ちゃんに練習相手になってもらったの」
兄「何、お前、何してんの!?」
妹友「えへへ……私、妹に男の子にされちゃったんですよお……」
兄「あ、うわ……。スカートがテント張ってる……」
妹友「……チンチンって、ボッキすると苦しいー……はふぅ……」(ナデナデ
妹「外に出してみたら? キツいの、楽になるかも」
妹友「あ、そっか。ちょっとこわいけど……えいっ」(スルリ
妹「わあ……」
妹友「ふうぅ……はあ、ラクになったあ……」(ビンビン
妹「すごい、妹友ちゃん、おっきーい」
妹友「そ、そう? 私のチンチン……そんなにすごい?」(コシュッコシュッ
兄「あっ、そ、そんな風にこすったら……」
妹友「ふぅう……チンチン……きもちい……」
妹「いいの、これが約束なんだから」
兄「約束?」
妹「男の子になって、女の子のお兄ちゃんをオカズにオナる、って約束」
兄「どういう約束だよ……!!」
妹友「はぁっ……はぁっ……」(コシュコシュッ
妹「うわ、妹友ちゃん、気持ちよさそー……」
兄「…………」(ゴクリ
兄「えっ、って、どうすりゃ」
妹「ベッドに座って〜」(グイグイ
兄「うおっ」
妹「はい、足かぱー」
妹友「あっ……!あっ……!」(コシュコシュコシュコシュッ
兄「あ、うわ、妹、やめろっ」
妹「うわ、お兄ちゃんも濡れてきてる?」
兄「な、何かこれは……その、反射で」(クパァ
妹友「わ、私のチンチンオナニーみて、濡れちゃったんですか……?」(コシュコシュ
妹「そうみたい。元は男なのに、チンチン見て興奮したんだって」
兄「ち、違っ……」
妹「じゃあ、おまんこ見られて興奮したの? そっちの方が変態だよー」
妹友「私も元は女の子なのにおまんこ見て興奮してるからっ、は、おあいこですねえっ」(ニュチッニュチッ
妹「お兄ちゃんのも、触ってあげるねー」(ニチャッ
兄「んっ……!」
妹友「あ、すごい、妹ちゃん、レズだぁ……」(コシュコシュッ
兄「あ、ひ、見られてるのに、触っちゃっ……」
妹「ほらほら、お兄ちゃんは妹友ちゃん見てれば良いの」(クニュクニュ
妹友「んんぅっ……ほらお兄さん、おちんちんですよー……」(ズリズリ
兄「あ、はぁっ、んっ……」
妹「……お兄ちゃん、入り口のとこ、ひくひくしてるよ?」(ニチャァッ
兄「あ、え、な、してないっ」
妹「おまんこにちんちん入るとこ、想像した?」
妹友「……っ!」(コシュコシュッ ギュウウッ
兄「しっ、してるわけないだろっ!」
妹「ふーん、じゃあ体が勝手にこうなってるんだ、やらしいなあ」(チュクチュク
兄「はあっ、あ……ひいんっ……」
兄「んうっ……!?」
妹友「あ、わ、わ……指、入っちゃってる……!はぁあっ……!」(シュコシュコシュコッ
妹「うわあ……中、きゅうきゅうしてる……」(
兄「い、言うなあっ……っは、抜けぇっ……」
妹「でも、何にもしなかったら、指吸い込まれちゃいそうだよ?」(ヅププ
兄「あっ……!んぁっ……!」
妹友「はーっ、はぁーっ……!」(ゴシュゴシュゴシュッ
妹「えいっ」(グチュッ
兄「いっ、ひっ、あ、う、動かしちゃっ」
妹「動かしたら、何?」(チュブチュボッ
兄「だ、あ、めっ、あっ……!」
妹友「すごっ、お兄さん、かわい、すごいっ」(ゴッシュゴッシュゴッシュ
妹「お兄ちゃん可愛いって、気持ちよくなってるとこ褒められて、良かったねー?」(グチュグチュグチュッ
兄「あ、ひぃっ、い、あ、あっ、う、うれしく、なひっ……!」
妹「あっ、ほら、お兄ちゃん、妹友ちゃん、セーエキ出るって」(ニチュッグチュッ
兄「えっ、あ、ひ、あ、あ」
妹「妹友ちゃん、こっち、お兄ちゃんに出るとこ、近くで見せたげてよ」
妹友「えっ、あっ、うんっ、あ、はっ……」(グリッグリッ
兄「うあ、あ、え、何、ティッシュっ、とかっ」
妹「お兄ちゃんが、ティッシュだよ」(グチュッ
兄「ひぁんっ! そ、それって、まさかっ」
妹友「あっ、ダメっ、もうダメっ、出る出ちゃうっ!」(ニチュニチュニチュッ
兄「えっ、あっ、や、あ、待て、待ってっ」
妹「えい、お兄ちゃんもイけるかなっ、イっちゃえっ」(チュボチュボチュボチュボッ
兄「あっ、ああっ、あっあっあっあっああっ!!」
妹友「出るっ、出しますうっ!!」(ビュルルッ ビュッ
兄「あぷっ……! ひああああっ……!!」(ビクゥッ ビクンッ
妹「おお、タイミングばっちり……。私すげー……」
妹友「はー、気持ちよかった」(フキフキ
妹「そんなに?」
妹友「うん。何か、一気にギューンって来る感じで、後味もスッキリみたいな」
妹「へええ、自分じゃ自分踏めないしなー」
妹友「その内、出来るようになるんでしょ? そしたらやれば良いよー」
妹「うん、気が向いたら頑張る」
兄「…………」(ホケー)
妹「で、お兄ちゃん、いつまで呆けてんの?」
兄「女子小学生に……顔にかけられながら……俺……」(ホケー
妹友「その、お兄さんエッチくて、可愛かったです! ありがとうございました!」
兄「う、うん……」
兄「なんか、男としてすごい大事なものを失った気がする……」
妹「ダメだこりゃ。ま、そのうち元に戻るでしょ」
妹友「くすくす、ねえねえ、妹ちゃん」
妹「ん?」
妹友「女の子になったお兄さんがこんな可愛いならさ、クラスの男子も……」
妹「あ、そっか! 面白そうだねー」
兄「……それはやめろ」
妹「あ、戻った。良かったー」
妹「うん、またねー!」
兄「あー、気をつけて帰ってね」
妹「帰っちゃった」
兄「その、男の子のままだけど……良いのか?」
妹「色々試したいんだって。妹友ちゃんの気がすんだら戻すよ」
兄「……俺も元に戻せよ」
妹「その事なんだけどさあ、お兄ちゃん」
兄「何だよ」
妹「聞いた話の通りなら、いっそ、そのまんまの方がよくない?」
兄「ええ!?」
妹「だってさ、今のままならえーと、『男の振りをしてる女の子』じゃん。
しかも、その眼鏡くんが協力してくれるっぽい」
兄「まあ、事実上、うん」
妹「でも、元に戻ったら眼鏡くんの前では、
『男の振りをしてる女の子の振りをする男の子』って事になるんだよ?
眼鏡くんの前では、っつったけど、同級生ならフルタイムじゃん」
兄「俺は元々男なんだから、男に戻って何も困る事ないだろ」
妹「私がつまんないじゃん。お風呂も添い寝も出来ないじゃん」
兄「おい」
妹「間違えた。つまり、前からの友達の前では、
どっちにしろ今まで通りの振る舞いをするわけでしょ?」
兄「でも、眼鏡の前だと、『男の振りをする女の振り』をしなきゃいけない……」
妹「そう。おしっこしてる所見られてるんじゃ、どうしようもないし。
元が男の子のお兄ちゃんは、『男の振り』するのと、『女の振り』するのと、
どっちがラク?」
兄「……そういう意味か」
妹「もちろん、洗いざらい全部ブチまけて妹友ちゃんみたいに巻き込むってのもアリだけど」
兄「ナシだろ!!」
妹「でしょ? じゃあ、女の子で学校行った方がラクじゃない。お兄ちゃん、未だに声変わりもしてないし」
兄「……そうかなあ、何か上手い事丸め込まれてる気がする」
妹「さ、早くご飯の準備しよ! 今朝朝ごはん手抜いたし、お母さんにしっかり食べてもらわなきゃ!」
兄「あ、待てって、おい!」
兄「そうだなあ」
妹「おなかすいたー」
兄「もう食べちゃう?」
妹「えー、お母さん待ってる」
兄「何してんだろうなあ、母ちゃん」
電話<プルルルルル プルルルルルル
兄「あ、電話だ」
妹「お母さんかな……」
兄「多分ね」
妹「帰って来れないんだね、たぶん」
兄「俺が取るね」
妹「うん」
兄「はい、もしもし」
妹「うん、仕方ないよね」
兄「ご飯にしよ」
妹「うん」
兄「隣座る?」
妹「うん」
兄「いただきます」
妹「いただきます」
兄「美味しいね」
妹「うん、美味しい。……お兄ちゃん」
兄「ん?」
妹「今日も、一緒にお風呂はいろ」
兄「はいはい」
妹「寝るのも」
兄「あいよ」
兄「ふわああああ」
眼鏡「寝不足ですか?」
兄「……まあな」
眼鏡「睡眠はきちんと取られた方がよろしいですよ」
兄「大きなお世話だ」
眼鏡「やっぱり家事は大変ですからね」
兄「……誰に聞いたんだよ」
眼鏡「あ、兄友さんに。その、僕が無理に」
兄「兄友!!」
眼鏡「ごめんなさい、貴方に興味があったもので」
兄「うへええ、背筋が寒くなってきた」
兄「へー」
眼鏡「冷たいですね」
兄「俺構ってて良いのかよ、女子がお前に興味津々だぜ」
眼鏡「僕は貴方に興味があるんです」
兄「……お前が思ってる様なヤツじゃないぞ、俺」
眼鏡「ああいう形で出会って、どう思われてると思ってるんですか?」
兄「……変態だろ、お前」
眼鏡「何か力になれる事があれば、何でも言ってくださいね」
兄「はぁ……」
兄友「よう、モテモテじゃん?」
兄「ふざけんな、何とかしてくれよ」
兄友「何とかったって、どうしようもねーだろ」
兄「何なんだよアイツ」
兄友「ロシア人とのハーフ?」
兄「それは昨日自己紹介で聞いたから知ってるよ」
兄友「アレだな、やっぱ外国育ちは開けっぴろげなんだよ」
兄友「良いじゃん、BLBL」
兄「笑い事じゃねえぞ……」
眼鏡「そうですよ。僕は男色じゃありません」(ヌッ
兄「うわっ」
兄友「うおっ」
眼鏡「誤解しないで下さいね」
兄友「お、おう」
兄(つーか、BL知ってるのか)
兄「? ……妹ー? 靴はあるけど……」
兄「ただいまー……部屋にもいない」
兄「母ちゃんの部屋とかー……?」
母「…ぐう…ぐう……」
兄「あ、母ちゃんいたのか」
妹「すう……すう……」
兄「なんだ、一緒に昼寝してたのか」
兄「昨日寂しそうだったもんな、そっとしといてやろ」
兄「久々に静かだし、俺も部屋で漫画でも読むかあ……」
兄「…………」(ヨミヨミ
兄「………」(パラパラ
兄「……」(モゾモゾ
兄「…」(ジー
兄「……俺の部屋、こんな汗っぽい臭いだったっけ?」(クンクン
兄「どっかで何かが臭い出してんじゃないよなー?」
兄「ゴミ箱の中とか……」(ゴソゴソ
兄「……!」
兄「そうだ、そういやあん時拭いたティッシュ、そのまんまだった……」
兄「あの後、妹に付きっ切りで部屋に戻って来れてないもんなあ」
(妹「うふふふ、お兄ちゃんって、私の足が気持ち良いんだ」)
兄「…………!」(ゾクッ
兄「やば、思い出したら何かヘンな気分に……」
(妹「今、私、すっごい楽しい!」(グリッグリッグリッ)
兄「んっ……!!」(ジワァッ
兄「な、何で?」
兄「……なんで踏まれてる時の事思い出したら、俺んの、こんな……」(サスサス
兄「はふぅ……そう言えば、妹友ちゃん、元に戻してやったのかな……」
兄「俺の時、みたいに、足でチンチン踏んで……」(グリッグリッ
兄「あ……はぁあ……ダメだぁ……手、手ぇ離さなくちゃ……」
兄「膝に力、入んなっ……んんっ……」(ペタン
兄「精液、妹友ちゃんのあのチンコ踏んでっ、精液、出させてっ……」(ギュッギュッ
兄「あ、はぁっ……んっ……」(ギュウゥ
兄「ふぅう……服の上から、押し付けるのも、イイんだ……」(ギュッ グリッ
兄「んっ、ふぅっ、ちょっともどかしい、けどっ……んっ……」
兄「……もっと、もっと強くぎゅうってっ……!」(ギュウウゥッ
兄「っは、あ、そうか、何か硬いモノ押し付ければっ…………」
兄「……じ、辞書の背表紙とか…!?」(バッ
兄「は、んっ……!」(グリグリッ
兄「あ、んっ、んんぅっ……ぐりぐりするうっ……」(ギュウゥッ
兄「平たくて、何か足の裏みたいだしっ……」(グリッ グリッ
兄「あっ、はっ、はあっ……! きもちいっ、んっ……!」(ギュッ ギュウゥッ
兄「あっ、ああっ、あっ、あっ……! ひ、来るっ……!」
兄「……うぅんっ……!!」(ビクンッ ビクンッ
兄「はぁあぁ……イっちゃったぁ……」(ヒクンッ
兄「はー……あ……うわ、中でパンツめっちゃ張り付いてる……」(モゾッ
兄「……気持ち悪ぅ、穿き替えよ」(ゴソゴソ
兄「うわあ……」
兄「ぐっちょぐちょになっちまってる……」(ヌトォォオ
兄「……俺から出たんだよな、コレ、全部」
兄「…………」(ソー
兄「んっ……」(クンクン
兄「ふはぁっ、うわ、こんな臭いなのか……」
妹「……何やってんの?」
兄「うわあっ!?」
妹「昼寝から覚めたらお兄ちゃんが自分のパンツ嗅いでた死にたい」
兄「い、いい、いつからいたんだ、いつから!」
妹「だから、お兄ちゃんが自分のお汁でべっちょりのパンツ嗅ぐなんて変態なコトしてる所から」
兄「か、かかか、母ちゃんは?」
妹「まだ寝てる」
妹「とりあえず、パンツ置いたら?」
兄「あ、ああ、えーと……ビニール袋入れとこ」(ガサゴソ
妹「で、何してたの?」
兄「あ、いや、何って訳でも」
妹「お兄ちゃんは何にもないのに、お尻丸出しにしておまんこ濡らすの?」
兄「あ……いや……」
妹「何してたのか、正直に言った方が身のためだよー」
兄「言わなかったら?」
妹「二度と男に戻してあげない」
兄「……えーと」
妹「うん」
兄「お……う……い、言わなきゃダメ?」
妹「言わなくてもだいたい分かってるけどー」
妹「お兄ちゃんが言うのを聞きたいの」
兄「う、うぅ……お、えっと、お……」
妹「うんうんっ」
兄「お……オナニー、してた……」(カァア...
妹「ふふふっ、お兄ちゃん、顔赤くして可愛いー」
兄「ううううう……」
妹「気持ちよかった?」
兄「…………」
妹「答えて?」
兄「き、気持ちよかった……」
妹「ふぅーん……。何考えて、そんなにおまんこ、べっとべとにしたの?」
兄「そ、その……ええと、妹の裸……」
妹「えっ?」
妹「ふぅーん……そうなんだ。……すけべ」
兄「ご、ごめん」
妹「ホント、はしたないんだから。……ちょっと嬉しいけど」(ボソッ
兄「うう……」
兄(……ウソついちまった)
兄(……でもまさか、踏まれてる所想像して、なんて言えねえよな……)
妹「とりあえず、早くパンツ穿きかえたらー?」
兄「あ、お、おう」(モゾモゾ
妹「……やば、結構うれしいかも」(モジモジ
兄(……ホントの事言ったら、踏まれてたのかな)
兄(あ、やば、何かまたっ……)
妹「何してんの? 早くご飯の準備しよー、えへへ」
兄「そう、良かった」
妹「ね、お母さん、お仕事まだ忙しいの?」
母「んー、そうねえ……。まだ、しばらくは忙しいかも」
妹「そうなんだ……」
兄「そんなに大事なとこなの?」
母「ん、取材してる相手にね、その結構大きな動きがあって」
妹「へえー」
兄「……わかるけど、でもさ、なるべくなら帰って来てよ」
母「ん……うん、分かった」
妹「お兄ちゃん? あんまり甘えんぼな事言っちゃダメだよー」
兄「ぶっ」
母「ふふっ、あははっ」
妹「あ、もう、何で二人とも笑うの、もうっ」
兄「はいはい、甘えんぼにならないようにするよ」
妹「ほんと!?」
母「うん、頑張るからね」
携帯(〜〜♪〜〜♪)
母「あ、電話」(ピッ
妹「あ、また仕事かな……」
兄「しーっ」
母「もしもし、母です。……はい。はい、はい。わかりました、はいっ! すぐ!」
妹「お母さん、また仕事?」
母「うん、取材先の偉い人がね、会ってくれるって!」
兄「えー、何か急じゃない?」
母「私より忙しい人みたいだからね。ごめん、二人とも! 美味しかった、ごちそうさ
ま!」
妹「あっ、うんっ、気をつけてね!」
兄「ちゃんと、無事に帰って来てね」
母「うん! 二人とも、元気で待つのだぞ!」
兄「行ってらっしゃい!」
妹「じゃ、お兄ちゃん、後片付けしてお風呂入ろー」
兄「はいはい」
妹「……あ、でも、あんな話した後だから、ちょっと照れるかも。えへへ」
兄「あ……あー、そうだな、うん」
妹「私の裸見てオナニーしても良いよ、お兄ちゃん?」
兄「……もうちょっと恥じらいを持ちなさい」
妹「お兄ちゃんに言われたくないなー」
兄「ええー」
兄「ん……もう朝か……」
妹「ううん……むにゃ……」
兄「……一週間近くも経つと、流石に朝勃ちがないのも慣れるな」(ペトペト
兄「おーい、妹起きろ、朝だぞ」
妹「う、うぅん……お兄ちゃん……」
兄「土曜日だから出掛けるんだろ、妹友ちゃんも来て」
妹「起きるー、起きるから……」
兄「はいはい」
妹「おはようの、ちゅうー」
兄「ドアホ」
妹「大マケにマケて、ほっぺで良いからー」
兄「はいはい、ちゅうちゅう」(ツネッ
妹「あぶえ」
兄「ほら、起きて着替えるぞ」
妹「ぶう、お兄ちゃんのドケチ」
妹「妹友、おはよーっ!」(ギュウッ
妹友「妹、おはよーっ!」(ギュウッ
兄「何してんだ、お前ら」
妹「親愛のハグ」
妹友「お兄さんも、おはようございますっ」(パッ
兄「え、ハグ待ち? 俺もすんの?」
妹「妹友ー」
妹友「あ、やっぱダメ? えへへ」
妹「お兄ちゃんには私がハグするのー」(ギュウウッ
兄「うわっ」
妹「お兄ちゃんは私のお兄ちゃんだもん、このおっぱいも私のー」(フニフニ
兄「あっ、こら、やめろっ、揉むなあっ」
妹友「あー! あー! ズルいよ、私だって女の子のお兄ちゃん欲しかったよ……」
兄「もしもし、妹友ちゃん? ヘンな事言ってるよ?」
兄「おい俺の意見は」
妹友「やったー!! お兄さーんっ」(ギュウウッ
兄「ぐええ」
妹友「お兄さんのおっぱいー」(フニフニ
兄「ちょっ、君もか!!」
妹「はい、という訳でですねー」
妹友「はいっ」
兄「段取りの悪いレポーターか」
妹「今日はその、おっぱいについてです」
妹友「はい」
兄「何?」
兄「あ? お前、理由もなく臨時のおこづかい……」
妹「理由もないおこづかいじゃないよー、必要経費」
妹「今日は、なんと! ……初ブラジャーを買いに行きます!」
妹友「わーっ」(パチパチパチ
兄「わ、わー? 何そのテンション」
妹「う、お兄ちゃんのデリカシーなし。私もちょっと緊張してんの」
妹友「大丈夫だよー、分かんない事はお店の人に聞いたら、ちゃんと教えてくれるし」
妹「うう、妹友ちゃんが頼もしい」
兄「それは良いけど、何で俺まで」
妹「私よりふくれてるんだから、お兄ちゃんだってブラいるでしょ!」(ビシッ
兄「え、ええ!? 俺も!? お、俺はいいよ!」
妹友「ダメですよー、ちゃんと付けなきゃ擦れるし、揺れるし、形崩れますよ。って言われました」
妹「と、言う訳で、兄妹揃って初ブラのために、いざ、しゅっぱーつっ」
兄「道理で……今日休みなのに戻してくれない訳だよ……」
妹「お兄ちゃんのためだよー? 近所で知り合いにあったらどうすんの」
兄「う」
妹友「ウカツですねー、お兄さん」
兄「……反論できない」
妹「私が気をつけなきゃ、心配だなー」
兄「あ、いや、お前が元に戻してくれりゃ、何の気遣いもないんだよ」
妹「あーあー聞こえなーい」
妹友「元に戻るって言えば、私も、女の子に戻ったんですけど」(ペタペタ
兄「あ、そうなんだ」
妹友「……お兄さんも、女の子になるとき、あんなすごい事になったんですか?」
兄「……妹友ちゃんもなったんだ」
妹「気持ちよかったでしょ」
妹友「先言っといてよー……パンツ脱がせるから、おかしいとは思ったけどさー」
兄(……あ、こないだの、ちょっと思い出しちゃった)
兄「また粘ったねー」
妹友「男の子に慣れちゃって、何か今、足の間が寂しくて落ち着かないんです、少し」
兄「あー、分かる」
妹「何その、何? あるあるトーク?」
妹友「妹ちゃんも、しばらく男の子になってみたら分かるって」
妹「えー?」
妹友「あ、そうだ。妹ちゃん、他にも出来るようになった事あるんですよ。聞きました?」
兄「え、何?」
妹「あっ、もー、もうちょっと上手く出来る様になってからやって、驚かそうと思ったのに」
兄「何だよ、教えろよ」
妹「……実はね、ちょっとだけ飛べるようになったの」
兄「は!?」
妹友「やって見せてよー」
妹「えー、電車の中だよ?」
妹友「他にお客さんほとんどいなから大丈夫だよ」
妹「仕方ないなあー……」
妹「じゃあ、行くよ。せーのっ」(フワッ
兄「おお、浮い、た?」
妹「う、微妙な反応。だからもうちょっと出来るようになってからって思ったのに」
兄「……数センチ?」
妹「足でしか使えないから、あんまり高いとバランス取れなくなっちゃうの」
妹友「でもすごいよー」
兄「妹がどんどん人間離れしていく……」
兄「……お前、恥ずかしいって感情あったのか」
妹「ちょっ、どういう意味?」
兄「いや、そういう意味そういう意味。ここしばらくの生活はさあ……」
妹「そういう恥ずかしいとこういう恥ずかしいと違うでしょ」
兄「でもちょっとビックリしたわ」
妹「ひどいなー、もう」
妹友「くすくす、良いなあ、お兄さん」
妹「えへへ、あげないよ」(ギュッ
妹「ええー、妹友ちゃんだから、だからね? 特別だよ?」
妹友「うんっ」(ギュー
兄「…………」(ポンポン
妹友「わっ」
兄「何つうか、色々ヘンな事もしちゃったけど」
妹友「あ、はい」
兄「妹と、これからも仲良くしてやってくれな」
妹友「! はいっ!」
妹「言われなくても仲良くするよー、もう」
妹「ほらほら、行くよー」(グイグイ
妹友「観念してください」
兄「下着屋に来る事なんて、一生無いと思ってたのに……」
妹「えーと、ジュニアブラって……こっちかな?」(キョロキョロ
店員「いらっしゃいませ」
妹友「あ、妹ちゃん、店員さんに聞いた方が早いよ」
妹「あっ、え、ええと……その」
店員「ブラジャーかな?」
妹「あっ、はいっ」
店員「サイズ、分かりますか?」
妹「え、えっと、初めてで……」
妹「あっ、あっ、ちょっと待ってください」
店員「はい」
妹「あの、おに……お姉ちゃんも、着けた事ないんです」
兄「あっ……!」
店員「そうなんですか。お姉さんは、サイズは分かりますか?」(ニッコリ
兄「あ、え、わ、分かりません」
店員「そうですか。それでは、同じ様にサイズを測りますので、お待ちくださいね」
兄「は、はい」
妹友「二人とも、そんなに緊張しなくても……」
店員「上を脱いで、シャツ一枚になってください」
兄「あ、はい……」(モゾモゾ
店員「腕、上げてください」
兄「はい」
店員「測りますねー」(シャッ シャーッ
兄「うわわ」
店員「息吸ってー、ゆっくり吐いてください」
兄「すー、ふううう……」
店員「はい、もう一回」(シャーッ
兄「ふうううう……」
店員「はい、オーケーです。アンダー71のAカップですね」
兄「……おお、想像よりあっさりだ」
兄「あ……はい、ええと、最近まで全然なかったんで……」
店員「そうですか。じゃあ、またこの先どんどん大きくなるかも知れませんね」
兄「そ、そうですか……」
店員「サイズが合うのをいくつか持ってくるので、試着してみましょう」
兄「あ、えーと……はい、お願いします……」
店員「着け方は分かりますか?」
兄「えっ、あ、着け方?」
店員「教えますから、覚えて帰ってくださいね」
兄「……着け方とかあるんだ」
店員「じゃあ、Tシャツ脱いで、付けてみましょう」
兄「あっ、はいっ」(モゾモゾ パサリ
兄(……これでAカップか……Aってもっとぺったんこかと思ってた……)(ジッ
店員「まずは肩紐を通して、位置をあわせ……」
兄「……ひー……」(ゴソゴソ
兄(ぶ……ブラジャー着けちまった……)
店員「ちょっと体を動かして、着け心地を確かめてくださいね」
兄(何かアレだな、下着だけど、防具、って感じだな)(グイグイ
店員「どうですか?」
兄「あ、ええと、はい、大丈夫です」
店員「このまま着けていかれますか?」
兄(防具だ!!)
妹「お姉ちゃん、決まったー?」(ヌッ
兄「うおっ!?」
妹「あ、可愛いじゃん」
妹友「ホントだ、良く似合ってますよ」
兄「あ、あのなお前ら、試着室にいきなり顔つっこむな」
妹「それにするの?」
兄「う、ああ、コレでいいよ」
兄「ショー……!」
妹「お昼になっちゃうから、早く早く」
妹友「済ませちゃいましょー」
兄「ったく……じゃあ、ええと、コレください」
妹「下も一緒に!」
店員「はい、ありがとうございます。えーと、ショーツのサイズは」
兄「……あ……わかりません……」
店員「えっと、じゃあ、測りますね。下、脱いでください」
兄「あ……」
店員「?」
兄「……はい……」(スルリ
店員(……トランクスって……この子、よっぽどね……)
妹「うふふふっ」
兄「うわ、何だ急に笑って」
妹「何て言うか、んー、上手く言えないけど何だか笑いたい気持ち」(ペタペタ
兄「?」
妹友「ああ、何だか分かる。私も初めて着けた時、そうだったもん」
妹「妹友ちゃんも?」
妹友「うん、大人っていうか、世の中がちょびっと違って見えるって言うか」
妹「うんうんっ」
妹友「お兄さんは、そうじゃないんですか?」
兄「……まあ、ある意味では完全に価値観変わっちゃったけど」
妹「着けてるとパーカーの前閉めてても、胸ふくらんでんの分かるね、さすがに」
兄「や、やめろよ、見んなっ」(バッ
妹「お兄ちゃん恥ずかしがってるー」
妹友「可ー愛いー」
妹友「ご飯、どうしましょうか」
兄「どっかこの辺で、景色の良い公園とか無いかなあ」
妹友「公園?」
妹「お弁当食べるなら、公園の方が良いでしょー」
妹友「お弁当?」
妹「妹友ちゃんの分もあるよ」(カバンチラッ
妹友「えっ!? あ、ありがとう!」
妹「私たちの手作りだよー」
兄「二人前と三人前と、手間同じだしね」
妹友「……すごいなー、二人とも」
うむ
妹友「うん、今度お料理教えてよ」
兄「妹友ちゃんは料理するの?」
妹友「簡単なのなら……でも、普段からはやらないんで」
妹「私らだってあんまり難しいモノはつくらないよー」
兄「そうそう、冷蔵庫の残り物で適当に作ったりするし」
妹友「最早お母さんの領域じゃないですか……」
妹「お母さんがいない時の、お母さん代わりがお兄ちゃんだもん」
兄「それで俺のこと、女にしたんだもんな……」
妹「そ、そういう訳じゃないけど!」
妹・妹友「「いただきます!」」
兄「良い公園あって良かったなー」
妹「結構にぎやかだね、土曜日だし」
妹友「おおおお……美味しそう……」
妹「妹友ちゃんのだからね、ちょっと頑張ったよー」
妹友「私、妹ちゃんお嫁さんにする」
兄「あはは、男の子になって?」
妹友「可能な以上、ありえないとは言い切れませんよ!」
妹「うわ、真顔だ真顔」
妹友「半分本気だよー? お兄さんもついてくるし!」
兄「えー、俺オマケ?」
妹「あはははっ」
妹「えっ」
兄「あっ……!」
妹友「?」
妹「誰?」
眼鏡「ああ、初めまして。眼鏡と言います」
妹「ああ、前にお兄ちゃんが話してた」
眼鏡「僕の事、話してたんですか? うれしいですね」
兄「何でお前、こんな所にいるんだよ」
兄「買い物の帰り。そのほら、知り合いに見つかる場所だと色々面倒なモノもあるんだよ」
眼鏡「ああ……なるほど」
妹(うわ、開き直ってるなー、お兄ちゃん)
兄「用事の途中なんじゃないのかよ、早く行けよ」
眼鏡「そんな邪険にしなくても、とは言え水入らずの所をあんまりお邪魔してもいけませんね」
兄「そうそう」
眼鏡「では、また学校で」
兄「はいよ、じゃーな」
妹友「……っはー、綺麗な顔の人でしたね。あの人が、その、バレちゃった人ですか」
兄「……まあね」
妹「思った以上に、いけすかない美形ねー」
妹友「いけすかない? って?」
妹「なんか、気に入らないって意味」
兄「お前、平成二桁生まれだよな?」
妹「でしょー? 何かスカしてるしさー」
兄「まあ、ああいうヤツだよ」
妹友「それもですけど……うーん」
兄「ん?」
妹友「私らの事、何だと思ったんですかね?」
妹「どういうこと?」
妹友「普通、友達が年下の女の子二人連れてたら、『妹?』とか聞かない?」
兄「そうかな、うーん、そうかも」
妹友「でしょ? お兄さんの事ばっかり考えてたのかも知れないけど」
兄「うへえ、妹友ちゃん、やめてくれよ」
妹友「えへへ」
妹「とにかく、お兄ちゃん、あんまり油断しないでね」
兄「油断って敵じゃないんだから」
妹友「でも、一番最初にその、すごい状況でバレたんですよね、油断して」
兄「うぐ」
妹「この公園も丁度良さそうな茂みいっぱいあるよ、してく?」
兄「しません!」
妹友「こちらこそ」
兄「また妹と遊んでやってね」
妹友「遊びますよー、毎日のように遊びます」
妹「明日も遊ぶ?」
妹友「良いよー」
妹「お兄ちゃんも、良い?」
兄「え、また俺もかよ」
妹「お兄ちゃんで遊ぶんだし」
兄「お兄ちゃんをオモチャにするんじゃありません!」
妹友「もう結構なってますよ」
兄「容赦ないな!」
妹「あはは、とにかく、じゃあ、また明日ね」
妹友「うん、また明日!」
妹「……って話したのに、夕方になっても妹友ちゃんが来ない」
兄「都合が悪くなったんじゃないのか?」
妹「それなら連絡すると思うんだけどなあ」
兄「何かあったのかな」
妹「とりあえず、妹友ちゃんの携帯に電話してみるよ」
兄「うん、してみな」
妹「えーと……080の……」
妹「……え、圏外? 電源入ってない?」
兄「おいおい、ひょっとしたら病院じゃないか? ケガとか、体調崩したとか」
妹「え、ヤだな、心配になっちゃうじゃん。……妹友ちゃんち電話してみよ」(ガチャ
兄「ああ、してみな」
妹「妹友ちゃんと遊ぶ約束してたんですけど、え、ええ、はい」
妹「え、じゃあ、家出て……はい、さっき携帯に電話したんですけど……」
妹「分かりました、はい、私も探します」
兄「え、おい、まさか」
妹「妹友ちゃん、お昼過ぎに家出たんだって!」
兄「まずいだろ、それ」
妹「私、妹友ちゃん探してくる!」
兄「待て待て、俺も行くよ!」
兄「とりあえず、妹友ちゃんちへの道を回ってみようぜ」
妹「そうだね、見た人がいるかも」
兄「何かの事件に巻き込まれてなきゃ良いけど……」
妹「やめてよ、心配なんだから」
兄「悪い、ごめん」
妹「妹友ちゃんにヘンな事した奴がいたら、グリグリに踏んづけてやる……」
兄「この辺、休みの日は人通り無いからなあ」
兄友「おっ、兄妹、何してんの?」
妹「誰!?」
兄「部活帰り? なあ、この辺で妹と同い年くらいの女の子見なかったか?」
兄友「ええ? 俺もちょっと前に学校出たばっかだから……なんだよ、迷子?」
兄「遊びに来るっつってた子なんだけど、家出た後連絡が付かないんだよ」
兄友「げ、それ心配だな」
妹「だから、こうやって探してるんじゃん」
兄友「兄、お前の妹キツいな」
兄「すまん」
兄友「良いって、それより俺も手伝うよ。この辺りの友達に、メール回してみて良いか?」
兄「あんまり騒ぎがでかくなってもな」
兄友「信用できる奴らだけにするよ、見た奴がいりゃ手がかりになるだろ」
妹「……それなら、お願い」
兄友「兄、お前の妹素直だな」
兄「すまん」
兄「あ……六時か……」
妹「手がかりらしいもの、何にもないよ……」
兄友「こっちも、空振りだ」
妹「妹友ちゃんちの前まで来ちゃった……」
兄友「こういう時、情報を共有すんのは大事だぜ、って何かテレビでやってた」
妹「お母さんも言ってた」
兄友「あ、そういや雑誌記者だっけ」
兄「妹友ちゃんの家族の人も探してるだろうけど、一応、探したって話はしといた方が良いかな」
妹「そだね。えーと、インターフォン……」(ピンポーン
妹「あ、妹友のお母さん! こんばんは、妹です」
妹友母『あ、妹ちゃん。妹友ね、帰って来たわ』
妹「えっ!! あ、え、今いるんですか?」
妹友母『……帰って来たけど、今、寝ちゃってるの。約束してたみたいなのに、ごめんなさいね』
妹「それは、その、大丈夫ですけど」
妹友母『ごめんね。もう六時だから、妹ちゃんも早く帰らないといけないんじゃない?』
妹「あ、えっと、それじゃあ、妹友ちゃんに、また明日、学校でって伝えてください」
妹友母『ええ、伝えておきます。それじゃあ、わざわざありがとうね』(プツッ
妹「はー……帰ってたのかあ。とりあえず、良かったぁ……」
兄友「俺は何の役にも立たなかったなー」
兄「まあまあ、手伝ってくれてありがとな」
妹「うん、兄友さん、ありがとう」
兄友「どういたしまして」
兄「ごめん母ちゃん、ほら、出来たよー」
母「うう、せっかく早く切り上げて帰って来たのに二人ともいないから、泣くかと思った」
妹「ごめんなさい、書き置きしてけば良かったね」
母「で、何があったの?」
妹「んー、妹友ちゃんが迷子になってて、探してたの」
兄「結局、家に帰ってたんだけどね」
母「迷子って、妹友ちゃんからウチまでの間で?」
妹「そうみたい。妹友ちゃんち行ったんだけど、妹友ちゃん寝てて、何があったか聞けなかったの」
母「ふーん……気になるね」
兄「母さん、仕事っぽい顔やめて」
母「ああ、ごめんごめん。でも、帰って来てて良かったね」
妹「うん、明日学校で、何があったか聞けるといいなあ……」
兄「ヘンな事に巻き込まれた訳じゃなきゃいいな……」
妹「って言ったのに、通学路に妹友いないや」
(ヒソヒソ)
妹「昨日の今日だし、遅刻してくるのかな?」
(ヒソヒソ)
妹「みんな、おはよー!」
(ヒソヒソ)
(ヒソヒソ)
(ヒソヒソ)
妹「あ、あれ?……おはよー」
(ヒソヒソヒソヒソ)
男子集団「せーの、じゃんけんほいっ」(ヒソヒソ
男子A「え、俺ー?」(ヒソヒソ
男子B「一発勝負だろ、ほら行けよ」(ヒソヒソ
男子C「聞いて来い聞いて来い」(ヒソヒソニヤニヤ
妹「?」
妹「え、私? 何?」
男子A「お前、兄ちゃんいるだろ」
妹「うん、いるけど」
男子A「その兄ちゃんと、エロい事してるって本当?」(ニヤニヤ
妹「はあ!?」
男子A「うわ怒った、やっぱしてるんだ」
妹「何、し、してる訳ないじゃん!!」
妹(してるけど!)
男子B「ホントの事言われるから、ムキになるんだぜー」
妹「何それ、子どもっぽい」
妹(ホントの事だけど!)
妹「するわけないでしょ!」
妹(それはしてない!)
妹「誰が言ってんの、そんなこと!」
男子A「えー、妹友が言ってたらしいぜ」
妹「は……!?」
男子C「エロ子だ、エロ子ー」
妹「ちょ、やめてよ! してないし!!」
ヤッパソウナンダー ヒソヒソ
イモウトチャン ヒソヒソ
男子A「お兄ちゃんのチンコ大好きー?」
妹「こいつら……! 踏んづけたい……!」
妹(……でも、それやったら、本当に大騒ぎになっちゃう)
妹(それより、妹友ちゃんが話したって、どういう事?)
妹(何で妹友ちゃん、学校来てないの?)
男子集団「ヒューヒュー!」
兄「ただいまー」
妹「おかえり……」
兄「ん、どうしたんだよ、調子悪そうだな」
妹「……ううん、なんでもない」
兄「そうか? あ、そうだ、今日は俺、ちょっと遊びに行って来るから」
妹「えっ」
兄「晩の用意までには戻るからさ」
妹「あっ、じゃあ、えっと、男に戻る?」
兄「えっ」
妹「遊びに行くなら、その方が良いでしょ?」
兄「あー、眼鏡が一緒なんだよ……それに、時間も無いしさ」
妹「そっか。……その、気を気を付けて、行ってらっしゃい」
兄「うん。行ってきます」
妹「いってらっしゃーい……」
妹「はあ……」
妹「あ、お兄ちゃん、おかえり……」
兄「どうしたんだよ、電気も点けないで」
妹「あ、うん……寝てたから」
兄「お前本当、今日何かあったのか?」
妹「なんでもない……と思う、たぶん」
兄「おい、はっきり言えって」
妹「何でもないって! 大丈夫だから!」
兄「っ!」
妹「あ、ご、ごめん……。でも、大丈夫、大丈夫だから」
兄「……今日は休んどけ、晩ご飯、俺が作るから」
妹「でも」
兄「いいから」
妹「みんな、おはよー……」
(ヒソヒソ)
妹「……またか」
(ヒソヒソ)
妹「気にしてもしょうがないや、とりあえず席に付こ」
妹「……!!」
[ブラコン][エロ女] [セックス大好き][まんこ] [チンコ][マンコ] [お兄ちゃん入れて]
[注意:妹は お兄ちゃんとS●Xする ヘンタイです!]
妹「この……誰、この落書き!」
(シーン)
妹「……そう、そういう事ね、分かった」(ツカツカツカツカ)
男子A「あ、エロ女、何だよー」
妹(パァンッ!)
男子A「んぶっ!? な、何すっ……!」
妹「みんな、そんなに興味があるなら、私がお兄ちゃんと何してるか、教えてあげる」
男子D「あ、あひっ……ひいっ……」(ビクッビクッ
妹「さーん、にーい、いーち、はい、おしまい」(グリィッ
男子D「あっ、あっ、ああっ……!」(ビクンッ
男子E「あ、は、まんこ……これ、まんこなんだ……」(スリスリ
男子A「胸の先っぽ、チリチリするぅ……」
男子B「妹、ごめんん……男に戻してえ……」
男子C「あ、は、机のカド押し付けると、気持ちい……!」(ガコガコ
妹「さ、次にチンチン踏み潰されたいの、誰?」
妹「え?」
女子B「そうだよ、最初に言い出したの、妹友ちゃんだし」
妹「ああ、そうだっけ? で、妹友ちゃんに一番最初に聞いたの、誰?」
女子たち「…………」
妹「そうだよね、妹友がそんな事、言うわけないもん」(ドンッ
女子B「あっ」
妹「Bちゃん、シャセーした事ある? すっごい気持ち良いらしいよ?」(グリッ
女子B「え、まさか、やだ、やだ、やめてえ……!!」
男子B「…………」(モジモジ
女子A「…………」(ソワソワ
男子A「……は、んっ……」(モゾモゾ
担任「まあいいや、朝の会始めるぞー、日直ー」
男子E「あっ、はいっ!」
妹「はーい」
男子E「きりーつっ、おはようございま、あ、すっ!」
「「お はよ うご ざ いま ぁすっ」」
担任「おいおいEー、声裏返るから、挨拶バラバラになっちゃったぞー、もう一回だ」
妹「あはは、Eくん、もっかいだって」
男子E「へ、ヘンなタイミングでお尻触るのやめて……」(ヒソヒソ
妹「ん? ほら早く、もう一回だよ」
兄「ただいまー」
妹「お兄ちゃん、お帰りー」(ギュッ
兄「うわ、何だ、どうした?」
妹「んーん、何でもない。それよりね、お兄ちゃん」
兄「ん?」
妹「私もう、学校行かないから」
兄「は!?」
妹「決めたの」
兄「決めたのじゃないだろ、学校は行かなきゃいけません」
妹「だよね、お兄ちゃんならそう言うと思ってた」
兄「当たり前だろ」
妹「だから、言わせないようにしなきゃなって、ね」
兄「妹?」
妹「お兄ちゃんが私から、離れたくなくなるようにしてあげる」(サワ…
妹「場所なんか関係ないよ」(ムニュ
兄「いや、やめっ……」
妹「あ、ブラ付けてないんだ。ダメだよ、折角買ったのに」(クリュクリュ
兄「今日体育あんのにっ、じゃなくて、お前、何が……!」
妹「私ね、人間やめる事にしたの」
兄「はっ……?」
妹「……ホントはね、もっと前から思ってたの。結構前、ひいおばあちゃんが来る前から」
兄「何の、話を」
妹「私、お兄ちゃんが好き」
妹「違う、お兄ちゃんに、ギュってされたい好きなの。手つないで、出掛けたい好きなの。
チューしたい好きなの。エッチな事したい好きなの。ケッコンしたい好きなの」
兄「…………」
妹「でも、ダメじゃない。人間として、ダメじゃない、きょうだいだと。
だからずっと、そういう事、考えてたの」
兄「でもお前、俺にさんざん……」
妹「だって、したかったんだもん。だから、お兄ちゃん女の子にしたかったの。
一緒にお風呂入っても、ギュってしても、裸見せ合っても、エッチな事しても、
女の子同士だったら大丈夫だから」
兄「……最後のは女の子同士だとなおダメだろ……」(ボソッ
妹「お兄ちゃん女の子になって、そういう事して、すごい嬉しくて……
だから、私、大丈夫だと思ったのに……でも、ダメだった……」
兄「妹? ……泣いてる?」
妹「ちょっと、突っつかれただけで……全然……ダメだった……」
妹「ぐすっ……お兄ちゃん、私もう、学校行けない……」
兄「……落ち着けよ、落ち着いて、何があったか話せ。
兄ちゃん、何があってもお前の味方だから」
妹「…………」(フルフル
兄「俺の事で、何かあったのか……?」
妹「……お兄ちゃん、私、お兄ちゃんの事が好き」(サワサワ
兄「んっ……」
妹「だから、二人でずっと、ウチにいよ? 気持ち良い事、何でもしてあげるから」
兄「…………」
妹「お兄ちゃんって、素直だから好きよ」(ギュウッ
兄「妹……」
妹「……おっぱい、またちょっと大きくなってない?」(ツツーッ
兄「んっ……!」
妹「ホント、男だったのにおっぱいで気持ちよくなって、恥ずかしいね」(パク
兄「やっ……」
妹「ふふふ、乳首、ピンピンになってる」(レロレロ
兄「あ、はぁあっ……」
妹「んっ……んん、お兄ちゃん、可愛い……」(チュゥチュッ
兄「はぁあぁ……」(ヘロヘロ
妹「あは、足に力入んないんだ。良いよ、押し倒してあげる」(グイッ
兄「んっ……!」(ゴロン
兄「あっ、やっ、そこ触りながら、胸舐めたらっ……」
妹「気持ちよくなっちゃう?」(チロチロ
兄「……!!」(コクコク
妹「まだ服の上からなのに……おにいちゃんばっかり、気持ちよくなるのはズルいなあ」(ヌギヌギ
兄「あ、妹、何を……」
妹「お兄ちゃんは、今からイスです」(マタギ
兄「えっ」
妹「私のおまんこを舐めて気持ちよくするだけの、エロイス」(シャガミ
兄「あっ、妹、の」
妹「えへ、良く見える?」(ノシッ
兄「んぷっ……!」
妹「ちゃーんと舐めてね……」
妹「舐めないと、窒息死しちゃうよー」
兄「んっ……ん、んっ……」(ペチャペチャ
妹「あっ……は、あっ……お兄ちゃんの舌ぁっ……」
兄「ぷはっ、はあっ……」
妹「ヤメちゃダメだよう」(ノシィ
兄「んぐ、む、んんっ、んっ!」(レロレロ
妹「あはあ……そう、そのまま続けてねー……」(モゾモゾ
兄「んんっ……!」
妹「私もお兄ちゃんの、なめてあげる。お尻上げて」(ズルリ
兄「えっ、あっ、それはっ」
妹「なめっこしよー……」(チュウッ
兄「ひんっ……」
兄「いや、だって、あっ……」
妹「チンチンでもオマンコでも濡れるんだ、ホント、お兄ちゃんヘンタイだね」(レロォ
兄「あ、ひ、ひぁあっ」
妹「……あ、口離れてるよぉ……ちゃんと舐めてぇ……」(フリフリ
兄「ん……は、んっ……」(チュウッ
妹「あ、は、お兄ちゃんが自分から舐めてくれたぁっ……!」
兄(……何があったか良く分かんないけど、妹はパニくってる)
兄(このまんまじゃ、本当、何をしでかすかわかんない)
兄(だから……今は、妹の言う通りにして落ち着かせる……
落ち着かせる、つもりだけど……)
妹「お兄ちゃんの、吸い付いてくるよぉ……可愛い……」(グチュッグチュッ
兄「んひ、いぃっ、指ダメっ、何でそんな、さわるの、上手いんだよぉっ」
妹「夢で練習したの」
兄「ひ、サキュバス睡眠学習っ、万能すぎぃっ……!!」
兄「え、何が」
妹「次はねー、くっ付けっこ」(クルリ
兄「くっ付け……」
妹「お兄ちゃんのおまんこと、私のおまんこ、チュウさせよー……」(グイッ
兄「あっ、うわっ、ちょっ……」
妹「あは、くっ付いた」(ヌチュウッ
兄「あ、は、何かコレ、エロ本で見た事あるっ……」(クチュッ
妹「え、お兄ちゃん、エロ本とか見るんだっ」(グリッ
兄「ひゃっ、あっ……ちょ、ちょっとだけっ……」
妹「しかも、こんなコトしてるのっ……んっ……」(ヌチュヌチュ
兄「あ、ひっ、それは、たまたまぁっ……」(ヌチュクチュ
兄「あっ、はっ、あっ……!」(ニュルッニュルッ
妹「お兄ちゃんなのに、妹とレズってるんだよっ」(ニチャァッ
兄「はああっ……あっ、そういう事言うなあっ……!」(クリュッ
妹「あっ、は、クリ同士当たったっ、お兄ちゃん、もどかしくなったんでしょっ」(グリグリ
兄「あっ、ひっ、あっ、やだ、違うっ」(クチャクチュッ
妹「何が違うの、そんな腰動かして、丸っきり女の子じゃんっ」(グイグイ
兄「あ、ひっ、だって、だって妹がぁっ、んっ……!」(クッチュグッチュグッチュ
妹「良いよ、私のせいにするなら、私がお兄ちゃんのセキニン取るもんっ、
セキニンとって、お兄ちゃんと幸せになるんだからぁっ……!」(クチュクチュクチュッ
兄「あ、ひ、や、来る、来ちゃ、来ちゃうっ」
妹「待って、お兄ちゃ、やだ、私もだから一緒、一緒だよ、ずっと一緒ぉっ……!」
兄「んっ……ん、は、んんっ……!!」(ギュウウッ
妹「あっ、抱っこっ……ん、あ、イくぅっ……!!」(ギュウゥッ
兄「結局、妹が疲れるまで付き合って、寝かしつけたけど……」
兄「何があったのかは、聞きだせず仕舞いだったな……」
兄「……そういうとこ、母ちゃん似なのかな」
兄「母ちゃんも、何取材してんのか、俺たちに教えてくれないし……」
兄「…………」
兄「あ、何かイライラしてきた」
兄「今夜は肉だな、時間も無いし肉焼こう肉」
兄「んで、明日だ」
兄「……俺に言えないって事は、俺に関係があるって事だよな」
兄「小学校に行けば、何があったか一発で分かるはずだ。うん、決めた」
妹(……どうしよう、あんな事して、私もうホント、学校行けない)
妹(…………)
妹(……妹友ちゃんが、私とお兄ちゃんがセックスしたって話してた、ってウワサ)
妹(妹友ちゃんが言ってる所を聞いた子は誰もいない)
妹(当たり前。妹友ちゃんは月曜日から休んでるし、日曜日には連絡が付かなかったんだから)
妹(……何か、関係があるのかな。妹友ちゃんが休んでるのと、今度の事と)
妹(良く分かんないけど、妹友ちゃんがすごい心配になって来た……!)(ガバッ
妹「今夜なんか、お兄ちゃん、私の部屋来ないよね、たぶん」
妹「……よし、窓から行こう。
ちょっとだけ空飛ぶ力使って、屋根伝ってけば見つからないで行けるはず!」(ガラガラ
兄「…………」
(ヒソヒソ)
兄「…………」
(ヒソヒソ)
兄「……小学校に行くまでもなかったな、そういう事かよ……」
兄友「あ、おい、兄ー」
眼鏡「ヒドい噂が出回ってますね」
兄友「小学校に兄弟がいる奴から来た噂らしいぜ、バカバカしい」
兄「……ホントだよ」
兄友「妹ちゃん、大丈夫か? お前よりショックでかいだろ」
兄「…………休ませてる」
眼鏡「それが良いでしょうね」
兄友「当たり前だろ、お前が妹ちゃんにヒドい事する訳ねえもん」
眼鏡「そうですよね」
兄「……!」(ズキン
兄(……エロい事してんのは、本当なんだよ……)
兄友「それにまあ、仮にしてたとしても、お前がするなら合意の上だろうし」
兄「は」
兄友「お前と妹ちゃんなら、あー、したとしてもお互い思いやるんだろうな、って事!
だから、万が一してても良いんじゃねえかな、って!」
眼鏡「いやいや!! 近親相姦は良くないですよ!?」
兄「ぷ……あはははっ」
兄友「お? 俺、何かヘンな事言ったか?」
兄「あはははははっ、あー、兄友きめえ、あはは」
兄友「ひっでー!! そりゃないんじゃねえか!?」
兄「あはははははっ、悪い悪い、ひー」
兄友「何がだ?」
兄「兄友、ちょっとこっち来い、こっち」
兄友「ん?」
兄「もっとだよもっと、ギリギリまで近づいて、ここ見ろここ」
兄友「んー?」
兄「……ほれ」(チラリ
兄友「え、胸なんか見せて、何を……え!?」
眼鏡「ちょ、兄さん、はしたなっ……!」
兄「しーっ!」
兄友「え、何でお前、なにそれ」
兄「実は俺、女なんだ」
兄友「は!?」
兄友「え、いや、そんな今まで付き合いあって、初耳で、えー?」
兄「こうなったからには仕方ねえ、これを話せばヘンな噂も消えるだろ」
眼鏡「……兄さん、それで良いんですか?」
兄「妹のためだからな。俺一人の事情なんて、どうって事ないだろ」
眼鏡「…………」
兄友「兄……」
兄「おう」
兄友「もう一回見せて」
兄「そう言うと思ったよドアホ」
眼鏡「いや、でも、それは……」
兄友「眼鏡は知ってたのか?」
眼鏡「不幸な、その、事故がありまして」
兄「……厳密には違うんだけどな」
兄友「はっ?」
兄「眼鏡がいる前じゃ話せなかったんだよ」
兄友「は? アイツ、知ってたんじゃねえの?」
兄「……こっからは長くなるし、聞いたら後戻りさせらんなくなる」
兄友「お、おお……雰囲気出してきたな」
兄「それでも聞いてくれるなら、このまま俺の家に付いて来てくれ……」
兄友「……おお、何だよ、燃えるシチュエーションじゃねーか」
兄「……という訳で、俺の妹は悪魔の血を引いてるんだ」
兄友「いやいやいやいや」
兄「マジだって! だから眼鏡の前じゃ話せなかったんだよ、見るからに外国人っぽい外見だし」
兄友「外国人がみんな敬虔なクリスチャンってのも偏見だろ!」
兄「でも、そうじゃなかったらどうして俺が女になってると思うんだよ」
兄友「いや、だから、前から女だったのかなーって」
兄「臨海学校も修学旅行も行ったろ! 連れションもしたろ! お前は鳥か!」
兄友「いやあ、記憶力に自信のある方じゃねえから、記憶違いかなーって」
兄「よく日常生活送れてるなお前」
兄友「不思議なもんだよな」
兄「……まあ、そんな事はどうでも良くてだな」
兄友「俺の脳の活動がどうでも良い事にされた」
兄「問題は、その……空飛ぶ俺の妹が行方不明だ、って事だ……」
兄友「……上の空だったのは噂じゃなくて、そっちが原因かよ」
兄「やっぱりか」
兄友「空を飛ぶんじゃ、足で探しても仕方ないしな。行きそうな所を当たるしかない」
兄「行きそうな所っつっても、ここの所の様子じゃ、妹友ちゃんちくらいだけど……」
兄友「行ってりゃ連絡来るだろ。兄にゃ酷な事を言うけどー……」
兄「何だよ、何でも言えよ」
兄友「あの噂にショック受けて家出して、んで、悪魔だってんなら、
感情に任せて小学校をめっちゃくちゃにしてたっておかしくないだろ」
兄「悪魔じゃない、悪魔の力を持ってる、だ!」
兄友「はいはい、とにかく善は急げだ、早いとこ出発しようぜ」
兄友「ダメなら明日やりゃ良い。明日だけやるのと、今日と明日やるのと、どっちが成功率高いと思う?」
兄「そりゃそうだ」
兄友「……おっと、ランドセルしょった子発見。ねえねえ、君、六年生?」
少女「…………!」(ダッ
兄友「逃げられた!」
兄「声の掛け方考えろ!」
兄友「追うぞ!」
兄「追うな!!」
兄「良かった……見失って本当に良かった……」
兄友「……ん? 何だありゃ?」
兄「ん?」
女子?「は、あは……もっと、根元の方まで舐めてぇ……」
男子?「ん、ぶぅっ……うぇっ……」
兄友「……何やってると思う?」
兄「……あんまり深く考えたくない」
兄友「最近の小学生は進んでるなー」
兄「…………多分、妹の事知ってるはずだ、聞こう」
兄友「野暮だな、お前」
兄「そんな事言ってる場合じゃない」
女子?「あっ、きゃあっ、やだっ!」
男子?「ぷはっ、はあっ、はあっ……!」
兄「君ら、妹の事、知ってるだろ?」
男子?「い、妹……!」
女子?「妹、いるんですか!? どこにっ……!」
兄「うわっ、待った、君は前をしまってっ……」
兄友「君、彼女、あー、彼? の恋人?」
男子?「そ、そういう訳じゃ、ないんです、けど……」
兄「何聞いてるんだお前!」
女子?「妹に、体、元に戻してもらわなきゃっ……」
兄「……まさかとは思ったけど、そうなんだな」
女子?「そしたら、妹が急にキレて、それで、こんな……」
兄友「だからって、路地裏であんな事してる理由にならないと思うんだけど」
男子?「……こうなってから、みんな、エロい事がガマン出来なくなっちゃったんです」
兄「みんな?」
女子?「ウチのクラスの子、ほとんどみんな、です……」
兄「…………」
男子?「俺たち、ウワサ話しただけで悪くないのにっ、何でっ」
兄「あ、こら、兄友」
兄友「こんな事する妹ちゃんが悪くないとは言えねえけど、お前らももうちょっと人の気持ち考えるべきだぜ」
小学生二人「「…………」」
兄「それは、まあ、良いよ。それより、そのウワサって、言い出したの誰なんだ?」
女子?「妹友ちゃん……らしいです、けど……。妹友ちゃん、一昨日からずっと来てなくて……」
兄友「妹友ちゃん? って、日曜日に迷子になってた子だよな?」
兄「つじつまが合わないな、何もかも」
兄友「無理に合わせんなら、迷子になってる内に、クラスメートの間回ってウワサをした」
兄「だとしても、その後学校休む理由はないな」
兄友「くそっ、兄の言う通り、最初から妹友ちゃんの家行っとけばよかったかもな」
兄「大体、本当に妹友ちゃんが帰って来てるのか? って話だな。行くぜ」
兄友「ああ、付き合う」
兄「何がだよ」
兄友「その、ガマン出来なくなったりしないわけ?」
兄「……多分、ガマン出来なくなんのは、妹が感情にまかせてやったせいだよ、俺の時と違って」
兄友「チッ」
兄「チッってなんだよ! インターフォン押すから、バカ話はここまでな」
<ピンポーン
妹友母『はい、どちら様ですか?』
兄「ああ、妹の兄です。こちらに、妹、お邪魔してませんか?」
妹友母『妹ちゃんですか? さあ、ウチには来てないですねえ』
兄友「どこ行ったか分かんないんですよー、妹友さんに話聞かせてもらっちゃダメですか?」
妹友母『すいません、妹友は一昨日から伏せってて……』
兄友「ええ? さっき会った子たちは、妹友さんと学校で話したって行ってましたよー」
兄友(引き伸ばすから 今の内に しのびこんで 妹友ちゃん 探せ)(ジェスチャー)
兄(……了解)(ジェスチャー
兄「室外機を足場にすりゃ、手、届くかな……」(ゴソゴソ
眼鏡「兄さん」
兄「うおっ!?」
眼鏡「勝手に人の敷地内に入るのは、犯罪ですよ」
兄「いや、お前も敷地ん中」
眼鏡「僕は仕事で来たんです。ちゃんと許可を取って」
兄「仕事?」
眼鏡「ええ。……淫魔の毒牙に掛かった善良な少女を救うお仕事ですよ」
兄「十字架……!?」
眼鏡「はい、ちょっと眠っててください」(ハンカチ
兄「……!!」
兄(ほらみろ……)
兄(クリスチャンだったじゃねえ……か……)
妹友母『はあ……はあ……』
兄友(……何してる、兄、引き伸ばすのも限界だぞ)
眼鏡「待ってても、兄さんは来ませんよ」
兄友「眼鏡!?……で、抱えてんのが、兄……?」
兄「…………」
兄友「眼鏡、お前こりゃ、どういう事だよ」
眼鏡「兄友さんも、危ない所でした。危うく、悪魔の毒牙にかかる所だったんですよ?」
兄友「……お前、何言ってんだ?」
眼鏡「信じられないでしょうが、兄さんと、それから妹さんは、悪魔の血を引いてるんです」
兄友「そんな事、藪から棒に言われて信じると思うのかよ」
眼鏡「僕だって、兄さんまで悪魔だなんて信じたくなかったですけどね。
……付いてきてください。彼女の本性を見せてあげます」
兄友(……妹ちゃんも見つからないのに、話が大事になって来たな……)
兄友「よくまあ、兄を抱えたままこんだけ歩いたな」
眼鏡「鍛えてますから。こっちです」
兄友「教会の……地下室?」
眼鏡「口外しないでくださいね」
兄友「口外しちゃいけない所に、そもそも俺連れてかなきゃ良いだろ」
眼鏡「淫魔退治はですね、なるべく淫魔を人間から孤立させて行いたいんです」
兄友「どういう事だよ」
眼鏡「淫魔は精力を吸うと言いますけど、要するにそれって、感情なんです。
だから周囲の人間に淫魔に対する感情が残ってると、そこから復活しちゃう事があるですよ」
兄友「つまり」
眼鏡「つまり、兄友さんには、兄さんへの愛想を尽かしてもらいます。
と言っても、淫魔の本性を見たらきっと、勝手に愛想を尽かしたくなりますよ」
兄友「うわあっ!? おい、目隠しされた女の子が下着姿で縛られて悶えてんぞ!」
眼鏡「ああ、彼女が妹友さんです。自分から淫魔の力を求めて、妹さんと一緒にいたので、
悔い改めるために罰を受けてる所ですよ」
妹友「はひぃ……おかあさああん……」
兄友「熱いって……」
眼鏡「彼女が兄さんと妹さんの事を忘れられれば、縄の熱は消えます。
まだよっぽど、煩悩が残っているようで」
兄友「えぐいな、兄より前にお前に愛想が尽きそうだぜ」
眼鏡「ご自由に。どちらにせよ、僕はこの仕事が終わったら本国に帰らなきゃなりません。
最初から、淫魔を退治するために呼ばれたんですから」
兄友「……兄を友達だとは思ってねーのかよ」
眼鏡「淫魔だと知れば情も消えます。ほら兄さん、起きてください」(ペシペシ
兄「ん……ん……お、お前」
眼鏡「はい、ちゃっちゃと行きますよ。主よ……」(ゴニョゴニョ
兄「え、何だいきなり、何、なんっ……!」
兄友「お、おい、おいおいおい……」
眼鏡「主の力で、人の振りをして抑えている淫魔の力を無理やり揺り起こしています。
すぐに我慢できなくなって、本性をあらわしますよ」
兄「あ、やだ、眼鏡、兄友、見てるのにっ……!」(モジッ モジッ
眼鏡「発情し始めましたね」
兄「……はーっ……はーっ……」
眼鏡「辛いでしょう、これをあげましょう」(コロン
兄友「うわ、バイブ?」
眼鏡「聖別された、特別なものです。淫魔なら、ガマンが出来ないはずですよ」
兄「…………!」(ゴクリ
兄友「お、おい、兄、まさかだろ」
兄「あ……兄友ぉ……」
眼鏡「さ、無様に本性を晒しなさい」
兄「俺……俺ぇ……」(モゾモゾ
兄友(……そうか! 眼鏡は兄が元は男だって事を知らないのか!)
兄友(つまり、兄は今こらえてるんだな……いわば、『男の意地』で!)
兄友(という事は、その『男の意地』を刺激してやれば、
この何かよく分からない状況を跳ね除ける事が出来るのかも知れん!)
兄友「おい、兄ィ!」
兄「ひっ!?」
兄友「何、そんなバイブ、うっとりした目で見てんだよ!」
兄「あ、いや、これはっ……」
兄友「それでよく男の格好してられたな、股抑えて腰くねらせて!」
兄「あ、ひ、や、違うぅっ……」
兄友「どう見ても女みたいだぜ、それもAVに出てくるような、エロ女!」
兄「あっ、あ、あ、ああっ……!」(ビクッビクッ
兄友「……あれ?」
眼鏡「効いてますね、GJです」
兄友「ひぎゃくしこう?」
眼鏡「えー、俗っぽい言い方をすれば、マゾです」
兄「ひっ、違ぁっ……!」
眼鏡「違いませんよ、主の力で本性があらわになってるのが今なんですから」
兄「ちが、違うぅ……」
眼鏡「ひょっとして、あんな所で用を足してたのも、見られたかったからじゃないんですか?」(ツカツカ
兄友「あんな所?」
眼鏡「ええ、彼女、どういう訳か校庭の茂みの中で用を足してたんですよ」
兄「や、やめろ、兄友に言うなぁ……」
眼鏡「常識で考えたらありえませんよ、とんでもないヘンタイですよね」(グリッ
兄友「あ、お前、踏むのはいくら何でもっ」
兄「うふぇぁっ……」
眼鏡「嬉しそうですけど」
眼鏡「そうなんですか? じゃあ、胸とか踏んでみましょうか」(ギュッ
兄「いぎっ……!!」
眼鏡「ほらほら」(グリグリ
兄「足、ぎ、足、どかせぇっ……!!」
兄友「あ、兄っ!」
眼鏡「足の間を踏んづけたら、どうなるんでしょうね?」
兄「えっ、や、それはっ」
眼鏡「やってみましょう」(グジュル
兄「ふほぉっ!!」
眼鏡「……汚らしい、布地の下がグチョグチョになってるじゃないですか」
兄「あ、ひ、あ……」
眼鏡「浅ましい淫魔の表情になってますよ」(グジュグジュ
眼鏡「このまま踏み続けたら、どうなるんでしょうかね?
締まりの悪い兄さんは、漏らしちゃうかも知れませんね?」(グニグニ
兄「ひっ、あっ、やっ、動かすな、やぁっ」
眼鏡「動かしてませんよ、貴方が勝手に腰を靴にこすり付けてるんです」
兄「そ、そんな訳、あるかあっ……」
眼鏡「ありますよ、ほらほら」(グリグリグリッ
兄「あっあっあっ……!!」
眼鏡「ほらっ」(ゴスッ
兄「あひいっ……!!」
眼鏡「ほらほらっ、漏らせ、漏らしちゃいなさいっ」(ガスッ ゴスッ
兄「あっ、ぎっ、やっ、やだあっ……!」
眼鏡「半端淫魔が生意気なんですよ、僕をあんな気持ちにさせるなんて――!!」(ゴスンッ
兄「ひぃんっ……!!」(ジワァァ
兄「あ……あ……」(フルフル
兄友「兄……お前……」
兄「やめろぉ……見るなあ……」
眼鏡「いいえ、貴方は見られるんですよ。発情もお漏らしも無様にこの後許しを請う様も、
全部兄友さんに見られながら本性をあらわにして、私に退治されるんです」
兄友「な、なあ、そこまでしなくて良いんじゃないのか? 兄なんだし……」
眼鏡「まだ分かってないみたいですね。淫魔は一人でも残すと、後々まで禍根を残すんです。
兄さんと妹さんがこうなったのも、三十年前に討ち逃した淫魔のせいなんですよ」
兄「なんっ、そこまでっ……」
眼鏡「もちろん淫魔の血を引いた家族ですから、教会が監視を続けていました。
けれど、何の悪さもしないでいたものですから、手が出せなかったんです」
妹友「ああ、意外と有無を言わさない訳じゃないんですね」
眼鏡「でも、淫魔の血なんて存在しても、いずれは悪徳の元になるだけですから。
だから、淫魔に近づいた子を捕らえるついでに、淫魔を刺激する噂を流したんですよ」
妹「で、それにまんまと引っかかっちゃったと」
眼鏡「ええ、面白いほど上手く行きました。お陰で……ちょっと待ってください」
妹「アンタが愉しそうにお兄ちゃん踏んでる辺りから」
眼鏡「何で降りてるんですか」
妹友「妹ちゃんがほどいてくれました」
眼鏡「何でほどけるんですか! 悪しき存在にとっては、手が焼けるほど熱いんですよ!」
妹「妹友ちゃんはあのクソ熱いの足掛け四日ガマンしたんでしょうが。
解くだけの手間なんて、手が焼け落ちようがちょちょいのちょいよ」
眼鏡「だい、大体っ、何で淫魔がここに、勝手に入れるんですか!
ここは僕の祈りによって聖別された、神聖なる、隠れ聖堂で……!」
兄友「……だとすりゃ理由は一つだぜ、眼鏡」
眼鏡「何、何ですか!」
兄友「兄の『男の意地』の勝利だ」
眼鏡「どういう……事です……?」
兄友「あ、えーと……」
兄友(しまった、言ってみたかっただけとはいえない!)
兄友「そうそう! それだ!!」
眼鏡「なっ……僕が、そんな、淫魔なんかに……」
妹「そう? お兄ちゃんいじめて、楽しくなかった? ゾクゾクしなかった?
可愛いって思わなかった? 自分のものにしたくならなかった?」
眼鏡「お、思わないっ!」
妹「そう? じゃ、足の下でオシッコまみれになって倒れてるお兄ちゃん、見てみたら?」
眼鏡「…………」(チラッ
兄「は、ひぃ……」
眼鏡「…………ッ!」(グリグリ
兄「ひゃうんっ!」
妹「ね」
兄友「ま、そんな事しなくても……兄が女だって思った上で、眼鏡の普段を思い出しゃ分かるよ」
眼鏡「そんな、僕は」
兄友「すごい分かりやすかったよ、マジでBLの人かと思ったもん」
妹「はい、妹友ちゃん」
妹友「眼鏡さんは、もう最初にお兄さんが用足してるのを見た時に、堕ちかけてたと」
眼鏡「そんな……僕は……」
兄「……堕ちる、とかじゃないよな、眼鏡……」
眼鏡「兄さん」
兄「……しょうがないんだよ、人が、人好きになったらさ、多分」
眼鏡「兄さん……」
兄「分かったら、足どけて。俺、このままじゃ風邪引いちゃうよ……」
眼鏡「……いえ、そういう訳には行きません!」
妹友「えっ」
眼鏡「このまま皆さんを帰したら、僕は多分、教会によって罰を賜るでしょう」
眼鏡「それでなくても、神に仕えた今までの日々のため、自分の矜持のためにも、
こんな事を認める訳にはいかないんです!!」
兄友「ナイフ!? アイツ、あんな物どこに!」
妹「この、わからずや!」(ダッ
お兄さんを餌にするつもりではありました! でも、こうなったら同じ事!」(ダッ
妹「もう! 素直に認めたら、それで話が済んだのに!!」
兄友「ダメだ妹ちゃん! 向かっていくな!!」
妹友「危ないよぉ!!」
妹「食らえ! 妹金的キーックッ!!」
兄友「うわっ、露骨!」
眼鏡「…………」(スッ
兄「だから……」(ムクッ
妹「えっ」
眼鏡「うわっ……」
兄「やめなさいって……」
妹「ちょっ、お兄ちゃん頭そこ危なっ……」
兄「ぶぁ」(ゴスッ
眼鏡「兄さん!? 兄さん!! しっかりしてください!!」
兄友「……だから認めろって、眼鏡」
妹友(正確に眼鏡さんの股間を狙っていた妹ちゃんのつま先は、その後ろ頭を見事に射抜いてしまったのだ)
妹友(意識を失ったお兄さんは、私たち4人で、大急ぎに病院に運んだ)
妹友(私は恐い思いや熱い思いをして、すっごく大変だったけれど、
あの顛末のせいで何となく、眼鏡さんも、眼鏡さんに丸め込まれたお母さんの事も怒る気になれないでいる)
妹友(でも、妹ちゃんがしでかした騒ぎは、なかった事にはならない……)
妹友(眼鏡さんが学校に広めた噂も、消えないで残っている)
兄友「よ、また考え事してんのか」
妹友「う、そりゃしますよ。言ったら、私が発端みたいなモンですもん」
兄友「でも眼鏡は、最初っから妹には目、付けてた訳だしな」
妹友「それでも、うう……私が捕まらなかったら、妹ちゃんもお兄さんも、転校なんて……」(ジワァ
兄友「ああほら、泣くなって。可愛い顔が台無しだぜ」
妹友「ぐすっ、兄友さんって軽そうですね」
兄友「情け容赦ないな君も」
兄友「ああ、兄や妹友ちゃんにしたみたいな事繰り返してたみたいで、
ワイドショーでバンバンやってるぜ。完全にカルト扱いだ」
妹友「……偶然って恐いですね」
兄友「偶然じゃねーんだな、これが。お母さんに話、聞いて来たんだ」
妹友「え、どういう事ですか?」
兄友「二人の父ちゃんだよ。お母さんの旦那さん。元は教会の人だったらしいぜ」
妹友「えっ!?」
兄友「眼鏡が監視してたって言ってたろ、その役目だったらしいぜ。
ただ、その内、二人の母ちゃんの事が好きになって……」
妹友「はー……好きになるって、しょうがないんですね……」
兄友「ただ、妹が生まれた後、教会に呼び出されてそのまま戻って来なかったらしい。
二人のお母さんは、その事実を知るために、自分から取材に行ってたんだと」
妹友「つまり……二人、いえ、三人は、お父さんや、旦那さんの仇を討ったんですね」
兄友「兄と妹についちゃ、そんな壮大な話でもない気がするけどなあ」
妹友「二人とも、今ごろ何してんだろ……うう……」
兄「ふわああ……おい、妹、起きろー」
妹「ううん……お兄ちゃーん……」
淫魔「二人とも今日から一年生だろ、早く準備しな」
妹「……そうだった! お兄ちゃん、早く準備しよ、準備!」
兄「ひいばあちゃん……一年生ってやめてよぉ」
淫魔「しょうがないじゃないか、一年生は一年生だもの。
エクソシストのせいとは言え、そんだけ力が強くなっちゃ、人間の世界じゃ暮らせないからねえ」
兄「……だからって、何で一年生なんだよぉ……」
妹「何度も言ったじゃん、悪魔はほとんど寿命が無限だから、十四年なんて誤差の範囲なんだって」
淫魔「お母さんがお仕事ひと段落して、こっちで一緒に暮らせるようになるまでに、生活のリズム作るんだよ」
妹「はーい」
兄「はーい……」
淫魔「さ、じゃ早く準備しちゃいな! 朝ごはん作っとくからね!」
兄「なんで俺、またランドセルしょって学校行かなきゃいけないんだよお……」
妹「しかも、私とおそろいの、赤ー!」
兄「何でだよお!」
妹「女の子しかいないサキュバスの一族なんだから、当たり前じゃん、ふふふっ」
兄「ううう、恥ずかしい……」
妹「ちょうど良いね、私が足で踏まなきゃなのと同じで、お兄ちゃん恥ずかしくないと魔法使えないし」
兄「使わなくて良いよ!」
兄「何がだよー」
妹「だって私、ほんとに、本っ当〜にお兄ちゃんの事好きなのに、いつかは離れなきゃ、ってずっと思ってたんだもん!」
兄「妹……」
妹「でもそれが、同級生になれちゃったんだもん!ずっと一緒に学校行けるんだもん!めちゃめちゃ嬉しいよ!!」
兄「……複雑だけど、お前が嬉しいなら、良いか」(ナデナデ
妹「えへへ、お兄ちゃん」
兄「ん、何?」
妹「嬉しいからちゅーしよ、ちゅー」
兄「お前な」
妹「んー、んー」
兄「……ん」(チュッ
妹「……!!」
兄「……ほら、早く、学校行くぞ」(プイッ
妹「……うん! お兄ちゃん、大好き!!」(ギュウッ
妹友「悪魔ですからね……でも、いちゃいちゃしてる最中とかだとバツが悪いし、今はいいです……」
乙!
11時間ぐらいぶっ続けよくできたな
妹「でもさ、お兄ちゃんも魔法使える様になったんだから、男の子に戻れるはずだよね?」
兄「あっ、うん、そう、それな」
妹「あ、試したんだ、やっぱ」
兄「そうなんだけど……」
妹「あ、何かあるんだ。へー、どうなったのか教えてよ、協力してあげるから」
兄「協力?」
妹「チンチン生えるところ、見ててあげる。恥ずかしい方が上手に出来るでしょ?」
兄「え、やだ、やだよ」
妹「みんなー! お兄ちゃんが、チンチン生やす魔法見せてくれるってー!」
幼女悪魔A「ホント!?」
幼女悪魔B「見たい見たい!」
幼女悪魔C「すごーい! 私まだ出来ないよ!」
妹「ね、すごいよね! 自分にチンチン生やせるの、このクラスだとお兄ちゃんくらいだよー」
兄「お、お前なあ……!」
兄「あっ、こら」
妹「足広げてー」
幼女A「ひろげてー」
幼女B「じー……」
幼女C「わ……見られてるだけなのに、もう開いてきた……」
兄「んっ、じゃ、じゃあ、しょうがない、やるよ……」
妹「うんっ」(ジー
兄「んんっ……!」(プクッ
幼女A「あっ、クリトリス、ふくれてきた……!」
幼女B「すごい、皮も伸びてくー……」
幼女C「わ、わ、チンチンになるんだ……わー……」
兄「……はぁっ」(プランッ
妹「えっ」
幼女B「ちっちゃいー」
幼女C「皮だけながいー」
妹「え、お兄ちゃん、終わり? 何これ、本当にチンチン?」
兄「だ、だからやりたくなかったんだよお……」(ムクムク
妹「あ、ふくらんできた……見られて大きくなるなんて、恥ずかしいなあ」(ツン
兄「ひゃっ!」
妹「なっがい皮……あ、一応剥けるんだ」(ツルン
兄「あ、はぁあぁ……」
妹「……ホントだ、先っぽに口もあいてるし、一応クリトリスじゃなくてチンチンなんだ」
幼女B「おまんこ、のこってるよー」(クニュ
幼女C「すごいぬれてきてる……」(ペトペト
幼女A「知ってる! ふたなり、ってやつ!」(クパァ
兄「あっ、あっ、触っちゃダメだってっ……! あっ……!」(ビュルルッ
妹「うわっ、もう出た!?」
兄「うん……」
妹「恥ずかしくないと魔法が使えないから、恥ずかしいチンチンしか生えないのね、お兄ちゃん?」(クニュクニュ
兄「あっ、ひっ、いじっちゃあっ……あっ……!」(ビュッ ビュッ
幼女A「また出た!」
幼女B「そーろーだ」
幼女C「そちんだねー」
兄「んっ……わ、分かったら、離してくれよぉ……」
妹「しかもおまんこが残っちゃうなんて、いじめられるためだけのチンチンじゃない」(グリッ
兄「あっあっ……!」
妹「可哀想だから、また私が踏み潰してあげる。ね、お兄ちゃん?」
兄「あっ……うんっ……俺の、恥ずかしいチンコ、踏み潰してください……」(ピュルルッ
女子淫魔学校 初等部1年 △組 妹
私は、同じクラスにお兄ちゃんがいます。
元は男の子だったのに、私が女の子にしてあ
げたら、そのままサキュバスになってしまっ
て、一緒に学校に通っています。
お兄ちゃんはマゾすぎて、恥ずかしくない
と魔力が使えません。学校に来るまでに空を
飛ばなきゃいけない所がありますが、そこで
は、私がまたがって、お尻を叩いてあげます。
そうするとお兄ちゃんは、ポニーみたいにヒ
ンヒン言いながら、空を飛ぶ事が出来ます。
遅刻しそうになった時はずっとそれなので、
学校に着く頃にはお兄ちゃんのパンツはビチ
ョビチョで、大変です。
元は男の子なのにおっぱいを触られるとす
ぐその気になるし、そのくせ、前にチンチン
があったせいにして、すぐおもらしをします。
すごい恥ずかしいお兄ちゃんですが、私は
そういう所が可愛くて、大好きです。
兄「よう。喚んでくれてサンキュ」
兄友「なんだ、あんまり変わってねーじゃん」
兄「基本はな」
兄友「もしこの携帯番号、サキュバスの召喚法っつってどっかに書いて残して、
何にも知らねー男子中学生がワクワクしながらお前呼んだらガッカリするな、学ランだし」
兄「ザマアミロだな」
兄友「そっちはどうよ、新生活順調?」
兄「あー、その……すげえ大変」
兄友「そっかー……サキュバスも大変なんだなー……」
兄「……妹のせいで、多分他より大変だなー……」
兄友「お前、一応サキュバスだろ? 頼んだら、俺の童貞もらってくれるの?」
兄「えー、命と引き換えで良いか?」
兄友「それは勘弁だなー、他のサキュバスならともかく」
兄「俺もお前は勘弁だなー」
兄「元気すぎるくらい元気」
兄友「そっか、大変だなー」
兄「まあなー」
兄友「悪魔の学校って、何勉強すんの?」
兄「え、一年生だから、足し算とか引き算とか」
兄友「えー、エロい事しないの?」
兄「するけど」
兄友「するんだ」
兄「聞かないのか?」
兄友「羨ましくなるから良い」
兄「二人一組になって、お互いの胸を」
兄友「あー聞こえない、あー聞こえない」
兄友「だろうと思って呼んだんだけど」
兄「ありがとう、兄友」(ニッコリ
兄友「おっ、お、お、おう」
兄「眼鏡も呼んでくれりゃ良いのにな、ロシアとか行ってみたいな」
兄友「そりゃ、まあ、アイツも踏ん切りが付かなきゃ無理だろ」
兄「そっか、そうだよな。あんまし気にしてなきゃ良いけど」
兄友「無茶言うな」
兄「そうだよな」
兄友「それよりよ、映画見に行こうぜ、映画。チケット2枚あるから」
兄「え、何それ、デートの誘い?」
兄友「それで良いよ、眼鏡に恨まれそうだけどな」
兄「否定しないのかよ」
兄友「別に良いかなって思っちゃったんだよ、あー怖ぇえ」
兄「俺のセリフだよ」
妹「もー、こうされたくて私呼んだんでしょ?」(チュブッチュブッ
妹友「ふ、普通に遊ぼうと思ったのにいっ……!」
妹「ホントに?」(レロレロ
妹友「あ、ひ、遊んでからしようと思ってたのぉ……」
妹「してから遊んでも一緒だよー」(チュブチュブチュブッ
妹友「あ、ひゃ、出る、出ちゃうぅっ……!」(ビュッ ビュッ
妹「んっ……んんっ、んっくっ……」(コクン
妹友「あ、飲んでる……妹ちゃん、飲んでるぅ……」
妹「ぷは、ごちそうさま。でも、そんなにシャセーってしたくなるモン?」
妹友「……たまに、すごい無性にしたくなる時がある、かな」
妹「ふーん……お兄ちゃんがこっそりちっちゃいチンチン付けてオナってるの、それかあ」
妹友「え、何それ、どういう事?」
妹「うふふ、お兄ちゃんったらね、自力でチンチン生やせる様になったんだけど……」
素晴らしかった…!!
まさかこんな展開になるとは
Entry ⇒ 2012.05.07 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
少女「抱っこをご所望です、おにーさん」 男「困った」
男「いや、幸か不幸か俺はかっこよくないので抱っこしません」
少女「私は目がおかしいのでおにーさんがかっこよく見えます。だから抱っこしてください」
男「くそぅ、この娘はちっともくじけやしねえ。しょうがない、おいで」
少女「執念の勝利です! えやっ」ポフリ
男「はいよしよし」ナデナデ
少女「なでなでまで! これは嬉しいサプライズですよ、おにーさん! ナイスガッツ!」
男「はいはい」ナデナデ
このSSはSS深夜VIPのSSです
男「そんなことはないと思うのだけど」
少女「いいえいいえいいえ! そんなことなはないことはないのです!」
男「ややこしい」ナデナデ
少女「はふぅ」
男「そんな注釈はいりません」
少女「じゃあどんどん勘違いしたらいいじゃないですか!」
男「怒りのツボが分からん」
少女「女の子は怒りっぽいんです。カルシウムが足りないんです。骨を食べたいです、わんわん」
男「犬なの?」
少女「可愛い女の子です」
男「なるほど」ナデナデ
少女「ふにゃー」
男「猫だったか」
少女「可愛いので間違うのも仕方ないかもしれませんが、人です」
男「怪しいものだ」ナデナデ
少女「ふにゃー」
男「意味が分かりません」
少女「ですから、ちゅっちゅぺろぺろしてはどうですか、と言ってるんです。どうでしょうか?」
男「繰り返すが、意味が分かりません。あと、何やらパワーアップしているような」
少女「女の子は無敵なんです!」
男「困ったなあ」
少女「大丈夫ですよ、おにーさん。もちろん初めてですよ!」
男「そんな心配はしてねえ」
少女「私が誰にでもキスするようなはしたない女性と御思いですか! 不愉快です!」
男「んなことは思ってねえ」
少女「謝罪の意も込めてちゅーしてください、おにーさん!」
男「これはひどい策略だ」
少女「ちゅー! おにーさん、ちゅー!」
男「ねずみですか?」
少女「どこをどう見たらねずみに見えるんですか! 人ですよ! おにーさんを大好きな人です!」
少女「おにーさんがちゅーしてくれたら帰ります」
男「はぁ……分かったよ。はい、ちゅー」
少女「はやややや!? ……って、ほっぺじゃないですか! 口にです! もう、ぶべーってくらいどぎついのをご所望です!」
男「中学生にそんなのしたら捕まりませんか?」
少女「親公認ですから大丈夫です!」
母「その通りよ、娘」コッソリ
男「ドアの隙間から……いつから見てた」
母「最初から! えろいぞ息子!」(満面の笑みでサムズアップ)
男「俺はアンタの息子じゃない。お前の母親だろ、なんとか言ってくれ少女」
少女「見てて母様、見事におにーさんを篭絡してみてます!」
男「この家にまともな奴はいないのか」
母「初めてでそれを推薦するとは……ナイスガッツ、娘!」(サムズアップ)
少女「貴方の娘だもの」(サムズアップ)
男「あの。一応、確認したいのですが」
少女「はい! なんでも聞いていいですよ、おにーさん? ただ、一回質問に答えるごとになでなでしてもらいます!」
男「……まあ、それくらいならいいか。ええと、俺は家庭教師、なんだよね?」
少女「という体で、さらいました!」
男「だよね。なんか街歩いてたら黒い服着た人がいっぱい来て俺をワゴンに連れ込んだもの、犯罪に巻き込まれたと思ったよ」
母「私の手引き。手引き」クイクイ
男「はいはい」ナデナデ
母「うへへぇ」
少女「あー! 母様ずるい! 私も! おにーさん、私もなでなで!」
男「はいはい」ナデナデ
少女「はふぅ」
少女「あれは、今から一ヶ月前のことでした……」
男「あ、なんか語り入った」
少女「色々あって、いま、おにーさんが私を抱っこしています。最高に幸せです」スリスリ
男「省略が過ぎる。もうちょっと具体的にお願いします」
少女「おにーさんのたくましい腕が、私を包み込んでいます。大きな手のひらが私の背中をさするたび、私の心は」
男「いや、その具体性はいらない」
少女「おにーさんのいけず……」
男「おたくの娘さんはちょっと頭悪いですね」
母「学力はすごいザマスよ?」
男「母親も頭悪かったか」
少女「そこまで言うなら仕方ありません。特別に教えてあげます。だからなでなでしてください」
男「……まあいいか」ナデナデ
少女「はにゃー。次、ちゅー」
男「いや、いいです」
少女「おにーさんのいけず……。まあ、なでなでしてもらったし、いいです。今回は我慢します。今回だけです。次はないですよ、おにーさん?」
男「帰ろうかな」
少女「分かりました、素早く説明しますっ! ええとですね、一ヶ月前、私は一人で学校から帰っていました。……偉いですか?」
男「いや、普通だろう」
少女「えええっ!? お供も一人もナシで、しかも、徒歩ですよ!? こんな偉業を成したのに、褒めないんですか!? おにーさんの鬼!」
母「そうよ! 男さんの鬼! 悪魔! 三段腹!」
男「別に太ってねえ。で、続きは?」
母「やるわね、娘! このまま喋りの力をつけて、将来はひな壇で頑張るのよ!」
少女「折角の激励ですが、私は芸人になるつもりはないです……」ションボリ
母「私も娘が芸人なんかになられたら悲しいわ……」ションボリ
男「帰りてえ」
少女「安心して、母様! 私、将来は、おにーさんのお嫁さんの予定ですから!」ドヤッ
母「まあ! じゃあ私は二号さんね!」ドヤッ
男「こっち見んな」
少女「……母様、殺し文句なのに、おにーさんはちっとも嬉しそうじゃないです」
母「解せぬ」
男「なるほど、母子揃って頭悪いのか。可哀想だな」
母「ええっ!?」
男「お前の肉親が真顔でええって言ってるけど、いいのか」
少女「……一ヶ月前、私は一人で学校から帰っていました」
男「無視か。いい選択だ」
母「くすん」
少女「いつもは車で優雅極まりなく帰っていたのですが、たまには庶民の気持ちを味わうのもいいと思い、徒歩で帰宅してみました」
母「帝王学ね! レッツラーン庶民!」
男「頭悪くても金持ちになれるんだな」
少女「……しかし、ここでとあるトラブルが。あ。……とある黒髪少女の揉め事(トラブル)が」チラチラ
男「言い直すな。こっち見るな。期待するな。揉め事と書いてトラブルと読ませるな」
母「れーるがん!」キラキラ
男「あの笑顔が腹立つ」
母「※犯人はあとで黒服が秘密裏に処分しておきました」
男「あれ? この家ヤバいの? ヤのつく職業?」
少女「そこへ颯爽と現れたのが……誰あろう、おにーさんです!」
母「ひゅーひゅー! かっこいいぞ、男さん!」パァン
男「囃し立てるな。クラッカーを鳴らすな。至近距離で俺に向けるな」
少女「紙くずまみれでも素敵です、おにーさん!」
男「いや、嬉しくない」
母「いいえ! よく見なさい、娘! こんな紙くずまみれの男なんて、どこがかっこいいの!」
少女「はっ……! 確かに。みすぼらしいばかりで、ちっともかっこよくないです! 恋心で眼が曇ってたわ。ありがとう、母様!」
母「分かってくれて嬉しいわ、娘!」
男「何も悪いことしてないのに、どうしてここまで悪し様に言われなければならないのか」
少女「大丈夫! 紙くずはみすぼらしいですけど、おにーさんは素敵です!」
母「ちぃっ! 騙しきれなかったか! あわよくば娘の恋心をなくし男さんをもらおうと思ったのに!」
男「早く帰りたい」
母「ドジっ子萌え、ね! 萌えるぞ我が子!」スリスリ
少女「ひゃああ」
男「…………」
少女「……母様。おにーさん、ちっとも喜んでないみたいです」
母「百合属性はないのかしら。……否! もっとドギツイ絡みをすれば、開花するかも! 覚悟はいい、娘?」
男「おいそこ、客の前で親子で絡むな」
少女「いや、私はおにーさんが好きなんでそういうのはちょっと」
母「普通に断られた!? 冗談なのになんだかちょっとヘコむわね……」
少女「閑話休題、そこに現れたおにーさん! おにーさんは私に優しく語りかけます」
母「なんつった!? なんつった!?」
男「母親の合いの手がウザすぎる」
少女「『あー……大丈夫か?』……って。きゃーきゃーきゃー!」ジタバタ
母「きゃーきゃーきゃー! 何がきゃーか分からないけどきゃーきゃー!」ジタバタ
男「そこの二人、暴れるのは百歩譲っていいとしても、せめて俺から離れてくれ。手や足が思い切り顔に当たって痛いのだが」
母「ラジカセで喋るくらいクールね、男さん……!」
男「少女はともかく、母の方は明らかに馬鹿にしてるだろ」
母「?」
男「女じゃなかったら殴ってる」
少女「折角おにーさんが声をかけてくれたのに、異性に慣れていない私は、怖くてうつむいてしまいました」
母「それでなくても怖いのに、基本的に無表情だからね、男さん!」ツンツン
男「言うな。気にしてるんだ。頬を押すな」
少女「母様ずるいです! 私もふにふにしたいです! と、というわけで、えいえいっ」ツンツン
男「……はぁ。満足いただけましたでしょうか、お嬢様」
母「まあまあね」
男「お前じゃねえ」
母「なんと」
男「はいそこ、なに顔を近づけてるか」
少女「はうあっ!? ち、違うんですよ!? ほっぺ、ほっぺですから! ほっぺにちゅーしようとしただけですから!」
母「つまり母たる私に男さんの口を残してくれたのね! 娘の心遣いに感謝し、いざ覚悟、男さん!」
男「いや違うだろ」
少女「いくら母様でも、おにーさんだけは譲れません!」
母「まあ! あんなに気弱で私に歯向かうなんて考えられなかった娘が……子供の成長って嬉しいものね、男さん?」
男「俺も扶養されてる身なんで、分かりません」
少女「今日からはおにーさんは私が養ってあげますねっ♪」
母「超☆ヒモ宣言、キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」
男「つっこみが追いつかねえ」
母「男さんが娘を穴奴隷にしたところまでね」
少女「ああそこまででしたか。……あっ、穴!?」
男「そこ、しれっと娘に嘘をつくな。あと、つくとしても、もうちょっとマシな嘘にしろ。中学生にする嘘じゃねえ」
少女「……? おにーさん、あなどれい、って何ですか?」クイクイ
男「ほらみろ、どういうわけか俺に被害が来た。助けてください」
母「あのね、娘。穴奴隷っていうのは娘の穴という穴に」
男「待て。短い付き合いだが、全部言いそうな気がしてならない」
母「見事な慧眼ね、男さん。その通りよッ!」(サムズアップ)
男「なるほど、やっぱコイツ馬鹿だ。ええとな、少女。それはまだお前が知らなくていいことだから、気にしないでくれるとありがたい」
少女「はぁ……。よく分かりませんが、おにーさんがそう言うなら気にしませんっ!」
男「よし。偉いぞ」ナデナデ
母「うにゃにゃ(笑)」
少女「お、おにーさん、母様がいじめます……」(半泣き)
男「よしよし、泣かない泣かない。そこ、娘をいじめるな」ナデナデ
母「いや、あんまりにも可愛くて。男さんも分かるっしょ?」
男「……まあ、否定はしませんが」
少女「お、おにーさんがいじめたいと言うなら、我慢します。泣きません」(半泣き)
男「もう半分泣いてるじゃねえか! あーもう、嘘だよ。いじめないよ」ナデナデ
少女「きゅー……」
母「きゅー(笑)」
少女「お、おにーさぁぁぁぁん……」(半泣き)
男「ああもう、ああもう」
少女「おにーさんになでてもらい、折れた気持ちを立て直しました。……偉いですか? 好きになりましたか?」
男「前者は肯定、後者は否定」
少女「母様、おにーさんが私を蛇蝎の如く忌み嫌います」(半泣き)
母「男さんは私の熟れた肉体が目当てだからしょうがないわよ」
男「違うッ! つーか色々間違ってる! 順番に正していこう。まず、俺は別に少女を嫌ってなどいない。次に、俺は母さんを狙ってなどいない。最後に、母さんは熟れてない。なんだそのロリ体型。本当に人の親か」
母「ほほほ。よく姉と間違われますわ」
少女「おにーさんは、おっぱいが大きい方がいいですか?」
男「いいえッ! ……いや、今はそんな話などどうでもよくて」
母「とんでもない反応速度だったわね」ヒソヒソ
少女「おにーさんはおっぱい小さいのが好きなんですね。……よかったです」ヒソヒソ
男「すげぇ、一向に話が進まねえ」
少女「そんなところも素敵です……」キラキラ
男「なんでもいいのか」フニフニ
少女「ひゃああ。お、おにーさん、ほっぺふにふにしないでください」
男「む。母さん、この娘さん可愛いですね」
母「こっちも年甲斐もなく可愛いと噂よ? やってみ?」
男「…………」(不承不承つんつんと)
母「ヒャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!」
男「怖え! それも尋常じゃなく怖え!」
男「ほらみろ、あまりの恐怖に少女が震えてるじゃねえか!」
母「嗜虐心をそそるわね! 性別と血の繋がりがなければどうかしてるわ!」
男「本当にどうかしてる。こんなのが親で可哀想だな」ナデナデ
少女「はぅぅ。で、でも、おにーさんになでてもらえるので、プラスマイナスぜろです」ガタガタ
男「まだ震えてるじゃねえか。よしよし」ナデナデ
少女「はぅ。はぅぅ。……はふぅ。落ち着きました。ありがとーございます、おにーさん」ペコリン
母「私のナイスアシストを褒めてはどう?」
男「はい偉い偉い」ナデナデ
母「片手間ね!」キラキラ
男「喜ぶな」
男「やっと本筋に戻った」
母「混ぜっ返す? 得意よ?」
男「頼むから口を挟むな」
少女「こほん。……んと、どこまで話しましたっけ?」(小首をこてりと)
男「うん、可愛い」ナデナデ
少女「はやや。ち、違います、違いますが……嬉しいと感じてる私が確かにいます!」
母「じーっ」キラキラ
男「いや、そっちには別に何もするつもりないですよ」
母「ちいいっ! ダメだダメだ、やはりロリコンはダメだ! というか、私だって結構ロリ体型なのに! もっと私をちやほやしなさいよ!」
男「人を勝手にロリコン呼ばわりするな」
少女「おにーさんは、ロリコンさんなのですか?」
男「い、いいえ、違います」
母「一瞬の躊躇を見逃す母ではない! この男……確実に、ロリコンね! 自室には緊縛された小学生や中学生が両手の指ほどいるに違いないわ!」
男「いねぇよ。どんな大悪党だと思われてんですか。というか、仮にロリコンだとしても、犯罪をおかす度胸なんてないですよ」
男「あ、そういや今日信号無視した」
少女「お、おにーさぁん……」(半泣き)
男「はいよしよし」ナデナデ
母「犯罪をおかすだなんて……人として恥ずかしいわ!」キラキラ
男「また嬉々として……はいはい、すいませんね」
母「いいえ、許せないわね! 警察に通報されたくなかったら、私を褒め称え、あとついでに私もなでなさい!」
男「代わりに娘をなでることで許してもらえないでしょうか」ナデナデ
少女「はぅ、はぅぅ」
母「……うん! 面白いから可!」
少女「面白い!? 私は見世物じゃありません、母様!」
男「そうだな」フニフニ
少女「ひゃああ。ほ、ほっぺふにふにしないでください」
男「……いや、見てて楽しいから見世物かも」
少女「がーん!」
少女「……つーん、です。いじわるなおにーさんなんて知りません。つんつーん、です」
男「少女に嫌われたショックで母親の方に走りそうだ」
母「お、私の出番か。よし、どんなプレイする? 母乳プレイ? ただ、出ないからまず孕まして頂戴な」
少女「!!? だ、だ、だ、ダメですッ! 私の、おにーさんは私のですっ! 母様にだって譲りませんッ!」ギューッ
男「冗談だ、冗談。つーかなんで歓迎ムードなんだ母親。あと、プレイの内容が酷すぎます」
母「いや、義母モノのエロゲってやったことないから、適当な想像で言ってみたもので。で、どう? 合ってる?」
男「知りません。というか、そういうのするんですね……」
母「部下が優秀すぎて、基本的に暇なの!」
男「どんな役職に就いてるか知りませんが、そのうち更迭させられそうですね」
母「戦々恐々の日々ね!」キラキラ
男「なんで嬉しそうなんですか。……で、いつまでしがみついてるんだ」
男「ああ、嫌だね」
少女「……わ、分かりました、離れます」(半泣き)
男「だから、冗談だっての! すぐ泣きそうになるなッ!」ナデナデ
少女「ぐしゅぐしゅ……おにーさんのいじわるっぷりは凄まじいです。鬼だっておにーさんのいじわるにかかれば泣いちゃいます。泣いた赤鬼です。ぐしゅ」
男「いや、その名作絵本は俺とは関係ないと思うのだけど」ナデナデ
少女「そのうち泣いた少女という絵本が出版されます。買ってください。ぐしゅ」
男「買わねーよ」ナデナデ
少女「鬼のいじわるおにーさんです」スリスリ
男「なんか俺が絵本の主役みたいになってるな」
少女「絵本カップルですね。素敵です」
男「どうかと思うが。……で、そっちはそっちで何やってんですか?」
男「……まさかとは思うが、マジで出版しようとか思ってませんよね?」
母「大丈夫! 原作者としてマージンもこのくらいあげるから!」
男「断言していいが、ぜってー売れねーからやめといた方がいいです」
母「それはどうかしらね?」
少女「おにーさん、なでなでが止まってます。断固抗議します」
男「ああはいはい」ナデナデ
少女「はぅぅ」
男「分かった、分かったから」
少女「えへへ。元気いっぱいです! んと、おにーさんが私に大丈夫か、と問いかけたところで話はすとっぴんぐしてます」
母「誰のせいよ!」
男「主にアンタのせいだな」
母「特技はセクハラと話の腰を折る、です!」
男「はいはい」
少女「おにーさんに声をかけられた私は、怖くてうつむいてじっとするしかできませんでした。足を怪我しているので、走って逃げることもできません。このままさらわれてしまうかも、という疑念が脳裏によぎります」
母「こんな可愛い娘をさらおうだなんて……この鬼! 悪魔! むっつり! ロリコン!」
男「言いがかりだ」
少女「その時、おにーさんが私の手をとり、どこかへ連れて行こうとしました」
母「やっぱり! 薄い本の展開ね! 待ってました!」
男「待つな。お前の娘だろうが」
少女「嫌でしたが、私の力では抵抗することもできず、ふらふらとついていくしかできませんでした……」
男「見ろ少女、あれがお前の母親だ」
少女「でぃーぶいでぃー♪ でぃーぶいでぃー♪」
男「ノリノリとは」
少女「……ところでおにーさん、なんで母様はでぃーぶいでぃーって言ってるんですか?」
男「分からないで言ってたのか?」
少女「なんだか楽しそうでしたので。……ダメだったですか?」
男「いや、むしろ安心した」ナデナデ
少女「よく分かりませんが、なでなでしてもらって嬉しいです!」ニコニコ
母「説明しよう! あのね娘、DVDってのは」
男「説明するな」ズビシ
母「あいたっ。ちぇー」
少女「うふふ。おにーさんにつれて行かれた先に、大きなショッピングモールがありました。そこでおにーさんは、私にそこで待ってろ、とベンチを指さしました」
男「あー……」(なんとなく思い出してきた様子)
少女「仕方なく、私はベンチに腰掛けました。膝はズキンズキン痛みます。周りは知らない人でいっぱい。痛くて怖くて、私はまたうつむいていました」
男「よし。思い出した。だから話はもう終わりに」
母「面白そうだからぜひ続きを、娘!」
少女「了解です、母様」
男「あああああ」
少女「顔を上げると、おにーさんがそこにいました。そして、『ちょっと痛いだろうけど我慢してくれ』と言いながら、私の膝を濡れたハンカチで軽く払いました」
母「ほう、ほう!」
少女「ハンカチの冷たさと怪我の痛みに、私は身を固くしてしまいます。その様子を見たおにーさんは、『痛いか? 痛いよな。ごめんな、もうちょっとだから我慢してくれ』と言いながら、ぽんぽんと私の膝を優しくハンカチで拭いてくれました」
母「ひゅーひゅー! 男さん、おっとこまえー!」
男「ふふふ。そうだろうそうだろう。じゃあもういい加減話は終わりに」
少女「そうして膝の汚れを落とすと、次におにーさんは薬局で買ったらしき真新しい絆創膏を私の膝にぺたりと貼りました。そして、『……えっと、どうする? 親御さん呼ぶか?』と、恐る恐る、だけど優しく尋ねてくださったのです」
母「ムッハー!!! 不器用萌え!」
男「きめぇ。俺きめぇ」
母「COOL! COOLよ、男さん!」
男「颯爽というかそそくさというか、その、本当勘弁してください」
少女「その時のおにーさんは、私がお金持ちの子だということなんて知りません。なのに、おにーさんは助けてくれました。しかも、何の見返りも求めてません。自分の名前すら名乗っていないのです」
母「クールにも程があるわね! 逆に怪しいわ!」
少女「学校でもどこでも、私はこの家の子ということで、誰からもチヤホヤされていました。……もっとも、それは私という個人ではなく、この家の子、という肩書きを見ていたのでしょう」
母「うんうん。思春期特有のはしかのようなものね! そんなところも可愛いわ、娘!」
少女「そんな肩書きではなく、私そのものを見て、しかも手厚く看護してくれ、あまつさえ何の見返りも求めない。……そりゃ一発で好きになりますよ!」
男「え、なんで怒ってるの?」
少女「だってこちとらそういう経験ぜろですから! なのにあんな優しくされたら、そりゃコロっといきますよ! 悪いですか!? う、う!?」
男「いや、その、普通女の子が困ってたら助けるだろ? そりゃ最近は通報される恐れもあるが、でも……なあ?」
少女「そ、そーゆーわけで、母様に頼んでおにーさんを探してもらい、現在おにーさんは家庭教師という名目でここに拉致されたわけなんです。説明終わりです。終わったのでなでてください。抱っこもお願いします」
男「経緯は理解したので了解」ナデナデギュー
少女「ふわあ。夢心地です」
少女「説明おつー!」
男「……いや、まあいいや。そうなんです」
少女「じゃあ、今から拉致当日の話を脳内プレイバックでお届けしますか? それとも、も一度なでなでしますか?」
男「あー、じゃあ、プレイバックで」
少女「なでなでですね!」
男「いや、プレイバックの方で」
少女「な、なでなでですね!」
男「いや、だから」
少女「な、なでなでですよね、おにーさん?」(涙目)
男「ああもう、ああもう」ナデナデ
少女「押しに弱いおにーさん、素敵です♪」
男「そいつぁよかった」
母「私はご満悦になりたいなー?」
男「夫にしてもらえ」
母「未亡人なのー! してもらいたくてもいないのー!」ジタバタ
男「はいはい」ナデナデ
母「うひはー!」
少女「母様がきもいです」
男「しっ! みんな知ってるけど、黙っておくのが大人だよ」
少女「分かりました。心の中だけで思っておきます」
母「子の気遣いが、なんだか悲しいわ……」
少女「さて、それでは話は2週間前に遡ります。皆さん、準備はよろしいか? よろしいですね。では、ごー」
男「さて。いきなり変な連中に拉致されたわけなんだが……なんだこの豪邸は」
男「(目の前に広がるは、俺の家が丸ごとすっぽり入ってしまいそうなほど大きなリビングだった。壁には見たことのある絵画が飾られており、さらに暖炉や西洋甲冑まである。床はふかふかの絨毯が敷き詰められており、俺がいま座っているソファは全身を優しく優しく包み込んでいる。そして極めつけは天井からぶら下がる金持ちの象徴、シャンデリアだ)」
男「(そこまでされたら嫌味に感じるのだろうが、どういうわけかその全てが見事なまでに調和されており、圧倒されるものの嫌悪感は感じない。ただの成金ではないってことなのだろうか)」
男「(などと感心していると、ドアの隙間から誰か覗いてることに気づいた。あ、こっち来た)」
少女「……え、えっと。あの」
男「あー。ええと、これはどういうことなのか説明してもらいたいのだけど」
少女「……う、うあ」ジワーッ
男「涙ッ!? ええなんで何も酷いことなんて言ってないのにいやしかし泣いている以上言ったのだろうごめんなさい!」
少女「…………」プルプル
男「否定!? 許してくれないの!? ああこんな金持ちに恨みを買われる覚えはないのになあ。今日で俺の人生も終わりか。つまらない人生だったなあ」
少女「……!? !!」ブンブン
男「そこまで激しく首を横に振らなくても、分かったって。ただ、できることなら、あまり痛くない方法でお願いしたい」
少女「ち、違う、違います……。あ、あの、私のこと、覚えてますか?」
男「へ? ……いや、ごめん。覚えてない」
男「ああいやごめんよく思い出しますから泣かないで!」
少女「は、はい。ぐすぐす。泣きません。我慢します」
男「(こんな子、知り合いにいたかなあ……? というか、そもそも異性に知り合いなんていないような。じゃあ、一体どこで……?)」
少女「(おにーさんだ。あの時助けてくれたおにーさんが、いま、目の前に……!)」
男「(う。なんか知らんが見てる。めっちゃこっち見てる)」
少女「(……な、なんか、ドキドキしてきました。ど、どうしよう!?)」
男「(そして突然顔が赤くなってきた。なに? 興奮? 今から俺を痛めつけることを想像しての興奮か? この娘……まだ若いのに、レベルが高い!)」
男「……って、アレ? なんか、見覚えが……」
少女「!!」
男「……いや、うーん」
少女「ひ、ひんと、ひんとです。ひんとでぴんとです。……えいっ」
男「(突然その場に倒れた。何?)」
少女「う、うーんうーん。い、痛いです」
男「(そして、膝を抱えての台詞。……膝?)」
少女「お、思い出してくれましたか!」
男「おまえ、あの時のパンツ覗き魔!」
少女「……私は転校生ではないです。ついでに言うと、性別も間違ってます。本来なら主人公と転校生と通学路でぶつかり、その際にパンツを見られ、そしてその転校生が教卓の前で主人公に言う台詞です」
男「100点の解法ありがとう。じゃなくて、この前こけた子か。あれから膝はどうだ?」
少女「は、はい、おかげさまで、ばっちしです。犯人も闇に葬られましたし、言うことなしです」
男「(闇……?) そ、そうか、それならよかったんだ。女の子だもんな、傷が残ったりしたら可哀想だもんな」
少女「お、おんなのこ……///」
男「え、……男なのか? ということは、最近流行の男の娘? ……いや、いける!」
少女「違います。いかないでください」
男「はい」
少女「そ、その節は、お世話になりました。心より深くお礼申し上げます」フカブカオジギ
男「あ、こりゃどうも」フカブカオジギ
男「ひゃい!」
少女「ふぇっ!?」
男「あ、や、失礼。こんな可愛い子にお兄さんなんて呼ばれて気が動転した。気に障ったのなら謝る」
少女「か、かわいい……///」
男「(それにしても、何が目的で俺なんかを拉致したのだろう。お礼を言うため? わざわざ? ……なわけないよなあ。……ま、まさか)」
男「(イチャモンをつけて尻の毛までむしりとるつもりか? そこまでやってのシャンデリアなのか? 俺はこの先生きのこるのか!?)」
少女「は、はぅぅ……///」
男「(って、顔を赤くしてうつむいてはぅはぅ言ってるような子がそんなことするわきゃねーか)」
男「あ、いや失礼。話を続けてくれ」
少女「あ、は、はい。……すぅー、はぁー。……え、えっとですね、……えっと、えっと」
男「?」
少女「……あ、あぅぅ」ジワーッ
男「また涙ッ!? 一体全体どういうことか分からない俺だがとりあえず泣き止んでくださいっ!」ナデナデ
少女「は、はぐ、ぐす。……は、はい、泣き止みました。……なでてくださってありがとうございます」
少女「い、いいえ、いいえ! ……お、おにーさんだったら、別に、その……」
男「いやいや。どこの誰とも知れない奴を特別扱いするのはよくないぞ」
少女「…………」
男「?」
少女「……うん。おにーさん、私の家庭教師になってくださいませんか?」
男「はい?」
少女「とまあ、そんなこんなでおにーさんは私の家庭教師となり、色々あってらぶらぶなのです」
母「手を出したのね! 中学生相手に……いやらしいっ!」
男「待てそこの親子。出してねえぞ、俺は」
少女「なでなでされて、抱っこされました」
母「出してるじゃない! いやらしい……っ!」
男「え、それも手出すに含まれるの? じゃあ、はい、出しました。ごめんなさい」
少女「これはもう、結婚するしかないです! 玉の輿ですね、おにーさん?」
男「展開が早すぎる」
母「初夜は親子丼ねッ!?」
男「頼むから待ってくれ」
少女「それが嫌なら抱っこしてください。なでなでもです」
男「はぁ、まあ抱っこもなでなでも好きだからいいですけど」ナデナデギュー
少女「はぅぅ」
母「手を出した! 母は見たわよ! 家政婦も見たわよ! あとミタも見たわよ! あと何が見る!?」
メイド「呼んだっスか?」ヒョコ
男「呼んでません」
メイド「性処理スか?」
男「呼んでねぇっつってるだろ」
少女「わ、私がするんですか?」ガタガタ
男「違う。震えるな」
母「じゃあ私ね!」キラキラ
男「断じて違う。目を輝かせるな」
メイド「じゃあやっぱ私の仕事っスね」
男「突然出てきて場を混ぜっ返すな」ギリギリ
メイド「ふぐわああ! あ、アイアンクローは痛いっス!」
母「私の特技を奪うとは……やるわね、メイド!」
メイド「だ、だけどギブだけは絶対にしないっス! 負けてなるものかっス!」
男「あ、このメイドめんどくせえ」
男「そんなこんなでやっと本編だ」
少女「今までが導入だったんですか? 長すぎません?」
男「どっかの誰かが特技を使いまくるせいでね」ジロリ
母「私のことねッ!」キラキラ
男「ダメだ、この大人は悪びれる、という言葉を知らないらしい」
メイド「知ってるうえでの行動だと思うっス」
母「流石はうちで雇っているメイド……思考レベルが高いわね!」
メイド「お褒めに預かり恐縮っス!」
男「なんかめんどくさいのが増えた気がする」
少女「それでおにーさん、本編って何をするんですか?」クイクイ
男「基本的には俺と少女とのイチャコラの話の予定です」
少女「い、いちゃこら……///」
母「親の目の前でメタ話にかこつけイチャイチャと……許せないことだわ! 混ぜなさい!」
メイド「褐色巨乳メイドなんかはどうっスか?」ボインッ
男「男なんでおっぱいには憧れますが、それもちょっと」
少女「こ、黒髪ぱっつんの中学生なんかは、ど、どうですか……?」クイクイ
男「あ、大好物です」ナデナデ
少女「あ、あぅぅ……///」(自分で言って照れちゃった様子)
母・メイド「「ぶーぶー。ひいきひいきー」」
男「そりゃあ、ねえ?」ナデナデ
少女「じ、次期当主として、ひいきされるのには慣れないといけないのです。あと、抱っこもしてほしいです」
男「はい」ギュー
少女「天にも昇るとはこのことです! 昇天しそうです!」
男「え、幽霊なの?」
少女「お化けじゃないです。お化けは怖いです」
男「そうだな。お化けは怖いな」ナデナデ
少女「です」
男「そんなある日のこと」
男「今日は朝から天気がよかったので花見でもしたいな、となんとはなしに朝食の場で言ってみた」
男「すると昼には庭に花見の準備ができていた。出来たメイドもいたものだ」
男「庭……にわにわにわにわとりがにわ」
少女「お、おにーさんが、おにーさんが!」ガタガタ
母「下がって、娘! 男さんはもう私たちの知ってる男さんじゃないの!」
メイド「ううう……せめて、せめて私の手で成仏させてあげるっス!」チャキ
男「早口言葉を言っただけだ。だからその手の無骨に黒光りする日本では所持が許されていない銃器を下ろしてください」
母「騙されちゃいけないわ! そうやって油断させるのが奴らの常套手段よ!」
男「誰だ、奴らって」
男「ああ、そだな。庭に桜があるってのはいいな」ナデナデ
少女「です」
母「あれ? もっとやんないの? 遊んでよ娘ー」
メイド「もう聞いてないようっスよ」
少女「じゃじゃーん」
男「おお、お重」
少女「私が作りました。……と言いたいところですが、メイドさんにほとんど作ってもらいました。私はちょこっとしか手伝ってません。……不器用なこの手が憎いです」
男「手伝おうとする意思が尊いの。まだちっこいんだし、頑張ればグングン上達するさ」ナデナデ
少女「……♪」スリスリ
母「親の目の前で口説いてるわね」
メイド「見上げた根性っス!」
男「別に口説いてはいません」
少女「困ります。口説いてください」
男「えー……」
男「んー……じゃあ、月が綺麗ですね?」
少女「みーとぅー」ギュー
男「落ちた」
少女「というか、既に落ちていますので、何を言われようが変化ないです」
男「なるほど」ナデナデ
少女「んふー」
母「はいはい、イチャイチャするのもいいけど、そろそろご飯にするわよ。いい加減お腹空いて死にそうだわ」
メイド「準備は既に整ってるっス! 有能なメイドと褒めてもいいっスよ?」
男「このメイドさんは有能でおっぱいが大きくて素敵だなあ」
メイド「そ、そんな褒めても何も出ないっスよ……もー! 男さんは! もー!」バンバン
男「痛い痛い。背中を叩くな」
少女「…………」ムニムニ
男「いや、小さい方が好きですから。難しい顔して自分の胸触らなくても大丈夫かと」
少女「じゃあ全く問題無いです」
男「始まってもいません」
母「したの!? シたのね!? この益荒男!」
男「してねぇ」
少女「おにーさん、おにーさん。私の隣に座ってください」ポフポフ
男「ん、了解」
母「ちっ、びくともしないわ。つまんないの」
メイド「はいはい、それじゃご飯にするっスよ。一番上の段がおかずの層っス。煮物や玉子焼き、天ぷらなどがひしめいてるっス!」
メイド「そして二段目がご飯の層っス。ちらし寿司とおにぎりが半分ずつあるっスから、好きな方を食べて欲しいっス!」
メイド「とどめの三段目がデザートの層っス! まんじゅうをいっぱい作ったので、食後にゆっくり食べて欲しいっス!」
男「いや、本当に有能なメイドさんだ。よくもまあ短時間でこれだけ作ったものだ。すごいすごい」
メイド「そ、そんな、私の仕事っスから……そ、そんな真面目に褒める必要ないっスよぉ///」
母「今日もフラグ建設お疲れ様ね!」
男「物理的に説得してえ」
少女「(……今日からお料理も勉強しよう)」
母「笹!? 誰がパンダだってのよ!」
メイド「ひぃ!? だ、誰もそんなこと言ってないっス!」
男「まだ飲んでもいないのに絡んでるのか。メイドさんも災難だなあ」
メイド「見てないで助けるっスよぉ!」
男「そうしたいのは山々なんだが、少女が俺の膝の上に乗っており、動けないんだ」
少女「気がつくと移動してました。助けられず、申し訳ない気持ちでいっぱいです」チョコン
メイド「なら一刻も早く下りるっスよぉ!」
少女「おにーさんに後ろから抱っこされてると、幸せで幸せで動けなくなっちゃうんです」
男「なら仕方ないな」
メイド「仕方なくないっス! へるぷみーっス!」
母「特に竹やぶがいいわよ!」
男「お、いいな。いただくよ」
少女「んしょ……あの、これ、私が握ったおにぎりです。……食べていただけますか?」
男「もちろん! 怪獣モチロンさパパ!」
少女「はい?」
男「じゃあ、いただきます」
少女「え、あ、はい。……え?」
男「はぐはぐ」
少女「どきどき」
男「はぐはぐ……ごくん。ん、おいしい」
少女「ほっ……。どきどきしました。おいしいと聞いて安心しました。……それが嘘でなければ、ですけど」
男「というか、おにぎりをまずくするなんて逆に難しいだろ。塩つけて握るだけだろ?」
少女「これだから素人さんは困りものです。その絶妙な塩加減が、そしてなにより上手に握ることが、どれだけ難しいか……」
男「あ、じゃあこれは練習のたまものか」
メイド「うっぷ。お嬢様の失敗作を食べ過ぎて、思わずげっぷが出ちゃったっス。失礼したっス」
少女「……母様、ごー」
母「おっす! オラ、母! いっちょ(性的な絡みを)やってみっか!」
メイド「ひぃぃぃぃ!!?」
男「酷くない?」
少女「当然の罰です」
男「でも、まあ、頑張ったんだな。偉い偉い」ナデナデ
少女「…………///」
母「……いけない、冗談なのになんか燃えてきた。百合もアリかも!」
メイド「ナシっス、全力でナシっス!」
少女「私はいいです。おにーさんが食べてください」
男「俺はさっき食ったからいーの。少女も食え食え」
少女「……じゃあ、その。……食べさせてください」
男「えっ」
少女「おにーさんに食べさせてもらうと、おにーさん菌がついておいしさ栄養度共に1.5倍にあっぷします」
男「菌とか言うとマイナスのイメージがありませんか? というかそもそもそんな菌存在しないような」
少女「とにかく、おにーさんに手ずから食べさせてもらいたいんです。仲良しな感じで食べたいのです」
男「……な、なるほど、分かった。んじゃ、何がいい?」
少女「なんでもいいです。おにーさんに食べさせてもらう、ただその一点のみが重要なのです」
男「ええい、恥ずかしいことをしれっと。じゃあこの玉子焼きでいいな?」
少女「はい、問題ありません。じゃあ一度それを咥えてください」
男「嫌な予感しかしないので断ります」
少女「大丈夫、よいことしか起こりません。それを私が食べ、そのついでにおにーさんにちゅーするだけです」
男「俺の予感が的中だ」
男「頑張らなくていい」
メイド「男さんはヘタレっスね」
母「むしろちんこの上に玉子焼きを乗せるくらいのことはしてほしいわね」グビグビ
男「そこの酔っぱらい、娘の教育上よくないので存在しないでください」
母「あそこの婿養子に死ねって言われたあ! うえええん! メイドちゃん、慰めて!」
メイド「ああはいはい、泣かない泣かないっス」ナデナデ
男「まだ結婚してねえ」
少女「私が今13歳だから……あと3年の我慢ですよ、おにーさん」
男「えっ」
少女「それまでは、私の瑞々しい肢体を堪能していてください。婚約者の特権です」
男「え、あれ、婚約したっけ?」
少女「この家におにーさんを呼んだ時点でしてます。私内部で」
男「それは一般的にしてない、と言います」ナデナデ
少女「むう」
男「どうかと聞かれると、その、想像しただけで大変ですよ? ……いやそうじゃなくて。別に婚約が嫌とかそういう話じゃなくてだな」
少女「早速今日にでもおにーさんの背中を流してあげます。大喜びですか、おにーさん?」
男「はいッ!!! ……いや、だからそうじゃなくて」
母「ここまで腹の底から響く声、久しぶりに聞いたわ」
メイド「男さん、性欲に思考を奪われてるっス」
男「だってスク水とか言われたらしょうがないじゃないですか!」
母「うわぁ。ちょっと引くわ」
メイド「流石にキモいっス」
男「ちょっと本音を出すとこれだ。これだから現実ってのは嫌なんだ。やはり二次元に走るべきか?」
少女「じゃあ、スク水で背中を流すのはやめますか?」
男「たまには現実もいいよね!」ギュー
少女「ぶい」
母「メイドちゃん、一応男さんの行動監視しといてね。ちょっと不安になってきたわ」
メイド「お任せっス!」
少女「母様が将来の親ということは……わ、私は、将来のお嫁さんですか?」
男「え、あ、そうなりますね」
少女「……え、えっと。ふつつかな娘ですが、よろしくお願いします」ペコリ
男「え、あ、こちらこそよろしくお願いします」ペコリ
少女「…………///」
男「(しまった、可愛い)」
メイド「動くなっス!」ポワワ
男「ぎゃあ! ていうか動くなって言いながら撃つな。なんだその銃」
メイド「ポワワ銃っス! かっこいいっス!」
男「…………」ヒョイ
メイド「ああっ、私のポワワ銃が!」
男「宇宙の彼方まで飛んでけー」ポーイ
男「殺してでも うばいとる」
少女「な なにをする きさまらー。……まあ、もう私はおにーさんのものなので、奪う必要などないのですが」スリスリ
メイド「私の宝をダシにイチャイチャしてるっス! 許しがたいっス!」
母「ていうかなんか男さんさー、スク水の辺りからはっちゃけてない?」
男「煩悩が理性を駆逐したんだろうね」ナデナデ
少女「よい傾向です♪」
母「よし! ならこの母もなでてみてはどうかな?」
男「あ、それは結構です」
母「なんでよ! こう言っては何だけど、結構ロリ体型なのよ! ……あっ! ……こほん。お兄ちゃん、なでなでして?(ロリ声)」
男「……よし。えっと、こうして……『お兄ちゃん、なでなでして?』」
母「なななんで録音なんてしてるのよッ!?」
男「金持ちの弱み、ゲットだぜ!」
少女「おにーさんの手練手管にめろめろです」
母「そこっ! 実の親が大ピンチなんだから、ちょっとは助ける素振りを見せなさいよっ!」
男「少女の頼みを俺が断るはずないだろう。はい」
少女「ありがとうございます、おにーさん」ペコリン
母「ナイスよ、娘! さあ、さっきのデータを消しちゃって!」
少女「はい。……あ」
母「あ!?」
少女「……機械の操作は苦手なので、しょうがないです」
男「そうだな、しょうがない」ナデナデ
母「なな何したの、何したのっ!?」
少女「ちょっと間違って、おにーさんの友人全員にさっきのデータを転送してしまいました。てへ☆」
男「うむ、可愛いので無罪!」ナデナデ
少女「ぶい」ピース
母「有罪、有罪、ゆうざーいッ! 明らかに有罪! なんてことしてくれたのよ、娘! ああもう、今すぐ隠蔽工作しないと!」
少女「その必要はないです」
母「あんでよ! その友人とやらがそのデータを週刊誌とかに売ったりしたら、母のイメェジがとんでもないことになっちゃうじゃない! これでも外では有能な社長で売ってるんだから!」
男「ぼっちで助かった」
母「……なるほど。二人して私で遊んでたわけね?」
男「いや、遊んでいたのは少女だけで、俺は知らなかったですよ?」
少女「おにーさんが私を売ります……」
男「俺が全て悪い。罰は俺が全て受けます!」
少女「おにーさんの愛を感じます!」
母「……じゃあ、今日から一週間、男さんだけ夕食抜きね」
男「少女も罰を受けるから半分にまかりません?」
少女「おにーさん……」ウルウル
男「俺が全ての罰を受ける! この可愛い少女に手を出す奴は誰も許さねえ!」
母「飯抜き二週間ね」
男「しまった、余計なことしたせいで増えた!」
少女「おにーさん、ふぁいとっ」
少女「たくさん食べるおにーさん、素敵です」
男「喉に詰まった。ぐええ死ぬ」
少女「青紫色のおにーさんも素敵です」
メイド「ふぅ……ようやく見つかった──って、なんで男さん泡吹いてるっスか!?」
母「もうちょっとマシな許嫁いなかったのかしらね」
男「そんな臨死体験をした夜のこと」
男「俺は一人風呂に入っていた」
男「豪邸の風呂ということで、屋内に巨大風呂が一つ、露天が一つ、とどめにサウナもついてる無双っぷり。自宅の足を伸ばせない風呂を思い出すと現実の不公平っぷりに泣きたくなる」
男「とか一人ぶつぶつ言いながら巨大風呂で泳いでると、誰か入ってきた」
少女「にゅあー」
男「猫だ」
男「ではない。鳴き声に騙される俺ではない」
少女「さすがはおにーさん、優れた洞察力です。ぱちぱちぱち」
男「えっへん。いや違う。あの、今は俺が入っていい時間だと思ったのですが。表に『男 入浴中』って札をかけてたと思ったのだけど。かけてなかった?」
少女「いいえ、かけてありました。おにーさんは毎度律儀で素敵です」
男「いや別に普通だと思うのだけど。それで、あの、なんでスク水着てるの?」
少女「? 昼にお風呂で背中を流す、と言ったと思ったのですが……」
男「え、あれマジだったの?」
少女「……迷惑、ですか?」
少女「だいじょぶです。痛くても我慢します。なるべく泣かないようにします」
男「何か違うこと想像してませんか?」
少女「大丈夫です、愛があれば条約には引っかかりません」
男「やっぱり想像してやがった。背中を流すって話だよね?」
少女「そうです、そうです、そうでした。てへ、うっかり」
男「これを故意犯といいます」
少女「おにーさんは恋の犯人さんです。ばきゅーん」
男「違う。撃つな。ていうか、それ水鉄砲かと思ったら、ポワワ銃か。なんで持ってるんだ。メイドさんのだろ?」
少女「ここに来る前に、押し付けられました。水場でも使える万能銃らしいです。『いざというときはフルパワーで撃つっスよ?』とはメイドさん談です」
男「人のことをまったく信用してねえなあ、あのメイド。いつかあのおっぱいをほひんほひんにしてやる」
少女「その練習として、私のおっぱいをほひんほひんにしますか?」
男「するほど量がないので結構です」
少女「残念なことこのうえないです……」
男「いやまったく。じゃあ俺はこの辺で」
男「ちぃっ!」
少女「……それとも、私に背中を流されるのは、嫌ですか?」ションボリ
男「是非お願いします」
少女「流れるような動きで椅子に座るおにーさん、素敵です」
男「お前はあんまり悲しそうな顔をするな。すぐに迎合しちゃうんだよ」
少女「今日もおにーさんは優しくて素敵です」
男「ヘタレなだけだよ」
少女「そんなことないです。……はい、じゃあ背中流しますね。わっしわっし」
男「もっと力入れても大丈夫だぞ」
少女「はい。わっし、わっし、わっし」
男「あー、もっと入れられるか?」
少女「へ、へっちゃらです。わっし……わっし……わっし……!」
男「あ、あのー……うん、丁度いいです」
少女「背中の皮を削ぐ勢いでやってやりますよ! わっしわっしわっしわっしわっし!」
少女「はぁはぁはぁ……ぜ、全然疲れてません」
男「聞いてねえ」
少女「つ、疲れてませんが、ちょっとだけ休憩します。大人の女は焦らすのが上手なのです」
男「別に身体洗うのを焦らされてもなあ」
少女「じらーす。がおー」
男「あ、可愛い」ナデナデ
少女「焦らすと言うと、どうしても言いたくなる衝動を抑えられないのです。じらーす。がおー」
男「可愛い可愛い」ナデナデ
少女「がおんがおん」フリフリ
男「尻を振るな」
少女「しっぽがないので、苦肉の策です」
男「ああ、いや、こっちは自分で洗うから大丈夫」
少女「だいじょぶです。前も私にお任せです。おまかせ退魔業です」
男「いや本当に! こっちは防具がタオルしかないのでちょっと色々問題が!」
少女「私の水着で隠しますか?」シュルリ
男「隠さない! 脱ごうとするなッ! ほらほら、肩紐戻しなさい!」
少女「ちぇ」
男「はぁ……と、とにかく、どうしてもと言うのなら、上半身は洗ってもいい」
少女「どちらかと言えば、おにーさんの下半身に興味津々です」
男「そっちはマジ勘弁してください」
少女「残念無念です。しょうがないので、上半身だけで我慢してあげます。代わりにあとでなでてください。抱っこもしてください。あ、ちょうどお風呂ですし、一緒にお風呂に入ってください」
男「あー、まあ、それくらいなら」
男「待て」
少女「突然の犬扱いに驚きを隠せません。わんわん?」
男「違う、そんな扱いはしてない。しつけではない。単純に待ってくださいと言ったのです」
少女「分かりました、待ちます。私待ちます。私待ーつーわ」
男「歌わなくていいです。じゃなくて、なんで俺の膝に乗るの?」
少女「具体的に言うと、おにーさんの膝の上にまたがり、おにーさんと相対しています。とても近くにおにーさんがいて、少しどきどきします」
男「説明ありがとう。いや、それで、なんで乗ってるの?」
少女「おにーさんの身体を洗うためです」
男「……風俗?」
少女「うっふんうっふん」
男「ポーズ作らなくてもいいです」
少女「篭絡できません……」
男「もうすでに篭絡してるからしなくてもいい」
少女「おにーさんはすぐに私を喜ばせるので注意が必要です」
少女「じゃあ、準備しますね」
男「待って。いやそれも待って」
少女「はい? それも、とは?」
男「なんで水着にボディーシャンプーかけてるの。なんで泡立ててるの」
少女「さっき使ったタオルを紛失してしまいました」
男「そこに落ちてる」
少女「えい」ポワワ
男「タオルがポワワ銃で消し炭に!?」
少女「紛失しました」チャキ
男「はい。だからこっちに銃口向けないで」
少女「分かればいいんです」ワシャワシャ
男「ああ。どんどん泡立っていく。ああ」
少女「準備完了です」
男「あああああ」
男「ひぃっ」
少女「……困りました。思ったより恥ずかしいです」
男「んなもんする前に分かれ。と、とにかく、恥ずかしいのなら早くここからどいて」
少女「しかし、今の私はおにーさんのタオルなので、恥ずかしさを介している暇などないのです」ゴシゴシ
男「動かないで!」
少女「んしょ、んしょ。……どうですか、おにーさん?」ムニュムニュ
男「おっぱいが、おっぱいが! ちっこいおっぱいが明らかに当たってます!」
少女「あててんのよ、です。……あの、気持ちいいですか?」
男「はい! いやあの、何を聞いてんだ」
少女「……私の胸はまだ小さいので、おにーさんを満足させられるか、不安なのです」
男「不安は無用、そういうのが大好きですから。……いやだから、俺も何を律儀に答えてるんだ。あのさ、今からでも遅くないからここからのいて」
少女「そういうことなら頑張ります。んしょんしょ」ムニムニ
男「だから! ああおっぱいが、おっぱいが!」
少女「ああ窓に、窓に! みたいですね、おにーさん」
少女「直接がいいですか?」ヌギヌギ
男「違う! 脱ごうとするな!」ムニッ
少女「あ」
男「あ」
少女「……お、おにーさん、えっちです///」
男「い、いや、違くて! 極めて偶然の可能性を視野に入れる必要がありまして! 押し留めようとしただけでして! その……そう! 事故! 事故ですよ!」ムニムニ
少女「っ! ……ど、どうして揉んでるんですか?」
男「いや、手が俺の制御を受け付けなくて! くそっ、鎮まれ、俺の右手よ、鎮まれ……ッ!」ムニムニ
少女「んっ! ……ち、中二病なおにーさんも素敵ですが、そ、その。……そろそろ、手を離してもらえると、助かります///」
男「あ、は、はい」パッ
少女「……ふぅ。……おにーさん、えっちです」
男「返す言葉もないです。ごめんなさい」
男(そしてマズイ)
男(ちんこが。俺のちんこが)
男(いかん!)
少女「……お、おにーさん。……え、えっちです///」
男(ばれた!)
少女「そ、そういうことは、その。……もうちょっと大きくなってから、ですね、その」
男「は、はい。仰るとおりで」
少女「で、でもそのあの、……ど、どしてもと言うのなら、ですね?」
男「は、はい?」
少女「……て、手とかでいいなら、その///」
男「いっ、いいえいいえいいえいいえ! 結構です、大丈夫です!」
少女「おっ、お口じゃないとダメですか!? ……が、頑張ります///」
男「そういうことじゃなくて! しなくていいから!」
少女「ほっとしましたが、ちょこっと不満です。むぅ」プゥ
男「頬を膨らませるない。あー……いや、しかし、妙に詳しいな。それとも、最近はこれくらい普通なのか?」
男「やはりか。あの大人たちはダメな大人たちなので、あまり真面目に話を聞かないように」
少女「分かりました。私をおにーさん色に染めてください」
男「そういうことじゃなくて!」
少女「ところでおにーさん」
男「はい?」
少女「さっきはおにーさんが私のおっぱいをもみもみして身体を洗うのを中断してしまいましたので、続きをしてもいいですか?」
男「人聞きが悪い! 偶然! 事故! 触ってしまっただけ!」
少女「でも、その後むにむにしましたよね?」
男「あー。本当だ。揉んだ揉んだ。柔らかかった! ちょー幸せ!」
少女「……私を助けてくれた優しいおにーさんは、幻想だったのでしょうか」
男「あ、いや、ごめん。本当に。もうしません」
少女「私の身体は魅力ないですか?」ムー
男「どうしろと言うのだ」
男「難しいことを言うものだ」
少女「具体的に言うなら、なでなでしたり抱っこしたりすりすりしてください。そういうのが好きです。おにーさん大好きです」
男「さりげなく告白してくるな、この娘」
少女「忍法、秘めたる恋です」
男「告白した時点で秘めてないね」
少女「忍法大失敗です。今日から私は抜け忍です。にんにん」
男「スク水忍者か。属性がとっちらかってて、ちょっと方向性を見失ってるね」
少女「残念です……」
男「いや全く。じゃあそろそろ風呂からあがろうか」
少女「まだ洗ってる途中ですよ、おにーさん」
男「チクショウ、最大限のさりげなさで離脱しようとしたが失敗した」
少女「じゃあ引き続きおにーさんの身体を洗っちゃいますね。んしょんしょ」ムニムニ
男「ほら! ほぉら! またしても俺の轟天号がどてらいことになりそうな予感だよ!」
男「は、はい。……無だ、心を無に……!」
少女「んしょんしょ」ムニュムニュ
男(おっぱい柔らかいなあ)ムクムク
少女「……おにーさん」
男「心を無にするために目をつむったら、感触に集中してしまってこのざまです」
少女「今日もおにーさんはえっちです」
男「面目ない。だが、やはり女の子に抱きつかれ、小さいおっぱいを押し付けられると、やはり興奮しちゃいますよ?」
少女「そこを我慢するから素敵なんです。おにーさん、ふぁいとっ」
男「くそぅ。分かった、もう一度挑戦だ」
少女「それでこそおにーさんです。んしょんしょ」ムニュムニュ
男「冷静だ、俺は冷静だ」ムクムク
少女「ダメです」
男「困った」モミモミ
少女「んっ……ふ、普通に私のおっぱいを揉んでます。もみもみしてます。しかも両手で、です」
少女「んうっ……お、おにーさんは変態さんです。えっちすぎです。いわば超えっちまんです」
男「いかん、舐めたくなってきた!」
少女「……ぽ、ポワワ銃の出番でしょうか」チャキ
男「ごめんなさい」パッ
少女「分かればいいのです。……それにしても、おにーさんがこんなにえっちだとは思いもしませんでした」
男「いや、俺も。自分ではもうちょっとまともだと思ってたんだけどなあ。やはり、少女が身体で俺を洗ったりするから理性が飛んじゃったのではなかろうか」
少女「私のせいですか?」
男「そ、そうは言いませんよ!? ええ、ええ! 俺が全部悪いですよ! ただ純粋に少女のおっぱいを揉んだだけですよ!」
メイド「話は聞かせてもらったっス!」
男「なんて最悪のタイミングでやってくるんだ」
メイド「奥様に命じられて脱衣場で息を殺して様子を伺ってたら、とんでもない声が聞こえたので慌てて参上したっスよ!」
男「断言する。気のせいだ!」
メイド「真っ直ぐな瞳で嘘をつかないで欲しいっス!」
少女「分かりました。おにーさんが私のおっぱいを揉んでいたことを誤魔化せる良い嘘を考えます!」
メイド「これはひどいっス」
男「少女の素直さが仇に」
────
母「話はメイドちゃんから聞いたわ」
男「メイドはどうなってもいい。だから、俺と少女だけは助けてやってくれ!」
メイド「なんで私が生贄にされてるっスか!? 今は男さんが糾弾される所っス!」
男「勢いでなんとなく誤魔化せると思ったんだけどね」ナデナデ
少女「おにーさんの誤魔化し技にどきどきです」
母「はいはい。男さん、さすがに手出すの早すぎない? 娘はまだ中学生なのよ?」
男「すでに十分えろいです。いや、中学生だからこそ、えろいのです! なんだったら小学生でもえろいです!」ドンッ
少女「か、かっこよすぎて目眩がします……///」
メイド「目が腐ってるっスよ、お嬢様!」
男「お小言をもらうはずが、お墨付きをもらってしまった」
少女「早速しますか? お風呂でしますか?」クイクイ
男「しません」
少女「がーん。……ちっちゃいおっぱいが好きだと言ったのに。いっぱい揉んでたのに。おにーさんのばか」
メイド「一回揉んだら用済みっスか!? この鬼! 悪魔! 貧乳無双! 一揉み500円!」チャキ
男「違え。銃を構えるな。なんだ最後の金。じゃなくて、えろいと言ったが、それとエッチをするのはまた別の話ってだけだ」
少女「……私の体を気遣ってのことですか?」
男「あー、んー、まあ。その、あまり大きい方ではないからさ、お前の身体は」
少女「……大丈夫です。おにーさんならヘッチャラです」
男「少女の身体に合わせた大きさということですかね!?」(股間を押さえて嫌んなるくらい狼狽中)
少女「平均は知りませんが、そうでもないと思います。でも、今はおにーさんのそれの話ではないです」
男「なんだ。安堵の息を吐かずにはいられないよ。ほっ」
母「ねえ娘、今からでも遅くないからもうちょっとマシなのにしない? 見た目も学歴も地位も名誉もコイツより遥かに優れた婿候補なら死ぬほどいるわよ?」
少女「お断りです。私はおにーさんじゃないと嫌です」
メイド「総合を崩しすぎっス! 気持ち悪いっス!」
少女「……一考の余地ありかも、です」
男「いかん、調子に乗ったら捨てられた!」
少女「冗談です、おにーさん。私はおにーさんをずっと好きでいますよ?」ピトッ
男「なんだ。あまりの恐怖に全身から冷や汗が吹き出したよ」
少女「じゃあ、もう一度お風呂に入る必要がありますね」
男「いやもう結構!」
少女「NOという感じの手をしてもダメです。汗をかいたまま寝たりしたら風邪をひいてしまいます。決して、もう一度お風呂でイチャイチャするために入るのではないです。……嘘ですが」
男「ああこの娘は育ちがいいから嘘をつけないのだなあ」ナデナデ
少女「温室育ちのこの身が憎らしいです」
メイド「じゃあ今度は私が一緒に入って監視するっス!」
男「え、母さんから許可はもらったのだけど、監視の必要は」
メイド「男さんのことだから、誘われたらホイホイと最後までしてしまうに違いないっス! そうさせないための私っス!」
男「なるほど、じゃあ俺は巨乳と貧乳に囲まれて風呂に入るのか。……困ったなあ!」(全力笑顔)
メイド「身の危険を感じるっス!」
母「……危険手当を出しておくわね」
メイド「危険!? え、なに、私孕まされるっスか?」
男「俺子供好きだから大丈夫だよ?」
メイド「いらない情報っス!」
少女「…………」ムニーッ
男「あ、いや、あの、冗談ですから頬を引っ張らないで」
少女「知りません。おにーさんのばか」ツーン
男「見た、見た!? つーんとしてる少女の可愛いこと可愛いこと!」ナデナデ
少女「お、怒ってるんだからなでないでください、おにーさん///」
メイド「なんかもうここの職場辞めたいっス」
男「そんなわけで再び風呂だ!」ババーン
少女「風呂です」ババーン
メイド「ううっ……なんで私までスクール水着を着なきゃいけないんスかぁ……」タプーン
男「大丈夫だ、メイドさん。スク水がそのものすごいおっぱいに押し広げられて、すごいことになってるから!」
メイド「何が大丈夫なんスか! ああもう、あんまりこっち見るなっス!」
男「断る。俺は、メイドさんのおっぱいを、見る!」
メイド「断るなあっス! そんな男らしい宣言不要っス!」
少女「浮気をしたら殺しますからね、おにーさん」
男「じ、じ、じ、じゃあ、そ、その、ふ、風呂に入ろうか」ガタガタガタガタ
メイド「怯えすぎっス! お嬢様の冗談に決まってるっス! ですよね、お嬢様?」
少女「?」
男「見たか、このイノセントな瞳を。少女は本気だ」ガタガタガタガタ
メイド「震えながら言う台詞じゃないっス! どんだけ震えてるっスか!?」
メイド「お嬢様も男さんに触って遊んでないで! ほらほら、とっとと入ってとっとと出るっスよ!」グイグイ
男「ああ押さないで押さないでもがっ」
メイド「ああっ!?」
少女「おにーさんが頭から湯船に落ちました。ぶくぶくとあぶくが出ています。下半身が浴槽からにょきっと飛び出ていて、以前映画で見た犬神家の一族のようです。……あ、あと、おにーさんの象徴が///」
メイド「冷静に説明してないで! は、早く助けるっスよ!」
男「もが……ぷはあっ! ……はぁはぁ」
メイド「だ、大丈夫っスか、男さん!?」
男「すいません真面目になりますから殺さないでください」
メイド「別に殺そうとしたんじゃないっス! ただの事故っス!」
少女「誰もその殺意を証明できませんが、ただの事故らしいですよ、おにーさん」ニヤリ
男「少女もメイドさんも俺の命を狙っている。もうダメだ」ガタガタガタガタ
メイド「狙ってないっス! ちょっとお嬢様、適当なことを言ったらダメっス!」
少女「大丈夫、私はおにーさんが裏切らない限り、酷いことをしません。信頼出来るのは私だけです。私を信じてください、おにーさん」
メイド「洗脳っスか!?」
男「ガ……ウガ……オレ……オマエ……シンジル……」
メイド「なんでカタコトになってるっスか!?」
男「ビビ……コレ……ナニ……? ……ナミダ?」
メイド「そして獣系と思いきや、ロボなんスか!?」
少女「ツッコミがいると楽ですね、おにーさん」
男「いや全く。んじゃそろそろ湯船に入ろうか。いい加減寒くなってきたよ」
メイド「……からかってただけスか」
男「ざぷーん」
少女「ざぷーん」
メイド「ふぅ。……お風呂に水着を着て入るって、なんだか不思議っスね」
男「じゃあ脱げばいいのでは! なんという名案! よし、こうなったら全員脱いで」
少女「おにーさん」
男「……って、そ、そんなわけないよね。異性がいるものね。決して怖いから意見を翻したんじゃないよ?」
メイド「将来の力関係が今から見えるようっス」
少女「おにーさんおにーさん、あぐらをかいて座ってください」
男「ん、ああ。こうか?」
少女「そです。……んしょっと」チョコン
男「やあ、膝に座るのだね」ナデナデ
少女「です」
メイド「ここまでならまあ分かるっス。仲の良い兄妹のようで一見微笑ましいっス」
メイド「はいおかしい! 早速おかしいっス! どういうことっスか!?」
少女「昔のスクール水着には、こういう穴があるんです。博識です」エッヘン
男「少女は頭がいいなあ」ナデナデ
少女「褒められてご機嫌です♪」
メイド「いやいや、いやいやいや! そういうことじゃなくて! ていうかお嬢様、何を自分から誘ってるっスか!?」
少女「おにーさんの魅力に抗えず、つい。てへ」
男「かか可愛い。これは襲わずにはいられない」
少女「きゃー」(棒読み)
メイド「ひどい茶番っス。まあ仕事なんで、一応止めておくっス」チャキ
メイド「私のいた部隊では、頭と腹を撃てと習ったっス」
男「なにそのコロラド撃ち怖い」
少女「私をかばうおにーさんかっこいいです」
メイド「目を覚ますっスお嬢様! 私が自主的に男さんを狙ってるだけっス!」
男「…………」ソーッ
メイド「そこ! 目を離した隙にお嬢様の水抜き穴を広げるなっス!」
男「いや、実際に目の当たりにするの初めてで、珍しくって」
少女「もうちょっとずらすと色々見えますよ? ずらしますか?」
メイド「ああもう本当に帰りてえっス」
メイド「冗談だったんスか!?」
少女「私は本気でした」
メイド「お嬢様の方が危ないんスねえ……」
男「じゃ、みんなで温まろう」
少女「はい。メイドさんもこっちに来てください」
メイド「え、いや、私は別に」
少女「次期当主の命令です。来てください」
メイド「……分かりましたっス。でも、私に手を出したら殺すっスよ、男さん?」チャキ
メイド「言ってるそばから出してるっス! 揉んでる、私の胸を超揉んでるっス!」
男「しまった、理性を切り離したままだった! 戻れ〜、理性戻れ〜」ムニムニ
メイド「な、なんでもいいから手を……んっ、手を離すっス! う、撃つっスよ!?」
男「ひぃ、怖い!」ムニッムニッ
メイド「な、なんで揉む力が強くなるっスかあ!?」
男「あまりの恐怖に手が震えてるんだろうね」ムニムニ
メイド「んっ……や、やめ……っ!」
少女「脂肪がにくいです」
男「いかん、メイドさんのおっぱいを揉んでるところを見られてしまった。どうしよう」モミモミ
メイド「ならもう手を動かすなっス! 奥様! 助けてほしいっス!」
少女「おっぱいめ……おっぱいめ……!」
母「えーと……状況がよく分からないんだけど、どうなってるの?」
男「簡単に説明しますと、濡れた水着のメイドさんに欲情してしまったんです。浴場で欲情する、なんちて」
母「うわぁ」
メイド「それはないっス」
少女「おにーさんにはがっかりです……」
男「大不評だ」モミモミ
メイド「い、いい加減にするっス! いつまで揉んでるっスか!」
男「振り払われた。残念」
母「はぁ……まったく、貴方は娘の許嫁なのよ? メイドちゃんに手を出してどうするの」
少女「まったくです。おかんむりです。ぷんぷん」プクー
少女「やんやん♪」
男「機嫌が直った」
メイド「早ッ! お嬢様、もうちょっと頑張るっス!」
少女「惚れた弱みです」スリスリ
母「しかし……貧乳は娘、巨乳はメイドちゃん、そして微乳の私。全種揃ったわね?」
男「そこは普通乳じゃないんですか」
母「そこまで思い上がってないわよ。で、どうする? 折角だし私のも味見しとく?」
メイド「奥様まで壊れてるっスか!?」
少女「ところで、どうして母様もスクール水着を着ているのですか?」
母「仲間はずれは寂しいじゃない。で、どうする?」
メイド「誰が年増っスか、誰が!」ギュー
男「首を絞められると死にます」
少女「どんな時も冷静なおにーさん、素敵です」
母「顔色は紫だけどね」
男「まあ待て、誰も年増なんて言ってない。見た目通り、若いと思ってるぞ。ちなみに何歳なの?」
メイド「……何歳に見えるっスか?」
男「うわ超めんどくさい質問きちゃったよ。でもナイスガイを自認している俺は考える振りを一応しておこう。高校生くらい?」
メイド「なんかもう色々台無しっスけど、一応当たりっス」
男「やったあ! 当たりの景品をいただきます」モミモミ
メイド「んにゃあ!? も、揉んでいいなんて一言も言ってないっス!」
男「握力が鍛えられそうだ」モミモミ
メイド「人の胸で鍛えないで欲しいっス! いーから離せっス!」
男「逃げられた。残念」
少女「おにーさんは超えっちですね」
メイド「超賛成っス! 今すぐ死ぬっス!」
少女「私の全権限を持って反対します」
母「あー……そうね、保留かな?」
男「じゃあ発表します。賛成1、反対1、保留1。それに加え俺の投票、反対に100が加わり、101対1票で、反対に決定しました!」
メイド「なんスかそれ! なんで男さんに100も票があるっスか! 横暴っスよ、おーぼー!」
男「誰かに死ね死ね言われても、最終決定権は自分が持ってるのでね」
メイド「そもそも死ぬって言い出したのは男さんじゃないっスか!」
男「過去は振り返らないタチなんだ」
メイド「ムキーっス!」
男「まあそう怒るな、落ち着け」モミモミ
メイド「にゃあっ!? い、イチイチ揉むなっス!」
少女「私もイチイチ揉んでもらいたいものです」
男「大丈夫。俺が愛しているのは、少女だけだッ!」キリッ モミモミ
メイド「き、決め顔でっ、決め台詞なのにっ、私の胸を揉んでる手は止まってないっス!」
少女「あ、愛している……///」
メイド「お、お嬢様! 明らかに騙されてるっス! 愛してるとか言いながら私のおっぱいを揉んでるっスよ!?」
男「いや、安心しろ、少女。メイドさんのおっぱいに対する感情はただの欲望で、そこに愛はない。俺が愛しているのは……少女だけだッ!」モミモミ
メイド「最悪も最悪っスよぉ!?」
少女「お、おにーさん……」ジーン
メイド「いやいや、いやいやいや! 感動するところなんてひとっかけらもないっスからね!? だってそう言いながらも私の胸を揉んでるっスからね!?」
男「気持ちいいんだ」ムニムニ
メイド「だからって人の胸を揉んでいい理由にはなんないっス! いい加減離れるっス!」
男「ああおっぱいが離れていく」
メイド「まったく……男さんはサイテーっス!」
男「うーん。こんな最低な俺で大丈夫かな?」
男「は、は、は、はひ」ガタガタガタガタ
メイド「男さんの震え方と顔色がヤバイっス!」
母「締めるところは締めるわねぇ……さすがは我が娘ね!」
少女「……大丈夫ですよ、おにーさん? 浮気しなければ大丈夫なんですから。それに、普段の処理はメイドさんが手伝ってくれますし」
メイド「ええっ!?」
男「張本人がええって言ってるぞ」
少女「気のせいです」
男「すげぇな、この娘」
母「まったくね。誰がこんな風に育てたんだか」
男「なるほど」
母「ところで、その処理って私も手伝っていいのよね?」
少女「母様とメイドさんは浮気に入らないので、いいです」
母「やたっ♪ こういうの久しぶりだし、楽しみねー♪ そだ、メイドちゃんと二人がかりでってのもいいわね?」
メイド「勘弁してほしいっス! いや、かなりマジで!」
メイド「いくなあーっス!」
少女「もちろん私も手伝いますよ、おにーさん?」
男「親子丼メイド添えか……いいな、いいな! 最高だな!」
メイド「ちっとも全く全然よくないっス! 奥様、どうにかしてくださいっス!」
母「あー……我が家のメイドになっちゃった時点で諦めな、メイドちゃん?」
メイド「そ、そんなぁ……っス」
男「大丈夫、優しくするよ?」モミモミ
メイド「だから、隙あらば揉むなあっス!」
少女「おにーさんおにーさん、私も揉んでください」クイクイ
母「娘に負けてなるものか! 男さん、微乳とかどう?」
男「Wつるぺたが! ここが桃源郷だったのか!」
メイド「この家の住人全員頭おかしいっス」
おわり
他にも
・幼馴染「…………」クイクイ
・妹「猫薬?」 兄「猫薬」
・犬「人間になりました」 男「そのようですね」
なんか書いてるので、暇でしたら検索してみてください。
乙。
Entry ⇒ 2012.05.03 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
男「親父が小学生の女の子を家に連れ込んできた」
父「―――今日からここで住むんだ」
男(親父……?帰ってきてんのか)
少女「すてきっ!!」
男「……?!」
父「そうか。気に入ってくれてよかった」
男「おい!!親父!!」
父「おお!!な、なんだ起きてたのか……!!」
男「その子、なんだよ!!どこから攫ってきたんだ!!!」
父「この子は……その……」
少女「初めましてお兄ちゃん。今日から妹になる者です」
男「え……?」
男「妹って……」
少女「実は私、孤児で。ずっと施設で生活していたんです」
男「そ、そう」
父「な、なかよくしてやってくれ」
男「……」
少女「パパ、私の部屋は?」
父「二階にある。おい、案内してやってくれ。お前の部屋の隣にある空き部屋だ」
男「俺が?」
少女「よろしく、おにいちゃん」
男「……いいけど」
少女「やった」
少女「へー、ここが私の部屋になるんだー」
男「……ねえ」
少女「なぁに?」
男「俺、親父から君が来るなんて一切聞いてないんだけど」
少女「正式な手続きはまだみたいだから、話してなかっただけじゃない?」
男「それでも……」
少女「私がここに住むのは一ヵ月後だから。4月からはよろしくね?」
男「……」
少女「あれ?私じゃ不満?」
男「君こそ、ずっと施設にいたわりには社交的っていうか」
少女「お兄ちゃんは私に優しくしてくれるって一目でわかったから」
男「そ、そう……」
少女「いっぱい甘えさせてね、お兄ちゃん?」
少女「それじゃあ、またね」
男「う、うん」
父「じゃあ、この子を送ってくるよ」
男「親父、帰ってきたら話があるから」
父「わかってる」
男「……」
少女「お兄ちゃん」
男「なに?」
少女「だーいすきっ」
男「……」
少女「バイバーイ」
父「じゃあ、留守番頼むな」
男「なんだよ。一体……」
男「……」
父「……今日、話そうと思ってたんだ」
男「いきなりすぎるだろ!!」
父「その……すまん」
男「あの子、いつから引き取ろうと思ってたんだ?」
父「一年前ぐらいから」
男「なんでそのときに相談してくれなかったんだよ!!」
父「いや、言えなかったんだ。というか、どういえば納得してくれるかわかんなくて……」
男「あのなぁ!!そんなんだから母さんにも逃げられるんだよ!!」
父「こ、このことはちゃんと母さんにも報告してるし、大丈夫」
男「そういうことはいってない!!」
父「すまん。……でもあの子、結構可愛いだろ?」
男「……」
父「すまん……」
父「その辺りはちゃんとできてる」
男「……」
父「本当だ!!」
男「もういい」
父「嫌なら、母さんのところに引き取ってもらうことになってる」
男「……なら、それでいいじゃん」
父「で、でも、私が引き取りたいんだ!!」
男「……ロリコン」
父「おぅ!?」
男「好きにしろよ。俺は面倒みないからな」
父「も、もちろんだ。全部、私が面倒を見るし、お前にこれ以上迷惑はかけない」
男「ふん」
父「……すまん」
少女「ただいまー!!」
父「はは」
少女「えへへ。パパ、部屋にいってきてもいい?」
父「ああ、いいよ。まだ荷物の整理ができてないけどな」
少女「それなら大丈夫」
男「……」スタスタ
少女「あ、お兄ちゃん。今日からよろしくね」
男「うん……」
少女「ねえねえ、お兄ちゃん。私の部屋の整理手伝ってくれない?」
男「え?なんで?」
少女「ほらほら、はやくぅ」ギュゥゥ
男「おい……」
父「……うんうん。仲良くなってくれるとうれしいなぁ」
男「……」
少女「これは下着だから見ちゃだめだよー?」
男「見ないよ」
少女「でも、ちょっとだけなら……うふっ」
男「……」ゴソゴソ
少女「むー」
男「……ん?これは?」
少女「あ、それ、大事な人形なの」
男「随分と汚れてるけど……」
少女「えへへ。昔からずっと持ってるの」
男「ふーん」
少女「みてみてー。お兄ちゃん、私のパンツー」
男「……」
少女「……あれ?」
少女「ありがと、お兄ちゃん。お礼にお風呂、一緒にはいってあげるね」
男「……じゃあ、部屋に戻る」
少女「お兄ちゃんのお部屋みせてー」
男「なんで?」
少女「いいでしょ?」
男「いや」
少女「おねがい」
男「……」
少女「妹には優しくするべきだと思うの」
男「……妹面すんな」
少女「えー?」
男「ふん」
少女「まあ、無理やり見に行くんだけどね」トコトコ
男「あ、おい!!」
少女「ここがお兄ちゃんの部屋かー」
男「……」
少女「一人っ子って感じね」
男「なんだよ。なんか文句あるのか」
少女「ふーん……ん?この写真……」
男「もういいだろ。出て行ってくれ」
少女「やだー」
男「あのなぁ……」
少女「なに?」
男「この際、はっきり言っておくけど。俺は君の面倒なんてみない」
少女「ガビーン」
男「……」
少女「お姉ちゃん派?」
男「うるさい」
男「おい」
少女「ほーら、女の体を教えてあげるよー」チラッ
男「でてけ!!」
少女「はーい」トコトコ
男「全く……何がお姉ちゃんらしくだよ」
少女「お兄ちゃんっ」
男「ん?」
少女「あいらびゅー」
男「……」
少女「私が必要になったらいつでも呼んでね」
男「早くでてけ」
少女「うん」
男「はぁ……」
男「なんなんだ……あの子……」
男「……ん?」
少女「よっと……」ジュージュー
男「なにやってんだ?」
父「今日は娘が手料理を振舞ってくれるって」
男「料理できんのか……?」
父「ああ。施設で練習していたみたいだ」
男「……」
少女「もうちょっとでできるからねー」
父「おーぅ」
少女「パパー、ビールのおかわりいるー?」
父「いるいるー」
少女「今、もっていくねー」
男「……新しい母さんじゃないよな?」
父「ぶっ!!お、おまえ!!なんてことをいうだ!!ばかもん!!」
男「……いただきます」
父「いただきます」
少女「……」ニコニコ
男「……」モグモグ
少女「どう、お兄ちゃん?美味しい?」
男「まぁまぁ」
少女「やったー!!」
父「うまいなー。すごいじゃないか」
少女「まぁ、施設ではあまりできることがなかったから、これぐらいはね」
父「そっかー」
男「……」
少女「ん?どうかした?」
男「いや……別に」
少女「……」
父「いやー、家事もできる娘はいいなぁー」
男「悪かったな。息子で」
父「別にそういう意味で言ったわけじゃないぞ」
男「ふん……」
父「いやぁ、こうしていられるのが嬉しくてなぁ」
男「……」
父「どうした?」
男「別に」
父「……お前が気にするのも分かるが」
男「何も気にしてない」
父「……」
少女「はい。洗い物終わり。お兄ちゃん、一緒にお風呂はいろっか?」
男「一人で入れ!!」
少女「ひ、ひどい……」
男(明日の講義は……)
トントン
男「はい?」
少女「おにいちゃーん」ソーッ
男「なんだよ?」
少女「みてみてー。ランドセル」
男「……」
少女「どう?かわいい?」フリフリ
男「うんうん」
少女「見てないし」
男「もう子供は寝る時間だろ」
少女「そっかー。一緒に寝る?」
男「おやすみ」
少女「ちぇ……」
男「ん……?」
少女「お兄ちゃん、あさですよー」
男「なんだよ……?」
少女「お兄ちゃんを起こす妹。健気でかわいくなーい?」
男「……」
少女「うっふん」
男「大学、午後からだから」
少女「早起きは三文のとくだよー」ユサユサ
男「……」
少女「朝ごはんはお兄ちゃんの大好きな納豆とキノコのお味噌汁だよー?」
男「なに……?」
少女「ほらほら、早くおきて」
男「ったく……仕方ないな……」
少女「えへへ。一緒にいこーね」ギュゥゥ
少女「気をつけてね、パパ」
父「ああ」
男「いってらっしゃい」
父「お前も、頼むぞ」
男「は?」
少女「お兄ちゃん、学校まで一緒に行ってくれるんでしょ?」
男「はぁ?!」
父「すまん。言い忘れてた」
男「ふざけんな!!」
少女「いえーい。お兄ちゃんと登校だぁ」
男「な……!!」
父「案内してやってくれよ」
男「……くそ」
少女「やった」
少女「ふんふーん」
男「……」
少女「そっかー。この辺りに小学校が」
男「……そういえば、何歳になるの?」
少女「お兄ちゃんとは10歳違い」
男(てことは……6年生……か?)
少女「お兄ちゃん?」
男「なんだ?」
少女「私のこと……嫌い?」
男「嫌いっていうか……」
少女「やっぱり、妹よりお姉ちゃんのほうがよかったの……?」
男「そういう……わけじゃ……」
少女「姉側のシスコンだー」
男「だまれ!!」
男「……親父になにを聞いたかしらないけど、別になんでもない」
少女「私のこと、お姉ちゃんって呼んでもよくってよ?」
男「ただの変態じゃねーか」
少女「よくってよー」
男「じゃあな、ここでいいだろ?」
少女「あぁん。教室まできてよー」
男「なんでだよ!!」
少女「今日は私だけの父兄参観ってことで」
男「ふざけんな」ペシッ
少女「いたっ」
男「……じゃあな」
少女「うん。ありがとう、お兄ちゃん」
男「ふん……」
少女「……」
男「―――てことが春休み中にあってさ」
友「いいなー!!義理の妹、最高じゃん!!」
男「いや……なんか戸惑うだけなんだけど」
友「でも、料理もできて可愛くて……それに血が繋がってない……」
男「……」
友「くぅー!!!その妹、くれ!!」
男「親父に言え」
友「しかし、お前のことをお兄さんと呼ばなくちゃならないのか……」
男「気持ち悪いこというな」
友「俺にはクソデブの姉しかいねーから、本当に羨ましいぜぇ」
男「そっちのほうがいいじゃねーか」
友「姉なんてダメダメ。ほんとに第二の母親って感じで、萌えない」
男「しるか」
男「ただいまー」
少女「おっかえり、お兄ちゃん」
男「また、飯つくってるのか?」
少女「イエース。トンカツだよー。カツどんにしてもよし、そのままご飯と食べてもよし」
男「ふーん」
少女「あと30分ぐらいで出来上がるからね」
男「わかった」
少女「ほらほら、手洗い、うがいはちゃんとしないと、春先に風邪を引く人って意外と多いし」
男「うるさいな」
少女「ダーメ。ちゃんとすること」
男「なんでそんな上からなんだ」
少女「だって、お兄ちゃんはこういう方が好きなんでしょ?」
男「年下にされたら腹が立つ」
少女「むずかしいなぁ」
少女「パパ、はい。ビール」
父「ありがとぅ!こんな娘がもてて、私はしあわせだぁー」ギュゥゥ
少女「調子にのらないで」バシッ
父「……すまん」
男「なあ」
少女「なぁに?」
男「親父と仲がいいけど、施設で出会ったときからそんな感じなのか?」
少女「まさか。初めは誰、このハゲたおっさんは?って感じだったよ」
父「なにぃ?!」
少女「いやだって……」
父「それもそうか……」
少女「でも、話をしているうちにだんだんと仲良くなったの」
父「三ヶ月はかかったな」
男「そんなに引き取りたかったのか?」
男「そりゃあ、まぁ、世間的にはアウトだし」
少女「まぁまぁ。私はここに来れて良かったと思ってるよ?」
男「え?」
少女「お兄ちゃんに会えたから」
男「……」
父「……おかわりくれ!!」
少女「はぁーい。ちょっとまってくださいねー」パタパタ
男「親父……」
父「な、なんだ……?」
男「あいつに俺のこともベラベラ喋ったみたいだな?」
父「いや、だって……現在の家庭の様子は伝えないと、ダメだろ?」
男「そうかもしれないけど。姉ちゃんがいたことまで喋ることはないだろ」
父「何か問題でも?」
男「なんか知らないけど、姉を気取ろうとしてんだよ!!」
男「俺は……」
父「分かってる。お姉ちゃんのことをずっと引き摺っているは」
男「……」
父「すまん」
男「……ごちそうさま」
父「おい」
少女「あれ。もういらないの?」
男「……美味しかった」
少女「そっか。ありがと。また、作るね」
男「……」スタスタ
少女「どうかしたの、パパ?」
父「昔のこと思い出したんだろう」
少女「昔のこと……」
男「……姉ちゃん」
男(もう10年か……)
男(親父と買い物にでかけて……そのとき、交通事故で……)
男「はぁ……」
男(確かにシスコンかもな……)
トントン
男「はい」
少女「おにーちゃーん?」
男「なんだよ」
少女「むふふ……」
男「……?」
少女「添い寝してあげようか?」
男「いらん」
少女「まぁまぁ」
少女「今日は私がお姉ちゃんになってあげるよー」
男「……」
少女「さ、たっぷり甘えなさい」
男「いい加減にしろ。君を姉とは思えないし、妹としても認めてない」
少女「なんと……」
男「もう出て行ってくれ」
少女「そんなぁ。おにいちゃぁん。いいことしよーよ」
男「……」
少女「女の秘密、おしえて、あ げ る」
男「でてけ」
少女「じゃあ、お風呂一緒にはいる?」
男「出てけ」
少女「もう……お兄ちゃんのわからずやー」
男「お前は妹がどういうのかちゃんと勉強したほうがいい」
男「俺はそういう妹は欲しくない」
少女「姉気取りの妹がほしいんじゃないの?」
男「気持ち悪い」
少女「うそー?」
男「ホント」
少女「難しいとしごろだねー」
男「……」
少女「わかりましたー。戻ります」
男「そうしてくれ」
少女「じゃ、お兄ちゃん。だーいすき」
男「はいはい」
少女「ほんとに大好きだからー」
男「おやすみ」
少女「おやすみー」
少女「今日は休日だぞー。どこかに連れて行って欲しいなぁ?」
父「うんうん」
男「……」
少女「パパー、家族でどこかにいこー?」
父「どこがいい?」
少女「富士急」
男「……」
父「そうか。じゃあ、デパートに行こう」
少女「おー!」
父「お前も行くか?」
男「今日は用事があるから」
少女「どうせ、エッチな妄想にふけるんでしょ?」
男「おまえ……!!」
父「よさないか」
男「俺はなぁ……!!」
少女「なによぉ!!」
父「こらこら」
男「とにかく、用事があるから」
少女「嘘つきー。お兄ちゃん、用事があるなんて嘘嘘ー」
男「ぐっ……」
父「なぁ、一度ぐらいいいじゃないか」
男「……」
少女「お兄ちゃんがいかないなら、私もいかないっ!」
男「なら、行かないでいいじゃん」
少女「そういうこじゃないでしょー?」
父「午前中だけでも。な?」
男「……はぁ」
少女「やった」
父「結構、込んでるなぁ」
少女「ほんとだねぇ」
男(なにやってんだか……)
少女「お兄ちゃん、手繋いでおこうね」ギュッ
男「なんで?」
少女「迷子になったら、困るじゃない?」
男「そうだな」
少女「えへへ」
父「どこから見る?」
少女「服をみたいなー」
父「服か。よし」
少女「いえーい」
男「はぁ……」
父「そうだなぁ」
少女「最近の流行って良くわかんないけど……。似合えばいいよねー」
父「うんうん」
男「……」
男(時間かかりそうだし本屋にでもいっとくか)
男「……」スタスタ
少女「―――ねえ、お兄ちゃん、これどう思う?」
少女「って、あれ?おにーちゃん?おにーちゃーん?」
父「なんだ、どこいったんだ?」
少女「……本屋」
父「え?」
少女「ちょっと呼んでくる」
父「あ、おい」
少女「パパはそこで待ってて」
男「新刊は……」
少女「まだ名探偵コナン集めてるの?」
男「おぉ?!―――なんだ、服選びは終わったのか?」
少女「お兄ちゃん!!」
男「静かにしろよ!!」
少女「妹の服選びに協力してくれてもいいんじゃないの?」
男「……」
少女「……」
男「別にいいだろ」
少女「ホント、落ち着きがないんだから」
男「なんで出会って数日の君にそんなことを言われなきゃならないんだ!!」
少女「もういいですー!!その代わりここにいて!!」
男「はいはい」
男(……そういえば、よくわかったな。俺がここにいること)
男「まぁ、どうでもいいか」
男(お、これ面白そう)
男「……」
男(妹モノか……ちょっとなぁ……)
男「他には……」
少女「どーん」
男「おぉ?!」
少女「買ったよ。早く、いこ。パパも待ってるし」
男「あ、ああ」
少女「全く」
男「お前、なんでそんな姉気取りなんだよ」
少女「お兄ちゃんは姉萌え」
男「違う」
少女「うそだー」
少女「どれにするー?」
父「そうだなぁー」
男「……」
少女「ねえねえ、お兄ちゃんはどれにするー?」
男「なんでもいいけど」
少女「またまたー。ブロッコリーが嫌いなくせに」
男「もう食える!!」
少女「あ、そうなの?」
父「マジか」
男「それぐらい伝えとけよ!!」
父「いやー。そんなの知らんし」
男「全く」
少女「へー。食べられるようになったんだ、すごいねー」
男「上から目線やめろ」
父「じゃあ、帰るか」
少女「お手洗いはいいの?」
男「別にいい」
少女「そっか。でも、途中で行きたいっていってもしらないよー?」
男「……やめろ」
少女「なに?」
男「いい加減にしろ」
少女「え?」
父「おい」
男「姉ちゃんは10年前に死んだ。俺はそのときに割り切ったんだ」
少女「……」
男「これ以上、姉を気取るなら本当に怒る」
少女「……ごめんなさい」
父「おい、やめないか」
男「……」
男(本当に姉ちゃんみたいなこといいやがって……)
男(親父も細かいことまで伝えすぎだろ……)
トントン
男「はい?」
少女「おにーちゃん?」
男「なんだよ」
少女「あの、今までごめんね」
男「……」
少女「よかれと思って……」
男「余計な気遣いだからいいよ」
少女「こ、これからちゃんと妹らしく振舞うから!!」
男「……うん」
少女「……それじゃあ、またね」
少女「おにいちゃーん、たべさせてー」スリスリ
男「自分で食えるだろ」
少女「あーん」
男「……」
父「パパがたべさせてあげるよー。ほーら」
少女「……さがってろ」
父「……すまん」
少女「おにいちゃぁん……あーん」
男「……」
少女「じゃあ、私が食べさせてあげるね?はい、あーん」
男「それが君のいう妹らしさか」
少女「可愛いでしょ?うっふん」
男「鬱陶しい」
少女「えぇ……!?」
少女「うぅ……」
父「……」
男「普通にしてろよ」
少女「それじゃあ……また、怒られそうで……」
男「え?」
少女「なんでもない」
父「ふむ……」
男「なんだよ?」
父「やっぱり、このまま黙っていてもギクシャクするだけだな」
少女「パパ!!」
男「は?」
父「やっぱり無理があったんだよ」
少女「でも……!!」
男「何の話だよ?」
男「なんだよ」
少女「パパ……」
父「信じられない話だと思うが……実は……この子……」
男「……」
父「お前の姉だ」
男「……は?」
父「お前はきっと混乱するだけだろうから、黙っていようって思っていたんだが」
男「何言ってんだ?」
少女「……」
男「親父、頭でも打ったのか?」
父「本当だ。この子は10年前に交通事故にあった、お前の姉だ」
男「いやいや」
父「……本当だからな」
男「どうしたんだよ?酔ったのか?」
男「おい」
父「と思われた」
男「え?」
父「実は生きていたんだ。意識が戻らないと診断されたがな」
男「……」
父「そのとき、医者は脳移植を薦めてきた」
男「脳移植……?」
少女「……」
男「それって……」
父「そして手術を行った……。しかし、失敗だった。そこでお前の姉は本当に死んだ」
男「まてよ!あの時、葬式だってしたし!!火葬もしたぞ?!」
少女「もう一度、脳移植をしたの」
男「は?」
父「医者は娘の脳だけを冷凍保存していた。10年後なら脳死者の脳を蘇らせることもできるかもしれないと思ったらしい」
父「私も最初は医者を問いただした。向こうは医学進歩のために協力してほしいといってきたんだ」
男「じゃあ、姉ちゃんの脳だけが別の場所にあったのか?」
父「そういうことだ」
男「……で、最近になって移植したのか」
父「一年前、実験のために娘の脳を使ったらしい。脳死した少女にな」
少女「で、見事に蘇ったの」
男「……」
父「そして少女が目を覚ますと、生前の記憶を持っていた。私の娘のだが」
男「よくわかんないけど」
父「私も良く分からない」
少女「つまり、えっと……別の子の体だけど、私はあなたのお姉ちゃんなの」
男「10年前のままか?」
少女「そのつもり。自分の状況を把握するのにすごく時間がかかったけど」
男「いやいや。なんの冗談だよ」
少女「信じられないと思うけど」
男「……」
父「というわけで、これから仲良く……」
男「そんなこと信じられるわけないだろ」
父「だが、現実にこうして」
男「だけど……」
父「本当のことだ……」
男「な……」
少女「……」
男「部屋に戻る……」
父「だが、これでどうして私がこの子を引き取りたかった分かってくれたはずだ」
男「……」
少女「あの……」
男「一人してくれ」
男「脳死……移植……」カタカタ
男(人格が変わることがある……?記憶が引き継がれる……?)
男(全部、オカルトじゃないか)
男(脳移植してそんなことありえないだろ)
男「……」
男(でも、確かに俺の好きな物を知っていたり、嫌いな物まで……)
男(じゃあ……そうなのか……?)
男(あれが姉ちゃん……?)
男「……そんなバカな、こと」
男「……」
男「……よし」
男(確かめよう)
男「……」トントン
少女「はーい?」ガチャ
男「ちょっと、いいか?」
少女「いいよ」
男「……」
少女「なに?」
男「君は本当に姉なのか?」
少女「うん」
男「俺が小学1年のとき、姉ちゃんといった夏祭りで買ったものは?」
少女「えーと、たこやき……たこやき……たこやき。なんかたこやきばっかり買ってたね」
男「……じゃあ、初めて姉ちゃんと遊んだテレビゲームは?」
少女「ドカポン。それでケンカして一週間ぐらい口きかなかったね」
男「最後に二人でお風呂に入ったのはいつ?」
少女「私が死ぬ前日まで」
少女「信じられた?」
男「……本当、なんだな?」
少女「うん」
男「ごめん。全然信じられない」
少女「だろうね。私も全然信じられなかったよ」
男「姉ちゃん……」
少女「大きくなったね……」
男「……」
少女「さぁ、胸に飛び込んできていいよ?」
男「それは……遠慮しとく」
少女「そっか」
男「なぁ……辛くないの?」
少女「でも、体が変わっただけで。年齢はほぼ一緒だし。まぁ、若干若返ったけど」
男「……」
男「まぁ」
少女「でも、これからはこの姉であり妹でもある私がいるから寂しくないよ」
男「そうだな」
少女「ふふ……お兄ちゃんって呼んだほうがいい?それとも……」
男「呼びやすいほうでいい」
少女「じゃあ、お兄ちゃんにしとくね」
男「……」
少女「あ、気持ち悪いって思ったでしょー?」
男「いや、まぁ……別に」
少女「お姉ちゃんにお兄ちゃんって呼んでもらえるなんて、あんたぐらいじゃないかなー?このこのー」
男「うぜえ……」
男(でも……なんだ……?)
男(どうしても信じられない……)
男(姉ちゃんは……)
男「いや、なんでもない。じゃあ、俺はそろそろ戻る」
少女「まってよー。もっと昔のことを話そうよー」
男「昔のことって」
少女「ほらほら、あんたが小学校三年生のとき怖い映画みてオネショしちゃったときとかー」
男「おい!!それやめろよ!!」
少女「ぷふふ。恥ずかしいよねー」
男「姉ちゃんだって、小学校にあがるまでオネショしてたんだろ!!」
少女「ぶふっ!?」
男「それぐらいは知ってるからな」
少女「わすれろー!!」
男「……あと、俺の漫画全部捨てたときもあったよな」
少女「まー、あれはあんたが全部悪いんだけどね」
男「そうだっけ?」
少女「そうだよー」
男「……」
男「……」トゥルルル
『はい、もしもし?』
男「母さん?」
『あら、どうしたの?』
男「親父から、孤児を引き取った話知ってるよな?」
『勿論。それがどうかしたの?』
男「その孤児が姉ちゃんの人格だって話は聞いてる?」
『ええ。それも聞いたわ』
男「それ、本当の話なのか?」
『どういうこと?』
男「俺、その話が全然信じられないんだけど……」
『私もその子と話して色々なことを聞いたけど、全部知ってたわよ?』
男「……」
父「それじゃあ、行ってくるよ」
少女「行ってらっしゃい、パパー」
父「行ってきます」ニヨニヨ
少女「うふふ」
男「……」
少女「どうしたの?おかわりいる?」
男「姉ちゃん」
少女「なぁに?」
男「……ごめん。なんでもない」
少女「なにー?気持ち悪いなぁー」
男「……それじゃあ、大学に行ってくる」
少女「一緒に出ようよ」
男「今日は朝一であるから」
少女「そっか。うん、行ってらっしゃい」
友「義妹ちゃんとはよろしくやってるのかぁ!?」
男「……なぁ」
友「なんだ?」
男「人間って他人に成りすますことができるもんか?」
友「はぁ?」
男「どうおもう?」
友「なんだよ、突然?」
男「例えば。俺がお前に成りすまして、お前の姉にバレないように生活ができると思うか?」
友「顔でわかるだろ」
男「顔とか関係ない。記憶をそっくりもらっていたら、できるとおもうか?」
友「そりゃ、俺と姉しか知らないことまで知ってるならできるんじゃないか?」
男「親も騙せると思うか?」
友「お前……どうしたんだ?」
男「はっきりいって、気持ち悪い」
男「妹が」
友「ブサイクなの?」
男「いや。可愛い」
友「じゃあ、なんで」
男「俺の知らないことまで知ってる」
友「はい?」
男「漫画を捨てられた記憶にないのに、妹は知っていた」
友「なにいってんの?」
男「わかんねえ」
友「なんだよー?怖いぞ、お前」
男「俺だって怖い」
友「ちょっと、落ち着けよ。詳しい話聞かせてくれ」
男「実は―――」
男「そう」
友「……いやー。それは信じられないな」
男「だろ?」
友「そもそも、その医者もおかしい。百歩譲って脳を冷凍保存しようとしたにしろ、そんなもん親父さんに一報入れるだろ」
男「……」
友「それにそんな女の子が目を覚ましたら、ニュースになるはずだ。医学会が公に発表しない理由がないし」
男「そうだな」
友「マスコミだってそんな話きいたら取材するだろうし」
男「じゃあ……あいつ、誰だ?」
友「姉の記憶があるけど、別人なんじゃないの?」
男「それって赤の他人ってことか?」
友「少なくともお前の亡くなった姉ではないんじゃないと思うけど、俺は」
男「なんだよ……それ……」
友「親父さんに詳しい話を聞いたほうがよくないか?」
少女「よっと。じゃあ、お風呂に入ってこようかな」
父「一緒に―――」
少女「あ?」
父「すまん……」
少女「ふんふーん」トコトコ
父「娘は反抗期か……」
男「親父」
父「ん?」
男「あの子、本当に姉ちゃんなのか?」
父「勿論だ。どうしてそんな嘘を吐く必要がある?」
男「脳移植って本当にしたのか?」
父「え?」
男「親父、やっぱり信じられない。あの子は姉ちゃんじゃない気がする」
父「なにを……」
父「そりゃ、お前はお姉ちゃんっ子だったからな。私が心配するぐらいに」
男「だからさ、姉ちゃんのことならなんでも知っているつもりなんだ」
父「……」
男「仕草も口調も遊び道具も」
父「それがどうした?」
男「殆ど一緒だけど違和感がある」
父「違和感なんて……」
男「親父も色々、アイツに質問したんだよな?」
父「そりゃあする。本当に自分の娘なのか確かめるためにな」
男「親父と姉ちゃんしか知らないことも知ってたか?」
父「ああ。昔、運動会で二人三脚することになってこっそり二人だけで練習したこともしっていた」
男「……なあ、親父。ちょっとアイツに聞いて欲しいことがあるんだけど」
父「なにをだ?」
男「誰も経験したことがないこと」
男「だって」
父「母さんも一緒に確認したんだ。間違いようがないだろう」
男「でも!!昔のことを覚えすぎてるし!!」
父「おい」
男「……悪い」
父「どうしたんだ?」
男「部屋に戻る」
父「分かった」
男「……」
男(そうだな。考えてみれば、こんな嘘をつく理由がない)
男(いくらなんでも考えすぎだよな)
男「……」
男「はぁ……」
男「……」ガチャ
男(最低だとは思うけど)
男(アイツの私物になにか……)ゴソゴソ
男(いや。昔の物なんて殆ど捨てられてるよな)
男(引越しもしたし、思い出の品なんて……)
男「……あ」
男「この人形……」
男「そうだ。これ……なんだ?」
男「姉ちゃん、こんなの持ってなかっただろ……」
男「この汚れた人形……親父に見せてみれば―――」
ガチャ
男「……!!」
少女「なにしてるの?」
男「え……と……」
男「……姉ちゃん、この人形いつからもってた?」
少女「さぁ?それ、ずっと前から持ってたから」
男「俺、こんなの見たことないぞ」
少女「……それは、あれだよ。あんたに見せたことがないだけで」
男「あんなにずっと一緒にいて、見たことがない姉ちゃん私物なんて……」
少女「返して」
男「お前、誰だ?」
少女「は?私はあんたの姉で、この家の長女だって」
男「脳移植されて、そんな体になってるんだよな?」
少女「そうだよ?まだ信じてないの?」
男「正直」
少女「じゃあ、なんでも質問して。あんたと私にしかわからないことも覚えてるから」
男「教えてもらったの間違いじゃないよな?」
少女「……誰に?」
少女「誰に教えてもらったっていうの?」
男「わから……ない、けど」
少女「……」
男「とにかく、お前は姉ちゃんじゃない……」
少女「まだいうの、お兄ちゃん?」
男「だって……」
少女「あんたが5歳のとき、初めて食べたポテトチップスはうすしお味で、その味にびっくりしておもしろい顔になってたね」
男「……」
少女「あんたが6歳のとき、初めてランドセルをみて、頭を中に突っ込んでたね」
男「知らない。なんだそれ」
少女「それはあんたが覚えてないだけだって。私は覚えてるよ?」
男「……」
少女「お兄ちゃん?顔が怖いよ?」
男「勝手に入って悪かった。部屋に戻るよ……」
男(誰だ……アイツ……)
男(姉ちゃんじゃない……絶対に違う……)
男(そうだ……!!)
男「……」トゥルル
『もしもし?』
男「母さん!!」
『どうかしたの?』
男「病院とか覚えてるか?」
『病院?』
男「姉ちゃんが手術したって病院」
『県立病院だけど』
男「なんて先生が執刀したんだ?」
『えっと……確か……』
男「そうだ……思い出してきた」
男(あのとき母さんに連れられてあの県立病院にいった)
男(俺は脳移植なんて話は一切聞かなかった)
男(当時は姉ちゃんが亡くなったことがショックで他のことにまで気が回らなかったけど……今は違う)
男(親父……脳移植手術なんていつしたんだよ……)
男「いた……!!こいつか……」
男「脳医学の権威……?」
男「10年前とは立場が違うのか……?」
男「こいつに話を聞かないと」
男「でも、簡単に会えるかな?」
男「……」
男「とにかく会ってみないとわからないな」
男(俺の姉ちゃんはどこにいったんだよ……)
男「で、どうにかしてその医者と会えないかなって」
友「アポとれば?」
男「電話したら、いける?」
友「とりあえずやってみろよ」
男「そうだな……」
友「……」
男「バイト面接の電話より緊張する」
友「へたれめ」
男「……」ピッ
男「……」トゥルルル
友「……」
男「もしもし、あの。是非、お会いしたい人がいるんですけど」
友「……」
男「……」
トントン
男「は、はい?」
少女「お兄ちゃん、ご飯できたよ」
男「ああ、今行く」
少女「……どうかした?」
男「え?」
少女「昨日から変だよ?」
男「別になにも」
少女「私はここの長女で、貴方の姉」
男「……」
少女「それは事実だから」
男「分かってるよ」
少女「……」
男「はぁー……」
友「なんで俺まで」
男「暇だったろ?」
友「別にいいけど」
看護師「お待たせしました。こちらにどうぞ」
男「あ、はい」
友「美人だなぁー」
男「はいはい」
看護師「こちらの部屋でお待ちください」
男「わかりました」
友「ありがとうございます」
看護師「それでは、失礼します」
男「どんな奴だろう……」
友「女医さんなんだろ?美人かなー?」
男「あ、どうも」
友「(すっげー、美人)」
男「(だまれ)」
女医「……それでお話とは?」
男「あの一年前に脳移植手術された経験がありますよね?県立病院で」
女医「ええ。私の初めての脳移植だったから」
男「俺の姉でした」
女医「なるほど。でも、あれは手術ミスではありません」
男「それは分かってます。問題はそのあとです」
女医「……」
男「最近、俺の姉が蘇りました。どういうことでしょうか?」
女医「脳移植したら、不思議な現象がおこった。それだけ」
友「でも、そんなのオカルトじゃあ」
女医「人体のことは殆ど分かっていない。まだまだ謎があるのです。という答えではダメですか?」
女医「体は別物だけど、中身は貴方のお姉さん。確かに最初は困惑されるでしょうが……」
友「あの!」
女医「なんですか?」
友「どうしてそのことを公に発表しないんですか?」
女医「プライバシー保護のためです」
友「違います」
女医「え?」
友「冷凍保存した脳を移植したら意識が戻ったってところです」
女医「だから……」
友「それってすごいことだと思うんですよ。でも、ニュースにもなってないし、BMJとかランセットにも記載されてませんでした」
男「なんだそれ?」
友「医学雑誌」
女医「日本での施術なのでそういった雑誌には載りません」
友「そんなわけないでしょうに」
友「医学会では発表できないことをしたんじゃないですか?」
女医「そろそろ診察が始まりますので、これで」
男「待ってください!!今、俺の家に姉ちゃんの記憶を持ってるのかどうかよくわからない奴がいるんです!!」
女医「……」
男「そいつが誰なのか教えてください」
女医「貴方のお姉さん」
男「そんなわけ!!」
女医「では、訊ねます。貴方の両親に来てもらい、いくつかの記憶がきちんと共有できているか確認してもらいました」
男「それは、教えただけじゃ」
女医「誰が?どのようにして?」
男「それは……」
女医「それでは失礼します」
男「……くそ」
友「……」
男「はぁ……もうなんだよ……」
友「なぁ?」
男「なんだ?」
友「お前も良く知らない記憶まで持ってるんだよな、義妹さん」
男「そう」
友「でも、カマをかけたら記憶にないことも「ある」って言ったんだよな」
男「漫画を全部捨てられた経験なんてないからな」
友「姉の記憶をそっくり貰ってたら、そんなこと言わないよな?」
男「そうだろうな。姉ちゃんの記憶をそのまま持ってるなら、そんなの記憶にないって言うだろうし」
友「……あとお前の見たことのない人形を持ってたんだよな?」
男「ああ。あれだけは見た事がなかった。しかも姉ちゃんが大事にしてたやつなら、絶対に見てる」
友「……」
男「誰なんだ……あいつ……」
友「思ったんだけど。義妹さんを姉か別人かで考えるから混乱するんじゃないか?」
友「例えばだけど、義妹さんには二種類以上の人格があるとか」
男「は?」
友「例えばな。例えば。俺とお前が合体したとするだろ?」
男「気持ち悪いぞ」
友「まあ、聞けよ。で、体は全くの別人になった。その状態で、どちらかの家族にあう」
男「……」
友「家族は本人確認のために思い出を共有できているか訊ねる」
男「……それって」
友「どっちの記憶も持ってるから家族は本人だって思う、だろ?」
男「そんなの本人が一番混乱するだろ」
友「そういう可能性もあるんじゃないかなーって、思っただけ」
男(いや……実際、混乱してたのか……?親父の顔を最初は思い出せなかったみたいだし……)
友「あの女医さんがなんかしたのは間違いないと思うけどなぁ」
男「……」
友「俺も気になるからちょっと女医さんのこと調べてみる」
男「いいのか?」
友「なんか面白いじゃん」
男「お前がいてくれて助かった」
友「なんのなんの」
男「でも、これからどうしたらいいと思う?」
友「そうだなぁ。義妹さんに色々聞いてみたらどうだ?」
男「色々?」
友「どんどん記憶にあることないことぶつけてみろ。なんか分かってくるかもしれない」
男「分かった」
友「じゃあな」
男「ありがとう」
男(色々か……)
男「……」トントン
少女「はーい?」ガチャ
男「よう」
少女「どうしたの?お兄ちゃん?」
男「少し話そうかなーって」
少女「私は貴方の姉で、ここの長女だよ……?」
男「それは分かってる」
少女「ほんとに?」
男「うん」
少女「ならいいけど」
男(色々……よし)
男「姉さん、俺が卒園するときどんな服着てたか覚えてる?」
少女「確か、紺色のスーツに赤いネクタイをしてたかな」
男「はは……よく覚えてるなぁ」
男「じゃあ、そのあとお寿司を食べに行ったよな?」
少女「えっと、行った行った」
男「なに食べたっけ?」
少女「たまごとエビと……」
男「あれ、マクドナルドだっけ?」
少女「え?えっと……ううん、お寿司であってる」
男「そっか」
少女「でも、マクドナルドも美味しかったよね」
男「……ああ。うん」
少女「えへへ。またいこっか?」
男「うん、行きたいな。そういえばデパートの屋上とかも小さいときはよく連れて行ってもらったよな」
少女「うん。そこでよくたこやき食べたよね」
男「……え?姉ちゃん、何言ってんだ?たこやきは夏祭りに買っただけで、デパートではいつもソフトクリームだっただろ?」
少女「え?そ、そうだっけ?ううん……でも、確か……いつもたこやき食べてたよ……?」
少女「ちょっと待って。確かにソフトクリームも食べてたよ……?でも、貴方とはいつもたこやきだった」
男「……そっか」
少女「もう。びっくりさせないで」
男「……じゃあ、そのあと観覧車に乗ったのも勿論覚えてるよな?」
少女「貴方と観覧車……?」
男「うん」
少女「乗った……」
男「誰と?」
少女「誰って……」
男「誰と乗ったの?あのデパート観覧車も屋上にお店もないけど」
少女「は!?」
男「この前、一緒にデパートいったとき確認しなかったの?」
少女「ま、まって……記憶が混乱してるみたい」
男「そう……」
男「姉ちゃん、いっぱいしてるな。でも、俺はそんなにしてない」
少女「私は貴方の姉で、ここの長女でしょ?」
男「……姉ちゃん、もしかしてそれ……」
少女「そうでしょ?」
男「俺に言ってたんじゃなくて、自分に言い聞かせてたのか……?」
少女「貴方とは毎日お風呂に入ってた」
男「うん」
少女「初めて遊んだゲームはドカポン……」
男「うん」
少女「あれ……ドンキーコングでも遊んだよね?」
男「それは知らない」
少女「私はここの長女。パパの顔も知ってる。ママの顔も知ってる。貴方の顔も知ってる……」
男「姉ちゃん」
少女「私は貴方の姉……お姉ちゃんなんだから……」
男「おい……」
少女「ううん。私、私は私……。ここの長女で姉……そう……」
男「大丈夫か?」
少女「お姉ちゃんの長女……末っ子じゃない……私にお兄ちゃんなんていない……」
男「あ……」
少女「ううん。お兄ちゃんはいた……いたから、弟の貴方にも抵抗なくお兄ちゃんって呼べた」
男「……」
少女「あれ……あれれ……?なに……なんで……こんなにいっぱい、思い出があるんだろう……?」
男「あの……」
少女「おにいちゃん……私……おねえちゃんだよね……?」
男「それは……分からない……」
少女「えぇ……?なんで……?私のお兄ちゃんのくせに……弟のくせに……」
男「えっと……」
少女「ごめんなさい……もう寝るから……出て行って……」
少女「……ほんと?」
男「俺との思い出とか親父の思い出、いっぱいあるんだろ?」
少女「あるよ……あるよ……」
男「なら、俺の姉ちゃんだ」
少女「そっか……そうだよね……うん……」
男「おやすみ」
少女「おやすみ、お兄ちゃん」
男「……」
男(やっぱり姉ちゃんじゃない)
男(それどころか一人の人間でもないぞ)
男(これ、親父に言うべきか……?)
男(……いや、ダメだ。問い詰ることになったら、大変なことになる)
男「……」
男(俺もあの女医のこと調べてみよう……)
男「……」カタカタ
ピリリリ
男「もしもし?」
友『よう。なんか進展あったか?』
男「とりあえず姉ちゃんじゃないことははっきりした」
友『問い詰めたのか?』
男「おかげでパニックになった」
友『やっぱり』
男「なんかわかったのか?」
友『あの女医。そうとうマッドみたいだ』
男「え?」
友『まず、あの人の卒論がエグい』
男「なにをテーマにしたんだ?」
友『二種類以上の記憶野接合で発生する人体への影響について、だ』
友『勿論、問題になってこれは研究テーマとしては認められなかったみたいだ』
男「いや、なんだよ、そのテーマ」
友『要は脳移植じゃなくて、脳の結合を試みたんだろうな』
男「脳の結合!?」
友『お前、見たことないか?頭がくっついて生まれた双子とか』
男「ある」
友『弟が握ったものを兄が感じとったり、兄が見たものを弟が記憶したりしてるらしい』
男「それで?」
友『あの女医さんはそんな脳を人工的に作ろうとしたかったみたいだ。幾人もの脳を一つにしたら、様々な知識や経験が一気に手に入るかもしれないからな』
男「じゃあ、今うちにいるのは……」
友『そのプロトタイプかもしれない』
男「……」
友『一時期、脳死者の脳をかき集めてたらしいし、間違いないと思う』
男「なんだよ……それ……」
男「これからどうすればいいんだ……?」
友『そうだよな。義妹さんが何なのか分かったところで、どうしようもないよな』
男「……もう一回、話にいこう」
友『え?』
男「とにかく、このことを話そう」
友『否定されて終わるぞ』
男「でも……」
友『なら、義妹さんも連れて行ったらどうだ?もうパニック障害みたいなの起こってるんだろ?』
男「ああ」
友『アンタの実験は失敗だーって言うしかないかもな』
男「一緒に行ってくれるか?」
友『じゃあ、義妹さん紹介してくれ』
男「化け物なのに?」
友『可愛いは正義なんだぜ』
少女「お兄ちゃん、今日はどこ行くの?」
男「ちょっとな」
少女「ふーん」
男(変に刺激しなけりゃ、普通だ。きっと姉ちゃんの記憶を引っ張り出して自我を保ってるんだろうな)
友「おーい」
男「おそいぞ」
友「悪い悪い。―――こんにちは、噂をきいてるよ」
少女「だ、だれ……?」
男「俺の友達。いい奴だけど、近づいちゃダメだ」
少女「わ、わかった……」
友「ひでー」
男「……行くか」
友「おう」
少女「……?」
看護師「では、こちらでお待ちください」
男「はい」
少女「ねえ、ここ……」
男「覚えてるのか?」
少女「うん……私、ずっとここにいたから」
友「そっか。一年ぐらいいたんだっけ?」
少女「うん。多分」
友「なんかされた?」
少女「良く覚えてない」
男「覚えてないほうがいいと思う」
友「だな」
少女「なんの話?」
女医「―――お待たせしました」
男「こんにちは」
女医「……何か?」
男「この子に見覚えはありますよね?」
女医「当然です。私が脳移植を―――」
男「違う」
女医「……」
友「卒論、読みました。すごいですね」
女医「貴方、医学生だったのですか?」
友「いえ。普通に文系です」
女医「じゃあ、理解なんてできなかったのでは?」
友「いやー、貴女の卒論はすごいですよ。だって、医学とか全然しらない俺でも、アンタの脳がいかれるのは理解できましたから」
女医「……私の崇高な研究を三流大学生が読み解けるわけありません」
男「読み解けなくてもいい。あんたは異常。それが分かれば十分だ」
女医「……」
少女「お兄ちゃん……?」
男「俺の姉ちゃんの脳だけじゃなくて、何人の脳を弄ったんだ?」
女医「モルモットの死骸をいちいち数える研究員がいると思いますか?」
男「……!!!」ガタッ
友「おい!!」
少女「え……?え……?」
友「……貴女、脳の結合の研究ずっと続けてきたんですか?」
女医「小学生のときに思いついたことだから、もう30年近いかもしれません」
男「なんでこんなことができるんだ……?」
女医「人間は脳を全て使うことができない」
男「は?」
女医「体重のたった2%の重さしかない脳を人間は殆ど使うことができない。本来なら一瞬だけ見たものでも長期記憶として保持できるのに」
友「……」
女医「私はどうしたら100%脳を使えるか、考えました。そして行き着いた結果が、脳の結合なのです」
少女「先生……?」
女医「なら、その人たちの脳のいいところを結合してしまえば、完璧な脳が出来上がりますよね?」
男「アンタ……」
友「じゃあ……記憶野だけを結合させたわけじゃないんですか?」
女医「それはただの通過点にすぎませんでした。文字通り、全ての脳を結合してこそ私の研究は完成する」
女医「彼女には記念すべき1作目の脳を提供したに過ぎません。記憶野が発達したのも、研究途中での副産物です」
少女「ど、どういうことですか……?」
女医「貴女は完璧な人間というわけです」
友「完璧って……」
女医「記憶にすぐれ、思考力も、インパルスも……全部、人間の頂点です」
男「お前……」
友「この子は誰なんですか?被験者ってことですか?」
女医「この子の肉体は孤児でした。私は結婚もしているので簡単に養子縁組が成立しました」
男「な……!?」
友「養子を弄ったのか……?」
男「親父か……!!」
友「なんのためにコイツの親父さんを?」
女医「貴方のお姉さんの記憶が一番強かったのですよ。主人格といってもいいかもしれません」
少女「先生……なにを……?」
女医「だから貴方の親御さんに引き取ってもらいました。結合した脳はちゃんと機能し、意識まで保っていたのですから」
男「……」
女医「しかし、ここまで貴方が来たということは違和感を覚えたのでしょうね」
男「ああ……」
女医「所詮は試作品でしたか。そのうちボロがでるとは思っていました」
友「アンタなぁ……」
女医「それで、用件はなんでしょうか?その子を引き取って欲しいという相談でしょうか?」
男「……」
友「……」
少女「なに……なんなの……?おにいちゃん……どういうこと……?」
女医「え?元に?冗談でしょう?」
男「おまえ!!」グッ
女医「くっ……!」
友「やめろ!!」
少女「やめてお兄ちゃん!!」
男「元に戻せ。この子を元に戻せよ!!」
女医「ふっ。これだから文系は。偉大な進歩を倫理観だけで排斥しようとするんですね」
男「なんだと……!!」
女医「彼女は人類の可能性。進化した人間。新人類」
友「……」
少女「せんせい……」
女医「私ならきっとヒトを導ける。そう。進化という希望に」
男「……アンタの奇天烈な文言はどうでもいい。とにかくこの子を元に戻せ」
女医「いいのですか?お姉さんが完全にこの世から死んでしまうということですよ?」
男「……っ」
女医「そんなこと無理ですよね?だって、彼女は間違いなく貴方の姉でもあるのですから」
友「それは……」
女医「それに彼女を元に戻すことは不可能です。―――だって、その子の脳どこかにいっちゃいましたから」
男「……!!」ガタッ
女医「……?!」
友「やめろって」ガシッ
男「離せ……」
友「義妹さんが泣きそうだぞ?」
少女「おにい、ちゃん……」
女医「もういいですか?診察の時間ですので」
友「待ってください。―――ふざけんな!!」ドガッ!
女医「ぎっ……!??」
男「お前……!?」
女医「だ、だれかー!!たすけてー!!!」
男「おい!!やばいって!!」
少女「うぅ……」
友「元に戻せよ……!!」
女医「だれかー!!!」
看護師「ど、どうされ―――ひっ!?」
女医「警備員を!!あと警察!!」
看護師「は、はい!!」
男「おい!!逃げるぞ!!」
友「元に戻せ」
女医「だ、だから……もう脳が―――」
友「このやろ!!」ドガッ!
女医「ぐっ!?」
警備員「―――やめろ!!!」
友「はなせ!!くそがぁ!!」
女医「はぁ……はぁ……」
男「……」
少女「お、おにいちゃん……」
男「……帰ったら全部話す」
少女「え……?」
男「……」スタスタ
女医「な……!?」
警備員「君……!?」
男「元に戻せよ!!」ドガッ!!
女医「ぎゃぁ!?」
男「このやろう!!!」
少女「お兄ちゃん!!やめてー!!!」
警備員「取り押さえろ!!はやく!!」
警官「―――それであの女医さんを殴ったの?」
男「そうです」
警官「……」
男「俺、反省はしてません」
警官「立派な傷害罪だけど」
男「はい」
警官「……君のお友達も同じ事をいっているそうだ」
男「だと思います」
警官「どうしたいの?」
男「裁判してください」
警官「そりゃなるだろうけど」
男「そこで今、話したこと全部いいます。それでどうなるか分からないけど、誰かに知って欲しいから」
警官「……そう」
男「お願いします」
男「ただいま」
父「……」
男「親父、ごめん」
父「おかえり」
男「姉ちゃんは?」
父「もう寝た」
男「話したい事があるんだ」
父「なんでも聞く」
男「怒らないのか?」
父「話をきいてから決める」
男「あっそ」
父「とりあえず風呂はいってこい」
男「うん」
男「……」
父「その話、どうするんだ?」
男「とりあえず俺の友達が色んなところにリークしてみるって」
父「それであの医者を追放できても」
男「うん。何の意味もないだろうな」
父「どうするんだ?」
男「どうしたらいい?」
父「私に聞くな」
男「そうだよなぁ」
父「お前はあの子をどうしたい?」
男「……」
父「このままでいいのか?」
男「とりあえず、妹の寝顔でもみてくる」
父「そうか」
男「……」
少女「……おにいちゃん?」
男「ただいま」
少女「おかえり」
男「……今から全部話す」
少女「うん」
男「……でも、先にこれだけは言っとくな。君は俺の姉であり、妹だ」
少女「そうなの……?」
男「ああ。それは間違いない」
少女「そっか……よかった……」
男「……」
少女「最近、もしかしたら私はお兄ちゃんのお姉ちゃんじゃないかもって思ってて……」
男「そんなことない」
少女「ありがとう……」
男「じゃあ、行って来る」
少女「お兄ちゃん……」
男「すぐ戻ってくるから」
少女「私は……」
男「俺の妹で姉」
少女「……」
男「それさえ分かってればいいから」
少女「うん」
父「いくぞ」
男「おう」
少女「お兄ちゃん!!」
男「ん?」
少女「大好きだから!!」
男「俺も」
『すいません。非人道的な研究を長年続けていたことに対して何か』
女医『何もありません』
『例の裁判で貴女の研究が公にされて医学会では―――』
男「おはよう」
父「おはよう」
男「またこのニュースか」
父「無断で脳死者から脳を摘出していたこともあったらしいからな」
男「いい薬だ」
父「じゃあ、そろそろ行って来る」
男「行ってらっしゃい」
『数多くの人命を奪ったことに対してなにか』
女医『私は人間の進化のために―――』
男「俺もそろそろ行くかな」
友「よっ」
男「謹慎やっととけたな」
友「ま、あれだけのことして退学にならなかったのはラッキーだな」
男「まぁな」
友「で、義妹さんは?」
男「まだ」
友「また、弄くられてるんじゃないだろうな?」
男「しばらく入院して様子を見るってだけだし。俺、毎日見舞いにいってるけど、変わった様子はねえよ」
友「本当か?」
男「ただ、一個だけ。脳への負担が大きいらしい。長くは生きられないだろうって」
友「また脳移植するのか?」
男「いいや。それは多分、アイツが一番嫌がるだろうし」
友「俺たちのやったこと意味あったのか?」
男「あの女医の研究が潰せただけでも意味はあったんじゃないか?」
男「よー」
少女「お兄ちゃん」
男「もうすぐ退院できるんだってな」
少女「うん」
男「よかったな」
少女「またお兄ちゃんと一緒に過ごせるね」
男「俺も姉ちゃんがいないと寂しいな」
少女「もう、甘えん坊なんだから」
男「帰ったら何する?」
少女「たこやき一緒に食べたいな」
男「それいいな」
少女「うん。あの夏祭りで食べたたこやき、美味しかったもんね」
男「そうだね、姉ちゃん」
少女「えへへ」
男「どうした?」
少女「一緒に観覧車に乗ったの、私のお兄ちゃんだった」
男「……」
少女「とっても背が高くて……大好きだった」
男「また乗りたい?」
少女「お兄ちゃんと乗りたいな」
男「観覧車も乗ろうな」
少女「うん……。あとね」
男「なんだ?」
少女「あの人形……。私がお母さんにもらったやつみたい」
男「お母さん?」
少女「うん……。一緒にいれないからって、あれをくれたの」
男「そうなんだ。姉ちゃんは愛されてるな」
少女「色んな人に優しくされたけど、私はお兄ちゃんが一番好きだよ?」
少女「ありがとう……」
男「なんだ、眠いのか?」
少女「うん」
男「姉ちゃん?」
少女「んー?」
男「またゲームしような?」
少女「うん」
男「おやすみ……」
少女「うん……」
男「……」
少女「……」
少女「おにいちゃーん!!あーさー!!」
男「分かってるよ……うっせーなぁ」
少女「なにぉ!?ちゃんと起こしてるんだから文句いうな!!」
男「はいはい」
父「遅刻するぞ、どっちも」
少女「ほら、早く食べる!!」
男「入院してたほうが大人しくて可愛かったのに」
少女「あーん?」
父「こらこら。やめろ」
父(もう少しだけこの光景を見ておきたいな……。姿は違えど、この二人は……)
弟「姉ちゃんは口うるさいんだよ!!それぐらい言われなくてもわかってるって!!」
姉「弟のくせに生意気!!もう朝ごはん作ってあげないんだからね!!」
FIN
やっと寝れる
いい話です
Entry ⇒ 2012.04.29 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
姉「じゃ、風呂でも入ってくれば?」男「そうするよ、おやすみ」 1
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1334814587/
男「あ、あれ?……え?ご、ごめんなさい……?」
金髪女「……さっさと入ってよ、冷めるでしょ」
男「えーっとごめんなさい……入ってたんですね、時間とかで分けたりとか」
男(姉さんちゃんと言っといてよ……)
金髪「そんな面倒なことしてるわけないじゃん、新入生?」
男「あ、新入生というか……5号室に入って来ました男です」
金髪「2号室の金髪だよ、よろしくぅっ」
男(全然普通なんだけど……こういうもんなの?)
金髪「だから寒いって、早くドア閉めてくれー」
男「あ、はい」
金髪「……何にも聞いてないの?」
金髪「風呂が共同だって」
男「いや、聞いてましたけど……共同っても男女は……」
金髪「男女共同なんだけど」
男「え?いやそういう場合って、普通混浴って言うんじゃ」
金髪「さぁ?家主がそう言ってんだし」わしゃわしゃ
男「あ、あの浴槽浸かっていいですか」
金髪「いいけど、ちんこちゃんと洗っとくんだよ」
男「は、はい」
じゃばじゃば
ざぷ…………ふぅ
男「あ、あの、よくあるんですか?」
金髪「何が?」
男「そ、その男女が一緒に入ることって……」
男「すみません、よく知らずに入っちゃって」
金髪「ん、まぁ、久々にいいもの見せてもらったし気にしない気にしない」
男(いいもんって)
金髪「……ちんこだよ、ちんこ、立派なのつけてるじゃん」
男(見られてた)
金髪「あんたもこっちの見たっしょ?ま、おあいこってことで」ぷるるん
男「は、はぁ」
金髪「何、気の抜けた反応。あんた、貧乳好きなの?」
男「いや、そんなことはないです」
金髪「そりゃよかった」さぱぁ
金髪「よし、じゃ新入りってことで、ちょいっと背中頼むよ」
金髪「先輩の背中流して頂戴って言ってるんだけど」
男「その……ちょっと難しいというか……」
金髪「難しいもくそもないじゃん、ちょっとタオル泡立てて」
金髪「擦るだけなんだから。ちょっとくらいなら手が滑っても許すゾ」
男「すみません、浴槽からでれません……」
金髪「ん……ああ、勃ってるだけじゃん」
男「の、覗きこまないでくださいよ」
金髪「いや、このカラダ見せて勃ってなかったらむしろ落ち込むし」
男「……」
金髪「ま、とにかく頼んだよっ」とんとん
男「で、では、洗わせて頂きます」ソロソロ
ごし……ごし
金髪「もっと勢い良くやってくれると気持ちいいんだけど」
男「ふぅ……では……いきますよ」
ごしごしごしごし
金髪「お、お、お、お、いいねえ」ぷるんぷるん
男(揺れてる……胸がたぷんたぷんと揺れてる)
金髪「その辺りちょっと強めによろしく」
男「はい」
男(ぶっきらぼうだけど、体格は小さい人だな)
男「あ」
金髪「お、おおぅ……やるねえほんとにタッチしてくるとは」
男「ご、ごめんなさい……わざとじゃなくて」
金髪「いいっていいって減らない減らない」
金髪「代わりにあんたのちんこでも触らせてもらっちゃおうか?」ハハ
男「は、はい?」
金髪「よっ」ぷらん
男「おふ」
男(マジで袋触ってきた)
金髪「あんた、バッキバキに勃ってんじゃん」
金髪「女に免疫ないんだねー」
金髪「この下宿で大丈夫?」
男「え?」
金髪「他の住人も全員女の子だよ」
男「え?え?」
金髪「まぁ、そんなこと聞いてるはずないよね」
男「初耳です……」
金髪「まぁ……頑張れ若人よ……」ヒヒヒ
金髪「女嫌いってわけでもないみたいだし」ニヤニヤ
男「今日のこと黙っておいてもらえませんか」
金髪「何?一緒に風呂入ったこと?おっぱい見て勃起したこと?」
金髪「いやぁ、無理でしょ、あたし口軽いし」
男「ダメですか……」
金髪「別に知られて恥ずかしいもんでもないっしょ?」
金髪「新入りは立派なもんつけてたって言っとくよ」
男「あ、あああ……」
金髪「じゃ、そろそろ流して?浸かるから」
男「流します」ざぱー
金髪「いいねえ、後輩ができるって」
ざぷん
金髪「洗い場空いたし、ささ、どうぞどうぞ」
金髪「今更隠したって、勃ってるもんはどうしようもないんだぞー」
男「じゃあ見ないでもらえませんか?」
金髪「そんな勿体無い~」
男「うぅ……」
金髪「抜きたい?」
男「……他の部屋の人も金髪さんみたいに下品な人ばかりなんですか……」シクシク
金髪「言うに事欠いて、下品って……まぁ、皆、奥手なんじゃ?」
金髪「あんた好みの連中かもね」
金髪「ま、胸が一番でかいのはあたしだけどな」
金髪「その割に、なに、それ?スカイツリー好きとか?」ハハハハ
男「お、大人の女の人とお風呂なんて入ったことがないからです」
金髪「この胸見て興奮してるんでしょ?ほれほれ」
男「……そうだと思います」ごしごし
金髪「そういや、そのタオル……あたしの体洗ったままじゃね?」
男「……」
金髪「うひゃー、あたしの柔肌に触れたタオルだよ」
男「……気持ち悪いとかなら一度洗いますけど」
金髪「いーよ、いーよ、泡が勿体無い、この下宿選ぶくらいだから金ないんでしょ?」
男「じゃ、このまま使います」
男「嫌です」
金髪「けちー、先輩が見たいって言ってんだけど」
男「そういうのはもっと親しい人に頼んでください」
金髪「いやいやいや、こんなの頼める奴、後輩以外いないよー」
男「後輩なら頼めるってどういう理屈ですか」
金髪「いや、あたしも先輩には色々頼まれてたから」
男「……無理ですよ」
金髪「じゃ、手伝うし」ひょい
男「あ」
ぴゅ
男「……」
金髪「怒った?」
男「少し」
金髪「気持よくなかった?」
男「……」
金髪「よくわかんなかった?」
男「……」
金髪「やっぱ怒ってる?」
男「はい」
金髪「ごめんごめん、皆には早いってこと内緒にしてあーげーる」
金髪「……えー」
男「金髪さん、やりすぎです……」
金髪「ごめんねー……えーっと、お、おっぱい触ってもいいよ」
男「いいです」
金髪「あ、抜いた後だから……」タハハ
男「もう、いいです」
金髪「ごめんごめん、ちょっと珍しくて面白かったんだってー」
男「分かりました。でも、もうやめてください」
金髪「その……ピクピクして苦しそうだし……」にぎ
男「あぅ」
金髪「全部出したほうがいいんだって聞いたことが……」にゅるにゅる
男「あ、やめ、て……く、ださい」
金髪「こうすりゃいいんだよね」にゅろにゅろ
金髪「へー、これって……随分、ネバネバな感じなんだ……」
男「感触、知らなかっ……たんです……か?」
金髪「い、いや、他の奴に比べてってことだよ、他よりネバってるって意味っ」
男「……」
金髪「気持ちいいの?」しゅるにゅる
金髪「そうか」にゅるにゅる
にゅるにゅるうるるるるうっ
男「う」
金髪「また出たっ」ウハ
にゅっぽにゅっぽ
男「お」
ぴゅる、ぴゅる……る……
男「打ち止め……っす」
金髪「あ、そうなの」
金髪「…………ふーん……」
金髪「ちょい待ち」ペロ
男「……うわっ」
金髪「しょっぺ」
ざー
男「……」ざー
金髪「……」
男「……」
金髪「先……上がるね」ざぱー
金髪「またーねー」
がらがらがら
男(下宿で変な人さっきの人くらいだよね……)
男(オナニーしかしたことなかった僕が……女の人にしごかれて)
男(射精するなんて……思い出しただけで全然収まらない……)
男「そういや、どんな人が住んでるんだろう」
男「挨拶行った時だれも居なかったもんな」
がらがらがら
眼鏡女「誰?」
男「あ、あ、5号室に越してきた男です」
眼鏡「1号室の眼鏡だよ、よろしく」
男「す、すみません」
眼鏡「終わったらちゃんと流して欲しいね」
男「……はい」
男(ちゃんと流したつもりだったのに……はぁ、初日から風呂で抜く奴って思われた)
ざぱ……
ちゃぽ
眼鏡「……まだしている途中だったかい?」
男「あ、いえ、その、これはもう終わったのでもうすぐ収まります」
男(うぉぃぃ、早く収まれマイサンっ)
眼鏡「ふぅ……」
男(この子、全然見えてないんじゃ……湯気で真っ白だし)チラチラ
男「僕が入るまで……誰も男の人は居なかったんですか?」
眼鏡「そうだな、ボクの知る限りは居ないかなぁ……昔は居たんだろうね」
男「その割には……男の人が風呂にいても……皆さん平気ですね」
眼鏡「皆さん?」
男「あ、さ、さっきまで金髪さんが……」
眼鏡「あ、ああ、それで」
男「い、いや、誤解です、別に金髪さんと……ごにょごにょ……したわけではなく」
眼鏡「そうか、まぁ、流石にセックスしていたら声で気づくか」
男「あ……皆さん、そのようにあけすけといいますかなんといいますか」
眼鏡「たまに家主と入るからな」
眼鏡「日頃安い家賃で助かってるから背中を流したりしている」
眼鏡「家主は君のように勃起はしないけど」
男「すみません」
眼鏡「襲わんでくれ、これでボクも処女なんだ」
男「襲いません」
眼鏡「助かるよ」
男「……ふぅ」ざぱー
男「あ、あのー」
眼鏡「あ、洗い場空いたかい」ざー
男「ど、どうぞ」
男「あの、背中を流したりとかは要りますか?」
眼鏡「いや、間に合っているよ」
眼鏡「そのようないきり立ったものを背中に当てられてもどうしていいか困るし」
男「あ、そんな意味ではなく……」
眼鏡「気遣いだけもらっておくということで」
男(大きくはないけど形の良いおっぱいだなぁ)
男(くそ、また上がれなくなるぞ)
男(毛は薄目だなぁ……丸見えだよ……)
男(端正な顔つきだから嫌味じゃなくて似合ってるけどね)
眼鏡「……」わしゃわしゃわしゃ
男(眼鏡かけたまま洗ってるよ……眼鏡痛むのになぁ)
男(お、流石に収まってきた……かな?)
男「じゃあ、お先に上がります」ざばー
眼鏡「ん」
がらがらがら
男(このペースで行けば早く着替えないと次の人がきちゃうよ)
男(抜いて賢者になった今となっては早く部屋に帰りたいっ)
男(とんでもない下宿に来てしまった)
男(しかもどうも誤解されてるみたいだし……)
男(まぁ、しばらくすれば分かるか)
トントン
女「夜分恐れ入ります」
男「あ、は、はい」
ガチャ
男「はい、何でしょう」
黒髪女「あの、金髪さんから新しい方が入られたと伺って挨拶にきました」
男「いえいえ、すみません、こちらから伺わなくては行けないところを」
黒髪「4号室の黒髪と申します、よろしくお願いします」
男(スラっとした体格に長いストレートの黒髪……清楚な香り……)
ごそごそ
男「つまらない物ですが、引越しのご挨拶に」
黒髪「まぁ、お気づかいなく……」
男「男と申します」
黒髪「珍しいですね、この付近で男の方が下宿されるなんて」
男「はぁ、そうらしいですね、金髪さんにも言われました」
男「越してくるまで全然知らなくて……」
黒髪「何かあれば隣まで言ってくださいね」
男「はい、よろしくお願いします」
男「いやぁ……そんな安心できるような男じゃないですよ」
黒髪「では、夜も遅いのでこれで失礼します」
男「わざわざ有り難うございました」ぺこり
がちゃん
男(何だか隣は普通の人でよかったなぁ)
男(黒髪さんもお風呂入るのかな……)
男(……なんだろう……あの人はエロいこと想像できないや)
男(……マイサンも落ち着いてきたことだし寝るか……)
zzzzz
ちゅんちゅん
トントン
トントン
男(ん?)
女「……ません」
男「おわっ、すみません」
がちゃ
男「はい、なんでしょう」
小柄女「……あのぅ……朝からすみません……」
男「あ、もしかして3号室の方ですか」
小「……はぃ……」
男「昨日越してきました男です、挨拶が遅れて申し訳ないです」
男(道理で昨日は誰も居ないはずだ)
小「男さんも、一緒の……新入生なんですね……よ、よろしくお願いします」
男「あ、いや……」
小「あ……すみません、先輩なんですか!……てっきり昨日って聞いて」
小「私ったら……すみませんすみません……あのこれ挨拶に……」
小「よ、よろしくお願い致します……」タタタタ
男(挨拶の品を渡して顔を赤らめて行ってしまった……)
男(僕の挨拶の品を渡す間もなく……)
男(しかし新入生?……中学生かと思う体型だったけど……)
男(あの子と風呂一緒になったら入っただけで犯罪者だろ……)
1号室:眼鏡。余り動じないタイプ。標準体型。2年以上と推測。
2号室:金髪。金髪だが日本人だと思う。巨乳。性に積極的?2年以上と推測。
3号室:小柄。中学生とも思える容姿と体型。内気なのかな?1年生。
4号室:黒髪。凄く普通のお姉さんタイプ。清楚系。2年以上と推測。
5号室:俺。五代くんではない。
6号室:未確認
男(6号室は特に確認するまでもない……)
男(というのも、ここを紹介してくれた姉さんだからだ)
男(昨夜は、酒盛りに付き合わされて潰れてたから)
男(今日は二日酔いだろう……)
男(週末だけど、学生の前で教員がそんな姿晒すってどうなんだろう)
男「ちょっと……様子見ておくか、午後に家電見てもらう約束だし」
トントン
男「姉さん……大丈夫?」
「……」
男「入るよ?」
かちゃり
男「う、酒くせえ」
姉「zzzz……ひくっ……お、よぅ、おはー」
男「二日酔いじゃねぇ……これはまだ酔っぱらいだ」
男「姉さん姉さん……いつまで飲んでたんだよ」
姉「……zzz……5じ……ぃ……」
男「一人で?」
姉「寝てたら……えーっと、金髪が来てな……朝まで飲み直し」
姉「お前、あいつの手でドッピューって出したんやって」
男「……」
姉「いやぁ、生々しい描写やったなぁ……酒が進んだっちゅーの」
男「誰かに伝わるのは諦めてたけど……早すぎだろ」
姉「おい、男っ、姉さんにも成長確認させんかーい、うひひひ」
ごそごそ
男「いいからそろそろ起きてよ……ちょ」
姉「ちんこ見たら起きるぅー」
ずいっ
男「ちょっと、やめて、や、やめて」
ポポロンッ
男「はいはい、10年以上前でしょうそれ」
姉「そうか、覚えとるか……よしよし、可愛いちんこめ」
姉「今度は姉さんも楽しませてくれよな」
男「ちょ、ちょ」
姉「おいおい、金髪は抱けても姉さんは抱けへんってのかー」
姉「お姉ちゃんと結婚するーって言うとったやろー」
男「昨日何話したああああ、金髪さん抱いたとか……そんなの噂でも流さないでよ」
姉「えー、金髪ちゃんの目を見とったら絶対ヤッた目しとったで?」
男「酔っぱらいの目が信用できるかっ」
がたっ
小「え……」
小「し、しちゅれいしましたー」ペコリ
タタタタタタ
男「ズボンもパンツも脱がされて……姉さんと向い合ってる様子を見てあの反応」
男「絶対誤解されてる」
姉「あはははははは、……で、あの子誰なん?」
男「笑い事じゃないって……3号室に越してきた小柄さんだって」
姉「中学生かと思った」
姉「手出すなよロリコン」
男「人をロリコン呼ばわりして……って、あの子、大学生でしょ」
姉「でも、見た目中学生やん」
姉「……ってことは、おぉ……合法ロリってやつか」
姉「仕方なぃわな、男にかて嗜好があるんやもんな……」
男「おーい」
姉「でも、姉さんも忘れんときやー、あんたにツバつけとるんやでー」
男「はいはい」
姉「出かけるの午後やったな?もう一眠りするわ」
男「また起こしに来るよ」
トントン
姉「おう、入りぃ」
ガチャ
男「……お、おぅ」
姉「ん、どないした?」
男「いや、姉さんも出かけるときはちゃんと化粧するんだなって」
男(正直、朝とのギャップでドキッとした)
姉「ん、ん?惚れ直したかぁ?」ぐりぐり
男「いててて、そういうとこは姉さんのままなんだよな」
姉「ほほぅ、するとやっぱりこの装いにくらくらーっと来とるわけな」
男「まぁ、可愛いんじゃない」
姉「さ、さんきゅ……まっすぐ来ると思わんかったし……何か照れるわ」クラクラー
男(絶対僕で遊んでるよなぁ)
男「自分でいうセリフじゃないですよ、それ」
男「落とした僕のこと何度も振っておいて」
姉「あははは、だから言うてたやん、大人になったらなって、今ならオールオッケーやで」
男「幼い僕の心はふかーく傷ついたんです」フン
姉「学生のくせにませとんのがあーかーんーのー」
男「真剣だったんですからね」
姉「まぁまぁまぁ、それは私もふかーく反省しとるから……」
男「まぁ、いいです、じゃあ出かけましょうか」
姉「おう、ついてこーい」
男「姉さん……今、どういうこと教えてるんだっけ」
姉「ん、量子力学IIとIII。教授がめんどくさいってこっちに全部投げてきてんのよ」
男(な、なんか難しそうな……って、姉さん……もしかして凄い人?)
姉「去年まではテストの採点だけやったのに……」
姉「助教が教える科目かっちゅーの」
男「……僕大丈夫かな」
姉「あははは、大丈夫大丈夫、うちは物理科やけど、男は情報やろ?」
姉「全然違うって、うちなんて教授が未だにFORTRAN信者で困るし」
男「そうなんだ」
姉「しかしまぁ、立派になったなぁ、パソコンエロゲにしか使ってへんと思ってたわ」
男「酷い……」
男(でも動機がそこだったのは否定出来ないのかも……)
男「こ、ここが……聖地秋葉原」
姉「はい、ちゃっちゃと行くでー、今日は家電やからな」
男「あ、ちょ、ちょっとあのメイドさんからチラシを……」
ずるずるずる
姉「もー、隣に可愛い女の子おんのに目移りしてどうすんの」
男「別腹でんがな」
げしっ
姉「似非やめいっ」
男「何か今日、素面なのに、き、きつい……」
男(……んん?……あ、あれ?あそこ歩いてるの黒髪さ……ん……じゃないか?)
姉「ん?なんで黒髪がここにおんねん、会ったばかりで早速妄想出しとんかいな」
姉「ほんま、エロい頭しとるなぁ」コツン
男(錯覚か……まぁ妄想ならもっと凄いことさせてるはずなんだけどな……)
姉「黒髪の趣味は、古典文学研究だぞ工学部のくせに」
姉「古典文学と秋葉原ってどうつながんねん」
姉「もしおったら……」ニヤリ
姉「それこそエロゲやな……どないして落とすんやろなぁ」ニヤニヤ
男「はぁ、僕が黒髪さん落としても姉さんはいいんですね」
姉「そんなん妨害するに決まっとるやーん、私の男やでー」
男「く、妨害だけは嬉々としてきそうだ」
男「しません」
姉「ええー、男が私以外とセックスなんてしたら寂しいやーん」
男(くそ、この罠にかかって何度告白させられて何度振られたかっ)
男(悔しいことに、それでも姉さんが諦めきれない僕の負けなんだけど!)
男(こうなったら童貞くらいは別の子で卒業してやる……)
男(くらいに思っとかないと……一生童貞のまま終わりそうだしな……)
男(僕以外の告白も全部断ってるらしいし……まさか……レズ……?)
男(にしても、男の僕に下ネタで絡んでくるし……うーん、わかんない)
男(……でも最後には絶対姉さんから僕に告白させてやる)ブツブツ
姉「おい、何ぶつぶつ入ってしもてんねん」
男(下宿の皆さんには悪いですけど……全員姉さんを嫉妬させる道具にさせてもらいます)
姉「何にやにやしてんねんって、気持ち悪いやろ」
男「いつつつ」
姉「それ、またいつもの黒い妄想始めてたんやろ、黒髪含めて全員落としてやる、とか」
男「……う」
姉「当たりかいな、ほんまそういうとこ何とかしたほうがええで」
姉「妄想だけやったらええけど、下宿の子に手出して泣かしたら許さんで?」
姉「一応、、お目付け役みたいな立場やし」
姉「手出すんやったら姉さんだけにしときや」
男「え……じゃ、じゃあ、姉さん僕と付き合ってください」
姉「あかんあかん、そんな簡単に攻略できるわけないやろ、セーブ地点からやり直せ」
男(くそ、また騙されて振られた……)
男「あ、あの……それは」
姉「ほな、冷蔵庫はコレ買おか、兄ちゃんこれなんぼになるん?」
……
男「あ、ちょっと姉さん」
姉「あれとセットで買うから、5万にしときって」
……
男「掃除機……」
姉「あの下宿で、掃除機はウルサイから要らん、と。ほな次」
……
男「え?」
姉「要るコレ?電動オナホ」
姉「ふーん、動いてんのん見てみたいんやけどな」
男(く、使わせて、しかも見る気か)
……
姉「なぁ、PS3買うといてーな」
男「自分の財布から出してください」
姉「えー、一緒にやろ、な?」
男「設置場所が姉さんの部屋になりそうなので結構です」
姉「けち、そんなんじゃ黒髪落ちんぞ」
男「関係ありません」
姉「ふぅ……これで大体買い終わっただろ」
男「ねぇ、何か洗濯機ちょっと大きくないですか?」
姉「そら、私のも洗濯してもらうんやから大きくないとあかんやろ」
男「……まさか冷蔵庫も」
姉「ビール沢山入らんと困るやろ?」
男「姉さんがね」
姉「大は小を兼ねるっていうやん」
男「姉さん稼いでるんだから自分で買えばいいのに」
姉「えー、隣の部屋にある方が便利やん」
男「飲んだ片付けは自分でしてくださいね」
姉「よし、部屋で飲んでもええってお墨付き出た、と」
男(プライベートが侵食される予感……はぁ)
黒髪「うふふふ……新作新作……わーぉ、今回も際どい構図たまんないっす」
黒髪友「あんたそれ全部行くの」
黒髪「仕方ないじゃない……全部いいんだもん」
黒友「ホントお兄ちゃんモノ好きだねあんた」
黒髪「リアルに居ないからこそあこがれるのですぞ」
姉「えー、めんどくさーい」
男「ええい、元はと言えば姉さんが誤解のもとを作ったんでしょうが」
男「姉さんが説明しないと誤解が解けないでしょう」
姉「別にええやん、それくらい……ちょっと軟派な人なんやなぁ、くらいやって」
男「あの反応、絶対違うと思います」
トントン
小「はーい?」
男「すみません、男ですけど……ちょっとお話が……」
小「は、はいっ」
男「あ、姉も居ます……6号室の」
小「……あのぅ……何でしょう」
男(部屋着だったのか、ラフなTシャツと短パン……ホントに中学生なんじゃ)
姉「……小柄ちゃんはホントは何歳なの?」
小「え、18ですけど…………」
小「……よく、子供料金と間違ってないか指摘されることがあります……わかってます」
小「あ、姉さんは……男さんの……」
男「あ、この人、僕の従姉なんだよね」
小「え、じゃあ、従兄弟同士でお付き合いを」
男「いやいやいや、あれは姉さんの悪戯でね……よくからかわれてるんだよ」
男「何か誤解されてそうだったから姉さんから説明を」
男「ちょ、そういう意味じゃないって」
小「……は、はい、分かりました」
姉「お、こいつ狙ってんの?」
小「あ、あ、いえ、その、お二人の関係がわかりましたという意味で」
姉「男、振られたみたいやぞ」
男「まだ始まってもない恋を無理やり失恋させられただけです」
男「ほんとごめんね、小柄ちゃん……朝はびっくりさせちゃって」
小「すみません、こちらも挨拶もちゃんとできずに……」
小「改めまして姉さん、今度越してきました小柄です」
小「理学部の物理です……」
男「え」
姉「お、ほぅ……新学期楽しみにしとるからね~、じゃまたねー」
男「え、え」
ずるずる
小「……姉さんってどこの学部の先輩なんだろう?」
……
男「ちょ、ちょ、何で身分隠してんの」
姉「えー、だって面白いやーん」
姉「何か他に基準あったっけ?」
男「何言っても言い負かされるからそれでいいです」
姉「なんじゃいな、おいっ、こっちは構えとったのに」
バタン
金髪「あれ、姉さん出かけてたんですか……それに男」
姉「そや、金髪、今日もうちの部屋来て飲もうや……こいつ肴に」
男「嫌です」
姉「却下」
姉「眼鏡も呼んどいて」
姉「来そうやったら呼んどいて、こいつと3号室の新歓パーティーってことで」
金髪「了解」
姉「ほな、今から酒買い出しにいってくるわ、男ついてきーや」
男「へいへい……」
……
姉「さてさて、皆さんよくお集まりになりました」
姉「私、本下宿お目付け役、姉でございまーす」
姉「……拍手拍手」
パチパチ
姉「その歓迎を兼ねてパーティーを開催させていただきましたっ」
パチ……パチ
金髪「姉さん、長い長い」
姉「お目付け役の有難い話ちゃんときかんかいっ」
男「姉さん……もう、さっきから飲んで出来上ちゃってるんです……」
眼鏡「乾杯」
かんぱーい、カツンっ
姉「おぉぃっ」ビシッ
姉「早いがなっ眼鏡」
眼鏡「もっと飲んでもいいんじゃないかな?」
姉「すまん、年度末と頭は忙しいんや」
金髪「先生も大変ですねぇ」
小「えっ?」
姉「えへへへ」
小「姉さん……って先生なんですか?」
姉「じゃじゃーん、実はそうでしたぁ、どう?どう?学生に見えた?」
小「ええ、私てっきり先輩の方だとばかり」
姉「まあ先輩でもあるけどな、私の専攻物理」
小「は、はい頑張ります……」
金髪「まぁ、あんたも逆に学生に見えんけどな」
小「……はぁ……もう慣れました」
黒髪「可愛らしくていいと思いますよ、年をとって見えるよりいいじゃないですか」
男「み、皆さん、何年生なんですか?」
金髪「おぅおぅ、女性に年齢尋ねるってどういう教育されてきたの?」
男「え?……いやそういう意味じゃ……」
眼鏡「ボクは2年……年齢は19歳。別に隠しちゃいない」
黒髪「4年です。学部は経済学部。年齢は……秘密ってことに」ニコリ
男(え、ストレートじゃないのかな……)
金髪「あたしは2年。年齢は20歳。1浪だよ」
姉「えっとぅ、あたしは~1年?年齢は18歳ですっ」キャピ
姉「ふんっ」どふっ
男「あがっ……」
黒髪「そう言えば、男さんと姉さんって親しげですけど……」
小「何でもお二人従兄弟同士だそうですよ」
眼鏡「ふーん」
黒髪「あら、そうなんですか」
金髪「昨日聞いてビックリしたって、まさか風呂で……」
男「ちょちょちょちょちょおおおおおおおっとまったあああああ」
姉「黙らせる」がしっ
男「もごもごもご!!!!」
金髪「あまりにね、股間が苦しそうだから楽にしてあげたいなぁって」
金髪「ちょいって触ってあげたらね……」チラチラ
小「……」ゴクリ
金髪「ほんと一瞬、一瞬でね、どっぱーってそりゃ凄い勢いで噴出」
金髪「もうこれでもかーってくらい、ドクドク出しまくるわけ」
黒髪「……///」
眼鏡「ボクが入った時もまだ勃起してたぞ」
金髪「で、そんな話、姉さんにしたら従弟だっていうでしょ」
金髪「びっくりしたよねー」
小「あ、あの、よく飲み込めないんですけどそもそもどうして一緒にお風呂に……」
姉「あらら、また説明ちゃんとしてへんかったんかいな」
姉「あのね、ここのお風呂って共同でしょ、男女別とちゃうから」
小「うそっ……」
姉「時間で分けるのも不経済やからね」
黒髪「無駄が無くて素晴らしい仕組みだよね」
小「……ぇええええー……黒髪さんは立派な体ですけど……私とか……」
姉「なんとタイミングが良かったら裸の男を堪能できるチャンスっ」
姉「お申込みは今すぐ!」
男「あのー……」
男「僕、なるべく皆さんと時間ずらすように気をつけますので……」
姉「おい、お前それでも男か?エロゲならこれで1本できる美味しい状況だぞ」
男「気まずいでしょっ、さっきの金髪さんの話みたいなのとかっ」
姉「何を今更、なぁ?」
眼鏡「まぁ、生理現象だから仕方ないかと」
眼鏡「ただ、ボクにはかけないで貰えるかい?それでいいよ」
姉「おいおい、オナネタにするまでは許すって許可でたぞ男っ、よかったなぁ」
金髪「何か食べさせてくれたら、また抜いてあげてもいいかなぁ……」ニヤニヤ
男「姉さん……何か話が変な方向に向かってます」
黒髪「お、男さんが嫌がってるんですから」
黒髪「私もお風呂の時間ずらすように気をつけます」
男「へ」
姉「黒髪、こいつ今明らかに残念そうな顔したで」
男(く、目ざとい)
男(僕だってちょっと気になる位には健康な男なんだよー)
黒髪「……///」
男(くぅっ、頬を染めた黒髪さん綺麗で可愛いなぁ)
姉「小柄ちゃん、襲われちゃうかもしれないからお風呂は気をつけてね」
小「……え、えぇっ」ビク
男「襲いませんって」
姉「襲わないから一緒にお風呂入ってって言っとるな、うん」
男「いやあの、そうじゃなく」
眼鏡「ロリコン」
小「ち、違いますって、あのちゃんと大人ですから」
姉「しかし、大人かどうかはジャッジが必要!」
姉「男より先に私と一緒にはーいーろー」
小「は、はい」
もぞもぞ
姉「……うん」
男「おわっ」
姉「何や、しっかり勃っとるやん、そらまあしゃあないわなぁ」
男「僕が変態って印象しかつかないじゃないですか」
姉「えー、そうやん、でも姉さんそんな変態男も結構好きやでぇ」
男「もう騙されません」
小「やっぱり」
男「やっぱりじゃないですよ、この人、僕をその気にさせて」
男「僕がその気になって告白したら断るって遊びしてるんですよ」
男「何回ひっかかったか」
姉「……隣に男が越してきてテンション上って調子乗っちゃっただけなんやもん」
姉「男はうちのこと嫌いなん?」ウルウル
男「いや別に嫌いじゃないけど」
姉「じゃあ、好き?」ウルウル
男「まぁ、好きだけども」
姉「ふふーん、そうなんや、へー、私にまだ惚れてんねやぁ」グフフ
金髪「男、また振られた?」
男「くっそぉおおおお」
眼鏡「哀れだな」
小「……男さんって姉さんが好きなんですね」
金髪「そうみたい」
黒髪「気を落とさないでね、きっと良い人が居ますよ」
男(それって自分じゃないって遠回しの拒絶じゃ……)
姉「皆、同情してくれてんぞ、優しいなぁおい」バンバン
男「くぅ……」
男「無理ですって……全員に言って回られるんでしょ、どうせ……」
金髪「黙っとくオプションももう1食つけてくれたら考えるんだけどな」
男「……」
眼鏡「真剣に悩んでるな」
男「……うぅぅ……もうどうにでもしてください……イメージボロボロだぁ」
姉「ええやん、後から正体バレて失望されるよりは」
姉「男子っちゅうのは多かれ少なかれエロい訳やんか?」
姉「そやから男がちょっと人よりエロいっちゅうのも個性のうちやって」
小「そう言えば、男さんてどこの学科なんですか?」
姉「のエロゲ専攻」ボソ
男「違います」
金髪「まぁまぁ、今更エロゲくらいでは……」
金髪「昨日の風呂の方がよっぽど強烈だよ?」
黒髪「エロゲ……って、男の人って皆やるものなんですか」
眼鏡「珍しい人が食いついてきたね」
眼鏡「ボクの経験から言えば、ほぼ全員やるみたいだよ」
黒髪「そうなんですか……」へ~
男「強い断定ですけど、多分全員ではないと……」
眼鏡「少なくともボクの付き合った相手は今まで全員やっていたよ」
小「へー」
眼鏡「25人」
男「え?」
眼鏡「ボクが付き合ったことのある人数としては多すぎるかな?」
男「い、いや」
男(ボクっ子大人気じゃんっ)
姉「多すぎるー、断固多すぎるー、先生にも分けんかーい」ブーブー
姉「あ、告白されて3分後には振ってたとかはノーカウントやで」
眼鏡「肉体関係は無いけど、お互いの家に行くくらいの交際はしていたよ」
黒髪「え、25人で、しょ……」
男(黒髪さん……今処女って言おうとして止めたよね)
男(意外に食いついてるなぁ、ムッツリ系なのかな)
眼鏡「結婚すると決めた相手以外には許す気にはなれませんでしたから」
金髪「眼鏡えらーい、よしよし」ナデナデ
金髪「小柄ちゃんも初めてを許す相手には気をつけるんだよ」
小「は、はいっ」
男(まぁ、当たり前だろうけど小柄ちゃんも処女か……)
男(ほんとハーレムエロゲみたいになってきたよ)
姉「黒髪も気を付けや……あんたムッツリっぽいから」
姉「興味だけで流されそうやし」
黒髪「そ、そ、そ、そんな……十分気をつけますよ」アタフタ
男(ふむ、黒髪さんはムッツリで処女確定、と)
男「そ、そこは掴まない……で」
姉「あんたがずっと勃たせたままなんが悪いんやろ」
姉「女の子に囲まれて勃起させとるってエロいこと考えとるに決まっとる」
男「そ、そんなぁ」
男(当たっちゃいるんだけど……)
小「……」ジー
男(あぁ、小柄ちゃんに見つめられて更に固くなる……僕ロリコンですか?)
金髪「そういや、前にチラッと聞いた姉さんの初めてってどんな感じだったです?」
男(え?)
金髪「話してる途中に姉さん寝ちゃったじゃないですか」
姉「え、え、アレはいいって、無理やりみたいな感じだったし」
姉「ま、まぁ、悪くは思ってなかったっちゅうか、えへへへ」カァァ
男(え、いつ、だれと……え、えぇっ)
眼鏡「男……ショック受けすぎ」
姉「別にそいつとは付き合ったりとかしてないし……1回だけだし……ね」
金髪「ヤリ逃げじゃないっすか、酷い奴がいますね」
姉「いや、相手は悪くないんちゃうかなぁ、私が悪いんだって……」
黒髪「一途ですね……姉さん……ちょっといいと思います」
男(処女厨じゃないけど……何か頭がクラクラする……)
ドサッ
男「つ、つかれた……」
男(悔しい……姉さんの初めてが……知らない奴に無理やりだなんて)
男(くそっ、くそっ、俺の童貞……姉さんに残してたんだぞ……)
男(ま、まぁ、卒業するあては無かったけども、だ)
男(嫌われてる訳じゃないから一縷の望みを持ってたのに……)
男(はぁ、ネタでもいいからって姉さんに童貞もらってもらおうかなぁ)
男(歓迎会の後半は覚えてない……18で酒が飲めない小柄ちゃんに)
男(ひたすら慰められていたような気もする……)
男(ロリコンじゃないけど小柄ちゃんは可愛くて優しくていいよね……はぁ)
……
zzzz
んがっ
男(あれ?いつの間にか寝てたか……)
男(布団に涙の跡ついてるよ……うわぁ……自分がキモい……)
男(んー、この時間なら大丈夫……かな?……風呂に行こう)
……
がらがら
男「よかった……誰もいない」
男「ついさっき、からかわれたばかりで一緒に入るとか気まずすぎるよ」
男「そりゃ、嬉しいけども……こっちも見られちゃう訳で」
男「下心バレルのダメージでかい……って、もう大ダメージ食らってるか……」
ざぶん
男「酔いが覚めて思い返したら……」
1号室:眼鏡。処女
2号室:金髪。不明
3号室:小柄。処女
4号室:黒髪。処女
5号室:僕。処女///
6号室:従姉。非処女
男「か……エロゲなら金髪も処女だよなぁ……」
男「姉さんだけ非処女……か……姉さんもいい年だもんな……」
男「そりゃ僕の知らない姉さんも沢山あるか……」
男「分かってるけど……ちくしょー、NTR属性ないんだぞぉぉ……」
男「本気で凹む……」
がらがら
小「あ、どなたか入ってますよね、すみません小柄です」
小「ちょっとコンタクト外してるんで見えないんですよ」
男「す、すみません、入ってます」
小「え、男……さん……わ、きゃ……」ギュ
男(体を隠したけど、見ちゃいました……)
男(若干非合法の匂いがするロリ体型だと思います……)
男(胸はちょっと膨らんでるだけで……あ、でも乳首はしっかり大人だった)
男(下は下で……毛が……無い……少年漫画だから描いてないとかじゃない)
男(薄くはあるのかもしれないけど湯気ではっきりわからないよ)
男(というところを一瞬で見てしまった……)
ざー
ざぽんっ
男(え?一緒の浴槽に入って来た)
小「ご、ごめんなさい……狭いですよね……」
小「恥ずかしくて……お湯に入っちゃいました……」
男「み、見てないから」
小「ホントですか?」
男「いや、完全に見てないわけじゃないけど見ないようにしたから……」
男(嘘っす)
小「……夜中だから人居ないと油断してました……」ポッ
男「僕も油断してたよ……」
小「もともと、ずーっと眼鏡だったんですけど……大学入るとき」
小「思い切ってコンタクトにしてみたんです」
小「大人っぽく見えるかなぁって」
小「でも、コンタクト無いと全然見えなくって……」
小「これくらい近づかないと男さんってわかんないんです」グイ
男(……うぉっ!)
小「ご、ごめんなさい……急に近づいて……」
男「ドキドキしちゃったよ……あはは」
小「私まだ眼鏡じゃない自分の顔に慣れてなくて……」
小「変じゃないですか……この顔?……見られるの恥ずかしいんです」
小「と?」
男「小柄ちゃんて凄く可愛い顔だと思うよ、僕の主観だけど」
小「わ、え、あ、ありがとうございます……そんなに褒められたの初めてです……///」
男「眼鏡でも可愛いとは思うけどなぁ」
男(多分眼鏡の方が可愛いと思うぞ、主観的にはねっ)
小「ほ、褒めすぎですっ、男さんは姉さん一筋なんじゃないんですかっ」
男「あはは……何回も振られてるんだよねぇ……」
男「はぐらかされて酒の肴にされて……」
小「男さん、格好良いとは言いきれないかもしれませんけど何だか……えーっと」
俺も入居希望で空待ちなんだけど
男(ははは、安全パイ扱いだわ、これ)
小「絶対、姉さんも振り向く日が来ますよ」
男「そんな事言ってー、ダメだったら、小柄ちゃん僕を引き取ってよー」
小「え……」
男「あ、ご、ごめんなさい、ちょっと調子乗りました……」
小「いえ、そんな事言われたことがなくて……あのー私で良ければ」
男(あれ?凄くいい子……?)
小「で、でも、友達からで、あの、あういうことは……」
小「……よ、よく知り合ってから……姉さんも言ってたように」ポッ
男(そこまで想像広げるなんて……僕より気が早いよっ)
男「今でも友達にはなれると思うよ、これからよろしくね」
小「そうですね、よろしくです」ペコリ
男「……えーっと、そろそろさ……体洗うのにあがりたいんだけど」
小「そ、そっち向いてます」クルッ
ざぱー
男「ありがとう」
小「は、はいっ」カクカク
男(ぎこちなくなっちゃってる……申し訳ないなぁ)
男(とは言え……こんな準備万端な凶器見せられないもんなぁ)ハハッ
男「手早く洗います」
小「ご、ごゆっくり」カクカク
男「……」わしゃわしゃわしゃ
小「……」
男「……」わしゃわしゃわしゃ
男(な、なんだかプレッシャー…………?)
小「……」チラ
男(小柄ちゃん……こっち盗み見てる……?)
男(男の裸なんて見る機会ないもんね……興味くらいあるか)
男(気づかないフリしといて上げよう)
男「……あと頭洗って終わりですんで」ごしごしごし
小「……はい」チラチラチラ
男(見られてると思うと収まりがつかない……)
男(視線的に……股間に注目されてる気がする)
男(そしてそう思うことで更にフィードバックが……はは、ロリコンだぜ俺)
男「……」わさわさわさわさ
小「……」
ざーざー
男「ふぅ、洗い終わりました、交代しましょうか?」
小「……」
小「……」ポー
男「小柄ちゃん、小柄ちゃん」
小「……」ポ~
男「やべぇ、湯あたりか!」
男「どど、どうしよう、とりあえず、あげなきゃ」
よいせっ
ずるずる
男「脱衣所の床なら冷たくて……おーい、小柄ちゃん」
小「……ふー……ふー……」
男(涼しくしないとダメだよな)
ばっさばっさ
男(バスタオルで扇いでみたけどこれでいいのかな?)
男(よ、よかった気がついたぁ……)
男「湯にあたったみたいだよ……じっとしてて、あ、水々……」
男(洗面所のこっぷで水汲んで、と、とと)
じゃー……こぽこぽこぽ
男「は、はい」
小「ありがとうございます……あ、体に力が入らなくて」コクコク
男(はっ、気がついたら、真っ裸で小柄ちゃんの肩を抱いて起こして)
男(水を飲ませてる態勢……に)
男(うぉ……俯瞰で全部見えまくりっ)
男(お腹は息に合わせて上下してて……その下は……ツルンとした恥丘から)
男(股の間にかけてくっきりとした割れ目が……)
小「ちょっと……恥ずかしいです……///」
男「あ、ごごごごめん……見ちゃって」
小「あ、いえ、仕方ないですよ……助かりました」チラ
男(あ、そういえば僕も裸だった……そして)
小「……ご、ごめんなさい……私もジロジロ見ちゃって」カァ
男「ごめんなさい……変なの見せちゃって」
小「私みたいな子供っぽい体でも反応するんですね……」テヘ
男「僕、ロリコンなのかなぁ……はぁ」
男「こ、これからドンドン変わっていくよ」
男「それに小柄ちゃんは可愛いから関係ないよ……体型なんて」
男(あー、上手くフォローできてねー)
男「え、えーっと、そういう体型の人のほうがいいって男もいるだそうし」
男(さらにドツボに、ああああああ)
小「ロ、ロリコンですか……」ビクッ
男「あー、ごめん、何言ってんだか……」
小「沢山食べて、大きくなります……今まで全然大きくなってないけど……」
男「ぼ、僕は、ロリコンじゃないけど小柄ちゃん見たいな女の子好きだよ」
男「何だか、ほっとして落ち着く感じがするから」
男「うぁ……ほんとごめん、全然落ち着いてないや」
男「ええと、あー、これは僕が……小柄ちゃんの体に対して」
男「大人の女の人という色気を感じて興奮してるから……なんだけどね」
男「つ、つまり、小柄ちゃんの体に欲情してるんだよ」
男(そ、そういうことだから僕ロリコンじゃないよね?)
小「……ご、ごめんなさい、ちょっと私気持ちの整理が」アタフタ
男(うぅ……何か激しく間違って伝わったかも……)
男「あ、いや、大丈夫……いくらなんでも弱ってる女の子に襲いかかったりしないから」
小「そ、そうですね、すみません」
男「な、何というか……ちゃんと大人の雰囲気は持っているよってことで」
小「はい、ちょっと自信出ました」クス
男「でも、眼鏡を掛けるときっともっと魅力的だと思うよ」
男「男はね、眼鏡に知性を感じるんだ。つまり大人っぽく素敵に見えるんだよ」エヘン
小「男さん、眼鏡萌えですか?」
男「う……ちょっとね」
小「今度見せますよ、眼鏡かけたところ」アハハ
小「だいぶ調子が戻って来ました」
男「大丈夫?」
小「……んー、恥ずかしいついでに、甘えちゃっていいですか」
男「いいよ」
男(ん?)
小「……手足が怠くてよく力が入らないんですよね……まだ……」
男(そ、そんな……僕の理性が持つのか……)
小「えっと……」チラチラ
男「申し訳ないです、ちょっとシチュエーションに反応を」
小「……ふふ、素敵のバロメーターなんですよね、男さんの」
男「そ、そんな感じです……はい」
男「じゃ、先に体を拭くね……扇いでだいぶ乾いてるけど」
小「お願いします……」
ごしごし
ふきふき
そして散った
そして跳ねた
そして溶けた
そして喰った
男「朝に見られた姉さんとの光景って、まさにこういう感じだったんだよね」
小「あぁ……今ならすごく納得できました、ふふふ」
男「じゃ、足に通していくよ」ずりずり
小「……はい」
小「ぅぅ……やっぱりちょっと恥ずかしいです……」
男「ごめん、どうしても視線が向いちゃって」
小「頭がボーっとして感覚鈍ってますから今ならきっと平気です」
男(そりゃ、割れ目の先がどうなってるか気になるだろ……)
男(パンティで隠すのが勿体無い……でも……ああ、隠れちゃった)ずりっ
男「前から胸に乗せて?……」
ぱさっ
小「//////」
男(下半身見てる時より赤くなってる)
小「……小さいですよね///」
男「人それぞれだと思うから……え、っと……ちょっと背中に手を回すね」
ぷ、ちっ
男(止まった?……後は肩紐を……と)
ぴとっぴと
小「ありがとうございます」
男「これは頭からすっと被せればいいの?」
小「はい」
よいしょっ
男(バンザイをしてワンピースを通してる姿はやっぱり何だか子供のようで)
男(複雑な気分になる……)
男(でも……下着……普通に大人っぽいのを着けてるんだよね)
小「……本当にありがとうございます、助かりました」ペコリ
小「少し休んでから部屋に帰りますので、男さんお風呂浸かってください」
男「ちょっとまだしんどいようだね」
さささっ
男「蒸着っ!」
小「?」
男「ささ、部屋まで行きましょう姫」ググッ
小「え、え、え」
……
どすっ
男「と、布団は暑いだろうから掛けないでおくね」
小「部屋までわざわざすみません」ペコリ
男「だって、だいぶ調子悪かったみたいだし」
小「もう大丈夫だと思います、このまま寝ちゃいます」
男「添い寝は要る?」
小「大丈夫っ、それは、いいです、おやすみなさい」フフ
男「はいはい、じゃ、おやすみなさい」
バタン
小(……恥ずかしかったぁ……全部見られちゃった……)
小(でも、それほど気分は悪くない……ホントに恋でもしちゃったんだろか)
小(それともお風呂でのぼせすぎてぼーっとしてるだけ?)
小(良い人なんだろなぁ……)
ばたん
男(耐えたあああああああああああああ)
男「よしっ」ガッ
男(中学生みたいな小柄ちゃんにあんなにムラムラきちゃうなんて)
男(ロリコンって……そろそろ認めないとダメかなぁ……)
男(でも、中学生みたいってので罪悪感が出るね)
男(手を出すのは犯罪っぽいや……)
男(子供っぽい喘ぎ声想像して勃起しちゃう僕……やっぱアウト……かな)
男(はぁ、自制に疲れたぁ……)
男(寝よう……)
黒髪(風呂に向かおうとして凄いものを見てしまった)
黒髪(ぐったりとした小柄ちゃんを男が抱えて小柄ちゃんの部屋へ……)
黒髪(しかも二人共風呂上りのような……)
推測1.
男と小柄は付き合っている。一緒に風呂に入った。
推測2.
風呂場で男が小柄を襲った。
推測3.
……思いつかない。
黒髪(推測1の場合……風呂上りに小柄が抱えられていた理由が思いつかない)
黒髪(ま、まさか小柄ちゃん、襲われて今頃……ど、ど、どうしよう)
黒髪(そ、そうだ、と、とりあえず)
黒髪(……このネタでネーム書いてみよう)
かりかりかりかりかり
黒髪(お、意外と行ける……えーっと……)
黒髪(でもって、追加設定、男が小柄の生き別れの兄だったと……)
黒髪(無理やり手篭めにされた小柄ちゃんが涙を流しながら男の首筋をみると)
黒髪(小さい頃に別れた兄と同じ痣が……よしよし……)
黒髪(男の方はというと……宴会で彼女が妹だと目星をつけていた)
黒髪(それでもって風呂場でその証拠の痣を……痣ばっかだと変だな)
黒髪(ほくろを確認したことにしよう……場所はお尻だな)
黒髪(妹だと確認した上で襲いかかった、と)
黒髪(ずっと妹が好きだったんだな、うん)
黒髪(妹も兄だとわかって、実は嬉しい。相思相愛だった、と)
黒髪(二人が生き別れた理由、それは相思相愛の二人が肉体関係に)
黒髪(及ぼうとしたところを見つかって引き裂かれてしまったからだね)
黒髪(場面、現代に戻ってきて……二人キスをしてハッピーエンド、と)
かりかりかりかり
黒髪「いいねぇ」
黒髪(あ、でもそうなると、姉さんとの関係が不自然になっちゃうなぁ)
黒髪(うーん、よし、姉さんは男が養子に出された先の従姉としておこう)
黒髪(妹と別れた心の隙間を埋めてくれたのが姉さんなんだね)
黒髪(でも、小柄ちゃんへの思いは断ち切れない)
黒髪(それを知る姉さんは自身の思いを抑えて、男の告白を断り続ける)
黒髪「名作できたよ、これこれ、夏はコレで決まりだね」
眼鏡「……男が気になるのか?」
金髪「え、何?妬いてんの?」
眼鏡「そういうわけじゃない」プイ
金髪「あー、妬いてるじゃん。可愛いなぁ、眼鏡は」チュ
眼鏡「違うって、金髪は……可愛いんだからもっと気をつけないと」プク
金髪「……もし男に襲われたら眼鏡が助けに来てくれるもーん」ヘヘヘヘ
眼鏡「男の人の方がいいか?」
金髪「よくわかんないや、あんたと居るほうが落ち着くし……」
金髪「それに気持ちいい……」スリスリ
眼鏡「それはボクもだ」モミモミ
金髪「……えへ……眼鏡の手……あったかい……んっ」
眼鏡「金髪っ……好きだっ」ガバッ
金髪「だーい好きだよ、眼鏡っ」ギュッ
姉「ぐがー」
ぶっ
姉「んー……」
ぶりぶり
……
トントン
男「おはよー、姉さん起きてる?」
男「開けるよー」
ガチャ
男「ん?」
男「え?」クンクン
姉「……や、やぁ、おはよう男くん、まずそこを閉め給え」
姉「あはは、やってしもたわ。寝糞」
男「まだやってたんだ……」
姉「酒のんで寝たらたまにやってしまうんよねぇ」
男「社会人になってんだからもう大丈夫だと思ってたよ」
姉「あっはは、姉さんにも抜けてるとこあるって」
姉「ほら、愛嬌あいきょう」
男「どうですかね、今読んでる人、一気に引いたかもしれませんよ」
姉「なーに、文章やったら臭わんから大丈夫やって」
姉「一人で寝てるトコ書いたら勢いで書いちゃったらしいよ」
姉「書いてる奴もリアルじゃ絶対無理って言ってっから」
男「当たり前です」
姉「面目ない」スルスル
男「落とさないでくださいよ」
姉「兎の糞、2個くらいなんやし大丈夫やって」
男「姉さんのうんこってほんと変ですよね」
姉「……小さい頃からずーっとこんなんやし……変ちゃうもん」ブーブー
男「じゃ、洗ってきま……」
ガチャ
金髪「おはよーっ…………///す」
金髪「し、失礼」
バタン
姉「しかも今度はスカトロか……今度はこっちも困るがな」
男「ちゃんと説明してくださいよ……じゃ行ってきます」
……
じゃぶじゃぶ
男(昔、姉さんちに泊りに行ったり、姉さんがうちに泊まりに来てたけど)
男(しょっちゅう、姉さんはおねしょや、寝糞をしてた……締まりなさすぎ)
男(その後始末、いっつも手伝わされてたんだよね)
男(好きな人のだからそんなに嫌じゃなかったけど……)
男(変な属性付かなくてよかったよ……マジで)
男(プリプリと兎の糞を生み出されたときは心臓止まるかと思ったっけ)
男(あれ、なんだかんだで誤魔化せたけど姉さんにバレたら半殺しだな……)
眼鏡「おはよう……」
男「あ、おはようございます」
眼鏡「特殊な性癖でも構わないが、清潔には気をつけてもらいたいね」
男「そ、その件は、後で姉さんが説明に行きます……」
男(あっという間に拡散してる……とほほ)
小「あれ、朝から洗濯ですか?」
男「あ、おはよう、気分はどう?」
小「お陰様で、すっかりいいです……///」
男(昨日のことを思い出したのかちょっと照れ顔になってる)
小「き、昨日のお礼……いつかします……では」スタタタ
男(小柄ちゃんは去っていった……あれ?これフラグ立ってね?)
男(……本格的にロリコンに転向しようかな僕……はぁ……)
男(小柄ちゃんも、付き合ってるうちに成長してくるよね……)
男(幼い体格と、大人の体格両方の魅力が楽しめ……)
男(ロリコンに転向すれば今のママがベストになるのか)
男(実際、昨日は体が反応したけど……幼さに反応したのか)
男(そうじゃないとこに反応したのかわかんないし……)
男(はぁ……ここらで姉さんを諦めるとかしないとダメなのかなぁ)
ガチャ
男「洗ってきたよー、どこに干す……って」
男「おいっ」
姉「さんきゅー」クルッ
男(ね、ね、姉さんがパンツを履かずに四つん這いの状態で)
男(押し入れを覗き込んでいる)
男(つまり、おまんまんが僕から丸見え状態で……)
男(ごくり……)
男(こ、こんなに明るいとこでマジマジと見たことって……)
男(初めてで……目が吸い寄せられ……うぉぉぉっ)
男(姉さんは前側には毛が生えて割れ目を隠してるけど……)
男(広げられた割れ目の周りには全然毛がなくて……)
男(桃色の唇が僕に笑みを見せてるように……可愛い)
姉「……ん?あ、こらー、すけべー、覗きこむなやー」
男「こ、これくらい褒美で見せてもらってバチあたんないでしょ」
姉「ちょ、ちょー、興奮しすぎ」ケタケタ
男「し、仕方ねーじゃん、そんなはっきり見たことないんだから」
男(ああ、でも姉さんのここにちんこ突っ込んだ男が居るんだよな)
男(くそっくそっ、悔しすぎる……よく言われてるようにくすんで無くて)
男(すごく綺麗な桃色に紅がかかったようないろ……微かに湿って?)
姉「あんまみすぎたら穴あくでー…………って、うわっあいてもたがな」
姉「はい、おしまーい」すっ
男「ちぇ」
姉「正直やなぁ」アッハハ
姉「しゃーない、今日は一日ノーパンや」
男「え?」
姉「可愛い姉さんのまんまんが見えんように男しっかりガード頼むで」
……
ふわっ
男(風が吹くたびにこっちがドキドキしてしまう)
男(なのに、姉さんはひざ上のスカートを……)
男(見せたいのかって言いたいです!)
男(姉さん曰く、丈が短いほうが風に煽られにくいそうな)
男(エスカレータに乗ったら姉さんの後ろでがっちりガード)
男(階段も後ろからピッタリつけて登る)
男(知らない人から見たら痴漢に見えるかも……)
男(姉さんのためにガードしてるのに……)
男(まぁ姉さんのあそこを見せたくないってのもあるけどさぁ)
男(買い残しの為に秋葉原に今日も出てきたものの……ついた時点で)
男(もうクタクタ……神経使いすぎた……)
男「ね、姉さん……ついたらお茶しましょう」
姉「そやな、今日はそんなに沢山買わんし」
ウィーン
店員「おかえりなさいませご主人さまー」
姉「二人」
男「あの、姉さん?」
姉「あれ?メイド喫茶来たことないん?」
男「はい、初体験です」
姉「ふーん、まぁ、書いてる人も行ったことないらしいけどな」
男「じゃあ、描写は適当ですね、普通の喫茶店として休みましょう」
店員「ミックスジュースお待ち、そちらはブレンドコーヒーね」
男「普通の喫茶店になったね」
姉「あ、黒髪……」
男「え、見間違いでしょ、昨日姉さんが」
姉「ほら、あそこ」
男「あ、確かに……あの髪の長さは……黒髪さんですね」
姉「ここまで歩いて来てしもたんかな?」
男「あ、確かに古い本入ってそうな袋持ってますね」
男「でも、何か……あの引っ張ってるカートが黒髪さんらしくないですね」
姉「そんなに一気に本買うとかいう話聞いたこと無いけどなぁ」
姉「にやり」
男(それ口でいうセリフじゃないです)
姉「ついてくよ、男」ガタ
男「え、え、さっき座ったトコじゃないですかぁ」
姉「後でまとめて座ったらええねん、会計済ませて出てきーや」バタバタ
男「……姉さんのおごりじゃないんだ……」
小「あれ?……あの二人……男さんと姉さん?」
小「デートかしら……」
小(あれ?私、どうしてこっそり後つけ始めちゃったんだろ……)
小(男さんと姉さんが上手く行ってるならそれでいいじゃない……)
……
金髪「えへへ、デートなんて久しぶりじゃん」
眼鏡「そうだな」
金髪「どういう風の吹き回し~、昨日はすっごく激しかったし」
眼鏡「たまたまボクがそういう気分の日だったんだよ」
眼鏡「君が危なっかしく見えるだけだよ」
金髪「そんなに拘束したいんだったら……帰りにホテル寄っても一度……」
眼鏡「拘束だなんて……ボクは君が好きだけど……」
眼鏡「君が誰を好きになるかまでは決める権利は持ってないよ」
金髪「あらら、昨日、あんなに激しく『君はボクのもの』って囁やいてたのに」
眼鏡「……恥ずかしいから、それはちょっと……」
金髪「紳士なフリして野獣なトコも、眼鏡の好きなとこなんだぞ、と」スリスリ
眼鏡「あ……あれ?小柄……」
金髪「え?突然なになに?そんなテレてごまかさなく……あららホントだね」
金髪「よし、あたしらもつけよう」サササッ
眼鏡「え、それは趣味が悪いって、金髪」
金髪「じゃあ、あんた一人で帰ってて、何か面白そうだから一人で……」
眼鏡「はぁ……やれやれ……ついていきますよお嬢さん」
姉「お、喫茶店入ってったぞ……はよきーな」
男「もういいじゃないですか、きっと休憩する喫茶店探してたんですよ」
姉「人生、そんなありきたりの結論でええんか、ん、あかんやろ?」
男「人生持ちださなくてもいいじゃないですか」
姉「そんな真っ直ぐの返ししかできんから振られてばかりなんやぞ」
男「僕、そんな理由で振られてたんですか……」
姉「あ、ええからええから、入るで」
男「え?」
カランカラン
小「こそこそと、喫茶店に入って行きましたね」
小「別に普通のデートなんだから堂々と歩けばいいのに」
小「手もつながないで余所余所しい……私なら絶対つなぐのに……」ブツブツ
小(よし、私も喫茶店入ろう……)グッ
小(今日はメガネだし、地味なブラウスにハーフパンツ)
小(どこから見てもパソコンを見に来た中学生女子にっ…………うぅぅ)
小(自虐はもうやめよう……)
カランカラン
金髪「こっそり喫茶店に……別に変な店とかじゃないのに何で?」
眼鏡「ボクには前の二人組を追っているように見えたぞ」
金髪「え、なになに、あの子探偵ごっこしてるんだ」
眼鏡「どうもその二人も知り合いのような……」
金髪「……いくよっ」
眼鏡「はいはい、もうどこまでもついていきますって」
カランカラン
姉「黒髪……が……男と……ショックやわ……」
男「そりゃ、黒髪さん素敵ですから彼氏くらい居ますよ」
男(ちょっとショックだけど……)
姉「しかも、あんな年上の男と……あれ絶対不倫やで……」
男(姉さんの後ろの席の子、さっきからチラチラこっち見てるけど)
男(姉さんの声、抑えててもうるさいかな?……)
男(君みたいに小さい子がひとりで喫茶店なんて秋葉原って感じだけど)
男(怯えないでね……ごめんなさい)
男(……しかし可愛い眼鏡っ娘がいるとは……いいとこだ……秋葉原)
男(小柄ちゃん位の年格好だけど可愛く見えてるのは歳のせいじゃ)
男(……無いとは言い切れなくなってきてます……このところ……)
男「お金持ってたら何であんな下宿住んでるんですか、誤解ですよ」
姉「……っく、お目付け役としてなんとかせんと……」
男「お金って決まった訳じゃないですし……恋愛は自由ですって」
姉「よし、ビシッっと言ってくるわ、うちの学生たぶらかすなって」ガタ
男「え?」
ツカツカツカ
小「……う、見過ぎたかも……男さんにこっち注目されてる……」
小(しかも、男さんと姉さんつけてきたら、何故か黒髪さんも店内の別の席に……)
小(二人は黒髪さんに見つからないように尾行してたみたい)
小(確かに何だか怪しげなカップルだもんね……黒髪さん何の話してるんだろ)
小(荷物もたくさん持ってるし……でも、会話は弾んでるっぽいなぁ)
小(それにひきかえ、男さんと姉さんは黒髪さんに注目しっぱなしで)
小(折角のデートなんだから二人の会話を楽しめばいいのに……)
小(姉さんが男さんを引っ張り回してるだけかしら……)
小(あ、あ、姉さんが黒髪さんの席に……わ、わ、なんか怒ってる?)
小(……男さんも出てきて……)
小(何か揉め事……?)
小(……あれ?外に出るのかな……4人連れ立って……)
小(よし、ついていこう……)
小(や、やばくなったら大きな声出して助けを呼んだりできますもんね)
ゴソゴソ
……
小(……二人ずつで話ながら歩いて行ってますね)
小(仲はよさそうだったけど黒髪さんのカップルは少し距離があるみたい?)
小(むしろ男さんと姉さんが何か二人でコソコソと話を……)
小(黒髪さん達にどっかに連れて行かれてるんだろうか)
小(……え……そっちの方って……ホテル街……)
小(……いつの間にか姉さんが男さんの腕を掴んで寄り添ってる)
小(え、え、もしかしてこの四人って……そんな破廉恥な……///)
小(男さんも満更じゃない表情……むむむ……)
小(いつか私も当てれるくらい成長を……い、いつかね)
小(豆乳毎日飲んでるんだもんいつか大きくなるんだから……)
小(あれ?……黒髪さんの彼氏さん?が一人で帰るの?)
小(手を振って……)
小(……行っちゃった??)
小(三人は……え、えええええ、ラブホテルに……嘘ぅ……)
トントン
?「君、こんなところで何をしているんだい?学校はどこ?」
小「ふぇっ」ビクッ
眼鏡「何見てるんだい?」
小「び、びっくりしたぁ……金髪さんと眼鏡さんじゃないですか」
小(いつから?!)
金髪「男がきになるんだね?振られたハズの姉さんとラブホなんて」
小「……いえ、そ、そういう訳じゃ……」
金髪「まぁまぁ、いいんだってそういうのは新入生の頃はあるもんだって」
金髪「一番初めに知り合った相手がよく見えちゃうんだな」
小「……ですから……違いますって」
眼鏡「追うなら早くしないと」
がしっ
金髪「行くよ、追ってんでしょ」
小「……わ、わわたた」
ずるずるずるー
……
眼鏡「……最上階の端の部屋だね……」
小「……高い部屋ですよね」
金髪「じゃあ早速乗り込みましょうか」
眼鏡「ボクは反対なんだけどなぁ……」
金髪「グズグズしてたら、マズいタイミングになるかもよ」
小「……あのあの……」
小「……いえ、特に……何となくなんです……たまたま街角で見つけたので」
金髪「あたしらも、そうだって、じゃいくよ」
小「え、えええ、でもでも、お邪魔だったら……」
金髪「3Pするならするで別に構わないから、ごめんって言って退散するだけ」
小「さ、さ……さん……」
眼鏡「P……プレイの意味だね」
金髪「そこまで知らないならホントに中学生でしょ」
小「……し、知ってますけど……」
金髪「兎に角、気になるからあたしは行く」ズンズンズン
コンコン
姉「え?何で?……ラブホって誰か訪ねてくるようなもんなん?」
男「し、知りませんよ……」
黒髪「無いと思うんですけど……何か緊急事態なんでしょうか……」
黒髪「は、はい……どなたですか?」
?「すみません、部屋のタオルをお取り替えさせていただきたいのですが」
黒髪「あ、はいはい?……」
ガチャ
金髪「どもー、こんちゃー」
眼鏡「こんにちは」
小「……ど、どうも」
男・黒髪・姉「え?」
男(ラブホに5人の女の子と居るという事実だけが頭でグルグルしてる)
男(そりゃ、もう、ただ話をしに来ただけのはずなので)
男(変なことにならないはずなんだけど……)
男(生理現象だよね……全力で勃起してるのも)
小「……私もです」
黒髪「どうして皆さんここへ?」
姉「黒髪を追って」
男「姉さんに引きずられて……」
小「……姉さんと男さんについてきて……その後、金髪さんと眼鏡さんに連れられて」
金髪「皆が楽しそうなコトしてるから追いかけてきて」
眼鏡「金髪に付き合っただけ」
黒髪「えーっと……やはり私が一番の原因みたいですね……すみません」
姉「で?何?何見せてくれんの?」
黒髪「えーっと、皆さんに見せないとダメですかね」
金髪「だめーっ、ここまで来て追い返されるなんて」
黒髪「ふぅ……」
黒髪「実は……喫茶店で会ってた人は編集さんなんです」
金髪「なにそれ?」
黒髪「原稿の打ち合わせや校正したりして本にしてくれる人です」
姉「ああ、それで印刷がどうとか言ってたんや……」
黒髪「最近、原稿を頼まれていまして……それのネームができたので」
黒髪「今日、外に出るついでに見てもらうことになってたんです」
黒髪「はぁ、まぁ一応……駆け出しですけど……まぁ……」
小「……す、凄いじゃないですか……」
小「有名人と知り合いになれるなんて……初めてです」
黒髪「い、いやぁ……そんな有名でも……」
金髪「ね、ね、どんなの書いてるのー、やっぱ小難しい奴?」
黒髪「……」
男「んー、ネームって言うからには漫画なんですよね」
金髪「え、漫画家なの?へー、人って見かけによらないじゃん」
金髪「ね、ね、どこに載るの?雑誌は?」
黒髪「……うぅ、げ、月刊メグストア……っていう」
男「え、それって……」
男「はい……その、たまに……読ませて頂いているといいますかお世話に……」
姉「へー、どんなの描いてんの?」
黒髪「えーっと」
眼鏡「エロ漫画……ですね?」
黒髪「……はぃ……」コクリ
小「ほぇー…………」
姉「ええええええええええええええ」
金髪「うっそ、マジ、黒髪さんがエロ?全然イメージ違うんだけどー」
黒髪「……ぅぅ……消えちゃいたいです……」
姉「え、えーっと……あのさっきの人と、エ、エロ漫画の打ち合わせしてたの」
黒髪「はい……でも、喫茶店だと恥ずかしいのでいつも原稿とかアドバイス貰うのに」
黒髪「このホテル利用させてもらってたんです……人の目気にしないですみますし」
黒髪「でも、編集さん……とても紳士でそういうことはなさいません」
金髪「男なんて、ちんこで生きてるんだから、いつ襲われてもおかしくないって」
金髪「ほら、男見て。……ね?今もフルボッキよ」
男「あははは……ラブホなんて初めてでなもんで……」
黒髪「そうなんでしょうか……」
黒髪「男の人の心理がよくわからないので……」
黒髪「最近、よくその……そういう場面の……」
金髪「ヤッちゃうとこ?」
黒髪「……はぃ……描写にダメ出しされるんです……」
姉「知らんと描いてたん?」
黒髪「はい……実体験もないんで、全部恥ずかしい妄想で……」
技術指導とかもしちゃったわー
ちょっと署まで来い(AA略
姉「あんた、それ、この部屋で相談って、そいつ下心ありまくりやん」
姉「経験つまないとって言われて、襲われんで」
黒髪「でも、そういう話しましたけど別に襲われてませんよ……」
男「信頼させてから次回でいただこうって狙いとか」
金髪「でも、そういうの続けてたらいつか手出されるって」
黒髪「でも……」
眼鏡「……ふーん、嫌じゃない、と」
黒髪「……///」
金髪「さっきから、この子、真っ赤になって爆発しそうなんだけど……」
小「……ぁぅぁぅ……」
黒髪「……はい」
姉「まぁ、好きならええんやけど……自分を安売りせんようにな」
黒髪「ええ……」
姉「何でそんな状況で暗いねん」
黒髪「だって、作品がダメなままだったらいつか見捨てられます……きっと」
金髪「そんなの簡単じゃん、色々知りたいから抱いてくださいって言えば」
黒髪「編集さんは真面目なのできっと断ると思います……そして担当も変わって……」
金髪「そんなものかなぁ」
黒髪「あの、もう恥ずかしいついでなので皆さんに相談します」
黒髪「ネームを見てもらえないでしょうか」
姉「かまへんで、見せて見せて」ウキウキ
小「//////」
男(小柄ちゃんが倒れてしまいそうだ……目が泳いでる)
男(そりゃそうだ……僕とセックスする描写があるんだから)
男(僕も目を合わせられないよ)
姉「……はは、凄いなこれ」
男(姉さんも動揺してるな……)
金髪「過激なこと描いてんだね、まさか身内がネタになってるとは……」
眼鏡「ボクの想像を超えてたよ、これは……」
黒髪「す、すみません……夜中に小柄ちゃんを運ぶ男さんを見て暴走しちゃって」
姉「え?何それ」
小「お風呂で湯あたりした私を男さんが部屋まで運んでくださったんです」
黒髪「これをどうしたらそれらしくなると思いますか?」
男「僕はダメだよ……だって経験豊富じゃない……というか経験ゼロだもの」
眼鏡「童貞ね」
男「世間ではそう言います」
姉「あ、あたしのはその全然参考にならへんから……」モジモジ
小「私も……全く経験が無いです……」
眼鏡「つまり処女と……ちなみにボクも処女だよ……金髪もね」
金髪「ちょっと勝手に言わないで……」
男「え?」
姉「またまたぁ、嘘やんなぁ」
男「え?」
姉「は?」
黒髪「え、え、え、え」キョロキョロ
小「ど、どういうことなんですか」
眼鏡「こういうこと」ガシッ
ぷちゅぅぅ
姉「うぅおおおおおおおー」
小「きゃあああああああぁああああ」
男「ま、まじでええええええええ」
黒髪「百合っ……!」グッ
じゃねーよwwwww
眼鏡「ちょうどいいカミングアウトの機会だったと思わない?」
眼鏡「まぁ、そういう訳でボクらは男女関係には詳しくないかな」
男「……あんなに慣れてそうだったのに」
金髪「別に男に興味がなかったわけじゃないんだから」
金髪「今、好きな相手が女の子ってだけで」モジモジ
眼鏡「ボクもそうだよ、まぁ、男と付きあって散々懲りたからでもあるけど」
眼鏡「金髪は奥手だから、誰かと付き合うのもボクが初めてだよ」
小「ちょっと意外です……」
黒髪「あの、そっち方面もいつか描きたいのでまた聞いていいですか」
金髪「ちょ、ちょっと……え……」
男(ゴクリ)
金髪「男も居るんだけどー」
眼鏡「いいじゃないか、お風呂で見せてるんだし」
眼鏡「それに彼が風呂場で射精したことを皆に話して楽しんでたろう?」
眼鏡「それくらいお返ししなきゃ」
金髪「え、え、そん、そんなの恥ずかしい」
男(あれ?眼鏡さんのリードだと金髪さんが凄く可愛らしく見える)
小(ゴクリ)
眼鏡「どこに?」
姉「こ、こ……?」
小「私、子供じゃありません、大丈夫です。人並みに興味もあります。」
小「見せてください、金髪さん、眼鏡さん」
姉「男っ!あんたはええんかいなっ…………って愚問やったか……」
男「姉さんどこ見て判断しました?」
姉「ち、ちんこ」
男「……まぁ……見てみたいかなあっていうのは正直なとこですけどね」
金髪「あ、あたしらだけじゃやっぱ恥ずかしいって」
金髪「黒髪の話もそれが知りたい訳だろ?」
男「え、え?勝手に話を」
黒髪「確かにそれが見られれば助かります」ジー
男(あれ?何か黒髪さんの目、現実を見てる目じゃないような)
黒髪「お願いします」
姉「いやいや、あかんでしょ、法律で捕まりますって、こんなロリ」
男「いやいやそういうとこじゃなく小柄ちゃん置いてきぼりだし」
金髪「小柄ちゃんも男ならいいんじゃないの?」
金髪「男見てる目……絶対……怪しいし」
小「えっ、うそ……え」カァァァ
男(僕いつからそんなモテるようになったんっすか)
金髪「な?……んぁ……ちょっと眼鏡……早い……んんん」
男(うわぁ……眼鏡さんと金髪さん始まっちゃった……)
男(なんてエッチなキスをするんだ……)
眼鏡「柔らかい唇、いいね」
金髪「……ん……む……」ちゅるちゅぷ
黒髪「凄い、凄いです」
小「……」ギュ
男(うぉ、いつの間にか小柄ちゃんが僕の腕を握ってる……)
小「私……もう大人です……男さんなら……許していいと思います」
姉「その、昨日の今日あったとこでってのは……どないかなーって」
小「でも、ずっと前から知り合ってる姉さんは男さんに許してないじゃないですか」
小「時間って関係ないと思います……」
小「だから……」
ちゅ
小「男さん……抱いてもらえませんか……もし、男さんが良ければ……」
男(姉さん……)
姉「……ええんちゃう…の」フン
黒髪「いいですね、男さん、少し姉さんに気を残した感じ……バッチリだと思います」
男(く、据え膳食わぬはって格言、使う日が来るとは思わなかった)
男「小柄ちゃん……」
ちゅう……
男(目を閉じて身を預けて来たよ……マジか……)
男(……唯一の心配はホントに犯罪じゃないよね、という所……)
男「ど、どうしたらいいかよくわかんないんだけど」
小「男さんのしたいことをしてください……多分……私も気持ちいいです」
男「わかった」
男(欲望に任せてみよう)
男「ベ、ベッド借ります」
金髪「いーよ……あはっ……ん……とうとうする……んっだ……」
男(眼鏡さん、いつの間にか金髪さんを脱がしてキスしまくってる)
男(小柄ちゃん肩を掴んだらやっぱりちょっと震えてる)
小「男さん……手が震えてますよ……」ニコ
男(小柄ちゃんをそっと寝かせて……き、キスをしてみよう)
男(あ、小柄ちゃんが目を閉じた……)
ちゅ
小(……恥ずかしい……目が開けられない……)
小(男さんの手首が胸に当たってる……ああ、小さいって思うよぉ)
男「眼鏡可愛いね……ほ、ほんとだよ」
小「ふふ、ほんとに眼鏡萌えなんですね」
男「まぁ、そうだよね……」
姉「むー」ジー
黒髪「……」カリカリカリ
男(黒髪さんは何か熱心に書いてる、姉さんは不機嫌……一人手持ち無沙汰だもんな)
小「私ね……気づいてます……」コソ
男「な、何、小さくて聞こえない」
小「男さんが今でも姉さんのコトしか見てないの……」コソ
小「でも、今はいいです……これから暫くの時間、私だけを見てくれたら」コソ
小「それくらいはいいですよね」チュ
男「……ごめんね」チュ
小(正直な人だなぁ……ますます好きになっちゃうじゃない)
男(……小柄ちゃん中学生だなんて全然思えない……凄く色気あるよ)
男(おっぱいは確かにまだ小さ……発展途上で毛も薄目だけど……)
男(君の魅力はそういうとことじゃないだと思う……)
小「///」ギュ
男(服のボタンを外そう)ポチポト
小「……」チュ
男(外してる僕に小柄ちゃんが目をつぶったまま自分からキスをしてくる)
小「……///」ジッ
男(上気した頬、目を開いて僕の服を脱がし始めた……)
男(脱がしっこをしてる)
ちゅ
男(合間に小鳥のするようなキスを繰り返す)
小(……ボーっとしてくる……そしてお腹がとても熱い……)
小(凄く濡れちゃってるかも……うう、見られちゃうの恥ずかしいな)
ぶちん
小「……ふふ」
男(僕と同じ事思い出して笑ったのかな……)
小(湯あたりして……よかったかも……)
……
黒髪「……さん」
トントン
姉「ん?」
黒髪「姉さん……お願いがあるんです」ジ
姉(う、何か変な予感)
黒髪「どうも見ているだけではわからなくて」
姉「ええー、うそー」
姉(……都合よく……どうしてベッドがキングサイズなのよ)
姉(そうか、ホテルでいい部屋だから……か)
姉(やっぱり、あの編集、絶対黒髪狙って部屋取ってる……)
黒髪「お願いします」
姉「あー」
黒髪「お願いし……」
姉「わかったわかった」
姉(これは断れない目だ……)
黒髪「え?私、姉さん好きですけど」
姉「えええええーっ?……えー?」
黒髪「恋愛感情じゃないと思いますけど……姉さん大好きです」ニコ
姉「そ、そうやな、黒髪が好きなん編集やもんな」
黒髪「では、お願いします……」
ぺろり
姉(うぉ、いきなりスカートまくられたっ)
黒髪「姉さん……どうしてパンティ履いていないんですか?」
姉「しまった」
黒髪「あれ?しかも、もう凄ーく凄く、濡れちゃってますよ」
姉「……え、え、えっへへ……ノーパンって興奮しちゃうよね」ポリポリ
小(え?……いつの間にか黒髪さんと姉さんも服を脱ぎ出して……)
男(ん、小柄ちゃん何を?……うぇ?姉さんと黒髪さん??)
小「……全員、始めちゃいましたね……」ちゅっちゅ
男「そうだね」ちゅぱちゅぱ
男(おっぱいを吸うのが凄く楽しくなっている)
男(確かに、これは中学生サイズ……でも触るたび、吸うたびの小柄ちゃんの反応が)
小「……んっ……ふぁ……」
男(どう聞いても大人……ズボンで股間が痛い)
かちゃかちゃ
男(心の声が聞こえたように……小柄ちゃんが僕のズボンを脱がし始めた)
かちゃ
男(僕も小柄ちゃんのズボンを……)
男(……パンティも昨日履かせたものだね……え……これ染み?)
男(小柄ちゃんのズボンの股の所がしっとりと湿っている)ヌチョ
男(そして……脱がせる時、ズボンとパンティの間で糸が……)
小「恥ずかしいよ……」
男(ほんとに顔を真赤に……声も消え入りそう……)
男(でも、男としてはこんなに濡れてくれて凄く嬉しい)
男「びちょびちょだね」
小「……うぅー……気持ちいいんです……すっごく」
男(二人共、パンツだけになった)
眼鏡「これ使いな」ポイッ
男「ど、ども」
男(金髪さんと69の態勢でいじくりあいながら枕元にあったゴムを投げてくれた)
男(た、助かったぁ、眼鏡さんイケメンだよー)
金髪「……ちゅぱちゅぱ」
男(金髪さん熱心に眼鏡さんの足の付根を舐めてる……)
小「よそ見はダメです」プクー
ちゅ
小「……今は……私だけの……ん……気持ちいい……」
男(も、もう、我慢出来ない、パンティも脱がしちゃおう)ハァハァ
小「あ……」ビクッ
男「いい?」
小「……///」コクリ
男(手が汗ばんでる……)
男「え?」
男(小柄ちゃんが僕のパンツを脱がせようとしてる……)ポロン
男(出た……小柄ちゃんの足にペタペタ当たってる……先走りで糸引いてる)
男(小柄ちゃんのパンティも……うわぁ……すっごいベトベトだ……糸というか雫が)
小(濡れすぎだよ私……うぅぅ)
男(足首まで下ろして……引き……抜いた……これで小柄ちゃんは全裸……)
男(胸の下付近で手を回して……でも隠さないで見せてくれてる……)
男(そして水飴をこぼしたような股の割れ目……)
男(湯気がないところで見たら薄っすらと産毛がある感じなんだなぁ)
男(でも僕の好みは薄い毛だから、凄く可愛く見える)
男(幼いとも言える……けど……子供はこんなにベトベトにならないよ)
男(全裸だけど眼鏡はつけたまま)
男(何だか僕の理想のようだ)
男(小柄ちゃん?……え?ゴムを……つけてくれようとしてる)
小(え、こ、これどっちが表?表……がこっちだからこうかぶせて……)
つるん
小「……触っちゃいました」エヘヘ
男(恥ずかしそうにペロリと舌を出したのがドキッとした)
小「……あ、え、そのぅ……男さんの好きなように……」ジー
ちゅ
男(真剣な眼差しに惹きつけられてキスをして……)
男(キスしながら、水飴のなかに入れる場所を探して当ててみる)
ぺちゃぺちゃり
小「……っつ……ぁ……ぅ」
男(反応が少し違う場所が……ここ?)グイ
小「……」グッ
男(小柄ちゃんが唇を噛んで耐えている)
男「いくね」
ぐいにゅっ
男(目から涙が滲んできた)
小「……こ、これは嬉しいからです……嬉し泣きです」ニコリ
小(痛いのもあるけど……ほんとに嬉しいからだもんね)
小(男さんが私の中に……入ってきてる……大きくて熱くて……優しい)
男「じっとしてるね」
小「……大丈夫です……男さんの気持ちいい動かし方をしてもらえれば」
男(とは言っても……そもそもあっという間に終わってしまいそうで)
男(そうなるとそれは恥ずかしいし)
男(いずれにせよ……僕は今)
男「童貞卒業しちゃったよ」アハハハ
小「処女卒業しちゃいましたっ」チュ
小「……ありがとうございます」チュチュチュ
にゅる
男(全体が包み込まれてる……これは……ヤバイ)
男「あ……何かもうヤバイ……」
小「気持ちいいからですか?」
男「うん」
小「だったら凄く幸せです……もっと気持ちよくなってください」
にゅるにゅる
小「……ぅ……んぁ……っく……ふぅ……ふぅ……あぁぁ」ガシッ
にゅっぽみゅっぽ
にゅっぽ
にゅるん
小「……出ちゃいまっ……ーすっ」
にゅ、にゅにゅにゅにゅにゅ
小「あ、あ、あ、あ、あ、あぁ、ああああ」
にゅにゅにゅ
男(段々、気持ちが乗ってきた出る出るだすぞっ)
でゅぷっ
でゅしゅっ
小「……ぁうう……」ビクン
じゅぷ
小「……ぁん……」ビク
男「はぁはぁ……」
小「……出たの……わかっちゃいます……ね」エヘ
小「……私も……ちょっとイっちゃいました」
男「え」
小「?」
男「いや、えっと勝手な印象だけど小柄ちゃんが」
男「イくとか言うイメージなかったもんだから」
小「私だって大人なんですからね」ニコリ
男「そうだね」チュ
小「……とてもこのままで居たいんですけど抜かないとダメなんですよね?」
男「だよね……」ジュルッ
小「……ちょっと寂しくなりました……」
男「……」ナデナデ
小「……ありがとうございます……初めてが男さんで本当によかったです……」ギュッ
男(気がついたら僕達の行為は金髪さんと眼鏡さんに凝視されてた)
男(でも、そんなことより……黒髪さんと姉さんが大変なことに……)
男(貝合わせっていうのかな?股同士をあわせて盛んにこすり合わせて)
男(お互い……あんあん声を上げまくりながらずーっと続けてる)
眼鏡「凄いな」
金髪「ほんとにこの二人初めて?」
小「……息ぴったりですね」
男「どっちも気持ちよさそう」
男「男と違って終わらないから羨ましいよ」
姉「……あう……ん……はぁ……はぁ……いい、いいっ」
黒髪「んん……ぅぅ……くぅ……ふぁぁあっ……あ、あ、あ」
姉「っ……あ、あ、あああああああぁああああああ……」
姉「んっあ……」ビクビクン
姉「はぁはぁはぁ……」
黒髪「はぁ……はぁ……え、え?皆さん、え?終わったんですか」
金髪「うん、さっきから二人をずーっと観察してた」
姉「ふぇ?え、ええええ、あ、あれ、みんな……終わってる」
男「熱中しすぎじゃないですか、姉さん」
姉「え、え、え……うううう、ノーマルだと思っとったのに」
黒髪「何か……目覚めちゃいました……女の子同士でも気持ちいいんですね」ウフフ
姉「おい、編集はどないしたっ」アセアセ
黒髪「それは恋ですよ……でも性欲的には女の子もいいかなぁって」ジー
姉「ふぇ?」
黒髪「はい」
姉「……ええええええええ」
男「ノリノリだったくせにぃ」
男「この場で、男とも女ともヤッちゃったのって姉さんだけですよ」
眼鏡「確かに」
姉「え、男……小柄ちゃんと……ヤッちゃったん?」ショボン
小「……お借りしました姉さん」
小「男さん……また……機会ありますか?」チラッ
男(え?)
姉「待て待て、ヤッちゃうだけやのうて付き合うなんてもっとよう考えて……」
小「よく考えてますよ……男さん優しいし格好いいし体の相性もいいし……」
姉「え、え、え」オロオロ
男「姉さんは僕を男としてみて好きになってくれない見たいだし……」
姉「え、えぇ?」
金髪「ふふ」ニヤニヤ
姉「ダメダメだめあかんって、許可できへんよ、学生に手を出しちゃダメー」
姉「男はあたしで我慢しときってっ……な、な、付きあったるから」
男「姉さんは僕が好きじゃないのに小柄ちゃんを守るために僕と付き合うって?」
姉「しゃ、しゃーないがな、小柄ちゃんの為やし」
男「でも、好きじゃないのにそれは姉さんにも悪いし」
小「……私は別に守ってもらわなくても大丈夫です」
黒髪「あ、姉さんは、本当は男さんが好きなんですか?」
金髪「あーもー、ちょっと突っ込み早いよ、黒髪さん」
金髪「それは姉さんの口から聞かないと」
男「もしかして姉さんも、僕のこと好きなんですか?」
眼鏡「素直になるべきだとボクは思うけどね」
姉「……ちょっとは」
小「私は大好きです」
姉「待って待って、あたしも好きやって……ずっと好きやったんやから……」
男「へ?ずっと?」
金髪「そりゃそうでしょ、こりゃ見たトコ、結構長い恋煩いっぽいし」
金髪「好きって言ってくれて、きついこと言っても慕ってくれるから」
金髪「遊ばれてたんでしょ」
金髪「今回はかなり本気のライバルできちゃったみたいだし?ね?」
小「まだ、諦めてませんよ、今のところは姉さんに譲ったとしても」
姉「あかんって……もぅ」
金髪「今日は姉さんの負けかな……」
金髪「グズグズしてて男の童貞取られちゃったみたいだし」
姉「……それはなぁ……そんなことないんやでぇ……」ニヒヒ
男「ん?」
小「……?」
黒髪「ほぅほぅ……そこ詳しく」カキカキカキ
姉「あんな……あたしの初めての体験って……男相手やねん」
男「ちょちょちょ、知らないですよ、勝手なことを」
姉「まぁ、男、気うしなっとったし……飲みつけん酒飲んでもて」
姉「高2の正月、うちで集まったやん」
男「そ、そうだけど」
姉「で、ピール飲まされて倒れたやろ?」
男「確かに……まさか……な」
姉「そんときな、ちょーっと魔が差してな……その無理やり……」
姉「男寝たままで、ビンビンに勃ったままやったし……寝顔可愛くてな」テレテレ
姉「こっそりっちゅうか痛かったからあんま動けんかったけど」
姉「しっかり血出てたし、男が急にビクビクって中出しするから」
姉「ビビってすぐ服着せて知らん顔しとってん」
男「うーわー」
男「あのとき夢精したんだと思ってた……」
姉「童貞なくしとったんやで」イシシ
小「……犯罪です……そ、その年齢の子に、しかも無理やりなんて」
姉「そやかて、男、あたしが好きやてずっと言うてくれてたし……///」
小「悔しいです……うぅ……卑怯なぁ……」
黒髪「小柄ちゃんには悪いけど、これは行けるいい、いいよ」カリカリカリ
金髪「まぁ、素直に吐き出したところで今日はよしとしましょう」
眼鏡「そういえば、ボク、ちょっと気になっていることがあるんだけど」
姉「ん?」
眼鏡「学生に手を出しちゃダメって……姉さんは言ってたけど……」
眼鏡「学生って小柄ちゃんのコトだよね」
眼鏡「男さんって」
姉「え?言ってたでしょ?情報学科の……」
眼鏡「……教員なんですね」
男「今度、情報学科で助教やることになっている男です、よろしく」
金髪「え?年上?」
黒髪「うぉおおおお、更に設定追加ぁあ」カリカリカリ
小「……先生?」
男「学科は別だけどそうだね」
姉「小柄ちゃんほどちゃうけど男もよう幼く見られるよなぁ」
男「はははは」
小「……あわわわわ、先生とエッチをしてしまって……ど、どうすれば」
男「ホントは慌てないとダメなのは僕なんだけど……」
小「……それは困ります……」
小(…………今度は二人きりでこっそり……)ジー
姉「あー、もー、あかんって初めてだけやって……もう男渡さんから」
男「な、何かストレートで照れちゃうよ」
姉「うはっ」
黒髪「禁断の三角関係……教師と女学生……きたきたきたー、次号のネタまでっ」カリカリカリ
姉「黒髪、次あった時でも編集押し倒してみ、好きなんやろ」
男「また僕のような被害者を出すつもりだ……」
姉「被害?……なんかあった?」
男「僕の貞操が……」
男「……結果的には何か可愛かったので許しますけど……」
男「覚えてないのが悔しいので……僕の記憶が被害です」
姉「んー、ほな、黒髪……押し倒すときは意識のあるうちにな」
黒髪「はい、頑張りますっ」
男「そこかよっ」ビシ
姉「ええで、その突っ込み、それやそれ」
おしまい
物足りない気もするが乙
面白かった
けど乙
続き→姉「じゃ、風呂でも入ってくれば?」男「そうするよ、おやすみ」 2
Entry ⇒ 2012.04.22 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
少女「うっ・・・男が・・・動かない・・・動かないよぉ・・・」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1334416189/
男(寝てるだけなんだけど・・・低体温なだけなんだけど・・・)
少女「・・・!・・・・///・・・っ・・・・・///・・・!!!」
男(なんだ・・・?)
少女 チュウウウウウウ
男(!?)
男(!???)
男(なっ・・・!?)
少女「・・・っ・・・えぐ・・・うぇ・・・生き返らない・・・」
少女「っ・・・うぅ・・・・」
少女「ひっ!!」
少女「男ぉ・・・男ぉ助けてよぉ・・・」ガクガク
スライム プルプル
スライム「キピー!!」
少女「うわぁあああ!!」
スライム
デューン
少女「はぁ・・はぁ・・・」ペタン
少女「男、ごめんね・・・私、大事なことはいつも・・・っ・・・いつも取り返しがつかなくなってから・・・っ・・・・うぅ・・・っ」
少女「あなたが生きてるうちに・・・好きって・・・伝えたかった・・・っ・・・」
男「はぁ・・・周囲300歩にはモンスター無し・・俺ももう一眠りするかな」
少女「うぅ、・・・・・・・ん・・・男ぉ・・・」スヤスヤ
男「おはよう、どうした俺の寝坊グセが移ったか?」
少女「」
少女「」ホッペムニ
男「なにやってんだ」
少女「夢じゃない・・・・?」
男「あほ、俺が死ぬか、面倒ごとには首を突っ込まないで大事にしてきた命だ」
(お前のせいで考えも変わってきたけどな・・・ますます死ねないな)
少女「男っ」ギュウウウ
男「どうしたんだ・・・?」
少女「怖い夢をみたの・・・とっても怖い夢・・・」
少女「頭を撫でたりはしてくれないのね・・・」
男「柄じゃねぇよ。それに俺の両腕は、お前を守るのに手一杯だ」
少女「ねぇ、いつか・・・いつか私が強くなったら、もしくは世界が平和になったら、あなたの腕で私を抱きしめてくれる?」
男「・・・・お前は俺にとっては亡くなった恩師の娘、それだけだ」
少女「・・・そぅ
男「ただな、俺は気まぐれだから・・・この旅の末には、どうなるかな。まぁ生き残ってみないことにはな」
少女「えぇ、ねぇ男、私も男を守れるようになりたいわ」
男「お前にならできるかもな・・・」
(こいつの眼を見てると本当にそう思えるよ・・・何処かに勇者とやらがいるらしいが・・俺だけの勇者はここにいる。
この旅の先、本物の勇者に出会う時がくる。その先でも俺が守る勇者はいつもここに・・・)
少女「向こうに街が見えますよ!男~」
少女(あれ、なんか足が筋肉痛・・・もしかして・・・
「まぁいっか♩」
勇敢な少女の話
寝る前の拙い妄想
Entry ⇒ 2012.04.17 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
男「委員長、またウロコ落としてましたよ?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1333797430/
男「委員長、また鱗落としてましたよ?」
委「ん? そうか、すまないな。拾っておいてくれたか?」
男「はい。でも、最近多くないですか?」
委「気をつけてはいるんだが、生憎と私は完全無欠ではないからな。」
男「委員長が落とすところを見られたわけでもないから、大丈夫だろうけど。」
委「理解者が傍に居るというのは心強いものだな。」
男「理解者ですかー……」
委「不服か?」
男「まあ、今は理解者でいいかな。」
委「皆に知れ渡ってしまうと居づらくなる。私はまだここに居たいからな。」
男「ばれたら身を隠すってことですか?」
委「許されるならこのまま暮らしていきたい。だが、君のような者はそうそういないだろう?」
男「それ、僕が変人ってことです?」
委「悪く言えばそういう事になる。しかし、悪く思ってなどいないよ。」
男「それは光栄ですね。」
委「最初に気付いたのが君で良かったとさえ思っているさ。」
男「あの時の委員長、うろたえてて可愛かったですね。」
委「それを言うな。」
男「最初は小道具にまでこだわった遅咲きの厨二病かと思いました。」
委「厨二病? 何の病気だそれは。」
男「思春期特有のはしかのようなものです。主な症状は過剰なまでの個性の強調?」
委「よくわからないな。今度調べておこう。」
男「言っておきますが、辞書には載ってないですよ。調べるならはしかの方で。」
委「心得た。」
男「それにしても、委員長って、ほんとに委員長って感じですよね。」
委「同じものを比較しているようにしか聞こえないが?」
男「委員長はいーんちょで、委員長は役職です。さらに言えば眼鏡でもあります。」
委「いーんちょ?」
男「いーんちょっていうのは委員長のことですよ。今決めました。」
委「キミは私を混乱させたいのか? それとも馬鹿にしているのか?」
男「その反応とか、すごく委員長っぽいです。」
委「真面目に聞かなくていい部類の話か?」
男「んー……先生はせんせーだけど、せんせーの役職は先生ですよね?」
委「あだ名の類か? ふむ、人間っぽいな。」
男「いーんちょは人間っぽいのが嬉しいんですか?」
委「よくわからないが、悪い気はしない。模倣することは人間を知る近道だと思うからな。」
男「今でも十分に人間を演じられてはいると思いますけど。」
委「しかし、今まではあだ名など無かった。より人間に近づくことができたわけだ。」
男「人間になりたいんですか?」
委「なれないよ。溶け込んで生きて行くために情報を集めているだけだ。」
男「じゃあ、人間みたいになりたいんですか?」
委「それはわからない。正確には、まだ結論が出ていないと言うべきか。」
男「人間に溶け込んで生きるのは何故なんでしょう?」
委「それは簡単だ。そうしないと生き辛いからだ。」
男「いーんちょもいろいろと大変なんですね。」
委「実感も湧いてないのに同情されるのは気分のいいものではないな。」
男「あ、ごめんなさい。ちょっと軽率でしたね。」
委「いや、人間だったらやりそうな反応を実践してみただけだ。本心じゃない。」
男「ところで、この鱗ってどこから落ちてくるんですか?」
委「衣服に付着していたものが落ちているだけだ。今は鱗は生えていない。」
男「今は?」
委「この姿は擬態だからな。自宅では本性で過ごすのだが、そのとき服に着くのだろう。」
男「仮の姿ってことですか。じゃあ、本当は全然違う見た目なんですか?」
委「上半身は人間と同じだよ。だから偽る必要はないし、偽ってもいない。」
男「じゃあ、顔とか胸は天然ものなんですね。」
委「それは重要なことなのか?」
男「少なくとも僕にとっては。」
委「キミにとっては?」
男「全身が鱗で覆われてるタイプは嫌です。」
男「本当の姿を見せてもらう事ってできます?」
委「可能か不可能かで言えば可能だが、後悔しないか?」
男「後悔するような要素があるんですか?」
委「本性を見たら、私のことを嫌わないか?」
男「見てからでないとなんとも……ザイダベックくらいビフォーアフターが違うんですか?」
委「たとえの基準にわかりづらい物を用いるべきではないな。」
男「ですね。」
委「やめておこう。本性を見られたら相手を殺すか、愛さなければならないからな。」
男「どこの女性聖闘士ですか。」
委「まあ、それは冗談としても、今はリスクを冒したくない。」
男「いーんちょも冗談言うんですね。」
委「覚えたことは実践していかないとね。」
男「どんな感じなのか、聞くだけならいいですか?」
委「そうだな、今は足を生やしているが、本来の私には足が無い。」
男「じゃあ、何が生えてるんですか?」
委「何も生えてはいない。そのまま胴が続いていて尾が付いている。」
男「うーん……ちょっと想像できないな。」
委「だいたいこのあたりから鱗に覆われているぞ。」
男「スカートをたくし上げないでください。」
委「おっと、見苦しいものを見せたな。すまない。」
男「見苦しいとか、むしろ眼福ですが。恥じらいを持つべきかと。」
委「とは言っても所詮擬態だからな。恥ずかしくもない。好きなだけ見るがいい。」
男「とりあえず、スカートを戻し……なんで付いてるんですか?」
委「付いてる?」
男「パンツが不自然に盛り上がってますよね? いーんちょの性別は?」
委「メ…いや、女性だな。」
男「ですよね。」
委「私の擬態は間違っているのか?」
男「女性には付いてちゃいけないものが付いてます。」
委「いけない?」
男「いけなくはないか……愛好者もいるし。」
委「間違っているのだな?」
委「参考のためにいろいろな画像を見たが、細部は見れぬよう加工してあってな。」
男「塗りつぶしてあったり、画素が極端に荒かったりですか?」
委「うむ。だから彫刻を参考にしたのだが、女性をモチーフにしたものはココが省略されている。」
男「だから男性の彫刻を参考にしたというわけですね。」
委「その通りだ。」
男「省略してあるんじゃなくて何もついてないことを忠実に再現してるだけですよ。」
委「では詳しく教えてくれないか。擬態を完全なものにするために細部が知りたい。」
男「僕も実物は見たことが無いので、教えてあげることはできませんね。」
委「そうか、それは残念だ。」
男「擬態ってどうやってるんですか?」
委「?」
男「声が出なくなる代わりに足ができる薬を飲んだり?」
委「今、君と会話をしているのは?」
男「いーんちょですね。」
委「私は今、筆談をしているか?」
男「いえ、喋ってますよね。」
委「そんなおとぎ話と一緒にされても困る。」
男「じゃあ、泡になって消えちゃったりはしないんですね。」
委「少なくとも私は、な。」
委「体組織を丸ごと組み換えたり、作り変えているだけだ。」
男「なんか夢のない話ですね。」
委「ファンタジックである必要はない。」
男「それはそうですが、ちょっと残念です。」
委「何が残念なものか。今でこそこうしているが、最初は大変だったのだぞ。」
男「今も局所的には大変なことになってますが。」
委「これはその……次から改善する。」
男「是非、そうしてください。」
委「二足歩行に慣れない頃はよく転んだものだ。」
男「バランスの取り方が難しいとかですね。」
委「それもあるが、足首にも関節があることを知らなかったりしてな。」
男「姿形だけ真似たら大失敗……と。」
委「力の配分なども習得するまでには時間を要した。」
男「歩く・走る・跳ぶ、全部涙ぐましい努力の賜物なんですね。」
委「あとは排泄もだな。」
男「そんな事まで特訓が必要だったんですか?」
委「我慢する時どこに力を込めるのかが分らなくてな。よく下着を汚……」
男「やめて! そんないーんちょ想像したくない。」
委「そういえばこの眼鏡も、本当は必要ないものだ。」
男「伊達眼鏡なんですか。なら、どうして眼鏡をかけるんですか?」
委「理由は二つあるが、教えられるのは片方だけだ。聞きたいか?」
男「はい。」
委「眼鏡をかけると印象が地味になると聞いた。そして、私はあまり目立ちたくない。」
男「地味な人を演じるための変装アイテムってことですか。」
委「そういうことだな。」
男「まあ、特殊な嗜好の人もいるんですけどね。」
男「目立ちたくないのに毎回委員長に立候補してるのは何故でしょう?」
委「役職を盾にいろいろな事に介入できるだろう? 調査がはかどると考えてな。」
男「熱心ですね。」
委「だが、私はそんなに目立っているか?」
男「人目を引くという意味では目立ってません。」
委「では、どういう意味では目立っているのかな?」
男「ステレオタイプすぎるところですね。」
委「先入観との差異が無いということか、それなら好都合じゃないか。」
男「イメージ通りなら、あれこれ詮索する必要が無いですもんね。」
委「そろそろ下校時刻だ。また明日の放課後だな。」
男「楽しい時間はあっという間ですね。」
委「君はこれが楽しいのか?」
男「このために学校に通ってるようなものですね。」
委「それは良くないな。」
男「ドライな反応ですね。」
委「両親に学費の負担を強いているなら、まずはそれに応えるべきだ。」
男「僕、奨学生なんです。学費を負担するのは未来の僕ですよ。」
委「そうか……だが、本分は勉強であることに変わりはない。」
男「もちろん勉強もないがしろにはしてませんよ。」
委「……であればこそ、私も心置きなく君とのやりとりを楽しめるというものだ。」
男「やっぱり、いーんちょはカッコいいです。」
――――――――――
男「おはようございます。」
委「おはよう。」
男「……ん? 僕の顔、何かついてますか?」
委「何も。ただ、私が挨拶を返すのは君だけだと思ってな。」
男「いーんちょは僕以外には挨拶を返さないんですか?」
委「いや、返せないという方が正しいのだが。」
男「クラスメイトは怖くないですよ?」
委「わかっているくせにそういう事を言う。やはり、君は面白いな。」
男「エー? ナンノコトデスカ?」
委「そこまでとぼける事はないだろう? そういうところは少し腹立たしい。」
男「照れ隠しというやつですよ。」
委「なぜ照れる?」
男「褒められ慣れてないもので。」
委「私としては、君以外にも挨拶を返してみたいのだがな。」
男「返される方ですもんね。」
委「まあ、私の方がもっと歩み寄らなければ無理なのだろう。」
男「その辺のバランス感覚は難しいですね。ヤマアラシのジレンマ?」
委「慣用句か? 放課後までにそれも調べてみよう。」
男「放課後が待ち遠しいですね。」
委「それまでの授業をおろそかにして欲しくはないのだが。」
男「わかってますよ。」
委「私なりに調べてみたのだが、どうも解釈が複数あるようだな。」
男「ハリネズミのジレンマ?」
委「ヤマアラシだよ。」
男「ああ、そうでした。」
委「それに慣用句ではなく、哲学や心理学の類の用語のようだ。」
男「そうなんですか。」
委「君はどういう解釈に基づいてこの言葉を使ったんだい?」
男「解釈も何も、それっぽい言葉を挙げただけで真意なんかないですよ。」
委「いろいろと台無しだな。」
男「肩肘張って問答するのは苦手です。」
男「いーんちょは苦手なものとかってあります?」
委「色々とあるな。」
男「たとえば?」
委「火とかな。熱いのは嫌だろう?」
男「丸焼き的な意味で?」
委「丸ごとでなくとも身を焼かれるのが得意な者がいるか?」
男「いませんね。」
委「おそらくだが、君が期待している返答は、人間と異なる苦手要素だな?」
男「最初からそう訊ねればよかったですね。」
委「哺乳類だ。」
男「イルカとか、シャチとか、クジラですか?」
委「いや、確かにそれらも哺乳類だが、違う。人の世に混じって暮らす犬や猫のことだ。」
男「ケモノが嫌い?」
委「彼らは人間と違って擬態が通じない。見破られてしまう。」
男「可愛がろうとしても逃げられちゃう?」
委「苦手なものの話しだろう? 逆だ、盛大に威嚇される。」
男「意外ですね。犬や猫が怖いなんて。」
委「怖くなどないぞ。」
男「あれ?」
委「だが、行く先々で威嚇されてみろ。存在否定されてるようでこたえるぞ。」
男「とりあえずですね、僕と友達になりませんか?」
委「うむ、申し出は嬉しいのだが、私自身が友達と言うものが良くわからない。」
男「友達は友達ですよ。きっと人間らしさに磨きがかかりますよ。」
委「概念はわかっているつもりだ。しかし、自分に当て嵌めて実践する自信は無い。」
男「難しく考え過ぎです。のび太とジャイアンだって、広義の解釈では友達なんだから。」
委「では、差し当たって私は何をすればいい?」
男「僕のことを友達だと認めてください。定義に関しては納得しなくてもいいですから。」
委「とりあえず、理解者と呼ぶべき時は友達と置き換えて呼んでみようか。」
男「その返事、いーんちょらしくてカッコいいですね。」
男「いーんちょ、いつもお昼はどうしてるんですか?」
委「昼休みという意味なら読書だ。昼食という意味なら食べていない。」
男「午後の授業、お腹すきません?」
委「食生活が違うからな。その心配はない。」
男「お昼は食べちゃダメなんですか?」
委「そんなことは無い。用意する手間や、購買部で使う金を惜しんでいるだけだ。」
男「じゃあ、今度からはお昼一緒に食べませんか?」
委「友達らしく、ということかな?」
男「そうですそうです。食べながらの会話で友情パワー炸裂です。」
委「考えておこう。」
――――――――――
男「♪~……♪~♪~……」
委「…………」
男「♪・♪・♪~……♪~」
委「…………」
男「♪~…おわ!?」
委「む? どうした、やめてしまうのか?」
男「いーんちょ、帰り道はこっちじゃないはずでしょう?」
委「確かに逆方向だな。」
男「何でいるんですか?」
委「君の口笛が聞こえたからな。聴き入っていた。」
男「そのためにわざわざ引き返して付いてきたんですか?」
委「そういうことになるな。」
男「いつからいたんですか?」
委「前の曲が終わったあたりからかな。」
男「恥ずかしくて死にそうです。」
委「恥じる事などない。私はもっと聴きたいと思っている。」
男「聴かれるのが恥ずかしいんですよ。」
委「そうなのか。」
委「曲名はあるのかい?」
男「Pollyanna……」
委「ポリアンナ?」
男「なんか、女性名ですけど、楽天家みたいな意味もあるみたいです。」
委「楽天家なのか? 少し物悲しいメロディに感じたが。」
男「一人っきりのときに流れる曲ですからね。」
委「それはともかく、続きを聴かせて欲しいのだが。」
男「この曲は二人になると流れなくなるんですよ。」
委「では他の曲を奏でてくれ。」
男「曲を変えても恥ずかしいわけで、そういう問題じゃないんです。」
委「曲じゃなくても構わないのだが。」
男「いーんちょって変わってますよね。」
委「しょうが無いさ。人間ではないのだから。」
男「そういうところは是正していきましょう。」
委「君が言うのなら、そうした方がいいんだろうね。でも、なぜだい?」
男「郷に入りては郷に従えです。」
委「帰ったら辞書を引いてみるよ。」
――――――――――
男「今日は休憩時間中、ずっと何か書き留めてましたね。」
委「君はそれをずっと見ていたというわけか。」
男「ずっとじゃないですよ。ストーカーみたいに言わないでください。」
委「ではどうして私がずっと書き留めていたと言い切れる?」
男「見かける度に同じ姿勢で筆を遊(すさ)ばせていれば印象にも残るってものでしょう?」
委「そうか……奇怪に映ってはいなかっただろうか?」
男「それは無いと思いますけどね。」
委「人間がその他の動物と決定的に違うところはなんだと思う?」
男「言葉を喋ることですかね?」
委「会話ならイルカ同士もしているらしいぞ?」
男「じゃあ、料理でしょうか? 調理して食べる動物っています?」
委「私が望む答えはもっと壮大なものだな。それには料理も含まれる。」
男「当たる気がしないですね。」
委「単純だぞ。文化だ。」
男「言われてみればそうですかね、今の暮らしは文化が積み重なったもの。」
委「時の流れとともに変化し、人間の営みもそれに伴ってうつりかわる。」
男「で、なぜ今そんな話をしだすんですか?」
委「人間を理解するにあたって、重要なものの存在に気が付いた。」
男「それが文化だと?」
委「いや、文化はずっと学び続けているよ。今だってそうさ。もっと狭い話なんだ。」
男「要領を得ませんね。」
委「芸術だよ。」
男「いろいろと飛躍してませんか?」
委「生き物というのは基本的に、食べる・寝るを繰り返している。」
男「それだけじゃ、増えずに絶滅してしまいますね。」
委「だが、人間はそれ以外にも力を注ぐものがある。それが芸術だ。」
男「つまり、理解を深めるために芸術にも食指を伸ばそうと?」
委「その通りだ。」
男「じゃあ、今日はずっと芸術に没頭してたんですか。」
委「現段階で私にできそうな創作活動を考えてみたのだよ。」
男「あんまりいい予感はしないですね。」
男「絵でも描いてたんですか?」
委「私に絵心など理解できないよ。ただの模写にしかならない。」
男「作曲とか?」
委「私は楽譜を読むことができない。読めないものが書けるはずもないだろう?」
男「いーんちょ、この流れはよくないです。非常によろしくない。」
委「私はね、君の意見は、いつだって真摯に受け止めてきたつもりだ。」
男「そうだったんですか。」
委「君は無知な私に対して、その理由までもわかり易く教えてくれたからな。」
男「そんな高尚なものでもないかと。」
委「だからこそ、聞く前から否定する今の君に失望している。」
男「ごめんなさい。ちょっと無神経でしたね。」
委「でも、今から君は挽回してくれるんだろう?」
男「なんですかその無茶振り。」
委「話が逸れたな。私が今日試みたのは……」
男「ポエムですよね?」
委「見抜かれていたか。」
男「ある意味、登竜門ですからね。」
委「君はそれをよくないと断じたが、その意図を聞かせてくれ。」
男「それは遅効性の猛毒のようなものです。」
委「なんというか、とても抽象的だな。」
男「それは時に時限爆弾になり、時に古傷に姿を変えて、いーんちょを襲います。」
委「にわかには信じ難いな。」
男「僕は、自ら綴った詩によって、身を滅ぼしかけた執事の話を知っています。」
委「私はそれほどの劇物を作り出してしまったと言うのか?」
男「いーんちょはまだ間に合います。早急に処分しましょう。」
委「そうか、遅効性だから早めに対処することで中和できるのだな?」
男「その通りです。」
委「危ないところだった。」
男「まあ、サマーの詩のような特異点もありますが。」
委「芸術というのは恐ろしいものなのだな。」
男「爆発しますからね。」
委「そして、私はふりだしに戻ってしまった。」
男「なんで急に芸術に興味を持ったんです?」
委「君がいると人間の調査が捗るからな。裾野を広げる余裕ができた。」
男「つまり僕のせいなんですか。」
委「君のせいじゃない。君のおかげだ。」
男「まずは娯楽からアプローチしたらどうですか?」
委「芸術は娯楽の一種なのでは?」
男「そういう堅いものじゃなくて、漫画とかゲームとか小説とかです。」
委「身の丈に合ったものから始めろと言うのだな?」
男「いえ、そういった方面なら僕も協力しやすいってことです。」
委「君が協力してくれるなら願ってもない事だ。」
男「学校には持ち込めませんけどね。」
委「丁度良かった、ちょっと教えてほしいのだが、いいかい?」
男「学校に漫画持って来ちゃダメじゃないですか。」
委「授業中に読んだわけじゃない。それに、これは必要なことなんだ。」
男「いーんちょはそういうのを注意する立場だと思うんですけどね。」
委「では、君の家に行こう。校外なら問題ないだろう?」
男「それは……無理ですね。ちょっと散らかってますし。」
委「私はそんな事は気にしないぞ。」
男「僕が気にするんです。」
委「むう……困ったな。」
男「からかっただけです。僕も持ってくることありますし。」
委「ならば、今度から厳重注意だな。」
男「まあまあ、教えますから見逃してください。」
委「では早速だが、ここの最後のいちじくの葉という言いまわしを説明してくれないか。」
男「いちじくの葉はですね、絵画なんかで陰部を隠すのに使われるものでして……」
委「ふむ。」
男「障害物が取り払われて丸見えになり、悶々とした気分が晴れて満足という事じゃないでしょうか。」
委「なるほど。よくわかった。」
男「しかし、ハイレベルなものを読んでますね。」
委「次はこれなんだが、ここのケツの穴にツララを突っ込まれた気分と言うのは?」
男「…………」
委「君にもわからない揶揄なのか。」
男「えと、台詞の勢いを感じられれば、それでいいんじゃないですかね?」
委「試してみればわかるだろうか?」
男「試さないでくださいよ。」
委「私は試さないよ。擬態で試しても正しい感覚が得られるとは思えない。」
男「次にお前は、君に試してみて欲しいのだ。と言う。」
委「君に試してみて欲しいのだ……ハッ!」
男「パーフェクトです、いーんちょ。」
――――――――――
委「今日は私も昼食を持参した。」
男「お、いいですねー。じゃあ、一緒に食べましょうか。」
委「それは構わないのだが、人目はなるべく避けたい。」
男「僕なんかと噂になるのは嫌ですか。」
委「なるほど、そういう見識もあるのか。」
男「納得しないでくださいよ。」
委「実を言うと、弁当と呼べる代物ではないのでな。人に見られたくない。」
男「失敗作が恥ずかしいんですか? なんとなく、らしくない感じですね。」
委「なるほど、そういう見識もあるのか。」
男「その一言で、サプライズの予感MAXですね。」
委「保健室か……薬品の匂いを嗅ぎながら食べるのか?」
男「屋上はなぜか白い煙が立ち込めてますし、中庭は人目がありますからね。」
委「まあ、タバコの匂いよりは我慢できる。さっさと食べて退室しよう。」
男「弁当箱の中、全部卵なんですね……」
委「君たちと同じものが食べられないわけではないが、消化にコツがいるからな。」
男「そういえば食生活が違うって言ってましたっけ。」
委「それに、君たちが食べるものは私にとって味が濃すぎる。」
男「だから茹で卵なんですか。」
委「いや、これは茹でてないぞ。」
男「生卵!?」
委「火を使う事に慣れていないのでな。現状ではこれが最適解だ。」
男「ワイルドというかダイナミックというか……」
委「私ばかり見ていないで君も箸を進めるべきだ。」
男「そうですね。なにか欲しいものがあれば、分けましょうか?」
委「いや、気を使わないでくれ。私はこれで十分だ。」
男「…………」
委「……どうした?」
男「あー……はいはい、どうぞ。カマボコが気になったんですね。」
委「なっ? むぅ……そこまで言うなら、いただくとしよう。」
男「お茶飲みます?」
委「今度こそ遠慮しておくよ。水の方が好きなんだ。」
男「ふいー……和やかな気持ちになりますね。」
委「で? これから何が始まるのかな?」
男「もう終わりましたけど?」
委「……え?」
男「え?」
委「では、何のために一緒に昼食を?」
男「食事こそが目的であって、手段じゃないですよ?」
委「なるほど、わからん。」
――――――――――
男「いーんちょ、また鱗落としてましたよ。」
委「ん、またか……」
男「気をつけてくださいね。」
委「言われるまでもないのだが、落ちていると目立つものか?」
男「どうでしょう? 僕が意識し過ぎなのかもしれないですね。」
委「見つけて拾ってくれるのはありがたく思っているぞ。」
男「ちょっとした対策を思い付いたんで、これ持って帰ってもいいですかね?」
委「正直なところ、あんまり気分のいい事ではないな。」
男「そうなんですか?」
委「たとえば、君の抜け毛を誰かが拾い集めて持って帰る。そう考えたら?」
男「相手によりますが、興奮を抑えきれませんね。」
委「……じゃあ、好きにするといいさ。」
男「あ……いーんちょ、引いてます?」
委「若干な……しかし、君の言う対策のほうに興味がある。」
男「悪用はしないんで、安心して預けてください。」
委「心配してはいないが、悪用というのがどういう用途を指すのかにも興味が湧いた。」
男「あー……それはですね……」
委「どんな用途であれ、悪用される可能性があるなら私にも責任が生じると思う。」
男「えと、たとえば……味噌汁に入れてダシを取ったりとか?」
委「勘違いをしているようだから、一つ忠告しておこう。」
男「は、はい。」
委「それは君が考えているほど悪い事ではない。それに、いいダシが出るとも思えない。」
男「やっぱり、いーんちょはサイコーです。」
委「ところで対策というのは教えてはくれないのか?」
男「それは明日のお楽しみです。」
委「明日? 一朝一夕でなんとかなるものなのか?」
男「あー……あんまり期待されても困るんですけどね。」
委「期待をしてはいけないが、安心して任せろ……か?」
男「じゃあ、不安に押しつぶされそうになりながら明日まで待ちますか?」
委「どのみち今すぐは教えてはくれないようだな。」
男「そうです。」
委「わかった、今日のところは悪用の件ともども誤魔化されておこう。」
男「わーい、バレてた。」
――――――――――
男「いーんちょ、いま時間大丈夫ですか?」
委「昨日言っていた対策のことかな?」
男「そうです。」
委「大丈夫だと言いたいところだが、目安箱の集計がまだ終わらなくてね。」
男「それって真面目に投函してる生徒いるんですか?」
委「ほとんどはいたずら書きか、ゴミが投函されているが、真っ当なものもあるよ。」
男「手伝いましょうか?」
委「それは駄目だ。この作業は守秘義務を尊重しなければいけないからね。」
男「じゃあ待ってます。見とれててもかまいませんか?」
委「なるべく早く終わらせるとしよう。」
男「終わりました?」
委「とりあえずはね。これ以上のことは次回の委員会で議論すべきだろうし。」
男「じゃ、さっそくこのイヤリングを見てください。」
委「君が加工したのか? 器用なものだな。」
男「いえ、百均で買ったやつに瞬着で貼り付けただけですよ。」
委「で、これがどう対策になるというのかな?」
男「いーんちょがコレを付けていれば、落ちてる鱗はコレの部品だと思い込むんじゃないでしょうか。」
委「ふむ。隠すのではなく、わかりやすい答えを晒しておくわけか。」
男「そしたら、拾って届けてくれる人も出てくるんじゃないかと。」
委「発想は悪くないが、これを使うことはできないな。」
男「ちょっとダサすぎましたか?」
委「いや、悪くはないと思う。私の美的感覚はアテにはならないだろうが……」
男「お洒落をして目立つのを避けたい?」
委「それ以前の問題だよ。」
男「?」
委「ピアスやイヤリングは校則違反だ。」
男「あー……」
委「ヘアピンやカチューシャも華美な装飾が施されたものは禁ず、とある。」
男「八方塞がりですね。」
委「どこも塞がってはいないぞ。キーホルダーやストラップならお目こぼしがある。」
男「そっか、身につけるものに拘りすぎてましたね。」
委「君のセンスに任せるから、作ってみてはもらえないか?」
男「それは構いませんが、もう鱗ないですよ。」
委「じゃあこれを使うといい。目安箱に入れてあった。」
男「僕以外にも拾ってる人がいたのか……」
委「まあ、ゴミとみなして捨てたというところかな。」
男「それを捨てるなんてとんでもない!」
委「いやいや、私もゴミ同然だと思うのだが……」
男「でも、ちょっと少ないですね。」
委「必要なら言ってくれ、明日むしって持ってくる。」
男「痛くないんですか?」
委「ニキビを潰す程度のものだよ。」
――――――――――
男「いーんちょ、最近調子悪いんですか?」
委「そう見えるかい?」
男「お肌カサカサだし、机の周りも抜け毛すごいじゃないですか。」
委「よく見ているな。」
男「そこは僕の個人的な視点が大きいです。でも、誰が見ても心配すると思いますよ。」
委「しかし、言ってきたのは君だけだぞ?」
男「ほら、いーんちょ近寄りがたいオーラ出てますから。」
委「それは仕方がない。交友を深めていけばボロを出さないとも限らない。」
男「でも、みんな心の中では気にかけてると思います。」
委「私がどうなろうと気にする必要はないんだがな。」
男「冷たいこと言いますね。」
委「そうか?」
男「友達を気遣うのは当たり前のことですよ。」
委「そうか、友達か……」
男「いきなり居なくなったりしないですよね?」
委「居なくなるとは?」
男「遠くへ行っちゃったり、入院したり、あと……」
委「あと?」
男「死んじゃったり。」
委「なんだ、そんな事を心配していたのか。」
男「そんな事って言い切れる事態かどうかもわからないから不安なんじゃないですか。」
委「じゃあ、安心してくれてかまわないぞ。そんな事と言い切れる程度の事態だ。」
男「ならいいんですけど……正直、見るに耐えないというか……」
委「体調の管理は万全だ。」
男「そうは見えないから、心配してるんですけどね。」
委「もう一度言う、安心してくれ。それとも、私は信用できないか?」
男「わかりました。ひとまず安心しときますね。」
委「よろしい。」
男「でも、何かあったら言ってくださいね。力になれるとは思えませんが。」
委「ところで君は今週末、何か予定があるかい?」
男「特に何もないです。」
委「では、ちょっと私に付き合ってはくれないか。」
男「お? それはデートのお誘いですか?」
委「そう思うのか?」
男「少しくらいは期待したっていいじゃないですか。」
委「私が人間なら、そういう反応を喜ぶべきなのだろうな。」
男「その発言で僕の期待は粉々に打ち砕かれてしまったわけですが。」
委「で? 時間は割いてもらえるのかな?」
男「いいですよ。ご一緒します。」
――――――――――
委「やあ、待たせたかい?」
男「いえ、僕もさっき来たところです。ほんの2時間ほど前にね。」
委「おかしいな、1時間ほど前に私が来たときは見かけなかったが。」
男「すいません嘘です。というか、一回来て帰ったんですか?」
委「いや、私のも嘘だ。人間らしいやり取りだろう?」
男「そうですね。花マルを差し上げますよ。」
委「では行こうか。」
男「あ、そういえば聞いてなかったんですけど何をするんですか?」
委「大人の階段を上る手伝いを頼むよ。」
男「えーと……目的地としては何処へ行くんですか?」
委「私の家……というか、部屋だな。」
男「できれば緊張する猶予くらい与えて欲しかったですね。」
委「何もないところだが、上がってくれ。」
男「では、お邪魔します。」
委「どうかな? 緊張しているかい?」
男「多少は……それよりも本当に何もないことに驚いてますが。」
委「絶対に必要なもの以外は置かないことにしているからな。」
男「でっかい水槽でもあるのかと思ってました。」
委「水槽なんてそれこそ必要のないものだろう。」
男「自宅では本性で過ごすって聞いてたもので。」
委「君は勘違いをしているよ。まあ、敢えて明言を避けてきた私も悪いのだが。」
男「じゃあ、答え合わせをお願いします。」
委「君は私を何だと思っていたんだい?」
男「人魚ですね。マーメイド。」
委「だろうね。」
男「違うんですよね?」
委「失望させてしまうかもしれないが、私は蛇女だ。」
男「ああ……え?」
委「今日はこれから本性を披露しようと思っている。」
男「いいんですか?」
委「それを見て醜いと思うかもしれないが、できればこれまで通り接してやって欲しい。」
男「わかりました。」
委「それが無理なら、嫌っても構わないが、私のことは今後も秘密にしておいて欲しいな。」
男「嫌うってことはないと思います。秘密に関しても心配無用ですよ。」
委「そう願いたいものだ。私は君を手にかけたくはない。」
男「発言には一層の気を遣うようにしますね。」
委「本邦初公開……でもないか。どうかな?」
男「なんていうか……長いですね。」
委「他に何か感想はないのかな?」
男「強いて言えば、上は着てください。」
委「気持ち悪くはないのかい?」
男「落ち着いたらそんな感想も浮かぶかもしれません。とりあえず上は着てください。」
委「混乱しているから、冷静な判断は下せないということか。」
男「そうです。僕は自分で思ってたより小心者でした。それより上をですね……」
委「わかったわかった。これでいいかな?」
男「おお、新しいジャンルを垣間見た気がします。」
委「たかがシャツ一枚でか?」
男「で、今日僕を招いた目的は何でしょう? このお披露目だけじゃないですよね?」
委「君は察しがいいな。さっきも言ったが、手助けを頼みたい。」
男「勢力争いに加勢しろとか、そういうのは多分無理ですけど。」
委「察しがいいと言ったのは取り消すことにしよう。」
男「今はその程度のユーモアセンスしか働かないんですよ。大人の階段でしたっけ?」
委「コホン、脱皮をする。」
男「え?」
委「脱皮の直後はひどく衰弱してしまう。その間の世話を焼いてほしいのだ。」
男「じゃあ、もうやっちゃってください。今の僕に考える時間を与えないほうがいいです。」
委「それもそうだな。」
――――――――――
男「いーんちょ、グロいです。あと、エロいです。」
委「別に……経過まで見る必要は……なかったのだが。」
男「この抜け殻はどうするんですか? 燃えるゴミの日?」
委「すまない……軽口につき合う余力も……ない。」
男「何からすればいいですか?」
委「ベッドまで……たのむ……尾は引きずってもいい。」
男「身体ヌルヌルですけど拭いたほうがよくないですか?」
委「表皮が定着するまでは駄目だ……今はすごく刺激に弱い……」
男「となると僕が素手で触れるのも激痛なのでは?」
委「抜け殻の内側から……残っている粘液をすくって、手に塗れば……な?」
男「カンベンしてください。」
委「贅沢を言える立場じゃないな、私が耐えよう。」
男「あーもー! わかりました! やりますよ!」
委「ありがとう。重くはなかったかな?」
男「思ったよりは重かったですね。」
委「君は正直だな。」
男「それより、なんかすいませんでした。」
委「どうして謝るんだい?」
男「いや、抱きしめるような感じになっちゃってたので。」
委「気にしているのかい?」
男「あれは、不可抗力というか、ヌルヌルで上手く支えられなかったからで……」
委「私を床に放り出さなかった事に感謝したいくらいなのだが。」
委「ふむ、だいぶ楽になって来たな。」
男「もう大丈夫なんですか?」
委「本調子には程遠いが、あと小一時間もすれば起きられそうだ。」
男「じゃあ、僕はそろそろ……」
委「帰ると言うのかな?」
男「いけませんか?」
委「引きとめたら居てくれるのかい?」
男「悩むと思います。」
委「とりあえず、服を洗濯した方がいいと思うよ。」
男「あー……確かに。」
委「君たちは裸を見られるのは嫌だろう? だったら、今のうちに洗ってしまうといい。」
男「脱ぐとしても上だけですが、ちょっと言ってることがわからないですね。」
委「私はまだ目を開けることができないからね。」
男「じゃ、洗ってしまいます。」
委「その後で構わないから、私の眼鏡を持ってきてくれないか。」
男「あれは伊達眼鏡なんじゃないんですか?」
委「それでもあれは必要なものなのさ。」
――――――――――
委「遅くまですまなかったね。今日はすっかり君に甘えてしまった。」
男「僕の方こそ、頼ってもらえて少し嬉しかったですよ。」
委「今なら、正常な判断はできそうだね。」
男「何の事ですか?」
委「私のことを気持ち悪いとは思わないか?」
男「思わないです。」
委「本当に?」
男「思った方がいいんですか?」
委「そんな事はないさ。」
男「でも、とても驚きました。」
委「本当に助かったよ。また次も、お願いしてもいいかい?」
男「こういうのは頻繁にあるんですか?」
委「年に数回かな。」
男「今まではどうしてたんです?」
委「どうしようもないときは自分で何とかしてきた。」
男「どうにかなるときはどんなとき?」
委「今日の君のように、手伝ってくれる人がいたときだ。」
男「それはちょっとショックですね。」
委「どうしてだい?」
男「理由がわからないなら、それはきっと勉強不足だからです。」
委「説明してはくれないのかな?」
男「宿題ということにしましょう。」
委「そういえば、ここへ人を招いたことはあるが、無事に帰るのは君が初めてだ。」
男「他の人はどうなったんですか?」
委「それが私からの宿題というのはどうかな?」
男「そういう問題じゃないと思いますが。」
委「私は今日、君に一つだけ嘘をついている。それがヒントだ。」
男「全然ヒントになってませんよ。」
委「じゃあ、ヒントを足そう。殺したりはしていないよ。」
男「本当ですね?」
委「嘘は一つだけだよ。」
男「月曜日には登校できそうですか?」
委「うん、大丈夫だ。」
男「じゃあ、月曜日に答え合わせをしましょう。」
委「送ってあげられなくてすまないね。気をつけて帰ってくれ。」
男「いいんです。無理はしないでください。おやすみなさい。いーんちょ。」
委「ああ、おやすみ。」
委「…………」
委「どうしてだろうか? 不意に彼を困らせてみたくなった。」
委「……これは勉強の成果なのかな?」
――――――――――
男「いーんちょ、まだ体力が戻ってないんですか?」
委「そう見えるかい?」
男「見えます。」
委「難しい宿題に悩まされて、先週末は寝付けなかったんだ。」
男「奇遇ですね、実は僕も難問に頭を抱えてて寝不足なんです。」
委「だからと言って授業中の居眠りは看過できないな。」
男「寝てません。ちょっとウトウトしてただけです。」
委「じゃあ、明日からは授業に集中できるよう答え合わせをしよう。」
委「私のついた嘘は、まだ目を開けられないというものだ。」
男「じゃあ、見てたんですか?」
委「見てはいないさ。」
男「で、それが無事に帰れなかった人達とどう関係するんですか?」
委「私は目が合った相手に暗示を掛けることができるんだ。」
男「じゃあ、僕にも何か暗示を掛けてるんですか?」
委「心配しなくてもいいよ。この眼鏡のもう一つの理由がまさにそれだ。」
男「眼鏡越しだと暗示にかからない?」
委「ご名答。」
男「実践とか、お願いしてもいいですかね?」
委「君でかい?」
男「疑ってるわけじゃないですよ。一応、身を持って知っておきたいなと。」
委「じゃあ、眼鏡を外すから、私の目を見てくれないか。」
男「なんか照れますね。」
委「そんな余裕があるのかい? 君の手足は石になってしまったぞ?」
男「え? うあ……これ、マジで……」
委「それにとても喉が渇いている。そうだろう?」
男「そういえば……」
委「もう治ったけどね。」
男「あれ……ホントだ。」
男「何でもできちゃうんですか?」
委「あくまで暗示だから、相手の知識に寄るよ。赤ん坊には効かない。」
男「他の人達にはこれにかかったんですね。」
委「拒絶されてしまったからね。私に関する事を全て忘れて帰ってもらったんだ。」
男「僕にそうしなかったのは……」
委「君は私の姿を見ても態度を変えなかった。だから必要ないと判断したのさ。」
男「僕の場合、ある程度タネ明かしがあったからじゃないかと。」
委「しかし、蛇女とまでは知らなかった。むしろ人魚であることを期待していただろう?」
男「あんまり関係ないんじゃないですかね。」
委「期待を裏切られたとは思わなかったのかい?」
男「まあ、多少は……」
男「でも、裏切られたのはいーんちょじゃないですかね?」
委「どういう意味だい?」
男「あれはいーんちょにとって弱味になる部分だと思うんです。」
委「そうなるね。」
男「そこまでさらけ出して手のひらを返されるのは辛いと思います。」
委「……ん?」
男「いーんちょ?」
委「そうか、なるほど、そういうことか。」
男「もしもーし? いーんちょ?」
委「ああ、すまない。」
男「何か閃いたんですか?」
委「私は今までの……君以外の人とはそれほど親密になれていなかったんだろうね。」
男「んー……それに関しては僕からはなんとも。」
委「でも、親密になれなかったのは当然のことなんだ。」
男「はあ。」
委「私は君と交流を持つ前は、相手との距離に曖昧な認識しかもっていなかった。」
男「あー……それはありそうですね。」
委「そんな関係でいきなり本性を晒しても、一方的な押し付けでしかないじゃないか。」
男「お、なんかレベルアップできたっぽいですね。」
委「一皮むけたのさ。文字通りね。」
男「次は僕の解説になるわけですが。」
委「よろしく頼む。」
男「さっき弱味って言いましたけど、僕はそれを見る資格を持ってると思ったんです。」
委「資格というと?」
男「弱味を見せても構わない、いーんちょにとって特別な人間なんだと。」
委「その通りだな。」
男「でも、その特別は僕だけじゃなかった。」
委「結果としては、現時点では特別なのは君だけだと思うが?」
男「まあそうですね。だからこれは出題ミスです。」
委「それにショックを感じた理由がわからないのだが。」
男「出題ミスなんです。追及は無駄です。徒労です。」
――――――――――
男「読書の習慣が復活したんですね。」
委「でも、実用書を読むのはもうやめたんだ。」
男「何を読んでるんですか?」
委「小説だよ。」
男「僕としては漫画を読むほうが楽ですけど。」
委「本は知識を増やすために読むものだと思い込んでいた。」
男「面白いですよね。物語でも知識でも文字に違いは無いはずなのに。」
委「文字にはこんな使い方もあったんだ。漫画を読んだからそれに気づけたんだと思うよ。」
男「僕はどちらかと言うと、活字は苦手ですけどね。」
委「文章から得られる情報を、情景として思い浮かべる……前はできなかったことだ。」
男「そんな事は無いと思いますけど。」
委「物語をなぞる事は、私にとっては知識を得る事と等しい価値をもつものだと思う。」
男「擬似体験ってことですか?」
委「これに書かれていることを実際の体験で得ようと思うと、きっと膨大な時間が必要だろう。」
男「その機会自体が無い事だってあり得ますからね。」
委「人の感情がどう変化するのか、その参考にもなるよ。」
男「あ、それはあんまり参考にしない方がいいです。」
委「そうなのか。」
委「近頃は、自分の行動がどんな結果に結び付くのかを想像することもあるんだ。」
男「本の中の世界に入り込んじゃう?」
委「それとはまた別だよ。もし私が授業中や休憩中にこうしたら、他の人はこうするとか。」
男「シミュレーションですか。」
委「そうだね。」
男「逃走中の銀行強盗がこのクラスに立て籠ったら、どう対処するか。みたいな?」
委「なっ!?」
男「まあ、それは冗談としても……」
委「君は私の心が読めるのか?」
男「……いーんちょ、それはダウトです。」
――――――――――
委「最近ね、人の感情というものがわかりかけてきたと思うんだ。」
男「わかった。とは、言い切らないんですね。」
委「そんなに傲慢ではないさ。推し量れるものでないことを理解しているからね。」
男「えーと、今日は何かデリケートなお話なんです?」
委「感情について考えているとね。君の事が浮かんでしまうんだ。」
男「それは僕にとって喜んでもいい事なカンジですか?」
委「期待させたのなら詫びなければいけない。むしろ失礼な事を言ってしまうかもね。」
男「ぬか喜びには慣れました。気にしないで続けてください。」
委「岡目八目という言葉を知っているだろうか?」
男「いきなり現国の話になった!?」
男「関係ない人の方が、当事者よりも物事を正確に見られることですよね。」
委「君の話はまさにこれだと思うんだ。」
男「どういう事ですか?」
委「君は何事においても客観的すぎる。私にはそう感じられる。」
男「うーん……まあ、そうかもしれないですね。」
委「同年代の人と比べても、随分と達観しているしね。」
男「僕の物言いはウザいですか?」
委「そんなことじゃない。そうじゃないんだ。」
委「単刀直入に聞くが、君は本当に人間なのか?」
男「また話がブッ飛びましたが……」
委「君がくれるアドバイスは、先達や先輩が体験談に基づいて下すそれに思える。」
男「そんな大層なものじゃないですって。」
委「君の感情も、どこか現場の外にいて、全体を見ながらコントロールできているような……」
男「とりあえず、僕は人間ですよ。性格については育ちの悪さによるものかと。」
委「悪いなんて思ってないぞ。」
男「じゃあ、育ちの良さによるものってことで。」
委「とにかく、人間なのは間違いないんだね。」
男「僕が人間ってことについては、安心ですか? 残念ですか?」
委「どっちもある。複雑なところだな。」
男「前に僕は奨学生だって言ったの、覚えてますか?」
委「覚えている。私もそうだからな。」
男「あ、それは初耳だ。」
委「続けてくれないか。」
男「あ、はい。僕は両親に早くに死なれちゃって、親戚に預けられたり施設に入ったりしたんです。」
男「だからですね、人の顔色を窺ったり、こじれない人付き合いの方法を身につけなきゃいけなかった。」
委「それを私にも教えてくれているというわけか。」
男「でも、教えてるだけであって、いーんちょにはそういう接し方はしてないつもりですよ。」
委「そうなのか。」
男「無意識にやっちゃってたことがあったとしたらノーカンでお願いします。」
委「教えてくれるのはなぜかな? 私にそう接しないのはどうしてなんだい?」
男「怒らないでくださいね?」
委「顔には出さないよう努力しよう。」
男「自分と同類だと思うようになったからです。」
委「私と君が、かい?」
男「はい。」
委「だったら怒る理由が無い。むしろ嬉しく思うよ。」
――――――――――
男「♪・♪~♪・♪~……」
委「…………」
男「♪・♪~♪・♪~……」
委「口笛は恥ずかしいんじゃなかったのかい?」
男「ああ、今は別にいいんです。そういう気分なんで。」
委「それも何かの曲なのかな?」
男「これはBein'Friendsって曲ですね。」
委「じゃあ、聴き入ってもいいのかな?」
男「どーぞ……♪・♪・♪~……」
――――――――――
委「やはり、君に訊くのがよさそうだ。教えてくれないか?」
男「成績ならいーんちょのほうが優秀じゃないですか。」
委「授業の内容だったら、私がわからないほど難しいものを君に訊ねることは無いよ。」
男「相手が落ち込むような台詞を平然と言ってのけるッ! そこにシビれる!」
委「憧れる?」
男「そっちのお勉強も順調なようですね。」
委「そうでもないんだ。だから君に教えてもらいたいのさ。」
男「わかりました。教えましょう。」
委「萌えるとは何だ?」
男「え?」
委「もちろん草木が芽吹くことではない。」
男「可愛い! の、類義語ですかね。」
委「可愛いというのは形容詞だぞ?」
男「じゃあ、可愛いく思う。と、言うべきでしょうか。」
委「どのように使い分けるんだ?」
男「決まりはないと思います。個人の裁量ですね。」
委「なぜそんな言葉ができたのだろうね?」
男「可愛いを口にするのは恥ずかしい、欲情すると口に出すのは後ろめたい。そんな感じでは?」
委「真意は伏せたいが、評価はしたいということかな?」
男「僕がそう思うだけであって、それが正しいとは言えないですけど。」
委「解釈が違うかもしれないのに、意思疎通に使える柔軟性を持つ言葉か……」
男「それほど真剣に考えることもないかと。」
委「じゃあ、これに関しては深く考える必要はなさそうだ。」
男「これ? それ以外にもあるってことですか?」
委「いくつかある。書き留めてきたからね。」
男「わかりました。わかる範囲でよければ教えます。」
委「次はやおいというものについて教えてもらいたい。」
男「ちょ! 一体どんな本からその言葉を拾ってきたんですか!?」
委「特に参考図書があるわけじゃない。単語として見掛けただけだよ。」
男「それは主に作品のジャンルを表す言葉です。山無し、意味無し、オチ無し、の頭文字です。」
委「それだけか?」
男「そういった、起承転結の無い物語を表す言葉です。」
委「そんな物語に需要があるのだろうか?」
男「ないです。だから、これも深く考えちゃダメです。」
――――――――――
男「おはようございます。いーんちょ。」
委「ああ、おはよう。」
男「なんとなくですけど、機嫌がよさそうですね。」
委「実はさっき、君以外のクラスメイトに挨拶を返したんだ。」
男「よかったじゃないですか。」
委「きっと、君のおかげなんだろうな。」
男「もっともっと馴染んでいけるといいですね。」
委「でも、それは難しい事だ。私には絶対に打ち明けられない事があるからね。」
男「そこに引け目を感じる必要はないですよ。」
委「そうなのかい?」
男「友達同士でも多少の隠し事はあるもんです。」
委「多少どころの話じゃないと思うけれどね。」
男「僕からすれば多少どころの話です。」
委「そうか。ありがとう。」
男「どういたしまして。」
委「今日は折り入って話があるんだ。」
男「何でも言ってください。」
委「少し自信がついたからね。自力で友達と呼べる相手を作ってみようと思ってね。」
男「それで僕に相談がしたいと?」
委「いや、相談はしない。あくまで自分ひとりで挑んでみるつもりだ。」
男「少し危なっかしい気もしますね。」
委「私もそう思う。でも、失敗から学べることもあると思う。」
男「確かに。」
委「だから、君との友達関係を一旦解消したい。」
男「え?」
委「こういう事は、手続き的に対応できるものじゃないことはわかっているよ。」
男「でも、相手が僕なら納得してくれるだろう。と?」
委「その通りだ。」
男「しょうがないですね……断ったら、いーんちょが困りますよね。」
委「人間の友達関係について、君からは色々なことを学ばせてもらった。」
男「これからは実践あるのみってことですね。」
委「それもあるが、君には今後、恋愛関係について教えてほしいんだ。」
男「え!?」
委「かか、勘違いしないでくれ! その、あくまで人間の理解を深めるためだ。」
男「……あれ?」
委「でも! 卵を産む手前くらいまでなら!」
――――――――――――――――――――おわり
こういうの大好きだな
続編の予定はあるか?
個人的にはやってほしい
やっぱりいろいろみなまで言わない部分があるので不明な点があれば解説します
>>153
基本続編はやらない
嬢ちゃんのやつはショートコントっぽい奴だから追加を作ったけど
こういうストーリー性のあるやつは一話完結
また今度違うのでいいから書いてくれ
乙
Entry ⇒ 2012.04.10 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
不良女「卒業したらお礼参りに行くからな!」男「!?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1333711933/
不良女「んな事知ってるに決まってんだろっ!」
男「それじゃあ本当の意味でのお礼参りなんだな?何でだよ?」
不良女「はぁ!? 忘れたとは言わせねぇぞ! この前オレにやった事を!」
男「………あぁ、この前のカツアゲを邪魔したことか?」
不良女「あの後サツに連れてかれてよぉ!酷い目にあったんだよっ!」
男「自業自得じゃねぇか」
不良女「るせぇっ!!分かったな!後でぜってぇブッ殺す!」
男「それで?お礼参りって一体何するつもりだ?」
不良女「それは>>1000!」
男「わざわざ俺の家にくんのかよ」
不良女「ったりめーだっ!テメェの家族の前で血祭りにあげてやるよ!」
男「ハァ、めんどくせ。んな事に構ってられっか」スタスタ
不良女「おいっ!? 逃げんじゃねぇっ!」ガシッ
男「なんだよ?」
不良女「お礼参りさせろってんだよっ!」
男「勝手にしろよ…」バッ
不良女「あっ!」
男「」スタスタスタ
不良女「」ポッツーン
不良女「アイツんち、どこだよ………」
不良女「つー訳で学校に来たのは良いんだが……」
モブ「ワイワイガヤガヤギッシンバッタン!」
不良女「あいつのクラスがどこかわかんねぇ…… ひとまず自分のクラスに行くか」
不良女「……って、オレのクラスって何組だったっけ…?最近来てねぇから忘れた…」
モブ「アヘアヘワイワイニャンニャンブー」スタスタ
不良女「おいっ!そこのお前」
モブ「ひぃ!?ななな、何ですか!?」
不良女「オレのクラスって何組だ?」
モブ「えつ!? えっと、その……」
不良女「んだよっ!とっとと答えろっ!」
モブ「ひぃ!? ししし知りませんっ!!許してぇー!!」ダッ
不良女「あっ!? おいっ!? …チッ」
不良女「あぁっ!? なんか文句でもあんのか?」
先生「いくら出番のないモブとは言っても脅して良いことにはならん」
不良女「チッ!うっせぇ! 」
先生「大体お前、何で学校にいるんだ。お前のようなクズが来るところじゃないんだぞここは?」
不良女「んだとっ!? てめぇ……ケンカ売ってんのか!?」
先生「ふんっ 吠えるしか芸のないクズが」
不良女「てめぇ……」プルプル
不良女「(ん?あっちから来るのは?)」
男「」スタスタスタスタ
男「」スタスタスタスタ スルー
男「」スタスタスタスタ
不良女「ちょっと待てぇええ!!」ガシッ
男「なんだうるさい……」
不良女「スルーするんじゃねぇよ!ここ助けるとこだろうが!」
男「生憎お前を助ける義理なんかないんだよ」
不良女「ふざけんな!それでもお前武士か!?」
男「武士じゃない。 ハイ論破」スタスタスタスタ
不良女「あっ!? おいてめぇ!?」
先生「待て、話はまだ終わってないぞ」ガシィ
不良女「てめっ!?離せっ!このっ!」
男「それと…」
不良女「あぁ!?」
男「お前のクラスは俺と同じ一組だ。席は一番窓側の一番後ろ」スタスタスタスタ
不良女(それもこれも全部男のせいだ……あいつがオレの邪魔しなければこんな事には…)イライラ
不良女(ぜってぇブッ殺してやる!あのスカしたツラをグチャグチャにしてやる!)
不良女「一組一組っと……ここか!」
不良女(最初が肝心だ!あのヤローをビビらせてこっちが主導権を握ってやる!)
不良女「おいっ!!男ぉおおお!!テメェを殺しに来たぞっ!!」ガラガラ
モブ「」アッケカラーン
不良女(何だこの雰囲気?)
モブ「あのぉ……」ビクビク
不良女「なんだよ!」
モブ「そのリボンの色って三年生の方ですよね」オソルオソル
不良女「それがどうかしたのかよっ!」
モブ「ここ、一年一組なんですけど…」
不良女「~~~~」カァッ
不良女「るせぇ!てめぇのせいで!あんな…恥ずかしい、思いを……」カオマッカッカ
男「絶対に俺のせいじゃないと思うぞ。そんなことよりも早く胸ぐら掴むのをやめてくれ。苦しい」
不良女「そんな事とはなんだっ!そんな事とはぁあああっ!!」ブンブン
男「だから…やめ、ろって……くる、しぃ」ガクガク
先生「よし、授業始めんぞ」ガラガラ
男「ほら、先生来たからとっとと離せよ」バッ
不良女「あぅっ!後で覚えてろよ!」
モブ「ガッコウオワリ」
不良女(もう、放課後か。寝てると時間が経つのもはえーな)
不良女(そんにしても学校は本当にツマンネー……こんな事ならゲーセンにでも行けば良かった)
不良女(大体何でこんな事を勉強しないといけねーんだよ。因数分解ってなんだよ、勝手に分解すんなよ、自然のままにしとけよ!)
不良女(それにしても…なんか忘れてるような………?)
不良女「ッ!!」チーン!
不良女「あぁあああっ!!忘れてたぁ!!」
不良女「アイツの家を調べるんだったああああ!!」ダダッ!
モブ「イソイデガッコウヲデルフリョウオンナ」
不良女「いたっ!男だ!」
男「」スタスタスタスタ
不良女「よし、コッソリとあとをつけよう」
男「」スタスタスタスタ
不良女「」コソコソコソコソ
男「」スタスタスタスタ
不良女「」コソコソコソコソ
不良女「お!? 角を曲がったぞ」タッタッタ
男「何やってんだ、お前?」
不良女「きゃあ!?」マガッタシュンカンゴタイメン!
不良女「お、お、男!てめぇ、奇襲とはやってくれんじゃねーか!」ビクビク
男「声が裏返ってんぞ?」
不良女「るせぇ!」
男「」ジーッ
不良女「んだよ、人の顔じーっと見やがって…」ギロッ
男「いや、なんでもない」
不良女「? なんだよ、気持ち悪い奴」
不良女「うるせーよ!こっちも仕方なくやってんだよ!」
男「そこまで嫌そうな表情するくらいなら多少の事は我慢しろよ」
不良女「分かった!もうあとはつけない!」
男「理解が早いな」
不良女「その代わり一つだけ教えろ!てめぇの家は何処だっ!」
男「ここ」
男「このアパートが俺の家だ」
不良女「えっ!? あっ、そう。ふ、フンッ、素直に教えるとはテメェも相当なバカだな」フフン
男「バカ?なんでだ?」
不良女「オレはなぁ、テメェにお礼参りしに行くんだぜ?」
男「卒業後にな」
不良女「えっ!?」
不良女(そうだったあ~!!)ガガーン
男「もしかして忘れてたのか?」
不良女「ばっ、バカなことょ言うんじゃにぇ!オレは…」シドロモドロ
男「噛みまくりだな」
不良女「るせぇってんだよっ!!なんか文句あるか!」
男「いや、別に」シラー
不良女「んぐぐぐぅぅ!!」ギリギリ
不良女「覚えてろぉっ!!」ダダッ!
男「それにしても…」
『テメェのせいで!あんな、恥ずかしい思いを…』
『きゃあ!?』
『ばっ、バカなことょ言うんじゃにぇ!』
男「」プルプル
男「ぷっ、ククッ……」
男「あははっ!!面白い奴!」
不良女「なんだよぉ~アイツ!人の事バカにしやがってぇ~~」ジタバタ
不良女「あんなツッケンドンな態度で私を弄びやがって…ふざけんじゃねぇぞ!!」
不良女「こうなったら卒業なんか待たねぇ……明日これでブッ殺してやる!」ヂャラ
イヌ「ツギノヒホウカゴ」
不良女「おい、テメェ!ちっとツラ貸せ」
男「なんだ?俺にお礼参りするのは卒業後だろ?」
不良女「あぁ!? んなもん待つ訳ねーだろ!これからボコボコにしてやんよ」
不良女「へぇ、別にいいけどよ。その時はテメェの家族がどうなっても知らねぇぞ?」
男「……………………」
不良女「」ニヤニヤ
男「分かった。素直に着いて行こう」
不良女「分かりゃ良いんだ。オラッ!とっとと行くぞ!」
ホームレス「カワラダヨ♡」
不良女「さて、ブッ殺してやるよ。覚悟しな」ヂャラ
男「チェーンか……危なっかしい物を振り回すなよ」
男「何がだ?」
不良女「そのスカした態度だよ!なに余裕ぶってんだ!?今からテメェをブッ殺すんだぞっ!?」
男「殺せもしない癖に、殺すとか軽々しく口に出すな」
不良女「なっ!?」
男「そんな言葉を言ってるうちはお前の事なんか全く怖くねーよ」
不良女「て、テメェはぁっ!!どこまでオレをバカにすりゃ気が済むんだ!!」
不良女「殺す!テメェは絶対にブッ殺す」
不良女「覚悟しやがれぇええっ!!!」
ホームレス「ゴフンゴ♡」
男「大丈夫か?」
不良女「大丈夫な訳ねーだろっ!……めっちゃ痛いんだぞっ!」ウルウル
男「何でチェーンの扱いが下手な癖にチェーンを持っきた?その傷は全部チェーンでの自滅だ。俺がチェーンを取り上げなかったらもっと酷い目に遭ってたぞ?」
不良女「テメェがひょいひょい躱すのが悪いんだよ!バーカ!アーホ!ハーゲ!!」
男「ガキかお前は。……ほら」スッ
不良女「なんだよっ!」
男「取り敢えず立てよ」
不良女「っ!?ふざけんなっ!!」バシッ
不良女「敵に情けを掛けられるほど落ちぶれてなんかねーよ!」
不良女「~~~」カアァ!
不良女「覚えてろよ!ヴァーカ!」ダダッ
男「あっ おい!」
不良女「なんだよっ!」ピタッ
男「チェーン忘れてるぞ」スッ
不良女「~~~~」カアァ!!
不良女「死ねっ!!」パシッ ダダダッ!
男「それでも律儀に受け取って行くと……」
男「……………」
男「帰るか……」
???「ん?あれは……不良女?」
不良女「あぁ~!痛いっ!それもこれも全部あいつのせいだ!アイツは絶対に泣かしてやる……」グスッ
???「おーい!不良女~」
不良女「ん?……ゲッ!?姉貴!?」
不良姉「どうしたの~?そんな涙目で?」
不良女「なっ!?別に泣いてない!!」ゴシゴシ
不良女「うるせぇっ!こらっ!くすぐるんじゃねぇ! ひぁっ!?」ビクッ
不良姉「ウヒヒ~、ここかぁ?ここがええんのかぁー!?」コチョコチョ
不良女「ひぅ!? や、やめ、んあっ!?」ビクビクッ!
不良姉「いやぁ~、相変わらず感度がいいわねぇ~ かっわいい!」
不良女「んっ! や、め、てぇ……」ウルウル
不良姉「やめてと言われてやめるバカなどこの世にはいない!今夜は寝かさないぜ!」ビシッ
不良女「んっ!くっ!あぁっ!!い、い、加減に、しろっ!!!」ドゴッ
不良姉「おぅふ」
不良姉「そんな事が遭ったの」フムフム
不良女「うん……」ズーン
不良姉「全部自業自得じゃない」スッパリ
不良女「うぅ、やっぱりそうだよな……」
不良姉「むしろその子は不良女を助けてくれたんじゃないの。それなのに怒るのはダメでしょ?」
不良女「うぐぐっ……」グサグサッ
不良姉「だからさ、明日お礼をしてみたら?」
不良女「お礼」
不良姉「そう!お礼参りじゃなくてお礼。昨日はありがとうって」
不良女「でも……オレ、アイツにはなんかお礼したくない」
不良姉「なんでよ?」
不良女「なんかやだ!」キリッ
不良女「アイツのせいでオレは酷い目にあったんだ!だからヤダッ!」プンスカ
不良姉「どうしても?」
不良女「うんっ!」
不良姉「絶対に?」
不良女「絶対に!」
不良姉「お礼するのが?」
不良女「ヤダっ!」
不良姉「手紙に書くとか」
不良女「無理っ!」
不良女「何でオレが酷い目に遭うことが前提なんだよっ!!」キッ
不良姉「だって不良女だし…」
不良女「~~っ!!うるさいうるさい!とっとと出てけっ!!」ゲシッ
不良姉「きゃっ!?ちょっと、痛いってば!」
バタン!
不良女「ハァ、ハァ……あの野郎今に見てろよ!」
とり「ミッカゴ」
不良女「こうなったらアイツに一泡吹かせるための作戦を練ってやる!」
不良女「どうよ?この超パーフェクトな作戦…略して超パー作戦!」ドヤァ
男「少なくとも俺の前で言うことでは無いな」
不良女「るせぇんだよ!ケチ付けるんじゃねえっ!!」
男「お前がどうよ?って言うから答えたんじゃないか」
不良女「本当にお前はうるせぇな!ああ言えばこう言いやがって!」
男「それにそんなもの作戦と名付けるのがおこがましい。誰でも思い付く」
男「むしろ三日間も思いつかなかったお前がおかしい」
不良女「ばっ、バカにすんなっ!こんなもんあの日の夜からとっくに考えついてたよ!」
男「それじゃあ何で今更そんな事言うんだよ?」
不良女「だってぇ…テメェの弱点が見つからないから」ショボーン
男「(こいつ真性のバカだ)」
不良女「敵から自分の弱点を教えてもらうなんて斬新な作戦だろ!」
不良女「しかも教えてもらうのは他ならぬ敵自身からなんだから間違いもあり得ない!」
不良女「この頭をクルクルッと二回捻じって考えた超パーフェクトな作戦!」
男「(頭を捻ったと言いたかったのか?)」
不良女「名付けて超クルクルパー作戦だ!」ドヤドヤァ~
男「お前の頭がクルクルパーだ」スクッ
不良女「おいっ!?どこに行くつもりだ!」ガシィ
男「購買にパン買いに行くんだよ」
不良女「よしっ!私も行く!」スクッ
不良女「パン買ってやるから弱点教えろ!」
男「無理」
不良女「いいだろ!協力しろよ!」
男「なにが悲しくて自分をブッ殺す協力しなくちゃならんのだ、阿呆らしい」スタスタ
不良女「あっ!?まてっ!!」タタタッ
不良女「列長ぇな~」モグモグ
男「お前は何で俺の真横に立ちながらまんじゅう食ってんだよ」
不良女「腹が減っては戦は出来んと言うだろ!お前もバカだなぁ~」ケラケラ
男「うっとおしい……とっとと食えよ」
不良女「これ食い終わってもあと二つあっからな~、残念だったな!!」
男「あっそう……あー腹減った」
不良女「なんだぁ?やらねーぞ」ニタニタ
男「俺は昔喉詰まらした事があるから、まんじゅうが嫌いなんだよ」
不良女「っ!?マジかっ?」メモメモ
男「(それで良いのか、こいつは……?)」
不良女「おい、何買うんだ?オレが買ってやる」
男「弱点は教えんぞ」
不良女「じゃ、買わね」ササッ
男「何で俺の前に並ぶんだよ」
不良女「オレが自分の分を買うためだよ」
男「割り込みだぞ。後ろの人に迷惑だ」
不良女「後ろの奴ぅうう!?」ギロッ
モブ共「ひぃっ!!」
不良女「おい、テメェらなんか文句あんのか」ギロリ
モブ共「ひぃ、い、いえ、別に文句ないです」ガクブル
不良女「そうか?それじゃあここに並ばせて貰うぜ?」ニヤニヤ
男「」サッ
不良女「待てよ、どこに行くつもりだ?」ガシッ
男「後ろに並び直す」
不良女「おい、何買うんだ?オレが買ってやる」
男「弱点は教えんぞ」
不良女「じゃ、買わね」ササッ
男「何で俺の前に並ぶんだよ」
不良女「オレが自分の分を買うためだよ」
男「割り込みだぞ。後ろの人に迷惑だ」
不良女「後ろの奴ぅうう!?」ギロッ
モブ共「ひぃっ!!」
不良女「おい、テメェらなんか文句あんのか」ギロリ
モブ共「ひぃ、い、いえ、別に文句ないです」ガクブル
不良女「そうか?それじゃあここに並ばせて貰うぜ?」ニヤニヤ
男「」サッ
不良女「待てよ、どこに行くつもりだ?」ガシッ
男「後ろに並び直す」
男「お前が1人入った分、俺が後ろに並び直せば元通りの順番になる」スタスタスタスタ
不良女「なっ!?お、おいっ!!」
不良女「………チッ」
不良女「おいお前っ!」
モブ「は、はいっ!?」
不良女「ここの順番取っとけ」ダダッ
不良女「おい、待ちやがれ!」
男「なんだよ?俺はまたこの20人近く並んでる列を並び直すんだが?」
不良女「オレが並ぶ、お前は戻れ」
男「戻れと言っても、もう遅いだろ」
不良女「大丈夫だ!後ろの奴に頼んどいたからお前が行けばいれてくれる」
不良女「るせぇ!テメェに借りを作りっぱなしなんて死んでもゴメンだね!とっとと戻れっ!」ゲシッ
男「そう言っておきながら蹴るのか……」
不良女「テメェがとっとと戻らねぇのが悪いんだよ!」イライラ
男「分かったよ、戻る」
不良女「とっとと行け」シッシッ
男「それとな」クルッ
不良女「あん?」
男「ありがとな」ニコッ
不良女「なっ!?……フンッ!」
男「」スタスタスタスタ
不良女「……………」
モブ共「」ジーッ
不良女「……っ!?テメェら何オレにガン飛ばしてんだ!ああっ!?」
モブ共「ひぃっ!?すみませんでしたぁー!!」ガクブル
不良女「うん…購買なんかのパンでもなかなかイケるな」モグモグ
男「何でお前は俺の目の前で飯食ってんだ」
不良女「あぁっ!?んなもんテメェの弱点探るために決まってんだろ!!」ブハァッ
男「口の中のものを飛ばすな、汚い」
不良女「チッ……テメェが分かりきった事を聞いてくっからだ!」ムシャムシャ
男「(食事に集中できねぇ……)」
ミミズ「ホウカゴ!」
不良女「よしっ!帰るぞ!」
男「勝手に帰れ」スタスタスタスタ
不良女「なっ!?テメェ待ちやがれ!!」ダダッ
男「うるさい……本当にうるさい…」
女「あら、男君」
不良女「誰だテメェ!」ギロ
女「ひっ!?」ビクゥッ!
男「二組の女さんだ。去年お前も同じクラスだっただろ」
不良女「知らねーよこんなアマ!」
男「こいつは何故か俺のストーキングをして来る怪しい奴」
不良女「ブッ殺すぞっ!!」カッ!
女「もしかして女不良さん?」
不良女「不良女だ!間違えんじゃねー!殺すぞ!」
女「ご、ゴメンなさい!」
不良女「チッ……クズが………」イライラ
不良女「っ!そうだお前!去年こいつと同じクラスだったんだろ?」
女「えっ!? はい……」
不良女「それならこいつの弱点知らねぇか?」
女「えっ!?弱点?」
不良女「んだとっ!?」
男「本当のことだろ。俺に弱点なんかない」
不良女「嘘だね!さっきまんじゅうが苦手だっていったもん!」
男「小さくちぎって食べれば問題ない」
不良女「そんな食い方まんじゅう道から逸脱してる!オレは認めねぇ!!」
男「お前は人の道から逸脱してるがな」
不良女「テメェ…ブン殴るぞっ!!」ドゴッ
男「殴った後に言う言葉じゃないな。やっぱりお前はバカだ」
不良女「ムガーッッ!!」ブンブンッ!
女「プッ…あはははは!2人とも面白い!なんか漫才見てるみたいだった」
不良女「なっ、なっ!?何笑ってやがんだっ!オレ達をバカにしてんのか!!」
女「だって…面白くて……2人って仲良いんだねぇ~」
不良女「はぁ!?頭に蛆でも湧いてんじゃねーかっ!?」
男「手遅れだったか。ついに女さんがこいつのバカの瘴気にあてられてバカになってしまった」ガクッ
女「あははは、こんなに笑ったの久しぶり」
男「もう…手遅れなのか……女さん、済まない」ガックリ
不良女「~~~っ!!テメェら覚えてろぉおお!!!」ダダダダッ!
ぬいぐるみ「不良女の部屋」キリッ
不良女「って事があったんだよ!」
不良姉「あははっ!その女の子もついにバカの瘴気にあてられちゃったかぁ~」ゲラゲラゲラゲラ
不良女「ふんっ!」ドゴッ!
不良姉「おぅふ」
不良女「ブン殴るぞこのくそ姉貴!」プンスカ
不良姉「殴ってから言わないでよ」
不良女「フンだ!」
不良姉「ところでさぁ、その男君は最初河原に行った時家族の事を持ち出したら付いて来たんでしょ?」
不良女「おおっ!!」パァァ
不良姉「えっへん」フンゾリ
不良女「さっすがお姉ちゃん!サイコーだぜ!」ダキッ
不良姉「そうでしょ!(イクッ!)さぁこれからもこのお姉ちゃんにたよりーーー」ビクンビクン
不良女「早速明日から調べるぞぉ!と言うわけでもう寝るからお休め」ゲシゲシ
不良姉「えっ!?ちょっと!?なんで蹴るの!?なんでさりげなく命令形で休めって言ってるの!?」ホウチプレイ!?
バタン!
いぬ「いや、next dayだろ…」
不良女「今日は休みだ!と言う訳で朝から男の家に行くぜぇ!」ババッ!
不良女「着替え完了だ!今日は男の家族を調べてやる!そしてそれを弱みにして男をブッ殺す!」イキヨウヨウ!
バタンッ!
不良姉「いってらっしゃーい」フリフリ
マツコ「10分後よ!」
不良女「えぇっと?」キョロキョロ
不良女「こっちに行って…あっちに行って……」テクテク
不良女「……ここどこだ?」ポツーン
ブロロローッ!
不良女「あっ!あれは!!」
男「」スタスタスタスタ
不良女「おお!男じゃねーか!バスに乗るのか?」ダダッ!
バスアナウンス「次は桜田霊園前」
男「」スッ コツコツ
不良女「お、降りるのか。そんじゃオレも……あっ……」
不良女「金が…ねぇ!!」デデーン!!
バス運転手「どうかしましたか?」
不良女「えっ!?いや、あはは~」マッサオ
不良女「(クソッ!こんな事ならさっきのガキから金盗っとけば良かった!!)」クヤミキレン!
不良女「(ここは逃げるしか手はねぇ!よし、行くぞ!一二のーーー)」
男「すみません、こいつの分も払います」
不良女「うおおっ!?」ビクッ
ブロロローッ!
男「それで?なんでこんなところにいるんだ?」ジィ
不良女「あぁ!? オレがどこにいようとオレの勝手だろ!」ギロ
男「まぁ、それもそうだ。それじゃあな」スタスタスタスタ
不良女「ま、待てよ!」
男「なんだよ?」
不良女「お前の弱点を探る為にオレもついてく!」キリッ
男「………勝手にしろ」
不良女「ここは…墓?なんの用事なんだよ?」
男「…………」スタスタスタスタ
不良女「まさかお前!神社でも寺でもなくて墓を経営してんのか!?スゲーっ!」
男「少し黙ってろ」イラッ
不良女「あぁ!?テメェいまオレに向かってーーー」
男「黙れっつったんだよ!」グイッ!
不良女「ふぇ!?な、えっ!?」ビクビク!
男「……っ!?」パッ
不良女「お、男?」ビクビク
男「済まなかった」コツコツコツコツ
不良女「あ、あぅ……」ドキドキ
不良女「この墓は?」
男「………俺の家族の墓だ」
不良女「なっ!?」
男「今から掃除するから少し待ってろ」
不良女「お、オレも手伝う!」アセアセ
ゴシゴシゴシゴシ…
不良女「ふぅ~綺麗になったな」マンゾクゲ
男「あぁ、不良女が手伝ってくれたおかげでいつもより早く終わったよ。ありがとな」
不良女「………別に」
男「後は花を添えて線香をあげる」メラメラ
不良女「線香をオレにもあげさせてくれないか?」
男「ほらよ」ソッ
不良女「あ、それと……」オズオズ
不良女「眠ってる人の名前を教えてくれ。ちゃんと拝みたいんだ」
男「男母、男父。それと男妹だ」
不良女「あぁ、分かった」
………………………………
男「別にいい。今日墓参りしてくれた礼だ。きっとみんな喜んでる」
不良女「そうか?こんな不良でもか?」
男「心を込めてくれる人間にその程度は瑣末な事だ」
不良女「ん…そっか……」
男「」コツコツコツコツ
不良女「」テクテクテクテク
男「ところでお前は俺の家にまでついて来たんだ?」
不良女「えっ!?あっ!!そう、そうだよ!テメェの弱点!!」
男「まだ覚えてたのか…」
不良女「考えてみたらテメェの家が1番弱点を見つけやすそうだからな!ついてく!」ガッシリ
男「……ったく…勝手にしろ」
不良女「お邪魔しまーす」
男「挨拶するんだな」
不良女「あったりまえだろ!人間としてじょーしき!」フフン
男「お前に常識を説かれる日が来るなんて。俺もヤキが回ったな」
不良女「るせぇ!それよりも仏壇に案内しろ!」
男「墓参りした後に仏壇拝んでいいんだっけか……?」ウーン?
不良女「細かい事は気にすんなって!」ポンポンッ
男「こっちだ」
不良女「あいよ、こっちか……っ!?」
男「どうした?」
不良女「いや、別になんでも」アセアセ
男「似てるだろ、お前と……俺の妹」
不良女「あ、ああ。そう思ったんだ。なんか自分の写真を見たみたいに感じた…」
男「そうか…」
不良女「あぁ……」
チーン………
男「ほらお茶」
不良女「サンキュー!」ゴクゴク
何人見てるか知らんけど眠いんだが……
不良女「なんだよ」ギロ
男「いや、似てるんだよ、そういうところも」
不良女「妹さんにか?オレなんかが」
男「ちょっと勝気なとことか、それでいてちょっとした事で照れたり可愛くなったりするとこがな」
不良女「なっ!?ば、バカ言ってんじゃねーよ!!オレは別に可愛くなんかっ!!」カァァ
男「あぁ、そういう所もそっくりだ……本当に妹みたいだ」ウルウル
不良女「お、おいっ!?なにいきなり涙目になってんだよ!?」アセアセ
男「…悪い。でも本当にそっくりなんだよ………俺の…殺された……妹と…」ポロポロ
不良女「お、おい!?こ、こら泣き止めよ」アセアセ
男「~~~~っ!!」ポロポロ
不良女「あぁっ!もうっ!!これでどうだっ!」ギュッ
男「っ!?」
男「うっく……あ、ありが……とう……」ポロポロ
…………………………………
不良女「落ち着いたか?」
男「あぁ、お陰で落ち着いたよ」
不良女「そっか!そりゃあ良かったぜ!」ニカッ
男「悪かったな、いきなり泣き出して」
不良女「全くだ、びっくりしたぞ」
男「………俺の話を聞いてくれるか?」
不良女「あぁ聞いてやるよ。それで男の気が少しでも晴れるならな」
男「ありがとう」
男「父さんは弁護士でさ。かなり有名な人だったんだよ」
男「そんなある日、父さんがある殺人事件の被疑者の弁護をする事になった」
男「そいつはある一家を惨殺した容疑で逮捕されたんだ」
男「そいつは容疑を否認してて父さんも必死に弁護をした」
男「でも結果は惨敗でさ…死刑が決まったんだよ」
男「そしたらさ、その一週間後その被疑者は自殺してさ……それで父さんは凄く心を痛めてたんだ」
男「そしたらその3日後、その被疑者のアリバイが出て来て、さらに次の日には新しく犯人が捕まったんだよ」
男「それを知った父さんは被疑者を救えなかったのは私が不甲斐ないせいだって嘆いてさ…」
男「そんな事はないのに……悪いのは全て犯人と杜撰な捜査の警察だってのに」
男「さらにマスコミは父さんを責めたんだよ。お前がもっと被疑者の話を聞いていれば無罪にできたってな」
男「そしたら父さんは精神がおかしくなっちまってよ。一家心中を図ったんだ」
男「でも何故か俺は死ねなかった……頸動脈を切られたにも関わらず一命を取り留めた」ブルブル
不良女「お、男…」
男「どうして俺は死ねなかったのかな?なんでみんな死んだのに俺だけ死ねなかったんだっ!!」ダンッ
不良女「ひっ…男、落ち着け!」
男「………俺の家族は殺されたんだよ。父さんにじゃない、あの事件の犯人にだっ!」
男「アイツは精神疾患と判断されて大して重い刑じゃない!家族を……俺の家族を殺したくせにだ!!」
男「なんでだ……なんで俺がこんな目に遭わなくちゃ………」ポロポロ
不良女「………グスッ」ポロポロ
男「……不良女?」
不良女「かわいそう…そんなの酷すぎるよぉ………」ポロポロ
男「不良女………」グスッ
不良女「うわぁぁああああん」ポロポロポロポロ
不良女「い、いやそんな事ない……こっちこそゴメンな?聞いてやるなんて言いながら泣いちまって」ポリポリ
男「いや、皆喜んでるよ。俺も他人の家族の事で泣いてくれる不良女に感謝してる」
不良女「へへっ!そうかよ?」
男「あぁ」
不良女「そんじゃまたな!」
男「あぁ、また学校でな」
不良女「あっ!それと…」
男「ん?」
不良女「何度も何度もブッ殺すなんて言ってゴメンなさい!」ペコリ
男「気にしてねーよ!」ニカッ
不良女「ん……そう…?」
不良女「そっか…えへへっ…そうかよ!」ダダッ
男「………明日から楽しそうな学園生活が送れそうだな」
にわとり「それから一ヶ月後!」コケコッコー!
不良女「オーッス男!今日も元気かぁ?!」バンバン
男「あぁ、元気だよ。だからあんまり人を叩くんじゃねぇ」ポン
不良女「おいっ!テメェも人の頭の上に手を置くんじゃねぇよ」
男「はいはい…」サッ
不良女「あっ………」シュン
男「なんだよ?」
不良女「その、登校中なら手を置いといていいぜ……」カァァ
男「はいはい」ポン
不良女「へへっ!」
モブ「なんか付き合ってるらしいよ」
モブ「マジで!?あの不良女が!?」
モブ「こうして見るとあの不良女ちゃんも可愛い女の子って感じだよ」
モブ「それに最近男君も明るくなったよね」
モブ「そうだよな。ちょっと前までは氷男とさえ呼ばれてたのに」
不良女「なんかさっきからジロジロ見られてる気がすんだけど」モジモジ
男「考えるな、そんなもん」
不良女「こうなったらオレがガン飛ばして!」
男「やめろって……」
不良女「それにしてもオレ達もそろそろ卒業かぁ~」
男「……あぁ、そうだな」
不良女「オレは大学なんか行けねぇけどよ、男は行くんだよな!どこ行くんだよ?」キラキラ
男「卒業したら教えてやるよ」
不良女「約束だぜ!あぁ!卒業が楽しみだ!」
不良姉「おー!君が噂の男君かぁ!いつも不良女がお世話になってるよ!」ブンブン
男「はじめまして、不良姉さん。こちらこそ不良女さんにはいろいろお世話になっています」ニコッ
不良女「や、やめろよテメェら!恥ずかしいじゃねーか!」カァァ
不良姉「それにしても不良女がこんないい人捕まえるなんて……羨ましいっ!」
不良女「や、やめてくれ!」カァァ
男「なぁ、不良女。愉快そうなお姉さんじゃないか」ボソッ
不良女「まぁ愉快である事には間違いねーな」ボソッ
不良姉「チミ達、なにボソボソと喋ってるのかなぁ?愛を囁くなら2人きりの時にやってくれたまへー」
不良女「な、なっ!なっ!?」カァァッ!
不良女「ぶっ飛べぇええ!!」ドゴォオオン!
不良姉「おぅふ」
不良姉「うぅううん…もう食べれない」ムニャムニャ
不良女「完璧に眠っちまったな、このバカは…」サッ
男「そう言いながらキチンと毛布を掛けてやるんだな」
不良女「うっせ」
男「てかお前ももう眠いだろ?目がトロンとしてる」
不良女「はぁ!?んな事ねぇよ……たぶん…」ウツラウツラ
男「不良のくせに規則正しい生活してっからな、お前は」クスッ
不良女「うっせぇ」ウツラウツラ
男「さぁ、お前ももう寝ろ」ナデナデ
不良女「分かった。でもその前に…」ウツラウツラ
男「どうした?」ナデナデ
不良女「チューしてくれたら寝る」ニコッ
男「………目瞑れ」ナデナデ
不良女「ありがとう、男。お休み、大好きだぜ……」
男「お休み、不良女。俺もお前が大好きだ…」ナデナデ
不良女「………」スーッスーッ
男「寝たか……」
男「いつまで寝たふりしてるんですか?お姉さん」ジロッ
不良姉「あれっ?バレてた?」ガバッ
男「あんな例文みたいな寝言を言う人なんかいるわけないですよ」
不良姉「アハハ~やっぱりね。でもいいや!2人のラブラブっぷりをこの目で見れたし」
男「まったく……」
男「…………………」
不良姉「?どうしたの」
男「不良姉さん。頼みがあります」
不良姉「昨日貴方が寝た後に帰ったわよ?」
不良女「なんだよ、起こしてくれてもいいじゃねーか!」ギロッ
不良姉「貴方が寝た五分後だったのよ?起こせないわよ」
不良女「チッ、男の奴水くせぇ!」
不良姉「それはそうとこんなものを貴方に預かったわよ」スッ
不良女「なんだこれ?…手紙?」パラッ
不良女「…………………」
不良女「な、なんだよ……」ワナワナ
不良女「なんだよこれ!」ダダッ!
不良姉「不良女!?どうしたの!?」
不良姉「この手紙に何が……」
よぉ元気か?
お前がこれを読んでるという事は俺はどうやら無事に大学に合格できたみたいだな。
今まで黙ってて悪かったが、俺の志望大学はここから遠く離れたH大学だ。
俺はどうしても父さんと同じ道を進みたかった。
そして二度と俺のような人を作り出したくなんかない。
だから俺は弁護士になろうと思う。
そして父さん、母さん、そして妹の仇を討ちたい。
だからお前に黙ってこんな遠く離れた大学を志望しちまった。
本当にすまない。
あの時カツアゲしてるお前を見て止めに入ったのはまったくの無意識だったんだ。
お前があまりにも妹に似ていたからな、身体が勝手に動いちまった。
もしかしたら妹の生まれ変わりなんじゃないかって真剣に考えもしちまったよ。
でもな、それは間違いだった。
お前は妹以上に優しくて、可愛くて、そして素晴らしい奴だよ。
あの時お前に会えたのは運命かもしれない。
もしかしたら妹が巡り会わせてくれたのかもな。
もっといろいろと思い出を書きたいがそれじゃあキリがと思うのでそろそろ終わろう。
今俺は泣きながらこの手紙を書いているから、文脈とかもおかしいかもな。
でもやっぱり合格前にこの手紙を書いて正解だったよ。
もし合格後に書こうとしたとしても、きっと泣いちまって書けなかっただろうからな。
でもお前に対するこの愛は嘘ではない事を最後に伝えたかった。
今までありがとう。
ごめんな。
俺の最大にして最高の親友
そして最愛なる女性へ
不良女「おいっ!男!出て来い」ガンガン
不良女「いるんだろ!?なぁ、出て来いよ」ガンガン
不良女「おい……男ぉ…」ガン…ガン
不良女「」ペタン
不良女「そん、な……」ジワッ
不良女「う、うわぁああああああああ!!!!」
男「…………」
男「はぁ…………」
男「不良女、元気にしてっかなぁ……」
男「俺もアイツも携帯持ってないし……家に電話したことねぇから電話番号もしらねぇし」
男「はぁ……」
ピンポーン
男「ん?誰だよこんな時間に」スタスタ
男「はい、どちら様でーーー」ガチャ
バタンッ!
男「うぉ!?」ドサッ
???「言ったよなぁ!?オレはあの時言ったよなぁ!?」
男「お、お前!?」
???「まさか忘れたとかいうんじゃねぇーよな!?そんならもう一回だけ言ってやるよ、耳をかっぽじってよーく聞けよ!」
不良女「卒業したらお礼参りに行くからな!」
終わり
最後少し無理やりだったのは反省…次に生かしたい
何人いるかはわからんがここまで読んでくれた人、ありがとう
むしろよく終わらせた
Entry ⇒ 2012.04.07 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
雪女姉「ちゅーしようぜ」男「え」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1332155791/
前→雪女「ちゅーしよう!」男「だが断る」
雪女姉「どーしたんだぜ、鳩が豆鉄砲喰らったみたいな顔して」
男「……いや、俺、君の妹の恋人ですよ?」
雪女姉「知ってるぜ、それが何なんだ?全然問題ねーよ」
男「問題しかねーですよ」
雪女姉「いーじゃんよー!ちゅーしよーぜ、ちゅーさせろよ、ちゅーしやがれよー」
男「」メルメル
雪女姉「?何してんだぜ?」
男「」メルメル
雪女姉「おいおい無視すんなよ、溶けちゃうぜ、ジェラートみたいに!」
男「」ピッ!
雪女姉「……ジェラートみたいにー……」
ダダダダダダ、キキー、ドガン、ピキーン、ダダダダダダ
雪女「呼ばれたんだよ!飛び出たんだよ!じゃじゃじゃーんだよ!」
男「早かったなー、よしよし」ナデナデ
雪女「えへへー」
雪女姉「ちょっと待て」
男「何ですか、何も問題ないですよ」
雪女姉「問題しかねーんだぜ」
オンナノコガ クルマニ ヒカレタゾー
クルマガ コオッテルワー
ナ、ナンダッテー
男「大丈夫か雪女」
雪女「大丈夫だよ!車にぶつかった時身体砕けちゃったけど、くっついたんだよ!」
男「今が冬で良かったね」
雪女「ねー!」
雪女姉「え、そういう問題?」
雪女「で、私何で呼ばれたんだー?」
男「だいたい君の姉ちゃんのせいだよ」
雪女「なるほど!」
雪女姉「なんたる理不尽っ!あれ、でも何か気持ちいいぜぃ」
男「え」
雪女姉「まぁ新たな性癖に目覚めるのも悪くはないけど、本題に戻るぜ男」
雪女「本題ー?」
男「……冗談じゃなかったのか」
雪女姉「私の純情を冗談呼ばわりするなよ!さすがの姉ちゃんも泣くぞ泣いちゃうぜ!」
男「ごめんなさい」
雪女「そーりー!」
雪女姉「ん、許す。許すからちゅーさせろよ」
男「させねーよ」
雪女「姉ちゃん、男とちゅーしたいのかー?」
雪女姉「そうだぜちゅーしたいんだぜ」
雪女「わはははー!男はね、ちゅーうまいだよ!」
雪女姉「ほう」
男「ちょっと黙ろうか雪女」
雪女「だけどべろいれてくるのは嫌だなー!頭がほわほわするんだよ!」
雪女姉「ほうほう」
男「チェスト!」ペシン
雪女「痛い!」
雪女「姉ちゃん、男とちゅーしたいのかー?」
雪女姉「そうだぜちゅーしたいんだぜ」
雪女「わはははー!男はね、ちゅーうまいんだよ!」
雪女姉「ほう」
男「ちょっと黙ろうか雪女」
雪女「だけどべろいれてくるのは嫌だなー!頭がほわほわするんだよ!」
雪女姉「ほうほう」
男「チェスト!」ペシン
雪女「痛い!」
雪女姉「ちゅーう!ちゅーう!」
男「なにこの人キス魔?!助けて雪女!君の恋人が変態に襲われてる!」
雪女「わはははー!二人とも仲良いなぁー!」
男「ダメだ!俺の恋人は馬鹿だった!」
雪女姉「ちゅーう!ちゅーう!」
男「えぇい寄るな!くっつくな!」
雪女姉「……そこまで言われると傷付くぜぃ」
明日の仕事が早いんで寝る。明日の今頃また続き書きにくるよ!おやすみ!
雪女姉「なぁ、そんなに私とちゅーするの嫌か?」
男「良いとか嫌とかの問題じゃないです、というか何でそんなに俺とちゅーしたいんですか」
雪女姉「………」プイッ
雪女「姉ちゃん、そっちにはだれもいないよ!」
男「教えてくれたらちゅーしてあげますよ」
雪女姉「うっ……意地悪だぜお前は……」
雪女姉「まぁ話してやろーじゃねーか!これには深い事情があるんだぜ」
━━━回想
鬼娘「雪女姉っちはさ、ちゅーってしたことある?」
雪女姉「え」
河童娘「何を分かりきった事を聞いてるんですか鬼娘さん!あの雪女姉さんですわよ?ち、ちっ、ちゅーくらいしたことあるに決まってるでしょう!」
雪女姉「え」
鬼娘「そうだよなー、あの雪女姉っちだもんなー」
河童娘「そうですわよ!《氷の口付け》の異名を持つ雪女姉さんですわよ!」
雪女姉「(……それ私のハンドルネームなんだぜ)」
鬼娘「なーなー雪女姉っち、ちゅーってどんな感じなんだ?」
雪女姉「えっと……(この前男とちゅーしたのが初めてとか言えない雰囲気なんだぜ……)」
河童娘「私も一応後学の為に聞いておきたいですわ!是非!是非是非!」
雪女姉「……えーと、その、あの」
鬼娘「?」
河童娘「どうなさったんですの雪女姉さん」
雪女姉「ちょっと待ってろ!」
━━━回想終了
雪女姉「ということでちゅーさせろ、ちゅーの感覚を私は知りたいんだ!」
男「深いようで、浅い」
雪女「わはははー!私は知ってるぞー!ちゅーはな、幸せになれるんだ!」
雪女姉「リア充溶けろ!ジェラートみたいに!」
男「その言い回し好きだな君」
男「というか君、前に俺にちゅーしたじゃないですか。凍らせられたせいであんまり覚えてないけど」
雪女姉「あれは……違う」
雪女「どうしたんだ姉ちゃんー!何が違うんだー?」
雪女姉「違うったら違うんだもん!もういい!男に頼んねーぜ!!ばーかばーか!!」
ダダダダダダ
男「意味が分からない…」
雪女「男!」
男「何だよ」
雪女「あのね、姉ちゃんの事を追いかけてほしいんだよ」
男「……どうしてだ?」
雪女「私、馬鹿だから分かんないけど、きっと姉ちゃんは男に来てほしいと思ってるよ!」
男「………」
雪女「男!」
男「っすぐ戻る!」
━━━━雪山
雪女姉「(追いかけてもくれないんだな)」
雪女姉「(まぁそりゃそうだぜ、恋人でもねーんだから)」
雪女姉「(恋人・か)」
雪女姉「はぁ……吹雪いてきやがった」
雪女姉「(そういえば、男に会ったときもこんな天気だったぜ……)」
━━━回想
雪女「姉ちゃん!雪!雪だぞ!うわーー!冬!冬!冬!」
雪女姉「うるせーぜ雪女、冬になって嬉しいのは分かるけどはしゃぎ過ぎだぜ」ソワソワ
雪女「つららうめーー!」バリバリ
雪女姉「やめて!」
雪女「ん?姉ちゃん、あそこ何か落ちてんぞ」
雪女姉「どれどれ」
男「」
雪女姉「人間だーーー!!」
雪女「だー!」
雪女姉「おい大丈夫かお前!生きてるか!?」ユッサユッサ
男「」
雪女「どうしよう姉ちゃん!」
雪女姉「おおお落ち着け雪女、息はしてるから死んではいないぜ!ただし身体が冷えきっちまってるからこのままじゃヤバイ!」
雪女「じゃあ暖めれば良いんだな!」
雪女姉「私達雪女だぜ?暖めるって言ったってどーすりゃいいんだよ……」
雪女「取り敢えず人肌で暖めるんだよ!」ギュウッ
雪女姉「いや私達、人じゃねーぞ」
男「!……つめたっ!!」バッ
雪女「おぉ!起きたぞ姉ちゃん」
雪女姉「マジかよ」
男「ここはいったい……というか冷たい!君冷たいですよ!」
雪女「わはははー!私雪女だからな!冷たいぞー!」ヒンヤリ
男「……雪女?」
雪女姉「そうだぜお前、私達は雪女だぜ」
雪女「がおー!」
雪女姉「しかしお前、何でこんな所で倒れてたんだぜ?しかもそんな薄着で、馬鹿じゃねーの」
男「………」
男「……親と、喧嘩して」
雪女「おとーさんとおかーさんだな!」
雪女姉「それでそれで」
男「頭に血が上って、少し冷静になろうと思って、家を出て……気付いたらここに」
雪女姉「……ば」
雪女「馬鹿だろお前!」
男「え?」
雪女「冬に雪山に入って、死にたいのかお前は!死んだらおとーさんとおかーさん悲しむだろ!」
男「………」
雪女「おとーさんとおかーさんを悲しませる奴は馬鹿なんだぞ!ばーか!」
男「………」
雪女「喧嘩するのは良いんだ!私もよく母ちゃんと喧嘩するもん!だけど死ぬのは馬鹿だ!馬鹿なんだよ!」
男「………そうだな、馬鹿だ俺」
雪女「分かれば良いんだよ!分かれば!」
雪女姉「雪女……」
雪女「お前名前は何だ!」
男「男、です」
雪女「行くぞ男!」
男「えっとどこに……?」
雪女「男の家だ!私が麓まで無事に送り届けてやるぞ!だからおとーさんとおかーさんにごめんなさいしろ!」
男「……うん」
雪女「レッツゴー!」
雪女姉「早めに帰ってくるんだぜー」
男「あっあの!」
雪女姉「何だぜ男」
男「助けてくれて、ありがとうございます」ペコ
雪女姉「礼なら、お前を見つけてお前を起こした妹に言え。私は何もしてねーぜ
男「はい!」
━━━━回想終了
雪女姉「(あの時、男を見つけたのが雪女じゃなくて私だったら……)」
雪女姉「(ううん、私が見つけたとしても、男は雪女を好きになっただろうな)」
雪女姉「(……何してんだ、私は)」
雪女姉「(妹の恋人に迫って、拒まれたら罵倒して逃げて、未練たらしくぐちぐち考えて)」
雪女姉「(馬鹿じゃねーの私)」
雪女姉「(もう男には会わねー方が良いよなぁ……)」
雪女姉「……グスッ」
ダダダッ
男「雪女姉!!」
雪女姉「」ビクッ
男「ぜーはー…こんなところにいたのか…」
雪女姉「な、何のようだぜ男」
男「……戻りますよ、雪女も心配してます」
雪女姉「……む」
雪女姉「今は放っておいて欲しいんだぜ…男とは、話したくない」
男「放ってなんか置けません」
雪女姉「……私は、恋人のいる男にちゅーしようぜと迫るような女だ。男もそんな女は嫌いだろ」
男「嫌いならわざわざこんな吹雪の中探しませんよ」
雪女姉「っ、優しくするな!」
雪女姉「私の事なんか何とも思ってねーのに優しくすんじゃねーぜ!これ以上私を惨めにすんな!」
男「落ち着け!」
雪女姉「うるさい!」
男「………」
雪女姉「……ごめん、言い過ぎたぜ。だけど丁度良い機会だし、そのまま私の話を聞いてくれ」
男「…はい」
寝ます。長くなってすみません。明日には終わらせます。
男「!?」
雪女姉「知らなかったろ?言わなかったもん」
男「……」
雪女姉「おかしいだろ?笑えよ男。妹の好きなやつを好きになっちまったんだぜ、私は」
男「………」
雪女姉「自分でもおかしいって分かってる。だから、何度だって諦めようとしたさ……お前らが恋人同士になれば諦められると思って、応援したりしたぜ」
男「………」
雪女姉「だけど無理だった!諦められなかった!だって好きなんだもん、大好きなんだもん!」
男「………」
雪女姉「私みたいな馬鹿野郎にも優しくしてくれる男が私は大好きだぜ!」
男「ちょっ」
雪女姉「メロメロなんだぜ!フォーリンラブなんだぜーーー!」
男「(何か恥ずかしくなってきた……)」
雪女姉「男!頼みがある!」
男「は、はい!」ビクッ
雪女姉「私を、これ以上ないっくらいこっぴどくフってほしいんだぜ」
男「え」
雪女姉「それぐらいされなきゃ、きっと私は諦められない。ずっとズルズル恋を引きずっちまう」
男「………」
雪女姉「なぁ、頼むぜ」
男「っ、分かった」
雪女姉「……男」
男「━━━俺は雪女が好きだ。大好きだ。だから、君の気持ちには答えられない」
男「だけど、俺は君の気持ちを知れて……嬉しかったです」
雪女姉「え」
男「俺みたいな奴を、好きになってくれてありがとーです」ペコッ
雪女姉「………ずるいぜ、そんなこと言われたら、諦められるわけねーじゃんよ」
男「すみません」
雪女姉「でも、さんきゅう。やっぱ優しいぜお前は」
雪女姉「ほら、吹雪も止んだし、帰ろうぜ!」ニコッ
男「……ああ!」
━━━━━━
雪女姉「ただいまだぜ!雪女」ダキッ
雪女「おかえり姉ちゃんー!」ダキッ
雪女姉「きゃっ、どこさわってるんだぜ妹ー、この変態さんめー」プニプニ
雪女「わははー!」
キャッキャッ ワハハ
男「………」
雪女姉「なーにしょぼくれた顔してんだぜ男」ミミニ イキフゥッ
男「冷たい!」ヒンヤリ
雪女「わははー!私もやるぞー!ふぅーふぅー!」
男「ぎゃー!」ヒンヤリ
雪女姉「ふぅー!」
雪女「ふぅー!」
男「ぎゃー……」ピキーン
雪女姉「男ーーー!?」
雪女「男が凍っちゃったよ!?」
男「毛布って暖かい」モフモフ
雪女姉「」ドゲザー
雪女「」ゲザー
男「やめなさい」
雪女姉「私って奴は……私って奴は……!」
男「落ち着こうか君」
雪女「お腹空いたー」
男「君は少しは反省しなさいよ」
男「ほら君も顔を上げてください」
雪女姉「……許してくれるのか?」
男「はい、別に凍らされるのは慣れてますから」
雪女姉「くそう!格好いいじゃねーか!」ダキッ
雪女「そうだぞ!男は格好いいんだよー!」ダキッ
男「うわっ」
雪女姉「そんな奴にはちゅーしてやるぜ!」
雪女「私も私もー!ちゅー!」
男「ぎゃーーーー!」
━━━━おわり
前回のキャラクター達を気に入ってしまい何となく始めた続編でしたが、何となく纏まった感じになったようです!
支援ありがとうございました!
Entry ⇒ 2012.03.24 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
雪女「ちゅーしよう!」男「だが断る」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1332062661/
このSSはSS深夜VIPのSSです
雪女「なんでだよう!ちゅーしろ、ちゅーさせろ、ちゅーしやがれー!」
男「女の子がそんなはしたないこと言わないの」
雪女「はしたない!?『ちゅー』ってはしたない意味なのか!?」
男「そうです、はしたない言葉なんですよーこの変態さんめ」
男「……分からずに喋ってたのか」
雪女「それがねー、姉ちゃんが『雪女はちゅーすると幸せになれるのよ』って言ってたんだよ!」
男「ちょっと姉ちゃん連れてこい、説教するから」
雪女「ねぇ男ー、何で幸せになる事なのに『ちゅー』がはしたない言葉なんだー?」
男「……。君にはまだ早い!」
雪女「ねぇー何でだ?何でなんだよー!教えろよケチケチー!」
男「俺はケチケチって名前じゃありません」
雪女「何でちゅーがはしたないんだよー、私と幸せになろーよー!」
男「大丈夫だ、俺はちゅーしなくても幸せだから」
雪女「ずるいぞ男!私も幸せになりたい!なーあー!ちゅうしろー!」
男「(どうしよう)」
男「!(閃いた!)」
雪女「?どうしたんだよケチケチー」
男「だから俺の名前はケチケチじゃありませんー。……まったく、雪女のしつこさには負けたよ(棒読み)」
雪女「やったー男に勝ったー!いえーい!」
男「だからちゅーしてやる」
雪女「やったー!ちゅーだちゅー!」
男「えい」
男が雪女を抱き締める
雪女「おー?」
男「これがちゅーです」
雪女「はふぅ」
男「………」
雪女「成る程ー、これがちゅーなんだな!確かにはしたないなー」
男「だから言っただろーこの変態さんめー」プニプニ
雪女「わはははー!くすぐったいよ男ー!やめろ、頬っぺたプニプニするなー!」
男「変態さんめー」プニプニ
雪女「わはははー!」
━━━数日後。
雪女「男!せっくすしろー!」ダダダッ
男「!?」
雪女「なんでだよう!せっくすしろ、せっくすさせろ、せっくすしやがれー!」
男「……ちょっと姉ちゃん連れてこい」
雪女「うん?分かったー!ちょっと待ってろー!」ダダダッ
男「さてと、火炎放射器はどこにしまったかな」
━━━数分後。
雪女「姉ちゃんだよ!」
雪女姉「姉ちゃんだぜぃ!」
男「ちょっとそこに座りなさい、説教するから」
雪女「分かった!」
男「いや君じゃなくて」
雪女姉「分かったぜぃ!」ドゲザッ
男「いや土下座まではしなくていいから」
雪女姉「で、この姉ちゃんに何の用なんだぜ?残念ながら姉ちゃんは妹の彼氏をNTR趣味はねーぞ」
男「恋人じゃない」
雪女姉「成る程、旦那か」
男「夫婦じゃない!」
雪女「姉ちゃんと男は仲良いなー!わははー!」
男「……雪女、ちょっと耳を塞いでいなさい」
雪女「分かったぞ!」ミミセンッ
雪女「………」
男「雪女は可愛いなぁ!」
雪女「………」
男「ペロペロ!ペロペロしたい!」
雪女「………」
男「よし、聞こえてないな」
雪女姉「何だお前ら」
雪女姉「で、本当に何の用なんだぜ?」
男「一つ確認しておく。雪女にあれやこれやいらんことを吹き込んだのは君でいいんだよな?」
雪女姉「そうだぜ!この姉ちゃんが吹き込んだんだぜ!」
男「せいやっ」火炎放射器発射
雪女姉「うわぁっ!」避ける
男「……チッ」
雪女姉「溶けちゃう!溶けちゃうから止めてー!熱い!熱い熱い!」
男「(ちょっと可哀想になってきたな)……はい、止めました」
雪女姉「……ふぅ、危うくジェラートになっちまう所だったぜ」
男「何であんな事をしたんだ」
雪女姉「だってよー、お前らの仲が全然進展しないんだもんー。さっさとちゅーくらい済ませろよー!」
男「だってじゃありません。いらないお世話です」
雪女姉「ぶーぶー」
雪女「ねぇー男ー、まだ耳栓してなきゃだめかー?」
男「……」手をバッテン
雪女「だめかー……」
雪女姉「何でだぜー?何でちゅーくらいしてやらないんだよー!お前それでもちんちんついた男か!?」
男「女の子がはしたない言葉をつかうんじゃありません!だから雪女には聞かせたくないんだよ、君との会話」
雪女「暇だー」
雪女姉「姉ちゃんが言うのもなんだけどよー、私の妹めちゃくちゃ可愛いじゃん、美少女じゃん」
雪女「暇だー」
雪女姉「正直な話、ムラムラする時とかねーのかよ」
男「………」プイッ
雪女「?何してんだ男ー」
雪女姉「駄目だこいつら」
雪女姉「まったく、そんなんじゃいつまでたっても進展しそーに……はっ」ヒラメキッ
雪女「暇ー」
男「もう良いぞ外して」ミミセンハズシッ
雪女「うおっ!音がでけーぞ!うるさいなーわはははー!」
男「君の方がうるさい」ペシッ
雪女「いてー!」
雪女姉「ちょいちょい、こっち向け男」
男「……何ですか」フリムキ
雪女姉「ちゅっ」
男「!?」
雪女姉「ちゅーーー」
男「む"ーー!む"ーー!」
雪女「ね、姉ちゃん何してるんだよ!男から離れろー!」
雪女姉「……っん……ちゅ……ぷはっ」
男「」ピキーン
雪女「男ーーー!!こ、こここ氷ってるよ!男がっ氷っちゃったよ!?」
雪女姉「これが、ちゅーだぜ雪女」
雪女「そうなの!?」
雪女「そんなことはどーでもいいよ!男、男をどーにかしないと!」
雪女姉「いやいやこれはどーでもよくないぜ雪女。ちゅーはな、確かに幸せにはなれる。だけどそれは人間同士の話だぜ」
雪女「………」
雪女姉「私達は雪女だ。妖怪だ。>>1からずっと設定が生かされてなかったけど、これは覆せない事実なんだぜ」
男「」ピキーン
雪女姉「雪女、私達が人間とちゅーすれば……人間を不幸にしてしまう」
雪女「……」
雪女姉「それでも、男とちゅーできなくても、雪女は男が好きか?」
雪女「好き、……好きだ!大好きだ!ちゅーできなくたってもいい!!私は男が大好きだ!」
雪女姉「そうか、━━━ということらしいぜ、男」
雪女「ふぇ?!」
男「………」解凍済
雪女姉「女の子にここまでさせて、お前はまだへたれるつもりか?」
雪女「え、何で男が治ってるんだ!?溶けてるよ?氷ー!?」
雪女姉「私達は雪女だぜ?凍らすのも溶かすのも自由自在なのを忘れたのかよ?」
雪女「あー!そうだったんだよっ!」
男「俺は……」
雪女「男!大丈夫か?寒くない?」
雪女姉「さて、と邪魔者はそろそろ山に帰るんだぜ。姉妹丼を期待している奴はごめんな」
雪女「男!毛布持ってきたんだよ!」
雪女姉「あ、そうだ雪女。お前男を暖めてやれ」
男「!」
雪女「分かったよ姉ちゃん!でもどうやってやるんだよ!私雪女なんだぞー!」
雪女姉「ヤり方は男が知ってる筈なんだぜ」
男「君何を言って」
雪女姉「じゃあな、男。お膳立てはしておいたぜ。後はお前が素直になるだけだぜ」スタスタ
男「おい待て……ってもう居ないし」
雪女「?男どーしたの」
男「あー……もう」
━━雪女「好き、……好きだ!大好きだ!ちゅーできなくたってもいい!!私は男が大好きだ!」━━
男「何か人間だの妖怪だの寿命だのその他色々…考えてるのが馬鹿らしくなってきた」
雪女「本当にどーしたんだー男、馬鹿になっちゃったのか?」
男「黙りなさいお馬鹿」
雪女「おー、元気だ!男が元気で私は嬉しいぞ!」
男「……はぁ」
雪女「わはははー!」
男「雪女」
雪女「なんだー?」
男「ちょっとこっち来い」グイッ
雪女「分かったぞ!ん?どこにいくんだー?」
男「俺の家ですよ」
━━━男の家。
雪女「」そわそわ
男「そこのソファーにでも座ってて、今冷たいジュースでも持ってくるから」
雪女「は、はい!」スワリッ
男「なんだいきなり……寛いでて良いんだよ」
雪女「うん!分かったぞ!(久々の男の部屋だ……!何か緊張するな)」
男「お!オレンジジュースがあったよ雪女」
雪女「オレンジジュース!い、良いのか?そんな豪華なの!」
男「(……豪華?)」
男「はいどーぞ」
雪女「わーい!」ゴクゴク
男「なぁ雪女」
雪女「ひゃんらー?(なんだー?)」ゴクゴク
男「俺、君のことが好きだ」
雪女「がふっ」ブハッ
雪女「」ふきふき
男「俺は人間で、君は雪女だ。種族も生き方も寿命だって違う」
雪女「……うん」ゴクゴク
男「きっと俺は…君より先に死ぬ。だから、俺は……いやこれは言い訳だな」
雪女「………」
男「俺は君に嫌われるのが怖かっただけだ」
雪女「嫌わないよ!私は、男を嫌いになんかならないもん!」
男「……そうなんだよな、君は、俺の事を好きだと言ってくれた」
男「何て言うか情けないよな、俺。女の子に告白させてしまうなんて」
雪女「……」ゴクゴク
男「だから、もうへたれるのは止める」
雪女「……」
男「俺は、君が好きだ。大好きだ。……愛している」
雪女「なら」
雪女「私に、ちゅーしろ!」
男「!……うん、分かった」
━━━おわり
暇だから立てたは良いけれど何か上手く纏められそうにないから終わっとく
コメントとか色々ありがとーです!
Entry ⇒ 2012.03.21 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
少女「お邪魔しまーす」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1331810488/
少女「こんにちはー」ガララ
親父「おお少女ちゃん。いらっしゃい」
少女「あ、親父さん。お兄さんはいらっしゃいますか?」
親父「あいつはまた小屋の方に篭ってるよ。なんでも新作のネタがぼぼんっ、と浮かんだんだと」
少女「むむ、そうですかー。それなら邪魔しちゃ悪いかな……」
親父「んにゃ、行ったれ行ったれ。たまには息抜きも必要だろう。
それに、少女ちゃんの顔をみりゃあ、あいつも喜ぶだろうしな」
少女「そっか……じゃあ、行ってみますね」
親父「ん、その包みは?」
少女「あ、これですか? えへへ、お兄さんに食べてもらおうと思って、お結びをいくつか……」
親父「おお、おお……あいつもいいお嫁さんを見つけたもんだなぁ……」
少女「もう、親父さんってば。私じゃお兄さんにはつりあいませんよー」ニコニコ
少女「ふう……ふう……」テクテク
少女「はあ……いつ歩いても、結構きついー……」
少女「えっと、この木が、中間地点だから……後半分っ」
少女「お結び崩れないように注意しないと……」テクテク
少女「はぁ……お兄さん、よくこんな道歩いていけるなあ……」
少女「今度、理由でも、聞いてみようかな」
少女「お兄さーん?」トントン
「あいよー」
少女「入っても構いませんかー?」
「構わんぞー」
少女「はーい……っと」ガララ
男「よーこそ少女。今日も山登りご苦労様だなー」
少女「このくらい平気ですよー。男さん、今お仕事中ですか?」スタスタ
男「んにゃ、寝てた」
少女「あら、どーりで……目やに、ついてますよ」フキフキ
男「うおっ、しょ、少女、そんな事しなくてもいいのに」
少女「いーえ。お兄さんは放っておいたらすぐぐーたらするので、私がしっかり管理してあげないと」
男「身の回りのことはしっかりしてるつもりなんだがなー……」
男「毎度毎度すまんなあ」
少女「私も好きでやってる事ですから、お気になさらず。はい、お茶どうぞ」
男「ありがとう……しかし、そう言ってもうそろそろ三年になるな」ズズ
少女「早いものですねえ。ついこの間までお兄さんは大学に通っていた気がします」
男「お前はついこの間まで小学生だった気がするなあ」
少女「む……そう言われるとなんだか寒気がしますね」
男「人をロリコン呼ばわりするとはいい度胸だなー」
少女「事実を述べたまでですー。お兄さん、可愛い子を見かけるとすぐ鼻の下伸ばすんですもの」
男「そ、それは男として普通の事であってだなー。早くも話の方向性がずれてきているぞ」
少女「雑談なんてそんな物ですよ」ズズ
少女「ひ、昼ごはん食べていないんですか?」
男「十一時くらいから篭っていたからな、仕方ない」
少女「仕方なくありません! どうして言ってくれなかったんですか?」
男「どうしてもこうしても、お前は高校があるだろうに」
少女「それはそうですけど、言ってくれれば朝にお弁当を作るくらいは……」
男「お前なー、17の女の子にそんな負担をかけさせる訳にはいかんだろ」
少女「25の男の人が適当すぎるんです!」
男「あー分かった分かった。今度から気をつける。だからそんな必死にならんでも、な」
少女「納得いきませんねぇ……」ムスー
少女「そもそもこんな山奥まで来る必要も余り無いんじゃないですか?」
男「馬鹿言うでない、ここまで来る道は運動不足解消にうってつけだ」
少女「はあ……確かに結構いい運動にはなりますけど」
男「確かお前も帰宅部だったよな。丁度いいじゃないか」
少女「それは……そうですけどー」ムムム
男「まあそんな事しなくても十分痩せてるように見えるけどなー」ハハハ
少女「な、何言ってるんですか!」カァア
男「ばっちりだ。もう終盤でな、そろそろ再開しようかと思っていたところだが」
少女「ん……でしたら、私はこの辺で……」
男「……いや、やめた」
少女「え?」
男「執筆は中止だ。十一時からさっきまでぶっ通しで書いていたからな、今日はこのくらいで終わりにする」
少女「それじゃあ、居てもいいですか?」
男「お前には他に遊ぶ友達がいないのかねー」ニヤニヤ
少女「せ、折角此処まで来たのにそんな事言うんですかあなたはー!」
男「暗くなってきたなー」ピシャン
少女「そうですねー。いつ頃帰るんですか?」
男「何時でも。少女が満足したらでいいよ」
少女「そんな適当でいいんですか」
男「適当とは失礼な。責任は今全て少女にあるぞ」
少女「丸投げじゃないですかー」
男「俺に出来るのは小説を書くこと! それだけだな」
少女「何故そんな自慢げなんでしょう」
男「小説家たるもの、常に自信家で無いとやってられないものだよ」
少女「ハードなんですね」
男「締め切りとかね」ハァ
男「うむ、じゃあ帰ろうか」
少女「今日は泊まっていかないんですね」
男「女の子一人で暗い山道を歩かせる訳にはいかんだろー」
少女「子どもじゃないんですから……でも、心配してくれているんですね」
男「そりゃあ、お前が赤ん坊の頃からずっと見てきた男としてはだな」
少女「それだとなんだかお父さんみたいですよ?」
男「ダディと呼んでくれたまえ」
少女「お断りしますー」クスクス
少女「……灯りが綺麗ですね」テクテク
男「一日の疲れを癒す最高の時間だ。気分転換にもなる」テクテク
少女「……そうだ、お兄さん」
男「どうした」
少女「手を繋いでくれませんか?」
男「な、何を突然抜かすんだお前はー」
少女「いいじゃないですかー、その方が安全ですよ? ふと隣を見たら私がいなくなっていたらどうするんです?」
男「どんな状況だそれは」
少女「神隠しとかー」
男「そんな無茶な」
少女「あら、私結構オカルト好きなんですよ」
男「ほーう、小学生の頃夜お化けが怖くておもらししかけた子は何処の淑女だったかな」
少女「せ、セクハラですよそれはー!」
少女「あっ……」
男「子どもじゃないと言う割には、まだまだ小さな手だなぁ」ニギニギ
少女「お、女だから当然です。お兄さんだって、私の手が大きかったらどう思いますか」
男「うーむ、難しい質問だ」
少女「なんですかそれ」
男「お前には立派な女性になってほしい反面、小動物的可愛らしさを維持して欲しいという気持ちもある」
少女「はぁ」
男「反応薄いなー」
少女「いや、まあ……どう反応すればいいのか分からなかったもので」
男「俺がどういう人間だかよーく知っているものだと思っていたが!」
少女「はいはい、分かってますよー。ほらっ、遅くなったら怒られてしまいますよ!」グイッ
男「坂道で走るのは危ないだろうがぁ」
少女「……着きましたね」
男「なんだかんだで少女の家まで来てしまった」
少女「いつもここまで送ってくれるのに、何を今更」
男「それもそうだがなー。ほら、手離しなさい」
少女「……嫌です、と言ったら?」
男「また俺の中でお前の年齢が一回り減少するだけだな」
少女「むう」パッ
男「……明日も学校だろう。早く寝ないと、成長しないぞ」
少女「……今のままがいいんです」ボソッ
男「なんだ?」
少女「……なんでもありません。さようなら、お兄さん」フリフリ
男「おお、またなあ、少女」フリフリ
親父「おう、おかえり。少女ちゃんは」
男「ちゃんと家まで送った。いつもの事だろう」
親父「そりゃそうだがなー、やはり若い男女が二人っきりだと、どうにかなってしまうんじゃないかと」
男「……何年の付き合いになると思っているんだ」
親父「まあなぁ。お前も考えた事は無いのか、結婚とか、そういう……」
男「少女はまだ17だぞー。高校生に何を望めというのか」
親父「随分と世話になってないか、お前。この前も部屋の掃除といって、大掛かりな掃除セットを持ってきたじゃないか」
男「い、いやそれは彼女が勝手にし始めた事であってだなー」
男「けじめねぇ」
親父「意味が分からない、なんて言わないよな」
男「あんたは人を低く見過ぎだ……分かってますとも、ええ」
親父「ならお前、少女ちゃんに好きな子が出来たらどうするよ」
男「なんだそりゃ」
親父「どうするよ」
男「……耐えられそうに無いな」
親父「だろうなあ」クツクツ
男「……掃除してもらってからと言うもの、部屋が輝いて見えるな」
男「さぁて、どうするか。やる事も無いし寝るか」
男「メールが着ているな……少女から」
“明日も小屋に行くんですか? お弁当、要りますか?”
男「気にするなと言った筈なんだがな……」カチカチ
男「……よし、これでいいだろう」ピッ
男「……世話になりっぱなしだな、全く」ガバッ
――“よろしく頼む。”
ザァアアアァ…
少女「お兄さーん! 開けてくださいー!」ドンドン
男「な……お、お前! びしょびしょじゃないか、早く入れ!」ガララ
少女「お世話になりますー……」スタスタ
男「あー、と、服は……仕方ない、男物で我慢しろ。後ろ向いててやるから早く着替えなさい」
少女「はいぃ」ヌギヌギ
男「……」
男「うむ、濡れた服は……あー、干しておくか」
少女「あ、はい。手伝いますよ」
男「いい、いい。お前は体を温めておきなさい。風邪でも引かれたら親御さんに顔向けできん」
少女「……一応許可は取ってあるんですけどね」
男「なんのだ?」
少女「いえ、なんでもありません。それより、助かりました」
男「構わんさ。しかしなんでこんな日に来たんだ少女よ」
少女「来る途中までは降ってなかったんですよ? こんな急に降ってくるとは思ってなくて……」
男「……天気予報は見ないタイプだったか」
少女「た、たまたまです」
少女「元々、泊まっていく予定だったのでは?」
男「俺はそうだがなー。お前の事を言っているんだよー」
少女「あ、なるほど……そうですね、確かに」
男「その割には随分と気にして無さそうだが」
少女「いえー、いざとなったら私もお泊りしていきますし」
男「な、何馬鹿な事を考えてるんだ?」
少女「言ったでしょう、許可は取ったって。雨も止みませんし、止んだとしても夜遅くだと思いますよ」
男「むぐぐ、しかしそれは道徳的な問題があってだなー」
少女「あら、何かしようとでも考えて……くしゅんっ」
少女「は、はい……ただの、くしゃみです」ズズ
男「……これを羽織ってなさい」バフ
少女「わ……これ、お兄さんのじゃ」
男「言っただろう、風邪を引かれても困ると」
少女「でも、そしたら今度はお兄さんが寒いんじゃ」
男「お前は俺の体力をなめているなー、そんなんじゃ将来男と付き合っていけないぞ」
少女「な、何の話をしているんですか!?」
男「なんでもない。ほら、早くしなさい。俺は大丈夫だぞ」
少女「……ありがとうございます」
男「……うむ」
少女「……今、七時です」
男「……そうだな」
少女「雨、止みそうにありませんね」
男「……うむ」
少女「今日、一緒に泊まっていってもいいですか?」
男「……今日だけだぞー」
少女「……」ニコニコ
男「な、なんだその満面の笑みは」
少女「ふふ、こうして一緒にお泊り会を開くのも、何年ぶりかなあと思って」
男「また奇妙な事を考えてるなお前はー」ハァ
男「夕ご飯? 台所は無いぞ」
少女「ふっふー、こんな事もあろうかと、しっかりお結びを用意してきたのです!」ジャーン
男「……褒めるべきなのかこれは?」
少女「本当はまた間食用だったのですが。
ま、急遽お泊り会が開かれてしまった以上、栄養はしっかり摂らないとなりませんよ」
男「何を言っても始まるまい。ありがたくいただこう」
少女「そうですね。お茶、どうぞ」
男「……手馴れてきているよな、本当」ズズ
少女「お兄さん相手にだけ、ですけどね」
男「そうなのか?」
少女「そうなのです」ズズ
男「そう言えば、何処へ行くにも俺の後ろに隠れてついてきていたなあ」
少女「また恥ずかしい記憶を……いえ、今回に限っては、何も言えません」
男「十数年経て克服されていたかと思ったが……」
少女「あ、でもちゃんと友人はいますので、ご心配なく」
男「そ、そうか」
少女「男友達も、ちゃんといますよ?」
男「……ふむ」
少女「……彼氏は、いませんけどね」
男「……きゅ、急に湿っぽくなったな少女よ」
少女「誰が湿地帯ですか誰がー」
男「そんな事一言も言ってないぞー」
少女「お粗末様です」
男「これからどうしたものか」
少女「まだ、七時ちょっとですから、寝るには早いですね」
男「うむ、俺は大体十二時過ぎまでおきているからな、まだまだだ」
少女「そ、そんな時間まで起きて執筆してるんですか?」
男「締め切り前とかは徹夜だがな、普段はほら、色々やる事もあるし」
少女「はぁ……私は、起きてられませんね……」
男「昔から九時に眠る子だったな」
少女「今でも十時ですけどね……そうしないと、朝起きられませんから」
男「……いい子に育ったなあ」
少女「お、親父さんみたいな事言わないでくださいよー」
男「なんだー、改まって」
少女「お兄さんは、結婚とかどう考えてるんですか?」
男「はぁ? 最近、突拍子も無い発言が多すぎやしないかね」
少女「き、気になったことを口に出すようになっただけですよー」
男「それは……ううむ、いい事であるようなそうでないような」
少女「それで、どうなんです? もう、25ですし、お仕事の方もうまく行ってるって聞いてますし……」
男「……なんとも、言えないな」
少女「は、はあ」
男「俺はその……なんだ、えー」
少女「え……?」
男「……うおう、急にやる気出てきた。よーし、執筆するぞー」スタスタ
少女「あ……お兄さん、なんではぐらかしたんですか今ー!」
男「なあ、少女よ」
少女「はい、どうしました?」トントン
男「執筆中の俺に何かしたい、と思ってくれたのはありがたいんだが……」
少女「はあ」トントン
男「何故よりによって肩たたきなんだ?」
少女「あ、今馬鹿にしましたねー? 私、これでも親父さんに上手って褒められたんですよ?」
男「何をさせているんだあいつは羨ましい……いや、まあ、確かに上手ではあるな。マッサージ屋にでもなったらどうだ」
少女「あのですねー、お兄さんが思っているほど、世の中甘くないですよ」
男「17の小娘に言われちゃせわが無いな」ハァ
少女「誰が小娘ですか誰がー」
少女「……」トントン
少女「……それにしても、お兄さん」
男「どうしたー」
少女「大きくなりましたね、背中」
男「せ……さっきから随分、年上からのような意見が目立つな」
少女「思ったことを口にしてるだけですって。覚えてます?
小さい頃、一緒にお風呂に入っていたでしょう」
男「そんなことがあったような気もする」
男「そりゃなあ」
少女「手が止まってますよー」
男「そっちこそさっきから昔話ばかりして」
少女「ふふふ。懐かしいですね」トントン
男「懐古主義だなあ」
少女「いえいえ。勿論、昔も楽しかったですけど……今だって十分」トントン
男「……」
少女「ずっと……こうしていられたらなあ、なんて」
男「……ぷっ」
少女「えっ」
少女「なっ、なんで笑うんですか! そ、そんなおかしいこと言いました!?」
男「いやぁ……お、おかしく無いけどなー……それを少女が言ってると思うと、わ、笑いが」ヒヒヒヒ
少女「ひ、酷いです……」
男「いやーな。心配せんでも、俺はこれからもこんな感じだ」ナデナデ
少女「そうですかねえ……そ、そんな強く撫でないでください」
男「ま、お前にはもうちょっと成長して欲しいと思うがなー。胸の膨らみとか」
少女「せ、セクハラー!」
少女「そう言えば……お兄さん」
男「どーした」
少女「この小屋……お風呂有りませんよね」
男「ああ、そんな物ある訳……あー」
少女「……」
男「……我慢するか、帰るか。そろそろ雨もやんだ頃じゃ……」
ザー
男「……い、一日くらいなら平気じゃないかなー」
少女「うー……仕方ないですよね」
男「うむ、仕方ない」
少女「お疲れ様でした」
男「うん。うげ、もうこんな時間か。大分集中してたんだな。暇じゃなかったかー?」
少女「暇でしたけどー……お兄さんの小説の、資料。読んでましたから」ピラ
男「あれ、いつの間に……あんま面白いもんじゃないと思うがなー」
少女「確かによく分かりませんでしたが、お兄さんはこれを参考に書いているんですよね?」
男「うむ。今回のは自信作だぞー。入賞はかたい」
少女「入賞? また、なんかの……小説大賞とかに出したりするんですか?」
男「ああ、正確にはそうじゃなくて……ほら、本屋大賞とか。そう言うのはお前も知ってるだろ?」
少女「あぁ……あまり詳しくありませんが」
男「うん。俺もだ」
少女「そ、それでいいんですか……」
少女「なんですか藪から棒に。そりゃ、知ってる人が有名な賞に選ばれたら嬉しいですよ」
男「本当かー?」
少女「疑うところですかねそれー。でも、お兄さんが小説家になるって知らされた時はびっくりしました。
てっきり普通の会社員とかになるものだとばかり思っていましたから」
少女「その時に十分驚きましたし、今度何か取ってもあまり驚かないかもしれませんねー」
男「それがありがたいなあ。いきなり態度変えられても困るしなー」
少女「……そもそも、なんでそんな自信あるのかが不思議です」
男「前にも言っただろう、自信家でなければやってられないのだよ」
少女「その割に線が細いところありますよねー」
男「なんか言ったかー?」
少女「いえなにもー」ニコニコ
男「寝不足は肌に悪いと聞くね」
少女「お風呂に入らないって時点で、ちょっと自暴自棄です」ゴシゴシ
男「その使い方はおかしいぞ、少女……よし、寝るか」
少女「……お先にどーぞー」
男「お前の方が眠そうに見えるんだがなー」
少女「先に眠ったら、その、何されるか分かりませんし」
男「そ、そこまで信用されてなかったのか俺はー……」
少女「冗談です。布団は何処ですか?」
男「ああ、待て待て。俺が出すから座ってなさい」スタスタ
少女「……そこまで子供扱いしなくても」ボフボフ
男「17才はまだまだ子供でしょうに。暫く使っていなかったが、問題ないか? 湿ってる所とか」
少女「大丈夫です……あ、お兄さんの匂いがしますね」クンクン
男「……匂いフェチと言う奴か」
少女「あ、いえそういうのじゃなくてー……」バッ
男「うむうむ。俺はお前がどういう子だかきちんと理解しているからな、弁解はいらないぞ」
少女「お、お兄さんの方がよっぽど変態くさいです」
男「保護者だからな!」キリッ
少女「むう……どうしてそう自信満々なのか……」
少女「いいですよー……ふあぁ」
パチッ
男「……おやすみ」モゾモゾ
少女「おやすみなさい……」モゾモゾ
男「……」
少女「……」
少女「……まさか、本当に何も無いとは」
男「あってほしかったのかよ、えー?」
少女「ち、違いますけどー。はいっ、着替え終わりましたよっ」
男「よろしい。忘れ物は無いなー? 暫く来る予定ないからな、此処」
少女「あ、そうなんですか」
男「前も言ったかもしれんが……脱稿間近でな。後は家で書こうと思う。編集との折り合いもあるし」
少女「ああ、成程……大変な時期なんですね」
男「そうだなあ。大変だけど、書くことは好きだからいいのさ」
少女「そうですか……」
少女「ドピーカンって、古臭い言い方ですねぇ」
男「そうかー? ま、気持ちの良い晴れであることには変わりあるまい」
少女「そうですね。昨日はどうしてあんなに降ったのか……あ、そう言えば」
男「どうしたね」
少女「そろそろ、学校のテストが……」
男「おお? そんな時期か。お前なら心配要らないと思うが、抜かるなよー」
少女「私は大丈夫ですけど、お兄さんもしっかりお願いしますね。執筆に夢中で、栄養失調とか、お兄さんなら……」
男「……流石にそれはないと思うぞー」
男「ようし、到着。元気でな、少女」
少女「はい、お兄さん。お兄さんも、お体には気をつけて」
男「おう。そうだ。お前のテストが終わったら、記念にどっか出かけるとしよう」
少女「え? 本当ですか?」
男「男に二言は無いのさー。その時は俺も脱稿出来てると思うし。だから、しっかり頑張るんだぞ」
少女「は……はいっ! 分かりました! お互い、頑張りましょう!」
男「急に元気になったなあ」ハハハ
少女「ただいまっ」
少女母「あら、おかえり。随分元気そうだけど……もしかして、あったのかしら?」
少女「んんー、あったと言うか無かったと言うか……でも、お母さんが考えてることじゃないと思う」
少女母「あらそう。まあそうよね、男さんだものねー……少女から迫ったパターンも考えたのだけど」
少女「せっ、迫ったってあのねー。私とお兄さんはそう言う関係じゃないのっ」
少女母「そのお兄さんって呼び方もいつまで続くかしら」クスクス
少女「だ、だからーっ!」
男「ただいまー……ああ、親父は仕事か」スタスタ
男「うーむ……勢いで出かける約束をしてしまったはいい物の……」
男「一体何処に行くべきか。あいつの行きたそうな所、となると」
男「遊園地、とかか……?」
男「……ふむ。最近行ってなかったし、新しいアトラクションも増えていることだろう」
男「よしっ、そうと決まれば執筆あるのみだ。あいつのテストが終わるより先に完結させてやろうッ」スタスタスタ
キーンコーンカーンコーン
先生「――では、解散。テストが終わったからって、各自ハメを外し過ぎないよーに」
少女「ふう……」
少女友「おいすー。お疲れ少女ちゃん。どだった?」
少女「可もなく不可もなく、ですね。友ちゃんは?」
少女友「ふっへへー。部活に打ち込む青春っていいよねー」ニコニコ
少女「あ、はい……お疲れ様ですね」
少女「あー……すみません。ちょっと、行く所があって」
友「おおう。あ、あれでしょ。お兄さんのところでしょ、でしょ?」
少女「あう。話したこと、ありましたっけ……」
友「何回かー、ぽろぽろと。どう見ても通い妻です、本当にありがとうございましたっ!」
少女「か、通い妻って……そう言うのじゃ」カァ
友「んーふふ。急いでるんでしょ? 私に構わず、早く行けー、なんちて」
少女「あ、それでは。また今度」
友「じゃーねー。さよならだけが人生ならば、またくる春はなんだろうー」ヒラヒラ
ピンポーン
親父「ん、客か」スッ
男「あ、俺が出るよ」
親父「おう? ああ、そろそろ来る頃だったな」
男「全くまあ律儀なもんだ……はいはい、今開けるよー」ガラララ
少女「こんにちは、お兄さん! お久しぶりですね!」
男「久しぶりと言う表現は本来数年来の旧友に使うものだ」
少女「相変わらずのご様子で、安心しました。入っていいですか?」
男「おうとも。いらっしゃい」
少女「はい、お疲れ様です」
男「テストはどうだった?」
少女「可もなく不可もなくです」
男「最早決まり文句のように聞こえるなーそれは。いつも通りならいいんだがね」
少女「お兄さんの方も、書き終わったんですよね?」
男「勿論だとも。本になるのは大分先だろうが、ひとまずはゆっくりできるだろうな」
少女「で、でしたら……その、覚えてます?」
男「……何をだね?」
少女「ほら……ど、何処かに出かけるって、最後にあった時に……」シュン
男「……そんなしょげんでもいいと思うがー。ちゃんと覚えてるぞ」
男「俺かー? そうだな、○○遊園地なんてどうだ」
少女「あら。奇遇ですね。私も行きたいと思っていたんです!」
男「おう、知ってたぞ」
少女「……なしてでしょう」
男「言っただろう、俺はお前がどういう子だかきちんと理解しているとなー」
少女「えー……お母さんに聞いたりしました?」
男「……そう言う鋭い所も把握しているぞー」
少女「あの人は……」ハァ
少女「あ、そんな早くに?」
男「俺はお前より早く終わっていてなー。結構余裕があったのさ」
男「遊園地の地図、効率の良い回り方などなど、万全の準備をしておいた」フンス
少女「な、成程ー……いつにもまして手際が良いのですね」
男「楽しみだからね」
少女「シンプルですね……でも、私も、楽しみです」ニコニコ
男「出発は朝五時です」
少女「ええええっ」
少女「では、そろそろお暇しますね」
男「ああ。送ってく」
少女「いいんですか?」
男「暇だしなー、久々の自由を存分に満喫しなければならない」
少女「って言っても、忙しい時だって毎回送ってくれたじゃないですかー」
男「それはそれ、これはこれ。気分転換って奴だなー」
少女「よく分かりませんねぇ」ハァ
親父「気をつけてなー」
男「普段お前に世話になりっぱなしだからなー、こう言う時くらいはきちんと保護者らしいところをね」
少女「保護者……ですか……」
男「うむ。今までずっとそうだったろう」
少女「そうですね……でも、その、お兄さん」
男「ん?」
少女「私は、もう――子供じゃ、ありません」
少女「……ずっと思ってたんです。いつまで私は子供扱いなのかなって」
男「そりゃあお前、俺からしてみれば、お前は――」
少女「分かっています。お兄さんにとって私は、まだまだ子供なんですよね。
昔から接してきたから。昔からそうだったから」
少女「でも、それでも私は……それが嫌なんです。立派な一人の女として見てほしいんです」
男「……」
少女「……おかしいですよね。いつまでもこのままがいいなんて、言っておきながら……こんなことを望むなんて」
少女「私は、わがままです」
少女「……」
男「お前がわがままで、結構いじっぱりなことは知ってる」
男「昔から見てきたからな」
男「だから……その、なんて、言うかな」
少女「……お兄さん」ギュッ
男「お、わっ……」
少女「お兄さん、好きです」
男「」
少女「ずっと、ずっと……子供としてじゃなくて。一人の少女として、お兄さんのことが好きでした」
少女「だから……」
男「――……」
男「すまん。それは、できない」
男「……さっきも言ったけど、俺は昔からお前のことを見てきた。お前のいろんな所を知ってるし、どういう人間だかも知ってる」
男「だから……お前の言ってくれた言葉も、一人の女性として見て欲しいってのも……やっぱり全部、子供のわがままにしか聞こえないんだ」
少女「……酷いです」
男「知ってる。嫌っても構わん。嫌われるのを承知で、俺は言うぞ」
男「俺もお前のことは好きだ。大好きだ。でもそれ以上に、大切な人なんだ。今までずっと見てきたから」
男「だから、お前が立派な大人になるまでは……俺は保護者として、お前と一緒にいようと思った。好きとか嫌いとかいう感情は抜きにして」
男「……返せる言葉は無いな」
少女「それなら……お兄さんが、私のことを見ていてくれたように。私だって、ずっとお兄さんのことを見てきました。
だから、お兄さんの……色々なことを知ってるつもりです」
男「……」
少女「お兄さんは……冗談は言っても、嘘はつかない人です」
少女「だから、その言葉も信じます。私は、立派な大人になって……もう一度お兄さんに告白します」
少女「それなら……いいんですよね?」
男「……ああ。約束する。俺は嘘は、つかない」ニッコリ
少女「ありがとうございます」
男「……こちらこそ」
少女「……でも」グイッ
男「え――」
少女「――キスくらいするわがままなら、聞いてくれますよね?」チュッ
終わっていいだろうか
無駄な要素入れすぎたかなー…精進します。お粗末さまでした
二人だけだと少女の背伸びした恋愛が増長し
親と3人で仲良くやってると少女が病気になる気しかしない
ともあれ乙
Entry ⇒ 2012.03.18 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
犬「人間になりました」 男「そのようですね」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1331560900/
このSSはSS深夜VIPのSSです
男「興奮せずにはいられませんね」
男「人としての恥じらいに欠けているように思えて仕方が無いです」
犬「獣ですので」
男「ならしょうがないですね」
犬「しょうがないです」
男「散歩にでも行きましょうか」
犬「折角目の前に裸のようじょがいるというのに散歩ですか」
男「嫌ですか」
犬「大喜びです」
男「人は全裸で出歩くと捕まるのです」
犬「着たくないです」
男「散歩はやめますか」
犬「このしっぽのアグレッシブさを見て、よくもそんな酷いこと言えますね」
男「こんなこともあろうかと、以前買っておいた服が役に立ちました」
犬「普通、こんなことは起きません」
男「男はいつでも1%の奇跡を待っているんです」
犬「あまりのかっこよさにめまいがしてきました」
男「暖かくて気持ちいいですね」
犬「わけもなく駆け出したくなります」
男「対抗心が芽生えます」
犬「人としての矜持を捨てないでください」
男「散歩中の奥様方がたくさんいます」
犬「よその犬と挨拶してきます」
男「その間に奥様方から奇異の視線に晒されます」
犬「こんにちは。こんにちは。こんにちは」
男「違います。誘拐とかじゃないです。首輪はお洒落です」
男「流石にリードの言い訳が思いつきませんでしたから、苦肉の選択です」
犬「言い訳せずに逃げたりしたら、通報されるんじゃないですか」
男「夜逃げも視野に入れる必要がありそうです」
男「奇遇ですね、私もです」
犬「今日のご飯はなんですか。ぬらぬらしてるのが好きです」
男「ウェットタイプのことを言っているのですか」
犬「ぬらぬら」
男「人になったことだし、試しにご飯を食べてみましょう」
犬「もがもが」
男「当然、箸は使えませんよね」
犬「熱いっ、口の中が熱いっ」
男「言いがかりです」
犬「まだ口の中が熱いです」
男「水を飲みなさい。ほら、コップです」
犬「いつもの容器が空です」
男「ようじょが四つん這いで水を飲む様を見ていろ、と言うのですか」
男「他者の目があれば確実に通報されています」
犬「……ふぅ。少し口の中がすっきりしました」
男「それは何よりです」
犬「あの熱いのはもういいです。ぬらぬらをください。ぬらぬら」
男「ぬらぬらではなく、ウェットタイプのエサです」
犬「ぬらぬら」
男「ウェットフードは高いのです」
犬「……食べます。食べますけど」
男「その恨みがましい目をやめなさい」
犬「ぬらぬら……」
男「じゃあ、今度は私の番です」
犬「ご主人様がぬらぬらを食べるんですか。とてもずるいです」
男「人は犬のご飯を食べません」
犬「おいしいですよ?」
男「……少し、興味が出てきました」
犬「おいしいですよ?」カリカリ
男「もう騙されません。普通に料理を作ります」
犬「普段は神秘のベールに包まれた箇所に、興味深々です」
男「冷蔵庫に入らないでください」
男「冷蔵庫は住居ではなく、食品を保管する場所です」
犬「ささ寒いです」ガチガチ
男「抱っこすることで体温を分け与えます」ダキカカエー
犬「ようやく人心地つきます」シガミツキー
犬「その様をご主人様の背にしがみついて拝見します」
男「手馴れた様子でキャベツを千切りします」
犬「寒さで思わず出てしまった鼻水をご主人様の肩に垂らします」
男「それに気を取られて包丁で指を切ります」
犬「申し訳なく思います。犬なのにご主人様の邪魔をしてしまい、大変申し訳なく思います」ペコペコ
男「泣かなくていいです」
犬「ぐすぐす。せめてものお詫びに、舐めます」
男「何やら嫌な予感がします」
男「指でしたか。流石に邪推のし過ぎでしたね」
犬「お望みとあらば、ご主人様のちんちんも舐めます」
男「嫌な予感が的中です。お望んでません」
犬「ご主人様のちんちんは、ぬらぬらですか?」
男「いいから指を舐めてください」
男「感謝することしきりです。これで料理を再開できます」
犬「今度はご主人様に触れずに、静かに見守ろうと思います」
男「ようじょの柔肌が離れていくことに静かにショックを受けます」
犬「いつものご主人様に安心しました」
男「しかし、ようじょの舌使いを糧に、どうにか力を振り絞って料理を作ります」
犬「それを後ろから応援します。ふれーふれーご主人様ー」
男「ようじょのあどけない応援に気を取られ、このざまです」
犬「ロリコンはだめですね」
男「まったくです」
男「炭の味でした」
犬「じゃあ、ご飯も食べ終わったようだし、ブラシで毛をといてください」
男「犬用のブラシしかないのですが」
犬「犬なので大丈夫です」
男「元犬で現人なのでダメです。人用のブラシを買いに行きましょう」
犬「むう」
犬「見慣れぬ景色にやや興奮気味です」
男「普段の散歩ルートから離れていますからね」
犬「そして化粧品の匂いに顔をしかめます」
男「犬には少々きついかもしれませんね」
犬「さあ、お遊びはこの辺にして、ぬらぬらを探しましょう!」
男「ブラシを買いに来たのです」
犬「むう」
犬「ブラシを買いに来たと言ったのに。ぬらぬらはダメと言ったのに」
男「昼は炭だったから、晩は食べられるものがいいですね」
犬「ぬらぬら……ぬらぬら……」
男「……1つだけですよ?」
犬「っ! だからご主人様は好きなんです!!」ダキッ
男「ようじょに大きな声でご主人様と呼ばれたうえに抱きつかれ、あっという間に大ピンチです」
男「ぜー……ぜー……。いいですか、外では私のことをご主人様と言ってはいけません。捕まります」
犬「じゃあ、何と呼べばいいですか?」
男「……お、お兄ちゃん?」
犬「ご主人様は業が深いです」
男「ご主人様もいいが、お兄ちゃんもいいですね」
犬「よくよく観察してみれば、お兄ちゃんは気持ち悪いかもしれません」
男「気づかなかったのですか」
犬「ご主人様補正で気づきませんでした。でも大好きなのは変わりませんよ、お兄ちゃん」
男「お兄ちゃんという響きに、私の右脇腹にある浪漫回路がうなりをあげています」
犬「やっぱり気持ち悪いです」
男「そうです。そして事あるごとに私をお兄ちゃんと呼んでください」
犬「ご主人様でなければとうの昔に逃げていますが、了解しました、お兄ちゃん」
男「じゃあ行きましょうか、妹よ!」
犬「犬です」
男「ノリが悪いですね」
犬「犬にノリを求めないでください」
男「化粧品は犬の天敵ですね」
犬「でも、ぬらぬらのために我慢します。偉いですか、お兄ちゃん?」
男「ああ、可愛いぞ妹よ!」ナデナデ
犬「犬です」
男「なかなか夢を見させてもらえません」
犬「犬がようじょになっただけで満足しませんか」
男「人の欲求は果てないものです。そして、男は夢を追い続けるものです」
犬「あまりのかっこよさに震えが止まりません」
男「だから、『お兄ちゃん、大好きですにゃん♪』と言ってください」
犬「ご主人様がまさかの猫派です」
犬「ショックのあまり泣きそうです。もうすぐ泣きます。泣きます。ひんひん」
男「でも、お前と一緒にいるうちに、犬が猫と同じくらい好きになりました。それで許してはくれませんか」ナデナデ
犬「ぐすぐす……分かりました。許します」
男「ほっと胸をなでおろしました」
犬「ぬらぬら二個で手を打ってあげます」
男「うちの犬が交渉を覚えました」
男「うちの犬がウェットフードを両手に持ってご機嫌です」
犬「こんなに嬉しいのは今日のお昼の散歩以来です」
男「割と近い過去でしたね」
犬「しっぽの勢いも留まるところを知りません」ブンブン
男「はは、本当ですね。……いま気づきましたが、普通にしっぽがありますね」
犬「犬ですので」
男「もしかして、私が奇異の視線に晒されていたのは、私の挙動不審さが原因ではなく、そのしっぽ、そしてそのイヌミミのせいだったのではないでしょうか」フニフニ
犬「ミミを触られて少し恥ずかしいです」
犬「服犬にするだけで飽き足らず、さらにアクセサリーをつけるのですか、お兄ちゃん」
男「我慢してください。全てはお前のためなんです」ナデナデ
犬「帽子の上からなでられても、感触が届きません……」
男「我慢してください」
犬「犬の喜びの9割以上を占める欲求を我慢しろとは酷い話です。正直泣きそうです」
男「そのグラフおかしくないですか」
犬「頑張ってしっぽを振らないようにします。努力します」
男「ふむ。……犬はいい子だね、可愛いね」頬ナデナデ
犬「う、動きません。しっぽを動かしません」ブンブン
男「動いてます」
犬「だって、あんなことされたら喜んじゃいます。無理です。……ずるいです、お兄ちゃん」ブンブン
男「いけない、ちんちんが勃ちそうです」
犬「あっ、お兄ちゃんが気持ち悪い!」ピタッ
男「お、しっぽが止まりましたね」
犬「……わざとあんなこと言って、しっぽを止めたのですか?」
男「いや、純粋にお兄ちゃんという響きにちんちんが勃ちそうになっただけです」
犬「重ねて言いますが、お兄ちゃんは気持ち悪いです」
犬「ぬらぬらは既に確保済みです。早く帰りましょう」ダキツキッ
男「ブラシと私の食材がまだです。そう急かさないでください」
犬「本当にぬらぬらはおいしそうです。……じゅるり」
男「涎が垂れていますよ」
犬「大丈夫です、ぬらぬらにはかからないよう細心の注意を払っています」
男「私の腕に抱きついているためか、腕に全部かかっています」
犬「本当ですね」
男「明らかな他人事です」
犬「ここは化粧品売場が近いので鼻がひんまがりそうです。ふがふが」
男「鼻声もまた萌えますね」
犬「隙あらば気持ち悪いですね」
男「兄としてのたしなみです」
犬「お兄ちゃんは兄ではなくご主人様です。便宜上、お兄ちゃんと呼んでいるだけです」
男「鼻声でのお兄ちゃんはまた格別ですね」
犬「レベルの低い犬ならもう逃げ出しています」
犬「噛みごたえがあるのがいいです」
男「そんな観点で選んでいません。そもそも、噛んではダメです。そういえば、犬用のブラシも三代目ですね。ブラッシングが嫌いなのですか?」
犬「ごしごしされるのは好きです。お兄ちゃんに体を触られるのはたまりません」
男「それ以上はいけない」
男「犬用の噛むおもちゃを以前買ったと思いましたが、どうしてそれを噛まないのですが」
犬「犬としての沽券に関わるからです。どうして与えられたものを喜び勇んで受け取らなくてはならないのですか。獣としての本能が与えられるのを座して待つのではなく、奪え、と囁くのです」
男「なるほど、思ったよりしっかりした考えを持っていたのですね」
犬「あと、ゴム臭いから嫌です」
男「そっちが本音ではないのでしょうか」
犬「噛むとおえってなります。バナナマンの日村と同じ症状です」
男「いやに詳しいですね」
犬「お笑いのDVDを見るのは構いませんが、一緒に見る相手がいつも犬たる私だけというのはどうかと思います」
男「思わぬ所で友達がいないことを露見させられてしまいました」
犬「こちらの方が少し安いようです。よし、差額でぬらぬらを買いましょう!」
男「買いません」
犬「巧みな誘導のつもりでしたが、失敗しました。しょんぼりです」
男「もう既にふたつ買ったじゃないですか」
犬「そうでした。喜びが湧き上がります」ブンブン
男「しっぽに気をつけましょう」
犬「はや、はやや」ピタッ
男「あっ、可愛い!」
犬「あっ、気持ち悪い」
男「感情の発露が禁止されているようです」
犬「私と一緒ですね、お兄ちゃん」ブンブン
男「しっぽ」
犬「あぅ」ピタッ
犬「お兄ちゃん、私もそれ押したいです」
男「カートですか。まあ、何事も経験です、やってみなさい」
犬「ころころ、ころころ」
男「おお、初めてにしては上手ですね」
犬「ころころ、ころころ」フンス
男「褒められたことに気を良くするのはいいけど、スピードをあげないでください」
犬「ころころ、ころ……!!?」
男「見失いました」
男「未だに見つかりません。神隠しに遭ったと考えるのが妥当でしょうか」
犬「鼻! そうだ、私には鼻がある。くんくん、くんくん!」
男「しかし私は神を信じていないのでその案は捨てます。どこに行きましたか、私の犬」
犬「……今日ほど化粧品を憎く思ったことはないです」
男「何やら前方にしょんぼりしたようじょを発見しました。あのようじょには見覚えがあります。おうい、おうい」
犬「……? !!!」
犬「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん!!!」
男「ぜ、全力で突撃するものではないです。内蔵が飛び出るかと思いました」ナデナデ
犬「私を置いていってはダメです! もう二度と会えないかと思ったじゃないですか!」
男「置いていったのではなく、置いていかれたのです」
犬「なんでもいいです。あのころころはとても危険です。もう近寄りません」
男「カートは悪くないと思います」
犬「お兄ちゃんがころころの味方をします。やはりあのころころは悪です。いつか痛い目を見せてやります」
男「近い将来、この店に弁償しなければならない気がします」
犬「なんですか、お兄ちゃん?」ムギュー
男「もう少し離れてもらわないと、歩きにくいのですが」
犬「嫌です。また離れ離れになるなんてコリゴリです」
男「店内で少し迷子になっただけで、少々大げさかと思いますが」
犬「あと、ころころを監視しておく必要もあるのです。今度はお兄ちゃんを連れ去ってしまう危険もあるのです」
男「さっきのは、お前がスピードを出し過ぎただけです」
犬「お兄ちゃんがころころをかばう……これが三角関係というやつですか?」
男「カートが自我を持ち、女性形態(小学生、あるいは中学生程度の凹凸が望ましい)になれるならその関係は成り立ちます」
犬「お兄ちゃんはブレませんね」
男「カゴを持ち歩くのは面倒ですからね」
犬「しかも、私の大事な大事なぬらぬらをその中に入れています。一瞬も目を離せません」
男「おや、犬用のおもちゃがたくさん売ってますよ」
犬「……!! でもころころが、ああ、でもこれ噛みたい。あっ、こっちの動く!」
男「ああカートが私を連れ去ってしまう」
犬「お兄ちゃんが!!!!?」
男「ごめんなさい嘘です」
犬「お兄ちゃんはもうころころに近寄ってはダメです! 禁止です!」
男「ちょっとした冗談で面倒な事になりました」
犬「こんな酷い冗談はなしです。あんまりです。泣きそうでした」
男「ごめんなさい」ナデナデ
犬「……お兄ちゃんだから許します。特別です」ブンブン
男「しっぽ」
犬「うわわ。帽子の上からなでられたから、大丈夫と思ったのに」ピタッ
男「帽子をとった上でなでると、どうなるのでしょうか」
犬「…………」キラキラ
男「熱い視線を送っているのに申し訳ないですが、外ではしませんよ」
犬「再び泣きそうです」
犬「私が我慢して押します。一時休戦です。苦肉の策です」
男「なるほど。頑張る犬に、特別におもちゃをひとつ買ってあげましょう」
犬「あまりのことに、しっぽがはち切れんばかりの勢いです」ブンブンブンッ
男「しっぽが他のお客さんにばれたら即座にこの店から逃げますからね」
犬「とまれー、しっぽとまれー。……止まりません」ブンブン
男「困りましたね。このままではいつばれるか気が気でないです」
犬「悲しいことを考えてしっぽを止めます。うーんうーんうーん」ブンブン
男「私も手伝いましょう。私は犬なんて嫌いです」
犬「嘘でも泣いちゃいます。ひーん」ピタッ
男「ああごめんごめんなさい。本当は大好きですよ?」ナデナデ
犬「ぐすぐす……」ブンブン
男「元の木阿弥です」
男「褒めたいですが、褒めると再び動いちゃうだろうから褒めません」
犬「それなら我慢します。家に帰ってから改めて褒めてもらいます。この我慢の分も褒めてもらいます。たぶん、ものすごく褒められます。なでなでされまくりです」ブンブン
男「想像だけでしっぽが動いてます」
犬「……ままなりません」ブンブン
男「いっそ、おしりにバイブをつっこんでいると喧伝し、それが猛威を奮っていると周囲に勘違いさせる方向で行った方がいいのでしょうか」
犬「安心と信頼のお兄ちゃんクオリティーです」ピタッ
犬「お兄ちゃんはセンスがないです。どうしてトラのぬいぐるみを選ぶのですか。怖いです」
男「ものすごく可愛らしくデフォルメされているのですが」
犬「奴らの獰猛さを侮ってはいけません。たとえどれほど可愛くよそおうとも、普通の生き物なら指先ひとつでダウンしてしまいます」
男「ぬいぐるみの話ですよ?」
犬「私は途中から北斗の拳の話になってしまいました。ほあたー」ペシペシ
男「……それで、結局このおもちゃは嫌なのですか」
犬「怖いですが、恐怖を克服するのも生物としての勤め。これでいいです、がんばります」
男「偉いですね」ナデナデ
犬「ああ、しっぽが。またしっぽが。こうなったらトラの恐怖で相殺です。がおーがおー」ブンブン
男「どう見ても楽しそうに遊んでます」
犬「たくさん買いましたね。袋が重そうです」
男「明日の分も買いましたからね。そう毎日行くのは面倒です」
犬「私もお手伝いします。ぬらぬらが入ってるのはどの袋ですか?」
男「結局それですか。まあ、そう言うと思ったのですが。はい、どうぞ」
犬「ぬらぬら! あっ、トラのぬいぐるみも! ……あれ、他には何も入ってませんよ?」
男「さあ、早く帰りましょう。あまりもたもたしていると日が暮れてしまいます」
犬「…………。あの、お兄ちゃん?」
犬「……だっ、大好きです!」
男「ようじょに告白されました。もう死んでもいいです」
犬「折角気合を入れて言ったのに、何もかもが台無しです」
男「冗談です。私も大好きですよ?」ナデナデ
犬「軽いです……。こっちとしては一世一代の告白でしたのに」
男「ふむ。……ええと、これくらい好きです」チュー
犬「……!!? お、おおお、お兄ちゃん!?」
男「か、風が強くなって来ましたね。早く帰りましょう、ええ帰りましょう」
犬「舌! 舌が入ってません! もっと舌をからませあうやつがいいです! でもさっきのもドキドキしていいです!」
男「夕食時のスーパーの近くは人がいっぱいなのですよ!?」
犬「お兄ちゃんに抱っこされて疾走するのは至福です♪」
おわり
犬ペロペロ
気が向いたら次も続編も書いてくれ
Entry ⇒ 2012.03.17 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
悪魔「俺を召喚したのはお前か?」女「そ、そうです・・・」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1329406294/
このSSはSS深夜VIPのSSです
女「え、えと、私の願いを叶えてもらえますか?」
悪「いいぜ。それが仕事だしな。だがお前貧乏くじを引いたな。」
悪「一生に一回しかできない悪魔の召喚で俺みたいな悪魔を呼び出すなんて。」
悪「俺は悪魔は悪魔でも知恵の悪魔だ。知恵や知識に関すること以外の願いはかなえられない。
悪「つまり不老不死や世界征服みたいな壮大な願いは無理ということだ。残念だったな。」
女「そうなんですか?でも大丈夫です。」
女「それならそれで叶えてほしい願いがありますから。」
悪「そうか、それでお前の願いは?」
女「私に今までにない最高の経済学の理論を教えてください!」
悪「俺は契約に則り、お前の願いを一つかなえる。そしてその代償として死後、お前の魂を頂く。なにか質問は?」
女「えと、魂を取られるとどうなるんですか?」
悪「お前は死後永遠に魔界で俺の下僕、奴隷になることになる。」
女「…わ、わかりました。それでいいです。」
悪「本当にいいのか?今ならまだ引き返せるぞ?」
女「だ、大丈夫です。契約して下さい。」
悪「分かった。じゃあ、この契約書にサインしろ。それで契約成立だ。」
女「悪魔さんとの契約も契約書なんですね。もっと禍々しいものかと思ってました。」
悪「まあ、そういうやつもいるが、俺はこれが一番好きなんでな。」
女(スラスラ)「はい、できました。」
悪「では、契約成立だ。お前の願いが叶うのを待っているがいい。」
女「ん~よく寝ました~。さて、さっさと準備して研究所に行かないと。」
女(そういえば、昨日ので契約ってちゃんと成立したんですかね?出てきた悪魔さんもあまり悪魔っぽくなかったですし…。まさか夢オチなんてことはないですよね…)
悪「ああ、おはよう。朝ごはんできてるぞ。」
女「ふえ?…キャーーーーーーーー!!!!」
女「な…なんで悪魔さんがここにいるんですか?」
悪「ああ、それなんだが、昨日あのあとお前の願いを叶えようと色々準備を始めたのだが、どうにもお前の言う『最高』の意味が分からなくてな。お前に聞きに来たんだ。」
悪「だが、気持ちよさそうにお前は寝てるし、起こすのも悪いんで、こうして暇つぶしに朝飯を作りながら待ってたわけだ。」
女「そこは起こして下さいよ!恥ずかしいじゃないですか?!」
悪「だからそれが悪いくらい気持ち良さそうに寝てたんだよ。」
悪「だが、まあ、そのなんだ。女が涎垂らしながら寝るのはちょっとどうかと思うぞ…」
女「イヤーーーー!」ジタバタ
女「え、えと、それはですね。今までのどんな経済学の理論よりも素晴らしいという意味です!」
悪「だからそういうあいまいなのでは困るんだ。『素晴らしい』と言われてもお前の言う『素晴らしい』と俺の考える『素晴らしい』に齟齬があるかもしれないからな。」
女「意外と細かいんですね。悪魔さんたちってもっと大ざっぱな生き物だと思ってました。」
悪「おい。それは偏見だぞ。」
悪「まあ、理由を説明するとだ。魂という対価を頂いてる以上、悪魔には相手の願いを100%完全にかなえる義務がるんだ。」
女「は~悪魔さんたちって職業意識高いんですね。常にお客様満足度100%を目指すとは。」
悪魔「変なところに感心している場合か。」
女「は、はい。その、悪魔さんに頼んだらなんとかなるって思ってました…」
悪「ハア…なら、仕方がない。俺はしばらくお前に取りつく。お前を観察してお前の願いの詳細を探ることにする。」
女「え、えええええええ?!そ、そんな困ります!」
悪「仕方がないだろう。他に方法がないんだから。」
女「無理です、無理!だってそれって男の人と四六時中一緒ってことじゃないですか?!」
悪「まあ、そうだな。でもそれなら大丈夫だ。別に襲ったりなんかしねえよ。俺は貧乳には興味ないしな。」
女「う~ヒドイです。気にしてるのに。安心できたのになぜか釈然としません…」
悪「嫌だったらさっさと願いを詳細まで詰めるんだな。それを俺に伝えた時点で俺は願いを叶えて消えるから。」
女「はい…」
女「あ、じゃあ頂きます。なにがあるんですか?」
悪「とりあえずご飯とみそ汁は作った。希望があれば他にも作るが?」
女「いえ、それだけあれば大丈夫です。」
女「それにしても私、こんなに豪華な朝ごはんは久しぶりです。いつもは食べないことも結構あるんで。」
悪「そんなだから胸が小さいんじゃないか?」
女「またそれを言いましたね?」
悪「はは、冗談だ。さあ、食べるぞ」
悪・女「「いただきます」」
女「ご馳走様でした~」
悪「お粗末様でした」
女「悪魔さんって料理上手なんですね。」
悪「この程度は誰にだってできる。」
女「そんなことないですよ。前に私が味噌汁を作ろうとしたらお鍋が爆発しましたから。」
悪「…は?」
女「いえ、だから爆発したんです。」
悪「俺は知恵の悪魔だが、俺でも味噌汁を爆発物に変える方法は知らないな。」
悪「お前、錬金術師の才能でもあるんじゃないのか?」
女「そんな才能いらないです」
悪「それもそうか」
女「え?」
女「あー!もう遅刻確定です!色々あり過ぎて完璧に頭から消えてました!どうしてくれるんですか?」
悪「俺のせいにするな。のんびり朝飯食べ出たくせに。」
女「だからそれも原因なんですよ!あんなに美味しく作るから。」
悪「知らん!いいからさっさと準備しろ!」
ギルクラ見ながらになるから少しの間ペース落ちるかも
悪「用意できたか?」
女「はい」
悪「つか、急がなくていいのか?走ったりすれば間に合うんじゃないのか?」
女「…いえ、もうさっき体調不良で遅刻しますって連絡を入れましたから大丈夫です。」
女「どうせ間に合わないんですからゆっくり行きましょう」
悪「嘘吐きは地獄に落ちるんだぞ。」
女「私は吐かなくても落ちますから。」
悪「…そうだな。」
悪「ああ、わかった。」
バタン
ジャー
悪(? 水の音?)
バタン
女「お待たせしました~」
悪「あ、ああ。つか、さっき蛇口の音がしたんだがどうかしたのか?」
女「あ、いえ、ちょっとお喉が渇いたのでついでにお水を飲んでました。」
女「さ、そんなことよりも行きましょう?」
悪「しかし、人の世はいつ来ても面白い。常に変化と活気に満ち溢れている。」
女「あ、やっぱり今までにも召喚されたこともあるんですか?」
悪「ああ。前に召喚されたのは5,60年前くらいかな。その時は確かウォーレン・バフェットとかいうおっさんに呼び出されたな。」
女「…なんですかそれ?!悪魔さん、あんな凄い人と契約したんですか?!」
悪「違う逆だ。俺が契約したからあいつはあそこまで凄くなったんだ。ちなみにあいつのその時の願いは『どのような時でも利益を出すことのできる投資法を教えて欲しい』だったな。」
悪「正直、そんな願いをするくらいだから金の亡者なのかと思っていたが、なかなかどうして。面白い慈善家になったものだ。」
女「…」(ポカーン)
悪「要は俺をうまく使えばお前でもあいつクラスの人物になれるということだ。賢く使えよ。」
女「は、はい」
悪「他人からの見え方に関しては切り替えられるようになっている。願いによってその辺は変わるからな。融通が利くようになってるんだ。」
悪「ちなみに今は両方できない設定になっている。お前を観察するにはそっちの方が便利だからな。」
女「あ、じゃあ、別に悪魔さんの分の電車賃とかはいらないわけですね。」
悪「そういうこと。まあ、外で俺に話しかけるときにはせいぜい気を付けるんだな。」
アイムバック…心折れそう
悪「これが日本のラッシュアワーというやつか…」
女「はい、毎朝憂鬱になります。」
悪「…どうやって乗るんだ?これ?」
女「そこは気合です!さあ、乗りますよ。」
悪「ま、今霊体みたいな俺には関係ないんだけどな。」
女「…ずるいです、うらやましいです。」
女「あ、さすがに電車の中では喋れないので。」
悪「ああ、了解」
ぞろぞろぞろぞろぞろ
悪「しかし見れば見るほど凄いな。」フヨフヨ
悪「なるほど、この中吊り広告というのは面白い。電車内で手持無沙汰な人間の目が行くのを狙っているのか。人は無意識に文字を読もうとするからな」
女「…」
悪「…あいつ何やってるんだ?」
女「あ、あの止めて…下さい…お願いします…」
痴漢「へへへ」
悪「ちっ!」ガシッ
悪「おい、人の連れになにしてくれてるんだ?」
痴「え、ちょ、お前、いったいどこから・・・?」
悪「ごちゃごちゃうるさい。いいから離せ。」
痴「ヒ、ヒイイ」
痴(今だ!)ダッ
悪「あ!くそ!ちっ…」
悪「おい、大丈夫か?」
女 コクコク
女「あ、あの助かりました。」
女「ありがとうございます。今までにも何度かされてて困ってたんです…」
悪「別にいいさ。それに安心しろもう二度とあいつに悩まされることはないから。」
女「どういうことですか?」
悪「あいつに呪いをかけておいた。今後一生あいつは女に触れるたびに死ぬほどの腹痛に襲われる。」
悪「痴漢どころか一生女性と手も繋げまい。」
女「ちょっと可哀そうな気もしますね。」フフッ
悪「お、やっと笑ったな。まあ、嫌なことはさっさと忘れることだな。」
女「そうですね。あ、着きましたよ。この駅です。」
女「おはようございます。」
教授「ああ、女君。おはよう。体調の方は大丈夫なのかね?」
女「はい、もう大丈夫です。ご心配をおかけしました。」
女「教授、今日はなにをお手伝いすればよろしいでしょうか?」
教「そうだねえ…今日はこの論文に必要なデータの収集をやってもらおうかな。」
女「…はい。承知しました。」
悪「ふむ、ここがお前の働いている研究所というやつか。面白そうだな。俺はまあ適当に色々と見ているぞ。」
女「どうぞ~。あ、今はまた見えないようになってるんですね?」ヒソ
悪「ああ、そうだ。だから気にせずお前の研究をしているがいい。」
女「…できないですよ。教授の研究のお手伝いがありますから」ヒソ
悪「ああ、なるほど、あの教授とやらがお前の上司なのか。んで、お前はあの教授の研究を手伝いつつ、自分の研究をしてると。」
悪「んで、まあお前は自分の研究の方に俺の力を貸してほしいといったところか。」
女「そうです。」ヒソ
悪魔「ふむ、じゃあ、お前の研究をするときになったら教えてくれ。それまで俺はその辺でうだうだしている」
女「分かりました」ヒソ
悪「…」ジー
女「(カタカタカタカタカタカタ・・・・・)」
悪「…」ジー
女「(カタカタカタカタカタカタ・・・・・)」
悪「…おい、いつのなったらお前の研究に移るんだ?」
女「ははは…仕方ないですよ。平の研究員に自分の研究をする時間なんてほとんどありませんから…」
悪「変な話だな。それでは新しい人材がいつまでたっても育たないじゃないか」
女「そうですね。でも、仕方ないですよ。そういうことになっていますので…」
悪「ふむ…」
悪(しかしこれじゃあ、らちが明かないな。こっちとしてはさっさとお前個人の研究に取り掛かってほしいのだが…。あ、そうだ!)
女(あれ、悪魔さん教授の方に行ったけど、どうしたんでしょう? )
悪「ふん!」ヴォン
教「あばばばばばばばばばばばばばばばば!!!!!」
女「教授、どうかされましたか?!今なにかすごい悲鳴が・・・」
教「いや、なんでもないよ。ところで女君。私の研究の手伝いの方はもういいよ。それは悪魔君がやってくれるそうだから。君は自分の研究に専念しなさい。」プシュー
女「は。はあ。ってなんで悪魔さんが?!」
悪「いやいや。女さんひどいですよ。僕もこの研究所の一員じゃないですか。教授のお手伝いするのは当然ですよ。」
悪「ささ、僕は今個人的に取り組んでいることはないんで、こっちは僕に任せてください。」
女「…」
女「え、えと、説明してもらってもいいですか?」
悪「うむ、あのおっさんを洗脳して俺も研究所の一員だということにした。」
女「さっきの痴漢の件でも思いましたけど、悪魔さんってなんか、こうメチャクチャですね」
悪「お前には自分の研究に専念してもらわないと困るんでな。俺はそれを見ながらお前の願いを考えることにする。」
悪「お前はお前で研究をやりながら願いが明確化されたらすぐに言えよ。その場で叶えてやるから。」
女「分かりました」
女「データ集めも大事な過程ってのは分かってるのですが。やっぱり作業っぽくてつまらないですし、自分の好きな理論のことを考えてる時が一番楽しいです。」
女「…あ、ごめんなさい。愚痴っぽくなっちゃって。」
悪「別にいいさ。それに人のダメなところを受け入れて肯定するのが悪魔って存在らしいぞ。」
悪「さて、じゃあ話も終わったし、昼飯行こうぜ。この辺りに何か美味しい店ないのか?」
女「そういえば悪魔さんって意外と食い意地張ってません?」
悪「まあな、久しぶりの人間の食事だから懐かしくてな。」
女「5,60年ぶりですもんね。あ、なにか食べたいものありますか?」
悪「そうだな、せっかく日本人に召喚されたんだ。日本食がいいな。」
女「そうですね。でしたらお蕎麦とかどうですか?」
悪「蕎麦か。日本の麺だな。知識では知っているが食べるのは初めてだな。よし、そこにしよう。」
女「あ、そうだ。さっきの痴漢のときのお礼に私が奢ります」
悪「あーいいよ別に。そういうつもりで助けたわけじゃないしな。」
女「そうですか? あ、でも悪魔さん、お金大丈夫なんですか?」
悪「それなら大丈夫だ。悪魔だからな。お金位いくらでも作り出せる。ほら。」じゃらじゃら
女「…やっぱり私が奢ります。」
悪「ふむ、別に贋金ってわけじゃないから問題ないぞ」
女「そういう問題じゃありません!」
女「…いいですか、お金っていうのは頑張ってる人に与えられるものなんです。」
女「会社はサリーマンの人たちが頑張って働いているからお給料を払います。」
女「人々は会社が頑張っていい商品やサービスを提供するからそれにお金を払います。」
女「そして、私もここの蕎麦屋のおじさんが頑張って美味しいお蕎麦を作ってくれるからそれにお金を払います。」
女「たとえお金自体は本物でも、偽物の頑張りで作り出されたお金で対価を払おうとするのは、頑張っている人たちに失礼です!」
悪「…」
女「…ごめんなさい。その、言いすぎました。」
悪「ごめんなさい」ペコリ
女「わ、分かればいいんです。さ、顔を上げてください。お蕎麦を頼みましょう。」
女「おじさん、ざるそば二つ。」
店主「あいよ~」
女「あ、来ましたよ。食べましょう」
悪「ああ」
女「頂きます」
悪「頂きます」
女「スルスル」
悪「ズルズル」
女「ね?おじさんが頑張って打ってくれたお蕎麦は美味しいでしょう?」
悪「…ああ」
女「へ?」
悪「悪魔は寝なくても平気だし、お前が寝ている間は観察していても無駄だしな。その間に働くことにする!」
女「は、はあ…が、頑張ってください!」
悪「うむ、頑張る」
悪「そういや気になってたんだけどさ。」
悪「あんたってなんで経済学の勉強してるんだ?願いも経済学がらみだったし。」
女「…」
悪「どうかしたか?」
女「いえ、そんな話すほど大した理由じゃないですよ?ただ単に進学するときに潰しが利く学部を選んだら、思いのほか好きになっただけです。」
女「あ、もうそろそろ昼休みが終わっちゃいますよ。早く食べ終わって戻りましょう!」
悪「…ああ。」
続き考えながら寝やす。
女「あーあ、今日も全然進みませんでした~」
悪「見ていたところお前自身なにを目指しているのか分かっていないみたいだったが?」
女「そうなんですよね~。私のやりたいことが経済学にあるのは分かってるんですけど、具体的に経済学でなにをしたいのかが自分でも突き詰めれてなくて…」
女「ちょっと急がないといけないですね。悪魔さんをずっとこうやって拘束するわけにもいかないですし。」
悪「まあ、そう気にするな。俺自身は結構お前との生活気に入ってるんだぞ。」
女「…え?あの、それって…」
悪「今までに契約したことのないタイプの人間だからな。悪魔として興味深い。」
女「…」
悪「? どうした? 不満そうな顔して? 俺何か悪いこと言ったか?」
女「別に何でもないですー」
悪「そうか、ならいいが。」
悪「そうだな、ほとんどの人間は召喚したとき俺たちにかなり具体化した状態で願いを言うんだ。」
悪「なぜなら、具体性のないぼんやりとした願いを悪魔を呼び出すに至るまでの執念で抱き続けるなんて基本は不可能だからな。」
悪「だが、お前はそうではなかった。しかし、その願いを叶えること自体に対する執念は嘘ではないらしい。その辺が俺の好奇心をそそるんだよ。」
女「…」
悪「…でな、ここで一つ相談なのだが、俺を呼び出した理由をそろそろ全部ちゃんと話してくれないか?」
女「えと、どういうことですか?」
悪「だからさっきも言った通り、具体性のない願いを悪魔を召喚するほど強く持ち続けるなんて基本は不可能なんだ。だが、お前はそれしている。そして、俺は願いを叶えるものとしてその理由を知りたい。」
女「別にそんな特別な理由なんてないですよ。きっとただ単に私の研究者としての名誉欲が人よりも強いだけですよ。」
悪「いや、お前はどう見てもそういうタイプじゃない。それくらいは俺にも分かる」
女「じゃあ、私にも分からないですね。」
女「それにそんなこと契約に関係ないじゃないですか? 私にも一応プライベートはあるんです。必要でないなら聞かないでください。」
悪「…分かった。まあ、言いたくないなら無理には聞かないさ」
女「…」
しばらくは書き溜めがあるから早いかも
女「いいですねー、美味しそうです。」
女「それにしても悪いですね。毎日朝晩とご飯を作らせてしまって。」
悪「まあ、仕方ないとはいえ居候の身だしな。」
悪「それにお前の料理の腕前は初日の晩で分かったしな…」
女「そ、それは言わないでください…」
悪「さてと、じゃあ俺はバイトに行ってくるわ」
女「今日も工事現場ですか?」
悪「ああ、今日も朝帰りになると思うから先に寝ててくれ」
女「分かりました。頑張ってきてくださいね。」
悪「ああ。じゃあ、行ってくる。」
バタン
女「…」
女「特別な理由か…」
女「私の場合、間違いなく『アレ』ですよね…」
女「やっぱり、いつかは話した方がいいのでしょうか…」
・・・
悪「こんばんは。お疲れ様です。」
作業員「おう、悪魔のあんちゃんか。お疲れ!」
悪「今日も頑張りましょうね。」
作「おうよ!」
悪「ふんっ」カツーン
作「おりゃ」カツーン
悪「ふんっ」カツーン
作「おりゃ」カツーン
作「ところでよ、あんちゃん。今日なんかあったんか?妙に元気がなさそうだが。」カツーン
悪「…まあ、ちょっと」カツーン
悪「彼女じゃないですって。ただの同居人ですよ。でも確かに今回も彼女が原因ではあるんですけどね。」カツーン
作「どうしたんだい?」カツーン
悪「実は彼女ちょっと隠し事をしてるみたいで。そのことを聞いてみたら怒られてしまったんです。」カツーン
作「ほう」カツーン
悪「たとえ同居人でも他人のプライベートに首を突っ込むべきではなかったですね。」カツーン
作「…いや、時には他人の心の中に入り込んでいかないといけない場合もある。」カツーン
悪「そうですか?」カツーン
悪「いや、俺は別に他人と距離なんて…」カツーン
作「いんや、明らかに目に見える形で拒絶してないからそう見えないだけで俺には分かる。」カツーン
作「あんちゃんはいつも相手が一歩近づいてきたらさりげなく一歩引いて近寄らせないようにしてる。」カツーン
作「心の底から人間を嫌ったり、怖がったりしてるやつの特徴だ。」カツーン
悪「…」カツーン
作「俺も昔そうだったからな。わかっちまうんだよ。」カツーン
悪「え…?」ピタ
作「それである日帰ったらいないときた。流石にあんときはショックだったよ。」
作「それで人間ってやつが信じられなくなってな。酒浸りの毎日を送ってた。」
作「でもまあ、ある日そんなんじゃあダメだって思えてなあ。なんとか立ち直って今こうしてるって訳だ。」
作「それでもなあ、あんちゃん、今でも時々あのとき踏み込んでればなあって思っちまう。後悔しちまう。」
作「だからな、あんちゃん、今日はもう上がれ。帰って彼女さんと話してこい」
悪「え、いや、それじゃ…」
作「いいから、あんちゃんがここんところ毎日出てくれてるおかげで予定より進んでるし、風邪ってことにして帰っちまえ。親方には俺から言っておく」
悪「…ありがとうございます」
作「おう」
女「さてと、悪魔さんが帰ってくる前に早く済ませてしまいましょう。朝帰りとは言っていましたが念のため。」
女「まあ、どうせ気休め程度のものなんですけどね」
女 (ガサゴソ)(ジャー)(パキッパキッ)
バタン
悪「ただいま。先輩が今日はもういいって早めに上がらせて…」
女「あ!」ポト サッ
悪(あれはっ・・・)
悪(どうする…見なかったにもできる。だが、それじゃあ今までと一緒だ。)
悪(今回だけは逃げない!)
女「…なんのことですか? ちょっと今日は寝つきが悪いから睡眠薬を飲もうと思っただけですよ?」
悪「…とぼけるな。悪いが俺は薬学にもしっかりと精通しているんだ。お前がさっき落とした薬は…」
悪「心臓病の薬だ…」
女「あ~あ、ばれちゃいました。はは。最後までなんとか黙っておくつもりだったんだけどなあ…」
悪「…どうして黙ってた?」
女「いや、だって格好悪いじゃないですか?『死期を悟った女が最後に生きた証としてなにかを残すために悪魔と契約した』なんて思われたら。安っぽいドラマみたいじゃないですか?」
悪「…そんなに悪いのか?」
女「はい、お医者さんにはもってあと3か月って言われました。『もうどうしようもない状態だから残りの時間は好きにしなさい』って匙を投げられちゃったくらいです。」
女「せめてもの気休めとして薬は飲み続けてたんですが、それでばれちゃいましたね。はは…」
悪「…」
女「…」ポロ、ポロ
女「ぐす、ごめんなさい。ばれたら、ぐす、色々と緊張が緩んじゃったみたいです。今まで、ぐす、誰にも、ひく、言って…なかったので…」
悪「…」ポン
~~~数十分後~~~
女「ありがとうございます。だいぶ落ち着きました。」
悪「気にするな。」
悪「しかし悪かったな。隠してたことをこんな形で暴いてしまって。」
女「ううん、気にしないで下さい。どうせきっと遅かれ早かれいつかはばれてたことですから。それに逆にすっきりもしました」
悪「そうか」
女「どうせここまで知られたなら悪魔さんにもっと私のことを知ってもらいたいですし、その………私ももっと悪魔さんのことを知りたいです。」
悪「そうだな。そういうのもいいな。」
女「じゃあ、言い出しっぺの私から話しますね。」
女「実はですね、こう見えて私いいところのお嬢様だったんですよ。」
悪(あーだからこんなに色々ととろいのか・・・)
女「今何か考えてませんでしたか?」
悪「いや、なにも」
女「…まあ、いいです」
女「父が事業をしていて、本当に冗談みたいな豪邸にも住んでたんですよ。」
女「でも、その事業がある日完璧に傾いてしまったんです。」
女「最初はちょっとしたミスってレベルだったんですけど、そこをどんどんライバル会社に付け込まれちゃって、それで完璧に倒産しました。」
女「それで父と母は蒸発して、私だけが残ったんです。」
悪「…」
女「競争相手を倒そうとするのは会社として当然の動き方ですし、両親も同じことを言ってましたから。」
女「前にお蕎麦屋さんで聞かれて誤魔化しましたけど、実は私が経済学を勉強しようって思ったのはこれが理由なんです。」
女「私はあの件のことを恨んでるわけじゃないですし、別段苦労もしませんでした。引き取ってくれた叔父さん夫婦がいい人たちだったので。」
女「ただ、そうじゃない人たちだって世の中にはいくらでもいるんです。」
女「私はそういう人たちを少しでも減らせるような、少しでも今より幸福が多いような世界を作れないかなって思って経済学を勉強しだしたんです。」
女「まあ、残念ながら、それを実現できるほどの頭は私にはありませんでしたけど…」
悪「大丈夫だ。そのために俺がいる。」
女「…そうですね」
悪「大丈夫だ。前にも言っただろ、人のダメなところをすべて受け入れて肯定するのが悪魔だって。」
女「…はい」
女「私が悪魔さんに隠してたのはこれくらいですね。あの、今度は悪魔さんの話を聞かせて下さいよ。」
女「ほら、悪魔さんたちがどういう風に生まれるのかとか気になりますし。」
悪「そうだな。まあ、期待しているところ裏切って悪いが俺は生まれつき悪魔だったわけじゃないんだ。」
悪「俺は元々人間だったんだよ。」
女「え?!えと、どういうことですか?」
悪「まあ、最初から全部話そう。」
悪「そんなだから周りもこぞって俺に勉強させたし、俺自身も知識欲や好奇心はあった方だからひたすらに勉強したよ。」
悪「それで勉強して、勉強して、勉強して、そうしているうちに俺はこの世のすべてを知り尽くしていた。」
悪「知らないことはなくなってたし、あっても持ってる知識の応用ですぐに解き明かすことができた。」
悪「でもな、当然だがそのすべてってのには目を瞑りたくなるような醜いものも含まれてるんだ。」
悪「特にきつかったのはやっぱり人間のそれを完全に知ってしまった時だな。」
悪「賞賛をしながら嫉妬をする。侮蔑の念を抱きながら友達面をして一緒にいる。相手のためと言いながら自分の評判を気にする。言い出したらきりがない。」
悪「それが分かってからは周りの人間をまともに見れなくなったよ。ありていに言ってしまえば怖くなったんだ、人間が。」
悪「そうして人間に絶望して、人間でありたくない、人といたくないって思いながら過ごしているうちに気が付いたら悪魔になってた。」
悪「それで、今に至るって感じだな。」
女「…」
女「やっぱり人間に戻りたいとはもう思わないんですか?」
悪「そうだな。俺を含めて悪魔といっても全員変な能力を持っていること以外はほぼ人間と変わらないし。魔界も悪魔にとってはこの人間の世界と別段変わらないしな。」
悪「それにやっぱり、悪魔には俺の能力が利かないのは俺にとって大きいんだ。さっき言った負の側面を見なくて済むからな。」
悪「まあ、それでも悪魔の仕事には時々嫌気がさすことがあるけどな。」
悪「やっぱり同意の上とはいえ魂をもらうってのは罪悪感もあるし、やっぱり悪魔を呼び出すほどの執念をもった願いってのは人の負の側面を見させられることが多いんだよ。」
悪「聞こえのいい願いを言っててもその裏に物欲や名誉欲、自己顕示欲が透けて見えるなんてことはごまんとある。」
悪「そして時には『あいつを社会的に陥れて復讐したいから知恵を貸してほしい』なんてストレートなものもある。」
悪「俺が悪魔になった経緯と合わせて、そういうのはやっぱり・・・つらいな。」
女「ごめんなさい…そうとは知らずに、私…」
悪「気にするな。それが悪魔なんだから。」
悪「なんだ?」
女「私に、可能な限り誰も不幸にならなない、みんなが幸福でいられる経済モデルを教えて下さい。」
女「これぐらい具体的なら大丈夫ですか?」
悪「ああ。しかしな、実をいうとだ、あの悪魔が相手の願いを100%完全にかなえなきゃいけないというのは嘘だ。」
女「ほえ?・・・・嘘お?!」
悪「ああ、本当は俺の解釈で適当に叶えても問題はない。騙してすまなかった。」
女「…それにしても、なんでそんな嘘ついたですか?」
悪「賭けてみたくなったんだ。お前は今までに見たことのないタイプの人間だったからな。」
悪「ふと、もしかしたら、こいつならもう一度俺に人間を信じさせてくれるかもしれないって思えてな。近くで観察してみたくなったんだ。」
女「…私なんかに賭けたら、後悔するかもしれないですよ?」
悪「ああ、かもな。だが、それでもいい。そもそもが賭けなんだからな。」
女「…そうですか」
悪「ああ」
昼飯行ってきやす
悪「? 研究やあのおっさんの手伝いか?」
女「いいえ、それよりもっと大切なことです。」
女「まあ、明日になれば分かりますよ。」
悪「まあ、いいか。おやすみ。」
女「おやすみなさい。」
悪「しかし、まさかあんなにきれいさっぱり研究所を辞めるとはなぁ」
悪「あれでよかったのか?」
女「いいいんです。私の願いはほぼ決まりましたし、残った時間を有効に使うためにも、もうあそこにいる理由はないですから。」
悪「そうか。」
悪「んで、お前はこれからどうするんだ?」
女「そうですねえ。とりあえず、とにかく色々と今までできなかったことをやりたいですね。」
女「…悔いが残らないように。」
悪「…そうだな。」
女「まずは旅行ですね。色々なところを回りたいです。」
悪「楽しそうだな。だが、あまり無理はするなよ。」
女「大丈夫ですよ。無理な運動とかをしない限りは基本は問題ないですから。」
悪「なら、まあいいが。少しでも何かあったらすぐに言うんだぞ。」
女「はい」
女「さてと旅行の第一弾ですよ」
悪「どこに行くんだ?」
女「○○神社です。日本で五本の指に入る有名な神社です。すごくきれいらしいです。」
女「あ、悪魔さんって神社とかって大丈夫ですか?成仏とかしちゃいませんよね?」
悪「成仏って…。まあ、大丈夫だ。多少きついかもしれないが浄化とかをされる心配はない。」
悪「こう見えて俺は地獄では魔王の次に位が高い悪魔だからな。低級の悪魔とかとは違ってよほどのことがない限りは大丈夫だ。」
女「…悪魔さんって意外とすごい人だったんですね。」
悪「意外とは余計だ。お前は今まで俺のことをどう思ってたんだ…」
女「だってほら、最初に合った時に自分のことを『貧乏くじ』って言ってたじゃないですか。それでてっきり結構卑屈な下っ端の悪魔さんなのかなあと…」
女「そんなことないですよ?私は悪魔さんと一緒にいられて毎日楽しいですから。」
女「それに調べたんですけど、命の悪魔さんは対価として他人の命を要求するらしいですね。」
女「私は他人の命を犠牲にしてまで生きたいとは思いませんから。」
女「それに私の目的は生きることじゃありませんから。」
女「だから、私は悪魔さんと契約で来て幸せですよ?」
悪「…ありがとう」
女「だからそんなつらい顔しないでください。ね?」
女「さ、湿っぽい話は終わりにしてそろそろ出発しましょう?新幹線に遅れちゃいますよ。」
悪「そうだな」
悪「荷物をよこせ。持つから。」
女「大丈夫ですよ、これくらい。」
悪「いいから。俺が持ちたいんだ。」
女「フフッ 変わった悪魔さんですねえ。でも…ありがとうございます。」
女「着きましたー」
悪「綺麗なところだな…」
女「ですねえ…でも、本当にすごいのはここからですよ。さ、本堂の方に行きましょう」
悪「ああ」
悪「しかし平日なのに案外人が多いんだな。」
女「そうですね。観光地として魅力的ってのもあるんでしょうが、やっぱりそれだけ神様にお願いしたいことがある人が多いんでしょうね。」
悪「…なあ神は人の願いを叶えないって話知ってるか?」
女「え、なんですか?それ?」
悪「だが、それだけの数の願いが集まれば、ある願いを叶えることによって別の願いを潰してしてしまうといった矛盾が必ず生まれる」
悪「例えばある人に幸せになってほしいって願いと不幸になってほしいって願いを同時にされたらその時点で両方を叶えるのは不可能だろ?」
悪「そして神は可能な限り平等でなくてはならない。選り好みしてある人の願いは叶えるが別の人の願いを叶えるってのはあってはならない。そんなことをすれば世界は崩壊するからな」
悪「そしてそんな状況で神に取れるもっとも平等な選択って何かわかるか?」
女「…誰の願いもかなえないこと」
悪「正解」
悪「神は平等に誰の願いも叶えない。そして矛盾の発生しにくい、わざわざ願わなくても簡単に叶うようなとても小さな願いだけに応える。そんな存在なんだよ。」
女「…それでも私は祈りや願い事が無意味だとは思いません。」
女「だってそれは人に許された最後にできる行動ですから」
悪「…そうだな」
女「あ、着きましたよ!さ、お参りしましょう?たとえ無駄だとしても少しは効果があることを祈って。」
悪「ああ…」
悪「…」パンパン
女「悪魔さんはなにをお祈りしたんですか?」
悪「ククッ 内緒だ。こういうのは言うと効果がなくなるんだろう?そういうお前は?」
女「フフッ じゃあ、私も内緒です」
悪魔「そうか」
悪「…なあ、実はさっきの話には続きがあるんだ。」
女「え?」
悪「そうして作られたのが平等性などを一切考慮せず、代償を要求することでバランスを取りながら、ただされた願いに応える存在。」
女「それって…」
悪「ああ、俺たち悪魔のことだ」
女「…」
悪「まあ、その、なんだ俺が言いたかったのはだな…救いはこうやってちゃんと用意されてるってことだ。」
悪「あの夜からお前が病気について吹っ切れたのは素直に嬉しい。だが、反面少し無理をして明るくしているようにも見えてな。」
悪「…まあ、だから少し安心して欲しかったんだ。お前にはちゃんと俺がいるって。」
女「…そうですね。確かに少し空元気だったかもしれません。気を付けます」
悪「ああ、それがいい」
女「それじゃあ、今日はホテルに戻りましょうか?」
女「今日は結構歩きましたし、明日も…ウッ」グラッ
悪「おい!?どうした!?大丈夫か?!」
悪「ちっ…救急車!」
女「…」
悪(あの日倒れてからこいつはまだ眠り続けている)
悪(とりあえずは安定したが、それでも今後どうなるかは分からない)
悪(…あいつに残されてた時間はもうそんなになかったんだな)
医「とりあえずは安定はしているが、それでも油断は許されない状態だ」
悪「そうですか」
医「…その、こんな時に言うのもなんなんだが、心の準備はしておいあ方がいい」
悪「え…」
医「女君の心臓はもう限界に近い。もうそんなに長くはない。いつそうなってもいいように覚悟だけは決めておきなさい」
悪「…」
医「では」
悪「…待て」
医「なんだね?」
悪「あいつのカルテとこれまでの検査結果を全部見せろ。俺なら治療方法が分かるかもしれない!」
医「いや、病院には守秘義務があるのでね、たとえ親族などであっても見せられない決まりに…」
悪「うるさい!いいから見せろ!」ヴォン
医「あばばばばばばばばばばばば」バリバリバリバリ
回想終わり
悪(それにおそらく次の発作にあいつの心臓は耐えられない。リミット長くてもあと一ヵ月といったところか。)
悪(…俺は本当に無力だ。あいつの願いを叶えることはできても、あいつを助けることはできない。)
女「ん…」
悪「!」
女「あれ…悪魔さん…?ここは…?」
悪「目が覚めたか!ここは病院だ。お前は発作で倒れたんだ。」
女「そう…でしたか。すみません…またご迷惑を。」
悪「いいんだ。とりあえず俺は医者を呼んでくる。おとなしくしてるんだぞ。」
女「はい…」
医「うん、今は安定しているね。でもしばらくは絶対安静だ。ベッドでおとなしくしているように」
女「はい、分かりました…あの、先生」
医「ん?なんだね?」
女「私の命、あとどれくらい持ちそうですか?」
医「っ…」
女「隠さなくてもいいですよ?自分のことですから、なんとなく分かるんです。私はもう長くないですよね?」
医「ああ…おそらくだが君の心臓は次の発作には耐えられない。それが来たら…」
女「そうですか」
医「力になれなくて申し訳ない…」
女「仕方ないことですから」
医「…それでは私は失礼させてもらうよ。」
女「はい」
悪「そうだろうな。」
女「…少し一人にしてもらってもいいですか?」
悪「ああ…分かった」
悪「だが、その前にこれだけ渡しておく。」バサッ
女「なんですか、これ?」
悪「お前の願いだ。『可能な限り誰も不幸にならない、みんなが幸福でいられる経済モデル』の理論がまとめてある」
女「ありがとうございます…これで私たちの契約も終わりですね。」
悪「ああ…だが、ここまで来たのなら最後まで付き合うさ。」
女「そうですか…」
悪「…またあとでな。多分、下のどこかにいるからなにかあれば呼んでくれ。」
女「はい」
悪「はあ…契約を終わらせた悪魔は魔界にすぐ帰らなければならないことになっているが、まあ今回みたいなケースなら許されるだろう。」
悪「どうせ…そんなに長く残るわけじゃないしな。」
悪「俺もなに考えてるんだか。残ったところで、あいつになにかしてやれるわけじゃないのに…」
悪「はあ・・・」
悪「ん…なんだあれ?」
屋上 メラメラ
悪「!屋上でなにか燃えてる!」ダッ
屋上
悪「一体何が…」
女「…」
悪「ってお前いったいそこで何してるんだ?!」
女「ああ、悪魔さんじゃないですか」
女「見てわかりませんか?燃やしてるんですよ、悪魔さんに貰った論文を。」
悪「…理由を聞いていいか?」
女「そうですね、もう私にとって必要も意味もないものになってしまったからでしょうか?だからせめてもの反逆としてこういう形で利用させてもらいました」
悪「…どういうことだ?」
女「…悪魔さん、私は神様に復讐をしたかったんです。」
女「私の人生は常になにかを奪われることの連続でした。」
女「会社を奪われ、両親も奪われ、幸せな家庭も、なにもかもを奪われました。そして今は私自身の命さえ奪われかけています」
女「私は私にそんな人生を強いた神様に復讐したかった!少しでも抗いたかった!」
女「だから悪魔との契約に手を伸ばしました。悪魔の力を借りて何かをなせば、それが神様への反抗になるんじゃないかと思って!なのに…」
女「その悪魔でさえ、結局は神様が生み出したシステムの一つだった!」
女「…結局、私は神様の掌の上で踊り続けるしかなかったんです。」
あ、ID変わりましたけど1です。
女「私はあなたの望み通りには死んでやらない!この人に力を借りてあなたに抗ってみせる!って」
女「まあ、それも無駄でしたけど。」
悪「…」
悪(ははは…笑えるな。俺はあいつの力になるどころか、あいつの夢を潰しただけじゃないか。)
悪(やっぱり俺は最後の最後まで貧乏だったということか…)
女「抗って抗って、最後の手段に手を出したのに、それさえも無駄だった。」
女「もう…いいですよね?」
悪「ああ…」
悪(俺には…なにも言うことはできない…)
女「色々とお世話になりました。」ガシャンガシャン ストッ
女「そういえば私はここで死んだあと、魔界で悪魔さんの奴隷になるんでしたっけ?」
悪「ああ…」
女「聞くのを忘れていましたが、私の記憶や意思って残るんですか?」
男「なんでそんなことを聞く?」
女「いえ、研究者ってお仕事自体は好きだったので、魔界に行った後も空いた時間で研究とかが出来たらいいなと思いまして。」
悪「…結論から言うとどちらも残る」
女「そうですか…」
悪(一旦、奴隷になってしまえば、俺に仕えること以外は考えられないようになる。)
悪(だがな…悪いがそんな残酷な現実をここでお前に叩きつけられるほど俺は強くないんだよ。)
悪(だから、せめて優しい嘘で見送らせてくれ。)
悪(弱い俺を許してくれ)
悪「いいさ、お前の気持ち…少しわかるからな」
悪「俺は人間のすべてが信じられなくなって絶望した。お前はそれが神様なだけで状況は一緒だ。」
悪「俺にお前を否定する権利はない」
女「…ありがとうございます、責めないでくれて」
悪「言っただろ。悪魔は人のダメなところを受け入れて肯定する存在だって」
女「そういえばそうでしたね」
悪「ああ」
女「…こんなことを言っても無理かもしれませんが、今回のことはあまり気にしないでください。」
女「私がここで死ぬのは勝手に私が選んだだけで悪魔さんのせいではありません。」
女「だから悪魔さんが気に病むことはなにもありません。」
悪「…ああ」
女「こんな終わり方になってしまって申し訳ありません。でも、あなたと最後に過ごせた日々は楽しかったです。ありがとうございました。」
悪「俺もだ。」
悪「結局、お前の力になれないどころかお前の夢をつぶす結果になって申し訳ない。だが、俺もお前と過ごした時間はけっこう楽しかったぞ。」
女「フフッ 最後の最後でまったく同じこと考えるなんて、私たち案外相性はよかったのかもしれないですね」
悪「そうだな…」
女「それでは、また。」
悪「ああ、またな」
女 トンっ
ヒューーーーーーグシャ
悪(今の俺を見たらお前はなんて思うだろうか)
悪(未練がましく、惨めに、お前の真似事をしている今の俺を見たら…)
悪(人間の世界を劇的に変えるような研究をしてそれが完成しては人間界に送り込む)
悪(悪魔による人間界への干渉は禁止されているが、だからこそそれがお前のしたかった反抗になるのではないかと信じて)
悪「…無様だな、俺は」
悪「…入れ」
奴隷「失礼します」
奴「先日、承った『腐敗の発生しない官僚制度』を作り上げるために必要なデータの収集が終わりましたのでご報告に」
悪「そうか、ありがとう。今日はもういいぞ。」
奴「はい。…失礼ですが悪魔様少し御顔色が優れないようですが?」
悪「…お前に似てる人のことをちょっと思い出してな。そのことを少し考えていただけだ」
悪「特に問題はない。もう下がっていいぞ。」
奴「そうですか。では、失礼します。」
悪「ああ…ご苦労様。」
バタン
悪「…女」
~~~BAD END~~~
奴「はい、どちら様でしょうか?」
?「私よ、女悪魔よ。入れてもらえるかしら?」
奴「それは失礼いたしました。本日はどのようなご用件で?」
女悪魔「悪魔に会いに来たの。開けてもらえるかしら?」
奴「承知いたしました。どうぞお入りください。」キー
アフターというかトゥルーのようなものです。
奴「失礼ですが一つ質問をしてもよろしいでしょうか?」
女悪魔「いいわよ、答えるかどうかは知らないけど」
奴「女悪魔様は時々いらっしゃいますがご主人様とはどのようなご関係なのですか?」
女悪魔「恋人」
奴「…」
女悪魔「冗談よ。そうね、あいつの保護者ってところかしらね。」
奴「というと?」
奴「はい、たしか元々は人間である日突然悪魔になって魔界に来たと以前お話しされてました。」
女悪魔「うん、その通り。それでいきなりの魔界で右も左もわからずに困っていたところを助けて保護したのが私なの。」
女悪魔「それがきっかけでこうしてズルズルと腐れ縁が続いてるってわけ。」
奴「そうでしたか」
女悪魔「しかし、あの時はあいつがこんなに出世するとは思わなかったなー。今では魔王の次に位の高い悪魔の一人にまでなるなんて」
奴「私もそのような方にお仕え出来て鼻が高いです。」
奴「はい、なんなりと」
女悪魔「あなたがここにきてもうしばらくたつけど、どう?あいつは優しい?」
奴「はい、それはもう!ご主人様は私に大変良くして下さいます。」
女悪魔「そう…それはよかった」
奴「あ、着きました。こちらです。」
女悪魔「ありがとう。」
奴「失礼します。お客様をお連れしました。」
悪「…今は会いたくない。帰らせろ。」
奴「ですが…」
悪「いいから!」
女悪魔「うるさいわね!それこそいいから入れなさい。」ガチャ
悪「…また説教に来たのか?」
女悪魔「ええ、あなたの保護者としてね。」
悪「お前が勝手に名乗ってるだけだ。」
女悪魔「そうね、でもあの時の仮があるのも事実よ。」
悪「…」
悪「奴隷、とりあえずお前は下がれ。またなにかあれば呼ぶ。」
奴「承知しました」バタン
女悪魔「あの子に格好悪いところを見せたくない?」
悪「うるさい」
悪「お前には関係ない。」
女悪魔「それがそうでもないのよね。あなたが人間界にしていることが神や魔王に感づかれ始めてる。おかげで監視が厳しくなって私たちも行動しにくい状況なのよ」
悪「それは悪かったな。だが、それでこそ意味がある。」
悪「神が動いてるということは俺がしていることが奴への反抗になっているということだ。」
悪「それで最後に俺を疎ましく思った神に消されれば最高だな。」
悪「どうせそんなに時間はかからないはずだ。もう少しだけ我慢してくれ。」
悪「…なんだと?」
女悪魔「だから、また逃げるのって聞いてるの。」
悪「俺は逃げてなんかいない。あいつがしたかったことを代わりにしてるだけだ。」
女悪魔「嘘ね」
女悪魔「あなたはただそれを言い訳に逃げているだけ。」
女悪魔「あの件で傷ついたあなたはただすべてを怖がって逃げているだけよ。」
女悪魔「生きて行動を起こしてまた前みたいになってしまうのは怖い」
女悪魔「でも、すべてを捨てて死ぬほどの勇気もない」
女悪魔「そして何より自分の無力さを認めてしまうのが怖い」
女悪魔「だからこうして『あいつの代わりに』を言い訳に意味のないことをしながら誰かに殺してもらえるのを待つ。」
女悪魔「それが今のあなたよ」
女悪魔「そうね。もちろんすべてを分かり切ったつもりはないわ。」
女悪魔「でも、一つだけ分かることを言ってあげる」
女悪魔「最後の最後に諦めたけれども、あなたが力になろうとした彼女はあなたよりもずっと頑張っていたわ。」
女悪魔「本当の最後の最後まで、打てる手がなくなるその時まで神に抗おうとした」
女悪魔「あなたと彼女、どちらの方が一生懸命に生きようとしているか。頭のいいあなたなら少し考えれば分かるわね?」
悪「…」
女悪魔「だったらひたすら考えなさい。どんなに無理に見える状況でも覆すような一手を考えだせる。それがあなたの力なんだから。」
女悪魔「かつてその知恵で魔界を建て直した時の力をもう一度今度は自分のために使いなさい。」
女悪魔「それが本当の『あいつのために』なることでしょう?」
悪「…」
女悪魔「私は伝えたいことは全部伝えたわ。あとはあなたが一人で決めなさい。」
バタン
悪「少し女悪魔のところへ行ってくる。帰りは遅くなる。」
奴「承知しました。いってらっしゃいませ。」
バタン
~~~女悪魔の家~~~
コンコン
女悪魔「どちら様?」
悪「俺だ。」
女悪魔「いらっしゃい。どうしたの?」ガチャ
悪「頼みごとをしに来た。」
悪「俺はこれから少し大きな勝負に出る。結果によっては生きて帰ってこれないかもしれない。」
女悪魔「…」
悪「だからそうなったときのために後のことを頼みに来た。」
悪「俺をここまでけしかけたのはお前なんだからな。嫌とは言わせないぞ。」
女悪魔「…分かったわ。で、具体的にはどうすればいいの?」
悪「使用人たちのことを頼む。適当に家や土地を売って退職金として渡しておいてくれ。」
女悪魔「分かったわ。」
悪「あと…」
女悪魔「あと?」
悪「あいつだけはお前のところで雇ってやってくれないか?」
女悪魔「いいわ。なかなかいい子そうだし、気も利きそうだし。」
悪「恩に着る」
悪「ああ」
女悪魔「ふ~ん…いい顔になったじゃない。少し前とは大違い。」
悪「色々と覚悟がきまたからな。」
女悪魔「そう。まあ、頑張ってらっしゃい。それで駄目だったとしても、またあの時みたいに私が拾ってあげるわ。」
悪「ありがとう。じゃあ、またな。」
女悪魔「ええ」
側近「魔王様、知恵の悪魔が来ました」
魔王「通せ。」
スタスタ
魔「久しぶりだな、知恵の悪魔よ。貴様の方から儂に会いたいとは珍しい。」
悪「そうですね。前回お会いしたのは今年の社会情勢の予測とそれへの対応策をお伝えに来たときですから、丁度半年前ですかね。」
魔「うむ、お前には毎度世話になっておる。ところで今日は急にどうした?ついに儂の側近になりたくなったか?」
悪「いえ、そうではないです。」
魔「そうか、それは残念だ。貴様ならかなりの待遇で迎え入れたいのだがな。」
悪「あまりそういうのには興味がないので。」
悪「今日は魔王様に私のお願いを申し上げに来ました」
側「貴様!魔王様を呼び出すだけでなく、その上要求をしようなど無礼な!今すぐつまみ出すぞ!」
魔「よい。ふむ、貴様には大きな借りがあるからな。とりあえずは聞こうか。」
側「…」
悪「それでは申し上げます。私の要求は三つです。」
悪「一つ、悪魔である私に悪魔と契約召喚する権利を与えること」
悪「二つ、本来は契約召喚時に無作為に選ばれる悪魔を私に選べるようすること」
悪「三つ、一生に一度しかできない悪魔の契約召喚を二度まで可能にすること」
悪「以上の三つです」
悪「はい」
魔「貴様が要求したことはどれも禁忌とされていることだ。」
魔「当然だな。そのどれか一つでも認めてしまえば世界はたちどころに崩壊するであろう。」
魔「特に一つ目は最高位の禁忌の一つだ。元々特別な力を持つ悪魔に更に別の悪魔との契約をさせればなにが起こるかわからないからな。」
魔「…だが、このような願いをただ儂に言う貴様ではないよな?」
悪「はい」
悪「…私は悪魔になって魔界に来て以来、混沌にあった魔界のあらゆるものを建て直しました。」
側「貴様!くだらないことをぺらぺらと喋っておらず、さっさと魔王様の質問に答えろ!」
魔「貴様は少し黙っておれ!…続けろ。」
側「…」
悪「有事の際に備えて私はそれらを建て直す際に時限式で発動する罠を仕掛けておきました。」
悪「今までは毎年魔王様にお渡ししている対応策にそれを防ぐものをさりげなく織り交ぜていました。」
悪「ですが、私がそれを止めれば魔界の経済、政治、福祉、行政などはたちどころに崩壊し、魔界は私が来る以前以上に衰退するでしょう。」
悪「そうなれば非難を受けるのは表向きではそれらをすべて成したことになっている魔王様です。」
悪「要約すれば、今の地位を失いたくなければ私の要求を飲んで下さいということです。」
魔「…」
魔「貴様ほどの悪魔がここまでする理由はなんだ?」
悪「…女のためだ。俺には助けきれなかった女がいる。俺は今度こそあいつを助けたい。だからお前の協力がいる。それさえ叶えたら他には何もしない。」
魔「…分かった。お前の要求を飲もう。」
悪「感謝する」
側「魔王様、そんな下種の要求など聞く意味ありません!今言ったこともきっと嘘です。」
側「兵士に捕えさせて拷問にかけましょう?!それで罠を発動させない方法を吐かせればいいんです!」
魔「無駄だ。こいつはそんなことで吐く奴じゃない。それにたとえ拷問にかけたとしても自殺でもされればその瞬間に儂たちが終わりなのは一緒だ。」
魔「おい、知恵の悪魔、こっちへ来い」
悪「…」スタスタ
魔「ふんっ!」ヴォン
悪「…案外あっけないもんだな。まあ、いい。俺はもう行くぞ」
魔「そうか。ああ、その前に最後にもう一つだけ儂の質問に答えてから行け。」
魔「貴様はこの交渉の間に儂に対して何回嘘を吐いた?」
悪「…一回だ。」
魔「…やはりお前の作ったシステムは完ぺきだということか。やっぱりお前は儂の側近にしたい。」
悪「悪いがそれはできない相談だ。他を当たってくれ。」
魔「そうか、残念だ。」
悪「じゃあな。」
魔「うむ」
バタン
魔「…貴様はまだ分からんのか?」
側「というと?」
魔「あいつは儂らのために先の交渉をしに来たのだ。」
側「は?」
魔「それで魔界が崩壊し、その責任で儂らが追放されたあとに今度は奴が表だって崩壊した魔界を建て直せばよい。一度同じことをした奴にしてみれば簡単なことだろう。」
魔「そうすれば次の魔王として君臨できるのは確実だ。その後、魔王の権利として堂々と禁忌に関する法を変えればよい。これが一番簡単だ。」
魔「だが、奴はそれをしなかった。」
側「そ、それはあやつが言った仕掛けとやらが嘘やハッタリだからでは?」
魔「だとしても、また別な方法で魔界の社会を衰退させ、クーデターや革命でも引き起こせば同じことだ。」
魔「直し方を知っているということは壊し方も知っているということだからな。」
側「…」
魔「いくら儂が魔王だとはいえ、最高位の禁忌を犯したということが明るみになれば当然かなりの非難は受ける。」
魔「だが、儂の地位と魔界の衰退を叩きつけられたということにできれば、そこまで致命的なダメージにはならない。」
魔「奴はそこまで計算していた。そして儂はそれに気が付いたから、あやつの要求を飲んだのだ。」
側「…」
魔「今後はその口を軽率に開かないことだな。」
魔(だがな、知恵の悪魔、儂はそんなことをされなくとも貴様の願いなら聞き入れるつもりだったぞ。)
魔(儂が貴様にこれまでにどれほどの借りを作っていると思っている。それに比べれば禁忌の一つや二つ犯すくらいなんてことはない。)
魔(…お前の本当の願いが叶うことを願っているぞ)
悪(ふう…)
悪(魔王が投げやりになって向かってくるのとあのバカな側近が血迷うことだけがリスクではあったが、なんとかなったな。)
悪(しかし、あいつも伊達に魔王はやってないんだな。俺の本当の真意まで見抜いてくるとは。)
悪(…今回のことがなければあいつの部下として生きていくのも悪くなかったかもしれないな。)
悪(とにかく、これですべての準備は整った。あとは実行に移すだけだ。)
悪「待ってろよ…」
悪「これでよし…」
悪「まずは…出でよ!時間の悪魔!」バリバリ
時間の悪魔「我を呼び出したのは汝か…?って知恵の悪魔様!?」
悪「よう」
時「え、な、なんで知恵の悪魔様がわっしなんかを!?というか悪魔は悪魔を召喚できないはずじゃ…」
悪「まあ、色々と事情があってな。詳細は省くが今の俺にはそれができるんだ。」
悪「そんな訳で悪いが俺と契約してもらうぞ。」
時「は、はあ…分かりやした。」
悪「俺を五年前にタイムリープしてくれ。」
時「過去への時間移動ですね。承知しやした。」
時「それでは契約の確認を致しやすね。わっしは知恵の悪魔様を五年前に時間移動させやす。そしてその対価として悪魔様の積み重ねたものを頂きやす。」
悪「積み重ねたもの?」
時「はい。時間とは積み重ねでございやす。過去に戻る…つまりはその積み重ねをやり直す対価としてわっしは今まで積み重ねてきたものを頂いているんです。」
悪「なるほどな。具体的には俺はなにを差し出せばいい?」
時「そうですねえ…知恵の悪魔様であれば今の魔界での地位や立場であれば十分対価になるかと。」
悪「分かった。それで構わない。」
時「本当にいいんでございやすか?わっしなんかにせっかく手に入れた今の地位を差し出してしまって。」
悪「問題はない。もとよりそんなものに執着はないさ。」
時「左様でございやすか。」
時「この手を握り返した瞬間に対価が支払われ、わっしは知恵の悪魔様を過去に飛ばしやす。」
悪「分かった。頼んだぞ。」グッ
時「では!」バシュン
時「…あなた様のような方がなぜこんなことをされのかはわっしには分かりやせんが、成功をお祈りしていやす。」
悪魔「ハッ…」
悪魔(病院…ってことは時間移動は成功ってことか。)
悪魔(とりあえずあいつの病室に行ってみるか…)
~~~女の病室~~~
女「…」
悪「よう…久しぶりだな。…大分寄り道することにはなったが、やっとここまで来たぞ。」
悪「待ってろ。次ですべてが終わる。」
悪「準備完了っと。これで最後だ…出でよ!」バリバリ
女悪魔「私を呼び出したのはあなたかしら?ってなんだ悪魔じゃない?どうしたの?」
悪「決まってるだろ。悪魔を召喚をしたのならばやることは一つだ。お前と契約がしたい。」
女悪魔「悪魔による悪魔との召喚契約は禁忌として禁止されているはずだけど?」
悪「それなら大丈夫だ。魔王を脅迫してその権利を手に入れた。」
女悪魔「…あの口ぶりからかなりのことをしでかすとは思ってたけど、まさかそこまでやるとはね。」
女悪魔「あなたこそなにを言ってるの?わざわざ私の家まで来てそのことを言いに来たじゃない。」
悪「…俺は魔王に会った後、時間の悪魔と契約して5年前に時間移動したんだ。」
悪「だからここで召喚されるのは五年前のお前のはずだ。そしてそのお前があの時の会話のことを知っているはずがないんだ。」
女悪魔「…きっとこういうことじゃない?」
女悪魔「あなたは時間転移したとはいえこの時代から見ればどこまで行っても未来の存在。だから悪魔を召喚しようとすると元いた時代の悪魔が呼び出される。」
女悪魔「きっと時間の悪魔も知らなかったことでしょうね。今までに二度も悪魔の契約召喚をした例なんてあるはずがないもの。」
悪「さっきも言ったが俺と契約してくれ。女悪魔、いや今は命の悪魔って言った方がいいか。」
命の悪魔「…それもやっぱりあの彼女のためよね?」
悪「ああ」
命「あなた、私との契約の対価を知らない訳じゃないわよね?」
悪「ああ、契約者自身の命を救う場合は他者の、他者の命を救う場合には契約者の命だろ?」
命「…ねえ、契約の前に答えて。あなたがそこまでする理由はなに?いえ、聞き方がずるいわね。彼女にあなたがそこまでする価値はあるの?」
悪「今まで散々俺をけしかけてきたお前がなんで今更そんなことを問う?」
命「折角助けた命をくだらない意地や大した価値もない人間のために使って欲しくないのよ。それが気に入っている悪魔のなら尚更ね。」
悪「…」
命「それはそうよね。だって超えないといけない問題の数とレベルがおかしいもの。」
命「ううん、それよりも人間嫌いのあなたが誰かのためにそこまで動くこと自体が最大の計算外だった。」
悪「だったらなぜそもそも俺をけしかけた?放っておけばよかっただろう?お前が俺を焚き付けるようなことをしなければ俺は動かなかった。」
命「それも理由は簡単よ。気に入ってる悪魔の情けない姿を見たくなかった。それだけよ。」
悪「我儘だな。」
命「ええ、でも女ってそういうものよ?」
命「私はあなたが彼女を救えなかったという自責の念や意地でああなっていると思ってた。」
命「だから、あなたをある程度頑張らせて、それに失敗しつつもそれであなたが義理を果たせたと感じて、元のあなたに戻ればそれでいいと思った。」
命「なのにまさか本当に彼女を救うところまでやってくるとはね…」
命「だからねえ、答えて。あなたをそこまで突き動かすものはなに?」
悪「…お前には関係ない。お前には辛いかもしれないが悪いが契約をしてもらうぞ。」
悪「は?」
命「人間に悪魔との契約という一生に一度の好機が与えられているように、悪魔にも一生に一度の反抗が許されている。」
命「まず使われない権利だから忘れてたみたいね?それとも私があなたに敵対するとは思わなかった?」
悪「まさか…」
命「そうよ。悪魔には一生に一度だけ召喚した人間との契約を断る権利が与えられている。」
命「あなたは悪魔だから確実に有効かは分からないけど、多分問題はないはず。」
悪「頼む…後生だ。」
命「だったら私の納得させてみなさい!証明しなさい!あの彼女は私に愛した男を殺させるほどの価値があると!」ポロポロ
悪「…」
悪「人間には価値があると、人間嫌いの俺がすべてを捨てて助けることで証明したい。」
悪「人間の醜さを嫌というほど見せつけられた俺だからこそ、その奥にある人間の素晴らしさを信じてみたい。」
悪「確かにあいつの心の底にあったのは神への復讐心だった。」
悪「だが、その隣にはちゃんと世界をよくしたい、自分と同じ境遇の人を少しでも減らしたい、自分の願いでみんなを幸せにしたいって思いがあった。」
悪「人間に絶望した俺には絶対に抱けない思いだ。だから俺はそれに賭けたい。応援したい。」
悪「だから俺はあいつを助けたい。」
命「…あなたらしくないわね。言ってること、支離滅裂で意味不明よ。なにを言いたいのかさっぱり分からないわ。」
命「でも、あなたが本気だってことだけは分かったわ。」
悪「だからさっきからそう言ってるだろう!」
悪「なんでだ?!」
命「だってあなたは賭け終った段階でもうこの世にいないじゃない!」
命「自分の命を賭けるだけ賭けておいて、捨てるだけ捨てておいてその結末を見届けずにいなくなるなんてあんまりよ…」
悪「それは…」
命「あなたが契約することで救われる者や残される者の気持ちをあなたは考えたことあるの?!」
命「そんなのどれだけ本当に彼女のためだったとしても自己満足以外の何物でもないわ!」
悪「だったらどうすればよかったんだ?!」
悪「これが俺に取れる最善の手段だったんだ!これなら最小限の犠牲で、俺の命一つであいつを救える!魔界への影響も少ない!」
悪「俺にこれ以上どうしろと言いたいんだお前は?!」
命「もっと他人を頼りなさいって言ってるのよ!」ポロポロ
悪「…」
命「あなたはいつもそう!…なんでも分かるくせに周りの気持ちには気付かずに自分のことを最後にして他人を助ける!」ポロポロ
命「私は確かにあなたに考えなさいと、頑張りなさいと言ったわ!でも、一人で全部やりなさいとは一言も言ってない!」ポロポロ
命「なんで一言私に相談してくれなかったの?!私はあなたの頼みだったら契約なんてなくても力を使ったのに…」ポロポロ
悪「…人間界に対して契約外のことで悪魔の力を行使すればペナルティが発生する。ちょっとした呪いとかならともかく悪魔の能力となれば…」
命「そんなこと知ってるわよ!それでも言ってるの!」
悪「…」
悪「…なんだ?」
命「あなたは人間の醜悪さを忘れている。それはあなたが言っているほど、善性に目を向ければ霞むほど甘いものじゃない。」
悪「かもしれない…。少し長い間魔界にいたからな。俺はそれでも…」
命「違う、そうじゃない。」
悪「?」
命「あなたは忘れているけど、あなたは前に一度同じことをしたことがあるの。そして、その結果は凄惨たるものだった。」
悪「なんのことを言っている?」
命「今から私は封印したあなたの記憶引き出す。」
命「それを思い出してから、もう一回考えてみなさい!」ヴォン
悪「ぐああ!!!」バタリ
少年「ご依頼の作戦計画書です。」
大将「おお、ご苦労であった。これでまた次もいい戦果が挙げられそうだ。」
少「それはなによりです。」
大「うむ、では儂は失礼させてもらうよ。」
少「はい、では。」
ガチャ
父「どうだった?大将はお喜びされていたか?」
少「はい。」
父「よくやった。お前は我が家の誇りだ。これからもこの調子で頼むぞ。」
少「分かりました。」
少「父さん…少し疲れたので庭で休んできます。」
父「おお、分かったぞ。だが、ほどほどになお前には軍から新兵器の設計依頼も来ているんだからな。」
少「はい」
少「ふう…」
少(我が家の誇りね…。父さん、労いのつもりなんだろうけど国に恩を売って会社を大きくすることしか考えてないのが見え見えだよ。)
少(しかし、さっきの大将の目はつらかったなあ。『軍のエリートである儂がなぜわざわざこんなガキのところまで…』とか考えてたんだろうなあ。)
少(それにしても疲れた。こうして一人で庭のベンチに寝転がっているときが一番休まる。)
少(ん…なんだあれ?鳥?にしてはやけに大きいな。)
~~~上空~~~
命「ふい~疲れた~。といっても契約して願いを叶えただけだけど。」パタパタ
命「契約はつらいけど、こうして終わった後人間界を散策できるのはちょっとした救いよね。今の魔界はなんにもないし。」パタパタ
命「あら?誰か私のことを見てる?そんな訳ないわよね?ちゃんと人間には見えないように…忘れてた。」パタパタ
命「…」ピュー
少(あれ、シルエットからすると多分人間だよね?でも、パラシュートも何もつけてないみたいだし…ってこっち来た?!)
命「ねえ、あなた、私のこと見てたわよね?」スタッ
少「は、はい…」
命「あの、実はね、私は悪魔なの。いつもは人間には見えないようにしてるんだけど、今日はうっかり忘れちゃっててね。」
少「は、はあ…」
命「人間に知られると色々と不都合だから悪いけどあなたの記憶を消させてもらうわね。」
少「…どうぞ」
命「…と思ったけど、止めるわ。」
少「え、なんで?」
命「だってあなた今にも死にそうな顔してるんだもの。特に目、ひどいわよ?なんの光も宿ってない。」
少「…」
少「…なんで、僕に構うんです?そんな面倒なことせずにさっさと記憶を消していけばいいじゃないですか?」
命「私はね、命の悪魔なの。人間と契約して誰かの命を代償に別の誰かの命を助ける、そんなお仕事をしているの。だから命の大切さは誰よりも知ってるつもり。」
命「そんな私の前に今にも死にそうな顔してる人がいたらそりゃ話しかけるわよ。」
命「…ってこんな話をいきなりしても信じられないか。」
少「…いえ、信じます。お姉さんを見てもなにも分かりませんから。」
命「どういうこと?」
少「僕は見て少し考えただけでなんでも分かってしまうんです。本当になんでも。」
少「でも、お姉さんは見てもなにも分からない。多分、人知とかを超えた存在ってことなんでしょうね。」
命「…なるほどね」
命「察するにあなたがつらそうにしてるのもその力が原因ってところかしら?」
少「そうです。他人の考えてることが全部筒抜けみたいなものですからね。本当につらいですよ?」
命「…そう。」
命「私は今誰とも契約していないから長くは人間界にいられない。でも、あなたと契約すればそれを遂行するまではあなたと一緒にいられる。」
命「見てもなにもわからない私となら一緒にいても平気でしょ?私があなたの相談相手になってあげる。」
少「でも、僕別に助けたい命とかないですよ?」
命「別にいいわよ。悪魔との契約はすぐに遂行する必要はないの。いつか助けたい命ができた時にでも遂行すればいいわよ。最後までできなければ契約を破棄すればいいしね。」
少「でも、それってお姉さんに迷惑なんじゃ…?」
命「ううん、全然。人間界は好きだし。今にも死にそうな人間を見捨てることの方がよっぽどストレスだわ。」
命「だから、ほら子供は余計なこと考えずに大人の好意に甘えておきなさい。」
少「…分かりました。じゃあ、お願いします。」
命「じゃあ、契約成立ね。」
少「はい」
少「え…//////」
命「それが私との契約の方法なの。子供にはまだ早いかもしれないけど頑張りなさい。」
少「///////」チュ…ピカー
命「はい、これで契約成立よ。」
少「は、はい。えと、これからよろしくお願いします、お姉さん。」
命「こちらこそよろしくね。でも、そのお姉さんは止めてもらえるかしら?その、恥ずかしいから…」
少「すみません。じゃあ、なんて呼べばいいですか?」
命「うーん、そうね…女悪魔でいいわ。」
少「どうぞ、ご依頼の新兵器の設計図です。」
大「おお!待っておったぞ!これで大分戦争を有利に進められるはずだ!感謝する!」
少「いえ、恐縮です。」
大「それでは儂は失礼させてもらう。すぐにこれを軍本部に届けなくてはならないのでな。」
少「分かりました。では。」
大「うむ。」
ガチャ
女「あなたはいつも人と会った後は疲れ切ってるわね?」
少「仕方がないよ。やっぱり人の本音が透けて見えるからね。」
女「ちなみにあのおやじはなんて考えていたの?」
少「『まったく次から次へと画期的な案や匹を出しおって。頼りになるのは確かだが、気持ち悪い』だと思う。」
女「分かったわ。あのおやじ殺してくる。」ゴゴゴゴゴゴ
少「い、いいよ!ある意味当然の反応だし。」
女「…そう。」
女「昔なら無理だったかもしれないけど、今なら私がいるわよ?」
女「あなたの両親に義理立てしてるというならもう十分したと思うけど?」
少「違うよ。」
女「じゃあ、なんで?」
少「僕が軍に協力しなければそれだけ戦争が長引く。そうすればより多くの人が死んでしまう。」
少「他のこともそう。僕が薬を開発しなければ、それだけ病で死ぬ人が増える。僕が安全な機械を発明しなければ、それだけ昔の危険な機械で怪我をする人が増える。」
少「でも、たとえそれらを考えれたとしても世に出すには他の人の力がいる。」
少「だから僕はこうして頑張るんだ。それがこんな力を持って生まれてしまった僕の使命だと思うから。」
女「…」ウルウル
少「それに今は女悪魔がいるからね。前ほどはつらくないよ。」
女「…うん」
少「だから泣くのを止めていつもみたいに面白い話をしてよ。」
女「…分かったわ。任せなさい。」
少年改め青年「やっと戦争が終わったか…」
女「そうね。あなたが協力したからあの規模の戦争がこの短さで終わったのよ。誇っていいわ。」
青「いや、それでもかなりの被害が出ていることには変わりはない。これからは復興の方に協力することになるだろうな。」
女「そうね。でもいいじゃない、そっちの方がお人よしのあなたには向いているわ。」
青「だな。」
女「それにしても最近のあなたはいい顔をしてるわね。」
青「そうか?」
女「ええ、昔のあなたとは大違い。」
青「まあ、今は女悪魔がいるからな。普通に話すことができる存在がこんなに尊いとは思わなかった。」
女「フフッ」
青「それに頑張れば女悪魔に褒めてもらえるからな。他の人間の薄っぺらいお世辞とは違う本物のな。」
女「じゃあ、もっと頑張らないとね?」
青「そうだな。今日は確か大統領が来るはずだ。挨拶がてら復興案について話に行ってくるよ。」
女「いってらっしゃい」
父「どういうことですか?!」
大統領「先程から何度も説明している通りだ。」
大「あなたのの息子が開発した兵器や戦術は確かに戦争の早期決着に貢献した。だが、そのあまりの効果故今では世界中から非人道的であったとの非難を受けている。」
大「そのような者や家族を表彰するわけにはいかん。悪いが諦めてくれ。」
父「そ、そんな…」
大「あなたたちに責任を負わせないだけ感謝して頂きたい。それではもう失礼させて頂くよ。ここにいることさえ私にとっては危険なのだからね。」
父「…」ガク…
青「失礼します。」
父「…」
青「あれ?お父様、大統領はどちらですか?たしか今日いらっしゃる予定では?」
父「…帰られたよ。」
青「え?意外とお早いお帰りですね。やっぱり忙しいんで…」
父「お前のせいだ!」
青「!」
父「お前の考えた兵器や戦術は効果がありすぎて非難されているそうだ!」
父「そのせいで大統領からは今後の協力はおろか表彰さえ断られてしまった!」
父「この戦争を機に会社を成長させる私の計画がこれでパアだ!どうしてくれる?!」
青「お父様、僕は…」
父「まったく、昔から気持ちが悪いガキだったが頭はよかったから今日まで育ててみたものの…その結果がこれか。」
父「ああ、お前のような奴に期待した私が馬鹿だった。もういい、貴様にはなんの価値もない!どこへなりとも消えろ!」
青「…」フラフラ
青「ははは…」
青(俺はやっぱりそういう存在だったということか…)
青(いや、それはいい。分かっていたことだ。俺は人間から見れば訳の分からない気持ちの悪いものだってことは。)
青(しかし、そうか、俺が今までやってきたことは無意味だったということか。)
青(ああやって世界のためにって頑張っていけばいつかは認めてもらえるんじゃないかって期待していたが駄目だったか。)
青(俺が世界のためとか言ってやってきたことはすべて無価値な自己満足だったということか。)
青(いや、無価値どころか非人道的ときたか。ああ、そうか、人間じゃないってことか。)
青(もう無理だ。俺にはもう人間と一緒に生きていける自信がない。人間でいようとしていられる自信がない。)
青(女悪魔、悪いな。せっかく助けてもらった命だけど無駄になりそうだ。)ガシッ
青「…本当にすまない」カチ
バン!!!!!!!
女「なに?!今の音!?拳銃!?」
女(物置の方からだったわね。…嫌な予感がする!)
~~~物置~~~
女「!」ダッ
青「…」グッタリ
女「あなた、なにをしたの!?」
青「…俺と…俺のしてきたことは…人間にとっては無価値の…気持ち悪いものらしい…だから…」
女「もういい!喋らないで!」
青「そうか…悪かったな、こんなことに…ガフッ」
女「青年!!!」
女「…そうだ!契約よ!私とした契約を今果たすわ!」
女「生きたいと願いなさい!そうすれば契約が遂行される!多分、あなたの父親あたりが犠牲になるけど、あなたは助かる!」
青「いや…いい」
青「俺は…誰かを犠牲にしてまで…生きたいと思わない。」
女「馬鹿!そんなこと言ってる場合じゃないでしょう!それにあんな父親なら別にいいじゃない!」
青「それに…」
女「それに?」
青「俺にはもう…人間と生きていく自信がない。人間として生きていける…自信がない。」
青「もう…死なせてくれ」
女「だったら!悪魔として生きていけばいい!」
青「?!」
女「私は今から残っているあなたの人間としての命を対価にあなたに悪魔としての命を吹き込む!これならいいわね!?いえ、断ってもするわ!」
青ああ…分かった。頼む。」
女「じゃあ、やるわよ!はあ!!!!」ピカー
悪魔「…」
女(…なにがあったのかは記憶を読ませてもらったわ。)
女(あれはあまりにも悲惨なものだった。だから、あなたのために封印させて貰ったわ。)
女(私と出会ってから数年間の記憶を…)
女「目が覚めた?」
悪「ここは…どこだ?」
女「魔界よ。」
悪「…魔界?俺はなんでこんなところに?」
女「あなたはしっかりと覚えてないかもしれないけど、あなたは人間から悪魔になったの。きっと人間を嫌いになりすぎたせいね。」
悪「ああ、なんか断片的に覚えてるな。ところでお前は?」
女「私は女悪魔。魔王の命であなたの世話係になったの。」
女(嘘だけど…)
女「まあ、そんなだからよろしくね。」
悪「あ、ああ」
~~~回想終わり~~~
悪「ああ…」
命「あなたはあの時と同じことをまた繰り返そうとしてる。」
命「人間に認めてもらおうと、人間を信じようとして、自分を犠牲に人間を助けようとしている。」
命「でも、これで分かったでしょ?それは報われないって。」
命「あなたが人間のためなんかに犠牲になる必要はない。あなたは悪魔のまま生きていくのが幸せなの。」
命「違うわ。私は私のエゴでやっているだけよ。ただ、あんたを人間なんかのために不幸にしたくないっていうね。」
悪「それが優しいっていうんだよ。」
命「ふん…」
悪「なあ、考えたんだけどさ。俺とお前は要は同じなんだよ。」
命「なにが?」
悪「お前が俺に優しくしてくれるように、俺も人間に、あいつに優しくしたい。ただそれだけなんだよ。」
命「あなた、まだ諦めてないの?」
悪「ああ」
命「だって全部思い出したんでしょう?」
悪「ああ」
命「あなたは自分の心を削りながら人間のために頑張って、結果すべて報われずに終わってしまった。」
悪「そうだ。」
命「なのになんでまだ人間のために頑張るなんて言えるの!あなたまさか辛すぎる記憶を見たせいでおかしくなったんじゃないの?!」
悪「そんなことはないさ。」
悪「今度は逃げないって決めたからさ。」
悪「思ったんだ。もし、俺があの時諦めずに自分の命を絶つようなことをしなければ、ちゃんと人間と向かい合い続けてればいつか認められる日が来たんじゃないかって。」
悪「でも、俺は逃げてしまった。目の前のことがあまりにも恐ろしすぎて。だから、あんな結果で終わってしまった。」
悪「だから今回は逃げない。最後まで見届ける。どんなに途中に辛いことがあっても最後にはいいことがあったってお前に報告できるように。」
命「あなたはなにを言ってるの?!あなたは私との契約で命を対価として奪われる。最後まで見届けるなんてことはできない!さっきそう言ったじゃない!」
悪「そうだな。だから…力を貸してくれ。…お姉さん。」
命「!」
悪「この年になってお姉さんは恥ずかしいな。でも、なんか妙にしっくりくる。」
命「やっやめなさい!恥ずかしいのはこっちよ!」
悪「ははっ 久しぶりにいつもの顔を見た気がするよ。ずっと泣き顔か怒り顔しか見てなかったから。」
命「ふん…」
悪「ああ簡単だ。今から俺がすることを黙って見ていてくれ。あと多分、お前を全力で走らせることになると思う。」
命「?」
悪「この方法なら多分、俺もあいつも助かる。場所がよかった。もしかしたらお前に少しペナルティが発生するかもしれないが、そんなに重くはないはずだ。」
命「あなた、さっきからなにを言って…」
悪「なあ、魔王、魔界と悪魔の管理役のお前なら今も見ているんだろう?聞いてくれ!」
悪「俺は過去にこの命の悪魔と契約した際に不当に契約を遂行された!」
命「なっなにを!?」
悪「この命の悪魔はかつて俺に対してこう述べた!『私は今から残っているあなたの人間としての命を対価にあなたに悪魔としての命を吹き込む!これならいいわね!?いえ、断ってもするわ!』と。」
悪「俺はこの言葉に押し切られて、とっさに権利を遂行してもよいと返事してしまった!」
悪「しかも、この悪魔はそれだけでなく、そのことを隠ぺいしようと俺の記憶を今まで封じてきた!」
悪「これを不当と言わずになんというのだろう!」
悪「よって以前の契約の遂行を無効とし、またそれによって俺が失った時間と被った被害の補填として、この悪魔との対価の存在しない契約を認めてほしい!」
魔王『…承知した。貴様の要求を認めよう。』
命「あなたって本当に悪知恵が働くわね。まさかこんな方法で対価をなくすなんて。」
悪「まあ、知恵の悪魔だからな。さて、じゃあ時間もないしさっさと契約をしてもらうぞ。」
命「分かったわ。」
悪「えと、確か傅いて手にキスをすればいいんだったな…」
命「…いいえ。こっ今度は口にしなさい////」
悪「なっ…お前、ふざけてる場合じゃ…」
命「ふざけてなんかないわ!…私がどれだけあなたのことを心配したのか分かってるの?」ウルウル
命「死んじゃうかもしれないって…何回思ったことか…」ポロポロ
命「これぐらいしてもらわなきゃ…割に合わないわよ…」グスッ
悪「分かった。…悪かったな。」
命「ふん…」
命「え、ええ…」ス…
悪「ん…」
命「ん…」ピカー
命「それじゃあ、あなたの願いを言ってもらえるかしら?」
悪「ああ、俺の契約者である女の心臓病を直して、あいつの命を救ってやってくれ。」
命「分かったわ。今回の契約は特例により対価はなしよ。」
悪「ああ、頼んだぞ。…お姉さん。」
命「え…?」
命(そうか!私との最初の契約が無効になれば、私が契約を遂行して悪魔にすることによって命を助けたという事実も無効になる。)
命(この馬鹿!いや、怒るのは後よ!まずは急いで医者を呼んでこないと!)
命(だからさっき、走らせることになるかもって言ったのね!)ダッ
青「…」
命(医者による処置が間に合い、あいつはなんとか一命を取り留めた。)
命(医者によれば太い動脈を打ち抜かれており、あと少し遅れていたら間違いなく死んでいたそうだ。)
命(そんな命にかかわる大怪我だったらからか、手術が終わって三日たった今もあいつはまだ眠っている。)
命「…それともやっと色々な重荷から解放されたからかな?…あとはお姉さんに任せて今はゆっくりお休みなさい。」
命「それじゃあ、私こいつとの契約を果たしに行きますかな。たしかそろそろ目を覚ますはずよね。」
女「ん…」
命「おはよう。」
女「…ここはどこですか?あと…どちら様ですか?」
命「ここは病院よ。あなたは悪魔との旅行中に発作で倒れてここに運ばれたの。」
女「そうでしたか…あれ?でも、なんで悪魔さんのことを知ってるんですか?」
命「ごめんなさいね、自己紹介が遅れたけど、私も悪魔なの。」
女「え?」
命「私は命の悪魔。知恵の悪魔との契約であなたの命を救いに来たの。」
女「あ…悪魔さんは無事なんですか!?だってたしか命の悪魔さんとの契約の対価ってその人の命なんじゃ…うっ」
命「ほら、まだあなたは病人なんだから大きな声出さないの。」
命「大丈夫、無事よ。一回死にかけはしたけど、命は無事なはず。」
女「よかった。」
女「わ、分かりました。」
命「じゃあ、車いすに乗ってもらえるかしら」
女「はい」
~~~病院内、廊下~~~
命「~というわけ。」
女「そんなことが…」
女「悪魔さん…私なんかのために…そこまで」
命「ねえ、あいつとの契約を遂行する前にいくつか質問してもいい?」
女「どうぞ」
女「…」
命「前にあいつがあなたにした話は本当よ。悪魔は人間の願いを叶えるために神様に作られたシステムの一つでしかない。」
命「つまり悪魔が今回あなたの命を助けるのも、所詮は神様の掌の上の出来事なの。」
命「言うなれば、あなたの人生が神様に振り回されっぱなしって事実にはなんの変化もない。」
命「あなたはこの事実を受け止めたうえで今後どうするの?」
女「私は…」
女「悪魔さんが命を賭けて助けてくださった命ですから、これからは純粋に自分のために使いたいと思います。」
命「世界のための研究をすることが自分のためになるの?矛盾してない?」
女「はい。多分してると思います。でも、これが今の私の正直な思いです。」
女「悪魔さんは他人である私のために命までかけて力になってくれました。だから今度は私がどこかの誰かのために全力で力になりたいんです。」
女「それが本当の悪魔さんに対する恩返しになると思うので。」
命「それに?」
女「悪魔さんは私を助けることで人間をもう一度信じようとしました。だから、まずは私が頑張って悪魔さんに人間のいいところを見せてあげたいんです。」
命「そう…」
命「分かったわ。いいんじゃないかしら?それで。」
女「私にも本当にそれでいいのかは分かりませんけどね。」
命「そんなのきっと誰にも分からないのよ。」
命「でもよかったわ。あなたがあいつに救われた命を無駄にしなさそうで。」
命「正直に言うとね、私はあなたを試していた。この人間はあいつが命を賭けるに足るのかどうかを。」
命「不合格だったらどんな罰が待っていようと契約を破棄するつもりだったんだけど…」
命「どうやらなたは合格みたいね。…頑張りなさい。」
女「はい」
命「そろそろ病室に戻るわね。…そこで契約を終わらせるわ。」
女「はい、よろしくお願いします。」
命「じゃあ、いくわよ。」
女「はい!」
命「これが終わったら私は契約完了ということで魔界に変えるけど…あいつのことをよろしくね。やっぱり最初のうちは誰かの支えがいると思うから。」
女「分かりました、任せてください。」
命「じゃあ、頼んだわよ。…はあ!!!」ヴォン
女「んっ…」
命「はい、これでおしまい。」
女「ありがとうございます。本当に色々と。」
命「どういたしまして。」
命「悪魔は基本的に契約時以外はあまり人間界にいちゃいけないことになってるの。どんな影響があるかわからないからね。」
命「それに…いえ、なんでもないわ。」
女「そ、そうですか?」
命「それじゃあね。お元気で。」
女「は、はい!本当にどうもありがとうございました!」
命「いいえ。あとはよろしくね。」バシュン
女「は、はい…」
命(…言えるわけないじゃない。会ったらやっと着いた決心が揺らぎそうだから、なんて。)
命(人間に戻ったあいつに悪魔である私はもう会えないし、会うべきではない。)
命(頭では分かってるのに…)
命(どうしてこんなに泣けてくるんだろう…)ポロポロ
命(ダメね。最近、泣いてばかり。頑張らなきゃ。)グスッ
兵士「命の悪魔様ですね?」
命「そうだけど…」
兵「人間界からお帰りになったばかりでお疲れのところ申し訳ありませんが魔王様がお呼びです。」
命「ああ…」
兵「あなたが犯した罪に対して審議を行うそうです。」
命「そう…」
青「ん…」
女「あ、目が覚めたんですね。よかったです。」
青「…よう。」
青「その様子だとあいつはちゃんとお前の心臓を直してくれたみたいだな。」
女「はい!もう完全に健康体だそうです。」
青「それはよかった。で、あいつは?」
女「それなんですが…もう契約を果たしたということで魔界にお帰りになりました。」
青「え…?」
女「引き留めはしたんですが…」
青「あいつ、なんで…」ガバッ
女「あ、まだ動いたらダメですよ!死んでもおかしくない怪我だったんですから。」
青「なんで…せめて最後にお礼くらい言わせてくれよ…」
女「悪魔さん…」
女「やっとリハビリも終わって晴れて完全に退院ですね。」
青「そうだな。」
女「悪魔さん…じゃなかった、青年さんはこれからどうするんですか?」
青「そうだなあ。まずは仕事を探さないとなあ。これからは人間として食っていかきゃいけないわけだしな。」
青「そう言うお前に方は大丈夫なのか?旅行の前に盛大に働いてた研究所を辞めていったが。」
女「はい、それは大丈夫です!事情を説明してから土下座をしまくってもう一回雇ってもらいました。」
女「今までの貯金もありますから安心して下さいね。しばらくは青年さんを養えます。」
青「ヒモはやだなあ…」
女「じゃあ、頑張らないとですね。」
青「ああ、そんなんじゃあいつにも恰好がつかないしな。」
女「そうですね…」
?「ふ~ん、まだちゃんと覚えていてくれたんだ?」
女「い、命の悪魔さん!?」
青「な、なんでここに?!」
命「私も人間になったの。だから正確には元・命の悪魔ね。」
青「ど、どうやって…」
命「それはね…」
魔王「それでは命の悪魔による不正な契約の遂行に対する審議を始める。被告人は前へ!」
命「…」スッ
魔「貴様は以前、契約を交わした際に二つの罪を犯した。」
魔「一つは契約者の意思を無視して契約を遂行したこと。」
魔「二つ目はその後契約者の記憶を改ざんし、その事実を隠ぺいしようとしたこと。」
魔「以上で間違いはないか?」
命「ないわ」
魔「随分と素直だな。弁明があれば聞くぞ?」
命「別にいいわ。だってもうどうだっていいもの。」
魔「そうか。では貴様の罪が確定したということで次は罰の決定に移るぞ」
命「ご自由に。」
魔「更にはそれを隠ぺいしようと契約者の記憶を改ざんしたというのであれば、これは厳罰に処さざるを得ない。」
魔「よって命の悪魔、貴様の悪魔としてのすべての権限、能力をはく奪し、人間として人間界で生きていく罰を貴様に与える!」
命「え!?」
魔「聞くに貴様はなかなかの人間嫌いだそうではないか。ならばそれと同じ存在になり、それと生きていくのは十分な罰になるであろう。」
命「…ありがとうございます」
魔「ふむ、聞こえんな。まあいい、罪人の戯言になどに耳を貸す価値はあるまい。」
魔「それでは今から刑を執行するが、最後に何か言いたいことはあるか?」
命「ありがとう。あなたは最高の魔王よ。」
魔「ふん…あいつに会ったら伝えておいてくれ。『これで借りは返したぞ』とな。」
命「分かったわ。必ず伝える。」
魔「ではな。ふん!」バリバリ
~~~回想終わり~~~
青「あいつも味な真似をしてくれるな。」
女「フフッ 素敵な魔王様じゃないですか?」
青「で、お前は今何をしているんだ?」
命「無職よ。だって人間界に来たのは昨日だもの。」
青「…お互い大変だなあ。」
命「…そうね。」
命「面白そうね。」
女「いいですね!でも、お金は大丈夫なんですか?」
青「ああ、工事現場で働いていた時のお金がそのまま残っているはずだ。」
女「なるほど!」
青「じゃあ、行くか!」
女「はい」
命「ええ」
~~~TRUE END~~~
気が向いたらエピローグや書けなかった悪魔と女悪魔が魔界を建て直す話を書くかもしれないので、
その時はまたよろしくお願いします。
なんだか今更感が凄いしますが、エピローグを書かせて頂きます。
命「で、どう?数十年間こうして人間界で暮らしてみて?あなたの望む結果は得られた?」
男「そうだな…長いことここで暮らしてみたが、分かったのはやっぱり人間という存在は最悪だってことだな。」
男「自己中心的で、見栄っ張りで、強欲で、臆病で、欠点を言い出したらきりがない。」
男「でもな、今なら確信を持って言える。あのとき人間を信用しようとしたのは間違いではなかったと。」
男「見てみろよ。」バサッ
命「なになに…」
新聞「快挙!日本人初のノーベル経済学賞受賞。受賞者は女氏。」
新「女氏は『誰も不幸にしない経済モデル』と呼ばれる画期的な経済理論を開発し、その功績を称えて今回受賞が決定した。」
命「へえ…」
男「なあ、覚えてるか?あの日、三人でお祝いに行った時のこと。」
命「ええ、今でも忘れられないわ。」
女「そういえば水を注すようで悪いのですが一つ気になってることがあるんです。」
青「なんだ?」
女「私と悪魔さんが交わした契約ってどうなってるんでしょうか?」
青「ああ…。おそらくだが中断ということになっていると思う。契約を遂行する前に俺が人間に戻ってしまったからな。」
女「そうですか。」
青「お前に非があるわけじゃないからな。魔王にでも申し出れば他の悪魔との再契約くらいなら認めてもらえるんじゃないか?」
青「それか、なんだったら俺が今から契約のときに言ってた願いを叶えてもいいぞ?俺は人間にはなったが能力を失ったわけじゃないからな。」
女「そうですねえ…」
青・命「「は?」」
女「あれ?私そんな変なこと言いましたか?」
青「いやだって、普通にもったいないだろ?!」
女「かもしれませんね。でもいいんです。私にはもう必要も意味もないものですから。」
青「!」
女「どうかしましたか?」
青「…いや、なんでもない。で、なんでもういらないんだ?」
女「人間は悪魔の力や神の力なんて借りなくても十分すごいんだってことを見せつけてやりたいんです。」
女「だから今度はどれだけ時間がかかっても私一人の力でやり遂げたいんです。」
女「なので、凄く勿体ないお話ですけど、どちらもお断りします。」
青「そうか。…頑張れ。」
女「はい。」
魔王「…なんだ?」
女「私と知恵の悪魔さんが交わした契約は遂行されないまま中断してしまいました。」
女「なのでその代りに神様に会った時にこう伝えておいてください。『人間の力を見せてあげます!その日まで楽しみにしておいてください!』と。」
魔「…承知した。」
~~~回想終わり~~~
命「…そうね。」
男「この結末を見れただけでも俺がしたことは無駄ではなかったって思えそうだ。」
命「ふ~ん、あっそ。」
男「…なんでさっきからそんなに不機嫌なんだよ?」
命「別に不機嫌じゃないわよ。」
男「いや、どう見ても不機嫌だろ。理由を言えよ。」
命「…それがどんな理由であろうと、夫が他の女のことをイキイキと話すのは妻にとっては面白くないことなのよ。」
男「…ガキか、お前は。」
命「女ってのはそういうものなのよ。」
命「…キスしてくれたら許してあげる。」
男「…お前はそればっかだな。…分かったよ、ほら、こっちに来い。」
命「ん…」ス…
男「…」ス…
チュ
男「…これで満足か?」
命「…い、今はこれだけで勘弁しておいてあげる。帰ったらもっと色々としなさい…。」
男「…分かったよ。」
命「分かったわ。いってらっしゃい、大学教授殿。」
男「…からかうなよ。自分の能力を最大限に活用できる職業を選んだ結果だ。」
命「まあ、たしかに適職といえば適職ね。」
男「そういうお前だって人のこと言えないだろう?医者なんだから。」
命「私はあなたとは違うわ。私は能力を失くしても大切な人を助けられるようになりたかっただけよ。」
命「今ではこうして守らないといけない家族がいるわけだしね。」
男「…そうだな。」
男「さてと、もう出ないとな、遅刻しちまう。お前もあんまりゆっくりしすぎるなよ?」
命「残念、今日は非番よ。だから家のことは任せておきなさい。」
男「うらやましい限りだ。まあ、よろしく頼むよ。」
男「じゃあ、いってきます。」
命「いってらっしゃい、あなた。」
~~~THE END~~~
これで本当に書きたいこと全部出しきったんで終わりです。
今まで支援してくれた人ありがとうございます。
Entry ⇒ 2012.03.13 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
男「クラスの怖い女子が部室にきた」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1308384313/
女「あん?」
男「な、何故この部室に……?」
女「……なんか文句あんのかよ」
男「い、いえ、滅相もございません」
女「……チッ」
男「……」
女「……」
男「……なにこれ」ボソッ
女「あぁん?」
男「い、いえ! なんでもございません!」
女「……お前、何部だよ」
男「え? え?」
女「何部かって聞いてんだよ!!」
男「や、やめてぇぇぇ! 殴らないでぇぇ!!」バッ
女「……」
男「……あ、あれ?」
女「……チッ」
男「……」
男(……怖いよう、怖いよう、ここ写真部だよぉ、なんなんだよぉ)
女「……」
男「……」
男(ホントに何しにきたんだよぉ、怖いよう)
女「……何部なんだよ」
男「……しゃ、写真部です……というか、外に書いてありますけど……」
女「あ?」
男「ひぃ! な、なんでもないです!!」
女「……」
男「……」
女「……部員は?」
男「……お、俺だけです……」
女「……そうかよ」
男「……は、はい」
女「……」
男「……」
男(誰かあああ!! 気まずいよおおお!!)
男「え!? あ、はい……廃部の危機ってやつです……」
女「……チッ」
男「ご、ごめんなさいいい! 一人でごめんなさいいいい!!」
女「……黙ってろ」
男「は、はいぃ!」ビクッ
女「……」
男「……」
女「……っても……ぞ」ボソッ
男「……え?」
女「入部して……ってもいいぞ」
男「え、えーっと……すみません、よく聞こえませんでした……」
女「……」
男「……えっ?」
女「……」
男(……なにこれ)
女「……チッ」スタスタ ガララッ、ピシャッ
男「……か、帰っちゃった……」
男「……な、なんだったんだよ」
男「よく分からない人だ……」
男「はぁ……なんだかどっと疲れた……今日はもう帰ろう」
友「で? で? どうだったのよ!? ねぇねぇ!」
女「う、うっせーな」
友「男くんの部室に行ったんでしょ!? 何があったの!? せっかく待ってたんだから聞かせてよぉ!」
女「べ、別になんもねぇよ」
友「何もない訳ないでしょ!? 勇気出して行ったんじゃん! あんたが何もせずに帰ってくるなんt」
女「な、何もできなかったんだよ……」
友「……えっ?」
友「何もできなかった……?」
女「……」コクン
友「……き、緊張して?」
女「…………」コクン
友「……ありゃ~」
女「……ほっとけよ」
友「ホントに何もしなかったの? 会話も何も?」
女「……そりゃ、ちょっとはしたけどよ……」
友「え!? どんな!?」パアァ
女「……チッ」
友「いいじゃんいいじゃんそれくらいさっ!」
女「……ここは……何部だって」
友「……えっ?」
女「それと……部員は一人かって……」
友「……あの、あのさ?」
女「……なんだよ」ボソッ
友「ほ、他には?」
女「……」
友(えぇぇぇぇぇぇぇっ!)
友「……だからってそんな分かりきったこと聞かなくても……。
男くんが一人で写真部続けてるってこのクラスじゃまぁまぁ有名じゃん」
女「うっ……」
友「……しっかし驚いたねぇ。あんたが急に男の部室はどこだなんて聞いてくるんだもん」
女「……文句あんのかよ」
友「ね? ね? 好きなんでしょ!?」
女「あ、あぁぁん!?」ガタッ
友「どこに惚れたのよ? ねぇねぇ!」ニヤニヤ
女「テ、テメェそれ以上言うとブッ殺すぞ!!!!」
友「お~怖い怖い」
女「チッ……」
友「でも、教えてくれたっていいんじゃない? これからあんたと男くんの、
フォーリンラブを成就させるために力を貸す私にくらいさ!」
女「……な、なぁにがフォーリンラブだよ……背筋がゾッとするね」
友「あれ? じゃあ男くんに近づきたくないの?」
女「……」
友「はい聞こえた! 今心の声が聞こえたよ!!
『そりゃあたいだって近づきたいさ……でも恥ずかしいんだもん!』って聞こえてきたよ!」
女「テ、テメェなぁ……」プルプル
友「でも本心はそんな感じでしょ?」
女「ち、ちげーよ」
友「隠さなくったって分かります。あんたと何年友達やってきたと思ってんの」
女「……チッ……かなわねぇな……」
友「ふふんっ」
女「そのツラどうにかしろよ……」
友「それ無理、かわいいんだもんあんた」ニヤニヤ
女「バ、バカにすんな!」
友「してないよ~? ただ本心を言っただけ」
女「くそっ……」
友「で?」
女「はぁ……なんつーか……あ、あいつの、たった一人なのに部活を続ける心意気っつうか……」
友「あ~、わかる、わかるよ。あんた一本気のある男好きだもんねぇ」
女「……わ、悪いかよ」
友「ぜ~んぜん悪くないよ? 言ったでしょ、協力する」
女「……あ、ありがと」
友「ふふっ」
女「わ、笑ってんじゃねぇ!!」
女「……」
友「じゃないと何も進まないよ?」
女「……わ、わかったよ」
友「よしよし。なんか聞きたいこととかないの?」
女「あ?」
友「今日話せなかったんでしょ? 一つくらい質問準備しておけば?」
女「……か、彼女は」
友「ストーップ、早いでしょ!」ビシッ
女「……じゃ、じゃあ趣味とか」
友「写真でしょ」
女「くっ……好きな食べ物」
友「口下手か! って、そうだった」
女「……やっぱ行くのやめる」
友「おぉぉいっ!! 分かった! 分かったから! 私が考えるから! ね!?」
女「……くそっ」
友「『部員募集してる?』 うん、これでいこう!」
友「もしそれで募集してるって言ってくれたら流れで写真部入部できるし、
イコール男くんとお近づきになれちゃうし? 完璧ねっ!」
女「……そ、そんな上手くいくのかよ」
友「やってみなきゃ分からないよ! さ、ファイトファイト!」
女「……わ、わかったよ」
男(えぇぇぇぇぇぇぇ!? また来てるぅぅぅぅぅぅ!?)
男(それも俺より早く来て先に椅子に腰かけちゃってるぅぅぅぅぅぅ!?)
男(何これぇぇぇぇぇぇ!? 助けて!! 誰か助けてぇぇぇぇ!!)
女「……」
男「……」
女「……」
男「……」
男(落ち着け!! 落ち着け俺!! 一回落ち着け!!)スーハースーハー
男「……あ、あの」
女「あぁ?」ギロッ
男「ひぃぃぃ!! ごめんなさいいい!!!」
男(落ち着くとか関係なく怖いよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!)
女「……チッ」
男「ひっ……」
女「……おい」
男「は、はいい! なんでしょう!?」
女「……何部だよ」
男「……えっ?」
女「こ、ここは何部なんだよ!!」
男(えぇぇぇぇぇ!! それ昨日聞いてきたじゃん!! 写真部って言ったじゃん!!
なにこの人!? 昨日とは違う人なの!? いやそんな訳あるかっ!!)
男「……しゃ、写真部です」
女「……」
男「……」
男「俺一人です」
女「……チッ」
男「ご、ごめんなさい……」
男(だって昨日と同じ流れだったからつい……)
女「……そ、それじゃあ」
男「ん?」
女「ぶ、ぶぶ、ぶい、部員、部員っ、ぶ」
男「え? なに?」
女「ぶい、部員、ぼ、ぼしゅ、募集」
男(え? 何? ちょっと? おち、落ち着いて? ねえ? 何? 大丈夫なの?)
男「……い、一度大きく息を吸ってから……」
女「……」スゥー
男「……」
女「……」スゥー
男「……」
女「~っ!」ピクピク
男「す、吸いすぎ! 吸いすぎだから! なると思ったよ!! ほら、息吐いて!!」
女「……ハァ……ハァ」ギロッ
男「あ、あぁぁ!! す、すみませんん!!! うっかりタメ口を!!」
女「ハァ……ハァ……ぶ、部員とか……ぼ、募集……してねぇのかよ……」
男「……えっ?」
女「だ、だから、募集してるのかしてねぇのかって聞いてんだよ!!!!」
男「ひぃぃぃ!! し、してますしてます!! なんせ廃部の危機ですから!! しまくってます!!」
女「ほ、本当だろうな!?」
男「えっ? あ、はい」
女「……」
男「……」
女「……」チラッ
男「……」
女「……」チラッ
男「……」
男(え? 違うよね? 違うよね? なんかすっごいチラチラ見てくるけどまさかそんなはずないよね? そうだよね?)
女「……」チラッ
男「……あ、あの」
女「!! な、なんだよ」
男「……もしかして……いやまさかとは思うんですけど……」
女「な、なんだコラ、言いたいことあるなら早く言えコラ」
男「ひいぃっ、い、いや、その……もしかして、入部希望なのかな~……なんて、あ、あはは! あははは!」
女「~っ!」ガタッ
男「ご、ごめんなさい!! やっぱ違いますよね!! 生意気言ってすみませんでしたぁぁぁ!!」
女「……こ、これ……」スッ
男「……えっ?」
女「……く、くそっ……は、早く受け取れボケェ!!」
男「ひゃあ! ご、ごめんなさい!! こ、これ……えっ?」
男(ハッ! まさか……これが果たし状ってやつかぁぁぁぁ!! うわあああ!!)
男(何時!? 何時に屋上行けばいいんですかぁぁぁぁぁ!!!)ペラッ
男(……『入部届け』っておぉぉぉい!!!!!! びっくりして損しt……えっ?)
女「……」
男「……」
女「……」
男「……」
女「……」
男「……あ、あの、入部届けは顧問の方に……」
女「」バッ スタスタ、ガララッピシャッ、タッタッタッタ
男「…………」
友「そ、それで慌てて職員室まで走って行ったの? ぷっくく、ぶはっ!」
女「わ、笑うんじゃねぇ!!」
友「ひー、だ、だって……むはっ!!」プスプス
女「テ、テメェ……!!」
友「ご、ごめんごめん。で、承認してもらったの? 顧問の先生には」
女「……か、かなり驚いてたけどな」
友「そりゃそうだよねぇ、あんたが部活なんて職員室にスコールが降るよ~」
女「……」
友「ま、何はともあれこれで正式に男くんとキャッキャキャッキャできる訳だし、よかったじゃん!」ニヤニヤ
女「んな事するか!!」
友「え? したくないの?」
女「う、うるせぇ!!」
友「冗談冗談、そんなに照れなくても」
女「チッ……」
女「ま、まぁな」
友「ニヤけてるよ」
女「あ? ニ、ニヤけてねぇよ」
友「ニヤけてたよ?」
女「……う、うっせぇな、いいじゃねぇか別に」
友「嬉しい?」
女「……そ、そりゃあ」
友「」ニヤッ
女「う、嬉しくねぇよ!! ちくしょう!!」
友「もう、あんたってばホント素直じゃないねぇ」ニヤニヤ
女「テ、テメェが茶化すからだろうが!!」
友「ふっふっふー」
女「あ? 何をだよ」
友「明日男くんに話すこと!」
女「……嫌な予感しかしねぇな」
友「『男くんと一緒の部活に入れてよかった』」
女「却下」
友「えぇぇ? なんでぇ? 本心じゃん! 素直な気持ちじゃん!」
女「チッ……言えるかよ、んなこと」
友「素直にならないと自分の気持ちに気付いてもらえないよ?」
女「くっ……」
友「ん? 大体、何?」
女「……ガ、ガラじゃねぇし……」
友「んもー、分かってないなぁ。ギャップだよギャップ!」
女「あぁん?」
友「男くんがあんたに持ってるイメージどんなだと思う?」
女「……男、ビビってるからな」
友「そう! そこだよ! そこ! あんたが照れ隠しに叫ぶからじゃん」
女「し、仕方ねぇだろ……どんな反応すりゃいいかわからねぇんだよ」
友「じゃあさ、もしそんなコワーイあんたが急に可愛らしくなったらどう思う?」
女「気色悪ぃな」
友「もー!」
女「あ?」
友「あんたさ、顔は良いんだよ。でも格好がね」
女「な、なんだよ……かっこいいじゃねぇか」
友「まずその長いスカート、短くしなさい」
女「はぁ!? んなことできっかよ」
友「男くんは短いスカートの方が好きみたいだよ?」
女「……なんだと……」
友(適当だけど……)
友「少しでも男くんの理想に近づきたくないの?」
女「くっ……ちくしょう……ちくしょおおお!!」
友「はい、私の予備貸してあげるから、スカート折りましょうねぇー」テキパキ
友「顔赤すぎだよあんた」
女「う、うっせぇ! 脱ぐ!!」
友「な、なんでなんで!? 似合ってる!! 似合ってるから!!」
女「嘘つくな!!」
友「ホントだって!! それなら男くんもイチコロだと思うよ! うん!」
女「……ほ、ほんとかよ」
友「お世辞じゃなくて、本当に似合ってるから。むしろ私があんたに惚れそう」
女「……」
友「いやいやそこ引くところじゃないでしょ」
女「なんだよ急に」
友「ズバリ!! 『好きなタイプは?』」
女「バッ!! き、聞けるかよ!!」
友「これには二つの意味があるのだよ、ふふふーん」
女「あ?」
友「今あんたに必要なのは積極性なの、あんたは叫んで自分を隠しちゃうからね」
女「……」
友「好きなタイプを聞くことによって男はこう考えるの。
『なんでこの子、俺の好きなタイプを……? もしかして』 そう、正に『あんたのことが気になるんだからね』アピール!
そしてさらに男くんの好きなタイプを聞き出すことによって具体的な対策が思い浮かぶという
まさに一石二鳥の質問なのである!」
女「……」
友「ハイ決まり! 明日もがんばろう!」
女「……ちょ、ちょっと待て」
次の日写真部
男「女さん、正式に入部したのか……」
男「大丈夫かな……俺、生きて高校卒業できるかな……」
男「……というか、なんで入部したんだろう……」
男「写真に興味があるのかな……」
男「……わからない」
男「!!」
女「……お、おう」
男「あっ……よ、ようこそ……」
女「……」
男「……あ、あの、どうぞ、座ってください」
女「……」スタスタ、ストン
男「……」
女「……」
男「……」
女「……」
男(会話ねええええ!! ぶ、部長としてなんか話さないと!! 何話す!?
いやー、いい御天気ですね、ハハハ。……俺つまんねえええ!!)
女「あ?」
男「ひっ、……え、えっと……女さんは……どうしてこの部活に入部したんですか?」
女「……」
男「……」
女「……」
男「……あ、あの……しゃ、写真に興味は?」
女「……ね、ねぇな」
男「……え、えーっと」
女「……」
男「……じゃ、じゃあ、どうして?」
女「……お、お前、お前が!! お、お前!!」ガタッ
男「え!? え!?」
男「え!? え!?」
女「う、うるせぇ!!」
男(えぇぇぇぇぇぇ!?)
女「……チッ……く、くそっ……」
男(な、なんなの? なんかすごい顔赤いけど大丈夫なのかなこの人……)
女「……見、見んじゃねぇよ」
男「ひぃ! ご、ごめんなさい!!」
男(なんか触れちゃいけないところに触れてしまったんだろうか……)
男(スカートもいつもみたいに長くないし……正直、こっちの方が似合ってるよな)
男(……こ、怖いけど……い、言ってみようかな……な、生意気かな……。
俺みたいなやつに言われても嬉しくないかな……いやでも……このまま無言も気まずいし……。
かといって何話せばいいか分からないし……よ、よし……)
女「……」
男「……」
女「……」
男「……あ、あの」
女「……あ?」
男「……ス、スカート……長さ、いつもと違いますよね?」
女「……んなっ!」
男「……い、いやあ、アハハッ! す、すみません……」
女「……うっ、あぅ……」
男「ひぃぃ!! や、やっぱりダメでしたよね!! キモイですよね!! ホントすみません!!」
女「お、お前は……どっちが、いいんだよ」ボソッ
男「……え?」
女「だ、だから!! 短いのと長いの!! どっちがいいんだよ!!」
男「え!? お、俺!? ですか!?」
女「そ、そうだよ!!」
男「ど、どっちでもいいですけど!! お、女さんは、み、短い方g」
女「……み、短い方?」
男「え、ええ!! えっと、えーっと……」
女「……そ、そうかよ…………そ、その、……に、ににに、にあっ、似合って、る、るか?」
男「え?」
女「な、なんでもねぇよ!!!!」
男「ひぃぃ!! ごめんなさい!!」
女「……あ?」
男「……み、短いスカート……よ、よく似合ってると思います。な、なんちゃって……あ、いや、その、
ふ、普段と違う姿というか! な、なんというか、し、新鮮で……って、何言ってんだ俺!!
ご、ごめんなさい! 気持ち悪いですよね!」
女「……」
男「えっと、えっと……」
女「……」ガタッ
男「えっ?」
女「……」スタスタ、ガチャッバタン、タッタッタ
男「え? え?」
男「……か、帰っちゃった……やばい……やばい……どうしよう……」
男「お、俺が生意気言ったから……お、怒ったんだ……」
男「……謝らないと……」
友「へぇ~! よかったじゃん!!」
女「……」コクン
友「やっぱり私の考えに狂いは無しだね! というか、だから長いスカート捨てようとしてたんだ」
女「……」コクン
友(さすがに止めたけどね……)
友「全く、急にゴミ箱に向かって歩き始めた時は何事かと思ったよ」
女「……お、男が短い方がいいってなら……も、もう必要ねぇだろ……」
友「もうもう赤らめちゃって! 妬けちゃうな!」ニヤニヤ
女「……う、うるせぇ……」
ガラッ
友「ん?」
男「ご、ごめんなさいいい!!」
友「……はっ?」
友「ちょっ、え!? 何!?」
男「生意気言いましたあああ!!!」
友「ちょ、お、落ち着いて!! 一回落ち着いて!? ね!?」
男「なんでもしますからああ!!」
友「あ、あんた何したのよ!!」
女「えっ、あ、うぁ……そ、その……ま、舞い上がっちまって……か、勝手に部室を……」
友「はぁぁぁ!? 何も言わずに!?」
女「……」コクン
男「処女以外ならなんでも捧げますからああああ!!!」
友「ちょ、あんたうっさい!!!!」
セクハラ発言かなんかで怒らせたと思って謝罪しに追いかけてきたと」
男「はい……」
友「はぁー……」
女「うっ……」
友「あのね、男くん」
男「な、なんでしょう……」
友「この子、全く怒ってないから」
男「えっ?」
友「むしろ、ものすっごーく喜んでるから」
女「お、おいテメェ!!」
友「事実でしょ?」
女「……うぅ」
男「どういう……」
友「この子、言ってることと思ってることは真逆だから」
男「え?」
女「ち、ちげぇよ!!」
友「『本当はあってるけど恥ずかしいから言わないでぇ!!』」
女「ハァァ!? テ、テメェ……」
友「『それ以上言うと色々バレちゃうから言わないでぇ!!』」
女「こ、こいつ……」プルプル
友「あんたね、これ以上のチャンスないよ?」
男「チャ、チャンス……?」
友「あ、ううん、こっちの話」
友「ズバリ聞くけど、男くん、女にどういう印象持ってる?」
男「……そ、それは……」
友「……怖いでしょ?」
男「ひぃぃ!! ごめんなさい!!」
友「……肯定してるようなもんじゃん」
女「……」
男(……あれ? お、怒らない……)
友「あのさ、せっかく一緒の部活なんだからさ、仲良く行こうよ」
男「そ、それはもちろん……そうできたら素晴らしいなと思ってますけど……」
女「……チッ」
友「私が思うに! 問題はどちらにもあるのです!!」
男「……す、すみません……」
友「ほらそれ!!」
男「……ご、ごめん……なさい」
友「なさい!!!!」
男「ひぃぃぃ!! ご、ごめん!! で、でもやっぱり怖くて……」
友「私達は怖くありません!!」
男「……ご、ごめん……」
友「それでいいの。あんたはどうなのよ」
女「あ?」
友「敬語じゃない方がいいでしょ?」
女「……そ、そりゃあ……なんつーか、堅苦しいっつうか……」
友「だって」
男「……は、はい」
友「ほらまた!! あーもう!! 決めた!!」
男「う、うん……」
友「で、あんたは?」
女「……」
友「あーんーたーは??」
女「……な、仲良く……な、なりてぇよ……」
友「」ニヤ
女「テ、テメェ!! わざと言わせやがったな!!」
友「なんのことかな~っと。それで、本題なんだけど」
友「男くんは敬語をやめなさい!! 女は一つでもいいから素直になりなさい!!」
友「以上!!」
男「えーっと……」
女「す、素直になれって……ど、どうすりゃいいんだよ」
男「えぇぇぇぇ!? む、無理無理!! 無理だって!!」
女「は、ハアァ!?」
友「何を言うか!! いい!? 今の状況を乗り越えるにはね、男くんも女もデカイ壁を乗り越える必要があるの!!
ちっちゃい階段を細々とのぼってちゃ埒が明かないの!!
やっとタメ口で話せるようになったのが卒業式でした、なんてそんなのでもいいの!?
いうなれば荒療治よ荒療治!!」
男「で、でも……」チラッ
女「な、なんだよ」
男「ひぃぃ!」
友「ほらそこ!! 威嚇しない!!」
女「し、してねぇよバカ!!」
男(何言ってんだこの人……)
友「はい聞こえた! 今心の声聞こえた!!
私のことうっすらバカにしたでしょ!?」
男「えぇぇ!? も、申し訳ありませんでしたぁぁぁ!!」
友「もう! とにかく殴りあうくらいの極端な荒療治が必要なの! わかった!?」
女「……そうだよな……青春の男達みてぇに……熱さが必要なんだよな……」
友「よしっ!!」
男(なんか納得してるうううう!? というか俺達男同士じゃないから!!!!)
友「男くんもわかった!?」
男「ぐっ……う、うん、わかったよ。確かに、一気に距離を縮めないと、どうにもなんないかもしれない。
……ちょ、ちょっと勇気が足りないけど……」
友「大丈夫大丈夫!」
男「……え、えーっと……では……」
女「……」
男「うっ……お、女!」
女「!!」ガタッ
男「さん」
友「ストップストーップ!!!!」
男「ダメだああ!!!」
友「ちょっとあんた! 何で拳握って立ち上がるの!?」
女「し、仕方ねぇだろ!! よ、よび、呼び捨て!!」
友「あーもう分かった分かった。どんだけウブなの?」
女「う、うるせぇ!! な、慣れてねぇんだよ!!」
友「次は大丈夫だよね? ね?」
女「……うぅ」
なんか逆に緊張しちゃうでしょ?」
男「う、うん……」
友「それじゃ、ちょっと耳貸して」
男「ん?」
友「ゴーニョゴニョ! ゴニョ! ゴニョー!!! ……言える?」
男「う、うん。それくらいなら」
友「はいどうぞ!」
男「えーっと……ひ、人が足りなくて廃部の危機だったけど、お、女が入部してくれて助かったよ! ありがとう」
女「……あぅ……」
男「……え、と」
女「……」
男「……」
女「~っ!」ジタバタ
友「はいはい暴れない暴れない。嬉しいなら嬉しいってそう言えばいいのに」
どう? ちょっとは壁取り除かれた感じする?」
男「う、う~ん……とりあえず敬語は使わない方がいいってのは分かったよ」
友「上出来上出来!」
女「……お、おい」
友「ん?」
女「す、素直になるっつっても……い、一体何をすりゃいいんだよ」
友「そんなの簡単じゃん」
女「あ、あぁ?」
友「今こそ男くんの好きなタイプを聞く時だよ」ボソッ
女「なっ!! で、できるかよっ!!」
友「できるできないじゃありません!! するんです!!」
女「む、無理だ!!」
友「素直になりなさい!! あんたかわいいんだから!! ね!?」
男「え!? あ、うん」
女「あ、あぁぁぁん!?」ガタッ
男「ひいい!! ごめんなさい!!」
友「もう! なんでそこで威嚇するの!!」
男「な、何でしょう!?」
友「男くん! 敬語に戻ってる!! 女も凄まない!!」
男「あ、ご、ごめん!」
女「チッ……」
女「お、おい……お、おと、男!」
男「な、何!?」ドキッ
女「……テ、テメ、テメェ、テメ、す、好きな! タ、タタタタ」
男「す、好きな!?」
女「好きなタイ、タ、タイプ、タ、タ、タイプ、タイ」
男「す、好きなタ、タイプ?」
女「そ、それだよちくしょう!! あ、あんのかコラァ!!!!」
男「ひ、ひいいい!! あ、あります! あります!! ごめんなさい!!!!」
友(……ダメだこりゃ)
男(な、なんでそんな質問を……)
男「そ、それは、女性のってことでいいんだよね?」
女「お、おう。そ、そうだよ……は、早く言えよコラ」
友「凄まない!」
女「く、くそっ……」
男「え、えーっと……贅沢かもしれないけど……お、俺の趣味に、理解を示してくれる人だと、
嬉しいっていうか、その……や、やっぱり、俺にとって写真は大切なものだし……そこが分かりあえたら、す、すごく素敵だと……」
女「……」
男「……え? えーっと……だ、大丈夫?」
友「……ほっといてあげて。顔が赤いのは体調不良でもなんでもなくてズキュンと何かが刺さった印だから」
男「う、うん?」
友「簡単に言うとね、男くんのその一本気な姿勢にもっと恋しちゃいまs」
女「う、ううっせぇ!! それ以上言うなバカ!!」
友「ぷくくっ! 本心だ!」ニヤニヤ
女「うぅ~っ!! く、くそぉっ!!」
そ、そんなはずはない! ありえないありえない!)
男(お、女さんが……お、俺のことを……? いやいやいやいや!! …………で、でも……。
よ、要素は、揃ってるよな? …………勘違いじゃない可能性も……
ないとは言い切れない……かもしれない……
という可能性が50%くらいはあるのかもしれない…………わ、わからない……今はまだ)
女「お、男!」
男「え!? な、何?」
女「しゃ、写真には……その、あんまり興味ねぇけどよ……」
男「う、うん」
女「ぶ、部活は……毎日ちゃんと出るつもりだからよ…………よ、よろしく」
男「…………」
女「……あ、あぁん? テ、テメェシカトk」
男「ぷ、ぷくくっ! ぶっ!」
女「な、何笑ってんだよテメェ!!」
男「ご、ごめん!! ぶはっ! わ、わざわざ、律儀だなと思って……ぶほっ!」
女「あ、あぁん!? テ、テメェ!! 挨拶とか誠意とかそういうのはなぁ!! だ、大事なんだよ!!」
男「う、うん! わ、分かってる! けど……ぶふっ!」
友「それ必要以上に重視するのあんたの世界だけだからね」
女「う、うるせぇな!! わかんねぇんだよ!!」
友「ま、いいと思うけどね。ウケたみたいだし」
女「ウ、ウケ狙いじゃねぇ!!」
女「」ズキューン
男「それじゃあ、俺はもう帰るから、また明日の部活で!」
女「あ、あた、あたふ、また、あし、あした、あt」
友「何言ってるのかわからないよ?」
女「ま、また……明日……」
男「うん! それじゃ!」
女「……」
友「……よかったね」
女「……」コクン
友「……あんたが今日から皆勤賞になりそうで怖いね」
女「……」コクン
友「……ふふっ」
友「え? ダメダメ、帰らせないよ?」
女「あ? まだなんかあんのか?」
友「もう! 現状に安心しきって未来を見据えないのは愚かな行為だよ!
かの有名な作家も精神的に向上心のない者は馬鹿だって言ってたでしょ!?」
女「あ? 西森博之か?」
友「全然違うじゃん! それあんたがいっつも読んでる漫画の作者でしょ!?
夏目漱石の「こころ」だよ!」
女「あー、夏目漱石な」
友「分かってるのかな……まぁいいや。言いたいことは、あんたまだゴールじゃないでしょ? ってこと!」
女「あん?」
友「むしろやっとスタートラインだね!! ゴールは男くんと付き合う!! 違う?」
女「つ、付き合、付き合うっつったって……」
友「私はそんなに遠いことじゃないと思うけど?」
女「お、おう……」
友「男くんの好きなタイプは聞きました。正直あんたはこれもうクリアしてると思うんだよね」
女「そ、そうか!?」
友「急に笑顔になったね。男くんは趣味に理解を示してほしいんでしょ?
あんたは男くんの趣味に没頭する姿に惚れたんだから、ノープロブレムじゃん!」
女「へへっ、まぁな」
友「調子に乗らない。いくら無問題だと言っても、ずーっと写真に興味持たないってのもよくないと思うよ?」
女「な、なんでだよ」
友「いい? 趣味に没頭している人は同じ趣味を持っている人が傍にいるとすごく嬉しいの!
だから、あんたは写真部の活動を通して、幸いまだ2年もあるんだから、しっかりと勉強すること!」
女「……わ、わかったよ」
友「明日男くんにする質問を発表しちゃおうと思います!」
女「……」ゴクリ
友「『彼女いるの?』」
女「ちょっ! ま、待てコラ!!」
友「何?」
女「そ、それはまだ早いって言ってたじゃねぇか!!」
友「あの時はね。でももう大丈夫だと思うよ? 今日あんたが好きなタイプを聞いた時、
『私はあんたのことが気になるんだからねアピール』に成功してたっぽいし。二人の距離も縮まったし。
それに、これはあんたも一番気になることでしょ?」
女「うっ……そ、そうだけどよ……」
友「積極性の上に積極性を上乗せして勝負!! スピード命!! 男くんもあんたのことかわいいって言ってたしさ」
女「……くっ」
男「」ガラッ
女「……お、おう」
男「あ、先に来てたんだ」
女「ま、まぁな」
男「……」
女「……」
男「えと」
女「あ、あのよ!」
男「えっと……何?」
女「……い、いや、な、なんでもねぇ」
男「ん?」
女「なんでもねぇから、お、男の用事を言え」
男「え、えーっと……とりあえず、お茶でも飲もうか」
女「あ?」
男「アハハ……いや、簡単なものだけど……ティーバッグだし……」
女「……」
男「……じゃ、じゃあ淹れるからちょっと待ってて」
女「ま、待てよ……」
男「え?」
女「……わ、わた、私が……い、淹れてやっから……す、座ってろ」
男「……いいの?」
女「い、いいから座ってろっつってんだ!!」ガタッ
男「わ、わかった!! わかったから!! 拳握らないで!!」
女「……ま、待ってろ……」
男(……りょ、料理とかそういう類はできるのかな……)
男「あ、ありがとう……」ズズッ
女「……」
男「……こ、これは……」
女「……な、なんだよ」
男「……う、うまい……」
女「そ、そうかよ……」ニヤッ
男「なんで? 俺の時と全然違うんだけど……」
女「カ、カップをあっためたり、蓋したりとか色々コツがあんだよ」
男「す、すげぇ!! すげぇよ女!」
女「あ、あんま褒めんなボケ!」
男「えぇぇぇっ!?」
男(ああ……いいなあ……なんかいいなあこういうの……)
男(女の人が食器を洗ってる後ろ姿を眺めながらのほほんと……
こんな奥さんがいたらなあ……って、何考えてんだ)
男(ハッ!! カメラカメラ!!)
男「……」
女「……」カチャカチャ
男「……」パシャッ
女「!!」クルッ
男「あ、やべっ」
女「テ、テメェコラァ!! な、何許可なしに撮ってんだバカ!!」カァ
男「ご、ごめん!! つ、つい……な、なんかすごく良い風景だったから……」
女「く、くそっ……」
友「えぇぇぇぇ!?」
女「な、なんだよ」
友「何それ何それ何その展開!!」
女「う、うっせぇよ」
友「だって!! 男くんとお出かけなんて!! 何それ!!」
女「ぶ、部活だっつってんだろ。郊外に出て写真撮ろうってだけだ」
友「でもでもでもでも!! あんた!!」
女「あ?」
友「もう彼女いるかいないか聞けなかったなんてどうでもいいよこの際!!」
女「うっ……」
友「ふ、服!! 服買いに行こう!!」
女「は、ハァ!?」
女「……か、考えてもなかった……」
友「ね!? よし行こう! すぐ行こう!!」
女「ちょ、ちょちょ、ちょっと待てよ!! い、今ある服じゃいけねぇのかよ?」
友「ダメに決まってるじゃん! あんたどうせ特攻服しか持ってないでしょ!?」
女「んな訳あるか!! というか特攻服なんざ一着も持ってねぇよ……」
友「あれ? そうなの?」
女「あのな……私、暴走族とかじゃねぇから……」
友「でも出来る限りおしゃれしたいでしょ?」
女「……」
友「ハイ決まり。行こう!」
女「……わ、わかったよ」
友「そういえばなんでそんな流れになったの?」
女「……と、とりあえず最初は何すりゃいいかわかんねぇから、
男の写真撮る姿を見て学びたいって言ったんだよ」
友「へぇー、ふーん」
女「な、なんだよ、文句あんのか?」
友「べっつにー、あんたも積極性出てきたじゃん! って思って」ニヤニヤ
女「チッ……う、動かねぇと変わらねぇっつったのはテメェだろ?」
友「そうだね。うんうん良い調子!」
友「その調子なら、明日彼女いるかどうか聞けるね!!」
女「うっ」ギクッ
友「逃れられない運命なのであーる。じゃないと一線越えられないよ?」
女「な、んだよその言い方」
友「あ、これなんてどう?」カチャ
友「おぉぉぉ!! あんたその性格だからかっこいいイメージしかなかったけど、かわいいのも大丈夫じゃん!!」
女「……ほ、本当だろうな? もし騙してやがったら」
友「騙す訳ないでしょー。似合ってるって」
女「……そ、そうか? ……ぜ、全然慣れねぇ……なんだこのフリフリ」
友「男くんのハートもイチコロよ!!」
女「……じゃ、じゃあこれにする……」
友「ふっふっふー」
女(……ほ、本当に大丈夫なんだろうなこの格好……)
女(に、似合ってるよな? 大丈夫だよな? ……ど、どっかに姿見とかねぇかn)
男「お、おはよう……」
女「おわっ!! あ、な、お、おう、男かよ。なんだよ?」
男「なんだよって、待ち合わせしてたじゃん」
女「あ、そ、そうだったな」
男「待たせた?」
女「ハァ!? い、いや、ま、待ってねぇよ」
男「そ、そう? なら良かった。なんか不安そうな顔してたから」
女「ふう……」
男「じゃあ、適当に街歩こうか。気に入った場所あれば勝手に写真撮るけど、本当にこんなんでいいの?」
女「あ? お、おう! わ、私は、つ、ついて行くから、気にすんな」
男「わ、わかった」
女「……」スタスタ
男(…………な、なんだこれ!! かわいいいいい!! 気のせい!? いや違うよな!?)
男(というか何俺落ち着き払ってんの!? いつからそんな余裕のある男に!?)
男(いや内心焦りまくってるから余裕ないか!! というか何その服!?)
男(メチャクチャ似合ってるんですけどおおお!! これがギャップっていうやつか!!!)
男「お、俺ももっとちゃんとしてくればよかった……」
女「あ?」
男「え? ……あ、あれ!?」
女「……あ?」
男「ん? えっ? 何?」
女「…………ちゃ、ちゃんとって、なにをだよ」
男「……あ、ありゃ? 声に出てた?」
女「……お、おう」
男「……」
女「……」
女「あ?」
男(こ、これ言っていいの!? いいのこれ!? キモイとか思われるんじゃね!?)
女「な、なんだよ。言うことあるならハッキリ言えよ」
女「……そ、それともなんだよ……テ、テメェは……て、適当に今日を迎えたのかよ」
男「い、いや、そ、そうじゃなくて!!」
女「……じゃ、じゃあ、ちゃんとってなんだよ」
男(な、なんかまずい方向になってる気がするし、もう思いきって本心言っちゃおう!!
うん!! ぶちまけちゃおう俺!!)
男「え、っと…………お、女の……」
女「あ?」
男「……ふ、服装がとてもよくお似合いになられていて!! か、可愛いなと思ったので!!
お、俺はこんなダサい格好でいいのだろうかと思い『ちゃんと』とか言っちゃいましたあああ!!!」
女「なっ!! ……あ、ぅ……」
男「……え、えと……」
女「……テ、テメェェェェェ!!!!!」
男「ひいい!!! ご、ごめんなさいいい!!!」
なんというか…下品なんですけど…フフ
殴っちゃいましてね…壁…
男(……あ、あれ? な、殴られなかった……)
女「くぅ……うぅ……」カアァァ
男「ちょ、え!? だ、大丈夫!?」
女「……ダ、ダメだ……」
男「え!? ダ、ダメなの!?」
女「ち、ちが…………う、嬉し……」
男「う、嬉し?」
女「ハッ……うぁ、ち、ちげぇよ!! う、嬉しいとかじゃねぇよ!!!!」
男「え!? え!?」
女(……な、なんだこりゃぁ……ど、どうすりゃいいんだよちくしょお!!)
女「……お、おう……」
男「……そ、その……ごめん。なんか急に変なこと言って……」
女「……」
男「……」
女「……」
男「……」
女「……テ、テメェ」
男「……な、何?」
女「……か、かの、かのj、かの、か、かの」
男「え? え?」
女「か、かの、か彼女!!!!」
男「か、彼女……?」
女「か、彼女!!!!」
女「かの、彼女!!!! い、いい、いるのか!?!?」
男「いっ!? か、彼女!? い、いません!!」
女「あぁ!? い、いねぇのか!?」
男「い、いませんいません!!!!」
女「ほ、ホントか!?!?」
男「ほ、ほんと!!」
女「……」
男「……え!?」
女「……」ヘタリ
男「え!? ちょ、ちょっと!!」
友「んぶはっ!! むはっ!! ぶふぅぅ!!」
女「わ、笑いすぎなんだよテメェはよぉ!!」
友「むはっ!! だ、だって……んぶふぁ!! ぶほぉ!!」
女「チッ……く、くそっ」
友「ぷふっ……で、でもすご、すごいよあんた……ぶほっ!」
女「笑いながら言われても嬉しくねぇよ」
友「い、いや、ホントに……むはっ! こ、ここ数日で、物凄い進歩だと思うよ」
女「はいはいありがとよ」
友「ご、ごめんごめん! …………よしっ! もう大丈夫だから!!」
女「チッ……」
友「でも本当に良かったね、男くんに彼女いなくて」
女「……お、おう」
女「あ? なんだよそれ」
友「もう! 分かってるでしょ? あれだよ、あーれっ」
女「あ、あれ? わ、わかんねぇな」
友「分かってるくせにー、告白じゃん!!」
女「ハ、ハアァ!? ん、んなことできっかよ!!」
友「今回ばかりは私にまっかせなさい!!」
女「あ? ど、どういうことだよ」
友「私は気になるのです!! そう!! 男くんの気持ちが!!」
女「あ、あぁん?」
友「ということで、突撃しちゃいたいと思ってるんだけど、どう?」
女「ど、どうって言われても、わ、わかるかよ……」
女「んなっ!!」
友「だってね? 普通なんとも思ってない子の服を褒めるのにそこまで考える?
『自分もちゃんとすればよかった』って、それってつまり自分は不釣り合いだって考えたってことじゃん?
何かしら思いがないとそんなこと思わないよね? ね?」
女「……さ、さぁな……」
友「もう! そんなのだったら勝手に突撃しちゃうよ? いいの!?」
女「す、好きにしろよ……」
友「あれ? いいんだ? ……あっ、わかった……あんたも知りたいんだ?」
女「あ、あぁん!?」
友「あんたのその反応は肯定も同然なんだよーっと」
女「く、くそっ……」
友「ということでっ!」
男「え、えーっと……」
友「残念でした! 今日は女は来ないよー」
男「そ、そうなんだ……」
友「」ニヤッ
友「がっかり? がっかりしちゃう?」
男「そ!! それは……うん、まあ」
友「いいね、男くんは素直でやりやすいね」
男「え? ど、どういうこと?」
友「ね、正直に聞いちゃうけど」
男「何?」
友「女のこと、どう思ってる?」ニヤッ
男「ど、どどどうって……どう?」
友「そう、どう」
友「ありゃ、バレてたか」
男「し、質問しながらあんなにニヤけてたら気づくよ」
友「え? ニ、ニヤけてた?」
男「う、うん」
友「ありゃ……とまあそんなことは置いといて、どうなの?」
男「な、なんというか……す、すごく……その、か、かわいらしいなとは……思う」
友「かわいらしい?」
男「う、うん……た、たまに怖いけど……その、あ、あの仲良くなった日の放課後から、なんというか……
ちょ、ちょっと気になっちゃって……」
友「好きなタイプ聞かれたから?」ニヤッ
男「ま、またニヤけてるよ……」
友「ありゃっ」
友「ふっふっふ」
男「な、何?」
友「なーんでも。それで、日々が過ぎていく中で思いは蓄積されかわいい私服と『彼女いるの?』でノックアウトと」
男「なっ!!」
友「ふっふっふー、図星? 図星でしょ?」
男「……な、なんか悔しい」
友「と、いうことはつまり男くんはもう……」
男「……うっ……うん……す、好き……だと、思う」
友「むっはっは!!」
男「え!? な、なに!? なにその笑い!!」
ガラッ
男「え!?」
女「あぅ……」フルフル
男(えぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?)
男「こ、この人一番怖いよおおお!!」
友「むはっ!! むははっ!! むっはっは!!」
女「……」
男「うぐっ……」
男「……あ、あの、さ、さっきの……その……聞いてた? よね?」
女「……」コクン
男「や、やっぱりか……あっ、えっと……な、なんだこれ……ど、どうすれば……」
女「……お、男」
男「な、何!?」
女「よ、よく聞け!!」
男「え!? は、はい!!」
男「え!? え!?」
女「す、すすす、す、すk、す、すすす!」
男「え? なに!?」
女「お、おとk、男が、そ、その、す、すすすす」
男「す!?」
女「す、す、好き、す、好きいいいい!!!!!」
男「……えぇぇぇぇぇ!? や、やったああああ!!!!!」バンザーイ
女「ぅあぅ…………くっ、テ、テメェェェェェェェェ!!!!!!」グッ
男「えぇぇぇぇぇぇなんでぇぇぇぇぇぇぇ!?」
友「むはっ!!」
うっかり男の胸倉を掴み手を出しそうになった女の頬は真っ赤だったとさ
終わり
ムカついたけど壁を殴る筋肉が無い、壁を殴りたいけど殴る壁が無い、そんなときに!
壁殴りで鍛えたスタッフたちが一生懸命あなたの代わりに壁を殴ってくれます!
モチロン壁を用意する必要もありません!スタッフがあなたの家の近くの家の壁を無差別に殴りまくります!
1時間\2400~ 24時間営業 年中無休!
∧ __∧
( ´・ω・` )
__,,.= '"::l:. ':: : : :::'' .:': : : . . ヘ
,r.''" 、:`' : : :;:. ゙;:.:.:'",:':.:.:: : : : ' ' .`ヽ、
/ , ' ..: :' '゙ ' 、.,:レ ' ". : ' ' :' .: : ::. :Y
l .: ,.':.. .,;' ゙':、.. : .' . . :.::..:.:l
人::'´ `'::'⌒ `:.::::l、..' . . : :.:.:.:.:./
. /, ゙f : : : : : ::'l、.. .. . . : : : : /⌒ヽ .,r‐.ィ"´ .i'
,'.,' : ゙i、: : : : ;,l、: : : : : : : : ,-i' : r .:. . .: :.ノ
,イ i:. . : ⊥::'__ :' `'': : :' '"彡}: : : ;' : ::' :.:.:,:':/
y'.ィ'"゙ヘ": : : : :  ̄ ''''=-..、∠ニl´‐-〈 .:' .:'´ :〃
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゙!、:.:.:.: : : : :..:,.;.,: : `ト、: : : :,,: : . . `''" ./::/
`¨¨'' ‐- +-‐ ''¨´l::'"`ト .,,_:_: : : : ::,.. _/:::/
,!: i':..: : :{": : : : : : : :~7''‐-'ー'l:.:.:./ 壁殴り代行では同時にスタッフも募集しています
. / .::r'' '''tr‐-:: : 、: : :::,': : : : :.:,':.:.:.l 筋肉に自身のあるそこのアナタ!一緒にお仕事してみませんか?
/ ゙: ::'. :' : : :,:': : : : .:,::': :.:.:{ 壁を殴るだけの簡単なお仕事です!
二時間半で!!!
5時間お願いします
よかった。
さっぱり終わって僕満足
|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| 壁殴り代行会社は壁殴り代行サービスについて、
||冬季休業中| 予想を大きく上回る売れ行きと、スタッフ不足の為、
||_____| このたび代行を一時休止させていただくこととなりました。
| ::| お客様やお取引先様ならびに関係者の皆様に
_| ::|_ 多大なご迷惑をおかけしますことを、心より深くお詫び申し上げます
Entry ⇒ 2012.03.10 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
女面接官「どうぞ」 男「失礼します」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1310566384/
男「はい、私○○大学○○学部所属の男と申します」
女面接官「ありがとうございます。では早速面接の方に移りたいと思います」
男「はい」
女面接官「大学時代に打ち込んだものは何かありますか?」
男「はい、私は資格取得を目指し努力していました。その結果○○検定1級を取得することができました」
女面接官「そうですか。では、次の質問です」
男「はい」
女面接官「私に打ち込みたいものはありますか?」
男「すみません。もう一度お願いします」
男「……申し訳ありません。少し考えるお時間を頂けますか」
女面接官「分かりました。どうぞ」
男「……」
女面接官「……」
男「……」
女面接官「……」
男「……」
女面接官「……」
男「……ムチ、ですかね」
女面接官「わかりました。では次の質問です」
男「はい」
女面接官「あなたが我が社を希望した理由を教えて下さい」
男「はい。私が御社を希望した理由は、大学時代に取得した資格を存分に生かすことができると考えたからです」
女面接官「わかりました。では、重ねてお聞きします」
男「はい」
女面接官「あなたが我が社を希望した理由は、大学時代に得た能力を発揮できるという理由と、
私がいるという2つの理由ですか?」
男「すみません、もう一度お願いします」
女面接官「あなたが我が社を希望した理由は能力の発揮と私の存在ですか?」
男「……」
女面接官「……」
男「……いいえ」
女面接官「……」
男「……」
女面接官「……ですよね。では次の質問です」
男「はい」
女面接官「自己PRしていいですか?」
男「はい、私は……って、え?」
女面接官「自己PRしていいですか?」
男「えっ……? ……えっ?」
女面接官「え?」
男「え?」
女面接官「えっ!?」
男「……」
女面接官「……」
男「……ど、どうぞ」
女面接官「はい」
女面接官「私は、ご飯粒は残さず食べることを心がけています」
男「……は、はぁ」
女面接官「理由は、残さず食べないとお米の神様に怒られるからです」
男「……そ、そうなんですか」
女面接官「……」
男「……え!? お、終わりですか……?」
女面接官「は、箸もちゃんと持てますよ!?」
男「え? ……あ、いや……はい」
女面接官「……何か質問はありますか?」
男「えーっと……特にありません」
女面接官「それでは次の質問です」
男「あ、はい」
女面接官「あなたの長所は……」
男「はい、わたくs」
女面接官「まだ質問の途中ですよ?」
男「あ! も、申し訳ありません」
女面接官「いえ。では。……あなたの長所は、こんな私の相手をしてくれる優しい心を持っているところですが、
今度お食事でもご一緒にどうですか?」
男「え? デ、デートですか……?」
女面接官「そ、そそそんなっ! デートだなんて……」ポッ
男「いや、あのーですね……私はその……」
女面接官「ダメですか……?」
男「そ、その……節度をもった関係をですね……いやいや、えー……っと、なんだこれ。
教授の面接練習じゃこんなのなかったぞこれ、どうすりゃいいんだこれ」
女面接官「……ご飯を食した後の器の綺麗さには定評があります。
理由は綺麗に食べないとお米の神様n」
男「あ、いえ、それは先ほどお伺いさせていただきました」
女面接官「箸もちゃんと持てます」
男「は、はい。そちらも先ほど……」
女面接官「後は……後は……」
男「い、いえ、無理をなさらず!」
女面接官「す、好きな食べ物はチャーハンとハンバーグです。
料理は一応人並み程度には振舞えます。好きな音楽は北風小僧の寒太郎と……えっと、えと……」
男「あ、あの! あの! 落ち着いてください! 自己PRはもう終わりましたから! あの!」
女面接官「あ、そうでしたね。……すみません。私としたことが」
男「い、いえ……」
女面接官「では、質問に戻ります」
男「は、はい……」
女面接官「あなたの長所h」
男「はい! 私の長所は!」
女面接官「未だに呆れずに私の相手をしてくれる菩薩のような広い心を持っているところですが、
あなたから見た私の長所を教えて下さい」
男「努力すると! って……」
女面接会「時間制限は1時間です」
男「い、いえ……そんなに必要ありません……。絶対に」
女面接官「……」
男「……」
女面接官「……」
男「……お、お米を綺麗に食べることができるところ……ですかね」
女面接官「……」テレッ
男「……なんだこれ」
男「はい……」
女面接官「最近関心のあることはなんですか?」
男「は、はい! 最近は大きなニュースがたくさん取り上げられていますが、
その中でもやはり一層関心を引かれる出来事は○○です。というのも、この○○は私の得意分野に密接に関わることであり、
御社の業界にも多大な影響を与えております。なので私はこの出来事について自分なりに考え、意見を持つようにしています」
女面接官「わかりました、では、重ねて質問です」
男「はい」
女面接官「最近関心のある出来事は○○ということでしたが、あなたのその関心が少しでも私に向くことはありますか?」
男「……」
女面接官「……」チラッ
男「……」
女面接官「……」モジモジ
男「……申し訳ありません。少々お時間をいただけますか?」
女面接官「どうぞ」
女面接官「……」
男「……」
女面接官「……」
男「……」
女面接官「……」
男「……申し訳ありません。私の知識経験が未熟なため、その質問にお答えすることができません」
女面接官「わかりました……。では次の質問です」
男「はい」
女面接官「あなたの弱み、短所を教えて下さい」
男「はい。私の短所は、未知の経験に遭遇してしまうと、判断力が一時的に低下してしまうことだと今分かりました」
女面接官「そしてその判断力の低下を補うために私が存在しているということですが、それはどういう意味ですか?」
男「……えっ?」
女面接官「……なんだか、素敵じゃないですか?」
男「すみません。もう二度お願いします」
男「……」
女面接官「では次の質問です」
男(あ、流された……)
男「は、はい」
女面接官「あなたが我が社に入ってからやってみたいことはなんですか?」
男「はい、やはり自らの技能を生かした仕事をしてみたいです。具体的には~などです」
女面接官「わかりました。一つよろしいですか?」
男「はい?」
女面接官「私はあなたが我が社に入社したら一緒に映画を観てみたいです」
男「えっ?」
女面接官「では次の質問です」
男「えっ? えっ!?」
女面接官「あなたがこれまでに一番感動した瞬間はいつですか?」
男「はい。やはり努力が報われた瞬間である、資格試験に合格したときです。
私はこの資格取得において本当に多くのことを学びました。特に学べて良かったなと思うことは
努力の先に待っている喜びです。これを知ることにより、私はどんなことにも意欲が湧くようになりました」
女面接官「ありがとうございます。では重ねて質問です」
男「はい」
女面接官「私の一番の感動はあなたと深く関わっています。
率直にお聞きいたしますが、その時は来ると思いますか?」
男「……」
女面接官「……」
男「……0パーセントではないと思います」
女面接官「!!」
女面接官「り、りゆ、りゆ、理由は!?」
男「……はい。理由は、私が心の奥底で『おかしな面接だな』と思い、
その意義に疑問を持ちながらも何故かこの場から動くことができないからです」
女面接官「そ、それはつまり……?」
男「……私をこの空間に縛り付けている要素がこの空間のどこかにあるということです。
現段階では自分でもわからない部分が多いのですが、何かの心理的要因が働いているのは確かです。
それは緊張なのか、あなたの魅力なのか、義務なのか、私にはよく分かりません」
女面接官「……」ドキドキ
男「しかし、一つ不思議なことがあるのです」
女面接官「な、なんですか?」
男「私の深層心理に働き掛けるものはストレスなどの負の要素ではなく、
どこか心地の良い、じれったさのようなものを感じる正の要素だということが、
私の脳内でハッキリしているということです」
女面接官「……」
男「……」
女面接官「……」
男「……」
男「面接の途中ですが、こちらから一つ質問をさせていただいてもよろしいでしょうか」
女面接官「どうぞ」
男「この心地よさの正体はなんだと思いますか?」
女面接官「えっ?」
男「……」
女面接官「……」
男「……」
女面接官「……申し訳ありません。少し考えるお時間を頂けますか?」
男「どうぞ」
女面接官「……」
男「……」
女面接官「……考えた結果、私の頭に疑問が浮かんできました。
しかしその疑問を解決するには、あなたの協力が必要なのです」
男「はい、なんですか?」
女面接官「私の目を見てもらえますか?」
男「はい……?」ジッ
女面接官「……」ジッ
男「……」ジーッ
女面接官「……」
男「……」ジーッ
女面接官「……」ボンッ
男「……えっ」
女面接官「も、もも、もういいです、だいじょぶ、大丈夫です」ポッ
女面接官「……コホン。はい、あなたは自らに働いている心理的要因が義務からくるものなのか、
はたまた緊張か、私の魅力か、分からないと言っていました」
男「おっしゃる通りです」
女面接官「そこで私は疑問に思った訳です。それを調べる方法はないのか、と」
男「調べる方法……」
女面接官「はい。そして見つけ出したのです。『私と見つめ合う』ことがその答えだと」
男「……」
女面接官「いいですか? 私と見つめ合うことであなたの心理状況は次の内いずれかに変化したはずです。
1、緊張からくるストレス 2、魅力からくる高鳴り 3、義務感からくる利己的な探究心」
男「……」
女面接官「そこで重ねて質問です。今のあなたの心理状況は、1・2・3の内どれですか?」
男「自らの心理状況を具体的に説明することは容易ではありません」
女面接官「はい」
男「なので私の解答には若干の差異が発生している可能性も否めません。
それを踏まえていただいたうえでお答えするのであれば」
女面接官「はい、大丈夫です」
男「2です」
女面接官「!!」
私自身私の深層心理を理解できているわけではありません。
ただ、あなたの素直な瞳にあの短い時間の中で少し心動いたということは事実です」
女面接官「なるほど。よくわかりました」
男「ご期待に添えず申し訳ありません」
女面接官「!!」ドキッ
男「……あの、どうされました?」
女面接官「あ、あな、あなたは、私の『期待』を、り、理解しているのですか?」
男「……」
女面接官「……」
男「……」
女面接官「……」
男「……いや、そりゃそうでしょ」
女面接官「……ですよね。慌てて思考能力が一時的に低下してしまいました」
男「はい」
女面接官「これまでに直面した困難なことはなんですか? また、それをどう乗り越えましたか?」
男「はい。これまでに直面した困難なことはある企業での面接で、突然面接官にアプローチをかけられたことです。
私はその場において、あくまで面接官と入社希望者という立場を守っていましたが、
いっそのこと男女として向き合ってみようと開き直ってみた結果、予想外の結果を得ることができました」
女面接官「予想外の結果……とは、なんですか?」
男「先ほども申し上げた通り、じれったい心地よさです。私はこの困難を乗り越え、
よりリラックスした気持ちで面接官の方と話ができるようになりました」
女面接官「わかりました。では最後に何か質問はありますか?」
男「はい」
女面接官「どうぞ」
男「……お米が一粒も残らないお椀を見るにはどうしたらいいですか?」
女面接官「!!」
終わり
乙
乙
Entry ⇒ 2012.03.10 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
少女「あなた誰?」 宇宙人「えっ宇宙人ですけど」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1330324785/
宇宙人「そうですよ」
少女「……」
少女「……」ツン
宇宙人「あっ何するんですかやめてください」
少女「……うりうり」ツンツン
宇宙人「あっそこは目ですから!痛い!痛いです!」
少女「えっなにそれこわい。何でそんなとこに目がついてるの?」
宇宙人「えっおかしいですか? えっ? えっ……」
宇宙人「す、すいません……緊張して汗が」
少女「えっそれ汗なの?」
宇宙人「えっなに? なんですか? おかしいですかわたし」
少女「……」
宇宙人「あ……あの……。急に黙られると不安になります」
少女「これ耳?」
宇宙人「あっあっダメですそこはひっぱらないで! 気持ちよくなっちゃいますから! あッ!」
少女「えっごめん」ビクッ
宇宙人「ふー……ふー……。び、びっくりしました」
宇宙人「……もう、気をつけてくださいね。同族同士だったら攻撃と見なされて裁判モノですよ」
少女「このぷらんぷらんしてる変なのは……一応、手足なのかしら。だとしても本数がおかしなことになってるし」
少女「ほんとに宇宙人ってこと?」
宇宙人「いえ、自分のことを宇宙人だとは特に思ってないんですが……あなたからすればそうでしょう」
少女「宇宙から来たの?」
宇宙人「そうですよ」
少女「……」
少女「宇宙人は宇宙人語をしゃべるんじゃないの?」
宇宙人「あーそれは私たちの言語とあなたたちの言語を同時に相互翻訳する機械を使ってるからですよ」
少女「?」
宇宙人「えっと……と、とにかくお互いの言葉が通じるようになる特殊な技術を使ってるんです」
少女「ふーん」
宇宙人「それはもちろん! あなた方の現在の科学技術レベルは、我々が4万年ほど前に通り過ぎた地点ですね」
少女「……」
少女「えい」ツン
宇宙人「あっ! 痛いです! ツンツンしないで!」
少女「いばらないでよ」ツンツン
宇宙人「ごめんなさい! もういばらないですから! いばらないって約束します!」
少女「……そう」
少女「でもツンツンする」ツンツン
宇宙人「あっ! ダメです! そこはダメ!」
少女「……」
宇宙人「まぁ、多少不安はありますが……選り好みできる立場でもありませんし、あなたで我慢します」
宇宙人「すみませんが、しばらくここに置いてもらえませんか?」
少女「どうして?」
宇宙人「先程も簡単に説明しましたが、私の生体維持と宇宙船稼働のための動力源を確保する必要があるんです」
宇宙人「当面は母船と短時間の通信を可能とするだけのエネルギー採取で何とかなりますから、そんなに大量でなくてもよいのですが」
少女「動力源……石油とか?」
宇宙人「いえ、私たちが動力源とするのは生物の『感情』です」
少女「……意味がわからないわ」
宇宙人「えっ」
宇宙人「我々にとってはもはや当たり前のことなのですが、あなたの星の科学レベルでは意味不明なのも無理はないです」
少女「えい」ツン
宇宙人「えっ! いや、今のは別にいばったわけじゃ! すみません!」
少女「……続けて」
宇宙人「と……とにかくですね、我々は生物の『感情』を動力源に変換する技術をもってるんです」
宇宙人「それも知性の高い生命体の感情ほど純質で、エネルギー変換効率も高いのです」
少女「よく分からないけど、わたしが怒ったり笑ったり泣いたりすればいいの?」
宇宙人「そうです! 理解してくださって嬉しいです!」
宇宙人「大丈夫です。そんな心配はいりません」
宇宙人「感情を生み出す能力を奪うわけではなく、生み出された結果としての感情を利用するだけですから」
少女「じゃあいいけど」
宇宙人「ありがとうございます。それでは感情採取装置を身体にとりつけさせて下さいね」
少女「……いいけど」
宇宙人「しからば……よいしょっと」ペタペタ
少女「あっ! エッチ!」
宇宙人「えっ」
少女「……エッチぃ」
宇宙人「い、いえわざとじゃありません。というかそもそも種が違うのでやましい気持ちとかないですから」
少女「ふーん」
宇宙人「とりあえず笑ってみて下さい」
少女「……」
少女「う……うふふ?」
宇宙人「ダメですね。全然ダメダメです。気持ちがこもってません」
少女「……」
少女「えい」ツン
宇宙人「あっ! 痛い! なんでですか!? すみません!」
宇宙人「そうしたいのは山々なのですが、我々は半分生物じゃないので、感情の変換効率が悪すぎるのです」
少女「えっ」
宇宙人「えっ何ですか? 驚くところですか?」
少女「驚くところだと思う。半分は生き物じゃないの?」
宇宙人「そうですよ。宇宙では半生命体は珍しくもありません」
少女「生命以外のもう半分はなんなの?」
宇宙人「色々な場合がありますが違いますが、我々の種族の場合には『情報体』ですね」
少女「じょうほうたい?」
宇宙人「情報体というのは一種の物理的存在です。しかしあなた方の知性では正確には理解できないでしょう」
宇宙人「……そうですね、お化けみたいなものだと考えて下さい」
宇宙人「粗雑な説明にならざるを得ませんが……我々も大昔の祖先は、宇宙の何処にでもいるようなごく普通の生物だったのです」
宇宙人「しかし、生命力や身体能力、情報伝達や情報蓄積などの様々な点で純粋な生命体は効率が悪いということになりまして」
宇宙人「遠い過去に身体の機械化が始まり、やがては機械化から情報体化へとトレンドが移行しました」
宇宙人「その結果『肉体の檻』は突破しましたが、生命体は生命体の限界を超え出られないため、完全な情報体にもなれなかったのです」
宇宙人「そのような経緯で、現在の半情報体・半生命体に落ち着いたわけですね」
少女「??」
宇宙人「いえ、分からないなら無理に理解しなくていいです」
宇宙人「ともかくこの情報体という身は色々と便利ではあるのですが……」
宇宙人「生体維持に生物の感情が必要となり、にもかかわらず自分たち自身の感情のエネルギー変換効率は純粋な生命体よりも劣化してしまった、と」
宇宙人「結果論ではありますが、何事も完璧にうまくいくということはないという良い教訓ですね」
少女「ふーん……。やっぱりよく分からないや」
宇宙人「基本的には生物の感情なら何でもよいのですが、高出力のものほどありがたいです」
少女「たとえば?」
宇宙人「たとえば……オルガスムスなどはその代表例でしょうか」
少女「おるがす……??」
宇宙人「性的絶頂時の感情、つまり極限的な快感の情動です。たいていの生物にとってこの類の感情は爆発的エネルギーを内在させていますから」
宇宙人「あなた方の種の交配方法は確か……最もノーマルな二者間交配でしたよね」
宇宙人「私としては、あなたがガツンガツン交配に励んでくれれば嬉しい限りです」
少女「……」
少女「…………」
少女「………………」ツンツンツンツンツンツンツンツン!!!!
宇宙人「痛い! っていうか強い! 何ですか! 何でそんな急に!! あッ! すみませんすみません!!」
宇宙人「いてて……『そういうこと』って何ですか?」
少女「……」スッ
宇宙人「あっすみません! よく分かりませんが分わかりました!」
宇宙人「……って、あ!」
少女「?」
宇宙人「今しがた、強い感情が生じたようですね。この色と形は……羞恥心?」
少女「……」
宇宙人「あぁ……なるほど! そういえば交配事情に羞恥を感じる文化が稀にあると聞いたことがあります。特に未開文明に散見されるとか」
宇宙人「へぇ~実際に遭遇したのは初めてです。へぇ~」
少女「……」
少女「…………」ツンツンツンツン!!!
宇宙人「痛ッ! すみません! あっこれはどうやら怒りの感情ですね! ありがたいです! あっでも痛い!」
宇宙人「学校ですか。何を学ぶので?」
少女「いろいろよ。文字とか数とか……地理とか歴史とか、生き物のこととか」
宇宙人「なるほど。どのような仕方で学ぶのですか?」
少女「どのようにって……。先生が前に立って説明して、みんながそれを聞いて学ぶの。当たり前でしょ?」
宇宙人「……」
少女「なに?」
宇宙人「いえ……やはり随分と非効率的だなと思っただけです」
少女「?」
少女「……わたしはもう行くから、いい子でお留守番しててよね」
宇宙人「はい。いってらっしゃい」
少女「……」
宇宙人「おかえりなさい」
少女「……ただいま」
宇宙人「学校はそんなにイヤな所なのですか?」
少女「……えっ」
宇宙人「この部屋であなたの感情をモニタリングしていましたが、継続的に強い感情が生起していました」
少女「……」
宇宙人「『恐怖』という感情です。それほどまでにあなたを怯えさせる要因が学校にはあるんですか?」
少女「別にいいでしょ。あなたは私の『怖い』って感情を手に入れられて満足じゃないの?」
宇宙人「ええまぁそうなんですが……恐怖という感情は生命力を鈍らせる働きがあります」
宇宙人「私としては感情採取が順調で喜ばしい反面、寄生先のあなたに死なれても困るので、やや複雑な気持ちです」
少女「……」
少女「……ふん。相手の気持ちを汲んで、言葉を選ぶことすらできないのね」
少女「そんな気持ちわるい容姿でも『私たちと同じように感情豊かなんだ』って驚いたけれど、やっぱり別の生き物ってことかしら」
少女「満足がいくまでいくらでも感情を提供してあげるわ。だから……もう黙ってて」
宇宙人「……」
宇宙人「……意外に饒舌な方だったんですね。少し驚きました」
少女「……もう寝る」
宇宙人「……」
宇宙人「どうしました急に?」
少女「!! ……パパが呼んでるッ!」ガバッ
少女「ッ!」ダッ
宇宙人「??」
宇宙人「……」
宇宙人「……」
宇宙人「……」
宇宙人「……」
宇宙人「また……『恐怖』の色と形。それに『悲しみ』の色と形も」
宇宙人「おかえりなさい」
少女「……」
宇宙人「また何か辛いことがあったようですね」
少女「……」
少女「……私たちの種族は、あなたたち宇宙人とは違って何でもないことに恐怖を感じるようにできてるだけよ」
少女「みんなそうなの。私だけじゃなくて」
宇宙人「……」
宇宙人「こめかみの所……アザになってますよ」
少女「……」
少女「……おやすみ」
少女「……」
宇宙人「おかえりなさい」
少女「……ただいま」
宇宙人「今日も学校は辛かったのですか?」
少女「……」
宇宙人「いじめですね?」
少女「……」
宇宙人「いじめは生物にとってある程度普遍的です。知能の低い生物種にすらいじめはあります」
宇宙人「ましてあなた方のようにある程度発達した知性をもつ種族にいじめがあるのは自然なことです。想像に難くありません」
宇宙人「学校の級友たちばかりではない。お父様やお母様にもいじめられているのでは?」
少女「……」
宇宙人「……」
少女「……」
宇宙人「……」
少女「……」
宇宙人「………………殺してあげましょうか?」
少女「……えっ?」
少女「……なにそれ」
宇宙人「あなたには一宿一飯どころではない恩義がありますから」
宇宙人「一切の痕跡を残さず消滅させることも可能ですし……」
宇宙人「お望みならば、苦しませながら相手の生命を断つこともできますよ?」
少女「……」
少女「……ダメだよ、そんなの」
宇宙人「どうしてですか?」
少女「だって……」
少女「だって、悪いのは私だもの」
安心した
少女「……わたしはもらわれっ子で、パパとママは嫌々わたしを養ってくれてるの」
少女「ママは『親戚の子だからって貧乏クジ引かされてこっちは散々よ』って言って、怒ったり、叩いたりするの……」
少女「パパはわたしのこと、その…………身体を撫でてきたりとか……」
少女「でも、わたしはパパとママのおかげで生きていられるんだから、多少のことは我慢しないといけないの」
宇宙人「……」
宇宙人「学校のことは?」
少女「……」
少女「……お風呂にはたまにしか入れないし、お洋服もほとんど持ってないから、みんなに『臭い』とか『汚い』って言われてるの」
少女「仕方ないよ……自分でも汚いって思うもん」
宇宙人「……」
少女「学校のみんなも……私が汚いから仕方ないんだよ」
宇宙人「……」
宇宙人「あなたはとても賢いのですね」
少女「えっ?」
宇宙人「あなたの種族の同年代の個体と比較すると、随分と聡明のようです」
宇宙人「自分を取りまく環境を正確に理解しており、その上で自分の感情を抑制する術を心得ています」
少女「……」
少女「なにそれ……変なの」
宇宙人「……ただ、これは私があなた方の種族の『責任』の概念をきちんと理解していないだけなのかもしれませんが……」
宇宙人「私には、あなたが『責任』と『原因』とを混同しているように見えます」
少女「??」
宇宙人「いじめの原因は、確かにあなた自身にもあるのでしょう」
宇宙人「もらわれっ子であるという事実や清潔感がないという印象はあなた自身に付与される属性であって、確かにこれらはいじめの一因となっていると推察されます」
少女「……」
宇宙人「しかし、そういった事実や印象によって、あなたのお父様やお母様に対して、またあなたの学校の級友に対して、あなたをいじめることの免罪符が与えられるわけではありません」
宇宙人「他方でまた、彼ら彼女らのいじめという行為の『責任』は、本来的にその行為遂行者である彼ら彼女ら自身が引き受けるものでしょう」
宇宙人「にもかかわらず、そのいじめという行為の責任があなたにまで分与されると考えてしまうのは、あなたが『原因』の帰属先と『責任』の帰属先とを混同しているからです」
少女「……」
少女「……ごめんなさい。難しくてよく分からないわ」
宇宙人「……つまり簡単に言うとですね、仮にいじめの原因があなたにあったとしても、いじめの責任はあなたにはないということです」
宇宙人「あなたは、悪くないのですよ」
宇宙人「あなたにも色々な事情があって、それ故にいじめられているのでしょう」
宇宙人「しかしだからといって、それは『あなたが悪い』わけではないですし、まして『仕方のない』ことでもありません」
宇宙人「あなたが望むならば、あなたをいじめる存在を皆殺しにしてみせましょう。それで問題解決です」
少女「……」
少女「ありがとう。少し驚いたけど……あなた、慰めてくれてたのね」
宇宙人「いえ、というよりも『いじめっ子排除プラン』の採用を説得していたつもりだったのですが……」
少女「でも、ダメよやっぱり」
少女「学校のみんなが死んだら、その子たちのパパやママはとても悲しいだろうし」
少女「今のパパやママを死なせちゃったら、天国にいる本当のパパとママはきっとわたしを叱るもの……」
宇宙人「……」
少女「でもありがとね。何だか少しスッキリしちゃった」
少女「昨夜のこと……悪かったわ」
宇宙人「え?」
少女「ほら、あなたのこと『気持ちわるい』って言ったでしょ」
少女「言ってからずっと……後悔してたの」
宇宙人「ああそんなことですか。気にする必要ないですよ。私から見ればあなたの姿形もそうとう変ですし」
少女「そ、そう……。まぁいいわ。だったらお互い様ね」
少女「でも、あなたは……そうね、鼻はぷっくりとしてて可愛いと思わないでもないわよ」
宇宙人「そうですか? あなたの鼻は、私にはあまり可愛いとは思えないのですが……」
少女「ちょーしにのるなッ!」ツンツン
宇宙人「あっ! 痛い! やめてください! えへへ!」
少女「……もうッ! なんでちょっと嬉しそうなのよ……バカ」
宇宙人「これを身につけて下さい」
少女「? なにこれ」
宇宙人「携帯型の防犯装置です。今日あなたがいないうちに作っておきました」
少女「……危ないものじゃないの?」
宇宙人「他人に危害を加えるものではありませんので心配しないでください。外部から強制的に他者の自律神経系に作用する微弱な電流を放出します」
少女「??」
宇宙人「その装置から出る電流にはリラックス効果がある、とでも思って下さい」
宇宙人「怒りっぽい人が少しだけ怒りっぽくなくなる程度の影響力ですし、後遺症などの心配も必要ありません」
宇宙人「いじめの根絶はできませんが、緩和効果くらいはあるはずです」
少女「……ありがとう」
宇宙人「……おや。暖かい色と形ですね。喜んでもらえたようで何よりです」
宇宙人「おかえりなさい」
少女「ただいま! ねぇ聞いて、今日お友達ができたの!」
宇宙人「おやそうなんですか」
少女「うん! きっとあなたがくれたお守りのおかげね」
宇宙人「それはよかったですね。男の子ですか、女の子ですか?」
少女「女の子よ。……男の子は、ちょっと怖いわ」
宇宙人「……」
少女「そういえば、あなたって男の子? それとも女の子?」
宇宙人「私ですか? その分類で言うならば、一応『女の子』ですね」
宇宙人「なんですか?」
少女「てっきりあなたのことだから、『我々には性別などない』って言うのかと」
宇宙人「いえ、そんなことはありません。ただこの性別にはもはや高次の社会的意味合いは薄いでしょうね。種の存続という点に限った生物学的特色に過ぎないものです」
宇宙人「とはいえ、その交配についてもあなたが想像する営みとは食い違っているかもしれません」
少女「こ、こうはいって……」
宇宙人「ああ、すみません。性事情に羞恥を感じる文化をお持ちでしたよね」
少女「別にいいけど……それじゃあ、あなた達の場合どうやって子どもができるの?」
宇宙人「生命情報の直截的な連結と分裂です」
少女「?」
宇宙人「この『半分』というのは文字通り身体の半分ずつがそうなっているという意味ではありません」
宇宙人「『生命』という事象を科学的に解析することに成功した我々の祖先は、さらに続けてその生命現象を情報体として存続させる技術を確立させたのです」
宇宙人「つまり、我々は『生命と情報体』の二つで出来ているのではなく……正確に言えば『生命としての情報体』なのです」
少女「……」
少女「……あいかわらずよく分からないわ」
宇宙人「たとえば私が子どもを作ろうとしたら、自分の生命情報の一部と他者の生命情報の一部を直截的に繋ぎあわせた後、分離させます」
宇宙人「そうすると新たな生命情報が誕生するわけです。言うなればそれが、私の子どもですね」
少女「はぁ……なんだかすごいのね」
宇宙人「いえ、むしろある意味では原始的とさえ言うべきかもしれませんよ」
宇宙人「しかし、この情報体というやつも一長一短でして」
宇宙人「同種間での情報伝達・情報蓄積・情報処理といった点では素晴らしい効率性をもつのですが、いかんせん情報体化していない種族とのコミュニケーションをはかるのが不得手なのです」
宇宙人「この点については現在も改良が続いているので、時間が解決してくれる問題だとは思いますが……」
宇宙人「現時点では非情報体の他種族とコミュニケーションをとる場合、『肉人形』を情報伝達の媒体として使うという何とも原始的方法をとっているんです」
少女「肉人形?」
宇宙人「今あなたの目の前にある私の身体のことです」
少女「えっなにそれ」
宇宙人「私にとってこの身体は借り物です。別の身体を用意すればそちらに移ることもできますし、この身体が損傷しても私自身が死ぬことはありません」
宇宙人「とはいえ、我々にも個体ごとの趣味嗜好というものがあります。この肉人形も私の趣味で選びました」
宇宙人「どうでしょう? 人気モデルの女型なんですが……少しくらいは、かわいいと思いませんか?」
少女「えっ」
宇宙人「えっ」
少女「ただいま! 今日はお友達と一緒にお昼ごはんを食べたのよ!」
宇宙人「おかえりなさい。それはとてもよかったですね」
宇宙人「感情モニタリングでも、『喜び』や『楽しみ』といった暖かい色や形が続いていましたよ」
少女「うふふ。あなたが来てからなんだか幸せよ」
宇宙人「でもそれだけではなく『緊張』……いえ、『戸惑い』といった感情も継続的に観測されましたが」
少女「あ……」
少女「実はね……男の子に告白されたの」
宇宙人「ほほぅ」
少女「こんなこと初めてだから、どうすればいいか分からなくって……」
少女「へっ?」
宇宙人「できればズッコンバッコン励んで頂きたいですね」
宇宙人「彼氏が床上手であることを祈ります。あなたも幸せですし、私も感情採取ができて嬉しいです」
少女「……」
宇宙人「……あ」
少女「だーかーらー」
宇宙人「あっ、ちょっまっ」
少女「そーゆーこと言わないでって言ってるでしょ!」ツンツンツンツンツンツン!!!
宇宙人「あっ! 痛い! 痛いです! うっかりです! うっかりですってば!」
宇宙人「今は生体維持を可能にするだけの最小限のエネルギーしか使ってないので仕方ないんですよ」
少女「ふーん」
宇宙人「そんな疑いの眼差しを向けないでください」
宇宙人「そもそも我々の種族は、個体ごとの嗜好の違いはあっても、情報蓄積や情報処理は共有化できるため、賢さという点での個体差はあってないようなものなんです」
宇宙人「もっとも、知識の均質化は嗜好の方向性さえも限定してしまうので、趣味・嗜好の個体差も些細なものだったりするのですが」
宇宙人「このような個体間の多様性欠如というのも、情報体化のデメリットかもしれませんね」
少女「へぇ~。趣味や嗜好が限定されるって、例えば好きな男の子が被ったりとか大変じゃない?」
宇宙人「いえ、性愛などの感情は退化しています。我々の仲間内でもごく一部の者たちが趣味的に娯しむものでしかありません」
宇宙人「以前にも説明しましたが我々の生殖活動は肉体を必要としませんので、性欲などの低次欲求も退化してしまっているのです」
宇宙人「性欲が退化すれば、愛情も退化するものです。ついでに言えば、食欲や睡眠欲なども退化していますね」
宇宙人「色々ありますが、大部分は……生存欲と知識欲ですね」
少女「へぇ~不思議。『食べたい』って欲求は消えたのに、『生きたい』なんて基本的な欲求は残ったんだ」
宇宙人「それが生命体としての限界というやつです」
宇宙人「生命体である以上、自己の生命の存続を求めずにはいられない」
宇宙人「生命現象の知的解析に成功してなお、我々は『自らが生命体である』というその事実を乗り越えることはできなかったのです」
少女「ふぅん。でも何だかつまらないわ。あなた女の子よね? それなのに、これまでもこれからも……好きな男の子はいないってこと?」
宇宙人「ええ。しかし別段そのことを不満にも思いません」
宇宙人「自分の子孫を残すのも、情報体コミュニティを存続させるための義務程度に考えています。他の仲間の多くもきっとそうでしょう」
宇宙人「色々ありますが、大部分は……生存欲と知識欲ですね」
少女「へぇ~不思議。『食べたい』って欲求は消えたのに、『生きたい』なんて基本的な欲求は残ったんだ」
宇宙人「それが生命体としての限界というやつです」
宇宙人「生命体である以上、自己の生命の存続を求めずにはいられない」
宇宙人「生命現象の知的解析に成功してなお、我々は『自らが生命体である』というその事実を乗り越えることはできなかったのです」
少女「ふぅん。でも何だかつまらないわ。あなた女の子よね?」
少女「それなのに、これまでもこれからも……好きな男の子はいないってこと?」
宇宙人「ええ。しかし別段そのことを不満にも思いません」
宇宙人「自分の子孫を残すのも、情報体コミュニティを存続させるための義務程度に考えています。他の仲間の多くもきっとそうでしょう」
少女「別にあなたにそんなこと期待してないわ」
宇宙人「十分なエネルギーさえあれば、仲間と共有しているデータベースを参照することで適切なアドバイスを引き出すこともできるのですが、残念です」
少女「いいって言ってるでしょ別に」
少女「どっちにしろ……男の子は少し怖いもの。お付き合いはお断りするわ」
宇宙人「そうですか。残念です」
少女「なんであなたが残念がるのよ……って、いいわ答えなくて」
宇宙人「いえ、別に交配のことだけではありません」
宇宙人「恋愛を楽しんでくだされば『喜び』や『楽しみ』などの様々な感情採取が効率的に行えそうなので、残念だと思ったのです」
少女「それは申し訳ないわね。でも、一朝一夕に性格なんて変えられないもの」
宇宙人「ええ、まぁ先を急ぐ旅でもありませんので、気長に待たせて頂きます」
宇宙人「今日はどうされたんですか」
少女「……」
宇宙人「お父様やお母様と、何かあったので?」
少女「……」
宇宙人「これまでにない『恐怖』の感情が観測されました」
宇宙人「長時間続けばあなたの生命活動に支障を来たしかねない程の強さです」
少女「……」
宇宙人「……」
少女「……」
少女「…………パパ、が」
少女「…………パパが、『一緒にお風呂に入ろう』って」
少女「……」
少女「……」
少女「……さ」ジワ…
宇宙人「さ?」
少女「……さ、さわ、られたの」ポロポロ…
宇宙人「……」
少女「……色々な、ところ……さわられた、の……」ポロポロ…
宇宙人「……」
宇宙人「…………やはり、排除しましょう」
少女「……だ、だめだよ。それはだめ……」
宇宙人「……」
少女「天国のパパとママが……許してくれないもん……」グス…
宇宙人「手を下すのは私ですし、あなたの意向によって行うわけでもありません。前にも説明したでしょう? 行為の責任は行為遂行者にあるものです」
宇宙人「もちろんこの原則にも例外はあり得ます」
宇宙人「行為を遂行した者と責任を負う者が必ずしも一対一対応するとは限りませんし、積極的に行為を為さなかったとしても消極的な関与によって責任が生じることもある」
宇宙人「しかし今回の件は、私があなたの意向を無視して勝手に行うことです。私の行為を生じさせた淵源があなたにあったとしても、その行為の責任はあなたにはない」
宇宙人「私があなたを悩ませる存在を排除したとしても、あなた自身がそのことで苦しむ必要はありません」
少女「やっぱり、それはだめだよ」グシグシ…
宇宙人「……」
少女「その話を聞いた上で頷いてしまったら、私にも責任があると思うし……」
少女「仮にあなたが私の意思とは無関係にやったとしても、それでも私は責任を感じちゃうよ」
宇宙人「それは……」
少女「理屈じゃないの。……そういうものなの」
宇宙人「……しかしそれではどうすれば」
少女「どうしようもないんだよ。言ったでしょ。……『仕方ない』んだって」
宇宙人「……」
少女「……」
少女「……ただいま」
宇宙人「ここ最近、学校では穏やかな感情の色と形が続いていましたが、今日はどうされたんですか」
少女「……」
宇宙人「また以前のような『恐怖』や『悲しみ』の色と形で揺れていました」
少女「……」
少女「友達がね、私のこと……裏切り者だって」
宇宙人「……どういうことですか?」
宇宙人「確かお付き合いを断ったのですよね」
少女「……うん」
少女「私の友達がね、その男の子のことが好きだったんだって」
宇宙人「ふむ」
少女「それで、私がその男の子に告白されたことが、友達にばれちゃって」
少女「『裏切り者だ』って」
宇宙人「?? よく分かりませんね」
宇宙人「あなたがその友達の好きな男の子が誰かを知っていて、その上で、友達に断りなく男の子とお付き合いをしたならば、裏切り者となじられるのも無理はないと思いますが」
少女「……」
少女「……『可哀想だからお友達になってあげたのに、私の好きな男の子に告白されるなんて最低』って言われたわ」
少女「わたし……裏切り者なのかな」
宇宙人「……」
宇宙人「……あなたは彼女に対して、その男の子のことで偽りを働いたわけではありません」
宇宙人「しかし、彼女はあなたに期待を裏切られたと感じたのでしょう」
少女「期待、を?」
宇宙人「ええ。僅かな情報からの推測ですが、彼女はあなたを見下していたのです」
少女「……」
宇宙人「彼女はあなたに、『自分よりも可哀想な子』『自分よりも不幸な子』であることを望み、期待していたのです」
宇宙人「しかし、彼女が好意を向ける男の子は、自分にではなく、よりにもよって『自分よりも可哀想な子』であるはずのあなたを選んだ」
宇宙人「そのとき、彼女にとってあなたは『自分よりも可哀想な子』ではなくなってしまった。彼女の期待が裏切られてしまったのです」
宇宙人「そのような期待を抱いていた彼女があなたのことを裏切り者だと感じてしまうのは仕方のないことかもしれません」
宇宙人「しかし、だからといってあなたが裏切り者だという評価は、客観的に見て妥当なものだとは言い難い」
少女「……どうして?」
宇宙人「彼女はあなたと友好関係をもつに当たり、『常に自分よりも可哀想な子であれ』という契約を結んだわけではありません」
少女「……」
宇宙人「そしてまた、彼女のあなたに対する『常に自分よりも可哀想な子であってほしい』という期待も、あなたの種族の価値観に鑑みるに、正当な期待であるとは言い難い」
宇宙人「『無闇矢鱈に暴力を振るわないでほしい』という期待や、『私の陰口を叩かないでほしい』といった期待は、あなた方の文化では種族間関係における正当な期待と言えるでしょうが、彼女の期待についてはそうは言えないということです」
少女「……」
宇宙人「……分かりにくければ、はっきりと言いましょう」
宇宙人「あなたは、悪くない」
宇宙人「……」
宇宙人「彼女はあなたに身勝手な期待を抱いた」
宇宙人「そして、その身勝手な期待が叶わないことを嘆いているだけです」
宇宙人「期待も落胆も自分の世界の中で自己完結しているのですから、これは全き自己責任と言えるでしょう」
少女「……」
宇宙人「あなたに責任はない。あなたは悪くないのです」
少女「……」
少女「……『責任』ってね、突然誰かのもとに生まれたり、いつの間にかなくなったりするものじゃないと私は思うの」
宇宙人「え?」
少女「たぶん、責任って、自分のものとして引き受けるものなんじゃないのかな」
宇宙人「引き受ける、ですか」
少女「うん……うまく説明できないんだけど。きっとね……覚悟が、必要なの」
宇宙人「……」
少女「どんな悪い事をしたって、その行為の結果を受け止める覚悟がないなら、それは自分自身に責任を引き受けてないってことなの」
少女「誰かの悪口を言ったって、誰かを殺したって……、その事実から目を背けているなら、そこには『覚悟』が……『責任』がないんじゃないかな。『無責任』なまま……じゃないのかなって」
少女「逆にね、仮にそれが自分に非のないことだとしても……」
少女「そのことを自分自身の問題として受け止めてしまったなら、それはもう、その問題を自分の『責任』として引き受けたってことになるんじゃないかと思うの」
少女「責任って、覚悟の形なんだと思うわ……」
宇宙人「……」
少女「……」
少女「ううん……違うの。そういうことじゃなくて……」
少女「たとえばね、ある人が悪い事をして、それを他の誰かが『悪いことだ』って指摘して、強制的に罰を与えたとするでしょ」
少女「でもその罰を受けた当人が、自分の行為の結果や、受けた罰について何処吹く風な態度だったら、やっぱりその人は『責任』を果たしていないんだと思う」
宇宙人「……」
少女「周りの人は、その人は『罰を受けた』んだから立派に『責任を果たした』んだって考えるかもしれないけど」
少女「私は……その人は責任を果たしてないと思う」
少女「だってその人は、最初から最後まで、自らが負うべき責任を自分のものとして引き受けていなかったんだもの」
少女「自分の責任なんて無関係に、ただ罰を受けただけに過ぎないわ」
宇宙人「……ふむ」
少女「でも理屈じゃなくて……彼女を傷つけてしまった事実を、私はもう既に自分のものとして引き受けてしまっているの」
少女「自分の意思とは無関係に、彼女の言葉を引き受けてしまっているから……」
少女「だから、私には彼女を裏切ったんだっていう責任が、やっぱりあるんだと思う」
宇宙人「……」
宇宙人「あなたがそう言うなら、これ以上は何も言いません」
宇宙人「しかし、それは辛い生き方ですよ?」
少女「……そう、かな」
宇宙人「あなたの考え方は、自分自身に過失がない場合ですら、本来負う必要のない責任を無理に背負いこむ者の思考です」
宇宙人「それは自身に対して一点の曇りすら看過すまいという狭量な態度であり、また柔軟性のない思考であると言えます」
少女「……」
少女「…………もう、寝るわ」
宇宙人「……はい。おやすみなさい」
少女「……」
宇宙人「おかえりなさい」
少女「……」
宇宙人「日に日に『恐怖』の色は濃く、形は激しくなっています」
少女「……」
宇宙人「そんなに辛いなら、学校になど行かなければよいのでは?」
少女「……」
少女「……友達が、ほしいの」
宇宙人「……」
少女「……」
宇宙人「何ですか?」
少女「あなたには、お友達、いるの?」
宇宙人「……ふむ」
宇宙人「情報交換を頻繁に行う個体はいますが……それはきっと、あなた方が言うところの『友達』ではないでしょうね」
少女「……そう」
少女「あなたも……友達いないんだ」
宇宙人「……」
少女「ふふ……ふ……」
宇宙人「どうして嬉しそうなんですか?」
少女「……別に」
宇宙人「……わたしは、あなたの生命の弱まりが心配です」
少女「……」
少女「『感情』の供給源がなくなるのが心配なだけじゃないの」
宇宙人「……」
少女「……ごめんなさい」
宇宙人「……」
少女「ママが呼んでるわ」
宇宙人「はい。いってらっしゃい」
少女「……」
宇宙人「学校に行かないのですか?」
少女「……今日は休みなの」
宇宙人「ああ……そうでしたか。何を読んでいるので?」
少女「小説よ。SF小説」
宇宙人「へぇ。小説を読むのがお好きなんですか」
少女「ええ。ここ最近は余り読んでなかったけど、小説に限らず本を読むのは好きなのよ」
宇宙人「なるほどなるほど。年齢のわりに語彙が豊富なわけがわかりました」
少女「本を読んでいるときだけはね……なんだか心が落ち着くの」
少女「想像の世界で活躍する主人公たちに感情移入している間は、嫌なことを忘れられるもの」
少女「いま読んでるのは……宇宙人と出会った女の子のお話なの」
宇宙人「え?」
少女「ある日突然、一人の女の子のもとに宇宙人がやってくるの」
少女「宇宙人は変な姿形をしているんだけど、なぜだか憎めないヤツで……」
少女「次第にね、女の子と宇宙人は心を通わせて、仲良くなっていくの」
宇宙人「……」
少女「ふふ。まるで、今の私たちみたいでしょう?」
宇宙人「……」
少女「本当に、まるで……まるで、私たちのことを描いたみたいなお話……」
宇宙人「……」
宇宙人「……」
少女「そういえば、あなたはどうしてこの星にやってきたの?」
宇宙人「……」
宇宙人「我々の種族の生体維持には、他の生命体の『感情』が不可欠であることは何度もお話ししたと思いますが」
宇宙人「これは必然的に、生命体、それも高次の知性をもつ生命体の存在が、我々の種族の存亡の鍵になるということです」
少女「あぁ、つまり……」
宇宙人「はい。我々は常に感情エネルギー採集地の開拓を行なっているのです」
宇宙人「私はこの星に現地調査として赴いた開拓員の一人です。私以外にも、何人かの仲間がこの星に降り立っています」
宇宙人「しかし、思いがけない事故で宇宙船の一部機能が壊れてしまったため、こうしてあなたにお世話になっているわけですね」
少女「……なるほど。そういうことだったのね」
少女「ん?」
宇宙人「私たちが、どのような経緯で出会ったか覚えていますか?」
少女「……」
少女「……え?」
宇宙人「……なぜ、宇宙人の私が、あなたのもとに来たのか。私たちの出会いの記憶が、あなたにはありますか?」
少女「……えっ、え?」
少女「あ……」
宇宙人「……」
少女「……お、覚えてるわ。それはもう、も、もちろん!」
宇宙人「……」
宇宙人「……そうですか。それならばいいのです」
少女「……ヒック…………ヒック……」
宇宙人「……どうしたのですか」
少女「……ヒック……もぅやだぁ……」ポロポロ
宇宙人「……」
宇宙人「また、お父様に悪戯をされたのですか?」
少女「……ヒック……グス……………」ポロポロ
宇宙人「……」
少女「……ヒック……」ポロポロ…
宇宙人「……」
少女「……」
宇宙人「……」
少女「……」
宇宙人「……」
少女「……」
少女「…………今日、『二度と学校に来るな』って言われたわ」
少女「……何度も、何度も」
宇宙人「……」
少女「……」
宇宙人「……血が、出ています」
少女「……」
宇宙人「……」
少女「……ママが投げつけた物が、ぶつかったのよ」
宇宙人「……」
少女「……」
宇宙人「手当てした方がよいと思います。手伝いますよ」
少女「……」
少女「……ありがとう」
少女「……」
宇宙人「……」
少女「今日は、友達だったあの娘に叩かれたわ」
宇宙人「……」
少女「靴を隠されて、教科書に落書きをされて、下着を脱がされて教室の前に貼り出されたの」
宇宙人「……」
少女「貼り出された下着の前で膝をつかされて、『ごめんなさい』って言えって、言われたわ」
少女「『生まれてきてごめんなさい』って言えって」
少女「わたし、ごめんなさいって言ったわ。そしたら次は……」
少女「『こんな私が生きていることを許してくれてありがとう』って言えって」
宇宙人「……」
少女「『私たちに感謝しなさい』って言うの……」
宇宙人「……」
少女「……」
少女「パパが」
宇宙人「え?」
少女「パパが……最近エスカレートしてるの……」
宇宙人「……」
少女「きっと、もう時間がないと思う……」
少女「取り返しのつかないことが起こってしまうまで、もう、ほとんど時間が残ってないと思うの……」
宇宙人「……」
少女「ねぇ……」
宇宙人「なんですか?」
少女「私たちは……どうして、他の誰かをいじめるのかな」
宇宙人「……」
少女「……あなた、物知りだから分かるでしょ?」
少女「どうして弱いものいじめなんて起こるの?」
宇宙人「……」
少女「どうして、みんな、お互いに優しくなれないんだろう」
少女「欲求?」
宇宙人「奪い、殺して、食べる……生命の営みの基本です」
宇宙人「攻撃欲求、征服欲求、生命の根底にはこれらの欲求が横たわっています」
宇宙人「ある程度知性を発達させたあなた方のような種族にもなお、これらの欲求は根強く存在している」
少女「……」
宇宙人「承認されたい、権威を誇りたい……社会性の獲得によってこのような欲求も生じます」
宇宙人「攻撃欲求、征服欲求、示威欲求、あなたのお父様の場合は性的欲求ですが……いずれにせよ、欲求を満たすことで快感が得られます」
少女「……」
宇宙人「あなたのお母様は、あなたを養っている現況に不満をもっておられます」
宇宙人「不満の解消は、これもまた消極的ながら気持ちのよいものです」
少女「……」
宇宙人「他人との関わりの中で満たされ、解消されることで、快感が得られる類のものだと言えます」
宇宙人「気持ちがよいのです」
宇宙人「いじめは気持ちが良い」
宇宙人「だからなくなりません。気持ちのよいことは誰もがしたいと思うことですから」
少女「……」
宇宙人「あなたは、彼らにとって悦楽の遊具に過ぎません」
宇宙人「……それが、あなたの知りたがっている答えです」
少女「……」
少女「……そう」
宇宙人「……」
少女「……そう、なんだ」
少女「……」
宇宙人「……」
少女「ねえ」
宇宙人「なんですか?」
少女「私も連れていってくれない?」
宇宙人「連れていってとは……宇宙に、ですか?」
少女「……うん」
宇宙人「無理です」
少女「……」
少女「……どうして?」
宇宙人「第一に、私には感情エネルギー採集地を開拓する開拓員としての役目があります」
宇宙人「こうして協力してくれているあなたには感謝していますが、だからといって自分の任務を疎かにすることはできません」
宇宙人「そして、そもそも、現地民をこの星の外に連れ出せるだけの権限は、一開拓員の私にはありません」
少女「……」
宇宙人「第二に、私が利用する宇宙船には、肉体そのままではなく……情報体の形でしか乗船できません」
宇宙人「この肉人形……私の身体も、この星への下船時に構築したものであって、もともとこの姿形のまま宇宙船に乗っていたわけではありません」
宇宙人「つまり宇宙船に搭乗させるにはあなたを情報体化させねばならないわけですが、そもそも異種族の情報体化は、我々の種族の法では禁止されています」
宇宙人「以上より、その提案に頷くことはできません」
少女「……そう」
宇宙人「はい。……申し訳ありませんが、諦めて下さい」
宇宙人「え?」
少女「あのSF小説の主人公の女の子、ね……」
少女「最後の結末で、宇宙人と共に宇宙に旅立つの」
宇宙人「……」
少女「幸せそうな顔で、弾む足取りで、胸を夢一杯の期待でふくらませて……」
少女「宇宙人と手をとり合って……宇宙にね、飛び立つのよ……」
宇宙人「……」
少女「とても……幸せな結末でしょう?」
少女「……幸せな、……とても幸せな結末なの……」
少女「私もね、この星を飛び出せたら、きっと幸せな未来が待っているんじゃないかって……そう思うの……」
宇宙人「……」
少女「え?」
宇宙人「もし、すべてが解決して幸せになれたなら……何をしたいですか?」
少女「……」
少女「そうだね……」
少女「あなたの生まれた星に行ってみたいかな」
宇宙人「……」
少女「って、あなたには生まれ故郷なんてないんだっけ?」
宇宙人「……そうですね」
少女「ふふ……でもいい。決めたの。それを私の夢ってことにするわ」
少女「全部うまくいくようなことがあったら、あなたの生まれ故郷でね、変な姿をした変な宇宙人たちに囲まれて……幸せに暮らすの」
宇宙人「……」
宇宙人「今日は、どうされたんですか?」
少女「……」
宇宙人「ひどい顔色ですよ」
少女「……」
宇宙人「……」
少女「……何でもないわ」
宇宙人「……」
少女「……何でもない」
少女「……いつものことだもの」
少女「……」
宇宙人「……」
少女「最近なんだか身体が重いの……」
宇宙人「あなたの生命力の薄弱化は把握しています」
少女「……ねえ。私を連れて行くことができないなら……優しく殺してくれない?」
宇宙人「え?」
少女「あなた、前に言っていたでしょう。『一切の痕跡を残さず消滅させる』ことができるって」
宇宙人「……ええ」
少女「だったら、私を殺して? 痛みを感じる間もなく、一瞬で……」
宇宙人「……」
少女「……」
少女「……どうして」
宇宙人「……」
少女「どうしてよ……」
少女「どうしてよぉッッ!!!」
少女「あなた、私の友達でしょう!?」
宇宙人「……」
少女「ね? ねぇ? 友達だよね私たちッ!」
少女「お願いだから『そうだ』と言って! あなただけが友達なの! あなただけが優しくしてくれるの!」
宇宙人「……」
宇宙人「……」
少女「友達だって言って! 『あなたの友達だよ』って!!」
宇宙人「……」
少女「みんな、私をいじめるのッ! この世界には幸せなことなんて一つもないッ!!」
少女「でも、あなたは違うでしょう!? あなたはいつも私に優しくしてくれたもの! この広い宇宙の中で、あなただけがッ!!」
宇宙人「……」
少女「あなただけが私を見てくれたのッ!! だからッ……だから、お願いだからぁッ!! 『友達だ』って言ってよぉッッ!!!」
宇宙人「……」
宇宙人「……あなたは」
宇宙人「……」
宇宙人「……あなたは、私の……友達です」
少女「……そう」
少女「だったら、私のお願いを聞いてくれるよね?」
宇宙人「……」
少女「……お願い。本当に……本当に辛いの……」
少女「身体が引き千切られそうで……魂が散り散りになりそうなの……」
宇宙人「……」
少女「……お願い。わたしを、殺して」
宇宙人「……」
宇宙人「……それは、できません」
少女「……」
宇宙人「……」
少女「だったら……もう何もいらない」
少女「もう、どうでもいい」
宇宙人「……」
少女「みんな、互いに優しくなることができずに……」
少女「私も、この地獄から逃げることすらできないなら……」
少女「こんな世界……」
少女「こんな、世界……」
──────もう、なくなっちゃえばいい
宇宙人「では、なくしてしまいましょう」
少女「……え?」
宇宙人「……」
少女「だ、だめだよ! や……やっぱり今のはなし! みんなを殺すなんて……ッ!!」
宇宙人「……いいえ」
宇宙人「違います。そんなことをする必要はないんです」
宇宙人「世界を……『あなたの世界』をなくしてしまうには、たった一言で十分ですから」
少女「……」
少女「……な……なにを、言って……?」
少女「え?」
宇宙人「いえ、以前に一度言ったことがあるのですが、あなたの反応が劇的だったので、以後そのことは禁句としていたのです」
少女「……なんの、こと?」
少女「あなた……一体、なにを言っているのよッ!?」
宇宙人「あなたも、薄々気づいているんじゃないですか?」
宇宙人「世界は……」
少女「……や、」
宇宙人「あなたの『その世界』は……」
少女「……や、やめてッ!」
宇宙人「────すべて、あなたの妄想なんです」
宇宙人「あなたを虐待する両親は存在していません」
宇宙人「あなたは学校にも行っていませんし、級友からいじめを受けてもいません」
宇宙人「……すべて、あなたの妄想です」
少女「…………は、」
少女「……は、はは。なに言ってるの……」
少女「そんなの嘘よ。だって、私には記憶があるもの」
少女「友達に罵倒された、ママに叩かれた、パパに身体を触られたッ……生々しい記憶があるものッ!」
宇宙人「……」
宇宙人「……ええ。確かにそれらの記憶はすべて本物です」
宇宙人「紛うことなき、あなた自身の本当の記憶ですよ」
少女「え?? さっき、……から、一体何を……? 意味がわからないんだけど」
少女「……それ、は」
宇宙人「あなたは……」
宇宙人「…………────自分の、実の両親を殺したんですよね」
少女「………………ぇ」
宇宙人「あなたと出会ってすぐに、異常には気が付きました」
宇宙人「そこで、悪いとは思いましたが、あなたの睡眠中に記憶を探らせてもらったのです」
少女「………………」
宇宙人「あなたが受けていた虐待は、養父母によるものではありません」
宇宙人「あなたを本当に虐待していたのは……実の両親でした」
宇宙人「あなたの存在を疎んじ、罵倒し、暴力を振るっていたのは実の母親」
宇宙人「そして、あなたに性的虐待を行なっていたのは、実の父親です」
宇宙人「浴室にてあなたに乱暴を働こうとした父親を、あなたは突き飛ばしてしまい……」
宇宙人「足を滑らした彼は転んで、……打ち所が悪かったのですね」
宇宙人「あっけなく、死んでしまいました」
少女「……ぅ…………ぁ」
宇宙人「父親の死が露見すれば、どのような仕打ちを母親から受けるか……」
宇宙人「場合によっては殺されるか……、そうでなくても死ぬほどの折檻を受けることは容易に想像できたのでしょう」
宇宙人「あなたは、母親を手にかけた」
少女「……ぅ、グッ……やめ……て……」ブルブル
宇宙人「刃物で一突きです。父親の場合とは違って、こちらは明確な殺意をもって行った殺害でした」
宇宙人「いえ、お父様の殺害についても過失というより……やはり多少なりとも殺意があったのではないですか」
宇宙人「一面では非常に理性的であり、他方では全く逃避的でした」
宇宙人「両親の遺体を風呂場に突っ込んで隠したかと思えば、隠蔽工作もせずに放置しておいた」
宇宙人「実の両親の死を受け入れているように見えて、養父母の存在を盲信しつつ自傷行為によって過去の虐待を自ら再現した」
宇宙人「また、学校に行くように見せかけておいて、周りの目も気にせず日がな一日公園でぼんやりして過ごしていました」
少女「……やめ、て……もう…………やめて……」ブルブル
宇宙人「いいえ……やめません。あなたはもう限界です」
宇宙人「死んだ両親の代わりとなる優しい養父母の存在を夢想し、学校の級友たちとの暖かな交流を空想しようとした」
宇宙人「妄想の世界で偽りの温もりに包まれていられるならば、その先に果てるとしてもきっと幸せだったことでしょう」
少女「……ウップ………はぁ……はぁ……」ブルブル
宇宙人「しかし、生まれてこの方『幸せな自分』を一度も経験したことがなく、不幸な体験しか知らなかったあなたは……」
宇宙人「妄想の中でさえ、幸せな自分を思い描くことができなかったんです」
少女「……あぁ……ああ"あ"ぁ"…………」ブルブル
宇宙人「妄想の中の養父母の虐待は、かつてあなたの実の両親が、実際にあなたに体験させた虐待そのままに他ならない」
宇宙人「現実で不幸だったあなたは、思い通りになるはずの妄想の中ですら……不幸だったのです」
少女「……はぁー……はぁー……」ポロポロ…
宇宙人「この地域の官憲組織の整備が不充分であったことは不幸中の幸いでしたね」
宇宙人「もし充分な機構が整っていれば、数日と経たずに捕まっていたことでしょう」
宇宙人「あなたの身体には……屍臭が染み付いていますから」
宇宙人「……以上が、あなたの『本当の世界』です」
少女「……………ッ……」ポロポロ…
少女「……どう、して……」
宇宙人「……」
少女「どうして……話したの?」
宇宙人「……あなたは、妄想に憑き殺されそうになっていた」
宇宙人「黙っておくのはこれが限界だと感じました」
少女「……」
宇宙人「……」
少女「……そ、う」
宇宙人「……はい」
宇宙人「……何でしょうか」
少女「あなたも……」
少女「あなたも……私の妄想の産物なの?」
宇宙人「……」
少女「……」
宇宙人「……はい、そうです」
少女「………………そっか」
少女「……やっぱり……そうよね。当たり前だよね。だって、この世に宇宙人なんているはずないもん、ね……」
少女「あなたと私の関係……あのSF小説の内容にそっくり、だったもの……」
少女「妄想相手に『お友達』なんて……みじめを通り越して、滑稽ッ……で……」グスッ
少女「皆……みんな……みーーーんなッ! 私の……一人遊び、だったんだぁッッ……あははっ」ポロ…
少女「あはは……あはははっ…………」ポロポロ…
少女「どうして……私は、パパを……殺しちゃったんだろう……」
少女「どう、じでっ……ママを"……こ、殺しちゃっだん、だろうッ……」グスッ
少女「あ、あはははははっ……あははは………」ポロポロ…
少女「あは……あぁぁ……あ”あ”あ”あぁぁぁ…………」ポロポロポロ…
少女「……ぅう"う"、ぁ"あ"……う"わあ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁぁぁぁぁんッッ!!!」ポロポロポロ…
少女「ごめん、なさい……ごめん"な"ざい……ごめん"な"さいごめんなざいごめんなさいッッッ!!!」ポロポロポロ…
少女「パパぁ……ママぁ……」ポロポロポロ…
少女「パパぁッ! ママぁッ! ごめんな"ざい"! ごめんなざい"ぃッ! う"あ"あ"あぁぁぁ……」ポロポロポロポロ…
宇宙人「……」
宇宙人「……」
宇宙人「……落ち着きましたか」
少女「……」
少女「……」
少女「…………うん、少しだけ」グスッ
宇宙人「……」
少女「……もう、私のそばにいなくてもいいんだよ」
少女「これ以上妄想にしがみついて逃避を続けてたら、死んじゃったパパとママに申し訳ないもの」
宇宙人「……そうですか」
宇宙人「確かに。もう既に十分な量の感情採取が行えましたから。これ以上ここに留まる理由もありませんね」
少女「そう、なんだ」
宇宙人「あなたの茶番につき合う必要ももうない。わたしは、あなたの世界から退散しましょう」
少女「うん……それが、いいよ」
少女「……」
少女「前に私が言ったこと……覚えてる?」
宇宙人「……」
少女「『どんな悪い事をしたって、その行為の結果を受け止める覚悟がないなら、それは自分自身に責任を引き受けてないってこと』だ」
少女「『誰かの悪口を言ったって、誰かを殺したって……、その事実から目を背けているなら、そこには覚悟が……責任がない』んだって」
少女「……偉そうなこと言って、自分の責任から逃げていたのは私だったね」
宇宙人「……」
少女「今度ばかりは『あなたは悪くない』だなんて言わないでね」
少女「私は、殺したの」
少女「自分の意志で、……殺したのよ」
宇宙人「責任は覚悟の形……でしたね」
少女「ふふ。なんだ……ちゃんと覚えてるじゃない」
少女「……なんて、私が覚えてることだもの。私の妄想のあなたが、覚えてないはずないものね」
宇宙人「……」
少女「わたしは自分の行為の責任を、自分自身で引き受けなきゃいけない」
少女「だからね、死のうと思うの……わたし」
宇宙人「……」
少女「ひょっとすると他に、もっときちんとした責任の取り方があるのかもしれない」
少女「でも、これが……私の、私なりの責任の取り方よ」
少女「私が自分自身に引き受けた……『覚悟の形』なの」
少女「……うん」
宇宙人「わたしには、あなたの覚悟を否定する権利はありません」
少女「……うん」
宇宙人「ですから、ここであなたのもとを去ろうと思います」
少女「……」
少女「そっか」
宇宙人「はい。通信を回復させられる程度には動力源も回復しましたし、母船と通信が可能になれば向こう側でこちらを引っ張ってくれます」
少女「それじゃ、これでお別れ……だね」
宇宙人「……はい」
少女「私の妄想に過ぎないとしても……、あなたと過ごした時間は楽しかったわ」
宇宙人「……はい」
少女「ありがとう。本当に感謝してるの」
宇宙人「いえ……こちらこそ、私の生体維持および宇宙船の動力源供給の協力、感謝します」
少女「ふふ。最後の最後まで……そのキャラは崩さないんだ。私の妄想もなかなかのものね」
宇宙人「……もう会うことはないでしょう。これでお別れです」
少女「うん。ばいばい……妄想世界の宇宙人さん……」
宇宙人「さようなら。……薄幸の少女さん」
少女「……」
少女「……ほんとうに、一瞬にして消えてしまうのね」
少女「跡形もなく……まるで蜃気楼のように」
少女「……」
少女「……さよなら」
少女「結局わたしは、最初から最後まで、一人ぼっちだったんだね……」
少女「……」
少女「パパ、ママ……」
少女「パパとママは……私のこと、愛してなかったのかなぁ……」
少女「パパの愛情は、ふつうの父親の愛情とは違ってたもんね……」
少女「でも、私は……」
少女「……」
少女「私は、二人のことが大好きだよ」
少女「……今でも、二人のこと、だ、大好き、だよ」グスッ
少女「だから、ね」ポロ…
少女「もし天国にいけたら、三人で仲良くできるかなぁ……」ポロポロ…
少女「また三人で、一から、やり直せるかな……」ポロポロ…
少女「……」
少女「……無理、か。私はきっと、地獄行きだよね……」ポロポロ…
…………こんなにも、こんなにも、辛いことばかりで
…………せめて
…………せめてこの眠りだけでも
…………安らかなものでありますように
…………さようなら
…………ばいばい、宇宙人さん
────…………
───………
──さい
少女「……」
──して下さい
少女「……ぅ……」
──目を覚まして下さい!
少女「…………ぇ?」
宇宙人「目を覚まして下さい! お願いしますから!」
少女「…………」
少女「…………どう、して?」
宇宙人「……ッ」
少女「わたし、……覚悟したつもり、だったのになぁ……まだ、妄想を見続けてるなんて……覚悟、足りなかったのかな……」
宇宙人「しゃべらないでください!」
宇宙人「腹部を刃物で刺したのですね……」
少女「……ぅ……ゴフッ…………」
宇宙人「わたしは……あなたに謝らねばならないことがあります」
宇宙人「自分の任務を優先しようとする余り、……あなたに嘘をついたんです」
少女「……」
少女「……ぇ?」
宇宙人「偽りの家族も、偽りの級友も、確かにすべてあなたの妄想でした」
宇宙人「それは、……否定しようもない事実です」
宇宙人「しかし私は実在します」
少女「……」
宇宙人「あなたの世界はあべこべだったんです」
宇宙人「事実と思えることが実は妄想で、……逆に妄想としか考えられない私の存在は事実でした」
宇宙人「……そのことを伝えなかった私を、どうか許してください」
少女「……」
宇宙人「一見すると荒唐無稽に思える私の存在こそが、あなたにとっては────ただ一つの真実だったのです」
少女「……ほんと、に? ほんとにあなた、は……存在するの?」
宇宙人「はい」
少女「……妄想じゃ、なくて?」
宇宙人「妄想ではありません。ここに、きちんと実在しています」
少女「でも……コフッ……なん、で?」
少女「どうして……戻って、きたの?」
宇宙人「……」
宇宙人「私がここに来たのは、自分の『責任』を果たすためです」
少女「……せき、にん?」
宇宙人「私にはあなたの覚悟を否定することはできません」
少女「……」
宇宙人「あなたが見せた高潔なその意思を否定することなど、私にはできない」
宇宙人「……ですから」
宇宙人「ですから、私は私なりに、私の覚悟をあなたに示すことにしました」
少女「……」
宇宙人「私は、己の全身全霊をささげて……あなたを救ってみせる」
宇宙人「あなたを苦しめる全ての障害から、あなたを守ってみせます」
宇宙人「それが……私の『覚悟の形』です」
少女「……」
少女「…………わたし、を?」
宇宙人「ッ!? しっかりしてください!!」
少女「…………して」
宇宙人「え?」
少女「…………どう、して、……わたしなんか、を?」
宇宙人「……」
宇宙人「……そんな。いまさら何を言っているんです」
少女「ぇ?」
宇宙人「そんなの決まっているじゃないですか」
少女「……」
宇宙人「あなたは……」
宇宙人「あなたは、この広い宇宙の中で、たった一人の────」
宇宙人「──────私の、お友達でしょう?」
宇宙人「友達のためなら、いくらでも『覚悟』をもつことができます」
宇宙人「私はあなたの全存在を……自らの果たすべき『責任』として、引き受けることを誓います」
少女「……あ、……あぁ────」ジワ
宇宙人「待って下さい、今処方をしますから!」
少女「……もう、────いいわ」ポロ……
少女「……死ぬ間際に、こんな……素敵な、友達が……できたんだもの」ポロポロ…
宇宙人「……あなたを死なせたりしません!」
少女「あなたが妄想でも、……ゴフッ……実在、していても、……もう、どちらでもいい」ポロポロポロ…
少女「ありがと、ね……」ポロ…
少女「私を、友達だと言ってくれ、て……ありが、とう……」
宇宙人「ちょっと! しっかり────」
────その瞬間、彼女は……事切れた
私は星を去った
しかし、調査任務を無事に遂行し終えたとは言い難い
母船に通信して向こうに引っ張ってもらってもらい、帰還して動力源を確保したのも束の間、先程発ったばかりの星へと無断で取って返したのだ
……しかし、彼女の死は避けようがなかった
私の躊躇いが、運命を分けたのだろうか
後悔が鈍い想念となってかけ巡る
確かに……母船に戻る前の段階で彼女を無理やり情報体化して連れだしたところで、
動力源を確保するために母船に帰還すれば即お縄だっただろう
結局は、こうするしかなかったのだと自分自身を無理やり納得させるしかない
過去へは……戻れないからだ
情報体同士の情報共有化はできない
そんなことをすれば、第三者に自分の位置をあからさまに教えるようなものだ
いずれ何らかの策を講じる必要があるが、当面はローカルな情報に頼らざるを得ない
──故郷にでも帰ろうか
そんなことを考えつつ舵を取る
……宇宙船の航行速度はとてつもなく速い
というか宇宙船と言っても、そもそも物理的形状をもった船に乗っているわけではないのだ
この宇宙船もまた一種の情報体に過ぎない
無形飛行の中で……私は今、前に進んでいるのだろうか、それとも逃げているのだろうか
「責任……か」
ぼんやりと意識を宙に浮かべて、独りごちる
今更になって何故か…………彼女との出会いが脳裏をめぐった
──……
─…
──通信機のトラブルで母船に帰還することができなくなり、動力源も底をついてしまったものの、
とりあえず目的の星に辿りつくことができたため、私はその段階でも比較的状況を楽観視していた
あまり物事を深刻に考えすぎないのは、他の個体とは異なる、私という個体の特性だろうか
「とは言え、気軽に出歩くのはマズイですよね~」
本来であれば、この星で接触をとる種族の姿に似せた肉人形を用意すべきところなのだが、その程度の動力源すら残っていなかったのだ
仕方なく私は現状ですぐに作ることのできる肉人形────我々の種族の祖先の姿形を模したものだ────を用意することにした
こうなると軽々には行動できない
こんな姿で街を悠々と闊歩しようものなら、たちまち衆目を集め、捉えられたり解剖されちゃったりするだろう
いや、この身体を解剖されたからといって死にはしないのだが
「あなた誰?」
──探すまでもなく見つかってしまった
「えっ宇宙人ですけど」
つい本当のことを答えてしまう自分の馬鹿正直さが憎らしい
「へぇ~」
なんだか目をキラキラさせていらっしゃる
「私ね、宇宙人とお友達になるのが夢だったの!」
──ほほぅ
「私も寄生さk……ゲフンゲフン……現地民のお友達ができるのは嬉しいです!」
そんな風に、無邪気な生き物ですよ~という感じのアピールをして彼女に近づいた
──異変は彼女の家に入った瞬間に気づいた
腐臭……いや、屍臭だこれは
「さあ、あなたが思っているものとは随分違うと思いますが……」
臭いの出所は……1階……バスルームだろうか
「それにしてもあなた……変な姿してるのね。宇宙人ってみんなこんななの?」
「いえ、そうとも限りません。そもそもこの形は借り物で、私にとっての定型ではないので」
「ん? どういうこと?」
──彼女はこの臭いに気づいていないのか?
…………いや、気付かないはずはない
気づいている上で、『気にしていない』のだ……
彼女と会話しつつも、私は臭いの元が気になって仕方なく、どこか上の空だった
「えっ!? いいけど……宇宙人もトイレ行くの?」
「ええ……そんなもんです」
──もちろん嘘だ
1階に降りてバスルームを確認する
腐った死体を二体発見した
「──ふむ」
この種族には同族の死体をバスルームに放置する文化でもあっただろうか?
「いや、ないですないです」
自分のとぼけた発想に自分で突っ込むという何だかのんべりとした情報処理を行った後、2階の彼女の部屋に戻った
「あぁ、ただいまです」
少女は自室でくつろいでいた
「あの……一つ聞きたいことがあるのですが」
「なに?」
「バスルームの死体は何ですか?」
「……」
「?」
「……」
「あのぉ~」
──き、気絶してる
なんだこの子……
目を覚ました一言目がそれだった
「えっ宇宙人ですけど」
それに馬鹿正直に返す私も私だが……って、何だか既視感
「ウチュージン?」
「そうですよ」
──ああ、なるほど
この子、イカレてるんだな
そう判断した私は、同時に、『むしろこれは好都合なんじゃないか?』……そう考えた
宇宙人の存在を何の躊躇もなく受け入れている時点でかなり頭がおかしいが、
感情採取を目的としている私にとっては、過剰に警戒されない分やりやすいと言える
そんなこんなで、私は彼女を寄生先に選ぶことにしたのだった
────……
──……
─…
彼女の不幸な境遇や、その不幸な妄想の内容を悟った後も、特別、同情心は生じなかった
『いじめっ子排除プラン』も、彼女の生命力を弱らせないようにする方便でしかなかったし、
実際にその排除プランが彼女の賛同を得たとしても、適当に振舞って妄想の方向性を変えてやればいい程度に考えていたのだ
とは言えその妄想の方向性を変えてやるには、何らかの方法で『両親や級友が死んだ』と彼女に誤認させねばならなかった
もし虐待が妄想ではなく、現実に起こっていることであれば彼女の意向を無視してさっさと殺害を遂行していただろうが……
妄想の中の相手となるとそうすることもできず、彼女の動向に多少ヤキモキしていたのも確かだ
……そう、彼女には本当にヤキモキさせられた
それはひとえに、彼女のその偏向した考え方によるも所が大きい
小娘の戯れ言でしかなく、一笑に付してしかるべき妄言のはずだ
それなのに私の内なる変化をもたらしたのもまた……彼女のその言葉だった
妄想の友人に傷つけられた彼女が、友人の告発を自らの責任として受け止めようとする姿は滑稽でもあり、何故か美しくもあった
『生命の有り様』を美しいと感じる
これは我々の種族にとって退化した感情のはずだ
それなのに彼女の『覚悟』は……何故か私の琴線に触れ、私の魂を揺さぶった
そして、自身の両親を殺めた罪を引き受け、終には自らの命に幕を引こうと決意したその『覚悟』を見るに至って──
私は、彼女を、この美しいものを守らねばならないという強烈な衝動に襲われたのだ
その際、往々にして『選んだその先で何を失うか』という視点は忘れられがちだ
そして、一度選択して先に進んでしまえばもはや失われたものに気など払わず、やがて、『自分が失ったのだ』という事実すら忘却の彼方へ追いやってしまう
その無数の忘却の果てに今の我々の姿があるとすれば、果たして、これまでの選択が正しかったのだろうかと、自分たちの道程に対する懸念が生じるだろう
疑い始めては前に進めない
だから私の仲間たちは疑念を抱かず、立ち止まることなく、忘却を恐れず、勇敢に前を向いて進んでいくのだ
────そう
ただ私は、そんな彼らと道を違えたに過ぎない
根底的な断絶でもって、彼らと訣別したのだ
私が彼女に対して抱いた、心を震わせつつ胸の奥からこみ上げてくるあの内なる情動
私は自分の仲間たちがかつて忘却したものに固執し、取り残される側に自らも残留することを、あえて選んだのだ
────そこまでする価値があるというのか?
それこそ、聞くまでもないことだ
……暖かく
……穏やかで
……勇気を湧かせ
……胸を熱くする
……何よりも尊い──────
少女「────ねえ。むっつりと思索にふけってないで、私とおしゃべりしなさいよ」
宇宙人「えっ……あぁ、すみません。さて、どんなお話をしましょうか?」
────元気な笑顔を見せてくれる彼女を守ること以上に、大切なものなどないのだから
少女「ん~~~~ッッ!!」
少女「……ッ、はぁ~~!! 久しぶりの地面ね!」
宇宙人「長旅お疲れ様でした」
少女「本当よ! 宇宙船の中つまんないんだもの。歩けないし、食事もできないし」
宇宙人「あなたは情報体になったんですから、運動する必要も食事する必要もないんですよ?」
宇宙人「その代わりに、我々と同じく感情エネルギーが必要な存在になってしまいましたが」
少女「……まぁ、それはまだいいんだけど。この身体はなに?」
宇宙人「我々の種族の祖先の形を模した肉人形ですね。私がこれまでに使っていたのと同タイプのやつですよ」
少女「……元の身体がいい」
宇宙人「そこは我慢してくださいよ。あなたは……あなたの肉体は間違いなく死んだんですから」
宇宙人「一般的な生物種としての死を迎えたことは間違いないでしょうね」
宇宙人「ただ、肉体の死と生命の死とは本来、別の現象なんです」
宇宙人「生命が肉体と不可離に結びついてる状態で肉体が滅びると、生命も肉体の死に引きずられて死んでしまいますが」
宇宙人「私や、今のあなたのように、生命を情報体の形で単独で存在させられるならば、肉体が死んでも生命は滅びません」
宇宙人「もっとも、肉体の寿命とは別に生命それ自体にも寿命がありますから、情報体になったからといって永遠に生きられるということではないんですが」
宇宙人「ふむ。簡潔に言えば……」
宇宙人「あなたが肉体的な死を迎えた後、時間的猶予は全くありませんでしたが、何とかあなたの生命の情報体化に成功したので、あなたの生命それ自体は死なずにすんだんです」
宇宙人「とはいえ、あなたの肉体が失われたことは残念に思っています」
宇宙人「もっとどうにかできなかったものかと、後悔していますよ」
少女「それは……まぁ仕方がなかったから、別にいいんだけど」
宇宙人「……で、情報体になったあなたを宇宙船に乗せて、逃亡航行の果て、私の故郷にたどり着いた……というわけですね」
少女「……」
少女「やっぱりよく分からない」
少女「緑も多いし、水も多い。空気は……少し淀んでいるけど、そのうち馴染むと思うし」
宇宙人「気に入っていただけて何よりです」
宇宙人「一時期は地殻変動や気候変動、我々自身による森林伐採や資源採掘とかでひどい有り様だったんですが、長年の努力によってずいぶん改善しました」
宇宙人「今や異星人も少なくないので、歓迎……とまでいかないでしょうが、邪険に扱われることもないはずです」
少女「へぇ~。……ここ、あなたの故郷って言ってたけど、別にここで生まれたわけではないんでしょう?」
宇宙人「ええもちろん。正確に言えば、私の種族の祖先たちが住んでいた星ですね」
宇宙人「いま私やあなたが使っているこの肉人形ですが、これが私の祖先の姿形だったようですよ」
少女「ふーん。変なの……」
宇宙人「まぁまぁ、ほとぼりが冷めたらあなたの種族用の肉人形を用意してあげますから。今しばらくは我慢してくださいよ」
少女「……わかった。我慢する」
宇宙人「? ええ、そうですね」
少女「だ、だからぁ……ちゃんと『責任』とってってことよ!」
少女「こんな星で、一人っきりでほっぽり出されたらたまったものじゃないし」
宇宙人「ああなるほど。大丈夫ですよ、きちんと面倒見ますから」
宇宙人「……しかし今の文脈、今の言葉の意趣、そしてあなたの種族の文化的背景から考えるに、この『責任とって』という台詞は……」
宇宙人「結婚の申し込み? プロポーズというやつでしょうか」
少女「……え? なに言ってるの?」
宇宙人「ふむ。まぁ一生連れ添うくらいの覚悟は元よりありますが、あなたに『そういう意図』があるとなると……」
宇宙人「性別の壁……、いえ……そもそも種族という大きな壁が……」ブツブツ
宇宙人「……ええ。分かりました。大丈夫です」
少女「え、何が?」
宇宙人「種族の違いがあるので子どもを作ることは不可能ですが、性生活で欲求不満にはさせません」
少女「はぁ?」
宇宙人「なに、不安になることはありません。性愛欲は我々にとって退化した欲求にすぎませんが、私の仲間でもエクスタシーを娯楽的に楽しむ者たちはいます」
宇宙人「その手の営みも研究し尽くされ、膨大な知識の蓄積があるのですよ。数万年にわたって発展してきた禁断の性技を披露致しましょう」
少女「……」
少女「……ほんッッとに」プルプル…
宇宙人「?」
少女「学ばないわねあなたはッッ!!!」ツンツンツンツンツンツン!!!
宇宙人「あっ! 痛い! 痛いです! でもなんか懐かしい! でも痛い!」
少女「だからなんで少し嬉しそうなのよ! このバカ!」
宇宙人「えへへ、すみません」
少女「……ほら、当面の亡命先に行くんでしょ?」
宇宙人「ええ、参りましょう」
少女「……って、ああもう歩きにくい!!」
宇宙人「申し訳ないですが、こればっかりは慣れてもらうしかないですね~」
少女「どうしてあなたはこんな身体でひょいひょいと歩けるの!?」
宇宙人「慣れですよ、慣れ」
少女「だいたいね……」
少女「そもそも、────なんだって脚が二本しかないわけ!? おかしいじゃない常識的に考えて!」
少女「脚も二本なら腕も二本! 不便ったらないわ!」
少女「それに身体全体もなんか縦にひょろっと長くて重心が安定しないし!」
少女「だいたいこのてっぺんについてるサワサワしたやつ何なの!?」
宇宙人「『髪』って言うんですよ。黒髪サラサラのロングストレートです。とってもお似合いですよ」
宇宙人「目もクリクリとしてて、鼻筋が通っていて、とても美人さんな顔立ちです」
宇宙人「体型はあなたの年代に合わせた小柄なものですが…………我々の種族の肉人形愛好家の間では、人気の高いモデルなんですよその身体」
少女「そんなこと言われても、おかしいものはおかしいって感じるんだからしょうがないじゃない!」
少女「…………はぁ。元の身体が恋しいわ」
宇宙人「ふふ。少しの間の我慢ですってば。ね?」
──彼女が長い髪をたなびかせて振り返る
宇宙人「何ですか?」
少女「この星のことよ。なんていう名前なの?」
姿形がどのようであれ、彼女の強さとその煌めきには何の変わりもなく
宇宙人「あれ? 最初に言いませんでしたっけ?」
少女「聞いたかどうかも忘れちゃったわ」
その傍らに立ち、共に『覚悟』を持って未来を見据えられるならば、そこにあるのは希望だけで────
宇宙人「ふふ。そうですか」
宇宙人「私の故郷である、この星は────」
宇宙人「──────『地球』っていうんです。素敵な名前でしょ?」
全編を通した叙述トリックについては,勘のよい人なら >>1, >>2, >>6 当たりの表現で早々に疑いを抱くはず
宇宙人は4万年後の人間で、少女こそが(人間側から見れば)宇宙人だった
過去作は「男と少女」のイチャイチャSSと見せかけて、実は『利他主義』をテーマとした物語
今回は「少女と宇宙人」のほのぼのSSと見せかけて、実は『責任』をテーマとした物語
もし次回作があれば『教育』か『宗教』か……あるいは他に気に入ったテーマがあればそれで書くかもしれない
もしまたSSを書く機会があれば読んでくれ!
※過去作
男「パン……食べるか?」 少女「……」
夫「この先何があろうと、僕が守るから」 妻「………」
男「そして誰もいなくなった」
おつ
面白かったよ
ぜひまた書いてください
Entry ⇒ 2012.03.07 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
女借金取り「ま、また来るからな!!」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1304438632/
女借金取り「いるのは分かってんだァ!!」
女借金取り「出てこいコラァ!!」
男「ひぃぃ」ガクブル
女借金取り「扉開けろオイ!!」
男「む、無理です無理ですぅ!!」
女借金取り「開けろォォォォォ!!!!」ガンガンガンガン
男「ひゃあああっ!!わ、わかりましたって!!今!今開けますから!」
女借金取り「な、なにっ!?本当だろうな!?」
男「開けますから!大きな音出さないで!近所の人に迷惑だから!!」
女借金取り「お、おう……分かったから早く開けろコラァ!!」ガンガンガンガン
男「あ、開けますからぁ!!」
女借金取り(あ、でも待てよ……こんな格好で大丈夫なのか私?)
女借金取り(も、もし『こいつ服のセンスねぇなぁ』とか男に思われたら……)
男「い、今開けますから……」
女「待てコラァ!!!開けんじゃねぇクソテメェ!!!」
男「え、えぇえぇぇぇっ!?」
女「あ、開けたらぶっ殺すぞテメェコラァ!!」
男「ど、どっちなんですか!?」
女借金取り「ちょ、ちょっと待っとけやぁ!!!」ガンッ
男「ひっ!は、はいぃ!」
ピポパピ、プルルルルルルル、プルルルルルルル
女借金取り「お、おやびん!!」
女借金取り「あ、あのその、今から一回事務所帰ってから、もう一度例の家に突撃することって可能っすか!?」
女借金取り「いやその、ちょーっと用がありましてぇ!!いや、えーっと、服を着替え……」ゴニョゴニョ
女借金取り「えっ!?あんまり深夜の取り立てはダメ!?」
女借金取り「つまり……そうっすか。わかりました…………やっぱ無理っすよね」
女借金取り「はい……」ピッ
女借金取り「……」グスッ
男「あ、あのぉ……結局扉は閉めたままでもいいんですか?」
女「ちくしょぉぉぉっ!!!」ガンッ
男「ひぃぃっ!!」
女借金取り「おい男テメェコラァ!!!」
男「は、はいぃ!!」
男(なんで涙声なんだ……?)
女借金取り「ま、また明日来ても……じゃなくて、また明日も来てやっから覚悟しとけよオラァ!!」
男「か、勘弁してくださいぃっ!」
女借金取り「逃がさねーぞォ!!!」
男「そんなぁ!」
女借金取り「待ってろテメェコラァ!!絶対家にいろよ!!
夕方あたりにまた来るからなァ!!!」
男「い、嫌ですよぉ!」
女借金取り「うるせェ!!絶対行くから家にいろよ!!」
男「うぅっ……」
女借金取り「いいか!?家にいろよ!?絶対だぞ!?家にいろよ!?」
女借金取り「じゃあな!!!」
男「」ガクブル
女借金取り(大丈夫だよな?この服……)
女借金取り(……いや、やっぱフリフリしすぎじゃねぇかコレ!?)
女借金取り(ミスったか!?やっぱ似合ってねぇかな!?)
子「ふんふふ~♪」テクテク
女借金取り「あ、おいそこのガキみてぇな坊主ぅ!!!」クワッ
子「ひぃぃっ!ガ、ガキと坊主は一緒ですぅ!!」
女借金取り「こ、この服……どうだ?ダ、ダサくねぇか!?似合ってるよな!?」
子「え!?あ、いや……」
女借金取り「似合ってねぇのか!?ハッキリ言いやがれ坊主コラァ!!」
子「に、似合ってます!!すごく似合ってますぅ!!」
女借金取り「お?そうか?……へへっ、本当か?」
子「ほ、本当です!!春って感じっス!!」
女借金取り「そうかそうか、似合ってるか。だよなっ!
へへっ、おい坊主、小遣いをやろう」ニコニコ
子「え?」10円チャリーン
女借金取り「んじゃなっ!」ニコニコ
子「……なんだったんだろう」
女借金取り「おーい」ピンポーン
女借金取り「……」
女借金取り「おい男ォ!!」ガンガン
女借金取り「……」
女借金取り「返事しろコラァ!!!」ガンッ
女借金取り「……」
女借金取り「……いないの?」
女借金取り「……」
女借金取り「ちくしょぉぉぉっ!!!!!」
タッタッタッタ
男「わざわざ夕方に来るとか言ってくれたから逃げてこられたけど……家に帰るタイミングが掴めない……」ズーン
男「夜までこの公園で時間潰すしかないのか……?」ギーコ、ギーコ
男「もし待ち伏せとかされてたらどうしよう……」
男「ひぃっ」ブル
男「あ、でも強引な取り立ては深夜しちゃいけないっていうし……その時間まで待てば大丈夫か……」
男「つまり夜まで待つしかないか……はぁ……」ギーコ、ギーコ
女借金取り「どこ行きやがったコラァァァ!!!」タッタッタ
男「こ、この声は!?まずい、隠れろ!!」サッ
女借金取り「くそぉあの野郎!!!」タッタッタ
男「ひぃぃっ!」ガクブル
女借金取り「ちくしょぉぉぉっ!」タッタッタ……
男「……い、行ったか。よかったぁ……怖ぇえよ!」
男「……うぅ、寒い」ブル
男「今何時だ……?」
男「げっ!もう日付変わってるじゃねぇか!!か、帰ろう!」スタスタ
男「さすがにもう大丈夫だよな……」
男「こんな時間までいる訳ないしな……」
男「そろそろ我が家に到着だ……裏をかいて近い場所に隠れててよかった」
男「……ッ!!」
男「う、うちの前に誰かいる!!」
男「ま、まさかな……いや、そんなまさか」ジリジリ
女借金取り「遅いぞちくしょう……グスッ……」
男「……えっ」
女借金取り「テメェ、絶対家にいろって言っただろうがよ……」
男「あ、あの……」
女借金取り「せっかく朝早く起きて服を選んで……」ブツブツ
男(何言ってるんだろうこの人……)
女借金取り「さみぃし眠いんだよテメェェェ!!!!」
男「ひゃあっ!!」ビクッ
女借金取り「なめてんのかァ!?あぁんっ!?」
男「い、いや!なめてないです!!全然なめてないです!!」
女借金取り「とりあえずテメェ……へっくしゅっ!」
男「あっ……」
女借金取り「……」
男「……な、なんか飲みます?」
女借金取り「……」コクリ
男「コ、ココアしかないですけど……」コトッ
女借金取り「……」ジロッ
男「ひ、ひぃぃっ!!お、お気に召さないようであればなんなりと!!
ち、近くにコンビニがあります故、拙者温かいコーヒーか何かを」
女借金取り「……」ズズーッ
男「あっ……あ、あの、ココアで、よかったですか?」
女借金取り「……」ジロッ
男「ご、ごめんなさい!!ごめんなさいぃ!!切腹の準備はできてますぅ!!!」
女借金取り「……」ズズーッ
男「え、と……」
女借金取り「……」ズズーッ
男(……ナニコレ、すごく気まずい神様仏様俺を助けて)
女借金取り「……台所」ボソッ
男「は、はい?」
女借金取り「台所どこだって聞いてんだよ!!」
男「す、すみません!すみません!!」
男「そ、その扉の奥ですぅ!!」
女借金取り「……チッ……借りるぞ」
男「は、はいぃ!」
男(な、なんだ、何するつもりなんだ?
高級そうなお皿を探して『とりあえずこれ貰っとくぞ』みたいなこと?)
男(それとも何?水がすごい好きで『お金の代わりに水貰うぞ』みたいな?)
男(あ、わかった!台所マニアだ!!この人台所マニアだ!!)
女借金取り「……」キュ、ジャー、カチャカチャ
男(……え?カップを……洗っている……だと?)
女借金取り「……」ジャー、カチャ
男「そ、そんなっ!いいですって!俺がやりますから」
女借金取り「黙ってろ」
男「で、でも……」
女借金取り「いいから座っとけ!!」クワッ
男「ひ、ひぃぃっ!!」
男(や、やっぱり怖い……)
男(で、でもカップ洗ってくれてるし……根はすごくいい人なのかも……)
男(いやでも……借金取りなんてみんな怖い人だし……)
女借金取り「ふう……」
男「あ、あのっ……」
女借金取り「あ?」
男「い、いえ!なんでもないですぅ!!」
女借金取り「……」
男(なんで30分間も無言で座ってるのォォォ!?)
男(ワガンネぇ!!オラワガンネぇよ母ちゃん!!!母ちゃん元気してっか!?)
女借金取り「……」
男「あ、あのっ……」
女借金取り「あん?」ジロッ
男「ひっ……そ、その……」
女借金取り「なんだよ」
男「か、帰らなくて、いいのかナー……なんて……ハハハ」
女借金取り「……テメェ」
男「ご、ごめんなさい!!」
女借金取り「……そ、その」
男「……え?」
女借金取り「……か、かかか、かの、彼女、かのっ」
男「か?……え?かの……?」
女借金取り「うるせェ!!!!!」ガンッ
男「えぇぇぇぇっ!?」
男(また黙っちゃった!!もう助けて!!)
女借金取り「……」
男「……」
女借金取り「……忘れろ」ボソッ
男「……え?」
女借金取り「忘れろっつってんだよコラァ!!!」
男「ひぃぃっ!!な、何をですかー!?」
女借金取り「さっきのだよ!!!」
男「さ、さっきの……?か、蚊がどうとか……」
女借金取り「黙りやがれテメェコラァ!!!」
男「す、すびばべん!!」
女借金取り「く、くそっ……」
男「は、はい!?なんでしょう!?」
女借金取り「ひゃ、120円は……返済してもらったってことにしといてやる」
男「え?……えっ?」
女借金取り「……」
男「……あっ、ココアですか?」
女借金取り「そ、そうだよ!!なんか文句あんのか!?」
男「ないです!!ないです!!むしろ嬉しいです!!」
女借金取り「……」
男「……」
女借金取り「……また明日も来るからよ、覚悟しとけよ」
男「あっ……はい……」
女借金取り「……チッ」スタスタ、ガチャ
男「……や、やっと帰った……」
~夜道~
女借金取り「なにしてんだああああああっ!!!」
女借金取り「ホントなにしてんだああああああ!!!!!」
犬「ワンッ!」
女借金取り「うわっ!」ビクッ
女借金取り「犬テメェコラァ!!!」
犬「ブシュッ」
女借金取り「まずい……まずいぞ……明日も行くとか言っちまったぞ……」
女借金取り「いやでも行かねぇと……いやでも気まずすぎんだろ……」
女借金取り「……ぜってぇ、変なヤツって思われたし……」
女借金取り「あーちくしょぉぉぉっ」ジダンダ
女借金取り「……クッ……クソッ」モジモジ
女借金取り「……チャイム押すだけだろうがよ……なんでできねぇんだよクソッ……」
近所の爺「あんれー?」
女借金取り「あ、あぁん!?」クルッ
爺「男くんのがーるふれんどかえ?」
女借金取り「なっ、ち、ちげぇよ!!」
爺「男くんなら今日は仕事だって言ってたけんど」
女借金取り「な、なにっ!?」
爺「ホホホ、残念じゃったのう」
女借金取り「だからちげぇっつってんだろ!!!」
爺「ホホホ」スタスタ
女借金取り「クソッ……待つしかねぇか……。またかよ」
女借金取り「……うー、さみぃ……」
女借金取り「早く帰ってこいよあの野郎!!」
女借金取り「クソッ……」
男「あっ……」
女借金取り「あ」
男「……な、中、入ります?」
女借金取り「……」コクリ
男「きょ、今日は、コーヒーありますよ。
ね、念のため、買っておいたので……」
女借金取り「……」ジロッ
男「ひっ!」
女借金取り「早く扉開けろよ」
男「は、はいぃ!!」ガチャ
男(……ま、また無言か)
男(この人……借金取りだよな?何しにここ来てるんだろう……)
男(というか、なんで俺また招き入れてんだろう……)
女借金取り「……」ズズーッ
男「……」
女借金取り「……」ズズーッ
男「……」
女借金取り「……台所」
男「……ど、どうぞ」
女借金取り「……」スタスタ
男「……なんだこれ……」
女借金取り「……」ジャー、キュッ
男「あ、ありがとうございます……」
女借金取り「……」ジロッ
男「ご、ごめんなさい!」
女借金取り「……」スタスタ
男「……」
女借金取り「……」
男(……また黙っちゃった)
女借金取り「……」
男「あ、そうだ!お腹空いてませんか?」
男(なんでもいい……!この場から逃げ出したいんだ……!)
女借金取り「……」
男「あ、あの……俺、チャーハンくらいなら作れますけど……」
男(これで台所に逃げられる……!)
女借金取り「必要ねぇy」グーゥ
男「……つ、作りますね!」
女借金取り「……チッ……」
女借金取り「待てよ……」
男「え?」
女借金取り「待てっつってんだコラァ!!!」
男「な、なんでしょう!?」
女借金取り「……座ってろ」
男「え?いや、でもチャーハ」
女借金取り「いいから座ってろつってんだァ!!!」
男「は、はいぃ!!」
女借金取り「……」スタスタ
男「あの……」
女借金取り「あ?」ピタッ
男「なんでも……ないです」
15分後
男(おいしそうなチャーハンがでてきました)
女借金取り「……」
男「す、すみません……作らせちゃって」
女借金取り「黙って食え」
男「は、はい……すみません」
男「……」パクッ
男(なんだこれ!うめええうああああ!!!!)
女借金取り「……ど、……」
男「え?」
女借金取り「なんでもねぇよ」
男(オラァ幸せだぁ!!)ポロポロ
女借金取り「……どう……うま……い……」ゴニョゴニョ
男「え?」
女借金取り「なんでもねぇ」
女借金取り「……」
男「……」
男「……これ、俺の、食べますか?
スプーンこれしかないですけど……それでよかったら……」
女借金取り「……」
男「あの……」
女借金取り「」バッ
男「うわっ!」
女借金取り「」ムシャムシャ
男(す、すごい勢いでスプーンひったくられた……
や、やっぱ俺しか食ってなかったから怒ってたのかな……)
女借金取り「」ダンッ!スタスタ、ガチャ
男「え!?あ、ちょっと!!」
男「……か、帰っちまった……何しに来たんだ、ホント……」
おやびん「なんだ、話って」
女借金取り「おやびん……」
おやびん「どうした、早く言ってみろ」
女借金取り「か、かかか、か、間接、キ、キス、キスっ」
おやびん「あ?」
女借金取り「か、間接キスが、チャ、チャーハンの味でした!!」
おやびん「……何言ってんだオメェ」
女借金取り「お時間頂いて、すいませんっした!!」
おやびん「……お、おぉ」
女借金取り「」ガチャ
おやびん「……女ってもんが、わからネェ」
おやびん「……ふう」スパー
男「ま、また……仕事終わるまで待ってたんですか?」
女借金取り「……文句あんのかよ」ジロッ
男「い、いえっ!ないです!!!すみません!!」
女借金取り「ならグダグダ言うんじゃねぇよ」
男「す、すみません!!すみません!!」
男(わからん!借金取りとしてやる気があるのかないのかサッパリわからん人だ!)
男(まあやる気満々も困るけど!というかそっちの方がいや!)
女借金取り「……」
男「と、とりあえず、中どうぞ……」ガチャ
男「……ありがとうございます」
女借金取り「……」
男「あ、あの!」
女借金取り「あん?」
男「……お、お金……全然、足りませんけど……その、なんとか用意してきました」
女借金取り「……チッ、これっぽっちかよ」
男「すみません……でも、今はそれが限界なんです……
も、もう少しだけ……待っていただけたら」
女借金取り「テメェ」
男「ひ、ひぃぃっ!な、なんですか!?」
男(や、やっぱ生意気言いすぎたか!待ってくれなんて……)
女借金取り「……か、かの、彼女、彼女とか、い、いねぇのかよ」
男「……はい?」
女借金取り「勘違いすんじゃねぇぞォ!!!そういう身内のもんから借りるとか色々あんだろうがァ!!!」
男「べ、別に勘違いはしてませんけど……」
女借金取り「あぁんっ!?」
男「な、なんでもないです!申し訳ありません!!!」
女借金取り「でどうなんだコラァ!!!言ってみろオラァ!!!」
男「か、彼女は……い、いません!!」
女借金取り「あぁぁぁんっ!?」
男「ひっ、す、すみません!すみません!!
というか、できたこともないです!彼女いなくてごめんなさいぃ!!!」
女借金取り「えっ?」
男「……え?」
女借金取り「……か、……え?」
男「……えっ?」
女借金取り「か、彼女、いねぇの……?」
男「……あ、はい……」
男(……何その驚き方……メチャクチャ傷つくんですけど)
女借金取り「い、いねぇの!?」
男「い、いませんって……すみません」
女借金取り「いねぇんだな!?本当の本当にいねぇんだな!?」
男「だ、たから……いませんよ……傷つきますよさすがに……」
女借金取り「ちょ、ちょーっと待ってろテメェコラァ!!!!!!」
男「え!?」
女借金取り「彼女がいないテメェは大人しく待ってろコラァァァッ!!!!!」ガチャバタン
男「一言余計ですよ!!!何回言うんですか!!!」
~事務所~
ガチャ
女借金取り「おやびんっ!!!」
おやびん「なんだどうした!?」ガタッ
女借金取り「か、間接キスを勧めてきた野郎に彼女がいないってのは一体どう解釈したらいいんすかァ!!」
おやびん「……な、なんだそりゃァ」
女借金取り「これなんなんすかァ!!!なんなんすかこれ!!!!」
おやびん「お、落ち着け!いいから一旦落ち着けテメェはよぉ!」
女借金取り「は、はい!すみませんっした!」
おやびん「ふう……ったく。で?間接キスがなんだって?」スパー
女借金取り「は、はいっ!」
女借金取り「こ、恋!?」
おやびん「ああ、間違いねェ。そりゃ恋だ」
女借金取り(やはりか!!こ、恋か!!
だよな!間接キス勧めてきた上に彼女がいねぇなんてあの男……
こりゃ恋だな!!へへっ!こ、これが両思いってやつか!!
悪くねェェェなァァァ!!!)
おやびん「そうか……まさかオメェが恋とはなぁ」
男組合員「おやっさん、いいんですかい?
身寄りのない女借金取りを、娘のように可愛がってきたおやっさんが……」
おやびん「構わねェよ。娘が恋をしたってんなら、それを応援するのが親ってもんだろォが」
男組合員「はっ!すみませんっした!!」
おやびん「気にすんじゃねェ。それにしても、あいつが恋か……へへっ」
女借金取り「待ってろよォォォ!私に恋した男コラァ!!!」
おやびん「えっ」
おやびん「ちょ、ちょーっと待でゴラァィ!!!!」ガタッ
女借金取り「は、はいっ!?なんでしょうおやびん!!」
おやびん「テメェ、俺が言ったのはテメェがその男に恋をしているということであってだな、
何もその男がテメェに恋をしているという訳じゃねェぞ」
女借金取り「は、はい!だから私はがんばって……えっ?」
おやびん「やーっぱり勘違いしてたか。まあしょうがねェはな。ろくすっぽ恋なんざしたことねェからなテメェはよ」
女借金取り「ちょ、ちょっと待って下さいおやびん!!」
おやびん「なんだ?」
女借金取り「男は……え?
私に恋をしていない……?」
おやびん「してねェかどうかはわからねェけどよ。してるとも言い切れねェ」
女借金取り「な、なにィィィ!!!!!」
女借金取り「そ、そんな……」
おやびん「なあおい、その男の借金ってのは後いくらあんだ?」
女借金取り「……万円です」
おやびん「なるほど。おい、ちょっとその男ここにつれてこい」
男組合員「はっ!」
女借金取り「な、なにをするつもりですか!?」
おやびん「テメェにチャンスをやろうと思ってんだ。いいからつれてこい」
男組合員「行くぞ。道案内頼む」
女借金取り「お、おう……」
ざわ・・・
男「や、やめてェェェ!!い、命とアナルだけはァァァ!!」
男組合員「いいから黙ってついてこい!!!」
男「嫌あああ!!嫌嫌嫌あああああ!!!」
女借金取り「着いたぞ、男組合員」
男組合員「おやっさん、お待たせしました!!」ガチャ
おやびん「……おう、来たかァ」
男「……」ガクブル
おやびん「……ちょっとこの男と二人にしてくれ」
女借金取り「えっ!?で、でも」
おやびん「俺の言うことが聞こえねェのかぁ!!!!!」ビリビリ
女借金取り「はっ!す、すみませんっした!!!」ガチャ
男(……父さん、母さん……ごめんよ)
おやびん「……ふう、まあ、座ってくれや」スパー
男「は、はい…………あの、本当に……すみませ」
おやびん「すまねェなぁ」
男「……えっ?」
おやびん「本当はこっちから出向くべきなんだろうが、生憎できのわりぃ部下ばっかりでな。
目が離せねェのよ」
男「い、いえっ!!あ、あの……それで……なんで俺は」
おやびん「ああ、そうだな」
おやびん「男さんの家を担当してるのは、女借金取りで間違いねぇな?」
男「は、はいっ……」
男「は、はぁ……」
おやびん「それがよぉ、いつの間にか立派な口聞くようになりやがって、成績も今じゃ組で一番だ」
男(そ、そうなのか……とてもじゃないけどそんな風には思えない……)
おやびん「なんだ、話を聞いてみると、男さんにその娘が世話になってるらしいじゃねェか」
男「……え?」
おやびん「嬉しそうに話すんだよなぁ、コーヒーをごちそうしてくれるとか、チャーハン作ろうとしてくれるとか」
男「いえ……」
おやびん「いや、経緯は聞かねェ。借金取りとして、しちゃいけねェことだってのも分かってんだ」
男「は、はぁ……」
おやびん「ろくに友達もいねェ、恋もしてねェ。きたねえ世界に入り浸せちまった、親としての申し訳なさってのがあんだよ」
おやびん「あの娘には……才能がある。だが、普通に過ごして欲しいって気持ちを持つのは、親として間違ってるか?」
男「い、いえ」
男「は、はい」
おやびん「男さんがよけりゃ……その、当分娘とこの関係を続けてくれはしねェだろうか?」
男「えっ……でも、それって……」
おやびん「もちろんタダとは言わねェ。本当なら身ぐるみ剥いででも請求するとこだ。
かといって、こっちのメンツもある。借金を無くすってことはできねェ」
男「どういう……」
おやびん「借金は無くせねぇ……だが、毎日男さんは娘にコーヒーを煎れてくれている」
男「も、もしかして」
おやびん「一杯一万円でいい。どうか、借金を返済するまで、頼まれちゃくれねェだろうか……」
男「えっ……と」
おやびん「頼む、かわいい娘のためだ。このとおり」ペコッ
男「そ、そんな!頭をあげてください!」
おやびん「どうか」
男「……わ、わかりました!や、やりますから!」
おやびん「ほ、本当か!?」
男「ええ……その、女借金取りさんと関わること自体は……嫌じゃ、ありませんから」
おやびん「そうか……そうか!へへっ!」
おやびん「おーい!女借金取り!入ってこい!!」
女借金取り「おやびん!!!!!」
男(……おやびんのこと、慕ってるんだな。まあ、気持ちはわかる、すごく)
おやびん「今後、男さんから直線的に金を請求することは許さねェ。
その代わり、テメェには男さんの借金分コーヒーを男さんの家で飲むという役目を与える」
女借金取り「……!!ありがとうございます!おやびんっ!」
男(……ありがとう?う、嬉しいのか?
俺の家に毎日来なきゃいけないのに……?)
おやびん「いや、手荒な真似で呼び出してすまなかった。
男組合員!男さんを家まで送って差し上げろ」
男「そ、そそそんな!申し訳ないですよ!」
男組合員「はっ!」
ブロロロロ……
男組合員「到着ですぜ」
男「あ、ありがとうございました……わざわざ」
男組合員「気にする必要はありませんで。
形式は特殊だが、今やあなたは組の人間の一部と言っていい。
どうか女借金取りをよろしくお願いします」
男「ア、アハハ……」
女借金取り「か、勝手なこと言ってんじゃねェ!!!」
男(あ……やっとしゃべった)
男組合員「ハッハッハ」
女借金取り「そ、その、よ……」
男「は、はい……」
女借金取り「……ま、また明日も、来るからな!!」
男「よろしくお願いします……」
キリいいし終わり
すまん
これからラブラブになるのを期待したのに
久々に楽しませてもらった
いい感じに落ちがついたな
面白かったぜ
またなんかスレたてて書いてくれ
良い物を見させてもらった
Entry ⇒ 2012.03.03 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
女「どうせ、一人寂しく過ごしてるんでしょ?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1329563778/
今日は、世間で言う大晦日というやつだ。
世間でなんて、まるで他人事のような言い方をしてはみたが、なにも俺が12月31日を、大晦日と呼んでいないと言うわけではない。
12月31日、それは俺からしたって、むしろ誰からしたって、大晦日は大晦日だろう。
ただ、誰からしたって大晦日は大晦日なわけだが、誰もが同じ大晦日なわけではないだろう。
俺が過ごす大晦日、他の人間が過ごす大晦日、同じ大晦日であっても、全く別の大晦日なのだ。
例えば、家族と過ごしたり、恋人と過ごしたり、友達と過ごしたりなど、その人によって様々だ。
今例えに出したのは、誰かと過ごす者であったが、それは大半の人間がそうであろうと思ったからだ。
一人で過ごす者もいるだろうが、それはたぶん少数だろう。
統計を取ったわけではないので、本当のところどうなのかはわからないが。
ただ俺が悲観して、そう思い込んでいるだけなのかもしれない。
・・・悲観して。
そう、俺は悲観している。
まあ散々周りくどく説明はしてきたが、ここまでのことを簡潔に説明するならば、
「俺は大晦日に一人でいる。」
ただそれだけ。
それだけの状況を説明するだけで、これだけ長くかかってしまったのは、俺がこの現実を受け入れるのが嫌だったからだろう。
なんてかっこよく振る舞ってみたものの、結局のところ、俺は寂しいだけなのだ。
大学に入って初めての大晦日。
そして、俺がこのアパートで一人暮らしを始めて、初めての大晦日。
悲しいことに、俺には恋人なんてものはいない。
さすがに友達はいるが、今日は声がかからなかった。
友達がいるからと言って、必ず大晦日に声がかかるわけではないだろう。
だからと言って、俺から友達に声をかけるとか、そんな積極性を俺は持ち合わせてはいないので、こうして一人、予定もなく家にいるのだ。
去年までは、予定がなくとも、半ば強制イベントでもあるかのように、家族と過ごしたりしていた。
ただ、今年は違う。
予定がないというのは、一人で過ごすと同義になってしまうのである。
大晦日なのだから、予定がなければ実家に帰ればいいんじゃないか?と思うかもしれない。
しかしそれは、貧乏学生の俺にとっては、難しいことなのだ。
俺が今住んでいるところは、実家のある田舎まで、新幹線で一時間半といったところだ。
さっきは難しいなんて言ったが、実際は難しくなんてないだろう。
帰ろうと思えばすぐ帰れるし、その分のお金がないわけでもない。
少しでもお金を残して、自分のお小遣いとして使いたいのだ。
言わば節約というやつである。
決してケチなわけではない。
これはあくまで節約なのだ。
男「・・・うん、節約」
まるで自分にそう言い聞かせるかのように、そう呟いた。
そう自分に言い聞かせなければ、男一人で大晦日を過ごすという寂しさ、虚しさが、どんどんとこみ上げてくるからだ。
・・・まあそう言い聞かせていること自体、とても虚しいことではあるような気がするけれども。
この虚しさを少しでも和らげようと、テレビをつける。
一通りチャンネルを回してみたが、どの番組も年越しの特番をやっていた。
芸能人たちが、ワイワイと楽しそうにしている様子が、テレビに映し出しされている。
男「はは・・・。大晦日の番組って、こんなにおもしろくなかったっけ」
去年までは、大晦日の番組は普段の番組と違うという理由で、どこか楽しみで、おもしろかったような気がする。
それが今は、ただただ虚しさがこみ上げてくるだけのような気がした。
しかし、ここでテレビを消しても、部屋が静かになるだけで、余計虚しくなるだけのような気がしたので、とりあえずそのままテレビを見ることにした。
男「はあ・・・。年明けまであと一時間ってとこか」
時計を見ると、時刻は夜の11時をまわっていた。
年が明けたからといって、なにが起こるというわけでもないのだが、とりあえず年が明けるまでは起きているつもりでいた。
ピンポーン
テレビの音しか聞こえないこの部屋に、突然無機質な機械音が鳴り響く。
男「こんな時間に、しかも大晦日に一体誰だ?ピザなんて頼んだ覚えはないけど・・・」
本当にピザの配達が来たのだと思ったわけではないが、そんなことを口に出してみた。
言ってみただけだ。
一人暮らしをしていると、自然と独り言も多くなってしまうものだ。
男「はいはーい。今開けまーす」
そう言って、俺は誰が来たのかを確認することもなく、ドアノブに手をかける。
多少無防備なような気もするが、男の一人暮らしなんてこんなものだろう。
これが若い女の子だったのなら、無防備すぎるとも思うが。
ガチャッ
男「どちらさまでしょ―」
言葉がそこで止まってしまう。
なぜなら、ドアの向こうにいたのは、よく見知った顔だったからだ。
いや、それだけの理由では、普通はこんな反応にはならないだろう。
俺がこんな反応をしてしまった理由は、よく見知った顔ではあるが、ここにいるのがおかしい人物であったからだ。
「久しぶり。来ちゃった」
いやいやいやいや。
来ちゃったじゃねえよ。
そんなこと、現実で言ってるやつ初めて見たから。
って重要なのは、そこではない。
男「なんで女がここにいるんだ・・・?」
実家から家も近く、いわゆる幼馴染というやつなのだろうか。
・・・なのだろうかなんて、そんな疑問めいた感じで言ってみたものの、特になにか深い意味があるわけではない。
ごめんなさい。
ただ単に、恥ずかしかっただけです。
この歳で幼馴染どうこうなんなんて、恥ずかしかっただけです。
正真正銘の幼馴染というやつだ。
女「どうせ、一人寂しく過ごしてるんでしょ?」
女「だから、私が来てあげたんだよ」
そう言って、女は部屋を見渡し、
女「・・・やっぱりね」
と呟いた。
男「いやいや、やっぱりってなんだよ!と言うより、そもそもなんでお前がこんな所にいるんだよ!」
それは、こいつが小、中、高と一緒だった、地元の幼馴染だからである。
さすがに大学までは一緒ではない。
こいつは、高校を卒業したあと、地元を出て、都会の大学へと進学したはずだ。
まあここも地元に比べれば、十分都会ではあるのだが、それよりももっと都会。
俺よりも、地元より遠いところに行ったはずだ。
その女がどうしてここに?
女「久しぶりに会ったのに、その言い方酷いよ!」
久しぶり、その通りだ。
俺は高校を卒業してから、女と会うどころか、連絡すらろくにとっていなかった。
なのでもちろん、俺の住んでいるアパートの場所だって、教えた覚えはないのだ。
いくら幼馴染と言えど、住むところが別になってしまえば、そんなものだろう。
実際、地元では俺達は仲が良かった。
むしろ、仲が良すぎるくらいだったのだろう。
二人でいることが多かったので、よく付き合っているものだと、勘違いされていたくらいだ。
実際はそんなことはなく、俺と女が付き合うことはなかった。
いや、形にしてして付き合うことはなかったものの、実際は付き合っているのと同じだったのかもしれない。
俺は女のことを嫌いではなかったし、女も俺のことを嫌いではなかった。
・・・嫌いではなかったなんて、じゃあ好きでもなかったのかよ、なんて言われそうだが。
自分で言うのもなんだが、俺は恥ずかしかったりすると、少し見栄を張るくせがある。
ごめんなさい。
見栄を張らずに、正確に言うのであれば、俺達はお互い好きあっていたのだ。
両想いというやつだ。
俺から女に好きだなんて言ったこともないし、女から好きだなんて言われたこともない。
じゃあお前の片思いだろ!変な妄想してんじゃねえよ!
と思うかもしれないけれど、というより、大半がそう思うだろうけれど。
しかし、俺達は両想いだった、と俺は断定できる。
なにかそう断定出来る、確たる理由があるわけではないのだが、俺にはわかるのだ。
なんでわかるんだよと言われても、わかるものはわかるのだから、そうとしか言いようがない。
それは女も同じだろう。
女も、俺が女のことを好きだったことなんて、わかっていたはずだ。
しかし、俺達はそれを、お互い口にすることはなかった。
ではなぜ、俺達は両想いだとわかっていて、お互いそれを口にはしなかったのか。
簡単なことだ。
この微妙な距離感が、俺達にとって、とてもいい距離感だったというだけだ。
ごめんなさい。
まあ見栄を張ったと言っても、嘘をついたと言うわけではない。
確かに、この微妙な距離感が、俺達にとっていい距離感だった、というのは本当だが、所詮それは後付けでしかない。
ただ単に、俺は女との関係が崩れるのが怖かっただけだ。
あまり女に近づきすぎて、俺達の関係を崩したくはなかった。
それならば、このままの距離感を保っていた方がいいだろうと、俺は思っていたのだ。
よく、友達以上恋人未満なんて言葉を聞くが、まさしく俺達は、それだったのかもしれない。
まあそれは、今となっては昔のことだ。
今さら女に好きとか嫌いとか、そういう感情を持ってはいない。
というより、全然連絡もとっていなかったので、そんな感情は、忘れてしまっていたのだろう。
それなのに、今ここに、こうして女が俺の前にいることが、不思議でしょうがなかった。
女「あー、そういうことか」
そういうことかって、むしろそれ以外になにがあるんだか、俺は聞いてみたい。
しかしここでそんなツッコミをしたならば、いつになっても本題を聞くことが出来なくなると思ったので、俺は我慢する。
女「男が一人で寂しそうにしてると思ったから、来たんだよ?」
男「そうじゃねえよ!!」
・・・ツッコんでしまった。
我慢していたこともあって、なかなかキレのあるツッコミだったと思う。
自画自賛だ。
そうでもしなければ、やってられない。
俺はため息をつき、少し気持ちを落ち着かせる。
男「それはさっきも聞いたよ。こうなったら、一つずつ疑問点を解決していこう。OK?」
女「OK!」
男「じゃあまず一つ・・・っとその前に、そういえばここ玄関だったな」
そう言って、俺は自分達がまだ玄関で話していたことに気付いた。
玄関で長話もなんだろう。
これが全く知らない相手ならともかく、こいつは幼馴染だ。
部屋にあげることに、特に躊躇はない。
男「とりあえずあがれよ」
女「ありがとう」
なので俺は、ひとまず女を部屋にあげてから、詳しい話を聞くことにした。
男「まあな。というより、物がないだけだけどな」
女「ふーん」
そんな声をだしながら、女は部屋を見渡す。
あまりジロジロと見ないでほしい。
そんなに見られると、さすがに俺も恥ずかしくなってくる。
女「あ!それより、台所借りてもいい?」
男「台所?」
女「うん!やっぱり大晦日って言ったら、年越しそばでしょ!」
まあ確かにその通りだろう。
俺も年越しそばは食べるつもりでいたので、準備はしていたのだ。
まあカップ麺のものではあるが。
女「うん!」
そう言うと、女はゴソゴソと、自分で持ってきた荷物から、なにかを取り出す。
女「じゃーん!」
男「おお。年越しそばの材料か。準備いいな」
女「まあね!だから台所使っていい?」
男「まあ別にそれはかまわないけど・・・」
年越しそばを作ってくれるというのなら、それは是非ともよろしくお願いしますと言うところだ。
カップ麺で年を越すくらいなら、手作りの年越しそばで、年を越した方がいいに決まっている。
だから台所を貸すことについては、なんの問題もない。
貸すことについては、だ。
問題なのは、
男「まだ疑問点を解決していない!」
というところだ。
男「いいけど・・・」
女「じゃあ台所借りるね」
そう言って女は台所の方に向かい、料理を始めた。
なんだか俺以外の人間が、この部屋で料理をしているなんて、とても不思議な光景のように思える。
男「じゃあとりあえず一つ目」
俺は料理をしている女の背中にむけて声をかける。
料理をしている人にむけて、手伝うわけでもなく、ただ質問をなげかけているだけだなんて、少し罪悪感のような気まずさを感じはしたが、仕方ないだろう。
女がそうしろと言ったわけだし。
男「なんで俺の住んでるところを知ってるんだ?」
女「それはおばさんから聞いたからだよ」
男「母さんから?」
なんでそこで俺の実家に電話するんだよ。
なにか、色々と間違っていると思うのだが。
女「そしておばさんに聞いたら、男が帰って来ないって意地張ってるって言うから、なら私が様子を見に行きますってなったわけ」
男「なったわけ。って全然意味がわからねえよ!なんでそうなるんだよ!」
というより、そもそも俺は意地を張って帰らないと言っていたわけではない!
あくまで節約のためだ!
・・・節約のためだ!
女「そうは言うけど、おばさん男のこと心配してたよ?全然帰ってこないし、それどころか連絡すらくれないって」
男「まあそれは悪いとは思ってるけど・・・」
女「だから、私が様子を見てくるので安心してくださいって話になったの。それならおばさんも、少しは安心だって言ってくれたから」
つまり、母さんが俺を心配していたから、代わりに女が来たというわけか。
どうやら俺は、母さんにも女にも、迷惑をかけてしまったようだ。
なんだか突然、申し訳ないような気持ちでいっぱいになる。
男「でもそう言うことなら、なんで来る前に俺に連絡しなかったんだ?俺に予定があって、この部屋にいなかったら大変だったろ?」
女「それは大丈夫!」
男「大丈夫?」
自信満々といった感じだ。
それこそ、津波でも押し寄せてくるんじゃないかと思うほど、溢れんばかりの自信がある、といった感じだ。
実家にも、そこまでは言っていなかったはずだけれど・・・。
女「男が一人寂しく家にいる姿が、容易に想像出来たからね」
男「ただの予想!?」
女「というより、むしろその姿しか浮かばなかったよ」
男「失礼!」
ただの予想だけで、女はあそこまで自信ありげにしていたっていうのか!?
そこまで自信たっぷりに、一人だと思われる俺って・・・。
女「男って友達いないの?」
男「いるよ!というか、もう俺を傷つけるのはやめて!」
これ以上は、俺の繊細な心がもたないから!
男「え?」
冗談?
よかった・・・。
大晦日に、一人でいる姿しか想像出来ないような、そんな人間に思われているなんて、とてもじゃないが悲しすぎる。
女「さすがに、友達がいないわけはないよね!」
男「そこ!?」
女「え・・・?本当にいなかったの・・・?」
男「いや、そうじゃないから!そういうつもりで言ったわけじゃないから!」
だから、そんな哀れみの目で俺を見るのはやめてくれ!
友達は本当に、ちゃんといるから!
というか、俺が一人でいる姿しか想像出来ないって言うのは、冗談じゃなかったのかよ!
男「どうせってなんだよ。勝手に決め付けんなよ」
女「じゃあいるの?」
男「・・・いないけど」
女「だろうね」
男「だろうねってなんだよ!」
女と話していると、本当に疲れる。
でもその反面、なにか癒されるような、居心地がいいような、そんな不思議な気分になるのも事実だ。
俺は昔から、女といるこの雰囲気が、好きだったのだ。
女「どっちだと思う?」
男「なんで質問に質問で返してくるんだよ・・・。というか、どっちもなにも、初めから彼氏いないんだろ?って聞いてるだろ?」
女「ふふっ。ご想像にお任せします」
男「え・・・?もしかしているのか・・・?」
ドクンと、心臓が高鳴ったような気がした。
女の意味深な言い方に、動揺してしまったのだろうか。
もし彼氏がいたところで、今さら俺には関係のないことのはずなのに。
女「いるわけないじゃん。もうちょっと考えようよ」
男「ってじゃあ最初からそう言えよ!少し焦っただろ!」
女「焦った?」
男「あ・・・」
つまり、これが俺の本音なのであろう。
俺はいまだに、女が好きなのだ。
考えてもみれば、当然であろう。
俺はただ単に、しばらく会ってもいなかった女への想いを、忘れていただけなのだ。
忘れていただけで、無くしていたわけではない。
それを久しぶりに女に会って、女への想いを見つけ出して、思い出しただけ。
女「ふふっ。でも私もちょっと安心したかな」
男「え?それってどういう―」
女「出来た!年越しそば完成だよ!」
どうやら年越しそばが、出来あがったようだった。
どうだ!と言わんばかりの勢いで、女は俺のことを見ながら声をあげる。
その声に、俺の疑問の声はかき消されてしまった。
男「ああ・・・。そうだな」
そう言って、俺達はそばを持って、テーブルを囲むように座る。
テーブルなんて言ってはみたが、所謂こたつだ。
冬を乗り切る為には、このこたつという物は、欠かせないアイテムである。
これさえあれば、他の暖房器具はいらないと言ってもいい。
・・・なんて、また見栄を張ってしまった。
いくらこたつがあっても、他の暖房器具がいらないなんてことはないだろう。
ただ、見栄を張ったのではあるのだが、これは事実でもある。
どういうことかというと、俺の家には、こたつ以外の暖房器具がないのである。
こたつがあるから他の暖房器具なんていらない、と思ってそうしているのではなく、節約の為にそうしているだけだ。
ケチなのではなく、節約をしているだけだ。
俺は倹約家なのだ。
女「さっきから思ってたんだけど、男の部屋って寒いよね?ファンヒーターとかってないの?」
と、女が聞いてきた。
なんてタイムリーな質問なんだ。
こいつは俺の心が読めるのか?
などと一瞬思ったが、俺の部屋は冗談抜きで寒いのだ。
その寒さゆえに、純粋に出てきた疑問なのだろう。
男「残念ながらこたつしかないよ。賢く節約ってやつかな?」
女「ふーん。部屋だけじゃなくて、懐まで寒いんだ」
余計なお世話だ!
別にお金がないんじゃなくて、節約してるだけなんだって!
男「はいはい。寒くて悪かったですね。ったく・・・いただきます」
一々こいつの言葉には、棘があるような気がする。
まあそれは、女が俺に心を許しているという表れなのだろうけど。
というより、そうでなければ俺が不憫すぎる。
ズルッ
男「うまい・・・」
女「本当に!?よかったー」
女は、俺が食べるのをジッと見つめていたようで、俺のうまいと言う言葉を聞くと、とても嬉しそうに笑顔をむけた。
そして一通り喜んだあと、女もいただきますと、笑顔でそばを食べ始めた。
それにしても、本当においしい。
女ってこんなに料理うまかったっけ?
女「まあね。でもまだ、レパートリーは年越しそばしかないんだけどね」
男「少なっ!」
というか、それを果たしてレパートリーと言っていいのか!?
レパートリーもなにも、年越しそば限定じゃねえか!
作れるのが、年越しそば限定ってなんだよ!
そんな奴、日本中を探したってなかなか見つからねえよ!
・・・・・・たぶん。
男「それにしても、なんで年越しそばなんだ?他にも色々と料理はあるだろ。なにも、こんな大晦日にしか食べないような料理を、わざわざ最初に勉強しなくても・・・」
女「大晦日にしか食べないからだよ」
男「え?」
女「それじゃちょっと違うか。どちらかと言うと、大晦日に食べるから、かな」
大晦日には、年越しそばを絶対食べなければいけないとか、そういうことなのだろうか。
昔から女はそうだったか?
そんな記憶はなかったと思うけど・・・。
女「・・・ばーか」
男「いきなりばか呼ばわり!?この流れで!?」
女「この流れだからだよ。なんでわからないかな・・・。そんなことだから、彼女できないんだよ」
男「なっ・・・!できないんじゃなくて、作らないんだよ!」
女「また強がり?男はすぐ見栄張るからね」
さすが幼馴染。
よくご存知でらっしゃる。
でもこれは見栄を張っているわけではない。
本当に作らないんだ。
男「俺はお前のことがっ・・・!」
女「え・・・?わ・・・私のことが・・・?」
男「うっ・・・・・えっと・・・・・・し、心配!そう!心配だからだよ!」
―心配だから。
そんな訳がない。
そんな訳のわからない理由の訳がない。
でもやっぱり俺には、本当のことを言う勇気がない。
女「え?心配?」
そんな俺の言葉に、女はキョトンとした顔をしている。
当然だろう。
自分でも、自分の発言にキョトンとしているのだ。
それでも俺は、訳のわからない言い分けのようなことを、続けてしまう。
本当に訳がわからない。
テンパっているにしても、もっとマシな言い訳があるだろう・・・。
女「本当にばーか・・・」
男「・・・うるせえよ」
俺がばかなのくらいわかってるよ。
結局、昔から俺はなにも変わっていない。
ばかで、見栄っ張りで、そして臆病だ。
そんな自分に嫌気がさす。
男「・・・」
女「・・・」
沈黙が続く。
俺のばかな発言によって、突然気まずくなってしまったのだ。
そんなことを考えると、どんどんと自己嫌悪に陥ってしまい、益々気まずさが加速してしまう。
『新年まで、残り10秒を切りました!』
すると、突然テレビから、もう少しで今年も終わるという知らせが聞こえてきた。
『5、4、3、2、1!』
『新年明けましておめでとうございます!』
年越しまでのカウントダウンがなされ、新年がおとずれる。
この部屋とは対照的に、テレビの中では、とても盛り上がっている様子だった。
女「年・・・明けちゃったね」
男「そうだな・・・」
男「なんで今年『は』なんだよ」
そこは今年もだろ。
去年だって、一昨年だって、その前の年だって、ずっとずっとよろしくしてきただろ。
女「じゃあ・・・今年こそはよろしくお願いします」
男「今年こそは・・・」
・・・。
本当に俺はばかなやつだ。
そして、お前もばかなやつだよ。
男「こちらこそ、今年こそはよろしくお願いします」
女「・・・男がそれ言うの?なんかずるいよ」
ずるい。
確かにそうかもしれない。
しかし、変わらないけど、変われはする。
男「先に言ったのはそっちだろ?これでおあいこだ」
女「むー」
女は頬を膨らませ、機嫌が悪そうに、俺を睨みつけている。
怒っているのをアピールしているのだろうが、全く怖くはない。
それどころか、女のその顔を見て、俺は別のことを思ってしまった。
男「かわいい顔してるぞ」
女「なっ・・・!」
今度は顔を真っ赤にさせ、目をパチクリとさせている。
表情豊かなやつだな。
色々な顔が見れて、ずっと見ていても飽きなさそうだ。
しかし、俺は唐突に初詣を提案する。
女の顔をずっと見ているのも、楽しそうだとは思ったが、やはり、正月と言ったら初詣だろう。
女「・・・初詣?」
男「ああ。ここから少し行ったところに、神社があるんだ」
新年明けて早々、こんなに早い時間から初詣に行った経験があまりないので、これから行くと考えただけで、少し心が躍ってしまう。
まあそもそも、初詣は心躍らせて行くようなものではないのだろうけど。
女「ちょっと待って!」
俺が初詣に行く準備を始めようと立ち上がると、突然女が声をあげ、俺の腕をつかんだ。
女「その前に、どうしても男に言いたいことがあるの!」
その表情を見れば、さすがにばかな俺でも、なにか大事な話があるということくらいわかる。
そのくらい、女は真剣な表情をしていた。
女「さっき、彼女ができないんじゃなくて、作らないって言ったよね?作らないって言うのは、見栄じゃなくて本当だとしても、できないんじゃなくてってところは、やっぱり見栄だよね?作ろうと思っても、できないでしょ?」
男「ぶっっ!!そこつっこむかよ!!」
確かに見栄張ったかもしれないけどさあ!
というか、ここぞとばかりにかっこつけて、見栄張りましたけどもさあ!
男「それって今改めて言うことか!?」
女「うわー・・・凄いね」
男「・・・ああ。こんなに人がいるとはな・・・」
俺達は、近くの神社に来ていた。
この辺では、それなりに有名な神社らしく、初詣といえばここらしい。
なにが有名で、なぜ初詣といえばここなのかはわからないが、そんなものだろう。
こんなにも人が集まってはいるが、この中で、この神社についてちゃんと説明できる人なんて、ごくわずかしかいないだろう。
それどころか、ここにいる人達の中で、この神社に参拝に来るのは、初詣だけだと言う人がほとんどではないだろうか。
正月だから、とりあえず初詣にでも行っておこう。と言うだけで来ている人達が、ほとんどだろう。
そんな形だけの初詣に、もはや意味なんてあるのかわからないが、まあ俺もそんなことをとやかく言える立場ではない。
かく言う俺も、そういう人達の中の一人なわけだから。
男「やめろ!その発言は色々とアウトだから!」
なにがアウトだかは言わないが、アウトだ!
そうじゃなくとも、周りの人達をゴミ呼ばわりするのはやめろ!
こっちを睨んでいる人達がいるじゃないか!
女「ワロス!!」
男「惜しい!呪文を唱えようとしたんだろうけど、なにかが違う!」
そして、それじゃ余計周りの人達を煽っているように聞こえるからやめて!
周りの人達のこっちを見る目が、全然ワロエナイから!
とりあえずこの場から逃げ出さないと、周りの目が気まずい・・・。
男「ほら行くぞ!」
この場から逃げ出すために、俺は女の手をとり、視界の奥の方に見える、列の最後尾の方へと向かった。
男「ん?あっ・・・ごめん!」
慌てて手を離す。
焦っていたとはとはいえ、とっさに女の手を握っていたことに気づいたからだ。
女もいきなり手を握られたことに対して、声を出してしまったのだろう。
女「手が、手がぁー!」
男「ってそれが言いたかっただけかよ!もうそのネタはいいから!」
そしてその発言、何気に傷つくから!
俺に手を握られたら、手がどうなるって言うんだよ!
ちょっと照れちまった俺の純情を返せ!
女「ごめんごめん」
女は、あまり申し訳なくなさそうに謝る。
嘘でも、もう少し申し訳ないという気持ちをだしてもいいと思う。
と、今度は少し恥ずかしそうに、自分の手を差し出してきた。
男「え?」
女「・・・ばか」
そう言った女の顔は、この寒さのせいなのか、恥ずかしさからなのかはわからないが、少し赤みがかかっていた。
もう一度手を握れと言うことなのだろう。
それにしても、この上目遣いは反則だ。
ただでさえ、手を握るということだけで、ドキドキしてしまうのに、その表情で尚更ドキドキしてしまう。
俺は今、心音が外に聞こえてしまうのではないかと言うくらい、心臓がフル回転している。
男「ああ・・・ごめん。ちょっと待って」
女「三分間待ってやる!」
男「・・・」
今から並び始めて、参拝できるまで、あとどれくらいかかるのだろう。
気が遠くなりそうだ。
女「ごめん待ってよー!三分間じゃなくて、五分間でもいいから!」
最後尾に並び始めた俺のもとへ、慌てて女が駆け寄ってくる。
なにか見当違いなことを言っているような気がするが、気にしない。
こうなると、気にしたら負けだと思う。
女「ごめん冗談だから。今度こそ手をつなご?」
男「もういいよ。そもそも、もう最後尾まで来たわけだし、手をつなぐ必要もないだろ」
そう言って、俺は自分が着ていたダウンジャケットのポケットに、手をつっこむ。
散々からかわれた俺の、小さな仕返しのつもりだ。
女「むー・・・こうなったらこうだ!」
男「ちょっ!おまっ!」
小さなポケットの中で、女の小さな手のぬくもりが伝わってくる。
女「へへ。男の手暖かい」
男「・・・ったく。はぐれないように握っててやるよ」
そう言って、俺はポケットの中で、女の手を握った。
俺も甘いやつだ。
散々からかわれたあげく、最後にはこうやって、女の言うがままに手を握ってしまうのだから。
いや・・・これも見栄なのだろう。
女の言うがままになんて言ったけれど、俺が女の手を握りたかっただけなのだから。
男「お前の手、暖かいな」
男「知ってるか?手が暖かいのは、子供らしいぞ」
少しからかってみる。
女の思惑通りに、こうやって手を握ることになってしまったことが、少し癪だったからだ。
男「なんで!?」
今の発言のどこに、ロリコン要素があったって言うんだ!?
今の発言だけでロリコンって、随分ロリコンのハードルって下がったんだな!
女「男の部屋に、自作のロリコン検定1級の賞状があったから、まさかとは思ってたけど・・・」
男「そんなのねえよ!あらぬ誤解を招くからやめろ!」
とんでもねえ話だ!
そんなの自作するわけねえだろ!
自分の名前が入ったロリコン検定1級の賞状を、ニヤニヤしながら作ってる自分の姿を想像しちまったよ!
そんなの自作してたら、まさかどころか、完璧にアウトだろ!
正真正銘そっち側の人間だ!
女「・・・ごめん・・・機嫌そこねた・・・?」
女は途中までなにかを言いかけたかと思うと、今度は申し訳なさそうに謝ってきた。
自分がとんでもない話をしていることに、気づいたのだろうか。
嘘の話まで作って、俺をロリコンに仕立て上げようとするとは、本当にとんでもない話だ。
まあ俺は、女のこういうことには慣れているから、一々そんなことでは怒らないけども。
男「いや、別にいいけど・・・」
女「よかった・・・。女の子なんて言ったから、機嫌そこねたかと思って・・・」
男「?」
女の子なんて言ったから?
・・・なぜだろう。
なんだか話がかみ合っていないよう気がする・・・。
男「幼女!?」
こいつ女の子を幼女に言い換えやがった!
幼女ではなく、女の子と言ったことに、俺が怒ったとでも思ったってことか!?
女「ロリコンの人は、女の子って言うより幼女って言ったほうがいいのかなって」
男「知らねえよ!」
俺はロリコンじゃないから、そんなこだわりはない!
そもそも、ロリコンの人にそんなこだわりがあるのかよ!
それこそ女の作り話じゃないのか?
女「まあ恒例の男の見栄張りはおいといて、」
そこは見栄じゃねえ!
本当に俺はそんなの知らないんだって!
女「男はあの子かわいいと思う?」
そこには、お父さんとお母さんと娘だと思われる、三人家族がいた。
見た感じ、娘は小学生にあがるかあがらないかといったくらいの年だろうか。
女はあの子のことを、かわいいと思うか聞いているのだろう。
男「かわいいと思うよ」
素直に感想を述べる。
俺は子供が嫌いなわけではないので、素直にかわいいと思った。
女「・・・」
男「そこで黙るなよ!別に変な意味はないから!」
純粋に、子供としてかわいいと思っただけだ。
女「じゃあ、ああいう子好き?嫌い?」
その聞き方、なにか悪意があるとしか思えない。
だいたいなんで二択なんだよ。
好きか嫌いかの二択であれば、選択肢は一つしかないようなものだろう。
女「うわー・・・幼女が好きって公言しちゃったよ・・・」
男「違うっていうの!そしてその幼女がって言うのやめろ!」
幼女って言い方だけで、途端に危ない臭いが増す!
幼女好きとか、その言葉だけでお巡りさんが動き出しそうだ。
女「幼女って言うのをやめようじょ」
男「・・・」
そんな馬鹿な話をしながら、俺達の順番が来るのを待っていた。
周囲から、蔑むような目で見られていたことは、言うまでもないだろう。
特に子連れの親に。
もとい、幼女連れの親に。
女「やっとお参り出来たね」
男「ああ。色々と疲れたけどな」
俺達は、相当な時間がかかってはしまったが、無事に参拝を済ませることができた。
並ぶのにも、あれから続いた女との馬鹿な話にも、ダブルで疲れてしまって、疲労感マックスではあるが。
女「男はなにをお願いしたの?」
男「お願い?そんなのしたかなー」
とぼけてみる。
まあこういうところでは、しっかりとお願いをする俺なのだ。
お願いが、初詣の醍醐味と言っても過言ではないと、俺は思っている。
でもお願いの内容を、女には言いたくない。
言わない。
言えない。
男「そんなお願いしねえよ!」
いつまでそれを引っ張るんだ!
お前はどうしても俺をロリコンに仕立て上げたいのかよ!
そんな馬鹿みたいなお願いをするわけないだろ。
男「お願いは、人に言うと叶わなくなるんだよ。だから秘密だ」
女「えー」
女はつまらないといった風に、むすっとした顔をしている。
女がなにをお願いしたのか、少し気にはなったが、自分でこう言ってしまった手前、聞くことはできないだろう。
なので、別の話題をだしてこの話を終わらせる。
女「おみくじやりたい!男には絶対負けないから!」
男「負けないって、おみくじは勝ち負けを競うものじゃないだろ・・・」
そんなことを話しながら、俺達はおみくじをするために、移動することにした。
女が異様に張り切っているみたいだったが、そういう奴に限って悪い結果しか出ないんだよ。
ご愁傷様。
・・・
おみくじをやっている所まで来た俺達は、早速おみくじを引くところだった。
女「えい!」
女が勢いよくおみくじを引く。
そんなに勢いをつけたって、結果は変わらないだろう。
女「やったー!大吉!」
喜びを体全体で表しながら、はしゃいでいる。
どうやら女は大吉だったらしい。
俺の予想は外れてしまったようだ。
まあこういう時もあるだろう。
悪い方に外れたのではなく、良い方に外れたのだから、よかっただろう。
男「こんなのどれでも変わらねえよ」
とりあえず手についたものを引く。
時間をかけて選んだところで、中身がわかるわけではないのだから、どれを選んでも一緒だろう。
おみくじなんて、結局は自分の運に任せるしかない。
男「どれどれ・・・」
そして俺は、おみくじの結果を確認する。
男「なん・・・だと・・・?」
うまく伝えることが出来ないかもしれないが、
『大凶』
そんな風に見えなくもない。
なんせ、俺はこんな字を見たことがないので、なんて読むのかもわからない。
だい・・・きち・・・?
最近の大吉は、こういう字を書くのだろうか?
まったく困ったものだ。
『だいきち』なら大吉と書いて欲しい。
これが近代化というやつなのだろうか。
男「うるせえよ!勝手に人の見るなよ!」
・・・ああそうですよ。
そうですとも。
そんなのわかっていましたとも。
こんなのが、近代化な訳がない。
『だいきち』と読める訳がない。
どう見ても『だいきょう』です。
本当にありがとうございました。
女「DA☆I☆KYO☆U」
男「なんかいらつくからその言い方やめろ」
男「またってなんだよ。俺は他にいつ負けたんだよ」
女「敗北を知りたい」
男「くっ・・・」
なんという屈辱だ・・・。
おみくじは勝ち負けじゃないはずなのに・・・。
別に負けたとかではないはずなのに・・・。
しかしこの、滲み出る敗北感の様なものは一体なんなんだ・・・。
まさかこの俺が大凶とは・・・・。
っ!
ふっ、なるほどな。
そういうことか。
女「奴ら?」
エンジェルス・ノティス
男「ああ。これは機関による陰謀だったんだ!大吉の力によって、俺の秘められし力が覚醒することを恐れた、機関による陰謀だったんだよ!」
女「痛い!痛いよ男!エンなんとかとか言っちゃってるけど、所詮大吉の力だからね!?大吉の力で目覚めるとか、なかなかのかっこわるさだよ!?」
男「近づくな!!俺の秘められし力の覚醒に伴う暴走に、巻き込まれたいのか!?」
女「秘められし力は、大吉の力で覚醒するんじゃなかったの!?男は大凶だよ!?早くも設定ミスだよ!」
男「あっ」
女「そして周囲から浴びせられる痛い目に、すでに私は巻き込まれてるよ!」
男「うっ・・・」
冷静になって周りを見てみると、痛い目の集中砲火のようになっていた。
ちょっとふざけてみたつもりが、本気になりすぎてしまったらしい。
・・・恥ずかしい。
男「申し訳ない」
女「まあ子供達は楽しそうに、こっちを見てるけど・・・」
周りを見渡すと、大人達は相変わらず残念そうな目でこちらを見ていたが、子供達は目をキラキラと輝かせてこちらを見ていた。
どうやら子供達にはうけたらしい。
俺はこの子供達と、同じレベルということか・・・。
女「でも見てるのは男の子ばっかりで、男が大好きな幼女は見てないけどね」
男「男の子だけでもいいよ!」
幼女に見られたいなんて願望ないから!
むしろ男の子でも女の子でも、俺を見ないでほしい。
残念な大人をそっとしておいてほしい。
女「え・・・?ロリコンでショタコンなの・・・?」
男「そうじゃねえ!」
俺のキャラがわからなくなるから、これ以上はもうやめろ!
俺は至ってノーマルだ!
要は考え方次第、ってだけの話だけど
女「ああ、男が大凶を引いたって話ね」
男「くっ・・・」
そういえば俺は大凶を引いたんだった・・・。
またこの話をぶり返すのは失敗だったぜ・・・。
男「で・・・でも、考えてもみれば、逆に大凶を引くなんて凄いことだよな?こういうのって、大吉より大凶の方が少ないらしいぞ?」
女「ふーん。男がそれで納得するならいいんじゃない?大凶には変わりないけど」
男「くっ・・・」
なんというこだ・・・。
自分でフォローをいれたつもりなのに、逆に惨めな気持ちにさせられてしまった。
恐るべき大凶パワー。
男「なんだよ。自慢かよ」
女「そういうことじゃなくて、私がいつも男のそばにいてあげるってこと。私の大吉パワーで、男の大凶パワーを打ち消してあげるから」
男「あ、ああ・・・」
確かにその考えはありかもしれないけど、いつもそばにいてあげるって・・・。
こいつはたまにさらっと恥ずかしいことを言うよな。
そもそも、そんなの無理だろ。
お互い住んでいるところも違うわけだし。
・・・付き合っているわけでもないし。
でもそれを口には出さない。
否定はしない。
否定はしたくない。
だから俺は、そこには触れないで、別のところに論点をもっていく。
女「そっか・・・」
そう言った女の表情は、どこか残念そうだった。
それは俺が話に触れなかったことに対してなのか、女の大吉パワーを打ち消してしまうと言ったことに対してなのかはわからないが。
女「じゃあ勝負だね!」
残念そうにしていた顔から一変、今度は楽しそうな顔をむける。
本当にこいつは、コロコロと表情が変わるやつだ。
男「勝負?」
女「私の大吉パワーが勝つか、男の大凶パワーが勝つか、勝負!」
男「また勝負か・・・」
しかし、こんなにも勝ちたくないと思った勝負も珍しい。
どうか俺の不戦敗にしていただきたい。
女「やる気でてきたでしょ!」
男「でねえよ」
そもそも、俺がやる気をだしたところで、勝てるとかそういう話じゃないだろ。
俺のやる気に呼応して、大凶パワーも力が増すのかよ。
今まさに、とんでもないペアリングが、完成されようとしているようだ。
男「そんなことより、次は初日の出でも見に行こうぜ」
とんでもないペアリングが完成されてしまう前に、俺は別の話題を振ることにした。
参拝までの待ち時間やおみくじやらで、すでに結構な時間が経ってしまっている。
こんな時間になってしまったのなら、もう少し待てば初日の出も拝めるだろう。
男「それはよかった。初日の出は、いつもの日の出と違って、美しさが格別なんだぜ?」
女「そうなんだー!楽しみ!」
まあ俺も初日の出なんて、見たことないんだけど。
でもこういうのは気持ちの問題だろう。
きっと、初日の出補正がかかって、綺麗に見えるはずだ。
男「よし。じゃあ見に行こう!」
女「うん!」
男「あともう少しで日の出だな・・・」
女「そうだね。楽しみ」
俺達はさっきの神社から少し歩いて、日の出が綺麗に見える、丘のようになっている場所に来ていた。
周りには、ちらほらと人が集まっている。
やはりここは、この辺ではそれなりに有名な、初日の出スポットなのだろう。
女「ちょっと寒いね・・・」
男「ああ・・・」
それもそうだろう。
日付が変わってから今まで、ずっと外にいるのだ。
どれだけ着込んでいても、やはり寒くなる。
女「・・・うん」
俺はそっと女の手を握る。
女は寒いと言っていたが、その手はとても温かい。
やっぱり子供なんじゃないか?なんて、心の中でクスッと笑う。
女「男の手あったかい。子供だね」
男「そうきたか・・・」
先手を取られてしまった。
ちなみにさっき俺が似たようなことを言った時は、ロリコンって言われたんだけど・・・。
男「お前の手もあったかいよ。俺達二人ともまだ子供なのかもな」
女「かもね」
そう言って、女はおかしそうにふふっと笑った。
男「それはお互い様だろ。お前も昔はかわいかったよ」
女「それって、今はかわいくないって意味?」
女は頬をぷくっと膨らませる。
指でつっつけば、割れてしまいそうだ。
男「今は・・・どうかな」
女「どうかなって曖昧!そういうところが、君達日本人の悪いところだよ!」
男「君達って、お前も日本人だろ。お前のそういうところは、昔から変わらないよな」
明るくて、ちょっとお調子者で、でもやさしくて。
いつも俺を気にかけてくれている。
今回だって、俺の為にわざわざここまで来てくれたんだ。
今も昔も、それは変わらない。
女「どうかな・・・。案外変わらないようで、変わっているのかも」
変わらないようで、変わっている、か・・・。
実際そうなのかもしれないな。
女も昔から変わらないと思ったけど、本当は変わっているのかもしれない。
いや、変わっているのだろう。
俺だって、昔から変わっていないわけではない。
いい意味でも、悪い意味でも、人は変わっていくものだ。
男「いつのまにか去年も終わって、今年にかわったもんな。俺達もそうやって、いつのまにか変わっていくんだろうな」
女「私達は年とは違うけどね」
・・・ごもっともな意見だな。
ちょっと雰囲気にのまれて、かっこつけすぎたかな・・・。
恥ずかしい・・・。
男「まあ大晦日で年が終わって、元旦から新しい年がくるからな」
そういう風に考えれば、俺達のかわるとは、全然違うものなのだろう。
所詮考え方の違いであって、そんなことを考えたところで、なんの意味もないのだろうけど。
そういえば、古い年が行って、新しい年が来るみたいな言葉あったよな・・・。
えっと・・・
男「ゆく年―」
女「さる年」
男「そこで去っちゃダメだろ!いつまで経っても年が来ねえよ!」
そこは行く年来る年だ。
行く年去る年とか、年が行ってそのまままた去るなんて、そんなの悲惨すぎるだろ。
男「申年?」
女「そう。年が行って、今度は申年が来るってこと」
あー、なるほど。
それなら年が行きっぱなしで、来ないということはないわけか。
ふむ、ひとまず安心だ。
男「って今年は申年じゃねえ!辰年だ!」
危うく騙されるところだった!
申年が来るのなんて、まだまだ先じゃないか。
女「じゃあ行く年辰年?」
男「もはや全く関係なくなっちゃったよ!」
それがありなら、もうなんでもありだろ。
十二支全てで成り立ってしまう。
全十二パターンを、一年ごとに使い分けるようだ。
そうなったら、もはや最初の行く年なんか取ってしまって、申年とか、辰年とか、そのままでよくなってしまうだろう。
女「でもさ、ゆく年くる年って、年の部分を人に変えたらなんか嫌な言葉だよね」
男「ん?行く人来る人ってことか?別に嫌な言葉だとは思わないけど」
別れがあって、新しい出会いがある。
そんな感じの意味に、捉えることが出来ると思う。
それは、特に嫌な言葉ではなく、むしろなにか良い言葉のような、そんな感じにさえ思える。
女「逝く人来る人って、どうなのかなって」
男「なんか重い!」
逝く人とかやめてくれ!
まあ人が逝って、新しい人が生まれて来ると考えれば、それは自然の摂理であって、確かにそうなのだけれども。
でも今までの展開から、話の重さが変わりすぎだろう。
女「まあそれは冗談として、行く人来る人って、行く年来る年と違って、必ずじゃないんだよね」
男「?」
女の言わんとしていることが、よく伝わってこない。
なにが必ずではないというのだろうか。
女「年って言うのは、必ず行くものだよね。そしてそれと同時に、年が行けば、必ず年が来るわけだよ」
男「えっとー・・・つまり、今年が終われば、次は必ず来年が来る、とかそういう意味か?」
女「うん。まあそういう意味だね。でも人って言うのは、必ず行って、必ず来るものじゃないと思うの」
男「・・・必ず行って、必ず来るものじゃない?」
女「つまり、わかり易く言い換えれば、人って言うのは、必ずしも別れがあって、必ずしも出会いがあるわけではないでしょ?年と違って、行く人を止めることは出来るし、来る人が来ないかもしれない」
そして、女は少し間をあけ、
女「・・・人は年と違って、別れたくなければ、別れなくていいんだよ」
と言った。
その顔はとても真剣な表情をしていて、でもどこか寂しそうで・・・。
女の表情も、そして俺達の間のなにかも、崩れてしまいそうな気がした。
男「女・・・」
それでわざわざ、俺のところに来たということか・・・。
俺の母さんが心配してたからなんて言ってたけど、結局は俺に会いたかっただけだったってことだ。
お前も俺に負けず劣らず見栄っ張りじゃないか・・・。
でもやっぱり、見栄っ張りでは俺の方が上だ。
男「俺も・・・寂しかった・・・」
男「本当は女に会いたくてしょうがなかったんだ・・・」
女が俺の家に来た時、なんでいるんだ?みたいなことを、平然な顔をして言ったが、あれは見栄だ。
内心嬉しくてしょうがなかった。
女への想いを忘れていて、それを思い出したなんて言ったが、あれも見栄だ。
思い出したもなにも、最初から忘れてなんていない。
全部、見栄だ。
俺の話は、見栄で固められた話だ。
もしかしたら、今までの話、ここまでの出来事、全部見栄だったのかもしれない。
常日頃から見栄を張っている俺には、それが見栄なのか、真実なのか、もはやわからなくなっているのかもしれない。
でも、そんなことはもうどうでもいい。
見栄を張るのは終わりだ。
ここからの話は全て、見栄ではなく、真実だ。
嘘偽りない―
いや、言うなれば見栄偽りない、真実の話。
俺の本当の気持ち。
男「女のことが好きだ!付きあってくれ!」
女「・・・・・・・・・」
沈黙。
女は俯いてなにも言わない。
このタイミングでの俺の発言は、失敗だったのだろうか・・・。
男「え!?泣き!?というかOK!?でも泣き!?」
喜んでいいの!?
でも泣いてる女の横で、俺だけ喜んでいいの!?
というより、なんで泣いてんの!?
女「だっで・・・やっと言ってくれて・・・」
女「嬉じぐて・・・」
男「わ、わかったから、とりあえず落ち着け。な?」
女「・・・うん」
俺も人のことを言えないくらい、落ち着いたほうがいい動揺っぷりだったように思えるが・・・。
でもまずは女が泣いているのを、どうにか落ち着かせようと、俺は必死にかける言葉を探す。
男「大丈夫だ。俺がそばにいてやるから」
女「うわーん!男にそばにいてあげるって言われたー!」
男「なんで更に泣くんだよ!」
さっきより号泣じゃないか。
必死にチョイスした言葉だったはずなのに、かける言葉を間違えたか?
女「男が・・・女心を全然わかってないからだよ・・・」
男「悪かったよ。頭撫でててやるから、少し落ち着け」
女「うわーん!男が頭撫でてくれるってー!」
男「いやだから本当落ち着けって!」
いい加減、周りがざわつき始めたから!
これじゃ俺が、女を泣かせたみたいじゃないか!
・・・まあ実際そうなんだろうけど。
でも頼むから、俺にも喜びの余韻に浸らせてくれ!
・・・
男「落ち着いたか?」
女「うん・・・。さっきはごめんね」
男「まあ別にかまわないけど・・・。」
あれから周りの目が気になって、仕方なかったけどな。
どこからともなく、「若いっていいなー」みたいな声が聞こえ始めたときは、恥ずかしくて逃げ出したかったよ。
女「やっと男からその言葉を聞けて、つい嬉しくなっちゃって・・・」
男「だからって泣くなよ・・・」
男「それは嘘だ!」
お前と初めて会ったのは、そんな昔の話じゃない!
もう少し成長してからだ!
女「むしろ前世から」
男「それも嘘だ!いや・・・でも本当なのか・・・?」
当たり前だが、俺に前世の記憶なんてものはない。
だからこいつに前世の記憶があるというのなら、俺に否定することはできない。
もしかしてこいつ、前世の記憶があるとでも・・・
女「そんなわけないじゃん。前世なんて知らないよ」
男「そりゃそうだ!」
前世なんてわかるわけねえよ!
そんなの覚えているなら、それこそ今更言うかよって話だ。
男「ごめん・・・。待たせちまったな」
女「本当だよ。前世の時からだから、かれこれ―」
男「もうそれはいいって!」
でもまあ、女が言うほど大袈裟な時間ではないが、この言葉を言うまでに時間がかかったのは事実だ。
それこそ、何年、十何年と。
女「そう言えば、私の初詣のお願い叶っちゃった」
男「俺もだよ」
初詣のお願い。
今更あえて言うことでもないので、なにをお願いしたかは言わないが、俺も女も願い事は一緒だったのだろう。
女「大吉パワーのおかげもあるのかな?」
エンジェルス・ノティス
男「大吉の力か!?」
女「ちがうよ」
男「・・・」
そう言いながら、女はおかしそうにふふっと笑う。
なんだかこいつ幸せそうだなあと思いながらも、俺は、
男「やなこと言うなよ・・・」
と、少し暗くなってしまう。
それが付き合い始めた彼氏に、彼女が言うことかよ。
私と付き合うことで不幸になるかもねって・・・。
女「冗談だよ。男の大凶パワーは私の大吉パワーに打ち消されちゃったんだよ」
男「だといいけど・・・」
女「きっとそうだよ。だから私の勝ち」
男「勝ち?」
そういえば、そんなことで女と勝負してたんだった。
全く勝つ気はなかったから、忘れてたけど。
女「だから罰ゲームとして、なんでも言うこと聞いてね?」
男「そんな罰ゲームあったか!?」
女「今作った」
男「理不尽!」
勝ってから罰ゲーム決めるとか、傲慢すぎるだろ!
まあ元から勝ちたくない勝負ではあったけども。
男「・・・で、罰ゲームってなんだよ?」
こういうときの女は、なにを言っても無駄だということを俺は知っているので、半ば諦めの様な感じで、罰ゲームの内容を促す。
こういうのは、さっさと済ませてしまった方がいいだろう。
あとから言われるのも面倒くさい。
男「へ?」
予想だにしなかった女の言葉に、俺は素っ頓狂な声をあげてしまう。
女「だからっ、私とずっと一緒にいてって言ったのっ!」
男「いや、それはわかったけど・・・。そんなことでいいのか?」
俺は思ったことを、素直に口にする。
女のことだからどうせ、「日の出と同時に俺はロリコンだーって大声で叫んで」とか、そういう理不尽な罰ゲームを言うものだとばかり思っていた。
それがこんな罰ゲームだなんて、一体どこの俺が予想しただろうか・・・。
女「そんなことって、私にとっては大事な事だもん!」
男「いやそういう意味じゃなくて、そんな簡単なことでいいのかって話。むしろ罰ゲームどころか、俺にとってはご褒美と言ってもいいくらいだぜ?」
女「っ!なんで男は、そんな恥ずかしいこと平気で言うかな!」
男「罰ゲームじゃなくても、最初からそうするつもりでいたからな」
女「あうぅ・・・」
まあ実は俺も、平気で言ってはいないんだけどな。
あんな臭いセリフ、言った後に火が噴き出そうな程恥ずかしくなってしまった・・・。
男「まああれだ。そんなこと罰ゲームで言われなくたって、俺はお前とずっと一緒にいるよ」
女「男・・・。ありがとう・・・」
男「そんな礼を言われることじゃないだろ」
むしろ俺からも、ずっと一緒にいてくださいとお願いしたっていいくらいだ。
まあそんなこと、恥ずかしいから言えないけども。
・・・でもよくよく考えてみれば、俺がさっき言った言葉も、十分恥ずかしいよな。
・・・。
やべー・・・超恥ずかしいんですけど・・・。
男「あ、ああ。当然だろ」
自分の言葉を思い出して、急に恥ずかしくなってしまった俺は、必死に平然を装うとする。
俺の顔、今真っ赤かも・・・。
女「それなら、罰ゲームは他のを考えないとね!」
男「っておい!なんでそんな話になるんだ!」
女「なにがいいかなー」
男「人の話を聞け!」
とんでもないやつだ。
一人で恥ずかしくなって、顔を真っ赤にしている場合じゃないぞ。
今度こそ、とんでもない理不尽な要求がくるはずだ・・・。
女「じゃあ、日の出と同時に俺はロリコンだーって大声で叫んで!」
男「やっぱりそうきたか!」
そんなところで、期待を裏切られなくても、なにも嬉しくないけれど。
女「なんて、冗談だよ。彼氏がそんなこと叫び始めたら、私が恥ずかしいもん」
男「彼氏じゃなかったら、よかったのかよ」
女「うん。男が私と付き合ってなかったら、言わせてた」
男「その基準がわかんねえ!」
彼氏でも彼氏じゃなくても、一緒にいるやつがそんなこと叫び始めたら、普通に恥ずかしいわ!
彼氏になっていなかったら叫ばされていたんだと思うと、改めて彼氏になれてよかったと思う。
いや、でも待て・・・。
もし彼氏にならなければ、そもそも罰ゲーム自体なかったわけで・・・。
女「馬鹿がなにかを必死に考えてる」
男「突然人を馬鹿呼ばわりするな!」
人が少し真剣に考えてるだけでこれだ。
あともう少しで、なにか真理のようなものに辿り着けるような気がしたのに。
男「こいつ・・・」
そんなこと言われたら、なにも言い返せないだろ。
こいつだって、平気な顔して恥ずかしいこと言ってんじゃねえかよ。
女「あっ!男見て!」
男「え?」
俺は突然声をあげた女に反応し、その見ている方へと視線をむける。
男「おお・・・」
そこには、綺麗に空をオレンジ色に染める、眩しいくらいの日の出があった。
女「綺麗だね・・・」
男「そうだな・・・」
いや。
思っていたより、凄く綺麗だった。
こんなにも綺麗なのなら、見に来た甲斐があったというものだ。
男「・・・」
女「・・・」
俺達は、しばらくの間、初日の出に見入っていた。
周りには他にも人はいるのだが、二人だけしかいないような、そんな気さえしてくる。
・・・。
静まり返る時間。
そんな中、沈黙を破るように女が口を開いた。
男「ああ」
女「ちゃんと予定空けておいてよ?」
男「わかってるよ」
言われなくても、予定なんておけておくさ。
と言ったって、こいつの場合、次は必ずこう言うはずだ。
女「あっ。そんなこと言わなくても、」
女「どうせ、一人寂しく過ごしてるんでしょ?」
ってな。
俺は素直に答える。
男「そうだな。お前との予定以外は入らないよ」
来年も、そのまた次の年も、さらにそのまた次の年も、ずっとお前以外との予定は入らない。
入らないし、いれない。
男「だから、これからもずっと一緒にいよう」
女「ぷっ。なに真顔で臭いセリフ言ってるの?恥ずかしいよ?」
男「ちょっ!空気呼んでくれ!」
今ちょっとかっこつけたいところだったんだよ!
というか、そういうこと言うのやめて!
本当に恥ずかしくなってくるから!
男「まったく・・・」
本当にこいつは調子いいやつだよ。
ふざけてみたり、笑ったり、怒ったり、泣いたり。
こいつと一緒にいるのには、俺の体力がいくつあっても持たないかもしれない。
でも、俺はそれでもいいと思ってる。
なんてったって、俺はこいつの彼氏なのだから。
こいつは俺の彼女なのだから。
そしてなにより、
男「俺もそんな女が好きだ!」
俺達は、こんな感じでいつまでもずっと一緒にいるのだろう。
これは見栄なんかではなく、俺が心からそう思えたから。
fin.
最後まで見てくださった方、ありがとうございました。
SS書くのも、むしろスレ建てするのも初めてだったので、とりあえずVIPでやってみたんだけど、なんか場違いだったかも・・・。
ごめんです。
Entry ⇒ 2012.03.01 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
男「す、好きです!セックスレスを前提に付き合ってください!」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1328877892/
男「す、好きです!セックスレスを前提に付き合ってください」
女「え?」
男「だ、だからその、君のことが…好き、ってことで…」
女「いや、いや、いや」
男「もしかして、だ、だめ……」
女「いやいや、ダメとは言ってないけど」
男「じゃあOK!?」
女「いや、OKっていうか、その、え?」
男「す、好きです!」
女「いや、うん、それはわかったから。うん、え?」
男「ごめん、急だよな、返事はいますぐじゃなくてもいいから…さ」
女「いや、いや、いますぐとかそういう問題じゃなく、え?」
男「俺、いつまででも、待ってるから…お前の返事」
女「うん、それは嬉しいんだけど、うん、ごめん、ちょっともう一回お願いできる?」
男「もう一回?」
女「その、最初に言ったことを」
男「……わかった。何度でも言うよ、お前のことが好きだ!」
女「……」
男「女さんが好きだ!!」
女「……」
男「俺のこの熱く迸る気持ちを受け取ってくれ!」
女「最初に言ったことだって言ってんだろ」
男「セックスレスを前提に付き合ってください!」
女「ああ、やっぱりそう言ったの」
男「言ったよ」
女「そう」
男「うん」
女「……え?」
男「え?」
女「いや、え?」
男「君のことを想うと俺の胸はまるで灼熱の太陽に焦がされる砂漠の岩のような」
女「黙れ」
女「おかしいよね」
男「なにが?」
女「いや、なにがって」
男「告白したことがおかしい?」
女「いや、いや。告白したことはね、うん、おかしくないよ。でも、どうして私に告白したの?」
男「それはもちろん、女さんが好きだからだよ」
女「うん、そうだよね、うん、そうなるよね、うん」
男「どこがおかしいの?」
女「いやいやいや」
女「もしかしてこれ罰ゲ?」
男「え?」
女「近くで男くんの友達が見てるとかそんなんじゃ…」
男「どうして俺がそんなことをするんだよ!」
女「うん、そうだよね、うん、ごめん」
男「ひどいよ、女さんは俺が遊びでこんなことをしていると思ってるの?」
女「う、ううん。違うよね、男くんは遊びでこんなことする人じゃないもの」
男「そう、俺の女さんへの気持ちは本当の本当に、真剣なんだ!」
女「折れろよ」
男「…わかったよ、女さんは俺と付き合いたくないんだね」
女「え、ど、どうしてそうなるの」
男「さっきから全然煮え切らないじゃないか」
女「うん、だって、うん」
男「いいよ気を使わなくて。でもこれからも友達でいてくれたら…」
女「ちょちょちょっと!付き合いたくないとは言ってないから!」
男「え?でも」
女「うん、うん、ね、男くんは、私のことが、好き、なんだよね?」
男「うん、そうだよ」
女「私も……ね、男くんのこと……その、嫌いじゃないかなって」
男「……!じゃあ俺とセックスレスを前提に付き合ってくれる…!」
女「クソが」
男「もう、なんなんだよ」
女「こっちのセリフなんだけど」
男「なんでさ。俺何か変なこと言ったかな」
女「ねぇ男くん。愛ってなんだと思う?」
男「難しいな」
女「愛って認め合うことだと思うの」
男「そういう風にも見れそうだね」
女「お互いの心も、体も、全部」
男「もちろん俺は女さんのすべてを認めるよ」
女「どうやって?」
男「それはもちろん、けけ、結婚…!」
女「結婚!?あ、そ、そっか…男くんってそういう考え方だったんだね。
そうだね、貞操観念はそうあるべきだよね。そういうことは、結婚してから…か」
男「…いきなり結婚なんて言ったら引かれるかなと思って…」
女「ちょっと古いかもしれないけど、私いいと思うよ、男くんのお付き合いの考え方」
男「ほ、ほんとに?じゃあ…あ、改めて告白しようかな。
…女さん!好きです!結婚とセックスレスを前提に付き合ってください!」
女「異議あり!」
女「ごめんやっぱり私ちょっと認められない男くんの考え方」
男「女さんは俺のこと愛してはくれないのか…」
女「あ、や、違うの、ただちょっと考え方が古いかなーみたいな、いや古いとか以前の問題なんだけど」
男「よくわからないよ、俺くらいの現代人はいないのに。ほらiPhone」
女「現代人の定義はiPhoneを持っていることじゃないよ」
男「そりゃね。持ってるだけで使いこなせてないやつはたくさんいるさ。でも俺は違う。
Macだって持ってるし自分で欲しいアプリの開発だってやってるんだ」
女「想いを伝えるのって難しいね」
男「そう、作り手の想いを結晶化させることは難しい。だからなかなかいいものは作れない。
でも真に欲しいものはこの手で創り上げるしかないんだ。女さんは何が欲しい?」
女「愛が欲しい」
男「告白中にそんなこと言われるとは思わなかった」
女「ああよかった、告白中だってこと男くん覚えてたんだね」
男「ひどいな、それじゃまるで俺がふざけてるみたいじゃんか!」
女「いっそふざけててほしいくらいだけど」
男「そんな言い草!俺はいつだって真面目なのに」
女「ふざけろ」
男「俺のこの気持ちはいい加減なものじゃないんだ!」
女「いい加減にしろ」
男「なんだよその態度、俺が何したって言うのさ!?」
女「ナニもしてねぇよ!」
男「俺の気持ちは伝わらないのか」
女「なにがしたいのかわからない」
男「理解されなくてもいい!でもこれだけはわかってほしい、俺は自分のやりだしたことはなんと言われようと曲げないよ!」
女「好かれる気ある?」
男「結局女さんは俺にどうしてほしいんだよ」
女「私の口から言わせたいの?」
男「言ってくれなきゃわかんないよ」
女「はいはいはい、言ってあげるわこの変態野郎、耳かっぽじってよく聞けよ」
男「さっきからすごい口悪いよね」
女「だからね、その、せ、せ…」
男「せ?」
女「せ、せ、せ」
男「せ」
女「正義の話をしよう」
男「これから?」
男「正義なんて言うけど、人によって正義なんていろいろだよね。ただ正義の実現方法としては、やっぱ政治への参加って大事だと思う」
女「うんごめん別に今正義の話はしたくないかな」
男「でもさっき」
女「忘れて」
男「女さんは政治不信なのかな。たしかに政治家は選挙前に言っていたことも忘れて約束も守らずにやりたい放題だけど」
女「言いたい放題だね」
男「俺は違う、俺は言ったことを忘れないし、必ず約束を守る!」
女「そこに正義はあるのか」
男「あはは…厳しいな。そうだね、表面的な字面に惑わされず、その本質を知るべきだね」
女「大切なことは意味を考えることだよ」
男「うん」
女「ところで結婚ってどういう意味なのかな」
男「難しいな」
女「結婚って、責任を取るってことだと思う」
男「そういう見方もできるかな」
女「責任取ってくれる?」
男「もちろん!」
女「どうやって?」
男「君を一生傷つけないことを誓うよ!」
女「もうアベしちゃおっかな」
男「それは朝日新聞のつくった造語だよ」
女「どうでもいいよ」
男「よくないよ。それに俺安倍ちゃん好きだったし。あの人の理念には共感するところがあったな」
女「うん、今はちょっと理念とかどうでもいいかな。もっと実際的、現実的な話というか」
男「ああ…たしかに結果的には一年で政権を手放すことになったわけだから、現実は厳しいよ」
女「ねぇもうちょっと目の前の現実を見たほうがいいんじゃない?」
男「そうだね、でも小事のために大局を潰すようじゃろくな政治じゃないと思うんだよ」
女「ロンドンは燃えている!!」
男「女さんはあまり安倍さん好きじゃないんだね。民主党支持かい?」
女「別にそんなことはないけど」
男「うーん、じゃあみんなの党とか、地方の政党だけど橋下さんの維新の会の躍進ぶりが…」
女「うん、ちょっと政治から離れようか」
男「あ、無党派?最近だとそれが一番多いのかな」
女「人の話聞いてる?」
男「もちろん、政治はまず国民の声を聞くところから始まるからね」
女「じゃあ池田大作の素晴らしさについて語ろうか」
男「女さんのことが好きです!」
女「人間の三大欲求ってあるよね」
男「睡眠欲と食欲、性欲だね」
女「人間たるもの理性は大事だけれど、生物である以上本能を蔑ろにしてもよくないと思うの」
男「これでも自分のことはうまくコントロールできてるつもりだよ」
女「どうやって?」
男「別に普通だよ。眠いときには寝て、必要以上は寝ないようにして、無理はしないようにして」
女「うん」
男「お腹がすいたら食べて、食べ過ぎないようにして」
女「うんうん」
男「まぁその、したくなったらするときもあるかな」
女「うんうんうん!」
男「でもだいじょうぶ、全部一人で管理できること、女さんに迷惑はかけないよ!」
女「ひとでなし!!」
男「俺、女さんがわからなくなってきた」
女「私も男くんがわからない」
男「男と女ってそういうものなのかもね」
女「男くんは本当に男?」
男「どういう意味?」
女「男の子ってもっとこう…ね?その、女の子とさ…」
男「うん」
女「キャバクラとか最近だったらガールズバーとか、そういうのもあるくらいだし、風俗街なんてのもあったりするでしょ、
だから、男の子って基本的にこう女の子といろんなことしたいみたいな感じのことを思ってるのかなって…」
男「女さん!」
女「はい!?」
男「愛は、金じゃ買えない」
女「てめぇこの野郎」
男「俺別に間違えたこと言ってないと思うんだけど」
女「根本的に間違えてると思うの」
男「なにが?」
女「根の深い間違いは口で言われてもわからないものなのよね」
男「けど何も言わないと何もわからないよ」
女「口にすることで余計にこじれることだってあるわ」
男「沈黙は金だなんて、そんなのはこの狭い島国に伝わる昔話だよ。今はそういう時代じゃない」
女「時と場所で変わるものもあれば、普遍的にして変わらないものもあるでしょ。
大事なことはいつだって変わらないものなの」
男「そんなのまやかしだね。万物流転、諸行無常。イデアなんてありはしない」
女「じゃあ男くんの私への気持ちもいつか変わってしまうの?」
男「やられたな!たしかに俺の女さんへのこの気持ちだけは永遠にして不変、
地球が逆さになったって変わらないよ!」
女「別れましょう」
男「まだ付き合ってもないのに別れ話を持ちかけられてしまった」
女「私のほうこそ、どうあっても私とは付き合いたくないと言われてるような気がしてならないわ」
男「やっぱり、俺の気持ちは伝わらないのか」
女「私の想いは伝わらないのね」
男「伝わってるよ!」
女「なにが伝わってるのよ!」
男「セックスしたいんじゃないの?」
女「絶対私と付き合う気ないよね」
男「あれ、違った?」
女「あーあ、男くんの辞書にデリカシーはないのね」
男「失礼な、あるよ!デリカシーとは、感情、心配りなどの繊細さ。微妙さのことだよ」
女「本物の辞書みたいなこと言うんだね」
男「本物の辞書に載ってたんだよ」
女「調べたことがあるんだね」
男「あるんだよ」
女「ごめんね」
男「うん」
女「わかった。もうハッキリ言う。
私は子供が欲しいけど、キリストの母親になれるとは思ってない。なりたくもない。
だから男くんさえその気になってくれるなら、付き合ってもいいわ」
男「養子制度とかあるしね」
女「うん、私の言い方が悪かったかな。
もうちょっと正確に言うと、男くんの愛を私が受け入れることで、私たち二人の子供をつくりたいの」
男「体外受精みたいな」
女「うん、私の言い方が悪かったわ。
もうちょっと正確に言うと、男くんの下腹部についている男性固有の生殖器と呼ばれる凸型の部位を、
私の下腹部にある凹型の女性の生殖器、女性器の中に入れて、
そのまま男くんは私に優しい愛の言葉をかけながら、精巣で作られた幾億の生命体を体外に排出することで、
私の染色体と男くんの染色体を合わせた受精卵を形成し、
それは私の胎内で少しずつ育ち分化をすすめ最終的に一人の人間となって
そして二人力を合わせてその愛おしい大切な命を育てていく、そういう過程を踏みたいのね」
男「つまりセックスだね」
女「わかってくれてありがとう、泣きたい」
男「俺も変わってるけど女さんも変わってるよね」
女「告白されてこんな惨めな気分になったのって私くらいよきっと」
男「そんな惨めになることないのに」
女「ねぇ男くん、私って可愛くないかな」
男「可愛くない女に告白する男なんているもんか」
女「ならどうして?」
男「俺は純粋に、女さんが好きなんだよ。やましい気持ちがあるわけじゃない」
女「やましいことじゃないと思う」
男「でも俺がそういうことしたいから付き合ってくださいって言ったら女さん嫌だろ?」
女「それは嫌だけど、まったくしたくないと言われるのも辛いというか」
男「じゃあほどほどにしたいから付き合ってくださいって言えばいいのかよ」
女「っていうかそういう情報告白のときにいる?」
男「でも付き合ってから実はそういうの嫌だって言うのも変だろ」
女「それはそうだけど」
男「わかってくれよ、俺はただ女さんが好きなだけなんだ」
女「好きならするべきことがあると思う」
男「だから結婚したいとまで言ってるじゃないか」
女「セックスレスって立派な離婚の理由になるんだよ」
男「法律がなんだ!そんなもので俺の愛は曲げられない!」
女「へし折るぞ」
女「あーもう、わかったわかった。男くんは私のことからかって喜んでるんでしょ」
男「なんでそうなる」
女「うるさい!うるさい!この最低男!クズ!!もう二度と私の前に現れるな!!」バチーン
男「痛ぁっ!?く…いつつ…う……うへへ」
女「え」
男「あ」
女「……なんで、笑ってるの」
男「へ…いや、別に…うひひ…あれ」
女「かつてない笑みなんだけど」
男「は……はは……うひ」
女「……」
男「……」
女「……」
男「そうだよ…」
女「え?」
男「俺は…俺は、俺は、ド変態なんだよっ!!」
女「ええええええええええ」
男「女さんに罵られたり、ぶっ叩かれたり、蹴っ飛ばされたり、踏んづけられたり、そんなことをされると、
すごく、すっごく興奮するんだよ!!というかそれ以外じゃ全然ダメなんだよおおおおおおお!!!!」
女「ダメなの!?」
男「でもでも、そんなの、そんなの絶対おかしいだろ?女さんも嫌だろ?
けどもし女さんと付き合うことになって、そういう関係になったりしたら…俺、絶対に自分を抑えられないと思う!
でも女さんのことは好きだ…一緒にいたい…だから、そもそもそういうことをしなければって。
これが、これが、これが俺の愛なんだよ!!」
女「愛が痛い」
女「……あのさ」
男「え?」
女「いいよ」
男「え、え」
女「人間、誰にだって人と違うところはあるよ。
言ったよね、愛って認め合うことだと思うって」
男「お、女さん…!」
女「だから私、男くんのこと受け入れるよ」ニコッ
男「だから笑顔じゃ興奮しねぇんだよ」
女「……あのね」
男「ご、ごめん」
女「…いいけど。……で、男くんは私にどうしてほしい?」
男「そ、そうだな…ちょっとその、踏んでくれたりしたらそれでいいです」
女「……うん」
男「あとできればその、虫けらを踏みつぶすような感じで…」
女「……うん」
男「それとよかったら、素足で踏んでもらえるとなおいい感じかと」
女「……うん」
男「靴下だけバージョンも欲しい!」
女「調子のんなよ」ギロ
男「ああその目!その目がいい!そんな感じで!」
女「……」
男「ご、ごめん」
女「……いいけど」
男「あの…もしかして女さんもさ、俺に認めてほしいことってあるんじゃないの?」
女「……男くん、私に、踏んで欲しいって言ったよね」
男「僭越ながら」
女「いいよ。…男くんさえ、耐えられるなら」
男「耐えるもなにもご褒美です」
女「ふふふ……あはははは、いひひひひ」
男「え?」
女「けけ、くけけ、きゃひは、ふ、ひひぃっ…」
男「だいじょうぶだよ女さん、魅力的な笑顔だよ」
女「笑い方じゃねぇよ」
女「ふふふ」
男「どうしたのささっきから」
女「ふふふふ」
男「え?女さん急に靴なんか脱いでどうする……んん!?な、なんだろう、突然異臭が…!」
女「ふふふふふ」
男「世界中のあらゆるゲロが混ざり合って夏場の車に長時間密閉されてたみたいな臭いがする!」
女「ふふ……え?そんなに臭い?」
男「うん」
女「……」
男「今更靴履きなおしても遅いよ!?」
男「そ…そうか、そういうことだったのか」
女「ええ、そうよ…そういうことなの」
男「その靴すごい。陰ながらこれだけのものを封印してたんだ。すごい。というか可哀想。
生まれ変わっても女さんの靴にだけはなりたくない」
女「うんごめんちょっと普通に傷つくからやめて?」
男「ごめん。いろいろ辛い思いをしてきたんだよね」
女「そうね…日曜日の朝、父親は私の顔を見ながらしみじみと『お前の足は臭いなぁ…』って呟いたわ」
男「けっこうショックだな」
女「以来私は家では室内用の靴を履いている。私の靴下を母は割り箸で掴んでいる」
男「野原ひろしみたい」
女「そう私の足は、まるで野原ひろしのように臭いの!」
男「多分もっと臭い」
女「……」
男「あ、いや。でもさ、野原ひろしだって立派に家庭築いてるじゃないか」
女「でも私は35歳のオッサン係長じゃない!」
男「だいじょうぶだよ、今は7割が課長にもなれないんだって本で読んだよ」
女「足臭OLには一文の価値だってないのよ!」
男「俺は全然OK、どんとこいだよ」
女「え?」
男「足臭OL大いに結構ってことさ。
正直女さんのそんな臭い足で踏まれる屈辱を考えただけで、俺は、俺は……」
女「男くん…」ウルウル
女「本当にいいの?」
男「もちろんだよ」
女「こんな臭い足の女だよ?」ヌギ
男「おふぅ!!げぼぉ、ぐふぅ…う、その足を俺の頭に…」
女「そんな、男くんの鼻に私の足を接近させるようなこと…でもやっちゃう」
男「げ、げろげろ、お、俺、最高にいい気分だ…よぉっ!」
女「素敵……これが私たちの愛なのね……」
男「そうだよ!これが俺たちの愛…うう、臭い……その臭い足でもっと強く踏んでください!」
女「こ、こう?」
男「くぅ!いい!!さらに女王様っぽく罵倒してください!!」
女「この変態がぁ!!」
男「はいぃぃ!!!」
女「私の足をお舐めっ!!!」
男「無理」
女「……ぐすん」
男「あ、や、その」
女「男くんの気持ちはよくわかったわ。やっぱり無理だよねこんな足臭女」
男「そんなことないよ…ただちょっと俺のレベルが低いというか経験値不足というか」
女「言い訳なんて聞きたくない」
男「でもいつか、女さんの犯罪的に臭い足を舐められるようになりたいと思う」
女「男くん……」
男「はは、ちょっとクサかったかな?まるで君の足みたいに」
女「ぶっ飛ばすぞ変態野郎」
男「いい罵倒だね、女さんわかってきたね」
女「うんいやこれは別に喜んでくれたならいいんだけどねもう」
男「俺たちけっこう、お似合いってやつなのかな」
女「…そうだね、もう私たち、怖いものなんてないよね」
男「ああ!それじゃ改めて」
女「はい」
男「好きです!変態セックスを前提に付き合ってください!」
女「キモイ。足の臭い嗅げ」ギロ
男「ほぅ…」
こうして二人は幸せに暮らしましたとさ。はっぴーえんどで、おしまいです。
え?
おわりっぽくないですか…。でもこんなしょうもない話を膨らませるのは多分人生の浪費。
でもきっとそんな無駄こそ人生。生まれ変わったらアメーバになりたい。
サブタイイラネは>>1にとってショックであった。
でもサブタイ好きだから仕方ない。
そろそろ寝よう。そんじゃね、ありがとさん。
乙
Entry ⇒ 2012.03.01 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)