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淡「陽に照らされて星は輝く」 後半
淡「陽に照らされて星は輝く」 前半
※ここから長い麻雀パートに移ります。あまり麻雀得意ではないので、いろいろ
ミスがあると思いますが生温かく見守ってやってください
準決勝大将戦
東一局
白糸台:125000
清澄:113000
姫松:98000
有珠山:64000
親:咲
実況『さあ、ついに準決勝大将戦のスタートです。決勝戦に上がれるのはこの中の上位
二校のみ! いったいどこが勝ち上がるのか――!』
四人「よろしくお願いします」
淡(ラス親か。咲ちゃんは起家)
末原(清澄……借りは返させてもらうで)
東一局
末原(清澄との差は15000。これをなんとか詰めるしかない。振り込まんのは当然やとして、
親の連荘……それしかあらへん)
末原(1000点でも2000点でも、とにかく少しずつ清澄との差を詰める。親が流れたら
絶対に振り込まず、大きい手を狙う。子で安い手を和了って場を進めるわけにはいかんからな)
咲「……」4萬
末原(鳴ける、けど……鳴いたら三色が消えるし手が安くなる。子でそんな手は和了られへん。清澄の親を楽に流させたりしたらあかんねや)
淡「……」カチャ
咲「――カン」
末原「!」
末原(まずい……!)
咲「――ツモ。嶺上開花。1300オール」
実況『早速宮永選手の嶺上開花が決まった――!』
末原(また嶺上開花……あかん、また差が広がってもうた)
末原(清澄の嶺上開花を止めるには、カン材になりそうなものをなるべく捨てないこと、
順子場を作ること、捨て牌とかから清澄が持ってそうな暗刻を予想して、それから……)
淡「……」
淡(一局打っただけでわかる。場を支配する力。限定的だけど、かなり強い)
淡(嶺上開花が得意技なのかな? これを止めるには、まず咲ちゃんの支配を上回る
力で場を支配し直すしかない)
淡(まずは咲ちゃんの支配が王牌だけなのか、それともツモ牌、あるいは卓全体にまで
及んでいるのか、それを確認しないと。嶺上開花そのものの対策はその後でいい)
次局
咲「ツモ、嶺上開花」
実況『宮永選手、二回連続で嶺上開花だ――!』
末原「くっ……」
次局
淡「……」カチャ
六六六八八八北北北1234 4
淡(ツモった。――けど、今はこんな手を和了ることよりも……)4索
実況『!? お、大星選手、和了りを見逃してツモ切り――!? これはいったい
どういうことでしょうか――!』
咲「――カン」
末原「ちょ――」
咲「ツモ。嶺上開花」
実況『宮永選手、三連続和了、そして三回連続の嶺上開花だ――!』
実況『大星選手、高めを狙ったか。しかしあそこで和了っておくべきだった――!』
実況『これでついに清澄が白糸台を抜いてトップに躍り出た――!』
末原(ちょ、ちょっと……前の試合より明らかにペース早いやん……。もう三回連続やで)
末原(清澄の連続和了だけはなんとしても防がな……もう安手でも和了るべきか?)
淡「……」
淡(支配域は卓全体か。王牌は特に強力。カン材が自然と咲ちゃんのところへ流れていく
のを感じる。かなり私に近い打ち筋。――でも、防げないほどじゃない)
淡(嶺上開花は、それ自体が咲ちゃんの能力ってわけじゃない、か。あくまでも
王牌の支配から発生した結果に過ぎない。なら嶺上開花だけを防ごうとするのは無意味)
淡(まずはその結果の出所……根本的な支配を断ち切ることが重要だ)
淡(――それだけ分かれば十分。あとは私の支配と咲ちゃんの支配……どちらが上をいくか)
淡(……じゃあ、始めようか)クス
淡(――引きずりこんでやる。宇宙の闇へ)ゴォォォォォッ!!
咲「――うっ!?」ゾクッ
末原「――!?」ビクッ
有珠山「……?」
末原(な、なんやこの感じ……? さ、寒い……?)カタカタ
咲(こ、これ……お姉ちゃんや、衣ちゃんと同じ……!)
淡「ふふ」ゴォォォォ
淡「怯えることないよ。私が和了ることができるのは、どれも〝成り損ない〟の安い手ばかりだから」
咲「成り損ない?」
淡「そう。私の麻雀はまだ未完成なの。だから、完成した完璧な役は作れない」
末原「ど、どういう意味ですか」
淡「――今から教えてあげる」ゴッ
東一局
末原「……」カチャ
末原(張った。四巡目で跳満の手。早くに手作りできたんはラッキーや。ここで
一気に差を詰める)
末原「リーチ」白
淡「遅いよ」
末原「え?」
淡「ロン」
123二二二発発発中中白白 白
淡「小三元、発、白。8000」
末原「しょ、小三元……?」
末原(な、なんでわざわざそこで止めるんや。白を鳴いて二萬を捨てれば、フリテンとはいえ
大三元聴牌やないか。流局間近とかやったらまだしも、まだ四巡目。手代わりも十分
ありえる。
逆転されてんねんし、ここで大きく取りたいと思わんのか?)
淡「ふふ」
末原「!?」
※有珠山に活躍の場はありません。有珠山が上がってくるのかも分からない段階で書き始めたので、
今回は数合わせ程度に思っておいてもらえると助かります
淡「言ったでしょ? 〝成り損ない〟しか和了れないって」
末原「な、成り損ない……?」
末原(つ、つまり大三元の成り損ない……ってこと?)
東二局
末原(と、とにかく……それやったら、役牌を捨てへんかったらええだけや)
末原「……」五萬
淡「――ふふ」
淡「ロン」
三三三五五①①①②②西西西
淡「三暗刻トイトイ。8000」
末原「な――!」
末原(さ、三暗刻トイトイって……四暗刻聴牌やないか!)
末原(二回連続でこんな大物手――――いや、大物手やない。たった8000点や。
どういうことや。二回とも、もう少し粘れば役満っていう手やった。やのにそれを
わざわざ崩して満貫……)
末原「――!」
末原(ま、まさか、『成り損ない』って……)
淡(そう。『役満一歩手前の役を和了る』。それが私の力)
淡(今の手、ロン和了りかツモ和了りか……たったそれだけで、13飜が4飜にまで
下がる、未完成の力)
淡(だから、完成した強さを持つテルにはまだ及ばない。
――でも、あなたたちを倒すにはそれで十分)
淡(――見せてやる。宇宙の闇を)ゴッ
末原「……」ゾクッ
咲「……」
白糸台:137200
清澄:124400
姫松:88200
有珠山:60200
東三局:一巡目
咲「……」
咲(感じる……何かとても大きな力がこの卓に働いてる。迂闊には動けない……)
咲「……」⑨筒
末原(と、とにかく白糸台に連荘はさせたらあかんねん。ここは安手で流すしかあらへん)
末原(ちょうど配牌もいい。喰いタンで和了ってしまお)一萬
淡「――ふふ」
末原「!」ビクゥ
末原(そ、その笑い方やめて! ロンされたかと思って驚いてまうやん!)
淡「間抜けた顔。まだ一巡目だから、誰かが和了るには早い……そう高を括って
安心しきってるね」
末原「…………え?」
淡「気づかないの? もうここはあなたたちがいつも呑気に麻雀を打ってる卓とは全く
別次元の場所――『宙の中』なんだよ?」
パラララララララ……
末原「……………………ぇ?」
二三四五六七八九3455赤5
淡「――人和。おまけで一通平和ドラ1。16000」
末原「――――」
実況『れ、人和炸裂――! これは珍しい役が飛び出しました。人和は本大会では4飜として
採用しています。が、こんな役はここ数年一度も出ていません!』
実況『末原選手、これで3回連続大星選手に満貫以上を振り込んでいます』
末原(人和……? なんやそれ……地和の『成り損ない』とでも言うんか……。
こんなん、ルールさえ違えば役満やんか……!)カタカタ
淡「――ふふ。震えてるね」
末原「……!」ビク
淡「でも、まだだよ。血の気が凍るには……まだ早い」
淡「――さあ、私の親番だね」ゴッ
末原「ひっ……!」カタカタ
東四局
末原(だ、大丈夫や。今は白糸台が親番。私が一巡目で振り込んでも人和はない……!)
末原(地和の成り損ないやって言うんなら、あんな速攻の手は子のときにしか……!)
淡「――ふふ」
末原「……!?」ゾクッ
淡「ダブルリーチ」2筒
末原「――!」
末原(ぁ――て、てんほ……)
末原(こ、こんなん無理や……捨て牌もないのに、危険牌なんかわかるわけない……)
末原(いやや、振り込みたくない――!)
咲「――カン」
末原・淡「!?」
咲「――ツモ。嶺上開花」
1133456777 1 2222
咲「3000,6000です」
淡「……はい」ジャラ
末原「……」ジャラ
末原(な、なんやこれ……なんやこれ……)
末原(私まだ一回もツモってないのに……こんな……まるきり蚊帳の外やないか)
末原(いや、まだや……まだまだいける。こんなことでメゲたらあかん!)
淡(配牌でその手……確実に槓材を揃えて和了る力……)
淡(私の支配は消えてない。じゃあこれは純粋に、咲ちゃんの支配力が上回ったってこと?)
淡「……」ギリ
淡(やってくれるじゃん。いいよ、面白いよ)
淡(思い知らせてやる……)
咲「……」
白糸台:148400
清澄:135200
姫松:59200
有珠山:57200
※牌の表記は索子「1」萬子「一」筒子「①」でいきます
わかりづらくてごめんなさい
南一局
有珠山「……」カチャ
末原「……」カチャ
末原(今度は六巡目までこれた。でもまだ白糸台がどんな手を張ってるかわからん。
高めは狙うけど、無茶はできん。常に警戒しとかなあかん)
末原(白糸台の捨て牌……字牌もなしに索子と筒子ばかり切ってる。萬子の染め手か
……まさか、国士ちゃうやろな)
淡「……」カチャ
咲「……」カチャ
一一二二三三七八九九九①③
淡(河だけ見れば萬子で染めてるように見えるはず。でも実際は②筒待ち)
淡(成り損ないも絡まないダサい手だけど、今はこれでいい)
有簾山「……」②筒
末原「……」②筒
淡「……」カチャ
実況『大星選手、有珠山と姫松からの和了り牌を見逃した! これはあくまでも
清澄を狙い撃ちするということか――!?』
淡(雑魚から毟ったって私の気は収まらない。咲ちゃんから直撃もらわないとね)
淡(分かってるんだよ咲ちゃん。②筒、溢れてるんでしょ? 早く切りなよ)
咲「……」カチャ
二二四五②22245678 六
実況『宮永選手、六萬をツモった! しかしこれで②筒が溢れてしまった。これは
振り込んでしまうか――!?』
咲「……」4索
淡「……!」ピク
実況『おっと、宮永選手、聴牌と三面待ちを崩して4索切り――!? 結果的に
大星選手への振り込みは回避できたものの、これはどういうことでしょうか』
淡(……聴牌に取らない……? 私の当たり牌を読まれてる? でも、これじゃあ
咲ちゃんも和了れない。それともチンタラ回し打ちするつもり?)
淡「……」タン 七萬
有珠山「……」九萬
淡「――カン」カチャ
一一二二三三八八九九九①③ 九
咲「!?」
咲(あ、そ、その②筒は、私の――!)
ゴォッ!
一一二二三三八八①③ ② 九九九九
淡「ツモ。嶺上開花。400,700」
咲「うぅ……」
淡「ふふ」
咲(私が淡ちゃんの当たり牌で和了ろうとしてたことが読まれた……?
まさか嶺上開花を横取りされるなんて……)
淡(馬鹿にしないでよね咲ちゃん。私の和了り牌を握り潰した上で、その牌で
ツモ和了ろうなんて、ちょっと調子に乗り過ぎだね)
淡(……とはいえ、私も満貫手を1飜手にまで下げられちゃったか)
淡(――そういえば、こんな安い手で和了るのなんて何年ぶりだろう。
テルにかっこ悪いとこ見せちゃったな)
淡(テル……私は咲ちゃんに勝てないって言ってた。今のところ得失点差では1000点
くらい勝ってるけど、これじゃ互角だって言われても仕方ない)
淡(テルならきっと、もう二位に五万点差つけててもおかしくない。なのに私は
たったプラス1000点……?)
淡(私は――私は世界でただ一人、テルの隣を歩ける存在じゃなきゃだめなんだ。
こんなところで咲ちゃんなんかと『いい勝負』してる場合じゃない)
――打ってみればいい。淡の実力なら、それでどっちが勝者か判断がつく――
淡「……」ギリ
淡(いいよテル。見せてあげる……!)ゴッ‼
南二局
実況『さあ前半戦も南二局に突入しました。清澄と白糸台の両校が凄まじい活躍を見せる中、
有珠山は焼き鳥状態、そして姫松の末原選手は既に39000点の失点となっています』
実況『そしてその姫松の親番。末原選手、この親はなんとしてもものにしたいところでしょう』
末原「……」
末原(こんなこと言ったら主将には叱られるやろうけど、私は白糸台を抜いて一位抜け
なんて狙ってへん。もちろん決勝戦では白糸台も倒すつもりや。でも今この場は、とにかく
二位抜けでもいいから決勝を目指すことが優先)
末原(――そう思ってたのに、二位の清澄との差はもう取り返しのつかんところまで来てる。
……なんとしてもこの親で連荘して差を詰めなあかん)
末原「……」カチャ
一二二三三四四六七八九九発 中
末原(親番でめっちゃええ配牌や……と言いたいところやねんけど、役牌が二つ……)
末原(今まで打ってきてここまで役牌を切りたくないと思う対局は初めてや。それも、
相手は平気で人和なんか和了りよるし……。有り得るで、人和小三元なんてふざけた手が、
この白糸台の大将に限っては)
末原(でも、じゃあこれ持っとくんか? 仮にどっちかを頭にできても、もう片方は
切らなあかん。どっちも抱えるつもりならチートイツしかあらへん。せっかくの親番……
それもこんなええ配牌でそんなことやっとったら、勝てるもんも勝てへん。攻めるんや!)
末原「……」中
淡「ポン」
末原「!」ビクッ
末原(も、もっとった……やっぱり配牌から中の対子……)ブルッ
咲「……」カチャ
有珠山「……」カチャ
末原「……」カチャ
一一二二三三四六七八九九発 赤五
末原(じゃあ、やっぱり持っとるんか? 発の対子……まさかこれで和了るなんてことは……)
末原(切りたくないけど……でも切らな……まだ二巡やで? 二巡で11飜以上の手が
入って聴牌しとるんや。勝負するしか……ない!)発
淡「ポン」
末原「うっ!」ビクッ
末原(ぽ、ポンか……よかった……い、いやよくない。小三元濃厚やないか)
末原(でも、もし白糸台が聴牌やったとしても、うちもこれで張った。ダマでも十分やけど、
あと1飜増えるだけで24000点が36000点にまで跳ね上がる)
末原(ツモれれば最高やけど、もしロンなら……せっかくの三倍満を倍満どまりに
してまう。リーチをかければ三倍満確定なんや)
末原(――あかん……リーチなんてもってのほかや。狙い撃ちされてお終いや。そんな
甘い相手ちゃうで)
※ドラは基本表記しませんが、役宣言でドラがあったら「ああ、これがドラなのかな」くらいに補完してください
末原(でも、もし……もし和了れるなら、リーチかけるべきちゃうんか? こんなええ流れ
もう来えへんかもしれん。今が勝負のときちゃうんか? うちは今二回振り込みの危険を
犯して役牌を切ったんちゃうんか。そこまでやったのに結局保身に走るんか? くそ、
どうすればええんや……)
淡「……チッ」
淡「あのさ」
末原「っ、な、なんですか?」
淡「ざ……っ、ふー……えっと、早く打ってもらえます?」
淡(なに悩んだって同じだよ)
末原「あ、す、申し訳ありません」アセアセ
末原(……行くしかない! 勝負や!)
末原「リーチ!」
淡「……」
淡(リーチ、か……)
淡(――ここで潰すか? いや、焦らなくてもこんなのいつでも始末できる)
淡(それより、私のこの手……テルにいいとこ見せようと思ったのに、こんな無様
な手が揃うなんて……最悪だ。まだ本調子じゃないのかな)
淡(こんな手で和了りたくないな……もういっそ姫松に和了らせようかな。とりあえず、
この巡は放置してみるか)
咲「……」カチャ
末原「……」カチャ
末原(こい……! 頼むわ、来て……!)
末原「……」
末原「……」チラッ
白
末原「…………ぁ」
末原(う……嘘やろ。こんな……な、なんでうちにばっかりこんな牌が……クソ……!)
末原「くぅ……」
淡「……」フー
淡(白をツモったのかな。まったく、事ここにきてそんな牌をツモるなんて、よっぽど
場を支配する力に乏しいんだね。そのくせ他者の支配に抗う力もないなんてね)ヤレヤレ
末原「……」
末原(行くしかない……行くしかないんや!)
末原「……」タン 白
有珠山「……!」
有珠山(白? これは、白糸台の当たり牌じゃ……)
淡「……」
咲「……」
末原「……?」
有珠山「……え、っと……」
有珠山「ツモってもいいですか?」
淡「当たり前でしょ。誰も鳴き宣言してないんだから」
有珠山「あ、はい。じゃあ……」カチャ
末原「……」
末原(は、白が通った? 杞憂やったんかな……いやでも、中と発を鳴いて、こっから
どんな役満の成り損ないになるって言うんや……?
小三元もない。三暗刻もない。……まさか三槓子? 有り得なくはないけど……)
末原(――いや、そうか。白糸台は小三元を和了るつもりやったけど、まだ聴牌できて
なかったって可能性もある。なら白糸台はまだ一向聴以下。私の方が早い――!)
末原(和了るで、親の三倍満!)
咲「……」カチャ
咲(まずいよ……間に合わない)
有珠山「……」カチャ
淡「……」カチャ
淡「っ……」ピタ
淡「……………………チッ」
末原「……?」
末原(なんや、今度は自分が長考? 私の親リーに対して危険な牌を掴んだんか?)
末原(ええで……振り込め……振り込め……!)
淡「……………………ま、いっか」
末原(――振り込め!)
淡「ツモ」
末原「え?」
西西西南南南① ① 中中中 発発発
淡「混老頭トイトイ混一色西南中発ドラ2、6000,12000」
末原「」
末原「……」クラッ
末原(ふ、ふざけなや……)
末原(なんやその手!)
末原(白糸台の最後の手だしは北。つまり字一色聴牌やった。それをわざわざ落として
の①筒待ち……? 有り得ん。そんなん有り得んやろ)
末原(混老頭も清老頭の成り損ないってこと? 役牌のポンからてっきり小三元やと
ばかり思とったけど、そんなんもあるんか……どういうことなん)
淡「……」
淡(でもこんなの、清老頭の成り損ないとは言えない。私の混老頭ってのは、1,9牌
の刻子を四組揃えて、頭だけ字牌とか、そういうのであるべき。これじゃ字一色の
成り損ないじゃない)
淡(星の引力で場を支配したはずなのに、どうしてこんな恰好悪い手が入っちゃったんだろう)
咲「……」
咲(①筒待ち……か)
白糸台選手待合室
誠子・尭深「……」
菫「……清澄。なるほど、お前が買うだけのことはあるな、照」
照「……」
咲の手牌
一一九九①⑨⑨1199白白
菫「今の局、確かに大星の支配は効いていた。だが同時に、清澄の支配も行き渡っていた。
大星は小三元の素は手に入れたが、同時に清澄も白を所持。そして清老頭に必要な
1,9牌の半分を清澄が独占する形になってしまった。
結果、大星はあんな歪な形での混老頭しか和了れなくなった、ということか」
菫(大星、そいつは今までの奴とは訳が違うぞ。お前は清澄を出し抜いて和了ったつもり
かもしれないが、実際には清澄も①筒待ち。あと一手ツモ巡が違っていれば、混老頭を
和了っていたのは清澄なんだ。侮ると、お前でも本当に……)
菫「大星ほどではないにせよ、場を支配し、相手の手配を見透かす力。
それに、槓からのブースト。そして嶺上開花。確かに強敵だな」
照「……違う」
菫「ん?」
照「あの子の本当の強さは、そこじゃない」
菫「どういうことだ照。……お前、やっぱり清澄の大将のこと知ってるのか?」
照「……」
南三局
白糸台:173700
清澄:129700
姫松:45800
有珠山:50800
末原「……」カチャ
末原(あ、あかん。まだ前半戦やのに、マイナス5万点って、こんなんあっていいはずない。
しかもまたラス転落……。前の試合で清澄警戒しとったけど、白糸台……こっちがやばすぎる)
末原(せめてもっとこの人の牌譜があれば対策もできたのに、この大星淡、今大会では
予選の決勝以外打ってない。それ以外は全部大将に回ってくる前に終わってたから)
末原(せめて和了りの特徴だけでも知っておきたかった……けど、そんなん言っても
なんも始まらへんし、まずは一回和了ることや。ここまで和了れてるのが清澄と白糸台
だけとか、こんなこと許しとったらあかん)
末原(もう安手でもなんでもいい。一回和了りたい。安手で場を進めるのはホンマは愚行やねんけど、もうこの際仕方ない)
一一二三三七七八八九東東白 三
末原(よし、安手どころか、倍満手。今回は五巡目まで来てるし、
白糸台にも速攻の気配はない。大きく負けてる身としては勝負したいところやけど
……この白。これどないしよか)
淡「……」カチャ
末原(白糸台はツモ切り。いま河には役牌が一つも出てない……まさかまた小三元?
あかん、この白は切られへん。なら……安くなるの覚悟でチートイツや)三萬
淡「……」
淡(姫松は回し打ちか。白は出ない……?)
111222白白中中中発発 9
実況『大星選手、またしても非常に高い手を張っています! 三暗刻トイトイ小三元ホンイツ役牌二つにドラの1索が三枚……
数え役満に到達します。いえ、ツモ和了りすればそもそも四暗刻――! とてつもない大物手です!』
淡(……違う……私の麻雀はまだ完成していない。だからまだ役満は和了れない)
淡(私は今までの麻雀人生の中で、役満を和了ったことは一度もない。何度も狙ったけど、一度も和了れなかった。どんなに格下が相手でも)
淡(テルに出会って、私の力はまだ未完成なんだってことに気づいた。いつかテルを超えた
とき、私の麻雀は、最高の形で完成するはず。でも、今はまだその時じゃない)
淡(……だからきっと、この手じゃ和了れない。和了るなら、飜数を下げないと……今
14飜だから、最低でも二つは下げないとね。どうやって下げるか……)
咲「……」カチャ
咲「……」2索
淡「――っ!」
淡「カン」カチャ
111白白中中中発発 2222
実況『おっと? 大星選手、宮永選手の捨てた2索をカン。この鳴きは……どういう
ことでしょうか。無意味に飜数を下げただけに思えますが』
淡(喰い下がりでホンイツが1飜下がって、三暗刻も消えて合計11飜の手になった。この手なら和了れるはず)
淡(でも……なんか、違和感。咄嗟に鳴いちゃったけど、今の2索……あのタイミングで咲ちゃんがあれを捨てたのは偶然? それとも……)
咲「……」カチャ
咲「カン」
淡・末原「!」
456④⑤⑥二四五白 発 ⑦⑦⑦⑦
咲「……」二萬
淡(……? 嶺上開花じゃない? なら、今のカンは……)
咲(淡ちゃんが嶺上牌からも有効牌を取れるんなら、王牌に発を置いておくのは危険
だよね。私も和了りづらくなっちゃうけど、大きい手を淡ちゃんに和了られるよりはいい)
淡(……まさか私にわざとカンさせて、次の嶺上牌を狙ったの? ……あじな真似してくれるじゃん)
淡(でも、どうするの? 姫松が白を一枚もってる以上、その白はもう頭にもなれない
完全な不要牌。仮に姫松が白を切っても、頭ハネの権利は私にある。咲ちゃん、もうこの
局で和了れないんだよ?)
淡(それに、私の感じだとまだ発は出切ってない。あと一枚は山にあるはず。私がそれを引いたら……
――いや、それだと三暗刻がつく。13飜になるから和了れない……!?)
淡(まさか……私が役満以上を和了れないのを見越して……?)
咲(淡ちゃん、『成り損ない』しか和了れないって言ってた。なら、役満は和了れないってことだ。この局ではそれを確かめたい。複合役ありで数え役満なら出せるのか、それも
できないのか。それがわかれば、その情報は後半戦できっと活きてくる)
咲(私の予想では……多分和了れない。じゃないと、今の2索鳴きは説明できないもん)
淡「っ……」
淡(……なんにせよ、咲ちゃんはこの局では和了れない。もう咲ちゃんを警戒する必要もない。
なら肝心なのは有珠山と姫松だけど、有珠山はまだ聴牌にも遠い。問題は姫松……)
淡(そこそこの手を張ってきてる。でもこっちも咲ちゃんと同じで余った白を持て余してるせいで
和了れない。なら、結局この局で和了るのは私ってことになる)
淡(手を上げるならともかく、手を下げるのなんて簡単――と言いたいところだけど、
生憎、そうもいかない。いま私が一瞬でも聴牌を崩せば咲ちゃんがすぐさま白を切ってくる。
当然姫松もそれに続いて白を捨ててくるだろうから、白が全滅……
私は山のどこかにある発を引くまで和了れない)
淡「……」
淡(最悪、この局は流したっていっか。あるいは唯一和了れる有珠山が和了ってもいいし、
もし有珠山が発なんか捨ててきたら、それで和了ればいい)
咲「……」②筒
淡「ん?」
末原(嶺上開花やないんか)ホッ
淡(嶺上開花じゃないなら、今の槓は多分、私のツモる牌をずらすのが目的。
東をツモるつもりだったけど、邪魔されちゃったか)
淡(東をツモったのは有珠山……こっちはもうオり気味だから生牌の東なんて切ってこないな)
淡(まあいいか。なら東を落として中を頭にすれば――)
淡「……」カチャ
淡「……」東
咲「……!」カチャ
咲「……」白
淡「ポン」
咲「……」発
淡「……? それもポン」
末原(……ちょっとどういうつもりや清澄。白糸台の親のときに役牌を二つも連続で
捨てるなんて。よっぽど大きい手が来てるんか?)
淡「……」カチャ
中中東東135 6 発発発 白白白
淡(一向聴か。次巡に東を引いて、その次に2索を引いて和了りだ)
咲「……」カチャ
咲「カン」
淡・末原・有珠山「!」
淡(まさか、もう?)
末原(は、早すぎるやろ)
末原「……」カチャ
有珠山「……」カチャ
淡「……」カチャ
淡(――――ん?)ピク
淡「――ッ!」
淡(なっ……こ、これ……!)
中中東1135 中 発発発 白白白
実況『おーっと、大星選手、ここでついに中をツモった――! これで大三元確定!
他校に止めを刺す一撃となるか――!?』
淡「…………」
淡(違う――『掴まされた』!)
淡(さっきの局で、咲ちゃんは私が役満手以上を和了れないことを見抜いたんだ。
この中をツモったことで大三元は確定――つまり、『もうこの手じゃ和了れない』!)
淡(今の槓は東をツモる順をズラす以外に、私に中をツモらせる意図もあったんだ)
淡「……」ギリ
淡(ならこの中を捨てればいい――ってわけにもいかない。私の麻雀を見抜いたんなら、
この中を捨てるのは承知の上のはず。なら、咲ちゃんの当たり牌はこの中で間違いない。
じゃないとこれを掴ませる意味がない。逆に私がこれを持ち続ける限り、咲ちゃんも和了れない)
淡(……またこの流れ? 私も和了れない。でも咲ちゃんも和了れない。このまま他家が
和了るか流局? 一体なにが目的――いや……なるほど。そういうことか)
淡(……いいよ、咲ちゃん。認めてあげる。確かに、あなたなかなか強いよ。
あなたが白糸台にいれば私も少しは退屈せずに過ごせたかも)
淡(確かに咲ちゃんは私の能力の弱点を見抜いて、その隙を突いてきたかもしれない。
面白い力も持ってるし、白糸台でもナンバー3には入れただろうけど、でも、所詮は
そこまでってことだね)
淡(咲ちゃんは全力を出しても、私に和了らせないようにするのがやっとなんだ。自分の
和了るチャンスを棒に振ってでもしないと、私を止められない。最悪、いざとなれば
さっきみたいに他家に差し込んででも私の和了りを防ぐしかない)
淡(その結果が、この点差だよ。前半戦だけで得失点48000点差。チーム毎に見れば
60000点差。それが私たちの実力の差だよ、咲ちゃん)
淡「……」東
咲「ロン」
淡「…………は?」
四五六4赤56④⑤⑥東 東 8888
咲「三色ドラ2。3900です」
淡「」
実況『宮永選手、大星選手の大三元を阻止――! 独走状態の白糸台に一矢を報いた――!』
淡「……」ジャラ
実況『前半戦終了――! 前半戦は清澄と白糸台の競い合いでしたが、終わってみれば
白糸台の完全一人浮き状態――! このまま白糸台が三連覇に繋がる勝利を掴むのか――!』
ガチャ
淡「ただいま」
菫・尭深。誠子「……」
淡「……? なに? 三人とも変な顔して」
菫「いや、なんというか……」
淡「ねえテル、見てたでしょ? 私の勝ちだよ。前半戦だけで45000点のプラス。
賭けは私の勝ちってことでいい?」
照「まだ後半戦が残ってるから」
淡「ふふ。照も往生際が悪いなぁ。安心してよ。別に変な罰ゲームなんてさせないよ。
そーだなー。私の家に三日くらい泊まりこんでずーっと麻雀打とうよ。他にプロを二人くらい呼んでさ」
照「いいよ。私が負けたらね」
淡「もう、どう見たって私の勝ちじゃん。菫もそう思うでしょ?」
菫「……」
淡「……菫?」
菫「照の言った通りになった」
淡「…………は? なにが?」
菫「照がな、言ったんだ。清澄の大将は、前半戦をプラマイゼロで終わるって」
淡「プラマイゼロ?」
菫「清澄は前半戦でプラス4600。25000点持ち30000点返しで考えたら、
プラマイゼロだ」
淡「――」
淡「……偶然でしょ、ただの」
菫「いや、気になって調べてみたら、清澄は一つ前の試合でも同じことをやってる。
それに県予選の個人戦でも何度か。照が言うには、彼女はこれを意図的にやってるらしい」
淡「……狙って……プラマイゼロ……?」
菫「……」
淡「……それで? 仮にそうだとしたらなんなの? 点数調整と勝つ技術は別でしょ?
実際には私と咲ちゃんの間には得失点が40000点差もあるんだから、私の勝ちじゃん」
照「淡は毎試合プラマイゼロにできる?」
淡「そんな訳わかんないことしようとも思ったことないから分からないよ。でも出来るんじゃない?」
照「でも菫とか白糸台の一軍メンバーには出来ないんじゃないか?」
淡「まあ……毎回確実に、ってことだったらかなり格下じゃないと厳しいかもだけど」
照「そういうことだよ」
淡「なにが?」
照「つまりあの清澄の大将は、〝淡のことを相当格下だと思ってる〟ってことだよ」
淡「……」
照「確かに今のままなら白糸台は一位通過するだろう。でも、それで清澄に勝ったと言える?」
淡「……」
淡「手加減されてるっていうの? この私が?」
照「どう捉えるかは淡の自由」
淡「……」ギリッ
淡「……いいよ。わかった」
淡「後半戦、私は死んでも咲ちゃんにプラマイゼロなんてさせない。白糸台も一位で通す。
麻雀の内容でも勝つ」
淡「それができたら、文句なしで私の勝ちってことでいいよね?」
照「ああ。そこまで出来れば、私の完敗だ」
淡「じゃあそれでいいよ。一応、テルも罰ゲーム考えといてよ。まあ無駄だろうけど」
ガチャ、バタン
菫「……本当なのか、清澄が狙ってプラマイゼロをやったなんて」
照「まず間違いない」
菫「……信じられん。あの大星を相手に……。お前はどう思うんだ? 本当に大星相手に
二連続プラマイゼロが出来ると思うか?」
照「私はそう賭けた」
菫「……そうだったな」
照「でも、かなり難しいと思う」
菫「ならどうしてこんな賭けをしたんだ。いくらなんでも分が悪すぎるぞ」
照「勝ち負けはどうでもいい。私はただ、知りたいだけ」
菫「知る? 何をだ」
照「淡ならあの子の……咲のプラマイゼロを止められるのかどうか」
菫「照……」
照「もし淡に咲が止められるなら……」
照「きっと、私にも止められる」
淡「……次の後半戦で、もう一回プラマイゼロにしてみなよ」
咲「え?」
淡「それができたら、咲ちゃんのこと認めてあげる。私よりも強い雀士だってね」
咲「あ……うん。どうも」
淡「私に認められるかどうかなんて興味ないって感じだね」
咲「え、いや、そんなことないよ」アタフタ
淡「……言っとくけど」
淡「私に勝てないようじゃテルには一生勝てないよ」
咲「――ッ!」
淡「やってみなよ、プラマイゼロ。私は全力で阻止する。絶対にプラマイゼロになんてさせない。
プラマイゼロできなきゃ、咲ちゃんって別に凄くもなんともないよね。正直、天江衣にも劣ってるよ。
当然、私にもね。前半戦どおりの実力って感じ」
咲「……」
淡「でも、私が全力を出しても……それでもプラマイゼロにできるんなら、認めてあげる。
高校生で一番テルに近い打ち手だって」
咲「……お姉ちゃんに……」
淡「それだけ。じゃあ、後半戦よろしくね」
ツカツカツカ
咲「……」
咲「よろしくね、淡ちゃん」ゴッ!
実況『さあ、ついに準決勝も後半戦に差し掛かりました。独走状態の白糸台を止める
ことはできるのか――!」
四人「よろしくお願いします」
東:有珠山
南:清澄
西:姫松
北:白糸台
咲「……」
淡「……」
淡(咲ちゃん、やる気だね、プラマイゼロ)
淡(させるもんか。私を相手にそんなふざけた真似、絶対許さないから)
東一局。親:有珠山
有珠山:50800
清澄:117600
姫松:61800
白糸台:169800
淡(この一試合、もう単純な点の取り合いじゃない。私と咲ちゃんのプライドをかけた勝負だ)
私の勝利条件は三つ。
一つ。白糸台が一位通過すること。
二つ。咲ちゃんにプラマイゼロをさせないこと。
三つ。麻雀の内容で咲ちゃんに負けないこと。
淡(私のリードは5万点以上ある。そうそうひっくり返されることはない。白糸台の
1位通過っていう条件はほぼクリアされてると言っていい)
淡(そして咲ちゃんのプラマイゼロを阻止すれば、連動して内容でも勝ったって言えるはず。
とにかく咲ちゃんをプラマイゼロにしないこと。それができれば私の勝ちだ)
咲ちゃんのプラマイゼロを潰す方法は大きく分けて三つある。
まず、咲ちゃんに和了らせない。プラマイゼロなんていう微調整は咲ちゃん自らが動かないとできるはずがない。
必ずどこかで和了って点数を調整してくる。私はそれを叩けばいい。
次に、プラマイゼロから大きく引き離す。プラマイゼロになるのはプラス4500から5400まで。その点数から
大きく咲ちゃんを引き離すだけで、プラマイゼロはぐっと難しくなる。
マイナスならベストだけど、最悪プラスに引き離してもいい。そうなると咲ちゃんは自分から
他家に振り込んで点数を調整するしかない。そこで私が咲ちゃんよりも先にどこかに差し込むか、なんなら私が先に和了ればいい。
最後は、オーラスで刺す。オーラスまでに私がトップ、かつ咲ちゃんがプラマイゼロの状態でなければ、
最後に私が和了るだけで咲ちゃんのプラマイゼロは不可能になる。和了る際に咲ちゃんが
プラマイゼロにならないように調整するだけでいい。
淡(この後半戦、私は和了りまくればいいってわけじゃない)
淡(私が和了りまくって20万点とったとしても、咲ちゃんがプラマイゼロにすることは不可能じゃない。試合では勝っても、勝負に勝ったことにはならない)
淡(私自身も適度に点数を調整していかないと。時には和了りを見逃したり、他家に
振り込んだりすることも必要だね)
淡(……ふふ。こういう趣向の麻雀は今まで打ったことないよ。なかなか面白いね。
――でも、最後に勝つのは私だよ、咲ちゃん)
淡(じゃ、まずは軽く挨拶代わりに……)
淡「ツモ」
発発22234666888 5
淡「混一色三暗刻。2000,4000」
末原「なっ……!」
淡(ふふ。悔しそうにしてる。前半戦で私に点を取られ過ぎたね。いくらでも差し込んであなたの
和了りを阻止してあげるよ)
咲「……」
咲(そう来るのか……困ったなぁ)
末原(白糸台が振り込むなんて珍しいな。これは、流れが来てる……? 今がチャンスや)
末原(親番が続行できるし、ここは軽くでも連荘目指すべきやろか)
東三局
咲(……まずは軽く和了らないと。これ以上振り込んでマイナスに傾くのはよくない)
淡(――って、思ってるんだろうけど。そうそう簡単にはいかないってこと教えてあげる)
淡「カン」 白
末原(? 白を暗槓……? なんでわざわざ)
淡「もいっこ、カン」 中
咲・末原・有珠山「!?」ビク
末原(しょ、小三元……!?)
咲(しかも槓ドラが……淡ちゃんの鳴いた中!)
淡(ふふ、どう? 和了れば倍満以上確定の手だよ。これをツモ和了りすれば咲ちゃんはマイナス6000)
淡(更にマイナスに傾く上に、有珠山がもう三万点弱しか残らない。私なら一瞬で消しトばせる。
そうすればプラマイゼロどころの話じゃないよね?)
咲「ん……」
淡(ほら、そういう事態を防ぐにはどうすればいいの、咲ちゃん?)
咲「……」カチャ
有珠山「! ろ、ロン。3900です」
咲「……はい」チャラ
末原「……」ホッ
淡「ふふ」
淡(そう。私の和了りを防ぐには自分から他家に差し込むしかないよね。私が大きいのを和了って
有珠山がトぶよりはずっと確実。それが正解だよ、咲ちゃん)
淡(でもこれから私が大きな和了りをしそうになる度に咲ちゃんはそれを繰り返さないといけない。じゃないと他家が
トんじゃうしね。その度に咲ちゃんはマイナスに傾いて、プラマイゼロから遠ざかっていく)
咲「……」
淡(まあ、そんな『他家が弱かったからプラマイゼロを防げた』みたいな勝ち方はしないけどね。
あくまで正面から咲ちゃんを叩き潰す。でも、咲ちゃんはその可能性も考慮しないといけない)
淡(相当動きが制限されるはず。さあ、これでもまだプラマイゼロ出来るって言うならやってみせてよ)
南四局
淡「……」カチャ
淡(私の親番か。さーて、どうしてあげようかな)
淡「……」ゴォォォォォ!
咲「……」カチャ
末原「あ、ロン! 7700!」
咲「……」チャラ
淡「ふふ」ニヤ
淡(どう? 身動きが出来ずに少しずつ窒息していくような感覚。まるで宇宙に
放りだされたみたいでしょ? もっと引きずり込んであげるよ……宇宙の闇へ)ゴォォ
淡(これで咲ちゃんは後半戦マイナス21600点。今の段階では倍満を和了ってもプラマイゼロには届かない)
淡(意識すればプラマイゼロなんて簡単に止められるもんだね)
咲「……」
もう咲ちゃんは戦意喪失したような面持ちだった。
今まで格下相手に得意げにプラマイゼロをやってきたんだろうけど、今回ばかりは相手が悪かった
ということだろう。続く南一局、親の有珠山が2600オールを和了った。それはまたしても
咲ちゃんがプラマイゼロから遠ざかることを意味していたが、咲ちゃんは何もできなかった。
続く南一局二本場――
淡「……」カチャ
東東南南西西北北白白発発⑦ ⑦
淡「……ツモ。4000,8000」
咲・末原・有珠山「!」ビク
淡(何の苦もなく字一色の鳴り損ない和了っちゃったよ。これで咲ちゃんはマイナス28200。
悪あがきもここまでかな?)
淡「あーあ。なんかがっかりだな。咲ちゃん、もっと楽しませてくれると思ってたのに」
咲「……っ」
淡「まるで張り合いないよ。この程度でテルに挑もうなんて、身の程知らずにも程があるよね」
咲「……」
淡「だいたい咲ちゃん、テルの強さ分かってるの? この私ですらテル相手に一度も
トップとったことないんだよ? 麻雀でテルに何を伝えたいのか知らないけどさ、
こんなんじゃテルも「弱いなぁ」としか思わないんじゃない?」
咲「……淡ちゃん」
淡「んー?」
咲「ちょっと……うるさい、かな」
淡「そう? 負けてるときは何でも耳障りに聞こえるものじゃないかな」ニコリ
咲「まだ勝負は終わってないよ。まだ私の親番が残ってる」
淡「そう、最後の親番だね。これを逃せば、残り二局でプラマイゼロにしないとだね。
――できると思ってるの?」
咲「お姉ちゃんに挑むなら……」
咲「それくらいじゃないと、駄目なんだよね」ゴォォッ!
淡「やってみなよ」ゴォ!
南二局
淡(咲ちゃんの親……喰いタンでも和了ってやろうかな。ふふ、咲ちゃん悔しがるだろうなぁ)ニヤニヤ
咲「――カン」
淡「お?」
咲「ツモ。嶺上開花。2000オール」
淡(案外あっさり和了られちゃったか。さっきの挑発でさすがに火が点いたかな?
まあそれくらいじゃないと面白くないけどね)
南二局
咲「……」カチャ
淡(……咲ちゃんが張った。でも安い。連荘狙いできたか。いいよ、受けて立ってあげる)
末原(清澄……張ったか? せやけど、ここはうちもオりれん。私の親は次の南三局。うちと清澄の
点差はまだ三万点以上ある。ここで逃げたら、次の親でケチついてまう気がする)
淡「……」カチャ
淡(四巡目で一向聴……珍しく私の手が重い。このままなら咲ちゃんに和了られちゃうか……)
淡(咲ちゃんの待ちは多分③⑥筒。私が振り込むことはないけど……他の二校が読めてるかどうか……)
淡「……」タン 赤5筒
有珠山「――っ、チー」 ④赤⑤⑥
淡(――よし。今のはただのドラ回収じゃない。この局数と点差でそんなケチな点棒拾っても仕方ないからね。
有珠山は⑥筒が危険だと察知してる。なら筋の③筒も切らないよね。よし、こっちは大丈夫)
淡(あとは……)チラッ
末原「……」カチャ
末原(張った! 溢れたのは③筒か……切りにくいけど……)
末原(――いくしかない!)カチャ
淡「……チッ」
咲「ロン。3400」
末原「っ……はい」チャラ
淡「……」
淡(いくら私でも姫松が振り込むのを止めるのはちょっと厳しいな。小三元ちらつかせて
オりさせることもできるけど、それならもう私が和了っちゃった方が早いか)
南二局
淡「カン」発
末原(っ……小三元か……いや、さっきの緑一色……?)
末原(いや、暗槓なら発を鳴いて役満一歩手前に出来る役なんかいくらでもある。
字一色。混老頭、四槓子、四暗刻……全部を警戒するなんか無理や。くっ……わざわざ
暗槓したのは他家の動きを牽制するためか)
淡(これなら姫松も有珠山も勝手にオりてくれるでしょ。さぁてと――)
咲「――カン」 4索
淡・末原・有珠山「!?」
咲「――ツモ。2600オール」
淡「――」ヘー
淡(4索……緑一色の大本命じゃん。お構いなしか……やっと全開ってわけ?)
淡(もうこうなると下手なハッタリは逆効果だね。さっさと和了っちゃう方が確実か)
実況『清澄高校の宮永選手、ここにきて親の三連続和了です。一位の白糸台とも、三位の姫松とも
大きく差が開いての二位。この連続和了は二位抜けでの決勝進出を盤石なものとするのか、
それとも一位の白糸台にすら食らいつく決意の表れか――!』
淡(私も咲ちゃんももう点数も順位も考えてない。あるのはただ、プラマイゼロへの調整のみ。
咲ちゃんは今マイナス11000点。オーラスで最後の調整をするつもりなら、ここは
満貫12000くらいを狙ってくるはず。そうすればプラス1000点。オーラスで3900を
和了ればプラマイゼロだ)
淡(させないよ……!)ゴッ
淡「……」カチャ
一一一二二三四六七八九九⑨ 九
淡(――よし。張った)
実況『大星選手、この局面で九連宝橙聴牌だ――! 五萬なら役満となります――!』
淡(ってことは、五萬は和了れないってことだ。九連を張ったらいつも清一になるから、ツモるのは
五萬子以外。多分次か、その次くらいに来る)
有珠山「……」カチャ
淡(有珠山……この点差でもまだ戦意喪失してないな。親番もないし、役満を狙うしかない状況)
淡(姫松以上にオりれないから、危険牌でもガンガン切るしかない。――ここから取る?
これ以上咲ちゃんに点数調整させるのもよくないし)
有珠山「……」カチャ 東
咲「――カン」
淡(っ、馬鹿……! いくら突っ張るしかないったって、よくそんな牌切るね。信じられない)
咲「もいっこ、カン」カチャ
淡(くそ……これ和了られるな。あーあ、だから弱い人と打つのは嫌なのよ。
まあ、次で親を流せばまだプラマイゼロは十分防げるはず)
咲「――もいっこ、カン!」
淡・末原・有珠山「!?」
淡(三連続……!? まって、しかもこの牌……これ、安手なんかじゃない!)
咲「――ツモ」
99南南 南 ①①①① ⑨⑨⑨⑨ 東東東東
咲「三暗刻三槓子トイトイ混老頭東南嶺上開花ツモ。――36000点です」
有珠山「ひっ――!」ビクッ!
末原「」
実況『…………さ』
実況『――三倍満!! 親の三倍満が飛び出しました――!! 有珠山の捨てた牌から
三連続カンにより一気に手を進め、三倍満にまで上りつめました――!』
実況『これは姫松、有珠山にとっては致命傷の一撃となるか――!? 二位の清澄と三位の
姫松の点差は七万点以上にまで広がってしまいました!! 有珠山高校は親番がないため絶体絶命。
親を残す姫松も、もはや敗退は時間の問題か――!』
末原「……」プルプル
末原(き……清澄ぃ……!)ギリリ
有珠山「……」ボーゼン
淡「…………」
淡(これは……どういうこと?)
淡(確かに驚いたよ。ここで三倍満かましてくるなんてね。――でも、それって駄目でしょ。
今ので咲ちゃんはプラス25000点。これ、どうするの? どこかに20000点振り込まないと
プラマイゼロにできないんだよ? てっきりオーラスで指定の点数を和了ってプラマイゼロにしてくる
と思ったのに、これじゃあ『オーラスで指定の点数に振り込んで』点数調整するしかないじゃない。
そんなこと……本気でできると思ってるの?)
淡(……思ってるんだろうなぁ……自分で自由に役を作って点数調整するならまだしも、
誰かにその役を作ってもらってそこにちょうど振り込むなんて、そこまでできれば確かに
神技だよ。はっきり言って、多分私もできない)
淡(……調子に乗り過ぎだよ、咲ちゃん)
淡(分かってるの? もう有珠山が10000点ないんだよ。今私が有珠山を
トばせばそこで終わり。あなたは馬鹿丸出しで負けるんだよ)
咲「……」
咲(……そんなことさせないよ、淡ちゃん)
南二局
淡「……」カチャ
四四四七七七南南南⑨⑨⑧① ⑧
淡(はい、三暗刻、南、ドラ3でハネ満。これで有珠山トばしてあげる)
咲「……」カチャ ③筒
有珠山「っ……」ピク
有珠山「…………」
有珠山「ろ、ロン……です。3900」
咲「はい」ホッ
淡(ふん、差し込んだか。点数調整も兼ねてるんだろうけど、必死だね咲ちゃん)
咲(……危ないところだった。もし有珠山の人が和了ってくれなかったら……多分、負けてた)
末原(くそっ……なんて迷惑な和了りや。もう戦意喪失したならじっとしといて欲しいもんやけど……まあ振り込んでトばれるよりはマシか)
末原(私は諦めへんで清澄。この親番……絶対ものにしてみせる!)
23567中中中発発発白白
淡「――ふふ。リーチ」カチャ
咲・末原・有珠山「!」
実況『大星選手、ここでリーチ! 点差と役を考えればダマでも十分な手ですが、
これは他家を牽制するためのリーチでしょうか――!?』
淡(これでまず有珠山はオりる。あとは姫松。ここはオりない。オりれない。私のリーチに
対して責め続けるしかない。振り込めばそこで終わりだ)
末原「くっ……」
789①①①②③一二二三1 北
末原(いい手が入ってる……これは和了りたいけど……1索は白糸台に危険や。いや、もうここまで
めちゃくちゃな打ち手やと待ちなんか読まれへんけど、ここで振り込むことだけはあかん)
末原(まずは現物の北や。この1索は順子に伸ばして使うしかない)
淡(――無駄だよ。あなたは次に4索をツモる。それを切ってお終いだよ。あなたも、咲ちゃんもね)
咲「……」
咲「……」カチャ 1索
淡・末原「!」
淡(これは――私の当たり牌……!)
淡「……く」
淡(だめだ、和了れない。これを和了ったら咲ちゃんの思うつぼだ。咲ちゃんのプラマイゼロの
調整を手伝うだけで終わっちゃう)
淡「……」
末原(……ロン宣言しない。この1索は通る! 現物がなかったから、もうここはこれに与るしかない。
三色は消えるけど、振り込むよりはずっとええ)
末原「……」カチャ
789①①①②③一二二三1 4
末原「……」カチャ 1索
淡「……」ギリ
実況『あーっと。大星選手、清澄高校の当たり牌を見逃したため、これは同巡フリテン縛りで
和了ることができません――! いったいなぜ清澄から和了らなかったのか』
淡(……別にいいよ。次で今ツモった4索切ったら同じことだし)
咲「……」カチャ
咲「……」タン 4索
淡「ぐっ……!」ピク
淡(また私の当たり牌!? このっ……私が和了れないのをいいことにやりたい放題……!)
末原(この4索も通る。よし、いい感じや)
789①①①②③一二二三4 一
末原(よし、いける!)
末原「……」タン 4索
実況『――ああー! これも同巡フリテンで和了れない――! 大星選手、清澄からの出和了りを
二度見逃したせいで、もう二度もチャンスを手放しています』
淡「……」ギリィ
淡(まだだ。この巡で有珠山がもう一度4索を引く。それは山越しだから、有珠山がそれを捨ててくれば和了れる。
有珠山はオりてるだろうけど、この流れなら4索は安全と思って切ってもおかしくない)
淡「……」カチャ
咲「カン!」
淡「!? なっ――!」
淡(私の捨て牌を――!)
末原(ちょ、ちょっとまって清澄……まさか……嶺上開花!?)
淡(違う。和了ってどうするの。これは嶺上開花じゃなく、有珠山が4索を引かないように
ズラしたんだ。……でも、それだと結局4索を引くのは姫松だ。こんどはフリテンにならないから和了れる!)
咲「……」カチャ クルッ
槓ドラ 西
咲「……」カチャ 西
淡(今開けた新ドラの西を躊躇いなく切ってきた。これは……――! あ、しまった!)
有珠山「ぽ、ポン!」カチャ
淡「くっ……!」
淡(西は有珠山の風牌……!)
淡(カンで西をドラにして有珠山に鳴かせたんだ。まずい、この鳴きでまたツモ巡がズレて、
4索をツモるのは咲ちゃんになった。もう4索は出ない……!)
淡(……やってくれるね、咲ちゃん)
咲「……」
淡(次で仕留めてやる……絶対に)ゴッ
南三局
淡「ポン」北
末原(くそ……まずい牌鳴かせてもうたか?)
末原(でもこの配牌……これは……)
淡(咲ちゃんは今プラス13100点。オーラスでマイナス8000点になればプラマイゼロだ)
淡(今の点差のままオーラスになれば咲ちゃんの負けは確実。その考えは間違ってないはず。
さっきは少し余裕出してリーチなんてしちゃったから後の状況変化に対応できなかったけど、
今度は鳴いて速攻で仕留める)
咲「……」カチャ 東
淡「ポン」カチャ
咲「……」カチャ 西
淡「ポン」カチャ
中中中九 北北北 東東東 西西西
淡(星の引力を使えば十分勝算はある。これで和了っても咲ちゃんはプラマイゼロにならない)
末原「……」カチャ
末原(……こい!)
末原(こい!)カチャ
末原(こい!!)カチャ
末原「……」カチャ
末原「……! っ、き――!」ビクッ
一九①⑨19東南西北白発八 中
末原(きた!! 国士13面待ちや!!)ドックンドックン
淡「――ッ!?」ビクッ
淡(この感じ……! まさか姫松、役満張ったの? この土壇場で!?)
末原(いける……! これを和了れば、清澄と並ぶ!)ドックンドックン
淡「……」
淡(この捨て牌……国士か。しかもこの気配……尭深がオーラスで和了るときと同じ。
まさか13面待ち……?)ギリ
淡(ツモなら16000オール。咲ちゃんは逆にマイナス2900点になって、今度は
二局で8000点前後を和了ればプラマイゼロになる。……それくらいなら、十分有り得る)
淡(有珠山も聴牌には遠いから差し込めない。咲ちゃんは当然和了らないだろうし、まずいな……
私が和了るしかない。この手で和了れば6000,12000。ここで和了れば姫松はオーラスでどんな手を和了っても二位にはなれないんだから、
咲ちゃんから2000点和了ったりしないはず。それよりもここで姫松に役満和了られて
二位争いに参加されるほうがずっと面倒だ)
淡(仕方ない、次で引くしかないね)ゴォォォッ!
咲「……」カチャ
咲「――カン」
淡(また暗槓? 大丈夫、暗槓ならツモ巡は狂わない。次巡で当たり牌をツモれるはず。
悪あがきだよ、咲ちゃん)
咲「……」カチャ クルッ
淡(新ドラは……――え)ピク
淡(新ドラ、西……? 私の鳴いた牌だ。ってことは、ドラ3がプラスされて……)
淡「――ッ!!!」
淡「…………」プルプル
咲(淡ちゃんの弱点は13飜以上の手を和了れないこと。だからカンを操ってドラを乗せることが
できる私なら、淡ちゃんの手を封じることができる。今までそんな止められ方をしたことは少ないはず)
淡(……この一瞬を狙ってたっていうの……? 私に役満を振り込ませることを……!)
咲「……」
淡「く……そぉ……!!」タン!
末原「!! ろ、ロン!! 国士無双、48000点です!!」
淡「……」ギリッ!
淡(最後の最後でこんな殴り合いみたいな麻雀にもつれ込むなんてね。でも、ここを押さえれば私の勝ちだ)
淡「ポン!」カチャ
999⑤⑤⑧⑧北北北 111
淡(トイトイ。ツモれば三暗刻だ。4800だからプラマイゼロにもならないし、即終局。
これでとどめを刺す……!)ゴッ!
末原「……」カチャ
二二二234赤56②②③③④ ④
末原(来た! タンヤオイーペーコー平和ドラ1で三面待ち! これを和了れば文句なしで1位通過や!)
淡(……姫松も張った。まずい。オーラスは私が親……高い手をツモられれば親被りで
三位転落も有り得る。そんなことになるくらいなら自殺したほうがマシだ)
淡(⑤筒も⑧筒もまだ二枚ずつある。絶対に先に和了ってみせる!)
有珠山「……」カチャ ⑨筒
咲「チー」カチャ ⑦⑧⑨筒
淡「……っ」
淡(私の⑧筒……くそ、でもまだ一枚ある)
咲「……」カチャ
咲「……」タン 赤⑤筒
淡「――あ」ピク
淡(⑤筒――私の当たり牌だ!)
実況『――ああーっと。ここで宮永選手、赤⑤筒を捨てた――! これは大星選手の当たり牌!
これで勝負は決着だ――!』
淡「ろ――」
淡「――」ピタ
淡「……」
淡(赤⑤筒……ドラ……これを和了ったら、私の手はトイトイドラ1で9600点になる)
淡(咲ちゃんは今プラス14700。私に9600点を振り込んだら、プラス5100点)
淡(つまり……プラマイ、ゼロ――!?)ゾクッ
咲「……」ジー
淡「……っ」ゾ
淡(これは事故じゃない。差し込んだんだ。これが私の当たり牌だって分かった上で切ってるんだ)
淡(この子、正気!? ここで私が和了ったら、清澄は三位に転落。決勝に進めないんだよ!?
咲ちゃん、そうまでしてプラマイゼロに拘るっていうの!?)
咲「……」ジー
淡「くっ……」
淡(咲ちゃんは私を試してるんだ。私が咲ちゃんとの勝負に決着をつけるのか、
それとも手近な勝利に飛びつくのか。私の器を測ってる……)
照『――打ってみればいい。淡の実力なら、それでどっちが勝者か判断がつく――
』
淡(――ッ! ……そうだ、ここでロン宣言するっていうことはつまり、姫松とのめくりあいに
勝つ自信がないって認めるようなものだ。そんな屈辱……受けられるわけない!)
淡「……」
実況『え……? えっと……? 大星選手、ロン宣言を……え、しない……? な、なぜ?』
末原「……」カチャ
実況『あ、ああーっと! 末原選手が牌をツモりました。もう大星選手はロン宣言できません!
こ、これはどういうことでしょうか!? 今ロンすれば勝利は確定していたというのに、なぜ
見逃したのか――!?』
咲「……」
咲(淡ちゃん、すごいプライドだ。確かに、この人に勝たないとお姉ちゃんに挑む資格なんてない)
淡(まだだ……まだ二枚ある。それを引ければ)
咲「……」タン 赤⑤筒
淡「――!!」ビクッ
淡「ぐっ……!」
淡(に、二巡連続……!? こ、こいつ……!)ギリギリ
実況『お、大星選手、なんと二巡連続で当たり牌を見逃した――! も、もう私には訳がわかりません!』
淡「……」プルプル
淡(……こ、ここまでコケにされたのは生まれて初めてだ……血管ブチ切れそう
……)プルプル
淡(これであとは⑧筒一枚……姫松は多分三面待ち。当たり牌の数では私が圧倒的に不利だ)
淡(それでも先に引けるかどうか。それが雀力の差なんだ。私なら引ける、引いてやる!)
末原「……」カチャ
末原(こい……!)ドックンドックン
淡(くそ、来るな……!)ドックンドックン
末原「……く」カチャ
淡「……」ホッ
淡「……」カチャ
淡(こい……!)ドックンドックン
末原(来るな……!)ドックンドックン
淡(くそ、不要牌……)カチャ
咲「……」カチャ
末原「……」カチャ
淡「……」カチャ
淡(っ……くそ!)タンッ
白糸台控室
照「……淡。押されてる」
菫「あの大星が……」
誠子「大星さん、何度も和了りを見逃してましたよね。これで逆転負けして敗退なんてことになったら……」
尭深「どうするんですか?」
菫「――どうもしないさ。言っただろ、個人のミスはチームのミスだ。それが団体戦だ。
まあ、部長としてしっかりと叱っておくがな」
尭深「……わかりました」
菫「それに、私は大星が勝つって信じてる。あいつはきっと負けない」
誠子「……弘世先輩、なんか嬉しそうですね」
菫「え?」
誠子「いえ、なんかそんな気がして」
菫「……嬉しい……」
菫「そうか、そうなのかもしれないな」
照「どうしたの?」
菫「私は、大星が追い詰められて嬉しいのかもしれない」
誠子「日頃の恨みつらみがあるからですか?」
菫「おいおい、そういう話はやめろ。そうじゃない。
見てみろ、大星の顔を。あんなに必死になってる大星を見たことあるか?」
照「私と打ってるときでも、あんなに必死になってるところは見たことない」
菫「でも、私たちは多分、いつもあんな感じで麻雀を打ってるんだと思う。聴牌になったときは
当たり牌が出ないか目をギラギラさせて、他家がツモるときは、和了るな和了るな、って念じながらさ」
菫「私はそれこそが麻雀の醍醐味だって思ってる。麻雀を打つやつは皆そのときのドキドキとか、
和了れたときの喜びとかが大好きで、だから麻雀を打つんだと思う。
でも大星は今までそんな感覚を味わえたことがないんだ。唯一照だけがそれに近いものを与えてくれるから、
あいつは照と打ちたがるんだと思う」
尭深・誠子「……」
菫「でも今、あいつはその感覚に肉薄してる。姫松がツモれば逆転負け。自分がツモれば完全勝利。
その両極端な境地で、自分の運に全てを託す感覚。……もしかしたら大星は今、生まれて
初めて麻雀を打っているのかもしれない」
照「……それが嬉しいの?」
菫「ああ、嬉しい。あいつもやっぱり私たちと同じ、麻雀を楽しめる女子高生なんだなって思うと、
なんだろうな、なんて言えばいいのか分からないが……多分、私はそれが嬉しいんだと思う」
照「……そう」
尭深「――――あ」ピク
誠子「あ!」
菫・照「――ッ!」
菫「こ、これは……!」ガタッ
菫「清澄!!」
淡「……」カチャ
淡(くそ、また引けない……どうして)
末原「……」カチャ
末原(く、なんで引かれへんのや)
咲「……」
淡(テル……)
どこまでも暗く、どこまでも孤独な宙の中で、私が初めて見つけた光。温かな輝き。
彼女に近づきたくて私は麻雀を打ってきた。テルと一緒に歩けることを誇りに思っていた。
私に負けるようじゃテルに挑む資格はないと咲ちゃんに言ったけど、それは私にも言えることだ。
こんなところで負けるようじゃ、私にテルの隣に並ぶ資格なんてない。
淡(いやだ……)ドックン ドックン
テルから遠ざかりたくない。もう二度と孤独になりたくない。もっとあの太陽の光に照らされていたい。
負けたくない……負けたくない!
淡(私は――)ドックン ドックン
こんなに負けたくないと思ったのは生まれて初めてだった。
こんなに心臓が脈動するのは初めてだった。こんなに手の平に汗が滲むのは初めてだった。
でも、不思議とこの感覚は嫌いじゃなかった。
緊張に霞む視界は眩しくて。汗ばむ身体は暖かくて。
もしかしたら……。
私の胸を震わすこの鼓動こそが。この火照る身体の熱こそが。
私がずっと欲しかった、星すらも照らす陽の光だったのかもしれない――。
淡(私は――咲ちゃんに勝ちたい!)
タン
――ツモ。
実況『――き』
実況『決まったァァァ!! ついに準決勝大将戦決着――! 勝者は――!!』
淡「……はあ……はあ……」
何も聞こえなかった。
まるで鼓膜が切れたかのように静かだった。姫松と有珠山が立ちあがり何かを言っていた気がするが、何も聞こえてこなかった。
ただ、心臓の音だけが聞こえた。ドックンドックンと脈打つその鼓動の音だけが、ずっと響いていた。
淡「……はあ……はあ……」
ぴちゃん、と頬を滑った汗が卓に落ちて、私の意識はようやく目覚めた。
開かれた私の手牌。掴みとった最後の⑧筒。トイトイ三暗刻の4000オール。
私の勝ちだった。
白糸台:144800
清澄:128300
姫松:126700
有珠山:200
淡「……私の……勝ちだね、咲ちゃん」
咲「うん」
卓には私と咲ちゃんだけが残っていた。決勝進出を果たした二人だけが。
淡「ねえ、どうして赤⑤筒切ったの? 私が和了ったらどうするつもりだったの?」
咲「淡ちゃんは和了らないと思ったから」
淡「……ふふ」
淡「まあ、あれだね。私をここまで追い詰めたことは認めてあげる。でも、やっぱりまだ
テルには及ばないよ」
咲「そう、なのかな……」
淡「でも、確かに高校生の内では段違いの強さだと思う。ま、私ほどじゃないけど」
咲「あはは……」
咲「じゃあ私帰るね」
淡「うん、じゃあ、また決勝でね」
咲「うん」ガタ
ツカツカツカ
淡「……」
淡「ねえ、咲ちゃん」
咲「ん?」
淡「――どうして、オーラスで和了りを見逃したの?」
咲「――――」
咲「……気づいてたの?」
淡「まあね。私が⑧筒をツモる前、咲ちゃん聴牌になってたよね。カンして嶺上開花すれば
和了れてたんじゃないの?」
咲「……うん」
淡「和了ればよかったのに。私が赤⑤筒和了らなかった時点でプラマイゼロは諦めたんでしょ?」
咲「うん。まあ、和了られても困ったんだけどね。もうあの時点で私はドン詰まりになってたんだ」
淡「ならせめて最後に気持ち良く和了って終わればいいのに」
咲「……」
咲「私の手は5飜で、2000,4000の手だった。それなら和了ってたと思う」
咲「でもそのためにはカンをしないといけなかったから」
淡「……槓ドラか」
咲「うん。あそこでカンしてたら、ドラが乗ってハネ満手になってたと思う。そしたら3000,6000……
淡ちゃんが親被りで三位になってた」
淡「……決勝でテルに会いたいんだったっけ?」
咲「うん。だから白糸台に敗退してほしくなくて」
淡「放銃さえしなければ誰が和了っても二位抜け確実だったもんね。なるほどね……」
淡(勝たせてもらった……って形になるのかな、これ)
淡「あーあ。なんかすっきり出来ないなぁもー。手加減されて勝ったみたいじゃん」
咲「ううん、私のプラマイゼロに付き合わなかったら私だって普通に負けてたかも」
淡「ほんとだよ! 私が何回和了りを見逃してあげたと思ってるの! ほんとストレスマッハだったんだから!」
淡「だいたい、ほんとにそのカンで嶺上開花できてたかどうかも分かんないじゃん」
咲「むっ、それは出来てたもん」
淡「いーや出来てなかったね。仮にできてても、それでドラが一つ乗ったかどうかもわかんないし」
咲「乗ってたもん」
淡「乗らなかったもんねー。ベー」
咲「乗ってたの! ああもう、山崩さなきゃよかった!」
淡「ふふー。結局私の完全勝利ってことだよね。やっぱ私サイキョーだわー」
咲「ふん、私の誘導で役満振り込んだくせに」
淡「は、はあ? あんなのわざとだし。ああすれば咲ちゃんが大きくプラスになるから、
プラマイゼロさせにくくなるなーって思って、わざと振り込んだんだし」
咲「うっそだー。『くっそー!』とか言いながら切ってたじゃん」ププ
淡「言ってないっ!」
咲「言ってたよ。涙目で」
淡「涙目だったの咲ちゃんじゃん!」
咲「私はずっと平静だったよ」
淡「どこが。『人和振り込んじゃった、あわあわ~』ってしてたじゃん」
咲「し、してないよっ」
淡「言っとくけど、決勝ではもうプラマイゼロ勝負なんてしないからね。っていうか、咲ちゃんも
出来ないでしょ。二位じゃ意味ないんだし」
咲「うん、そうだね」
淡「普通に点の取り合いしたら私が勝つに決まってるんだから。決勝ではこんなに競るとは思わないでよね。ベー」
咲「大丈夫、決勝では私も点を取りにいくから。逆に淡ちゃんトばないように気をつけてね」ニッコリ
淡「ふん、決勝戦でほえ面かかせてあげるから」
咲「こっちこそ」
淡・咲「ふんっ!」
淡・咲「……」
淡・咲「――ぷ。あはははっ」
淡「……まあ、あれだね」
咲「ん?」
淡「私の方が強いのは確かなんだけど、まあ……そこそこ強いってのは認めてあげる」
淡「だから特別に! ほんとにとっくべつに! 今日から私のライバルを名乗ることを
許してあげる。感謝してよね」
咲「えー? 別にいらないや」
淡「うっさい! ありがたく受け取れバーカ! 私のライバルなんて今のとこテルくらいしかいないんだからね!」
咲「……お姉ちゃん」
淡「……」
淡「昔テルと何があったのか知らないけどさ、あの人は理由もなく人を嫌ったりする人じゃないと
思うよ。妹なら尚更」
咲「……うん。全部、私のせいなんだ」
咲「だから私……お姉ちゃんに会って、伝えなきゃ」
淡「……ふふ」
淡「伝わるといいね。咲ちゃんの伝えたいこと、私にもなんとなく分かるよ。私も――さっき
同じものを感じてたと思うから」
咲「……うん」
咲「ありがとう、淡ちゃん」ニコ
ガチャ、バタン
淡「ただいまー。あー疲れた」
菫「御苦労さま、大星。危ないところだったな」
淡「別に危なくないよ。余裕余裕。決勝では普通に打つから勝てるよ」
菫「油断するなよ大星。お前は気づいてないだろうが、オーラスで清澄は」
淡「嶺上開花を見逃したんでしょ? そんなの分かってるってば」
菫「え、あ、ああ、気づいてたのか。なら――」
淡「分かってる。次はちゃんと打つって。――それよりテル。どう? 咲ちゃん、
プラマイゼロにできなかったよ」
照「ああ、そうだね」
淡「これって私の勝ちってことでいいんだよね?」
照「……」
照「でも淡、清澄の大将に完全に勝ったって言える?」
淡「む……か、勝ったもん。一位通過したし、プラマイゼロも防いだし、合計収支でも勝ったじゃん」
照「でも最後に清澄が見逃さなかったら淡は負けてた」
淡「嶺上開花できてたかどうかもわからないし、ドラが乗ったかも分からないじゃん」
照「もしドラが乗らなくても淡は抜かれてたよ」
淡「……」
照「……」
菫「――引き分けでいいだろ、別に」
淡「私引き分けって大嫌いなの。白黒はっきりつけたいから」
照「……じゃあどっちも勝ちってことにしない?」
淡「どっちも勝ち?」
照「勝ったら相手のいうことを一つ聞くって約束だったけど、お互いに一つずつ相手に命令できるの」
淡「うーん……まあそれでいっか」
菫「私からも一つ頼みごとがあるんだが、もう二度と麻雀で賭け事なんてしないでもらえるか」
淡・照「私に勝ったら聞いてあげる」
菫「……」
淡「じゃあ何にしよっかなー。やっぱ私の家に泊まり込んで麻雀打ちまくるとかかなー」
照「……ねえ」
淡「ん?」
照「命令できる権利、いま使いたいんだけど、いい?」
淡「え、早速? まあいいけど……なに?」
照「……」
菫「……? どうした、照」
照「……次の決勝戦――」
照「私に、大将を代わって」
つづく!
ごめんなさい、一旦ここで終わります。前後編で考えてて、ここで前編終わりです。
淡編が終了したので、次の照編で姉妹の関係や三人の今後は全部終わらせます。
後編もやろうかと思ったんですが、正直、まさか15時間以上かかるなんて夢にも
思ってなかったので、次は日にちを跨いでもいいように
週末くらいに立てることにします。このスレで淡関係が全部終わると思って辛抱強く読んでくださった方々、
本当に申し訳ないです
なんかそろそろ本編で淡が出てきて能力解禁されそうなんで、それまでになんとか投下したかったんです
こんなに夜遅くまで沢山の支援や感想、本当に嬉しかったです。ありがとうございました
照編ではもっと麻雀パート短くします。ほんとにごめんなさい。つい書きすぎちゃいました
440: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 20:54:40.52 ID:PDMqfHI10
※ここから長い麻雀パートに移ります。あまり麻雀得意ではないので、いろいろ
ミスがあると思いますが生温かく見守ってやってください
準決勝大将戦
東一局
白糸台:125000
清澄:113000
姫松:98000
有珠山:64000
親:咲
実況『さあ、ついに準決勝大将戦のスタートです。決勝戦に上がれるのはこの中の上位
二校のみ! いったいどこが勝ち上がるのか――!』
四人「よろしくお願いします」
淡(ラス親か。咲ちゃんは起家)
末原(清澄……借りは返させてもらうで)
446: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 20:59:57.14 ID:PDMqfHI10
東一局
末原(清澄との差は15000。これをなんとか詰めるしかない。振り込まんのは当然やとして、
親の連荘……それしかあらへん)
末原(1000点でも2000点でも、とにかく少しずつ清澄との差を詰める。親が流れたら
絶対に振り込まず、大きい手を狙う。子で安い手を和了って場を進めるわけにはいかんからな)
咲「……」4萬
末原(鳴ける、けど……鳴いたら三色が消えるし手が安くなる。子でそんな手は和了られへん。清澄の親を楽に流させたりしたらあかんねや)
淡「……」カチャ
449: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:05:45.94 ID:PDMqfHI10
咲「――カン」
末原「!」
末原(まずい……!)
咲「――ツモ。嶺上開花。1300オール」
実況『早速宮永選手の嶺上開花が決まった――!』
末原(また嶺上開花……あかん、また差が広がってもうた)
末原(清澄の嶺上開花を止めるには、カン材になりそうなものをなるべく捨てないこと、
順子場を作ること、捨て牌とかから清澄が持ってそうな暗刻を予想して、それから……)
淡「……」
456: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:10:54.18 ID:PDMqfHI10
淡(一局打っただけでわかる。場を支配する力。限定的だけど、かなり強い)
淡(嶺上開花が得意技なのかな? これを止めるには、まず咲ちゃんの支配を上回る
力で場を支配し直すしかない)
淡(まずは咲ちゃんの支配が王牌だけなのか、それともツモ牌、あるいは卓全体にまで
及んでいるのか、それを確認しないと。嶺上開花そのものの対策はその後でいい)
次局
咲「ツモ、嶺上開花」
実況『宮永選手、二回連続で嶺上開花だ――!』
末原「くっ……」
459: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:16:01.96 ID:PDMqfHI10
次局
淡「……」カチャ
六六六八八八北北北1234 4
淡(ツモった。――けど、今はこんな手を和了ることよりも……)4索
実況『!? お、大星選手、和了りを見逃してツモ切り――!? これはいったい
どういうことでしょうか――!』
咲「――カン」
末原「ちょ――」
咲「ツモ。嶺上開花」
実況『宮永選手、三連続和了、そして三回連続の嶺上開花だ――!』
実況『大星選手、高めを狙ったか。しかしあそこで和了っておくべきだった――!』
実況『これでついに清澄が白糸台を抜いてトップに躍り出た――!』
末原(ちょ、ちょっと……前の試合より明らかにペース早いやん……。もう三回連続やで)
末原(清澄の連続和了だけはなんとしても防がな……もう安手でも和了るべきか?)
460: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:17:58.06 ID:PDMqfHI10
淡「……」
淡(支配域は卓全体か。王牌は特に強力。カン材が自然と咲ちゃんのところへ流れていく
のを感じる。かなり私に近い打ち筋。――でも、防げないほどじゃない)
淡(嶺上開花は、それ自体が咲ちゃんの能力ってわけじゃない、か。あくまでも
王牌の支配から発生した結果に過ぎない。なら嶺上開花だけを防ごうとするのは無意味)
淡(まずはその結果の出所……根本的な支配を断ち切ることが重要だ)
淡(――それだけ分かれば十分。あとは私の支配と咲ちゃんの支配……どちらが上をいくか)
淡(……じゃあ、始めようか)クス
淡(――引きずりこんでやる。宇宙の闇へ)ゴォォォォォッ!!
465: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:22:05.48 ID:PDMqfHI10
咲「――うっ!?」ゾクッ
末原「――!?」ビクッ
有珠山「……?」
末原(な、なんやこの感じ……? さ、寒い……?)カタカタ
咲(こ、これ……お姉ちゃんや、衣ちゃんと同じ……!)
淡「ふふ」ゴォォォォ
淡「怯えることないよ。私が和了ることができるのは、どれも〝成り損ない〟の安い手ばかりだから」
咲「成り損ない?」
468: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:23:37.14 ID:PDMqfHI10
淡「そう。私の麻雀はまだ未完成なの。だから、完成した完璧な役は作れない」
末原「ど、どういう意味ですか」
淡「――今から教えてあげる」ゴッ
東一局
末原「……」カチャ
末原(張った。四巡目で跳満の手。早くに手作りできたんはラッキーや。ここで
一気に差を詰める)
末原「リーチ」白
淡「遅いよ」
471: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:27:01.78 ID:PDMqfHI10
末原「え?」
淡「ロン」
123二二二発発発中中白白 白
淡「小三元、発、白。8000」
末原「しょ、小三元……?」
末原(な、なんでわざわざそこで止めるんや。白を鳴いて二萬を捨てれば、フリテンとはいえ
大三元聴牌やないか。流局間近とかやったらまだしも、まだ四巡目。手代わりも十分
ありえる。
逆転されてんねんし、ここで大きく取りたいと思わんのか?)
淡「ふふ」
末原「!?」
473: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:30:09.27 ID:PDMqfHI10
※有珠山に活躍の場はありません。有珠山が上がってくるのかも分からない段階で書き始めたので、
今回は数合わせ程度に思っておいてもらえると助かります
淡「言ったでしょ? 〝成り損ない〟しか和了れないって」
末原「な、成り損ない……?」
末原(つ、つまり大三元の成り損ない……ってこと?)
東二局
末原(と、とにかく……それやったら、役牌を捨てへんかったらええだけや)
末原「……」五萬
淡「――ふふ」
淡「ロン」
477: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:31:02.42 ID:PDMqfHI10
三三三五五①①①②②西西西
淡「三暗刻トイトイ。8000」
末原「な――!」
末原(さ、三暗刻トイトイって……四暗刻聴牌やないか!)
末原(二回連続でこんな大物手――――いや、大物手やない。たった8000点や。
どういうことや。二回とも、もう少し粘れば役満っていう手やった。やのにそれを
わざわざ崩して満貫……)
末原「――!」
末原(ま、まさか、『成り損ない』って……)
479: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:34:10.94 ID:PDMqfHI10
淡(そう。『役満一歩手前の役を和了る』。それが私の力)
淡(今の手、ロン和了りかツモ和了りか……たったそれだけで、13飜が4飜にまで
下がる、未完成の力)
淡(だから、完成した強さを持つテルにはまだ及ばない。
――でも、あなたたちを倒すにはそれで十分)
淡(――見せてやる。宇宙の闇を)ゴッ
末原「……」ゾクッ
咲「……」
白糸台:137200
清澄:124400
姫松:88200
有珠山:60200
482: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:36:27.82 ID:PDMqfHI10
東三局:一巡目
咲「……」
咲(感じる……何かとても大きな力がこの卓に働いてる。迂闊には動けない……)
咲「……」⑨筒
末原(と、とにかく白糸台に連荘はさせたらあかんねん。ここは安手で流すしかあらへん)
末原(ちょうど配牌もいい。喰いタンで和了ってしまお)一萬
淡「――ふふ」
末原「!」ビクゥ
末原(そ、その笑い方やめて! ロンされたかと思って驚いてまうやん!)
483: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:39:14.70 ID:UQQYDVAh0
ボコボコの淡ちゃんが早く見たい
484: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:39:58.91 ID:r01SvAkM0
もっとボコボコにされる末原も見たい
485: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:40:09.27 ID:PDMqfHI10
淡「間抜けた顔。まだ一巡目だから、誰かが和了るには早い……そう高を括って
安心しきってるね」
末原「…………え?」
淡「気づかないの? もうここはあなたたちがいつも呑気に麻雀を打ってる卓とは全く
別次元の場所――『宙の中』なんだよ?」
パラララララララ……
末原「……………………ぇ?」
二三四五六七八九3455赤5
淡「――人和。おまけで一通平和ドラ1。16000」
末原「――――」
488: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:42:45.59 ID:PDMqfHI10
実況『れ、人和炸裂――! これは珍しい役が飛び出しました。人和は本大会では4飜として
採用しています。が、こんな役はここ数年一度も出ていません!』
実況『末原選手、これで3回連続大星選手に満貫以上を振り込んでいます』
末原(人和……? なんやそれ……地和の『成り損ない』とでも言うんか……。
こんなん、ルールさえ違えば役満やんか……!)カタカタ
淡「――ふふ。震えてるね」
末原「……!」ビク
淡「でも、まだだよ。血の気が凍るには……まだ早い」
淡「――さあ、私の親番だね」ゴッ
末原「ひっ……!」カタカタ
494: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:46:14.20 ID:PDMqfHI10
東四局
末原(だ、大丈夫や。今は白糸台が親番。私が一巡目で振り込んでも人和はない……!)
末原(地和の成り損ないやって言うんなら、あんな速攻の手は子のときにしか……!)
淡「――ふふ」
末原「……!?」ゾクッ
淡「ダブルリーチ」2筒
495: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:47:07.79 ID:PDMqfHI10
末原「――!」
末原(ぁ――て、てんほ……)
末原(こ、こんなん無理や……捨て牌もないのに、危険牌なんかわかるわけない……)
末原(いやや、振り込みたくない――!)
咲「――カン」
末原・淡「!?」
502: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:50:07.00 ID:PDMqfHI10
咲「――ツモ。嶺上開花」
1133456777 1 2222
咲「3000,6000です」
淡「……はい」ジャラ
末原「……」ジャラ
末原(な、なんやこれ……なんやこれ……)
末原(私まだ一回もツモってないのに……こんな……まるきり蚊帳の外やないか)
末原(いや、まだや……まだまだいける。こんなことでメゲたらあかん!)
506: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:52:07.81 ID:PDMqfHI10
淡(配牌でその手……確実に槓材を揃えて和了る力……)
淡(私の支配は消えてない。じゃあこれは純粋に、咲ちゃんの支配力が上回ったってこと?)
淡「……」ギリ
淡(やってくれるじゃん。いいよ、面白いよ)
淡(思い知らせてやる……)
咲「……」
白糸台:148400
清澄:135200
姫松:59200
有珠山:57200
509: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:54:53.80 ID:PDMqfHI10
※牌の表記は索子「1」萬子「一」筒子「①」でいきます
わかりづらくてごめんなさい
南一局
有珠山「……」カチャ
末原「……」カチャ
末原(今度は六巡目までこれた。でもまだ白糸台がどんな手を張ってるかわからん。
高めは狙うけど、無茶はできん。常に警戒しとかなあかん)
末原(白糸台の捨て牌……字牌もなしに索子と筒子ばかり切ってる。萬子の染め手か
……まさか、国士ちゃうやろな)
淡「……」カチャ
咲「……」カチャ
512: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 21:58:41.56 ID:PDMqfHI10
一一二二三三七八九九九①③
淡(河だけ見れば萬子で染めてるように見えるはず。でも実際は②筒待ち)
淡(成り損ないも絡まないダサい手だけど、今はこれでいい)
有簾山「……」②筒
末原「……」②筒
淡「……」カチャ
実況『大星選手、有珠山と姫松からの和了り牌を見逃した! これはあくまでも
清澄を狙い撃ちするということか――!?』
淡(雑魚から毟ったって私の気は収まらない。咲ちゃんから直撃もらわないとね)
516: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:00:47.57 ID:PDMqfHI10
淡(分かってるんだよ咲ちゃん。②筒、溢れてるんでしょ? 早く切りなよ)
咲「……」カチャ
二二四五②22245678 六
実況『宮永選手、六萬をツモった! しかしこれで②筒が溢れてしまった。これは
振り込んでしまうか――!?』
咲「……」4索
淡「……!」ピク
実況『おっと、宮永選手、聴牌と三面待ちを崩して4索切り――!? 結果的に
大星選手への振り込みは回避できたものの、これはどういうことでしょうか』
淡(……聴牌に取らない……? 私の当たり牌を読まれてる? でも、これじゃあ
咲ちゃんも和了れない。それともチンタラ回し打ちするつもり?)
519: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:03:27.11 ID:PDMqfHI10
淡(そんなことしてる間に私がツモるとかは考えないの? ②筒は山にあと一枚。
私なら十分引ける。それもそう遠くない、数巡後に)
淡(溢れた牌を残して回し打ちなんてしてたら、私の速度に敵うわけない。
――それでも、咲ちゃんが勝てると確信してるんなら……私には『絶対に引けない』と
思ってるってことだ。②筒は私のツモれる位置にない。……つまり)
咲「……」カチャ
二二四五六②2225678 二
咲(――四枚目の②筒は、嶺上牌にある。淡ちゃんがツモることはない)
咲(私は次に2索をツモるから、それでカン……②筒を引いて嶺上開花……!)
淡「……」
淡(……そういうこと。あくまで嶺上開花に拘るんだ)
淡「……ふふ」
末原「……!」ビク
淡(それなら――)
私なら十分引ける。それもそう遠くない、数巡後に)
淡(溢れた牌を残して回し打ちなんてしてたら、私の速度に敵うわけない。
――それでも、咲ちゃんが勝てると確信してるんなら……私には『絶対に引けない』と
思ってるってことだ。②筒は私のツモれる位置にない。……つまり)
咲「……」カチャ
二二四五六②2225678 二
咲(――四枚目の②筒は、嶺上牌にある。淡ちゃんがツモることはない)
咲(私は次に2索をツモるから、それでカン……②筒を引いて嶺上開花……!)
淡「……」
淡(……そういうこと。あくまで嶺上開花に拘るんだ)
淡「……ふふ」
末原「……!」ビク
淡(それなら――)
528: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:08:05.48 ID:PDMqfHI10
淡「……」タン 七萬
有珠山「……」九萬
淡「――カン」カチャ
一一二二三三八八九九九①③ 九
咲「!?」
咲(あ、そ、その②筒は、私の――!)
ゴォッ!
一一二二三三八八①③ ② 九九九九
淡「ツモ。嶺上開花。400,700」
531: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:09:45.50 ID:PDMqfHI10
咲「うぅ……」
淡「ふふ」
咲(私が淡ちゃんの当たり牌で和了ろうとしてたことが読まれた……?
まさか嶺上開花を横取りされるなんて……)
淡(馬鹿にしないでよね咲ちゃん。私の和了り牌を握り潰した上で、その牌で
ツモ和了ろうなんて、ちょっと調子に乗り過ぎだね)
淡(……とはいえ、私も満貫手を1飜手にまで下げられちゃったか)
淡(――そういえば、こんな安い手で和了るのなんて何年ぶりだろう。
テルにかっこ悪いとこ見せちゃったな)
532: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:10:46.39 ID:PDMqfHI10
淡(テル……私は咲ちゃんに勝てないって言ってた。今のところ得失点差では1000点
くらい勝ってるけど、これじゃ互角だって言われても仕方ない)
淡(テルならきっと、もう二位に五万点差つけててもおかしくない。なのに私は
たったプラス1000点……?)
淡(私は――私は世界でただ一人、テルの隣を歩ける存在じゃなきゃだめなんだ。
こんなところで咲ちゃんなんかと『いい勝負』してる場合じゃない)
――打ってみればいい。淡の実力なら、それでどっちが勝者か判断がつく――
淡「……」ギリ
淡(いいよテル。見せてあげる……!)ゴッ‼
535: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:15:05.17 ID:PDMqfHI10
南二局
実況『さあ前半戦も南二局に突入しました。清澄と白糸台の両校が凄まじい活躍を見せる中、
有珠山は焼き鳥状態、そして姫松の末原選手は既に39000点の失点となっています』
実況『そしてその姫松の親番。末原選手、この親はなんとしてもものにしたいところでしょう』
末原「……」
末原(こんなこと言ったら主将には叱られるやろうけど、私は白糸台を抜いて一位抜け
なんて狙ってへん。もちろん決勝戦では白糸台も倒すつもりや。でも今この場は、とにかく
二位抜けでもいいから決勝を目指すことが優先)
末原(――そう思ってたのに、二位の清澄との差はもう取り返しのつかんところまで来てる。
……なんとしてもこの親で連荘して差を詰めなあかん)
537: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:19:13.80 ID:PDMqfHI10
末原「……」カチャ
一二二三三四四六七八九九発 中
末原(親番でめっちゃええ配牌や……と言いたいところやねんけど、役牌が二つ……)
末原(今まで打ってきてここまで役牌を切りたくないと思う対局は初めてや。それも、
相手は平気で人和なんか和了りよるし……。有り得るで、人和小三元なんてふざけた手が、
この白糸台の大将に限っては)
末原(でも、じゃあこれ持っとくんか? 仮にどっちかを頭にできても、もう片方は
切らなあかん。どっちも抱えるつもりならチートイツしかあらへん。せっかくの親番……
それもこんなええ配牌でそんなことやっとったら、勝てるもんも勝てへん。攻めるんや!)
末原「……」中
538: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:24:00.54 ID:PDMqfHI10
淡「ポン」
末原「!」ビクッ
末原(も、もっとった……やっぱり配牌から中の対子……)ブルッ
咲「……」カチャ
有珠山「……」カチャ
末原「……」カチャ
一一二二三三四六七八九九発 赤五
末原(じゃあ、やっぱり持っとるんか? 発の対子……まさかこれで和了るなんてことは……)
540: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:24:57.24 ID:PDMqfHI10
末原(切りたくないけど……でも切らな……まだ二巡やで? 二巡で11飜以上の手が
入って聴牌しとるんや。勝負するしか……ない!)発
淡「ポン」
末原「うっ!」ビクッ
末原(ぽ、ポンか……よかった……い、いやよくない。小三元濃厚やないか)
末原(でも、もし白糸台が聴牌やったとしても、うちもこれで張った。ダマでも十分やけど、
あと1飜増えるだけで24000点が36000点にまで跳ね上がる)
末原(ツモれれば最高やけど、もしロンなら……せっかくの三倍満を倍満どまりに
してまう。リーチをかければ三倍満確定なんや)
末原(――あかん……リーチなんてもってのほかや。狙い撃ちされてお終いや。そんな
甘い相手ちゃうで)
544: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:30:26.80 ID:PDMqfHI10
※ドラは基本表記しませんが、役宣言でドラがあったら「ああ、これがドラなのかな」くらいに補完してください
末原(でも、もし……もし和了れるなら、リーチかけるべきちゃうんか? こんなええ流れ
もう来えへんかもしれん。今が勝負のときちゃうんか? うちは今二回振り込みの危険を
犯して役牌を切ったんちゃうんか。そこまでやったのに結局保身に走るんか? くそ、
どうすればええんや……)
淡「……チッ」
淡「あのさ」
末原「っ、な、なんですか?」
淡「ざ……っ、ふー……えっと、早く打ってもらえます?」
淡(なに悩んだって同じだよ)
545: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:32:56.31 ID:PDMqfHI10
末原「あ、す、申し訳ありません」アセアセ
末原(……行くしかない! 勝負や!)
末原「リーチ!」
淡「……」
淡(リーチ、か……)
淡(――ここで潰すか? いや、焦らなくてもこんなのいつでも始末できる)
淡(それより、私のこの手……テルにいいとこ見せようと思ったのに、こんな無様
な手が揃うなんて……最悪だ。まだ本調子じゃないのかな)
淡(こんな手で和了りたくないな……もういっそ姫松に和了らせようかな。とりあえず、
この巡は放置してみるか)
548: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:35:43.80 ID:PDMqfHI10
咲「……」カチャ
末原「……」カチャ
末原(こい……! 頼むわ、来て……!)
末原「……」
末原「……」チラッ
白
末原「…………ぁ」
552: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:38:54.22 ID:PDMqfHI10
末原(う……嘘やろ。こんな……な、なんでうちにばっかりこんな牌が……クソ……!)
末原「くぅ……」
淡「……」フー
淡(白をツモったのかな。まったく、事ここにきてそんな牌をツモるなんて、よっぽど
場を支配する力に乏しいんだね。そのくせ他者の支配に抗う力もないなんてね)ヤレヤレ
末原「……」
末原(行くしかない……行くしかないんや!)
末原「……」タン 白
有珠山「……!」
有珠山(白? これは、白糸台の当たり牌じゃ……)
淡「……」
咲「……」
554: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:39:37.57 ID:PDMqfHI10
末原「……?」
有珠山「……え、っと……」
有珠山「ツモってもいいですか?」
淡「当たり前でしょ。誰も鳴き宣言してないんだから」
有珠山「あ、はい。じゃあ……」カチャ
末原「……」
末原(は、白が通った? 杞憂やったんかな……いやでも、中と発を鳴いて、こっから
どんな役満の成り損ないになるって言うんや……?
小三元もない。三暗刻もない。……まさか三槓子? 有り得なくはないけど……)
556: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:41:52.93 ID:PDMqfHI10
末原(――いや、そうか。白糸台は小三元を和了るつもりやったけど、まだ聴牌できて
なかったって可能性もある。なら白糸台はまだ一向聴以下。私の方が早い――!)
末原(和了るで、親の三倍満!)
咲「……」カチャ
咲(まずいよ……間に合わない)
有珠山「……」カチャ
淡「……」カチャ
557: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:43:39.47 ID:PDMqfHI10
淡「っ……」ピタ
淡「……………………チッ」
末原「……?」
末原(なんや、今度は自分が長考? 私の親リーに対して危険な牌を掴んだんか?)
末原(ええで……振り込め……振り込め……!)
淡「……………………ま、いっか」
末原(――振り込め!)
淡「ツモ」
558: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:46:16.87 ID:PDMqfHI10
末原「え?」
西西西南南南① ① 中中中 発発発
淡「混老頭トイトイ混一色西南中発ドラ2、6000,12000」
末原「」
末原「……」クラッ
末原(ふ、ふざけなや……)
末原(なんやその手!)
561: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:52:39.13 ID:PDMqfHI10
末原(白糸台の最後の手だしは北。つまり字一色聴牌やった。それをわざわざ落として
の①筒待ち……? 有り得ん。そんなん有り得んやろ)
末原(混老頭も清老頭の成り損ないってこと? 役牌のポンからてっきり小三元やと
ばかり思とったけど、そんなんもあるんか……どういうことなん)
淡「……」
淡(でもこんなの、清老頭の成り損ないとは言えない。私の混老頭ってのは、1,9牌
の刻子を四組揃えて、頭だけ字牌とか、そういうのであるべき。これじゃ字一色の
成り損ないじゃない)
淡(星の引力で場を支配したはずなのに、どうしてこんな恰好悪い手が入っちゃったんだろう)
咲「……」
咲(①筒待ち……か)
562: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:54:48.40 ID:PDMqfHI10
白糸台選手待合室
誠子・尭深「……」
菫「……清澄。なるほど、お前が買うだけのことはあるな、照」
照「……」
咲の手牌
一一九九①⑨⑨1199白白
菫「今の局、確かに大星の支配は効いていた。だが同時に、清澄の支配も行き渡っていた。
大星は小三元の素は手に入れたが、同時に清澄も白を所持。そして清老頭に必要な
1,9牌の半分を清澄が独占する形になってしまった。
結果、大星はあんな歪な形での混老頭しか和了れなくなった、ということか」
565: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 22:57:50.15 ID:3M6u8jMW0
菫さんがピッコロさんよろしくの解説ポジになってるwww
566: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:00:00.32 ID:PDMqfHI10
菫(大星、そいつは今までの奴とは訳が違うぞ。お前は清澄を出し抜いて和了ったつもり
かもしれないが、実際には清澄も①筒待ち。あと一手ツモ巡が違っていれば、混老頭を
和了っていたのは清澄なんだ。侮ると、お前でも本当に……)
菫「大星ほどではないにせよ、場を支配し、相手の手配を見透かす力。
それに、槓からのブースト。そして嶺上開花。確かに強敵だな」
照「……違う」
菫「ん?」
照「あの子の本当の強さは、そこじゃない」
菫「どういうことだ照。……お前、やっぱり清澄の大将のこと知ってるのか?」
照「……」
570: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:05:42.24 ID:PDMqfHI10
南三局
白糸台:173700
清澄:129700
姫松:45800
有珠山:50800
末原「……」カチャ
末原(あ、あかん。まだ前半戦やのに、マイナス5万点って、こんなんあっていいはずない。
しかもまたラス転落……。前の試合で清澄警戒しとったけど、白糸台……こっちがやばすぎる)
末原(せめてもっとこの人の牌譜があれば対策もできたのに、この大星淡、今大会では
予選の決勝以外打ってない。それ以外は全部大将に回ってくる前に終わってたから)
末原(せめて和了りの特徴だけでも知っておきたかった……けど、そんなん言っても
なんも始まらへんし、まずは一回和了ることや。ここまで和了れてるのが清澄と白糸台
だけとか、こんなこと許しとったらあかん)
573: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:07:26.03 ID:PDMqfHI10
末原(もう安手でもなんでもいい。一回和了りたい。安手で場を進めるのはホンマは愚行やねんけど、もうこの際仕方ない)
一一二三三七七八八九東東白 三
末原(よし、安手どころか、倍満手。今回は五巡目まで来てるし、
白糸台にも速攻の気配はない。大きく負けてる身としては勝負したいところやけど
……この白。これどないしよか)
淡「……」カチャ
末原(白糸台はツモ切り。いま河には役牌が一つも出てない……まさかまた小三元?
あかん、この白は切られへん。なら……安くなるの覚悟でチートイツや)三萬
淡「……」
淡(姫松は回し打ちか。白は出ない……?)
111222白白中中中発発 9
実況『大星選手、またしても非常に高い手を張っています! 三暗刻トイトイ小三元ホンイツ役牌二つにドラの1索が三枚……
数え役満に到達します。いえ、ツモ和了りすればそもそも四暗刻――! とてつもない大物手です!』
淡(……違う……私の麻雀はまだ完成していない。だからまだ役満は和了れない)
淡(私は今までの麻雀人生の中で、役満を和了ったことは一度もない。何度も狙ったけど、一度も和了れなかった。どんなに格下が相手でも)
574: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:11:16.65 ID:PDMqfHI10
淡(テルに出会って、私の力はまだ未完成なんだってことに気づいた。いつかテルを超えた
とき、私の麻雀は、最高の形で完成するはず。でも、今はまだその時じゃない)
淡(……だからきっと、この手じゃ和了れない。和了るなら、飜数を下げないと……今
14飜だから、最低でも二つは下げないとね。どうやって下げるか……)
咲「……」カチャ
咲「……」2索
淡「――っ!」
淡「カン」カチャ
111白白中中中発発 2222
実況『おっと? 大星選手、宮永選手の捨てた2索をカン。この鳴きは……どういう
ことでしょうか。無意味に飜数を下げただけに思えますが』
淡(喰い下がりでホンイツが1飜下がって、三暗刻も消えて合計11飜の手になった。この手なら和了れるはず)
淡(でも……なんか、違和感。咄嗟に鳴いちゃったけど、今の2索……あのタイミングで咲ちゃんがあれを捨てたのは偶然? それとも……)
咲「……」カチャ
578: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:16:03.87 ID:PDMqfHI10
咲「カン」
淡・末原「!」
456④⑤⑥二四五白 発 ⑦⑦⑦⑦
咲「……」二萬
淡(……? 嶺上開花じゃない? なら、今のカンは……)
咲(淡ちゃんが嶺上牌からも有効牌を取れるんなら、王牌に発を置いておくのは危険
だよね。私も和了りづらくなっちゃうけど、大きい手を淡ちゃんに和了られるよりはいい)
淡(……まさか私にわざとカンさせて、次の嶺上牌を狙ったの? ……あじな真似してくれるじゃん)
580: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:18:26.27 ID:PDMqfHI10
淡(でも、どうするの? 姫松が白を一枚もってる以上、その白はもう頭にもなれない
完全な不要牌。仮に姫松が白を切っても、頭ハネの権利は私にある。咲ちゃん、もうこの
局で和了れないんだよ?)
淡(それに、私の感じだとまだ発は出切ってない。あと一枚は山にあるはず。私がそれを引いたら……
――いや、それだと三暗刻がつく。13飜になるから和了れない……!?)
淡(まさか……私が役満以上を和了れないのを見越して……?)
咲(淡ちゃん、『成り損ない』しか和了れないって言ってた。なら、役満は和了れないってことだ。この局ではそれを確かめたい。複合役ありで数え役満なら出せるのか、それも
できないのか。それがわかれば、その情報は後半戦できっと活きてくる)
咲(私の予想では……多分和了れない。じゃないと、今の2索鳴きは説明できないもん)
淡「っ……」
583: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:25:28.29 ID:PDMqfHI10
淡(……なんにせよ、咲ちゃんはこの局では和了れない。もう咲ちゃんを警戒する必要もない。
なら肝心なのは有珠山と姫松だけど、有珠山はまだ聴牌にも遠い。問題は姫松……)
淡(そこそこの手を張ってきてる。でもこっちも咲ちゃんと同じで余った白を持て余してるせいで
和了れない。なら、結局この局で和了るのは私ってことになる)
淡(手を上げるならともかく、手を下げるのなんて簡単――と言いたいところだけど、
生憎、そうもいかない。いま私が一瞬でも聴牌を崩せば咲ちゃんがすぐさま白を切ってくる。
当然姫松もそれに続いて白を捨ててくるだろうから、白が全滅……
私は山のどこかにある発を引くまで和了れない)
淡「……」
淡(最悪、この局は流したっていっか。あるいは唯一和了れる有珠山が和了ってもいいし、
もし有珠山が発なんか捨ててきたら、それで和了ればいい)
585: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:28:32.79 ID:PDMqfHI10
末原「……」カチャ
一一二二三三七七八八九東白 九
末原(きた! チートイツにするつもりやったけど、思いもがけずリャンペーコー
チャンタ混一色の倍満手になった。
白の単騎待ちなんがネックやけど、とにかく聴牌や。くそ、白さえ切れれば清一も絡めれる手やのに……)
淡(張ったか。でもその白は切れないし、もうツモることもできない。大きい手が出来て
喜んでるみたいだけど、その手、和了れないんだよ)
淡(有珠山もまだ一向聴ってとこか。これは流局かなぁ)
咲「……」カチャ
咲「……!」
咲(――発! ……四枚目の発がきた。淡ちゃんを避けるみたいに、一手遅れて私のところへ。
……やっぱり淡ちゃん、役満手は和了れないんだ。――よし、それだけ分かれば……)
咲「……」タン 白
淡・末原・有珠山「!?」
淡(え、白? ここで? なんで?)
一一二二三三七七八八九東白 九
末原(きた! チートイツにするつもりやったけど、思いもがけずリャンペーコー
チャンタ混一色の倍満手になった。
白の単騎待ちなんがネックやけど、とにかく聴牌や。くそ、白さえ切れれば清一も絡めれる手やのに……)
淡(張ったか。でもその白は切れないし、もうツモることもできない。大きい手が出来て
喜んでるみたいだけど、その手、和了れないんだよ)
淡(有珠山もまだ一向聴ってとこか。これは流局かなぁ)
咲「……」カチャ
咲「……!」
咲(――発! ……四枚目の発がきた。淡ちゃんを避けるみたいに、一手遅れて私のところへ。
……やっぱり淡ちゃん、役満手は和了れないんだ。――よし、それだけ分かれば……)
咲「……」タン 白
淡・末原・有珠山「!?」
淡(え、白? ここで? なんで?)
588: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:32:33.89 ID:PDMqfHI10
淡「……ロン。小三g」
末原「――ま、待ってください!」ガタッ
末原「ろ、ロンです! 16000点、頭ハネです!」
咲「はい」ジャラ
淡「……」
淡(差し込み……? なんでわざわざ。流せばいいじゃん、こんな局)
咲「……」
南四局
末原(なんとかラスからは這い上がれた。清澄から直撃取れたんも大きい。後半戦に
入る前に、もう一回くらい和了りたい。でも、今は白糸台の親番……無茶はできへん)
淡(さて、と。私の親か……)
淡(――行くよ!)ゴォッ!
咲・末原「……!」ビク
咲「……」
咲(……させないよ)ゴッ
末原「――ま、待ってください!」ガタッ
末原「ろ、ロンです! 16000点、頭ハネです!」
咲「はい」ジャラ
淡「……」
淡(差し込み……? なんでわざわざ。流せばいいじゃん、こんな局)
咲「……」
南四局
末原(なんとかラスからは這い上がれた。清澄から直撃取れたんも大きい。後半戦に
入る前に、もう一回くらい和了りたい。でも、今は白糸台の親番……無茶はできへん)
淡(さて、と。私の親か……)
淡(――行くよ!)ゴォッ!
咲・末原「……!」ビク
咲「……」
咲(……させないよ)ゴッ
590: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:36:29.85 ID:PDMqfHI10
発発中中
淡(まずは役牌二つずつ)
発発中中白白東東
淡(効いてる。私の星の引力が、有効牌を引き寄せてるのを感じる)
淡(ダブルリーチで決めてやる……!)
発発中中白白東東西西13
発発中中白白東東西西13赤5八
淡(…………は?)
淡(ダブルリーチじゃない……!? 私の親番で? どうして……)
咲「……」カチャカチャ
淡(……咲ちゃん……あくまでも私に歯向かう気なんだね)
淡(でも、いくら足掻いたところで私に大きな手が来てることに違いはない。一気に
ツモって終わらせてやる)
淡「……」八萬
淡(まずは役牌二つずつ)
発発中中白白東東
淡(効いてる。私の星の引力が、有効牌を引き寄せてるのを感じる)
淡(ダブルリーチで決めてやる……!)
発発中中白白東東西西13
発発中中白白東東西西13赤5八
淡(…………は?)
淡(ダブルリーチじゃない……!? 私の親番で? どうして……)
咲「……」カチャカチャ
淡(……咲ちゃん……あくまでも私に歯向かう気なんだね)
淡(でも、いくら足掻いたところで私に大きな手が来てることに違いはない。一気に
ツモって終わらせてやる)
淡「……」八萬
596: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:46:37.02 ID:PDMqfHI10
咲「……」②筒
淡「ん?」
末原(嶺上開花やないんか)ホッ
淡(嶺上開花じゃないなら、今の槓は多分、私のツモる牌をずらすのが目的。
東をツモるつもりだったけど、邪魔されちゃったか)
淡(東をツモったのは有珠山……こっちはもうオり気味だから生牌の東なんて切ってこないな)
淡(まあいいか。なら東を落として中を頭にすれば――)
淡「……」カチャ
淡「……」東
咲「……!」カチャ
594: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:41:57.33 ID:PDMqfHI10
咲「……」白
淡「ポン」
咲「……」発
淡「……? それもポン」
末原(……ちょっとどういうつもりや清澄。白糸台の親のときに役牌を二つも連続で
捨てるなんて。よっぽど大きい手が来てるんか?)
淡「……」カチャ
中中東東135 6 発発発 白白白
淡(一向聴か。次巡に東を引いて、その次に2索を引いて和了りだ)
咲「……」カチャ
咲「カン」
淡・末原・有珠山「!」
淡(まさか、もう?)
末原(は、早すぎるやろ)
599: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:49:36.02 ID:PDMqfHI10
末原「……」カチャ
有珠山「……」カチャ
淡「……」カチャ
淡(――――ん?)ピク
淡「――ッ!」
淡(なっ……こ、これ……!)
中中東1135 中 発発発 白白白
実況『おーっと、大星選手、ここでついに中をツモった――! これで大三元確定!
他校に止めを刺す一撃となるか――!?』
淡「…………」
淡(違う――『掴まされた』!)
淡(さっきの局で、咲ちゃんは私が役満手以上を和了れないことを見抜いたんだ。
この中をツモったことで大三元は確定――つまり、『もうこの手じゃ和了れない』!)
淡(今の槓は東をツモる順をズラす以外に、私に中をツモらせる意図もあったんだ)
603: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:52:15.63 ID:PDMqfHI10
淡「……」ギリ
淡(ならこの中を捨てればいい――ってわけにもいかない。私の麻雀を見抜いたんなら、
この中を捨てるのは承知の上のはず。なら、咲ちゃんの当たり牌はこの中で間違いない。
じゃないとこれを掴ませる意味がない。逆に私がこれを持ち続ける限り、咲ちゃんも和了れない)
淡(……またこの流れ? 私も和了れない。でも咲ちゃんも和了れない。このまま他家が
和了るか流局? 一体なにが目的――いや……なるほど。そういうことか)
淡(……いいよ、咲ちゃん。認めてあげる。確かに、あなたなかなか強いよ。
あなたが白糸台にいれば私も少しは退屈せずに過ごせたかも)
淡(確かに咲ちゃんは私の能力の弱点を見抜いて、その隙を突いてきたかもしれない。
面白い力も持ってるし、白糸台でもナンバー3には入れただろうけど、でも、所詮は
そこまでってことだね)
607: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:54:16.29 ID:PDMqfHI10
淡(咲ちゃんは全力を出しても、私に和了らせないようにするのがやっとなんだ。自分の
和了るチャンスを棒に振ってでもしないと、私を止められない。最悪、いざとなれば
さっきみたいに他家に差し込んででも私の和了りを防ぐしかない)
淡(その結果が、この点差だよ。前半戦だけで得失点48000点差。チーム毎に見れば
60000点差。それが私たちの実力の差だよ、咲ちゃん)
淡「……」東
咲「ロン」
淡「…………は?」
四五六4赤56④⑤⑥東 東 8888
咲「三色ドラ2。3900です」
淡「」
実況『宮永選手、大星選手の大三元を阻止――! 独走状態の白糸台に一矢を報いた――!』
淡「……」ジャラ
実況『前半戦終了――! 前半戦は清澄と白糸台の競い合いでしたが、終わってみれば
白糸台の完全一人浮き状態――! このまま白糸台が三連覇に繋がる勝利を掴むのか――!』
610: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/23(日) 23:57:40.18 ID:Gv7irOzA0
咲は明槓?暗槓だったらツモ巡変わらないと思うが。
612: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:01:15.26 ID:nlBB/sdP0
※>>610改行が多すぎて投下できなかったので、咲のツモ描写を削るつもりが有珠山の打牌を消しちゃいました
ごめんなさい。正しくは有珠山の捨て牌でカンです
白糸台:169800
清澄:117600
姫松:61800
有珠山:50800
末原「……お疲れさまでした」
有珠山「お、お疲れさまでしたぁ……」ガックリ
淡「……おつかれさまでした」
咲「お疲れさまでした」ペッコリン
廊下
淡「……」カツカツ
淡(最後の一局……待ちは中じゃなかった)
淡(……私の考えを読まれた。私が中を切らずに東の対子落としをすると見て、そこで
狙い撃ちしたんだ。――くそっ)
淡「……でも、私の勝ちだから」
そうだ。清澄は前半戦でたったプラス4600。私はプラス44800。
誰が見たって私の勝ちだ。照との賭けは、私の勝ちで文句なんてないはずだ。
咲ちゃんは私に一矢を報いたに過ぎないんだ。
ごめんなさい。正しくは有珠山の捨て牌でカンです
白糸台:169800
清澄:117600
姫松:61800
有珠山:50800
末原「……お疲れさまでした」
有珠山「お、お疲れさまでしたぁ……」ガックリ
淡「……おつかれさまでした」
咲「お疲れさまでした」ペッコリン
廊下
淡「……」カツカツ
淡(最後の一局……待ちは中じゃなかった)
淡(……私の考えを読まれた。私が中を切らずに東の対子落としをすると見て、そこで
狙い撃ちしたんだ。――くそっ)
淡「……でも、私の勝ちだから」
そうだ。清澄は前半戦でたったプラス4600。私はプラス44800。
誰が見たって私の勝ちだ。照との賭けは、私の勝ちで文句なんてないはずだ。
咲ちゃんは私に一矢を報いたに過ぎないんだ。
617: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:04:21.61 ID:nlBB/sdP0
ガチャ
淡「ただいま」
菫・尭深。誠子「……」
淡「……? なに? 三人とも変な顔して」
菫「いや、なんというか……」
淡「ねえテル、見てたでしょ? 私の勝ちだよ。前半戦だけで45000点のプラス。
賭けは私の勝ちってことでいい?」
照「まだ後半戦が残ってるから」
淡「ふふ。照も往生際が悪いなぁ。安心してよ。別に変な罰ゲームなんてさせないよ。
そーだなー。私の家に三日くらい泊まりこんでずーっと麻雀打とうよ。他にプロを二人くらい呼んでさ」
照「いいよ。私が負けたらね」
619: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:06:12.51 ID:nlBB/sdP0
淡「もう、どう見たって私の勝ちじゃん。菫もそう思うでしょ?」
菫「……」
淡「……菫?」
菫「照の言った通りになった」
淡「…………は? なにが?」
菫「照がな、言ったんだ。清澄の大将は、前半戦をプラマイゼロで終わるって」
淡「プラマイゼロ?」
菫「清澄は前半戦でプラス4600。25000点持ち30000点返しで考えたら、
プラマイゼロだ」
淡「――」
淡「……偶然でしょ、ただの」
620: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:07:57.12 ID:nlBB/sdP0
菫「いや、気になって調べてみたら、清澄は一つ前の試合でも同じことをやってる。
それに県予選の個人戦でも何度か。照が言うには、彼女はこれを意図的にやってるらしい」
淡「……狙って……プラマイゼロ……?」
菫「……」
淡「……それで? 仮にそうだとしたらなんなの? 点数調整と勝つ技術は別でしょ?
実際には私と咲ちゃんの間には得失点が40000点差もあるんだから、私の勝ちじゃん」
照「淡は毎試合プラマイゼロにできる?」
淡「そんな訳わかんないことしようとも思ったことないから分からないよ。でも出来るんじゃない?」
照「でも菫とか白糸台の一軍メンバーには出来ないんじゃないか?」
淡「まあ……毎回確実に、ってことだったらかなり格下じゃないと厳しいかもだけど」
照「そういうことだよ」
淡「なにが?」
照「つまりあの清澄の大将は、〝淡のことを相当格下だと思ってる〟ってことだよ」
淡「……」
631: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:12:02.43 ID:K6tlteyr0
原村さんとの誓いは何処
635: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:15:19.59 ID:nlBB/sdP0
照「確かに今のままなら白糸台は一位通過するだろう。でも、それで清澄に勝ったと言える?」
淡「……」
淡「手加減されてるっていうの? この私が?」
照「どう捉えるかは淡の自由」
淡「……」ギリッ
淡「……いいよ。わかった」
淡「後半戦、私は死んでも咲ちゃんにプラマイゼロなんてさせない。白糸台も一位で通す。
麻雀の内容でも勝つ」
淡「それができたら、文句なしで私の勝ちってことでいいよね?」
照「ああ。そこまで出来れば、私の完敗だ」
638: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:17:56.48 ID:nlBB/sdP0
淡「じゃあそれでいいよ。一応、テルも罰ゲーム考えといてよ。まあ無駄だろうけど」
ガチャ、バタン
菫「……本当なのか、清澄が狙ってプラマイゼロをやったなんて」
照「まず間違いない」
菫「……信じられん。あの大星を相手に……。お前はどう思うんだ? 本当に大星相手に
二連続プラマイゼロが出来ると思うか?」
照「私はそう賭けた」
菫「……そうだったな」
照「でも、かなり難しいと思う」
639: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:20:59.15 ID:nlBB/sdP0
菫「ならどうしてこんな賭けをしたんだ。いくらなんでも分が悪すぎるぞ」
照「勝ち負けはどうでもいい。私はただ、知りたいだけ」
菫「知る? 何をだ」
照「淡ならあの子の……咲のプラマイゼロを止められるのかどうか」
菫「照……」
照「もし淡に咲が止められるなら……」
照「きっと、私にも止められる」
643: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:23:33.54 ID:nlBB/sdP0
廊下
咲「……ふう」
咲(淡ちゃん……すごく強かった。お姉ちゃんと互角くらいの力は持ってる
……お姉ちゃん……見てくれたかな。私の麻雀。私の伝えたい事……お姉ちゃんに伝わったかな)
淡「咲ちゃん」
咲「あ。淡ちゃん」ぺっこりん
淡「……」
咲「……? どうかしたの?」
淡「さっきのプラマイゼロ、狙ってやったの?」
咲「……!」ピク
淡「どうなの?」
咲「……ごめんなさい」
淡「なんで謝るの?」
咲「だって……」
淡「……」
咲「……ふう」
咲(淡ちゃん……すごく強かった。お姉ちゃんと互角くらいの力は持ってる
……お姉ちゃん……見てくれたかな。私の麻雀。私の伝えたい事……お姉ちゃんに伝わったかな)
淡「咲ちゃん」
咲「あ。淡ちゃん」ぺっこりん
淡「……」
咲「……? どうかしたの?」
淡「さっきのプラマイゼロ、狙ってやったの?」
咲「……!」ピク
淡「どうなの?」
咲「……ごめんなさい」
淡「なんで謝るの?」
咲「だって……」
淡「……」
648: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:26:45.42 ID:nlBB/sdP0
淡「……次の後半戦で、もう一回プラマイゼロにしてみなよ」
咲「え?」
淡「それができたら、咲ちゃんのこと認めてあげる。私よりも強い雀士だってね」
咲「あ……うん。どうも」
淡「私に認められるかどうかなんて興味ないって感じだね」
咲「え、いや、そんなことないよ」アタフタ
淡「……言っとくけど」
淡「私に勝てないようじゃテルには一生勝てないよ」
咲「――ッ!」
649: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:27:05.68 ID:WUw6wZZ50
プラマイゼロで何を伝えよとしたんだwwwwwwwww
650: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:28:42.04 ID:AY9HVG7Q0
>>649
お姉ちゃんの後輩、雑魚いよ
お姉ちゃんの後輩、雑魚いよ
651: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:29:02.56 ID:nlBB/sdP0
淡「やってみなよ、プラマイゼロ。私は全力で阻止する。絶対にプラマイゼロになんてさせない。
プラマイゼロできなきゃ、咲ちゃんって別に凄くもなんともないよね。正直、天江衣にも劣ってるよ。
当然、私にもね。前半戦どおりの実力って感じ」
咲「……」
淡「でも、私が全力を出しても……それでもプラマイゼロにできるんなら、認めてあげる。
高校生で一番テルに近い打ち手だって」
咲「……お姉ちゃんに……」
淡「それだけ。じゃあ、後半戦よろしくね」
ツカツカツカ
咲「……」
咲「よろしくね、淡ちゃん」ゴッ!
655: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:32:04.60 ID:nlBB/sdP0
実況『さあ、ついに準決勝も後半戦に差し掛かりました。独走状態の白糸台を止める
ことはできるのか――!」
四人「よろしくお願いします」
東:有珠山
南:清澄
西:姫松
北:白糸台
咲「……」
淡「……」
淡(咲ちゃん、やる気だね、プラマイゼロ)
淡(させるもんか。私を相手にそんなふざけた真似、絶対許さないから)
658: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:35:15.84 ID:nlBB/sdP0
東一局。親:有珠山
有珠山:50800
清澄:117600
姫松:61800
白糸台:169800
淡(この一試合、もう単純な点の取り合いじゃない。私と咲ちゃんのプライドをかけた勝負だ)
私の勝利条件は三つ。
一つ。白糸台が一位通過すること。
二つ。咲ちゃんにプラマイゼロをさせないこと。
三つ。麻雀の内容で咲ちゃんに負けないこと。
淡(私のリードは5万点以上ある。そうそうひっくり返されることはない。白糸台の
1位通過っていう条件はほぼクリアされてると言っていい)
淡(そして咲ちゃんのプラマイゼロを阻止すれば、連動して内容でも勝ったって言えるはず。
とにかく咲ちゃんをプラマイゼロにしないこと。それができれば私の勝ちだ)
659: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:39:24.95 ID:nlBB/sdP0
咲ちゃんのプラマイゼロを潰す方法は大きく分けて三つある。
まず、咲ちゃんに和了らせない。プラマイゼロなんていう微調整は咲ちゃん自らが動かないとできるはずがない。
必ずどこかで和了って点数を調整してくる。私はそれを叩けばいい。
次に、プラマイゼロから大きく引き離す。プラマイゼロになるのはプラス4500から5400まで。その点数から
大きく咲ちゃんを引き離すだけで、プラマイゼロはぐっと難しくなる。
マイナスならベストだけど、最悪プラスに引き離してもいい。そうなると咲ちゃんは自分から
他家に振り込んで点数を調整するしかない。そこで私が咲ちゃんよりも先にどこかに差し込むか、なんなら私が先に和了ればいい。
最後は、オーラスで刺す。オーラスまでに私がトップ、かつ咲ちゃんがプラマイゼロの状態でなければ、
最後に私が和了るだけで咲ちゃんのプラマイゼロは不可能になる。和了る際に咲ちゃんが
プラマイゼロにならないように調整するだけでいい。
660: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:39:40.92 ID:WUw6wZZ50
たった5万点のリードで安心してる淡かわいい
664: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:42:28.92 ID:6RoGc2nb0
>>660県予選決勝では6万点以上を一瞬でひっくり返したからな
663: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:42:17.26 ID:nlBB/sdP0
淡(この後半戦、私は和了りまくればいいってわけじゃない)
淡(私が和了りまくって20万点とったとしても、咲ちゃんがプラマイゼロにすることは不可能じゃない。試合では勝っても、勝負に勝ったことにはならない)
淡(私自身も適度に点数を調整していかないと。時には和了りを見逃したり、他家に
振り込んだりすることも必要だね)
淡(……ふふ。こういう趣向の麻雀は今まで打ったことないよ。なかなか面白いね。
――でも、最後に勝つのは私だよ、咲ちゃん)
淡(じゃ、まずは軽く挨拶代わりに……)
淡「ツモ」
発発22234666888 5
淡「混一色三暗刻。2000,4000」
末原「なっ……!」
667: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:44:49.78 ID:nlBB/sdP0
末原(あ、あの手……5索じゃなく2索なら、緑一色……! しかももう少し粘れば
四暗刻まで見える手……白糸台、しょっぱなから全開かいな)
末原(赤5索じゃなかったのだけが救いか……ドラが乗ればハネ満まで伸びとった)
淡(……そういえば菫が前に言ってたな。この手を和了るなら赤5索は狙わないのか、って)
淡(分かってないよね皆。それだと5索が全部赤くなるじゃん。五本の内一本だけ赤いからこそ
『完璧な成り損ない』なんじゃない。赤5索なんてダサイ手、ツモってもイラついて崩しちゃうよ)
実況『大星選手、肩慣らしとばかりに満貫をツモ和了り――! やはり白糸台を
止めることはできないのか――!?』
末原(あかん……どっかで流れを掴まな。ただでさえ清澄とも大差なんや。このままじゃ
二位で決勝進出も厳しい)
有珠山「うぅ……」
淡(姫松と有珠山はどうやって二位になろうか考えてるのかな? ふふ、まあせいぜい
低い次元で足掻いてればいいよ)
淡(さあ、咲ちゃん……そろそろ本気出してよ)
咲「……」
四暗刻まで見える手……白糸台、しょっぱなから全開かいな)
末原(赤5索じゃなかったのだけが救いか……ドラが乗ればハネ満まで伸びとった)
淡(……そういえば菫が前に言ってたな。この手を和了るなら赤5索は狙わないのか、って)
淡(分かってないよね皆。それだと5索が全部赤くなるじゃん。五本の内一本だけ赤いからこそ
『完璧な成り損ない』なんじゃない。赤5索なんてダサイ手、ツモってもイラついて崩しちゃうよ)
実況『大星選手、肩慣らしとばかりに満貫をツモ和了り――! やはり白糸台を
止めることはできないのか――!?』
末原(あかん……どっかで流れを掴まな。ただでさえ清澄とも大差なんや。このままじゃ
二位で決勝進出も厳しい)
有珠山「うぅ……」
淡(姫松と有珠山はどうやって二位になろうか考えてるのかな? ふふ、まあせいぜい
低い次元で足掻いてればいいよ)
淡(さあ、咲ちゃん……そろそろ本気出してよ)
咲「……」
671: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:47:59.16 ID:nlBB/sdP0
東二局
姫松(……配牌は悪くない。一巡目はまず北を切って、それから……)
咲(淡ちゃん……すごいプレッシャーだ。今まで何度かプラマイゼロを防ごうとしてきた人は
いたけど、その中でも一番手ごわい相手だ……)
咲(でも……淡ちゃんに勝てれば、お姉ちゃんに一番近い打ち手だって認めてもらえる。
私は……お姉ちゃんにもう一度会うために来たんだ。こんなところで負けられない……!)
咲(お姉ちゃん……あの日のこと、許してもらおうとは思わない。ただもう一度だけ……
お姉ちゃんと話がしたい)
咲「……」カチャ 北
淡「ロン」
咲「え――」
234456三四五①①①北 北
淡「人和。8000」
姫松(……配牌は悪くない。一巡目はまず北を切って、それから……)
咲(淡ちゃん……すごいプレッシャーだ。今まで何度かプラマイゼロを防ごうとしてきた人は
いたけど、その中でも一番手ごわい相手だ……)
咲(でも……淡ちゃんに勝てれば、お姉ちゃんに一番近い打ち手だって認めてもらえる。
私は……お姉ちゃんにもう一度会うために来たんだ。こんなところで負けられない……!)
咲(お姉ちゃん……あの日のこと、許してもらおうとは思わない。ただもう一度だけ……
お姉ちゃんと話がしたい)
咲「……」カチャ 北
淡「ロン」
咲「え――」
234456三四五①①①北 北
淡「人和。8000」
676: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:53:00.94 ID:nlBB/sdP0
実況『――ま、またしても人和炸裂――! 大星選手が止まらない――!』
淡「聴牌気配すら読めなかった? 不注意すぎるよ咲ちゃん」
咲「……」
淡「あのさ。私に宣戦布告しといて対局中に他のこと考えてる余裕なんてあるの?」
咲「……!」ビク
淡「あんまりイライラさせないでね」
咲「……うん」
末原「……」
末原(あ、危なかった……清澄が北を切らんかったら、私が切ってた……白糸台……ほんまにバケモノやないか)
淡「聴牌気配すら読めなかった? 不注意すぎるよ咲ちゃん」
咲「……」
淡「あのさ。私に宣戦布告しといて対局中に他のこと考えてる余裕なんてあるの?」
咲「……!」ビク
淡「あんまりイライラさせないでね」
咲「……うん」
末原「……」
末原(あ、危なかった……清澄が北を切らんかったら、私が切ってた……白糸台……ほんまにバケモノやないか)
673: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:51:53.99 ID:nlBB/sdP0
淡(とりあえずこれで咲ちゃんはマイナス1万点。マイナスの方に傾いてる。咲ちゃんはこれから軽い和了りで点数を調整しようとしてくるはず)
淡(私はもう十分リードを取ってる。多少振り込んででも、咲ちゃんの和了りを防げばいい)
淡(咲ちゃんが和了りそうになったら姫松か有珠山にでも差し込んで咲ちゃんの点数を変動させない。理論上はこれで勝てる)
咲「……」カチャ
淡(咲ちゃんが張った。待ちは索子が臭い。……流すか)
淡「……」カチャ
末原「ポン!」
淡「……」カチャ
末原「……!?」
末原「ろ、ロンです! 5800」
淡「はい」チャラ
咲「……っ」
淡(私はもう十分リードを取ってる。多少振り込んででも、咲ちゃんの和了りを防げばいい)
淡(咲ちゃんが和了りそうになったら姫松か有珠山にでも差し込んで咲ちゃんの点数を変動させない。理論上はこれで勝てる)
咲「……」カチャ
淡(咲ちゃんが張った。待ちは索子が臭い。……流すか)
淡「……」カチャ
末原「ポン!」
淡「……」カチャ
末原「……!?」
末原「ろ、ロンです! 5800」
淡「はい」チャラ
咲「……っ」
679: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 00:57:19.88 ID:nlBB/sdP0
淡(ふふ。悔しそうにしてる。前半戦で私に点を取られ過ぎたね。いくらでも差し込んであなたの
和了りを阻止してあげるよ)
咲「……」
咲(そう来るのか……困ったなぁ)
末原(白糸台が振り込むなんて珍しいな。これは、流れが来てる……? 今がチャンスや)
末原(親番が続行できるし、ここは軽くでも連荘目指すべきやろか)
東三局
咲(……まずは軽く和了らないと。これ以上振り込んでマイナスに傾くのはよくない)
淡(――って、思ってるんだろうけど。そうそう簡単にはいかないってこと教えてあげる)
淡「カン」 白
末原(? 白を暗槓……? なんでわざわざ)
淡「もいっこ、カン」 中
684: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 01:01:13.24 ID:nlBB/sdP0
咲・末原・有珠山「!?」ビク
末原(しょ、小三元……!?)
咲(しかも槓ドラが……淡ちゃんの鳴いた中!)
淡(ふふ、どう? 和了れば倍満以上確定の手だよ。これをツモ和了りすれば咲ちゃんはマイナス6000)
淡(更にマイナスに傾く上に、有珠山がもう三万点弱しか残らない。私なら一瞬で消しトばせる。
そうすればプラマイゼロどころの話じゃないよね?)
咲「ん……」
淡(ほら、そういう事態を防ぐにはどうすればいいの、咲ちゃん?)
咲「……」カチャ
有珠山「! ろ、ロン。3900です」
咲「……はい」チャラ
末原「……」ホッ
淡「ふふ」
688: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 01:05:16.12 ID:nlBB/sdP0
淡(そう。私の和了りを防ぐには自分から他家に差し込むしかないよね。私が大きいのを和了って
有珠山がトぶよりはずっと確実。それが正解だよ、咲ちゃん)
淡(でもこれから私が大きな和了りをしそうになる度に咲ちゃんはそれを繰り返さないといけない。じゃないと他家が
トんじゃうしね。その度に咲ちゃんはマイナスに傾いて、プラマイゼロから遠ざかっていく)
咲「……」
淡(まあ、そんな『他家が弱かったからプラマイゼロを防げた』みたいな勝ち方はしないけどね。
あくまで正面から咲ちゃんを叩き潰す。でも、咲ちゃんはその可能性も考慮しないといけない)
淡(相当動きが制限されるはず。さあ、これでもまだプラマイゼロ出来るって言うならやってみせてよ)
南四局
淡「……」カチャ
淡(私の親番か。さーて、どうしてあげようかな)
淡「……」ゴォォォォォ!
695: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 01:10:11.15 ID:nlBB/sdP0
咲「……!」
咲(あ、しまった……!)
淡(ふふ。もう私の星の引力を止める気力もないのかな? 遅いよ、咲ちゃん)
淡「ダブルリーチ!」
咲・末原・有珠山「!」ビクッ
実況『出ました、大星選手のダブルリーチ――! 天和の『成り損ない』。しかしその威力は
絶大です――! さあ、他の三校はこれを防ぐことができるのか――!?』
淡(できるよね、咲ちゃん。別にむずかしいことじゃないよ)
淡(ほら、姫松が配牌で一向聴だよ。一巡待ってあげるから、差し込んであげなよ)
咲「……」
咲「……」カチャ
咲(あ、しまった……!)
淡(ふふ。もう私の星の引力を止める気力もないのかな? 遅いよ、咲ちゃん)
淡「ダブルリーチ!」
咲・末原・有珠山「!」ビクッ
実況『出ました、大星選手のダブルリーチ――! 天和の『成り損ない』。しかしその威力は
絶大です――! さあ、他の三校はこれを防ぐことができるのか――!?』
淡(できるよね、咲ちゃん。別にむずかしいことじゃないよ)
淡(ほら、姫松が配牌で一向聴だよ。一巡待ってあげるから、差し込んであげなよ)
咲「……」
咲「……」カチャ
697: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 01:11:55.68 ID:WCas2CC/0
そういえばなんかで見たけど
最強のキャラを作るにはそのキャラの心理描写を一切省くことが重要らしいな
打ってる最中の咲さんってそういうところあるよね
最強のキャラを作るにはそのキャラの心理描写を一切省くことが重要らしいな
打ってる最中の咲さんってそういうところあるよね
699: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 01:13:19.00 ID:gHhlzXFs0
>>697
別に咲に限らず麻雀漫画はボコられる奴の視点で進むのが基本や
別に咲に限らず麻雀漫画はボコられる奴の視点で進むのが基本や
701: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 01:15:46.49 ID:nlBB/sdP0
咲「……」カチャ
末原「あ、ロン! 7700!」
咲「……」チャラ
淡「ふふ」ニヤ
淡(どう? 身動きが出来ずに少しずつ窒息していくような感覚。まるで宇宙に
放りだされたみたいでしょ? もっと引きずり込んであげるよ……宇宙の闇へ)ゴォォ
淡(これで咲ちゃんは後半戦マイナス21600点。今の段階では倍満を和了ってもプラマイゼロには届かない)
淡(意識すればプラマイゼロなんて簡単に止められるもんだね)
咲「……」
もう咲ちゃんは戦意喪失したような面持ちだった。
今まで格下相手に得意げにプラマイゼロをやってきたんだろうけど、今回ばかりは相手が悪かった
ということだろう。続く南一局、親の有珠山が2600オールを和了った。それはまたしても
咲ちゃんがプラマイゼロから遠ざかることを意味していたが、咲ちゃんは何もできなかった。
続く南一局二本場――
705: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 01:19:40.20 ID:nlBB/sdP0
淡「……」カチャ
東東南南西西北北白白発発⑦ ⑦
淡「……ツモ。4000,8000」
咲・末原・有珠山「!」ビク
淡(何の苦もなく字一色の鳴り損ない和了っちゃったよ。これで咲ちゃんはマイナス28200。
悪あがきもここまでかな?)
淡「あーあ。なんかがっかりだな。咲ちゃん、もっと楽しませてくれると思ってたのに」
咲「……っ」
淡「まるで張り合いないよ。この程度でテルに挑もうなんて、身の程知らずにも程があるよね」
咲「……」
708: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 01:24:05.87 ID:nlBB/sdP0
淡「だいたい咲ちゃん、テルの強さ分かってるの? この私ですらテル相手に一度も
トップとったことないんだよ? 麻雀でテルに何を伝えたいのか知らないけどさ、
こんなんじゃテルも「弱いなぁ」としか思わないんじゃない?」
咲「……淡ちゃん」
淡「んー?」
咲「ちょっと……うるさい、かな」
淡「そう? 負けてるときは何でも耳障りに聞こえるものじゃないかな」ニコリ
咲「まだ勝負は終わってないよ。まだ私の親番が残ってる」
淡「そう、最後の親番だね。これを逃せば、残り二局でプラマイゼロにしないとだね。
――できると思ってるの?」
咲「お姉ちゃんに挑むなら……」
咲「それくらいじゃないと、駄目なんだよね」ゴォォッ!
淡「やってみなよ」ゴォ!
713: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 01:29:18.80 ID:nlBB/sdP0
南二局
淡(咲ちゃんの親……喰いタンでも和了ってやろうかな。ふふ、咲ちゃん悔しがるだろうなぁ)ニヤニヤ
咲「――カン」
淡「お?」
咲「ツモ。嶺上開花。2000オール」
淡(案外あっさり和了られちゃったか。さっきの挑発でさすがに火が点いたかな?
まあそれくらいじゃないと面白くないけどね)
南二局
咲「……」カチャ
淡(……咲ちゃんが張った。でも安い。連荘狙いできたか。いいよ、受けて立ってあげる)
末原(清澄……張ったか? せやけど、ここはうちもオりれん。私の親は次の南三局。うちと清澄の
点差はまだ三万点以上ある。ここで逃げたら、次の親でケチついてまう気がする)
716: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 01:31:20.49 ID:nlBB/sdP0
淡「……」カチャ
淡(四巡目で一向聴……珍しく私の手が重い。このままなら咲ちゃんに和了られちゃうか……)
淡(咲ちゃんの待ちは多分③⑥筒。私が振り込むことはないけど……他の二校が読めてるかどうか……)
淡「……」タン 赤5筒
有珠山「――っ、チー」 ④赤⑤⑥
淡(――よし。今のはただのドラ回収じゃない。この局数と点差でそんなケチな点棒拾っても仕方ないからね。
有珠山は⑥筒が危険だと察知してる。なら筋の③筒も切らないよね。よし、こっちは大丈夫)
淡(あとは……)チラッ
末原「……」カチャ
末原(張った! 溢れたのは③筒か……切りにくいけど……)
末原(――いくしかない!)カチャ
淡「……チッ」
724: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 01:35:50.34 ID:nlBB/sdP0
咲「ロン。3400」
末原「っ……はい」チャラ
淡「……」
淡(いくら私でも姫松が振り込むのを止めるのはちょっと厳しいな。小三元ちらつかせて
オりさせることもできるけど、それならもう私が和了っちゃった方が早いか)
南二局
淡「カン」発
末原(っ……小三元か……いや、さっきの緑一色……?)
末原(いや、暗槓なら発を鳴いて役満一歩手前に出来る役なんかいくらでもある。
字一色。混老頭、四槓子、四暗刻……全部を警戒するなんか無理や。くっ……わざわざ
暗槓したのは他家の動きを牽制するためか)
淡(これなら姫松も有珠山も勝手にオりてくれるでしょ。さぁてと――)
咲「――カン」 4索
淡・末原・有珠山「!?」
729: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 01:39:33.06 ID:nlBB/sdP0
咲「――ツモ。2600オール」
淡「――」ヘー
淡(4索……緑一色の大本命じゃん。お構いなしか……やっと全開ってわけ?)
淡(もうこうなると下手なハッタリは逆効果だね。さっさと和了っちゃう方が確実か)
実況『清澄高校の宮永選手、ここにきて親の三連続和了です。一位の白糸台とも、三位の姫松とも
大きく差が開いての二位。この連続和了は二位抜けでの決勝進出を盤石なものとするのか、
それとも一位の白糸台にすら食らいつく決意の表れか――!』
淡(私も咲ちゃんももう点数も順位も考えてない。あるのはただ、プラマイゼロへの調整のみ。
咲ちゃんは今マイナス11000点。オーラスで最後の調整をするつもりなら、ここは
満貫12000くらいを狙ってくるはず。そうすればプラス1000点。オーラスで3900を
和了ればプラマイゼロだ)
淡(させないよ……!)ゴッ
732: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 01:46:09.03 ID:nlBB/sdP0
淡「……」カチャ
一一一二二三四六七八九九⑨ 九
淡(――よし。張った)
実況『大星選手、この局面で九連宝橙聴牌だ――! 五萬なら役満となります――!』
淡(ってことは、五萬は和了れないってことだ。九連を張ったらいつも清一になるから、ツモるのは
五萬子以外。多分次か、その次くらいに来る)
有珠山「……」カチャ
淡(有珠山……この点差でもまだ戦意喪失してないな。親番もないし、役満を狙うしかない状況)
淡(姫松以上にオりれないから、危険牌でもガンガン切るしかない。――ここから取る?
これ以上咲ちゃんに点数調整させるのもよくないし)
有珠山「……」カチャ 東
咲「――カン」
735: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 01:50:07.40 ID:nlBB/sdP0
淡(っ、馬鹿……! いくら突っ張るしかないったって、よくそんな牌切るね。信じられない)
咲「もいっこ、カン」カチャ
淡(くそ……これ和了られるな。あーあ、だから弱い人と打つのは嫌なのよ。
まあ、次で親を流せばまだプラマイゼロは十分防げるはず)
咲「――もいっこ、カン!」
淡・末原・有珠山「!?」
淡(三連続……!? まって、しかもこの牌……これ、安手なんかじゃない!)
咲「――ツモ」
99南南 南 ①①①① ⑨⑨⑨⑨ 東東東東
咲「三暗刻三槓子トイトイ混老頭東南嶺上開花ツモ。――36000点です」
有珠山「ひっ――!」ビクッ!
末原「」
742: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 01:54:17.85 ID:nlBB/sdP0
実況『…………さ』
実況『――三倍満!! 親の三倍満が飛び出しました――!! 有珠山の捨てた牌から
三連続カンにより一気に手を進め、三倍満にまで上りつめました――!』
実況『これは姫松、有珠山にとっては致命傷の一撃となるか――!? 二位の清澄と三位の
姫松の点差は七万点以上にまで広がってしまいました!! 有珠山高校は親番がないため絶体絶命。
親を残す姫松も、もはや敗退は時間の問題か――!』
末原「……」プルプル
末原(き……清澄ぃ……!)ギリリ
有珠山「……」ボーゼン
淡「…………」
淡(これは……どういうこと?)
748: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 01:57:31.38 ID:nlBB/sdP0
淡(確かに驚いたよ。ここで三倍満かましてくるなんてね。――でも、それって駄目でしょ。
今ので咲ちゃんはプラス25000点。これ、どうするの? どこかに20000点振り込まないと
プラマイゼロにできないんだよ? てっきりオーラスで指定の点数を和了ってプラマイゼロにしてくる
と思ったのに、これじゃあ『オーラスで指定の点数に振り込んで』点数調整するしかないじゃない。
そんなこと……本気でできると思ってるの?)
淡(……思ってるんだろうなぁ……自分で自由に役を作って点数調整するならまだしも、
誰かにその役を作ってもらってそこにちょうど振り込むなんて、そこまでできれば確かに
神技だよ。はっきり言って、多分私もできない)
淡(……調子に乗り過ぎだよ、咲ちゃん)
淡(分かってるの? もう有珠山が10000点ないんだよ。今私が有珠山を
トばせばそこで終わり。あなたは馬鹿丸出しで負けるんだよ)
咲「……」
咲(……そんなことさせないよ、淡ちゃん)
750: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 01:58:39.13 ID:eR6UiQb80
もう当然のように脳内で会話してるな
754: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 02:01:01.20 ID:nlBB/sdP0
南二局
淡「……」カチャ
四四四七七七南南南⑨⑨⑧① ⑧
淡(はい、三暗刻、南、ドラ3でハネ満。これで有珠山トばしてあげる)
咲「……」カチャ ③筒
有珠山「っ……」ピク
有珠山「…………」
有珠山「ろ、ロン……です。3900」
咲「はい」ホッ
淡(ふん、差し込んだか。点数調整も兼ねてるんだろうけど、必死だね咲ちゃん)
咲(……危ないところだった。もし有珠山の人が和了ってくれなかったら……多分、負けてた)
末原(くそっ……なんて迷惑な和了りや。もう戦意喪失したならじっとしといて欲しいもんやけど……まあ振り込んでトばれるよりはマシか)
末原(私は諦めへんで清澄。この親番……絶対ものにしてみせる!)
757: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 02:03:20.99 ID:6bnybioZ0
あきらめない末原さんマジヒロイン
761: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 02:04:40.82 ID:nlBB/sdP0
南三局
淡(さて、あとたった二局。咲ちゃんは今プラス21100点。ここから二局でマイナス16000点
しないといけないわけだけど、二局に分けて考えれば決して不可能じゃない。満貫に二回振り込めばいいわけだしね)
淡(でももしオーラスでこの点数だったら? オーラスだけでマイナス16000なんて
できるわけがない。だってそんな点数で和了っても姫松も有珠山も二位になれないんだから。だからこの局、
咲ちゃんは必ず姫松に振り込もうとするはず。姫松は連荘を狙って8000点でも喜んで和了るだろうし、
それを二回繰り返したあと、誰にも振り込まず、誰にもツモ和了りさせなければようやくプラマイゼロ、か)
淡(――ふふ。相当きつそうだね咲ちゃん。焦ってるのがこっちまで伝わってくるよ)
咲「……」
咲(分かってる。ここからプラマイゼロはかなり厳しいよ……)
咲(――でも、きっと淡ちゃんは私のやろうとしてることは読めてないはず。だって淡ちゃん
には思いつくはずのない方法だもん)
咲(そこで決める――!)ゴッ!
淡(さて、あとたった二局。咲ちゃんは今プラス21100点。ここから二局でマイナス16000点
しないといけないわけだけど、二局に分けて考えれば決して不可能じゃない。満貫に二回振り込めばいいわけだしね)
淡(でももしオーラスでこの点数だったら? オーラスだけでマイナス16000なんて
できるわけがない。だってそんな点数で和了っても姫松も有珠山も二位になれないんだから。だからこの局、
咲ちゃんは必ず姫松に振り込もうとするはず。姫松は連荘を狙って8000点でも喜んで和了るだろうし、
それを二回繰り返したあと、誰にも振り込まず、誰にもツモ和了りさせなければようやくプラマイゼロ、か)
淡(――ふふ。相当きつそうだね咲ちゃん。焦ってるのがこっちまで伝わってくるよ)
咲「……」
咲(分かってる。ここからプラマイゼロはかなり厳しいよ……)
咲(――でも、きっと淡ちゃんは私のやろうとしてることは読めてないはず。だって淡ちゃん
には思いつくはずのない方法だもん)
咲(そこで決める――!)ゴッ!
768: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 02:08:16.62 ID:nlBB/sdP0
23567中中中発発発白白
淡「――ふふ。リーチ」カチャ
咲・末原・有珠山「!」
実況『大星選手、ここでリーチ! 点差と役を考えればダマでも十分な手ですが、
これは他家を牽制するためのリーチでしょうか――!?』
淡(これでまず有珠山はオりる。あとは姫松。ここはオりない。オりれない。私のリーチに
対して責め続けるしかない。振り込めばそこで終わりだ)
末原「くっ……」
789①①①②③一二二三1 北
末原(いい手が入ってる……これは和了りたいけど……1索は白糸台に危険や。いや、もうここまで
めちゃくちゃな打ち手やと待ちなんか読まれへんけど、ここで振り込むことだけはあかん)
末原(まずは現物の北や。この1索は順子に伸ばして使うしかない)
773: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 02:14:17.62 ID:nlBB/sdP0
淡(――無駄だよ。あなたは次に4索をツモる。それを切ってお終いだよ。あなたも、咲ちゃんもね)
咲「……」
咲「……」カチャ 1索
淡・末原「!」
淡(これは――私の当たり牌……!)
淡「……く」
淡(だめだ、和了れない。これを和了ったら咲ちゃんの思うつぼだ。咲ちゃんのプラマイゼロの
調整を手伝うだけで終わっちゃう)
淡「……」
末原(……ロン宣言しない。この1索は通る! 現物がなかったから、もうここはこれに与るしかない。
三色は消えるけど、振り込むよりはずっとええ)
777: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 02:18:30.32 ID:nlBB/sdP0
末原「……」カチャ
789①①①②③一二二三1 4
末原「……」カチャ 1索
淡「……」ギリ
実況『あーっと。大星選手、清澄高校の当たり牌を見逃したため、これは同巡フリテン縛りで
和了ることができません――! いったいなぜ清澄から和了らなかったのか』
淡(……別にいいよ。次で今ツモった4索切ったら同じことだし)
咲「……」カチャ
咲「……」タン 4索
淡「ぐっ……!」ピク
淡(また私の当たり牌!? このっ……私が和了れないのをいいことにやりたい放題……!)
778: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 02:19:17.16 ID:tfvRGiVT0
リーチする意味まったくないな
781: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 02:20:47.99 ID:Nl7CEKeK0
あわあわは調子乗ってリーチしちゃったのが敗着
782: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 02:21:12.97 ID:nlBB/sdP0
末原(この4索も通る。よし、いい感じや)
789①①①②③一二二三4 一
末原(よし、いける!)
末原「……」タン 4索
実況『――ああー! これも同巡フリテンで和了れない――! 大星選手、清澄からの出和了りを
二度見逃したせいで、もう二度もチャンスを手放しています』
淡「……」ギリィ
淡(まだだ。この巡で有珠山がもう一度4索を引く。それは山越しだから、有珠山がそれを捨ててくれば和了れる。
有珠山はオりてるだろうけど、この流れなら4索は安全と思って切ってもおかしくない)
淡「……」カチャ
咲「カン!」
淡「!? なっ――!」
淡(私の捨て牌を――!)
786: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 02:24:36.31 ID:nlBB/sdP0
末原(ちょ、ちょっとまって清澄……まさか……嶺上開花!?)
淡(違う。和了ってどうするの。これは嶺上開花じゃなく、有珠山が4索を引かないように
ズラしたんだ。……でも、それだと結局4索を引くのは姫松だ。こんどはフリテンにならないから和了れる!)
咲「……」カチャ クルッ
槓ドラ 西
咲「……」カチャ 西
淡(今開けた新ドラの西を躊躇いなく切ってきた。これは……――! あ、しまった!)
有珠山「ぽ、ポン!」カチャ
淡「くっ……!」
淡(西は有珠山の風牌……!)
淡(カンで西をドラにして有珠山に鳴かせたんだ。まずい、この鳴きでまたツモ巡がズレて、
4索をツモるのは咲ちゃんになった。もう4索は出ない……!)
787: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 02:24:59.46 ID:JgnkQdLL0
同巡フリテンどころか見逃しだからツモ和了しかできないんじゃ…
792: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 02:28:02.28 ID:nlBB/sdP0
>>787しまった・・・リーチ見逃しだった・・・まあどの道和了れなかったので許してください
咲「カン!」
淡(ちょ……今度は暗槓!?)
咲「……」カチャ クルッ
末原(槓ドラ……――!!)
末原(槓ドラが私の①筒! これでドラ3……倍満手や!)
末原「……」カチャ
末原(こい! ――――!)カッ
末原「ツモ! イーペーコー純チャンドラ3、8000オール!」ッターン!
淡「なっ――」ガタッ
実況『末原選手、ここで親倍――! これで試合はまだ分からなくなりました――!』
淡「……」
淡(私が咲ちゃんから和了れないことを利用して、二度も姫松の危険牌処理を手助けして、しかもあの槓ドラ……)
淡(有珠山に当たり牌が渡ることの阻止。槓ドラで姫松の手を上げてきっちり8000点マイナス。
そしてツモ巡そのものをズラして姫松に当たり牌をツモらせる。……槓ドラを利用してここまで思惑通りに進めてくるなんて)
咲「カン!」
淡(ちょ……今度は暗槓!?)
咲「……」カチャ クルッ
末原(槓ドラ……――!!)
末原(槓ドラが私の①筒! これでドラ3……倍満手や!)
末原「……」カチャ
末原(こい! ――――!)カッ
末原「ツモ! イーペーコー純チャンドラ3、8000オール!」ッターン!
淡「なっ――」ガタッ
実況『末原選手、ここで親倍――! これで試合はまだ分からなくなりました――!』
淡「……」
淡(私が咲ちゃんから和了れないことを利用して、二度も姫松の危険牌処理を手助けして、しかもあの槓ドラ……)
淡(有珠山に当たり牌が渡ることの阻止。槓ドラで姫松の手を上げてきっちり8000点マイナス。
そしてツモ巡そのものをズラして姫松に当たり牌をツモらせる。……槓ドラを利用してここまで思惑通りに進めてくるなんて)
797: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 02:29:36.58 ID:ULlH4L9Xi
淡「私のもう一つの能力はリーチ後フリテンの撤回」
801: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 02:31:48.77 ID:WUw6wZZ50
>>797
なん、、、だど、、、、、、、、
なん、、、だど、、、、、、、、
802: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 02:32:15.56 ID:nlBB/sdP0
淡(……やってくれるね、咲ちゃん)
咲「……」
淡(次で仕留めてやる……絶対に)ゴッ
南三局
淡「ポン」北
末原(くそ……まずい牌鳴かせてもうたか?)
末原(でもこの配牌……これは……)
淡(咲ちゃんは今プラス13100点。オーラスでマイナス8000点になればプラマイゼロだ)
淡(今の点差のままオーラスになれば咲ちゃんの負けは確実。その考えは間違ってないはず。
さっきは少し余裕出してリーチなんてしちゃったから後の状況変化に対応できなかったけど、
今度は鳴いて速攻で仕留める)
806: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 02:36:17.65 ID:nlBB/sdP0
咲「……」カチャ 東
淡「ポン」カチャ
咲「……」カチャ 西
淡「ポン」カチャ
中中中九 北北北 東東東 西西西
淡(星の引力を使えば十分勝算はある。これで和了っても咲ちゃんはプラマイゼロにならない)
末原「……」カチャ
末原(……こい!)
末原(こい!)カチャ
末原(こい!!)カチャ
812: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 02:44:58.77 ID:nlBB/sdP0
末原「……」カチャ
末原「……! っ、き――!」ビクッ
一九①⑨19東南西北白発八 中
末原(きた!! 国士13面待ちや!!)ドックンドックン
淡「――ッ!?」ビクッ
淡(この感じ……! まさか姫松、役満張ったの? この土壇場で!?)
末原(いける……! これを和了れば、清澄と並ぶ!)ドックンドックン
淡「……」
淡(この捨て牌……国士か。しかもこの気配……尭深がオーラスで和了るときと同じ。
まさか13面待ち……?)ギリ
淡(ツモなら16000オール。咲ちゃんは逆にマイナス2900点になって、今度は
二局で8000点前後を和了ればプラマイゼロになる。……それくらいなら、十分有り得る)
815: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 02:49:06.44 ID:nlBB/sdP0
淡(有珠山も聴牌には遠いから差し込めない。咲ちゃんは当然和了らないだろうし、まずいな……
私が和了るしかない。この手で和了れば6000,12000。ここで和了れば姫松はオーラスでどんな手を和了っても二位にはなれないんだから、
咲ちゃんから2000点和了ったりしないはず。それよりもここで姫松に役満和了られて
二位争いに参加されるほうがずっと面倒だ)
淡(仕方ない、次で引くしかないね)ゴォォォッ!
咲「……」カチャ
咲「――カン」
淡(また暗槓? 大丈夫、暗槓ならツモ巡は狂わない。次巡で当たり牌をツモれるはず。
悪あがきだよ、咲ちゃん)
咲「……」カチャ クルッ
淡(新ドラは……――え)ピク
淡(新ドラ、西……? 私の鳴いた牌だ。ってことは、ドラ3がプラスされて……)
淡「――ッ!!!」
819: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 02:54:35.41 ID:nlBB/sdP0
淡(まずい、この手――!)
中中中九 北北北 東東東 西西西
淡(九萬がドラだから……混老頭トイトイ中混一色ドラ5、14飜で数え役満――!
まずい、この手じゃ和了れない!!)
淡「……くっ!」カチャ
淡「――――!!??」
淡(なっ……九萬じゃない……!?)
中中中九 一 北北北 東東東 西西西
淡「ぐっ……そ、そんな!」
淡(確かに一巡前までは九萬を引けるはずだったのに……数え役満になったから、牌が私を避けて……!
しかも、手牌に字牌しかない……これじゃあどれを切っても……!)
実況『こ、これは――!!! 大星選手、手牌が全て末原選手の当たり牌になってしまった――!!
こ、これはもう、振り込むしか道はない――! 親の役満直撃は48000点です!!』
中中中九 北北北 東東東 西西西
淡(九萬がドラだから……混老頭トイトイ中混一色ドラ5、14飜で数え役満――!
まずい、この手じゃ和了れない!!)
淡「……くっ!」カチャ
淡「――――!!??」
淡(なっ……九萬じゃない……!?)
中中中九 一 北北北 東東東 西西西
淡「ぐっ……そ、そんな!」
淡(確かに一巡前までは九萬を引けるはずだったのに……数え役満になったから、牌が私を避けて……!
しかも、手牌に字牌しかない……これじゃあどれを切っても……!)
実況『こ、これは――!!! 大星選手、手牌が全て末原選手の当たり牌になってしまった――!!
こ、これはもう、振り込むしか道はない――! 親の役満直撃は48000点です!!』
821: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 02:58:56.55 ID:nlBB/sdP0
淡「…………」プルプル
咲(淡ちゃんの弱点は13飜以上の手を和了れないこと。だからカンを操ってドラを乗せることが
できる私なら、淡ちゃんの手を封じることができる。今までそんな止められ方をしたことは少ないはず)
淡(……この一瞬を狙ってたっていうの……? 私に役満を振り込ませることを……!)
咲「……」
淡「く……そぉ……!!」タン!
末原「!! ろ、ロン!! 国士無双、48000点です!!」
淡「……」ギリッ!
823: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 02:59:57.38 ID:nlBB/sdP0
白糸台:132800
清澄:130700
姫松:130700
有珠山:5800
実況『な、なんということでしょう!! まさかここで白糸台が三位の姫松に役満を放銃!!
これにより有珠山以外の三校の点差はほぼ横並び状態です! これは姫松の二位進出……
いえ、まさかの白糸台の三位転落すらも十分考えられる点差となりました――!』
淡(こ、この私がこんな雑魚相手に役満を振り込むなんて……テルの見てる前でよくもこんな……!)ギリィ!
有珠山「……」カチャ
咲「ロン。1600」
淡(あっ……! しまった、動揺してる間に和了られた)
実況『清澄高校が有珠山から安手を和了り、姫松高校の親が流れます。ついに準決勝大将戦の
オーラスに突入です!!』
清澄:130700
姫松:130700
有珠山:5800
実況『な、なんということでしょう!! まさかここで白糸台が三位の姫松に役満を放銃!!
これにより有珠山以外の三校の点差はほぼ横並び状態です! これは姫松の二位進出……
いえ、まさかの白糸台の三位転落すらも十分考えられる点差となりました――!』
淡(こ、この私がこんな雑魚相手に役満を振り込むなんて……テルの見てる前でよくもこんな……!)ギリィ!
有珠山「……」カチャ
咲「ロン。1600」
淡(あっ……! しまった、動揺してる間に和了られた)
実況『清澄高校が有珠山から安手を和了り、姫松高校の親が流れます。ついに準決勝大将戦の
オーラスに突入です!!』
825: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 03:04:35.43 ID:nlBB/sdP0
白糸台:132800
清澄:132300
姫松:130700
有珠山:4200
末原(オーラスや。清澄との差はたった1600点や。ここで2飜以上和了れば二位抜けや!)
淡(今の和了りで咲ちゃんはプラス14700。この点差なら誰かが和了った時点で即終局。
正真正銘、最後の一局だ)
淡(ここから咲ちゃんがプラマイゼロにするには9000点以上の振り込みが必要……
でも振り込んだら三位に転落。だから私が8000オールを和了って、その前に咲ちゃんが
リーチしてリー棒を1000点だせば、600点差で姫松に勝ちつつプラマイゼロ。
……無理だ。できるわけない。もうプラマイゼロは絶対に不可能だ)
淡(プラマイゼロは諦めたか。役満を振り込ませて一矢報いたってことかな。確かに、プラマイゼロに
されるのと同じくらいの屈辱だよ、咲ちゃん)
淡(こうなった以上、もうプラマイゼロの心配はない。ここで私たちの戦いの勝敗を
決める要素があるとすれば、それは私か咲ちゃんがどこかに振り込んで三位に転落っていう赤っ恥を晒すこと以外にない)
清澄:132300
姫松:130700
有珠山:4200
末原(オーラスや。清澄との差はたった1600点や。ここで2飜以上和了れば二位抜けや!)
淡(今の和了りで咲ちゃんはプラス14700。この点差なら誰かが和了った時点で即終局。
正真正銘、最後の一局だ)
淡(ここから咲ちゃんがプラマイゼロにするには9000点以上の振り込みが必要……
でも振り込んだら三位に転落。だから私が8000オールを和了って、その前に咲ちゃんが
リーチしてリー棒を1000点だせば、600点差で姫松に勝ちつつプラマイゼロ。
……無理だ。できるわけない。もうプラマイゼロは絶対に不可能だ)
淡(プラマイゼロは諦めたか。役満を振り込ませて一矢報いたってことかな。確かに、プラマイゼロに
されるのと同じくらいの屈辱だよ、咲ちゃん)
淡(こうなった以上、もうプラマイゼロの心配はない。ここで私たちの戦いの勝敗を
決める要素があるとすれば、それは私か咲ちゃんがどこかに振り込んで三位に転落っていう赤っ恥を晒すこと以外にない)
829: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 03:07:38.52 ID:nlBB/sdP0
淡(最後の最後でこんな殴り合いみたいな麻雀にもつれ込むなんてね。でも、ここを押さえれば私の勝ちだ)
淡「ポン!」カチャ
999⑤⑤⑧⑧北北北 111
淡(トイトイ。ツモれば三暗刻だ。4800だからプラマイゼロにもならないし、即終局。
これでとどめを刺す……!)ゴッ!
末原「……」カチャ
二二二234赤56②②③③④ ④
末原(来た! タンヤオイーペーコー平和ドラ1で三面待ち! これを和了れば文句なしで1位通過や!)
淡(……姫松も張った。まずい。オーラスは私が親……高い手をツモられれば親被りで
三位転落も有り得る。そんなことになるくらいなら自殺したほうがマシだ)
淡(⑤筒も⑧筒もまだ二枚ずつある。絶対に先に和了ってみせる!)
832: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 03:10:30.48 ID:nlBB/sdP0
有珠山「……」カチャ ⑨筒
咲「チー」カチャ ⑦⑧⑨筒
淡「……っ」
淡(私の⑧筒……くそ、でもまだ一枚ある)
咲「……」カチャ
咲「……」タン 赤⑤筒
淡「――あ」ピク
淡(⑤筒――私の当たり牌だ!)
実況『――ああーっと。ここで宮永選手、赤⑤筒を捨てた――! これは大星選手の当たり牌!
これで勝負は決着だ――!』
淡「ろ――」
淡「――」ピタ
836: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 03:13:14.56 ID:nlBB/sdP0
淡「……」
淡(赤⑤筒……ドラ……これを和了ったら、私の手はトイトイドラ1で9600点になる)
淡(咲ちゃんは今プラス14700。私に9600点を振り込んだら、プラス5100点)
淡(つまり……プラマイ、ゼロ――!?)ゾクッ
咲「……」ジー
淡「……っ」ゾ
淡(これは事故じゃない。差し込んだんだ。これが私の当たり牌だって分かった上で切ってるんだ)
淡(この子、正気!? ここで私が和了ったら、清澄は三位に転落。決勝に進めないんだよ!?
咲ちゃん、そうまでしてプラマイゼロに拘るっていうの!?)
咲「……」ジー
淡「くっ……」
841: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 03:14:29.44 ID:eR6UiQb80
白糸台の控え室は今頃阿鼻叫喚だな
844: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 03:15:54.60 ID:nlBB/sdP0
淡(咲ちゃんは私を試してるんだ。私が咲ちゃんとの勝負に決着をつけるのか、
それとも手近な勝利に飛びつくのか。私の器を測ってる……)
照『――打ってみればいい。淡の実力なら、それでどっちが勝者か判断がつく――
』
淡(――ッ! ……そうだ、ここでロン宣言するっていうことはつまり、姫松とのめくりあいに
勝つ自信がないって認めるようなものだ。そんな屈辱……受けられるわけない!)
淡「……」
実況『え……? えっと……? 大星選手、ロン宣言を……え、しない……? な、なぜ?』
末原「……」カチャ
実況『あ、ああーっと! 末原選手が牌をツモりました。もう大星選手はロン宣言できません!
こ、これはどういうことでしょうか!? 今ロンすれば勝利は確定していたというのに、なぜ
見逃したのか――!?』
咲「……」
咲(淡ちゃん、すごいプライドだ。確かに、この人に勝たないとお姉ちゃんに挑む資格なんてない)
850: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 03:18:13.22 ID:nlBB/sdP0
淡(まだだ……まだ二枚ある。それを引ければ)
咲「……」タン 赤⑤筒
淡「――!!」ビクッ
淡「ぐっ……!」
淡(に、二巡連続……!? こ、こいつ……!)ギリギリ
実況『お、大星選手、なんと二巡連続で当たり牌を見逃した――! も、もう私には訳がわかりません!』
淡「……」プルプル
淡(……こ、ここまでコケにされたのは生まれて初めてだ……血管ブチ切れそう
……)プルプル
852: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 03:18:43.36 ID:Nl7CEKeK0
清澄の待合室もすごいことになってるだろな能力割れてる分
857: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 03:20:57.86 ID:lYQPHFPB0
孕村さんが泡吹いて失禁するレベル
858: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 03:21:00.67 ID:nlBB/sdP0
淡(これであとは⑧筒一枚……姫松は多分三面待ち。当たり牌の数では私が圧倒的に不利だ)
淡(それでも先に引けるかどうか。それが雀力の差なんだ。私なら引ける、引いてやる!)
末原「……」カチャ
末原(こい……!)ドックンドックン
淡(くそ、来るな……!)ドックンドックン
末原「……く」カチャ
淡「……」ホッ
淡「……」カチャ
淡(こい……!)ドックンドックン
末原(来るな……!)ドックンドックン
863: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 03:25:12.60 ID:nlBB/sdP0
淡(くそ、不要牌……)カチャ
咲「……」カチャ
末原「……」カチャ
淡「……」カチャ
淡(っ……くそ!)タンッ
白糸台控室
照「……淡。押されてる」
菫「あの大星が……」
誠子「大星さん、何度も和了りを見逃してましたよね。これで逆転負けして敗退なんてことになったら……」
尭深「どうするんですか?」
868: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 03:27:54.82 ID:nlBB/sdP0
菫「――どうもしないさ。言っただろ、個人のミスはチームのミスだ。それが団体戦だ。
まあ、部長としてしっかりと叱っておくがな」
尭深「……わかりました」
菫「それに、私は大星が勝つって信じてる。あいつはきっと負けない」
誠子「……弘世先輩、なんか嬉しそうですね」
菫「え?」
誠子「いえ、なんかそんな気がして」
菫「……嬉しい……」
菫「そうか、そうなのかもしれないな」
照「どうしたの?」
菫「私は、大星が追い詰められて嬉しいのかもしれない」
872: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 03:32:09.13 ID:nlBB/sdP0
誠子「日頃の恨みつらみがあるからですか?」
菫「おいおい、そういう話はやめろ。そうじゃない。
見てみろ、大星の顔を。あんなに必死になってる大星を見たことあるか?」
照「私と打ってるときでも、あんなに必死になってるところは見たことない」
菫「でも、私たちは多分、いつもあんな感じで麻雀を打ってるんだと思う。聴牌になったときは
当たり牌が出ないか目をギラギラさせて、他家がツモるときは、和了るな和了るな、って念じながらさ」
菫「私はそれこそが麻雀の醍醐味だって思ってる。麻雀を打つやつは皆そのときのドキドキとか、
和了れたときの喜びとかが大好きで、だから麻雀を打つんだと思う。
でも大星は今までそんな感覚を味わえたことがないんだ。唯一照だけがそれに近いものを与えてくれるから、
あいつは照と打ちたがるんだと思う」
尭深・誠子「……」
877: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 03:36:05.56 ID:nlBB/sdP0
菫「でも今、あいつはその感覚に肉薄してる。姫松がツモれば逆転負け。自分がツモれば完全勝利。
その両極端な境地で、自分の運に全てを託す感覚。……もしかしたら大星は今、生まれて
初めて麻雀を打っているのかもしれない」
照「……それが嬉しいの?」
菫「ああ、嬉しい。あいつもやっぱり私たちと同じ、麻雀を楽しめる女子高生なんだなって思うと、
なんだろうな、なんて言えばいいのか分からないが……多分、私はそれが嬉しいんだと思う」
照「……そう」
尭深「――――あ」ピク
誠子「あ!」
菫・照「――ッ!」
菫「こ、これは……!」ガタッ
菫「清澄!!」
882: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 03:40:36.32 ID:nlBB/sdP0
淡「……」カチャ
淡(くそ、また引けない……どうして)
末原「……」カチャ
末原(く、なんで引かれへんのや)
咲「……」
淡(テル……)
どこまでも暗く、どこまでも孤独な宙の中で、私が初めて見つけた光。温かな輝き。
彼女に近づきたくて私は麻雀を打ってきた。テルと一緒に歩けることを誇りに思っていた。
私に負けるようじゃテルに挑む資格はないと咲ちゃんに言ったけど、それは私にも言えることだ。
こんなところで負けるようじゃ、私にテルの隣に並ぶ資格なんてない。
淡(いやだ……)ドックン ドックン
テルから遠ざかりたくない。もう二度と孤独になりたくない。もっとあの太陽の光に照らされていたい。
負けたくない……負けたくない!
886: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 03:45:06.44 ID:nlBB/sdP0
淡(私は――)ドックン ドックン
こんなに負けたくないと思ったのは生まれて初めてだった。
こんなに心臓が脈動するのは初めてだった。こんなに手の平に汗が滲むのは初めてだった。
でも、不思議とこの感覚は嫌いじゃなかった。
緊張に霞む視界は眩しくて。汗ばむ身体は暖かくて。
もしかしたら……。
私の胸を震わすこの鼓動こそが。この火照る身体の熱こそが。
私がずっと欲しかった、星すらも照らす陽の光だったのかもしれない――。
淡(私は――咲ちゃんに勝ちたい!)
タン
――ツモ。
実況『――き』
実況『決まったァァァ!! ついに準決勝大将戦決着――! 勝者は――!!』
890: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 03:47:07.66 ID:nlBB/sdP0
淡「……はあ……はあ……」
何も聞こえなかった。
まるで鼓膜が切れたかのように静かだった。姫松と有珠山が立ちあがり何かを言っていた気がするが、何も聞こえてこなかった。
ただ、心臓の音だけが聞こえた。ドックンドックンと脈打つその鼓動の音だけが、ずっと響いていた。
淡「……はあ……はあ……」
ぴちゃん、と頬を滑った汗が卓に落ちて、私の意識はようやく目覚めた。
開かれた私の手牌。掴みとった最後の⑧筒。トイトイ三暗刻の4000オール。
私の勝ちだった。
白糸台:144800
清澄:128300
姫松:126700
有珠山:200
897: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 03:50:10.56 ID:nlBB/sdP0
淡「……私の……勝ちだね、咲ちゃん」
咲「うん」
卓には私と咲ちゃんだけが残っていた。決勝進出を果たした二人だけが。
淡「ねえ、どうして赤⑤筒切ったの? 私が和了ったらどうするつもりだったの?」
咲「淡ちゃんは和了らないと思ったから」
淡「……ふふ」
淡「まあ、あれだね。私をここまで追い詰めたことは認めてあげる。でも、やっぱりまだ
テルには及ばないよ」
咲「そう、なのかな……」
淡「でも、確かに高校生の内では段違いの強さだと思う。ま、私ほどじゃないけど」
咲「あはは……」
901: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 03:52:12.70 ID:nlBB/sdP0
咲「じゃあ私帰るね」
淡「うん、じゃあ、また決勝でね」
咲「うん」ガタ
ツカツカツカ
淡「……」
淡「ねえ、咲ちゃん」
咲「ん?」
淡「――どうして、オーラスで和了りを見逃したの?」
903: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 03:54:28.86 ID:nlBB/sdP0
咲「――――」
咲「……気づいてたの?」
淡「まあね。私が⑧筒をツモる前、咲ちゃん聴牌になってたよね。カンして嶺上開花すれば
和了れてたんじゃないの?」
咲「……うん」
淡「和了ればよかったのに。私が赤⑤筒和了らなかった時点でプラマイゼロは諦めたんでしょ?」
咲「うん。まあ、和了られても困ったんだけどね。もうあの時点で私はドン詰まりになってたんだ」
淡「ならせめて最後に気持ち良く和了って終わればいいのに」
咲「……」
咲「私の手は5飜で、2000,4000の手だった。それなら和了ってたと思う」
咲「でもそのためにはカンをしないといけなかったから」
淡「……槓ドラか」
906: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 03:55:50.58 ID:nlBB/sdP0
咲「うん。あそこでカンしてたら、ドラが乗ってハネ満手になってたと思う。そしたら3000,6000……
淡ちゃんが親被りで三位になってた」
淡「……決勝でテルに会いたいんだったっけ?」
咲「うん。だから白糸台に敗退してほしくなくて」
淡「放銃さえしなければ誰が和了っても二位抜け確実だったもんね。なるほどね……」
淡(勝たせてもらった……って形になるのかな、これ)
淡「あーあ。なんかすっきり出来ないなぁもー。手加減されて勝ったみたいじゃん」
咲「ううん、私のプラマイゼロに付き合わなかったら私だって普通に負けてたかも」
淡「ほんとだよ! 私が何回和了りを見逃してあげたと思ってるの! ほんとストレスマッハだったんだから!」
淡「だいたい、ほんとにそのカンで嶺上開花できてたかどうかも分かんないじゃん」
咲「むっ、それは出来てたもん」
911: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 03:59:22.94 ID:nlBB/sdP0
淡「いーや出来てなかったね。仮にできてても、それでドラが一つ乗ったかどうかもわかんないし」
咲「乗ってたもん」
淡「乗らなかったもんねー。ベー」
咲「乗ってたの! ああもう、山崩さなきゃよかった!」
淡「ふふー。結局私の完全勝利ってことだよね。やっぱ私サイキョーだわー」
咲「ふん、私の誘導で役満振り込んだくせに」
淡「は、はあ? あんなのわざとだし。ああすれば咲ちゃんが大きくプラスになるから、
プラマイゼロさせにくくなるなーって思って、わざと振り込んだんだし」
咲「うっそだー。『くっそー!』とか言いながら切ってたじゃん」ププ
淡「言ってないっ!」
915: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 04:02:17.30 ID:nlBB/sdP0
咲「言ってたよ。涙目で」
淡「涙目だったの咲ちゃんじゃん!」
咲「私はずっと平静だったよ」
淡「どこが。『人和振り込んじゃった、あわあわ~』ってしてたじゃん」
咲「し、してないよっ」
淡「言っとくけど、決勝ではもうプラマイゼロ勝負なんてしないからね。っていうか、咲ちゃんも
出来ないでしょ。二位じゃ意味ないんだし」
咲「うん、そうだね」
淡「普通に点の取り合いしたら私が勝つに決まってるんだから。決勝ではこんなに競るとは思わないでよね。ベー」
咲「大丈夫、決勝では私も点を取りにいくから。逆に淡ちゃんトばないように気をつけてね」ニッコリ
917: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 04:05:19.69 ID:nlBB/sdP0
淡「ふん、決勝戦でほえ面かかせてあげるから」
咲「こっちこそ」
淡・咲「ふんっ!」
淡・咲「……」
淡・咲「――ぷ。あはははっ」
淡「……まあ、あれだね」
咲「ん?」
淡「私の方が強いのは確かなんだけど、まあ……そこそこ強いってのは認めてあげる」
淡「だから特別に! ほんとにとっくべつに! 今日から私のライバルを名乗ることを
許してあげる。感謝してよね」
咲「えー? 別にいらないや」
淡「うっさい! ありがたく受け取れバーカ! 私のライバルなんて今のとこテルくらいしかいないんだからね!」
921: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 04:06:39.99 ID:nlBB/sdP0
咲「……お姉ちゃん」
淡「……」
淡「昔テルと何があったのか知らないけどさ、あの人は理由もなく人を嫌ったりする人じゃないと
思うよ。妹なら尚更」
咲「……うん。全部、私のせいなんだ」
咲「だから私……お姉ちゃんに会って、伝えなきゃ」
淡「……ふふ」
淡「伝わるといいね。咲ちゃんの伝えたいこと、私にもなんとなく分かるよ。私も――さっき
同じものを感じてたと思うから」
咲「……うん」
咲「ありがとう、淡ちゃん」ニコ
923: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 04:08:29.34 ID:nlBB/sdP0
ガチャ、バタン
淡「ただいまー。あー疲れた」
菫「御苦労さま、大星。危ないところだったな」
淡「別に危なくないよ。余裕余裕。決勝では普通に打つから勝てるよ」
菫「油断するなよ大星。お前は気づいてないだろうが、オーラスで清澄は」
淡「嶺上開花を見逃したんでしょ? そんなの分かってるってば」
菫「え、あ、ああ、気づいてたのか。なら――」
淡「分かってる。次はちゃんと打つって。――それよりテル。どう? 咲ちゃん、
プラマイゼロにできなかったよ」
照「ああ、そうだね」
淡「これって私の勝ちってことでいいんだよね?」
照「……」
925: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 04:10:51.17 ID:nlBB/sdP0
照「でも淡、清澄の大将に完全に勝ったって言える?」
淡「む……か、勝ったもん。一位通過したし、プラマイゼロも防いだし、合計収支でも勝ったじゃん」
照「でも最後に清澄が見逃さなかったら淡は負けてた」
淡「嶺上開花できてたかどうかもわからないし、ドラが乗ったかも分からないじゃん」
照「もしドラが乗らなくても淡は抜かれてたよ」
淡「……」
照「……」
菫「――引き分けでいいだろ、別に」
淡「私引き分けって大嫌いなの。白黒はっきりつけたいから」
照「……じゃあどっちも勝ちってことにしない?」
926: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 04:11:29.04 ID:nlBB/sdP0
淡「どっちも勝ち?」
照「勝ったら相手のいうことを一つ聞くって約束だったけど、お互いに一つずつ相手に命令できるの」
淡「うーん……まあそれでいっか」
菫「私からも一つ頼みごとがあるんだが、もう二度と麻雀で賭け事なんてしないでもらえるか」
淡・照「私に勝ったら聞いてあげる」
菫「……」
928: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 04:13:04.53 ID:nlBB/sdP0
淡「じゃあ何にしよっかなー。やっぱ私の家に泊まり込んで麻雀打ちまくるとかかなー」
照「……ねえ」
淡「ん?」
照「命令できる権利、いま使いたいんだけど、いい?」
淡「え、早速? まあいいけど……なに?」
照「……」
菫「……? どうした、照」
照「……次の決勝戦――」
照「私に、大将を代わって」
つづく!
933: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 04:15:11.84 ID:nlBB/sdP0
ごめんなさい、一旦ここで終わります。前後編で考えてて、ここで前編終わりです。
淡編が終了したので、次の照編で姉妹の関係や三人の今後は全部終わらせます。
後編もやろうかと思ったんですが、正直、まさか15時間以上かかるなんて夢にも
思ってなかったので、次は日にちを跨いでもいいように
週末くらいに立てることにします。このスレで淡関係が全部終わると思って辛抱強く読んでくださった方々、
本当に申し訳ないです
なんかそろそろ本編で淡が出てきて能力解禁されそうなんで、それまでになんとか投下したかったんです
こんなに夜遅くまで沢山の支援や感想、本当に嬉しかったです。ありがとうございました
照編ではもっと麻雀パート短くします。ほんとにごめんなさい。つい書きすぎちゃいました
938: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 04:16:21.76 ID:aUGFtn9G0
>>933
乙乙乙
乙乙乙
946: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 04:19:47.63 ID:nlBB/sdP0
一応、>>1で言ってる原作無視のオリジナル展開は抽選の変更と決勝でのオーダー変更が主です
どうしてもこの順番にしないと終わらなかったので、なんとか許して下さい
ssを投下するのは二回目なのですが、皆さんの何気ない感想や支援が本当に嬉しかったです
とちゅう三回さるさんくらったので、多分皆さんの支援なしじゃここまで書けませんでした
本当にありがとうございました!
どうしてもこの順番にしないと終わらなかったので、なんとか許して下さい
ssを投下するのは二回目なのですが、皆さんの何気ない感想や支援が本当に嬉しかったです
とちゅう三回さるさんくらったので、多分皆さんの支援なしじゃここまで書けませんでした
本当にありがとうございました!
949: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 04:20:30.04 ID:eR6UiQb80
乙
野暮だけど咲はカンドラ乗らないのとインターハイは順番変えられないんだぜwww
野暮だけど咲はカンドラ乗らないのとインターハイは順番変えられないんだぜwww
950: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 04:24:24.91 ID:nlBB/sdP0
>>949
みたいですね。プロット練ってる段階で知って焦りましたwwww
なので最後は咲は和了らず、最後のドラは乗ったの?乗らなかったの?と濁らせる
感じで終わらせました
オーダー変更は、このパラレルワールドでは認められている、ということでお願いします
どうしても照と決勝で戦ってほしくて
さて、寝ます。こんな遅くまで付き合ってくださってありがとうございました
また今週か来週の金曜日くらいに投下できたら、そのときはよろしくお願いします
みたいですね。プロット練ってる段階で知って焦りましたwwww
なので最後は咲は和了らず、最後のドラは乗ったの?乗らなかったの?と濁らせる
感じで終わらせました
オーダー変更は、このパラレルワールドでは認められている、ということでお願いします
どうしても照と決勝で戦ってほしくて
さて、寝ます。こんな遅くまで付き合ってくださってありがとうございました
また今週か来週の金曜日くらいに投下できたら、そのときはよろしくお願いします
960: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 07:19:17.91 ID:kULkZ9eL0
乙乙
続き楽しみにしてる
続き楽しみにしてる
962: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 07:41:21.04 ID:BzhQRs1q0
おつ
966: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/24(月) 08:41:55.04 ID:VCWkrcC10
乙~
あわあわフルボッコになるかと思ったらなんかいいかんじに落ち着いたな
あわあわフルボッコになるかと思ったらなんかいいかんじに落ち着いたな
この記事へのコメント
こういう±0仲違い説SSもこれで見納めかね。
咲のフラッシュバックが強すぎた
咲のフラッシュバックが強すぎた
なぜ準決勝?
最高でした!!!!まじよかった!!
次回作期待してます!!!!!
次回作期待してます!!!!!
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- 名無しさん - 2012年09月24日 19:25:48
続き期待