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刹那「ソレスタルビーイングの技術力なら作れるはずだ、ガンダムを」
刹那「違う、これだ」
イアン「…お前が雑誌を見るとは珍しいな、どれどれ…」
刹那「106ページのホビー特集の部分だ」
イアン「……MS少女?…これは…フィギュアか、ふむ…フラッグの装甲のようなパーツを装着しているな」
刹那「次のページにはティエレンやイナクトも載っている」
イアン「………」
刹那「もう一度言う、ソレスタルビーイングならば創れるはずだ、ガンダムを」
イアン「……あのな刹那」
刹那「創れるはずだ」
イアン「………」
刹那「……創れるはずなんだ」
刹那「っ!!」
イアン「そんな懇願するような眼をされたらやらん訳にもいかんさ…ま、良い息抜きにもなるだろう」
刹那「感謝する」
刹那「……モデル?」
イアン「流石にキャラクターのディテールを考えるのは専門外だからな、機械的な部分なら元のガンダムのデザインがあるから大丈夫だが」
刹那「誰でも構わない」
イアン「ならトレミーのクルー辺りから適当に選んでも構わんか?」
刹那「問題ない」
イアン「…ふむ…ならフェルト辺りの写真を撮って来てくれ刹那、参考になる物がないと造形が崩れかねん」
刹那「了解した、刹那・F・セイエイ、目標を撮影する」
イアン「バレないようにな、念のために」
刹那「…了解した、刹那・F・セイエイ、目標を盗撮する」
イアン「……………………ああ…うん、ほどほどにな?」
………
刹那「資料の調達に成功した」
イアン「早いな、まだ30分も経っておらんぞ?」
刹那「丁度自室で睡眠中だったのが幸いした」
イアン「……よく部屋のロック外せたな」
刹那「俺達はガンダムマイスターだ」
イアン「……トレミーの個室のロックナンバーはマイスターでも知らんだろ」
刹那「ティエリアならトレミーの全システムを把握している」
イアン「…どうやってまるめ込んだんだあいつを!?」
刹那「最近のティエリアは人間の感情とそれから来る行動に興味を示しているらしい」
ティエリア「その通りだ」
イアン「いたのかお前」
ティエリア「刹那がフェルト・グレイスの部屋に侵入したいと聞かされた時は正直迷ったが協力すると決断した」
イアン「なんでだ?」
ティエリア「夜這いという行為を観測するチャンスだと思ったからだ、実際はそんな事は起こらなかったがな」
イアン「……………」
刹那「夜這いとはなんだ?」
ティエリア「男女の逢い引きの事だ」
刹那「……?モデルの撮影が何故それに繋がる?」
イアン「……こいつらはまったく」
ティエリア「とにかくだ、刹那のやろうとする事にも興味があるからこうして同行している」
イアン「…そ、そうか」
刹那「それより資料の確認を頼む」
イアン「あ、ああそうだな…見てみない事には使えるかどうかわからんからな」
ティエリア「使えなければもう一度強行盗撮を敢行するまでだ」
イアン「…トレミーのクルー内の不和に繋がるからやめてくれ」
刹那「それで、どうなんだ」
イアン「…ちょっと待ってろ…えーと…………ぶふぉっ!?」
ティエリア「どうした?」
イアン「…なんで裸なんだ!!しかも見る限り無理矢理脱がしただろこれは!?」
刹那「ああ」
イアン「あっさり認めるな!!ちょっとは罪悪感とかないのか…いや起こさないでよく脱がせたなお前!?」
刹那「先代ロックオンから対象を起こさずに衣服のみを脱がす技術を指導されていた、もしもの時に役に立つだろうから、と」
ティエリア「実際この技術を行使するシチュエーションではなかったのだろうが有益であったのは確かだ」
イアン「何に使うんだその技術は…」
刹那「そんな事は今はどうでも良い、資料が使えるのかどうかの判定を貰いたい」
刹那「そうか」
ティエリア「やはり全身像を撮影したのは正解だったようだ」
イアン「むしろやり過ぎだ」
イアン「自室待機だ、出来上がるまで待ってて良いぞ」
ティエリア「それだけで足りるのか?」
イアン「問題ないな、後は作るだけだし素人に下手に手を出されたくない」
刹那「以前にも製作した事があるのか?」
イアン「十代の頃にな、そういうのにハマッていた時期もあるってだけだ」
ティエリア「ならば経験者に任せるのがこの場は最適か…了解した」
刹那「頼む」
イアン「任せておけ、すぐに完成する」
イアン「刹那、完成したぞ」
刹那「っ!!」ガタタッ!
ティエリア「早いな…作業に取り掛かったのは昨日だと言うのに」
イアン「まあな、徹夜を覚悟さえすればこれくらいは当たり前だ」
刹那「見せてくれ、あるのは格納庫か?」
イアン「いや持って来てる、これだ」コト
ティエリア「……ほう、OOか」
イアン「間接は内蔵式で不自然な継ぎ目を除去、素材も最新の技術で作られた特殊シリコンで質感もより柔らかで装甲部分をパージすると出る胸の部分も色彩済みついでに縞も脱がせられてその中も一応造形してある」
刹那「………」
この人も変態や
ティエリア「随分と細かい…これを一晩で完成させるとは流石だ」
イアン「こういうもんは妥協が一番の敵だからな」
ティエリア「刹那、君の感想は?」
イアン「とりあえずはお前の注目通りのはずだ」
刹那「…………違う」
ティエリア「刹那?」
刹那「違う!!これは…ただの玩具でしかない!!」
イアン「え、あ…まあそうだな?」
刹那「俺が望んだのは…ガンダムだ」
ティエリア「……つまり、サイズに不満がある、と?」
刹那「………」コクリ
イアン「………初めから言ってくれよそれを」
ティエリア「刹那、イアンに説明した際にただホビー雑誌を見せただけでは確かにこうなる…対話は必要だと悟ったのだろう?」
刹那「……すまない…ティエリア・アーデ」
イアン「…はあ…やれやれだ」
フェルト「………え?」キョトン
イアン「…もう一度説明するぞフェルト、刹那がちゃんとした恋愛を経験するチャンスだ」
フェルト「はぁ…それで、私はどうすれば?」
イアン「現在OOの装甲部分を模した軽量カーボンをお前のサイズに合うように調整している、完成したらそれを来てくれ」
フェルト「あの…なんでそんなコスプレみたいな事…」
イアン「…刹那が望むからだ」
フェルト「……それは」
イアン「…あいつの人生は戦いしかなかった、そしてそれはこれからも続く、それがソレスタルビーイングであり…ガンダムマイスターであるって事ではあるがな」
フェルト「………」
イアン「だが…そんな刹那が初めて女体に興味を持ったんだ、MS少女だがな。
戦いに明け暮れるだけが人生ではないと知るまたとない機会があいつに来たんだ…なら、出来る事をしてやりたいんだよ」
フェルト「………そんな役目を私なんかで」
イアン「フェルトだからだよ、お前が刹那を悪く思っていないって知った上で頼んでいるのだからな」
フェルト「…………」
イアン「付け入るような事だと非難されるのは承知の上で、それでも刹那の為に出来る事をしてやって欲しいとお願いしている…頼む、フェルト」
フェルト「………わかった」コクリ
イアン「刹那、今度こそ完成だ」
刹那「…っ!!」ガタタッ!
ティエリア「今度こそ大丈夫なのだな?」
イアン「ああ、完璧だ」
刹那「では格納庫へ…!!」
イアン「大丈夫だ刹那、ちゃんと連れて来ている」
刹那「……なに?」
フェルト「……じゃ、じゃきーん…!!」ブンブン
ティエリア「…フェルト・グレイス、何をしている?」
フェルト「…えっ…と…び、ビームサーベル」ブンブン
刹那「…………」
フェルト「…う…うぅ…///////」ブンブン
ティエリア「…………」
イアン「かわいいだろう?恥ずかしそうに顔を真っ赤にしているのにきちんとやろうとする所がかなりポイント高い」
刹那「…………」
ティエリア「…ふむ、物事には未熟で拙いものが逆に需要があるという現象を追求したのか、深いと言わざる負えない」
フェルト「…恥ずかしい…うぅ」ブンブン
刹那「………ぅ」
ティエリア「……ん?」
刹那「…違う!!」
フェルト「……え?」ブンブン
イアン「………今度はなんだ」
刹那「フェルト・グレイス!!お前はガンダムか!?」
フェルト「…え…う、うん今はそのつもり」ブンブン
刹那「違う!!お前はガンダムではない!!」
フェルト「あの…刹那?」ブンブン
刹那「お前は……人間だ!!ガンダムでもMSでもない…!!」
イアン「…刹那?お前がMS少女を…ガンダムっぽい女の子を望んだんだぞ、それを…」
刹那「っぽいじゃない、ガンダムだ」
フェルト「…………」
イアン「……ガンダムじゃ抱き合えも愛を育む事も出来ないぞ刹那、」
刹那「そんな事はない」
イアン「………」
刹那「ガンダムはMSだ、そしてMSは人間ではない」
ティエリア「…つまり、ただの人間のコスプレには用は無いと?」
刹那「ああ」
フェルト「」ガーン
イアン「……すまないフェルト」
フェルト「……うぅ」
刹那「フェルト・グレイス、その格好は常識的に奇抜な部類に入る、早く着替えた方が良い」
フェルト「………」ジワッ
ティエリア「刹那・F・セイエイ、君はもう少し女性の扱いを学ぶべきだ」
刹那「…そうか、すまないティエリア・アーデ」
ティエリア「僕に謝ってどうする!!」
ロックオン「……そんな事あったのか?」
アレルヤ「通りでフェルトが塞ぎ込んでるはずだよ…」
イアン「ミスとは言えフェルトには悪い事をした…」
アレルヤ「悪いのは刹那だけどね」
ロックオン「しかし刹那の頼みとは言え…新たにガンダムは作れるねないだろ?」
イアン「太陽炉も現存の機体だけの分しか無いからな…まあやろうと思えばGNパックで動力はなんとかなるが…」
アレルヤ「……イアン、もしかして作りたい?」
イアン「本音を言えば作ってみたいとは思う」
ロックオン「………マジかよ」
イアン「だが独断で建造出来るほどの権限もないからな…刹那にはなんとか諦めて貰うしかないだろ」
イアン「刹那!?」
ロックオン「なんだ聞いてたのか?」
刹那「ああ」
アレルヤ「盗み聞きは感心しないよ?」
刹那「偶然だ」
イアン「…刹那、さっきのは本気か?」
刹那「ああ」
ロックオン「…どんだけ執着してんだよお前」
イアン「……難しいな、フレームから設計しないと機体のバランスがめちゃくちゃになるぞ」
刹那「…………」
ロックオン「無茶言わないで諦めろって、別にガンダムに拘る必要無いだろ?同じサイズの人間で我慢しとけって」
アレルヤ「これ以上はイアンが困るだろ?」
刹那「………わかった」
イアン「……そうか」
刹那「なら頭だけで良い」
イアン「………」
ロックオン「………」
アレルヤ「………」
イアン「………」
ロックオン「…刹那…お前…」
アレルヤ「なんでそんなに必死なの…」
刹那「………俺にはガンダムしかないからだ」
ロックオン「だからってMSに欲情すんなよ…」
アレルヤ「以前からまさかとは思ってたけどここまでとはね…」
刹那「………イアン」
イアン「………予備の交換部位として製作するだけだ、常時その部分を着けたりはしないからな刹那」
刹那「っ!!」
ロックオン「……まじかよ」
アレルヤ「イアン…」
ブシドー『頂くぞガンダム!!』ブンッ
刹那「……くっ!?」バチバチバチ!!
ブシドー『手応えは無しか!!だがメインカメラは潰させて貰った!!』
ロックオン「させるか!!刹那、一旦後退しろ!!」キュインキュイン!!
ティエリア「僕達が抑える間に応急処置をしろ!!」
刹那「了解した、イアン!!」
イアン「…わかっている!!早くトレミーに戻れ!!メインカメラとオーライザーを出す!!」
沙慈「刹那!!」
イアン「OOのメインカメラは即座にパージ出来るように改造してある!!やれ!!」
刹那「沙慈!!」
沙慈「了解!!ドッキングと同時にメインカメラの換装を行う」
ハロ「ダブルオーライザードッキングオーケー!!ドッキングオーケー!!」
刹那「ダブルオーライザァァァァァァ!!!!」
ブシドー「……なんと」
OOライザー(フェルト顔)「じゃきーん」
フェルト「」
スメラギ「なにあれ」
ミレイナ「おっきいグレイスさんになったですぅ」
ラッセ「…じゃきーんて…フェルトの声だったな」
フェルト「」
刹那「ガンダムだ」
沙慈「………」
刹那「これが俺の、俺達の、ガンダムだ」
OOライザー(フェルト顔)「ばきゅーん」
フェルト「」ジワッ
ブシドー『………可憐だなガンダム』
おわれ
じゃーな
壮大なフェルトいじめだった
やっぱフェルト可愛いな
ハムが呆気にとられただと
Entry ⇒ 2012.08.31 | Category ⇒ ガンダムSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
カレン「私知ってんだからね!どんなとこ行ってんのか」ゼロ「……」
扇「ゼロ、黒の騎士団の財政も……」
ゼロ「何?私の指示通りにしていれば予算で困ることはないはずだが」
扇「そ、それは……」
ゼロ「予算管理は玉城だったな」
玉城「お、俺の所為じゃねえぞ!!後輩も増えたから色々と出費が増えるのは仕方ねえだろ!!」
カレン「私、知ってんだからね!どんなとこ行ってんのか」
玉城「そ、そうなの……?」
ゼロ「カレン。玉城たちはどんなところへ行っているんだ?」
カレン「え……」
ゼロ「教えてくれ」
カレン「そ、それは……あの……えー……」モジモジ
ゼロ「どうした。早く言え」
ゼロ「男が行く店だと?……それだけでは分からんな。具体的に言ってくれ」
カレン「具体的にですか?」
ゼロ「予算がどこに消えているのか知りたい」
カレン「……扇さん」
扇「あー、そうだ。ナイトメアの点検があったな」
カレン「たまきぃ」
玉城「トイレいこっと」
カレン「……」
ゼロ「カレン。早く言え」
カレン「で、ですから……えっと……大人の男の人が行く店です……」
ゼロ「全然わからん。もっとはっきり明確に伝えてくれないと困る」
カレン「なんで私に聞くんですか?」
ゼロ「知っている者に訊ねてなんの問題がある?」
カレン「いや……そうですけど……」
カレン「……ソ、ソープ……ン……です……」
ゼロ「よく聞こえない」
カレン「もう他の人に聞いてくれませんか?!」
ゼロ「カレンが答えてくれれば何も問題はないし、時間の無駄にもならない」
カレン「……」
ゼロ「何故いえない。これは業務連絡のようなものだろう」
カレン「そ、それもそうですね……。申し訳ありません」
ゼロ「分かってくれればいい。では、言ってくれ。玉城はどんな店に我々の予算を使い込んだのかを」
カレン「ソープランド……です」
ゼロ「ソープランド?」
カレン「は、はい」
ゼロ「……」
カレン「……」ドキドキ
ゼロ「……レジャープールみたいなものか?」
カレン「え?」
ゼロ「ん?どうした?」
カレン「あの……もしかして……知らないんですか?」
ゼロ「遊ぶ場所ではないのか?」
カレン「いえ。遊ぶ場所と言えば遊ぶ場所なんですが……」
ゼロ「どうした?」
カレン「わざとですか?」
ゼロ「意味が分からないな。どのようなことをする場所なんだ?」
カレン「え?!」
ゼロ「どうした?」
カレン「それ質問ですか?!」
ゼロ「他にどのような捉えかたがある?」
カレン「……」
ゼロ「カレン。そのソープランドとは一体どのような遊び場なんだ?」
ゼロ「言えないだと?何故だ?」
カレン「ゼロ!!からかうのもいい加減にしてください!!」
ゼロ「私は大真面目に訊ねている」
カレン「ぐっ……」
ゼロ「答えろ」
カレン「えっと……あの……えー……?」
ゼロ「えー、ではない。予算がどこに消えているのか調査するのはトップとしての責務だ」
カレン「わ、分かっていますが……」
ゼロ「ならば答えてもらおうか。ソープランドとはどのような場所だ!!!」
カレン「大声出さないでください!!」
ゼロ「これはすまない。少し力が入りすぎた」
カレン「あの……本当に聞いたこともないですか?」
ゼロ「無いな。なんとかランドといえば、巨大テーマパークぐらいしか思いつかない」
カレン「……」
カレン「それは違います。安心してください」
ゼロ「そうか。大人の男が行く遊び場と言えば……他に考えられるのは……」
カレン「あ、あの。ゼロ」
ゼロ「なんだ?」
カレン「本当に申し訳ないんですが……ゼロは何歳ですか?」
ゼロ「質問には答えられないな。その質問の意図も―――」
ゼロ(そうか。成人男性にとってソープランドなる遊戯場は常識なのか。俺が知らないとなれば年齢の推測ができてしまう……!!)
ゼロ(ここから修正していくしかないな)
カレン「あのー」
ゼロ「まて。カレン。すまなかった」
カレン「え?」
ゼロ「そうか。ソープランドか。思い出した」
カレン「お、思い出したんですか?」
ゼロ「ああ。私もよく通っていた。昔のことだがな」
ゼロ「余りにも懐かしい単語なのですっかり忘れていた」
カレン「そ、そうなんですか……ちょっとショックです……」
ゼロ「?!」
ゼロ(ショックだと?くそっ!!益々わからん!!!どのような場所なんだ!!ソープランドとは!!!)
ゼロ(もしや威厳を失うような場所なのか……!?これはかえって失言になってしまったか!!)
カレン「ゼロも経験があるなんて……」
ゼロ「まて、カレン。違うな。間違っているぞ」
カレン「どういうことですか?」
ゼロ「現在のソープランドと私が通っていた時期のソープランドは別物だ」
カレン「別物?」
ゼロ「そうだ。勝手に失望されては困るな」
カレン「も、申し訳ありません」
ゼロ(よし。なんとか誤魔化せたな)
カレン「あの、興味本位の質問なんですが。どのように違うんですか?」
カレン「別物なら聞ける話かなって思うんですが……」
ゼロ「……せ、石鹸が買える」
カレン「はい?」
ゼロ「と、当時のソープランドでは石鹸が買えた」
カレン「へー。それって薬局とは別の石鹸が買えるということですか?」
ゼロ「まあ、そうだな」
カレン「どんな石鹸が売っていたんですか?」
ゼロ「桃の香りがするやつとかだ」
カレン「今とは全然違いますね」
ゼロ「そうだろう」
カレン「でも、どうしてそんな石鹸屋から現在の形態に変化してしまったんでしょうか?」
ゼロ「……」
カレン「ゼロは変わっていく様子を目の当たりにしていたんですよね?」
ゼロ「あ……ああ。勿論だ」
ゼロ「そうだな。少し長くなるからまた今度にしよう」
カレン「え。でも、もう今やることは特にないですよね?」
ゼロ「……」チッ
カレン「ゼロ?」
ゼロ「そうだな。確かに何もなかったな」
カレン「では、教えてください」
ゼロ「……現在のソープランドはどのような感じになっている?」
カレン「え?」
ゼロ「最新の営業スタイルを私は知らないからな。変化の途中までしか語ることができないために、カレンと私の知識に齟齬をきたすことになる」
カレン「あ、ああ……なるほど」
ゼロ「今の営業形態を知らなくてはこちらもソープランドの変革を語ることは難しい」
カレン「確かに」
ゼロ「答えてくれるな?」
カレン「でも、昔から変わっていないと思いますけど……」
カレン「それはないんじゃ……」
ゼロ「いいから答えろ!!!」
カレン「は、はい……」
ゼロ(よーし。これで主導権は我が手の内。くくく……ソープランドの実態さえ掴めれば、いくらでも自身の失言失態の修繕は可能!!)
カレン「えっと……私はお店自体には行ったことがないんですけど……」
ゼロ「なんだと?」
カレン「だって。あの、女ですし……」
ゼロ「そういえば、今は男しか行けないのか」
カレン「ゼロの時代では女性が普通に出入りしていたんですか?!」
ゼロ「勿論だ!!!」バッ
カレン「す、すごい時代ですね……」
ゼロ「続けてくれ」
カレン「はい。えっと……お店に入って複数の女性から一人を指名するか……お店の人が女性を用意してくれるんです」
ゼロ「女性を用意する……?なんのために……」
ゼロ「そこでなんだ?」
カレン「一緒にお風呂に入るんです」
ゼロ「見知らぬ男とか?バカな……」
カレン「そういうサービスですから」
ゼロ(なるほど。分かったぞ。ソープランドとはつまり、女性に背中を流してもらうというサービスが受けられる公共のお風呂場か)
ゼロ(そういえば日本に銭湯という共同風呂の店があると聞いたことがあったな。そういうことか。それでソープランド……ふふははは。知ってしまえばなんということはなかったな)
カレン「今のでえっと……いいですか?」
ゼロ「ああ。問題ない。これで分かった。どうやらあまり変化していないようだな」
カレン「やっぱり」
ゼロ「私の時代は先も述べたように世界中の石鹸を売っている店に過ぎなかった」
カレン「はい」
ゼロ「そんなある日、とある銭湯とソープランドが業務提携を結んだ」
カレン「おお」
ゼロ「あれが現在の営業形態の祖となるものだな」
カレン「実演販売?」
ゼロ「そうだ。石鹸の効果を文字通り肌で感じてもらうために考え出されたセールス方法だ」
カレン「ふむふむ」
ゼロ「そのとき若い女性が実演販売のために男性の背中を流した。世の男どもはそのサービスに大変喜び、その銭湯には連日長蛇の列が出来上がっていた」
カレン「まだ女性もいたんですよね?」
ゼロ「ああ。しかし、男性の人気が高く、いつしかソープランドは男性のためだけに営業しているような状態になった」
ゼロ「また他店も真似をし始め、サービス競争が激化し、現在に至るわけだ」
カレン「え?!じゃあ、今でも石鹸の販売が主な目的なんですか?!」
ゼロ「勿論だ。コンセプトは変わらない。サービスが過剰になっただけだな」
カレン「でも、玉城は石鹸を買ってきたところを一度も見たことないですけど」
ゼロ「買わないこともできる。サービスを受けて帰る客もいるだろう」
カレン「ああ。そうですよね。ただお風呂に入りに来ただけって人もいますもんね」
ゼロ「その通りだ」
カレン「じゃあ、私は勘違いしてました。もっと卑猥なお店とばかり……。そっか、ただ石鹸を売るお風呂屋さんなんだ……」
カレン「は、はい。えっと……その……」
ゼロ「おいおい、カレン。どんな想像をしていた?」
カレン「あの……聞いた話なんですけど……」モジモジ
ゼロ「うむ」
カレン「お風呂場で女性と……エ、エッチなことを……するとか……しないとか……」
ゼロ「フハハハ。カレン。我が右腕ともあろうお前がそのようなまやかしに踊らされてどうする?」
カレン「は、はい!申し訳ありません!!」
ゼロ「まあ、多少は卑猥とも思える過剰サービスをする店員がいるのだろう」
カレン「そうですよね。きっと無駄に胸を押し付けてきたりとかその程度ですよね」
ゼロ「そうだ」
カレン「あははは」
ゼロ「フハハハハ」
藤堂「楽しそうだな。ゼロ、紅月」
ゼロ「藤堂か」
ゼロ「ご苦労だったな」
藤堂「で、どのような話をしていた?」
カレン「ソープランドの歴史をゼロから学んでいました」
藤堂「ソープランド……?」
ゼロ「ああ」
藤堂「そ、そうか……。紅月はそこに興味があるのか?」
カレン「いえ。玉城が新団員をつれてそこによく行っているってことから話が膨らんで……」
藤堂「なるほどな。ゼロも店には行ったことがあるのか?」
ゼロ「当然だ。行きまくりだ」
藤堂「……どの程度の頻度で行っていた?」
ゼロ「そうだな。週に3度は行っていたな」
藤堂「そうか。ベテランの域だな」
ゼロ「フハハハ」
カレン「流石はゼロですね」
ゼロ「どれくらい、とは?」
藤堂「店のランクだ」
ゼロ「ランク……?」
ゼロ(ランクってなんだ?!ここに来て新要素が発覚するとは!!まさか店によって下級中級上級とランク付けされているのか?!)
藤堂「どうした?」
ゼロ「……」
カレン「藤堂さん。ランクってなんですか?」
ゼロ(素晴らしいアシストだ!!カレン!!そういうところが好きだ!!)
藤堂「ああ。紅月は知らなくても当然だな」
藤堂「ソープランドでは「入浴料+サービス料金=総額料金」となる。この総額料金が高いものが高級店となる。その下には中級店。時間が短い店を大衆店と呼称する」
カレン「高級店だとどれぐらいになるんですか?」
藤堂「そうだな……。日本円で5万ぐらいはするだろうな」
ゼロ「……!!」
カレン「結構いきますね……。あ、そうか。それだけ高級な石鹸を使うからですね?」
ゼロ(つまりプリタニアポンドで計算すると約400ブリタニアポンド。かなりの大金だ。玉城たちが予算を横領しようとするのもよくわかる)
カレン「へー、高級とそれ以下だとかなり違うんですか?」
藤堂「ああ。まず時間が違うからな。高級店だと180分ぐらいはある」
ゼロ(時間制限があるのか……。風呂屋で?俺はまさか何か勘違いをしているのではないか……?)
カレン「180分?入浴だけでですか?結構入りますね」
藤堂「……ゼロ」
ゼロ「な、なんだ?」
藤堂「紅月は未成年の少女だ。確かに実態を語るのは少々忍びないとは思うが、間違った知識を教えるのも先達の身としてはどうかと思う」
ゼロ「む……」
カレン「嘘だったんですか?」
藤堂「紅月。ゼロの気持ちを察してやれ。恐らくは言葉を選びすぎて上手く伝えられなかったのだろう」
カレン「え……」
藤堂「少女に語るには些か配慮に欠ける事柄だ」
カレン「それって……やっぱり……エ、エッチ……な……お店……?」
ゼロ「藤堂。流石だな。カレンの言動から違和感をすぐさま感知するとは」
藤堂「いや。誰でも気づく」
ゼロ「確かに私ではソープランドの真実をカレンに伝えることは難しい。サブカルチャーな講釈は不得手でね」
藤堂「しかし」
ゼロ「カレンに正しい知識を教えてやってくれないだろうか。後学のために」
藤堂「……」
カレン「……」モジモジ
藤堂「辛い現実を見ることになるかもしれんがいいのか?」
カレン「は、はい……。ゼロの説明だけでは自分だけで入店するところでしたから」
藤堂「なんだと?!それはいかん!!!ゼロ!!どのような説明をした?!」
ゼロ「……」
カレン「ゼロは石鹸を売る場所だと」
藤堂「ゼロ!!それは言葉を選びすぎだ!!間違った知識は無知よりも罪が重いぞ!!!」
ゼロ「す、すまない……」
カレン「なんだか……緊張してきたぁ……」ドキドキ
ゼロ「ああ……」ドキドキ
藤堂「―――よし、始めようか」
カレン「お願いします」
ゼロ「頼むぞ」
藤堂「しかし、何から語ればよいのやら……」
カレン「とりあえず、何をする場所なんですか?」
藤堂「いきなり核心に迫る質問だな」
カレン「ごめんなさい」
藤堂「いや、いい。ここで隠しても仕方あるまい。今日は私が紅月の親となり、社会のルールを伝えることにしよう」
ゼロ「……」パチパチパチ
藤堂「ソープランドの中で何が行われているのか……それは……」
カレン「それは……?」
藤堂「春の売買だ」
ゼロ「……?」
藤堂「そうだな。ゼロよ?」
ゼロ「あ、ああ!!そうだ!!」
カレン「春って買えるんですか?」
藤堂「紅月、春を買うのだ」
ゼロ(意味がわからない。どういうことだ……?!)
カレン「あ!!そ、そうか……!そういうことですか!!―――はっ!そういえばゼロは桃の香りの石鹸を買えるって……そういうことだったのですね……!!」
藤堂「そういうことだ」
ゼロ「……」
ゼロ(まずい。カレンは何かを理解したぞ……)
カレン「じゃあ、やっぱり……」
藤堂「そういうことだな。紅月、どうする?まだ何か訊きたいことはあるか?」
カレン「じゃあ、折角ですから……えっと……具体的にはどんなことを?」
藤堂「難しいな……。マット運動と言えば分かるか?」
藤堂「通じないか。まぁいい。ともかく、浴槽、マット、ベッドでサービスが行われる。サービスの内容については……言わずもがなだ」
カレン「なんか気になりますね……」
ゼロ「藤堂」
藤堂「なんだ?」
ゼロ「お前がもっとも好きなサービスはなんだ?」
藤堂「ゼ、ゼロ……!?それを訊ねるか……。紅月の前で……!!」
ゼロ「何もおかしくはあるまい。カレンにも正しい知識を身につけようと始めたことだ」
藤堂「そうだが……」
ゼロ(とりあえず情報収集をしなくては。予期せぬところで矢を向けられては困る!!)
藤堂「……どういえばいい?」
ゼロ「カレンにやってもらえばいい」
藤堂「?!」
カレン「わ、わたしですか?!」
ゼロ「ダメなのか?」
ゼロ「真似だけでもいい」
藤堂「ダメだ!!ゼロよ!!紅月はまだ花散らす前の乙女だ!!そのような少女になんと卑劣な……!!!」
ゼロ「……カレン。できるな?」
カレン「え……えーと……」
ゼロ「で、藤堂。お前はどのようなサービスが好みなんだ?」
藤堂「……潜望鏡」
ゼロ「潜望鏡?」
カレン「なんですかそれ?」
藤堂「知らなくてもいい」
カレン「でも、気になります」
ゼロ「カレンにやってもらえ」
藤堂「無茶だ!!できるわけがない!!!」
ゼロ「ならばカレン。俺に潜望鏡を行え」
カレン「どうやるんですか……?」オロオロ
ゼロ「なんだ?私が実験体では不服か!?」
藤堂「そういう問題ではない!!」
カレン「ゼロ……潜望鏡なるものはどうやれば……?」
ゼロ「藤堂。この何も知らないカレンにレクチャーしてやってくれ」
藤堂「なんだと……!?」
ゼロ「正しい知識を伝えるのが先達の役目なのだろう?」
藤堂「ゼロ……私に修羅の道を歩かせるつもりか……!!」
ゼロ「恐れては何も成し遂げることはできない!!!藤堂よ!!奇跡の藤堂と呼ばれたその手腕、ここで見せてみろ!!!」
藤堂「ぐぐ……奇跡とはなんら関係が……」
ゼロ「違うな!!間違っているぞ!!お前は奇跡を起こしてしまった!!!ならばいつ如何なるときでも奇跡を求められるのだ!!!」
藤堂「……!!」
ゼロ「カレンに悪影響を与えないように伝えればいいだけの話だ。まさか、出来ないとは言うまいな?」
藤堂「……いいだろう」
カレン「いいんですか?!」
カレン「えっと、潜水艦に搭載されている海上を偵察するための光学装置です」
藤堂「その通り。潜望鏡と名があるということは……。そのサービスを受けられるのは、どこだと思う?」
カレン「水辺ですか?あ、浴槽!」
藤堂「正解だ。潜望鏡とは浴槽で受けられるサービスだ」
ゼロ(なるほど)メモメモ
藤堂「では、このテーブルが浴槽だということにするか。まずはゼロ、湯船につかるようにテーブルの上へ乗ってくれ」
ゼロ「分かった」
藤堂「そして紅月。向かい合うように湯船へ」
カレン「は、はい……」
ゼロ「……」
カレン「こ、このとき……お店ではどんな格好なんですか?」
藤堂「無論。何も着衣していない」
ゼロ「……っ」
ゼロ(ダメだ……少し想像してしまった……)
ゼロ「え?」
藤堂「腰を浮かせてくれないと困る」
ゼロ「あ、ああ……そうか、そうだな」クイッ
カレン「え……」
ゼロ「どうした?」
カレン「あの……藤堂さん。お互いに裸、なんですよね……?」
藤堂「そうだ」
カレン「じゃあ……ゼロと向かい合って、それで……腰を浮かせたら……え?」
ゼロ「なんだ?」
藤堂「……そういうことだ」
カレン「潜望鏡って……!!!」
藤堂「そうだ。見た目が潜望鏡のようだろう?」
カレン「いやぁ……」ブルブル
ゼロ「どうした、カレン。はやく潜望鏡を行え」クイックイッ
藤堂「……まぁ……紅月の想像に任せる……」
カレン「そ、そんな……私……あの……」
ゼロ「早くしろ」
カレン「ゼロ?!本気で言っているんですか?!」
ゼロ「カレン。潜望鏡の意味が分かったのなら、証明して見せろ」クイッ
ゼロ(俺のためにな)クイックイッ
カレン「……っ」
ゼロ「カレン。私では不服か?」
カレン「そ、そんなことは決してありません!!わ、私はゼロのなら喜んで……あの……えっと……」モジモジ
ゼロ「ならば、頼む」ドーン
カレン「……!!」
藤堂(今、私は少女が大人になるところを目撃しているのかもしれない……)
カレン「では……いきます」
ゼロ「よし。こい」
ゼロ「リラックスだ、カレン」
カレン「は、はい……」
カレン「ゼロ!!!紅月カレン!!女になります!!!」
ゼロ「苦しゅうない」
カレン「うわぁぁぁ!!!!弾けろぉぉ!!!ブリタニアァ!!!!」ギュッ!!
ゼロ「ぬおぉぉ!?!?!」
カレン「ぬぐぐぐぐぐぅぅぅ!!!!」グググッ
ゼロ「カ、カレェン!!!どこに顔をうずめて……ひゃぁ……!!」ビクッ
カレン「むぐぐぐ……!!!!!」ググググッ
ゼロ「やめ、ろぉ!!微妙な振動がつた、わるぅ……!!!」ビクッビクッ
藤堂(いかん……いかんぞ……これはぁ……!!!しかし、私に二人の行為を止める勇気はない!!!)
カレン「あぶぶぶぶ……」
ゼロ「ふわぁぁ……!!!だめぇ……!!」
藤堂「……」ホッコリ
ゼロ「……ひ、ひどい……どうして……こんなことを……」グスッ
カレン「あ、あれ?!ゼロ?!どうしたんですか?!」
ゼロ「……」モジモジ
藤堂「ゼロ、どうした?プロのテクニックに遠く及ばないことは百も承知だが、紅月もかなり頑張ったほうだ。ここは素直に賞賛を送るべきだ」
ゼロ(今、全てを理解した。潜望鏡の意味を、ソープランドの真実を……!!)
ゼロ(ソープランドは俺が最も唾棄すべき場所のようだな……!!!全く、下らん!!!)
カレン「ゼロ……。ごめんなさい。至らないところしかなかったと思いますけど、私も自分なりに考えて……!!」
ゼロ「分かっている。カレン、お前はよくやった。だが、絶対にソープランドでは働くなよ」
カレン「も、勿論です!!」
ゼロ「潜望鏡もお前が見初めた相手にしてやれ」
カレン「は、はい!!」
藤堂「いきなりそんなことをする恋人なんて普通の学生なら引くぞ」
ゼロ(玉城め。こんなことに黒の騎士団の予算を横領していたとは。許せないな。予算管理は別の者にさせなければ)
カレン(いつかゼロに本当の潜望鏡を……。だめだめ!!私ったら何を考えて……!!!だめぇ……顔があつい……)
玉城「よう、ゼロ。呼び出しなんてどうしたんだよ」
ゼロ「予算管理はこれから扇にしてもらう」
玉城「はぁ!?なんでだよ!!予算の管理は昔から俺がしてきたんだよ!!」
カレン「変な店に行って黒の騎士団の予算がなくなったら意味ないでしょ?!」
玉城「ちゃんと考えてるよぉ!!!」
ゼロ「くだらん!!ソープランドに行っては潜望鏡を受け、鼻の下を伸ばしているだけだろうが!!!」バンッ!!!
玉城「おぉ……?!」
カレン「変態玉城ぃ」
玉城「ち、ちげぇよ!!!俺はなぁ泡踊りからの花時計が一番好きなんだよぉ!!!」
ゼロ「……」
カレン「え?」
扇「玉城!!」
玉城「潜望鏡なんてやんねーよ!!」
ゼロ(くそ……玉城の分際で……俺を見下すのか……!!!)
玉城「んだよ」
藤堂「同志よ」
玉城「なんだ。藤堂もか。やっぱ、一番いいよな」
藤堂「花時計は素晴らしいな」
扇「おい!!カレンも居るんだぞ!!そういう話はやめろ!!!」
藤堂「心配はない。紅月にはゼロと私で正しい知識を伝達したからな」
扇「何を言っているんだ?!」
カレン「ゼロ……あの……玉城が言ったのってなんですか?」
ゼロ「……」
藤堂「やはりゼロも花時計がいいか?」
玉城「なんだゼロも行くのか?」
藤堂「玉城、口を慎め。ゼロは大ベテランだぞ。一時期は週に三回も通っていたらしいからな」
玉城「マジかよ?!じゃあ当然、鶴の恩返しとかもしたことあるよな?!あれどんな感じだった?まだ、やったことなくてさぁ」
ゼロ「つ、鶴……だと……?」
ゼロ「……」
カレン「ゼロ?」
藤堂「ゼロほどになれば即即だろう」
玉城「マジで?!いや、でも、最終形態はそうなるかな」
扇「お前ら!!もうやめろって!!!カレンがいるんだぞ!?カレンはまだ未成年だぞ!!」
ゼロ「……」プルプル
藤堂「ゼロクラスになれば二輪車も経験しているはず」
玉城「それすっげえききてぇ!!!」
扇「……本当かゼロ?」
ゼロ「……れ……」
カレン「ゼロ……?」
ゼロ「黙れぇぇぇ!!!!おまえらぁぁぁぁ!!!!!わけのわからない言葉で私を見下して楽しいのかぁぁぁ!!!!!」
玉城「お、おい……」
カレン「ゼ、ゼロ……」
せんせー 男子がゼロ君泣かしましたー
扇「ゼロ……すまない……あの……」
ゼロ「ふぅー……ふぅー……はっ?!」
ゼロ(しまった……!!我を忘れてしまった……)
カレン「ゼロ……もしかして……」
玉城「おめえ……へへ……」
ゼロ「……!!」
ゼロ(終わったか……。だが、ギアスを使えば……まだ、俺の尊厳は……!!)
藤堂「待て。玉城」
玉城「あ?」
ゼロ(藤堂……?)
藤堂「ゼロはかなり昔に通っていたと言っていた」
玉城「それがなんだよ?」
藤堂「故にまだサービスの専門用語が確立してないな時期だったかもしれない。二輪車も花時計も別名称はあるからな」
ゼロ「藤堂……」
藤堂「ゼロよ。気を悪くしないでくれ。どの専門用語も比較的新しいものだからな。馬鹿にされたと思っても致し方ない」
ゼロ「……」
藤堂「ゼロの経歴を疑うような発言をしてしまったことは謝罪する」
扇「俺も少しだけ思ってしまった。すまない」
玉城「わ、わるかったよ」
ゼロ「わ、分かればいい」
玉城「じゃあ、予算管理の件は……」
ゼロ「扇にやってもらう」
玉城「なんだとぉ!?」
ゼロ「下らない店に行くからだ」
玉城「ゼロも週3で通ってたんだろ!?俺たちと同じじゃねーか!!!」
ゼロ「私は!!!一回400ブリタニアポンドの店に通っていた!!!」
玉城「超高級ソープだとぉ……?!」
ゼロ「紳士の嗜みと声高に言うなら自腹で最高級のサービスを受けて来い。世界が変わる」
扇「ゼロ。じゃあ、今日はこれでいいか?」
ゼロ「ああ。ご苦労だった」
藤堂「私もこれで失礼する」
ゼロ「藤堂」
藤堂「……」
ゼロ「お前の忠義に感謝する」
藤堂「何のことかわからんな」
ゼロ「ふっ……」
カレン「ゼロ」
ゼロ「なんだ?」
カレン「もしかして……経験、ないんですか?」
ゼロ「……!!!!」
カレン「……」
ゼロ「ち、ちがうな……わたし……は……経験しか、してこなかった、といっても過言、ではない……!!」
ゼロ「私のことが信じられないのか?!」
カレン「こればっかりは」
ゼロ「……!!」
ゼロ(馬鹿な……俺は完璧に演じていたはずだ……!!完璧な人間であるために……!!カリスマで人を動かすために……!!!)
カレン(よかった。顔は見えないけど、この反応ならきっとソープランドの経験なんて無いんだ。ゼロが穢れてなくてよかった……)
ゼロ「……」
カレン「ゼロ……」
ゼロ「カレン!!」ガシッ
カレン「は、はい?!」
ゼロ「……」
カレン「な、なんですか……」ドキドキ
ゼロ(いや、ここで何をしても俺が無経験であることを露呈させるだけ。無様に鼻で笑われて終わりだ……!!カレンにギアスはもう通じない!!!こうなれば……!!)
カレン「あの……」
ゼロ「ええい!!!そうだ!!!俺は経験したことがない!!!だからなんだ!?カレンよ!!それで人の価値が変わるのか?!違うだろう?!」
ゼロ「なんだと?価値を……下げる?」
カレン「はい」
ゼロ「守り抜いたほうがいいといのか?」
カレン「当然です。ゼロのような人は特に」
ゼロ「……それ、他の女性も思っているのか?」
カレン「はい。大半はそう思ってると思いますけど」
ゼロ「……」
カレン「ゼロ?」
ゼロ「フフフ……フハハハハハ……なんだ、そうだったのか」
カレン「……?」
ゼロ「ありがとう、カレン。私はこのまま勘違いをしたまま、道を踏み外すところだった」
カレン「ゼロ……よかった……。そうです。経験なんてしなくてもいいんですよ」
ゼロ「分かった。ここに誓おう。私は経験なんてしないと」
カレン「わー」パチパチパチ
カレン「ゼロぉ……素敵です……」
ゼロ「カレン、こんな私についてきてくれるか?」
カレン「はい」
ゼロ「守るために修羅にならねばならないが、強制はしない、引き返すなら今だ」
カレン「共に進みます。私は、あなたと共に」
ゼロ「カレン……」
カレン「ゼロ……」
ディートハルト「―――聞かせていただきました。ゼロよ」
ゼロ「ディートハルト!?」
カレン「わっ?!」
ディートハルト「ゼロは経験ゼロ。これはいい。親近感を抱く者もいるでしょう」
ゼロ「そうか?」
ディートハルト「ええ。経験ゼロでも立派なリーダーを務められる!!そんな勇気をもらう若人もいるはずです」
ゼロ「なるほどな……」
ゼロ「任せる」
ディートハルト「では、早速準備を始めます」
ゼロ「ああ」
カレン「ゼロの男らしさが日本中に伝わりますね。私も嬉しいです」
ゼロ「ふっ……カレンよ。お前のおかげで私は大きな一歩を踏み出せた気がする」
カレン「ゼロ……」ギュッ
ゼロ「カ、カレン……」
カレン「……」
ゼロ「やめろ」
カレン「あ……」
ゼロ「カレン。私は貫くつもりだ」
カレン「いつでも貫いてください」
ゼロ「ああ。見ていろ」
カレン(やったぁ♪念願のゼロに……♪お風呂はいってこよ)テテテッ
千葉「どうした、紅月?」
カレン「ゼロは?」
千葉「見てないな。自室じゃないのか?」
カレン「いなくて……」
千葉「そうか。何か用事でもあったのか?」
カレン「いえ……別に……」
千葉「なら日を改めろ。お前も明日は学校に行くんだろ」
カレン「え、ええ」
千葉「なら、早く帰れ」
カレン「はぁーい」
千葉「ああ、そうそう」
カレン「なんですか?」
千葉「藤堂さんにはきつく言っておいたから。それで勘弁してほしい」
カレン「は、はい……わかりました……」
カレン「こんにちはー」
ミレイ「これ本当だとおもうー?」
リヴァル「あのゼロがでしょ?信じられませんよね」
シャーリー「でもでも、わざわざ言うってことは本当なんじゃないですか?」
ニーナ「そうかもね。案外、ああいうタイプってモテないのかも」
スザク「ゼロが……経験ゼロ……ふふっ」
ナナリー「スザクさん。笑うなんて失礼ですよ」
スザク「ごめん。でも……ふふふっ」
リヴァル「実際、笑っちまうよなー。あれだけ偉そうなこと言ってるのにー」
ミレイ「リヴァルー、じゃあ、あんたはゼロより経験豊富なのかなー?」
リヴァル「……」
スザク「もう17歳だし、当然じゃないですか」
リヴァル「え?」
カレン(なにしてるのかなぁ……?)
カレン「何してるんですか?」
シャーリー「この広告みた?ネットでも大々的に書かれてるの」
カレン「え?」
スザク「我が名はゼロ!!経験もゼロ!!!―――くくっ」プルプル
カレン「……」
ニーナ「ふふっ。わざわざこんなこと言わなくてもいいのにね」
ミレイ「まーでも、ちょっと怖かったイメージもこれでかなり緩和されちゃうから、いいんじゃない?」
シャーリー「確かに。経験ゼロって可愛いですね」
カレン「あの……え……?」
スザク「守り抜いて価値があるのは女性で、男の価値は経験の差だと思うよ」
リヴァル「くぞぉ……!!!スザクめぇ……!!!」
スザク「ルルーシュもそう思うだろ?」
ルルーシュ「ふふふ……フフハハハ……アーッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!!!!」
カレン(ゼロ……ごめんなさい……私の勘違いだったみたいです……)
ギルフォード『黒の騎士団だ!!!迎え討て!!!』
ゼロ『よし!!コーネリアを討て!!!』
コーネリア『ゼロをとめろ!!こちらに近づけさせるなぁ!!』
ランスロット『経験ゼロか!?僕が相手だ!!経験ゼロ!!!』
ゼロ『フフフフ……フハハハハハハ!!!!!!!!ヒャーッハッハッハッハッハ!!!!』
紅蓮『ゼロを侮辱するなぁぁぁぁ!!!!!』
ランスロット『経験ゼロ!!!君は間違っている!!!!―――ふふっ』
紅蓮『やめろぉぉ!!!』ガキィィン
ランスロット『経験ゼロ!!こんなことしていないで経験をイチにするべきだ!!』
ゼロ『カレェェン!!!!』
紅蓮『は、はい!!』
ゼロ『そいつを殺せぇぇ!!!』
紅蓮『ゼロ……うぅぅ……。―――はいっ!!ゼロは私が守ります!!!』
コーネリア(ゼロめ。そんなことで私に親近感を覚えさせようとも無駄だ。私は鉄の女だからな)キリッ
カレンかわいいよカレン
ダールトン『経験ゼロ!!この場でし止めてくれる!!』
ゼロ『……』
藤堂『貴様らぁ!!!ゼロを経験ゼロを侮蔑するのはよせぇ!!!』
玉城『経験ゼロでもよぉ!!俺たちにとっては最高のリーダーなんだよ!!!』
ゼロ『やめ……ろ……』
カレン『経験がゼロだからってなんだ!!!ゼロはゼロだ!!!』
スザク『間違った結果(経験ゼロ)に価値なんてない!!!』
ゼロ『もう……やめ……て……』
コーネリア『私はゼロを支持する!!がんばれ!!』
千葉『まけないでー。私がついているぞー』
ゼロ『うおぉぉぉ!!!!!!皆殺しだぁぁ!!!』ドドドドド!!!!!
スザク『経験ゼロが乱心した!!』
カレン『ゼロー!!!私がイチにしてあげますからー!!』
ゼロ『ゼロの何がわるいぃぃぃ!!!!!』ドドドドド!!!!!
藤堂「ゼロは?」
扇「自室に閉じこもっている。今、カレンとC.C.が傍にいるみたいだが……」
玉城「ゼロ……どうしちまったんだ……」
千葉「みんなでイジメすぎです」
玉城「いや。俺はちゃんとフォローしたぜ?」
藤堂「私もでき得る限りのことはしたつもりだ」
扇「全部ブリタニアだ……!!あいつらがゼロを追い込んだんだ!!!」
藤堂「おのれ、ブリタニアめ……!!」
朝比奈「許せませんね」
仙波「今度の戦場で借りを……!!」
卜部「ああ。ゼロの仇を取る」
千葉「次はゼロの弔い合戦になる!!」
藤堂「許すまじ!!ブリタニア!!!」
扇「やるぞ!!俺たちだけでもやるんだ!!ゼロのために!!!」
C.C.「よしよし。お前はよく耐えたよ」ナデナデ
カレン「ゼロ……」
ゼロ「俺をその名で呼ぶなぁ!!!」
カレン「え……」
C.C.「もうゼロがトラウマになったようだな」
カレン「そんな……ゼ……いえ、じゃあ……なんと呼べば……」
ゼロ「……」プイッ
C.C.「今はそっとしておこう」
カレン「そうね……」
C.C.「またいつか、いつものリーダーに戻ってくれるはずだ。少なくとも私はそう信じている。なぁ?そうだろ?」
ゼロ「……」コクッ
カレン(ゼロ……いつか私が貴方をイチにしますから……!!だから戻ってきてください!!!)
C.C.(そろそろルルーシュの初めて、奪っておいてやるか。やる気もでるだろうし。そうだな、今晩あたりでも―――)
おしまい。
Entry ⇒ 2012.08.31 | Category ⇒ コードギアスSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
怜「誰や……うちのパソコン壊したんは……」
怜「お、この画像ええな。うち好みのイラストや」
怜「ふふふ……」カチッ
怜「やっぱり阿知賀の松実玄ちゃんはかわええなぁ……」
怜「このニーソからはみ出るむちむちの太ももが最高なんや」
怜「お、新道寺の大将もええ感じやん! 保存しとこっと……」カチッ
怜「うちあんま胸の大きさって気にせんのやけど、このおもちはちょっと揉んでみたい……」ゴクリ
怜「……はぁ……ええなぁ」
怜「……」カチカチ
怜「ふわぁ……眠い」
怜「……」チラッ
怜「もうこんな時間なんか……明日学校めんどうやなぁ」
怜「……」
怜「仕方あらへん、お風呂入ってこよ……」スタスタ
怜「ふわぁ……」
竜華「怜ー! おはよー!」ダキッ
怜「う゛っ……!」
竜華「怜ぃ……」スリスリ
怜「り、竜華……重いって……」
竜華「ぶぅ、なんやそれー。女性に対して失礼やろー」
怜「ごほっ、ごほっ……」
怜「うち病弱やねんから、もっと身体に気ぃ使ってほしいわ……」
竜華「あ、ごめん……」
怜「……」
怜「うん……なんだか今日は調子悪いんや」
竜華「ホンマごめんな……怜の体調考慮せんと、いきなりあんな抱きついたりして……」
怜「ええよ。これから気をつけてくれれば」
怜(ほんまはただの寝不足やしな……)
竜華「ありがとうー、怜ー」スリスリ
怜「だ、だからそれやめえって……」
怜「あ、セーラ。おはよう」
竜華「せやろー! 怜とうちは夫婦みたいなもんやしなー」
怜「な、なにいうてんの……うちら女同士やん」
竜華「愛に性別は関係あらへんやろー」
セーラ「まぁお前らならそのくらいの障壁なんとかしそうではあるな」
怜「せ、セーラまで……」
竜華「せやってー。がんばろうなぁ怜ー」スリスリ
怜「……」
セーラ「せやな。竜華もそこまでにしとき」
竜華「仕方あらへんなぁ……」
竜華「続きは後でなー、怜♪」
怜「……」
怜(……いつからこんななってしもうたんやろなぁ)
怜(竜華でもええっかなぁと思った時期もあったけど、うち今は松実玄ちゃん一筋なんや)
怜(それに、リアルでの付き合いはなんかだるそうやし……うちは画像愛でてる方が好きやわ)
怜(竜華は全然気づいてないみたいやけど……)
竜華「一限は……体育やな。怜は見学しとき?」
怜「言われなくてもそうするわ」ガサゴソ
竜華「別にわざわざ体操着に着替えんでもええのに」ヌギヌギ
怜「なんかサボってると思われたくないんや」
セーラ「いや、実際サボってるやん」
竜華「セーラは黙っとき!」
セーラ「うわ、ごめんごめん」
怜(……セーラの言う通りやけどな)
怜「あぁ……ただのノーパソやで」
竜華「はぁ? なんで怜がそんなもの持ってきとるん?」
怜「いや、うちもフナQを見習ってデータ麻雀を打とうかなーと」
セーラ「ははっ、似合わねー」
竜華「セーラ!」
セーラ「はいごめんなさい」
竜華「でもほんま怜らしくないで。一体どういう風の吹きまわしなん?」
怜「みんなに迷惑かけないためにも、もっと強くなろうと思ったんや」
竜華「怜……」ウルッ
セーラ「見直したで怜! その調子で頑張れよ!」
怜「へへ……ありがとう、二人とも」
怜(……ほんまは学校で画像整理したいだけなんやけどな。部室はLANも引いてあるし、ネット使い放題やで)
怜(体育の時間でも、バレへんようにすればパソコンいじるくらい余裕やろ)
怜「ほな、遅れんうちにはよ行くで」
竜華「うん!」
怜「~♪」カチカチ
怜(新しく新道寺フォルダを新設したで)
怜(新道寺ってすごくマイナーやけど、けっこう粒揃いなんやなぁ……今気付いた)
怜(デビ子ちゃんは言わずもがな、部長の哩先輩の太ももなんか最高やろ……)
怜(あのムチムチな太ももで絞め殺されたいわ……)
怜(他のメンツは……まぁそこそこちゃうか? うちはあんま好みやないけど)
怜(なにより、新道寺は全員黒ソックスかニーソなんや! ここはほんとでかい!)
怜(白い太ももには黒のニーソが一番映える……! これは宇宙の真理やで!)
太もものチェックは欠かさないんだな
セーラ「お前はもうちょっと普段から運動せえよ」
怜(あ、もう終わりか……)
怜「お疲れさまやで、二人とも」
竜華「うん、ありがとー怜」
セーラ「お前、見学中もパソコンいじってたんか。熱心なやっちゃなぁ」
怜「まぁな。みんなに一歩でも早く近づこうと思って」
竜華「怜はほんまええ子やなぁ……でもあんまり無理せんといてな? それで身体壊してたら元も子もないで」
怜「うん、気をつけるわ」パタン
怜「それじゃ、部室いきますか」
セーラ「おう」
竜華「あ、二人とも先行ってて。うちちょっと職員室に用あるから」
怜「わかったわ。フナQたちにも伝えとくで」
竜華「うん、おおきに」
セーラ「んじゃ俺たちは一足先に行ってるか」
怜「うん」
怜「? なんのこと?」
セーラ「パソコンやパソコン。オレなんか10分くらい画面見ただけでもう頭クラクラや」
怜「はは、なんやそれ。セーラはほんまに文化系なんか」
セーラ「パソコンなんか使えなくても麻雀は打てるしな!」
怜「でもそれだとネトマは打てないで」
セーラ「そーなんだよなー。ま、苦手なもん使って無理やり打ってもいい結果なんか残せないしな」
セーラ「うちはアナログ一筋の女や!」キリッ
怜「ふふ、セーラらしいわ」
セーラ「おーっす……って誰もいないんか」
怜「いや今さっき自分で鍵開けたやん」
セーラ「はは、せやったせやったー」
怜「誰もいないんならしばらく、牌譜でも見てるわ」
セーラ「じゃ、オレ飲みもん買ってくるー。怜はなんかほしいもんあるか?」
怜「うち炭酸以外ならなんでもええよ」
セーラ「おう、じゃあちょっくら購買行ってくるわ。留守番よろしくなー」
怜「うん、任せとき」
ガチャン
怜「なーんていうのは冗談で、もちろんやるのは画像漁りや」カチカチ
怜「今日はVIPでスレ立てて、うちがまだ持ってない玄ちゃん画像を探すで」カチカチ
怜「『阿知賀の松実玄ちゃんの画像が集まるスレ』っと……」カタカタ
怜「……」ワクワク
怜「おっ……さっそくきたで」カチッ
怜「……む、これ見たことない。なんかの同人作品なんかな?」
怜「『詳細希望』っと……」カタカタ
ガチャ
怜「っ!」ビクッ
フナQ「どうもー」
フナQ「はいそうですけど……どうしたんですか?」
怜「いや、別に何でもないで」
フナQ「?? まぁええですわ」
フナQ「それより園城寺先輩、そのパソコンどうしたんですか?」
怜「あぁこれ? これはあれや、フナQのそれ……なんやったっけ?」
フナQ「タブレットですか?」
怜「そうそれ! それと同じやで」
フナQ「??」
怜「つまり、うちもフナQを見習ってデータ麻雀を行なうことにしたんや」
怜「え、なんか反応薄いなぁ……」
フナQ「いえ、園城寺先輩がパソコンってなんか似合わんと思いまして」
怜「うーん、やっぱそう?」
フナQ「はい。それにデータの収集・解析でしたらうちが全部やりますし」
フナQ「園城寺先輩が無理する必要はありませんよ?」
怜「そっかぁ……」
怜(あかんな……このままじゃうちが部室にまでパソコンを持ちこんで使う理由がなくなってまう……)
怜(どうしたもんかなぁ……)チラッ
怜「……!」ガタッ
怜「ふ、フナQ……それ……!」
フナQ「え? ……これですか?」スッ
怜「こ、これ玄ちゃん画像やないか! どないしたん!?」
フナQ「え、えっと……」
怜「あ、ごめん……いきなり取り乱してもうて」
フナQ「別にかまいませんけど……ちなみに、これは知人に描いてもらったイラストです」
怜「へ、へえ……」ゴクリ
フナQ「……」
怜「あ、ごめんごめん」
フナQ「先輩、もしかして……」
怜「え……な、なんや……?」
怜「え……あ、あぁ! そうなんや! うちその子の大ファンやねん!」
フナQ「やっぱり……さっきの反応、常人のそれとは明らかに違いましたからね」
怜「……そ、そんな変やった?」
フナQ「ええ、血に飢えた猛獣のようでした」
怜「っ!」ギクッ
フナQ「……先輩」
怜「は、はい……」
フナQ「……ほんとにそれだけですか?」
怜「……」
怜「そ、そう?」
フナQ「パソコン買ったのいつでしたっけ?」
怜「えっと、一週間くらい前やったかな……」
フナQ「たったの一週間でこれだけの数を集めるとは……1000以上はありますよ?」
怜「まぁ徹夜して漁りまくった日もあったしなぁ」
フナQ「それで病弱とかホンマ詐欺ですわ」
怜「詐欺ちゃう。根性や根性」
フナQ「ま、そういうことにしときましょう」カチカチ
セーラ「うぃ~、買ってきたデー」
怜「ふ、フナQ閉じて閉じて!」
フナQ「はい」パタン
怜「お、お疲れセーラ」
セーラ「おう。ほれカルピス」ヒョイ
怜「うわっ、とっと……おおきに」
セーラ「ちゃんとあとで金徴収するからなー……って浩子もいたんか」
浩子「ええ、どうもです」
セーラ「残念ながら浩子の分は買ってきてないでー」
浩子「うちマイ水筒持ってきてますんで、お気遣いなく」
泉「どうもー」
竜華「お待たせー」
セーラ「おぉ、一気にきたなー」
泉「職員室で先輩と偶然お会いしたんです」
フナQ「なんや泉、赤点でもとったん?」
泉「ち、違います! それにこの時期テストなんてありませんやん!」
竜華「愛宕先生に用があったんやって」
泉「そうです、麻雀特待の手続きの関係で先生にお話があって」
セーラ「なんだ、自慢かよ」
泉「自慢じゃありません! それに先輩だってうちと同じ特待じゃないですかー!」
怜「……フナQ、この話はまた今度な」ボソッ
フナQ「ええ、わかっとります」ボソッ
竜華「んー、二人でなにコソコソ話とるんー?」
怜「べ、別に何でもないで!」
竜華「? そうなん?」
怜「せやせや! な、フナQ?」
フナQ「ええ、ちょっとパソコンの使い方に関して園城寺先輩にアドバイスしとっただけです」
竜華「なんだー、そんなことやったん」
怜「そうなんよー。あはは……」
怜(フナQ、ナイスフォローやで)ビシッ
フナQ(……いいってことですよ)ビシッ
セーラ「でも、5人やし誰か一人抜けなあかんな」
怜「うち抜けてもええで。データ取りたいし」
怜(……ええか? フナQ)
フナQ(……はい、ごゆっくりと)
セーラ「そうか、じゃ久々の浩子参戦やな」
フナQ「いや、普段もうちとけっこう打ってますやん。うちかてデータだけ取ってるんとちゃいます」
泉「そうですよ先輩。船久保先輩を千里山のパソコン担当みたいに言うの止めてください」
セーラ「いやさすがにそこまでは言うとらんわ」
泉「えっ……」
フナQ「泉……覚悟しときぃよ」
泉「ひ、ひぇええっ! すんません!!」
泉「はやっ!」
竜華「セーラ、今日はバカヅキやなー」
フナQ「……そろそろ泉だけ狙い撃ちすんの止めますか」
泉「そんなことしとったんですか!?」
ワーワー!
怜「……」カチカチ
怜(お、知らんうちにさっきのスレの画像がこんなに……)カチッ
怜(『おおきにー』っと……)カタカタ
怜(うちも少し、自慢の玄ちゃん画像を提供しますか……)カチカチ
怜(……)カチカチ
怜(ふぅ……そろそろ他の子の画像も探そか)カチッ
セーラ「よっしゃー、点棒がっぽりやでー!」
泉「またうちが最下位……」ガクッ
フナQ「まぁ、こんなもんですかね」クイッ
怜「ん~」ノビー
竜華「怜ー、そろそろあんたも混ざらんー?」
怜(そろそろ目が疲れてきたし、気分転換に打ちますか……)
怜「うん、今行くでー」
フナQ「じゃ、うちが抜けますんで」ガタッ
セーラ「おーう」
怜「ぼちぼちやな」ボソッ
フナQ「パソコンちょっと拝見させて頂いても?」ボソッ
怜「別にかまへんで。ただ席離れるときはウィンドウ閉じてロックしといてな」
フナQ「了解です」ボソッ
怜「データも取れたことだし、気張っていくでー」
セーラ「よ、新生トキのお披露目や!」
泉「お、お手柔らかにしてくださいー」
竜華「怜、あんま無理せんといてな」
怜「わかっとるよ」
セーラ「うわ、さっそくきちまったかぁ」
泉「誰か鳴ける人いないんですかー?」
竜華「いても言わんやろ」
フナQ「……ふむ」カチカチ
フナQ(園城寺先輩は黒ニーソ好きなんですかね。さっきも松実玄のイラストに過剰な反応示してましたし)
フナQ(そういえば清水谷先輩は白ニーソですけど、そこに関してはどう思ってんでしょうかね? あとで訊いときましょ)カチカチ
フナQ(というか千里山フォルダがありませんね……まぁいつも見慣れてるからかもしれませんが)
フナQ(ちなみにうちは、江口先輩を筆頭に千里山勢の画像はダントツですけどね。もちろん園城寺先輩のもあります)カチカチ
フナQ(たしかに数はあるけれど、女の子の種類が圧倒的に少ない。重複もちらほら見受けられますし)
フナQ(長野の高校の画像は豊富にあるので、あとでお裾分けしてあげましょ)カチカチ
フナQ「……ぅ」ゴロゴロ
フナQ(……なんやろ、急にお腹の調子が……)
フナQ「……」
フナQ(少しおさまったんか……)
フナQ(大丈夫なんやろか……あとでちゃんとトイレ行っとかんと……)カチカチ
フナQ(お、この新道寺の子ええですやん! ブカブカな袖と胸のぺったんこ具合がたまりませんわ!)
セーラ「なんや、今日も調子良かったんは最初だけかー」
泉「もう……めげます……」
怜「元気だしぃ、泉」ポンポン
泉「はい……気分転換にジュース買ってきます」
竜華「泉ー、うちのもー」
泉「はい、なにがいいですか?」
竜華「お茶で。種類は何でもええよー」
泉「了解です。他の先輩方は?」
セーラ「うちらはええわ。さっき飲んだばっかやしな」
怜「うん」
泉「ほな、行ってきます」ガチャ
怜「うん、そうさせてもらうわ」ヨイショ
竜華「どう具合は? 今朝気分悪いって言うてたやろ?」
怜「あぁあれ? もうすっかりよくなったわ」
怜(授業中寝たからな)
竜華「そ、ほんならよかった」ナデナデ
怜「……ん」
怜(あぁ……やっぱリアル太ももの感触はええなぁ)
怜(これが哩先輩のやったらどんな感じやろ……もっと弾力感あって気持ちよさそうやなぁ)
怜(目閉じて、次開けたらそこには哩先輩が……とかあらへんやろか?)
怜(……)
怜(まぁ目閉じるだけでも、その妄想に浸れるからええか……太ももだけはいっちょ前やしな、竜華は)
竜華(ふふ……かわええなぁ、怜は)
怜「……っ」ブルッ
竜華「ん、どうしたん怜?」
怜「ちょっと飲みすぎたんかも。おトイレ行ってきます」
竜華「大丈夫? ついて行かんでええ?」
怜「さすがにだいじょぶやて。竜華は心配症やなぁ」
セーラ「オレもちょうど行きたかったし、ついて行くから安心しろや」
竜華「ほなセーラ、任せたわ」
セーラ「おう」
ガチャ
竜華「……」
竜華「……フナQ、あんたなにしとるん?」
フナQ「……うぐ……ぐ……」
竜華「ちょ、あんた大丈夫なん!?」
フナQ「お、お腹が……ぐふ」
竜華「……」
竜華「バカ……はよ、トイレ行ってき」
フナQ「はい……」ヨロヨロ
フナQ「これ……そこの机置いといて下さい」
竜華「あぁ、怜のパソコンか。わかったで」
フナQ「……ほな、行ってきます」ヨロヨロ
ガチャン
竜華「……大丈夫なんかな、浩子のやつ」
竜華「怜、これわざわざ学校まで持って来たんか。帰りはセーラあたりに持たせんと」
竜華「そういえば、データ収集ってどういうことしとるんやろ」チラッ
竜華「でも、さすがに人のパソコン勝手に見るんはまずいかなぁ……」
竜華「……」
竜華「ま、えっか。どうせたいしたもんじゃないやろし」パカッ
竜華「ええっと……ん、なんや電源つけっぱやん。もしかして浩子も使っとったんかな」カチカチ
竜華「んーと……って、え……?」カチカチ
竜華「……」
竜華「……え……?」
竜華「……」
竜華(……女の子の画像ばっか……しかも、どれもインハイで見た覚えのある子ばっかや)
竜華(……意味わからん……なんで怜のパソコンにこんなもんが……?)
竜華「……」カチカチ
竜華(『お気に入り』って……ウソやろ……?)
竜華(と、怜はこんな……こんな子がええっちゅうんか……?)フルフル
竜華(わけわからん……わけわからん……!)カチカチ
竜華(なんなんや……なんなんやこれ……!!)カチカチィッ!
竜華「うぁ……」
竜華「うわぁああああああああああああああああぁあああ!!」
ガンッ
竜華「こんなもん! こんなもんウソや!!」ガンガンッ
竜華「怜はうちのことが一番好きなんや!! こんな画像の中だけの女、好きになるわけない!!」ガキンガキンッ
『鶴田姫子ちゃんフォルダ』
竜華「いやぁああああああああああああああああああ!!!」バキバキッ!
ガチャ
泉「せんぱ~い、買っt」
泉「せ、先輩!? な、なにやっとるんですか!?」
竜華「ウソや……全部ウソやァ!!!」バキバキィッ!
泉「や、やめてください!! い、一体なにがあったんですか!?」ガシッ
竜華「離してや!! 離せぇ!!」ジタバタ
セーラ「浩子のやつ大丈夫なんかなー」
怜「さぁ?」
泉「あ、先輩たち……」
竜華「……」
怜「ただいまー……ってなにかあったん?」
泉「そ、それが……」
竜華「……」
怜「竜華、どうかしたん?」
セーラ「ん、なんやそれ……って、うわ……」
怜「どないしたんセーラ」
怜「……えっ」
その姿は、見た者なら誰もがわかるように、ハードディスクの中身が到底無事では済まされないことを物語っていた……
怜「……れ……」
怜「だれ……? 誰……?」
セーラ「と、怜……」
怜「誰や……うちのパソコン壊したんは……」
怜「……誰……?」
泉「せ、先輩……」
竜華「……」
怜「……」
ダンッ!
怜「誰やっちゅうとるやろボケ!!!!」
竜華「……」
怜「……セーラは白。うちと一緒にいたからな」
セーラ「と、怜……落ち着けって……」
怜「……泉……あんたか?」
泉「う、ううううウチちゃいます……」ガタガタ
怜「ほんまか……? ホンマに違うんか?」
泉「は、ぃ……ぁ……」
ダンッ!
怜「はっきりせえや!!」
泉「ひっ!!」ジワッ
泉「だ、だからもう……もう許して下さい……」ガタガタ
セーラ「怜! 泉もこう言ってるんやし、信じたれよ!」
怜「……」
怜「わかったわ……信じたる」
泉「……ぁ……はぃ……」ガタガタ
怜「……じゃあ残りはフナQか竜華やなぁ……」
怜「フナQはあの調子じゃこんなこと出来そうもあらへんし……」
怜「……」
竜華「……」
怜「あんたなんか……あんたがこわしたんか……?」
竜華「……」
怜「おい竜華……」
竜華「……」
怜「……」
竜華「はははははは、はは」
竜華「あはははははははははは!!!」
セーラ「り、竜華……」
竜華「あははははは……はぁ……」
怜「……」
竜華「ふふ……うちが壊したよ?」
竜華「うちが壊した……あは……うちが壊しちゃった……あは、は」
怜「……」
竜華「ぶっ、はははははは!! 壊しちゃった!! あははははははは!!」
怜「……」
怜「……」
竜華「あんたがあんなもん……あんなもん集めとるから……」
竜華「……なんなんあれ……? ねぇ、なんなんあれ……?」
怜「……」
セーラ「な、なんの話や……?」
泉「」ガタガタ
竜華「……まぁええわ」
竜華「これでなんもかんも、全部消えた……」
竜華「もう、怜にはうち……うちしかおらへん……そうやろ?」
怜「……」
竜華「ねぇ、怜……なんでだまっとるん……? なんで……」
竜華「……?」
怜「ぁあ……ぁああぁあ……」
セーラ「と、怜……?」
怜「ぁぁぁあああぁあああああッ!!!!」ガシャンッ!
怜「ぁアアアアああ嗚呼あああッ!!」ガシャガッシャンッ!
セーラ「怜! ヤメロッテ!!」
怜「ぁアアアアああ嗚呼ああああああァァァァあああッ!!!!」ガシャガシャンッ!!
怜「なんでや!! なんでや!! なんでやぁアアアアああ嗚呼ああッ!!!」バキィッ!
怜「イヤや!! いやぁアアアアああ嗚呼ああ嗚呼!!! うわぁああああああああああん!!!」ガシャガシャ!
セーラ「怜……」
竜華「……」
怜「うぁ……ぅ……うわぁぁあああん!」ボロボロ
怜「うちのぉ……うちのデータがぁ……うわぁああああああああん!!」
竜華「……」
セーラ「……」
泉「」
怜「……ひっく……っく……」
竜華「……」
怜「うれしいか……?」
竜華「……」
怜「きがすんだか……?」
竜華「……」
怜「……」
竜華「……」
怜「……しね竜華。しね」
竜華「……」
怜「……一生のろってやる。しね」
竜華「……」
怜「……地獄へいけ」
竜華「……」
怜「……」
竜華「……」
怜「……うちは絶対あんたのことゆるさへんからな」
怜「……絶対ゆるさへん。絶対や」
竜華「……」
怜「……絶対こうかいさせてやる。しね」
竜華「……」
怜「……っく……」
竜華「……」
怜「絶対に……っ……ゆるさへんから、な……」ボロボロ
竜華「……」
怜「うっぐ……っく……し、ねぇ……」
怜「し、ね……しねぇ……っぐ……」
セーラ「……」
泉「」
フナQ「ダメや……完全に入るタイミング見失ったわ」
怜「……」
セーラ「怜……」
怜「……ごめん、セーラ。うち帰るわ」
セーラ「……あぁ、あとはオレが片しておく」
怜「……堪忍な」
泉「」
怜「……泉もごめん」
泉「」カタカタ
怜「……」
竜華「……」
怜「いつか絶対……あんたの大事なもん、壊したるからな」ボソッ
竜華「……」
怜「覚えときよ、クソ女」
竜華「……」
竜華「……」
セーラ「……竜華」
竜華「……」
セーラ「……」
竜華「……」ポロッ
竜華(なんでやろ……涙が……)
竜華(……)
竜華(……うち、バカやな……)
竜華「……っ」
竜華(……ほんと……バカや……)
竜華「ぅぅ……」
竜華「……うぐぅぅう……うぅう゛う゛う゛ううぅ……」ボロボロ
セーラ「……」
泉「」
怜「……」バタッ
怜「……」
怜「……なんでやろ……もう涙も出てこんわ」
怜「……」
怜「……なんちゅうか……なんもかんも、気力が湧いてきいひん」
怜「……はぁ」
怜「……」
怜(……でも、竜華だけはゆるさへん)
怜(……)
怜(あの女……絶対に後悔させてやる……)ギギ
「おはよー」「おっはー」
竜華「……」
セーラ「おっす、竜華」
竜華「……」
セーラ「怜は……さすがに一緒じゃねえか」
竜華「……」
ガチャ
『しね、クソ女』
竜華「……」
竜華「……」ペラッ
セーラ「ん、なんやそれ?」
竜華「……なんでも」
竜華「……」
セーラ「……おっす、怜」
怜「……」クルッ
竜華「……」
怜「おはよ、セーラ」
セーラ「……あぁ」
怜「……どうしたん?」
セーラ「……」
セーラ「あのさ、怜……」
怜「そういえば!」
セーラ「……」
怜「そういえば、新しくパソコン買ってもらえることになったんよ。ええやろー?」
セーラ「怜……」
セーラ「あ、あぁ……」
ガララッ
「おらー、出欠とるぞー」
セーラ「……」チラッ
竜華「……」
セーラ(竜華……)
怜「……」
怜(今朝のは利いたやろか……?)
怜(……)
怜(……あんたの大事なもの、結局見つからへんかった)
怜(でもなぁ、うち気づいたんや……あんた自身を壊してしまえば、そんなの関係ないって)
怜(……)
怜(まだまだこんなもんじゃ終わらへんからな……竜華)
セーラ「腹減った~、メシメシっと」ガサゴソ
セーラ「……」チラッ
竜華「……」モソモソ
セーラ(竜華……)
ガタンッ...バララ
怜「おっとごめんな」
竜華「……」
セーラ「おい、怜……!」ガタッ
怜「え、なに?」
怜「だから謝ったやん」
セーラ「ふざけんな、ちゃんと拾ってやれよ」
怜「……」
怜「はいはいわかりましたぁ」
セーラ「……」
怜「めんどくさいなぁ……」
怜「なんや、ゴミと弁当の区別がつかへんわ」ポイッ
セーラ「おい怜、てめえ!!」ブンッ
竜華「……セーラやめ」
セーラ「ぐっ……」
怜「……」
怜「そう? じゃ頼むわ」
グシャ
竜華「……」
怜「……あと、怜っていうのやめてくれへん?」ボソッ
竜華「……うん、わかった」
怜「……」
スタスタ
セーラ「おい竜華……なんで止めたんや」
竜華「ごめん……でも、これはウチととk……園城寺さんの問題やから」
竜華「セーラ……あんたは今後、うちらの問題に口挟まんといて」
セーラ「……そんな……」
竜華「……頼む」
セーラ「……」ギリッ
怜「ロン。2600」
竜華「……はい」
泉「お、園城寺先輩は強いやんなぁ!」
怜「ありがとう、泉」ニコッ
泉「いえいえ~、あはは~」
泉「はは、は……」
泉「……」
セーラ「……」
セーラ(くそっ……麻雀打ってるのに、全然楽しくあらへん……)
怜「……ふふ」カチャカチャ
セーラ「ゲスト……?」
怜「せや。もうすぐ来る頃だと思うんやけど……」チラッ
ガチャ
フナQ「どうもお待たせしてすみません」
怜「おう、待っとったでフナQ。それで、お客さんは?」
フナQ「ちゃんと連れてきました。ほら入って」
洋榎「どうも~」
絹恵「お、お世話になりますぅ」
セーラ「あん……? たしかあんたら姫松の……」
フナQ「うちの従姉妹……愛宕の姉妹です」
洋榎「せやでー。うちの母がいつもお世話になっとるなぁ」
泉「いえ、世話になっとるんはこっちですけど……」
怜「絹ちゃん久しぶりやでー!」ダキッ
絹恵「え……えっ!?」アセアセ
怜「……うちが園城寺です」コソッ
絹恵「あ、あぁ……わかりました」コソッ
絹恵「と、怜ちゃん久しぶりやー!」ギュゥ
絹恵(うぅ……恥ずかしいわぁ……)
洋榎「なんや、知り合いか?」
絹恵「う、うん……」
怜「あ、千里山の園城寺怜です」ペコリ
洋榎「おぉ、あの一巡先を見る~ってやっちゃな?」
怜「せやで。これからよろしゅう」
フナQ(まさか絹恵と園城寺先輩が知り合いやったとは……)
フナQ(でもおかしいんよなぁ……園城寺先輩は絹恵のアドレス知らなかったっていうし、絹恵から園城寺先輩の話を聞いたことは一度もあらへんかったし……)
フナQ(……)
フナQ(まぁええか)
怜「絹ちゃん~、またいつもの膝枕してえなぁ」
竜華「!」
絹恵「えと……うん、わかったでー!」
怜「わーい!」ダダッ
怜「うん……あぁ、気持ちええ……」
竜華「……」
洋榎「なんや、エライ仲良しやなぁ」
絹恵「う、うん……まぁね」ナデナデ
怜「……あ、それもっとやってぇ」
絹恵「ひゃぁ! こ、これ……?」ナデナデ
怜「うん……そう……」
絹恵「……」ボーッ
絹恵(なんか……園城寺さんってすごくかわいい……)ドキドキ
竜華「……っ」
セーラ「……あ、あぁ。よろしくな」
洋榎「あっちは邪魔しにくい雰囲気やし、ここは一戦どうや?」
セーラ「せ、せやな……」
セーラ「……」チラッ
竜華「……」
セーラ「……ぐっ」
洋榎「よーし、そこの子もどや? うちらと一局」
泉「あ、はい! よろしくお願いします!」
洋榎「おう、よろしゅー」
泉(うわ~……ほんものの愛宕洋榎や~)
泉「そ、それで待っとったんですか!」
洋榎「時には状況に応じて打ち方を変えるのも大切なんやでー」
泉「な、なるほど……」
竜華「……」
セーラ「……竜華、大丈夫か?」
竜華「……」
セーラ「竜華」
竜華「っ!」ビクッ
竜華「な、なに……?」
セーラ「いや、お前さっきからボーっとしとるから」
竜華「……あぁ……心配あらへんで」
セーラ「……ならええけど」
洋榎「ええってええって、うちらも久々に手強い連中と打てて楽しかったでー」
絹恵「うん、また遊びに来るで」
怜「ぜひぜひ、いつでも来てえなー」
洋榎「ほなら、さいなら~」ブンブンッ
絹恵「他の皆さんも、どうもお騒がせしましたー」ブンブンッ
フナQ「じゃウチ、あの二人送ってきますんで」
怜「うん、任せたでフナQ」
フナQ「ほな、お疲れ様です」
怜「お疲れー」
バタン
泉「うちも愛宕洋榎さんと打てて良かったです」
怜「せやろ? また近いうちに呼んだるで」
泉「ほんまですか! お願いします!」
怜「ふふ……」チラッ
セーラ「……」
竜華「……」
怜「セーラと、それに『清水谷さん』も……今日は楽しめたんやない?」
セーラ「……まぁな」
竜華「……うん」
怜「……」ニヤッ
怜「ほな、また明日な」
セーラ「……あぁ」
竜華「……うん、また明日」
怜「……」
スタスタ
セーラ「……」
竜華「……」
セーラ「……なぁ、竜華」
竜華「……」
セーラ「……もう辛いやろ……? 苦しいやろ……?」
竜華「……」
セーラ「怜やって性根は腐ってねえ……オレが一度ぶん殴れば目を覚ますはず」
セーラ「だからもうお前は我慢すんなや。全部俺に任せろ」
セーラ「な?」
竜華「……」
竜華「ごめん、気持ちは嬉しいけど……もうウチらに構わんといて」スタスタ
セーラ「……」
ザッ
竜華「セーラ……どいてや」
セーラ「いや、今回ばかりはオレも引きさがらねえぞ……竜華」
竜華「……」
セーラ「これはもう、お前と怜だけの問題やない……千里山の麻雀部全体の問題や」
セーラ「せやからその一員として、オレはこの問題を黙って見過ごすわけにはいかへんのや」
竜華「……」
セーラ「竜華……あとはお前の意思だけや。それでオレは思う存分動ける」
竜華「……」
セーラ「竜華!」
セーラ「オレはもうやるからな……ええんか!?」
竜華「……セーラ」
セーラ「……なんや」
竜華「……一日だけ待って。そしたらセーラのしたいようにしてええから」
セーラ「……? なんで一日やねん……」
竜華「……」
セーラ「おい竜華!」
竜華「……もとはと言えば自分が蒔いた種や……落とし前はきっちりつける」
セーラ「は……? お前なに言って……」
竜華「ほな、また明日なセーラ……さっきの、約束やで」スタスタ
セーラ「りゅう、か……」
ガチャ...バタン
竜華「……」
竜華「……どうしよ……あんなこと言うたけど」
竜華「ウチにはもうどうしようもあらへん……ウチがなにを言おうが、怜は絶対に許してくれへんやろうし」
竜華「でも……セーラには関わってほしくない。迷惑をかけたくないんはもちろんやけど……」
竜華「なによりこれ以上怜とセーラの関係が壊れたら……?」
竜華「怜は独りぼっちになってまう……そんなことにはさせたくあらへん」
竜華「……」
竜華「ふふ、ウチってホンマに卑怯やなぁ……こんな時まで好きな相手のこと考えてるふりか」
竜華「悲劇のヒロイン気取って、バカみたいや……」
竜華「……」
竜華「……っ……えっく……」
竜華「……う、ウチが怜に嫌がらせを受けるだけならかまへん……ウチが我慢すれば済むだけの話やし」
竜華「……だってウチが怜のパソコン壊したんが原因なんやから……当然の報いや」
竜華「……」
竜華「……いやそれはウソやな。もうこれ以上、ウチは耐えられんかもしれん」
竜華「次、あの姫松の子とイチャイチャされてるのを見せられたら、また発狂してしまいそうやもん……」
竜華「……っ」
竜華「あんなにされても、まだあんたのことが好きなんやで……これだけはウソやない。正真正銘の事実や」
竜華「……なんてゆうても、怜にはそんなこと関係あらへんか。言い訳にもならへん」
竜華「……」
竜華「メール……」
カチャ
『もう学校辞めちまえ、ぼけ』
竜華「……」
竜華「たしかにそれも考えたよ、怜……」
竜華「辞めるなんてぬるいことはせんと、ウチが自殺したら怜は満足するんやないかって……」
竜華「死ぬんは怖い……でもそれが仕方ないことなんやったら、ウチはやるつもりやった……」
竜華「……でも、そうしたらあんたはどうなるん?」
竜華「その事実に一生苛まれて生きていく羽目になる……セーラかて、絶対にあんたのことゆるさへんやろうし」
竜華「ウチは、そんなことになってしまうんが怖いんや……死ぬことと同じくらいにな」
竜華「……だから死ぬわけにはいかへん」
竜華「……」
竜華「……セーラには明日まで猶予をもらっとる。けどウチにはどうすることもできへん……」
竜華「でもこのままじゃ確実に壊れてく……ウチらだけやなくて、部全体の関係が……」
竜華「……死んで逃げることも……学校行かずに逃げることもできひん」
竜華「けど、セーラにも約束してしもうたし、ウチがなんとかせんと……」
竜華「……はは、これがいわゆる板挟みの状態ってやつやな……」
竜華「……」
竜華「……っく……ぅう……」
竜華「っく……どないすればええん……どないすれば……」
竜華「……っ」
竜華「……もうウチわからへんよぉ……っぐ……」
竜華「……っ……えっぐ……」
怜「……」
怜(ほんとに学校こなくなるとはなぁ……)
怜(ま、うちには関係あらへんことや)
怜「……」
怜「……」チラッ
怜「……ぐ」
怜(……なんでやろ……胸が痛い)
怜「……」
怜「……セーラ」
セーラ「……」
セーラ「……竜華、欠席やて」
怜「……」
セーラ「……」
怜(……セーラのこんなつらそうな顔……初めて見るわ)
怜(それもこれも、全部うちが原因なんよな……)
怜「……そ、よかったやん。“まだ”連絡あって」
セーラ「……」ギリッ
怜「……」
怜(なにいうてんの……なにいうてんのやウチは……)
怜「……ふーん」
セーラ「……」
怜「……なに? なんかウチに言いたいことでもあるんか?」
セーラ「……」
セーラ「……まだや。竜華との約束やからな」
怜「は……?」
セーラ「……」
怜「……」
怜(なんや……セーラのやつ……)
怜「……」
怜(また来てへんのかあいつ……ホンマしょうもない奴やで)
怜「……」ガタッ
怜「……ぅ」
怜(なんや、吐き気がする……どうして……)
怜「……っ」ダダッ
トイレ
怜「うぼぇえええええぇぇえ……」ボタボタ
怜「うげぇ……ぇ……」
怜「……ぅ」
怜「うげぇえええええええ……」
セーラ「……」
怜「……セーラか……おはよ」
セーラ「……具合悪そうやな」
怜「……まぁな……別に大したこと、あらへんよ」
セーラ「……」
怜「へへ……」
セーラ「……怜、放課後部室こいや」
怜「……」
セーラ「絶対やからな」
スタスタ
怜「……」
ガチャ
怜「……」
セーラ「……」
泉「……園城寺先輩……」
フナQ「……」
怜「あれ……今日は部活休みなんやないん……?」
セーラ「……」
セーラ「……今日のは部活じゃねえよ」
怜「……」
セーラ「……怜、だいたいの事情は浩子から聞いた。こいつが一昨日、自分から話してきた」
フナQ「……」
怜「……そう」
怜「……」
セーラ「……一発殴らせろ、ええな」
怜「……」
セーラ「……いくで」
バッシーンッ!
怜「……っ」
セーラ「はぁ……はぁ……っ」
泉「……ひっ」
フナQ「……」
セーラ「っ……この、大バカ野郎!!」
怜「……」
怜「……」
セーラ「……」
セーラ「昨日、あいつからメールがあった。『休んでしまってごめんなさい』だってよ」
怜「……」
セーラ「あいつはもう一杯一杯や……周りに謝っとかんと気が済まねえほどに心が敏感になっとる」
怜「……」
セーラ「お前がどれだけ、あのパソコンのこと大事にしてたんか、オレは知らねえ……」
セーラ「せやけど、そっちを優先させちまった結果、今お前の手元に残ってるもんはなんだよ、あぁ!?」
怜「……」
セーラ「お前が選択したのは、こういうことなんだよ!!」
怜「……」
泉「……」
フナQ「……」
怜「……」
セーラ「……」
怜「……行ってきます」
セーラ「……」
怜「……っぐ……行って、きまず……」
泉「園城寺先輩……うちも」
セーラ「……泉、一人で行かせえや」
泉「……はい」
怜「……うっぐ……ぅう……」
セーラ「……竜華には連絡しといた。今からお前がそっちに向かうって」
怜「……っぐ……っ」
セーラ「……ちゃんと互いの気持ち、清算してこい。わかったか?」
怜「……ぅん……っく……うん……っ」
セーラ「……」
怜「……はぁ……はぁ」
怜(こんな走るの、久々や……)
怜「っぐ……はぁ……」
怜(……胸が苦しい……)
怜(でも、これは竜華が感じてた痛みのほんの一部でしかないんやな……)
怜(……)
怜(……許してくれるかわからへんけど……それでも今は竜華の顔が見たい、そんで謝りたい……っ)
怜(ウチのホンマに大事なもんが、こんな近くにあったなんて……ヒトってのはつくづく愚かもんやな……)
怜「ぐっ……はぁ……」
怜(待ってて……待っててよ、竜華……っ)
タッタッタッタッ
竜華「……」
竜華(……もうすぐ、怜がここにやってくる……)
竜華(……)
竜華(……ウチ、怜とどんな顔して合えばいいんかわからん……)
竜華(……)
竜華(……怜はウチのこと、許してくれるんやろか……?)
竜華「……」ブルブル
竜華(怖い……怖いよ……)
竜華「っ!」ビクッ
竜華「……怜……なんか?」
竜華「……」
スクッ
竜華「もうウチも、逃げたらアカンやな……ちゃんと向き合わんと」
竜華(自分のしたこと……それから、怜自身と……)
スタスタ...ガチャ
怜「はぁ……はぁ……」
竜華「怜……」
竜華「あんた……大丈夫なん?」
怜「……っ……う、うん……」
竜華「……」
竜華「……とりあえず上がって」
怜「うん……お邪魔します」
...ガチャ
竜華「……入って。ウチ、お茶持ってくる」
怜「あ、うん……」
怜(竜華の部屋……なんかずいぶん久しぶりって感じや)
ガチャ
竜華「……おまたせ」コトッ
怜「ん、ありがと……」
竜華「……」
怜「……」
怜・竜華「……」ゴクリ
怜・竜華(な、なにから話したらええんやろ……)
竜華「……えっと」
怜・竜華「あの……!」
竜華「……ど、どうぞ怜から」
怜「いやいや、竜華の方がちょっと早かったし……」
竜華「え、そんなことないやろ……」
怜「いや、0.2秒くらい早かったで」
竜華「はぁ? なんやそれ……」
怜「……」
竜華「……」
竜華「……なにが」
怜「……ウチ、竜華にひどいことした……」
怜「……っ」
怜「……り、竜華の気持ち……きずつけた……」
竜華「……」
怜「だ、から……っぐ……ごめ……っ、ごめんなさい……」
怜「……っ……うぅ……うぅううう……」ポロポロ
竜華「……」
ダキッ
竜華「もう泣かんで、怜……もうええから……」
怜「う゛ぅうう……ぅうぁあああああああん!!」ギュゥ
竜華「もうええ……もうええんよ……」
怜「……ひっく……」
怜(竜華の胸の中……あったかい……)
怜(やっぱウチ……ここやないと安心できへんみたいや……)
竜華「……」ナデナデ
竜華「……怜、ウチもあやまらなあかん」
怜「……それはもうええって」
竜華「いや、パソコンのことだけやないんや……ウチ、怜を束縛し続けてた」
竜華「ウチが心から怜のこと好きでいれば、怜の方も必ず応えてくれるって、妄信してた……」
怜「……」
竜華「ウチの想いが……怜を縛りつけてた……」
怜「……うん」
怜「せやから、あんな画像に逃げてたんやと思う」
竜華「……うん」
怜「けど、今竜華に抱きしめられてて気づいたんや」
竜華「なにを?」
怜「やっぱり人肌の温もりが、一番心を溶かしてくれるんやって……」
怜「そんでウチ……やっぱり竜華のこと好きやったんだって」
竜華「……怜」
怜「……」
怜「……もう一度聞くで、竜華。ウチはあんただけやない……部全体を巻き込んで、最低なことをしくさった……」
怜「竜華の一番大事なものやった……学校での居場所さえ壊して、ないものにした」
竜華「……」
怜「それでも……それでもウチのこと、許してくれますか?」
竜華「……」
怜「なに、竜k」
チュ
竜華「……っ」
怜「……っ……り、竜華!?」
竜華「ごめん……いきなり」
怜「い、いや別にかまへんのやけど……」ドキドキ
怜「ホンマいきなりやったからビクッてなったわ……今度からはする前にちゃんと声かけてえな」
竜華「……ん、それって……これからもたくさんしてくれるっちゅうこと?」
怜「いや……そ、それは……っ」
竜華「なーんて……ふふ、ちょっとからかっただけや」
怜「り、竜華!」
怜「むぅ……」
怜「……」
怜「い、いやまぁ……竜華がええんなら、な? ウチも別にかまへんよ?」
竜華「……」
怜「な、なに?」
竜華「いや、相変わらず素直やないなぁと思って」
怜「う、うっさいわボケ!」
竜華「ふふ……まぁ怜の場合、そこがかわええんやけどなー」
怜「や、やめえって! 恥ずかしい!」
怜「なに?」
竜華「……さっきあんた、ウチの大事なもん壊したって言うたやろ?」
怜「う、うん……」
竜華「……心配あらへんよ。ウチの大事なもんは、あんたには一生見つけられへんと思うから」
怜「え、なにそれ……めっちゃ気になる。教えて」
竜華「……んー」
怜「??」
竜華「ふふ、内緒♪」
怜「えぇ~! なんやそれ~!」
セーラ「これで一件落着やな……」
泉「よ、よかったですね……」ポロッ
フナQ「ホンマや」
セーラ「……」フッ
―――やっぱりあいつらは……仲良く、笑顔でいるのが一番似合ってるな……
竜華とセーラが言い争って、それを見た泉が右往左往して、フナQが我関せずといった感じでタブレットをいじっとる……そんな日常が。
今回の事件のおかげで、ウチ……いやウチらにとっては、そんな当たり前な日常こそが本当の宝物で、一番大事なもんなんやって……そう気づけた。
今、ウチのパソコンには大事な画像が入っとる。麻雀部の5人で撮った、思い出の記録としての画像が―――。
でも、今度パソコン壊されてもウチは怒らへん……だって、なくなったんなら、また作っていけばいいんやから。
これからも、ウチらは思い出のアルバムをどんどん増やしていく……そんでもって、竜華と二人での思い出も同じくらいに、な。
カン
手探り状態でしたが、なんとかハッピーな感じで終わらせられてよかった……
保守・支援どうもでした!!
あと絹恵の気持ちはどうなる!!
たしかに
イタズラにときめき持たされて放置って
ある意味一番の被害者かもなw
Entry ⇒ 2012.08.31 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (4) | Trackbacks (0)
憧「シズへの気持ちが一方通行で辛い」
穏乃「好きだよ!」
憧「じゃあ玄のことは?」
穏乃「好きだよ!」
憧「宥姉、灼さん、ハルエも?」
穏乃「好きだよ!」
憧「ぐぬぬ」
穏乃「みんな一番好きだよ!」
憧「あえて順位をつけるなら!」
穏乃「ええー? それは、うーん」
憧「……」ドキドキ
穏乃「お母さんとか?」
憧「確かにお母さんは大切よね、うん……」
穏乃「いやー、改めて口にされるとハズいなー」
憧「でも、それはそれとして!」
憧「阿知賀麻雀部の中から誰か1人好きな人を選ぶとしたら……」
穏乃「ねえ憧。さっきから変な質問ばかりどうしたの」
憧「えっ?」
穏乃「好きに順位付けなんてしなくてもいいじゃん」
憧「それはその……」
穏乃「みんな好きってんじゃ駄目なの?」
憧「駄目じゃない……、けど……」
憧「うわーん! シズの馬鹿ぁー!」
穏乃「えええええ!?」
憧「悪いこと言ったってわけじゃないけど、鈍感っていうか……」
穏乃「うーん。なんかよく分かんないけどごめんな、憧」
憧「!!」
憧(あたしが勝手に空回ってるだけなのに、自分から謝ってくるなんて!)
憧(やっぱりシズはいい子! というか可愛すぎ!)
憧「あたしの方こそ、なんか訳分かんないこと言ってごめんね」
穏乃「いいよ別に。気にしてない!」
憧「仲直りの印にラーメンでも食べにいく?」
穏乃「いいね。玄さんとかも誘ってみる?」
憧「!?」
穏乃「玄さんも一緒の方が賑やかで楽しいかなー、って」
憧「うぐぐ」
穏乃「あれ? もしかして憧、玄さんのことあんまり好きじゃないの……?」
憧「そういう訳じゃない!」
憧「というか、好きか嫌いかなら好きに入る、けど……」
穏乃「けど?」
憧「せっかくだしあたしはシズと2人で……、ごにょごにょ」
穏乃「変な憧ー」
憧「え?」
穏乃「ラーメンのこと考えてたらもう腹減って腹減って」
憧「あのさ、玄に連絡はとらなくていいの?」
穏乃「だって憧は皆でわいわいって気分じゃないんでしょ?」
憧「う、うん」
穏乃「それなら私は2人だけでもいいよ」
憧「シズ……」
穏乃「たまには憧と2人きりってのも悪くないし!」
憧「!!」
憧(ふふっ、シズったらもう)
穏乃「あ。灼さんだ!」
憧「えっ」
灼「穏乃に憧。外で会うなんて偶然だね」
憧(ちょ、これ駄目な流れじゃ)
穏乃「灼さんは何してるところなんですか?」
灼「ハルちゃんと一緒にラーメン食べる約束してて」
憧(あああああああ!)
灼「そうなんだ。2人は仲がいいね」
憧「さすが灼さん! 分かってるー!」
灼「そ、そう? どうも」
穏乃「そだ。せっかくですし一緒にラーメン屋に行きません?」
憧(ガーン!)
灼(えっと……、なんか露骨に憧の態度が何かを訴えてるんだけど)
憧(お願い断って! 断って! 断って!)
灼「……」
灼「部長と顧問で真面目にお話ししたいから、悪いけど今回は」
憧(ありがとう! ありがとう灼さん!)
穏乃「うーん。それなら仕方無いですね」
灼「それじゃあ私はあっちの方向のお店だから」
穏乃「はーい! ではまた部活でー!」
憧(ふうっ。なんとか2人きりキープできた)
憧「あたしは塩かな」
通行人A「テルー。東大寺はまだー?」
通行人T「待ってて。多分もうすぐだから。多分」
通行人A「あれ? この地図逆さ」
通行人T「えっ」
通行人A「観光って難しいね……」
通行人T「うん……」
憧「……」
憧(今すれ違った2人組、あたし達と同年代ぐらいなのに手を繋いでた)
憧(そういうのもありか!)
穏乃「ん?」
憧「久々に手でも繋がない?」
穏乃「え。嫌だよ」
憧「え? ……そ、そっか」
憧(なんだろ、断られても思ったよりは平静でいられて、それは自分でもビックリなんだけど)
憧(ただ、心臓が冷たくなったみたいな嫌な感じが胸の中に広がってる……)
憧「考えてもみればそうだよね、こんな年で手繋ぐとかキモいか……」
穏乃「別に気持ち悪いとかはないよ」
憧「え!? それならどうして?」
穏乃「だーってこの暑いのに手なんて繋いだらますます暑いじゃん!」
憧「あ、あははは……、なーんだ。そんな理由」
憧(よかった。あたしだから嫌ってわけじゃなくて)
憧「うら若き女子高生がチャーシュー麺とかどうなのよ」
穏乃「美味しければいいの!」
憧「ま、そのぐらいの方がシズらしいか」
穏乃「ちゅるるるっ、ちゅるっ」
憧「……」
穏乃「ちゅるるるる」
憧(こうしてみると、シズがラーメン食べてる姿って……)
憧(なんかちょっとセクシーじゃない!?)
穏乃「あの……。そんなに見られてると食べにくいんだけど」
憧「ごっ、ごめん」
穏乃「美味しかったなー」
憧「ラーメンも時々はいいもんだよねー」
穏乃「私は毎日でもいけるよ」
憧「そりゃさすがにおかしい!」
穏乃「えへへへー」
憧(ああ、シズ可愛いなぁ)
穏乃「……」
憧(高校卒業しても一緒にいられるのかなあ)
穏乃「憧。私重要なことを思い出した」
憧「ん? デザートでも頼み忘れた?」
穏乃「そうじゃなくて……、いや、それもあったか……」
穏乃「おじさーん、ソフトクリーム1つー!」
憧「本当に食べるんかい! ……で、思い出したことっていうのは?」
穏乃「小さい頃に埋めたタイムカプセル!」
穏乃「急に思い出したよ! 懐かしいな」
憧「……」
穏乃「ちょうどここに2人揃ってるわけだし今から掘り返さない?」
憧「それはえーと、どうかなー」
憧(無理無理無理! あの中には、あの中には……!)
憧(シズがまだ平仮名しか読み書きできないのをいいことに適当言ってサインさせた、2人の結婚届け(仮)が!)
憧(あれを今見られたら恥ずかしすぎる!)
穏乃「えー。付き合ってくれないの?」
憧「喜んで付き合うよ!」
穏乃「よっしゃー!」
憧(しまった! 付き合うという言葉がシズの口から出たもんだから、つい条件反射で!)
憧「よく埋め場所なんて覚えてたね。シズのことだから忘れてるものだとばかり」
穏乃「んー、まあね。憧との大切な思い出だし」
憧「……さっきまでタイムカプセルの存在自体忘れてた癖に」
穏乃「それはそれ! これはこれ!」
憧「調子いいんだから、もう」
憧(大切な思い出、か)
憧(そうだよね。どんなに恥ずかしくても、あたしにとってもあれは大切な思い出だ)
憧(仕方無い。腹をくくるか!)
憧「入り口から右手に見える水色のシーソーのそば、に……、えっ?」
穏乃「……」
憧「……」
穏乃「うっ、うそぉー!? コンクリートで舗装されてる!? いつの間に!」
憧「あれからだいぶ経ったもんね……。無理もないよ」
憧(そうだよね。時間が経てばどんなものだって変わっちゃう)
憧(あの日の淡い気持ちも、今は冷たいコンクリートの下、か)
憧(なんだか寂しいな……)
憧「だねー」
穏乃「さらば私のスーパーボール」
憧「あんたそんなもの埋めてたんかい!」
穏乃「うん……。あと未来の自分宛の手紙とかも入れたかも」
憧「普通気にするのはそっちでしょうに」
穏乃「憧は何入れたのか覚えてる?」
憧「あたし? あたしは、その……」
憧「シズと一緒で未来の自分宛の手紙と、お気に入りのビーズか何かと、それから……」
穏乃「それから?」
憧「け、けっ……、けっこ……」
 ̄ ̄ ̄ ̄
『タイムカプセルの中に入れられた未来宛の手紙』
未来の新子あこへ
この手紙を読むころ、あなたはいくつになっているのでしょうか
背はのびているのかな
マージャンも強くなってるとうれしいな
だけど一番の気がかりはシズと仲好くやれているかどうかです
あたしは、少なくともこの手紙を書いた時点ではシズのことが好きです
ただそれをシズに伝えるゆう気はまだありません
もしも未来のあたしが同じようにシズのことを好きなままでいて
しかも同じようにシズに気持ちを伝えられずにいるのなら
一しょに入れた結婚届けにはげまされて、がんばってみて下さい
すでにシズに思いを伝えられているのなら、こんなこともあったなとなつかしんてください
万が一、シズが一番好きな相手でなくなっていたならば……
自分が昔シズのことを好きだった気持ち、ちょっとでいいから思い出してね
でもそれはやだな。この気持ち忘れたくないや
なんだかシズのことばかりですが、これにて筆を置きたいと思います
未来のあたし、がんばってね
新子あこより
憧「そういえばさ、舗装された地面を突き破って花が生えることもあるって言うじゃん」
穏乃「うん? 確かに聞いたことあるけど……、どうしてそんな話を?」
憧「なんていうかなー」
憧「時間が経ってコンクリに埋められて見えなくなっちゃったとしても、その上に新しい花が咲くこともあるっつーか……」
憧「ああ待って、やっぱりこれ無し。まどろっこしいのは止め止め!」
憧「……あたしね。あのタイムカプセルの中に、結婚届けを入れてたんだ」
穏乃「結婚届け?」
憧「うん。婚姻届じゃないところが、子供の浅知恵だよね。ドラマか何かでうろ覚えだったのかな」
穏乃「そんなもの入れてたんだー。憧ませてるぅー!」
憧「でね。その結婚届けってのが……、あたしとシズの結婚用のものだったの」
穏乃「ええっ!?」
憧「当時の気持ちは今となってはうろ覚えだけど、未来に想いを馳せて、そんなもの作ったんだったと思う」
穏乃「そうだったんだ……」
憧「馬鹿だよね。現実見えてないよね。シズは女の子なのにね」
穏乃「じっ、自分のことそんなに馬鹿なんて言っちゃ駄目だよ!」
穏乃「憧が私のこと好きでいてくれたって知って、嬉しいよ?」
憧「ありがと、シズ」
憧「でもね。あたしが馬鹿なのは今も同じなんだ」
穏乃「え? それって、その……」
憧「うん……」
憧「あたしのこと他の麻雀部メンバーと同じにしか見てないってのは痛いぐらい分かってる」
憧「でも、私、シズの特別になりたいよ……」
憧「だってシズのこと、一番大好きだから」
穏乃「憧……」
憧「だからお願い。あたしと特別な関係になって下さい」
穏乃「……」
憧「シズ?」
穏乃「どう答えればいいのか分かんないよ……」
憧「……」
穏乃「だって、憧がそんな気持ちだなんて知らなかったし。そんなこと考えてもみなかったし」
穏乃「なんかビックリしちゃって、頭の中ぐちゃぐちゃで」
憧(シズを困らせちゃった……)
憧「ごめんね、シズ」
穏乃「ううん。謝ることじゃない」
憧「でも……」
穏乃「ねえ憧。手繋ごっか」
憧「へ?」
穏乃「繋ごうよ」
憧「あ、うん」
憧「うん、そうだね」
穏乃「あのさ。憧」
憧「……」
穏乃「このまま今から山登ろう!」
憧「はぁ!? 山!?」
穏乃「ね!」
憧「まあ……、いいけど。惚れた弱味っていうか。にしても突拍子ないな」
穏乃「ありがと。頂上につくまでには気持ちの整理するから」
憧「あの、無理して急ぐことないよ……?」
穏乃「ううん。何より他でもない私自身が、この胸のもやもやを整理しちゃいたいの」
憧「そっか」
穏乃「ここらでジュース飲むか」
憧「おー」
「おねえちゃーん、疲れたよー」
穏乃「ん? あの声は?」
宥「頑張ろう玄ちゃん!」
玄「うぅー、おもちで栄養補給したいよぉー」
憧「玄に宥姉……」
宥「あれ? 憧ちゃんと穏乃ちゃんだ」
穏乃「こんにちはー! 山登りですか?」
玄「旅館で使う山菜を集めてきた帰りだよ」
穏乃「え?」
玄「ふぅーむ、なるほどざわーるど」
玄「シズちゃんと憧ちゃん、今日は手を繋いでて仲良しさんだね!」
憧「あっ」
穏乃「あははー。そりゃもう幼なじみですし」
憧「……ん?」
憧(あれ? シズの顔も、ちょっと照れた感じになってる?)
憧(なんか……、小さなことだけど嬉しいな、えへへ)
憧(今までだったら照れてすらもらえなかったはずだから……)
穏乃「はい! お気をつけてー!」
玄「2人も熱中症にはご注意をば!」
憧「熱中症ってったらそんな格好してる宥姉が一番心配だよー」
宥「私?」
玄「お姉ちゃんには私がついてるから大丈夫!」
穏乃・憧(あんまり大丈夫な気がしない……)
穏乃「山頂!」
憧「到着ー!」
穏乃・憧「いえーい!」パンッ
憧「おっつかれー、シズ!」
穏乃「おっつかれー、憧!」
憧「山を登りきるとテンション上がるよねー」
穏乃「本当、本当。勢いであと2往復ぐらいしたくなってきた!」
憧「ごめん。それはさすがに付き合いきれない……、かも」
穏乃「なはは冗談冗談」
憧「にしても、ここはいい空気だね」
穏乃「うん。変わらないなぁー」
憧「ん?」
穏乃「実は私も何年か前、お前に言えなかった言葉があったことを思い出したんだ」
憧「えー、なんだろ。愛してるぜ憧とか?」
穏乃「ぶっぶー」
憧「ハズレかー!」
穏乃「正解は、『行かないで憧』、でした!」
憧「行かないで……? どういう意味?」
穏乃「今だから白状できるけどね。本当は私、憧と和と3人で同じ中学に行きたかったんだ」
穏乃「うん。言いたかったけど、言っていいことなのかどうか分からなくってさ」
穏乃「憧の意思を尊重するのが正しいのかなって、迷ったあげく結局そっちに転んじゃったんだ」
憧「そうだったんだ……」
穏乃「こうやってバラバラになるのが大人になるってことなのかなー、なんてね」
穏乃「無理に背伸びして強引に納得しようとしてたのかも」
憧「シズも色々考えてたってわけかー」
穏乃「当然だろ」
憧「なんか意外だ」
穏乃「いやおい、私のことなんだと思ってたんだよ!」
憧「ぷっ……。ごめんごめん!」
穏乃「あの時って?」
憧「ほら、和がインターミドルで優勝した日の電話」
穏乃「ああ!」
憧「今のシズの話からすると、あれも……」
穏乃「うん。本当は阿知賀にきてって言いたかったけど、そんな風に憧の進路を乱していいのか分からなくて、言えなかった」
憧「そうなんだ……」
穏乃「それだけに憧が自分から駆け付けてきてくれた時はすっごく嬉しかったよ!」
憧「……」
憧(あたしが部室に行った時、シズは喜んでくれてたんだ……)
憧(うーわー。その事実だけで胸がどきどきする!)
憧「うん」
穏乃「私、こうして憧といると楽しいよ」
憧「うん」
穏乃「それだけじゃ、憧はいや?」
憧「……うん」
憧「あたしシズのこと……、やらしい目で見ちゃってるから」
憧「だからごめん。ごめんね。ただ一緒にいるだけじゃ寂しいんだ」
穏乃「そっ、か」
憧「うん」
穏乃「特別な好きになったら、憧はずっと私と一緒にいてくれる?」
憧「それは……、約束する!」
穏乃「大事なこと黙って決めちゃったりしない?」
憧「うん!」
穏乃「分かった。それなら付き合おう、憧」
憧「え?」
穏乃「恋人になろ!」
憧「えと……、マジで!?」
穏乃「マジで!」
穏乃「うん!」
憧「あたし、その……、シズとキスとかエッチなこととか、したいと思っちゃうような人間だよ……?」
穏乃「さっきやらしい目で見てるとか聞いたからそんなの分かってるよ」
憧「それでも、あの」
穏乃「もーっ! いいから黙って私の胸に飛び込んでこい!」
憧「……、うんっ!!」
穏乃「聞こえてるよ」
憧「ずっと好きだったんだよ……」
穏乃「ありがとう」
憧「恋人になれて嬉しいよシズ……」
穏乃「私も嬉しいよ」
憧「大人になっても一緒……?」
穏乃「もっちろん! アラサーになってもアラフォーになってもずっと一緒だ!」
憧「それとシズ……」
穏乃「今度は何?」
憧「汗、超かいてる」
穏乃「やっ、山に登ったんだし仕方ないじゃん!」
憧「確かに。ふふっ」
穏乃「えええっ!? 外で!?」
憧「どうせ山の上だし誰も見てないよー!」
穏乃「そっ、それでも外でってのはどうなの?」
憧「大丈夫大丈夫!」
憧「それにあたし、何年も我慢してきたんだもん。もう我慢したくないよ」
穏乃「じゃあえっと……、キスしよっか」
憧「やたっ!」
憧「あー。それは……。どっちなんだろ?」
穏乃「うわー! なんか私ダメダメだー!」
憧「ではここは一つ、目を開けたままキスしよう!」
憧(テレビかなんかで閉じる方が多数派って見た気がするけど、開けた方が顔が見れていいよね?)
憧「だってこっちの方が近くでシズのこと見れるから……」
憧「なっ、なーんちゃって! あはは!」
穏乃「……」
憧「えと……、急にベタベタ過ぎて引いた?」
穏乃「憧ってさ」
憧「うっ、うん」
穏乃「なんか可愛いよね」
憧「かわっ……、あ、ありがと……」
 ̄ ̄ ̄ ̄
穏乃「……で、けっきょく一人だけ目閉じちゃうんだもんなー」
憧「ごめーん。いざシズの顔が近付いてきたら、なんだか予想以上に恥ずかしくて……」
穏乃「憧って案外ヘタレ?」
憧「ぐぬぬ。反論できない」
穏乃「でもそういうとこも好きだよ」
憧「……」
憧(可愛いとか好きとか言われるだけで嬉しくなるとか、あたしってこんな安い女だったんかい!?)
憧(くぅー、なんか負けた気分!)
憧(でもいいや。シズにはもうとっくの昔から負けてたし……)
穏乃「んー?」
憧「あたしのことどう思う?」
穏乃「大好きだよ!」
憧「!!」
憧「シズへの気持ちが一方通行で辛い」
おわり
おい
Entry ⇒ 2012.08.31 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
ナナリー「ずるいです。私はお兄様だけで良かったのに……」キュィィン
ルルーシュ「うぅ……ナ、ナリー……」
ナナリー「そんな……お兄様は、今まで……!!―――お兄様、愛しています!」
ルルーシュ「あぁ………俺は、世界を、壊し、世界を……つくる―――」ガクッ
ナナリー「お兄様!いや!目を開けてください!お兄様!お兄様ぁぁぁ!!」キュィィン
ゼロ「……」
ナナリー「ずるいです。私はお兄様だけでよかったのに。お兄様のいない明日なんて……そんなの……!!」
ゼロ「……」バッ!!!
ナナリー「今、人工呼吸を!!」チュッ
ルルーシュ「うぐっ!?」
ゼロ「なに?!」
ルルーシュ「んー?!んんー?!!?」
ゼロ「やめるんだ!!ナナリー!!!」
ナナリー「離して下さい!!」
ゼロ「皇帝ルルーシュはもう……」
ナナリー「そんなことありません!!私のキスで!!」
ゼロ「人工呼吸じゃないのか?!」
ルルーシュ「ん……?」
ゼロ「え……?」
ルルーシュ「な、なんだ……傷が癒えている……?」
ナナリー「お兄様!!」
ゼロ「……」
ルルーシュ「……」
ナナリー「よかった……本当に……」
ゼロ「悪の皇帝ルルーシュ!!覚悟ぉ!!!」
ルルーシュ「……!!」
ゼロ「はぁぁぁ!!!」グサッ
ルルーシュ「うご……!?」
ナナリー「いやぁぁぁ!!!!」
ゼロ「……」バッ!!!
ルルーシュ「はぁ……はぁ……」ガクッ
ナナリー「いやです!!お兄様!!私はお兄様がいてくれればそれでいいのです!!」キュィィン
ルルーシュ「ナ、ナナリ……」
ナナリー「今、キスを!!」チュッ
ルルーシュ「?!」
ゼロ「いい加減に―――」
ルルーシュ「傷が……癒えた……。これは……一体……」
ナナリー「お兄様!!」ギュッ
ゼロ「悪の皇帝ルルーシュ!!覚悟ぉ!!!」
ルルーシュ「……!!」
ゼロ「はぁぁぁ!!!」グサッ
ルルーシュ「うご……!?」
ナナリー「いやぁぁぁ!!!!」
ゼロ「……」バッ!!!
ルルーシュ「はぁ……はぁ……」ガクッ
ナナリー「いやです!!お兄様!!私はお兄様がいてくれればそれでいいのです!!」キュィィン
ルルーシュ「ナ、ナナリ……」
ナナリー「今、キスを!!」チュッ
ルルーシュ「?!」
ゼロ「いい加減に―――」
ルルーシュ「傷が……癒えた……。これは……一体……」
ナナリー「お兄様!!」ギュッ
ジェレミア「いかん!!全軍撤退だ!!捕虜はそのままで解放しても構わん!!」
ルルーシュ「ナナリー……お前は……」
ナナリー「お兄様……」スリスリ
ゼロ「ギアスか……」
ルルーシュ「なんだと?!ナナリー!!目を見せろ!!」
ナナリー「はい?」キュィィン
ルルーシュ「が……?!紋章が……!?」
ナナリー「なんでしょうか?」
ゼロ「どうする?!」
ルルーシュ「ゼロレクイエムは延期だ!!」
ゼロ「わ、わかった」
ルルーシュ「ナナリー、話したいことがある。いいな?」
ナナリー「はい」
コーネリア「捕虜をすくえー」ダダダッ
ルルーシュ「―――くそ!!知れ者め!!」
ゼロ「悪の皇帝ルルーシュ!!覚悟ぉ!!!」
ルルーシュ「……!!」
ゼロ「はぁぁぁ!!!」グサッ
ルルーシュ「うご……!?」
ナナリー「いやぁぁぁ!!!!」
ゼロ「……」バッ!!!
ルルーシュ「はぁ……はぁ……」ガクッ
ナナリー「いやです!!お兄様!!私はお兄様がいてくれればそれでいいのです!!」キュィィン
ルルーシュ「ナ、ナナリ……」
ナナリー「今、キスを!!」チュッ
ルルーシュ「?!」
ゼロ「いい加減に―――」
ルルーシュ「傷が……癒えた……。これは……一体……」
ナナリー「お兄様!!」ギュッ
ルルーシュ「C.C.!!!」
C.C.「お前……。死んだんじゃないのか」
ルルーシュ「それは俺の台詞だ」
C.C.「意味がわからないな」
ルルーシュ「ナナリーを見ろ」
C.C.「んー?」
ナナリー「あ、C.C.さん。お久しぶりです」キュィィン
C.C.「ギアス……」
ルルーシュ「お前……」
C.C.「おいおい。私がそんなことするわけないだろ」
ルルーシュ「じゃあ、誰が……!!」
C.C.「V.V.じゃないのか。あいつは一度、ナナリーと出会っているからな。ギアスを譲渡するチャンスはあったはずだ」
ルルーシュ「くっ……」
ナナリー「あの……。お兄様?」キュィィン
ルルーシュ「ええい!!」
ゼロ「悪の皇帝ルルーシュ!!覚悟ぉ!!!」
ルルーシュ「……!!」
ゼロ「はぁぁぁ!!!」グサッ
ルルーシュ「うご……!?」
ナナリー「てややぁぁぁ!!!!」
ゼロ「……」バッ!!!
ルルーシュ「はぁ……はぁ……」ガクッ
ナナリー「いやです!!お兄様!!私はお兄様がいてくれればそれでいいのです!!」トエエエエイ
ルルーシュ「ナ、ナナリ……」
ナナリー「今、キスを!!」チュッ
ルルーシュ「?!」
ゼロ「やめたまえ!」
ルルーシュ「傷が……癒えた……。これは……一体……」
ナナリー「お兄様!!」ギュッ
ルルーシュ「人体の治癒能力を高めることができるものだと俺は判断した。勿論、物を直すこともできるかもしれないがな」
C.C.「なるほど」
ナナリー「あの……」
C.C.「ナナリー。お前、自分がギアス能力者だという自覚はあるんだろうな?」
ナナリー「はい」
ルルーシュ「……」
C.C.「……V.V.と契約したのか?」
ナナリー「優しい世界を目指すなら必要だって。そのときはまだギアスのことなんて知りませんでしたが」
C.C.「誰に対しても優しくありたいという想いが生んだギアスだな」
ルルーシュ「それにしても。両目に浮かび上がっているが……」
C.C.「既に暴走しているな」
ルルーシュ「……どうする?」
C.C.「私に訊くな」
ナナリー「あの……」キュィィン
ルルーシュ「―――くそ!!!!」
ゼロ「悪の皇帝ルルーシュ!!覚悟ぉ!!!」
ルルーシュ「……!!」
ゼロ「はぁぁぁ!!!」グサッ
ルルーシュ「うご……!?」
ナナリー「いやぁぁぁ!!!!」
ゼロ「……」バッ!!!
ルルーシュ「はぁ……はぁ……」ガクッ
ナナリー「いやです!!お兄様!!私はお兄様がいてくれればそれでいいのです!!」キュィィン
ルルーシュ「ナ、ナナリ……」
ナナリー「今、キスを!!」チュッ
ルルーシュ「?!」
ゼロ「いい加減に―――」
ルルーシュ「傷が……癒えた……。これは……一体……」
ナナリー「お兄様!!」ギュッ
ナナリー「お兄様が初めてです」
ルルーシュ「……」
ナナリー「私のギアスは相手にギアスをかけて、さらに私の体の一部を飲ませないと効果を発揮しないようで……」
C.C.「どうしてそれを知ることができた?」
ナナリー「お兄様の傷が癒えたときにそう理解しました」
ルルーシュ「つまり、俺の傷を癒すまでは自分でもどんなギアス能力か知らなかった。ということか」
ナナリー「そうなりますね」
C.C.「まあ、つい2ヶ月前まで目は開かなかったわけだしな」
ルルーシュ「そうだな。ギアスを試すこともできなかったはずだ」
ナナリー「でも、これでお兄様と私はこれからも一緒にいられますね」キュィィン
C.C.「ゼロレクイエムはどうする?」
ルルーシュ「……ナナリー抜きでやるしかないな」
ナナリー「お兄様!?何故ですか?!」
ルルーシュ「俺は死ななければならないからだ!!」
ルルーシュ「これが俺の罰だ」
ナナリー「お兄様……」キュィィン
スザク「ルルーシュ。もう一度、やろう」
ルルーシュ「わかっている」
ナナリー「お兄様!!せめて!!せめて!!私も傍に居させてください!!」
ルルーシュ「ナナリー……」
ナナリー「お兄様の最後を看取るのも……ダメですか?」キュィィン
ルルーシュ「しかし……」
C.C.「ナナリーがルルーシュに近づかなければいいだけの話だろ?妹の我侭ぐらい聞いてやれ」
ルルーシュ「そうだな……」
スザク「ルルーシュ。じゃあ、僕は逃げ出した捕虜をもう一度捕まえにいくよ」
ルルーシュ「何故だ?」
スザク「ナナリーだけじゃ見栄えが悪いだろ?ジェレミア卿も一緒だから問題ないよ」
ルルーシュ「ああ。そちらは任せた。どうせ、俺がどんなに理不尽なことをしても「ルルーシュだから」で片付くしな」
ルルーシュ「当然だ」
C.C.「察してやれ」
ナナリー「……はい」キュィィン
ルルーシュ「パレードは捕虜が捕まり次第、再度行う!!」
C.C.「がんばれよ」
ルルーシュ「死ぬのにがんばれもないだろ」
C.C.「ああ、そうだったな」
ナナリー「……」
ルルーシュ「ナナリー。悪いが独房に居てもらうぞ」
ナナリー「分かりました」キュィィン
ルルーシュ(やはり常時ギアスが発動されていては落ち着かないな)
ナナリー「……」キュィィン
ルルーシュ「ナナリー、あまりこちらを見ないでくれ……」
ナナリー「……」キュィィン
カレン「くっ……なによ!!逃がしたくせに!!」
玉城「ぬか喜びさせんじゃねえ!!!」
藤堂「……にしても、どうしてまた同じことを」
千葉「まあ、ルルーシュですし」
星刻「そうだな」
天子「うぅ……かぐやー」
神楽耶「天子さま……」
ルルーシュ(よし……問題はないな……)
ナナリー「……」キュィィン
ルルーシュ(ナナリーが下から熱視線を送ってくる以外は前回と同じ条件!!あとは俺がナナリーの傍に行かなければいいだけの話!!)
ジェレミア「誰だ!!!」
ゼロ「……」バッ!!!
ジェレミア「賊めが!!」
ゼロ「……」ダダダダッ!!!
ナナリー「……」ガシッ!!!
ゼロ「うわぁ?!」バタッ!!
ルルーシュ「なに?!」
ゼロ「足を離してくれ、ナナリー!!」
ナナリー「いかせません……」キュィィン
ゼロ「こうなったら……。―――すまない!!ナナリー!!!気絶してもらう!!」
ナナリー「いやぁ!!」
ルルーシュ「やめろぉ!!!」ダダダッ
ゼロ「ルルーシュ?!」
ルルーシュ「(バカか!!お前が捕虜を殴れば英雄ゼロになれなくなるぞ!!)」
ゼロ「(そ、そうか……)」
ルルーシュ「(もういいから。ここで俺を殺せ!!)」
ゼロ「わかったぁ!!!」グサッ!!!
ルルーシュ「そ、そんない、いきな……り……!?」
ルルーシュ「―――くそ!!知れ者め!!」
ゼロ「悪の皇帝ルルーシュ!!覚悟ぉ!!!」
ルルーシュ「……!!」
ゼロ「はぁぁぁ!!!」グサッ
ルルーシュ「うご……!?」
ナナリー「いやぁぁぁ!!!!」
ゼロ「……」バッ!!!
ルルーシュ「はぁ……はぁ……」ガクッ
ナナリー「いやです!!お兄様!!私はお兄様がいてくれればそれでいいのです!!」キュィィン
ルルーシュ「ナ、ナナリ……」
ナナリー「今、キスを!!」チュッ
ルルーシュ「?!」
ゼロ「いい加減に―――」
ルルーシュ「傷が……癒えた……。これは……一体……」
ナナリー「お兄様!!」ギュッ
ゼロ「ナナリー!!近づくな!!」
ナナリー「いやぁ!!!いやぁぁぁ!!!」
ルルーシュ(これでいい……これで……俺は……死ねる……)
ゼロ(さようなら……ルルーシュ……)
ナナリー「お兄様ぁ!!!お兄様ぁ!!いやです!!私はぁ!!お兄様のいない明日なんて!!いりません!!!」
ルルーシュ(ナナリー……強く……いき……て……)
ナナリー「えい」ポイッ
ゼロ「?!」
ルルーシュ「……!?」パクッ
ルルーシュ「な、なんだ!?何かが……口に……?!」
ナナリー「私の体液を入れたカプセルです」
ルルーシュ「ナナリー……?!―――しまった、傷が癒える!!!」
ナナリー「お兄様。どうしてすぐに死のうとするのですか?」
ゼロ「そんなものを用意していたのか……!!」
ナナリー「お兄様……」
ルルーシュ「もう一度だ!!諦めるな!!」
ゼロ「おぉぉ!!!」
藤堂「なんだ。何が起こっている?」
カレン(何、グダグダやってんの……?)
扇「あれ、やはり枢木スザ―――」
カレン「ゼロです!!」
星刻「しかし……」
カレン「あれはゼロです!!!」
ゼロ「皇帝ルルーシュ!!覚悟ぉ!!!」グサッ
ルルーシュ「うがぁ……いたい……!!」
ゼロ「これだけ深く突き刺せば……流石に死ぬだろ!!」
ルルーシュ「うぅ……う……」
ナナリー「……」キュィィン
ルルーシュ(うつ伏せに倒れなければ……また繰り返す……)
ルルーシュ「ぐはっ……」バタッ
ゼロ「ルルーシュ……」
ルルーシュ「ごふっ……もう……これで……死なせて……く―――」
ナナリー「……そろそろ時間ですね」
ゼロ「え?」
ナナリー「カプセルが溶ける頃です」
ゼロ「なんだって?!」
ルルーシュ「はっ!?」ガバッ
ナナリー「ふふ……」
ルルーシュ「どうして……?!先ほどカプセルの効果は……」
ナナリー「カプセルを投げる前に唾液で濡らしておいたのです。これなら一度で二度美味しいですよね?お兄様?」
ルルーシュ「……」
ゼロ「ナナ、リー……」
ナナリー「嫌です」
ルルーシュ「?!」
ナナリー「私はお兄様さえ居てくれれば何もいりませんから」
ルルーシュ「スザク!!」
ゼロ「もう一度!!」
ナナリー「やめてください」ギュッ
ルルーシュ「ナナリー!?」
ゼロ「どくんだ、ナナリー!!」
ナナリー「お兄様をどうしても殺すというなら。私も一緒に貫いてください!!」
ルルーシュ「馬鹿なことをいうなナナリー!!お前は生きろ!!」
ナナリー「嫌です!!お兄様と一緒に生きて、一緒に死にます!だって、私はお兄様を愛しているから!!」
ルルーシュ「俺も愛している!!しかし!!俺は死ななければならない!!そしてお前は優しくなった世界で生きろ!!!」キュィィン
ナナリー「お兄様も居てくれないと生きる意味なんてありません!!」キュィィン
ゼロ「あの……刺してもいいのか?」
ゼロ「じゃあ!!どうすればいいんだ?!」
ナナリー「殺さないでください!!!」
ルルーシュ「いや、俺だけを殺せ!!」
ゼロ「うぅぅ……!!!」
藤堂「やはり、あのゼロは枢木―――」
カレン「ゼロです!!」
玉城「いや。もう―――」
カレン「ゼロだ!!!」
神楽耶「でも、ルルーシュ様もスザクと」
カレン「ゼロだって言ってるでしょ?!」
天子「ひっ。ご、ごめんなさい」
カレン「ゼロ!!!さっさとルルーシュをやっちゃいなさいよ!!!」
ゼロ「そうだ!!頭の頂点から串刺しにすれば……!!」
ルルーシュ「やめろ!!そんな死に方はしたくない!!」
ルルーシュ「ナナリー!?!」
ナナリー「私の頭も一緒に貫いてください」
ゼロ「そんな……串団子みたいな死に方……」
ナナリー「だんご兄妹で死なせてください」
ゼロ「くそ……!!」
ルルーシュ「スザク!!」
ナナリー「スザクさん!!」
ゼロ「こうなったら……ナナリーごと……!!」
ルルーシュ「やめろぉ!!」
ナナリー「ありがとうございます……」
ゼロ「うわぁぁぁぁ!!!」
ルルーシュ「本気か……!!―――ジェレミア!!」
ジェレミア「―――仮面の騎士よ。ナナリー様は殺させない」ギィィン
ゼロ「ジェレミア卿?!あなたまで邪魔をするのですか?!」
ゼロ「は、はい……」
ルルーシュ「ふぅー……危なかった」
ナナリー「死ぬ覚悟をしていただけに、今は生きていることがすごく幸せなことだと実感できますね」
ルルーシュ「ああ、そうだな。―――って、違うぞ。俺は死にたい!!」
ナナリー「お兄様は嘘つきですね。ふふっ」
ゼロ「僕はどうしたらいいのですか」
ジェレミア「選択肢は様々ある。まずはナナリー様をルルーシュ様から引き剥がす」
ゼロ「それは……」
ナナリー「お兄様……ふふ……」ギュゥゥ
ルルーシュ「ナナリー!!民衆が見ている!!」
ナナリー「見せ付けてあげましょう」
ゼロ「無理です」
ジェレミア「だろうな。では、ギアスを使うという手もある」
ルルーシュ「そうか!!ギアスか!!」
ナナリー「お兄様、どこですか?私は目が……」オロオロ
ルルーシュ「なんだと?!」
ナナリー「お父様のギアスが再発しました」
ルルーシュ「おのれシャルル……!!どこまで俺の邪魔をする……!!」
ジェレミア「ならば私のギアスで……!!」キュィィン
ナナリー「……!!」
ジェレミア「これで目は開くはず。それだけではありません。足も……」
ナナリー「んっ……ダメです。上手く立てません」
ルルーシュ「リハビリが必要だな」
ナナリー「お兄様。手伝ってくださいますか?」
ルルーシュ「当然だろ?」
ナナリー「まぁ、うれしい」
ゼロ「ルルーシュ!!!君は今日、死ぬんじゃないのか?!」
ルルーシュ「そうだった……。すまない、ナナリー。その約束は果たせそうにない」
ルルーシュ「ナナリー……」
ナナリー「私がどれだけお兄様とのリハビリを楽しみにしていたと思っているのですか?!」
ルルーシュ「だが、俺はもう……」
ナナリー「お兄様……共に生きてください……。私を助けると思って」
ゼロ「ナナリー!!ルルーシュがどれだけのことをしてきたのか知っているだろう?!それでも尚、君は許すというのか?!」
ナナリー「はい」
ゼロ「……迷いの無い瞳……。ナナリー……君はいつだって真っ直ぐだ……だから、僕は……」
ジェレミア「ルルーシュ様……」
ルルーシュ「ナナリー。死なせてくれ……頼む……。どうしたら俺は罪を償える……?」
ナナリー「私と生きてください」
ルルーシュ「それではユーフェミアを殺してしまった俺への罰は?!」
ナナリー「お兄様、めっ」
ルルーシュ「……」
ナナリー「これで私は許しました。さあ、二人だけのエデンに向かいましょう」
ルルーシュ「そうだ!!俺を殺せ!!!スザァァク!!!!」
ナナリー「そもそも。スザクさんがゼロになってどうするのですか?!」
ゼロ「え……」
ジェレミア「ナナリー様……」
ナナリー「スザクさん、政治とかできるんですか?」
ゼロ「それは……」
ナナリー「その点、お兄様はできますよね」
ルルーシュ「あ、ああ……」
ナナリー「どうしてもお兄様が死なないとダメだというなら、スザクさんのように公には死亡させたことにして、お兄様がゼロになればいいだけの話ではないでしょうか」
ゼロ「だから、それでは僕が納得しない」
ナナリー「あくまでもお兄様を殺すと?」
ゼロ「そうだ」
ナナリー「では、お兄様とユフィ姉様はCの世界で仲良くなってしまうでしょうね。それでもいいのですか?」
ゼロ「?!」
ナナリー「スザクさん。貴方が年老い、Cの世界へ旅立ち、そして目の当たりにするのは仲良く寄り添うお兄様とユフィ姉様の姿ですよ?」
ゼロ「……」
ルルーシュ「ま、惑わされるな!!俺がそんな不誠実な男に見えるのか?!」
ゼロ「……見えるから困っている」
ルルーシュ「スザァク……!!」
ナナリー「ユフィ姉様も老いたスザクさんより、若々しいお兄様を選ぶでしょう」
ゼロ「だが、ルルーシュはユフィを殺した!!なのにユフィがルルーシュを選ぶなんてことはありえない!!!」
ナナリー「ユフィ姉様はお優しいですから、もう許しているのではないでしょうか?」
ゼロ「……!!」
ルルーシュ「スザク!!目を覚ませ!!」
ナナリー「スザクさん。お兄様を殺すほうがデメリットは多い。あとは分かりますよね?」
ゼロ「しかし……僕は……ルルーシュ……を……ユフィのためにも……」ブルブル
ナナリー「ユフィ姉様がスザクさんに親友殺しを望んでいるとお思いですか?」
ゼロ「……!!!」
これを本編でナナリーからスザクへ言えれば、もう少し優しい結末があったはず
ルルーシュ「スザク!!もういい!!今だ!!やれぇ!!!俺の心臓を貫け!!!」
ゼロ「……」ブルブル
ナナリー「スザクさん」
ルルーシュ「スザァク!!!」
ゼロ「うわぁぁぁぁ!!!!!」バッ!!!
スザク「―――俺にはできない!!ルルーシュ!!!もう君を殺す勇気が萎えた!!!」
ルルーシュ「スザァァァク!!!!」
藤堂「やはり枢木スザクだったか」
カレン「あれはゼロです!!!枢木スザクの仮面を被ったゼロです!!!」
扇「しかし、いつになったら俺たちは解放されるんだ」
星刻「早くしてもらえないだろうか」
天子「しんくー、おしっこ……」
星刻「なんと?!」
カレン「あれはゼロだ!!!ゼロなんだ!!!」
ルルーシュ「こんなことで……今まで積み上げてきたものは……一体……」
ジェレミア「むむむ……!!ルルーシュ様、撤退なさいますか?」
ルルーシュ「そ、そうだな……」
ジェレミア「では、一時撤退を―――」
コーネリア「―――ええい!!役立たずのゼロめ!!!」ダダダッ
ジェレミア「む?!」
ルルーシュ「姉上か?!」
ナナリー「え……コーネリア姉様」
コーネリア「悪虐皇帝ルルーシュ!!!覚悟ぉ!!!」
ルルーシュ(よし!!願っても無い好機!!!)
コーネリア「死ね!!ユフィの仇ぃ!!!」バァァン
ルルーシュ「ぐっ?!」
ナナリー「お兄様!!!」チュッ
ジェレミア「ギアス解除!!!」キュィィン
ナナリー「んっ……っ……」キュィィン
ルルーシュ「ん……」
ナナリー「おにい……さまぁ……んっ……」
ルルーシュ「んんっ……っ……」
ルルーシュ(ナナリー……そんなに体液を送り込んでも……もう遅い……お前が俺にかけたギアスはもう……消えている……)
ナナリー「お兄様……おにいさま……んっ……」ジュルル
ルルーシュ「ふぐっ……ぅ……」
ナナリー「目を開けてください」グイッ
ルルーシュ「ナナリー……?!」
ナナリー「お兄様……」キュィィン
ナナリー「んっ……」
ルルーシュ「うぐぅ……?!」
ジェレミア「……すごい。これがルルーシュ様とナナリー様の兄妹愛!!」
コーネリア「ふ……ふざけ……るな……!!」
ルルーシュ「はぁっ……はぁ……はぁ……」
ナナリー「どうですか、お兄様?痛みはありますか?」
ルルーシュ「おかげさまでない」
ナナリー「お兄様ぁ」ギュッ
コーネリア「ルルーシュ!!!貴様だけはぁ!!!」
ルルーシュ「姉上!?これは!!」
コーネリア「民に対しあれだけの圧政、悪政を強いて!!!貴様はなんだ!!実の妹と……キ、キ……キス……を……公衆の面前で……!!!」
ナナリー「お兄様、お部屋に戻ってキスの続きを……」
ルルーシュ「ナナリー!!」
コーネリア「ルルーシュ!!もう許さん!!お前だけは我が手で!!!裁く!!!」
ナナリー「コーネリア姉様!!撃たないでくださ―――」
バァァァン!!!!
ナナリー「あ―――」
ルルーシュ「ナナリー……?」
ジェレミア「ナナリーさまぁぁぁ!!!」
ナナリー「……あ……はぁ……」
ルルーシュ「ナナリィィ!!!ナナリィィ!!!」
コーネリア「ルルーシュ……!!」
ジェレミア「銃をおさめてください!!!」キィィン
コーネリア「ジェレミア……きさまぁ……!!」
ジェレミア「ルルーシュ様!!!」
ルルーシュ「ナナリー……しっかりしろ……ナナリー……!!」
ナナリー「お兄様……」
ルルーシュ「ナナリー……すぐに止血をする!!少し待っていろ!!手で圧迫していろ!!いいな?!」
ナナリー「お兄様……最後に……もういちど……だけ……キスを……」
ルルーシュ「わかった!!―――んっ」
ナナリー「んっ……」
コーネリア「この期に及んでも……おまえたちはぁぁ!!!」
コーネリア「おのれぇ……私だって……私だってぇ……!!」
ナナリー「ふふ……お兄様……嬉しい……」
ルルーシュ「ナナリー!!!」
ナナリー「……もう……私は……」
ルルーシュ「……そうだ!!ジェレミア!!!」
ジェレミア「はっ!」
ルルーシュ「鏡だ!!鏡を!!」
ジェレミア「―――どうぞ」
ルルーシュ「ナナリー!!」サッ
ナナリー「お兄様……」キュィィン
ルルーシュ「どうだ?」
ナナリー「……あ……痛みが引いていきます……」
ジェレミア「まさか……ギアスをナナリー様ご自身に……」
ルルーシュ「よかった……本当によかった……ナナリー……」
ルルーシュ「残念でしたね。姉上」
ナナリー「お兄様、私はとても痛かったです」
ルルーシュ「そうだろうな。可哀相に」ナデナデ
コーネリア「……」
ルルーシュ「俺を狙わず、何故ナナリーを?」
コーネリア「それは……ナナリーがお前を庇ったからで……」
ルルーシュ「言い訳などするなぁ!!!」
コーネリア「なんだと?!」
ルルーシュ「姉上。あなたはなんの罪もないナナリーを撃った。それなりの覚悟はありますね?」
コーネリア「何を言っている!?お前がさっさと死なないからこうなったのだろうが!!」
カレン「そーだ!!そーだ!!」
ルルーシュ「外野は黙っていろ!!!」
カレン「……ぁぃ」
ナナリー「お兄様……。やっといつものお兄様に戻られたのですね……」
ルルーシュ「姉上……。ナナリーへの暴力だけは絶対に許せません」
コーネリア「お、おまえたち!!加勢しろ!!!」
ヴィレッタ「……」フルフル
コーネリア「ヴィレッタァァ!!」
ヴィレッタ(お腹に子どもも居るのに……無茶はできない……)
コーネリア「くそぉ……!!」
ルルーシュ「孤立無援ですか……姉上……」
コーネリア「ひっ……」
ルルーシュ「総督から随分と落ちぶれたものですね」スタスタ
コーネリア「こっちにくるなぁ……」
ルルーシュ「ふふふ……ふふははは……姉上……」
コーネリア「ルルーシュ……!!」
ルルーシュ「……」スッ
コーネリア「え……?」
コーネリア「……!」
ルルーシュ「(無責任かもしれませんが、世界を見守ってください……あなたも……)」
コーネリア「ま―――」
バァァン……
ルルーシュ「ぐっ……」
ナナリー「え……?!」
ジェレミア(ルルーシュ様……失敗すれば自決する覚悟だったのですね……誰かに英雄の肩書きを託して……)
コーネリア「ルルーシュ……おい……」
ルルーシュ「あね……うえ……あなたが……きて……くれて……よかっ―――」ドサッ
コーネリア「あ……あぁ……」
ナナリー「お兄様ぁ!?お兄様ぁぁ!!!いますぐそちらに……!!!」ズリズリ
スザク「ナナリー!!よすんだ!!!」
ナナリー「はなしてぇ!!おにいさまぁぁぁ!!!!」
コーネリア「ルルーシュ……ルルーシュ……?」
カレン「あれはゼロです」
千葉「は?」
カレン「あれはコーネリアの仮面を被ったゼロです!!!」
玉城「どーせ生きてんだろ?」
扇「俺もそう思う」
神楽耶「すぐに脈の確認をしたほうがよろしいですわ」
星刻「天子様!!もう少しの辛抱です!!」
天子「うぅぅ……!!!」モジモジ
カレン「悪虐皇帝ルルーシュは死んだぁ!!!コーネリアの仮面を被ったゼロが殺したんだぁ!!!」
スザク「……」
ナナリー「いやぁぁ……おにいさまぁぁ……!!」
ジェレミア「まずい!!この場は退却する!!退けー!!!」
リヴァル「ルルーシュ!!!おい!!!起きろ!!!もう騙されねえぞ!!!」
ミレイ「誰か!!皇帝陛下が本当に死んだのか確認して!!出来れば全然関係のない第三者でお願いします!!!」
ルルーシュ「……」ピクッ
コーネリア「……」
ルルーシュ「……」
コーネリア「……お前、生きているな?」
ルルーシュ「(しーっ)」
コーネリア「(この痴れ者め!!何度生き恥を晒せば気が済む?!)」
ルルーシュ「(俺にもよくわかりません。確実に心臓を打ち抜いたはず……)」
コーネリア「(では、何故……)」
ナナリー「おにいさまぁぁ……うぅぅ……ぅぅ……ふふふふ……」
コーネリア「(私はどうしたらいい?)」
ルルーシュ「(とにかくこれ以上の茶番劇は避けたいので、姉上が合図を)」
コーネリア「……こほん」
コーネリア「悪虐皇帝ルルーシュは倒れたぁ!!!確実に死んだ!!火を見るより明らかに確定的に死んだ!!!捕虜を解放しろ!!!」
ヴィレッタ「おうぎぃぃ」テテテッ
コーネリア「死んだ!!」
扇「俺たちにも確認させてくれ」
コーネリア「ならん!!」
藤堂「何故だ」
コーネリア「私の言葉が信じられないのか?!」
神楽耶「はい」
コーネリア「ぐっ……」
星刻「どけー!!もう天子様は限界だ!!ぐほっ?!がはっ……こんなときに……!!」
天子「星刻……もういいです……」
星刻「え……」
ナナリー「おにいさまぁぁ!!おにいさまぁぁ!!!」
ジェレミア「ルルーシュ様のご遺体を回収しろ!!速やかにだ!!」
スザク「はい!!」
カレン「ちょっと待って!!」
カレン「扇さん!私が確認します」
扇「あ、ああ」
カレン「……」
コーネリア「まて!!触るな!!私の弟にぃ!!」
千葉「いかせないぞ!!」ギュッ
コーネリア「おのれぇ!!」
ルルーシュ「……」
カレン「ルルーシュ……」ギュッ
ルルーシュ「……っ」ピクッ
カレン「(おはよう)」
ルルーシュ「(お、おは……よう……)」
カレン「(いっぱい見せ付けてくれたわねぇ?ルルーシュ?私がどれだけ苦労したか知ってる?聞いてた?私、もう喉を潰すぐらい叫んでたのよ?)」
ルルーシュ「(あ、ああ……届いていた……お前の声は……)」
カレン「(なのにあんたはナナリーと……なにしてんの?死んでアンタが世界の悪意を背負うんじゃないの?あ?)」
カレン「(この……!!!)」グッ
ルルーシュ「?!」
カレン「バカぁぁぁぁ!!!!」ドゴォッ!!!!
ルルーシュ「ごほぉ?!」
玉城「なんだぁ?!」
スザク「カレン!?君はなんてことを?!」
カレン「なんで死んじゃうのよぉ!!この!!この!!」バキィ!!!ドカッ!!
ナナリー「カレンさん!!!やめてください!!!お兄様が大変なことになってしまいます!!」
扇「カレン!!おい!!もういい!!わかったからやめろ!!やめるんだ!!」
カレン「私だってキスぐらいしたかったのに!!この!!この!!!」ドゴォ!!!ベキィ!!!
ルルーシュ「(おまえとは……もう……)」
カレン「もっと濃厚な奴よ!!!」ボキィ!!!
ルルーシュ「はっ……!?!?」
ジェレミア「もうやめたまえ!!ご遺体を傷つけるな!!!」
ルルーシュ「ぅぅ……ぅぅ……」
カレン「んっ……」チュッ
ルルーシュ「……」
カレン「……血の味がする」
ルルーシュ「……」ガクッ
コーネリア「ルルーシュ……」
カレン「悪虐皇帝は倒れた!!もう悪政は終わり!!!」
「ウオォォォ!!!!!」
「カレン!!カレン!!!カレン!!!カレン!!!」
カレン「私の名はゼロ!!!」バッ!!!
ジェレミア「とにかくルルーシュ様をお運びしないと」
ナナリー「おにいさまぁ!!目をあけてください!!おにいさまぁ!!!」
スザク「こんなに瞼が腫れあがっていては目を開けることはできないよ。ナナリー」
ナナリー「いやぁぁ……!!―――んっ」チュッ
カレン「ナナリーのギアスで死に損なったのね」
ルルーシュ「そう……だ……」
ナナリー「お兄様、あまりご無理をされないでください」
C.C.「よくもまあ、顔面が倍になるまで殴れるな」
カレン「だって……」
コーネリア「しかし、ナナリーまでもがギアス能力者だったとはな……」
スザク「これからどうするべきか……」
ルルーシュ「そうだな……。政治のできないスザクのために兄上も折角用意したのに」
シュナイゼル「ゼロはどこだい?」キョロキョロ
ナナリー「お兄様ぁ……」
C.C.「ゼロレクイエムはナナリーが居る限り、失敗で終わるな」
カレン「ナナリーを監禁していればいいだけの話じゃないの?」
ルルーシュ「どちらにしても……もうゼロレクイエムはもう実行できない……これ以上は本当に茶番だ……いや、既に茶番に成り果てたが」
C.C.「では、どうする?お前はこのまま生き延びて、妻と妹と共に幸せな家庭を築くのかな?」
コーネリア「ルルーシュ……」
スザク「それにしても最後はどうやってギアスを発動させたんだ、ナナリー?」
ナナリー「カプセルの中にカプセルを入れただけです」
C.C.「つまり、一度目は外側を唾液でコーティングして、あとはマトリューシカの要領か」
ナナリー「はい。保険は大事ですから。一粒で3度美味しいです」
カレン「はぁ……。ナナリー……どうして、ルルーシュを……?」
ナナリー「お兄様は生きるべきですから」
ルルーシュ「え……」
ナナリー「望んでもいない敵討ちをスザクさんにさせて、死んで逃げるなんて私は許しません」
ルルーシュ「だったら……俺はどうすれば……!!!」
ナナリー「私とともに優しい世界を目指しませんか?」
ルルーシュ「ナナリー……だが、俺は血を流しすぎた……!!その責任はどうやってとる!!」
ナナリー「お兄様は世界の行く末を見守る義務があると思います。世界を壊したのですから」
ルルーシュ「……」
ルルーシュ「スザク……」
スザク「これを……」
ルルーシュ「お前……」
スザク「ルルーシュは死んだ。これからはゼロとして生きるんだ」
ルルーシュ「いいのか?」
スザク「僕は許したよ。ううん、もう許していた」
ルルーシュ「スザク……お前……」
スザク「でも、それでも君が死にたいと望むなら今度こそ僕が息の根をとめる。ナナリーにも邪魔はさせない」
ルルーシュ「……」
ナナリー「お兄様……」
C.C.「お前次第だな」
カレン「ルルーシュ……ごめん。思いっきり殴って」
コーネリア「さっさと決めろ」
ルルーシュ「俺は―――」
カレン「ねぇ、ルルーシュ。あれから世界は随分とマシになったわ」
カレン「戦争に向いていたエネルギーは今、飢餓や貧困に振り向けられている。色んな憎しみや悪事はほとんどあなた一人に押し付けられて」
カレン「皆、ダモクレスというシステムより、名前のある一人の方が分かりやすかったってことかしら?」
カレン「調子のいい話よね。でも、だからこそ、皆は過去にとらわれず先に進めるのかもしれない。計算通りだってあなたは笑うのかしら?」
カレン「もちろん、色んな問題は残っているけど。それでも――」
ゼロ「そんなことは知っている!!カレン!!そろそろ学校に行け!!」
カレン「はいはい。じゃあ、いってきまーす」
ゼロ「全く……」
カレン母「……」
ゼロ「あ、これが朝食です」
カレン母「いつもありがとうございます」
ゼロ「いえ。では、私もこれから仕事がありますので」
カレン母「はい。いつも娘を起こしに来てくれて……ありがとうございます……」
ゼロ「これはカレンとの約束ですからね。それでは」
ゼロ「失礼する」
玉城「おー!!きたきた」
ゼロ「納品はこれで全部だな?」
玉城「いつも悪いねー。格安で食材を送ってもらってよぉ」
ゼロ「これが私の仕事だ。藤堂は?」
玉城「奥にいるぜ」
ゼロ「藤堂」
藤堂「ゼロか……」
ゼロ「話はつけておいた。この職場ならお前の能力を活かせるはずだ」
藤堂「ゼロ……!!」
ゼロ「また私に奇跡を見せてくれ」
藤堂「ああ!!」
玉城「ゼロよぉ。色んなことしてんなぁ。つかれーの?」
ゼロ「これが私の罰だからな」
シュナイゼル「ではナナリー様?」
ナナリー「はい。扇首相、ご無沙汰しております」
扇「こちらこそ」
ゼロ「……」
扇「ゼロもおかわりないようで」
ナナリー「ええ」
ゼロ「……あ」
ゼロ「……」タタタッ
(ルルーシュ)「よし、交代だ」
(スザク)「おかえり。じゃあ、あとは任せたよ」
ゼロ「扇首相、ごきげんよう!!」バッ!!!
扇「今、ゼロが二人いませんでしたか?」
ナナリー「気のせいです」
扇「はぁ……」
ナナリー「ふぅー……ふぅー……」ヨロヨロ
ゼロ「そうだ……そのままゆっくり……」
ナナリー「あぁ……だめ……」ヨロッ
ゼロ「ナナリー?!」ギュッ
ナナリー「お兄様……ごめんなさい……」
ゼロ「気にするなゆっくりやろう」
ナナリー「はい」
ゼロ「あとお兄様ではない」
ナナリー「ふふ……そうでしたね」
コーネリア「ゼロ!!ちょっとこい!!!」
ゼロ「はい。またあとでなナナリー?」
ナナリー「あ……」
ゼロ「どうしましたか?」
コーネリア「この件だがな……」
C.C.「ルルーシュは死んだ。そしてゼロは善意の限りを尽くし、ご奉仕活動か。笑えるな」
ゼロ「黙れ、魔女」
ナナリー「おに……ゼロ様……」ヨロヨロ
ゼロ「ナナリー。歩いてきたのか」
ナナリー「はい」
ゼロ「よくがんばったな」
ナナリー「ふふ……」
C.C.「これがナナリーの望んだ優しい世界なのかな」
ナナリー「はいっ」
ゼロ「ナナリー……」
ナナリー「私は……」
ゼロ「ルルーシュは死んだ。ここにいるのは中身のない亡霊だ。だから、極力こうしてプライベートでは会わないようにしよう。ナナリー」
ナナリー「ずるいです。私はお兄様だけで良かったのに……。どうして……みなさんとともに歩もうと?」
ゼロ「ゼロはナナリーのためだけに生きることは許されない。親友は許したと言っていたが、やはり私がナナリーと話しているのは奴にとって思うところがあるはずだ」
ゼロ「いい子だ。さあ、もう部屋に戻れ。車椅子に乗っていけよ」
ナナリー「はい……おやすみなさい」ウィィィン
ゼロ「ああ」
C.C.「真面目な奴だな」
ゼロ「……俺は酷い男だな。数多くの命を奪い、親友も傷つけ、大事な人にも嘘を吐いてきたのに、のうのうと生きている……」
ゼロ「C.C.……許されるのか。俺は」
C.C.「ナナリーのギアスが貴様を生かした」
C.C.「ナナリーの優しいギアスがそうさせた。ならお前はその優しさに応えろ。ゼロとして一生を捧げろ。ナナリーの優しさを無駄にするな」
ゼロ「ああ……そうだな……そうしよう……」
C.C.「そうそう。最近分かったことだがな」
ゼロ「なんだ?」
C.C.「ナナリーのギアス。あれ、別にキスする必要はないようだぞ。ギアスをかけたら治癒するようだ。この前、聞いた」
ゼロ「なに……」
C.C.「しかも無制限に重ね掛けができるようだ。お前が何度も死に損なったのは、ナナリーが前日からお前にギアスを掛け捲っていたからだな。カプセルはただのハッタリだ。お前とキスするためのな」
ナナリー「スザクさん。どうされましたか?」
スザク「ちょっと紙で指を切っただけみたいだ」
ナナリー「では」キュィィン
スザク「そんな!!ナナリー!!僕とキスなんて?!!ダメだ!!!」
ナナリー「は?何言っているんですか?」
スザク「え?」
ナナリー「私はお兄様としかキスはしません。―――だって……私はお兄様のことを愛しているのですから」
スザク「ナナリー……」
ナナリー「今は無理でもそのうちお兄様と二人だけで誰も知らない土地へ逃避行します。そして私のギアスを利用して小さな外科病院を経営し、お兄様と私は幸せに暮らすのです」
スザク「でも、体液が……いるんじゃ……」
ナナリー「ああでも言わないとお兄様は中々私と濃厚なキスをしてくれませんから。そもそもギアスを一回使っただけで暴走するはずないじゃないですか。何度も使ったから暴走するんですよ?」
スザク「な……」
ナナリー「きっとお兄様はそろそろ私の唇が恋しくなって仮面を外す頃ですね……。ふふふ……おにいさまぁ……私はお兄様だけで良いのですよ……ふふふ……」
スザク(どうやら僕たちは敵を見誤っていたようだ……ルルーシュ……)
END
乙乙
ナナリーだろ?
妹誰になるのよ
そりゃナナリーだろ
Entry ⇒ 2012.08.31 | Category ⇒ コードギアスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
冬馬「今日はついに961プロのオーディションか……」
冬馬「歌も踊りも自信あるが……ヴィジュアルっていまいちピンと……」
冬馬「……」
冬馬「これに合格したら……アイドルの道が切り拓ける」
冬馬「大丈夫だ!俺は今日この日のために必死に努力してきたんだ」
冬馬「これで落ちるわけがねえ!」
冬馬「……」
冬馬「いける、絶対いけるんだ。アイドルになるんだ……!」
冬馬(テレビで修正入ってるだけかと思ったけどマジで顔が真っ黒だな、オイ)
黒井「今日はこの私が直々にお前たちを評価してやる」
黒井「私は実力でのみ評価する。誤魔化しなど一切無意味だ」
冬馬(しゃ、社長が直接……)ゴクリ
黒井「……どうした、貴様。顔が青くなってるようだがお家に帰るか?」
冬馬「そ、そんなことねえy……あ!」
黒井「……」
冬馬「す、すいません!」
黒井「フン……それで芸能界を生きていくつもりか。底抜けの愚か者と見た」
冬馬「……」
冬馬(だが……思ったよりレベルの低い連中ばかりだ。本当にやる気あんのか?)
翔太「それじゃよろしくお願いしま~す!」
冬馬(何だ、あのチビの舐めた態度……)
冬馬(ウソだろ!?あの身のこなし……!次々とんでもねえ技を決めてやがる……)
翔太「それじゃ、お疲れさまでーす」
冬馬「……」
冬馬(あいつ……動きはカニみてえだが俺には無い何かを感じるぜ)
北斗「ふぅ……ありがとうございました」
黒井「何をボサッとしている。次は貴様の番だ」
冬馬「は、はい!!」
冬馬(後悔なんて絶対しないように……)
冬馬(俺の……俺の全てを今この瞬間に!!)
冬馬「ふぅ……」
「何あいつ……必死すぎねえ?」ヒソヒソ
「なんつーか暑苦しいよな。もっと落ち着いてやれよヒソヒソ
「てかあいつ社長に口応えしてたよな……ばっかじゃねぇの」ヒソヒソ
冬馬(何とでも言えよ。勝つのは俺だ!)
黒井「知っての通り我が961プロにはプロジェクト・フェアリーというユニットが存在した」
冬馬(あの星井美希、我那覇響、四条貴音の……)
黒井「しかし765プロの姑息で卑怯で下劣な手段で解散になり……」
黒井「揚句の果てに私の駒を奪われたのだ!!」
冬馬(765プロ……そんなに汚ねえ真似するのか)
黒井「忌々しい765プロを今度こそ完全に叩き潰すのだ!!」
黒井「そのための新ユニット、セカンド・フェアリーに相応しいかどうかの最終試験を行う!」
冬馬(へぇ……歌もダンスもかなりイケてるじゃねえか)
黒井「貴様らに今見たデビュー曲をこの場で歌ってもらう。もちろん振り付けもな」
冬馬(はぁ!?今一回映像見せただけじゃねえか!!)
黒井「まあ、私も鬼では無い。今から10分間この映像を流し続ける」
冬馬(その間にマスターしろってか!?)
黒井「それでは10分後にまた会おう。アデュー」
「ちょ、ちょっと無茶苦茶すぎねえ?」ヒソヒソ
「流石に無理だっての……」ヒソヒソ
冬馬(……やってやろうじゃねえか)
翔太「ねえ、お兄さん。そんなに見てたら疲れない?」
冬馬「んだよ……俺は今集中してるんだ」
翔太「ちぇっ、つまんないのー。あ、そっちのお兄さん!」
冬馬(えっとここで飛んで……音程は……腕を……)
冬馬(それから……ここを……最後にこのポーズか……時間的にあと一度しか全部見れねえな……)
冬馬(クソッ!絶対受かってやるぜ!そして俺の曲にしてやる!)
翔太「まあ当然かな!皆悪いね」
冬馬(くっ、やっぱりあいつか……だが実力は認めるぜ)
黒井「伊集院北斗」
北斗「はい、皆お疲れ☆」
冬馬(……まあ、何か良く分からねえが人を惹き付ける力ってのがあったからな)
黒井「天ヶ瀬冬馬」
冬馬「……え?」
黒井「聞こえなかったのか?どうやら耳が腐ってるようだな」
冬馬「す、すいません!」
黒井「合格者は以上だ」
冬馬(や、やった!!やったぞ!!ついに……ついに俺もアイドルに……なれるんだ……!!)
翔太「任せてよ。僕ならどんな相手でも楽勝だと想うし」
黒井「北斗、貴様はヴィジュアルだ」
北斗「分かりました。俺が全ての人を魅了してみせますよ」
黒井「冬馬、貴様は宣伝部長だ」
冬馬「はい!俺が宣伝しまくって……え?」
黒井「もちろん歌や踊りのレッスンに参加する権利など無い」
冬馬「……えっ」
「ははっ、そんな役になるんだったら落とされた方がマシだぜ」
冬馬「ウソ……だろ……?」ガクッ
「うわっ、人がこんなに綺麗に崩れ落ちるの初めて見た」
北斗「……えっと、今のは冗談なんですよね?」
黒井「私はジョークを言ったつもりはないが。そう聞こえたかね?」
翔太「だ、だってフェアリーって3人でやってたし、僕達も……」
黒井「何を呆けた事を。きっちり3人で役割が分かれているではないか」
翔太「ほ、本気?」
冬馬(俺は……この日のために……)
冬馬(一体……何だったんだよ……!!今まで俺がやってきたことは……)
冬馬(宣伝するためにアイドルになりたかったんじゃ……ねえんだよ!!)
北斗「君……冬馬って言ったっけ」
冬馬「ああ……」
翔太「多分、社長も本気じゃないと思うよ?」
冬馬「ははっ……だと良いけどよ」
北斗「俺たちは今から同じユニットの仲間だ。よろしく」
翔太「まあ、のんびり気楽にやってこうよ」
北斗「それじゃ俺はここで、チャオ☆」
翔太「あ、僕も!まったねー!」
冬馬「……じゃあな」
冬馬「ちくしょう……ちくしょう!!」
冬馬「ふざけんなよ……何が……宣伝部長だ……」
冬馬「人が死ぬ気で……必死にやってんのを嘲笑ってんのかよ……」
冬馬「死にたく……なるぜ。イヤ……いっそ殺せって感じだな」
冬馬「ばかみたいじゃねえか……」
冬馬「夢……俺の夢だったんだろ……?それがこれか……ははっ」
冬馬「この出来事が……夢であってほしいぜ……」
冬馬「俺の仕事は……新ユニットの宣伝」
冬馬「……これもアイドルにとって必要なことなんだ……!」
冬馬「全力でやるんだ……!」
冬馬「……徳島!?いきなり遠すぎねえか!?」
黒井「貴様は私の指示に従っていれば良いのだ」
冬馬「ぐっ……わかりました」
北斗「社長……冬馬がまだ来てないんですが」
黒井「フン、奴なら今頃必死に宣伝してるはずだが」
北斗「えっ……ほ、本当にやらせてるんですか?」
黒井「当然だ」
翔太「いい加減きずけよ!そんなことしちゃダメだって……!」」
黒井「黙れ。私の方針に口を出す事は許さん」
冬馬「マジかよ」
黒井「マジだ。セレブな私は貧乏人の諸経費ぐらいは出してやるがな。這いつくばって感謝する事だ」
冬馬「……ありがとうございます」
黒井「おぉっと、更に優しい私は貴様に良い物をやろう」
冬馬「……?」
黒井「デビュー曲の映像だ。精々移動中に眺めてどう宣伝すれば良いか考えるのだな」
冬馬「は、はい」
冬馬(ここで……こう動くのか)
冬馬(ここが良く分かんねえな……別の角度からも見ねえと……)
冬馬(あっ、この映像いろんなアングルから撮ってるんだな。へぇ……)
冬馬(曲も耳に馴染んできたぜ)
冬馬(到着まで……まだ時間があるな。もう一度最初から見てみるか)
冬馬「ふざけやがって……!どうすりゃいいんだよ!!」
冬馬「とりあえず、何かつぶやいて……」
冬馬「誰か……フォローしてくれよ!!」
冬馬「別に何かしろって言ってるわけじゃねえんだ!だから……」
冬馬「頼むよ……」
冬馬「……ははっ、これが……アイドルの仕事か」
冬馬「で、でも一応これだけの人数は……」
黒井「ノンノン、言い訳など負け犬の戯言。聞く価値など無い」
冬馬「……」
黒井「結果がすべて、貴様の力量はこの程度と言うわけだ」
冬馬「お、俺も踊りや歌なら……もっと上を……!」
黒井「黙れ、貴様には罰を用意している」
冬馬「……」
黒井「貴様のような使えんゴミの晩餐にピッタリな餌だと思ってな、フハハハハ」
冬馬「……」
冬馬「あはは、クリームソーダうまいわー」
冬馬「……」モグモグ
冬馬「やべっ、マジでうめえ」
冬馬「全然罰になってねえぞ、社長」
冬馬「……でも、やっぱり俺はアイドルとして勝負してえんだよ」
冬馬(何だよこの距離……冗談じゃねえぞ!!)ハァハァ
冬馬(もう……スタミナが……)ハァハァ
冬馬(クソッ……諦めねえぞ!!)ダダダ
冬馬「ハァハァ……間に合った……」
千早「……今から1分宣伝しても良いそうです」
冬馬「え!?今から!?それに1分!?」
冬馬「あ、え……961プロ新ユニットが近いうちデビューします!」ハァハァ
冬馬「それで、……あの」ハァハァ
千早「……ちょっと良いかしら」
冬馬(……765プロの如月千早)
千早「あなた……本当にアイドルなのよね」
冬馬「……そうだ」
千早「なら、何でいつも今日みたいなことばかりしてるの?」
冬馬「俺が宣伝部長だからだ。後の2人はレッスンで忙しいんだよ」
千早「あなたは……それで良いの?」
冬馬「……仕方ねえだろ」
冬馬「そうだよ、笑えよ」
千早「……最低、酷過ぎるわ。どうしてそんなことが出来るのかしら……」
冬馬「いつか、おっさんに俺もアイドルって事認めさせてやる。それまでの辛抱だ」
千早「……そう」
冬馬「ああ」
千早「……私も本当は歌の仕事だけがやりたかった。グラビアなんて本当に嫌だったわ」
冬馬「……」
千早「だけどプロデューサーは私の事を想ってやってくれた。無名の私が歌えるように」
冬馬「良いプロデューサーじゃねえか。……で、何でそんな話俺にするんだよ」
千早「……なんとなく、少しだけ似たような境遇だから。あなたの社長が何を考えてるかは分からないけど」
冬馬「俺も分かんねえ。けど俺も、お前みたいになれたら……」
冬馬「……」
千早「全力でやって、黒井社長が驚くぐらいに」
冬馬「言われなくても分かってるっつーの」
千早「そう……あなたならきっと大丈夫だと思う。根拠は無いけど」
冬馬「……そうか」
千早「お節介でごめんなさい、誰かの真似をしてみたんだけど迷惑だったかもしれないわ」
冬馬「いや、何か少し楽になった。ありがとよ」
冬馬(本当に765プロって……汚ねえ事務所なのか……?)
冬馬「おう、いつもいつも悪いな」
北斗「……それは俺達の台詞だよ。世話になりっぱなしだ」
冬馬「お前らは何も考えず必死にレッスンしとけば良いんだ。こっちの事は気にすんな」
北斗「冬馬……」
翔太「絶対、絶対僕達三人でステージに立つよ!」
冬馬「……当たり前だろ。トップアイドルになるんだからな」
北斗「社長、あなたは一体何を考えてるんですか?」
翔太「冬馬君は宣伝の合間にも必死に練習を……」
黒井「フン、その程度の事私が気付かないとでも?」
北斗「では何故……冬馬の能力を知っていながら」
黒井「……前にも言ったな。貴様らが私に意見するなど100年早いわ!」
翔太「くっ……」
北斗「はい」
翔太「いつも通りやれば大丈夫だよね」
黒井「貴様は何時も通り大声で宣伝しておけ。以上だ」
冬馬「……はい」
黒井「お前はもう帰って良い。残りの二人は明日の事についてまだ話がある」
冬馬「……分かった」スッ
翔太「冬馬君……」
北斗「……」
黒井「私が黒井です。以後お見知りおきを」
黒井「本日は我が961プロ所属の新ユニットをご紹介いたしましょう」
黒井「と……その前に皆さまにお見せしたいものがあります」
冬馬「……え?」
黒井「この映像をご覧に!この天ヶ瀬冬馬のオーディション風景です」カチッ
冬馬(い、いつの間に……全く気付かなかった……)
黒井「なんと愚かなのでしょう。所詮オーディションにも過ぎないのにこの形相。余裕が全く感じられない」
冬馬「……」ガクッ
冬馬「……」
黒井「しかし、ただいまを持って宣伝部長を引退してもらう事になります」
冬馬「は?」
黒井「それでは紹介しましょう!!961プロ新ユニット、ジュピター!!」
冬馬「……じゅぴたー?」
黒井「伊集院北斗!」
北斗「初めまして、お嬢さんたち。俺は伊集院北斗。俺達から一瞬たりとも目を離さないでね?」
黒井「御手洗翔太!!」
翔太「どうも、御手洗翔太です!がんばるから、皆よろしくねっ!」
冬馬「え?え?」
黒井「宣伝部長改めジュピターのリーダー、天ヶ瀬冬馬!」
冬馬「……はああああ!?」
北斗「俺達のリーダーだろ?しっかりしてくれよ」
冬馬「どういうこと……だ……?セカンド・フェアリーは?」
黒井「セカンド・フェアリー?そんなもの存在しない。ありもしないユニットのオーディションを受けてたのか?」
冬馬「!?」
黒井「いつまでも過去の遺産に縋っているはず無かろう。……おっと失礼しました」
黒井「あのオーディションをご覧の皆さまには……」
黒井「冬馬がジュピターのリーダーに相応しい事が十二分に理解していただけたと思います」
黒井「歌唱力、身体能力、ヴィジュアルその全てが一流。先ほどの映像のように少々熱くなりすぎる所もありますが」
冬馬「俺が……リーダー……?ゆ、夢じゃないのか?」
北斗「おっとリーダーはまだ寝ぼけてるみたいだね。今まで身体を張って頑張ってたから許してあげてほしいな」
翔太「信じられないなら僕がつねってあげるよ、冬馬君」ギュウゥ
冬馬「いてええええ!!!……はは、ははは……マジ……かよ……」グスッ
北斗「おっと、泣いてる暇は無いよ。今から歌うんだから」
冬馬「い、今から!?……へっ、上等じゃねえか!皆聞いてくれ!!」
北斗「ほんと、やりすぎですよ。いくら冬馬のしつけのためとはいえ」
黒井「何を言ってるか。この世界の厳しさを教育してやっただけだ」
翔太「たしかにいきなりため口で反抗したからね」
冬馬「お前も似たような態度だったじゃねえか!!」
北斗「でもジュピター発表の時無事に歌を披露出来て良かったよ」
翔太「本当、あの時は何も考えずにやったけどぶっつけ本番でよく息が合ったよね。正直僕達凄いんじゃない?」
黒井「フン、うぬぼれるな。あの程度の事もこなせんようではトップアイドルになる資格など無い」
翔太「だってさぁ、僕達はともかく冬馬君泣いちゃってたじゃん?歌えるかどうかも怪しかったし」
冬馬「うるせえ!!泣いてねえ!!目にまつ毛が入ってただけだ!」
北斗「はいはい」
翔太「あれ~?前、えーっと……そう!あずささんと共演した時ガチガチだったよね?」
黒井「何!?貴様765プロ相手に浮ついているとは……!」
冬馬「ち、違う!あれは別にそういうのじゃ……」
北斗「まともに目を見て話せて無かったじゃないか」
冬馬「ぐっ……」
翔太「冬馬君にはそっち方面もちゃんとしつけないといけないかもよ?黒ちゃん!」
黒井「ウィ」
冬馬「やめてくれよ……」
終われ
Entry ⇒ 2012.08.31 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (2) | Trackbacks (0)
P「真美、ジェミーの最後のほう歌ってくれないか?」
P「そこじゃなくて一番最後のほう」
真美「きっみが手に取るの」
P「その次その次」
真美「みっ☆つっけたんっ♪」
P「んああああああああああ真美かわいいよおおおおお」
俺もあの部分で撃ちぬかれた
律子「はい?」
P「真美ってなんでかわいいのかな?」
律子「プロデューサーだからじゃないですか?」
P「うーんそうなのかなぁ」
律子「なんて言って欲しいんですか」
P「俺の嫁だから」
P「ああ、なるほど!」
律子「そろそろ仕事戻っていいですか?」
P「あ、待ってもういっこ聞いていい?」
律子「…なんですか?」
P「真美ってどうして俺をこんなにドキドキさせるのかな?」
律子「…プロデューサーの嫁だからじゃないですか?」
P「えーそうなのかなぁ」
P「俺の女神だから」
律子「プロデューサーの女神だからじゃないですか?」
P「ああ、なるほど!」
律子「…もういいですか」
P「うん満足した。ありがとう律子」
小鳥「はい、どうしました?」
P「ちょっと聞いてくださいよ!」
小鳥「はい」
P「昨日真美のやつが俺に何したと思います!?」
小鳥「さあ?」
P「なんと抱きついて離れなかったんですよ!」
小鳥「へえ」
P「しっかりくっつくもんだから暑いやら寝苦しいやらでもうっ!おかげで寝不足でもうっ!」
小鳥「じゃあ寝る部屋変えたらどうでしょう」
P「とんでもない!」
小鳥「じゃあ空調を効かせて寝るとか」
P「真美が風邪引いちゃうじゃないですか!」
小鳥「じゃあ手をつないで寝てあげたらどうですか?」
P「手から腕、腕から身体にシフトしていく真美が見える!」
小鳥「真美ちゃんが寝るまで一緒に居てあげて寝てから部屋を出るとか」
P「俺が真美から離れられる訳ないじゃないですか!」
小鳥「あらプロデューサーさん、だいぶ怒ってますけどどうしました?」
P「真美のやつ!今日の昼ご飯なにしたと思います!?」
小鳥「さあ?」
P「俺が楽しみにしてた唐揚げ弁当から摘んだんですよ!」
小鳥「あら大変ですね」
P「まあその弁当も真美が作った愛真美弁当なんですけどね、ふふふ」
小鳥「へえ」
P「あーくそ!もう許さねえ!帰ったらぺろぺろしてやる!嫌がったってあんよぺろぺろしてやる!」
春香「あっプロデューサーさんおはようございます」
P「真美見なかったか?」
春香「見てないですけど?」
P「クッ…どこ行っちまったんだ真美、こんな時間まで帰らないなんて…」
春香「そんなに長い時間居なくなってるんですか?」
P「ああ!誘拐かもしれない!!あんなにかわいい真美だったらあり得る!!」
春香「落ち着いてください!どれくらい帰ってきてないんですか!?」
P「三分だ!」
春香「」
P「クッ…2人で食べる予定だったカップ麺がそろそろできちまうぞ…」
春香「あっ真おはよーっ」
P「もう会えないのか真美…」
春香「えーっそうなんだあははっ」
P「もっと…もっと…お前の温もりを感じておけばよかった…」
春香「あっ雪歩ーおはよーっ!」
P「真美…真美…くうっ」
春香「今日はお菓子作ってきたんだ、みんなで食べよ♪」
響「あっプロデューサー」
P「髪を結ってる子って…魅力的だよなぁ」
響「い、いきなりなに言い出すんだプロデューサー!?」
P「こうさ…元気さの中にも乙女の可憐さがあって」
響「うぅ…は、恥ずかしいぞ…」
P「抱き締めたくなるよな…」
響「あっそんなに見つめられると…自分は…自分は…」
P「あー我慢できね真美をギューってしてこよ」
響「…」
響「あっプロデューサー」
P「うーんやっぱ猫…かな?」
響「どうしたんだプロデューサー?」
P「いや猫かなって思って」
響「意味わかんないぞ…」
P「いや気ままで甘えん坊でさ、そんで最高にかわいい」
響「えっ…?」
P「ぴったりだよな…こう、ゴロゴロってしたくなる」
響「ひゃっ…くすぐったいぞプロデューサーの変態!」
P「響…」
響「あっ…そんなに見つめられると…自分は…自分は…」
P「真美に猫コス似合うと思わないか…ンハァンハァ」
響「…」
あずさ「あらプロデューサーさん?」
P「浮気ですよ…」
あずさ「はい?」
P「信じてたのに…真美…」
あずさ「ええっ真美ちゃんが!?」
P「俺も嘘だと思いたいです…もう首つろうかな…」
あずさ「ま、待ってくださいプロデューサーさん!詳しく聞かせてください」
P「真美…あんなにあの男の前で楽しげに…」
真美『わおっかっこいいっしょ→!』
P「ちくしょう…ちくしょう…!」
真美『真美もこんなカッコいいの欲しいな→』
P「あの…あのハム蔵!!」
真美『よかったねハム蔵、その回し車イカしてるぜ☆』
真「えっ?なんですかこれ?」
P「プレゼントだよ」
真「うわぁー可愛い!ふりふりでキュートですね!!」
P「だろぉ?絶対似合うって!」
真「え?えへへ…そうかな」
P「あったり前だろもう宇宙一かわいいって!!」
真「い、言い過ぎですよっ」
P「いやいや言い過ぎとか無いから!切実に!マジだよマジ!」
真「えへへ…じゃ、じゃあ着てみようかなぁ」
P「えっ?」
真「えっ?」
高木「おやキミかね」
P「真美ですよ真美!」
高木「な、なんだいそんなに怒って」
P「なんですか!この破廉恥極まる衣装は!こんなの出せませんよ!!」
高木「いやでもほかの子はみんな水着だよ?これでも最大限キミに配慮したんだが」
P「こんなっ…こんなのっ世の男が見たら…ウッ」
高木「ああ、こらこら鼻血をふきまたえキミ」
P「とにかく撮り直しましょう!こんな…」
P「脇が丸見えの服!」
高木「ならこの写真は処分しよう」
P「待ってください!」
高木「ええっ!?まだ何かあるのかい?」
P「それを貸してください!!」
高木「あ、ああ」
P「ジョキジョキ」
P「ふう、真美回収完了」
P「あ、黒井社長こんにちは」
黒井「どうした、ひとりか?」
P「いや真美が着替え中なんで」
黒井「それで?更衣室のドアを見てても仕方ないだろう」
P「いや、ひょっとしたらドアがカラッと開いて真美がひょっこり顔出さないかなって」
黒井「そんなことは起こらんだろう、子供かお前のアイドルは」
P「わからないですよ」
黒井「なに?」
真美『…』ひょこっ
P「どうしたんだ真美?」
真美『ううん…』
真美『兄ちゃん…居るかなって』
P「とか言っちゃってさオホホゥオホホゥッ」
尾崎「ああ、765プロの…こちらこそ」
P「水谷さんも出るんですか?」
尾崎「ええ、今準備してるの」
P「そうなんですか、今真美も準備中だからきっと中で楽しくしてるんでしょうね」
尾崎「そうね」
P「きっと今頃真美は兄ちゃんスッゴくカッコいいんだよ→☆とか言ってますよきっとゲヘェゲヘェ」
尾崎「絵理だってきっと尾崎さんが好きすぎて生きるのがつらい…?って言ってると思うわハァハァ」
美希「どうしたのプロデューサー?」
P「きょ、きょ、今日バレンタインだよな?」
美希「プロデューサーはバレンタインになるとキョドーフシンになるの?」
P「ま、真美からチョコ貰っちゃうよな俺?」
美希「うん、そういえば作ってるって言ってたよ」
P「そうすると当然俺は萌えるよな?」
美希「えーっ!?プロデューサー燃えちゃうの!?」
P「ああ、絶対萌え死ぬよ!」
美希「ミキ、受け取るの辞めた方がいいって思うな…」
P「アアン『兄ちゃん!ハッピーバレンタイン☆』ってチューされたらどうしよう俺どうしよう!!」
美希「今から渡すの辞めるように言ってくるね?」
P「バレンタインキッス!?バレンタインキッスなの真美!!?」くねくね
P「どうしたんだ真美…こんな人気の無いところに呼び出して」そわそわ
真美「兄ちゃん、どういうこと?」
P「えっ?何が?」
真美「ミキミキから聞いたよ!兄ちゃん真美のチョコ死ぬほど食べたくないって!」
P「ええーっ何をばかな!?」
真美「兄ちゃん真美のチョコなんか要らないんだ…そうだよね、どうせ他の子のチョコでお腹いっぱいだもんねっ」
P「違う!」
真美「兄ちゃん?」
P「勘違いさせてごめん…真美のチョコが楽しみ過ぎて…それではしゃいじゃって…」
真美「兄ちゃん…」
小鳥「」
P「許してくれるか?」
小鳥「」
真美「うん…真美も怒鳴ったりしてごめんね」
小鳥「」
P「気にするもんか、むしろヤキモチ妬いてくれる真美がもっと好きになったよ」
小鳥「」
真美「えへへ…じゃあ、ハッピーバレンタイン☆」ちゅっ
P「んー?」
真美「明日真美実家帰るね→」
P「え」
真美「亜美と映画見てくるんだ☆」
P「へ、へえ…楽しみだな」ガクガク
真美「うん!あっ兄ちゃんはダメだよ?久しぶりに亜美孝行するんだ♪」
P「へえ…じゃあ明日は帰るの遅いのかな」ガクガク
真美「実家に泊まってくるよー?亜美と乙女トークだぜ→☆」
P「」ジョババババ
P「真美分が足らないなー」
P「あ、そうだメール送ろ」
P「真美分補給しなきゃ死んじまう」
P「真美のおぱんつ嗅いで待ってるよ、と」
ブーンブーン
P「おおっ返ってきた!」
『兄ちゃんお邪魔虫過ぎだYO(●`ε´●)』
P「怒られた…」キュン
春香「プロデューサーさん死んでますね?」
小鳥「真美ちゃんがオフ使って実家帰っちゃったんだって」
P「しかも…しかも2泊だなんて」ブクブク
春香「泡吹いてますけど大丈夫ですか?」
P「」コポォ
響「うわぁだぞ…」
響「空気と会話してるぞ…」
小鳥「真美ちゃん恋しさに幻覚を見ているのね」
P「アヘッアヘヘッ真美ぃ…」
響「…」
律子「そんな目で見ないであげなさい」
P「オホホゥ…オホホゥ真美ぃ…」ピクピク
真美「ちょ→楽しかったぁ♪」
P「真美…また幻覚か?」
真美「どうしたの兄ちゃん、頬痩けてるよ?」
P「へへ…いいんだ…俺は真美に会えないままここで孤独死するんだ…」
真美「うあっこりゃめっちゃ重傷ですなぁ」
P「…」ブツブツ
真美「兄ちゃん、お膝借りるね→」ぽふっ
P「この尻の感触…」
真美「ただいま兄ちゃん☆」
P「真美ぃ…」じわっ
真美「兄ちゃんは大げさ過ぎっしょ→」なでなで
P「同棲記念日」
真美「それ明日っしょ→」
P「えーっ何かなーっ」
真美「覚えてないとかカレシ失格っしょ→!!」
P「ヒントヒント」
真美「ヒントはね→5月!」
P「むずかしいなぁ~」
真美「兄ちゃん…ホントにわすれちゃったの?」
P「はい真美、誕生日プレゼント」
真美「兄ちゃん…えへへ」
P「13歳回って13歳おめでとう」
P「んー?」
真美「暑いねー」
P「んー」
真美「そとでたくないねー」
P「んー」
真美「でも洗濯物干さないとねー」
P「んー」
真美「じゃんけんしよっか」
P「確実俺が勝つけどいいのか?」
真美「ふたりで干すのが一番ですな」
P「素直でよろしい」
P「真美の好きなものがいいな」
真美「え→いいの?」
P「え?なんかまずいこと言ったか俺?」
真美「んじゃ兄ちゃんまな板に手置いて」
P「うん…っておい切れる切れる!?」
真美「んっふっふ~だって真美の好きなものって言えば兄ちゃんっしょ~」
P「わかった!チャーハン食いたいチャーハン!」
真美「おっけー☆これに懲りたらおまかせはナシだぜ兄ちゃん♪」
真美「…」ころんぎゅっ
P「うーん…」ごろん
真美「…」ころんぎゅっ
P「うう…」ごろん
真美「…」ころんぎゅっ
P「…真美」
真美「なに→?」
P「暑いからもう少し離れて眠ろう」
真美「そこはこうするんだよ→」
P「おおっ真美はやっぱりゲームうまいな!」
真美「んっふっふ~、亜美と毎日やってたからね~」
P「協力できるゲームは楽しいな」
真美「いいよね→兄ちゃんの膝に座ってゲーム、最高っしょ☆」
P「あ、真美ちょっと今動かれると尻がこすれて…オフッ」
P「…」ポリポリ
真美「…」サクサク
P「…」サクサク
真美「あ、最後の一個だ…」
P「よしじゃんけんだな」
真美「いやいやここは真美ちゃんに譲る場面でしょ→」
P「じゃんけんしよっじゃんけん」
真美「やだよ→兄ちゃん絶対真美の顔見て勝つもん」
P「わかった、こうしよう。俺が端っこを食べる、真美は反対側を食べる」
真美「おおっポッチーゲームですな♪」
P「沢山食べたければ早くポキポキしなきゃいかん」
真美「受けてたつぜ→☆」
真美「ふあ~おはよ兄ちゃん」
P「あ、やべえ寝坊した」
真美「兄ちゃん今日オフだよ?」
P「あれ?そうだっけ」
真美「うん」
P「うあっ昨日すごかったから体中ベトベトだな」
真美「お風呂はいろっか」
P「風呂まで行く元気もあるかどうか…」
真美「昨日ちょ→頑張ってたもんね→」
P「つい張り切ってしまってな」
真美「どったの~?」
P「お風呂いつも一緒に入ってるじゃん?」
真美「そだね→」
P「今日はなんでダメなのかな~って」
真美「兄ちゃんの目から野獣のオーラを感じたのさ…」
P「入れて入れて」カリカリ
真美「だめ~☆」
P「ヒツジだよ~オオカミじゃないよ~」カリカリ
真美「兄ちゃん曇りガラス越しからも全裸待機してるのわかるよ」
P「メェ…」
P「すまんな真美」
真美「いいよ、ほらパパたちからお薬もらってきたから」
P「ずびっ…俺もうダメかなぁ」
真美「弱気がいちばんダメなんだよ兄ちゃん」なでなで
P「風邪うつるぞ」
真美「へーきだよ」
P「おかゆ食べたい」
真美「うん、お昼はおかゆにしようね」
P「どうした真美?寝れないのか?」ぽんぽん
真美「ううん、なんかこう…スゴいよね、一緒に暮らすって」
P「ああ…そうだな」
真美「甘えたり、遊んだり、看病したり」
P「これからもっと騒がしくなるかもしれないぞ」
真美「どうして?」
P「『三人目』、増えるかもしんないだろ?」
真美「それは…」
真美「それは…兄ちゃん次第ですな☆」くすっ
あれは嘘だ
今度こそおしまい
Entry ⇒ 2012.08.31 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
シャルル「ルルーシュ!!家族でピクニックに行くぞぉぉ!!!」
ルルーシュ「はい。もしもし?」
シャルル『……ルルーシュか?』
ルルーシュ「……!!」
ルルーシュ(シャルル……!!なんだ……なぜ……電話を……!!)
シャルル『ルルーシュよ。休みは謳歌しているか?』
ルルーシュ(何が目的だ。また俺とナナリーを政治の道具に使うつもりか……?)
シャルル『なに?!どこも出ずにナナリーと家に篭っているだとぉ!?なぁんとも愚かぁ!!ルルーシュ!!』
ルルーシュ(どうする……。まだシャルルを殺す手段など……!!)
シャルル『よぉし!!そういうことならピクニックだぁ!!家族でピクニックにいくぞ!!ルルッーシュ!!』
シャルル『オール・ハイル・ブリタァァニア!!!』
ルルーシュ「……」
―――ルルーシュは受話器をそっと元に戻した。
ルルーシュ「間違い電話みたいだ」
ナナリー「そうですか」
ルルーシュ(俺はともかくナナリーの身の安全は確保しなければ)
リリリリリン!!!
ナナリー「あ、また電話ですね」
ルルーシュ「……はい?」
シャルル『おい。何故、切った?まだ場所の説明もしていなというに』
ルルーシュ「何が目的だ」
シャルル『ぬあっはっは!!何を言っている、ルルーシュ。ピクニックに行くと行ったであろうが』
ルルーシュ「黙れ!!何がピクニックだ!!馬鹿馬鹿しい!!!」
シャルル『なに?景色のいい場所でシートを広げて、サンドウィッチを食べるのは好かんというか?』
ルルーシュ「俺はお前が好きじゃない!!」
シャルル『ぬぁに!?それはワシが皇帝であると知ったうえ―――』
ルルーシュ「うるさい!もうかけてくるな!!」ガチャン
ルルーシュ「ああ、ごめん。ナナリー。なんでもないんだ……なんでも……」
ナナリー「……」
ルルーシュ(これ以上、ナナリーに心配をかけるわけにもいかない……!電話線を抜いておくか)
ルルーシュ(よしこれで―――)
ピリリリ
ルルーシュ(携帯が……知らない番号だな……)
ルルーシュ「はい?」
シャルル『電話線を抜きおったな、ルルーシュよ?』
ルルーシュ「いい加減にしろ!!」
シャルル『どうした?何故怒っている?ワシには理解できん』
ルルーシュ「あのなぁ……」
シャルル『そうか。ぬぁっはっはっは!!恥ずかしいのか!!ならば、友達も許可する!!』
ルルーシュ「黙れ……!!」
ナナリー「お兄様……」
ルルーシュ「聞いてない」
シャルル『ナナリーを人質にしてもいいのだぞ?』
ルルーシュ「貴様……!!やはり目的はナナリーか!?」
シャルル『聞いておるではないか、ルルーシュ』
ルルーシュ「ぐっ……」
シャルル『場所は―――』
ルルーシュ「……」ピッ
ナナリー「お兄様、一体……」
ルルーシュ「気にするな。ただの間違いだ」
ナナリー「そうですか……」
ルルーシュ(ナナリーだけは守る……)
ルルーシュ(携帯の電源は切っておくか)
ナナリー「……」
テレビ『―――番組の途中ですが、シャルル皇帝の臨時会見をお送りします』
ルルーシュ「なんだ?」
ナナリー「お父様……?」
ルルーシュ「どこのチャンネルも一緒か……」
ルルーシュ(何を言うつもりだ……シャルル……)
シャルル『マイクは?入っておるか?え?よし』
シャルル『うぉっほん!!!』
シャルル『我が息子ルルーシュよ!!!!そして我が娘ナナリーよぉ!!時は来た!!!』
シャルル『ピィックニックゥに行くぞぉぉぉ!!!!!!!』
シャルル『オール・ハイル・ブリタァァァニア!!!!!』
ルルーシュ「な……!?」
ナナリー「まぁ……」
ルルーシュ(俺たちが生きていることを平然と公表しただと……!!!)
ナナリー「お兄様……これは……」
ルルーシュ「シャルルめ……!!」
シャルル『待っておるぞ、ルルーシュ!!ワシは逃げも隠れもせん!!』
シャルル『駅前広場で待っているからなぁ!!ルルーシュ!!!』
ルルーシュ「先手を打たれた……!!」
ナナリー「お兄様……どうされるのですか……?」
ルルーシュ(全国のテレビ中継までしたんだ。電話番号もばれているから住所も把握しているだろう)
ルルーシュ(待ち合わせに俺とナナリーが現れなければ、恐らく奴はここで、この部屋でピクニックを始める!!)
ルルーシュ(俺とナナリーの空間にあいつを入れることなんて、我慢できない)
ナナリー「お兄様?ピクニック、行くのですか?」
ルルーシュ「ナナリーは行きたいか?」
ナナリー「お兄様が行くなら、私も行きます」
ルルーシュ「そうか……。ちょっと考えてみるよ」
ルルーシュ(まずは仲間だ。奴と会えば戦争になる。頼れる仲間がいる……!!)
ルルーシュ「悪い、いきなり呼び出して」
スザク「ルルーシュ」
カレン「突然、呼び出してどうかした?」
ルルーシュ「さっきの臨時放送みたか?」
スザク「……ああ」
カレン「あれって……やっぱり、ルルーシュのことなの?」
ルルーシュ「そうだ」
スザク「どうするんだ?ピクニックに行くのか?」
ルルーシュ「行かなければならないだろうな」
カレン「大丈夫なの?」
ルルーシュ「大丈夫ではないから二人を呼んだんだ」
スザク「それって」
カレン「あたしたちもピクニックに参加しろってこと?」
ルルーシュ「そうだ」
ルルーシュ「迷惑なのは重々承知している!!だけど、俺一人じゃ……」
カレン「家族のピクニックでしょ?あたしたちがいていいわけ?」
ルルーシュ「むしろ居てほしい」
カレン「家族……嫌いなのね」
ルルーシュ「シャルルが嫌いなだけだ」
カレン「皇帝のほうが気をつかうんじゃ……」
ルルーシュ「あいつがそんな繊細なものか」
カレン「そうなの?」
スザク「ルルーシュ」
ルルーシュ「どうした?やはり……軍関係者としては……気が引けるか?」
スザク「いや。おやつは500円までかい?」
ルルーシュ「……ああ」
スザク「そうか」
カレン「そんな決まりあったの?じゃあ、考えて買わないと……」
スザク「ルルーシュの頼みを断るわけないだろ?それにこれは軍は関係ない」
カレン「ま、家族との付き合い……よね。多分」
ルルーシュ「助かる……。ありがとう……」
カレン「ちょっと。たのピクニックでしょ?なんでそんな深刻に……」
ルルーシュ「ただのピクニックじゃないから深刻なんだ!!」
カレン「そ、そう……」
スザク「色々あるんだよ、カレン」
カレン「まぁ……いいけど」
スザク「じゃあ、日時は会見で言っていた通りでいいんだね?」
カレン「えっと、明日の朝8時に駅前広場集合だったわね」
ルルーシュ「ああ。じゃあ、悪いけど必ず来てくれ」
カレン「あ、ちょっと」
ルルーシュ「どうした?」
カレン「お弁当……もって行ったほうがいいの?」
スザク「カレン、作れるのか?」
カレン「サンドウィッチぐらいなら……」
スザク「僕もおにぎりぐらいなら」
ルルーシュ「……」
カレン「……た、たこさんウインナーはちょっと……」
ルルーシュ「いや。そこまでしなくてもいいと思うが」
スザク「でも、ルルーシュ側にだけ負担をかけるわけにも」
カレン「参加するならそういう役割分担は必要だと思うし」
ルルーシュ「……」
スザク「ところでバナナはおやつか?」
カレン「果物ってデザートでしょ?」
スザク「じゃあ、お弁当箱に入っていればセーフか」
カレン「多分ね。房のままだとアウトだけど」
スザク「なるほどね。気をつけるよ」
スザク「ルルーシュ、いいのか?」
ルルーシュ「俺から誘ったんだ。それぐらいはな」
カレン「へー、ルルーシュってお弁当作ることできるの?」
ルルーシュ「ナナリーによく作っていたからな」
カレン「……うらやましい」
スザク「カレン、今からおやつでも買いに行こうか」
カレン「500円でしょ?結構、色々なもの買えるかな」
スザク「駄菓子ならかなり」
カレン「じゃ、いこっか」
スザク「ルルーシュ、また連絡するよ」
ルルーシュ「ああ。ありがとう」
カレン「また明日ね」
ルルーシュ「よし……。スザクとカレンという戦力は得た……」
ルルーシュ「あとは……」
コーネリア「……」
ピーピー
コーネリア「私だ」
『あの……ルルーシュと名乗る学生から―――』
コーネリア「繋げ!!」
『はい!!』
ルルーシュ『……姉上』
コーネリア「そろそろだと思っていた」
ルルーシュ『流石ですね』
コーネリア「どうする?」
ルルーシュ『姉上とユーフェミアを傍に置いておきたい』
コーネリア「……残念だが。私はいけない」
ルルーシュ『なに……』
コーネリア「行きたいのは山々だが、仕事だ。社会人は辛い」
コーネリア「無茶をいうな」
ルルーシュ『姉上とユーフェミアがいれば……シャルルが俺に絡んでくる比率を大幅に減らせると思ったのに』
コーネリア「ユフィだけでも幾分マシだと思うが」
ルルーシュ『ユフィだとシャルルの威圧に押されて何も言えなくなるだろ』
コーネリア「むぅ……それもそうか」
ルルーシュ『だから、姉上の存在感が必要なんだ』
コーネリア「……だが」
ルルーシュ『ダメですか』
コーネリア「総督は椅子に踏ん反り返るだけではないのでな」
ルルーシュ『仕方ない……少し可哀相だが、ユフィだけでも』
コーネリア「ユフィは喜んでついていくだろう。伝えておく」
ルルーシュ『お願いします、姉上』
ピッ
コーネリア「……はぁ……ピクニック……いいな……」
コーネリア「ユフィ、私だ」
ユフィ「どうぞ」
コーネリア「先ほどの放送は見たな?」
ユフィ「はい。皇帝のピクニック会見ですね」
コーネリア「ルルーシュがお前に来て欲しいと行って来―――」
ユフィ「おやつは買ってきました!!」バーン
コーネリア「……こうなることを分かっていたのか」
ユフィ「きっとルルーシュは困っていると思っていたので。私でも力になれるならと」
コーネリア「そうか。駅前広場までは護衛をつけるから」
ユフィ「あの。護衛は既にスカウトしたのですけど……」
コーネリア「なに?だれだ?」
ユフィ「えっと……枢木スザクを」
コーネリア「枢木スザクだと……?」
ユフィ「ご、ごめんなさい。スザクもちょうど一緒に行くとのことだったので……」
ルルーシュ「咲世子にも頼んでおいたし……これでいいか」
C.C.「……」ソワソワ
ルルーシュ「スザクにカレン、あとシャルルの絡みが俺とナナリーに集中しないようにユフィも同行する」
C.C.「……なぁ」
ルルーシュ「カードは揃った。これで布陣を敷けば……まだ戦いにはなるはず」
C.C.「ルルーシュ?」
ルルーシュ「ピクニックはおよそ5時間として……」
C.C.「おい」
ルルーシュ「なんだ!?」
C.C.「こっちとこっち、どちらの服がピクニックに向いていると思う?」
ルルーシュ「……」
C.C.「私自身としてはこのワンピースタイプの―――」
ルルーシュ「お前は留守番だ」
C.C.「な、なぜだ!?」
C.C.「ポニーテールにする」
ルルーシュ「だめだ」
C.C.「帽子もかぶる。目深にかぶる」
ルルーシュ「バレる」
C.C.「仮面をしていく」
ルルーシュ「怪しまれるだろ」
C.C.「プチ整形する」
ルルーシュ「そこまでするなら家にいろ!!!バカか貴様!!!」
C.C.「お前と私は共犯者だ!!ピクニックだって一緒だろ!!」
ルルーシュ「……」
C.C.「……」
ルルーシュ「そんなに行きたいのか?」
C.C.「……ああ」
ルルーシュ「……」
C.C.「そんなこというやつはだいっきらいだ」
ルルーシュ「まて。偶然を装えということだ」
C.C.「ほう」
ルルーシュ「お前は俺たちのあとをつけるようにしてこい。現地で偶然居合わせたように振舞え」
C.C.「はじめましてといえばいいかな?」
ルルーシュ「それでいい」
C.C.「わかったよ。それで妥協してやる」
ルルーシュ「おまえな……!!」
C.C.「一緒に電車に乗って、景色を見ながらワイワイいうのだってピクニックの楽しさなんだぞ?知らないのか?」
ルルーシュ「もういい!!早く寝ろ!!!寝坊したらおいていくからな!!」
C.C.「そんなことしたら契約破棄だ。ギアスを返してもらうからな。必死で起こせよ?」
ルルーシュ「くそ……!!魔女がぁ……!!!」
C.C.「それじゃあ、おやすみ」
ルルーシュ「はぁ……」
V.V.「シャルル、ついに明日だね」
シャルル「ええ、兄さん」
V.V.「楽しみかい?」
シャルル「夜も眠れぬほどに」
V.V.「寝坊はダメだよ?」
シャルル「分かっています」
V.V.「……本当に来るかな?」
シャルル「来ますとも。必ず」
V.V.「……そのときはどうするの?」
シャルル「マリアンヌ」
アーニャ「なぁに?」
シャルル「頼むぞ?」
アーニャ「任せておいて」
シャルル「ぬぁっはっはっは!!!!ルルーシュ!!!明日が楽しみだな!!ルルーシュ!!!!」
ルルーシュ「ナナリー、準備はできたか?」
ナナリー「はい、お兄様」
ルルーシュ「……大丈夫か?」
ナナリー「お兄様が一緒なら……私は大丈夫です」
ルルーシュ「そうか……」
ナナリー「お兄様のほうこそ……手が震えています」ギュッ
ルルーシュ「心配しなくていい。俺がナナリーを守る」ギュッ
咲世子「ルルーシュ様……お気をつけて」
ルルーシュ「ああ。行こうか、ナナリー」
ナナリー「はい、お兄様」
咲世子「行ってらっしゃいませ」
C.C.「……」コソコソ
咲世子「あの、あまり接近するとナナリー様に気づかれてしまいますよ?」
C.C.「わかった」コソコソ
カレン「病弱キャラは封印でいいよね」
カレン「服はこれにしてっと……」
カレン「んー……まぁ、別にお洒落する意味はないかな」
カレン「にしても、お父さんが怖いだなんて……意外とかわいいかも……」
カレン「って、ルルーシュの場合は話が違うか」
カレン「ブリタニアの皇帝だしね……」
カレン「……隙があれば……殺す」シャキン
カレン「……」
カレン「……それは無理か」
カレン「ナイフは置いていこ」
カレン「財布よし!服よし!おやつよし!」
カレン「リュックも新調したし、大丈夫!!」
カレン「よっと。さ、いこっと」
カレン「ルルーシュ待ってるし……」
ユフィ「スザーク」テテテッ
スザク「ユフィ、そんなに慌てなくても」
ユフィ「はぁ……ご、ごめんなさい。すこし遅れちゃった」
スザク「気にしてないよ。それより僕が護衛でよかったの?」
ユフィ「いいえ。スザク以外に護衛は考えられないから」
スザク「……ありがとう。嬉しいよ」
ユフィ「でも、今日は覚悟しておいてね。相手は……」
スザク「わかっている。僕らからすれば雲の上……いや、神といってもいい人だ」
ユフィ「ええ」
スザク「……ポテリッチを2袋用意した。これでなんとか」
ユフィ「……」
スザク「ユフィ?どうかした?」
ユフィ「ううん。その様子なら大丈夫かなって」
スザク「え?」
ルルーシュ「まだ誰も来ていないな」
ナナリー「そうですか」
ルルーシュ(そもそも奴がどこから来るのか……)
カレン「ルルーシュ、おまたせ」
ルルーシュ「カレ―――え?」
ナナリー「おはようございます、カレンさん」
カレン「おはようナナリー」
ルルーシュ「おい、カレン……登山にいくんじゃないんだぞ?」
カレン「え?ピクニックでしょ?」
ルルーシュ「もういい……」
カレン「なによ……?」
ルルーシュ(カレンは貴重な戦力だ。下手をことをいって気分を害されたら困る……)
カレン「なによー?これそんなに変?ちゃんと雑誌みて買ったんだけど……」
ルルーシュ「そのまま富士にでも登ればいいんじゃないか?」
ルルーシュ「ユフィ」
ナナリー「ユフィ姉さま!!」
ユフィ「ナナリー、久しぶり!」
ナナリー「ユフィ姉さまもお変わりなく」
ユフィ「えへへ」
スザク「おはよう、ルルーシュ。カレン」
カレン「おはよ」
ルルーシュ「スザク……お前、なんで軍服なんだ?」
スザク「シャルル皇帝に会うんだ。私服はまずい」
ルルーシュ「軍は関係ないって自分で言ってたじゃないか」
スザク「それでも礼儀は大事だから」
ルルーシュ「ユフィ……?」
ユフィ「スザクの軍服姿、かっこいいよね」
ルルーシュ「もういい……。だが、あとは奴の到着を待つだけか……」
ナナリー「お兄様、落ち着いてください」
スザク「そうだ。まだ20分しか経っていないじゃないか」
ルルーシュ「約束の時間から20分もたっている!!こんなことしていたら日が暮れる!!!」
ユフィ「まぁまぁ」
ルルーシュ「まぁまぁじゃない!!」
カレン「ルルーシュ、冷静に。相手の作戦かもしれないし」
ルルーシュ「そうか。わざと約束の時間に遅れて、相手の冷静さを失わせる作戦か」
カレン「そうそう」
ルルーシュ「ちぃ……やってくれる……!!」
―――バババババババ!!!!!!
スザク「ん?ヘリだ」
ユフィ「しかもあれは皇族専用ヘリ……」
ルルーシュ「まさか……!!」
シャルル『ルルーシュ!!!!またせたなぁ!!!!!寝坊してしまぁった!!!ぬぁっはっはっはっは!!!!』
カレン「あいつが……ブリタニアの皇帝……」
スザク「……」
ルルーシュ「あの……バカ……!!」ギリッ
シャルル「よっと。―――よく集まってくれた。皆のものよ」
スザク「い、いえ!!お招きいただき、光栄です!!」
シャルル「ん?おまえは……枢木スザクか?」
スザク「え?じ、自分の名前をご存知なのですか?!」
シャルル「上に立つもの、部下の顔と名前ぐらいは把握している」
スザク「なっ……」
シャルル「ルルーシュの親友だそうだな?これからもよろしく、たのむ」
スザク「イエス!!ユアマジェスティ!!」
ルルーシュ(早い!!もうスザクを懐柔するとは……シャルルめ……!!!)
ユフィ「あ、あの……お父様……」
シャルル「んー?ユーフェミアか……。久しいな」
シャルル「コーネリアはどうした?」
ユフィ「お、お仕事が……お忙しいみたいで……」
シャルル「なぁに!?」
ユフィ「ひゃ」ビクッ
シャルル「それは……残念だ……」
ユフィ「は、はぁ……」
シャルル「……ん?おまえは?」
カレン「ど、どうも……。えっと……」
シャルル「そうか、ルルーシュのガァールフレンドか」
カレン「ち、ちがいます!!!」
シャルル「照れることはない。ルルーシュは頭がいい。浮気されたと感じたら、いつでも、ワシのところに来るがよい。助言はしてやる」
カレン「いや……そういう……関係じゃ……」
ルルーシュ「いい加減にしろ!!貴様!!!」
シャルル「おー!!ルルーシュよ!!久しいなぁ!!!しばらく会わぬうちに、マリアンヌそっくりになりおって!!ぬぁっはっはっは!!」
シャルル「ピクニックだ」
ルルーシュ「何故、俺に会いに来た……」
シャルル「父親が息子に会うのには理由が……いるのか?初耳だな……」
ルルーシュ「捨てたくせにぃ!!」
スザク「よせ。ルルーシュ」
ルルーシュ「スザァク!!」
スザク「今日は全てを水に流そうとして来てくれたんだろう。そういう発言はよくない」
ルルーシュ「おま……!!」
シャルル「良く出来た友人をもったな、ルルーシュ。よかったではないか」
スザク「いえ!自分はそれほどできた人間ではありません!!」
ルルーシュ「ちぃ……!!!」
ナナリー「あぁ……あの……」オロオロ
シャルル「ナナリーか……。今日はよくきてくれたな」
ナナリー「は、はい……お、おひさし……ぶりです……」オロオロ
ナナリー「え?」
シャルル「目が見えぬこと……辛いか?」
ナナリー「いえ……私にはお兄様がいますから」
シャルル「そうか。―――ナナァリー!!!安心するがいい!!!」
ナナリー「な、なんですか……?」
ルルーシュ「おい!何をするつもりだ!!」
シャルル「今日はナナリーのために……アメをもってきた」
ナナリー「……アメ?」
シャルル「なめて……みよ」
ナナリー「はい……はむっ」
シャルル「どうだ?甘いか?」
ナナリー「とても」
シャルル「ぬぁっはっはっはっはっは!!!!!」
ナナリー「え?」
ナナリー「このアメは……?」オロオロ
スザク「イエス!!ユアマジェスティ!!!」
ルルーシュ(おのれ……既にスザクは寝返ったか……!!)
ユフィ「ルルーシュ、大丈夫?顔色悪いけど」
カレン「都合つけて帰る?」
ルルーシュ「それは無理だ……そんなことを言えば、俺の部屋でどんちゃん騒ぎになる」
ナナリー「それは嫌ですね」
ユフィ「確かに。お父様を部屋には入れたくないかも」
カレン「嫌われてるのね」
ルルーシュ「ああいう父親だからな」
ナナリー「お兄様、大丈夫でしょうか?」
ルルーシュ「無視するという手もあるが……」
カレン「それはちょっと、あとが怖いし」
ルルーシュ(なんとかこの地獄を切り抜ける策を……。だが、やつのことだ。既に全てにおいて先手をうっているだろう……)
シャルル「皆に切符をくばぁる!!」
スザク「はっ!!」
ルルーシュ(C.C.は大丈夫か……?)
C.C.「うーん……切符か……いくらのを買えば……」
V.V.「これだよ」ピッ
C.C.「な……」
V.V.「久しぶり、C.C.」
C.C.「お前は……」
アーニャ「私も居るわよ」
C.C.「なんのつもりかな?」
アーニャ「ふふふ」
C.C.(まさか……狙いは私か……!!)
V.V.「じゃあ、行こうか。僕たちは僕たちで楽しもうよ、C.C.」
C.C.(悪い……ルルーシュ……やっぱりお留守番しておくべきだったよ……)
シャルル「いいか。車内ではあまり騒がないように」
スザク「イエス!!ユアマジェ―――」
シャルル「だまれぇい!!!」
スザク「……」
ルルーシュ「うるさいのはこの二人だ」
カレン「えっと、ユーフェミア……様……」
ユフィ「ふふ。カレンさん。ユフィで結構ですよ」
カレン「あ、そう?」
ユフィ「ルルーシュの恋人なんでしょ?いっぱい話を聞かせてほしいな」
カレン「ちがうちがう!!何言ってるの!?」
ユフィ「でもお父様が」
カレン「あれはあの人の勘違いだからっ!!!」
ルルーシュ「全く……何故こうも緊張感がないんだ……シャルルがいるというのに……」
ナナリー(お兄様……すごく辛そう……)
シャルル「きたか……」
スザク「はい」
ルルーシュ「おい、スザク」
スザク「どうした?」
ルルーシュ「俺の味方じゃなかったのか?」
スザク「味方だよ。でも、ルルーシュの親友である前に僕は軍人だから」
ルルーシュ「お前……」
スザク「ごめん」
ルルーシュ(こんなことならシャーリーでも連れてくるべきだったか……!!)
ナナリー「お兄様、大丈夫ですか?飲み物です、どうぞ」
ルルーシュ「あ、ああ。ありがとう、ナナリー」
カレン「だからね、ルルーシュとはただの友達なの」
ユフィ「兼、恋人なのよね?」
カレン「ちっがうから!!」
ざわざわ……
「あ、あれ……シャルル皇帝じゃないか……」
「すげ……!!なんで電車にのってるんだ?!」
「あれだよ、ピクニックだろ?」
「写メとろ」パシャ
シャルル「よいか!!皆のもの!!!」
ルルーシュ「うるさい!!車内では静かにしろ!!!」
シャルル「ぬぅ……では、静かに伝える!!!!」
ナナリー「あの、乗客のみなさん。もうしわけありません」オロオロ
ユフィ「あの。すぐに黙らせますから」ペコペコ
カレン「ごめんなさい、ごめんなさい」ペコペコ
シャルル「よいかぁ!!!人は平等ではなぁい!!!!」
ルルーシュ「しるか!!!」
スザク「ルルーシュ!みてくれ!向こうにアッシュフォード学園が見える!」
ルルーシュ(お前が入ってきたから乗客が他の車両に移動しただけだ……)
シャルル「ふー。やっと落ち着けるな」
スザク「シャルル皇て―――」
シャルル「スザクよ……」
スザク「は、はい」
シャルル「今日は無礼講だ。堅苦しい肩書きなど……今は持ち合わせておらぬ」
スザク「といいますと……?」
シャルル「今日は……シャルルおじさん、でよい」
スザク「そ、そんなこと!!自分には無理です!!」
シャルル「なんという愚かしさかぁぁ!!!軍人ならば!!ワシの命令を素直に、きけぇい!!」
スザク「イ、イエス!!ユアマジェスティ!!」
シャルル「うむ。ナナリー、ルルーシュ、ユーフェミアも……今日はワシのことを、パパと呼ぶことを許す」
ルルーシュ・ナナリー・ユフィ「「お断りします」」
シャルル「そうか……。流石に泣いてしまいそうだな……」
ユフィ「カレン、どうかした?」
カレン「え?いや……ちょっと輪に入りにくくて」
ユフィ「どうして?」
カレン「どうしてって。私以外はほら、皇帝陛下と繋がりがあるじゃない?」
ユフィ「あ、そういえば、そうね」
カレン「だから、距離が違うのよ。微々たるものでしょうけど」
ユフィ「でも、そんなことないと思う」
カレン「なんでよ?」
ユフィ「だって、カレンはルルーシュの恋人なのでしょう?」
カレン「だから―――」
ユフィ「恋人なら将来のお嫁様。お嫁になればルルーシュとも家族。ほら、お父様とも繋がりが生まれる」
カレン「あんたねえ……」
ユフィ「私とも姉妹になれる。それってすごく素敵なことじゃないかしら?」
カレン「……はいはい」
ルルーシュ「だまれ!!」
ナナリー「お兄様、大丈夫ですか?」
ルルーシュ「今にも貧血を起こしそうだ……」
ナナリー「飲み物は如何ですか?」
ルルーシュ「ありがとう……貰おうかな」
スザク「ナナリー、僕もほしいな」
ナナリー「はい。いいですよ」
シャルル「カレンよ」
カレン「は、はい?!」
シャルル「下世話なことではあるが……。ルルーシュと交際してから月日はどの程度だ?」
カレン「で、ですから!!あたしとルルーシュはそういう関係ではないんです!!」
シャルル「なに?ルルーシュでは物足りぬのか?」
カレン「そういうことでもないんですけど……」
シャルル「では、よいではないか。シャルル・ジ・ブリタニアが命じる!!ルルーシュを、喰え!!」
ルルーシュ「ぶー!!!」
ナナリー「きゃ?!」
スザク「ルルーシュ、飲み物をそんな霧吹きみたいにしちゃダメだよ」
シャルル「どうした?」
ルルーシュ「おまえ!!何を言い出すんだ!!!」
カレン「そ、そうよ!!」
シャルル「おー、怖いな。最近のキレる若者は」
ナナリー「うぅ……」
ユフィ「今、拭いてあげるからね」ゴシゴシ
ナナリー「ごめんなさい、ユフィ姉さま。このハンカチは洗って返しますから」
ユフィ「いいから。でも、カレンにルルーシュを喰えってどういうことかな?」
ナナリー「さぁ……」
スザク「ルルーシュ。ルルーシュはカレンにとってのおやつみたいなものか?」
ルルーシュ「お前も黙れ!!もうこれ以上、俺を責めるな!!」
シャルル「よし、無事についたな……。番号!!!」
スザク「いちっ!!!」
ルルーシュ「悪かったな、ナナリー」
ナナリー「いえ、気にしないでください。大丈夫ですから」
ユフィ「ルルーシュは下品よねー?」
ナナリー「ふふ、そうですね」
ルルーシュ「あのなぁ……」
カレン「ルルーシュ、ちょっと」
ルルーシュ「どうした?やはり、帰るか?無理に付き合うことは……」
カレン「いや、むしろ居てあげる。このままじゃルルーシュが脳内出血起こしそうで不安だし」
ルルーシュ「そうか……助かる」
カレン「でも、ちゃんと私とあんたがそういう関係じゃないことは説明しておいて」
ルルーシュ「あ、ああ。わかった」
ルルーシュ(あいつが俺の話をまともに聞くとは思えないがな……)
スザク「そこでピクニックを行うのですね」
シャルル「うむ!!楽しみよなぁ!!」
スザク「全くです」
ルルーシュ(せめてコーネリア……コーネリアがいれば……)
ユフィ「ところで先ほどはどんな内緒話を?」
カレン「え?な、なにが?」
ユフィ「ほら、駅のホームでルルーシュと」
カレン「ああ、あれね。いや、別に」
ユフィ「お父様のお許しが出たから、もう……?」
カレン「か、勘違いしないでったら!!」
ナナリー「お兄様、草花の匂いが強くなってきましたね。ここはもう目的地なのですか?」
ルルーシュ「ああ。国立公園だな。緑がいっぱいあるよ」
ナナリー「そうですか」
ルルーシュ(なんとかして……早く帰路に……どうする……)
シャルル「ここだぁ!!!ここが!!!我らの目的地であぁぁぁる!!!!!」
スザク「オール・ハイル・ブリタニア!!」
シャルル「枢木スザクよ!!シートを敷くのだ!!!」
スザク「イエス!!ユアマジェスティ!!」
シャルル「ルルーシュよ。この男は成長する。手放すな?」
ルルーシュ「ふん……言われなくても」
カレン「で、どうするの?お昼には早すぎるし」
ユフィ「そうですね。まだ10時……」
シャルル「ぬぁっはっはっはっは!!!ワシが!!このワシがぁ!!!何も持ってきていないと思うのかぁ!!!」
スザク「シャルルおじさん、何か遊具を?」
シャルル「うむ!!トランプ、オセロ、チェス、人生ゲームがあぁる!!」
ルルーシュ「ナナリーは遊ばせない気か?」
シャルル「ぬぅ……?!」
ナナリー「お、お兄様!!わ、私のことは気になさらず!!」オロオロ
ルルーシュ「何がピクニックだ。所詮はその程度なんだよ、貴様は」
シャルル「……」
ナナリー「お兄様!!」
スザク「やめろ、ルルーシュ!!ちょっとした手違いだ!!」
ルルーシュ「お前は俺とナナリーを捨てた!!今更、父親面しようとするからだ!!」
カレン「ちょっと……」
ユフィ「ルルーシュ……」
シャルル「これは……あれだ……ケアレスミス……」
ルルーシュ「だまれ!!」
ナナリー「お兄様!!」
ルルーシュ「俺とナナリーは別行動をとる。昼になればここに戻ってくる」
スザク「ルルーシュ!!待つんだ!!」
カレン「ルルーシュ!!」
シャルル「……」
ルルーシュだって些細なことでキレたくもなるわ
C.C.「おぉ。来たか」
アーニャ「ここいいわね。涼しくて」
V.V.「残念だったね、C.C.。ルルーシュと一緒にいれなくて」
C.C.「まぁ、たまにはいいさ。でも……」
V.V.「分かってるよ。今日は手を出さない。シャルルにも言われているからね」
アーニャ「いただきまぁーす」
C.C.「あ、こら。そこは私が食べようと」
V.V.「どこも一緒じゃないか」
C.C.「違う!」
アーニャ「あれ?あそこにいるの、ルルーシュとナナリーじゃない?」
C.C.「なに?確かシャルルと一緒なんじゃなかったか?」
V.V.「どうせ、シャルルがルルーシュを怒らせたんでしょ?シャルル、トランプとかリュックに入れていたからね」
アーニャ「ああ、それはナナリーが遊べないわね」
C.C.「全く……シャルルめ」
ルルーシュ「……分かっている。だけど、俺は……あいつを許すことはできない」
ナナリー「お兄様……」
ルルーシュ「母さんを救えたはずなのに……あいつは……」
ナナリー「……」
カレン「ルルーシュ!!」
ルルーシュ「カレンか」
カレン「ちょっと、戻ってきてよ。シャルル皇帝―――じゃなかった、シャルルおじさん、膝抱えちゃったんだけど」
ルルーシュ「しらん」
カレン「そういうわけにも……」
ナナリー「あの私はお兄様たちが遊んでいる声を聞いているだけでも十分に楽しいですから」
ルルーシュ「……」
カレン「ルルーシュ……」
ルルーシュ「悪い……すぐには戻れそうにない……」
カレン「じゃあ、仕方ないね。あたしも一緒にいていい?ルルーシュがいないと、あたしも緊張しちゃうし」
カレン「ナナリー、お花の髪飾りとか作ってみない?」
ナナリー「カレンさん、そういうことできるんですか?」
カレン「えーと……多少は……ね」
ルルーシュ「意外だな。お前にそんな少女趣味があったなんて」
カレン「どういう意味よ!!」
ナナリー「お兄様、そういう言い方は酷いです」
ルルーシュ「あ、悪い……」
カレン「ふふ、ルルーシュってホントにナナリーには弱いね」
ルルーシュ「うるさいな」
カレン「さ、ナナリー。作ってみよっか」
ナナリー「あの……私でも上手くできるでしょうか?」
カレン「大丈夫。結構簡単だから」
ナナリー「よろしくお願いします、カレンさん」
ルルーシュ「……涼しくて、気持ちいいな……ここは……」
スザク「(ユフィ、どうしたらいい?)」
ユフィ「(どうしたらいいと言われても……。私もお父様とはそれほどお会いしたことないし)」
スザク「(……ここは僕が……いくしか……)」
ユフィ「(が、がんばって)」
スザク「皇帝陛―――いえ、シャルルおじさん」
シャルル「なんだ……?」
スザク「えっと……その……じ、自分は良いと思います!!」
シャルル「あー……?」
スザク「トランプもチェスもどれも素敵な遊戯ですし」
シャルル「愚かなり、枢木ぃぃぃ!!!!」
スザク「なっ……!?」
シャルル「ナナリーが遊べないものなど!!下の下ぇ!!!愚の最前線!!!」
スザク「あ、あの……」
シャルル「この様なもなど、いらぁぁん!!!」ポーイ
努力は認める
ユフィ「スザク、だめじゃない」
スザク「ごめん……」
ユフィ「はぁ……こんなときお姉様がいてくれれば……」
スザク「コーネリア総督か……」
ユフィ「……こ、ここは……私が行ってみる」
スザク「ユフィ……気をつけて」
ユフィ「お、お父様……?」
シャルル「なんだ……ユーフェミア?」
ユフィ「えっと……物を捨てるなんてダメです。ちゃんと持って帰りましょう」
シャルル「そうだな……。拾っておいてくれ」
ユフィ「はい」
ユフィ「……よっと。拾いました」
シャルル「下がってよい」
ユフィ「はい……失礼しました……」
ユフィ「ごめんなさい……」
スザク「万事休すか……」
ユフィ「こうなったら……」サッ
スザク「ユフィ?どこに連絡を?」
ユフィ「……」トゥルルル
コーネリア『ユフィか?どうした?』
ユフィ「お姉様!!助けて!!」
コーネリア『なにがあった?』
ユフィ「そ、それが……ルルーシュとお父様が喧嘩してしまって」
コーネリア『なに……?』
ユフィ「もうどうしていいか……」
コーネリア『おい!!ギルフォード!!この業務はお前に任せていいか?え?ダメ?わかった』
コーネリア『すまない、ユフィ。仕事が終わり次第、すぐに向かうから、なんとか耐えてくれ』
ユフィ「そ、そんなぁ……お姉様……」
ナナリー「本当ですか?触らせてください」
カレン「はい」
ナナリー「わぁ……素敵ですね」
カレン「ありがとう」
ルルーシュ「……」
C.C.「なんだ、浮かない顔をしているな」
ルルーシュ「なっ?!」
C.C.「初めまして。かな?」
ルルーシュ「……道にでも迷いましたか?」
C.C.「いいや。ちょっとした散歩をしていた」
ルルーシュ「そうか」
C.C.「シャルルと喧嘩でもしたのか?」
ルルーシュ「他人が家庭内事情に首を突っ込むのは感心しないな」
C.C.「それは失敬。でも、まぁ、仕方ないな。お前とシャルルは相性が悪いから」
C.C.「事実だろ?」
ルルーシュ「そうだな。俺は奴を決して許すことはない」
C.C.「だが、話すことはできるはずだ」
ルルーシュ「……」
C.C.「怖いのか?坊や?」
ルルーシュ「黙れ」
C.C.「ふふ……本心を探られるとそれしか言わないな。お前は」
ルルーシュ「ちぃ……」
C.C.「もうすぐ昼だろ?戻ってやれ。膝を抱えているシャルルが面白すぎる」
ルルーシュ「……そうだな」
ナナリー「あれ?お兄様、今誰かが……」
ルルーシュ「誰もいないよ。ナナリー、カレン。もうすぐ昼だ。戻るか」
カレン「大丈夫なの?あんた」
ルルーシュ「どんなときでも腹は減るからな」
シャルル「なに……?」
ルルーシュ「昼だから戻ってきた」
ユフィ「ルルーシュ、お父様と仲直りを」
ルルーシュ「……」
ユフィ「……そうですか」
シャルル「おー!!ルルーシュ!!ナナリー!!そうか!!昼か!!!」
ナナリー「お父様?」
シャルル「なんだ?」
ナナリー「これ……お花の髪飾りなんです」
シャルル「え……?」
ナナリー「アメのお礼にしては不出来な物ですけど……どうぞ」
シャルル「これを……ワシに……?」
ナナリー「お、お気に召しませんでしたか……?」
シャルル「おぉぉ……ぉぉぉ……なんだ……なんだこれはぁぁぁぁぁ!!!!!!うひょぉぉ!!!!」
シャルル「否!!ナナリー、ダメではない!!むしろ!!!!!―――よい」
ナナリー「よかったぁ……」
シャルル「頭に乗せておけばいいのか?」
ナナリー「是非」
シャルル「……これでよし」
カレン「……」プルプル
ルルーシュ「(カレン、笑うなよ)」
カレン「(わ、わかってる……)」
スザク「よくお似合いです!!シャルルおじさん!!」
シャルル「ぬぁっはっはっはっはっは!!!そうか!!いや、そうでなければ、おかしぃ!!」
ユフィ「とっても素敵です、お父様」
C.C.「あはははははは!!!!なんだあれは!!!あはははは!!!」
V.V.「C.C.、笑いすぎだよ。でも、確かに面白いから写真は撮っておくけど」パシャ
アーニャ「これはいいものを見たわ。私も写真とっておこっと」パシャ
はえーよww
仕事早すぎワロタwwwww
すげぇwww
ユフィ「はい……。えっと、ルルーシュが用意しているって言っていたけど」
ルルーシュ「ああ。早起きして作った。まぁ、大したものじゃないけどな」
スザク「いや、すごいよ。これ一人で?」
ルルーシュ「咲世子も手伝った」
カレン「いただき―――」
シャルル「まてぇ!!」
カレン「は、はい!!すいません!!」
ルルーシュ「なんだ?」
シャルル「おしぼりを配る」
スザク「あ、ありがとうございます」
ユフィ「はぁ……」
シャルル「さぁ、手を合わせろ!!!」パンッ
ナナリー「は、はい」パンッ
シャルル「ルルーシュと咲世子という者に感謝し!!いただぁきます!!!」
ユフィ「えっと……そのサンドと……おにぎり。あとは……卵焼きを」
カレン「ナナリー、取ってあげるよ」
ナナリー「ありがとうございます」
シャルル「……」チラッチラッ
ルルーシュ「……」モグモグ
シャルル「ぬぅ……ウインナーが遠いなぁ……」
ルルーシュ「―――どれがいいんだ?」
シャルル「ルルー……シュ……?」
ルルーシュ「一度に言え。何回も取るつもりはないからな」
シャルル「ほほぉ……では!!ルルーシュが作ったものを全てこの皿に載せろぉ!!」
ルルーシュ「いちいち叫ぶな!!唾が飛ぶだろう!!」
ナナリー「お兄様もですよ?」
ルルーシュ「ちっ……」
カレン「ふふ……」
ルルーシュ「よかったな」
シャルル「どこでこのような技術を手に入れた?」
ルルーシュ「……お前に捨てられてから、苦労したな」
スザク「ルルーシュ!!」
ルルーシュ「なんだ!!」
スザク「(皇帝陛下を拗ねさせるような発言は控えろ!!)」
ルルーシュ「(お前はどっちの味方だ!!)」
ユフィ「ルルーシュ……」
カレン「仕方ないって。単純な親子喧嘩じゃないんだし」
ユフィ「そうだけど……。あ、その赤いのなに?」
カレン「梅干だけど……いる?」
ユフィ「うんっ。―――はむっ」
ユフィ「ひゃぅ!?」
カレン「まぁ、そうなるわね」
ルルーシュ「ゴミはこれでよし。ナナリー、行くか」
ナナリー「え?」
シャルル「おい……ルルーシュよ。いずこへ向かうというか?」
ルルーシュ「お前の顔が見えないところだ」
シャルル「……」
スザク「ルルーシュ。いい加減に……」
ルルーシュ「……」
スザク「……」
シャルル「わかった。ルルーシュよ。そこまでいうなら……良い遊びがある」
カレン「なんですか?」
シャルル「Hide and seekだ」
スザク「それって……」
カレン「かくれんぼ?」
ルルーシュ「バカか、貴様?」
「もう帰ったんじゃない?」
「きっとそうだね、帰ろっか」
「うん、ばいばーい」
やめろ
ユフィ「もしかし膝を抱えてどんな遊びがいいか考えていたのですか?」
シャルル「……」コクッ
ルルーシュ「この歳でかくれんぼだと……」
スザク「いいじゃないか、ルルーシュ、やろう。かくれんぼ。昔はよく遊んだじゃないか」
ルルーシュ「あのなぁ……!!」
カレン「(ルルーシュ。いいじゃない。シャルルおじさんと近くにいることなく、皆が遊べるんだし)」
ルルーシュ「くぅぅ……」
シャルル「だめか?」
ナナリー「い、いいと思います!!」
ルルーシュ「ナナリー?!」
ナナリー「ね?お兄様?」
ルルーシュ「……わかった。やってやる。ただし、鬼はお前だ、シャルル」
シャルル「よかろう」
ルルーシュ(考えてみればこれは好機だ。シャルルに見つからなければ、このまま帰宅時間になる)
ルルーシュ「100だ」
シャルル「長いな……」
ルルーシュ「数えろ」
シャルル「仕方ないか……いーち、にー、さーん―――」
ルルーシュ「全く……」
スザク「ルルーシュ、どこに隠れる?」
ルルーシュ「一人で隠れろ。俺はナナリーと一緒に隠れる」
ユフィ「スザクは私と隠れましょうか」
スザク「え、は、はい」
カレン「……あたしはどうしよう……」
シャルル「じゅーいち、じゅーに、じゅーさん―――」
ナナリー「お兄様?もしかして、このまま隠れきるおつもりですか?」
ルルーシュ「それがいいだろ」
ナナリー「……」
ルルーシュ「―――シャルルが俺の半径100メートル以内に来たら伝えろ」キィィン
通行人「わかりました」
ルルーシュ(これでよし)
ナナリー「お兄様?ここでいいのですか?隠れているような感じではないですけど」
ルルーシュ「俺が見張っておくから。それに草むらに身を潜めるなんて、ナナリーには出来ないだろ?」
ナナリー「そうですけど」
ルルーシュ「ここでゆっくりしておけばいい」
ナナリー「はい」
ルルーシュ「……酷い兄だと思うか?」
ナナリー「いいえ。お兄様の態度は仕方ないと思っています」
ルルーシュ「……」
ナナリー「でも……折角歩み寄ってくれたお父様を無碍にするのは……」
ルルーシュ「分かっている……。分かっているが……どうしても……心が邪魔をする」
ナナリー「お兄様……」
V.V.「はい。ジョーカーだね」
C.C.「またか……」
アーニャ「C.C.はジョーカーに好かれてるのね」
C.C.「そういう女なのかもな」
V.V.「お似合いだと思うよ」
C.C.「なんだと?」
シャルル「どーこだー?ルルーシュ!!ナナリー!!ユーフェミアー!!スザーク!!カレーン!!」
アーニャ「あら?」
V.V.「かくれんぼを始めたみたいだ」
C.C.「となると……坊やは逃げ切る算段を立てているな」
V.V.「途中で帰る選択肢は?」
C.C.「ナナリーが止めるから選ばないだろう」
V.V.「そっか」
C.C.「けれど……さすがにこのままっていうのも、シャルルが不憫だな。あんな探し方では永久に見つけられない」
スザク「ここに隠れましょう」
ユフィ「ええ」ガサガサ
スザク「ああ、ユフィ。あまり奥にいくと服が汚れるから」
ユフィ「へーきへーき」
スザク「だめだって。君は皇女なんだから」
ユフィ「今はただのユフィだから、いーの」
スザク「全く……」
ユフィ「それに……お父様……もう一緒に遊ぶのこ諦めてるみたいだから」
スザク「え?」
ユフィ「わざとゆっくり数えていたし、それに……あんなに大声だして自分の居場所を教えているし」
スザク「まさか……皇帝陛下は……」
ユフィ「きっと、ルルーシュとナナリーに気を遣って……」
スザク「そんなの間違っている!!」
ユフィ「でも、どうしようもないってルルーシュもお父様も分かってるんだと思う。心の問題だし……」
シャルル「どこだー?」
カレン「シャルル皇帝……殆ど、動かない……」
カレン「探す気がないみたいな……」
シャルル「おらんか……」
カレン「……」
カレン「そういうこと……」
カレン「……シャルルおじさん!!」
シャルル「ぬぅ!?みつけたぞぉ!!!」
カレン「ルルーシュを探しにいかないんですか?」
シャルル「……いま、探している」
カレン「ルルーシュはかなり遠くまで移動しましたよ?」
シャルル「そうか」
カレン「……」
シャルル「なんだ?」
シャルル「なにを言う?ワシは皇帝シャルル・ジ・ブリタァニア!!誰から逃げるという!!」
カレン「自分からです」
シャルル「……」
カレン「ルルーシュもそう。自分から逃げています。そういうところは親子ですね」
シャルル「小娘が……楯突くか」
カレン「今のアンタは怖くないから」
シャルル「ぬぅ……」
カレン「あたしも母親から目を背けていましたから」
シャルル「なに?」
カレン「その所為であたしのお母さんは……潰れて……壊れて……。あの人はずっとあたしのことを見ていたのに……」
シャルル「そうか……」
カレン「だから、ルルーシュにも逃げないで欲しい。貴方にも逃げないで欲しいんです」
シャルル「耳にとどめておこう。―――いけ。ワシはもう一度、数を数えなおす!!」
カレン「はい。分かりました」
ナナリー「お兄様。できました」
ルルーシュ「え?また作ったのか」
ナナリー「貰っていただけますか?花飾りを」
ルルーシュ「ああ、ありがとう」
ナナリー「残念です。私の花飾りをつけているお兄様をこの目でみたかった……」
ルルーシュ「ナナリー……」
ナナリー「あ、ご、ごめんなさい」
ルルーシュ「……」
カレン「はぁ……はぁ……ここにいたんだ……」
ルルーシュ「カレン。なんだ?」
カレン「ちょっと休憩……」
ナナリー「カレンさん。カレンさんに習った花飾り、もう一度作ってみたんです」
カレン「え?ああ、ルルーシュ、良く似合ってるよ。なんか花嫁みたい」
ルルーシュ「な、なんだと?!」
その花冠でその顔止めろwwwwww
シャルルより破壊力控えめだけどワロタwww
アーニャ「どこに?」
シャルル「……マリアンヌか」
C.C.「中々、楽しませてもらったよ、シャルル?」
V.V.「うん。そんなに子煩悩だとは思わなかったけど」
シャルル「どけ。今は忙しいのでな」
アーニャ「ルルーシュ、ナナリー、カレンは池のほう。スザク、ユフィは向こうの草むらでイチャイチャしてたわよ」
シャルル「そうか」
C.C.「じゃあ、私たちは向こうで花札をしておくから。暇があれば覗いてくれ」
シャルル「それはできぬ……相談よ」
V.V.「息子娘と遊ぶので精一杯だからね、シャルルは」
アーニャ「がんばってね」
シャルル「うむ……」
C.C.「どうやら、余計な世話だったようだな」
V.V.「そうだね。さ、花札しようか。こいこいって知ってる?」
ルルーシュ「なんだ?」
カレン「許すとか許さないとかじゃなくてさ……。今は楽しめばいいんじゃない?」
ルルーシュ「何も知らないくせに……」
カレン「知らないけど、あんたがただ逃げてるのはわかるよ。前のあたしと同じだから」
ルルーシュ「過去のことを水に流すのが逃げないことなのか?」
カレン「そうじゃない。―――向き合うのが逃げないことだ」
ルルーシュ「向き合うだと?奴とか?あいつは救えるはずだった俺の母さんを見殺しにしたんだぞ!!!」
ナナリー「お兄様……」
ルルーシュ「そんなやつと向き合う?ふざけたこというな!!!」
カレン「でも、向き合わないと解決しない」
ルルーシュ「……」
カレン「どうして見殺しにしたのか知るには、あの人と向き合うしかないと思うよ?」
ルルーシュ「分かっている……。お前たちがいなければ……殴ってでも……訊ねていた……のに……」
カレン「それならあたしたちを誘わず、一人で行けばよかったのに。……あんたは訊くのが怖かったんでしょ?あの人に直接訊くのが」
カレン「……ごめん」
ナナリー「お兄様……」
ルルーシュ「……そうだ。怖かった。ずっと知りたかったことなのに……突然降って沸いたチャンスに動揺した」
ルルーシュ「そうしたら……色々と怖くなった……真実を知るのが……」
カレン「だから、訊ねられない理由をあたしたちに押し付けた。他人が居ればそういうことをいうほうが空気読めてないから」
ルルーシュ「……」
カレン「今日は逃げちゃったから、もう次の機会しかない。でも……楽しむことはまだできるはず」
ルルーシュ「悪かったな……。気を遣わせて」
カレン「別にいいよ。どうする?逃げる?」
ルルーシュ「……」
通行人「あの。シャルル皇帝陛下がお見えになりました」
ルルーシュ「そうか」
カレン「え?誰?」
ルルーシュ「気にするな。向こうから来るなら、動かなくてもいいな」
ルルーシュ「そうだな……」
ナナリー「外すのですか?」
ルルーシュ「え……いや……」
ナナリー「お兄様……外すのですか……?」
カレン「……無理だね」
ルルーシュ「いや、これはカレンにつけたほうがいい!!」
カレン「ちょ!?なんであたしなのよ!?」
ルルーシュ「いいから……」ググッ
カレン「ちょっと……やめて……!!」ググッ
ルルーシュ「おま……えが……つければ……」
カレン「いや……ルルーシュも……似合ってるし……」
シャルル「なんだルルーシュよ。やはり、その女にしたのか?お前にはぴったりだな」
ルルーシュ「シャルル?!」
カレン「あ、いや!?これは違うんです!!」
ルルーシュ「お前は……!!」
シャルル「ナナリーよ。二人の時間を邪魔しないように向こうにいこう。スザクとユーフェミアを探しにいく」
ナナリー「そうですね」
カレン「ちょっと待ってください!!!」
ルルーシュ「俺たちは見つかった!!一緒にいく!!」
シャルル「よい!!シャルル・ジ・ブリタニアが命じる!!!キィィスしろぉぉ!!」
カレン「なっ!?」
ルルーシュ「バカだな?!お前、やはりバカだ!!!」
シャルル「こういう気遣いもできぬようでは……皇帝、失格よ」
ナナリー「そうですね、お父様」
ルルーシュ「余計なお世話だ!!!」
カレン「あの!!だからぁ!!!」
シャルル「30分後にはおやつタぁぁぁイムだから、戻って来い」
ルルーシュ「シャルルぅぅ……!!!」ギリッ
スザク「あの……ユフィ?」
ユフィ「なに?」
スザク「そろそろ足が痺れてきたんだけど……」
ユフィ「だーめ」
スザク「それに僕で膝枕なんて、筋肉で硬いだけじゃ……」
ユフィ「これがいいんです」
スザク「ユフィ……」
ユフィ「こういこと……普段はできないから……」
スザク「確かに」
ガサガサガサ……
スザク「シャルルおじさんか」
ユフィ「おとうさ―――」
コーネリア「なにをしている?枢木ぃぃぃぃ!!!!!!」
スザク「な、んで……!?」
シャルル「なんだ?」
ナナリー「スザクさんの声ですね」
シャルル「よし……行ってみるか」
コーネリア「こちらにこい!!!貴様ぁぁぁ!!!!」
スザク「も、申し訳ありません!!!」
ユフィ「やめてください!!お姉様!!!」
コーネリア「よくも!!私の居ないところでユフィを!!!!」
スザク「あの……」
コーネリア「せっかくギルフォードの目を盗んで抜け出してきたというのに!!!なんだこれはぁぁぁ!!!!」
スザク「申し訳ありません!!!」
ユフィ「お姉様!!スザクは悪くないんです!!!」
コーネリア「ユフィは黙って―――」
シャルル「なんたる愚かしさぁ!!!なんたる醜態かぁぁ!!!!コォォネリアァァ!!!!」
コーネリア「ひっ」ビクッ
ユフィ「お父様……」
シャルル「この憩いの公園で罵声を飛ばすとは、ブリタニア皇族としての自覚がないと見えるな」
コーネリア「あ……これは……だって……その……」ガタガタ
シャルル「コーネリアよ……衆目にその身を晒しながらの蛮行……許しがたし!!!」
コーネリア「も、申し訳ありま―――」
シャルル「否ぁぁ!!!謝罪などここには不要!!!」
コーネリア「あぁ……そ、そんな……」
シャルル「妹の恋路に口出す権利などない!!」
コーネリア「で、でも……枢木スザクは身分も……」
シャルル「スザクほど出来た人間はおらん!!口を慎めぇ!!!」
コーネリア「は、はいぃ!!」
シャルル「スザク、悪かったな。我が娘がお前の時間を穢したようで」
スザク「い、いえ!!気にしておりません!!!」
シャルル「器のでかい男よ。ぬぁっはっはっはっは!!!」
ルルーシュ「何を言えっていうんだ?」
カレン「いや……もうなんか……あたしたちの勘違い……といてくれそうにないし」
ルルーシュ「そうだな。帰りにもう一度、説明しておくか」
カレン「え?」
ルルーシュ「嫌なんだろ?俺とお前がそういう関係と思われるの」
カレン「あ、いや。もう勘違いさせとこうよ。いちいち説明するのも疲れるし」
ルルーシュ「いいのか?」
カレン「いいの!!」
ルルーシュ「しかし……」
カレン「なによ……ルルーシュは迷惑だっていうの?」
ルルーシュ「迷惑というか、結婚の話が持ち上がったとき、カレンが第一候補になるんだぞ?」
カレン「えっ……?」
ルルーシュ「本当にいいのか?」
カレン「まぁ……そのときは……そのときで……いいような……悪いような……」
カレン「と、とにかく!!もういいじゃない!!この話は!!うん!!」
ルルーシュ「お前がそういうなら。俺もあいつと話すのは、もういい」
カレン「逃げるんだ」
ルルーシュ「ああ。俺は卑怯でずるい人間なんだよ」
カレン「さいてーね」
ルルーシュ「そうだな」
カレン「そんな自分に酔ってるところなんて、本当にクズって感じ」
ルルーシュ「そこまで言うか!!」
カレン「そんな花飾りつけたままで言われても、怖くない」
ルルーシュ「ぬぅぅ……!!こんなもの―――」
カレン「外せるの?妹思いのルルーシュが?」
ルルーシュ「ぐぅぅ……!!!くそぉ!!!」
カレン「ほら、いこうよ。もう30分経ってるし」
ルルーシュ「シャルルにあげたのと同じものを作るナナリーもナナリーだな……全く……」
C.C.「猪鹿蝶ができた。でも、ここはこいこいだな」
V.V.「ずいぶん強気だね、C.C.」
C.C.「三光が完成するのにここで終わらせるのは勿体無いだろ?」
V.V.「そうかな?―――はい、くず」
C.C.「な!?」
V.V.「役は役だからね。僕の勝ちだよ、C.C.」
C.C.「そんな勝ち方で楽しいのか?!」
アーニャ「C.C.、ワイン空になったわー。新しいのとって」
C.C.「お前な?その体は未成年なんだぞ?」
アーニャ「いいからいいから」
C.C.「ほら」
アーニャ「ありがとう。―――向こうはおやつタイムに入ったみたいね」
C.C.「ルルーシュ……戻ってきたか。よかった」
V.V.「次は野球盤でもしよっか。僕、先攻ね」
ルルーシュ「おやつの時間だからな」
スザク「シャルルおじさん、ポテリッチを献上いたします」
シャルル「ポテリッチとな?」
スザク「ポテトチップスよりも高級なポテトチップスです」
シャルル「ほう?それは面白い」
ルルーシュ「ん?コーネリア、来ていたのか」
コーネリア「ついさっきな」
ユフィ「お姉様ったら、仕事をさぼってまで来たのよ?」
コーネリア「こら!それを言うな!!」
ルルーシュ「社会人が聞いて呆れるな」
コーネリア「すぐに戻ると置手紙もおいてきた。心配はない」
カレン(こんなやつが総督だなんて……)
ナナリー「お兄様、オレンジジュースは如何ですか?」
ルルーシュ「ああ、貰おうかな」
コーネリア「なんだと!?ユフィの手作りか!?」
ユフィ「はい」
スザク「へえ、おいしそうだね」
ユフィ「みなさんもどうぞ」
カレン「いただきまーす」
ルルーシュ「うん……美味しいな」
ユフィ「ありがとう」
コーネリア「ユフィ……いつもの……してくれるか?」
ユフィ「もうお姉様ったら……はい、あーん」
コーネリア「あー……」
ギルフォード「見つけましたよ、姫様」
コーネリア「ギ、ギルフォード?!」
ギルフォード「さぁ!!まだ山のように書類がのこっているのです!!帰りましょう!!!」グイッ
コーネリア「やめろぉ!!!ユフィのクッキー!!!クッキィィィ!!!!」
ルルーシュ「自業自得だ」
シャルル「うまい!!うまいな!!!」バリバリ
スザク「お口に合ったようで嬉しいです」
シャルル「偶には庶民の駄菓子も悪くない」
ルルーシュ「汚い食べ方をするな」
シャルル「しかし、フォークで刺そうにも砕けてしまうからなぁ」
ルルーシュ「もういい」
カレン「あのシャルルおじさん、おしぼりを」
シャルル「気が利くな。勝気な女だと思わせておいて、この気配り。ルルーシュが惚れるものやむなしか」
ルルーシュ「おい!!!」
カレン「……」モジモジ
ルルーシュ「カレン!!否定しろ!!」
ナナリー「お兄様こそ、肯定してあげればいいですのに」
ルルーシュ「ナナリーまで……!!くそ……!!半日たらずで俺が孤立無援に陥るとは……シャルルめ……!!」
ユフィ「そうですね……」
スザク「では、自分が片づけを」
カレン「あたしも手伝うよ」
ナナリー「お兄様、ゴミはこの袋の中にお願いしますね」
ルルーシュ「ああ。おい、シャルル」
シャルル「なんだ?」
ルルーシュ「少しは手伝え」
シャルル「そうだな」
ルルーシュ「……楽しかった」
シャルル「……え?なんかいったかぁ?」
ルルーシュ「聞こえただろうが!!!」
シャルル「一度、言ってみたかっただけだ」
ルルーシュ「この……!!!」
シャルル「楽しめたのならよい。ここに来た価値は十分にあった」
ナナリー「すぅ……すぅ……」
カレン「すぅ……」
ユフィ「スザクぅ……むにゃ……」
スザク「みんな寝ちゃったね」
ルルーシュ「……ふん。あいつもな」
シャルル「ぐぉー……ぐぉー……」
スザク「多分、陛下が一番疲れたんだと思うよ」
ルルーシュ「どうして?」
スザク「ルルーシュとナナリーと遊ぶなんてもうないかもしれないから、一生分楽しんだんじゃないかな?」
ルルーシュ「自分の野望のために奔走していて、子どもにまで時間が割けないだけだ」
スザク「そうかもしれないけど……。僕、よくわかったよ。皇帝陛下はすごい人だってことは」
ルルーシュ「すごくなければ、俺の父親ではない」
スザク「実は大好きなんだろ?シャルルおじさんのこと」
ルルーシュ「黙れ。虫唾が走る」
シャルル「では!!!ここで各自解散とするぅ!!!おつかれさまだ!!!!」
スザク「お疲れ様でした!!!」
ユフィ「たのしかったぁ!また行こうね、ナナリー?」
ナナリー「はい!」
ユフィ「カレンも今日は楽しかった」
カレン「うん。あたしも。また一緒に遊びにいけるならいきたいかな」
ユフィ「絶対、行こうね」
―――バババババ……!!!
シャルル「ヘリが来たか」
ルルーシュ「お前……」
シャルル「分刻みのスケジュールなのでなぁ!!!ワシはこれで去る!!!何か言い残したことはあるかぁ!?」
ルルーシュ「ない!!消えうせろ!!!」
シャルル「ぬぁっはっはっはっはっはっは!!!!ワシはある!!!―――ルルーシュ、ナナリー、愛しておるぞぉぉ!!!!」
ルルーシュ「早く帰れ!!!」
ユフィ「いいなぁ……ルルーシュばっかり」
ルルーシュ「やめろ!!本当に虫唾が走る!!」
ナナリー「うふふ」
スザク「ユフィ、護衛していくよ」
ユフィ「お願い、スザク。―――ルルーシュ、ナナリー、カレン!また会いましょう!!必ず!!」
スザク「みんな!また連休明けに学校で!」
ルルーシュ「ああ」
ナナリー「さようなら!!ユフィ姉さま!!スザクさん!!」
カレン「またね」
ルルーシュ「カレン、家まで送っていこうか?」
カレン「え?いいの?」
ルルーシュ「ついでだ」
カレン「ふーん。ま、いいけど」
ナナリー「カレンさんも素直じゃないんですね」
カレン「ここでいいよ」
ルルーシュ「そうか。じゃあ、またな」
カレン「うん」
ナナリー「それでは、カレンさん」
カレン「あ。ルルーシュ!!」
ルルーシュ「なんだ?」
カレン「その……花飾り、もらってもいい?」
ルルーシュ「ナナリー?」
ナナリー「私に訊ねなくてもいいですよ?お兄様?」
ルルーシュ「じゃあ……」スッ
カレン「……あ、ありがとう……」
ルルーシュ「またな。カレン。生徒会もあるからすぐに会うだろうけど」
カレン「うん。またね」
ナナリー「カレンさん、さようなら」
ギルフォード「さあ、まだまだありますからね!!」
コーネリア「いや……ちょっとは手伝ってくれても……」
ユフィ「お姉様、ただい―――わぁ。すごいですね。これ全部お姉様の書類ですか?」
コーネリア「おかえり、ユフィ。ああ。もう目が回りそうで……」
ユフィ「ふふ……お姉様っ。はい、あーんしてください」
コーネリア「そ、それはユフィのクッキーか!?」
ユフィ「きちんとおいておきました」
コーネリア「ユフィィィ……」ウルウル
ユフィ「はい、あーん」
コーネリア「はむっ……うん……うまい……うまいぞ……」ポロポロ
ユフィ「もう、大げさなんですから」
コーネリア「ようし!!もう怖いものなんてない!!うおぉぉぉぉ!!!!」シュババババ
ギルフォード「(ありがとうございます。仕事をしなくて困っていたので)」
ユフィ「(これでも私は副総督ですからっ)」エッヘン
セシル「おかえり、スザクくん」
スザク「申し訳ありません。急に予定を入れてしまって」
ロイド「ほんとだよ。こっちも忙しいっていうのに。一人だけたのしんじゃってさぁ」
スザク「本当に申し訳ありません」
セシル「気にしなくていいわよ。ロイドさん、スザクくんに妬いてるだけだから」
スザク「え?」
セシル「ロイドさんもスザクくんとピクニック行きたかったんだって」
スザク「そうなんですか?!」
ロイド「それ、セシルくんも、でしょ?」
セシル「ま、そうなんだけどね」
スザク「じゃあ、今度行きましょうか。三人で」
ロイド「ほんと?!いやぁ!!やったぁ!!これで広い場所でランスロットをうごかせる!!おめでと~」
セシル「結局、そっちですか!?」
スザク「あははは」
カレン「花の冠……」
カレン「……」
ルルーシュ『カレン……良く似合ってるよ?』
カレン『そ、そう?』
ルルーシュ『俺の花嫁に相応しい』
カレン『あ、ありがとう……』
ルルーシュ『さぁ。誓いのキスを……』
シャルル『シャルル・ジ・ブリタニアが命じる!!!キィィスしろぉい!!!』
カレン『ルルーシュ……』
ルルーシュ『カレン……』
カレン「―――って、なんて妄想!?わぁー!!!」
カレン「落ち着けカレン……お義父さんに認めてもらっただけ……ってちがーう!!!」
カレン「……やばい……これじゃあシャーリーと一緒じゃないの……!!」
カレン「でも……まぁ……はぁ……いいか……今だけは……す、好きっぽいし……あいつのこと……」
咲世子「おかえりなさいませ」
ルルーシュ「ああ、ただいま」
ナナリー「ただいま戻りました」
咲世子「楽しかったですか?」
ナナリー「はい。とっても」
咲世子「ルルーシュ様も?」
ルルーシュ「まぁ……普通かな」
ナナリー「ウソばっかりですね、お兄様」
咲世子「本当ですね」
ルルーシュ「な……!!」
ナナリー「咲世子さん、今日の夕飯はなんでしょうか」
咲世子「今日はですね―――」
ルルーシュ「まて!!俺は本当にそんなに楽しんでない!!!」
ルルーシュ「ないぞぉ!!!」
V.V.「シャルル、楽しかった?」
シャルル「ええ。兄さんも充実した1日だったようですね」
V.V.「そうでもないよ。あの子が酔いつぶれたからね」
シャルル「ん?」
アーニャ「ぅごー……んごー……」
シャルル「それは災難でしたね、兄さん」
V.V.「でも、こんな戯れはもう終わりでしょ?」
シャルル「勿論ですよ。時間が……あまりないですから」
V.V.「……寂しい?」
シャルル「そんなわけ……ある」
V.V.「嘘のない世界……時には恥ずかしい思いをしなきゃいけないね」
シャルル「考えものか……」
V.V.「今更、それはないよ?シャルル?」
シャルル「わかって……いますよ。約束、ですからね。兄さんとの」
C.C.「楽しかったようだな、坊や」
ルルーシュ「黙れ魔女」
C.C.「図星をつかれると黙れしかいえないのか?」
ルルーシュ「黙れ!!」
C.C.「またいった」
ルルーシュ「シャラップ!!」
C.C.「はいはい」
ルルーシュ「全く……」
C.C.「でも、楽しかったんだろ?よかったじゃないか」
ルルーシュ「これっきりにしてほしいな」
C.C.「もうないよ。こんな奇跡は」
ルルーシュ「そうだな。シャルルとはいずれ……」
C.C.「お前が修羅の道を歩む限り……どこかで倒さなくてはならない相手だ」
ルルーシュ「覚悟はできている。―――俺はゼロ。世界を壊し、創造する男だからな」
ルルーシュ「はい?」
シャルル『ルルーシュか?』
ルルーシュ「……なんだ?」
シャルル『なに?!夏季休暇に入ったにも関わらず、部屋から一歩もでていなぁいだと!?』
ルルーシュ「……」
シャルル『何たる愚かしさ!!!ルルゥゥゥシュよ!!!!いくぞ!!海か?!山かぁぁぁ!?』
ルルーシュ「……」
ガチャン
ナナリー「お兄様?どなたからでした?」
ルルーシュ「ナナリー?海と山ならどっちがいい?」
ナナリー「んー……海です!」
ルルーシュ「……わかった。伝えておく」
―――もう一度、電話が鳴り響く。ルルーシュは受話器をそっと手に取り、「海だ」と告げた。
おしまい。
皇帝陛下の水着姿か・・・
次は潜水艦で来そうだな陛下
Entry ⇒ 2012.08.30 | Category ⇒ コードギアスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
ビュティ「すぅ…すぅ…」ボーボボ「寝たか」
首領パッチ「ふぁ…今日も疲れたなーっとぉ…」
天の助「…………」
ボーボボ「どうした天の助?早く寝ようぜ」
天の助「あ、あぁ…そうだな…」
首領パッチ「んごぉぉぉぉ…」
天の助「…………」
天の助「…………」スッ
ビュティ「すぅ…すぅ…」
天の助「…………ごく…」
天の助「……ビュティ…」
ビュティ「すぅ…すぅ…」
天の助「ビュティ…ビュティ…はぁ…はぁ…」
天の助「………うっ……」
天の助「…………今日もやっちまった…畜生…」
ビュティ「…………」
天の助「俺は仲間で何してんだよ…俺のクズ野郎が…」
天の助「すまん…ビュティ…」スッ
ビュティ「……まって」
ビュティ「…まって、天の助くん…」
天の助「ビュ…ティ…?お前…いつから起きて…!?」
ビュティ「……ついさっきだよ」
天の助「そ、その…えっと…」
ビュティ「……いつもこんなことしてたの?」
天の助「う……それは……」
ビュティ「答えて」
天の助「…………すまん…」
天の助「……軽蔑したろ」
ビュティ「…少しだけね」
天の助「……お前に嫌われても仕方ねぇよな…それだけのことをしたんだ…」
ビュティ「…………」
天の助「……ボーボボ達に言うのか?」
ビュティ「いわないよ」
ビュティ「うん」
天の助「じゃあなんで言わねぇんだ!」
ビュティ「だから、だよ」
天の助「…………」
ビュティ「…天の助くんがいなくなると…寂しいよ…」
天の助「…ふざけんなよ」
天の助「ふざけんなよ!普通は気持ち悪がるだろ!近づきたくねぇだろ!」
ビュティ「…………」
天の助「…本当のこと言えよ…今さら俺みてぇなクズに気を使うな…」
ビュティ「違う…」
ビュティ「私は本当に天の助くんがいなくなるのやだよ」
天の助「……っ!」
ワロタ
クソワロタ
ビュティ「きゃっ…」
天の助「おら!どうだ怖いだろ!?なら叫べよ!助けを呼べよ!」
ビュティ「よ、呼ばない…」
天の助「なんでだ…!?なんでお前は…そこまで…」
ビュティ「…天の助くんがすっきりしてくれるなら…私、我慢するから…」
天の助「……ま、また明日もやるかもしれねぇんだぞ…?」
ビュティ「……うん」
ビュティ「…………」
天の助「…おそっちまうぞ…?」
ビュティ「…………」
天の助「……くっ……」プルプル
ビュティ「……っ!?」
天の助「もう…叫んだっておせぇからな…後悔してもしらねぇぞ…!」プルプル
ビュティ(手足が…動かせない…!)
ビュティ「む……く…っ!」
天の助「お前が…ビュティが……っ!」
ビュティ「っ…!…んっ……!」
天の助「ビュティ……ビュティ……っ!」
ビュティ「つぅ…!…ぅぅぅ……!」
天の助「ビュティっ……!!」
ビュティ「…ーーーっ!!」
天の助「…はぁ…はぁ……」
ビュティ「……はぁ……はぁ……」
ビュティ「…………天の助…くん…」
天の助「……ん…?」
ビュティ「満足、してくれた…?」
天の助「……馬鹿野郎…」
ビュティ「……いたかったぁ…」
天の助「……ごめんな」
ビュティ「ううん。いいの」
ビュティ「天の助くんの役にたてたなら、嬉しいから」
ボーボボ「おら起きろこんぺいとうが」ゲシ
首領パッチ「ふぁ……」
ビュティ「ボーボボ、へっくんおはよう」
ヘッポコ丸「お、おはようございます!」
ビュティ「天の助くんもおはよう」
天の助「お、おう…」
ヘッポコ丸「どうしたお前?なんか変じゃないか?いつも変だけどさ」
天の助「うっせぇなへっこき丸が」
ボーボボ「おう、おやすみ」
天の助(1日経ったけど…結局ビュティのやつは俺のことバラさなかったな…)
ヘッポコ丸「ん?やっぱ変だぞ天の助。なにかあったのか?」
天の助「うるせぇな…何もねぇよ」
ボーボボ「いや、話してみろよ天の助。気持ち悪いんだよ」
天の助「…………」
ボーボボ「言えねぇのか?気持ち悪い…」
ボーボボ「お前気持ち悪いよ」
ヘッポコ丸「たしかに気持ち悪いですけどその辺にしといてやってくださいよ」
天の助「…………」
ビュティ「……ん、天の助くん…今日もきたんだね…」
天の助「…………」
ビュティ「私、声出さないから…好きにしていいよ」
天の助「ビュティ…」
ビュティ「いいよ…天の助くん…」
天の助「………っ!!」
ビュティ「ん…また手足を拘束しちゃうの…?」
天の助「…いや…今日はせめてお前も…」プルプル
ビュティ「え…!?わ、私はいいよ天の助く……んんっ…!」
天の助「……」プルプル
ビュティ「あっ…そ、そんなとこ…駄目だよ…やめて…」
天の助「…………」プルプル
ビュティ「私はいいから…っ!天の助くんがすっきりすればいいからぁ…!」
天の助「…最低だよな、俺…」
ビュティ「え…?」
天の助「ビュティを気持ちよくしたところで俺の罪は消えないのに…」
ビュティ「天の助くん…」
天の助「だけど…ビュティを気持ちよくしてやれば…罪悪感が少しでも晴れる気がして…」
ビュティ「…………」
天の助「…やっぱり俺…もうこんなことはやめるよ」
ビュティ「え…?」
天の助「それで、俺のしたことを全部ボーボボに打ち明ける」
ビュティ「だ、駄目だよ!そんなことしたら…」
天の助「二度とビュティとは合わせてもらえないだろうな…」
天の助「もう俺が耐えられないんだ!」
ビュティ「う…」
天の助「もうこんなこと…お前にしたくない…」
天の助「…ビュティ。順番が遅れたけど…俺…」
天の助「お前のことが好きだったんだ」
ビュティ「天の助くん…」
天の助「だからもうお前を傷つけたくない」
ビュティ「だからって…私天の助くんとお別れなんてやだよ!」
天の助「…頼むからビュティ…自分を大切にしてくれ…」
ビュティ「そんな…」
天の助「人のことより自分のことだけ考えろ…俺みたいなクズに自分を差し出しちゃいけねぇよ」
ビュティ「…なにそれ…私にこんなことしたの…天の助くんなのに…」
天の助「…そうだ。俺みたいな奴は消えた方がいい」
ビュティ「いやだよ…いかないでよ天の助くん…」ポロポロ
天の助「…………」
ボーボボ「なにやってんだ天の助!?」
ビュティ「ボーボボ!これは違うの!」
ボーボボ「なにが違うんだ!服をなおせビュティ!」
ビュティ「あっ…」
ボーボボ「天の助…てめぇ!」
ビュティ「ボーボボ!落ち着いて!」
ボーボボ「落ち着いていられるかよ!こいつはお前を…」
天の助「そうだ…犯した…」
ビュティ「天の助くん!」
天の助「俺が無理やりビュティを襲ったんだ」
ボーボボ「ふざけんな!」シュルルル
天の助「ぐぁ…!」
ビュティ「やめてボーボボ!鼻毛しまって!」
ボーボボ「ビュティ…お前にも後で話は聞くが…今はもう寝ろ」
ボーボボ「俺はこいつとしっかり話をつける」グイッ
天の助「う…」
ビュティ「ボーボボ…」
天の助「…話せも糞もねぇ…俺がビュティを無理やり…」
ボーボボ「本当にか?」
天の助「…………」
ボーボボ「ビュティは…何故かお前を庇ってた…」
ボーボボ「なにか理由があったんじゃないのか?全部話せよ天の助」
天の助「…話したところで…俺の罪が消えるわけじゃねぇ…」
ボーボボ「それはてめぇが決めることじゃねぇ…話を聞いて、俺が決めてやる」
天の助「…………」
天の助「ビュティは悪くねぇんだ…悪いのは全部俺だ」
ボーボボ「当たり前だろ…お前が悪い」
天の助「あぁ…」
ボーボボ「…だが…お前がビュティのことを好きだってのは俺たちも気づけなかった…それはすまん」
天の助「…………」
ボーボボ「たしかにお前の立場だったら辛いかったかもしれんな…だが」
ボーボボ「ビュティはまだ子供だぞ!?歳を考えろよ!」
ボーボボ「あとお前ところてんじゃねぇか!」
天の助「……すまん…」
ボーボボ「はぁ…もういい。やっちまったもんは仕方ねぇ…」
天の助「仕方なかねぇよ!責任はちゃんととる!煮るなり焼くなりしろよ!」
ボーボボ「お前煮ても焼いてもまずいんだよ」
天の助「こんなときにふざけてんじゃねぇ!俺みたいなクズ、さっさとお前の手でぶっ殺してくれ!」
天の助「俺に…罪を与えてくれよ…」
ボーボボ「この馬鹿野郎が!」
天の助「……!」
ボーボボ「お前はこれ以上ビュティを苦しませるつもりなのかよ!?天の助!!」
天の助「……う…!」
ボーボボ「……お前が罪を償う方法があるとすれば…1つしかねぇんだ…」
ボーボボ「ずっとビュティのそばにいてやれ…」
天の助「う…うぅぅ…うわぁぁぁぁぁぁ…!」ポロポロ
首領パッチ「いいこと聞いちまったぜ…」
ビュティ「…天の助くん…」
ビュティ「天の助くんは自分を責めるけど…」
ビュティ「私だって…拒めなかった…」
ビュティ「天の助くんが喜んでくれるなら…私も嬉しかった…」
ビュティ「ただそれだけなのに…どうしてこうなっちゃったんだろ…」
首領パッチ「まだ寝てなかったのか?ビュティ」
ビュティ「首領パッチくん?どうしたの?」
首領パッチ「いやな…ビュティに用があってよ」
首領パッチ「あぁ…お前、天の助と寝たんだろ?」
ビュティ「え…!?」
首領パッチ「あぁ否定しなくてもいいぜ。全部知ってるからよ」
ビュティ「なんで…そのこと…」
首領パッチ「そんなんどうだっていいじゃねぇかよ。それよりよ、どうだった?」
ビュティ「な、なにが…?」
首領パッチ「だから膜破っちまった気分はどうだって聞いてんだよ」
首領パッチ「おぉ赤くなっちまって…初々しいねぇ」
ビュティ「なんでそんなこと聞くの!?」
首領パッチ「へへ…ウブな面して本当はアンアンよがっちまってたんじゃないかって思ってよぉ」
ビュティ「な…な…」
首領パッチ「どうだったんだ?天の助のテクはよ?ん?」
ビュティ「い、言いたくない!」
首領パッチ「へっ…俺よりも上手いのかどうか…比べてみてくれよ?」
首領パッチ「やめるわきゃねーだろ」
ビュティ「来ないで…!」
首領パッチ「あんだぁ?あのところてんとかヤっといて俺様とはヤれねぇってのか?あ?」
ビュティ「あんたもこんぺいとうじゃない…」
首領パッチ「この…!てめぇいい気になってんじゃねぇぞクソアマァァァァァ!!」ガッ
ビュティ「きゃっ!?」
首領パッチ「よぅし…前戯は無しだ糞女。てめぇはただ使われるだけの道具だ」
ビュティ「た、助けて…!誰か助けて!」
ビュティ「やめて…!お願いだから…!」
首領パッチ「おーら首領パッチソードっとぉ!」
ビュティ「っっ!!」
ボーボボ「天の助…落ち着いたか?」
天の助「あぁ…迷惑かけたなボーボボ…」
ボーボボ「全くだ…だが謝るのは俺にじゃねぇだろ?」
天の助「…あぁ」
ボーボボ「きっとまだ起きてんだろ…早く会いにいってやれよ」
天の助「あぁ、わかった…」
ビュティ「…………」
首領パッチ「やっぱまだできあがってねぇのな。俺のモノでよがらねぇなんてよ」
ビュティ「…………」
首領パッチ「まぁ今日からは俺が毎日慣らして…具合がよくなるまで使い込んでやるよ!ぶははははは!」
ビュティ「……そんな人だとは…思わなかった…」
首領パッチ「こっちも毎日身体張って色々溜まってんだよ。ツッコミしかできねぇんだからこのくらい使わせろよ」
ビュティ「…………」ポロポロ
首領パッチ「あーあー…1回やんのも2回やんのも同じじゃねぇか…めんどくせぇな」
天の助「なにやってんだ…お前…?」
ビュティ「…天の助…くん…」
天の助「お前…ビュティになにしてんだよ…」
首領パッチ「何ってナニだよ!お前がしたことと同じじゃねぇか!」
天の助「て、てめぇ…」
首領パッチ「あぁお前旅から抜けないことになったんだっけ?ならこれから穴兄弟ってことになるな。仲良くいこうぜ天の助」
天の助「てめぇ!!ぶっ殺してやる!!」
首領パッチ「……は?誰に口聞いてんのお前?」
首領パッチ「チッ…人が仲良くしようっつってんのに…女取られたくらいで切れてんじゃねぇよ」
ビュティ「もうやめて首領パッチくん…!これ以上天の助くんにひどいことしないで…」
首領パッチ「お前次第だなぁ…明日からお前が俺専用になるっつんだったら考えてやってもいいぜ?」
ビュティ「…………」
首領パッチ「どうすんだビュティ?こいつ粉々にしちまうぞ」
天の助「やめろ…ビュティ…俺はどうなってもいいから…」
ビュティ「て、天の助くん…」
首領パッチ「ところてんが喋んなよカス!」
天の助「ガハッ…」
天の助「ビュティにはもう…なにもしないでくれよ…」
首領パッチ「てめぇが真っ先に手出したんだろうがぁ!」
天の助「そうだ…だから…これからは俺が責任をとって…」
天の助「ビュティを一生守るつもりだ」
ビュティ「!」
首領パッチ「守る…?ひゃはは!全然守れてねーじゃんお前!」
首領パッチ「いいか天の助よぉ。力のない奴は女取られても文句言えねぇんだよ。てめぇは指でもくわえてズリセンこくのがお似合いだぜ」
天の助「そうだな。お前も俺と同じ最低のクズ野郎だよ」
首領パッチ「雑魚がいつまでも調子のんなよ…!」
ビュティ「同じじゃないよ」
天の助「ビュティ…」
ビュティ「天の助くんは私に優しくしてくれたよ」
ビュティ「私ね。天の助くんだから拒まなかったんだよ」
天の助「…………っ!」
ビュティ「…私も、天の助くんのこと好きだよ」
ビュティ「だって私のことずっと守ってくれるって言ったじゃない」
天の助「…あぁ。ずっとそばにいるよ」
ビュティ「うん!」
首領パッチ「なんだてめぇらぁ!イチャコラしてんじゃねぇぞオラァ!」
天の助「ビュティ。下がれ。こいつは俺が食い止める」
ビュティ「う、うん!」
天の助「首領パッチ…てめぇは少しやりすぎた…ダチだと思ってたのに残念だぜ…」
首領パッチ「お前が俺に勝つ気かよ?冗談はその身体だけにしやがれ!」
プルプル真拳奥義・アメーバ空域!!
天の助「お前チビだから面積足りたわ」プルプル
首領パッチ「くそ…動けねぇ…!」
天の助「どうだよ?散々舐めてた相手に捕まっちまう気分はよ?」
首領パッチ「あぁ!?俺がまだ本気出してねぇってわからねぇのか!?」
ビュティ「ど、首領パッチくんが本気で怒ったら…!」
ボーボボ「首領パッチ!!」
首領パッチ「チッ…ボーボボも来やがったか…!」
首領パッチ「なんだよボーボボ…天の助は許して俺は許さないってんじゃねぇだろうな?」
首領パッチ「1度最初にヤったのは天の助だぜ!?穴を空けたのは天の助!俺は空いた穴に入れただけだ!」
首領パッチ「それがなんだってんだこの童貞野郎!」
ボーボボ「お前!人が気にしてることを!」
天の助「俺は許されるつもりはねぇさ。……だがな、お前は俺が絶対に許さん」
首領パッチ「この…!」
ボーボボ「よく言った天の助。その火の玉野郎を抑えとけよ」
ボーボボ「冗談じゃねぇ」
首領パッチ「俺がいなくなってこれからやっていけんのか!?俺のおかげで今までやってこれたものじゃねぇかよ!!」
ボーボボ「問題ねぇ。食費が浮くだけだ」
首領パッチ「チッ!おいビュティ!」
ビュティ「……ごめんね首領パッチくん。もう君のこと人として見れないよ」
首領パッチ「く、くそ!」
ボーボボ「歯ぁ食いしばれゴミクズが!鼻毛真拳奥義!」
ボーボボ「処刑!!処刑!!処刑!!!!」
首領パッチ「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
天の助「俺ごとぉぉぉぉぉぉぉ!?」
天の助「」
ボーボボ「おい天の助起きろ。ところてんのお前が真っ二つくらいで死ぬわけねぇだろ」
天の助「そう だな」ムクッ
ビュティ「二等分になってる!?」
ボーボボ「お前気持ち悪いよ…ゴキブリ並の生命力じゃねぇか…」
天の助「引く なよ」
ボーボボ「まぁ今ので俺からの罰はおしまいだ。後はお前がビュティに償っていけ」
天の助「あぁ…」 勿論だ」
ビュティ「とりあえずのり付けしなきゃ…」ペタペタ
ビュティ「え…?」
天の助「お、おれは…お前のこと…好きだ」
ビュティ「……!」
天の助「お前はどうだ…?」
ビュティ「…私も、好き」
ボーボボ「はぁ…お暑いこって…」
漬物「1度はヒヤヒヤしたもんだがな」
ボーボボ「お前なにしにきた」
漬物「1枠空いちまっただろ?だから仕方ないけどこれからは俺が…」
ボーボボ「てめぇは駄目だ漬物」
漬物「!!!!」
ボーボボ「今ではプルプルのダルンダルンだった身体も引き締まり、ガッチガチの超合金の助になっちまったよ」
ボーボボ「だがそこのあなたもこいつのようにきっとなれる!」
超合金の助「最初は怪しいものでしたけど使ってみるうちにメキメキ鍛えささりましたよ。モテるようになりましたし毎日ウハウハです。もう手放せませんね」
ボーボボ「鼻毛印の超合金!今なら大特価87000000円!!」
超合金の助「それはお買い得だ!」
ボーボボ「奥さん!買うなら今だよ!!」
首領パッチ「ちょっとどきなさいよ!私が買うんだから」
ボーボボ「はいはい押さないで押さないでー」
ビュティ「……せーのっ」
ビュティ「今までの全部テレビ通販かよっ!!!!」
終わり
乙!
乙
Entry ⇒ 2012.08.30 | Category ⇒ 版権物SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
ナビィ「リンク…お願い…しっかりして…」
ナビィ「リンク…」
リンク「フゥwwwハwwwwでやーwwwwwwwwwwww」
ナビィ「はぁ…」
リンク「……」
メドリ「あの…」
リンク「……」
メドリ「はぁ…」
リンク「……」
ミドナ「…おい!」
リンク「……」
ミドナ「人が珍しく褒めてんだぞ!無視すん」
リンク「ィェアアアア!?」
ミドナ「ヒッ!?」
リンク「……」
ミドナ「…な…なんなんだよ…」
リンク「?」
ファイ「…いえ…なんでもございません」
リンク「…?」
リンク「…」ニコ
ナビィ「どうしてナビィにリンクを任せたのですか…?」
パリン
兵士「おい!勝手に人の家の壺を割るんじゃない!!やめろ!!」
リンク「デヤァアアアアアアアアwwwwwwwwwwwwwww」
パリンパリンパリン
ナビィ「…はぁ……」
リンク「……」
メドリ「あの…リンク…さん?」
リンク「……」ヨイショット
メドリ「いや…岩じゃなくて私を担いで…」
リンク「ほっ!」
バコン
リンク「でや!」
バコン
リンク「やぁ!」
バコン
バコン
バコン
メドリ「…リンクさん、そろそろ」
リンク「………」チラ
メドリ「うっ」
リンク「…ハァ~…」
メドリ「…え…いや…あの…」
メドリ「……その……」
メドリ「…すいません…
リンク「エァァァァァアアア!!?」
ミドナ「うるさい!普通に返事しろよ!」
リンク「アアアアアア!!」
ミドナ「なんなんだよこいつはもう!!」
リンク「?」
ファイ「あのモンスターの糞害に憤慨する確率95%」
リンク「…?」ソンナニオコルカナ?
ファイ「マスター、ファイが言いたいのはそこじゃありません」
リンク「?」
ファイ「糞害に憤慨…です、マスター」
リンク「……?」
リンク「…!」ナルホド!
リンク「ハハ」ニコ
ファイ「…」キュン
リンク「ハァwwwwwフゥwwwwwwwハァwwwwwwwww」
ナビィ「お願いリンク!前転しないで!みんな見てるヨ!?」
リンク「ハァwwwwwwハァwwwwwwwフワwwwwwwww」
ナビィ「お願い、普通に歩いて…」
リンク「ほっ!」
メドリ「きゃぁ!?」ドン
メドリ「…わ、わたしはへいきれ~す、もういっかいやってくらさ~い」ピヨピヨ
リンク「……」
リンク「……ゴクリ」ムラムラ
リンク「……」
ミドナ「その顔のおかげで得してるところもあるかもな!お前やお前の幼馴染とかさ!」キャハハ
リンク「……」
ミドナ「あーあーいいねぇモテる男は、周りにもチヤホヤされるしさ」キャハハ
リンク「……」
ミドナ「…相変わらず無愛想だなお前は、ほらほらもっと笑えよ!」キャハハ
リンク「…」ニコ
ミドナ「…へ…///」
リンク「?」ニコ
ミドナ「や、やめろよ!そんな顔で私を見るな!」
リンク「フフ…」ニコ
ミドナ(…なんでアタシこいつの顔見てドキドキしてんだ!?)
ミドナは元に戻らないほうがかわいいしエロいしでやる気が出たわ
うん
確かにあっちのほうがエロいし可愛かった
ファイ「マスターがファイに笑顔を向けてもファイにはわかりません」
リンク「……」ウーン
リンク「!」ピコーン
ファイ「マスター?」
リンク「♪」ニコ
ファイ「…こうですか?」ニコ
リンク「♪」ウン!ニコ
ファイ「これが…笑顔…ですか…」
ファイ「……」ニコ
リンク「アァーwwwwwwwwwデヤァーwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
ラウル「……」
リンク「ハァwwwwwwwwwwwwwwシャァァwwwwwwwwwwww」
ナビィ「…もういや…」
メドリ「さぁ、今度こそあの崖の向こうへ投げて下さい!」
リンク「……」ムラムラ
メドリ「…ん…?リンクさん?」
Cスティック↑主観
メドリ「…あの…なにして…ひゃう!?」
リンク「……」ハァハァ
メドリ「リ、リンクさん、見ないで下さい!い、息がかかって…!」
リンク「……」ワーオオ
メドリ「いやぁ…」
はちのこを手に入れた!
リンク「へへ…」
ミドナ「お前それどーすんの?」
リンク「……」
ゴックン
ミドナ「イィ!?」
リンク「プハ」
ミドナ「うげぇ…虫食べやがったコイツ…気色悪い…」
デンデデデデーン
スープを手に入れた
ミドナ「おい!そのビン虫入れてたやつだろ!洗えよ!」
リンク「ゴク、プハ」
ミドナ「うげ…どんだけ野生児なんだよお前…ぶっちゃけ不潔…」
リンク「アアアアアアア!!!??」
ミドナ「ご、ごめん」
ファイ「……」
ファイ「…マスター…」
ファイ「…早く、戻ってきてください」
ファイ「ファイは…ここであなたの帰りを持ち続けます…」
ファイ「…だから…マスター……」
ファイ「………」
リンク「wwwwwwwwwwww」
ピポパピポピープエー
ナビィ「リンクのオカリナ…雑菌だらけなのに…分からないの…?」
リンク「wwwwwwwwwwwwwwww」
ピプピプピププピー
ナビィ「…分からない…よね…」
ナビィ「…はぁ…」
ポワワンワ
メドリ(操られているんですけど意識はちゃんとあるから高いところとかはちょっと怖い…)
メドリ(…ん?…ちょっ!?)
メドリ(リンクさん!?なんで下着を脱がすんですか!?)
メドリ(うぅ…リンクさん…なんで…)
メドリ(たくし上げてる…コモリ様の前でもこんなことしたことないのに…)
メドリ(ぐす…)
ミドナ「最後の光の雫は…と…ん?」
ミドナ「ギャー!!でっかい虫ー!」
ミドナ「私はああいうブヨブヨしたやつは苦手なんだよ!」
狼リンク「ガルル」
ミドナ「うわ~近づきたくもない、さっさと倒そうぜ…」
狼リンク「ガブブ!!」
グチャグチャグチャ
ミドナ「ヒィィィ!馬鹿!お前が噛んだせいで変な汁が付いただろ!!」
狼リンク「ガブブ!」
グチャグチャグチャ
ミドナ「おわ、やめろお前!ふざけんな汁が」
グチャグチャグチャグチャグチャ
ブチ
ミドナ「うげええええええええええ」
ファイ「…?」
ファイ(どうしてファイはそのようなことを考えているのでしょう…?)
ファイ(それがファイにとって何の意味が…)
ファイ「……」
ファイ「ファイがマスターに…」
リンク「?」ドシタノ?
ファイ「…なんでもありませんマスター」
ファイ(…好意を持っている確率…)
風タク:変態
トワプリ:野生児
スカイ剣:ファイの淡い恋
なんだこの違いは・・・
ゴロゴロッピー
ナビィ「七年前のロンロン牛乳飲んでリンクがお腹壊しちゃった…」
ナビィ「だけどなんでだろう…」
ナビィ「もしかしたらリンクが死ぬかもって思った瞬間、なぜかほっとしちゃった…」
ナビィ「おかしいよね…本当なら心配するはずなのに…」
ナビィ「もうナビィ…デクの樹サマに怒られちゃうヨ…」
ナビィ「ごめんなさい…」
リンク「ハァハァ」
赤獅子「へいリンク!」
リンク「ホギャァ!?」
赤獅子「いい加減にしないか!メドリの気持ちも考えろ!」
リンク「……」チェ
メドリ「…た、助かった…」
赤獅子「安心しろ、この石には録画機能もある、今までの映像はすべて記録済みだ」
メドリ「ちょ!?」
リンク「イェイ!」
メドリ「うぇ…コモリ様…グス…」
ミドナ「前々から思ってたけどさ、お前すっごい力あるよな」
ミドナ「ただの人間のくせにゴロン族投げ飛ばすわ重そうなチェーンハンマー振り回すわ…」
ミドナ「磁力で張り付いた鉄の靴引き剥がしながら天井歩くわ…」
ミドナ「一体どんな体してんだお前?」
ミドナ「そういやお前トアル村の村長とに相撲教えてもらうとき上脱いでたけど」
ミドナ「なんつーか…すっげー引き締まってたなお前の体」
ミドナ「…なぁ…」
ミドナ「ちょっと触っていいか?」
ペタペタ
リンク「……」
ミドナ「ん…?なんだお前、もしかしてあたしに触られて気持ちいとか!?」キャハハ
リンク「……」プイ
ミドナ「な、なんだよお前、もうちょっと触っていいだろ!」
リンク「……」
ミドナ「…嫌われたか、キャハハ」
ミドナ「……なんだよもう」
リンク「…!」パァァ
ゼルダ「ありがとう…リンク!」
ファイ「…マスター…」
ファイ「……」
ファイ「ファイの役目も…もう少しで終わりです…」
ゴシゴシ
リンク「ぐ…うあぁ…」
ナビィ「……」
ゴシゴシゴシ
リンク「うっ!」
ナビィ「…いっぱい出たねリンク、拭くからちょっと待っててネ」
リンク「ハァ…ハァ…」
ギュウ
ナビィ「…リンク?」
リンク「…ナビィ…ナビィ…!」
ナビィ「…!リンク…私の名前…!」
リンク「いかないで…ナビィ…!一人にしないで…」
ナビィ「リンク…喋れるようになったんだね…うれしい」
ナビィ「大丈夫だヨ…ナビィはどこにもいかないヨ…」
メドリ「みなさん、ただいま…って…あれ?」
ザワザワ
メドリ「どうしたんですかみなさん?」
メドリ「…!これ…!?あの時の私の写真…!?」
メドリ「まさかリンクさんが…」
コモリ「メドリ」
メドリ「コモリ様!違うんですこれは!」
コモリ「こういうのもなんだけど………最ッッッ高だったよ」ハァハァ
メドリ「 」
コモリ「僕の部屋に映像が入ったテープも置いてあったけどまさかメドリが自分から脱ぐ子だったなんて」
メドリ「ち、違うんです!あれは私だけど私じゃないんです!」
コモリ「またまた、僕への脱引き籠りのお祝いテープなんだろう?本当にメドリはスケベだなぁ」ハァハァ
メドリ「違うんです…コモリ様ぁ…グス…ヒック…」
リンク「……」
真ミドナ「フフフ…」
リンク「チェンジ」
真ミドナ「へ?」
リンク「もっかい元に戻れ」
真ミドナ「え…な…なんで…」
リンク「ちっちゃいほうが可愛い」
真ミドナ「え…そうなの?」
ゼルダ「はい」
真ミドナ「じゃ、じゃあ元にもどるよ」
ボン
ミドナ「え、じゃ、じゃあさ、この姿だったらお前と結婚して光の世界でお前と暮らしていいんだな!?」
リンク「いや俺アゲハさんもいるしアッシュさんもいるしゼルダ姫もイリアも山羊たちもいるから一人にだけってのは無理」
ミドナ「なんなんだよちくしょおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
ファイ(ファイはあなたと一緒に旅をしてきたことを誇りに思います)
ファイ(ファイは剣と共に永遠の眠りにつきますがあなたとの思い出は忘れません)
ファイ(あなたの魂とあなたを受け継ぐ者たちの中にファイは生き続けます)
ファイ(だから寂しくなんかありません)
ファイ(最後にもう一度言わせて下さい)
ファイ(マイマスターリンク)
ファイ(ありがとう)
ゼルダ「はいリンク、あーん♪」
パク
ゼルダ「おいしい?」
リンク「♪」
ゼルダ「うふふ♪」
ファイ(……)イラ
ファイ(…今度出会うときはあの人以上に親密な関係になりますように…)
ファイ(次のマスターの手はやたら涎まみれですね)
終わり
ぶっちゃけ立て逃げするつもりだったからめちゃくちゃだわ
ふぅ…
Entry ⇒ 2012.08.30 | Category ⇒ 版権物SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
入須「折木君、忘れてないだろうな?」
・平日 AM7:45
入須「………」
奉太郎「おはようございます、先輩」
入須「…遅い」
奉太郎「……時間通りですが」
入須「先輩を待たせるな」
奉太郎「先輩が早すぎるんですよ」
入須「君が遅いんだ」
奉太郎「…二人で決めた時間ですよね?」
入須「うるさい」
奉太郎「………」
入須「…時間も惜しい。ほら、行こう」
奉太郎(…この人は俺の事が嫌いな気がする)
ザワザワ
奉太郎(…そして注目を浴びてしまった)
入須「どうした? 早くしろ」ギュッ
奉太郎「! え? 先輩?」
入須「行くぞ」
奉太郎(頼むから、見せびらかすように手を握らないでくれ…)
・平日 PM17:45
入須「………」
奉太郎「…すいません。お待たせしました」
入須「…遅い」
奉太郎「……今回はすいません」
入須「そうだろ?」
奉太郎「…先輩、先に帰っていても良かったんですが」
入須「……何故だ?」
奉太郎「余り待たせるのも悪いですし」
入須「…私はそうは思わない」
奉太郎「…はぁ」
入須「今の季節は夏だ。この時間だから外も明るいしこの辺りの治安は決して悪くない」
奉太郎「はい」
入須「ただし、やはり万が一の可能性と言うものを否定はできない。私は女だ。例えばそうだな、変質者が出たと仮定しよう。ギラギラと目の血走った男だ。そこに女の私が一人通りかかったらどうだ?」
奉太郎「…大変ですね」
入須「そうだ。例えば急に野犬が飛び出して来たとしよう。ギラギラと目の血走った雄犬だ。治安が良いとはいえここは山も近い、可能性の無い話とは言えないはずだ。そこに女の私が通りかかり、ビーフジャーキーを手に持っていたとしたらどうだ?」
奉太郎「…とても危険ですね」
入須「例えば
奉太郎「先輩」
入須「…なんだ?」
奉太郎「次から必ず連絡しますから」
入須「……守れよ」
奉太郎「はい」
入須「…心配するだろ」
奉太郎「すいません」
入須「わかればいいよ」
奉太郎(…俺もそろそろ携帯ぐらい持つか)
入須(折木君、忘れてないだろうな?)
・土曜日 秋分の日 AM10:00 折木家
入須「………」
ピンポーン
入須「………」
ピンポーン
入須「………」
ピッ プルルルルル…
入須「………」
ガチャッ
奉太郎「……………はい、おれきです」
入須「…折木君か? 来たよ」
奉太郎「……だれですか?」
入須「入須だ」
奉太郎「……先輩?」
入須「約束したはずだが」
奉太郎「…はぁ」
入須「…まさか、忘れていたのか?」
奉太郎「………」
奉太郎(………何のことだ…?)
入須「……顔が見たい。とりあえず入るよ」
奉太郎「…鍵は開いてます」
入須「わかった」
ガチャッ
奉太郎「………」
入須「……おはよう」
奉太郎「……おはようございます」
入須「…忘れていたようだな」
奉太郎「……はぁ」
入須「……洗面所はどこだ?」
奉太郎「……えー、一番奥の扉
入須「来い。君の頭の中身を全部洗い流してやる」ギュッ
奉太郎「! 先輩! 手が! 手が取れます!」
入須「うるさい」
奉太郎(勘弁してくれ…)
ガチャッ
入須「ほらっ」
奉太郎「痛っ! まったく…」
入須「顔を洗え」
奉太郎「まだいいんじゃ
入須「なんだ?」
奉太郎「わかりましたやりますよ。 …だからその顔で見ないで下さい」
奉太郎(…もはやトラウマだ)
入須「早くやれ」
奉太郎「はいはい」
入須「…頭を梳いてやろう」
奉太郎「ふーっ…自分でやります」
入須「いいから任せろ」
奉太郎「………」
入須「………」ガチッ
奉太郎「痛っ! 先輩…」
入須「髪が硬いな」
奉太郎「…先輩、意外と雑ですね」
入須「………」ガチッ
奉太郎「痛っ! …わざとですよね」
入須「そんなことはないよ」
奉太郎(…嘘だ)
入須「……ふぅ、いつも通りにはなったが」
奉太郎「これでいいんです」
入須「ボサボサだよ」
奉太郎「見慣れているでしょう?」
入須「…今日は休日だ」
奉太郎「そうですね、朝からエネルギーを消費しない日です」
入須「…君は休日に外に出ないのか?」
奉太郎「休むから休日って言うんですよ」
入須「…外に出る時は着替えるな」
奉太郎「そうですね」
入須「髪も整えるな」
奉太郎「はい」
入須「例えば恋人の家に行く時は、君ならどうする?」
奉太郎「…行った事が無いので」
入須「…まぁ、そうだな」
奉太郎(…また何か意味があるのか?)
奉太郎「………」
入須「………」
奉太郎(……あぁ、先輩、ポニーテールだな)
奉太郎(…それに肩開きのシャツ、七部丈のパンツ)
奉太郎「……ほんのり」
入須「ん?」
奉太郎「艶やか?」
入須「! …そうか?」
奉太郎「まぁ、はい」
入須「ふふっ」
奉太郎(喜んでくれているようだ)
入須「それで、君は?」
奉太郎「自分の家なので」
・AM10:15 リビング
奉太郎「…それで、何時帰るんですか?」
入須「いきなり失礼だな」
奉太郎「今日は土曜日で祝日です」
入須「そうだな」
奉太郎「明日は日曜日です」
入須「あぁ」
奉太郎「貴重な二連休です」
入須「余りある事ではないな」
奉太郎「…一時まで寝る予定でした」
入須「そうか」
奉太郎「……では、また今度」スッ
入須「待て」
奉太郎「…なんですか?」
入須「座れ」
奉太郎「………」
入須「早くしろ」
奉太郎(帰る気は無いようだ…)
入須「……休みの日に君の家に行くと言ったはずだが」
奉太郎「…そうでしたか?」
入須「言った」
奉太郎「覚えてませんでした」
入須「…君は手帳を持っているか?」
奉太郎「はい」
入須「どこにある?」
奉太郎「部屋に」
入須「後で書いておく」
奉太郎「…今更いいです」
入須「一週間分の予定をだ」
奉太郎「やめてください」
入須「君が忘れるのが悪いんだ」
奉太郎(手錠を掛けられた気分だ…)
奉太郎「……今日はどうしたんですか?」
入須「君の省エネ生活の指導だ」
奉太郎「…え?」
入須「確かに今の時代は省エネだろう、それは悪くない。電力削減、ガス削減、重要な事だ。エネルギーには限りがあるからな」
奉太郎「そうでしょう。その通りです」
入須「だが君の場合は省エネではなく零エネだ。限りなく零に近づける事を良しとするのではなく、零である事が通常なんだろう?」
奉太郎「…良い響きですねぇ、零エネ」
入須「やらなければならない事を零にするんじゃない」
奉太郎「安請け合いをしすぎるのもどうかと思いますけど」
入須「そうではない。人間は消費をするものだと言っている」
奉太郎「…わかってますよ。最近は万人の死角の件でエネルギーを消費しすぎてしまったので、確かに零エネだったかもしれません」
入須「…一ヶ月以上経っているが」
奉太郎「それなりに衝撃的だったんですよ」
入須「まぁ、その件に関してはいい。目的はわかったな? 今日は一日私と過ごして貰う」
奉太郎「…はぁ」
奉太郎(…これで、帰る確率が零だと証明されたな。きゅーいーでぃー)
入須「ところで君は朝食は済ませたのか?」
奉太郎「俺はついさっき起きましたので」
入須「なら私が作ってやろう」
奉太郎「…まだいいですよ」
入須「食材を買ってきたんだ」
奉太郎「いらないです」
入須「キッチンを借りるぞ」スッ
奉太郎「………」
奉太郎(…仕方ない、今日はいいだろう。明日も休みだしな)
・AM10:30 台所
入須「………」ガタッ
奉太郎(さつまいも、ベーコン、チーズ、凍ったブルーベリー、ヨーグルト、牛乳、はちみつ)
奉太郎(随分大きい鞄だと思ったが)
入須「私も朝食はまだなんだが、昼食もあるしな。軽く済ませよう」
奉太郎「…兼用じゃないんですか?」
入須「私なりに考えてきたんだ。少し家の物を借りてもいいか?」
奉太郎「えぇ」
入須「では、少し待っていろ。 …あぁ、エプロンはあるかな?」
奉太郎「そこに掛かってますよ」
入須「助かる」
奉太郎「………」
入須「……~♪」
奉太郎(…鼻歌がカノンだ)
トン…トン…
ガチャガチャ
ジュー
奉太郎(…眠い)
入須「ミキサーを借りるぞ」
奉太郎「…どうぞ」
入須「寝るなよ?」
奉太郎「…がんばります」
トクトクトク
パシャ
ウィーン
奉太郎「………」
カタンッ
入須「できたぞ」
奉太郎「………」
入須「………」ペシッ
奉太郎「痛っ」
入須「起きろ」
奉太郎「…寝てませんよ」
入須「嘘をつくな」
奉太郎「…なんですかこれ? さつまいもを焼いた物と、シェイク?」
入須「ガレットだ。あと、正確にはスムージーだな」
奉太郎「…はぁ」
入須「気に入って貰えると良いんだが」
奉太郎「朝は洋食なんですね」
入須「君がそうだろうと思ってな」
奉太郎(パン一枚で洋食といっていいのだろうか…)
入須「さぁ、頂こう」
奉太郎「はい」
入須「………」
奉太郎(…見られている)
奉太郎「………」パリッ
入須「……どうだ?」
奉太郎「……ん。 …美味い」
入須「! そうか!」
奉太郎「美味しいですね、このガレット」
入須「ありがとう。では私も」
奉太郎(先輩、料理上手かったんだな)
入須「……なんだ?」
奉太郎「いえ、何も」
入須「…ふふっ、私は料理ができないと思ってたんじゃないか?」
奉太郎「思ってました」
入須「イメージで?」
奉太郎「はい」
入須「心外だな。 …まぁ、勉強してきたのは確かだが」
奉太郎「そうですか」
入須「……勉強とは何の為にするものだ?」
奉太郎「卒業する為ですか?」
入須「それは一部分に過ぎない。自分の為だ」
奉太郎「…確かに」
入須「だが料理の勉強に関しては一概にそうとは言えないと私は考えている」
奉太郎「…はぁ」
入須「…考えを放棄するな」
奉太郎「………」
奉太郎(あぁ、今日の消費エネルギーは過去に無い量になりそうだ…)
入須「………」
奉太郎「……自分の為ではないなら、他人の為ですか?」
入須「そうだ。自分の腹を満たす為、美を味わう為、そして他人に喜んで貰う為」
奉太郎「はい」
入須「作った人に美味しいといって貰う為」
奉太郎「……俺の為に、勉強してきてくれたんですか?」
入須「…そうだ」
奉太郎(頼んでません、なんて、今のこの人の前では冗談でも言えないな)
奉太郎「嬉しいです」
入須「そうか?」
奉太郎「ありがとうございます」
入須「…ふふっ」
奉太郎(…まぁ、確かに美味いな、コレは)
・AM11:00 リビング
タンタンタン
供恵「…あれ? あんた今日は早いね」
奉太郎「…誰かのせいでな」
入須「先輩、おはようございます。お邪魔しています」
供恵「おはよ、後輩」ドスッ
奉太郎「隣に座るな」
供恵「ここしか空いてないでしょーが」
奉太郎「立ってろ」
供恵「あんたが立ちな」
入須「先輩、私が」
供恵「あーいーって、冗談だから」
奉太郎「冗談じゃない」
奉太郎(……ん?)
奉太郎「姉貴、入須先輩の事知ってるのか?」
供恵「そりゃ一年同じ高校に居れば知ってるよ」
奉太郎(んな事あるか)
入須「先輩にはお世話になってな」
供恵「そーそー」
奉太郎「コイツに他人の世話をする甲斐性があったんですね」
供恵「あんたよりはね」
奉太郎(…反論できない)
入須「…ふふっ、君と先輩は仲が良いんだな」
奉太郎「…先輩、大いなる誤解です」
供恵「今日は一日こいつと?」
入須「はい」
供恵「つまらないと思うよー。何も起きない、零だね」
入須「そんな事は
供恵「あるって。喋らない動かない何も無い、どーしようもないヤツだから」
奉太郎(…ムカつくがその調子だ、姉貴)
入須「…私は折木君と居るだけで楽しいですよ、先輩」
供恵「へー、変わってるねー」
入須「ふふっ、そうかもしれませんね」
供恵「…本気?」
入須「私はそのつもりです」
供恵「ふーん」
奉太郎「………」
入須「折木君がどうかは、わかりませんが」
供恵「え? 返事貰ってないの?」
入須「はい」
供恵「最悪だねー」
入須「いいんです、私は急いでませんので」
供恵「無理矢理言わせてやろうか?」
入須「先輩…」
供恵「冗談よ、じょーだん」
奉太郎「………」
奉太郎(…あぁ、逃げたい)
・AM11:15 リビング
供恵「それじゃ、私出掛けるわ」
奉太郎「おぉ」
供恵「夜には帰るから」
奉太郎「あぁ」
入須「先輩、また夜に」
供恵「可愛い弟を宜しくねー、可愛い後輩」
入須「ふふっ、はい」
奉太郎「…早く行け」
供恵「はいはい、じゃーいってきまーす」
ガチャッ バタン
奉太郎(嵐が過ぎ去った…)
入須「…どうした、折木君?」
奉太郎「…いえ、なんでも」
入須「久々に先輩と直接話せて嬉しかったよ」
奉太郎「物好きですね」
入須「そうか?」
奉太郎「初めて聞きましたよ」
入須「君が聞かないだけだろ? 思い返せば、先輩の話を君から聞いた事は無かったな」
奉太郎「これから一生無いですね」
入須「私は尊敬しているのだが」
奉太郎「姉貴を?」
入須「あぁ。私がどう足掻いてもあの人には敵わないだろう」
奉太郎「…まぁ、確かに」
入須「凄い人だよ」
奉太郎「…先輩も行動力は余り無さそうですね」
入須「失礼だな」
奉太郎「省エネですか?」
入須「君と一緒にするな。それに、私は動くぞ」
奉太郎「…へぇ」
入須「君を茶に誘っただろ」
奉太郎「…はぁ」
入須「クラスの作品も完成させた」
奉太郎「撮影に参加したんですか?」
入須「…今日も君の家に来たし」
奉太郎「…そうですか」
入須「…なんだ」
奉太郎「いえ、何も」
入須「馬鹿にしてるだろ」
奉太郎「してませんよ」
入須「してる」
奉太郎「してません」
入須「………」
奉太郎「………」
入須「…まぁ、君と一緒と言うのも悪くはないか」
奉太郎「…そうきますか」
入須「嬉しいか?」
奉太郎「嬉しくないですよ。省エネは俺のです。返して下さい」
入須「貰った覚えは無いんだが」
奉太郎「…先輩は自ら動かなくても、周りが動いてくれるんじゃないんですか?」
入須「そうだな」
奉太郎「ありがたい事ですね」
入須「君も尽くしてくれると嬉しいんだが」
奉太郎「…もう二度としません」
入須「…そういう意味ではないよ」
奉太郎「………?」
入須「…なんでもないよ」
・AM11:30 リビング
入須「朝は本を読まないんだな」
奉太郎「頭に入らないので」
入須「そろそろ冴えて来ただろ?」
奉太郎「今日は先輩もいますから」
入須「…そ、そうか」
奉太郎「冗談ですよ」
入須「…私も怒るぞ」ガシッ
奉太郎「痛っ! …すいません、謝りますから腕を掴まないでください」
入須「全く…」
奉太郎「結構力強いですね、先輩」
入須「君は弱そうだな」
奉太郎「そんな事ありません」
入須「そうか?」
奉太郎「…ある程度はあります」
入須「…随分濁したな」
奉太郎「自慢できる程はありませんから」
入須「ふむ、ちょっと見せてみろ」
奉太郎「…いやです」
入須「ほら腕を」
奉太郎「………」グッ
入須「…中々良いじゃないか」ペタペタ
奉太郎「お世辞はいいですよ」
入須「男の腕だ」ペタペタ
奉太郎「…あの、そろそろ」
入須「………」ペタペタ
奉太郎「…顔、近いです、先輩」
入須「…! あぁ、すまない」
奉太郎「…ふぅ」
入須「夢中になってしまった」
奉太郎(どこにそんな要素があるんだ…)
入須「部活もやっていないのに逞しいな」
奉太郎「…部活はやってますけど」
入須「…あぁ、そうじゃない。運動部に、という意味だ」
奉太郎「わかってますよ。まぁ、授業で体育はありますから」
入須「…授業だけでそうはならないだろ」
奉太郎「そもそもの話、そう言うほど有りませんから」
入須「そうか?」ペタペタ
奉太郎「もう勘弁してください…」
入須「ふふっ。 …ところで、古典部はどうだ?」
奉太郎「いつも通りですよ」
入須「違う。文化祭の事を聞いているんだ」
奉太郎「あぁ。俺の作業は終わりましたよ」
入須「…君に担当が割り振られていたとは」
奉太郎「遠慮と言う言葉を知らない奴らなので。 …まぁ、何も手伝わない訳にもいかないですし」
入須「…君も成長したんだな」ナデナデ
奉太郎「っ! …失礼ですね。やるべき事は手短に、ですよ」
入須「ふふっ」ナデナデ
奉太郎「………」
奉太郎(今日はスキンシップが過剰すぎるぞ、先輩…)
・AM11:45 リビング
奉太郎「先輩の方はどうなんですか?」
入須「……ん?」ナデナデ
奉太郎「長いです先輩」
入須「……準備なら君達のおかげで滞りなく終わったよ。後は前日に設営をするだけだ」
奉太郎「…思ってないでしょうに」
入須「そんな事は無い。完成したのは間違いなく、君のおかげだ」
奉太郎「…そうですか」
入須「設営で何かトラブルでも起こらない限りは問題ないだろう」
奉太郎「先輩が居るなら起きそうにないですけど」
入須「勿論、そうなるように努力はするよ」
奉太郎「…でも先輩、見てるだけですよね?」
入須「基本はな」
奉太郎「基本?」
入須「後は指示をしたり、当日の段取りを組んだり」
奉太郎「…まぁ、そうですよね」
入須「なんだ?」
奉太郎「先輩が金槌持って看板作っている姿は想像出来ないなと」
入須「…否定したい所だが、それには私も反論できないな」
奉太郎「今日の服装ならアクティブに動けそうですが」
入須「肩と足の紐が邪魔じゃないか?」
奉太郎「あぁ、何かに引っ掛かりそうですね」
入須「だろう?」
奉太郎「でも髪を括っている姿も中々様になってますし」
入須「この纏め方ではできないよ。ただ垂らしているだけだからな」
奉太郎「確かに、長くて邪魔ですね」
入須「……君は半ズボンを履くのか?」
奉太郎「…いえ、あまり履きませんね」
入須「…確かに、そこまで似合いそうにはないな」
奉太郎「否定はしませんよ」
入須「では、長ズボンが好きと言う事でいいのかな?」
奉太郎「そうなりますかね」
入須「………」
奉太郎「……先輩、なんとなく俺に求めている事はわかりました」
入須「そうか」
奉太郎「ですが、流石に今の情報だけでは分かりません」
入須「君が言った事を思い出せ」
奉太郎「…はぁ」
入須「私は少し不機嫌だよ」
奉太郎(俺の知らない所で勝手にならないでくれ…)
入須「君が自分を見つめ直し、私の望む言葉を言うまで機嫌は直らないからな」
奉太郎「………」
奉太郎(この人も、千反田達に負けず劣らず厄介だな…)
入須「……ふん」
奉太郎「………」
入須「……早く考えろ」
奉太郎「……分かりましたよ」
・PM12:00 リビング
入須「……長い」
奉太郎「すいませんね」
入須「……ふん」
奉太郎「………」
奉太郎(設営の話、ズボンの話)
奉太郎(その話の中の俺の言葉に先輩が不機嫌になる要素があり、それの解決方法は俺が先輩に何かを言うと)
奉太郎「………!」
奉太郎(……考えさせられる事に慣れてきている!)
入須「……まだか?」
奉太郎「……わがまま女帝」ボソッ
入須「なんだ?」
奉太郎「なんでもありません。 …先程二つの話をしましたね」
入須「あぁ」
奉太郎「先輩が言いたい事が含まれているのは後者でしょう。では前者に問題点があり、後者にヒントが隠されている」
入須「まぁ、そうだな」
奉太郎「その二つの話の中に共通点が有り、先輩はその点に関して俺に何かを言って欲しい」
入須「そうだ」
奉太郎「人に言葉を望む、勿論否定的な言葉ではなく肯定的な言葉でしょう」
入須「あぁ」
奉太郎「…共通点は服装です。確か肩と足の紐の話しをしましたね? その上でズボンの話しを先輩はした」
入須「……続けて」
奉太郎「…では、一度だけ言います」
入須「あぁ」
奉太郎「……紐のリボンが付いてて可愛いズボンですね、先輩」
入須「! ………」
奉太郎「………」
入須「……違うんだが」
奉太郎「……えぇ?」
入須「…随分間抜けな声を出したな」
奉太郎「ち、違うんですか?」
入須「私の求めていた言葉ではない。 …だが、嬉しいよ」
奉太郎「…はぁ」
入須「…長い髪が邪魔ではないかと言ったな?」
奉太郎「…あぁ、言いましたね」
入須「自分で言うのも何だが、私は気に入っている」
奉太郎(……そういう事か)
奉太郎「…先輩、ズボンの話ではそれはわかりません」
入須「長い短いの話をしたじゃないか」
奉太郎「それに、俺は嫌いなんていってませんよ」
入須「邪魔と言ったろ」
奉太郎「………」
入須「………」
奉太郎「………」サラッ
入須「!」
奉太郎「…こんな綺麗な髪、嫌いなんて言いません」
入須「そ、そうか」
奉太郎「はい」
入須「……ありがとう」
奉太郎「いえ」
入須「…好き、とは言ってくれないのか?」
奉太郎「その言葉、今はまだいらないんじゃないんですか?」
入須「……機嫌が悪くなった」
奉太郎「えぇー…」
入須「…ふふっ、冗談だよ」
奉太郎「まったく…」
・PM12:15 リビング
入須「君は文化祭当日はどうするんだ?」
奉太郎「さぁ、特に何も決めていません」
入須「…まぁ、そうか」
奉太郎「ずっと店番でも良い位ですよ」
入須「君が文化祭をアクティブに楽しんでる姿こそ、想像できないな」
奉太郎「先輩はどうするんですか?」
入須「私は視聴覚室に詰める事になるだろうな」
奉太郎「三日間ともですか?」
入須「あぁ。合間合間で休みは貰うが」
奉太郎「大変ですねぇ」
入須「…心底興味がなさそうだな」
奉太郎「はい」
入須「誰かと共に回ろうと、少しでも思ったりはしないか?」
奉太郎「…先輩、古典部まで遊びに来て下さいよ」
入須「……先手を打ったな」
奉太郎「そう何度もやられませんよ」
入須「少しくらい時間を貰えないか?」
奉太郎「…考えておきます」
入須「君と行く所を考えておくから」
奉太郎「後顧を断たないで下さい」
入須「君はしおりを見たか?」
奉太郎「見てません」
入須「…奇術部と手芸部が気になるんだ」
奉太郎「そうですか」
入須「……ふん」
奉太郎「…一回だけなら付き合いますから」
入須「二回だ」
奉太郎「どちらかにして下さい」
入須「……考えておく」
奉太郎「お願いします」
入須「…デートだな」
奉太郎「違います」
入須「二人で一緒に行くだろ」
奉太郎「それだけです」
入須「……ふん」
奉太郎「…先輩」
入須「なんだ?」
奉太郎「慣れました」
入須「なら、新しい方法を考えないとな」
奉太郎「…やめて下さい」
入須「次は怒る」
奉太郎「やめて下さい」
入須「…君は後輩なのに私の扱いが酷いな」
奉太郎「敬語じゃないですか」
入須「呼び捨てでもいいんだぞ?」
奉太郎「…どうすればいいんですか、それ」
入須「……ふん」
奉太郎(な、なんなんだこれは…)
・PM12:30 リビング
奉太郎「……ん?」
入須「…どうした?」
奉太郎「もう十二時半ですね」
入須「そうだな。 …そろそろ昼食にしようか」
奉太郎「そうですね」
入須「では」ゴソゴソ
奉太郎「………?」
ゴトッ
入須「弁当を持ってきた」
奉太郎「おぉ」
奉太郎(かなり大きな鞄だと思ったが、朝の材料以外に弁当も入っていたのか)
入須「手作りだ」
奉太郎「先輩のお母さんのですか?」
入須「………」ペシッ
奉太郎「痛っ。言葉で言って下さい…」
入須「私のだ」
奉太郎(遂に暴力に訴えだした…)
奉太郎「全く、冗談ですよ。 …開けても良いですか?」
入須「あぁ」
パカッ
奉太郎「おぉ」
入須「…どうかな?」
奉太郎「美味そうですね」
入須「そ、そうか?」
奉太郎(俵おにぎり、卵焼き、竜田揚げ、シイタケと筍、ニンジン、さやえんどう、レンコン、ゴボウの筑前煮、そしてポテトサラダ)
入須「デザートもあるよ。フルーツを切っただけだが」
奉太郎(…これはシンプルで美味そうだ!)
奉太郎「それではいただきます」
入須「あぁ、召し上がれ」
奉太郎「………」パクッ
入須「……どうだ?」
奉太郎「…美味い」
入須「本当か?」
奉太郎「美味いです」パクッ
入須「良かった…」
奉太郎「味が染みてますね、筑前煮」パクッ
入須「それは意外に簡単に作れたよ」
奉太郎「竜田揚げもサクッとしてますね」パクッ
入須「少し揚げすぎてしまったんだが…」
奉太郎「イケますよ。卵焼きも柔らかくて美味しいです」
入須「それはとても上手く巻けたんだ。醤油味だが大丈夫だったか?」
奉太郎「俺もそちらの方が好きですよ」
入須「そうか。では私も頂こう」パクッ
奉太郎「このおにぎりも先輩が?」
入須「……ん。 …そうだが?」
奉太郎「………」パクッ
入須「…どうした?」
奉太郎「いえ、なんでも」
奉太郎(少し恥ずかしくなってしまうのは、俺が邪な人間だからなんだろうな…)
入須「…私の手が気になるのか?」
奉太郎「! …いえ、そんな事は」
入須「だが先ほどからずっと
奉太郎「料理が初めてなのに失敗はしなかったのかなと思っただけです!」
入須「失礼だな、初めてではないよ。 …三回目くらいだ」
奉太郎「…余りやらないのは確かですね」
入須「うるさい。レシピを見ながら作ったから問題ないはずよ」
奉太郎「美味いのは本当ですよ」
入須「…まぁ、包丁に慣れていないのは認めるわ」
奉太郎「怪我はしなかったみたいですね」
入須「幸いな。慎重にやった分時間は掛かってしまったけど」
奉太郎「始めたばかりでこれなら、少しやればすぐにコツを掴むんじゃないですか?」
入須「…君は作って欲しいのか?」
奉太郎「いえ、別に」
入須「………」
奉太郎「…だからその顔はやめて下さい。冗談ですよ」
入須「…まぁ、毎日作る事は出来ないが」
奉太郎「作ってくれるなら、嬉しいですよ」
入須「…そ、そうか。 …なら、作る時は言うようにするよ」
奉太郎「お願いします」
入須「リクエストがあれば言ってくれ」
奉太郎「はい」
入須「…君が良ければ、長い間作ろうかと思うんだが」
奉太郎「…はぁ」
入須「長い間、作ろうかと思うんだが?」
奉太郎「…まぁ、ありがとうございます」
入須「! あぁ、頑張るよ」
奉太郎(…先輩が卒業するまで作ってくれるんだろうか?)
入須「ふふっ」
奉太郎(まぁ、喜んでいるなら良いだろう。わざわざ藪をつつくとまた不機嫌になるしな…)
入須「さぁ、残りを頂いてしまおう」
奉太郎「はい」
・PM1:25 リビング
奉太郎「先輩、ご馳走様でした」
入須「お粗末様。綺麗に食べてくれたな」
奉太郎「残すのも悪いですし」
入須「そう言って貰えると甲斐があるよ」
奉太郎「…ところで、この後はどうするんですか?」
入須「あぁ、実は君にお願いしたい事が一つあってな」
奉太郎「……なんですか?」
入須「そう警戒するな。君の部屋を見せて欲しいんだ」
奉太郎「…はぁ」
入須「どうだろうか?」
奉太郎「まぁ、いいですけど」
入須「そうか。では早速行こう」
奉太郎「二階ですよ。来て下さい」
・PM1:30 奉太郎の部屋
ガチャ
奉太郎「ここです」
入須「お邪魔します」
奉太郎「何もありませんけど」
入須「……確かに」
奉太郎「基本的に俺しか使いませんから」
入須「スペースは広く見えるな。布団くらいなら敷けそうだ」
奉太郎「机があるのでテーブルを置いてないんです」
入須「…後はクローゼットと本棚か」
奉太郎「見て面白い物は有りませんよ」
入須「…ふむ」スッ
奉太郎「先輩、何屈んでるんですか?」
入須「………」
奉太郎「! 先輩!」ガシッ
入須「なんだ?」
奉太郎「…なぜベッドの下を除くんですか」
入須「気にするな」
奉太郎「気になりますって」
入須「…君の嗜好を理解しておこうと思ってな」
奉太郎「…しこう?」
入須「私は先輩だ」
奉太郎「そうですね」
入須「胸もある程度はある」
奉太郎「…な、何の話をしてるんですかっ」
入須「君のベッドの下に後輩、スレンダーと書いてある本があったら処分しようと思う」
奉太郎「有りません!」
入須「…まぁ、それ以外が有っても処分するが」
奉太郎「だから有りませんから…」
入須「チェックするから少し待て」
奉太郎「やめて下さい」
入須「………」
奉太郎「っ! 先輩!」
入須「…なんだ?」
奉太郎「俺の事を随分信用していないようですね」
入須「そんな事はないぞ」
奉太郎「いいです。わかりました」
入須「…折木君?」
奉太郎「……ふん」ドスッ
入須「…冗談だよ」
奉太郎「………」ペラッ
入須「……折木君?」
奉太郎「………」ペラッ
入須「折木君…」
・PM2:00 奉太郎の部屋
奉太郎「………」ペラッ
入須「…私も本を読んでいいかな?」
奉太郎「………」ペラッ
入須「…借りるよ」
奉太郎「………」ペラッ
入須「……タロットか」
奉太郎「………」ペラッ
入須「君がこんな本を持っているとは意外だな」
奉太郎「………」ペラッ
入須「……少し、読ませてもらうから」
奉太郎「………」ペラッ
入須「………」
・PM2:30 奉太郎の部屋
奉太郎「………」ペラッ
入須「………」ペラッ
奉太郎「………」ペラッ
入須「………」パタン
奉太郎「………」ペラッ
入須「………」
奉太郎「……ふぅ」
入須「!」ビクッ
奉太郎「…疲れましたね、先輩」
入須「……そ、そうだな」
奉太郎「なんて顔してるんですか」
入須「……君のせいだ」
奉太郎「もう怒ってませんよ」
入須「…本当か?」
奉太郎「はい」
入須「そうか…」
奉太郎「このままだと折角の休日が無駄になってしまいますし」
入須「…あぁ、そうだな」
奉太郎「もうやめて下さいよ」
入須「勿論だ。 …君に無視されるのは辛いよ」
奉太郎「…すいません」
入須「…謝るな。悪いのは私だ」
奉太郎「…ですが」
入須「…なら、隣に来てくれないか?」
奉太郎「……? はい」スッ
入須「ありがとう」
コツッ
奉太郎「!」
奉太郎(先輩の頭が俺の肩に…)
入須「少し、甘えたい気分だ」
奉太郎「…そうですか」
入須「しばらく…良いか?」
奉太郎「はい」
入須「……折木君」
奉太郎「はい」
入須「……折木君」
奉太郎「なんですか?」
入須「……呼んだだけだ」
奉太郎「…可愛いですね、先輩」
入須「…君に言われると、嬉しいよ」
奉太郎「…そうですか」
入須「………」
奉太郎「………」
奉太郎(こういう時間の使い方も、悪くないかもな…)
・PM3:00 奉太郎の部屋
入須「―――省エネが過ぎるぞ折木君。大体君は
奉太郎(どうしてこうなった…)
入須「私に全く興味を持ってくれないじゃないか。君が言ったんだぞ、興味を持ちあえと」
奉太郎「それとその…え、エッチな本は全く関係がな
入須「今は私の話をしているんだ」
奉太郎「………」
入須「…変態」
奉太郎「違います! ただのグラビア雑誌じゃないですか…」
入須「うるさい、ケダモノ」
奉太郎「ケダモノ…」
入須「結局君はこういうスレンダーな女性が好きなんだろ?」
奉太郎「いや、だから違いますって…」
入須「…まぁ、私も体の話をしたい訳じゃない。気持ちの話だ」
奉太郎「…はぁ」
入須「私の一方通行じゃないか」
奉太郎「……まぁ、はい」
入須「はい、と言ったか?」
奉太郎「! いや、言葉を選び間違えました」
入須「まだ私の事が嫌いなのか?」
奉太郎「…嫌いじゃありませんよ」
入須「なら好きと言う事になるだろう」
奉太郎「なりません」
入須「言葉遊びをするつもりはないよ」
奉太郎「……専売特許の癖に」ボソッ
入須「なんだ?」
奉太郎「……先輩」
入須「だからなんだ?」
奉太郎「疲れませんか?」
入須「……疲れた」
奉太郎「ちょっと休みましょう」
入須「あぁ」
奉太郎「…今度から改めますから」
入須「…今日からだ」
奉太郎「わかりましたよ」
入須「まったく…少しは自信があったんだがな」
奉太郎「…はぁ」
入須「自信を無くすよ」
奉太郎「…何がです?」
入須「小さくはないだろう?」ポヨン
奉太郎「!!!」
入須「…顔が赤いぞ、折木君」ニヤ
奉太郎「せ、先輩が
入須「私が、どうした?」ポヨンポヨン
奉太郎「!!!」
入須「手に乗るんだ」ユサユサ
奉太郎「!!!」
入須「……んっ」クニッ
奉太郎「せ、先輩!」
入須「…なんだ?」
奉太郎「出掛けましょう」
入須「……まさか君からその言葉を聞くとは思わなかった」
だけどそんなほうたるも可愛い
奉太郎「着替えますから下で待っていて下さい」
入須「ここでもいいよ」
奉太郎「俺が嫌です。さぁ、早く」グイッ
入須「わかったから押さないでくれ」
奉太郎「大人しくしていて下さいよ」
入須「私は子供か。早くしろよ」
奉太郎「頑張ります」
ガチャ
入須「……折木君」
奉太郎「…なんですか?」
入須「君は言葉であれこれ言うよりは、体を使った方がよく動くようだな」
奉太郎「!」
入須「理解しておくよ」ニヤ
バタン
奉太郎「………」
奉太郎(猫に睨まれたネズミの気分だ…)
・PM3:15 奉太郎の部屋
ガチャ
入須「折木君」
奉太郎「うぇっ!」
入須「…随分素っ頓狂な声を出したね」
奉太郎「…着替えてる最中なんですが」
入須「パソコンを借りていいかな?」
奉太郎「…どうぞ」
入須「ありがとう」
バタン
奉太郎「………」
ガチャ
奉太郎「えぇっ!」
入須「私は気にしないから」
バタン
奉太郎「………」
奉太郎(俺が主導権を握る事はこれから先、一生無さそうだな…)
・PM3:25 リビング
カチッカチッ
タンタンタン
奉太郎「お待たせしました」
入須「あぁ」
奉太郎「…何を見ているんですか?」
入須「…わからないか?」
奉太郎「はい」
入須「高校のホームページだぞ?」
奉太郎「…初めて見ました」
入須「……まぁ、良い」
奉太郎「…文化祭特設ページ?」
入須「あぁ、これか」カチッ
奉太郎「カウントダウンしてますね」
入須「内容の紹介もあるよ」
奉太郎「…へぇ」
入須「…まぁ、後で見ておくといい」
奉太郎「そうします」
入須「それで、どこに行くんだ?」
奉太郎「前に俺の知っている喫茶店に行こうと言ってましたよね」
入須「覚えていてくれたのか?」
奉太郎「さっき思い出しました」
入須「……まぁ、進歩はしたか」
奉太郎「折角ですし行きましょう」
入須「あぁ、わかった」
奉太郎「少し歩きますよ?」
入須「構わないよ。どれくらいだ?」
奉太郎「十五分くらいですね。川を越えた所です」
入須「それなら、少し川沿いを歩いて行かないか?」
奉太郎「わかりました」
・PM3:30 折木家前
バタン カチャ
奉太郎「行きましょう」
入須「あぁ」
奉太郎「まず左に真っ直ぐです」
入須「…折木君」
奉太郎「なんですか?」
入須「…察してくれ」
奉太郎「ノーヒントですか…」
入須「二人で外を歩くんだ。わかるだろ?」
奉太郎「………」ギュッ
入須「…成長したね」ギュッ
奉太郎「正解できて良かったですよ」
入須「ふふっ」
奉太郎(手を握るのも大分慣れてきたが…それでもやはり恥ずかしいな)
入須「ゆっくり行こうか」
奉太郎「そうですね」
・PM3:50 川沿いの道
奉太郎「この先を少し歩くと着きますよ」
入須「なんと言う所だ?」
奉太郎「パイナップルサンドです」
入須「…それが美味いのか?」
奉太郎「……メニューに無かったと思います」
入須「パイナップルサンドなのに?」
奉太郎「はい」
入須「……んん?」
奉太郎「ケーキが美味しいと思いますよ」
入須「…食べた事がないだろ」
奉太郎「はい」
入須「おすすめと言ったな?」
奉太郎「…ブレンドは美味いですよ」
入須「……まぁ、良い」
奉太郎「それにしても、大分涼しくなりましたね」
入須「そうだな、この様な服も今週で終わりだ」
奉太郎「肩の所、寒くないですか?」
入須「…少しな」
奉太郎「…半袖ですけどこの上着、着ます?」
入須「いいのか?」
奉太郎「はい」サッ
入須「…ありがとう」
奉太郎「もうすぐ着きますよ」
入須「………」
奉太郎「先輩?」
入須「…手を握ってくれ」
奉太郎「…はい」ギュッ
入須「………」ギュッ
奉太郎「…なんだかしおらしいですね」
入須「…似合わないか?」
奉太郎「意外です」
入須「…君だけよ」
奉太郎「………?」
入須「君の前だけだ」
奉太郎「…そ、そうですか」
入須「…そうだ」
奉太郎「………」
奉太郎(…この空気に当てられたんだろうか)
・PM4:00 パイナップルサンド
マスター「いらっしゃい」
奉太郎「どうも。 …先輩、奥に行きましょう」
入須「あぁ」
ガタッ
奉太郎「…どうします? 先輩」
入須「……そうだな。折角だ、セットにしよう」
奉太郎「ケーキセットですか?」
入須「あぁ……ん、抹茶のケーキか。これにしよう」
奉太郎「わかりました。マスター、ブレンド一つ」
入須「私はブレンドと抹茶のケーキを」
マスター「はい」
入須「…素敵な店だな」
奉太郎「静かで良い所です」
入須「君の注目点はそこだけなのか?」
奉太郎「…それ以外にありますか?」
入須「…あるよ」
奉太郎「何ですか?」
入須「抹茶が美味しい事だ」
奉太郎「…その注目点も先輩だけだと思いますけど」
・PM4:05 パイナップルサンド
マスター「お待たせ」カタッ
奉太郎「どうも」
入須「ありがとうございます」
マスター「ごゆっくり」
入須「…うむ、美味そうだ」
奉太郎「そうですね」カチャ ゴクッ
入須「頂きます」パクッ
奉太郎「………」
入須「…美味いな」
奉太郎「…そうですか」
入須「抹茶の風味がよく出ているよ」
奉太郎「先ほどまでの先輩の気持ちがようやくわかりましたよ」
入須「緊張するだろ?」
奉太郎「はい、とても」
入須「君の特別な店だ。例え不味くても美味いと言うけど」
奉太郎「…え?」
入須「あぁ、勘違いしないでくれ。本当に美味いよ」
奉太郎「…余りドキドキさせないで下さい」
入須「ふふっ、すまないな」
奉太郎「心臓に悪いです」
入須「君も食べればよかったのに」
奉太郎「甘い物にはそこまで熱心じゃないんですよ」
入須「というより、君は食べ物に執着心が無さそうだな」
奉太郎「…そんな事ありませんよ」
入須「まぁ、それはそれで私も助かるが」
奉太郎「…何の話ですか?」
入須「将来の話だ」
奉太郎「…将来?」
入須「…なんでもないよ」
奉太郎「…はぁ」
・PM4:30 パイナップルサンド
入須「…はぁ、美味かった」
奉太郎「なによりです」
入須「コーヒーもケーキも堪能させてもらったよ」
奉太郎「そうですか」
入須「また二人で来よう」
奉太郎「そうですね、機会があれば」
入須「…機会とは作るものだ、折木君」
奉太郎「…はぁ」
入須「来週の水曜日、手帳に書き込んでおけ」
奉太郎「………」
入須「わかったな?」
奉太郎「……黙秘し
入須「わ・か・っ・た・な?」
奉太郎「…はい」
入須「この後は何か考えているか?」
奉太郎「いえ、何も」
入須「そうか。 …なら、夕飯の買い物に行こう」
奉太郎「…いやで
入須「買い物に行こう」
奉太郎「いやです」
入須「後輩らしくない態度だな、折木君」
奉太郎「いやなものはいやです」
入須「…それでは、私一人で商店街まで出向き、重たい買い物袋を手に提げて一人で帰らなければ行けないな」
奉太郎「…そうですね」
入須「…重たい買い物袋だ。私の足取りはフラフラしてしまうだろう。もしかしたらそこに車が衝突してくるかもしれないな」
奉太郎「…可能性がないとは言えませんね」
入須「…食材を買えば両手が塞がってしまう。何も出来ない私を突然暴漢が襲ってくるかもしれないな」
奉太郎「…まぁ、無いとは言えませんね」
入須「…丁度夕飯時だ。腹を空かせた私は重たい買い物袋を持ち歩いている途中に体力が尽きて行き倒れてしまうかもしれないな」
奉太郎「…そんなに空いてるんですか?」
入須「そこを暴漢に襲われてしまうかもしれないな」
奉太郎「……まぁ、嫌なものは嫌なので」
入須「………」ペシッ
奉太郎「痛っ!」
入須「無理矢理連れて行く」ガシッ
奉太郎「痛い痛い! 行きますから!」
入須「なら早くしろ」
奉太郎(強引な怪力女帝だ……ん? おぉ!)
奉太郎「アマゾネスか!」
入須「…なんだって」
奉太郎「…すいません、口が滑りました」
入須「………」ペシッ
奉太郎「痛っ!」
入須「外で待ってる。払っておけ」
ガチャ バタン
奉太郎「………」
マスター「…甲斐性ないねぇ」
奉太郎「…ほっといて下さい」
・PM4:40 パイナップルサンド前
入須「ほら、行くぞ」
奉太郎「はいはい」
入須「…はいは一回だ」
奉太郎「…すいません。謝りますから睨まないで下さい」
入須「早く来い」
奉太郎「…はい」
・PM5:00 商店街
入須「野菜はこんなものか。では折木君、頼む」
奉太郎「はいはい」
入須「………」
奉太郎「…はい」
・PM5:05
入須「折木君、これも頼むよ」
奉太郎「…もう何でも持ちますよ」
・PM5:10
入須「折木君、これもだ」
奉太郎「はい」
・PM5:15
入須「これも」
奉太郎「…はい」
・PM5:20
入須「ほら」
奉太郎「………」
・PM5:25
ドサッ
奉太郎「せめて何か言って下さい…」
・PM5:30
入須「歩いて少し温まったな。君の上着も返すよ」
奉太郎「今ですか!?」
入須「それでは帰るよ」
奉太郎「…はい」
・PM6:00 折木家
ガチャッ
奉太郎「はぁ…はぁ…」
奉太郎(人使いが荒すぎる!)
入須「台所に頼む」
奉太郎「っはぁ…わ、わかりました」
入須「君は体力が無いな」
奉太郎「………」
入須「それが終わったら手を洗うんだぞ」
奉太郎「…はい」
入須「その後は風呂を洗っておけ」
奉太郎「…はい」
入須「それが終わったら食卓の準備だ」
奉太郎「…は、はい」
入須「…必ずやるんだぞ?」
奉太郎「…頑張ります」
入須「やるんだぞ?」
奉太郎「…はい」
入須「では頼む」
奉太郎(母親に怒られているかの様だ…)
・PM6:30 台所
奉太郎(ようやく終わったか…)
トントントン
奉太郎(頑張ってください。先輩)
入須「折木君、終わったようだな」
奉太郎「……えぇ、まぁ」
入須「君は料理は出来るか?」
奉太郎「出来ません」
入須「ならこの鍋を見ていてくれ」
奉太郎「………」
入須「なんだ?」
奉太郎「逃げても
入須「なんだ?」
奉太郎「……てつだいます」
入須「そうか。では頼むよ」
奉太郎(あぁ、俺は今日、死ぬんだろうな…)
・PM7:00 台所
供恵「たーだーいまー!」
奉太郎「! あ、姉貴!」
供恵「おー、どうした?」
奉太郎「助けてくれ!」
供恵「んんー?」
入須「お帰りなさい。先輩」
供恵「ただいまー。どしたのこいつ?」
入須「折木君は生活指導中です」
奉太郎「強制のスパルタ指導ですけど」
入須「………」
奉太郎「……睨まないで下さい」
供恵「ふーん。まぁ頑張りなさい、奉太郎」
奉太郎「おい、弟を見捨てるな」
供恵「おっ、美味そうじゃーん。人参いただきー」
入須「先輩」
供恵「んー? …!」
入須「手を洗って来て下さい、先輩」
供恵「は、はーい…」
入須「お願いします」
供恵「………」ドゴッ
奉太郎「痛っ! 何すんだ!」
供恵「あんたあの子に何言った?」
奉太郎「……うっかりしてたんだ」
供恵「早く仲直りしな!」ドゴッ
奉太郎「痛っ! 二回も叩くな!」
入須「折木君」
奉太郎「……はい」
入須「皿を出してくれないか?」
奉太郎「…はい」
奉太郎(自分の家なのに逃げ場が無い!)
・PM7:05
奉太郎「…先輩」
入須「なんだ?」
奉太郎「……すいませんでした」
入須「………」
奉太郎「何故あんな事を口走ってしまったのかは自分でもよく分からないんですが」
入須「……もう怒ってないよ」
奉太郎「…そうですか」
入須「…実はな、正直に話すと最初からそんなに怒ってはいなかったよ」
奉太郎「…え?」
入須「ただ、ものぐさな君を動かすには丁度良いと思ってな。 ふふっ、きびきびと動いてくれて助かったよ」
奉太郎「…先輩」
入須「ん? なんだ?」
奉太郎「…いや、今日はもういいです」
入須「懸命だ。今日は疲れただろ?」
奉太郎「そうですね」
入須「風呂に入るといつも以上に気持ち良いはずよ。それまで頑張ろう」
奉太郎「…はい、お互いに」
入須「あぁ」
供恵(へー、ふーん)
・PM7:40 台所
供恵「ごちそーさま」
入須「お粗末様でした、先輩」
供恵「ハンバーグ美味かったよ」
入須「ふふっ、ありがとうございます」
供恵「じゃー私風呂入ってくるから」ガタッ
入須「はい」
供恵「…あ、今日これから帰るの? 泊まってけば?」
入須「…いいんですか?」
供恵「いいよ」
奉太郎「…何で姉貴が決めるんだよ」
供恵「あんたが決められると思ってるの?」
奉太郎(ぐうの音も出ない…)
入須「…それでは、甘えさせて貰います」
供恵「そーしな、もう遅いし。寝床はどーしようかね?」
入須「…実は、考えていた所があるんです」
供恵「ん?」
奉太郎「?」
入須「あの…折木君の部屋で寝ようかと」
供恵「……え?」
奉太郎「……え?」
入須「布団を敷いて寝るスペースは十分有りますし」
供恵「んー、今日の家主として余り手放しで賛成はできないんだけど…」
奉太郎(そうだ姉貴、いいぞ)
入須「何も起きませんよ、先輩。私と折木君ですから」
供恵「あー…確かにこのヘタレじゃ無理か」
奉太郎「おい」
供恵「布団出すの手伝うのよ、奉太郎。じゃっ」
奉太郎「ちょ、ちょっと待て」
バタン
奉太郎「………」
入須「食べ終わったらお願いするよ、折木君」
奉太郎「…はい」
・PM8:00 リビング
供恵「あがったよー」
奉太郎「おぉー」
供恵「先入りなよ。コイツの後だとなんだしさ」
入須「いえ、そんな事は有りませんよ」
奉太郎「いいですよ先輩。 …でも、着替えはあるんですか?」
供恵「私の貸そうか?」
入須「…すいません、先輩」
供恵「ん?」
入須「実は持って来ているんです、着替え」
供恵「…へぇー、中々やる様になったねぇ」
入須「すいません、騙してしまって」
供恵「いーよ、今回は私の負け。狭い部屋だけどゆっくりしていきな」
入須「はい」
奉太郎「…先輩、もしかして」
入須「…すまないな、最初から君の部屋に泊まろうと思っていたんだ」
奉太郎「………」
供恵「ま、後は好きにやりなさい。一線越えなきゃ怒らないから」
奉太郎「越えねぇよ」
供恵「じゃ、おやすみー」
入須「おやすみなさい、先輩」
奉太郎「……先輩」
入須「過ぎた事よ。それじゃ、私も風呂を貰うとするよ」スッ
バタン
奉太郎「………」
奉太郎(…先輩と同室で一晩を過ごすのか)
奉太郎(一晩…)
奉太郎(………)
奉太郎(…ひ、一晩!?)
・PM8:30 リビング
奉太郎「………」
ガチャッ
入須「すまない、待たせたな」ホッコリ
奉太郎「…あ、いえ」
入須「…どうした?」
奉太郎(先輩の顔を直視できない…)
奉太郎「…風呂、行ってきます」
入須「あぁ……あ、折木君」
奉太郎「なんですか?」
入須「先に君の部屋に行っているよ。今日は早く寝るとしよう」
奉太郎「わかりました」
入須「戸締り、しっかりやるんだぞ」
奉太郎「はい」
入須「それじゃ、後でな」
タンタンタン
奉太郎「………」
・PM8:40 バスルーム
チャポン
奉太郎(…先輩、俺の部屋に泊まるつもりで今日、ここにやって来たのか)
奉太郎(今週の頭に告白されて、今日のこの状況…)
奉太郎(早いんじゃないのか? いや、今はこれが普通なのかもしれないな)
奉太郎(いやいや! 状況がこうなっているだけで、そういうつもりは俺も先輩も…)
奉太郎(…そういやこの風呂、先輩が浸かったんだよな)
奉太郎(………)
奉太郎(だぁぁ! 何を考えているんだ俺は!)
奉太郎(…今日は省エネとは程遠い生活をしてしまったな)
奉太郎(明日は先輩、どうするんだろうな)
奉太郎(何時に帰るんだろうか…)
奉太郎(次の日は月曜だ、今のような状況にはならないだろ…)
奉太郎(それがわかっているだけでも…)
奉太郎(だいじょう……)
奉太郎(………)
奉太郎(………)
奉太郎(………)
奉太郎「!」
バシャッ
奉太郎「死ぬ! 本当に死ぬ!」
・PM9:00
ガチャッ
入須「あぁ、折木く
バタッ
入須「折木君!?」
奉太郎「………」
入須「大丈夫か!? 折木君!」
奉太郎「……平気です。少しのぼせただけなので」
入須「何をしているんだ君は…」
奉太郎「…すいません」
入須「…ほら、頭を乗せろ」
奉太郎「! い、いや、いいですから…」
入須「……早くしろ」グイッ
奉太郎「うわっ」
入須「……こうして目を覆えば、少しは楽になるだろう」
奉太郎(膝枕の上、顔に手を当てられて…情けなくて嫌になるな)
奉太郎(だが何故だろうな…凄く安心する…)
入須「………」
奉太郎「………」
・PM9:20
奉太郎「…先輩」
入須「あぁ、なんだ?」
奉太郎「んっ…」スッ
入須「もう大丈夫なのか?」
奉太郎「はい、大分楽になりました。ありがとうございます」
入須「気をつけろよ? 風呂場で溺死なんて洒落じゃ済まないぞ」
奉太郎「…十分気をつけます」
奉太郎(前科もあるしな…)
入須「君はベッドだな?」
奉太郎「はい、すいませんけど」
入須「いいよ。それじゃ、電気を消すぞ?」
奉太郎「まだ十時にもなってないですけど、先輩は良いんですか?」
入須「あぁ、私も今日は少し疲れた」
カチッ
奉太郎「それでは先輩、おやすみなさい」
入須「おやすみ、折木君…」
・PM10:00
奉太郎(まだ顔が熱いな…)
ゴソッ
奉太郎(……ん?)
ピトッ
奉太郎「!」
奉太郎(背中に、先輩が…)
入須「……折木君」
奉太郎「……先輩?」
入須「! 起きていたのか…」
奉太郎「…どうしたんですか」
入須「…今日は楽しかったよ」
奉太郎「……はい」
入須「一日中君と共に居れて、嬉しかった」
奉太郎「…はい」
入須「…君が怒った時は、少し悲しかったけど」
奉太郎「…俺も、先輩が怒っていた時は怖かったですよ」
入須「…お互い様だな」
奉太郎「…ですね」
入須「……最近、君の事ばかり考えてしまうんだ」
奉太郎「………」
入須「君とどこに行きたい、何をしたい、こう言う話をしたい」
奉太郎「………」
入須「…例えば、君と結婚をしたらどんなに幸せだろうか。子供が出来たらどんな家庭になるだろうか」
奉太郎「………」
入須「…大人になった君は、どうなるだろうか。私は君に相応しい女だろうか」
奉太郎「………」
入須「……そんな事、ばかりだ」
奉太郎「……俺に、勇気が足りないせいです」
入須「…折木君に?」
奉太郎「…省エネ生活に於いて、変化は必要ないんです」
入須「………」
奉太郎「…でも、そんなもの俺が一歩を踏み出せばいいだけ」
入須「………」
奉太郎「…ようは、怖いんです。ビビリ、ヘタレ。そんな奴なんですよ、俺は」
入須「そんな事」
奉太郎「ありますよ。嫌いじゃないと言って言葉を濁したり、冗談を言って真意を避けている。先輩の好意から悉く目を背けてます」
入須「…折木君」
奉太郎「先輩、ありがとうございます、勇気を出してくれて」
入須「………」
奉太郎「最初は確かに苦手でした、先輩の事。でも、今は違うと断言できます」
入須「…そう、か」
奉太郎「次は俺の番です、先輩」
入須「……あぁ」
奉太郎「……俺は先輩の事を…特別な、かけがえのない人だと、想ってます」
入須「! ………」
奉太郎「………」
ギュッ
奉太郎「!」
入須「嬉しい…」
奉太郎「……すいません、結局濁してますけど」
入須「いいよ、嬉しい」
奉太郎「……そう言って貰えると」
チュッ
奉太郎「! …せ、先輩?」
入須「…首筋はノーカウント?」
奉太郎「何が、ですか…」
入須「……ファーストキス」
奉太郎「! ………」
入須「…すまない。 …君への気持ちが、溢れてしまった」
奉太郎「…いえ」
入須「…折木君が好きで、愛しくて…ふふっ、その内、爆発してしまうかもしれないな」
奉太郎「…そうなる前に、何とかしましょう」
入須「…ふふっ」ギュウッ
奉太郎「…先輩」
入須「私は幸せだ、折木君」
奉太郎「…俺も、同じ気持ちですよ」
入須「ふふっ」
奉太郎(…可愛くて綺麗で茶目っ気もある、魅力的な先輩。 …たまにわがままで怒るけど)
奉太郎(…俺だってこんな人、絶対に手放したくない)
奉太郎(…そう言える日が来る様に、俺も頑張らないとな)
おまけ
・AM12:00
入須「……ん…折木君…」ギュッ
奉太郎「………」
入須「折木…君…」
奉太郎「………」
入須「すぅー…すぅー…」
奉太郎(…こんなの寝られるか!)
おわり
さるさんの猛威に心が折れる所でしたが、長い時間ありがとうございました。
システムをよく理解しておらずすいませんでした。
次回があるとすれば、アニメ氷菓が終わる前に書ければいいなと思います。
では、限界なので寝る事にします。ありがとうございました。
入須先輩可愛い
1おつ
入須先輩最高!
よかったよ
Entry ⇒ 2012.08.30 | Category ⇒ 氷菓SS | Comments (5) | Trackbacks (0)
ちなつ「へぇ、あかりちゃん犬飼ったんだ!」
あかり「ううんっ、あかりも遊びに来てくれて嬉しいよぉ」ニコニコ
ちなつ「あぁ、笑顔が眩しい……」
ちなつ「ちょっとお家にいても手持ち無沙汰でね、ついつい遊びに来ちゃった」
あかり「気にしない気にしない、あかりとちなつちゃんの仲だもん」
ちなつ「ふふ……、手ぶらなのも悪いしあかりちゃんが喜びそうな雑誌を持ってきたよ」
あかり「えっ、あかりが喜びそうな、雑誌?」
ちなつ「うんうん♪」ゴソゴソ
ちなつ「ふふ~ん……」ニコッ
ちなつ「まぁそれもいいけど、こっちのがきっと喜ぶかなって」スッ
あかり「あっ、……コレって犬さんのカタログだねっ!」
ちなつ「あかりちゃんは犬大好きだもんねぇ、とたんに目をキラキラさせちゃうもん」クスッ
あかり「うんっ、あかりわんわんだーいすき!」
ちなつ「ふふふ、持ってきて正解だったね、良かった良かった」
ちなつ「あ、私ね、飼うとしたらこの真っ白な犬が欲しいな~」
あかり「あはは、この犬さんほんともっふもふだね、可愛いよぉ……」ニコニコ
ちなつ「サモエド犬っていうんだ、この子朝のテレビでよく見かけるよね」
あかり「あっ、分かる分かる、あの番組のコーナーあかりもほんと大好き!」
あかり「全国を訪問してるんだよね、あぁ、富山にも来てくれないかなぁ……」ポー
ちなつ「ずーっと続いて欲しいよね、見てるとこっちも癒されるもん」
あかり「そうだねぇ、少しでも長生きして欲しいよね」
あかり「そういえばそんなこと言ってたね、ちなつちゃんは猫派って」
ちなつ「うんっ、……いつか結衣先輩に猫みたいに飼ってもらうの、きゃっ」ポッ
あかり「えっ、結衣ちゃんのペットになりたいの?」
ちなつ「まぁあくまで願望というか、その……」モジモジ
あかり「でも結衣ちゃんはあかりのペットだし、さらにそのペットになっちゃうね」
あかり「ふふふ、なんだかおかしいよぉ」クスクス
ちなつ「えっ、なにか言った?」
あかり「ううん、こっちの話だから気にしないでね」
あかり「えっと、あの、その……」
ちなつ「あらら、そんなにたじたじしちゃってどうしたの」
あかり「実はあかりね、いま犬さんを飼ってるんだよ、ぇへへ……」ニマニマ
ちなつ「えっ、もうそれを先に言ってよ、結構なニュースだよね!」
ちなつ「でもお外には犬の家とか、それっぽい遊び道具も無かったけど……」
あかり「ふふ~ん、実はねお家の中で飼ってるんだよぉ」ニコニコ
ちなつ「へぇ~!」
あかり「うんっ、とーっても可愛いんだよ、順従で、なんでも言うこと聞いちゃうの」
ちなつ「ってことは室内犬ことだよね、あかりちゃん、私も見たいよその子!」ユサユサ
あかり「あはは、そう急かさないでよぉ、いま呼んであげるからね」
あかり「おーい、ゆっぴー、ゆっぴーおいで!」
ちなつ「ゆっぴーかぁ、ふふ、可愛い名前だね」ニコニコ
あかり「名前はゆっぴーでね14歳のメス、ちなつちゃんも可愛がってあげてね!」
ちなつ「うんっ?14歳ってけっこうヨボヨボなんだね、……どうしてだろう」ウーン
ちなつ「でもエライね呼ぶだけでこっちに来てくれるなんて」
あかり「んー、恥ずかしがり屋だけど根はいい子だからね、最初はちょっと反抗もあったけど」
ちなつ「ふーん、躾とかもあったんだね、やっぱり大変そう……」
あかり「でもね、やっとあかりの気持ちが通じたのか今はデレデレなんだよぉ」
あかり「ちょーっと離れただけで寂しそうな顔をするの」ニコニコ
ちなつ「ふふ、あかりちゃん楽しそうだなぁ、きっと可愛い犬なんだろうね」クスッ
トテトテ タタタタタッ トントン
結衣「わんっ、わんわん!」ガチャッ
ちなつ「」
結衣「ち、ちなつちゃん、なんであかりのお家に!?」アセアセ
あかり「ふふっ、エライエライゆっぴー、ちゃんと来てくれるなんて」
ちなつ「いや、あの、どういうことなのこれ」
結衣「ちゃ、ちゃんとした理由があるんだ、こうなった経緯というものが!!」
あかり「はいゆっぴー、お手!」スッ
結衣「わふっ」ポスン
ちなつ「しっかり調教済みですね、あはは、なんだこれ」
結衣「あ、いや、違う、違うの……」カァー
結衣「あっ、あのちなつちゃん……」
あかり「おかわり!」スッ
結衣「わんっ!」ポン
ちなつ「ずいぶんとノリノリですね、犬耳と首輪もよーく似合ってますよ」ジトッ
結衣「っ……うぅぅぅ……」カァー
ちなつ「それじゃあ聞かせて貰いましょうか、その経緯と理由とやらを」ズイッ
結衣「ち、ちなつちゃん顔近い、顔近いです!」
結衣「……あはは」
あかり「ちなつちゃんもゆっぴーのこと触っていいんだよ、ちょっと恥ずかしがり屋さんだけど」ニコニコ
ちなつ「いまはそれよりも大切な話があるの、なめなめするのは後だから」
結衣「なめなめ!?」
結衣「えっとね、こうなったのはちょっとしたワケが……」
ちなつ「まぁそうでしょうね、普段の結衣先輩からはあり得ない行動ですし」
結衣「実は……」
あかり「はぁ、犬さんが欲しいよ、ほんとに欲しいなぁ……」ペラッ
結衣「あかり、いま読んでる雑誌って犬のカタログ……」
あかり「うんうんっ、みんな可愛い子ばっかりで目移りしちゃうよぉ~」
結衣「犬大好きだもんね、思い切ってお家の人に頼んでみればいいんじゃないかな?」
結衣「ふふ、あかりはいい子だからきっとOKって言ってもらえるよ」
あかり「結衣ちゃ~ん……」グスン
あかり「お願いしたんだけどね、お母さんにダメだって、何回も念を押されちゃったの」シクシク
結衣「そっか……」
あかり「んっ……だって、ペットを飼うってきっと大変なことなんだよね」
結衣「そうだな、お世話もしないといけないし、毎朝の散歩だってあるから……」
あかり「きっと家族のみんなもそういうのを真剣に考えてくれたんだろうな、って……」
あかり「それにあかりはもう中学生だしワガママ言えないもん、あかりはカタログを見て妄想するよ!」ペラッ
あかり「よし、この子にしようかな……」
あかり「……」ポー
あかり「きゃはは、くすぐったいよぉヨーゼフ、あっ、おじいさーん、ペーター、ヤッホー!!」
結衣「あはは、なりきってるなぁ……」
あかり「タロ、ジロ、絶対に助けにくるからね!!それまで待っててね!!」グスッ
結衣「なんかもうめちゃくちゃだなぁ……」
結衣「うーん、なんとかしてあげたいけどな、こればっかりはどうしようもないよね」
結衣「私の家で飼うわけにもいかないし、残念……」
トゥルルルルルルルルルル……
結衣「おや、……あかり、携帯なってるよ」ユサユサ
あかり「あはははっ、そんなに跪いて犬そっくりだねぇ」
結衣「ど、どんな妄想してるんだよおいコラ!!」
あかり「はっ!?」
結衣「最後の妄想のときが一番いい顔してたけど……」
あかり「誰だろ、あっ、お姉ちゃんだ♪」ピッ
結衣「っ!!」
あかり「はいもしもし、あかりだよ!」
あかり「えっ、今日はみんなで回転寿司に行くの?金のお皿も食べていいって!?」ガタッ
結衣「なっ、なっ……!」
結衣(なんであかりの待ち受け画面が、私のセクシーショットになってるんだよ!?)
結衣(……パンダのパジャマ、これ、京子にこの間撮られたやつだよ)ガクッ
あかり「おっすし、おっすし♪」
あかり「まぁ、あかりとしては回らない方が良かったんだけど、お父さんの稼ぎじゃ厳しいか……」ボソッ
結衣「あ、あのさ、あかり」
あかり「んー、分かってるよぉ、結衣ちゃんにもガリ持ち帰りしてきてあげるから」ニコッ
結衣「ありがと、ってそうじゃないから!!」
あかり「えっ、それじゃ甘エビの尻尾?」
結衣「んんー?変なこと言うのはこのほっぺたか?」グニグニ ムニムニ グニムニ
あかり「んむむむむっ、あはは……」
あかり「ごめんねぇ、ちょっとお寿司がご無沙汰だったから舞い上がっちゃった」ニコニコ
結衣「それはいいんだよ、家族の人と楽しんでおいで」
あかり「うんっ!」
結衣「えっと……私が言いたいのはね、その、待ち受けのことなんだけど」
あかり「あっ、コレのこと?」ピッ
あかり「ふふふ、結衣ちゃんがはっちゃけるのって珍しいからつい待ち受け画面にしちゃったの」
結衣「……だ、誰かに見せた?」
あかり「ううん、今のところはまだ見せてないよぉ」
結衣「い、今のところはって、引っかかる言い方だなぁ……」ビクッ
あかり「えっと、櫻子ちゃんとかに写メールで送るつもりなんだけど」
結衣「!?」
あかり「ふふ、きっとビックリするよね、今までの結衣ちゃんのイメージを壊す感じだもん」ニコニコ
結衣「……」ダラダラ
あかり「結衣ちゃん、そんなに汗だくでどうしたの?」
結衣(あかり→大室さん→ちなつちゃん、古谷さん、綾乃、千歳→七森中学全員→そしてそのまま日本中に)
結衣(日本→欧州、アジア、南米、北米→世界中→水星、金星などの太陽系→そして銀河系まであの写真が……?)ガンガン
あかり「ゆ、結衣ちゃん、そんなにそんなに壁に頭を打ち付けちゃダメだよぉ!!」グスッ
結衣「あんな写真が出回ったら末代までの恥、どうするどうする」ポタポタ
あかり「ひぃぃっ、血、額から血出てるよ結衣ちゃん!!」
結衣「……」ガシッ
あかり「きゃああああああああ、堪忍して、助けて京子ちゃん!!」ワタワタ
結衣「あかり、さっき犬がほしいって言ってたよね」ドクドク
あかり「い、いまは結衣ちゃんの傷を縫合してくれる腕利きのお医者さんがいいです……」
結衣「……だから、私が、あかりの犬になるから、代わりにその写真を!!」
・・・
・・
・
ちなつ「結衣先輩どうしたんですか、ちゃんとした理由があるからこんな事してるんですよね?」
ちなつ「……きっとなにかあったに決まってます、こんなのおかしいですもん」
ちなつ「優しい結衣先輩のことですから、きっとあかりちゃんのお願いでも聞いてるんでしょうね」クスッ
結衣(ダメだ、本当のことを話したらきっとちなつちゃんはこう言うよね)
結衣(その写真、ぜひ見せてください……って)ダラダラ
結衣(あぁぁぁ……なにかいい言い訳は、考えろ、考えないと!!)
結衣「……」
結衣「ちなつちゃん、私がなんでこんなことをしているかっていうとね」
結衣「小さい頃からの夢だったんだ、犬耳と鎖を付けて、ペットとして飼われるのが……」カァー
ちなつ「……」
結衣「そうなんだよ、あかりって優しいし、面倒見がいいから、ぴったりかなって」
あかり「ふふっ、もう芸まで仕込んじゃったよね、後でちなつちゃんにも見せてあげるからね」
結衣「……あはは」
ちなつ「……なるほどね、結衣先輩は飼われる方が好みでしたか」ニコッ
ちなつ「私としては逆のほうが良かったんですけどね、こうなったらしょうがないです」
結衣「ち、ちなつちゃん……?」
ちなつ「私も結衣先輩の飼い主になります!」グッ
結衣「えぇ……」
ちなつ「ふふ、小さい頃はブリーダーか羊の毛刈りする人になるかで迷ってたんだから」
あかり「あははっ、どっちも世知辛い日本じゃ食べていくほど稼げないよぉ」
ちなつ「そういう事言わないの、……腕がなるな、いっぱい可愛がってあげなきゃ」
あかちな「ねー♪」ニコッ
結衣「あ、あの、2人とも、ちょっと待ってよ!」
ちなつ「そうだあかりちゃん、躾でどんなこと教えこんだの?」
あかり「……ふふん、さぁゆっぴー、服従のポーズだよ、ちなつちゃんに見せてあげて!」
結衣「……」グスッ
あかり「そうそう、あのお腹を見せるポーズがほんと可愛いくて……」
ちなつ「ふふ、いいセンスしてるね、さすがあかりちゃん」
あかり「……ぇへへ」
結衣「……」モジモジ
あかり「どうしたのゆっぴー、早く早く!」
ちなつ「……」ニコニコ
ちなつ「……」ジーッ
あかり「あはは、脳内の結衣ちゃんフォルダに保存するつもりだね」
ちなつ「だってこんなの滅多にみれないもん、あの結衣先輩が……」ドキドキ
あかり「よしよし、ちょっとびっくりしちゃったよね」ナデナデ
結衣「や、やめて、なでなでしないで……あかり……」
あかり「ねぇゆっぴー、いつもみたいに可愛いところ見せて欲しいな」
あかり「……犬耳の結衣ちゃん、とーっても素敵だよ」ボソッ
結衣「んっ……ほ、ほんと?」
結衣「……わ、わん」スリスリ
あかり「そうそう、背中を床に擦りつけて」
結衣「……」グスッ
結衣「わふっ……くぅ~ん……」クイッ
あかり「うんうん、開脚もしてるし、まさに服従のポーズだね」ニコッ
あかり「ゆっぴーはあかりとちなつちゃんの可愛いわんわんだよ、分かった?」ナデナデ
結衣「……う、うん、分かった、分かったよ……えへへ」
ちなつ「あー、一眼レフ持ってきて良かった、ふふふ」カシャッ パシャッ カシャッ
結衣「んっ……あかり……」
ちなつ「あー、これはもう部屋の壁紙確定かな」
ちなつ「犬耳と首には鎖をつけた結衣先輩が、涙目で、そして服従のポーズ……うふふ……」
ちなつ「あっ、ずるいよあかりちゃん、私もゆっぴーぎゅってさせて!」
あかり「うんっ、みんなのゆっぴーだもんね」ニコッ
ちなつ「……えへへ、ゆっぴーはいい子ですねぇ」ナデナデ
結衣「あっ……ちなつちゃんのなでなで……」
ちなつ「大好きですよ、良い子良い子」ギュッ
結衣(なんかもう犬でもいいかもしれない)
あかり「ふふ、惚けた顔しちゃってるね、可愛いなぁ……」
ちなつ「くすっ、まんざらでもなさそうだね結衣先輩も」
ちなつ「ん~、今日はもう最高の日だよ……」ウットリ
あかり「ゆっぴーはね、お返しにいいことしてくれるんだよ」
ちなつ「えっ、いい事ってなぁにあかりちゃん?」
あかり「まぁまぁ、ちょっと見ててね、ゆっぴーいつものお願いね」ニコッ
結衣「……う、うん」
ちなつ「えっと、戸籍でも入れるんですか?いつでもいいですけど」
ちなつ「ハネムーンは無難に箱根ですかね、えへへ」
結衣「そ、そうじゃなくて、ちょっとじっとしててね……」スッ
ちなつ「えっ!?」
結衣「ゴメンね、ほっぺた汚くなっちゃうけど、私の気持ち……んっ……」チュッ ペロ
ちなつ「……そ、そうですね、犬だから、おかしくないですね!」
結衣「えへへ、ほっぺた柔らかいね……」チロチロ
ちなつ「……」ポタポタ
あかり「ち、ちなつちゃん、鼻血出てるよ!」
結衣「あっ、ちなつちゃん気絶しちゃった、でももちもちしてて気持ちよかった……わふっ♪」
あかり「……ゆっぴー、あかりには?」
結衣「うん、あかりもじっとしててね、……私のことなんか飼ってくれてありがと」チュッ
あかり「……ううん、ほんとはあかりのお願いを叶えてくれたんだよね」
あかり「犬さんが欲しいって、だからこんなことまで……」
結衣「あむっ……んっ……」チュッ ペロペロ
結衣「しょんぼりするなよ、結局は私も楽しい思いしてるんだし」
結衣「……わふっ」スリスリ
あかり「……ふふ、ありがとうゆっぴー」
あかり「うう゛ん……ゆっぴー、ずっと一緒……」ギュッ
ちなつ「だ、ダメですよ、そんなところ舐めたら……あぁっ……」ギュッ
結衣「こらこら……」コツン
ちなつ「いたっ!?」
結衣「ずーっとこんなことが続けばいいな、って思うのはおかしいのかな」
結衣「こんな可愛いご主人様たちに飼われたら、きっと幸せなんだろうな……」ギュッ
あかちな「んっ……んん……」zzz
ちなつ「あ、おはようあかりちゃん、よく眠れた?」
あかり「うん、犬さんとお昼寝したらきっとこんな感じなんだろうなぁ……」ギュッ
ちなつ「ふふ、ゆっぴーもぐっすりだね、かわいい」
ちなつ「……結衣先輩、様になってますよ、もうずーっと犬の格好でもいいくらい」スリスリ
結衣「……」zzz
あかり「……これはあかりのワガママなんだ」
ちなつ「えっ?」
あかり「ちなつちゃん、本当はね結衣ちゃんはそんな変態さんじゃないの」
あかり「犬耳付けて鎖を自発的に付けるなんて、普通あり得ないでしょ……」
ちなつ「まぁ……ね」
あかり「……うん、だからきっと無理してるんだと思う」
ちなつ「そうだよね、結衣先輩がこんなので喜ぶワケないもんね」
あかり「今日で一週間の終わり……」
ちなつ「うん?」
あかり「結衣ちゃんと約束したの、一週間だけあかりの犬さんになってくれるって」グスッ
あかり「だから、もう、ゆっぴーとはお別れ、なの……うっ……ぁぁぁぁ」ギュッ
ちなつ「……そっか」
ちなつ「なら、最後にお別れしないとね、今までありがとう、って」
あかり「うんっ……うん……」ポロポロ
結衣「命令……?な、ならするしか……」
結衣「ち、ちがう、喜んでなんかないよ、信じて……あかり、ちなつちゃん……」
結衣「はっ!!」ガバッ
結衣「……」サワサワ
結衣「あれ、首輪も犬耳を外れてる」
結衣「んっ……くぁ~……なんでだろう、あかりが外したのかな?」
結衣「……落ち着かない、やっぱり繋がれてないと」ソワソワ
ちなつ「あぁ、結衣先輩は寝顔も凛々しかったです……」ポッ
結衣「あ、うん……」
結衣「2人とも……その、さっきの首輪って」
あかり「そ、そろそろ帰る時間だね、カラスも鳴いてるし!」
ちなつ「そうだね、ふふ、今日は楽しかったなぁ」
あかり「んー、散歩がてらちなつちゃん達のこと送っていくね、結衣ちゃんも忘れ物しないでね」ニコッ
結衣「……うん」
ちなつ「うんうん、残暑がほんと厳しいね、嫌になっちゃうな……」
結衣「……」
あかり「あ、えっと、そう言えばこの間、お母さんが扇風機と間違えてハロゲンヒーター買ってきてね!」
あかり「何よコレ、って言いながらうちわ扇ぎ続けてたなぁ……」
ちなつ「ふふっ、年齢が年齢なら老人ホームぶちこまれてるね」ニコニコ
あかり「もうっ、あかりのお母さんはまだピチピチだよぉ!」プンプン
あかり「肩こりとか、ホットフラッシュがあるって言ってたけど……」
ちなつ「それ更年期障害なんじゃ……」
あかちな「わいわい」
結衣(もうゆっぴーって呼んでくれないんだ……もう可愛がってくれないのかな……)グスッ
あかり「ううん、30の後半くらいだとは思うけど……」
ちなつ「なら安心だね、ちょっと疲れてるだけだよ、肩たたきでもしてあげなきゃね」ニコッ
あかり「うんっ!」
ちなつ「……ていうか、なんで真夏にハロゲンヒーター売ってるんだろうね」
あかり「……さぁ」
結衣「2人とも、私はこっちの道だからそろそろお別れだね」
あかり「っ……」グスッ
ちなつ「あかりちゃん、ほら笑って手振らないと」コソコソッ
あかり「うっ、うん……」
ちなつ「……はい」
あかり「うっ、うっ……うぅぅぅ……」グスッ
結衣『結衣ちゃん、だからゆっぴー……ふふ、しょうがないな』
結衣『えっ!ひ、平皿でミルク飲むの!?』
結衣『と、トイレは人間と同じにしてって、信じられない、あかりの変態!!』
結衣『あの、あかねさん、これには深いわけが!えっ、一緒に精神科へ!?』
結衣『あの……体は、優しく洗ってね……』
あかり(ゆっぴーとの思い出が、止まらない、止まらないよ……)ポロポロ
あかり(……いま思うと金槌で殴られても文句言えなかったかも)グスッ
あかり「……ぁぁぁぁぁん……うっ、うっ……」ポロポロ
結衣「じゃあまたね、車には気を付けるんだよ」タッ
ちなつ「結衣先輩!!」
ちなつ「……けっこうドライなんだね、あかりちゃんが泣いてるのに」
ちなつ「帰ろうかあかりちゃん、今日は泊まっていってあげる」ポンポン
あかり「んっ……うん、ありがと……ぇへへ」グスッ
結衣「あかり、ちなつちゃん!!!」
ちなつ「ど、どうしたんですか結衣先輩、そんなに血相を変えて」
結衣「あかり、そのリュックの中に入ってるんだよね?」グイッ
あかり「あっ!!」
結衣「……」ゴソゴソ
結衣「もう決めたんだ、あかりとちなつちゃんがどんなに私のことを軽蔑しても構わないって……」カチャカチャ
結衣「自分のためでもあるんだ、……もう今さらだよ、私のご主人様は君たち2人だもん」ニコッ
あかちな「ゆっぴー……」ジワッ
結衣「……わんっ♪」
ちなつ「あははっ、お帰りなさいゆっぴー!」ギュッ
結衣「ふふ、よしよし……でもその内本名忘れちゃいそうだな、メモしておこう」メモメモ
あかり「ウワァァァン、あかりやっぱり結衣ちゃん抜きじゃもう駄目だよぉ……」
結衣「だから2人が私のこと可愛がってくれるんだよね、わんわん」ギュッ
ちなつ「はいっ、それはもう24時間年中無休で愛でますから!」スリスリ
結衣「あはは、ありがとう、大好きだよあかり、ちなつちゃん……」
京綾「……」
京子「まぁ、こう暑いとしょうがないよね」
綾乃「そうね、残暑が厳しいもの」
京子「とりあえず心療内科か精神科でも探しておこうかな」
綾乃「そうね、きっとそれがいいわ」
京子「まだ間に合うよね、大切なごらく部だもん」
綾乃「そうね、最悪黄色い救急車でも呼びましょうか」
おわり
是非またなんかかいてくれ
いろいろワロタ
Entry ⇒ 2012.08.30 | Category ⇒ ゆるゆりSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
モモ「リンシャンさんとヤってる所を先輩に見られたっす」
咲「モモちゃんは相変わらずおっぱいが敏感だよね」クリクリ
モモ「そこばっかりっ……リンシャンさんは変態っすねっ……!」ハァハァ
咲「そうだよ? だって私おっぱい大好きだもん」クリクリ
咲「もしかして今まで気づかなかった?」クリクリ
モモ「おっぱいさんにべったりな時点で、周知の事実だと思うっす……け、ど……ぁう…」ビクッ
咲「原村さんとは……別にそんな……」
モモ「…………」
モモ「わかってるっす、それに」グイッ
咲「んぅ!?」チュウ
モモ「はぁっ……浮気してるのは……私の方っすから」
咲「モモちゃん……」
モモ「リンシャンさん……焦らされるのは辛いっす……」
モモ「だから……もっと……」
咲「」ムラッ
モモ「ううっ、先っぽがヒリヒリするっす……」
咲「モ、モモちゃんが悪いんだよ!?」
咲「あんな誘い方するから……」
モモ「それでも乳首でイクまでいじり続けるのはおかしいっすよ」
咲「それは……だって開発されすぎなモモちゃ、あ……」
モモ「…………」
咲「ごめん……」
咲「…………ねぇ」
咲「やっぱり、私たち……」
モモ「咲さん」
咲「」ビクッ
モモ「絶対にバレませんよ」
咲「でも……」
モモ「いくら先輩でも、リンシャンさんとの関係に気づくことはないっすよ」
モモ「私を誰だと思ってるんっすか?」
モモ「私は、ステルスモモっすよ?」
――鶴賀麻雀部部室――
かじゅ「だから、久とは何もないと言っているだろう!」
モモ「何もないのに下の名前で呼ぶことがおかしいって言ってるんじゃないっすか!」
かじゅ「だから……」イラッ
モモ「どうせ、あの女にいいように言いくるめられたに決まってるっす」
モモ「なんて言って近づいてきたんすか、あの女」
かじゅ「久とは純粋に麻雀だけの関係だ、やましいことは何も……」
かじゅ「……モモッ、お前っ」
モモ「あ、もしかして、先輩が抱かれたんすか?」
かじゅ「いいかげんにしろっ! モモ!」
かじゅ「お前、少しおかしいんじゃないか!?」
モモ「一晩であんなに親しくなるっていうのが異常なんすよ」
モモ「そもそも清澄のあの女、風越のキャプテンにも色目を使ってたみたいじゃないっすか」
かじゅ「……っ!」イライラッ
モモ「相手がそんなとんでもない女って言うんじゃ、いくら先輩の言うことでも……」
かじゅ「だが、べつにこれは珍しいことではない」
かじゅ「今まで友人のいなかったお前には、わからないかもしれないが……」
モモ「……!!」
かじゅ「……あ」
モモ「もう……いいっす」ユラッ
かじゅ「! ま、待ってくれモモ!!」
モモ「さよなら、っすよ」
モモ「先輩」スゥゥ…
かじゅ「モモ! 違うんだ! モモッ!!」
モモ(あの優しい先輩が、あんなこと言うはずないっす)
モモ(あの女が先輩に何かしたに決まってるっす)
モモ(見つけ出して……二度と先輩の目に現れられないようにしてやるっす……!)
モモ「それにしても、麻雀部の部室はどこっすかね……」
モモ(こっちの校舎の中にはなかった、ってことは)
モモ(あっちの建物っすかね)トコトコ
モモ(一応清澄の校舎みたいだし)
モモ「リンシャンさん?」
モモ(どうやら、私が向かってた建物を目指しているようっすね)
モモ(ビンゴっす!)
モモ(このままリンシャンさんに憑いていけば、労せずしてあの女のもとに)
モモ(……許さないっすよ)ゴゴゴ
咲「!?」ゾクッ
モモ「あっ、やば」ビクッ
モモ「って、え」グラッ
モモ(やば、土手に落ち)ゴロッ
モモ「きゃあああ!」ゴロゴロゴロ
咲「! いけないっ」ダッ
モモ「……っ、いったた……」
モモ(バレてビビって転げ落ちるとか、最悪っす……)
咲「大丈夫ですかー!」
モモ(これはちょっとやばいっす)ダラダラ
咲「今、そっちに降りますね!」
モモ(イチかバチか、ステルスで逃げっ……っ!)ビキビキッ
モモ(あ、足、挫いちゃったすか!?)
モモ(うう、どうすれば……)
モモ(ハッ、そうっす!)
モモ(!? 影の薄い私を覚えているとは……意外っす)
モモ「あー、えーと、県予選で副将やってた、東横っす」
咲「あ、原村さんと戦った……」
モモ「そういうあなたは、清澄の大将の、えーと、リンシャンさん?」
咲「あ、はは、確かに嶺上開花は得意ですけど……」
咲「清澄の、宮永咲です」
モモ「宮永……そういえばそんな名前で」
咲「えっと、怪我とか大丈夫ですか?」
モモ(キタッ)
モモ「恥ずかしながら、自分で立つことができないみたいっす」
咲「ちょ、大変じゃないですか!」
咲「ちょっと見せてください!」ガバッ
モモ「わわ、こ、ここで見てもどうにもならないと思うんすけど」
モモ「冷やすものとかもないっすし」
咲「あ……そうか」
咲「冷凍庫の中に氷もあったと思いますし、簡単な救急セットもあると思います」
モモ(ふふ、狙い通りっす)
モモ「いいんすか、そこまでしてもらって……」
咲「良いもなにも、そうしなくちゃダメですっ!」
咲「捻挫だって、ほうっておくと酷いことになるかもしれないんですよ!?」
モモ「は、はいっす……」
咲「じゃあ、はいっ」シャガミ
モモ「え?」
モモ「いや、そこまでしてもらうわけには……」
咲「けが人は素直に言う事を聞いてくださいね」ニコッ
モモ「」ゾクッ
モモ「分かったっす。ちょっとの間お世話になるっす」
咲「よ、いしょ、っと」ググッ
咲「大丈夫です、原村さんと比べればこれくらい……」
咲「あ、べべべ別に原村さんが思いとかそういうわけでは……」
モモ「私に弁解してどうするんすか…」
モモ・咲(それにしても)
モモ(なんかちょっと、罪悪感が……)キリキリッ
咲(おっぱい大きいなぁ……)ショボン
咲「ちょっと待っててください、今鍵開けますから」ガチャガチャ
モモ(部活に一番乗りっすか)
モモ(とりあえずしばらく様子見っすね)
咲「よし、じゃあ中に入りますね」グイッ
モモ「あたた…」
咲「あ、ごめんなさい!」
モモ「いや、大丈夫っす、心配しないで欲しいっす」
モモ「はいっす……ふぅ」ボス
咲「今、氷と救急箱持ってきますね」
モモ(それにしても、随分といろいろ揃ってる部室っすね)
モモ(プロジェクターのスクリーンとパンドラの棚しかないうちの部室とは大違いっす……)
モモ(しかもちゃんと自動卓まで……)
モモ(うちと同じ無名校の清澄が、どうやってここまでの設備を集めたのか……)
モモ「いや、手当してもらえるだけでありがたいっすから」
咲「じゃあ、痛めた方の足出してください」
モモ「あ、すいませんっす」
咲「腫れてる……ごめんなさい、すごく痛かったでしょ……」
咲「もっと急いでこれればよかったんだけど……」
モモ「いや、もうホントに気にしないで欲しいっす」
モモ「なんか、こっちが申し訳なく……」
モモ「ほかの部員の方は、何時頃いらっしゃるんっすか?」
モモ「今って授業終わってから結構経ってると思うんすけど」
咲「今日は部活、お休みなんです」
咲「私はここにある本を借りていこうと思っていただけで……」
モモ(なん……だと……)
モモ(じゃああの女は今日はここに来ないってことすか)ガーン
モモ(情けないっすよ……何してんすかね……)ジワッ
咲「わわっ、痛かったですか!? ごめんなさい!」ワタワタ
モモ「ち、違うんす、これは、その……」
モモ「ちょっと花粉症が……」
咲「花粉症……ですか……」
モモ「はいっす……」
咲・モモ「…………」
咲「ここまで来るってことは、麻雀関係のことだと思うんですけど」
モモ「いや、その、ちょっと」
モモ(まさか「あんたのとこの部長を〆にきた」なんて言えないっすよね……)
咲「あ、もしかして部長に何か用が……」
モモ「っ!」ザワッ
咲「……ぇ」ゾワゾワ
モモ「あー、そんな感じだったんすけど……」
モモ「そんなに急ぎの用でもないんで、またの機会にするっす」
モモ「?」
咲「もしかして、うちの部長が何かしました?」
モモ「!?」ガバッ
咲「……やっぱり」
咲「東横さんが滑り落ちる直前と、今、なんだかすごくゾッとする気配がしたんです」
咲「もしかして、部長に、その……何か言いたいことでもあったのかなぁって……」
モモ「…………そうっすよ」
モモ「私はここの部長を、あの女を先輩から引き離すために来たんす」
咲「え?」
咲「そうだったんですか……」
モモ「先輩があんなこと言うわけなんてないっす」
モモ「あの女になにか吹き込まれているに違いないんすよ……!」
咲「…………でも」
咲「うちの部長、そこまでひどい人でもないと思うんですけど……」
モモ「は?」
咲「いえ! た、たしかにちょっと普通よりは誠実さが足りないというか、ちょっと問題はありますけど」
咲「そんな風に、人の心をあえて傷つけるような真似は……」
咲「しなく…………なくも……なくも……あれ?」ウーン
モモ「やっぱり……」
咲「だから、その、加治木さんとは仲直りして欲しいというか……」
モモ「先輩は寝取られたんす。原因をどうにかしないと、臭いものに蓋のままじゃ何も解決しないっす」
咲「寝取っ……!」カァァ
モモ(一気に顔が真っ赤に……ウブな反応っすね)
咲「その、あの……東横さんと加治木さんは……どういった関係で……」モジモシ
モモ(興味があるけど恥ずかしくて聞けない……)
モモ(同性間の恋愛に拒否感を持ってるわけじゃなさそうっす)
モモ(ちょっと……かわいい、っすね)
モモ(なんか、先輩に初めて抱かれたときのことを思い出すっす……)
モモ(先輩……)
モモ(…………先輩が、浮気したって言うなら……)
咲「え?」
モモ「リンシャンさん」グイッ
咲「へ? はえ?」ドサッ
モモ「そんなに興味があるんだったら」
モモ「私と先輩の関係、教えてあげるっすよ?」
咲「…………え」
咲「モモちゃん、今日は泊まっていかないの?」
モモ「……さすがに明日は学校があるっすから」
咲「ふぅん……」
咲「加治木さんに、会いにいくの?」
モモ「!」ビクッ
咲「ねぇ、もう……私たち……」
モモ「先輩と私は、もう終わってるんっす」
モモ「それでも、いつまでも逃げてるわけには行かないっすから」
モモ「だから、その最後のけじめを付けに行くだけっすよ」
咲「ホントに……私たちこのままでいられるの?」
モモ「無論っす」
モモ「リンシャンさんはもう私のものだし、私ももうリンシャンさんのものっすから」
咲「そ、染められたって……」カァァ
モモ「まさか、私がリンシャンさんに対してネコになるとは思ってなかったっす」
モモ「しかも、こんな時には赤面するくせに、ベッドの上ではあんなに」
咲「わぁわぁわぁ!! そ、それ以上はダメ!」
モモ「ふふっ」
モモ「じゃあ、また週末に来るっす」
咲「…………うん、またね」
咲(モモちゃんはああ言ってたけど)
咲(やっぱり、不安だよ……)
咲(ずっと加治木さんを避け続けてるって言ってたけど、話を聞くと加治木さんの方も諦めずに探し回ってるみたいだし……)
咲(たぶん、モモちゃんも諦めきれてない……)
咲(もし、二人が仲直りしちゃったら……)
咲「!!」ゾワゾワゾワ
咲「だめ!っそ、そんなの」ガバッ
咲(加治木さんにモモちゃんが抱かれるなんて……考えただけで……)ズキズキズキズキ
咲「モモちゃん……」
咲(うん、決めた)
咲(いつまでも、私をその気にさせてる、モモちゃんが悪いんだからね)
咲(今日聞いた時が、最後のチャンスだったんだ……)
咲(もう、絶対に離して上げないんだから……)
――鶴賀校舎裏――
モモ(あと20分ぐらいで、先輩が来るっす……)
モモ(そしたら、ちゃんと言うっす)
モモ(もう、金輪際私に関わらないでくれって……)
モモ(うぅ……)ズキズキ
モモ(胃が……胸が痛いっす……)ズキズキズキズキ
ザッザッ
モモ「!?」バッ
モモ(それとも、先輩も待ちきれなくって)ドキドキ
咲「……」スッ
モモ「えっ!?」
モモ「リンシャン……さん?」
モモ(な、なんでここに……?)
咲「ねぇ、モモちゃん、加治木さんとはちゃんと別れられた?」
モモ「い、いえ、これからここで話をするつもりだったっす……」
咲「ねぇ、モモちゃん」
モモ「っ!」ビクッ
モモ(なんか、リンシャンさんの雰囲気が……)
咲「手伝って、あげるよ?」ニッコリ
モモ「……え?」
かじゅ(やっと、モモと連絡を取ることができた……)
かじゅ(いままでずっと避け続けられて)
かじゅ(携帯からの連絡にも全く応じてくれなかったモモが)
かじゅ(会いたい、ものすごく会いたい)
かじゅ(会って、抱きしめて、謝りたい)
かじゅ(許してもらえなくても、せめて顔を見るくらいは……)
かじゅ(ああ、モモ…………)
かじゅ(このあたりのはず……)
かじゅ「ん?」
ヘェ コンナニナッテルノニ ダメナンダァ
モ、モウユルシテクダサイッス コレイジョウハッ!!
ジャア ヤメテアゲル
アッ… ハァハァ
ウウゥ……
かじゅ(先客…か……何をしているんだこんな時間から……)ブルブル
かじゅ(はは、全く、モモと待ち合わせだというのに……とんだハレンチなやつらがいたものだ)ガタガタブルブル
ソロソロイイカナ クチュ
アアァァァァ!!
ヤメ、ヤメテッテ…アア!
ハイ、ヤメタ
ア、アア……アアア
モイッコイコッカ
モ、モウイヤッス! イカセテクダサイッ!!
かじゅ(や、やれやれ、おまけにモモにそっくりな声だとは)ガクガクガク
かじゅ(すこし、説教を、してやらねば)ガクブルガタガタ チラッ
かじゅ「」
モモ「これ以上、焦らさないで欲しいっす!」
咲「もうちょっと、ね? 加治木さんが来るまでがんばろ?」クリクリ
モモ「あぁ! ち、乳首……それっ」ガクガク
咲「おっと、あぶない」パッ
モモ「ひぃ、ひぃ……」ガクガク
咲「モモちゃんのおっぱいがとってもえっちだって忘れてたよ」クチュ
モモ「あひぃ……も、ゆる」ビクビク
ザッ
かじゅ「モ……モ…?」
モモ「…………え」
モモ(あ……私が……呼んだ、っす、か)
モモ「あ……ああぁああぁぁ……」ガクガクガクガク
咲「あ、加治木さん、いらっしゃったんですね」ニコッ
かじゅ「き、貴様、宮永……」ブルブル
咲「モモちゃんが加治木さんにお別れを言いたいって言うから、手伝ってたんですよー」ニコニコ
かじゅ「な、にを」ブルブル
咲「どっかの誰かさんが、モモちゃんを冷たくあしらったりするから……」
咲「モモちゃん、すごく傷ついてたんですよ?」
かじゅ「そんな、わたしは……」
咲「だから……」
咲「もう、モモちゃんをみっともなく追い回すのは止めてくださいね?」ニコッ
モモ「リ、リンシャンさん……」
モモ「あっ……」
咲「これで、自由に動けるでしょ?」
咲「ねぇ、好きな方、選んでいいよ?」
モモ「え……?」
かじゅ「な……」
咲「私か、加治木さん、好きな方を選んでよ」
咲「私を選んだら、今までで一番気持ちよくしてあげるし、これからもずっとずっと気持ちよくしてあげるよ?」
咲「絶対にモモちゃんを裏切らないし、いつでも傍にいてあげる」
咲「どんなに存在感を消したって、必ず見つけ出してあげるから」
咲「ね?」
かじゅ「モモ!!」
モモ「!」ビクッ
かじゅ「私が……私が悪かった……!」
かじゅ「誤解されるようなことをしたのも、ひどいことを言ったことも謝る!」
かじゅ「だから、だから戻ってきてくれ……!」
かじゅ「モモっ……!!」
かじゅ「私は……君がいないと、ダメなんだっ!」
モモ「せ、せんぱい」ブルッ
咲「ねぇ、モモちゃん」
咲「私のこと……捨てるの」ウルッ
モモ「……あ」
咲「私はモモちゃんのモノで、モモちゃんは私のモノだって」
咲「言って……くれたよね……?」ウルウル
咲(なんで……なんで迷ってるの、モモちゃん……!?)
咲(モモちゃんは、私のものなんだよっ!?)
咲(絶対、絶対離さないんだから!)
モモ(そうっす、私はもうリンシャンさんのもので……)
モモ(先輩は……私に……)
かじゅ「モモっ!!」
かじゅ「私は! 君が欲しいっ!!」
モモ「っ!!」ブルルッ
咲「モモ……ちゃん?」
モモ「ごめんなさいっす……やっぱり、わたし……先輩のことが……」
かじゅ「モ、モモっ!!」
咲「え……そんな……モモちゃん?」
咲(うそ)
咲(だって、モモちゃんは)
咲(…………)
咲「フフッ」
モモ「先輩、く、苦しいっす……」
かじゅ「ごめん! ごめんなっ!モモ!」ポロポロ
かじゅ「もう、二度と悲しい思いはせないっ!」ポロポロ
モモ「先輩……泣かないでくださいっす……」ナデナデ
モモ「私も、さんざんワガママ言って……」
モモ「ごめんなさいっす……」
咲「モモちゃん」
モモ「!」バッ
咲「ずっと……いっしょ……なんだよね……」ユラッ
モモ(あれっ……ナイフ!)
咲「ねぇ、モモちゃん……」
咲「私にも、おんなじことするの?」
咲「加治木さんが、モモちゃんにしたみたいに」
モモ「そ……れは……」
かじゅ「た、頼む! モモにだけは、手を……モモだけはっ」
かじゅ「責は全て私にあるっ……だから!」
モモ「先輩っ……!」
モモ「リンシャンさん!」バッ
かじゅ「モモッ!!」
モモ「私が、私が悪かったっす!」
モモ「先輩と仲違いした鬱憤を……リンシャンさんを使って忘れようとしてしまったっす!」
モモ「みんな、みんな私が悪かったんっす!」
モモ「だから、だから……」
モモ「私を殺して、気が済むなら……」
モモ「どうぞ、やっちゃって……くださいっす……」ニコッ
モモ「先輩!!!」
かじゅ「!」ビクッ
モモ「先輩に欲しがられて、嬉しかったっす」
モモ「先輩は、私が悪いのに、私を追いかけてくれて、謝ってくれて、必要としてくれて」
モモ「私を、赦してくれたっす」
モモ「もう思い残すことは……いえ、やっぱりもっと先輩といたかったっす」
モモ「……でも私は、私が生んだ結果に、けじめをつけなくちゃいけないっす」
モモ「先輩……ありがとうございました……」ニコッ
かじゅ「モモ……」
かじゅ(なんでだ……動かなくちゃいけないのに……モモを守らなきゃいけないのに……)
かじゅ(モモの目を見てから……体が、動かないっ!!)ギリッ
咲「…………」
カランッ
モモ「!?」
咲「……ぃ、だょ」ポロッ
咲「無理ぃ……だよぉ」ポロポロ
咲「モモちゃんを傷付けるなんて……出来るわけないよぉ……」ポロポロ
モモ「リン、シャン…………さん」
咲「うぅっ…………ひっ、ぐぅ………うえぇぇぇ…………」ボロボロボロボロ
咲「ゔえ゙えぇぇぇぇ…………モ゙モ゙ぢゃああああん!」ボロボロボロボロ
咲「ひっ、うわあああああぁぁぁっあっあぁぁぁ!!」ボロボロボロボロ
モモ「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ」ギュウゥゥ
モモ「私っ……が、私が……!」
咲「ひっぐ……うぅう」グズッ
モモ「ホントに……ごめんなさいっす……!」
咲「……っう、ねえ、モモちゃん」
咲「最後に、ひとつだけお願い聞いてくれる……?」
モモ「……なんでも、聞くっす」ギュウ
咲「私のこと……名前で読んで……?」
モモ「っ!」ジワッ
咲「もう一度、最後のお別れは、名前で呼んで……?」
モモ「っうう、ひっぐ……」ポロポロ
モモ「咲っ……さん」
モモ「咲さんっ、咲さんっ!!」ギュウゥウゥ
咲「モモ、ちゃん」ギュウゥ
咲「加治木さんと、仲良くしてね……?」
咲「幸せに……暮らしてね……?」
モモ「咲さぁん……」ボロボロ
咲「……」スクッ
咲「加治木さん」
かじゅ「……なんだい」
咲「次は、絶対に許しませんから」キッ
かじゅ「……ああ、誓うよ」
咲「モモちゃん」
モモ「ひっぐ……咲、さん」
咲「バイバイ、モモちゃん」
モモ「ぁあ……咲、さん」
モモ(私は、たくさんあなたに癒してもらったのに……)
モモ(私……あなたに…何もしてあげられなかった……っす)ボロボロ
カン!
その完、成立せず
嶺上開砲で全てを灰燼に帰すエンドも考えたけど、欝は無理
とりあえず呑気にクロチャー貼ってた>>1は凌遅刑な
IFで咲選んだ場合はまだかなチラッチラッ
仕方ない
ちょい待ち
咲「ねぇ、モモちゃん」
咲「傍に、居てよぉ」ウルッ
モモ(…………)
モモ「先輩……」
かじゅ「!」ビクッ
モモ「先輩には、ホントに感謝してるっす」
モモ「誰からも必要とされてこなかった私に光を当てて、存在意義を、生きる意味を与えてくれたっす」
モモ「こんなにどうしようもない私のことを、疑り深くて嫉妬深くて面倒くさい私のことを」
モモ「リンシャンさん……咲さんは、先輩と同じように必要としてくれたっす……」
モモ「どっちも……どっちも掛け替えのない、大切な人達っす」
モモ「でも、私は咲さんと約束したっす」
モモ「私は、咲さんのモノだって」
モモ「その咲さんが、今私のことを必要としてくれてるっす」
かじゅ「モモ……」
モモ「咲さんと付き合っていて、清澄の部長のことを知って、全部私が悪かったって気づいたっす」ポロッ
モモ「本当に、救いようのない間違いをしてしまったっす」ポロポロ
モモ「でも、もう引き返せないんす」ポロポロ
モモ「咲さんのことを、忘れることなんてできないんっす!」ボロボロ
かじゅ「…………」
モモ「どんな罰でも受けるっす」
モモ「それでも……それでも咲さんは諦められないっす……!!」
モモ「…………」ポロポロ
かじゅ「君が、なにか必死になれるものを見つけられただけで」
かじゅ「私はそれで……それだけで、満足…だよ」ポロッ
かじゅ「君が……陰ではなく、光の当たる場所で笑っていられることが」ポロポロ
かじゅ「私は嬉しい」ポロポロ
モモ「せんぱぁい……」ボロボロ
かじゅ「モモ、君は自分を「誰からも必要とされない」人間だと思い込んでしまいがちだが」
かじゅ「こんなにも君を想っている人がいる」
かじゅ「そのことを、絶対に忘れないでくれ」
かじゅ「自分を卑下しないでくれ」
かじゅ「じゃあ、さよなら、モモ」
モモ「先輩……ごめんなさいっす……」ボロボロ
モモ「咲、さん……?」
咲「モモちゃん……ごめんねぇ……」ポロポロ
咲「わた、し……どこかでモモちゃんのこと疑ってた……」ポロポロ
咲「モモちゃんは、やっぱり加治木さんのことを選ぶんじゃないかって……」ポロポロ
咲「やっぱり私のところを、離れていっちゃうんじゃないかって……」ポロポロ
咲「それで……加治木さんに見せつけるみたいに……こんな、ひどいこと……」ポロポロ
モモ「二人を悲しませてしまったのは、全部私が悪かったんす」
モモ「先輩への贖罪は、到底できっこないっす」
モモ「罪の意識は、これからもずっと背負っていくっす」
モモ「でも……だからせめて」
モモ「私は咲さんには幸せになって欲しいっす」
モモ「咲さんが私を求めてくれるなら、全身全霊でそれに応えたいっす」
咲「モモちゃん」ギュッ
モモ「咲さんっ」ギュゥゥ
モモ「はいっ!」
咲「モモちゃん……んっ」チュゥ
モモ「はっ……む」
咲「……っはぁ、ね、モモちゃん」
咲「ずっと一緒だよ!」
モモ「もちろんっす……!」
*************************
モモ(あれから私は、咲さんの家で暮らすことになったっす)
モモ(もとは4人家族だったから部屋が余っているとかで、咲さんがお父さんに交渉してくれたみたいっす)
モモ(しかも都合がいいことに、咲さんのお父さんが単身赴任になって、実質咲さんと二人暮らしの状態っす)
モモ(それなりに爛れた生活を送りながらも、別々の高校で麻雀をやり続けているっす)
モモ(東京の大学に入学したっす)
モモ(そこで竹井久さんとばったり遭遇して)
モモ(最終的にあの二人もカップルになったみたいっす)
モモ(先輩も幸せそうにしている……)
モモ(そんなことで若干心が軽くなってしまうあたり、私はどうしようもない人間みたいっす……)
モモ(先輩がくれた思い出は、今でも大切な心の拠り所になってるっす)
モモ(そして、それと切り離すことができない罪悪感……)
モモ(私はそれを、咲さんの気持ちに応え続けることによって、覆い隠そうとしているのかもしれないっす……)
モモ(どんなにそれが褒められない形でも、私は、咲さんの笑顔のために生きるって誓ったっすから……)
もいっこカン!
まさに焼け石に水……!
何の役にも立たない……!
脳が動かないから寝ます
Entry ⇒ 2012.08.30 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
千早「プロデューサーにセクハラされたわ…」
美希「千早さん、それ本当なの?」
千早「ええ。その…、胸を…」
真「胸を?」
千早「なでられたのよ」
真「セ、セクハラだ…」
千早「2人は、そういうことされてないの?」
美希「ミキはされてないなー、だって、ミキは揉まれるから」
千早「 」 ブワッ
美希「…ごめんなさいなの」
美希「ハニーがね、言ってたの」
美希「胸なんか飾りだって、小さくても問題ないって!」
美希「だから、大丈夫なの、千早さん!」
真「美希ー、何気に傷に塩塗ってるだけだよそれ」
千早「くっ」 プルプル
真「でも、プロデューサーの言うとおりだと思うな」
真「大きいとかそういうのじゃないとボクは思う」
千早「…そう?美希もそう思うかしら?」
美希「は、はいなの」
真「そればっかりはボクにはわからないなー」
美希「ミキも、男の人じゃないからわからないの」
千早「……どうしてこんなに差がでたのかしら」
真「やっぱり、身長と同じで普通に差はでると思うけどなあ」
千早「それにしても出すぎだと思うの」
美希「……でも、いまさら千早さんがばいーんとなってもミキ困るなーって思うの」
真「まあ、今の千早でなれちゃってるからね」
千早「つまり、今の状況で甘んじておけ…ということかしら」
真「で、でも、成長の余地はあるかもしれないし」
美希「千早さん、あきらめちゃだめなの!」
真「揉まれるんだっけ?」
千早「それはそれで、ちょっと問題よね」
美希「合意の上だから、問題ないかなってミキは思うな」
千早「…羨ましい」
真「揉まれるのが?」
千早「揉まれるほどあるのが」
真「……」
千早「ねえ、真。豊胸手術っていくらかかるのかしら」
真「千早、落ち着こう?」
美希「でもね、千早さん。胸が大きいとうつ伏せになると苦しいの」
千早「 」 ブワッ
美希「千早さん、本当にごめんなさいなの」
真「そんな事じゃないですよ」
P「ああ、悪い悪い…」
真「そもそも、何で胸なんか触ったんですか?」
P「それがさ…、おれ本当は胸じゃなくてお腹をなでようとしたんだ」
P「そうしたら、…何故か胸を触りたくなってさ」
真「つまり、セクハラ自体はする気だったんですね?」
P「おうよ」
P「でもまー、セクハラは日常茶飯事だからいいじゃないか」
真「よくないです」
P「くっ」
P「胸のことを気にする必要はないと思うよ」
真「本人にとっては、相当深刻な問題みたいですよ?」
P「うーん、まあそうなんだけど」
P「…真はさ、何で人の胸が膨らむか知ってる?まあ、個人差はあるけど」
真「え?…そういう身体の仕組みだから?」
P「いや、なんでそうなったかって話なんだけど」
P「サルいるだろ、サル」
P「サルっていうのは、オスがメスのお尻をみてそれで興奮するんだけどさ」
P「でも、それはサルが四足歩行するからだろ?」
真「あ、人間は立ってますから、あまり目線がお尻にむいたりはしませんね」
P「そうそう、それでかわりに胸が大きくなって、オスを興奮させるようになったらしい」
P「まあ、ただ単に直立二足歩行でお尻がでかすぎるのが不便っていうのもありそうだけど」
真「…つまり、どういうことです?」
P「つまり、千早は胸がなくても十分、魅力的な女性ってことだよ」
真「──それ、本人の前でいってあげたほうが」
P「言ったら言ったで「くっ」ってなりそうだけどな」
真「胸がないってワードがネックかあ…」
美希「つまり、ミキはお胸がないと魅力がないの?」
P「…美希、いつのまに?」
美希「ちょっと前からなの」
P「まあ、今のはあれだ、……千早用だから」
美希「むぅー」
P「大丈夫だよ、美希だって胸がなくても大丈夫さ」
美希「本当?」
真「でも、大きければ揉むんですよね?」
P「おうよ」
真(ダメだこりゃ)
P「女の価値は胸の大きさじゃない、形じゃない、柔らかさじゃない、感度じゃない」
P「正直、そんなものはどうだっていい」
P「大事なのはな、顔と性格なんだよ」
真「…ま、まあ。最終的にはそうなるんでしょうけど」
美希「ハニー的には、美希はどう?」
P「そりゃあ、アリだ。もう、可愛い」
真「ぼ、ボクは…?」
P「もちろん、アリ」
P「っていうか、765プロのメンバーには思い入れもあるしな」
P「全員いける!亜美だろうが真美だろうが、やよいだろうがお構いなしだ!」
P「そう、つまり…」
美希「765プロの女の子ならだれでもいいのハニー?」
P「だって、皆可愛い、いい子じゃねぇか…」
P「……みんな可愛い、俺のアイドルさ!」
P「…とはいえ、セクハラ以上のことはあずささんにもしないぞ?」
P「YESロリータNOタッチ、という言葉をしっているか?」
美希「ミキ、知らないの。真君は?」
真「ボクもわからないな…、あまりいい予感はしないけど」
P「つまり、ああいうのって、めでるもんなんだよ」
P「触っちゃいけないし、性の対象としてみちゃいけない」
P「アイドルにも同じことがいえるのさ」
真「いや、思い切り触ってるじゃないですか!」
P「まあね」
P「俺は、お前の胸を揉む以外のことをしたか?」
美希「…あ」
P「そう、していない」
P「アイドルと性交渉に及ぶなどという」
P「そういった夢のような行為」
P「この俺がするわけがない、夢は夢だからこそよいのだ」
真「な、なるほど…?」
P「お前らもさ、いわゆる〝偶像〟だからこそよいんだ」
P「アイドルが楽屋でタバコ吸ってる姿とか、考えたくないだろ?」
P「まあ。765プロのみんなはそういうのないけどな」
P「つまりな、千早は胸のことを気にする必要がない。俺が愛でる」
P「あずささんも、迷子になったら俺が見つけ出す」
P「やよいも、ヤバくなったら俺がご飯おごってやる」
P「貴音も、望むのなら横文字を徹底的に教えてやる」
P「真だって、お姫様扱いしてやる!」
P「そう…」
P「お前らの弱みなんざ、─俺にとっては何て事はない」
P「プロデュースするにあたって、そこまで支障もないからな!」
P(まあ、あずささんだけは見張ってないとだめだけど)
真「…でも、プロデューサーがそうでも、千早は…」
美希「そうなの、お胸が小さくて悩んでるのはハニーじゃなくて、千早さんなの」
P「まあ、そこなんだよな」
真「うーん、…気にすることないよっていうのも効果ないし」
美希「あ、詰め物すると、おっきくなれるの!」
P「根本的解決になってないし、何よりそれトドメさすことになるぞ」
美希「難しい問題なの…」
P「…とはいえ、自然に大きくなるのを待つのもな」
真「何年かかるんでしょうね」
P「来世まで待つしかないな」
美希「ハニー、それは言いすぎだと思うな」
P「そんなもん、あったらここら一帯のスーパーから千早が買い占めるだろ?」
P「まあ、鶏肉は大きくなるらしいけどな」
真「そうなんですか?」
P「それと、中国だかどっかでは…」
P「どこかが悪いときに、同じ部位の肉を食えばよくなるって言われてるんだ」
P「肝臓がわるいなら、レバーとかな」
美希「つまり、鶏のムネ肉を食べれば千早さんも…!」
P「まあ、鶏肉は確かに効果あるみたいだし、やってみるのもいいかもな」
真「…プロデューサー、肝臓が悪いときにフォアグラを食べるのはどうなんですか?」
美希「あ、余計に悪くなりそうなの!」
P「フォアグラとか都市伝説です」
真「へ?」
P「千早の胸」
美希「やっぱり、ちょっと小さいかなってミキは思うな」
P「そうじゃない、そうじゃない」
P「今のままでもいいだろって話」
真「それはまあ…」
美希「でも、大きくても小さくても、千早さんは千早さんなの」
P「しかし、俺はだな」
P「…………大きい千早はちょっといやだ!」
真「え?」
P「ほら、マジメだった女の子が」
P「夏休み明けにハデになるような…喪失感を感じる」
P「ああ、俺の知ってる彼女じゃなくなったんだなって」
P「胸の大きい千早」
真「ま、まあ…」
美希「いざ会ってみると、多分困るの」
P「……そうだろ」
P「だから、あれでいいんだ」
P「千早はB72でいい」
P「そういった趣旨のファンレターだってある」
真「あ、ほんとだ」
美希「これ、千早さんには見せちゃダメなの…」
真「会わないほうがいいんじゃないかなあ」
美希「今いっても、逆効果なの」
P「構わん、逆効果でもいいさ」
P「会って話すことに、意義がある」
美希「そうとは思えないの…」
P「任せろ、俺ならやれる」
真「くれぐれも、言葉選びには気をつけてくださいね?」
P「うむ」
千早「……」
P「なあ、千早ぁ」
P「……ちぃーは~や!」
千早「……」 プイ
P「セクハラしたのは悪かった」
P「そこは謝る」
千早「…そこは問題ではありません」
千早「いえ、セクハラ自体は少し困りますが」
P(やはり胸か)
P(……どうしよう、気の利いたセリフがでないな)
P(俺はお前の胸好きだぜ!…変態じゃないか)
P(女の価値は胸じゃない!…これか?)
P(いや、でもこれも千早にはだめかもな)
P(……くそ、俺は千早のプロデューサーだぞ)
P(こんな時に、支えてやれないでどうする?)
P(そうさ、こういう時こそ、ちゃんとしないとな!)
P「元気をだせよ」
千早「プロデューサー……」
P「まあ、俺は男だからさ、お前の悩みとかちゃんと理解してやれないし」
P「それが、どういう苦しみなのかもわからない」
P「けど、だからこそ。俺はお前にこう言ってやれる」
P「そんなことで、お前の価値は無くならない」
P「そんなことで、お前の価値は決まらない」
P「だから、ほら」
P「笑っとけ、笑っとけ」
P「笑わなきゃ、人生損するぞ」
P「やっと笑ってくれたな」
千早「だって、プロデューサー…。ガラにもないこと言うものだから…」
P「え、えぇッ!?」
千早「でも。おかげで色々ふっ切れました」
P「……そうか、よかった」
P(ガラにもないって。コイツの中の俺という人間はどうなってんだよ)
千早「プロデューサー、お手を煩わせてしまって、申し訳ありません」
P「違う違う。こういう時は…」
P「ありがとうっていうんだよ」
千早「……。」
千早「ありがとうございます」
P「真と美希が心配してたぞ?」
千早「そうですね…」
千早「2人にも謝らないと…」
P「そうだな、それがいいさ」
千早「あの…」
P「ん」
千早「プロデューサーのおかげで、色々、踏ん切りがついて…」
千早「なんだか、自信がもてました」
P「そりゃそうだ。俺は有能だからな」
Pェ・・・
美希「ううん、ミキもね、千早さんの事を考えないで…ごめんなさい」
真「すごいです、プロデューサー…。よく千早を宥められましたね」
P「ほら、二枚貝あるだろ?サザエとかみたいな巻貝じゃなくて。」
真「ホタテとかですか?」
P「そう。閉じてりゃ開けるのに苦労するけどさ」
P「BBQして、熱するとぱかぁって開くじゃん」
真「あー、そうですね」
P「北風と太陽も同じさ」
P「無理やり吹き飛ばすんじゃなくて暖かくしてやる」
P「つまり、ああいう時は」
P「カッコいい言葉で暖めてやればいいのさ」
真「そうなんですか…」
P「夏の栄螺は口ばかり、にならないようにしないとな」
真「…ことわざですか?」
P「口だけのヤツって意味だ」
美希「ミキ、前半部分いらないって思うな」
P「そういう事いうんじゃありません」
千早「ふふっ」
P「…しかし、これで一見落着だな」
美希「はいなの」
P「…………控えるべき?」
真「はい、そりゃあもう」
千早「あまり定期的にされるのも、こまってしまいます」
美希「ミキ、ハニーだったらいいかなって思うな」
真「美希がそんなこというから、プロデューサーが調子にのるんだよ?」
千早「そうよ。今はセクハラ以外はしてこないけど、いつエスカレートするか…」
P「安心しろ、それはないから。ボディタッチだけ」
P「基本的に上半身」
P「下半身はお尻だけしか触らない!」
真「ねえ、千早。社長に言っちゃおうか?」
千早「そうね、ちょっとお灸を据えないと」
P「ごめんなさい…」
P「どうした」
真「ボク、セクハラされてない」
P「してほしいのか?」
真「違います!…ただ、プロデューサーはその」
真「ボクを女の子としてみてくれてないのかな…って」
P「そんなことはない」
P「この前、転寝してる真の口から垂れている涎をこう…すくいとってだな」
千早「…うわ」
P「なめたい衝動に駆られただけだ!やってない!」
千早「…思いとどまったのなら、まあ」
真「よかった…、のかな?」
美希「真君のよだれ…」
P「実際やるとするだろ」
P「まこと、美味しゅうございます。真だけに。…って言うだろ?」
P「なんか、色々だめだろそれは」
千早「そもそも、セクハラ自体が…」
P「そこはほら」
P「役得?」
美希「手当たりしだいはどうかと思うな」
P「俺は差別はせん」
P「美希の胸を揉んだなら」
P「伊織のデコを撫で回す!」
P「伊織のデコを撫でたなら」
P「春香が転んだ時にパンツを覗く」
P「これぞ、平等」
千早「そういうことを平等にしなくても」
P「そうか?世間は平等を歌謳っているじゃないか」
P「まあ、万人に平等に降りかかるモノは不平等なんだけどな」
美希「ハニー、それっぽいこと言ってるけどよくわからないの」
真「だったらセクハラも不平等にしたっていいよね」
千早「そうよね、音無さんあたりにでも…」
P「あの人にして、本気にされたらどうすんだよ」
美希「それはミキが困るの」
P「だろ?」
P「しかし、……本気の恋愛はちょっと違う!」
P「彼女はそう」
P「観賞用だ」
P「YESオトナシNOタッチ」
P「それが、俺の矜持」
千早「仰ってることがよくわかりません」
P「つまり、彼女は見てるだけでなんか癒される」
P「子供は帰る時間だ」
美希「ミキ…今日お仕事してない気がするの」
P「いいんだよ」
千早「それでは、プロデューサー、お疲れ様です」
真「おやすみなさーいっ」
プロデューサー「おう、三人ともまた明日な」
ふにゅんっ
美希「ひゃっ」
さわさわ
真「わっ」
なでなで
千早「きゃっ」
P「じゃっ、おやすみ!」
P「きいてください、音無さん」
小鳥「はい、なんでしょう?」
P「……ったんです」
小鳥「はい?」
P「真のお尻の触り心地がよかったんです!」
小鳥「 」
P「前々から触りたかったんですが」
P「あれはいい」
P「貴音の胸もいいし」
P「伊織のデコもいい」
P「でも、あの尻もいい…」
小鳥「…そ、そうですか」
P「音無さんが引くってことは、俺相当ですかね」
小鳥「私をものさしにしないでください」
小鳥「それ、セクハラじゃないですか」
P「……」
P「まあ、そういう言葉に置き換えることもできますよね」
小鳥「セクハラ以外になんといえと」
P「……絆を確かめあう」
小鳥「絆ということばを汚さないでください」
P「ごめんなさい」
小鳥「謝るなら、アイドルの娘たちに…」
P「大丈夫ですよ、なんだかんだで彼女たちもまんざらじゃないですし」
小鳥「天罰がくだってもしりませんよ?」
P「ははは、大丈夫ですよ」
P「あれ?」
小鳥「どうかしましたか?」
P「…パソコンのデータが吹っ飛んでる」
小鳥「えぇ!?大変じゃないですか!」
P「…いえ、仕事のデータは残ってます。ただ」
P「…エロ画像がスッパリと…操作ミスでもしたのかな」
小鳥「……天罰、下りましたね」
P「うぉおおおおお!」
小鳥「元気出してください…、これを…」
スッ
P「こ、これは…!同人誌!」
小鳥「私には、もう必要のないものですから」
P「…ありがとうございます。これで、戦える」
P「ふぅ…」
P「さて、では仕事しますか」
小鳥「お役に立てて、よかったです」
P「なんでしたら、直接お役立ちしてくれたら」
P「俺もお役勃ちしたんですが」
小鳥「もう、プロデューサーさんったら」
P「はははは」
伊織「な、何よ」
P「ちょっと様があるんだ」
ナデナデ
伊織「ちょっと、出会い頭におでこ触るのやめなさいよ!」
P「…出会い頭じゃなくて、出会い額」
伊織「うまくない、うまくない」
P「…まあ、いいや」
P「それより、あのことなんだけど」
伊織「!」
P「…誰にもいってないよな」
伊織「あ、あったりまえじゃない。アンタが秘密にしろっていうから、秘密にしてるわよ」
P「よしよし。知られたらまずいからな…」
伊織「ねえ、アンタ…」
P「みなまでいうな、俺だってつらいんだ」
伊織「まあ、そうね…」
P「それまでは、このことは俺と伊織だけの秘密」
P「いわば、俺と伊織だけの秘密だ」
伊織(何で二回言うのよ)
P「わかったな?」
伊織「…にひひ♪しかたないわね」
P「ようし、えらいえらい」
伊織「…ほんとうにそう思ってるなら、態度でしめしなさいよね!」
P「よし」
なでなで
伊織「おでこじゃなくて頭でしょ!?」
P「貴音、なんかオススメないか?」
貴音「これなんかはどうでしょう?」
P「…塩か」
貴音「あまり辛いたいぷですと、食べるのに時間がかかってしまうでしょうし」
P「確かにな」
P「貴音の分も作ろうか、何がいい?」
貴音「では、あなた様と同じものを…」
P「りょーかい」
数分後
ズズズズズ…
P(あ、これうまいな)
貴音(これは、2分47秒で食べるのがべすとですね…)
P「今日のスケジュールも完全に消化できたな」
小鳥「お疲れ様です、プロデューサーさん」
P「それは、アイツらに言ってあげてください」
P「本当にがんばってるのは、あいつらですし」
P「俺なんか、たまに手助けして、セクハラするだけですから」
小鳥「そんなことないですよ」
小鳥「プロデューサーさんの力があるから、みんながんばれるんですよ」
P「…そうなのかな」
小鳥「はい、そうですよ」
P「俺、もう…恥ずかしくってさ」
真「でも、あながち間違ってないかもしれませんね」
P「そうなのか?」
真「はい、やっぱり。プロデューサーが色々やってくれるからこそ、がんばれるっていうか」
P「つっても、スケジュールの管理とか、営業探してきたりとかだぞ?」
真「でも、それがないと、ボクたちって成り立たないじゃないですか」
P「まあ、確かに」
真「だから。ボクたちはプロデューサーには感謝してるんですよ」
P「…な、なんだよ、いきなり」 カァァ
P「プロデューサー冥利につきる」
真「えへへ」
P「ま、でも」
P「いくら有能とは言っても。俺もまだまだだし」
P「お前たちと一緒に、成長していかないとな」
P「もっと、いいプロデューサーになるためにさ」
真「プロデューサー…」
P「あ、そうそう…」
P「誕生日おめでとう。真」
こいつ…出来る!
真「ボクの誕生日、覚えて…?」
P「あったりまえだろ。社長含めた全員の誕生日覚えてるよ」
P「俺を誰だとおもってんだよ?」
真「プロデューサー…」
P「へへへ、ま。ほら…こういうの祝うのも俺の仕事だしな」
P「…ま、仕事抜きでもお前らの誕生日は祝うけど」
真「え…」
伊織「まったく、皆に内緒でケーキ用意するの苦労したのよ?」
P「ありがとう、伊織」
P「他の皆も呼んであるし、みんな集まったらパーティしよう」
伊織「でも、いいの?パーティするって伝えてないのよ」
伊織「プレゼントとか用意してないんじゃ」
P「伊織はなんだかんだで子供だな」
P「プレゼントとかよりも」
P「…ハートだろう、ハート」
P「蝋燭に火をつけたい人いる?」
亜美「……うぅ」
真美「……う~」
春香「やっぱり…」
美希「ここはハニーがいいと思うの」
千早「そうですね、主催者でもありますし」
伊織「まあ、これ以上の適任は居ないわね」
あずさ「亜美ちゃん、真美ちゃん。よく我慢したね、偉いわ」
P「へ、じゃあ、俺がつけていいですか?」
P「へっへへ、ついでに真のハートにも着火しちゃうぞ~?」
社長「それじゃ、照明の方は任せたまえ」
P「あ、お願いします」
パチン
P「コホン、それでは皆さん」
P「真の誕生日を祝って」
P「例のアレをいきましょう!」
皆「ハッぴバースデーとゥユー」
皆「ハッピバーすデートゥユー」
皆「ハっピバースでーディア真~」
シーン
千早「ハッピバースデー…」
千早「トゥー……ユー……」
フッ
皆「お誕生日おめでとーっ!」
パァンッ パァンッ パァンッ
真「みんな、…ありがとう!」
P「いやあ、本当にめでたい。伊織、ケーキ用意してくれてありがとうな」
伊織「これくらい、お安い御用よ」
春香(…レシピきになるなあ)
貴音「まこと、よき日です…」
響「自分も、なんだかうれしくなってきたぞ」
雪歩「真ちゃん、本当におめでとう」
P(あ、このケーキうめえ)
真「これは…?」
響「ラフテーを、パンで挟んでみたぞ」
P「その名も「かなサンド」…俺たちの気持ちだ。ふっ」
美希「ハニー、かっこいいけどくさいの」
P「いいんだよ、別に。これくらいがちょうどいい」
響(正直いえば、自分の時にこれをプレゼントしてほしかったぞ)
春香(あ、このケーキ、クッキーが入ってるんだ…)
小鳥「とはいえ、ジュースしか用意してませんけどね」
P「いいじゃねーの、ジュースでも十分酔える」
P「この歓喜の時に酔いしれるのに、アルコールなど不必要さ」
千早「……」 プルプル
伊織「千早、我慢は身体に悪いわよ」
春香「千早ちゃん、おかしいときは笑っていいんだよ」
真美「そうだよ、芸人さんのギャグは笑わないとだめだって兄ちゃんいってたよ」
亜美「その兄ちゃんがギャグをやってくれたんだから、笑わないとダメっしょ」
P「おいこら」
P「あ、あれぇ?律子、それ遠まわしにバカにしてないか」
律子「あら、気のせいじゃ?」
P「ふぐう…」
P「でも、…ま」
P「とりあえず、今日はこの祝宴を愉しもう」
P「…な、真」
真「はいっ…、ありがとうございます」 グスッ
P「お、おいおい、泣くなよ?それほど感動的だっていうのはうれしいが」
P「笑え、笑っとけ。こういう時は」
P「笑わないと、人生大損するぞ」
真「……はいっ」
P「というわけだ、もっと盛り上がるぞー!」
皆「おーっ!」
P「…ふう、みんな騒ぎ疲れてねちゃったか」
社長「今日はお疲れさま、君のおかげで彼女もうれしそうだったよ」
P「いやいや、これくらいのこと。当然ですよ」
P「彼女たちは、俺の家族のようなものですから」
P「家族の誕生日祝うのは当然でしょう?」
社長「うむ、そうだね」
P「ちゃんと、妹たちをトップアイドルにしてみせますよ」
P「ね、お父さん」
社長「ああ、期待しているよ」
P「任せてくださいって、俺は有能ですから」
P「わかってますよ、この仕事は身体が資本ですから」
社長「それに、君が倒れてしまうとみんなが心配する」
P「──そう、ですね」
P「社長も、ご自愛してくださいよ?」
社長「ハハハハ、大丈夫。まだまだ現役でいけるよ!」
P「それをきいて、安心しました」
P「…あ、ちょっと夜風にあたってきますね」
P「とはいえ、まだ夏の暑さが残ってるな」
P「…今日はちょっと、夜風が気持ちいな」
P「ん~っ、秋もアイツらとがんばらないと」
P「さて、もうちょっとゆっくりしたら片付けするか」
P「とはいえ、音無さんは率先して疲れてねちゃったし」
P「社長にあまり屈んだりさせるのはしのびないから、俺一人になるか」
真「あの、プロデューサー」
P「真、起きてたのか?」
真「あの、ちょっといいですか?」
P「ああ、構わないぞ」
真「えへへ」
真「ボク、その、すごくうれしくて…」
P「それはよかった」
P「真のその言葉が、何よりのお返しだよ」
真「そんな…、ダメですよ。お返しはちゃんとします」
P「本当に?」
真「はい」
P「じゃあ、トップアイドルになってくれ」
P「で、その祝賀会をみんなでしよう。それが俺の望むお返し」
真「プロデューサー…」
P「出来ない、なんて言わせないぞ?」
真「はい!ボク、絶対にトップアイドルになってみせます!」
P「今日は真の誕生日なんだけどさ」
P「もし、真が生まれてなかったら。こうやってプロデュースすることも」
P「誕生日祝ってやることもできなかったんだよな」
P「だから。生まれてきてありがとう、真にあえてよかったよ」
真「プロデューサー…」
真「ボクも、プロデューサーにあえてよかったです」
P「俺だけじゃないだろ?」
真「はい、皆にあえて本当によかったです。生まれてきて、本当によかった」
P「ああ、そうだな。…さ、それじゃそろそろ片付けに戻ろうか?」
真「はい…♪」
P「こら、くっつくなよ、歩き辛いだろ…?」
真「いいじゃないですか、これも誕生日プレゼントですよ♪」
P「まったく、しょうがないな…」
真「えへへ♪」
宅配便「お届けモノでーす」
P「ん、真にだ」
P(…ファンから?…いや、名前書いてないな)
P「……うーん、カミソリとか、爆弾じゃなさそうだし」
真「プロデューサー、どうしたんですか?」
P「え、いや。真あてに…こづづみが」
P「多分、真へのプレゼントだと思うんだけど…」
真「本当ですか?あ、ボクあけてみますね」 ヒョイ
P「あ、差出人不明のモノを勝手にあけるな!」
真「わー、ぬいぐるみだ…」
P「不自然に重いとか、中に硬いものはいってるとかないか?」
真「?…大丈夫ですよ」
P「そうか、よかった」
ヒラ…
P「…メッセージカード?」
P「何々…?」
8/29が誕生日だって、何かの雑誌で読んだから
たまたま手元にあったぬいぐるみを送ってやる。
勘違いするなよ、ただぬいぐるの処理に困ってただけだからな!
P「……これは」
真「どうみても…」
P「律儀なやつ。気なんて使わなくてもいいのに」
P「やれやれ、一応お礼は言っておかないとな」
真「連絡先、知ってるんですか?」
P「一応…」
北斗「あれ、プロデューサーさん?」
P「ああ、北斗。今日うちに真へプレゼントが届いて…」
北斗「ああ、届きましたか。」
P「ありがとう、って伝えといてくれないか」
北斗「わかりました。俺からも真ちゃんにおめでとうって伝えておいてください」
P「うん、わかった。ありがとう…、それじゃあな」
北斗「チャオ☆」
ツーツーツー
真「…なんていってました?」
P「誕生日おめでとうだって、961プロが」
P(ふう、こういう事務所の垣根も飛び越えて祝福されるなんて)
P(やっぱり、誕生日っていいもんだ)
小鳥「プロデューサーさーん」
P「あ、音無さんがよんでる」
P「ちょっと行ってくるな」
真「あ、はい」
タッタッタ
真「……みんな、本当にありがとう」
真「……でも」
真(あの時、2人だけのとき。プロデューサーがおめでとうって言ってくれたのが、本当にうれしかった)
真(プロデューサー、お返し期待しててください)
真(その時に、あらためて。ありがとうって言います)
真(それ以上にも、伝えたい気持ちもありますし)
真(……とても素敵なプレゼントありがとうございます、プロデューサー)
真(誕生日、おめでとう。ボク)
終
誕生日おめでとう、真。
読んでくれた人は本当にありがとう。
祝ってくれた人も本当にありがとう、真は最高だと思うんだ。
改めて誕生日おめでとう真
ちーちゃん最初だけだったなw
というわけで、寝る。見てくれてありがとう
あともう一回、真本当に誕生日おめでとう
真誕生日おめでとう
真おめでとう
チャオ☆
Entry ⇒ 2012.08.29 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
橙子「式って普段ノーブラだったんだな」幹也「…は?」
幹也「え……あ、あの……橙子さん?」
橙子「夏場は蒸れなくて涼しそうだが……しかしなぁ……胸が痛くならないのかな、式は……」
幹也「もしもーし、聞こえてますかー?橙子さーん……」
橙子「ん? ああ、聞こえているよ黒桐。何だ、給料なら上げんぞ」
幹也「今回はその事じゃありませんよ。橙子さん、今何か……おかしな事口走りませんでした?」
橙子「おかしな事って……どんな?」
幹也「だから、その――式の……下着がどうした、とか……」
橙子「……」
幹也「……」
橙子「黒桐……君が式を好きなのは分かるがな……ここは職場で、今は勤務時間中だ」
幹也「はぁ……」
橙子「君はそこらの区切りはしっかり出来てる方だと思っていたんだが」
幹也「仕事中にいきなり独り言始めたのは橙子さんの方ですけどね……で、どうしたんですか?」
橙子「何が?」
黒桐「何がって……つまり、式の下着……」
橙子「……そんなに気になるのか?」
幹也「え?」
橙子「私は今勤務時間中だと念押ししたが……それでも式の事について聞きたいんだろう、君は」
幹也「……」
幹也(これは……はいと言っても、いいえと言っても……多分、黙っていても僕の分が悪くならないか?)
橙子「……」ククク
幹也「以前、小川マンションの件の時に鮮花に似たような質問をされましたが……ああいうの、橙子さんが鮮花に教えてるんですか?」
橙子「さて」(すっとぼけ)
幹也「……」ハァー…
幹也「気になるか気にならないかで言えば……気になります」
橙子「ふむ。つまり君にとっては、仕事より式が下着を着けているかどうかの方が重要だと」
幹也「聞こえの悪いように言わないで下さい。大体なんで急にそんな事言い出したんですか」
橙子「ん、いやね。思い返してみれば――私は、あの子が着物以外の服を着ている姿を殆ど見た事がないんだ」
幹也「え?」
橙子「いや、厳密には違うんだが……とにかく、式が着物以外を着ている姿を私は殆ど知らない。お前はどうだ」
幹也「そう、ですね。高校の時、休みの日に式と何度か遊びに行った事がありますけど……そういう時も基本はずっと着物でした、式は」
橙子「学校生活なんかは?着物で来てたのか?」
幹也「うちは私服登校だったんです。あ、でも体育の授業がありましたから、その時に何度か体操着姿を見た事があります」
橙子「式の体操着は可愛かったか?」
幹也「ええ、もちろんっ」
橙子「……」
幹也「……」
橙子「黒桐は式の体操着萌え……、と。今度式に会った時教えてあげよう」
幹也「ちょっ……所長!? 何言ってんですか!! 止めてくださいよ本当っ……」
橙子「落ち着け黒桐、暴れるな」
幹也「別に暴れてませんけど……」
橙子「今のは冗談だ、式には内緒にしておく」
幹也「本当ですか……?」
橙子「勿論だ。……私を信じられないか、黒桐?」
幹也「……」ジーッ…… ←不信の眼差し
橙子「まあ、それは置いておくとして」
幹也(不安だなぁ……)
橙子「もしかして式は……着物以外の服を持っていない、のか?」
幹也「そういう訳じゃないと思いますけど……家の人に用意してもらった洋服も、式は一度も袖を通した事がないそうです」
橙子「単に着物が好きなのか、極端な洋服嫌いなのか……どちらにしろ筋金入りだね」
幹也「……はは」
橙子「にしても……学生時代、男とデートする時も一貫して着物だったのか、あいつ……」
橙子(ん?学生時代……デート……学生……学校……)
橙子「あっ、そうだ」
幹也「?」
橙子「黒桐、前に礼園で起きた事件の事、覚えてるか?」
幹也「あの、妖精の?」
橙子「ああ。……私もあそこのOGだが……何でこの事忘れてたかなぁ……」
幹也「どういう事ですか?」
橙子「分からんか?あそこは全寮制で、生徒には制服の着用が義務付けられている。鮮花をみれば分かるだろう」
幹也(礼園……妖精事件……制服の着用義務……)
幹也「あっ」
橙子「もう分かっただろう。私は以前、鮮花の“目の代わり”にあそこへ式を送り込んだ事がある。その時にだ……」
橙子「……一度、目にしたんだよ。式があの制服を着ている姿を」
幹也「……良いなぁ」ボソッ…
橙子「いや、あれは実に―――素晴しかった」
幹也(ちょっと楽しみにしてたのに……結局、僕だけ一度も見られずじまいだったんだよな……式の制服姿)
橙子「あの制服、式は今どうしてるかな。もう一度着ている姿を見たいものだが……」
幹也「……」
橙子「黒桐、おまえ知らないか?」
幹也「え?何で僕が」
橙子「いやな――私には結局一度しかその姿を拝ませてくれなかったが――」
橙子「君になら、式も悦んで制服姿を見せ付けているかもしれないじゃないか」
幹也「い、いやー……」
橙子「え、どうなんだ実際? あの制服で君に迫ったりしないのか、式は?『黒桐くん、良くってよ……』なんて――」カチャッ…
幹也「と、橙子さんっ!」
橙子「……」クスクス
幹也(一瞬だけ眼鏡をかけて……器用な事するな、この人はー……)
幹也「――あいにく、僕も礼園服の式を見た事はありません」
橙子「なんだ、つまらん」
幹也「……」
橙子「式はあの制服どうしたかな」
幹也「捨ててなければ、秋隆さんが大切に保管しておいてくれているかもしれませんね」
橙子「うむ……」カチッ…シュボッ
橙子「……」フゥー…
幹也「……」
橙子「……あっ」
幹也「?」
橙子「制服と言えば――式って、中学時代はどうしてたんだろうな」
幹也「―――」
橙子「高校は私服登校だったかもしれんが、中学もそうとは限らん。案外あいつ、中学の時は普通にセーラー服を着てたんじゃないか」
幹也「……おぉ……」
橙子「黒桐、ちょっとイメージしてみろ」
幹也「?」
橙子「初めて君が出会った……それより少し幼い式の、セーラー服姿を」
幹也「―――」
橙子「……」
幹也「……何とも、可愛らしいですね」
橙子「だろう?」
幹也「今の式も十分可愛いですけど」
橙子「……」
橙子「式はまだ中学の時の制服を持ってるかな……」
幹也「秋隆さんなら、きっと……」
橙子「そうか……」
幹也「……」
橙子「……」フー…
橙子「話が逸れたな……」
幹也「逸らしたのは橙子さんご自身ですけどね」
橙子「だから。式は着物以外の服を滅多に着ないが、着物を着る時は普通下着を着けないものなんだろう? だから――」
幹也「式も、普段は下着を着けていないと……?」
橙子「その可能性は、十分ありえるって事さ」
幹也「……」
橙子「それがどうも気になって……昨日、私は一日中式の胸を観察していたんだがな」
幹也「は?」
橙子「これが良く分からん。普通、胸が服に擦れれば痛そうな素振りをしても良いはずなのに、式にはそれがなかった」
幹也「それってつまり、式は下着をしているって事なんじゃないですか?」
橙子「……ないんだ」
幹也「は……?」
橙子「だから。ブラをすれば出来るはず膨らみがなかったんだ、式の着物には」
幹也「――」
橙子「という事は……式は下着を着けていないという事になる訳だが……黒桐」
幹也「はい?」
橙子「君さ、式が普段下着を付けてるかどうか、知らない?」
幹也「――知りませんよ。何で僕がそんな事を知ってるんですか」
橙子「本当か?」ズイ
幹也「……」
橙子「おまえは、本当に、式のあの着物の下がどうなってるのか、知らないのか?」
幹也「……」
橙子「……」
幹也「……」
幹也「……ノーコメントで」
橙子「……何とも無難でつまらん返し方だなぁ」
ガチャ……ギイイイ……
橙子「おや、噂の張本人がやって来たようだ」
幹也「え……?」
式「……」
幹也「あ……」
橙子「……」クスクス
式「……」
幹也「や……やあ。おはよう、式。今日もいい天気だね」
式「これから曇るそうだけど。……おはよう」
橙子(こりゃ相当慌ててるな……天気予報くらい家で観てきただろうに)ククク
幹也「今日はどうしてここに?学校は?」
式「今日は休みの日だよ。……なんだ、オレはここに来ちゃいけないって言うのか?」
幹也「い、いや……そんな事ないけど」
式「……ふん」スタスタ
橙子(……これは面白いモノが観れそうだ)
幹也「式、コーヒー飲まない?」
式「……淹れてくれるなら飲むけど。何だ、おまえ今仕事中じゃないのか」
幹也「堅い事言わないで。別に良いですよね、橙子さん?」
橙子「構わんよ」
幹也「よかった。じゃ、淹れてくる」スタスタ
式「……? 何だあいつ……」
橙子(男と言うのは、浮気の最中余所余所しい程家族に優しくなるそうだが……ふむ)
幹也「お待たせ。ブラックしかなかったけど、いいかな?」
式「……甘いのよりは、こっちがいい」
橙子(後ろめたい気持ちがあるんだろうな……さて、どうなるか)
…………………………
橙子「……」パラ…パラ…
式「……」グテー…
幹也「……」ソワソワ
幹也(式は今……ジャンパーを脱いで、ソファーでゴロゴロしている……)
式「……」ゴロゴロ…ゴロゴロ…
幹也「……」チラ…チラ…
式「?」
橙子「……」ククク
幹也「……」
幹也(――本当に。式は今、着物の下に下着を付けてないんだろうか)
式(あいつ……何でさっきからこっちをチラチラ見てくるんだろう?)
幹也(もし橙子さんの言った事が真実なら……式はここまで、ずっとノーブラで歩いてきた事になる)
幹也(幸い式の家はここから近いから……痴漢に遭ったって事もなさそうだけど、しかし……)
幹也「……」ウーン…
式(……何か、服に変な物でも付いてるのかな?)
幹也(それでもやっぱり、心配だよな……歩いている最中、擦れ違い様に触ろうとする痴漢が居ないとも限らないし……)
式「?」
幹也(式に直接聞ければそれが一番なんだろうけど、聞いた途端に拳が飛んできそうな気がする……参った)
橙子「……ああ、もう昼か。式、腹減らないか?」
式「ん? ……ああ、腹減ったな」
橙子「この辺に、上手い和食料亭が最近オープンしたそうだ」
式「へぇ、それで……?」
橙子「三人で食いに行かないか?勿論私が奢ろうだ」
幹也「……え?」
式「……トウコの言う事にしては偉く太っ腹だけど。どういう風の吹き回し?」
橙子「いや……普段から世話になってる君達への礼だと思ってくれ」
式「……」
橙子「純粋な好意だよ、これに裏はないから安心しろ」
式「……分かった」
この日支払われた食事代は、こっそり黒桐くんの給料から天引きされていた
橙子「じゃ、今日は一旦仕事を引き上げて……あっ、そうだ。おい、黒桐」
幹也「え……な、何です?」ドクン…
橙子「おまえさっき式が部屋に入った時チラチラ見てただろ」
式「……」ドキ…
幹也(と、橙子さん、何を……?)
幹也「いや、見てないですよ」
橙子「嘘吐け絶対見てたぞ」
幹也「……何で見る必要なんかあるんですか」
式「……『なんか』?」ピクッ
幹也「あっ……」
式「おまえ幹也さ、さっき仕事してる時、中々手が動いてなかったよな」
橙子「そうだよ」
幹也「い、いや、そんな事……」
幹也(ちょっと橙子さん……! 何言ってるんですか!)
橙子(いや……君、さっきから式が下着を着けてるか着けてるかどうか凄く気にしてたんだろう? だから……)スッ…
橙子「見たけりゃ見せてやろう、式」ガシ
式「え?」
幹也「あっ……!」タタタ
音も無く式の背後を取った橙子さん。その手は既に式の肩口にかかっていた……
橙子「―――」
式「―――」
幹也「―――」
(ふにっ……)
幹也(あれ……?)
橙子さんは式の肩口に手をかけた。手をかけたが……それ以上何もしなかった。
一方、このままでは式の着物が引き下ろされると判断した黒桐くんは、橙子さんの手を抑えるべく走った、が
幹也「……」
式「……」
橙子「……」
幹也(引き下ろされて……ない?え……じゃあ今、僕の手の中にあるこれは……)
(ふに……ふに……)
幹也(柔らかい……けど、これは素肌じゃないな……何かで覆ってる……さらし……?)
ギイイイ……バタンッ!
鮮花「橙子さーん!兄さんと一緒に料亭にお昼食べに行くって本……当……」
いいぞもっとやれ
鮮花「……」
幹也「……」
幹也「あざ……か……? どうして、ここに……」
橙子「ああ、あらかじめ電話で私が呼んでおいたんだ。食事って言うのは人数が多ければ多いほど楽しいものだろう?」
幹也「はは……」
式「……」
鮮花「……」
幹也「……」
橙子「……」カチッ…シュボッ…
橙子「どうでもいいがな、黒桐、おまえいつまで式の胸掴んでるんだ」
幹也「―――」
式「―――――ッ!!」
(バチンッ)
幹也「あいたっ」
式「―――っ……!」タタタ
ガチャッ……バタンッ!
橙子「腰の入れ方といい、スナップの掛け具合といい……見事な平手打ちだったな」
鮮花「……」ユラリ…
幹也「あ、あの……鮮花……?」
鮮花「ふ……」
鮮花「ふ……ふふ……ふ……」
幹也「……?」
鮮花「喰らいやがれぇーーーッ!!(Azolto)」
(ドッ……グォンッ……)
幹也「……」
鮮花「―――ッ……」タタタ…
橙子「驚いた。鮮花の奴、ここまで強力な発火能力が使えた、とは……」
幹也「何て火力とパワーだよ……あいつは……」ガクッ…
幹也「……」
橙子「おい、黒桐。大丈夫か?」
幹也「……」ガクッ
橙子「あ、気を失ったか……。まあ多少は役得も有ったんだ、それくらいは我慢しなきゃな」
橙子「……思春期には辛い事もある。だが、皆そうやって大人になっていくんだよ……式、鮮花、黒桐……」
と、若い三人の心と体に深い傷を植えつけた張本人は言い放つのであった
この後、走り去った式と鮮花は幹也が頭下げて連れ戻し、改めて四人で料亭へと向かった
鬱憤を晴らすかのような式と鮮花のやけ食いは凄い物で、流石の幹也も声を失ってしまった。そして……
幹也「あ、あれ……今月やけに少なくないですか橙子さん?」
橙子「さあ?気のせいじゃないか」
黒桐くんの給料は、大幅に下げられてしまったのだった。
完
おい
元々らっきょにエロは合わないけど橙子さんの鬼門っぷりは異常
Entry ⇒ 2012.08.29 | Category ⇒ 版権物SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
真「アイドルとしてのボク」
時計の針は九時半を示している。いつものボクならもう現場まで出向いて、仕事をしている時間だけど、今日は事務所でファッション雑誌を読んでいた。
最近は暑いし、働きづめだったということで、久しぶりにプロデューサーが休みをくれたのだ。
せっかくの休日に事務所にいるのは、765プロのみんなと会うため。駆け出しのころから支え合ってきた仲間がいるこの場所は、ボクにとってもう一つの家のようなものだ。
そう言いながら、響がボクの横に座る。そしてボクの広げている雑誌を覗き込んだ。
「真、またフリフリの衣装見てるのか?」
「うん。……やっぱり、こういうの憧れちゃうなぁ……」
一度でいいから、かわいい服を着て、女の子扱いされてみたいものだと思う。いつも男のような扱いを受けているボクだって、れっきとした女の子だ。少しくらい夢見たって、罰は当たらないだろう。
いや、その「誰か」は、すでに頭の中では分かっている。デスクでスケジュールの整理をしているプロデューサーをちらと見る。
いつ抱いたともわからないこの想い。ボクの鈍感な王子様は、いつか気付いてくれるのだろうか。
「ん……あふぅ」
そんなことを考えていると、向かいのソファで寝ていた美希が起き上がった。響と全く同じように、雑誌を覗き込む。
「あ、これ、一昨日出たやつだよね? ミキ、いろんなファッション誌読んでるけど、この雑誌はセンスがいいって思うな」
そのまま雑誌を眺めていた美希の顔が、不意に訝しげなものに変わる。視線の先をたどってみると、さっきまでボクが見ていたかわいいブランドの紹介があった。
顔を上げ、何とも言えない表情でこちらを見つめてくる美希。
「な……何?」
「真くん、この服を見てたの?」
「えっと、そうだけど……」
「ミキ的には、真くんにはこーゆーの、似合わないって思うな」
……ボクが可愛い衣装が似合うタイプではないことは、いろんな人にさんざん言われてきたことだし、それのおかげで多少の自覚もある。あまり受け入れたくはないけど、それが事実というものだ。ただ、そんな似合わないものに憧れる自分が存在するのも、また事実だった。
「でもボクだって、いつかお姫様みたいな服を着て、素敵な王子様とのロマンスを……」
「真くん、面白いこと言うの。王子様は、真くんだよ?」
「そういうことじゃなくて……響はどう思う?」
「……自分、真にはもっとかっこいい服の方が似合うと思うぞ!」
「響まで……もう、プロデューサーはどう思います?」
話を振られるとは思っていなかったのだろう、プロデューサーは若干驚いた風にこちらを向いた。
「……そうですか」
プロデューサーの出した答えは、アイドルとしてのボクの評価だった。それがプロデューサーの仕事だから、イメージ前提の考えになるのはボクも理解できる。でも、こういう時くらいは一人の女の子として見てくれたっていいのになぁ……。
「あれ? どうしたんだ、真?」
「……もういいですよーだ」
もう一度雑誌に目を戻して、フリフリした衣装を着こなすモデルを眺める。
……ボクも、こんな風になれるかな?
その笑顔に心の中で問いかけるも、返答はなかった。
もうそろそろ、765プロ総出のライブがあるから、その告知や、各所への挨拶などで忙しいのだ。
ボクも、朝から公園でのゲリラライブの後、午後にはテレビ出演の予定が一本控えていた。
つまり、今日はプロデューサーを一人占めできるということになる。仕事上のものではあるけど、プロデューサーと一緒に過ごせる貴重な時間だ。プロデューサーのことが気になっている同僚は、枚挙に暇がない。
このような小さな機会ですら、なかなか得られるものではないのだ。
「よーし真、そろそろ行くぞ」
「はいっ」
「確認するぞ。今日やる曲は、『エージェント夜を往く』、『まっすぐ』、『迷走mind』の順に、三曲だ。
一曲挟まるとはいえ、ダンスの激しい曲が二つ入っている。今日はかなりハードなスケジュールだけど、今の真ならこなせると俺は思ってる。
今日が終わったら、明日はフリーだから、ゆっくり休んでくれ。それと……」
いつものように、プロデューサーが読み上げるスケジュールを記憶と照らし合わせていく。
たまに勘違いがあったりするから、こういう風にプロデューサーが送迎してくれるのは、仕事上、とても助かることだった。
「よし、今日のスケジュールはこんなもんだな。何か質問あるか?」
「はーい! プロデューサー、今日仕事が終わったら、ボクと一緒にご飯食べに行きませんか?」
「そういう質問か……って、今日か?」
「はい、ダメですか?」
「今日は、ちょっとな……真、本当に今日、食事に行きたいのか?」
「そうですけど……それがどうかしましたか?」
「いや、まあいいんだけどな……」
プロデューサーの言っていることがよく分からない。どうして今日誘うと、そんなに不思議がられるのだろうか。
車に乗っている間考え続けたけれど、その答えが出ることはなかった。
「ああ。なんたって真は、人気アイドルだからな」
会場に着くと、耳が早い百人ほどのファンが、既にたむろしていた。運営から情報が漏れたのだろうか。
詰め寄るファンをかわしつつ、素早く舞台裏に滑り込む。ボクの登場で、会場は熱気に包まれていた。
今日のゲリラライブは、オールスターライブの宣伝も兼ねた、ごく小規模なものの予定だから、当日の情報拡散以外の集客はしない。
にもかかわらず、集まったファンの数は、予想をはるかに超えるものだった。
視界いっぱいに広がったのは、たくさんの女の人の顔。
小学生くらいの子から、ボクと同じくらいの高校生らしき人、家では主婦でもしていそうな人など、年代問わずたくさんの女性で会場はいっぱいだった。
「……ほとんど、女の人かぁ」
思わずため息が漏れる。別に、女性のファンを軽視しているわけでも、男のファンばかりに好かれたいと思っているわけでもない。
ただ、一応ボクも女性アイドルだ。女性として、男の人にちやほやされる存在を夢見たことは、何度もある。
「あっ、いえ、何でもありません!」
「今日のライブの評判は、今度のライブの集客にも影響が出る。一曲一曲、気を引き締めて臨もう」
「はいっ! ……あっ、プロデューサー」
「ああ、分かってる」
「ダーン! へへっ、今日もひとつ、ガツンと決めてきますからね!」
拳を合わせる。ただそれだけの動作だけれども、それはボクの集中を高め、一気に仕事モードに切り替わらせる。
ボクのアイドルとしての形、『王子様』の菊地真へと。この形をボク自身が望んでいるわけではない。
それでも、プロデューサーに見てもらえているという歓びと、その期待に応えなければいけないという程良い緊張が、ボクの糧となっていた。
「気合十分だな。よし、行ってこい!」
プロデューサーがぐっと背中を押してくれる。ボクはその勢いのまま、ステージに飛びだした。
今この瞬間、ボクはみんなの王子様(アイドル)だ。煮え切らない自分も心のどこかにはいる。それでも、今はこのステージを成功させることに、全神経を集中させる。
「みんなー! 今日はボクのライブに来てくれて、ありがとう!
このライブのことは、誰にも言ってなかったんだけど、こんなにたくさんの人たちが集まってくれて、ボク、凄く嬉しいよ! ……じゃあ、早速一曲目、行きます!
『エージェント夜を往く』!」
きらめくステージの上、ボクは出来る限りの力を出して、ボクを輝かせた。
「真、よくやったな! 大盛況だったぞ!」
激励してくれるプロデューサーに、満面の笑みで応える。ライブは大成功を収め、集まったファンの数は五百人を超えたという。
ボクとしては、会心の出来、の一言に尽きるものだった。この分なら、オールスターライブもきっと成功できるだろう。
「ほんとに、よくやったよ」
頭をくしゃくしゃっと撫でてくれるプロデューサー。その様子が何だか男らしくって、何故だか少し嬉しかった。
「これから三時間昼休みをとって、十五時から、ブーブーエスのスタジオで収録だから……。真、何か食べたいものはあるか?」
「じゃあ……一旦765プロに戻りませんか? お弁当でも買って。事務所でちょっと、ゆっくりしたいです」
「わかった、じゃあ事務所に戻ろう。どのみち、ブーブーエスに行くときに通る道だしな」
その後、少しの休憩をとって、ボクたちは公園を後にした。
「あ、おかえりなさーい」
事務所に戻ったボクたちを出迎えてくれたのは、二人で歌番組の収録に行っていた、春香と千早だった。
「たっだいまー! 聞いてよ二人とも! 今日のライブ、大成功だったよ!」
ライブを成功させた嬉しさそのままに、ボクは二人に報告をする。
「私はただ、いつも通りに歌っただけだから……」
楽しそうに千早の活躍を話す春香と、冷静に振る舞いながらも、どこかまんざらでもなさそうにする千早。
やっぱり、自分の能力が認められるというのは嬉しいことだ。それは、ボクについても同じことが言えるし、たぶんほかのみんなもそうだろう。
今回、心残りがあるとすれば、それは、来てくれたお客さんのほとんどが女性だったということだ。
もちろん男性だけを多めに集めるなんてできないし、それに意味なんてないけれど、こうも女性が多いと、ボクには男性のファンがいないのではないだろうか、とさえ思ってしまいそうになる。
そう考えると少し、寂しいような悲しいような気分になった。
「あれ? どうしたの、真?」
顔には出していないつもりだったのだけれど、春香が目ざとくボクの変化に気付いた。
春香はこういう他人の感情の機微に鋭いところがある。もっとも、ボクが単に分かりやすい反応をしていただけなのかもしれないけど。
「聞いてよ二人とも。ボクのライブに来てくれたお客さん、女の人ばっかりなんだよ!」
それを聞いて、何やら二人が、なんとなくわかったような顔をする。
「あー……真は、女の子に大人気だもんね」
「……きっと、真には女の子を惹きつける魅力があるんじゃないかしら。気にすることはないと思うわ」
確かに、ボクが二人の立場だったとしても、同じような反応をするだろう。
だって、これはボクのアイドルとしてのイメージで、言ってしまえばどうしようもないことなのだから。それでも、不満なものは不満なのだ。
「でもでも、真が女の子に人気なのは、私達には無い武器だよ? もっと、胸を張らないと!」
「……確かに、そうかもしれないね」
春香の言葉で、少し気持ちが楽になる。確かに、女の子らしいボクを見せられているかとは関係なく、女性に人気なのは、ボクの長所だろう。
「うん、ありがとう、春香。もうバッチリだよ! よーし、午後も頑張るぞぉ!」
立ち上がって、気合いを入れ直す。それが聞こえたのか、デスクからプロデューサーが顔を出してきた。
「お、真、昼食は食べ終わったみたいだな。そろそろ行くか?」
「分かった。……じゃあ、春香、千早、行ってくるな」
「行ってらっしゃい、二人とも」
「行ってらっしゃーい。頑張ってね、真」
二人の送り出す声を背に、事務所を出る。そして、ボクたちは次の収録があるブーブーエスへと向かった。
今日の出演内容は、番組内のコーナーで、ボクが自身の半生をドキュメンタリー形式で紹介する、というものだ。
ただ、ボクは人に語れるほど長く生きてきたわけでもないし、取り立てて立派なことをしてきたわけでもない。
正直なところ、このコーナーに、まだまだ人生経験の浅い自分が呼ばれることには、違和感があった。
それでも、せっかくプロデューサが選んできた仕事だし、そんなコーナーにこの歳でボクが呼ばれたこと自体に意味もあるのだろう。
そう考えると、この仕事一つを受ることにも誇りを持てるというものだ。
「あっ、はーい、今行きまーす!」
感慨に浸っていると、スタッフさんから声がかかる。再度気持ちを引き締め、ボクは楽屋を出た。
司会のタイトルコールで、ボクのコーナーが始まる。そして、ボクの軽い紹介がされた。
「……ということで、今回のゲストは、今を時めく人気アイドル、菊地真さんです!」
デモのVTRが終わり、ボクがセットに入る。
「はい、そうなんです! ゲリラライブだったんですけど、結構たくさんの人が来てくれて。ライブに来てくれたファンの皆さん、ありがとうございました!」
「まさに、今旬のアイドルといった感じの真ちゃん。では今日は、彼女がいかにして今の地位を手に入れたのか。
それを解き明かしていこうと思います。今日はよろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いします!」
ボクがどの程度のものか、この番組で評価されるのかもしれない。少しでもよく見られようと思って、襟を正す。
「デビューしたのは……去年の今頃なのかな?」
「はい、まだ一年経つか経たないかです」
「それでもうこの人気だもんねー。今、乗りに乗ってるって感じだよね」
「ありがとうございます。でも、出来ればもっと上を目指していきたいと思ってます」
パネラーの人の言葉に続き、VTRが流れ出す。
制作には携わっているし、もちろんどんな内容になるかは知っているものの、実際に完成したものを見るのは初めてで、いざそういうものが流れると思うと、少し気恥ずかしい。
映像をはさんだトークによって、番組はつつがなく進行する。
VTRは、売れるまでの下積みの時や、プロデューサーとしてきた努力についての話とか、お父さんにアイドル活動を賛成してもらえなかった話が続き、
ボクがしてきた数少ない苦労を圧縮したような内容だった。
この程度で努力なんて言ったら、本当に努力してきた人達、まさに今この番組で司会やパネラーをしているような人達に怒られてしまうんじゃないかと、心配になる。
『辛い時や困ったときは、いつもプロデューサーが助けてくれました』
画面の中のボクが話すのを見ていると、色々な思い出が次々に浮かんでくる。
お父さんにアイドルをしていることがばれたとき、プロデューサーが直々に家に来て、お父さんを説得してくれたこと。
思うように踊れなかったときに、励ましてもらったこと。
ボクのこれまでのアイドル活動は、プロデューサーによって成り立っていると言っても、過言ではないと思う。
……全部、プロデューサーに支えられて、ここまで来てるんだ……。
そう考えると、改めてプロデューサーへの感謝の思いが湧いてきて、胸が熱くなるのを感じた。
「菊地真さん? 同じ番組に出るのは、初めてだったわよね。……あんた、ホントに男みたいな顔してるわね」
「は、はい……自分では、あまり男みたいな扱いを受けるのは、好きではないんですけどね……」
突然の物言いに少しむっとしたが、相手は年上。ちゃんとした礼節をもって接する。にもかかわらず、相手の反応は、少なくとも礼をわきまえたものではなかった。
長い髪を神経質そうに触ると、醜いものを嫌々見るような目でボクを見下ろしてくる。
「えっ……?」
言っている意味がよく分からず、そんな反応をしてしまう。すると、彼女は薄ら笑いを浮かべながら鼻を鳴らして、吐き捨てるように言った。
「あんたみたいなイロモノは、一発屋に終わるか、そうじゃなくてもブームが終われば、何か別の路線でもなきゃ、大した扱いはされなくなるものよ。
短い間だろうけど、せいぜい頑張ってみたら? ……まぁ、そんな男みたいな顔じゃ、他の路線目指そうとしても、無駄だろうけどね」
「…………」
ボクの隣を抜けていく彼女。言いたい放題言われたことよりも、何も言い返せなかった自分が悔しかった。
それは昼にも春香に言われたことだし、はっきりと自覚している。でも、その人気がなくなってしまったら? 今のボクには、どうしていいのかわからない。
結局のところ、ボクはイロモノの『王子様』でしかないのだろうか。お姫様になることを目指して入った芸能界。
それを諦めてまで演じる王子様がいずれ必要とされなくなるのなら、アイドルとしてのボクに、意味なんてあるのだろうか。
一旦ネガティブな方向に向かった思考は、加速するばかりだった。
ふと、ドアが開く音がする。ボクの楽屋にノック無しに入る人。そんな人は一人しかいない。
「お疲れ、真……真? どうしたんだ?」
「お疲れ様です、プロデューサー……実は、さっき、共演した人から……」
事の顛末を、プロデューサーに話す。ボクが話している間、プロデューサーは、何をするでもなく、ただ黙って聞いてきてくれた。
「あのな、真。確かに俺は、今、真が可愛い服を着ると、イメージに影響が出ると言った。だけどな、これからの真には、そういった可能性もあるんじゃないかと、俺は思ってる」
「これからの、ボクですか……?」
「ああ。真は、あんまりにも王子様扱いされすぎたんだな。……ごめんな、それはそういう路線で売り出してしまった俺の責任だ。
でもな、真は確かに凛々しいけど、それに負けないぐらい、可愛いところもあるんだ。俺が保証する」
「だから、誰に何を言われても、気にするな。俺はお前が可愛いって、分かってるから。これからいくらでも、時間はあるんだ。
いつか、真がなりたかったお姫様にも、絶対にしてみせる。それまで、少しの間、我慢してくれないか?」
プロデューサーに触れてもらうと、不思議と心が落ち着く。この人がそう言ってくれるなら、安心できる。
さっきまで心に沈着していた不安が、嘘のように消えていくのを感じた。この人が、信じてくれるなら……。
静かにプロデューサーから離れる。プロデューサーは歯を見せて笑うと、ボクの頭の上に手を置いた。
「よしっ、じゃあ帰るか、真! みんな待ってるぞ」
「はいっ! ……みんな?」
「なに、着けば分かるさ」
事務所に戻ったボクを出迎えたのは、たくさんの破裂音と、「おめでとう」の声。何が起こったのかわからず、周りを見回す。
春香たちや、小鳥さん、社長までもが、クラッカーを持って立っていた。
「驚いたか?」
隣で、やはりクラッカーを持ったプロデューサーが聞く。
「何でこんな……って、あっ」
そこでようやく気付く。プロデューサーが今日の夕食を断った理由。さっきの言葉の意味。こんな簡単なことに気付かなかった自分がおかしくて、ひとりでに笑みがこぼれる。
「真、誕生日おめでとう! もしかしたらばれちゃうかなーって思ってたけど、真ったら、気付かないどころか誕生日自体忘れてるんだもん。こっちがびっくりしちゃったよ」
「あはは……ありがとう、春香」
何日か前まで、覚えていたはずなんだけどな……ここ数日のハードスケジュールや、今日のいざこざですっかり頭から抜けていたらしい。
「社長はお酒飲みたいだけでしょ? 経費じゃ落ちませんからね」
「わ、分かっているとも、律子君」
「ほら真、今日は真が主役なんだから、みんなの前に出ないと」
「わっ……とと」
部屋の真ん中まで春香に押されて、みんなの前に出る。ボクをじっと見つめる沢山の嬉しそうな顔。
こんなにたくさんの人が、ボクの誕生日を祝ってくれていることに、少し涙が出そうになった。
「「「かんぱーいっ!」」」
乾杯して、ご飯を食べて。忙しいはずのみんなが作ってくれた時間は、何にも代えがたいものだった。
一通りテーブルの上が片付いてきたところで、プロデューサーが手を叩いて注目を集めた。
「当たり前っしょ→」
「兄ちゃんこそ、忘れてんじゃないの?」
「んっふっふ~。亜美たちからは、これだよ!」
「まこちん、あんまゲームとかやんないっしょ? だからこれでゲーム始めて、真美たちと一緒に、もっともっと遊ぼうぜー」
「コラあんたたち、自分のためにプレゼント買ってどうすんのよ!」
「うげっ、律っちゃん!」
いつも通りのやり取りに、思わず笑ってしまう。最近はプロデューサーも忙しいことが多いし、二人はもっといろんな人と遊んでいたいのだろう。
今度からは、もっと二人に付き合う時間を増やしてあげようと思った。
「あっ……へへっ」
「……さすがまこちん、かっこいいですなー」
頭に手をのせると、二人は少し照れたように笑った。
そう言って出てきたのは、いつも通り元気そうなやよいと、いつもと違って何やら気後れした様子の伊織だった。
「私たちからは、はい! ぬいぐるみです! 伊織ちゃんと、二人で作ったんですよー!」
やよいの手からクマのぬいぐるみを、伊織の手からウサギのぬいぐるみを、それぞれ渡される。
「何よ……変なら変ってはっきり言いなさいよ……」
伊織は、ちょっとほっとしたような表情をした後、その顔をすぐにこわばらせた。全く、もうちょっと素直になってもいいと思うんだけど。
「喜んでもらえて、嬉しいですー!」
「ふ、ふん、当然よね。なんたってこの伊織ちゃんが、私とおそろいのうさちゃんを、わざわざ作ってあげたんだから。感謝、しなさいよね……」
素直なやよいも、素直じゃない伊織も可愛くって、亜美や真美と同様に頭をなでる。
「はわっ!? ……えへへ、真さん、優しいです……」
「んなっ……ちょっと、やめなさいよ……」
「真ちゃん、次は、私たちのプレゼントを受け取って欲しいな」
「真。わたくしと雪歩の二人で、あくせさりぃしょっぷなる場所で購入したものです。気に召すとよいのですが……」
おずおずと雪歩に渡されたのは、小さな腕時計。
「四条さんと、何をプレゼントするか迷ってた時に見つけたんだ。それで、これを見たときに……」
「わたくしも雪歩も、これしかないと思ったのです。きっと、似合うと思いますよ」
早速腕時計を付けていると、貴音が頭を下げてこちらを見ているのに気が付いた。
「えっと……どうしたの、貴音?」
「? ……頭を撫でるのでは、ないのですか?」
中学生組――美希も中学生だけど――が可愛くて頭を撫でていたのを、プレゼントをくれたみんなの頭を撫でるものと勘違いしているらしい。
でも、今更訂正するのも気が引けたし、貴音の髪の毛も触ってみたかったから、黙っておくことにする。
「ふふ、ありがとうございます。……雪歩は、頭を撫でられられなくても、よろしいのですか?」
「えっ……私は、その……じゃ、じゃあ、よろしく、お願いします……」
「何で敬語なんだよ、雪歩……」
雪歩の頭も、なるべく優しく撫でる。自分と同じくらいの雪歩と、明らかに自分より大きい貴音を撫でるのは、何だか変な感じがした。
「まったく、これだから真は王子様なんて呼ばれるのよ……」
伊織がため息交じりにそんなことを言う。雪歩たちの頭は別に撫でようと思って撫でてるわけじゃないんだけどな……。
「次は、私たちね」
「何だかいつも通りな気がするんだけど、千早ちゃんと二人でケーキを作ってみましたっ!」
そう言いながら、春香が冷蔵庫から大きなケーキを取り出す。赤いイチゴの乗った、真っ白なショートケーキ。チョコレートを使った文字で、名前まで書いてある。
「私は、あまり力になれなかったと思うんだけど……」
「そんなことないって! 千早ちゃんがいてくれて、ほんとに助かったんだから!」
「ありがとう、二人とも。じゃあ、みんなで食べよっか」
ケーキにろうそくが立てられ、部屋のあかりが消される。こんな誕生日は、本当に久しぶりだ。
昔は、家族みんなに誕生日の歌を歌ってもらっていたけれど、いつの間にかそれもなくなってしまっていた。
それが今は、こんな風にみんなから歌を贈られ、プレゼントを贈られ、こんな嬉しいことが他にあるだろうか。
「真ちゃん、私たちからのプレゼントも、受け取ってもらえるかしら? 私と、律子さんと、音無さんと、社長さんからのプレゼントなの」
「オホン! 菊地君の我々からのプレゼントは、今外に置いてあるんだ。見に行ってくれるかね」
社長に促されて、事務所の下に行く。そこに置いてあったもの、いや、停めてあったものは、ボクの想像の遥かに上を行くものだった。
「……GIANTの、コンポジットSE」
今年発売された、まだ新しい自転車だ。欲しいと思ったけど、値段が高くて手が出なかった覚えがある。
「頑張ったのは、お財布ですけどね……」
何やら胸を張る小鳥さんと、ちょっと余裕のなさそうな律子。いくら四人で買ったとはいえ、安いものではないのに……。
「なに、君たちは私にとって家族のようなものだ。大切な家族へのプレゼント、受け取ってはくれないか」
「社長……分かりました……ありがとうございます」
社長は、真っ黒な顔をほころばせて笑った。
「そ、そうね、やよいは妹ってとこかしら」
「うっうー! よろしくね、伊織お姉ちゃん」
「わ、悪くないわね……」
ふと、背中を叩かれるのを感じて振り向く。美希と響が並んでいた。
「じゃあ今度は、ミキたちからのプレゼントを受け取ってほしいの。真お姉……ちゃん?」
そこは何で疑問形なのか。
「だから自分たち、真のために可愛い服を用意したんだぞ!」
渡されたのは、いかにも女の子といった感じの、白いワンピース。今までイメージしていた『可愛い』服とは違うけれど、少なくとも普段ボクが着るような服ではなかった。
「ミキ達のコーディネートだから、真くんに絶対似合うの! ミキ、真くんにはこういう可愛さが似合うって思うな」
確かに、フリフリの服を着たときの周りの意見は、総じて芳しいものではなかった。でも、このワンピースなら、そこまで今までのイメージの差がない気がする。
もしかしたら、フリフリの服を着るためには、ボクにはある程度の段階が必要なのかもしれない。
そう言うと、美希は花が咲いたように笑う。
「気に入ってもらえて、よかったさー」
天真爛漫な二人の様子を見ていると、さっきまで悩んでいたことが、バカみたいに思えてきた。
「この服着るからさ、今度どこかに行こうよ」
「じゃあ自分、真に負けないくらい可愛い服、着てくぞ!」
「一番可愛いのはミキで決まりなの。あはっ」
「俺だけ、プレゼントを渡しそびれちゃってたからな……。はい、おめでとう」
そう言って、ボクの手の上に小さな箱を置く。
「……開けても、いいですか?」
ゆっくりと頷くプロデューサー。恐る恐る箱を開けると、そこには銀のネックレスが慎ましやかに光っていた。
「これ……ほんとに貰っても、いいんですか?」
そのネックレスは、見るからに高価で、受け取るのをためらうほどだった。プロデューサーだって、そんなにお金を持っているわけではないだろうに……。
ボクなんかのために、無理をさせることは気が引けた。
「あっ……はい、ありがとうございます」
もちろん、他のプレゼントと比べようなどとは、微塵も思わない。それでも、プロデューサーからのプレゼントは、ボクの中で特別な意味を持つものだった。
「真、あれ、やらないか?」
「あれ? ……ああ、あれですね」
いつものように、拳を合わせる。これは、ボクとプロデューサーだけの特別な合図。拳を通して、二人の心は繋がっていた。
「美希!?」
「プ、プロデューサーさん! いいものって、真に何あげたんですか?」
「春香まで……」
「これはちょっと、詳しい話を聞かないといけないの」
最後は美希たちに見つかって、大変なことになってしまったけど、その日は間違いなく、今までで最高の日だった。
「では、真くん。今度のライブの、注目すべきところはどこですか?」
「はい! 今回のライブは、ファンの皆さんにとっても、ボクたちにとっても大事なライブになると思います。だから、ボクたちの新しい魅力に注目してくれたら、嬉しいです!」
「新しい魅力といいますと、具体的にはどんなものがあるのでしょう?」
ライブ当日、プロデューサーに無理を言って、ボクも一曲、可愛い衣装を着てステージに立つことが決まった。
もちろんリスクは高いけど、これからのボクの路線を変えていくためには、避けては通れない道だと思う。
実のところ、ボクはもしかしたら、プロデューサーにさえ可愛いと思ってもらえたらそれでいいと思っているのかもしれない。
自覚があるわけではないけど、そう思うことがたびたびある。もちろんお姫様扱いされてみたい、という望みは変わっていない。
ただ、それは結局は無い物ねだりにすぎないような気もしてきたのだ。でも、プロデューサーはあの時、ボクのことをお姫様にしてくれると言った。
王子様としてしか扱われてこなかった、このボクを。だからボクは、プロデューサーを信じる。そしていつか、お姫様になるんだ。だって……
だって、プロデューサーの願いは、ボクの願いだから。
手に持っている衣装は、今までのボクのイメージとはかけ離れた、いわゆる『可愛い』もの。
今まで、こんな服を着てステージに上がることはほとんどなかった。そして、こんなに緊張したことも……。
人は、手にしているものを失うことを極端に恐れるという。今のボクの震えは、そんな人間の本能に通じるものを感じさせていた。
「真ちゃん、大丈夫?」
いつからそこにいたのか、雪歩が隣にいて、ボクを気遣ってくれていた。
「真ちゃん……」
自分でも笑ってしまうほど、大丈夫ではない声。それは結果的に、雪歩の不安を助長するだけのものとなった。
ふと、てのひらに違和感を覚える。見ると、ボクの右手は、首から下がっているネックレスを握りこんでいた。
プロデューサーから貰ったネックレス。あの時の拳の感触。それらが鮮明に思い出される。
あの日、プロデューサーと誓った約束。もちろんそれを忘れたわけではない。でも、いざステージに出るとなると、どうにも足が震えて、止められなかった。
「真ちゃん。もう時間がないよ……」
どんなに足が震えていようと、ボクの出番は刻一刻と近づいてくる。今更、逃げようがなかった。
「……うん、分かった。行こうか」
震える足を叩き、強引に歩を前に進める。半ばやけくそになりながらも、走ってステージに飛びだした。
戸惑うファンたちの様子が、雰囲気で伝わってくる。何を言っているかははっきりと感じ取れなくとも、今のボクを異様なものとして認識していること。
それだけがひしひしと伝わってきた。
数秒の沈黙に、心が折れそうになる。このまま会場が盛り上がらなかったら、ボクは一体どうすればいいのか。
いっそこのまま逃げ出してしまいたい。そんな衝動が頭を支配しようとした、その時だった。
「真ーっ!! とっても似合ってるぞーっ!!」
「可愛いぞーっ!! 真ーっ!!」
今度は間違えようもない。正真正銘、プロデューサーの声だ。暗い会場の中、必死に目を凝らしてみると、ファンたちの中、最前列で揺れる紫のサイリウム。
そのサイリウムは一人、必死に叫んでいた。
「お前はかわいいんだ!! 真ーっ!!」
どんな言葉より、どんな声援より。プロデューサーが一番に声を張り上げてくれたこと。ボクのために最前列の席まで行ってくれたこと。それだけが嬉しかった。
そんな声が何度聞こえただろうか。にわかに会場がざわつき始め、少しずつ今までの喧騒を取り戻してゆく。
「真くん、可愛い!!」
「思ったより、可愛い格好もイケる!!」
そんな声が、聞こえたような気がした、次の瞬間。
「わぁ……」
一斉に光る、紫のサイリウム。それは、今までと全く異なる自分を見せたボクに、今までと全く変わらぬ声援を向けてくれた、何よりの証だった。
ふと、足の震えが止まっていることに気付く。今ならできる、いや、今しかできないと思った。だから、プロデューサーの声に応えるように、声を張り上げる。
「みんな、ありがとーっ!! ボクの新しい衣装、気に入ってもらえると嬉しいな。じゃあ、新曲行きます! 『THE IDOLM@STER』!!」
「ふぅ……」
ライブも終わり、人がいなくなったドーム。ボクは一人、ステージに座って息を吐いていた。
「大成功、だよね……」
恐らく今日のライブは、そう呼べる代物だっただろう。ボクは結局、予定されていたよりも一曲多く新しい衣装でこなすことになった。
「ああ、大成功、だな」
後ろからの声と、振り向くより先に手渡されるスポーツドリンク。ボクは座ったまま、体を反対側に向けた。
あの時、誰も声を出してくれなかったら。ボクは、恐らく何もできなかっただろう。下手をすれば、その後の進行にまで影響があったかもしれない。
「気にするな。言っただろ? 絶対真をお姫様にしてみせる、って」
「えへへ……そうですよね」
この人は、どんな無茶でもして、どんな時もボクを導いてくれる。そんなプロデューサーが嬉しくて、なにより愛しかった。
「プロデューサー。ちょっとだけ、動かないでいてくれます?」
ボクはプロデューサーを、必ずボクのものにしようと思う。
「なんだよ、いきなり……まあ、いいけど」
プロデューサーが動きを止めたのを確認すると、ボクは素早く立ち上がり、プロデューサーの唇にさっと口づけた。
「お、お前、バカ、何を……」
「えへへ。お姫様は、欲張りなんですよ。欲しいものは、手に入れなくっちゃ、ね?」
今は、これだけでもいい。でも、いつか必ず、プロデューサーの心を、手に入れてみせる。だってボクは、お姫様なのだから。
おわり
寝る前に良いまこりんSS読めましたありがとう。
真誕生日おめでとう!!
乙
そして、今日のまこりん誕生日おめでとう
誕生日おめでとう!
これからもよろしくね愛してるよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
イヤッッホォォォオオォオウ!
マッコマッコリイイイイイイイイイン!!!!!!!
Entry ⇒ 2012.08.29 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
馬頭鬼「ゾンビ・マスターって女の子?」
馬頭鬼「いや、だからゾンマスって女の子なの?」
ゾンマス「なに言ってんだテメェ」
馬頭鬼「いや、だってお前いつも一緒に風呂入らないし」
馬頭鬼「着替えてる最中に部屋覗くとキレるし」
馬頭鬼「1ヶ月に一回凄い不機嫌な時期が来r」
ゾンマス「死ねオラァ!!」ドスッ
馬頭鬼「死んでますが!?」ドグシャアッ
ゾンマス「お前は俺が気紛れなの知ってんだろ、不機嫌な時もありゃ機嫌のいい時もあンだよ」
馬頭鬼「なら、あの妙に不機嫌な時は何なの?」
ゾンマス「……貧血…とかだろ、知るか」
馬頭鬼「?」
ゾンマス「俺が女だったら龍骨鬼のアホが黙っちゃねぇだろ」ケケケケ
馬頭鬼「あぁ、あの性欲骸骨」
ゾンマス「『今度魔法使いにジュノンってマブい奴が出たんだろ!?ATK2500だろうが俺は無理心中ファックをキメるぜヒョォイ!!』って言ってたレイプ野郎がだぜ?」
ゾンマス「同族の女に手を出さねぇ筈あるかよ、ボケ」
馬頭鬼「ヴァンパイア・レディは?」
ゾンマス「あいつ人妻には興味ねぇとさ」
馬頭鬼「ワイト夫人は?」
ゾンマス「だから人妻には興味ねぇって言ってんだろ!二度言わせるんじゃねぇ!!」ゲシッ
馬頭鬼「オップス!?」ゴハッ
馬頭鬼「ちゃんと異次元に行っても埋葬してくれよ…?」
ゾンマス「もしくはコイツ等な」クイッ
ネクロフェイス「バブー」
酒呑童子「報酬は来週の飲み代な」ゴキュゴキュ
ゾンマス「既に飲んでるじゃねーか」
馬頭鬼「今度は誰と飲むんだよ…」
酒呑童子「魂の解放ちゃんとサシ飲みだけど?」
馬頭鬼(マジでリア充氏ねよ…)
馬頭鬼「お前ホント除外されっちまえよぉぉぉおお!!」
ゾンマス「アホらし…勝手にやってろ」ヒラヒラ
馬頭鬼「おい!どこ行くんだよ!」
ゾンマス「言うかバーカ」スタスタ
馬頭鬼「全く、唯我独尊野郎め」
ネクロフェイス「チャーン」
ゾンマス「………」スタスタ
ゾンマス(…バレてない、よな?)ソワソワ
……………
………
…
ゾンマス「何がおかしいんだクソッタレ!この強姦野郎ォ!!」
龍骨鬼「それよりなんでお前は俺の頭の上に座ってんの?」
ゾンマス「……俺の特等席だ」フンスッ
龍骨鬼「さいですか」
龍骨鬼「いやー、しかしお前が女かどうか、ねぇ…」
龍骨鬼「俺から言わせりゃどっから見ればお前が男に見えるのかって感じだけど」
ゾンマス「うっせうっせ!!バーカバーカ!」ゲシゲシ
龍骨鬼「ATK1800乙、超乙」
ゾンマス(かかと痛い…)
ゾンマス「あーそーかい」
龍骨鬼「残念?」
ゾンマス「ちんこもげろ」
龍骨鬼「」タマヒュン
龍骨鬼「お前にはちんこもげる気持ちが分からねぇのかよ……!」
ゾンマス「知るか!!」
龍骨鬼「…わかった、この話はやめよう。ハイ!やめやめ」
ゾンマス「テメェが始めたんだろうが」
龍骨鬼「それより早くフォーチュンレディと戦わせてくれよ!!ヒィヒィさせてくれよ!」
ゾンマス「うっせーよ!!」
ゾンマス(助けに来たファイリーに吹っ飛ばされてたくせに…)
龍骨鬼「お前、今俺をエロ戦車だと思っただろ?」ドヤァ
ゾンマス「そんな可愛いもんじゃねーだろオメェ」
龍骨鬼「屈辱と恥辱にまみれたダルキーたんの睨み顔もたまんねぇわ」
ゾンマス「クズ極まりねぇなお前」
ロード「オマケに下品だね」
ゾンマス「……お、ヴァンパイア・ロードじゃねぇか」ヒョコッ
龍骨鬼「もう降りろよお前」
ロード「………」クラッ
ロード「………」フラァッ
ロード「失礼、醜すぎて立ち眩みが」フゥ
ロード「息災かい?龍骨k…間違えた、ブ男君」
龍骨鬼「よし分かった、やっぱりお前とはしっかり白黒着けなきゃならねぇって事だな?喧嘩売ったんだよな?」
ロード「何故私のような貴族階級が君のような乞食ブードゥーに喧嘩を売らねばならんのかね?」
ゾンマス「テメェ等まだそんな仲悪ィのかよ」
ロード「なんと醜悪な嫉妬心だろう、感動すら覚えるよ」
龍骨鬼「うるせぇ!ATK俺が勝ってんだからなオラァ!」
ロード「ふむ、つまり君は筋肉と性欲だけが取り柄という事か…私の眼を見たまえ、この憐れみの眼差しを」
龍骨鬼「どう見ても威圧する魔眼じゃねーか!!生き返ったカースに攻撃力負けるくせによぉ!」
ロード「彼は吸血鬼界の武道派なのだよ」
龍骨鬼「ジェネシスになったお前も超肉体派じゃんwwwww」
ロード「ブッ飛ばすぞ?あ?」
ゾンマス「『お嬢さん』はやめろ、キメェ」
ロード「失礼、では女史。予々疑問だったのですが、何故貴女は女性である事を新顔のアンデット達に隠すので?」
ゾンマス「ん…」
龍骨鬼「そうだよ、言っちゃえばいいじゃんか!確かに昔と比べたらお前の性別知ってる古株ゾンビも影薄くなったり少なくなったりしたけどよぉ」
ロード「我等1人と1匹以外には誰が居たかね?」
龍骨鬼「誰が1匹だクソが!…あー、不死王様とかその辺は知ってるんじゃね?あとはピラタくらいだろ、知ってる奴でまだ皆と関わりあるのは」
ロード「あぁ、王族達か…彼等は広い情報網をお持ちだからね。亀はどうでもいいが」
龍骨鬼「俺とお前とスカル・フレイムはかなり世話になってるだろ、あのカメ公には」
ゾンマス「……んー、なんだろうな。今更女だったとか言ったせいで周りの環境とか対応が変わったら嫌だしな…」
ゾンマス「『ゾンビ・マスターは男』って前提でアイツ等会話してきやがったからよぉ、そりゃあこんな口調の俺も悪ィが…適当に合わせてたらかなり時間が経っちまって」ポリポリ
龍骨鬼「つまりタイミングを逃したのか」
ロード「遊戯王だけに」
ゾンマス「テメェ等ほんとは仲いいだろ?なぁ?」
ロード「しかしいつまでも隠しておく事はできませんよ」
龍骨鬼「そうだよ、言って楽になっちまえよ」
ゾンマス「あー……まぁ、考えとくさ」ケッ
デ・ザード「………」フーム
………
…
場所:髑髏の寺院
デ・ザード「……と、ゾンビ・マスター女史は自らの性別を明かせぬ事に少なからずストレスを感じているようです」
リッチー「ふむ、そうであろう…奴はあれでいて繊細であるからな」
パンプキング「ふぉっほっほ!あの娘っ子もなかなか愉快な事で悩んどるもんじゃい!どうじゃ、1つ性別を勘違いしておる奴等の前で衣服をひん剥いて…」
ワイトキング「ゴースト王、戯れが過ぎますぞ」
蘇生ハ・デス「ふ、しかしあの性格で生娘というのも中々……あ、ツモ。イーペーコータンヤオドラ2」
パンプキング「おっほ、さすがは火力押し至上主義者じゃな」
蘇生ハ・デス「勝てばいい、それが全てだ!勝ち方に卑怯などないのだ骸骨王!」
リッチー「さすがは効果至上主義者」
パンプキング「ところで不死王、お主ビリじゃろ」
リッチー「……日が悪い…」ジャラジャラ
リッチー「しかしゾンビ・マスターか、確かに我等不死の軍勢内で隠し事があるのは由々しき事態だ」
デ・ザード「不死王、隠しているのとはまた違う様子ですが」
リッチー「知られていないならば同じ事よ」
パンプキング「暴論ジジイじゃな」
リッチー「貴殿もジジイであろうがゴースト王!」タンッ
ワイトキング「ロンです不死王、リーチ一発純チャンドラ1…おぉ、裏も乗りましたぞ!ドラ2!」
リッチー「」
リッチー「とにかく!一度彼女とは話をしておかねばなるまいな」
デ・ザード「ではそのように手配致します」
リッチー「うむ」
ワイトキング「不死王、早く点棒を」
リッチー「分かっておるわ!」ジャラジャラ
キング・スカル「さっさと卓代われよ…退屈だぜ…」
………
…
ゾンマス「はぁ?リッチー様がお呼びだぁ?影武者の方じゃなくて?」
ゴブゾン「おう、リッチーロードじゃねぇぞ」
ゾンマス「んだよ…俺ァ別に悪い事なんざしちゃねぇぞ」
ゴブゾン「素行不良ってやつじゃね?」
ゾンマス「誰が素行不良だコラァ!!」ゲシッ
ゴブゾン「今まさにだよ!」ゴハッ
ゴブゾン「お前頭悪いだろ」
ゾンマス「んだとテメェ…墓地に突き落とすぞこの野郎…」
ワイトメア「まぁまぁ落ち着きたまえ、お茶でも飲んでから考えるというのはどうだね?」
ゴブゾン「ぅお!?急に出てくんな!」
ワイトメア「正体不明で神出鬼没、我等の名前は」
ゾンマス「ワイトだろ」
ワイトメア「」
ゴブゾン「クソDQNだなお前」
ワイトメア「紅茶のお代わりはどうかね?」
ゴブゾン「お前ちっとは話合わせろよ!」
ワイトメア「だが私は謝らない」ゴクゴク
ゾンマス(紅茶が顎から滴り落ちてやがる…)
ワイトメア「ではこういうのはどうだろう、ジャンケンで負けた者が不死王の下へ行く」
ゴブゾン「なんでだよ!!」
ゾンマス「ヒャッハ!さすがは骨紳士!話が分かる!いくぜぇ?せーの、」
ジャーンケーン…
………
…
ゴブゾン「なんでだよ」
ゴブゾン「なんでッ!だよ!!」
ゴブゾン「なんで俺が行かなきゃならねぇんだよ…ったくゾンマスの野郎…。チワーッス」
場所:精気を吸う骨の塔
リッチー「ふむ、来たk…あれ?」
ゴブゾン「…ど、どうも」
リッチー「ゾンビ・マスターはどうした?」
ゴブゾン「用事があるそうなんで、俺が代理で…」
リッチー「………」ハァ
ゴブゾン「ですよね?あ、じゃあ俺もう帰っていッスか?」
リッチー「うむ、本人が来いと託を…む?」
リッチー(いや待て、本人に言った所であの娘が聞くだろうか?)
リッチー(それよりも…こやつに真実を話した方がよいのではないか)
リッチー(『前と変わらぬよう接して欲しい』とでも言えば)
ゴブゾン「…あの、不死王様?帰りますよ?」
リッチー「いや、待たれよ!」
ゴブゾン「はぁ………」
……………
………
…
ゴブゾン「」
ゴブゾン「え?」
リッチー「分かったな、つまりそういう事なのだ」
ゴブゾン「え」
ゴブゾン「ちょ」
ゴブゾン「…オンナ……!?」
リッチー「そういう事になるな」
ゴブゾン(オンナ女おんなON-NA…おん…)
ゴブゾン「マジすか!?」
リッチー(な、何事だこやつ……)
リッチー「うむ、何度も言うが事実なのだ」
リッチー「どうかこれからも、性別の分け隔てなく奴と接してもらいたい」
リッチー「よいな?」
ゴブゾン「はぁ…まぁ、オッケです…」
リッチー「用件はそれだけだ、行くが良い」
王族親衛隊「出口までご案内致します、御客人」
ゴブゾン「は、はい…」
ゴブゾン(やっべやっべ、どうするよコレ、マジどうするよ)
王族親衛隊「……何をブツブツと喋っているのですか?」
ゴブゾン「うぇい!?」
………
…
ゴブゾン「あーやべぇ、知っちゃったよスゲェ事」
ゴブゾン「今までと変わらずって…無理だろ…」
ピラタ「お、ゴブリンゾンビじゃん」
ゴブゾン「ピラミッド・タートル…」
ピラタ「暗い顔してるけどどうかしたのか?」
ゴブゾン「いや、実はな…ゾンマスが女だったんだよ…」
ピラタ「えっ」
ピラタ「お前知らなかったの?」
ゴブゾン「えっ」
ピラタ「結構俺の周り(龍骨鬼ヴァンロetc)じゃ常識だぞそれ」
ゴブゾン「…マ、マジで?」
ピラタ「おうよ」
ピラタ「声でかいなお前!あとはー…んー…達人キョンシーとか」
ゴブゾン「うわ…居たなそんなの…」
ピラタ「龍骨鬼とヴァンロの旦那は知ってるぜ?」
ピラタ「後は…リボーン・ゾンビとワイトか」
ゴブゾン「なんでアイツ等が知ってんだ!?」
ピラタ「ゾンマスが生き返ってから初めて甦らせたアンデットだからな」
ゴブゾン「…俺も結構昔の馴染みなんだけど…」
ピラタ「教えたくなかったんだろ、口軽そうだし」
ゴブゾン「結構傷付くぞそれ…」
ピラタ「どうすんだよ」
ゴブゾン「どうするも何も…とりあえず皆に知らせるわ」
ピラタ「ふーん」
ゴブゾン「止めないんだな…」
ピラタ「アレだろ?不死王様になんか言われたんだろ?」
ゴブゾン「あ、あぁ…皆に教えて、尚且つ今まで通りに接してほしいって…」
ピラタ「楽勝じゃん」
ゴブゾン(楽勝じゃねーよ…)
ゴブゾン「とりあえず…噂好きのアイツに頼んで皆にタレ込むわ…」
ピラタ「死霊か」
ゴブゾン「死霊だ」
死霊「あンだってェ!?ゾンマスが娘っ子だとォ!?」
死霊「驚きのあまりにテメェの魂を削ッちまいそうだぜェ!?」
ゴブゾン「やめてくれ!!それで…」
死霊「おうよ、ゾンビの噂は千里を駆けるってヤツだ!!なぁ相棒!」
悪夢馬「ヒヒィイ~~~~ン!!」
ゴブゾン「ナイトメア・ホースのやる気も満々だな」
死霊「おうよ!馬並みだぜェ!?」
悪夢馬「ブルルゥン!!」
死霊「アレだな?ゾンビッ娘にゃァ知られないように流せってこったな?」
ゴブゾン「そうだn」
悪夢を駆る死霊「よっしゃァ!!俺にィ!まっかせとけぇええいッ!!ハイヤーッ!!」ズザァアーッ
ゴブゾン(やっべぇメチャ不安)
バーサーク・デッド・ドラゴン「ふーん…あ、おいお前殴らせろよ」
―噂は
ゾンキャリ「ちょっとゾンマスちゃんとシンクロして来る」
―瞬く間に
馬頭鬼「俺すげぇ前に否定されてたんですけど…」
―広がっていった
ヴァンパイア・レディ「…あら、しかも生娘なの…?」ジュルリ
龍骨鬼「何が?」
ゾンマス「最近…周りの連中が俺を避けてる気がする」
龍骨鬼(あー、女耐性無いからねアイツ等)
ゾンマス「なんでだよ!チクショウ気にいらねぇ!!」ガンガンガンッ
ゾンマス「いってぇえ!硬いんだよお前…!!」
龍骨鬼「そりゃお前が裸足だからだろ?つーか頭踏むなよ…」
ゾンマス「…テメェ余裕だな…今度ブラマジと戦う予定あったんだけど呼ばねぇぞ…?」
龍骨鬼「ご、後生だ!!呼んでくれ!!!」
龍骨鬼「お、めずっちじゃん!整いました?」
馬頭鬼「凄い古いだろその生者芸人!!…と、」
馬頭鬼「よ、よぉゾンマス」
ゾンマス「おぃーっす。……!」
ゾンマス「おいおいおい馬頭鬼ちゃんよォ」ガシッ
馬頭鬼「え!?ちょ、なんだよ離せよ近いって…!」
馬頭鬼(やべぇ、こいつ体やっこいんですけど…今まで気付かなかったんですけど…)
ゾンマス「オメェ等よォ、最近俺に冷たいじゃねぇか?あぁ?」グリグリ
馬頭鬼「いやいやいやそんな事ねーって!!はは!HA☆HA!!」
馬頭鬼(あー駄目だ距離近ぇよこれもうマジ前屈みだわやっべぇわ天国のような地獄、まさにライロ)
ゾンマス「………」
ゾンマス「嘘つけボケェ!!」ゲシッ
馬頭鬼(女の子の素足とかご褒美なんですけどッ!?)ゴッブッフゥ
ゾンマス「は?掴めてないだけって何がだ?」
馬頭鬼「いや、なんでもねーからマジで!!」
蒼血鬼「おーい馬面ァ、早くこっち来…あ、あれ…ゾンマスじゃん」
ゾンマス「よォ、青コウモリ。…なんでテメェも余所余所しいんだよ」
蒼血鬼(…あー…コイツすげぇいい匂いする、ゾンビのくせに…)
蒼血鬼「な、なんでもねぇって…行こうぜ馬頭鬼!」
馬頭鬼「あ、あぁ」
ゾンマス「あん?どっか行くのか?だったら俺も…」
馬頭鬼「悪ィ!ちょっと急用でよ!また今度な!!」
ゾンマス「あぁ?」
蒼血鬼「あぁ、そういう事だから!じゃまたな!」
ゾンマス「っ…………」
ゾンマス「…ぁ、あぁ…またな!」
龍骨鬼「…………」
ゾンマス「んだよアイツ等!ムカつくぜ畜生ォ!気にいらねぇ!!」ガンガンガンッ
龍骨鬼「ちょ、止めて止めて!!執念の剣はヤバいから!ギリだから!マジでギリだから!!」
ゾンマス「ハァ…ハァ…あぁクソ、クソッタレだ馬鹿野郎、空気の読めねぇクソ鬼共!」
ゾンマス「…………」
ゾンマス「…………」ダキッ
龍骨鬼「…ん?」
ゾンマス「なぁ、龍骨鬼……」
ゾンマス「俺、なんかしちゃったのかなぁ…分からねぇよ…全然…」
ゾンマス「調子に乗って…蹴ったり殴ったり、しすぎたのかな…」グスッ
龍骨鬼「……ゾンマス…」
龍骨鬼(拝啓、不死王様。事態の悪化が止まりません)
バーサーク「おうよ、知ってたか?」
不死竜「知らね、どうでもいいわ」
バーサーク「マジかよ、意識して見ると結構可愛いって言われてるぜ?」
不死竜「へぇ…でも人型じゃ全然そそらねぇしなぁ…」
不死竜「闇竜の黒騎士、お前はどうだ?」
黒騎士「ぶっちゃけ今すぐ会いに行きたいです」
不死竜「マジかよ…行って来ればいいじゃん…」
黒騎士「マジっすか!行って来ちゃいますよ俺!!」
バーサーク「ホントお前ら変わってなくて安心するよ」
黒騎士「俺の騎士道がスパイラル・アローですよ」
黒騎士「全然雨が降らないのにゾンマスのあれは梅雨入りですよ」
不死竜「お前最低すぎるだろ」
黒騎士「マジっすか!」
不死竜「マジだよ」
バーサーク「でもなぁ、黒騎士みたいに意識しちゃう奴が増えすぎると」
不死竜「あぁ、絶対に当人は混乱するよな」
黒騎士「混乱なんかさせたら準強姦ですよ!俺は和姦を目指しますよ!」
不死竜「心底最低だなお前」
黒騎士「マジっすか!」
バーサーク「なんでお前こんな奴舎弟にしたの?」
不死竜「見誤ったんだよ言わせんな恥ずかしい」
黒騎士「マジっすか!」
不死竜「…………」フゥー
不死竜「とにかく、こういう事態を王様共は理解しちゃいねぇだろうからな」
不死竜「ちょっくら説明に行ってやるか」バサッ
バーサーク「あ、俺も俺も」バサッ
黒騎士「じゃあ自分も!!」ザッ
不死竜「俺等と方向逆じゃね?」
黒騎士「ゾンマスちゃんトコ行くんで!!」
バーサーク「お前もこっちな」
黒騎士「マジっすか!」
……………
………
…
カース「聞いていますともノーブル・ド・ノワール氏、今まで男と偽って生活をしていた、と…」
黒い貴族「フ、下級アンデットの事は理解し難い事の多い事…一体何故性別を偽ったのか」
カース「大勢の男達に自然と囲まれる環境を整えていたのでは?」
黒い貴族「成程成程!ハッハッハ、いやはやなんとも浅ましい売女…」
カース「まぁ、下級アンデットの娯楽など所詮はその程度の…」
ガタンッ!!
二者「!?」
ロード「…………」
ロード「今しがた貴殿等が交わしていた会話と彼女、果たしてどちらが浅ましいですかな」
ロード「よく考えておくと良いでしょう、『上級アンデット』のお二方」スタスタ…
黒い貴族「チッ…若造が」
カース「………」
ロード「ゾンビ・マスターの所へだ」
青眼の銀ゾンビ「えぇ!?だ、駄目ですぜお坊ちゃま!また勝手に下々の連中と…」
ロード「やかましい、この城の君主は誰だ?」
青眼の銀ゾンビ「そりゃロード様ですが…あっしはジェネシス様からきつく言われとりますんで…」
ロード「フン、初代君主の亡霊にいつまで縋り付いている、アンデットのくせにな」
青眼の銀ゾンビ「他の貴族の皆様方の面子もありやす……!」
ロード「なんだ、そんなものクソ喰らえではないか」
青眼の銀ゾンビ「ロ、ロード様!?お屋敷に皆様がいる中でそんな…」
レディ「シルバー」
青眼の銀ゾンビ「お、奥様!?」
レディ「君主の命令は絶対、でしょう?」
青眼の銀ゾンビ「ぅ………」
レディ「………」ウィンクパチン
ロード「………」フッ
獄炎「ゴォォォァァァアアアアアアッ!!」ボゥゥッ
ロード「フン、貴様もこの理不尽さに対して怒りに燃えるか」
ロード「全く、揃いも揃って下級共は頭が弱すぎるのだよ……!」
獄炎「ゴゥウゥゥウウウオオッ!」シュバッ ヒューン…
青眼の銀ゾンビ「あぁ…行ってしまわれた…」
レディ(行ってらっしゃい、うふふ…)
レディ「いいのよ、ところでゾンマスちゃん?今度うちの屋敷に招待しなぁい?」
青眼の銀ゾンビ「お、奥様までそんな事を!!」
レディ「あらぁ、冗談よぉ?」
カース「…ノワール氏よ」
黒い貴族「はて?」
カース「確かに、噂を飛躍させすぎたやもしれませんな」
黒い貴族「……えぇ、それは全く。…後で詫びねばなりますまい」ヤレヤレ…
リッチー「なんと」
不死竜「つーワケだジジイ、お前のやった事は完全に裏目だよ」
リッチー「…むむむぅ…まさかそんな筈は…」
バーサーク(天然だったのか…)
蘇生ハ・デス「クハハッ、予定が外れたなぁ不死王よ」ナデナデ
ゾンキャリ「モットナデナデシテー」
黒騎士「あ、ゾンビキャリアじゃねっすか!久々にシンクロしますか?」
ゾンキャリ「引っ込んでろ」
黒騎士「手厳しっす!」テヘペロ
ワイトキング「ゾンビ・マスターの噂は我等の領地にもちらほら…今回ばかりは失策でしたな」
キング☆スカル「へ、今更どうかしても遅いんじゃねぇかぁ?速さが足りねぇよ、速さが!」
リッチー「ぐぅ……こうなったら…!」
リッチー「リッチーロードの所為にしよう!!」
パンプキング(こいつアホじゃ)
パンプキング「いやその理屈はおかしいじゃろ」
蘇生ハ・デス「自分の非を認める事も名君の条件であるぞ」
キング☆スカル「それをしなかったせいでテメェはヘイトなバスター喰らっちまったワケだしな」
蘇生ハ・デス「黙れ黙れィ!!」
ワイトキング「おやおや、古傷が抉られたようですな魔王よ」
蘇生ハ・デス「ぐぬぬ」
黒騎士「すげぇ!!『ぐぬぬ』なのに全然萌えねえっす!」
バーサーク「お前の遠慮の無さも凄いわ」
不死竜「俺も遠慮なんざしてねーけどな」
不死竜「どうすればって…謝るしかないんじゃねぇのか?」
リッチー「ゾンビ・マスターにか」
不死竜「それしかねぇだろ」
リッチー「………そうよな…」
リッチー「分かった、さっそく謝罪の方を…」
バタンッ!!
スピリット・オブ・ファラオ「その必要は無いぞッ!!」ドギャァアン
リッチー「………」
ワイトキング「………」
パンプキング「………」
キング☆スカル「誰?」
ファラオ「ちょ」
ファラオ「ファラオのしもべや王家の守護者を部下に持つ王の中の王!それが俺だ!」
ファラオ「そう」
ファラオ「つまり」
ファラオ「俺だ!!」
ファラオ「その俺が来たのにどうしたお前ら!!」
キング☆スカル「なんだこのうっせー馬鹿は…」
ファラオ「俺」
ファラオ「が馬鹿だって!?」
パンプキング(だから呼びたくないんじゃコイツ)
ファラオ「ヘイ不死王よ、お前は別に謝る必要なんざねぇ」
リッチー「む?」
不死竜「おい、いきなりやって来てなんだそりゃお前」
ファラオ「まぁまぁ落ち着け」
ファラオ「俺」
ファラオ「の話を聞け」
バーサーク(おいコイツ超殴りてぇぞホントに王族かよ)
ファラオ「実は最近新顔のアンデットがこっちの勢力に加わってなぁ」
ファラオ「そいつ、体はでけぇけど心は純粋で素朴で超いい奴なんだわ」
ファラオ「今そいつをゾンマスん所に向かわせた」
蘇生ハ・デス「それがどうした?」
ファラオ「おいおい…俺の部下が問題解決に赴いたんだぜ!?俺の部下だぜ!?俺だぜ!?」
ファラオ「あいつなら…ゾンマスの心を溶かせられるさ!」
………
…
龍骨鬼「大丈夫だったゾンマスよぉ、いきなり皆がお前を嫌うワケねぇだろ?」
龍骨鬼(つーか逆なんだよね)
ゾンマス「だってよぉ…あいつ等…や、やっぱり…ちゃんと今までの事謝ってくる!」
龍骨鬼「や、やめろ!!(それでオちる奴絶対いるから)それだけは駄目だ!」
ゾンマス「なンでだよ!離せ馬鹿!クソ野郎!!テメェ!!」
龍骨鬼「離さねぇぞ!あーそうだお前に突然欲情してきたわ犯しちゃおっかなHAHAHAHA!」
ゾンマス「っ………!?」
龍骨鬼「おい冗談だよマジで絶望顔すんなよ、そういうのは魔法使いか戦士で見たいんだよ俺は」
不乱健「…………」ノッソノッソ
ゾンマス「?」
龍骨鬼「ん?…うわ!何こいつ攻撃力超高ぇ!!」
ゾンマス「し…新入りの死人かぁ…?」
ゾンマス「お、おう…俺がそうだが…なんだよ…」
不乱健「俺の名前、不乱健」
不乱健「最近ファラオに仕え始めた新顔」
ゾンマス「ファラオって…あの、なんか顔が金色のあのアンデットか?」
不乱健「皆、言ってた」
不乱健「お前、女」
ゾンマス「」
ゾンマス「……あぁ…!?」
龍骨鬼「!?」
不乱健「お、俺と…付き合ってくれ…!」
ゾンマス「嫌だ!!つーか、オイ!なんでお前がそれ知ってんだよ!皆って誰だ!!」
不乱健「」
龍骨鬼(色んな意味で惨すぎる…)
ゾンマス「あぁ!?」
龍骨鬼「実はな…かくかくしかじか」
ゾンマス「な…」
ゾンマス「なんだとぉぉおおッ!!?」
ゾンマス「つまりあいつ等、もう俺の本当の性別を知ってて…」
ゾンマス「うッ…、うわぁあああああああぁあ!!」バリバリバリバリバリバリ
龍骨鬼「お、落ち着けゾンマス!髪の毛抜けるぞ!!」
ゾンマス「超恥ずかしいじゃん俺…嫌われてると思ったから、いつもより過度にスキンシップ取ってたぞ…!」
龍骨鬼「うわぁ」
不乱健「」
絶望「絶望の香りがして、闇より出でました」
不乱健「」
絶望「お、コイツか」
ロード「ゾンマス、ブ男君!」スタッ
ゾンマス「うぅぅううぐぐぐぐぅ……!」ゴロゴロゴロ
ロード「……何してるのかね、彼女は」
龍骨鬼「あぁ…今しがた自分が女である事が皆にバレていると悟ったんだ」
ロード「一足遅かったか…」
龍骨鬼「つーかお前、また俺をブ男と言ったろ?なぁ?言ったよな?」
ロード「…小さい男だ、何をそんなに怒っているのだね?この世には鏡があるという現実にかね?」
龍骨鬼「テメェにだよこのクソ貴族!!」
ロード「フ、下賎の民が愉快な事を言ってくれる」
不乱健「ふられた…」
絶望「失恋かぁ、辛いねー…いいねーこれは絶望してるねー」
龍骨鬼(つーか絶望さん嬉しそうだな…)
ゾンマス「俺も今絶賛絶望中だよクソッタレ……!!」
龍骨鬼「顔真っ赤だぞ」
ロード「綺麗な色白が台無しだよ?血色が良くなってしまったのかね?」
ゾンマス「うるせぇうるせぇ!黙れバーカ!このッ…」
ゾンマス「…………」
ゾンマス「…よかった」
ゾンマス「私、嫌われてたワケじゃなかったんだ…よかっだぁ…」エグエグ
龍骨鬼「………」
ロード「………」
龍骨鬼「バーカ、同族同士でマジのマジに嫌い合ってる奴なんかいるかよ」ヒョイ
ゾンマス「ゔん゙……」
ロード「そうとも、少なくとも私と龍骨鬼以外ではね」
龍骨鬼「ブ男君じゃねぇのかい?」
ロード「…フフ、そうとも言う」
不乱健「俺、立ち直ってなi」
龍骨鬼「はー…全く、泣かれた時はヒヤヒヤしたぜ」
ゾンマス「バカ言え!泣いてねぇ!!」
ロード「嘘だろう?」
ゾンマス「嘘じゃねぇ、強がりだよ」
ロード「…成程」フフフ
ゾンマス「しっかしアレだよなぁ…俺のいねぇ所でそんなにも話が展開してたってのは気に入らねぇ」
龍骨鬼「…ゾンマス?」
ゾンマス「ちっとは俺抜きで楽しみやがった連中に復讐してやらねぇと…だろ?」ニタニタニタ
ゴブゾン「ふ、ふぉおお!?ちょ、なんだよいきなり!離せ!!」
ゾンマス「とぼけんなよ…お前もう知ってんだろ…?俺の性別、さ…」
ゴブゾン「え……」
ゾンマス「まぁバレちまったモンは仕方無ぇ…だから、俺の…俺の本当の気持ちも…」
ゾンマス「お前にバラそうと思ってよ。…なぁ…こっち、見ろよ…ゴブゾン…」
ゴブゾン(え!?嘘、マジで!?いやでも間違いない、この流れは告白!!)
ゴブゾン「ゾ、ゾンm」
パシャッ
ゾンマス「ハイ頂きマシター、女に言い寄られて鼻の下ァ伸ばすマヌケ面しっかり頂きマシター」
ゴブゾン「な、ななななななあぁぁあ……!」
ゾンマス「ピラタァ!これも焼き増しして死霊に配っとけ!!」
ピラタ「悪く思うなよゴブゾン、今回はこの悪戯で色々チャラにしようぜ」
ゴブゾン「」
ゾンマス「ひゃっひゃっひゃっひゃっひゃwww」
ピラタ「えーっと、再生ミイラとか茫漠の死者とか、ピラミッド系のゾンビはまだだね」
ゾンマス「よっしゃ!じゃあそっち行くぞ!最後に死霊だ!!」
ピラタ「どうやって写真撮るの?」
ゾンマス「『こうやって他の奴等の恥ずかしい写真撮ったのは…お前のライバルを蹴落とす為なんだぜ…?』」
ゾンマス「みたいな感じでイケるだろ!ケケケケケケ!」
ピラタ(悪い顔してるなぁ)
ゾンマス「行くぞーッ!!」
ゴブゾン「」
絶望「なんだか最近絶望の香りがプンプンするねー」ニュッ
ワイト夫人「いいじゃありません事。あの歳の子はあれくらい元気が丁度いいわ」
ワイトメア「夫人、紅茶は如何ですか?」
ワイト夫人「ありがとう、メア」
ワイト「そもそもアタシがいるから此処の連中は全員性別知ってましたしねェ」
ワイト夫人「そうね、貴方は最初に彼女に蘇生されたアンデットの1人だものね」
ワイト「へへ、役得でさァ」
ワイトキング「何にせよ、平和に解決してよかった」
ワイトメア「いや全く」
不死竜「解決はしたが男共が各々深い心の傷を負ってるぞ」
黒騎士「俺も写真撮られたっす!ツーショットお願いしたら断られてショックっすよ!!」
不死竜「お前だけ元気だよな、マジで」
黒騎士「失恋程度でへこたれてたら騎士やってけねっすよ!」
バーサーク「ある意味凄いよお前、俺達より」
黒騎士「マジっすか!じゃあバーサークさんちっとパン買って来いよ!」
バーサーク「あ゙?」
黒騎士「ちょ、こえぇえ~…!ごめんなさウィッシュ☆」
バーサーク「なんかもーお前怒る気にもならねぇ」
黒騎士「DAIGO効果すげっすね…!」
ロード「……まぁ、それだけ彼女としては安心したという事なのだろうが」ヤレヤレ
龍骨鬼「まぁいいんじゃねーの?元気なら」
ロード「…ブ男君、どうやら不相応に君は彼女に惚れているのではないかね?」
龍骨鬼「……いやいやいや、お前の方こそどうなんだよ」
ロード「フ…答える義理はない」
龍骨鬼「なら、俺にもねぇ」
ゾンマス「おいテメェ等!何ボサっとしてやがんだ!まだ写真撮り終わってねぇんだからな!!」
ロード「…ま、どうあれやはりアレだね」
龍骨鬼「あぁ、アレだ」
二者「アイツは笑ってる顔が一番だ」
-・-・-
馬頭鬼「ゾンビ・マスターって女の子?」
おしまい。
面白かった
Entry ⇒ 2012.08.29 | Category ⇒ 遊戯王SS | Comments (2) | Trackbacks (0)
咲「じゃあね、また明日」 和「はい」
和「わ、私だって負けませんよ! 明日は今日よりコテンパンにしますからね!」
咲「お! 楽しみにしてるよ」
和「はい!」
咲「じゃあね!」ザッ
和「はい。では」ザッ
和「あ、ちょっと待って」
和「? どうしたんですか?」
和「一言だけ言って良い?」
和「な、なんですか……?」
和「大好きだよ」
和「なっ……」
和「いきなりごめんね」
和「あ、いや……」
和「ごめんね。私も、いきなり自分の口から本音が飛び出ちゃって、びっくりしたよ」
和「なっ……」カァッ
和「本音も本音だよ?」ニコッ
和「……!」カァッ /////
和「それを伝えたかっただけだから、ごめんね」クルッ
和「……」
和「また明日ね!」
和「ちょ、ちょっと待ってください!」
和「? どうしたの?」
和「の、和ちゃんからも?」
和「は、はい……!」
和「……?」
和「……わ、私だって……」
和「……!」
和「私だって咲さんの事、大好きですよ!」
和「え……!」
和「……」
和「ふふ」
和「ふふふ」
ザッ
咲「の、和ちゃん?」
和「!!!!」
咲「和ちゃん……」
和「あ……いや……」
咲「なんで……」
和「その……」
咲「なんで一人でやっちゃったの?」ウルッ
和「……え?」
咲「告白なんて一度しかないすっごく大事なイベントなんだから、しっかり私の口から言いたかったのに……」
和「!?」
咲「ずるいよ……私が言うべきの「好き」も、和ちゃん一人で言っちゃうなんて……」
和「なっ……」
咲「……もう二番煎じになっちゃうけど言って良い?」
和「え……」
咲「私、和ちゃんの事好きだよ」ニコッ
和「!!」
咲「いきなりでごめんね」
和「あ、いや……」クラクラ
咲「でも、和ちゃんが悪いんだよ? いきなり先にやっちゃうんだもん」
和「ふふふ」
和「ふふふ」
和「……ふぅ」ペリッ
エトペン「……」
和(エトペンに咲さんの顔写真貼って妄想するのも何度やっても飽きませんね)
カタッ
和「!!」
和(物音……!?)
クルッ
咲「え、えへへ」
和「!!」
和「え……」
咲「ご、ごめんね……」
和「い……い、いつから……」
咲「5時間目がかなり早く終わったから、和ちゃんが来るより前に来てて、そこのソファーで仮眠してたんだ」
和「!!」
咲「正直、びっくりしちゃったよ」
和「その……」
咲「和ちゃん……」
和「いや、その……」
咲「なんで私がいつも部屋でしてる事知ってるの?」
和「!?」
咲「そ、それとも偶然なのかな。真似してたわけじゃなくて、和ちゃんもしたくてしてたとか……」
和「な……」
咲「それだったらすっごく嬉しいな。えへへ」
和「!」
咲「うん?」
和「さ、咲さんも……」
咲「あ、やっぱり私が部屋でこういう事してるの知ってて、それをからかってきてたわけじゃないんだね」
和「そ、それは違いますけど……」
咲「そっか。良かった」
和「そ、それはつまり……」
咲「そうだね。だから、お遊びじゃなくて、しっかり言うね」
和「!」
咲「私、和ちゃんの事、好きだよ」ニコッ
和「!!」
和「なっ……」
咲「や、やっぱり本人に向かって直接言うと照れるね。えへへ」カァッ
和「あっ……」クラクラ
咲「顔写真に向かって言った事はもう何回もあったんだけどね。えへへ」ポリポリ
和「……」クラクラ
咲「いきなりごめんね」
和「いや……」
和「……」キリッ
咲「……?」
和「私もですよ!」
咲「!」
和「私も、咲さんの事、大好きですよ!」
咲「!!」
和「当たり前じゃないですか! 私だって素でああいう事してたんですから!」
咲「そ、そっか」
和「大好きですよ!」グイッ
咲「……!」カァッ
和「咲さんも言ってくれましたよね!」
咲「う、うん。じゃあこれで……正式に……」
和「は、はい……!」カァッ ////
咲「……」ボタン ポチッ
スピーカー「えんだぁぁぁぁぁぁぁいやぁぁぁぁぁ」
咲・和「「ぷっ」」
咲「あははははは」
和「ふふふふふふ」
和「本当ですね」
咲・和「「ふぅ」」
咲「正式にお付き合いするようになってからは、和ちゃんの部屋に来るたびにこんな事やってるね」
和「い、良いじゃないですか」ツン
咲「い、嫌とかじゃないよぉ。私も楽しいよ? でも和ちゃん、これすっごく好きだよね」
和「告白の場面ってのは、一度しか出来ないですもん」ツン
咲「そうだよね。疑似でも良いから何度でもしたいよね」
和「はい」
咲「……」
和「……?」
咲「……とか言って、もう一つ事情があるでしょ」
和「は、はい?」ギクッ
和「……!」 ギクギクッ
咲「恥ずかしくて、好きって言えないんでしょ!」
和「……」アセアセ
咲「たまには言ってよ、演技じゃなくてさ」ニコッ
和「……!」カァッ
和「……」
咲「ね」
和「……す」
和「好きですよ! 大好きですよ!」カァッ ////////
咲「やった~!」ダキッ
和「……」テレテレ
咲「私も和ちゃん、大好きだよ~!」ギューッ
和(あぁぁぁぁぁぁ)ガクガクガクガク
終
Entry ⇒ 2012.08.29 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
P「伊織、どうしてここに?」
P「いや、それはないけどさ」
伊織「だったら別にいいじゃない」
P「でも、なんだってこんな時間に……もう結構な時間だぞ」
P「親御さんも心配するだろ。ほら、送ってやるから帰るぞ」
伊織「いや……」
P「いやって、伊織……」
伊織「あんな所、戻りたくない」
P「家出か……?」
伊織「……」
P「家出だな……」
Prrrr…Prrrr…
P「いつもお世話になっています。私、765プロのプロデューサー、Pと申します」
P「あっ、新堂さんですか? 実は……」
P「えぇ、そうなんです。俺の家にいるんですよ。はい、屋敷に帰りたくないと……」
P「えっ、俺が預かる? でも、それって色々と……」
P「出来ないなら、伊織を放っておくって、そんなこと出来るわけないじゃないですか!」
P「わかりました。伊織は今晩、俺が責任もって預からせてもらいます」
Pi……
P「頭を冷やせだってさ」
伊織「そんなのとっくに冷えているわよ! 頭どころか、身体中ね!」
P「こんな時期とはいえ、夜は冷えるからな」
伊織「誰のせいよ、誰の!」
P「伊織が家出しなければ」
伊織「あんたのせいよ! こんなに人を待たせて!」
P「勝手に来ておいて……」
伊織「なにか言った?」
P「いや、何も」
伊織「とにかく、入りましょう。ほら、開けなさいよ」
P「わかったよ……」
伊織「ポタージュ……」
P「わかった」
・
・
・
P「はい、どうぞ」
伊織「……」ズズッ
伊織「あまり美味しくないわ」
P「普段、伊織が家で食べているものと比べられてもな。インスタントだからしょうがない」
P「でも、少しは暖まっただろ?」
伊織「うん……」
伊織「うん……」
P「それじゃあ、伊織……どうして、家出を?」
伊織「……」
P「伊織、焦らなくてもいい、ゆっくりでもいい。でも、わけを話してくれ」
P「俺は伊織のプロデューサーとして、伊織のことをちゃんと知っておきたい」
伊織「……」
P「伊織のお父さんが?」
伊織「うん。もう十分に人気もでたし満足しただろって、だからもうアイドルは」
P「なるほどな。確かに最近の伊織の人気はすごいよな。テレビをつけて、チャンネルを回せば大抵はどっかで映っているし」
伊織「私、頭きちゃって飛び出したわ。なに、人気がでたからアイドルやめろ?」
伊織「ふざけるんじゃないわよ! 私は遊び感覚でアイドルをやっているわけじゃないのよ!」
伊織「ここに来るまで、どれだけ苦労したか」
P「色々あったからな……」
P「それなのに、そんな風に言われたら、今までの努力とか苦労とか全部否定されているみたいだな」
伊織「まったくよ……」
伊織「はぁ!? 子どもを応援するのが、親ってもんでしょ!」
P「でも、親は同時に子どもの将来を考えなきゃいけないと思うんだ。俺の親もうるさかったし」
伊織「……どういうことよ」
P「伊織、アイドルこのままずっと続けられると思うか?」
伊織「当然じゃない!」
P「10年、20年も先も? あずささんや音無さんより歳をくってもか?」
伊織「そ、それは……」
P「俺がズルい質問をしているのは、わかってる。そんな先のことなんて俺だって想像がつかない」
P「でも、これだけは分かっている。ピークを過ぎれば、後は落ちていくだけだ」
P「そうしている間に新しいアイドルが出てくる。そういった中には、とんでもないのがいるかもしれない」
伊織「……」
伊織「……」
P「俺は負けるとは言えない。でも、勝てるとも自信を持って言えない」
P「それこそ、惨めに負けるかもしれない」
伊織「まどろっこしいわね……つまり、あんたは何が言いたいわけ?」
P「だから、そういう風になってしまうより、今のいい時期でやめて、有終の美を飾る」
P「引き返せる内に、引き返す。それがお父さんの考えなんじゃないかな」
P「俺は伊織のお父さんじゃないから、これは俺の身勝手な予測でしかない」
P「世界有数の水瀬グループの頂点に立つ人だ。あまり考えなしで発言をすると思えないんだよ」
P「伊織自身も、今の考えに思う所はあっただろ?」
伊織「……」
伊織「でも、それって妥協じゃない!」
P「そうとも言うな……」
伊織「私、そんなの絶対にいや!」
P「なら、伊織はどうしたい?」
伊織「私、まだまだこんなもじゃない。もっと、今よりずっと上にいけるわよ」
P「本当か?」
伊織「あんた、私を誰だと思っているの。天下の美少女、伊織ちゃんよ!」
P「だったら、それをお父さんに言ってあげな」
伊織「えっ……」
P「遊びじゃないって言ってやればいい」
P「そうしたら、お父さんも考えが変わるかもしれない。伊織の言うように、子どもを応援するのが親なんだから」
伊織「……そうね。あんたの言う通り、ちゃんと私の考えや想いを言うべきだったわ」
伊織「不思議ね。さっきまでパパのこと憎くて仕方なかったのに、今はちゃんと話せそう」
伊織「これって、やっぱりあんたが……」
P「どうした、伊織?」
伊織「なっ、なんでもない……///」
伊織「はぁ!? 私の服に、あんたのベッドの匂いをしみつかせる気?」
P「いや、でもさ……」
伊織「方法は他にもあるでしょ」
伊織「その……あんたの服を着るとか」
P「……」
P「は?」
ろまん
まろん
ごろん
伊織「べ、別にやましいことじゃないでしょう?」
伊織「ほらほら、早く服を渡しなさい」
P「わかったよ……」
・
・
・
P「伊織、着替えおわったか……って、なんて恰好してるんだ!」
伊織「なにって、あんたが渡してくれたYシャツを着ているだけじゃない?」
P「ズボンはどうした? 短パンを渡しただろ?」
伊織「あれ、ウエストが違い過ぎて履いてもすぐにずり落ちちゃって、意味がないわよ」
P「……」
P「そんなこと言われったて……」
伊織「……!」
伊織「変態!」ギュッ
P「あっ、裾を引っ張るな! 伸びるだろ!」
伊織「だって、見えちゃいそうじゃない!」
P「だから、ズボンを履けっていってるだろ!」
伊織「それが意味がないって言ってるでしょ!」
伊織「最初から、そう言いなさいよね」
P「んじゃあ、俺はさきに寝るぞ。明日には、お前を送ってやらなきゃいけないんだから」
伊織「ちょっと待ちなさいよ!」
P「……」
伊織「んしょっと……」モゾモソ
P「……」
伊織「あったかいわ……」
P「ベッドってそういうものだからな」
P「んっ……」
伊織「なんで、背を向けて寝ているわけ?」
P「今の伊織は、刺激が強すぎるから」
伊織「掛け布団で私の体は見えないわよ」
P「見える見えないの大したことじゃないよ。見てしまったというのが問題なんだ」
伊織「そんなの、私には関係ないわ」
伊織「だから、こっちを向きなさいよ。んぎぃいいっ!」グィイイッ
P「……」
伊織「んぎぃいいっ!」グィイイッ
P「なんなんだよ……もう」クルッ
P「は、はぁ……」
伊織「あんたには、私の体を温める義務が、責任があるわけだ」
伊織「だから、もっとくっつきなさいよ」
P「……」
伊織「早く!」
P「俺って、甘いんだな」
P「このくらいでいいか?」
伊織「もっと……ぴったりくっつけるくらいに」
P「これくらいか?」
伊織「うん……そのくらい」
伊織「……」ギュッ
伊織「すぅ、すぅ……」
P「眠れない……」
P「だって、自分の担当アイドルと寝ているんだぞ?」
P「とても落ち着いてなんかいられない」
P「むしろ、なんで伊織はこんな安心しきった顔でねているんだ?」
伊織「うんっ……」
P「……っ!?」
P「伊織の足が……俺の足に」
伊織「んっ~」
P「抱き枕のつもりかよ」
P「よいしょっと……」
伊織「すぅ、すぅ……」
P「ええい、ままよ」
P「……」ギュッ
P「あっ、ちょうどいい大きさだ」
P「それに柔らかくて、いいにおいだ」
P「何か……急に眠くなってきたな」
P「……」
P「ぐぅ……」
伊織「うんっ……もうこんな時間」
伊織「……っ!」
伊織「な、なんでこいつがここにいるのよ!」
伊織「あれ……私のベッドじゃない」
伊織「あっ……そっか私、こいつの家に泊まったんだ」
P「……」
伊織「それにしても、見れば見るほど締まりのない間抜けな顔ね」
伊織「でも……私はこいつにたくさんほめてもらって、たくさん支えてもらっているのよね」
伊織「私とこいつで、美女と野獣かしら……にひひっ!」
P「……」
伊織「まだ起きてないわよね……つんつん」
P「う~ん……」
伊織「!?」
P「……」
伊織「……」ドキドキ
P「すぅ……」
伊織「ほっ……」
伊織「本当に眠っているみたいね」
伊織「……」
伊織「よしっ!」
伊織「ようやくお目覚め? いい御身分ね」
P「伊織……おはよう」
伊織「おはようじゃないわよ。さっさと着替えて準備しなさい」
伊織「朝ごはん、簡単だけど作っておいたから」
P「あぁ……ありがとう」
P「んっ?」
伊織「なに、どうかしたの?」
P「いや、唇がなんか濡れているから……どうしたのかと思って。それと、口の中がかすかに甘い香りが」
伊織「!」
P「なんでだろう?」
伊織「さっ、さぁ? 飴でも舐めて、寝たんじゃない」
P「何を焦ってるんだ?」
P「はいはい、わかってるよ」
伊織「ねぇ、プロデューサー……」
P「どうした?」
伊織「もし私が10年、20年経ってもアイドルやってたら、あんたは私のプロデューサーでいてくれるの?」
P「もちろんだ。伊織のそばが、俺の居場所だよ」
伊織「そ……そう、ならよかった。途中で嫌になって逃げられたら、たまらないしね」
伊織「だったら、これからもずっとずぅ~っと私の面倒を見なさい! 約束よ!」
fin
Entry ⇒ 2012.08.29 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
マミ「長女が私、次女が佐倉さん、三女が暁美さん」
杏子「あたしの方がお姉さんみたいってことだな」フフン
マミ「なんとなくそう思ったのよ」
ほむら「一人暮らしの3人で一緒に暮らすというのはいいわ、お金も節約できるしいろいろやりやすいし」
ほむら「でもどう考えたら私が杏子の妹になるのよ」
マミ「暁美さん、三女って二人のお姉さんよりしっかり者がなるってイメージがない?」
マミ「私と佐倉さん、両方をしっかりと支えてくれる一番かわいい子ってなるとやっぱり暁美さんだと思うのよ」
ほむら「そ、そうかしら?」
マミ「えぇ」
ほむら「ま、まぁそうね、杏子じゃしっかり者にはなれないし」
マミ(ふふっそうやって褒めてあげると扱いやすいところとか末っ子の子にぴったりね)
俺にも頼む
杏子「言っとくけどあたしだって妹がいたんだからな」
マミ「次女の子っていうのは長女の子に甘やかされたりしてるのよね」
杏子「マミに甘えてなんかねぇよ」
マミ「でも妹のことも姉のことも自分より大事に思ってくれてる子が多いわ」
マミ「表にはださない子が多いけど佐倉さんにぴったりじゃないかしら?」
杏子「そ、そんなんじゃねえよ!」
杏子「ま、まぁ三女がほむらにぴったりだから次女ってことにしといてやるよ」
マミ(お姉さんのいうことには少し反抗しつつも従順なところもぴったりよね)クスクス
杏子「そうだそうだ、次女と三女がっていうなら長女はどうなんだよ」
ほむら「当然あなたはぴったりなのよね?」
杏子「まさか年齢が一番上だからなんて言わないよな?」
マミ「そうねぇ、長女はしっかりしているとか、頼りがいがありそうっていうわね」
ほむら「三女とかぶってないかしら?」
マミ「でも重要なところで抜けてたりするらしいわ」
マミ「そういうところを妹達がサポートしてくれるみたいよ?」
杏子「ふ、ふーん、まぁサポートぐらい言われなくてもするけどさ」
ほむら「え、えぇ、まぁマミは頼られたくせに油断してぱっくりとか抜けてるものね」
マミ(暁美さんが何を言ってるかよくわからないけど納得はしてもらえたのかしら)
杏子「勝手な行動ってなんだ?」
マミ「例えば、深夜に出歩くとか」
ほむら「まどかの家にQBが忍び込んだら深夜であろうと私は行くわよ」
マミ「そういう時もできるだけ私や佐倉さんに連絡すること」
ほむら「一刻を争うのよ!」
杏子「さすがにいまさらまどかも契約はしないと思うけどなぁ……」
ほむら「わかったわ……」
杏子「はいはい」
マミ「次に佐倉さんは見滝原中学校に通ってもらうわね」
杏子「はいは……は?」
マミ「やっぱり学校は行かないとダメよ」
杏子「いや、いまさら勉強なんて追いつけねぇって」
マミ「そこは私や暁美さんがいれば大丈夫よ」
杏子「だいたい戸籍だとか書類だとか」
マミ「全部問題無いわ」
ほむら(3人で住むって決まってすぐに準備していたのかしら……)
杏子「いや、あたしは名前で呼んでるけど」
ほむら「私もよ」
マミ「と、とにかく私も佐倉さんを杏子、暁美さんをほむらって呼ぶからね」
杏子「おう」
ほむら「どうぞ」
マミ「あ、せっかくだしあなた達は私をマミお姉ちゃんって呼んでもいいからね?」
ほむら「杏子、今日夕飯で食べたいものはある?」
杏子「あ、うーん……量があればいいや」
マミ(露骨にスルーされた……)
マミ「あ、でも今冷蔵庫の中にあまりないのよね」
ほむら「じゃあ買ってくるわ」
マミ「せっかくの共同生活1日目よ、一緒に行きましょう」
杏子(面倒だけど試食品でも食ってればいいか……)
ほむら(もうすぐタイムセールスの時間だけどこの二人、足手まといにならないかしら……)
杏子「お菓子のコーナーいこうぜマミ」
マミ「その前にお肉とか買わないとだめよ」
杏子「ってほむらは?」
マミ「あれ?暁美さ……ほむらはどこに行ったのかしら」
杏子(素直に苗字で呼べばいいのに)
知久「かわいい娘と息子の笑顔のために主夫は負けられないんだよお嬢さん」
ほむら「なら今日はその娘さんと息子さんに泣いてもらう事になりそうですね」
知久「はははっそう言われるのは何度目だったかな」
ほむら(この人に勝てた事は未だに一度もない……今日もダメだというの……)
マミ「お菓子をそんなに食べると体に良くないわよさく……杏子」
杏子「マミのケーキだってお菓子だろ」
マミ「うっ……」
杏子「甘いモノは別腹ってことでいいじゃねぇか」
マミ「で、でも……」
ほむら「ここにいたのね……」
マミ「あら、お肉やお野菜をとってきてくれたの?」
ほむら「えぇ……リベンジはできなかったけど」
マミ(リベンジ?)
ほむら「やっぱりあそこで白菜は捨ててナスに走っていれば……」
杏子「何言ってるんだお前……」
マミ「そういえば料理当番とか決めないといけないわね」
杏子「あたしは食う専門で」
マミ「だめよ、せっかくだから料理ぐらいできるようになっておきなさい」
杏子「自分で作ったほうがましだって思うよな」
ほむら「そうねぇ……」
杏子「ほ、ほら!ほむらもこう言ってるし」
ほむら「料理ぐらい上手になればいいのよ、妹である私にできるんだから……ね?杏子お 姉 ち ゃ ん」
マミ「そうよねぇ、末っ子であるほむらができるんだから杏子もできないといけないわよね」
杏子「うぐ……」
マミ「今日は私が当番ってことでいいから杏子はお手伝いをすること」
マミ「そうすれば自分がする時の練習にもなるわ」
杏子「はぁ……」
ほむら「じゃあ私は末っ子らしくゴロゴロしながら漫画でも読んでいるわね」
マミ「何を言ってるのほむら、あなたはお風呂のお掃除よ」
ほむら「な!」
マミ「お姉ちゃんのいうことが聞けない?」
ほむら「わ、わかったわよ……」
ほむら(マミの家なだけに凄まれると逆らえないわ……)
杏子(見てても包丁の動きが早くてわかんねぇ……)
マミ「ふんふーん」トントン
杏子(そもそも何を作ろうとしてるかもわからねぇ……)
杏子(どうしよう……)
―お風呂場―
ほむら「細かいところのカビが気になってしょうがないわ……」
ほむら「本気で掃除する必要がありそうね……」
杏子(え?あれでゆっくりなのか!?)
マミ「ふふっちゃんとわからなかったって感じね」
杏子「悪いけどさっぱりだ」
マミ「お姉ちゃんがしっかりと当番の時に教えてあげるわね」フフン
杏子(マミはそんなにお姉ちゃんって呼ばれたいのかな……)
杏子「ん?おう」
―風呂場―
杏子「おーいほむらー」
ほむら「何?」
杏子「もう飯ができるから早く来いってさ」
ほむら「待って、今私はこのカビと戦っているのよ」
ほむら「この部分だけカビがおちないのよ」
杏子(べつにいいとおもうけどなぁ)
ほむら「これをおとしたらいくとマミに言っておいて」
杏子「あいよ」
ほむら「お待たせ」
杏子「お、やっときた」
マミ「そのカビはおとせたの?」
ほむら「えぇ、やるからには完璧を求めているもの」ファサ
杏子「早くくおうぜー」
杏子「……」
ほむら「お姉さんなら末っ子に譲ってもいいんじゃないかしら?」
杏子「妹が太らないようにっていう姉の優しさだよ優 し さ」
マミ「もう、喧嘩しないの!」
ほむら「お風呂の順番はどうするの?」
マミ「そうねぇ、いっそみんな一緒に入っちゃう?」
ほむら「さすがに狭いと思うわ……」
杏子「3人はなぁ……」
―――
マミ「さっぱりしたわ」
ほむら「髪型が変わると印象も変わるものね」
杏子「だな、ほむらは変わってないけど」
ほむら「それにしても……杏子ってかわいいパジャマ派だったのね」
杏子「な、なんだよ悪いかよ!」
マミ「似合っているわよ杏子」
杏子「あーもう、人をからかいやがって」
杏子「そのサイズでそんなパジャマよく見つけたな」
マミ「み、見た時可愛いって思って買ったっていいじゃないの」
ほむら「いいと思うわよ、似合っているし」
ほむら「お姉さんっぽくはないけど」
マミ「ほむらまで……」
杏子「お、いいなマミ姉、ジャージなんかより女の子としてかわいいのをあげないとな」
マミ「えぇ、かわいい妹をもっと可愛くしてあげないと」
ほむら「マミ姉ってなによ……というかジャージは動きやすいしあたたかいし」
マミ「ジャージはだめよ、寝るときに身体を締め付けてしまうわ」
ほむら「そんなにきついジャージははいてないのだけど……」
杏子「いいか、パジャマは寝る時のための服だからな、ジャージより健康にもいいんだぞほむら」
マミ「そうだわ、鹿目さんや美樹さんも誘ってほむらのパジャマを選びましょう」
ほむら(まどかやさやかが……着せ替え人形にされる……)
ほむら「それはやめて!」
ほむら「……なにか言った?」
マミ「な、何も言ってないわ」
杏子「ほむらじゃする必要がないだろ」
ほむら「放っておいて!」
杏子「そうだな」
ほむら「1日目から疲れたわ……」
マミ「と、ところで杏子」
杏子「ん?なんだよマミ」
マミ「……マミ姉って呼ばないの?」
杏子「いや、それは妹ということになってるほむらを……」
マミ「そ、そうよね……」
杏子「あーもうわかったよ、マミ姉って呼べばいいんだろ」
マミ「えぇ!」
ほむら(いずれ二人を姉と呼ばされそう……)
ほむら「というか暑いわ」
杏子「あとマミ姉の胸が邪魔」
マミ「……」
ほむら「それに3人は結構キツイわね……」
杏子「なんだよマミ姉」
マミ「杏子が落ちないようにって思ったのよ」
マミ「杏子もほむらをぎゅってして落ちないようにしてあげて」
ほむら「余計に暑いじゃないそれ……」
杏子「あいよ」ギュゥ
ほむら「ってああもう……」
まどか「うぇひひ、私も大好きだよほむらちゃん」ギュゥ
ほむら「こ、こんなところで恥ずかしいわ///」
まどか「恥ずかしさ以上にほむらちゃんを抱きしめたいなって」ギュゥゥ
ほむら「あ、あの、まどか?ちょっと抱きしめるのが強いわ」
まどか「うぇひひー」ギュゥゥゥ
ほむら「い、痛いわまどか、もう少しやさしく……」
杏子「くかー」ギュゥゥゥ
ほむら「うーん、痛いよまどかぁ……」
マミ「んんーほら、二人共起きなさい」
杏子「ん、もう朝か……」グシグシ
ほむら「幸せな夢を見ていたような気がするけど身体が痛いわ……」
マミ「寝違えたの?」
ほむら「腕と胸のあたりが痛い感じね……何かに締め付けられていたような……」
マミ「それって……」チラッ
杏子「ん?」
マミ「ま、まぁ幸せな夢が見れたのなら良かったじゃない」
ほむら「まぁそうなのだけど……」
杏子「いいんじゃねぇの、マミの家なんだしマミに従うよ」
マミ「……」
杏子「なんだ?」
マミ「マミ姉……」
杏子「あーわるかったよマミ姉」
杏子(そんなに姉って呼んで欲しいのか……)
ほむら(私はコーヒー派なんだけど……とはいいにくい空気ね)
ほむら「反抗期の三女は姉を呼び捨てにするってことにしておきなさい」
マミ「そう……」シュン
ほむら(うぐ……なんだか朝から悪いことをしたみたいじゃない……)
杏子「そういや今日はお前らは学校だっけ、あたしは家でのんびりしてるよ」
マミ「あなたは見滝原中学校に通うって言ったでしょう?」
杏子「あれって本気だったのか!?」
マミ「えぇ、本気よ」
マミ「えぇ、とっても似合っているわ」
杏子「なんかスカートって慣れない……」
マミ「あ、学校で授業中に飲食は禁止だからね」
杏子「な!」
ほむら「あと転校生は質問攻めにあう運命よ、覚悟しておいたほうがいいわ」
マミ「まぁそこは少しはマシだと思うわ」
ほむら(質問攻めがまし?)
杏子「飯の時にしゃべるなんてのも久しぶりな気がするよ」
ほむら「ところで時間いいの?」
マミ「え?あ!?」
杏子「ん?なんだよ時間そんなにやばいのか?」
ほむら「えぇ、それなりにね」
マミ「なんで冷静にしてるのよほむら、二人共早く行くわよ!」
まどか「あ、ほむらちゃんとマミさんがきた!」
さやか「珍しいね、ほむらとマミさんが遅れるなんて」
マミ「遅くなってごめんなさいね」
仁美「昨日からお二人はご一緒にお住まいされているせいで……ま、まさか!」
ほむら「違うわよ仁美、せめて私のそういう相手はまどかにしなさい」
さやか「いや、それもどうなの……」
まどか「うぇひひ///」
さやか「んじゃ行きましょうか」
マミ「待って美樹さん」
さやか「?」
マミ「ほら、いつまで隠れているの、どうせ見られるんだから諦めなさい」
まどか「?」
仁美「?」
さやか「え?杏子?」
まどか「杏子ちゃん!?」
仁美「佐倉さんもご一緒にお住まいされているんでしたね」
マミ「今日から佐倉さんが学校に通うから仲良くしてあげてね」
さやか「へー制服似合うじゃん杏子」
まどか「うん、とっても可愛いなって」
ほむら「よかったわね杏子」
杏子「あーうっせーうっせー」
まどか「杏子ちゃんもこのクラスなんだね」ヒソヒソ
さやか「みたいだね」ヒソヒソ
仁美「楽しみですわ」ヒソヒソ
和子「佐倉杏子さん、入ってきて」
杏子「あ、はい……」
杏子(う、なんか全員に注目されるのってやだな……)
和子「えー佐倉さんは暁美さんと大の仲良しと聞いているので暁美さんの隣に座ってもらいましょう」
アノアケミサントナカヨシナンダッテー
カワイイ
ドンナコナンダロウネー
和子(知り合いの子が一人いるだけでも気が楽になるっていうものね)
ほむら(質問攻めが楽っていうのは私も巻き込まれるからってことね……)
杏子「いや、こっちに来てからの知り合いだな」
ほむら「えぇ、ちょっとしたことで出会ってそこから仲良くなったのよ」
モブ「でも大の仲良しなんでしょ?」
杏子「ん?んーまぁ一緒に住んでるしな、それにほむらの姉みたいなもんってことになってるし」
ほむら「ちょ、ちょっと杏子!」
アノアケミサンガイモウトダッテ
エークールナオネエチャンッテイメージダッタヨ
ほむら(マミ……恨むわよ……)
さやか「ま、ほむらもいるなら助ける必要はないでしょ」
仁美「そうですわね、お二人のあたふたしているところも見られますし」
さやか(仁美って意外と……)
ほむら「やっと開放された……」
杏子「疲れた……」
マミ「お疲れ様、二人共」
さやか「いやー休み時間になるたびに囲まれてたね」
仁美「ほむらさんの時は妙な威圧感で質問したいのにできない方もいたみたいですわ」
仁美「ですから今回の一件に便乗してほむらさんのことを聞いている方もいたみたいですし」
ほむら「そう言われると自分のことを結構話した気がするわ……」
まどか「うぇひひ、でも二人共すぐにクラスの人気者になったね」
さやか「ほむらなんて印象が変わったって子がいっぱいいたしね」
杏子「ドタバタしてたし持ってきた記憶はないな……」
ほむら「こういう疲れた日に限ってご飯抜きなのね……」
まどか「あ、じゃあ私達の分けてあげるよ」
マミ「心配はいらないわ、ここに3人分用意してあるから」
さやか(三人分っていうか……)
仁美(おせち料理のような重箱ですわね……)
ほむら(いつの間に作ってたのかしら……)
さやか「マミ姉?」
マミ「長女が私、次女が佐倉さん、三女が暁美さんってことになったから」
まどか「え?じゃあほむらちゃんもマミさんや杏子ちゃんをお姉ちゃんって呼んでるの?」
さやか「マミお姉ちゃんとか?」
仁美「ありですわね」
ほむら「呼んでないわよ!」
まどか「でもほむらちゃんが妹かぁ…・・・いいなぁ」
まどか「うぇひひ、しっかりしてるけどお姉ちゃん想いな妹になりそうだよね」
ほむら「そうかしら」
まどか「うん!」
さやか「まどかはたしかに姉だけどこの中だと一番妹って感じだよね」
まどか「ひどいよぉ……」
杏子「あたしのことも姉って呼んでもいいんだぞ」ケタケタ
ほむら「黙りなさい」
マミ「反抗期ねぇ」
杏子「父親が入った後のお風呂は嫌みたいな反抗期だろ」
まどか「あはは、でもとっても楽しそうだなって」
仁美「羨ましいですわ」
ほむら「どこがよ……」
マミ「ほむら、ちゃんとガールフレンドはおうちに連れてくるのよ」チラッ
杏子「そうそう、妹のガールフレンドに挨拶はしたいからな」チラッ
まどか「え?」
ほむら「あなた達……」
杏子「ん?あたしは食べたぞ」
マミ「私も食べたわよ?」
ほむら(いつの間に食べたのよ……)
ほむら(昼休みは散々な目にあったわ……)
先生「はいじゃあここの問題を暁美さん」
ほむら「はい、その問題は~」
先生「正解ね、じゃあ新しく転校してきた佐倉さん、こっちの問題を解いてみて」
杏子「……」
杏子『助けてくれ』
ほむら『嫌よ』
杏子『助けてくれさやか』
さやか『ごめん、わかんない』
杏子『じゃあまどかとか仁美に聞いて教えてくれ!』
さやか『じゃあ今度ファミレスでおごりね』
杏子「すみません、わかりません」
先生「そう?ここはね」
さやか『そんなにおごりが嫌か!』
杏子「勉強全然わかんねぇ……」
さやか「でもマミさんやほむらが一緒に住んでるなら教えてもらえるじゃん」
杏子「まぁそうだけどさ」
まどか「でも体育はすごかったね杏子ちゃん」
杏子「ま、体を動かすのは得意だからな」
ほむら「あまり人間離れした動きをすると変に注目されるわよ」
杏子「へいへい」
杏子「お、やっときたな」
マミ「HRが長引いていたのよ」
ほむら「そろったことだし帰りましょう」
さやか「えー寄り道しようよー」
マミ「そうねぇ、じゃあ私の家でお茶会でもしましょうか」
まどか「うぇひひ、楽しみ」
さやか「一緒に住み始めたって言う割にはあんまり変わらないですね」キョロキョロ
まどか「前に来た時とあんまり変わらない気がするね」キョロキョロ
ほむら「もともと私の家にそんなに家具はなかったから」
杏子「あたしも特定の場所に住んでたりはしないしな」
マミ「二人の衣類が増えたぐらいなのよ」
さやか「だから全然かわらないのかぁ」
ほむら「そうね、だれかさんのせいで疲れたわ」ゴロゴロ
さやか「二日目とは思えないぐらいくつろいでるね二人共……」
ほむら「もともとアパートがあったのにこっちにきてくつろげないならきた意味がないじゃない」ゴロゴロ
杏子「そうだそうだ」
さやか「あんたはアパートとかにいなかったでしょうが」
マミ「あら、そうだったのね」クスクス
ほむら「な!違うわまどか!」
杏子「ちげぇ!」
ほむら「マミ、私がまどかをもてなすわ、だからあなたは休んでいなさい」
マミ「あらあら」
さやか「今更そんな事言っても遅いでしょ……」
さやか「っていうか私ももてなそうという気はないの!?」
さやか「本当に?」
ほむら「えぇ、本当よ」
ほむら「ただほんのちょっと待遇に差があるぐらいよ」
さやか「まぁほむらならそれもしょうがないかー」
杏子「だな」
ほむら「納得されるとそれはそれで嫌なものね……」
マミ「ほむら、カップをそっちへ持って行ってくれない?」
ほむら「わかったわ」
マミ「あ、あと杏子はお茶菓子をつまみ食いしないこと」
杏子(ばれた……)
さやか「あたしもここの子になっちゃいたくなるね」
杏子「……」
ほむら「……」
さやか「露骨に嫌そうな顔をすると泣くよ!」
ほむら「冗談よ、さやかがきたら騒がしくはなりそうね」
杏子「確かにうるさそうだな」
ほむら(杏子と喧嘩をして騒がしくなりそうって意味だったんだけど……)
さやか「あたしとまどかがもしも入ったらほむらは五女に降格だね」
ほむら「なんで私が絶対に末っ子なのよ……」
さやか「うーん、じゃあまどかが五女でほむらが四女だね」
まどか「えぇ!私だってお姉ちゃんなのにひどいよぉ」
マミ(でも唯一の妹である鹿目さんをとにかく可愛がってしまうとか結構合っているきがするわね)
マミ「え?」
まどか「私ってこの5人で一番妹っぽいですか?」
マミ「え、えっと……」
マミ(大雑把なところはあるけどお姉ちゃんって感じのする杏子……)
マミ(周りをよく見て楽しませようとしたり気配り上手な美樹さん……)
マミ(鹿目さん贔屓なところはあるけどしっかりしてて頼りにもなるほむら……)
マミ(可愛くて頑張り屋さんで応援したく成る鹿目さん)
マミ(どうしよう否定出来ないわ……)
マミ「だから妹っぽいところがあるのと同様にお姉さんなところもあるとおもうの」
まどか「本当ですか!」
マミ「えぇ!」
まどか「よかったぁ」
ほむら「まどか、あなたはタツヤ君にとても姉として慕われているじゃない」
まどか「うぇひひ、ありがとうほむらちゃん」
まどか「ほむらちゃんもまどかお姉ちゃんって言ってくれてもいいからね」
ほむら「え?」
まどか「……」ジィー
ほむら(お姉ちゃんって呼ばれるのを期待されてる……)
さやか(お姉ちゃんって呼ばれたいって考えがまず姉っぽくないって言わないほうがいいよね)
ほむら「まどか……お姉ちゃん」
まどか「うぇひひ、なぁにほむらちゃん」ギュゥ
ほむら(抱きつかれて嬉しいけれどもフクザツな心境ね)
ほむら(マミまで便乗してきた!?)
さやか(あ、マミさんもお姉ちゃんって呼ばれたいんだ……)
さやか(確かに年齢が一緒ってことにして考えたらお姉さんぶってる妹って感じがしないこともないかな)
マミ「……」ジィー
ほむら「そ、それよりまどかとさやかは時間は大丈夫なの?」
まどか「あ、もうこんな時間」
さやか「本当だ」
マミ「……」シュン
ほむら(なんだか罪悪感が……)
杏子(そんなに姉って呼ばれたいものなのかねぇ)
まどか「お邪魔しました」
さやか「お邪魔します」
ほむら「なんでお邪魔しますなのよ……」
さやか「いや、まどかとほむらの二人きりをこうお邪魔しますってことで」
ほむら「からかうのもいい加減にしないと怒るわよ?」
さやか「ご、ごめんなさい」
マミ「気をつけてね」
杏子「んじゃなー」
杏子「どうしたんだ?」
マミ「どうしたらほむらはお姉ちゃんって呼んでくれるのかしら」
杏子「やっぱり姉って呼ばれないのか?」
マミ「そ、そりゃあやっぱり一人っ子だったからお姉ちゃんになるのって憧れてたもの」
杏子「ふーん」
マミ「どうしたら呼んでくれるか杏子も考えてみてくれない?」
杏子「え?うーん、マミが」
マミ「……」ジィー
杏子「あ、あーマミ姉がほむらのためになることでもしたらいいんじゃねぇの」
マミ「あの子のためになることを?」
杏子「知らねぇよ」
杏子(適当に言っただけだし)
マミ「勉強は教えなくてもあの子は問題ないし……あ!」
杏子「どうした?」
マミ「そういえば杏子は見滝原の授業はついていけた?」
杏子「あ、あー……あんまりかなー」
マミ「杏子にまずはしっかり勉強を教えないと」
杏子(とばっちりだ……)
杏子「うっせー」
マミ「ちゃんと授業についていけるように杏子に勉強をね」
ほむら「あぁ、そういうこと」
マミ「よかったらほむらも手伝って、どのへんまでやったかわからないし」
ほむら「私も授業なんて聞いてないからどこまでやったかなんてわからないわ」
マミ「そうなの?」
ほむら「えぇ、だってこの教科書を何度読んだと思ってるの?」
ほむら「まぁこの教科書を使っているのだからこの教科書の全範囲を教えれば問題はないわ」
マミ「それもそうね」
杏子「こんなにできるわけねぇだろ!」
マミ「えぇ、ありがとうほむら」
杏子「そ、そうだ!今日も料理の手伝いを……」
ほむら「必要ないわ」
杏子「で、でもあたしの当番の時にうまく出来るように見ておかないとさ」
マミ「杏子、ここの解き方をまちがっているわ」
マミ「基礎からちゃんとやったほうがいいわね」
杏子「かんべんしてくれ……」
杏子「勉強なんてしたくない……」
ほむら「はい、これでも食べなさい」
杏子「なんだこれ……」
ほむら「チョコレート、脳が疲れたのなら糖分をとりなさい」
杏子「ありがと」
マミ「新しい事を知るのはとても大切なことよ」
ほむら「そうね」
杏子「まぁいいや、飯だ飯!」
ほむら「どこのおっさんよ……」
マミ「杏子がお父さんで私がお母さん、ほむらが娘っていうほうが合ってるのかしら」
ほむら「その方がマシな気はするわね」
マミ「お母さんって呼んでみる?」
ほむら「遠慮するわ」
杏子「その前にあたしは男じゃねぇよ」
杏子「うーん、薄味だな」ホムホム
ほむら「そうかしら?」
マミ「美味しいとおもうわよ?」ホムホム
杏子「今度はもうちょい濃い目だといいな」
ほむら「まず自分で作れるようになってから言いなさい」ホムホム
マミ「ごちそうさまでした」
ほむら「ごちそうさま」
杏子「勉強もしたし飯も食ったし」
マミ「さ、勉強の続きね」
杏子「まだやらされるのかよ……」
ほむら「頑張りなさい杏子お 姉 ち ゃ ん」
杏子「ほむらてめぇ!」
杏子「……」
ほむら「ふふっ」
マミ「で、その応用でここがね」
ほむら「ふふふ」
杏子「あーもう、そこでくつろいで漫画呼んで笑ってるんじゃねぇ」
ほむら「この漫画おもしろいわよ?杏子も読んでみたら?」
杏子「え?そ、そういうことなら」
マミ「だめよ、あと4ページは進みましょう」ガシ
杏子「そう言ってこれだけできたならあと5ページはって増やすんじゃねぇか!」
ほむら「ふふふ、この漫画まどかにオススメしてみようかしら」
マミ「そんなことを言う暇があったらちゃんと勉強しなさい」
杏子「畜生……」
マミ「中学1年の分ぐらいは終わったかしら……」
ほむら「1日で1年分って考えると凄いわね」
マミ「まぁ1日で詰め込んでも忘れちゃうから復習が重要よね」
ほむら「そうね、明日も全部問題が解けるか見てあげたほうがいいと思うわ」
杏子「あー2日めにしてもう家出したい……」
マミ「何言ってるの、ダメよそんなことしたら」
ほむら「ま、そういう時はヤル気が出るようなことを考えればいいのよ」
杏子「例えば?」
ほむら「さやかより良い点をとってさやかをからかうとか」
杏子「……それは楽しそうだな」
ほむら「でしょう?あなたには勝てるってさやかは思ってるわよ」
杏子「負けられねぇ!」
ほむら(嘘だけど)
杏子「え?いや、それとこれは話が別だろ」
ほむら「頑張りなさい、杏 子 お 姉 ち ゃ ん」
杏子(さっきからあいつのお姉ちゃんって言葉に悪意を感じる……)
マミ(羨ましいわ、佐倉さんはお姉ちゃんって呼んでもらえて……)
マミ(私も呼んでくれたらいいのに……)
ほむら(まどかとメールでもしていましょう)ピッピッ
マミ「えぇ、お疲れ様」
ほむら「お疲れ様」ゴロゴロ
杏子「あーなんかずっと座って頭使ってたから走り回りたい」
ほむら「マミとジョギングでもしてきたら?」ピッピッ
マミ「そうねぇ、魔法少女として体力は必要よね」
マミ「そうだわ!」
ほむら(まずいわ……巻き込まれそう……)
マミ「皆で銭湯までジョギングをしましょう!」
マミ「そのまま汗を流せるし」
ほむら「杏子は付かれているし、マミだって杏子をみていたわけだから……」
杏子「いいな銭湯、よくこの時間帯にばあちゃんにミられないように忍び込んだっけ」
マミ「そんなことしたら怒るわよ……」
杏子「は、はい……」
ほむら「なら二人で……」
マミ「家族一緒にいってこそでしょう?」
ほむら(まどかとの楽しいメール交換が……)
ピリリ
まどか「あ、新しいメールだ」
まどか「走って銭湯に行く事になってしまった?」
まどか「何か忘れ物とかを銭湯にしたのかな?」
まどか「銭湯かぁ、なんだか普段のお風呂より気持ちいいんだよね」
杏子「こんなの歩いてるようなペースじゃねえか」
ほむら「魔法禁止って……元心臓病には辛いのよ……はぁ……はぁ……」
マミ「運動不足ねぇ」
杏子「これは姉として鍛えてやらないとなぁ」ニヤニヤ
ほむら「遠慮するわ……はぁはぁ」
ほむら「そこまでいったら次の電柱って話でしょう?」
ほむら「それぐらいしってるわよ……はぁ……はぁ……」
杏子「ジャンプするように走ると速いぞ」
ほむら「それは短距離走でしょ……はぁ……はぁ……」
ほむら「というかあまり喋らせないでよ……はぁ……はぁ……」
杏子「本当にねぇなぁ」
ほむら「というかあとどれだけ走ればいいのよ……」
マミ「大丈夫よ、あと半分は過ぎているわ」
杏子「あぁ、半分は過ぎてるよ」
ほむら(絶対に走り切れないわよそんなの……)
マミさんが走ってるってことはたゆんたゆん
マミ「もしも走りきったら鹿目さんの好感度アップよ」
ほむら「なんで……アップするのよ……そんなわけないでしょう……」
杏子「あ、もしもしまどかか?え?あぁ、そうそう今銭湯まで走ってるんだけどさ」
杏子「ほむらが走り切れないって泣き言言ってるんだよね」
ほむら「え?え?ほ、本当に電話しているの?」
杏子「え?ほむらはそんな事言わない?まぁお前の前では格好つけるからそうかもしれないけど」
杏子「実際はだらだらと」
ほむら(まどかに格好悪くミられる……名前に負けないように格好良くなるって……)
ほむら(走るわよ走ればいいんでしょう!)ダッ
マミ(あら、ペースアップしたわね)
杏子(電話なんてしてねぇのに)
ほむら「はぁはぁ……」
マミ「すぐに銭湯に入ったら倒れちゃいそうね」
杏子「ちょっと休ませてやったほうがいいんじゃねぇの」
マミ「ちゃんと走りきったものね」
ほむら「かはっ……はぁはぁ……」
杏子「ほれ、清涼飲料水」
ほむら「はぁはぁ……はぁはぁ……」
ほむら(飲み物が欲しいけど息切れがひどくて飲めない……)
ほむら「程度はね……」
マミ「そう、じゃあ中に入りましょう」
ほむら「えぇ」
杏子「汗で服がはりついててうぜぇしな」
マミ「そうね、下着が透けて見えそうだし」
ほむら「……」ジィー
マミ「どうかした?」
ほむら「いえ……」
杏子「ま、そのうち大きくなるって」
ほむら「杏子に言われたくないわよ!」
マミ「?」
マミ「やっぱり露天風呂よねー」
杏子「まぁ外を見ながらっていうのはいいよな」
ほむら「露天風呂といえば女湯は覗きをよくされるわよね」
マミ「え!?」キョロキョロ
杏子「んなやついねぇだろ、まどかの入った露天風呂なら誰かさんは覗きそうだけどさ」
ほむら「失礼ね」
杏子「誰もお前とは言ってないだろ」
ほむら「まどかと一緒に銭湯にきて一緒に入らない理由がないじゃない」
杏子「ってそっちかよ……」
マミ(覗きなんていないわよね……)キョロキョロ
マミ「え?なんでもないわよ」
杏子「覗きの心配か?」
マミ「あなた達不安にならないの?」
ほむら「簡単に覗けたら銭湯なんてすぐに潰れるんじゃないかしら」
杏子「だな」
ほむら「それにそんなに言うなら露天風呂じゃなくて屋内に戻ればいいだけよ」
杏子「一番姉って言う割りには怖がりだな」
マミ「二人がそうやって脅かすからでしょう!」
マミ「キャァ!」
杏子「水鉄砲って意外と出来るもんだな」
ほむら「杏子少しやり方が違うわ、こうよ」ピュゥ
マミ「キャゥ!」
マミ「二人して何するのよ!」
杏子「姉っていうのは妹のイタズラをよくうけるもんだろ?」ピュ
ほむら「そうそう」ピュゥ
マミ「も、もう」グシグシ
杏子「銭湯であんまり暴れたりはできないだろ」
ほむら「かわいい妹がじゃれていると思えば起こる必要もないでしょう?」
マミ「杏子は勉強、ほむらは運動……」ボソ
ほむあん「……ごめんなさい」
マミ「まったくもう……」
杏子「結構長く浸かってるしそろそろあがるか」
マミ「そうね」
ほむら「ふにゃ……」
マミ「ちょ、ちょっとほむらがのぼせてるじゃない」
マミ「気分はどう?」ナデナデ
ほむら「あんまり良くないわね」
杏子「体力ねえんだからきついならきついっていえよな」パタパタ
ほむら「そうね、少し無理してしまったわ」
マミ「あまりお姉ちゃんを心配させちゃダメよ」
ほむら「そうね」
マミ「何言ってるのよ、家族っていうのはお互いに迷惑をかけても助け合ってこそでしょ?」
ほむら「本当の家族ってわけではないでしょう」
マミ「もう……」
杏子「ま、そんなに気にするならなにか1ついうことを聞くってのでどうだ?」
ほむら「私に出来る範囲でお願いするわ」
杏子「んじゃそうだな、あたしの料理当番の時にちゃんとやり方を教えてくれ」
ほむら「お安いご用ね」
マミ「じゃ、じゃあ私はマミお姉ちゃんってこれからは呼ぶことっていうのでどうかしら」
ほむら「それは無理ね」
マミ「そう……」シュン
ほむら(いまさらお姉ちゃんなんて呼ぶのはさすがに恥ずかしいわ)
杏子「走ったり勉強したりで疲れたしな」
ほむら「そうね、結構眠いわ」
マミ「それにしても走っていくような距離じゃなかったから湯冷めしそうね」
ほむら「でも温泉なら湯冷めしにくいっていうけど」
杏子「まぁどのみち帰るしかないんだし気にしてもしょうがねぇよ」
ほむら「私はコーヒー牛乳にしておくわ」
マミ「私はフルーツ牛乳ね」
杏子「別に違う種類じゃないとダメってわけじゃないだろ」
ほむら「その3種でコーヒー牛乳が一番好きってだけよ」
マミ「私もフルーツ牛乳が一番好きなだけよ?」
杏子「ま、ならいいけどさ」
ほむら(牛乳をビールに変えたら本当におっさんね……)
マミ「よく一気に飲めるわね……」コクコク
杏子「ちびちびのむより一気に飲んだほうが気分いいだろ」
ほむら「そう言われても一気に飲まないし」
マミ「えぇ」
マミ「んーゆっくり眠れそうね」
杏子「そうだなー」
ほむら「えぇ、いろいろとあって疲れたわ」
マミ「昨日は杏子を抱きしめていたから今日はほむらね」
杏子「んじゃあたしがマミの後ろで寝るか」
ほむら(結局私はどちらかに抱きしめられて寝ることになるのね)
マミ「すぅ……すぅ……」ギュゥ
ほむら(寝れない……)
ほむら(そういえばマミはあのあと代わりのお願いも何も言わなかったわね……)
ほむら「……」
ほむら「今日はありがとうマミお姉ちゃん」ボソ
ほむら「え?起きて……」
マミ「もっとほむらはお姉ちゃんを頼っていいのよ……むにゃ……」
マミ「少しは甘えてくれないと心配なんだから……すぅ……すぅ……」
ほむら(寝言……ほっとしたような……)
ほむら(それにしても、一緒に住み始めただけの相手にそこまで寝言で言うなんてね)クス
杏子「さやかに1点差で負けたぁ……むにゃ……」
マミ「じゃあ杏子は今日からお勉強の特訓ね……すぅ……すぅ……」
ほむら(寝言で会話してる)クスクス
ほむら(せっかく一緒に住み始めたのだし少しぐらい甘えようかな)ギュゥ
ほむら(人肌って暖かくて眠るときは気持ちいいのよね……)ウトウト
マミ「ほむらー朝よー」
ほむら(暖かくて心地いい……もうちょっとだけ寝ていたい……)
ほむら「もう少しだけ……」ギュゥ
マミ「あなたが起きてくれないと私が動けないのよね……」
杏子「引き剥がして起こせばいいじゃねぇか」
マミ「そういうあなたはなんでベッドと壁の隙間に挟まってるのよ」
杏子「なんでだろうなぁ、とりあえず動けないから助けてくれ」
マミ「ほむらが起きたらね」
ほむら「もう少しだけ……」
マミ「ダメよ起きなさい」
ほむら「マミお姉ちゃんのもう少しだけ……」
マミ「え?今お姉ちゃんって」
ほむら「!!?」ハッ
ほむら「あ、目が覚めたわ、さ、早速朝食の準備をしましょう」
杏子「いや、気のせいじゃねぇだろ、確かにほむらはお姉ちゃんって言ってたぞ」
マミ「そ、そうよね!」
杏子(そんなに喜ぶことかねぇ……)
マミ「ほむら、お姉ちゃんも朝食作るの手伝うわよ!」
杏子「あ、おい!」
杏子「挟まってるのを助けてから行ってくれよ……」
マミ「ふんふーん」ニコニコ
ほむら「朝から随分ごきげんね」
マミ「いいことがあったもの」
ほむら「そう……」
マミ「えぇ、これから毎日楽しくなりそうな感じがしてきたわ」
ほむら「それはどうかしらね」
杏子「おーい助けてくれよー」
マミ「ちょっとほむら、いくら鹿目さんが来ているからってカバンを放置しちゃダメでしょ」
ほむら「まどかと遊ぶ時間がどれだけ大事だと思っているの!」
杏子「てか今日はほむらが買い出しの日だったよなマミ姉」
マミ「そうね」
まどか「あ、じゃあ私、ほむらちゃんのお手伝いしますよ」
ほむら「まどか……うるさい姉のせいで遊ぶ時間を手伝いなんかさせてごめんなさい」
まどか「うぇひひ、いこっほむらちゃん」
ほむら「あ、そういえばマミお姉ちゃん、牛乳と卵ってまだあったっけ?」
マミ「あ、もう無くなりそうね、買ってきて」
杏子「チョコレートも買ってきてくれ」
ほむら「杏子お姉ちゃんは食べ過ぎだからダメ」
杏子「ちっケチな妹だな」
まどか(うぇひひ、本当の家族みたいでとっても羨ましいなって)
終われ
いつもいつもここでいちゃついてないの!って叱られちゃうようなSSを考えて……
あとさやかちゃん全然だせねぇ!出したかったのに全然だせねぇ!
グダグダ続けるのは好きだしもっと続けたくても明日用事あるしネタもないし保守だらけになるだけだわ
付き合ってくれてありがとう、寝落ちしてごめんなさい、暇つぶしになってれば幸い
乙だ
乙
Entry ⇒ 2012.08.28 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
京子「結衣!泊まりに来てやったぜ!」
結衣「うーん、今日は泊まらないほうがいいかな」
京子「なんでよ!」
結衣「実は…」
結衣『布団干そうっと♪』
結衣『今日は京子来るっぽいこと言ってたからな』
結衣『ついでに晩御飯の材料(とラムレーズン)買いに行こうっと』
結衣『よし、材料も買ったし…』
結衣『…って雨降りそうじゃん…天気予報は快晴って言ったくせに…!』
結衣『あ、そういえば布団干してあるじゃん!やばいやばい!急いで帰らないと!』
ポツ…ポツ
結衣『あっ降ってきちゃった』
ザーーーーーー
結衣『…』
結衣『ただいま…うわ…布団ビッチョビチョ…』
結衣『どうしよう…寝られないよこれじゃ…』
結衣「…という感じに出先で雨に降られてだな」
京子「あぁ、通り雨あったねぇ…うわ、ほんとだ、布団ビチョビチョだ」
結衣「これじゃ寝られないから今日は帰りな」
京子「大丈夫だよ!私ビチョビチョでも気にしないよ!」
結衣「いや気にしろよ、風邪ひくぞ」
京子「でもこれじゃ結衣も寝られないよね」
結衣「まぁ、床で寝るから大丈夫だよ」
京子「…ん!?」
結衣「なに?」
京子「そういえば結衣布団もう1つなかったっけ?」
結衣「あ…あったなそういえば」
京子「ほら、初めて泊まった時布団2つ並べたじゃん?」
結衣「あぁ、あったあった」
結衣「でもこれシングルだし枕1つしかないぞ?」
京子「いいよいいよ!」
結衣「狭いぞ?」
京子「狭くてもいいよぉ!」
結衣「密着することになるけど…」
京子「別にいいんじゃん?」
結衣「なんか恥ずかしいんだけど」
京子「あんだけ一緒に寝といて何を今更」
結衣「うーん…」
京子「うえっへっへ、今夜は寝かせないぜ!結・衣!」ピトッ
結衣「やっぱ帰れ」
京子「ウソウソ!ウソだから!寝るから!だから泊まる!」
結衣「しょうがないなぁ…まぁいいよ」
京子「よっしゃーー!それじゃ風呂入ってきます!」
京子「えへへ…結衣も一緒に入る?」
結衣「入らねぇよ」
京子「ですよね」
パタン
結衣「…ふう…」
結衣「良いって言ったけど、やっぱどう考えても狭いよなぁ…」
結衣「枕も1つ…こっち側を私が使ったとして…幅が足りないよなぁ…」
結衣「あ、思いっきり端に寄って5㎝くらいあければ…え、5㎝でも足りない…?」
結衣「うわ、3㎝で2人分ギリギリかよ…いやいや、3㎝とか体が密着なんてレベルじゃないだろ」
結衣「…まぁ…枕無しでいいか…」
ガチャ
京子「うーす!あがったよぉ!結衣も風呂入ってきちゃえよ!」
結衣「あ、うん、入ってくるね…」
京子「おう、風呂あがったらゲームしようぜー」
パタン
京子「…改めてみるとホント狭いな」
京子「狭くてもいいよって言ったけどコレ絶対寝てる時パンチしそうだよな」
京子『う~ん…』バシッ
結衣『ゴフッ!』
京子『うぅ~ん』ゴスッ
結衣『ガフッ』
チュンチュン
京子『おはよう結衣!…って結衣が白目剥いてる!!結衣ーーー!!』
京子「ああっ!私の寝相が悪いばかりに!!すまん結衣!すまん!」
ガチャ
結衣「あがったよー」
京子「あっおかえり結衣!」
結衣「何がすまん!なの?」
結衣「意味わからん」
京子「Oh…」
結衣「ゲーム何やるの?」
京子「ナモクエの続きやる!」
結衣「あぁ、レベル上げてあるしいいよ」
京子「いえーい」
ピコピコ
ピコピコ
結衣「進むなぁ…」
京子「結衣がレベルあげといてくれたから進むの楽でさぁ」ピコピコ
結衣「あ、そこに行くにはまだ足りないかも」
京子「えぇー行けるよー!」
結衣「だーめ、あと5レベル上げれば全回復魔法覚えるから」
京子「レベル上げだるい…」
京子「えぇ…」
結衣「もう22時だし寝るよ!」
京子「分かったよ…」モソモソ
結衣「電気消すよ」
京子「あいよ!」
パチッ
京子「おやすみ結衣ー!」
結衣「あぁ、おやす…」モソモソ
結衣「あ」
京子「なんだい?」
結衣「そうだ、そうだった、狭いんだった…」ブツブツ
京子「何?なんだって?」
結衣「あぁ、枕京子が使っていいよ」
京子「え?なんで?2人で使おうぜー」
京子「ほらほら、結衣ここ!」ポフポフ
結衣「こうなるんだけど…」ポフッ
京子「…!」
結衣「…」
京子「…んちゅう~」
結衣「オイコラ」コツン
京子「いてっ!!」
結衣「いきなり何すんだよ」
京子「結衣が顔近づけてくるから…つい」
結衣「つい…じゃねーよ、あと近づけてねーよ!」
京子「結衣、結衣、息がかかるよ」
結衣「だから枕使っていいって言ったんだよ…近いから」
京子「なんだか体も密着して…」ポッ
結衣「うわぁ…あ、もう私枕いいから、ほんと、うん、京子使いな」クルッ
結衣「…」グッ
京子「あちょ!布団引っ張らないで!こっちの布団なくなっちゃう!」
結衣「…あ、あぁごめん」
京子「布団よこせー」
結衣「…はい、ちょっとごめん…よっ…と」
ファサッ
京子「…あ」
結衣「ん?」
京子「それ好き」
結衣「どれ?」
京子「ちょっと覆い被さって、布団かけてくれるの」
結衣「あぁ…そう」
京子「もう一回やって!」
結衣「布団あるじゃん」
結衣「あっ!何すんだよ!布団返せ!」
京子「ほらよっ!」バッサー
結衣「ぶほっ!いや、全部は返さなくていいから」
京子「…結衣ぃ…かけて?」
結衣「…」ドキッ
京子「…」ジー
結衣「しょ、しょうがないなぁ…」
京子「…」
結衣「…よいしょ…っと」
ファサッ
京子「おぉぅ…」
結衣「これでいい?」
京子「最高だよ!鼻血もんだよ!もういっか」
結衣「しねぇよ」
結衣「おやすみ」
京子「ほんとに枕なしで寝るの?」
結衣「うん」
京子「結衣は枕なしじゃ眠れない派じゃないの?」
結衣「や、別になくても眠れるけど…京子の方が枕なしじゃ眠れなくない?」
京子「そんなことないよ!いつも寝相で枕吹っ飛んでるし!」
結衣「あれ?最初に枕持ってきていい?って聞いてきたから枕ないと寝られないと思ったんだけど…」
京子「ぎくり」
結衣「あぁ、やっぱり」
京子「あ!いいこと思い付いた!」
結衣「なんだよ」
京子「結衣が枕を使う!」
結衣「うん」
結衣「…」
京子「ナイスアイディア!私!」
結衣「余計近いっつーのアホか」
京子「まま、試しに試しに…」
結衣「まぁ、でも顔ぴったり体ピッタリよりは寝やすいか…いいよ」
京子「おっしゃー!」
結衣「いいから、頭あげて」
京子「はいよ!」
結衣「…」スッ
京子「おぉぉう…」
結衣「頭おろして良いよ」
京子「おぉう…」プルプル
結衣「おろしていいってば」
京子「ん?あ、うん」
結衣「お前は腕枕されたいのかされたくないのかはっきりしろよ…」
京子「……されたい」
結衣「?」
京子「ありがと」
結衣「ん」
京子「…」
結衣「…」
京子「…」スリスリ
結衣「スリスリすんな」
京子「はい」
結衣「…まったく…」ギュッ
京子「おぉ!?」
結衣「あ、ごめん、なんか抱き枕感覚でつい」
京子「いや、別にいいよ、いいんだよ~もっと強く抱き締めても!」
京子「いだだだだ!!首が!首が!!」
結衣「変なこと言うからだ」
京子「なんだかんだ言いつつ密着至近距離でも抵抗しないんだね、結衣」
結衣「あ、そういえば…慣れたのかな」
京子「ではこれを期にもっと密着…」
結衣「もう半分乗ってるし、これ以上密着できんだろ」
京子「重なる?」
結衣「ねぇよ」
京子「キスする?」
結衣「しねぇよ、なんでそうなる」
京子「いや、だって上を向くともうこれはキスをする体勢…」
結衣「…」
京子「結衣…」
結衣「…」
京子「結衣…」
結衣「…」
京子「…って寝てる!?この雰囲気で!?」
結衣「…」
京子「結衣のバカ」ペチン
結衣「…」
京子「おやすみ」ギュッ
結衣「…」
京子「…」zzzz
結衣「…寝た?」
京子「…」zzzz
結衣「寝たか…ごめんな京子…」
結衣「やば、腕痺れてきた」
結衣「…もうちょっと抱き寄せてもいいよね…?よいしょ」グイッ
京子「…」zzz
結衣「同じシャンプーなのに…うん、京子の匂いがする」ギュッ
結衣「私さぁ、目瞑ったときキスされてもいいと思ったんだよ」
京子「…うん…結衣ぃ…むにゃむにゃ」
結衣「!?」
京子「…」zzz
結衣「寝言かよ…ビックリするからやめろよ…」
京子「…フヘヘ…」zzz
結衣「間抜けな寝顔しやがって」ナデナデ
結衣「…ヘタレ」
結衣「目瞑ったのに何もしないとかヘタレ」
結衣「…待ってたのに」
京子「…」zzz
結衣「でも…そんなヘタレな京子が好き、大好き…」
結衣「京子…」
チュッ
結衣「…」
京子「…」zzz
結衣「…おやすみ…」
結衣「…やっぱりもう一回…」
チュッ
結衣「…今度こそおやすみ」
京子「うん、おやすみ」
結衣「…」
京子「起きてたよん」
結衣「…」
京子「フヘヘ…ヘタレな京子が好き…大好き…」
結衣「やめろ」
結衣「やめろ、やめろよ」
京子「やっぱりもう一回…ちゅっ!」
結衣「うわぁぁあああああ!!!」
京子「寝てる間にするのはズルいなぁ…」ニヤニヤ
結衣「だ、だって…」
京子「結衣、結衣、大丈夫、私も大好きだよ」
結衣「いやいやいや…」
京子「好きだよ!結衣が私の事好きよりも私の方が結衣の事大好きだよ!」
結衣「嘘でしょ?…ほら、いつもお前そうやってからかうじゃん」
京子「好きだからだよ!」
結衣「?」
京子「好きだから冗談でごまかしてたんだよ!」
結衣「…それじゃ…」
京子「ふざけて言ってたけど全部本心だよ!」
京子「でもやっぱり、寝てる間にキスはズルいよね」
結衣「あぁ、ごめん…」
京子「だから…」
チュッ
京子「次からは起きてるときにしようね!」
結衣「京子…」
京子「ふへへ…結衣…大好き…」
結衣「もう一回…」
京子「おぉ?欲張りさんだな結衣は」
結衣「ん」
京子「…んっ」
チュッチュナウ
結衣「シングルで良かった」
京子「枕ひとつで良かった」
おわり
結衣「…」ギュzzz
京子「んふふ~ゆいぃ…」ガスッ
結衣「ゴフッ」
京子「…ふへ…ゆいぃ~…ぎゅー…」バキッ
結衣「グハッ」
チュンチュン
京子「…ん…おはよ…ゆい…って結衣っ!?」
結衣「…」
京子「し、白目剥いてる!!誰がいったいこんなことを…結衣ーッ!!」
結衣「…」パチッ
京子「結衣…!良かった!生き返った!!」
結衣「誰がってお前だよ」スパーン!
京子「ゲボーー!!」
おわり
乙
多いなwwwゆっくり読ませてもらうよ乙
中SSは3~5レスくらい
長SSは8~10~20レスくらいでバラツキあるから長いかも
>>71も後で読む
Entry ⇒ 2012.08.28 | Category ⇒ ゆるゆりSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
響「お弁当作ってきたぞ!」
響「みんなきっと喜んでくれるぞ!」
響「おにぎりもいっぱい作ってきちゃったさー!ハム蔵も手伝ってくれたんだぞ!」
ハム蔵「チュッッチュチュイ」
P「お、来たか。響で最後かな」
響「ごめん!自分お弁当気合入れすぎて作りすぎちゃったみたいだぞ」
春香「えっ・・・」
春香「私はいいかなー・・・自分で作ってきたし・・・」
響「そうなのかー・・・」
春香「うん!ごめんね!」
美希「・・・!」
響「美希おにぎり好きだよね!楽しみにしてるといいさー!」
美希「あはっ・・・美希は今ダイエット中だからおにぎり断ちしてるの!ごめんなの!」
春香(うまい逃げ方・・・流石美希っ・・・!)
やめなよ
美希「えっ・・・」
春香「それって衛生的に大丈夫なの・・・?」
響「もちろん大丈夫だぞ・・・!ハム蔵は毎日お風呂入ってるし・・・」
響「ひっ!自分は・・・自分は・・・みんなに喜んでもらおうと思って・・・」
律子「プロデューサー殿からもきつく言ってあげてくださいよ!響は意識が低すぎます!」
P「響・・・流石の俺でもそれは食べたくないわ・・・」
響「いやあああああああああああ!」
響「はぁはぁ・・・なんかとっても嫌な夢を見てた気がするぞ・・・」
響「そうだ!お弁当作らなきゃ!ハム蔵も手伝ってくれるよね?」
ハム蔵「ジュイッ」
P「お、来たか。響で最後かな」
響「ごめん!自分お弁当気合入れすぎて作りすぎちゃったみたいだぞ」
春香「えっ・・・」
春香「私も作ってきたんだ!響ちゃん!おかず交換しようね!」
響「うん!楽しみだぞ!」
春香「響ちゃん料理上手いから楽しみだなー!」
美希「・・・!」
響「美希おにぎり好きだよね!楽しみにしてるといいさー!」
美希「あはっ!美希のおにぎりの採点は厳しいから覚悟しとくの!」
美希「えっ・・・」
春香「それって衛生的に大丈夫なの・・・?」
響「もちろん大丈夫だぞ・・・!ハム蔵は毎日お風呂入ってるし・・・」
え?
響「ひっ!自分は・・・自分は・・・みんなに喜んでもらおうと思って・・・」
律子「プロデューサー殿からもきつく言ってあげてくださいよ!響は意識が低すぎます!」
P「響・・・流石の俺でもそれは食べたくないわ・・・」
響「いやあああああああああああ!」
響「はぁはぁ・・・なんかとっても嫌な夢を見てた気がするぞ・・・お弁当に関する夢・・・?」
響「そうだ!お弁当作らなきゃ!ハム蔵も手伝ってくれるよね?」
ハム蔵「ジュイッ」
ハム蔵「ジュイッ」
響「みんなに食べさせるものだからちゃんとしないとな!」
ハム蔵「ジュジュイッ!」
P「お、来たか。響で最後かな」
響「ごめん!自分お弁当気合入れすぎて作りすぎちゃったみたいだぞ」
春香「えっ・・・」
響「安心するさー!みんなの分もちゃんと作ってきたぞ!」
春香「私も作ってきたんだ!響ちゃん!おかず交換しようね!」
響「うん!楽しみだぞ!」
春香「響ちゃん料理上手いから楽しみだなー!」
響「おにぎりもいっぱいつくってきたぞ!」
美希「・・・!」
響「美希おにぎり好きだよね!楽しみにしてるといいさー!」
美希「あはっ!美希のおにぎりの採点は厳しいから覚悟しとくの!」
美希「あはっ!動物のつくるおにぎり食べるのは初めてだから楽しみなの!カモ先生にも食べさせてあげたいの!」
春香「でもそれって衛生的に大丈夫なの・・・?」
響「もちろん大丈夫だぞ!ハム蔵は毎日お風呂入ってるし、ちゃんとビニール手袋作って握ったしね!」
響「みんなのお腹を壊すわけにはいかないからな!」
美希「流石響なの!安全安心なの!」
響「自分完璧だからなっ!」
よかったね響ちゃん
律子「本当に大丈夫なの・・・?」
響「えっ・・・?」
律子「ネズミってゴキブリなんかよりずっと雑菌が多いのよ?ビニール手袋使ったくらいで大丈夫っていいきれるの?」
律子「確かにあなたは大丈夫かもしれないわね。でも他の娘達が絶対大丈夫って言い切れるの?」
響「ハム蔵は綺麗にしてるし・・・きっとだいじょうぶだぞ・・・」
律子「他のアイドル達をあなたみたいなムツゴロウさんと一緒にしないの!明日から仕事もあるんだしお腹壊したらどうするの!?」
律子「プロデューサー殿からもきつく言ってあげてくださいよ!響は意識が低すぎます!」
P「響・・・流石の俺でもそれは食べたくないわ・・・」
響「いやあああああああああああ!」
響「はぁはぁ・・・なんかとっても嫌な夢を見てた気がするぞ・・・お弁当に・・・ハム蔵に関する夢・・・?」
響「そうだ!お弁当作らなきゃ!ハム蔵はまだ寝てるといいぞ!」
ハム蔵「ジュイッ」
P「お、来たか。響で最後かな」
響「ごめん!自分お弁当気合入れすぎて作りすぎちゃったみたいだぞ」
春香「えっ・・・」
響「安心するさー!みんなの分もちゃんと作ってきたぞ!」
春香「私も作ってきたんだ!響ちゃん!おかず交換しようね!」
響「うん!楽しみだぞ!」
春香「響ちゃん料理上手いから楽しみだなー!」
響「おにぎりもいっぱいつくってきたぞ!」
美希「・・・!」
響「美希おにぎり好きだよね!楽しみにしてるといいさー!」
美希「あはっ!美希のおにぎりの採点は厳しいから覚悟しとくの!」
律子「衛生面は大丈夫なの・・・?」
響「えっ・・・?」
律子「響ってたくさん動物飼ってるじゃない?そんな部屋で作った弁当やおにぎりは安全なの?」
律子「動物って雑菌たくさんもってるのよね」
響「もちろん自分の家族達はお弁当に一切触ってないし大丈夫だぞ!」
律子「いや・・・動物をたくさん飼ってる響の部屋の空気に触れてる食べ物って大丈夫なの・・・?」
律子「確かにあなたは大丈夫かもしれないわね。でも他の娘達が絶対大丈夫って言い切れるの?」
響「自分の家族たちはちゃんと清潔にしてるし・・・きっとだいじょうぶだぞ・・・」
律子「他のアイドル達をあなたみたいなムツゴロウさんと一緒にしないの!明日から仕事もあるんだしお腹壊したらどうするの!?」
律子「プロデューサー殿からもきつく言ってあげてくださいよ!響は意識が低すぎます!」
P「いや!俺がきつく言うのは律子だ!」
響律子「!?」
よかった…
律子「でも・・・私が言ってることは正論ですし・・・」
P「確かに気にする人もいるかも知れないな。でも一般的に律子くらい気にするのは少数派だ!」
律子「私は・・・他のアイドル達の健康を考えて・・・」
律子「・・・」
P「響が一生懸命みんなを喜ばせようと作ってきたお弁当を貶すなんて律子はプロデューサーとして失格だっ!」
律子「でも・・・それはっ・・・」
P「アイドルの気持ちを考えられないプロデューサーなんて最低だろ!!」
美希「律子・・・さん・・・ひどいの!響がかわいそうなの!」
P「さぁ律子・・・響に謝るんだ・・・」
響「じ、自分は気にしてないから別にいいぞ!自分もちょっと無神経だったかもしれないし・・・」
響「えっ・・・」
P「響!!危ない!!」
プップー!!!ドカーン!!!
P「うわああああああああああああ!」
おい
響かわいい
響「はぁはぁ・・・なんかとっても嫌な夢を見てた気がするぞ・・・ピクニックに・・・お弁当に関する夢・・・?」
響「そうだ!お弁当作らなきゃ!」
響「うぎゃー!材料がないぞ!昨日買ったのに!」
pipopa♪プルルルル~
伊織『もしもし?』
響「はいさーい!伊織!助けて欲しいぞ!」
響「お弁当の・・・お弁当の材料がないんだぞ・・・」
伊織『え・・・?』
響「昨日買ったはずのお弁当の材料がなくなってて・・・こんな時間だとお店あいてないし・・・」
響「そんなことってひどいぞ!自分今日のピクニックお弁当作っていこうと思って楽しみにしてたのに・・・」
伊織『その程度のことならこのスーパーアイドル伊織ちゃんに任せなさいってことよ!今から迎えよこすから準備しときなさいよ!』
響「伊織ぃ・・・!ありがとう!」グスッ
伊織『にひひっ!うちにある食材にないものなんてないんだから!』
響「す、凄い食材だぞ・・・!」
伊織「まだ使っていいとは言ってないわよ?」
響「えっ・・・」
伊織「この食材を使うには条件が一つだけあるの」
響「条件・・・?」
響「・・・」ゴクリッ
伊織「この伊織ちゃんの分もおいしいお弁当を作りなさい!」
響「そ、そんなことでいいのか・・・?」
伊織「にひひっ!私の舌を満足させるものを作らないと許さないんだからね!」
伊織「今日のお弁当楽しみにしてるから頑張りなさいよ」
響「自分料理も完璧だからな!」
伊織「あと時間には気をつけなさいよ?熱中しすぎて遅刻なんてアイドルに許されないんだから」
響「まかせるさー!」
伊織「お疲れ様。車用意できてるし早く行きましょ」
響「うん!」
ブロロロロー
P「お、響と伊織早いな」
響「自分完璧だからな!」
伊織「お弁当づくりに熱中しすぎて私が声かけるまで時間なんて全く気にしてなかったのはだれかしら?」
響「伊織ぃ・・・」
響「じゃーん!自分お弁当作ってきたんだぞ!みんなの分もあるから食べてね!」
春香「わぁ~!美味しそう!」
美希「おにぎりもあるの!」ハムッハフッ
P「うん!上手いな!」
響「自分完璧だからな!」
響「自信作だぞ!どう!?」
伊織「文句なしに美味しいわね!」
響「自分完璧だからな!」
~そのころ響の家~
いぬ美「お弁当の材料全部食べるのは結構きつかったわね・・・」
ぶたた「でもこれで俺たちの見た夢が現実にならないなら苦でもねーよ・・・」
ハム蔵「ジュイッ」
おしり
いおりんは天使!
乙
Entry ⇒ 2012.08.28 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
シャーリー「何度生まれ変わっても、きっとまたルルを好きになる…」
シャーリー「ルル……」
ルルーシュ「大丈夫だ!!今、助ける!!」
シャーリー「私、ルルが好き。お父さんを巻き込んだって分かっても、嫌いには、なれなかった……。
シャーリー「ルルが全部忘れさせてくれたのに……それでも、また、ルルを好きになった。記憶を弄られても、また好きになった……」
ルルーシュ「喋るな!!シャーリー!!」
シャーリー「何度生まれ変わっても、きっとまた、ルルを好きになる……。これって、運命なんだよね」
ルルーシュ「死ぬな!!シャーリー!!!」キュィィン
シャーリー「だから、いいよね、ルル……。生まれ変わっても、また、ルルを好きになっても……。何度も、何度も、好きに、なる……から―――」
ルルーシュ「目を閉じるな!!!シャーリー!!!シャーリィィ!!!!」
ジェレミア「ルルーシュ様、どうされましたか
ジェレミア「むむ。これはいけない。すぐに治療を開始せねば」
ルルーシュ「できるのか?!」
ジェレミア「お任せください」
ルルーシュ「頼むぞ!!」
ジェレミア「まずが服を脱がせないと」
ルルーシュ「待て!!こんな場所で何を考えている?!」
ジェレミア「しかし!!服を脱がせなければ治療が行えません!!!」
ルルーシュ「そうか……シャーリー!!服を脱がせるぞ!?いいな?!」
シャーリー「い、いいけど……目を、瞑って……くだ……さ……」
ジェレミア「わかりました。善処します」
ルルーシュ「しっかりしろ!!シャーリー!!」
シャーリー「ふぐっ?!」
ルルーシュ「おい!!」
ジェレミア「今からオペを始めます」
シャーリー「うぅ……」
ルルーシュ「シャーリー!!」
シャーリー「えへへ……まだ……ルルと話せる……うれし、い……」
ルルーシュ「俺もだ!!」
ジェレミア「やや」
ルルーシュ「どうした?」
ジェレミア「傷は浅いですね。これなら消毒してしまえば問題ありません」
ルルーシュ「そうなのか!?よかったな!!シャーリー!!!」
シャーリー「え……わたし……たすかるの……?」
ジェレミア「はい。傷も残りません」
ルルーシュ「しかし誰がシャーリーを……!!」
ジェレミア「ルルーシュ様、私が犯人の捜索しましょう」
ルルーシュ「いいのか」
ジェレミア「我が君の女房となる者を撃った罪は重いですので」
ルルーシュ「ありがとう、ジェレミア卿」
ジェレミア「では。あと、これ消毒液とガーゼと包帯です。お使いになってください」
ルルーシュ「助かる」
シャーリー「……」
ルルーシュ「シャーリー……本当によかった……本当に……」
シャーリー「あの」
ルルーシュ「どうした?」
シャーリー「殺して……」
ルルーシュ「どうしてだ!?」
ルルーシュ「恥ずかしいこと?」
シャーリー「もうルルの顔とか見れないよ!!!」
ルルーシュ「シャーリー……何を言っている?」
シャーリー「え……?」
ルルーシュ「恥ずかしいことなんて言ってなかったぞ、全く」
シャーリー「そ、そう?」
ルルーシュ「ルルが全部忘れさせてくれたのに……それでも、また、ルルを好きになった。記憶を弄られても、また好きになった……。なんて、どこが恥ずかしいんだ?」
シャーリー「うわぁぁぁあぁ!!!!!いわないでぇぇ!!!!―――あたたた」
ルルーシュ「シャーリー!!大声を出すな!!」
シャーリー「うぅ……もう死ぬと思ったからそういう告白してみたのに……こんなの生き恥を晒すだけじゃないかな?!」
ルルーシュ「どうしてそんなことを言うんだ?恋はパワーなんだろ?」
シャーリー「ちょっと!!もうやめて!!」
ルルーシュ「今、消毒する」
シャーリー「うん……」
ルルーシュ「しみるぞ」
シャーリー「ひゃっ!?ルル!!もっと優しく!!」
ルルーシュ「我慢しろ。拳銃で撃たれたんだぞ」
シャーリー「そうだけど……」
ルルーシュ「よし。あとはガーゼと包帯で……」
シャーリー「はぁ……」
ルルーシュ「それにしてもシャーリーは凄いな。思い返せばいつも驚かされてばかりだったかもしれない」
シャーリー「え……なにが?」
ルルーシュ「死を悟った奴が「何度生まれ変わっても、きっとまた、ルルを好きになる……。これって、運命なんだよね」なんて台詞を自然と出せるなんてな」
シャーリー「いやぁぁ!!!もうやめて!!ルル!!おねがいぃ!!!」
ルルーシュ「シャーリー……でも、俺にとっては感動的だったんだが……」
シャーリー「私にとっては恥ずかしいの!!!そん台詞!!死ぬって分かってるから言えたの!!!」
シャーリー「な、なりた?」
ルルーシュ「記憶を失くし、俺のことなど忘れたシャーリーは俺を励まそうと……」
シャーリー(なんて言ったっけ……?)
ルルーシュ「私、さっきまで何しにここまで来たのか分かんなくなっていたんですけど、もしかしたら、何か区切りをつけたかったのかもしれません」
ルルーシュ「そりゃあ、忘れることなんてできっこないし、悲しい事っていっぱいあるけど、でも、朝は来るじゃないですか。だから、無理して押さえ込んでも。と言ってくれた」
シャーリー「ルル?!」
ルルーシュ「どうした?」
シャーリー「わ、私……そんなこと言ったの……?」
ルルーシュ「朝は来ますよって台詞は今でも俺の心に刻まれている」
シャーリー「死ぬ!!死んでやる!!!」
ルルーシュ「シャーリー!!やめろ!!」
シャーリー「あ……」キュィィン
シャーリー「ダメ!!死んだらダメ!!!―――あぁ!!!死にたいのに死ねない!!!」
ルルーシュ「大丈夫か?!シャーリー!!落ち着け!!」
シャーリー「違うよ。撃たれたことじゃなくて、私自身に興奮してるよ」
ルルーシュ「もう少ししたら救助の人も来てくれるはずだ」
シャーリー「うん」
ルルーシュ「事情聴取はあるかもしれないが……」
シャーリー「そっか。私、撃たれたんだもんね」
ルルーシュ「誰にやられたんだ?」
シャーリー「……えっと……分からない。気づいたら撃たれてて」
ルルーシュ「おいおい」
シャーリー「ご、ごめんね」
ルルーシュ「まぁ、いいさ。シャーリーが無事なら」
シャーリー「ルル……」
ルルーシュ「ところでシャーリー?」
シャーリー「なに?」
ルルーシュ「……あの……だな……。いいぞ?」
ルルーシュ「だから……別に好きになっても」
シャーリー「……?」ゴクゴク
ルルーシュ「シャーリーが言ったんだろ。「だから、いいよね、ルル……。生まれ変わっても、また、ルルを好きになっても……。何度も、何度も、好きに、なる……から―――」って」
シャーリー「ぶふっ?!」
ルルーシュ「シャーリー!!大丈夫か!?」
シャーリー「げほっ……!!ごほっ……!!」
ルルーシュ「ハンカチを使え」
シャーリー「あ、ありがとう……」
ルルーシュ「どうしたんだ?」
シャーリー「ルルが変なこというからでしょ?!」
ルルーシュ「これはシャーリーの台詞だろ?」
シャーリー「そうだった?!あぁぁ!!!!私、羞恥心で死ねる!!!ダメ!!!死ねない!!死んだらだめぇ!!」
ルルーシュ「お、おい。まだ、傷が痛むのか?」
シャーリー「私自身が痛いよ!!ルル!!どうにかして!!こんなの耐えられない!!」
シャーリー「またナリタのときみたいに記憶を弄ってよぉ……」ウルウル
ルルーシュ「いや、できればよかったが、もうシャーリーには……できない」
シャーリー「そんなぁ……私、今日の日記はどう書けばいいのぉ……」
ルルーシュ「ありのままを書けば……」
シャーリー「そんなことしたら見返すたびにベッドの上でバタバタするじゃない!!!」
ルルーシュ「バタバタ?」
シャーリー「ルルだって恥ずかしい過去がフラッシュバックしたら叫んだり、顔を埋めたくなるでしょ?!」
ルルーシュ「ああ」
シャーリー「でも、まだ忘れていられるだけマシだよね!!私なんて記憶を改竄してくれないともう一生引き摺っちゃうよ!!いいの!?」
ルルーシュ「いいんじゃないか?」
シャーリー「穴があった閉じこもりたい……」
ルルーシュ「ここは落ち着けないか。寮に戻るか」
シャーリー「でも……事情聴取とかあるんでしょ?」
ルルーシュ「シャーリーが苦しむだけなら、この場から離れたほうがいいだろう。行くぞ」
ルルーシュ「はいはい」
警官「あ、君たち。ここで何をしている?」
シャーリー「あ……」
警官「少し話を―――」
ルルーシュ「俺たちを見逃してもらえますか?」キュィィン
警官「―――分かった」
シャーリー「え……」
ルルーシュ「シャーリーには話しておかないといけないな」
シャーリー「今、何したの?」
ルルーシュ「これがギアスの力だ」
シャーリー「ギ、ギアス……?もしかして記憶を弄ったときに使った……?」
ルルーシュ「お前の心理を巧みに利用した男もいただろ。あいつもギアスという力により、お前の心を読んでいた」
シャーリー「今流行ってる催眠術ってそんな名称なの?」
ルルーシュ「え?」
ルルーシュ「……まぁ、そうだな」
シャーリー「だよね。そういうことでもないと記憶を失くさせるとかできないよね」
ルルーシュ「俺のギアスは絶対遵守。どんなに理不尽な命令でも、相手に従わせることができる」
シャーリー「へー。犬にも?」
ルルーシュ「犬?」
シャーリー「うん」
ルルーシュ「できるんじゃないかな。試したことはないが」
シャーリー「じゃあ、実家にね、私にすっごく吠える犬がいるの。全然懐いてくれなくてさ」
ルルーシュ「シャーリーに懐かせろと?」
シャーリー「うん」
ルルーシュ「……」
シャーリー「だめ?」
ルルーシュ「考えておこう」
シャーリー「わーい」
シャーリー「何が?」
ルルーシュ「それって、俺がシャーリーの実家に行くということになるが」
シャーリー「へ、変な勘違いしないで!!別に深い理由なんてないもん!!」
ルルーシュ「そうか」
シャーリー「そう!!別にルルを将来の旦那様的な扱いで招待するわけじゃないし!!」
ルルーシュ「分かった。分かった。そんなに騒ぐとまた出血するぞ」
シャーリー「大丈夫です!」
ポタッ……
シャーリー「え……?」
ルルーシュ「シャーリー!!血が!!」
シャーリー「あぁ……もう……私……ルル……あのね……」
ルルーシュ「大丈夫だ!!傷は浅い!!死ぬような出血でもない!!」
シャーリー「あぶな……また、恥を上塗りするところだった……」
ルルーシュ「とにかく学園に戻るぞ。いいな?」
シャーリー「お腹いたい……」
アーニャ「生理?」
シャーリー「アーニャ!!それセクハラ!!」
アーニャ「心配してあげたのに」
リヴァル「トイレいけよ」
シャーリー「そういう腹痛でもないの!!」
ルルーシュ「おいおい、お前ら。あまりシャーリーを興奮させないでやってくれ」
リヴァル「なんかあったのか?」
ルルーシュ「色々とな」
アーニャ「わかった」
シャーリー「何が?」
アーニャ「ルルーシュ、シャーリーに無茶な体位を要求した?」
シャーリー「アーニャ!?なにいってんの?!」
ルルーシュ「体位?なんのことだ?」
シャーリー「アーニャ!!実演しなくていいから!!!そもそもそんなことしてません!!!」
アーニャ「そうなの?」
ルルーシュ「アーニャ。下着が丸見えだぞ」
アーニャ「エッチ」
シャーリー「自分でやっておいてなに言ってるの?!」
ルルーシュ「シャーリー、あまり無茶はするなよ?」
シャーリー「うん」
ルルーシュ「じゃあ、俺は先に失礼する」
シャーリー「バイバーイ、ルルー」
リヴァル「……なんか、距離が縮まった気がしませんか、アーニャさん」
アーニャ「シャーリーもお年頃。ルルーシュもお年頃」
リヴァル「と、いうことは?!」
アーニャ「シャーリーの落とし頃を過ぎたかもしれない」
リヴァル「シャーリーは元々そんな時期なかった気がするけどな」
シャーリー(ルルってば、私の文字通り命をかけた告白については何も言ってくれないけど、どう思ってるんだろ……)
ソフィ「シャーリー、お風呂いく?」
シャーリー「あ、ごめん。先に行ってて」
ソフィ「また日記?」
シャーリー「う、うん」
ソフィ「ほどほどにねー」
シャーリー「別にいいでしょ!!」
シャーリー「さてと……何を書こうかな……」
シャーリー「……」
シャーリー「そういえば、あのロープウェイのとき……ルル、私の秘蔵写真持ってたっけ……」
シャーリー「……」
シャーリー「……まさか!!!」ガタッ
シャーリー「でも……いくら、ルルでも……部屋に忍び込むとか……うーん……」
シャーリー「よし。電話しよ」
ルルーシュ『どうした?』
シャーリー「ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」
ルルーシュ『ああ、構わない』
シャーリー「ルルさ、ロープウェイのとき……あ、私がルルを撃っちゃおうとしたときね」
シャーリー「あのとき私の持っていた写真、ルルが持ってたよね?もしかして私の部屋に入った?」
ルルーシュ『……ああ』
シャーリー「やっぱり?!」
ルルーシュ『ギアス漏洩を防ぐためだったんだ……。すまない』
シャーリー「日記は読んだ?!」
ルルーシュ『……ああ』
シャーリー「おぉ……?!」
ルルーシュ『本当に悪いと―――』
シャーリー「ど、どこまで読んだの?!」
ルルーシュ『どこまでって全部だが……』
ルルーシュ『勿論、シャーリーの日記の内容を公表するつもりなんてない』
シャーリー「あ、当たり前でしょ!?」
ルルーシュ『時々、ポエムみたいになるのが俺は好きだったな』
シャーリー「ポエ!?」
ルルーシュ『―――今日もあいつを見ていた。誰に言われるでもなく、ただぼんやりと背中を眺めていた。ああ、これが恋か。とか』
シャーリー「いやぁぁ!!!!それ日記をどう書くか迷走しだしたときのやつじゃない!?」
ルルーシュ『あとは……。―――今日は冷たいソフトクリームをペロペロ。とっても甘い。冷たいアイツもペロペロしたら甘いのだろうか。とかな』
シャーリー「うわぁー!!!うわー!!!!」
ルルーシュ『どうした?!シャーリー?!』
シャーリー「いやぁぁ!!!やめてぇぇ!!!」バタバタ
ルルーシュ『シャーリー?!暴漢でも現れたのか?!』
シャーリー「心の暴漢が耳元にいるよ!!」
ルルーシュ『なんだと?!分かった!!すぐにそっちへ行く!!』
シャーリー「こないでぇ!!ルルはだめぇ!!」
シャーリー「いや……もう……ダメかも……」
ルルーシュ『シャーリー!!しっかりしろ!!』
シャーリー「もう……表に出られない……死のう……」キュィィン
シャーリー「ダメ……死ねない……よぉ……」
ルルーシュ『シャーリー……。俺でよければ相談に乗るが……』
シャーリー「ほ、他には……?」
ルルーシュ『え?』
シャーリー「もう……それだけしか……覚えてない……?」
ルルーシュ『いや、一番強烈だったのが一つだけあるな』
シャーリー(なんだろう……!!もしかして初めてルルに会ったときのやつ?それともルルって呼び始めた日のこと……?!)
ルルーシュ『今日の妄想シリーズはとても記憶に残っている』
シャーリー「だめ……!!それは……言わないで……!!おね……がい……!!」
ルルーシュ『しかし、デートプランはかなりしっかりしていた。相手のLって奴が羨ましいぐらいだ』
シャーリー「……もう……ころしてよぉ……」
シャーリー「あー!!あー!!」
ルルーシュ『シャーリー?!!やはり今から……!!』
シャーリー「ルル!!お願い!!忘れて!!」
ルルーシュ『忘れたくても……』
シャーリー「忘れろー!!」
ルルーシュ『だが……』
シャーリー「忘れないなら舌噛み千切って、丸めて、窓から投げ捨ててやる!!」
ルルーシュ『俺のか?』
シャーリー「私のに決まってるでしょ?!」
ルルーシュ『シャーリー!!死ぬぞ!!やめろ!!』
シャーリー「なら忘れて!!」
ルルーシュ『ポエムは忘れなくてもいいか?』
シャーリー「全部!!恥ずかしい内容の日のやつは全部お願いします!!!」
ルルーシュ『どれが恥ずかしい日のものなんだ?LとSのいけない日記シリーズか?あれは確かに女の子が書いていい内容ではなかったが……」
ルルーシュ『でも、日記と書かれたフォルダに……』
シャーリー「私小説を隠すためのフォルダなの!!」
ルルーシュ『なんだ。そうだったのか』
シャーリー「よ、読んだの……?」
ルルーシュ『1ページ400字で800ページ以上あったからな。全て読むのに少し時間がかかった』
シャーリー「読んだんだ……」
ルルーシュ『初めは文章も荒かったが、中盤から洗練されてきて、とても読み応えがあった』
シャーリー「……」
ルルーシュ『特にLがSを自室に招いてから濡れ場に向かう心理描写なんて秀逸だったな』
シャーリー「ルル……あの……それは……」
ルルーシュ『LはSの瞳を見るたびに鼓動を大きくさせた。もうこの感情を抑えることはできない。Lの心に灯る。劣情と言う名の青い火が。とかな』
シャーリー「うぅぅ……うぅぅ……」
ルルーシュ『シャーリー?具合でも悪いのか?』
シャーリー「舌が噛み切れません……」
シャーリー「言えるわけないでしょ」
ルルーシュ『その機会はいずれ』
シャーリー「言わないってば!!」
ルルーシュ『ん?ジェレ……ロロ……だと……!!!』
シャーリー「え?ルル?どうしたの?」
ルルーシュ『ああ、悪い。急用が入った。また明日な』
シャーリー「ルル!!日記と小説のこと忘れてね!!お願いだから!!」
ルルーシュ『分かっている』
シャーリー「あ、あと!!」
ルルーシュ『なんだ?』
シャーリー「ルルのこと手伝いたい……。もし困っているなら何でも言って」
ルルーシュ『シャーリー……』
シャーリー「……」
ルルーシュ『シャーリーは俺の帰る場所になってくれたらそれでいい。お前が生きている限り、俺は死ねない』
ルルーシュ『嬉しいよ』
シャーリー「嬉しいの?!ありがとう!」
ルルーシュ『それじゃあ、おやすみ』
シャーリー「ルル!!忘れてね!!ルルー!!!」
シャーリー「切れちゃった……」
シャーリー「……」
シャーリー(さっき、ロロって……)
シャーリー「……!」ガタッ
シャーリー「もしかして私を撃ったのがロロくんだって分かったの……」
シャーリー「大変。ロロくんを探さないと……」
シャーリー「今のルル、何をするかよくわかんないし……」
シャーリー「催眠術でロロくんに意地悪するかもしれないし……!!」
シャーリー「よしっ」ダダダッ
シャーリー「ごめんくださーい」ドンドン
咲世子「なんでしょうか?」
シャーリー「咲世子さん。ルルは?」
咲世子「生憎と」
シャーリー「ロロは?」
咲世子「ロロ様もいまは……」
シャーリー「ロロもルルもいない……。やっぱり!!」
咲世子「シャーリーさん!?どちらへ?」
シャーリー「二人を探します!!」
咲世子「あ……!!」
シャーリー「ロロー!!!」ダダダッ
咲世子「……はぁ……」
咲世子「―――ヴィレッタ様」
ヴェレッタ『分かっている。ルルーシュからも言われているからな。こちらで保護しよう』
ヴィレッタ「入れ」
シャーリー「あの……ここは……?」
ヴィレッタ「私の仕事場だ」
シャーリー「ヴィレッタ先生ってここに住んでいるんですか?」
ヴィレッタ「まぁな」
シャーリー「わぁ。モニターがいっぱいありますね。今、面白いドラマとかやってますよ。一緒に見ます?」
ヴィレッタ「それはテレビではない。とにかく座れ」
シャーリー「は、はい」
ヴィレッタ「ルルーシュからどこまで聞いた?」
シャーリー「……私が恥ずかしい小説を書いているところまで……」
ヴィレッタ「何のことだ。ギアスについて聞いたのだろ?」
シャーリー「ああ。そっちですか。はい」
ヴィレッタ「どう思った?」
シャーリー「ルルはすごいなーって思いました」
シャーリー「はい」
ヴィレッタ「もっとあるだろ。お前の父親はルルーシュに殺され、更に記憶まで奪い、偽りの日常をお前に与えたのだぞ」
シャーリー「今の催眠術ってそんなことまで出来るんですよね。凄いです」
ヴィレッタ「シャーリー……」
シャーリー「あの。今はロロを助けにいかないといけないんで……」
ヴィレッタ「その必要はない。ルルーシュはロロに手を出すことはない。まだまだ利用価値があるからな」
シャーリー「利用価値?」
ヴィレッタ「ロロのギアスは相手の体感時間を奪うものだ。それを利用してナナリーを救出するのだろう」
シャーリー「ナナちゃんを……」
ヴィレッタ「ああ。それまでは手出しなどしないはずだ」
シャーリー「そんなのナナちゃんを救っても手なんて出したらダメですよ!!」
ヴィレッタ「……お前な……」
シャーリー「はい」
ヴィレッタ「やはりお前だけは好きにはなれない」
ヴィレッタ「嫌なことを思い出させるな」
シャーリー「あれは……あの……ごめんなさい。アルバイトして治療費払います」
ヴィレッタ「もういい。治療費はタダだったしな。それ以前に父親を殺されて平然としていられるお前に腹が立つ」
シャーリー「平然としているように見えますか?」
ヴィレッタ「見える」
シャーリー「……よかった」
ヴィレッタ「……」
シャーリー「なら、きっとルルにもそう見えてますよね」
ヴィレッタ「何を言っている?」
シャーリー「だって。お父さんが死んだことを気にしているように見えちゃったら、ルルは私に今よりももっともーっと優しくなると思うんです」
ヴィレッタ「それでいいじゃないか」
シャーリー「ダメですよ。それはただ罪の意識から私の頭を撫でてくれているだけじゃないですか」
ヴィレッタ「なに?」
シャーリー「私はルルのことを許しました。だから、いつものルルと私でいいんです。ルルは少しだけ遠くにいるような気がするけど、それでもいつものように接してくれるだけで嬉しくて……」
シャーリー「あの……理由になってないですか?それとも撃ったことを気にしてますか?」
ヴィレッタ「お前も撃たれたのだったな?」
シャーリー「あ、はい。ここです」
ヴィレッタ「ふんっ」ツンッ
シャーリー「がっ……?!!?」
ヴィレッタ「どうだ?ちょっと突いただけでも痛いだろ?私も同じ苦しみを味わった」
シャーリー「あ……ご、ごめ……」
ヴィレッタ「そのように思考ができれば……私も扇と……」
シャーリー「先生?」
ヴィレッタ「何でもない。ともかく、お前はロロに命を狙われている。我々が保護を―――」
シャーリー「先生?せんせー。もしもーし」
ロロ「―――シャーリーさん」
シャーリー「あ、ロロ。みてよ、先生ったら固まっちゃって」
ロロ「今度こそ……貴方を……」
ロロ「死んでもらいますよ」チャカ
シャーリー「ロロ……」
ロロ「貴方は兄さんにとって危険な存在だ……」
シャーリー「どうして……」
ロロ「貴方が!!兄さんを惑わせるから!!!死んでください!!!」
シャーリー「ロロ、私は―――」キュィィン
シャーリー「死ねない!!」ダダッ
ロロ「なに!?―――くそ!!」バァァン!!!
シャーリー「うっ?!」
ロロ「もう一発……!!」
シャーリー「ふっ!!」ドゴォ
ロロ「ぐ?!」
シャーリー「はぁ……はぁ……ロロ、やめようよ……どうして……」
ヴィレッタ「―――は?!シャーリー?!ロロ!!」
シャーリー「……」
ヴィレッタ「ロロ、どうして……。シャーリーの時も奪えばよかっただろに」
ロロ「それは……」
シャーリー「ロロ、私もルルのこと大好きなの」
ロロ「それがなんですか?」
シャーリー「ロロも好きなんでしょ?」
ロロ「ええ。そうですよ……。兄さんは僕だけの……」
シャーリー「うん。わかった」
ヴィレッタ「え……」
ロロ「シャーリー……さん……?」
シャーリー「ロロ、じゃあ競争しよ」
ロロ「競争……?」
シャーリー「私だってルルが好きだもん。でも、ルルを独り占めにするつもりもないから。だから、競争。恋敵の時を奪うんじゃなくて、好きな人の心を奪おうよ。そのほうが良いと思うよ?」
ロロ「……」
ヴィレッタ「おい!!お前は二度も殺されかけたんだぞ?!」
シャーリー「でも、私は死んでいません。この前も今も、ロロなら簡単に殺せるのに」
ロロ「……」
シャーリー「頭とか心臓を撃っちゃえばいいのに、ロロはそうしなかった。今も足を撃っただけですし」
ヴィレッタ「お前!!大丈夫か!?」
シャーリー「痛いですよ!!」
ロロ「シャーリーさん……」
シャーリー「ロロはきっとちょっと興奮しただけなんです。ほら、良くあるじゃないですか。好きな人の隣に知らない誰かがいて、それを見た恋敵がハンカチを噛むとか」
シャーリー「むきー!誰よあの女はぁ!!みたいな」
ヴィレッタ「あるかもしれんが……」
シャーリー「私もカレンとルルが一時期怪しかったので、いつもむきーってなってました。ロロのことを責めるなんてできません」
ヴィレッタ「あのな……。いいのか?ロロはまたお前を狙うぞ?」
シャーリー「ロロは私じゃなくてルルのハート狙うべきだよ」
ロロ「新手の命乞いですか?」
ロロ「兄さんも貴方のそんなところに惹かれたのでしょうね……」
シャーリー「え?」
ロロ「兄さんが写った写真をかき集めたり、変なポエムを書いたり、LとSの官能小説書き溜めたり……」
シャーリー「うわぁぁぁっぁ!!!!!」
ロロ「変態の癖に!!」
シャーリー「女の子はみんなしてるよ!!」
ヴィレッタ「してないが」
ロロ「ヴィレッタさん、見てください」
ヴィレッタ「これは?」
ロロ「シャーリーさんのポエム集です」
ヴィレッタ「ポエム集」
シャーリー「なにそれ?!」
ロロ「あなたが日記の残した恥ずかしいポエムを一覧にしたものですよ」
シャーリー「なんでそんなことするの!?そんなことするなら撃ってよ!!」
ホモが何言ってるんだ
シャーリー「いやぁぁぁぁ!!!声に出さないでぇぇぇ!!!」
ロロ「ふふふ……」
ヴィレッタ「シャーリー、こういうのが趣味なのか」
シャーリー「それはだから、日記の余白を埋めようとして……!!!」
ヴィレッタ「良い匂いがした。自分を深い場所まで潜らせる。そして包まれる。それが好きということ」
シャーリー「せんせぇぇ!!もうやめて!!音読はやめてください!!!黙読で!!黙読でお願いします!!」
ヴィレッタ「意外と面白いじゃないか。本でも出せばいいのに」
シャーリー「悶死しますよ!!」
ロロ「兄さんが写っている写真もこれだけあります。千枚以上はありますね」バサッ
シャーリー「ロロ!?私の部屋からもってきたの?!」
ロロ「それに画像データは1テラバイト弱もありましたよ。なんですか、これは?」
シャーリー「それは一つの画像に保存用、鑑賞用、実用に分けてあるのと、大きさも普通のと壁紙に分けてあるから、自然と要領が肥大化しちゃって……」
ロロ「ド変態ですね」
シャーリー「みんなやってるよ!!きっと!!」
ロロ「あなたの異常性を兄さんが知ればどうなるでしょうね……」
シャーリー「ロロ……!!」
ロロ「きっと気持ち悪がりますね」
シャーリー「それだけはやめて!!お願い!!!」
ロロ「なら兄さんに近づくな。半径100メートル以内に入らないでください!!」
シャーリー「そんな!?」
ヴィレッタ「おい、ロロ。無茶を言うな。シャーリーとルルーシュは同じクラスだ」
シャーリー「そ、そうだよ!!」
ロロ「なら、学園を去るしかないでしょうね」
シャーリー「そ、それは……!!」
ロロ「どうするんですか?」
シャーリー「うぅぅ……!!」
ヴィレッタ「シャーリー。どうでもいいが、足の怪我はどうする?応急処置ぐらいしたほうがいいぞ。化膿したら大変だ」
シャーリー「うぅぅ……出血多量で死にます……私はもう生きているのが辛いんです……」
シャーリー「やっぱり……私は死ねないんですね……」
シャーリー「ルルにも恥ずかしい秘密をいっぱい知られたし……もういやぁ……」
ヴィレッタ「はぁ……」
ロロ「シャーリーさん、いや、シャーリー!!早く兄さんの傍から離れろ!!この魔女め!!」
ヴィレッタ「そこまでいうなら何故、一思いに殺さない?」
ロロ「……!」
ヴィレッタ「お前、実はシャーリーを生かして何かを得ようとしているのか?」
ロロ「そ、それは……」
シャーリー「え?なに?」
ロロ「……ち、違う!!僕は本当にシャーリーに死んで欲しいんです!!」
シャーリー「早く殺して!!だめ!!やっぱり殺さないで!!!」
ヴィレッタ「……」
ロロ「僕は……本当に……!!」
ルルーシュ「―――そこまでだ。ロロ」
ヴィレッタ「ルルーシュ……」
シャーリー「ルルがきたー!!!もうお終いだー!!!」バタバタ
ルルーシュ「シャーリー。落ち着け」
シャーリー「え……?」
ルルーシュ「俺はお前の秘密を全部知っているだろ。どうしてロロの脅しに屈しようとする」
シャーリー「あ、そうだった。全部、見ちゃってるもんね。ルル」
ルルーシュ「そうだ」
シャーリー「じゃあ、私のこと嫌い?!キモいとか思った?!」
ルルーシュ「何度生まれ変わっても、きっとまた、ルルを好きになる……。とか、新しいポエムだろ?」
シャーリー「ちがっ!?」
ヴィレッタ「そんなポエムは見当たらないが」
ルルーシュ「シャーリーの新作なんですよ、きっと」
シャーリー「ルル!!違うってば!!!それは死ぬ間際だから……!!」
ルルーシュ「だからこそ最高傑作が出来上がったんだろ?分かっている」
ロロ「何しにきたの?」
ルルーシュ「シャーリーを撃ち、こんな卑劣な脅しまで……。ロロ、もう言い逃れはできないぞ」
ロロ「兄さん!!目を覚ましてよ!!シャーリーさんはただの変態ストーカーだよ!!きっと兄さんの上履きとか縦笛とかもクンカクンカ、ペロペロしてるよ!!」
シャーリー「まだ踏み込んだことのない領域です!!」
ヴィレッタ「普通するだろ」
ルルーシュ「ロロ……。ならば、貴様のパソコン内のあのフォルダはなんだ?」
ロロ「え……な、なんのこと……?」
ルルーシュ「容量は2TB超。しかも外付けHDDにまで同じフォルダがある」
ロロ「それはあれだよ。バックアップで……」
ルルーシュ「俺の画像がか?」
ロロ「僕は兄さんを監視する役目があったんだよ。盗撮したような画像が多くなるのは仕方のないことだよ!!」
ルルーシュ「風呂、トイレまでもか?」
ロロ「ひ、一人になる場所は一番警戒しなきゃダメでしょ?全く、素人なんだから、兄さんは」
ルルーシュ「ああ。俺も最初はそう思った。―――まるで便器の中から撮ったような動画が見つかるまではな」
シャーリー「な、なにそれ……」
ヴィレッタ「おいおい。どんな動画だ?資料として持って帰る」
ルルーシュ「これだ」ピッ
シャーリー「……モニターが……」
ヴィレッタ「……」
ロロ「やめてよ……兄さん……」
シャーリー「あ、ルルだ」
ヴィレッタ「おい、シャーリー。目を逸らせ」
シャーリー「わわわ……ルルが……ルルが……」
ロロ「兄さん!!!」キュィィン
ルルーシュ「―――ふっ」
シャーリー「あ、あれ?!決定的瞬間が終わってる?!」
ロロ「兄さん……自分の恥ずかしい映像を見せて……何が楽しいの……?」
ルルーシュ「出演者は俺。そして視聴者はシャーリーだ。別に問題はないな」
ルルーシュ「いつかは自分の裸も見られるときが来る。今から恥ずかしがっていてどうする?」
ロロ「に、兄さん……それって……!!!」
シャーリー「え?どういうこと?ルル、私の前で裸になるの?なんで?ヌードデッサンなんて私、興味ないけど」
ヴィレッタ「シャーリー……」
ルルーシュ「悪いな、ロロ。お前には見せない。しかし、シャーリーには見せる。それが答えだ」
ロロ「ぐっ……!!どうして!!僕だってこんなに愛しているのに……!!兄さん!!!」
ルルーシュ「それはシャーリーも同じだな」
シャーリー「わ、私は別にルルのことなんて、そこまで愛してないもん!!」
ヴィレッタ「今更それは通じないだろ」
シャーリー「ホントです!!ルルが私を好きなだけです!!」
ルルーシュ「ロロ。貴様の持つ画像と動画データを消去されたくなければ、この俺に従い続けろ。その無償の愛を持ったままな!!!」
ロロ「くそ……!!くそぉ……」ガクッ
シャーリー「ロロ?大丈夫?」
ヴィレッタ「シャーリーの勝ちか」
シャーリー「どこへ?」
ルルーシュ「また新しいポエムでも聞かせてくれ」
シャーリー「い、いや!!」
ルルーシュ「あの小説の続きは出来たのか?」
シャーリー「よ、よみたいの!?」
ルルーシュ「当然だ。教室でLとSが盛っているのをクラスメイトに見られたあと、一体どうなるのか。気になって夜も眠れない」
シャーリー「あ、あのあとは……後ろから抱きしめているだけってSが言い訳しながら、実は繋が―――って、女の子に何を言わせるの?!おかしいよ!!」
ルルーシュ「はいはい」
シャーリー「もう……」
ロロ「負けた……あんな魔女に……僕は……」
ヴィレッタ「ロロ……」
ロロ「うぅぅ……」
ヴィレッタ「あの動画、コピーさせてくれないか?」
ロロ「いやです!!」
ざまあああああああああああああwwwwwwwwwwww
ルルーシュ「シャーリー。あまり一人で出歩くな。怪我だってしているし」
シャーリー「ごめん。だって、ルルがロロに何かしちゃうって思って」
ルルーシュ「するわけないだろ」
シャーリー「うん……」
ルルーシュ「足の応急処置はこれでいいな」
咲世子「ルルーシュ様。では、私は……」
ルルーシュ「連絡してくれて助かった」
咲世子「とんでもありません」
シャーリー「咲世子さん。さようなら」
咲世子「はい。では、失礼しますね」
シャーリー「……」
ルルーシュ「今日はどうする?泊まっていくか?」
シャーリー「え?ううん。ルルに悪いし、寮に戻るよ」
ルルーシュ「そうか」
ルルーシュ「送っていく」
シャーリー「ね、ねえ!!ルル!!」
ルルーシュ「ん?」
シャーリー「あの……嘘を吐かないで欲しいんだけど」
ルルーシュ「ああ」
シャーリー「ルルの写った写真をかき集めたり、ポエム書いたり、変な小説書いたり、気づいたらいつもルルのことばかり見ているような女の子ってやっぱり変……?」
ルルーシュ「変だな」
シャーリー「やっぱりぃ……?」
ルルーシュ「冷静に考えたらそんな女は気持ち悪い」
シャーリー「うぐっ……?!」
ルルーシュ「ルームメイトも白い目で見ているんじゃないか?」
シャーリー「生暖かいです」
ルルーシュ「だろうな」
シャーリー「じゃあ……ルルは……私のこと……嫌い……だよね」
シャーリー「は、はい」
ルルーシュ「嘘を吐かないで欲しいんだが」
シャーリー「う、うん?」
ルルーシュ「俺の写った写真をかき集めたり、ポエム書いたり、変な小説書いたり、気づいたらいつも俺のことばかり見ているような女の子を好きになるって変か?」
シャーリー「……変かな」
ルルーシュ「やはり……」
シャーリー「そんな子、絶対ストーカーだよ!!ルル!!目を覚まして!!」
ルルーシュ「目を覚ましたらシャーリーのことを好きでいられなくなる。それはゴメンだ」
シャーリー「なによぉ!!私はそんなこと……してる!!それ、私のことだった!!」
ルルーシュ「恋はパワーだからな。それぐらいの押しがあってもいいとは思うが……」
シャーリー「ルルぅぅ……もう画像も保存用だけにするし、ポエムも書かないし、小説もやめるぅ……だから……」ウルウル
ルルーシュ「そうだな。写真を撮る必要も、小説を書く必要もこれからはないからな」
シャーリー「え……?」
ルルーシュ「シャーリー。ゲームで決まっただけの恋人は終わりにするぞ。―――シャーリー、俺の恋人になってくれないか。ずっと傍にいてくれる恋人にな」
ルルーシュ「やはりダメか?」
シャーリー「……」
ルルーシュ「悪い。虫のいい話だったな。忘れてくれ」
シャーリー「ねえ!!」
ルルーシュ「どうした?」
シャーリー「……私はルルのこと許してるから!!」
ルルーシュ「……」
シャーリー「だから、気にしないで!!」
ルルーシュ「シャーリー……」
シャーリー「生まれ変わってルルがまた自分を見失って、酷いことしても……きっと私はルルを許しちゃうと思う」
ルルーシュ「どうして?」
シャーリー「それが好きってことでしょ。きっと、そうだと思うの。ルルが好きだから……。許しちゃうの……多分……」
ルルーシュ「馬鹿な女だな」
シャーリー「思うところがないわけじゃない。それでも、ルルが好きだから仕方ないでしょ?!」
シャーリー「だから……えっと……画像捨てる!小説も書かない!!ポエムも捨てる!!」
ルルーシュ「よせ」
シャーリー「え?」
ルルーシュ「ポエムは書け。いや、書いて欲しい」
シャーリー「なんで?!もうあんなの忘れたい過去の上位なんだけど?!」
ルルーシュ「あのポエムはいい。本も出そう」
シャーリー「えぇ!?」
ルルーシュ「出版社にも話は通してある。ギアスを使った」
シャーリー「どうして!?」
ルルーシュ「ナナリーにも見せてあげたいんだ。あんなに読んでいる側までも綻んでしまうような文章、中々書けない」
シャーリー「それ苦笑いでしょ!?私、知ってるよ?!」
ルルーシュ「シャーリー。今の気持ちをポエムにしてくれ」
シャーリー「え?えーと……見上げると夜空があった。視線を合わせても星が見えた。彼の瞳の中にそれはある。こっちのほうが綺麗だし、なにより近くていいね―――って、ルル!!」
ルルーシュ「今のもいいな。メモしておくか」カキカキ
ルルーシュ「都合よくロロがシャーリーもポエムを纏めてくれているし、これでスムーズに事が進むな」
シャーリー「すすめないで……ルルぅ……」
ルルーシュ「あとシャーリーの声を録音してポエム集の付録にCDを付けたい。ポエムの音読CDだ」
シャーリー「はぁ?!」
ルルーシュ「これでナナリーにも安心してシャーリーのポエムを届けることができる」
シャーリー「ルル!!ナナちゃんを取り戻そう?!そうすれば本を出版しなくてもいいじゃないかな?!」
ルルーシュ「ナナリーを助けるための手は打っている。だが、まだまだ時間はかかる」
シャーリー「出版とか寄り道してるからじゃないの?!」
ルルーシュ「そんなことはない。俺はシャーリーが大好きだからな」
シャーリー「うん……私も……って、そんな言葉では騙されない!!」
ルルーシュ「シャーリー……俺のことが嫌いなのか……」
シャーリー「ううん!!大好き!!」
ルルーシュ「よかった……シャーリー。録音、頑張ろうな」
シャーリー「うん……え?本当に?」
シャーリー(はぁ……結局、朝帰り……。ソフィ、心配してるかなぁ……)
シャーリー「ただい―――」
ロロ「お帰りなさい。シャーリーさん」
シャーリー「ロロ?!なんで?!」
ソフィ「あ、シャーリー。たすけてよぉ」
シャーリー「どうしたの?!」
ソフィ「この子がね、シャーリーに新作小説を書くようにお願いしろって。じゃないと、シャーリーの恥ずかしいポエムをばら撒くって」
シャーリー「小説……?」
ロロ「貴方を殺せなかったのは、この小説を読んでしまったからなんです」
シャーリー「それは!?」
ロロ「LとSのキャラが生々しくて素晴らしいですね。僕も大ファンになってしまいました。なので殺してしまっては続きが読めない……。そこで僕に迷いが生じた」
シャーリー「そ、それで……?」
ロロ「本来なら殺さない代わりに、あるいは学園を去りたくなければ小説を書けと脅すつもりでした。昨日はそれができませんでしたから」
シャーリー「わ、私の小説……どうして、みんな読むの……。ただのストレス解消なのにぃ……」
シャーリー「やめて!!―――と、思ったけど。別にいいか」
ロロ「な……?!どうして?!僕は本気ですよ?!」
シャーリー「だって、そのポエム集、本にして売るから」
ロロ「正気ですか?!」
シャーリー「ルルにいってよぉ!!私だって今すぐに誰かに殺して欲しいぐらい……。でも、殺されたくない」キュィィン
ロロ「兄さんめ……。分かりました。では、この未完成の小説は新人賞にでも出してみましょうか」
シャーリー「完成してないしダメぇ!!」
ロロ「ネットにばら撒いてもいい!!勿論、名前も顔もつけてね!!」
シャーリー「ひどいよ!!」
ロロ「なら書くんです。まずはこのLとSのいけない日記を完結させて、次はLとRの秘め事ってタイトルのBL小説を書いて下さい!!!」
シャーリー「えぇ……そんなの……」
ロロ「いいんですか?バラ撒きますよ?」
ソフィ「いいじゃん。書いちゃえば」
シャーリー「もう!!書く!!かきますぅ!!」
シャーリー「できた……!!できちゃった……!!」
ルルーシュ「シャーリー。何が出来たんだ?」
シャーリー「うおぉ?!なんでもありません!!」
アーニャ「ルルーシュのシャーリーの子ども?」
ルルーシュ「なに?本当か?」
シャーリー「そんなわけないでしょ?!」
アーニャ「お腹に手を当ててみる。何も聞こえない。何も感じない。だけど、貴方の温もりだけが残っている。―――これって、どういうこと?」
シャーリー「なんで買ってるの!?」
リヴァル「生徒会メンバーはみんな買ってるって」
シャーリー「こっそり出したのに……!!」
ルルーシュ「これは小説か」
シャーリー「あ?!みちゃだめぇ!!」
ルルーシュ「これも出版してみるか?」
シャーリー「ルルー!!これ以上、私の恥部を配り歩かないで!!」
ナナリー「カレンさん、見てください」ウィィィン
カレン「どうしたの?嬉しそうに」
ナナリー「シャーリーさんのポエム集です」
カレン「どういうこと?」
ナナリー「私は付属のCDでシャーリーさんの声と共に、美しい詩を聞きました」
カレン「ふーん……」ペラッ
ナナリー「水の音が聞こえる。それは命の息吹。それを受け止め、私はまた未来を望む。ああ、このときだけが私の全て……。これが一番好きですね」
カレン「何を思って書いてるんだろ……」
ナナリー「もうすぐ小説も出るみたいですよ。私、楽しみです」
カレン「できたら私にも貸してよ」
ナナリー「はいっ」
カレン(シャーリー……人生を楽しんでるわね……ん?このポエムは……CD未収録集?)
『何度生まれ変わっても、きっとまたルルを好きになる……これって、運命なんだよね』
カレン「……シャーリー……本当に人生、楽しんでるなぁ……!!」
シャーリー「うわぁぁぁ!!!私の知らないポエムまでのってるぅ!!!」
ルルーシュ「俺に向けたポエムだろ?」
シャーリー「違うよ!!あれは一世一代の告白だったのぉ!!」
ルルーシュ「そうだったのか?」
シャーリー「分かってて載せたんでしょ?もうー!!」
ルルーシュ「悪い。あまりにも嬉しくて」
シャーリー「……ホントに?」
ルルーシュ「もう一回、言ってみてくれないか?」
シャーリー「……な、何度生まれ変わっても、きっとまたルルを好きになる……」
ルルーシュ「俺もだ、シャーリー」
シャーリー「そんなことで、この出版は許さない!!」
ルルーシュ「シャーリー……好きだ……」
シャーリー「私も、ルルのこと大好き……。でも、恥ずかしいよぉ!!!もっと普通に告白したらよかったぁ!!!」ジタバタ
ルルーシュ「シャーリーは見ていて飽きないな。これなら一生一緒でも大丈夫だろう」
おしまい
何か平和だなと思ったら、ウザクがいなかった
Entry ⇒ 2012.08.28 | Category ⇒ コードギアスSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
一「純くんのことを考えると胸がドキドキするんだ……」
一「…暑いなあ…8月下旬とはいっても、まだまだ夏の暑さは健在だねえ…」
一「…うぅ」
一「透華と衣は野球観戦に行ってるし、ともきーは部屋に引きこもってネトゲだし…」
一「暇だなあ…」
一「ん…あれは…」
純「~♪」
一「…純くん?」
一「純くんなにしてるの?」ヒョコ
純「おわっ!」ドテッ
一「あ、ごめん…」
純「いてて…く、国広くん…?」
一「うん、こんにちは。立てる?」スッ
純「ああ…」ヨッコイショ
一「えと、暇だったからここらへんをブラブラ散歩してたんだ。そしたら、純くんg
純「っと、そうだった!」タタタッ
一「…」
純「あーあ…逃げられちまったかぁ…」
一「なにしてたの…って、もしかして釣り?」
純「ああ、そうだよ。バス釣り」
純「違う違う、魚だよ。ブラックバス」
一「あ、聞いたことある」
純「まあ名前だけなら知ってるやつも多いだろうな」
一「なんとなく、あまりいいイメージはないけどね」
純「…というと?」
一「たしか生態系に悪影響を及ぼしてるって、だいぶ前にテレビで…」
一「外来種なんだよね?」
純「そうそう、しかも異様に生命力が高い」
一「へえ…たしかに獰猛そう」
純「まあ獰猛っちゃ獰猛だな。だからこそ釣りがいがあるんだけど」
一「純くんが釣り好きだったなんて、なんか意外」
一「たしかにインドアタイプっぽくはないよね」
純「まあ麻雀は打つし、好きだけどな?」
一「むしろそっちのが意外性あるのかもね」クスクス
純「なんだよそれ…そうだ、国広くんもやってみる?」
一「…? やるってなにを…?」
一「ぼ、ボクが釣り…?」
純「ああ。意外にやってみたらハマるかもよ?」
一「うーん…じ、じゃあやってみようかな」
純「そうこなくっちゃな」
一「でも、ボクやり方全然知らないよ?」
純「心配すんなよ。俺が手とり足とり教えてやるから」
純「おうよ」
純「まず、釣りは竿を使って行う。タモなんかでも場所によっちゃ魚は取れるけど、それじゃ釣りの醍醐味は味わえない」
一「釣りの醍醐味…?」
純「ああ。国広くんは釣りってなにを楽しむものだと思う?」
一「んーと…釣ったお魚を食べること、かな?」
一「むむ…じゃあ、他にまだ楽しむ要素があるってこと?」
純「モチ」ニヤッ
純「たしかに、釣れた魚を食べることに価値を見出す人も少なくないし、それを間違ってるとは思わない」
純「でも、オレに言わせれば釣りの醍醐味ってのはそこにあるんじゃない」
一「…」ゴクリ
一「うん」
純「…ッ!」シュッ
一「おお」
ポチャン
純「ここのバスはスれてないから、他のとこと比べて釣りやすいんだ」
一「す、スれ…?」
純「簡単にいえば、魚がニンゲン慣れしてるかどうかってこと…っ!」ググッ
純「魚がかかったったことさ。でも焦っちゃダメだ…っ」ググッ
一「…う、うん」
純「魚を泳がせて…動きが止まったと思ったら竿を立てて一気に巻く…!」ジジジッ
一「わっ…」
一(す、すごい…)
一「に、逃げちゃわないの…?」
純「さっき竿をクイッって立てたろ? あれでルアーの針を食い込ませたから、もう逃げられないよ」
一「うわ…なんか痛そう」
純「痛いのかな…まあ、弱肉強食の世界なんてそんなもんさ」
一「ま、まあボクだってお肉やお魚食べてるわけだしね…」
一「わわっ…」
純「今度は国広くんが引いてみろ」スッ
一「え、ええっ!?」
純「大丈夫だよ。俺が後ろで補助しててやるから」
一「そ、そんなこと言ったって…」アセアセ
一「…っ」ドキッ
一「じ、純くん…!?」
純「ほらちゃんと持てって…魚が逃げるぞ」
一「う、うん…」
一(じ、純くんの手…おっきい…)ドキドキ
一「うぅ、なんかうまく回せないよ…」
純「…国広くんって、もしかして不器用?」
一「う、うるさいよ!」
一(さ、さっきから純くんの胸が背中にあたって集中できないんだ…っ!)
一「さ、魚だ…!」
純「そのままの体勢でいろよ」
一「お、重いぃぃ…」
純「…おし。なかなかのサイズだな」
一「つ、釣れたの…?」
純「ああ、もう竿から手離してもいいよ」
純「ま、これが釣りの醍醐味ってやつだ」ニコッ
一「な、何がなんだかよくわからなかったけど…」
純「はは、まあやってるうちにわかってくるさ」
一「うん…でも、釣りは僕には合わないかな。ボクって力ないし…」
一「そ、それを先に言ってよ…」
純「はは、ごめんごめん」
純「まあ国広くんさえよければ、今度また別の場所にでも連れて行ってやるよ」
一「えっ…」
一「…う、うん」ドキドキ
純「んじゃ時間もいい頃合いだし、ちゃちゃっと片づけして帰りますか」ボチャン
一「あ、あれ…逃がしちゃうの?」
純「バスは食用じゃないからな。完全に釣り用の魚なんだ」
純「そんなに食べたかった?」
一「別にそうじゃないけど、ますます釣りってものがよくわからなくなったよ…」
純「はは。まあそんなにお腹すいてるなら、帰りにファミレスにでも寄っていくか」
一「だ、だから違うってば!」
純くんのことは前々からおもしろい人だなぁと思っていたけど、今日はことさらにおもしろい話をいくつも聞かせてくれた。
あまり興味のなかった内容でも、純くんが話し出すとなんだか面白いことのように思えて…純くんの話術がすごいのか、それとも…。
自分の話をするときも、ところどころつっかえながらですごく恥ずかしかった。純くんはちゃんと笑わずに聞いてくれていたけど…。
他にもけっこう恥ずかしいところを見られてしまったかもしれない。それでも純くんは気さくに笑っていてくれて、それがボクにはとても嬉しかったんだ―――
純「まぁ明日もどうせ休みだし、いいんじゃねーの?」
一「そうだね…あ、ボクはこっちだから」
純「ああ。それじゃ、また今度な」
一「う、うん…」
一「お、おやすみ…純くん」
純「ああ、おやすみ」ニコッ
一「…」ドキドキ
一「すぅ…はぁ…」
一「…っ」ダダッ
一「はぁ…はぁ…」
透華「あら、一。おかえりなさいまし」
一「あ、透華…ただいま」
透華「もうとっくにお夕食はできてましてよ。早く食べてしまいなさい」
一(あ、そっか…連絡入れておくの、すっかり忘れてた…)
透華「ちょ、一!?」
バタンッ
透華「もう! 一体何なんですの!?」
一「今日はどっと疲れたな…」
一「…」
一「…なんでこんなに胸が苦しいんだろう」ギュゥ
一「…」
一「純くん…」
一「…んぁ」
一「あ、れ…ボク知らないうちに寝ちゃってたのか…」
一「まぁいっか…」ボフン
一「今日もどうせ休みだし、少しくらいぐーたらしてても罰は当たらな
「はじめーっ! いますのー!?」
一「っ!?」ビクンッ
一「と、透華…? なに?」
透華「…なんでドアを半開きにしてますの?」
一「ボク昨日お風呂入るの忘れちゃって…」
透華「別にそのくらいいいではありませんの。それより」
透華「純があなたのことを呼んでいましてよ」
一「えっ」
透華「え、ええ…」
一「な、なんて言ってた!?」
透華「? なんかプールにでも行かないかって言ってましたけど…」
一(ま、まずい…!)
一「と、透華! 純くんにすぐ行くからちょっと待っててって伝えて!」
一「シャワー浴びてくる!」ダダッ
透華「…?」
透華「どちらにせよプールに入るんだから変わらないでしょうに…どうしたのかしら一」
一「早くしないと帰っちゃうかも…! 急げボク!」ダダッ
ドンッ
一「あ、痛っ」
「お、ごめんごめん」
一「い、いえこっちこそ…って」
一「…」
純「ん、どうした? てか、さっき透華と会わなかった?」
一「…」
純「おっかしいなぁ…国広くんにも伝えとけっていったはずなのに」
一「み…」
純「…?」
純「お、おい国広くん!」
純「…ったく、どうしたっていうんだ?」
一「はぁ…はぁ…」
一「うぅ…もうお嫁に行けないよ…」グスン
一「とりあえずシャワーは浴びなくちゃ…」トコトコ
シャワーシーン略
一「ふぅ…さっぱりしたよ…」フキフキ
コンコン
一「はーい、入ってまーす」
一「じ、純くん!?」
純「ああ、そうだけど…」
一「な、なんでまだいるの!?」
純「なんでって、みんな国広くんのこと待ってるんだよ」
一「み、みんな…?」
透華「遅すぎでしてよ、はじめ!」
智紀「③サーバーのクエが…」
一「…」
純「ほら、国広くんもきたことだし、さっさと行こうぜ」
衣「しゅっぱーつ!」
純「わかったわかった、向こう着いてからな」
智紀「…幻の薙刀…幻の薙刀…」ブツブツ
透華「智紀はなにを言ってますの!? そんな暗い気持ちではプールも逃げてしまいましてよ!」
純「いやプールは逃げねえだろうけどさ…」
一「…」
一「!」
一「な、なんでもないよ…」プイッ
純「…?」
一「…」
一(ああっ…ボクは何をやってるんだよ…)
一(関係ない人にまでやつあたりなんて、最低だよ…)
一(い、いやそのことじゃなくって…!)
一(…)
一(透華たちもくるなんて予想できることじゃないか…そもそも純くんがボクだけ誘うなんて道理がないし…)
一(せっかく純くんが誘ってくれたんだ…精一杯楽しまなくちゃ!)
一「じ、純くん…」
純「ん、どうした?」
一「そ、その…さっきは、ごめん」
純「…?」
純「?? オレ、国広くんにひどいことなんて言われたっけ?」
一「えっと…」
純「まあ、よくわからないけど気にすんなよ。俺だって気にしてないから」ニコッ
一「あ…うん…」
一「…」ドキドキ
透華「衣、転びますわよ!」
智紀「…巨大」
純「県内最大規模らしいぞ。透華と衣は迷子にならないように注意な」
透華「なーんーでー、私も含まれてますの!?」
純「透華はしっかりしてるようでどっか抜けてるからな」
一「はは、言えてるね」
衣「透華、見ろ! あのプールおもしろそうだぞ!」
透華「えっと、どれどれ…な、なんなんですのアレは!?」
純「ありゃ流れるプールだな。その名の通り、流れのあるプール」
透華「ひ、人が流れていってますわ…!」
衣「早く行こう、透華!」ダダッ
透華「ええ、一番ノリですわ!」ダダッ
純「はは、だな」
智紀「…」
一「ともきーは泳がないの?」
智紀「…寝不足だから」
一「もう…夜中までネトゲばっかしてるからだよ」
純「いや、こいつ泳げないんだよ」
智紀「純、黙って」
純「あいつらはそのうちくんだろ。そしたら智紀も誘ってボール遊びでもすればいいよ」
一「そうだね」
純「それより、スライダー行こうぜスライダー!」
一「スライダーって、まさかあの…」
純「そそ、ジュバッって滑り降りるやつ」
純「高所恐怖症?」
一「な、なんでそれを!?」
純「いやなんとなく」
一「へ、ヘンに鋭いよね…純くんって」
純「まあ心配すんなよ。一緒に滑りゃ怖くないって」
一「えっ」
純「ほらああいう感じで」
キャー! ウワー!
一「あ、あんなのする気!?」
純「うん、ダメか?」
一「だ、ダメっていうか…」
一(あれって恋人同士がするようなものじゃないのかな…!?)
一「ちょ、ちょっと!」
純「大丈夫大丈夫。目、閉じてれば怖くないって」
一「そ、そっちの問題じゃなくってさ!」
純「ほれ、俺が前に座ってやるから国広くんは後ろで同じように構えて」
一「しかもボクがそっち側!?」
一「う、うん…」
純「れっつごぅ!」ジュバッ
一「ま、待って!」ジュバッ
純「うぉおおおおおおおお!!」
一「ひ、ひゃぁあああああああ!!」
バッシャーンッ!
純「うひゃー! 爽快だな!」
一「こ、こっちは怖くてたまらなかったよ…」
純「もっかい行くか!」
一「イヤだよ!」
衣「おーい」
一「あ、衣」
純「お前らもきたかー」
純「流れるプールで目を回す奴なんて初めて見たぞ…」
衣「全く情けない奴だ」
衣「それよりも、衣もさっきのがやりたいぞ!」
一「さっきのって…まさか見てた!?」
衣「ああ、実に楽しそうだった!」パアァ
一「うぅ…恥ずかしい…」
衣「うん!」
一「あ、ちょっと…!」
バシャバシャッ!
一「…」
透華「はっ…ここはどこなんですの!?」
一「…プールだよ、透華」
バッシャーンッ!
衣「もっかい行くぞ! ジュン!」
純「よし、任せろー!」
ハハハッ!
一「…」ブクブク
透華「はじめ? さっきからなにをしてますの?」
一「…」ブクブク
一「…」ブクブク
透華「そういえば知ってます? 智紀はカナヅチなんですの! まったくとんだデクノボウですわね!」
一「…」ブクブク
透華「はじめ…」
一「…」ブクブク
透華「…」
一「純くん…」
純「ったく、衣のやつ…5往復も付き合わせやがって…」
一「大丈夫…?」
純「まあな…それより衣と、それから透華は?」
一「…」
一「あっちの波のプールってとこに行ったよ」
衣「ぷはっ…なんだー透華ー?」
透華「あっちにある波のプールに行きませんことー!?」
衣「波のプールだってー!? 行くぞー!」バシャバシャッ!
一「…」
透華「ほら、はじめ! そんなことしてたら、時間がもったいありませんでしてよ!」
一「透華…」
一「!」
一「…」
一(…ボクは…ボクは…)
純「んじゃちょっくら行ってくるわ」バシャ
ギュ
純「えっ」
純「ん…?」
一「ボクは…行って欲しく、ないな…」
純「? 国広くん…?」
ギュ
一「…っ」
純「ど、どうしたんだよ?」
純「…」
一「っく…えっく…」
純「…わかったよ。一緒に遊ぼう」
一「ぇ…?」
純「なに泣いてるんだよ。国広くんらしくないぞ?」
一「な、泣いてなんか…!」ゴシゴシ
一「…」
純「またスライダーでも行くか?」
一「…それはイヤ」
純「じゃあどこ行くんだよ?」
一「…ど、ドクターフィッシュプール」
純「ああ、あそこか。あの小魚が泳いでる」
一「…」コクン
一「…でも人気らしいよ? 肌の角質も取れるって…」
純「へえ…ま、とりあえず行ってみるか」
一「…うん」
一「ほ、ほんとだね…」
純「よいしょっと…」
純「うおっ…な、なんかくすぐったい…!」
一「い、いきなり群がってきたよ…!」
純「くすぐ…ってか痛い、これ痛いぞ…!」
純「なんでこいつらオレの足にばっか集まるんだ!」
一「きっとおいしい角質がいっぱいなんだよ」クスクス
純「あ、あまりいい気分ではねえな…」
一「かわいいねえ」
純「俺はバスの方が好きだなぁ…いてっ」
一「そうだね」
一「あ、あの…純くん」
純「ん?」
一「さ、さっきはその…ありがと」
純「…別に気にしてないよ。国広くんが楽しめたならそれでいいさ」
一「…」
純「なんだい?」
一「ぼ、ボクなんかと一緒で…その…」
一「ち、ちゃんと楽しめたのかな…って」モジモジ
純「…」
ポンッ
一「ふぇ…?」
一「じ、純くんってば…なにすんの…っ」
純「国広くん見てるとおもしろいしさ。なんか小動物みたいで」
一「そ、それは褒めてるの!? けなしてるの!?」
純「はは、どっちも」
一「なっ…むう!」
純「ははっ、やっぱおもしろいや、国広くんは」
衣「なぁ透華…衣たちはいつまでこうしてればいいのだ?」
透華「もうちょっとですわ、衣」
衣「もうちょっとっていつなんだ…んぐ」
透華「…」
透華(ふふ…よかったですわね、はじめ)
透華「…」
透華「…っく…っ」
透華「な、なんですの智紀…?」
智紀「…別に」
透華「ま、まったく! 人の顔をジロジロ見るなんて失礼ですわ!」
衣「とーか、泣いてるのか…?」
透華「こ、これは水滴ですのよ!!」ゴシゴシ
透華「!」
智紀「…おかえり」
一「ただいま。ごめんね、待たせちゃって」
衣「いいぞ! そんなことよりジュン、またスライダーへ行くぞ!」
純「あほ、もう帰るんだよ」
衣「な、なんだと!?」
透華「また連れてきてあげますから、今日は我慢しなさいな」
衣「むむぅ…」
衣「ああ、衣も楽しかった!」
智紀「…なんだかんだでいい気分転換になった」
透華「智紀はこれを機会にもっと外で遊ぶことを心がけるべきですわ!」
智紀「…家に帰ったら、サブキャラのレベル上げしつつ緊急クエ待機」
透華「人の話を聞きなさいまし!」
一「ふふっ…」
純「おう、また今度どっか行こうぜ」
衣「衣はプールに行きたい!」
純「またかよ…」
衣「智紀も無理やり連れて行くぞ!」
智紀「…やめて」
一「ははっ」
透華「…」
智紀「…乙」
衣「じゃーなー!」ブンブンッ
一「じゃあねー」
衣「いやぁプールというものは楽しいものだな! 衣もいつか自力で泳げるようになりたい!」
一「ふふ、練習するなら誰かが見てるところでやってよ?」
衣「大丈夫! 透華がいつもついててくれるし!」
透華「…」
一「透華…?」
透華「…はじめ、いいんですの?」
一「えっ…?」
透華「もうすぐ夏も終わりなんですのよ…それなのに、このままでいいんですの?」
一「ちょっと透華…? なにをいって…」
一・衣「!」ビクッ
透華「…ですわ」
一「な、なに…?」
透華「ダッシュですわ!」
一「は、はぁ!?」
透華「早く行きやがれですわ!」ブンッ
一「ちょ、なにすんのさ透華! 危ないって!」
透華「どこにでも行ってしまったらいいんですわぁあああ!!」
一「わわっ…!」タタッ
衣「ま、待ってくれはじめ…衣も連れて…」
透華「衣は逃がしませんわ」ガシッ
衣「ひっ!」
キャー
一「な、なんだったんだろ…あれ」
一「さて、どうしたもんだろ…」トコトコ
「あれ、国広くんじゃないか」
一「えっ…純くん!?」
純「なんでここに? 帰ったんじゃ…」
一「いや純くんの方こそ…」
純「いやなんか智紀に追いかけまわされてさ…」
一「そ、それはちょっと怖いね…」
純「あいつらなに企んでんだろうな」
一「さぁ…」
一(ん…企む…?)
一「…」
一「…!」
『もうすぐ夏も終わりなんですのよ…それなのに、このままでいいんですの?』
一「まさか透華…応援してくれてる?」
一「あ、いや別に…」
一「…」ドキドキ
一(き、気持ちはありがたいけどそんなの無理だって…! 純くんのことは昨日意識しだしたばかりなんだから…!)
『時間なんて関係ありませんわ! 当たって砕けろ、ですわ!』
一(聞いてもいないのに、こんな言葉が出てくるなんて…ボクもいよいよおかしくなったかな…)
一(…でも、あながち的外れでもない…かも)
一「…」ゴクリ
一・純「あ、あのさ…」
一「え、っと…」
一(は、ハモっちゃった…)
純「さ、先話していいよ…」
一「え、ええっ…純くんが先でいいよ」
一「…」
純「んー…まぁなんだ…」ポリポリ
一「…?」
純「あ、明日さ…どっか行かないか? ふ、二人で…」
一「えっ…」
純「い、嫌ならいいんだ! そ、それとも…」
純「お、オレと二人が嫌…とか?」
一「!」
純「!」
一「あ、ごめん…いきなり大声出しちゃって…」
純「い、いや…」
一「ぼ、ボクも…」
純「…?」
一「ぼ、ボクも…純くんと、どこか行きたい…な」カアァ
純「っ!」ドキッ
一「う、うん…」
純「…」
一「…」
純「ど、どこ行きたい?」
一「…純くんが行くとこなら、どこだって」
純「んな適当な…」
一「だって、ボクよく知らないし…」
純「ん…?」
一「純くんといると、いろんなことが楽しく思えてきて…」
一「次はどんなおもしろいことを教えてくれるんだろうってワクワクしてきて…」
一「それで…」
純「…」
一「一緒にいると…す、すごく幸せなんだ…」カアァ
純「国広くん…」
一「どこでもいいから…ボクに、純くんの世界を少し分けてほしい」
純「…」
純「ああ、いいよ」
一「…ぁ」
一「…う、嬉しいな」
一「…うん」
純「オレも、国広くんといると楽しいよ…」
一「…」
純「なにか教えると、子供みたいに興味津々に聞いてくれるし」
純「なにより、そんな君が見てて愛おしいっつーか…」
一「…っ」
純「な、なに言ってんだろうなオレ! まったく恥ずかしいぜ!」カアァ
一「ぼ、ボクは嬉しい…な」
一「…うん」
純「く、国広くん!」
一「な、なに?」
純「残りの夏休み…いや、その先も…!」
純「二人でいろんなこと、たくさんしていこうな!」
一「…」
一「…っ」グスン
一「う、うん! 期待してるよ、純くん!」ニコッ
遊びそのものも楽しいけど、なによりそれを教える純くんの笑顔がボクには最高の宝物だった。
夏は、もうすぐ終わる。でもボクたち二人の夏はこの先も続いていく―――
カンっと
おつおつ
ところで純くんの水着ナチュラルに海パンが浮かんでたんだけど
実際ビキニなのかねぃ
アニメかなんかじゃビキニじゃなかったっけ? 海パンはさすがにアカン
規制解除を記念して以前から書きたいと思ってたカップリングを書いてみた。
咲日和でのこの二人の絡みがほほえましすぎる!
王道ではないがゆえの良さもあると思うのです。お疲れさまでした。
咲日和の二人のノリは可愛い
Entry ⇒ 2012.08.28 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
恒一「怜子さんが死んでもう一年半か……」
4月25日(土)
~病室~
早苗「そういえばホラー少年は親戚のお家がこっちなんだっけ?」
恒一「はい。母の実家がこちらで、転校先も母の通っていた中学なんです」
「今回は病気の療養も兼ねて越してきたんですけどね、なのに早速やらかしちゃいました」ハハ…
早苗「こらこら、そんな自虐的じゃ治るものも治らないぞー。こっちにお友達とかもいたりするの?」
恒一「それが残念ながら1年半前に家の都合で訪れたぐらいなものだったので……あ」
早苗「ん? どうかした?」
恒一「いえ、その時にちょっと仲良くなった子がいたのを思い出して」
早苗「あ、もしかして……女の子でしょ?」フフ
恒一「決め付けないでくださいよ、そうですけど。というか何で笑うんですか」
早苗「いやいや、別に『見かけによらずプレイボーイだなー』なんて思ってないよ?」クスクス
恒一「もう、そんなんじゃないですって。ただ、お互いの境遇が似てたからちょっと意気投合しただけですよ」
「……それに結局名前も聞かないままお別れしちゃいましたから、どう転んでも水野さん好みの浮ついた話にはならないですよ」
早苗「そっかー、ざんねん」
風見「あの、こちらが榊原恒一さんの病室だと伺ったのですが……」
早苗「ええそうですよー。お見舞いかな?」
桜木「はい、彼が転校してくる夜見山北中学校の3年3組の者ですぅ」
早苗「そかそか、いらっしゃい。じゃあパイプ椅子がそっちにあるから適当に使ってね、ごゆっくりー」トテトテ
――バタン
風見「始めまして榊原くん、今日はクラスを代表してお見舞いにきました」
恒一「これはどうも……」
風見「僕はクラス委員長の風見といいます。こっちが女子の委員長で桜木さん、それでこっちが――」
赤沢「対策係の赤沢泉美、なん、だけど……」ポカーン
恒一「あれ、キミはもしかして……?」ジー
桜木「2人とも驚いた顔で見つめ合ってどうしたんですかぁ?」キョトン
赤沢「もしかしてあの時の男の子……?」
恒一「河原で僕に空き缶ぶつけた女の子……?」
赤沢「……」
恒一「しかも同じクラスだなんてびっくりしちゃった」ハハ
赤沢「……ええ、私も驚いているわ」
桜木「え? え? お2人は知り合いなんですか?」
恒一「うん。たまたま1年半前に家の都合で夜見北に来てたときに、ちょっとね」
赤沢「まさかあの時の彼が転校してくるなんて今知ったけどね……どうして夜見北なんかに転校してきたのよ」キッ
恒一「え……もしかして僕何かしちゃったかな?」
赤沢「いえ再会できたのは素直にうれ……こほん、なんでもないわ。ただちょっとうちの中学には特別な事情があるのよ」
恒一「特別な事情?」
風見「赤沢さん、この際だから今日のうちにすべて話しておくのも手じゃないかな」
赤沢「……そうね、1年半前に会ってるんだし彼が死者ということもなさそうか」
恒一「ししゃ?」
赤沢「心して聞いてね。これから話すことは嘘でも冗談なんかでもない本当のことだから」
「私たちの、そしてあなたがこれから通うことになるクラスには、ある“現象”とそれに伴う“災厄”が存在しているの――」
赤沢「ええ。26年前の無邪気な善意が生んでしまった、ある種の呪いね」
風見「死者が紛れ込むと、始業式の日から毎月1人以上クラス関係者が命を落としてしまうんだ」
「始まりの年の一家焼死事件をなぞってか、市内にいる生徒と教師本人とその2親等以内が死の対象になる」
赤沢「死者が紛れ込むことは“現象”、それによって引き起こされる理不尽な死は“災厄”とそれぞれ呼ばれているわ」
「そして“現象”が起きている年は〈ある年〉、何も問題のない年は〈ない年〉というの。死者はかつての“災厄”の犠牲者がなるそうよ」
桜木「それで〈ある年〉だと分かった場合に“災厄”の発生を未然に防ぐためのおまじないが〈いないもの〉対策なんですぅ」
恒一「……“現象”に“災厄”、ね。まるでホラー小説の話を聞いてるみたいだよ」
赤沢「こんな話を信じてるなんて、ちょっと馬鹿げてると思うでしょう?」
恒一「いや、そんなことは……」
赤沢「ううん仕方のないことだし気にしないで。今日来てる他の2人も正直なところ半信半疑だと思うしね」チラッ
「でも私は違う、確信してる……1年半前に会ったとき、大切な人を失ったって言ったの覚えてる?」
恒一「うん、もちろん。それで共感を覚えたんだから」
赤沢「そう……その大切な人っていうのは私の家族でね、彼は当時3年3組の生徒だった」
「私はすでに“災厄”で家族を奪われる理不尽を経験しているの。だから対策係に自ら立候補したのよ」
桜木「全然知りませんでしたぁ……」ショボン
赤沢「良いのよ、私が話さなかっただけだから」
恒一「ねえ、1つ確かめてもいいかな。つまり1年半前……96年度は〈ある年〉だったということなんだね?」
赤沢「ええそうよ」
恒一「そっか……あの時赤沢さんにシンパシーを感じたのは、そういうことだったのかもしれないな」
赤沢「どういうこと?」
恒一「大切な人を亡くしたと言った赤沢さんに僕も同じだって言ったの、覚えてる?」
赤沢「ええ、もちろん」
恒一「僕の叔母さんはね、夜見北の教師をしていたんだ。それで死んだ96年度は……3年3組の担任をしていたって聞いた」
桜木「それって……!」
恒一「ああ、多分僕の叔母さんも“災厄”の犠牲者だったんだと思う」
「赤沢さんの話、今度こそ全面的に信じるてみるよ。続きを聞かせてくれないかな」
「“災厄”を未然に防ぐのが〈いないもの〉対策だって話、さっきしたわよね?」
恒一「うん、けどそれがどんな内容なのかはまだ聞いてないよ」
赤沢「そもそも“現象”というのは死者が1人増えることによって始まるでしょう?」
風見「ちなみに〈ある年〉かどうか分かるのは始業式の日で、用意されていた机より何故か生徒が1人多いことから発覚するんだ」
赤沢「1人増えてしまったことで“災厄”が起こる、ならその分1人減らして生徒数の辻褄を合わせれば……そういう発想のおまじないなの」
恒一「なるほど、原理は分かったよ。けど具体的に1人減らすっていうのはどうやって?」
桜木「そこで〈いないもの〉を作るんですぅ」
赤沢「“現象”のきっかけとなった26年前は、夜見山岬という死んだ生徒を〈いるもの〉として扱ったことから始まった」
「その逆だから、生きている生徒を死んだもの、そこに存在しない〈いないもの〉として扱えば良いっていう理屈よ」
恒一「つまり簡単に言うと、クラス全体で1人の生徒を無視するってこと?」
風見「イジメみたいで気はのらないけどね……これは担任の先生なんかも協力してくれてることだよ」
赤沢「ちなみに〈いないもの〉は拒否することも途中でやめることも一応は許されているわ」
「でもね、途中で放棄した年は、その月から“災厄”が起こり次々に犠牲者が出てしまっているの」
「それが私たちの家族が死んだ96年度の出来事よ……だから私は今年こそは〈いないもの〉対策をやり遂げるつもり、何としてでもね」
恒一「ちょ、ちょっと待って。〈いないもの〉の名前出して良かったの?」
桜木「あ、はい。見崎さんは5月から〈いないもの〉なんでまだ大丈夫なんですよぉ」
恒一「んー……どういうことかさっぱりなんだけど、〈いないもの〉を作るってことは今年は〈ある年〉なんだよね?」
赤沢「ええ。“災厄”による犠牲者が出るまではグレーだけど、その可能性は少なくないと思ってる」
恒一「でも〈ある年〉かどうかの判別って始業式の時点で行われるんだよね、〈いないもの〉も4月から作られるものじゃないの?」
赤沢「それは……今年は始業式の時点では机と生徒の数はぴったり一致していて〈ない年〉だと思われていたの」
「けれどあなたの転校によって生徒が1人増え、机が1つ足りなくなってしまった」
「今年度は途中から〈ある年〉に変わった可能性があるのよ、だから〈いないもの〉対策もあなたの転校に合わせてスタートするの」
恒一「そっか、僕の転校のせいで……」
赤沢「あなたが気に病む必要はないわ。転校なんて家の事情だし、何よりこれはわざわざ3組に入れた学校側の落ち度なんだから」
恒一「……うん、ありがとう。赤沢さんは優しいな」
赤沢「べ、べつに、事実を言っただけよ」モジモジ
「まあこんなクラスで大変だとは思うけどこれから1年間よろしくね、榊ば……ううん、恒一くん」
「退院したら再会の記念も兼ねて美味しい珈琲をご馳走するわ。イノヤのハワイコナエクストラファンシーは本物なんだから」ニコ
~夜、院内エレベーター~
――ガコン…ウィイイイイン……
見崎「……」
恒一「あ、すみません人がいるの気がつかなくっ……て、あれ?」ジー
見崎「……なに」
恒一「キミ、三神怜子って人の葬式に来てなかった?」
見崎「……部活の顧問だったから行った、けど」
恒一「やっぱりそうか、見たことあると思ったんだ」ウンウン
「確か事件の通報をしてくれた子ってキミだよね。お礼が遅れてごめん、ありがとう」
「僕は怜子さんの甥で榊原恒一っていうんだ、キミの名前は?」
見崎「さかき、ばら?」ピクッ
恒一「あー……やっぱり印象良くないよねこの苗字は」ハハ…
見崎「そう、あなたが榊原恒一……あなたさえ……」
恒一「え?」
見崎「あなたさえ来なければ妹はっ! 未咲は……っ!!」キッ
恒一「えっと……」
見崎「……ごめんなさい、今のことは忘れて」
恒一「いや、別に構わないけど……だいじょうぶ?」
見崎「ええ……それじゃあ」トテトテ
恒一「……」
見崎「ああ、それと」ピタリ
恒一「え、なに?」
見崎「……見崎、鳴」
恒一「え?」
見崎「名前、聞かれたから……じゃあね」フラリ
恒一「……あ、そっちは――」
(霊安室の方へ向かって行っちゃった…なんだったんだろう、あの子は)
(というか見崎鳴って、もしかして彼女が〈いないもの〉に指名された女生徒?)
(対策係に〈いないもの〉か……1年半ぶりに再会した子はみんな変な肩書きがついちゃってるな)
――カチコチカチコチカチコチ…
恒一「はぁ……寝付けないや」ゴロン
「見崎鳴、か……」
「彼女が赤沢さんの言ってた見崎鳴その人なら、僕の名前に反応したのも頷ける」
「3年3組の生徒ならすでに転校生の名前を知っていてもおかしくないからね」
「僕の転校さえなければ〈いないもの〉なんていうモノにされずに済んだ。その怒りで詰め寄った……?」
「……いや、違う」
――あなたさえ来なければ妹はっ! 未咲は……っ!!
恒一「ミサキというのが彼女自身を指している可能性もなくはないけど、恐らくその前に口走った『妹は』って口走っていた」
「つまり彼女は自分のためじゃなく、妹を想って僕へ怒りを向けていたんじゃないかな」
「そしてその後に彼女が向かった先は……」
「……」
「ちょっと確かめる必要がありそう、かな」
~病室~
恒一「ねえ水野さん、ちょっと変な質問なんですけど」
水野「ん、なにかな? もしかしてえっちな質問?」フフ
恒一「昨日亡くなった患者さんって水野さん知っていますか? たぶん女の子だと思うんですけど」
水野「む、スルーは傷ついちゃうぞ。それにしてもほんと変わった質問だね、何かあったの?」
恒一「あったのかどうか、それを知りたいなと思いまして」
水野「ふむ、何か事情があるみたいねー。私の担当してる患者さんにはいなかったよ」
恒一「そうですか……」
水野「あ、でも若い患者さんが亡くなったって話は聞いたかな、確か女の子だったと思う」
恒一「えっと、その人の名前とかって調べてもらえたりは……」
水野「んー……それとなく聞くくらいなら大丈夫。けど他の患者さんや先生にはナイショよ?」
恒一「もちろんですよ」
水野「た、だ、し」ビシッ
恒一「な、なんでしょう?」
水野「こんなこと聞くなんて何かワケアリなんでしょ? だからそのワケを教えてくれたらってことで」フフ
恒一「笑い事じゃないですよ、昨日亡くなってた子がクラスの関係者だったら“災厄”が始まってるわけですから」
水野「う……そうだよね、恒一くんのご親戚も亡くなってるんだし不謹慎だった、ごめんね」シュン
恒一「いえ、そこは気にしてないですし構いませんよ」
水野「ん、ありがと」
恒一「こういった話は水野さんの得意分野だと思うんですけど、何か解決策とかないですか?」
水野「ホラー小説は好きだけどただの趣味だしねー、うーむ……ちょっと気になる点はあるかな」
恒一「え、なんです?」
水野「これは今年がその〈ある年〉ってやつで“災厄”が始まってると仮定しての話なんだけどね」
恒一「はい、昨日の患者さんが最初の犠牲者だったという場合ですね」
水野「その場合、もう死者が3年3組に紛れてるってことになるでしょ?」
恒一「“災厄”は死者がクラスに1人増えることから始まるから……はい、必然的にそうなりますね」
水野「けどまだキミは転校出来てない」ビシッ
恒一「はい、気胸で転校予定日が延びちゃいましたから」
水野「つまりクラスの人数はまだ増えてないわけよ、なのに“災厄”は始まってる……これってちょっと変じゃない?」
恒一「そっか……だったら僕が転校してくるまで人数は増えない、つまり4月中は絶対に安全なはず?」
水野「そゆこと。ただしこれは実際に転校してきた日を基準に考えた場合だけどね」
恒一「実際に転校してきた日?」
水野「だってもともと4月中に転校を済ませてたはずでしょ? 登校できてないだけでもう書類上は3年3組の生徒なんじゃないかな」
恒一「確かに……はい、本来なら4月20日に転校を済ませている予定でした」
水野「だったらその〈いないもの〉対策っていうのは、その20日から始めるべきだったのかも」
恒一「言われて見れば確かに水野さんの言うとおりですね……対策が間に合ってなかったのか」ウーム
水野「ただねー、この考え方だとその紛れ込んだ死者っていうのがねー……」
恒一「え、もしかして死者が誰かまで分かっちゃったんですか?」
水野「……恒一くん」
恒一「なんですか水野さん」
水野「いや、だからね、恒一くんなの」
恒一「え?」
水野「4月20日から死者が増えたっていう考え方だと、死者は恒一くんしかありえないのよ」
恒一「え、ええ」
水野「でも教室の机だけはその改竄の例外で勝手に増えたりしないから、何故か1席足りなくなって1人増えてることが分かる、と」
恒一「はい、そういう話だったと思います」
水野「この机は勝手に増えたりしない、っていうのがミソなのよ」
恒一「どういうことですか……?」
水野「だって恒一くんが転校してくる段階でやっと『あ、転校生の分の机が足りない』ってなったわけでしょ?」
「つまり始業式からずっとクラスの机はぴったり足りてたわけだよね」
恒一「はあ、そうなります……けど」
水野「もし恒一くん以外の誰かが死者だったとしましょう、たとえば例の見崎鳴ちゃんとかね」
「今までクラスにいなかった鳴ちゃんが、恒一くんの転校に乗じて20日からそれまで一緒に過ごしてたクラスメイトとして紛れ込みます」
「この場合、足りない机はいくつでしょう? ヒントは死者の分の机は勝手に増えない、です」
恒一「……あ」
水野「そゆこと。もし他のクラスメイトが死者だった場合、その子の分の机も足りなくなるはず」
「だから足りない机は恒一くんのと合わせて2つ必要にならなきゃおかしいの」
水野「残念だけど……恒一くん、あなたはもう……」
恒一「そ、そんな……」
水野「……」
恒一「けど死んだ覚えなんて……」
水野「……」フルフル
恒一「ああそうか、死者には自覚がないんだったか……」
水野「……」プルプル
恒一「僕はいったい、どうしたら……」
水野「……」プルプルプル
恒一「……水野さん?」
水野「…………なーんてね!」クスクス
恒一「え?」
恒一「もしかして……冗談だったんですか?」ムッ
水野「ホラー少年の洞察力が足りないのが悪い」ビシッ
「ほら、死者の条件に『かつての“災厄”犠牲者』ってのがあったでしょ?」
恒一「けど怜子さんが96年度の担任でしたし、その時にもしかしたら巻き込まれてて、とか……」
水野「“災厄”の対象はクラス関係者とその2親等以内で夜見山にいる者、なんでしょ?」
「甥と叔母は3親等、しかも恒一くんは東京に住んでたんだし“災厄”の対象外だよ」
「もう、ちゃんと考えれば自分が死者なんかじゃないってわかったはずなのになあ」
「ホラー少年もまだまだだね」ツンツン
恒一「む……」
水野「まあそれが一番だよね。今年はやっぱり〈ない年〉だったっていうオチ」
恒一「うーん、赤沢さんたちの早とちりなのかなあ」
水野「けどもし見崎さんの妹さんが亡くなってるなら、今の段階でそう決め付けるのはちょっと怖いよね」
恒一「どこかに穴があるんでしょうか?」
水野「あり得るとしたら……何らかの理由で座席は最初から余分に用意されていて、そのせいで1人増えたことに気付けなかった、とか」
恒一「僕の転校は春休み中に夜見北に打診してますし、2週間かそこらでやってくる生徒だからって先生が事前に用意してた可能性もなくはないですけど……」
水野「でも担任の先生が自ら用意したとしたら、始業式の日に席の余りがなくなってることに気付かないのはおかしな話よね」
恒一「つまり担任以外の何者かが勝手に机を1つ増やした? けど何のために……」ウーン
水野「まあ今度こそは名推理を期待してるよ、ホラー少年」フフ
「じゃあ私は一応昨日亡くなった患者さんについて調べてみるね」
恒一「はい、よろしくお願いします」
水野「りょーかい、それじゃまたねー」フリフリ
~病室~
水野「お待たせ、やっぱり27日に若い女性の患者さんが亡くなってたよ」
恒一「それで名前は……?」ゴクリ
水野「それがねー……藤岡未咲さん、だってさ」
恒一「え? 苗字は見崎じゃないんですか?」
水野「違うの、藤岡。しかも1人っ子だったみたいでご両親がすごく取り乱してたそうよ」
恒一「1人っ子ですか……ということは、見崎鳴の妹じゃなかった……?」
水野「そういうことになるのかな。けど恒一くんは妹って言葉を聞いたんだよね?」
恒一「はい、確かに『あなたさえ来なければ妹は、未咲は』って」
水野「名前は合ってるのね。27日に彼女が訪れた霊安室にいたのは藤岡未咲さんで間違いないわけか」フム
恒一「となると僕に詰め寄った理由ですね……“災厄”の対象は2親等以内なので、彼女たちは実は姉妹って考えるのが妥当なんですけど」
水野「兄弟姉妹なのに苗字が違う、って仮定すると……養子とかかなー」
恒一「養子、ですか?」
水野「東京ではどうか分からないけど、田舎では跡取りのいない家が子供をもらうってそれなりに良くある話なのよ」
恒一「ああそういえば確かにスティーヴン・キングの兄も不妊症が原因で引き取った養子でしたね、なるほど」
恒一「いえいえもう十分助けてもらいましたよ、ありがとうございます」
水野「よし、ではこれ以降の真相究明はホラー少年に任せた! ……なーんておどけつつも、実はちょっと不安なのよね」ハァ
恒一「何かあったんですか?」
水野「それが昨日家に帰ってから知ったんだけど、うちの下の弟も夜見北の3年3組の生徒なのよ」
恒一「じゃあ水野さんの弟さんが僕のクラスメイトになるわけですか?」
水野「そゆこと。猛っていうの、体力バカなやつだけど仲良くしてやってね」
「まあそれで昨晩弟を問い詰めてみたら、アイツまでなんだか“現象”のこと信じてるみたいなのよね」
「そんな風にいざ身近な存在に感じちゃうとなんか急に怖くなってきちゃって……」
「我ながら情けない話だけど、今まで他人事だったからこそ気楽に助言なんて出来てた部分もあったんだろうなー……」
恒一「情けなくなんかないですよ、僕だって我が身に降りかからなければこんな話信じてたか怪しいですし」
「水野さんと弟さんの命も預かったつもりで“現象”について取り組んでみます、安心して待っていてください」
水野「うん、ありがとう。私が力になれることがあったらいつでも相談してね」
恒一「ええ、その時はぜひお願いします」
~教室、朝のHR~
久保寺「転校生の榊原恒一くんです。3組の新しい仲間として仲良くやっていきましょう」
恒一「父の仕事の関係でやってきました。えっと……どうぞよろしく」
久保寺「では榊原くんはあそこの席に座ってください」
恒一「あ、はい」スタスタ チラッ
見崎「……」
恒一(やっぱりあの子も同じクラス、か)ストン
(ボロボロの机に隅っこの席……赤沢さんの言ってた通り今月から〈いないもの〉をやってるみたいだ)
(けど妹さんが亡くなっているならそんな対策は無意味だって彼女自身分かっているはず)
(どうして甘んじてこんな辛い役割を引き受けているんだろう?)
(赤沢さんに相談したいところだけど……今日は休みか)
(勝手な行動は控えて赤沢さんが登校してくるのを待つべきなのかな……いや、違う)
(万が一“災厄”が始まっていた場合、新たな犠牲者がいつ出るとも限らないんだ)
(ここは“災厄”が始まってしまっているものと考えて、早急にそれを止める方法を調べなくっちゃ)
(ただし手持ちの情報だけじゃ手詰まりだ、ここは新たな情報を誰かから――)
王子「お父さんが大学の教授で外国に研究へ行ってるんだってね、久保寺先生から聞いたよ」
恒一「そんなことも知ってるのかあ。じゃあもしかして、前の中学のことも何か?」
桜木「いいえ、それくらいしか聞いてないですよぉ」
勅使河原「にしても久保寺みたいな冴えないおっさんより、美人の先生が担任だったら良かったのになー」
望月「うんうん」
勅使河原「美人でキリッとした感じのさー」
望月「あ、でもプライベートでは気さくで人懐っこい年上女性ってのも捨てがたいよ、できれば年齢は20代でストッキングの似合って弟思いだったりする大人の女性とか良いよね」
勅使河原「お、おう……」
恒一「20代の気さくなお姉さんか……水野さんが教師だったら理想どおりだったかもね」ハハ
望月「水野さん?」ピクッ
恒一「僕の担当だった看護婦さんなんだけど、このクラスに猛くんって男子いるよね、彼のお姉さんで――」
望月「ねーねー水野くぅーん!」トテトテ
綾野「あはは……もっちーは今日も平常運転だねー」
恒一「ところでみんなにちょっと質問があるんだけど、いいかな?」
小椋「ぶっ飛ばすよ」
恒一「たぶんAかな。千曳さんって人にはどうやったら会える?」
小椋「ぶっ飛ばす」
勅使河原「転校生があの人のことよく知ってんなー。ちなみにオレはAAだとげふぅ!?」
小椋「ぶっ飛ばした」フン
王子「あの人ならいつも第2図書室にこもっているよ、司書だからね」
恒一「そうなんだ、ありがとう。ところで赤沢さんは今日休みなんだね、風邪かな?」
中尾「心配だよな……オレも今朝から何度も電話してるんだけど繋がらないし、もし何かあったらと思うと……」
小椋「ちょっと中尾、あんま縁起でもないこと言うとぶっ飛ばすよ」
恒一「まあまあ、あの人は殺しても死なないようなタイプだし大丈夫だよ」
中尾「お前に赤沢さんの何が分かるんだよ、ちなみにオレは血液型から家族構成まで知ってるぞ」
恒一「彼女の好きなコーヒー豆の種類とか?」
中尾「教えてください」
綾野「中尾っちよわー……」
――コンコン ガララ
恒一「失礼します」
千曳「やあいらっしゃい」
恒一「えっと……あなたが千曳さんですか?」
千曳「うむ、そうだが私に何か用かい?」
恒一「僕は3年3組に転入してきた榊原恒一と言います。今日は3年3組のことについてお話を伺いたくてきました」
千曳「なるほど、キミがあのクラスの……私が“現象”について詳しいというのは対策係から聞いたのかい?」
恒一「ええ、赤沢さんから聞きました。早速なんですけど、いくつか質問しても構いませんか?」
千曳「ああ構わないよ」
恒一「まず1つ目ですが……僕が3組になったのにはなにか特別な意図があったんですか?」
千曳「いや、単なる校長の無理解によるものだ。彼は今年赴任してきたばかりで、“現象”や“災厄”など馬鹿馬鹿しいとお考えのようでね……」
「事情を知る教員たちはキミを別のクラスへ転入させるよう散々に意見したんだが、それが彼を余計に頑なにさせてしまったようだ」
「力及ばず済まない……今はただ“災厄”が始まってしまわないことを祈るばかりだよ」
恒一(学校側も今年の“災厄”は始まってないものとして認識してるのか……これは本人に確認する以外ないかも)ウーム
千曳「ああ、確かに写りこんでいたよ。よくある心霊写真なんかと違って、はっきりとした存在感を伴ってね」
恒一「もしよろしければこの目で確かめてみたいのですが」
千曳「それなんだが……すまない」
恒一「どうしてですか?」
千曳「いや、あまりの禍々しさに手元に置いておくのが憚られてね……その、処分してしまったんだ」
恒一「そう、ですか……」
千曳「こんな“現象”や“災厄”が起こると分かっていたら残しておいたんだが……」
恒一(何か写真から手がかりがつかめると思ったけど、ないものは仕方ないか)
恒一「では万が一ですが“災厄”が始まってしまった場合、それを止める方法はないのでしょうか?」
千曳「26年間見守り続けてきたが、私が知りうる限り残念ながらその手段は見つかっていないよ」
「こちらを見てくれるかな、始まりの年からの26年度分のクラス名簿をコピーしたものだ」ズッシリ
恒一「これは……犠牲者とその死因についても書かれているんですね」ペラ…ペラ…
「あ、一昨年の名簿に赤沢和馬って名前が……彼が赤沢さんの亡くなった家族でしょうか?」
千曳「ああ、和馬くんは彼女の従兄だよ。あの年は〈いないもの〉対策が途中まで成功していたんだが……」
「いや、今更そんなことを言っても仕方のないことだ。ひとまず83年度のページを見て欲しい」
恒一「83年度ですね、えっと……ありまし、た!?」
千曳「どうかしたかね?」
恒一「三神、怜子……これ、僕の叔母さんの名前です」
千曳「そうか、キミは三神先生の甥だったのか……一昨年のことは、残念だったね」
恒一「あ、いえそれは良いんです。赤沢さんから“災厄”の話を聞いたときに怜子さんの死の原因は知りましたから。ただ……」
千曳「他に何かあるのかい?」
恒一「この83年度というのは僕の母・理津子が死んだ年でもあるんです。この名簿の犠牲者欄に名前は載っていませんが、母ももしかしたら……」
千曳「理津子くんだって!?」ガタッ
千曳「……一番最初のページ、始まりの年の名簿を見てごらん」
恒一「!」
千曳「そう、理津子くんは72年度の生徒であり夜見山岬くんの同級生だったんだ」
恒一「母さんが始まりの生徒だったなんて……」
千曳「さて、話を戻そうか。83年度の名簿なのだが、注目してもらいたいのは備考欄の死因とその日付だ」
恒一「はい。えっとこれは……8月で“災厄”が止まっているように見えますね」
千曳「そう、正確には8月9日の犠牲者が最後となっている。そしてその年には8月8日から10日までクラス合宿が行れているんだ」
恒一「合宿、ですか?」
千曳「〈いないもの〉対策が考案されるまで、生徒と教師は一丸となって“災厄”から逃れられないものかと試行錯誤してきた」
「お祓いなどオカルト的なことから、3年3組そのものをなくすという物理的な試みまで様々行われてきた。どれも効果はなかったがね」
「そして83年度は、夜見山神社というこの地に古くからある神社へお参りしクラスの安全を祈願しようとしたというわけだ」
恒一「実際に“災厄”が止まっているということは、そのお参りが効果を発揮したということではないんですか?」
千曳「それが後の年に同じようにお参りが試されたんだが効果がなくてね。何か条件を揃えてお参りしないと意味がないのかもしれない、あるいは……」
恒一「合宿中に行われた別のことが災厄を止めたのか、ですね……なるほど。大変参考になりました、今日のところは失礼します」ペコリ
勅使河原「おーいサカキー!」
恒一「うん? どうしたの?」
勅使河原「せっかくだし一緒に帰ろうぜ!」
恒一「残念だけど今日はお婆ちゃんが車で迎えに来てくれてるんだ、ごめんよ勅使河原」
勅使河原「ガガーン!」
風見「いや、そもそもキミは帰る方向が違うだろう」クイッ
勅使河原「そういやそうだったか、んじゃまた明日なー」バイバイ
風見「それじゃあ榊原くん、また明日」クイッ
恒一「2人ともまたねー」
「さて、僕も帰ろうかな……ってあれは……」
「んー……よし」
――ピポパ プルルルル…
恒一「あ、もしもしお婆ちゃん? 今日の迎えなんだけど――」
――ザザァアアア…バラバラ…
恒一「それにしても3組はみんな優しくて親切な人たちで良かった、名前でからかうような人もいないし」テクテク
「……けどあの中に死者が紛れ込んでるかもしれないんだよね、なんとも複雑な気分だよ」テクテク
「誰が死者なのか気になるところだけど、今はそんなことより“災厄”を止める新しい手段を探さなきゃかな」テクテク
「だってもう“災厄”は始まってしまっているかもしれないんだから、〈いないもの〉対策なんてまったくの無意味かもしれないしね」テクテク
「ただ未咲さんが今年最初の犠牲者だったとして、どうして未だに〈いないもの〉対策が行われているんだろう」テクテク
「対策係はもとより学校の人間である千曳さんも彼女の死を知らない、あるいは“災厄”の犠牲者として認識していないのはなんでだろう?」テクテク
「何か理由があって〈いないもの〉を引き受けてるのかもしれないけど、“災厄”が始まっている可能性を訴える必要はあるんじゃないのかな」テクテク
「身内の死を口に出すのは辛いかもしれないけど……僕の母さんと叔母さんも、赤沢さんの従兄のお兄さんも“災厄”で殺されてるんだ」テクテク
「だからこれ以上はもう不幸な犠牲者を増やしたくないし、そのための努力は惜しまないつもりだよ」テクテク
「……まあ全部独り言なんだけどね……って、ん?」テクテ…ピタ
「へぇ、雰囲気のあるお店だなあ。『夜見のたそがれの、うつろなる蒼き瞳の』、っていうのか」
見崎「……」
「……わたしも、これは独り言だけど」ポツリ
――ザァアアア…シトシト…
見崎「まずは傘、帰り道に入れてくれてありがとう」
恒一「……」ポリポリ
見崎「これから続けるのも独り言だけど……」
「先生たちが未咲の死を“災厄”と結び付けないのは、彼女とわたしが戸籍上は従姉妹だから」
「けど血縁上は血を分けた双子の姉妹、わたしは見崎家に引き取られた養子なの」
恒一「……」
見崎「今まで言い出せなかったのは……わたしに現実を直視する勇気がなかったから」
「この眼帯と同じ。見たくないものは見ないようにしてしまう、心の弱さのせい」
「妹が“災厄”なんて出来の悪い冗談みたいなもののせいで死んだなんて認めたくなかった」
「しかもわたしが3組になったことが原因だなんて、絶対に信じたくなかった」
「だから、きっと未咲が死んだのは偶然で、わたしが〈いないもの〉として完璧に振る舞えば“災厄”なんて起きることはないはず」
「そして5月中に“災厄”が起こらなければ、それこそが未咲がわたしのせいで死んだんじゃないって証拠になるんじゃないか――」
「……そう、思っていたの。思い込むことで現実から眼を背け続けていたの」
「もう逃げるのは終わりにする。明日には赤沢さんに本当のことを話すことにするわ」
恒一「そっか。だったら〈いないもの〉を続ける必要はもうないよね、改めてよろしく見崎」ニコッ
見崎「……今までクラスを騙してきたこと、怒らないの? 怒らないまでも、呆れたりとか……」
恒一「一番辛いのは妹さんを失った見崎だと思うんだ。それなのに話してくれてありがとう」
「それにまだ5月はまだ始まったばかりだし、今からでもきっと間に合うはずだ。謝る必要なんてどこにもないよ」
見崎「そう……まだ、これから…」
恒一「うん、僕からも赤沢さんを説得するから一緒に頑張ろう」
見崎「けどみんなの前で〈いないもの〉を急に辞めたりしてパニックにならない?」
恒一「じゃあ明日の朝、登校してきた赤沢さんを捕まえてこっそり3人で話すことにしようよ」
見崎「……うん、それが良さそうかな」コクリ
恒一「それじゃあ明日の朝、学校の中庭のベンチで待っててよ。僕が赤沢さんを引っ張っていくから」
見崎「わかった、お願い」
恒一「それじゃあまた明日ね」バイバイ
見崎「うん、また明日」フリフリ
~翌朝、昇降口~
恒一「おはよう赤沢さん、待ってたよ」
赤沢「待ってたって私を? 教室で待ってれば良かったのに」
恒一「人目に付く場所だとちょっと困るんだ」
赤沢「えっ」ドキッ
恒一「だからこれから中庭まで来て欲しいんだけど、良いかな?」
赤沢「え、ええ構わないわよ、それじゃあ早速――」
中尾「あ、赤沢さん!」
赤沢「」チッ
中尾「おはよう、体調良くなったんだね良かったよ」ハハ…
恒一「中尾くんおはよう。昨日はすごく心配してたもんね、中尾くんの気持ちが通じたんじゃないかな」
中尾「電話は通じなかったけどな、それで何かあったんじゃないかって気が気じゃなくってさ――」
赤沢「それただの着信拒否だから」
中尾「うわあああああああああああん!!!!」ダッ
赤沢「よし、邪魔者は消えたことだし早く中庭に行きましょう」
見崎「……」チョコン
赤沢「……これは一体どういうことよ」キッ
恒一「“災厄”と対策について対策係である赤沢さんに話があるんだ。さあ、見崎」
赤沢「ちょっと! 〈いないもの〉の相手は――」
見崎「“災厄”はもう、始まってるかもしれない」
赤沢「!」ピクッ
見崎「今まで黙っていてごめんなさい……わたしの妹は4月27日に病死しているの」
赤沢「そんなはず……! 先生も千曳さんも今年度の犠牲者はまだいないって……!」
見崎「戸籍上は従姉妹だから2親等外だとして見過ごされたんだと思う。わたしは見崎家の養子なの」
赤沢「……じゃあ見崎さんも……私と同じ、だったの?」
恒一「そうだよ赤沢さん、見崎も僕らと同じ“現象”の被害者なんだ。“災厄”のせいで家族を奪われた者同士、助け合えないかな」
「もう犠牲者が出てしまっている今、予防策である〈いないもの〉対策は無意味なんだ」
「だからと言ってこのまま手をこまねいているなんてことも僕はしたくない」
「ねえ、新しい対策を一緒になって考えてみようよ。見崎も含めたクラス全体で」
恒一「じゃあ――」
赤沢「でも、見崎さんの〈いないもの〉解除は認めるわけにはいかない」
恒一「そんな、どうして!」
赤沢「衝撃が強すぎるのよ……あなたたちはいつ死ぬとも分からない状況にあります、なんてクラスのみんなに告げられる?」
「解決策も見出せていない今の状態で真実を告げても、悪戯にクラスに動揺を走らせるだけよ」
恒一「それは……でも、見崎をこのままずっと〈いないもの〉でいさせるなんて……」
見崎「ううん、榊原くんいいの。これは今まで黙っていたわたしの責任だから」
恒一「だけど……!」
赤沢「あー、あのね2人とも。盛り上がってるところ悪いけど、今はまだ続けてもらうしかないってだけよ」
見崎「?」キョトン
赤沢「確かに別の案もない今は我慢してもらうしかないけど、だったら他の解決策を早く見つければ良いだけの話でしょ」
「それにあくまでポーズだけだから、すでに真実を知って受け止めている私と恒一くんの前でまで〈いないもの〉である必要はないわ」
恒一「それじゃあ――!」
赤沢「ええ、今日から3人で新しい対策を考えていきましょう。新しい犠牲者が出る前に、この“災厄”を止めてみせるわよ」キリッ
久保寺「さて、今回からは人物画のデッサンに挑戦してもらいます」
勅使河原「えー、またデッサンっすかー? この間は静物画だったじゃないっすかー」
望月「仕方ないよ、今の夜見北は美術教師いなくって各担任が見よう見真似でやってるんだし」
久保寺「今は私の方も勉強中ですが、徐々に分野を広げていきますので今後に期待ということでお願いします」
綾野「くぼっちファイトーっ」アハハ
久保寺「では今回はクラスメイト同士で互いを描きあってもらいます。まずは2人組みを作ってください」
――ワシトクムゾナー ウン、カマワナイヨ
アキノカワイイカオ、カキタイナー キョウコチャンッタラ…ポッ
アノサ、モシヨカッタラオレト… イヤヨ ウワアアアアアン!!
ワイワイガヤガヤ ヤイノヤイノ
勅使河原「なあサカキ、一緒に描こうぜ!」
恒一「うーん、どうしようかなあ」チラッ
見崎「……」ポツーン
恒一「んー……悪い勅使河原、また今度ね」
久保寺「なんでしょうか、榊原くん」
恒一「このクラスって30人じゃなくって29人なんですよね、2人組みだと1人余っちゃいませんか?」
久保寺「あ、あー……」チラッ
見崎「……」チョコン
久保寺「さっそくミスをしてしまいました、指摘ありがとう。ではどこか3人のペアを――」
恒一「あ、それなんですけど。僕だけ4月中の授業出てないせいで静物画のデッサンが出来ていないですよね」
久保寺「はあ、そうですね」
恒一「なので3人ペアを作るんじゃなくって、僕1人だけ静物画描くというのはどうでしょうか?」
久保寺「なるほど……ええ、榊原くんさえ良ければそれで。では前回まで皆さんがモチーフに使っていた果物がそちらにありますので――」
恒一「ああ、お構いなく。もうモチーフは決めてるんで大丈夫です、それでは」ドッコイショ
――トコトコトコ…ストン
恒一「さて、目の前のこの椅子でも描こうかな」
見崎「……えっ」
恒一「赤沢さんどうしたの? そんなに慌てて」
赤沢「あなた何しようとしてるの? ……さっきも言った通りクラスでは〈いないもの〉のフリしてもらわなきゃ困るわ」ヒソヒソ
恒一「何って、静物画のスケッチだよ。今からこの椅子を描こうと思ってるんだけど、どこかおかしいかな?」シレッ
赤沢「そう……あくまで椅子を描くだけなのね?」
恒一「だから最初からそう言ってるのに変な赤沢さんだなあ。あ、もしかして僕と描きたかったとか?」
赤沢「べ、べつにそんなんじゃ――」
恒一「まあ、もし『相手がいないんだったら勝手に描いて構わない』けどね」
見崎「……!」
赤沢「ああ、なるほどそういうこと……いいわ勝手にして、『私は』描かないけど」スタスタ
恒一「よーし。赤沢さんの許しも出たことだし早速描き始めるとするかな」ガサゴソ
見崎「……」チラッ
恒一「~♪」カキカキ
見崎(3人で秘密を共有、か……ちょっと楽しいかも)クス
――カキカキ…シャッシャ…サラサラ…カキカキカキ……
赤沢「……あんなの詭弁よ」
恒一「ん? なんのこと?」
赤沢「椅子描くって言ってたのに、完成した絵見たら普通に見崎さんだったじゃない!」
恒一「僕には椅子がああ見えるんだよ」
赤沢「望月くんみたいなこと言ってもダメ、てっきり見崎さんのモデルになるだけだと思ったからOKしたのに……」
見崎「えっと、なんだかごめんなさい」
赤沢「ああ、別に見崎さんは悪くないんだから謝る必要は少しもないわ」
見崎「そう……?」
赤沢「ええ、悪いのは全部恒一くんだから」ジトー
恒一「う……でも赤沢さんだって授業中に不自然なくらい見崎の方チラ見してたじゃないか」
赤沢「だ、だって事情知っちゃったら色々気になるじゃない……無理して〈いないもの〉のフリ続けてもらってるわけだし……」
「うん、だからまあ、恒一くんのその見崎さんに寂しい思いをさせたくないって気持ちは分かるのよ?」
「でも今後はそこを堪えて、クラスのみんなに疑問を持たれるような行動は謹んでもらいたいの」
恒一「そっか、赤沢さんも同じ気持ちなんだ。なら分かったよ、今後は僕も我慢するね」
恒一「さっそく作戦会議でも良いとは思うけど……学校じゃ人目に付いちゃうかな」
赤沢「そうね。一旦場所を移しましょう」
恒一「どこか落ち着いて話せるようなところはある?」
赤沢「落ち着いて話せる場所と言うと、そうね……恒一くんはイノヤって分かる?」
恒一「イノヤ……ああ、昨日見崎を送った帰りに見かけたあの喫茶店かな?」
見崎「たぶんそれで合ってる、あそこ酒屋兼喫茶店だし」
赤沢「え? 送った?」
恒一「じゃあ今からイノヤにみんなで……って見崎は一緒に歩いてるとこ見られちゃまずいね」
見崎「わたしはあとから向かうから、2人は先に行ってて」
恒一「わかったよ、それじゃあまた後でね」
見崎「ええ、またあとで」フリフリ
赤沢「こ、これは由々しき事態だわ、まさか放課後デートまで済ませてるなんて……」ブツブツ
恒一「何してるの赤沢さーん、置いてっちゃうよー」
赤沢「ま、待ちなさいよー!」タタッ
――ガチャ カララン カララン…
恒一「――っていう感じに見崎に話しかけてみたんだよ」
赤沢「なるほど、そういう流れで家まで送ったのね」フムフム
恒一「そういうこと。良く分からないけど納得してくれたみたいで良かった」
赤沢「私も今度傘忘れてみようかしら……あ、智香さんこんにちは」
智香「いらっしゃい、泉美ちゃん――と、お友達かしら?」
赤沢「はい、1年半ぶりの運命的な再会を果たした末にクラスメイトになった榊原恒一くんです」
智香「あら、じゃあ優矢くんのお友達ね。いつも弟がお世話になっています」ペコリ
恒一「え?」
智香「望月優矢の姉の智香です、はじめまして」ニコ
恒一「は、はじめまして……ねえ赤沢さん、これまずくない?」ヒソヒソ
赤沢「ああ、智香さんなら大丈夫よ。口の堅い人だから望月くんを介してクラスに伝わることはないわ」
智香「何か事情があるみたいね。大丈夫、ちゃんと優矢くんには黙っておくから安心してね」フフ
恒一「えっと……」
赤沢「いつものを。彼にも同じやつをお願いします」
智香「あらあら、かしこまりました」フフ
恒一「いつもの?」
赤沢「退院したら再会の記念にコーヒーを奢るって約束したでしょ? あの時言ってたやつをね」
恒一「コーヒーかあ、ちょっと苦手なんだけど……でも赤沢さんのおすすめなら飲んでみようかな」
智香「――お待たせしました、ごゆっくりどうぞー」
赤沢「騙されたと思ってまずはそのまま飲んでみて」
恒一「うん……あ」
赤沢「どう?」ドキドキ
恒一「苦いのに甘い……美味しいね、これ」ニコッ
赤沢(やった! 恒一くんに私のお気に入りを好きになってもらえたわ!)グッ
見崎「おまたせ」ストン
赤沢「ナチュラルに恒一くんの隣に座ったわね……」
「まあ良いわ、こっちは少しの間だけど2人きりのアフタヌーンコーヒーを楽しんでたんだから」フッ…
恒一「そうそうこのコーヒー、赤沢さんおすすめなんだけどすごく美味しいんだよ」
見崎「わたし、苦いのはちょっと……」
恒一「まあまあ、騙されたと思って飲んでみなよ。きっと見崎も気に入るから」
見崎「じゃあ榊原くんのそれ、一口もらえる?」
赤沢「えっ」
恒一「いいよ、はい」スッ
赤沢「えっ、それ間接キ――」
見崎「ほんとだ、美味しい」コクコク
赤沢「あ……あぁ……」ガクリ
見崎「ふぅ、ごちそうさま……赤沢さんはもう飲まないの? ならもらっても良い?」
赤沢「あ、他意はないのね……いいわよ全部飲んじゃって……」
恒一「始まってしまった“災厄”を止める方法について、だね」
赤沢「ええ、2人は何かアイデアみたいなものはある?」
恒一「ヒントになりそうなことなら千曳さんから聞けたよ」
見崎「もしかして、83年度のことかな」
赤沢「合宿のあった年のことね。やっぱりみんなそこに行き着くか……」
恒一「とりあえずこの合宿中に何かがあって“災厄”を止めたことは間違いないと思うんだ」
赤沢「でも他の年に同じように合宿と参拝をしても結局効果はなかったそうよ?」
恒一「うん、だから当初の目的だった参拝以外の何かが合宿中にあったんだと思う」
見崎「他のなにか、ね……」
赤沢「でもこればっかりは当時の合宿参加者にでも聞かなきゃ分かりっこないわよね……」
恒一「当時の参加者か、怜子さんさえ生きててくれたらな……」
智香「いらっしゃ――あら松永くんじゃない」ニコッ
松永「やあ、お邪魔するよ」ヒョイ
智香「今日はいつもより少し早いんじゃない?」
松永「近々隣町に住み込みで働くことになりそうなんだよ、だから来られるうちに沢山来ておこうと思って」ハハ
「というわけで景気付けに1杯頼む。まずはウィスキーのロックを――ん?」
恒一「え? なんですか?」
松永「もしかしてキミは……怜子の甥っ子くんじゃないか?」
恒一「えっと、怜子さんは僕の叔母ですが……」
智香「あら。2人はお知り合いだったの?」カランカラン トクトクトク…
恒一「違うと思います、けど……」
松永「あースマンスマン、1年半前の葬式んとき見た顔だと思ってつい声をかけちまった」ポリポリ
「俺の名前は松永克己。怜子とは中学のときのクラスメイトで古くからの友人だったんだ」
見崎「三神先生の同級生……?」ピクッ
赤沢「つまり、夜見北中学出身……!」ガタッ
恒一「えっと、失礼ですが、3年生のとき何組だったのか伺ってもよろしいでしょうか」
松永「ん、3年生のときか? 怜子と同じ3組だったが」チビチビ
赤沢「!」ガタタッ
見崎「赤沢さん落ちついて」
恒一「実は僕たち、今年の3年3組の生徒なんです」
松永「キミたちが……! そうか、あの呪われたクラスの後輩たち、か……」
見崎「はい。わたしたちは“災厄”を止める方法を探しています」
赤沢「松永さんの年は災厄が途中で止まっていますよね、当時何があったのか覚えていませんか?」
恒一「具体的には合宿中の出来事を。どんな些細なことでも構いません、お願いします」
松永「合宿、か……確かにあったな……そしてそこで何かが……」
見崎「なにか……?」
松永「それは……ダメだわからない、頭にモヤがかかったようで……」
恒一「いえ、15年も前のことですし覚えてなくても仕方ないですよ。こちらこそ無理を言ってしまってすみませんでした」
松永「役に立てなくってスマンな、不甲斐ない……んくっ……んくっ……ふぅ」コトッ カラララン…
恒一「松永さん? 酔ってます?」
松永「そ、そうだ……あの年の“災厄”は俺が止めたんだ……!」
赤沢「!」
松永「俺が……俺がみんなを守って……それで……」ワナワナ
恒一「それで、隠した?」
松永「あ、ああ……紙、ではなかったような気がする……でも伝えようとしたんだ……」
「とにかく何かを教室に……いや、ダメだ……これ以上は思い出せない……スマン」フルフル
恒一「いえ、充分過ぎるほどの情報でした」
赤沢「松永さんの残したもの、必ず私たちが探し出してこの“災厄”を止めてみせます」キリッ
松永「後輩に託す形になってしまってすまないが、よろしく頼む……」
見崎「……」コクリ
赤沢「1つは“災厄”は確かに止めることができるということ」
「そしてもう1つはその方法が教室に隠されている可能性がある、ということね」
恒一「うん、それでその教室っていうのは、たぶん松永さんが過ごした旧3年3組のことだと思う」
見崎「……」コクリ
赤沢「そうと分かれば話は早いわ、次はみんなで旧校舎の3年3組に行きましょう」ガタッ
恒一「うーん、そうしたいのは山々なんだけど……」
赤沢「なによ。水差さないでくれる?」
恒一「女の子の夜遊びは親御さんが心配するし、今日は一旦解散にして明日にした方が良いんじゃないかな」
赤沢「使用人に車で迎えに来てもらうから別に心配いらな――」チラッ
見崎「……」コックリコックリ
赤沢「はぁ……仕方ないわね、見崎さんも眠そうだし明日にしましょう」
恒一「明日は土曜日だから午前授業だしね、ゆっくり探してみようよ」
赤沢「じゃあこれで今日は解散ね。見崎さんは私の車で送るから任せて」
恒一「うん、明日は放課後に旧校舎の入り口で落ち合うことにしよう。それじゃあ2人ともまた明日」バイバイ
~放課後、旧校舎3年3組~
――ガラララ…ピシャ
赤沢「もう、ちゃんと整理くらいして欲しいわよね。これじゃ物置と変わらないじゃない」
恒一「この中のどこかに松永さんの隠したものがあるはずなんだけど、どこから探したものやら……」ウーン
見崎「けほ……ほこりっぽい。ちょっと窓開けてくる」トテトテ
――ギギィイイ…ピシッ
恒一「あ、見崎! ガラスが――」
赤沢「あぶないっ!」グイッ
――カッシャーン! パラパラ…
見崎「……あ、ありがとう」
赤沢「もう気をつけてよホント、寿命縮んじゃったじゃないの」
見崎「ごめんなさい」
赤沢「無事なら良いわ、とりあえず窓には近づかないようにしましょう?」
見崎「うん」
赤沢「ん、よしよし」
「僕がダンボールとか重いものを下ろしていくから、2人はその中を調べてもらえるかな」
見崎「ええ」コクリ
赤沢「わかったわ、任せて」キリッ
恒一「よし、それじゃあ調査開始だ!」
・
・
・
恒一「ふぅ、疲れた……こっちは大体終わったかな。赤沢さんたちそっちは――」クルッ
見崎「どう?」キュピ
赤沢「ど、どっちが似合うかしら?」モジモジ
恒一「……頭に紙花つけて遊ぶのは小学生までにしておきなさい」ムシリッ
赤沢「あーっ」
見崎「いじわる」
恒一「はいはい、どっちも可愛いから真面目に調べて」
赤沢「見つからないわね……本当に松永さん、隠してくれたのかしら」
見崎「――ねえ、あそこは調べた?」スッ
恒一「あれは……掃除用具入れか。僕は調べてないよ、赤沢さんは?」
赤沢「私もまだよ。ちょっと調べてみましょう」
――ガシャン ギィイイ…
恒一「中には何も……ん? 天板に何か張り付いてるな、よいしょっと」ベリリッ
見崎「何か文字が書いてあるみたい」
恒一「なになに、『将来このクラスで理不尽な災いに苦しめられるであろう後輩たちへ』?」
赤沢「これよ、やったじゃないっ! それで中身は何なの?」
恒一「包み破くからちょっと待ってね、びりびりっと……む、これはカセットテープ、かな?」
見崎「なるほど、メッセージを音声にして残したのね」
赤沢「善は急げよ。放送室でレコーダーを拝借して、早く解決策を確かめましょう」
恒一「いいのかなあ、勝手に使っちゃって」
見崎「もうここまで来たら腹をくくった方がいいよ、榊原くん」クス
恒一「おーけー、わかったよ。テープはもうセットしたし再生スタートするよ?」
赤沢「ええ、お願い」
見崎「うん」コクリ
――カチッ キュルルルルルル…
テープ『……ザ……ザザ……ええっと、俺の名前は松永。松永克己』
『1983年度の3年3組の生徒で……録音が終わったらこのテープはどこかに隠すつもりだ』
『俺がこんなテープを残そうと決めたのには、2つの意味がある……』
『1つは俺の、俺自身の罪の告白……』
『もう1つは……後輩であるキミたちに、アドバイスを伝えたい……』
恒一「……」ゴクリ
・
・
・
『そう、肝心なのはその後だ……』
『やっとの思いで夜見山から下山した直後にそれはあったんだ……』
『それっていうのは………………………………………………………』
恒一「む?」
赤沢「まさか壊れたんじゃ……」
見崎「――しっ、2人とも静かに」
――コツ コツ コツ コツ…
恒一「足音……!」
赤沢「こっち近づいてくるわよ、隠れなきゃ……の前にテープ!」ガチャッ キュルルル――ブチッ
見崎「2人ともこっち」グイグイ
恒一「わ――むぐっ!」
赤沢「きゃ――むぐ!?」
見崎「しずかに」ヒシッ
――ガチャリ ダレモイナイ…キノセイカ バタン
恒一「ぷはっ」
赤沢「もがっ」
見崎「2人とも声上げそうだったから、つい」
赤沢「いえ、おかげで助かったわ。そんなことより早く続きを――って、あ……」ビローン
恒一「ちょっ、赤沢さんテープ再生中に抜き取ったの!?」
赤沢「だだだって急いでたんだもの……! これ、どうにかならない!?」ビローン
恒一「千切れちゃってるからなあ、ちょっと難しいんじゃないかな……」
赤沢「そんなぁ……」ガクリ
見崎「……ねえ、ちょっと貸してもらってもいい?」
赤沢「え、ええ、いいけど……」グスン
見崎「……これくらいなら大丈夫かも」
赤沢「み、見崎さんこれ直せるのっ!?」ガバッ
見崎「直すのはわたしじゃなくて霧果……お母さんだけどね、あの人手先だけは器用だから」
赤沢「なんでもいいからお願い直してーっ」ユサユサ
恒一「はは、何とかなりそうで良かったね」
赤沢「でも壊しておいて任せっぱなしというのは……ねえ、見崎さんの家について行っても構わない?」
見崎「別にわたしたちに出来ることは特にないと思うけど」
赤沢「これは気持ちの問題なのよ、近くにいたいの」
見崎「そう、赤沢さんがそうしたいなら……」
恒一「ところでテープの修復ってすぐに済むのかな? 出来ればすぐにでも聞きたいから終わり次第連絡もらえると嬉しいんだけど」
赤沢「そ、それじゃあ仕方ないわねっ、で、電話番号交換しなくっちゃ!」
恒一「そうだね、交換しようか。えっと僕の番号はね――」
見崎「……」ポケー
赤沢「これでよし、と……ん?」
「……ねえ見崎さん」
見崎「?」
赤沢「見崎さんも番号教えてくれる? みんなで番号交換しましょう」
見崎「! 携帯電話は……えっと」イソイソ
恒一「さて、今頃2人は見崎の家に着いてる頃かな」
「最初はあんまり仲良くないのかと心配したけど、杞憂みたいで良かった」
「なんだか赤沢さんは見崎のこと気にかけてくれてるし、見崎は見崎で懐いてる感じ」
「ただ、家にお邪魔するって話がいつの間にかお泊り会に変わってたのには笑ったけど」ハハ
「……早く“災厄”を止める方法が何なのか確認して、この平和を守らなきゃな」
「見崎に赤沢さんに僕、それにクラスみんなで一緒に卒業できるよう頑張るぞ」グッ
見崎「こちら、同じクラスの赤沢泉美さんです」
赤沢「なんだか今日は急にお邪魔しちゃってすみません」
霧果「いいのよ、そんなこと。鳴とは今後も仲良くしてあげてちょうだいね」
見崎「それじゃあわたし達は上に行ってますから、修理の方よろしくお願いします」
赤沢「よろしくお願いします」ペコリ
霧果「はい、確かに受け取りました」フフ
赤沢「な、なんでしょうか?」
霧果「いえね、この子がお友達を家に泊めるなんて始めてだから嬉しくて」
見崎「もうお母さんっ、じゃあわたしたち行きますから」グイグイ
赤沢「あっ、ちょっと見崎さ――」ズルズル
霧果「うふふ」
「……ふぅ」
「未咲さんが亡くなって塞ぎこみがちだったけど、少し元気が戻ったみたいで良かった」
「――よし、可愛い娘のために腕を振るっちゃおうかしら」
赤沢「へぇ、意外と部屋の中はシンプルなのね」キョロキョロ
見崎「もっとごちゃごちゃしてるって思った?」
赤沢「1階に通されたときは数十体のドールに囲まれて寝ることを覚悟したわ……」
見崎「人形は虚ろだから、そんなことしたら吸い取られるよ」クス
赤沢「カンベンしてー……これ以上のオカルトはもうお腹いっぱいよ」
見崎「そうね。早くこんな理不尽な“災厄”は終わりにしちゃいましょう」
赤沢「そしたら〈いないもの〉も終わりになって、見崎さんも学校生活を思う存分楽しめるものね」
見崎「あ……わたしそう言えば〈いないもの〉だったんだっけ」
赤沢「もうポーズだけだけどね、それでも忘れてもらっちゃ困るわよ」
見崎「ここ2日間が楽しくって、つい」クス
見崎「うん」
赤沢「……今まであなた1人につらい役目を押し付けて、ごめんなさいね」
見崎「ううん、別につらいと思ってなかったし大丈夫」フルフル
赤沢「でも……」
見崎「赤沢さんこそ対策係のプレッシャーで大変なんじゃない?」
赤沢「私はおにぃが死んだときから決めてたから。対策係になって“現象”をなんとかしてみせるって」
見崎「そう……けど1人でなんとかしようなんて思わないでね。だって今はわたしも榊原くんもいるんだから」
赤沢「見崎さん……」
見崎「わたしたちはもう1人じゃないわ、みんなで一緒に乗り切りましょう?」
赤沢「ええ……!」
赤沢「どうかした?」
見崎「赤沢さん、着替えなんて持ってきてないよね」
赤沢「あ」
見崎「パジャマならわたしの貸せるけど……」
赤沢「下着はそういうわけにはいかないわよね」
見崎「サイズも合わない」ペタペタ
赤沢「……あとでバストアップ体操教えてあげようか」
見崎「ほんと?」
赤沢「由美が教えてくれたやつだから効果はちょっと怪しいんだけどね」
見崎「小椋さんか……」
赤沢「……やめとく?」
見崎「……うん、なんかしぼみそう」
赤沢「えーっと、ちょっと家に電話して着替え届けてもらうことにするわね」ソソクサ
見崎「ええ。今のうちにお風呂沸かしておくから、届いたら一緒に入りましょう」
――カポーン
赤沢「ふぅ……誰かと一緒にお風呂っていうのも良いものね」チャプ
見崎「じゃあ今度は榊原くんも誘ってみようか」
赤沢「ちょっ」
見崎「冗談だよ」クス
赤沢「もう……見崎さんもそういう冗談言うのね」プクプク
見崎「怒った?」
赤沢「……由美直伝の豊胸術をかけてやる」
見崎「……っ!」ジャバジャバ
赤沢「ふふふ、逃げたって無駄よ覚悟なさい」ワキワキ
見崎「それだけはやめて……やっとここまで成長したの……」プルプル
赤沢「そんなに怯えられると由美が不憫になってくるわね……いいわ、他のことで許してあげる」
見崎「他のこと?」
赤沢「ええ、それじゃあ――」
赤沢「んー、上手……人に髪洗ってもらうのってやっぱり気持ち良いわ」
見崎「これだけ髪長いといつも大変でしょう」コシコシ
赤沢「慣れるとそうでもないけどね。むしろ乾かすほうが手間なのよ」
見崎「そうなんだ、じゃあドライヤーかけるのも後でやってあげる」シャコシャコ
赤沢「それはかなり助かるわー……」
見崎「痒いところはない?」コシコシ
赤沢「ええ、大丈夫よ」
見崎「それじゃあ流すね」キュッ
――シャワアアアアアア……
赤沢「ふぅ、さっぱりした……じゃあ今度は見崎さんの番ね」
見崎「え?」
赤沢「さあ見崎さんそこ座って、洗ってあげるから」
見崎「わ、わたしは自分でできるから……」
赤沢「遠慮なんかしてないで洗わせなさい、ほらほら」グイッ
見崎「……もう、強引なんだから」ストン
赤沢「シャンプーはこれでいい?」
見崎「ううん、その隣のリンスのいらないやつ」
赤沢「意外と庶民的なのね……まずはシャワーで髪濡らすわよー」シャワアアアア…
「よし。じゃあ泡が目に入らないように前髪上げて、っと」
見崎「あっ」
赤沢「……わぁ、綺麗な目!」
見崎「え……」ドキン
赤沢「眼帯の下ってこうなってたのね。オッドアイ……ううん、義眼かしら」ジー
見崎「う、うん……霧、お母さんが作ってくれたの」ドキドキ
赤沢「こんな綺麗なんだからもっと堂々と出して歩けばいいのに、もったいない」
見崎「……変なものは見えない方が良いから」フイッ
赤沢「全然変なんかじゃないわよ、すごく似合ってて素敵よその目」
見崎「あ、この目のことじゃなくって……ううん、ありがとう」
見崎「気持ちいい……けど背中に当たる感触が悔しい」
赤沢「まだ中学生なんだし見崎さんだってこれから大きくなるわよ」シャコシャコ
見崎「そうかな……わたしも早く『当ててんのよ』ってやりたい」
赤沢「誰によ!?」
見崎「別に当てられれば誰でもいい」
赤沢「見崎さん、あなた恐ろしい子ね……」シャコシャコ
見崎「あ、もうちょっと右おねがい」
赤沢「はいはい」コシコシ
見崎「んっ、そこ、きもちい」
赤沢「……変な声出さないの」ペシッ
見崎「あいたっ」
赤沢「もう、本当に恐ろしい子ね……流すわよ」キュッ
――シャワアアアアアア……
見崎「来客用の布団がなくてごめんなさい」モゾモゾ
赤沢「見崎さんのベッドは大きいし問題ないわ。むしろ半分取っちゃって悪いわね」モゾモゾ
見崎「いいの、赤沢さんは特別――あ、でも榊原くんもいいかな」
赤沢「」ピクッ
見崎「どうかした?」
赤沢「えっと、別にその、深い意味はなくって、今後の参考のために聞くだけなんだけど……」モジモジ
見崎「?」
赤沢「……見崎さんって、恒一くんのこと好きなの?」
見崎「うん、赤沢さんと同じくらい」
赤沢「私の恒一くんに対する想いくらいって……つまり恋してるってこと!?」
見崎「えっ」
赤沢「えっ」
見崎「わたしは2人とも同じくらい好きってつもりで言ったんだけど……赤沢さん恋してるの?」
赤沢「」
見崎「む」
「……」
「……わたしの妹の未咲もね」
赤沢「……?」
見崎「好きな人がいたんだって。地味な男の子だけど音楽の趣味が合うんだって惚気てた」
「ただ、わたしがその話を聞いたのはあの子が倒れる前日だった」
赤沢「……」
見崎「可哀想な未咲は想いを伝えることなく、胸に秘めたまま逝ってしまったわ」
「解決の糸口を見つけたとは言え、わたしたちだっていつ“災厄”で倒れるかまだ分からない」
「もしかしたら明日にも……なんて可能性だってないとは言えないんだから」
「だから……後悔だけはしないように、ね」
赤沢「……うん、ありがとう」
見崎「こんな心配しなくても良いように早く“災厄”を止めましょう」
「――それまでは赤沢さんのこと、もちろん榊原くんのこともわたしが守ってみせるわ」ギュッ
~イノヤ~
――ガチャッ カララン カララン
恒一「2人ともお待たせ、待った?」
赤沢「いえ、見崎さんとコーヒー飲みながら過ごしてたから平気よ」
見崎「あ、榊原くんはそっち座って」
恒一「? 別に良いけど……じゃあ赤沢さん、隣座るね」ストン
赤沢「え、ええ……」ソワソワ
見崎「テープレコーダーは持ってきた?」
恒一「うん、探してみたら怜子さんが使ってたのがあったよ」ゴトン
赤沢「ありがとう、助かったわ」ホッ
見崎「わたしたちの家にはテープレコーダーなんてないものね」
恒一「このブルジョワっ子たちめ」カチャカチャ…
赤沢「何はともあれ、これで続きが聞けるわね」
恒一「よし、それじゃあ準備は良い? いくよ――」カチッ キュルルルルルル――…
『それが、始まってしまった災厄を止める方法だ……!』カチッ…
恒一「……死者を、死に還す?」
赤沢「つまり死者が誰かを特定して……殺すってこと、よね」
恒一「まさか、クラスメイトを手にかけなきゃいけないなんて……」
赤沢「しかもその年の“災厄”を止められても“現象”自体はなくならない」
「松永さんが止めたのに今年こうして犠牲者が出てるってことは、そういうことよね」
恒一「そんなその場しのぎのために誰か1人を……?」
赤沢「考えたくないわね」
恒一「でもそうしないと、もっと人が……」
赤沢「そんなのまるで生贄じゃない」ギリッ
赤沢「殺すつもり、なの?」
恒一「まだそこまでは考えてないよ。でも……今ここで立ち止まるわけにはいかないと思う」
「僕たちにはあとひと月も時間が残されていないんだ、出来ることを1つずつ片付けていこう」
「見つけた死者をどうするか、それは特定してから悩めば良いと思う」
赤沢「……今はそれしかないか。分かったわ、でも他の手段も平行して検討していくわよ」
恒一「もちろん。僕だってクラスメイトを殺したりなんかしたくないからね」
「ただ『死者を死に還すことで“災厄”が止まる』ってことから1つ分かったことがあるんだ」
赤沢「え、なにが分かったの?」
恒一「多分だけど、死者は“災厄”によって死ぬことはない」
赤沢「どうしてよ?」
恒一「だってこの26年間で1度しか“災厄”は止まっていないんだよ?」
赤沢「そっか……松永さんが手にかけた死者以外は無事に卒業出来てるって、確かに不自然ね」
恒一「そういうこと。だから死者が勝手に死んでくれたら、なんて消極的な期待するのは止めておこう」
見崎「……」
赤沢「見崎さん、どうかした? 何か心当たりでも?」
見崎「ううん、なんでもない」フルフル
赤沢「そう……?」
恒一「ところでこの情報はクラスで共有しない方がいいと思うんだけど、どうかな」
赤沢「みんなの知恵を借りたいところだけど……疑心暗鬼になられるのは怖いわね」
恒一「うん。考えたくはないけど、暴走したクラスメイト同士で諍いが起きないとも限らないからね」
赤沢「じゃあ私たち3人で聞き込みをして、誰が死者なのか調査してみましょう」
見崎「ううん、実質2人。わたしは〈いないもの〉だから」
赤沢「そういえばそうね……ごめんなさい見崎さん、もう少しだけ〈いないもの〉をお願いするわ」
恒一「それじゃあ明日からは赤沢さんと僕の2人で聞き込み、その情報を放課後に3人で分析って感じでいこう」
「今後の方針も決まったことだし、とりあえず今日は解散にしようか」
見崎「夜道は危険だから榊原くんは赤沢さんを送ってあげること。それじゃあ」スクッ トテトテ…
恒一「それを言ったら見崎だって――って行っちゃった。はは、それじゃ一緒に帰ろっか赤沢さん」
赤沢「見崎さんったら、もう……ええ、エスコートお願いするわね」モジモジ
見崎「……」グテン
「死に近い色が分かる義眼、か……」
「ちゃんと言うべきだったのかな、この瞳の力のこと」サワサワ
「だけど言っても信じてもらえるか分からない」
「変な子だと思われるかもしれない」
「あの2人にそういう目では見られたく、ない」
「……わたしのいくじなし」ゴロン
「でも、病人や怪我人や死体は見たことあるけど、死者なんて今まで見たことないもの」
「死者がどんな色かも分からない以上、わたしが口を出すべきじゃないわ」
「2人が死者を探している間、わたしは“災厄”を止める別の方法を探してみよう」
「……きっと、だいじょうぶ」
「だからこのまま眼帯は外さずに着けたまま、見たくないものは見なければ……――」
5月16日(土)
~放課後、イノヤ~
恒一「うーん、この1週間いろいろと手を尽くしてみたけど……」
赤沢「周囲の人間どころか死者本人にも自覚がないんじゃお手上げよ」ハァ
見崎「……」
恒一「あと1歩なのになあ……」
赤沢「死者を見分ける手段さえ分かれば……もう!」ムキー
見崎「……あのね、2人とも」
恒一「なになに、もしかしてなにか思いついた?」
見崎「ううん、違うの。ただ、死者を死に還すって方法に固執しすぎかと思って」
赤沢「でも……」
見崎「死者を特定したからって、そこから先どうするかはまだ決まってないんだよ」
恒一「うーん……進展もないし、ここは一度原点に立ち返って考え直してみるべきなのかな」
見崎「それで考えてみたんだけど、怜子さんもわたしたちと同じように“災厄”を止めるために調べてたと思うの」
「だから榊原くんさえ良ければだけど……怜子さんの当時のノートとか日記を調べることはできない?」
――ガララッ…
恒一「ただいまー」
民江「ハイハイおかえり――って、あら?」
恒一「2人は僕のクラスメイトで赤沢さんと見崎さん。2人とも、こっちは僕のお婆ちゃんだよ」
赤沢「お邪魔します」ペコリ
見崎「……」ペコ
民江「あらあら、恒一くんも隅に置けないわね」フフ
恒一「そんなんじゃないってば、怜子さんの教え子だったって聞いて連れてきたんだよ」
民江「まあ、怜子の……」パチクリ
恒一「部活で一緒に描いた絵を見たいんだってさ。2人を怜子さんの部屋に通しても良いかな?」
民江「ええもちろん、きっと怜子も喜ぶわ。ささ、こっちよ」
赤沢「……なんだか騙してるみたいで心苦しいわね」ヒソヒソ
見崎「わたしは本当に教え子だったからべつに」シレッ
恒一「ほら、2人とも行くよー」
恒一「さて、じゃあ1つずつダンボールを開けていってみようか」
赤沢「とは言ってもけっこうな数あるわね……」
恒一「あはは、うちのお婆ちゃんはなんでも残しておく人だからね」
見崎「3人で手分けすれば夕方までには片付く、かな」
恒一「何かそれっぽいもの見つけたら報告するようにしよう、1人じゃ判断がつかないかもしれないしね」
赤沢「それじゃあ調査開始よ!」キリッ
・
・
・
赤沢「見つからないわ!」ムリッ
恒一「でも怜子さんが僕たちと同じように奔走してたっていうのは確かだったね」
赤沢「ええ。しかも担任になってからじゃなくって、15年前からずっと」
恒一「怜子さんは僕の母さんの死に責任を感じていて、それで……」
「元3組の生徒がどうして夜見北に戻ってきたのか疑問だったけど、“災厄”を止めるためだったんだね……」
見崎「……いいえ」
赤沢「ちょっと一緒に調べてたけど、あっちは恒一くんのお母さんの遺品が主だったみたい」
恒一「そっか母さんの……あとで個人的に見てみるよ、ありがとう」
赤沢「ダンボールは全部開けたし、これ以上の収穫は見込めなさそうかしら」
恒一「良い案だと思ったんだけどね……まあそう上手くはいかないか」
見崎「……ごめんなさい」
赤沢「見崎さんが謝ることないわよ、明日からまた新しい策を考えてみましょう?」
見崎「……うん」
恒一「さて、今日のところはそろそろお開きにしようか」
赤沢「そうね、もう良い時間だしこれ以上いたら家の人のお邪魔になっちゃう」
恒一「別にそんなことないと思うけど……良かったらうちでご飯でも食べてく?」
赤沢「えっ!?」ドキッ
赤沢「そんないきなりご家族と食事だなんて……」アワワ
「そ、そうだ! 見崎さんはどうするの?」チラッ
見崎「わたしは……ううん、今日は帰らなくっちゃいけないから」
「でも赤沢さんはご馳走になっていくんでしょう?」
赤沢「えっ、私もがっ!?」
恒一「分かった、じゃあお婆ちゃんに1人増えるって言ってくるからちょっと待っててね」
赤沢「んー……!」モガモガ
見崎「諦めてカレー食べるの、チャンスは活かす」
赤沢「むー……」
見崎「よし。それじゃあわたし帰るわね」パッ
赤沢「えっ、恒一くん帰ってくるまで待ってないの?」
見崎「……急いでるからごめんなさい。榊原くんによろしく伝えておいて」
赤沢「分かったわ、帰り道気をつけるのよ」
見崎「ええ……またね」ソソクサ
赤沢「なんか急ぎの用があるそうでもう帰っちゃったわ、恒一くんによろしくって」
恒一「そっか、なんだか今日は特に元気ないように見えたけど大丈夫かな」
赤沢「もう5月も半ばだし焦りを感じているのかもしれないわね」
「ねえ、原点に立ち返るつもりで千曳さんに相談してみるっていうのはどうかしら?」
恒一「千曳さんかー……うーん」
赤沢「あまり乗り気じゃない?」
恒一「えっと、僕の母さんも犠牲者だったらしいって話はしたっけ?」
赤沢「恒一くんを生むために夜見山に帰省していて、出産後間もなく……だったわね」
恒一「そうそう。で、それを千曳さんは把握できてなかったんだよね」
「今年度の犠牲者である未咲さんのこともあるし、今までもそういう見落としがあったかもしれない」
「始まりの年の担任で“現象”を出現させた張本人の1人なのに、自分は被害の及ばない安全な立場に退いているし」
「気味が悪いからって夜見山岬の写り込んだ始まりの年の集合写真は処分しちゃうし」
「怜子さんが命を省みずに教師として戻ってきたのを知っちゃうと、本気で取り組んでくれているのかなってどうしても思っちゃうんだよね」
赤沢「うーん、言われてみればちょっと無の……いえ、頼りにならなそうね…」
赤沢「そうね、一応カセットテープも千曳さんに保管しておいてもらった方が良いと思うわ」
恒一「そのほうが来年度以降の生徒たちの参考になる、か」
赤沢「来年度以降……そうよね、“災厄”を止められても“現象”がなくなるわけじゃないんだもの」
恒一「僕らも松永さんと同じように、後輩たちに託すことしか出来ないのかな」
赤沢「……いえ、私はそんな他人任せなことしたくないわ」
「怜子さんがそうしたように、卒業してからだって“現象”に立ち向かうことはできるんだから」
「私は絶対に、何があってもいつか必ずこの負の連鎖を断ち切ってみせる!」
恒一「赤沢さん……僕も一緒に頑張らせてよ、ここまできたら一蓮托生だと思ってさ」
赤沢「一蓮托生!? つ、つまりそれは、卒業してからもずっと一緒に……?」モジモジ
恒一「赤沢さん?」
赤沢「あ、あのね恒一くん、私恒一くんのことが――」
民江「2人ともー、カレーできたわよー!」
恒一「お、もう夕飯みたいだね、それじゃ行こうか」スタスタ
赤沢「……うん、カレー楽しみだなあ」グスン
見崎「……」ピラッ
「……現実を直視する勇気、か」
「見たくなくても、見ないわけにはいかないんだよね……」
「逃げるのはもう、やめにしなきゃ……」
――ピポパ プルルルル プルルルル プル…
「……こんな夜更けにごめんなさい」
「話したいことがあるの、大事な話」
「ううん、直接がいい」
「できれば明日……ええ、うん、空いてるかな」
「そう……じゃあ明日、うちに来て」
「ええ、また明日……」
――ピッ ツーツーツーツーツー…
~見崎の家~
見崎「いらっしゃい、榊原くん」
赤沢「昨日はカレーご馳走様、美味しかったわ」
恒一「あれ、赤沢さんも来てたんだ」
赤沢「見崎さんに呼ばれてね」
恒一「そうなんだ。それで、電話でも言ってたけど大事な話っていうのはなんなのかな?」
見崎「……わたし、今まで2人に秘密にしていたことがあるの」
「2人は未咲のこと黙っていたのを許してくれたのに、また隠し事なんて……ごめんなさい」
恒一「良いんだよ見崎、友達同士だって隠し事の1つや2つあるものなんだから」
赤沢「恒一くんの言うとおりよ。それに見崎さんはこうして話そうとしてくれてるじゃない」
見崎「……ありがとう、2人とも」
「わたしの隠し事というのはね、この眼帯の下……義眼の持つ力のことなの」
見崎「赤沢さんには見せたよね、この義眼」
赤沢「ええ、綺麗なガラスの瞳だったけど……」
見崎「どうして眼帯で隠すのかっていう赤沢さんの質問に、わたしがなんて答えたか覚えてる?」
赤沢「えっと……『変なものは見えない方がいいから』だっけ?」
見崎「そう。赤沢さんは義眼を見えないようにしてるんだと勘違いしていたけど、それは間違い」
「隠しているのは……このガラスの瞳が映す景色のほうよ」
恒一「どういうこと?」
見崎「左目を病気で失ったときに臨死体験をしたからかな、この義眼は死の色が見えてしまうの」
赤沢「死の色って……?」
見崎「病気だったり怪我だったり、あるいは死体だったり」
「死に近い存在をこの義眼を通して見るとね、その存在に不思議な色が重なって見えてしまうの」
「日常に死が溢れているのを直視したくないから、普段はこの眼帯で見えないように封じているの」
「それでも2人に言い出せなかったのは……やっぱりわたしが臆病だったから」
「だってこんな話、普通信じてもらえないでしょう?」
「ううん、少し頭のおかしな子だと思われてしまうかもしれない、それはまだ良いの」
「もし仮に信じてもらえたとして、死が見えるなんて気味が悪いと拒絶されてしまうのが怖かった」
「だから『死者を見たことがないからこの瞳を使っても確証は持てない』なんて自分に言い訳をして……」
「ううん違う、本当に逃げていたのは……ほんとは……」
赤沢「……いいのよ、話してくれてありがとう」ギュッ
「見崎さんが冗談でこんなこと言う人じゃないって分かってるし、ましてや気味が悪いなんて思ったりしないわ」ナデナデ
「恒一くんだってそうでしょ?」
恒一「うん、もちろんだよ。友達のことをそんな風に思ったりするもんか」
見崎「でも……っ」
赤沢「いーいーのっ」ギュッ
恒一「見崎、その力を僕たちに貸してくれるね?」
赤沢「お願いよ、見崎さん」
恒一「きっかけ?」
見崎「これ。勝手に持ち出しちゃってごめんなさい」スッ
恒一「これは……」
赤沢「集合写真?」
見崎「昨日家にお邪魔したときに、榊原くんのお母さんの遺品の中から見つけたものよ」
恒一「じゃあこれは……26年前の3年3組の?」
見崎「ええ。始まりの年、すべてのきっかけとなったあの写真が、それ」
赤沢「じゃあこの中に夜見山岬が……って一目瞭然ね、これは……」ヒキッ
恒一「どれどれ……ってうわぁ、もっとうっすら控えめに写ってるのかと思ってたのに……」
見崎「今までは死者をこの義眼で見たことがなかったから死者の色が分からなくて足踏みしていた」
「でもこの写真のおかげでその色がやっと分かった……ううん、分かってしまったの」
赤沢「すごいじゃない、じゃあこれで明日から死者探しが出来るわね!」
見崎「いいえ、その必要はないわ」フルフル
「……死者が誰なのか、もう分かっているから」
見崎「いいえ、学校では一度も」
赤沢「それじゃあいつ確かめたの?」
見崎「……」
恒一「見崎?」
見崎「せっかく綺麗な瞳だって、褒めてくれたのに……」
赤沢「……え?」
見崎「お風呂でこの色が見えたとき、きっと未咲と同じように死の危険が迫ってるんだ、今度こそ守らなきゃって思ったの」
「ううん、そう思い込もうとしただけで、本当はあの時から心の底では分かってたのかもしれない」
「死者を死に還せば解決するってわかったのにこの義眼の力を明かさなかったのも、現実を直視したくなかったから……」
「だって赤沢さんが死者だなんて、何があってもわたしは認めたくなかった……!」
赤沢「私が、死者……?」
「だってほら、僕と赤沢さんは1年半前に会ってるんだよ? 従兄のお兄さんを亡くして泣いてる姿を今でも覚えてるし……」
見崎「赤沢さんはきっと、榊原くんと会ったそのあとに亡くなってるんだと思う」
恒一「そ、それはないよ、僕も前ある人に騙されかけたけど2親等外じゃ“災厄”の犠牲にはならないんだ、従兄妹の赤沢さんは対象外なんだよ」
見崎「……ねえ、赤沢さん。従兄のお兄さんって、本当に従兄だった?」
赤沢「!」
恒一「なにを言ってるんだよ見崎、そんな嘘をつく必要なんてないし千曳さんも2人は従兄妹だって……」
見崎「嘘? 赤沢さんの口から2人が従兄妹だって言葉、榊原くんは聞いた? わたしは聞いてないよ」
「……わたしはずっと引っかかってた。どうして赤沢さんはわたしにこんなに親切にしてくれるんだろうって」
赤沢「それ、は……」
見崎「大切な従兄を失って執念で対策係にまでなったような人が、その原因でもあった〈いないもの〉対策を止めてまで……どうして?」
「そこでね、最初にわたしを認めてくれたときの赤沢さんのセリフを思い出したの」
「『見崎さんも私と同じだったの?』」
「あれは家族を失ったことだけじゃなく、家庭環境も含めて同情していたんじゃないか……って」
「ねえ赤沢さん、あなたも養子なんじゃない? だから従兄のお兄さんとは実の兄妹だった、違う?」
「でも私が養子っていうところだけ間違い。養子だったのはおにぃの方よ」
恒一「なっ……!」
赤沢「私が生まれた家は赤沢家の親戚で、だけど余り裕福とは言えない家庭だった」
「一方赤沢家は子宝に恵まれず跡継ぎを欲していてね、うちから兄の和馬を養子として引き取ることにしたの」
「そうして私は1人残され、2人は従兄妹として過ごすことになったわ」
見崎「本当にうちとそっくりね……」
赤沢「見崎さんの家と違うのは両親があっけなく死んでしまったことね。事故だったそうだけど……よく覚えてないわ」
「おにぃを養子に取った縁で私も今の赤沢家に引き取ってもらえたんだけど、跡継ぎとして望まれた兄と違って養子にする必要はなかったみたい」
「だから兄とはまた兄妹のように暮らせるようにはなったけど、戸籍上は従兄妹のままだったってわけ」
「……つまり、1年半前に私が死んでいる可能性は大いにあるってことね」
恒一「で、でも……」
赤沢「そして私は見崎さんの言うことを信じてる、だって友達だもの」
「……私が死ぬことで今年の“災厄”は止まるのね。だったらすることは1つよ」
見崎「……っ」フルフル
赤沢「それにごめんなさい見崎さん、私のせいで妹さんを失わせてしまって」
見崎「そ、んな……っ、赤沢さんのせいなんかじゃ……っ」
赤沢「見崎さんのおかげでこれ以上犠牲者を増やす前に逝ける、ありがとう」
恒一「……赤沢さん、本気なの?」
赤沢「ええ。記憶の改竄ってあまり強固なものじゃないみたい、見崎さんに指摘してもらったら少しだけど記憶が戻ってきたわ」
「確かに私は死んでる。河原で恒一くんと別れた帰り道にトラックが迫ってきて――ううん、そんなことはどうでもいいわね」
「このまま私が卒業まで居座っていたら、恒一くんや見崎さんまで殺してしまうことになるかもしれない」
「私はそんなの御免よ、私のせいで2人が死んでしまうなんてことあって欲しくないわ」
「それに身体を張って“災厄”を止めるなんて、対策係としてこれ以上ない有能っぷりじゃない?」フフ
見崎「忘れたくなんて、ない……」クスン
「……そうだ……しゃしん」
赤沢「え?」
見崎「写真、撮ろう……?」ギュッ
恒一「見崎……」
見崎「この義眼があれば写真の赤沢さんのことずっと見えるはずだから、忘れずにいられると思うの」クスン
恒一「うん、そうだよ! 松永さんだって教室に隠したテープのこと思い出せたんだし、赤沢さんだって記憶が戻ったんだ」
「きっかけがあればきっと思い出せる、赤沢さんのことを忘れたりなんかしないし、そんなことはさせないよ」
赤沢「2人とも……ありがとう」ウルッ
恒一「うん、お願いできるかな」
見崎「少し時間がかかると思うから……ねえ、赤沢さん」
赤沢「なにかしら?」
見崎「しばらく2人きりだから、頑張って」ヒソヒソ
赤沢「え、それって……?」
見崎「ベッドは自由につかっていいから」ヒソヒソ
赤沢「え、えーっ!?」ガタッ
恒一「なに? どうしたの?」
見崎「乙女の秘密」
「それじゃあ行ってきます、ごゆっくり」
恒一「う、うん?」
赤沢「」プシュー
・
・
・
赤沢「おっ、おかえりなさいっ」
恒一「お、おかえりミサキ」
見崎「……挙動不審すぎ」
恒一「あ、あははー」ポリポリ
見崎「あれ?」
赤沢「な、なによ?」
見崎「シーツが乱れてない……」
赤沢「そんなことするわけないでしょ!?」
見崎「じゃあなにをしたの?」
赤沢「そっ、それは……その……」モジモジ
恒一「わあこのカメラってばレトロでかっくいー!」
見崎「……まあいいわ、写真の準備しましょうか」クス
「やっぱり恒一くんじゃない?」
「わたしは赤沢さんの隣じゃなきゃイヤ」
「あはは……」
「っていうか何枚も撮れば良いんじゃないの?」
「……じゃあ榊原くんの隣で今は我慢する」
「はいはい、じゃあセルフタイマーをセットして、と……」
「あ、ぴかぴかし出した」
「はやく戻ってこないと!」
「うん今行くよ――ってうわあ!?」
「ちょっ!?」
「きゃっ」
――カシャ!
3月13日(土)
~卒業式後~
久保寺「クラス全員で無事に卒業できるなんて、こんな嬉しい日はありません……うう」グス
綾野「もぉー、くぼっちったら大げさなんだから」ケラケラ
勅使河原「そうっすよ、結局今年は〈ない年〉だったってだけなんですから」
桜木「でも何にせよみんなで卒業式を迎えられたのは素敵なことですよぉ」
中尾「うーん……」
杉浦「どうかした? 気分でも悪い?」
中尾「いや、なんか忘れてる気がしたんだけど……気のせいだよな」ウーン
風見「ところでみんな、せっかくだし集合写真でも撮らないかい?」
小椋「お、いいじゃん。あたしカメラ持ってきてるよ」
久保寺「よし、それでは……あ、千曳さん調度良いところに」
千曳「む?」
・
・
・
見崎「仕方ないよ、わたしたちもこの写真があるから覚えていられるんだから」
恒一「見崎はまだはっきりと見える?」
見崎「ええ、この左目がある限り」
恒一「そっか……僕は段々薄れてきちゃってる、記憶も一緒に消えてしまわないか不安でしょうがないよ」
見崎「だいじょうぶ、わたしがちゃんと思い出させてあげるから」
恒一「うん、頼りにしてるよ」
見崎「榊原くんはこれからどうするの?」
恒一「まずは東京の高校に通って、それから大学に進学するつもりだよ」
見崎「大学に? お父さんの後を継ぐの?」
恒一「あはは、まさか。僕はね、教師になろうと思ってるんだ」
見崎「もしかして……」
恒一「うん。怜子さんと同じように夜見北に戻ってくるつもりだよ」
見崎「でもそれだと“災厄”の犠牲になるだけになってしまうかも……」
恒一「ああ、それなら大丈夫。ちゃんと手は考えてあるんだ、実はね――」
~夜見山北中学校、校門前~
赤沢「今までお世話になりました」ペコリ
未咲「お世話になりましたー!」ペコッ
恒一「2人とも今までお疲れ様、ゆっくり休むんだよ」
未咲「いやいや、先生と違って私たちまだまだ若いんで元気あり余ってますよー」エヘヘ
赤沢「ええ。むしろこれからが大変なんですよ、花の女子高生ですから」クスクス
恒一「それもそっか、これは一本取られたよ」ハハ
赤沢「……えっと」ソワソワ
未咲「ほーら、泉美っ」
赤沢「う、うん……あの先生、卒業しても手紙とか書いてもかまいませんか?」モジモジ
恒一「――うん、楽しみに待ってるよ」ニコッ
未咲「きゃー! 良いな良いな、私も恋してやるー!」ダッ――スゥ…
赤沢「あ、待ちなさいよ未咲ー! そ、それじゃ先生またっ!」パタパタ――スゥ…
恒一「……2人とも、卒業おめでとう」
恒一「うん、ここまであっという間のようで長かったなあ」
見崎「当時が懐かしいわ。最初にこの計画を聞かされたときは驚いたけど」
「『“現象”で紛れ込む死者は“災厄”の犠牲者に限られている、そして卒業した死者が再び死者として紛れ込んだ例は一度もない』」
「『なら“災厄”で死んだすべての生徒を卒業させてしまえば、死者が紛れ込むという“現象”自体起こりようがなくなるはすだ』」
「……ここまではなるほどって思って聞いてたけど、まさかクラス30名全員死者にするなんて正気を疑ったわ」
恒一「1年に1人じゃ効率悪いし、〈いないもの〉対策も完璧じゃないから“災厄”が起きちゃう可能性があったからね」
「その点クラス全員を死者にしてしまえば“災厄”で死者が死ぬことはないし、まとめて30人も卒業させられるんだ」
「何より〈いないもの〉になって寂しい思いをする生徒を作らなくって済むしね」ニコ
見崎「それにしてもこんな無茶苦茶な話、よくあの校長先生を納得させられたね。わたしたちが3組の頃の校長でしょう?」
「あの人が榊原くんの席を勝手に用意したせいで対策が遅れたんだと思うと……今でもあの人のこと好きになれない……」
恒一「当時“災厄”に無理解の校長を先生たちが説き伏せよう奮闘したらしいから、それで逆に頑なになっちゃったのかもしれないね」
「世迷言をぬかしてるから備品管理も満足に出来ないんだ、ほら見ろ転校生の分の座席がまだ用意されてないじゃないかって具合にさ」
「まあ僕らが卒業したあとやっぱり“災厄”が続いちゃって、精神的にどんどん追い詰められていったみたいだよ」
「夜見北に戻ってきて僕が何とかしてみますって申し出たときにはすがり付くように頼んできて、少し不憫なくらいだったからね」
恒一「千曳さんの資料だけじゃ不安だから興信所でも調べてもらったけど、これで全員卒業してもらえたはずだよ」
見崎「そう……」
恒一「見崎にもずいぶん長いこと付き合ってもらっちゃったね、ごめん」
見崎「いいの、わたしたち3人で“現象”を何とかするって約束したんだから」
恒一「そっか……うん、そうだね。じゃあ、ありがとうかな」
見崎「ええ。それに未咲が元気に卒業する姿も見れたから、満足だよ」
恒一「そうそう美咲さんと言えば、双子とは聞いてたけど本当見崎そっくりでびっくりしたよ」
「赤沢さんのスカートめくってケラケラ笑いながら逃げる見崎と同じ顔っていうのは、すごいシュールだった」
見崎「あの子のセクハラ癖は相変わらずか」クス
恒一「それにしても、未咲さんと話さなくって良かったの?」
見崎「うん、過去に縛られるのはよくないから」
「もう逃げたりしない。見たくないものだって見るし、前を向いて歩くことに決めたの」
恒一「そっか……見崎も成長したんだなあ」
見崎「このまま工房Mで働くのも手だけど、せっかくだし東京に行こうかと思ってるの」
恒一「東京か……人が多くて賑やかだから、見崎は少し苦手な環境かもしれないよ?」
見崎「それでも構わないわ。未咲と赤沢さんが焦がれていた東京で、少し自分を見つめ直してみたい」
恒一「そっか、そこまで決意が固いなら応援するよ。出立の日取りはもう決まってるの?」
見崎「ええ、実は明日にでもと思って」
恒一「そっか、じゃあ帰ったらすぐに準備しなくちゃだね」ハハ
見崎「……ねえ、榊原くん」
恒一「うん?」
見崎「これからしばらく会えなくなっちゃうけど、ずっと友達でいてくれる?」
恒一「それはもちろんだよ、見崎だって赤沢さんと友達のままでしょ?」
見崎「うん……」
恒一「なら同じだよ、僕たちはずっと友達だ」
見崎「ありがとう。それじゃあ……」
恒一「うん、それじゃあ――」
―一「僕も消えないとね」
見崎「これで6回目。榊原くんが死んだ年を含めると7回目だよ」
恒一「ちなみに僕が死んだのは担任を始めて2年目?」
見崎「ええ。夜見山岬を喚び込んだ始まりの年と同じように、死んだ生徒30人と教師1人を〈いる者〉として扱って1人芝居をしたのが最初の年」
「卒業写真には目論見通り31人分の死者が写り込んで、翌年からは生徒30人教師1人の全員が死者というクラスになって……ただ1人の生者である榊原くんは“災厄”から逃れられなかった」
恒一「ああ、そうそう。確かお爺ちゃんが死んじゃってお婆ちゃんは父さんが東京に引き取ったから、それで遠慮なくこの計画を実行できたんだよねー」
「その後のクラス運営は……そうだ、千曳さんに事情を話して籍を置かない形で教鞭を揮ってもらう約束をしたんだった」
見崎「そして翌年、唯一教師で死者になる可能性のあった怜子さんは最初の年に卒業させているから、榊原くんは確実に紛れ込むことができたってわけ」
恒一「うんうん、段々思い出してきた……ちなみに卒業式を迎える度に見崎に自分が死者だってこと教えてもらってたの?」
見崎「ええ。少なからずでも自覚があったのは今回が初めてだったから、ちょっと驚いてる」
恒一「最後の年になるから“現象”もサービスしてくれたのかな」ハハ
見崎「むしろ逆じゃないかな」
「あなたに卒業されたら“現象”が終わってしまうから、それを避けるために死者だと自覚させて自殺を促してるんだと思う」
恒一「あー、今まで毎年卒業門をくぐらないように自殺してリセットしてたんだよね? それで“現象”も知恵を付けたのかな」
見崎「ただの“現象”にそんな思考があるのかは分からないけど、可能性としてはあり得るかも」
見崎「ううん、現実から目を背けるのはもう止めにするって決めてたから」
恒一「そっか……今まで本当にありがとう」
見崎「榊原くんもお疲れさま、そっちで赤沢さんと仲良く待っててね」
「また3人で遊べるの、楽しみにしてる、から……」
恒一「こらこら、さっき前を向いて歩くって言ったばかりじゃないか。うつむいてたら赤沢さんに叱られるよ」
見崎「ええ……」コシコシ
恒一「僕たちはハワイアンコナでも飲みながらのんびり待ってるからさ、見崎はゆっくりおいでよ」
見崎「うん……ありがとう」
恒一「さて、と。それじゃ今度こそ僕は行くとするよ」
見崎「ええ、いってらっしゃい」
「卒業、おめでとう――」
おわり
乙
乙
乙
Entry ⇒ 2012.08.27 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
穏乃「私も必殺技が欲しい!」 憧「は?」
穏乃「違うよ、麻雀の話! 私もここぞっていう時の必殺技が欲しいんだ!」
穏乃「場の流れが見える能力とか、ツモる牌が分かる能力とか、決まった種類の牌が必ず手牌に来る能力とか……」
憧「バッカねーしず。そんな能力なんてあるわけ……いや、あるか」
穏乃「だろ? だから、私も全国の猛者と互角に戦う為の必殺技とか能力が欲しいんだ」
憧「んなこと言われても……」
憧「あたしに言われても……そういうのは玄とか宥姉に聞いた方がいいんじゃないの?」
穏乃「うん。でもあの二人を見ていても何も得られなかった」
憧「そうなんだ……」
穏乃「というわけで、他校の生徒に聞きに行こう!」
憧「他校のって……マジでいってんの?」
穏乃「大マジだ! まずは>>6のところに行く!」
憧「花田さんって……誰よそれ」
穏乃「覚えてないのか。あのすばらすばら言う人」
憧「ああ、あの人か……。でもあの人って能力持ちじゃないんじゃ、」
穏乃「行くぞ! 新道寺へ!」
憧「……って聞いてないし!」
穏乃「まぁ、そこは大人の事情って事で……こんにちはー! 阿知賀女子麻雀部の高鴨穏乃です!」
姫子「阿知賀……? おお、遠い所からお疲れ様ですばい」
穏乃「花田煌さん、いますかっ?」
姫子「花田? さっきまでいたとですが……なんの用事で?」
穏乃「はい! 実は花田さんの強さの秘訣を伝授していただきたく!」
姫子「花田の……それはやめときんさい」
穏乃「なんで……ですか?」
憧(うわぁ……リアル熊本弁や)
姫子「……けどな、やっぱり」
「私になんのご用ですかなー?」
憧「え!? どこから声が……」
穏乃「憧! 雀卓の下から変な毛が……!」
憧「え……? うわっ、きしょっ!」
「ふふふ……どこからともなく現れる……」
煌「すばらですっ!」
姫子「ど、どこから出てきよるんじゃ、アホっ」
穏乃「花田さんっ! お願いがあります」
煌「はぁ……私に、ですか?」
穏乃「はい! 花田さんの強さの秘訣を、ずばり教えて下さい!」
煌「私の強さの秘訣……ですか」
穏乃「花田さんは、過去、一度も飛ばされたことはないと聞きました。つまり、それをなせるほどの秘密がなにかあるのではないかと」
煌「……いや、そんなのありませんし」
穏乃「ええっ!?」
煌「それに、仮にそんなものがあるとしたら、他の部員に聞いた方が賢明ですよ」
姫子「花田……」
憧(あれ……? なんかノリで来たのに、すごい真面目な雰囲気になってるんだけど)
穏乃「でも……それでも、なにか、花田さんの支えになっているものが知りたいんです」
煌「……分かりました。そこまで言うならお教えしましょう」
穏乃「本当ですかっ!? ありがとうございます。では、その極意を……」
煌「ええ。その極意とは……」
穏乃「極意とは……?」
穏乃「はい、ありがとうございました!」
憧「え? 今ので分かったの!?」
穏乃「もう十分。まさか憧、分からなかったのか?」
憧「いや、さっぱり……なによすばらって」
煌「ほぉ。これがすぐ理解できるとは、すばらですね。あなたとはとてもすばらな関係になれそうです」
穏乃「はい! 私もすばらに励むようがんばります!」
憧「もうついて行けないわ……」
姫子「同じくやけど、すばらの言葉を別の言葉に置き換えれば、理解できますばい」
憧「別の言葉……ね」
憧(今までのすばらをホモセクシャルに置き換えたとしたら……)
憧「なるほど。理解したわ」
えっ
憧「はやっ!? まぁいいわ。何か得るものがあったんでしょ?」
穏乃「当然! 早速、打ってみよう! 玄さーん、宥さーん!」
宥「……今から麻雀? いいけど……」
玄「なにか試したいことがあるの? 私でいいなら相手になるよ」
憧「よりによって、この能力姉妹か……」
穏乃「いいじゃないか、憧。敵は強い方がやりがいがあるってもんだよ。この展開……すばらです!」
憧「うわ……早速使ってるし」
穏乃「というわけで、玄さん、宥さん。手加減なしで来て下さいね!」
宥「よろしくお願いします……」
玄「お任せあれ!」
穏乃「……」
憧「確かに、飛んでないわね。あと満貫一回で飛んでたけど」
穏乃「……うう、すごく……すばらじゃない……」
玄「穏乃ちゃん。もう一回やる?」
穏乃「いや、やりません」キッパリ
憧「こらこら。それじゃなんの意味もないでしょ」
穏乃「そもそも花田さんに聞いたのが間違いだったんだ。正直、すばらってなんなのか分からないし」
憧「分かんないのかよっ」
穏乃「憧は理解できたのか?」
憧「当然! 理解できて……ない、よ……」
穏乃「だよね。やっぱり人それぞれの世界観とかってあるし!」
憧「そ、そうよね!」
憧「しず。もうやめない?」
穏乃「やめない! 私たちはもっと強くならないといけないんだ!」
穏乃「全国で和と遊ぶんだろ!?」
憧「そうだけどさ……」
穏乃「じゃあ、次は>>46に会いにいく!」
穏乃「ほら、宮守女子だよ。Bブロックの」
憧「ああ。そういえばいたわね……しずって、以外と他校のメンバー詳しいわね」
穏乃「いやぁ、それほどでも……んじゃ、行くか。岩手県!」
憧「北から南へと……大忙しだわ」
穏乃「こんにちわ! 小瀬川さんに姉帯さん、いますか-っ?」
「エッ……ダレデスカ」
憧「が、外国人!?」
「エート……」
憧「もしかして、あたしたち間違えて外国に来ちゃったんじゃないの?」
穏乃「いや、そんなはずは……確かにここは岩手のはず」
憧「とりあえず……名前は? じゃなくて……ワッツユアネーム?」
エイスリン「エイスリン……デス」
憧「エイスリンさん。だって。一応日本語通じるのね」
穏乃「エイスリンさん。小瀬川さんと姉帯さんっていますか?」
エイスリン「……シロ?」
穏乃「シロ? よくわかんないけど、多分その人」
「お客さん? だる……」
穏乃「噂をすれば……小瀬川さん!」
白望「なに……なんかよう?」
穏乃「はい! 私を弟子にしてください!」
憧「単刀直入!?」
白望「やだ」
憧「しかも即、断られてるし」
エイスリン「……!」カキカキ
エイスリン「……」サッ
穏乃「? なんですか、この絵は」
白望「おととい来やがれ、だって」
憧「絵の意味、わかるの!?」
白望「だるいから、さっさと言って……」
穏乃「是非、小瀬川さんの強さの秘訣を教えて下さい!」
白望「秘密? 別にないけど……」
穏乃「またそのパターンか……」
憧「しず。もう諦めなよ」
穏乃「いや、能力を開花させる糸口を掴むまでは、阿知賀には帰れないよ」
白望「能力?」
穏乃「はい。能力です。とても欲しいと思います」
憧「なんでカタコト?」
白望「能力を求めてるんだったら、私よりもトヨネのほうがいい。ついてきて。案内してやる」
穏乃「本当ですかっ!? ありがとうございます!」
憧「なんか迷惑ばっかりかけてる気がする……」
白望「だる……」
「いるよー」
白望「いるみたいだ。じゃあ、かえる……」
穏乃「はい。お世話になりました!」
穏乃「……失礼します! 阿知賀女子麻雀部の高鴨穏乃です! と、ついでに新子憧です」
憧「ついでは余計よ、ばか」
「はーい。何か用?」
穏乃「はい。実は小瀬川さんから能力のことを聞くなら姉帯さんのほうがいいって……って、でかっ!?」
豊音「能力? なんのことかなー」
穏乃「聞くところによると、姉帯さんはおっかけリーチの天才だとか」
豊音「おっかけか-。確かにそうとも言えなくはないねー。けど、私の能力は一つじゃないし」
穏乃「え? 他にもあるんですか?」
豊音「うん。多分ジャージさんにはこっちの方が合ってると思う。知りたい?」
穏乃「ぜひ、お願いしますっ!」
豊音「じゃあ、まずはね……」
憧「相変わらずの超展開ね。っていうか、あれからあたしを部屋から追い出して二人だけで特訓してたけど、なにしてたのよ」
穏乃「ふっふーん。秘密の特訓だよ」
憧「あんた、糸口を掴むまでは阿知賀に帰れないとか言ってたけど、今度はちゃんと得るものあったんでしょうね?」
穏乃「当然! なら、先に憧には見せておいてもいいかな……」
憧「自信満々ね……。なら、見せてみなさいよ」
穏乃「行くぞ……姉帯さん直伝。必殺、裸単騎!」
ジィ~ッ……バサッ!
憧「って、うわぁああぁぁあっ!? なにしてんのよバカしず!?」
穏乃「何って、裸単騎だよ。この一糸纏わない捨て身の裸体。これこそ、裸単騎の神髄だ!」
憧「神髄だ、じゃないわよ! 禁止、絶対禁止! 二度とやるな!」
憧「当たり前でしょ。あんたこの歳で連行されたいの?」
穏乃「今回も失敗か-。めげずに次は>>65に行きますか!」
憧「その前に服を着ろっ!」
憧「また九州か……。だったら新道寺にいったついでに来ればよかったでしょ」
穏乃「いいだろ。憧……大事なのは直感なんだ」
憧「はいはい。さっさと行くわよ。つーか、強豪校ばっか選ぶわね。その行動力は晴絵も顔負けだわ」
穏乃「憧。褒めても何も出ないぞ」
憧「いいから、さっさと結果を出しなさい」
穏乃「……こんにちはー。誰かいますか?」ガラッ
「はい。いますよー」
憧「うわ、巫女さんだ。生巫女さん!」
そうそう
憧「いやぁ。親近感っての? あたしのうちも神社だし」
「そうですか。それはそれは……」
穏乃「あなたは確か……神代小蒔さんですよね!」
小蒔「はい。以前お会いしたことってありましたっけ?」
穏乃「いえいえ、有名ですよ。その神代さんに折り入ってお願いがありまして……」
小蒔「なんでしょう?」
穏乃「神代さんの全国区のその力の秘密を、教えていただきたくはるばる奈良から来ました!」
小蒔「……」
穏乃「なので、能力の秘密を教えて下さい!」
小蒔「……」
穏乃「……あの、」
小蒔「……はっ! すみません、寝てました」
憧「今の流れでっ!? 巫女と天然さんかー……典型的な萌えキャラね」
穏乃「本当ですか! ありがとうございます」
神代「では、まずこれに着替えて下さい」
憧「これって……」
憧「巫女服じゃん! なんか久々に着たなー……。しずはどう? 着られた?」
穏乃「ばっちし!」ドンッ!
憧「へぇ-、以外と……って、下をはきなさい! 下を!」
穏乃「いいだろ。この方がしっくりくるんだ」
憧「もうなんでもいいわ……」
小蒔「着替えましたか。では、まずはその石の上に座って下さい」
憧「こ、こう……?」
穏乃「以外と楽そうだな……」
小蒔「そのまま、12時間座り続けます」
憧「できるかっ!」
穏乃「いやいや、12時間なんて無理ですって」
小蒔「そうですか……それでは修行になりませんね」
穏乃「もっと手っ取り早く出来る方法はないんですか!?」
小蒔「あるにはありますが……かなり過酷な修行になりますよ?」
穏乃「大丈夫ですっ! 絶対に耐え抜いてみせます!」
小蒔「分かりました。いい覚悟です。では、まずはその滝に飛び込んで下さい」
穏乃「えっ……!?」
憧「うわー……軽く10メートル以上はあるわね……」
穏乃「命綱とかってのは……」
小蒔「ないですね」
憧「しず、本気?」
穏乃「……! やっぱやめます。ごめんなさい」
憧「折れるの早っ!」
穏乃「5年!? そんなにかかるんですかっ?」
小蒔「当然です」
憧「巫女さんの道は甘くないわね……」
穏乃「すみません。実家に帰らせていただきます」
小蒔「わかりました。その巫女服は差し上げますので、また修行する気になったら来て下さいね。待ってます」
穏乃「……よし、憧。次いこうか」
憧「あんた……こりないわね」
穏乃「当然だ。>>82! そこに私の可能性がある!」
やえ「おお、初瀬……じゃない! 誰だお前!」
穏乃「やだなー。地区予選で戦った中じゃないですか」
やえ「ああ。阿知賀のジャージの子か。巫女服着てるから誰だか分からんかったわ」
憧「初瀬、おひさー! 地元だから安心するわ」
初瀬「あ、憧……? な、なによ突然。まさか私に会いに来てくれたの?」
憧「うん?」
初瀬「ま、まぁ? そりゃ腐れ縁の私たちだし、たまにはこうして合うのもいいけどさっ? 全国行ってから何の連絡もないって、ちょっと……冷たすぎない?」
初瀬「いや、別におまえの連絡を待ってたとかそういうんじゃないからな!?」
憧「あーごめん。忘れてたわ。それに今日は小走さんに会いにきたわけだから、ついでに初瀬にもあえてよかったよ」
初瀬「ついで……ついでか-……」
憧「どしたの?」
初瀬「な、なんでもないわよ、ばかっ!」
穏乃「はい。小走先輩の力の秘密を……って、今思えば、もう聞く必要もないんですよね」
やえ「ど、どういうことだそれっ?」
穏乃「いや、だって……もう超えた相手ですし、強者は後ろを振り返らないといいましょうか」
やえ「ふん! にわかが言ってくれるじゃないか」
やえ「だが、確かに負けたことは事実だ……。いいだろう。この小走やえが、特別に王者の打ち筋を伝授してやろう!」
穏乃「本当ですか? わーい(棒)」
やえ「なんか気に食わんな……」
やえ「まぁ、いい。やるからには本気だ。巫女コンビ、初瀬。卓につけ!」
初瀬(まさか小走先輩から直に指導をしてもらえるなんて……! やった!)
憧「あたしもですか? まぁいいけど」
穏乃「よろしくお願いしまーす(棒)」
穏乃「ありがとうございました」
憧「結局、普通に指導麻雀をやって終わったわね」
穏乃「なんとなくそんな気はしてたよ。にわかだし」
憧「でも、久しぶりに初瀬に会えたからよかったな。初瀬元気そうでよかったわ」
穏乃「……憧」
憧「なによ、しず。妬いてんのー?」
穏乃「そろそろ巫女服脱がないか?」
憧「そ、そうね……」
穏乃「……よし、いつも通りのジャージに着替えたし、気を取り直して>>94!」
憧「そろそろ、為になる相手を選んでよね」
憧「って、まさか……」
穏乃「決まってるだろ。王者白糸台高校のクールビューティー、弘世菫さんのところだ!」
憧「ちょっと……マジっ!?」
穏乃「というわけで、来ました。東京だよ、都だよ!」
憧「東京来るの久しぶりだなー。えーと、白糸台高校は……」
穏乃「こっちだ。んで、部室がこっちで……」
憧「なんでも知ってるのね、あんた」
穏乃「ここだ! 弘世さん。いますかー?」
「……なんだ。私に何か用か?」
穏乃「はい。阿知賀女子麻雀部の高鴨穏乃です! 弘世さんの強さの秘訣を教えて下さい!」
菫「阿知賀……あぁ、そういえばいたな。同じブロックに」
菫「断る。私は人に物を教える主義じゃないんだ」
穏乃「そこをなんとか……」
菫「見たところ、かなり思い詰めているようだな」
穏乃「はい。いろんな選手に聞き回っているんですが、得られたものがほとんど無くてですね……」
菫「わかった。わざわざ関西から来たんだ。ここで追い返すほど、私も人間ができていないわけじゃない」
穏乃「本当ですかっ!?」
菫「ただ、一つ条件がある」
穏乃「なんなりとっ」
菫「では、私とキスをしろ」
穏乃」「」
菫「そうか? 見たところ、そのジャージの子。まだ女というものを知らないようだからな」
憧「当たり前でしょ! しずよっ?」
菫「まぁ、私としてはきみでもいいんだが……」
憧「あ、あたしっ?」
菫「そうだ。きみはそれなりにできそうだからな……」
憧「いや、あたしだって……でも、それでしずが報われるのなら……」
憧「……わかった。やります」
菫「そう。私は潔い子は好きだよ」
穏乃「ちょっと憧っ!」
穏乃「邪魔するに決まってるだろっ!? 憧の貞操が奪われようとしてるんだぞ!」
憧「分かってるわよ……。でも、それでしずが強くなれるんだから、安い犠牲よ」
穏乃「だってしず……初めてなんだろっ?」
憧「……。しずは黙ってて」
穏乃「もういい……勝手にしろっ!」
菫「覚悟は決まったのか?」
憧「はい……いつでもいいですよ」
穏乃「……」
憧「は、はやくしなさいよ……」
穏乃(憧バカ……憧のバカっ! 人の気持ちも知らないで……)
菫「やる前に先に行っておくが……舌を入れてもかまわないな?」
憧「し、舌っ?」
菫「そうだ。ただ唇同士を付け合う子どものキスじゃない。舌と舌、体液と体液が絡み合う大人のキスだ」
憧「す、好きにしなさいよっ……」
菫「いい子だ。では……」
憧「あっ……!」
穏乃「うわぁぁああああーーーーーーーーーーーっ!!」
ドンッ!
菫「痛いな。なにをする」
憧「し、しず?」
穏乃「やっぱりダメだぁーーーっ!!」
穏乃「うるさい! 帰るぞ憧」
憧「痛っ!? ちょっと引っ張らないでよっ」
菫「くくっ……あははっ!」
穏乃「なにがおかしいっ!」
菫「いや。面白い反応をしてくれた、と思ってな」
穏乃「人をからかって……!」
菫「そうだ。からかった。もともとキスなんてするつもりはなかったさ。けど、合格だ」
穏乃「は……合格?」
菫「いくら私でも、見ず知らずの人といきなり接吻などしない。もとから寸止めで止めるつもりだった」
菫「まぁ、そこまでいってもジャージのきみが動かなかったら、その時点でさよなら、だったけどな」
穏乃「意味がよく分からないです」
菫「つまり、二人の仲と人間性を試したということさ。少なくとも、つまらない人間でないことは分かった。力になってやろう」
穏乃「……?」
憧「要するに、認めてもらったって事よ」
菫「気にするな。ここは怒っていいところだぞ」
穏乃「いや、なんか怒るを通り越して力が抜けたと言いますか……」
菫「でも、ツインテールの子とキスしたかったのは本当だ。もしよければ、いつでも相手になるよ」
穏乃「やっぱり怒ります! うがーっ!」
菫「ははは。面白いやつらだ」
憧「あはは……」
穏乃「はい。今まで会って来た人達は話しにならなくてですね……。それで、ついに王者白糸台高校にまで行き着いたわけですよ」
菫「そうか。それは懸命な判断だな。けど、私はそれを伝授することはできない」
穏乃「なっ……! どうしてですかっ?」
菫「どうしてかって……? 簡単だ。まだ阿知賀編の単行本では、私の実力が顕わになっていないからだ!」ドヤァ
憧「うわ、そう来たか……」
菫「それともう一つ、我が校には私よりも異能なやつがいるからな。そいつに聞いた方が早い」
穏乃「それって……!」
菫「そうだ。入ってこい……照!」
穏乃(照……宮永照……! 高校生最強の人だ……!)
照「……誰だ」
菫「ん?」
照「私のプリン……食いやがったの」
憧「ぷ、プリン……?」
照「……そうか」
穏乃「え……はぁっ?」
照「プリン……返してもらおうか」ギュルルル……
穏乃「なにを言っているのかさっぱり……って、うわぁっ!」
菫「……ってのは冗談だ。本当は淡が食べた」
照「……そう。後でお仕置きしないとな」
穏乃(た、助かった……のか? ていうかなんだあの右手……あれがあの人の能力……?)
穏乃「よろしくお願いしますっ!」
照「……」
憧「あのー……。宮永さんって、確かもっとこう、しゃきしゃきしてる人でしたよね」
照「……それがなにか」
憧「いや、インタビューの時と全然印象が違うなーって……。まさか、別人……妹とか?」
照「ふん……」スクッ
菫(あ、また出るぞ、あれが……)
憧「ど、どうしたんですか、いきなり立ち上がって……。変なこといったのなら謝りますけど……」
照「私に……」
照「私に妹などいない!!!!」ドンッ!
憧「あ、そうですか……」
穏乃「私もっと……強くなりたいんです!」
照「そうか。では一つだけ聞こう……」
穏乃「はいっ!」
照「お前に……妹はいるか」
穏乃「へ……?」
照「妹はいるかと聞いている」
穏乃「いや、いないですけど……」
照「そうか……。もう何も言うことはない。帰れ」
穏乃「なんでですかっ!?」
照「ましてや、姉のいないやつに最強を目指す資格などない……そうだよね、咲ぃ」
穏乃「は、はぁ……」
憧「なんか私の知ってる宮永さんのイメージとだいぶ違うなぁ……」
菫「これが素の照だ。知っている人間はごく僅かだけどな」
穏乃「じゃあ、私は……私はどうすれば強くなれるんですか!?」
照「仲間と共に……切磋琢磨」
穏乃「え……?」
照「今いる仲間を大事にして、みんなで強くなれ。お前は一人で強くなることはできない。限界がある」
照「だから、みんなで強くなって、そして私たちをチーム全員の力で倒しにこい」
穏乃「宮永さん……。はい、分かりました、ありがとうございましたっ!」
憧「宮永照……。やっぱりチャンピオンは言うことが違うわね……。敵わないわ」
照「まぁ、私たち姉妹の絆には敵わないけどな……。待っててね、咲ぃ」
憧「……あれ?」
菫「ああ。がんばれよ。新子憧ちゃん、だったな。また今度、二人でお茶でもしようか」
憧「遠慮します。お世話になりました」
菫「そうか。残念だ」
照「早く会いたいよ……咲ぃ」
憧「やっぱりさ、行き着く所は仲間、なのよね」
穏乃「そうだな。私、小さな事に囚われていて、周りが見えなくなってた」
憧「分かればいいのよ。さ、部室に戻って練習しましょ……みんなで」
穏乃「待って、憧」
憧「へ?」
穏乃「みんなの所に行く前に……憧に言いたいことがあるんだ」
憧「そ、それって……」
穏乃「憧……。私……」
憧「いや、ちょっとダメだって……まだ、心の準備が……」
穏乃「やっぱり裸単騎が一番効果あると思うんだ! 裸単騎!」
憧「えーと……何?」
穏乃「だから裸単騎だよ! 姉帯さんに教わっただろっ? やっぱりあれが一番、何かを得られた感じがするんだ」
穏乃「生まれながらの姿になることで、神経が研ぎ澄まされ、牌が見える……これだ、これだよ!」
憧「……はぁ」
穏乃「な、どうだ憧! よければ憧も一緒に!」
憧「ちょっとは、学習と反省をしろっ!」ゴツッ!
穏乃「いたぁっ!? なにすんだよ憧!」
憧「ふーん。もうしずなんてしらないんだからっ! べー!」
穏乃「な、そういう言い方ないだろっ! 待てよ、憧-!」
おわり
Entry ⇒ 2012.08.27 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
アスナ「なんか凄そうなアイテムドロップした」キリト「?」
アスナ「でもこれなんなんだろう?」
アスナ「呪われたりとかはなさそうだしちょっと付けてみようかな」
アスナ「……ん?」
アスナ(スキルが増えた?)
アスナ「なっ!?」
キリト「?」
アスナ(の、覗き見スキルレベルMAX!? なにこれ!?)
アスナ「う、ううんなんでもない!」
キリト「そうか、じゃあ先に行こうぜ」
アスナ「う、うん」
アスナ(このアイテムはまさか装備した人が覗き見スキルを得られるスキル用アクセサリなの?)
アスナ(にしたってMAXってどんだけよ)
アスナ(どんなことができるのかしら……少し興味があるわね)
キリト「おーい、今日は引き上げようぜ」
アスナ「あ、うん」
アスナ「あ、待って!」
キリト「どうしたんだ?」
アスナ「今日はもう遅いしあそこの宿で一泊しない?」
キリト「いや、帰るくらいなんでもないけど」
アスナ「いいから! それに少し明日も付き合って欲しいし!」
キリト「明日も!? 大丈夫なのか? 俺はソロだけどアスナはギルドがあるだろ?」
アスナ「だ、大丈夫よ」
キリト「まあそういうならいいけど」
アスナ「……キリト君、寝たかしら」
アスナ「……覗きスキル、開始」
アスナ「お、おおー、本当に壁が透視できる」
アスナ「これ凄いわ!」
アスナ「キリト君の部屋は……あ、いたいた」
アスナ「キリト君は寝てる寝てる」
アスナ「はぅ~キリト君の寝顔可愛いわぁ♪」
アスナ「あ、今寝返りうった」
アスナ「口が動いてる動いてる」
アスナ「猫みたいに顔をこすってwww……キリト君可愛い~」
アスナ「ん? 寝言言ってる?」
アスナ「確か覗きスキルの中に……あった!」
アスナ「盗み聞き発動」
キリト「……っ」
アスナ「?」
キリト「……チ」
アスナ「ち?」
キリト「……サチ」
アスナ「さち?」
アスナ「……サチ?」
アスナ「サチって誰?」
アスナ「聞いたことない名前……」
アスナ「でも、男の名前じゃ……ないわよね」
アスナ「……」
アスナ「キリト君に私以外にも女の知り合いがいる?」
アスナ「……それも寝言で呼んでしまうような間柄……」
アスナ「……」
アスナ(昨日はあれからほとんど眠れなかった)
アスナ(サチ)
アスナ(サチって一体誰なの?)
アスナ(……モヤモヤする)
キリト「アスナ? どうかしたか?」
アスナ「……ううん」
アスナ(キリト君には聞けない……)
アスナ(盗み聞きなんて、言えないし……)
アスナ(あれからサチってプレイヤーを探したけど全然見つからない)
アスナ(どうなってるの? もしかしたらモンスター名? それともNPC?)
キリト「アスナ? 珍しいなこんなことこで」
アスナ「っ!? キ、キリト君!?」
キリト「ああ、こんな低い階層にいるなんて珍しいな」
アスナ「ちょ、ちょっと気分転換にね」
アスナ(サチっていうNPCを捜して虱潰しだなんて言えないわ……)
キリト「そうか」
アスナ「で、でも今日も遅いしよかったら一緒にどこかに泊まらない?」
キリト「え……」
アスナ「?」
アスナ「どうかした?」
キリト「あ、いや……この階層の宿には……ちょっとな」
アスナ「?」
クライン「お? ようキリトじゃねぇか!」
キリト「クライン? 久しぶりだな」
クライン「おうよ! まさかまたこの階層で会うとはな」
キリト「……」
クライン「あ、わり……」
アスナ「?」
クライン「そ、それにしてもお前が他のプレイヤーといるなんて珍しいな!」
キリト「あ、いや……アスナとはたまにパーティを組むくらいで……俺は相変わらずソロだよ」
クライン「そうか……けどそれでもいいことだろ?」
キリト「……どうなのかな」
クライン「少なくとも俺はお前が他のプレイヤーといるのは嬉しいぜ。あの時以来、かたくなだったお前が……」
キリト「っ」
クライン「っと、悪いな、今日はどうも口が辺に滑っていけねぇや。どうだ? 一緒にメシでも」
キリト「……いや、この階層には長くいたくないんだ。悪いな」
クライン「……そうか」
キリト「それじゃあな、アスナも。また」
アスナ「え、ええ」
クライン「あいつはまーだ引きずってやがんのか」
アスナ「ねぇ」
クライン「ん?」
アスナ「キリト君のこと何か知ってるんですか?」
クライン「ん、まぁな。そういうあんたはどこかで見たことがあるな……」
アスナ「私はアスナ、血盟騎士団のメンバーです」
クライン「血盟騎士団のアスナって……閃光の!?」
アスナ「……そう呼ばれてもいます」
クライン「かーっ、キリトも凄い人と知り合いだなあ」
アスナ「そ、そんなことよりよかったらキリト君のことを教えてください!」
クライン「キリトに何があったのか、かい?」
クライン「あんまり人に言うようなことじゃないんだが……」
アスナ「他言はしません」
クライン「まぁ、あんたなら大丈夫かな。あいつがビーターだってのは……」
アスナ「知ってます」
クライン「あいつはそのことを引きずっててな」
アスナ「それもなんとなくわかってます」
クライン「そんなあいつでも、一度ギルドに入ってたことがあるんだよ」
アスナ「……え」
クライン「初耳だろ?」
アスナ「え、ええ」
クライン「経緯とか全部知ってるわけじゃねぇけど、確かにあいつは一度ギルドメンバーに入った。確か名前は月夜の黒猫団だったかな」
アスナ(月夜の黒猫団? 聞いたことが無い……でもキリト君がいたのに有名じゃないはずは……)
クライン「……あいつは本当は優しくていい奴なんだよ」
アスナ「? それはわかってます」
クライン「そうかい、ならいいんだが……」
クライン「何があったのか、あいつはちゃんとは俺にも言ってくれなかった」
クライン「だが、あいつ以外のギルドメンバーは全滅した」
アスナ「!?」
クライン「あいつの端々の台詞と偶然の目撃者からおおよその経緯はこうだろう」
クライン「その日、資金がたまった月夜の黒猫団はリーダーがギルドホームを買いにいき、他のメンバーはレベル上げに向かった」
クライン「しかし、そこでなんらかの罠にかかるかしてしまい、メンバーはキリトを残して全滅してしまった」
クライン「一つ確定情報なのは、そのリーダーがそれを知った時、キリトを蔑んで自殺したって話だ」
アスナ「……そんな」
クライン「それからあいつはかたくなさをより一層増したよ」
アスナ「そんなことがあったなんて……」
アスナ(じゃあサチっていうのは、その時のメンバー?)
クライン「それから少しして、クリスマスイベントがあった」
アスナ「あ、確か蘇生アイテム……」
クライン「そうだ……あいつはそれに躍起になってた」
クライン「協力しようと言ったがあいつはかたくなにソロでいることにこだわってな」
アスナ「……」
クライン「オマケに闇ギルドにも目をつけられちまった」
クライン「だがあいつは結局そのアイテムを入手した」
アスナ「……え、だってあのアイテムは……」
クライン「ああ、蘇生は死亡してからわずかな時間しか有効じゃなかった」
アスナ「……」
クライン「絶望してたよ。俺にそのアイテムをよこしてキリトはまた何処かへいっちまった」
アスナ「……そうでしたか」
クライン「なあ、キリトはあんたのとこのギルドに入れてやれねぇのか?」
アスナ「……私は何度も誘ってます」
クライン「そうか」
クライン「あいつはさ、俺の恩人、師匠みたいなもんなんだ」
アスナ「?」
クライン「初めてSAOやった日、一目でβテスターだって思ってな、いろいろ教授してもらったんだ」
アスナ「……」
クライン「そのあとみんな広場に集められて、これからのことを知った時も、あいつは俺を連れて行ってくれようとした」
アスナ「!?」
クライン「けどな、俺にも他に約束してた仲間がいた。俺一人ついていくわけにはいかかった」
クライン「キリトもそこまでの大人数を抱え込むのには不安があったんだろう。当然だ」
アスナ「……」
クライン「結局、俺はあいつの誘いを断った。あいつは泣きそうな顔でまたな、って言ってくれたよ」
アスナ(キリト君……)
クライン「なあ」
アスナ「はい……」
クライン「頼みがあるんだ」
アスナ「?」
クライン「そんなことがあったあいつだからきっと人一倍誰かと一緒にいるのを怖がってるんだと思うんだ」
アスナ「そう、でしょうね」
クライン「けど、アンタとはパーティを組むことがあるんだろう?」
アスナ「私が半ば無理矢理にさそってるんですけどね……」
クライン「それでいい、それでいいからあいつを一人にしないでやってくれ。俺はあいつに死んでほしくないんだ」
クライン「頼むよ……!」
アスナ「……」
アスナ「まさかキリト君にそんなことがあったなんて……」
アスナ「キリト君がソロにこだわるのは……」
アスナ「もうこんなことにならないように……」
アスナ「でも、そんなの寂しすぎるよ……」
アスナ「キリト君……」
アスナ「貴方は一体どんな時間を過ごしてきたの……?」
キリト『この階層には長くいたくないんだ』
アスナ「! まさか……この階層にその時しばらくとどまって……あ、だからクラインさんも……」
アスナ「……よし!」
アスナ「この階層の宿は少なくて助かったわ」
アスナ「覗き見スキル発動」
アスナ「このスキル、本当は内部分裂や犯罪抑止のためのものなんでしょうね」
アスナ「まさか過去にあったことまで覗き見できるなんて……」
アスナ「でもいいわ。私がキリト君の歩んだ軌跡をたどって彼を知ることができるなら、今はそんなことどうでもいい」
アスナ「まずはこの宿……えっとキリト君がいた時のみ再生、これでいいのかしら?」
アスナ「出たっ!」
アスナ「ん? プレイヤー名サチ? この人が?」
アスナ「やっぱり同じギルドメンバー……え?」
アスナ「な……な……!」
アスナ「……」プルプル
キリト『……』
サチ『……』
アスナ「一緒のベッドに入ってるとか……これ、まさか、もう、そんな、えっと、え?」ジワッ
アスナ「二人はもしかして……恋人?」ウルッ
アスナ「……じゃあキリト君は……」グスッ
アスナ(……見るんじゃなかったかも……ううん、これはきっと覗き見なんてした私への罰ね)
アスナ(……)
アスナ「……キリト君にはもうお相手がいたのね……はぁ」
アスナ「……ううん、たとえそうだとしても最後まで見届けなくっちゃ」
アスナ「……行為を始めたら見るのはやめよう、うん」
アスナ「……」
アスナ「……」
アスナ「……」
アスナ「……」
アスナ「なんで二人ともなにもしないの!?」
アスナ「それともこれって実は事後なの!?」
アスナ「……なんだか一気に疲れたわ」
アスナ「でもこの後ギルドメンバーがみんなそろって狩りにいって……」
アスナ「楽しそう……この頃の私なんて攻略のことしか頭になかったのに」
アスナ「こうやって楽しくSAOをやっていられたら、今とは少し違ったのかな……」
アスナ「あ、そろそろクラインさんの言ってた話みたい」
アスナ「リーダーが転移して、みんなでレベルとお金稼ぎ、か」
アスナ「でもこの時のキリト君ならこの階層なんて敵じゃないんじゃ……」
アスナ「それにしても周りは少しあぶなっかしいな」
アスナ「……あ、サチさんまたキリト君に助けられた……」
アスナ「……いいなぁ」
アスナ「あ、あの人随分先に行ってるけど」
アスナ「え? 隠し扉? 隠しダンジョンなんてこんなところにあったかしら……っ! キリト君が止めてるのに行っちゃ……!」
アスナ「罠!?」
アスナ「この敵はここの階層に見合う敵じゃない!」
アスナ「あ、ああ、あああああ……っ!」
キリト『サチ!』
サチ『……ありがとう、さよなら』
キリト『───────!』
アスナ「キリト君……」
アスナ「この後のキリト君の足取りは……」
アスナ「ここか……クラインさんの言ってた通りね」
キリト『』
『ビーターのお前が!』
キリト『……っ! あ』
キリト『っ!』
キリト『~~~~~~っ!!!!!!!!!!』
アスナ「キリト君……なんて、なんて悲しい経験をしてるの……」
アスナ「……これが、これがキリト君の過去……」
アスナ「これがキリト君の背負うもの……」
アスナ「……私の事じゃないのに胸がキリキリ締め付けられる」
アスナ「キリト君は一人で平気なの? ううん平気なはずがない」
アスナ「クラインさんも言ってた」
アスナ「私が、私がキリト君のそばにいなきゃ!」
アスナ「……友達、親友としてでも」
アスナ「それでも、私、彼の支えになりたい!」
アスナ「キリト君!」
キリト「アスナ?」
アスナ「今日のダンジョンは終了でしょ?」
キリト「ああ、まぁ」
アスナ「じゃあウチにご飯食べに来ない?」
キリト「ええ? いやでも……」
アスナ「何か用事が?」
キリト「そういうわけじゃないが……」
アスナ「そうよね、あるわけないもんね。友達いなさそうだし」
キリト「っ」
アスナ「だから私がキリト君の用事作ってあげる」
キリト「……へ?」
アスナ「さあどうぞ」
キリト「話には聞いてたけど、凄いな」
アスナ「まあね、趣味も兼ねてるけど」
キリト「十分凄いよ、俺なんて戦闘用スキルしかないようなもんだから」
アスナ「楽しくないでしょ? それじゃ」
キリト「まぁそうだけど」
アスナ「キリト君が言ってたじゃない。風が気持ちいいから寝る、って」
キリト「……そうだな」
アスナ「私も、そういうの必要だって思うよ」
キリト「……ああ」
アスナ「キーリートー君!」
キリト「わっ!? なんだ?」
アスナ「明日私とパーティ組んで最前線行くからね!」
キリト「は、はぁ!? 俺はソロで……」
アスナ「聞こえなーい!」
キリト「いや俺は……」
アスナ「この前の食事代として」
キリト「う」
アスナ「別にギルドに入って、ってわけじゃないから。ただコンビ組んで中にもぐりたいだけよ」
キリト「最前線はキツイぞ?」
アスナ「ほほう? それで?」ジロッ
キリト「……なんでもないです」
アスナ「キリト君、スイッチ行くよ!」キィン
キリト「ああ!」ズバッ
アスナ「ふぅ」
キリト「……」
アスナ「ん? どうかした?」
キリト「いや、一人手練れがいるとだいぶ安定するなって」
アスナ「そうでしょー?」
キリト「ああ」
アスナ「やっぱり一人より二人よね!」
キリト「……」
アスナ「あ、別にギルドに誘ってるわけじゃないよ? もちろん入りたいならウェルカムだけどね」
キリト「……ああ」
アスナ「キリト君! 60層の町でお祭りイベントあるんだって!」
キリト「祭りイベント?」
アスナ「一緒にいってみない?」
キリト「何かレアアイテムでももらえるのか?」
アスナ「もう! ただ面白そうだからよ!」
キリト「は、はあ……でも攻略が遅れないか?」
アスナ「……」ジロリ
キリト「う」
アスナ「行くの? 行かないの?」
キリト「……行きます」
アスナ「よし♪」
アスナ「キリト君ー!」
キリト「今いくよ!」
キリト「やれやれ、このところやたらアスナに付き合わされるな」
キリト「……いつぶりだろうな」
キリト「こんなに一人じゃないのは」
キリト「……いつぶりだろう」
キリト「こういうのもいいや、って思えるのは」
キリト「……」
アスナ「はーやーくー!」
キリト「ああ!」
「おいあれアスナ様じゃないか?」
「すげー本物だ」
「可愛いなー」
キリト「大人気だな」
アスナ「もう、ただのお客として来てるだけなのに」
アスナ「なんだか有名になって、こういうのがあると少し嫌だな」
キリト「そんなもんだよ、俺だってアスナはよくやってるって思うし」
アスナ「そう?」
キリト「ああ、それにプレイヤーの中でもトップクラスに可愛いと思うよ」
アスナ「っ///」
キリト「?」
アスナ「お、お世辞はいいから!」
キリト(お世辞じゃないんだけどな……)
アスナ(……キリト君にはサチさんが……)
キリト「あ、お祭り始まるみたいだぞ」
アスナ「ほんとだ。っていうかSAOの中なのに普通に日本のお祭りなのね」
キリト「お祭りっていうか盆祭り、みたいな?」
アスナ「そうそう、なんか懐かしいって思える食べ物一杯おいてるわ!」
キリト「そうだな、クレープとかフレンチドックとか」
キリト「まさかSAO内で大阪焼きを見れるとは思ってなかった」
アスナ「来てよかった?」
キリト「ああ、ありがとうアスナ」ニコッ
アスナ「っ」ドキッ
キリト「あ、なんかイベントあるみたいぞ?」
アスナ「ほんとだ」
NPC「そこのカップル! 参加してみないか?」
キリト「俺たちのことか?」
アスナ「そうみたい……きっと男女ペアに無作為に話しかけてるのね」
NPC「カップルで踊る盆踊り選手権! 優勝賞品はレアアイテムだ!」
アスナ「レアアイテムか……」
キリト「俺たちはカップルじゃ……」
アスナ「出るわ!」
キリト「いいっ!?」
アスナ「いいでしょ別に。減るものじゃないんだし」
アスナ(ごめんね、でもこれくらい許してね、サチさん)
キリト「お、おい!」
アスナ「何よ、まだ文句あるの?」
キリト「そうじゃなくて! 俺踊りなんて知らないぞ!」
アスナ「適当でいいんじゃない?」
キリト「いや、周り結構レベル高いぞ!?」
アスナ「え」
アスナ「わ、ほんとだ」
アスナ「あわわわわ……ど、どうしようキリト君?」
キリト「何も考えずに参加したのか……」
アスナ「う、だって……」シュン
キリト「ぷっ、あははははは!」
アスナ「な、何よぅ! 笑わなくてもいいじゃない!」
キリト「ごめんごめん」クスクス
アスナ「もぅ、まだ笑って……」
アスナ(あれ? キリト君が笑ってる? そういえば、私ちゃんとキリト君が笑ってるの、初めて見た気がする……)
アスナ(良いこと、なのかな。良いこと、だよね!)
キリト「アスナ、俺に一つ考えがある」
アスナ「?」
キリト「」ニヤリ
NPC「さあ、お次は……この二人だ!」
キリト(いいか?)
アスナ(ええ)
キリト(せーの)
アスナ「そいっ!」キィン
「なんだ!? 剣を出した!? 戦ってるぞ!?」
「す、すげー! 早いぞ目でおえねぇ!」ザワザワ
キリト「スイッチ!」
アスナ「はっ!」
キリト「ふっ!」ピタッ
アスナ「やっ!」ピタッ
シーーーーン
「おおおおおおお! すげー!」
「かっこいーーーー!!!」
「すてきーーーーー!!!」
キリト「」チラ
アスナ「」チラ
キリト(上手くいったな)
アスナ(そうね)フフ
アスナ「あーあ、優勝は無理かープレイヤーに受けは良かったのになー」
キリト「しかたないさ、あの祭りがシステム上のものだから、剣舞はイベントの対象外になってたんだろ」
アスナ「でもあれだけ盛り上がって拍手もらって0点ってねー」
キリト「確かにな。でも……」
アスナ「ん?
キリト「俺は楽しかったよ、こういうの、こういう気持ちになれるの、なんか久しぶりな気がするんだ」
アスナ「ん、そっか。じゃあいいか」
キリト「ああ」
キリト「アスナ、今度少し付き合ってくれないか?」
アスナ「ええ」
アスナ(キリト君からお誘いをもらうようになった)
アスナ(なんだかんだで凄く仲良くなれたし彼の笑顔も増えた)
アスナ(でも……)
アスナ(私はこれ以上を望んじゃいけないんだよね)
アスナ(……)
アスナ「最近攻略が進まないわね……」
キリト「……隠しダンジョンが多くなってる」
アスナ「……」
キリト「隠しダンジョンは階層でいうと3~4階層分は上な敵がいるのもザラだ」
キリト「一度通り超えてから行ったほうがいいのに……」
アスナ「……そうね」
アスナ(……キリト君にとってはつらいよね)
アスナ(私がなんとかしなくちゃ)
キリト「最前線か……やはり敵もそれなりに強いな……」
アスナ「いいですか! 今日はマッピングが主です! 絶対に余計なことはしなように!」
騎士団員A「了解」
アスナ(今日はソロの人やギルドメンバーなど総勢十数人でのダンジョン攻略)
アスナ(ここまで人が多いのは稀だけど逆に安心もできるわね)
騎士団員B「あれ? こんなところに抜け道? あ、隠し部屋だ」
アスナ「!?」
キリト「そこは開けるな!」
騎士団員B「ビーターのお前の言うことなんか聞けるか、どうせほんとはここに何があるかも知ってるんだろ? レアアイテムか?」ガチャ
アスナ「やめっ」
騎士団員B「あ……?」
70層ぐらいまできたらβテスターとかかんけいなさそうなのに
74層まで来ても一部のやつには嫌われてるからな
騎士団員B「なんだ、5階層くらい下の雑魚ばかりじゃないか」
アスナ「ちょっと! あなた何やって……」
騎士団員B「見てくださいよ。こんなやつらなら楽勝……」
キリト「……………違う! 離れろ!」
騎士団員B「え?」
アスナ「っ!?」
騎士団員A「モンスターから煙……こいつはそんなことしないはず!?」
騎士団員B「う……」バタリ
アスナ「くっ」フラッ
キリト「! アスナァァァァァッ」
騎士団員A「くそ! どうしてこんなことに!」
キリト「……」
医者「これは……ひどい毒だな。普通の薬では治らない」
キリト「っ!」
騎士団員A「Bの馬鹿野郎が!」
医者「総勢6人が毒にかかってるな。治療にはその敵が必要だろう」
キリト「どういうことだ?」
医者「今までにも何回かは似たことがあった」
医者「その場合、たいていは敵から解毒剤をドロップするか俺みたいな医療スキルを上げてるやつがその敵から解毒剤を作るかなんだ」
医者「だが、この調子では持って二日だな」
キリト「二日!?」
医者「この毒は特別性だ、通常の回復では回復できない」
医者「体力は時間経過とともに等間隔で減り続けてるからおそらく」
キリト「……くそっ」
医者「最前線の隠しダンジョンとなれば本来なら3層は余計に上った奴が調査すべき場所」
医者「今の皆のレベルじゃきついな」
キリト「……」
騎士団員A「くそおおおお!」
キリト「……」スタスタ
キリト(……アスナ)
キリト「……」
アスナ「……」
キリト(こうしているだけでアスナのゲージが減って行ってる……)
キリト(……このままアスナを死なせるわけにはいかない。もう、誰も死なせたくない)
キリト(アスナは、アスナは……ようやく俺が一緒にいたいと思える人で……)
キリト(いつも気にかけてくれてて……)
キリト(いつも俺をほうっておかなくて……)
キリト(ずっとそばにいてくれて……)
キリト(だから……今度は俺がアスナを助けに行くんだ)
キリト「俺は……アスナが好きだから」
アスナ「……」
キリト「ん……?」
キリト「これは結構前にアスナがドロップしたアイテム?」
キリト「そういえば結局なんなのか聞いてなかったな」
キリト「あれ?アスナが持ってるのに所有権を放棄してるのか? なんで?」
キリト「……これはスキルアイテム? 覗き見……そりゃアスナも所有権を放棄するか」
キリト「でも未だに持ってるってことはこれを使ってたのか?」
キリト「……使ってみるか」
キリト「……な」
キリト「アスナがこれを使った時を覗き見、ってしてみたら……これは……」
キリト「俺の過去を見てたのか……?」
キリト「はは、なんだ、そういうことか……」
アスナ『クラインさんも言ってた』
アスナ『……友達、親友としてでも』
キリト「そうだよな……俺にそんな資格はないんだ」
キリト「ビーター、か」
キリト「俺は哀れまれて、情けをかけられていたんだな」
キリト「でも、それでも君だけは助けるよ……それが、君の俺へかけてくれた情けへの恩返しだ」
キリト「……ここだな」ギィ
キリト「うおおおおおおおおおお!!!」
キリト「ぐぅっ!」
キリト「やっぱり、見た目は似てても全然違う!」
キリト「強い!」
キリト「それでも!」
キリト「でやああああああああ!!!!」
キリト「ぐっ! 毒か!」
キリト「知ったことかああああああああ!!!!!」ズバッ
キリト「……医者の読みは当たってたな……くっ」
キリト「……倒すと必ずドロップか……」
キリト「しかし、同時に六体はさすがにきついな……うぅ」
キリト「でもこれで六個そろった……全員分……全員?」
キリト「うぐっ!」
キリト「は、ははっ……全員、全員か……確かに、全員分ではあるよな」
キリト「良いんだよな、これで」
キリト「……」
医者「お、お前ひとりでこれを!?」
ザワザワ
スゲー
ケッビーターガ
キリト「これでみんなを頼む」
医者「あ、ああ!」
キリト「……っ!」
キリト(やばいな……ゲージが危険域だ)
キリト(……とりあえず、ここを離れるか)
アスナ「……あれ、私」
医者「おお、目を覚ましたか!」
アスナ「あ、私攻略中に毒で……」
医者「未だ見たことない新しいタイプでな、強力で街中でも均等に体力ゲージが減っていく代物だった」
アスナ「……そう、解除方法は?」
医者「今のところ敵からの解毒剤ドロップしかない」
アスナ「え、じゃあ誰かがこれを?」
アスナ「まさかキリト君!?」
医者「いやあ、彼は凄いな。疲れた顔をしながらも全員分六個の解毒剤を……」
アスナ「六個!? 六個ですって!?」
アスナ(あの場には六匹しか敵はいなかった! 固定数のはず!)
アスナ(毒をくらわずに攻略は現状では不可能!)
アスナ(それに隠しダンジョンによるドロップは一度しかできないし誰かがドロップしたらしばらくは復活しない!)
アスナ(まさかまさかまさかまさかまさか!!!!)
アスナ「どこ? どこにいるのキリト君!」
アスナ(嫌だよ? 死んじゃ嫌だよ!?)
アスナ「キリトくん……っ!」
アスナ「どこなの……!!」
キリト「ハハ、やばいな、みるみるゲージが減っていく」
アスナ「キリト君!」
キリト「アスナ? どうしてここが?」
アスナ「フレンドリスト! 居場所検索!」
キリト「あ、そっか……しまった、うっかりしてた」
アスナ「馬鹿! なにやって……ゲージが!」
キリト「はは……ちょっと無理しすぎたかも」
アスナ「あ、そんな……!」
キリト「アスナ……」
アスナ「な、なに!? なんでもいって!」
キリト「今まで、ありがとうな」
アスナ「な、なに言って……」
キリト「哀れみでも、情けでも、優しくされるのは、割と嫌じゃなかった」
アスナ「哀れみ? 情け? 何を言って……」
キリト「良いんだ、アスナが俺を調べたことはわかってる」
アスナ「っ!」
アスナ「違う、あれは……」
キリト「いいんだ」
アスナ「死ぬ気、なの……?」
アスナ「だからここに来たの?」
アスナ「目の前で彼が自殺した場所だから!?」
キリト「……そう、かもね」
アスナ「っ!」
キリト「俺はビーターだ、きっと、そういう最後になるって、決まってたし、覚悟もしてた」
アスナ「そんな、そんなの……!」
キリト「このまま一人だったら、ゲージがなくなる前に飛び降りようと思ってたんだけど……はは、まいったな」
アスナ「そんな、そんなの認めない!」
キリト「だよ、なあ……」
アスナ「だって、私、私……私なんかのために……!」
キリト「君が助かって……本当に良かった」
アスナ「良くない! キリト君が死んだら何も意味ない!」
キリト「そう、言ってもらえるだけで、うれしいよ」
アスナ「っ! う、うぅ」
アスナ「何か、何かないの!?」
アスナ「アイテム、アイテムアイテム!」チャラリン
アスナ「回復アイテムは……」
キリト「この毒で受けたダメージは回復アイテムじゃ回復できなかった……」
アスナ「そんな……」
キリト「いいんだ、最後に守りたいものを守れたから……」
アスナ「ダメだよ……キリト君がいなくなったら、私……私!」
キリト「……」
アスナ「キリト君!?」
アスナ「いや、だめ……ゲージ、減らないで、減らないでよ!」
キリト「死ぬ、ってこんな感じなのかな」
アスナ「いやいやいやいやいやいやいやいやいや!」
キリト「……ごめん」
アスナ「なんで、あやまる、のよ……」グスッ
アスナ「あやまるくらいなら……死なないでよ!」
キリト「泣かせたかった、わけじゃないから……泣かせちゃって、ごめん」
アスナ「っ!」
キリト「ああ、サチもきっと、こんな気持ちだったのかなあ」
アスナ「!」
キリト「アスナ、ありがとう」
さ よ な ら
アスナ「~~~~~~~~っ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
クライン「これ持って叫べ! 早く!」
アスナ「え? これ!? っ!」
アスナ「蘇生! キリト!」
パアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
キリト「あ……れ……」
クライン「よおキリト。預かりモンを返しに来たぜ」
キリト「クラ、イン……? 俺、生きて……」
アスナ「~~~っ! ばかぁ! ばかぁ!」ポカポカ
キリト「わっ! アスナちょっとタンマタンマ!」
アスナ「いやぁ! いやぁ! ばかぁばかぁ」グスグス
キリト「アスナ……」
アスナ「う、うぅ……キリト君……キリト君キリト君……!」
キリト「あの……アスナ? そろそろ離れてくれると……」
アスナ「いやぁ」ダキッ
キリト「い、いやって、あのそのだから……」
アスナ「私、情けでも哀れみでもないもの」
キリト「え」
アスナ「キリトがサチさんが好きでも、恋人を忘れられなくても、私キリト君が好きだもん……好きなんだもん!」
キリト「う……あ……?」
アスナ「たとえキリト君が振り向いてくれなくても好きなんだもん!」
キリト「あ、その、あり、がとう……ってか」
アスナ「うぅ」グスグス
キリト「別にサチとは恋人じゃなかったけど」
アスナ「」
アスナ「え、ええ!? だって一緒にベッド入って……」
キリト「そこまで見たのか……」
アスナ「あっ!?」
キリト「サチは結構怖がりでさ、俺のところに来てたけど、そういう関係じゃなかった」
アスナ「そうなの?」
キリト「もしかしたら、あのままいってたら、そういう関係になってたかもしれないけど」
アスナ「むぅ」プクッ
キリト「俺が今好きなのは、アスナだから」
アスナ「ふぇっ!?」
クライン「あー……ゴホン、青春してるとこ悪いんだが……俺しゃべっていい? それとも帰ります?」
キリト「あ、ああそういやお前に助けられたんだったな、ありがとうクライン」
クライン「気にスンナ、それはもともとお前のものだ」
アスナ「あ、私///」カァァァ
クライン「おーおー可愛いねぇ、ところで言いにくいんだけどさ」
キリト「?」
アスナ「?」
クライン「お前らのさっきからの会話全部、血盟騎士団に届いてるんだが」
キリト「はああああああああああああああ!?」
アスナ「えええええええええええええええ!?」
クライン「いや、俺に血盟騎士団の医者から連絡がきてな」
クライン「医者は攻略に行ってなかったが、他にも攻略にいってった奴がキリトの分の解毒剤がないってことがわかったらしくて」
クライン「いちはやく気付いた副団長が先走ったはいいが自分たちになすすべが思いつかない」
クライン「そんなとき誰から聞いたのか団長さんが俺が蘇生アイテムを持ってることを知ってて俺に連絡が来たんだ」
クライン「慌ててフレンドリストの検索で駆けつけてみればまさに間一髪だったわけよ」
クライン「まあその際、顛末をみんなが知るために音声を向こうにも届くようにしてたんだが……完全に裏目に出ちゃったっぽいな」
キリト「」
アスナ「」
悪口言った相手に命かけて助けられたわけだが 舎弟じゃ済まないよな
だな
アスナ「あわわわわ、どうしよう……告白までしちゃったのみんなに聞かれちゃた……」
キリト「いや、これはその……なんていうか、どうしよう?」
クライン「さあ?」
キリト「いや、さあってオマエな……」
クライン「好きにしたらいいんじゃねぇの。かわいこちゃん首からぶら下げてそんなしょげた面すんなって」
キリト「あ、これは……」
アスナ「」ギュム
キリト「う」
アスナ「……うん、決めた」
キリト「?」
アスナ「私血盟騎士団抜ける、ソロ……ううん、キリト君とコンビ組む」
キリト「えええええ!?」
アスナ「あ、あんなこと言った後にあそこに戻れないし」
キリト「いや、だけど……」
アスナ「……それに、離れたく無い」
キリト「アスナ……」
アスナ「もう勝手に死ぬなんて許さないから」
キリト「……それはこっちの台詞だ」
アスナ「ふふ、私は死にません絶対に」
キリト「なんで絶対なんて言いきれるんだよ」
アスナ「キリト君がいれば、その自信があるから」
キリト「う」
キリト「じゃあ俺が死んだら?」
アスナ「私も死ぬ」
キリト「はああああああ!? 何言ってんだよ!」
アスナ「キリト君がいないなんて、意味ないもの」
キリト「ア、アスナ……」
アスナ「責任重大だからね、キリト君。これでキリト君は簡単に命を諦められなくなったんだから」
キリト「……ふぅ」
アスナ「なによぅ、嫌なの?」
キリト「いや、重たいと思っただけさ」
アスナ「……キリト君が嫌なら」
キリト「俺は、そういう重荷があったほうが、生きてるって実感できるみたいだ」
アスナ「あ」パアアア
キリト「よろしく、アスナ」
アスナ「うん!」
クライン「俺と、メンバーにも繋がってるのまた完全に忘れてるなこいつら」
クライン「……ま、いいか。よかったな、キリト」
クライン「一人じゃないってのはそれだけでいいもんだぜ」
クライン「まあこれで大団円……」
アスナ「ところでキリト君」
キリト「?」
アスナ「サチさんとは恋人じゃなかったそうだけど……どこまでいってたの?」
キリト「いっ?」
アスナ「この前ちょっと見えちゃったんだけど、どうにも女の子の知り合いが多いよねキリト君」
キリト「い、いやそんなことは……」
アスナ「……」ジロリ
キリト「……サチとはなんでもなかったし、他の人とだってただ知り合っただけだよ」
アスナ「……結婚の経験は?」
キリト「あるわけないだろ」
アスナ「……そっか、よかった」
キリト「……そういうアスナは?」
アスナ「申し込まれたことは何度かあるけど、受けたことはないわ」
キリト「申し込まれたことはあるのか……」
アスナ「私、結婚って現実でもそうだけどそう簡単にしないと思ってた」
アスナ「ましてやこのSAOの中ではね」
アスナ「でも、キリト君となら良いと思う」
アスナ「……キリト君となら結婚、したい」
キリト「……」
キリト「……アスナの家は400万コルくらいだっけ?」
アスナ「え? ええ」
キリト「俺もちょうどそれくらいは溜まってる」
アスナ「?」
キリト「……よかったら、家を買ったら、一緒に住んでくれ」
アスナ「!」
アスナ「そ、それって……///」
キリト「ああ、そのまあ……うん」
クライン「おーい、盛り上がってるとこ悪いが」
アスナ「!」
キリト「!」
クライン「そろそろ逃げた方がいいぞー」
キリト「?」
アスナ「?」
クライン「今の話聞いてた連中がわんさかおしかけてくるっぽい」
アスナ「!」
キリト「!」
キリト「行こう! アスナ」ギュッ
アスナ「うん!」
クライン「達者でなー」
アスナ「ところでキリト君?」
キリト「うん?」
アスナ「い、家っていつ買うの?」ワクワク
キリト「え、えっと……そのうち、かな」
アスナ「もう、何よそれ!」プクッ
キリト「でも……この手は家を買わなくても離さないつもりだよ」ギュッ
アスナ「……うん、ところでどこへ向かってるの?」
キリト「どこだっていいさ、アスナがいれば」
アスナ「……私も。大好きだよキリト君」
SAO編 END
ALO編も期待してるよー
やはりアスナさんは可愛い
ありがとう ありがとう
はたから見てると百合にしか見えないシーンもあるよ!
Entry ⇒ 2012.08.27 | Category ⇒ 版権物SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
響「ただいまー!」美希「おかえりなさいなの」
響「おっ。帰ってきてるのは美希だけなのか」
美希「お仕事が終わって、ずっと寝てたの。あふぅ」
小鳥「あら響ちゃん。おかえりなさい」
響「ただいま、ぴよ子」
小鳥「暑かったでしょ。すぐお茶を入れるわね」
響「にふぇーでーびる!」
美希「ことりー美希もお願いなのー」
小鳥「はいはい、待っててね」
美希「ハニーなら春香を迎えに行ったの」
響「えっ」
美希「? どうしたの? 響」
響「い、いや、なんでもないぞ……」
響(どうして自分は迎えに来てくれないのに……)
美希「あー春香は今日クランクアップなの。だから挨拶もかねて迎えに行ったんだって思うな」
響「ふ、ふーん、なるほどね。……って、べ、べつにそんなこと気にしてないぞ!」
美希「ことりーっこのプリン食べてもいいかな?」
響「それ伊織のじゃないのか?」
小鳥「いいんじゃないかしら」
響「い、いいのか!?」
美希「でこちゃんなら許してくれるの!」パタン
響「自分、知らないぞー……」
響「………」
美希「でこちゃんに感謝しなくちゃって思うな! あはっ☆」
響「………」
美希「響、こっちじーっと見て、どうしたの?」
響「へっ!? み、見てない、見てないぞ!」プイッ
美希「響、このプリンね、とーっても美味しいの!」
響「へ、へぇ~、そっかぁー」チラッ
美希「響はわかりやすすぎるの」
美希「しかたないの。一口あげるから、それでガマンするの」
美希「はい、あーんなの!」
響「じ、自分は……」ゴクリ
美希「はやくしないと美希が全部食べちゃうの。はい、あーん」
響「……っ、あーんっ!」パクッ
小鳥「キマシタワー!」
美希「ね? すっごく美味しいでしょ」
響「美味しい! 美味しいな! 美希!」
響「………」ジーッ
美希「はい、あーんなの!」
響「あーん!」パクッ
…
響「やっちゃったぞ……ひとの食べ物を食べるなんて、自分サイテーだ……」ズーン
美希「そんなに気にしなくてもいいって思うな」
響「うぎゃー! 伊織に怒られるぞ!」
美希「でこちゃんはそんなことで怒らないってば」
美希「あれはなんとゆーか、んーっと、でこちゃんなりの愛情表現なの」
響「そ、そうなのか……?」
美希「そうなの! 美希、でこちゃんのデザートとかいっぱい食べてるけど、怒られたことないよ?」
響「そ、そっかぁー、よかったぁ……」
美希「いつだったか、間違えて律子のを食べちゃったらすっごい怒られたの。ひどいって思うな!」
響「『さん』ってつけないとまた怒られるぞ」
美希「もーっ響まで律子…さんみたいなこと言うの!」
響「ご、ごめんってば」
美希「あ、コンディショナーの?」
響「そうそう。なんかこう、ぴかーってして、さらさら~って感じだったぞ!」
美希「ホント!? 美希も、きらきら、ふわふわしてて、とっても良いって思ってたの!」
小鳥(ぜんぜんわからないわ……これがジェネレーションギャップ……!?)プルプル
美希「響もせっかく長い髪なんだし、ちょっと気をつければもっともっときらきらできるって思うな!」
響「へっ? い、いやぁ自分はいいさー」
美希「どうして?」
響「え、えっとぉ……」
響「だって……なんか、恥ずかしぃ……」
美希「ど、どういうことなの!?」
響「じ、自分がそんな、きらきらなんて、似合わないし……」
美希「えっ?」
響「元気だね! って言われることはあるけど、可愛いねってあんまり言われないし」
響「似合わないのに力いれてたら恥ずかしいっていうか……」
美希「? 響は可愛いよ?」
響「え……?」
響「そ、そんなことないぞ……だってみんなそんなこと言わないし」グス
美希「それはね、響」
響「?」
美希「可愛いっていうのは、言わなくても可愛いからなの!」
美希「元気だねっていうのは、可愛くて、しかも元気だねってことなの!」
響「み、美希……」
美希「ミキがホショーしてあげるの! 響は可愛い!」
美希「う?」
響「うぎゃーっ! 恥ずかしいぞー!」ダダッ
美希「響!? ……行っちゃったの」
小鳥(美希ちゃんGJ)
…
響「………」コソコソ
P「響、なにしてるんだ?」
響「うわひゃぁっ!?」
春香「ただいま! 響ちゃん」
響「おっおかえり!」
P「やー暑い暑い。響、早く事務所に入ろう」
響「あ、ごめん!」ガチャ
美希「響やっと帰ってきたの」
美希「あ! ハニー!」ガバッ
P「おお、美希。ただいま」
春香「美希、ただいま」
春香「ただいまです!」
P「戻りました。なにかありました?」
小鳥「いえ、特には」
美希「ハニーハニーハニーハニー」
響「美希が壊れちゃったぞ……」
春香「美希? プロデューサーさんから離れなよ」
美希「さっきまでハニーとふたりっきりだった春香に言われたくないの!」
春香「ふ、ふたりっきりって……! そんなんじゃないから!」
P「どうした?」カチカチ
美希「ハニー……いい匂いなの……」クンクン
P「おいやめろ」
春香「美希はいつもどおりだねぇ」
響「いや、笑ってる場合じゃないレベルじゃないのか?」
P「よし、メールチェック終わり」ガタ
P「音無さん、またちょっと出てきます」
小鳥「はい、いってらっしゃい」
P「悪いな。春香、駅まで送るよ」
春香「はいっ!」
響「春香は帰るのか?」
春香「今日はちょっと用事があるんだ」
美希「また春香なの!? 美希もハニーとふたりっきりになりたいのーっ!」
P「はいはいまた今度な」
響「………」
P「それじゃ、いってくるな」ガチャ
美希「あぁっハニーに捨てられたの……!」
P「人聞きの悪いことを言うなって」
春香「また明日ね! ばいばい!」バタン
美希「ハニー、ミキ、ミキ、待ってるからね……!」
響「美希は楽しそうで良いな」
美希「フラれた女は不貞寝するの……」ポスン
美希「おーなーかーすいたのーっ!」ガバッ
響「おわっ! び、びっくりしたぞ」
美希「響! ごはん食べにいこっ」
響「え、今からか?」
美希「膳は急げ、っていうでしょ? 小鳥ーごはんいこーっ」
小鳥「ごめんね、私は電話番しなくちゃいけないから」
美希「そっかぁ。じゃ、お土産買ってくるね!」
小鳥「ありがとね、美希ちゃん」
響「わわっ、ちょっと待ってくれー!」バタバタ
-商店街-
響「たるき亭じゃないのか?」
美希「せっかくなんだから響とのデートを楽しむの!」
響「でっデートなのか!?」
美希「響ってば動揺しすぎなの! あはっ☆」
響「もぉ~っからかわないでほしいぞ!」
美希「ふふふ。甘いの、響。さっきのプリン並に甘いの」
美希「これから響を、ミキのとっておきのお店に連れて行ってあげるの!」
響「とっておき? それは楽しみだぞ!」
美希「響はお腹すいてる?」
響「いや、現場でお弁当もらったから、そんなには」
美希「むむぅ~それなら何個も食べられないかなぁ」
響「何個?」
美希「厳選する必要があるの……これは難しいの……」ムムム
響「『御握屋』……おにぎり専門店なのか?」
美希「そうなの! ここがミキの、えーっと、ゆ、ゆー、ゆーとくいなり? なの!」
響「ワケがわからないぞ……」
美希「細かいことはいいの! おばちゃーん!」ガラッ
おばちゃん「あら美希ちゃん今日も来てくれたの? 相変わらず可愛いわねぇ。今日はお友達も一緒なのね! いらっしゃい!」
響「はいさい! 自分、我那覇響だぞ!」
おばちゃん「まぁまぁ響ちゃんも可愛いわねぇ。おばちゃんの若いころに似てるわね! なんちゃってねオホホ!」
美希「響ーこっちこっち」
響「カウンターに座っておにぎりを食べるのか……」
おばちゃん「はいはいどれにしましょうかね! どれも美味しいよ!」
美希「響ははじめてだから、やっぱりスタンダードに梅干から始めるべきかなぁ……」
響「は、はじめてって、自分、おにぎりくらい食べたことあるぞ!」
美希「響」
響「は、はい! な、なんか美希が怖いさー……」
美希「ミキはね、おにぎり大好きなの」
響「し、しってる」
美希「おにぎりくらい、なんて言われると、悲しくなっちゃうな」
響「ご、ごめん。自分が悪かったぞ……」
響「す、すじこってなんだ?」
美希「簡単に言うとばらばらになってないイクラなの」
美希「っておばちゃんさらっと一番高いやつ薦めないでほしいの!」
響「一番……? うわっ高っ」
おばちゃん「あらら、ばれちゃった? でも美味しいんだから食べてほしいな~」クネクネ
美希「美味しいのは知ってるの。でもミキだって月に一回だって決めてるんだからね」
響「美希はおにぎりのことになるとすごいな……」
美希「よし! 響には高菜でいくの!」
美希「甘いの! さっき食べたプリン並みに甘いの!」
響「気に入ったのか? そのフレーズ」
美希「何事も段階を踏むべきだって思うな!」
響「それ、プロデューサーに抱きついたりほおずりしてる美希に言われたくないぞ」
美希「あれはアレなの、スキンシップなの」
美希「そんなことは今はいいの! ミキは塩辛おねがい!」
おばちゃん「はいよー!」
響「早いな! いや、おにぎりだから早くて当たり前なのか?」
美希「いただきまーす!」パクッ
響「いただきまーす!」パクッ
響「うわ、なんだこれ、すごい美味しいぞ!」
美希「ふふふ、響もおにぎりの魅力にめろめろなの」
響「ごはんが熱々ふっくらで、高菜の食感との相性がバツグンだぞ!」
美希「塩辛も相変わらず美味しーの!」
美希「おばちゃん、次はミキ、昆布が食べたいな!」
響「うぎゃーっどれも美味しそうで決められないぞ!」
美希「その気持ちはとーってもよくわかるの」
おばちゃん「すじこなんてどうだい? 響ちゃん」
美希「天丼なの!」
響「ん? きゃらぶき、って、なんだ?」
美希「フキの柄を甘辛く煮たものだよ」
響「ようし! きゃらぶきおねがいします!」
おばちゃん「はいよー!」
――
―
ガラッ
美希「美味しかったのー!」
響「た、食べ過ぎたぞ……」ヨロ
美希「でも美味しかったでしょ?」
響「それはもう、美希の言うとおりだったぞ! 肉味噌おにぎりとかすっごいボリューミーだったし」
響「あう、お腹一杯で動けないぞ……」
美希「あはっ☆ 響ってば食いしん坊さんなの!」
響「しょうがないだろー美味しいんだからー」
響「賛成さー」
美希「ふうっ! いい天気だね、響!」
響「そうだなー。沖縄は晴れてるかなー」
美希「沖縄! ミキも沖縄行ってみたいって思うな!」
響「沖縄はいいぞぉー! 海も空もきれいだし、ご飯もおいしいし!」
美希「飛行機でどれくらいかかるのかな?」
響「本島までなら2時間くらいだったと思うぞ」
美希「それくらいならぐっすり寝られてちょうどいいの!」
響「お、おにぎりかぁ、あるかなぁ?」
美希「なければ作ればいいの! ……?」
男A「うわぁー君、かっわいいねぇー!」
男B「マジマジ! やばいでしょこれマジで!」
響「う、うわ、ナンパってやつだぞ……」
美希「ミキが可愛いって? そんなこと知ってるの!」
男A「小悪魔系いいねー! ちょっと俺らとご飯でも行こうよー」
男B「美味しいところ、おごっちゃうぞー!」
男A「あれ、そうなの? そんじゃ腹ごなしにカラオケとかどうよー」
男B「いいねぇカラオケ、行こう行こう!」
響「ね、美希」
美希「? どうしたの? 響」
響「も、もう休憩はいいから、どっか行かないか? なんか怖いぞ……」
美希「あはっ☆ わかったの!」
男A「そっちの君も可愛いねぇ! なでなでしたいね!」
男B「ポニーテールいいねぇマジヤバイ」
美希「ミキの歌を聴くなら、ライブに来てほしいって思うな! それじゃね!」スタスタ
男A「あっちゃあフラれちゃったよ! 今度は遊びに行こうね!」
男B「後ろ姿もマジ可愛いねぇ」
…
響「追っては来なかったか、よかったぞ」
美希「響は気にしすぎなの。あっちも遊びなんだから、てきとーにあしらっとけばいいの」
響「なんか美希がやけにかっこよく見えるぞ……!」
美希「自分、完璧だからなっ! あはっ☆」
響「あーッ、それ、自分のセリフだぞーっ!」
美希「そうかな? ミキ的には、ひなたぼっこが気持ちよさそうだって思うな!」
響「自分、暑いのは苦手さー」
美希「沖縄生まれなのに、響ってばおもしろいね! もしかして、沖縄生まれってウソなの?」
響「うっウソじゃないぞ! 正真正銘のうちなーんちゅさ!」
美希「あははっジョーダンなの!」
美希「それじゃ、そこの喫茶店にでも入って涼もっ?」
響「そーするさー」
響「えっと、ジャスミンティーおねがいします」
美希「静かでいいところだね!」
響「こういう静かなお店に入ったこと、あんまりないから緊張するぞ……」
美希「? 何も気にすることないの」
響「美希はマイペースだなー」
美希「そうかな? よくわかんないの」
響「そういうとこ、ちょっと羨ましいなぁ」
美希「完璧な響にしては珍しいね! あはっ☆」
美希「ありがとうなの!」
響「ありがとうだぞ」
美希「んーっ美味しいの」
響「うん!」
美希「さてと」
響「? どうしたんだ? 美希」
美希「そろそろ本題に入るの」
響「何の話だ?」
響「っ!?」
美希「ね、ハニーのこと、どう思ってるの?」
響「ぷ、プロデューサーは、えっと、さ、最近頼りになるようになってきて、助かるさー!」
美希「美希はね、ハニーのこと大好きだよ? 響は違うの?」
響「み、美希……えぇっと、」
響「自分、自分は……プロデューサーが……」
美希「まぁ、ホントはわかってるの」
響「えっ!?」
響「そんなことないっ! と、思うぞ……」
美希「だって帰ってきてすぐハニー探したし、迎えに来てほしそうだったし」
美希「ミキがハニーに抱きついてたら羨ましそうにしてたし、ふたりっきりって話をしてたらずうっとハニーのこと見てたし」
響「うがっ!?」
美希「おにぎり屋さんでも、ミキのあとでハニーの分のお土産買ってたでしょ」
響「ば、バレてた!?」
美希「ホントに隠してたつもりだったの!?」
響「うぅっ……。そ、そうかもしれないぞ……」
美希「かも?」
響「わぁーっわかった! 自分、プロデューサーのことが大好きだぞー!」ガタッ
美希「ひっ響、落ち着いてなの!」
響「はっ! ご、ごめん」ストッ
響「って、自分ってば、何言ってるんだー恥ずかしいー」
美希「なにも恥ずかしいことじゃないの」
響「自分にはそうじゃないさー……」
美希「ごまかすのが遅いの、響」
響「うぅ……」
美希「それに、どうして謝るの?」
響「い、いや、それは、だって、美希が、えっと……」
美希「ミキ? 響がハニーのことを好きなのと、ミキは関係ないでしょ?」
響「えっ? そ、そうなのかな?」
美希「うん。関係ないって思うな」
響「そっかー」
美希「ミキをきらきらさせてくれるからなの!」
響「即答……!」
美希「それに先生も保証してくれたの」
響「先生?」
美希「カモ先生なの。それじゃ、響はハニーのどこが好きなの?」
響「自分は……、うーん、けっこう難しいな、それ」
響「むむむ……」
響「それはそうなんだけど、それだけじゃなくて、なんというか、な、なでなでしてほしい……っ」
美希「こ、これは! 涙目で見上げてくるなんて、破壊力高すぎなの、響!」
響「うぎゃーっ自分、さっきから恥ずかしいことばっかり言ってるぞー!」
美希「そういえば、響はハニーにどんなアピールしてるの?」
響「アピール?」
美希「だから、自分のことを好きになってもらうために、どんなことをしてるのかなって」
響「うが?」
響「プロデューサーに、好きに……プロデューサーが自分のことを好き……」ボッ
響「ふわあぁぁ」
美希「想像するだけで真っ赤になったの……」
響「ううぅ……」ゴクゴク
響「ちょっと、自分には早すぎるみたいだぞ……」
美希「響って年上だよね?」
響「それは言わないでほしいさー……」
響「でもそれで美希はプロデューサーに好きになってもらったのか?」
美希「グサッ、なの……。なかなか痛いところを突くの、響」
美希「たしかにまだミキはハニーの心を奪えているとは言いがたい状況なの」
響「そもそも、プロデューサーには好きな人がいるのかなぁ?」
美希「ミキなの!」
響「言ってることが真逆だぞ美希!」
美希「うーん、ハニーの好きな人……ハニーを好きな人ならたくさんいるんだけどなぁ」
響「えっ!?」
響「ほ、ホントなのか? たとえば誰が?」
美希「春香とか千早さんとかなの。あと最近、真美も意識しだしたみたいなの」
響「ぜんぜん知らなかったぞ……。どうやってわかるんだ?」
美希「見てればわかるの! 響はハニーばっかり見てて、ぜんぜん周りを見てないんだね。あはっ☆」
響「プロデューサーにべったりな美希にそんなことを言われるとは思わなかったぞ……」
響「って、べ、別にプロデューサーばっかり見てるわけじゃないぞ!」
美希「響。いまさらなの」
――
―
美希「それじゃ、事務所に帰ってさっそく実践なの!」
響「こ、こんなこと、恥ずかしすぎるぞ……」
美希「もう夕方だね! 夕陽がきれいなのー」
響「ぷ、ぷろ、プロデューサー、な、な、あうぅ……」ボソボソ
…
美希「ただいまなのー!」
響「た、ただいまだぞー!」
小鳥「おかえりなさい」
美希「小鳥! これお土産なのー!」
小鳥「わぁ、ありがとう美希ちゃん!」
美希「そんでもってハニー! ただいまのチューなのー!」ガバッ
P「はいはい、律子にやってやれな」
律子「どうしてそこで私に振りますかね」
伊織「ちょっと美希! あんた私のプリン食べたでしょ!」
美希「あ、でこちゃん! あれすっごく美味しかったのー」
美希「はい、これあげるの」
伊織「な、なによ。おにぎり?」
美希「うん! とっても美味しいから、でこちゃんにも食べてほしいの!」
伊織「そこまで言うなら、食べてあげるわよ……ってでこちゃんっていうなってば!」
P「はは、なんか一気ににぎやかになったなぁ。俺も仕事に戻るか……ん?」
響「……ぷ、プロデューサーっ!」
P「響? どうした?」
響「えっと、こ、これっ!」
響「そ、それで、えっと、お、お願いが、あるんだけどっ」
P「? なんだ?」
響「うぅー……」
P「響?」
響「じッ自分のことなでなでしてほしい!」
「「「!」」」
P「ん? あぁ。ありがとな、響」ナデナデ
響「! えへへ……」
伊織「わ、私もなでなでして、いいのよ? 今だけ特別なんだから!」
美希「じゃあミキはキスしてほしいって思うな!」
P「なんだよお前ら……。ほら仕事に戻るから散った散った」
美希「ぶーっ」
響「えへへ……」
響(やっぱり自分はプロデューサーのことが好きなんだ)
響(今は声に出していえないけど、いつか、きっと……)
響(プロデューサー、かなさんどー!)
おしまい
ありがとござましたー
乙
乙
Entry ⇒ 2012.08.27 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
怜「催眠術?」竜華「せやでー」
竜華「練習しててなー、最近出来るようになったんよー」
怜「なんや初心者かいな……」
竜華「いや、そんなことないで!ぜひ怜に体験してもらいたくて……」
怜「でもなぁー。私催眠術とか掛からないと思うで」
竜華「え、今までそういう経験あるん?」
怜「途中で絶対寝る自信ある」
竜華「あぁ……」
怜「まぁ、竜華の膝枕でもええんなら、ええよ」
竜華「寝る気まんまんやな……まぁ、ええよ」
怜「では、お邪魔して」ポフッ
竜華「どうぞー」
竜華「それじゃ、始めるから、うちの言葉聞いてなー」
怜「あかん、もう寝そうや……」
竜華「はやっ!」
怜「いや、なんかうとうとしてまう…」
竜華「リラックス出来とるいい証拠やん。きっと怜は催眠術掛かりやすいで」
怜「そうかぁー?」
竜華「リラックスは掛かるために必要なことやしな。何より一番大事なのは、互いの信頼関係や」
怜「信頼関係か。それならまぁ、掛かるかも知れんな」
竜華「せやろー。それじゃ、改めまして。うちの言葉、よく聞いてな?」
怜「はーい先生」
竜華「いちいち返事せんでええから。怜はリラックスして、うちの声だけ聞いとけばええんよ?」
怜「なんやつまらんなぁ」
竜華「ええからええから……はい、深呼吸」
怜「……」スー、ハー
竜華「うちの声に合わせて深呼吸してみよか。はい、吸ってー、吐いてー……」
怜「…スー……ハー……」
竜華「その調子やでー……吸ってー……吐いてー……」
怜「……あかん、寝てまう……」
竜華「目を瞑ってもええよー、うちの声に集中して、しっかり聞いといてなー」
怜「うん……」
竜華「目を瞑ったら、もっと、もーっと深ーい深呼吸しよかー」
竜華「はい、吸ってーー……吐いてーー……」
怜「スーッ……ハーッ……」
竜華「寝ながら深呼吸すると、気持ちいいやろ?ほら、もっと深呼吸して」
怜「スーッ……ハーッ……」
竜華「なんだかぽかぽかしてて気持ちええなー……お腹のあたりに意識を向けてみぃ?」
怜(ほんま、なんかぽかぽかするなぁ……)
竜華「お腹に意識を向けると、お腹がもっとぽかぽかするで。ほら、深呼吸」
怜(あ、ほんまや……なんかそんな気がする……にしても眠いなぁ……)スー、ハー
竜華「うんうん、お腹ぽかぽかしてきたなぁ。それじゃあ今度は、右手に集中しよか」
竜華「右手に集中したら、今度は右手が、ぽかぽかしてくるでー」
怜(なんやこれ……どんどん眠くなるやん……ほんとに右手もぽかぽかしてきたし……)
竜華「はい、右手もぽかぽかしたな……じゃあ次は、左手」
怜(ぽっかぽかや……気持ちええなー)
竜華「右手も左手も、ぽっかぽかして気持ちええなー。今度は両足いっきに、いこか」
怜(足に意識を……おぉ、ほんまにぽかぽかするなぁ……)
竜華「うんうん、足もぽかぽかやね……それじゃもう、全身ぽっかぽかやな」
怜(全身、ぽっかぽか、やなぁ……)
竜華「全身ぽっかぽかやと、もう寝むぅて仕方ないな。この暖かさに浸って、少し気持ち良くなっとこかー……」
怜(うん、もう、めっちゃ寝そうわ……)
怜(……スーッ……ハーッ……)
竜華「怜、すっかり催眠状態やなぁ……やっぱり掛かりやすいでー」
怜(ん……こんなんが催眠術なん……?ただのお昼寝みたいなもんやん……)
竜華「ところで、怜」
竜華「右手に力入らんくなってるの、気付いてるー?」
怜(ん……?)
竜華「ほら、怜はもう、右手に力が入らんよ」パチンッ
怜(んっ……なんや……ほんまに……?)
竜華「試そうとすればするほど、右手から力が抜けてくでー。ほら、すぅっ、て」パチンッ
怜(あ、力が……)ガクッ
竜華「ほーら、力入らんやろー。怜は催眠術に掛かってるから、もう、力入らへんでー」
怜(ほ、ほんまに……催眠術……?)
怜(あっ……)ガクッ
竜華「怜は偉いなー。ちゃーんと催眠にかかっとる」
怜(力が……)
竜華「ほら、不安がらんでええよ。全身がぽかぽか。気持ちいいんやろ?」
怜(……ぽかぽかして力抜くと……気持ちええ……)
竜華「右足も……すぅっ。左足も……すぅっ」パチンッ、パチンッ
怜(あ、もう……)ガクッ
竜華「うんうん、それじゃあ、全身ぽかぽかしたまま、全身の力抜くでー……」
竜華「……はい、すぅっ」パチンッ
怜(んっ……)ダラン
竜華「力抜けたなー。気持ちええなー。眠いなー。もう何も考えたくないなー」
怜(ん、そんないっぱい喋らん…といて……)
怜(何も考えんでええん……?)
竜華「全身ぽかぽかで、力入らなくて、何も考えない。すっごい気持ちいいなぁー」
怜(……気持ちいい……)
竜華「催眠状態、気持ちいいなぁ……。それじゃあ、もっと深い催眠、掛けてあげるな」
怜(さいみん……)
竜華「今から10から数え下ろすでー。数字が小さくなればなるほど、怜の催眠は、ふかーく、ふかーくなっていくからな」
怜(ふかく……ふかく……?)
竜華「0になった瞬間、怜は、完全に催眠状態になるで」
怜(ぜろ……さいみん……?)
竜華「ほな、いくでー」
竜華「じゅう、きゅう、はち……」
竜華「ほら、段々と、意識が薄れていくで」
怜(……じゅ、はち…ん…)
竜華「なな、ろく、ごぉ……」
竜華「もう半分まで来たで……全身ぽかぽか、気持ちいいな」
怜(ぽか…ぽか…)
竜華「よん、さん……」
竜華「全身ぽかぽか、力が入らない。催眠状態」
怜(ぜん…さいみ……?)
竜華「にぃ」
竜華「ほら、あと二つ数えたら、怜は完全に催眠状態になるよ。気持ちええなぁ」
怜(…ふた、つ……)
竜華「いーち」
竜華「ほら、もう、意識が落ちる寸前。気持ちよくて、何も考えられへん。気持ちいだけ」
怜(きも…ち……)
竜華「あと、ひとつ、数えたら、完全に催眠状態に落ちるよ?怜」
怜(さいみ……おち…?)
竜華「……ふふっ」
竜華「ぜろ、『堕ちて?』」
怜(あっ────────…………)
竜華「…………ほーら、もっともっと、深くいこか」
怜(───………)
竜華「10,9,8,7,6,5,4,3,2,1」
竜華「ぜろ、『堕ちて?』」
怜(ッッ────………)
怜「………」スー、ハーッ
竜華「……ふふっ、完全に催眠状態やなぁ。怜」
竜華「可愛いで……怜ぃ……」
竜華「ときぃ?催眠状態は気持ちええなぁ」
竜華「ずっとずっと、この感覚に浸りたいなぁ」
竜華「でも、いったん、目を覚ましてもらうで」
竜華「うちが1から10まで数えて、手を叩いたら、怜は目を覚ます」
竜華「ええ?うちが手を叩いたら、怜は目を覚ますよ」
竜華「ただし。うちが『堕ちて?』って言ったら、怜はすぐに、この催眠状態に帰ってこれるよ」
竜華「嬉しいなぁ。気持ちいい催眠状態に、すぐに帰ってこれるでー」
竜華「うちが手を叩いたら、怜は目を覚ます。うちが『堕ちて?』って言ったら、怜は催眠状態に堕ちる」
竜華「いくでー……」
竜華「1,2,3,4,5,6,7,8,9……」
竜華「じゅう!」パンッ
怜「んっ………」
竜華「怜ー、お疲れ様。目は覚めたかー?」
怜「ん、んんっ……ふぁーぁ……」
竜華「なんや怜、まだ寝ぼけとんのかー?」パンッ
怜「んっ!び、びっくりするなぁ……なんやねん」
竜華「いったんおはようやでー。どう?気持ちよかった?」
怜「あぁ、催眠術やったかいな……せやなー、あんまり覚えてないしなー」
竜華「えー、しっかり思い出してよー。ほら、全身がぽかぽかになって、力が抜けて…」
怜「え、あ、そ、そうやなぁ……なんか 竜華「『堕ちて?』」
怜「ッ────」ガクンッ
竜華「怜ぃ。一瞬で催眠状態まで落ちると、すっごく気持ちええやろー?」
竜華「意識が一瞬で飛ぶ瞬間、なんとも言えんくらい気持ちええやろー?」
竜華「これを何回も繰り返すとなー……ふふっ」
竜華「怜はもう、催眠状態の虜になっちゃうんやでー?」クスクス
竜華「はい、1,2,3,4,5,6,7,8,9」
竜華「じゅう!」パンッ
怜「!」ビクッ
竜華「怜、起きてー。目ぇ覚ましー」
怜「ん……あ、りゅうk」
竜華「『堕ちて?』」
怜「ッ─────」ガクンッ
竜華「1,2,3,4,5,6,7,8,9,10」パンッ
怜「ぁっ……」ビクッ
竜華「『堕ちて?』」
怜「ッ──────」ガクンッ
竜華「はい、もう一回いくよ。1,2,3,4,5,6,7,8,9,10」パンッ
怜「ぁ……」ボーッ
竜華「もうどっちがどっちか分らんなぁ」クスクス
竜華「『堕ちて?』」
怜「─────」
竜華「もう、手ぇ叩くだけで起きてね。いくで」パンッ
怜「……」ボーッ
竜華「『堕ちて?』」
怜「────」ダラーン
竜華「それじゃ、最後は、どでかいのいこかー。はいっ」パンッ
怜「……」ボーッ
竜華「怜、10,9,8,7,6,5,4,3,2,1」
怜「りゅぅ……」ボーッ
竜華「0、『堕ちて?』」
竜華「ほら、もっと『堕ちて?』。もっと『堕ちて?』。まだまだ『堕ちて?』」
竜華「何も分らない暗闇まで、ずーと落ちていこう?」
竜華「だから……ほらぁ、『堕ちて?』」
怜「──────」ビクッビクッ
竜華「あは、あはは…なんや怜、気持ち良すぎて少し痙攣しとるやないか」
竜華「まだまだ本番はこれからなのに……」クスクス
竜華「なぁ、怜?そんなに『堕ちて』大丈夫?」
怜「───」ビクッ
竜華「あぁ、ごめんなぁ。間違って『堕ちて』って言ってしまったわぁ」
怜「────」ビクッ、ビクッ
竜華「また『堕ちて』って言ってしまったわぁ。もう『堕ちて』って言わんようにしとこ」クスクス
怜「────ッッ」ビクンッ
竜華「ふふっ、そーんなに気持ちええんやぁ……」クスクス
竜華「これからもっと、もーっと気持ちよくしたげるからなぁ」クスクス
竜華「怜は今、深い、ふかーい催眠状態」
竜華「もううちの声しか聞こえへん。うちの声だけ聞いとけばええから」
竜華「うちの声だけを聞いてれば、それだけで気持ちいい」
竜華「ほら、聞けば聞くほど、気持ちよくなっていくやろー…?」
竜華「だから、うちの言う事は、どんどん聞いていこうなー」
竜華「うちの声聞いて、言う事聞いて、どんどん気持ちよくなっていこ」
竜華「ほら、もう一回、深いとこいくよー…」
竜華「はい、『堕ちて?』……」
────
──…
─…
…
…
─…
──…
───
竜華「はいっ!」パンッ
怜「っ!」ビクッ
竜華「はいはい、起きてー」
怜「な、な、なんやなんや……」
竜華「いつまでうちの膝で寝てるつもりやねん。もう起きぃや」
怜「なんや竜華。今日はなんか冷たいなー」
竜華「冷たくなんかないよ?なぁ怜」
怜「んっっ!!」ビクッ
竜華「どーしたん?いきなり大きな声出して……」
怜「い、いや、なんでも…」
怜(な、なんや…いまいきなり電流みたいなのが…?)
竜華「なんや、今日の怜なんか変やなぁ」
怜「んんっっ!!」ビクッ
竜華「……ほんまどうしたん?熱でもあるんか?」
怜「い、いや…なんもない…」
怜(あ、あかん…これなんや…めっちゃ変な気持ちになる…)
竜華「それはそうと、いつになったら膝からどいてくれるん?」
怜「あ、ああ。そうやな」ヨイショ
竜華「あ、そういえば怜」
怜「んはぁっ!」ガタッ
竜華「ど、どうしたん!?やっぱり体調悪いんか!?」
怜「はぁ……はぁ……だ、だいじょうぶ…」
竜華「怜、無理せんでええからな?うち、怜の事が心配やねん」
怜「ぁっ、ん……っっ!!」ビクッ、ビクッ
怜(か、身体がぁ……なんやねんこれぇ……)
竜華「な、なにエロい声出してんねん、怜」
怜「え、エロい声なんて…んっっ…」ビクッ
竜華「なぁ、怜」
怜「んはぁぅっ……」ビクッ
怜(竜華に……名前……)
竜華「ほんまに大丈夫か?と──」
怜「す、ストップ!」
竜華「ん?どないした?」
怜「うん、うん……よし、竜華。今日はうちの名前呼ぶの禁止な」
竜華「はい?」
怜「よし、よし……うん、もう大丈夫や!ほないこか!」
竜華「どうしたん?熱でもあるん?」ピトッ
怜「ッッ!!」ビクンッ
竜華「熱はないなぁ……まだ寝ぼけとるんかぁ?」ホッペプニー
怜「ぁっ、んんっ……」ビクッ、ビクッ
竜華「またエロい声出してぇ……発情でもしとるんか、怜?」
怜「ぁぁっ……!」ビクッ
怜(な、名前と……触られても……)
怜「りゅ、竜華ぁ…今日、うちに触るのもk──」フルフル
竜華「そんなに震えて……大丈夫、うちがおるで…」ギュウッ
怜「~~~~~~~~~~~~ッッッ」ビク、ビクンッ
怜「んはぁっ…はぁっ……はぁぁ……」
怜(い、い、イってしまった……)
竜華「怜ぃ」ボソッ
怜「ひゃぁぁッ……!!」ビクッ
竜華「今、イったな…?うちに抱きつかれて、イった…?」
怜「ゃ、ちがっ…」
竜華「うちに抱きつかれてイっちゃうような、エッチな子やったん……?」
竜華「なぁ、怜ぃ」ボソッ
怜「~~~~~ッッ!!」ビク、ビクッ
竜華「今度は名前囁かれただけでイったなぁ……」
怜「りゅ、りゅうかぁ……」
竜華「なんやー?うちはただ、部活の仲間の事を心配して、抱きしめてあげてるだけやで?」
竜華「そうやろ?怜?」ギュウッ
怜「あ、ぁ、ぁぁぁッッッッ!!!」ビクンッ
竜華「あぁ……抱きしめながら名前呼んでしまったわぁ…」
怜「りゅ、か……」
竜華「もう限界って顔しとるなぁ怜」
怜「んはぁぁっっ!」ビクッ
竜華「あかん……あかんて……」
竜華「うちももう、限界やわ……」
怜「りゅう…んんっっっ」
竜華「んっ…んっ…んぁ…はぁぅ……」
怜「ぁぁぁぅ……んぁぁ……んんんっ……」
竜華「キスでも感じてまう怜…かわいいなぁ……んっ」
怜「はぁ…ふぁっ……ぁぁぁっ……」
怜「ふぁぁぁ……ぁ、ぁ、ぁぁ……」ボーッ
竜華「もう目の焦点あってないやん…そんなに気持ちよかったん…?」クスッ
竜華「それとも、催眠が深く掛かりすぎたんかな…?」
竜華「まぁ、どっちにせよ、気持ちよすぎたんやな…ふふっ」ギュウッ
怜「ぁぁ、ぅぁ……」ボーッ
竜華「虚ろな怜めっちゃ可愛いけど……いったん、寝ようかぁ」
竜華「はい、怜。『堕ちて?』」
怜「ぁっ────………」
───
──…
─…
…
…
─…
──…
───
竜華「はいっ」パンッ
怜「んっ……」
竜華「怜ー、お目覚めの時間やでー」
怜「ん、んん……」
竜華「ほら、そんな眠そうにせんと。早く起き!」
怜「う、うん……ちょ、ちょっと待って……」ドキドキ
竜華「んー?」
怜(あかんあかんあかん………あかん!)
怜(竜華に……めっちゃキスしたい!!!!)
怜(あかん、何考えてんねんうち…そんなん意味わからんやろ!)
怜(ええか、竜華はうちの事を心配してくれて、膝枕してくれてたんや)
怜(それをっ!うちはっ!いやらしい気持ちでっ!この馬鹿っ!)
怜(よ、よし。冷静を装って。いつもどーりに…)
怜「お、お待たせー。そろそろ起きるなー」
竜華「うん、うちはいつでも大丈夫やでー」ニコッ
怜「ああああああああああああああかんん!!!!」
竜華「んー?」
怜(可愛い、可愛い…っ!あかん、めっちゃキスしたい……)
怜「りゅ、りゅうか…?」
竜華「どーしたん、怜?」ニコッ
怜「うち……うち……」ハァハァ
竜華「どーしたん?息荒いでー?」
怜「うち……もう……我慢……」ハァハァ
竜華「……ふふっ、我慢せんでもいいよ?」ニコッ
怜「!! りゅ、竜華ぁぁ!!!」ドサッ
竜華「んっ……んぁぁっ……」
怜「んはぁっ……んっっ……竜華、竜華ぁぁ……」
竜華「んんっ……はぁっ……」
竜華(私とキスしたくなるようにしただけなのに、怜ったら……)クスッ
怜「竜華ぁ、はぁっ、んっ、んんぁ……」
竜華「怜……」
怜「りゅ、竜華ぁ、あのなぁ」
竜華「……?」
怜「う、うちな……竜華のことがな」
竜華「え、あ、ちょっと──」ズキンッ
怜「すk───」
竜華「ごめん!『堕ちて?』!!」
怜「ぁっ────………」ガクンッ
竜華「………はぁ………」
竜華「……まだ、心がなんか痛い……」ズキンッ
竜華「うち……」ハァ
竜華「……こんなんで、怜に好かれたかったんやない……」
怜「スーッ……ハーッ……」
竜華「怜、今から怜に掛かってる、すべての催眠をとくで……」
竜華「それと…ごめんな。うちに帰ったら、ゆっくり寝てな…」
竜華「…今から10数えて手を叩くと、怜に掛かってる全ての催眠は解ける」
竜華「いくで…1、2、3…」
竜華「4,5,6……」グスッ
竜華「7,8,9,……」
竜華(これで良かったんや…明日からはまた、今までどおりのうちらで──)
竜華「じゅう!」パンッ
怜「んっ………」
竜華「おっはよー、怜。よく眠れたかー?」
怜「竜華……」
竜華「いやー、いつもに増して、熟睡してたなー怜!そんなにうちの膝枕気持ちよかったん?」ハハハ
怜「あー……そかぁ……あー…なるほどなぁ……」
竜華「どうしたん?怜?」
怜「どうりで……はぁ……悲しくなってきたわ」
竜華「え?え?ほんまにどうしたん?」
怜「竜華、うちの催眠、『すべて』解いたやろ?」
竜華「…………あ………」
竜華(催眠中の記憶──消してない──……)
怜「どーりでなー……うんうん」
竜華(私の気持ちも──卑劣なやり方も──全部──)
竜華(怜『どうりで……はぁ……悲しくなってきたわ』……)
竜華(怜に……)
竜華(怜に………嫌われたぁ……)グスッ
怜「やっぱり、詰めが甘いなぁ。それに、駄目駄目やん」
怜「あと一歩で、一生後悔するとこやったで…ほんま」
怜「……うちのど阿呆」
怜「ごめんな、竜華。もう一回だけ、眠ってな」
竜華「え……?」
怜「『おやすみなさい』」パチンッ
竜華「ぁ───………」
怜「……竜華に催眠掛けて、催眠術叩きこんで」
怜「うちに催眠術掛けて、いやらしいことするように仕組んで」
怜「自分の記憶は忘れるように自分で催眠掛けて……」
怜「ただの卑怯なやり方で、何の意味もない愛情を作って」
怜「自分は何も知らないふりで……竜華を苦しめたなぁ……」
怜「竜華、今から竜華に掛かってるすべての催眠を解くで」
怜「……ほんま、堪忍な」
怜「1,2,3,4,5,6,7,8…」
怜「9…じゅう」パンッ
怜「竜華、おはよう。いつもと立場逆やな」ハハハ
竜華「……」
怜「頭混乱しとるやろ?ごめんな。さっきまでの竜華の気持ち、全部あれ、うちが…」グスッ
怜「うちがぁ…グスッ…づぐった…偽物…やがらな……」
怜「ほんまごめんな……ぎら、ぎらいになっでも……ええから……」
竜華「怜」ギュウッ
怜「!!……りゅぅ……かぁ……」
竜華「怜に掛かってる催眠は、うちが全部解いたんよな?」
怜「……?」コクッ
竜華「それで、うちに掛かってる催眠は、怜がさっき、解いたんよな?」
怜「……」コクッ
竜華「はぁー……それはしんどいわー……なんでやろなー……ほんま」
竜華「ほんま、なんでうち、こんなに怜のことが、好きで好きで仕方ないんやろかぁ…」
竜華「はぁ。大体、催眠なんかで人の気持ちが操れるわけがないよなぁ」
竜華「行動は操れても!人の、一番大事な、恋心!そう簡単に操れる訳ないんや」
怜「……竜華……」
竜華「だからな、怜」
怜「───待って、竜華……」
竜華「待てへん。言うで」
怜「なんや……せっかちやな……まぁ、うちもやけど」クスッ
「「大好きやで」」
カン!
ほんとは最初みたいに催眠の様子をずっと描きたかったけど、時間の都合とやる気の(ry
支援感想…すばらでしたよっ!
すばらでした
すばらですよ
Entry ⇒ 2012.08.27 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
シャーリー「合コンあるけど、参加しない?」ルルーシュ「しない」
シャーリー「だ、だよねー。ルル、そういうの興味ないもんねー」
ルルーシュ「シャーリー、その合コンに参加するのか?」
シャーリー「ううん!!別に!!しないよー!!私も興味ないし!!」
ルルーシュ「じゃあ、どうしてそんなことを訊ねた?」
シャーリー「それは……」
ミレイ「水泳部のメンバーにまた合コン誘われたの。でもね、いつも断ってばかりだから今回は流石に参加しないと悪いかなって思ったのよ。でも、ルルがいないと意味ないしなー」
ミレイ「あ、そうだ!ルルを誘っちゃおう!!!ってことじゃないの」
シャーリー「会長?!なんでそのことを?!」
ミレイ「これだけ想われたルルーシュが一言!」
ルルーシュ「じゃあ、断ればいいじゃないか」
シャーリー「だって、もう散々断ってるから、断り辛くて……」
シャーリー「だからー。興味無いんだってば!」
ルルーシュ「じゃあ、行かなければいいだろ」
シャーリー「断りにくいから困ってるの!!」
ルルーシュ「面倒な性格だな」
ミレイ「ルルーシュ、たまにはシャーリーに付き合ってあげればぁ?」
ルルーシュ「どうして俺が合コンなんて」
リヴァル「ルルーシュは合コンなんてしなくても立ってるだけで女の子が寄って来るもんな」
ルルーシュ「変な言い方はやめろ。別にそんなことはない」
リヴァル「それはお前がナナリーとよく一緒にいるから近寄ろうって女の子が少ないだけだよ」
ミレイ「というか、ルルーシュが合コンなんて参加したら他の男の子が可哀相よね。シャーリーはいい子だからそんな凄惨な男子に同情して、夜のネオン街に消えていく……」
ミレイ「ああ、お父さん、お母さん。ごめんなさい。シャーリーは悪い子です」
シャーリー「何言ってるんですか?」
ルルーシュ「俺はそういうのに呼ばれたこともないし、参加したこともない。恐らく場に馴染めず、空気を悪くするだけだろう」
シャーリー「そうかなぁ……私はルルがいてくれるだけで心強いけど……」
シャーリー「え……あ、いや……」
ミレイ「顔も知らない男を前にするよりは、知っている憎いあいつがいたほうがいい。そういうことよ」
ルルーシュ「おいおい。合コンの意味がないんじゃないか?合同お見合いみたいなものだろ?」
ミレイ「そうよねー。新しい出会いを求めて合コンは開かれるわけだし」
リヴァル「うんうん」
ミレイ「二人は意気投合。みんなと別れたあとも何故か家には帰りたくない。そしてホテル街へと消えていく……」
シャーリー「もういいです。断りますから」
ルルーシュ「待て。シャーリー、俺が行けば解決するのか?」
シャーリー「え……?」
ルルーシュ「友人との付き合いも大事だ。俺で解決できるなら参加してやろう」
シャーリー「いいの?!ホントぉ?!」
ルルーシュ「ただし、居るだけだ。何もしない。空気が悪くなっても文句は言うなよ?」
シャーリー「うんうん!!ありがとう!!ルルー!!これで―――」
ミレイ「ストーップ!!!そんなに簡単に決めていいのかね、若人たちよぉ!!合コンとは戦争だぞー!!」
ミレイ「言ったけどね、やっぱりど素人のルルーシュとシャーリーが参加するのは危険だと思うのよ」
シャーリー「危険……ですか?」
ルルーシュ「合コン自体が駄目になると?」
ミレイ「シャーリー、何対何でやるの?」
シャーリー「えーと、4対4です」
ミレイ「なるほど。ド素人の二人を含めて8人。これは全員がご破算になるわ」
ルルーシュ「未経験者が二人いるだけでですか?」
ミレイ「そうよ。だって、テーブル席はまさに戦場と言う名のフィールド!!話術とは兵器!!飲食物は兵糧!!」
ルルーシュ「なるほど。確かに新兵が混じればどうなるかわかりませんね」
ミレイ「そう!敵味方の足を引っ張り合って、誰も生きては帰らない結末だってあり得てしまう!!」
シャーリー「そうなの?」
リヴァル「まぁ、カップルが成立しないっていうのは珍しくないな」
ミレイ「と、いうわけで、ルルーシュ。今から生徒会で合コンをしまーす!!ルルーシュとシャーリーを合コンマスターにするために!!」
ルルーシュ「会長が合コンをしたいだけでしょう?」
リヴァル「え?!マジ?!今からこの4人で合コンするの?!」
シャーリー「でも、人数足りないし……」
ミレイ「そうねー。ニーナ!!こっちおいでー」
ニーナ「わ、私はいいよぉ」
ミレイ「何事も経験だってば。ほれほれ」
ニーナ「うぅ……」
ルルーシュ「それでも男は2、女は3ですね」
リヴァル「スザクを呼んでも、あと二人足りないな……」
シャーリー「じゃあ、カレンも呼ぼう!」
ミレイ「それじゃあ、ナナリーも呼ぼう!」
ルルーシュ「会長!!ナナリーは関係ない!!」
ミレイ「人数合わせで急遽誰かを呼ぶのは合コンじゃありきたりな風景でしょ?」
シャーリー「そうなの?」
リヴァル「会長……合コンしたことあるのか……?」
リヴァル「あ、会長!!俺も一緒に!!」
ルルーシュ「全く……」
シャーリー「ごめんね、ルル?」
ルルーシュ「気にしてない。シャーリーの所為でもなんでもないからな」
シャーリー「うん……」
ニーナ「シャーリー、合コンしたことあるんですか?」
シャーリー「えっと、2回ぐらい」
ルルーシュ「なんだ。やることやってるんだな」
シャーリー「無理やり誘われただけ!!自発的に行ったことなんてないもん!!」
ルルーシュ「ふぅん。で、合コンはどのように始めるんだ?」
シャーリー「えーと……まずは自己紹介からなんだけど」
ルルーシュ「自己紹介か……。会長が来る前に流れだけでも掴んでおくか。ニーナ」
ニーナ「は、はい」
ルルーシュ「お前から自己紹介をしてみてくれ」
シャーリー「さぁ……」
ルルーシュ「立った方が良くないか?」
ニーナ「じゃあ……」
ルルーシュ「……」パチパチパチ
ニーナ「わ、私はニーナ・アインシュタインです……」
シャーリー「誕生日とか言って」
ニーナ「8月27日……です……乙女座です……」
ルルーシュ「……それだけでいいのか?」
シャーリー「趣味とかあれば」
ニーナ「趣味は物理学の研究ですけど」
ルルーシュ「やめろ。ニーナにその類のことを語らせると長くなる」
シャーリー「そっか。男の子ひいちゃうよね」
ニーナ「ごめんなさい……根暗な趣味で……」
ルルーシュ「いや、そこまで言っていないが……」
ルルーシュ「いいだろう」
ニーナ「はぁ……」
ルルーシュ「俺の名前はルルーシュ・ランペルージ。誕生日は12月5日の射手座だ。趣味はチェス」
シャーリー「……」
ニーナ「……」
ルルーシュ「拍手はないのか?」
シャーリー「あ、ごめん」パチパチ
ニーナ「他にはないの?」
ルルーシュ「他……身長は178センチ。血液型はA型だ」
シャーリー「へぇ」
ニーナ「……」
ルルーシュ「おい。これ、楽しいのか?」
シャーリー「まだ、自己紹介だし」
ルルーシュ「イメージと違うな。自己紹介だけでもかなり盛り上がっているような気がしたんだが……」
ルルーシュ「俺が?」
シャーリー「そうだよ。人に任せちゃダメだよ」
ルルーシュ「そうか。確かにな。キングから動かなくてはな。いいだろう。少し待ってくれ」
ニーナ「(ルルーシュって変に真面目ですよね)」
シャーリー「(だねー)」
ルルーシュ「―――よし。改めて自己紹介をしよう!!二人も精一杯盛り上げてくれ!!」
シャーリー「ウォォォ!!!!」
ニーナ「イエーイ!!!ルルーシュぅ!!!」
ルルーシュ「フハハハハハ!!!!!皆の者!!!満を持して私の出番がやってきた!!!」
ルルーシュ「私の名はルルーシュ・ランペルージ!!!よろしく」
シャーリー「きゃー!!かっこいい!!!」
ニーナ「すてきー!!!」
ルルーシュ「趣味はチェス。今すぐ、君のハートにチェックメイト」
シャーリー「おぉ……」
ニーナ「ごめんなさい。私、こういうのはダメ……」
シャーリー「私も……」
ルルーシュ「お前ら!!他人にやらせておいてそれはないだろ!!」
シャーリー「ルルーシュ、がんばったね。あれならきっと合コンも大丈夫だと思うよ?」
ルルーシュ「シャーリーもやれ!!ニーナもだ!!」
シャーリー「えぇ……」
ニーナ「できないよぉ」
ルルーシュ「俺だけ恥をかくのは御免だ!!」
シャーリー「器ちっさ」
ルルーシュ「なんだと?!」
ミレイ「はぁーい!たっだいまー!!連れてきたわよー!!」
スザク「あの……一体、何を?」
カレン「また下らないことですか?」
ナナリー「お兄様との合コンと聞いて飛んできました」
ミレイ「男性陣はこっちの席。女性陣は反対側の席ね」
シャーリー「あぁ、緊張してきたー」
ニーナ「はぁ……」
カレン「もう……合コンって……」
ミレイ「あー、カレンはこっちじゃなくていいから」
カレン「はい?でも、女性陣はって……」
ミレイ「男が一人足りないのよ」
カレン「あたしに男役をやれってことですか?」
ミレイ「お願い!カレンしかいないのよぉ」
カレン「なんで……」
ニーナ「……」
カレン「なに?」
ニーナ「ううん……」
ルルーシュ「まあ、カレンの男役は適任だな」
ルルーシュ「そのままだ」
スザク「ルルーシュ、合コンってどんなことをするんだい?」
ルルーシュ「顔の知らない数人の男女と会食をするだけだ」
スザク「へえ……。それって何が目的なんだ?」
ルルーシュ「まあ、簡単に言えば出会いだな」
スザク「そうか。友達を増やすためなのか」
ルルーシュ「ああ」
スザク「でも、もう友達ばかりだけど」
ルルーシュ「これは練習だ。初対面という設定でやるんだろ」
スザク「そうか。つまり、ルルーシュとも今日が初めての出会いってことでいいのか」
ルルーシュ「その辺は自由でいいんじゃないか?」
リヴァル「それ面白そうだな。じゃあ、今はみんな初顔合わせってことで」
カレン「はぁ……」
ナナリー「では、今日はお兄様と私は兄妹ではない。ということですね。ふふ」
ナナリー「それじゃあ、お兄様のこと、ルルーシュさんって呼んでもよろしいですか?」
ルルーシュ「な……」
ナナリー「ダメですか?」
ルルーシュ「いや。構わない。ナナリーの好きにするといい」
ナナリー「はいっ」
ミレイ「ではー、合コン幹事のリヴァルさん!!」
リヴァル「俺?!」
ミレイ「早速、初めてください」
リヴァル「そこは会長でしょう」
ミレイ「私、合コンなんてしたことないもーん」
リヴァル「はぁ?!」
ミレイ「だから、お、ね、が、い」
リヴァル「ああ、もう!!分かりました!!じゃあ、俺が仕切らせてもらいます!!」
シャーリー「がんばれー」
ミレイ「いえーい!盛り上がっていこーぜー!!」
シャーリー「あの、会長。酔ってるんですか?」
ミレイ「まだ、自己紹介が済んでないでしょー?私とあなたは初対面っ」
シャーリー「は、はぁ……」
リヴァル「では、僭越ながらこの俺から自己紹介をさせていただきます!!」
リヴァル「名前はリヴァル・カルデモンドです!!好きなタイプの女性は年上の人です!!」
ミレイ「やったー!!」
ニーナ「え?」
シャーリー「そんなこと言うの?!」
ルルーシュ(不覚……!!!誕生日や趣味以外のことを言わないとだめだと?!)
リヴァル「次は君だ!!」
スザク「はい。自分はブリタニア軍所属枢木スザク准尉です!!女性のタイプでいうなら元気で笑顔の似合う人がいいです」
ミレイ「やったー!!私、モッテモテー!!!」
シャーリー「会長、それ盛り上げようとしてるんですか?」
カレン「え、ええ……」
ニーナ「あ……」
カレン「えーと……カレン・シュタットフェルトです。好きなタイプの人は……自分の意思をしっかりと思ってる人かな?」
ミレイ「また私のことだー!!」
シャーリー「会長、違いますよ!!」
カレン「はい」
ルルーシュ「……いいだろう。練習の成果をみせてやる」
カレン「練習?」
ルルーシュ「フフフハハハハハ!!!!私の名はルルーシュ・ランペルージ!!!趣味はチェス!!今日はみなさんのハートと言う名のキングにチェックメイトしてみせます」キリッ
ミレイ「……」
シャーリー「……」
ニーナ「……」
ナナリー「はいっ!お願いします!!」
ルルーシュ「ありがとう」
ミレイ「はぁーい。えーと、ミレイ・アッシュフォードです。ニックネームは会長!結構なお金持ちです。よろしくー」
シャーリー「うわっ。性格、わる」
ミレイ「はい。次は貴方ね」
シャーリー「え、えーと……シャーリー・フェネットです。す、好きなタイプは……何を考えているのかよく分からない……人……」
スザク「変な人がいいってことか」
シャーリー「ち、ちがいます!!」
スザク「あれ?そうなの?」
リヴァル「どんどん行きましょう」
ニーナ「……えっと……ニーナ・アインシュタイン……です……。す、好きなタイプは……優しい人……」
カレン「ふーん」
ニーナ「……」モジモジ
カレン「ん?」
ナナリー「ナナリー・ランペルージです。好きな男性のタイプは背が高くて家事全般ができて優しくていつも私のことを気遣ってくれるお兄様……じゃ、なくてそんな人がいいです」
リヴァル「はぁーい、ありがとう!では、質問タイムといきましょー!!」
リヴァル「男性陣から女性陣に、あるいはその逆。全体に投げかける質問だよ」
スザク「じゃあ、はい」
リヴァル「はい、スザクくん」
スザク「みなさんとても魅力的ですが、今まで付き合ってきた男性はいるのでしょうか?」
ミレイ「いませーん。新品です」
リヴァル「マジで?!」
ミレイ「なんであんたが食いつくのよ」
シャーリー「わ、私も……いません」
ニーナ「ないです」
ナナリー「私もありません。生涯においてこの身を捧げるのはお一人しかいないと思っていますから」
スザク「なるほど、ありがとうございます」
ミレイ「じゃあ、男性陣の女性遍歴をおしえてくださーい」
ルルーシュ「……!!」
カレン「……あたしはないけど」
ミレイ「なーんだ。そうなの?」
ルルーシュ「まぁ、この中でそんな特異な経歴を持っている奴なんて―――」
スザク「僕は昔、付き合っていた女性が一人います」
ルルーシュ「なにぃ?!」
ミレイ「うっそ!?ほんとぉ?!」
シャーリー「えー?!だれだれ?!」
カレン「意外ね」
スザク「そうかな。17歳だし、別に不思議はないと思うけど」
ルルーシュ「き、貴様……!!どこの誰とだぁ!?」
スザク「とある任務で大怪我を負ったときに、その場にいた女性に介抱されてね。その流れで……色々……ありました」
ミレイ「わお」
シャーリー「いやぁ……スザクくん……そうだったのぉ……」
スザク「でも、ルルーシュもそれぐらいあるだろ?」
ルルーシュ「あ、ああ……当然じゃないか……ふふ……」
ルルーシュ「スザク……おのれぇ……!!」ギリッ
シャーリー「あの!!じゃあ、経験のある二人に訊きたいんですけど……」
スザク「なんだい?」
ルルーシュ「……」
シャーリー「キ、キスしたこともありますか?!」
スザク「あるよ」
シャーリー「?!」
ミレイ「スザクくん……余裕があるわね」
ルルーシュ「俺も……ある」
シャーリー「えぇぇぇ?!」
リヴァル「ルルーシュぅ!!嘘吐くなよぉ!!!」
ルルーシュ「ある!!嘘ではない!!キスぐらいある!!」
カレン「ナナリーとは無しよ?」
ルルーシュ「ち……違うな!!間違っているぞ!!!」
ミレイ「そうね。反省、反省」
スザク「というか、キスぐらい普通じゃないのか?」
リヴァル「……」
ルルーシュ「そ、そうだな……普通だな……」
カレン「キスぐらい、なんぼのもんじゃい」
シャーリー「カレンもあるの?!」
ニーナ「だ、誰と?」
カレン「え……えーと……年上の男性」
ミレイ「……この生徒会……経験豊富な奴がこんなにもいたなんて……不覚……!!」
シャーリー「はは……は……ルル……そうなんだ……」
リヴァル「どこのどいつとキスしたんだよぉ!!」
ルルーシュ「誰でもいいだろ!!この場でいう必要はない!!!!」
ナナリー「うふふふ……ふふふふ……あははは……」
ミレイ「ねー、惨めになるから次いこ、次」
シャーリー「席替え?」
リヴァル「そう。気になる人の隣にいくチャーンス!!」
ミレイ「なるほど!!」ガタッ
シャーリー「おりゃぁぁぁ!!!!」ダダダッ
ルルーシュ「さてと。俺は勿論……ナナリーの隣に……」
ナナリー「ルルーシュさーん♪」
ルルーシュ「ナナリー」
スザク「―――ナナリー。僕と話さないかい?」
ナナリー「え……」
スザク「ダメかな?」
ルルーシュ「スザァァァク!!!貴様は何故邪魔ばかりする!!!」
スザク「ルルーシュゥゥゥ!!僕だってナナリーの隣がいいんだ!!!」
ルルーシュ「貴様さえいなければ!!!」
スザク「お前がいるから!!!」
スザク「ナナリーは譲らない!!」
ナナリー「や、やめてください……」オロオロ
カレン「なにやってんだが……」
ニーナ「あの」
カレン「ん?ニーナ、どうしたの?」
ニーナ「話さない?」
カレン「いいわよ。余りモノ同士、仲良くしましょ?」
ニーナ「うん……する……」
ミレイ「あちゃー……こりゃ、ルルーシュの隣は無理そうね……」
リヴァル「会長。隣、いいでしょうか?」
ミレイ「いいけど、何も出ないわよ?」
ルルーシュ「じゃんけん、ポン!!!」
スザク「よし!!勝った!!!」
ルルーシュ「くっそぉぉ!!!ナナリィィィ!!!!」
スザク「ナナリー、こっちに来るんだ!!」
ナナリー「いやです!!私は!!私はぁ!!」
ルルーシュ「ナナリィィ!!!」
シャーリー「あのぉ……ルルー?」
ルルーシュ「シャーリー、俺でよければ話さないか?」
シャーリー「うんうん」
ルルーシュ「とは言っても、普段から会っているしな。今更なにを話せばいいのか」
シャーリー「……ルルーシュさん」
ルルーシュ「な……?!」
シャーリー「ほ、ほら、今日は初めての出会いだし……」
ルルーシュ「そうだったな。俺のことはルルって呼んでくれても構わないよ、シャーリーさん」
シャーリー「わ、わたしも……シャーリーでいいよ?」
ルルーシュ「そうか。じゃあ、シャーリーと呼ぶよ」
シャーリー「うん」
シャーリー「あ、えと……私、水泳部に所属しているんです。だから、水泳を……少し」
ルルーシュ「なるほど。だから体が整っているのか」
シャーリー「え?!」
ルルーシュ「どうした?」
シャーリー「変なところみないで!!」
ルルーシュ「ああ、そんなつもりはなかったんだが。すまない」
シャーリー「……」
ルルーシュ「いや、でも。君が魅力的に見えるのはきっと水泳部で鍛えているからなんだろうな」
シャーリー「あ、ありがとう!!」
ルルーシュ「どういたしまして」
ミレイ「シャーリー、可愛いじゃない」
リヴァル「会長、俺とも話を……」
ミレイ「だから、何も出ないって言ったでしょ?」
リヴァル「言葉もでないんすか……?!」
スザク「ナナリー、何か飲む?」
ナナリー「結構です」
スザク「ナナリー、君を一目見たときからいいなって思ってたんだ」
ナナリー「……」
スザク「君を大事にしたい」
ナナリー「どうせ、他の女性にも同じ事を言っているのでしょう?」
スザク「そんなことない!!君だけだ!!」
ナナリー「過去の女性のことは清算されたのですか?!」
スザク「した!!もう君だけだ!!」
ナナリー「信じられません!!いつも、いつも……スザクさんはそうやって嘘を吐くんです……」
スザク「ナナリー!!僕は本気だ!!」
カレン「何、あの昼ドラマ……」
ニーナ「カレンさん……♪」ギュッ
カレン「ちょっと、ニーナ。抱きつかないでよ……」
ミレイ「おわったー」
カレン「肩こるわー」
ナナリー「ルルーシュさん、次はご一緒しましょうね?」
ルルーシュ「ああ。こちらからもお願いしたい」
スザク「ナナリー……やっぱり、素敵だ……」
カレン「何が?」
ニーナ「また、カレンさんの隣、いいですか?」
カレン「え、ええ。どうせ、私の隣はいつでも空いてるから」
ニーナ「やった」
シャーリー「で、次はなにするのー?」
リヴァル「ふっふっふっふ……やっぱり、合コンといえば……」
ミレイ「いえばー?」
リヴァル「ゲームでしょー!!!ひゃっほー!!!」
ルルーシュ「ゲーム?何をするんだ?チェスか?」
ニーナ「ツイスターゲームがいいな」
カレン「なんでもいいわー」
ナナリー「私もできるゲームでお願いしますね」
リヴァル「その辺はご心配なく……。まずは……」
ミレイ「定番の王様ゲーム!!」
ルルーシュ「王様ゲーム?」
スザク「なんですか?」
ナナリー「皆さんが一本ずつ籤を引いて、王様を選定するんです。そして、王様の命令は絶対です」
ルルーシュ「なんだ。それだけか」
シャーリー「でも、結構無茶な命令もできたりするから……」
スザク「恐ろしいゲームだね」
ルルーシュ(絶対遵守というわけか……)
リヴァル「はいはい。籤を引いてね。それぞれ番号が書いてあるから。王様って書いてある籤を引いた人は番号を指定して命令をしてくださーい」
ミレイ「これよ、これこれ。合コンはこうでなくっちゃ」
ナナリー「はいっ」
リヴァル「え?」
シャーリー「ホントに?!」
ナナリー「確認してもらえますか。きっと王様です。あ、私の場合は女王様でしょうか?」
シャーリー「ホントだ……ナナちゃんが王様……」
ルルーシュ(なんだ、ナナリーか……ならば無茶な命令が下されるわけがないな)
ナナリー「では、1番と4番の人」
ルルーシュ「俺だな」
カレン「あたしだ」
ナナリー「リヴァルさん」
リヴァル「はい?」
ナナリー「ジュースをコップに注いでください。お二人には恋人飲みをしてもらいます」
ルルーシュ「なんだそれは?」
カレン「恋人飲み?なにそれ?」
ミレイ「うわー」
スザク「へえ、そんな飲み方があるんだ」
リヴァル「はい、どうぞ」
ルルーシュ「……これを……二人で……?」
カレン「いや、おかしくない?だって、あたしは……」
ナナリー「王様の命令は絶対ですよ?」
ルルーシュ「……」
カレン「でも……」
ナナリー「あ、ごめんなさい。無理なら結構です」
カレン「え?本当に?」
ナナリー「その代わり、私はしますから」
ルルーシュ「そのほうがいいな。俺もカレンも幸せだ」
ナナリー「ふふふふ……あはははは……」
ミレイ「ストーップ!!!それは面白くないっ!!!」
ミレイ「それってつまり、無茶な命令は聞かなくてもいいってことでしょ?しかもナナリーが請け負うなんてなんの面白みもなーい」
ナナリー「でも、無理なら女王様の私が責任をもって代わりに……」
ミレイ「それだと根本的な王様ゲームのルールが覆っちゃうでしょ?」
ナナリー「……」
ミレイ「ほらほら、ルルーシュとカレンは恋人のように顔を近づけて飲む飲む」
ルルーシュ「ちぃ……一度吹きかけた神風が……」
カレン「じゃあ……」
ルルーシュ「いくぞ」
カレン「息、しないでよね」
ルルーシュ「無茶を言うな」
カレン「なら、せめて目を瞑って」
ルルーシュ「分かっている……」
カレン「んっ……ぅ……」
ルルーシュ「んっ……」
カレン「はぁ……疲れた……」
シャーリー「いいなぁ……」
ミレイ「じゃあ、次いってみよー」
リヴァル「はーい」
ニーナ「カレン、大丈夫?」
カレン「え?あ、ああ、うん……」
スザク「ルルーシュ、顔が赤いけど、どうしたんだ?熱でもあるのか?」
ルルーシュ「黙れ!!」
ナナリー「……」
リヴァル「じゃあ、引いてくれ」
ミレイ「今度こそー」
リヴァル「はい、ナナリー」
ナナリー「どうも……」
ナナリー(王様と書かれた籤は……あ、これですね)
ナナリー「はい」
ミレイ「また?!」
ルルーシュ「ナナリーか……」
スザク「ナナリー、すごい籤運だね」
ナナリー「手触りで分かりますから」
ニーナ「手触り?」
ナナリー「では、2番と3番のかた」
ルルーシュ「俺か」
スザク「僕だ」
ナナリー「……!!」
シャーリー「うわー、どんなことするんだろう……」
ミレイ「清き乙女としては健全な命令を期待するわね」
スザク「なんでも言ってくれ、ナナリー」
ナナリー「え……えーと……そうですね……」
ミレイ「それいい」
シャーリー「けってーい」
ルルーシュ「おい!!決めるのはナナリーだろうが!!」
ナナリー「では、お二人が……」
リヴァル「二人が……?」
ニーナ「……」
ナナリー「アドリブでお芝居してください」
スザク「芝居?」
ルルーシュ「内容は?」
ナナリー「スザクさんがルルーシュさんの最愛の人(ナナリー)を殺してしまう。でも、それには理由があったのです。二人は亡くした愛する人に想いの丈を叫びながら、大喧嘩します」
ナナリー「最後はお互いを認め合って、抱き合って終わりです」
ルルーシュ「なんだそれは……」
スザク「いやに具体的だ」
ミレイ「はいはい。王様の言うとおりにする!!」
スザク「ここで僕が……」
ミレイ「やってるやってる」
ナナリー「どんなものになるのか楽しみですね」
リヴァル「長くなりそうだし、先に次の王様決めときましょうか」
カレン「そうねー」
シャーリー「うん。ルルとスザクくんの分は私が引くから」
リヴァル「―――じゃあ、王様だーれだ」
ナナリー「はい」
シャーリー「また、ナナちゃん?!」
ミレイ「なんかズルしてない?」
ナナリー「いえ。何もしていません」
ミレイ「なら、いいけど。で、何をするの?」
ナナリー「今度は好きな人に愛の告白してもらいます。5番の人が」
シャーリー「……」
スザク「あれ、みんなどうしたの?」
リヴァル「いや、なんでもない」
ミレイ「クオリティの低いもの見せたらただじゃおかないわよ」
ルルーシュ「タダで見ているくせに……」
カレン「はやくー」
ナナリー「楽しみですね」
シャーリー「ルルー、スザクくーんがんばってー」
スザク「できる限りのことはする」
ルルーシュ「まあ、見ていろ」
ニーナ「二人とも舞台映えするから、何をやっても見れそう」
ミレイ「そうね。リヴァルー、飲み物とポップコーン」
リヴァル「ポップコーンはありませんよ」
ルルーシュ「では、ルルーシュとスザクの愛の劇場を始めよう」
ナナリー「……」パチパチパチ
スザク「ああ。僕が殺した」
ルルーシュ「何故だ!!何故!!!スザァァク!!!!」
スザク「ナナリーは君を愛しすぎた!!君とは絶対に結ばれることはないとわかっていたのに!!!」
ルルーシュ「ならば、貴様がナナリーを幸せにすればよかっただけだろうが!!!殺す必要などなかったはず!!!」
スザク「君と一緒にいられないなら死んだほうがマシだと言った……だから、僕は……僕は……!!」
ルルーシュ「スザァク!!!俺がどれだけナナリーを愛していたのか知っているはずだぁ!!!」
スザク「ルルーシュゥゥ!!僕がどれほどナナリーを好きだったのか教えただろ!!」
ルルーシュ「貴様ぁ!!!」
スザク「僕はもう……ダメだ……僕は……この手を血で染めた……愛した人の血で……」
ルルーシュ「スザク……俺はお前を許すことはできない……。だが!!死ぬな!!お前はナナリーを殺した分だけ生きなければならない!!死ぬことは罪滅ぼしにはならない!!!」
スザク「この僕に生きろといってくれるのか……?どうして?!僕はナナリーを殺したんだぞ!!」
ルルーシュ「生きろ!!!生きて俺に尽くせ!!それがナナリーを手にかけた貴様への罰だ!!!」
スザク「ルルーシュ!!!これからは君のために生きよう!!!好きだ!!」ギュッ
ルルーシュ「スザァァク!!!これからは俺のために生きろ!!!愛している!!」ギュッ
ナナリー「素敵です。表情までも伝わってきます」
ミレイ「拍手しにくい」
カレン「うんうん」パチパチ
ニーナ「素晴らしい」パチパチ
リヴァル「……」
スザク「ルルーシュ……」
ルルーシュ「スザァク……」
リヴァル「おい!!もういいだろ!!」
ルルーシュ「そうか。如何だったかな?」
スザク「即興にしては良く出来ていたと思うけど」
ミレイ「まあ、真に迫るものはあったかな」
ルルーシュ「まぁ、この程度は容易い」
スザク「途中から本当にルルーシュが襲い掛かってきそうで怖かったよ」
ルルーシュ「最愛の人を殺されたとなればあれぐらいにはなる」
ルルーシュ「こら、ナナリー?違うだろ?」
ナナリー「あ、そうでしたね。ルルーシュさん」
スザク「えっと、もう次はどうするんだ?」
ナナリー「もう決まっています。五番の人が好きな人に愛の告白をしていただきます」
ルルーシュ「五番って誰だ?」
ミレイ「……ルルーシュ」
ルルーシュ「……え?」
シャーリー「ごめん、ルル。ルルが五番なの……」
ルルーシュ「なんで俺ばかりが……!!」
スザク「ルルーシュもナナリーもすごい籤運だね」
ナナリー「では、ルルーシュさん。お願いしますね」
ルルーシュ「……」
カレン「ナナリーは無しね」
ナナリー「なんでですか?私は今は赤の他人のはずです。告白されるチャンスは平等でなくてはいけません」
ナナリー「わ、私に告白するほうがむしろ難しいはずです!!」
カレン「そう?」
ニーナ「……」
シャーリー「どうする?」
ルルーシュ「……しかし……」
リヴァル「(おい、ルルーシュ。まさか妹に逃げるなんてセコい真似しないよな?)」
ルルーシュ「(ナナリー以外に誰がいる!!)」
スザク「(ルルーシュ、いくら赤の他人を演じているといっても妹であることは間違いないんだ!!ナナリーに愛の告白なんてあってはならない!!)」
ルルーシュ「ぐっ……」
ナナリー「さあ、ルルーシュさん」
ミレイ「わ、私でもいいけどねー」
カレン「あたしは男役だからなし」
ニーナ「私も……困るから、なしで」
シャーリー「ルル……」
リヴァル(会長以外なら誰でもいい!!)
スザク「ルルーシュ……」
ナナリー「ふふふ……」
ミレイ「……」ソワソワ
シャーリー「怖い……怖いよ……」
ルルーシュ「スザク!!」
スザク「え?!」
ミレイ「にゃー?!」
ナナリー「お兄様!?」
シャーリー「予想外すぎる!!!」
カレン「おっ」
ニーナ「素敵」
スザク「ルルーシュ……分かっているのか?!僕は……僕は……!!」
ルルーシュ「……電話を貸せ」
ルルーシュ「ああ」
スザク「誰にかけるんだい?」
ルルーシュ「……だ」
スザク「そんな!!ルルーシュ!!」
リヴァル「どうした?」
カレン「何をもめてるのよ?」
ルルーシュ「この場を乗り切るためだ」
スザク「そこまで……」
ルルーシュ「早く」
スザク「ちょっと待ってくれ……」
ルルーシュ「……」
ナナリー「ルルーシュさん?さぁ、どうぞ?」
ルルーシュ(悪いな、ナナリー。ここでお前を選べば……全てが終わる……気がする。あとでゆっくりとお前とは愛と説こう)
スザク「―――ルルーシュ、繋がったよ」
シャーリー「ルル……誰に……?」
ルルーシュ「……私です」
ナナリー「お兄様……」
ルルーシュ「ずっと好きでした。貴方のことが」
カレン「ちょっと!誰にかけたの?クラスメイト?」
ルルーシュ「嘘ではない。これは本当の告白……ええ、そうです」
リヴァル「スザク、ルルーシュの奴、誰と話してるんだ?」
スザク「それは……」
ニーナ「……ユーフェミア様の声」
ミレイ「え?」
ニーナ「電話からユーフェミア様の声がした!!」
シャーリー「ルル!!それって!!」
ナナリー「ユーフェミア……姉様……?」
スザク(ルルーシュ、それはなんの解決にもならないよ。その場しのぎで乗り越えられるほど、甘い状況じゃないんだ!!)
ルルーシュ「はい」
ユフィ『お気持ちは嬉しいですけど……』
ルルーシュ「なに。気にしなくてもいい。どうしても告白をしなければならない状況になって、それで貴方を選んだだけですからね」
ユフィ『いえ。そうではなくて……』
ルルーシュ「なんですか?」
ユフィ『嘘つきの声ですね』
ルルーシュ「……!」
ユフィ『あなたが私のことを好きであるはずがない。だって、恨んでいるのでしょう?……スザクに代わって下さい』
ルルーシュ「待ってくれ!!俺は……!!」
ユフィ『ルルーシュ。私、嘘つきは嫌いです。それに合コンに参加していない私に逃げるのは卑怯です』
ルルーシュ「な……」
スザク「―――ユーフェミア様?あの……」
ユフィ『スザク?お友達に言ってあげてください。貴方にはきちんと好きだと言える相手がいるはずだ、と』
スザク「……イエス、ユア・ハイネス」
ユフィ『うるさっ』
ブツッ
ニーナ「ユーフェミア様!!?ユーフェミアさまぁぁ?!もしもしぃぃ?!」
スザク「ルルーシュ……」
ルルーシュ「俺は見透かされていたのか……ふふふ……滑稽だな……」
スザク「いや、君に代わる前に僕が全部伝えただけだ。この状況を。だから、ユーフェミア様は察してくれたんだろう」
ルルーシュ「スザァク……!!」
ミレイ「んー……ルルーシュ?そこまで告白する相手に困窮しているの?」
シャーリー「も、もういいじゃないですか!!ルルは告白したんですから!!」
ナナリー「まだ終わってません。そもそも今のはルール違反です。ルルーシュさんは告白をするべきです。私に。ここで。全員に見せ付けるが如く」
リヴァル「そうだよな……。いくらなんでも皇女様はないな」
カレン「ニーナ?大丈夫?」
ニーナ「カレぇぇン……ぐすっ……」ギュッ
カレン「よしよし」ナデナデ
ルルーシュ「逃げる……?」
スザク「ナナリーもユーフェミア様も君にとってはただの逃げ場所だ。嫌なことを全て飲み込んでくれる、心地の良い場所だ」
ルルーシュ「それの何が悪い!!そこに安心を求めるのは人間の性だ!!」
スザク「君は卑怯だ!!」
ルルーシュ「なんだと?!」
スザク「そうやって今を求めている!!今を捨てようとしない!!今を保身している!!」
ルルーシュ「違うな!!間違っているぞ!!俺は明日を守る為に今を犠牲にした!!」
スザク「そんなことはない!!明日に生きるなら、今を変えないでどうする?!」
ルルーシュ「変える事で明日を迎えられないかもしれない!!」
スザク「それが逃げているというんだ!!今を勝ち取れ!!でなければ明日なんてこない!!今日を繰り返すだけだ!!!」
ルルーシュ「スザク……!!ならば、問う!!俺はどの明日を選べばいいんだ!?どの未来も俺にとっても相手にとっても破滅しかまっていない!!」
スザク「そんなことはない!!少なくとも君の全てを受け入れてくれる人がいるじゃないか!!!」
ルルーシュ「誰だというつもりだ!!ナナリーか?!」
スザク「僕の話を聞いていたか!?ルルーシュぅぅぅ!!!!」
ミレイ「そうよ!!落ち着いて!!」
シャーリー「あぁ……」
ナナリー「ルルーシュさん。いつでも準備はできていますよ」
ニーナ「怖い……」ギュッ
カレン「そうね」ナデナデ
ルルーシュ「スザク……誰だ……言ってみろ……。俺の全てを受け止めてくれるのは……誰だ!?」
スザク「君だって分かっているはずだ……。その相手が誰なのかは」
ルルーシュ「分からないから訊いている」
スザク「素直になるんだ。ルルーシュ。心を落ち着かせて、一番最初に浮かんだ顔がその相手だ」
ルルーシュ「……」
ナナリー(ナナリー、ナナリー、ナナリー)
ルルーシュ「やはり、ナナリーの顔しか……」
スザク「そんなことはないはずだ!!真面目にやるんだ!!」
ルルーシュ(ナナリーのあとは……C.C.と咲世子が真っ先に浮かぶぞ……しかし、雰囲気的に今、この場にいる誰かではないと行けないんだよな……)
ルルーシュ「?!」
ミレイ「そこまで悩まれるとねえ……。強引に選んでもらっても気分よくないし」
カレン「もういいじゃない。ユーフェミア様が好きってことで」
ニーナ「ルルーシュもなんだ……でも、もういいかも……」ギュッ
カレン「は?」
ニーナ「遠くのユーフェミア様より近くのカレン……」
カレン「ニーナ!?」
ルルーシュ「……そうか……そうだったのか……」
スザク「ルルーシュ、やっと気づいたんだね?!」
リヴァル「俺じゃ、ねえよな?」
ルルーシュ「お前だったんだな……シャーリー?」
シャーリー「うぇ?!」
スザク「違う!!そうじゃないだろ!!!ルルーシュ!!!」
ルルーシュ「だが、4番目に浮かんだ顔はシャーリーだった!!これをどう説明する?!」
スザク「ルルーシュ!!間違った方法で得た結果に価値なんてない!!!」
ルルーシュ「いや。誰がなんと言おうと、この場ではシャーリーを選ぶ!!」
シャーリー「えぇぇ?!なんでぇぇ?!」
ナナリー「……っ!!!」ウィィィン!!!!
シャーリー「きゃぁ?!ナナちゃん!!車椅子で突っ込んでこないで!!危ない!!」
スザク「ルルーシュ……どうして……どうして気がつかないんだ!!」
ルルーシュ「何にだ!!」
スザク「君のことをこんなにも想っているのに!!」
ルルーシュ「……会長か?!」
ミレイ「え……」
スザク「違う!!」
ルルーシュ「カレンか?!」
カレン「いやいや。ありえないから」
ルルーシュ「じゃあ……誰だ!?シャーリーでも会長でもカレンでもないなら!!誰だ?!」
ニーナ「カレン……え?」
ルルーシュ「ニーナ……だと?」
ニーナ「……なんで?」
ミレイ「ニーナが?!」
ナナリー「ニーナさん……?」グリグリ
シャーリー「いたい!いたいよ!!ナナちゃん!!私の足、車輪の下敷きだよぉ!!」
スザク「思い返してみるんだ!!ニーナはずっと影で君のことを見ていたはずだ!!」
ルルーシュ「……」
ルルーシュ(そういえばニーナ、普段は騒いだりする性格ではないのに。俺と合コンの練習をしたとき、すごくはしゃいでくれた)
ルルーシュ(あんなニーナは見たことが無い)
ルルーシュ(あれは全て……俺のためだったのか……。俺のことが……)
ニーナ「あの……」
スザク「僕は知っている!!ニーナがルルーシュを見るとき、いつも顔を赤らめていたことを!!!」
リヴァル「それ、すべての男性に対してニーナはそういう反応するってだけでさぁ……」
ルルーシュ「……ニーナ……」
ニーナ「違う……」
スザク「ルルーシュ……素直になるんだ。君にはニーナしかいない」
ルルーシュ「そうだったのか」
ニーナ「……」
ルルーシュ「ニーナ……」
ニーナ「は、はい……」
ルルーシュ「すまない」
ニーナ「……はい?」
ルルーシュ「どうしても俺の心にはシャーリーの顔が4番目なんだ。だから、ニーナの想いには応えることはできない」
ニーナ「よかった……。私もごめんなさいするつもりだったから」
シャーリー「ルル……」
ナナリー「……」グリグリ
シャーリー「あぎぃ……?!」
ルルーシュ「悪いな、スザク!!」
スザク「君という男は……!!」
ルルーシュ「この合コンで俺は自分の気持ちを知った。俺の心にあるのはニーナではなく、シャーリーであることにな!!」
スザク「勝手にしろ!!どうなってもしらないぞ!!」
ルルーシュ「そのつもりだ。シャーリー」
シャーリー「いたた……なに?」
ルルーシュ「お前をテイクアウトする」
シャーリー「へぇぇ!?」
ミレイ「合コンってそんなことできるの?!」
リヴァル「おい、ルルーシュ。それは解散してからだろ」
ルルーシュ「カップルが成立してしまえば後のことなど、二人にとっては不毛な時間だろう?」
リヴァル「そうかもしれないけど。一応、最後まで参加してくれないとダメなんだって。お前、合コンのこと何もわかって無さすぎ」
ルルーシュ「そうだったのか。悪かった。では、その流儀に則ろう」
ナナリー「……」
シャーリー「ルルぅ……本当に私でいいの?」
ルルーシュ「いいに決まっているだろ?」
シャーリー「ありがとう……」
スザク「くっ……ルルーシュ……!!」
カレン「もしかして、シャーリー狙ってたの?」
スザク「そ、そんなことはない!!」
カレン「ふーん」
ニーナ「カレン……私をお持ち帰りして……くれない?」
カレン「ゴメン。あたし、そっちの趣味ないから」
ニーナ「……」
リヴァル「えー、では、もう消化試合だけど。最後のゲームをして締めたいと思います」
ミレイ「最後のゲーム?何するの?」
リヴァル「まあ、これも恒例なんだけど。ポッキーゲームを」
スザク「なんだい、それ?」
ルルーシュ「ナナリーがスティック菓子を咥えているな」
リヴァル「要するに二人が両端を咥えて食べていけばいいだけ」
ルルーシュ「ナナリーがするのか」
ナナリー「おにいふぁま~」
リヴァル「どうする?ご指名みたいだけど」
ルルーシュ「籤でいいだろ。何を言っている。ナナリーにそのような下劣な行為をさせることはできない」
ニーナ「ルルーシュ、ちょっと」
ルルーシュ「どうした?」
ニーナ「(ナナリー、手触りで籤に何が書いてあるのかわかるみたい。だから、籤にしてもきっとナナリーが自分のいいようにしちゃうと思う)」
ルルーシュ「(では、俺が選ばれ続けたり、ナナリーがずっと王様だったのは……)」
ニーナ「(うん。ナナリーが操作した結果のはず)」
ルルーシュ「(いくらナナリーといえどもそれはフェアじゃないから看過はできないな。よし……)」
ルルーシュ「スザク、籤を」
スザク「いいよ」
ルルーシュ「これでいい。―――ナナリー。籤を引くぞ」
ナナリー「ふぁーい」
スザク「どれが当たりなんだい?」
ルルーシュ「籤に名前が書いてある。書かれた名前の者とゲームを行う」
カレン「自分のを引いたら?」
ルルーシュ「黙って菓子を食えば良い」
ミレイ「なんか寂しいわね」
ナナリー(うーん……これはスザク……こっちはシャーリー……じゃあ……ルルーシュ!!あった!)グイッ
ナナリー(ん?)
シャーリー「……これにしよっと」
ナナリー「シャーリーさん、この籤は私が手にしたものです」
シャーリー「あ、うん……ごめん」
ナナリー(これで……お兄様との濃厚なキスが……)
リヴァル「じゃあ、見てみましょう!!せい!!」
ルルーシュ「ナナリー、良く触ってみろ。今回の籤は二枚重ねになっている」
ナナリー「?!」
カレン「これ捲ったら本当の相手が出てくるのね」
ルルーシュ「そういうことだ」
ナナリー「……」ペラッ
ナナリー(ナ、ナナリー……?!)
ミレイ「あー、自分の名前だ」
リヴァル「うわ?!俺、スザクとかよ?!」
カレン「げ?!シャーリーと!?」
シャーリー「私はルルとだけど」
ルルーシュ「俺はカレンとだな」
スザク「僕はニーナとだ」
ニーナ「私は……リヴァル……?!」
ルルーシュ「三人以上でする場合は一人が二本咥えろ。それでいける」
ルルーシュ「何か不都合でもあるのか?」
リヴァル「いや……これはどっちが多く食べられたかを競うもので……」
ルルーシュ「二本咥えたものは受身となれ。残りの二人でどこまで食べられたか競えばいい」
リヴァル「マジかよ……」
ルルーシュ「できるだけ口の端で咥えるようにしろ」
シャーリー「誰が咥えるの?」
ルルーシュ「俺が咥える。止めたくなったらいつでもやめていいからな」
シャーリー「ルル……ありがとう」
カレン「早くしてよね」
スザク「じゃあ、ニーナが咥えて」
ニーナ「私に二人が迫ってくるの?!」
リヴァル「ちゃんと寸止めするって」
スザク「信じてくれ」
ニーナ「いぃぃ……!!!」
ナナリー「おにいふぁまぁ……」
ミレイ「……」ポリポリポリ
シャーリー「じゃあ、行くね」
ルルーシュ「ああ」
カレン「……よーい……ドン」
シャーリー「んー……」ポリポリポリ
カレン「んんっ」ポリポリポリポリポリポリ
ルルーシュ(おい?!カレン!?)
シャーリー「なっ……!!このぉ……!!」ポリポリポリポリ
ルルーシュ(まて!!ここで加速してどうする?!)
カレン「んんっーー!!」ポリポリポリ
シャーリー「ふんーー!!」ポリポリ
ルルーシュ「やめ―――」
ミレイ「……いいよねえ、恋って」
スザク「いくよ」
リヴァル「おう」
ニーナ「あぁぁぁぁ……」ガクガク
スザク「はっ!!」バクッ
ニーナ「ぎゃぁ!?」
リヴァル「あ、こら?!いっぺんに食べてどうするんだよ!?」
スザク「あ―――」
ニーナ「いやぁ!!」
スザク「……!!」チュッ
ニーナ「ふぐぅ……?!!?」
リヴァル「うわぁ?!ニーナァァァ!?」
スザク「んっ……っ……」ギュッ
ニーナ「んーーーー!?!?!?」
ミレイ「スザクくん!!ストーップ!!!」
リヴァル「ニーナ!?おい!!大丈夫か?!」
ミレイ「ちょっと!!何すごいキスしてくれてるの?!」
スザク「すいません。昔を思い出してしまって」
ミレイ「あ、あんな激しいことしてたの?」
スザク「はい」
ミレイ「そうなんだ……」
ニーナ「あぁ……いやぁ……また……私……イレヴンに……」ガクガク
ミレイ「ニーナ……」
ニーナ「もう男なんて嫌い!!」
スザク「そんな自信あったんだけど」
リヴァル「そういう問題じゃねえよ!!合コンで傷口抉るやつがあるかぁ!!」
スザク「ニーナ、すまない」
ニーナ「こっちにこないでぇぇ!!!!」
ミレイ「あーあ……」
シャーリー「ねえ、ルル?」
ルルーシュ「なんだ?」
シャーリー「4番目って……どういうこと?」
ルルーシュ「大事な人の順番だ」
シャーリー「好きとかそういうのじゃなくて?」
ルルーシュ「恋愛感情はまた別だ」
シャーリー「そうなんだ……よかった……」
ルルーシュ「ふふ……」
カレン「……」ギュッ
ナナリー「ルルーシュさん!!私はどうなるのですか?!!」ウィィィン!!!!
カレン「ぎゃぁ?!踏んでる!!足、踏んでるから!!!ナナリー!!」
ルルーシュ「ナナリーが1番に決まっているだろ?」
ナナリー「お兄様……」グリグリ
シャーリー「いだぁい?!」
ニーナ「うぅぅ……ぐすっ……うぅぅ……」
ミレイ「ニーナ、よしよし。今日は一緒に寝てあげるから」
ニーナ「おトイレも……」
ミレイ「うんうん。一緒に行ってあげる」
スザク「ニーナ……」
リヴァル「本当に大変でした。まあ、これで親睦が深められたら幸いです。では、解散」
シャーリー「ルル、このあとどっかいく?」
ルルーシュ「悪い。用事があるんだ」
シャーリー「じゃあ、しょうがないね」
カレン「ナナリー。なんてことするの!?」
ナナリー「……」
カレン「あたしは別にルルーシュのことなんて―――」
ナナリー「嘘つき」
カレン「!?」
ルルーシュ「今日は疲れた……。まぁ、シャーリーをテイクアウトできたし、十分だろう」
C.C.「チョコがあるぞ。いるか?」
ルルーシュ「いらない」
C.C.「ほら、口をあけろ」
ルルーシュ「あのなぁ……そういう疲れじゃ……」
C.C.「はい」
ルルーシュ「……うまいな」
C.C.「だろ?」
ルルーシュ「それより、何か着ろ」
C.C.「お前が着せてくれ」
ルルーシュ「俺に甘えるな」
C.C.「きーせーてーくーれー」バタバタ
ルルーシュ「はいはい……両腕をあげろ」
C.C.「私の脇で興奮するなよ?」
ルルーシュ「ありがとう」
咲世子「いえ」
ルルーシュ「……」
咲世子「なんでしょうか?」
ルルーシュ「いや……。咲世子さんもあの魔女も……違うなと思って」
咲世子「違う?何がでしょうか?」
ルルーシュ「……今度、確認してみないと」
咲世子「そうですか」
ルルーシュ「ナナリーとも少し違う……」
咲世子「ルルーシュ様。明日の夕食はご用意しなくてもよろしいようですね」
ルルーシュ「……そうだな。遅くなるかもしれない」
咲世子「では、そのように」
ルルーシュ「ああ。お願いします」
咲世子「畏まりました」
シャーリー「ルルー!!」
ルルーシュ「どうした?」
シャーリー「合コンのことすっかり忘れてたよぉ!!参加する?!」
ルルーシュ「しない」
シャーリー「やっぱりぃ?昨日の練習で嫌になっちゃった?」
ルルーシュ「違うな。間違っているぞ」
シャーリー「え?」
ルルーシュ「もう合コンをする必要がないんだよ」
シャーリー「どういうこと?」
ルルーシュ「新しい出会いなんて不要だ。今の俺にはな」
シャーリー「よくわかんないけど……」
ルルーシュ「……シャーリー」
シャーリー「なに?」
ルルーシュ「今日は二人きりで食事会をしよう。確かめたいことがあるからな」
ルルーシュ「俺と二人で食事をするのは構わないのか?」
シャーリー「なっ?!いや、構うけど!!今日はたまたま暇だったか、いいよって言うとしたの!!」
ルルーシュ「はいはい」
シャーリー「もうー!!ルルー!!!」
ルルーシュ「今晩、約束だ」
シャーリー「あ……はい……」
ルルーシュ「シャーリー?」
シャーリー「は、はい!なんでしょう?!」
ルルーシュ「―――今、わかった。俺の1番は、シャーリーだ」
シャーリー「え……?!なんの1番!?」
ルルーシュ「待っているからな」
シャーリー「ルルー!!―――ルル……もしかして……そうなのかなぁ……あはは……ルル、私も大好き……♪」
ナナリー「……!!!」ウィィィィン!!!
―――ドガッ!!!
END
ナナリーェ…
乙乙
乙
Entry ⇒ 2012.08.26 | Category ⇒ コードギアスSS | Comments (1) | Trackbacks (0)