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恒一「僕が見崎の一番なんだって」未咲「は? 私だよ?」
未咲「やんの?」
鳴「はぁ…」
恒一「ストーカー? あぁ、学校帰りに毎回校門で待ち伏せしてる君の事?」
未咲「あれは鳴が変な奴に絡まれたりしないか心配してるの! あんたみたいに邪な考えじゃないし」
恒一「見崎は僕が守るからいいって言ってるよね?」
未咲「あんたみたいな変態モヤシに任せられるわけないでしょ!」
鳴(左右から唾飛ばしあうの止めてほしい…)
未咲「はぁ…鳴かわいいよ鳴」ハァハァ
恒一「ちょっと、真似しないでよ」
未咲「は? あんたが真似したんでしょ。キモい」
恒一「見崎、あんなのの言う事聞いちゃダメだよ? 口が汚くなっちゃうからね」
未咲「鳴、こんなの無視した方がいいよ」
恒一「は?」
未咲「あ?」
鳴「不毛ね…」
未咲「それこっちの台詞。今日は鳴と二人で過ごす予定だったのに」
恒一「勝手に決めるなよ。僕は見崎に呼ばれて来たんだぞ」
未咲「は? 私は三日前から約束してたし」
鳴(…どっちも呼んだ覚えないけど)
恒一・未咲「だってコイツが!」
鳴(むしろコレ仲良いのかな…?)
恒一「君が後から僕の病室来たんじゃないか」
未咲「鳴ー。コイツ看護婦さんと逢引してたよ」
恒一「だから水野さんとは違うって言ってるだろ!」
未咲「ほらね。必死で否定するとことか怪しいでしょ?」
鳴「ふーん…」
恒一「ち、違う! 誤解だ!」
未咲(ざんまぁ)
恒一「ぼ、僕は見崎だけだよ!」ギュッ
鳴「っ///」
恒一「信じて…?」
鳴「わ、分かったから…離して…///」
未咲「」ゲシゲシ
恒一「よかった…」
未咲「離れろ変態」ゲシゲシ
未咲「おい! 鳴が気絶しちゃっただろ変態!」
恒一「そんなに嬉しかったのか…」
未咲「聞けよ!」
鳴(私だけ…ふふ…)
恒一「ん? あ、まだ居たの?」
未咲「あーもう切れた!」ブンッ
恒一「うわっ!」ヒョイッ
未咲「避けんな!」ブンッ
恒一「無茶苦茶言うなよ!」ヒョイヒョイ
未咲「このっ…!」
恒一「そのリーチで当たるかよ」
未咲「ううぅ~!」
鳴「うん」
未咲「はい、あーん」
鳴「おいちい」コロコロ
未咲(天使)
恒一「ほら見崎。ガムあるよガム」
鳴「おいしそう…」
恒一「僕が噛んで柔らかくしてあげるね」モグモグ
未咲「流石に引くわ」
未咲「コイツが話しかけてくるの。壁にでも話してろって感じ」
恒一「この娘が話しかけてくるんだ。空気読んで欲しいよね」
未咲「はぁ? なに言ってんの? この前だって――」
恒一「あれは君から――」
ペチャクチャ
鳴「…」イラッ
未咲「おぉ…! やるじゃないモヤシ。要らないのが横に写ってるのが不快だけど」
恒一「いいから約束のモノ出しなよ」
未咲「ちっ。ほら、悪用しないでよ」ピラッ
恒一「ロリ見崎…どっかのそっくりさんが写ってるのが邪魔だけど」ハァハァ
未咲(…まぁ写真切るのはアレだし、このまま取っとこう)
恒一(拡大コピーして壁紙にしよう。いらないのは消せばいいし)
未咲「……は? は?」
鳴「仲良いじゃない…」
未咲「え? え? どこが? むしろ機会があれば謀殺してやりたいレベルなんだけど」
鳴「違うの?」
未咲「違う! あんな貧弱そうなの…」
鳴「あ、榊原君」
未咲「っ!?」バッ
鳴「う・そ」
未咲(やっぱアイツは消すしかない…)
怜子『恒一くーん? 見崎さん来てるわよー』
恒一「!?」ガタッ
怜子『女の子を待たせちゃダメよー?』
恒一「見崎!」ガラッ
未咲「よう」
恒一「帰れ」ガラッ
未咲「だって鳴。帰ろ」
鳴「…うん」ショボーン
恒一「いらっしゃい見崎。狭いけどゆっくりしていってね」
未咲「ちっ」
未咲「変態」ペリペリ
恒一「取るな」
未咲「壁紙以外つまんない部屋だなー」ゴソゴソ
恒一「漁るなよ…」
鳴(榊原君の布団…)ゴソゴソ
恒一「!?」
未咲「…」ペラペラ
恒一「ちょっ、何読んでんの!」
未咲「…不潔」ジトー
恒一「ち、違う! それは勅使河原が…友達が持ち込んだんだ!」
未咲「ねー鳴! こいつこんなん持ってるよー」
恒一「うわあああああああ!」ガシッ
未咲「ん!? んーんー!」バシバシ
未咲「んー!/// んーんー!///」バタバタ
鳴「…何してるの?」モゾッ
恒一「あ」
未咲「んむー! んーんー!」バシバシ
鳴「…さ・か・き・ば・ら・君?」
恒一「ち、違うんだ。これはたまたまこういう体勢になっただけで…」アセアセ
鳴「たまたま、私が見てないとこで、未咲を押し倒したんだ? ふーん…」イライラ
未咲「ん!?」
鳴「ふーん…ふーん…」
恒一「僕が愛してるのは見崎だけだよ…」ジッ
鳴「…ほんと?」
恒一「はい」コクコク
鳴「…///」
未咲「んー!? んんー!?」ガスガス
恒一「う、うん…(エロ本は…っしゃ確保!)」スッ
未咲「あぅ…/// おま、お前マジ殺すからな…///」
恒一「はいはい。懲りたらもう漁るなよ」
未咲「鳴ー! コイツの本棚からこんなん見つけたー!」バサッ
鳴「…『ドS29歳女教師・調教編』…? なにこれ榊原君…」
恒一(それ望月のぉぉおおおおおおおおお!?)
鳴「何で望月君のがここにあるの? 何で? 借りたの? そうでしょ?」
恒一「そ、それは…(鑑賞会してたなんて言えない…)」ダラダラ
未咲「ばーかばーか!」
恒一「コイツ…!」
恒一「見崎に変なもの見せるな!」
未咲「アンタのでしょ!?」
恒一「違うって!」
鳴「…うわぁ///」ペラペラ
恒一「君が見せたんだろ!」
未咲「人のせいにするなー!」
恒一「あぁもう…」
怜子「うるさいなぁ…」
恒一「うん。いつでも来てね」ニコニコ
未咲「もう来ないから!」
恒一「二度と来るなマジで」
恒一「疲れた…」
怜子「恒一君…? こ、これ…/// その…部屋の前に置いてあったんだけど///」モジモジ
『ドS29歳女教師・調教編』
恒一「」
未咲(にひひ…突然抱きついて驚かせてやろう…)コソコソ
恒一「でさぁ――」
未咲(アイツの声がする…という事は鳴も…。鳴はいつも右側だから…)
未咲(今だっ!)
未咲「待ってたぞー♪」ギュッ
恒一「は?」
未咲「え?」ギュー
未咲「あれ? 鳴? アンタ…え? え? 何で?」ギュー
恒一「…見崎なら早退したよ?」
未咲「え!? 何で!? 風邪!?」グイッ
恒一「…昼間お弁当食べすぎて腹痛起こしちゃって…」ハァ
未咲「あぁね…」
恒一「ていうか放してよ。いつまでくっついてんの」
未咲「あ…///」バッ
恒一「何言ってんだよ…」
望月「あの…誰?」
恒一「見崎の…親戚」
未咲「そっちは? 彼女?」
恒一「男だし友達だって。望月優矢」
未咲「あぁ…あのエロ本の」
望月「!?」
恒一「(スマン望月…)じゃあ僕見崎ん家行くから」スタスタ
未咲「ま、待てよー!」スタスタ
望月(彼女、かな?)
未咲「アンタ歩幅広い。もっとゆっくり歩いて」テクテク
恒一「我儘言うなよ…」テクテク
未咲(あ、少し遅くなった…)
恒一(見崎大丈夫かな…重箱一つ丸ごと食べるなんて…いや、見崎の食欲を侮ってた僕が悪いか)
未咲(身長高いな…)
恒一(あぁ見崎。見崎…見崎見崎見崎)
未咲(ま、まぁ顔はいいよね。顔は、顔だけは…///)
恒一(見崎ペロペロペロペロ)
恒一「大丈夫? ごめんね、明日はもっと少なめにするから」
鳴「そのかわりデザート多めにね」
恒一(カロリー計算とか大変なんだけどなぁ…)
恒一「健康も気を使って作ってるから大丈夫だって」
未咲「ふーん…」
恒一「はぁ…弱ってる見崎もかわいい…」ジー
未咲「…やっぱただの変態か」ボソッ
鳴「もう…?」クイクイ
恒一「きゃわわ…じゃなくて、病人なんだから安静にしてなきゃダメだよ?」
鳴「…うん。またね」
未咲「もう来んな」
恒一「君も帰るんだよ」ズルズル
未咲「き、気安くさわるなー!」
恒一「口一杯にご飯詰めてるの可愛いよ見崎可愛いよ」
未咲(なにこれウマー!)パクパク
恒一「ちょ…それ僕の!」
未咲「ケチケチするなよー」ゴックン
恒一「あぁ僕の…」グー
鳴「…」クイクイ
恒一「? どうしたの?」
鳴「…あ、あーん」
鳴「う、うん。いつも作ってくれるから、お礼」
恒一「生きてて良かった…! じゃ、じゃあ…」アーン
鳴「はい」ドキドキ
恒一「もぐもぐ…」
鳴「どう?」
恒一「最高」グッ
鳴「そう…///」
未咲「わ、私も私も!」
未咲「あ、あー…///」
鳴「おいしい?」
未咲「うん! あ、言っとくけどアンタが作ったからじゃないから」
恒一(そういえばこれって間接キスだよね…ふへへ///)
未咲「聞けよ!」
未咲「?」モグモグ
恒一「ねぇ、一口ちょうだいよ。元々は僕のなんだからいいだろ?」
未咲「はー? いや」モグモグ
恒一「しょうがない…じゃあ見崎から――」
未咲「それはダメ」ガシッ
恒一(無理やり奪っておいて…)
未咲「………じゃ、じゃあほら、口開けて…」アーン
恒一「ちょっと味付け薄かったかな…」ヒョイモグ
未咲「…」
恒一「どうしたの? スプーンこっち向けて。ごちそうさま」ゴックン
未咲(ばーかばーかばーか!!)
鳴「?」
未咲「おいモヤシ。さっさとアイスティー持ってきて」
恒一「僕は君の小間使いじゃないんだけど…はい見崎」
鳴「ありがと」クピクピ
未咲「私のは?」
恒一「あるよ。また僕の取られちゃたまらないからね」
未咲「…ふん。ミルクとシロップも」
恒一「それぐらい自分でやれよ。あ、見崎は遠慮無く言ってね?」
未咲「はよ」ゲシゲシ
恒一「ったくもう」シブシブ
恒一「だろうと思ってミルク入りも用意しておいたよ」
鳴「やった」
未咲「私もレモンティー飲みたい」
恒一「スーパー行ってこいよ」
未咲「やだよ。あ、アンタのレモンティーちょうだ――」
恒一「ごくごくごく…ふー。え? 何か言った?」プハー
未咲「……しんじゃえ変態ばか」
未咲「…なによ」ジトー
恒一「いや、流石に似てるなと思って」
未咲「双子なんだから当然でしょ」
恒一「まぁ中身は天使と悪魔というか、月とすっぽん、見た目一緒でも中身の差でここまで違って見えるのも凄いね」
未咲「喧嘩売ってんの? 買うよ?」ポキポキ
恒一「さぁね」
鳴「でも顔は良いんでしょ? 前言ってたし」
恒一「見崎の100分の1ぐらいは好みかもね。多分」
未咲「嬉しくないわよ!」
未咲(そーっとそーっと…)コソコソ
「んっ…もうダメぇ…」
「見崎、かわいいよ」
「そんな事ばっかり言って…あぅっ」
「本当の事じゃないか。ほら…」
「さ、触っちゃ…ひゃぁ…」
未咲「」
「ほら…見崎のココ、もうこんなに…」
「ほ、ホント…?」
「うん。だからほら、もっとしよう?」
「分かった…んっ、んっ」
「凄いよ見崎」
未咲(……………………)プチン
鳴「ふっ、ふっ…」ギシギシ
恒一「98、99、100! よし見崎よく頑張ったね」ナデナデ
鳴「うん」
未咲「……あれ? なにやってんの?」
鳴・恒一「腹筋だけど?」
鳴「榊原君がおいしいの作るから」
未咲「で、でも可愛いよとか触っちゃダメって…」
恒一「見崎が可愛いのは当たり前だろ」
鳴「榊原君がおへそ触るから…」
恒一「チラチラ見えて正直我慢きかんかった」
未咲「あ、あれー?」
未咲「そ、それは…えと…///」
恒一「どうせ変な想像してたんだろ」ボソッ
未咲「ち、違うよ! 違うからね!」
恒一「ふーん…」ニヤニヤ
未咲「っ! アンタ私が外いるの気付いててあんな事…!」
恒一「さぁ? それでも君が何を想像するかなんて分からないから、結局は君の責任――」
未咲「~~!!/// 変態!! 変態!!」バシバシ
未咲「…鳴ぃー。あいつが虐めるよー」ダキッ
恒一「見崎、そんなのの話聞いちゃダメだよ?」ギュッ
鳴「腹筋…楽しいかも」
鳴「え? でもご飯まだ食べてないし…」
未咲「ありゃ、そうなんだ。じゃあ食べてからだね」
鳴「榊原君が来て作ってくれるからそれまで待って――」
未咲「やっぱ今行こう! ほら鳴はやく!」グイグイ
鳴「えー」
未咲「はよ!」
鳴「もう…」シブシブ
未咲(今日という今日は邪魔されてたまるか!)
鳴「アイス…」ジュルリ
未咲「うーん…よし! 奢ってあげようではないか! 待っててね!」
鳴「うん」コクコク
未咲(今月ピンチだけど…鳴の為だ! おねーさんは強いのだ!)
未咲「アイス二つくださーい。三段と一段一つづつ」
店員「マイドアザーシター」
鳴「三段…」キラキラ
未咲「私はこっちー」
鳴「あれ? 未咲ひとつ?」
未咲「ダイエット中なんだよね」アハハ
鳴「そうなんだ…」ペロペロ
未咲(かわいい…)ボケー
男「いてっ」ドンッ
未咲「あ。ご、ごめんなさい」
男「ってーな…お、姉ちゃんかわいいなぁ」
未咲「はい。知ってます」
男「増えた!? まぁいいや、とりあえず謝らんかい」
未咲「(謝ったじゃん…)サーセン」
男「痛いのー。こりゃ骨までいっとるわー」
鳴「え? ど、どうしよ未咲…」
未咲「…行くよ鳴」グイッ
男「まてや。慰謝料払わんかい」
未咲(面倒なのにからまれたなぁ…)
鳴「え…」
未咲「鳴に触んな!」ゲシッ
男「痛っ! …この餓鬼!」ドンッ
未咲「あうっ…」ベチャ
鳴「あ、アイスが…」
男「へっへっへ…」
未咲「く、くんな!」
未咲(あーもう! こうなったら鳴だけでも――)
恒一「おい…!」ゴゴゴ
男「え?」
恒一「なに僕の女に手を出してんの? スライスされたいの?」
男「え? スライス?」
恒一「スライスだよ」
ナンダナンダー ケンカカー? ケンカナラマカセロー
男「ちっ。おぼえてろよ…」
恒一「あ、もしもし。霧果お義母さんですか? いい蝋人形の素材が見つかったんですけど…」
未咲「…」ポカーン
未咲「あ、アンタ…」
恒一「見崎! 大丈夫? 怪我はない? 触られた所早く消毒しなきゃ!」
鳴「アイス…」ショボーン
恒一「アイス? アイスなら持ってるじゃない」
鳴「違うの。未咲のアイスが…」
恒一「え? あ、いたんだ」
未咲「おい!」
未咲「今からアイツぶっ飛ばすつもりだったのに…つーか何でここにいんの」
恒一「匂いを辿って」キリッ
未咲「この変態…あれ?」
恒一「?」
未咲「た、立てない…」
未咲「重くないよ! それもこれもアンタが変な事言うから…」
恒一「へ?」
未咲「な、なんでもない…///」プイッ
恒一「あーもう…仕方ないか…」ダキッ
未咲「へぇ!?」ビクッ
恒一「暴れるなよ」
未咲「へ? へ?」オロオロ
恒一「立てないんじゃこうするしかないだろ」ギュー
未咲「あ、あぅ…///」
恒一「そういえば君のアイス…」
未咲「え? あ…」ベチョー
恒一「…」
未咲「べ、別にいいよ。私ダイエット中だし、甘いの苦手だし…」
鳴(嘘つけ)ペロペロ
店員「アザーッシタ」
恒一「ほら」ヒョイ
未咲「…」
恒一「いらないなら僕が食べるよ?」
未咲「…ふん」ペロ
鳴「榊原君、私も私も」クイクイ
恒一「すいません一番大きい奴ください」キリッ
未咲(ふん…なんだよカッコつけて…変態のくせに…)ペロペロ
恒一「見崎…見崎…」ハァハァ
未咲「ちょっと、起きちゃうでしょ」コソコソ
恒一「ごめんごめん…あぁ可愛い…」
未咲「ホント可愛い…」
恒一「見崎かわいいよ見崎…あ、涎…ペロペロペロペロ」
未咲(変態が…ペロペロペロペロ)
未咲(…見崎見崎って…)
恒一「見崎…愛してる」
未咲(未咲…愛してる)
未咲「…って! 何を言ってんのよ!///」バシッ
恒一「はぁ!?」
恒一「え? どこが?」
鳴「私抜きでずっと喋ってるし…この前お姫様抱っこしてたし…」
恒一「あ、あれは緊急事態だったから…」
鳴「口だけなら何とでも言えるよね」
恒一「え、えーっと…こう?」ギュッ
鳴「…もっと」ギュー
恒一(嫉妬…? それにしても可愛い。天使だ…)
鳴「…」ギュー
恒一「…」クンカクンカ
鳴「…何か言って」
恒一「好きだ」キリッ
鳴「ん…」ギュッ
恒一「言われてみれば…」
未咲「呼んでみる?」
恒一「別にいいけど…」
未咲「こ…恒一」
恒一「なに藤岡さん」
未咲「何で名字なのよ!」
恒一「見崎と被るだろ」
未咲「じゃあ鳴を名前で呼びなよ」
恒一「そ、そんな…名前で呼ぶとか、恥ずかしいじゃないか…///」
未咲「…」
恒一「…」
未咲「今のままでいいわ」ハァ
恒一「だね」
恒一「だからそれ悪口だろ!?」
鳴「…」
未咲「鳴…えへへ…ダメだよぉそんなとこ…Zzz」
鳴(起きたら二人仲良く寝てやがった…いいな…)
恒一「ねぇ、なんか怒ってるみたいだけど…」コソコソ
未咲「まさかアンタ…信じられない。近づかないでよ獣」コソコソ
恒一「まだ何もしてないって」コソコソ
未咲「まだ?」
恒一「だから言葉のあやだって。どうせ君がなんかしたんだろ。謝りなよ」
未咲「はぁ!? 人のせいにするなバカ!」
恒一「は?」ゴゴゴ
未咲「あ?」ゴゴゴ
鳴(また二人で話して…)ムスッ
恒一「?」テクテク
鳴「それで未咲はこっち。左側」
未咲「?」テクテク
鳴「これでよし」ムフー
恒一・未咲「どういう事?」
鳴「二人は今日一日このままね」ギュー
恒一(腕を組まれた…)
未咲(腕を組まれた…)
鳴「♪」
恒一・未咲(まあご機嫌だしいいか)
鳴「結婚式…」ボー
恒一「挙げよう!」
未咲「黙ってろ。鳴、結婚はできないけど私はずっと一緒だよ?」
恒一「僕は出来るからもっと一緒にいられるね」
未咲「こんなのと結婚したら苦労するよ?」
恒一「見崎は僕と話してるんだから静かにしてて。そしたら犬代わりに家に置いてあげるよ?」
未咲「は?」
恒一「あ?」
鳴(結婚式…ごちそう一杯…)ジュルリ
鳴・未咲「はぁ!?」ガタッ
恒一「お、落ち着いてよ。貰っただけだから。ていうか何で君まで怒ってんの…」
未咲「は? 別に怒ってないけど?」ムスッ
鳴「…それで、どうするの?」
恒一「断るに決まってるだろ。僕は見崎しか眼中にないよ」キリッ
鳴「ならいいけど…」
未咲「ふん…最初からそう言えよバカ…」
恒一「だと思って上映してる映画のパンフ揃えてるよ」
未咲「チケットも全部あるからね!」
霧果「車なら任せろー!」
未咲「は? ラブロマンスでしょ」
霧果「鳴、あっちに大人だけが見れる奴があるんだけど行かない?」
鳴「私はアクションが見たいかも」
恒一・未咲・霧果「でもやっぱりアクションだよねー!」
未咲「コーラうめー」チューチュー
恒一「ちょっとそれ両方僕の…」
未咲「気にすんな」
鳴「な」
恒一「もう…あ、お義母さんどうぞ」
霧果「お義母さんやめろ」
恒一(真剣に映画見てる見崎かわいい)
未咲(集中し過ぎてポップコーン持ちっぱなの鳴かわいい)
霧果(はぁ…ペロペロ)
未咲「やだ」チュー
恒一「もう十分飲んだだろ。喉乾いたんだよ」
未咲「何で買ってこなかったの?」
恒一「この…いいから」グイッ
未咲「あ…」
恒一「なんだよ」チューチュー
未咲(く、口…/// 何で平然と…///)
恒一・霧果「(見崎(鳴)の顔ばっか見てたから内容知らいけど)うん!」
未咲「…うん」
鳴「未咲? どうかした?」
未咲「へ? あ、あぁ面白い映画だったねー」アセアセ
未咲「え、えっと…えっと…か、間接…///」
鳴「関節?」
恒一「関節?」
未咲「――お、お前のせいだー!!」バシバシ
恒一「へ? ちょ、何?」
未咲(こいつが変な事するから調子狂ったじゃない! あぁもう!!)
未咲(歩く時は歩幅会わせてくれるし、鳴と一緒の時以外はそれなりに話すし)
未咲(いや、だからどうって事でもないけどね。うん…うん)
恒一「や」ポンッ
未咲「ひゃああああああ!?」バッ
恒一「?」
未咲「い、いきなり後ろから声かけんな!」
鳴「はいはい」ナデナデ
未咲「離れろ変態! そこは私のだ!」ゲシッ
鳴「未咲、暴力はダメだよ?」
未咲「あれはあれでいいの。めーいー」ギュー
鳴「もう…」
未咲(あー癒される…やっぱ鳴が一番だねー)
鳴「…」ナデ
未咲(…微かにアイツの匂いがする…)クンクン
鳴「未咲?」
未咲「な、なんでもない!」
霧果「もぐもぐ…今日は暑かったから汗かいたみたいね。もぐ、しっかり濯がないと」グチュグチュ
霧果「もぐ、うめっ…今日は飲み込まないように…むぐむぐ…しなきゃ…」
霧果「んー…ぺっ。うん、綺麗になった」ニコニコ
未咲(綺麗じゃないよ!)コソコソ
恒一(流石ですお義母さん…!)コソコソ
恒一「僕はお義母さんも愛してますよ。だって見崎のお母さんは僕のお母さんでもあるんですから」ニコッ
霧果「黙ってろ」
未咲「同じとこから出てきた私が一番だとおもいまーす」
霧果「まぁ下品…」
未咲(お前が言うな)
恒一「お義母さん! 僕と鳴さんの交際を――」
霧果「黙ってろ」
恒一「海? 水着?」
鳴「うん。日帰りだけど」
未咲「いくいく! じゃあ水着買いにいこうよ!」
鳴「うん」
恒一(海か…水着…水着…うへへ…)
霧果(更衣室に仕掛けるカメラ用意しなくちゃ)
恒一「お義母さん、パラソルの取り付け終わりました」
霧果「御苦労さま。帰っていいわよ」
鳴「お待たせ」テクテク
恒一・霧果「Foooooooooo!!」
未咲「よ、よう…」
恒一「凄く似合ってるよ見崎。麦藁帽子も可愛いね」
鳴「そ、そう?」テレテレ
霧果「オイル塗りましょ鳴! さぁ早く!」
未咲「…」
恒一「ん? なに?」
未咲「…」ズイッ
恒一「なんだよ」
未咲「…」ズイッ
恒一「…水着見崎のと一緒だね」
未咲「ち、違う! そうじゃない!」
恒一「じゃあ何だよ」
未咲「あぅ…だ、だから、その…鳴みたいに…///」ボソボソ
未咲「は!?」
恒一「え? そりゃ可愛いけど」
未咲「はぁ!?///」
鳴「だって。よかったね未咲」ボソッ
未咲「ち、違うってば! そうじゃなくないけど、違うって…///」ワタワタ
恒一「あ、見崎の次だからね。一番は見崎だから」
未咲「うっさい!///」
未咲「鳴が変な事言うから…」
鳴「私は榊原君に質問しただけだよ?」
恒一(…そっくりなのは顔だけじゃないんだなぁ…)シミジミ
未咲「うん!」
鳴「榊原君も――」
恒一「ジュース買って来ましたお義母さん!」
霧果「ありがと。あぁでも海と言えば焼きそばよね…」ボソッ
恒一「か、買ってきます!」ダッシュ
霧果「お肉多めにしてもらってね」
未咲「…二人で行く?」
鳴「うん…」ガッカリ
鳴「…しょっぱい」
未咲「そりゃそうだよ。海だもん」アハハ
鳴「…来れてよかったね」
未咲「うん…」
鳴「もう体平気?」
未咲「うん。鳴のおかげ!」ギュー
鳴「んぶっ…もがもが…」バシャバシャ
未咲「あ、ごめんごめん」
鳴「溺れるかと思った…」
未咲「やったなー! ほりゃ!」バシャ
鳴「んっ! おかえし!」バシャ
未咲「生意気な…えいっ!」
鳴「んむっ…」
未咲「むふふ! 大勝利!」
鳴「…」グイッ
未咲「うひゃ!?」ザブーン
鳴「ふふ」
恒一(…………楽しそうだし、もうちょい待ってよ)
恒一「おぉ…」
鳴「砂の像?」
霧果「そうよ。こっちが鳴で、こっちが私」ドヤァ
恒一(若干霧果さんの胸が大きくなってるな)
未咲(つーかこんなとこに作ったら…)
波「おじゃまーwwww」ザブーン
霧果「あああああああああああああああ!!!」
鳴「あー…」
恒一・未咲(流された…)
霧果「おい」
恒一「準備出来ました!」
未咲(奴隷かよ)
霧果「さぁ鳴。好きなだけ割りなさい」
鳴「はい」ワクワク
未咲「いいなー…私もしたい」
恒一「…」
鳴(うっさいな…)フラフラ
未咲「もっと前だよ! ほらアンタも――って、あれ? どこ行った?」キョロキョロ
鳴「えいっ」ブンッ
霧果「惜しい!! 頑張って鳴! 鳴! 鳴! 鳴ぃいいいいい!!」
鳴「すいません黙っててもらえます?」
霧果「」
未咲「まぁいいか。ほら鳴! 今だよ!」
鳴「んっ!」パコン
霧果「Foooooooooooooooo!! 流石よ鳴!」
未咲「凄いよ鳴!」
鳴「えへへ…あれ? 榊原君は?」
未咲「どっか行ってるみたい。ったく何してんだか」
恒一「――ごめん、もう終わっちゃった?」テクテク
鳴「うん。どこ行ってたの?」
恒一「ちょっと買い物にね」ガサッ
未咲「スイカ?」
恒一「えっと…ほら、見崎はどうせ一つじゃ足りないかなって…」
鳴「む。そんなに食べないよ…食べるけど」
鳴「で、どうするの? また割る?」
恒一「だね。じゃあほら」スッ
未咲「へ?」
恒一「割るの任せたよ」
未咲「い、いいの?」
恒一「(いいもなにも…)僕は疲れたし、見崎はもうスイカにがっついてるからね…」
鳴「うまうま」シャクシャク
霧果「天使」
恒一「何がでもだよ。見崎もう全部食べちゃうよ?」
鳴「ウマー」パクパク
未咲「し、仕方ないなぁ」ニヤニヤ
恒一「…」クスッ
未咲「? なによ」
恒一「なんでもないよ。ほら目隠しして」
未咲「うひゃ!? ちょ…」
恒一「はい回って回って」グルグル
未咲「も、もう!」
恒一「真っ直ぐ行って少し右ね。あ、ダメだよ見崎種吐いちゃ」
未咲(それだけかよ!)フラフラ
恒一「え? 僕はいいよ…じゃあ少しね。あーん」
未咲(自分だけ…! くそ! これ終わったら鼻の中に種詰めてやる!)フラフラ
鳴「あ。危な…」
恒一「へ?」
未咲「え?」
ドンッ
未咲「いてて…ひっかかっちゃった…」
恒一「ひっかかっちゃったじゃないよ…」
未咲「へ?」ノシッ
恒一「あっちだよ」
鳴「食べていい?」ジー
霧果「オッケー」グッ
未咲「あはは…」
恒一「笑いごとじゃないって…下手したら頭割れてたよ」
未咲「ご、ごめん…」シュン
恒一「もう…せっかく買ってきてやったのに…」ボソッ
未咲「へ?」
恒一「あ」
恒一「…さぁ?」
未咲「私の為に買って来たんだ」ニヤニヤ
恒一「知らないよ」
未咲「意外と可愛いとこあるじゃん」ニヤニヤ
恒一「ふん…」
未咲「……ありがとね、恒一」ボソッ
恒一「…どういたしまして」
未咲「なーんだやっぱり私の為じゃん」ニヒヒ
恒一「…」プイッ
未咲「照れるな照れるな」ツンツン
恒一「もう退いてくれよ…」ハァー
恒一「見崎の為だからね。当然の事だよ」キリッ
未咲「…二個目は違うけどねー」ボソッ
恒一「おい…」
未咲「にひひ」
鳴「?」
霧果(鳴が食べたスイカの皮…いけるか?)
未咲「寝ちゃったね」
恒一「疲れたんだろ。起こすなよ」
未咲「言われなくっても」
恒一「はぁ…海ではしゃいで疲れて寝ちゃう見崎ペロペロ」
未咲「口元のスイカの種ペロペロ」
恒一「おい。スイカ買って来たの僕なんだからその種をペロペロする権利は僕にある」
未咲「早いもの勝ちでしょ」
恒一「は?」
未咲「あ?」
ギャーギャー
鳴「んん…Zzz…」
霧果(スイカと鳴の唾液がミックスされてデリシャス)チューチュー
未咲「なわけないじゃん! 恒一はこの前ラブレターくれた娘と付き合ってろ!」
恒一「断ったって言っただろ! 泣かれたよ!」
未咲「うわサイテー」
恒一「じゃあどうすれば良かったのさ」
未咲「付き合えよ」
恒一「だから――」
ギャーギャー
鳴「…あれ?」
恒一「僕には見崎がいるから」
未咲「ははっ。ねぇよ」
恒一「君こそ大丈夫なの? 僕以外にはその性格隠してた方がいいよ?」
未咲「どういう意味よ」
恒一「そのままだけど?」
未咲「ほう…つまり恒一以外の男とは喋るなと」
恒一「むしろ僕に喋りかけるのを止めてくれる?」
未咲「や・だ」
鳴「名前で呼んでる…!?」ガーン
恒一「まったく…あれ? どうかした?」
鳴「…」ジー
恒一(かわいい)
鳴「…ち、くん…///」ボソッ
恒一「ん?」
鳴「こ、ぅいち…君…///」ジー
恒一「」
恒一「」
鳴「…恒一君?」
恒一「」
鳴「恒一君? 恒一君?」グイグイ
恒一「」
鳴「…気絶してる…」
恒一「…」
鳴(未咲なら平気なのに…赤沢さんとかも…私だけ…)グスン
恒一「み、みさ――鳴」ギュッ
鳴「へ?」
恒一「鳴」
鳴「…///」ギュー
恒一「鳴」
鳴「恒一君…///」
恒一「」
鳴「おい!」
鳴「もう…」
未咲「私は?」
恒一「生まれ変わって出直せよ」
未咲「酷い…ぐすっ…」
恒一「は? ちょっ…」アワアワ
未咲「と言うと思ったかバーカ」ベー
恒一「…は?」
恒一「もう怒った。帰る」スタスタ
未咲「ちょっ…え? ま、待って…」
恒一「と言うと思った? 騙された気分はどう?」
未咲「死ね」バシッ
恒一「だ、だから暴力は…」
未咲「うっさい! ばーかばーか!」ベシベシ
鳴「もう…」ハァ
赤沢「どう? ここのカフィーは?」
恒一「うん。おいしいね(見崎達と待ち合わせしてたら捕まった…)」
赤沢「ここのカフィーは本物よ」キリッ
恒一「うん。おいしいおいしい(まだかなー)」
赤沢「気に入って貰えたなら嬉しいわ」ウフフ
恒一「そうだね。おいしいね」
赤沢「ねぇ恒一君? もしよかったらこの後――」
鳴「お待たせ」
赤沢「え?」
赤沢「え!?」
恒一「あ、やっと来た」
鳴「ごめんね。未咲が服どれがいいかなって迷って時間かかっちゃって」
未咲「そ、それは鳴もじゃん!」
赤沢「え? え?」
恒一「ごめんね赤沢さん。僕はこれで」ガタッ
未咲「ごめんねー。恒一借りていくね」
鳴「いこ」クイクイ
恒一「うん。じゃあね」スタスタ
赤沢「あ…」
未咲「置いていくなー!」スタタ
赤沢「…」ポカーン
恒一「クラスメイト」
鳴「何で赤沢さんが?」
恒一「偶然ね」
未咲「恒一あの人の胸見てたよ。やらしー」
鳴「へぇ…」ジトー
恒一「で、でたらめ言うなよ!」
恒一「だからあれは友達ので…」
鳴「でも見たんでしょ?」
恒一「お、男の付き合いってものがあるんだよ…」
未咲「変態」
恒一「ぐっ…!」
鳴「榊原君のえっち」ムー
恒一「うっ…!」ビクンビクン
恒一「来てそうそう何してんだよ!」
鳴「布団…///」モゾモゾ
未咲「ちっ…。隠し場所変えたな?」
恒一「返したんだって」
未咲「嘘つけ。この辺に…」ゴソゴソ
恒一「箪笥はダメだって!」
鳴「///」ギュー
鳴「うん」
未咲「はよ行け」
恒一「(飯抜いてやろうかコイツ…)頼むよホント…」スタスタ
未咲「さて…」ゴソゴソ
鳴「さて…」モゾモゾ
未咲「ふへへ…」コソコソ
鳴(安心する…ふぁ…///)クンカクンカ
未咲「お邪魔ー」モゾモゾ
鳴「ん…」
未咲(うっとりしちゃってる…きゃわわ)
鳴「どうしたの?」
未咲「鳴が可愛いからつい…」
鳴「そう?」
未咲「食べちゃっていい?」
鳴「今からご飯食べるのに?」クスッ
未咲「そ、そうだった…」
鳴「未咲は抜けてるとこあるよね。ちょっと心配」
未咲「むー。鳴こそ私がいないとダメなくせに」
未咲「ダメダメあんな変態。鳴は私の!」ギュー
鳴「そんなにダメかな…? たまに変な時あるけど」
未咲「顔はいいよ? 料理も上手いよ? 身長も高くて…あれ?」
鳴「…」ジー
未咲「と、とにかくダメ! 鳴は私のって決まってるんだからね!」ギュー
鳴「く、苦しい…」
鳴「オムレツ…」ジュルリ
恒一「あとサラダね」
未咲「おぉ…お店で出てくる奴みたい」
恒一「ケチャップで名前書いてあげるね。み・さ・き…っと」
鳴「いただきます」モグモグ
未咲「…」ソワソワ
未咲(あーやっぱりかー…って、何ガッカリしてんだ…)
恒一「? いいの? 名前」
未咲「はいはい。自分で書きますよー」ムスッ
恒一「あ、自分で書くんだ」
未咲「…え!? か、書いてくれるの!?」
恒一「最初からそう言ってるじゃないか」
恒一「結局か…み・さ・きっと。これでいい?」
未咲「…は、ハートも」
恒一「は?」
未咲「か、貸してそれ!」グイッ
恒一「?」
未咲「こっち見ないでよ!?」コソコソ
未咲(みさきって所の周りをハートで…よし!)
恒一「終わった?」ヒョイ
未咲「み、見るなって!///」
未咲(…ふふ///)
恒一「?」
鳴「榊原君、おかわり」クイクイ
恒一「あ、もう無いんだよ。ごめんね」
鳴「そっか…」ショボーン
恒一「僕のちょっと食べる?」
鳴「…じゃあ一口だけ」
鳴「もう一口」モグモグ
鳴「最後に一口」モグモグ
鳴「本当に最後」モグモグ
恒一(全部無くなった…)
鳴「あ、あの…ごめんなさい…」シュン
恒一「いいの? じゃあ少しだけ…」
未咲「じゃあ口開けて」
恒一「自分で食べれるって」
未咲「それはダメ! あ、あと目閉じてて」
恒一「? もう…変なとこ突っ込むなよ?」アー
未咲「するか! じゃ、じゃあ…」ヒョイ
恒一「ん…もぐもぐ…」
未咲「おいしい?」
恒一「ケチャップかけ過ぎ」
未咲「う、うっさい!」
未咲「もういいの?」
恒一「うん。君もお腹すいてるだろ?」
未咲「まぁ…だけど遠慮しなくていいのに」
恒一「それこそ今さらでしょ。遠慮とかする仲じゃないだろ?」
未咲「え…」ドキッ
恒一「あれだけ悪口やら言いあったのに、今さら食べ物で遠慮しないよ」
未咲「そ、そっか…」ドキドキ
未咲(なにこれなにこれなにこれ///)ドキドキ
鳴「大丈夫。未咲もいるし」
未咲「…」ボケー
恒一「…本当に?」
鳴「…多分」
恒一「ま、明るいし寄り道せずに帰れば平気か。じゃあまたね」
鳴「うん」
恒一「君も気をつけて帰れよ」
未咲「…う、うん」モジモジ
恒一(本当に大丈夫か?)
鳴「大丈夫? 気分悪いなら戻るよ」
未咲「そ、それはダメ!///」
鳴「…そう」
未咲「鳴こそ恒一の分まで食べちゃって大丈夫なの?」
鳴「え? あの程度で?」
未咲「え?」
鳴「え?」
未咲「急に優しくするから調子狂うんだよー!」
鳴「?」
未咲「ふーふー。あースッキリした。帰ろ」
鳴「そういえば未咲。明日の遊園地どうする?」
未咲「へ? 遊園地?」
鳴「さっき榊原君ん家で言ったじゃない。明日は三人で遊園地だって」
未咲「…………マジ?」
恒一「あ、おはよう見崎。少し遅かったけど何かあった?」
鳴「霧果がね…」
恒一「お義母さんが?」
鳴「昨日ぽろっと言っちゃって、そしたら自分も行く行くって駄々こねて、遂には泣きだしちゃってさ」
恒一(あの人ならあり得るな…)
鳴「本当はもう少し早く来れたんだけど、なだめるの長引いちゃって…」
恒一「ううん、気にしないで。今日は長いんだし、遅れた分楽しもう」ニコッ
鳴「…うん」ニコッ
恒一(マジ天使)
鳴「うん。まずは未咲のとこ行って、それから遊園地」ギュッ
恒一「あ…」
鳴「…今日はこのまま、手、繋いでよ?」
恒一「…うん。そうしようか」ギュッ
鳴「い、いこ/// 早く///」グイッ
恒一(はぁ…恥ずかしがる見崎もペロペロ)
未咲(遅いなー…まだかな…)ソワソワ
恒一「おーい」
未咲「あ…」
恒一・鳴「お待たせ」ギュッ
未咲「…」
恒一「ごめん、待たせちゃった?」
未咲「…何で手、繋いでんの?」
恒一「愛故に、かな」キリッ
鳴「もう…またそんな事言って」
未咲「この変態。鳴の可愛らしい手を離せよ」
恒一「見崎の可愛らしい手が僕の手を離さないんだよ」
未咲「は? どうせ手に接着剤でも付けてるんでしょ」
恒一「……それもアリだな」ボソッ
未咲「変態」
恒一「なんだよ…今日は嫌に突っかかってくるな」
未咲「あ、アンタが――」
鳴「ストップ。今日は喧嘩はダメ」
鳴「ダメ。分かった?」
恒一・未咲「…はーい」シブシブ
鳴「せっかくのデ、デートなんだし、ね?」
恒一(天使)
未咲(デート…)チラッ
鳴「ほら未咲」コソッ
未咲「?」
鳴「手、繋がなくていいの?」コソッ
未咲「なっ!?///」
未咲「…あ、ぅ///」
未咲(ど、どうしよ…手、手、手…繋いで、歩く…///)ドキドキ
未咲(あーもうまただ…落ち着け私! ただ手を繋ぐだけ! はぐれちゃアレだし! 危ないし!)
未咲「こ、恒一!」
恒一「ん?」
未咲「て、手…貸して」ドキドキ
恒一「こう?」スッ
未咲「…っ!」ギュッ
恒一「…」
未咲「…///」ギュー
恒一(腕に抱きつかれた…なにこれ)
未咲(あ、あれぇ!? なにしてんの私!)
未咲「い、いいから!/// い、今は何も言うなバカ!」ギュー
恒一「…はい」
鳴「…モテモテだね、さ・か・き・ば・ら・君?」ゴゴゴ
恒一「え?」
鳴「未咲、私そこまでしていいって言ったっけ?」ゴゴゴ
未咲「だ、だってぇ…///」ギュッ
恒一「え? え?」
鳴「もう、この二人はもう…!」プンプン
鳴「この状況で言うの? それ」
恒一「あの…な、何で腕に…」
未咲「うっさい!/// 今日はいいの! これで!」ギュッ
鳴「よかったね」ギュー
恒一「…と、とりあえず行こうか」
鳴「うん」
未咲「おー!」
恒一(…まぁいいか。これはこれで)
未咲「おーおー。賑わってますなー」キョロキョロ
鳴「意外と多いね。どこから回る?」
恒一「うーん…見崎は行きたいとこある?」
鳴「三人で乗れるのがいいよね…」ウーン
恒一(悩む姿も可愛い。無敵だな)
未咲(ペロペロ)
鳴「いいかも」
未咲「よっし行くかー」
恒一・未咲「じゃんけんぽん! あいこでしょ! しょ!」
未咲「勝った! 私鳴の隣!」ダキッ
鳴「騒ぐと怒られるよ」
恒一「くっ…!」
未咲「ふふふ…これが愛の差だよ恒一」
恒一「後だしで勝っておいて良く言う…」
未咲「何の事? 証拠あるの?」
未咲(oh…)
恒一(怖がる見崎も可愛い…後でお化け屋敷行こう)
鳴「未咲は平気?」
未咲(萌え死にそうです)
恒一「隣なんだって。行ってみようよ」
未咲「わ、私はいいかなー…」
鳴「未咲怖いの苦手だもんね」
恒一「ふーん…」
未咲「な、なによ…」
恒一「いや、じゃあ僕と見崎だけで行ってくるから」
未咲「……まった。私も行く」
恒一「怖いの苦手なんでしょ?」
未咲(恒一と鳴を二人っきりにさせる方が怖いの!)
鳴(重い…)
恒一「…あ、人魂」
未咲「ひぇ!」ビクッ
恒一「足もとに首が…」
未咲「ひゃ!?」ビクッ
恒一「あれ? なんか声聞こえない?」
未咲「うぅ…」ギュー
恒一「君の後ろに――」
未咲「ぐすっ…も、もうやだぁ…」ペタン
鳴「…」ジロッ
恒一「…すいませんやり過ぎました」
恒一「はいはい。ごめんって」
鳴(抱きつきながら言う台詞じゃないよね)ムスッ
恒一(見崎が嫉妬している…かわいい)
未咲「やだ」
鳴「…」ジトー
恒一「はぁ…僕の事嫌いなんでしょ?」
未咲「…死ね」
鳴「今のはないわ…」
恒一「え?」
恒一「お昼だもんね」
未咲「じゃあ恒一、買い出しよろしく。向こうに売店あるから。私ピザね。あとアイス」
鳴「私は…とりあえずあるだけ。あとアイス」
恒一「皆で行った方が――」
未咲「あ?」ギロッ
恒一「くっ…行ってきます」テクテク
鳴・未咲「ったく…」
鳴「…秘密。未咲は?」
未咲「私? だから言ってるじゃん、き・ら・い」
鳴「ホントに?」ズイッ
未咲「私の一番は鳴だよ」ギュー
未咲「遅い」
恒一「無茶言うなよ…」
鳴「ありがと。お金後で渡すから」
恒一「いいよ、デートなんだから。僕の奢り」
鳴「…こういう所とかね」コソッ
未咲「ふんっ…かっこつけめ」
恒一「君は払えよ」
恒一(とか言いつつアイスに手を伸ばす見崎も可愛いよ)
未咲「ん…」ヒョイ
恒一「へ?」
未咲「…一口あげる。ご飯のお礼」
恒一「いいの?」
未咲「いいから」グイッ
恒一「む…」
未咲「おいしい?」
恒一「ん」コクコク
恒一「(見崎の食べかけ!?)いただきます!」パクッ
鳴「どう?」
恒一「幸せの味がした」
鳴「…あのね、未咲も素直じゃないだけだから」コソッ
恒一「?」
鳴「それだけ。変な事したら怒るからね」
恒一「?」
恒一(そりゃあれだけ食べてジェットコースターに乗ればな…)
未咲「大丈夫? 次の乗れそう?」
鳴「ん…少し休んでるから、次のは二人で乗ってきて」
恒一「次って…観覧車?」
未咲「待ってようか?」
鳴「いいよ。行ってらっしゃい」
恒一「でも…」
鳴「行かないと嫌いになる」
恒一「わ、わかったよ…」
鳴「未咲」チョイチョイ
未咲「?」
鳴「これっきりだからね。素直にならなきゃダメだよ?」コソッ
未咲「…………うん」
未咲「…」
恒一「…」
未咲「…高いね」
恒一「うん」
未咲「…」
恒一「今日は楽しかった?」
未咲「お化け屋敷以外はね」
恒一「ん?」
未咲「鳴のどこが好きなの?」
恒一「全部」
未咲「そういうんじゃなくて…何で好きになったの?」
恒一「…笑うなよ?」
未咲「うん」
恒一「…一目惚れ」
未咲「ふーん…」
未咲「さぁ? 昔っから一緒で、ずっと好きだったから覚えてない」
恒一「へぇ…」
未咲「ねぇねぇ、一目惚れってどんな感じなの?」
恒一「なんだよ」
未咲「私、鳴以外に惚れた人とかいないから、どういうのか知りたくて」
恒一「…こう、出会った瞬間にときめいたと言うか…」
恒一「違うって。…だって見た目同じの君と会っても惚れなかったでしょ」
未咲「…そっか」ギシッ
恒一「ん? 何でこっちに…」
未咲「よっと」ギュー
恒一「あぁもうまた腕に…」
恒一「どういう意味?」
未咲「私に一目惚れはしなかったんでしょ?」
恒一「うん」
未咲「じゃあ今は? 一目惚れとか、そういうんじゃなくて、今は私に惚れそう?」
恒一「…」
未咲「正直私はね、鳴を好きになった時の事覚えてないから、恋とか惚れただとか分からない。恋ってどういう事?」
恒一「その…一緒にいたらドキドキしたり、触れたくなったり、喋りたくなったりするもの…じゃない?」
未咲「…私、今ドキドキしてるよ?」
恒一「…」
未咲「恒一は? 私と一緒にいたらドキドキする?」ギュッ
恒一「…自分で聞けよ」ギュッ
未咲「あ…」
恒一「…」ギュッ
未咲「…」
恒一「…」
未咲「…ドキドキ、してるね」
恒一「…じゃあそういう事だろ」
恒一「もういいだろ」
未咲「あれ? 自分で抱き締めたくせに?」
恒一「それは…///」
未咲「赤くなるな赤くなるな。ちょっと私に惚れた程度で…///」
恒一「自分で言って赤くなってどうするの…」
未咲「いやいや…あはは…は、恥ずかしいね!///」
未咲「それはこっちの台詞」
恒一・未咲「僕(私)の一番は見崎(鳴)だから」
未咲「私は鳴が一番好き。だから恒一は二番目」
恒一「僕は見崎を一番愛してる。だから君は二番目だ」
未咲「だってあんなに可愛いんだもん。マジ天使」
恒一「だってあんなに可愛いんだよ? マジ天使」
未咲「ふふ…」
恒一「はは…」
未咲「ふふふ、おかしいね。なにこれ」
恒一「いいんじゃない? お互い二番で、一番は見崎で」
恒一「僕も好きだよ。見崎の次に」
未咲「これで後は鳴の一番か…私だな」
恒一「は? 僕だろ?」
未咲「いやいや私」
恒一「僕」
未咲「私!」
恒一「僕だって!」
恒一「だから僕だって! 今日だって見崎から手繋いでもらったし!」
未咲「どーせまた病気のフリして同情させたんだろ! 変態!」
恒一「君に言われても嬉しくないよ!」
未咲「知るか変態!」
恒一「こうなったら見崎に直接聞くしかないね…」
未咲「上等じゃない…!」
鳴(喧嘩してないといいけど…ま、大丈夫かな)
恒一「僕が見崎の一番!」
未咲「私!」
恒一・未咲「ぐぬぬ…!」
鳴(さて次は何に乗ろうかなー)ルンルン
終わり
見てくれた人ありがとうございました
よかった
鳴ちゃんも未咲ちゃんもすごく可愛くてよかった
Entry ⇒ 2012.09.03 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (3) | Trackbacks (0)
恒一「怜子さんが死んでもう一年半か……」
4月25日(土)
~病室~
早苗「そういえばホラー少年は親戚のお家がこっちなんだっけ?」
恒一「はい。母の実家がこちらで、転校先も母の通っていた中学なんです」
「今回は病気の療養も兼ねて越してきたんですけどね、なのに早速やらかしちゃいました」ハハ…
早苗「こらこら、そんな自虐的じゃ治るものも治らないぞー。こっちにお友達とかもいたりするの?」
恒一「それが残念ながら1年半前に家の都合で訪れたぐらいなものだったので……あ」
早苗「ん? どうかした?」
恒一「いえ、その時にちょっと仲良くなった子がいたのを思い出して」
早苗「あ、もしかして……女の子でしょ?」フフ
恒一「決め付けないでくださいよ、そうですけど。というか何で笑うんですか」
早苗「いやいや、別に『見かけによらずプレイボーイだなー』なんて思ってないよ?」クスクス
恒一「もう、そんなんじゃないですって。ただ、お互いの境遇が似てたからちょっと意気投合しただけですよ」
「……それに結局名前も聞かないままお別れしちゃいましたから、どう転んでも水野さん好みの浮ついた話にはならないですよ」
早苗「そっかー、ざんねん」
風見「あの、こちらが榊原恒一さんの病室だと伺ったのですが……」
早苗「ええそうですよー。お見舞いかな?」
桜木「はい、彼が転校してくる夜見山北中学校の3年3組の者ですぅ」
早苗「そかそか、いらっしゃい。じゃあパイプ椅子がそっちにあるから適当に使ってね、ごゆっくりー」トテトテ
――バタン
風見「始めまして榊原くん、今日はクラスを代表してお見舞いにきました」
恒一「これはどうも……」
風見「僕はクラス委員長の風見といいます。こっちが女子の委員長で桜木さん、それでこっちが――」
赤沢「対策係の赤沢泉美、なん、だけど……」ポカーン
恒一「あれ、キミはもしかして……?」ジー
桜木「2人とも驚いた顔で見つめ合ってどうしたんですかぁ?」キョトン
赤沢「もしかしてあの時の男の子……?」
恒一「河原で僕に空き缶ぶつけた女の子……?」
赤沢「……」
恒一「しかも同じクラスだなんてびっくりしちゃった」ハハ
赤沢「……ええ、私も驚いているわ」
桜木「え? え? お2人は知り合いなんですか?」
恒一「うん。たまたま1年半前に家の都合で夜見北に来てたときに、ちょっとね」
赤沢「まさかあの時の彼が転校してくるなんて今知ったけどね……どうして夜見北なんかに転校してきたのよ」キッ
恒一「え……もしかして僕何かしちゃったかな?」
赤沢「いえ再会できたのは素直にうれ……こほん、なんでもないわ。ただちょっとうちの中学には特別な事情があるのよ」
恒一「特別な事情?」
風見「赤沢さん、この際だから今日のうちにすべて話しておくのも手じゃないかな」
赤沢「……そうね、1年半前に会ってるんだし彼が死者ということもなさそうか」
恒一「ししゃ?」
赤沢「心して聞いてね。これから話すことは嘘でも冗談なんかでもない本当のことだから」
「私たちの、そしてあなたがこれから通うことになるクラスには、ある“現象”とそれに伴う“災厄”が存在しているの――」
赤沢「ええ。26年前の無邪気な善意が生んでしまった、ある種の呪いね」
風見「死者が紛れ込むと、始業式の日から毎月1人以上クラス関係者が命を落としてしまうんだ」
「始まりの年の一家焼死事件をなぞってか、市内にいる生徒と教師本人とその2親等以内が死の対象になる」
赤沢「死者が紛れ込むことは“現象”、それによって引き起こされる理不尽な死は“災厄”とそれぞれ呼ばれているわ」
「そして“現象”が起きている年は〈ある年〉、何も問題のない年は〈ない年〉というの。死者はかつての“災厄”の犠牲者がなるそうよ」
桜木「それで〈ある年〉だと分かった場合に“災厄”の発生を未然に防ぐためのおまじないが〈いないもの〉対策なんですぅ」
恒一「……“現象”に“災厄”、ね。まるでホラー小説の話を聞いてるみたいだよ」
赤沢「こんな話を信じてるなんて、ちょっと馬鹿げてると思うでしょう?」
恒一「いや、そんなことは……」
赤沢「ううん仕方のないことだし気にしないで。今日来てる他の2人も正直なところ半信半疑だと思うしね」チラッ
「でも私は違う、確信してる……1年半前に会ったとき、大切な人を失ったって言ったの覚えてる?」
恒一「うん、もちろん。それで共感を覚えたんだから」
赤沢「そう……その大切な人っていうのは私の家族でね、彼は当時3年3組の生徒だった」
「私はすでに“災厄”で家族を奪われる理不尽を経験しているの。だから対策係に自ら立候補したのよ」
桜木「全然知りませんでしたぁ……」ショボン
赤沢「良いのよ、私が話さなかっただけだから」
恒一「ねえ、1つ確かめてもいいかな。つまり1年半前……96年度は〈ある年〉だったということなんだね?」
赤沢「ええそうよ」
恒一「そっか……あの時赤沢さんにシンパシーを感じたのは、そういうことだったのかもしれないな」
赤沢「どういうこと?」
恒一「大切な人を亡くしたと言った赤沢さんに僕も同じだって言ったの、覚えてる?」
赤沢「ええ、もちろん」
恒一「僕の叔母さんはね、夜見北の教師をしていたんだ。それで死んだ96年度は……3年3組の担任をしていたって聞いた」
桜木「それって……!」
恒一「ああ、多分僕の叔母さんも“災厄”の犠牲者だったんだと思う」
「赤沢さんの話、今度こそ全面的に信じるてみるよ。続きを聞かせてくれないかな」
「“災厄”を未然に防ぐのが〈いないもの〉対策だって話、さっきしたわよね?」
恒一「うん、けどそれがどんな内容なのかはまだ聞いてないよ」
赤沢「そもそも“現象”というのは死者が1人増えることによって始まるでしょう?」
風見「ちなみに〈ある年〉かどうか分かるのは始業式の日で、用意されていた机より何故か生徒が1人多いことから発覚するんだ」
赤沢「1人増えてしまったことで“災厄”が起こる、ならその分1人減らして生徒数の辻褄を合わせれば……そういう発想のおまじないなの」
恒一「なるほど、原理は分かったよ。けど具体的に1人減らすっていうのはどうやって?」
桜木「そこで〈いないもの〉を作るんですぅ」
赤沢「“現象”のきっかけとなった26年前は、夜見山岬という死んだ生徒を〈いるもの〉として扱ったことから始まった」
「その逆だから、生きている生徒を死んだもの、そこに存在しない〈いないもの〉として扱えば良いっていう理屈よ」
恒一「つまり簡単に言うと、クラス全体で1人の生徒を無視するってこと?」
風見「イジメみたいで気はのらないけどね……これは担任の先生なんかも協力してくれてることだよ」
赤沢「ちなみに〈いないもの〉は拒否することも途中でやめることも一応は許されているわ」
「でもね、途中で放棄した年は、その月から“災厄”が起こり次々に犠牲者が出てしまっているの」
「それが私たちの家族が死んだ96年度の出来事よ……だから私は今年こそは〈いないもの〉対策をやり遂げるつもり、何としてでもね」
恒一「ちょ、ちょっと待って。〈いないもの〉の名前出して良かったの?」
桜木「あ、はい。見崎さんは5月から〈いないもの〉なんでまだ大丈夫なんですよぉ」
恒一「んー……どういうことかさっぱりなんだけど、〈いないもの〉を作るってことは今年は〈ある年〉なんだよね?」
赤沢「ええ。“災厄”による犠牲者が出るまではグレーだけど、その可能性は少なくないと思ってる」
恒一「でも〈ある年〉かどうかの判別って始業式の時点で行われるんだよね、〈いないもの〉も4月から作られるものじゃないの?」
赤沢「それは……今年は始業式の時点では机と生徒の数はぴったり一致していて〈ない年〉だと思われていたの」
「けれどあなたの転校によって生徒が1人増え、机が1つ足りなくなってしまった」
「今年度は途中から〈ある年〉に変わった可能性があるのよ、だから〈いないもの〉対策もあなたの転校に合わせてスタートするの」
恒一「そっか、僕の転校のせいで……」
赤沢「あなたが気に病む必要はないわ。転校なんて家の事情だし、何よりこれはわざわざ3組に入れた学校側の落ち度なんだから」
恒一「……うん、ありがとう。赤沢さんは優しいな」
赤沢「べ、べつに、事実を言っただけよ」モジモジ
「まあこんなクラスで大変だとは思うけどこれから1年間よろしくね、榊ば……ううん、恒一くん」
「退院したら再会の記念も兼ねて美味しい珈琲をご馳走するわ。イノヤのハワイコナエクストラファンシーは本物なんだから」ニコ
~夜、院内エレベーター~
――ガコン…ウィイイイイン……
見崎「……」
恒一「あ、すみません人がいるの気がつかなくっ……て、あれ?」ジー
見崎「……なに」
恒一「キミ、三神怜子って人の葬式に来てなかった?」
見崎「……部活の顧問だったから行った、けど」
恒一「やっぱりそうか、見たことあると思ったんだ」ウンウン
「確か事件の通報をしてくれた子ってキミだよね。お礼が遅れてごめん、ありがとう」
「僕は怜子さんの甥で榊原恒一っていうんだ、キミの名前は?」
見崎「さかき、ばら?」ピクッ
恒一「あー……やっぱり印象良くないよねこの苗字は」ハハ…
見崎「そう、あなたが榊原恒一……あなたさえ……」
恒一「え?」
見崎「あなたさえ来なければ妹はっ! 未咲は……っ!!」キッ
恒一「えっと……」
見崎「……ごめんなさい、今のことは忘れて」
恒一「いや、別に構わないけど……だいじょうぶ?」
見崎「ええ……それじゃあ」トテトテ
恒一「……」
見崎「ああ、それと」ピタリ
恒一「え、なに?」
見崎「……見崎、鳴」
恒一「え?」
見崎「名前、聞かれたから……じゃあね」フラリ
恒一「……あ、そっちは――」
(霊安室の方へ向かって行っちゃった…なんだったんだろう、あの子は)
(というか見崎鳴って、もしかして彼女が〈いないもの〉に指名された女生徒?)
(対策係に〈いないもの〉か……1年半ぶりに再会した子はみんな変な肩書きがついちゃってるな)
――カチコチカチコチカチコチ…
恒一「はぁ……寝付けないや」ゴロン
「見崎鳴、か……」
「彼女が赤沢さんの言ってた見崎鳴その人なら、僕の名前に反応したのも頷ける」
「3年3組の生徒ならすでに転校生の名前を知っていてもおかしくないからね」
「僕の転校さえなければ〈いないもの〉なんていうモノにされずに済んだ。その怒りで詰め寄った……?」
「……いや、違う」
――あなたさえ来なければ妹はっ! 未咲は……っ!!
恒一「ミサキというのが彼女自身を指している可能性もなくはないけど、恐らくその前に口走った『妹は』って口走っていた」
「つまり彼女は自分のためじゃなく、妹を想って僕へ怒りを向けていたんじゃないかな」
「そしてその後に彼女が向かった先は……」
「……」
「ちょっと確かめる必要がありそう、かな」
~病室~
恒一「ねえ水野さん、ちょっと変な質問なんですけど」
水野「ん、なにかな? もしかしてえっちな質問?」フフ
恒一「昨日亡くなった患者さんって水野さん知っていますか? たぶん女の子だと思うんですけど」
水野「む、スルーは傷ついちゃうぞ。それにしてもほんと変わった質問だね、何かあったの?」
恒一「あったのかどうか、それを知りたいなと思いまして」
水野「ふむ、何か事情があるみたいねー。私の担当してる患者さんにはいなかったよ」
恒一「そうですか……」
水野「あ、でも若い患者さんが亡くなったって話は聞いたかな、確か女の子だったと思う」
恒一「えっと、その人の名前とかって調べてもらえたりは……」
水野「んー……それとなく聞くくらいなら大丈夫。けど他の患者さんや先生にはナイショよ?」
恒一「もちろんですよ」
水野「た、だ、し」ビシッ
恒一「な、なんでしょう?」
水野「こんなこと聞くなんて何かワケアリなんでしょ? だからそのワケを教えてくれたらってことで」フフ
恒一「笑い事じゃないですよ、昨日亡くなってた子がクラスの関係者だったら“災厄”が始まってるわけですから」
水野「う……そうだよね、恒一くんのご親戚も亡くなってるんだし不謹慎だった、ごめんね」シュン
恒一「いえ、そこは気にしてないですし構いませんよ」
水野「ん、ありがと」
恒一「こういった話は水野さんの得意分野だと思うんですけど、何か解決策とかないですか?」
水野「ホラー小説は好きだけどただの趣味だしねー、うーむ……ちょっと気になる点はあるかな」
恒一「え、なんです?」
水野「これは今年がその〈ある年〉ってやつで“災厄”が始まってると仮定しての話なんだけどね」
恒一「はい、昨日の患者さんが最初の犠牲者だったという場合ですね」
水野「その場合、もう死者が3年3組に紛れてるってことになるでしょ?」
恒一「“災厄”は死者がクラスに1人増えることから始まるから……はい、必然的にそうなりますね」
水野「けどまだキミは転校出来てない」ビシッ
恒一「はい、気胸で転校予定日が延びちゃいましたから」
水野「つまりクラスの人数はまだ増えてないわけよ、なのに“災厄”は始まってる……これってちょっと変じゃない?」
恒一「そっか……だったら僕が転校してくるまで人数は増えない、つまり4月中は絶対に安全なはず?」
水野「そゆこと。ただしこれは実際に転校してきた日を基準に考えた場合だけどね」
恒一「実際に転校してきた日?」
水野「だってもともと4月中に転校を済ませてたはずでしょ? 登校できてないだけでもう書類上は3年3組の生徒なんじゃないかな」
恒一「確かに……はい、本来なら4月20日に転校を済ませている予定でした」
水野「だったらその〈いないもの〉対策っていうのは、その20日から始めるべきだったのかも」
恒一「言われて見れば確かに水野さんの言うとおりですね……対策が間に合ってなかったのか」ウーム
水野「ただねー、この考え方だとその紛れ込んだ死者っていうのがねー……」
恒一「え、もしかして死者が誰かまで分かっちゃったんですか?」
水野「……恒一くん」
恒一「なんですか水野さん」
水野「いや、だからね、恒一くんなの」
恒一「え?」
水野「4月20日から死者が増えたっていう考え方だと、死者は恒一くんしかありえないのよ」
恒一「え、ええ」
水野「でも教室の机だけはその改竄の例外で勝手に増えたりしないから、何故か1席足りなくなって1人増えてることが分かる、と」
恒一「はい、そういう話だったと思います」
水野「この机は勝手に増えたりしない、っていうのがミソなのよ」
恒一「どういうことですか……?」
水野「だって恒一くんが転校してくる段階でやっと『あ、転校生の分の机が足りない』ってなったわけでしょ?」
「つまり始業式からずっとクラスの机はぴったり足りてたわけだよね」
恒一「はあ、そうなります……けど」
水野「もし恒一くん以外の誰かが死者だったとしましょう、たとえば例の見崎鳴ちゃんとかね」
「今までクラスにいなかった鳴ちゃんが、恒一くんの転校に乗じて20日からそれまで一緒に過ごしてたクラスメイトとして紛れ込みます」
「この場合、足りない机はいくつでしょう? ヒントは死者の分の机は勝手に増えない、です」
恒一「……あ」
水野「そゆこと。もし他のクラスメイトが死者だった場合、その子の分の机も足りなくなるはず」
「だから足りない机は恒一くんのと合わせて2つ必要にならなきゃおかしいの」
水野「残念だけど……恒一くん、あなたはもう……」
恒一「そ、そんな……」
水野「……」
恒一「けど死んだ覚えなんて……」
水野「……」フルフル
恒一「ああそうか、死者には自覚がないんだったか……」
水野「……」プルプル
恒一「僕はいったい、どうしたら……」
水野「……」プルプルプル
恒一「……水野さん?」
水野「…………なーんてね!」クスクス
恒一「え?」
恒一「もしかして……冗談だったんですか?」ムッ
水野「ホラー少年の洞察力が足りないのが悪い」ビシッ
「ほら、死者の条件に『かつての“災厄”犠牲者』ってのがあったでしょ?」
恒一「けど怜子さんが96年度の担任でしたし、その時にもしかしたら巻き込まれてて、とか……」
水野「“災厄”の対象はクラス関係者とその2親等以内で夜見山にいる者、なんでしょ?」
「甥と叔母は3親等、しかも恒一くんは東京に住んでたんだし“災厄”の対象外だよ」
「もう、ちゃんと考えれば自分が死者なんかじゃないってわかったはずなのになあ」
「ホラー少年もまだまだだね」ツンツン
恒一「む……」
水野「まあそれが一番だよね。今年はやっぱり〈ない年〉だったっていうオチ」
恒一「うーん、赤沢さんたちの早とちりなのかなあ」
水野「けどもし見崎さんの妹さんが亡くなってるなら、今の段階でそう決め付けるのはちょっと怖いよね」
恒一「どこかに穴があるんでしょうか?」
水野「あり得るとしたら……何らかの理由で座席は最初から余分に用意されていて、そのせいで1人増えたことに気付けなかった、とか」
恒一「僕の転校は春休み中に夜見北に打診してますし、2週間かそこらでやってくる生徒だからって先生が事前に用意してた可能性もなくはないですけど……」
水野「でも担任の先生が自ら用意したとしたら、始業式の日に席の余りがなくなってることに気付かないのはおかしな話よね」
恒一「つまり担任以外の何者かが勝手に机を1つ増やした? けど何のために……」ウーン
水野「まあ今度こそは名推理を期待してるよ、ホラー少年」フフ
「じゃあ私は一応昨日亡くなった患者さんについて調べてみるね」
恒一「はい、よろしくお願いします」
水野「りょーかい、それじゃまたねー」フリフリ
~病室~
水野「お待たせ、やっぱり27日に若い女性の患者さんが亡くなってたよ」
恒一「それで名前は……?」ゴクリ
水野「それがねー……藤岡未咲さん、だってさ」
恒一「え? 苗字は見崎じゃないんですか?」
水野「違うの、藤岡。しかも1人っ子だったみたいでご両親がすごく取り乱してたそうよ」
恒一「1人っ子ですか……ということは、見崎鳴の妹じゃなかった……?」
水野「そういうことになるのかな。けど恒一くんは妹って言葉を聞いたんだよね?」
恒一「はい、確かに『あなたさえ来なければ妹は、未咲は』って」
水野「名前は合ってるのね。27日に彼女が訪れた霊安室にいたのは藤岡未咲さんで間違いないわけか」フム
恒一「となると僕に詰め寄った理由ですね……“災厄”の対象は2親等以内なので、彼女たちは実は姉妹って考えるのが妥当なんですけど」
水野「兄弟姉妹なのに苗字が違う、って仮定すると……養子とかかなー」
恒一「養子、ですか?」
水野「東京ではどうか分からないけど、田舎では跡取りのいない家が子供をもらうってそれなりに良くある話なのよ」
恒一「ああそういえば確かにスティーヴン・キングの兄も不妊症が原因で引き取った養子でしたね、なるほど」
恒一「いえいえもう十分助けてもらいましたよ、ありがとうございます」
水野「よし、ではこれ以降の真相究明はホラー少年に任せた! ……なーんておどけつつも、実はちょっと不安なのよね」ハァ
恒一「何かあったんですか?」
水野「それが昨日家に帰ってから知ったんだけど、うちの下の弟も夜見北の3年3組の生徒なのよ」
恒一「じゃあ水野さんの弟さんが僕のクラスメイトになるわけですか?」
水野「そゆこと。猛っていうの、体力バカなやつだけど仲良くしてやってね」
「まあそれで昨晩弟を問い詰めてみたら、アイツまでなんだか“現象”のこと信じてるみたいなのよね」
「そんな風にいざ身近な存在に感じちゃうとなんか急に怖くなってきちゃって……」
「我ながら情けない話だけど、今まで他人事だったからこそ気楽に助言なんて出来てた部分もあったんだろうなー……」
恒一「情けなくなんかないですよ、僕だって我が身に降りかからなければこんな話信じてたか怪しいですし」
「水野さんと弟さんの命も預かったつもりで“現象”について取り組んでみます、安心して待っていてください」
水野「うん、ありがとう。私が力になれることがあったらいつでも相談してね」
恒一「ええ、その時はぜひお願いします」
~教室、朝のHR~
久保寺「転校生の榊原恒一くんです。3組の新しい仲間として仲良くやっていきましょう」
恒一「父の仕事の関係でやってきました。えっと……どうぞよろしく」
久保寺「では榊原くんはあそこの席に座ってください」
恒一「あ、はい」スタスタ チラッ
見崎「……」
恒一(やっぱりあの子も同じクラス、か)ストン
(ボロボロの机に隅っこの席……赤沢さんの言ってた通り今月から〈いないもの〉をやってるみたいだ)
(けど妹さんが亡くなっているならそんな対策は無意味だって彼女自身分かっているはず)
(どうして甘んじてこんな辛い役割を引き受けているんだろう?)
(赤沢さんに相談したいところだけど……今日は休みか)
(勝手な行動は控えて赤沢さんが登校してくるのを待つべきなのかな……いや、違う)
(万が一“災厄”が始まっていた場合、新たな犠牲者がいつ出るとも限らないんだ)
(ここは“災厄”が始まってしまっているものと考えて、早急にそれを止める方法を調べなくっちゃ)
(ただし手持ちの情報だけじゃ手詰まりだ、ここは新たな情報を誰かから――)
王子「お父さんが大学の教授で外国に研究へ行ってるんだってね、久保寺先生から聞いたよ」
恒一「そんなことも知ってるのかあ。じゃあもしかして、前の中学のことも何か?」
桜木「いいえ、それくらいしか聞いてないですよぉ」
勅使河原「にしても久保寺みたいな冴えないおっさんより、美人の先生が担任だったら良かったのになー」
望月「うんうん」
勅使河原「美人でキリッとした感じのさー」
望月「あ、でもプライベートでは気さくで人懐っこい年上女性ってのも捨てがたいよ、できれば年齢は20代でストッキングの似合って弟思いだったりする大人の女性とか良いよね」
勅使河原「お、おう……」
恒一「20代の気さくなお姉さんか……水野さんが教師だったら理想どおりだったかもね」ハハ
望月「水野さん?」ピクッ
恒一「僕の担当だった看護婦さんなんだけど、このクラスに猛くんって男子いるよね、彼のお姉さんで――」
望月「ねーねー水野くぅーん!」トテトテ
綾野「あはは……もっちーは今日も平常運転だねー」
恒一「ところでみんなにちょっと質問があるんだけど、いいかな?」
小椋「ぶっ飛ばすよ」
恒一「たぶんAかな。千曳さんって人にはどうやったら会える?」
小椋「ぶっ飛ばす」
勅使河原「転校生があの人のことよく知ってんなー。ちなみにオレはAAだとげふぅ!?」
小椋「ぶっ飛ばした」フン
王子「あの人ならいつも第2図書室にこもっているよ、司書だからね」
恒一「そうなんだ、ありがとう。ところで赤沢さんは今日休みなんだね、風邪かな?」
中尾「心配だよな……オレも今朝から何度も電話してるんだけど繋がらないし、もし何かあったらと思うと……」
小椋「ちょっと中尾、あんま縁起でもないこと言うとぶっ飛ばすよ」
恒一「まあまあ、あの人は殺しても死なないようなタイプだし大丈夫だよ」
中尾「お前に赤沢さんの何が分かるんだよ、ちなみにオレは血液型から家族構成まで知ってるぞ」
恒一「彼女の好きなコーヒー豆の種類とか?」
中尾「教えてください」
綾野「中尾っちよわー……」
――コンコン ガララ
恒一「失礼します」
千曳「やあいらっしゃい」
恒一「えっと……あなたが千曳さんですか?」
千曳「うむ、そうだが私に何か用かい?」
恒一「僕は3年3組に転入してきた榊原恒一と言います。今日は3年3組のことについてお話を伺いたくてきました」
千曳「なるほど、キミがあのクラスの……私が“現象”について詳しいというのは対策係から聞いたのかい?」
恒一「ええ、赤沢さんから聞きました。早速なんですけど、いくつか質問しても構いませんか?」
千曳「ああ構わないよ」
恒一「まず1つ目ですが……僕が3組になったのにはなにか特別な意図があったんですか?」
千曳「いや、単なる校長の無理解によるものだ。彼は今年赴任してきたばかりで、“現象”や“災厄”など馬鹿馬鹿しいとお考えのようでね……」
「事情を知る教員たちはキミを別のクラスへ転入させるよう散々に意見したんだが、それが彼を余計に頑なにさせてしまったようだ」
「力及ばず済まない……今はただ“災厄”が始まってしまわないことを祈るばかりだよ」
恒一(学校側も今年の“災厄”は始まってないものとして認識してるのか……これは本人に確認する以外ないかも)ウーム
千曳「ああ、確かに写りこんでいたよ。よくある心霊写真なんかと違って、はっきりとした存在感を伴ってね」
恒一「もしよろしければこの目で確かめてみたいのですが」
千曳「それなんだが……すまない」
恒一「どうしてですか?」
千曳「いや、あまりの禍々しさに手元に置いておくのが憚られてね……その、処分してしまったんだ」
恒一「そう、ですか……」
千曳「こんな“現象”や“災厄”が起こると分かっていたら残しておいたんだが……」
恒一(何か写真から手がかりがつかめると思ったけど、ないものは仕方ないか)
恒一「では万が一ですが“災厄”が始まってしまった場合、それを止める方法はないのでしょうか?」
千曳「26年間見守り続けてきたが、私が知りうる限り残念ながらその手段は見つかっていないよ」
「こちらを見てくれるかな、始まりの年からの26年度分のクラス名簿をコピーしたものだ」ズッシリ
恒一「これは……犠牲者とその死因についても書かれているんですね」ペラ…ペラ…
「あ、一昨年の名簿に赤沢和馬って名前が……彼が赤沢さんの亡くなった家族でしょうか?」
千曳「ああ、和馬くんは彼女の従兄だよ。あの年は〈いないもの〉対策が途中まで成功していたんだが……」
「いや、今更そんなことを言っても仕方のないことだ。ひとまず83年度のページを見て欲しい」
恒一「83年度ですね、えっと……ありまし、た!?」
千曳「どうかしたかね?」
恒一「三神、怜子……これ、僕の叔母さんの名前です」
千曳「そうか、キミは三神先生の甥だったのか……一昨年のことは、残念だったね」
恒一「あ、いえそれは良いんです。赤沢さんから“災厄”の話を聞いたときに怜子さんの死の原因は知りましたから。ただ……」
千曳「他に何かあるのかい?」
恒一「この83年度というのは僕の母・理津子が死んだ年でもあるんです。この名簿の犠牲者欄に名前は載っていませんが、母ももしかしたら……」
千曳「理津子くんだって!?」ガタッ
千曳「……一番最初のページ、始まりの年の名簿を見てごらん」
恒一「!」
千曳「そう、理津子くんは72年度の生徒であり夜見山岬くんの同級生だったんだ」
恒一「母さんが始まりの生徒だったなんて……」
千曳「さて、話を戻そうか。83年度の名簿なのだが、注目してもらいたいのは備考欄の死因とその日付だ」
恒一「はい。えっとこれは……8月で“災厄”が止まっているように見えますね」
千曳「そう、正確には8月9日の犠牲者が最後となっている。そしてその年には8月8日から10日までクラス合宿が行れているんだ」
恒一「合宿、ですか?」
千曳「〈いないもの〉対策が考案されるまで、生徒と教師は一丸となって“災厄”から逃れられないものかと試行錯誤してきた」
「お祓いなどオカルト的なことから、3年3組そのものをなくすという物理的な試みまで様々行われてきた。どれも効果はなかったがね」
「そして83年度は、夜見山神社というこの地に古くからある神社へお参りしクラスの安全を祈願しようとしたというわけだ」
恒一「実際に“災厄”が止まっているということは、そのお参りが効果を発揮したということではないんですか?」
千曳「それが後の年に同じようにお参りが試されたんだが効果がなくてね。何か条件を揃えてお参りしないと意味がないのかもしれない、あるいは……」
恒一「合宿中に行われた別のことが災厄を止めたのか、ですね……なるほど。大変参考になりました、今日のところは失礼します」ペコリ
勅使河原「おーいサカキー!」
恒一「うん? どうしたの?」
勅使河原「せっかくだし一緒に帰ろうぜ!」
恒一「残念だけど今日はお婆ちゃんが車で迎えに来てくれてるんだ、ごめんよ勅使河原」
勅使河原「ガガーン!」
風見「いや、そもそもキミは帰る方向が違うだろう」クイッ
勅使河原「そういやそうだったか、んじゃまた明日なー」バイバイ
風見「それじゃあ榊原くん、また明日」クイッ
恒一「2人ともまたねー」
「さて、僕も帰ろうかな……ってあれは……」
「んー……よし」
――ピポパ プルルルル…
恒一「あ、もしもしお婆ちゃん? 今日の迎えなんだけど――」
――ザザァアアア…バラバラ…
恒一「それにしても3組はみんな優しくて親切な人たちで良かった、名前でからかうような人もいないし」テクテク
「……けどあの中に死者が紛れ込んでるかもしれないんだよね、なんとも複雑な気分だよ」テクテク
「誰が死者なのか気になるところだけど、今はそんなことより“災厄”を止める新しい手段を探さなきゃかな」テクテク
「だってもう“災厄”は始まってしまっているかもしれないんだから、〈いないもの〉対策なんてまったくの無意味かもしれないしね」テクテク
「ただ未咲さんが今年最初の犠牲者だったとして、どうして未だに〈いないもの〉対策が行われているんだろう」テクテク
「対策係はもとより学校の人間である千曳さんも彼女の死を知らない、あるいは“災厄”の犠牲者として認識していないのはなんでだろう?」テクテク
「何か理由があって〈いないもの〉を引き受けてるのかもしれないけど、“災厄”が始まっている可能性を訴える必要はあるんじゃないのかな」テクテク
「身内の死を口に出すのは辛いかもしれないけど……僕の母さんと叔母さんも、赤沢さんの従兄のお兄さんも“災厄”で殺されてるんだ」テクテク
「だからこれ以上はもう不幸な犠牲者を増やしたくないし、そのための努力は惜しまないつもりだよ」テクテク
「……まあ全部独り言なんだけどね……って、ん?」テクテ…ピタ
「へぇ、雰囲気のあるお店だなあ。『夜見のたそがれの、うつろなる蒼き瞳の』、っていうのか」
見崎「……」
「……わたしも、これは独り言だけど」ポツリ
――ザァアアア…シトシト…
見崎「まずは傘、帰り道に入れてくれてありがとう」
恒一「……」ポリポリ
見崎「これから続けるのも独り言だけど……」
「先生たちが未咲の死を“災厄”と結び付けないのは、彼女とわたしが戸籍上は従姉妹だから」
「けど血縁上は血を分けた双子の姉妹、わたしは見崎家に引き取られた養子なの」
恒一「……」
見崎「今まで言い出せなかったのは……わたしに現実を直視する勇気がなかったから」
「この眼帯と同じ。見たくないものは見ないようにしてしまう、心の弱さのせい」
「妹が“災厄”なんて出来の悪い冗談みたいなもののせいで死んだなんて認めたくなかった」
「しかもわたしが3組になったことが原因だなんて、絶対に信じたくなかった」
「だから、きっと未咲が死んだのは偶然で、わたしが〈いないもの〉として完璧に振る舞えば“災厄”なんて起きることはないはず」
「そして5月中に“災厄”が起こらなければ、それこそが未咲がわたしのせいで死んだんじゃないって証拠になるんじゃないか――」
「……そう、思っていたの。思い込むことで現実から眼を背け続けていたの」
「もう逃げるのは終わりにする。明日には赤沢さんに本当のことを話すことにするわ」
恒一「そっか。だったら〈いないもの〉を続ける必要はもうないよね、改めてよろしく見崎」ニコッ
見崎「……今までクラスを騙してきたこと、怒らないの? 怒らないまでも、呆れたりとか……」
恒一「一番辛いのは妹さんを失った見崎だと思うんだ。それなのに話してくれてありがとう」
「それにまだ5月はまだ始まったばかりだし、今からでもきっと間に合うはずだ。謝る必要なんてどこにもないよ」
見崎「そう……まだ、これから…」
恒一「うん、僕からも赤沢さんを説得するから一緒に頑張ろう」
見崎「けどみんなの前で〈いないもの〉を急に辞めたりしてパニックにならない?」
恒一「じゃあ明日の朝、登校してきた赤沢さんを捕まえてこっそり3人で話すことにしようよ」
見崎「……うん、それが良さそうかな」コクリ
恒一「それじゃあ明日の朝、学校の中庭のベンチで待っててよ。僕が赤沢さんを引っ張っていくから」
見崎「わかった、お願い」
恒一「それじゃあまた明日ね」バイバイ
見崎「うん、また明日」フリフリ
~翌朝、昇降口~
恒一「おはよう赤沢さん、待ってたよ」
赤沢「待ってたって私を? 教室で待ってれば良かったのに」
恒一「人目に付く場所だとちょっと困るんだ」
赤沢「えっ」ドキッ
恒一「だからこれから中庭まで来て欲しいんだけど、良いかな?」
赤沢「え、ええ構わないわよ、それじゃあ早速――」
中尾「あ、赤沢さん!」
赤沢「」チッ
中尾「おはよう、体調良くなったんだね良かったよ」ハハ…
恒一「中尾くんおはよう。昨日はすごく心配してたもんね、中尾くんの気持ちが通じたんじゃないかな」
中尾「電話は通じなかったけどな、それで何かあったんじゃないかって気が気じゃなくってさ――」
赤沢「それただの着信拒否だから」
中尾「うわあああああああああああん!!!!」ダッ
赤沢「よし、邪魔者は消えたことだし早く中庭に行きましょう」
見崎「……」チョコン
赤沢「……これは一体どういうことよ」キッ
恒一「“災厄”と対策について対策係である赤沢さんに話があるんだ。さあ、見崎」
赤沢「ちょっと! 〈いないもの〉の相手は――」
見崎「“災厄”はもう、始まってるかもしれない」
赤沢「!」ピクッ
見崎「今まで黙っていてごめんなさい……わたしの妹は4月27日に病死しているの」
赤沢「そんなはず……! 先生も千曳さんも今年度の犠牲者はまだいないって……!」
見崎「戸籍上は従姉妹だから2親等外だとして見過ごされたんだと思う。わたしは見崎家の養子なの」
赤沢「……じゃあ見崎さんも……私と同じ、だったの?」
恒一「そうだよ赤沢さん、見崎も僕らと同じ“現象”の被害者なんだ。“災厄”のせいで家族を奪われた者同士、助け合えないかな」
「もう犠牲者が出てしまっている今、予防策である〈いないもの〉対策は無意味なんだ」
「だからと言ってこのまま手をこまねいているなんてことも僕はしたくない」
「ねえ、新しい対策を一緒になって考えてみようよ。見崎も含めたクラス全体で」
恒一「じゃあ――」
赤沢「でも、見崎さんの〈いないもの〉解除は認めるわけにはいかない」
恒一「そんな、どうして!」
赤沢「衝撃が強すぎるのよ……あなたたちはいつ死ぬとも分からない状況にあります、なんてクラスのみんなに告げられる?」
「解決策も見出せていない今の状態で真実を告げても、悪戯にクラスに動揺を走らせるだけよ」
恒一「それは……でも、見崎をこのままずっと〈いないもの〉でいさせるなんて……」
見崎「ううん、榊原くんいいの。これは今まで黙っていたわたしの責任だから」
恒一「だけど……!」
赤沢「あー、あのね2人とも。盛り上がってるところ悪いけど、今はまだ続けてもらうしかないってだけよ」
見崎「?」キョトン
赤沢「確かに別の案もない今は我慢してもらうしかないけど、だったら他の解決策を早く見つければ良いだけの話でしょ」
「それにあくまでポーズだけだから、すでに真実を知って受け止めている私と恒一くんの前でまで〈いないもの〉である必要はないわ」
恒一「それじゃあ――!」
赤沢「ええ、今日から3人で新しい対策を考えていきましょう。新しい犠牲者が出る前に、この“災厄”を止めてみせるわよ」キリッ
久保寺「さて、今回からは人物画のデッサンに挑戦してもらいます」
勅使河原「えー、またデッサンっすかー? この間は静物画だったじゃないっすかー」
望月「仕方ないよ、今の夜見北は美術教師いなくって各担任が見よう見真似でやってるんだし」
久保寺「今は私の方も勉強中ですが、徐々に分野を広げていきますので今後に期待ということでお願いします」
綾野「くぼっちファイトーっ」アハハ
久保寺「では今回はクラスメイト同士で互いを描きあってもらいます。まずは2人組みを作ってください」
――ワシトクムゾナー ウン、カマワナイヨ
アキノカワイイカオ、カキタイナー キョウコチャンッタラ…ポッ
アノサ、モシヨカッタラオレト… イヤヨ ウワアアアアアン!!
ワイワイガヤガヤ ヤイノヤイノ
勅使河原「なあサカキ、一緒に描こうぜ!」
恒一「うーん、どうしようかなあ」チラッ
見崎「……」ポツーン
恒一「んー……悪い勅使河原、また今度ね」
久保寺「なんでしょうか、榊原くん」
恒一「このクラスって30人じゃなくって29人なんですよね、2人組みだと1人余っちゃいませんか?」
久保寺「あ、あー……」チラッ
見崎「……」チョコン
久保寺「さっそくミスをしてしまいました、指摘ありがとう。ではどこか3人のペアを――」
恒一「あ、それなんですけど。僕だけ4月中の授業出てないせいで静物画のデッサンが出来ていないですよね」
久保寺「はあ、そうですね」
恒一「なので3人ペアを作るんじゃなくって、僕1人だけ静物画描くというのはどうでしょうか?」
久保寺「なるほど……ええ、榊原くんさえ良ければそれで。では前回まで皆さんがモチーフに使っていた果物がそちらにありますので――」
恒一「ああ、お構いなく。もうモチーフは決めてるんで大丈夫です、それでは」ドッコイショ
――トコトコトコ…ストン
恒一「さて、目の前のこの椅子でも描こうかな」
見崎「……えっ」
恒一「赤沢さんどうしたの? そんなに慌てて」
赤沢「あなた何しようとしてるの? ……さっきも言った通りクラスでは〈いないもの〉のフリしてもらわなきゃ困るわ」ヒソヒソ
恒一「何って、静物画のスケッチだよ。今からこの椅子を描こうと思ってるんだけど、どこかおかしいかな?」シレッ
赤沢「そう……あくまで椅子を描くだけなのね?」
恒一「だから最初からそう言ってるのに変な赤沢さんだなあ。あ、もしかして僕と描きたかったとか?」
赤沢「べ、べつにそんなんじゃ――」
恒一「まあ、もし『相手がいないんだったら勝手に描いて構わない』けどね」
見崎「……!」
赤沢「ああ、なるほどそういうこと……いいわ勝手にして、『私は』描かないけど」スタスタ
恒一「よーし。赤沢さんの許しも出たことだし早速描き始めるとするかな」ガサゴソ
見崎「……」チラッ
恒一「~♪」カキカキ
見崎(3人で秘密を共有、か……ちょっと楽しいかも)クス
――カキカキ…シャッシャ…サラサラ…カキカキカキ……
赤沢「……あんなの詭弁よ」
恒一「ん? なんのこと?」
赤沢「椅子描くって言ってたのに、完成した絵見たら普通に見崎さんだったじゃない!」
恒一「僕には椅子がああ見えるんだよ」
赤沢「望月くんみたいなこと言ってもダメ、てっきり見崎さんのモデルになるだけだと思ったからOKしたのに……」
見崎「えっと、なんだかごめんなさい」
赤沢「ああ、別に見崎さんは悪くないんだから謝る必要は少しもないわ」
見崎「そう……?」
赤沢「ええ、悪いのは全部恒一くんだから」ジトー
恒一「う……でも赤沢さんだって授業中に不自然なくらい見崎の方チラ見してたじゃないか」
赤沢「だ、だって事情知っちゃったら色々気になるじゃない……無理して〈いないもの〉のフリ続けてもらってるわけだし……」
「うん、だからまあ、恒一くんのその見崎さんに寂しい思いをさせたくないって気持ちは分かるのよ?」
「でも今後はそこを堪えて、クラスのみんなに疑問を持たれるような行動は謹んでもらいたいの」
恒一「そっか、赤沢さんも同じ気持ちなんだ。なら分かったよ、今後は僕も我慢するね」
恒一「さっそく作戦会議でも良いとは思うけど……学校じゃ人目に付いちゃうかな」
赤沢「そうね。一旦場所を移しましょう」
恒一「どこか落ち着いて話せるようなところはある?」
赤沢「落ち着いて話せる場所と言うと、そうね……恒一くんはイノヤって分かる?」
恒一「イノヤ……ああ、昨日見崎を送った帰りに見かけたあの喫茶店かな?」
見崎「たぶんそれで合ってる、あそこ酒屋兼喫茶店だし」
赤沢「え? 送った?」
恒一「じゃあ今からイノヤにみんなで……って見崎は一緒に歩いてるとこ見られちゃまずいね」
見崎「わたしはあとから向かうから、2人は先に行ってて」
恒一「わかったよ、それじゃあまた後でね」
見崎「ええ、またあとで」フリフリ
赤沢「こ、これは由々しき事態だわ、まさか放課後デートまで済ませてるなんて……」ブツブツ
恒一「何してるの赤沢さーん、置いてっちゃうよー」
赤沢「ま、待ちなさいよー!」タタッ
――ガチャ カララン カララン…
恒一「――っていう感じに見崎に話しかけてみたんだよ」
赤沢「なるほど、そういう流れで家まで送ったのね」フムフム
恒一「そういうこと。良く分からないけど納得してくれたみたいで良かった」
赤沢「私も今度傘忘れてみようかしら……あ、智香さんこんにちは」
智香「いらっしゃい、泉美ちゃん――と、お友達かしら?」
赤沢「はい、1年半ぶりの運命的な再会を果たした末にクラスメイトになった榊原恒一くんです」
智香「あら、じゃあ優矢くんのお友達ね。いつも弟がお世話になっています」ペコリ
恒一「え?」
智香「望月優矢の姉の智香です、はじめまして」ニコ
恒一「は、はじめまして……ねえ赤沢さん、これまずくない?」ヒソヒソ
赤沢「ああ、智香さんなら大丈夫よ。口の堅い人だから望月くんを介してクラスに伝わることはないわ」
智香「何か事情があるみたいね。大丈夫、ちゃんと優矢くんには黙っておくから安心してね」フフ
恒一「えっと……」
赤沢「いつものを。彼にも同じやつをお願いします」
智香「あらあら、かしこまりました」フフ
恒一「いつもの?」
赤沢「退院したら再会の記念にコーヒーを奢るって約束したでしょ? あの時言ってたやつをね」
恒一「コーヒーかあ、ちょっと苦手なんだけど……でも赤沢さんのおすすめなら飲んでみようかな」
智香「――お待たせしました、ごゆっくりどうぞー」
赤沢「騙されたと思ってまずはそのまま飲んでみて」
恒一「うん……あ」
赤沢「どう?」ドキドキ
恒一「苦いのに甘い……美味しいね、これ」ニコッ
赤沢(やった! 恒一くんに私のお気に入りを好きになってもらえたわ!)グッ
見崎「おまたせ」ストン
赤沢「ナチュラルに恒一くんの隣に座ったわね……」
「まあ良いわ、こっちは少しの間だけど2人きりのアフタヌーンコーヒーを楽しんでたんだから」フッ…
恒一「そうそうこのコーヒー、赤沢さんおすすめなんだけどすごく美味しいんだよ」
見崎「わたし、苦いのはちょっと……」
恒一「まあまあ、騙されたと思って飲んでみなよ。きっと見崎も気に入るから」
見崎「じゃあ榊原くんのそれ、一口もらえる?」
赤沢「えっ」
恒一「いいよ、はい」スッ
赤沢「えっ、それ間接キ――」
見崎「ほんとだ、美味しい」コクコク
赤沢「あ……あぁ……」ガクリ
見崎「ふぅ、ごちそうさま……赤沢さんはもう飲まないの? ならもらっても良い?」
赤沢「あ、他意はないのね……いいわよ全部飲んじゃって……」
恒一「始まってしまった“災厄”を止める方法について、だね」
赤沢「ええ、2人は何かアイデアみたいなものはある?」
恒一「ヒントになりそうなことなら千曳さんから聞けたよ」
見崎「もしかして、83年度のことかな」
赤沢「合宿のあった年のことね。やっぱりみんなそこに行き着くか……」
恒一「とりあえずこの合宿中に何かがあって“災厄”を止めたことは間違いないと思うんだ」
赤沢「でも他の年に同じように合宿と参拝をしても結局効果はなかったそうよ?」
恒一「うん、だから当初の目的だった参拝以外の何かが合宿中にあったんだと思う」
見崎「他のなにか、ね……」
赤沢「でもこればっかりは当時の合宿参加者にでも聞かなきゃ分かりっこないわよね……」
恒一「当時の参加者か、怜子さんさえ生きててくれたらな……」
智香「いらっしゃ――あら松永くんじゃない」ニコッ
松永「やあ、お邪魔するよ」ヒョイ
智香「今日はいつもより少し早いんじゃない?」
松永「近々隣町に住み込みで働くことになりそうなんだよ、だから来られるうちに沢山来ておこうと思って」ハハ
「というわけで景気付けに1杯頼む。まずはウィスキーのロックを――ん?」
恒一「え? なんですか?」
松永「もしかしてキミは……怜子の甥っ子くんじゃないか?」
恒一「えっと、怜子さんは僕の叔母ですが……」
智香「あら。2人はお知り合いだったの?」カランカラン トクトクトク…
恒一「違うと思います、けど……」
松永「あースマンスマン、1年半前の葬式んとき見た顔だと思ってつい声をかけちまった」ポリポリ
「俺の名前は松永克己。怜子とは中学のときのクラスメイトで古くからの友人だったんだ」
見崎「三神先生の同級生……?」ピクッ
赤沢「つまり、夜見北中学出身……!」ガタッ
恒一「えっと、失礼ですが、3年生のとき何組だったのか伺ってもよろしいでしょうか」
松永「ん、3年生のときか? 怜子と同じ3組だったが」チビチビ
赤沢「!」ガタタッ
見崎「赤沢さん落ちついて」
恒一「実は僕たち、今年の3年3組の生徒なんです」
松永「キミたちが……! そうか、あの呪われたクラスの後輩たち、か……」
見崎「はい。わたしたちは“災厄”を止める方法を探しています」
赤沢「松永さんの年は災厄が途中で止まっていますよね、当時何があったのか覚えていませんか?」
恒一「具体的には合宿中の出来事を。どんな些細なことでも構いません、お願いします」
松永「合宿、か……確かにあったな……そしてそこで何かが……」
見崎「なにか……?」
松永「それは……ダメだわからない、頭にモヤがかかったようで……」
恒一「いえ、15年も前のことですし覚えてなくても仕方ないですよ。こちらこそ無理を言ってしまってすみませんでした」
松永「役に立てなくってスマンな、不甲斐ない……んくっ……んくっ……ふぅ」コトッ カラララン…
恒一「松永さん? 酔ってます?」
松永「そ、そうだ……あの年の“災厄”は俺が止めたんだ……!」
赤沢「!」
松永「俺が……俺がみんなを守って……それで……」ワナワナ
恒一「それで、隠した?」
松永「あ、ああ……紙、ではなかったような気がする……でも伝えようとしたんだ……」
「とにかく何かを教室に……いや、ダメだ……これ以上は思い出せない……スマン」フルフル
恒一「いえ、充分過ぎるほどの情報でした」
赤沢「松永さんの残したもの、必ず私たちが探し出してこの“災厄”を止めてみせます」キリッ
松永「後輩に託す形になってしまってすまないが、よろしく頼む……」
見崎「……」コクリ
赤沢「1つは“災厄”は確かに止めることができるということ」
「そしてもう1つはその方法が教室に隠されている可能性がある、ということね」
恒一「うん、それでその教室っていうのは、たぶん松永さんが過ごした旧3年3組のことだと思う」
見崎「……」コクリ
赤沢「そうと分かれば話は早いわ、次はみんなで旧校舎の3年3組に行きましょう」ガタッ
恒一「うーん、そうしたいのは山々なんだけど……」
赤沢「なによ。水差さないでくれる?」
恒一「女の子の夜遊びは親御さんが心配するし、今日は一旦解散にして明日にした方が良いんじゃないかな」
赤沢「使用人に車で迎えに来てもらうから別に心配いらな――」チラッ
見崎「……」コックリコックリ
赤沢「はぁ……仕方ないわね、見崎さんも眠そうだし明日にしましょう」
恒一「明日は土曜日だから午前授業だしね、ゆっくり探してみようよ」
赤沢「じゃあこれで今日は解散ね。見崎さんは私の車で送るから任せて」
恒一「うん、明日は放課後に旧校舎の入り口で落ち合うことにしよう。それじゃあ2人ともまた明日」バイバイ
~放課後、旧校舎3年3組~
――ガラララ…ピシャ
赤沢「もう、ちゃんと整理くらいして欲しいわよね。これじゃ物置と変わらないじゃない」
恒一「この中のどこかに松永さんの隠したものがあるはずなんだけど、どこから探したものやら……」ウーン
見崎「けほ……ほこりっぽい。ちょっと窓開けてくる」トテトテ
――ギギィイイ…ピシッ
恒一「あ、見崎! ガラスが――」
赤沢「あぶないっ!」グイッ
――カッシャーン! パラパラ…
見崎「……あ、ありがとう」
赤沢「もう気をつけてよホント、寿命縮んじゃったじゃないの」
見崎「ごめんなさい」
赤沢「無事なら良いわ、とりあえず窓には近づかないようにしましょう?」
見崎「うん」
赤沢「ん、よしよし」
「僕がダンボールとか重いものを下ろしていくから、2人はその中を調べてもらえるかな」
見崎「ええ」コクリ
赤沢「わかったわ、任せて」キリッ
恒一「よし、それじゃあ調査開始だ!」
・
・
・
恒一「ふぅ、疲れた……こっちは大体終わったかな。赤沢さんたちそっちは――」クルッ
見崎「どう?」キュピ
赤沢「ど、どっちが似合うかしら?」モジモジ
恒一「……頭に紙花つけて遊ぶのは小学生までにしておきなさい」ムシリッ
赤沢「あーっ」
見崎「いじわる」
恒一「はいはい、どっちも可愛いから真面目に調べて」
赤沢「見つからないわね……本当に松永さん、隠してくれたのかしら」
見崎「――ねえ、あそこは調べた?」スッ
恒一「あれは……掃除用具入れか。僕は調べてないよ、赤沢さんは?」
赤沢「私もまだよ。ちょっと調べてみましょう」
――ガシャン ギィイイ…
恒一「中には何も……ん? 天板に何か張り付いてるな、よいしょっと」ベリリッ
見崎「何か文字が書いてあるみたい」
恒一「なになに、『将来このクラスで理不尽な災いに苦しめられるであろう後輩たちへ』?」
赤沢「これよ、やったじゃないっ! それで中身は何なの?」
恒一「包み破くからちょっと待ってね、びりびりっと……む、これはカセットテープ、かな?」
見崎「なるほど、メッセージを音声にして残したのね」
赤沢「善は急げよ。放送室でレコーダーを拝借して、早く解決策を確かめましょう」
恒一「いいのかなあ、勝手に使っちゃって」
見崎「もうここまで来たら腹をくくった方がいいよ、榊原くん」クス
恒一「おーけー、わかったよ。テープはもうセットしたし再生スタートするよ?」
赤沢「ええ、お願い」
見崎「うん」コクリ
――カチッ キュルルルルルル…
テープ『……ザ……ザザ……ええっと、俺の名前は松永。松永克己』
『1983年度の3年3組の生徒で……録音が終わったらこのテープはどこかに隠すつもりだ』
『俺がこんなテープを残そうと決めたのには、2つの意味がある……』
『1つは俺の、俺自身の罪の告白……』
『もう1つは……後輩であるキミたちに、アドバイスを伝えたい……』
恒一「……」ゴクリ
・
・
・
『そう、肝心なのはその後だ……』
『やっとの思いで夜見山から下山した直後にそれはあったんだ……』
『それっていうのは………………………………………………………』
恒一「む?」
赤沢「まさか壊れたんじゃ……」
見崎「――しっ、2人とも静かに」
――コツ コツ コツ コツ…
恒一「足音……!」
赤沢「こっち近づいてくるわよ、隠れなきゃ……の前にテープ!」ガチャッ キュルルル――ブチッ
見崎「2人ともこっち」グイグイ
恒一「わ――むぐっ!」
赤沢「きゃ――むぐ!?」
見崎「しずかに」ヒシッ
――ガチャリ ダレモイナイ…キノセイカ バタン
恒一「ぷはっ」
赤沢「もがっ」
見崎「2人とも声上げそうだったから、つい」
赤沢「いえ、おかげで助かったわ。そんなことより早く続きを――って、あ……」ビローン
恒一「ちょっ、赤沢さんテープ再生中に抜き取ったの!?」
赤沢「だだだって急いでたんだもの……! これ、どうにかならない!?」ビローン
恒一「千切れちゃってるからなあ、ちょっと難しいんじゃないかな……」
赤沢「そんなぁ……」ガクリ
見崎「……ねえ、ちょっと貸してもらってもいい?」
赤沢「え、ええ、いいけど……」グスン
見崎「……これくらいなら大丈夫かも」
赤沢「み、見崎さんこれ直せるのっ!?」ガバッ
見崎「直すのはわたしじゃなくて霧果……お母さんだけどね、あの人手先だけは器用だから」
赤沢「なんでもいいからお願い直してーっ」ユサユサ
恒一「はは、何とかなりそうで良かったね」
赤沢「でも壊しておいて任せっぱなしというのは……ねえ、見崎さんの家について行っても構わない?」
見崎「別にわたしたちに出来ることは特にないと思うけど」
赤沢「これは気持ちの問題なのよ、近くにいたいの」
見崎「そう、赤沢さんがそうしたいなら……」
恒一「ところでテープの修復ってすぐに済むのかな? 出来ればすぐにでも聞きたいから終わり次第連絡もらえると嬉しいんだけど」
赤沢「そ、それじゃあ仕方ないわねっ、で、電話番号交換しなくっちゃ!」
恒一「そうだね、交換しようか。えっと僕の番号はね――」
見崎「……」ポケー
赤沢「これでよし、と……ん?」
「……ねえ見崎さん」
見崎「?」
赤沢「見崎さんも番号教えてくれる? みんなで番号交換しましょう」
見崎「! 携帯電話は……えっと」イソイソ
恒一「さて、今頃2人は見崎の家に着いてる頃かな」
「最初はあんまり仲良くないのかと心配したけど、杞憂みたいで良かった」
「なんだか赤沢さんは見崎のこと気にかけてくれてるし、見崎は見崎で懐いてる感じ」
「ただ、家にお邪魔するって話がいつの間にかお泊り会に変わってたのには笑ったけど」ハハ
「……早く“災厄”を止める方法が何なのか確認して、この平和を守らなきゃな」
「見崎に赤沢さんに僕、それにクラスみんなで一緒に卒業できるよう頑張るぞ」グッ
見崎「こちら、同じクラスの赤沢泉美さんです」
赤沢「なんだか今日は急にお邪魔しちゃってすみません」
霧果「いいのよ、そんなこと。鳴とは今後も仲良くしてあげてちょうだいね」
見崎「それじゃあわたし達は上に行ってますから、修理の方よろしくお願いします」
赤沢「よろしくお願いします」ペコリ
霧果「はい、確かに受け取りました」フフ
赤沢「な、なんでしょうか?」
霧果「いえね、この子がお友達を家に泊めるなんて始めてだから嬉しくて」
見崎「もうお母さんっ、じゃあわたしたち行きますから」グイグイ
赤沢「あっ、ちょっと見崎さ――」ズルズル
霧果「うふふ」
「……ふぅ」
「未咲さんが亡くなって塞ぎこみがちだったけど、少し元気が戻ったみたいで良かった」
「――よし、可愛い娘のために腕を振るっちゃおうかしら」
赤沢「へぇ、意外と部屋の中はシンプルなのね」キョロキョロ
見崎「もっとごちゃごちゃしてるって思った?」
赤沢「1階に通されたときは数十体のドールに囲まれて寝ることを覚悟したわ……」
見崎「人形は虚ろだから、そんなことしたら吸い取られるよ」クス
赤沢「カンベンしてー……これ以上のオカルトはもうお腹いっぱいよ」
見崎「そうね。早くこんな理不尽な“災厄”は終わりにしちゃいましょう」
赤沢「そしたら〈いないもの〉も終わりになって、見崎さんも学校生活を思う存分楽しめるものね」
見崎「あ……わたしそう言えば〈いないもの〉だったんだっけ」
赤沢「もうポーズだけだけどね、それでも忘れてもらっちゃ困るわよ」
見崎「ここ2日間が楽しくって、つい」クス
見崎「うん」
赤沢「……今まであなた1人につらい役目を押し付けて、ごめんなさいね」
見崎「ううん、別につらいと思ってなかったし大丈夫」フルフル
赤沢「でも……」
見崎「赤沢さんこそ対策係のプレッシャーで大変なんじゃない?」
赤沢「私はおにぃが死んだときから決めてたから。対策係になって“現象”をなんとかしてみせるって」
見崎「そう……けど1人でなんとかしようなんて思わないでね。だって今はわたしも榊原くんもいるんだから」
赤沢「見崎さん……」
見崎「わたしたちはもう1人じゃないわ、みんなで一緒に乗り切りましょう?」
赤沢「ええ……!」
赤沢「どうかした?」
見崎「赤沢さん、着替えなんて持ってきてないよね」
赤沢「あ」
見崎「パジャマならわたしの貸せるけど……」
赤沢「下着はそういうわけにはいかないわよね」
見崎「サイズも合わない」ペタペタ
赤沢「……あとでバストアップ体操教えてあげようか」
見崎「ほんと?」
赤沢「由美が教えてくれたやつだから効果はちょっと怪しいんだけどね」
見崎「小椋さんか……」
赤沢「……やめとく?」
見崎「……うん、なんかしぼみそう」
赤沢「えーっと、ちょっと家に電話して着替え届けてもらうことにするわね」ソソクサ
見崎「ええ。今のうちにお風呂沸かしておくから、届いたら一緒に入りましょう」
――カポーン
赤沢「ふぅ……誰かと一緒にお風呂っていうのも良いものね」チャプ
見崎「じゃあ今度は榊原くんも誘ってみようか」
赤沢「ちょっ」
見崎「冗談だよ」クス
赤沢「もう……見崎さんもそういう冗談言うのね」プクプク
見崎「怒った?」
赤沢「……由美直伝の豊胸術をかけてやる」
見崎「……っ!」ジャバジャバ
赤沢「ふふふ、逃げたって無駄よ覚悟なさい」ワキワキ
見崎「それだけはやめて……やっとここまで成長したの……」プルプル
赤沢「そんなに怯えられると由美が不憫になってくるわね……いいわ、他のことで許してあげる」
見崎「他のこと?」
赤沢「ええ、それじゃあ――」
赤沢「んー、上手……人に髪洗ってもらうのってやっぱり気持ち良いわ」
見崎「これだけ髪長いといつも大変でしょう」コシコシ
赤沢「慣れるとそうでもないけどね。むしろ乾かすほうが手間なのよ」
見崎「そうなんだ、じゃあドライヤーかけるのも後でやってあげる」シャコシャコ
赤沢「それはかなり助かるわー……」
見崎「痒いところはない?」コシコシ
赤沢「ええ、大丈夫よ」
見崎「それじゃあ流すね」キュッ
――シャワアアアアアア……
赤沢「ふぅ、さっぱりした……じゃあ今度は見崎さんの番ね」
見崎「え?」
赤沢「さあ見崎さんそこ座って、洗ってあげるから」
見崎「わ、わたしは自分でできるから……」
赤沢「遠慮なんかしてないで洗わせなさい、ほらほら」グイッ
見崎「……もう、強引なんだから」ストン
赤沢「シャンプーはこれでいい?」
見崎「ううん、その隣のリンスのいらないやつ」
赤沢「意外と庶民的なのね……まずはシャワーで髪濡らすわよー」シャワアアアア…
「よし。じゃあ泡が目に入らないように前髪上げて、っと」
見崎「あっ」
赤沢「……わぁ、綺麗な目!」
見崎「え……」ドキン
赤沢「眼帯の下ってこうなってたのね。オッドアイ……ううん、義眼かしら」ジー
見崎「う、うん……霧、お母さんが作ってくれたの」ドキドキ
赤沢「こんな綺麗なんだからもっと堂々と出して歩けばいいのに、もったいない」
見崎「……変なものは見えない方が良いから」フイッ
赤沢「全然変なんかじゃないわよ、すごく似合ってて素敵よその目」
見崎「あ、この目のことじゃなくって……ううん、ありがとう」
見崎「気持ちいい……けど背中に当たる感触が悔しい」
赤沢「まだ中学生なんだし見崎さんだってこれから大きくなるわよ」シャコシャコ
見崎「そうかな……わたしも早く『当ててんのよ』ってやりたい」
赤沢「誰によ!?」
見崎「別に当てられれば誰でもいい」
赤沢「見崎さん、あなた恐ろしい子ね……」シャコシャコ
見崎「あ、もうちょっと右おねがい」
赤沢「はいはい」コシコシ
見崎「んっ、そこ、きもちい」
赤沢「……変な声出さないの」ペシッ
見崎「あいたっ」
赤沢「もう、本当に恐ろしい子ね……流すわよ」キュッ
――シャワアアアアアア……
見崎「来客用の布団がなくてごめんなさい」モゾモゾ
赤沢「見崎さんのベッドは大きいし問題ないわ。むしろ半分取っちゃって悪いわね」モゾモゾ
見崎「いいの、赤沢さんは特別――あ、でも榊原くんもいいかな」
赤沢「」ピクッ
見崎「どうかした?」
赤沢「えっと、別にその、深い意味はなくって、今後の参考のために聞くだけなんだけど……」モジモジ
見崎「?」
赤沢「……見崎さんって、恒一くんのこと好きなの?」
見崎「うん、赤沢さんと同じくらい」
赤沢「私の恒一くんに対する想いくらいって……つまり恋してるってこと!?」
見崎「えっ」
赤沢「えっ」
見崎「わたしは2人とも同じくらい好きってつもりで言ったんだけど……赤沢さん恋してるの?」
赤沢「」
見崎「む」
「……」
「……わたしの妹の未咲もね」
赤沢「……?」
見崎「好きな人がいたんだって。地味な男の子だけど音楽の趣味が合うんだって惚気てた」
「ただ、わたしがその話を聞いたのはあの子が倒れる前日だった」
赤沢「……」
見崎「可哀想な未咲は想いを伝えることなく、胸に秘めたまま逝ってしまったわ」
「解決の糸口を見つけたとは言え、わたしたちだっていつ“災厄”で倒れるかまだ分からない」
「もしかしたら明日にも……なんて可能性だってないとは言えないんだから」
「だから……後悔だけはしないように、ね」
赤沢「……うん、ありがとう」
見崎「こんな心配しなくても良いように早く“災厄”を止めましょう」
「――それまでは赤沢さんのこと、もちろん榊原くんのこともわたしが守ってみせるわ」ギュッ
~イノヤ~
――ガチャッ カララン カララン
恒一「2人ともお待たせ、待った?」
赤沢「いえ、見崎さんとコーヒー飲みながら過ごしてたから平気よ」
見崎「あ、榊原くんはそっち座って」
恒一「? 別に良いけど……じゃあ赤沢さん、隣座るね」ストン
赤沢「え、ええ……」ソワソワ
見崎「テープレコーダーは持ってきた?」
恒一「うん、探してみたら怜子さんが使ってたのがあったよ」ゴトン
赤沢「ありがとう、助かったわ」ホッ
見崎「わたしたちの家にはテープレコーダーなんてないものね」
恒一「このブルジョワっ子たちめ」カチャカチャ…
赤沢「何はともあれ、これで続きが聞けるわね」
恒一「よし、それじゃあ準備は良い? いくよ――」カチッ キュルルルルルル――…
『それが、始まってしまった災厄を止める方法だ……!』カチッ…
恒一「……死者を、死に還す?」
赤沢「つまり死者が誰かを特定して……殺すってこと、よね」
恒一「まさか、クラスメイトを手にかけなきゃいけないなんて……」
赤沢「しかもその年の“災厄”を止められても“現象”自体はなくならない」
「松永さんが止めたのに今年こうして犠牲者が出てるってことは、そういうことよね」
恒一「そんなその場しのぎのために誰か1人を……?」
赤沢「考えたくないわね」
恒一「でもそうしないと、もっと人が……」
赤沢「そんなのまるで生贄じゃない」ギリッ
赤沢「殺すつもり、なの?」
恒一「まだそこまでは考えてないよ。でも……今ここで立ち止まるわけにはいかないと思う」
「僕たちにはあとひと月も時間が残されていないんだ、出来ることを1つずつ片付けていこう」
「見つけた死者をどうするか、それは特定してから悩めば良いと思う」
赤沢「……今はそれしかないか。分かったわ、でも他の手段も平行して検討していくわよ」
恒一「もちろん。僕だってクラスメイトを殺したりなんかしたくないからね」
「ただ『死者を死に還すことで“災厄”が止まる』ってことから1つ分かったことがあるんだ」
赤沢「え、なにが分かったの?」
恒一「多分だけど、死者は“災厄”によって死ぬことはない」
赤沢「どうしてよ?」
恒一「だってこの26年間で1度しか“災厄”は止まっていないんだよ?」
赤沢「そっか……松永さんが手にかけた死者以外は無事に卒業出来てるって、確かに不自然ね」
恒一「そういうこと。だから死者が勝手に死んでくれたら、なんて消極的な期待するのは止めておこう」
見崎「……」
赤沢「見崎さん、どうかした? 何か心当たりでも?」
見崎「ううん、なんでもない」フルフル
赤沢「そう……?」
恒一「ところでこの情報はクラスで共有しない方がいいと思うんだけど、どうかな」
赤沢「みんなの知恵を借りたいところだけど……疑心暗鬼になられるのは怖いわね」
恒一「うん。考えたくはないけど、暴走したクラスメイト同士で諍いが起きないとも限らないからね」
赤沢「じゃあ私たち3人で聞き込みをして、誰が死者なのか調査してみましょう」
見崎「ううん、実質2人。わたしは〈いないもの〉だから」
赤沢「そういえばそうね……ごめんなさい見崎さん、もう少しだけ〈いないもの〉をお願いするわ」
恒一「それじゃあ明日からは赤沢さんと僕の2人で聞き込み、その情報を放課後に3人で分析って感じでいこう」
「今後の方針も決まったことだし、とりあえず今日は解散にしようか」
見崎「夜道は危険だから榊原くんは赤沢さんを送ってあげること。それじゃあ」スクッ トテトテ…
恒一「それを言ったら見崎だって――って行っちゃった。はは、それじゃ一緒に帰ろっか赤沢さん」
赤沢「見崎さんったら、もう……ええ、エスコートお願いするわね」モジモジ
見崎「……」グテン
「死に近い色が分かる義眼、か……」
「ちゃんと言うべきだったのかな、この瞳の力のこと」サワサワ
「だけど言っても信じてもらえるか分からない」
「変な子だと思われるかもしれない」
「あの2人にそういう目では見られたく、ない」
「……わたしのいくじなし」ゴロン
「でも、病人や怪我人や死体は見たことあるけど、死者なんて今まで見たことないもの」
「死者がどんな色かも分からない以上、わたしが口を出すべきじゃないわ」
「2人が死者を探している間、わたしは“災厄”を止める別の方法を探してみよう」
「……きっと、だいじょうぶ」
「だからこのまま眼帯は外さずに着けたまま、見たくないものは見なければ……――」
5月16日(土)
~放課後、イノヤ~
恒一「うーん、この1週間いろいろと手を尽くしてみたけど……」
赤沢「周囲の人間どころか死者本人にも自覚がないんじゃお手上げよ」ハァ
見崎「……」
恒一「あと1歩なのになあ……」
赤沢「死者を見分ける手段さえ分かれば……もう!」ムキー
見崎「……あのね、2人とも」
恒一「なになに、もしかしてなにか思いついた?」
見崎「ううん、違うの。ただ、死者を死に還すって方法に固執しすぎかと思って」
赤沢「でも……」
見崎「死者を特定したからって、そこから先どうするかはまだ決まってないんだよ」
恒一「うーん……進展もないし、ここは一度原点に立ち返って考え直してみるべきなのかな」
見崎「それで考えてみたんだけど、怜子さんもわたしたちと同じように“災厄”を止めるために調べてたと思うの」
「だから榊原くんさえ良ければだけど……怜子さんの当時のノートとか日記を調べることはできない?」
――ガララッ…
恒一「ただいまー」
民江「ハイハイおかえり――って、あら?」
恒一「2人は僕のクラスメイトで赤沢さんと見崎さん。2人とも、こっちは僕のお婆ちゃんだよ」
赤沢「お邪魔します」ペコリ
見崎「……」ペコ
民江「あらあら、恒一くんも隅に置けないわね」フフ
恒一「そんなんじゃないってば、怜子さんの教え子だったって聞いて連れてきたんだよ」
民江「まあ、怜子の……」パチクリ
恒一「部活で一緒に描いた絵を見たいんだってさ。2人を怜子さんの部屋に通しても良いかな?」
民江「ええもちろん、きっと怜子も喜ぶわ。ささ、こっちよ」
赤沢「……なんだか騙してるみたいで心苦しいわね」ヒソヒソ
見崎「わたしは本当に教え子だったからべつに」シレッ
恒一「ほら、2人とも行くよー」
恒一「さて、じゃあ1つずつダンボールを開けていってみようか」
赤沢「とは言ってもけっこうな数あるわね……」
恒一「あはは、うちのお婆ちゃんはなんでも残しておく人だからね」
見崎「3人で手分けすれば夕方までには片付く、かな」
恒一「何かそれっぽいもの見つけたら報告するようにしよう、1人じゃ判断がつかないかもしれないしね」
赤沢「それじゃあ調査開始よ!」キリッ
・
・
・
赤沢「見つからないわ!」ムリッ
恒一「でも怜子さんが僕たちと同じように奔走してたっていうのは確かだったね」
赤沢「ええ。しかも担任になってからじゃなくって、15年前からずっと」
恒一「怜子さんは僕の母さんの死に責任を感じていて、それで……」
「元3組の生徒がどうして夜見北に戻ってきたのか疑問だったけど、“災厄”を止めるためだったんだね……」
見崎「……いいえ」
赤沢「ちょっと一緒に調べてたけど、あっちは恒一くんのお母さんの遺品が主だったみたい」
恒一「そっか母さんの……あとで個人的に見てみるよ、ありがとう」
赤沢「ダンボールは全部開けたし、これ以上の収穫は見込めなさそうかしら」
恒一「良い案だと思ったんだけどね……まあそう上手くはいかないか」
見崎「……ごめんなさい」
赤沢「見崎さんが謝ることないわよ、明日からまた新しい策を考えてみましょう?」
見崎「……うん」
恒一「さて、今日のところはそろそろお開きにしようか」
赤沢「そうね、もう良い時間だしこれ以上いたら家の人のお邪魔になっちゃう」
恒一「別にそんなことないと思うけど……良かったらうちでご飯でも食べてく?」
赤沢「えっ!?」ドキッ
赤沢「そんないきなりご家族と食事だなんて……」アワワ
「そ、そうだ! 見崎さんはどうするの?」チラッ
見崎「わたしは……ううん、今日は帰らなくっちゃいけないから」
「でも赤沢さんはご馳走になっていくんでしょう?」
赤沢「えっ、私もがっ!?」
恒一「分かった、じゃあお婆ちゃんに1人増えるって言ってくるからちょっと待っててね」
赤沢「んー……!」モガモガ
見崎「諦めてカレー食べるの、チャンスは活かす」
赤沢「むー……」
見崎「よし。それじゃあわたし帰るわね」パッ
赤沢「えっ、恒一くん帰ってくるまで待ってないの?」
見崎「……急いでるからごめんなさい。榊原くんによろしく伝えておいて」
赤沢「分かったわ、帰り道気をつけるのよ」
見崎「ええ……またね」ソソクサ
赤沢「なんか急ぎの用があるそうでもう帰っちゃったわ、恒一くんによろしくって」
恒一「そっか、なんだか今日は特に元気ないように見えたけど大丈夫かな」
赤沢「もう5月も半ばだし焦りを感じているのかもしれないわね」
「ねえ、原点に立ち返るつもりで千曳さんに相談してみるっていうのはどうかしら?」
恒一「千曳さんかー……うーん」
赤沢「あまり乗り気じゃない?」
恒一「えっと、僕の母さんも犠牲者だったらしいって話はしたっけ?」
赤沢「恒一くんを生むために夜見山に帰省していて、出産後間もなく……だったわね」
恒一「そうそう。で、それを千曳さんは把握できてなかったんだよね」
「今年度の犠牲者である未咲さんのこともあるし、今までもそういう見落としがあったかもしれない」
「始まりの年の担任で“現象”を出現させた張本人の1人なのに、自分は被害の及ばない安全な立場に退いているし」
「気味が悪いからって夜見山岬の写り込んだ始まりの年の集合写真は処分しちゃうし」
「怜子さんが命を省みずに教師として戻ってきたのを知っちゃうと、本気で取り組んでくれているのかなってどうしても思っちゃうんだよね」
赤沢「うーん、言われてみればちょっと無の……いえ、頼りにならなそうね…」
赤沢「そうね、一応カセットテープも千曳さんに保管しておいてもらった方が良いと思うわ」
恒一「そのほうが来年度以降の生徒たちの参考になる、か」
赤沢「来年度以降……そうよね、“災厄”を止められても“現象”がなくなるわけじゃないんだもの」
恒一「僕らも松永さんと同じように、後輩たちに託すことしか出来ないのかな」
赤沢「……いえ、私はそんな他人任せなことしたくないわ」
「怜子さんがそうしたように、卒業してからだって“現象”に立ち向かうことはできるんだから」
「私は絶対に、何があってもいつか必ずこの負の連鎖を断ち切ってみせる!」
恒一「赤沢さん……僕も一緒に頑張らせてよ、ここまできたら一蓮托生だと思ってさ」
赤沢「一蓮托生!? つ、つまりそれは、卒業してからもずっと一緒に……?」モジモジ
恒一「赤沢さん?」
赤沢「あ、あのね恒一くん、私恒一くんのことが――」
民江「2人ともー、カレーできたわよー!」
恒一「お、もう夕飯みたいだね、それじゃ行こうか」スタスタ
赤沢「……うん、カレー楽しみだなあ」グスン
見崎「……」ピラッ
「……現実を直視する勇気、か」
「見たくなくても、見ないわけにはいかないんだよね……」
「逃げるのはもう、やめにしなきゃ……」
――ピポパ プルルルル プルルルル プル…
「……こんな夜更けにごめんなさい」
「話したいことがあるの、大事な話」
「ううん、直接がいい」
「できれば明日……ええ、うん、空いてるかな」
「そう……じゃあ明日、うちに来て」
「ええ、また明日……」
――ピッ ツーツーツーツーツー…
~見崎の家~
見崎「いらっしゃい、榊原くん」
赤沢「昨日はカレーご馳走様、美味しかったわ」
恒一「あれ、赤沢さんも来てたんだ」
赤沢「見崎さんに呼ばれてね」
恒一「そうなんだ。それで、電話でも言ってたけど大事な話っていうのはなんなのかな?」
見崎「……わたし、今まで2人に秘密にしていたことがあるの」
「2人は未咲のこと黙っていたのを許してくれたのに、また隠し事なんて……ごめんなさい」
恒一「良いんだよ見崎、友達同士だって隠し事の1つや2つあるものなんだから」
赤沢「恒一くんの言うとおりよ。それに見崎さんはこうして話そうとしてくれてるじゃない」
見崎「……ありがとう、2人とも」
「わたしの隠し事というのはね、この眼帯の下……義眼の持つ力のことなの」
見崎「赤沢さんには見せたよね、この義眼」
赤沢「ええ、綺麗なガラスの瞳だったけど……」
見崎「どうして眼帯で隠すのかっていう赤沢さんの質問に、わたしがなんて答えたか覚えてる?」
赤沢「えっと……『変なものは見えない方がいいから』だっけ?」
見崎「そう。赤沢さんは義眼を見えないようにしてるんだと勘違いしていたけど、それは間違い」
「隠しているのは……このガラスの瞳が映す景色のほうよ」
恒一「どういうこと?」
見崎「左目を病気で失ったときに臨死体験をしたからかな、この義眼は死の色が見えてしまうの」
赤沢「死の色って……?」
見崎「病気だったり怪我だったり、あるいは死体だったり」
「死に近い存在をこの義眼を通して見るとね、その存在に不思議な色が重なって見えてしまうの」
「日常に死が溢れているのを直視したくないから、普段はこの眼帯で見えないように封じているの」
「それでも2人に言い出せなかったのは……やっぱりわたしが臆病だったから」
「だってこんな話、普通信じてもらえないでしょう?」
「ううん、少し頭のおかしな子だと思われてしまうかもしれない、それはまだ良いの」
「もし仮に信じてもらえたとして、死が見えるなんて気味が悪いと拒絶されてしまうのが怖かった」
「だから『死者を見たことがないからこの瞳を使っても確証は持てない』なんて自分に言い訳をして……」
「ううん違う、本当に逃げていたのは……ほんとは……」
赤沢「……いいのよ、話してくれてありがとう」ギュッ
「見崎さんが冗談でこんなこと言う人じゃないって分かってるし、ましてや気味が悪いなんて思ったりしないわ」ナデナデ
「恒一くんだってそうでしょ?」
恒一「うん、もちろんだよ。友達のことをそんな風に思ったりするもんか」
見崎「でも……っ」
赤沢「いーいーのっ」ギュッ
恒一「見崎、その力を僕たちに貸してくれるね?」
赤沢「お願いよ、見崎さん」
恒一「きっかけ?」
見崎「これ。勝手に持ち出しちゃってごめんなさい」スッ
恒一「これは……」
赤沢「集合写真?」
見崎「昨日家にお邪魔したときに、榊原くんのお母さんの遺品の中から見つけたものよ」
恒一「じゃあこれは……26年前の3年3組の?」
見崎「ええ。始まりの年、すべてのきっかけとなったあの写真が、それ」
赤沢「じゃあこの中に夜見山岬が……って一目瞭然ね、これは……」ヒキッ
恒一「どれどれ……ってうわぁ、もっとうっすら控えめに写ってるのかと思ってたのに……」
見崎「今までは死者をこの義眼で見たことがなかったから死者の色が分からなくて足踏みしていた」
「でもこの写真のおかげでその色がやっと分かった……ううん、分かってしまったの」
赤沢「すごいじゃない、じゃあこれで明日から死者探しが出来るわね!」
見崎「いいえ、その必要はないわ」フルフル
「……死者が誰なのか、もう分かっているから」
見崎「いいえ、学校では一度も」
赤沢「それじゃあいつ確かめたの?」
見崎「……」
恒一「見崎?」
見崎「せっかく綺麗な瞳だって、褒めてくれたのに……」
赤沢「……え?」
見崎「お風呂でこの色が見えたとき、きっと未咲と同じように死の危険が迫ってるんだ、今度こそ守らなきゃって思ったの」
「ううん、そう思い込もうとしただけで、本当はあの時から心の底では分かってたのかもしれない」
「死者を死に還せば解決するってわかったのにこの義眼の力を明かさなかったのも、現実を直視したくなかったから……」
「だって赤沢さんが死者だなんて、何があってもわたしは認めたくなかった……!」
赤沢「私が、死者……?」
「だってほら、僕と赤沢さんは1年半前に会ってるんだよ? 従兄のお兄さんを亡くして泣いてる姿を今でも覚えてるし……」
見崎「赤沢さんはきっと、榊原くんと会ったそのあとに亡くなってるんだと思う」
恒一「そ、それはないよ、僕も前ある人に騙されかけたけど2親等外じゃ“災厄”の犠牲にはならないんだ、従兄妹の赤沢さんは対象外なんだよ」
見崎「……ねえ、赤沢さん。従兄のお兄さんって、本当に従兄だった?」
赤沢「!」
恒一「なにを言ってるんだよ見崎、そんな嘘をつく必要なんてないし千曳さんも2人は従兄妹だって……」
見崎「嘘? 赤沢さんの口から2人が従兄妹だって言葉、榊原くんは聞いた? わたしは聞いてないよ」
「……わたしはずっと引っかかってた。どうして赤沢さんはわたしにこんなに親切にしてくれるんだろうって」
赤沢「それ、は……」
見崎「大切な従兄を失って執念で対策係にまでなったような人が、その原因でもあった〈いないもの〉対策を止めてまで……どうして?」
「そこでね、最初にわたしを認めてくれたときの赤沢さんのセリフを思い出したの」
「『見崎さんも私と同じだったの?』」
「あれは家族を失ったことだけじゃなく、家庭環境も含めて同情していたんじゃないか……って」
「ねえ赤沢さん、あなたも養子なんじゃない? だから従兄のお兄さんとは実の兄妹だった、違う?」
「でも私が養子っていうところだけ間違い。養子だったのはおにぃの方よ」
恒一「なっ……!」
赤沢「私が生まれた家は赤沢家の親戚で、だけど余り裕福とは言えない家庭だった」
「一方赤沢家は子宝に恵まれず跡継ぎを欲していてね、うちから兄の和馬を養子として引き取ることにしたの」
「そうして私は1人残され、2人は従兄妹として過ごすことになったわ」
見崎「本当にうちとそっくりね……」
赤沢「見崎さんの家と違うのは両親があっけなく死んでしまったことね。事故だったそうだけど……よく覚えてないわ」
「おにぃを養子に取った縁で私も今の赤沢家に引き取ってもらえたんだけど、跡継ぎとして望まれた兄と違って養子にする必要はなかったみたい」
「だから兄とはまた兄妹のように暮らせるようにはなったけど、戸籍上は従兄妹のままだったってわけ」
「……つまり、1年半前に私が死んでいる可能性は大いにあるってことね」
恒一「で、でも……」
赤沢「そして私は見崎さんの言うことを信じてる、だって友達だもの」
「……私が死ぬことで今年の“災厄”は止まるのね。だったらすることは1つよ」
見崎「……っ」フルフル
赤沢「それにごめんなさい見崎さん、私のせいで妹さんを失わせてしまって」
見崎「そ、んな……っ、赤沢さんのせいなんかじゃ……っ」
赤沢「見崎さんのおかげでこれ以上犠牲者を増やす前に逝ける、ありがとう」
恒一「……赤沢さん、本気なの?」
赤沢「ええ。記憶の改竄ってあまり強固なものじゃないみたい、見崎さんに指摘してもらったら少しだけど記憶が戻ってきたわ」
「確かに私は死んでる。河原で恒一くんと別れた帰り道にトラックが迫ってきて――ううん、そんなことはどうでもいいわね」
「このまま私が卒業まで居座っていたら、恒一くんや見崎さんまで殺してしまうことになるかもしれない」
「私はそんなの御免よ、私のせいで2人が死んでしまうなんてことあって欲しくないわ」
「それに身体を張って“災厄”を止めるなんて、対策係としてこれ以上ない有能っぷりじゃない?」フフ
見崎「忘れたくなんて、ない……」クスン
「……そうだ……しゃしん」
赤沢「え?」
見崎「写真、撮ろう……?」ギュッ
恒一「見崎……」
見崎「この義眼があれば写真の赤沢さんのことずっと見えるはずだから、忘れずにいられると思うの」クスン
恒一「うん、そうだよ! 松永さんだって教室に隠したテープのこと思い出せたんだし、赤沢さんだって記憶が戻ったんだ」
「きっかけがあればきっと思い出せる、赤沢さんのことを忘れたりなんかしないし、そんなことはさせないよ」
赤沢「2人とも……ありがとう」ウルッ
恒一「うん、お願いできるかな」
見崎「少し時間がかかると思うから……ねえ、赤沢さん」
赤沢「なにかしら?」
見崎「しばらく2人きりだから、頑張って」ヒソヒソ
赤沢「え、それって……?」
見崎「ベッドは自由につかっていいから」ヒソヒソ
赤沢「え、えーっ!?」ガタッ
恒一「なに? どうしたの?」
見崎「乙女の秘密」
「それじゃあ行ってきます、ごゆっくり」
恒一「う、うん?」
赤沢「」プシュー
・
・
・
赤沢「おっ、おかえりなさいっ」
恒一「お、おかえりミサキ」
見崎「……挙動不審すぎ」
恒一「あ、あははー」ポリポリ
見崎「あれ?」
赤沢「な、なによ?」
見崎「シーツが乱れてない……」
赤沢「そんなことするわけないでしょ!?」
見崎「じゃあなにをしたの?」
赤沢「そっ、それは……その……」モジモジ
恒一「わあこのカメラってばレトロでかっくいー!」
見崎「……まあいいわ、写真の準備しましょうか」クス
「やっぱり恒一くんじゃない?」
「わたしは赤沢さんの隣じゃなきゃイヤ」
「あはは……」
「っていうか何枚も撮れば良いんじゃないの?」
「……じゃあ榊原くんの隣で今は我慢する」
「はいはい、じゃあセルフタイマーをセットして、と……」
「あ、ぴかぴかし出した」
「はやく戻ってこないと!」
「うん今行くよ――ってうわあ!?」
「ちょっ!?」
「きゃっ」
――カシャ!
3月13日(土)
~卒業式後~
久保寺「クラス全員で無事に卒業できるなんて、こんな嬉しい日はありません……うう」グス
綾野「もぉー、くぼっちったら大げさなんだから」ケラケラ
勅使河原「そうっすよ、結局今年は〈ない年〉だったってだけなんですから」
桜木「でも何にせよみんなで卒業式を迎えられたのは素敵なことですよぉ」
中尾「うーん……」
杉浦「どうかした? 気分でも悪い?」
中尾「いや、なんか忘れてる気がしたんだけど……気のせいだよな」ウーン
風見「ところでみんな、せっかくだし集合写真でも撮らないかい?」
小椋「お、いいじゃん。あたしカメラ持ってきてるよ」
久保寺「よし、それでは……あ、千曳さん調度良いところに」
千曳「む?」
・
・
・
見崎「仕方ないよ、わたしたちもこの写真があるから覚えていられるんだから」
恒一「見崎はまだはっきりと見える?」
見崎「ええ、この左目がある限り」
恒一「そっか……僕は段々薄れてきちゃってる、記憶も一緒に消えてしまわないか不安でしょうがないよ」
見崎「だいじょうぶ、わたしがちゃんと思い出させてあげるから」
恒一「うん、頼りにしてるよ」
見崎「榊原くんはこれからどうするの?」
恒一「まずは東京の高校に通って、それから大学に進学するつもりだよ」
見崎「大学に? お父さんの後を継ぐの?」
恒一「あはは、まさか。僕はね、教師になろうと思ってるんだ」
見崎「もしかして……」
恒一「うん。怜子さんと同じように夜見北に戻ってくるつもりだよ」
見崎「でもそれだと“災厄”の犠牲になるだけになってしまうかも……」
恒一「ああ、それなら大丈夫。ちゃんと手は考えてあるんだ、実はね――」
~夜見山北中学校、校門前~
赤沢「今までお世話になりました」ペコリ
未咲「お世話になりましたー!」ペコッ
恒一「2人とも今までお疲れ様、ゆっくり休むんだよ」
未咲「いやいや、先生と違って私たちまだまだ若いんで元気あり余ってますよー」エヘヘ
赤沢「ええ。むしろこれからが大変なんですよ、花の女子高生ですから」クスクス
恒一「それもそっか、これは一本取られたよ」ハハ
赤沢「……えっと」ソワソワ
未咲「ほーら、泉美っ」
赤沢「う、うん……あの先生、卒業しても手紙とか書いてもかまいませんか?」モジモジ
恒一「――うん、楽しみに待ってるよ」ニコッ
未咲「きゃー! 良いな良いな、私も恋してやるー!」ダッ――スゥ…
赤沢「あ、待ちなさいよ未咲ー! そ、それじゃ先生またっ!」パタパタ――スゥ…
恒一「……2人とも、卒業おめでとう」
恒一「うん、ここまであっという間のようで長かったなあ」
見崎「当時が懐かしいわ。最初にこの計画を聞かされたときは驚いたけど」
「『“現象”で紛れ込む死者は“災厄”の犠牲者に限られている、そして卒業した死者が再び死者として紛れ込んだ例は一度もない』」
「『なら“災厄”で死んだすべての生徒を卒業させてしまえば、死者が紛れ込むという“現象”自体起こりようがなくなるはすだ』」
「……ここまではなるほどって思って聞いてたけど、まさかクラス30名全員死者にするなんて正気を疑ったわ」
恒一「1年に1人じゃ効率悪いし、〈いないもの〉対策も完璧じゃないから“災厄”が起きちゃう可能性があったからね」
「その点クラス全員を死者にしてしまえば“災厄”で死者が死ぬことはないし、まとめて30人も卒業させられるんだ」
「何より〈いないもの〉になって寂しい思いをする生徒を作らなくって済むしね」ニコ
見崎「それにしてもこんな無茶苦茶な話、よくあの校長先生を納得させられたね。わたしたちが3組の頃の校長でしょう?」
「あの人が榊原くんの席を勝手に用意したせいで対策が遅れたんだと思うと……今でもあの人のこと好きになれない……」
恒一「当時“災厄”に無理解の校長を先生たちが説き伏せよう奮闘したらしいから、それで逆に頑なになっちゃったのかもしれないね」
「世迷言をぬかしてるから備品管理も満足に出来ないんだ、ほら見ろ転校生の分の座席がまだ用意されてないじゃないかって具合にさ」
「まあ僕らが卒業したあとやっぱり“災厄”が続いちゃって、精神的にどんどん追い詰められていったみたいだよ」
「夜見北に戻ってきて僕が何とかしてみますって申し出たときにはすがり付くように頼んできて、少し不憫なくらいだったからね」
恒一「千曳さんの資料だけじゃ不安だから興信所でも調べてもらったけど、これで全員卒業してもらえたはずだよ」
見崎「そう……」
恒一「見崎にもずいぶん長いこと付き合ってもらっちゃったね、ごめん」
見崎「いいの、わたしたち3人で“現象”を何とかするって約束したんだから」
恒一「そっか……うん、そうだね。じゃあ、ありがとうかな」
見崎「ええ。それに未咲が元気に卒業する姿も見れたから、満足だよ」
恒一「そうそう美咲さんと言えば、双子とは聞いてたけど本当見崎そっくりでびっくりしたよ」
「赤沢さんのスカートめくってケラケラ笑いながら逃げる見崎と同じ顔っていうのは、すごいシュールだった」
見崎「あの子のセクハラ癖は相変わらずか」クス
恒一「それにしても、未咲さんと話さなくって良かったの?」
見崎「うん、過去に縛られるのはよくないから」
「もう逃げたりしない。見たくないものだって見るし、前を向いて歩くことに決めたの」
恒一「そっか……見崎も成長したんだなあ」
見崎「このまま工房Mで働くのも手だけど、せっかくだし東京に行こうかと思ってるの」
恒一「東京か……人が多くて賑やかだから、見崎は少し苦手な環境かもしれないよ?」
見崎「それでも構わないわ。未咲と赤沢さんが焦がれていた東京で、少し自分を見つめ直してみたい」
恒一「そっか、そこまで決意が固いなら応援するよ。出立の日取りはもう決まってるの?」
見崎「ええ、実は明日にでもと思って」
恒一「そっか、じゃあ帰ったらすぐに準備しなくちゃだね」ハハ
見崎「……ねえ、榊原くん」
恒一「うん?」
見崎「これからしばらく会えなくなっちゃうけど、ずっと友達でいてくれる?」
恒一「それはもちろんだよ、見崎だって赤沢さんと友達のままでしょ?」
見崎「うん……」
恒一「なら同じだよ、僕たちはずっと友達だ」
見崎「ありがとう。それじゃあ……」
恒一「うん、それじゃあ――」
―一「僕も消えないとね」
見崎「これで6回目。榊原くんが死んだ年を含めると7回目だよ」
恒一「ちなみに僕が死んだのは担任を始めて2年目?」
見崎「ええ。夜見山岬を喚び込んだ始まりの年と同じように、死んだ生徒30人と教師1人を〈いる者〉として扱って1人芝居をしたのが最初の年」
「卒業写真には目論見通り31人分の死者が写り込んで、翌年からは生徒30人教師1人の全員が死者というクラスになって……ただ1人の生者である榊原くんは“災厄”から逃れられなかった」
恒一「ああ、そうそう。確かお爺ちゃんが死んじゃってお婆ちゃんは父さんが東京に引き取ったから、それで遠慮なくこの計画を実行できたんだよねー」
「その後のクラス運営は……そうだ、千曳さんに事情を話して籍を置かない形で教鞭を揮ってもらう約束をしたんだった」
見崎「そして翌年、唯一教師で死者になる可能性のあった怜子さんは最初の年に卒業させているから、榊原くんは確実に紛れ込むことができたってわけ」
恒一「うんうん、段々思い出してきた……ちなみに卒業式を迎える度に見崎に自分が死者だってこと教えてもらってたの?」
見崎「ええ。少なからずでも自覚があったのは今回が初めてだったから、ちょっと驚いてる」
恒一「最後の年になるから“現象”もサービスしてくれたのかな」ハハ
見崎「むしろ逆じゃないかな」
「あなたに卒業されたら“現象”が終わってしまうから、それを避けるために死者だと自覚させて自殺を促してるんだと思う」
恒一「あー、今まで毎年卒業門をくぐらないように自殺してリセットしてたんだよね? それで“現象”も知恵を付けたのかな」
見崎「ただの“現象”にそんな思考があるのかは分からないけど、可能性としてはあり得るかも」
見崎「ううん、現実から目を背けるのはもう止めにするって決めてたから」
恒一「そっか……今まで本当にありがとう」
見崎「榊原くんもお疲れさま、そっちで赤沢さんと仲良く待っててね」
「また3人で遊べるの、楽しみにしてる、から……」
恒一「こらこら、さっき前を向いて歩くって言ったばかりじゃないか。うつむいてたら赤沢さんに叱られるよ」
見崎「ええ……」コシコシ
恒一「僕たちはハワイアンコナでも飲みながらのんびり待ってるからさ、見崎はゆっくりおいでよ」
見崎「うん……ありがとう」
恒一「さて、と。それじゃ今度こそ僕は行くとするよ」
見崎「ええ、いってらっしゃい」
「卒業、おめでとう――」
おわり
乙
乙
乙
Entry ⇒ 2012.08.27 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
恒一「男子中学生の日常」
引用元: ・http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1343221837/
‐とある昼休み 屋上‐
恒一 「巨乳と貧乳どっちが好き?」
勅使河原「つまんねーこときくなよ! …じゃなくて、何サカキ、そんなこと言う奴だったっけ?」
恒一 「そうじゃないけど、父さんが男子中学生なら猥談だって言ってたから」
望月 「わからないでもないけど…唐突すぎて頭おかしくなったのかと思ったよ」
勅使河原「ひでえ言いざまだなお前」
恒一 「まぁいいけどね。で、どっち?」
勅使河原「ん~どっちかって言ったらやっぱ巨乳だろ。ヤンマガの表紙飾りそうな」
恒一 「なるほど。やっぱ勅使河原は巨乳派か。望月は?」
望月 「えぇ~…ぼくも答えるの?」
勅使河原「あたりまえだろ。男子中学生たるもの猥談に背を向けるべからず。背中の傷は剣士の恥だ」
望月 「意味わかんないよそれ…」
「…まぁ、それならやっぱりボクも、き、巨乳派かな…その、三神先生みたいな…」モジッ
恒一 (高め打ちだね)
勅使河原(高め打ちだな)
恒一 「やっぱり中学生ともなると巨乳好き多いんだね」
勅使河原「そりゃそうだろ。おっぱいは正義。正義は勝つ。…で、お前はどうなんだよ」
恒一 「僕?」
望月 「もちろん、榊原君だよ。ボクも言ったんだから」
恒一 「そっか。まぁやっぱりどっちかって言ったら僕もきょn「貧乳だよね」
恒一・勅使河原・望月「「「 !? 」」」ギョッ
見崎 「もちろん貧乳だよね? サ・カ・キ・バ・ラくん?」
恒一 「み、みみみみ…見崎!?」
見崎 「そうですわたしがみさきです」
勅使河原「どっから涌いて出たんだよ…」
望月 「て、ていうかどっから聞いてたの?」アセアセ
見崎 「このSSの始めから」
恒一 「」
見崎 「それで、榊原君?」
恒一 「え、な、なに?」ダラダラ
見崎 「巨乳と貧乳どっちが好きなの? …まぁ、訊くまでもないと思うけど」クスッ
勅使河原「なんでナチュラルに参加してんだよ」ヒソヒソ
望月 「ていうか榊原君すっごい汗なんだけど。ガマ蛙でももうちょっと遠慮するよ」ヒソヒソ
見崎 「…」ゴゴゴゴ
見崎 「榊原君、早く答えて?」ズイッ
恒一 「えっとその…どっちかっていうと…」ダラダラダラダラ
見崎 「どっちかって言うと?」
恒一 「きょn…」
見崎 「ん? どっちかっていうと?」
恒一 「だからきy」
見崎 「なに? よく聞こえない」
恒一 「………控えめな胸が大好きです…」ウツムキ
見崎 「やっぱりそうだよね、だと思った」ウンウン
恒一 「はい…」シュン
勅使河原「言わせといてなに嬉しそうにしてんだよ…」ボソッ
見崎 「なにか言った? 勅使河原くん」
勅使河原「ノー!マム!」
望月 「強い…」
恒一 「…」
見崎 「それで榊原くん、具体的には誰のむn」
<キーンコーンカーンコーン
勅使河原「おっと、予鈴だぜ!? 戻ろう、な、授業はじまっちゃうぜ!?」
恒一 「そ、そうだね戻ろう! 昼休み終わっちゃうね!」
望月 「そうだよ、次の授業久保寺先生でしょ!? 担任の授業遅れちゃまずいよ!」
見崎 「…そうね」チッ
恒一・勅使河原・望月((( 助かった… )))
‐放課後 3年3組‐
勅使河原「…というわけで、昼休みの続きだ。あのときは邪魔が入ったからな」
望月 「HR終わってすぐ男子だけ召集されたと思ったら、やっぱりこれか…」
勅使河原「ま、部活やら何やらで皆帰っちまったけどな。サカキも先に見崎送ってから戻ってくるらしいし」
風見 「なら僕も帰って構わないね? 受験勉強したいし」ガタッ
勅使河原「おっと、これを見ても同じことが言えるかな?」ガサッ
風見 「…! そ、それは…!」
勅使河原「そうだ、桜木の体操服姿を収めた一枚だ。しかもブルマを人差し指で直す瞬間だ。まさに値千金」
「ちなみに提供者はこいつな」
中尾 「Y談ならマカセロー!」
風見 「…中尾くんか…」
勅使河原「で、だ。この話し合いにちゃんと参加したらこいつをくれてやる」ヒラヒラ
風見 「くっ! しかたがないな。…それにしても、どうしてそこまでして僕も参加させるんだい」
勅使河原「もちろん、共犯者は多いほうがいいからな」
風見 「共犯者って…別に好みの胸の大きさを話すだけだろう」ハァ
勅使河原「確かにそうだが、ただ単に胸の話だけで済むと思うのか?」
望月 「えっと…つまり、ただの猥談じゃないってこと?」
勅使河原「っていうより、俺たちはごくごく健康的な男子中学生だ」
「中学生男子が胸の話っつったら、身近な女子の話になりがちだろ」
風見 「…要は、胸の話からさらに突っ込んで3年3組の女子の話をしようってことかい?」
勅使河原「ご明察」フフン
望月 「なるほどねぇ…」
中尾 「俺は猥談できればなんでもいいけどな!」フフン
望月 「歪みないなぁ…」
中尾 「そんなことより、早く修学旅行の夜を煮詰めたみたいな話しようぜ」ワクワク
勅使河原「まぁそうしたいのはヤマヤマだが、とりあえずサカキが帰ってくるまで待とうぜ」
「目下最大の脅威、見崎を家まで送り届けることで排除してくれてる功労者だし」
風見 「榊原君もよくよくわからないな…わざわざそんな手間までかけるとは」フゥ
望月 「まぁ、こんな話しようと思ったら、やっぱり見崎さんはできるだけ遠ざけたいよね」
「気づいたら横にいるのがデフォだし。元・いないものは伊達じゃないよ」
<スタスタ
勅使河原「そうなー。…お、噂をすればだ。サカキ来たんじゃね?」
望月 「うん。この足音は榊原君だと思うよ。僕にはわかる」キリッ
勅使河原(高め打ちな上に♂もイケるクチかよ…救えねぇな…)
<ガラッ
恒一 「ごめん、遅くなって。もう始まってる?」
勅使河原「いんや、お前来てからはじめようって話してたとこ」
恒一 「そっか、ありがと」
望月 「おかえり、榊原君」
中尾 「よっしゃ、じゃあはじめようぜ!」ワクワクワクワク
風見 「はぁ…しょうがないな」ソワソワ
勅使河原「なんだかんだ言ってお前も楽しみなんじゃねーかwww」
「ま、せっかく女子もいないんだし、ゆっくり楽しもうぜ!!」
‐第2図書室‐
勅使河原『せっかく女子もいないんだし~』ザザッ
見崎 「…と、思うじゃん?」
有田 「3年3組にはカメラと盗聴器が仕掛けられてます。企画は見崎さん、工作は私です」カメラメセン
綾野 「相変わらずのコンビネーション…ほんと歪みないなこの人たちは」
多々良 「放課後すぐに第2図書室集合って、こういうことだったんですね」
赤沢 「なんてこと…放課後に集まって3組女子をネタに猥談なんて…対策が必要だわ…」ブツブツ
小椋 「ま~た対策対策って…素直に恒一くんの性癖が気になるって言いなよ」ヒヒヒ
ワイノワイノ フェアダワ ムシロギャクニアンフェア
千曳 「3組の生徒は本当に尋常ではないね…」
‐3年3組‐
勅使河原「で、だ。ぶっちゃけうちのクラスで一番乳デカいのって誰?」
望月 「乳て」
中尾 「さるスジによると、杉浦、佐藤、桜木が巨乳三女帝だな。俺のデータとも合致する」パラパラ
風見 「マっジで!? マっジで!? ひゃっほう!」ガタガタッ
恒一 「風見くん落ち着いて、なにやら大変なことになってるから」
「あ、でも赤沢さんも大きくない? 海のときとかすごかったんだけど。こう…タージマハル型の」
勅使河原「確かに。だが逆に言えばそれよりもデカいのがその三人、と…けしからんな」
恒一 「まったくだ、けしからんね」ウンウン
望月 「激しく同意」ウンウン
勅使河原「そうだ、巨乳と杉浦で思い出したんだけどさ」
風見 「なにか知ってるのかい?」
勅使河原「お、戻ったな。 …でな、杉浦なんだけどさ、いっつもパーカー羽織ってるじゃん」
中尾 「あのフードついたやつな」
勅使河原「そそ。聞くところによると、あのパーカーって胸デカいのを隠すためらしいぜ?」
恒一 「うはぁ、マジで!? 恥じてるの!? 含羞ゆえのパーカーなの!?」ガタガタッ
望月 「榊原君落ち着いて。風見君と同じ轍を踏んでるよ」
恒一 「あ、ああごめん」
中尾 「あいつがなぁ…そういえば夏でも脱がないもんな。かわいいとこあんじゃん」
勅使河原「それ今度本人に言ってやれ」
望月 「それにしても、杉浦さんに桜木さん、佐藤さんか…おとなしい人ばっかりだね」
風見 「確かに。イメージ的には渡辺さんとか藤巻さんのほうが大きそうなんだけどね」クイッ
恒一 「やっぱり大きい人はメンタルが違うんじゃない? こう、心の余裕的な。だからおとなしい」
勅使河原「ふむ、一理あるかもな」
恒一 「きっと胸が心の大きさを表してるんだよ。だから小さい人ってギスギスしてるんじゃない」HAHAHA
勅使河原(サカキのやつ…昼休みの見崎に与えられたストレスをここぞとばかりに…)ヒソヒソ
望月 (この様子からして、普段から何かあるのかもね。モテ男もそれなりに苦労してるんだなぁ…)ヒソヒソ
‐第2図書室‐
見崎・小椋「…」
多々良 「あ、あの…」
見崎・小椋「「 ああん? 」」ギロッ
多々良 「い、いえ…やっぱりなんでもありません…」ビクビク
見崎 「…チッ」
小椋 「はぁ…美乳様はよろしゅうございますねぇ…心の余裕があらせられて! けっ!」
赤沢 「恵に八つ当たりしてんじゃないわよ。だから恒一くんにもあんな風に思われるんじゃない」
見崎・小椋「ぐぬぬ」ギリギリ
綾野 「まぁまぁ、逆に言えば心に余裕を持てば胸も膨らむかもしんないじゃん!(多分無理だけど)」
有田 「あと、よく言うよね。胸はひとに揉んでもらうと大きくなるって」
小椋 「マジ!?」ガタッ
見崎 「…未咲に頼むか…いやいっそ榊原くんに…いや、でも、やっぱ、だけどしかし…」ブツブツブツブツ
赤沢 「そうなの? 私はむしろ、揉んだところから重点的に痩せるって聞いたけど」
多々良 「そこだけ運動してるような状態になるらしいですね」コクリ
見崎・小椋「ちくしょう」
‐3年3組‐
中尾 「桜木っていえば、あいつ胸だけじゃなくこう、全身やわらかそうだよな。揉みしだきてぇ」
風見 「ちょっと中尾くん、僕のゆかりで変なこと考えないでくれないかい」ギロリ
勅使河原「妄想乙。 でも確かにな。あの肉付きの良さは正直ムラムラ来る。太ももとか二の腕とか」
望月 「う~ん、やっぱり肉付きなら僕は三神先生だなぁ。あの脚で顔挟まれたい」
勅使河原「あらキモい。まぁ気持ちはわかるけど。なぁサカキ、そこんとこどうなん?」
恒一 「そこんとこって?」
勅使河原「やっぱ身内だと三神先生のこと見る機会多いだろ? せっかくだしこの機会に語れよ」
恒一 「ん~…この際だから言っちゃうけど、怜子さんって家だとすごくだらしないんだよね」
風見 「というと?」
恒一 「家だと余裕で鎖骨とか谷間とか見える服でうろつくし、お酒飲んだらそのままで寝ちゃうし」
望月 「!?」ガタッ
恒一 「風呂上りとかバスタオル一枚のときもあるし。あと、そうそう。酔っぱらったとき時なんかさ」
「仕方ないから僕が背負って部屋に運んだら、面白がって耳かまれたり頬にチューされたりしたよ」
望月 「義兄さん」
勅使河原「やめろ。 それにしても…」
中尾 「ああ。正直SNE(S:それ N:なんて E:エロゲ)すぎるな。…ちょっとトイレ行ってくる」スタスタ
望月 「最初から三神先生以外アウトオブ眼中な僕は勝ち組」キリッ
勅使河原「そういうのはせめて三神先生とアドレスのひとつも交換してから言え」
望月 「ちくしょう」
中尾 「ただいま」
勅使河原「はやいなおまえ」
中尾 「へへっまぁな!…ちょっと話変わるけどよ、佐藤って巨乳抜きにしてもなんかエロいよな」
勅使河原「そうか?」
風見 「ああ、でもちょっとわかるね。佐藤さんって大人しい雰囲気なのに、妙に挑発的な所があるよね」
恒一 「蠱惑的だよね。個人的に、佐藤さんは隠れドSだと思ってるよ」
勅使河原「あ~そう言われたらそう思えてきたな…」
中尾 「二人きりになるとドSになんだよ。そんで、散々罵倒されながら筆おろしされてぇな」
勅使河原「やだキモい。弱冠15歳にして完成されすぎだろお前」
‐第2図書室‐
赤沢 「中学生離れした色っぽさなら私も負けてないでしょうが…! 十分蠱惑的でしょうが…!」
有田 「まぁ、中学生男子なら三神先生とか和江みたいな人大好きだよね」
綾野 「へぇ、そうなの?」
有田 「うん、恒一くんの持ってるAVも大人っぽい女優さんばっかりだし」
多々良 「え、えーぶぃ…///」
赤沢 「私の流し目とか最高でしょうが…! 流し斬りでしょうが…!」
綾野 「ちょ、なんで松子がこういっちゃんのラインナップなんか知ってんの?」
有田 「見崎さんとちょくちょく忍び込んでるし」
見崎 「ナースもの多数」コクリ
多々良 「…ナース服、Amazonに売ってるかな…」ボソッ
ありがてぇ
綾野 「ナースっていえば、恒一くんって水野くんのお姉さんと仲いいよね」
多々良 「そうなんですか? 以前近くで見かけましたけど、美人で大人っぽくて素敵ですよね」
小椋 「私も見たことある。私もあんな風になりたいなぁ…」
見崎 「禿げ上がるほど同意」
赤沢 「くっそ…! こうなったら戦争でしょうが…! 全力でしょうが…!」
綾野 「泉美いい加減うるさい」
‐3年3組‐
勅使河原「ドSって言えば、水野の姉ちゃんとかいい線いってるんじゃねぇの?」
望月 「僕は親しくないからわかんないけど。そうなの? 榊原君」
恒一 「どうだろう…ドSとはちょっと違うけど、茶目っ気は強いほうかも」
中尾 「ほう」
恒一 「以前家に呼ばれて遊びに行ったんだけど、ぼくがお茶こぼしちゃってさ。二人とも濡れちゃって」
「そのとき、『一緒にシャワー浴びる?』とかニヤニヤしながら言われた時は正直やばかった」
風見 「具体的にいうと?」
恒一 「勃起した」
勅使河原「そこまで具体的じゃなくていいです」
恒一 「くそう」
勅使河原「まぁ気持ちはわかるけどな。そのままご相伴に与っちまえばよかったのに。据え膳だろそれ」
恒一 「まさか、さすがに冗談だったと思うよ」
勅使河原(たぶん本気だろうけどな)
望月 (水野さんもいいな…)
勅使河原「ま、いいけどさ。でも、ナースって正直エロいよな。タイトミニとか特に」
風見 「最近はスカートじゃなくてズボンの病院も多いみたいだけどね」
中尾 「それはいかんな。日本の医療界は即刻、旧弊としたスカートに戻すべきだ。温故知新だろ」
勅使河原「難しい言葉知ってんな」
中尾 「赤沢に教えてもらったからな」フフン
風見 「赤沢さんといえば、君たち赤沢さんの話はしないのかい?」
「いつもの君たちなら真っ先に話題にしそうだけど」
勅使河原「そういえば赤沢忘れてたな。エロいといえばあいつもエロい。同じ中学生とは思えん」
中尾 「まったくだ。正直俺は毎日あいつで4回は抜いてるぜ」
望月 「テクノブレイクして死ねばいいのに。 赤沢さんってスタイルいいよね」
恒一 「そうだよね。メリハリの利いたスタイルしてるし、あと美乳だね。顔も声も奇麗だし」
「っていうか赤沢さんって何から何まで奇麗だよね」
勅使河原「べた褒めじゃねーかwww なに、お前赤沢好きなの?」
中尾 「!?」ガタッ
‐第2図書室‐
勅使河原『なに、お前赤沢好きなの?』ザザッ
全員 「…!?」ガタガタガタッ
多々良 「ちょ、これって…!?」
赤沢 「恵うるさい気が散る!一瞬の油断が命取り!」
小椋 「あんたもうるさい! よく聞こえないでしょうが!」
見崎 「…」ゴゴゴゴ
綾野 「あーらら。…ま、泉美が本命だったら私は二号さんでもいっか」
有田 「あれ? でもこれって…」
‐3年3組‐
勅使河原「で、そこんとこどうなのよ」
恒一 「ん~…今のとこ好きとかではないかなぁ」
望月 「そうなの? その割に褒めまくってたけど」
恒一 「だからだよ」
風見 「どういうことだい?」
恒一 「ほら、赤沢さんってあれだけ奇麗だからさ、気後れしちゃって」
「こう…恋愛とか、そういう次元で見ちゃいけない雰囲気ない?」
望月 「あーちょっとわかるかも。まさしく高嶺の花って感じだよね」
恒一 「そうそう、そんな感じ」
中尾 「俺は毎日抜いてるけどな。具体的な妄想聞く?」
勅使河原「聞きたくないです」
中尾 「まず放課後の教室で俺が」
勅使河原「いやほんとに聞きたくないですごめんなさい」
‐第2図書室‐
赤沢 「ふふ…うふふふふふ…そんなこと気にしなくてもいいのに…ふふふふふふふふふふふふ」ニヤニヤニヤニヤ
「奇麗だってうふふ高嶺の花だってうふふふふふふふふふふふ」ニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤニヤ
綾野 「やだこの子キモい」
多々良 「すっごくニヤついてますね。でもいいなぁ、私も榊原君にべた褒めされてみたい…」
有田 「恵は待ってたらべた褒めしてくれるんじゃない?」
小椋 「そうだよね。個人的には恵が恒一君争奪戦最大の仮想敵だと思ってる」
見崎 「髪、胸、身長…私にはないものをたくさん持っておる…」クッ
多々良 「そ、そんなこと…ないです///」
綾野 「おお、噂をすれば。次、恵の話みたいだよ」
‐3年3組‐
勅使河原「高嶺の花っていえば、多々良もかなりレベル高いよな」
中尾 「多々良も抜ける」
風見 「さしもの僕も、多々良さんの魅力には時々ぐらっと来てしまうね」
勅使河原「言ーってやろ言ってやろ。桜木ゆかりに言ってやろ」
風見 「やめろ貴様。川堀をけしかけるぞ」
勅使河原「正直すまんかった」
望月 「たしかに、多々良さんって赤沢さんとは違うジャンルでおとなっぽいよね。清楚っていうか」
中尾 「俺なんかにも優しいしな」
勅使河原「哀しいこと言うなよ…で、サカキ先生は多々良のことどう思ってんの?」
恒一 「また僕が答えるの? たまには勅使河原が語りなよ」
勅使河原「そう言うなって。お前転校してきたばっかだし、一番客観的な意見聞けそうじゃん」
恒一 「まぁいいけどさ」
恒一 「望月も言ってるけど、多々良さんって清楚で美人だよね」
「性格も優しくて衒いがないし、あそこまで外見と中身の調和がとれてるひとっていないと思う」
風見 「確かに。多々良さんは誰にも分け隔てなく接するし、真面目で親切だね」
恒一 「あとあの黒髪ロングもいいよね。美人御用達の髪型をあそこまで完璧に維持できるのはすごい」
勅使河原「すれ違ったときとかなんかいい匂いするしな」
望月 「なんか怖いよその意見」
恒一 「なんていうか、大和撫子って感じだよね。正直結婚するなら多々良さんみたいなひとがいい」
中尾 「ぶっちゃけたなおい。同意するけど」
勅使河原「そうなー多々良だったら幸せな家庭築けそうだよな。わかるわ」
望月 「うんうん、健気に支えてくれそう」
風見 「多々良さんの人気はさすがだね。僕もゆかりの次に好きだけど」
勅使河原「こぉのムッツリめ」
「ていうか今思ったんだけどよ、この会話聞かれたらやばいよなwww」
恒一 「ほんとだよね。結婚したいとか言っちゃったし、聞かれてたら明日から顔みれないよ…」
全員 「ほんとになー」HAHAHA
‐第2図書室‐
見崎 「…と、思うじゃん?」
小椋 「いや、そのネタもういいから」
赤沢 「…で、当の結婚したいランキング第1位はというと…」チラッ
多々良 「け、け…/// け、けっこ、けっこ…//////」
綾野 「鶏の物まねに必死、と。まぁ気持ちはわかるけど」
見崎 「私だって黒髪なのに…ちくしょう…!」ゴゴゴゴゴゴゴゴ
有田 「んふふ、私も恵の髪型に通ずるものがあるよね? よね? んふふふ」
多々良 「“おかえりなさい、ご飯にする?お風呂にする? それとも…”」
「なんちゃって…ふふふふふ。やだ、私ったらはしたないです///」
赤沢 「これはしばらく帰ってきそうにないわね…」フゥ
綾野 「そうだね。治るまでほっとこ」
見崎 「次こそは私。次こそは私の話…」ブツブツ
小椋 「やだこの子なんかぶつぶつ言ってて怖い」
‐3年3組‐
風見 「君たちが多々良さんと結婚したいのはわかったけど、付き合うなら誰にするんだい?」
中尾 「誰でもいい」
勅使河原「即答かよ…ここまで来ると逆に男らしいな。 俺はやっぱ赤沢かな」
望月 「もちろん三神先生」
風見 「僕はゆかりだね」クイッ
勅使河原「サカキはやっぱ見崎か?」
恒一 「んー…見崎もかわいいし、いいんだけど、僕はあえて小椋さんを推したいかな」
勅使河原「あれま。その心は?」
恒一 「小椋さんってパッと見気が強そうだし、口調も今どきぽいけどさ」
「話してみたら明るくて気さくだし、結構純情って言うか、健気なとこあるじゃない」
望月 「そうなの? 僕はあんまり話したことないけど」
勅使河原「確かにな。あいつ意外に尽くすタイプなんだよな。いつも綾野のフォローとかしてるし」
恒一 「そうなんだよ。美人だし、背も小さくて小動物っぽいし、守ってあげたいかな」
中尾 「あいつは俺に冷たいから苦手だ…」
勅使河原「それはお前の自業自得だろ」
風見 「ん? 中尾くん、小椋さんとなにかあったのかい?」
勅使河原「ああ、前ちょっとしたことでこいつ小椋と口論になってな」
中尾 「“うるせぇ、この貧乳!”って言ったら、それ以来豚でも見るような目で見られるように…」
望月 「ああ、明日の朝にはお肉屋さんに並ぶのねって感じの目だよね、あれ」
恒一 「哀れな…今からでも謝ればきっと許してくれるよ。小椋さん優しいし。だから元気だしなって」
中尾 「おう、サンキュー…」
‐第2図書室‐
小椋 「もう、しょうがないなぁ…恒一くんがそこまで言うなら許してあげよっかな」ニヨニヨ
赤沢 「くっ…さすがに3組の女子は侮れないのが多いわね…!」
見崎 「私の話じゃなかった…」シュン
綾野 「でもいい加減話聴くのもちょっと疲れてきたね…お腹すいた…」
有田 「そうだねー…あ、こっからは恒一きゅんの一人語りだってさ。ナイスタイミング」
見崎 「なんと」
‐3年3組‐
勅使河原「それにしてもちょっと話し疲れてきたな。あとはもうサカキの一人語りでいいか」
恒一 「なんだよそれ」
勅使河原「いやほら、なんだかんだでお前の意見を幹にして話してるじゃんか」
「だからこっからはサカキに語っていただいて、俺らは極力黙ってようかな、と」
風見 「いいかもしれないね。そうだな…見崎さん、有田さん、綾野さんあたりでいいだろう。人気的に」
望月 「その人気投票はどこでデータとったの…」
風見 「いやネットで」
中尾 「さいですか」
※ということで最後はダイジェストです。
勅使河原「じゃ、まず見崎からな」
恒一 「見崎か~まず奇麗だよね。背小さいけど顔立ちは大人びててミステリアスだし」
「肌が白いのもポイント高めだね。性格も落ち着いてて実は一番付き合いやすいかな」
「落ち着いてるって書いたけど、意外にお茶目な一面もあって、その辺の愛嬌もあるよね」
「余談だけど未咲ちゃんも小悪魔っぽい感じでかわいいよ」
勅使河原「なるほどなぁ…要約すると?」
恒一 「見崎ぺろぺろ」
見崎 『榊原君クンカクンカ』
勅使河原「じゃ、次は有田な」
恒一 「有田さんはかわいいよね。ただひたすらかわいいよね。ほんっとうにかわいいよねマジで」
「気さくで話しやすいし、ぶっちゃけあのセミロングの黒髪にモフモフしたい」
「あとあのスレンダーなスタイルも僕的(ロリコン的)にポイント高いよ。98点」
「キャミソール姿の有田さんマジ天使」
風見 「なんかはっちゃけたね。有田さんの変態キャラが伝染したかな」クイッ
有田 『恒一きゅん!恒一きゅん!恒一きゅん!恒一きゅぅぅうううわぁああああああああああ(ry』
望月 「最後は綾野さんだね。思いのたけをぶちまけなよ」
恒一 「御意。綾野さんも気さくで付き合いやすいよね。多々良さんの次に結婚したい」
「くせ毛っぽいショートと、猫みたいに豊かな表情、しなやかな体躯…Fantastic(素晴らしい)」
「でも、部活の時とかは打って変わって真剣な表情で打ち込んでて思わずドキッとさせられるよね」
「あとちょくちょく小椋さんに叱られてシュンとしてる綾野さんもかわうぃーよね」
望月 「一瀉千里というか立て板に水でよくもまぁここまで滔々と語れるね…」
綾野 『こういっちゃん、私も愛してるー!!』
勅使河原「ふー…語ったな」
恒一 「語ったのはほとんど僕だけどね」
中尾 「いや、すごかったぜ。感銘受けたよ。これからは赤沢だけじゃなく、ほかの子もオカズにするわ」
風見 「ゆかりだけはやめてくれよ。僕の嫁だからね」クイッ
望月 「風見くんもたいがい怖いよ。ストーキングとかしないでね。あ、あと三神先生も除外で」
恒一 「父さんに唆されて始めた話だったけど、男子だけでこういう話するのも楽しいね」
勅使河原「じゃあ次はクラスの男子全員集めて女子のこと話そうぜ! …川堀のとか、な!」
全員 「nice joke.」HAHAHAHAHA...
後日、なぜかこの日の僕らの会話が流出していて、クラスの女子がえらい積極的になったり、
水野さんや怜子さんが肌の露出を増やしたり、中尾君が赤沢さんに去勢されかけたりと、
なにやら大変なことになったのですが、それはまた別のお話…。
ともあれこれが、僕ら3年3組の、男子中学生の日常。
恒一「あなたは誰がかわいいと思いますか?」
おわりんこ。
ごめん、最後力尽きた…中途半端に書き溜めてるとこうなるんだね…。
読んでくれた人、画像貼ってくれたひとありがとうございました。
僕はやっぱり小椋由美ちゃん!
佐藤さんに足蹴にされたい
由美かわいいよ由美
Entry ⇒ 2012.07.26 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (3) | Trackbacks (0)
恒一「有田さんが普通じゃなくなる現象……?」
引用元: ・http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1334238666/
赤沢「どう? 理解できた?」
恒一「えっと、夜見北の三年三組は呪われたクラスで、毎年「アリタ」の名字を持つ人は呪われる……ってこと?」
赤沢「理解が早くて助かるわ」
恒一「それで、その、赤沢さんが対策係で、もうすぐ転入する僕にそれを説明しに来た」
赤沢「そういうことよ」
恒一「でも、普通じゃなくなるって、どうなるのさ。それに、どうしてその説明を、僕に?」
赤沢「……現象が現れる引き金が「アリタが恋をする」事なのよ」
赤沢「ええ、つまり、榊原君は、その……」
風見「赤沢さん、言いにくいなら僕から話そうか?」
赤沢「ええ、お願いするわ。異性に対して面と向かって言う事は、少し憚るわ」
桜木「……無能」ボソッ
赤沢「何か言った」ギロッ
風見「榊原君、君は同性の僕から見ても、整った顔立ちをしていると思う。現在、有田さんは恋愛をしていない。だが、彼女とて中学三年生だ。恋に飢えてる時期だろう」
風見「そんな所に、君のようなイケメンが来れば、有田さんはすぐに落ちる可能性がある」
恒一「そ、そんな……じゃあ僕はどうすれば……」
赤沢「簡単な事よ。初日に、悪いイメージをつければいいの」
赤沢「もちろん、有田さん以外の生徒には、先に転入生として紹介するわ。貴方はただ、有田さんが恋心を抱かないように、強烈なイメージをつければいいの」
恒一「具体的には、何をすればいいの?」
赤沢「……初日にこれを、つけてきてほしいの」スッ
恒一「……紙のお面?」
桜木「お大事に」
恒一「うん、ありがとう。またね」
赤沢「正直、納得はしてもらえないと思うわ。それでも、クラスの普通少女を守る為だと思って、お願い」
恒一「うん、わかった。出来る限り、頑張るよ」
赤沢「対策係として、感謝するわ」スッ
恒一(握手…………)ギュッ
久保寺「転入生の榊原恒一君だ。皆、仲良くして……くくっ……れ」
勅使河原「ブブッ……くくくくっ……」
小椋「ふふっ! ……ひっ、ふ……ずる……ふふふふ」
恒一「転入生の榊原恒一です」
綾野「お面……あはは、つけてしゃべらな……ふふ」
中尾(どうして……俺の顔のお面なんだ……)
赤沢(我ながら、完璧な対策ね。これで有田さんは榊原君を嫌う事間違い無しだわ)ドヤァ
恒一(これ、いつになったら外せるんだろう?)
中尾(なんで皆、バカ受けなんだ……)
勅使河原「サカキ最高だなぁ! 本当、見直したぜ!」
風見「見直したって、お前はまだあって二日しか経ってないだろう」
勅使河原「細けぇ事は良いんだって。それより、それ、見してく……くくくくっ!」
望月「本当、凄い出来だね。誰が作ったんだろう」
杉浦「私よ」
勅使河原「マジかよ……」
小椋「ん? どうしたの?」
有田「あの転校生さん、おかしくない?」
小椋「あはは……ま、まあそういう人もいるよ。松子は気にしない方が良いんじゃないかな」
赤沢(グッジョブ由美! そうやって有田さんを榊原君からそれとなく離して行きなさい)
有田「うーん……でも、ちょっと面白い人だよね」
赤沢、小椋(!?)
赤沢(私の対策よ。多佳子は連絡を回しやすいように、男子の中に混じってもらっているわ)
有田「それもなんか変じゃない? 彩ちゃんなんかは、転校生にぐいぐい行きそうだと思ってたんだけど……」
綾野「……っ!?」
赤沢(行きなさい! 怪しまれるくらいなら、すぐに!)
綾野「あ、あー、やっと宿題終わったなー、かったるいなー、あれぇ、あんな所に転入生がいるぞ? ちょっとちょっかいを書けてこよう!」ボウヨミ
赤沢、小椋(お前それでも演劇部かっ!)
小椋(普通な子で良かった……)
有田「和江ちゃん、宿題やってきてる? お願い、見せてっ!」
佐藤「え、えぇ。いいわよ」
見崎(私もやってない……)
有田「悠ちゃん、一緒に帰ろ!」
江藤「うん、いいよ。コンビニよってく?」
有田「うん、私も欲しいの物があったんだ」タッタッタッタ
クラス一同「ふぅ……」
赤沢「現在の結果ね……それはあの人に聞いた方が……」
恒一「……あの人」
千曳「現象の結果……尋常じゃないね」
赤沢「千曳先生……」
恒一「よ、よろしくお願いします」
千曳「うん、たしかに端正な顔立ちだ。これなら、アリタの呪いを気にするわけだ」
赤沢「千曳先生、彼に現象について詳しく教えてあげてもらっても、いいですか?」
千曳「あぁ、いいだろう。私もそのためにここに来たんだ」
千曳「始まりは……26年前の出来事だ」
千曳「しいて彼の特徴をあげるなら、その凡庸さ故に、誰とでも仲良くなれる事くらいだね。きっとこのクラスの有田さんも、似たような所があるだろう?」
小椋「はい……」
千曳「そんな彼だがね、自殺したんだよ」
恒一「ええっ!?」
千曳「彼の遺書にはね、こう書いてあったんだ」
千曳「普通じゃなくなりたい。特別な人間になりたい。もっと自分を見てほしい。モブキャラなんてもうゴメンだ。来世では、きっと主役になってやる。ってね」
千曳「26年前の有田君はね、好きな人がいたらしいんだ。それがこのクラスなのか、それとも違うのか、それはわからない。だが、友人にほのめかすだけで、告白する事もなく、彼は死んでしまった」
恒一「だから、恋をする事で呪いが始まるんですか?」
千曳「私はそう思っている。そして、呪われるとどうなるかだが……」
千曳「彼は、三年生になり、ある女子生徒と同じクラスになってしまった。一目惚れ、って奴だったんだろうね」
千曳「そして、呪われた。次の日彼は、「俺はダンサーだ!」そう言いながら、サンバの衣装を着て、踊り始めた」
千曳「衣装は、女性用のものだ」
千曳「耐えに耐え、耐え難きを耐え、耐え続けて、一年間、三年三組は耐えた」
千曳「受験勉強と共に鳴り響く、サンバのリズムに耐え抜いたんだよ」
千曳「……わかるかい? 私のいた図書室まで聞こえるほど、大きなサンバの音楽に、一年間耐え続けたんだ」
千曳「卒業書証を受け取った瞬間、全てに気づいたらしく、泣き崩れたそうだ」
千曳「どうして俺は、こうなってしまったんだ。この腰の動きを、何に生かせば良いのか。もう告白なんて、出来るわけが無い。俺は、何を頼りに生きていけばいいんだ」
千曳「その時、一人の女子生徒が彼の元に駆け寄って、こう言ったんだ」
千曳「貴方には、この一年間休まず鍛え続けた技術があるじゃない。私はそれを見続けた。腰を痛めていようと、休まず努力した貴方を見ていた。貴方には才能がある。だから、お願い、自信を持って」
千曳「ブラジルに、行きなさい。そう言った」
恒一「…………」
千曳「おお、話がそれてしまったね。呪いは、今の所わかっている限りで説明するなら」
千曳「「アリタ」が三年三組で恋をすると始まり、「アリタ」が普通ではなくなる。今のパターンは一年一緒だったが、一貫しないパターンもある」
千曳「理解、できたかな?」
恒一「……はい」
赤沢「わかった、榊原君。この現在の恐ろしさが」
恒一「尋常じゃないね……」
赤沢「私達は、有田さんを、あの普通少女有田松子を、普通じゃなくするわけには行かない」
赤沢「それが、クラスの総意なの」
クラス一同「…………」コクリ
赤沢「有田さんと直接的関わらないことね。これは男子一同のルールよ」
恒一「そうか、それなら、思ったより簡単そうだね」
赤沢「ええ、皆もお願い。なんとしても、有田さんの普通を守り抜くわよ!」
クラス一同「おおおおおおおお!!!」
教師「この問題、榊原説いて見やがれこの腐れイケメン」
榊原「円の面積を求めて、大きな円錐の体積を求めます。次に小さな……」
勅使河原「サカキ、お前すげぇな」
風見(バカな、わけがわからない)
赤沢(ふん、これくらい出来て当然よ。私だって、真剣に考えればきっと……!)
見崎(蝶々が飛んでる……)
教師「せ、正解だ……」
有田「…………」ボーッ
小椋「松子……? どうしたの? 心ここにあらずだよ?」
有田「ねえ、由美ちゃん、今日の私の占いさ」
有田「貴方の目線の先に、運命の人がいます。だったんだ。それでね、その……」
小椋(マズい……占いなんて外的要因……抑えきれないっ!?)
有田「今日、榊原君が気になってしょうがないんだ……」
有田「血液型も、星座も、昨日コンビニで思わず買っちゃった手相占いの本も、そう言ってるんだぁ……」ジーッ
恒一(見られてる……間違いなく見られてる……)
小椋(おのれ占い、適当な事を言いやがって!)
有田「ね、ねぇ、今目線が合ったよ! やっぱり運命かなぁ!」
小椋(榊原君も榊原君でチラチラこっちを見ちゃだめえ!)
有田「運命、だよね、やっぱり」
小椋(それはない。どっちかと言えば、呪いの類だよ……)
小椋(これは私の手に余る……増援を!)アイコンタクト
綾野(はっ!?)ジュシン
有田「うん、いいよ。ねぇ彩ちゃん、恋の運命って信じる?」
小椋(信じちゃダメ!)アイコンタクト
綾野「私は……そういうのはガラじゃないかなぁ」ジュシン
有田「そっかぁ……ねぇ、昨日榊原君と何か話してたよね。どんな人だった?」
小椋(適当に地味っぽく!)アイコンタクト
綾野「うん? んー、なかなか誠実そうな主人公タイプだったよ。 ありゃ天性のモテ男だね」ジュシンシッパイ
有田「主人公タイプ……」ポワァ
小椋(バカ! なんで素で言うの!)
綾野(だって嘘ついてもクラスメートだってらバレるじゃん!)
小椋(どうするの! 恋する乙女の顔になってる!)
綾野(うわぁ、まんま乙女だね)
小椋(感心してる場合か!)
有田「私、榊原君の事、もっと知りたい」
綾野、小椋(!?)
綾野「お、おう! この恋のキューピット彩に任せてよ!」
有田「いいの!? やったぁ! せっかくだから、ゆっくり話せる時間が欲しいなぁ」
小椋「じゃあ、明日は授業が少ないし、放課後に榊原君にも残ってもらおうよ!」
綾野「よし、じゃあこういっちゃんに伝えてくるよ!」
小椋(上手くマイナスイメージを作れるようにするんだぞ!)
綾野(オーケイ!)
有田「なに?」
小椋「話した事も無い人に、勝手に幻想を被せるのは、あんまり良くないよ」
小椋「みんなそういう事をしてるけど、実際に話して失望しちゃったら、悲しいだけだよ」
有田「……うん」
小椋「だから、明日ゆっくり榊原君と話すまで、運命だなんて思わないように、ね」
有田「そうだね。うん、そうするよ」
小椋(グッジョブ私!)
赤沢「状況はわかったわ。随分と食いついてきたわね、悪いことに」
小椋「もう正直お手上げだよ。明日、上手くイメージを崩さないと……」
恒一「ゴメン、僕のせいで……」
勅使河原「別にサカキは悪くないだろ」
勅使河原「この問題に、悪い奴なんていないのさ」キリッ
クラス一同「…………」シラー
赤沢「さて、それじゃあ、どういう風にイメージを崩していくか、だけど……」
榊原(皆、有田さん事が大事なんだな。そんな人と深く関わっちゃいけないなんて、ちょっと寂しいよ)
榊原(あれ? 階段の下から足音が?)
??「忘れ物しちゃったよー!」ドタバタ
榊原「うわぁっ!?」
??「きゃぁっ!?」
榊原(誰かわからないけど、マズい! 相手が階段を転げ落ちちゃう!)ガシッ
榊原「うわあっ」
ズルッ ズサササ ドシーン
榊原「う、うぅ……」
有田「怪我は無い? ゴメンね、ゴメンね! 私が上に乗っちゃって、危なっかしいし、本当にごめんなさい」
榊原「有田さん、有田さんこそ怪我は無い? ゴメンね、僕がちゃんと、有田さんの事を支えてあげられたらよかったのに。あ! 膝、怪我してる!」
有田「え? あ、本当だ……」
榊原「えっと水道は……あっちだね、僕に捕まって、有田さん」
有田「う、うん、ありがとう」キュンキュン
有田「うん、大丈夫だよ!」キュンキュン
恒一「心なしか、顔が赤いみたいだけど大丈夫? 熱は無い?」
有田「大丈夫、本当に大丈夫だってば」
恒一「そっか、家まで送ろうか? 仮にも階段から落ちたわけだし、捻挫くらいはしていても……」
有田「だだ、大丈夫だよ! 私、一人で帰れるからっ! じゃあ、また明日、楽しみにしてるんだからね!」タタタタ
恒一「行っちゃった……はっ!?」
恒一(いや、むしろあれは、気がつけば女の子の足に触れるという、僕にとって嬉しいだけで、有田さんからすれば気持ちの悪いイベントだ)
恒一(そもそも僕のせいで怪我をさせちゃったんだから、むしろイメージダウンだよね)
恒一「……僕も帰ろう。次があったら、必ず支えられるような、そんな男になろう」
有田「言っちゃった、言っちゃったよ! 「明日、楽しみにしてるんだからね!」なんて大胆な事を言っちゃったよ!」
有田「あぁもう! 明日が待ち遠しいなあ! 彩ちゃんの言ってた通りだ、榊原君は、かっこいい王子様みたいな、主人公タイプ……!」
有田「あ! 忘れ物! ……まあいっか、宝物みたいな思い出が出来たもんね!」
有田「榊原君、榊原恒一君……」キュンキュン
赤沢(おかしい。有田さんはいつも、クラスの中で早く学校にくる方のはず)
赤沢(それが、もう、遅刻ギリギリじゃない!)
赤沢(ましてや、今日は、約束をした日。遅刻なんてありえないはずだわ!)
赤沢(私の勘が、危険だと教えてくれる。何かが、起きる)
ガシャーン
赤沢(っ!?)
赤沢(やけに長いスカート、なんか持ってるヨーヨー……)
赤沢(しかも、きっと有田さんの知識に余りない分野だから、口調も仕草も中途半端!?)
スケバン有田「何見てんだ、ああん?」
赤沢(そんな……有田さんがガンをつけるなんて……)
クラス一同「…………」ポカーン
教師「えー、じゃあこの問題、ありt」
スケバン有田「あぁ? えっと……わかんねぇ……」
赤沢(もうただのヤンキーじゃない)
見崎(あのヨーヨー欲しいなぁ……)
スケバン有田「彩! 時間だぞ!」
綾野「は、はい! えっと、何の……」
スケバン有田「アタシはなぁ、今日この時の為に、学校に来てるんだよ! 約束があったろ、その、榊原との……」
綾野(あー、うん、中身はどこか松子だね)
赤沢(くっ、対策が追いつかない。とりあえず、必要最低限の面子を残して、クラスの皆は一旦引いて!)
クラス一同(了解!)
綾野(というか、部活……)
勅使河原(なんで、俺が必要最低限なんだよ……)
望月(何で合コンみたいに向かい合うの!?)
恒一(……これが、呪い)
有田「…………」ドキドキドキドキ
有田「み、見崎が欲しいって言ったからあげてやった」
勅使河原(大事な物じゃなかったのかよ)
小椋「そ、それで、何の話をしよっか?」
望月「そ、そうだね……何が良いかな?」
勅使河原「はぁっ!? あ、えっと、それよりも俺の話を聞いてくれ! 昨日さ、帰り道に花が咲いててさ!」
恒一「勅使河原君、お願い。好きなタイプの話をさせて」
小椋(な、何を企んでいるの?)
望月「え、えぇ!?」
勅使河原(サカキ、何考えてるんだ?)
望月(わかったよ、とりあえず従うよ)
望月「僕は、その、包容力があると言うか、僕の事を包み込んでくれるというか、ほんの少しだけ年上の人が好きかな」
綾野(ほんの少しだけは嘘だね)
望月「例えば、みか……えっと今の無し! うん、僕の好みのタイプの話終わり!」
女子(!?)
恒一「じゃあ、次。有田さん。有田さんの好みを、僕に教えてくれる?」ニコッ
有田「あ、アタシの好みなんて、聞いても……」
恒一「僕は知りたいな、有田さんの好み」
有田「お、おう……アタシは、その、優しい男がタイプだ。優しくて、でも、困った時に助けてくれて、カッコ良くて、親切な男が……好きだ」
綾野(もろやん)
望月(もろじゃないか)
有田「以上、だ……ほら、言い出しっぺの榊原、お前も言ってくれよ」
恒一「そうだね……あ、ちょっとトイレ行ってくるよ。僕の好みのタイプは、楽しみに待ってて!」タタタタ
勅使河原「おい! サカキ!」
榊原「よかった、居たんだね赤沢さん」
赤沢「当然よ。対策係の私がいないわけないじゃない。それより、どういうつもりなの!」
榊原「赤沢さん、強烈にビンタをしてくれ」
赤沢「はぁっ!?」
榊原「そう決心した筈なのに、有田さんを見ていたら、鈍っちゃってね……」
赤沢「恋が破れれば、呪いは解ける。そう考えているのね」
榊原「サンバ男はまともに会話が成り立たなかった。でも有田さんは違う。ちゃんと、会話できるし、好みのタイプだって言える」
赤沢「……いいわ、時間が無いんでしょう? ドギツイの一発かましてあげるから、さっさと有田さんを救ってきなさい!」
スパァンッ
恒一「……待たせたね」
勅使河原「おせーぞサカキ! ……って、どうした、その頬」
恒一「気にしないで、それより、僕の好みの話だったよね」
スケバン有田「…………」ゴクリ
恒一「僕は……無垢な幼女が好きだっ!」
小椋、綾野、望月、勅使河原(な、なんだってー!?)
そんな物は存在しない。無邪気に遊び回る彼女達ほど見ていて飽きないものはないだろう。僕はね、この場を借りて、こう宣言するよ。
世界中の子煩悩の親共。お願いだから、僕に貴方達の子供のプリティーベストショットを僕にください。やましいことはしないんです。ただ愛でるだけなんです。
僕の愛は、実際に受け止めてくれる幼女がいないんです。せめて、せめて愛しき写真にくらい、愛を囁いたっていいじゃないですか!」
恒一「ふぅ……」
綾野、小椋、望月、勅使河原、赤沢(…………)ポカーン
恒一「うん、欲望も混じってたけどね」
スケバン有田「そうか、わかった。用事を思い出したから、アタシは帰る。じゃあな」タタタタ
小椋「逃げるように、行っちゃったね」
綾野「乙女の恋、敗れたり……って感じかな」
勅使河原「サカキ……おまえ……」
恒一「こうするしか無かったんだよ!」
勅使河原「涙……出てるぞ」
恒一「……っ!?」グスッ
次の日、学校
赤沢(結局、あれから皆、流れ解散になってしまった)
赤沢(今日、有田さんがどういう形で入ってくるかで、今後の対策も変わる……)
赤沢(呪いが解けていれば、悲しい話だけれど、有田さんの恋は破れたという事)
赤沢(そうなってくれれば、後輩達に有益な情報を作る事が出来る)
赤沢(……嫌なものね、私は彼女がふられる事を望んでいる)
赤沢(もし、呪いが解けていなければ、「アリタ」の呪いは、一度恋をしたら、学年の終わりまで解けないという事。最悪のケースね)
赤沢(それとも、有田さんが、まだ……)
恒一「…………」
赤沢(榊原君も、心なしか緊張した様子ね……)
ガラララ
??「恒一おにーちゃーん! おっはよーっ!」
クラス一同「!?」
赤沢(なんという事……あれは、どう見ても普通には見えないわ!)
小椋(見た目が松子そのままなだけに……)
綾野(マニアックだね……)
見崎(幼児プレイ……)
恒一「有田さんっ! その、抱きつくのはちょっと……」
ロリ有田「えー、やだやだー! 松子、お兄ちゃんから離れたりしないもん!」
恒一(くっ…………)
ロリ有田「授業が始まってもするのーっ! そうだ、なら……ねえ、水野君」
水野「は、はいっ!」
ロリ有田「恒一お兄ちゃんと、席を交換して」
恒一「そんな事、出来るわけが……」
赤沢(ぶっちゃけ、現象のせいだし出来るわ)
ロリ有田「あっ! せんせーっ! ねぇ、松子のお願い聞いてくれる?」
ロリコン久保寺「うん! いいよっ!」ニッコリ
ロリタ「水野君の席と、恒一お兄ちゃんの席を交換してほしいんだ!」
ロリ寺「もちろんおっけーさ!」ニッコリ
ロリタ「やったーっ! お兄ちゃん、これで隣同士だね!」
恒一「あぁ、うん……そうだね」
恒一「ねえ、有田さん」
ロリタ「んー? なぁに、お兄ちゃん」ギュー
恒一「どうして、席がずれて、僕の席にくっついてるの?」
ロリタ「松子ね、今日の用意を全部忘れて来ちゃったの! だから、お兄ちゃんの教科書を見せてもらうんだ!」
恒一「じゃあ、どうして僕にくっついてるの?」
ロリタ「え? 何でそんな事を聞くの?」
小椋(授業中くらい、静かにしてほしい限りね……)
佐藤(黒板が見えないわ……)
見崎(有田さん、アホ毛が立ってる……)
ロリタ「お兄ちゃん、あーんしてっ!」
恒一「えぇっ!?」
ロリタ「後でお兄ちゃんにもあーんしてあげるから、お願いー」ギュー
恒一「もう、仕方が無いなぁ、ほら、あーん」
ロリタ「あむっ! えへへ、おいしいね!」
綾野(すっかりこういっちゃんが懐柔されてるね。午前中抱きしめられ続けたのは、やっぱり影響があったのかな?)
赤沢「おい、中尾!」
中尾「イエス、ボス」シュタッ
赤沢「千曳先生に、現状を伝えに行きなさい。そして、どうにかする方法を聞く事。三十秒で図書室まで、良いわね?」
中尾「イエス、ボス」ヒュオン
赤沢(もっとも、対策案なんて、一つしか無いでしょうけど)
ロリタ「お兄ちゃん、もう一回食べさせてっ!」ウフフ
恒一「えーっ、僕まだ食べさせてもらってないよ」アハハ
赤沢(有田さんは、榊原君の事を諦めていない)
ロリタ「仕方が無いなぁ、お兄ちゃんは。ほら、あーんっ!」ウフフ
恒一「ありがとう、有田さん」アハハ
ロリタ「だーめっ! 『松子』って呼んでくれるまで、食べさせてあげないっ!」ウフフ
恒一「松子……さん?」
ロリタ「だめ! 呼び捨てっ!」
恒一「お願いだよ、松子」
ロリタ「仕方が無いなぁっ! あーんっ!」
赤沢(でも、私はあんなに楽しそうな榊原君に、もう一度有田さんを振れって言うの?)
小椋、綾野(わかったよ、泉美)
廊下
赤沢「……見ての通り、呪いはかかったままよ」
小椋「……うん」
赤沢「友人として、二人に聞くわ。どうすればいいと思う?」
綾野「私は、このままでいいと思うよ」
小椋、赤沢「えっ……」
綾野「松子のあの姿。昨日、こういっちゃんがああ言ったから、ああなったんだと、私は思う。そう考えてみれば、あのスケバン松子も、きっと『伝えたい事を伝えたい人に伝えれる自分』のイメージなんじゃなかったかな。根っこの所で松子のままだったから、失敗だったけど」
綾野「だから、私が思うに松子は、こういっちゃんに好かれる自分になろうとしてるんだよ。それは、現象なんて関係ない、普通の恋愛でもする事だ」
小椋「私は……彩の意見には反対かな」
小椋「私の知ってる松子は、あんな前向きに、好きな男子に抱きつけるような、そんな恋が出来る子じゃない。なら、あれは現象が引き起こした、偽物の松子の姿だよ。今は良いかもしれないけれど、卒業した後、松子がすべてを知った時に、絶対に悲しむ」
小椋「松子の為を思うなら、私は榊原君が、もう一度松子をふるべきだと、思う」
中尾「……ボス、ミスター千曳から伝言が」ヒュオン
赤沢「聞くわ」
中尾「『榊原君だって、事情はわかっているはずだ。これはもう、クラスの問題というよりは、二人の問題だ。あまり口をはさむべきではない』だそうです」
赤沢「……そう、下がりなさい」
中尾「イエス、ボス」ヒュオン
赤沢「……わからないわ。何が正解なのか、わからない。現象のパターンが掴めていないのもあるけれど、私は心のどこかで、私の都合で榊原君が有田さんをふる事を望んでいる。こんな精神状態じゃ、対策係として正しい判断が出来ない」
赤沢「無能と罵ってくれて結構よ。私には、その自覚がある」
綾野「そんな事、無いよ。今日、もう一度クラス会議を開こう」
小椋「そうだね、まだ呪いは始まったばかりだもん、どうにかなるよ」
ロリタ「おにーちゃーんっ! 一緒に帰ろっ!」
恒一「……うん、良いよ!」
ロリタ「えへへ、やったぁ!」
恒一「…………」
ロリタ、恒一「ねえ」
恒一「有田さんから、言ってよ」
ロリタ「『松子』って呼んでくれなかったから、お兄ちゃんから言ってっ!」
恒一「……松子は、今、幸せ?」
ロリタ「うん? 松子はお兄ちゃんさえいれば、幸せだよ?」
恒一「じゃあ、君の中の『有田さん』は今、幸せ?」
ロリタ「何の事を言ってるの? 松子は松子だよ? 変なお兄ちゃん、怒っちゃうよ?」
恒一「ごめんごめん……じゃあ、松子は何を聞きたかったの?」
ロリタ「お兄ちゃん……今日の私、どうだった?」
恒一「どうって?」
ロリタ「お兄ちゃんの好きな私だった? お兄ちゃんにとって特別な私だった? お兄ちゃんが好きになれる私だった?」
恒一「……有田さん?」
ロリタ「松子は松子だよ。お兄ちゃん、昨日、嘘ついたの?」
有田「昨日、お兄ちゃん言ったよね。幼い子が好きだって。愛してるって」
有田「だから私、頑張ったんだよ。榊原君が好きになってくれるような、そんな女の子になりたいって、すっごく頑張ったんだよ」
有田「でも、今日の榊原君、ちっとも嬉しそうじゃない。ずっと、寂しそうな目で私の事を見ていた」
有田「ねえ、私は、何に失敗しちゃったの? まだ、私は普通の女の子なの?」
恒一「有田さんっ!?」
有田「ごめんね! 私、先に帰るっ!」タタタタ
恒一(今、ほんの少しの間だけど、『普通の有田さん』だった気がする)
恒一(僕は、どうすればいい? 僕は有田さんに何が出来る?)
恒一「そうだ、怜子さんなら、昔の呪いの事、知ってるかも……」
恒一(まだ、部活にいるかな。家にいるかな……あぁ、望月が今日は休みだって言ってたっけ)
恒一「急いで、家に帰ろうっ!」
恒一「はぁっはぁっ、怜子さんっ!」
怜子「おかえり恒一く……どうしたの? そんなに走ったら、また体がっ!」
恒一「今はそんな事は良いんだッ! お願いだよ、怜子さんが中学三年生だったころ、何組だった?」
怜子「そんな事って……えっと、三組だったわ」
恒一「なら、『アリタの呪い』を見たんだよね?」
怜子「ええ……受験勉強に、とても触ったわ」
怜子「そうね、私が教えられる事なんて限られているけど……」
怜子「私達の代の「アリタ」は一目惚れだったわ。今はブラジルにいるんだったかしらね、この前テレビに出ていたわ」
怜子「一目惚れされた女の子は、私の友達だったんだけど、最初は本気でうざがってたわね」
怜子「まぁ、クラスの中で大音量でサンバの音楽を流され、踊られるわけだから、嫌に決まってるわよ」
怜子「でも、その原因も女の子に有ったのよ」
怜子「運が悪かったと言うか、なんと言うか。三年三組になった頃、丁度五年とか呪いがない年だったから、アリタの呪いの事は七不思議程度にしか思ってなかったのよ」
怜子「あの子、その頃ダンスに嵌っててね。いっつもその話を、していたわ。そして、いつものようにおしゃべりをしていて、『ダンサーってかっこいい』って話をしたのよ」
怜子「次の日、サンバ男が現れたわ」
怜子「うん、そっからはどうしようも無い日々だったわね。来る日も来る日もサンバサンバサンバ。飽きたわ」
怜子「会話もまともに出来ないし、彼を止める手段は無かったの……あれ? でも、一回何かあったわね……何だったかしら」
怜子「ごめんなさい。何せ十五年も前の話だか ら、覚えて無いわ。知り合いに確認しておくか ら、ちょっと待ってて。来週には伝えれるよう にするから」
恒一「……わかった」
怜子「貴方に差し迫った事だから、しょうがな いとは思うけど……普通に、面と向かってふる、 で解決出来ないの?」
恒一「それは、出来ないよ」
怜子「でも、ただのクラスメイトでしょう? 理由もあるし、クラスに居づらくなるわけじゃ ……」
恒一「違うんだよ、怜子さん」
怜子「えっ?」
恒一「僕は、いつからか……有田さんをふるなん て選択肢を、無くしちゃったんだ。それに、そ の選択肢を選ぶつもりも、無い」
怜子(同じね、なんだかデジャヴ……)
怜子(15年前の、あの時と一緒)
怜子「さぁって、私は私にやれることをしますか!」
怜子「卒業アルバムの名簿、片っ端から電話してやるんだから!」
恒一(今日は、有田さんどんな有田さんなのかな……)
怜子「待って! 恒一君! 一つ伝えないといけないことが!」
恒一「れ、怜子さん!? 学校に行ってたんじゃ……」
怜子「ええっと……有給?」
恒一「公立中学教諭にあるんですか!?」
恒一「何かわかったんですか……」
怜子「一度ね、教師が集まって、踊りを止めさせようとした事があったの。強引に捕まえてね」
怜子「それで、体育教師が彼を抱えるようにして、その踊りを止めた時、彼の雰囲気が変わったわ」
怜子「「君達が抱きしめたって、彼は変わらないよ?」そう、踊りを止めて、言ったらしいの。驚いた体育教師が放した瞬間、元通り踊り出したんだけど……」
恒一(抱き締める……)
怜子「ええ、行ってらっしゃい、恒一君!」
恒一「はい!」タタタタ
怜子「恒一君! 私達の代の彼と彼女!」オオゴエ
恒一「怜子さん?」トオイ
怜子「今でもブラジルで元気に暮らしてるから! 子供は二人いるから! 呪いのせいでメチャクチャだったけど、二人とも、後悔してないから!」
恒一「……ありがとうございます、怜子さん」タタタタ
怜子「徹夜はもうきついね……年かな……」
怜子「二人とも、元気だったしな……結婚かぁ……」
怜子「まずは、恋人かぁ……はぁ……」
恒一「ねぇ、赤沢さん」
赤沢「おはよう、榊原君。一応、貴方に報告しなきゃいけない事があるの」
恒一「報告?」
赤沢「昨日のクラス会議で正式に決まったわ。有田松子の現象を、貴方に任せる。クラスの皆は、その現象に対しては、通常通り接し、呪いを解くも、このままにするも、貴方次第。ということよ」
恒一「……わかった、ありがとう」
赤沢「貴方からの質問は?」
恒一「あぁ、今日の……午前中の間かな、有田さんと一緒に授業を離れてもいいかな?」
赤沢「現象絡みなら大丈夫よ。でも、一体何を……」
恒一「僕に任せてくれるんだろう?」
赤沢「っ! ……そうね、私ももう対策係では無いんだったわ。好きにしなさい」
オトナ有田「おはよう、恒一君」
恒一「おはよう、有田さん」
小椋(大人っぽく制服の胸元を開いているけど……松子、貴方には似合わない……)
綾野(ロリでダメだったから、望月君に言った言葉を元に、オトナにして来たのかな)
恒一「有田さん、ちょっと大事な話があるんだ。来てくれる?」
オトナ有田「ええ、いいわよ」
オトナ有田「それで、話は何? 恒一君」
恒一「有田さんは、僕の事が好きなんだよね」
オトナ有田「……ええ、そうよ。わざわざ言わせるなんて、酷いのね」
恒一「そっか、じゃあ、ちょっと失礼するよ」ギュッ
オトナ有田「えっ!? あ、う……」
??有田「……よく気がついたね。ついでに僕が誰だかわかるかい?」
恒一「有田さん……じゃない、有田さんはいつも、性格の核は有田さんだった。お前は誰だ?」
有田岬「岬だよ。有田岬。最初の「アリタ」であり、呪いの根源。そして、「アリタの呪い」だ」
恒一「お前は、有田さんを元に戻せるのか?」
有田岬「戻せるよ。そして、「アリタの呪い」自体を消し去る事も出来る」
恒一「それは、どうやって……!」
有田岬「そう焦るな。なに、簡単な事さ」
有田岬「元々僕は、「アリタ」が望む姿になる手伝いしか出来ない。ダンスを上手くなりたいなら、ひたすらダンスをやらせる気にさせる。強気になりたいなら、強気にさせる」
有田岬「自分に自信があれば、何も変わりはしない」
有田岬「元に戻す方法も、簡単だ。呪いの力を逆手に取ればいい。普通な「アリタ」を肯定してやればいい。アリタが望むほどにね」
有田岬「そして、そうすれば、僕自体も消え去る。有田松子が救われ、アリタの呪いに終止符が打たれる、そんなハッピーエンドさ」
有田岬「この期に及んで僕の心配までするのかい? そりゃ、女性にモテるわけだ。僕も見習えば良かった」
有田岬「僕はこうして、普通じゃない呪いとなった。夢は叶ったんだ。最初の数年間は、そりゃ楽しかったよ。自分と同じ「アリタ」を、普通じゃなくせるんだから」
有田岬「でもね、ある時、「アリタ」が死んじゃった。僕の事を拒絶する余り、卒業式の後に、自殺した」
有田岬「……自分を見ている気分だったよ。そして気付いた。「普通とは、なんて幸せな日々だったんだ」ってね」
有田岬「笑えるよね、呪いになってから、そんな事に気づくなんて、遅すぎる」
有田岬「自分を消し去る方法を知っても、抱きしめてくれなきゃ伝えられない。そもそも普通じゃなくなったアリタには、誰も近寄らない」
有田岬「榊原、あの子の息子なんだろ? 顔立ちが似てるよ」
恒一「まさか、お前の好きだった人って……!」
有田岬「君のお母さんさ、もう死んじゃったけどね」
有田岬「君が何をすればいいか、わかるかい?」
恒一「わかる、けど……なんて言えば良いか……」
有田岬「簡単さ、君の言葉で伝えれば良い。僕には出来なかった、ね。それじゃ、お別れだ」シュウウウ
恒一「そんな、待って!」
オトナ有田「う、ううん……恒一、君?」
オトナ有田「私、恒一君に、無理をさせてまで、解こうとは……」
恒一「違うよ。有田さん」
オトナ有田「え?」
恒一「僕は、本当の有田さんと一緒にいたいんだ。呪いを解くとか、そんなの関係無しで。だって僕、その状態の有田さんと会話したの、あの階段の時だけなんだもん」
恒一「いろいろあったし、本当の有田さんに伝えたい事があるんだ。僕の、気持ちを伝えさせて欲しい」
オトナ有田「何で、私のかぁ…為にそんな……」
恒一「有田さんが、僕のことを好きでいてくれたから、だよ」
オトナ有田「恒一君はずるいよ……」
恒一「ずるいのは有田さんだよ。僕の為に僕好みの女性になろうとした事は嬉しいけれど、これじゃあ、僕は本当の有田さんとお喋り出来ないんだよ」
恒一「一つ、教えてあげる。皆はやれイメージがどうのこうの言っていたけど、僕は階段で会った次の日のお喋り、楽しみにしてたんだよ。皆が大事にする、有田さんが、どんな人かやっとわかる、ってね」
オトナ有田「あの時は、私も……」
恒一「ううん、いいんだ。僕は、もう帰るよ。有田さんは授業を受けてく?」
オトナ有田「……ううん。私も、帰るよ」
恒一「そっか、一緒に帰る?」
オトナ有田「……それも、いい。私は、早く私に戻らないといけないから」
恒一「わかった。じゃあ、また明日だね」
オトナ有田「ええ、また明日」
恒一(やっぱり、早すぎたかな)
恒一(でも、僕告白とか初めてだし、緊張して寝れなかったし……怜子さんに相談しようにも、爆睡してるし……)
恒一(何て言えば良いんだろう……いや、そもそも有田さんが来てくれるかな……)
恒一(有田さんに、本当の有田さんで来てほしいなんて、嫌なお願いだったかな……)
恒一(ううん、これで良いんだ。僕は、本当の有田さんに告白したいんだから……)
恒一(あ、案の定校門が閉まって……あれ?)
恒一「有田、さん……」
恒一「早いね、やっと空が明るくなり始めたのに」
??有田「それを言ったら、榊原君もだよ。……えっと、その、お久しぶりです。私が、有田、有田松子です」
恒一「三日ぶりだね。元気そうで良かったよ」
有田「ゴメンね。迷惑かけちゃったみたいで……」
恒一「良いんだよ。こうして、今ここで有田さんと、向かい合って話せてるんだから」
有田「……うん」
恒一「僕は有田さんが好きです。
僕のことを好きになってくれた有田さんが好きです。
僕の好みに合わせようと必死になってくれる有田さんが好きです。
ロリタさんぶっちゃけ好みでしたでも有田さんのほうがもっと好きです。
この数日間しか会話してないし、しかも本当の意味ではなせたのもほとんど無い。
でも、僕は確信を持ってこう言います。
有田さん、一生幸せにするから、僕も幸せにしてください!」
恒一「有田さ……松子って呼んでもいい?」
有田「もちろんだよ、恒一君!」
有田「ずっとずっと、幸せでいようね!」
Aritar おわり
イチャイチャは脳内でなんとかしてくれ
ついでに有田さんのSSをいっぱい書いてくれ
Entry ⇒ 2012.07.26 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (3) | Trackbacks (0)
綾野「てっしーイケメンなのにね」
引用元: ・http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1343123728/
勅使河原「髪を明るくしてみたり」
勅使河原「服にも力入れてみたり」
勅使河原「気さくな雰囲気をだしているのに」
勅使河原「なぜだ……」
綾野「え?はっきり言っちゃっていいの?」
綾野「そもそもバカはモテないよ?」
勅使河原「」
綾野「それに服に力入れたみたいなこと言ってるけど実際センスないし」
勅使河原「」
綾野「やっぱこういっちゃんがいるからさあ」
綾野「こういっちゃんのスペックの引き立て役になっちゃうんだよ」
勅使河原「だよなあ……」
綾野「忘れてた、帰宅部のエースってのも後押ししてるね」
勅使河原「」ガクッ
綾野「こういっちゃん肺がどうのこうの言ってたじゃん」
綾野「しょうがないよ」
勅使河原「それもそうだな」
綾野「でもてっしーはなんにもないのになんにもやってない」
勅使河原「うぅ……」
綾野「てっしーイケメンなのにね」
勅使河原「だろ?だろ?」
綾野「こういっちゃんがいなかったら良かったのかもねー」
勅使河原「……」
綾野「?」
勅使河原「綾野……」
勅使河原「こういう状況なんだからさ、冗談でも◯◯がいなかったら良かったなんてのはよしとこうぜ」
綾野「あ……ごめんね……」
小椋「関わりあんまりないけどなんか性格もチャラそうじゃない?」
小椋「じこちゅーっていうか?」
綾野「え~そんなことないよ」
小椋「内面なのになんでわかるのよ」
綾野「昼休みのときにお話してたんだけどね、」
綾野「なかなかはっきり指摘できる人は少ないと思うよ」
小椋「それにしても酷い失言ね」
小椋「泉美あたりに聞かれてたら大変なことになってそうね」
綾野「泉美好きだもんね、こういっちゃんのこと」
小椋「それもあるけど……」
綾野「あはは、わかってるよぉ……次から気を付けますっ!」ビシ
綾野「そうなんだよね」
小椋「東京の偏差値トップの男子校」
綾野「背も低くないし」
小椋「優しいし行動力溢れる」
綾野「おまけに学年一のイケメンときた」
小椋「信じられないほど高スペックね……」
綾野「私では手が届かないよ……」
小椋「私もよ……」
小椋「アホだしうるさいしダサいし」
綾野「運動神経はそこそこ良かったよね」
小椋「まあね」
綾野「なんで部活入ってないんだろう」
小椋「あれ、あんた知らないの?あいつバスケ部だったわよ」
小椋「確かね……」
小椋「俺はオトコを極めるッ!!」
小椋「とか言って3週間で」
綾野「」
小椋「髪の毛とがりだしたのはあのときからかしら」
綾野「てゆーか、なんでそんなに知ってるの?」
小椋「私もほんのちょっとバスケ部だった時期があったのよ」
綾野「やっぱ運動神経はいいんだ~」
綾野「由美はなんでやめたの?」
小椋「え、だって私運動神経クラスで最下位クラスよ?」
小椋「もーついていけなーい!ってなったのよ」
綾野「へえ~」(こういっちゃんに勝てるてっしーの長所見つけたかも!)
勅使河原「んーまあ球技や身体能力なら俺のほうが上かもな」
綾野「かもって?」
勅使河原「あいつ体育の授業受けてないからな」
綾野「あ、そっか」
綾野「いっちゃ悪いけどヒョロかな?」
勅使河原「……と思うだろ?」
勅使河原「ケンカっつーか中尾が殴りかかってきたんだけどな」
綾野「うんうん」
勅使河原「そのパンチを片手ではたいたかと思えば次の瞬間」
勅使河原「中尾が尻餅をついて倒れていたんだ」
綾野「すご……」
勅使河原「男子全員ポカーンとしてたよ」
勅使河原「聞いてみたら小6のときに黒帯とったとかなんとか」
綾野「」
勅使河原「不意打ちでも勝てる気がしねえよ」
綾野(新たなスペックが……)
勅使河原「そろそろ次の授業だ、行こうぜ」
綾野「調理実習なんだっけ、急がなくちゃね」
勅使河原「そうだ、料理上手くなればモテるんじゃね?」
綾野「それ!それだよてっしー!」
多々良「すごいね……榊原くん……」
桜木「私より断然上手いですね……」
風見(ひそかに練習したんだけどな……無駄になっちゃったか……)
川堀「俺に毎日味噌汁を作ってくれ榊原!」
高林「フェアじゃないよ……」ブツブツ
小椋「すごいわねー恒一くんってなんでもできて」
赤沢「そうでしょう!」フフン
小椋「なんであんたが得意気なのよ」
勅使河原「」
綾野「まあこんなこんなことだろうと思ってたけど」
水野「料理部か?いろいろと器用なやつだな」
見崎「……」ヒョイパク
川堀「あ!なに食ってるんだてめえ!」ヒョイパク
多々良「もう!つまみ食いはだめですよ」ヒョイパク
高林「これはこういう流れだよね」ヒョイバク
シーン……
高林「あれ?」
赤沢「無くなったじゃない、どうしてくれるのよ……」ゴゴゴ
高林「フェアじゃない……フェアじゃないいいい!!」
小椋「多々良さんや桜木さんも狙ってくるんじゃないかしら」
勅使河原「川堀にもな」
小椋「……大変なこともあるのね」
勅使河原「お前らは狙ってないのか?サカキを」
綾野「そういうことをじかに聞くもんじゃありませんーだ」
小椋「まさか、釣り合わないわよ私となんかじゃ」
小椋「ありがと」
勅使河原「反応薄いな……」
綾野「だっててっしーだもん?」
小椋「その通りね」
綾野「こういっちゃんだったら今ごろ由美顔真っ赤だよ~」
小椋「そんなことないわっ//」
勅使河原「……」
勅使河原「リコーダーとサカキがなにかあったのか?」
小椋「リコーダーが名前通りやらかしたわ」
綾野「うわお」
勅使河原「それは……」(正直羨ましい……)
小椋「そしてバレたんですって恒一くんに」
綾野「あっはあっ!」
勅使河原「綾野……お前案外性格悪い?」
勅使河原「……」
小椋「許してもらったらしいわよ」
綾野「なーんだつまんないのー」
小椋「あと次からやらないかわりに恒一くんの私物を貰えるようになったとか……」
綾野 勅使河原「……は?」
小椋「恒一くんのリコーダーも買い換えずそのまま」
綾野 勅使河原「はあああああ!?」
小椋「女子の目は冷たくなるわよ」
綾野「そんなことぐらいで……」
勅使河原(楽器か……)
小椋「そんなことって、あんた……」
勅使河原「そうだよ!楽器だよ!」
綾野 小椋「!」ビクッ
小椋「女子の目は冷たくなるわよ」
綾野「そんなことぐらいで……」
勅使河原(楽器か……)
小椋「そんなことって、あんた……」
勅使河原「そうだよ!楽器だよ!」
綾野 小椋「!」ビクッ
勅使河原「どうして気づかなかったんだ!」
小椋「……それいいかもしれないわね」
勅使河原「だろ?」エアギター
綾野「ギターピロリロピロリロ鳴らすのカッコ良さそう!」エアギター
勅使河原「いって、こぶしぶつけた……」
小椋 綾野「……」
綾野「あーあるかもね」
勅使河原「後でさりげなく聞いてみるよ」
小椋「一応、恒一くんのスペックまとめておきましょうか」
綾野「学年一のイケメン、身長170ほど、偏差値トップクラスの男子校、小学生のころに黒帯、料理上手い、性格良し」
勅使河原「改めてみるとやベーな」
勅使河原「おっす!サカキに鳴ちゃん!」
恒一「やあ勅使河原」
見崎「ん……」チラ
勅使河原「ギターやろうかなって思うんだけどサカキなにか知ってっか?」
恒一「いやあ……ギターは触ったことないからなあ」
勅使河原「そっかあ、それは残念だっじゃあな!」ニタニタ
恒一「なんだったんだ……」
見崎「でも榊原くんピアノうまいよね」
恒一「はは……言うほどでもないよ……」
勅使河原「じゃーん!」
綾野 小椋「おー」パチパチ
綾野「へーカッコいいギターだねえ~」
勅使河原「最初だけどな……10万くらいのやつを買ってきたぜ」
綾野「たかっ」
小椋「アンプあるわよ」ドサ
勅使河原「いや、まだ弾けるわけないだろ……」
綾野 小椋「そりゃそうか……」
ガチャ
赤沢「あら、いたのね彩に小椋」
赤沢「……に勅使河原?なにやってるの部室で」
赤沢「ここは音楽部じゃないわよ」
勅使河原「ああ、わりいわりい」ガタガタ
綾野「別に帰んなくて良くない?」
小椋「まあ居てなにかあるわけでもないしね」
赤沢「……まあいいわ」
赤沢「こんどの劇の話だけど、」
赤沢「劇中にピアノを弾いてくれる人が決まったわ」
綾野 小椋「おおー」パチパチ
勅使河原「ピアノも良かったかもな」
小椋「でも小さい頃からやってないと難しいんじゃないの?」
赤沢「ちょっと聞いてる?」
綾野「ごめんね泉美」アセアセ
小椋「それでなんの話だっけ……」
赤沢「」ピキ
赤沢「」ギロ
勅使河原「俺が悪いのか……?」
綾野「それで、誰?」
赤沢「恒一くんよ!」ドヤァ
綾野 小椋 勅使河原「」
赤沢「なんでもコンクールで賞を取ったとかなんとか……」
赤沢「ちょっと……なんで勅使河原泣いてるの……?」
勅使河原「うう……」
綾野「おーよしよし」ナデナデ
小椋「尋常じゃないわね」
勅使河原(いや女の子はそういうものか)
勅使河原(俺がどんなに頑張ってもゲットできなかったこの感触を)
勅使河原(あいつはいとも簡単に手に入れるんだろうな)
勅使河原「うう……」
綾野「てっしー……」
小椋「マジ泣きだよ……」
綾野 小椋「……」
赤沢「……」
赤沢「勅使河原、」
赤沢「別に恒一くんに勝たなくてもいいんじゃないの?」
勅使河原「!?」
勅使河原「……」
赤沢「でもね、そんな人なんてたくさんいるわ」
赤沢「私たちがどんなに努力しても決してこえることの出来ない存在だっている」
赤沢「それでもあなたの長所はあなたの長所よ」
赤沢「一番できなきゃいけないわけじゃないの」
赤沢「ほら、あなたのそのポジティブさも立派なステータスよ」ニコ
綾野「さすが泉美だなあ」
小椋「格が違うわね」
赤沢「なに言ってんのよあんたたち、ほら練習始めるわよ」
綾野「おっけーばいばいてっしー」
小椋「またねー」
赤沢「ふふ、まあ頑張りなさいな」
勅使河原「おう!じゃあな!」
ヘイパス!ヘイパス!……ナイッシュー……
勅使河原「バスケか……」
勅使河原「あのときは途中でやめちゃったんだよな……」
ガラッ
水野「勅使河原じゃないかなにやってんだこんなところで」
勅使河原「ちょっと懐かしいなーって思ってな」
水野「ハハハ、そんなに長くはやってなかっただろ」
水野「一人早退したんだ、かわりにコートに入らないか?」
勅使河原「いいのか?」
綾野「てっしーギター忘れてるよ」
小椋「相変わらず抜けてるわねー」ハア
赤沢「しょうがないわ届けにいきましょう」
ナイッシュー
赤沢「今日は一段とバスケ部の声が大きいわね」
小椋「あ、あいつバスケやってるよ」
綾野「お、てっしーナイスシュート!」
水野「ああ、これで体力あったら俺でも危ないかもしれんな」
勅使河原「だろ?だよなあ?」
赤沢「フンッ」ゴス
勅使河原「ふぐおっ」
小椋「少しは謙虚さを持ちなさいよ」
勅使河原「ワ……ワルイワルイ……」
綾野「ばいばーい」
赤沢「頑張りなさいよ」
小椋「デジャヴ……」
綾野「てっしー……ちょっといいかも……」
小椋「なになに?どうした?」
綾野「な……なんでもないよーだ」
赤沢「ふふ……」
恒一「この鼻か」グイッ
有田「さ……さかきば……痛い痛い!つねらないで!」グググ
恒一「」スッ
有田「やっぱやめないで!」
小椋「恒一くんの新たなスペックがどんどん発掘されるたびに声かける人が減ってってるわね」
綾野「手が出しにくくなったのかもね」
勅使河原「見崎、赤沢、多々良ってところか」
綾野「リコーダーもいるよ」
川堀「俺もいるぜ」
綾野 小椋 勅使河原「帰れ」
綾野「女子三人のほうもスペック高いもんね」
小椋「まーた泉美声かけれなかったのね」
勅使河原「案外やるよな多々良」
綾野「鳴ちゃんと泉美の組み合わせも珍しくなくなってきたね」
小椋「そうね」
勅使河原「最初は意外だったんだがなあ」
勅使河原「おう、部活頑張れよ」ニッ
綾野「あ……ありがと//」
小椋「あは」ニヤニヤ
有田「ああっギブギブ!」ペシペシ
恒一「もうやらない?」
有田「やるに決まって……ああっ……もっと絞めて!」グググ
勅使河原(お盛んだなぁ……)
恒一「あっ、じゃあね勅使河原」ギシギシ
勅使河原「ほどほどにしておけよ……」
恒一「有田さんがやってほしいんだって」ギシギシ
恒一「あんまり気乗りはしないんだけどやらなきゃ縦笛舐めるっていうし……」
有田「ああっもっ……と……もっと!」
勅使河原(うわあ……噂以上の変態だー)
勅使河原「……」ジャンジャジャンジャローン
勅使河原「なっつの日のキミにー!」ジャラーン
勅使河原「ふう……」ジャラーン
勅使河原(サカキは歌も上手かった)
勅使河原(結局身体能力も俺と同じくらいだった)
勅使河原(あいつの苦手なものをいまだ見たことがない)
勅使河原「赤沢に言われたのに……」
勅使河原「心の底ではまだ張り合ってんだよな……」
勅使河原(いつのまにか綾野や小椋、赤沢とまで仲良くなっていた)
勅使河原(少しは羨ましがられるレベルか?)
勅使河原(それでも……)
勅使河原(友達止まりだよな……)
勅使河原「……」
綾野『上手だったねてっしー』
綾野『ばいばいてっしー』
綾野『おーよしよし』
綾野『てっしーイケメンなのにね』
勅使河原「綾野……」
勅使河原「やたらとあいつの顔が思い浮かぶ」
勅使河原「俺は……綾野が好きだったのか」
綾野『実際センスないし』
綾野『帰宅部のエースってのも後押ししてるね』
綾野『なんにもないのになんにもやってない』
綾野『こういっちゃんのスペックの引き立て役になっちゃうんだよ』
勅使河原「……」
勅使河原(張り合っているようで……)
勅使河原(実際はただ羨ましがっていただけの……)
勅使河原(あいつは小さい頃からコツコツ頑張っていたのに……)
勅使河原(それを才能だなんだと決めつけて……)
勅使河原(たいした努力もしない)
勅使河原(そんな自分だったが……)
勅使河原(今の俺を……綾野は認めてくれるだろうか?)
勅使河原「ん?」
小椋「いつ彩に告白するの?」
勅使河原「ぶはっ!」ゴホゴホ
小椋「あ~こりゃ確定かあ」
小椋「ともかく彩、ずっと待ってるよ」
勅使河原「でもなあ……今の俺じゃあな……」
小椋「あーんもう!謙虚になりすぎ!」
小椋「ポジティブでストレートなとこが数少ないあんたの長所だったのに」
綾野「なあに?てっし……」
勅使河原「放課後、屋上で待ってるから」ボソッ
綾野「えっ//」
小椋(こういうのはあっさりいくのね)
小椋(流れがなかなか清々しいわ)
赤沢「あら、勅使河原どこいくの?」
勅使河原「ちょっと屋上にな人を呼び出してるんだ」
赤沢「ふーん」
赤沢(屋上に?決闘かしら……?)
赤沢「あら、彩どこいくの?」
綾野「ちょっと屋上に~//」
赤沢「!」
赤沢「ふふん、良かったじゃない」
綾野「なっ//」
赤沢「はやく済ませてらっしゃいよ」
勅使河原「……」
綾野「話って……なにかな……?」
勅使河原「……」
綾野「ま……まさか決闘?勘弁してよ~」アハハ
勅使河原「……」
綾野「てっしー……?」(こっち向いてよお……)
勅使河原「綾野っ」クルリ
綾野「!」
勅使河原「好きだっ付き合ってくれっ!」
勅使河原「!?」
綾野「ほーんとてっしーセンスなくてやんなっちゃう」スッ
勅使河原「わ、悪い……」
綾野「普通屋上に呼び出すかなあ~」
勅使河原「すまん……」
綾野「おまけに前フリなしにいきなり告白しちゃう?」
綾野「ロマンとはかけ離れてるよねてっしーは」クスッ
勅使河原「」ガクッ
綾野「でも……」
勅使河原「!」
綾野「こっちからもお願いさせてもらうね//」
綾野「あたしと……付き合ってください……」
勅使河原「綾野っ!!」ダキッ
綾野「きゃあっ」
勅使河原「離さないぞー!」ギュ
綾野「もー遅くなったら泉美に怒られちゃうよお//」
勅使河原「自分でもなかなか熱いカップルに慣れたと思っている」
勅使河原「高校は勉強を頑張って彩の志望校に合わせることに決めた」
勅使河原「まだまだ頭は悪いが努力してなんとかする!」
綾野「てっしーさっきからなに一人でぶつぶつと……」
勅使河原「なんでもないさ、さっ行こうぜ!」
綾野「引っ張んないでよ~」
小椋「まーなんて幸せそうな顔」フフ
赤沢「羨ましいわあ、ほんと」フフン
教室にて
有田「榊原くんのリコーダー……」ハアハア
有田「ちゅるっ……れろ……れろ」
恒一「この口か」グイッ
有田「ごめんなひゃい……ゆふひへ……」グイグイ
恒一「しょうがないなあ……今回だけだよ……?」スッ
有田「榊原くんの指……」ペロリン
恒一「」
有田「?」
有田「いふぁい!いふぁい!ぎふ!ひふ!」グリグリ
有田「もっふぉやっふぇ~!!!」
おしまい
乙
Entry ⇒ 2012.07.25 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (5) | Trackbacks (0)
恒一「見崎、起きなよ」鳴「もうちょっと…」
鳴「…Zzz」スピー
恒一「雨…は、流石に止んでるか。今日は帰れそうだな」
鳴「むー…」ギュー
恒一「見崎ー。朝だよ、起きて」ユサユサ
鳴「あと五分…」
鳴「いい…」モゾモゾ
恒一「とりあえず起きなって。布団潜ってないでさ」
鳴「眠い」
恒一「夜中までゲームしてるから…」
鳴「むっ。ポケモンは遊びじゃないの」
恒一「はいはい」
恒一「僕が寝ようとする度に見崎が邪魔したんじゃないか」
鳴「眠くないの?」
恒一「眠いよ。でも今寝てたら夜寝れないだろ」
鳴「そう…じゃ、おやすみ」モゾモゾ
恒一「あぁもう…」
恒一「ホントに寝ちゃったよ…」ナデナデ
鳴「ん…」スリスリ
恒一(睫毛長いなー。肌もスベスベで相変わらず良い触り心地だ)サワサワ
鳴「んにゅ…」
恒一(あー昨日あのまま寝たのか…。シャツ一枚なんて風邪ひくぞ――あ、パンツ見えた)
鳴「こ、これ全部食べていいの?」ワクワク
恒一「うん。僕があーんしてあげるね」
鳴「デザートは?」
恒一「もちろんあるよ」
鳴「ごくり…」
鳴「ふへへ…」ニヤニヤ
恒一(夢でも見てるのかな?)
鳴「んむー」
恒一「ほら口閉じて」
鳴「んー…あむ」グイッ
恒一「ちょっと、袖噛まないでよ」ポンポン
鳴「もぐもぐ」
恒一「どんな夢見てるんだホント…」ハァ
恒一「あぁもうビチョビチョじゃないか…着替え着替え」ヌギヌギ
霧果「起きてるー?」ガチャ
恒一(裸)「あ」
鳴「Zzz…」
霧果「」
霧果「お、お邪魔だった?」
恒一(裸)「?」
霧果「いや…その…するんでしょ? 鳴と…///」
恒一(裸)「へ? い、いや、これは見崎の涎で服が汚れちゃったからで――」
霧果「鳴の体液で服が…」ゴクリ
恒一(裸)「霧果さんが想像してるようなことはしてないですから」
恒一(裸)「あ、起きた」
鳴「…」ボー
恒一(裸)「おはよう。良く寝れた?」
鳴「…夜這い?」
恒一(裸)「だから違うって」
霧果「朝這い、よね」
恒一(こいつ面倒くせぇ…)
恒一「そりゃあね」
鳴「…私は、あのままでも良かったのに」ボソッ
恒一「恥ずかしいよ」
鳴「残念…」プチッ
恒一「起きて早々ゲームですか…」
鳴「いいじゃない」ピコピコ
恒一「雨も明けたし、お弁当持って公園にでも…」
鳴「外は暑いし、蝉がうるさいから嫌」ピコピコ
恒一(…本でも読むか)ボケー
鳴「…」ピコピコ
恒一(これ読んだ…これも…)
鳴「…」ピコピコ
恒一(やることねーなー…)ボー
鳴「榊原君、暇なの?」ピコピコ
恒一「ん? まぁ…」
恒一「なに?」
鳴「ここ座って。あぐら組んで」ポンポン
恒一「はい」
鳴「…♪」ゴロン
恒一「…膝枕?」
鳴「このままね」ピコピコ
恒一(暇潰し…にはなるのかな、これ)ナデナデ
鳴「?」
恒一(むぅ…)モゾモゾ
鳴「榊原君」
恒一「ん? なに」
鳴「胸、見すぎ」ジトー
恒一「あ、あはは…ゴメンナサイ」
恒一「そうでもないよ」
鳴「楽しいの?」
恒一「…まぁ、その、うん」
鳴「ふぅん…榊原君は、私の胸を見て、楽しんでるんだ」
恒一「下着ぐらい着なよ」
鳴「下は付けてるけど…榊原君はそっちのが好み?」
恒一「…見崎も楽しんでるでしょ」
鳴「さぁね」クスッ
恒一「もうゲーム終わり?」
鳴「うん。榊原君とお喋りした…してあげようかなって」
恒一「ふーん。見崎は、僕と、お喋りしたいんだ」ニヤニヤ
鳴「そ、それは…榊原君が暇そうだから、仕方なく…」
恒一「いいよ? 僕は見崎を眺めて暇を潰すから」
鳴「…意地悪」ムー
恒一「あはは」ナデナデ
恒一「だね。何か作る? リクエストとかあれば聞くけど」
鳴「…きょ、今日は私が作るから、食べて?」
恒一「…大丈夫なの?」
鳴「む。昼ご飯ぐらいは作れます…多分」
恒一「ホントかよ…」
恒一「怪我とかしないようにね? 火傷とかも…あと砂糖と塩を見間違えないように…」ペラペラ
鳴「大丈夫だって。信じて?」
恒一「う…はい」
鳴「じゃ、いこっか」
恒一「うん」
鳴「♪」
恒一「いえ、今日は――」
鳴「今日のお昼は私が作ります」
霧果「え?」
鳴「エプロンエプロン…あった」ゴソゴソ
霧果「え? え? 大丈夫なの?」オロオロ
恒一「た、多分は…」
恒一「(裸Yシャツエプロン…)最高」グッ
鳴「そ、そう…///」テレテレ
恒一「何作るの?」
鳴「お蕎麦。いいよね?」
恒一「うん。楽しみにしてるよ」
鳴「あんまり期待しないでいいよ?」
恒一「あはは、期待してるよ」
鳴「もう…」
恒一(思えば見崎に食事を作ってもらうの初めてだな)ジー
鳴「ネギとか…は後でいいか。お蕎麦お蕎麦」ゴソゴソ
恒一(…なんかいいなぁ、こういうの)ニヨニヨ
霧果「もの凄くだらしない顔になってるわよ?」
恒一「へ? そ、そうですか?」ニヤニヤ
恒一「あー…」
霧果「…やっぱりお楽しみだったの?」キョウミシンシン
恒一「違いますって」
霧果「鳴の部屋からギシギシって音が聞こえてたんだけど?」
恒一「あれは――」
恒一「…」ウトウト
雷「どっかーんwwwwwwwwww」
鳴「っ」ビクッ
恒一「んー…」
鳴「…」ビクビク
雷「どっかんかーんwwwwwwwwwwwww」
鳴「ひぅっ」ビクッ
恒一「…」ウトウト
鳴「…おじゃまします」モゾモゾ
恒一「…ん? どうしたの…」
鳴「気にしないでいいよ」ギュー
恒一「眠いんだけど…」
鳴「寝てていいよ」
鳴「何でもn――」
雷「どーんwwwwwwwww」
鳴「っ…!」ギュッ
恒一「…雷怖いの?」
鳴「ち、違う」
恒一「雨は好きとか言ってた癖に…」
鳴「違うって言ってるでしょ」ベシベシ
鳴「…」ギュー
恒一「…」ウトウト
鳴「ん…」スリスリ
恒一「…戻らないの?」
鳴「…よし。おじゃましました」ゴソゴソ
恒一「おやすみー」
鳴(もう大丈夫…厳選再開しなきゃ)ヨジヨジ
雷「くぁwせdrftgyふじこlp」
鳴「ひぇっ…」ビクーン
恒一「…また来たの?」
鳴「怒ってる?」ダキッ
恒一「別に怒ってないよ」
鳴「寝てていいけど…」クンクン
恒一「…安心したら戻ってよ?」
鳴「うん」ギュー
霧果「なるほど…全くあの子は」
恒一「苦手なものは仕方ないですし、気にしてませんから」
霧果(出来た子ねー)
霧果「…あれ? でも今朝は榊原君も鳴の布団に…」
恒一「あ、あれは…見崎が、その…震えてたから、仕方ないんですよ。はい」
霧果「ふぅん」ニヤニヤ
霧果「…鳴が、鳴が私にご飯を作ってくれた」ジーン
鳴「榊原君、食べてみて?」ソワソワ
恒一「う、うん。いただきます」
鳴「…」ドキドキ
恒一「もぐもぐ」
鳴「ど、どう?」
恒一「…うん。おいしいよ、見崎の茹でてくれた蕎麦」ニコッ
鳴「…ん///」
鳴「そうですか。榊原君榊原君、ネギも私が切ったの」
恒一「そうなんだ。上手に切れてるね」
霧果「凄いわよ鳴!」ズバー
鳴「ふふ…ほら、ワサビとかいる?」
恒一「うん。ありがとう」
鳴「入れてあげるね」
イチャイチャ
霧果「…ぐすん」チュルチュル
恒一「お手伝いとかは…」
霧果「いいから、もう部屋戻ってイチャイチャし続けてなさい…」
鳴「そうします。行こ」クイクイ
恒一「あ、うん。じゃあ失礼します」
霧果(だから何故いちいち手を繋ぐ手を)グムム
恒一「冷房16度にして扇風機まで付けてりゃ涼しいだろうね。僕はちょっと寒いけど…」
鳴「じゃ…へ――くしっ」クチュン
恒一「あぁほら、そんな格好でいるから」ゴシゴシ
鳴「んぅ…だって暑いんだもの」
恒一「だからってYシャツと下着だけってのは…」
恒一「僕以外には見せないでほしいかな」
鳴「見せません」
恒一「うん…」
鳴「はい…」
恒一「…///」
鳴「…///」
鳴「そ、そうね。じゃあ…はい」
恒一「?」
鳴「着せて?」
恒一「はい?」
鳴「動きたくないの。だから榊原君がして?」
鳴「いやなの?」
恒一「…じ、自分でやった方が、楽だと思うよ?」
鳴「榊原君がしてくれなきゃ、着ない」
恒一「…分かったよ、もう」ハァー
恒一(見崎ってこんな我侭だったけなぁ…? 短い付き合いだけど)
鳴「あ、私の服昨日の雨で全部濡れてたんだった…」
恒一「どうするの?」
鳴「えっと…榊原君がウチに泊まって行く時用の着替え、あるでしょ?」
恒一「うん」
鳴「それ貸して?」
恒一「いいけど…サイズ合わないと思うよ?」
鳴「でも――へっくしゅ」
恒一「あーもう…ほら、こっち来て」
鳴「うん。ごめんね」グシグシ
恒一「そう思うなら自分でやってよもう…」
鳴「ん…」ピクッ
恒一「ほら、手通して」
鳴「…何で目瞑ってるの?」スルスル
恒一「見ちゃマズイでしょ」
鳴「朝にまじまじと見てたじゃない」モゾモゾ
恒一「じゃあ見飽きたんだよ。ほら、次は下ね」
鳴「むー…」
鳴「ぶかぶか…」
恒一「見崎はちっちゃいからね。ほら、裾めくらないと転ぶよ」
鳴「うん」メクリメクリ
恒一(結局服の隙間から見えてるし…)ジー
鳴「榊原君の匂いがする…」クンクン
鳴「あ…大丈夫?」
恒一「うん。やっぱりちょっと寒いかも…」ブルッ
鳴「…榊原君。こっち、布団入って」ポンポン
恒一「ん」モゾモゾ
鳴「…」モゾモゾ
恒一「何で見崎も…」
恒一「見崎?」
鳴「こうすれば暖いでしょ?」
恒一「…うん。あったかい」ギュッ
鳴「…私の事、嫌いになった?」
恒一「どうして?」
鳴「さっき、怒ってたから」
恒一「別に怒ってないよ」
鳴「榊原君、優しいから。つい要らない事言っちゃうの。ダメだよね」
恒一「…たまの我侭なら、特別にみとめます」ムギュー
鳴「く、くすぐったいよ…」
恒一(――惚れた弱味だよなぁ…)
恒一「なに?」ナデナデ
鳴「ジュース取って来て」
恒一「た・ま・に・ね?」グリグリ
鳴「は、はい…」
鳴「んー」
恒一「…」ウトウト
鳴「…寝ていいよ」
恒一「うん…そうする。すぐ、起きるから…Zzz」
鳴「おやすみ、榊原君」ナデナデ
鳴「おはよう」
恒一「おはよ…今何時?」
鳴「えっと、7時」
恒一「…寝すぎた」モゾモゾ
鳴「良く寝てたね」
恒一「起こしてくれよ…」
鳴「寝言で私の名前呼んでたけど、夢でも見たの?」クスッ
恒一「さ、さぁ?」
恒一「うん」ゴソゴソ
鳴「ふぅん…」
恒一「どうかした?」
鳴「ううん。なんでもないよ、ただ――」
恒一「?」ガチャ
大雨「よーうwwwwwwwwwwww」
鳴「どうやって帰るのかなって」
鳴「どうするの?」
恒一「…今日も泊めてもらっていい?」
鳴「じゃ、部屋戻ろうか。今日は一晩中付き合ってもらうから」ギュッ
恒一「勘弁してくれよ…」
鳴(そんな言葉とは裏腹に、つい表情が緩んでしまう榊原君であった)
happy☆end
よかった
Entry ⇒ 2012.07.20 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (3) | Trackbacks (0)
恒一「あれ?教卓の上に置いてあるのは・・・・・・」
恒一「……そのようだね」
――――――――――――
朝の教室
赤沢「どう?みんな短冊に願い事は書いた?」
勅使河原「おう!書いたぞ。ほれ」
赤沢「……ご丁寧に名前まで書かなくてもいいのに」
勅使河原「え?名前書かなくても良かったのか?……まあいいけどさ」
ガラッ
恒一(……教室の前でみんな何をしてるんだろう?あれは……笹?)
恒一(何が書かれてるのか気になるけど……今見ると迷惑になりそうだからやめておこう)
ガラッ
スタスタ
見崎(……おはよう、榊原君)ペコリ
恒一(おはよう、見崎)ペコリ
見崎(…………あれは?)
恒一「(今日は七夕だから……)」ボソッ
見崎「(なるほどね)」
恒一「(まあ、どうせ今見るのは無理だしあまりここに長居しても……)」
見崎「(今日はどうするつもりなの?)」
恒一「(図書室で二人で勉強しようか)」
恒一「(どうかした?)」
鳴(七夕にかこつけてどこか行こうかな、なんて思ったけど……)
鳴「(……なんでもない)」
ガラッ
久保寺「おはようございます。HRをはじめるので、みなさん席について下さい」
ザワザワ
恒一「(先生に僕たちのことは確認させたし、そろそろ行こうか)」
鳴 コクリ
スタスタスタ
ガラッ
勅使河原(行動パターンが完全にデートだろ、あれ)
赤沢(2人を『いないもの』にしようって言ったのは私だけど…………私だけど……)
中尾「赤沢さん、眉間に皺寄ってますけどどうかしたんですか?」
赤沢「え?あ、それは失礼」
――――――――――――
昼休み
勅使河原「なあ、望月」
望月「何?勅使河原君」
勅使河原「あの短冊、いちおう"全員分"あるんだよな?」
望月「そのようだけど…………まさか」
望月「そうらしいけど……」
勅使河原「だからとりあえず1枚はみんな同じことを書くってことになったわけだが……」
望月「でも、勅使河原君の考えてることをしたら……むしろ『いないもの』のおなじまいの効果は……」
勅使河原「でも、そうは言ってもなあ……」
望月「……う~ん……直接渡すわけにもいかないし…………そうだ」
勅使河原「なんか思いついたか?」
望月「放課後の教室に置き忘れたってことで教卓の上にでも置いとけば……」
勅使河原「それはよさそうだな!」
望月「でも、短冊を教室に飾ってある笹につけたりすると翌日面倒なことになりそう」
望月「忘れ物ってことだから黒板に『短冊を忘れた人は持ち帰ってください』とでも書くしかないか」
勅使河原「それなら大丈夫だろう。よし、赤沢に頼んで短冊をもらおう」
望月(実はそれが一番の難関だったりして……)
勅使河原「赤沢、短冊を2人分もらえないか?」
赤沢「え?どうしてよ、朝はあんた短冊持ってたでしょ」
勅使河原「それがどうやら昼休みになるまでになくしちまったみたいで……」
赤沢「あと1人分は誰の?」
勅使河原「望月が持ってくるのを忘れたらしい」
赤沢「そうなの?望月君」
望月「えっと……まあ……」
勅使河原「さすが赤沢。準備がいい!」
赤沢「わかっているわよね?私が渡すのはあくまで勅使河原と望月君のぶんよ」
勅使河原「もちろんさ」
赤沢「翌日面倒なことにならないようにしてよ」
勅使河原「それは望月が方法を考えてくれたぜ」
赤沢「教えて、望月君」
望月「かくかくしかじか」
勅使河原「何言ってんだ、赤沢。あくまでこれは短冊を忘れた人のための救済策だろ?」
赤沢「……そうだったわね。まあどのみち明日片付けたあとみんな持ち帰るのだし……」
勅使河原「じゃあ、頼む」
赤沢(本当はあまり渡したくないけど……でもここで拒むとかえって『いないもの』扱いできなくなるのか……)
赤沢「……しょうがないわね。はいこれ、2人分の短冊」
勅使河原「恩に着るぜ」
望月「ありがとう、赤沢さん」
赤沢「え、ええ……(ああ、あくまで忘れ物って体で話が進んでるから私はこれ以上どうしようも……)」
――――――――
――――――――――――
恒一「『短冊を忘れた人は必ず家に持ち帰ってください』か……」
鳴「私たちが笹に飾ったままにして、明日面倒なことにならないように考えてあるのね」
恒一「じゃあ飾った後に外さないと……短冊には今すぐ何か書くしかないのか……」
鳴「短冊は1人3枚あるようね」
恒一「笹を見ると……どうやら1枚はみんな同じことを書くみたいだ」
鳴「『災厄が早く止まりますように』……」
恒一「僕たちがこれを書いても……本当にいいんだろうか」
鳴「なぜ?」
恒一「い、いや……もし僕が見崎に話しかけたりしなかったら、こんなことには……」
恒一「そもそも?」
鳴「……ううん、なんでもない」
恒一「?」
鳴「いえ、ともかく……今は榊原君も早く災厄が止まってほしいと思っているなら、別にいいんじゃないかしら」
恒一「そうなのかな」
鳴「もう1枚はそれぞれ好きなことを書いているようね」
恒一「名前が書いてないから誰のかわからなく……そうとも限らないか」
鳴「そもそも願い事じゃない……誰が書いたのかしら」
恒一「……綾野さんだよ」
鳴「え?何故わかったの?」
恒一「いや……ありがとうって言われてるのはたぶん僕のことだから」
鳴「ふぅん?……具体的には何があったの?」
恒一「病院から歩いて帰る途中に、学校サボってた綾野さんと偶然会ったんだけど……」
恒一「少し立ち話してたら、急に風が吹いて車の荷台に立てかけられていたガラスが……」
鳴「それで榊原君が綾野さんを守ったのね」
恒一「守ったっていうと大げさだけど、まあ……」
鳴(直接お礼を言うのは恥ずかしいからこんなことしたのね……ちょっと可愛いかも)
恒一「いや?もしかしてこの先生っていうのは久保寺先生のことかもしれないよ?」
鳴「まさか。だいたい……」
恒一「冗談だよ。まあ筆跡を見れば……ね」
鳴「そうそう」
恒一「ん、これは隣同士で同じことが書いてある…『ずっと一緒にいられますように』か」
鳴「松井さんと金木さんね」
恒一「なるほど。ところであの二人ってただの友達っていうより……」
鳴「それ以上の関係にしか見えないわね」
恒一「ああ、やっぱりそうなんだ……」
鳴「『無病息災』とだけ書いてある…………なんだかちょっと怖いかも」
恒一「何か病気持ちなのかな……久保寺先生……」
鳴「そういえば最近顔色があまりよくないような……」
恒一「……他の人のを見ようか」
鳴「これは見るからに勅使河原君って感じね」
恒一「こんなデカデカと『モテたい』なんて書かなくても……」
鳴「誰が書いたのかわかるようじゃ、かえって逆効果になりそう」
恒一「ハハハ……」
恒一「『ゆかりは生きている』ってこれも願い事じゃないし…………誰が書いたんだろう」
鳴「それはたぶん……風見君よ」
恒一「え!?風見君が?ということは……」
鳴「……桜木さんの方はどう思っていたのかはわからないけど、たぶん風見君は……」
恒一「……そうだったのか…………風見君……」
鳴「…………他の人のを見よう」
鳴「それは……小椋さんね」
恒一「背が低いの、気にしてるのかな」
鳴「背だけじゃないと思うけど」
恒一「……というと?」
鳴「……それを女の子の口から言わせるの?榊原君」
恒一「それってどういう意味…………あ」
鳴「……別にいいけど」
恒一「やっぱりその……普通は気にするものなのかな?」
鳴「一般論としてはそうなるかも」
恒一「そっか……僕は別に気にしないけどね、そんなこと」
鳴「そう……(……よかった)」ボソッ
恒一「今何か言った?」
鳴「何でもないから、次の人のを見る……」
鳴「たぶん中尾君じゃないの」
恒一「え?どうして中尾君だと?」
鳴「まあまずこの下手な字は女子ではないし……それで片思いしてて思い当たりそうな人」
恒一「ふ~ん……中尾君は誰が好きなんだろう?」
鳴「それは……」
ガラッ
鳴&恒一「!」
恒一(笹は教室の前の窓際に飾ってあるから、赤沢さんがこっちに……)
赤沢「……」ガサゴソ
鳴(……机の中に忘れ物をしたから取りに来たのね……)
赤沢「……」ガタッ カチャリ
スタスタスタ
赤沢 クルリ
赤沢 ジロッ
鳴「……」
スタスタスタ
ガラッ
……
鳴&恒一「ふぅ~」
恒一「ああ、急に来られたからドキドキしちゃったよ」
鳴「おまけに短冊の内容について喋っていたから余計に、ね」
恒一「……たぶんこれなんじゃないかな」
鳴「『忘れていることを思い出せますように』って書いてある短冊が?」
恒一「うん」
鳴「確かに字はそれっぽいけど……何か書いてある内容に心当たりでもあるの?」
恒一「ん~……入院してた時、初めて赤沢さんたちと会ったけど……向こうはそうでもないような感じだったから」
鳴「榊原君が赤沢さんと以前に会っているってこと?」
恒一「まあ、僕の記憶にはないけどね」
鳴「ふ~ん…………とりあえず人の見るのはこの辺にしておかない?」
鳴「それに自分たちの短冊にも何か書かないといけないし」
恒一「見崎は何を書くの?」
鳴「……内緒」
恒一「どっちみちここに飾るんだから、わかるんじゃないの?」
鳴「それもそうね。でも、書いているところは見ないでね」
恒一「?……わかった」
恒一「どう?書けた?」
鳴「一応ね」
恒一「見せてもらってもいいかな?嫌だったら無理にとはいわないけど」
鳴「そういうこと頼む時はまず自分から見せるものじゃない?」
恒一「それもそうだね。はい」スッ
鳴「『現象について少しでも多くの事柄が解明されますように』か……」
恒一「一応1枚分はみんなと同じで災厄が止まるように、とは書いたんだけどね」
鳴「それとは別にこれは榊原君の個人的な願いってことね」
恒一「そう……とはいってもなかなか難しそうだけど」
鳴「個人的には、『いないもの』対策が効果があるならあえてそれ以上は求めない」
鳴「それよりも一度始まった現象を止める方法がないのかが気になる」
恒一「確かにそれもそうだね。でも、もし今の状態のままが続くのなら必要なくなるけど」
鳴「榊原君は『いないもの』を二人に増やしたら災厄は止まると思っているの?」
恒一「……どうだろうね」
恒一「止まるに越したことはないけど、今の状態が続くとなると現象について学校の人間に訊くのも難しそうだ」
鳴「逆に止まらなかったら……『いないもの』も解除かな?……」
恒一「……少し残念そうな顔してる?」
鳴「それは榊原君の気のせい、だと思う……(でも、あながちウソとも言えないか……)」
恒一「いいよ別に。僕は気にしてないから」
恒一「割と今の状態を気にいっているし、見崎にとっても良かったんじゃないかな」
鳴「どういう意味?」
恒一「少しは……いや、かなり学校に来る頻度が増えたから」
鳴「だ、だってそれは……1人の時は好きにしてていいかもしれないけど、榊原君が来るのに私が行かないわけにも……」
恒一「それは気を遣ってくれてありがとう。でも、そもそも学校行かないと勉強自体もほら……」
鳴「だから今は榊原君に教えてもらっているんじゃない」
鳴「どうにも榊原君から色々と何かされる方ばかりで……悪い気がする」
恒一「あ、いや、そういうつもりじゃ……」
恒一「こっちはこっちで見崎といると楽しいから……」
鳴「でも、私は榊原君に何もしていないような……」
恒一「今こうして喋っているだけでもいいんだよ」
鳴「そ、そう?……でもやっぱりつり合いが取れていない気がする……」
恒一「どうして?」
恒一「ちょ、言いかけてやめるのは……続きが余計気になるよ」
鳴「やっぱりそういうもの?」
恒一「そういうもの」
鳴「後で教えてあげる……たぶん今日か明日には……」
恒一「……わかった」
鳴「……はい、これ」スッ
恒一「『繋がり過ぎず、離れ過ぎず』……これ、どういう意味?」
鳴「言葉通りの意味でしかないよ」
恒一「……(自分のことだったらありがたいけど、見崎だし……ちょっと僕が自意識過剰になっているのかな)」
鳴「……どうしたの?黙り込んじゃって」
恒一「いや、なんでもないよ……すぐまた外しちゃうけど、一応飾ろうか」
鳴「そうね」
ガサガサ
鳴「……ここに飾られていないってことはみんな持ち帰ったんじゃない?」
恒一「他の人には見られたくない願いでも書くようにしたのかな?」
鳴「まあ、たぶんそんなところじゃないの」
恒一「なるほどね、じゃあまた後で書くか……」
鳴「……そうね」
恒一「ベタかもしれないけど、改めて見るといいものだね。こういう季節の風物詩っていうのも」
鳴「……そうね。でも、ただこの飾りを見るだけならそんなに楽しくは感じないかも」
恒一「……そうだね、僕も……」 スッ
恒一(!……見崎が僕の口に指を当てて……喋るなってこと?)
鳴「……その続きを言うのは……後にしてくれる?」
恒一「後って?」
鳴「とりあえず……ここから出た……後よ」
恒一「?…………わかった。じゃあ帰ることだし、また外そう」
鳴 コクリ
校門
鳴「今日は……いえ、いつも勉強とか教えてくれてありがとう」
恒一「いいよ、もうそのことはいちいち言わなくても」
鳴「そう?…………ところで、今日の夜は……晴れるのかな」
恒一「どうだろう……今はうすぐもりだけど……」
鳴「……晴れるといいな」
恒一「?……見崎は雨の方が好きなんじゃなかったっけ?」
鳴「7月7日は……いえ、今日は特別だから」
恒一「……そっか」
恒一「白紙のままにしろってこと?」
鳴「うん……あと、今日はわざわざ送らなくてもいいよ、それと……これを」スッ
恒一「さっきの短冊?(『繋がり過ぎず、離れ過ぎず』って書いてあるやつ……)」
鳴「これは榊原君にあげる。あと、この短冊は冷凍庫に入れておいてね」
恒一「えっ?冷凍庫?」
鳴「そう。それじゃあまた……」タッタッタッ
恒一(走っていっちゃった……)
恒一(冷凍庫ねえ……まあとりあえず言う通りにしておこう)
夕食後
恒一(そういえば、入れておいてとは言われたけど、いつ出せばいいんだろうか?)
ヴィーッ ヴィーッ
恒一(見崎から?)
恒一『もしもし、見崎?』
鳴『こんばんは、榊原君。あの短冊は冷凍庫に入れておいてくれた?』
恒一『まあ、一応ね』
鳴『良かった……じゃあ今からその短冊を見て、その通りにしてね』
恒一『?……それってどういう…………』
鳴『それじゃあまた後で』
恒一『うん…え?また後で……?』
プツリ
恒一(短冊のいう通りって言ったって、もう願い事書かれているんだけど……)
恒一(うん、『繋がり過ぎず、離れ過ぎず』って書いてあるだけだ)ペラッ
恒一(裏は何も書いてなくて…………!!!)
『今から20分後に、同類になった夜に行った公園にて待っています 見崎鳴』
『p.s.まだ白紙の短冊も持ってきてください』
恒一(こうしちゃいられない……仕掛けとかは後にしといてすぐ行かないと!)
怜子「あら、こんな時間にお出かけですか?」
恒一「あ、ちょっと突然友達に呼び出されちゃって……」
怜子「誰なの?その友達って」
恒一「えっとその………『いないもの』です……」
怜子「ああ……そういうことね。あまり帰るのが遅くなるようなら電話するのよ」
恒一「はい…」
恒一「……わかりました」
怜子「あと帰るときはちゃんと家まで送ってあげるのよ」
恒一「それもわかってますよ、怜子さん」
怜子「よろしい、じゃあ頑張ってね。織姫と彦星さん」
恒一「変なこと言わないで下さいよ……」
ガラッ
恒一(僕の家からだと20分って結構ギリギリなんだよなあ……見崎の家からは近いけど)
恒一(場所はあってるはずだけど……肝心の見崎がいない)
恒一(呼び出すだけっていうイタズラ?……まさかね)
恒一(まあともかく待っていよう……)
恒一(……)
…………
カンカランコロン…
鳴「ご、ごめんなさい榊原君……ほんとはもっと早く来れるはずだったんだけど……」
恒一「見崎、その格好……(紺色の浴衣……)」
鳴「あ、あの、これはその……榊原君に会うって言ったら霧果…お母さんが無理やり、というか……」
恒一「その浴衣……よく似合ってるよ」
鳴「あ、ありがとう」
恒一(…………可愛い」
鳴「え!?あ……うん」カァァ
恒一「ごめん、思わず…………えっと、その浴衣はお母さんが選んだの?」
鳴「…………そうよ」
鳴「どういうこと?」
恒一「ほら見て……柄が雪華とか水玉だし……」
鳴「ほんとだ……着せられるのに忙しかったからそこまで見ていなかった」
恒一「後でお母さんにありがとうって言っておかないとね」
鳴「え?でもこれは別に私が望んで……」
恒一「いや、そりゃ見崎もほんとは言うべきだけどさ……僕からの伝言ってこと」
鳴「なんだ、そういうことか……って……え?それはつまり……」
恒一「見崎の浴衣姿見れて良かったって意味だよ、もちろん」
鳴「そ、そう……」
恒一(また赤くなってる……)
鳴「あの人妙なところにこだわりがあるというか……線が出ないようにしたいとか言って……」
恒一「え?それってまさか……」
鳴「あ、いや今のは聞かなかったことにして……」
恒一「見崎、今…………穿いて……ない?」
鳴「………………えっち」
恒一「ご、ごめん……(……今この浴衣の下は……何も……)」
鳴「……あんまりジロジロ見ないで……///」
恒一「う、うん……」
鳴「うん、今日は七夕だから……その……榊原君と一緒に星でも見ようって……」
恒一「なるほどね。でも、なんでわざわざあんな短冊に書いて……」
鳴「星が見られるかどうかは夜にならないとわからないし……ちょっと驚かせようと思って」
恒一「ああ、そうか。じゃあもし天気が悪かったら電話しなかったってことか」
鳴「そう」
恒一「ところで、あの短冊にはどういうカラクリが?帰る時には裏には何も書いてなかったように見えたけど」
鳴「裏側は温度で消えたり現れたりするインクのペンで書いたから……」
恒一「それで冷凍庫に入れろって言ったのか……ふぅん、そんなペンがあるとは知らなかった」
鳴「私、文房具にはちょっとだけうるさいから」
恒一「……まあ、そのおかげでちょっと面白い体験ができて良かったよ」
鳴「そう言ってもらえると嬉しいけど……突然呼び出してもよかった?」
恒一「まあ自分も最初は知らなかったとはいえ、見崎の家に勝手に行ったりしてたし……」
鳴「それもそうかもね」
恒一「ハハハ……話を元に戻すけど、ここで星を見るの?」
鳴「ううん、もっとよく見える場所知ってるから……」
恒一「じゃあ早速行こうか」
鳴 コクリ
テクテク
カランコロン
恒一「そういえば、なんで君のお母さんはそんなに浴衣を着せることにこだわったの?」
恒一「別に今日じゃなくても夏祭りとかあるんじゃ……」
鳴「たぶん今年はもう着せるチャンスがないと思ったんじゃないかしら」
鳴「夜見山の夏祭り、というか七夕祭りは約1ヶ月後にあるんだけど……たぶんその時は夜見山にはいないから」
恒一「えっ?まさかそれって……お母さんは事情を知らないんじゃなかった?」
鳴「あ……別にここから逃げ出すってことじゃなくて……そのあたりの時期に家族で別荘に行くってだけ」
恒一「なんだそういうことか……それで半ば強引に今日……」
鳴「……まあ私はお人形だから仕方ないよね」
恒一(相変わらずひねくれてるなあ……親の心子知らずってやつ?)
鳴「見た目的にはさっきとあんまり違わない公園だけど………こっちは少し高い所にあるから……」
恒一「確かに……低いところの星もよく見えるね……あ」
鳴「どうしたの?」
恒一「そういえばこの時間帯はベガとアルタイルがどこに見えるのか知らないんだった」
鳴「大丈夫。私星座早見表持ってるから」
恒一「それは準備がいいね。見せてもらってもいい?」
鳴「いいよ」
恒一「……今は東よりに見えるはず……あれがデネブだから……あ、あれとあれか」
鳴「さすがに夏の大三角って言われるだけあってすぐに見つかるわね」
恒一「そうだね。当たり前といえば当たり前だけど、ほんとに天の川のちょうど両端にあるんだね」
鳴「……そうね」
鳴「どうって?星を見るのかってこと?」
恒一「そうそう」
鳴「まあ見ないこともないけど……榊原君に教えるほどの知識を持って見てはいないと思う」
恒一「いや、まあそこは気にしなくてもいいけどさ」
鳴「そう?」
恒一「そう」
鳴「……」
恒一「……まあ立ちっぱなしもなんだしベンチに座って見ようか」
鳴「うん……」
鳴(なんだか少しあつく感じるのは気温のせい?それとも……)
恒一「……」
鳴「……」
スーッ
恒一&鳴「!」
恒一「今流れたの、見た?」
鳴「見たよ」
恒一「……何かお願いごととかした?」
鳴「する前に消えちゃった」
恒一「僕もね」
恒一「確かにそうだね。星に願いをって曲もあるくらいだし……なんでだろう」
鳴「昔の人は太陽を神として崇めてたって話があるから、他の星も願いを叶える神様ってことなのかな?」
恒一「なるほど、そう考えるとしっくりくるかもね。そもそも星自体が人智を超えた存在だし」
鳴「織姫と彦星も、か……」
鳴「ここで見ている限りはそうは見えないけど……本当はずっと遠いんだよね、二つの星も」
恒一「そうだね。さすがに距離までは知らないけど、何光年も離れてる」
鳴「光が1年間に進む距離って言われてもピンと来ないかも」
恒一「確かkmに直すと9兆4600億kmだっけ」
鳴「1光年でもそんなに……」
鳴「何故?」
恒一「さっき二つの星が何光年も離れているって言ったけど、今のところ光より速い物質は見つかってないし」
鳴「光年は光が1年間で進む距離だから…………そういうことか」
恒一「…………なんだか夢を壊すような話だったかな」
鳴「そんなことない。私がロマンを感じるとしたら……もちろん星自体もそうだけど……」
恒一「?」
鳴「星を見てそういう物語を作った昔の人間に夢を感じるかもね」
恒一「ふぅん……なんかちょっと意外な気がした」
鳴「……どうして?」
恒一「それに、あまり人間に対して夢を見るって印象もないっていうか……」
鳴「榊原君の言っていることもまんざら間違ってもいないけど」
鳴「ただ、人間自体に対して夢を見ないわけじゃないよ。その対象が限られているってだけで」
恒一「それは相性のいい人とか好きな人とかにも通じる話?」
鳴「……そうね。大抵の周りの人は好きじゃないというか関心を持てないというか……」
恒一「……榊原恒一はどうなのかな、見崎にとって」
鳴「それはもちろん好きな方よ」
恒一「!……あ、ありがとう…………///」
鳴「!……(あ、あれ……そういう反応されると……まるで私が告白したみたい……)」
鳴「!」
恒一「(って思わず何を言ってるんだ自分は……)……ごめん、今のは自分でもちょっと……」
鳴「まあ、少しクサかったかも。でも、そう言ってもらえるのは悪い気はしなかった」
恒一「そ、そう……」ホッ
鳴「ただ、どっちにしても今の質問の答えはノーよ」
恒一「え?な……どうして……」
鳴「だって…………織姫と彦星は1年に一度しか会えないんでしょう?」
恒一「それはつまり……」
鳴「もっと榊原君の近くに………い、いたい…から……」
恒一「!」
鳴「…何?」
恒一「……抱きしめてもいい?」
鳴「…ダメ」
恒一 ガーン
鳴「あ、その……抱きしめること自体がダメってことじゃなくて……だ、段階というものを……」
恒一「段階?」
鳴「そういうことするのは普通は……恋人同士ででしょ?」
恒一「……雰囲気的にはもうそんな感じかな、と思ってた……ごめん」
鳴「それは否定しないけど……やっぱりこういうことはちゃんと口に出してほしい……」
恒一「……わかった」
鳴 コクリ
恒一「見崎さん、あなたのことが好きです。……僕と……お付き合いして下さい」
鳴「はい。私も榊原君のこと……好きだから……」
恒一「その……それで……さっき言ってたこと……」
鳴「……してもいいよ……」
恒一「うん…」
ギュッ
恒一(…見崎の匂いがする……)
鳴(こ、こんな近くで……私の鼓動が速くなってるの聴かれちゃいそう……)
鳴「……」
恒一「……ねえ」
鳴「何?」
恒一「これからは、その……名前で呼んでもいい?」
鳴「いいよ。というよりも……」
恒一「?」
鳴「今までも心の中では名前で呼んでいたんじゃない?」
恒一「!……な、なんでそんなことを……」
鳴「はじめて私の妹の人形を見た時、『鳴』って呟いてたし」
鳴「思わず心の声が口から洩れてしまったのね」
恒一「……もういいよ、そういうことで」
鳴「……あれ、なんか怒らせちゃった?」
恒一「は、恥ずかしいから……」
鳴「今私たちがしていることは…………恥ずかしくないの?」
恒一「それはそうだけど……今はお互い様だから」
鳴「……なるほどね」
恒一「わかった……」スッ
恒一「そ…それで……もし見崎が嫌じゃなかったら僕のことも名前で……」
鳴「それはちょっと……まだ……ムリかな」
恒一「ごめん……ちょっと急に色々お願いしちゃったから……」
鳴「ううん、そういうことじゃないの」
恒一「?」
鳴「これは私なりの……まあ……変なこだわりというか……」
恒一「こだわり?」
鳴「それで私はあえてその名字で呼ぶっていうちょっとした意地悪をしたわけ」
鳴「それは榊原君を遠ざけるのが目的だったけど……でも逆効果で……」
鳴「なんというかそれでこっちのこと気にしてくれるようになって、ちょっと嬉しかったというか」
鳴「そういう流れがあって、今も名字で……呼んでる感じ」
恒一「ただ……僕自身はもう……名字のことは気にしてないよ」
鳴「でも、他の同級生は違う……それは……」
鳴「……そう。まあ、今は2人とも『いないもの』だからそんなこと気にしなくてもいいのかもしれない」
鳴「でもやっぱり……他のみんながあなたの名字を気にしないで済むようになったら……そうなったら……」
恒一「……僕のことを名前で呼んでくれるようになるんだね」
鳴「うん……」
恒一「……わかった。じゃあもし、このまま1カ月過ぎたらその時は……」
鳴「そう……災厄が止まったと判断できた時には、ね」
鳴「?」
恒一「今日はまだ…………見てなかったね」
鳴「榊原君……そんなに見たいの?」
恒一「いや、こういうシチュエーションは同類になった時以来だし……」
鳴「……わかった。見せてあげる」スルッ
鳴「あ、ありがとう……」
恒一「少し……上を向いてくれる?」
鳴「?………向いたけど、何か……」
恒一「いや、こうすると月が映り込んでますますキレイに見えるから」
鳴「……や、やっぱり面と向かってそういうこと言われるのは照れる……」
恒一「照れてるところも可愛いよ、鳴」
鳴「もう……」
鳴「……」
恒一「……あ、あの」
鳴「は、はい」
恒一「……そろそろ戻ろうか……」
鳴 コクリ
恒一「あまり遅くなると電話かかってきちゃうし……」
鳴「……それもそうね」
カランコロン
恒一「ねえ、手……握ってもいい?」
鳴 フルフル
恒一「え?嫌?」
鳴「握手くらいならいいけど……」
恒一「もしかして……暑いから嫌ってこと?」
鳴「……半分は当たっているけど、半分は違う理由」
恒一「それはどういう……」
鳴「私、他の部分は全然なんだけど……手だけは汗かくから……ベタベタするの嫌かもって思って」
鳴「でも……」
恒一「……わかった。今はしなくていいよ。機会はいくらでもあると思うし」
鳴「また私の家に来たら、その時に……部屋の中は涼しいし」
恒一「……じゃあそうさせてもらうよ」
鳴「うん……」
……………………
見崎の家
鳴「……わざわざ家まで送ってもらわなくてもよかったのに」
恒一「僕の意思っていうのもあるけど、怜子さんにも言われたしね」
鳴「……私は大丈夫よ」
恒一「えてして大丈夫って言ってる人に限って危なかったりするものだよ」
鳴「……榊原君の意地悪」
鳴「私が最初に榊原君って呼んだこと……もし気にしていたのならごめんなさい」
恒一「それは気にしていたというか、少し驚いたというか……どっちにしろそんなこととっくに相殺されてるよ」
鳴「それならいいけど……」
恒一「特に今日は鳴の浴衣姿も見れたしね。おまけに…………!」
鳴「それ以上言ったら……」ジロリ
恒一「あ、えっと……"伝統的"な衣装も見れたしね」
鳴「何故そこを強調するの」
恒一「重要なところだし」
鳴「表面的なことなら私も何もいわないけど……」
恒一「ごめんごめん、ちょっとからかいたくなっただけ」
鳴「は、恥ずかしいからその話もちょっと……」
――――――――――――
テクテク
カラン…コロン…
恒一「ごめん、少し歩くの速かった?」
鳴「ううん、そうじゃないんだけど……」
恒一「あ、もしかして……」
鳴「うん、普段草履なんて履かないから……ちょっと痛くて……」
鳴「え!?い、いいよ……子供じゃないんだし、恥ずかしいし……」
恒一「この時間帯は人通りも少ないし誰も見てないよ」
恒一「それに、どのみち明日も学校に歩いていくんだから無理しちゃダメ」
鳴「私の方が呼び出したのに……そんなことまでさせてもいいの?榊原君」
恒一「僕が勝手に言ってることだから気にしなくていいよ」
恒一(そ、それに手をつなぐよりも鳴の感触を……)
恒一「ほらほら、」スッ
鳴「わ、わかった……」
恒一「よい、しょっと」スクッ
恒一「ううん、むしろ軽いよ」
鳴「それは良かった…」ホッ
恒一「ねえ、もっとちゃんと掴まって」
鳴「う、うん……」
テクテク
テクテク
恒一(これ背中にわずかに感じるのは……胸の感触?)
鳴(榊原君の頭がこんな近くに……なんか今日は浴衣着たせいで色々と恥ずかしい目に……)
恒一「……」
鳴「……」
――――――――
――――――――――――
鳴「なんか……申し訳なさやら恥ずかしさやらで……頭パンクしそう」
恒一「もともと呼びだしたのはそっちだけど……意外と余裕なかったり?」
鳴「だって急にこんな格好させられるとか……ただでさえ緊張していたのに……」
恒一「汗かくからって言ってたのも、緊張のせいもあったりする?」
鳴「それも……あるよ、確実に」
恒一「でも、これから……もっと緊張すること……やることになると思うよ」
鳴「そ、そうね……」
鳴「汗かくことって?…………!!!」カァァ
恒一「どうしたの、顔赤いけど」
鳴「……もう知りません、榊原君のことなんて」
恒一「あらら……見崎にまで『いないもの』扱いされるようになっちゃったか」
鳴「……分かってるくせに」
恒一「何を?」
鳴「私が……榊原君のこと無視なんてできないってことを」
恒一「さすがにそれを自ら言うつもりはないよ」
恒一「ハハハ……鳴と恋人になれて浮かれてるのかもしれないね」
鳴「……そんなに嬉しかったの?」
恒一「もちろん」
鳴「そ、それは……あ、ありがと……」
恒一「うん……」
恒一「どうしたの?」
鳴「3枚目の短冊のこと、忘れてた……」
恒一「あっ……そういえば」
鳴「今持ってる?榊原君は」
恒一「まあ一応ね。ほら……」スッ
鳴「私も一応持ってはいるけど……」
恒一「鳴はもともとこれ……どうするつもりだったの?」
鳴「ふたりで一緒の願い事でも書こうかなって思ってた……」
恒一「何か考えてあるの?」
鳴「そこまではちょっと……」
鳴「?…………なるほどね。でも、これは願い事というよりは……」
恒一「目標に近いかな?鳴が同意してくれればふたり一緒になるけど」
鳴「あまり神頼みっていうのもアレだしね……それに、これで榊原君がさっき言ったことも実現するのね」
恒一「織姫と彦星、か……」
鳴「……榊原君は、来年には東京に……戻るんだよね?」
恒一「いちおうそういう予定になっているよ」
鳴「そう…………わかった。それを私も書くことにする」
恒一「本当に良かった?これで……」
鳴「これはいわば……約束みたいなものでしょ?他力本願でもないし……良いと思う」
恒一「わかった……」
恒一「ああ、持ってくるってことね」
鳴「うん…………でも、本当にこんな約束して……大丈夫?」
恒一「まあ……なんとかするよ。それに今現在の危機に比べたらこんなの……」
鳴「……それもそうね」
恒一「今日はありがとう、鳴。たぶん一生忘れられない七夕になると思う」
鳴「私も……そして……次の七夕もそうなるように……したいと思う」
恒一「それにはまず……また、明日からの『いないもの』生活……」
鳴「……迷惑にならない程度に仲良く、ね」
恒一「そうだね」
鳴「私も……榊原君のこと……大好き」
こうして二人にとって忘れられない七夕が終わった……
そして、次の七夕もそうなるべく二人で交わした約束の短冊……
『来年もふたりで一緒に七夕に星を見よう 見崎鳴 榊原恒一』
おわり
良かったよ
Entry ⇒ 2012.07.15 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
恒一「誰かに閉じ込められたようだ」
引用元: ・http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1341497753/
恒一「ここは、どこだ?」
恒一「そうだ……帰るときに靴箱から靴を取ろうとしたら誰かに後ろから殴られて……」
恒一「ここ、どこかの空き教室?」ジャラジャラ
恒一「うわ!なんだこれ!手錠!?」ジャラジャラ
恒一「駄目だ……スチーム暖房のパイプを挟んで繋がれてるみたいで抜けそうにない」ジャラジャラ
恒一「………」
恒一「……完全に日が沈んでるなぁ」ジャラッ
恒一「これって、もしかしなくても監禁だよね」
恒一「誰がこんな事したんだろ」ジャラリ
ガラッ
>>6「起きてたんだ?」
恒一「……!」
佐藤「……ごめんなさい。こんな真似して」
恒一「……これ佐藤さんの仕業?」
恒一「なら出来るだけ早く外してくれる?この手錠」
佐藤「………」フルフル
恒一「じゃあ教えて。どういう目的でこんな事したの?」
佐藤「それは……」
佐藤「……>>23」
恒一「は?」
佐藤「うん。詳しくは話せないけど、恒一くんは今とても危険なことをしようとしてるから……」
恒一「(危険なこと?)」
佐藤「だから、少し酷いけどここに閉じ込めたらいいんじゃないかって話になって、それで」
恒一「僕が知らないうちにヤバいことに手を出して、それが原因で閉じ込められたのはわかったけどさ」
恒一「僕、いつまでここに閉じ込められるの?」
佐藤「多分、赤沢さんがいいって言うまで……」
恒一「じゃ、その間僕は家には帰れないの?」
佐藤「ううん」
佐藤「当番が送り迎え付きで登校して、学校にいる間は当番の人がついてることになったの」
佐藤「その、ごはんとかおトイレとかあると思うし……」
佐藤「で、明日の当番は私なの」
恒一「あ……そう」
ガチャン
勅使河原「わりいな、サカキ」
恒一「別にいいよ。事情があるんだろ?」
勅使河原「そういうこった。まあ、俺からもあいつに監禁生活から解放するよう頼んどくよ」ヒラヒラ
ガラガラ
佐藤「……」
恒一「……」
恒一「明日は、違う人なの?」
佐藤「うん。一人がかかりっきりだと授業とか受けられないし」
恒一「(僕も授業受けられないけどね)」
恒一「………」
佐藤「………」
恒一「(何この沈黙の空間)」
鳴「(カツサンド食べたいなぁ)」テクテクテクテク
恒一「(あ、見崎だ)」
佐藤「……っ!?」
恒一「おーい、みさ」佐藤「っ!」オサエコミッ!
鳴「(帰りにコンビニ寄ってカツサンド買おっと)」テクテクテクテク
恒一「わ!佐藤さんいきなり何するの!」
佐藤「詳しくは話せないけどとにかくこうしないと駄目なの!」ギュウウウウ
恒一「(って言ったって女の子にベアハッグかまされるのは色々ヤバいって!)」ポニャポニャ
恒一「(柔らかいの、特に頭に柔らかいのがあああああ!!)」ポニャポニャ
佐藤「ごめんね……いきなり押さえ込んだりなんかして」
恒一「あ、うん。気にしてないよ(むしろご褒美でした)」
恒一「(佐藤さんの身体、石鹸のいい匂いだったし、柔らかかったし、それにおっぱい当たって……)」
佐藤「……ところでそれ、さっき押さえ込んだ時からみたいだけど……もしかして私のせい?」オズオズ
恒一「え?」ノゾキコミッ
ピィーン
恒一「うわあああああ!(何やってんだ!沈まれ!僕の股間!)」
佐藤「すっごいきつそうだけど大丈夫なの?」
恒一「全然大丈夫だから!むしろ佐藤さんが見てたら目が腐るから!」ダラダラ
佐藤「そう……」
佐藤「(でも私で反応してくれたのはちょっと嬉しいかな?)」
佐藤「じゃあお昼にしようか」
恒一「そうしよ……」
恒一「って、佐藤さん。ご飯の時も手錠かけたままなの?」
佐藤「うん。帰るときとその、おトイレ以外は外したら駄目って」
恒一「じゃあどうやって食べるの?」
佐藤「食べさせてあげるんだって。あーん、って」
恒一「ええっ!何それ!?」
佐藤「ちょっと恥ずかしいかもしれないけど、クラスの決まりなの。ごめんね」
恒一「……そうなの。僕のお弁当は鞄のすぐのとこにあるからね」
イソイソカパッ
佐藤「恒一くんのお弁当。美味しそうだね。これ誰に作ってもらったの?」
恒一「一応自作だよ」
佐藤「そうなんだ、凄いなあ」
恒一「あーん」カアア
パクッ
佐藤「凄い照れるね。これ」カアア
恒一「照れる……ね」ムグムグカアア
佐藤「次、食べる?」
恒一「うん」ゴクン
佐藤「はい、あーん」フルン
恒一「(……佐藤さんのおっぱい、動く度にふるふるしてる)」
恒一「あーん(あー、リボンとブラウスさえなきゃ谷間が見えるのに……)」
佐藤「(あ、またおっきくなってる)」
佐藤「(私で反応してるんだ。私って魅力あるのかな?)」
佐藤「ね、恒一くん?」
恒一「え?」
佐藤「さっきもまたそこ、おっきくなってたよ」
恒一「え……」
恒一「(や、やっちまったああああ!!)」ワナワナ
恒一「(うわあああああ僕佐藤さんに嫌われるよ!ちんこ蹴り潰されるかもしれないどうしよおおお)」ワナワナ
佐藤「恒一くん?」
恒一「は!はひっ!」ビクウッ
佐藤「私ってよくわからないんだけど、そんなに魅力あるのかな?」モジモジ
恒一「……え?」
佐藤「……私でおっきくなったってことは、そうなんだよね……?」モジモジ
恒一「(なにこの大天使)」
佐藤「ねぇ、私って魅力ある?」ズイッ
恒一「……ゴクッ」
恒一「あ、あるよ……」
佐藤「例えば?」
恒一「おっとりしてるのに意外と大胆なとことか、身体が凄いいい匂いするのとか、あと……」
佐藤「あと?」
恒一「その、お、おっぱいとか」
佐藤「……やっぱり男の子ってオッパイ好きなんだね」クスッ
佐藤「じゃあ正直な恒一くんには特別にオッパイ見せてあげるね」ヌギヌギ
恒一「え?」
佐藤「特別だからよーく見ておいた方がいいよ」クスッ
恒一「(佐藤さんのおっぱい……谷間がぷるぷる揺れて……)」ハァーハァー
佐藤「やだ、息荒いよ」フフッ
佐藤「で、恒一くんはこれで満足?」フルン
恒一「え?」
佐藤「お願いしたら見せてあげる。生のオッパイ」フルン
恒一「本当?」
佐藤「うん」フフッ
恒一「……ゴクッ」
恒一「……佐藤さん。おっぱい全部見せてください」ボソボソ
佐藤「和江」
恒一「和江!おっぱい全部見せて!」
佐藤「よく出来ましたっ」プチプチ
佐藤「はい、ご褒美」ユサンッ
恒一「(それでいて乳輪はちっちゃくてピンクだったり乳首は陥没だったりとか……)」
恒一「(僕だけを萌え殺す兵器かよ)」ワナワナ
佐藤「すっごい窮屈そうだね。そこ」ユサンッ
恒一「(覗きこんだだけで乳揺れ起こすとか!)」
佐藤「もっかいお願いしたら、オッパイでしてあげよっか?」
恒一「えっ!?」
佐藤「おちんちん、オッパイできもちよくしてあげよっか?って」
鳴「(この前霧果が北海道土産に買ってきたマルちゃんの塩ラーメン食べよっかな?)」テクテクテクテク
佐藤「(あ……また来た)」
佐藤「(でも恒一くんはオッパイに釘付けみたい)」
佐藤「(それじゃだめ押しに……)」
チュウウウウウ
恒一「(え!?佐藤さん、キスして……)」
佐藤「(やだ、頭とろけちゃいそう……)」
佐藤「………ぷぁ」トローン
恒一「佐藤さん……」
佐藤「和江だよ。恒一くん」
佐藤「高林くんじゃないけど、フェアじゃないから私も言うね」
佐藤「私も恒一くんのことが大好き」
佐藤「笑顔も、優しくて知的なとこも、エッチなとこも」
佐藤「それに、私のオッパイで興奮してくれたこのおちんちんも」ギュッ
佐藤「きゃっ」ボロンペシッ
恒一「(なに佐藤さんの顔ビンタしてんだ僕の愚息!)」
佐藤「すっごい暴れん坊だね。そんなにオッパイできもちよくなりたいのかな?」トローン
恒一「(表情が凄いエロい……佐藤さんにこんな破壊力があるなんて知らなかった)」
佐藤「それじゃオッパイで包んであげるね」ニュルニュル
恒一「ああああっ!!」
赤沢「(様子を見に来たら、なんか凄いことになってるわね)」ハアハア
桜木「(あれって生パイズリだよね?榊原くん凄いきもちよさそう……)」ハアハア
杉浦「(やっぱ榊原くんもおっぱい星人だったか)」ハァ
杉浦「(でもってことはもっと単純な中尾への応用は十分可能ってことよね)」
巨乳ばっかに
桜木「(コート掛けにかかってた誰かの忘れ物だから落とし物に届けに行こうと思ったの!)」ヒソヒソ
杉浦「(ちょ、なんか展開が変わってきた!)」ヒソヒソ
佐藤「んっしょ、んっしょ」ユサユサ
恒一「あっ……ああっ……佐藤さん」
佐藤「和江。もう何回も言ってるでしょ?」ギュウッ
恒一「かっ、和江。なんでこんなこと……知ってるの?」
佐藤「女の子だってエッチな本くらい読むよ」
佐藤「それに私って結構ムッツリなとこあるし」ユサユサンッ
恒一「ああああっ……そこはっ!」
恒一「え……」
佐藤「もうちょっと滑りよくしよっか……んっ」クチュクチュ
恒一「和江、なにして……」
佐藤「べー」ダラリッ
恒一「あ……和江のよだれが僕のにかかって……あったかっ……」ブルッ
佐藤「よだれローション、これで滑りよくなったよ」ユサユサクチュクチュ
恒一「あふうっ!」ビクウッ
赤沢「(榊原くんのあの様子からするにフィニッシュは間近ね……)」モミモミハァハァ
桜木「(飲むか、かかるか、どっちなんでしょうか……)」モミモミハァハァ
杉浦「(あんたら空き教室の前で胸揉みながら興奮しないでよ。端から見たら不審者でしかないって)」
杉浦「(まあ、私に言えた義理じゃないけど)」ハァハァ
佐藤「えっ?」ユサユサンッ
恒一「うっ……!」
ビュルッ!
パタタタッ
恒一「はぁ……はぁ……」
佐藤「やだ、顔にかかっちゃった……すごいドロドロ」
佐藤「栗の花の匂い、すっごい……」トロン
恒一「ごめん、顔にかけちゃって」
佐藤「こんなに一杯かけてくれたって事はそれだけ気持ち良かったってことだよね」
佐藤「恒一くんが気持ちよくなったなら全然嬉しいよ」ニコッ
恒一「(精液かかったまま微笑む佐藤さんエロすぎるよおおお!)」ムクムク
佐藤「あれ?またおっきくなってきたね」フフッ
佐藤「やっぱりおちんちんはここに入りたいのかな?」シュルッ
恒一「(スカート、たくしあげて……うわ、凄い。パンツ黒いレースだよ……)」
佐藤「おちんちんはわたしのここに入って、一杯精液出して、私の卵子ちゃんをじゅせえさせたいんだよね」ナデナデ
佐藤「いいよ、一杯きもちよくしてあげるね」シュルリッ
恒一「(うわ、パンツが落ちた……)」
恒一「(和江のまんこ……上の方にうっすら毛が生えて、ちょっと開いてひくひく呼吸してるみたいに動いてる……)」
佐藤「やだ。そんなじっと見るほど綺麗じゃないよ。私のなんて」
恒一「ううん、すっごい綺麗だよ」
桜木「(カメラっ!誰かカメラっ!)」ボタボタ
杉浦「(てか大丈夫かなあの二人。生でやる気満々みたいだけど……)」
三神「……あなた達?そこで鼻血垂らして何見てるの?」
赤沢桜木杉浦「あっ」
三神「いったいその教室で何が起きてるの?」カツカツカツカツ
赤沢「(やばっ!昼下がりのニャンニャン現場見られたら止めずに覗いてたって対策係やめさせられる!)」
桜木「(同じく委員長やめさせられる!)」
三神「本当に何があるのか教えなさい。三人とも」カツカツカツカツ
鳴「(塩ラーメンにバターとカリカリ梅を入れてあげて)」テクテクテクテク
鳴「きゃ」ドサッ!
三神「あっ!」ドカッ!
赤沢杉浦「あ」
桜木「あ」キラーン
三神「あ」ゴオオオオ
ドスッ! キャアアアアアアアアアアア!!
恒一「ちょ!何!今の悲鳴!」ガチャガチャ
佐藤「今の声桜木さんだよね!?ちょっと見てくるね!」
恒一「あっ!和江!ブラウスとブラジャー!あとパンツ履いてから行って!あとティッシュかなんかで精液落とさないと流石にまずすぎるって!」
恒一「(その間に僕は放課後の送り迎え役を買って出た和江と朝晩イチャイチャし、一線を余裕で越えた)」
恒一「(そして、監禁生活解除後の今でも僕は和江にお弁当を食べさせてもらっていたりしている)」
恒一「(なんか忘れた気もするけど、僕達はとりあえず元気です)」
佐藤「はい、あーん」
恒一「あーん」
完
あとこれは少しおまけで
恒一「あれ?」ムクッ
恒一「ここどこ?誰かの部屋?」ジャラッ
綾野「わたしの部屋だよ?こういっちゃん?」
恒一「綾野さ……って、この手錠なんなの!?」
綾野「はずそうとしても無駄だよ♪それFBIの使ってる手錠と同じモデルなんだって」
綾野「ちなみに手錠の鍵は私が持ってますっ」
恒一「どうしてこんな事!」
綾野「んー、こういっちゃんの事独り占めしたくて」
恒一「独り占め……?」
綾野「そ。独り占め」
恒一「ひっ!」ビクッ
綾野「あ……怖がらせてごめんね」シュン
綾野「でもね、こういっちゃんを守るにはこうするしかなかったから」
恒一「(なんかおかしいぞ、この綾野さん)」
綾野「でももう安心だよ。こういっちゃんは一生側で私が守るからね」アハハ
恒一「(絶対におかしい……)」
綾野「ところでさ、こういっちゃんキスって初めて?」
恒一「え……?」
綾野「初めて?答えて欲しいな」
恒一「え?」
綾野「やっぱりみさきっちゃん?それとも意表をついて泉美?」
恒一「そ、それは……」
綾野「……まあいいよ。もうあんなの目にも入らなくなるから」
綾野「あんなのはもう眼中に入らないくらい、この部屋で私が愛したげるからね」チューー
恒一「(何これ……舌まで絡めてきてる)」
綾野「はぷ、ちゅ、ちゅううっ」
恒一「(よだれ吸われて……綾野さんってこんなにねちっこいキスするの?)」
綾野「ぷはっ。どう?良かったかな?」
綾野「私はこういっちゃんのよだれ飲めて幸せだったよ?」
恒一「……なんでこんな事するの?いつもの綾野さんらしくないよ」
綾野「いつもの私?」
綾野「じゃあ聞くけど、いつもの私ってどんな私?」
恒一「……明るくて、さばさばしてて、クラスのムードメーカーで」
綾野「そんなの上っ面だけだよ」
綾野「こういっちゃんの事が好きで好きでたまらなくて、告白する勇気はないけど誰にも取られたくないから監禁して自分のものにしようとした馬鹿な女の子」
綾野「こういっちゃん幻滅したよね?でも帰さないから」
恒一「(これが綾野さんの本性……なんかいつもより凄く弱弱しい感じがする)」
綾野「今からおちんちん、きもちよくしてあげるね」シュルッ
綾野「あんまり上手くないかもしれないけど、嫌わないでね」
恒一「なんでそんな性癖知ってるの?」
綾野「てっしーが教えてくれたよ。あとスク水も好きなんだよね」
恒一「(勅使河原ァァァ!)」
綾野「あんまりおっぱいおっきくないけど、嫌わないでね……」
恒一「(確かに大きくはないけど、綺麗な形してるなぁ)」
ジー
綾野「あんまりおっきくなってないね……」ボロンッ
恒一「そりゃ……何もされてないわけだしね」
綾野「キスしたよ」
恒一「いきなりだったしね」
綾野「そっか、残念」シュン
綾野「でも、言ったからにはきもちよくしてあげるからね……はむ」パクッ
綾野「どう……かな?じゅっ、きもちいいかな?」モゴモゴ
恒一「(すごっ……綾野さんの口、ねっとりしてて、熱くて、きもちいい……)」
綾野「ふふっ、おっきくなってきた。良かったあ……じゅっ」
綾野「口の中、こういっちゃんでいっぱいだよ……死んじゃいそっ」モゴモゴ
恒一「(綾野さんがこんなにうっとりしてるの……初めて見た)」
綾野「大丈夫だよ……全部、飲むからっ」
恒一「の、飲むからって!無理だっ……あっ!」ブルルッ
綾野「んううっ!」ゴプッ
綾野「(やだっ!気管に入って……!)ゲホッ!ゲホッゲホッ!」
恒一「だ、大丈夫!?凄い苦しそうだけど……」
綾野「……なかった」
恒一「え?」
綾野「飲めなかったよぉ……こういっちゃんに、嫌われちゃうよぉ」ポロポロ
綾野「そんな事あるよっ!」ポロポロ
綾野「私なんの取り柄もないしおっぱい小さいし好きな人いきなり監禁しちゃう独占欲まみれのダメな女なんか嫌って当然だよっ!」ポロポロ
綾野「私にできるのなんてこういっちゃんのこときもちよくする事くらいだけど、それも失敗しちゃったんだよ!?」ポロポロ
恒一「綾野さん……っ!」
恒一「(ちっくしょっ!後ろ手になってて抜けやしない!)」ガチャガチャ
恒一「(外れろやああぁぁっ!)」ガチャガチャ
綾野「もう駄目だよぉ」ポロポロ
バチインッ
恒一「(外れた!?いや、鎖が切れた!?)」
恒一「(でもどっちでも同じだっ!)」
ギュッ
綾野「え?」
恒一「嫌わないって」
恒一「綾野さんが僕が好きだって事も、それで綾野さんが不安だって事もわかった」
恒一「僕は綾野さんの事、好きだよ」
恒一「元気な綾野さんも、健気な綾野さんも、どっちも大好きだ」
ギュッ
恒一「だから、泣かないで」
綾野「こういっちゃん……」エグッ
綾野「うん」グスッ
綾野「ごめんね。泣いたりしたりして」
恒一「いいよ。綾野さんも不安だったんでしょ」
恒一「流石に綾野さんの中での僕のイメージがどんなのなのか少し気になったけどね」アハハ
綾野「……ね、いいかな」
恒一「え?」
綾野「順序おかしくなっちゃったけど、こういっちゃん、大好きです。私と付き合ってください」
恒一「……うん」コクリ
綾野「うん。バイバイ」ヒラヒラ
恒一「バイバイ。帰ったらショートメールするからね」ヒラヒラ ガチャ
小椋「すっかり仲良くなったみたいね」
恒一「小椋さん!?」
小椋「聞かれる前に先に言って置くけど、私は最初からここにいたし、ついでに言うと彩の共犯だから」
恒一「あの手錠の細工も??」
恒一「あれ、鎖がわざと外れやすいようにペンチで加工してたんでしょ?」
小椋「ギャンブルだったけどね。さっきみたいに彩を抱き締めてハッピーエンドになるか、彩を襲い倒すか、そのまま逃げるかの三分の一の賭け」
小椋「もし外れたら私が入って榊原くんを警棒でぶん殴る算段だったの」
恒一「私の場合?」
小椋「そ。彩と榊原くん達よりも面倒くさい関係で、榊原くんよりずっと面倒くさい人」
恒一「……そうなんだ」
小椋「彩を泣かせないでよ。意外と泣き虫なんだから」
恒一「オーケー、約束するよ」
恒一「恥ずかしいって、そんな」
綾野「いいからいいから、あーん」
恒一「……あーん」
赤沢「あの二人っていつあんなに仲良くなってたの?」
勅使河原「つかあれはもうありゃ新婚だろ」
赤沢「私も榊原くん狙ってたのにっ……」グシャグシャ
鳴「大丈夫だよ。赤沢さんは最初から眼中になかったから」
赤沢「なによそれっ!」クワッ
鳴「……でもあの二人はすごく強く繋がってると思うよ」
小椋「それって、二人でお互いの手に手錠してるみたいな感じに?」クスッ
勅使河原「なんだよそれ」
鳴「凄い近いかな。でも二人とも凄い楽しそう」
完
綾野ちゃんはこんな弱い子であって欲しいと願う俺がいます。
小椋さんのも見たいなーチラッ
Entry ⇒ 2012.07.06 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
恒一「裸エプロンって男の憧れだよね」
引用元: ・http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1341054648/
勅使河原「全くだな」
女子一同「」ガタッ
裸エプ有田「おかえりなさい、恒一くん!ご飯にする?お風呂にする?そ・れ・と・も……」
恒一「」バタン
恒一 (落ち着いて考えろ…。ここは、僕の…三神家の家であってるよな……よし)ガチャ
裸エプ綾野「おかえりー!こういっちゃん!」
恒一「」バタン
裸エプ赤沢「おかえりなさい、恒一くん」ボンキュボーン
恒一「あ…と、ただいま」
裸エプ赤沢「鞄持ってくわ、貸して」タニマチラリーン
恒一「あ、ありがとう」ムニュ
恒一「ん?」(なんか柔らかい感触が手の甲に…?)
恒一「」アトズサリ パタン…
裸エプ赤沢「oh…」
恒一 (質量のある幻覚…だとでもいうのか!?あ、赤沢さんの豊満なおっぱいの感触が…///)
恒一「…もう何だっていい…。幻覚だろうと現実だろうと、些末なことだよね…」
恒一 (ありのままに流されよう)ガチャ!!!
裸エプ小椋「お、おかえりなさい。しゃかきばらくん!///」ツルツルペターン
恒一「oh……」
裸エプ小椋「えーと、そ…その……。ん~///」モジモジ
恒一「ただいま帰ったよ。小椋さん」ニコッ
裸エプ小椋「ふぇ…?///お、おかえり!さか、恒一くん!///」
ガタッ チョットドウイウコトヨ イイナーユミ ワタシノデバン…
コレハフェアジャナイワ コウイチクンハワタシノヨウナオトナノオンナガニアッテルノヨ
恒一「ん?奥がなんだか騒がしいね」
裸エプ小椋「き、気のせいだよ///」
ガターン!!!!!!
恒一 (……!?)
裸エプ怜子「ちょっと恒一くん!そんな貧乳なんかのどこがいいってゆーの!?」バインバイーン
裸エプ桜木「三神先生の言うとおりです!」
裸エプ佐藤「榊原くん?こっちの蜜は甘~いゾ☆」
裸エプ小椋「ちょっ、ちょっとあんたたち!んなもんただの脂肪でしょーが!そんなことで恒一くんを誘惑しないでよ!」プンプン
恒一 (一体なんだっていうんだ…)
クイクイ
恒一「ん?」
裸エプ鳴「おかえりなさい…。恒一くん……///」ギュッ
恒一「み、見崎まで…そんな格好になって…///」ペターン (ん?肋骨?)
裸エプ綾野「あー!鳴ちゃんだけ抜け駆けしてズルーい!えーい!」トビツキ
裸エプ有田「収拾がつかなくなってきたね…」ハハハ…
裸エプ赤沢「」プルプル
ワーワーギャーギャー コノデカチチオンナドモメ ナニヨムネナシ スコシハアルワヨ!!
コーイッチャーン スリスリ/// コウイチクン///ペタンペターン…
チョッ…フタリトモ///
裸エプ赤沢「スゥーーー……、静まりなさぁーーーーい!!!!」
一同 (!?)ビクッ
裸エプ赤沢「いいえ!今のはあれが最善の対策だったはずよ!」
裸エプ鳴「…無能」ボソッ
裸エプ赤沢「…何か言った?見崎さん」ギロッ
裸エプ鳴「…何でもないわ」
裸エプ赤沢「……まあいいわ。それよりも恒一くん。今のこの状況をどう理解してる?」
恒一「へ?」 (なんか急に僕に振られたぞ…)
裸エプ有田「うん、そーだよ!」
恒一「それで僕は帰る家を間違えたんじゃないかと一旦ドアを閉めた…」
裸エプ綾野「それで次に私が待機してたらこういっちゃん、また一瞬でドアしめちゃったんだよ」
恒一「そう…なんだ。今度は間違いなく自分の家だと確信してから入ったのに、綾野さんがあられもない姿で立ってたものだから…///」
恒一「幻覚だと思い込んでもう一度入っていったら、そこには赤沢さんがいて…」
裸エプ赤沢「ええ、そうね。私がそこで恒一くんの鞄を預かったわ」
恒一「うん…。で、その時に……その……、手に赤沢さんの胸が当たって///…パニックになってまた外に出たんだ」
恒一「それで…もう現実だか幻覚だか…もうどうでも良くなっちゃって、ドアを開けたら今度は小椋さんがいて…」
恒一「こうなったらもう全てを受け入れよう、そう思って中に入ろうとしたら奥の部屋が騒がしくなって怜子さんが飛び出てきたんだ」
裸エプ赤沢「ストップ!今のとこ、もう一度言ってくれる?」
恒一「怜子さんが飛び出て…」
裸エプ赤沢「その前」
恒一「奥の部屋が騒がしくなって…」
裸エプ赤沢「そのさらに前!」
裸エプ赤沢「そう!そこよ!みんな聞いたわねー!」
裸エプ鳴「しかとこの耳に」
裸エプ有田「録音までバッチリよ!カチャリ『コウナッタラモウ全テヲ受ケ入レヨウ、ッテトコロ?』ね?」
裸エプ小椋「ちょっと泉美!?な、なんなのよ!さっきから!」
裸エプ鳴「あまりに混乱して場の雰囲気に流されてしまった、というわけね」
裸エプ綾野「だから、えーと…それってつまり…」
裸エプ有田「私や彩ちゃんに魅力がなかってわけでなく…」
裸エプ赤沢「単に巡り合わせが良かった、恒一くんが場の状況に流されてしまう準備が整ってしまったということよ」
裸エプ桜木「単にあのタイミングで出れば、全員がそうなっていたかもしれない…と」バルン
裸エプ佐藤「そういうことだね」プリン
裸エプ鳴「…恒一くんが裸エプロンは男の憧れだっていうから……」
恒一「え?勅使河原と話してた時のアレ?」
裸エプ赤沢「ええ、その会話が『偶然』聞こえてね。あなたに好意を寄せているクラスの女子一同が集まったのよ」
裸エプ桜木「みんなでこうして待機していたんですよ」
恒一「……」
裸エプ有田「グッドアイディアでしょ!」クネクネ
裸エプ小椋「その…ね、恒一くん…。そういうことだったんだけど……その…///」
裸エプ多々良「で、榊原くん。ここにはあなたに好意を寄せている女性がこれだけいるわけですが…」
裸エプ佐藤「誰が1番あなたの理想に近い姿なのかな?///」
恒一「…………えっと」
裸エプ赤沢 (大丈夫…恒一くんは私のおっぱいにメロメロだったはず…。何も恐れることはないわ…)
恒一「未だに恋人関係でもないのに…こういうのは過激過ぎるというか…///」(改めてみると、みんな凄い格好だし)
恒一「今はまだそういうのを選ぶことはできない…よ」
裸エプ女性「……」(今はまだ……ね。つまりはこれから次第!)
恒一「そうだね……」
恒一「今のトレンドはやっぱり、『手ブラジーンズ』だね!!」
その翌日、恒一の家には手ブラジーンズ姿の同一メンバーがいたことは語るまでもないだろう(※怜子さんを除く)
おわり
Entry ⇒ 2012.07.02 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
恒一「見崎の浴衣姿がなんかエロい」
鳴「お待たせ、榊原くん」
恒一「……」
鳴「…榊原くん?」
恒一「(まず、人ごみを嫌いそうな見崎をダメもとで夏祭りに誘ったらOKをくれたことに驚いた)」
恒一「(しかもわざわざ浴衣を着てきた見崎に今、驚いている)」
恒一「(しかもピンクの花柄…意外だ)」
恒一「(正直、可愛いと思うんだ)」
恒一「(けど…)」
鳴「さ・か・き・ば・ら・くん?」
恒一「(何故、浴衣なのにミニスカートなんだろう?)」
恒一「(浴衣のサイズがぶかぶかはあるにしても)」
恒一「(素足が思いっきり見えるだなんてことはまずあり得ない…)」ジー
鳴「…!」
鳴「…もしかして私が浴衣を着てきたのに驚いてるの?」
鳴「確かに浴衣は帯を結ぶのが面倒なのでキラい」
鳴「でも…」
鳴「き、今日は特別に…///」
恒一「(…そうか!)」
恒一「(これがゴシックロリータファッションか!)」
恒一「(見崎は見た目や実家的にもそういうのが好きそうなのは…)」
鳴「…それで、どう?」
鳴「似合ってる…かな?」
恒一「…!」
恒一「あ、あぁ!ごめんごめん!」
恒一「浴衣、凄い似合って…」
鳴「…!」ドキッ
恒一「……」
鳴「……」
鳴「…?」
恒一「(でも、待てよ?)」
恒一「(ゴシックロリータって一般的には黒じゃないのか?)」
恒一「(ただ、ゴシックのイメージとしては黒だ)」
鳴「…えっと」
鳴「似合って…ない…?」オズオズ…
恒一「(じゃあ、何故見崎の浴衣姿はピンクで素足が丸出しで、ちょっと淫らなんだ…?)」
恒一「……」
恒一「(そうか!)」
恒一「(これはただのロリータだ!)」
鳴「さ・か・き・ば・ら・くぅん…?」グスッ…
恒一「(それなら説明が…)」
鳴「…「いないもの」か」
恒一「…!!」
恒一「その浴衣、凄い似合ってるよ!」
鳴「えっ…?」
鳴「ほ、本当…?///」
恒一「(…あれ?)」
恒一「(でも、待てよ?)」
恒一「(ロリータファッションって…エロいのか?)」
恒一「(見崎自体はロリータだけど…)」
鳴「…着て来てよかった」ボソッ
恒一「(ていうか、ミニスカートで素足が丸見えなのは、さっきからわかっていたけれど…)」
恒一「(僕は今、大変なことに気がついてしまった)」
鳴「…お母さんのお古だけど…」
恒一「(見崎、なんで裸足なんだ?)」
恒一「(夏のアスファルトの上を裸足って…)」
恒一「(それに心なしか…)」
鳴「…///」ポワーン
鳴「…!」ハッ…!
鳴「そ、それで…」アセアセ
鳴「今日のプランはどうなってるの?」ペターン
恒一「(胸の谷間を強調しているような作りだ…)」
恒一「(いや、むしろ…)」
恒一「(ちょっとかがんだら隙間から見えてしまいそうな…)」
恒一「……」
恒一「(ダメだ…わからない…)」
恒一「(これはなんていうジャンルのファッションなんだ…?)」
恒一「…あっ、そうだね」
恒一「見崎はお腹とか空いてる?」
鳴「ちょっと小腹が空いてる程度かな」
恒一「そっか、じゃあ何か食べようか?」
鳴「……」ジーッ
恒一「…見崎?」
恒一「(見崎が明後日の方向を向いて…)」チラッ…
恒一「…!!」
『チョコバナナ』
恒一「(…なるほど、全ての答えがわかったぞ)」
恒一「(見崎のファッションはエロスと可愛さを取り入れたエロカワという全く新しいジャンルなんだ!)」
恒一「(この言葉…きっと21世紀には流行るぞ…)」
恒一「(これで全ての謎は解けた)」
恒一「(あとは見崎との夏祭りを楽しむだけだ)」
恒一「チョコバナナか、定番だね」
鳴「意外と紅茶に合うんだよ」
恒一「へぇー」
鳴「榊原くんは何か他に周りたい出店とかある?」
恒一「いや、僕もチョコバナナで…」
恒一「……」
恒一「…!!」
恒一「(あ、あれは…!?)」
『金魚すくい』
恒一「…くっ!」
鳴「…!?」ビクッ
恒一「(もっと相応しい言葉があったじゃないか…!)」
鳴「…?」チラッ…
鳴「…金魚すくいしたいの?」
恒一「(金魚をすくう為にかがむ見崎…)」
恒一「(隣にいる僕…)」
恒一「(つい、見崎の胸元に視線がいってしまう…)」
恒一「(そしてミニスカートでかがんでいるから通りすがりの男が見崎の下半身につい目を向ける…)」
恒一「(そうか…このファッションのジャンルは…)」
恒一「(エロスだ)」
恒一「(けど「可愛い」と思うのは人それぞれの感じ方だ)」
恒一「(しかし万人は見崎の浴衣姿を見て…)」
恒一「(エロい)」
恒一「(と思うだろう)」
鳴「金魚すくい、好きなんだ?」
恒一「(そうか…見崎って意外と露出狂…)」
恒一「……」
鳴「じゃあ、金魚すくい、しよっか?」
恒一「…違うっ!!」
鳴「!?」ビクッ
恒一「(露出狂?)」
恒一「(それじゃあ、まるで見崎が変態みたいじゃないか!?)」
恒一「(自分の友達を…)」
恒一「(ましてや好きな異性を変態扱いするだなんて…!)」
恒一「(見崎がそういう子じゃないのは、「いないもの」同士、一緒に過ごしててわかってたはずだ!)」
鳴「あ、あの…」オドオド…
鳴「(き、金魚すくいじゃ、無かったのかな…?)」オズオズ…
鳴「(じゃあ、その隣のお面屋さん…?)」
鳴「……」
鳴「(セーラームーンのお面、欲しいな…)」
恒一「(きっと、このファッションで何か見逃している点があるはずだ…)」
鳴「(榊原くんは…仮面ライダーが欲しいのかな?)」
恒一『夜見山には仮面ライダーがいることを忘れるな』
フェア林『さぁ、お前のフェアを数えろ』
鳴「(…結構ハマり役かも)」
恒一「(セクシーなんてどうだ?)」
恒一「(いや、セクシー=エロスか…)」
恒一「(それじゃあ、ダメだ…)」
恒一「(やはり重要なのは裸足なところか?)」
恒一「(浴衣…ミニスカート…裸足…)」
恒一「……」
恒一「(ダメだ…ただエロい…)」
恒一「(けど、絶対にそれだけじゃはずなのに…)」
勅使河原「お?あの浴衣姿、見崎じゃね?」
フェア林「本当だ。夏に浴衣だなんてフェアだね」
恒一「…?」
恒一「(勅使河原とフェア)林くん…?)」
恒一「(二人も来てたのか…)」
恒一「……」
恒一「…って、あれ?」
恒一「見崎がいない…」
フェア林「どうしたんだい?」
勅使河原「見崎の浴衣姿ってよ…」
恒一「(あっ、いつの間にかお面屋に…)」
恒一「(セーラームーンと仮面ライダー好きなのかな?)」
恒一「(それよりも、やっぱり勅使河原達も見崎の浴衣姿に興味を…)」
勅使河原「風俗っぽくね?」
恒一「……」
恒一「…!?」
恒一「(あの…見崎が…?)」
フェア林「その言い方はフェアじゃないよ」
恒一「…!!」
恒一「(そ、そうだ!)」
恒一「(あの姿から風俗に結び付けるのはフェアじゃ…!)」
フェア林「風俗って言っても色々あるんだから」
フェア林「ちゃんと風俗「嬢」を付けないと」
勅使河原「あっ、そっか!わりぃ、わりぃ!」
恒一「……」
恒一「…見崎」
鳴「つ お面」
恒一「仮面ライダーのお面…」
恒一「これを僕に…?」
鳴「う、うん…」
恒一「……」
鳴「…もしかして、アンパンマンの方だった?」オズオズ
恒一「見崎」
鳴「ご、ごめんなさい…」
鳴「今、また買ってくるから…」
恒一「コスプレプレイも良いよね」
鳴「……」
鳴「えっ?」
恒一「凄く良い組み合わせだと思うよ」
鳴「あの…榊原くん…?」
恒一「見崎!」
鳴「は、はいっ!」ビクッ
恒一「伝わったよ…見崎の気持ち…」
鳴「…えっ?」
恒一「僕も見崎のことが好きだ」
鳴「……」
鳴「…えっ?」
恒一「求めあうのは自然なこと…」
恒一「僕だって見崎と交わりたい…」
鳴「さ、榊原くん…?」
恒一「その気持ちを「変態」とは言わない」
恒一「それは「愛」だ」
鳴「……」
鳴「(何が何だか理解出来ない…)」
鳴「(でも…)」
鳴「私も…榊原くんのことが好き…」
鳴「(って、返しておけば大丈夫なのかな?)」
鳴「(私も好きなのは…事実だし…///)」
鳴「(今日、お母さんがアルバイト時代に着てたっていう浴衣を着てきたのは良いけど…)」
鳴「(私としたことが…)」
鳴「(履きものを履き忘れて裸足で着てしまうだなんて…)」
鳴「(でも、そこをあえて指摘しないでいてくれる榊原くん…)」
鳴「(優しい…///)」
恒一「しかし行為を行うにしても場所を考えないとな…」
鳴「……」
鳴「…えっ?」
鳴「(もう、キスまでするの…?)」ドキドキ…
鳴「ひゃ、ひゃいっ」ドキッ…
恒一「流石に外では良く無いと思うんだ」
恒一「(それこそ場所を選ばない「変態」扱いだ)」
鳴「あっ…うん…」
鳴「(別に…二人きりなら場所は…)」
恒一「それに初めてはやっぱり大切にしたいからさ」
鳴「…!!」ドッキーン
鳴「(た、確かにその通り…ファーストキスは一生に一度きりのイベント…)」
鳴「(安易に行うものでは無い…)」
鳴「(榊原くん…凄く私のことを大切にしてくれようとしてくれるんだ…///)」
恒一「初めては良かったら、お互いの家のどちらかでしないか?」
鳴「あっ…」
鳴「うんっ…///」コクッ…
恒一「もちろん、その格好とお面を持って」
鳴「……」
鳴「…えっ?」
鳴「(浴衣姿に…お面…?)」
鳴「……」
鳴「(…あぁ、なるほど)」
鳴「(二人の気持ちが通じ合った日の再現ってことね///)」
恒一「(でもお面を付けたら視界が狭い上にキスが出来ないな…)」
恒一「うん」
恒一「それじゃあ、今日は夏祭りを存分に楽しもうか!」
鳴「うんっ」
勅使河原「コスプレプレイか…そういうのも良いな…」
フェア林「お面を付けたらフェラが出来ないね」
おわり
鳴「えっ?」素顔
恒一「えっ?」お面状態
鳴「……」
恒一「……」
鳴&恒一「…!」
鳴「(なるほどね…)」
恒一「(そういうことか…)」
鳴「(最初はお面越しのキス…ちょっと甘酸っぱくて中学生っぽいかも…///)」
恒一「(中学生同士の性行為は不純だよな…)」
鳴&恒一「……」
鳴&恒一「その先は…卒業してから、しようね///」
ホントにおわり
コレは直接触れてはいないのか!?
Entry ⇒ 2012.07.01 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
江藤「おはよう榊原君!」 恒一「あ、おはよう江藤さん」
引用元: ・http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1340786760/
恒一「……………………」
江藤「どうしたの? 黙っちゃって。早く教室行かないと予鈴鳴っちゃうよ?」
恒一「……いや、なんだか最近江藤さんに話しかけられること多いからさ」
江藤「もしかして嫌だった?」
恒一「そんなことないよ。でも、なんでかなー、って」
江藤「決まってるじゃない。榊原君のことが好きだからだよ」
恒一「え!?」ドキ
恒一「え?」
江藤「冗談だよ」
恒一「じょ、冗談……?」
江藤「何その反応? もしかして期待しちゃったとか?」クス
恒一「ぼ、僕は別に……」アセアセ
江藤「ごめんごめん。ちょっとからかってみただけだよ。それに榊原君は見崎さん一筋なんでしょ?」
恒一「!」
江藤「はいそこ驚かない。3組に籍を置く者にとったら常識です」
恒一「そうなの!?」
江藤「それに私は、他の子みたいに恋とか男の子とか興味ないから。今は受験にクラブに忙しいし。そこは安心して」
キーンコーン
江藤「おっと、本当に予鈴が鳴っちゃった。急がないと」ダッ
恒一「あ」
江藤「ほらそこの少年! 突っ立ってても時間は過ぎてくばかりだぞ!? 駆け足駆け足!」タッタッタ
恒一「……行っちゃった」
恒一「……………………」
恒一「……って、僕も急がないと!」
昼休み・屋上
恒一「ってなことが朝あったんだよ」モグモグ
鳴「ふーん、江藤さんがね」ムシャムシャ
恒一「正直、僕、江藤さんがどんな子なのかよく知らないからどう接したらいいか分からないんだよね……」
恒一「見崎はさ」
鳴「うん?」
恒一「江藤さんってどんな子か知ってる?」
鳴「3組で一番ショートカットが似合う女子生徒?」
鳴「――ぐらいしか私も知らない」
恒一「だよね」
鳴「……でも私は最近、江藤さんと話す機会が多いよ」モグモグ
恒一「見崎も?」
恒一「ふーん……なんでだろ? 一学期中はほとんど話すことなかったし、〈いないもの〉扱いされてた時はあからさまに避けられてたよね」
鳴「……ま、一学期は災厄が終わってなかったからね」ガブガブアーンゴックン
恒一「でも、冗談でも江藤さんに告白された時はビックリしちゃったな。ちょっとドキッてしちゃったし」テヘヘ
鳴「……」ピタ
恒一「江藤さんって女子の中でも結構可愛い方じゃない? 彼氏とかいないのかな?」
鳴「………………」
恒一「って、あれ? どうしたの見崎? 急に手が止まっちゃったけど」
鳴「…………別に」ムスッ
恒一「……? そう」
鳴「……………………」ツーン
恒一「?」
昼休み・教室
渡辺「ハァ……」
佐藤「ちょっとちょっと。ご飯食べてる時にいきなり溜息吐かないでよ。お弁当が不味くなっちゃうじゃない」
有田「珊ちゃんらしくないね」モグモグ
江藤「なんか悩み?」
渡辺「いや、それがさ。私、バンドやってるじゃん?」
佐藤「ああ、デスメタルバンドだっけ?」
渡辺「そう」
有田「あ、知ってる知ってる!」
有田「歌舞伎みたいな化粧して頭ドカーンって爆発させてヤンキーの真似してデゲデゲデゲデゲ!!って演奏するやつだよね!」
渡辺「全然違う」
有田「あれ?」
江藤「で、それがどうかしたの?」
佐藤「へぇ、やるじゃない珊」
有田「おおお、さっすが珊ちゃん!」
江藤「……………………」モグモグ
渡辺「いやいやこっちは迷惑してるんだって。面倒にならないようにファンとはそういう関係にならない、って仲間内で決めてるのにそれ説明しても理解してくれなくてさ」
佐藤「なるほど。それは厄介ね」
渡辺「ていうかそもそもその男、私のタイプじゃない」ドン
有田「そうなんだ。珊ちゃんってどんな男の子が好きなの?」
渡辺「どっちかというと年上かな? そもそも同年代は対象として見れないというか」
有田「えーじゃあクラスの子でいないの?」
渡辺「そうね。うちの男子、幼稚なの多いし」
佐藤「辛口評価ね」
有田「でもなんだか珊ちゃんらしいよね」
渡辺「そういう松子はどうなのさ?」
渡辺「何それ普通すぎでしょ」
佐藤「普通すぎね」
有田「ふ、普通で悪かったか!」プンスコ
渡辺「じゃあ、悠は?」
江藤「え?」モグモグ
渡辺「悠はどんなタイプの男が好きなの?」
江藤「好きな男の子……?」
渡辺「そ」
江藤「うーん…………」
有田「……」ワクワクドキドキ
佐藤「えー溜めといてそれか」
有田「あはは、悠ちゃんらしい答えだね」
渡辺「やっぱりね。まあ悠はクラブが恋人みたいなもんだからね。クラブ一筋! ってところあるし」
佐藤「そういや悠にはまるっきり男の噂とか聞かないね」
江藤「私は受験にクラブに忙しいから。あんまり恋人とか恋愛とかどうでもいいんだよね」
有田「おー言い切ったね。密かに悠ちゃんを狙ってる3組の男の子が聞いたら卒倒しそう」ワクワク
江藤「そんな男の子いるの?」
有田「またまたーご謙遜しちゃってー! 悠ちゃんぐらい可愛かったら一人や二人いるって」
江藤「そうかなー?」
渡辺「悠ってばお洒落とかにはいまいち無頓着だからねぇ。素材はかなりいけてるのに」
有田「だよねだよね。着飾れば可愛くなるはずだよ!」
江藤「そう?」
佐藤「そういえば松子は最近可愛くなったよね」
有田「本当? まあ気をつけてる方かも、えへへ」
渡辺「何々? もしかして彼氏でもできたとか?」ニヤリ
有田「ち、違うよぉ!」
江藤「……」ガタッ
佐藤「どうしたの悠?」
江藤「ちょっと食べ足りなくてさ。購買部でなんか買ってくるね」
佐藤「ったく、色気が足りないな。太っちゃうぞ?」ツンツン
江藤「これぐらいでは太りません」ペシッ
江藤「ふぅ……」
江藤(好きな男の子ね……)チラッ
望月「えー恥ずかしいよこんなのー」
勅使河原「いいかいいから。お前も男だろ? 受け取っとけって」ガサゴソ
望月「こんなの貰っても、もしお姉さんに見つかったら変な目で見られちゃうよ」キョロキョロ
望月「!」
江藤「……」ジロッ
望月「////」カァァ
勅使河原「これでお前も一人前の男だ」フンス
望月「……あ、あの……勅使河原君。今度からはもっと人がいない所で渡してくれると助かるかも……////」チラッ
江藤(……やれやれ)ハァ
勅使河原「んじゃおまけでもう一つ」ガサゴソ
望月「あっ! そ、そんなの……! 恥ずかしいよ//// みんな見てるよ////」
江藤(珊の言ってることも理解できるかも)
鳴「!」
江藤「見崎さん……」
鳴「江藤さん」
江藤「もしかして今、昼食から帰ってきたところ?」
鳴「…………」コクリ
江藤「そっか。私は食べ足りなくてさ。今から購買部に行こうとしてたんだ」
鳴「そうなの……」
江藤「見崎さんは何か購買部でお勧めのパンとかある?」
鳴「私は……コンビニしか利用しないから……」スッ
江藤「あ……」
鳴「…………」タッタッタ
江藤「もしかして嫌われてるのかな?」
江藤「……ま、無理もないよね」
江藤「じゃあ適当にサンドイッチでも買おうとするかな」フンフンフーン
―――
―――――
放課後
恒一「ハァ……なんだか今日は見崎、素っ気なかったな。僕、何かしたかな?」
恒一「まあいいや。それより忘れ物早く取りに行かないと」
ガラッ
恒一「ん?」
江藤「あれ? 榊原君じゃない」
恒一「江藤さん……どうしたの? こんな時間に教室で」
江藤「うん。ちょっとクラブまで時間あるから暇潰してたところなんだ。榊原君は?」
恒一「僕は忘れ物取りに来たんだけど、偶然だね」
江藤「ふふ、そうだね」
恒一「えっと……確か机の中に置いてたはずだけど……」ガサゴソ
江藤「……………………」
恒一「じゃあ江藤さん。忘れ物も見つかったし、僕は――」
江藤「ねぇ」
恒一「ん?」
江藤「良かったら、クラブまでの間、話相手になってくれないかな?」
恒一「え? ……僕と?」
江藤「うん」
恒一「………………」キョロキョロ
恒一「……二人きりで?」
江藤「ダメ?」
恒一「……! (う、上目遣いが……っ!)」
恒一「わ、分かった。僕なんかで良ければ……」
江藤「ありがと、榊原君」ニコッ
恒一「いや、気にしないで。だけど江藤さん、まだクラブやってたんだね」
江藤「そうなんだよね。もうそろそろ引退だけど、できるだけやっておこうと思ってさ」
恒一「なんのクラブなの?」
江藤「水泳部だよ。今度、大きな大会があってね。今はそれに向けて特別メニュー組んで練習中」
恒一「へぇ、すごいね。水泳やってるんだ」
江藤「別にすごくないよ。水泳なんてやってる人、たくさんいるんだし」
恒一「そうかな? 僕、何か一つのことに打ち込める女の子って、素敵だし、かっこ良くて好きだけどな」
江藤「……もしかしてそれって口説いてるのかな? それとも女の子には誰にでも同じこと言ってる?」ニヤリ
恒一「ええっ!? べ、別に僕はそんなつもりじゃ……っ!」
江藤「榊原君のことだから女の子には困ってなさそうだよね。きっと見崎さんも同じ手で抱き込んだのかな? そしてあわよくばこの私もと……」
恒一「ち、違うよ! 僕はそんな酷いことしないよ!」
江藤「きゃー誰か助けてー榊原君に狙われるー(棒)」
恒一「わっ、ちょっ、だ、誰かに聞かれたらどうすんの!?」
恒一「へっ?」
江藤「ごめんごめん、冗談だよ冗談」ペロ
恒一「じょ、冗談……?」
江藤「そ。冗談。また引っかかっちゃったね。相変わらず純真だなー榊原君は」
恒一「ビックリするじゃないかーもう」
江藤「クスッ」
江藤「でもそういうところが榊原君の長所かもね」
恒一「長所って?」
江藤「うーん……すぐにからかいたくなるところとか?」
恒一「それって褒められてるんだろうか?」
江藤「どうだろ?」
恒一「江藤さんが言ったんじゃないか」
江藤「あははは、ごめんごめん。そうだったね」クスクス
恒一「………………」
恒一「いや、江藤さんって結構イメージしてたのと違う人なんだなー、って思って」
江藤「へぇ。興味深いね。榊原君は私のこと、どんな風にイメージしてたのかな?」
恒一「もっとこう、無口で淡々としてて、きつそうな感じ?」
江藤「あーなるほどねぇ。まあ一学期中はほとんど話したことなかったからね。無理ないかな」
恒一「だけど今はなんていうか、明るくて親しみやすい印象があるよ」
江藤「ありがと。そう評価してもらえると嬉しいです。ていうか元からこんなだったんだけどね」
恒一「じゃあ一学期、僕の前で冷たいようにしてたのはやっぱり……〈いないもの〉だったから?」
江藤「……あの時は、ね。言い訳なんてするつもりないし許してもらえるとは思わないけど、正直怖くて……」
恒一「そっか……」
江藤「ごめんね? 榊原君や見崎さんには酷いことしちゃったね」
恒一「いや、今更気にしてないよ。ただ、最近江藤さん、妙に見崎に話しかけてるみたいだから不思議でさ……」
江藤「ああ、それか……別に大した理由でもないんだけど」
恒一「何? もし良かったらその理由、教えてくれないかな?」
恒一「罪滅ぼし?」
江藤「うん。〈いないもの〉扱いしてあからさまに無視してたことのね」
恒一「……!」
江藤「本当は、いつかちゃんと見崎さんにも謝ろうとしてたんだけどさ。もし拒否されて嫌われちゃったら、って思うと普通に話しかけることぐらいしかできなくて……」
恒一「そんな理由だったんだ」
江藤「おかしいよね? 一学期、あんなに榊原君たちのこと無視してたのにさ……」
恒一「江藤さん……」
江藤「でも、ごめんなさい。本当にあの時は、災厄が怖かったの」
江藤「最初は私も半信半疑だったんだけど、3組の生徒たちが次々に死んでいって、いよいよ災厄の恐怖が実感できるようになると、次は私なんじゃないか、って不安になって……夜も眠れなかった。先生がみんなの前で自殺した時はもう本当に怖くて……怖くて……」
恒一「……そういえば江藤さん、あの時席で泣いてたね」
江藤「合宿も、松子や珊に誘われたけど死ぬのが嫌でずっと家に篭ってた。合宿が終わって、しばらくして人づてに3組の災厄が終わったのを知った時は本当に嬉しかった」
江藤「これでもう死に怯えなくて済むんだ、普通に生きれるんだ、って一日中泣いてた……」
恒一「そうだったんだ……」
江藤「もう……嫌なの。昨日まで一緒に勉強していたクラスメイトたちが理不尽に死んでいくのも、死の恐怖に怯えるのも……っ!」ガタガタ
江藤「なんでこんな目に遭わないといけないの!? 私が何をしたって言うの!? もうやめてよ!! 死にたくない!!」
恒一「江藤さん」ガッ
江藤「!!」ハッ
恒一「大丈夫?」
江藤「……さかき、ばら君」
恒一「安心して。災厄は終わったんだ。もう、江藤さんは怖がらなくていいんだよ」
江藤「……そうだね。ごめんなさい、ちょっと取り乱しちゃって……」グスッ
恒一「仕方がないよこればかりは。僕も、あの災厄で大切な人、たくさん亡くしちゃったからね……」
恒一「それなら、いい方法があるよ」
江藤「え?」
恒一「江藤さんは〈いないもの〉の件で何かと見崎のこと気にかけてるようだけど」
江藤「うん」
恒一「それよりも見崎の友達になってあげてくれないかな?」
江藤「私が……見崎さんの友達に?」
恒一「そう。僕には勅使河原や望月がいるし、災厄が終わってほとんどの男子とも仲良くなれたけど、見崎はあの性格だし〈いないもの〉扱いされてた時の影響でどうも多くの女子とはまだ壁があるみたいなんだ」
恒一「それが可哀想でさ。良かったらこれを機に見崎と友達になってほしいんだ。江藤さんなら良い友達になれそうだし」
江藤「私はもちろんいいけど、見崎さんとしてはどうなんだろ?」
恒一「見崎は、あんまり顔には気持ち出さないけど、根は良い子だからきっと喜んでくれるよ」
江藤「そっか。特に見崎さんが嫌じゃなかったら、それでいってみようかな?」
恒一「うん。よろしく頼むよ」
江藤「でもその前に」
江藤「榊原君は、私とは友達になってくれないの?」ニヤ
恒一「え? 江藤さんと?」
江藤「あら。何その反応? もしかして私みたいなとは友達になりたくないって?」
恒一「や、と、とんでもない! 江藤さんがいいならぜひ!」
江藤「ふふっ。ありがとう。よろしくね、榊原君」ニコッ
恒一「!」ドキッ
恒一「……う、うん、こちらこそよろしく江藤さん////」
江藤「……」クスッ
恒一「……、、、」
翌日・昼休み
恒一「ってわけで、江藤さんを昼食に誘ってみました」
江藤「誘われてみましたー」テヘヘ
鳴「……………………」
恒一「……………………」
江藤「……………………」
鳴「……………………」
恒一「……………………」
江藤「……………………」
鳴「………………そう」
恒一・江藤(何この間!?)
恒一「……あ、え、えっと、見崎?」
鳴「事情は理解したわ」
恒一「ほ、本当に?」
江藤「う」
鳴「でも拒否する理由もないしね。好きにすればいいんじゃないかしら?」
江藤「……」ホッ
恒一「良かった。二人とも、仲良くなれたらいいね」
江藤「お、お手柔らかに……」
鳴「…………」スッ
江藤「!」
鳴「…………」モグモグ
江藤(あ、あれ? なんか素っ気ない……)
恒一「じゃあ僕たちもご飯食べようか」
江藤「あ、うん、そだね」
江藤「榊原君のも美味しそうだよ」
鳴「………………」モグモグ
江藤「お、春巻き! このお弁当を作った人は分かってるね」
恒一「江藤さん、春巻き好きなの?」
江藤「うん、大好き」
恒一「じゃああげるよ」
江藤「いいの? やった! でも貰うだけじゃ申し訳ないから、私も何かあげるよ」
恒一「本当に? んーと、それじゃあから揚げとトレードしよう」
鳴「……………………」ムシャムシャ
恒一「はい、春巻きどうぞ」
江藤「ん。いただきました」
鳴「…………………………」モグモグムシャムシャ
江藤「じゃあこっちも。はい、から揚げね」
恒一「ありがとー。とても美味しそうだね」
恒一「ん? 何?」
江藤「榊原君はクラブとか入ってるの?」
恒一「僕は入ってないよ。もう3年だし。東京にいた頃は料理研究部とか入ってたけどね」
江藤「料理研究部? へぇ、榊原君、料理が得意なんだ?」
恒一「素人に毛が生えた程度だけどね。簡単なものは大体作れるよ」
江藤「すごいね。料理が得意な男の子ってなんだか憧れちゃうな」
恒一「そ、そう? なんだか照れるなぁ」テヘヘ
江藤「謙遜しない謙遜しない」
鳴「………………」バキベキッガブリ
恒一「江藤さんは料理とかしないの?」
江藤「するよー。榊原君ほど上手くないと思うけど」
江藤「でも以前、松子に振舞ってあげたら絶賛されちゃってさ。『悠ちゃんシェフになれるよ!』だって。もう、あの子ってば大袈裟だよね」
鳴「……………………」ガブガブゴクリ
江藤「またまたー。お世辞はいいって」
恒一「謙遜しない謙遜しない」
恒一・江藤「あはははは」
鳴「…………」グビグビグビグビプハー
恒一「江藤さんはクラブ、水泳部って言ってたっけ?」
江藤「うん。今度の大会が終わったら引退だけどね」
恒一「練習頑張ってね。僕、応援してるからさ」
江藤「ありがとう。そう言ってもらえると俄然やる気が出るよ」
恒一「ちなみに練習ってどんな風にやってるの?」
江藤「どんな風、って言われてもね。普通に学校のプールで、としか……あ、そうだ」
江藤「なんなら今日の放課後、見学に来てみない?」
恒一「え? いいの?」
江藤「もちろん。邪魔したりクラブのみんなに迷惑かけなかったらね。どうかな?」
恒一「それなら一回見に行ってみようかな」
鳴「………………」モキュモキュゴクンカジカジ
江藤「じゃ、決まりだね」
恒一「うん。放課後、見崎と一緒に見学させてもらうね」
鳴「……」ピク
江藤「どうぞどうぞー。お待ちしてまーす」
江藤「どうしたの?」
恒一「なんていうか江藤さんと話してると、会話が弾むね」
鳴「………………」ボリボリベキベキ
江藤「そう? 私としては普通に話してるつもりなんだけど」
恒一「それに懐かしい気がするんだ」
江藤「懐かしい……?」
恒一「まるで綾野さんと話してるみたいでさ。どことなく似てるところがあるんだよね、江藤さん」
江藤「……ああ、彩のことね……」
恒一「……? もしかして江藤さん、綾野さんと仲良かったの?」
江藤「うん。結構気が合ってさ。松子ほどじゃないけど、3組の女子の中では仲良かった方かな」
江藤「うん……」
恒一「あの災厄さえなければ、今頃3組のみんなで一緒に楽しい学校生活を送れてたのにな……」
鳴「……………………」
恒一「残念だな。綾野さんも、そして――」
江藤「ねぇ」
恒一「ん?」
江藤「今はこんな話、やめようよ。せっかく昼ご飯食べてるんだしさ……」
恒一「あ、そ、そうだね。ごめん、そこまで気が回らなくて……」
鳴「……………………」ムシャリ…
恒一「え、あ、そう? 喜んでもらえたなら何より。から揚げと交換した甲斐があるよ」
江藤「もしかしてだけど、このお弁当って榊原君の自作?」
恒一「そうだよ」
江藤「やっぱりぃ? すごいなぁ。機会があれば一度試しに榊原君の料理食べてみたいな」
鳴「……」ピタリ
恒一「それぐらいなら別に構わないよ。今度ごちそうしてあげようか?」
鳴「!」
江藤「いいの? 冗談で言っただけなんだけど」
恒一「もちろんいいよ。断る理由もないしね」
江藤「やった。それじゃあ、暇な時でいいのでお願いします」ペコリ
恒一「了解」ニコッ
鳴「……………………」
恒一「でしょ? また近いうちおいでよ。一緒にお弁当食べよう」
江藤「ありがとう。普段は松子たちか奈緒美と食べてるからあまり来れないかもしれないけど、そうさせてもらうね」
鳴「ごちそうさま」スクッ
恒一・江藤「!」
恒一「あれ? 見崎、戻っちゃうの?」
鳴「そろそろ予鈴鳴りそうだしね」
恒一「もうそんな時間か。会話に夢中で気がつかなかった」
鳴「……じゃ、私、先に行ってるね」
恒一「あ、うん」
鳴「…………」スタスタスタ…
恒一「なんだろ? 今日の見崎、やけに素っ気ないな」
江藤「あ、しまった」
恒一「え?」
恒一「あ、そういえば僕も見崎のことすっかり忘れてて……」
江藤「どうしよう。嫌われちゃったかな?」
恒一「まさか。見崎はそんな子じゃないから大丈夫だよ」
江藤「でも彼女の場合、きっとそれだけじゃないと思うんだ」
恒一「……? どういう意味?」
江藤「榊原君、ずっと私と話してたでしょ? だからだよ」
恒一「?」
江藤「……榊原君って、もしかして鈍感?」
恒一「へ?」
江藤「あちゃぁ……こりゃみんな苦労したんだろうなー」
恒一「みんな???」
江藤「……」ヤレヤレ
キーンコーンカーンコーン
放課後
恒一「4時前か……」
恒一「そろそろ江藤さんのクラブ、見学に行こうかな?」
和久井「ゴホゴホッ」
恒一「!」
恒一「和久井君、大丈夫?」
和久井「あ、ごめん。心配しないで。今のはただの咳だから」
恒一「そっか、ならいいんだけど」
和久井「それに、最近は喘息、かなりマシになってきてるんだ」
恒一「本当に? それは良かったね。体大事にしてね」
和久井「うん、ありがとう」
和久井「ああ、保健室の先生に貰ったんだ。喘息の記事が載ってるからって」
恒一「ふーん」チラッ
『また夜見山市で出没! 今月で被害者は○人目』
恒一「これ……また通り魔が出たんだ」
和久井「みたいだね。早く犯人、捕まるといいんだけど」
恒一「うん。確かにね……」
和久井「っと、ごめん。そろそろ帰らなきゃ。かかりつけの病院に行かなきゃならなくてさ」
恒一「そうなんだ。じゃあまた明日ね」
和久井「うん、またね」
恒一「……さて、僕もクラブの見学に行くとするか」
美術室
恒一「お」ガララ
望月「あ」
恒一「望月」
望月「榊原君か。どうしたの?」
恒一「見崎に会いに来たんだけど」
望月「見崎さんなら中で絵を描いてるよ」
恒一「そっか」
望月「………………」
恒一「あ、いたいた」
望月「ねぇ、榊原君」
恒一「何?」
望月「今日、昼休み終わった時、江藤さんと教室に帰ってきてたけど一体どうしたの?」
望月「へぇ、珍しい組み合わせだね」
恒一「そうかな?」
望月「でも見崎さん、榊原君たちより先に教室に帰ってきてたよね」
恒一「うん。なんだかご飯食べ終えたら1人だけそそくさと帰っちゃってさ」
望月「ふーん……勅使河原君が3人の関係を色々と勘ぐっちゃうのも無理ないか」
恒一「勘ぐるって? 勅使河原が何か言ってたの?」
望月「あ、ううん。気にしないで。いつもの勅使河原君の冗談だし」
恒一「?」
望月「それじゃあ僕ちょっと教室に用事あるから。またね」
恒一「あ、うん」
鳴「榊原君、どうしたの?」
恒一「江藤さんのクラブ、見学しに行こうよ」
鳴「……そういえばそんなこと約束してたわね」
恒一「行くでしょ?」
鳴「行かないわ」
恒一「え? なんでさ?」
鳴「私は別に江藤さんのクラブ、見学しに行くって約束したわけじゃないし」
恒一「でも……」
鳴「それに私は私で美術部があるんだから。榊原君1人で行ってきていいよ」
恒一「……えっと、見崎、なんか怒ってる?」
鳴「怒ってない」ツーン
恒一「僕、もしかして見崎に悪いことした? 昼休みもなんだか素っ気なかったし……」
鳴「別に素っ気なくない」ツンツン
恒一「…………、、、」
恒一「あ、そ、そうだね。それじゃあそうするよ」
鳴「………………」
恒一「えーっと、プールってどっちだったっけかな?」
鳴「ねぇ、榊原君」
恒一「うん? 何?」クルッ
鳴「江藤さん、ああ見えて災厄のことかなり引き摺ってるようだし、その辺りのこと気をつけてあげた方がいいよ」
恒一「災厄のこと……」
――『なんでこんな目に遭わないといけないの!? 私が何をしたって言うの!? もうやめてよ!! 死にたくない!!』――
恒一「……………………」
鳴「明るく振舞ってるようだけど、彼女のような人ほどトラウマになりやすいからね」
恒一「……分かった。気をつけるよ」
恒一「お、やってるやってる。江藤さんはどこかな?」
部長「あら、どうしたの貴方? 部員じゃないようだけど」
恒一「あ、すいません。江藤さんに誘われて見学に来たんです。少し邪魔させてもらっていいですか?」
部長「江藤さんに? それならいいわよ。悪いけど今忙しいし、適当な所で見ててくれる?」
恒一「分かりました」
恒一「さて、と。江藤さんは……もしかして4番レーンで泳いでるのがそうかな?」
恒一「気持ち良さそうだな。ていうか速いな江藤さん」
江藤「ふぅ……」ザバッ
部長「すごいわね江藤さん、またタイム上がったわよ」
部員「今度の大会では優勝間違いなしですね!」
部員「さすが水泳部のエース!」
江藤「あはは、よしてよくすっぐったい。もう引退間近なんだし」
部長「江藤さん、ちょっと休憩したら? お友達も来てるようだし」
江藤「お友達? あ……」
江藤「榊原君、本当に来てくれたんだ。嬉しい」
恒一「ふふ、頑張ってるね。にしても……江藤さん、競泳水着も似合ってるね」
江藤「え?」
恒一「…………」ジロジロ
江藤「ちょっと、何をジロジロ見てるの?」
恒一「あ、べ、別にそんなつもりじゃ////」アタフタ
江藤「榊原君って意外とムッツリ?」
恒一「ち、違うよ! なんか無駄がないスタイルでよく引き締まってるなー、って感心しただけで」
江藤「その発言、一歩間違えたらセクハラだよ?」
恒一「…………っ!!」
江藤「それに無駄がないスタイルってつまり、私が貧相な体だって言いたいの?」
恒一「ええっ!? ちがっ、そういう意味じゃなくて……っ!」
江藤「どうせ幼児体型ですよーだ」ベー
恒一「はわわ、ご、ごめん江藤さん……っ」
恒一「え?」
江藤「嫌?」
恒一「そ、そんなことないよ! 僕、江藤さんに会いに来たんだし。いいよ、話そう」
江藤「ふふ、よろしい」
江藤「ところで、見崎さんはどうしたの?」キョロキョロ
恒一「見崎は誘ったんだけど、美術部で来れないんだって」
江藤「そっか、残念……。ま、来れない理由は多分クラブだけじゃないんだろうけど……」
恒一「……? どういうこと?」
江藤「さぁ? どういうことだろうね? 乙女心が理解できない榊原君にはちょっと難しいかもね」
恒一「乙女心? ……って?」
江藤「あーもういいや。この手の話題は先に進みそうにないから今はやめとこう」
恒一「えぇ~気になるなぁ」
江藤「そ・れ・よ・り」
恒一「うん、そうだね。なんだか見てるだけで気持ち良さそうだし」
江藤「実際に泳いでみるとかなり気持ちいいんだよね、これが」
恒一「それにさ。江藤さんの水泳のフォーム、とても綺麗で驚いちゃったよ」
江藤「あはは、それはありがとう」
恒一「まるで人魚が泳いでるみたいだった」
江藤「それは褒めすぎ。そんなに大層なものじゃないって」
恒一「そうかな? 僕は感動したんだけどな。正直、目を奪われちゃったよ」
江藤「もう榊原君ってば。そういう口説き方ってどこで覚えるの? もしかして勅使河原君経由?」
恒一「な、そ、口説いてるわけじゃないって! 本当のことを言ったまでだし」
江藤「一応そういうことにしておいてあげますか」
恒一「ちょっ、ちょっとー」
江藤「ふふっ」
恒一「え?」
江藤「一学期は災厄が怖くて、水に近づけないことが多くてさ。たまに部活、休むこともあったし……」
恒一「あ……」
江藤「だけどさ、もう怖がらなくていいんだよね。自由に思い切り泳ぐことができる」
恒一「そうだね」
江藤「後は大会に向けて練習あるのみ。よーし頑張るぞ~!」ガッツポーズ
恒一「頑張って。応援してるからさ」
江藤「うん!」
部長「江藤さーん! そろそろいいかしらー?」
江藤「あ、部長が呼んでる。もう戻らなきゃ。榊原君はまだいる?」
恒一「僕はもうちょっとだけ見学させてもらうよ」
江藤「了解。それじゃあまた泳いでくるね!」ダッ
プルルルルル
恒一「ん? 電話? 勅使河原か」
恒一「はい、もしもし」
勅使河原『おーサカキ、今大丈夫か?』
恒一「ああうん。何か用事?」
勅使河原『いや、それがな、聞いてくれよ』
ザブーン!
江藤(やっぱり水の中は気持ちいいな)スイー
江藤(にしても榊原君が本当に来てくれるなんて思わなかった)スイー
江藤(応援してくれてるし、大会で結果出せるように頑張らなきゃ)スイー
江藤(榊原君、見てくれてるかな……?)チラッ
江藤(って電話してるし!)スイー
江藤(もう、応援するって言ってくれたくせにぃ)スイー
江藤(とにかく今はたくさん泳いで――)
江藤(!?)
江藤(あ、足が……!)ゴボッ
江藤(足が……吊って……っ!)ガボゴボッ
恒一「うん、また明日」ピッ
恒一「ったく……勅使河原の奴、なんで電話でエロビデオの感想語ってくるんだよ。どんだけ暇人なんだあいつは」
恒一「そういえば江藤さんはどうしてるんだろ?」
恒一「………………」キョロキョロ
恒一「あれ? おかしいな。江藤さん、どこのレーンにもいな……」
恒一「!!」
江藤「――――っ!!」ガボガボッ
恒一「江藤さん!!」ダッ
部員「あるあるw」ペチャクチャ
部長「ふふふふw」
恒一「おい! 人が溺れてるぞ!」ダダダ
部長「へ?」クルッ
ザブーン!!
恒一「江藤さん!!」
江藤「――っ!!」ガブガブッ
恒一「江藤さん、しっかり!」ガシッ
江藤「ゲホッ! ゲホッ!!」
恒一「今、プールサイドまで連れてくからね」
部員「きゃー!! 江藤先輩が!!」
部長「江藤さん!!」
ザワザワ
江藤「ゲホッ! ハァッ……ケホケホッ!」
恒一「江藤さん、大丈夫? 息はできる?」
江藤「ハァ……ハァ……」コクコク
恒一「良かった……」
部長「江藤さん、一体何があったの?」
恒一「多分、足を吊ったんだと思うよ。溺れかけてたし」
江藤「ハァ……ハァ……」
部員「そんな……江藤先輩が溺れかけるなんて」
部員「珍しいこともあるものなんですね」
恒一「え?」
江藤「……災厄よ」
恒一「!」
江藤「……3組の災厄は終わってなかったんだ……きっとそれで私が狙われて……」ガタガタ
部員「災厄?」
部長「って、なんのこと?」
恒一「……っ」
江藤「……きっとまた始まったんだ……死んだ3組のクラスメイトたちが……今度は私たちを狙って……っ」ブルブル
恒一「何を言ってるんだ江藤さん! そんなわけないじゃないか。災厄は終わったんだ」
江藤「終わってない!! じゃないと今の事故も説明がつかない! 嫌だ、嫌だ、嫌だ、死にたくない!! 災厄なんて嫌だ。死にたくない……っ!」ガタガタブルブル
恒一「江藤さん……」
―――――
江藤「………………」ボー
恒一「どう? 少しは落ち着いた?」
江藤「………………うん」
恒一「そっか。良かった……」
江藤「…………ごめんね、迷惑かけて。せっかく見学に来てくれたのに」
恒一「ううん。気にしないで。僕は江藤さんの泳ぐ姿見れただけで満足だから」
江藤「…………榊原君は優しいね」
江藤「部長……」
部長「気分はどう?」
江藤「……一応大丈夫」
部長「もしまだ続けられるなら続けてもいいけど……。それとも今日は大事を取って帰る?」
江藤「じゃあ帰ろうかな。今日はこれ以上、泳げる気分じゃないから」
部長「分かったわ。気をつけて帰ってね」
江藤「………………」コクン
恒一「あ、僕、送るよ」
下足箱
恒一(江藤さん、まだかな?)
江藤「ごめんね榊原君。ちょっと着替えるのに手間取っちゃった」
恒一「それじゃあ行こうか」
江藤「あの……別にそこまで気を遣わなくていいんだよ? 家なら一人で帰れるし」
恒一「いや、僕には江藤さんを無事に家まで見送る義務がある。無責任に放っておけないよ」
江藤「真面目だね榊原君は。それじゃあ今回は甘えちゃおうかな」
恒一「礼はいらないよ。当然のことをしたまでさ」
江藤「ったく、かっこいい台詞真顔で言っちゃってくれちゃって」
恒一「僕は至って真剣だよ。もう目の前でクラスメイトが死ぬ姿は見たくないしね……」
江藤「そうだね……」
恒一「………………」
江藤「………………」
恒一(あ、しまった。気まずい空気になっちゃった。話題変えないと)
恒一「そ、そういえばさ」
江藤「ん?」
恒一「江藤さんは普段、家でどんなことしてるの?」
江藤「何それ? 女の子のプライベート聞いて何企んでるの?」クスッ
恒一「ええっ!? な、何も企んでないよ。ただちょっと聞いてみただけで……」
江藤「ふふ、そっかそっか。まあそんな期待するほどのものじゃないけどね。勉強したり、水泳のビデオ見たり、雑誌読んだり、とかが大半かな?」
恒一「へぇ、意外と普通」
恒一「うーん、どうだろ?」
江藤「ま、色気のない女の趣味なんてこんなもんです」
恒一「色気がないだなんて……」
江藤「松子や珊に言わせると、女の子オーラがいまひとつ足りないらしいです。ていうか男の榊原君から見ても実際そう思うでしょ?」
恒一「いや、僕は江藤さんは可愛いと思うけどな」
江藤「へ?」
恒一「江藤さん、十分可愛いよ」
江藤「えっと……も、もしかしてからかって言ってる?」
恒一「からかってなんかないよ。本当のこと言ったまでだし。江藤さんって3組の女の子の中じゃかなり可愛い方だと思うけどなぁ」
江藤「なっ、そっ、なぁっ!? ちょ、直球すぎでしょ……っ////」
恒一「直球って?」
恒一「ごめん、何言ってるのかよく分からない」
江藤「バカぁ!!」ドンッ
恒一「ぷおっ!?」
江藤「……ったく、油断ならないなぁ榊原君は! 心臓に悪いっていうか。そっか、こういう手を使って見崎さんを落としたんだね?」
恒一「なんのこと?」
江藤「もういいです!」
恒一「もしかして江藤さん、まだ体調回復してない?」
江藤「………………」マッタクコノオトコハ…ヤレヤレ
江藤「まあいいや。そもそもこんなんで動じる私じゃないしね」
藤巻「おー悠じゃん。どうしたのこんな所で?」
江藤「い!?」
恒一「やぁ藤巻さんじゃないか。偶然だね」
藤巻「……ちょっとちょっと、これは一体どういうこと?」
恒一「何がだい?」
藤巻「もしかして二人、付き合ってんの?」
江藤「な!?//// そ、そんなわけないでしょ! ただ色々あって二人で帰ることになっただけ!」
藤巻「あ、そう」
江藤「もう、なんで狙ったかのように急に現れるかな奈緒美は」ブツブツ
藤巻「いや、私がどこにいようと私の勝手でしょ」
江藤「くっ……それはそうだけど」
藤巻「ていうか珍しい組み合わせだね。榊原君っていつも見崎さんと一緒にいるのに」
恒一「実は江藤さん、クラブ早退することになってね。見送ってあげてる最中なんだ」
藤巻「……何それ? 悠、どうかしたの?」
江藤「ううん、別になんでも。大したことじゃないから気にしないで」
藤巻「ふーん」
恒一「?」
藤巻「榊原君、悠を見送るってどこまで?」
恒一「僕は家までのつもりだけど」
江藤「え? そんなっ、そこまでしてもらったら悪いよ」
恒一「さっき言っただろ? 『僕には江藤さんを無事に家まで見送る義務がある。無責任に放っておけない』って。こればかりは中途半端は嫌なんだ」
江藤「だけど、わざわざ私の家まで送ってそこから自分の家まで帰るのってしんどくない?」
恒一「関係ないよ。僕の意思でやってることなんだ。万一、帰宅途中で江藤さんが倒れたりしたら大変だからね」
江藤「分かった。分かりました。ここまで真剣だと逆に断る方が申し訳ないね。じゃあお願いします」
恒一「ああ」
藤巻「ちょっとちょっと悠」ツンツン
江藤「ん? 何?」
藤巻「本当にいいの? 家まで送らせて」ヒソヒソ
江藤「……? だって榊原君がそう言うんだし、特に断る必要もないし」ヒソヒソ
藤巻「ハァ……悠ってば、男に興味ないくせにこういうのには無用心なんだね」ヒソヒソチラッ
江藤「……どういうこと?」
藤巻「分かんない? 彼、悠の家に着いたら適当に理由つけて家に上がるつもりだよ」
江藤「そんなことしてなんの意味が?」
藤巻「決まってるじゃない。上手いこと悠を言いくるめて襲うためさ」
江藤「なっ!?」
恒一「?」
藤巻「そしてそのまま悠の幼い体をペロリンチョ♪ と頂いちゃう腹積もりなんだよ!」
江藤「なっ、何言ってるの奈緒美!?//// 榊原君がそんなことするわけないでしょ……っ!//// ていうか誰が幼い体だ!」
藤巻「いやいやこういう普段は澄ましてる男ほど性欲は凄まじいんだって」
江藤「せ、せいよ……っ!?////」カァァ
藤巻「きっと悠の部屋に着いたら悠をベッドに押し倒して一気にセックs――」
江藤「わーわーわーわー!!!////」ジタバタジタバタ
恒一(二人でさっきから何やってんだろ?)
江藤「しょ、しょじょ!?////」
恒一「しょしょじょ? ッテナニ?」ジッ
江藤「!」ハッ
江藤「ぅぅぅ……////」ボンッ
藤巻「まあそういうわけだから。応援してるよ悠」バンバン
恒一「えっと、二人ともなんの話してるの?」
藤巻「あ、榊原君も悠のこと優しくしてあげてね! 明日には結果聞かせてもらうからさ!」
恒一「はぁ?」
江藤「奈緒美!!!」
恒一「行っちゃった……。なんだったんだろう? ねぇ江藤さん、頑張るってなんのこと?」
江藤「し、知らない!!////」
恒一「なんか江藤さん、顔真っ赤じゃない?」
江藤「~~~~~っ////」
恒一「ていうか江藤さんって意外と落ち着かないところあるんだね」
江藤「う、うっさい!!//// 榊原君のバカ!! アホ!!」
恒一「えーなんでいきなり罵られてるんだ僕?」
江藤(も~う、奈緒美のせいで~////)ギリギリギリ
江藤「………………」トコトコ
恒一「………………」チラッ
江藤「何?」
恒一「もう怒ってない?」
江藤「最初から怒ってません」
恒一「良かったぁ……」ホッ
恒一「江藤さんに嫌われたんじゃないかと思って心配しちゃったよ」アハハハ
江藤「……………………」
恒一「それで、江藤さんの家はまだなの?」
江藤「ここだよ」
恒一「え? あ、本当だ。表札に『江藤』って書いてあるね」
江藤「ま、しがないサラリーマンの一般家庭ですが」
江藤「!!!!!!」
江藤「い、言っとくけど家の中には上がらせないからね……っ!!」
恒一「……? う、うん。僕もそのつもりだけど……」
江藤「へ?」
恒一「なんでそんなことを……?」
江藤「べ、別になんでもないっ……!////」カァァ
恒一「そう。なら僕、このまま帰るけどいいよね?」
江藤「あ、待って」
恒一「どうしたの?」
江藤「その……ありがとね? プールで助けてもらった上に家まで送ってくれて……。本当感謝してる」
恒一「いいっていいって。困った時はお互い様さ」
江藤「あの時……私、本当に死ぬかと思って……。彩や死んだクラスメイトたちの死に際の気持ちが少しだけ分かった気がするの……」
恒一「江藤さん……」
江藤「ってごめんね。私ったらまたこんなことを……」
恒一「………………」
江藤「………………、、、」
恒一「江藤さん」スッ
江藤「!」
恒一「この紙、渡しとくよ」
江藤「これは?」
恒一「僕の携帯電話の番号。どんな些細なことでもいいから、何か悩んだり困ったりした時は気軽にかけてきて。相談に乗るからさ」
江藤「いいの?」
恒一「もちろん。僕たち友達だろ?」
江藤「榊原君……」ジワッ
江藤「……うん、ありがとう。私の携帯に登録しとくね」
恒一「ああ、電話待ってるからさ」
恒一の部屋
鳴『そう。そんなことがあったのね』
恒一「見崎も江藤さんに携帯の番号渡したら? また霧果さんに携帯、買ってもらったんでしょ?」
鳴『前にも言ったでしょ? 私、この機械好きじゃないって。だからあまり他人に番号教えたくないの』
恒一「でも、江藤さんとは友達になったんだろ?」
鳴『……ま、一応そういうことになってるんでしょうけど』
恒一「ならいいじゃないか」
鳴『……………………』
恒一「な、なんでそこで黙り込むのさ?」
鳴『それより』
恒一「ん?」
鳴『江藤さん、大丈夫だったの?』
恒一「ああ、大丈夫だよ。特に怪我もなかったし」
恒一「心?」
鳴『プールで溺れて死に掛けて、かつてのトラウマが蘇ったのなら心に深い傷を負ってもおかしくないわ』
恒一「!」
鳴『また錯乱しなきゃいいけどね。江藤さん、ああ見えて精神的に弱いところありそうだし。先生が教室で自殺した時も一番ショック受けてたのは彼女でしょ?』
恒一「……そうだけど、そういう可能性もあるから携帯電話の番号渡したんだし、一応は大丈夫だと思うよ?」
鳴『言い切れる? あの災厄でクラスの3分の1が死んだのよ? まだ完全に立ち直ってない可能性が高いわ」
恒一「それは……」
鳴『そもそも榊原君はどうなの?』
恒一「僕?」
鳴『あの合宿から一ヶ月以上経って死人は一人も出てないけど、榊原君は怖くないの? 災厄はまだ続いてるんじゃないか、って不安にならないの?』
恒一「それは……たまにはそういうことも考えるけど……」
鳴『なら江藤さんはもっと悩んでるはずよ。まだ油断はできないわね』
恒一「………………」
鳴『まあ、災厄は間違いなく終わってるはずなんだけどね』
霧果『鳴、ご飯の時間よ』
鳴『あ、霧果が呼んでる。ごめん、もう切るね』
恒一「分かったよ」
鳴『それじゃあ』
恒一「またね」ピッ
恒一「ふぅ……」
恒一「災厄か……」ゴロン
恒一「……………………」
―――――
―――
――
恒一「見崎!」
鳴「あ、榊原君」
恒一「ごめん。着替えるのに手間取って遅くなっちゃった」
鳴「ただ着替えてただけで15分も遅刻?」
恒一「本当にごめん!」
鳴「まったく……女の子を待たせるなんて」
鳴「でも、久しぶりのお出かけだし……」
恒一「?」
鳴「今日は特別に許します」
恒一「はは、そうしてもらえると助かるかも」
恒一「楽しみだね、美術展」
鳴「楽しみなのに遅刻するんだ」
恒一「……まだ怒ってる?」
鳴「冗談よ。もう怒ってないわ」
恒一「良かった……」ホッ
鳴「せっかくの機会なんだし、楽しまなきゃ損だもんね」
恒一「そうだね」
鳴「クスッ」
恒一「ふふ」
『電車がホームに参ります。電車がホームに参ります』
恒一「お、来た来た」
「恒一君」
恒一「へ?」クルリ
ドンッ!
鳴「!」
キキィィィィィッ!!!! グシャァァァァァッ!!!!
恒一「……え?」ビチャッ
「女の子が轢かれたぞ!!!」
「駅員呼べ!!!」
恒一「……みさ……き?」
「どうして……」
恒一「ハッ!」クルリ
「どうして私を……見殺しにしたの?」
恒一「!!!!!!!!!」
「痛いよ……恒一君……苦しいよ」
恒一「あ、う、わ……ああ……」
「許さない……殺してやる……恒一君も……3組のみんなも……絶対に」
「この私が、災厄になって3組を全滅させてやる……っ!!!!」
恒一「うわああああああああああああああああああ!!!!!!」
ガバッ!!!
恒一「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ」
恒一「………ハァ……ハァ……夢……?」
恒一「…………………………」
恒一「…………………………」
恒一「……………………はは……は」
恒一「夢、か……」
恒一「…………………………」
翌日・学校
望月「あ、榊原君。おはよう」
勅使河原「よーっす、サカキ!」
恒一「……おはよう二人とも」
勅使河原「なんだなんだ? やけに今日は元気ねぇな?」
望月「寝不足?」
恒一「気にしないで。なんでもないから」
恒一「ハァ……」トボトボ
望月「榊原君どうしちゃったんだろ? あんなに落ち込んじゃって」
勅使河原「深夜のアダルト番組見逃したんじゃねぇの?」
恒一「………………」
恒一「わっ!? 江藤さんか……ビックリした」
江藤「なんだか朝から憂鬱げだね。ダメだぞ、若い者がそんな溜息ばっかり吐いてたら」
恒一「あーうん、ちょっとね……」
江藤「?」
望月「あれ? 榊原君ってあんなに江藤さんって仲良かったっけ?」
勅使河原「おいおいサカキも隅に置けねぇな。鳴ちゃんとは倦怠期なのか?」
ガララ
鳴「…………」
勅使河原「お、正妻の登場だ。これは修羅場だな」ニヒヒ
望月「やめなよ勅使河原君」
恒一「あ、見崎」
恒一「無事だよ、ね……?」
鳴「……?」
江藤「……?」
昼休み・屋上
江藤「今日も誘われたので、昼食に同席させて頂いたんですが……」
鳴「……」モグモグ
江藤「何故か誘ってくれた張本人が暗い!」
恒一「……ハァ」
江藤「ねぇ見崎さん、榊原君どうしちゃったの?」ヒソヒソ
鳴「さぁ? 私も知らない」ゴクゴク
江藤「昨日はあんなんじゃなかったのに……」
鳴「寝不足かも」ガブリガブリ
江藤「いやいや、なわけないでしょ。あの落ち込みよう……」チラッ
恒一「…………」ボーッ
江藤「え? 何が?」
鳴「榊原君から昨日聞いたけど、プールで溺れかけたんでしょ?」モシャモシャ
江藤「あーそれ? 恥ずかしながらドジってしまいまして。でも体の方は大丈夫。この通り健康そのものです!」
鳴(体の方は、か)
鳴「ならいいんだけど……」ジュルジュルメコッ
江藤「だけど肝心の彼が朝からあんな感じで……」
鳴「家で何かあったのかもね」バキバキゴシャッ
江藤「なら一度ちゃんと訊いてみるべきだね」
恒一「…………」ボーッ
江藤「ねぇ、榊原君」
江藤「呼んだよー。ちょっといいかな?」
恒一「……なんだい?」
江藤「榊原君、朝からずっと落ち込んでるようだけど一体どうしたの?」
恒一「……あー別になんでもないから。無視して二人でご飯食べてて」
鳴「……………………」
江藤「そういうわけにはいかないよ。そもそもお昼ご飯に誘ってくれたの榊原君じゃない」
恒一「……そういえばそうだったね」
江藤「何かあったの? もし良かったら話だけでも聞いてあげるよ?」
恒一「うん……じゃあ……」
鳴「縁起でもないわね、ホームから落とされて轢死とか」
恒一「う、ごめん……」
江藤「それで、榊原君はその夢を見てからずっと罪悪感に苛まれてる、ってことでいいのかな?」
恒一「罪悪感というか……そもそも僕がもっと上手く立ち回れてたら、災厄の犠牲者も最小限に抑えられたんじゃないか、って思ってさ」
江藤「…………」チラッ
鳴「…………」チラッ
恒一「大切な人、たくさん死んじゃったから余計にね」
江藤「でもそれは榊原君が負い目を感じることじゃないよ。あんな常識が通じない状況で、例えどんなに優れた対策を立てても結局災厄の前では無意味だったかもしれないし」
鳴「そもそもは3組に起こる災厄という現象がすべての原因だからね。まともに対応できなかったのが悪い、って言って誰かを責めるならキリがない話だよ」
江藤「私も昨日あんな無様に錯乱しちゃったからね。色々と災厄のことでナーバスになっちゃう気持ちは分かるけど……」
鳴「それでも榊原君が気に病むことじゃない」
江藤「だね」
恒一「……分かっちゃいるんだけどさ」
恒一「…………ハァ」
鳴「いつかこういう日が来るとは思ってたけど、意外と早かったかも」ヒソヒソモグモグ
江藤「このまま榊原君に落ち込まれたままでも困るしね」ヒソヒソ
鳴「彼のことだからすぐに立ち直ってくれるとは信じてるけど」ヒソヒソゴクゴク
恒一「………………」ボーッ
江藤「あ、そうだ。ならこんなのはどう?」ヒソヒソ
鳴「え?」モシャモシャ
江藤「ゴニョゴニョゴニョゴニョ」
鳴「!」
江藤「で、ゴニョゴニョゴニョゴニョ」
鳴「……それは別に構わないけどただ私……ゴニョゴニョゴニョゴニョ」
江藤「そんなの関係ないって。なんなら私が見崎さんにゴニョゴニョゴニョ」
鳴「むー……じゃあそれならいいかも」
江藤「決まりだね」
恒一「……何?」
江藤「今日の放課後なんだけどさ!」
恒一「?」
―――――
―――
放課後・下足箱
江藤「ごめんね榊原君、無理言っちゃってさ」
恒一「構わないけど……なんで二人していきなり、僕の家に行きたい、なんて言い出したの?」
江藤「まあまあ細かいことは気にしない。男の子なら素直に喜ぶもんだよ? 女の子二人も家に招待できるんだからさ」
恒一「うーん……」
江藤「ほらほら! 早く榊原君の家、行こ?」
恒一「……分かったよ」
恒一「でも見崎がいないようだけど?」
江藤「見崎さんはクラブで一時間ほど遅れるから『先に行ってて』だって」
恒一「ていうか江藤さんは水泳部どうしたの?」
江藤「今日は水泳部はお休み。また明日から猛特訓だけどね」
恒一「そうなんだ。じゃあ行こうか」
江藤「うん!」
恒一「さ、上がって。部屋まで案内するよ」
江藤「あ、はーい。お邪魔しまーす」
恒一「にしても江藤さんが自分の家に来ることになるなんて、思ってもみなかったよ」
江藤「それは私も同じ。世の中分からないもんだね」
恒一「今日はお祖父ちゃんもお祖母ちゃんも、老人ホームの交流会で出かけてるから楽にしてくれていいよ」
江藤「りょーかい」
江藤「あ」ピタッ
恒一「どうかした?」
江藤「ここ、仏間だよね?」
恒一「そうだけど」
江藤「もし良かったら、線香上げていいかな?」
恒一「え? あ……」チラッ
恒一「もちろん。そうしてもらえると嬉しいよ」
チーンチーン
江藤「……………………」
恒一「………………」
江藤「……はい、済んだよ」
恒一「わざわざありがとうね」
江藤「ううん。これぐらいはね」
恒一「それじゃあ、僕の部屋はこっちだから」
江藤「うん」
恒一「着いたよ。ここが僕の部屋だ」ガラッ
江藤「おーなんか意外とさっぱりしてる」
恒一「つまらない部屋だけど、適当にくつろいで」
江藤「ありがとー。ではお言葉に甘えて、適当にくつろいどきます」スッ
江藤「ここが榊原君の部屋か……」
江藤(なんだか榊原君の匂いがする……)
江藤「………………、、、」
江藤(……ていうか男の子の部屋、入ったの初めてなんだけど)
江藤(やっぱり女の子の部屋とは根本的に違うんだなー)
江藤(って! ちょっと待ってよ。よく考えたら私……榊原君の部屋で榊原君と二人きり!?)チラッ
恒一「?」
江藤(うわ、何気にすごいシチュエーションじゃん)
江藤(……どうしよう、こんなの慣れてないよ)ソワソワ
江藤(はっ!!)
――藤巻『決まってるじゃない。上手いこと悠を言いくるめて襲うためさ』――
江藤(な、なんでこんな時に奈緒美の言葉が!?)
――藤巻『そしてそのまま悠の幼い体をペロリンチョ♪ と頂いちゃう腹積もりなんだよ!』――
江藤(ないないない! 絶対ないから!! そもそも私から榊原君の家に行きたい、って言ったんだし!)
――藤巻『いやいやこういう普段は澄ましてる男ほど性欲は凄まじいんだって』――
江藤(そんな……そんなの……榊原君に限って……)チラッ
恒一「?」
江藤(わーわーわー!!//// どうしよう奈緒美!? 私そんなの無理だよ!! 心の準備もできてないのに……っ////)
恒一「江藤さん?」
江藤「!!!!!!」ビクゥッ
恒一「え? 何が?」
江藤「へ?」
江藤「あ」
江藤「//////」カァァァ
江藤(あああああああああ!!!! 私のバカ! アホ! カス!! 何一人で暴走してんのよおおおおおおおおお)
恒一「…………」
江藤(うううう……)
恒一「……………………」
江藤「………………、、、」
恒一「江藤さん」
江藤「…………なんでしょうか?」
恒一「飲み物持ってこようか?」
江藤「……お願いします」ズーン
江藤「……フゥ」
恒一「少しは落ち着いた?」
江藤「さ、最初から落ち着いてます……っ」
恒一「そう? さっき一人で怪人二十面相してたようだけど」
江藤「あ、あれは……っ! そんなんじゃなくて……っ!」
恒一「だけど僕、表情豊かな江藤さんも好きだけどな」
江藤「……え?」
恒一「なんか嘘偽りない、ありのままの江藤さんを見れるからかな? 仲良くなる前は江藤さん、クールな印象があったし」
恒一「それに江藤さんと話してると不思議と元気が沸いてくるんだよね」
江藤「榊原君……」
恒一「僕、江藤さんと友達になれて嬉しいよ。君みたいな子と一緒にいると人生楽しいんだろうな」
江藤「!」トクン
恒一「こんなことならもっと早く江藤さんと友達になっておけば良かったね」
江藤(なんだろう……この胸が熱くなる感じ……。それに、榊原君と話すようになってから日に日に増していくこの感覚……)
江藤「………………、、、」
江藤「わ、私も……もちろん、そうだけど……」
江藤(彼のそばにいると、不思議と胸が心地良い……)ギュッ
プルルルルルルル
江藤「!!!!!!」
恒一「あ、電話だ。出ていいかな?」
江藤「……ど、どうぞ」
恒一「もしもし? 見崎?」
江藤(……相手は見崎さんか)
恒一「え? うん。そうだよ。江藤さんも一緒にいるよ」
江藤「……………………」
恒一「そっか分かった。もうそろそろ着くんだね?」
江藤(あ、見崎さん、もう来ちゃうんだ……)
江藤(ふーん……見崎さん、前に榊原君の部屋来たことあるんだ。ま、当然だよね。以前から仲良かったんだから)
恒一「ははは、そうだね」
江藤(……榊原君、相手が見崎さんだとあんなに嬉しそうに……)ズキン
恒一「うん、うん。いいよそれぐらいなら。ふふ、分かってるって」
江藤(いつまで話してるんだろ? なんかつまんないなぁ……)チラッ
江藤(ん? あれ? なんだろあの布団の下からはみ出てるやつ)ゴソゴソ
江藤(え……こ、これってまさか////)
恒一「じゃあ待ってるからね。また後で」ピッ
恒一「ふぅ……」
江藤「さ・か・き・ば・ら・くん」
恒一「なんだい江藤さ……!?」
江藤「この本は何かなぁ~?」ニヤニヤ
恒一「ど、どこでそれを!?」
江藤「布団の下からはみ出してたよ~。ダメだぞ、大切なものはちゃんと隠しておかないと♪」
江藤「榊原君もやっぱり男の子だね。こんな本持ってるなんて」
恒一「ち、違うんだ! それは勅使河原が無理やり僕にくれたやつで……っ!」
江藤「へぇ、そうなんだぁ?」
恒一「お願いだから返してくれないかな?」アセアセ
江藤「ふむふむ。この表紙を見る限り、榊原君は胸が大きくて眼鏡をかけた年上の看護婦さんが好きなんだね? うわぁ榊原君ってばムッツリ~」
恒一「あうう……////」
江藤「見崎さんが来たら言いつけちゃおっかな?」
恒一「そ、それだけはやめてくれ!!」
江藤「え~どうしよっかな~?」ニヤニヤ
恒一「この通りです!! どうか、どうかそれを返してください江藤様!!」
江藤「ふふ、だ~め」
恒一「くっ……」
恒一「とうっ!!」バッ
江藤「はいはい、ご苦労さん」シュバッ
恒一「ぬおおおおお」バッ
江藤「取れるものなら取ってみなさい」シュババッ
恒一「くぅ~……おりゃあああああああああ!!!!」
江藤「え? ちょっ」
江藤「きゃっ」
ズダーン!
恒一「よし! 取り返したぞ!!」
恒一「って、あ……」
江藤「!」
※恒一君が江藤さんを押し倒した状態です
恒一「……あ……その……ごめん……」ドキドキ
江藤「……う、うん……」ドキドキ
江藤「………………、、、」
ガラッ
鳴「榊原君、入るよ」
恒一「え?」
江藤「え?」
鳴「!?」
恒一「…………………………」
江藤「…………………………」
鳴「…………………………」
鳴「……ふぅん。榊原君と江藤さんって、そういう関係だったんだ」
恒一「ち、違うんだ見崎! これはただの事故なんだ!!」ババッ
江藤「そ、そう! 事故なの事故!!」ババッ
恒一「だーかーらー違うんだよ! ちょっとした弾みであんな態勢になっただけなんだ!! ねぇ江藤さん?」
江藤「うんうん! 私が悪ふざけで取った榊原君のエッチな本を榊原君が取り返そうとした末にああなっただけで……」
鳴「エッチな本?」
恒一「げ」
江藤「あ」
鳴「へぇ、榊原君ってそんなの持ってたんだ」
恒一「江藤さん!」
江藤「ご、ごめんなさい。つい……本当はバラすつもりじゃなかったんだけど、あはは……」
恒一「トホホ……」
江藤「そういうことだったんです。別に襲われてたわけじゃないから、榊原君を信じてあげて」
恒一「いや、その言い方なんかフェアじゃないよね?」
鳴「でも榊原君がエッチな本を隠し持ってたのは言い逃れのできない事実」
恒一「う……」
鳴「でしょ?」
恒一「そうだけど……別にエロ本の一冊持っててもいいだろ? 僕だってこれでも立派な男子中学生なんだ!!」ドン
鳴「確かに言われてみれば……」チラッ
エッチな本『メガトン級おっぱい大特集! ビッグサイズは男のロマン』
鳴「やっぱり許さない」
恒一「なんでだよ!?」
江藤「まあその表紙見るとやっぱりそうなるよね」
恒一「どっちなの江藤さん!?」
鳴「ということでこのいかがわしい本は没収決定」
江藤「決定~♪」
恒一「チクショオオオオオオオオ!!」
鳴「うるさい」
恒一「……はい」ショボーン
江藤「お、ありがとー。ごめんね? 一人で行かせちゃって」
鳴「ううん。これぐらいはやっておきたかったから」
恒一「何やってるの二人で? ていうかその買い物袋は何?」
江藤「それなんだけどさ榊原君、ちょっとキッチン貸してくれる?」
恒一「キッチン? 別にいいけど、なんでまた……?」
恒一「あ、もしかして料理作るの!? それなら僕も――」
鳴「ダメだよ」
恒一「へ?」
鳴「今回は榊原君には作らせません」
恒一「え? え?」
恒一「どういうこと?」
江藤「はいはい。榊原君はキッチンから退散する」グイグイ
恒一「えー僕の家なのにぃ。ていうか見崎って料理できないでしょ? 大丈夫なの?」
鳴「うるさい(怒)」グイグイ
江藤「榊原君に手伝ってもらうと意味ないんだよね。ごめんねぇ」
恒一「意味がない?」
江藤「じゃ、呼ぶまで待っててね」ピシャッ
恒一「あぁん」
鳴「元料理研究部の血が騒ぐのかも」
江藤「残念だけど、榊原君の手料理は次の機会ってことで。じゃあ始めようか?」
鳴「……本当にするの?」
江藤「一応キッチンの使用許可はもらったし、食材も見崎さんが買ってきてくれたからね」
鳴「……そうじゃなくて。榊原君も言ってたけど、私、料理なんてできないし……」
江藤「関係ないよ。私だって料理の腕なら榊原君の足元にも及ばないだろうしね。大切なのは料理に篭める気持ちじゃない?」
江藤「って、あはは。ちょっと臭かったかな?」
鳴「ううん。そんなことないよ。少し自信出たし。早く始めよう」
江藤「オッケー♪」
恒一「あー僕も作りたい。二人に真の料理っていうものを教えてあげたい」
恒一「そもそも江藤さんはともかく、見崎は料理からっきしじゃないか」
恒一「食べるものもいつもサンドイッチやおにぎりばかり。栄養が足りてない」
恒一「飲み物だって紅茶以外ほとんど飲まないし」
恒一「……そういえばなんで見崎は紅茶しか飲まないんだろ?」
恒一「いつも紅茶だよなぁ。コーヒーとか嫌いなのかな?」
恒一「コーヒーも美味しいんだけどなぁ。特にハワイコナ・エクストラ・ファン――」
恒一「…………………………」
恒一「……昨日の夢、思い出しちゃった……」
恒一「……なんだよ、白けるなぁ……」
恒一「……………………」
トントングツグツジュワァ
鳴「榊原君、喜んでくれるかな?」
江藤「大丈夫大丈夫。料理ってコツさえ掴めば意外と上手く作れるもんだよ」
鳴「そうかな? どっちにしろ江藤さんの方が私より美味しく作れそうだけど」
江藤「さぁー? 私の場合、他人に評価してもらったことあまりないからね。分かんないよ」
鳴「それでも江藤さんは料理だけでなく家事もできそうだし、全般的なスキルでは私はきっと敵わない」
江藤「それは褒めすぎ。正直、女の子の魅力としては私は見崎さんに負けてると思うな」
鳴「江藤さんが……? まさか」
江藤「私が普段、珊や和江からどう評価されてるか知ってる? 『色気がない』『ボーイッシュ』『この前、悠と間違えて望月君に挨拶しちゃった』だよ。失礼しちゃうよねぇ?」
江藤「そりゃ珊や和江は外見も内面も大人っぽいからそう見えても仕方がないけど、こっちだって成長しないものは成長しないんじゃチクショウめ!」プンスコ
鳴「……その気持ち、良く分かる」
鳴「ロングは手入れが大変だから、ショートカットが一番いいよ」
江藤「だよねだよね。珊なんかはロング、似合うんだろうけどさ」
江藤「なーんて、愚痴ばっかり言ってるからいけないのかな? ま、所詮『クラブが恋人』の女の実態なんてこんなもんです」
鳴「江藤さんは今まで、男の人と付き合ったことはあるの?」
江藤「ないね。ていうかそんなこと興味なかったし、考える余裕もなかったからね」
鳴「ふーん」
江藤「って、こういう態度がやっぱりいけないんだろうな。やっぱり男の子って、もっと女の子らしい女の子の方が好きなのかな……?」
江藤「だとしたら私じゃ全然ダメ、だよね……」
鳴「…………………………」
江藤「あ、しまった! 見崎さん、火、止めて! 焦げちゃう焦げちゃう」
鳴「え? あ、うん!」
ヨッシャァァ!! カンセェェイ!!
恒一「……?」
サッソクサカキバラクンヲヨビニイコウ!! ウン…
恒一「……なんだ? 今僕の名前が聞こえたような」
恒一「あ」
鳴「榊原君」ガララ
江藤「ごめんね、待たせちゃって」
恒一「どうしたの? 料理作り終わったの?」
江藤「うっふふ。まあね。来てくれるかな?」
恒一「分かったよ」スタスタ
江藤「じゃじゃーん!」
鳴「じゃじゃーん」
恒一「おおっ! これは……っ!」
江藤「そだよー。家庭科の教科書見ながらだけどね」
鳴「あまり味には自信ないんだけど……」
恒一「いやいやとても美味しそうだよ。元料理研究部の僕から見ても良くできてるし」
江藤「じゃあ早速食べてみてくれるかな?」
恒一「うん? 二人は食べないの?」
江藤「もちろん私たちの分も用意してるけど、最初は榊原君に食べてほしいんだ」
鳴「元々、榊原君を元気付けるために作ったものだしね」
恒一「え? 何それ? どういうこと?」
鳴「……」チラッ
江藤「……」チラッ
鳴「榊原君さ、今日一日、元気なかったでしょ? 昨晩見た夢のことで悩んでたらしいけど」
恒一「!」
鳴「昼休みに私たちがその話を聞いてからも、今までずっと落ち込んだままだったし」
江藤「だからさ、私と見崎さんで手作りのお菓子を作ることにしたの。榊原君に元気になってもらおうと思ってね」
江藤「うん。だって、榊原君の暗い顔なんていつまでも見ていたくないし」
鳴「榊原君には元気でいてほしいから」
恒一「………………、、、」
鳴「榊原君は、あの災厄で死んだ人たちに負い目を感じているようだけど、いつまでも引き摺っていたらダメだよ。本当の意味で災厄は終わらない」
江藤「榊原君はできるだけのことやったんでしょ? 罪を背負い込むよりも残りの半年を精一杯生きることが、死んでいった仲間たちのためにもなるんじゃないかな?」
恒一「……見崎……江藤さん……」
江藤「それでも、また辛くなった時は私たちが都度、榊原君の力になるからさ。ね、見崎さん?」
鳴「うん。だから、榊原君……」
恒一「分かった。二人とも、ありがとう。そこまで僕のことを考えていてくれたなんて、逆に申し訳ないよ」
恒一「でも、嬉しかった。これ、ありがたくごちそうさせてもらうことにするよ」ニコリ
鳴「じゃあ、早く早く」
恒一「はは、そう焦らないで。今食べるからさ」アーン…パクッ
江藤「……」ドキドキ
鳴「……」ドキドキ
恒一「うん! 美味しいよ!」
江藤・鳴「……!」パァァ
恒一「これは元料理研究部の僕でも唸るほどだ。二人でお店開けるよ!」
江藤「またまたぁ」
鳴「でも良かった」ホッ
―――――
江藤「ん~自分で言うのもなんだけど甘くて美味しい~♪」
鳴「こんなに真剣に料理したの初めてかも」モグモグ
恒一「ふぅ。ごちそうさま」
江藤「お粗末さま。どうする? まだ食材残ってるけどまだ食べたい?」
恒一「じゃあお願いしようかな」
江藤「了解」スクッ
鳴「私も全然食べ足りないし手伝うよ」スクッ
恒一「……………………」
江藤「残り全部使っちゃう?」
鳴「当然」
恒一(二人とも、本当にありがとう……。お陰で立ち直れたよ。僕は幸せ者だな)
恒一(にしても……)
鳴「行け行けぇ」
恒一(僕の家で女の子二人が料理作ってるって何気にすごいことだよな。しかも二人とも制服の上からエプロンだし。男なら誰でも憧れる光景だよなぁコレ)ニヘラ
恒一(ん? あ、ヨーグルトソース……二人とも手をつけてないのか)
恒一「ねぇ、見崎、江藤さん」ガタッ
鳴「何?」
江藤「どうかした?」
恒一「このヨーグルトソース使わないなら、冷蔵庫にほぞnどぉうわぁっ!!??」ガッ
鳴・江藤「!」
恒一「あ、ヨーグルトソースが!!」
ヒューン……ベチャッ! ベチャッ!!
恒一「げ!」
江藤「………………」
恒一「ご、ごめん二人と――」
恒一「!?」
江藤「ちょっとぉ~何これ? ベトベトするんだけど」
鳴「ヨーグルトソース? 顔がベトベトして気持ち悪い」
恒一(見崎と江藤さんの顔に白くて粘り気のある液体が……っ! くっ)
鳴「榊原君、気をつけてよ」
江藤「うわ、髪にもついちゃってるし」
鳴「って、何前かがみになってるの榊原君?」
恒一「あ、な、なんでもない。なんでもないから。あとシャワー使ってくれていいから。それ洗い流してきたら?」アセアセ
恒一「ど、どうぞどうぞ」
鳴「榊原君がああ言ってくれてるから、せっかくだし使わせてもらおっか」
江藤「もう。仕方がないな」
恒一「すんません。ホントすいません」
江藤「それじゃあ罰として、榊原君がパンケーキ作っておきなさい。オーケー?」
恒一「お、オッケーオッケー」
鳴「行こ」
江藤「はいはーい」
ガラガラガラ……ピシャッ
恒一「……………………」
恒一「……女子中学生とヨーグルトソースって組み合わせ次第で最強の凶器になるんだな」フゥ
風呂
江藤「……髪についたソース取れたかな? 臭いつかなきゃいいけど」
鳴「」
江藤「どうしたの?」
鳴「いや、一緒に入る意味あったのかな? って」
江藤「いいじゃんいいじゃん。水道代の節約になるし、一緒に入った方が手間もかからないでしょ。クラブでは女同士で学校のシャワー浴びるのはよくあることだよ」シャワー
鳴「わっぷ」
江藤「ふふふ」
鳴「……でもまぁ、こういうのも懐かしい感じがするしたまにはいいかもね」
江藤「懐かしい?」
鳴「ううん、なんでも」
江藤「?」
鳴「にしても……」ジロ
鳴「………………」ジー
江藤「へっ? わっ、ちょっと、どこジロジロ見てるの見崎さん!?////」
鳴「私より……でかい……」
江藤「えええぇ? そうかなぁ? これでも小さい方なんだけど」
鳴「それでも私よりは……マシ。ずるい」
江藤「ず、ずるいって。見崎さん、貴女、珊や和江のサイズがどれぐらい現実離れしてるか知ってる?」
江藤「二年の時修学旅行で目撃したことあるけど、メロンとスイカレベルだったよ? それに比べれば私のなんて……」
鳴「こっちの深さは……そんなに変わらないか」チラッ
江藤「ちょちょちょちょーっ!! こっちは観察禁止!! セクハラ親父ですか貴女は!?////」バッ
鳴「セクハラ親父にもなりたくなるよ、こんな体前にしたら」
江藤「は、はあ!?////」
鳴「確かに胸はそこまで大したものじゃないけど……」
江藤「う、うっさい!////」
江藤「え? そう?」
鳴「足は細いし、ウェスト引き締まってるし、全体的にスマートな体型してるし、肌も色白。多分、スタイルの良さで敵うのは3組の中では渡辺さんか多々良さんぐらいかも」
江藤「それは褒めすぎじゃないかな? あの二人に匹敵するほど理想的な体してるとは思えないけど」
鳴「一度鏡で全身像見てみたら? モデルでもできるんじゃない?」
江藤「モデルって……まあ、水泳やってるから余計な肉はないんだろうけどさ」
鳴「でしょ?」
江藤「うーん」
鳴「これだけお得な体型だったら、榊原君も喜んでくれそうだよね」フッ
江藤「ななななななんでそこで榊原君なの!!??////」
江藤「は、はぁぁぁ!?//// 何をいきなり!? そ、それは見崎さんの方じゃない……っ!」
鳴「わ、私は別に榊原君のことなんて……っ」
江藤「………………、、、」
鳴「………………、、、」
江藤「…………………………」
鳴「…………………………」
鳴「……榊原君さ」
江藤「う、うん」ビクッ
鳴「元気になってくれて良かったね」
江藤「……そうだね」
鳴「こればかりは江藤さんのお陰だよ」
江藤「なんで? 二人で料理作ったのに。見崎さんのお陰でもあるでしょ」
江藤「まあそれはそうだけど」
鳴「榊原君にとっても、あの災厄は忘れられない嫌な思い出。いずれ、そのことで榊原君が悩まされる日が来るのは予想してた」
鳴「それを乗り越えられるかが今後の分かれ道だったんだけど、あの反応を見る限りどうやら大丈夫だったみたいね」
鳴「すべては江藤さんの提案がきっかけだよ。災厄に対して敏感だった江藤さんだからこそ、榊原君の複雑な気持ちを汲み取ることができたのかもね」
江藤「……そんな。私なんて、いまだ災厄のトラウマから抜け出せてない臆病者なのに」
江藤「昨日はプールであんなことがあったし、今日、クラブが休みでホッとしてるほどなんだよ? 大会も近いのに……」
鳴「大丈夫だよ。榊原君の元気を取り戻せたんだから。江藤さんもトラウマを乗り越えられる。だから水泳、頑張ってね」
江藤「見崎さん……」
鳴「……」コクコク
江藤(私ってば、バカだな。見崎さん、こんなに良い子なのに一学期中あんなに怖がって避けてたなんて……)
江藤「ありがとう見崎さん。私、頑張ってみるよ」
鳴「それがいい」
鳴「でもそろそろ出ようか。風邪引いちゃうし、榊原君も待ってるだろうから」
江藤「そうだね」
カサカサッ
江藤「!?」
江藤「な、何今の音?」
鳴「え?」
江藤「そっちから何かが這うような音聞こえなかった?」チラッ
鳴「這うような音?」チラッ
カサカサカサッ!!
鳴・江藤「!!!???」
恒一「……ていうか今、僕の家の風呂で見崎と江藤さんがシャワー浴びてるんだよな?」ゴクリ
恒一「や、やばい。今日の夜は色んな意味で風呂に入り辛いぞ」
恒一「って、いかんいかん。最近私生活に女の子成分が多くてどうも気が緩んでるみたいだ。このままでは江藤さんの言うようにムッツリにな――」
きゃああああああああああああああああああああああ>
恒一「……っ」
恒一「この悲鳴は江藤さん!? まさかあの二人に何か!?」
恒一「こうしちゃいられない!!」ダッ
鳴「え?」
江藤「え?」
恒一「!!!!!!!」
鳴「……………………」スッパ
江藤「……………………」ダカ
恒一「……………………」
江藤「きゃああああ榊原君の変態!!!////」
恒一「えええええ!!?? どういうこと!!??」
鳴「…………////」カァァ
江藤「いつまでそこで見てんの!?」
恒一「ご、ごめんなさぁい!!////」ピシャッ
台所
恒一「そ、そうでしたか……。虫が……虫が出ただけなんすね……」
江藤「もう! どうしていきなり乗り込んでくるかな? 入浴中だって分かってるはずなのに!////」プンスコ
鳴「それを言ったら、たかが虫に驚いて悲鳴を上げた江藤さんも悪い」
江藤「う……。だって虫とか苦手なんだもん」
恒一「すんませんすんませんすんません。見崎と江藤さんに何かあったと思ってつい……」
鳴「ま、二人とも悪気があったわけじゃないし。おあいこ、ということで」
江藤「こればかりは……仕方ない、か……。私たちの身を案じてのことだし」
恒一「良かった……」ホッ
江藤「で・も!」
江藤「一つだけ聞いておきたいことがあるんだけど」
恒一「は、はい! なんでしょうか江藤様?」
江藤「見た?」
恒一「は? え? 何を!?」
鳴「見たね」
恒一「いやだから何を!?」
鳴「分かってるくせに……」
恒一「あーえっとつまり見崎と江藤さんの裸を見たか? ってこと?」
江藤「やっぱり見たんだね!?」
恒一「いやいやいや見てない見てないです!!!!」
江藤「本当に?」ジロリ
恒一(……なんかすっごく疑われてる。つってもそんな暇なかったしなぁ)
恒一(あ、でも……肝心な部分はざんねn……幸いなことに見えなかったけど、裸の二人は綺麗だったなぁ……)
恒一(あれが女の子の肌なのかぁ)ニヘヘ
恒一「はっ!!」
江藤「顔がニヤついてるんですけどぉ」ジローリ
鳴「ですけどぉ」ジローリ
江藤「目を逸らされたんですけどぉ」
鳴「ですけどぉ」
恒一「……………………、、、」アセアセ
江藤「汗が尋常じゃないぐらい出てるんですけどぉ」
鳴「ですけどぉ」
恒一「……っ」
恒一「も、もう! 信じてよ!! 変な部分は見てないって!!」
江藤「変な部分?」ピクリ
恒一「うっ……」
鳴・江藤「……多分……だよ……きっと……」ヒソヒソボソボソ
恒一(なんか内緒話してるし。ていうかこの二人、急に仲良くなったような)
江藤「ま、いいでしょう。榊原君はそんな嘘吐く人じゃないし」
鳴「判決:無罪」
恒一「分かってくれたか……」
恒一「う、嘘を吐いてたら……?」
江藤「『榊原君の家に連れ込まれて服を脱がされて裸にされた挙げ句変な部分を見られた』って3組のみんなに言いふらす」
鳴「しかもあることないこと付け足して」
恒一「ちょちょちょちょぉぉっと!」
江藤「なーんて」
恒一「へ?」
江藤「そんなことするわけないでしょ、さすがに」ペロ
恒一「なっ……お、おどかさないでよ」
江藤「相変わらずこんな冗談に引っかかるなんて、榊原君は純粋だねぇ」
鳴「純粋だねぇ」
恒一「く、くそう」
江藤「あはは」
鳴「クスッ」
恒一(へぇ、やっぱりこの二人……)
恒一「こっちこそ。料理とても美味しかったよ。ありがとう」
江藤「どういたしまして。リクエストあったらまた作ってあげるからね」
恒一「それは嬉しいな。楽しみにしてるよ」
鳴「……」グイグイ
恒一「ん?」
鳴「私も……一生懸命料理勉強するから……また作ってあげる」
恒一「うん、見崎のも楽しみにしてる」ニコッ
江藤「それじゃあ今日は帰るね」
恒一「二人一緒に帰るの?」
江藤「何か変かな?」
恒一「あ、いや、いいんじゃない?」クスッ
江藤「じゃあね榊原君」
鳴「さよなら」
恒一「またね」フリフリ
鳴「榊原君にお風呂覗かれたけどね」
江藤「うっ……それは言わないでよ」
江藤「でも、榊原君元気になってくれたし結果オーライでしょ」
鳴「……確かに」
江藤「普段は奈緒美とか、松子や珊、和江と遊んでるけど、たまにはこういう男の子交えて過ごすのもいいもんだね」
江藤「ホント、見崎さんと友達になれて良かったよ」
鳴「……………………」
江藤「ま、そろそろ受験にも本格的に取り組まなきゃいけないんだけど」
鳴「江藤さん」
江藤「ん? 何~?」
鳴「これあげる」
江藤「!」
江藤「この紙に書かれてある番号って……」
鳴「私の携帯電話の番号」
鳴「本当は……私、携帯電話とか好きじゃないから、今まで番号を教えたのも榊原君だけなんだけど……」
江藤「うん」
鳴「江藤さんなら……いいよ……////」
江藤「見崎さん……」
鳴「私なんかと、電波で繋がりたくないって言うなら……別に無理しなくてもいいけど……、、、」
江藤「まさか。そんなことないよ」スッ
鳴「あ」
江藤「むしろこちらとしては大歓迎」ポチポチ
プルルルルル
鳴「……! 私の携帯が……」
江藤「はい。これで私の番号も分かるでしょ? ちゃーんと登録しておいてね」
江藤「ま、私からはそんな頻繁にかけたりしないからさ。そこは安心して」
鳴「……ありがとう、、、」
江藤「どういたしまして♪」
鳴「ねぇ……」
江藤「ん?」
鳴「これもあげる」
江藤「え? これって」
鳴「今週の日曜、夜見山の花火大会があるでしょ? その会場の特等席男女特別ペア券」
江藤「……なんで、これを私に?」
鳴「榊原君、誘ってみたらどうかな?」
江藤「私が? ちょっと待ってちょっと待って。これ見崎さんが持ってたってことは、見崎さんが榊原君を誘うつもりだったんでしょ?」
鳴「別に。元々私、人が多い場所好きじゃないから今回はあまり乗り気じゃなかったし」
江藤「そう言われても、こんなのタダで貰うわけには……」
鳴「福引でたまたま当てたものだし、そこは気にしないでいいよ」
江藤「だけど」
鳴「何か不満でも?」
江藤「私が……榊原君を誘うだなんて……」
江藤「あ、ああ待って!」
鳴「どうするの?」
江藤「うっ……その……あの……」
鳴「聞こえないんだけど」
江藤「わた……私が榊原君を誘うから!!//// 良かったらそれ、貰えないかな……っ!?////」
鳴「よろしい」
鳴「日曜日だからね。もう今夜あたりにも誘っておいた方がいいよ」
江藤「でもさ見崎さん」
鳴「何?」
江藤「見崎さんはいいの? 本当は見崎さん、榊原君と一緒に行きたかったんじゃ……?」
鳴「行きたくない、って言ったら嘘になるかな? だけど今回は特別に江藤さんに 譲 っ て あ げ る 」
江藤「譲ってあげるぅ?」
江藤「なっ!?」
鳴「せいぜい私に置いて行かれないよう頑張ることね」フフン
江藤「言ったなこのやろう。油断してると痛い目に遭うよ?」ニヤリ
鳴「それはどうかな?」
江藤「にゃろぉ」
江藤「でもまあ」
鳴「?」
江藤「ありがとね、見崎さん」
鳴「……別に。感謝されるほどのことじゃないし」
江藤「ったく、素直じゃないなぁ鳴ちゃんは!」ウリウリ
鳴「や、やめて」
江藤「あはははは」
江藤の部屋
江藤「さて。見崎さんから、花火大会の男女ペアチケットを貰えたのはラッキーだったんだけど……」
江藤「どうやって榊原君誘おう?」
江藤「なーんて悩んでる暇ないよね。花火大会は明後日だし。さっさと電話して約束を取り付けちゃえ」
ピッピッピッ
江藤「……………………」
江藤(……って何躊躇ってるの? 普通に事情話して誘えばいいことじゃん)
江藤(くっ……後は発信ボタンを押すだけなのに、押せない)
江藤(押せ……押せ! 押せぇぇ……っ!)グヌヌヌ
江藤「やっぱ無理!」ポイッ
江藤「………………うう、情けない」
江藤「なんでこれぐらいできないの? 私って馬鹿なの?」
江藤「そうだ。ぶっつけ本番でやろうとするからダメなんだ。まずはイメトレしておこう」
江藤「あ、榊原君? ちょっと花火大会の特等席のペアチケット手に入れたんだけどさ、一緒に行かない?」
江藤「『いいよー。日曜日だよね? じゃあ学校の校門前で待ってるね!』」
江藤「うん。分かった。またねー……ぴっ、つぅーつぅーつぅー……」
江藤「…………………………………」
江藤「……何やってるんだろ私……orz」
江藤「なんか急に恥ずかしくなってきたし……っていうかこんな簡単にできたら苦労しないよ!」
江藤「やっぱり普通に電話かけてみよう」
ピッピッピッ
江藤「……」ジー
ポイッ
江藤「……」
江藤「……、、、」
江藤「……バカ」
ブーブーブーブー
有田「ん? 電話だ」
渡辺「誰から?」
有田「悠ちゃんみたい。私話してくるから、二人で続き歌ってて」
渡辺「りょーかーい」
渡辺「んじゃもう一曲デスメタル入れとくか」
ガチャッ……バタン
有田「もしもし、悠ちゃん?」
江藤『松子? 今何してる?』
有田「今、珊ちゃんと和江ちゃんとカラオケ来てるよ」
有田『あ、ちょっと歌いすぎて疲れてたところだし、今なら大丈夫だよ。どうかしたの?』
江藤「うん……」
有田『悩み事?』
江藤「まあ、そう、えっと、そんな感じ……?」
有田『何々? 私でできることならなんでもするよ!』
江藤「あ、あのさ……松子なら、誰かとなんかのイベントに行きたい時、どうやって誘う?」
有田『イベント……? もしかして日曜日の花火大会のこと?』
江藤「うっ! まあ、花火大会でもいいかな?」
有田『花火大会に誰かを誘いたいの? あ! もしかして悠ちゃん、彼氏できたとか!?』
江藤「えええっ!? ち、違う違うまだそんなんじゃなくて……っ!」
有田『まだ? あーそっかぁ! 榊原君を花火大会に誘いたいんだね?』
江藤「ぎっくぅ!」
有田『やっぱりね。そんなことだろうと思った』
江藤「なななななななんで!?」
江藤「う、ウソ!?」
有田『あれぇ? 知らなかった? でも悠ちゃんも悠ちゃんだよ。あんなに堂々と榊原君と一緒にいるんだからさ?』
有田『普段は慎重な悠ちゃんも、男の子が関わると急に注意散漫になっちゃうんだねぇ』
江藤「ううう……////」
有田『ただ榊原君って見崎さんと仲良いでしょ? だから余計にみんな、3人の関係疑ってるみたいだよ?』
江藤「べ、べ、別に私が誰と付き合おうが私の勝手じゃない……っ! な、なんでみんなしてそんな詮索するの!?////」
有田『まあ、悠ちゃんのことだから理由あってのことなんだろうけどさ』
江藤「そ、そうだよ色々あるの!」
有田『それで悩みの内容なんだったっけ? 榊原君に告白するにはどうしたらいいか、だった?』
江藤「松子!!」
有田『にははーごめんごめん。花火大会に誘いたいんだよね?』
江藤「だから最初にそう言ったじゃん!」
有田『はいはい慌てない慌てない。まずは落ち着いて深呼吸』
江藤「お願いだよ……松子が頼りなんだからさ」
有田(私今、悠ちゃんに頼られてる? いつもは私の方が悠ちゃんに頼ってばかりなのに!)
有田(いいでしょう悠ちゃん。今回は私が貴女の人生の先生です! 頼りになる私が悠ちゃんの将来設計のためにアドバイスしてあげましょう!)
有田(って言っても私も男の子のこと、全然分からないんだけどね!)ペロ
江藤「……それで、何かいい誘い方あるかな? 電話しようにも恥ずかしくてさ」
有田『あるよ。とっておきの方法が。一つだけね。これなら成功間違いなし!』
江藤「え? どんなの!? どうすればいいの!?」
有田『それはね……』
江藤「それは……?」ゴクリ
有田『当たって砕けろだよ!!!』バーン
江藤「…………………………砕けたら失敗じゃない?」
有田「あ、それもそっか」
江藤「おい」
――有田『とにかく頑張ってね! 私、応援してるからね!』――
江藤(って松子は最後に言ってくれたけど、やっぱり勇気が出ない……、、、)
江藤「……………………」
江藤(ええい、ままよ!)フリフリ
江藤(このまま電話を見つめていても状況は変わらない。『当たって砕けろ』……いいじゃない。それぐらいの気持ちで挑むだけの価値はあるはず!)
江藤「ダメで元々。やってやる!」
ピッピッピッピ
プルルルルルルルル……
江藤「………………」ドキドキドキ
恒一『もしもし。江藤さん?』
江藤「あ、榊原君……あのね!」
―――――
江藤母「~♪」
江藤「………………」スッ
江藤「ねぇ、お母さん……」
江藤母「あら悠ちゃん、何かしら?」
江藤「お出かけ用の服でさ、一番可愛いのどこに仕舞ってたっけ?」
江藤母「急にどうしたの? ようやく悠ちゃんもお洒落に目覚めてくれた?」
江藤「そ、そんなんじゃなくてさ……」モジモジ
江藤父「なんだなんだぁ? まさか好きな男でもできたかぁ?」ハッハッハ
江藤「///////」
江藤父「」
江藤母「まあそうなの!? あの悠ちゃんに彼氏が!?」
江藤「ち、ち、違うよ!! 彼氏とかじゃないって!!//// ただの友達だよ!! ただの友達とちょっとお出かけするだけ!!////」
江藤「そ、それは……っ!」
江藤弟「お姉ちゃん、かれしできたんだぁ!」
江藤「だ、だから違うっての……っ!」
江藤弟「かれしかれしーおねえちゃんにかれしぃ」
江藤「~~~~~~っ////」
江藤母「コラコラ、お姉ちゃんをからかうのもその辺にしときなさい。お父さんが立ち直れなくなる前にね」
江藤「え?」
江藤父「」
江藤母「それにしても、あの悠ちゃんにも好きな男の子ができたのね。まあもう中学三年生だし当然か」
江藤「別に好きじゃないってば~~!」
江藤母「はいはい」ウフフ
江藤「もぉ~!」
江藤父「」
そして日曜日――。
江藤「……………………」ドキドキドキ
江藤(榊原君、まだかな? ちょっと早く来すぎちゃったかも)
江藤(待ち合わせ場所、駅前の噴水で合ってるよね?)キョロキョロ
江藤(髪もちゃんと整えたし、服も一番可愛いの着てきたから準備は万端。問題はないはず)
江藤(ていうか男の子と二人でお出かけなんて初めての経験だから、緊張するな。でも……すごく楽しみ)
江藤(まだかなまだかな?)
「ねぇ」
江藤(来た!)
江藤「あ、榊原く……ん?」
江藤(誰……? 榊原君じゃないし)
江藤「えっと……なんですか? 私に何か用ですか?」
男「ふふっ、用ってほどでもないんだけどさぁ。もし一人で暇なら僕と一緒に遊ばない?」
江藤(ナンパ……? 今まで珊や和江といる時にしかナンパなんてされなかったのに……)
江藤「結構です。私、人を待ってるんで。迷惑なんで消えてくれます?」
男「そう言わずにさぁ~。楽しくてハイになれる刺激的なこと、一緒にしようよ?」
江藤「気持ち悪いです。あんまりしつこいと警察呼びますよ?」
男「警察とか、無能の集まりなんて怖くないし、ふふっ。ほら、行こうよ」ガシッ
江藤「!!!」
江藤「は、離して!!!」
男「!?」
江藤「!?」
恒一「江藤さんに何やってるんだ? 痛がってるじゃないか。手を離せ!」
江藤「榊原君!」パァァ
男「……チッ、男持ちだったのか。つまらないな」バッ
江藤「あ」
恒一「さ、行こう江藤さん」
江藤「うん」ササッ
男「……………………」
江藤「あの人、まだこっち見てる……」
恒一「気にしない方がいいよ、あんな奴。それよりも早くここから立ち去ろう」タッタッタ
江藤「大丈夫大丈夫。それよりも助けてくれてありがとね。白馬の王子様みたいで格好良かったよ」
恒一「や、やめてよ。照れるじゃないか……////」
江藤「クスッ、そこは素直に照れておきなさい。本当に私、助かったんだし」
恒一「最近は変な奴、増えてるからね。女の子には怖い世の中になったね」
江藤「確かに。さっきのナンパ男も榊原君に似てたしね」
恒一「それどういう意味? 僕は女の子に手を出すような男じゃないよ」
江藤「どうかなぁ? そんなジゴロの顔してるくせにぃ。東京では何人の女の子が犠牲になったのやら」
恒一「犠牲になんてなってないよ! ていうか僕ってそんなイメージある!?」
江藤「ある」
恒一「えええええ!?」
江藤「ウソウソ。榊原君がそんなことする人だったら、そもそも友達になってないしね。ふふっ」
恒一「なんだ、驚かせないでよー」
恒一「何が?」
江藤「今日のこと。なんだか無理やり誘っちゃったみたいで悪い気がしてさ……」
恒一「それなら大丈夫だよ。僕も暇だったしね。むしろ誘ってもらって嬉しいぐらいだよ」
江藤「そ、そっか……、、、……私も嬉しいよ? 榊原君と一緒に行――」
江藤「え?」
巨乳美女「ボウヤ、ちょっと教えてほしいことがあるんだけどいい?」バイン
恒一「へ? は、はい? なんでしょうか?」
巨乳美女「私地元の人間じゃないからよく分からないんだけど、市役所へはこっちの道で合ってるかしら?」ボイン
恒一「そ、そうですね。この道を真っ直ぐ行って右に曲がってそれで……(うわ、このお姉さんの服、胸元がすっごい開いてる)」チラッチラッ
江藤「……………………」
巨乳美女「助かったわ。ありがとね、ボウヤ」ボインバイン
恒一「いやぁ、それほどでも」デレデレ
江藤(何さ。あんなにデレデレしちゃって)
恒一「気をつけて~!」フリフリ
恒一「ふぅ。急に道を尋ねられてビックリしちゃった。ごめんね江藤さん、それでなんの話だったっけ?」
恒一「って、あれ?」
江藤「……………………」
恒一「どうしたの江藤さん? なんか怒ってる……?」
江藤「別に。怒ってないけど」ムスッ
恒一「でも急に機嫌が悪くなったような……。僕何か気に障ることした?」
江藤「さぁ?」ツーン
恒一「せ、せっかくなんだしさ。もっと明るく楽しくいこうよ! それに、江藤さんに無愛想な顔は似合わないって。笑顔の方がよく似合うよ」
江藤「むぅ……」プクゥ
恒一「僕、これでも江藤さんと二人で出かけるのずっと楽しみにしてたんだからさ」
江藤「……! 本当……?」
江藤「……それなら仕方がないなぁ」
恒一「え?」
江藤「今日は特別に許します」
恒一「はは、そうしてもらえるとありがたいけど、どっかで聞いたようなフレーズなのは気のせい……?」
江藤「た・だ・し!」
恒一「え?」
江藤「その分今日は一日楽しませてよね」ガシッ
恒一「わっ!(う、腕を組まれ……っ!////)」
江藤「オーケー?」
恒一「お、オーケーオーケー////」
江藤「ん。よろしい♪」ニコリ
恒一「どっかで暇潰す?」
江藤「そうだね。って言ってもあまり夜見山には見て周る所ないんだけど」
恒一「じゃあ小腹空いたし、どこか近くのファミレスでも入ろうか。デザートぐらいなら奢ってあげるよ」
江藤「いいの!?」
恒一「それぐらいならいいよ」
江藤「やった! それじゃあ早く行こ行こ!」
ファミレス
店員「いらっしゃいませー。何名様でしょうか?」
恒一「二人です」
店員「あ」
恒一「?」
店員「現在キャンペーン中でして、カップル席ではカップル割引が適用されますがそちらになされますか?」
江藤「え」
恒一「あーじゃあそちらでお願いします」
店員「かしこまりました。こちらへどうぞ」
江藤「さ、榊原君!?」
恒一「何?」
江藤「わ、私たちカップルだったっけ?////」ヒソヒソ
恒一「別に恋人じゃなくても男女のカップルなんだしいいんじゃないかな? それで割引もしてもらえるならお得じゃん」
店員「ではご注文がお決まりになりましたらお呼びください」
「○○はいつ見ても可愛いね」 「○○君もいつ見てもかっこいいよ」
「ほら、あーんして」 「あーん♪」
「キスしようぜキス!」 「バカ、みんな見てるでしょ////」
江藤(周り、本物の恋人同士ばっかりだし////)チラッ
恒一「僕はコーヒーでも飲もうかな。江藤さんは何頼む?」
江藤「え? あ、メニュー見せてくれる?」
恒一「はいどうぞ」
江藤「ありがとー。えーっと、せっかく奢ってもらえるんだし、そうだなぁ……何にしよう?」
恒一「……………………」
江藤「よし! きーめた!」
恒一「ねぇ江藤さん」
恒一「江藤さん、今日は私服なんだね」
江藤「ちょっとちょっとー今頃気づいたのー? ていうか休日なんだし当たり前じゃん」
恒一「はは、それもそうだね。でもいつもは制服姿の江藤さんばかり見慣れてるから、なんだか新鮮だよ。私服姿の江藤さんも可愛らしいね」
江藤「そ、そんな。照れちゃうよ//// (良かった。一番可愛い服着てきた甲斐があった)」
江藤「ちなみに榊原君は私服と制服、どっちが私に似合ってると思う?」
恒一「もちろんどっちも似合ってると思うよ。あ、でも競泳水着も江藤さんらしくていいかな?」
江藤「あー榊原君のエッチぃ」
恒一「ええっ!? そんな変な意味で言ったんじゃないよ!」
江藤「どうだか? 榊原君、ムッツリだし」
恒一「ムッツリじゃないって!」
望月「どうしたの勅使河原君?」
猿田「何かあったぞな?」
勅使河原「いや、今、榊原って名前が聞こえたんだけど」
望月「本当に?」
猿田「もしかしたらこのファミレスにいるかもしれないぞな」
勅使河原「お! マジだ! いたぜ! 向こうの席だ!」
望月「え? どこ?」キョロキョロ
猿田「おいおいどういうことぞな。一緒にいるの、江藤だぞな」
「僕は……だと思うな。江藤さんも……でしょ?」
「だね、あははは」
勅使河原「おいおいおいおい。サカキの奴、見崎がいるのに江藤と浮気か?」
猿田「やはり東京の色男は女関係も荒れてるぞな」
勅使河原「面白そうだし近くの席に移って盗み聞きしてやろうぜ!」
望月「ちょっ、やめなよ勅使河原君。何か事情があるのかもしれないし」
猿田「レッツゴーだぞな」ソロリソロリ
勅使河原「決定的瞬間を捉えてやるぜ」ソロリソロリ
望月「あ、もう。仕方がないなぁ」
江藤「うはぁ! 来た来た! デラックスストロベリーチョコパフェ!」
恒一「おお、すごい迫力だね」
江藤「でしょ? じゃあ早速、いただきまーす!」パクッ
江藤「うーん、この口の中でとろける感触、最高~♪」
恒一「だけど太らないように気をつけてね。そういうの、カロリー多いから」
江藤「うっ……」ピクッ
江藤「こ、これぐらいでは太らないはず。水泳で無駄な肉は落としてるし……」
恒一「ならいいんだけどさ」
江藤「っていうか榊原君はコーヒーだけで足りるの?」
恒一「十分だよ。このコーヒー、ハワイコナ・エクストラ・ファンシーっていうんだけど、これがまた美味しいんだ」
江藤「へぇ、博識だね。初めて聞いたそんなの」
恒一「僕の好きな飲み物さ」
江藤「ん?」
江藤「…………?」キョロキョロ
江藤「……ううん、気のせいみたい」
ヤベェ、アヤウクバレルトコダッタゼ サスガニコノセキハチカスギナイ? コレイジョウハナレタラ、ナニモキコエナイゾナ
江藤「そういえば榊原君はさ、受験どうするの?」
恒一「東京の高校に進学するつもりだよ」
江藤「あーやっぱり東京に帰っちゃうんだ。寂しくなるなぁ」
恒一「って思ってたんだけど、最近はこっちの高校に進むのもありかなぁって考えてるんだ」
江藤「そうなの?」
恒一「うん。良くも悪くもこっちとは色々と縁ができたしね」
江藤「そっかぁ。じゃあ私、榊原君と一緒の高校目指そうかな?」
恒一「いいね。僕も江藤さんが一緒だと高校生活楽しくなりそうだよ」
江藤「えへへ、ありがと。……ただ、残念なことに私の学力では榊原君と一緒の学校に行くのは難しそうなんだよねぇ」
恒一「江藤さんって成績はどんな感じなの?」
恒一「僕は確か、2番とか3番辺りだったよ」
江藤「やっぱり……さすがだね。これじゃあ同じ高校は無理かなぁ?」
恒一「なら僕が勉強教えてあげるよ」
江藤「榊原君が?」
恒一「うん。それぐらいお安いご用さ。頑張って勉強して一緒の高校、行こう?」
江藤「榊原君……(私のためにそこまで……)」
恒一「見崎も同じ理由で先週から一緒に勉強してるんだよね。江藤さんも加わったら3人でより楽しくなるでしょ?」
江藤「え? 見崎さん?」
恒一「うん。見崎にも空いた時間で勉強教えてるんだ」
江藤(なぁんだ、見崎さんもだったのか。ま、よく考えれば当然だよね。とはいえ、ここでむざむざ引き下がる私ではないのだ)
恒一「どうかな?」
江藤「ぜひぜひ! よろしくお願いします!」
猿田「あの3人の関係はいまいち分からないけど、江藤がサカキにぞっこんなのは間違いないぞな」ヒソヒソ
望月「ねぇ2人とも、こんな近くだとすぐバレちゃうよ」ヒソヒソ
恒一「じゃあそろそろ出ようか」
勅使河原・望月・猿田「!!!!」
江藤「ごちそうさまでしたー!」ガタッ
勅使河原「やべ! 顔隠せ!!」サッ
恒一「まだ花火大会まで時間あるね。どうしようか?」
江藤「とりあえず適当にブラブラしてみようよ」
猿田「……………………」
望月「……行ったみたいだよ?」ソー
猿田「どうやらそのようぞな」フー
勅使河原「ぃよっし! 尾行してみようぜ!」ガタッ
望月「えええええ!?」
猿田「賛成ぞな。こんなに面白そうなことは滅多にないぞな」
望月「2人も好きだね」
江藤「あまり遊ぶ場所がないのは難点だけどね。夜見山生まれとしては東京出身の榊原君にそう言ってもらえるだけで嬉しいよ」
恒一「東京は逆にゴチャゴチャしすぎてるからなぁ」
江藤「そうなんだ。……あ」ピタッ
恒一「どうしたの? ショーウィンドウの前で立ち止まったりして」
江藤「んーちょっとね。良さそうな服が目についたからさ」
恒一「……へぇ。江藤さんもやっぱり女の子だね。意外とファッションのことも興味あるんだ」
江藤「ちょいとお兄さん、それはどういう意味ですかい? お洒落にはいまいち無頓着~、とか言われる私でも一応はお年頃の女子中学生なんですが?」
恒一「ごめんごめん、確かにそうだね」
江藤「どうも榊原君はファミレスでの『今日は私服なんだね』発言といい、私のファッション事情に対して妙な偏見を持ってる節があるようで」
恒一「あ、いや、別にそういうわけじゃ……」
江藤「こうなったら罰です。中でお洋服を見て回るので榊原君は付き合いなさい。アドバイスしてもらうよ?」
恒一「えええええ!? 僕、女の子の服のこととか全然分からないよ?」
江藤「いいからいいから。私が榊原君に見てほしいの。ほら行こう!」ガシッ
恒一「あ! (また腕組み、、、)」
恒一「どうって言われても……」
江藤「ほら、私に似合いそうな服とかさ。なんかない?」
恒一「うーん……そうだね。選ぶだけじゃなんだし、何着か試着してみれば? そしたら分かるかも」
江藤「いいね、それ! じゃあ適当に着てみようかな」
江藤「えーっと試着室は、っと……お、あったあった」
多々良「……あら?」
中島「どうかしたの恵?」
キガエルカラ、ノゾカナイデヨ? ノ、ノゾカナイヨ!
多々良「もしかしてあすこにいるのは江藤さんでは?」
中島「え? あ、本当ね」
多々良「どなたかと一緒にいるようですね……」
恒一「うん。江藤さんらしくて似合ってるよ」
江藤「お、結構良い評価だね。とりあえずこれは保留で……次のに着替えるね」シャッ
江藤「着替えたよ! これはどう?」シャッ
恒一「そうだね……派手な感じもするけど明るくて江藤さんに似合ってるよ」
江藤「なるほど~。じゃあこれも保留で。さ、どんどん行くよ!」
多々良「まあ。一緒にいる男性、榊原君じゃありませんか?」
中島「へぇ……江藤さんと榊原君って、そういう仲だったのね」
多々良「てっきり見崎さんと仲が良いものかと思っていたのですが」
中島「江藤さんも隅に置けないわね。普段は男の子の気配はなかったのに」
多々良「ですが、男性にお洋服を選んでもらうのは、女性として憧れますよね」
中島「そうね。江藤さんも楽しんでるようだわ」
恒一「チュニックにレギンスか。女の子らしくて江藤さんに似合ってると思うよ」
江藤「ばばーん!」シャッ
恒一「今度はボーイッシュスタイルだね。江藤さんにはよく似合うね」
江藤「……ちょっとちょっと榊原君」
恒一「なんだい?」
江藤「さっきから同じようなことばかり言ってない? 結局どれ選んでも変わらないみたいじゃん」
恒一「あれ? そうだっけ? ごめん、僕あまりこういうの詳しくないからさ」
江藤「んもう」
多々良「面白そうですし、少しここから隠れて観察してみましょうか」
中島「いいわね。何か決定的瞬間に立ち会えるかもしれないし」
中島・多々良「……」ワクワク
勅使河原・望月・猿田「……」ソー
中島・多々良「ん?」
勅使河原・望月・猿田「え?」
キャーチカン!! ゴ、ゴカイダ!! ッテ、ナカジマトタタラジャネェカ!?
コ、コンナトコロデナニシテタンデスカ!? チカウンタ、゙タタラサン! ボクタチハテイサツヲシテタダケデ!
ワタシタチノ、ナニヲテイサツスルキダッタノヨ!? ソウイウイミジャナイゾナ!!
江藤「よし、ここまでにしておこうかな。これ以上は榊原君も困るだろうしね。ただ次、服買いに行く時には今回の意見、参考にさせてもらうよ」
恒一「そうしてもらえると嬉しいよ」
江藤「そろそろ出ようか」
恒一「そうだね」
猿田「部活で多々良と顔を合わせづらくなったぞな」ハァハァ
望月「……な、なんで僕が痴漢のレッテルを貼られなきゃいけないんだ……」ゼェハァ
勅使河原「っと、そういやサカキと江藤はどこ行ったんだ?」
猿田「店にはもういなかったぞな」
勅使河原「お! いたぞ! ゲーセンの前だ!」
猿田「よし! 追うぞな!」
望月「ま、まだやるの?」
江藤「ねぇ榊原君」
恒一「どうしたの?」
江藤「ゲームセンター、寄ってかない?」
恒一「意外だね。江藤さんってゲームとかやるんだ?」
江藤「そうじゃなくてさ。ちょっと来てくれる?」グイ
恒一「あ……」タッタッタ
江藤「ほらこれ。一緒にプリクラ、撮らない?」
恒一「プリクラか……って、江藤さんと一緒に?」
江藤「うん……。せっかく二人で遊びに来たんだし、榊原君と一緒に撮りたいな……?////」モジモジ
恒一(どうしよう……女の子と一緒にプリクラとかなんだか恥ずかしい、、、)
江藤「いや?」ウワメヅカイ
恒一「うっ!」
恒一「わ、分かった。いいよ。一緒に撮ろう」
江藤「やった! ありがとう榊原君!」
ホラ、ナカニハイロ ウン
望月「ファミレスでカップル席に座って、アパレルショップで一緒に服選んで、おまけにプリクラか」
勅使河原「完全にデートだなこれ」
猿田「羨ましくなってきたぞな」
江藤「ほらほら。もっと近づかないと写らないよ?」
恒一「あ、うん//// (え、江藤さんの顔がこんな近くに……っ! しかもなんか良い匂いするし////)」
江藤「……」チラッ
恒一「……」オドオド
江藤「……」クスッ
ハイチーズ! カシャッ!
恒一「すんません」
江藤(本当は私も内心、緊張してたんだけどね。だけど、榊原君と一緒にプリクラ撮れて良かった……。これ、大事にしよう)ギュッ
江藤「ん?」
恒一「どうかした?」
江藤「今、そこのUFOキャッチャーの裏に誰かいたような……」
恒一「他のお客さんじゃないの?」
江藤「そうかな? (目が合ったんだけど)」
恒一「……ちょっと見てみるよ」トコトコ
ヤベ、コッチキタゾ! ハヤクニゲルゾナ! モウ、マニアワナイヨ!
恒一「え?」
勅使河原「あ……」
江藤「!」
恒一「勅使河原? ……に、望月に猿田君?」
猿田「き、奇遇ぞなこんな所で」
恒一「……まさか尾けてた?」
勅使河原「な、なんのことだかよく分からねぇな! 別にファミレスで榊原と江藤を見つけて面白そうだったからって尾行してたなんてことないぜ!」
恒一「は?」
望月「勅使河原君!」
勅使河原「ん? あ、い、今のなし! 今の聞かなかったことにしてくれ!」
恒一「てしがわらぁぁ」
猿田「バレてしまったぞな」
望月「ご、ごめん榊原君! ちょっと興味本位だったんだ。江藤さんもごめんね?」
江藤「あ、うん……」
勅使河原「ま、まあ終わったことだしいいじゃねぇの! 細かいことはこの際気にすんな!」
恒一「勅使河原が言える立場じゃないでしょ」
勅使河原「それよりよぉ、サカキ! お前どういうことだよ?」ニヒヒ
恒一「何が?」
恒一「そ、そんなんじゃないよ……、、、」チラッ
江藤「?」
勅使河原「よし! ちょっくら事情聴取といきますか」
恒一「事情聴取?」
猿田「それはいいぞな。どんな経緯で江藤とこんな関係になったのか洗いざらい白状してもらうぞな」
恒一「待ってよ。僕たちこれから花火大会の会場行かなきゃならないんだけど」
勅使河原「なら俺たちが会場近くまで送ってやるから、道すがら話してもらうぜ?」
恒一「えええええ!?」
望月「うわ、勅使河原君も懲りないね」
勅使河原「大丈夫大丈夫。ちょっとそこまでだって。いいよな? サカキ!」
恒一「……じゃあそこまでだよ?」
勅使河原「よし決まり!」
猿田「話が分かる奴ぞな」
江藤「……………………」
―――――
勅使河原「でよぉサカキ、いつも思ってたんだけどよぉ」
恒一「なんだよ?」
勅使河原「お前ってなんでそんなに女にモテるんだよ?」
恒一「……? 僕がモテる? 何かの勘違いじゃないの?」
勅使河原「おいおいどんだけ天然なんだ? 一学期だけでもお前、少なくとも2、3人には好意持たれてたと思うぞ?」
恒一「そんなまさか。僕に限ってありえないよ」
猿田「はぁ。これだから都会生まれの色男は困るぞな」
望月「僕が言うのもなんだけど、榊原君はもっと周囲の人たちの言動に敏感になった方がいいよ」
恒一「そう言われてもなぁ……」
勅使河原「そもそもサカキはよ、どんな女のタイプが好きなんだ?」
恒一「そんなこと訊かれても、特に決まったのなんてないよ。そういう勅使河原はどういう子が好きなのさ?」
勅使河原「そうだな……年上から年下までなんでもありだぜ。ただ俺ってM属性あるからさ、ツンツンした気が荒い女がベストだな。あ、もちろんおっぱいはビッグサイズで!」
望月「勅使河原君らしいなぁ」
望月「なっ!? 僕はそんなの別に……」
勅使河原「隠すな隠すな。俺も分かるぜ。あの年上独特の包容力。最高だもんな?」
望月「うう……////」
猿田「望月も意外と好きじゃのう。だが包容力というのには同意するぞな」
勅使河原「だよな? あの抱き締められた時の感覚。形容しがたいぜ」
恒一「なんか偉そうに語ってるけど、そもそもお前、女の子と付き合ったことすらないだろ?」
勅使河原「いいんだよ。妄想こそ男子中学生のエネルギー源じゃねぇか?」
猿田「その通りぞな。妄想が男を磨くもんじゃ」
望月「もう、みんなそういう話にすると元気になるんだから」
江藤「……………………」トボトボトボ
猿田「おうおう、見た見た。見たぞな!」
江藤(ハァ……なんだかつまんないな……)トボトボ
恒一「何それ?」
勅使河原「お、興味あるのかサカキ? あの番号は最高にエロいぜ!」
望月「勅使河原君、声が大きいよ。他の通行人の人に聞かれちゃうよ」
江藤(榊原君は勅使河原君たちと会話に夢中だし……。適当な理由つけて帰っちゃおっかな……?)
望月「あ、榊原君。あそこじゃない? 花火大会の会場って」
江藤「!」
恒一「え? あ、本当だ。みんな集まってるね」
勅使河原「っと、俺たちはここまでだな。後はサカキと江藤の二人で楽しんでくれ」
猿田「時間は大丈夫かのぅ?」
恒一「始まるのは18時だからまだ余裕あるね、江藤さん」
江藤「…………」プイ
恒一(あ、あれ? 江藤さん、なんか怒ってる……?)
恒一「わっ! 何?」
勅使河原「もし江藤といい雰囲気になったら、迷わずやっちまえよ?」ヒソヒソ
恒一「はぁ? 何をだよ?」
勅使河原「チューだよチュー」
恒一「チュ……っ!?////」
猿田「女と二人きりになれるチャンス。男を見せる時ぞな」ヒソヒソ
恒一「な、何を言ってるんだよ……っ////」
望月「じゃあ花火大会楽しんでね。二人のところ邪魔して悪かったね、江藤さん」
江藤「……別に」
勅使河原「また学校でな!」
猿田「報告楽しみにしてるぞな」
恒一「さ、江藤さん、もうすぐ花火大会始まるし会場入ろうか」
江藤「そうだね」
恒一「えっと……江藤さん、さっきからなんか怒ってない?」
江藤「いや? 気のせいじゃないの?」
恒一「ほらぁ! 絶対怒ってるって。もしかして僕また何かした?」
江藤「してない」
恒一「もし本当に何かしてたのなら謝るからさ」
江藤「…………」
恒一「江藤さん?」
江藤「……ないよ」
恒一「へ?」
江藤「謝る必要なんて全然ないよ」
江藤「いきなり現れた勅使河原君たちと合流してから30分近くずっと蚊帳の外に置かれてて一人ぼっちだったけど謝る必要なんて全然ないから!」グスッ
恒一「え……じゃあまさか江藤さん、それで……?」
恒一「そんな……それならどうしてそう言ってくれなかったの?」
江藤「……っ 榊原君のバカぁ!」
恒一「え、え? ええっ!?」
江藤「初めて男の子と2人で出かけるからって、一番可愛い服着て、髪整えて、お洒落して、柄にもないことしてワクワクして来たのに……これじゃ私、間抜けみたい」
江藤「もし見崎さんだったら、耐え切れず帰ってるかもね」
恒一「うっ」
江藤「……」グスッ
恒一(まずい。大変なことをしてしまった。女の子ってこういうの気にしちゃうんだ。ていうか江藤さん、涙目なんだけど)オタオタ
恒一「あう、その……あの……ごめん江藤さん。初めに勅使河原たちに事情話してそこで別れるべきだったよ。ごめん……、、、」
江藤「いいよもう……30分黙ってて何も言わなかった私も悪いんだし」
恒一「はうう……」
江藤「…………、、、」グスッ
恒一「…………江藤さん」
江藤「……何?」
江藤「………………」
恒一「だけど最初にも言ったけど、僕も今日、江藤さんと2人で出かけるのを楽しみにしてたのは本当だよ?」
江藤「……うん」
恒一「調子良すぎるかもしれないけどさ……もしまだ、こんな僕でも構わないのなら……一緒に花火、見てくれないかな?」
恒一「もう無視しないし。今日だけはずっと、江藤さんの隣にいるから」
恒一「……ダメかな?」
江藤「……………………」
江藤「……ダメな訳、ない」ボソッ
恒一「え?」
江藤「私も今日は、ずっと榊原君の隣にいるから……」ギュッ
恒一「あ……(手を……)」
江藤「二人で楽しもう?」
江藤「ね?」
恒一「うん……」
ザワザワ
江藤「おー! いっぱいいるねぇ!」
恒一「もうそろそろ始まる時間だね」
江藤「あ! 榊原君、あそこあそこ!」
恒一「ん? どうかしたの? って、あれは……」
江藤「辻井君と柿沼さんだよね?」
辻井「この間さ、隣町に大きな本屋が出来たんだって。今度良かったらそこに行ってみない?」
柿沼「本当ですか? 辻井君と一緒に行けるなら嬉しいです」
辻井「はは、照れるなぁ」
江藤(へぇ。あの2人、あんなに仲が進んでたんだ)
恒一「お邪魔しちゃ悪いし、もっと離れた場所に座ろうか」
江藤「そうだね」
ヒュゥゥゥゥ……ドーン!! ドドーン!! ドパーン!!
恒一「お、始まったね」
江藤「わぁ! 綺麗」
恒一「やっぱり来て正解だったね」
江藤「うん!」
ドォォン!! ヒュゥゥ……パパパパパァン!!!
江藤「……………………」
恒一「……………………」
ヒュゥゥゥ……ドドドドォオン!!!
江藤「……私さ」
恒一「ん?」
江藤「正直、こんな風景見れるとは思ってなかった。一学期は、もしかしたら災厄で自分が、なんてずっと考えてたから……」
恒一「そうだったんだ……」
江藤「本当のこと言うと、今でもまだ災厄が怖い。今でもまだ、あのトラウマから抜け出せてないけど……」
江藤「……けど、こうして榊原君と一緒に花火を見れてる。それだけでもとても嬉しいし安心するの」
江藤「ありがとね、榊原君。私、榊原君と友達になれてとても幸せだよ」
恒一「僕だって……江藤さんと友達になれて幸せだと思ってる。そしてそれは、これからも変わらない」
江藤「そっか……」
江藤「…………、、、」
江藤「……あのね榊原君」
恒一「なんだい?」
江藤「私、実は榊原君のことが……」
恒一「ん?」
「お! 見ろ!」 「でかいのくるぞ!」
ヒュゥゥゥ……ドドドドドドドドドパパパパパァァァン!!!!
「おー!」 「きゃーすごーい!」
恒一「わぁ……これは迫力あるね」
恒一「っと、ごめんごめん。今何か言おうとしてたよね?」
江藤「……あ、いや、なんでもない」
江藤「いいの!//// やっぱりまだ早いし、もっと関係深めてからの方がいいしね!」
江藤「それに、強力なライバルもいることだし」ボソッ
恒一「一体なんのこと話してるの?」
江藤「いいからいいから!!//// ほら、今は花火見ようよ?」
恒一「あ、うん」
ヒュゥゥゥゥ……ドドドォォン!!! ドォォン!! パァァァン!!!
江藤「榊原君」
恒一「ん?」
江藤「これからもよろしくね♪」
恒一「こちらこそよろしく」ニコッ
ドドドドドドォン!!!! パパパパパァアン!!!! ドォォォン!!!!
―――
―――――
公園
江藤「あー面白かった! すごかったよね? 最後、花火が連続で打ち上げられたとことかさ!」
恒一「あれは僕も思わず見入っちゃったよ」
江藤「今日は本当にありがとね? とても楽しかったよ。それに、わざわざこんな所まで送ってもらっちゃって」
恒一「もう暗いし、良かったら家まで送ろうか?」
江藤「大丈夫大丈夫。ここからなら家はすぐだし」
恒一「そっか。それじゃあ……」
恒一「ああ、また学校で」クルリ
恒一「…………」スタスタスタ
江藤「………………」
江藤「あ、あのさ榊原君!」
恒一「どうかした?」クルリ
江藤「えっと、その……お休み?」
恒一「うん、お休み」ニコッ
恒一「…………」スタスタスタ
江藤「私も帰らないと」
江藤「そうだ。見崎さんにお礼の電話しようかな? 今日榊原君と楽しめたのも、見崎さんのお陰だしね」
江藤「見崎さんの電話番号は、っと……」ピッピッピ
ザッ
江藤「え?」
男「ハァハァハァ……また、会ったね」ニヤァ
江藤「!!!!!!」
男「ふふっ、運命を感じない?」
江藤(こ、この人……っ! 夕方、駅前で榊原君と待ち合わせした時にナンパしてきた人だ!)
男「僕は運命を感じるよ。なんたって、一度逃がした獲物に再び出会えたんだからね!」ギラリ
江藤(……包丁!?)
江藤(まさかこの人、初めからナンパ目的じゃなくて……)ゾッ
男「さぁ、おいで。ふふっ……僕と楽しいこと、しようよ」
男「ほら、この包丁も君の美しくて美味しい血を吸いたがってウズウズしているよ?」
江藤「来ないで……」ザザッ
男「何人もの乙女の血を吸ってきたこの包丁が、君を新たな生贄に選んだんだ」
男「さぁ、僕に君の血を見せてくれ!!!」ダッ
きゃああああああああああああああああ!!!!>
恒一「……っ」
恒一「今の……! 江藤さんの悲鳴!?」
恒一「江藤さん!!!」ダッ
男「ふへへへへ。いいね。このスラリと伸びた細い足、白い肌……柔らかい体……最高の素材だよ」
江藤(くっ……押し倒されて動けない! 口も塞がれて声が出ない……!)
男「そして何より、恐怖に歪んだ若い女の顔! ああああ! 何度見てもやめられない快感だ!!」
江藤「むうううう!!!! んううううう!!!!」ジタバタ
男「でもね、僕が一番見たいのは若い女が痛みと苦しみで泣き叫ぶ顔なんだ」
男「僕のために、死んでくれ!!!」ギラリ
江藤(神様……っ!)
恒一「おおおおおおおお!!!!!」
ドカッ!!
男「ぐふっ!?」
江藤「!?」
江藤「さ、榊原君!?」
恒一「僕がこいつを押さえてる間に逃げるんだ江藤さん!!」
男「ふふふ」ギラリ
恒一「!!!!」
シャッ ブシュッ!!!
恒一「ぐあっ!?」
江藤「榊原君!!!!」
恒一(クソ!! 左腕を切られた!!)
江藤「さかき――」
男「ふふふふふふ。汚い男の血が包丁についちゃったじゃないか。どうしてくれるのさ?」ペロリ
江藤「……!!」ドクン!!
――『ンツッ……イ゛エ゛アァアァァァッアア゛ツァァッァアッツァゥ――ヴンッ!!!!!』――
江藤「あ……ああ」ガタガタ
――『ハァハァ……ぅぇぁぁあっ!!』ドスッ!!――
江藤「ああ……いや……いや」フルフル
恒一「江藤さん?」
――『ひゃげう!!!』ブシュウウウウ――
江藤「あ……うあ……」ガタガタ
恒一(クソッ、どうしたってんだ一体!? 江藤さんの様子がおかしい!)
男「ほらほらほらほらほら!!!!」ブンブンブンブン
恒一「くっ!」サッサッサッ
男「早く死んじまえよ!!!」
恒一「わっ」ガッ
ビターン!
恒一「うっ……(転んでしまった。早く起きないと!)」
男「ひぃやはぁぁぁぁぁあああっ!!!」ブンッ
恒一「クソッ!!」ガシッ
男「お前……生意気だな。僕が誰だか知ってるのか?」ググググ
恒一「し、知るかよそんなこと(ほ、包丁が目の前に……っ!)」ググググ
男「ここ数年、世間を騒がせてる大スターだぞ?」
恒一「何ぃ? ……くっ!」
男「新聞で読んだことないか? 『また夜見山市で出没! 今月で被害者は○人目』ってな」
恒一「ま、まさか!?」
恒一「お前があの……」
恒一「あの通り魔なのか……?」
男「なんだ、ビビったか?」
恒一「お前が……」
男「良い冥土の土産になったろ? だが安心しろ。後でちゃんと、そこの彼女もお前の元に送ってやるからさ」
恒一「………………」
男「だからお前は、一足早くあの世に行ってろ!!!!」ブンッ
ガシィィッ!!!
男「何!?」
恒一「……お前のせいで」ボソッ
男「くっ!?」グググ
恒一「お前のせいでどれだけの被害者が無念のうちに死んでいったか……どれだけ多くの人が辛い目に遭ったのか……分かってるのか?」
恒一「お前は夜見山に取り付くもう一つの災厄だ」
男「なんだと? 何を言ってやがる?」
男「こいつ!!」
恒一「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
ドゴッ!!!!
男「ぷぎゃっ!?」
恒一「ハァ……ゼェ……今のは江藤さんを怖がらせた分」スクッ
男「お、お前えええええ!!!!」
恒一「もう一発はお前に殺された被害者たちの分だ!!!!」
ドゴオオオオオオッ!!!!
男「ぐぇぁあああぁぁぁ……っ!!??」
男「か……はっ」バタッ
恒一「江藤さん!」
江藤「あ……ああ」ガタガタ
恒一「江藤さん!! 怪我はなかったかい!?」ユサユサ
江藤「!!!」ビクッ
江藤「い……いや……」
恒一「江藤さん?」
江藤「いや……いや! いやぁ!!」
恒一「どうしたんだ江藤さん? 落ち着いて! 僕だよ! 榊原だ!」
江藤「包丁が……」
恒一「包丁?」
江藤「血まみれの包丁……ああっ、やだ……先生が……先生の首が……っ! あああああ」
恒一「!」
恒一(まさか、血がついた包丁を見てトラウマが蘇ったのか!?)
恒一「江藤さん!」ダキッ
江藤「!!!!」
恒一「大丈夫だ江藤さん……もう、災厄は終わってるんだ」
江藤「はっ……あっ……さかき……ばら……くん」
恒一「ここは公園で、あの日の教室じゃない。災厄は終わったんだ。江藤さんが怖がる必要はないんだよ」
江藤「……終わった? 災厄、終わった、終わったの? 終わったんだよね……?」
恒一「そうだ。だから安心して。それに、通り魔も僕がやっつけたからさ。僕が江藤さんの傍についてる。僕が傍にいる限り、江藤さんを守ってあげるから……」
江藤「守る……榊原君が?」
恒一「うん」
江藤「……そっか……安心……私、安心した……榊原君が傍に……傍にいてくれる」
江藤「……榊原君……」
恒一「なんだい?」
江藤「……ありがとう」
恒一「ああ」
江藤「……うん。もう大丈夫。榊原君のおか――」
男「ハァ……ハァ」ギラリ
江藤「榊原君!! 後ろ!!」
恒一「え?」クルリ
男「し、死ねええええええ!!!!」
恒一(ナイフ!? まだ凶器を隠し持ってたのか!?)
男「えぇやぁぁああああああ!!!!!」
「そうは問屋が卸さないんだなぁ」
ガッ!!!
男「ぐえっ!!」ズダーン
「決着は着いてるのに、往生際が悪いぜ?」
恒一「君は……」
水野「よう」
恒一「水野君!」
江藤「あ、前島君も」
男「クソオ!! 離せ!! うあああああ!!!!」
水野「おとなしくしてろよ、犯罪者」
恒一「どうして君たちがここに?」
前島「どうしても何も、公園の外を歩いてたら変な雄たけびが聞こえてさ。見てみたら、君たちが包丁を持った男に襲われてるじゃないか」
水野「だから一緒にいた米村に近くの交番まで走ってもらって、俺たちはお前たちを助けるためにここまで来たんだよ」
恒一「そうだったんだ」
水野「もっとも、その前に榊原がこいつを一度のしちまったし、警察もすぐ来るだろうから俺たちはお邪魔にならないよう陰で見守ってたんだが……」
江藤「お邪魔って?」
前島「いや、こいつ倒した途端、ハリウッド映画のラストみたいにいきなり抱き合い始めたじゃないか君たち」チラッ
恒一・江藤「え?」
恒一・江藤「……あ////」カァァ
恒一・江藤「~~~~っ////」ババッ
恒一「こ、これは別にそういうわけじゃ……!」
江藤「そ、そう! ちょっと事情があってあんな風になってただけで……!」
水野「ま、どうでもいいが油断してんじゃねぇぞ? 俺たちが近くにいたから事無きを得たものの」
恒一・江藤「……す、すいません、、、」
米村「おーい! 警官連れて来たぞー!」
前島「お、米村だ」
警官「凶器を持った男がいると聞いて来たんだが」
水野「こいつっす」
男「チクショウ!! 離せ!! この無能どもが!!」
恒一「この男、例の連続通り魔です。本人がそう名乗ってました」
水野・前島・米村「ええっ!?」
男「クソッ……」
前島「驚いたな。あいつが例の通り魔だったのか」
米村「まったくだよ」
水野「まさかこんな形で通り魔事件の犯人が終わるなんてな」
恒一「うん、終わったんだよ」
水野「あん?」
恒一「……これで本当に、すべてが終わったんだ」
恒一「ね? 江藤さん」
江藤「うん。そうだね……」
江藤「後は……」
―――――
―――
――
―――
―――――
それから一週間後・市内の市民プール
恒一「えーっと……」キョロキョロ
鳴「榊原君。こっちよ、こっち」
恒一「あ、見崎!」タッタッタ
鳴「遅いわよ。どこか行ってたの?」
恒一「うん。ちょっと、お墓参りにね」
鳴「お墓参り?」
恒一「ああ」
鳴「……なんでまた?」
恒一「良い機会だと思ってさ。今までずっと負い目があって行くのを避けてたんだけどね……」
恒一「謝罪して、あと江藤さんが大会で頑張れるよう見守ってほしいって頼んでおいたよ」
鳴「そう……」
『ただ今より、女子自由形100m決勝を行います』
鳴「あ、来たみたいよ。ほら、江藤さんもあそこに」
恒一「江藤さん……!」
『位置について、用意!』
恒一「……」ゴクリ
パン!!!
『各選手、スタートしました! おおっと、5番レーンの江藤選手出だしから早い!!』
恒一「行け」
『しかし、後から2番の山田、続いて4番の田中追い上げてくる! これは接戦です!!』
恒一「行け!」
恒一「頑張れ!」
『2番、4番、5番、50mを超えて横一列に並びました!』
恒一「君ならできる江藤さん!」
『ここで4番、引き離されました! 2番の山田選手と5番の江藤選手、両者一歩も譲りません!』
見崎「………………」
『ゴール直前! 果たして優勝はどちらでしょうか?』
恒一「江藤さん!!」
『ゴオオオオオル!!!! 優勝は江藤選手です!!!」
恒一「やったああああああああああ!!!!」ガタッ
『優勝おめでとうございます、江藤選手! 一言お願いします!』
江藤『ハァ……ゼェ……』
江藤『じゃあ……ハァ……応援してくれた友達に……ハァ』
江藤『ありがとう!』ニコッ
恒一「江藤さん……」
見崎「……」フッ
恒一「おめでとう……」グスッ
鳴「あらあら。男の子が泣いちゃって」
恒一「な、泣いてないよ! 見崎の意地悪!」グスッ
鳴「ふふ」
―――――
恒一「今日はよく頑張ったね、江藤さん」
鳴「お疲れ様」
江藤「えへへ、2人ともありがとう」
鳴「練習の成果が出て良かったわね」
江藤「うん。本当は……また溺れたりするんじゃないか、って不安も少しあったんだけど、どうやら完全に克服できたみたい」
恒一「じゃあもう、心配する必要もなさそうだね。これでまた好きに泳げるね」
江藤「うん楽しみ! って言いたいところなんだけど、その前に受験があるんだよねぇ」
鳴「あ、そっか。受験あるの忘れてた」
恒一「おいおい」
江藤「もういっそのこと受験諦めて、残りの半年遊びまくっちゃおうかな?」
鳴「それ名案かも」
恒一「ちょっと2人とも! 何言ってるの!? 将来がかかってるんだよ!?」
恒一「うおっ」
江藤「マンツーマンで勉強教えてよ? この前約束したよね? 一緒の高校行こって」チラッ
鳴「!」
恒一「あ、ああ、もちろんいいけど……(急に腕組まれてビックリした)」
鳴「…………」
鳴「私も」ギュッ
恒一「え? どわっ!?」
鳴「私も榊原君と同じ高校行くつもりだし、もっと勉強時間増やしてほしいな?」
恒一「そ、それも別に構わないけど……(急に手を握られてビックリした)」
恒一(ていうか僕今、何気に両手に花状態?)
江藤「そういう見崎さんこそ、独学の方が伸びるタイプだと思うけど」
見崎・江藤「ぐぬぬ」
恒一「ちょっ、よく分からないけど睨み合うのはやめなよ。見崎も江藤さんもなんで僕と2人だけで勉強したがるの? 3人一緒の方が楽しいじゃない」
見崎・江藤「でも……」
恒一「そう思わない?」
鳴「ま、榊原君がそう言うなら……」
江藤「仕方ないかな?」
恒一「うんうん、分かればいいんだ。それが一番だよ」
恒一(にしても二人とも、いつまで僕にくっついてんだろ? なんか恥ずかしいんだけど////)
鳴「?」
江藤「貴女とはこれから色んな意味で張り合うことになりそうだし、先に忠告しておくね」
鳴「……へぇ? 何かしら?」
江藤「トラウマを乗り越えた江藤悠は絶対無敵。勉強にしても恋にしても――」
江藤「私、絶対負けないからね!」
終わり
合宿不参加組のモブキャラとはいえ、江藤ちゃんも意外と魅力的な部分いっぱい
あるので今後何かと気にかけてくれると嬉しいです。
つまり何が言いたいかっていうと、江藤ちゃん可愛い。
Entry ⇒ 2012.06.29 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
恒一「性質が逆転する現象だって……?」
恒一「……」
見崎「気をつけて。もう始まってるかもしれない」ボヨン
恒一「そうだね」
恒一「……」
見崎「♪」ボヨン
貧乳→巨乳
見崎「26年前に、この夜見山北中学の3年3組で非常に天邪鬼な生徒がいたの」ボヨン
見崎「そんな彼をクラスメイト達は嫌い無視をした」ボヨヨン
見崎「そして次第に彼の心は病み始め、ついには友達が『いない』のに『いる』ような行動をとりはじめたの」ボヨン
見崎「以来3組ではその内容を問わず物事が次々と逆転していく現象がおこりはじめた」ボヨーン
見崎「それが性質が逆転する現象」ボヨン
恒一(しかし……でかいな)
見崎「そう、例えばほら」ボヨン
望月「うわああああ!」
恒一「!?」
望月「ふえー」
恒一「も、望月が女の子になってる……」
男→女
望月「恥ずかしいから、そ、そんなじっくり見ないでよぉ」
恒一「///」
見崎「むっ」ボヨン
ガッ
恒一「いた! 何で僕の足を踏むのさ!」
見崎「……別に」ボヨーン
見崎「気をつけて榊原くん。この様子じゃもう始まってる」ボヨン
見崎「♪」ポヨヨ
恒一「う、うん」
恒一(なんだか見崎が凄い嬉しそうだけど、場合によっては厄介な事になりそうだなぁ)
赤沢「でもいいわ、昔からみんなに無能無能と馬鹿にされてきたけれど」
赤沢「現象さんがきっと私を有能にしてくれると決まっているはず!」
赤沢「今に見てなさい! 見崎鳴!!」
望月「ななな、なんだか赤沢さんが一人で変な事言ってるよぅ」
高林「ハハハハ! 実にフェアでいいことじゃないかい」
高林「そんな事より望月!」
高林「今夜僕と一緒に野球観戦にでもいかないかい? ついでに洒落たディナーでも一緒に」キリ
望月「え、えっと、ごめん。今日は榊原くんと予約があって……」
高林「」
高林「そうかそうか!」
高林「でも僕は何度振られても君の心を奪ってみせる」キリリ
望月「高林くん……」
高林(なんだろう。今日の僕はどこか男らしいぞ。まるで強心臓だ!!)
弱弱しい心臓→強心臓
中尾「」ゾク
中尾「て、てめえ! 性懲りもなくまた俺のケツ穴を狙ってやがんのか?」
川掘「あ? 何言ってんだ、まるでホモみてえじゃねえか」
中尾「!?」
中尾(まさかこいつ現象でノンケに……?)
川掘「どうすんだ、行くのか行かねえのかハッキリしろって」
中尾「……お、おうそうだよな。わかったわかった付き合ってやるよ!」
川掘「おう!」
川掘(この現象、外見的な部分の逆転は見れるが内面的部分の逆転は見れない。すなわちあくまで自己申告であって……)
川掘「」
川掘「」ジュルリ
中尾「」ゾク
中尾「な、何か寒気が……?」
中尾「あ、待てって!」タッタッタ
柿沼「……」
柿沼「はー、ホモとかないわー」
柿沼「時代は百合だろ、普通に考えて」
柿沼「男の何がいいんだか」ハア
BL厨→百合厨
柿沼「……」チラッ
柿沼(やっぱ生涯安心金木松井の百合カップル、はと)
金木「……私達別れたほうがいいと思うの」
松井「!?」
柿沼「!?」
金木「私達の関係一旦冷ましたほうがいいと思うの」
松井「」
金木「……ごめんね、別に亜紀の事が嫌いになったわけじゃないの」
金木「でも、あなたの姿を見てると私が本当に釣り会うのか自信がなくて……ごめんなさい!」ダッ
松井「」
柿沼「」
松井「」
通常の一般人的体型→八頭身超モデル的体型
水野「やっぱり三島由紀夫の文学性は非常にウェットに富んでるよな。たとえば仮面の告白を読んでみても――」
アウトドア系→インドア系
久保寺「ハァー、なんで私のお母さんは私のお母さんなんでしょうか? むしろ私のお母さんであっても――」
超ロリ専門→超熟女専門
辻井「見える! 見えるぞ! 僕にも眼鏡なしで見える! まるでハイビジョンじゃないか――」
厚底眼鏡の低視力→マサイ族もびっくり超人的視力
恒一(みんな大なり小なり変わっている……昨日までは普通だったのに)
恒一「おはようおっぱい」
見崎「え?」ボヨン
恒一「? どうしたの見崎?」
見崎「いや、多分私の聞き間違い」
恒一「それにしても今日も見崎の見崎は元気だね。僕の恒一も見習ってほしいよ」ハハハ
見崎(!? 榊原くんがナチュラルにセクハラ発言を)
見崎「これも……現象か」
恒一「しかし皆変だよ、自分に違和感がないのかな? 普通あそこまで変わったら赤沢さんですら違和感を覚えるレベルなのにね」
本音を隠すタイプ→オープンな本音
見崎「……何でもない///」
見崎(まさか恒一くんがこんなセクハラまがいな事を考えていたなんて///)
見崎「現象には個人差があるみたい。自身が変わった事に気づく人間もいれば全く気づかない人間もいる」
見崎「辻井くんは気づいているけど久保寺先生は気づいていないように」
恒一「ふうん」
恒一(しかし元の久保寺先生ってロリコンだったのか)
恒一「いい年して気持ち悪いというか、鼻で笑っちゃうよね」
見崎(辛辣……)
見崎「……」スッ
見崎「……何かよう?」ボヨン
恒一(あ、胸を開放した)
恒一「やあ、赤沢さん、今日もキレイだね」
赤沢「……」
パアン
恒一「……!?」
見崎「……??」ボヨヨン
赤沢「……」チッ
ザワザワ
杉浦「い、泉美? どうしたの……」
小椋「ちょ、何やってんのよ」
綾野「ハア、こんないい天気だと気が滅入っちゃうよね。……死にたい……」
ポジティブ→ネガティブ
赤沢「……」スタスタ
恒一「ちょっ! 赤沢さん、待って」ガシ
赤沢「……!」
ガン
恒一「うう、呼び止めただけなのに、……頭突きしなくても」
恒一「そんな……。そんな素敵な顔をしたレディーに話しかけるなというほうが無理だよ……」
小椋(榊原くんも何かおかしいぞ……)
赤沢「やめてください。セクハラです」
恒一「例え、僕は殴られ続けられたって、君に愛の言葉をささやき続けるのをやめないよ!」
赤沢「……」イラッ
恒一「いたいいたい! そのツインテールみたいなもので殴らないで」ガスガス
見崎「……」ボヨン
見崎(現象は今完全に私の味方!)ボヨン
恒一「ちょ! ツインテールみたいな鞭で叩かないで!」パチンパチン
赤沢「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」パチンパチン
恒一きゅん大々々々々々々好きぃ!→中尾以下
見崎「これに懲りたら今後あの女の近くにはいかないほうがいいかもね」クス ボイーン
恒一「そういうわけにはいかないよ!」
恒一「もしあれが彼女なりの愛情表現だとしたら僕にはそれを受け止める義務がある!」
恒一「僕は彼女を愛することを止めないさ!」
見崎「……」ボヨン
恒一「それはもちろん見崎のおっぱいもね!」キリ
見崎「///」キュン ボイーン
三神「あら、佐藤さん関心ね。誰も見ていないところでもお花を大切にするなんて」
佐藤「ふええ、当然ぼ事ですぅ」
計算高い腹黒さ→純粋無垢な心
和久井「最近喘息が出ないんだ、なんでだろ?」
前島「さー、体質でも変わったんじゃねえの?」
和久井「うーん」
喘息持ち→風邪すらひかない健康的な体
勅使河原「おう、中尾……ってお前中尾か!?」
中尾「? 俺は俺だろ?」
勅使河原「お、おう……」
高林「へえ、彼もなかなかフェアな顔になったじゃないか」
望月「……///」ドキッ
中尾「?? どうしたんだお前ら?」
ブサイク→イケメン
中尾「? どうしたんだよ望月」
中尾「……手紙?」
勅使河原「おー、もしかしてラブレターじゃねえか?」
望月「うん」コクコク
中尾「ハハ、ありがたいけど、ゴメンな望月。俺もう彼氏がいるし、今のお前は女だしよ」テレ
望月「ガーン」
勅使河原「……うん? それって」
中尾「ああ、そういう事さ」
中尾「まったく……、お前が欲しいのはラーメンじゃなくて――」グイ
川掘「!」
中尾「俺のが欲しくてたまんねえんだろ?」
川掘「///」
勅使河原「」
望月「うう……」
高林「仲良きことは実にフェアだ」ウンウン
中尾「ククク」
守備範囲は女→守備範囲は男
川掘「///」
掘る側→掘られる側
多々良(まさかこれが噂の)
多々良「中学デビュー……?」
恒一「やあ、多々良さん」
多々良(よかった、恒一くんはいつも通りみたい///)
恒一「今日も美しい黒髪だね。いつかは僕の白濁液で汚して見せるよ」
多々良「」
多々良(いいいいいまのって、下ネタなのかな?///)
多々良(っどどどどどおしよう、ここはノリよく”今から汚してみる?”っていってみようかな。でももし恒一くんなりのジョークでムッツリなんて思われたりしたら///)
多々良(でもスルーしたらこの女カマトトぶりやがってなんて嫌われちゃうかも!)
多々良(嫌われるのは嫌! でも恒一くんが下ネタを言ってくるなんて///)
多々良「あわわわわわわ」ガタガタガタ
恒一「何だか分からないけど多々良さんがフリーズしてしまったからそっとしておくか」
恒一「やあ有田さん。今日も色っぽい顔だね。いつかその顔に僕の白濁液をかけてみせるよ」
有田「い」
恒一「い?」
有田「いやああああああああああああああ!!!!!」
恒一「!?」
赤沢「!……」ダダダダダ
赤沢「恒一くん! 松子に一体何をしたぁ! 言えぇ! 言えぇ!!」グサ
恒一「いたっ! ちょっとそのツインテールみたいなの刺さってる! 刺さってるよ!」グサグサ
赤沢「刺してるのよ!!」グサグサ
恒一「でも大丈夫、たとえツインテールみたいなもので刺されてもそれが君の愛情表現だと思って黙って受け止めるよ!!」グサグサ
有田「や、やめて泉美! 恒一くんが死んじゃう!」
赤沢「これで死ぬならとっくに殺してるわよ!」グサグサ
恒一(しかし血がひどくなってきたな……)
恒一「うん、ホントびっくりしたよ」ドクドク
恒一「でも有田さんが赤沢さんを制してくれなかったら今頃地面に倒れていたかもね。ありがとう」
有田「う、ううん/// 私が悪いから」
恒一「このお礼はいつかベッドの中でじっくりさせてもらうよ」
有田「い」
恒一「い?」
有田「いやああああああああああああああ!!!!!」
恒一「!」
赤沢「……」ダダダダダ
恒一「おのれ、現象め」
有田「ご、ごめんなさい/// で、でも、エッチなのは大人になってからだよ?」ウワメヅカイ
変態→純情
恒一「すでに僕のズボンの中で大人の恒一が暴れているけどね」ハハ
有田「い」
風見「ん、どうしたの桜木さん」
桜木「風見くんの事傘で思いっきり突いてみてもいいですか?」
風見「!?」
桜木「こうすることで何かを掴める気がするんです」
風見「……」
桜木「ありがとう風見くん」
ブス
風見「うっ!」
桜木「……」
ブス
桜木「……」
ブス
風見「くぅ」
ブス
桜木「……」
ブス
風見「ああっ!」
ブス
桜木「……」ハアハア
ブス
風見「ああっ!」
桜木「……」フーフー
ブス
桜木「こ、これは……」
桜木(心のそこからくる高揚感! 幸福感! 一本満足! これが私の生きる道!)
ブス
ブス
ブス
風見「くううぅ……あっ!」
ブス
桜木「これが、私?」
傘にさされる側→傘をさす側
ブス
風見「お願いします!! やめてください!」
桜木「……」
桜木「ニコ」
風見「!」
ブス
風見「うっ……あっ、はあ…」
ブス
風見「ふぅ、ふぅ……」
ブス
風見「……」
ブス
風見「んん、くぅっ……ぅ、うぅ……あっ」
ブス
ブス
風見「あっ、ふぁ、あぁっ、あっ///」
ブス
風見「も、もっとぉ///」
桜木「ニコォ」ハアハア
ブス
風見「うぁっ、ぐぅっ、つぅう、はっぁ///」フーッフーッ
殺される前にヤル側→殺されても良いからヤラれる側
桜木「これから私達、仲良くできそうですね、風見くん///」ニヤァ
風見「そ、そうだね。桜木さん///」ハアハア
ひょっとすると…
猿田「ぞなぁ」
王子「きちんと吹奏学も続けてるし」
猿田「ぞなぁ」
猿田(ワシは知っている。王子も現象に遭遇した事に)
猿田(王子は最近急にパンクに目覚めたぞな)
猿田(それもファイアースタントをつかったパフォーマンス付でよく深夜のイノヤで演奏しているぞな)
猿田(特殊なメイクをしてバレないと思ったぞなか、王子。親友の目はごまかせないぞなよ)
王子「あれ、そういえば猿田も最近変わったよね」
猿田「ぞな!?」
猿田(それはお前がパンクに目覚めたから、お前受け入れるために勉強してるためぞな)
王子「僕もなんだか最近パンクに目覚めたんだ。よかったら詳しく教えてあげるよ」
王子「やっぱり僕ら親友だね!」
猿田(……)
猿田「ぞな!」ニッ
王子「ニッ」
クラシック→パンク
金木「こないで!!」
松井「……!」
柿沼「」ハラハラ
金木「あなたにはもっと他にいい人がいる」
松井「そんな事ないって! 私には杏子しかいないよ!」
金木「……私、決めたの」
松井「……!?」
金木「私、男に走る!」
松井「」ドキッ
松井(何、今の気持ち。嫌なハズなのに一瞬えっちな気持ちになった)
松井「……?」
純愛→寝取られ
金木「……」
柿沼「」
恒一「やあ綾野さん。今日もうつむいてるけど、それじゃ猫背のせいでおっぱいがよく見えないよ」
綾野「いいんだよこういっちゃん。私のなんて多佳子や泉美、見崎さんにすら勝ててないし。勝ってるのなんて由美ぐらいだよ」ハア
見崎「……」フフン ボヨヨヨン
小椋「」
恒一「そうかな、綾野さんのも充分意義のあるおっぱだと思うけど……?」
綾野「なぐさめはいいから。ほっといてよ……」
恒一「こんな笑顔がよく似合う顔なのに、笑わないなんてもったいないなぁ」
綾野「笑うなんて……私にできっこないよ」
綾野「……まあお世辞でも嬉しいよ。今だけだけど」
恒一「別に僕は本心しか言わないけどなぁ」
綾野「はあ……、じゃあ私と付き合ってくれる?」
恒一「うん、いいよ」ニコ
見崎「」ガタプルン
多々良「」ガタ
有田「」ガタ
望月「」ガタ
赤沢「……」ペッ
綾野「わかってるわよ、全部。こういっちゃんモテるもんね」
綾野「ぬか喜びさせて陰口を叩く、知らないと思ってるの……?」
綾野「きっと私なんか眼中にないからノータイムで返事ができたんだよ」
綾野「そう、きっと、そう、きっとそう、きっと」ブツブツ
恒一「なんだか綾野さんがヤンデレになりそうだから一先ず退散するか」
見崎「ホッ」ブルン
多々良「ホッ」
有田「ホッ」
望月「ホッ」
赤沢「何彩をいじめてんよぉぉぉぉ!!!!」ダダダダダ
恒一「う、うわああああああ! ツインテールみたいなのはやめて! ツインテールみたいなものはー!!」
見崎「さっきのは危なかった。実に危なかった」ブルン
見崎「今の恒一くんは軟派なイタリア男状態」ブルン
見崎「来る者拒まず去る者追わず」ブルン
見崎「元々そういう思考だったみたいだけど……」ブルン
見崎「早急に対策せねば!」ブルルン
高林「さあ望月! 僕の恋人になれ!!」
望月「ご、ごめん高林くん。今日は勅使河原くんと予定が」
高林「そうか、ならまた明日迫らせてもらうのがフェアだというものだね!」
望月「ごめん、明日は明日で金木さんと用事があるんだ……」
高林「ふふ、なら明後日があるじゃないか!!」
藤巻(こいつ、なんて打たれ強いの……)
金木(とりあえず望月でリハビリして、と。私の好みは小さな女の子だし)
望月「やあ、ごめんね金木さん。お待たせ」
金木「ううん、別に待ってないよ……」
松井(嘘、もう30分近く待たされてたじゃない、杏子!)
松井(でもなんでだろう。二人を見てるとつらいはずなのに気持ちが興奮してくる……)
柿沼(この子、物陰から隠れてみて……なんと不憫な)
金木「……じ、実は」
望月「僕でよかったら相談にのるよ?」
金木「!」
金木(やっぱりダメ、今は女の子だって頭ではわかってるのにどうしても体が拒否してしまう)
金木「う、うわーん!」ダダダダ
望月「」
望月「ど、どうしたんだ一体?」
松井「てめええ! なに私の杏子泣かしてんだよぉぉ!」ゴゴゴ
柿沼「そこは普通引き止めるだろ百合的に考えなくても」ゴゴゴ
望月「!? な、何が起こってるんだ?」
ドン
金木「きゃっ!」
三神「うわっ、と、大丈夫金木さん?」
金木「……」ボーッ
三神「金木さん?」
金木「え、あわわ、は、はい!」
三神「そうよかった。でも今度からは廊下は走っちゃダメよ」ニコッ
金木「……///」
金木「は、はい! お姉様!!」
低め打ち→ハイボールヒッター
三神「お、お姉様?」
松井「ううう、杏子が寝取られちゃったよぉぉぉぉ」グスグス
松井「でもすっごい興奮するんだよぉぉぉぉ」グスグス
柿沼「女生徒×女教師! イケナイ関係! ”お姉様、そこはダメ。汚い穴よ!”、”いいじゃない、あなたの体は全て私のものよ。ほらいやらしく私に見せてみなさい……!”、ふぉぉぉ! インスピレーション沸いてきたわぁあああ!」
小椋「恒一くんの口ぶりじゃあおっきいおっぱいが好きみたいだし」
小椋「見崎さんみたいに胸に影響がでないかなぁ……」
敦志「なんだしけた面しやがって。おかえりの一言も言えないってのか」
小椋「おかえりー(棒)」
敦志「ったく、せっかく人が汗水たらして働いて帰ってきたっていうのに辛気臭い!」
引きこもり→社会人
小椋「へーへー。あたしもう、寝るから」
敦志「はやっ!?」
小椋「寝る子は育つっていうしー!」
小椋(おっぱいだってきっと……!)
由美ちゃんきゃわわわ
小椋「胸も変化ないし」
小椋「待ち合わせとかしてないんだけど、会えたらいいのになー!」
恒一「あ」
小椋「! こうい……榊原くん! おはよう!!」
恒一「やあ、小椋さ……んん?」
小椋「?」
恒一(小椋さんが大人の女性になっている。おっぱい以外)
女子中学生→大人の女性
恒一(制服がピッチピッチだぞ。胸は余裕そうだけど、でもこれは正直)
恒一「たまらん」
小椋「!?」
恒一(どうやら本人には違和感のないタイプみたいだな。不安を煽ってもいけないし普通に接するか)
恒一「ぐっへっへっへ、お姉ちゃんいい体してんな。ちょっと僕に触らせてみなよ」
小椋「」
小椋(おさわりを求められている!)
恒一「……」
小椋「ちょ、ちょっとだけなら///」
恒一「!!」
恒一「なら遠慮なく」サワ
小椋(! 胸じゃなくてお尻なの!?)
恒一「うん、やっぱり細身だけどしっかりした肉付き。たまんないよ」サワサワ
小椋「う、ううぅ///」
恒一「早起きしてよかったよ。朝からいいもんだね」サワサワ
小椋「///」
恒一「!」ピキーン
恒一「まずいこの気配は……」
赤沢「……」ダダダダダダ
小椋(泉美が猛スピードでこっちに向かってくる……!)
恒一「じゃあ、小椋さん。また学校で会おう。朝から赤沢さんのスキンシップはちょっと食傷気味でね」タタタタ
小椋「」
勅使河原「ほんとだよな」
高林「それにしてもまさかそんな制服の着方があるなんて初めてしったよ」
望月「勅使河原くんはハイセンスだからね」
勅使河原「おしゃれさんは制服すら簡単に着こなせるんだぜ?」
おしゃれさん(センス無)→おしゃれさん(センス有)
恒一「やあおはよう勅使河原に高林くん、それと望月は今日もかわいいね! じゃあ学校で!!」タタタタタタ
赤沢「……」タタタタタタ
勅使河原「あいつらホント仲いいよなー」
望月「そうは見えないけどなー」
江藤「へえ、でもなんで私に言うの?」
杉浦「だってそんな屈強な体してたら肉体作りのテクニックの一つぐらいしってるんでしょ?」
江藤「え……?」
小さな体→まるでボディービルダー
中島「最近あんまりいいことないなー」
渡辺「ほうほう例えば?」
中島「印象の無い人ってどうひっくり返しても印象の無い人だよね」
渡辺「0に何をかけても0みたいな?」
中島「いっそのことアフロにしてみようかなぁ」
渡辺「今なら現象のせいにできるもんね。私も思い切ってノーパンノーブラで登校してるけど案外気にならないよ」
米村「」ガタ
前島「これからの時代は」
前島「フェンシングだ!!」
桜木「アハハハハ」ハアハア
風見「ウフフフフ」ハアハア
ブスブスブス
前島「……」
前島「やっぱり剣道の方が健全だぜ!」
ザワザワ
恒一「やあ藤巻さん。どうしたんだい? いつものギャル風メイクやコギャルの格好はどうしたんだい? それにしてもいい唇だね食べちゃいたいよ」
藤巻「? いつもこんな感じだけど」
ギャル風→清楚風
前島「健全だ!!」
高林「フェアだね!! でも僕は望月くん一本だよ!!」
中尾「俺にはお前しかいねえよ」
川掘「こいつぅ///」
佐藤「あ、ちょうちょさんだ!」
佐藤「おなかすいたな~」
佐藤「ふええ」
佐藤「あ、シマリスちゃん」
見崎「何を見てるの恒一くん?」ブルン
恒一「いやあ、”『キャベツ畑』や『コウノトリ』を信じている可愛い女の子に無修正のポルノをつきつける時を想像するような下卑た快感さ』”なんてよく言ったものだななんてね」
見崎「?」ブルン
恒一「殴るならもっと優しく殴ってほしいんだけどな」ガッガッ
赤沢「……」ガッガッ
久保寺「ハアハア、お婆ちゃんの無修正お婆ちゃんの無修正お婆ちゃんの無修正///」
綾野「死にたい……」
辻井「へえあれが通天閣かぁ」
藤巻「あー、リップクリームきれちゃった~」
金木「お姉様どこですか!?」
松井「ああ、杏子ぉ///」ハアハア
柿沼「」ハアハア
杉浦「もうこのクラスにはほとんど現象の餌食にかかってしまった」
多々良「うん、後三神先生と一部の生徒ぐらいだね」
高林「望月! 結婚してくれ!!」
望月「だーめ!///」
佐藤「ふええ、ふええ」
小椋「うーん、最近なんだか制服がきついなぁ」
渡辺「難点を挙げるとすれば乳首がこすれるところとか?」
中島「アフロ失敗してチリチリになっちゃった……」
前島「健全こそ全て!!」
杉浦「一部は現象にかこつけてイメチェンをはかったりしてるみたいだけど」
多々良「うん」
中尾「///」イチャイチャ
川掘「///」イチャイチャ
猿田「やっぱりパンクより聖歌ぞな!」
クラシック→聖歌
王子「まさか猿田と音楽性の違いで争うとは思ってもみなかったよ! ぶっ殺してやる!」
水野「だから筒井康隆の断筆宣言の前とそれ以降の作品の毛並みは――」
桜木「今度はこの傘を使ってみましょう。この先が尖ったものを///」
風見「」ゾクゾク
杉浦「……」
多々良「……」
勅使河原「ほら、ここの制服の着方はだな」
米村「へえ、今度真似してみるよ」
杉浦「せめて私達だけでもまともなのが救いね」
多々良「みんな受験生なのに大変だなぁ」
多々良「こういう時はボートレースでも観て落ち着くのが一番なのにね」
杉浦「え?」
多々良「え?」
競馬→競艇
杉浦「……もう誰も信じられない」
杉浦「止めたとしても現象でおかしくなった人達が元に戻るのかも分からない」
三神「そうよねぇ」
杉浦「……」
三神「いまさら”死者”をみつけてもどうしようもないかもねえ」
杉浦「……ですよね」
三神「多分”死者”は私なんだろうけどね」
杉浦「!?」
死者→生者
杉浦「……じゃあ三神先生を殺したら現象は止まるですか?」
三神「多分止まらないんだよね。杉浦さんが殺したとして、人殺しとして記憶や記録にも残るだろうし」
杉浦「……っ」
三神「でも人って変わるものなんだよ?」
杉浦「……」
三神「でも現象によってその気持ち、吹き飛ばされちゃったんだ」
甥への反倫理的感情→甥への倫理的感情
三神「でも、今でもやっぱり恒一くんが好き」
杉浦「……!? なんで、現象によって逆転されたはずじゃあ?」
三神「でも、人は常に同じ気持ちじゃいられないの」
杉浦「?」
三神「ほら見て」
赤沢「ほら! こんな事されて嬉しいんでしょ!? この変態!! みすぼらしい! くたばれ!!」ニヤニヤ
杉浦「泉美が笑ってる……? そんな現象の影響で中尾以下まで落とされたはずなのに、吐くほど毛嫌いしているはずなのに」
三神「でも人は常に変化していくの。彼女だってゆっくりだけど元に戻ろうとしている。好きだった人を本当に嫌いにはなれないように」
望月 男→女
高林 弱弱しい心臓→強心臓
柿沼 BL厨→百合厨
松井 通常の一般人的体型→八頭身超モデル的体型
水野 アウトドア系→インドア系
久保寺 超ロリ専門→超熟女専門
辻井 厚底眼鏡の低視力→マサイ族もびっくり超人的視力
榊原 本音を隠すタイプ→オープンな本音
綾野 ポジティブ→ネガティブ
赤沢 恒一きゅん大々々々々々々好きぃ!→中尾以下
佐藤 計算高い腹黒さ→純粋無垢な心
和久井 喘息持ち→風邪すらひかない健康的な体
中尾 ブサイク→イケメン
中尾 守備範囲は女→守備範囲は男
川堀 掘る側→掘られる側
有田 変態→純情
風見 殺される前にヤル側→殺されても良いからヤラれる側
王子 クラシック→パンク
松井 純愛→寝取られ
金木 低め打ち→ハイボールヒッター
小椋兄 引きこもり→社会人
小椋 女子中学生→大人の女性
勅使河原 おしゃれさん(センス無)→おしゃれさん(センス有)
江藤 小さな体→まるでボディービルダー
藤巻 ギャル風→清楚風
猿田 クラシック→聖歌
多々良 競馬→競艇
三神 死者→生者
三神 甥への反倫理的感情→甥への倫理的感情
見崎「あー、肩がこるわー」ボヨン
三神「現象によって幸せになれた者」
中尾「ほら、こっちに来いよ!」
川堀「うん///」
三神「現象によって新しい自分を見つけられた者」
久保寺「ああ、守備範囲が広がるうううう!!」
三神「現象がマイナスに働いたけれどいずれ前に進む者」
綾野「はー、ちょっとだけ頑張ってみようかな……」
三神「呪いのようなものだし、同時に幸せの神様みたいなものなのかな」
杉浦「……」
三神「見た感じ、あなたも変わってたみたいね?」
杉浦「……はい!」
情緒不安定→情緒安定
三神「大丈夫、変わることは人間としてごく自然な事だから」
杉浦「そうですね」
杉浦「そう? 触ってみる?」
恒一「そうかい、じゃあ遠慮な……」ピキーン
恒一「ごめん杉浦さん。触るのはまた次の機会にするよ」タタタタタタ
杉浦「?」
赤沢「……」タタタタタ
杉浦「なるほどー!」
三神「ほら、みんな席について! HRをはじめるわよ」
金木「はい! お姉様!!」
柿沼「」パシャパシャ
杉浦「さ、今日も一日頑張るぞっと!!」
見崎「……」
見崎「おわり」ブルン
いい感じに終わったな
乙
風見の生死の行方は…
Entry ⇒ 2012.06.28 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
恒一「お風呂沸いたよ」鳴「うん」
恒一「凄い雨だね」
鳴「台風だからね。榊原君びしょ濡れだけど大丈夫?」
恒一「少し寒いかも…見崎は?」
鳴「ちょっと濡れたけど平気。榊原君の傘なんだから、自分が入らなきゃ駄目だよ」
恒一「入ってたじゃない」
鳴「肩のとこだけね」
恒一「あれ以上入ったら見崎が濡れちゃうだろ」
恒一「そういう気分じゃなかったの。タオル借りるよ」
鳴「…勝手にすればいい」ブスッ
恒一「何むくれてるのさ」
鳴「別にむくれてません。ついでにお風呂沸かして来て」
恒一「はいはい」スタスタ
鳴「…ばか」ボソッ
鳴「久しぶりに行ったな…学校。最近は榊原君と遊んでばっかりだったから」
鳴「榊原君のお弁当食べれるなら、また行ってもいいかも」
鳴「まぁ家で毎日食べてるけど」
鳴「…雨止まないな」
鳴「…榊原君まだかな」
鳴「…」ボー
恒一「見崎ー? お風呂先に入る?」
鳴「おそい」ギュッ
鳴「どうせお風呂入るじゃない」
恒一「そうだけど…」
鳴「一緒に入る?」
恒一「勘弁してよ…」
鳴「…」ギュー
恒一「痛いって」
恒一「いいの?」
鳴「一人でゆっくり入ってきたらいい」
恒一「…手、離して?」
鳴「…」ジトー
恒一「はぁ…お風呂上がったら何でもしてあげるから」
鳴「なんでも?」
恒一「ある程度のね」
鳴「…特別に認めます」スッ
恒一「何をだよ…。すぐに上がるから、見崎も用意しててね」
鳴「うん」
恒一「学校行ったの久々だったな…少し疲れた…」
恒一「見崎と登校して、見崎と喋って、見崎とご飯食べて、見崎とお昼寝して…まぁ普段と変わらないんだけど」
恒一「…さっきのは少し冷たかったかな。でも甘やかすのは…駄目だよね」
恒一「…何言われるんだろ」
鳴「! じゃ、じゃあ早速…」
恒一「その前にお風呂。見崎も少しとはいえ濡れてるんだから」
鳴「大丈夫」
恒一「大丈夫じゃない。入ってる間にご飯作っとくから」
鳴「…はーい」シブシブ
鳴「ただいま」トコトコ
恒一「お帰――って、何その格好!?」
鳴「変?」
恒一「変ではないけど、Yシャツ一枚って…」
鳴「下着は付けてるよ?」
恒一「そう言う報告はいいから! ふ、服持って来るから、じっとしてて」
鳴「無駄だよ。全部濡れてるから、これ以外」
恒一「…マジ?」
鳴「マジです」
鳴「ご飯出来てる? 食べよ」スタスタ
恒一「聞いてよ!」
鳴「榊原君」ビシッ
恒一「な、何?」
鳴「榊原君言ったよね? なんでも言うこと聞くって」
恒一「…はい」
鳴「じゃあ一つ目。私の服装に文句を言わないこと」
恒一「…はい」
鳴「じゃ、行きましょ」クイクイ
恒一(多分ここからが本当の地獄だなコレ…)
鳴「親子丼うめぇ」モグモグ
恒一「み、見崎? これ食べにくくない?」
鳴「全然。はい榊原君、あーん」
恒一「あ、あーん」モグモグ
鳴「美味しい?」
恒一「美味しいけど…作ったの僕だよ?」
鳴「でも食べさせたのは私だから」
恒一「はいはい…」
鳴「次は榊原君ね」アーン
恒一「もう…」
鳴「霧果は工房へお仕事に、天根は畑の様子を見に行きました」
恒一「桃太郎かよ…」モミモミ
鳴「んっ…榊原君、そこ、もっと強く…」
恒一「ここ?」グリグリ
鳴「あっ…い、いよ…榊原君」ビクッ
恒一(三つ目はマッサージ…これはマッサージ)モミモミ
鳴「あぅ…んっ、ふぁ…」ピクピク
恒一「み、見崎。こんな時間だし、僕もう帰らないと」
鳴「…帰るの?」
恒一「怜子さんも心配してるだろうし…」
鳴「…」
恒一「…」
鳴「…いいよ。またね」
鳴「榊原君」スッ
チュッ
鳴「…」
恒一「…」
鳴「またね」ニコッ
恒一「…うん。また明日」
恒一(明日のお弁当は見崎の好きな物沢山入れてあげよう)
恒一「お邪魔しましたー」ガチャ
大雨「ようwwwwwwwww」ザー
恒一「…ただいま」ビチョビチョ
鳴「お帰り。思ったより早かったね」
鳴「あの大雨の中帰ろうとする方がどうかしてる」
恒一「忘れてたんだよ…ていうか見崎知ってたなら言ってよ」
鳴「榊原君が先に意地悪したんじゃない」
恒一「…もういいや。今日泊めて」
鳴「今日は特別に――」
恒一「認めます?」
鳴「…もう」
怜子『恒一君? まだ帰ってこないと思ったら…』
恒一「すいません」
鳴「…」ジー
怜子『まあいいわ。今はどこ?』
恒一「今は見崎の家です」
怜子『また? 変な事とかしてないわよね?』
恒一「し、してませんよ?」
鳴「!」ピーン
恒一「帰ろうとしたんですけど、雨が酷くて帰れそうにないんです。だから――っ!?」
鳴「…ふふ」サワサワ
怜子『恒一君?』
恒一「い、いえ。何でもないです」
「ちょ、ちょっと見崎?」コソコソ
鳴「ん?」ムギュー
恒一「ん? じゃなくて…」
鳴「四つ目。私に気にせず電話を続けて?」ゴソゴソ
恒一「ふ、服の中に潜り込まないで!」
恒一「は、はい?」
怜子『どうかしたの? 服の中にどうとかって…』
鳴「…」クンカクンカ
恒一「いえ、その…虫が服の中に入って…」
鳴「む」
怜子『そう』
恒一「そ、それで今日は――」
鳴「んっ」チュー
恒一「うひゃっ!?」
恒一「わ、脇腹を刺されて…」
鳴「んちゅー」
怜子『だ、大丈夫?』
恒一「は、はい。これぐらい――」
鳴「…あー」ペロ
恒一「だ、いじょうぶ…です」
怜子『?』
恒一「そ、それで今日は見崎の家に…っ」
鳴「榊原君…」ボソッ
恒一「み、耳元で喋らないで」ボソボソ
怜子『見崎さんの家に?』
鳴「はむっ」
恒一「うわっ!?」
鳴「(弱点みっけ)榊原君、榊原君…」ボソボソ
怜子『おーい?』
恒一「――きょ、今日泊まります! じゃ!」プチッ
恒一「…みーさーきー」
鳴「…」スタタッ
恒一「逃がさない」ガシッ
鳴「っ! は、離して?」ボソッ
恒一「無駄無駄。さて、やっぱり甘やかすと駄目だね」
鳴「榊原君?」ビクビク
恒一「…」スパーン
鳴「ひゃうっ!?」
恒一「…」スパーン
鳴「ひぅっ」ビクッ
恒一「…」スパーンスパーン
鳴「んっ! ぁうっ!」
恒一「反省した?」
鳴「…し、してない」
恒一「…」スッパーン
鳴(…アリかも///)ビクッ
鳴「う、んっ!」ピクッ
恒一「ああいう事したら」ペシーン
鳴「あ…っ」
恒一「お仕置きだからね?」ペッシーン
鳴「はぃ、っ!」
恒一「…手痛い」ヒリヒリ
鳴「んっ…あ…」ピクピク
鳴「もう眠くなった?」
恒一「うん…」
鳴「(ま、いいか)じゃあ布団いこ」クイ
恒一「うん」
恒一「はいはい」
鳴「腕枕」
恒一「ほら」
鳴「ん。ぎゅってして」
恒一「…」ギュー
鳴「ね。明日はどうしよ」
恒一「いつも通り…かな」
鳴「そっか」ギュ
恒一「僕より先に寝ちゃった…」ナデナデ
鳴「ふにゅ…」スリスリ
恒一「…かわいいなぁ」
鳴「さかきばら、くん…むにゃ…」
恒一「おやすみ、見崎」
happy☆end
乙
Entry ⇒ 2012.06.24 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
小椋「彩が男子になった…?」赤沢「ええ」
引用元: ・http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1338804217/
恒一「う、嘘だ…」
鳴(私に話しかけてくれるクラスで唯一の女子だったのに……)
ザワザワ ガヤガヤ オレノアヤチャンガ マカセロー ユカリジャナクテヨカッタ フェアジャナイ
赤沢「今日学校休んでるでしょ? 彩……ショックで部屋に閉じこもってるらしいのよ」
勅使河原「し、しつもーん! それって、3組の性別が逆転するとか何とかーーって呪いのせいか?」
赤沢(本当は女性に男性器がはえる現象だけど、オブラートに包んだ表現になってるのはさすが先代の対策係ね)
赤沢(きっと私と同じで有能だったんだわ)ニヤニヤ
赤沢「とにかく彩を見てみないと何とも言えないから……放課後、私と由美で彩の家に行ってみるわ。小椋さん、いいわね?」
小椋「うん、分かった」
久保寺「同じ教室で共に学んだ綾野さんのうんたらかんたらーー」
小椋(彩……大丈夫かな……?)
綾野母「由美ちゃん達が来てくれて助かるわ。私じゃどうにもならなくって……」
小椋「彩はどんな様子ですか?」
綾野母「部屋にずっと……。けどここだけの話し、私は男の子が欲しかったんです。主人は女の子がーー」
赤沢「そ、それより…! 彩の部屋はどこですか?」
小椋「階段上がった正面だよ。早く行こ」
綾野母「彩を頼みますね……」シクシク
赤沢「お任せ下さい」キリッ
赤沢「あなた、来たことあるの?」
小椋「うん。そりゃ幼稚園からの付き合いだから」
赤沢「へえ……(私呼ばれた事ない……)」コンコン
綾野『……誰?』
赤沢「私と由美よ。入っていい?」
小椋(声そのまんまじゃない。ホントに男になったのかな?)
綾野『泉美と由美だけ……?』
赤沢「ええ私たちだけよ」
綾野『じゃあいいよ……』
赤沢「入るわね」
小椋「……!!」
赤沢「彩……なのよね?」
綾野「そうだよ。ははっ、笑っちゃうよね。こんな姿……」
赤沢(まあ確かに一回り大きくなったけど、あれがあれになったからってそんなに変わる訳じゃないのね。下の確認の必要は……なさそうね)
小椋(こ、これは……)
小椋(や、ヤバい……ちょーカッコいいじゃん…)
小椋「あ、ごめん。見とれちゃって……」
綾野「何それー。やっぱり変だよね……」
小椋「そ、そんなことないよ!?」ガシッ
綾野「えっ?」
小椋「あれ? あたし何してんだろ?」アハハ
小椋(な…なんで彩でドキドキしてんのよ~)
綾野「……」
赤沢「私も元に戻る方法を全力で探すから……辛いでしょうけど学校にはーー」
綾野「いやだよ! こんな姿、クラスのみんなに見せたくない!」
赤沢「……」
小椋「大丈夫だよ! むしろ今の彩も十分イケてるよ?」
綾野「そういう問題じゃないよ……」
赤沢「由美……なんかあなた変よ」
小椋「ご、ごめんなさい……」
綾野「……」
綾野「そうだよね。私が元気じゃないと、3組は盛り上がらないもんね!」
赤沢「その意気よ……ん?」チラッ
赤沢「あっ、この私達の写真、春休みに行った演劇部の合宿の時のやつね」
小椋「あっ……その写真、あたしなくしちゃった。部屋に置いてたんだけどなぁ」
綾野「どうせ卒業までの辛抱だし、男を満喫しちゃおっかな~」ニシシ
赤沢「ちょっと聞いてるの? それで制服だけど、何か適当な物を着てきてくれる? 学校にはーー」
綾野「ナンパとかしてみようかな~。どう? 私結構イケメンだよね~?」
小椋「ナンパなんてダメ! 明日はあたしが迎えに行くから一緒に行こうね!」
綾野「由美、頼むぜ(キリッ。なんちてー」
小椋「あ……う、うん……」ドキッドキッ
赤沢「聞いてない……けど、この調子なら大丈夫そうね」
小椋「ごめんごめん、遅くなっちゃったー」
綾野「遅いよー……って、あれ?」ジー
小椋「な、なに?」
綾野「うーん、いつもと雰囲気違うような……」
小椋「いつもと違うのは彩でしょ? 早く行かないと遅刻するよ!?」
綾野「そうかなー……」ダキ
小椋「きゃっ」
綾野「ほらー、いつもよりいい匂いもするし……」クンクン
小椋「な、何だっていいでしょ? それに急に抱きつかないでよ!」ガバッ
小椋「今の彩は一応男なのよ? いつも通りには出来ないよ!」
綾野「……やっぱり男になるなんて気持ち悪いよね」ショボン
小椋「あっ……違うの。そういう意味で言ったんじゃなくて……」
綾野「……」
小椋「彩は彩だよね! ごめんね! 今まで通りでいいから……ね?」
綾野「う、うわ~ん。由美大好き~」スリスリ
小椋(彩は彩なのよ! 落ち着けあたし!)ドキッドキッ
小椋(あたしは自分の席にいるけど……)ジー
小椋(彩の席の周りには人だかりが出来てる……まあみんな気になるよね)
勅使河原「へえー、確かに少し男っぽくなった……か?」
望月「変わったのかな? ちょっとおっきくなってるけど……」
中尾「元々無い胸が小さくなって、その分背がおっきくなっただけじゃねえか」
綾野「ひ、酷いよ……」
ザワザワ スライスサレロ ゴミ ザッソウ ゴミ ザッソウ
中尾「す、すまんかった……」
綾野「……」
勅使河原「まあでもそのなんだ……! 綾野、その容姿はズリぃわ。男女関係なくイケてるぜ?」
杉浦「確かにこのクラスの女も男も相手にならないわね」
綾野「えっ! えへへ、そうかなー」パァッ
高林(フェアじゃない……フェアじゃないよ)プルプル
赤沢「男子も彩が何か困ってたら、助けてあげてね」
勅使河原「綾野! 色々教えてやるよ!」
恒一「綾野さん、何でも相談してね……」
綾野「うん……」
小椋(彩……榊原くんには見られたくなかっただろうな……)ジー
有田「ねえ由美」
小椋「なに?」
有田「彩って……ち○こもついたのかな?」
小椋「ななな何でそんな事あたしに聞くのよ!」ガタッ
有田「普通気にならない? 後で触らしてもらーーってあれ?」
小椋「彩が……彩にあれが……あやのん……?」ブツブツ
鳴(榊原くんは眼帯や店の人形が物珍しいから私が気になるとか言ってたけど、綾野さんは物珍しい私を普通の人間として接してくれている……)
鳴(綾野さんが男になったなら……逆に都合がいいかも)ウットリ
桜木(風見くんは狂気じみてるし……元気な彩ちゃんなら……)ポワーン
川堀(……ん、待てよ? 綾野は女だ。けど身体は男! これって合法ホモじゃねえか!)ウホッウホッ
勅使河原(やべぇ、やべぇよ。見た目も声もそのまんまの綾野が、俺みたいに毎日……これはやべぇ、やばすぎんだろ)ゲスガオ
江藤「」キュンキュン
佐藤&渡辺(赤面しながらヒソヒソ……)
柿沼「」ギラギラ
有田(これも現象のせいなのかな? でも、凄い事になりそうだね!)
綾野「由美と松子~一緒に食べようよ~」
小椋「うん……」
有田「そーだね♪」
綾野「いや~男にもなってみるもんだねー。色々ちやほやされるし、体はなんか軽いしさぁ」
小椋「へーそうなんだ……」
有田「話しぶった切るけど彩、ち○こ触らしてよ」
小椋「ぶぅっー!!」
綾野「ダメに決まってるでしょ! 私だってまだよく見てないのにさ~」
綾野「て、照れるなぁ~。背も少しおっきくなったし、由美が余計にちっちゃく見えるよー」
小椋「ちっちゃいって言うな!」
綾野「お胸も余計に小さくーー」モミモミ
小椋「ちょっと……いつも通りとは言ったけど人前では……」
綾野「気にする事ないってばー。私と由美の仲じゃん」モミモミ
有田「止めて欲しそうには見えないけどな~」ニヤニヤ
オイオイ オグラガヤバイ マカセロー フェアダネ ユミチャンカオマッカ コウフンスルゾナ
小椋「だめだっあっ…てばぁ」
鳴「綾野さん」
桜木「小椋さんが困ってるじゃないですか!」ガシッ
有田(おお。さっそく修羅場来たぁ♪)
鳴「ねえ綾野さん、屋上に行って2人で食べようよ」ニコッ
桜木「学食に新しいスイーツがあるんです! 彩ちゃん一緒に行きませんか?」
綾野「いやー私は由美たちと食べてるからさ。ごめんね。一緒に食べる?」
スタスタ
綾野「あれ? メイちゃんよかったのかな?」
桜木「食事はいいですから今日一緒に帰りませんか? 私の家は綾野さんの家のさらに向こうだから」
綾野「今日はせっかく男になったから演劇部で何か男役を演じてみようと思ってるんだー。だから、ごめんね。一緒には帰れないや」
桜木「そうですか……残念です」
スタスタ
有田「しらばっくれちゃって。彩と由美はいつもモテモテじゃない」
綾野「そうだったかなぁ? そういう松子だって……まあいいや。由美、今日は部活付き合ってね」
小椋「いいけど……。やりたい役ってなに?」
綾野「ロミオとジュリエットのロミオやってみたいなぁーって。由美にはジュリエットをお願いしたいな」
小椋「彩がロミオであたしがジュリエット……?」
ーーー
ー
小椋『たとえ……祈りにほだされても、聖者の心は動きませんわ』
綾野『では動かないで下さい。祈りの効しをいただく間だけ』接吻
オーロミオアナタハナゼー
ー
ーーー
ーーーーー
赤沢「ーー彩が男役やってくれるなら幅が広がるわ」
綾野「でしょー? 泉美も来てくれるよね?」
赤沢「もちろんよ。これで千曳先生を裏方に引き戻せるわ」
綾野「楽しみだね~由美ぃ?」
小椋「」ニター
綾野「おぐりーん?」フリフリ
赤沢「まあ焦る事もないわ。昨日の今日ですし、彩も由美も疲れたでしょ」
綾野「そうだねー。また今度でいっかー」
有田(榊原くん以上の無自覚女たらし、綾野くんの誕生か。それにしても……)チラッ
赤沢(ふふっ恒一くんを巡るの最大のライバルの見崎さんが……彩には悪いけど対策探しは多佳子に任せて、恒一くんを対策しちゃうんだから)
風見(そんな……ゆかりが……ゆかりがァアあるあ!!ぶるあああ!!)プルプル
鳴「榊原くんごめんなさい。ストーカーの質問厨は私……嫌いなの」
恒一「そんな……見崎ぃいいいい!!!!」
江藤「水泳部に興味あるって彩言ってたよね?」
渡辺「私と一緒にスティーブハリスについて語らない?」
川堀「綾野、これも運命だ。やらないか?」
柿沼「図書室に行きましょう。秘密の第3図書室に」
綾野「遠慮しとくよー」
有田(ふふっ、どうなることやら♪)
綾野「毎朝迎えにこなくてもいいのに~。もう大丈夫だよ?」
小椋「でも……彩が心配だから……」チラッ
小椋(どんどんカッコよくなってく……気がする。最近は言動も男らしくなってきたし……)
綾野「由美~私の顔に何かついてる?」
小椋「ううん! 何でもない……」
小椋(けど彩は彩だよね。早く元に戻らないかなぁ。今ならまだ……)
綾野「うわっ、アイツがこっちに来るよ?」
小椋「げっ!」
高校生DQN「由美ちゃん、ちぃーす! ん?」ジー
綾野「……」
高校生DQN「まあいいや。今日は俺たちのジャマするあの女はいないんだね」ガムクチャクチャ
小椋「今日は何ですか……?」
高校生DQN「どう? 俺と付き合ってみる気になってくれたぁ?」クチャクチャ
小椋「な、何度も言いますけど、あたしDQNさんとは付き合えません!」
小椋(何回目だよこいつ……エロい目で見やがってマジでキモい、死ね!)
綾野「先輩、由美が嫌がってるじゃないですか」
高校生DQN「んだテメェ! あの糞アマみたいな見た目で糞アマみたいな事言いやがって! テメェにそんな事言われる筋合いはねぇんだよ!」
綾野「俺の彼女に手を出すなと言ってるんです」
小椋「!!」
高校生DQN「ちっ! 彼氏出来たのかよ。まあいいわ。正直貧乳は嫌だったしな!」ペッ
スタスタ
小椋「うん、その……ありがと」
綾野「よかった。DQNの言うことなんて真に受けたら……って、あれ?」
小椋「どうしたの?」
綾野(由美ってこんな可愛かったっけ……? それに胸や足も……ドキドキする……)ジロー
綾野(うう、おち○ちんがなんか変……これがてっしーが言ってたボッキてやつなのかな?)
綾野(えっ? こういっちゃんでは全然起きなかったのに、由美で? 私、由美でコーフンしちゃってるの?)
小椋「彩……それ以上見つめないで……」バックンバックン
綾野「え? あ、ああ。あはは~。そうだよね! 早く学校行こ♪」
小椋「……?」
綾野(親友に変な気を起こしたらダメ! 私はこういっちゃん一筋なんだから!)
小椋(歩き方変だけど、どっか悪いのかな? けど、さっきの彩……カッコよかったなぁ。それに彼女だなんて……どうしようあたしもう……)
有田(いつも由美といた彩が、勅使河原くん達といる事が増えたね~。今日も屋上にいるのかな)
小椋「……」
有田(朝も別々に来てるし……ケンカでもしたのかな?)
有田「ねえ、彩が気になるなら屋上行ってくれば?」
小椋「だって……男ばっかだし、なんかいつも下ネタ話してるし……」
有田「彩は女でしょ?」
小椋「だから! 勅使河原達に変な事教えられてないか心配なの……。松子、聞いてきて。それで変な話ししてる様なら連れ戻して来てよ」
小椋「そうだけどさぁー……」ジー
有田(出ました! 全ての男をたぶらかすような上目使い! さすが女優ね! けど残念、私は女の子なのよ……)
有田「……ハァ~。はいはい分かりました。今度ジュースおごってね!」
小椋「ありがとう! ありたん大好き!」
有田(はあ~、最初は楽しかったけど、最近はめんどくさいな~)スタスタ
有田(おっ、いた。勅使河原、風見、望月、中尾、高林、川堀、榊原くんに彩か……。早く引き離さないと榊原くんみたいになっちゃうね……)
有田「やあやあ皆さん。いつもここでなんの話ししてるの?」
勅使河原「うわっ! 有田か!」
有田「何よ、うわっ…て!」
高林「女子にはフェアじゃない話題だったからね。屋上でしてるんだよ」
有田「女子にはっ……て、彩もいるじゃない」
望月「綾野くんは僕たちが色々と教えて、今はもうほとんど男になったんだよね!」
綾野「……」
勅使河原「何って……せっかく男になったんだから、男の楽しみを教えただけだぜ?」ゲスガオ
有田「うわぁ……彩、教室に戻ろうよ。由美も心配してるよ?」
綾野「由美が……?」
中尾「おいおい有田。綾野は楽しいからこっちにいるんだよ。そうだよな?」
綾野「え? それは……」
ーーーーー
ーーー
ー
綾野(てっしーが教えてくれた男の慰め方……どうしてこういっちゃんで出来ないの……?)
綾野(あんなに好きだったのに……。女の時はちゃんと出来てたのに……。あれ? 何で好きだったんだっけ?)
綾野(違うよ……。私は女……。違う。私は由美が好き? 違う……。けど由美だとこんなに……親友なのに……私は男?)
綾野(由美は親友…? 泉美……この写真のもう1人の親友の泉美なら。いや。泉美は絶対いや。由美じゃなきゃいや)
綾野(うっぅ……うっ…あっ、はぁ…はぁ。また由美で……助けた日から毎日由美で……。女の時は数えるほどしかしたことないのに…)
綾野(私どうしちゃったの? …こんなにえっちに…。最低だよ…。由美にあわせる顔がない……)
綾野(明日も由美で? 違う。明日こそ止めよう…。けど終わった後は毎回そう思うけど結局…)
綾野(しちゃだめなのに。やりたくないのに止められないよぉ。助けて……誰か助けてよ……)
ーーー
ーーーーー
綾野「ダメ……ダメなの……」
有田「何がダメなの? 困ってるなら私でいいなら相談にのるよ? 私も由美もすごく心配してるんだから」
綾野「無理に決まってるじゃん!」
有田「!! ……私がいやならその……由美や赤沢さんに……」
綾野「由美にはもっと無理だよ……。泉美は私なんてどうでもいいみたいだし……」
有田「……」
川堀「そうだそうだ。女はすっこんでろ!」
高林「男子の事に口を出すのはフェ○だけにしてほしいね」
風見「僕は……君の知らない君の事を知っているよ」マジキチスマイル
有田(なんだコイツら……やっぱりこんな奴らといるから彩がおかしくなっちゃうんじゃない!)
望月「これだから10代の女は(笑)」
中尾「それは違うな望月。10代でも赤沢さんはーー」
有田「私は彩に聞いてるの! あんたらは黙ってて! 教室に戻ろ? 前みたいに3人でガールズトークしよ?」
綾野「ダメ…ダメなんだよ。私は……男なんだよ。ごめんね松子……いや有田さん」
有田「!! そんな……」
綾野「けど安心して。由美は男になっても大切な親友だから」
勅使河原「そういうこった。綾野はもう男なの。あっち行った」シッシッ
小椋「どうだった?」
有田「ああ、うん。今は彩は男子といるのが楽しいんだって」
小椋「そうなんだ……」
有田「けど由美の事は気にしてたから、またすぐに元に戻るよ!」
小椋「そうだといいけど……」
有田(ハァ~。どうなるんだろな~それにしても)チラッ
鳴「霧果に作ってもらった綾野くんの人形……かっこいい」ヨシヨシ
桜木「綾野くんが嫌がってるじゃないですか!」ガシッ
鳴「返して……」ウルウル
杉浦「泉美元気だしてよ」
赤沢「」ポカーン
有田(赤沢さんはどうしたんだろ?)
有田「ねえ? 赤沢さんどうしたのかな?」
小椋「……泉美、親友が男になって困ってるのに……対策係なのに、何もせず榊原くんに猛アタックしてたんだよ?」
小椋「彩の気持ちも知ってたくせに……けど榊原くんにストーカー呼ばわりされて……自業自得よ」
有田「……ねえ由美、卒業したら彩は元に戻るんだからもう少し落ち着こうよ。ね?」
小椋「そうだけど……」
有田「もしかして、由美もあの2人みたいに彩の事好きになっちゃった……とかだったりして~」
小椋「……」
有田「……否定しないんだ」
小椋「分からない……分からないよ」
有田(何が分からないのかな……。けど私もどうしたらいいかわかりませーん)オテアゲ
綾野「どうしたの? こんなとこに呼び出して」
小椋「うん……彩、最近部活にもこないし、あたしともあんまし喋ってくれなくなったし……あたし何かしたかな?」
綾野「いや、何もしてないよ?」
小椋「そう……なの?」
綾野(人気のないとこで、そんな目で見ないでよー……。こっちはこれ以上好きにならないように必死なんだから……)
綾野「……そうだよ。もう戻っていいかな?」
小椋「ま、待ってよ……。彩、ここんところずっと勅使河原や中尾達といるけど……仲いいの?」
綾野「仲はいいよ。まあ男同士にしか分からない事もあるし」
綾野「うっ……それは……やっぱり普通恋人同士がやる事だよ。男の私がやるなんて、今考えたらセクハラだよね。ごめん……」
小椋「ち、違うよ……彩は彩って言ったじゃない!」
綾野「この際だから言うけど、もう私……体だけじゃなく、心も男になりかけてるみたいなんだ」
小椋「そんな……」
綾野「だから……いくら親友でも前みたいに一緒に登下校したり、ベタベタしたりは無理だよ」
綾野「少し前まではそう思ってたよ」
綾野「不思議だよね。あんだけ大好きだったこういっちゃん事を、ただの同性の友達としてしか見れなくなっちゃうんだから」
小椋「…………」
ガチャ
勅使河原「こんな所にいたのか綾野、早く行こうぜ。みんなが待ってるからさ」
小椋「彩、行かないで……」
綾野「……っ!」
綾野「…………まさか。ただの幼なじみだよ」
小椋「……!」
勅使河原「ふーん。まあ女の時から仲良かったもんな。じゃあ、話しが終わったら例の場所に来いよ」スタスタ
綾野「待って、行く行く。ごめんね由美。これからは彩じゃなく、綾野くんとしてよろしく……」スタスタ
小椋「あ……」
綾野「あっ、てっしーが変な事言うから別々の方向に飛んでちゃったじゃん!」
勅使河原「へいへい、俺が悪かっーー」
ガチャン
小椋「……」
有田(ほほう……)
そして日増しに男になっていく彩と同じように、由美の気持ちも大きくなっていきました!
けど、彩は何故か自分から離れようとしている! あやのんが無意識にやっちゃってる恋愛の常套テクニックにおぐりんメロメロ~
親友と想い人が自分を避けるなんてつらい、つらいよね~
えっ? 何で屋上にいて、1人でこんな話してるかって?
鳥と語り、戯れる為ですよ! 雀には逃げられたけど、今はカラスと九官鳥のレーちゃんと鳥沢さんに話しをしているんです!!
そして、この様に激しく悩んでるのは由美だけじゃありません! 榊原くん、赤沢さん、そして勿論、彩もです!
ところがどっこい見崎さんと彩だったんだな、コレが! 赤沢さんも第3勢力だったみたいだけどね!
気になる彩が男になって、さらに見崎さんがその彩に惚れてしまいました!
その日以降、榊原くんは自我を失ってしまいーー
勅使川原・中尾・風見・望月・高林・川堀からなる【七人の変態】の一員として夜見北で猛威を奮ってます!
あっ、風見くんもゆかりが彩に惚れたんで、狂ったみたいです! けど彼は元から狂ってたか! テヘ☆
風見くんはどうでもいいとして、榊原くんはつらい、つらいよね~
大嫌いな勅使河原くん達にみたいになったのがショックだったみたいです!
無能だよね~接し方を間違えなければ榊原くんをゲット出来たかもしれないのに!
そして何より彼女を苦しめたのは自分の色恋沙汰にかまけて、現象に対する対策を放置してしまいーー
彼女にとって大切な演劇部3人娘の絆が崩れてしまった事でした!
今の彼女の表情と心は真っ黒です! 夜の闇? 漆黒のゴキブリ?
いやいや、ハワイコナのエクストラファンシーよりどす黒く、表情も心も珈琲の奥底にふさぎ込んでしまっています!
赤沢さん! 恋と友情のにらめっこ。つらい、つらいよね~
あ~勿体ない! こんな現象がなかったら、お似合いのカップルになれていたかもしれないのにね!
そして、日をおおう事に変わったのは榊原くんに対する気持ちだけではありません!
親友の由美に対する気持ちも変化していきました! そう、日増しに男になっていく彩は恋に落ちてしまいました! なななななんと親友、小椋由美に!
どんな気持ちだったんでしょうか? 男と女。惚れてしまった榊原くんと由美。そして親友の由美。
日々刻々と変化するそれらの気持ちの中で、彩がどれだけ悩んでいるかは心中察するに余りあります!
大切な人の取捨選択、つらい、つらいよね~
えっ? 私が変態? ご冗談を! 普通なだけが取り柄な松子ちゃんですから! 年頃の乙女なら誰でもち○こに興味があるんです!
さあ、2人はどういう決断をするのでしょうか! どっちかが倫理観の壁をピョーンと越えれば、生物学敵には愛し合えるんです!
以上、みんなのアイドル有田松子が現場からまとめさせて貰いました!
勅使河原「はあー、やっと学校終わった。今日はナンパに行こうぜ」
中尾「前にやった時はボロボロだったじゃん」
勅使河原「俺と中尾だけだったからな。けど今日はサカキと綾野を連れて行く」
中尾「2人が来てくれれば百人力だな!」
恒一「僕はいいよ。最近、女より男か人形の方がいいような気がしてきたんだ」
恒一「とにかく、疲れたんだ……行くなら3人で行ってくれよ」スタスタ
中尾「つれねーな」
勅使河原「まあ、あいつも色々あんだろ。綾野はくんだろ?」
綾野「どっちでもいいよ……」
勅使河原「うし決まり! じゃあ行こうぜ!」
中尾「ーーそりゃ赤沢さんよりいい人なんていない。けどナンパでもしないと、一生彼女なんて出来ないかもしれないからな」
勅使河原「赤沢はモテると見せかけてそうでもないぜ。チャンスはあると思うけどな」
中尾「そんな訳ないだろ、赤沢さんが1番に決まってる! 俺が3組の雑草なら、赤沢さんは俺の……3組の太陽だ! 毎日赤沢さんで光合成してるぜ!」キリッ
勅使河原「あいつが太陽ね~。分からんでもない。で? コーゴーセーって何だ?」
中尾「これだから馬鹿は困る。もうすぐ受験だろ? 俺は赤沢さんと一緒の高校に行く為に毎日勉強してるのさ」
勅使河原「女子校か東京の進学校だろ? どっちにしろムリムリ~」ヒラヒラ
勅使河原「けど残念ながら赤沢の事いいと思ってるのクラスで俺と中尾くらいだぜ?」
中尾「じゃあ聞くが赤沢さんを差し置いて誰が人気なんだよ?」
勅使河原「それはだな……」チラッ
綾野「……」
勅使河原「後は小椋と多々良だな」
綾野「えっ? 由美が?」
勅使河原「どうした急に会話に入ってきて。やっぱり小椋の事が気になるか?」
綾野「そりゃ……」
綾野「……」
中尾「けど多々良さんは初耳だな? まあ赤沢さん程ではないが美人だしな。王子や猿田か?」
勅使河原「こういうのは言いふら……っておい、あそこ見てみろよ」
綾野(ん? あいつら……)
高校生DQN「……」
無職DQN「……」
ビッチ「……」
オタクDQN「……」
勅使河原「おっかねえ集団だな」
勅使河原「あんな奴らとつるんでる女だぜ? ヤバいに決まってんだろ」
綾野「……」
勅使河原「何だ綾野? あんなのがタイプなのか?」
中尾「早く行こうぜ。絡まれたくねえ」
綾野「ごめん。用事思い出したから、ナンパは2人で行ってきてよ」スタスタ
勅使河原「おい、綾野! なんだよ……。中尾、2人で行くか?」
中尾「無理無理、連敗記録伸ばしたいのかよ」
勅使河原「……サカキの家にでも行くか」
中尾「だな」
小椋「こんなとこで毎日なにしてんの?」
赤沢「あ……由美……」
小椋「いいよ……もう。探して見つかるくらいなら、こんな現象とっくになくなってるし」
赤沢「でも私……」
小椋「いいってば。だからそんな顔しないで」
赤沢「ごめんなさい……。あなた達がーー」
小椋「だからいいってば。それにあたしも……えっと……」
小椋(やっぱり彩がいないと泉美には言いたい事も言えないわ……)
小椋「手伝おっか?」
赤沢「いいの。これは私の問題だから。……それより、私はともかくあなたも彩と何かあったの?」
小椋「彩とは……何もないよ。けど毎日男子たちといて楽しそうだよ」
赤沢「そう……」
小椋「演劇部にも顔だしてね。最近、3年で来てるのあたしだけだから」
赤沢「そうね……わかったわ」
赤沢「いいえ。部室にオキッパだけど……どうしたの?」
小椋「どっかいっちゃったのみたいなの。まあ、探しとくよ。じゃあね。泉美も早く帰りなよ」
赤沢「待って」
小椋「なに?」
赤沢「う……いや……な、何でもないわ。明日は部活に顔だすからよろしくね」
小椋「うん、わかった。じゃあね」ガラガラ
赤沢(なくしたって言ってた写真、現像したんだけどなぁ。彩がいないと渡し辛いわね……。まあいいや、多佳子に頼んで渡してもらおっと)
小椋「多佳子? 盗み聴きしてたの?」
杉浦「人聞きが悪い。泉美と帰ろうと思ったから、ここに来ただけ。まあ、ほとんど聴いちゃったけどね」
小椋「ふーん。あたしと泉美はいつもあんな感じだけど」
杉浦「……まあいいわ。それより玄関に彩がいたわよ。多分あなたを待ってるんじゃないかな」
小椋「待ってるのは望月とかじゃないの? あたしじゃないと思うけどな」
杉浦「どうだろうね。あなた最近ずっと1人で帰ってるでしょ? 一緒に帰ったら?」
小椋「……いいよ。1人で帰るから」
小椋「……ふん。分かったわよ。しゃーなしだから。その代わり、あたしからも1つお願いいいかしら?」
杉浦「なに?」
小椋「泉美に謝っといて。彩の事できつく言っちゃったから……」
杉浦「そんな事言わなくても……まあいいわ。伝えとく」
小椋「ありがと……。それじゃあ泉美の事よろしくね。また明日」スタスタ
杉浦「演劇部の3人は扱いやすいね」ヤレヤレ
杉浦(……泉美の衣装返しとかないと)
小椋(ホントにいた……1人でなにしてるんだろ)
綾野「おっ、由美~。一緒に帰ろうよ」
小椋「! いいけど……」
綾野「最近ごめんね。てっしー達といるのが楽しくってさぁ」
小椋「……そう」
綾野「あれ? 焼き餅やいちゃってる? 可愛いなぁ」
小椋(私を見る目が……もう前の彩じゃないんだね……)
小椋「……!! 嫌ぁ!!」
パチン
綾野「い、痛い……何すんのさ?」ヒリヒリ
小椋「セクハラで訴えるわよ! 何がしたいの?」
綾野「スキンシップして欲しかったんだよね? だからーー」
小椋「あなた自分でこれからは綾野くんとして頼むって言ったじゃない!」
綾野「な、泣かないでよ……謝るから。しばらく話してなかったから距離の計り方が分かんなくって。ごめんね……」
綾野「あはは。確かにもう男になっちゃったよ。けど私は元は女の綾野彩なんだけどなぁ」ポリポリ
小椋「……」
小椋「それより何よ? あたしの事避けてたクセに急に一緒に帰ろうだなんて……」
綾野「DQNが帰り道にいたからさ。心配になったの」
小椋「えっDQNが?」
綾野「だから一緒に帰ろ? 守ってあげるから」
小椋(げっ! ホントにいた。しかも仲間みたいなのも連れてきてるし……)
高校生DQN「あっ! 由美ちゃんやっときた。なになに? 彼氏と一緒に下校?」ヒューヒュー
綾野「無視して突っ切るよ」
小椋「うん……」
スタスタ
ガシッ
無職DQN「逃げられると思っんの? 殺すぞ」腹殴り
綾野「っう……」
小椋「彩……雄くん、大丈夫? 何すんのよ!?」
高校生DQN「暴力はダメだよ暴力は。落ち着け無職DQN」
無職DQN「ふんっ……」
綾野「大丈夫だ……。高校生DQNさん、もう由美に近寄らないでもらえますか。迷惑なんです……」
オタクDQN「だせえだせえwwwふられたうえにストーカー扱いwww」
高校生DQN「まだふられてねえよ。今日はお前らが本当に付き合ってるのか確かめに来たの」
綾野「何言ってるんです? 僕達はちゃんと付き合ってますよ。なあ由美?」
小椋「うん」
高校生DQN「なら証拠を見せて貰おうか。熱い熱いキスでもしてみろよ」
小椋(何なのよコイツ。貧乳は嫌いとか言ってたくせに未練タラタラでオマケにキスしろだぁ~……してみたいけど……)
無職DQN「おい。次、口答えしてみろ。今度は手加減しないから」
高校生DQN「まあまあ。ここではあれだから場所を変えるか」
オタクDQN「ぶひひwww近くで見るとかわいいwww」ガシッ
小椋「離して!!」
綾野「おい由美には手をーー」
小椋「い、いやああ……んーんー!」
オタクDQN「ハァハァwwwお口チャックチャックwww」口塞ぎ
ビッチ「ふふっ坊やかわいいわね。私が彼女さんよりも凄い事してあげよっか。多分気持ちよすぎて泣いちゃうよ」
綾野「ふざけないでよ! 由美を離せ!」
高校生DQN「早く行くぞ。それとも路チューしたいの? 気を使ってやってるんだから騒がず歩け!」
小椋(このままじゃ……お願い誰か助けて!)
川堀「待てよ」
小椋(川堀と望月と高林と風見! 助かった……のかな? 川堀以外モヤシだけど……)
オタクDQN「なんだコイツらwww」
高林「2vs4なんてフェアじゃない」
風見「ひゃはああっはぁっああ! ナイフ持ち歩いててよかったああああ!」
望月「まあまあ風見くん落ち着いて。こんなオムツ履いてるようなガキにナイフなんて必要ないよ(笑)」
高校生DQN「んだお前らああ! 口の聞き方も知らねーのか? ああ!?」
無職DQN「僕ちゃん達、俺の事知らないの? 今まで何人病院送りにしたかーー」
風見「このナイフでええ!! 自分の腕を刺すとおお! 気持ちいぃいいい!!!」ブシュー
ビッチ「い、いやあああ!!!」
無職DQN「な、なんだよコイツ……」
高林「風見くんはナイフで人を刺したい衝動を自分の腕を犠牲に抑えてるんだ。フェアだろ?」
望月「あーあDQNさん達が先に風見くんを刺しちゃった。この場合、ナイフで刺しても正当防衛になるんじゃないかなぁ」スットボケ
川堀「そうだな。なあ、風見はどう思う?」
風見「僕はね……これでコイツらを刺そうと思うんだ」
無職DQN「ひぃっ……逃げるぞ!」
オタクDQN「ママ~」
ビッチ「いや~」
スタコラサッサッ
川堀「待てよ」ガシッ
高校生DQN「うわぁ! 待てお前ら。俺を置いて逃げるな!」
高校生DQN「わわわかりました……アイツらにも言っときますから許して下さい……」
川堀「お前にはもうちょっと突き合ってもらう。行くぞ」ズズズ
高校生DQN「由美ちゃん……助けて……」ズズズ
小椋(助かったの……? こ、怖かった……)
綾野「うん……助かったよ。由美、大丈夫……?」
小椋「ぅ……ぅ……」グスン
綾野「由美……ごめんね。私がしっかりしていたら……」
小椋「いいの……もう大丈夫だから……。彩もみんなもありがとう」
風見「何で絡まれてたの? ナンパ? カツアゲ?」
小椋「ごめん……これ以上聞かないで……」
望月高林風見「……」
綾野「由美……」
小椋「そ…それより風見! それ演劇部のでしょ? あなたが犯人だったのね?」
風見「何言ってるんだい? この血もナイフも本物だけど」
小椋「え……」
風見「演劇部を騙せるくらいのレベルにはなかったか。言っとくけど衣装を盗んだのは僕じゃないから」
小椋「助けてくれたのは感謝してるけど……窃盗だよ?」
風見「もうやらないから見逃してくれよ」
綾野「違うんだよ。私が持ち出したのを風見くんが持ってたんだよね?」
風見「……そうかもね」
小椋「衣装もちゃんと返してくれたら……許してあげてもいいけど……」
小椋「また中尾かよ! だから泉美が使ってた奴だけ……。あたしの大切な人ばっかり……! 今度こそぶっ飛ばしてーー」
望月「まあまあ元々返すつもりだったんだから許してあげてよ。さあ帰ろう。綾野くん、小椋さんを頼むね」スタスタ
高林「じゃあね気をつけてね」スタスタ
風見「備品盗ったりして悪かったよ。これはお詫びの気持ちとして受け取ってよ」
小椋「なによこれ?」
小椋「あ、ありがと…」
風見「じゃあね」スタスタ
小椋「……何で風見はこんな物騒な物ばっか持ち歩いてんの?」
綾野「さあ? ゆかりを守るとか何とか言ってたけど、風見くんは変なことに使ったりしないから大丈夫だよ」
綾野「私達も帰ろっか」
綾野「ごめんね。カッコつけて守るとか言ったのになんにも出来なくて……。別の道から帰った方が良かったね……」
小椋「ううん。あたし1人だったら、今頃アイツらに……」
綾野「……」
小椋「ねえ? DQN達が待ち伏せしてなかったら、もうあたしと喋ったり、一緒に帰ったりしないつもりだったの?」
綾野「そんな訳ないじゃん! ただ……」
小椋「……なに?」
綾野「女の子だった時みたいに親友として由美を見れなくなったから……」
綾野「けど……私は由美の事、その……女として見ちゃってるんだよ?」
小椋「何年一緒にいると思ってんの? そんな事……それに屋上に呼び出した時言ってたじゃない」
綾野「ああ、そっか。女の私が……」
小椋「女の私ってなによ……。あと、あんな目で見られたら、鈍感な泉美でも分かるよ……」
綾野「……引いちゃうよね。けど親友をそんな目で見たくないから距離を置いてたの。分かってよ……」
綾野「どうしたの?」
小椋「……いいの。彩ならいいの。親友として見られようと、異性として見られようとも」
小椋「だってあたしはーー」
綾野「あっ、家ついたよ?」
小椋「え……もう?」
小椋「よかった……か。そうだね、今まで通りでよかったんだよね」
綾野「……」
小椋「じゃあまたね! これからは時々でいいからかまってね! あたし友達少ないから!」
綾野「……う、痛い……」グッ
小椋「えっ? お腹痛いの? もしかしてさっき……、見せーー」
ダキッギュッ
小椋「あっ…」
小椋(えっ? なになに? 何であたし抱きしめられてんの?)
小椋「え……あや……なんで…」
綾野「あはは♪ ごめん私、由美の事が好きみたいなんだ」
小椋「え……それは親友としてって……」
綾野「違うよ。異性として、だよ」
小椋「あ……え……」
綾野「混乱しすぎたよ。まあ仕方ないよね。私は元は女なんだし」
小椋「……おなかは?」
綾野「あっ、ごめん。全然平気だよ」
小椋「よかった……の……」
小椋「……」
綾野「1%くらい残ってる女の私が止めようとしたけど……そんな顔されたら女の私も……」
スッ
小椋「あっ…」
綾野「けど今抱きしめたので満足したから!」
小椋「……」
小椋「えっ……」
綾野「はあー、お腹すいた。今日はカレーだったかな? じゃあ帰るね!」
小椋「ま、待って!」
綾野「」ビクッ
小椋「あたしはーー」
敦志(ほほう……)
こいつ俺の妹に何ぉおお! と思ったがこの子よく見たらあの彩ちゃんだ。
引きこもり風情が彩ちゃんなんて馴れ馴れしく呼ぶなって?
HAHAHA! 彩ちゃんとは昔ビニールプールで一緒に泳いだり、
ままごととかしたりしてよく遊んだ仲なんだよ!
敦志お兄ちゃんのお嫁さんになる(ハァト なんて言ってくれてたからな!
クソ兄貴とか抜かす由美も見習って欲しいもんだ。
窓をそおっーと開けて聞き耳してみると、ななななんと彩ちゃんが由美に告白してやんの!
待て待て! 由美から聞いた話しでは彩ちゃんが男でいる期間は来年の3月までだ。
それ以前にいろいろと問題ありすぎんだろ! と考えてたのは彩ちゃんもらしい。
気持ちだけ伝えて、明日からは親友としてよろしくね、と言ってる。
ぶっちゃけ男でもかわいい。余裕で抱ける。嫁にしたい。
今度は由美が彩ちゃんに抱きつきやがった!
この時の由美の顔! こんな嬉しそうで幸せそうな顔は初めて見た!
2人が抱き合う姿を見て、俺は思ったよ。たとえ禁断の恋でも、妹を応援しようーーってな。
時間にして約3分。今の2人には一瞬だろうが、俺にはただの3分だ。
言葉をなくした2人……いや、言葉なんていらない2人は名残惜しそうに身体を離し、見つめ合っている。
これは一気に口づけか!? なら俺がこのロミオとジュリエットに最高のBGMをーーと思い、
キス!キス!キス! と口ずさんで手拍子してたら2人に気付かれちまった。俺とした事がorz
ドンッドンッドンッ
わざとらしい階段を登る音が聞こえて来る。マズい! エロ動画流しっぱなしだった! ポチッとな。
「おいクソ兄貴! 覗いてたのかよ!」
その後、スタンガンを持った妹に俺は罵られ続けた。
時間にして約10分。由美にはただのストレス発散タイムだろうが、俺にはご褒美だ。
家族で本音をぶつけてくれるのは由美だけだからな。
てかスタンガン持ってたのかよ。
何だよ男に付きまとわれてるって言ってたから、ネットで調べて買ってきてやったのに。
けどまあこれで安心か。
「パンツはバレッタと同じ色か。あと恋も受験も頑張れよ」
さて……由美が出ていったら、こいつの部屋からくすねた彩ちゃん(女)の写真で一発抜くとするか!
ビリリッ
俺は気絶した。
赤沢「ごめんね、呼び出して」
綾野「もしかして、元に戻る方法が……?」
赤沢「(多佳子が)色々調べてるんだけど、まだ見つかりそうにないの。ごめんなさい」
綾野「別にいいよー。それよりさー……」
赤沢「なに? 困った事があったら言ってみて。何たって私はなくなった演劇部の備品をあっという間に見つけちゃうくらい有能なんだから」キリッ
綾野「うん……ずっとこのままでいる事って……出来ないのかな?」
赤沢「……何で?」
綾野「いやぁ……男の方が毎日楽しいからさ~……」
綾野「別に謝らなくてもいいよ。泉美がもし男になってたら、私も同じふうに行動してただろうし」
赤沢「彩……」
綾野「それにもう何で好きだったか忘れちゃったよ。女に戻ったら……どうなるんだろね?」
赤沢「……」
綾野「けどその時こういっちゃんは東京かー。泉美頑張りなよ? 応援してるから!」
赤沢「そう……。ありがとう」
赤沢「それで、戻る戻らないだけど……。今までに元に戻らなかった人はいないわ。ずっと男でいるなんて無理ね」
綾野「そっか……」
赤沢「まあ男が楽しいのなら、元に戻る時の事も踏まえて楽しむ事ね」
綾野「そだね……」
綾野「あ、心配してくれてたんだー」
赤沢「当たり前でしょ? けど今のあなた達……金木さんと松井さんみたいだわね」
綾野「そそんな風に見えるの!! もう泉美ったらやだなぁー」グイッグイッ
赤沢「ちょっと髪の毛引っ張らないでよ!」
綾野「……泉美、もう戻る方法は探さなくっていいよ。私は卒業まで男でいたいから」グイグイ
赤沢「分かった! 分かったから! 髪の毛離してよ!」
ポイッ
赤沢「ハァ、全く……」
赤沢(確かに多佳子は今も学校内で解決方法を探しているけど……。私は私で現象を体験してきた人から色々な話しを聞いてきたんだから……)
赤沢(解決法が見つからないのは単純に見つからないって事には違いないんだけど……)
赤沢(それ以上に対象者が戻りたがらなくなるケースが多く、それで対策探しがおざなりになってしまうーーこれも大きな理由の1つみたいね……)
赤沢(そして、この現像が終わった後も悩んでる人がいる。その人はその現象の対象者ではなく……)
赤沢(伝えた方が良かったのかしら……。うーん)
赤沢(どうしたものかしらね。彩が元に戻って1番辛いのは、元の心境に戻れるか分からない由美でしょうに……)
有田「あっ戻ってきたよ」
綾野「ただいまー」
小椋「泉美と2人で何の話しだったの?」
有田(妬いてる妬いてる♪ 2人は親友以上の関係を隠してるみたいだけど、松子ちゃんの目はごまかせませんよ~)
綾野「それがね……元に戻れる方法が……」
小椋「えっ、まさか……」
有田「……」
綾野「見つからなかったんだって!」
小椋「お、驚かさないでよ!」
小椋「それは……」
綾野「まあいいじゃん。私も今楽しいしさ」
有田「へ~。話しぶったぎるけど、彩、ち○こ触らしてよ」
綾野「えっ」
小椋「ダメに決まってるでしょ? 調子に乗んなよこの貧乳!」
小椋「ふふふっ、残念ね。あたしは彩のおかげで少しおっきくなったのよ!」
綾野「ちょっと由美……」
有田「彩のお・か・げってどういう意味なのかな~?」
小椋「……彩が調べてくてたのよ。おっきくなる方法を」
有田「じゃあ私にも教えてよ」
小椋「忘れた」
有田「なんで忘れる訳~?」
小椋「う、うっさいわね! 別に揉んでもらうくらい前からやって貰ってたでしょ?」
有田「へー。同性にやって貰っても効果あるんだ。私が聞いた話しでは女性ホルモンがーー」
綾野「まあまあ2人とも。こういうのって団栗の背比べって言うんだよ」
有田(由美直伝の上目使い……どうだ!)
綾野「あ、進路希望書だすの忘れてたんだった。2人ついてきてよ」
有田(む…無視……)
小椋「なんでそんな大事な物を出し忘れんのよ! 早く行きましょ」
有田「……私はいいや。2人で行ってきてよ」
綾野「そっかー。じゃあ由美行こっか」
小椋「うん!」
スタスタ
鳴「榊原くん……前は酷い事言ってごめんなさい」
恒一「み、見崎いい…。もう質問なんてしないから……ストーカーなんてしないから……」
鳴「これからは特別に認めます」
赤沢「ちょっと見崎さん。今まで酷い扱いしてたのにそれはないんじゃない?」
恒一「いいんだ……もう、いいんだよ。赤沢さんもごめんね。ストーカー呼ばわりして」
赤沢「えっ、そんなっ…恒一くんがそういうんだったら……」
赤沢「恒一くんったら、2人きりっでコーヒーデートだなんて……」ブツブツ
恒一「見崎も来るよね?」
鳴「ええ。けど榊原くんは紅茶を飲むでしょ? コーヒーなんてだめだよ」
恒一「あはは、どっち飲もっかな。けどコーヒーと紅茶なんて、男と女で悩むのに比べたら……」
勅使河原「俺と望月も行っていいか?」
小椋にボコボコにされた中尾「赤沢さんが行くなら俺も!」
杉浦「私も」
恒一「そうだね。みんなで行こう。けどおごるのは赤沢さんだけだよ」
風見「ゆかり! ああ……XX日と6時間21分30秒ぶりにゆかりが僕にしゃべりかけてくれた……」
桜木「あっ多々良さん。待って下さい」スタスタ
風見「僕……今から勉強頑張るよ。だから西高に受かったら僕とーーってあれ?」キョロキョロ
高林「なんだい?」
川堀「前に綾野と小椋に絡んでたDQN3人いたろ?」
高林「アイツらがどうしたの?」
川堀「3人とも喰っちまったんだけどよ? 笑えるぜ、今のアイツら俺をめぐって大喧嘩してるんだからな!」
高林「フェアじゃないね。僕はビッチだけで我慢してるというのに」
有田(見崎さんもゆかりも諦めがついたみたいだね。まあ彩と由美をみてたらつけいる隙がないもんね)
有田(やっと彩のち○こ以外は元の3組に戻ってめでたしめでたし! 鳥たちに報告報告っと!)
綾野「私は前から夜見山高校に決めてたからねー」
小椋「あたしも志望校、夜見高に変えたんだ。一緒に勉強頑張んないとね」
綾野「え? なんで志望校変えたの?」
小椋「勉強したくなっただけ。(それに3組の人も多いし、彩や松子もいるし……)」
綾野「由美が勉強ね~。けど由美の偏差値じゃ頑張らないと厳しいんじゃないの? 多分内申もボロボロだよ?」
小椋「分かってるわよ! だからクソ兄貴に頭下げて勉強教えてもらってるんだから」
小椋「ねえ……兄貴に邪魔された事、ここでしてよ……」
綾野「ええ~? 学校ではダメだよ~」
小椋「……! やっぱりいいわ。松子が見てる」
綾野「あははー。けど松子やみんなと一緒の高校行けるといいね。泉美と一緒のとこに行けないのは残念だけど」
綾野「どうなるのかな~? けど、どうなってもいいじゃん。どっちにしろ一緒にいるのは変わりないんだからさ」
小椋「……そうだね!」
綾野「教室戻ろ! 3組のみんなといれるのも、夏休みとか除いたらあと半年くらいしかないよ!」
小椋「うん!」
小椋(そもそも男になったのが彩じゃなくて、泉美や松子とかだったら……)
小椋(やっぱり彩だからだよね……。ホントにどうなっちゃうんだろ……)
小椋(彩は多分榊原くんみたいにあたしの事を忘れて行くだろうし……。迷惑だけはかけないようにしないと)
小椋(ううん。まだどうなるか分からないじゃない! それにどうなったとしても、彩の言うとおりこれからもずっと一緒なんだから!)
綾野「何してるの由美~早く戻るよ~」
小椋「彩、待っててばぁ」
ガチャン
有田(お)
雀A(わ)
雀Y(り)
この2人のエロの下記タメもあるんだけど、正直めっちゃ蛇足な気がするので…
2人は卒業後、元の関係に戻りましたとさ。めでたしめでたし。
おぐあや含めアナザーのキャラみんな可愛いお
有田(お)
雀A(わ)
雀Y(り)
これどういう意味か説明しろください
あとこのつがいと赤沢さんが太陽云々と演劇部3人の写真はエロの時の描写に使ってるので本編では意味不明になってゴメンゴ
乙でした
Entry ⇒ 2012.06.22 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
恒一「今日は風が騒がしいな…」文学少女(やっさん)「っ!?」
引用元: ・http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1340117972/
恒一「(本格的になる前に早めに帰宅を…」
やっさん「……」
やっさん「でも…この風、少し泣いてます」
恒一「……」
恒一「え?」
恒一「……」
恒一「(…誰?)」
恒一「(パッと見た感じ…高校生の人かな…?)」
恒一「(今の言葉は僕に対して投げかけたのか…?)」
恒一「(でも、確かに台風が近づいていることを考えると…)」
恒一「(近隣同士で気をつけ合いましょう、ということか…)」
恒一「あはは…どうやら街に良く無いモノを運んできちゃったみたいですね…」
やっさん「~っ!!!///」プルプル
恒一「……」
恒一「(えっ、なんか喜んでないか?この人?)」
やっさん「……」キリッ
恒一「……」
恒一「(不思議な人だ…)」
恒一「と、とりあえず急ぎましょう…」
恒一「風が止む前に…」
やっさん「…あぅっ!!!///」
恒一「ええぇ…」
恒一「あっ、フェア林くん…」
フェア林「どうやらこの風はフェアだね」
フェア林「日本各地が大荒れだよ」
恒一「そ、そうだね…」
恒一「……」チラッ
やっさん「……」ンー…
恒一「(あっ、微妙そうな顔してる)」
恒一「(クールでミステリアスな印象だったけど…)」
恒一「(こういう表情は可愛らしいな)」
やっさん「…!?」
恒一「お、小椋さん…?」
やっさん「……」ゴゴゴ…
小椋「…?」
小椋「(なんで、あの人怒ってるの…?)」
恒一「一体どうしたの、小椋さん?」
小椋「向こうのコンビニでポテト100円…」
シュッ…!
小椋「…!」
やっさん「ふんっ!!」ゴォッ…!
ヒュン…
やっさん「…っ!?」
小椋「遅いわよ」
バキッ!!
やっさん「…わっつ!?」ヨロ…
やっさん「……」バタリ…
やっさん「…うお」
やっさん「うおぉぉぉぉぉぉぉっ…!!!」エグエグ…
小椋「はんっ」
小椋「相手が悪かったわね」
恒一「……」
フェア林「女の子同士のガチンコバトル」
フェア林「これはフェアだね」
恒一「……」
恒一「そうだね」
恒一「…帰ろう」
恒一「風が荒れる前に…」
小椋「…!」
小椋「そうだ!榊原くん、やばいのよ!」
小椋「向こうのコンビニでポテトが…!」
小椋「…って、あれ?」
小椋「……」
小椋「あぁ、そうか」
小椋「もうすぐ台風直撃するし早めに帰ったのかな」
小椋「あたしも帰ろう…」
やっさん「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ…!!!」エグエグ…
ヒデノリ「……」
ヒデノリ「わけがわからないよ」
おわり
Entry ⇒ 2012.06.21 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (8) | Trackbacks (0)
恒一「こういっちゃん!」綾野「綾野さんと人格が入れ換わった…」
恒一(綾野)「彩、僕は彩のことが大好きだよー///」ベタベタ
綾野(恒一)「あはは…」
見崎、赤沢、多々良、小椋、有田「」
綾野(恒一)「……」
綾野(恒一)「(今、僕と綾野さんの人格は入れ換わっている…)」
はよ
綾野(恒一)「(正直、心当たりは…)」
綾野(恒一)「(無い)」
綾野(恒一)「(今朝、目が覚めたら…)」
~~~~~~~~~~~
綾野(恒一)「えっ!?鏡に映ってるの、綾野さん…!?」
~~~~~~~~~~~
恒一(綾野)「おトイレ…」ムニャムニャ…
恒一(綾野)「……」
恒一(綾野)「なんか付いてる…」
恒一(綾野)「こ、こういっちゃーん!!!」
綾野(恒一)「!?ぼ、僕が僕の名前を呼びながら走ってこっちに…!?」
綾野(恒一)「…ってことは」
恒一(綾野)「あれ…こういっちゃんの家から私が出てきた…?」
綾野(恒一)「綾野さん…なんだね?」
恒一(綾野)「え、えっと…」
恒一(綾野)「こういっちゃん…なの…?」
綾野(恒一)「あぁ、会えて良かった…」
綾野(恒一)「状況は良くは無いけど…」
恒一(綾野)「??」
恒一(綾野)「ええーっ!?じゃあ、私とこういっちゃん、中身が入れ換わっちゃったのぉ!?」
綾野(恒一)「信じがたいけど、目の前に自分がいることを考えると…」
綾野(恒一)「それが有力だね…」
恒一(綾野)「わぁー…そっかぁ、そうだったんだぁ…」
恒一(綾野)「どうりで、おトイレの時に…」
恒一(綾野)「ぶら下がってるなぁーって…」
綾野(恒一)「」
恒一(綾野)「って…あっ…」
恒一(綾野)「あ、あはは…///」
恒一(綾野)「え、えーっと!その!」
恒一(綾野)「な、なかなかご立派なモノをお持ちで!!」
綾野(恒一)「わ、わかった!わかったからもう言わなくて良いって!」
綾野(恒一)「(く、クラスメートの女の子にこんな形で自分のモノを見られちゃうなんて…)」
綾野(恒一)「(これは一刻も早く元に戻る方法を見つけないと…!)」
恒一(綾野)「……」
恒一(綾野)「ねぇ、こういっちゃん?」
綾野(恒一)「あっ、ご、ごめんね!?粗末なモノ見せちゃって…!」
恒一(綾野)「いやいや別にそれは大丈夫なんだけど…」
綾野(恒一)「いや、大丈夫なんかじゃ…」
恒一(綾野)「えっと…そのぉ…」モジモジ
綾野(恒一)「?」
恒一(綾野)「こ、こういっちゃんも…私の姿でおトイレとか済ませちゃった…?///」
綾野(恒一)「」
恒一(綾野)「……///」モジモジ
綾野(恒一)「ご、ごめん…綾野さん…」
恒一(綾野)「…!」
恒一(綾野)「そ、そっかぁー…///」
恒一(綾野)「まぁ、仕方ないよ!生理現象だもん!」
恒一(綾野)「わ、私もこういっちゃんの見ちゃったし…」
恒一(綾野)「むしろ私の方こそ、なんかごめんね!」
恒一(綾野)「下着とか、そんなに可愛いモノじゃなくて…」
綾野(恒一)「い、いや!全然!むしろ良いと思うよ!」
恒一(綾野)「えっ…」
綾野(恒一)「あっ…」
恒一(綾野)「あ、あはは…///ありがとー…///」
綾野(恒一)「(な、何を言っているんだ僕は……)」
綾野(恒一)「(こんな感じで僕と綾野さんの人格は入れ換わったんだけれど…)」
綾野(恒一)「(思い返してみても何が原因なのかはさっぱりだ)」
綾野(恒一)「(間違いなく昨日、眠りにつくまでは僕の身体だったしなぁ…)」
綾野(恒一)「(正直、誰かに相談しようにもこんな夢物語的な話を信じてもらえるとは思えない)」
綾野(恒一)「(だから原因がわかるまでは、お互いに今の身体を演じて過ごそうって決めたわけなんだけど…)」
恒一(綾野)「ねぇ、彩?難しい顔してないで、僕と楽しくおしゃべりしようよー///」ベタベタ
綾野(恒一)「こ、こういっちゃんてば…べ、ベタベタし過ぎー…」
恒一(綾野)「そんなことないよー。東京ではこれが普通なんだよー///」ベタベタ
綾野(恒一)「(勘弁してくれ…綾野さん…)」
綾野(恒一)「ううっ…」
オイオイサカキドウシタンダ…?サカキバラクンガアヤノサンニベタベタスルナンテ…
フツウギャクジャナイ?フダンアヤノサンガベタベタシテルカラ、コレハフェアダネ
綾野(恒一)「(く、クラスの視線が痛い…)」
綾野(恒一)「(綾野さん…演劇部ならもっと僕を僕らしく演じてくれ…)」
恒一(綾野)「(うーん!こういっちゃんの姿でこういっちゃんにベタベタするのってなんか新鮮!)」
恒一(綾野)「(まぁ、ベタベタしてるは自分の身体なんだけどね…)」
恒一(綾野)「(でも、こうやって既成事実を作っておけば…)」
恒一(綾野)「(元の身体に戻った時に、本物のこういっちゃんに…///)」
「ちょ、ちょっとそこの二人!!」
綾野(恒一)「あか……泉美…」
恒一(綾野)「泉美?どうしたの?」
赤沢「!?」ドキーン
綾野(恒一)「ちょ!?」
恒一(綾野)「あっ…じゃなかった。赤沢さん…」
赤沢「(こ、恒一くんに名前で呼ばれちゃった…)」ドキドキ
赤沢「……///」
赤沢「(い、いや、そんなことよりも!!)」
赤沢「あ、彩!ここは学校なのよ!少しは自重しなさい!」
赤沢「こ、恒一君だって困ってるわよ!」
恒一(綾野)「そんなことないよ?」ベタベタ
綾野(恒一)「あや…こ、こういっちゃんってば…」オロオロ…
赤沢「~っ!!」
赤沢さんだからさ
赤沢「傍目から見ればそう見えるわ!」
赤沢「でも、恒一くんが自分の意思でこんなことするわけなんてないじゃない!」
赤沢「きっと、彩に何か弱みを握られて仕方なくベタベタしてるに違いないわ!!」
見崎、多々良、小椋、有田「うんうん」
綾野(恒一)「(するどい!けど、違うんだよなぁ…)」
恒一(綾野)「むっ!ちょっと、それは彩に失礼だよ!!」
恒一(綾野)「僕がしたいから彩にベタベタをしてるだけだよ!」
恒一(綾野)「責めるなら僕を責めてよ!」
赤沢「こ、恒一くん…」タジッ…
綾野(恒一)「(いや、それで僕の身体が責められるのはちょっと…)」
恒一(綾野)「この際だからハッキリと言っておくよ…」
赤沢「えっ?」
綾野(恒一)「えっ、ちょっと待って、何を言うつもりなの?」
恒一(綾野)「僕、榊原恒一と綾野彩は…」
恒一(綾野)「お互いの裸も既に見せあった恋人同士なんだ!!!」ドーン
赤沢「」
綾野(恒一)「」
見崎、多々良、小椋、有田「」
マ、マジカヨ…イツノマニ、ソコマデススンデタンダ…
オタガイニミセアッテルノガ、フェアダネ
恒一(綾野)「何を言ってるの、彩」
綾野(恒一)「い、いや、それはぼく…私の台詞で…」
恒一(綾野)「今朝、トイレで見たじゃない」ニコッ
綾野(恒一)「」
見崎、赤沢、多々良、小椋、有田「」
オ、オイ…トイレッテドウイウコトダヨ…
イッショノトイレニハイッテ、ミセアイッコシタッテコト…?
トイレハヌグバショニハチガイナイ、フェアダネ
綾野(恒一)「えっ、いや、その…!」
綾野(恒一)「う、嘘かと言われれば、嘘じゃない…かな…」
赤沢「」
綾野(恒一)「あっ…しまった…!」
恒一(綾野)「ほらっ!彩もこう言ってることだからさ!」
恒一(綾野)「もう、彩が弱みを握っているとかそういう酷いこと言うのは止めてあげてね?」
恒一(綾野)「僕は本当に彩のことが好きなんだからっ♪」キャピ
綾野(恒一)「う、ううっ…」
綾野(恒一)「(こ、これは…取り返しのつかないことになってきたんじゃないか…?)」
勅使河原「いやー、驚いたぜー…」
勅使河原「てっきり、サカキは見崎とデキてるもんかと…」
恒一(綾野)「あはは…確かに見崎とは仲は良かったけどさ…」
恒一(綾野)「でも、恋人にするなら明るくて元気な綾野さんかなーって!」
勅使河原「あー、なるほどなー。確かにアイツが恋人なら毎日退屈しなそうだしな」
フェア林「フェアな関係だね」
恒一(綾野)「(わかってるじゃない、てっしー☆)」
見崎「……」ズーン
恒一(綾野)「ん、なに?いきなり耳打ちしてきて…」
勅使河原「そのー…なんだ…」
勅使河原「お互いの裸を見たってーのは…マジなんか…?」
恒一(綾野)「……」
恒一(綾野)「…うんっ///」テレッ
勅使河原「うお、マジかよ…!流石は都会人だなサカキ…!」
勅使河原「そ、そのよー…」モジモジ
勅使河原「どんなだった…?アイツの裸?」
勅使河原「俺だけに教えてくれねーか…?」
恒一(綾野)「……」
恒一(綾野)「ご立派なモノがついてたなぁ…///」
勅使河原「おおぅ…!」
勅使河原「(綾野って脱いだら、すげーんか…!)」
小椋「彩、アンタが恒一くんの恋人なのは親友として百歩譲って認めるわ」
小椋「でも、それだけで済むと思っていないでしょうね?」
綾野(恒一)「あ、あはは…な、なにかな…?」
小椋「何かなって…」
小椋「ナニに決まってるでしょう!!」バンッ!
綾野(恒一)「ひっ!?」
小椋「…で、どうだったのよ…あの人の裸は…」ヒソヒソ
綾野(恒一)「えっ…」
小椋「私、失恋しちゃったんだし…それぐらい良いでしょ…?」
綾野(恒一)「えっ…」
綾野(恒一)「(小椋さんが…僕のことを…)」
綾野(恒一)「(綾野さんの冗談がキッカケとはいえ、これは思いもよらぬ…)」
綾野(恒一)「……」
綾野(恒一)「そうだよっ!!!冗談じゃないか!!!」
小椋「わっ!?ど、どしたの、彩…?」
綾野(恒一)「(僕と綾野さんは別に付き合っているわけじゃない!)」
小椋「あ、彩…?」
綾野(恒一)「ごめん、由美!由美の告白…いつかちゃんと返事するから!!」ダッ…
小椋「えっ…」ドキッ
小椋「…って、ちょっと、彩…?」
小椋「……」
小椋「「(なんで、ドキドキしてるんだろう…わたし…)」ドキドキ…
恒一(綾野)「あっ、彩♪」
綾野(恒一)「ごめんね、てっしー。ちょっと、こういっちゃん借りるね」
勅使河原「あぁ、別に構わねぇよ」
勅使河原「聞きたいことも聞けたしな…」マジマジ…
綾野(恒一)「」
勅使河原「(全体的に引き締まってる感じはあるが、脱いだら出るとこ出るってことか…)」マジマジ
恒一(綾野)「僕になにか用、彩?」
綾野(恒一)「……」
恒一(綾野)「…彩?」
綾野(恒一)「…屋上に行こう、こういっちゃん」
恒一(綾野)「う、うん…」
恒一(綾野)「(こういっちゃん…なんか怒ってる…?)」
恒一(綾野)「はぁーっ!やっぱ教室だと神経使うねー!」
恒一(綾野)「何度、「こういっちゃーん!」って呼ぼうとしたかわからないもん!」
恒一(綾野)「そういうこういっちゃんは何度もボロを出しそうになってたねー♪」ニシシ
綾野(恒一)「……」
恒一(綾野)「こういっちゃん…さっきからダンマリしててどったの…?」
恒一(綾野)「心なしか顔も怒って見えるよ…?って、私の顔だけど…」
綾野(恒一)「綾野さん」
恒一(綾野)「あっ、やっと喋ってくれた☆なになに?」
綾野(恒一)「どうして僕達が付き合ってるだなんて冗談を教室で言ったの?」
恒一(綾野)「えっ…?」
綾野(恒一)「だって、そうでしょ?」
綾野(恒一)「僕と綾野さんは別に恋人同士なんかじゃない」
恒一(綾野)「…っ」ズキッ…
綾野(恒一)「それなのに僕の身体を使ってあんなこと言うなんて…」
綾野(恒一)「僕は今の状態を真剣に悩んでいるのに…」
恒一(綾野)「ち、違うの!こういっちゃん…!」
恒一(綾野)「確かにあれは冗談だったけど…ホントに冗談ってわけじゃ…!」
恒一(綾野)「だって、私は…!」
綾野(恒一)「僕の身体を利用して…僕を困らせるようなことばっかりして…」
恒一(綾野)「私はっ…!」
綾野(恒一)「正直…綾野さんには…がっかりしちゃったよ…」
恒一(綾野)「…っ!!」
綾野(恒一)「もう少し…」
恒一(綾野)「……」
綾野(恒一)「…綾野さん?」
恒一(綾野)「…ごめんなさいっ…!」ダッ…
綾野(恒一)「…って、綾野さん!?話はまだっ…!」
綾野(恒一)「(行っちゃった…)」
綾野(恒一)「(でも、あれぐらい言わないとわかってくれないだろうし…)」
綾野(恒一)「……」
綾野(恒一)「(とりあえず、まずは元に戻ることよりも周りの誤解を解くべきかな…)」
「今の話だと、あなたが榊原くんってこと?」
綾野(恒一)「!?」
綾野(恒一)「み、見崎……さん…」
見崎「見崎、でいいよ」
見崎「だって」
見崎「あなたが榊原くんなんでしょ?」
見崎「そして、今出て行った榊原くんが、綾野さん」
綾野(恒一)「…聞いてたの?」
見崎「最初からね」
見崎「二人して、何をわけのわからないことを話してるんだろうって思ったけど」
見崎「確かに貴女が榊原くんで、榊原くんが綾野さんなら教室でのことも納得がいくわ」
見崎「人格が入れ換わってるなんて、にわかには信じがたい話だけどね」
綾野(恒一)「……」
見崎「大人しい綾野さんはともかく、誰かにベタベタしてる榊原くんはキライ」
見崎「何があったのか、話してもらえる?」
見崎「ふーん…朝、起きたら突然か…」
綾野(恒一)「見崎は信じてくれるの…?こんな馬鹿げた話…」
見崎「信じるしかないでしょう?」
見崎「教室であれだけベタベタしてたと思ったら」
見崎「二人っきりになったら自分で自分の名前を呼んで真剣な話をしているんだもの」
見崎「演劇の練習にも見えないしね」
綾野(恒一)「あはは…それもそうだよね…」
綾野(恒一)「普通は何かある、って思うよね」
見崎「……」
見崎「(教室で凄く動揺しちゃったのは、ないしょ)」
綾野(恒一)「漫画みたいに頭をぶつけた…ってわけでもないし…」
見崎「……」
見崎「ねぇ、榊原くん」
見崎「解離性同一性障害、って知ってる?」
綾野(恒一)「解離性…それって多重人格のこと…?」
見崎「ざっくりと言ってしまえば、そうだけどね」
見崎「この現象に何か理由を付けるとするならば」
見崎「そういった可能性もあるかもしれないわ」
見崎「そういった可能性もあるかもしれない」
見崎「あくまで入れ換わっているっていう症状的な意味でね」
見崎「本当に多重人格なわけではないでしょう?」
綾野(恒一)「まぁ、それはそうだけど…」
見崎「大切なのは解離の部分」
見崎「こうでありたい、と願い、「自分」の人格を切り離し…」
見崎「そして別の人格へと交代する」
見崎「そして交代した人格がまた「自分」として生きていく…」
綾野(恒一)「……」
見崎「ねぇ、榊原くん」
見崎「綾野さんに、なりたい、と願ったことはない?」
見崎「……」
綾野(恒一)「いや、僕にはないよ…」
見崎「そっか」
見崎「でも、綾野さんはわからない」
綾野(恒一)「(綾野さんが、僕に…?)」
見崎「まぁ、これはあくまで私の推測」
見崎「なんの根拠も無いわ」
綾野(恒一)「……」
綾野(恒一)「ありがとう、見崎」
綾野(恒一)「僕、もう一度綾野さんと話してみるよ」
鳴「…そう」
綾野(恒一)「(考えにくいことだけど、今日の振る舞いを見る限りではその線は否定は出来ない…)」
綾野(恒一)「(…あの、恋人宣言ももしかしたら…)」
見崎「ねぇ、榊原くん?」
綾野(恒一)「ん?なに、見崎?」
見崎「その…」
見崎「……」
見崎「…綾野さんとはホントに恋人同士なの?」
綾野(恒一)「えっ…」
見崎「……」
鳴ちゃんかわいい
見崎「そう…」
綾野(恒一)「今、僕は誰とも恋人ってわけじゃない」
綾野(恒一)「けれど、これから先はどうなるかはわからない」
見崎「…それは綾野さんとはいずれ恋人同士になるかもしれないってこと?」
綾野(恒一)「綾野さんとは限らないさ」
綾野(恒一)「綾野さんかもしれないし、小椋さんかもしれない…」
綾野(恒一)「見崎とだって、遠い未来に恋人になるかもしれない」
見崎「……!」
綾野(恒一)「二人が両想いだったら、ね」
綾野(恒一)「だから、僕はまずは自分の身体に戻ってそういう可能性も潰さないようにしないといけない」
綾野(恒一)「僕の恋愛は僕の身体でちゃんとしたいからね」
見崎「……」
見崎「…そうね」
綾野(恒一)「あはは…そんな真面目な感じに聞こえたかな…」
綾野(恒一)「なんか言ってて、軽い奴にも見られるかなって思っちゃったけど…」
見崎「両想い、って言ったじゃない」
見崎「相手の気持ちも自分の気持ちも考えられる…」
見崎「そういうのは、キライじゃない」
綾野(恒一)「見崎…」
見崎「ほら、早く行ったら?」
見崎「早くしないとまた榊原彩が暴走するかもしれないよ?」
綾野(恒一)「あはは…これ以上は困っちゃうな…」
綾野(恒一)「よし…!じゃあ行ってこようかな!」
綾野(恒一)「ありがとう、見崎!元の姿に戻ったらまた一緒にお昼食べようね!」ダッ…
見崎「……」
見崎「(天然、ジゴロ…)」キュン
勅使河原「ん?サカキか?教室には戻ってきてないぜ?」
綾野(恒一)「そうなんだ…」
フェア林「ケンカでもしたのかい?それはフェアじゃないね」
綾野「(教室にカバンは置いてある…帰ったわけではないと思うんだけど…)」ダッ…
勅使河原「そろそろ授業も始まるし…もしや、サカキの奴サボリか?」
勅使河原「って、綾野…!?お前、どこ行くんだ!?」
勅使河原「そろそろ授業はじまんぞ!」
綾野(恒一)「てっしー、ごめーん!」
綾野(恒一)「次の時間、私とこういっちゃんサボるから適当に代弁しててー!!」タッタッタ…
勅使河原「代弁しとけって…おい…」
勅使河原「……」
勅使河原「なぁ、フェア林…」
フェア林「君もサボって僕に代弁させるの?それはフェアじゃないよ」
綾野(恒一)「(彼女が行きそうな場所なんて、わからないぞ…)」
綾野(恒一)「(サボリの定番といえば、屋上だけどさっき出て行ったばかりだし…)」
綾野(恒一)「(じゃあ、中庭…?いや、「いないもの」じゃない今、中庭はサボるには目立ち過ぎる…)」
綾野(恒一)「(だとすれば、どこに行けば…)」ブルッ…
綾野(恒一)「……」
綾野(恒一)「(そ、その前にちょっと…トイレに…)」
綾野(恒一)「……」
綾野(恒一)「トイレ…」
綾野(恒一)「……」
綾野(恒一)「いや、まさかなぁ…」
綾野(恒一)「(ていうか、男子トイレの前で考え込んでる女の子ってどうなんだ…)」
綾野(恒一)「(まぁ、中身は僕なんだけどさ…)」
綾野(恒一)「(…うん!流石に男子トイレは無いよ!)」
綾野(恒一)「(休み時間は仕方ないとしても、授業中なら綾野さんでも女子トイレを選ぶよ!)」
綾野(恒一)「……」
綾野(恒一)「(じゃあ、僕は女子トイレを捜しまわるのか…?)」
綾野(恒一)「(まぁ、姿は綾野さんだし…別に入るだけなら何もおかしくは…)」ブルッ…
綾野(恒一)「……」
綾野(恒一)「(とりあえず、男子トイレの個室で用を済ませておこう…)」
綾野(恒一)「……」
綾野(恒一)「(いつも使用してるはずなのに、綾野さんの姿だとなんかいけないことをしている気分になる…)」
綾野(恒一)「(早いとこ、済ませちゃおう…)」
綾野(恒一)「(綾野さん、ごめん…また下着を見ちゃうことになるけど…)」
綾野(恒一)「(…って、あれ?)」
綾野(恒一)「(奥の個室、使用中だ…)」
綾野(恒一)「(まぁ、授業中にたまに腹痛になるときってあるよね)」
綾野(恒一)「(それじゃ、僕は手前の個室に…)」
「ん…ぁんっ…」
綾野(恒一)「……」
綾野(恒一)「…えっ」
綾野(恒一)「(これはきっと排便時に前立腺が刺激されてしまって、つい声が出てしまった名も知らない男子…)」
綾野(恒一)「(決して僕の姿をした綾野さんが喘いでいるわけでは…)」
恒一(綾野)「はぁ…こういっちゃん…」
綾野(恒一)「」
綾野(恒一)「あやのさーん!!??」ドンドンドンドン!!!
恒一(綾野)「ひゃっ!?」ビクッ
恒一(綾野)「こ、こういっちゃん…?」ソロー…
綾野(恒一)「…!」
バタン!
恒一(綾野)「きゃっ!?」
綾野(恒一)「……」ハァハァ…
恒一(綾野)「えと…こういっちゃん…?」
綾野(恒一)「あ、綾野さん…」
恒一(綾野)「な、なぁに…?」
綾野(恒一)「わかるよ…僕にだってそういう時もある…」
綾野(恒一)「でもね、綾野さんは女の子なんだ…」
綾野(恒一)「僕の姿で、そういうことをするのは…」
恒一(綾野)「えっ…で、でも…」
恒一(綾野)「おしっこ…漏らしちゃったら…迷惑かけちゃうし…」
綾野(恒一)「……えっ?」
恒一(綾野)「そ…そうだけど…?」
綾野(恒一)「で、でも…なんか声を出してて…」
恒一(綾野)「だ、だって…男の子のモノから出すのって慣れないから…」
恒一(綾野)「ちょっと場所を直そうとして触ったら、つい…」
綾野(恒一)「……」
綾野(恒一)「…僕の名前を呼んでいたのは?」
恒一(綾野)「えっ…そ、それは…こういっちゃん怒らせちゃったなぁって…」
恒一(綾野)「このまま嫌われちゃったら、やだなぁって思ったらつい…」
綾野(恒一)「……」
恒一(綾野)「…ていうか、こういっちゃん…今は確かに私はこういっちゃんの姿だけどさぁ…」
恒一(綾野)「女の子のおトイレ事情に深く突っ込んでくるなんて…」
綾野(恒一)「……」
恒一(綾野)「…こういっちゃんのえっち」
綾野(恒一)「うぐっ!」
やめてっ
ひどいよ…
綾野(恒一)「…って、てっきり思っちゃったんだよ…」
恒一(綾野)「……」
綾野(恒一)「…綾野さん?」
恒一(綾野)「こ、こういっちゃんのばかー!へんたいっ!!」
恒一(綾野)「私、そんなはしたない女の子なんかじゃないもんっ!」プンプン
綾野(恒一)「ごめん!本当にごめん…!」
恒一(綾野)「まったくー!」
恒一(綾野)「こういっちゃんは私の身体でそういうことしちゃおうと思っちゃったわけ!?」
綾野(恒一)「いや、そんなことは!微塵も!」
恒一(綾野)「そんな全力で否定しなくても良いじゃん!」
綾野(恒一)「ええっ!?」
綾野(恒一)「ううっ…」
恒一(綾野)「…でも、そういう私も男心をわかっていなかったんだよね…」
綾野(恒一)「えっ…?」
恒一(綾野)「…ごめんね、こういっちゃん」
恒一(綾野)「好きでも無い女の子から…ううん…」
恒一(綾野)「自分の姿で恋人宣言なんてされたって迷惑なだけだよね…」
綾野(恒一)「綾野さん…」
恒一(綾野)「えへへ…私、実はちょっと浮かれちゃってたんだ…」
恒一(綾野)「大好きなこういっちゃんの姿になれて…」
綾野(恒一)「……」
恒一(綾野)「でも、こういっちゃんにとっては私は友達の一人でしか無くて、いつもこういっちゃんの周りにはたくさんの人がいて…」
恒一(綾野)「どことなく距離、感じてたんだぁ…」
綾野(恒一)「……」
恒一(綾野)「だったら、いっそのこと私が私じゃ無くて、こういっちゃんなら!って思ったの!」
恒一(綾野)「二人で一つの身体なら、いつも一緒だし距離も感じない…」
恒一(綾野)「まぁ、それだとベタベタ出来なくなるのが欠点なんだけどさー」アハハ
恒一(綾野)「だから、こういっちゃんと私の中身が入れ換わった時は嬉しかったなぁ…」
恒一(綾野)「ベタベタするのは自分の身体だけど中身はこういっちゃんなんだもん!」
恒一(綾野)「それにこういう状況ならイヤでも一緒にいる時間も増えるじゃん?」
恒一(綾野)「それが嬉しくて…だから、ちょっと調子に乗っちゃった…」
恒一(綾野)「でも、普通に考えたらそれは身体の持ち主であるこういっちゃんにとっては迷惑でしかなかったよね…」
恒一(綾野)「ごめんね、こういっちゃん…」
恒一(綾野)「私、バカだから…そこまで…頭回んなかった…」グスッ…
綾野(恒一)「(綾野さん…)」
綾野(恒一)「(綾野さんは僕のことが本当に好きで…)」
綾野(恒一)「(僕になれたらと本当に想っていたんだ…)」
綾野(恒一)「(それなのに僕は…彼女に厳しく当たってしまった…)」
恒一(綾野)「ひっぐ…ううっ…!」グスッ…
綾野(恒一)「(もしもこの現象の原因が本当に見崎の言った交代人格によるものならば…)」
綾野(恒一)「(僕は…どうしたら良い…?)
恒一(綾野)「ひっぐ…ごめんなさい、こういっちゃんっ…!」
綾野(恒一)「(僕が…)」
綾野(恒一)「(僕が彼女に出来ることは…)」
恒一(綾野)「ひっぐ…!うぇぇっ…!」
綾野(恒一)「…ごめん。謝らなくちゃいけないのは僕の方だ」
綾野(恒一)「僕はただ自分の姿で勝手なことをされるのを恐れていただけで…」
綾野(恒一)「綾野さんの気持ちを、全然考えてあげられてなかった」
綾野(恒一)「綾野さんの良い面を悪い面だけでとらえちゃった…」
恒一(綾野)「ひっく…うぅ…」
綾野(恒一)「…好きになってくれてありがとう」
綾野(恒一)「こんな僕で良かったら…」
「僕の、恋人になってください」
恒一(綾野)「い、今、なんて言ったの…?」
綾野(恒一)「こんな僕で良かったら…」
綾野(恒一)「綾野さんの恋人にしてください、って…」
恒一(綾野)「えっ…えっ…?」
恒一(綾野)「それ、ホントに言ってるの…?私がかわいそうだからとかそんなんじゃなくて…?」
綾野(恒一)「綾野さんだって、冗談じゃこんなことは言えないでしょ?」ニコッ
恒一(綾野)「…!」ドキッ
恒一(綾野)「…で、でもぉ…」
恒一(綾野)「私、こういっちゃんにたくさん迷惑かけて…」
綾野(恒一)「迷惑なんてかけてくれたってかまわない」
恒一(綾野)「えっ?」
綾野(恒一)「ひたむきで」
綾野(恒一)「笑顔の綾野さんが好きなんだ」
綾野(恒一)「今回のことで、その気持ちに気づいたんだ」
綾野(恒一)「泣いてる綾野さんは、見たくないよ」
恒一(綾野)「こ、こういっちゃん…!」
恒一(綾野)「こういっちゃーん!!!」ガバッ!
綾野(恒一)「わっ!?」
恒一(綾野)「私も!私もこういっちゃん、大好きだよぉ!!!」
綾野(綾野)「うん…ありがとう…綾野さん…」ギュッ
小椋「上手くいっちゃったみたいね」
見崎「……」
小椋「信じるも何も私は彩とは親友だし」
小椋「彩の姿をした榊原くんと話した時から二人の中身が違うって気づいてたわよ」
小椋「だから失恋したって告白紛いのことも言ったんだし」
見崎「…そう」
小椋「そういう見崎さんは、ちゃんと榊原くんに気持ち伝えたの?」
見崎「私は、もう今さら、かな」
見崎「榊原くんが幸せなら、それでいい」
小椋「そっか」
小椋「…良かったら今日、失恋したもの同士うちに来て飲む?ジュースしかないけど」
見崎「…紅茶はある?」
小椋「確かあったかな…っていうか、そろそろ男子トイレ前から離れない?」
綾野(恒一)「本当だよ…僕としても今さっき気づいた気持ちだから実感が無いのもあるけど…」
恒一(綾野)「えー!実感ないのは困るなー!せっかく両想いになれたのにー!!」
綾野(恒一)「だから、どんどん実感できるようになる為に、これから綾野さんのことをもっと好きになっていくよ」
恒一(綾野)「…!」ドキーン
恒一(綾野)「も、もう…!こういっちゃんたら…///」
綾野(恒一)「……」
綾野(恒一)「(普通なら可愛いと思うところなんだけど…)」
綾野(恒一)「(冷静になると僕の姿なんだよなぁ…)」
恒一(綾野)「…ねぇ、こういっちゃん?」
綾野(恒一)「あ、えっと…なにかな?」
恒一(綾野)「その…ね…」
綾野(恒一)「うん?」
恒一(綾野)「…キス、してほしいなぁ…?」
綾野(恒一)「……えっ」
綾野(恒一)「いや、ダメっていうか…その…」
綾野(恒一)「あ、綾野さんは良いの?僕…綾野さん…だよ…?」
恒一(綾野)「そりゃ、私は私の姿でこういっちゃんとキスしたいのはやまやまだけどー…」
恒一(綾野)「一応、私とこういっちゃんの姿でキスするわけだし…それはそれで良いかなって///」
綾野(恒一)「ま、まぁ…確かにそうかもしれないけど…」
恒一(綾野)「だ・か・ら・ぁ…はいっ」ンッ…
綾野(恒一)「うぅっ…!」タジッ…
綾野(恒一)「(僕が…いや、綾野さんが目を閉じて待っている…)」
綾野(恒一)「(これはもう…覚悟を決めるしか無いのか…)」ゴクリ…
恒一(綾野)「……」ンー
綾野(恒一)「……」
綾野(恒一)「(ええい!ままよ!!)」
恒一(綾野)「(このキスの次は、ちゃんと自分の姿で…こういっちゃんと…)」
チュッ…
綾野「……」
恒一「(…して、しまった…自分のキスを…)」
恒一「……」
恒一「…って、あれ…?」
綾野「(えへへ…こういっちゃんと私の身体がキスしちゃった…///)」
綾野「……」
綾野「…って、あれ?」
恒一「綾野、さん…?」
綾野「こういっちゃん…?」
恒一&綾野「……」
恒一&綾野「…も」
恒一&綾野「…戻ったあぁぁぁぁ!!!」
恒一「う、うん!間違いなく僕だと、思う…!」
綾野「おおぉー…?」
綾野「……」
綾野「……」ペロン…
恒一「ちょ、ちょっ!?あ、綾野さん!?」
恒一「(い、いきなりスカート捲って、何を…!?)」
綾野「あっ、ナニが無くなってるー」
恒一「確認しなくて良いから!しかも僕がいるところで!」
綾野「…夢じゃないんだよね?」
恒一「…多分」
綾野「こういっちゃん…私に好きっていってくれたよね…?」
恒一「…うん」
綾野「~っ!」ウズウズ…
恒一「……」
恒一「おいで、綾野さん」
綾野「っ!!」ダッ…
綾野「こういっちゃーん!!!」ガバッ…
恒一「……」ギュッ…
綾野「こういっちゃーん///」
恒一「(…うん、僕じゃなくて間違いなく綾野さんだ…)」
恒一「(良かった…元に戻れて本当に良かった…)」
恒一「…多分、綾野さんが心から自分の姿に戻りたいと願ったからじゃないかな?」
綾野「うーん…そうなのかなぁ…でも、きっとこういっちゃんが言うんならそうだよね!」
恒一「(まぁ、見崎の受け売りだけどね…)」
恒一「(本当に解離性同一性障害の一種だったのか確かめる術は無いし…)」
綾野「あっ、ところでさーこういっちゃん!」
恒一「ん?なに、綾野さん?」
綾野「えーとね…」
綾野「キス、しようっ!!」ンー
実際に付き合うことになったので、人格が戻った今も綾野さんは人目を気にせずにベタベタとしてくる
綾野「こういっちゃーん!!」ベタベタ
恒一「彩…教室ではあんまり…」
ヤッパアヤノガスルノガフツウダヨナー
サカキバラクンハガツガツイメージダモンネ
アレガホントウニフェアナカンケイダネ
見崎「今日はうちに来ない?紅茶が結構余ってるの」
小椋「いくいく。今日もうちのクラスのバカップルを肴に愚痴りましょうか」
多々良「あ、あの…」
有田「私達も…良いかな?」
最近、見崎、小椋さん、多々良さん、有田さんでグループを作って話している姿を良く見かけるんだけど…
共通点はなんだろう?
「朝か…」
「顔を洗いに…洗面所に…」
「……」
「…えっ!?」
赤沢(恒一)「鏡に映っているの…赤沢さん!?」
~~~~~~~~~~~~~
赤沢家
「…おトイレ」ムニャムニャ…
「……」
恒一(赤沢)「…なんか付いてる」
このお話は綾野さんと僕が付き合ってから始まる、また別のお話
ていうか、もう勘弁してください
おわり
乙
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鳴「ご飯」恒一「はいはい」
鳴「買い物行く?」
恒一「外雨降ってるよ」
鳴「雨は嫌いじゃない」
恒一「びしょ濡れになった見崎を拭くのは僕なんだけど?」
鳴「…嫌?」
恒一「それくらい自分でやってほしいかな」
鳴「うん。いいよ」
恒一「豚骨と塩どっちが好き?」
鳴「豚骨」
恒一(まあどうせ僕のも分けたげる羽目になるんだろうけど)
恒一「そういう見崎こそ」ズルズル
鳴「…成績落ちたりしたら東京戻った後大変じゃない?」ゴクゴク
恒一「かもね」ズルズル
鳴「もう…」ゴチソウサマ
鳴「…そういう意地悪、嫌い」プイッ
恒一「あはは。ごめんごめん」
鳴「これは没取です」
恒一「どうせ元から貰うつもりだった癖に」
鳴「いいから」アーン
恒一「はいはい」アーン
恒一「もう眠くなったの? まだ昼間だよ」
鳴「昨日夜更ししてたから…。榊原君が電話してくるからだよ」
恒一「よく言うよ。僕が眠いって伝えても『もうちょっと』とか言ってたの見崎じゃない」
鳴「榊原君は眠くないの?」
恒一「僕はもともと睡眠時間短いから」
恒一「ここで寝ないでよ? ほら、部屋戻ろ」
鳴「うん…」クテー
恒一「あーもう」ダキッ
鳴「んぅ…」キュッ
恒一「そのまま掴まっててよ」
鳴「はーい…」ギュ
鳴「Zzz」
恒一「熟睡してるし…。このまま梯登るの危ないしなぁ」ウーム
鳴「さかきばら、くん…」ムニャムニャ
恒一「はいはい」ナデナデ
(仕方ない。このまま適当に座っておこう)
鳴「…ん」
恒一「あれだけ食べてるのに栄養は何処に…」ジー
鳴「Zzz」
恒一(…胸はないな)
恒一「いかんいかん。…これでいいかな」ペラッ
鳴「…ぁ、むにゅ」モゾモゾ
恒一「…」ペラッ
鳴「Zzz」ギュー
恒一(集中できん…)モンモン
「あれ? 何で部屋に…」
恒一「Zzz」
鳴「寝てるの?」ツンツン
恒一「ん…」
鳴(かわいい)
恒一「くー…」ネムネム
鳴「いたずらとかは…まあ榊原君だし。ないよね」
恒一「Zzz」
鳴「…」ナデナデ
鳴「…」プニプニ
鳴「!?」グニグニ
鳴「…」オソルオソル
鳴「…」ペシペシ
鳴「あ」
恒一「…起きてたんだ」ゴシゴシ
鳴「おはよう榊原君」
恒一「おはよう見崎」
鳴「うん」
恒一(股間が痛いような…何故?)
鳴「30分前ぐらいかな」
恒一「そっか。なら離れてれば良かったのに。暑いでしょ?」
鳴「榊原君こそ。私床でも寝れるよ?」
恒一「体痛くなるじゃない」
鳴「気にしないよ」
恒一「僕は気にするんだよ」
鳴「…そっか」
鳴「どうしたの?」
恒一「ん? いや少し汗の匂いが…」
鳴「!?」バッ
恒一「今更遅いよ」
鳴「えっち」
恒一「いや僕が汗臭いって話だから」
恒一「いいの?」
鳴「沸かして来るから待ってて」テクテク
恒一「ありがとー」
鳴『どう?』
恒一「いいお湯だよ。見崎ん家のお風呂は広くていいねー」
鳴『そう。なら良かった』
恒一「見崎も入る?」
鳴『いいの?』
恒一「ごめん冗談です」
恒一「見崎?」
鳴「…」ガララ
恒一「ぶっ!?」
鳴「詰めて」グイグイ
恒一(タオル巻いてるけど! けど!)ドキドキ
恒一「…」ドキドキ
鳴「榊原君」
恒一「な、何?」
鳴「見せてあげようか?」
恒一「なっ!?」
恒一「…見崎」
鳴「ん?」
恒一「その、正直言って見たい」
鳴「素直でよろしい」
恒一「…」ドキドキ
鳴「…はい」
恒一「…」
鳴「…」
恒一「…もういいよ」
鳴「そう」モドシモドシ
恒一(だよね水着ぐらい着てるよねあああああ何言ってんだよ僕!)
恒一「…ごめんなさい」
鳴「これからは私以外の子に軽々しく『裸見たい』とか言わないことね」
恒一「うん…うん?」
鳴「?」
恒一「…見崎には言っていいの?」
鳴「…あ」
恒一「も、もうあがろうか」
鳴「う、うん///」
恒一「普通の無いの?」
鳴「普通のは私の」
恒一「じゃあフルーツで」
鳴「はい」
恒一「いただきます」ゴクゴク
鳴「いただきます」クピクピ
恒一「いいよ。二人だし、ババ抜きでいいよね」
鳴「うん」シャカシャカ
恒一「義眼でジョーカー探知は駄目だからね。勝てないから」
鳴「…ちぇ」
恒一「…」
鳴「――これ」ピッ
ジョーカー「やっほー」
鳴「ぐぬぬ…」シャッフル
恒一(真ん中のカードが一枚だけ飛び出してる…)
鳴「さぁ」
恒一(…右端でいいか)ピッ
鳴「あ」
恒一「お、当たりだ。はい、見崎の番」
恒一「どうしたの? 迷う必要ないよね?」
鳴「ぐ…」
恒一「はよ」
鳴「…いじわる」ピッ
恒一「あがり。僕の勝ちだ」
鳴「もう一回」
恒一「えー」
鳴「いいから」
恒一「はいはい」クスッ
恒一「そう?」
鳴「そうだよ。この前だって私が寝てた時勝手にこっちの眼見たでしょ」
恒一「お、起きてたの? ていうか意地悪なのかなそれ」
鳴「意地悪って言うか、悪戯って言うか…」
鳴「謝るくらいなら、ちゃんと言ってくれればいいのに」
恒一「嫌がられるかなって思ってさ。もうしないよ」
鳴「…別に、榊原君ならいいけど」
恒一「そ、そう?」
鳴「特別に、ね」
恒一「また騙されそうだから止めとく」
鳴「ほら、そういう所が意地悪」
恒一「そうなの?」
鳴「こっち見て」グイッ
恒一「わっ」
恒一「…」
鳴「…」
恒一「…」
鳴「…何か言って」
恒一「…」ナデ
鳴「んっ…」ピクッ
恒一「綺麗だよ」ボソッ
鳴「榊原、君…」
恒一「…」スッ
鳴「…」ギュッ
霧果「あら、何してるの?」ガチャ
霧果「…お邪魔しましたー」スタスタ
恒一「…」
鳴「…」
恒一「…お約束だよね」ハァー
鳴「そうね」フー
鳴「どうしよ…。いないものなんだし、明日の気分かな」
恒一「そっか。ま、明日も朝に来るから、その時決めよう」
鳴「うん」
恒一「じゃ、またね」
鳴「…待って」クイッ
恒一「ん?」
恒一「…ここ、外だけど」
鳴「じゃあ中に戻ってから」
恒一「もう。ここでいいよ」チュッ
鳴「んっ…」
恒一「満足した?」
鳴「…うん。気を付けてね」バイバイ
恒一「おやすみ」バイバイ
霧果「…」ジー
霧果「鳴」
鳴「なんですか?」
霧果「…榊原君は、いい子よね」
鳴「? はい。そうですね」
霧果「お母さん悲しいけど、応援するから。頑張って」グッ
鳴「なっ!?」
霧果「押し倒されないなら押し倒しちゃいなさい」
鳴「///」
鳴「え、えっと…」
霧果「榊原君、誰かに取られちゃうわよ? いいの?」
鳴「…だめ、です」
霧果「ま。鳴が一発押せばイチコロよ。頑張りなさい」
鳴(押し倒す…)ドキドキ
恒一「おはよう」
鳴「おはよ」
恒一「学校どうする?」
鳴「…今日も雨だし、いいんじゃない?」
恒一「だと思った。朝ご飯食べた? お弁当作って来たけど」
鳴「朝は済ませたよ。でも食べる」
恒一「あれ? もういいの?」
鳴「もうって、全部食べたよ?」
恒一「いや、いつもなら僕のもよこせって言うからさ」
鳴「よこせなんて言ってないよ」ムッ
恒一「そうだっけ?」
鳴「もう…」
恒一「?」
鳴「…」ドキドキ
恒一(あー何か企んでるな)
鳴(大丈夫…だよね?)
恒一(やっぱりお弁当欲しいのかな?)
鳴「…」ソワソワ
恒一「…」ウーン
鳴「…」ジー
恒一「…」カキカキ
鳴「…」コソコソ
恒一「あの…」
鳴「!」ビクッ
鳴「な、なんでもない。榊原君は勉強?」
恒一「うん。流石にね」カキカキ
鳴「どれくらいで終わる?」
恒一「あとは答え合せぐらいかな。なんで?」
鳴「…ちょっと、話たいかなって」
恒一「暇?」
鳴「うん」
恒一「そっか。ちょっと待ってね」
鳴「じゃあこっち来て」クイッ
恒一「? うん」
鳴「ここ座って」ポンポン
恒一「はいはい」
鳴「…」
恒一「それで、なんの話しようか」
恒一「珍しいね。いつもは僕がしてるのに」
鳴「あのね? 榊原君って、好きな娘いる?」
恒一「…ん?」
鳴「好きな人はいるの?」
恒一「それ、今更言う事?」
恒一「…いるけど」
鳴「誰?」ズイッ
恒一「勘弁してよ…」
鳴「言ってくれなきゃ嫌いになる」
恒一「…見崎」
鳴「ちゃんと言って」
恒一「――見崎が、好きだよ」
恒一「は、恥ずかしがるなら言わせるなよ…」
鳴「榊原君、真っ赤だよ?」
恒一「見崎もね。で?」
鳴「?」
恒一「見崎は好きな人いるの?」
鳴「榊原君」
恒一「…ごめん。ちょっと待ってね///」ウツムキ
恒一「もう…どういう意味があってこんな」
鳴「確認、かな」
恒一「確認?」
鳴「うん。分かってたけど、一応、ね」グイッ
恒一「へ?」ドサッ
恒一「…」ボーゼン
鳴「こうするなら、ちゃんと言わないと駄目かなって思って」
恒一「…なるほど」
鳴「…嫌?」
恒一「嬉しいけど、うん…」
鳴「嬉しいんだ」クスッ
鳴「榊原君がしてくれないから、私がするの」
恒一「…そっか」
鳴「そうだよ」
恒一「じゃあ次は僕がするよ」
鳴「期待してる」
チュ
恒一「ん、見崎…」
鳴「んむ…ふ、ぁ…んちゅ」
恒一「見崎、見崎…」
鳴「しゃかきびゃら、くん…ちゅっ、ちゅ」
恒一「…ふぅ」プハ
鳴「ん、ぅ…」ポワーン
鳴「…」
恒一「…しないの?」
鳴「したよ?」
恒一「?」
鳴「?」
鳴「これで?」
恒一「…えっと、この先と言うか、その…イヤーンな感じの」
鳴「イヤーン?」
恒一「ちょ、ちょっと待って。え? え?」
鳴「うん」
恒一「き、キスも、した」
鳴「うん///」
恒一「つ、次は?」
鳴「次? 霧果は押し倒したら好きにしていいって…」
恒一「霧果?」
鳴「あ」
鳴「あ、あのね? 榊原君を押し倒して、キスしたかったの」
恒一「あ、はい」
鳴「うん…」
恒一「…」
鳴「…」ウズウズ
鳴「…まだ」チュッ
チュッチュ
恒一(まぁ、いいか。今度ゆっくり教えよう。次は僕のターンだし)ナデナデ
鳴(幸せ♪)チュッ
霧果「…っち。今度こそは…」
happy☆end?
やっぱりほのぼのSSもいいな
Entry ⇒ 2012.06.16 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
鳴「未咲」未咲「恒一」恒一「見崎」
未咲「ぐ、ぅ…!」
未咲(苦しい…! 発作が、誰か…!)ハァハァ
未咲「鳴…助け、て――」スッ
ギュ
未咲(え…? だ、れ?)
恒一「しっかりして! 病院の人呼んだから!」
未咲「あなた…は」
恒一「僕の事はいいから! もう少しで先生達が助けてくれるから、それまで頑張って!」ギュ
未咲(あったかい…)ギュ
――――
恒一「東京から来ました、榊原恒一です。その…よろしく」ペコッ
久保寺「では榊原君はあの席に」
恒一「はい」
鳴「…」ボー
恒一(ミサキ・メイ? 同じクラスだったんだ。僕の事覚えてるかな?)
――――
未咲「もうホント怖かったよー! 今度こそ死んじゃうかと思った」
鳴「手術も成功して、すっかり元気だね」クスクス
未咲「人が通りかかってくれなかったら危なかったよ。あの時は名前も聞けず仕舞いだったけど」
鳴「私もお礼言わなきゃ。未咲を助けてくれた恩人だもの」
未咲「朦朧としてて良く覚えてないんだけど、カッコいい人だったなー。この病院に入院してた人らしくてね、榊原恒一って言う私達と同世代の男の子だって看護婦さんが言ってたよ」
鳴「! 実はね、私のクラスに転校生が来たんだけど――」
――――
鳴「理不尽だと思う?」
恒一「そりゃあね」
鳴「…でも、それで災厄が止まるなら」
恒一「うん。分かってる」
恒一「? この音…」
鳴「…」
未咲「鳴ー!? 居るー?」ガチャ
恒一「あ」
未咲「へ?」
恒一「見崎、もしかして…」
鳴「うん。この娘が未咲」
鳴「未咲。彼が榊原君だよ」
未咲「え?」
恒一「えっと…元気、みたいだね」
未咲「榊原君って…あの時の…」
未咲「そ、そりゃ覚えてるよ! あの時はありがとう! あなたが居なかったら私…」ギュ
恒一「いいよ、そんな。君が助かったのは君が頑張ったからで、僕はたまたまあそこに居ただけだから」
未咲「そんな事ないって! 何かお礼を…」
恒一「うーん…じゃあ友達になってくれないかな?」
未咲「う、うん!」
恒一「よかった。よろしくね」ニコッ
未咲「…っ///」ドキドキ
鳴「…」
未咲「あー今日からしばらくおばさん居ないんでしょ? 退院してから全然逢ってなかったから、顔見せとこうと思ってさ」
鳴「中々会えなかったもんね」
未咲「寂しかったよー。でもまさか男の子と逢引してるなんて思わなかった」
恒一「そんなんじゃ――」
鳴「そんなんじゃないよ。今日はたまたま」
恒一(…何か悲しい)ガーン
鳴「どうしたの?」
恒一「い、いや。なんでもないよ」アハハ
未咲「ねーねー」ギュウ
恒一「へ? な、何で腕に…///」
恒一「で、でも…」チラッ
鳴「…」グヌヌ
恒一(な、何か不機嫌そうだ)
未咲「榊原君…って呼ぶのは鳴と被るしー。恒一って呼んでいい?」ギュ
恒一「い、いいけど…」
恒一「うん」
未咲「こ・う・い・ちー」ギュー
恒一「あ、あの…痛いよ」
未咲「もう。そこは未咲って、呼び返してくれなきゃ」
恒一「み、未咲」
未咲「恒一♪」
恒一「未咲」
未咲「んふふー」スリスリ
鳴「…」
恒一「え? …あ、もうこんな時間。おばあちゃん達心配してるかも」スクッ
未咲「えー。もう帰っちゃうの?」
恒一「何時でも会えるじゃない」
未咲「…じゃあまた明日」
恒一「うん。じゃあ明日ね」ニコッ
未咲「///」
恒一「わっ」
未咲「それなら私も――」
鳴「お留守番よろしくね?」ジロッ
未咲「…ハイ」
恒一(な、なんだろう…。さっきから見崎、機嫌悪そうっていうか…)
鳴「…榊原君」
恒一「な、何?」
恒一(も、もしかして…嫉妬されてるとか? うへへ…見崎ってば可愛いとこあるじゃ――)
鳴「未咲は、渡さないから」キッ
恒一「…うん?」
恒一「見崎? えっと…」
鳴「明日からはライバルだね」
恒一「」
鳴「じゃ、明日からよろしくね。さ・か・き・ば・ら・君」タタタッ
恒一(…嫉妬の方向が、逆だった)
恒一(…昨日は全く寝れなかった)
鳴「おはよう榊原君」ポンッ
恒一「うひゃっ!?」ビクッ
鳴「? どうしたの?」
恒一「い、いや、何でもない」
鳴「どう? いないものの感想は」モギュモギュ
恒一「あんまりいい気分じゃない…かな?」
鳴「だよね。でも我慢しなきゃ」ムシャムシャ
恒一「…見崎は強いね」
鳴「そう?」ゴックン
恒一(いつも通りだな…昨日のって聞き間違いだったり?)
恒一「食べる?」ヒョイ
鳴「あーん」
恒一「!? あ、あーん///」
鳴「うまうま」モグモグ
鳴「うん。もっと」アーン
恒一(嫌われては…いないよね。きっと)アーン
鳴「これ榊原君が作ったの?」モグモグ
恒一「うん。前の学校で料理研究部だったんだ」
鳴「ふぅん」ウマウマ
鳴「レトルトぐらいかな。あ、未咲は上手だよ」
恒一「へぇ。食べてみたいな」
鳴「…」
恒一(あ、あれ?)
恒一「え、あ、はい…」
鳴「分かってるよね? ライバルだからね」ゴックン
恒一「あの…別に僕は――」
鳴「榊原君に未咲は渡さない」キリッ
恒一「…はい」ショボーン
未咲「あっ! お帰りー!」ダキッ
恒一「うわっ!?」
未咲「恒一おかえりー! 待ってたよー!」ギュ
恒一「あ、はは…」チラッ
鳴「…」ジー
恒一(どうしろって言うんだよ…)ハァー
鳴「ただいま。未咲、離れた方がいいよ。榊原君迷惑そうだし」
未咲「えー。迷惑なの?」
恒一「へ? あ、それは…」
未咲「ぐすん」ウルウル
恒一「…迷惑じゃ、ないよ?」ニコッ
未咲「へへー」ギュー
未咲「ほーらね。恒一だって私とこうするの好きって言ってるもん」
恒一「言ってないよ!?」
鳴「榊原君のえっち」
未咲「ぬふふー。嫉妬かなー?」
恒一「話聞いてよ…」
恒一「読書かな? あと料理も好きだよ」
未咲「へー! 私も料理得意だよ!」
恒一「見崎が言ってたよ。未咲の料理はとっても美味しいって」
未咲「恒一にも食べさせてあげる。恒一も作ってくれる?」
恒一「うん。楽しみにしてるよ」
キャッキャウフフ
鳴「むぅ…」
未咲「ん?」
鳴「今日の晩ご飯、私が作るから食べて?」
未咲「ホント? 食べる食べる」
鳴「…」ドヤァ
恒一(何故僕を見てドヤ顔を…)
恒一「いいの?」
鳴「お弁当貰ったから、お腹空いてるでしょ?」
恒一「じゃあ遠慮なく」
鳴「うん」
恒一(帰れって言われるかと思った…)ホッ
鳴「え?」
未咲「鳴だけにいい格好させないからね!」
鳴「…」ムムム
恒一「はは…」
恒一「おぉ…凄いね。美味しそうだ」
未咲「でしょ? 気合入れちゃった」エヘヘ
恒一「っ」ドキッ
未咲「どうかした?」
恒一「い、いや? 確かに美味しそうだなーって」アハハ
(な、何で僕、今…)
鳴「いるよ。ちょっと時間かかっちゃった」ドンッ
恒一「唐揚げ?」
未咲「唐揚げだね」
鳴「未咲好きでしょ?」
未咲「好きだけど…量が」
鳴「? 普通じゃない?」
未咲「それは鳴の基準でしょー」
恒一「ま、まぁ頂こうよ。ね?」
未咲「そうだね。んーお腹すいたー!」
鳴「オムライス美味しそう…」ジュルリ
恒一「うん。卵もフワフワでご飯も僕好みだよ」モグモグ
未咲「! よかったー!」ニコッ
鳴「未咲、私の唐揚げどう?」
未咲「おいしーよ!」
鳴「そう。ならいいよ」フフッ
恒一「え?」
未咲「鳴の唐揚げだよー? 食べてみなって」グイッ
恒一「う、うん。あーん」モグモグ
鳴「…」
未咲「どう?」
恒一「凄く美味しいよ。見崎――」
鳴「…」ムスッ
恒一(…泣きたい)
久保寺「んぃえあ”あ”あ”――!」グサッ
キャー ウワー イヤダー
千曳「皆出なさい! 早く!」
恒一「…」
鳴「ダメ、だったみたいね」
恒一「うん…」
恒一「…」
未咲「どうしたの? 元気ないよ恒一」
恒一「ううん。何でもない」
未咲「…無理、しないでね?」
恒一「――うん。ありがとう」ニコッ
鳴「未咲は私が守るから」
未咲「またそれ? まず鳴は自分を守るのが先でしょー? 危なっかしいんだから」
鳴「危なくないよ」ムー
未咲「この前も恒一に助けられてた癖に」ニヤニヤ
鳴「あ、あれはたまたま」
未咲「偶然が10回も続いたらそれって運命だよ? 鳴は恒一に助けられる運命なのだよきっと」
鳴「なにそれ」クスッ
鳴「サボれなくなったのは痛いかな」
恒一「もう…成績とか少しは気にしたら?」
鳴「じゃあ榊原君教えてよ」
恒一「いいけど…授業もちゃんと受けようね」アハハ
鳴「うん」
恒一(二人の時はいいんだけどなー)
未咲「お。来たな我が半身!」
恒一「なにそれ」
未咲「鳴の真似。似てた?」
恒一「うーん…70点かな」
未咲「うわっ。微妙だ。似てると思ったんだけどなー」
恒一「ふふ」
鳴「…」
恒一(三人で集まるとこれだ…)ハァ
恒一「…ん?」プルル
未咲「携帯?」
恒一「うん。ちょっとごめんね」スタスタ
未咲「早く帰って来てねー」
鳴「…ねぇ未咲」
未咲「うん?」
鳴「未咲は、榊原君が好きなの?」
未咲「…うん。好きだよ」
未咲「鳴も好きなんでしょ?」
鳴「私? …どうだろ」
未咲「むむ。隠し事とは生意気な」
鳴「隠してないよ。榊原君は友達」
未咲「んー? じゃあ好きな人とかまだ居ないんだ」
鳴「いるよ」
未咲「えぇ!? だ、誰!?」
鳴「未咲」クスッ
未咲「…このー!」コチョコチョ
鳴「きゃっ! ちょ、こんな所で…」
未咲「私をおちょくるなんて10年早いのだー!」
未咲「鳴が悪いの」
鳴「もう。…榊原君、長いね」
未咲「まさか女か!? 私と鳴というものがありながら…!」グヌヌ
鳴(他の女の子…赤沢さんとか綾野さんとか…)ズキッ
鳴「? 何か今――」
未咲「遅ーい! 女か? 女なのか!?」
恒一「違うって。男の友達だよ」
未咲「ほんとにぃ?」
恒一「ホントだって。海に行かないかって言われたんだけど、断っちゃった」
鳴「勅使河原君達?」
恒一「赤沢さん達もね」
未咲「やっぱり女じゃない!」
鳴「何で?」ボソッ
恒一「…未咲のアレが災厄なら、また似たような事が起こるかもしれないからね。流石に部外者を連れて行くわけにもいけないし」コソコソ
鳴「なるほどね…」コソッ
恒一(…あれ? 怒らないの?)
未咲「無視するなー!」
恒一「だから男友達だよ?」
鳴「赤沢さん達もでしょ?」
恒一「それは…その…」
未咲「ぶっちゃけさー。恒一って好きな女の子いるの?」
恒一「へ?」
鳴「…」
恒一「…いるよ」
未咲「ふぅん…」チラッ
鳴「…いるんだ」
恒一「じゃあ逆に聞くけど未咲はいるの?」
未咲「恒一だよ?」
恒一「はいはい」
未咲「むっ。何だその態度は…。最近の恒一は私の扱いがおざなりだよね」
未咲「そうだよ! これは調教の必要がありそうですなぁ…」
恒一「調教って…」
未咲「ぬふふ…」ワキワキ
鳴「未咲、注文は?」
未咲「あ。そだそだ、注文だったね。すいませーん」
恒一(助かった…)
鳴(…なんかモヤモヤする)
恒一「またね」
未咲「鳴もまたね!」
鳴「うん。気を付けて」
未咲「はーい。じゃねー」
恒一「見崎は一人だと危なっかしいからね」
鳴「む…榊原君までそんな事言う」
恒一「怒らないでよ」アハハ
鳴「…ねぇ、榊原君」
恒一「ん?」
鳴「榊原君の好きな人って誰?」
恒一「…何で気付かないの…」ハァー
鳴「?」
恒一「うん?」
鳴「どうかした?」
恒一(まただ…)
恒一「なんでもないよ。好きな人は秘密かな」
鳴「ふぅん」
恒一(僕が好きなのは見崎…でも未咲も、嫌いじゃない)
鳴「まぁいいか。じゃ、気を付けてね」フリフリ
恒一「うん。おやすみ見崎」
恒一(結局、僕は誰が好きなんだろう…)
鳴「行くよ。榊原君は?」
恒一「僕も行くよ。写真はその時でいい?」
鳴「うん。大丈夫。それよりね、未咲がしばらく会えないなら三人でどこか行こうって」
恒一「夏休みだもんね。いいよ」
鳴「良かった。行き先決まったら連絡するね」
恒一「了解。――お互い気を付けようね」
鳴「…そうね」
――――
未咲「やった! いい加減落としてやるぜ」
鳴「…ね。未咲は、私と榊原君。どっちが好き?」
未咲「どしたのいきなり」
鳴「どっち?」
未咲「うーん…どっちも大好きだよ」ニコッ
鳴「そっか」
未咲「鳴は? 私と恒一どっちが好き?」
鳴「…わからないな」
未咲「…もう。いい加減自覚しなよ」ハァー
――――
恒一「遊園地かな。でも二人の好きな方でいいよ」
未咲「大丈夫。私も鳴も遊園地派だから」
恒一「そうなんだ。未咲はともかく、鳴は意外だな」
未咲「それどういう意味かな?」
恒一「じゃ、じゃあ楽しみにしてるよ! ばいばい!」ブツッ
未咲「あ! 逃げるなコラー!」
――――
恒一「はいはい」
未咲「むぅ…最近恒一反応が悪いなぁ。可愛くなーい」
恒一「毎日逢う度に抱きつかれたら慣れもするって」
未咲「ぐぬぬ。ならば…鳴!」
鳴「? 何?」
未咲「恒一に熱い抱擁をお見舞いしてやれ!」
恒一「なっ!?」
未咲「鳴になら特別に許します」
鳴「榊原君も、嫌じゃないの?」
恒一「い…嫌なわけない、よ」
鳴「…そうなんだ」ドキッ
未咲「はいはい良い雰囲気になってないで早くする!」ドンッ
鳴「きゃっ」フラッ
鳴「あ…」
恒一「えっと…」
鳴(榊原君の顔…近い)ドキドキ
恒一(見崎、顔赤い。多分、僕も…)ドキドキ
未咲(うひひ…)コソコソ
鳴(ドキドキする。なんでだろ…)
恒一(…好きだ。見崎)
恒一「うわぁ!?」
鳴「未咲!?」
未咲「二人で盛り上がってずるい! 私も恒一に見つめて欲しい!」グイッ
恒一「うっ」
未咲「ほーら」ジッ
恒一「…」ジッ
恒一「ない、けど」ドキドキ
未咲「私もなんだ。…してみようか」
恒一「え?」
未咲「んっ」スッ
恒一(眼瞑って…これってそういう事、だよね?)ドキドキ
未咲(さぁ来い!)ドキドキ
恒一(ヤバい…僕、未咲も好きだ)ドキドキ
鳴「…」ツネリ
未咲「へ?」パチクリ
恒一「み、見崎痛いよ」
鳴「なにが?」ギュー
恒一「お尻抓ってるのがだよ!」
鳴「な・に・が?」ギュウ
恒一(うう…最近はこういうのも無かったのに…)シクシク
未咲「…ちぇ」
鳴「うん。ご飯は店屋物でいいよね?」
未咲「作るの面倒だしね。私はいいよ」
恒一「僕も――そうだ。僕作ろうか?」
鳴「え?」
未咲「マジで?」
恒一「この前ごちそうしてもらったしね。未咲とも約束してたし」
未咲「やった! 私ハンバーグ食べたい!」
鳴「…卵焼き。甘いの」
恒一「好きだもんね。一杯作るよ」ナデ
鳴「うん」ニコッ
未咲「よーし! 買出し行こう買出し!」グイッ
恒一「分かってるから、引っ張らないでよ」ハハ
未咲「早く早く!」
恒一「もう…。ほら見崎、行こう」スッ
鳴「…うん」ギュ
未咲「はーい。…おお、美味しそう」ゴクリ
鳴「じゅるり」
恒一「口に合えばいいけど」
未咲「いっただきまーす!」モグモグ
鳴「いただきます」モッシャモッシャ
未咲・鳴「うまー」
恒一「良かった。デザートもあるからね」
恒一「普通逆じゃないの?」
未咲「それって俺の嫁になれって事?」ニヤニヤ
恒一「だったら?」
未咲「ほえ?」
鳴「…え」ピタッ
未咲「え、え? いいの?」
恒一「…冗談だよ。いつものお返し」クスッ
未咲「ぶっ飛ばすぞ!」ムキー
鳴(よかった…)ホッ
未咲「うん。おばさん帰って来るから、明日の朝イチで帰るんだけどね」
恒一「でも何でそんなに霧果さんは…」
未咲「ごめん。それは鳴から聞いて? 私が話していいことじゃないから」ギュ
恒一「未咲?」
未咲「…恒一、好きだよ」
未咲「ごまかさないでよ。いい加減怒るよ」
恒一「…」
未咲「返事は、今度で良いから。遊園地行く時に、ね?」
恒一「――うん」ギュ
未咲(鳴に悪い事しちゃったかな…でも…)
鳴「お風呂上がったけど…」ペタペタ
恒一・未咲「!」バッ
鳴「?」
鳴「わかってるよ。榊原君こそ、寝坊しないように」
恒一「朝迎えに来るから」
鳴「うん…」
恒一「? どうかした?」
鳴「あのね、聞いて欲しい事があるの。明日、言うから。聞いてくれる?」
鳴「未咲にも、きちんと話した事はないんだけどね。この眼のこと」スッ
恒一(ですよねー)ガックリ
鳴「それじゃあおやすみ」フリフリ
恒一「おやすみ」バイバイ
恒一(やっぱハッキリ言わなくちゃダメか。でも未咲が…あぁあああ…どうしよう)
鳴「なに?」
未咲「私ね、恒一が好き。大好き」
鳴「…うん」
未咲「でもね。鳴も同じぐらい好き」ギュ
鳴「私も好きだよ」ギュ
未咲「…もし、恒一が鳴を好きって言ったら、どうする?」
鳴「え?」ドキ
未咲「も、もう寝るね。ごめん」
鳴「あ…」
鳴(未咲は榊原君が好き。私は未咲を榊原君に取られたくなくって…じゃあ榊原君は? 榊原君の好きな人って…誰? 未咲? 私? それとも――)
未咲「あー…二人は今頃合宿かー。私も行きたかったなぁー」
未咲「まっ。帰って来たら遊園地だし。こ、告白の返事も、あるし…///」
未咲「うわああああ! 今更恥ずかしくなってきた!」ゴロゴロ
オイウルサイゾー
未咲「っとと。落ち着け落ち着け」フー
未咲「こうなったらなるようになれだ。…暇だなー」ゴロゴロ
杉浦『殺せぇえええええええ!』
シシャヲシニ シシャ ミサキヲ
鳴「っ」
恒一「違う!」
鳴「榊原君…」
恒一「見崎じゃない! 見崎は生きてる! 生きてここに居る!」
鳴「…」ギュ
恒一「見崎…」
鳴「行きましょ」
恒一「――うん」ギュ
恒一「…僕がやる」スッ
怜子「恒一くん!? 何を…」
恒一(僕は見崎を、信じる。だからごめん怜子さん。…おかあさん)
ドスッ
恒一「…ぐっ」
鳴「! 榊原君!?」
恒一(肺が…っ! また、か…!)ドサッ
鳴「榊原君!? しっかりして! 榊原君!」ポロポロ
恒一(あー…駄目だ。苦しい…意識が、消えt――)
――――
未咲「恒一!」バーン
鳴「…未咲」
未咲「鳴! 恒一が倒れたって…!」
鳴「どうしよう…榊原君、どうしよう…」オロオロ
未咲「しっかりして! 恒一は無事なの!?」
鳴「ぐすっ…」コクリ
未咲「…よかったぁ」ホッ
鳴「私が、悪いの…。榊原君、怪我もして…」
未咲「…とりあえず落ち着いてよ。その後、ゆっくりでいいから説明して?」
鳴「…うん」グスッ
鳴「4月に未咲が危なかったのも、多分災厄だと思う」
未咲「あー…なるほどね。で? 鳴は大丈夫なの? 怪我とか…」
鳴「少し打撲があるぐらいで平気。…榊原君が、守ってくれたから」
未咲「…恒一、意外と頑丈だから大丈夫だよ。すぐに起きて、笑ってくれるよ。ね?」ギュ
鳴「…うん、うん」ギュウ
鳴「…うん」クスッ
未咲「よし! 手術終わったらお見舞い行かなきゃね。遊園地はおあずけかー」
鳴「榊原君が良くなれば、いつでも行けるじゃない」
未咲「そうなんだけどねー…」アハハ
鳴「?」
未咲「…あのね、鳴。実は私、恒一に告白したんだ」
未咲「それで、遊園地で答えを――ってね」
鳴「…そうなんだ」
未咲「鳴は、どう?」
鳴「なにが?」
未咲「恒一の事。まだ友達? それでいい?」
鳴「…」
未咲「ごめんね…こんな時に。でも、ちゃんと考えて、素直に伝えた方がいいよ」
「じゃ、私戻るね。また」タタタ
鳴「素直、に…」
未咲「お、お邪魔しまーす」ソローリ
恒一「あ。久しぶり」
未咲「起きてたんだ。大丈夫?」
恒一「うん。手術も成功して、すぐに退院できるってさ」
未咲「そ、そうなんだ。本読んでたの?」
恒一「未咲も読む?」
未咲「またホラーでしょ? パス」
恒一「面白いんだけどなぁ…」
未咲「…うん。鳴、恒一の顔も見たくないってさ」
恒一「…傷付くよ?」
未咲「ごめんごめん。何か考え事してるらしくてさ。明日は連れて来るから」
恒一「無理しないでいいよ」ハハ
未咲「…無理してるのは恒一でしょ」ボソッ
恒一「え?」
恒一「ぐぇ!?」
未咲「恒一が死んだら…私…」グスッ
恒一「(痛ってぇ)未咲…」
未咲「倒れたって聞いた時、心臓が止まりそうだった。苦しそうな恒一なんて見たくなかった」ギュウ
恒一「…ごめん」
未咲「もうしない?」
未咲「…じゃあ、約束ね」
恒一「うん。約束」
未咲「へへー。駄目だなー私。元気づけるつもりだったのにこれじゃあ逆じゃない」
恒一「僕は未咲が来てくれただけで嬉しいよ」ニコッ
未咲「も、もうコイツめー///」バンバン
恒一「痛い痛い!」
未咲「あ、ごめん」タハハ
恒一「もう」
未咲「おはよー」
恒一「おはよ。見崎は?」
未咲「あれ? …ちょっと鳴。何で隠れてるの。ほら、いいから来る」グイッ
鳴「ちょ、待って――あ…」
恒一「…久しぶり。良かった、元気そうで」
鳴「…うん。榊原君も」
鳴「痣もないよ。榊原君が守ってくれたから」
恒一「見崎が隣に居てくれなかったら、僕も全部諦めてたかもしれない」
鳴「でも、私が居たから…」
恒一「見崎。怜子さんの事も、クラスの事も、怪我の事だって君のせいじゃない。だからそんな顔しないで?」
鳴「榊原君は優しいね」ニコッ
恒一「そ、そうかな? そういう風に言われると照れくさいよ」
鳴「余計な事言わないの」
未咲「ぬー。おねーさんぶるなー!」
恒一「あはは」
鳴「ふふ…」
未咲「…ま、二人ともお疲れ様」
鳴「榊原君は忘れたくない? ずっと覚えていたい?」
恒一「…どうだろ」
未咲「さーさー! 湿っぽいのはそれぐらいにして、遊園地の事でも考えようよ!」
恒一「その前に、未咲。今いいかな?」
未咲「あ…えと、うん」
鳴「…私は外した方がいいよね」
鳴「え?」
恒一「僕、ずっと考えてたんだ。好きな人が誰なのか」
未咲「…」
鳴「…」
恒一「正直に言うね。僕の好きな人は――」
鳴「…待って」
恒一「鳴?」
未咲「恒一。聞いてあげて」
鳴「未咲を取られたくない。でも、でも…榊原君を未咲に取られるのも――嫌」
鳴「好きだから…私は、榊原君が、未咲と同じぐらい、好きなの」
鳴「それだけ。言わないまま、榊原君と未咲が付き合うのは嫌だったから言っただけ」
鳴「…ごめんね榊原君。勝手にライバルなんて言って、酷いこと…ぐすっ…して」エグエグ
恒一「見崎」ギュ
鳴「へ?」グスッ
恒一「一回しか言わないから、良く聞いてね」
恒一「ひと目見た時から、ずっと好きでした。僕と付き合ってください」
恒一「ダメ…かな?」
鳴「え? で、でも…」
恒一「ダメ?」
鳴「――っ! だ、駄目じゃない! 私も好き!」
恒一「うん。僕も大好きだよ」ギュウ
未咲「…やったね鳴。おめでとう」ニコッ
鳴「未咲…」
未咲「じゃ、じゃあ私、えと…帰るねっ。若い二人の邪魔になるだろうし? あは、あはは…」ポロポロ
未咲「だ、大丈夫! ほら、私おねぇちゃんだから! こ、今回は…っ…鳴に…」ポロポロ
恒一「待って」ダキッ
未咲「はぇ?」
恒一「まだ未咲に返事してないよ?」
未咲「っ! 放してよ! もう答え出でんじゃん!」
恒一「未咲」ギュウ
恒一「君が好きだ。僕と付き合ってください」
インドなら一夫多妻があるからね
親父がインドへ行ったのは伏線だったってことだ
成る程、そんな解釈が出来るとはお前天才か⁉
鳴「ん?」
恒一「未咲の笑顔が大好きなんだ。僕が辛い時、ずっと励まされてた。いつの間に好きになってた。だから…」
鳴「どういう事なの?」
恒一「考えたって言ったよね?」
鳴「うん」
恒一「…でさ、凄く勝手な答えなんだけどね」
未咲「…」
恒一「鳴も未咲も好きで、どっちかなんて選べないから――」
恒一「どっちも、僕の女にしようと思ったんだ」
未咲「オンナ…」ドキドキ
恒一「あ。その、そこは聞き流して! とにかく、二人とも幸せにしたいって、そう…思ったんだ」
鳴「…」
未咲「あの…と、とりあえず放してくれる、カナ? は、恥ずかしいって言うか…///」
恒一「う、うん」
未咲「まぁ、凄い事言われたって言うか…」アハハ
鳴「正直…私はいいと思う」
未咲「マジ?」
鳴「それなら未咲とずっと一緒って事だし」
未咲「でも…」
未咲「…そりゃあ、私だって」
鳴「榊原君、意外と逞しいから。二人とも愛してくれるよ?」
未咲「くっ…なんだよその余裕! あーもー! 恒一!」
恒一「はい」
未咲「大好き!」ダキッ
恒一「うん。僕もだよ」
鳴「私は?」ダキッ
恒一「鳴も大好き」
未咲「私も鳴が好き!」
鳴「私も」
恒一「絶対、二人とも幸せにするから」ギュ
鳴「当然」
未咲「絶対に絶対だよ?」
鳴「まずは遊園地ね。そこで榊原君のテストです」
恒一「落ちたら?」
未咲「それは…ねぇ?」ニヤニヤ
鳴「ふふ。霧果特性の調教セットがある」
未咲「覚悟しといてね?」
恒一「う、うん」
鳴「…絶対放さないから」ギュ
未咲「もう逃がさないよー」ギュ
恒一「僕も、ずっと一緒だから」ギュウ
鳴・未咲「――大好き!」ニコッ
恒一「へぇ…意外とちっちゃいんだね」キョロキョロ
未咲「でも楽しいよ! えっとまずはー…」ギュ
鳴「ちょっと未咲。独り占めは相手の同意を得てからだよ。今日はデートなんだから」ギュ
恒一(なんて言って鳴も腕にしがみついてる…)
未咲「はーい」ギュウ
鳴「もう…」ギュウ
恒一「とりあえず適当に歩こうよ。ね?」
鳴・未咲「うん!」
恒一(かわいい…)
未咲「恒一の隣は私!」
鳴「私。これは譲れない」
未咲「鳴が先に告白されてズルイ! だから今日は私!」
鳴「未咲だって先に告白した。だから今日は私」
未咲「私の方がおねぇさんなんだぞー!」
鳴「先に生まれた方がおねぇさん。未咲は妹」
未咲「ぐぬぬ」
鳴「むむ」
係員「あ、あのー…」
恒一「二人並んで座りなよ、もう…」
鳴「もう…危ないよ?」
未咲「落ちそうになったら恒一が助けてくれるもん! ね?」
恒一「え? 何聞こえない」
未咲「おっけーだって! ほら鳴も!」
鳴「ちょ、怖いから…!」
未咲「いーからいーから!」
鳴「ば、ばんざーい///」
未咲「ひゃっほーい!」
恒一(僕もしようかなー)
鳴「後でね。次行きましょ」ギュ
恒一「鳴なんか乗りたいものある?」
鳴「メリーゴーランド」
未咲「おっ。いいねー」ダキッ
恒一「じゃあ行こうか」
恒一「鳴って意外とお転婆だよね」
鳴「そう?」ギュウ
恒一「こうやって馬に乗ってるとお姫様みたいだけどね」
鳴「じゃ、じゃあ榊原君は王子様/// エスコートとか、えと、よろしくね?」
恒一「なんなりと、姫」ギュッ
鳴「♪」
未咲「ぐぬぬ…早く終われー」
恒一「本物じゃないんだから」
未咲「体も治ったし、もっと激しいの乗りたいよー」
恒一「ほら、落ちちゃうから」ギュ
未咲「ふぇ///」
恒一「未咲って攻められると弱いよね」ニヤニヤ
未咲「うぅ…///」スリスリ
恒一「ちょ、ホント落ちちゃうって!」
鳴「まだかな…」モグモグ
未咲「あ! 私あれ! コーヒーカップ乗りたい!」
鳴「私あれ。カート乗りたいな」
未咲「む?」
鳴「ん?」
未咲「カップ」
鳴「カート」
恒一「はいはい。近い方から順番にね」クスクス
未咲「ふぃー。疲れたー」
鳴「もうお昼も過ぎてるしね。ご飯どうしようか」
恒一「お弁当でも持ってくればよかったね。売店で何か買って食べる?」
鳴「うん」
恒一「未咲はー?」
未咲「あっ! 待って待って私も行く!」
恒一「だね。っていうか僕が奢るつもりだったのに」
未咲「そういうのはいーの」ゴックン
鳴「ごちそうさま」ケプ
恒一「早いね」
鳴「少なかった…」
未咲「私達の倍あったじゃない…」
恒一「あはは。デザートでも食べる? アイス売ってたよね? 買って来るよ」
恒一「一つでね?」
未咲「私バニラがいーな。お金は――」ゴソゴソ
恒一「奢るって」
未咲「でも…」
恒一「初デートの記念に、ね?」
未咲「…うん。ありがと」ニコッ
鳴「うーん…チョコが…抹茶も…」ブツブツ
鳴「可愛い、かな?」
未咲「何て言うのかなー? こう、ぎゅーってしたくなる感じ?」
鳴「やっぱり未咲の可愛いは変わってるね」クスッ
未咲「そう?」
鳴「榊原君はどっちかって言うと、カッコいい、って感じだと思うけど」
未咲「ほぅ。ワンモア」ニヤリ
鳴「? だから、榊原君はカッコいいって…あ///」
鳴「は、恥ずかしいから止めて!」
未咲「どっしよっかなー」
鳴「み、未咲のも言うよ?」
未咲「どーぞどーぞ」
鳴「ぐぬぬ」
未咲「にひひ。おねーちゃんは強いのだ」
未咲「恒一! 鳴がカッコいい! 結婚して! だってー」
鳴「ちょ、そこまで言ってない!」
恒一「うん。高校卒業したら一緒に暮らそう?」
鳴「ふぇ?」
恒一「結婚かー。楽しみだね」
未咲「あ、あのー…」
恒一「もちろん未咲もね。幸せにするから」
未咲「は、はい///」
恒一「ほら、アイス食べよ?」
鳴「結婚、結婚…///」
未咲「幸せ…えへへ///」
恒一「おーい…」
恒一「高いね。夜見山が一望できるよ」
鳴「狭い…」ギュウギュウ
未咲「ダイエットしとけばよかった…」ギュウギュウ
恒一「今日は楽しかった?」
鳴「うん」
未咲「すっごく楽しかった! またこようね!」
未咲「そうなの? 意外だ」
恒一「前の学校は男子校だったしね」
鳴「榊原君モテそうなのにね」ギュ
未咲「確かに…正直に言った方がいいよ?」ギュ
恒一「ほ、ホントだって」
未咲「ま、今回は信じてあげよう」
鳴「だね」
恒一「もう…」
恒一「ん?」スッ
チュッ
恒一「!?」
未咲「ん…/// はい。これで恒一は私のね///」
鳴「むっ。榊原君、こっち」グイッ
チュッ
鳴「ん、んぅ…ちゅっちゅ。はい。上書き///」
恒一「」
チュ
鳴「未咲こそ…」
チュ
恒一(ここが天国だったのか…)
未咲「あー楽しかったー! 絶対また行こうね!」ダキッ
恒一「…うん。行こう」
鳴「三人で、ね」ダキッ
恒一「うん。僕と鳴と未咲で」ニコッ
鳴・未咲「ずっとずっと、一緒にね」ニコッ
いつか終わるかもしれない。そんな道を三人で歩いて行く。
幸せのまま、せめて一瞬でも長くと恒一は祈るのであった。
happy☆end
来週はまた鳴ちゃんと恒一君がいちゃつくのでも書くよ
恒一は爆発しろ
乙
おつ
来週も楽しみだな
Entry ⇒ 2012.06.11 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
見崎「今年もよろしくね、榊原君」
【4月25日】
病室
榊原「君は……誰?」
見崎「榊原君。もしかして私の事、覚えていない?」
榊原「ごめん、前にどこかで会ったことある?」
見崎「いいえ、覚えていないならそれでいいの」
見崎(去年の記憶は全てない……?)
榊原「いや、生まれたのはここらしいけど……自分の覚えてる範囲では……。それより君は誰なんだい?」
見崎(なるほど……ということは他の『死者』は今どうなっている?)
見崎「あなたの同級生になる予定の者、とだけ言っておくわ」
榊原「そ、そうなんだ。わざわざお見舞いに来てくれたの?ありがとう」
榊原「え?」
見崎「『現象』や『災厄』という単語に聞き覚えはある?」
榊原(この立て続けにされる質問には何の意味が?)
榊原「いや、ないけど」
見崎「そう」
見崎(まあ、この方が都合がいいのかな。計画を進める上では)
榊原「え?え……ああ、うん」
見崎「じゃあね」テクテク ガラッ
榊原「君!名前は……(って…もう行っちゃった……)」
榊原「何だったんだろう。今の子は」
……
榊原「はい…」
風見「僕は風見といいます、風見智彦。こっちは桜木さん」
桜木「…はじめまして。桜木ゆかりです」
風見「こっちは」赤沢「赤沢泉美」
榊原「あの、何か」
……
見崎(病院内を見てああなっているってことは……おそらく……)
【4月26日】
榊原(……っとエレベータが)スタスタ
榊原(!……この子は)
見崎「……」
榊原「……また会ったね。今日はお見舞いか何か?」
見崎「まあ」
見崎「…届け物。眠っているから。可哀想な私の半身が」
榊原(え?)
ガラッ
スタスタ
榊原「ねえ君!…前も訊こうと思ったんだけど、名前はなんていうの?」
見崎「メイ。…ミサキ……メイ」
スタスタ
榊原「……」
【教室】
勅使河原「一時はどうなることかと思ったけど、今年は『ない』年で良かったよな」
望月「ほんとそうだよ」
赤沢「…もともと現象は『ある』年と『ない』年があるようだけど…どういう理屈なのかしら」
杉浦「あまりそういう事を考えても仕方ないと思う」
榊原(本当に……本当にこれでいいのか?)
見崎(……)
ガラッ
千曳「HR始めるから、席に着け―」
「はーい」
千曳(またこの話をしているのか……)
千曳(しかし……私にはどうこう言う権利はない……)
…………
ガラッ
榊原「千曳先生」
千曳「……そろそろ来るころだとは思っていたよ」
榊原「先生は……止める気はないんですか?あれを」
千曳「……教師という立場から言わせてもらえば、この状況では学校に来てくれるだけでもありがたい」
千曳「……それ以上のことは望むべくもない。あれで気持ちが落ち着くというのであれば」
千曳「……それにもう『終わった』話なんだ。君の説明によれば。違うかい?」
榊原「それはそうですが……」
【10月某日】
榊原(今日も相変わらず全員元気にしている、か……)
榊原(この状況を逆手に取ったりできないのだろうか)
榊原(それに『現象』についてもまだまだ不明な点は多い)
…………
見崎「どうしたの?改まって二人だけで話なんて」
榊原「うん。ちょっと今後の方針についてね」
見崎「今後の方針?」
榊原「見崎は、地元の高校に進学するんだよね?」
見崎「そう。榊原君は東京に戻るんだったかしら」
見崎「……私が一人でやれば済む話。始業式に顔を出して確認すればいいってだけ」
榊原「もし来年度が『ある年』だったら……」
見崎「死者を死に還すわ」
榊原「……やはりそうするつもりなのか。僕は……君にそんな事をして欲しくない」
榊原「…それもうまくいくかどうかは五分五分……」
見崎「榊原君が気にする問題ではないと思う」
見崎「少なくとも今年については私に責任の一端があったことには間違いがない。だから……」
榊原「だから死者を殺す、と?」
見崎「そうよ」
見崎「同じ事を繰り返すだけ」
榊原「見崎!」ダンッ 見崎 ビクッ
榊原「僕は……僕は自分と同じ苦しみを見崎に背負わせたくない」
見崎「同じ所で見ていた時点で同罪よ」
榊原「……何も見崎が手を下す必要はないだろう」
見崎「……榊原君。まさかあなた……」
榊原「見崎にやらせるくらいなら、僕がやるよ」
見崎「榊原君は、東京に戻らなきゃいけないんじゃなかったの?」
榊原「そうだよ」
見崎「ずっとここに留まり続けて……あなたが死者を死に還す、と?」
榊原「詳しい事情は知らないけどね」
見崎「そんな……」
榊原「これ以上、災厄によって人が死ぬのは見たくないんだ」
榊原「今の3年3組の状態だって異常だという他ないだろう?」
見崎「それはそうだけど…………いいの?自分のことは」
榊原「自分がやらなきゃ他の人がやらなきゃいけない。それなら……」
見崎「私も……榊原君にこんな事させたくないんだけど……」
榊原「まあ、とはいってもずっとここに留まる必要があるかどうかはまだ分からない」
見崎「……」
榊原「僕に考えがある」
見崎「!……」
―――――
榊原「見崎は、どう思った?僕の考えについて」
見崎「…面白い考えだと思ったわ。実際のところどれくらいの期間現象を止められるかは未知数だけど」
榊原「……見崎は……その……協力してくれる気は…ある?」
榊原「…よかった。……とはいえこの計画にはクラスメイト全員の協力が必要だけど」
見崎「それは多分……大丈夫」
榊原「…どうして分かるの?」
見崎「それは………………………今の榊原君の言うことだったら多分みんな信用してくれると思うから」
榊原「僕たちの言ったことは本当だと思ってくれてはいるようだけど…」
見崎「……大丈夫だから」
榊原「まあ……見崎がそういうのなら…」
見崎「あとさっきの話に戻るけど……」
榊原「?」
榊原「…何?」
見崎「私が協力するのは、榊原君の言ったことがおそらく本当であると私が確信できている時だけ」
榊原「……どういうこと?」
見崎「……私はまだ……完全には……安心できないから」
榊原「わかった。……とりあえず、今のところはどうなの?」
榊原「そっか」
見崎「あと、もう一つ」
榊原「えっ、まだあるの?」
見崎「これは榊原君の計画とは直接関係なくてね」
見崎「…………単に私の願望を実現するために交換条件にしたいだけ」
榊原「?」
見崎「その……私と………つきあってくれる?」
見崎「こ……恋人になって欲しいってこと」
榊原(……耳まで赤くなってる……)
榊原「…残念だなあ」
見崎「えっ」
榊原「あっ……いや…僕のほうから言いたかったのに、それ」
見崎「もう……ビックリさせないで」
見崎「…『僕でよければ』なんて言わないで。私がいいのは……榊原君だけだから」
榊原「うん……ありがとう」
見崎「私も…ありがとう。残りの時間……短いのに……半年しかないのに…OKしてくれて」
榊原「半年?……計画がうまくいけば1年半だけど」
見崎「え?…ああ、そうね……」
見崎「えっと……その…せっかく恋人同士になったんだし」
榊原「ん?」
見崎「……名前で呼んでもいい?」
榊原「いいよ。僕も…名前で呼ぶことにするよ、鳴」
見崎「私がいいって言う前に呼ばれちゃった」
見崎「ダメじゃないけど……名前で呼ぶのは二人きりだけの時にして…恥ずかしいから…その…恒一くん」
榊原「…そういうことか。わかった」
見崎「……結構話し込んじゃったし……そろそろ帰ろうか」
榊原「そうだね、最近は日も短くなってきたし」
榊原「……いつも一緒に帰ってるけど、……今日から恋人同士だし…」
見崎「?」
榊原「手、つないでもいい?」
見崎「……いいよ」スッ
ギュッ
見崎「恒一くんの手は……温かいね」
見崎「そう?……気温が低いからかな」
榊原(そういうものなのか?…………)
見崎「恒一くんもそう思うんなら…………温めてくれる?私の手」
榊原「!…うん、もちろんだよ。でも……いいの?」
見崎「何が?」
見崎「そんなこと、言ったかも」
榊原「僕としては、できれば鳴を安心させたいから……」
見崎「!……確かに、今も……つながってない方が安心…なのかもしれない」
見崎「でもね……今はそういう安心とか不安とか関係なく、ただ恒一くんと一緒にいたい、つながっていたい」
見崎「ううん、そうじゃない、そうじゃないの……これは……私自身の問題だから…」
榊原(鳴は……一体何が不安なんだろうか)
榊原「鳴が今感じてる不安っていうのは……その…漠然としたもの?それとも何か具体的な…」
見崎「ごめんなさい……今はまだ…」
見崎「いつか、ね。……とりあえず、その時が来ればちゃんと話すから。約束する」
榊原「そっか。…何か他に僕にできることがあれば……いつでも言ってね」
見崎「ありがとう。今は……なるべく恒一くんと一緒に時間を過ごしたい」
榊原「…うん」
教室
榊原「ねえ、見崎のことについてなんだけど」
勅使河原「なんだ?またのろけか?勘弁してくれよ、もうそういう話は」
榊原「違うって」
望月「じゃあ、何?」
榊原「勅使河原や望月は、どう思う?最近の見崎を見ていて」
勅使河原「う~ん、前よりいいんじゃないか?」
榊原「そう?そうか……」
勅使河原「どうした?まさかサカキにだけ冷たいとか」
榊原「違うよ。そんなんじゃない」
望月「恋人にだけ見せる顔っていうのもあるんじゃない?」
榊原「……そうなのかな。でもなあ……」
勅使河原「何だ、サカキ。男ならハッキリ言え!ハッキリと!」
榊原「それが悪いとはいわないし……むしろいいことだよね」
榊原「その分なんというか……マイナス方向の感情もすぐに分かるようになってしまったというか」
勅使河原「なんだ?怒ったり泣いたりでもしてんのか?」
榊原「いや、基本僕といるときは嬉しそうだよ」
榊原「でも、ふと視線が外れた時に……時々すごく悲しそうな顔をするんだよ」
勅使河原「悲しそう?なんでだ?」
榊原「それが分かってたらこんな相談してないよ」
望月「う~ん……幸福すぎて不安になる……とか?」
勅使河原「幸福すぎて不安?なんじゃそれは」
榊原「……今が幸福ってことは、いずれ不幸になると考えてるわけか」
勅使河原「でもなあ、そんなこと考えてたら一生幸福なんて思えないぞきっと」
望月「…だよね。榊原君はどう思う?」
勅使河原「何か心当たりでもあったか?」
榊原「『つながってると不安なのは今でもそうだけど、それでも一緒にいたい』って言ってた」
勅使河原「それ露骨にそういうことなんじゃないか?」
望月「…見崎さんにそれとなく訊いてみたら?」
望月「単純に今僕たちが喋ったことを一般論的に言って、同意するか尋ねてみればいいんだよ」
榊原「なるほど」
勅使河原「否定しなきゃ、まず当たってるってことか?」
望月「そうなるかな」
榊原「ありがとう望月、勅使河原。今日ちょっと帰るときにでも話してみるよ」
勅使河原「…といえば?」
榊原「なんかいつも別れ方が大げさというか」
望月「ふ~ん?どんな風に?」
榊原「何度もキスをせがまれて」
勅使河原「やっぱのろけじゃねえか!いい加減にしろサカキ!少しは俺の気持ちも」
望月「て、勅使河原君、落ち着いて。……それで?」
勅使河原「俺には単なるバカップルの話としか思えん!」
望月「榊原君はなんでそれがそんなに気になるの?」
榊原「なんでだろう?……やっぱりその時も……悲しそうだからかな」
望月「見崎さんは……あまり自分のことを話したがらないからね」
望月「それは恋人である榊原君に対しても変わらない。だからこそ……気になるんじゃないかな」
榊原「……そうだと思う。でも、あまり踏み込むわけにもいかないんだよなあ」
勅使河原「なんでだ?」
望月「しっかり先にくぎを刺されてるね」
勅使河原「だいたいサカキ、そもそもお前はそういうところが好きになったきっかけじゃないのか?愛しの鳴ちゃんをさ」
榊原「…否定できない……」
榊原「う~ん……そうだね」
望月「やっぱり半分くらいはのろけだったね」
榊原「…ごめん」
勅使河原「まあ、いいっていいって!仲がいいことに越したことはないしよ!」
勅使河原「俺は協力するぜ」
望月「僕もいいよ」
榊原「ほんと?」
勅使河原「…正直言って、俺も今のクラスの状況は良いとは思ってなかったからな」
勅使河原「むしろ、これを利用して来年以降が良くなるのなら協力しない理由はねえ」
榊原「まあ計画自体うまくいくかどうかは分からないけどね」
勅使河原「…多分うまくいくさ」
榊原「どうしてそう思う?」
勅使河原「男のカンってやつ?」
望月「それを言うなら女のカンでしょ」
勅使河原「とりあえず俺からも他のクラスメイトに話つけてみるよ。全員分必要なんだろ?」
榊原「そうだよ」
望月「まあ協力してくれると思うけどね。計画が成功したらもしかしたらもう一度……」
榊原「望月」
望月「…ごめん」
望月「…わかってる」
榊原(とは言ったものの、実際には難しいよなあ……期待するなっていう方が無理だ)
榊原「僕からも話してみるけど、いちおう頼めるなら頼んだ」
望月「うん!」
勅使河原「おう!まかせとけ!」
榊原「そういうわけで、とりあえず勅使河原と望月は協力してくれるみたい」
見崎「そう、良かったわね」
榊原(あれ……なんだかあまり嬉しそうに見えない…もしかして……)
榊原「あのさ……もし鳴が嫌なら……計画のこと、断ってもいいんだよ」
見崎「…?どうして急にそんなこと言うの?」
見崎「ごめんなさい、私……顔に出てた?」
榊原「うん……」
見崎「もしかして……それって今だけじゃなくて……前から?」
榊原「…そうだね」
榊原「ねえ、今日望月や勅使河原とこういう話をしたんだ」
見崎「何?」
榊原「人って幸せすぎても不安になるもんなのかなって」
見崎(!…これって明らかに最近の私の様子から類推した話よね……)
見崎「…あると思うよ。……というより、それって私の話でしょ?」
榊原「ハハ……バレてた?」
見崎「バレバレ」
榊原「つまり鳴も……そういうことでいいの?」
見崎「……そういうことでいい」
榊原「わかった……なんか余計な心配だったみたいだね」
見崎「いえ、私が余計な心配をさせてるだけだと思う。ごめんなさい」
榊原「!…いや、いいんだ。理由が分かったから安心したよ」
見崎「そう……良かった。恒一くんもその……一緒にいるときに私がそういう顔をしても…心配しないでね」
榊原「わかった。たださ……」
見崎「ただ?」
榊原「さっきの計画の話なんだけど……もしかして藤岡未咲さんのこと…気にしてる?」
見崎「いえ、そのことはもう大丈夫。そもそも彼女の場合、実際に計画が始まらないとなんともいえないし」
見崎「恒一くんは本当にそれでいいのかな……と思って。これも実際のところ記憶がどうなるかわからないし」
榊原「言いだしっぺのことを心配する必要はないよ。君に話した時点で覚悟はできているさ」
見崎「そうなの?……恒一くんももし気が変わったらすぐに言った方がいいよ」
榊原「…わかった」
見崎の家
見崎「……着いちゃったね。いつもの……」
榊原「うん…」
チュッ
見崎「………もう一回」
榊原「あ、あのさ」
見崎「何?」
見崎「私にとってはいつも新鮮。私とキスするの……嫌だった?」
榊原「い、嫌なわけないよ。ただ……」
見崎(…恒一くんが戸惑うのも仕方ない……か)
見崎「わかった。今日は1回でいいよ。それより……」
榊原「?」
榊原「え?」
榊原(見崎の勉強を僕が見るっていう名目でよく僕の家に来るのはいいけど)
榊原(いや勉強自体はしてるからそれはそれでいいんだが)
榊原(最近は3~4日に一度くらい……いくらなんでも頻繁過ぎる)
榊原(………泊まりに来ることもあるし)
榊原(おまけに…………いやこれ以上は)…いちくん!」
見崎「恒一くん!」
榊原「え?あ、ごめん。考え事してた」
見崎「ふ~ん………妄想でもしてた?まあいいけど」
見崎「顔、赤いよ」
榊原「え!?」
見崎「…で、返事は?」
榊原「い、いいですよ」
見崎「そう……良かった」
ガチャリ
見崎「…ただいま」
霧果「…おかえりなさい。……榊原君とは、うまくいっているの?」
見崎「はい。おかげさまで。最近は勉強も教えてもらっています」
霧果「そのようね。成績も良くなっているみたいだし」
見崎「榊原君には……感謝してもし切れません……それと……」
霧果「?」
霧果「!……どうしたの?藪から棒に」
見崎「いえ………榊原君と…その……家族の話をしていて」
見崎「榊原君には……お母さんがいないから……」
霧果「…ごめんなさいね……今まで…あまり母親らしいこと…できなくて」
霧果「そう言ってもらえると……私も嬉しいわ」
霧果「私も……榊原君に感謝ね」
見崎「え?何故ですか?」
霧果「娘が素直になってくれたから」
見崎「!…もう……知りません」
ガチャッ パタパタ…
見崎(あ~あ……柄にもないことを言ってしまった……)
見崎(……どうせさっき言ったこともいずれは……)
見崎(いつかまた、同じような事を言える日は来るのかな)
見崎(『いつか』か…………恒一くんの質問に何度かそうやってはぐらかしてたっけ)
見崎(恒一くん…………お母さん……)ポロポロ
見崎「うっ……うう……」
見崎「……ごめんなさい…………」シクシク
……
千曳「榊原君、今日の放課後話があるから私のところに来なさい」
榊原「あ、はい」
見崎「……」
放課後
千曳「君の計画、学校側からも受理されたよ」
榊原「本当ですか!ありがとうございます」
榊原「前言っていた、人数的な問題は……」
千曳「…それはいいんだが……」
榊原「?」
千曳「本当に……君はこの計画を実行するつもりかね?」
榊原「千曳先生、いまさら何を言ってるんですか」
千曳「下手をすれば、再び君たちを辛い目に合わせてしまうかもしれない」
千曳「そうかい?」
榊原「……それに、実際にその時にならないと実行可能か分からないですし、その前に頓挫する可能性もあります」
千曳「そうだったね。君も……仮に計画が先に頓挫したとしても……」
千曳「……わかっているならそれでいい。私から言いたかったのはそんなところだ」
榊原「…失礼します」
ガラッ
「「!」」
榊原「見崎!いたの?」
見崎 コクリ
見崎「……待ち切れなかったから」
榊原「学校のある間はいつも一緒にいられるじゃないか。それに」
見崎「…上手くいけばあと1年は…ってこと?」
榊原「そうそう」
見崎「それはそうかもしれないけど……年が明けたら一度、東京に戻るんでしょ?」
見崎「あ……うん、まあね。直接訊いたじゃないから恒一くんに……」
榊原「ああ、そういうことか」
見崎(危ないところだった……)
榊原「それに2~3日で戻るから、すぐだよ。進級試験といっても形式的なものだし」
見崎「私も東京…………行きたいな」
見崎「そうだよね……ごめんなさい。急にそんなこと言って」
榊原「…春休みになったら行こうか」
見崎「3月中にして欲しいんだけど、いい?」
榊原「…いいよ」
榊原「何か……変な感じ……」
榊原「いや、前までは僕の方から誘う事の方が多かったのに……いつの間にか逆転してるから」
見崎「……出来るだけ……一緒にいたいから…恒一くんと」
榊原「そ、それは…ありがとう。僕も……出来ればずっと……一緒にいたい」
見崎「ありがとう……その……年明けの話はダメになったけど」
榊原「?」
榊原「うん」
見崎「最近はこっちが訪ねる事が多かったから、私の家に来てもらっても……いい?」
榊原「いいよ」
見崎「…渡したいものもあるしね」
見崎「いいよ、最近まで計画の事で結構忙しかったしね……それに」
榊原「?」
見崎「私、恒一くんと一緒にいられれば………他には何も……」
榊原「やっぱり………なんか……性格がちょっと変わってない?前はそんな感傷的な…」
榊原「状況?」
見崎「……まあ、今は家族含めて一応人間関係は順調だし」
榊原「そうなの?」
見崎「うん…だからあまり気にしないで」
榊原「…わかった……」
榊原「じゃあ、いってきます、おばあちゃん」
祖母「いってらっしゃい。あまり遅くなるようなら連絡するんだよ」
榊原「とりあえず、今日は大丈夫だから」
祖父「恒一、今日も病院かね」
祖母「お爺さん、もう恒一ちゃんの気胸は治ってますよ」
祖父「そうなると……お見舞いか。気をつけて行ってきなさい」
祖父「健康が一番、健康が一番だな」
榊原「い…いってきます…」
ガラガラッ
榊原(何でお爺ちゃんは僕が病院に……?)
榊原(確かに手術後は何度か通っていたけど……)
榊原(最後に行ったのももう1カ月以上前の事だし……)
ガチャリ
見崎「どうぞ」
榊原「…おじゃまします」
榊原「ごめんね、今日はたぶんあまり長居はできないと…」
見崎「わかってる。……ちょっと雪も降り始めちゃってるしね」
榊原「…あれ?他の家族の人は?」
見崎「出払ってるよ」
見崎「今は東京に戻ってるお父さんの所に行ってる。まあ……一応私は受験が近いという名目で…」
榊原「留守番というわけか。……さすがにここに並んでるご馳走は……」
見崎「多少は私が作ったのもあるけどね。なかなか急にうまくなるものでもないし」
見崎「先に食べちゃおうか。……渡すものはその後でってことで」
榊原「そうだね」
「いただきます」
パクパク
榊原「……これ、買って来たにしても鳴が全部、というわけではないよね?」
見崎「そう。おばあちゃんとかもね……私じゃさすがに七面鳥とか買おうとは思わない」
榊原「でも、いいの?二人しかいないのにこんな豪勢な……」
見崎「見崎家から恒一君へのプレゼントとでも思って……だって。お母さんとおばあちゃんが」
見崎「私も含めてだけどね……恒一くんには本当に感謝してる。あなたのおかげでその……」
榊原「?」
見崎「…私と家族の関係も良くなったと思うから」
榊原「え?でも僕は鳴以外に直接何かをした覚えは……」
榊原「…そうか……それは良かった」
榊原「正直言って……少し心配なところはあったんだよね」
見崎「何が?」
榊原「君と……その周りの身近な人との関係の事で」
榊原「……そうだね。でも今の話を聴いて少し安心したよ」
見崎「そう?まあ……もともと無用な心配だったのかもしれない……」
榊原「え?それはどういう……」
見崎「ごめんなさい、何でもないから。気にしないで」
見崎「と…とりあえず冷めちゃう前に食べましょ」
榊原「う、うん」
……
榊原「ふ~、色んなご馳走にケーキまで……こんなに食べたのは久しぶりかも」
見崎「私も……」
榊原「ごちそうさま。ありがとう」
見崎「こちらこそ……お粗末さま」
見崎「今日はこっちが招いてるのに……片付けとか手伝ってくれて……」
榊原「いいよ、別に。家事の類は慣れてるから。それに……」
見崎「?」
榊原「鳴一人に任せておくと……なんだか危なっかしい気もしたしね」
見崎「そ…そんなことない。私は大丈夫」
榊原「君の言う『大丈夫』はどうもあてにならない気が前からしてた」
榊原「あ!いや……鳴を困らせるつもりで言ったんじゃなくてさ」
見崎「…じゃあ何?」
榊原「こっちとしてはもうちょっと……頼って欲しいというか」
見崎「私としては充分頼ってるつもりだったけど」
榊原「頻度的なものじゃなくて……なんだろうな」
見崎「?」
見崎「たぶん今の私から一番近いのが恒一くんだよ」
榊原「それはなんとなく分かってる。ただ……」
見崎「ただ?」
榊原「僕は君ともっと……近づきたいのかもしれない。心理的に」
見崎「あまり近づき過ぎると……私は……別れの時が辛くなると思うから……」
榊原「!………ごめん…」
榊原「でも……僕は今の事しか考えてなくて君に負担をかけてしまったのかも」
見崎「負担のかからない人間関係なんて存在しないわ」
榊原「その……あまり無理しないでよ……色々と」
見崎「色々……まあ、確かに恒一くんの言う事は当たっているのかもね」
榊原「?」
見崎「恒一くんに……あげるものがあるんだった」
榊原「!あ、そういえばプレゼントのこと話しこんでてすっかり忘れてたよ」
榊原「…僕から渡した方がいいのかな。喜んでくれるかどうかわからないけど」
スッ
見崎「開けてもいい?」
榊原「いいよ」
ビリッ
ガシャガシャ
見崎「!これって……」
榊原「……見るの好きって言ってたから」
見崎「でも、この辺りじゃ買えないんじゃない?この画集……」
榊原「すぐ手に入る物をあげてもしょうがないしね」
榊原「ちょっと東京の友達におつかいを頼んで、送ってもらった」
榊原「喜んでもらえたみたいで、何よりだよ」
見崎「……どうしよう……」
榊原「何が?」
見崎「私のプレゼントは……ちょっと……恒一くんが喜んでもらえると……確実にはいえないから」
榊原「どういうこと?」
見崎「だから……受け取りたくなかったら、返してもいいよ」スッ
榊原「(意味がよく分からないな…)…とりあえず、開けるね」
見崎 コクリ
ビリビリ…ガサッ
榊原「!」
榊原「……どうして……これが僕の気分を害するかもって…思ったの?」
見崎「……嫌なことも……思い出させてしまうと思ったから」
榊原「…なるほどね………ねえ……もっと近くに寄っていい?」
見崎「え?あ…はい……(…って私を抱きしめてる!?)」
見崎「…うん」
榊原「忘れたくなんかないよ。だから……ありがとう鳴、僕の大切な人の事を描いてくれて」
見崎 コクリ
榊原「…この絵は……君にしか描けないものだし……」ポロポロ
見崎「……泣いてるの?…やっぱり私…」
見崎「うん……」
榊原「……」
見崎「……」
榊原「……」
見崎「……少し、落ち着いた?」
榊原「…ああ、ありがとう」
見崎「え?」
榊原「止められるのなら……」
見崎「恒一くん!」
榊原「は、はい」
見崎「恒一くんも………無理しちゃダメ」
榊原「そうでしたね……ハハハ」
見崎(余計な事しちゃったかな……そろそろ……)
……
榊原「じゃあ、行ってくるね」
見崎「行ってらっしゃい。2~3日で戻るんだよね?」
榊原「その予定だよ」
見崎「私も東京……行きたかったな」
榊原「もう少しの辛抱だよ」
見崎「……こんな事になるなら、最初から推薦狙いにすればよかった」
見崎「…だよね」
榊原「……1学期の成績は……お世辞にも良いものとは言えなかったし」
見崎「結構ズバズバ言うのね」
榊原「今の成績が良いからこそ言えるんだよ」
見崎「榊原先生のお教えの賜物でございます」
見崎「もうなんとでも言って下さい」
榊原「珍しいね。そんなに下手に出るなんて」
見崎「…帰ってきたらわかると思うよ」
榊原「何かサプライズでもあるの?」
見崎「さあ」
榊原「まあ、いいや。そろそろ電車の時間だから……」
見崎「うん」
……
見崎「どうだったの?進級試験は」
榊原「特に問題はなかったよ」
見崎「そう……それは良かった。これで東京に戻ったとしても大丈夫ってことね」
榊原「一応そうなるかな」
見崎「いいえ……そうなるのよ」
榊原「?」
榊原「え?何故?今のところ計画が頓挫したという話は」
見崎「計画は私が破棄させた」
榊原「え……………………え!?」
────────
────────────────
榊原「僕に考えがある」
榊原「一時的に『現象』を止める方法についてだ」
見崎「!……」
榊原「これはまだ推測の域を出ていない話だけど……」
見崎「さあ。超自然的な自然現象にどの程度理屈が通るのかはわからないし」
榊原「そうだね。ただ一応、これまでに原因は分からなくとも対策方法についてはわかっているわけだ」
榊原「それらしい理屈がないともいえない」
榊原「そう。とりあえずこの『現象』についてはクラスの人数を合わせることは重要なことのようだ」
見崎「それはそうね」
榊原「そして、『現象』によって増える人数は一人と決まっているみたいだ」
榊原「増えた人間は、これまでの『災厄』によって命を落とした者」
見崎「そう。まだ榊原君の話がよく分からない……」
榊原「……こう考えてみたんだ。『現象』は実は毎年起こっている」
見崎「え?」
榊原「にも関わらず、『ある年』と『ない年』がある」
榊原「『ある年』だとわかるのは始業式以降。ということはそれより前に……」
見崎「……」
榊原「『災厄』によって死者本人が死に還った」
榊原「だから『災厄』は起きないし、誰にも『現象』が起こったことがわからない」
榊原「その通り」
見崎「なんだか自作自演みたいな話ね」
榊原「そうだね。それにこれがもし本当だと確認できれば、さらにもう一歩踏み込んだことができるかもしれない」
見崎「?」
榊原「その通り」
見崎「なんだか自作自演みたいな話ね」
榊原「そうだね。それにこれがもし本当だと確認できれば、さらにもう一歩踏み込んだことができるかもしれない」
見崎「?」
見崎「榊原君。あなたの考えていることって……」
榊原「わざと『現象』を起こして死者を蘇らせ、『現象』の力によってその死者を死に還す」
榊原「もしこれができれば、実質的な『災厄』の被害は発生しない」
見崎「……榊原君は……本当にそんなことが可能だと思っているの?」
見崎「じゃあ、どうして……?」
榊原「今のクラスの状況をどう思う?」
見崎「異常ね」
榊原「……最初は自分もそう思って、どうにかしてみんなにやめてもらえないか、とも考えた」
見崎「それが普通に考えることだと私も思う」
榊原「まあ、過去の当事者だから自分にはその権利がないと考えるのも無理はない話だけど」
見崎「………じゃあ逆にこの状況を何かにつかえないか」
榊原「…そういうこと。こんな事をしていたら、また死者が蘇るかもしれない。そう考えるのが当然だ」
榊原「もしかしたら、来年度は今年度の死者が蘇る可能性もある」
榊原「増える死者は毎年ひとり。……でも、もし意図的に特定の死者を蘇らせることが出来たとしたら?」
榊原「そして、その死者を『災厄』によって再び死に還すことができたとすれば?」
見崎「もう私たちが直接介入しなくても済む、と?」
見崎「?」
榊原「来年度は今年度の再現をするんだ。今年度生き残った3年3組が、来年度も3年3組のメンバー」
榊原「そうすることによって蘇らせることの可能な人数も把握できる」
榊原「仮に記憶や記録が改竄されたとしても、それは死者に関することだけ」
榊原「『現象』は『現象』そのものが検証、解明されるところまでは踏み込んでいない」
榊原「そうだったとしたら、『いない者』対策なんていうのも無理だった」
榊原「念のため、今の自分の考えも複数の記録媒体に保存してあるよ」
榊原「実際に『現象』が始まったら今年度の記憶は改竄されるだろうし」
見崎「それで……それでとりあえず1年といったのね」
榊原「もし複数の人間を蘇らせることができたら、逆に次年度以降の『現象』を本当に止められるかもしれない」
見崎「1年に1人死者が現れるのをまとめて蘇らせる事で、逆に次年度以降の死者の人数あわせをするのね」
榊原「そういうこと。今年度のクラスの死者はX人」
榊原「仮にクラスの構成員全員を蘇らせる事が出来たら、次の年からX-1年間は『現象』が止まるかもしれない」
榊原「うまくいかなかったら、その時はここに留まるほかないけどね」
榊原「…僕の考えはこんな所だよ。千曳先生にはこのことは先に話してある」
榊原「クラスメイトの了承が得られれば、出来る限り協力してくれるみたい」
見崎「…そう」
見崎「…………考えさせて」
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────────
────
榊原「鳴は計画に協力すると言ってたけど……何故今頃になって?」
見崎「破棄というのは正確じゃなかった。正しくは計画は………現在実行中なの」
榊原「!?」
榊原「え?2000年…………………あれ?」
見崎「私たちは98年度の3年生だから、本来は1月なら99年じゃないとおかしい」
見崎「でも、誰も気づいてない。いえ……それどころか昨年度1年分の記憶がみんな丸々なくなってる」
榊原「そ……そんなはずは……いくら『現象』と言ったって」
見崎「特に物理的な事はね。例えば、8月にやった合宿の場所は違っているし。全焼してしまったから」
見崎「まあ直せる範囲の物はそのままだったようだけど。水野君のお姉さんの乗ったエレベータとか」
榊原「!…あ……『現象』ってそんなことも可能なのか」
榊原「家族も蘇った者に含まれていたから……誰も気づかないのか……」
見崎「それだけじゃないけど……まあそういう理由もある」
榊原「でも……何故鳴……君だけは……」
見崎「去年の記憶を維持しているのかって?…それは私も分からない。ただ……」
榊原「ただ……?」
榊原「……!そうか……君の左目で……死者が何人もいるとわかるから…記憶を改竄されても、いずれ気付くのか」
見崎「そう。それに誰も気づかないままだったら、永遠にループしちゃうでしょ?この3年3組を」
榊原「とりあえず今の状況は理解したよ。結論から先に訊いてもいいかな?計画はうまくいったの?」
見崎「……………………うまく……いったよ……」
見崎「去年と同じことが起きていった……それで……死者は災厄によって死に還っていった……」
見崎「!……いいよ。昨年度にこの話が出てから……覚悟してた事だから」
榊原「しかし、結果的に……二度も……君の姉妹を……」
見崎「……最初から分かっていた事だった。それに……他のクラスメイトが計画に協力したのも……」
榊原「『もう一度逢いたかった』か……」
榊原「そうかもしれない。災厄を止めるという大義名分はあったにしろ……僕はもう一度怜子さんに…」
見崎「でも……だからこそね……この方法はもう……使うべきじゃない」
榊原「死者をむやみやたらに蘇らせるもんじゃないよね……」
榊原「約束?」
見崎「私は記憶を持ったままだったから……どうしても我慢できなくて……その……未咲に話してしまったの」
見崎「もちろん最初は驚いていたけど……」
見崎「でもね、やっぱり双子だから……言っている事が本当かどうかくらいはわかるんだよね」
榊原「怒られた?」
見崎「『こんな……偽りの生をもらっても嬉しくない』」
見崎「『鳴はいつまでも死んだ私にとらわれていないで、今本当に生きている人を大切にしてあげて』って」
見崎「私……何も言い返せなかった……彼女の言ってる事…それ以上に正しい事なんてないように思えた」
榊原「そうだったのか……こうなる事は予測できていたのに……僕は鳴に辛い目を」
見崎「!……私のことはいいから。それよりも……」
榊原「……僕ももうこんな方法を使おうとは……思わないよ」
見崎「良かった……」
見崎「大丈夫……だと思う」
榊原「それは何か根拠とかは……」
見崎「ない……けど…少なくとも今までの榊原君の仮説は正しかったからこれもたぶん……」
榊原「そうかな……どっちにしろこれも来年度にならないと分からないか」
見崎「その時は……」
榊原「…ごめん、鳴。結局自分って嫌な役回りを押し付けてるだけのような気が……」
見崎「大丈夫。きっと……止まると思うから……」
見崎(止まらないと……私も困る……)
見崎 コクリ
榊原(……最近感じていた鳴への違和感はこれでだいたい……説明できるのか?)
榊原(鳴は最初からあと半年しかないと分かっていたから……?)
榊原(本当にそれだけなのか……何か……見落としているような……)
見崎「あ~あ、やっと受験も終わったし、後は自由の身ね」
榊原「はは……そうだね」
榊原(鳴が予定を年度末までにこだわる理由……)
榊原(ちょっと鎌をかけてみるか)
榊原「あのさあ、春休みの予定の事なんだけど」
見崎「え?うん……」
見崎「え!?なんで!?」
榊原「え……」
見崎「あ……ごめんなさい…少し驚いて…」
榊原「う、うん…(…何故そんなに驚く?)」
見崎「前から3月って言ってたのに……どうして?」
榊原「その……いざ東京に戻るとなると…色々やらなくちゃいけない事が増えちゃって」
榊原「……だから、その用事を済ませてからにしたいんだ。…ダメかな?」
見崎「…ダメ……」
榊原「ダメ?鳴は4月頭は予定入ってる?」
見崎「入ってないけど……」
見崎「!…………榊原君の気のせいだと思う」
榊原「そう?……じゃあ美術館巡りは4月に入ってからにするけど、いい?」
見崎「それは……(これ以上理由を言わずに食い下がっても…)…わかった」
榊原「楽しみは後に取っておいた方がいいと思わない?」
榊原「まあ、ただとりあえず今回のことについてはさ……」
見崎「いいよ。榊原君の好きにすればいい」
榊原(なんか怖い……表情が……)
見崎「それで……3月末に先に榊原君が東京に行って……私が後から合流するのね」
榊原「……そういうことになるかな」
見崎「……そう」
榊原「?」
見崎「その日……榊原君に伝えなきゃいけない事があるの。だから……」
見崎「必ず携帯電話を忘れないように」
榊原「え?直接言うのはダメなの?」
見崎「……ダメ」
榊原「?……わかった」
3年3組は、あの出来事のせいで生徒が幾人か少なくなっていた。
だが同級生がその生徒達を『いる者』と扱って、また校長の配慮もあり全員が卒業した事になった。
千曳先生と、僕、見崎鳴以外はまだ計画の破棄を知らない。わざわざ言う必要もないからだ。
生徒を載せる計画など破棄された所で誰も知りようがない。
見崎鳴の予測、いや願望にも近いが……来年度は『ない年』であると……信じたい。
とにかく来年度にならない限りは……この時はそう思っていた――――
夜見山の駅
榊原「わざわざお見送りなんてしなくても……数日経てばまた会えるんだし」
見崎「私は数日間会えないだけでも……寂しいから」
榊原「そ……それはどうも……ありがとう」
見崎「さっきも言ったけど……」
榊原「携帯の電源でしょ?入ってるよ、ちゃんと」
榊原「そんなに重要な事なら直接言えばいいのに」
見崎「重要な事だからこそ……言えない事も…ある」
榊原「それに電車に乗ってる時は……トンネル入ってたりしたら電波届かないし」
見崎「そこは頃合いを見計らって……ね」
榊原(確かに鳴には予め電車の時間を伝えてあるからそういうことは可能ではある)
榊原(何か特定の時間帯に伝えたい……ということか?)
榊原「ん?…いやなんでもない」
榊原(どうにも気になる……鳴がそういう考えなら、こっちにも考えがある)
榊原「…そろそろ時間だから」
見崎「いつものやつね」
榊原「え?ここでやるの!?」
見崎「大丈夫。今は周りに人いないから」
チュッ
見崎「……ありがとう」
ポロポロ
榊原「!……鳴…涙が……」
見崎「え?……ほんとだ……どうしてだろ……ちょっとしたらすぐ会えるのに…」
榊原(何かある……よな……)
見崎「うん……」
榊原「…じゃあ、僕はもう行くから」
見崎「また、会えるよね?」
榊原「そんなの当たり前でしょ」
見崎「…そうだよね……」
……
ヴィーッヴィーッ
榊原(鳴からだ……このタイミングで来るという事は)
見崎『もしもし、榊原君』
榊原『もしもし』
見崎『もう……新幹線に乗り継いだ?』
榊原『う、うん…まあそんなところ』
見崎『そう……私、榊原君に謝らなきゃいけない事があるの』
見崎『榊原君の考えた計画の本当の弊害……それを言ってなかったから』
榊原『本当の……弊害……』
見崎『あの方法はやっぱり……危険だった……』
見崎『一時的とはいえクラスをより死に近づけるやり方だから……』
見崎『それに災厄を起こすには新たに蘇った人間がいる事が重要だったみたい』
榊原『あ…ああ……(まさか……)』
見崎『私は……私が…………今年度、災厄によって新たに蘇った人間だった』
見崎『だからね、今の自分を左目で見ると……『見える』よ』
榊原『そ……そんなはずは……鳴……悪い冗談はやめてくれ』
見崎『ウソじゃない。……そもそも、何故あなたは去年の春に気胸が再発したの?』
榊原『え?そ、それは……その……転校して環境が変わったりしたからストレスとかで』
見崎『それは一昨年の話でしょう』
榊原『え?あ……ああ、そうか。僕には昨年度の記憶がないから……』
榊原『いや、そんなまさか』
見崎『急に脇の道路から車が飛び出してきて、私がはねられそうになったの。でも榊原君がとっさに私を突き飛ばした』
見崎『でも、その車は突き飛ばす前に避けようとして……私のほうにハンドルを切ってしまった』
見崎『……倒れた私からもあなたがうずくまる所が見えた』
見崎『すぐ二人とも救急車で病院に運ばれたんだけどね』
見崎『そうか。私が『災厄によって蘇った人間』だから、榊原君の記憶にも改竄が起こったのね』
榊原『『今年度蘇った』って……おかしいだろう……それじゃあ去年の災厄は終わってなかったって事に』
見崎『終わってなかったというより……『イレギュラーな災厄』とでも呼んだ方がいいかもね』
見崎『死者を死に還した後に続けられた、複数の人間を対象とした『いる者ごっこ』』
見崎『同じ年度を再現する事で意図的に現象を起こすという『計画』』
見崎『現象が起こるには人数のズレが必要』
榊原『君は……最初から……分かっていたの?』
見崎『私だけは去年の記憶を持ってたし……左目の事もあるしね……』
見崎『明らかにおかしかったもの。3月末に事故で重傷を負ってるのに4月になったらピンピンしてるって』
榊原『僕は……そんなことも知らずに……今年も暢気にそんな『計画』の話をしてたというのか……』
見崎『榊原君は悪くないよ。もともと災厄を止めようとやった事だし』
見崎『そもそもこの計画自体、2学期以降の3年3組の『いる者ごっこ』を良い方向に使おうとしただけ』
見崎『それも……私の事を心配してやったことだから……』
榊原『なんて馬鹿な事を……君が生きていなきゃこんな事しても何の意味もないのに』
見崎『でも……でもね、そういう榊原君が……私は好きだった』
見崎『私は未咲が死んでしまった後、自暴自棄になっていたのかもしれない』
見崎『クラスメイトの死に対してもどこか諦念の観があった』
見崎『『いない者』にされる自分に対しても特に残念と思うこともなかった。でも榊原君はそうじゃなかった』
見崎『私が『死の見える目』を持ちながら、行動を起こさなかったのとは大違いね』
見崎『もともと好奇心旺盛っていう面が影響していたのも否定できないけど』
見崎『私はそういう榊原君にだんだん惹かれていった』
見崎『……だから、今回の『計画』を昨年度に知った時も私は「榊原君らしい」と思ったよ』
見崎『もちろん協力するつもりだった。でも、さすがに深入りし過ぎたようね』
見崎『『災厄』のことがこれ以上分からなくても『対策』はあるし、いざとなれば『死者』を死に還すという方法もある』
見崎『結局あなたにその仕事を押し付けるような形になって………本当にごめんなさい』
見崎『私の『目』は……榊原君が自由にして下さい』
榊原『…………』
見崎『……そんなに落ち込まないで。もし私が『災厄』によって死んだのなら、いずれあなたにまた会えるかもしれないし』
見崎『私は他の災厄による死者と同じように『還るべき場所』に還らなきゃいけない』
見崎『…ありがとう……最後まで話を聴いてくれて。榊原恒一くん…………さようなら』
榊原『僕は…………認めない、こんなこと。今からそっちへ行く』
榊原(様子がおかしいから新幹線に乗る前でちょうど良かった。ここなら折り返して2時間あれば戻れる)
榊原(……わざわざ時間を指定したって事は事故に遭う時刻も……決まっているはず)
榊原(新幹線に乗ったのを確認させたという事は……逆に言えば乗る前なら間に合うということ)
榊原(駅から僕の家か鳴の家の経路のどこかか……)
榊原(携帯はあれから通じないか……)
榊原(どうか……間にあってくれ……)
タッタッタッタッ
榊原「見崎!……見崎!」
榊原(どこにいるんだ……)
榊原(そんなに長距離ではないから……探せば見つかるはず……)
ハァハァハァ……
榊原(河川敷には……いない)
榊原(公園にも……)
……
榊原(…結局彼女の家の前まで来てしまった……)
榊原(他の不可解な状況……まだ……決めつけるのは早い……)
榊原(しかしこれはもはや自分の力でどうこう出来る問題では……)
榊原(待つしかない……のか?)
榊原「!」
榊原「見崎!…見崎!」
見崎「………榊原君?どうして……」
榊原(間にあった…………でも質問したいのはこっちだよ)
榊原「それより何だよあの電話。ウソ……とは言わないけど、でも……」
見崎「……!」
榊原「!見崎、危な
キキィィィィィィィィ ドガッ
……………………
病室
榊原(……ここは……)
榊原(……病院、か…………)
榊原(事故にあった……んじゃないなこれは)
榊原(さすがにもうこれで打ち止めにしてほしいよ、気胸は……)
榊原(……!)
見崎「目は……覚めた?」
見崎「あの………ごめんなさい。余計な心配をかけさせてしまって……」
榊原「いいよ……どっちにしろあの時点では判断するのは不可能だった…」
榊原「ウソは言ってないしね、ウソは……あの時鳴は自分の事を『災厄によって蘇った』と言ったが……」
見崎「『自分が死者だ』とは言っていない」
榊原「確かにな。ついでに死の色が見える、とも言ったが……」
見崎「どういう風に見えるかは言っていない」
榊原「死の色が見えるから……死んでいるわけじゃない」
榊原「まったく……本当に『イレギュラーづくしの災厄』だったな」
見崎「私も……生きたまま別の形で蘇るなんて……想像できなかった……」
榊原「本当の鳴は去年の事故で1年間昏睡状態……」
見崎「だから、今の私も車椅子……」
榊原「僕が気胸が治った後も……なんで病院に通っていたのかやっと分かったよ」
見崎「その記憶は……本来、というか今の恒一くんにはない記憶のはずじゃ?」
榊原「おじいちゃんが時々言ってたんだよ……98年度の時も……改竄されてなかったことがあったし」
榊原「どうやらそういうことらしい」
榊原「……よくよく考えてみたら……本当に鳴が死者だったら99年度も災厄が続いてもおかしくなかった」
見崎「このケースにどの程度通常の現象の話が通用するかはおいておいてもね」
榊原「ともあれ………本当に無事で良かった」
見崎「恒一くんも……ね」
榊原「あ……そういえば今日はもう…………」
見崎「……安心して。今年は『ない年』だから。私……確認してきたから」
見崎「そうね」
榊原「必ず…………戻って来るから。約束する」
見崎「……うん……私も恒一くんと一緒になれるように頑張るから」
榊原「……それまで少しの間、辛抱だね」
見崎「少しの間…ね」
……………………
さすがに99年度があんなことになって……といっても事情を知る者はごくわずかしかいないが……
ともあれ予測通り、あれ以降X-1年間は現象は起こらなかった
ただし、また現象が起こったとしても対処方法はわかっている
『いない者』対策とは違って2人の共同作業だ
今年ももうすぐ新学期の時期
幸いにも今年も僕はこのセリフを聴く事が出来る―――――
鳴「今年もよろしくね、榊原君………………いいえ、榊原先生」
恒一「こちらこそ。……見崎先生」
おわり
作者じゃないので当たってるかは分かりませんが(上の方にも書いたけど)
98年度(アニメ)の災厄停止後に死んだ人を居る者として扱う→鳴事故→SSの最初~現在(99年度の2度目の3年生)
最初の恒一は改竄を受けているので鳴の事が分からない
鳴は生きているけど蘇っていて98年度の記憶がある(生霊的な?)
鳴自身が自分が災厄で死んで蘇ったか確証が持てないのでSS後半の様にこれでお別れみたいな状態になっているのかと
綺麗に終わったな
>>277
98年3月末の事故で鳴が1年間昏睡状態(その後車イス)→99年の再現では鳴がケガ無しで甦る
→死に近いので自分に死の色が見える
これで合ってる?
>>282
基本的にはそうです。死者の数を曖昧にしたのは各媒体で違ってるというのもありますが
Entry ⇒ 2012.06.07 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (4) | Trackbacks (0)
恒一「有田さんはかわいいなぁ!!!」
風見「男子諸君、今日君達に集まってもらったのには、意味がある……」
恒一(え? なにこれ? 何で皆真剣な顔なの?)
風見「そうだ、ついに完成したのだ」
恒一「て、勅使河原君……何が起きてるの?」
勅使河原「黙って聞いてな、サカキ。今は、声を出すべきじゃねぇ」
恒一(えー……)
風見「三年三組の男子の技術力が異様に上昇する現象を利用した、我々の最高傑作……」
風見「三年三組の女子生徒を攻略する恋愛シミュレーションゲーム『アナガミ』が、完成したっ!!!」
一同「うおおおおおおおおお!!!!!!」
恒一(え、えぇ……)
望月「……苦労したよ。本当に苦労した。僕以外に絵のスキルが上がった人が、もう少しいればもっと楽だったのに……でも、今は喜びばかりだ。三神先生ルートをやりたくてしょうがないよ!」
恒一「くっ……て、勅使河原君!」
勅使河原「ゲームの内容に、俺は関われなかった。だが、ハードやディスクの作成は、俺の仕事だった……放課後、一人で工場へ行き黙々とし続けた作業、その結果をもうすぐ見れるんだな……」
恒一「ダメか……」
一同「はい!!!」
風見「このプロジェクトに、こうして関われて、僕は嬉しい!! 最後に、感謝を言わせて欲しい。皆、ありがとう!!」
一同「ありがとう!!!」
恒一(このクラスの男子は、やけに帰るのが速いんだなと思ってからはや一カ月……わけがわからないよ)
恒一「いや、もらったけどさ……これ、どうみても企業レベルだよね?」
恒一「勅使河原君、普通に工場とか言ってたけど、え? 工場あるの?」
恒一「転入初日に、そういう現象があるとは聞いていたけど、こんなにレベル高いの?」
恒一「というか、PSPって何?」
恒一「まあ……もらったからには、やってみるけどさ……えっと、電源電源……これか」
恒一「えっと、これかな?」
多々良『貴方の名前を入力してね』
恒一「えっ!? 喋った!?」
恒一「女子も制作に参加してるの? ……いや、今の音声、少しだけ、本当に少しだけおかしかった気がする……」
恒一「もしかして……日頃の会話を録音して、それを加工したっ!?」
恒一「て、手間が掛かってるなぁ……」
恒一「主人公設定選択? えっと、委員長モード、運動部モード、文化部モード、帰宅部モード……あ、ちゃんと転入生モードもある」
恒一「……なんというか、皆ありがとう。転入生モード、だよね」
恒一『東京から来ました、榊原恒一です』
恒一「あ、さすがに僕の声は出ないか」ホッ
久保寺「榊原君はうんたらかんたら」
恒一「あ、プロローグ終わった」
恒一「……というか、選べる場所多すぎだよっ!!!」
恒一「これ、クラスどころか、怜子さんまで攻略できそうじゃないか! 僕にはわかるぞ、この職員室のイベント、明らかにシルエットが怜子さんじゃないか!!」
恒一「うーん……こういうときは、どうしよう。あ、このボタン押すと、ランダムに出来そうだな……」
恒一「まあ、最初くらい、ランダムで良いよね?」
夕方、道路
恒一『転入初日に、ちゃんと友達も出来たし、クラスの皆は可愛い子ばかりだ! これから、楽しい毎日が始まりそうだなぁ!!』
恒一『さて、でも困ったなぁ……』
恒一「いきなり困るなよ!!」
恒一『迷子になっちゃった……』
恒一「おい、僕」
恒一「たしかに、恥ずかしいね……」
??「榊原君? どうしたの、こんな所で」
恒一『あ、有田さん!』
恒一「あ、有田さんだ」
有田『良かったぁ、名前覚えてくれてたんだね』
恒一『一応、クラスメイト全員はね』
恒一「そういえば、実際の所は有田さんとあんまり話したことが無いなぁ」
恒一『ううん、実は迷子になっちゃって……』
有田『それは大変だね! 家はどっちの方なの?』
恒一『えっと……』
恒一「今更だけどさ、これ、ちゃんと有田さんの特長を掴んだ立ち絵って言うかさ、最初僕、写真かと思っちゃったよ……背景もよく見たら絵だし……」
怜子さん√だけあれば満足なのに良い奴だ
恒一『そんな、悪いよ。大体の方角を教えてくれたら、大丈夫だから……』
有田『私も、スーパーに行き忘れちゃって……だから、丁度良かったんだ。むしろ、榊原君を助けられて良かったくらい』
恒一『そっか……じゃあ、お願いしようかな』
恒一「優しいなぁ……」
有田『えっと、あっちの方だよ。そこの角を曲がって……』
恒一『あぁ、あそこなんだね。ありがとう、今日は本当に助かったよ!』
有田『ううん、どういたしまして。それじゃあ、また明日学校でね!』
恒一『うん、またね!』
恒一「このゲーム……実際夜見山の地理に対応してやがる……」
恒一『ふぅ、朝は眠いなぁ……』
有田『おっはよー! 榊原君っ!』
恒一『あ、有田さんおはよう。朝から元気だね』
有田『あはは……今日は日直なのに、いつもの時間に来ちゃったから、大急ぎなんだ……空元気?』
恒一『それは、ドンマイだね』
有田『うん、だから、先に行くね! また後でね、榊原君っ!』
恒一「あ、朝は強制イベントで四つの時間とは違うんだね」
恒一「うーん、他の子との出会いイベントもあるけど……有田さんのイベントともあるなぁ……」
恒一「ま、まあ、とりあえず有田さんのイベントをやろうかな!」
恒一『今朝のチラシ……有田さん急いでたし読んでないかな』
恒一『せっかくだし、教えようかな! 有田さーん!』
有田『うん? どうしたの、榊原君』
恒一『今日、スーパーが安売りなんだって、有田さん、朝急いでたから、確認してるかなぁって』
有田『え? 本当っ!? うぅ……見逃してたよぉ……』
恒一『チラシ、みる?』
有田『あるのっ!? 見る見る! 見せてっ!』
有田『うぅ……持てるかなぁ……』
恒一『(有田さん、困ってるみたいだなぁ……)』
●荷物持ち、しようか?
●買うもの、一杯あるんだね
恒一「選択肢か……これは間違いなく上だね。下は強制イベント避けかな」
恒一『荷物持ち、しようか?』
恒一『この前の恩返しだから、ね』
有田『そっか……じゃあ、お願いしようかな』
恒一『うん、じゃあ放課後にね!』
恒一「うん、予想通りだ!」
恒一「そういえば、こういうのって出会いイベントが強制かと思ったんだけど、違うんだね。まあ、ヒロインの数が数だし、しょうがないか……」
恒一「というか……この様子だと、有田さんだけでも結構なシナリオ量ありそうだな……」
恒一「とりあえず、有田さんのイベントを消費しよう!」
有田『ねえ、榊原君。ちょっとお話しない?』
●うん、言いよ
●今はちょっと……
恒一「上以外選ばせる気が無いでしょ」
恒一『うん、言いよ』
恒一「はっ、これは、話題を選べと言うのか……『世間話』『運動』『勉強』『恋愛』……色々あるな……」
恒一「これ、『エッチ』は絶対罠だよね……うーん……」
恒一「無難に世間話かなぁ」
有田『ドクターフィッシュ? 医者のお医者さん?』
恒一『まあ、あんまり間違ってないけれど、ちょっと違うかな。ドクターフィッシュはね、人の皮膚の老廃物を食べるんだ』
有田『皮膚の老廃物を食べるの?』
恒一『そう、病気になった皮膚も食べてくれるからドクターフィッシュなんだって』
有田『そうなんだ、すごいね!』
恒一「お、なんかいい感じじゃないか!!」
恒一『有田さんってさ、どんな男性がタイプなの?』
有田『た、タイプ!? うーん、あんまり、考えた事が無いかな……でも、話が合う人ではあってほしいかな』
恒一「話が合う人かぁ……話した事がそもそも無いんだよなぁ……」
恒一「次は……『勉強』かな」
有田『ねえ、榊原君。数学を教えてもらってもいい?』
恒一『数学?』
有田『円周角って、わけがわからないんだ……』
恒一『えっとね……ここはこうして……』
有田『あ、本当だ! ありがとう、榊原君っ!』
恒一「ふっふっふ、いい感じじゃないか!!」
恒一『ねえ、有田さんはどんな料理が好き?』
有田『うーん、和洋中なんでも好きだよ? でもそうだなぁ、和食の方がどれかと言われると好きかな?』
恒一『肉じゃがとか?』
有田『肉じゃがも好きだよっ!』
恒一『じゃあ、今度作ってこようか? 僕、肉じゃが得意なんだ』
恒一「何で知ってるの!?」
有田『本当にっ!? じゃあ、楽しみにしてるねっ!!』
恒一「まあ、良いだろう……五ターン目、『エッチ』だっ!!!」
有田『え、ええっ!? そそ、そんな事ないよっ!!』
恒一『ほら、このスカートから見える足とか、物凄い細いし、なんか守ってあげなきゃって思うんだ』
有田『あ、あう……うう……』
恒一『発育に不安を持ってるかもしれないけれど、僕はそんな事気にするべきじゃないと思う。有田さんは、今のままで良いんじゃないかな』
有田『そ、それ以上は恥ずかしいからダメっ!!!』
恒一「ちくしょう、罠だった!!!」
怜子「恒一くーん、ごはんだよー?」
恒一「あ、はーい、今行きまーす!」
恒一「ここまでか……セーブをしてっと……夜にもやろう」
恒一「全ての準備は整った! 僕は、有田さんの荷物持ちをしなきゃいけないんだ!!」
昼休み(ゲーム)
恒一「と、その前に昼イベントか……あ、有田さんのイベントがない……」
恒一「今更、他の人との出会いイベントをやるのもなぁ……スキップしようかな」
有田『ご、ごめんね、待たせちゃった?』
恒一『ううん、そんなに待ってないよ。それに、有田さんに日直の仕事があるのは、わかってたから』
有田『でも、私から頼んだのに待たせちゃったら悪いし……』
恒一『それも、迷子の僕を案内してくれた恩返しだから、気にする必要は無いんだよ』
有田『ううん、でも……』
恒一『それより、せっかくの大安売りが売り切れてたら寂しいから、行こうよ』
有田『うん! そうだね! 今日は宜しくお願いします!』
恒一『うわぁ……嵐の後みたい……』
有田『……ううん、まだだよ。まだ残ってる物は残ってる』
有田『榊原君はここで待っててっ! 私はめぼしいものの確保をしてくるねっ!!』
恒一『う、うん……』
恒一『(有田さん、慣れてるんだなぁ)』
恒一『あの状況で、よくこんなに見つけたね』
有田『あはは……あのお店は、たまに大特価のものをこっそり置くから、それを買っただけだよ』
恒一『いつもスーパーで買い物するの?』
有田『うん、私の家、両親がどっちも出張が多くてさ、今も二人とも海外にいるんだ。だから、料理や節約も自分でしないといけなくて……』
恒一『へぇ、そうだったんだ。僕も両親が海外なんだ。夜見山へ来たのも、二人がインドに入っちゃったからなんだ』
恒一「……これ、思いっきり僕の個人情報だよね? まあいいけど」
有田『そう、あんまり綺麗じゃないけど、キッチンまで運んで貰っても良い?』
恒一『もちろんだよ』
キッチン
恒一『よいしょ、いつも特売の日は、こんなに持って帰るの?』
有田『うん、重いけど頑張ればどうにかなるから、頑張ってるよ!』
有田『でも、今日は榊原君が居てくれて助かったよ! 本当にありがとねっ!』
恒一『ううん、全然良いんだよ』
有田「おはよう悠ちゃん」
江藤「おはよう松子ちゃん」
恒一(有田さん、リアルでも少しくらいは話せる仲になりたいな)
恒一「おはよう有田さん」
有田「おはよう榊原君」
恒一(凄いナチュラルに挨拶だけだった……)
江藤「ねぇねぇ松子ちゃん、今日○○スーパーで特売だって」
有田「ええっ!? 本当っ!? 行かなきゃっ!!!」
恒一(あ、本当っぽい)ヌスミギキ
恒一(どうしようかなぁ……とりあえず、アナガミクリアしようかな)
恒一「ふっふっふ、有田さんのイベントをひたすらやり続けて、好感度がスキまで来たぞっ!!!」
恒一「怜子さんに不審に思われたり、怜子さんに見つかりかけたり、怜子さんに睨まれたりしたけど、PSPは無事だっ!!」
恒一「さあ! 有田さんとイチャイチャしよう!!」
恒一『有田さんの料理って、おふくろの味だよね』
有田『もう、そんな事ないよぉ。私なんて、まだまだだよ……』
恒一『それこそ、そんな事ないよ。僕は毎日だって食べたいくらいだね』
有田『え、ええっ!? それって……』
恒一『どうしたの? 有田さん』
有田『……鈍感』
恒一「むっとしながらも、好感度は上がる有田さんはかわいいなぁ!!!」
有田『どう言うこと?』
恒一『ほら、友達以上恋人未満って言うけどさ、その時点で恋してるよなって、僕はそう思うんだ』
有田『……私もそう思うな。仲が良くなって、気がついたら好きになってるって事も、あると思う』
恒一「これは、あきらかに僕が鈍感すぎるよね! 有田さんが可哀想だよ、早く気づいてやれよ!!」
有田『頬に? ……うん、榊原君なら良いよ』
恒一『やっぱり、有田さんの肌はスベスベだね』
有田『もう、スベスベじゃなかったらガッカリしたの?』
恒一『日頃からじっくり観察してたからね。スベスベじゃないはずなんて無かったんだよ』
有田『さ、榊原君……』
恒一「僕としては、付き合う前にこういう事するのは、どうかと思うけど……ゲームだから良いよね」
恒一『ん……』チュッ
有田『榊原君……ん……』
恒一「良いよねっ!! ハッピーになるよね!! イベントCGにもかなり気合い入ってるね!!!!」
恒一「さあ、これがラストのイベントだ……」
恒一『有田さん、僕、君のことが好きなんだ。迷った僕を助けてくれたり、料理を作ってくれたり、お節介なくらい僕に優しい有田さんが、大好きなんだ!!』
有田『榊原君……私も、私も榊原君の事が大好きっ!! 荷物を運んでくれたり、料理を教えてくれたり、お節介なくらい私に優しい榊原君が大好きだよっ!!』
きーらきーらきーらめーく♪
恒一「終わった……」
恒一「今の僕なら、リアルの有田さんとも、仲良くなれる……かな!」
恒一「ふぁあ……寝よう」
恒一(朝は、ただ挨拶をしただけだった……でも、朝はそれだけでいい)
恒一(食後のこの時間に、僕は有田さんとの距離を縮める!!)
恒一「有田さん、ちょっとお話しない?」
有田「うん、いいよ!」
恒一「あのさ、こういう話があってさ……」
恒一「……ってわけなんだ」
有田「すごいねっ! そんな事があるんだね」
恒一(有田さんがどうすれば喜ぶか、僕にはわかるっ!!)
恒一「この前の数学の時間なんだけどさ……」
恒一「……ってわけなんだ。数学って凄いよね」
有田「へぇー、数学って難しいけれど、見方を変えると簡単になるんだねっ!」
恒一「あ、もう時間だね」
有田「うん、じゃあまたねっ!!」
恒一「うん、授業でわからない所があったら、すぐに呼んでいいからね」
有田「あはは……それはすぐに呼んじゃいそうだなぁ……」
恒一(……有田さんと仲良くなったぞ!)
恒一(よし、これからは僕も自分で料理をしよう!!)
恒一「えっと、ケチャップは……」
有田「あれ? 榊原君?」
恒一「有田さん? 偶然だね」
有田「ケチャップならあっちの棚だよ。榊原君も料理するの?」
恒一「うん、東京では料理クラブだったからね」
有田「すごいなぁ、私も一応やるんだけど、まだまだで……」
恒一「僕に教えれる範囲なら、教えようか?」
有田「いいのっ!? なら、お願いしちゃおうかな!」
恒一「お安いご用だよ」
恒一宅
恒一「有田さんの家に行ってきまーす!」
怜子「また料理指導?」
恒一「うん、今日は一緒に肉じゃがを作る事になってます」
怜子「そう……怪我させないようにね……」
恒一「はーい!」タタタタ
怜子「恒一君は、女の子を落とす技術が、異様に上昇しちゃったか……まあ、浮気してないからいいけれど」
恒一「うん、おいしいよ!」
有田「本当っ!? 良かったぁ……」
恒一「これなら、毎日食べたっておいしいだろうなぁ」
有田「!? わ、私は毎日作っても……良いんだよ?」ボソッ
恒一「うん? 何て言ったの?」
有田「ううん、何でもないっ! 片付けしてくるね!」タタタタ
恒一(聞こえちゃったじゃないか。……まったくもう)
恒一「有田さんはかわいいなぁ!!!」
Aritar
おわり
アマガミでは七咲が好きです
anotherでは有田さんと江藤さんが好きです
有田さんはかわいいなぁ!!!
乙
次回の有田さんにも期待‼
Entry ⇒ 2012.06.07 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
恒一「クラスの誰かが巨乳になる現象……?」千曳「あぁ」
千曳「しかし彼はあるとき、胸の惨状を嘆く女生徒の声を耳にした。優しい彼のことだ。放っておけなかったのだろう。彼はこういったんだ」
千曳「『彼女の胸はある!ほら、今も僕の掌に納まるほど豊満に!!』」
千曳「残念ながら女生徒の胸は断崖絶壁だったからそんな訳がない。女生徒は自覚していたから当然泣きだしてしまった。だが」
千曳「『本当だ!岬の言うとおり、胸がある!なんて大きいんだ!!』」
千曳「崇拝にも似た支持を受けていた彼だ。そんな彼の言葉を蔑には皆しない。
他の男子生徒も同様に女の子の胸があるように扱い始めた。それから他の男子生徒も、女子生徒さえも。
彼女の胸があるものと扱い始めた。当時、教育熱心な教師であった私も、若気の至りで、それが正しいと思ってね」
千曳「それから皆でその女生徒の胸があるように接し始めた。胸の近くで腕を振れば空を切ってもあたかも彼女の胸に触れたように。最初は居た堪れなさそうだったが、
やがてその女生徒も慣れていき、次第に自分に胸があるようにふるまい始めた」
千曳「大分大きめのブラを買ったりね」
恒一「そんなことが……」
千曳「信じられないと思うが、確かに現象はそこにあるんだ。因みに、その生徒と言うのは君のお母さんの理津子君だ」
理津子「えへへ///」テレテレ
恒一「母さん……」
千曳「付け加えれば十五年前は怜子君だった」
三神「えへへ///」テレテレ
恒一「怜子さん……」
バンッ
鳴「話は聞かせてもらった」
小椋「対策が必要ね!」
恒一「……」
小椋「しゃ、しゃーないわね!」ビシッ
鳴「誰かに押し付けるくらいなら、私が」スッ
綾野「いきなり始まったけど……『有る乳』って何?」
恒一「実はかくかくしかじか」
綾野「え、何それ!?ずるーい!あたしも!!」ビシッ
赤沢「……他は?」
勅使河原「つーか、いきなり始まったけどあるちちってなんだよー。親父あるあるか?」
赤沢「胸の無い女子の為に有るように扱ったら卒業後爆乳になるって話よ」
勅使河原「なんだそれ。ただの成長期だろ」
鳴「愚鈍に構っている時間などない」ギロッ
綾野「てっしーはお口チャックね」ギロッ
勅使河原「えっ、ごめんなさい……」
赤沢「勅使河原にしてはまともな意見だと思うけど、生憎そうとも言い切れないのよ。ねぇ、お義母様?」
理津子「この私が証明です!」
恒一「母さん……」
三神「私もです!」
恒一「怜子さん……」
赤沢「今配っているプリント見てもらったら解かるように、中学三年生の段階で絶望的だった胸が現象のおかげで
現段階でこれほどまでの膨張を見せているわ。つまり現象は――ある」
小椋「……!」ゴクリ
鳴「……!」タラリ
恒一「いや……僕は正直どうでも……大小関わらずその人の胸の個性を大切にすべきだと思うよ」
水野「流石榊原、良い事言うじゃねえか」
前島「おっぱいの前に大小など些事に過ぎない」
綾野「そ、そっか」
勅使河原「まぁ、眼福が増えるにこしたことはねーよな。望月もやったらどうだ?」
望月「えっ。それどういう意味?」
赤沢「え~、では、以上の三名の胸をこれから有るものとして扱ってください~。では、これで会議を終わります~(棒)」
小椋「始まったのね……!」
鳴「……刻が、動き出す」
恒一「ごめん……僕が千曳さんに怪談を訊きにいったばっかりに……」
赤沢「恒一君が自分を責める必要なんてないわ」ポヨン
桜木「そうです!元気を出してください!」ポヨン
鳴「私の胸で、傷付いた榊原君を癒してあげる」ダキッ
ゴリゴリ
鳴「気持ちいいでしょ?」
恒一「(痛い)」
ベシッ
鳴「き・も・ち・い・い・でしょ?」
恒一「あーはいはい気持ち良いですー」
鳴「そう。良かった」
桜木「そ、そうですよ!榊原君、痛そうです!」
鳴「桜木さん、それって大丈夫なの?」
桜木「あっ……!」
勅使河原「何も問題ないだろ。見崎の胸が無いことを指摘して人が死ぬわけでもあるまいし」
赤沢「見崎さん、そういう強引な手法はペナルティを与えざるを得なくなるわよ?」
鳴「チッ」
赤沢「まったく……恒一君、大丈夫?」ダキッ
恒一「ちょっ、赤沢さんっ!? あ、あの、さ?」ポヨポヨ
赤沢「うん?何?」ナデナデ
恒一「うぅ///」
鳴「……!」ギリッ
小椋「いやーもうねー!本当肩こりがひどくて大変だわー!!」ブンブン
杉浦「へぇ」
綾野「あたしもー」
杉浦「ふぅん」
小椋「あたしぐらい胸が大きいとさー!本当困っちゃう!男子の視線とかやらしいよねー!!」ノッペリ
綾野「本当やーねー」
杉浦「あ、中尾。日誌お願い」
中尾「まかせろー」
小椋「あたしくらい胸が大きいとさー!!」ツルペタ
杉浦「泉美、榊原君。いちゃつかない」
赤沢「い、いちゃついてなんかないわよ!?」パッ
恒一「温もりが……」
鳴「赤沢さんの断崖絶壁、痛かったよね、榊原君?」ナデナデ
恒一「……温もりがぁ」
恒一「おうふっ」ポヨポヨ
風見「」ガタッ
鳴「」グワッ
桜木「ど、どうですか?榊原君……/// あ、赤沢さんほどじゃないかもしれないですけど……」
恒一「いや、赤沢さんよりずっと大きいよ……とても気持ち良い、桜木さん……///」
桜木「そ、そうですか!よ、良かったです///」ギュゥッ
赤沢「ちょ、ちょっとゆかり、何しているのよ、離れなさい!」
桜木「あ、あうっ」パッ
風見「こ、此処にゆかりの胸がああああゆかりの胸があああああああああああああああ!?」ズリズリ
恒一「(痛い)」
鳴「……!」ワナワナ
赤沢「誰が淫乱よ……」
桜木「そ、そうですっ!もとはと言えば見崎さんが……」
鳴「煩い。それよりも二人とも、ちゃんとして。私の胸はある」
赤沢「はいはい」
桜木「解かってます……」
鳴「榊原君も、ね?」
恒一「う、うん。でも、出来れば抱きつくのとかは勘弁してほしいかな(痛いから)」
鳴「そう……恥ずかしいもんね?」
恒一「うん、まぁ」
鳴「こんなところで榊原君にその気になられたら大変だもんね。気を付けます」
恒一「ありがとう」
水野「おっと、わりっ」
小椋「ちょ、ちょっと気を付けてよね!女の子の胸はデリケートなんだからっ!」
水野「えっ今の骨」バキッ
小椋「同感だわ」
赤沢「……とまぁ、初日の終わり。二人からこんな意見が寄せられたわけですが」
勅使河原「赤沢も大変だな……」
赤沢「今日ばかりはあんたの同情も甘んじて受けるわ……そういうわけで、皆明日からもうちょっと頑張ってください」ポヨンッ
ハーイ
小椋「まったく!」スカッ
鳴「ちゃんとして」スカッ
恒一「(赤沢さんと同じように腕組みをして風が胸を素通りする姿……なんて嘆かわしい)」ブワッ
綾野「こういっちゃんよしよーし」ナデナデ
望月「そういえば、綾野さんは良いの?」
綾野「うん。飽きちゃった」
恒一「何?」
鳴「今日、この後暇?」
恒一「まぁ、特に用事はないけど」
鳴「付き合って欲しいところがあるの」
恒一「うん、良いよ」
恒一「(下着ショップ……まさか)」
鳴「今のブラ……ちょっと小さいから」
恒一「(してたんだ……)」
鳴「用事、無いって言ったよね?」グッ
恒一「いやあの実は今思い出して」
鳴「言った・よ・ね?」
恒一「あ、はい。いやでもこういうところに男の僕が入るのはまずいんじゃないかなーって」
鳴「誰も気にしないから、ほら、来て」グイッ
恒一「うっ……。……はぁ」トボトボ
恒一「(もう服じゃないかそれ)う、うん……良いんじゃない?」
鳴「じゃぁ、これ買う」
恒一「えっ。いや、でもさ」
鳴「明日……付けて来るから///」
恒一「(着てくるの間違いだろ?)」
店員「お客様」
恒一「あぁ!そうですよね、僕みたいな男がこんなところに居たら迷惑ですよね!はいっ、すぐ出ていきます!」
鳴「……?」
店員「……お客様にはちょっと合わないかと。なんでしたら、寸法を測り致しましょうか?
それから選ばれたらどうでしょう?」
鳴「……これから大きくなるから、これで良い」
店員「いや、流石にいきなりそれほどには……」
鳴「……これからちゃんとおおきk」
恒一「見崎! そう言わずにさ、ね?店員さんの厚意に甘えよう?ね?今日買ったのが小さくなったら、
また買いにくれば良いからさ、ね!?」
恒一「(此処で止めないと……あんなもの着て学校なんかに来られたら見崎がとんでもない恥をかくことになってしまう)」
鳴「……榊原君が、そう言うなら……」
店員「そうですか!では、こちらに」
鳴ちゃんには崩れるだけの胸は無かったね、ごめん
恒一「(――なんて居心地が悪いんだ!心なしか、周囲の視線が僕に集まっているような気が……!)」
恒一「(違うんです、僕はクラスの女の子に付いてきて欲しいと言われただけなんです……!)」
恒一「(むがーい僕むがーい)」ピョンピョン
赤沢「……恒一君?」
恒一「あ、赤沢さん!と杉浦さん!」ピョンピョン
杉浦「どうして飛び跳ねているの?」
恒一「あ、いや、これは、その、そういう事情があってねあはは……」ピョンピョン
杉浦「止めた方が良いと思う」
恒一「だ、だよねー……」
赤沢「それよりも!どうしてこんなところに居るの!?此処、何処だかわかってる!?」
恒一「解かってるよ!でも見崎が強引に……!」
……ってあぁ、現象の……どっちにしろ許せん」ギリギリ
恒一「そ、そういう赤沢さんは?」
赤沢「私は……まぁ、同じような理由ね。由美に強引に……」
小椋「これなんてどうかな?」
綾野「着ていくの?」
恒一「……お互い、苦労するね」
赤沢「本当……なんでこんな厄介な現象が……大体胸なんて放っとけば嫌でも大きくなるのに」ポヨン
杉浦「それ、絶対あの二人の前で言っちゃだめだからね」
赤沢「貴方こそ、なんで恒一君をこんなところに連れ込んでるのよ」
鳴「榊原君が来てくれるって言った」
恒一「(言ってない)」
赤沢「……嘘でしょ?」ジッ
鳴「嘘じゃないよね?」ジッ
恒一「あはは……」チラチラ
杉浦「(情けない男……)見崎さんは、何をしていたの?」
鳴「……胸の寸法測ってもらった」
杉浦「サイズは?」
鳴「……J」
鳴「J……もしかしたらK」
赤沢「はいはい巨乳巨乳」
鳴「赤沢さんは?」
赤沢「私?うーん、前に測った時はDだったけど……今そのブラじゃちょっときついのよね……」
恒一「……へぇ」
赤沢「――!? ちょっ、恒一君!今の、嘘、聞かなかったことにして!!」
杉浦「嘘なら、聞かなかったことにしなくて良くなっちゃうよ?」
赤沢「もー!なんでこんなところに男の子がいるのよぉ!!」
鳴「……」ガシッ
赤沢「えっ?」ムニュッ
鳴「……」モミモミモミ
↓
JA
↓
農協
↓
NO胸
つまりそういうことか
恒一「え?僕も良いの?」スッ
杉浦「良い訳ないでしょ!!」ドスッ
恒一「ごふっ……だよねー」ガクッ
赤沢「やめっ……もう!」パシッ
赤沢「なんなのよいきなり……!こんなところで人の胸もみしだいて何のつもりよ……!J(笑)なら自分の触ってなさいよ!!」
鳴「……取れないかなって」
赤沢「取れるか!」
赤沢「えっ、えっ!?」ペタペタ
赤沢「……えぇ?」 ツルペタ
恒一「赤沢さんと桜木さん、今日は欠席か」
勅使河原「実は巨乳が死んでいく現象だったりしてな!」
望月「縁起悪いよ、勅使河原君……」
小椋「いやぁ、昨日買ったブラもなんだかさーもうきつくなってきてー」
中尾「うぃーっすって小椋なんでブラジャー着て」バキッ
恒一「え、僕?」
杉浦「あんたは泉美のお気に入りだからね」
中尾「俺も行く!」
勅使河原「弱った赤沢も面白そうだから俺も!」
綾野「んじゃ、あたしもー」
小椋「泉美に胸枕しないといけないからあたしも!」
望月「とどめを刺しにいくつもりなの?」
鳴「……私も。赤沢さんには、いつもお世話になっているから」
杉浦「(とどめを刺しにくるつもりなの……?)」
美咲にお風呂で揉みしだかれてたし
えっ
桜木「……赤沢さんもそうなっているってことは、おそらくは」ペタ
赤沢「……」
桜木「……」
赤沢「こ、これって……まずい?」
桜木「どうなんでしょう……なんだか憑き物が落ちたような気持ちもするけど……」ペタペタ
赤沢「そうよね……なんか、思いっきり走り周りたい気分」
桜木「あ、解かる解かる!」
ピンポーン
赤沢「誰か来た」
赤沢「えぇ……元々体調が悪かったわけではないの。ただね」
勅使河原「……なんだか、物足りない気がするな」
恒一「あぁその気持ち、とてもよくわかる……」
中尾「そんな赤沢さんも好きだ」
綾野「なんだろうなー……うーん……」
赤沢「あはは……そのぉ……」ポリポリ
鳴・小「「」」ブフォッ
小椋「ちょっと泉美wwwwどうしたのその胸wwwww」
鳴「くっwwww胸まで無くなってwwwwもう何も無いwwwww」
赤沢「あはは……」ピキピキ
赤沢「……そうよ。今の私は貧乳よ」
鳴・小「「wwwwwwwwww」」ブフォモァッ
赤沢「私の部屋にゆかりも居るから……とりあえず、皆上がって」
風見「お邪魔します」
風見「そんな桜木さんも素敵だよ」
桜木「あ、ありがとうございます……」
恒一「なんか大変なことになったみたいだね」
赤沢「それほど悪い気分じゃないけどね?」
桜木「そうですね。なんだか動きやすいし!」
風見「そんなゆかりも素敵だよ」
勅使河原「まぁツンデレツインテで貧乳じゃなかった今までの方がおかしかったからなぁ」
赤沢「何語よそれ」
中尾「どんな赤沢さんでも、俺は好きだよ?」
赤沢「きもい」
望月「それよりも……どうしてこんなことになったんだろうね」
鳴「貧乳に泣く」
赤沢「別に泣いてないけど……」
桜木「これなら体育とか頑張れそうです!」
綾野「おっ、良いねー。泉美んち確か外にバスケットゴールあったよね?バスケしない?」
桜木「やりまーす!」
風見「やれやれ」カチャッ
勅使河原「そっちの方が面白そうだな!」
赤沢「まぁ、期せずしてバカの厄介払いが済んだから……ってあんたたちもあっちに行って来たら?」
小椋「いやいやwwwww」
鳴「こんなに面白いもの、ほかにないwww」
赤沢「あっそう勝手にしなさい……。とにかくこの現象、少し厄介かもね」
鳴「都落ちの気分はどうwwwどうwwww?」
恒一「やっぱり現象の仕業なのかな?」
杉浦「そうとしか考えられない。でなきゃ、こんな短期で胸が萎むなんて起こり得ないよ」
望月「だとしたら――実は巨乳になる現象じゃなかったとか」
鳴・小「「」」
赤沢「……かもしれないわね」
鳴・小「「はああああああああああああああああああああああああ!?」」
赤沢「何に僻めっていうのよ」
鳴「なんでも現象の所為にするのはどうかと思う。流石は無能ね」
赤沢「もうあんたたちしゃべんないでよ」
杉浦「元に戻る方法とか……ないのかな?」
赤沢「さぁね……私は別にこのままで構わないけど。ゆかりもなんだかんだ楽しそうだし」
小椋「泉美、ちょっとメジャーとかない?」
赤沢「黙ってろつってんのに……机の引き出しに入ってない?」
鳴「あった」
小椋「よし、泉美脱げ」
赤沢「馬鹿じゃないの、あんた」
杉浦「榊原君は止めたいんだね」
恒一「当たり前だろ!?」
中尾「はっきり言いやがったなこの変態」
恒一「もう僕を胸でよしよししてくれるのが杉浦さんしかいないだなんて……」
杉浦「しねーよ」
恒一「僕はなんとしても赤沢さんと桜木さんの胸を元に戻してあげたい。協力してくれ」
中尾「やだよ」
杉浦「二人は満足しているしね」
赤沢「で、測ったけど……あんたたちはどうなのよ」
小椋「黙れ」
鳴「死ね」
恒一「どうした望月。何か妙案が……?」
望月「三組一の巨乳は三神先生。訂正お願いね?」
恒一「よし、誰か何か対策はないのか?」
中尾「ねーよ」
杉浦「私もバスケしにいこうかな」
小椋「バスケでケリつけようぜ?なぁ」
鳴「だろ?」
赤沢「なんなのよ……あんたたち……」
恒一「……」トボトボ
桜木「榊原君――手加減はしませんっ!」ダッ
恒一「……」ババッ
桜木「きゃぁっ!」
ゴリッ
恒一「……勅使河原」シュッ
赤沢「脇ががら空きよ恒一君!」バッ
ゴリッ
恒一「……」
恒一「(いけない……全くバスケを楽しめない……)」
恒一「(あの二人の胸が無いというだけでこの喪失感……僕は……)」
恒一「(無くして初めて大切なものだと気付いた……おっぱい)」
恒一「……もっと触っておけばよかった!!」ガシッ
杉浦「」モニュッ
杉浦「……下種が」ペッ
恒一「くっ……畜生、僕はなんて無力なんだ……!」
恒一「……ただいま」
理津子「お帰り、恒一」
怜子「おかえりー」
恒一「うっ……怜子さあん!」ダキッ
怜子「おーおーどうしたの?」ヨシヨシ
恒一「(これだ……僕が学校に求めているのはこの温もり)」ズリズリ
理津子「何やってんのよあんた」ガシッ
恒一「あー怜子さーん」
怜子「こーいちくーん」
理津子「良い年こいて叔母の胸に埋もれてるんじゃないの。あんたも甘やかさない」
怜子「良いじゃない。ねぇ?」
恒一「ねぇ……?」
理津子「顔が下種なのよ、恒一」パンッ
恒一「……」ジンジン
理津子「人の所為にしない」
恒一「あんたたちが始めたんじゃないか!!」
理津子「恒一……」
恒一「嘘っぱちだ……畜生、夜見山岬に逢わせろ!!一発顔をぶんなぐってやる!!」
理津子「彼の顔にもう殴る箇所なんてないわよ……」
恒一「騙された……千曳さんもあんな嘘を教えやがって!何が卒業式には巨乳になる現象だ!
寧ろこんな大事な時期に僕のおっぱいが貧乳になったじゃないか!!」
理津子「あんたの胸は貧乳云々じゃないでしょ」
恒一「違う……そうじゃない……話を聞いてくれないか、母さん……」
理津子「聞きたくないけど……まぁ、話してみなさい」
恒一「あぁ……くそっ、なんでこんなことに……!!」
理津子「……それはないわ。確かに、糞山下種きの呪いのおかげで、私の胸は膨らんだから……
成長期にしては異常な膨らみ方をね。怜子もそうだった」
恒一「え……じゃぁ、じゃぁどうして僕のおっぱいは断崖のように萎んだんだよ!?」
理津子「だからあんたはおっぱい云々じゃないでしょ。もう変なところで馬鹿になるのあんたのお父さんそっくり」
恒一「あんな変態と一緒にいないでくれ!!」
理津子「十分あんたは変態でしょ」
恒一「あんな変態の話は良い……それよりも、夜見山岬に逢わせてくれないか……?それが本当なのか、聞きたいんだ」
理津子「千曳さんに聞いて勝手に会いに行って。私、あいつ嫌いだから」
恒一「……解かった」
ここまで酷い渾名はなかなか無い
千曳「榊原君。こちらが、件の夜見山岬君だ」
恒一「どうも、初めまして……榊原恒一です」
夜見山「あまり畏まらなくて良いよ、恒一君。それにしても、若い頃の三神さんになんとなく似ているね」
千曳「それは私も思ったな。お母さん似なんだね」
恒一「えぇ、まぁ」
夜見山「さて……世間話はこれくらいにして、本題に移ろうか。僕に訊きたいことがあるんだよね?」
恒一「……貴方が起こしたのは、本当に、貧乳が巨乳になる現象なんですか?」
夜見山「……あぁ、間違いないよ。現に三神さんは大きいだろう?」
恒一「少し垂れてきたようにも思えますけどね」
夜見山「悪意はなかったんだ……彼女が困っているように見えたから、なんとかしてやりたくてそれで……」
千曳「その通りだ。だから夜見山君を責めないでやってくれ。彼はもう、学生時代にこれほどかというほど理津子君から制裁
を受けたからね」
夜見山「止めてください先生……傷が、疼く」
夜見山「それはもう、断崖絶壁さ」
千曳「そこには何もなかったよ。愛も、脂肪も。それが夜見山君の働きのおかげで、あそこまでに
成長したんだ。これを奇跡と言わずなんと言おう?」
夜見山「おかげで僕はおっぱい星人にされましたけどね。尻の方が好きなのに」
千曳「今は……写真家をやっているんだっけ?」
夜見山「はい。あ、そうだ先生。これ今度出す写真集です」
千曳「ほほぅ、これはこれは」
夜見山「恒一君もどうだい?」
恒一「このアングル――良いですね」
夜見山「だろう?」
千曳「十一年の歳月を経て蘇ったと言った方が正しいかな。奇しくも同じ三神姓の少女にね」
恒一「それまでは……?」
千曳「誰もやろうとしなかったよ」
夜見山「よく考えれば当然ですよね。今思い出すと本当に、若気の至りだったとしか」
千曳「まずあれほどの断崖絶壁もなかなかいないからね(笑)」
夜見山「ですよね(笑)」
恒一「……それじゃぁ」
恒一「どうして、僕のおっぱいは萎んだんですか……!?」
夜見山「えっ(驚愕)」
夜見山「き、君……おっぱいがあったのかい?」
恒一「いえ……僕じゃなくて、僕のおっぱいが、萎んだんです」
夜見山「言っている意味が分からない」
恒一「……解かりました。ちょっと待っていてください」スタスタ
恒一「……これが僕のおっぱいです」
赤沢「初めまして……えっと……」
桜木「……?」
夜見山「これはまた……見事な絶壁だ」
夜見山「妹さんは知らないですが、確かに三神さんは他の女の子と比べるのは冒涜ですね」
赤沢「恒一君……千曳さんと……この人は?」
恒一「彼が、夜見山岬だ」
桜木「!? 夜見山岬って……現象を生んだ張本人……!」
夜見山「勘違いしないで欲しいんだけど、僕はおっぱいよりもお尻の方が好きだな」
赤沢「……下種ね」
桜木「最低……!」
夜見山「恒一君のお母さんにもよく言われたよ」
恒一「夜見山さん、この二人が僕のおっぱいです」
千曳「……なるほど、確かに萎んでいるな。夜見山君、そちらの子は解からないが、こちらの赤沢君は私とも親交のある
生徒なんだ。彼女の胸はこんな有様ではなかった」
夜見山「なんだと……それじゃぁ!」
恒一「二人がこうなったのは……どうしてなんですか、夜見山さん!!」
夜見山「……!?」
夜見山「僕なりに、調べてみるよ……といっても当時の同級生を当たるくらいしか出来ないけど」
恒一「……僕ももう一度母に当時の事を詳しく訊いてみます。それと怜子さんにも。
……二人とも、必ず元に戻してあげるからね」
赤沢「いや、別に良いんだけど」
桜木「寧ろこのままの方が……」
恒一「……必ず元に戻してあげるからね!!」
恒一「ごめんなさい……」
怜子「ふあぁ……ん?どうしたの恒一君、元気ないね?」ダキッ
恒一「怜子さん……」
怜子「ほれほれ~元気出して~?」モニュモニュ
恒一「ありがとうございます……」
怜子「何か困っていることがあるなら私になんでも相談しなよ~?」
恒一「はい……実は――」
恒一「はい……」
怜子「……」
恒一「僕……――二人を、もとに戻してあげたいんです」
怜子「恒一君……」
恒一「二人の胸を元に戻してあげたい……怜子さん、お願いです!母さんじゃ埒が明かない、当時の事、もっと詳しく教えてもらえませんか!?」
怜子「恒一君……ごめんなさい……私ももう大分昔の事だからあんまり覚えては……」
恒一「どんな小さなことでも構わないんです!お願いします!!」
怜子「――止めてよ!!……私、ちっちゃくないもん。あるもんっ」グスッ
恒一「うあっ、ごめんなさいっ!」
怜子「いえ、私の方こそ……昔の事をちょっと思い出して……そうね――そういえば私の年は……誰かの……胸が……」
恒一「!? 怜子さん、どうなったんですか!?」
怜子「ごめんなさい……私以外の誰かの胸で騒いだっていうのはなんとなく覚えているんだけど……詳しくは……」
恒一「……怜子さん」
恒一「(結局何もわからぬ仕舞い……か。千曳さん、夜見山さんはどうなんだろう……)」
望月「榊原君」
恒一「望月……」
望月「実は聞いてもらいたいことがあるんだけど」
恒一「うん……何?」
望月「うちの姉さんが働いている喫茶店……夜にはバーになるんだけどさ。その常連さんでね」
望月「三年三組の現象に深く関わった人が……いるみたいなんだ」
望月「うん……あんまりにもお笑い草だから姉さんに話したら……姉さんも、聞いたことがあるって。
そのお客さんが居ることを、話してくれたんだ」
恒一「その人は今何処に!?」
望月「それは解からないけど……今日、姉さんに詳しい話を聞きに行くのはどうかなって思ったんだよね」
恒一「ぜひ頼む……!」
鳴「クラスの女子総貧乳化開始」
小椋「ヒエラルキーってものを教えてあげましょう」
赤沢「詳しい事解かってないのに……あんたたち本当に必死ね」
恒一「はい。榊原、恒一と言います」
智香「三年三組の現象の話よね?」
恒一「はい……此処の常連さんが、深く関わったと聞いて。なんでも良いんです。
教えてもらえませんか?」
智香「えぇ……ええとね、秋山さんって人なんだけど――」
秋山『飲まずにやってられっかぁ!ちくしょう……またフラれた……これも全部胸が小さいからだ!!』
智香『関係ないと思うわ』
秋山『マスター!バーボンだ、バーボンもってこーい!!』
智香『本当に酒癖が悪いんだから……』
秋山『畜生……ヒック……これが全て過ちというのか。この俎板は罰なのか?そうなのか?』
智香『はいはい』
秋山『聞いてくれマスター……夜見北中学三年三組の悪夢の話を――』
智香『はいはい。後、別に私マスターじゃないから』
秋山『……ぐぅ』zzz
智香『って寝ちゃってるわね』
智香「というわけなのよ」
恒一「なるほど……その秋山さんって人は何処に!?」
智香「さぁ……流石にそこまでは……」
望月「三年三組の現象はただ胸が膨らむってだけじゃなくて……何か別の反作用があるってことかな?」
恒一「それで間違いないだろうな。おそらくそれは胸が萎む現象。赤沢さん、桜木さんそして……その秋山って人が、それを受けた」
智香「彼女が結婚できないのは胸云々は関係ないわね」
恒一「でしょうね。智香さん、他に何か解かることとかないですか?
智香「うーん……あ、そうだ」
秋山『三十路までには結婚したいのにー!後一年もないよー!!』
智香「と言っていたわ」
恒一「――ってことはその人、もしかして怜子さんと……!?」
望月「……行ってみよう、榊原君」
恒一「知ってるんですね!」バンッ
怜子「えぇ……まぁ、友達だったから……まぁ、最近じゃあんまり会ってないけど」
望月「その秋山って人……もしかして、胸が萎んだりしませんでしたか?」
怜子「萎む――あぁそうだそうだ!思い出した!!良子が教えてくれたんだ、三年三組の現象のこと!良子ってね、都市伝説とか大好きでね~」
恒一「そんなことどうでも良いんです!!」バンッ
望月「馬鹿野郎!良い訳あるかよ!!……三神先生、続けてください」
怜子「あ、ええとね。まぁ、当時私胸が本当に真っ平だったから。それ結構気にしてて……
大きくならないかなぁって思ってた時に教えてもらったのよ。現象の話を」
望月「なるほど。それで?」
怜子「それでまぁ、良子って結構騒がしいというか、それなりに中心的な子だったから、その現象を試してみようって言ってね…… まぁ、姉さんがされたようなことを同じように私もね……」
望月「何かしらのペナルティを与えられるような事はしていない……?」
怜子「ううん」フリフリ
恒一「え?」
怜子「あいつは罰を与えられるべきであり、そして受けた――あいつね、すっっっっっっっっごく私のこと馬鹿にしてきたのよ!
あぁ思い出したら腹立ってきた!!そうよ……自分が発育良いからって……事あるごとに人を馬鹿にして……!現象を始めた時もそう ……! あるように扱いながら、あいつが私を煽る視線!思い出しただけでうあああああ!!」ワシャワシャ
恒一「怜子さん、落ち着いてください!」ガシッ
望月「三神先生!」ダキッ
怜子「ふぅ……ふぅ……!とまぁ、そういうわけで。彼女が私を煽り続けたある日――彼女の胸が萎んだのよ。それはもう、ざまぁみろだったわ!
あっはっはっは!!そして卒業式の日に私はこの胸を手に入れた。これが十五年前の現象の始終よ」
恒一「……その現象の治し方とかは?」
怜子「知らないわよそんなの。う~ん、一応良子に話聞いてみる?連絡先くらいなら知ってるし」
望月「お願いします」
小椋(旧スク)「ひんぬービキニが許されるのは小学生までだよねwwww」
赤沢(ビキニ)「煩いわね……折角だから楽しみましょう、ゆかり」
桜木(ワンピ)「はい!私、今ならどんなスポーツも出来る気がします!」
風見「桜木さん、とても素敵だよ」
中尾「赤沢さん、最高です」
勅使河原「ビーチボール準備万端!」
綾野「海よー私は帰ってきたー!」
恒一「正直救いは杉浦さんだけかと思ったけど……あれはあれでアリだという事に気が付いたよ」
杉浦「スライスされろ変態」
望月「じゅ、ジュース買ってきました!」
理津子「ありがとー」
ハーイ
赤沢「ゆかり、ブイまで競争しない?」
桜木「望むところです!」
小椋「上等。負けた方が真の貧乳ね?」ズイ
鳴「とうとう雌雄を決するときが来た」ズイ
赤沢「あんたらは呼んでない」
パシャパシャッ
恒一「ん……あれは?」
夜見山「……」パシャパシャ
理津子「今度は盗撮かこの変態」ブンッ
夜見山「げぼら」ズサッ
夜見山「やぁ恒一君……こんなところで会うなんて奇遇だね?」
恒一「どうして此処に?」
夜見山「本能かな?」
理津子「恒一、私が息の根を止めるからあんたは穴掘ってなさい。はいこれスコップ」
夜見山「あぁ待ってくれ三神さん!違うんだ、話を聞いてくれ!」
理津子「何が違うっていうのよ……!あんたはただの変態、間違いないでしょ?」
その、君が本気で困っていると思ったからどうしても力になりたくて……」
理津子「やったことは最低最悪だけどね」
恒一「まぁまぁ母さん。そのおかげでコンプレックスを解消したんだから夜見山さんをそんな責めることないだろ?」
夜見山「恒一君……!」
理津子「……まぁ、そうかもしれないけど」
恒一「それよりも夜見山さん……どうでしたか?」
夜見山「あぁ。弟から話を聞いたんだが……実は、膨らむ話ではなく、萎む話……それを教えてもらったよ。
僕の弟ということもあって、なんとなくで始めたんだが、なんでも、対象者を馬鹿にした女生徒に降りかかったらしいんだ。
結局その年はその馬鹿にした子を戻すことに一生懸命で対象者の子はそれほど気にしていなかったこともあり中断。
再生に成功したけれど、元鞘だから記録としては残さなかったとか」
恒一「……!?どうやって戻したんですか!?」
翌日、彼女の胸が元通りになっていた。いや、少しだけ大きくなるというおまけつきでね」
恒一「おまけつき……!」ハァハァ
夜見山「元々無い物に接するよりも楽だったと言っていた。どうだろう、これで力になれたかな?」
恒一「はい!ありがとうございます!!」
理津子「怜子……あれ、欲しかったらあげる。私、いらない」
怜子「もーどうしたのー?」
望月「日差し、大丈夫ですか?」
理津子「望月君……家に来ない?」
望月「えっ」ドサッ
小椋「……戦いに負けて勝負に勝った……へっ、今どんな気持ち……?」ハァハァ
赤沢「はいはい。あ、あっちで多佳子たちがビーチバレーしてる。ゆかり、行きましょう」
桜木「はいっ!」
勅使河原「食材釣るぞー」
綾野「おー」
理津子「本当、望月君みたいな良い子がだったら家の息子だったらなぁ……可愛いし」
望月「い、いえ、僕はそんな」
怜子「ちょっとおねーちゃん。人の生徒誘惑しないでくれる?望月君は私のなんだから」
望月「」ブッ
風見「今日は、来てよかった」
中尾「あぁ」
夜見山「それにしても君のお母さんの尻の垂れ具合、あれは理想的だね」
恒一「皆に聞いてほしい話があるんだ」
勅使河原「なんだよ改まって」
恒一「皆、このままで良いと思うか?」
勅使河原「だからなんの話だよ」
恒一「赤沢さんと桜木さんの話に決まってんだろ!?」バンッ
勅使河原「何怒ってるんだよ……」
恒一「本当に……このままで良いのかよ!?」
勅使河原「うるせえよ……」
水野「……良くないな」
米村「あぁ……良くない」
勅使河原「水野……米村……」
前島「良いわけあるかよ、畜生!」
恒一「前島君……!」
高林「――フェアじゃないよ!!」
恒一「高林君……!!」
水野「できるのか、榊原」
恒一「あぁ……僕たちが力を合わせればな」
米村「……喜んで、協力する」
勅使河原「しょうもないなお前ら。まっ、でも眼福がないってのはそれはそれで寂しいから、
俺も協力するぜ?」
恒一「勅使河原……信じていた。さて、もとに戻す方法だけど――」
バンッ
中尾「お前ら黙って聞いていれば……赤沢さんを胸でしか判断してないのかよ!?」
風見「君たちはゆかりをなんだと思っているんだ……彼女の価値は胸ではない」
恒一「風見君……中尾君……」
風見「断固として君たちに異を唱えさせてもらう。ゆかりはそのままが可愛い」
水野「そんなことよりおっぱいだ!」
米村「おっぱい!おっぱい!!」
恒一「……二人の言う事はもっともだよ。だけど……――君たちが見ている赤沢さんと桜木さんは、本当に彼女たちなのか?」
中尾「なん……だと」
風見「どういう意味だ、榊原君……?」
それでも、あるがままの彼女たちだと言えるのか……?僕は、言えないと思う。彼女たちが
積み重ねてきた成長を、彼女たちの喜びや悲しみが詰まったおっぱいを無為にすることなど――
僕は許さないと思う!!」バンッ
中尾「――!!だ、だが!」
風見「君が言っているのは正論かもしれない……だが君たちの下劣な視線に、ゆかりを晒したくなんてないんだよ!」
水野「馬鹿野郎!」バキッ
米村「おっぱいを愛する心に、汚いも綺麗もあるか!!」バキッ
中尾「水野……!」
風見「米村君……!」
高林「誰しもフェアなんだよ。おっぱいに対する……思いは」
勅使河原「高林……!」
恒一「……これを見てくれ」スッ
中尾「!?」
風見「こ、これは……!」
僕たちに力を貸せば、その写真通り――いやそれ以上かもしれない彼女たちが手に入る」
中尾「」
風見「」
水野「駄目だ榊原……こいつらはもう」
米村「死んじまった……!」
恒一「……そうか。だが変わりはない。我々三年三組はこれより、桜木、赤沢の豊乳再生計画を実行する」
恒一「女子たちへの根回しは僕に任せてくれ……では、解散!」
来る日も来る日も、恒一たちは二人のおっぱいを有るものだと認識した。
幸いにも、皆それを行うのは簡単だった。誰しもが二人の豊乳の恩恵を受けていたからだ。
肘触れ、躍動、谷間。男たちは己の脳髄に眠るパターンを呼び起こし、状況に起こして取るべき反応を喚起した。
世界に刻まれる、少年たちの汗と涙。
最初こそ冷ややかだった少女たちも、やがてはその熱情に打たれ、赤沢泉美と桜木ゆかりの胸を有るものだとして扱い続けた。
鳴「ちょwww何これwww壁www?なんでこんなところに壁なんてあるんですかwww?」
小椋「ちがうよ鳴wwwwそれ泉美の胸だってwww」
鳴「うそwwwこれが胸www胸ってもっと柔らかいんじゃwww」
小椋「wwww」
この二人を除いては。
桜木「そうですね……運動とか、しやすくて良いですし」
恒一「でも赤ちゃんにおっぱいあげるとき困るかもよ?」
赤沢「そっ、それは……///さ、流石にそのときには元通りになっているわよ///」」
桜木「そ、そうですよっ///もうっ///」
恒一「いや、どうにも戻らないらしい」
秋山「証明は私です……」グスッツルペタ
赤・桜「「えっ」」
次第に事の重要性に気付いた彼女たちは――やがて、必死とも言える形相で事態に協力的になった。
雨の日も風の日も、雪が降った日も来る日も来る日も。
鳴「由美www雪玉作ったwww的当てやろうwww」
小椋「良いよwwwってこれ的じゃなくて泉美の胸www」
鳴「www」
こいつらは――二人を煽り続けた。
そして迎えた卒業式――。
赤沢「もう卒業か。案外、早かったわね」
桜木「そうですね……入学したのが昨日のように思えます」
恒一「二人とも、あっちで卒業写真撮るってさ」
鳴「胸の小さい人順で並んでくださいwww」
小椋「ほらほらwww二人とも前々www」
赤沢「普通に身長順でしょ?」
桜木「どちらにしても、お二人が最前列ですね……」
夜見山「とるよー。さんにいち、はいおしり」
パシャッ
恒一たちの血と涙の結晶は二人の胸に確かに詰め込まれ、見事豊乳を取り戻した。
赤沢泉美。
桜木ゆかり。
卒業式の翌朝、二人は安堵し、恒一に連絡した。
赤沢「ありがとう」
桜木「ありがとう、ございます」
だが返事が来ない……二人が耳を凝らしてみると……。
恒一「ウッ……グスッ……」
恒一は泣いていた。
智香「いらっしゃい」
鳴「……」ストン
小椋「……」ストン
智香「ご注文は?」
鳴「……胸が、膨らむ」
小椋「飲み物を」
智香「……」
「マスター」
智香「……私はマスターではありませんが、はい?」
「二人に極上の酒を……一杯やってくれ」
智香「……秋山さん」
秋山「それからあたしにも……ね?」
~END~
質問とかあったらどうぞ
ですよねーww
乙でした
乙
読んでくれてありがとう
たくさんの乙をありがとう
全てのおっぱいに、ありがとう
そもそも吸い取りじゃなくて胸が大きくなる現象でした
秋山さんが貧乳になったのはそういう現象ってだけです
だからクラスメイトが『有る乳』に参加していれば鳴ちゃんも小椋さんも巨乳になっていました。
>>217
尻だったら左ですね
Entry ⇒ 2012.06.06 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
恒一「見崎を棺桶の中に閉じ込めてみた」
鳴「そういえば榊原くん」
恒一「なに?」
鳴「自分が死者なんじゃないか、って疑ってみたって聞いたけど」
恒一「ああ……」
鳴「疑いは解けた?」
恒一「ん……まあ……」
鳴「……」
恒一「?」
タッタッタ…
恒一(……店の奥に走って行った?)
恒一「見崎? どこに行くの?」
タッタッ…
恒一(カーテンの奥かな?)スッ
恒一「……あれ? これって……」
「――新しい人形が、この中に収められるみたい」
恒一「!?」ビクッ
恒一「……あっ」
鳴「……」
恒一(見崎……なんで棺桶の中に……?)
恒一「……」
鳴「……安心して」
恒一「……」
鳴「死者じゃない」
恒一「……」
鳴「榊原くんは死者じゃn」恒一「えいっ」バタンッ
鳴「……」
鳴「……」
鳴「……えっ?」
鳴「……ちょっと、榊原くん」
恒一「……」
鳴「何で棺桶の蓋閉めたの?」
恒一「……」
鳴「ねえ聞いてる?」
恒一「……」
鳴「ちょっと」
恒一「……」
鳴「……ねえ、返事してよっ」バンッ
恒一「……」
鳴「……もしかして私に意地悪してるつもり?」
恒一「……」
鳴「だとしたらこんなの不毛ね。私は別にこのぐらいどうとも思わないもの」
恒一「……」
鳴「こんなの暗くて狭いだけ。少しも怖くないし、ちょっと息苦しいだけよ」
恒一「……」
鳴「だから早く私を出した方がいいよ。今なら怒らないであげるから」
恒一「……」
鳴「……ねえ」
恒一「……」
鳴「…………だから返事してよっ!」バンッ
恒一「……」
鳴「っ……」
恒一「……」
鳴「……いいわ、なら自力で開けてみせ、るっ……!」グッ
恒一「っ!」
鳴「うううっ……!」グググ
恒一「……! くっ……」ググッ
鳴「や、やっぱり外から押さえつけ……棺桶の前からどいてっ!」ググググ
恒一「っ……」グググッ
鳴「あ・け・て〜〜〜っ……!!」グググググ
恒一「くぅっ……!」
恒一「……!」ググググ
鳴「くっ……はぁっ」パッ
恒一「!」
鳴「はぁ、はぁ、はぁ……」ゼェハァ
恒一「ふぅ……」
鳴「はぁ……はぁ……」
恒一「……」
鳴「……どうやら意地でも開けてくれないみたいね」
恒一「……」
恒一「……」
鳴「悪ふざけにしてもそろそろいい加減にした方がいいと思うんだけど?」
恒一「……」
鳴「榊原くんがこんなことする人だとは思わなかった……」
恒一「……」
鳴「ねえ、何とか言ったらどうなの榊原くん?」
恒一「……」
鳴「……お願いだから何か言ってよ」
恒一「……」ゴソゴソ
鳴「……? 何して――」
ガチャッ
鳴「!?」
恒一「……」
鳴「今の音なに? ガチャって」
恒一「……」
鳴「もしかして鍵閉めた? 閉めたでしょ?」
恒一「……」
鳴「閉めたんでしょ棺桶の鍵」
恒一「……」
鳴「ねえ聞いてるの? ねえってば」
恒一「……」
鳴「……だから返事してよっ!」バンッ
恒一「……」
鳴「ここから出たら酷いからね? 絶対に後悔することになるから」
恒一「……」
鳴「だから今の内に解放した方が榊原くんの身のためよ。これ以上閉じ込めるつもりなら、もっと酷いから」
恒一「……」
鳴「……」
恒一「……」
鳴「……?」
恒一「……」
鳴「……ねえ、榊原くん?」
恒一「……」
鳴「もしかしてこっそり何処かに行ったってこと、ないよね? 私を置いて」
恒一「……」
鳴「……い、いるよね? 棺桶の前に居るんだよね?」
恒一「……」
鳴「榊原くん、返事してよ」
恒一「……」
鳴「……さ、榊原くんっ、榊原くんっ!」バンッ
恒一「……」
鳴「返事してっ! そこにいるんでしょ!?」バンバンッ
恒一「……」
鳴「っ……わ、わかった。アレでしょ」
恒一「……」
鳴「このまま居なくなったフリして私を不安がらせる作戦なんだよね?」
恒一「……」
鳴「ふんっ、小学生みたいな発想ね。バレバレ」
恒一「……」
鳴「ほら、バレたんだから諦めて返事してみて? そこにいるんでしょ?」
恒一「……」
鳴「っ……!! 榊原くんっ!」
恒一「……」
鳴「私、本気で怒ってるんだからね? わかってるの?」
恒一「……」
鳴「もう絶対に許さない。今さらごめんなさいって謝ってきても遅いからね」
恒一「……」
鳴「例え土下座しても許さないからね」
恒一「……」
鳴「……」
恒一「……」
鳴「……お願いだから、何か言ってよぉ……」
恒一「……」
鳴「……ねえ、私何かした?」
恒一「……」
鳴「榊原くんが嫌がるようなことした? もしかして知らない内に怒らせたりしてた?」
恒一「……」
鳴「だとしたわ謝るわ。榊原くんがこんなことするんだから、よっぽどのことだよね?」
恒一「……」
鳴「私何しちゃったの? 教えてくれればちゃんと謝るから」
恒一「……」
鳴「ねえ……教えてってば……」
恒一「……」
鳴「……」
恒一「……」
鳴「――もうっ! ホントいい加減にして!」バンッ
恒一「……」
鳴「怒らせるようなことしてたなら謝るって言ってるのに、どうして何も言わないの!?」
恒一「……」
鳴「私がここまで言ってるのに!」バンッ
恒一「……」
鳴「そこにいるんでしょっ! ねえっ! わかってるんだから!」バンバンバンッ
恒一「……」
鳴「おいっ! 榊原! 返事しろっ!!」バンッバンッバンッ
恒一「……」
鳴「開けて! 開けろバカきばらっ!」バンッバンッ
恒一「……」
鳴「ねえっ……くっ」
恒一「……?」
鳴「うぅっ……ふ、蓋叩き過ぎて手のひら痛い……」ジンジン
恒一「……」
鳴「ふー、ふー……」
恒一「……」
鳴「……」
鳴(ダメだ……言葉でどう言っても榊原くんは開けてくれない……)
鳴(ホントどういうつもりなの……? なんでこんなことするの……?)
鳴(一体どうしたら開けてくれるんだろう……)
鳴(……)
鳴(……)
鳴(……そうだ!)ピーン!
恒一「……」
鳴「私、ちょっとトイレ行きたいんだけど」
恒一「!?」
鳴「実はさっきからずっと我慢してたの、もう限界」
恒一「っ……!」
鳴「このままじゃここで漏らしちゃうわ。榊原くんは私がこんな所で漏らしてもいいの?」
恒一「……」
鳴「流石にまずいよね? だからここ開けてくれる?」
恒一「……」
鳴「ほら、早く開けないと私が悲惨なことになっちゃうよ?」
恒一「……」
恒一「……」
恒一(……声に余裕があるし、多分嘘だな)
恒一「……」
鳴「……う、嘘だよね?」
恒一「……」
鳴「もしかしてこのまま漏らせって言うの? 冗談だよね?」
恒一「……」
鳴「流石に榊原くんはそこまで酷い人じゃないよね? 女の子にお漏らしさせるなんて……」
恒一「……」
鳴「っ……! あ、開けてよっ! 早く開けて!」バンッ
恒一「……」
鳴「漏らしちゃうから! お願いだからトイレ行かせて!」バンバン
恒一「……」
鳴「〜〜〜っ……! このっ……変態!」
恒一「……」
鳴「女の子を閉じ込めただけじゃ飽きたらず、お漏らしまでさせようなんて……榊原くん、真正の変態だったのねっ」
恒一「……」
鳴「変態っ……鬼畜!」
恒一「……」
鳴「サド! サディスト! 榊原くんはドSの変態よっ!」
恒一「……」
鳴「っ……こ、ここまで言われてるんだから何とか言ったらどうなの!?」
恒一「……」
鳴「悔しくないの? 変態なんて言われて」
恒一「……」
鳴「もしかして榊原くんは本当に変態なの? だから何も言い返さないわけ?」
恒一「……」
鳴「っ……このっ、バカ! バーカ!」
恒一「……」
鳴「榊原くんのもやし! 変態! 変態もやし!」
恒一「……」
鳴「ストーカー! 質問厨! 犯罪者予備軍っ!!」
恒一「……」
鳴「ぜぇ、はぁ……」
恒一「……」
鳴「……意地でも何も言わないつもりなのね」
恒一「……」
鳴「少しぐらいなら言い返してもいいんだよ? 眼帯オバケー、とかチビー、とか」
恒一「……」
鳴「今日は特別に許可するから。試しに言ってみてよ」
恒一「……」
鳴「ほら復唱して。『邪気眼女ーっ!』って」
恒一「……」
鳴「……」
恒一「……」
鳴「…………言えよっ!!」ガンッ
恒一「……」
鳴「普段ローテンションの私でもそろそろ本気でキレるレベルだよ!? わかってるのっ?」
恒一「……」
鳴「キレた私は本当に凄いよ? 現象でも裸足で逃げ出す程なんだからっ!」
恒一「……」
鳴「だから、ほらっ、開けて! 棺桶の蓋っ!」
恒一「……」
鳴「キレた私なんて見たくないでしょ? なら開けてよ!」
恒一「……」
鳴「あー! けー! てーっ!!」
そんな事したらお前専用の棺桶が必要になるぞ
恒一「……」
鳴「はぁ……はぁ……」
恒一「……」
鳴「……ねえ、何でここまで言っても開けてくれないの?」
恒一「……」
鳴「私、本当に何したの? ここまでされるようなこと、した?」
恒一「……」
鳴「ねえ榊原くん……」
恒一「……」
鳴「榊原くん」
恒一「……」
鳴「さかっ……榊原、く……」
恒一「……」
鳴「さか……」
恒一「……」
鳴「……」
恒一「……」
鳴「…………グスッ」
恒一「!?」
恒一「っ……!?」
鳴「ひぐっ、うっ、うぇっ……」
恒一「っ……」
鳴「バカっ……さ、さかぎばらくんのバカぁっ……」
恒一「……」
鳴「あ、あやまっ、謝るって……言ってるのに゛ぃ……」
恒一「……」
鳴「うぇっ、ひっく……お、お願いだから……返事してよぉ……ぐすっ」
恒一「……」
鳴「さかきばらくぅん……」
鳴「うぇえええん……うぁああ……うぇええぇっ……」
鳴「ひぐっ……榊原ぐん……」
鳴「さかぎばらくん……榊原くんっ……」
鳴「開けて……開けてよぉ……ここから出してよぉ……」
鳴「お願いだからぁ……出して……」
鳴「榊原くん――」
――ガチャッ
鳴「……ふえっ?」
恒一「よい、しょっと……」
鳴「……」
恒一「……」
鳴「……さ、榊原、くん?」
恒一「……うん」
鳴「……あっ……」
鳴「……」
鳴「…………うぇっ」
鳴「……うっ、うぇええっ……」
鳴「やっど……やっと返事しでくれだぁ……」ボロボロ
恒一「……」
鳴「ひぐっ、うっ、うぐっ……うぅっ……」
恒一「……み、見崎?」
鳴「ふぐっ、ふぅっ……うっ、うぇええっ……」
恒一「……ごめんね?」
鳴「うああっ……うっ、うああああっ……」
恒一「いや、まさか泣くとは思わなくってさ……」
鳴「うあああぁっ……うぇっ、うぇええええんっ……!」
恒一「……」
鳴「うっ、うぁっ……うあああああんっ!」
恒一「……あの」
鳴「うぇええええんっ!! うぐっ、ふっ、うぇええええんっ!!」
鬼畜すぎるwwww
恒一「……いや、ホントごめん」
鳴「ばがッ、ばがぁっ……なにぞれぇ……榊原くんのばかぁっ!!」
恒一「最初はちょっと見崎をからかうだけのつもりだったんだけどさ」
鳴「うぇええっ……ぐすっ……か、からかう?」
恒一「うん……あの、見崎をこのまま棺桶に閉じ込めたらどうなるのかなーっ……って」
鳴「ぐすっ……ううぅっ……」
恒一「どういう反応するのか気になって、最初はすぐ開けるつもりだったんだけど」
鳴「うぐっ……すんっ」
恒一「そしたら途中から止めるに止められなくて……」
鳴「ぐすっ……」
恒一「うん……別に見崎は何も悪いことしてないよ」
鳴「……ホントに?」
恒一「うん」
鳴「私、榊原くんを怒らせるようなことしてない?」
恒一「うん……見崎は何もしてないよ」
鳴「……」
恒一「……」
鳴「…………――か」
恒一「え?」
鳴「――バカぁっ!!」バチンッ
恒一「ぶっ!?」
恒一「うっ、うおおっ……ほ、頬に思いっきり……」
鳴「私本当に不安だったんだからっ……!」
恒一「めっ目の中で火花が……」
鳴「私、さっ、榊原くんに……知らずに酷いことしたんじゃないかって、不安でっ……」
恒一「うああ……ち、チカチカする……」
鳴「傷つけてたんじゃないかって思って……わ、私っ……! ぐすっ……」
恒一「いてぇ……ぜ、絶対腫れてるよこれ……」
鳴「わだしっ……さ、榊原くんに謝らなきゃって……うっ、うぇっ……」
恒一「誰か氷、氷を……」
鳴「聞いてるのっ!?」
恒一「っ!! はい! き、聞いてますっ!!」
恒一「……」
鳴「……」
恒一「……あ、あの……見崎」
鳴「……許さないからね」
恒一「えっ?」
鳴「言ったでしょ、土下座しても許さないって」
恒一「……あ、あの」
鳴「――正座」
恒一「へっ?」
鳴「取りあえず、そこに正座して」
鳴「いいから早くしてっ!」
恒一「!? は、はいっ!」サッ
鳴「……」
恒一「……」
鳴「……」
恒一「……」
鳴「……」
恒一「……み、見崎?」
鳴「……」
鳴「……」
恒一「あの……」
鳴「……」
恒一「ね、ねえ見崎」
鳴「……」
恒一「いつまでこうしてればいいの……?」
鳴「……」
恒一「ち、ちょっと足が痺れてきたんだけど……」
鳴「……」
恒一「……見崎?」
恒一「っ! な、なに?」
鳴「私が棺桶に閉じ込められてたのって、時間どのぐらいだった?」
恒一「え? じっ……時間?」
鳴「そう、時間」
恒一「えーっと……十分から十五分ぐらいだと思うけど……」
鳴「そう……じゃあその十倍ね」
恒一「え?」
鳴「今から百五十分、そのままね」
恒一「………………え?」
恒一「えっ……え、ちょ、ちょっと待って!?」
鳴「その間私は自分の部屋で本でも読んでるわね」
恒一「ま、待ってよ! もしかして正座したまま二時間以上も!?」
鳴「そうだけど、何か問題?」
恒一「い、いや……あの」
鳴「……」
恒一「さっ、流石にそれはきついかな〜……って」
鳴「……」
恒一「……見崎?」
鳴「……わかった」
恒一「え?」
鳴「更に追加して二百分間にしましょう」
恒一「はあっ!?」
鳴「榊原くんはどうも反省が足りないみたいだから」
恒一「えっ……ま、待って! ちょっと待って!」
鳴「――絶交」
恒一「!?」
鳴「もし出来なかったら、絶交ね」
恒一「っ……!!」
恒一「……」
鳴「時々様子見に来るから、ズルしたらダメだよ?」
恒一「……」
鳴「途中でお茶でも持ってきてあげるから……頑張ってね? さ・か・き・ば・ら・くん」
スタスタスタ……ガチャッ バタン
恒一「……」
鳴「」
恒一「……」
恒一「……」
恒一「……」
恒一「……」
恒一「……うぅっ」モゾッ
恒一「くっ……あ、足が痺れっ……」モゾモゾ
恒一「っ……」
恒一「……」
恒一「……」
恒一「……」
恒一「……」
恒一「……」
ガチャッ
恒一「!」ビクッ
恒一「うぐっ……! あ、足に振動がっ……!!」
鳴「調子はどう? 榊原くん」スタスタスタ
恒一「み、見ての通りだよ……」
鳴「ふーん……」
鳴「そうなの?」
恒一「うん……最初じんじんしてたのが今は皮膚の感覚すら曖昧と言うか」
鳴「へえ……」
恒一「……」
鳴「……」
恒一「……」
鳴「……」
恒一「……み、見崎?」
鳴「――えいっ」ツンッ
恒一「いいいい゛っ!!?」ビクゥッ!
鳴「ダメだよ榊原くん、動いたら」
恒一「いやいやいや……こ、これはダメ……マジでダメな奴だから……」
鳴「動くたびに時間十分追加ね」
恒一「はあっ!?」
鳴「それっ」ツンッ
恒一「はうあああっ!?」ビクゥンッ!
鳴「そーれ」ツンツン
恒一「ふおっほお!? や、止めっ……!!」
鳴「それそれ」ツンツン
恒一「やめてーっ!?」
――結局
その後、僕が解放されたのは五時間後
日が暮れて、家から携帯に電話が掛かってくるまでだった
それまでの間、見崎に痺れる足をつつかれたり足の裏をくすぐられたり
挙句の果てに膝の上に乗っかられたりと色々あったのだけど
それらを伝える気力は、今の僕にはもう無い
……一つ、誓ったことと言えば
もう二度と、見崎に悪戯は仕掛けない、と言うことだろう
おわれ
最後尻切れ蜻蛉でごめんね
もうバイトの時間だから仕方ないね
お疲れ様でした
鳴ちゃん可愛い
好きな子は虐めたくなる
Entry ⇒ 2012.06.05 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (2) | Trackbacks (0)
恒一「有田さんがモテまくる現象……?」
恒一(わざわざ念を押さないでほしいなぁ……)
久保寺「それでは、あの席へ」
恒一(二人欠席……? 一番窓際の列の、一番前と一番後ろ)
江藤「……そんな事より先生! それで松子は何で休みなんですか!」
恒一(転入生をそんなことって……)
江藤「そうじゃなくてっ! ……っ!? う、うぅ……」
久保寺「落ち着いたようですね、それでは、授業まで静かにしていてください」
恒一(何か……わけあり?)
勅使河原「ほぁー、サカキって頭良いのな」
恒一「そうでもないよ。それに、ちょくちょく入院もしてるから」
風見「是非とも、クラス委員としてこのお調子者の更正を手伝ってほしい限りだ」
勅使河原「おいこら」
望月「体はもういいの?」
恒一「体育は、当分見学だね」
江藤「…………」
恒一(さっきの子、ずっと俯いてる)
キーンコーンカーンコーン
江藤「…………ッ!」
恒一(さっきの子、終わった途端に走って帰っちゃった……)
多々良「……ねぇ、悠、大丈夫かな?」コソコソ
佐藤「……あの子は、もう始まっちゃってるから」コソコソ
多々良「でも、あれじゃ、有田さんが……」
佐藤「しっ、それ以上はダメ」
勅使河原「おーっし、サカキ! せっかくだから、学校案内と行こうぜ!」
恒一「ねぇ、勅使河原君。望月君の後ろの席の子、何て名前なの?」
勅使河原「うん? あぁ、江藤か。えっとたしか……江藤悠だったはずだぜ。でも一体何でそんな……あ」
望月「勅使河原君! ……それ以上は……」
勅使河原「えっと、まぁ、それはおいおい説明するとして、まずは学校見学と行こうぜ!」
恒一「勅使河原君、なんでそんな風にはぐらかすのさ!」
風見「その質問には、僕が答えるよ。残念な事に担当者が欠席だからね。でも、ここじゃ問題だから、学校見学の途中で」
恒一「それで、一体江藤さんはどうしたの?」
風見「君は、呪いとかって信じるかい?」
恒一「普通だよ」
勅使河原「このクラスは今な、呪われてるんだ」
風見「勅使河原、いったん僕から離れた方が……」
勅使河原「あぁ……いや、大丈夫だ。俺が欠席だって、そう簡単に落とされやしないぜ」
風見「……わかった。気をしっかり保てよ」
勅使河原「お前もな」
風見「すまない、話がそれてしまったね。……単刀直入に言おう、このクラスは「恋」の呪いにかかっているんだ」
風見「26年前、ある生徒が三年三組にいた。彼はもの凄くモテた。夜見山内外から毎日ラブレターが届くほどね。ただの中学生でありながら、人気はアイドル並だったらしい」
風見「羨ましいと思う? そう、その通り、彼は嬉しくもなんともなかった」
風見「クラスでももちろん彼……あぁ、性別はわからないから、便宜的に彼と読んでいるんだ。クラスでも彼の事が大好きな生徒はいっぱいいたらしい」
風見「告白なんて日常茶飯事。危うく暴行を受けそうになった事もあるらしい。そんな彼は、人生を諦めた」
風見「それから、三年三組には呪いが起きるようになった」
風見「特定の生徒に対して、毎月一人以上が恋愛感情を持つようになる。そんな呪いだ」
風見「最低でも12人。最高記録……と言っても複数回あったんだが、多いときはクラス全員が、その生徒を好きになった」
風見「生徒の性別、「始まった」生徒の性別は関係ない。男女問わず、その呪いは降りかかる」
風見「「始まった」生徒は、そんな事には気付けない。「始まってない」生徒は、モテまくる生徒が気に入らない」
風見「それはもう、居たくも無いクラスだろうね」
恒一「その生徒が……有田さん?」
勅使河原「言うな! まだ説明は終わってねぇ!」
風見「唯一、「いないもの」を作る以外にはね」
風見「その、モテてしまう生徒を「いないもの」として扱うんだ。そんな生徒はクラスにいない。そう自分に信じ込ませる」
風見「いないものに恋は出来ない……まぁ、結局、その子を好きにならなければ良いんだ。現にその対策が発案されてからは、毎年「始まる」生徒は少ない」
恒一「じゃあ、江藤さんは「始まった」って事?」
風見「……辛いことに、毎年誰かが「始まる」までは、誰が「いないもの」になるべきかはわからない」
風見「最初の一人からすれば、自分の好きな人が、よくわからない理由で無視されているんだ。一年間、辛いだろう」
風見「だから、君もその、「いないもの」が登校してきても、反応をしないで欲しい。君が反応する事で、周りの生徒も気にしてしまう。それは危険なんだ」
恒一「……信じようが無いけれど、とりあえず、言われた通りにはするよ」
風見「……ありがとう。クラスの代表として、お礼を言うよ」
勅使河原「おうし! ちょっと望月もいるであろう美術部でも覗くか!」
恒一「美術部は勘弁してほしいなぁ……」
風見「あぁ、三神先生がいたら大変だもんね」
恒一「うん、覗きにきましたって言うわけにも行かないからさ……」
勅使河原「ちぇー」
望月「おはよう、榊原君」
恒一「うん、おはよう」
恒一(昨日欠席だった場所は……一番前は病院にお見舞いに来てくれた赤沢さんだな)
恒一(そして、一番後ろが……有田さん)
恒一(思ったり、普通な子だ……その二つ前に座ってる眼帯の子の方が、よっぽど不思議なオーラが出てるよ)
江藤「あ…………」
恒一(江藤さん、有田さんをチラチラ見てる……)
望月「ねぇ、榊原君。家での三神先生ってさ……」
恒一(やっぱり、無視しなきゃいけないのは辛いんだろうな……)
望月「僕が思うに、パジャマが似合うと思うんだよね。それも、出来るだけかわいい系の」
恒一(こういう様子を見てると、嘘であってほしいのに、本当だとわかるな……)
望月「ほら、やっぱりあのキリッとした三神先生だからこその……ねぇ、榊原君聞いてる?」
恒一「え?」
有田「…………」スタスタ
恒一(お弁当持って、どこかに行っちゃった)
江藤「…………っ!」タタタタ
赤沢「……待ちなさい、悠」
江藤「……赤沢さん」
赤沢「どこにいくつもり? トイレなら反対側よ」
江藤「……赤沢さんには関係ない!」
赤沢「大ありよ、「始まっている」とはいえ、貴方があんまりそういう事をするなら、私も何かしらをしなくちゃいけない」
赤沢「貴方は加害者になりたいの? 「あの子」はそんな事、望まないわ」
江藤「っ! …………いやだよ、そんなの」タタタタ
風見「今度は止めないのかい?」
赤沢「今度は、「あの子」とは逆方向に走っていった。悠だって、わかってはいるのよ」
赤沢「……今の会話は、皆忘れて。……それと榊原君、あとで話があるんだけど、良い?」
恒一「? 良いよ」
恒一(なんだろう……呪い関係かな)
赤沢「風見君から、説明はしてもらっているのよね」
恒一「うん、多分大体の事は」
赤沢「そう、ならいいわ。病院でも自己紹介をしたけれど、私は対策係の赤沢泉美。何の対策かは、もうわかるわね?」
恒一「うん、有田さんを「いないもの」にしたりするんだね」
赤沢「風見君も、好きな人がいるから、そうそう落ちない自信があるんでしょうね。でも、クラスの中では、いつ自分が「始まる」か不安な人も大勢いる」
赤沢「釘を刺すようで悪いけれど、榊原君。くれぐれも、「あの子」の事を考えないでね。くれぐれも、何かしようと思わないように」
恒一「……わかってるよ、昨日聞いた。でもね、赤沢さん」
赤沢「何?」
恒一「さっきの江藤さんとの会話、もっと言いようは有ったと思うよ」
赤沢「……反省はしてるわ。冷たく言い過ぎたと思う。でも、言ってる事は間違ってると思わない」
恒一「そっか……僕に対しての用は、説明を受けたかの確認と、釘を刺すだけ?」
赤沢「……ええ、そうよ。これからこのクラスでやりづらいでしょうけど、耐えてね」
恒一(本当だよ)
恒一(赤沢さんはクラスに入ってっちゃうし、僕はなんだか居づらくて出てきちゃうし……って、あれ、江藤さん?)
江藤「…………」
恒一「……江藤さん、お昼食べないの?」
江藤「説明は受けたんでしょ、私に話しかけないで」
恒一「そう言われても、君をいないもの扱いしろなんて、僕は言われてない」
江藤「私はもう「始まってる」の! いつあの子の事を口にしちゃうかわからない。だから……」
江藤「……名前、言って良いの?」
恒一「僕はほら、転校生だから好きになりようがないからね」
江藤「……一目惚れだってあるかもしれないよ」
恒一「それなら、とりあえず第一関門は突破出来たみたいだね」
榊原「だった……?」
江藤「今は……わからない。三年三組になって、気がついたら松子の事が、恋人として好きになってて……そしたら、皆に「始まった」って言われて……」
江藤「私、わからないよ。自分の中では、自然に松子の事が好きになったのに、それが呪いのせいだなんて思えない。思いたくもない!」
江藤「私、耐えられないよ。私が好きになったせいで松子が「いないもの」にされて……松子もそれを望んで……そうなってからは、松子はよく休むようになったんだよ? 松子だって辛いのに……私は支えてあげる事も出来ない」
恒一「江藤さん……有田さんだって、わかってくれてると思うよ」
江藤「転校生の榊原君にそんな事、わかるわけ無いよ」
恒一「わかるよ。江藤さんさ、ずっと有田さんの事、チラチラ見てたよね」
江藤「うん……」
恒一「有田さんもね、見てたんだよ、江藤さんの事。江藤さんにバレないように、江藤さんが見てない隙を狙ってね」
江藤「え……?」
恒一「さすがに僕には気づいてなかったみたいだけど、有田さんだってきっと、江藤さんの事が気になるんじゃないかな」
江藤「で、でも、そんなのただの予測で……」
恒一「じゃあさ、僕が聞いてくるよ。追いかけようとしたんだから、わかるんでしょ? 有田さんの居場所。江藤さんが聞けないなら、僕が聞く」
江藤「そ、そんな事をしたら!」
恒一「言ったじゃないか、転校生の僕が、有田さんの事を好きになるはずがない。僕はただ単に、このクラスの事が知りたいんだ」
江藤「で、でも……」
恒一「江藤さん。僕は何よりね、君が泣いてるのが嫌なんだ。それに、もしかしたら有田さんまで泣いてるのかと思うと、どうにかしたいと思っちゃう」
江藤「え、あ……涙……」
恒一「お願い。今から授業をすっぽかしてまで有田さんを探すより、昼休みの内に有田さんに会えた方が、問題が起きない」
恒一「そっか、ありがとう」
江藤「ごめんね、巻き込んじゃって……私が、松子に恋をしなければ……」
恒一「それは違うよ、江藤さん。僕は自分から巻き込まれに行ってるし、それに……」
恒一「恋をしなければ、なんて嘘、ついちゃダメだ」
恒一「……時間も無いから、そろそろ行くね。また後でね、江藤さん!」タタタタ
江藤「…………榊原君」キュン
恒一「はぁっはぁっ……走るのは、やっぱ、ダメ、だね……」
有田「っ!?」タタタタ
恒一「待って! 有田さん!」
有田「……!」フルフル
恒一「江藤さんに聞いてきたんだ!」
有田「……悠ちゃんに?」
有田「せ、説明を受けてないの? 私に話しかけないで!」
恒一「聞いたよ。多分全部知ってる」
有田「なら何で……」
恒一「有田さんの気持ちを聞きに来たんだ」
恒一「江藤さんはね、心配してた。有田さんの事が好きになって、そしたらこんな事になって、有田さんと満足に話す事も出来なくなった。だから、責任を感じてるし、有田さんが辛そうにしてる事を心配してる」
有田「私、辛そうにしてる? 頑張って、皆に、特に悠ちゃんには、見つからないようにしてたのに……」
恒一「普通さ、こんな状況になって、辛くない人なんて、いないんじゃないかな」
有田「でも、私のせいで、皆が呪われるなんて……嫌だよ。悠ちゃんが呪われるなんて、すっごく嫌なのに……」
恒一「……江藤さんの事、心配?」
有田「心配に決まってるよ! ずっと一緒にいた親友と、途端に話す事も出来ない状態になっちゃって……それに、悠ちゃんは、呪いのせいで、私の事が好きになっちゃって……」
有田「それが本当なら、私なんかより、もっと辛いと思う。それでも、私に話しかけないように、必死で耐えてくれてる」
有田「っ!? そんな……!」
恒一「でも、有田さんも同じくらいそうなんじゃないかな。少なくとも僕には、そう見える」
有田「わ、私は、「いないもの」になってればいいんだよ。そんな事……」
恒一「なれてないよ、「いないもの」に」
恒一「初対面の僕に対して、江藤さんの名前を出された瞬間に、色々喋っちゃうんだもん。それってさ、有田さんもそれくらい追い詰められてたって事だよね」
有田「…………」
恒一「何で、他に方法が無いなんてわかるの?」
有田「だって「いないもの」以外に今まで……」
恒一「僕が言いたいのは過去の話じゃない、これからの、未来の話だよ」
恒一「「いないもの」だって、所詮は自己暗示みたいな物だ。なら、自己暗示の仕方なんて、他にもいくらでもある。いっそ、有田さんと江藤さんは別に教室で授業を受けたっていい」
恒一「僕はね、二人の気持ちを聞いて、怒ってるんだ。「いないもの」なんてものに頼って、結局やってるのは、呪いを押しつけてるだけだ。それで親友と呼び合う二人が離されるなんて、納得行かない」
有田「そ、その気持ちは、素直に嬉しいよ……でも、榊原君はわかってないかもしれないけれど……榊原君がそう思う気持ちだって、呪いのせいかもしれないよ?」
恒一「有田さん、それは違うよ。僕は今、好意でも何でもなく、僕の価値観に反してるから、こう言ってるだけだ。……有田さん、君がそう言うのなら、僕はあえて君に言うよ」
恒一「僕は、君の事が別段に好きだと思ってない」
恒一「会ってまだ数時間。話してまだ数分間。それだけで、人を本当に好きには僕はならない」
恒一「一目惚れだって、先入観を持つだけで、本当に好きになるとは思ってない」
有田「……勘違い?」
恒一「「始まった」人の考えている事は、全部が全部、呪いの結果なの? 違うよね、呪いは恋をさせるけど、それだけだ」
有田「そ、それこそ、榊原君の妄想かもしれないよ。そんなの、転入してすぐの榊原君にわかるわけが…」
恒一「なら、「始まった」人の言葉なら、納得してくれる?」
恒一「そろそろ、出てきなよ、江藤さん。先に走って置いてっちゃったけど、そんなに時間はかからないはずだよね」
ガチャ
江藤「…………松子」
有田「悠ちゃんっ!」
江藤「呪いなんて、もう関係ないよっ! 私ね、思ったの。例え呪いのせいだろうと、松子の事が好きになった事を、悪い思い出にしたくないって」
江藤「呪いは怖いし、私だって、どこまで呪いの影響なのかわからないけれど、私は今、心から松子の事が好きなの」
江藤「昨日、松子が休んだ時にね、私、不安で不安でどうしようも無くて、授業が終わったら走って松子の家まで行ったんだよ」
江藤「でも、怖くて中に入れなかった。松子からすれば、松子の事を好きになった私なんて、気持ち悪くてもう友達じゃないのかもって、そう思ったら入れなかった」
有田「そんな事無いよッ! 私だって、私のせいで悠ちゃんが呪われて、勝手に自分の気持ちを変えられたりしたら、きっと嫌われてるって……」
江藤「それこそ、ありえないよぉ……私、私、松子の事が大好きだもん、一緒にいる事が出来なかったのに、嫌いになれなくって……ずっと私、寂しくて……」
有田「悠ちゃん……悠ちゃんっ!」ダキッ
恒一(……やっぱり、こうあるべきだったんだよね。変な形で、引き離す方がおかしかったんだ)
恒一(僕に出来る事があるとしたら、今は、二人をそっとしておいてあげる事だけだ)
恒一(それに、これからやらなきゃいけない事もある)
ガチャン
赤沢「で、榊原君から何の用?」
恒一「有田さんと江藤さんと話したよ」
赤沢「はぁっ!?」
恒一「クラスのルールを破ったのは謝る。ごめん。でも、間違った事をしたつもりは無いよ」
赤沢「あなた、そんな風にッ!」
恒一「君は、率先して有田さんを「いないもの」にして、事態を治めようとしたの?」
赤沢「……「いないもの」は、クラスの中で多数決を取ったわ。票は割れたけど、それでもクラス全体で決めた事よ」
恒一「僕は、君自身の意見を聞いてるんだ」
赤沢「私は……「いないもの」に賛成したわ」
恒一「……他に案は考えなかったの?」
赤沢「考えたわよ。でも、一番可能性があるのが、あの方法だった」
赤沢「無いわ。事実、4月の「始まった」人は江藤さんただ一人だった。あれは成功しているもの。これ以上変える必要は無い」
恒一「……なら、僕個人でやる」
赤沢「待ちなさい、あなた、一体あの二人と何を話したの?」
恒一「何も、ただ、二人が面と向かって話す機会を作っただけだよ」
赤沢「そんな事をしてっ!」
恒一「そんな事をして、どうなるの? 何の為に、わざわざ廊下に赤沢さんを呼び出したと思う? 二人は今、屋上で話してる。もうすぐ鐘も鳴るし、見つかる事は無いだろうね」
恒一「しいて言うなら、君が「始まる」くらいだよ。でも、君にこの事を伝えないでいるよりは、君にとってマシだと思ったけど、違う?」
赤沢「私の事じゃないわよ! 貴方が「始まったら」どうするつもり?」
恒一「どうもしないよ。ただ有田さんが好きになるだけじゃないかな」
赤沢「それが大問題じゃないの」
恒一「問題なのは、僕だけじゃないかな。その時は、僕も「いないもの」にすればいい。むしろ今からだって江藤さんも「いないもの」にする方が良いくらいじゃないかな」
赤沢「……それは考えていたわ。でも、結果的に12人が「始まる」呪いは、最後には影響が大きすぎるの」
赤沢「数年前の事例はそうしようとして、クラスの1/3が「いないもの」になり、破綻した」
赤沢「それよりは、最後まで被害の少ない、呪われた生徒だけを「いないもの」にする方が、ずっとマシよ」
恒一「なら、「いないもの」を別のクラスにすればいいんじゃない?」
赤沢「それは、学校の協力が必要になりすぎるの。そこまでやるには、学校にも大義名分がいる。それに、今の校長は呪いについてはからっきしで……」
恒一「……思ってたより、赤沢さんも考えてたんだね」
赤沢「そうよ……と言いたい所だけど、ほとんどが受け売りよ」
恒一「受け売り? 誰の?」
赤沢「第二図書室の、千曳先生。二十六年前の三年三組の担任で、今は図書室の司書をしているわ。呪いに関しては、誰よりも詳しいと思う」
恒一「第二図書室……美術部のある校舎の方だよね?」
赤沢「ええ、そうよ」
恒一「ちょっと行ってくる」タタタタ
赤沢「はぁっ!? ちょっとっ! 授業っ!」
恒一「はぁっはぁっ……失礼します、千曳先生って……」
千曳「何だいその尋常じゃない焦りっぷりは。君は、たしか……」
恒一「三年三組の転入生の、榊原恒一です」
千曳「あぁ、君が……」
恒一「お願いしますっ! 二十六年前の三年三組の話と、今までの対策について、僕に教えてくださいっ!」
千曳「……まったく、授業中だと言うのに。……だが、その様子だと、事情もありそうだ。教員免許があろうと、今の私は教師では無いからね、注意はしないよ」
千曳「そうだね、何から話せばいいか……」
恒一「はい、その、ついでと言ってはいけないんですけど……もしかして理津子って生徒は……」
千曳「理津子君? あぁ、いたよ。……君は、もしかして」
恒一「僕の、お母さんです」
千曳「そうか……君のお母さんも、三年三組だったよ。そして、深く関わっていた。夜見山岬君ともね」
恒一「夜見山岬……?」
千曳「そして、彼の事を好む生徒はたくさんいた」
千曳「悔しいばかりだよ。私も必死で彼の精神面のサポートをしていたが、結局助けてやる事は出来なかった」
千曳「男女問わずに好まれ……いや、恋をされていたと言っても、あの時を知っている人なら、誰も否定は出来ないだろう」
千曳「まぁ、その辺りは、君も知っている通りだ。君のお母さんは、彼の生前に、クラスの中で唯一、恋をしていなかった生徒だ」
千曳「正直な所を言うとだね、彼等の関係を正しく説明するのは、今でも難しい事なんだ。理津子君と岬君の関係は、ある種の愛だったと言っても良い」
千曳「……君のお母さんについて、そんな風に言うべきでは無かったね。すまない。彼女はとても正義感の強い子だったよ。さっき君が、ここに飛びこんで来たように、彼女も走って職員室に来たものだった。そして、私を呼んでくれた」
千曳「そっくりだったよ。彼女は、自分の手でどうにか出来る問題は、必ず自力でどうにかした。彼女のいるクラスで、ささいな問題は、担任の耳に入る必要も無く、無事に片付く」
千曳「だが、彼女の身に余る問題も、あった。特に、岬君の問題なんかがね」
千曳「クラス内の色恋沙汰なら、ある程度彼女もカバーできたが、岬君がらみはそうもいかない」
千曳「狂信的、と言えば聞こえは悪いが、事実、彼の周りに取り囲む色恋沙汰は、そうだった」
恒一「ええ、お願いします」
恒一(これが……お母さん……怜子さんに、やっぱり似てるな)
千曳「二十六年前は、そんな所だ。今でもはっきり覚えているよ。岬君のお葬式の場で、彼に恋した人が泣き喚いている中、彼女だけが、静かに手を合わせ、その怒りを抑えながら泣いていた姿をね。彼女は自分の不甲斐なさが許せなかったんだと、私は思う」
千曳「その後取られた対策は……「いないもの」を筆頭に、数多くがあるね。だが、呪いを止めたとなると……十五年前、か」
恒一「十五年前、何が有ったんですか?」
千曳「私にも、事実は分からない。だが、あの年は、結果として、「始まった」のは四名だけだった」
恒一「怜子さんに、ですか」
千曳「あぁ。彼女は、十五年前の三年三組の生徒であり、その年の「呪われた生徒」だ」
恒一「怜子さんが……っ!?」
恒一「おかえりなさい……怜子さん、十五年前の話、聞かせてもらってもいいですか?」
怜子「……赤沢さんから聞いたわよ……というか、恒一君達三人がいない間に、クラス会議があったの」
恒一「何か、決まったんですか?」
怜子「……貴方達三人を「いないもの」にするって」
恒一「そうですか」
怜子「思ってたより平気そうね」
恒一「有田さんを一人だけ「いないもの」にするよりは、ずっと良いと思いますから」
恒一「……一五年前は、どうやって途中で止めたんですか?」
怜子「……わからない。本当にわからないの。夏休みに何かをしたのは覚えてるんだけど……そこから先は、どうやっても思い出せない」
恒一「そうですか……」
怜子「落胆しないの、ほら、さっきも言ったでしょ、血は争えないって」
怜子「実は、心当たりのありそうな人に、もうすぐ会うの。私だって、姉さんの妹だよ。何もしてないわけないじゃないの」
恒一「怜子さん、ありがとうございます!」
怜子「こらから、学校はいろいろ大変だと思うけど、頑張ってね」
恒一「おはよう、勅使河原君」
勅使河原「……………………」
恒一「あぁ、気にしないで、わかっててやってるから」
勅使河原(やるなよ……)
恒一「「いないもの」か、たしかに不思議な気分だね」
江藤「おはよう、榊原君」
有田「おはよう! 榊原君っ!」
恒一「おはよう、二人とも。ごめんね、いろいろあって、江藤さんも「いないもの」にしちゃって……」
江藤「ううん、私も皆にそうしてもらおうと思ってたから、何だか先を越された感じかな」
有田「そ、それよりも、榊原君まで……」
榊原君「僕は良いんだ。自分からやった事だから。二人は仲直り出来たんだね?」
有田、江藤「うん!」
恒一「それはよかった」
勅使河原(何で、俺を挟んで会話するんだ……)
江藤「私はいいよ? 次の授業は、そこまで大事でも無いし」
有田「私も大丈夫だよ。悠ちゃんみたいに、大事じゃないとは……言えないけれど」
恒一「そっか、じゃあ行こうか」
屋上
恒一「えっとまず、報告なんだけど、もしかしたら、呪いを止める方法があるかもしれない」
江藤「本当っ!?」
恒一「事実、十五年前は止まった。それについては今、調べてもらっているんだ」
有田「止めれるかも、しれないの?」
恒一「絶対とは言えないけど、ね。それともう一つ。近い内に僕達は、別の教室で授業を受けることになると思う」
恒一「れいこさ……三神先生のおかげというか何だけどさ、その、元々こういう時の為に、三神先生は校長の弱みを握ってたらしくて……是が非でも、そうするってさ」
江藤「三神先生……そんな人だったんだ……」
恒一「だから、呪いの止め方がわかるまでは、この三人で授業を受けることになるね。……あぁ、僕お邪魔かな?」
有田、江藤「そ、そんな事無いよっ!」ハモリ
恒一「え、あ、そ、それならいいんだけど……本当に良いの?」
有田、江藤「良いの!」ハモリッ
恒一「空き教室に三つだけ机と椅子が並ぶと、寂しいね」
有田「仕方無いんじゃないかな?」
江藤「そうだよ。気にしたら負けだよ!」
恒一「それはそれでおかしいと思うんだ」
恒一「でも、千曳先生が呼ばれるほどなんですね」
千曳「職員は増やせないからね。ところで榊原君、君、前の学校ではどこまで授業が進んでいたんだい?」
恒一「一応、高校の頭までは……」
千曳「なら、大丈夫だね」
恒一「……何がですか?」
千曳「何、このクラスは基本的に、私がこうやって監督をするだけで、自習をしてもらうんだ」
千曳「榊原君といういい先生がつきっきりで教えてくれるんだ。二人とも文句は無いだろう?」
有田、江藤「はいっ!」
千曳「良い返辞だ」
恒一「えっと三角比ってのはね……」
江藤「ねぇ、サインって何? 名前でも書けばいいの?」
恒一「サインは正弦でね……」
有田「ルート3って、2よりおっきいの?」
恒一「ルート3は1.732……で「ひとなみにおごれや」って覚えると良いよ」
江藤「コサインって何? サインの子分?」
恒一「コサインは余弦で、もうすぐ出てくるタンジェントは正接だよ」
有田「ね、ねぇ、これ何?」
恒一「えっとこれはね……」
千曳「はっはっは、若い頃を思い出すね」
有田「悠ちゃんもう帰る?」
江藤「んー、やっぱり三組の人と下駄箱で鉢合わせになるのは嫌だしなぁ……」
有田「それもそうだね……なら、何してようか」
恒一「有田さんと江藤さんって、家は近いの?」
江藤「うーん、近からずも遠からず?」
有田「私が朝見台で悠ちゃんが原河町だから……うーん」
江藤「榊原君、地名聞いてもわけがわからない。って顔してるね」
恒一「さすがにね、朝見台はなんとなくわかるけど……」
有田「なら、榊原君を案内してあげるよっ!」
恒一「ちょっと高台なんだね」
江藤「勅使河原君と風見君は、たしかこのあたりかな」
有田「ここが御先町!」
恒一「普通に住宅街だね」
江藤「見崎さんは、この辺りのはず……」
恒一「見崎さん?」
江藤「松子の二つ前で、眼帯つけてる子」
恒一「あぁ、あの子か」
有田「見崎ちゃんだから御先町なのかな?」
江藤「それはあんまり関係無いんじゃない?」
恒一「なんでそんなにコソコソしてるの?」
江藤「このあたり、赤沢さんが住んでるから。ほら、やっぱり特に気まずいんじゃない?」
有田「う、うぅ……」
有田「ここが朝見台!」
恒一「朝見台に来たのに、夕日が綺麗だね」
江藤「せっかくなら、その辺も計算して夕見ヶ丘に行けばよかったね」
有田「うーん、えっと、じゃあ、私の家に上がってく?」
有田「うん! すぐそこだよっ!」
恒一「いや、でも、ほら、突然行ったら悪いしさ……」
有田「……来ないの?」
恒一「いやぁ、家族の方の迷惑になっちゃうし……」
有田「お父さんは今、海外に出張中で、お母さんは北海道に出張中だから、大丈夫だよ!」
恒一「そうなんだ、じゃあ有田さんは一人暮らしなの?」
有田「うん! だから、来てくれると嬉しいなっ!」
恒一(怜子さん、何て言うかな……)
江藤「女の子の部屋に入るチャンスだよ」ボソッ
恒一(危険は、侵す為にあるよね!)
恒一(女の子の部屋……やっぱり怜子さんの部屋とは違うな……)キョロキョロ
江藤「興味津々だね」
恒一「や、やっぱりキョロキョロはすべきじゃないよね!」ギクッ
江藤「松子はそんなに気にしないと思うよ? それに、たしかこの辺に松子の隠してた……」
ドタバタドタバタガチャン
江藤「何それ?」
有田「た、たしかバスケのルールで、触ったらダメ! みたいな奴?」
恒一「あんまりわかってないんだ」
有田「えへへ……とりあえず、そこはダメだよ、悠ちゃん」
江藤「じゃあ、何が入ってるか口頭で……」
有田「ゆ、悠ちゃん! そんなに喉が渇いてたなら、行ってくれれば良いのに! ほら! お茶っ! 飲んでっ!」
江藤「えっ、ちょ、まっ、んぐっ!? んく……んく……んー」バンバン
恒一「だ、大丈夫なの?」
有田「言う気が無くなるまで、口を放しちゃダメだよ、悠ちゃん」
恒一「あ、有田さん! 一人暮らしって事は、料理は出来るの?」
有田「んー、一応、かな。……あんまりおいしくは無いんだぁ……」
恒一「そっか、僕もね、前の学校では料理研究会に入ってたんだ」
有田「本当っ!? じゃあ、私に料理を教えてっ!」テヲニギッ
恒一「あ、有田さんっ! そんなに勢い良く放すとっ!」
有田「え、あっ! きゃぁっ!?」
バシャァー
江藤「まー、つー、こー」
江藤「びしょびしょになったのは誰のせいだぁっ! 必殺びしょびしょ抱きつきだぁ!」ギュウ
有田「つ、冷たいよ悠ちゃん!」
江藤「妖怪マツ公になるまでこうしてやるぞぉ!」
恒一「あ、あの、二人とも、風邪ひくよ?」
江藤「はっ……」ビショビショ
有田「あっ……」ビショビショ
恒一(女子の部屋に、男子を一人にしていいものなの!?)
恒一(観察しちゃダメだ! ほのかに漂う香りに、必死に鼻を動かしちゃダメだ!)
恒一(ベットの皺が物凄く気になったり、タンスから少しだけはみ出てるピンクの何かが物凄く気になったりするけど、気にしちゃダメなんだー!)
恒一(平常心、心頭滅却すれば火もまた涼し、明鏡止水……そういえば、さっき江藤さんは、有田さんの何を……)
恒一(親指の先くらいの、白い宝石?)
江藤「月長石……ムーンストーンって言った方が良いかな」
恒一「う、うわぁっ!? 江藤さんいつからそこにっ!?」
江藤「榊原君が、ベットの皺を食い入るように見てたあたりから」
恒一「着替えるのが速いんだねっ!」
恒一「でも、この宝石が、何であんなに秘密なの?」
江藤「んー……まぁ、うん、昨日、仲直りの印に二人で買ったんだ。それは、松子の買った奴」
恒一「女の子っえ、こういうの好きだよね、何か意味の有る宝石なの?」
江藤「長寿とか健康とかまぁ、いろいろかな……純粋な愛とか」ボソッ
恒一「ん? 江藤さん何て言った?」
江藤「ほら、そろそろしまわないと、榊原君も妖怪にされちゃうよ」
恒一「う、うん? わかったよ」
恒一「どうしたの?」
有田「せっかくだから、私に料理を教えて、そのまま食べて行かない?」
恒一「そ、そこまでお世話になるわけには……」
有田「お願いっ! このままじゃ、いつまでたってもお嫁に行けないのっ!」
恒一「う、うーん、なら、料理の出来る旦那さんならいいんじゃないかな?」
有田「それは、そう言う意味なんだよねっ!!!」
恒一「? そのままの意味だよ?」
有田「……うん」ショボン
江藤「女の子の出来たて手料理」ボソッ
恒一「くっ……」
江藤「それを、その子の自宅で……」ボソッ
恒一「くうぅ……」
江藤「もちろん、両親は不在」ボソッ
恒一「ちょっと怜子さんに電話してくる」ガタッ
恒一「何でわかるのっ!?」
怜子「まぁ、何となくはわかるかな」
恒一「えっと、その、こっちで晩御飯を頂く事になって……」
怜子「へぇ……やるじゃない」
恒一「何もやってないよ!」
怜子「良いわよ。思う存分、楽しみなさい。帰る頃には電話してね。車で迎えに行くから」
恒一「いいの?」
怜子「泊まって行きたいの?」
恒一「それはダメだよ! ……たぶん」
有田「榊原君の!」
江藤、有田「料理教室っ!」ドンドンパフパフ
恒一(何でちっちゃな太鼓とラッパがあるの?)
有田「よろしくお願いします」ペコリ
江藤「します」ペコリ
恒一「江藤さんもなの?」
江藤「ううん、私は食べるだけ」
恒一「料理はしないの?」
江藤「料理の出来る人と共に生きれば問題ないよね?」
恒一(だから、僕に有田さんの料理を改善してって言ってるんだよね?)
有田「買い置きがあったから、カレーライスだよ!」
江藤「無難だね」
恒一「僕は手伝うよりも、有田さんの監視をしたほうが良いのかな?」
有田「か、監視するほどでもないよ!」
江藤「監視の方が良いと思う」
恒一「じゃあ、監視だね」
有田「私の意見はっ!?」
江藤「…………」ゴゴゴゴゴゴ
有田「ど、どう? だった?」
恒一(僕、あれだけしっかりみてたよね! 何でいろいろ間違った味なの!?)アイコンタクト
江藤(私にも、わからない……噂には聞いてたけど、実際に一人で作る所は見たことが無かったから)アイコンタクト
有田「え? やっぱり、ダメだった?」オロオロ
恒一(塩を間違えて砂糖ってわけでも無いのに、そもそも塩を入れた場面も無いのに、どことなく砂糖の味がするぞ?)
有田「…………」ウルウル
恒一(何が問題って、結果的に味は、食べられない物ではないってところだ。なんとなく砂糖の味がするけれど、おいしいわけじゃないけど、食べる事が苦じゃない……だからこそ、コメントしにくい)
有田「や、やっぱりおいしくないよね。自分じゃあんまりわからないから、気が利かなくてゴメンねっ」
江藤、恒一「待ったッ!」
恒一「有田さん、お金は半分出すから、これから毎日夕飯は僕が指導するよ。一朝一夕に終わらせない。有田さんは、僕がお嫁に出せるレベルまで育てる」
江藤「とりあえず、おかわり」
有田「え、あ、ま、ままま毎日っ!? おかわりっ!? え? だってさっきまで……」
江藤「私は、食べる係だよ?」
有田「ゆ、悠ちゃん……」
有田「そ、それに榊原君、毎日って! 毎日っ!?」
恒一「一度よろしくお願いされたんだから、僕は負けない。目指すはクラス一位の料理上手だ」
有田「そ、それって榊原君を抜かないと!」
恒一「そうだよ、僕を越えるんだ。僕より料理上手になってみせるんだ、有田さん!」
有田「え、えええぇぇぇっ!!」
怜子「ん? もう帰ってくる?」
恒一「うん、食べ終えたから、ね。江藤さんも送ってこうかと思うんだけど、お願いしていい?」
怜子「もちろん良いわよ」
恒一「それと怜子さん、もしかしたら、いや、もしかしなくても僕、たぶん……」
怜子「「始まった」?」
恒一「うん、でも思ってたより、何も変わらないね、狂信的なんて聞いてたから、もっと変わるかと思ってた」
怜子「人によるのよ。本当に私生活まで変えちゃう子も、たまにいるの」
恒一「そっか……」
怜子「とりあえず、車でそっちに行けば良いかな?」
恒一「うん、あ、その前に、一つ質問」
恒一「ムーンストーン、月長石の意味って何?」
怜子「え、たしか、「純粋な愛」とか愛の象徴みたいなのが多いわね。あとら健康とかだったはずよ」
恒一「そっか、ありがとう。じゃあ、車待ってるね」
怜子「ええ、また後で」
恒一(純粋な愛……)
怜子「江藤さん、有田さん元気?」
江藤「はい、元気ですよ」
怜子「そっか……、江藤さんは、有田さんの事が好きなんだよね?」
江藤「はい。好きです」
怜子「恋愛感情?」
江藤「はい、恋です」
怜子「そう……、多分、これはあくまでも多分だけど、有田さんなりにも考えがあると思うの。この後、どうなろうと、それはわかってあげてね」
江藤「……それは、先輩としての助言ですか?」
怜子「うーん、一応、クラス担任としての助言かな。私は、さ、自分が呪われていた頃の記憶がどうも、ね」
恒一「クラス担任だったの!?」
江藤「気づいて無かったの?」
恒一「うん……」
怜子「そう、なら、これからはHRの時間くらいは顔を出そうかな」
怜子「千曳先生はどうしてるの?」
江藤「連絡事項が無い日は、何時までは教室にいろよー、とか言って帰っちゃいます」
怜子「……明日からでも、ちゃんと顔を出す事にするわ」
怜子「江藤さん、家このあたりよね?」
江藤「はい、そこの角を右に行って……」
江藤「おやすみ、榊原君」
怜子「夜まで遊んでいたからって、学校に遅刻しないようにね」
ブロロロロロロ
恒一「ねえ、怜子さん」
怜子「ん? 何?」
恒一「呪いの無い年も、あるんだよね」
怜子「ええ、あるわよ」
恒一「今年が、そうだって可能性は、あるんですか?」
怜子「江藤さんが、「始まった」わけでは無く、純粋に有田さんの事が好きになった、って事?」
恒一「うん、出来れば、そうあってほしいなって……絶対に呪いのせいとは限らないんですよね」
怜子「恒一君は、自分の事はどうなの? さっき電話で「始まった」のかもしれないって言っていたわよね?」
恒一「それは……だってさ、三人だけの同じクラスで、ずっと一緒に勉強してさ、そしたら、その……そう思ったって、おかしくは無いよ」
怜子「男子中学生らしい発想ね」
恒一「……そんなもんだよ。男子中学生って」
恒一「変ですか……」
怜子「……そう思いたい気持ちはわかるわよ。それに、それが無いなんて言わない」
恒一「じゃあ……」
怜子「ただ、それの答えは、呪いを解くか、6月の「始まる」人をがいなければ……あぁ、でも、「三年三B組」になった以上、どうなるんだろ?」
恒一「呪いを解く方法って、どうなったんですか?」
怜子「今度の週末に、会いに行くわ。一緒に来る? 彼も当事者を拒んだりはしないみたいだし、せっかくなら二人を呼んでもいいわよ?」
恒一「どこに行くんですか?」
怜子「市外の、海の近く……さすがにまだ五月だし、海には入れないわね。バーベキューくらいする?」
恒一「もう僕たちも行く気まんまんなんですね」
怜子「行かないの?」
恒一「……行きます。二人も誘って」
有田「う、うう海っ!?
え、どうしよう、水着とか何にも用意して、どこで買えば、どこでも売ってないよ!
その前にダイエットしなきゃ!
あ、でもせっかく榊原君と一緒に料理が出来るのに、朝は、やっぱりぬいちゃダメだし、お昼……今日いっぱい作っちゃったよ……
そもそも週末までにダイエットって……無理だよぉ!」
江藤「松子、普通に考えて、海に入れる季節じゃないよ?」
有田「あぁっ! 良かったぁ……」
恒一「……行く?」
有田「う、うん! お邪魔じゃないなら行くよ!」
江藤「行くよ。その方法ってのも、気になるし」
恒一「お邪魔にはならないよ。この人数なら、車にも乗れるし、日帰りだし、あ、でも、れいこさ……三神先生はバーベキューくらいはするかもって」
有田「バーベキュー! あ、でも、そんなにしてもらっちゃったら、お金とか……」
恒一「……その、ここだけの話なんだけど、どうやら三神先生、クラスの行事として行くらしくて……その、ね」
江藤「職権乱用とか、気にしなくていいの?」
有田「何で白く濁るの? 人の息には毒でも含まれてるの?」
恒一「有田さん、石灰水はそういうものだと理解してほしいな。それに、人の息に毒があったら僕たち死んでると思う。今回は、人の息に含まれる二酸化炭素だよ」
江藤「おたまじゃくしってさ、拡大すると可愛くないよね」
恒一「そりゃまあ将来はかえるだからね。って、そこは範囲じゃないよ! 理科便覧を見返して手を止めないで!」
千曳「ふむ……この本、尋常じゃないね」
恒一「先生も何か、手伝ってくださいよ!」
有田「おたまじゃくしって、かえるになるのっ!?」
恒一「待って、僕はそこから説明しなきゃいけないのっ!?」
江藤「お疲れ様、六時間もありがとうね」
恒一「うん、さすがに疲れたよ……」
有田「さ、榊原君! 今日の晩御飯、何が良い?」
恒一「うーん、僕としては、有田さんの買い物から監視しておきたいから、一緒に買い物に行こう。昨日の冷蔵庫の様子だと、どの道買いにいくよね?」
有田「う、うん! 一緒に行こう! 悠ちゃんも来るよね?」
江藤「……私は、食べる係。料理はしないよ?」
有田「うん、一緒にご飯を食べよ!」
江藤「松子……」キマシタワー
恒一「今日は、ラーメンを作ろうと思います」
恒一(これなら、材料を切って、麺をゆでるだけだ。何も入る余地は無い)
江藤「醤油? 味噌? 塩? つけ麺なんかもあるけど……」
恒一「そうだね、二人の意見を聞きたいけれど……」
有田「わ、私は、つけ麺がいいな! ほら、他のラーメンってどれも二人前で、三人だと食べづらいけど、つけ麺なら麺を一皿で出して、みんなで食べればいいでしょ!」
恒一「うん、いいんじゃないかな」
有田「良かった。一度やってみたかったんだ、みんなで一つのお皿から麺を食べるの」
恒一「有田さん、つけ麺の材料って他にある?」
有田「うーんとね、オススメはネギとかチャーシューとかあるよ」
恒一「じゃあ、それも買って帰ろうか」
有田「お湯を沸かしながら、野菜を切って……」
恒一(調味料は、キッチンから隔離した)
江藤(昨日のような油断はしない)
有田「スープ用のお湯も沸かして……」
恒一(とりあえず、おかしな所は無い)
江藤(……もうなんか、未知の領域)
江藤「何で作った本人が疑問系なの?」
有田「えへへ……ほら、ラーメンとかって、スーパーだと二人前でしか売ってないから、作るの始めてだったんだ。だから、ちょっと不安になっちゃった」
恒一「まぁ、とりあえず食べてみようか」
全員「いただきます!」
恒一(こ、これは……っ!?)
江藤(ど、どうして……っ!?)
江藤(どこに穴があった? どこで混入した?)ズルズル
恒一(いや、カレーと同じく、食べられないわけじゃないけれど)ズルズル
江藤(うーん、なんか、この味に慣れた?)
有田「こうやって、皆で晩御飯を食べるとおいしいねっ!」
江藤「っ! ……そうだね」
恒一「これが、有田さんの味だと思えば……これも良いね」
有田「もう帰っちゃうの?」
恒一「これから毎日だから、いつまでも怜子さんの車に頼るわけにもいかないし、江藤さんを送っていかなきゃいけないからね」
江藤「い、いいよそんなの。私も一人で帰れるし……」
恒一「それはダメだよ、江藤さんみたいな可愛い子が、夜道を一人で歩くなんて、あり得ない。そこは絶対に譲らないよ」
江藤「か、可愛いっ!?」
恒一「もちろん、有田さんも戸締まりはしっかりね。可愛い女子中学生の一人暮らしなんて、いつ襲われるか気が気じゃないよ」
有田「か、可愛いっ!?」
恒一「うわぁ、こうしてみると、やっぱり都会より星が綺麗だね」
江藤「都会はそんなに見れないの?」
恒一「んー、やっぱりこことは比較にならないよ」
江藤「そっか……それはちょっと、寂しいね」
恒一「こうやって見てれば、流れ星だって見えそうだよ」
江藤「意外と見えるよ? ……ほら! 今あっちに!」
恒一「え? ええ? 見逃したなぁ……」
江藤「気長に待つしかないよ。運が良ければ、すぐに見えるよ」
恒一「うーん……そんなもんなのかなぁ」
恒一「え? 星の事?」
江藤「んーん、違うよ。ちょっとコッチの事」
恒一「悩みがあるなら聞くよ?」
江藤「じゃあ……男としてさ、二股は悪だと思う?」
恒一「うーん、そこに悪意があるならそうだし、両方と秘密で付き合ってるとかはダメだと思うよ。でも、どっちも比べられないくらいに好きな事は、悪では無いんじゃないかな?」
江藤「そっか……うん、ありがとう。聞いてよかった」
恒一「そう? 役に立てたなら良いんだけど」
恒一「それじゃ、また明日、江藤さん」
江藤「……うん、また明日」
恒一「どうしたの?」
江藤「……どうもしてないよ。週末楽しみにしてるからね! また明日だよ恒一!」タタタタ
怜子「どうしたの?」
恒一「なんか、よくわからない……」
怜子「良い話?」
恒一「多分、良い話。でも……やっぱりよくわからない」
怜子「何がわからないの?」
恒一「……女心」
怜子「……へぇ」ニヤリ
怜子「と、いうわけで! 三年三B組修学旅行!」
恒一「修学旅行っ!?」
怜子「まぁ名前だけ、ね。恒一君は修学旅行に行ってないんだから、気分だけでもそうしておきなさい。本当は泊まりにしたかったんだけど……」
恒一「怜子さん……ありがとうございます」
怜子「いーのいーの、さ、二人は後ろに乗って。ちゃんと言っておいたもの、持ってきたわね?」
江藤「はい!」
有田「……はい」
恒一(何で有田さんは、あんなに自信が無さそうなんだろう?)
怜子「え? 恒一君も後ろよ?」
恒一「え?」
車内
有田「あはは、こうやって座ると、やっぱり狭いね」
江藤「そもそも、真ん中が一番でかい人なのは、おかしいと思うんだけど」
恒一「あはは……」ギュウギュウ
有田「きゃぁっ!?」ギュッ
恒一「うわぁっ!?」
江藤「うわ、速い……」ギュ?
有田「びびび、びっくりしたぁ……」ギュー
恒一「大丈夫?」
有田「さ、最初に驚いただけだよ! 私は大丈夫」ギュー
恒一(手は、放さないんだ……うん、いいんだけどね)
江藤「…………」
恒一「どうしたの? 江藤さん」
江藤「私が恒一って呼んでるんだから、恒一も悠って呼んで」
恒一「よ、呼び捨て?」
江藤「当然」ギュー
恒一(それだけ強く抱きしめられるとですね。いろいろ男子中学生な僕にも思うところはあるんですよ。有田さんの方もそうだけど、向こうは怖がって掴んだから、耐えるしかない。とりあえず、何が問題って、静まれ!)
江藤「だめ?」ウワメヅカイ
恒一「わ、わかったよ、悠」
江藤「それでよし」ギュウ
恒一(手は放さないんだ……)
恒一「ほ、ほら、そのさ、男子がいきなり呼び捨てって、勇気がいるというか……」
有田「だ、ダメなの?」ウルウル
恒一「だ、ダメじゃないけど……」
有田「呼んでほしいな、恒一君」
恒一「……松子」
有田「やったっ! ありがとう、恒一君!」
怜子(青春ねぇ……)
恒一「ここで、会うんですか?」
怜子「ええ、ここのプールでね」
恒一「え?」
怜子「言ったでしょ? 海には入らないって」
恒一「僕、聞いてないですよ? それに、二人にも泳がないって……」
江藤「昨日、突然「水着を持ってくるように」って、言われたよ」
有田「うう……」
恒一「そ、それに僕は水着を……」
怜子「私が持ってきたわよ?」
恒一「あ、はい……」
江藤「ま、松子っ!? タオルとった瞬間に飛び込まなくても……」
有田「だ、だって……お腹とか見られちゃうし……」
江藤「そんなに気にするほどじゃないよ?」
有田「悠ちゃんとは違うんだよぉ……」
恒一(二人とも、なんだかんだでビキニなんだな。怜子さん含めたら、三人とも)
怜子「なぁーにじろじろ江藤さんの後ろ姿を見てるの?」ニヤニヤ
江藤「なっ!?」
バシャーン
江藤「い、今のは……」
有田「えいっ!」バシャ
江藤「な、お返しだぁ!」バシャバシャ
有田「あはは、やぁっ!」バシャ
江藤「このっ!」バシャ
怜子「恒一君も入ったら?」
恒一「僕は、このまま少し、眺めてますよ」
怜子「それ、意味を取り違えると、ただの変態だからね」
江藤「早く来ないと、そこまで水をかけちゃうよ!」
恒一「ようし、ちょっと離れててね!」タタタタ
バシャーン!
江藤「あはは、一番水が跳ねたっ!」
有田「……そこだっ!」バシャ
恒一「う、うわっ! く、この!」バシャ
江藤「な、恒一、なんで私を!」バシャバシャ
怜子(うーん……)
怜子「いいえ、あの子達見てたら、待った気なんてしないわよ」
松永「……あの子達が、呪われた子と、「始まった」子か。呪われたのは誰だ?」
怜子「あの、元気そうな子よ」
松永「……へぇ、意外だな」
怜子「そう?」
松永「俺はてっきり、あの男だと思ってたよ」
怜子「ええ、私は覚えてないんだけど、皆が呪いが解けてからの貴方が、一時期変だったって……」
松永「変、ねぇ……俺もあの時は、あんまり詳しくはなぁ……」
怜子「どうやって解いたか、思い出せない?」
松永「……わかんないな……夏休みの時に……俺たち五人で……何かはしたと思うんだけど……あ、でも、じゃあ、あれは……」
怜子「何か思い出せそう?」
松永「……うん、俺、何か隠した気がする……あの三組の教室に……何だっけ……たしか、何かを残さなきゃいけない気がして」
松永「…………悪い、俺がわかるのはここまでだ。こんな所まで来てもらって、すまん」
怜子「良いのよ、何かを隠したってだけで十二分だもの」
怜子「そうでも無いよ、もうずいぶん変わっちゃった」
松永「なぁ、卒業式で俺が告白したの、覚えてるか?」
怜子「ええ、貴方、呪いが解けても後遺症みたいに残ってたわよね」
松永「あの時、怜子は俺に何て言ったか覚えてるか?」
怜子「……何だったかしら?」
松永「「後遺症が治ってもそう言うなら考える」って言ったんだぜ」
怜子「若い日の思い出ね」
松永「もう、十五年たったんだ。今更後遺症なんて言わないよな?」
怜子「え?」
松永「なあ、今度食事でも行こうぜ」
怜子「……そうね、それもいいわね」
有田「もう無理……今日だけで痩せた気がする……」
江藤「明日筋肉痛になりそう……」
怜子「はーいじゃあ皆、着替えてバーベキューするわよー」
恒一「あ、あれ? 待ち合わせた人は……?」
怜子「貴方達がきゃっきゃっしてた間に、一通りの話は聞いたわよ?」
恒一(楽しみすぎたかな……)
恒一「それなら、もう焼けてますよ」
江藤「恒一、お肉とって」
恒一「僕は使い魔か、ほら、野菜も」
有田「恒一君、どのお肉がおいしいかな?」
恒一「うーん、この辺りのなら、もう焼けてるから良いと思うよ」
怜子「次は次は?」
恒一「僕にも食べるタイミングをくださいっ! あとみんな、野菜も食べてっ!」
江藤「野菜……あーん」
恒一「それ僕が悠にあげたやつじゃ……あーん」モグモグ
恒一「お肉……いいの? あーん」モグモグ
怜子「あ、私はやらないからお肉とって」
恒一「まったく……」
有田「あーん」
恒一「あ、あーん」モグモグ
江藤「あーん」
恒一「モグモグ……あーん」モグモグ
有田「あーん」
恒一「両極端だよっ!」
有田「……くー、くー」モタレェ
江藤「んん……だめだよぉ……松子も恒一もそんな……えへへ……」モタレェ
怜子「行きは両側から抱きつかれて、プールでは水のかけ合いをして、バーベキューではあーんってして、帰りは眠った二人にもたれ掛かられる……中尾君あたりが聞いたら、我を忘れて暴れそうだねモテ一君」
恒一「そ、そんなんじゃ無いですよっ!」
怜子「そういうのはね、客観的にみた判断の方が、結局正しかったりするからね」
恒一「……それで、今日の目的は、どうなったんですか?」
怜子「彼から聞いた話だけどね……」
怜子「そゆこと、あんまり目立って入られても困るから、自習の時にでも探してもらえる?」
恒一「わかりました」
怜子「ごめんね、もっと核心に迫れると思ったんだけど……」
恒一「いえ、手がかりの在処がわかるだけで、充分です」
怜子「……頑張ってね」
恒一「はい」
恒一「それじゃ、おやすみ、えとうさ……」
江藤「悠」
恒一「……悠」
江藤「うん、おやすみ。松子は……まだ寝てるか、今日ははしゃいだから、仕方ないかな。ちゃんと王子様が、家までエスコートしてくれるし」
恒一「そんな良いもんじゃないよ」
江藤「またまた」
恒一「でも、お姫様をエスコートはするけどね」
江藤「……なら、いいよ。ちゃんと連れてってあげてね」
恒一「もちろんだよ。じゃあ、おやすみ、悠」
江藤「おやすみ、恒一」
恒一「松子ー、家についたよー?」ユサユサ
有田「う、うーん……ぐぅ……」
怜子「中まで運んであげたら? 部屋の場所はわかるんでしょ?」
恒一「うん、じゃあそうするね。松子、ちょっと失礼するよ!」グイッ
怜子「大丈夫? 荷物くらいは持って行こうか?」
恒一「ううん、大丈夫だよ、怜子さんは車で待ってて」
有田「恒一、くん……本当に、好き?」
恒一(寝言か……本当に、好き……僕も、そうであってほしいよ)
有田「私……は、本当に好き、だよ)
恒一(っ!?)
有田「でも、悠ちゃんの……事も、好き」
恒一(…………)
有田「でも、二人は……私を……」
恒一(僕は、どうなんだろうな……)
恒一「おやすみ、松子」
恒一「と、いうわけで、うん、これは1日かかりそうだね」
江藤「マスク持ってきて、正解だったね」
有田「へっくしょん! 埃っぽいよ……」
江藤「マスクを鼻までかけないからだよ」
有田「うぅ、そうすると息がしにくいよぉ……」
江藤「くしゃみが止まらないよりは、マシなんじゃない?」
有田「うぅ……」
恒一「とりあえず、手分けして探そうか」
有田(なんか可愛い髪飾りがあるよ! つけたら怒られるかな、学校の備品だもんね……)
江藤(あの窓、割れそうだな、離れとこう)
恒一(そもそも、隠した物が何かわからないんじゃなぁ……)
恒一「あった!」
江藤「まさしく、って感じだね……表面には「将来このクラスで有り得ない恋をさせられた後輩達へ」か……」
有田「あ、開けてみよう!」
ビリビリペリペリ
恒一「カセットテープ?」
江藤「そんなの、聴ける機械が……」
有田「私の家にあるよ!」
恒一「千曳先生に言って、学校早退しようか」
松永「これを聴いてる三年三組の生徒の皆、俺は「始まった」生徒だ。いや、皆が言うには、正確にはだった、らしい。俺は皆と違って、今でも、怜子の事が好きなのに……!」
恒一「だ、大胆だね」
江藤「本当に未来に残す気あるの?」
松永「とりあえず、結果として、呪いは解けた。当事者でも何があったのか、わけがわからないが、それでも、後輩達に、俺がわかる範囲で、何をしたのか伝えたいと思う」
松永「きっかけは、怜子だった。怜子のお姉さんが、提案したらしい」
恒一「お母さんが……?」
松永「○○なら、きっと、とかそんな事を言っていたらしい。よくわからない。とりあえず、夏休みに俺たち五人……怜子と「始まった」四人で、学校に泊まったんだ。三年三組に」
松永「悪い、会話の内容は、思い出せないんだ。塗りつぶされたみたいに、わからない」
恒一「なんか、たまに音が聞き取れないね」
有田「古いテープだからね、仕方がないよ」
松永「俺に言える事はこれだけだ、三年三年で、呪われた生徒と始まった生徒が全員集まって夜を迎えると、○○が○て○○○○○○は○○になるんだ。そしてそれが、呪いを解く方法だ」
松永「誰も、あの出来事を覚えちゃいねぇ。いや、俺だけが覚えていることがおかしいくらいだ。理由はわからない、俺だっていつ忘れるかわからない。だから、こうして記録する」
松永「役に立つことを願うよ、頑張ってほしい、後輩達」
プツン
江藤「で、でもさ、本当に信じるの? あの様子だと、何が起きてたのかわからないみたいだったよ?」
有田「……呪いを解く方法は、これしかないんだよね?」
恒一「うん、おそらくはこれしか」
有田「……なら、やろう? 十五年前みたいに夏休みってわけにはいかないから、明日にでも」
江藤「うん……」
怜子「三組にお泊まり……うん、もう好きにやりなよ。職員会議だろうと何だろうと、校長がその身をかけて、ねじ伏せてくれるから」
恒一「ありがとう、怜子さん。これで、終わってくれるかな?」
怜子「私には記憶が無いから……でもまぁ、終わるんじゃないかな。姉さんの助言なら、それこそなんとこなりそうだよ」
恒一「うん、そうだね。じゃあ、行ってきます」
怜子「行ってらっしゃい」
江藤「昨日、ある程度は掃除しておいて良かったね」
恒一「でも、もう少し生活出来るスペースが欲しいな」
有田「あ、じゃあ、窓開けてくるね!」
江藤、恒一「危ないっ!」ダッ
パリン
恒一「この窓、割れそうだから、気をつけてね」
江藤「昨日、言っておけばよかったね。ごめん、松子。怪我は無い?」
有田「うん、二人のお陰で無事だよ。ありがとう!」
恒一「ふぅ……体育ようのマットとか、何でここにあるんだろう? おかげで寝やすそうだけど……」
有田「実は、前にもこんな事があったのかもね。体育館から持ってきたとか」
江藤「一番の問題は、シャワーを浴びれない事だね。着替えもあるけど……ねぇ」
恒一「僕、向こうを見てようか?」
有田「じゃあ、お願いしよっかな」
恒一(はっ!? 布の擦れる音が……っ! いかんいかん)
シュルルル
恒一(今、二人はどんな格好なんだろうか……)
有田「悠ちゃん、またおっきくなった?」
恒一(何がっ!?)
江藤「ま、松子!? 何でこんな所でそんなっ!?」
有田「え? だってほら、身長が……」
江藤「あ、うん……ゴメン、ちょっと伸びた……」
江藤「これ、で、私の勝ちっ!」
有田「うー、また負けちゃったよー!」
恒一「松子は顔に出すぎなんじゃないかな。どれがジョーカーかすぐにわかるよ」
江藤「ポーカーフェイスの練習の為に、ポーカーでもする?」
有田「トランプはもうやだよぉ……」
江藤「そう、だね。テープの通りなら、目が覚めるらしいけど、その後に記憶を消されてるってことは、これが最後の会話になるのかな」
有田「最後……」
恒一「言いたいことは、今の内に言った方が、良いかもね」
江藤「……私は、松子が好き」
江藤「……あんまり驚かないね、恒一」
恒一「ちょっとだけ、予想してたから」
江藤「そっか……」
有田「わ、私も!」
恒一「ええっ!?」
有田「私のは、驚くんだ……」
恒一「ご、ごめん……予想してなかった……」
江藤「松子……」ギュッ
有田「悠ちゃん……」ギュッ
江藤「それで、恒一の返答は? 二人から告白されて、何もいわないとけは無いよね?」
恒一「……うん」
有田「えへへ」
江藤「……ばか」
恒一「驚かないんだね」
江藤「驚かないよ、私達三人は、こうなる気がしてたもん」
恒一「そっか、なら、これで何事もなく朝が来たら、きっと呪いなんて、関係がなかったってわけだね」
有田「……うん、きっとそうだよ。だから、皆、おやすみ」
江藤「おやすみ、二人とも」
恒一「おやすみ」
??「ねぇ、起きて」
恒一(誰だ? 松子?)
恒一「松子……?」
??「松子? あぁ違うんだ。今はちょっと、体を借りてるだけ。僕は岬。夜見山岬だ。はじめまして、理津子の息子の恒一君」
恒一「夜見山岬……? 二十六年前の?」
夜見山岬「そう。君は、どことなく理津子のおもかげがあるね」
恒一「……松子の、呪いを解いてくれるの?」
岬「うん? 君はもしかして、勘違いをしてる?」
恒一「えっ?」
岬「この二人は、君達の言葉で言えば「始まった」子だよ」
恒一「じゃあ、悠が松子の事を好きになったのは……」
岬「僕の知ったことじゃないね」
恒一「……良かった」
岬「へぇ……何が良かったの?」
恒一「だってそれなら、二人の想いは、呪いのせいで生まれた物じゃないって、断言できるから」
岬「君はつくづく理津子の息子だね。言ってる事がそっくりだ」
恒一「どういう……」
岬「後の二人の、君に対する想いは、呪いから出来てるんだよ? それでいいの?」
恒一「……良くは無いよ。でも、僕や悠から、松子への想いが消されるよりは、あの二人の間が残るだけ、ずっといいんじゃないかな?」
岬「嫌いだよ、そういう考え。それは、二人の気持ちは考えて無い」
恒一「でも、じゃあ!」
岬「だって、彼女達に記憶は残るんだよ? ただ、恋だけ消え去って。それがどんな気分か想像できる? 出来ないよね? 君達はそういう人達だ」
岬「君といい、理津子といい、理津子の妹の、怜子といい、皆同じ用な事を言う」
恒一「怜子さんも……」
岬「少し、昔話を教えてあげよう。あるところに、冴えない男の子がいました。彼には好きな女の子がいました。でも、彼女は人気物です」
岬「彼は悩みました。そして、彼女を越すくらい人気者になればいい。そう思いました」
岬「必死に努力しました、彼は人気者になりました。でも、彼女は彼の事に、見向きもしません。彼女は、自分にどうにかできる事しか考えないのでした。人気者になった彼の事は、自分ではなく、他の人に頼んでしまうのです」
岬「彼は結局、彼女の為に背負った、人気者の照合に押しつぶされて死にました。結局彼女は、最後まで、彼の事を気にしませんでした」
恒一「それって……」
恒一「母さんが、そんな事……」
岬「僕がどんなに彼女に思いを伝えようとね、彼女は僕の事は背負えないって言うんだ。僕にはもっと相応しい人がいるって! そんなはず無いだろう? 僕は君の為にこうなったのに、何でもっと相応しい人がおるのか!」
岬「結局、彼女はそう言って、僕を受け入れる事はなかった」
恒一「待って、それは違うよ」
岬「何が違うんだい? 君の生まれる前の話に、君が何を言うんだい?」
恒一「母さん、お前の葬式のとき、泣いてたって……静かに、震えながら泣いてた……」
岬「それが何? 泣いてたら何? 僕の思いは伝わってたというの? 受け入れてもらえなければ、何の意味もない!」
恒一「受け入れてたんだよ! 応えるのは遅かったけど、たしかに受け入れてたんだよ!」
岬「何を……」
恒一「怜子さんの時に、ここに行くよう言ったのは、母さんだ! それがどういうことかわかる? 母さんは、お前がこうなってることを理解して、その上で、自分が近づけない事もわかっていた。だから、自分と同じ考えの怜子さんなら、きっとお前に伝えれると想ったんだ」
恒一「あるよ! 僕が確証だ! 妹である怜子さんにだっていわれた、僕と母さんの考え方は同じだって。だから、僕には母さんの考えてる事がわかる!」
岬「だけど、遅すぎたんだ。もう僕は死んで、呪いとなった。これ以上、どうしようもない!」
恒一「あるじゃないか! お前の思いが届いてたんなら、お前がこうして、呪いである必要はもうない! 母さんだってこう言うさ。お前はもう、呪いから解放されなきゃいけないって!」
岬「な……そんな、事……」
恒一「あるよ。そんな事が、ある。母さんならきっと、わかってた」
岬「…………そう、か。僕は、もう……ごめん、理津子、僕も大概、気がつくのが遅いね」シュウウウ
恒一(う、うん? 夜見山?)
恒一「あれ、朝? 夜見山は……」
有田「この土地がどうしたの?」
江藤「もう、生徒が登校してきてるよ」
恒一「呪いは、解けたの?」
恒一「え?」
江藤「恒一が呪われた生徒で、呪いが解ければ恋心を失う。だから記憶を消してやろうか? そう言われた」
有田「でもね、断ったんだ。だって、恋心を失ったって、私達にとっては、恒一君を好きだった、大切な記憶だもん」
江藤「そしたら、その……もちろん、恋心は消えたよ」
有田「でもね、その記憶を思い返せば返す程に、私達は、恒一君を好きなんだって思ったの」
江藤「前に、言ったよね、「一目惚れはきっかけで、その後に一緒にいるから、本当に好きになる」って。それの逆だよ」
有田「きっかけが消えても、私達は恒一を本当に好き。それが残ったの。だから」
江藤、有田「呪いが解けても、大好きだよ! 恒一(君)!」
おわり
保守してくれた人達まじでありがとう!
有田さんが変態なSSが多いけど、こういう有田さんも可愛いと思うんだ!
江藤さんも可愛いと思うんだ!
本編出番少ない組は、多々良さんだけ多いけど、他の子も可愛いよ!
頭痛がひどいから、もう寝ます
3pはきっと、頑張れば夢の中で
俺得なSSだった
Entry ⇒ 2012.06.04 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
恒一「見崎と赤沢さんは水と油」
見崎「そして、相いれない存在ってこと?」
恒一「あっ……いや、そこまで言うつもりは……」
赤沢「そう?まあ、あながち間違っているとは思わないけど。私、見崎さんのこと好きではないし」
見崎「私も赤沢さんには苦手意識がある」
恒一「……」
赤沢「……ちなみにこの場合、どっちが水でどっちが油なの?」
恒一「えっ?(そこまで考えてなかったけど…)…しいて言うなら見崎が水で赤沢さんが油かな」
赤沢「コラァ〜!勝手に恒一君の発言を捏造するな!」
見崎「これは失礼。ギトギト赤沢さん」
赤沢「ヘンなあだ名で呼ぶな!」
恒一「あ、いやこれは比喩で……」
赤沢「わかっているわ、恒一君。見崎さんがヘンなことを言うから諌めただけよ」
見崎「榊原君、本当に比喩と言い切れる?赤沢さんのこの体を見ても?」
恒一「えっ?それはどういう……」
見崎「榊原君って本当に鈍いのね。ほらこれよ、これ」モミモミ 恒一「!」
赤沢「!……見崎さん…やめて……わ、私の胸を……」
赤沢「人の胸を脂身とか言うのはやめなさい!」
赤沢「…こ、恒一君も見てないで見崎さんを止めてよ……」
恒一「え?……あ、うん、見崎も人の胸で遊ぶのはやめなよ」
見崎「は〜い」パッ
赤沢「…た…助かった……」ゼェゼェ
見崎「…でもこれでわかったでしょ?比喩ではないってことが」
恒一(赤沢さんの手前、これを肯定していいものか……)
赤沢「そ、そういうあなたはどうなのよ!こ、この……ビショビショ見崎め」
見崎「ビショビショ、か……まあ…私、雨に濡れるのは嫌いじゃないから」
恒一「そういえば僕が転校してまもなくの頃、雨の日なのに傘もささずに帰る見崎を見たなあ」
見崎「そういうことだから、私のことは自由に呼べばいいわ。ビショビショでもビシャビシャでも」
赤沢(何故か私が負けてるような感じだわ……)
赤沢「あ、雨の日が好きだなんて変わってるのね」
見崎「そう?…まあ、赤沢さんはいかにも晴れの日が好きそうな感じだけど」
恒一「確かにそういうイメージだね。実際はどうなの?」
赤沢「もちろん晴れの日のほうが好きよ。焼けることを除けば、日の光は嫌いじゃないわ」
恒一「そうなると、見崎と赤沢さんは雨と晴って感じかな」
恒一「その肌の色を見てもいかにもそんな感じだね」
見崎「赤沢さんが光なら、私は陰といったところかしらね」
赤沢「あら?そんなに自分を卑下することはないと思うけど」
見崎「自分を陰に喩えたとしても、それが卑下だとは思わないわ。だって…」
恒一&赤沢「?」
見崎「私が陰なら、私にとっての光は榊原君だから」
恒一&赤沢「!」
恒一「あ…ありがとう。でも、やっぱり自分を陰に喩えることはないと思うよ」
恒一「自分にとっての光っていうのは……その……お互い様なところもあるし」
赤沢(こっちはこっちでのろけて…………)
見崎「それはどういたしまして……じゃあ何だったらいい?」
恒一「そうだなあ……赤沢さんを光に喩えたから……光……晴れ……太陽か」
赤沢「じゃあ見崎さんは月ね。自分で光ることのできない哀れな星」
見崎「私、太陽より月のほうが好きだからそれでいいわ。赤沢さんに照らされなくても……」
見崎「というよりそもそも光る必要性を感じないし」
赤沢「ぐぬぬ……」
赤沢「見崎さん、地球ってどうやってできたのか知ってるわよね?」
見崎「もちろん知っているわ。でも、これはあくまでたとえ話だから」
見崎「あなたまさか自分が榊原君と見崎鳴を産んだとでも言いたいの?」
恒一「そ……それはちょっと自意識過剰かも」
赤沢「あ〜〜もう!二人して意地悪しないでよ。本来の話に戻しましょう」
見崎「もともとこれって雑談じゃなかったの?」
恒一「…まあ、一応見崎と赤沢さんの違いについての話、だったよね」
赤沢「恒一君の好きなようにしてもらって構わないわ」
見崎「私もよ」
恒一「もしかしたら意外な共通項もあるかもしれないしね」
恒一「とはいえ、最初は答えの予想がつきやすい質問をするけど」
恒一「好きな科目は?」
赤沢「国語よ」
見崎「…美術」
恒一「ああ、やっぱり」
赤沢「どういうこと?」
見崎「どういうことって言われても、国語でよくある『この時の主人公の気持ちを述べなさい』とか」
見崎「『作者の考えをまとめなさい』とかそういう問題が得意そうだから」
赤沢「そうね。そういう問題って素直に考えれば解けるものなんじゃないの?」
見崎「ふぅん。私は好きじゃないわ、そういう問題。曖昧さを残しておきながら正解は一つとか」
恒一「とはいえ、よほどの悪問でなければちゃんと絞れるようにはなってるんだけどね」
見崎「そうなの?じゃあ今度榊原君に問題を解くコツでも教えてもらおうかしら」
恒一「いいよ」
赤沢「わ、私には何か教えてくれないの?」
見崎「今、国語は得意って言ったじゃない」
恒一「赤沢さんは数学は好きじゃないの?」
赤沢「国語と比較すればの話ね。なんか無味乾燥としてて」
見崎「そうね。だから逆に無味乾燥とした試験とむしろ相性がいいから、私はまだマシだと思う」
赤沢「あ〜、それは一理あるかもしれないわね」
赤沢「でも、私も試験はあまり好きじゃないからやっぱりドライな感じのする教科は……」
恒一「なるほどね。じゃあ試験とかはあまりない美術とかは?」
赤沢「私、絵を描くのは得意ではないから……」
恒一「僕も美術は好きでも、あまり上手い方ではないんだよね」
恒一「本当?見崎がそう言ってくれるなら是非そうしたいな」
赤沢「あ、あの……私は……」
見崎「あら、赤沢さんは私に絵の描き方を教えてほしいのかしら」
赤沢「別にそういうわけじゃ…(…これ以上この二人が一緒に過ごす時間が増えるのは……)」
恒一「…赤沢さんもいれてあげたら?見崎は絵が上手なんだし」
見崎「榊原君がそう言うなら仕方ないか」
赤沢「よしっ」
見崎「しかし、無味乾燥としてないはずの美術が苦手というのはどうして?」
赤沢「私は何であれ、できることなら上手くやりたいのよ」
恒一「……どうも赤沢さんは完璧主義者の気があるみたいだね」
赤沢「そういうやり方は私が許さないわ」
見崎「まあ自分のポリシーに留めておくだけならいいけど……」
赤沢「だいたいそういう見崎さんは、学校というものに対する態度が適当すぎるんじゃないの?」
恒一(あ〜、そういう話の流れになるのか……)
見崎「いいじゃない、適当って。適当って褒め言葉よ」
赤沢「ま、まあ確かに良い意味でも使う言葉だけど」
見崎「それに『いない者』だったんだから、私がいないほうがクラスの人には迷惑にならないと思ったまでよ」
恒一「まあ、そうだね。それに『いない者』が僕と見崎になった後は……」
赤沢「その言い方は気になるわ。ハッキリ言ってよ恒一君」
見崎「私も榊原君が自分のことについて何か言うなら、ちょっと気になるかも」
恒一「……後で言うから、今は二人とも待っててほしい」
赤沢「わかったわ」
見崎「…そう」
恒一「じゃあ次の質問。好きな飲み物は何?」
見崎「紅茶」
赤沢「コーヒー」
恒一「ですよねー」
赤沢「負けって何よ!?」
見崎「恒一君と好みが合わないということに」
赤沢「そ……それは……あっ…でもこの前勧めたコーヒーは美味しかったでしょ?」
恒一「ハワイコナのエクストラファンシーだっけ?確かにあれはコーヒーが苦手な僕でも飲めたよ」
赤沢「そういうことよ」
赤沢「私は、たとえ苦手なものであっても最高の物を提供することによってそれを無きものにできるわ」
見崎「むむむ…」
赤沢「だいたいあなた、紅茶が好きとか言ってたけど普段飲んでるのは缶紅茶じゃない?それでよく紅茶が好きとかいえるわね」
見崎「むぅ……か、缶紅茶も立派な紅茶の一種よ」
見崎「その心配はいらないわ」
赤沢「どうして?」
恒一「あ、それは僕も気になるかな」
見崎「誰かさんと違って、頭使ってるから糖分補給をするのは問題ないわ」
赤沢「何〜!?まるで私が頭使ってないみたいじゃない!そ、そりゃあ対策に関して言えばその…」
見崎「無能のそしりを受けても仕方ない、だっけ?」
赤沢「わざわざあんたが言うな!」
恒一「確かに対策係としては赤沢さんはちょっと……」
赤沢「恒一君まで私に追い打ちを……」シクシク
赤沢「そ、そうよ!あなたが藤岡未咲さんのことを話してたら、『ある年』だってすぐ分かったのに!」
見崎「その話と、榊原君に最初に事情を知らせなかったのとは別問題だと思うけど」
恒一「病院にいた時に教えてくれれば、僕がこんなに動き回らなかったというなら確かにそうだね」
赤沢「恒一君……」
恒一「でもね、まあ……怪我の功名だけど、結果的にそうなって赤沢さんには感謝してるよ」
赤沢「え?何故?」
見崎「確かにそういう見方もできるわね。ありがとう赤沢さん、私たちを『いない者』にしてくれて」
赤沢(何……この敗北感は……)
赤沢「そ、そういうことならもっと私に感謝しなさい!」
見崎「この度はまことにありがとうございます、赤沢泉美様」ペコリ
赤沢「慇懃無礼って言葉、知ってるわよね?頭を使っているとのたまう見崎さん?」
見崎「もちろん知っているわ。だから今、こうしているんじゃない」ニヤリ
赤沢「わ、私をどこまで怒らせたら気が済むんだ〜!!」キーッ
恒一「ま、まあまあ赤沢さん落ち着いて。今度また一緒にコーヒーでも飲みに行こうよ」
見崎「好きじゃないわ」
赤沢「恒一君……またあのコーヒーをご馳走してあげるからね」
恒一「え?う、うん……」
見崎(おや?この反応はもしかして……)
見崎「榊原君……この前は本当に赤沢さんにコーヒーご馳走してもらったの?」
赤沢 ギクッ
恒一「お金は僕が出したよ。まあ美味しかったからいいけどさ」
見崎「何それ…人にお金まで払わせて自分の好みを押しつけてるだけじゃない」
赤沢「そ、それは……」
恒一「まあ、そうだね。見崎は他人は他人、自分は自分って感じだからね」
見崎「赤沢さん……こう言っちゃなんだけど、そういうところが榊原君と合わないところだと思う」
赤沢「あなたに訊くのは癪だけど……教えてほしいです」
見崎「赤沢さんは無意識的に自分と他人は同じだって思っている」
見崎「それで、もし仮に違う場合は基本的に自分の方が正しいと思っている」
見崎「だから好みを押しつけてしまったりする」
見崎「…とは言っても、大多数の人は自分と他人を基本的には同じだと考えてると思うから、群れるのにはそっちが有利だけど」
赤沢「なるほど……」
恒一「赤沢さんはクラスの中心的な人物だもんね」
赤沢「見崎さん……あなた恒一君が多数派の人間じゃないって言いたいの?」
見崎「もちろんそう。というか榊原君は常識はあるけど、相当な変人よ」
恒一「変人って……」
赤沢「意外だわ。見崎さんが恒一君のことをそんな風に言うだなんて……」
恒一(ん〜?)
見崎「赤沢さんならやっぱりそういうと思った。そもそもそこからして認識に違いがある」
赤沢「どういうこと?」
押しの強い赤沢さんとちょっと頼りない恒一というのもなかなか。
見崎「それは言いかえれば、他人と同じであることを重視する、価値があると判断するっていうこと」
見崎「だから、私が榊原君のことを変人だと言ったらネガティブな意味に赤沢さんは捉えた」
見崎「でも……そうね、榊原君は…どう思った?私に変人だと言われて」
恒一「え?ああ……嬉しいってことはなかったけど、悪い気もしなかったよ」
赤沢「そうなの?」
恒一「うん……」
見崎「そういうこと」
見崎「だからね……そもそも自分と他人が基本的に同じか違うかって認識が赤沢さんと榊原君では違うのよ」
赤沢「見崎さんはああ言ってるけど……恒一君はそれに同意するの?」
恒一「見崎の言ってることは概ね合っていると思うよ」
赤沢「そうなの……ふ〜ん……つまり見崎さんと恒一君は似ているって言いたいのね?」
見崎「自分と他人に対する認識については、ね」
赤沢「そっか……何だかそういう言い方をされると興味がわいてきたわ」
恒一「何に?」
赤沢「恒一君と似てるっていう見崎さんについて」
見崎「!」
赤沢「そういうわけで、あなたのこと色々私に教えなさい!見崎さん」
見崎「嫌」
赤沢 ガーン
恒一(やっぱりそうなるよね……)
赤沢「ど、どうして?私はあなたへの好意の印として色々知りたいって言っているのに」
見崎「別に好意っていうのを理解してないわけじゃない……」
赤沢「じゃあどうして?それとも、私のこと先に色々言ったほうがいいか。言いだしっぺだし」
恒一「そういう問題じゃあないと思うよ、赤沢さん」
赤沢「じゃあどういう問題?」
恒一「会って間もない頃、見崎に『質問攻めは嫌い』って言われちゃったんだよ」
赤沢「!…え?…恒一君が……見崎さんに?…信じられないわ……」
見崎「まあ、あの時は榊原君が質問攻めになるのも無理はないと思ったけど」
赤沢「え……それで……何故見崎さんは自分のことを話すのが嫌なの?」
赤沢「普通は仲良くしたいならするでしょ?そういうことを」
恒一「それはそうなんだけど……見崎は他の人に比べるとそのスピードが遅いんだよ」
見崎「…そうね。それは否定しない」
恒一「それと理由はもう一つあるよね、たぶん」
見崎「!……」
赤沢「どういうこと?」
恒一「話すだけじゃなくて、自分のことを意図せず知られてしまって……というパターンもあるのかな」
見崎「私、榊原君にそんなこと話してないのに……よく分かるのね」
恒一「去年、そういうことを考える機会がたまたまあったからかな?」
見崎「去年……ああ……なるほどね……」
赤沢「……話がよく理解できないわ。わかりやすく説明してもらえる?」
見崎「ここからは私が説明する。そのほうが確実だし、私のことを知りたいっていう赤沢さんの希望にも合致するわ」
見崎「赤沢さんは私のことを知りたいんでしょう?」
赤沢「ええ、そうよ」
恒一「いいの見崎?本当に……」
見崎「まあ、今の赤沢さんなら理解してくれるでしょう」
赤沢「もったいぶらずに早く教えなさい」
赤沢「あ……でも、その前に今恒一君の言った『去年そういうことを考える機会が…』という意味を知りたい」
恒一「……大した話じゃないよ。ただ名前のことで去年ちょっと嫌な目に遭ったっていうだけの話」
赤沢「あ……ごめんなさい」
恒一「いいよ別に。もう終わった話だからね」
見崎「簡単に言うとね……他人に攻撃されないためよ。私が自分のことを話さないのは」
赤沢「???……むしろ、それをしないほうが攻撃の対象になるんじゃない?」
見崎「まあ、そういうこともあるか。でもね、それならそれで話さないほうがまだマシなのよ」
見崎「知られたくないことを知られるよりは」
赤沢「見崎さん、あなた……そんなに他人に知られたくないことがあるの?」
赤沢「な、何かやましいことでもしてるの?」
見崎「別にしてないわ」
赤沢「じゃあどうして?」
見崎「あなたは……たまたま環境に恵まれてたから分からないんでしょうけど……」
見崎「私の場合だったら、この眼帯の下のこととか家庭のこととかね」
赤沢「見崎さんは……以前にそういうことを知られて……嫌な目に遭ったのね」
見崎「そうよ」
赤沢「それで、そういう目に遭いたくないから……自分のことは話さない、と?」
見崎「そう」
赤沢「…でも、それって人間不信とも言えるんじゃない?」
見崎「…そうかもね」
赤沢「見崎さん……あなたは本当に……それでいいの?」
見崎「別に自分のことを人に晒す願望はそんなに強くないし……無用な攻撃を受けるよりはいいわ」
赤沢「そんな……」
恒一「!」
赤沢(またしてもそういうオチか〜〜〜)
赤沢「なんか……ごめんなさい。急にそんな踏み込んだことを訊いて」
見崎「構わないわ。赤沢さんはそういう人間だって私はわかっているから」
赤沢「それ褒めてるの?」
見崎「別に褒めても貶してもいないわ。ありのままを口にしただけ」
見崎「…というわけで赤沢さん、少しは私のことをあなたに教えたわ」
赤沢「え?今さっきそれを拒否されたような気がするのだけれど」
見崎 ハァー
恒一「え?まあ、ね」
赤沢「じゃあ教えて」
恒一「そうだね……見崎は自分のことについて他人に話したがらない性格だってことをさっき言ったんだよ」
赤沢「なんだか煙に巻かれたような気分だわ。そういう回答を用意する時点であなたも相当ひねくれてるわね、見崎さん」
見崎「そうかもしれない」
恒一「見崎はちょっと卑屈なところがあるよね、赤沢さんは堂々って感じだけど」
見崎「そうね。恒一君に褒められてるわよ、ドードー赤沢さん」
赤沢「いちいちヘンなあだ名にするな!」
赤沢「……これは素直に喜んでもいいものなのかしら」
赤沢「あなたがそういうことを言うとは意外だわ」
見崎「そう?別に私、あなたを褒める意図で言っているわけではないから」
赤沢「そういうことを言うあたり、本当に素直じゃないのね見崎さんは」
恒一「まあ、見崎は口ではそうかもしれないけど……」
赤沢&見崎「?」
恒一「行動を見てると、感情の一端が垣間見れて結構面白いというか可愛らしいというか」
赤沢「そうなの?少なくとも私に対しては何もアクションを起こされてないから分からなかったわ」
見崎「確かにそうね。私から赤沢さんに対して何かした覚えは一度もないわ」
赤沢「なんかその言い方、ハッキリ嫌いといわれるより傷つくかも……」
赤沢「そんなものなのかしら」
見崎「それで、どんな行動に感情の一端が垣間見れるって?」
恒一「本人に自覚がないとなると言いづらいな。僕が自意識過剰みたいに思われても嫌だし」
見崎「お願い。言ってほしい」
赤沢「私もそれは気になるかもしれないわ」
恒一「まあ、例えば携帯が嫌いといったくせに僕に番号のメモを渡したり、とかね」
赤沢「あら、そうなの?見崎さんも案外やるわね」
恒一「う〜ん……まあ、それもそうか」
赤沢「他には何かないの?」
恒一「…まあ、見崎は時々言葉というより行動や仕草で『誘う』よね」
赤沢「『誘う』ってどういう意味?」
恒一「興味をそそられることをする」
赤沢「例えば?」
恒一「学校ではじめてあった時に『私にはちかづかないほうがいい』と言ったり…」
見崎「…それは単なる事実じゃない」
見崎「それは……」
赤沢「あなた、そんなこと言ってたの?『いないもの』のくせに、呆れるわね」
見崎「……」
赤沢「どうせ他にも何か恒一君の興味を惹くようなこと、やってたんでしょ?この際だから白状しちゃいなさい!」
見崎「そんなこと言われても……」
恒一「はじめて見崎の家……その時は人形館が家だとは知らなかったけど……」
恒一「そこで会ったときには唐突にこう言われたよ」
赤沢「何何?」
赤沢「あら、見崎さん…………大胆」
見崎「ちょっと……榊原君も誤解を招くような言い方しないでよ……私が言ったのは眼帯の下のことで」
赤沢「ふぅん?でも何でそんな話になるのかしら?」
見崎「それは……前に病院で会った時に……眼帯のこと気にしてたみたいだから……それで……」
赤沢「あなたさっき自分のことはあまり人には言いたくないなんて言ってたけど……案外そうでもないのね」
赤沢「見崎さんも……実はその時から……好きだったんじゃない?恒一君のこと」
見崎「……そう言われると……否定できないかも……」カァァ
赤沢「見崎さん、学校は適当でいいとか言っていたのに……」
見崎「え、あ……いやそれは……榊原君が学校で喋る相手がいないと退屈するかもと思って……」
赤沢「へぇ〜」ニヤニヤ
見崎「何よ、その笑みは」
赤沢「あなたさっき自分と榊原君は似ているって言ったわよね?」
見崎「そう」
赤沢「それで見崎さん、あなたは一人でいるほうが好き…よね?」
見崎「まあそれは……そうね」
赤沢「だったら……その自分と似ている榊原君が一人でいたい、とは思わなかったの?」
見崎「!」
見崎「…………私だって…………」
見崎「人と話をすること自体が嫌いなわけじゃない……」
見崎「それに…………いえ、今さら否定することもないのかな、赤沢さんにここまで言われて…」
見崎「ええ、そうよ。本当はたぶんあなたの言うように私が求めていたんだと思う、話し相手を」
恒一「見崎……」
見崎「ごめんなさいね、赤沢さん。さっきはあんな言い方をして」
赤沢「えっ?」
見崎「本当は……嬉しかったんだと思う。榊原君と二人で『いないもの』になれて」
見崎「だから改めてお礼を言うわ。ありがとう、赤沢さん」
恒一「あなたって……何?」
赤沢「いえ、これを言うと負けた気がするから言わないわ」
見崎「今更何の負けを気にするのかしら」
赤沢「何〜!……やっぱり言うのやめたわ、ちょっと可愛いところもあるのかと思ったけど」
恒一「もう思いっきり口に出してるよ……」
見崎「赤沢さんは表情がコロコロ変わるから面白い」
赤沢「誰が変えさせてるんだ!」
見崎「……そしてそこが可愛い」
恒一&赤沢「!」
赤沢「そうね。何か心境の変化でも…」
見崎「あなたとは常にそれっきりの関係でいたいだけ」
赤沢「つまり、貸し借りや嫌なのね」
見崎「あなたもそうなんじゃない?少なくとも私との関係については」
赤沢「それはそうかもしれないわね」
赤沢「恒一君にだったらいくら尽くしてもいいと思うけど、見崎さんに対してそういうことは思わない」
恒一「……改めてそんなことを言われるとなんか恥ずかしいな……」
恒一「なんというか……ごめんね、赤沢さん。僕からは何もしてあげられなくて」
赤沢「いいのよ。私が一方的に好きなだけだから」
赤沢「じゃあ……今度、勉強教えてくれる?」
恒一「それくらいならいつでもいいよ」
見崎「…赤沢さんって成績は良い方じゃなかった?」
赤沢「そうよ。あなたとは違ってね」
見崎「そうね。私も私の家族も学校の成績には無関心だから」
恒一「……でも、これ以上の成績が何か必要な理由でもあるの?」
赤沢「それはまあ……親が決めた進学先の高校に私は行きたくないから……」
恒一「なるほど、そういうことか。成績をさらに上げることで進学先の自由度を上げたいんだね」
見崎「……私も知らなかったけど、赤沢さんは赤沢さんで大変のようね」
見崎「あまり相手のことも知らずに『恵まれてる』なんて言ってごめんなさい」
赤沢「いいのよ、別に。全体的な話でいえば、見崎さんの言うことは間違ってない」
赤沢「ただ……どうしても……兄が死んでから……兄の分まで……私に……」
恒一「それでも親の言うことに反発しないで、さらに上を目指そうって考えるのはすごいと思う」
見崎「私もそう思う」
赤沢「ま、まあ……その、期待は愛情の裏返しっていうの?ええと……」
赤沢「自分で言うのも変かもしれないけど、親から愛されてるっていうのは理解してるから」
見崎「そう……そういう素直なところはちょっと羨ましいかもね」
恒一「えっ?」
赤沢「見崎さんが他人を羨むなんて……」
恒一「う〜ん……ああ、でもそういうこともあるか……」
見崎「私は自分が他の人とは違うってことを理解しているけど、別に他の人と比較しないわけじゃないから」
赤沢「そうなの?でもその比較対象が私っていうのは……」
見崎「まあ、それはたった今ちょっと思っただけだから気にしないで」
恒一「見崎は……もっと身近に……そういう人がいたもんね……」
赤沢「……!……ああ、そういうこと……」
見崎「姿かたちはほとんど同じだしね、環境要因を除けば性格も似てたと思う」
恒一「今も……羨ましいって気持ち……あったりするの?」
見崎「ううん。そういうことより……もっと話をしておけばよかったと思ってる」
恒一「……そっか」
赤沢「……あなたって……ほんとに素直じゃないわ、あきれるほどに」
見崎「人の性格なんてそう簡単には変えられないわ。あなたの勝ち気なところだって……そうでしょう?」
赤沢「そうかもしれないわね」
見崎「それに、そこはあなたの個性なわけ。それは大事にした方がいいと思う」
赤沢「そうなの……?どうも素直じゃない見崎さんにそう言われても、すぐには納得できないんだけど」
恒一「僕もそう思うから安心していいと思うよ、赤沢さん」
赤沢「恒一君までそう言うのなら、見崎さんの言うことを信じるわ」
赤沢「でも……何か腑に落ちないわね……見崎さんは私のことを苦手だと言っているのに……」
恒一「にも関わらず、なんでその苦手な人の個性を認めることができるのかって?」
赤沢「そう……それが引っかかる」
見崎「…いいよ」
恒一「見崎は僕のことを変人と言い、僕も見崎のことをどちらかといえばそう思う」
恒一「変人っていうのは、まあ……数が少ないから変人なわけで……」
恒一「それ故、変人の側から見ると自分の周囲の人間は自分とは違うと思うわけだ」
赤沢「そういう話をさっきしていたわね」
恒一「そう。そして、変人は変人であることを……周囲と違うことを理由に攻撃されやすい」
恒一「……変人が変人であるのも……ひとつの個性だ。もうわかるかな?赤沢さん」
赤沢「そうか……変人は変人で自分の個性…存在を認めてほしい」
赤沢「だから、周囲の違う人間に対してもその個性を認めざるを得ないってことね」
見崎「だいたいそんなところよ」
赤沢「今までそんなこと……全然考えたことなかった……」
赤沢「もしかしたら私も無意識のうちにそういう人たちを攻撃していたのかもしれない」
恒一「赤沢さんは正義感が強いから大丈夫だと思うけど。見崎はどう思う?」
見崎「さあ?」
赤沢「見崎さんは相変わらずって感じね」
見崎「…少なくとも私はそういう思いをしたことはないけど、他の人がどう思ってるかまではわからないから」
赤沢「……なるほどね」
恒一&見崎「!」
赤沢「色々教えてくれて。見崎さんを知ることで……その、恒一君のことも間接的に知ることができたし」
見崎「それはどういたしまして」
赤沢「あと恒一君が見崎さんのことを好き理由……もなんとなくわかった」
恒一「改めてそうやって口にされるとなんだか照れるね」
見崎「私は赤沢さんが榊原君を好きな理由を知らないけど……まあ、いいか。知る必要もないし」
赤沢「いちいち憎まれ口を叩かないの、見崎さんは」
見崎「は〜い」
恒一(ん〜……前よりは仲良くなれたかな?)
赤沢「これからは今まで以上にガンガン押すから覚悟してなさい!恒一君」
恒一「う、うん……」
見崎「せいぜい頑張ってね、赤沢さん」
赤沢「覚悟するのはあなたもよ、見崎さん」
見崎「え?」
赤沢「見崎さんにも恒一君のこと、色々教えてもらうつもりなんだから!」
見崎「なんでわざわざ敵に塩を送るような真似をしなくちゃいけないの?」
赤沢「普通は…普通はそう考えるわよね……。でもあなたは…………変人なんでしょう?」ニヤリ
見崎「!………まあ、今回は…特別に認めないこともない」
赤沢「だ…だから見崎さん……私の…その…友達になってくれる?」
見崎「……何を言っているの?」
赤沢「やっぱりダメか……」
恒一「ええと……いいんじゃないの、それくらいは?」
見崎「そうじゃなくて…………もう私たちは…友達よ」
赤沢&恒一「!」
おわり
鳴ちゃんと赤沢さんは本編でもSSでもケンカしてるか対立してることが多いから少しは仲良くなって
もらいたいと思って書いてみました
よく赤沢さんはツンデレキャラだと言われるけど、鳴ちゃんの赤沢さんに対する態度もそうであって
ほしい……と思ってみたり。本編では、そもそもツンツンすらしてないけど
Entry ⇒ 2012.06.02 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
恒一「有田さんをナデナデしたら、真っ赤になった」
勅使河原「どうした?」
恒一「僕さ、有田さんをナデナデしてみたいんだ」
勅使河原「……は?」
恒一「だから、有田さんをナデナデしてみたいんだ」
勅使河原「あぁ、うん……すれば?」
恒一「そんな簡単な事じゃないんだよっ! ナデナデをするからには、人目につかず、長時間いられる場所じゃないとっ!」
勅使河原「サカキ、どんだけナデナデするつもりだよ」
恒一「最低三時間」
勅使河原「なげえよっ!」
勅使河原「いや、別に相手が許してくれるんなら、勝手にナデナデでもしておけよ」
恒一「問題はそこじゃないんだよ!」
恒一「そもそも、僕はあまり有田さんと会話をしたことがないんだ。突然ナデナデさせてくださいなんて言ったら、間違いなく変態だと思われちゃう!」
勅使河原「充分変態だろ……」
恒一「そんな事をしたら、もう二度と有田さんをナデナデ出来なくなるじゃないかっ!」
勅使河原「そんなに何度もするつもりなのかよ」
恒一「……わからないんだ。僕にもよくわからない。今までこんな風に思ったことは無かったんだ。有田さんの頭をナデナデしたい。撫で回して、撫で回して、撫で回したい! 僕はもう、この胸の高鳴りを止められないんだ!!!」
勅使河原「サカキ、お前まさか……」
恒一「そうだよ、赤沢さんが転入初日に教えてくれた、あれ。きっとそのせいだよ」
勅使河原「くそっ、そんな事って……」
恒一「クラスの中の誰か一人が異常な性癖に目覚める現象……転入生の僕がそうなるなんてね」
勅使河原「言うな、サカキ。それ以上は」
恒一「押さえ込めば、いずれ性欲を抑えられずに「いないもの(牢屋行き)」になってしまう」
勅使河原「サカキ……」
恒一「笑ってくれよ、勅使河原君。僕はもう、有田さんの頭無しでは生きてけない体なんだ」
勅使河原「間違い無いんだな?」
恒一「うん、僕はこうして君と話している今も、有田さんをナデナデしたいんだ」
勅使河原「わかった……俺も協力するぜ、サカキ」
恒一(有田さんナデナデ作戦、第一段階、「仲良くなろう」)
恒一「お、おはよう! 有田さんっ!」プルプル
有田「おはよう! 榊原君」
恒一(あぁ、もう挨拶もしたし、ナデナデしても良いよねっ! 良いよねっ!!!)
恒一(はっ……ダメだ。持続可能なナデナデライフの為に、僕はまだ、ナデナデをしてはいけない)
勅使河原(よく我慢したぜ、サカキ。手が震えている中、よく耐え抜いた)
恒一「て、勅使河原君。僕の症状の進行が速い。ステップを早めないと……」プルプル
勅使河原「くっ、昨日とは大違いだな。……本当は、もう少し段階を踏むべきなんだろうが、サカキなら大丈夫だろう。行くんだ、サカキ!」
恒一「うん!」タタタタ
恒一「あ、有田さんっ!」
有田「さ、榊原君!?」
恒一「……一緒に、お昼を食べない?」プルプル
有田「ええっ!?」
有田「い、良いよ?」
恒一「ありがとう! 有田さん、君は女神だっ!!!」
有田「そんなに誉められる事なのっ!?」
恒一「さあ、行こう有田さん! 今日はお日様が輝いているよ! こんな教室で食べるなんてもったいない! 屋上へ行こうっ!」ガシッ
有田「ええええっ!? ど、どうしたの、榊原君っ!?」
勅使河原(あぁ、サカキが壊れた)
恒一「ごめんね、強引に連れ出して……でも、伝えなきゃいけない事があるんだ!」プルプル
有田「あ、愛の告白っ!?」
恒一「ちょっと違うよ!」
有田「ちょっとなのっ!?」
恒一「ごめん、有田さん! ナデナデさせてくれっ!」ガシッ
有田「えっ!? ……きゃあっ!」
恒一「あぁ……」ナデナデナデナデ
有田「え、ええ……?」
有田「……えっと、その、榊原君? 落ち着いたらで良いんだけど、説明してもらえる?」
恒一「うん、ただ、もう少しこのままでいさせて……」ナデナデナデナデ
有田「う、うん……」
十分後
有田「落ち着いた?」
恒一「……うん」ナデナデナデナデ
有田「それって、あの?」
恒一「そう、三年三組の、あれ」ナデナデナデナデ
有田「そっか……それが、その、これ?」
恒一「ごめんね、有田さんを巻き込んじゃって……」ナデナデナデナデ
有田「う、ううん。私でよければ、これくらい、いくらでも……」
恒一「……ありがとう」ナデナデナデナデ
恒一「数日前に、有田さんを見たときから」
有田「症状は、ナデナデしたい。で良いの?」
恒一「……正確には、有田さんをナデナデしたい。かな」
有田「わ、私限定っ!?」
恒一「……うん」
有田「えっと、その……とりあえず、クラスの皆に打ち明ける?」
恒一「そ、それは……」
恒一「ごめんね、勝手に巻き込んで、その上黙っていろだなんて……」
有田「ううん、そう思うのは当然だもん。私が榊原君だったとしても、そうしたいだろうから……」
恒一「ありがとう、有田さん。本当にありがとう」
有田「良いんだよ、私で良ければ。それより、ご飯食べない?」
恒一「うん、そうだね! 僕なんかと二人で良ければ、一緒に食べよう!」
恒一「うん、お陰で溜まってたナデナデは出来たから……だだ、出来ればなんだけど……」
有田「私に出来る事なら、何でもするよ?」
恒一「ありがとう……念のために、放課後には残ってもらっても、良いかな?」
有田「うん! それくらい、何て事無いよ」
恒一(はうっ!? ま、まずい……ナデナデしたいっ! あ、あと五分なんだ……た、耐えろ! 耐えてくれ!)プルプル
有田(榊原君の様子がおかしい? もしかしてっ!?)
有田「せ、先生! ちょっとトイレに行ってきます!」
先生「ええ、構いませんよ」
恒一「ぼ、僕も行ってきます!!!」
先生「二人もですか……しょうがないですね」
恒一「ご、ごめんね……」ナデナデナデナデ
有田「ううん、仕方がないよ。授業も終わりかけだったし、大丈夫だよっ!」
恒一「ありがとう、有田さん……僕、相手が有田さんで、本当に良かった」ナデナデナデナデ
有田「榊原君……」
有田「……ねえ、榊原君」
恒一「な、何?」
有田「もし、立場が逆だったら、榊原君は私にナデナデされてくれる?」
恒一「もちろんだよ! 有田さんにナデナデしてもらえるんなら、本望さ!」ナデナデナデナデ
有田「そ、そこまで言わなくても……も、もう! 授業が終わったら、思う存分ナデナデさせてあげるから、一旦終わりっ!」
恒一「う、うん……」
恒一「……」ナデナデナデナデ
有田「……」
恒一「……」ナデナデナデナデ
有田「……」
恒一「……」ナデナデナデナデ
有田「……」
恒一「……」ナデナデナデナデ
有田「……あ、あの、榊原君?」
恒一「っ!? ご、ごめん!! つい夢中になって……って、こんな時間っ!?」
有田「わ、私も気がついたらこんな時間だったから、良いよ。でも、そろそろ帰らないと……」
恒一「そうだね、そろそろ帰らないとね……」
有田「明日の朝まで持ちそう?」
恒一「うん、さすがにどうにかなりそうだよ」
有田「それは良かったね! それじゃあ、また明日っ!」タタタタ
恒一「うん、また明日……」
恒一(怜子さんに、何て言おう……)
怜子「恒一君が、現象に……」
恒一「うん、今は有田さんの協力もあって、どうにかなってるんだ」
怜子「それは幸いね。でも、これからどうするの? いつまでも、クラスの皆に秘密には出来ないわよ?」
恒一「うん……でも、呪われたってバレるのは……」
怜子「気持ちはわかるけど……ナデナデだし大丈夫じゃないかしら」
恒一「うん……」
怜子「まぁ、そこは貴方がしたいようにしなさい。私は、あんまり力になれそうにも無いから……」
恒一「ううん、助かったよ。ありがとう、怜子さん」
怜子「どういたしまして」
久保寺「今日は、榊原君から皆さんに、伝える事があるそうです……」
恒一「……僕は、現象に呪われました」
ザワザワ ザワザワ
恒一「定期的に、有田さんの頭を撫でなければならない性癖です」
恒一「抑えられる限りは、抑えなければいけないけれど、どうしようもない時が、必ず来ると、思う」
恒一「だから、有田さんが受け入れてくれる範囲で、僕は有田さんの頭をナデナデする事になる」
恒一「変態だと罵ってくれてもいい。だけれど僕は、もうどうしようもないんだ」
恒一「授業中に、迷惑をかけることになるけれど、言わない訳にも行かないと思ったから、こうして伝えました」
赤沢「……質問、良いかしら?」
恒一「うん、良いよ」
赤沢「有田さん以外の頭じゃ、ダメなの?」
恒一「うん、ダメなんだ」
赤沢「そう……」ショボン
有田「皆に認めてもらえて、良かったね!」
恒一「うん! こうして皆の前でも有田さんを撫でられて、僕は嬉しいよ!」ナデナデナデナデ
有田「あはは……私はちょっと恥ずかしいかなぁ」
恒一「ご、ごめん……」ナデナデナデナデ
有田「そういう意味じゃないよ。それに、それくらいには慣れないとね」
恒一「ねぇ、有田さん」ナデナデナデナデ
有田「うん? どうしたの?」
恒一「どうして、そんなに僕に良くしてくれるの?」ナデナデナデナデ
有田「うーん……まだ秘密、かな?」
恒一「そっか、いつか教えてくれるの?」
有田「いつか、ね」
恒一「有田さん、おはよう!」ナデナデナデナデ
有田「おはよう。榊原君!」
恒一「昨日はごめんね、土日は、ナデ溜めをしておかないと、まずいね……」ナデナデナデナデ
有田「うん……上手く、土日もナデナデをしておかにいとね……」
恒一「とりあえず、金曜にたっぷりナデナデしておくしか無いのかなぁ」
有田「でもそれでも限度があるだろえから、やっぱり毎週日曜に会う方が良いかもね」
恒一「そっか……まだ慣れないね」
有田「あはは、大変だね」
有田「ねえ、榊原君」
恒一「どうしたの?」
有田「その、この一週間、どうだった?」
恒一「どうって?」
有田「えっと……私の頭を撫でていて……って事」
有田「そ、そうじゃなくって!」
恒一「そうじゃなくて?」
有田「……榊原君は、異性の頭を撫でて、何も思わない?」
恒一「な、何も思わないわけないよ!」
有田「じゃあ、何か思う?」
恒一「そりゃ……もちろん……」
恒一「あ、有田さんっ!?」
有田「だから、榊原君もそうあってほしいなって、そう思うの」
有田「ねえ、この一週間、私の頭を撫でて、榊原君は……嬉しかった?」
有田「……良かった。榊原君がいやいや呪いにしたがってるのかもって、ずっと怖かったの」
恒一「そんな事、無いよ。いやいやなんて、絶対無い」
有田「榊原君……」
恒一「有田さん、少し撫でても良いかな?」
有田「うん、良いよ」
恒一「有田さんが、僕に撫でられるのが嫌かもしれないからって、ずっと言えなかったんだけどね……」
恒一「ねえ、有田さん。この一年間、僕にずっとナデナデされてくれる?」
有田「うんっ! よろしくねっ!!」
勅使河原(何でこいつら、朝っぱらから教室でこんな会話してるんだろうなぁ……)
Aritar
おわり
次回、また出来ることならリベンジしたいと思う
見てくれてありがとう
乙
乙
乙
Entry ⇒ 2012.06.01 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
恒一「デビル鳴クライ?」
恒一「…」
鳴「ンウェー!ヘェァィ!キャモーン ゲラップ!」
恒一「…」
鳴「レツゴォーゥ!ヒェアッ!ハッ、フンッ、ハァッー!!」
恒一「…」
鳴「テェィクディス…ラィズィングドゥラァゴォン!!」
恒一「み、見崎…」
鳴「フゥーッ!!ヒャアッハァー!!」グルングルングルン…
恒一「そんなに傘振り回したら危ないよ…」
鳴「ヘルクラゥドォ!!…スウィートゥベイベー?」ドヤァ…
恒一「どうしよう…見崎の様子がおかしい…」
鳴「トゥーイィーズゥィー…」
恒一「…」
鳴「フゥーッ!ヘェアッ、フンッ、ハァッ!」キュイーン
恒一「…」
鳴「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハァッー!!」グルングルン…
恒一「どうすれば良いんだ…」
鳴「ヘェアーイwwwドゥーユージョォーブ?wwww」
恒一(なんかすごい煽られてる気がする…)
鳴「イェア"ア"ア"ア"ア"!!!!」シュッ
恒一「うっ!?」ドスッ‼
鳴「カモーン…」
恒一(痛い…)
鳴「ホォーゥ!!ホォアァァァァァ!!…スウィート"ゥリームス…」
恒一「あっ、ちょっと!教室で暴れないで!!」
鳴「ン"ンゥエーッ!!アーユーレェデェ?ハァッー!!フゥーーッ!!!」シュインシュイン…
恒一「みっ、見崎ッ!」ガシッ
鳴「!?」ビクッ
恒一(とりあえず捕まえておこう…)
鳴「ロイヤッガァードゥ!!」バッ
恒一「うわっ!?」
鳴「ハッ、フンッ、ヘェアッ!ビーゴォーンッ!!ヘエ"ァッ!」
恒一「つ、強い…」
赤沢「あら、恒一君に見崎さん、今日は早いのね…」
恒一「あ、赤沢さん…」
鳴「 レッツゴォ"オ"ーーーーン"…ヘァッ!!!」シュッ
赤沢「み、見崎さん…?あなたちょっと大丈夫?」スタスタ…
恒一「あっ!赤沢さん!今の見崎に近付いたら危険だよ!!」
鳴「フンッ、フンッ、フンッ、フゥンッ!!サイレェースッ!!」ブォンブォン…
赤沢「えっ?」
鳴「イエェ"ェ"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"!!!」ソォッイッ!
赤沢「うっ…!?」 ドスッ
恒一「鳩尾に傘がっ!」
鳴「クゥレェイズゥィ?…ハッンッ!」ドヤァ…
赤沢「」
恒一「赤沢さんっ!ほ、保健室に行かないと…」
勅使河原「な、なるほどな…だから今日、
赤沢居ないのか…」
望月「それよりも、見崎さんがそんな風になるなんてね…」
恒一「うん…今日登校してきたら一人で教室で暴れてて…」
鳴「ンン"ゥ"エ"ーーー!!レッツゴー!ヘァッア"ッ!!」ブゥオッンッ‼
勅使河原「それで今の今まであんな調子なのか…」
恒一「…」
望月「…なんか怖いね」
勅使河原「随分と、イキイキ動いてるなぁ…」
鳴「ケェーイス…トゥー…ヘルクラゥドォ!!」ビョーンッ…
望月「ねぇ…見崎さんが、ああなった理由って心当たりないの?」
勅使河原「そうだな…見崎は元々変な影響受けやすい子だからなぁ」
恒一「そういえば…」
勅使河原「ん?どうしたサカキ?」
恒一「なんだか最近ゲームにハマってるって見崎が言ってたな…」
望月「ゲーム?」
鳴「ヘァッ、フゥ、ハァーッ!!…ハッハッハッハッハ」グルングルン…
鳴「ハァッー!!イェーッ!…ヘェイ?ワッツアップ?」ドヤァ…
望月「見崎さんがゲームなんて珍しいね…」
勅使河原「そういうの…嫌いなイメージだったんだがなぁ」
鳴「レッツロック!!…フゥオーウ!!」カキイン‼
恒一「あんまり想像できないよね…」
鳴「ボォクヲミロォー!!」シュッ、パッ
恒一「あっ!見崎!二段ジャンプすると、パンツ見えちゃうよ!!」
鳴「テェアッ!!フッ、ハァッ!!…スウィートベイビー!」
望月(なんだこれ…)
勅使河原「そんな訳で病院に来たわけだけども…」
鳴「…ビーゴォーン!へァ"ァ"!!」ジュインジュイン…
望月「なんで連れて来たの…」
恒一「いや、一人にしておくと危険だと思って…」
勅使河原「それに頭の病気かもわからねぇからな…」
鳴「フゥァ"ーーーオ"オ"!!ハッハァー!!」グルングルン…
望月「…た、確かに、この動きは異常だよね…」
鳴「カモォン!!スリィーピィオン…ベイビー」ドヤァ…
恒一(ひとしきり動いた後に決めゼリフみたいなの言うのは意味あるのかな…)
勅使河原「まぁ、早く行こう…」
恒一「ここがそうっぽいね…」
勅使河原「なぁ、サカキィ…やっぱやめようぜ」
恒一「えっ?どうして?」
望月「なんだか猛烈に嫌な予感するよね…」
鳴「…」←腕を組んで俯いている
勅使河原「なんだか見崎も妙に神妙な態度になっちまったしな…」
恒一「…でもここまで来たんだし、ちょっとくらい話を聞いて行こうよ…」
望月「う、うん…まぁそうかも知れないけどさ…」
鳴「…カモォーン」
勅使河原「…」
恒一「こ、こんにちは…」
未咲「…」
勅使河原「あ、あのさぁ…見崎の姉妹さん?だよな…?」
未咲「……」
望月(普通なのかな…?無口だけど…)ヒソヒソ
恒一(うーん、僕も会うのは初めてだからね…)
未咲「……ダァーイ…」スッ…
勅使河原「えっ?」
望月「や、ヤバイよこれ…」
未咲「…ユゥーシャルダァーイ…」シュッ!!
恒一「逃げろぉおおおお!!勅使河原ァあああああ!!」
勅使河原(い、何時の間に背後に…)
未咲「ヘァ"ア"ア"ア"ア"ァァァァァ!!」グィッ!
勅使河原「ふぐっ!?」ドスッ
恒一「て、勅使河原が…」
望月「目にも留まらぬ早さの兜割りだ…」
未咲「…ユーアァナーモチベェーショォン?」
鳴「イエ"エ"エ"ア"ア"ァァァァァァァァ!!!!」ジュッ‼
未咲「…ワッツローン…」キィンッ
恒一「あっ、見崎!!」
望月「ここは一先ず見崎さんに任せて逃げよう!!」
恒一「そ、そうだね…勅使河原なんか頭から血出てるし」
恒一「こ、ここまで来れば大丈夫だよね」
望月「でも瞬間移動してくるから油断出来ないけどね…」
勅使河原「」ビクビク
望月「勅使河原君…白目向いちゃってるけど大丈夫かなぁ…」
恒一「一応、血は止まったけどね…」
?「おーい!」
恒一「うん?」
赤沢「あら?恒一君、それから望月君に…勅使河原?」
恒一「あれ?赤沢さん?どうしてここに…?」
赤沢「見崎さんに鋭い突きを食らった衝撃で肋骨にヒビが入ったらしくて…病院に…」
望月「す、すごい威力だったんだね…」
赤沢「えっ」
望月「見崎さんが暴れてるからね…」
赤沢「そ、そうなの…?」
恒一「…」
望月「それより勅使河原君どうしようかな…」
赤沢「私も結構重症なんだけど…」
恒一(見崎…大丈夫かな?だいぶ押されてたけど…)
望月「とりあえず救急車呼ぶね…」
恒一「赤沢さん」
赤沢「へっ?なに?恒一君」
恒一「勅使河原を頼むよ。ぼくはちょっと見崎が心配だから見てくる」ダッ
赤沢「あっ、ちょっと待って…」
望月「えぇー殺されるよ…やめた方が…」
恒一「…おかしいな…居ないぞ?」
恒一「一体どこに…」
シュインシュインシュイン…ハァッ!
恒一「なんか屋上の方から音がする…」
恒一「み、見崎!」ダッ
恒一「見崎!大丈夫!?」
未咲「フンッフンッフンッフンッフンッ…」ショインショインショイン…
見崎「ウッ、ウッ、ウッ、ウッ、ウッ…」ザシュザシュザシュ…
恒一「見崎が空中に固定されてずっと切られてる…」
未咲「フンッフンッフンッフンッフンッフンッフン…」ショインショインショイン…
鳴「ウッ、ウッ、ウッ、ウッ、ウッ、ウッ、ウッ…」ザシュザシュザシュ…
恒一「あれどうやって浮いてるんだろう…」
未咲「…ヘェア"ッ!!」ブンッ!
鳴「…ウワァァァァァァァ…」ドサァ…
恒一「あっ、終わった…」
未咲「フゥーリッシュグゥアール…」ドヤァ…
未咲「フゥーリッシュネス、メイェ…フゥーリシュ…」ドドヤァ…
恒一「…」
未咲「…」バッ
恒一(屋上から飛び降りてった…大丈夫なんだろうか)
鳴「…ゥウ…」フラッ
恒一「見崎!」
鳴「榊原君…うっ…」
恒一「あ、あんまり動かない方が…」(素に戻った…)
鳴「くっ…」
恒一「…なんでこんな事になったか、説明して貰えるかな?」
鳴「…うん」
鳴「未咲…お見舞いに来たよ」
未咲「あっ、鳴!」
鳴「これ、お花…」
未咲「綺麗…ありがとう!退院したら、また遊園地に行こうね!」
鳴「うん、きっとね……病院、退屈じゃない?」
未咲「全然退屈じゃないよ、ちょっと淋しいけど、テレビもあるからゲームも出来るし…」
鳴「そう、良かった…」
未咲「それより鳴は、ゲームとかしないの?」
鳴「私はあんまり…そういうの、得意じゃないからね」
未咲「やってみなよ!きっと気に入ると思うよ!」
鳴「どうかな…」
鳴「え…でもそれだと、未咲が退屈に…」
未咲「大丈夫!鳴が来てくれるから、ちっとも退屈しないよ!」フフフ
鳴「……そ、そう///」
未咲「それじゃあこれ、貸してあげる!」スッ…
鳴「…デビルメイクライ…3?」
未咲「主人公がね、ひゃっはーって感じでね、格好良いんだよ!!」
鳴「そうなんだ…ありがとう」
未咲「もしクリアしたら、感想聞かせてね!」
鳴「…うん、わかった」
恒一「デビル鳴クライ?」
鳴「そう、デビルメイクライ…」
恒一「そのゲームが原因なの?」
鳴「まぁ、そういう事になる…」
恒一「そっか…でも、話を聞いてると、二人は仲が良さそうな印象なんだけど…」
鳴「…」
恒一「どうしてさっきは喧嘩を?壊しちゃったとか?」
鳴「違うの…それには深い訳があってね…」
鳴「未咲に借りたゲーム…」
鳴「やってみようかな…」カチッ
鳴(ちゃんとクリア出来るかな…)ウィーン…カリカリ…
鳴(このゲーム15歳以上対象なんだ…)
デビルメイクラァーイ…
鳴(主人公…銀髪なんだ…)
鳴(すごい…あんなに沢山の敵をいとも簡単に…)ワクワク
ダンテ『ヒャッホォー!!イェア!コモォン!!』
鳴(二丁拳銃、剣も使うんだ…すごい、格好良い)ワクワク
鳴(…私好みのゲームかも知れない)
鳴「それから私は狂った様に、お風呂も入らず昼夜問わずにやり込んだわ…」
恒一「見崎はちょっと極端な所あるよね…」
恒一「それで?」(今の所、特に仲違いするような理由は見つからないけど…)
鳴「未咲、このゲーム…すごい面白かったよ」
未咲「そう!良かったぁ…鳴ならきっと気に入ると思ったの!」(厨二だからね…)
鳴「退院したら…二人でやろう」
未咲「うん!!その為には私も頑張らないとね!!」(なんか鳴…ちょっと酸っぱい匂いするけど…ま、いっか)
鳴「ダンテは最高に格好良い主人公だった…」
未咲「そうだね!でもバージルの方が格好良いけどね!」
鳴「…え?」
未咲「日本刀を武器に、自分の美学だけを信じる生き方…格好良いなぁ」
鳴「…いや、ダンテの方が格好良い」
鳴「…二丁拳銃と大剣リベリオンを武器に、どんな時でもクールな態度で敵を倒すダンテの方が格好良い」
鳴「…ダンテ…これは譲れない」
未咲「…ダンテはちょっと馬鹿っぽいじゃん」イラッ
鳴「…バージルは脳筋過ぎ…」イラッ
未咲「…でも実力ではバージルの方が強いんだよ?」イライラ…
鳴「…最後、負けたじゃん」イライラ…
未咲「…あれは連戦で疲れてたからだよ」イライライラ
鳴「…そんなのダンテもじゃない」イライライラ
鳴「僅かな価値観の違いから、私達の間に険悪なムードが漂った…」
恒一「そっか…」(そんなんどっちでも良いじゃないか…)
恒一「う、うん…」(見崎は変な所で頑固だったりするからなぁ…)
未咲「…この厨二病邪気眼少女」ボソッ
鳴「…うるさい虚弱モヤシ少女」ボソッ
未咲「…」カッチーン
鳴「…」カッチーン
未咲「…ウォア"ア"ア"ア"ァァァァ!!!ビィゴォーン!!!」ガタッ!
鳴「イェア"ァ"ァァァァァァ!!!!ハァア"ァ"ッアアアア!!!!」ガッ!
看護婦「えっ?」ビクッ
鳴「そして私達は…袖を分かつ事になった」
恒一「そうなんだ、大変だね…」(どうでも良いわぁ…)
恒一「なるほど…だけど、負けちゃったんだね…」(赤沢さんは巻き添えを食らったのか…)
鳴「悔しいけれど、バージルの強さは認めざるを得ない…アルカプでも糞キャラだし…」
恒一「そうなんだ…それで、どうするの?」
鳴「…正直、もう心が折れそうになってる…円陣幻影剣がウザ過ぎる…」シュン…
恒一「み、見崎…」(明らかにションボリしてる…)
鳴「迷惑をかけてごめんなさい…赤沢さんにも謝っておくね…」トボトボ…
恒一「…」(見崎…)
最強クラス
鳴「…」ションボリ
恒一「という訳だったんだよ」
勅使河原「なるほどなぁ…それであんなにテンション高かったのか…」
望月「それに比べて、今日は打って変わって静かだねぇ…それより勅使河原君、頭のアイスノン溶けそうだよ?」
勅使河原「…ん?そういやそうだなぁ…そろそろ取り替えに行くかぁ…」
望月「それじゃあ僕も一緒に行ってくるね…」
恒一「…うん、それじゃあね」
鳴「……二丁拳銃さえあれば…」ショボン
恒一(見崎…すっかり元気なくしちゃったな…)
鳴「…」フィッ
恒一「どっちも格好良いって事で良いじゃないか?ね?」(うつ伏せになって机に突っ伏してる辺り…かなり拗ねてるなぁ)
鳴「…別にそんなの分かってる」
恒一「…」
ガラッ
綾野「見崎さん!こういっちゃん!」
恒一「綾野さん?」
綾野「うん、ちょっと見崎さんに用があってね…」
鳴「…何?」
綾野「あれ?昨日は狂ったように傘を振り回してたのに、今日は元気ないねぇ…」
鳴「…」
恒一「あ、綾野さん…」
綾野「えーそうなの?なんだー…折角演劇部に入れようと思ったのになー」
鳴「……別に演劇部に入りたくて傘を振り回してたわけじゃない…」フンッ
綾野「なるほどねぇ…姉妹喧嘩に負けちゃったわけかー」
恒一「それで今日はずっとこんな感じなんだよ…」
見崎「…二丁拳銃さえあったら勝ってた…」
綾野「あはは、意外と負けず嫌いなんだね」
恒一「まだそんな事言ってるのか…」
綾野「ふーん……あっ、そういえば演劇の小道具で、確か拳銃あったような…?」
鳴「……マジで?」ガバッ
恒一(食いついた…)
鳴「ち、ちなみに…何丁?」ドキドキ…
恒一(喜びを隠しきれてない…)
綾野「うーん、どうだったかなぁー?確か一丁しかなかった気がするなぁ…」
鳴「……二丁ないと意味がない」ガクッ
恒一「こだわるなぁ…」
綾野「変に期待させちゃってゴメンねー」
鳴「…別に気にしてない」ガックリ
恒一「めちゃめちゃ気にしてるじゃないか…」
ガラッ
小椋「あれー皆何してんの?」
鳴「別にそんなに欲しい訳じゃない…」
恒一「いやいや、えらい欲しそうだったじゃないか」
小椋「ふーん、拳銃って本物の?」
綾野「エアーガンとかで良いんだってぇー」
小椋「そっかぁー…あっ、演劇部の貸して上げれば良いじゃん!」
鳴「二丁ないと駄目なの…」
綾野「だってさ」
小椋「…ならさぁ、ウチのアニキが持ってるヤツも貸してあげようか?」
鳴「!?」ガタッ
恒一「眼に光を取り戻した…」
小椋「うん、なんかサバゲーやるって言ってさぁー沢山持ってたんだけどねぇ…今は引きこもりだし」
鳴「ま、マジすか…?」ワクワク
恒一「見崎…口調が…」
小椋「うん、多分大丈夫だと思うけど…」
綾野「良かったね!見崎さん!」
鳴「…二人は親友、早速取りに行く…」
恒一「えっ?今から?」
小椋(問題はアニキが部屋を開けてくれるか…)
小椋兄「…」
『アニキー!起きてるんでしょー』ドンドン
小椋兄「…チッ」(うるせーなぁ…)
『友達が借りたい物あるらしいんだけどさぁー、開けてよー!』ドンドン
小椋兄「…」(その手には乗らないっつの)
『ねぇーってば!開けないと無理矢理開けるよー?いいの?』
小椋兄「…開けれるもんなら開けてみろよ」ボソ…
『…』
小椋兄「…行ったかな?」
『ンゥエ"ァー!!!イィエ"ア"ァ"ァ"ァ"ァ"!!!』ズドォオン…!
小椋兄「!!!?」ビクッ(ド、ドアが…)
鳴「…お邪魔します…」
綾野「うわぁー!小椋のお兄さん初めて見たー!」
小椋(ドアが無くなれば…アニキの引きこもりも治るハズ…!)
ゾロゾロ…
小椋兄「」
鳴「…このガス銃…ダンテのに似てる…」
恒一「えぇーでも、これ高そうだよ?貸してくれるかなぁ…?」
綾野「窓開けよーよ、空気悪いよ!」
小椋兄「…な、なんだ?何なの?」
小椋兄「え…?」
鳴「これ…借りても良いですか?」
小椋兄「う、うん…いや、ていうかさぁ…君、誰?」
鳴「…見崎、鳴」
小椋「私の友達なの…」
小椋兄「そ、そうなんだ…あの、ドア壊したの…君?」
鳴「イェア…」
小椋兄「ど、どうやって壊したのかな?いや、別に責めるわけじゃないんだけど…」
鳴「Level2スティンガーで…」
小椋兄「そ、そっかぁ…」
鳴「イェァア…スウィートベイベー…」ドヤァ…
小椋兄「そ、それ…もう返さなくてもいいよ…うん…」
鳴「…おぐりんのお兄さん、良い人だった…」
恒一「そ、そうだね…」(おぐりんって…)
鳴「…このオグニー&アヤボリーで、次こそ未咲を倒す」クルクル…
恒一「な、名前付けたんだ…」
鳴「うん、格好良いでしょ」ドヤァ
恒一「お、おう…そうだね…」
恒一「え?」
鳴「…イェ"ア"ァァァァ!!!!レッツゴォーゥヘェア"ッー!!!」ビョーンッ
恒一「うわっ!?」
鳴「フゥッワフッフッフッフッーーー!!!イェアァァァ!!」グルングルンバンバンバン‼
恒一「あっ、見崎!銃を下に向けて撃ちながら回転するとパンモロするよ!!はしたないよ!!」
鳴「ヒャッフゥゥゥゥゥゥ!!!フンッ、ヘァッ、ハァッー!!」ブォンブォン…
恒一「聞いてないな…よっぽどはしゃいでるんだね、見崎」
鳴「タイムトゥロック!!ンウェー!!ハァッー!!インマァイサン!!」トゥトゥン…
恒一「…ははは」
鳴「キーピンスタイリッシュ!!イヤァッホォwwwwwフゥーwwww」バンババンバン…
恒一「…」
鳴「ジャックポッwwwwww」バシュウン‼
恒一(これ元の見崎に戻らなかったらどうしよう…)
鳴「ガッチャッ!!ドゥォンリンク!!ンウェー!!」
恒一「…」
鳴「…」ピタッ
恒一「ん?どうしたの見崎、見てるからまだ動いても良いよ?」
鳴「…榊原君、私がこのままだったらどうしようって思ってない?」
恒一「…いや、べ、別に思ってないけど」
鳴「…安心して、次に未咲と闘ったら、勝っても負けてもデビルハンターは卒業するから」
恒一「うん…」(デビルハンターだったのか…)
鳴「それじゃあ、また明日ね。榊原君」
恒一「また明日、見崎」
鳴「…」ノシ
イェア"ァァァァ…
恒一(見崎…スティンガーで移動しながら帰ってる…)
鳴「デビチルッスコンブッ!!ハァッー!!」ギュイーン
勅使河原「見崎、すっかり元気を取り戻したなぁ…」
望月「戻らなかった方が良かったかも知れないけど…」
恒一「うん、でも今日で終わりにするらしいからね…」
勅使河原「えっ…?そうなの?」
鳴「フウゥーーウ!!ハッハーッ!」グルグルグルグル…
恒一「流石に…ね?」
勅使河原「なんだぁーガッカリだなぁー…大ジャンプでのパンチラはもう見えないのかぁー…」
望月「勅使河原君…それはちょっと…」
鳴「イェ"ア"ァァァァ!!」シュッ‼
勅使河原「いってぇ!!ゴメン、ゴメン…悪かったよ…」ドスッ
鳴「カモォーン!ゲラップ!!」
恒一「ははは」
未咲「…」(昨日はついやり過ぎちゃったな…)
看護婦「未咲さーん、明日には退院できるそうですよー」
未咲「…」(最近、ろくに口聞いてないけど…絶交とか、ないよね?)
看護婦「み、未咲さん?」
未咲「…失せろ」
看護婦「えっ?」
未咲「二度は言わん…」
看護婦(前はこんな子じゃなかったのに…)
鳴「…とうとう来た」クルクル…
恒一「本当に戦うの?」
鳴「家族だからね…」キリッ
恒一(全然理由になってないんだけど…)
恒一「僕もついて行こうか?」
鳴「いい、榊原君は巻き込めないから…私一人で行く…」
恒一「えっ?でも…」
鳴「フンッ…!」シュパッ‼
恒一「!?」
恒一「み、見崎が消えた…」
鳴「…あれ?」キョロキョロ
恒一「ちょっと先にすぐ出てきた…」
鳴「…」
未咲「…」
未咲「…待ってた」
鳴「こういうの、感動の再会っていうらしい」シュキィーンッ…
未咲「…そうみたいね」
鳴「まずは再会のキスでもしようか?」
未咲「…え?」(えっ///)
未咲「…ゴホン…たまには鳴の遊びに付き合ってあげよう」シャキーン…
鳴「…イェア"ア"ァァァァァ!!!!」ダッ!
未咲「…ハァ"ア"ァァァァァァッ!!!!」ダッ!
恒一(気になるから見にきちゃったよ…)
未咲「…ユライダゥーンッ」グルングルングルングルン…
恒一(全部弾かれてる…)
未咲「ハァッ!!」シュパシュパシュパ‼
鳴「ロイヤッガードゥ!!」キュイーンッ‼
未咲「ユーアァマァーイン…テェイクディス!!!ヘェァッー!!」グルングルン…
鳴「…フンッ!!」シュパッ
未咲「…!?」(消えた…だと…?)
鳴「イェア"ア"ア"ァァァァァ!!!!」ズンッ‼
未咲「…チッ…」ガキィーッン‼
鳴「…スウィートベイビー?」ドヤァ…
恒一(見崎はあの挑発好きだなぁ…)
未咲「…フン…ハッ、フッ、フンッ!!!」キィン…!
鳴「…テェイクディス…ライズィングドゥラアゴォオン!!」ゴパァッ‼
未咲「グフッ…!?」
鳴「ゥンウェー!!……ヘルクラウドゥ!!!」グルングルン…ドンッ
未咲「ナァーゥアムービングゥ…!」ギリッ
恒一(見崎がちょっと押してる…)
恒一(それにしても…)
鳴「カモン!!ゲラップ!!」クイックイッ…
未咲「…ダァーイ!バスタァードゥ!ヒィェル!!」キュイーンッ
恒一(無駄に熱い…)
鳴「…そんなものじゃない筈、立てよ」
未咲「…少し鳴を見くびっていた…」
鳴「…?」
未咲「少し…本気を出してやろう…」キィン…
鳴「…!?」
未咲「ユーアァゴーインダァーウン…」ブゥンブゥンブゥン…
鳴「!!」ロイヤッガード‼
恒一(なんか見崎のお姉さんが凄いオーラ出してる…)
未咲「ハァッー!!!」シュンッ
鳴「…!?」ガッ!
シュイン、シュイン、シュイン、シュイン、シュイン…
鳴「…ッ!?」ガキィンッ!ガキィン!
恒一(すげぇ…厨二病を極めるとあんな事が出来るのか…)
未咲「ダァーイ!ダァーイ!ダァーイ!ビーゴォン!」バシュッ!バシュッ!
鳴「…はぁ、はぁ」(ロイヤルガードがなかったら即死だった…)
未咲「…マイト、コントゥロールゥ…エブリィウェア…」
鳴「……。」グッ
未咲「…終わりね…」キィン…
鳴「……」
未咲「ダァーッイッ!!!!」ビュオッ‼
鳴「…ハッハーw」キィン…
未咲「…!!!?」
鳴「ロイヤッリリーッスッ!!!!」キュゥイィーン‼
未咲「…!?…ッ」ズズッ‼
恒一(カウンター!?)
恒一(あっ、かなり効いてる…!今がチャンスだ…!)
鳴「…インヤァ"ァー」ダッ
未咲「…クッ」
鳴「イェィ"ィィィヤァ"ァァァァァ!!!」シュキィーーン…!
未咲「……メイェ…」ドスッ!!
鳴「…」クルクルクルクル…
未咲「…」バタッ…
鳴「…ジャックポッ!!」ドヤァ…
恒一(か、勝った…)
鳴「…勝負は着いた、私の勝ち」ドヤ
恒一(ここぞとばかりにドヤ顔連発してる…)
未咲「…ふふ、やっぱりダンテは強いね」
鳴「バージルも中々強い…」
未咲「仲直り…してくれる?」
鳴「もちろん」グッ
恒一(良かった…)ホッ…
ガチャッ!
恒一(ん?)
霧果「ちょっと!!!鳴ちゃん!!!」
鳴「あ…お母さん…」
鳴「痛い…」ヒリヒリ…
霧果「赤沢さんの娘さんに怪我させたでしょ!!!」
鳴「え?」ジンジン…
霧果「もう!!何やってるの!!傘でチャンバラなんかして!!!お母さん悲しい!!!」
鳴「…ご、ごめんなさい」ジンジン…
霧果「本当にもぉー!!この子は!!赤沢さんの親御さんがね、許してくれたから良かったけどね…一歩間違ったら大変よ!!!分かってるの!!?」
鳴「…」ジンジン…
未咲・恒一(き、気まずい…)
霧果「もう!!そんなとこで遊んでないで!!!早くこっち来なさい!!!」ガー
鳴「…うぅ」
鳴「…はい」
霧果「人の物を壊したりしちゃダメって!!!何回も言ってるでしょ!!!」
鳴「…ご、ごめんなさい」シュン…
霧果「もう中学三年生にもなって!!!そんなオモチャの鉄砲なんか持ち歩いて!!!もうこれは没収!!」バッ!
鳴「…あっ…」ガックリ…
霧果「これからね!!赤沢さんと小椋さん家に謝りに行くからね!!!鳴ちゃんも来なさい!!!」グィッ
鳴「あっ…み、未咲…またね」ズルズル…
未咲「う、うん…また今度」
バタンッ…
恒一(ま、まぁ…そうなるよね…)
恒一「…あ、あの…」
未咲「…!」ビクッ
恒一「み、見崎の姉妹?なんだよね?」
未咲「そ、そうだけど…貴方は榊原君?」
恒一「うん、名前知ってたんだ…」
未咲「鳴がね、貴方の話をよくするから…」
恒一「ふ、ふーん、そうなんだぁ…」(なんか凄い嬉しいな…)
未咲「それより…私も謝らないとね…」
恒一「え?誰に?」
未咲「…病室で私が殴りかかった人」
恒一「あ、あぁー…」
恒一「うん、また今度…次は学校かな?」
未咲「多分ね…それじゃあ」
恒一「…じゃあね」
恒一(なんか疲れた…)
恒一(凄い二日間だったなぁ…)
恒一(ぼくも早く帰ろう…)
恒一(見崎は次の日からいつも通りのテンションで登校するようになった。)
恒一(ただ、頬っぺたには綺麗なモミジの後があって、三日は消えずに残った。)
恒一(それから…小椋さんのお兄さんは、引き篭もりを辞めたらしい。)
恒一(ドアがなくなった事で、家族ともスキンシップを取るようになり、社会復帰まであと僅かだという…)
恒一(そして、見崎と小椋さんの仲が少しだけ良好になった…)
恒一(藤岡さんは、しばらくして学校にも登校してくるようになり、大団円だ…)
恒一「…まぁ、めでたしめでたしって事で…」
おわり
乙乙、面白かったぜ
おもしろかった
Entry ⇒ 2012.05.29 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
鳴「みかん」アーン恒一「はいはい」ムキムキ
恒一「美味しい?」
鳴「うん」ゴクン
恒一「良かった」
鳴「もう一つ」アーン
恒一「はいはい」スゥー
鳴「……」モグモグ
鳴「もう一つ」ゴクン
恒一「はいはい」
恒一「……」ムキムキ
鳴「みかん」
恒一「はいはい」スッ
鳴「……」モグモグゴクン
鳴「みかん」アーン
恒一「はいはい」スッ
鳴「……」モグモグゴクン
恒一「……」ムキムキ
鳴「……」
鳴「かん」
恒一「はいはい」スッ
鳴「かん」アーン
恒一「はいはい」
鳴「……」モグモグゴクン
恒一「……」ムキムキ
鳴「かん」アーン
恒一「はいはい」スッ
鳴「……」モグモグ
恒一「僕も一粒食べよ」モグモグ
鳴「……」ゴクン
恒一「うん、甘いね」ゴクン
鳴「……」
鳴「ん」アーン
恒一「はいはい」スッ
恒一「……」モグモグ
鳴「……」ゴクン
鳴「ん」アーン
恒一「はいはい」スッ
鳴「……」モグモグゴクン
鳴「ん」アーン
恒一「はいはい」
鳴「……」モグモグゴクン
鳴「ん」アーン
恒一「はいはい」
モグモグゴクン
鳴「ん」アーン
恒一「はいはい」スッ
鳴「ん」アーン
恒一「はいはい」スッ
鳴「ん」アーン
鳴「ん」アーン
鳴「ん」アーン
恒一「はいはい」スッ
鳴「……」モグモグゴクン
恒一「……」ムキムキ
鳴「……」
鳴「……」アーン
恒一「はいはい」スッ
ガラッ
恒一「あ、赤沢さんおはよう」ムキムキ
鳴「……」モグモグ
赤沢「おはよう恒一君って……え?なんで……?」
赤沢「(どうして教室の真ん中に炬燵が……それに見崎さんと恒一君が向かい合って
座っているの……)」
赤沢「(恒一君の隣にはみかん箱と卓の上に打ち捨てられた大量のみかんの皮……)」
鳴「……」アーン
恒一「はいはい」スッ
赤沢「!?なんとうらましや!!」
恒一「うわっ!赤沢さんど、どうしたのいきなり……?」
恒一「そう?なら良いけど……」スッ
鳴「……」モグモグ
赤沢「……」
赤沢「……ねぇ、恒一君」
恒一「ん?何?」
赤沢「その……私も、そこに入っていい?」
鳴「駄目」
恒一「こら見崎。意地悪するならみかん食べさせてあげないよ」
鳴「……」アーン
恒一「良いってさ」
赤沢「……お邪魔します」スッ
見崎「……」ズガズガ
赤沢「痛いちょっと痛い!なんか骨が刺さってくるから!」
恒一「こら見崎。みかん、赤沢さんに全部あげちゃうよ?」
見崎「……」アーン
赤沢「(そんなにみかんが好きなの……?ていうかなんで私こんなに嫌われているのよ)」
赤沢「(駄目だ……何もかもさっぱりだわ)」グイッ
赤沢「(……この眼帯足乗せてきやがった……!地味に痛い!)」
鳴「……」モグモグ
赤沢「ねぇ、恒一君」
恒一「ん?どうかした?」
赤沢「私も、みかん一つ貰っていいかしら?」
鳴「……」アーン
恒一「良いよ、はい」スッ
赤沢「えっ」
鳴「」グワッ
恒一「あ、ごめん……見崎に食べさせている間に癖になったみたいだ。自分で剥いて食べるよね?」
鳴「うんそうだよ。だから早く」アーン
赤沢「……勝手に答えないでくれるかしら?」
鳴「榊原君」アーン
恒一「はいはい」スッ
赤沢「ストップ恒一君」
恒一「へいっ?」ピタッ
赤沢「……折角用意してもらったんだもの。私が頂くわ」
鳴「駄目。私の」
赤沢「構わないわ。……いただきます」アーン
恒一「召し上がれ?」スッ
鳴「……!」ズガズガ
赤沢「……」パクッ
鳴「……!!」ズガガガガ
赤沢「……御馳走様でした」ゴクン
恒一「どう?甘いよね」
赤沢「えぇ。これは、癖になるわね」
恒一「もう一ついる?」
赤沢「頂きます」アーン
鳴「!!」ガガガガガガガガ
鳴「……」パクッ
赤沢「恒一君」アーン
恒一「はいはい」スッ
鳴「……」ガガガガガガ
赤沢「……」モグモグゴクン
鳴「……」アーン
恒一「はいはい」スッ
赤沢「恒一君、みかん」
恒一「はいはい」スッ
鳴「……」アーン
赤沢「みかん」アーン
鳴「……」ズガガガガガガ
赤沢「かん」アーン
鳴「……」ガガガガガガガガガガ
赤沢「ん」アーン
鳴「ガガガガガガガガガガガ」アーン
赤沢「……」アーン
鳴「……」モグモグゴクン
恒一「はいはい」スッ
ガラッ
恒一「おはよう勅使河原。珍しいな、こんなに早くに登校なんて」
勅使河原「いやぁちょっと早く起きちまったから偶には……ってなんだこれ?」
赤沢「……」モグモグ
鳴「……」モグモグ
恒一「今日は槍でも降るんじゃないか?」ムキムキ
勅使河原「(教室のど真ん中に置かれた炬燵、そこに入ったサカキと見崎と赤沢。
サカキの隣に置かれたみかん箱、卓上に大量に打ち捨てられたみかんの皮と話ながら
とんでもない早さでみかんを剥くサカキ……一心不乱にそれを啄む見崎と赤沢)」
勅使河原「(駄目だ……どこから突っ込めばいいのか分からない……!)」
勅使河原「……良いのか?」
赤沢「駄目に決まってるでしょ」
鳴「調子に乗らないで」
恒一「こら二人とも。意地悪するとみかん上げないよ?」
赤沢「……」アーン
鳴「……」アーン
恒一「ほら、きなよ」
勅使河原「……そんじゃま、お邪魔しますっと……」
赤沢「……」ドガドガ
勅使河原「痛い痛い!ちょっとなんか骨っぽいのと肉っぽいのが刺さってくるんだけどさぁ!!俺出て良いか!?」
恒一「こら二人とも」
赤沢「……」アーン
鳴「……」アーン
勅使河原「(大人しくなったが……人の足の上で制空権取り合うの止めてくれ地味に踵とかが刺さっていてぇ……)」」
勅使河原「(はぁ出たい……けどなんだか出たら申し訳ない雰囲気だ……早起きなんてするんじゃなかった……!!)」
恒一「勅使河原はみかんいる?」
恒一「うん」
勅使河原「……じゃぁもらおうかな」
恒一「はい」スッ
勅使河原「えっ」
鳴「!!」ズガガガガガガ
赤沢「!!」ドガガガガガガガガ
勅使河原「痛い痛い!」
恒一「こら」
赤沢「……」アーン
鳴「……」アーン
勅使河原「俺は良いよ、自分で剥いて食うからさ……そいつらに食べさせてやれって」
恒一「ごめんな」
勅使河原「寧ろなんで野郎が剥いたみかんをあまつさえ食べさせてもらわなきゃいけねーんだよ……」
おれもマッチョ状態になってんのかと思った
勅使河原「美味いな」ゴクン
恒一「だろ?」ムキムキ
赤沢「……」アーン
鳴「……」アーン
勅使河原「どうしたんだよこれ」
恒一「ばあちゃんが貰ってきたんだ」
勅使河原「なるほどなぁ……うん、美味い。サカキのばあちゃんに感謝だな」モグモグ
恒一「伝えておくよ」ムキムキ
赤沢「……」アーン
鳴「……」モグモグゴクン
恒一「はいはい」スッ
赤沢「……」モグモグ
鳴「……」アーン
恒一「はいはい」スッ
勅使河原「(やべぇ……みかんが美味すぎてしゃべりたくねぇ……こいつらの気持ち、ちょっと解かっちまった……)」
ガラッ
恒一「おはよう、桜木さん」
勅使河原「よぉ。気持ちは解かる……が、まずはこっち来て座っとけよ」
桜木「え、あ、はい……じゃぁ、お邪魔します」
勅使河原「まぁ、なんだ……みかんもあるぜ?」
桜木「みかん……い、いえ!今日はちょっと、良いです……」グゥ
桜木「あっ///」
桜木「あっ、あうぅ……///」
恒一「無理はしない方が良いよ。授業に集中出来なくなるし、変なダイエットは体に毒だからさ」
勅使河原「そうだぞ」ズガガドガ
桜木「それじゃぁ……一つだけ、頂きます///」
恒一「はい、召し上がれ」スッ
桜木「えっ///」
ズガガガガガガドガガガガガガガガガガガ
勅使河原「(なんで俺が蹴られるんだよ……)」
恒一「どうした?宿題見せろってか?」ムキムキ
勅使河原「いやぁそれも出来れば後程お願いしたいんだが、そうじゃなくて」
恒一「なんだよ?」スッ
勅使河原「お前、さっきから全く食ってないよな」
恒一「ん?あぁ、まぁそうだな」
勅使河原「ほれ」スッ
恒一「えっ」
鳴「!?」
赤沢「!?」
柿沼「……」ガラッ
桜木「うぅ……もう一つ、もう一つだけ……!」モグモグ
恒一「……お前はさっき食べてくれなかっただろ」
勅使河原「良いから、ほれほれ」グイグイ
恒一「……たく、気持ち悪いなぁ」アーン
勅使河原「召し上がれ」
恒一「……いただきます」パクッ
柿沼「ごちそうさまでした」ガラッ
ズガガガガガガドガガガガガガガガガガガ
桜木「もう一つ……だけなら……!」モグモグ
ガラッ
恒一「おはよう、高林君」
勅使河原「よっす」
桜木「お、おはようございます……」モグモグ
鳴「榊原君」
赤沢「恒一君」
恒一「ん?何?」
鳴「みかん」
赤沢「みかん」
恒一「はいはい」スッ
赤沢「皮付で」
勅使河原「今度はサカキに食わせてやるってか。健気だねぇ」
鳴「黙れ」ガガガガガガガガガ
赤沢「俗物が」ガガガガガガガガ
勅使河原「ひでぇ」
高林「ねぇ……これって」
勅使河原「まぁ、お前も入れよ」
恒一「みかんもあるよ?」
鳴「……」ブチュッ
赤沢「……」ブチュチュ
勅使河原「(……へったくそだなぁこの二人)」
恒一「はい、高林君」スッ
高林「えっ」
勅使河原「食ってやれ、拗ねるから」モグモグ
勅使河原「(桜木は自給自足しているからなぁ……まぁその方が効率的に食べられるから良いが)」
桜木「フルーツはセーフ……フルーツはセーフ……!」モグモグ
高林「そうなんだ。でも、僕みかん剥くの下手だから、粒、ありがたくもらうよ」スッ
恒一「僕が剥いたのでごめんね」
高林「いやいや……それにしても榊原君の指先真っ黄色だね」
恒一「あぁ、ずっと剥いているから」
鳴「……」ブチュチュッ
勅使河原「ちょっ、目に入った!」アタフタ
赤沢「下手くそ」ブチュッ
勅使河原「ぐおおおおお!!」メガー
鳴「……自業自得」
赤沢「……そうね」
ガラッ
勅使河原「その声、風見か……?」
恒一「おはよう、風見君」
風見「……はぁ。勅使河原、またお前の仕業か」
勅使河原「お前が何を悟ったのかは知らないが、断じて俺は悪くない!」
風見「はいはい……」
桜木「ビタミン接種は体に健康ビタミン健康体に接種……」モグモグ
桜木「ビタミンダイエット――あ、か、風見君……お、おはようございますっ」
風見「……」チラッ
桜木「あ――い、いえ!これはその、違くて――あっ!!」
桜木「は、はいっ!」スッ
風見「えっ」
桜木「め、召し上がれ///」
風見「」
勅使河原「なんだ…・・・」
風見「これは夢か?またお前は僕に変な夢を……!」
勅使河原「はぁ?知るかよ……俺は今みかん汁の激痛と戦っているんだ……放っといてくれ……」
風見「勅使河原」
勅使河原「なんだってんだよ……!」
風見「僕はお前と親友であって、本当に良かった」
勅使河原「はぁ……?」
風見「……いただきます」アーン
桜木「ど、どうぞっ///」スッ
風見「……」パクッ
高林「甘いね」モグモグ
恒一「うん」ムキムキ
鳴「……剥けた」デロデロ
赤沢「……ふぅ」デロデロ
鳴「……」ブチュッ
赤沢「……」ブチュッ
勅使河原「うおおおおおおおおお!!」ジタバタ
鳴「榊原君」
赤沢「恒一君」
鳴・赤「「あーん」」スッ
赤沢「あなたこそ、そのみかん病気もったみたいな爛れ方ね」
鳴「あなたのよりマシ」
赤沢「あなたのよりマシよ」
恒一「僕は良いかな。二人とも、みかん好きなんだから自分で食べなよ」
鳴「」
赤沢「」
恒一「はい、高林君」スッ
高林「美味しいなぁ」モグモグ
桜木「はい、どうぞ///」スッ
風見「(こたつにありがとう、勅使河原にさようなら……全てのみかん農家の人よ……ありがとう)」
赤沢「……」クチャクチャ
恒一「こら二人とも、行儀悪いよ」
鳴「……」アーン
赤沢「……」アーン
恒一「まだ二人が剥いたの残っているじゃないか」
鳴「……」アーン
赤沢「!?」キュンッ
赤沢「(しまった……みかんを食べすぎたせいか……にょ、尿意が……でも、出たくない!)」モソモソ
鳴「……」ニヤァ
赤沢「(!? こ、このプレッシャーは!!)」
鳴「……」ズカズカズカズカ
赤沢「つ、突くなぁ……!」ギロッ
鳴「ふふっ――!?」キュンッ
鳴「(そ、そんな……!!)」
赤沢「……!」キュピーン
赤沢「(彼女も……ふふっ。これでフェアね……!)」
鳴「(今席を立ったらもしかすると……時刻は八時五分。生徒の登校ラッシュ間近。トイレに行っている間に演劇部の猟犬二人が登校してきたら、このベストプレイスが失われてしまう!他にも多々良、有田……無能の席なんていくらでもあげるけど、此処だけは……!)」
赤沢「(こたつのキャパシティは四方に二人づつ。南に恒一君と高林君。東に私とゆかり、北に眼帯、
西に馬鹿と風見君……そのうちに登校してきた誰かが眼帯の居場所を奪ってくれたら幸いだけど、私の場所に座られなんてしたら……たとえばあの二人とか!
排泄、経路を含めた所要時間は最低で七分……約八時十五分。……分の悪い賭けだわ)」
鳴「(……どうしよう、いっそ漏らすか……此処に、それだけの価値は……ある)」
赤沢「(恒一君に飲んでもらう?よろこんでくれるかしら――)」
鳴「(台拭き――!?)」
赤沢「(――そうか!!)」
鳴「……」ブチュッ
赤沢「……」ブチュチュッ
勅使河原「ぐおおおおおおおお!!」ジタバタ
鳴「(今私のエリアは最高に汚い。そうそれは……!)」ブチュッ
赤沢「(三年三組下劣のエースが引くぐらいに……ならば!)」ブチュチュ
鳴「(此処を最大に汚してしまえば何人たりともこの聖域を犯すことは出来ない!!)」ブチュチュッ
赤沢「(だれがこの場所に相応しいのかを証明してやるわ!!)」ブチュチュチュッ
恒一「……」ビチャチャッ
高林「……」ビチャビチャ
ガラッ
綾野「あ、めーちゃんいずみーおはよー!」
小椋「二人とも、珍しいね。一緒に居るだなんて」
赤沢「……ふっ」クスッ
鳴「……」ニヤッ
綾野「……?何?なんで笑ったのあの二人?」
小椋「ていうか、何あの内股……」
赤沢「(冷たい椅子に)」
鳴「(這い蹲ると良い)」
綾野「まぁいっか。おっはよーってうわ!?なんでこたつあるの!?」
小椋「みかんまで……!?何これ」
恒一「おはよう」フキフキ
高林「みかんも炬燵もフェアに分け与えられるよ」フキフキ
小椋「あたしもー」メイセキ
綾野「えー由美私の隣に座んないのー?」
小椋「だってそこだったら榊原君に食べさせてもらえないでしょ?」
綾野「いいじゃんそれでー」ブー
小椋「やーだよー」ベー
高林「ご指名だよ、榊原君。彼女たちにも与えないのは、フェアじゃないよね」
恒一「はいはい」ムキムキ
多々良「おはようってえぇ!?」
有田「なんで炬燵があるの……?」
恒一「おはよう二人とも。どう?みかんもあるよ?」
赤沢「……はい」エッグエッグ
鳴「……はい」ヒッグヒッグ
三神「今度からはね、ちゃんと、その、催したら、行くように」
赤沢「はい……」エッグエッグ
鳴「はい……」ヒッグヒッグ
三神「……」
三神「(学校に炬燵持ってくるの……もうやめよう)」
終わり
つまんなかった人ごめんなさい
読んでくれた人ありがとう
ネーブル食ってたらなんか書きたくなって書きました。そんじゃ失礼
問題ない
乙
ごめん漏らしたのは廊下
Entry ⇒ 2012.05.28 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
水野さん「榊原くんのクラスは将来有望だね」
次の日曜日
―夜見山駅―
恒一(まだ誰もきてないのかな・・・?! 水野さんだ)
水野さん「おっ!来たわね榊原くん おはよう」ニコッ
恒一「水野さん おはようございます」
水野さん「それで探偵少年は 調査の方はうまくいってるのかなぁ?」
恒一「まだ報告できる程では・・・ すいません」
水野さん「いいからいいから また次の楽しみとっておくから それに噂の鳴ちゃんも来るんでしょ? どんな子か楽しみだなぁ」
恒一「見崎ですか・・・ ちょっと変わってるけど普通の子ですよ」
水野さん「そうなの? 結構楽しみにしてたのに・・・ でもまぁ、今日は久しぶりの映画だし、楽しまないとね
弟から聞いたよ みんなでホラー映画観るんだよね」
恒一(えっ?!)
水野さん「榊原くんのクラスは将来有望だね」うんうん
恒一(みんなって・・・ 水野君、水野さんにどういう話したんだ? まぁ僕はホラー観るつもりだしいいか)
勅使河原「よぉ〜サカキ ふぁ〜ぁ」
風見「榊原君おはよう」
恒一「勅使河原、風見君おはよう 早いね」
勅使河原「集合時間前には行かないとって 風見がうるさかったんだよ ふぁ〜ぁ」
恒一「勅使河原・・・ 眠そうだな」
風見「女性との待ち合わせで 遅れる訳にはいかないからね」キリッ (桜木さんまだかな・・・)
水野さん「この子たちも3組の?」
恒一「そうです こっちが勅使河原でこっちが風見君」
水野さん「はじめまして 弟がお世話になってます 姉の水野 沙苗です」
勅使河原・風見「はじめまして こちらこそお世話になってます」
勅使河原(結構かわいいな 水野の姉ちゃん)
風見(桜木さんの方が勝ってる!)
多々良「みなさんおはようございます」ペコリ
桜木「みんなおはよう」
風見「!」(キタ―――――(゚∀゚)―――――!!)
風見「おはよう 桜木さん 多々良さん」キリッ
勅使河原「桜木と多々良も 結構早いな」
恒一「おはよう多々良さん 桜木さん」
多々良「榊原君 おはようございます」ペコリ (私服姿の榊原君も素敵だな・・・)どきどき
桜木「おはよう 榊原君」
水野さん「なになに? こんどは女の子?」
恒一「多々良さん 桜木さん こちら水野君のお姉さんの沙苗さん」
水野さん「はじめまして 弟がお世話になってます」
多々良「はじめまして わたくし多々良 恵と申します」ペコリ 多々良さんは 頭を深くさげた
水野さん(えらい美人だわこの子・・・ それに礼儀正しいし、私より背も高いし)しょぼん・・
多々良(水野君のお姉さんって可愛らしい人だな・・・ 榊原君も可愛い女の子が好みなのかな?)どきどき
桜木「はじめまして」
水野さん(この子は この子で可愛らしいし)
綾野「おっ! こういっちゃん達はっけん〜!!」
恒一「綾野さん小椋さん おはよう」
綾野「みんなおはよう♪」
小椋「おはよう」
恒一「水野さん こちら綾野さんと小椋さんです」
綾野「はじめまして〜 水野君にはお世話になってます」
小椋「はじめまして」
水野さん「はじめまして水野 沙苗です 弟がお世話になってます」(このクラスって 可愛い子ばかりじゃない?!)
風見「あと来てないのは 赤沢さん達と見崎さんか」
桜木「赤沢さんが遅れるなんてめずらしいですね?」
勅使河原「赤沢あれだけ威張ってたのに遅刻かよ 罰金だな罰金」
赤沢「遅くなってごめんなさい」
杉浦「みんなごめんね」
中尾「すまんみんな!」
勅使河原「うわぁ?! あの・・聞いてたか?」
赤沢「なんの話?」
勅使河原「あ〜ぁ 聞いてないんならいいから」ホッ
勅使河原「でっ なんで遅れたんだよ?」
赤沢「多佳子と中尾と待ち合わせしてたんだけど 中尾が全然来なかったのよ」ぷんぷん
中尾「赤沢さんごめん」
杉浦「中尾くん 家でアタマぶつけて、それで病院に行ってて遅れたの」
中尾「大丈夫って言ったんだけど 母ちゃんが病院、病院うるさくて」
勅使河原「中尾 大丈夫か?」
中尾「大丈夫だ、問題ない 検査結果は異常なしだ」
恒一「みんなこちらが 水野君のお姉さんの沙苗さん」
水野さん「はじめまして 弟がお世話になってます」
赤沢「はじめまして 赤沢 泉美です」
杉浦・中尾「はじめまして」
水野さん(また美人の子が増えた・・・ どうなってるのこのクラスは?!)
赤沢(水野君のお姉さんは可愛い系?・・・ 恒一くんのタイプってどんな女の子なんだろ?)チラッ
桜木「あとは見崎さんだけですね」
恒一「そうだね」(見崎遅いな・・・ まさか災厄?!)
恒一「?!」(あれは見崎? なんであんなに離れたところに・・・ 手招き?)
位置関係
(駅前) (建物の陰)
恒一達 ――――――――――――――――――――――――――――→ 見崎
恒一「みんなはここで待ってて」ダダダッ
勅使河原「おいサカキ?」
恒一「見崎おはよう どうしたの?みんな向こうで待ってるよ」
見崎(榊原君に念が通じた)「おはよう榊原君・・・」
見崎「・・・実は 映画の話を未咲にしたら 未咲も行きたいって言い出して・・・」
恒一「未咲も来てるの?」
見崎「うん・・・ でも一緒に行ってもいいのかな?」
恒一「未咲ならみんなも歓迎すると思うよ」
見崎「でも、みんなに未咲紹介したくない・・・」
恒一「・・・」
見崎「自分でもわがままだってわかってるよ・・・」
恒一「でも鳴も未咲と映画みたいでしょ?」
見崎「うん・・・」
恒一「それにみんなで観た方がきっと楽しいよ」
見崎「・・・ほんと?」
恒一「うん だから鳴と未咲とみんなで行こう」
見崎「うん・・・ わかった 未咲呼んで来るね」
未咲「はじめまして 鳴の従姉妹の藤岡 未咲です〜♪」
一同「!」
未咲「あと恒一くんの彼女です〜!」ベタッ
一同「?!」
/: : : /:〃: :./: :/:/:/ }八: : : :l: :l: :ト、: : : :|: :.|: : : :l: : :.∨ /
/: : : :.l: :l:l: l:.l: :/l/l/ \: :ト、ト、{ \: :!: .:!: : : :!: : : :∨イ
/:./: : : l: :l:l: lル'____ノノ ヽ! \: :|: : : :|: : : : :∨〉
.′l: :l: : l :.l:l八{´  ̄ ̄ ̄ \___, ?: : :八: : : : :‘.
|: l八Ν八:l:l , ==ミく`ヽ __ ̄ ̄丶 |:l: : :「⌒: : : : ::.
|: l: : : :|: :.:从/ 〃 心 刈ハ / ==ミ、, |:l: :l从:_: : : : : ::.
八ハ: :∧: :l〈{{ {《或リ} ´ 〃心 刈!八{⌒7: : : : : :.!
八从ト从ヘ ゞ==゚ノ, { {《或リ }}〉: : : :/: : :リ: :i: :|
\〈{ ´´ ̄ \ 、 ゞ==゚ ノ': : /:.イ〉: :/: /ルリ
-‐`ヘ / `ー=彡仏彡イ厶イ}:/
__ -―- ´.:.:.:.:.:.:∧ l / / ̄
_ ---┬.:.:./.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.∧ __ ヽ /爪__
〈.:.:.:/.:.:.:.:.:.:.:.:.\:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.\ {厂 `ヽi /.:.:.:∨(
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--‐  ̄`ヽ彡'^ー--、.:.:\.:.:.:.:.:.:.:.:.:l {\ `こ゚´ . /.:.:.:./:.:.:.:.:.:.:.:.:.:\
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見崎「はいはい そういう冗談はいいから」
未咲「えぇ〜?!つまんないの ねぇ恒一くん?」
恒一「もう冗談ばっかり 彼女も映画に一緒に行きたいんだって みんないいかな?」
杉浦(いま一瞬空気が固まった・・・藤岡 未咲 恐ろしい子・・・ こんな伏兵がいたなんて)
水野さん(・・・なんで動揺してるのよ私? 榊原くんは中学生で弟の同級生なのよ! こういう時は
邪神を数えて落ち着くのよ クトゥルー・・ダゴン・・ニャルラトホテプ・・・あとは・・・)ブツブツ
赤沢(冗談でもわたしの恒一くんに抱きつくなんて!!)ギリギリ
杉浦「泉美、落ち着いて せっかく榊原君と映画が観れるんだし」
赤沢「そ、そうよね恒一くんがせっかく誘ってくれたんだし」
(でも見崎さんにこんなそっくりな従姉妹がいるなんて・・ でもどこかで会ったような?)
多々良(私もあれくらい積極的になった方がいいのかな?・・・)
勅使河原「いいじゃねぇ? しかし従姉妹ねぇ・・よく似てるな」
綾野「見崎さんにそっくり」
小椋「ホント双子みたい」
桜木「そっくりですね」
杉浦「藤岡さんって 小学校が一緒じゃなかった?」
未咲「あれ?! 杉浦さん?」
見崎「・・・・・」
恒一「鳴・・・ 未咲が取られるかもって思ってる?」
見崎「思ってません・・・」プイッ
恒一「ゴメン でも大丈夫でしょ、鳴と未咲は」
見崎「うん・・・」
杉浦(なんだか妙な空気だし もう移動した方がいいかも)
風見「みんな揃ったことだし そろそろ電車に乗った方がいいと思うけど?」
桜木「そうですね それじゃ行きましょうか」
―電車内―
恒一「水野さんは山桜市はよく行くんですか?」
水野さん「そうねぇ〜 映画観る時くらいしか行かないかな」
水野さん「・・・そう言えば榊原くん 山桜市には変わった場所がたくさんがあるんだよ」ニコッ
恒一「変わった場所ですか?」
水野さん「そっ 山桜神社にお婆山 街の高台には死神病院 川をさかのぼって行くと車の墓場に幽霊団地 そして・・・」
恒一「そして?」
水野さん「怪談レストラン」
恒一「怪談レストラン?」
水野さん「うん いつの間にかそんな呼び名が付いた建物があるんだって」
恒一「へ〜ぇ」
多々良(なんだか会話に入れない・・・ 積極的に話そうと思ったのに・・・)しょぼん
風見「桜木さん お母さんの具合はどうなの?」
桜木「今朝も病院行ってきたんだけど だいぶ良くなってきたの」
風見「そうなんだ よかったね」(よし桜木さんとの距離を縮めれた気がする!)
桜木(榊原君、水野君のお姉さんと楽しそうに話してるな・・・)
風見(しかし、僕もお母様のお見舞いに行ったほうがいいのか? しかしどうやって・・・! クラスを代表してコレだ!)
赤沢「恒一くんの近くに行けなかった・・・」
杉浦「まぁまぁ 向こうに着いてから話せばばいいじゃない」
杉浦「それよりで勅使河原に中尾! 吊り輪にぶら下がるの止めなさいよ」
勅使河原「いま中尾と勝負してるんだから邪魔すんなよぉ〜」
中尾「吊り輪なら まかせろ!」
―山桜市 シネコン前―
勅使河原「着いたな」
風見「今からだと昼からの上映になるね」
綾野「じゃあさ〜 昼からの席だけ取っておいて 先にお昼食べようよ?」
小椋「綾は映画より食い気だね」
綾野「え〜っ ひどいよ由美」
杉浦「そうねとりあえず 席だけ取りに行きましょう」
桜木「あの〜 それでみんなは何を観るつもりなんですか?」
恒一「これだけ人数がいるとみんなで一緒の映画って訳にはいかないよね?」
見崎「そうね・・・ それぞれの趣味もあるし」
勅使河原「とりあえず自分が観たい映画を言ってみようぜ」
水野さん(3組の子は どんなホラー観るのかしら?)
綾野「それじゃてっしーの案でいってみよう せぇ〜の!」
恒一「スクリーム2」
水野さん「私はリングかラストサマーかスクリーム2のどれでもいいよ」
見崎「ドラえもん のび太の南海大冒険・・・」
未咲「名探偵コナン 14番目の標的」
赤沢さん「タイタニックね」
杉浦「アルマゲドン」
桜木・多々良「ディープ・インパクトです」
綾野「は〜い 踊る大捜査線 THE MOVIE」
小椋「リーサル・ウェポン4」(兄貴はエヴァ、エヴァうるさかったけど見たことないし) *富山県はテレビ東京系は映らないよ
勅使河原「ムトゥ踊るマハラジャ」
風見「007 トゥモロー・ネバー・ダイ」
中尾「スポーンかTAXi」
一同(?! バラけた!)
水野さん(アレ?! みんなホラー観に来たんじゃないの? これだと私と榊原君ふたりきりになるじゃない?!
・・・なに考えてるのよ榊原君は中学生よ! それに弟の同級生だし・・・ でも横顔見たら結構きれいだし
入院中は顔色悪かったけど、いま見たら・・・)ブツブツ
見崎(榊原君はホラー観たいのか でも未咲が怖いのダメだから一緒に観れないか・・・)
未咲(恒一くんホラー観るの?! 無理!無理!無理〜!! 怖いのは絶対ダメ!)
アカザー(タイタニックを観た恒一くんと私はジャックとローズのように 硬い絆で結ばれるのよ!) *人の話聞いてません
杉浦(まさかこのメンバー相手にガチでホラー映画をチョイスするなんて 榊原君って案外大物なの?)
桜木(えっ? えっ?! 榊原君が言った映画ってホラーなの?)
多々良(ホラー映画って観た事ないけど、榊原君が観るのなら それに今日は積極的に行かないと!)どきどき
綾野(え〜っ?! こういっちゃんはそういう趣味なの? わたしは怖いのダメなのに)
小椋(綾は怖いのダメだからね しゃ〜なしだな! 私が綾に付き合うか)
勅使河原(みんなわかってねぇな〜 これからはインド映画だぜ!)
風見(桜木さんとディープ・インパクトか・・・ アリだな!)
中尾(赤沢さんとタイタニックか・・・ 途中で寝るな)
恒一(やっぱり3組の生徒でホラー観たい人はいないよな・・・
水野さんには悪いけどここは僕等が・・・ って?!) 「あ、あの・・・」
多々良「あ、あの榊原君 スクリームって面白いのかな? わたしホラー映画観た事ないだけど」ドキドキ
水野さん・赤沢・杉浦・桜木・綾野「!」
恒一「えっと?! 前作はすごくおもしろかったよ 2も期待してるけど・・・
でもホラー観たこと無いなら ちょっと刺激が強いかもしれないけど?」
多々良「で、でも一度観てみたいんです 御一緒してもいいですか?」どきどき
恒一「そこまで言うなら 一緒に観ようか」ニコッ
多々良「はい」(やった〜♪ 榊原君と一緒に映画だ)
水野さん(・・・・・?!はっ なに残念そうにしてるのよ私)
杉浦(まさか多々良さんが動くなんて・・・ ?!ゆかり)
桜木「あの榊原君 わたしもホラー苦手なんだけど面白そうだし その、私も一緒に観てもいいですか?」
恒一「えっと 桜木さんよければどうぞ」ニコッ
風見「!」(そんな?! 桜木さん)ガクッ
杉浦「ちょっと泉美! なにしてるのよ! この波に・・ビックウェーブに乗らなくてどうするの」
赤沢「そ、そうよね 行ってくる」
赤沢さん「恒一くん」
恒一「赤沢さん?」
赤沢さん「その映画スクリームと言うくらいだから スクリーム・クィーンでるわよね?」しゃらん
恒一「?スクリーム・クィ・・ あぁ〜絶叫担当の女優さんだよね たぶん出ると思うけど」
赤沢さん「ふだんホラーとかあまり観ないんだけど 演技の勉強になるし今日は観てみようかなって」
恒一「赤沢さんなら大歓迎だよ」ニコッ
赤沢さん「まぁ今日は演技の勉強のつもりで観させてもらうわ」
アカザー(きゃっほう!! 恒一くんと一緒の映画!! 泉美ちゃんってば、この夜見山一の幸せ者め!!)
杉浦(泉美 まためんどくせぇ女に・・・・)はぁ〜
中尾「!」(あ、赤沢さん)ガクッ
見崎「榊原君・・・」
恒一「なに鳴?」
見崎「未咲が怖いのダメだから私たちは違う映画観るね・・・」
恒一「そうなんだ・・・ 残念だな」
見崎「今度はわたしと未咲と榊原君の3人で映画観ようね・・・」ぼそっ
恒一「そうだね次は3人で観に来よう」ニコッ
見崎「それじゃ席の予約に行くから・・・」
未咲「恒一くん映画終わったらふたりでデートしようね♪」
水野さん・赤沢・綾野・桜木・多々良「!」ガタッ
見崎「そういう冗談はいいから」
未咲「ハ〜イ」(冗談じゃないんだけどなぁ〜)
杉浦(・・・藤岡さんって今回の台風の目ね ・・・さて)
小椋「綾! わたしも踊る大捜査線にしようか?」
綾野「いいの?由美 ありがとう こういっちゃん!」
恒一「なに綾野さん」
綾野「私達も別の映画観るね ごめんね」
恒一「いいよ謝らなくって だれでも苦手な物あるし」
綾野「ありがとう こういっちゃん♪ でも次は同じ映画観ようね」
恒一「うん」ニコッ
綾野(こういっちゃん 優しいなぁ・・・)
杉浦「綾野さん私もまぜてもらっていいかな?」
赤沢「?!」(えっ?)
綾野「うんいいよ」
杉浦「泉美がんばりなさいよ」ぼそっ
赤沢「う、うん頑張る」
杉浦「で、アンタ達どうするの?」
アンタ達 → 勅使河原・風見・中尾
風見「ぼ、僕もスク・・」
杉浦「ねぇ、ジャンル以前にあの空気の中に入れるの?」
「榊原くんはパンフレット買うの?」
「まだ決めてませんけど」
「なんだかもうドキドキしてます」
「わたしも」
「ふたりともまだ早いよ」クスッ
風見・中尾「む、無理だ」ガクッ
杉浦「じゃあこっち来る?」
風見・中尾「はい・・・」
杉浦「勅使河原は?」
勅使河原「オレはひとりでも踊るマハラジャ観るぜ!」
風見・中尾「お前もこっちに来い・・・」
綾野「え〜っ てっしーも一緒に観ようよ」
小椋「みんなと観ようよ」
杉浦「どうするの? 演劇部からのお誘いよ」
勅使河原「・・・わかったよ! おれも一緒に観るよ」
杉浦「これで決まりね」
結局こうなりました
スクリーム2 恒一・水野さん・多々良・桜木・赤沢
のび太の南海大冒険 鳴・未咲
踊る大捜査線 綾野・小椋・杉浦・風見・中尾・勅使河原
昼からの座席を予約して軽めの昼食を取り
僕たちはそれぞれの映画館に別れていった・・・
―スクリーム2 上映中―
ちなみに座席順は ‖赤沢‖桜木‖多々良‖恒一‖水野‖
「キャァ―――――ッ!!」
「・・・・・・」グサグサグサグサッ
「グエェェ・・・ウボァ・・・・・・ぎょぇ〜〜」バタッピクピク
恒一(冒頭は前作と同じみたいだな・・・)
水野さん(劇中劇のスタブも映画化すればいいのになぁ〜)
多々良「!・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 *放心状態です
桜木「えっ? えっ?・・・・・・・」
赤沢(モタモタしたせいで 恒一くんと席が離れてしまった・・・)チラッ
―スクリーム2 終了―
恒一「おもしろかったですね水野さん」
水野さん「そうだね ところで犯人は判ってた?」
恒一「いえ最後まで判りませんでした」
水野さん「榊原くんもまだまだだね」
多々良(よくわからない内に 終わってしまった・・・ でも榊原君の隣りに座れたからいいか)どきどき
桜木(ホラー映画ってあんなに血がでる物だったなんて・・・)はぁ〜
赤沢(恒一くんばかり見てたから映画の内容がわからない・・・)
―山桜市 シネコン前―
恒一「たしか見崎達が最初に上映終わるはずだけど?」キョロキョロ
水野さん「鳴ちゃん達いないの?」
恒一「はい・・・ 寄り道してるのかな?」
未咲「こ〜いちく〜ん」タッタッタッ
見崎「・・・」トコトコ
恒一「鳴 未咲!」
未咲「遅くなってゴメンね 売店見てたら遅くなったの」
恒一「よかった迷子にでもなったのかと思ったよ」
未咲「えぇ〜 未咲はそんなバカじゃないよ」
見崎「未咲はバカでしょ」クスッ
未咲「えぇ〜 鳴ひどいよぉ!」
水野さん「よかった 鳴ちゃん達来たのね あとは踊る大捜査線の子達だけね」
勅使河原「おい〜 サカキ!」
恒一「勅使河原達だ これでみんなそろったね」
杉浦「泉美 どうだったの映画は?」
赤沢「えっと・・・ 全然憶えてないの」
杉浦「・・・」(泉美のことだから 榊原君の顔ばかり見てたんでしょけどね)はぁ〜
綾野「面白かったね! てっしー」
勅使河原「おうよ ・・・死ぬなぁ!! あおしま―――――ぁ!!!」
綾野「てっしー 似てる」
風見「このあとはどうしようか?」
勅使河原・綾野・小椋「カラオケ!」
中尾・桜木・杉浦「買い物とかは?」
恒一「また割れそうだね」
多々良「あの、榊原君」
恒一「どうしたの? 多々良さん」
多々良「私の家、門限があるので そろそろ帰らないといけないんです」
恒一「そうなんだ」
多々良「はい・・・ みんなと遊びに行きたいんですけど ごめんなさい・・・」ペコリ 多々良さんは 頭を深くさげた
恒一「多々良さん・・・ 謝らなくてもいいから」
勅使河原「カラオケ!」
風見「買い物だろ!」
恒一「みんな悪いけど 僕はそろそろ帰るよ」
多々良「えっ 榊原君?」
勅使河原「どうしたんだよ? サカキ」
綾野「こういっちゃん なにか用事?」
恒一「えっと実は門限があって そろそろ帰らないと時間オーバーしそうなんだ」
多々良「榊原君・・・」
見崎「・・・」
恒一「みんな盛り上がってるのにごめん」
勅使河原「そうなのか・・・ じゃあ俺らも帰るか?」
恒一「えっ? わざわざ僕に付き合わなくていいから」
勅使河原「何いってんだよ 元々『いないもの』のお詫びにみんなで遊びに来たんだろ」
恒一「勅使河原・・・」
勅使河原「それにだ またみんなで遊びに来たら良いだけだろ!」
綾野「てっしー いいこと言うね」
桜木「それじゃ今日はもう帰りましょうか?」
風見「そうだね」
綾野「少し残念だけど またみんなで遊びに来ようね」
「みんなバイバイ!」
「おぅ また明日」
「バイバイ」
「また明日ね」
「さよなら」
恒一「水野さん今日はありがとうございました」
水野さん「どういたしまして それに私も楽しかったし」
恒一「今度はホラー以外の映画でも観にいきましょうか タイタニックとか」(水野さんには他のジャンルも観てもらわないと)
水野さん「えっ?!」(タイタニックって恋人同士で観る映画じゃないの?)どきどき
水野さん「もう! 榊原くんったら そういう映画はまだはやいわよ」
恒一「そうですか・・・」(アクション系が良かったかな?)
水野さん「そ、それじゃ そろそろ帰るね 今日は楽しかったよ」
恒一「さようなら水野さん」
水野さん「さよなら榊原くん」
綾野「こういっちゃん! 今日は楽しかったよ♪ ・・・でも次はホラーじゃない映画観ようね」
恒一「ゴメンね今日は」
綾野「いいって じゃあ次は絶対だよ!」
恒一「うん それじゃあ綾野さん また学校で」
綾野「うん また学校でね こういっちゃん!バイバイ」
小椋「さよなら」
恒一「さよなら 綾野さん 小椋さん」
多々良「あ、あの榊原君」
恒一「なに多々良さん?」
多々良「さっきはその・・・ ありがとうございました 門限の事」ペコリ 多々良さんは 頭を深くさげた
恒一「気にしないで せっかくみんなで来たのに 多々良さんだけ、のけ者に成るみたいでイヤだったから」
多々良「榊原君・・・」(やさしいな榊原君・・・ )
恒一「それじゃ多々良さん また明日」
多々良「はい 今日はとても楽しかったです ありがとうございました榊原君 さようなら」
恒一「みんなと遊びに行くのどうだった?」
見崎「そんなに悪くなかった・・・」
恒一「よかった」
見崎「ところで門限って初めて聞いた・・・」ジ――ッ
恒一「えっ?! えっと最近、おばあちゃんが心配症で・・・」
見崎「ふ〜ん そうなんだ・・・」
恒一「う、うん そうなんだ」
見崎「次はわたしと未咲と榊原君とで出かけたい・・・」
恒一「そうだね・・・ こんどは3人で出かけてもいいね」
見崎「うん・・・ それじゃ私たちも帰るね」
恒一「さよなら 鳴 未咲」
未咲「恒一くん!今度は3人で行こうね 絶対だよ!」
恒一「うん」
見崎「さよなら 榊原君」
未咲「バイバイ 恒一くん♪」
赤沢さん「恒一くん 今日は楽しかったわ」
恒一「赤沢さんの演技の参考になれば良かったけど・・」
赤沢さん「えっ? えぇ参考になったわ でも今度は違うジャンルの・・・そうね恋愛物とか観てみたいわ」
恒一「そうだね ぼくもたまには違うジャンルの映画観ないとね」ニコッ
赤沢さん「恒一くんさよなら また明日ね」スッ
恒一「さよなら赤沢さん」ギュッ
杉浦(しかし、事あるごとに握手するわね このふたり・・・)はぁ〜
恒一「さよなら杉浦さん」
杉浦「えっ!えぇ さよなら」
桜木「それじゃあ 榊原くん途中まで一緒に帰りましょうか」どきどき
恒一「えっ・・・」
桜木「遠慮しない 遠慮しない」
恒一「えっと・・・ そうだね一緒に帰ろうか」
桜木「今日は楽しかったですね」
恒一「うん そうだ映画はどうだったかな ちょっと怖かったかな?」
桜木「正直いうとちょっと怖かったです あとあんなに血が出るなんて・・・」
恒一「それじゃ 桜木さんにはブレインデッドは無理かな?」クスッ
桜木「どんな映画なんですか?」
恒一「う〜ん スプラッターコメディかな? 面白いんだけど血の量が尋常じゃないんだ」
桜木「ひっ・・・・」
恒一「あっ!ゴメン 次は楽しい映画観たいよね」
桜木「そうですね 楽しい映画・・・」
恒一「それじゃ桜木さん さよならまた学校で」
桜木「榊原くんさよなら また明日」
こうして3組女子最大?の戦いは勝者なきまま終わりましたとさ
おしまい
ありがとうございました
続きはいま書いてる所ですので
そのうち投下するつもりです
このSSの前半は
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1337261149/
にありますので興味が出たという物好きな方は
よかったら覗いてみてください
今夜は、どうもありがとうございました
Entry ⇒ 2012.05.28 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
恒一「イチャイチャいないもの生活」
鳴「うん。でも毎日じゃなくてもいいのに」
恒一「自分の奴のついでだから気にしないでよ。それに見崎ずっとパンか惣菜じゃないか。そんなのじゃ栄養偏って大きくられないよ?」
鳴「むっ」ペターン
恒一「? ごめん、もしかして迷惑だった?」
鳴「そうじゃない。榊原君の料理は美味しいから好き」
恒一「そっか、良かった。じゃあ食べよ。今日も屋上でいいよね?」
鳴「うん」
鳴「おいひい」モグモグ
恒一「そう。こないだのとどっちが好み?」
鳴「どっちも」ムシャムシャ
恒一「あはは。……見崎、御飯粒ついてるよ」
鳴「ん……どこ?」
恒一「ほっぺ。もう、何でこんなとこに……」ヒョイ
鳴「……」ジー
鳴「あむ」パク
「」ムグムグ
恒一「うわっ! 噛まないでよ見崎」チュポン
鳴「美味しかった」ゴチソウサマー
鳴「榊原君も食べなよ。全然手付けてない」ジー
恒一「うん。でも見崎の食べっぷり見てたらもうお腹膨れた気がするよ」ハハハ
鳴「半分食べてあげようか?」ジー
恒一「いいけど……そんなに食べたら太っちゃうよ?」ヒョイ
鳴「そしたら、ムグムグ、痩せるようなの作って」アーン
恒一「まぁ、見崎は大丈夫か」ヒョイ
鳴「あ、次卵焼き取って」アーン
恒一「はいはい」クスクス
鳴「美味しいの」
恒一「うん。頑張るね」ニコッ
鳴「あ、今度は榊原君が付けてるよ。御飯粒」
恒一「え?」
鳴「もう。ここ」ヒョイパク
恒一「あ、ありがとう」
鳴「? どういたしまして」
鳴「そうね」
恒一「本でも読もうかな……取って来るね」スタスタ
鳴「行ってらっしゃい」
鳴「……」ゴソゴソ
恒一「ただいま」
鳴「おかえり。今日は何の本?」
恒一「キングのアンダー・ザ・ドームだよ」
「見崎も何か読む? 貸すよ」
鳴「ううん。やることあるから」
恒一「そっか」ペラ
鳴「……」ジー
恒一「……」ペラ
鳴「……」カリカリ
恒一「……」ペラ
鳴「……」ジー
「……」カリカリ
「あれ? 見崎なにしてるの?」
鳴「絵、書いてた。いいから本読んでて」カキカキ
恒一「うん」
「何書いてるの?」ペラ
鳴「秘密」ジー
恒一「出来上がったら見せてくれる?」ペラ
鳴「それは……ちょっと恥ずかしいかな」カリカリ
鳴「――できた」
鳴「見たい?」
恒一「無理強いはしないけど、見せてくれるなら。羽は付けてあげた?」
鳴「」フルフル
「これには要らないかなって。それになんにでも羽を付けるわけじゃないよ」
恒一「そうなんだ」アハハ
鳴「馬鹿にされた気がする……」
「意地悪な榊原君には見せてあげません」
恒一「えー」
恒一「見崎、絵上手じゃない」
鳴「そういう事じゃないの。とにかく、見せてあげない」
恒一「残念」
キーンコーン
恒一「あ、予鈴だね。次の授業どうしようか」
鳴「お腹一杯になったら眠くなっちゃった」ファー
恒一「それじゃ保健室行こうか。ベット空いてるかなぁ」
恒一「ここで寝ちゃ駄目だよ」
「ほら、手繋いで。こけない様に掴まってね」ギュ
鳴「うん」ギュ
恒一「いつもは昼休み中に寝ちゃうのに」
鳴「授業はいないものだから大丈夫」
恒一「そういう事じゃないと思うけどなぁ……」スタスタ
恒一「失礼します」ガララ
「ほら見崎、ベットまであと少しだよ」
鳴「」コク
恒一「もう。――良かった、一つ空いてる」
鳴「」クークー
恒一「寝ちゃってるよ……おーい見崎?」
鳴「Zzz」
恒一「……とりあえず寝かせよう。ちょっとごめんね」ヒョイ
「ほら見崎、おろすよ」ポス
鳴「ん……」ギュ
恒一(首に手を回された……まるで小さい子供みたいだ)
鳴「んぅ……さかきばらくん……」ムニャムニャ
恒一(どうしようこれ)
(睫毛長いなー。普段こんなジロジロ見ないから何か新鮮だ)
鳴「Zzz」
恒一(良く寝てる。ま、起こしちゃ悪いしそろそろ離れよう。そーっと――)
鳴「むにゃ」ゴロン
恒一「うわ」グイ
鳴「ぅむ」グーグー
恒一(いいタイミングで寝返りうつなぁ……寝転がって向かい合う体勢になっちゃった)
(もういいや。僕もこのまま寝ちゃおう。掛け布団して、一応周りからは気付かれないようにしてっと)ゴソゴソ
鳴「すぴー」
恒一「ふふ」ナデナデ
「おやすみ、見崎」
綾野「うわ、もう5限目終わりじゃん。寝過ぎたー」
綾野「ま、いっか。もうちょっとゆっくりしていこ」ゴロン
「むにゅ……」
綾野(横にも誰かいるのかな? 静かにしとかなきゃ)
綾野(それよりも問題はこういっちゃんだよ……)ハァー
(こういっちゃんと見崎さん……付き合ってるのかなぁ。毎日四六時中一緒に居て、ことあるごとに手を繋いだり抱きついたり。こういっちゃんがいないものじゃなかったら、私も――)
綾野「こういっちゃん……」
「みさきぃ……」
綾野「!? こういっちゃん!?」
(こういっちゃんの寝顔とか、見たい。寝てるんなら、胸元とか緩めてるかも……)ドキドキ
綾野「――よし」
綾野(ちょっとだけ、ちらっと隣を覗くだけ! 触ったり、話かけたり嗅いだり舐めたりしない!)
綾野「……」ソロー
恒一「くー」ギュー
鳴「すぴー」ギュー
綾野「」
鳴「ん……ふぁぁ」
「よく寝た……」ショボショボ
鳴「ん?」ギュー
恒一「」スヤスヤ
鳴「!?」バッ
(び、びっくりした。抱き着いたまま寝ちゃったのかな? 抱き締められてるし……)
恒一「みしゃき……」ギュウー
鳴「もう……いいから起きて。ちょっと苦しいから」ペンペン
恒一「Zzz」
鳴「反応しない。どうしよう」ウーン
「」ウーン
鳴「……」ウトウト
恒一「」グー
鳴「」スピー
恒一「見崎ー!」アハハ
鳴「榊原君!」ウフフ
恒一「見崎!」アハハ
鳴「さ・か・き・ば・ら・くん!」ウフフ
恒一「み・さ・き!」アハハ
鳴「恒一君!」ウフフ
恒一「鳴!」アハハ
アハハウフフ
恒一「――ぐふふ」スヤスヤ
鳴「えい」バシッ
恒一「ぶっ! ――いたた……」
恒一「おはよう……あれ? どんな夢見てたんだっけ?」
鳴「さぁ?」
恒一「それよりも見崎、もっと優しく起こしてよ」ズキズキ
鳴「だって全然起きないんだもの。もうこんな時間だよ?」
恒一「――うわ、もう授業終わってるよ」
鳴「部活も始まってるみたいね」
鳴「ううん。結構前」
恒一「ごめんね。暇だったでしょ?」
鳴「榊原君の寝顔、可愛かったよ?」クスッ
恒一「! わ、忘れて……」
鳴「どうかな。意外とずっと覚えてるかも」
恒一「み、見崎ぃ……」
恒一「そうだね。……あれ? 見崎だけ出れば良かったんじゃ……」
鳴「それ、自分の手離してから言って」
恒一「!? ご、ごめん!」バッ
(気付かなかった……まさか寝てる間も抱き締めっぱなしだったのか僕!?)
恒一「見崎! こ、これは不可抗力であって、決して下心は無くてその――」アタフタ
鳴「……そう」
恒一「その、許してくれる?」
鳴「別に怒ってないよ」
(私も抱き着いてたし)
恒一「そ、そっか」ホッ
鳴「じゃ、帰りましょ」
恒一「だね」
恒一「今日は何の授業にしようか」
鳴「今日も家庭教師するの?」
恒一「当たり前じゃないか。いないものになってから授業サボリっぱなしで碌に勉強してないからね。このままだと来年の受験どころかテストすら危ういよ?」
鳴「それは榊原君もじゃない」
恒一「僕は正直言って勉強しなくても分かるから」
鳴「今の風見君や勅使河原君に聞かせたら? いないもの解除してくれるかもよ? その後は知らないけど」
恒一「もう、屁理屈ばっか言って……」
恒一「教科書丸写ししてる事を勉強って言い張るのやめない?」ハァー
鳴「勉強は勉強でしょ?」
恒一「答え見ながら問題集やってるのと一緒だよソレ」
鳴「榊原君、将来学校の先生にでもなるの?」
恒一「話逸らさないでよ……将来は彫刻関係の仕事に行きたいかな」
鳴「ふぅん、そういうの好きなんだ」
恒一「まぁね。見崎は? 将来の夢とか、そういうの」
鳴「私? 私は、なんだろ……お嫁さん?」
恒一「お嫁さんかぁ……」
鳴「ま、適当にね」
鳴「ただいま」
恒一「お邪魔します。今日はお店お休みなんだね」
鳴「天根おばぁちゃんが地区の旅行で居ないから、店を見てる人がいないの」
恒一「霧果さんは?」
鳴「霧果が店番なんてする筈ないし、出来ると思う?」
恒一「……ノーコメント」
鳴「ま、一日ぐらいはいいんじゃない? それよりも早く行きましょ」スタスタ
恒一「あ、待ってよ」
鳴「着替えてくるから、適当に座ってて」スタスタ
恒一「うん」
(すっかり慣れちゃったな、ココで過ごすのも。まぁ毎日来てれば当たり前か)
恒一「さて、今日は数学と英語かな。昨日みたいに雑談で終わらない様にキチンと用意して――」ブツブツ
ガチャ
恒一「あ、おかえり――」
霧果「あら、ただいま。ここって榊原君の御宅だったかしら?」
恒一「す、すいません霧果さん! 見崎と勘違いしちゃって!」ワタワタ
霧果「冗談よ。いらっしゃい」クスッ
(この人、冗談とか言う人だったっけ?)
霧果「今日も鳴の家庭教師?」
恒一「は、はい」
霧果「そう。ゆっくりしていってね」
ガチャ
鳴「ただいま」
恒一「あ、おかえり見崎」
霧果「おかえり」
鳴「ただいま帰りましたお母さん」
鳴「はい」
霧果「ごめんね。榊原君もおもてなしできなくて……」
恒一「い、いえ。気持ちだけで」
霧果「じゃ、後は二人でね」スタスタ
ガチャ
恒一「……」
鳴「……」
鳴「変なだけ。何か話してたみたいだけど」
恒一「挨拶してただけだよ」
(ちょっと珍しい? ものを見たけど)
鳴「ふぅん。本当に?」
恒一「ホントだよ。何で疑うのさ」
鳴「別に」フイ
恒一「? まぁいいや。勉強しよ」
鳴「本当にするの?」
恒一「一時間ぐらいだよ。早く終わらせられたら御飯作ってあげるから」
鳴「やりましょ。ほら榊原君も早く」グイグイ
恒一「はいはい」
(現金だなぁ……可愛いからいいけど)
鳴「え? え?」
恒一「……見崎、これ教科書に載ってた問題なんだけど」
鳴「だって、途中式なんて書いて無かったから」
恒一「ほら、丸写しするとそういう事になるんだよ。一から説明するから、ほら、ペン持って」
鳴「……はい」グヌヌ
恒一「いい? まずは基本の――」
鳴(榊原君はスパルタ過ぎる……)
恒一「見崎、手」
鳴「はい」
(早くお喋りしたいのに……)
鳴(結局一時間以上勉強してた)グテー
恒一(結局英語は障りだけだったな。明日はもっと効率的に……)ムムム
鳴「」グー
恒一「――お腹減った?」
鳴「///」コクッ
恒一「じゃあ御飯にしようか。冷蔵庫見てくるね」
鳴「お願いします」
恒一「はは。何かリクエストは?」
鳴「肉じゃが」
恒一「肉じゃがね」ゴソゴソ
「材料は揃ってるから、見崎はテレビでも見てて。すぐ作るから」
鳴「うん」ワクワク
恒一「♪」トントン
鳴「……」ボケー
恒一「よるをーおおうー」カチャカチャ
鳴(楽しそう……)
恒一「? 見崎、まだできないよ」
鳴「そういう意味で見てたんじゃない」
恒一「じゃあなんで……」
鳴「別に。どうだっていいでしょ」ジー
恒一「気になるんだけど……。暇なら手伝ってくれる?」
鳴「いいの?」
鳴「分かった」
恒一「洗剤とかいらないからね」
鳴「そこまで料理しないわけじゃないよ」ムー
恒一「冗談だよ」
(可愛いなぁ)
鳴「もう」
(何か遊ばれてる気がする……)
鳴「はい」
恒一「ありがとう。――はい、見崎」
鳴「いただきます」ヒョイパク
恒一「ゆっくり噛んでね」ハハハ
鳴「うん」ムシャムシャ
恒一「美味しい?」
鳴「おいひいよ」モグモグゴクン
「榊原君も食べなよ」ヒョイ
「」モグモグ
鳴「美味しいでしょ?」
恒一「うん。自分じゃいつも通りの味だけど」ヒョイ
鳴「お袋の味って奴だよね」アーン
恒一「そうなのかな?」
鳴「多分」ムギュムギュゴックン
「私も良く知らないけどね」アーン
恒一「見崎が美味しいって言ってくれるならいいよ」アーン
鳴「そう?」
恒一「うん」ムグムグ
鳴「そっか」
恒一「お粗末様。片付けてくるね」
鳴「いいよ、そのままで」
恒一「折角だしやって帰るよ。お風呂にでも入ってきなよ」
鳴「時間大丈夫なの? もう8時過ぎちゃってるけど」
恒一「……家に帰ると、どうしても怜子さんと顔会わせちゃって気まずいんだよ」
鳴「あ……」
恒一「ごめんね。僕の勝手でこんなことしちゃって」
恒一「見崎が謝る事じゃないよ」ナデ
鳴「――ありがとう」
鳴「お風呂、入ってくるね」
恒一「うん」ニコ
鳴「榊原君も後で来なよ」
恒一「え?」
鳴「冗談。じゃ」スタスタ
恒一「あ、あはは」
鳴(今日も楽しかったな……)チャプチャプ
鳴(榊原君も楽しかったかな……。いないものになって落ち込んでたみたいだったし、先輩として私が元気づけてあげなきゃいけないのに)ブクブク
鳴「よし。明日からは少しづつ榊原君を私に甘えさせる」ザパー
「……でも何をしたらいいんだろ」フキフキ
恒一「見崎ー? 僕そろそろ帰るねー」
鳴「」ビクッ
「ちょ、ちょっと待ってー」ワタワタ
恒一「? うーん」
恒一「あ、眼帯外してるんだね」
鳴「蒸れちゃうから」
恒一「へー」ジロジロ
鳴「何?」
恒一「ん? いや、綺麗だなって思って。それで何か用だった?」
鳴「用って言うか、勝手に帰られるのが嫌だっただけ」
鳴「するよ。じゃ、またね」フリフリ
恒一「うん。また明日」フリフリ
「あ、余った材料で霧果さんの分の料理作ってるから持っていってあげて。いらなかったら捨てていいから」
鳴「(いつの間に……)うん。ありがと」
恒一「おやすみ見崎」
霧果「あら、榊原君帰ったの?」
鳴「はい。これ、彼が作ったんです」スッ
霧果「へぇ……美味しそうなチャーハンじゃない」
鳴「お母さんにって。要らないなら私食べますけど」
霧果「じゃあ、せっかくだしいただこうかしら」パク
「! おいしい」パクパク
鳴「榊原君の料理ですから」ドヤァ
霧果「鳴も見習いなさい」モギュモギュ
鳴「……それなんですけど」モジモジ
霧果「?」バクバク
恒一(おはよー)
ザワザワ キノウナカオガー マカセロー
恒一(皆楽しそうだなー)
(見崎は……まだか。仕方ない、本でも読んでよう)ペラッ
ガララ
恒一「!」チラッ
久保寺「皆さんおはようございます」
恒一(違った。見崎遅いなぁ……)ペラッ
見崎「……」テクテク
恒一「! おはよう見崎。遅かったね」
見崎「おはよ」ファ
恒一「寝不足?」
鳴「うん……ちょっと早起きしたから」ショボショボ
恒一「なのに遅刻したの?」クスッ
鳴「用意に手間取っちゃって」
恒一「用意?」
鳴「ごめん。私ちょっと寝るね……」テクテク
恒一「? お大事にー」
勅使河原(俺の後ろでイチャイチャしてんじゃねーよ)グヌヌ
鳴「くーくー」ギュム
川堀(俺の席……)ショボーン
赤沢(対策を対策を対策を対策を対策を対策を対策を対策を対策を対策を対策を対策を)イライラ
恒一「見崎、もうお昼だよ。御飯食べよう」ユサユサ
鳴「むにゃ……」ファァ
恒一「おはよう。良く寝てたね」
鳴「おはよ……ごはん」ゴシゴシ
恒一「ふふ。屋上行く前に顔洗って行こうか」
鳴「うん」コクン
「」フラフラ
恒一「ほら、手」スッ
鳴「ん」ギュ
赤沢「」
鳴「えぇ」キリッ
恒一「寝起きの見崎は、見てて面白いよ」
鳴「そういう冗談、嫌い」プイ
恒一「ごめんごめん。じゃ、行こう」ギュ
鳴「はぁ……」ギュ
(可愛いって言うところだと思うんだけど……)
恒一「今日は食べやすい様にサンドイッチにしてみたよ。見崎の好きな玉子サンドも――」
鳴「あっ、あのっ、その……」モジモジ
恒一「え?」
鳴「」スーハー
「ううん。はい、これ」スッ
恒一「お弁当箱……?」
鳴「うん」
恒一「これ、もしかして見崎が?」
鳴「」コクン
恒一「僕に?」
鳴「」コクコク
恒一「あ、開けてみてもいい?」ドキドキ
鳴「どうぞ」
恒一「……ごくり」パカッ
(唐揚げにミートボール。串で刺した野菜とハム。卵焼き、ポテトサラダ……)
鳴「ど、どうかな」オソルオソル
恒一「凄く美味しそうだね。嬉しいよ見崎」ニコッ
鳴「……良かった」ホッ
恒一(ヤバい凄い嬉しい。なんだろコレ)ニヨニヨ
鳴(お弁当見ながら笑ってる……喜んでるのかな?)ドキドキ
恒一「た、食べてもいいの?」
鳴「うん。榊原君みたいに上手には出来なかったけど、味見はしたから」
恒一「じゃ、じゃあいただきます」
鳴「めしあがれ」
(お、美味しい!)モグモグ
鳴「どう?」ドキドキ
恒一「美味しいよ! 凄いね見崎!」パクパク
鳴「ほ、ほんと?」
恒一「うん!」モグモグ
鳴「やった……!」グッ
恒一「でも、何でいきなり?」
鳴「……それはね、謝罪とお礼」
恒一「? 見崎が謝るような事も、僕がお礼を言われる事も無い気が――」
「榊原君がいないものになったのは、私のせいだもの。ちゃんと拒絶してたら、榊原君は今頃こんな事してない」
恒一「……」
鳴「それに三神先生との関係にも、要らない溝作っちゃったみたいだし」
「――ごめんなさい」ペコ
恒一「やめてよ……僕は――」
鳴「もう一個はね、その……さっき言ったのと、少し矛盾するんだけど」
「榊原君が話しかけてくれた時凄く驚いて、戸惑って――嬉しかったの」
鳴「いないものになって、皆から無視されるのはどうも無かったけどね。やっぱりどこかでストレス溜まってたのかな? 榊原君が『見崎』って呼んでくれるのが楽しみになってた」
「でもそのせいで榊原君までいないものになっちゃって、申し訳なくて――でも、すごく嬉しかった」
恒一「――見崎」ギュ
鳴「ぁ……」
恒一「見崎、見崎、見崎……」ギュウ
鳴「ごめんなさい。榊原君、ごめんなさい」ギュ
恒一「いいよ。いいから――泣かないでくれ」ギュ
鳴「うん。ありがとう、ありがとう」
鳴「……」ダキッ
恒一「……お腹、減らない?」
鳴「」コクン
恒一「食べようか」
鳴「」コクコク
恒一「はい見崎」ヒョイ
鳴「あー」モグモグ
恒一「おいしい?」
鳴「うん」
恒一「サンドイッチってあんまり作った事ないから不安だったんだ。口に合ったなら良かった」ニコッ
鳴「ぅん……///」
「もしかして今日遅刻したのって、これ作ってたから?」
鳴「昨日榊原君が帰ってから、メニュー決めたり買い物に行ったりしてたから。朝は朝で手際が、ね」フー
恒一「そういうのは慣れだしね」ハハハ
「でも、嬉しいよ。ありがとう見崎」
鳴「気にしないで」
恒一「――僕は、良かったと思ってるよ。いないものになって、見崎と過ごせて」
鳴「え?」
鳴「……毎日、作ってあげようか?」
恒一「たまにでいいよ。今日みたいに遅刻しちゃうかもしれないし」
鳴「必要なのは慣れだって言ったのに……」
恒一「うーん。じゃあ今夜の御飯、一緒に作ろう? 僕が教えるよ」
鳴「いいの?」
恒一「もちろん」
鳴「じゃあ、お願いします」ペコッ
恒一「うん。じゃあ何を作ろうか。あ、材料も買っていかないと」ブツブツ
恒一「そう?」
鳴「うん。でも榊原君はお母さんにはなれないかな」
恒一「男だからね」
鳴「……お婿さん?」
恒一「だね」
鳴「……もう」
恒一「? 見崎? どうかした――」
チュ
鳴「鈍感」
恒一「……いきなりは、卑怯だよ」
鳴「前フリはしたんだけど」
恒一「分かりづらいって」
鳴「そうかな?」
恒一「……ま、いいか」
鳴「今は晩ご飯のメニュー考えないとね。昨日のチャーハン食べてから、霧果も榊原君の料理食べたがってたよ」
恒一「ホント? じゃあ今日は――」
恒一(こんな風に僕らのいないもの生活は続いていく。期限付きの二人だけの世界。今はそれを楽しむことだけ考えよう)
おわれ
乙
GW中インフルで寝込んでた時に書いてたから集中が続かんかったのよ
乙
Entry ⇒ 2012.05.24 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
恒一「将来は喫茶店を経営してみたいなって」
恒一「もう少し規模は小さくていいとは思うね」
望月「夫婦二人で、みたいな?」
赤沢「」ガタッ
恒一「理想的だね。赤沢さんの勧めてくれたコーヒーのお陰で結構ハマっちゃって色々調べてみたりしてるんだ」
赤沢「」ガタタッ
恒一「ハハハッ、そうかもね」
赤沢「!」ガタッ
赤沢「…」ツカツカ
赤沢「…恒一くん」
望月「あっ、赤沢さん」
恒一「ごめん、聞こえてた…?」
赤沢「う、うん…//」
恒一「//」
赤沢「//」
恒一(怒ってるかな…?)
赤沢(お、おおお落ち着くのよ泉美!)
赤沢「こ、恒一くん」
恒一「は、はい」
赤沢「将来、喫茶店経営したいの?」
恒一「うん」
赤沢「じゃあ…勉強がてら今日、イノヤに寄って行かない?」
恒一「え…」
赤沢「コーヒーについてなら、私が色々教えてあげるわよ?」
恒一「赤沢さん…ありがとう!」
恒一「そうだね」
望月「あ、姉さんによろしく」
赤沢「ええ、わかったわ」
恒一「望月は来ないの?」
望月「うん」
望月(邪魔しちゃ悪いしね…)
赤沢「こうやって2人で歩くのは初めてね…」
恒一「う、うん」
赤沢(何だかデートしてるみたい//)
赤沢「そうね…」
赤沢(この場所で、私は恒一くんと出会った…)
赤沢(恒一くんは覚えてるのかしら……)チラッ
恒一「ん?」
赤沢「な、何でもないっ//」
恒一「?」
望月姉「あら、いらっしゃい」
恒一「あ、どうも」
赤沢「恒一くん、またあの奥の席でいいわよね?」
恒一「うん」
望月姉「ご注文は何にしますか?」
赤沢「そうね…恒一くんどうする?」
恒一「とりあえず、今日はコーヒーの勉強だから…キリマンジャロで」
赤沢「じゃあ私はウィンナー」
望月姉「かしこまりました」
恒一「そうだなぁ…とりあえず、場所は夜見山がいいかな」
赤沢「ふぅん。…で、でさ…あの……夫婦でとか言ってたけど…」
恒一「いや、あれは//」
赤沢「…別に良いと思うわよ?…す、素敵だと思うな//」
恒一「//」
望月姉「お待たせしました」
恒一「あ、どうも」
望月姉「ふふっ、今日はデート?」
赤沢「ち、違います!そんなんじゃ…//」
恒一「はい」
赤沢「まったくもう…やんなっちゃう//」ゴクッ
恒一「はははっ」ゴクゴク
赤沢「…恒一くん、それ美味しい?」
恒一「ん〜、ちょっと苦いかなぁ」
赤沢「私のと少し交換してみない?私が飲んでるのはそんなに苦くないわよ?」
恒一「え//」
赤沢「ほら」
恒一「う、うん…」
恒一(赤沢さんの唇の跡がある…//)
赤沢「//」ドキドキ ゴクッ
恒一「//」ドキドキ ゴクッ
恒一 赤沢((か、間接キス…//))
赤沢「…ど、どうだった?」
恒一「すごく…美味しい//」
赤沢「そ、そう。なら良かったわ」
恒一「それは僕が担当するよ。料理にはそれなりに自信があるからね」
赤沢「へぇ…そうなんだ?」
恒一「うん。だから調理担当は僕、コーヒー担当は赤沢さんだね」
赤沢「え…それって…」
恒一「! あ、いや、今のはつまり…!」アセアセ
赤沢「…私も、恒一くんと喫茶店で働きたいな」
恒一「赤沢さん?//」
望月姉「いらっしゃいませ」
小椋「あ、ご無沙汰してます」
有田「あ!榊原くんと赤沢さんがいる」
榊原「小椋さんに有田さん…」
赤沢「あら、珍しいわね」
有田「じゃあ私、榊原くんの隣に座っちゃおうかなっ」
榊原「え?ま、まあ良いけど…」
赤沢「ムッ」
赤沢「べ、別に何だって良いじゃない」
恒一「実は、将来喫茶店を経営したくて、今日はコーヒーについて勉強しに来たんだ」
小椋「へえ…喫茶店?」
恒一「うん」
有田「じゃあ私ウェイトレスになろっかな」
恒一「はは…」
赤沢「ムゥ」
赤沢(恒一くん…//)
有田(やだ…恒一くんまさか私と…//)
小椋「そうだ!」
恒一「?」
小椋「試しに赤沢さんと榊原くんで喫茶店やってみなよ!」
赤沢「え…?」
小椋「要は喫茶店ごっこよ。それで、クラスの人たちを接客してみるのよ」
赤沢「なるほど…」
恒一「僕の家なら、いつでも出来ると思うよ」
小椋「じゃあ決まりね!」
有田(何で榊原くんと赤沢さんなのよ…)ムクーッ
赤沢「あ、恒一くん、喫茶店のことなんだけど…」
恒一「丁度良かった、僕もその事で話があったんだ」
赤沢「何?」
恒一「メニューとか決めたいから、今日僕の家に…来てくれないかな?」
赤沢「い、行く!//」
恒一「じゃあ、また一緒に帰れるね」
赤沢「そ、そうね!」
赤沢(やった…!恒一くんの家に入れる!)
赤沢「そうね…」
赤沢(そうよね…きっと恒一くんはあの時の事覚えてない……)
赤沢(私もつい最近思い出したばっかりだし)
赤沢(何で…忘れてたんだろ…?)
赤沢(あんなに大切な思い出……)
恒一「赤沢さん、赤沢さん?」
赤沢「あ、ご、ごめんなさい…聞いてなかった…」
赤沢「も、もぉ!バカにしないでよ!//」
恒一「ごめんごめん」
赤沢「で、何の話?//」
恒一「うん…。この河原なんだけどね…通る度に思うことがあるんだ」
赤沢「…?」
恒一「前に、この場所に来たことがあるかも知れないって…」
恒一「不思議だけど、ここで僕は何か…大事なことをした記憶があるって…」
赤沢「恒一くん…」
恒一「何かモヤモヤするな…」
赤沢(今は、それでいいよ?そこまで思い出してくれただけでも…私は……)
恒一「何もないけど、くつろいでよ」
赤沢「布団出しっぱなし…ま、男の子らしいって言えばらしいわね」
恒一「今朝はちょっと寝坊してドタバタしてて…」
赤沢「へぇ〜。恒一くんでも寝坊とかするんだ?」
恒一「まあね。あ、何か飲み物持ってくるよ」
赤沢「ありがと」
赤沢「ふふふ…」
赤沢「恒一くぅーん♪」ガバッ
赤沢「あぁ…恒一くんの布団…//」ギュッ
赤沢「恒一くんの匂いがすりゅよぉ//」クンクンッ
赤沢「恒一くん…!恒一くん!」
ガラッ
恒一「おまたせ」
赤沢「うん」
赤沢「ドリンク類は、とりあえず市販の物でいいわよね」
恒一「あくまでごっこだしね」
赤沢「料理はどうするの?」
恒一「サンドウィッチとか…オムライスぐらいなら作れると思うよ」
赤沢「じゃあそれで決まりね」
恒一「あとはリビングをちょっと内装すれば良いよね?」
赤沢「そうね!」
恒一「何だかワクワクして来たよ」
赤沢「私も♪」
勅使河原「喫茶店?」
恒一「うん、赤沢さんとやるんだ。是非来てよ!」
中尾「なにぃ…!」
和久井「僕も行っていいかな?」
恒一「もちろんさ!」
王子「へー、楽しそうだね。僕らも行かせてもらうよ」
猿田「もちろんチョコバナナあるんぞなな?」
恒一「ねーよ」
赤沢「そうよ」フフン
小椋「あ、本当にやるんだ?」
有田「ぐぬぬっ」
多々良「へぇ…楽しそうね。私たちも行っていいかしら」
赤沢「無論よ。席に限りがあるし予約制だから、順番にね」
綾野「ズルイよ泉美!こういっちゃんとそんな事…!」
赤沢「ごめんね彩…。私も本気なの…」
恒一「最初のお客様は勅使河原、望月、中尾くんの3名様か」
赤沢「こ、恒一くん…//」
恒一「赤沢さん…そのウェイトレスの服…凄い似合ってるよ」
赤沢「恒一も…ウェイターの服似合ってるわよ?//」
恒一「//」
ピンポーン
恒一「来たみたいだ!」
望月「へぇ、なかなか凝ってるんだね」
中尾「赤沢さん!何て神々しいウェイトレス姿!!」
赤沢「いらっしゃいませ、3名様でよろしいですか?」
望月「うん」
赤沢「ではこちらの席へどうぞ」
勅使河原「赤沢が接客とか、何か違和感あるな…」
中尾「こう言うプレイもなかなか良い!」
赤沢「ご注文は?」
望月「僕はクリームソーダを」
中尾「赤沢さんの愛が詰まったアメリカンコーヒーください!!」
赤沢「コーラとクリームソーダとアメリカンですね。」
赤沢「食べ物もご一緒にいかがですか?」
勅使河原「ここ来る前に駄菓子屋に行って来たから、いいや」
恒一「…」シュン
赤沢「元気出して恒一くんっ!」
赤沢「頑張ろうね、恒一くん♪」
ピンポーン
赤沢「いらっしゃいませ」
綾野「うわぁ、泉美そう言うの似合わないね」
赤沢「るさいっ//」
赤沢「さっさと席に座りなさいよね!」
小椋「それが客に対する態度かよ…」
綾野「んーと…私オレンジジュース!」
有田「じゃあ私はトマトジュースください」
小椋「私は豆乳でいいわ」
綾野「あとサンドウィッチね」
赤沢「かしこまりました」
赤沢「恒一くん!サンドウィッチのご注文入ったわよ!!」
恒一「やった!」
有田(これが…榊原くんの手作りサンドウィッチね…)ジュワッ
綾野(こういっちゃんの手がこのパンに触れたと思うと…)ジュン
小椋「いただきまーす」ヒョイ パクッ
有田「あっ、ずるい!私も!」
綾野「私だって!」モグモグ
小椋「んまー♪」
赤沢「ふふっ」
赤沢「恒一くん!大好評よ!!」
恒一「嬉しい…!」ホロリ
赤沢「多々良さん、王子くん、猿、見崎さんの4名様になってるわ」
榊原「え?見崎も来てくれるんだ」
赤沢「ええ。4人とも食事しに来るみたい」
榊原「そっかぁ…腕がなるなぁ!」
赤沢「ふふっ、頑張りましょうね♪」
ピンポーン
赤沢「いらっしゃいませー」
猿田「うひひっ。楽しみじゃのぉ!」
鳴「…」
赤沢「それではご注文をどうぞ」
多々良「そうね…牛ほほ肉のビーフシチューを」
王子「僕はアサリの香草焼きを」
鳴「私は特製オムライスを」
猿田「ワシはナポリタンを」
赤沢「承知致しました」
赤沢(猿はともかく、他の3人はなかなかのグルメね…でも恒一くんなら…!」
恒一「! ついに…ついに来たんだね…!」
赤沢「ええ…私たちが研究に研究を重ねた自信作…!」
恒一「僕と赤沢さんの、汗と涙の結晶…!」
赤沢「アサリとナポリタンは私に任せといて」
恒一「ありがとう、赤沢さんも沢山練習したもんね」
赤沢「ええ!」
恒一「…」
恒一「えいっ」
赤沢「すごい!上手っ」パチパチ
恒一「いやぁ//」
赤沢「よし、これで全部完成ね」
恒一「あとは皆に食べてもらうだけだ…」
赤沢「お待たせ致しました」
猿田「待ってたぞな!」
鳴「…食べ方、汚ない」
多々良「猿田くん、もう少し上品に食べられないの?」
王子「せっかくの料理が台無しだよ」
猿田「ぞ、ぞな」
多々良「へぇ…このシチューとってね美味しいわ。お肉も柔らかい」
鳴「オムライスも…美味しい」
王子「うん、最高だよ。味付けもバッチリ」
赤沢(よしっ!)
赤沢「へ?」
多々良「そうね、シェフを呼んでくださらない?」
赤沢「かしこまりました」
恒一「あ、ど、どうも」
多々良「とっても美味しかったわ、榊原くん」
王子「うん。僕も満足だよ」
猿田「ワシは食べられれば何でもいいぞな」
見崎「…ただ、少し塩が足りなかった」
恒一「えっ?」
恒一「う、うん…」
鳴「でも」
鳴「こんなに美味しいオムライス、初めて食べた」
恒一「見崎…!」
赤沢(良かったね、恒一くん…)ホロリ
多々良「ご馳走様。また来たいわ」
鳴「そうね、私も」
猿田「次はチョバナナを用意しておけぞな」
恒一「やだよ」
恒一「そうだね」カチャカチャ
赤沢「私も洗い物手伝うわ」
恒一「えっ、でも悪いよ…」
赤沢「平気よ」カチャカチャ
ジジイ「あぁ〜、うぁ〜」
恒一「あっ、お爺ちゃん」
赤沢「恒一くんのお爺様…?」
恒一「クラスメイトの赤沢さんだよ、お爺ちゃん」
赤沢「よ、宜しくお願いします!」ペコッ
ジジイ「そぉか…恒一にも恋人ができたか」
恒一「んなっ//」
ジジイ「恋人といえば結婚だな。結婚はいいなぁ、結婚はいいなぁ」
恒一「ちょ、ちょっとやめてよお爺ちゃんっ//」
赤沢(こ、恒一くんと結婚か…//)
ジジイ「それまでには生きていたいなぁ」
恒一「んもぉ!あっち行っててよお爺ちゃん!」
ジジイ「避妊はちゃんとしろよ恒一」
赤沢「ううん、気にしてないわよ」
恒一「それなら良いけど…」
赤沢「……//」カチャカチャ
恒一「……//」カチャカチャ
2人の肩がふいに当たる
赤沢「! ご、ごめんなさい」
恒一「い、いいよ//」
赤沢(何か…気まずい空気になっちゃったわね…)
赤沢「じゃあ私、そろそろ帰るわね」
恒一「あっ、途中まで送って行くよ」
赤沢「いいわよ、お見送りなんて」
赤沢「それに、私は見かけ通り逞しいんでしょ〜?」
恒一「い、意地悪やめてよ。確かにそう言ったけどさぁ…」
赤沢「本当にいいわよ。一人で帰れるから」
恒一「…でも、赤沢さんも女の子なんだし。…ね?」
赤沢「こ、恒一くんてば…//」
赤沢「か、勝手にすればっ?//」
恒一「そうさせてもらうよ」ニコッ
恒一「何?」
赤沢「あの……あの、その……」
恒一「…?」
赤沢「な、何でもない…」
恒一「え?言ってよ、気になるじゃないか」
赤沢「嫌よっ」
恒一「んもぉ…」
赤沢「恒一くん」
恒一「んー?……んんっ!?」
チュッ
赤沢「…初キス、だから//」
赤沢「じゃあね!」タタッ
赤沢「はぁ…はぁ……」
赤沢「キス…しちゃった//」
恒一「赤沢さんに…キスされた…//」
恒一「心臓がバクバクする…!」
ジジイ「キスといえば結婚だな。結婚はいいなぁ。葬式と違ってめでたいからなぁ」
恒一「もぉ!お爺ちゃん!」
ジジイ「すまんな」
榊原「おはよう」
勅使河原「おーす、サカキ!」
望月「おはよう、榊原くん」
ガラッ
赤沢「あ…」
恒一「あっ……」
赤沢「//」
恒一「//」
勅使河原「おいおい…何だこの空気…」
多々良「うん、昨日辻井くんが目撃したんだって」
猿田「羨ましいのぉ、ワシも多々良さんとキスしたいぞな」
多々良「ごめん無理、ほんと勘弁」
王子「それにしても榊原くんと赤沢さんがねぇ」
多々良「まぁ、最近ずっと一緒にいたからね」
王子「案外、お似合いのカップルかもね」
久保寺「…と、その前に」
赤沢「?」
久保寺「我がクラスの赤沢泉美さんと榊原恒一くんが付き合ってるらしいと、耳にしました」
榊原「ちょ…!」
ざわわ…ざわわ…
赤沢「ち、違います先生!//」
榊原「そうですよっ!//」
久保寺「恥ずかしがることはありません。先生はお2人を応援するつもりです」
久保寺「ですから皆さんも一緒に、2人を心から祝福しましょう」
赤沢「そうね…」
赤沢「…でも…それもいいかな」ボソッ
恒一「……あのさぁ、赤沢さん」
赤沢「ん?」
恒一「本当に…付き合っちゃおうか?//」
赤沢「え…?//」
恒一「赤沢さんさえ良ければ、僕はそれでもいいかなって…」
恒一「いや、むしろ…そうしたい//」
赤沢「恒一くん…//」
そして僕と赤沢さんは付き合うことになった・・・。
トゥルルルッ
赤沢『あっ、もしもし恒一くん?//』
恒一「やあ赤沢さん」
赤沢『明日…暇?暇なら…その…デ、デートしない…?』
恒一「あー…ごめん、明日は勅使河原や望月たちと遊ぶ予定なんだ」
赤沢『え……』
恒一「赤沢さんとは昨日もデートしたし、明後日またデートしようよ。ね?」
赤沢『……嫌』
恒一「え?」
赤沢『私以外の人と遊んじゃ嫌!!』
赤沢さんは独占欲が強く、僕を束縛しはじめた・・・。
赤沢『それでも嫌!』
赤沢『男も女も関係ない!私以外の人と遊んじゃダメ!!』
恒一「そう言われても…」
ピンポーン
恒一「ん…?」
赤沢『ドア…開けて?今、恒一くんの家の玄関前に立ってるの』
恒一「赤沢さん…」
恒一「分かった、今行くよ」
赤沢「恒一くぅん!」ガバッ
恒一「うわっとっと……赤沢さん…」
赤沢「会いたかった…!」
恒一「今日学校で会ったでしょ…」
赤沢「恒一くん大好きっ!」ギューッ
恒一「赤沢さん…」
恒一「で、でも…」
赤沢「わがままなのは分かってる…でも!」
赤沢「恒一くんを独占したい!恒一くんと少しでも一緒にいたいの!!」
恒一「それは僕だって同じさ」
恒一「でもね、それは無理だよ」
赤沢「恒一くん…」
恒一「安心して、赤沢さん」
恒一「結婚すれば、ずっと一緒にいられるじゃないか」
赤沢「恒一くん…!!//」
赤沢「うん…、うんっ!」
恒一「だから今は、お互いこの距離を保っていようよ」
赤沢「わかった、そうする//」
恒一「いい子だ」ナデナデ
赤沢「きゅぅぅぅ//」
赤沢「もっとなでなで…して?」
恒一「いいよ。赤沢さんは甘えん坊なんだから」
赤沢「…クラスの皆には内緒だからね//」
恒一「わかってます」ナデナデ
でもそれも悪くなかった。
なぜなら、僕も依存されるのが好きだったからだ。
赤沢「恒一くん…私幸せ…//」
恒一「僕もだよ、泉美」
fin
Entry ⇒ 2012.05.23 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (0) | Trackbacks (0)