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蒲原「モモのにおいがするぞー」
蒲原「やっぱりいたか。ワハハ」
モモ「相変わらずすごいっすね蒲原先輩」
蒲原「そうだろー」
モモ「ちょっと引くっす」
蒲原「え」
モモ「あはは、ウソっすよ」
蒲原「なんだウソか」
モモ「はい、なんか用があるみたいでまだ学校らしいっす」
蒲原「学校で待たなくていいのか?」
モモ「む、いつもそんなにべったりじゃないっすよ」
蒲原「いやベッタリだろー」ワハハ
モモ「私は別に、待つのは全然いいんすけど……それで加治木先輩が私に気をつかうなら、そんなことはしたくないんっす」
蒲原「そういうもんかー」
モモ「そういうもんっす」
蒲原「?」
モモ「今日はどうしたんすか、こんなところで」
蒲原「帰り道だぞ」
モモ「……先輩の家、こっちの方角じゃなくないっすか」
蒲原「ワハハ。まあそうなんだけどな」
モモ「?」
蒲原「ふらふら散歩するのが好きでな。ちょっと足伸ばしてみた」
モモ「なんか先輩らしいっすねえ……」
モモ「山ばっかりっすよ」
蒲原「それがいいんじゃないか」
モモ「そうっすかねえ」
蒲原「そうそう。ワハハ」
モモ「はあっす」
蒲原「モモは?何してたんだ、こんなところでー」
モモ「え?いや、えーと」
蒲原「?」ワハハ
蒲原「ん?」
モモ「……帰り道だから、っす。加治木、先輩の」
蒲原「」ワハハ
モモ「……」
蒲原「やっぱり待ってるんじゃないか」
モモ「!」
蒲原「いや、この場合”待ち伏せてた”かー?」
モモ「蒲原先輩!」
蒲原「ワハハ」
モモ「……分かってるなら言わないでくださいっす……」
蒲原「わるいわるい」ワハハ
モモ「はあ……蒲原先輩にバレるなら、加治木先輩にもバレてるっすかね、これ……」
蒲原「ん?ああ、それは大丈夫」
モモ「え」
蒲原「ユミちんは特別鈍感さんだからなー」
モモ「ああ、それは確かに……」
蒲原「な?」ワハハ
モモ「ふふ。だから苦労するんすよねえ」
蒲原「ん?」
モモ「私のにおいって……どんなんすか?」
蒲原「んー、そうだなー」
蒲原「ちょっとすっぱい」
モモ「?!」
モモ(私汗くさい?!)
蒲原「でも甘い」
モモ「??」
蒲原「梅だなー。うん。梅のにおいだ」
モモ「う、梅っすか……」
モモ(汗くさいはないってことすか……)
モモ「へえ……私そんなにおいなんすか。別にシャンプーもせっけんも、梅っぽいの使ってるわけじゃないんすけどね」
蒲原「まあコレは私の感覚だから。他の人には分かんないかもなー」
モモ「あれ、ってことはっすよ?」
蒲原「?」
モモ「例えば私が梅の木の下に立って黙ってたら、蒲原先輩も私のこと気付かないってことっすか」
蒲原「ワハハ。そうかもなー」
モモ「へえ……」
モモ「それは私に言われてもっす」
蒲原「確かになー」
モモ「他のみんなはどんなにおいするっすか?」
蒲原「そうだなあ」
モモ「特に加治木先輩とか加治木先輩とか」
蒲原「じゃあ佳織から」
モモ「?!」
モモ「……においの話っすよね?」
蒲原「ワハハ。まあさっきも言ったけど感覚の話だから」
モモ「はあっす」
蒲原「冷たい空気を吸うと鼻の奥がツンとするだろ?佳織はその逆なんだ」
モモ「ああ、そういう言い方だとなんか分かるかもっす」
蒲原「だろー」
蒲原「むっきーはなー。そうだな、色で言うと」
モモ「……だからにおいの話っすよね?」
蒲原「だから感覚だよモモ」
モモ「うーん……」
蒲原「それでな、色で言うと……灰色、かな」
モモ「イメージカラーがそれなのは分かるっすけど」
蒲原「灰色を連想するにおいを嗅ぎ取れるっていうのかな」ワハハ
モモ「……よく分かんないっす」
蒲原「ん?清澄のとかはいいのかー?」
モモ「もういいっすよ、おなかいっぱいっす」
蒲原「そうかー」
モモ「はやくはやくっす」
蒲原「そう言われると焦らしたくなるなあ」
モモ「シャー」
蒲原「分かった分かった」ワハハ
モモ「もう」
モモ「ごくりっす」
蒲原(口に出して”ごくり”って言ったなー)ワハハ
蒲原「えーと」
モモ「?」
蒲原「わかんないんだな、それが」
モモ「?!」
蒲原「いや味はさすがに」
モモ「それじゃああれっすか、蒲原先輩は近くに加治木先輩がいても分から――」
モモ「――分からない、なんてことはないっすよね……」
蒲原「うん。そもそもにおいなんて、モモがいなきゃ意識もしなかったことだからなー」
モモ「……でも、なんで加治木先輩のにおいは分かんないんすか?」
蒲原「どうしてだろなー。もしかしたら、ユミちんのほうが嗅ぎ取らせまいとしてるのかもなー」
蒲原「?”じゃあ”?」
モモ「私が嗅ぐっす!加治木先輩のにおい!」
蒲原「そうかー」ワハハ
モモ「抱きついたときにこう、襟足のあたりをくんくんするっすよー」
蒲原「……そう詳しく言わなくてもいいんじゃないかー」
モモ「嗅ぐっすよー」メラメラ
蒲原「いつになく燃えてるなー」
モモ「?なんすか?」
蒲原「たまーにユミちんのにおい、分かることがあるんだ」
モモ「え、まじっすか?先言ってくださいよそういうのは」
蒲原「ワハハ。いやなー、残り香があるんだよ」
モモ「残り香っすか?」
蒲原「そう。梅のにおいがなー、たまにユミちんに残ってるんだ」ワハハ
モモ「……」
蒲原「ワハハ」
モモ「……」ボッ
蒲原「真っ赤だなー、モモ」ワハハ
蒲原「お、もうこんな時間かー」
モモ「こ、この時期はすぐ暗くなるっすからね……そろそろ帰るっすか」
蒲原「そうするかー」
モモ「なんかすいませんっす、付きあわせてしまって」
蒲原「いや、全然いいぞー。そもそも私のほうから来たんだからな。それに」
モモ「それに……?」
蒲原「一人でふらふら散歩するのも楽しいけど、誰かといるのも好きだからな。話せて楽しかったぞ、モモ」
モモ「それは……私もっす、蒲原先輩」
蒲原「そうかー」ワハハ
モモ「そうっすねえ」
蒲原「……」
モモ「どうかしたっすか、先輩」
蒲原「いやなー」
モモ「?」
蒲原「終わっちゃったなー、って」
モモ「そ、そうっすね」
蒲原「ごめん、白状するとな。ちょっと足りない。いや、ちょっとどころじゃなく足りないんだ」
モモ「……?」
モモ「はいっす、私が昔の加治木先輩のこと知りたいって言ったときっすよね」
蒲原「うん。それで夏は私の車で色んなところ行ったけど。正直まだまだ遊び足らないんだよなー」
モモ「私は遊び尽くしたなって思いましたけど……」
蒲原「私も分かってるよ、本当に遊び尽くしたっていうのは、あれくらいのことを言うんだって。でも子供みたいなんだけどなー、まだ未練みたいなこと思うんだよなー」
モモ「蒲原先輩……」
モモ「……先輩」ギュ
蒲原「お?」
モモ「私も、なんとなく……分かるっすよ。みんなと麻雀部として一緒にいられる夏は今年のたった一度きり……それならどれだけでも遊んでいたいって思うのも」
蒲原「……大人にならなきゃ、とは思ってるんだけどなー」
モモ「しょうがないっすよ……私だってそうっす、先輩たちと一緒にいられなくなるのは寂しいっす」
蒲原「ユミちんとだけ、じゃなくてか」
モモ「そうっすよ。来年、蒲原先輩がいなくなっちゃうのだって寂しいっす」
蒲原「優しいなー。モモは」
モモ「いいんす……蒲原先輩が、そういう風に思ってくれたのは嬉しいっすから」
蒲原「……こういう雰囲気だからさ、言うけどなー」
モモ「?」
蒲原「大好きなんだよなー、みんなのこと。そりゃ、たぶんモモがユミちんに思ってる好きとは違うものだろうけど」
モモ「先輩……」ギュ
蒲原「モモー」
モモ「……帰りたくないっすねえ」
蒲原「そうだなー」ワハハ
モモ「そうっすね……」
蒲原「帰ろう、今日はさ」
モモ「……はいっす」
蒲原「ライトライトっと」ゴソゴソ
モモ「持ち歩いてるんすか……」
蒲原「何事も備えが大事だぞー?」ワハハ
モモ「あははっす……」
蒲原「?どしたー」ワハハ
モモ「合同合宿のときにっすね、ちょっと加治木先輩と話したんすけど」
蒲原「うん」
モモ「夏も秋もその後も、みんなで一緒にいようって……先輩に、そう言ったんすよ、私」
蒲原「……そっか」
モモ「加治木先輩が”そうだな”って、言ってくれたら……できそうな気がするっすよねえ」
蒲原「……ああ」
蒲原「ヘタレのユミちんにそれを言わせるのはモモの役目だなー?」
モモ「えへへ。頑張るっすよー」
モモ「はいっす。こっちの道は街灯も比較的多くて明るいっすから大丈夫っす」
蒲原「そっか。それじゃまた、明日なー」
モモ「?明日は土曜っすけど……」
蒲原「ワハハ」
おしまい
ともあれ読んで下さった方はありがとうございます。
咲全国編アニメ化おめでとう!
またネタ思い浮かんだら咲SSかきますそのときまたお暇があればお相手したってください
それではまた
乙
乙
Entry ⇒ 2012.10.29 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (3) | Trackbacks (0)
憩「恋愛相談?」
憩「スクールカウンセラーとして尽力はさせてもらうけども……あの二人じゃあかんの?」
初美「衣と胡桃ですか? あんなちんまいのに何を相談するんですかー」
初美「二人とも恋愛経験とか無さそうだし」
憩「あはは……えらいボロクソ言うんやね……」
初美「本当のこと言ってるだけですよー」
憩(仲良いほど遠慮せえへん、ってことなんやろうなぁ)
憩「まあええわ。それで、恋愛相談って言ったけど……誰か好きになったの?」
憩「青春やなぁ。お相手は訊いてもいい感じ?」
初美「はい。先生になら言っちゃいますよー。3年生の臼沢さん、って知ってますか?」
憩「臼沢さんって……バスケ部で部長やってる臼沢塞さん?」
憩「確かこの前はっちゃんと一緒に保健室来たよな?」
初美「一ヶ月以上前のことなのに覚えてるとは……流石先生ですねー」
憩「まあ、結構印象深い出来事やったしなー。二人の組み合わせも珍しかったし」
憩「あ、もしかして……そのときに惚れてもうた感じ?」
初美「あ、あれはきっかけです……その日からちょっと気になりだして、バスケ部覗いたりしているうちに……って感じです」
憩「なるほどなぁ」
初美「そうなんですよー。あの時もすごく優しくしてくれたし、バスケしてるとことか特にカッコいいです……」ポケー
憩(初恋、って感じやなぁ……恋に恋してるような感もあるけど……)アハハ
憩「えっと、それではっちゃんは臼沢さんと具体的にどうなりたいの?」
初美「うーん……とりあえず、気兼ねなく話せるくらいには仲良くなりたいですね」
憩「そっかそっか。……付き合いたいとか思っちゃってる感じ?」
初美「そ、それは……まだ分からないです……」
初美「この気持ちが恋愛感情なのかも分からないので……」
憩「ただの憧れかもしれんしな」アハハ
憩「お近づきになりたい、ってことやんな?」
初美「それ! その通りですよー!」
憩「ふむふむ……しかし、話は分かったけど具体的にどう協力するかが迷うわ……」
初美「先生のコネとか使っちゃって、こう、ぐぐーっとばばーっとなりませんか?」
憩「ぐぐーっとばばーっと……」アハハ
初美「何か用事とか無いと、話しかけにくいし……」
憩「学年も違うしなぁ」
初美「はい……」
初美「おお!」
憩「だから臼沢さんと仲ええ子に事情を話して、ちょっと手伝ってもらおか」
初美「塞さんって誰と仲が良いんですか?」
憩「えっと……3年の小瀬川さんに、2年の鹿倉さんに」
初美「えっ……胡桃と仲良いんですか!?」
憩「臼沢さんと同じ部活入っとるやん。名前忘れたけど、学内ボランティア部みたいなん」
初美「そ、そうなんですか……初耳です。胡桃の部活、お遊びサークルだと思ってたんで……」
憩「まあ、暇な時はずっと遊んどるらしいけど」アハハ
このSSでは違うの?
はい。はっちゃんと胡桃が2年生設定です
初美「塞さんってそんな部活に入ってるんですか!? 初耳ですよー……」
憩「1年の時からバスケ部と兼任してるで? その部自体は小瀬川さんが部長やけど」
初美「そうだったんですかー……」
憩「まあ臼沢さんはバスケ部の方がイメージ強いからなぁ。部長でエースで有名やし」
初美「胡桃と仲が良いのは分かりましたけど、小瀬川ってのは誰ですか?」
憩「中学の時からの友達、とかそんなんやった気がするけど……詳しくは知らんわ」
初美「そうですか……」
憩「でも臼沢さんと一緒のクラスやで? 部活外ではほとんど一緒におるし」
初美「仲の良い友達ってことですかー……」
初美「東横さん……うーん、知らないですー……」
憩「バスケ部唯一の1年生レギュラーやから、名前だけやったら結構有名やと思うで?」
初美「ほ、本当ですか? 見学してたときそんな人見かけませんでしたよー」
憩「あの子クラスでも部内でもめっちゃ影薄いらしいからなぁ……」
憩「名前は知れてても実際に姿見た事ある人はほとんどおらんらしいわ」
初美「なんか都市伝説みたいですね……影薄いにも限度がありますよー……」
憩「まあとりあえず、ウチが把握してる限りやったらその三人かなぁ」
初美「なるほどなるほど……」
憩「どうする? とりあえず、身近なところで胡桃ちゃんあたりに頼んでみる?」
憩「普段一緒におるから逆に頼みにくいか」アハハ
初美「どうしても、ってなった場合はアレですけど……」
憩「ほんなら小瀬川さんか東横さんいってみる?」
初美「小瀬川って人は3年生ですよね?」
憩「うん、そやでー」
初美「学年が上の人に頼むのはちょっと気が引けるから……とりあえずバスケ部の1年生にお願いしましょう!」
憩「了解です。んじゃ早速来てもらおか」
初美「えっ? こっちから出向かないんですか?」
憩「東横さんには悪いけどな」
憩「ウチは保健室離れるわけにもいかんし、そもそもあの子見つけられる自信ないから……」アハハ
初美(み、見つけられる自信無いってどういうことですかー……)
キーンコーンカーンコーン
憩『バスケットボール部1年の東横桃子さん。校内にいましたら、至急保健室まで来てください』
憩『繰り返します。バスケットボール部1年の……』
―――――――――――
憩「ま、ゆっくり待ちましょ」ニコ
初美「流石先生ですよー! 頼りになる!」
憩「褒めても何も出えへんでー」
憩「まあこの時間やったらバスケ部もまだ練習中やと思うし、来てくれると思うわ」
初美「今日はお休み頂いてます。気になって部活にも身が入らなくて」
憩「そんなに思い詰めてるんや……」
初美「一つのことしか集中出来ないだけですよー」アハハ
憩「ふふ、そっか」
憩(もし上手くいかんくても、この子の性格やったら大丈夫そうやな……)
初美「このチャンス、絶対に活かしてみせますよー……!」ゴゴゴ
憩「燃えとるなぁ」アハハ
―――――――――――
初美「……来ませんね」
憩「まだ5分も経ってないでー」
初美「うぅー、そわそわしますよー……」
憩「せっかちさんなんやね 。でもまあ、もう言うてる間に来ると思うけど……」
モモ「あのー……」ユラ
初美「きゃあああ!?」
モモ「さっきノックして入ったっすよ? 返事なかったんで勝手に入っちゃいましたけど……」
憩「ごめんな東横さん。毎回気付けんくて。ウチは初めてやないのに……」
モモ「別にいいっすよ。馴れてるんで」アハハ
初美「ってことは……あなたが噂の……」
モモ「う、噂されてるんっすか私?」
憩「ふふ、さっき絶賛噂してたでー。東横さんの力が必要やってな」
モモ「私の力が? えっと……どういうことっすか先生?」
モモ「ここに呼びだれたのになんか関係してたり……」
憩「ちょっと東横さんに手伝って欲しいことがあってなー」
初美「東横さん! 塞さんのこと教えて欲しいですよー!」
モモ「塞さん? 塞先輩のことっすか?」
初美「ずばりその通りですよー!」
憩「意味分からんやろうから事情説明するわ」アハハ
モモ「は、はいっす……」
――――――――――――
モモ「なるほど……そんな甘く切ない事情が……」フムフム
憩(そこまで切なくはないと思うけど……)
モモ「塞先輩、相変わらずモテモテっすね」アハハ
初美「も、モテモテ!? ってことは、私以外にも……」
モモ「はい。クラスではどうか知りませんけど、部内では大人気っすよ?」
憩「まあ、部長でエースやしね」
モモ「はいっす。それでいて面倒見も良いし優しいし、絵に描いたような理想の先輩っすよ」
モモ「我がバスケ部の誇りっすね」キリッ
初美「それじゃあ塞さん、もう付き合ってる人とか……」
モモ「うーん……そういう話は聞いた事ないっすね」
初美「!」パァァ
モモ「誰々が告白したとか何々が好きらしい、ってのはよく聞くんすけど」
初美「これはもう勝利宣言出来るレベルですよー!」
モモ「あはは、落とせる気マンマンなんっすね。でも正直かなり難しいと思うっすよー?」
初美「な、なにゆえですかー……?」
モモ「塞先輩、高校入ってから今まで誰ともお付き合いしたことないらしいんで」
憩「今までの告白全部断ってきてるってこと?」
モモ「聞いた話では」
初美「そ、それは今までの女が雑魚だっただけですよー」
モモ「薄墨先輩なかなか言うっすねー。確かにそれはあるかもですけど……」
モモ「塞先輩、誰か好きな人がいるんじゃないか、ってのがバスケ部の推測なんすよ」
初美「す、好きな人!?」
憩「なるほどなぁ……そうなってくると難しなってくるね……」タハハ
モモ「本当に自分が好きだと確信できる人じゃないとお付き合い出来ない、とからしくて」
初美「うむむ……!」
憩「これは一筋縄じゃいかなさそうやね……」
モモ「塞先輩って見た目通り乙女っすから、かなり貞操観念が強いんすよ」
モモ「ちょっとエッチな話するとすぐ顔赤くするし、そのクセ恋バナには興味津々で」アハハ
初美「塞さんって初心なんですねー」
憩「めっちゃ普通に女子高生しとるんやね。この学校の子おかしい子ばっかりやからなんか安心するわ」
モモ「ましてや出会って間もない人と付き合う姿とか想像できないっすね」タハハ
初美「マジですかー……」シュン
憩「高嶺の花ほど手に入れるのは大変ってことやね」
モモ「本当に高嶺の花っすね。突撃しては玉砕していく人いっぱい知ってますし」
憩「そういえば、好きな人に振られたとかでたまにカウンセリング受けに来る人おるけど……」
モモ「そのうちの3割くらい塞さんじゃないんすか?」アハハ
初美「ほ、他の女の手垢が付いてないことは良い事ですよー」
憩「あはは。はっちゃんはポジティブやねー」
モモ「でもそれでいいっすよ薄墨先輩! 恋愛なんて諦めずに押しまくるのが一番っす!」
モモ「私の経験談では!」
憩(お相手誰ですかー)
モモ「ふふ、私なんかでよければ任せるっす」
モモ「塞先輩はそろそろ恋愛の一つでもするべきだと思うっすからね」
初美「おお……!」
憩「やったなはっちゃん。これで協力者一人目やで」
憩「バスケ部とのパイプも出来て数歩前進や」
初美「それじゃあ早速……どうすればいいんでしょう?」
モモ「体験入部でもしてみるっすか? あ、でも流石に塞先輩が構ったりは出来ないっすね……」
憩「まずはきっかけやなぁ……いやでも、顔見知り程度にはなっとるんやから、あとは親密になるためになんかして……」
初美「な、何をすればいいですか……?」
モモ「うーん、そうっすね……」
初美「えっ」
モモ「それは良い案っすね」
モモ「お互いに保健室に用事があって、それでいてたまたま一緒になったって言うのなら自然っす」
憩「そこから会話が始まって、親密になれるかどうかははっちゃん次第やな」
初美「な、なるほど……」
モモ「なんなら一日中保健室に閉じ込めるとかどうっすか! これで一気に距離を縮めて……!」
初美「それは素晴らしい案ですよー!」
憩「流石に先生としてそこは認められんかなぁ……」アハハ
初美「えー。ちょっとくらいダメですかー……?」
憩「ちょっとくらいダメですねー。1時間くらいは空けても大丈夫やから、その間に次のイベントに繋がるよう頑張ってや」
モモ「吊り橋効果を利用して距離をぐっと……」
憩「と、東横さん? あんましそういう穏便じゃないことはやめような」
初美「保健室に二人きりだけでも十分ですよー。何から何までお世話になるつもりはないです!」
モモ「それは心強いっすね」アハハ
憩「んじゃ、とりあえず早速今から始めよか」
憩「東横さん、臼沢さんここに呼び出したりって出来る?」
モモ「任せるっす!」
初美「よろしくお願いしますよー!」
憩「んで、はっちゃんはここで待機やけど……臼沢さん来るまでにちょっと細工しとこか」
初美「細工?」
憩「まあ、任せてや♪」
モモ「それじゃあ、とりあえず私は呼んで来るっすね」
初美「よろしくですよー」
―――――――――――
初美「うぅ……いざ保健室に一人にされると緊張するですよー……」
初美(でも、これは私自身のこと……協力してくれた二人のためにも、足がかりを……!)
コンコンコン
初美(き、来た!)
初美「は、入って大丈夫ですよー」
塞「失礼します……ってあれ? 先生は……?」ガラ
初美(塞さん……ユニフォーム姿……)
初美「なんか用事があるらしくて出て行っちゃいました。すぐに戻って来るそうですよ?」
塞「そっか。って……薄墨さん」
初美「お久しぶりですー。あの時はお世話になりました」ニコッ
初美「あはは、また怪我しちゃいました」
塞「だ、大丈夫? この前よりも酷く見えるけど……」
初美「体育の授業中にちょっと捻っちゃいました……」アハハ
塞「そっか……何かあったら私に言ってよ。先生帰って来るまでは手助けするから」
初美「ありがとですよー……塞さんはやっぱり優しいですね」ニッコリ
塞「そ、そうかな? 当たり前のことだと思うけど……」
初美「そんなことないですよー。塞さんは凄く優しいです」
初美「あの時だって、怪我した私のところに真っ先に向かって来て、保健室まで運んでくれて……」
塞「あ、あの時は私が一番近くにいたから……それに、怪我した人を放っておけるわけないし」アハハ
初美(ふふ、本当に素敵な人ですよー……)
塞「なんか健康診査? に不備があったとかで、荒川先生が呼んでるらしくて」
初美(また適当なことでっち上げたんですねー……)
塞「先生がいないから、少しの間ここで待つ事になりそうだけど……」
初美「そうなんですかー。それなら、その間は二人きりですね」ニコッ
塞「ふふ、そうだね」
初美(とりあえず、メルアドくらいは持って帰りたいですねー……)
塞「薄墨さんはどんな用事? って言っても、その足だよね……」
初美「いえ、この足もそうなんですが……実は今、ちょっと熱っぽくて」
塞「えっ?」
初美「体調もあんまり良く無いんですよー……」
塞「だ、大丈夫? 私先生探して来ようか?」
初美「いえ、そこまでしてもらわなくて大丈夫ですよ……」
塞「本当に……?」
初美「はい。一人のときは少し辛かったですけど……」
初美「今は塞さんがいるから大丈夫です」ニコッ
塞「っ……そ、そっか。あはは……なんかそう言われると恥ずかしい……」
初美(塞さん可愛いですよー)
初美「そういえば。聞いた話なんですが、塞さんって胡桃と仲良いんですか?」
塞「うん、昔からの馴染みだけど……薄墨さんは胡桃の知り合い?」
初美「私、胡桃とは同じクラスなんですよー。いつも一緒にご飯食べたりしてます」
塞「そうなんだ! そっか、胡桃、同学年の友達出来たのかー……」
初美「私と胡桃は1年の時から友達ですよ? まあ、腐れ縁ですけど」
塞「二人ともちっちゃいから気が合ったりするのかな」アハハ
初美「身長のことはいじらないでください」ジトー
塞「高校生で胡桃と同じくらいの身長の子なんて、この世にいないと思ってたから」アハハ
初美「私も初めて胡桃を見た時はビックリしたですよー」
初美「高等部の1年と中等部の1年間違えてるんじゃないかって思いました」
塞「ふふっ……薄墨さんがそれ言うとめちゃくちゃ面白いね……」
初美「バカにしないで欲しいですよー……」ジトー
初美「それでまあ、案の定胡桃に話しかけられたんですが……アイツ私になんて言ったと思います?」
塞「胡桃のことだから……ふふ、ここは高等部だよ、って注意されたとか?」
初美「その通りです。そっから互いに初対面なのに大喧嘩ですよー」
塞「薄墨さんと胡桃にそんな馴れ初めがあったなんて……面白いなぁ」
塞「高等部に上がった初日にそれってすごいね」アハハ
初美「まあ最初の印象が最悪だったせいか、今ではそれなりに仲良くさせてもらってますけどね」
塞「そっか。胡桃にそんなことがあったなんて……全然知らなかったなぁ」
塞「あの子、私たちといる時はクラスのこととか全然話さないから」
初美「そうなんですか?」
塞「うん。まあそれを言うなら、私とかもそうなんだけどね」
初美「塞さんはバスケ部とは別に胡桃と同じ部活に入ってるそうですが……何の部活なんですか?」
塞「ただのお遊びサークルだよ。名称は立派に校内ボランティア部ってなってるんだけど……」
初美「こ、校内ボランティア部?」
塞「そいつがただ自分の欲求を満たすためだけに作られたのが校内ボランティア部なの」
初美「めちゃくちゃふざけた成り立ちですねー……」
塞「最初は昼寝部っていうもっとふざけた名前にしようとかって言ってたんだけど、流石にやめさせて」
初美「あはは……」
塞「部として承認してもらうために名前だけでも偽ってるって感じだね」
初美「具体的にはどんな活動をしてるですか?」
初美「流石に遊んでるだけだと、先生たちが気付いて消滅させようとするんじゃ……」
塞「先生から雑用回されてそれやったり、一般生徒の依頼とか相談事を解決したり」
初美「要するになんでも屋みたいなものですかー?」
塞「うん、その例えが一番しっくりくるね」
初美「そんな部がこの学校にあったなんて……」
塞「案外有名だって聞いてるんだけどね」
塞「荒川先生に頼めないようなことはボランティア部に頼むとかって」
塞「まあ、部長は年中めんどいめんどい言ってるんだけど」アハハ
初美「ふふ、面白そうな部活ですねー……また何かあったときは利用させてもらうですよー」
塞「ぜひ。まあ、バスケ部もあるからそんときに私がいるかどうかは分からないけど」
初美「はい。毎日元気にすいすいしてますよー」
塞「すごく健康的な見た目してるもんね。綺麗に焼けてて……」
初美「塞さんの真っ白な肌も綺麗ですよー」
塞「そ、そうかな……」
初美「はい。一度でいいから触ってみたいです」ニッコリ
塞「あ、あはは。また機会があったらね」
初美(ガードが固い……)
塞「にしても、先生帰って来ないね……結構話し込んだと思うんだけど……」
初美「そ、そうですねー……きっと色々と立て込んでるんですよー」
塞「保健室の先生って忙しいって聞くしね……」
初美(今の感じだと、ここからキャッキャウフフなんて到底無理そうですねー……)
初美「あ、あの、塞さん!」
塞「ん、なに薄墨さん?」
初美「め、メールアドレス交換しちぇもらっていいですか?」
初美(か、噛んだ……)
塞「ふふ、喜んで」ニコッ
初美(やりましたよー!)
塞「あっ……携帯部室だ……」
初美「」
塞「ご、ごめんね薄墨さん……えっと、どうしよっか? 紙に書いて渡す?」
初美「そうしてもらえると嬉しいですよー……」
塞「あはは。ごめんね、出鼻くじくようなことしちゃって」
塞「えっと、紙と書くもの……」
塞「ありがと」ニコッ
初美(あぁ、塞さんすごく素敵ですよー……大人のお姉さんって感じで……)ポーッ
塞「はい、これ。連絡待ってるね」スッ
初美「ありがとうございます!」
塞「な、なんかそんなにも喜ばれると気恥ずかしい……」
初美「塞さんはシャイなんですねー」
塞「どっちかというとそうだとは思うかな」アハハ
初美(ああ、ずっとこのままいたいですよー)
塞(流石にそろそろ戻らないと……)
塞「薄墨さん、ごめん。私そろそろバスケ部戻るね」
初美「えっ……」
塞「練習の途中だし、あんまり長い時間放っておくわけにもいかないから……」
塞「荒川先生には後日訪ねるから、って伝えておいてくれる?」
初美「了解です……」シュン
初美(もう少し一緒にいれると思ったのに……)
塞(す、すごい落ち込んでる……)
塞「ご、ごめんね薄墨さん。一人にしちゃうけど、先生もすぐ来ると……」
初美「塞さん……行かないでください……」ウルウル
塞「へっ……?」
塞「え、ええっ……? そ、そんなこと言われても……」
初美「塞さん先生が戻って来るまでは一緒にいてくれるって言ったじゃないですかー……」
塞「き、記憶にないんだけど……」タハハ
初美「うぅっ……頭が痛くなってきましたー……体もぶるぶるですー……」
塞(し、白々しい……でも……)
塞「……分かった。先生が戻って来るまでは一緒にいるよ……」
初美「塞さん大好きですよー」ニッコリ
塞「あはは、取り繕う気はゼロなんだね……」
初美「約束させればこっちのもんですよー」
塞(この子、結構イイ性格してるなぁ……)
―――――――――――――
初美(話題がなくなっちゃいました……)
塞「……」ソワソワ
初美(なんかさっきからそわそわしだしてるし、このままじゃまずいですよー……)
塞(いくらなんでも遅すぎるような……早く戻りたいけど薄墨さんにはああ言っちゃたし……)
初美(な、なにかグッドなアイデアは……)
初美(……そうだ。この足を利用して……)
初美「塞さん」
塞「なに?」
初美「ちょっとトイレ行きたいんで、そこの松葉杖を……」
塞「あ、ああ。えっと、一人で行ける……よね?」
初美「そこまではお世話にはならないですよー」
塞「だよね。はい、これ」
初美「ありがとですよー」
初美「きゃっ!」ガクッ
塞「薄墨さん!」ガシッ
初美(ふふ、やっぱり。運動神経の良い塞さんなら抱きとめてくれて……)
塞「だ、大丈夫薄墨さん?」
初美「ごめんなさい……ちょっとバランス崩しちゃいました……」エヘヘ
塞「気を付けないとダメだよ? 怪我してるんだから、悪化させたら……」
初美「ふふ、やっぱり塞さんは優しいですよー……」
塞「もう、そんな調子の良いこと……」
初美「すみません……ちょっと、軽く怪我したところ捻っちゃったみたいで……」
塞「えっ!? だ、大丈夫なの!?」
初美「ちょっと足痛いですー……あそこにあるベッドまで運んでもらえれば……」
塞「分かった。えっと……肩とかは組めないし、どうやって運べば……」
初美「あの時みたいにおんぶすれば……」
塞「あ、そっか。……はい、身体預けて?」
初美「了解ですよー」ギュッ
初美(ふふ、計画通りなのですよー)
塞「少しの距離だから頑張ってね」
初美「はいですよー♪」
初美(こうやってぴっとりくっつくのはもっと……)ギュウ
塞(う、薄墨さんの吐息が……体も熱いし……)ドキドキ
塞「お、下ろすね、薄墨さん」
初美「えっ……」
初美(もう終わり……)
初美「は、はい……大丈夫ですよー……」
塞「よっと……足、楽にして」
初美「はい……」
初美(何の異常もないのにここまで心配されると、少し悪い気が……)
塞「……私、やっぱり先生のこと探して来るよ」
初美「えっ……」
塞「早く処置しないとどんどん悪くなるから……ちょっと待ってて」
初美「あっ……ま、待って……!」
塞「ごめん。すぐに戻って来るから」タタッ
初美(行っちゃいました……)
初美(塞さんの優しさがここに来て裏目に出ちゃいましたかー……)
初美「はぁ……もっとおんぶされたかったなぁ……」
―――――――――――
塞「それじゃあ先生、薄墨さんのことよろしくお願いします」
憩「了解しました。ウチがおらんかったせいで、色々とごめんな」
塞「いえ、いいんです。先生がお忙しい事は知ってますから……」
憩(うぅ……はっちゃんのためとは言え、臼沢さんの誠実さが胸に刺さるわ……)
塞「それでは、失礼しました」ガラ
憩「ふぅ……成果はどんなもん、はっちゃん」
初美「……本音を言えばちょっと物足りないかもですよー」
モモ「あれだけすれば十分だと思うっすよ?」ユラ
初美「きゃあ!? ってまたですかー……」
モモ「ふふ、ずっと中で見てたっすよ?」
初美「ほ、ほんとですかー……全然気付かなかったですよー」
憩「ウチは職員室おったけどなー」
モモ「バッチリっすよ薄墨先輩」
初美「もっとおんぶされてたかったですよー……私、アレかなり好きかもです」
憩「ふふ、はっちゃんは自分の気持ちハッキリ言うから好感持てるわー」
モモ「同感っす。ここまで好きって感情押し出す人も珍しいっすよね」
初美「隠す理由がないですよー」
初美「塞さんがオッケーしてくれるなら今すぐにでも告白したいです」
憩「はは、そっか」
モモ「塞先輩思われてるっすね……でも、今告白してもまだまだ厳しいと思うっす」
初美「やっぱりそうですかー……」
初美「今日いっぱい話して思ったんですけど、なんか恋愛対象に見られてない気がするんですよねー……」
憩「むしろ学年も違う部活も違うこの状態で、ここまで話せるようになっとるんやから十分すごいわ」
モモ「先生の言う通りっす。心配しなくても、もっと時間を重ねればいつか落とせるっすよ!」
初美「そ、そう言われるとなんか元気出てくるですよー!」
憩「ま、ゆっくり頑張って行こはっちゃん。時間はいっぱいあるんやから」
憩「とりあえず帰ってメールしてみたら」
初美「あ、そういえばアドレス……」
モモ「塞先輩メールするの大好きっすから、ウザいほどメール送っちゃってください!」
初美「了解ですよー!」
憩「いえいえ。まだ相談解決とまではいってないし、お礼言うのは早いで」
モモ「そうっすよ。本当の勝負はこれからっす」
初美「塞先輩と二人きりで話せただけでも幸せですよー」ニコニコ
憩「はは、まあはっちゃんが幸せそうにしとるんやったら、ウチはそれでいいんやけども……]
初美「では、また何かあったら相談しにきます。東横さんもその時はお願いするでよー」
モモ「任せるっす!」
憩(この子はなんでこんなにも協力的なんやろか……)アハハ
初美「それじゃあ、今日はこれで。水泳部の方に軽く顔出してくるですよー」
憩「お疲れ様。またなんかあったら遠慮なく来てや」
モモ「私も呼ぶっすよ!」
初美「よろしくですよー!」ニッコリ
憩(とりあえず一件落着……かな?)
――――――――――――
憩「あれからはっちゃんどんな感じなんやろなぁ」
憩「上手いことやってたらええけども……」
コンコン
憩「はーい、どうぞー」
初美「こんばんわです先生……」ガチャ
憩「噂をすれば……こんばんわはっちゃん。今日はどないしたん?」
憩「身長測りに? それとも……この前の続きとか?」
初美「続きなんですよー……先生、私どうしたらいいですかぁー……」ウワーン
憩(い、一体何が……?)
憩「とりあえず事情訊かせてや。何があったの?」
初美「実は……」
――――――――――――
憩(簡潔にまとめると。臼沢さんが3年生と思われる誰かとキスしてたとか)
初美「うぅ……」
憩「う、うーん……それって本当なん? 見間違いとかじゃ……」
初美「遠かったんでよくは見えなかったですけど」
初美「終始良い雰囲気で、空気が甘酸っぱかったというか……」
憩「なるほどなぁ……」
初美「あんな塞さん見たことないですよー……ジェラシーめらめらですー……」
憩(元気ないなぁ……そないショックやったんか……)
初美「先生、私、あれが塞さんの好きな人だと思うですよー……」
初美「あの雰囲気からして、ひぐっ、付き合っててもおかしく……」ウルウル
憩「は、はっちゃん……」
憩「う、うーん……具体的にどうしろと言われると……」
モモ「そんなヤツ刺しちゃえばいいんすよ!」ユラ
憩「うわぁ!? って東横さん!?」
モモ「元気無さそうなはっちゃん先輩の姿を見かけたんで付いて来たっす」
初美「ぜ、全然気付かなかったですよー……」
モモ「まあ私のことは置いといて……ダメっすよはっちゃん先輩! そんなことで落ち込んでちゃ!」
初美「モモちゃん……」
憩(い、いつの間に名前で呼び合うような仲に……)
モモ「恋に障害が多いのはあたりまえっす! 塞先輩のような人を狙うなら尚更っす!」
初美「で、でもキスしてたですよー……あれは絶対いかがわしい関係ですよー……これはもう、諦めるしか……」
初美「ね、寝取る……!」
憩(この子も例を漏れずにええ性格しとるなぁ……)
憩「って待ち待ち。刺すとか寝取るとか物騒なこと言わないの」チョップ
モモ「あうっ」
憩「話を聞いてる限りじゃ、諦めるんはまだ早いと思うで?」
初美「どういうことですかー……?」
憩「キスしてたんも確定やないし、本当に付き合ってるんかも分からんやから、まずはそこを調べんと」
憩「ただの誤解で刺されてたら命いくつあってもたまらんで」アハハ
モモ「確かにそれはそうっすね……ライバルがどんなヤツなのかを知るためにも、偵察は大事っす」
憩(過激な方向に持って行きたがるなぁ……恋愛事でなんか嫌なことでもあったんかな……)
モモ「塞先輩に直接訊いても答えてくれるわけないし……」
憩「そのキスしてたっていう相手の子に事情訊くのが一番早そうやね」
憩「名前とかって分かる? 分からんかったらその子の特徴とか」
初美「名前は分かんないですけど……たぶん、3年生だと思いますよー」
初美「特徴は……背が高くて、白髪で」
憩(背が高くて白髪って……)
初美「それでいて死んだ魚みたいな目してて、眉毛がにょろにょろーってなってて」
モモ「と、特徴的な方なんっすねー……」
憩(間違いなく小瀬川さんやん……)
初美「心覚えはあるですかー? 先生」
憩「うん、背が高くて白髪の時点で分かったわ……」
モモ「おお! 流石っす先生!」
憩(はっちゃんと対峙したらどうなるやら……)
初美「先生! この前みたいにお願いするですよー!」
モモ「ここに来たところを闇討ちっす!」
憩「闇討ちはやめたってな」アハハ
キーンコーンカーンコーン
憩『校内ボランティア部3年の小瀬川白望さん。校内にいましたら、至急保健室まで来てください』
憩『繰り返します。校内ボランティア部3年の……』
――――――――――――
憩「さて。あとは待つだけやね」
初美「き、緊張するですよー……」
モモ「はっちゃん先輩! 今のうちに戦闘態勢を整えるっすよ!」
憩「戦争するんやないんやから……」
憩(それが一番問題なんよなぁ……)
憩(あの小瀬川さんが恋愛ってホンマに想像付かんけど、臼沢さん相手やったらもしかすると……)
モモ「諦めたらそこで試合終了っすよはっちゃん先輩!」
モモ「もしそうだとしても、奪い取るくらいの気持ちで塞先輩にアタックするっす!」
初美「そうしたいのは山々ですがー……塞さんの幸せの邪魔するようなことは気が引けるですよー……」
モモ「なに言ってるすか! 自分がもっと幸せにすればいいんすよ!」
憩「逞しすぎるわ東横さん……」タハハ
――――――――――
モモ「来ないっすね」
初美「来ないですよー」
憩(あれから結構経ってるけども……校内におらんのかな?)
憩(いや、ちゃうな……たぶんあの小瀬川さんのことやから……)
初美「先生、もう一回呼び出してみて……」
憩「十中八九意味ないと思うわ。あの子の性格忘れてた」アハハ
モモ「どういうことっすか?」
憩「直接出向くしかないってことやね。小瀬川さん間違いなく部室におると思うから」
初美「それってつまり……呼びだれてるのに無視してるですかー?」
憩「まあ、そうやろね」アハハ
モモ「これは何か疾しいことがある証拠っす!」
憩「いや、あの子の場合はただ単に面倒くさいだけ……」
初美「りょ、了解ですよー!」
モモ「はっちゃん先輩、もしものために何か武器を……」
憩(ホンマは保健室離れたらアカンやけども、この二人だけに行かせるのは危ないやろなぁ……小瀬川さんの身が)
憩「二人とも先外で待っといてー。戸締まりしとくから」
憩「あとそのモップはちゃんと直しといてやー」ニッコリ
――――――――――――――
初美「ここが校内ボランティア部……」
モモ「部室棟にあったんすね。名前は何度か聞いた事あるっすけど、場所までは……」
憩「ウチは何度かお邪魔することあったわ」
憩「そんじゃま、行きましょか」
初美「ご、ごくり」
コンコンコン
シロ「どうぞー……」
憩「お邪魔しまーす」
やえ「って……荒川先生? それに……」
初美「お邪魔するですよー……!」ギラギラ
モモ「敵は一人じゃなかったすか……!」ギラギラ
やえ(な、なんだコイツら……)
憩「こらこら二人とも。そんな殺気立たんと」
やえ「えっと……ウチに何の御用でしょうか?」
憩「今日はちょっと小瀬川さんに話があって……」
シロ「私に?」
やえ「シロ、お前またなんか厄介事を……」ジトー
シロ「うーん……なんかしたっけなぁ……」
シロ「保健室遠いから……この学校無駄に広いし……」
やえ「あのなぁ……」
憩「まあそこまでにしといて」アハハ
憩「実はちょっと小瀬川さんに訊きたい事があってな。時間もらっても大丈夫?」
シロ「んー……まあ、はい。大丈夫です。暇なんで」
憩「それはよかったわー」
モモ(この人が、塞先輩の……?)
初美(小瀬川白望って言うんですねー……! 覚えましたよー……!)ゴゴゴ
シロ(なんか……ちっちゃい子から暑苦しい視線が……)
初美「小瀬川白望! あなたは塞先輩のなんなんですかー!」
憩「ちょっ……」
シロ「塞? 塞とは友達だけど……」
初美「ほ、本当にそれだけですかー!?」
シロ(なんかダルそうな雰囲気……)ハァ
憩「は、はっちゃんちょっと落ち着き。小瀬川さん意味分からんって顔してるから」アハハ
モモ「ここは私が出るっす。敵はなかなか手強そうっすからね」
シロ(もう一人出て来た……)
やえ(この子いつの間に……)
憩「と、東横さん?」
モモ「ずばりきくっす! 小瀬川先輩は塞先輩と付き合ってるっすか!?」
シロ「……は?」
やえ「お、お前ら……」
シロ「いや、してないから」
モモ「嘘付くっす! ネタはもうあがってるっすよ!」
初美「塞先輩に手を出すなんて許せないですよー!」
憩「二人とも人の話を聞きなさい」チョップ
「「あふっ」」
憩「ごめんな。いきなり来て意味わからんこと言って」アハハ
シロ「よくあることだから大丈夫です」
やえ(本当によくあるから困る……)
憩「えっと、つまりまあ何が訊きたいかと言うとな、……小瀬川さんと臼沢さんって付き合ったりしてるの?」
シロ「してないです」
モモ(そ、即答っすか……いやでもまだ……)
初美「!?」
憩「えっと、小瀬川さんの言葉は信じてもいい感じなん?」
シロ「信じるも何も、私なんかと勝手にくっつけられたら塞が可哀想だと思いますけど……」
モモ「むむむ……」
憩(これは白っぽいなぁ……)
初美「ほ、本当に塞先輩となんともないんですかー……?」
シロ「中学からの友達ではあるけど、そういうダルい関係じゃ無い」
憩「はは、ダルいときたかー」
やえ「3年間コイツらと一緒にいる私も断言するけど、この唐変木に恋愛なんてありえませんよ」
シロ「唐変木……木になったらどんな気分なんだろ……」
憩(なーんかうっすらと事情が見えて来たような……)
やえ(本当に何しに来たんだコイツら……)
初美「こ、これはどうしたらいいですかー……」
憩「どうするも何も、訊くこと訊いたんやから解決ちゃう?」
モモ「確かにあの人たちが嘘付いてるようには思えないっすけど……」
憩「疑う余地ないと思うで?」
憩「キスしてたんはたぶんゴミかなんか取ってたのがそう見えただけで、いい雰囲気なんは小瀬川さんと臼沢さんの付き合いが長いからで……」
初美「そ、それなら……」
モモ「終戦、っすか……」
憩(臼沢さんが小瀬川さんのこと好きなんは確定っぽいけど)アハハ
シロ「もういい感じ?」
初美「は、はいですよー!」
憩「ごめんな小瀬川さん。いきなりやって来てこんなこと訊いてもうて」
初美「同じくですよー」ペコ
シロ「何を謝られたのかよく分かんないんだけど……」
やえ「日頃の行いが悪いからこういうことが起こったりするのよ」ハァ
シロ「学校のみんなのためにダルいの我慢して頑張ってるよ?」
やえ「シロの場合は業が深すぎるの」
シロ「はぁ……意味わかんないダルい……」
憩「さて。相談解決ちゃう? 臼沢さんは晴れて独り身ってこと分かったし」
モモ「良かったっすね! はっちゃん先輩!」
初美「えへへ……」
やえ「えっと、その中等部? の子が塞のこと好きだったりするの?」
憩「まあ、そういうことです」アハハ
初美「失礼ですねー……私は高2ですよー……」ジトー
初美「まず制服が高等部のヤツなんですけどー……」
やえ「信じられない……高校生で胡桃以外にもこんななりした子がいるなんて……」
憩「はっちゃんはその胡桃ちゃんのクラスメイトで友達なんやでー」
シロ「そうなんだ……胡桃のクラスでの友達……」ジー
初美(は、初めて興味持たれた気が……)
モモ「私は塞先輩の後輩っすよー。バスケ部っす」
やえ「バスケ部? 何年生なの?」
モモ「華の1年っす」
シロ(1年……塞がよく話してるあの子かな……分かんないけど)
憩「ちゃんと気持ち受け取って返事しとるらしいし、誠実やと思うで?」
憩(あの子らに比べれば)
モモ「せっかくなんすから、この二人にも協力してもらうとかどうっすか?」
初美「それは名案ですよー! 塞先輩と仲が良い二人が手を貸してくれたら……!」
シロ「協力?」
やえ「ってことは、校内ボランティア部に対する依頼……」
憩(うーん、それってどうなんやろ……)
憩(臼沢さんは小瀬川さんのこと好きやのに、そんな小瀬川さんを協力させるって……)
シロ「……ごめん、私パス」
「「えっ?」」
シロ「いや、私は協力したくないってだけだから……」
シロ「やえと他の子で頑張ってよ。たまには顧問の戒能先生とか付き合わせてさ」
やえ「協力したくないって……今までそんなこと一度も言わなかったのに……」
シロ「うん、だから本当にごめん。こればっかりは私の我がままだから」
初美「そ、そんなぁ……」
モモ「部長の協力が得られないなんて想定外っす……」
憩(……ふふ、どういう考えかは分からんけど、小瀬川さんはやっぱしっかりしてるわ)
憩(この人の気持ちを汲み取るというか、気遣いが出来る子がもっと増えれば平和やのになぁ……)
やえ「シロ抜きでやるなんて今まで例がない……」
シロ「基本私とやえは固定で、その日部に来てる人を入れて依頼解決するのがスタイルだからね」
シロ「ん、なに?」
初美「今まで依頼を断ったこと……ないんですよね?」
シロ「私に関しては部が出来てから一度もなかったかなぁ……たぶん」
初美「……理由、聞かせてもらってもいいですか?」
シロ「んー……理由、か……」
シロ「……ちょいタンマ」
憩(これは正直、めちゃくちゃ気になるわぁ……)
憩(ま、ここにおる全員そうやろうけども)アハハ
やえ(もしかしてシロのヤツ、塞のこと……いや、ありえないとは思うけど……)
初美(まだまだ怪しくなってきたですよー……さっき言ったことも本当は嘘かも……!)
モモ(塞先輩の気になる人って……)
初美「お、面白くない……?」
シロ「いや、依頼に対して面白いとかつまんないとかでやったりしてないんだけど……」
シロ「こう、塞が誰かと付き合うための手助けをするのが……嫌、なのかなぁ」
やえ(シロ……)
モモ「な、なんかハッキリしない言葉尻っすね」
シロ「うん、自分でもそう思う……私自身よく分かってないから」
初美「つまり、私と塞さんの恋路は応援出来ない、ってことですかー……?」
シロ「申し訳ないけど」
初美「……」
憩(なんか、近い将来小瀬川さんの相談受けそうな気が……)
初美「え。そ、そうなんですかー……?」
シロ「塞と薄墨さんのことだから、私は関係ないよ」
モモ(小瀬川先輩が何を考えてるのかますます分からなくなってきたっす……)
憩(本人でも分からん言うてるくらいやし、かなり複雑な気持ち持ってそうやなぁ……)
やえ「……はぁ。ほんっと、昔から面倒くさいだから」
シロ「ごめん……」
やえ「謝らない! ……部長がこんなだし、申し訳ないけど断るわ」
シロ「やえ……?」
憩「うん、ウチもそれがええと思うわ」
憩「臼沢さんのためにも、ウチらと小瀬川さんたちは手を取り合うべきではないね」
初美「先生……」
シロ「うん。私もなんとなくだけど、そう思う」
モモ「……了解っす」
初美「分かりましたですよー……」
初美「それでは、お邪魔しました」ペッコリン
シロ「またなんかあったら来て。たぶん、手伝えるから」
初美「っ……」
初美「はいですよー!」ニッコリ
やえ「やれやれ……」フフ
憩(臼沢さんが誰とも付き合ってないってことは分かったし……一応は一件落着、なんかな)
モモ「なんかもやもやするっすー……」
―――――――――――
やえ「はぁ。なんか今日は珍しい日だったな……」
シロ「こういう日もあるよ」ハァ
シロ「……そろそろ出て来たら? 塞」
やえ「もう隠れなくてもいいよ」
塞「げっ……い、いつから気付いてたの?」
シロ「割と始めから」
やえ「あんなあからさまに部屋の中覗いてたら、そりゃね」アハハ
シロ「先生たちはこっち向いてたから気付けなかっただろうけど、ここからは丸見え」
塞「な、なるほど……」
シロ「軽く話しただけでも分かったけど、あの子本気で塞のこと好きだと思うよ?」
塞「そんなの言われなくても分かってるから……」
やえ「あはは、本気で困ってるし」
シロ「どうするの?」
塞「……ど、どうするって?」
シロ「告白されたら」
やえ「そう遠くはない未来だと思うよ?」
塞「……元気で明るくて、話してるとすごく楽しいんだけど……」
塞「今はまだ妹とかにしか思えないというか……」
やえ(あっちゃー)
シロ「……可哀想」
塞「ええぇっ!?」
やえ「塞の気持ちも変わるかもだしね」ニヤニヤ
塞「そ、そんなことっ……」
シロ「……」
やえ「さて、そろそろ下校時間だし帰るか。巽向かいに行ってくるよ」テクテク
シロ「いつもの場所で待ってるね」
塞(ちょっ、この状態でシロと二人きりにする気なの!?)
やえ(お前らもいい加減ハッキリさせろって)ハァ
塞(や、やえのヤツ……!)
シロ「……」ボケー
塞「……練習メニュー変わってね。3年は早く終わったから顔出しに来ただけ」
シロ「そっか……」
塞「あ、あのさ」
シロ「?」
塞「薄墨さんたちの依頼、断ってたけど……アレってつまり、その……」
塞「私が誰かとそういう関係になるのが嫌ってことだよね……?」
シロ「……うん」
塞「そ、そっか……あははー……そうなんだー……」
塞(ヤバい、めっちゃ嬉しいかも……)
シロ「自分の娘を嫁にやりたくないとか、そんな感じの気持ちだと思う」
塞「……は?」
シロ「飼ってる犬が他人に懐いてるの見たくないとか、そんな感じの」
塞「……」
塞「シロのバカ!!」ドゴォ
シロ「ぐふっ!?」
―――――――――――――――
初美「うふふー、今日はウキウキなんですよー」ルンルン
モモ「協力は得られませんでしたが、疑惑が晴れただけでも大収穫っすね」
憩「幸せそうで何よりやわ」
初美「塞さんと一緒に帰りたいですよー。あ、そうだ。メールしてみよう」
モモ「部活も終わってる頃ですし、きっとすぐに返信くるっす!」
憩(臼沢さんの気持ちを動かせるか……小瀬川さんがあの様子やから、まだまだ時間はあると思うけども……)
憩「ま、なにはともあれ。これからも頑張りやはっちゃん。押せ押せあるのみやで♪」
初美「はいですよー!」
モモ「私にも相談するっす! 偵察と闇討ちなら任せるっす!」
初美「二人とも本当にありがとなんですよー!」
初美「協力してくれた先生とモモちゃんのためにも、絶対に落としてみせます!」
モモ「その調子っす!」
憩(果たしてどうなるやら……)アハハ
終わり
お疲れ様でした
憩ちゃんええな~この学校の良心やな
続き期待してますで!
Entry ⇒ 2012.10.29 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (4) | Trackbacks (0)
玄「彼女募集中」
宥「えっ……」
玄「えっ!?」
憧「だってこの前、駅前を手を繋いで歩いてたじゃん」
宥「いつのこと?」
憧「この前の日曜日だよ」
玄(日曜日……そういえばお姉ちゃん朝から居なかった……)ムムム
憧「確か白糸台で宥姉と戦った人とさ。見間違いじゃなかったらだけどね」
憧「てっきり付き合い始めたのかと思ったんだけど」
玄「ま、まっさかー。ね、お姉ちゃん」ハハハ
宥「……」
玄「……お姉ちゃん?」
憧「おお」
玄「え!?」
玄「わ、私初耳だよお姉ちゃん!」
宥「言うの恥ずかしくて……」
憧「とうとう宥姉に春が来たかー」
玄「そ、そんな……」ガクッ
憧「玄ショック受けすぎじゃない?」
玄「そんな……お姉ちゃんに……」
宥「そんなに意外かな?」
穏乃「?どうしたの玄さん」
憧「しずにはまだちょっと早い話」
穏乃「何?」
玄「だって……だって……」
灼「何?」
憧「宥姉に恋人が出来たって聞いて落ち込んでるの」
灼「宥さんに?ああ、だから」
穏乃「玄さん、宥さんのこと大好きだからね」
憧「少しはお姉ちゃん離れとかすれば?」
玄「……べ、別にいつもお姉ちゃんにベッタリなわけじゃないもん」プイッ
灼「姉妹仲が良いにこしたことは無いけど」
穏乃「うん」
憧「このままベッタリじゃ玄の為にもならないんじゃない?」
玄「うううう……ベッタリなんかしてないもん……」
憧「忘れがちだけど私たち花の女子高生だしね」
憧「玄も恋人作れば……」
憧「……」
灼「……」
穏乃「……」
憧「玄には早いか」
灼「想像できない」
玄「わ、私にだってコイビトの1人や2人……」
穏乃「え?玄さん居たの?」
玄「……う、うん」ボソボソ
憧「嘘!?いつのまに!?」
灼「意外」
玄(え?あれ?)
玄「今のはそのー……、」
憧「どんな人?この学校の人?」
穏乃「ここ生徒数少ないし」
憧「あ、そっか。じゃあ他校の人!?」
玄「え、いや、その」
玄「……そうだよ、うん」
憧「同い年?あ、もしかして年上?」
玄(何か嘘でしたって言えない雰囲気……)
玄「そうだよ」
灼「他校で年上ってことは宥さんと同い年か」
憧「何だー。宥姉より玄のほうが水臭いじゃん」
宥「私も初めて聞いちゃった……」
玄(うん、だって居ないんだもん!)
玄「あはははは……」
玄(嘘ついちゃったよー……)ガックリ
玄(で、でも皆本気にしてないよね?)
宥「玄ちゃんの恋人ってどんな子?」
玄「え!?えーっとさっき言ったとおりだよ?」
宥「そうなの……」
宥「なんだかホッとしちゃった」
宥「私が頼りないから玄ちゃんは私に付きっきりなのかな、って思ってたから……」
玄「そんなことないよ!」
宥「玄ちゃん良い子だから絶対に玄ちゃんの事好きになる子居ると思ったの」
玄(そんな人居るわけないよー……)
宥「大会が終わった後、会場で偶然会ったの」
宥「そこから仲良くなって、付き合い始めたのは本当に最近なんだよ」
玄「そうなんだ」
宥「菫ちゃんも玄ちゃんに会いたいって言ってたから紹介するね」
玄「うん」
玄「え″」
玄「で、でもちょっと距離のあるところに住んでる人だし……」アセアセ
宥「ダメかな?」
玄「だ、だめじゃないようん」
宥「お願いね?」
玄「うん……」
玄(どうしよー……)
玄「……」タメイキ
玄「約束までしちゃったよ」
玄「正直に言えない感じになっちゃった……」
玄「こ、こうなったら今から作るしかない!」バッ!
玄「……」
玄「どうやって作るの……」ガックリ
玄「他校で年上なんて制約自分で付けちゃったし」
玄「自分で自分の首を絞めてるよ私……」
玄「ドラが恋人で良いかなもう……」
玄「テレビで現実逃避をしよう」ピッ
「女子高生へのアンケートによると恋人の居る人の割合は」
玄「何てタイムリーな話題なんだろう……」
玄「そうそう、みんなどこで会ってるの?」
「クラスメイト」
「部活の先輩とかぁ」
「何か友達の友達?と付き合い始めた子も居るー」
玄「普通そうだよねえ」
「しかしこれは五割。残りの五割は交遊関係の外からという人が多いのです」
玄「ふんふん」
「ネットで知り合った人と外で会うとか最近多いっていうかー」
玄「見知らぬ人って怖いと思うんだけど……」
玄「でもそれくらいしないと無理って事かな」
玄「私には無理だよー……」ガクッ
玄「あー、どうしよう……」
玄「そんなこんなしている内に一週間……」
玄「皆忘れてくれるかなーとか思ったらそんなこと全然無いし」
玄「特に憧ちゃんなんて誰か聞き出そうとするし」
玄「居ないんだから答えられないよ……」
玄「今日もお姉ちゃん朝から居ないし……デートかな」
玄「秋なんて絶対炬燵から出てこなかったのになぁ……」ハァ
玄「……」
玄(街中のカップルがやたら目に入ってくるよ)
玄(これがクラスで流行っているリア充死ねってことなのかな)トボトボ
玄「あーあ」
玄「朝起きたらドラが人間になってないかなー」
「ねえどっちが良いかな?」
「どっちも似合うよ」
「もうちゃんと答えてよ」
玄「……」
玄「試着して早く決めちゃおう」トトトッ
ドンッ
??「わっ」
玄「あ、ごめんなさいっ」
竜華「あんた阿知賀の……松実玄ちゃん?」
玄「千里山の……清水谷さん?」
玄(だよね?)
竜華「こんなとこで会うなんて偶然やなあ」
竜華「玄ちゃんも服買いに来たん?」
竜華「そっかー」
竜華「秋服って地味に悩まへん?日によって寒かったりするし」
玄「いっそ早く冬になってくれれば良いんですけどねえ」
竜華「そうそう。あ、玄ちゃん試着するん?」
玄「あ、はい。どっちにするか迷ってて」
竜華「ほんなら選ぶの手伝うわ」
玄「良いんですか?じゃあお願いします!」
……
玄「どうですか?」
竜華「……」
玄「清水谷さん?」
竜華「玄ちゃんは白い服がよう似合うなぁ」シミジミ
玄「そうですか?ありがとうございます」テレテレ
竜華「めっちゃかわええわ。うちやったらそれ着てくれたら嬉しい」
竜華「適当にこん中見てまわろっかー」
バッタリ
宥「あ」
玄「ふぇ?」
宥「玄ちゃん?」
玄「お姉ちゃん?なんでここに……」
玄(あ、この人とデート中なんだ)
竜華(今日は他校の子とよく会う日やなあ)
菫「そっちは確か千里山の……」
竜華「どもー」
宥「玄ちゃんもしかして清水谷さんなの?」
竜華「?」
玄「?」
玄「!」
玄(わ、わ、わ、忘れてたよ!)
玄(どどどどうしよう)ワタワタ
菫「?」
竜華「?」
玄(よ、よし。ここは適当に話を合わせて貰おう)
宥「そうなんだ……」
宥「清水谷さん」
宥「玄ちゃんのことよろしくお願いします」フカブカ
竜華「へ?」
菫「ん?」
玄(ごめんなさい、今だけ話合わせて下さい)チラッチラッ
竜華(よう分からんけど話合わせろってことやんな?)
竜華「よろしく言われても私のほうこそお世話になっとるで」
玄「ほ、ほらお姉ちゃん顔上げてっ」
宥「でもせっかく玄ちゃんの、」
玄「良いから良いから!弘世さん!」
菫「うん?うん」
宥「く、玄ちゃん顔上げてよ」
竜華「似たもの姉妹やなあ」
菫「姉妹仲は良いに越したことは無いが」
菫「宥、上映まであと10分だ」
宥「え?た、大変……」アセアセ
宥「じゃあ、あの玄ちゃんのことお願いします」
玄(何とか切り抜けた……危なかったよー……)
竜華「さて玄ちゃん」
竜華「どういう事なんか教えてくれへん?」
玄「はい……」
竜華「半ば冗談で言ったら本気にされてもうて、雰囲気的にも嘘と言えなかったと」
玄「お恥ずかしながら……」
竜華「それで何とか皆に会わせんで済むように条件付けてってたらお姉ちゃんに頼まれて困り切ってた」
玄「はい……」
竜華「で、運悪く鉢合わせしたけど運良く条件ピッタリな私がたまたま一緒におった……」
竜華「まあ玄ちゃんの助けになったんならええけど」
竜華「これからどうするん?」
玄「これからとは?」
竜華「お姉ちゃん、私と玄ちゃんが付き合ってるって信じとるやん」
竜華「玄ちゃんのことよろしくされてもうたし」
玄「うーむ……」
玄(ダメダメ!余計心配かけるし、お姉ちゃんの中の清水谷さんへの心証も悪くなっちゃう)
玄(このまま押し通すしか……よし、協力してもらおう!)
玄「清水谷さん!お願いがあります!」
竜華「大体予想ついとるけど、どうぞ」
玄「名目上で良いので恋人になって下さい!」ガバッ
竜華「うん、ええよ」
玄「そ、そんなアッサリ……良いんですか?」
竜華「特に断る理由もあらへんし」
玄「でもでも、もし好きな人が居るとかなら……」
竜華「おらんなあ」
竜華「思い返すと青春の殆どを麻雀に捧げてきたようなもんやからな」
竜華「強いて言うなら麻雀に恋してた」ドヤッ
竜華「玄ちゃんがええなら」
玄「……じゃあ、その、よろしくお願いします」
竜華「うん、よろしくなー」
玄(ずっと思ってたけど軽いノリの人だなー……)
竜華「あ、でも付き合うにあたっていくつか」
玄「何ですか?」
玄「あ、それもそうですね」ワタワタ
竜華「あと清水谷さんって無しな?」
竜華「名字呼びはちょっと寂しいわ」
玄「じゃあえっと……竜華さん?」
竜華「呼び捨てでもええよ?」
玄「さすがにハードルが高いです……」
竜華「そう?残念」
玄「それじゃ……しばらくお世話になります竜華さん」
憧「ねえ玄ー、聞きたいんだけどさ」
玄「なに?」
憧「玄の付き合ってる相手って千里山の清水谷竜華?」
玄「え」
玄「ど、どうして?」アセアセ
憧「昨日しずと○○駅のところ歩いてたらさ、玄たちっぽいの見かけたんだよね」
憧「ね、どうなの?」
玄(一応名目上とはいえ恋人だから言っても平気だよね?)
玄「そうだよ」
穏乃「やっぱりあれ玄さんだったんだ……」
憧「それにしても姉妹揃って相手が名門校の部長とは……なかなかのなかなかだよね」
玄「あはは……」
玄「普段って……フレンドリーな人だよ?」
憧「ほらそういうのじゃなくてさ」
憧「2人っきり特有のってあるじゃん」
玄「……え″」
玄(そんなの分からないよ……)
玄(どうしよー竜華さーん……)
続
最近竜華があまりにも可哀想な扱いだから違う方面で対抗する
楽しみにしてるぜー
Entry ⇒ 2012.10.28 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
菫「照が挟まっ照」
照「」ガチャ
照「……」キョロキョロ
照「誰もいない」
照「……」
壁壁 ↓
壁 照←
壁壁 ササッ
壁壁
壁照=3 ギュム
壁壁
照「……」
照「いい……」
菫「ん、誰もいないか」
菫「よっこらせと」
?「………………すみれー……」
菫「ひいっ!? おばけぇ!?」
?「こっち……」
菫「て、照の声? おどかすな……って」
照「助けて」ハサマッテル
菫「……」
照「……」
菫「は?」
照「助けて」
照「……」
菫「また?」
照「はい」
菫「はいじゃないが」
照「うん」
菫「そんなに好きなの?」
照「うん」
菫「挟まるのが?」
照「菫もやる?」
菫「やらん!!」
照「いいのに」
照「はい」
菫「お前何度目だよ、何でそこ入るんだよ、出られないの分かってて何で挟まるんだよ」
照「ごめん」
菫「はあ……全く、私が来たから良かったものの」
照「ところで話は変わるけど」
菫「話変えちゃっていいのその状態で!?」
照「『よっこらせ』はオバサンくさいと思う」
菫「……」
照「……」
菫「写メ」パシャパシャ
照「ごめんなさい消して」
照「お願い」
菫「ぬっ!」グイ
照「……」
菫「ぬぬぬ」グイグイ
照「……」
菫「抜けないな」
照「痛かっただけ」
菫「……」
照「すいません」
菫「前はどうやって抜いたんだったか……」
照「確か」
照「スポッ」
照「ってやった」
菫「お前はときどき物凄くヘタクソな説明をするな」
照「ギュルギュルの風圧でスポッっていけた」
菫「じゃあそれ試してみたらどうだ」
照「それは無理」
菫「何で」
壁壁
壁↓ ※矢印は照の向き
壁壁
照「こんな感じに挟まってたから、右腕ギュルギュルで抜けられた」
菫「ふむ」
照「今回は」
壁壁
壁↑
壁壁
照「こうなってるから、右腕ギュルギュルしたらもっと挟まる」
菫「確かに」
照「分かりやすかった?」
菫「まあ……うん……」
照「よかった」
照「……」
菫「自力じゃどうしても無理か?」
照「ガッチリホールドされてる。パーフェクト」
菫「何で挟まるんだよホントに……」
照「こんなに素晴らしい隙間はそうそうない」
菫「じゃあ一生挟まってようか」
照「それは困る。具体例を挙げるとお風呂が気持ち良くても一生お風呂に浸かってたらホヤホヤになっちゃうのと同じ」
菫「はあ……分かったよ……」
照「ありがとう」
照「ぜんぶ」
菫「真面目に答えろ」
照「真面目」
菫「もういい私が確かめる。この辺か?」サワッ
照「……」
菫「それともこっちか」サワサワ
照「……ンッ」
菫「ならばここか」サワサワサワ
照「…ア…ン……」ハァハァ
菫「……照」
照「なに」ハァハァ
菫「くすぐったいならくすぐったいって言いなさい、悪いことしてるみたいだから」
照「分かった」
照「んっ……ぅ……」
10分後
菫「……分かったぞ、照」
照「な、なに、が……」ハァハァ
菫「これは無理だ」
照「えっ」
菫「他の人に助けてもらおう」
照「や……やだ」
菫「やだってお前なぁ」
菫「照……」
照「知られたら『照が挟まっ照w』とか言われていじめられる」
菫「いや、それはないと思うぞ……」
照「くすぐったいのも、菫の手だから我慢できる」
菫「……」
照「こんな姿……他のみんなに見せたくない」
菫「……全く、しょうがないな」
照「菫……」
菫「誰か来る前に何とかするぞ」
照「うん」
小学生からお年寄りまで多くの人に親しまれている物理法則
少ない力でポッキーを折るなど実生活でも様々な場面で活躍している
照「釘を抜くのもてこの原理」
菫「なるほど。で、そのてこの原理でどうやって抜け出すんだ?」
照「……」
菫「考えてから発言しような」
照「はい」
動いている物体に掛かる摩擦力で、一般に静止摩擦力より小さい
静止しているニートよりも運動しているリア充の方が周囲との摩擦は少ないのである
菫「つまり、動いている状態を保てば抜けられる可能性はある」
照「動き続ける……」
菫「こっち側に力入れながら、こう、ブルブル細かく震えるとか」
照「ブルブル?」
菫「そう」
照「ブルブル……」
照「ブルブル……ブルブル……ブ、ブル、ブル」
照「ブルブルブルブr」
菫「照ストップだそれ以上はなんかやばい気がする!!」
なにが逆転の発想だ
コロンブスの卵って、とどのつまり力尽くだろ!?
菫「ふんぬッ!」グググ
照「ううう」
菫「ぬぬぬ」
照「ううう」
菫「ハァハァ……駄目か」
照「ダメ」
菫「くっ……今度は腰から引っ張るぞ! 照、お腹引っ込めろ!」
照「」ペコッ
照「大丈夫?」
菫「何とかいけそ……」
あっわい
あっわい
照「!」
菫「これは……淡の足音だ!」
照「あ、淡に見つかっちゃう」
菫「早く抜け出さないと! 照、お前も踏ん張れ!」グググ
照「んあっ……! す、すみ、れっ……!」
淡「いまさいこーのーきーせきに……ん?」
ハヤクシロ テル! アワイガ……
ダメッ スミレッ ン、ァ……
淡「……」
淡「のりこめーーーーー!!」ガチャ
菫「どわあ!」
照「わー」
ドンガラガッシャーン
淡「!?」
菫「いてて……」
照「抜けた」
淡「!! て、テルとスミレが……!!」
菫「え?」
淡「ハァハァいいながら乱れた制服でタイメンザイしてる!!」
菫「ちょっ」
照「リンシャンパイ?」
淡「タイメンザイだよね!? これタイメンザイだよね!? 二人でタイメンザイして何してたの!?」
淡「勢いでタイメンザイしてたの!?」
菫「だああ、対面座位はもう分かったから!」
照「……菫、ありがと」
菫「これに懲りたらもう二度と挟まるなよ」
照「うん」
淡「なになにー? 教えてよー!」
後日
菫「……で」
照「……」
菫「何をしているんだ、照?」
照「雀卓の下も、結構いい」
菫「自分の家でやれえええええ!!」
カン!
↓
狭いとことか好きそう
↓
隙間に挟まってそう
↓
いまここ
でした
乙乙
Entry ⇒ 2012.10.28 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
怜「演技の練習……?」
怜「昨日の様子見た感じで言わせてもらうと、出来れば辞退したいんやけども……」
久「クラスのためだから」ニコ
菫「昨日は私と竹井だったから……今日は照と園城寺か」
照「あの、私は照明がしたいって何度も……」
怜「どうせそんなこと言うても聞いてくれんやろ。諦めた方がいいで」
久「ふふ、聞き分けが良い人って好きよ♪」
菫「まあ、園城寺には役者でもやらせないとサボりそうだし」
怜「うっ」
菫「照の照明なんて不安すぎるからな」
照「そんなぁ……」
怜(めんどいなぁ……)
照「演技なんて出来ないのに……」
菫「だから練習するんだろ」アキレ
久「委員長命令ってことで、二人とも頑張りましょう」アハハ
久「今回は園城寺さんから行ってみましょうか」
怜「はいよー」
久「宮永さんは長くなりそうな気がするからね」
菫「練習相手はどうするんだ? 私たちの誰かか?」
久「それでもいいけど……昨日みたいに通りがかった人でもいいかもね」
練習相手>>10
菫「人を待つにしてもなかなか人が来ないし、そもそもやってくれるかどうか分からないだろ」
怜「照か久あたりでええんとちゃうん? それか演劇部の誰か引っ張って来るとか」
久「うーん、そうねぇ……宮永さんか演劇部の誰かでもいいんだけど……」
照「……誰か来る」
「「えっ?」」
久「あ、そこのあなた!!」
竜華「は、はい!?」
久「素敵だわ! あなたみたいな綺麗な人が演劇を……って」
怜「竜華……」
竜華「ど、どないしたん竹井さん……? それに、怜……」
久「文化祭に向けて演劇の練習をちょっとね」
照「ちなみに清水谷さんは何の用でここに?」
竜華「ウチはゴミ捨ての帰りやで」
怜「どんだけ人気あるねん、このゴミ捨てルート……」
菫「私もよく使っているぞ? 三年棟からなら一番近いからな」
久「清水谷さん、そういえばあなたのとこのクラスも確か演劇だったわよね?」
竜華「よう知ってんなぁ竹井さん。って言ってもまだ内容も何も決まってないんやけども」アハハ
久「そうは言っても大体みんな何やるかくらいは考えてるんでしょ?」
久「清水谷さんは何するの?」
竜華「ウチは役者したいかなぁ。どうせ演劇やるんやったら、小道具とかよりかは面白そうやし」
久「ほうほう……」ニヤリ
竜華「演技の練習?」キラーン
怜(アカン、竜華興味津々や……)
久「実はねー……」
―――――――――――
竜華「なるほど……面白そう!」
久「でしょ?」フフン
菫(ここまで乗り気な人間も初めてだな……)
久「ってことだから園城寺さんの練習に付き合ってもらえない?」
久「二人とも幼馴染みで仲も良いし、互いに良い練習になると思うんだけど」
竜華「うん、別にええよー。断る理由がないわ」ニッコリ
照(断る理由がない!?)
怜(まあ、照とかとは別の人種……でもないか)
竜華「1年生の時はほぼ病院で、2年生の時はやさぐれてて……学校の行事なんか参加する素振りすら見せてなかったから……」ウルウル
怜「な、なんでそこで竜華が泣きそうになってんねん……」
竜華「ウチめっちゃ心配やったんやで?」
竜華「暇があれば年中保健室行って、クラスではウチくらいとしかロクに話さんくて……」
照「怜っと不良だったんだね……」
怜「不良言うな。ってか昔の話すんのやめてくれへんかな……?」
怜「そない嫌な思い出ってわけでもないけども、掘り返されるのはちょっと……」
竜華「三年なってウチとクラス離れて、だんだん学校に馴染んで来てた怜がまたやさぐれてまうと思うと、夜も眠れんかったから……」
怜「りゅ、竜華。ホンマに恥ずかしいからやめて……」
久「園城寺さんの保護者なのは相変わらずね」アハハ
菫「こんなにも思ってくれてる人がいるのに、どうしてお前は……」
竜華「どういうこと弘世さん? もしかして、怜がまた迷惑を……」
菫「掃除はサボるしゴミ捨ていかないし、授業中はたまに消えるし体育に関してはまったく参加する素振りがないし……」
竜華「怜……?」ゴゴゴ
怜「ホンマにやめて委員長……」
照「あと、この前女たらし序列2位になった」
竜華「女たらし? それはどういう……」
怜「ひ、久。そろそろ始めよや。みんなも本来の目的思い出して」
菫「くく、まるで三者面談だな……」
照「怜は相変わらず清水谷さんには弱いんだね」
久「そんじゃまあ、園城寺さんの要望通り始めましょうか」
久「時間も勿体ないしね」アハハ
竜華「……怜。あとで話訊かせてや」
怜「うぅ……」
―――――――――――
怜『ただいまー』
竜華『……』
怜『いやぁ、今日も疲れたわ……竜華、今日のご飯なにー』
竜華『……』
怜『竜華……?』
竜華『……』
怜『どないしたん竜華? 無視せんといてや。もしかして体調悪かったり』
竜華『……怜。これなに』
怜『えっ?』
竜華『この髪の毛、ウチのちゃうよな……?』
竜華『怜の髪の毛でもないよな……? だってこんな赤い髪の毛、あり得へんもん……』
怜『りゅ、竜華。待って。落ち着いてや。それは友達をここに呼んだときのヤツで……』
竜華『ウチに内緒で誰かここに呼んだってこと……?』
竜華『ここ数ヶ月でそんなこと知らされてないんやけど……』
怜『ご、ごめんな。竜華がおらんかったときに、この家で遊ぼうってことになって、たぶんそんときに……』
竜華『誰か呼ぶ時は互いにちゃんと知らせような、ってゆったやん……』
竜華『この前も早く帰って来るって行ったのに結局帰ってこんくて、また朝帰りやったし……』
竜華『なんで約束守ってくれへんの……? 付き合う前はしっかり守るって言ったてのに……』
怜『それに朝帰りは大学での付き合いとかで友達の家に泊まる事も多いから、しょうがないねん……この前も言ったやろ?』
竜華『そやけど……』
怜『心配させてホンマにごめん。でも、竜華が思ってるようなことは絶対にないから』
怜『ウチを信じてや。疑われるんは……ちょっと辛いわ』
竜華『と、怜……』
怜『ウチが好きなんは竜華だけやのに、信頼されてないなんて……』
竜華『そ、それは怜が最近怪しいことばっかしてるから……!』
怜『付き合いで友達の家泊まったり、知り合いをここに呼ぶことが怪しいことなん……?』
竜華『そ、それは……』
怜『ちょっと疑心暗鬼すぎると思うで……?』
竜華『そんなことないよ……だって怜、帰って来たらすぐお風呂入ったり、ウチと一緒におるのに携帯で誰かとメールしてたり……』
怜『……』
竜華『そういうことが日常的にあるんやから、ウチやなくても疑うよ……』
竜華『その友達のこと教えてって言っても、言葉濁すだけで教えてくれへんし……』
怜『竜華……』
竜華『ウチやって辛いよ……怜が浮気してるなんて考えただけで耐えられへんもん……』
竜華『大学で他の女の子と一緒におるの見るだけでも辛いのに、そんなん……』
竜華『と、怜……?』
怜『最近あんまし一緒にいてなかったもんな……ごめんな、寂しい思いさせて』
竜華(え、演技でも怜に抱きしめられてるって……なんかドキドキする……)
怜『これからは竜華のために早く帰ってくるし、一緒におる時間もいっぱい増やすようにするから……』
竜華『怜……』
怜『ウチが好きなんは竜華だけやで』
竜華『う、ウチも……ウチも怜のこと好き……世界で一番好き……』
菫(なんだこの脚本)
久「ふふ、ここからが面白くなるところよー」
菫「お前が一筋縄でいくような台本を用意するなんて思ってはいないが……」
怜『そうや竜華、久しぶりに膝枕してや。ちょっとしんどい話して疲れてもうた……』
竜華『あっ……大丈夫? ごめんな、ウチのせいで……はい、頭貸して』
怜『ありがとー……やっぱり竜華の膝枕は気持ちええな……』
竜華『またそんなこと言って……でも、こうするのホンマに久しぶりやね……』
怜『最近は大学でも家でも一緒におる時間少なかったからな……』
竜華『でも、これからは高校の時みたいにこうやって過ごせるんやんな?』
怜『うん。みんなには悪いけど、竜華の方が大事やから……』
竜華『ふふふ、もう、そんなこと言って……』
竜華『別に寝てくれていいでー。ウチもこうやって怜の頭撫でるの好きやし』ナデナデ
怜『そんじゃお言葉に甘えさせてもらうわ……良い時間になったら教えて……』
竜華『はいはい。おやすみ』
怜『……』
竜華『……』
竜華『……怜? 寝てもうた?』
怜『すぅ……すぅ……』
竜華『ふふ、ホンマ、怜は可愛いなぁ……』
竜華『ウチのこと大好きって言ってくれたし、高校から付き合ってるんやし……浮気なんてあり得へんよな』
竜華『……あっ、怜の携帯……』
竜華『と、怜? 起きてる?』
怜『すぅ……むにゃむにゃ……』
竜華『ね、寝てる、よな……』
竜華『……う、ウチら恋人同士や……携帯見るくらい、ええよな……?』
照「し、清水谷さん……」
久「宮永さん、これ演技だからそんなにも緊迫しないで」アハハ
菫(リアリティがありすぎるんだよ……)
怜『うーん……りゅうか……』
竜華『……ご、ごめん怜、ちょっとだけやから……』
竜華『……』スッ
竜華『いっぱいあるけど誰が誰か分からへん……』
竜華『着信履歴は……』
竜華『ウチ、○○さん、ウチ、ウチ、××さん、ウチ……』
竜華『ん……? この宮永照って……誰やろ……?』
照「!?」
久「くくく……」
菫「竹井……」
竜華『なんで、怜からこんなにもいっぱい電話かけてるんやろ……?』
竜華『ウチ、こんなにもいっぱい怜に電話かけられたことなんて……』
竜華『そ、そうや……メールボックス見れば……』ピッピッピ
竜華『!』
竜華『ロック、かかってる……』
怜『んぅ……すぅ、すぅ……』
竜華『怜……どういうこと……? 宮永照って……誰……?』
照「こ、怖い……」ブルブル
菫「演技上手いな……本当にそれっぽく見えるぞ
久「感情移入しちゃってるのかもね」アハハ
菫「?」
ブーブーブー
竜華「きゃあ!?」
竜華(こ、こんなところまで台本通りにするんや……)
竜華『ちゃ、着信……しかもこれって……』
怜『ん、んぅ……竜華……?』
竜華『!』
怜『ウチの携帯鳴ってない……?』
竜華『だ、誰かから着信きてるで? はい』
怜『ありがとう……誰やろ……』
怜『……』
怜『ごめん、ちょっと』スッ
竜華『えっ? あ、うん……』
怜『どないしたん? ……うん……いや、大丈夫やけど……うん……』バタン
竜華『……さっきの着信、宮永照ってなってた……』
竜華『怜……?』
照「な、なんで私の名前なの?」
久「いや、リアリティ出るかなって……ふふっ」
菫「照……お前、まさかとは思うが……」
照「ふ、二人とも何言ってるの……? な、なんか清水谷さんこっち見てる……」
久「くくく……」
竜華『怜、なんの話してるんやろ……電話、ちょっと長いし……』
竜華『……盗み聞きしてみよ』スッ
怜『……うん、え? そんなことないよ……』フフッ
竜華『怜、あんなにも楽しそうに……』
怜『うん……ふふ、なんやそれ……急にどうしたん? なんか変やで』
竜華『……』
怜『もう……いつも言っとるやん……好きやで、照』
竜華『!!』
怜『今、彼女と一緒におるから……うん、ごめんな。えっ? もう一回? ふふ、今日はホンマにどないしたん……?』
竜華『と、き……』
竜華『……』
怜『うん……分かってる……もう、だから今彼女と一緒に……』
竜華『怜……?』
怜『!!』
竜華『どういうことなん……?』
怜『りゅ、りゅうか……!?』
竜華『さっきのなに……? ホンマに好きなんは照だけって……』
怜『ち、違うんや竜華……こ、これは……』
竜華『照って誰……?』ギロ
怜『ひっ』
怜(え、演技迫真すぎるんやけど……)
久「すごく良いわね、ぞくぞくするわ……玄さんもそうだけど、ここまでの逸材が……」
菫「相手が園城寺だからあそこまでなってるんだと思うぞ……止めなくて大丈夫なのか……?」
怜(ってここからアドリブ!?)
怜「て、照は、その、竜華が知らんウチの友達で……」
竜華「トモダチ……? ってことは、あの赤い髪……」
怜「あっ」
竜華「そっか……そいつがここに来たんやな……」
怜「お、落ち着いて竜華……違うんや、これは、誤解で……」
竜華「何が誤解なん……怜、さっきハッキリと言ってたよな……そいつに好きやって」ユラユラ
怜「りゅ、竜華ぁ……」
怜(ホンマに怖い)
怜「えっ……?」
竜華「ウチと怜の大切な場所で……何したん……?」
怜「べ、別に何もして……」
竜華「嘘つかんとって!!」
怜「ひっ」
竜華「寝たんやろ……?」
怜「……」ガクガクガク
竜華「えっちなことしたんやろ……!? そいつと二人で……ウチらのベッドで……!!」ギリリ
怜「りゅ、竜華……これ、演技のれんしゅ……」
竜華「……怜が汚れてもうた」
怜「は……?」
竜華「ウチが、綺麗にせな……汚された怜のこと、綺麗に……」
怜「ひゃっ……!?」
竜華「怜……怜……」サワサワ
怜「や、やめてや竜華! これ、演技っ……」
竜華「綺麗にせな……体も、唇も……全部……」チュッ
怜「きゃあ!? 」
怜(竜華、今、本気でキスしようと……!?)
竜華「なんで避けるん……? いつもしてることやのに……やっぱりその女に……」
怜(め、目にハイライトが……)
怜「だ、誰でもいいから助けて!! 今の竜華ホンマにやばい!!」
久「よし、行って来なさい宮永さん!」
照「えええぇ!?」
菫「園城寺を救えるのはお前だけだ」ボウヨミ
照「菫までなんでそんなこと!?」
久「だいじょーぶだって。所詮お遊びの演技なんだから。ほら、これも練習だと思って!」ドンッ
照「きゃあ!?」
照「と、怜……」
怜「きゃっ……ちょ、竜華どこ触って……!」
竜華「怜……好き……怜……」サワサワ
怜「あっ……た、助けて照!!」
竜華「照……?」
照「ひぃ!?」
竜華「アンタが、怜を唆した女か……」
久「宮永さん! 盛り上がってるんだから空気読んで!」
照「ええぇ!? え、えっと……と、怜を離して!」
照「ひぃぃ……!」ガクガク
怜「て、照! 頑張って! あの畜生二人助ける気なしや!」
菫「お前に言われたく無い」
久「今最高に面白いからね♪」
竜華「なんなん……? 怜はウチの恋人なんやで……? 付き合ってるんやで……?」
竜華「それをぽっと出のアンタが何をする気なん……?」
照「わ、悪いのは全部私! 怜は何も悪く無い! だから離してあげて!」
怜「照……」
竜華「悪いと思ってるんやったら今すぐウチらの前から消えろ……!」
照「」
怜(アカン)
菫(清水谷が演技なのかネジが飛んだのかが分からない……)
照「そ、そういうわけにはいかない! 私がいなくなったら清水谷さんは怜に酷いことする!」
竜華「酷いこと……? ウチらが愛を確かめ合うのが酷いことや言うん……?」
照「む、無理やりはよくない」
竜華「ウチと怜は恋人なんやで……? 恋人同士がこういうことして何が悪いん……?」
照「と、怜は嫌がってる! 私としたときはそんなんじゃなかった!」
竜華「は……?」
怜「ノリに任せて適当なこと言うな!」
竜華「やっぱり、二人で寝たんやないか……ウチの怜に……ウチの怜にそんなこと……!!」
照「あわわわ……」
照「ひぃぃぃ!?」
怜「や、やめて竜華! これは演技であって、フィクションで……」
竜華「なんで怜……? なんでその女庇うん……?」
怜「庇ってないから!? ただ目覚ませと言ってるだけで……」
竜華「ウチよりその女が大事なん……? ウチら、中学の時からずっと一緒やったのに、なんで……!!」
照「と、怜は愛が重い清水谷さんのこと面倒臭いって言ってた!」
怜「おいコラ!!」
竜華「面倒臭い……? う、嘘やんな怜……? そんな、そんなこと……」
久「くくく……清水谷さんも宮永さんも最高……」
菫(アイツは本当に……)
照「わ、私は怜に清水谷さんみたいな人がいるなんて聞いていなかった!」
照「怜に言われるがまま誘われるがまま、その、そういうことしちゃって……」
怜「照……頼むから黙って……」
照「怜、私と会うたびに清水谷さんの悪口ばっか言って……ご飯がまずいとか早く別れたいとか……」
菫(こいつが一番酷いな……)
竜華「嘘や、そんなん、嘘や……お前の言うことなんか、そんなん……!!」
照「とりあえず私は謝ります! 本当にごめんなさい! だから、あとは怜とゆっくりしていって……」
怜「お前なにしにきたねん!!」
竜華「怜……嘘やんな……? ウチのこと重いとか、別れたいとか……」
竜華「好きって言ってくれたやん……竜華だけやって……言ってくれたやん……!」
怜「お、落ち着いて竜華……これはフィクションで、ウチはそもそも竜華と付き合ってないし……」
竜華「付き合って、ない……?」
竜華「ウチと怜が、付き合ってない……」
竜華「全部ウチの勘違いで、怜が好きって言ってくれたんも一緒に住もう言ってくれたんも全部嘘で……」
怜「いや、ウチそんなこと一言も言ってないんやけど……」
竜華「……怜」
竜華「一緒に死のう?」ニッコリ
怜「ひぃぃぃ!?」
久「清水谷さん! パス!」ポイッ
カランカラーン
竜華「……そうやん……怜がウチのこと好きやないんやったら……全部嘘なんやったら……」スッ
竜華「死ぬしかないやん」ギラリ
怜「」
久「小道具に決まってるでしょ。本物なんてこんな場所にある訳ないじゃない」アハハ
照「本当に怖かった……」グスン
菫(こいつもちゃっかり帰って来て……)
怜「りゅ、竜華……ホンマに、目覚まして……」ガクガクガク
竜華「怜……これで一生一緒におれるな……」ユラユラ
竜華「二人一緒に……幸せに……」
怜「いやや……やめて……竜華、お願いやから……」ナミダメ
竜華「大好きやで怜。ウチもすぐに行くから」ドスッ
怜「りゅう、か……」
怜「……」バタッ
菫「んなわけないだろ」
久「いやー、迫真の演技だったわ。これにて終了ね」
竜華「……ふふ、くふふ……」
怜「……え。りゅ、竜華? ってウチ、別になんとも……」
竜華「怜、演技やのにあんな本気で怖がって……くふふ……めっちゃおもろいお腹いたい……!」
怜「……」ポカーン
竜華「はいこれウチの台本。ここ読んで」
怜「浮気をした恋人を刺して終了って……」
竜華「ウチの演技そんなに上手かった?」
竜華「本気で狼狽える宮永さんと怜が面白くて、途中で何回か笑ってたしまいそうになってたんやけど」クスクス
怜「はぁ……」
竜華「ふふ、おおきに♪」
久「いや、改めて。素晴らしい演技だったわ清水谷さん。演劇部入らない?」
菫「竹井と遜色ないレベルだったな……私も演技なのか本気でおかしくなったのか分からなかったよ」
竜華「もう、そんな褒めても何も出えへんで?」ニコニコ
照「あ、あれが、演技……」
竜華「でも、怜のことやから感情移入出来ただけやと思うで?」
怜「それはそれで怖いんやけども……」
菫「電話で浮気相手と話すシーンは、本当に誰かと話しているようだったしな」
竜華「良かったやん怜。二人とも褒めてくれてるで?」
怜「喜ぶ体力も残ってないわ……」
久「さて。練習付き合ってくれてありがとうね、清水谷さん」
竜華「いえいえ。ウチもめっちゃ楽しかったし、こっちがお礼言う方やで」
照「清水谷さんのクラスの劇、すごく楽しみです」キラキラ
菫「こんな天才がいるんだ。私たちもしっかり練習しないとな」
竜華「もう、ホンマお上手なんやからー」ニコニコ
怜「はぁ……ウチはちょっと休ませてもらうわ……」
竜華「膝枕する?」
怜「……お願い」
怜「」
―――――――――――
久「さて、ラスト宮永さんね」
照「わ、私はさっき練習参加したし、もう今日はこれくらいで……」
菫「いいわけないだろ」
照「あうぅぅ……」
怜「みーんな辛い思いしてるんやから、照もやってもらうに決まっとるわ」
竜華(さっきの宮永さんのアレ根に持っとるんかな……)アハハ
久「さーてお相手は……ふふ、誰になるやら。楽しみだわー」ワクワク
>>149
―――――――――――
菫「まあ、分かってはいたが……」
怜「誰もけえへんな」
照「こんなにも時間が経ったのに誰も来ない。これはもう今日は終わろうって神様が……」
菫「んなわけあるか。それに時間が経ったとは言ってもまだ10分くらいしか経ってないぞ」
久「でもこのまま待ちぼうけってのもアレだし……来ないならこっちから呼びましょう」キュピーン
照「よ、呼ぶって……」
竜華「どういうことなん竹井さん?」
久「まあ見てて♪ ……あ、もしもし? 今大丈夫? えっとね……」
菫(一体誰に電話を……)
怜(うーん。なんか嫌な予感が……)
久「これでよし」
竜華「誰に電話してたん?」
久「優しい後輩♪」
菫(一声かけただけですぐに人を動かせるなんて……本当に恐ろしい……)
照「だ、誰が来るの?」
久「私たちみんなが知ってる人」フフン
竜華「ウチらが知ってる人……同級生の誰か?」
久「ふふ、違うわ」
菫「3年以外で私たち全員が知ってる人なんて、教師くらいしか……」
怜(教師? ま、まさか……)
憩「大怪我した人はどこにおるの!?」ガラッ
久「きたー」
菫「荒川先生……」
憩「へ? 宮永さんに弘世さん……それに……」
久「うふふ……」
怜(よりによって……)
竜華「はは、どうも……」
憩(こ、この面子はなに……? 見事なまでに問題児だらけなんやけど……)
久「こんばんは、荒川先生。演劇しましょう」
憩「……な、なに言うとるの竹井さん?」
憩「ウチは大怪我したって人がおるって聞いたからここまで飛んで来たんやけども……」
照「本当に早かった。久が電話し終えて30秒後くらいにきた」
竜華「保健室の先生の鏡やね」アハハ
菫「先生、本当にすみません……実は……」
―――――――――――
憩「帰らせてもらいます」ツーン
菫(そりゃそうだ)
久「ま、待ってください先生」
久「確かに嘘をついたのは謝りますが、これにはさっき説明したとおり事情があって……」
憩「クラス演技の練習に付き合わすために養護教師呼び出すなんて言語道断です。ほとんどイタズラやないの」ジトー
久「あはは……」
憩「本当やったらちょっと説教するところやで?」
菫「まあ、確かに非常識的だな」アキレ
怜「そうやな。荒川先生も忙しいはずやし、ここは帰ってもらお。あかんあかん」
照「先生にやらせるなんてダメ」
久「みんながそんな常識的な反応するなんて……」
憩「し、清水谷さん……?」
久「そうよね清水谷さん! 学校一の人気教師荒川先生が演技するところなんて、このチャンスを逃せば一生見れないものね!」
菫「そう言われれば確かに……」
照「気になる……!」
怜「な、何言うてんのみんな。保健室の先生ってこう見えて忙しいんやで?」
怜「こんなくだらんことに付き合わせたらアカンに決まってるやろ」
照「不良の怜がまともなこと言ってる……」
菫「明日は槍でも降るのか……?」
憩「ウチも驚きやわ……」
怜「どういうキャラやねんウチは……」
憩「確かに……将来保健室で働きたいとか言い出すほどウチのとこに入り浸ってた頃のこと考えるとだいぶマシにはなったけども……」
照「怜……」
怜「おのれらぁ……!」
久「園城寺さんの素行不良の話題は置いといて」アハハ
久「お願い出来ませんか荒川先生? これも生徒のためだと思って」
憩「せ、生徒のためとかずるいこと言われても出来んものは出来ません」
竜華「先生忙しいんですか?」
憩「いや、忙しいってわけではないけども……」
照「暇じゃないと30秒でここまで来れませんよね」
憩「いつもは宮永さんらのおかげで忙しいんですけどねー。今日は大人しいから暇ですわー」ジトー
久「あはは……」
久「まあ、交渉してる感じだとねー……」
菫「ここはもう諦める方が早いと思うんだが……」
久「うーん……穏便に済ませたかったんだけど、しょうがないか……」
菫「た、竹井……?」
久「荒川先生、ちょっちナイショの話が」チョイチョイ
憩(内緒の話て……)ハァ
憩「……なんですか、竹井さん」
久「荒川先生って……園城寺さんとすごく仲良いですよね」ボソッ
憩「!?」
久「ただならぬ関係だという情報をつかんでいるんですが……」ニヤ
憩(こ、この子はホンマに……!)
久「本当にそれだけですか? 聞くところによると、およそ教師と生徒がするようなこととは思えないことをしているらしいですが……」
久「ここにこんな写真が……」ピラ
憩「!!」
竜華「二人とも、さっきから何の話してはるの……?」
菫(まさか竹井のヤツ……)
憩「な、なんでもあらへんよ? すぐに終わるから」アハハ
憩「……その写真渡しなさい」ギロ
久「もちろん等価交換、ですよね?」ニコ
憩「はぁ……ホンマ、あんたには一回痛い目遭わせなあかんらしいな……」
久「もう、そんなこと言って。痛い目なら常に遭ってますよ♪」
久「ふふ、ありがとうございます……みんな、荒川先生やってくれるって!」
照「えっ?」
竜華「すごいすごい!」
菫「本当ですか……」
怜(憩……ネタは分からんけど脅されたか……)
憩「で、演技の練習って言っても具体的になにしたらええの」ハァ
久「簡単に説明すると、宮永さんと一緒に寸劇をしてもらいます」
憩「宮永さんと?」
照「よろしくお願いします」キリッ
怜(なんでやる気になってんねん……)
久「途中から台詞がなくなるんで、そっからはアドリブで」
憩「エチュードみたいな練習しとるんやね……」
久「流石先生、博識ですね」
憩「まあウチもテレビで軽く見たくらいやけど……」
竜華「ウチ、先生の演技とかめっちゃ楽しみわ!」
菫「確かに興味深いな……」
久「私は宮永さんがこの脚本でどんな演技するのかが気になるわ」
憩「当事者置いてけぼりでえらい盛り上がって……」
照「緊張するけど……頑張る」
菫(照が意外と演技上手そうだな……)
怜「憩が演技なぁ……」ボソッ
憩「ちょ、ちょっと!」
久「ふふ、それじゃあ、早速スタートで」
――――――――――――
コンコンコン
照『どうぞ』
憩『失礼します、宮永先生』
照『……荒川さん』
憩『まだ働いてはるんですか? もう勤務時間も過ぎてるんですから、お帰りになった方が……』
照『……まだ書類仕事が残ってるから。それを終わらせたら、帰ろうと思う』
憩『終わらせてからって……昨日もそんなこと言って結局病院に泊まってましたやん……』
憩『あんまり無理せんとってください。宮永先生が倒れたりしたら、患者さんにしわ寄せが来るんですから』
照『……私は倒れたりしない』
憩『5日も家に帰ってないんですよ……? 顔色も悪いし……ホンマに無理せんとってください』
憩『3時間って……』
照『それに、夜は急患が多い。人が足りなくて夜勤の人たちだけじゃ手が回らなくなってるときもよくある』
照『緊急のときに対応出来る人間がいないと……人命に関わることだってある』
照『そんな命を救うためにも、私がこうやって待機しておかないと……』
憩『それは確かに、そうですけど……』
照『それに、叩き起こされるよりかは起きている方がマシ。だから心配しないで』
憩『宮永先生……』
照『ナースをこんな遅くまで働かせるわけにはいかない。早く帰って休んで』
照『荒川さんは今日は休みのはず。ここにいることはまずおかしい』
憩『宮永先生がこんなにも遅くまで働いてるのに、ウチが休める訳わけありません……!』
照『……私と荒川さんじゃ立場が違う。これは上の人間の務め』
憩『そんなこと……』
照『帰ってください。上司命令です』
憩『……!』
照『お願いします。荒川さん』
憩「ウチは……先生のお力にはなれないんですか……?』
照『……あなたが辛そうにしている姿は、見たくないです』
照『自分では気付いていないかもしれませんが、荒川さんも相当に顔色が悪いです』
照『まだまだ経験の浅いあなたには……夜勤の仕事は負担が大きすぎる』
照『私としては、あなたに倒れられる方がよっぽど困ります』
憩『先生……』
照『だから、無理をしないでください』
照『休める日にはしっかり休んで、遊ぶときにはたくさん遊んで息を抜いて……』
照『そして、働くときには一生懸命働いてください』
照『患者さんのためにも……私のためにも』
憩『……』ウルウル
憩『駄々をこねて、勝手な事をして……申し訳ないです』
憩『ただ……ここに、宮永先生と一緒におるだけでもダメですか……?』
憩『……!』
照『本当なら、今すぐにでも帰って欲しいですけど……』
照『……言う事、聞いてくれそうにないから』ハァ
憩『宮永先生……ありがとうございます……』
照『こんなところで寝ても、疲れなんて取れないのに……あなたも物好きですね』
憩『……宮永先生が、好きなんです』ボソッ
照『えっ?』
憩『な、なんでもありません! それじゃあ、何か用があったら声かけてください!』
照「了解です。それじゃあ、ゆっくり休んで』フフ
憩『は、はい……おやすみなさい……』
照『おやすみなさい』ニコッ
憩『宮永先生のベッド……ふふ……』
久「緊急病棟で働く外科医とナースよ」フフン
菫「照に白衣まで着せて……」
菫(似合ってるのがまたなんとも……)
竜華「荒川先生も本物のナースみたいやし、話に引き込まれるわ……」
照『荒川さん……荒川さん……』ユサユサ
憩『んぅ……ふぁ……?』
照『起きてください。そろそろ勤務時間ですよ』
憩『ふぇっ……う、うそ、もうそんな時間……!?』
照『はい。あっという間に朝です』
憩『ってことは……宮永先生は……!』
照『まあ、一日くらい寝ないってのは、よくあることですから』
憩『そ、そんな……ウチのせいで……!』
照『深夜に来た急患の対応とかもしてましたし……今日は元から眠れない日した』
憩『宮永先生、ダメです……こんな生活繰り返してたら本当に……』
照『仕事ですから。生き甲斐でもあります』
照『この生活が命を縮めていたとしても……それで死ぬなら本望です』
憩『そんなっ……死ぬなんて、言わんとってください……』
照『お、大げさに言っただけですから。だから、その、そんな顔しないで……』
照『それに、今日の昼頃には仮眠も取れますから……』
照『ほら、呼ばれてますよ荒川さん。早く行ってください』
憩『宮永先生……』
照『命に関わる仕事です、気を引き締めて。それじゃあ』テクテクテク
憩『このままじゃ……いつかホンマに……』
久「フィクションなんだから、あんまりツッコミ入れ過ぎるのは無粋よ?」アハハ
竜華「そろそろ一波乱ありそうやね……!」
菫(清水谷もこういう点は照に似ているな……)
憩『失礼します……宮永先生、いますか?』
照『……』
憩『宮永先生?』
照『すぅ……すぅ……』
憩『寝てる……昼頃に仮眠取る言うてたけど、やっぱり……』
照『……』
憩『全然眠ってないんやろうな……死んだみたいに寝てる……』
憩『仕事には熱心で、院内での信頼も厚くて……患者さんからは好かれてて……』
憩『すごく、綺麗で……』
怜(な、なんやねんこの雰囲気……ま、まさか……)
竜華「……」ドキドキドキ
憩『宮永先生……』ギュ
憩『好きです……宮永先生……』ギュウゥ
照『ん……』
怜「……なんやねんこの脚本」イライラ
久「ふふ……」
竜華「うわぁ……職場恋愛や……甘酸っぱぁ……」
照『すぅ……ん、んぅ……』
憩『ずっと、このまま……』
憩(……宮永さん良い匂いするなぁ)スンスン
照(む、胸があたって……)ドキドキ
憩(っとアカンアカン。話進めな……)
憩『……宮永先生、起きてますか?』
照『すやすや……』
憩『寝てます、よね……』
憩『……』
照(な、なにされるんだろ……)
照(……? 間が長いような……)
憩『……宮永先生。き、キス、してもええですか……?』
照「っ……」
照(き、キス……)
憩『ウチ、ずるいですよね……寝てる宮永先生に、好き放題して……』
憩『でも、ごめんなさい……我慢、できないんです……』
憩『宮永先生……』スッ
照(目、閉じてるから分からないけど……け、気配が……!)
憩(……この子、黙ってたらめちゃくちゃ美人やよな……)
憩(カッコいい系というか、凛としているというか……)
憩(な、何考えとるんやウチは! 生徒に対してこんなっ……でも、本当はこの人年上で……)ドキキドキ
久「くくくっ……」
竜華「き、キス、してまうんかな……」
菫(荒川先生……?)
照「あ、あの……先生……」ボソッ
憩「ご、ごめん……話進めるな」
憩『……んっ』チュッ
照「……!」
照(ほ、ほっぺた……)
憩『う、ウチ、一体なにを……』
照『うぅん……荒川、さん……?』
憩『わわっ……』
憩『ま、まだまだ大丈夫です! お、起こしてしまってごめんなさい……』
照『そう、ですか……それならまだ眠れる……』
照『目覚ましが指定した時間より早く作動したような気分です……』アハハ
憩『ごめんなさい……宮永先生、疲れてはるのに……』
照『気にしないでください……ところで、何か用でも……?』
憩『……!』
憩『ほ、ホンマにごめんなさい! 失礼します!』タタッ
照『あっ……』
照『荒川さん……』
怜「延々とイチャついてるの見せられるってあんましいい気分やないんやけど……」
久「うーん、今で半分くらいかなー……アドリブ次第ではもっと長くなるかもだし」
竜華「荒川先生の片思いが実るんか気になるわ……!」
菫「しかし、照のヤツ普通に役をこなせてるな……」
怜「普段とあんまし変わらん感じやからやろ……てか医者はいつの間に敬語キャラなっとんねん……」
竜華(怜イラついとるなぁ)アハハ
照『まさかあなたの問診をすることになるとは……』
憩『すみません……お手間かけさせてもうて……』
照『別に大丈夫です。こういうことがまったくない、という訳でもないので』
照『足、見せてください』
憩『はい……』
憩『考え事してて、ぼーっとしてた時に……階段、踏み外して……』
照『しっかり者の荒川さんらしくないです……何か悩み事でも?』
憩『えっ……そ、それは……』
照『私には言えないこと?』
憩『っ……』
照『そうですか。……なら、言わなくていいです』
憩『……』
照『軽く固定しときますね。大事を取って、3日は松葉杖を使ってください。もちろん、仕事も休んで』
憩『宮永先生は……気にならないんですか?』
憩『……ウチの悩み事』
憩『……!』
照『でも、無理に聞き出そうとは思いません』
憩『……宮永先生。少しだけ、質問してもええですか?』
照『質問……なんでしょうか?』
憩『……恋人とか、いますか?』
照『……えっ?』
憩『それか、好きな人、とか……』
照『すみません……何の話でしょうか……?』
憩『……ウチの悩みごとに関係ある話です』
憩『それで……どうなんですか? おるんですか? そういう人……』
憩『!』
照『学生時代から勉強ばかり。医師になってからも恋愛をする暇なんて無くて……すみません』
憩『な、なんで宮永先生が謝るんですか!?』
照『その……私は恋愛相談を受けられるような人間じゃないから……』
憩『そ、そんなこと……』
照『そういう話なら、私なんかよりもっと適任な方がいると思いますよ……』アハハ
照『少なくとも、今まで恋愛経験のない私よりかは確実に……』
憩『こんなにも素敵な人やのに、恋愛経験ないなんて……』ボソッ
照『あ、荒川さん?』
憩『もっと、好きになってしまいました……』
照『……えっ?』
照『こ、こんな年にもなって、恥ずかしいですが……』
憩『ってことは、そういう経験も……』
照『さ、察して欲しいです……』
憩『すみません!』
憩『でも、嬉しいです……』ボソッ
照『あの、私の恋愛経験と荒川さんの悩み事になんの関係性が……?』
憩『……ま、また今度お話させていただきますね! ありがとうございました!』
照『あっ……』
照『一体なにを……?』
怜「医者なるってことは大学は確実に出とるから、22以上で……」イライライラ
久「お、園城寺さん。これフィクションだから落ち着いて」
竜華「でも、ホンマにあんなお医者さんおったら素敵やわ……」
菫「アイツに人命なんて間違っても任せられないがな……」
憩『み、宮永先生』
照『どうしました荒川さん? なにか御用ですか?』
憩『明日は、その……お休みですよね?』
照『そうですね……久しぶりに家でゆっくりしようと思います』
憩『もしよければ……今日の夜、一緒にお食事でもどないですか……?』
照『私と……?』
憩『ほ、他に予定があるんやったら大丈夫です! もしよろしければの話で……!』
憩『そ、そんなことありあません! 宮永先生ほど素敵な人なんて他には……あっ。う、ウチは何を……!』
照『ふふ、荒川さんは相変わらず面白い方ですね……』
憩『あぅぅ……』
照『それじゃあ、今日の夜、よろしくお願いします』
憩『は、はい!』
怜「……なんやねんこれ。少女漫画か」
怜「どうせこのあとどっちか酔っぱらって家送るついでにそこに泊まる事になってー、とかっていうべったべた展開やろ……」
竜華「と、怜落ち着いて……」アハハ
久「園城寺さんが暗黒面に堕ちかかってる……ふふっ……」
菫(とっくの昔にお前と一緒に堕ちてるだろ……)
憩『だ、大丈夫ですか宮永先生……?』
照『大丈夫じゃ、ないかもです……』
憩『ご、ごめんなさい……ウチ、宮永先生がこんなにもお酒弱いなんて知らんくて……』
照『言わなかった私が悪いんです……荒川さんは、関係ない……うぅ……』
憩『もうすぐ部屋ですから、頑張ってください……!』
照『はぃ……』
憩『にしても、すごい綺麗なマンション……』
憩『宮永先生、こんな場所で住んでるのにほとんど帰らずに……』
照『うぅ……』
憩『えっと、部屋何階ですか?』
照『3階です……301号室……』
憩『か、鍵もらっときますね』
照『はい……』
照『すぅ……すぅ……』
憩『ね、寝とるの……? この状態で……?』
憩『と、とりあえずベッドまで……電気どこ……?』
照『んぅ……すぅ……』
憩『……やっぱり、日頃の疲れが溜まってるんやろうな……』
憩『台所も洗い物溜まってて……ウチが支えてあげたいわ……』
怜「……チッ」
久「くくく……」
竜華(と、怜不機嫌すぎるわ……もしかして、ホンマに宮永さんのこと……)
菫(園城寺がここまで感情を出してる姿は初めて見るな……)
照『すぅ……すぅ……』
憩『寝かせますね……よっと』
照『ん……』
憩『ふぅ……これで一安心やな』
憩『あとは、帰るだけやけど……』
照『すぅ……すぅ……』
憩『ちょっとくらい、ご褒美もらってええよな……?』
憩(よりによってこの台詞のあとにアドリブ開始って……)
憩(……憧れの宮永先生と一つになって終了)
憩(ホンマにあの子はなんちゅう脚本を……)
久(さーて、どうなるやら)
憩「……宮永先生」ギュゥ
照「ゃっ……」
憩(そ、そんな声出さんとってや……)
憩「ウチ、頑張って家まで送ったんやから……添い寝くらいはいいですよね……」
照(これ、話の流れ的に寝たフリしか出来ない気が……)
憩「だ、大好きです……宮永先生……」ギュー
憩(ウチは一体生徒に何をして……)
久「なんて書いたかなぁ……確かナース役が憧れの先生と一つになって終了で」
怜「」
久「医者役がナースと既成事実を作って終了だったかな」
竜華「そそ、それってつまり……!」アワワ
菫「言い方が違うだけで同じ意味じゃないか……」
久「せっかく先生に参加してもらうんだから、一番難しいの渡したわ」ニコ
憩(てかここからどないしよ……)
憩(ほ、本当に一つになるわけにはいかんし……)
憩(でもこのままじゃ終わられへんし……)
照(既成事実ってなんだろう……)
照(一人で作れるもの? それとも二人で作るもの?)
照(わからない……ここは先生に任せよう……)
憩(一つになる……あかん、どう曲解してもキスくらいしか納得させられそうなんがない……)
憩(……演技なんやし、キスしたフリでええか)
憩「……宮永先生。起きてますか?」
照「!」
照(せ、先生が動いた……)
照「……すやすや」
憩「寝てます、よね……」
憩「寝てる先生にしか何も出来へん臆病なウチを、許してください……」
憩「……」スッ
照「!!」
照(け、気配が……たぶん、今、顔が近づいてきてるような……)
憩「……ん」
怜「っ……!!」
竜華「あわわっ……」
久(キスしてるフリだと思うけど……)
菫(ここから見れば正直わからないな……)
憩(フリとは言え、こんなにも顔近づけてこんなこと……!)
照(め、目を開けられない……)
憩「これからも、ちゃんと支えていきますから……よろしくお願いしますね」ギュッ
照「ん、んぅ……すぅ……」
憩(これ以上は教師として何も出来んのやけど……)
久(うーん、正直、ここからがクライマックスなんだけど……)
久(荒川先生と宮永さんじゃ、ここまでが限界そうね)
久(てかこれ以上やらせると園城寺さんが絶対に止めに入りそうだし)アハハ
怜「……」ゴゴゴゴゴ
竜華「と、怜……」アワワ
久「うん、二人ともお疲れ様です。これにて終了ね」
憩「はぁ……」
照「お、終わり……」
照「ほ、本当に……?」
菫「園城寺の言う通り、普段とそこまで変わりがなかったおかげかもしれないがな」
菫「まあそれを言うなら、竹井以外の私たち三人にも言える事だが」
竜華「いや、でも宮永さんの先生役めっちゃはまってたで。不器用で優しい先生みたいな感じがよく出てたというか」
照「うへへ……」
久「荒川先生もお上手でしたしね」クスクス
憩「褒めても何もでえへんで」ハァ
怜「ホンマお上手でしたね。まるでプライベートでの先生見てるような気分になりましたわ」ジト
照「プライベート?」
竜華「それってどういう……」
憩「な。何を言っとるの園城寺さん?」
憩(もしかして妬いてる……?)
菫「しかし、もうこんな時間か……」
久「今日はここまでね。いやー、昨日と今日、すごく楽しかったわ」
久「ついでに良い練習にもなったでしょ」
((今ついでって言った……))
久「宮永さんなんてあんなにも嫌がってたのに」フフ
照「自分の隠された才能を見つけた」ドヤ
菫「調子に乗るな」
怜「隠された才能見つけた言うんやったら竜華やろ……」
竜華「ふふ、照れるわ♪」
久「ってことで今日はこれにて解散ね。また集まってもらうかもだけど……ま、そんときはよろしくね♪」
照「今から咲たちのところ行かなくちゃ……それじゃあみんな、また明日」
菫「私も待ち合わせがあるから……これで失礼するよ」
久「私は生徒会にでも行ってみようかしら」
怜「ウチは保健室にでも行こうかなー」
憩「帰りなさい」
怜「……ケチ」
竜華「ふふ、先生も付き合わせたせいで忙しいんやって。ほら、帰るで」
怜「ちょ、竜華……」
竜華「で、女たらし序列2位ってなに? ウチそんな話知らんやけど」
憩「ウチが教えたるわ清水谷さん。この子、くじ引きで引いた女の子にキスするっていうふざけた遊びを……」
怜「ちょっ……」
終わり
乙ー
面白かった
>
>憩「……何度も言っとるけど、年齢について他の子に話したら怒るからな」
>
>怜「ウチと憩だけの秘密やな」
>
>憩「先生方は知っとるけどな」
>竜華「誰に電話してたん?」
>
>久「優しい後輩♪」
部長って物知りなんですね
普通に感心した
>>215に関しては部長が知り合いの後輩に指示して先生呼んでもらった、って感じの意図でしたが
後輩=荒川先生の発想はすごく感心しました。思いついてたらそう書いたと思います
では、お疲れ様でした
Entry ⇒ 2012.10.27 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (2) | Trackbacks (0)
咲「エロゲーって楽しいよね!」
シロ「今年もあと2週間かぁ……」
エイスリン「イチネン、スギルノハヤイ!」
豊音「今年はちょー楽しかったよー!」
エイスリン「ウン!」
塞「全国大会では準々決勝敗退だったけど、いい思い出になったよね」カチッ
胡桃「さっきから気になったんだけど、塞はさっきからノートパソコンで何してるの?」
塞「ちょっとね」カチカチッ
胡桃「別にいいけど」
http://ssweaver.com/blog-entry-1836.html
洋榎「エロゲしてる所を絹に見られてしもた……」
http://ssweaver.com/blog-entry-1845.html
菫「エロゲしてる所を宥に見られた……」
http://ssweaver.com/blog-entry-1848.html
竜華「怜、今日もエロゲをするで!!」 怜「ファンディスクや!」
http://ssweaver.com/blog-entry-1852.html
照「エロゲしてる所を咲に見られた……」
http://ssweaver.com/blog-entry-1875.html
今作がシリーズ最終回となります。
※余談ですが、今作は今までの2倍近いテキスト量となってしまいそうです。
今現在も書き留めが半分近くまでしか出来ていないため、
一旦保守して貰って後半は明日投下、という事もご配慮をして頂けますようお願い致します。
エイスリン「オオミソカ……?」
豊音「1年の終わりの日、12月31日の事だよー」
胡桃「私は何の予定もないよ」
エイスリン「ナイヨー!」
シロ「じゃあさ、初詣に行かない?」
豊音「初詣!?ちょー面白そうだよー!行く行くー!」
胡桃「去年も行ったけど、去年は3人だったからね」
シロ「うん、今年は5人で行こうよ」
エイスリン「サンセー!!」
塞「あ……私は……」
塞「うん……ごめん、家族でおじいちゃん家に行く事になってて……」
豊音「えー!じゃあ塞ちゃん行けないのー?」
塞「うん……だから皆で楽しんでおいでよ」
エイスリン「デモ……」
シロ「んー……どうでも行けないの?」
塞「うん……ごめんね、私に構わず4人で楽しんできて?」
塞(私も本当は皆と初詣に行きたかったけど……)
………
……
…
塞「え?千葉に?」
塞母「ええ、今年は千葉のおじいちゃん家で年越しをする事になってね」※当SSでの設定です
塞「年越しって……大晦日だよね?いつから?」
塞母「そうねぇ……31日は移動の疲れをゆっくりと癒したいから……」
塞母「――30日の昼かしら」
……
…
塞(もしかしたら31日にコミマへ行く事が出来るかもしれない……)
塞(岩手から東京に行くのは交通費がかかりすぎるから、行く機会は無いと思ってたけど……)
塞(お母さん達と千葉に行ったら、かかる交通費は片道千円と少し……)
塞(二度とこんなチャンスはやってこない)
塞(皆には本当に申し訳ないと思うけど)
塞(私はコミマに行くんだ……!)
シロ「……塞?」
塞「ふぎゅっ!?な、なに?驚かさないでよ!」
シロ(ふぎゅって……)
シロ「もう部室閉めるよ、帰ろう」
塞「あ、う、うん、すぐ行くよ」バタム
恭子「主将、もうすぐコミマやけど、何日目に行くんです?」
洋榎「うちは初日で考えとるけど」
由子「企業の物販目当てなのー?」
洋榎「せやな、同人の方はあんまり興味あらへんし」
洋榎「恭子と由子はいつ行くんや」
恭子「私は最終日に」
由子「私もよー」
洋榎「最終日とか創作とエロしかあらへんやろ……エロ同人でも買うんか?」
由子「あ、あはは……」
恭子「……でも主将、見てないんですか?」
洋榎「なんのことや」
恭子「これですよ」」
洋榎「なんやこれ……第1次スーパーヤエシュリー大戦……?」
恭子「主将が大好きな”ヤエシュリー”シリーズのキャラクターが戦う同人ゲームが最終日に出るんですよ」
洋榎「な……なんやと……!」
洋榎「こ……こんな同人ゲーム全然チェックしておらへんかった……」
由子「それが今回のコミマ限定らしいのよー」
洋榎「な、なんやて……!」
恭子「ええ、せやからどうしても手に入れるとなると、この最終日に行くしか無い訳です」
洋榎「……せ、せやけど、初日から3日目まで滞在する程の余裕は無いで……」
由子「最終日のみに行けばいいのよー」
恭子「そうなりますね」
洋榎「し、しかし、それやと企業行ってから西回ったんやと間に合わないんとちゃうか?」
由子「そうなのよー、しかも今回はかなり数を絞ってるらしいよー」
恭子「そこで、ひとつ相談があるんですよ、主将」
洋榎「……?」
……
…
洋榎「なるほど……な」
洋榎「確かにそれなら行けない事もないかもしれへんが……」
恭子「問題は、3人だと厳しいところですね……」
由子「あと一人いればいいのよー」
洋榎「……」
洋榎「……絹に頼んでみよか」
恭子「えっ、絹ちゃんですか?」
由子「で、でも絹ちゃんは確か……」
洋榎「心配ないで、絹ならきっとやってくれるで」
洋榎「今じゃあ絹も、うちとアニメ談義をするくらい……」
洋榎「一騎当千の戦士やからな――」フフッ
竜華「今年もあと2週間やなぁ」
セーラ「せやなー、なんだかんだ言って充実した1年やったわー」
怜「せやけども、まだ最後の戦争が残っておるわ」
竜華「戦争?」
怜「冬コミや」
セーラ「ふゆこみ?なんやそれ」
怜「なんや知らんのか」
怜「コミックマート、世界最大の同人誌即売会にして世界が誇る最大のオタクイベントや」
竜華「なんやそれ!そんなんあるんか!」
怜「東京ビッグサイトで12月29日から31日までの3日間、最大56万人もの来場者が一箇所に集まるんや」
セーラ「56万人!?」
セーラ(ってどれだけ凄いかわからへん……)
怜「勿論や」
竜華「ならうちも行きたい!」
怜「え、で、でも1日だけでも18万人近く集まるっちゅーし、むっちゃ人ごみやで……?」
竜華「だからこそや!そんな所に怜を一人で行かせるなんて、心配やで!」
セーラ「とか言うても、ホントは竜華がただ行きたいだけやないんのー?」
竜華「ちょ、セーラ!!」
怜「ははは、でも竜華が居てくれると正直助かるわ」
怜「一緒に行こか」
竜華「怜……うん、行こ!!」
セーラ「おいおーい、俺も忘れたらアカンでー!」ハハハ
怜「基本的には、同人誌即売会……オリジナルの漫画や小説を公開して販売するのが主なんやけど」
怜「今のコミマっちゅーんは、アニメやゲームを題材をした二次創作の漫画を販売したり」
怜「私らみたいな素人クリエイターが集って作ったゲームを販売したりするイベントやな」
セーラ「うおー!俺らみたいなんが、ゲームを作って販売しとるっちゅー訳やな!」
セーラ「むっちゃ面白そうやん!」
怜「それだけやない、企業ブースではエロゲブランドのグッズ販売も行なっとるんや」
怜「参加者の半分以上は企業目当て……まぁ私も”アコス”のグッズ目当てなんやけど」
セーラ「”アコス”のグッズとか、そんなんもあるんかー」
怜「せや、しかもコミマ限定販売やから、この機会を逃すと二度と手に入らへん」
竜華「も、もしかして……”きらめそふと”のグッズとかもあったりするん?」
怜「あるやろな、確か……」ガサガサ
竜華「”きらめそふと”……っと、何々……クロチャー抱き枕カバーにイケニャー人形……!?」
竜華「他にも、”麻雀で私に恋しなさい!”のコークスクリューセットとシャープシューターセットやて!!?」
竜華「なんやこれ!!めっちゃ欲しい!!」
怜「ただ、企業は早めに並ばんとすぐ売り切れてまう」
怜「本気で狙うなら始発で並ばんときついで」
セーラ「始発て……朝の5時とかやろ?」
怜「せや、それでもマナーの悪い徹夜組が大勢並んどるんや」
怜「人気のあるブースなんかは、下手すりゃ始発でも間に合わへん」
怜「それでも行くんか?」
竜華「……それでも!」
竜華「それでも、うちは行くで……!」
怜「……そか!」
怜「えっ」
セーラ「あー、俺は29日に予定があるなー30日なら行けそうやけど」
怜「え、ちょっ」
竜華「30日の午後からなら空いてるんやけど……」
怜「……」
怜「じゃあ行くのは最終日にしよか……」
竜華「ええの?」
怜「30日の午後に大阪を出発し、東京のホテルに泊まる事にしよ」
怜「セーラもそれでええ?」
セーラ「おう、それなら行けそうや」
竜華「了解や!」」
セーラ「どうせならそのまま東京で年越しするのもええな」
竜華「せやな!そーしよや!」
怜「はは、それも悪くないかもな」
――ス○イプのとあるグループチャット――
――とあるネット掲示板で知り合った数人の猛者達が――
――互いに集い語り合う 淑女達のグループチャットである――
ひろぽん:おるかーー?
塞:えっ?
ひろぽん:よーし、おるな!
トキ:ここやで (トントンッ
ピカリン: 西 濃 は 神
牛乳:なんなのこれもー
かじゅ:気にしたら負けだ
巫女みこカスミン:あら?珍しくフルメンバーですね
舞Hime:そういえばそうやね
トキ:珍しいなぁ
ひろぽん:いやー実はコミマに行くのが最終日になってもうてな
トキ:なんやひろぽんもなんか、私も急遽3日日に行く事になったんよ
塞:あ、私も最終日のコミマに行く事になりました
ピカリン:おお
かじゅ:塞さんは確か行かないはずだったんじゃないのか?
塞:実は岩手に住んでるんだけど、30日に千葉のおじいちゃん家に行く事になってね
塞:ついでにコミマも行こうかなって
かじゅ:……これはまさかのオフ会が実現できそうだな
牛乳:オフ会?
巫女みこカスミン:なんだから面白そうな話になってるわねー
舞Hime:私もオフ会に参加してみたいとよ
巫女みこカスミン:そうねぇ コミマに行く予定はないけどオフ会があるなら行こうかしら
牛乳:私もオフ会があるなら行ってみたいですね
舞Hime:私もよ
かじゅ:他の皆はどうだ?
ひろぽん:せやな、オフ会っちゅーんも悪くないな
トキ:うちもや、他の皆と会うてみたいしな
ピカリン:私も望むところ
かじゅ:決まりだな
かじゅ:詳しい日時と場所は、私の方で決めても構わないか?
巫女みこカスミン:任せるわ
トキ:かじゅなら心配あらへんやろ
ひろぽん:やな 楽しみや
………
……
…
恭子「お、来ましたね新幹線」
洋榎「N700系のぞみ、東京行きやな」
絹恵「降りるのは品川駅やったっけ?」
恭子「ええ、品川で降りてJR山手線に乗り換えて五反田駅で降ります」
恭子「五反田駅から徒歩数分、大崎駅から徒歩10分の所にホテルを2人2部屋予約しております」
恭子「東京ビッグサイトへの行き方は、大崎駅からりんかい線に乗れば国際展示場駅まで1本です」
由子「さすが恭子なのよー」
洋榎「ホンマ、こういう時は助かるで」
恭子「いえいえ、では乗りましょう」
セーラ「東京行きの新幹線がキタデー」
竜華「いよいよやね」
怜「こうして東京に新幹線で行くのは初めてやな」
竜華「せやねー、大会とかは全部バスやったし」
セーラ「確か、品川ってトコで降りるんやろー?」
怜「せや、品川で降りてJR東海道本線に乗り換え、1駅行った所の大井町駅で降りや」
怜「大井町駅から徒歩数分の所にホテルを3人1部屋予約してある」
怜「国際展示場までりんかい線で1本行ける絶好のポジションや」
竜華「さすが怜やな!」
セーラ「ほな、早速新幹線に乗るデー」
ゆみ(予算は高くついたが……場所的にもいいホテルを確保できた)
ゆみ(国際展示場まで1本、ここからなら始発ですぐに着く)
ゆみ(出来れば、明日行く前に一度会場を見て回りたいところだが……)チラッ
ゆみ(時間は……13時か、今から行けば2時間は見て回れるな)
ゆみ(とすれば、やる事はただひとつ)
ゆみ(会場の構造を直に確認し、最適なルートを考える事だ)
ゆみ(早速、出発するとしよう)
塞爺「おお、よくきたのぉ」
塞母「しばらくお世話になるわね」
塞爺「よかよか、塞も大きくなったのぉ」
塞「お久しぶりです、おじいちゃん」
塞爺「疲れただろう、今日はゆっくりしていきんしゃい」
塞「はい」
塞(とりあえず今日はゆっくりしよう)
塞(電車の時刻表も大丈夫、オフ会の開催地もチェック済み)
塞(あとは明日を待つだけだ……!)
小蒔「あら、霞ちゃん。これからお出かけですか?」
霞「ええ、少しばかり……東京に行ってくるわね」
初美「東京ですかー!私も行きたいですー!」
霞「ふふ、ごめんね。今回は私用なの」
春「ざんねん……」
小蒔「そういえば……巴ちゃんも東京に行くって言って、今朝出かけていきましたけど」
小蒔「一体何の用があるんでしょう」
初美「二人してずるいですー!」
霞「巴ちゃんも?」
霞(まさか……そんな事は無いわよね)
哩「……」
哩(もうすぐ搭乗開始時間)
哩(そろそろ準備しとかんと)ブルルッ
哩(なん……?メールが来とる……姫子か)
哩(「明日の大晦日一緒に過ごしませんか」)
哩(すまんな姫子、今日明日は用事があるんね)
哩(近いうちに埋め合わせするから、堪忍な)
哩「……」ピッピッピ
美幸「さ、さすがに早く着き過ぎちゃったかなー」
美幸(まだ前日の13時だし……オフ会は明日の20時……)
美幸(今からホテルに向かってもチェックインにはまだ早いし……)
美幸(かと言ってこれからコミマ会場に行くって言うのも……あーもー!)
美幸(どうやって時間を潰せばいいのよもー!)
美幸(……)
美幸(そういえばここから秋葉原って近いんだっけ)
美幸(秋葉原の方に行ってみようかな)
照「ただいま」
咲「おかえりお姉ちゃん」
照「ただいま咲、寂しくなかった?」
咲「う、うん、大丈夫だけど……お姉ちゃん、凄い荷物だね」
照「ちょっとね」
咲「昨日も今日もどこ行ってたの?」
照「少し友達の所にね、今日の夜も出かけるから母さんに言っておいて」
咲「う、うん……」
咲(友達の所に行ってあんな沢山の荷物……本当に何してるんだろう)
『見てください!ここにいるのは全部人間です!』
『その数、およそ20万人!これが世界最大のオタクイベントと言われるコミックマートです!』
菫「……」
菫「そういえばコミマの時期だったか」
菫(宥との幸せを選ばずに、オタクとして生きる事を選んでいたのなら)
菫(おそらくは、私もあの中にいたのだろうか……)
菫(まぁ、今の私にとっては全く関係のない事だが……)カチッ
菫(私も少し前まではエロゲオタクだ、コミマのレポートは少しばかり楽しみにしている)カチカチッ
菫(……ほう、今年も大荒れのようだな)カチッ
菫(……ん?なんだこれは)
「”ソフトハウスダヴァン”コミマ限定フィギュアを急遽増量!」
菫(珍しいな、このブランドは普段企業には出展しないはずなんだが……)カチカチッ
菫(しかもフィギュアだって?あのブランドがそんな事をするとは到底思えないが……)カチカチッ
菫「……なッ!!?」ガタンッ
菫「マツミー姉妹の戦闘服フィギュアじゃないか!!」
菫(ソフトハウスダヴァン史上、最も可愛いキャラであるマツミー姉妹)
菫(しかもあの可愛いデザインの戦闘服だと?)
菫(これは……正直欲しい!!)
菫(……だが――)
菫(……今の私に、これを手にする資格などない)
菫(私はエロゲを捨て、恋人を選んだ人間だ)
菫(そんな私に、エロゲはおろかコミマに参加する資格など……)
菫(……しかし)チラッ
「コミマ限定フィギュア マツミー姉妹戦闘服バージョン お一人様1体のみ」
菫(……それでも私は)
菫(……私は――)
菫(……)
菫(すまない、宥……!)
菫「……っ!」ガタンッ
ドタドタドタ
ガチャ バタンッ カチャ
………
……
…
「まもなく、国際展示場、国際展示場です」
洋榎「いよいよやな……」
絹恵「きたんやね……」
恭子「動画とか見た限りですと、ドアが開いた瞬間にダッシュが始まるようです」
由子「始発ダッシュなのよー」
洋榎「ダッシュするんは正直マナー違反やけど、ここは何としてでも早く並ぶで」
恭子「ええ、わかってます」
由子「電車が停まるのよー!」キィイ
洋榎「なっ……!エスカレーターの前は隣の車両やんけ!!」
ピロンピロンピロン ガララッ
恭子「言ってる場合じゃないです!行きますよ!」ダッ
『走らないでくださーい!』
ゆみ(後ろの混雑に巻き込まれずに済んだ)
ゆみ(そしてエスカレーターから直線的に一番近い改札を抜ける)
ゆみ(今回の為だけにSuicaも作った)
ゆみ(これで改札を抜ける時のほんの僅かなタイムラグも解消する)
ゆみ(改札から駅の出口を直線的に抜け、西の待機列を目指す)
ゆみ(駅から西待機列までの距離はおよそ300m)
ゆみ(全ては計画通りだ)
ゆみ(あとは徹夜組がどれだけ並んでいるか……だが)
洋榎「……ああ、頼むで恭子」
恭子「わかってます」
洋榎「恭子は東で同人誌の確保!」
恭子「はい」
洋榎「絹は西で同人ゲームの確保!」
絹恵「任せてやお姉ちゃん!」
洋榎「由子はうちと企業や!」
由子「はいなのよー!」
洋榎「我等『姫松-アルカディオス-』、皆生きてまた逢おうや!」
怜「始発ダッシュやなぁ」
セーラ「俺らは普通に歩いて行こーな」
怜「せやな」
竜華「無理をせず、マナー良く行こうで」
セーラ「ところで怜、さっきスタッフさんが東だが西だかってボード立ててたけど、なんなんあれ」
怜「東ホールと西ホールは並ぶ所が別々やねん」
怜「私らは西4の企業ブースに行くから西の待機列に並ぶんやけど」
怜「最初に東館に行きたい人は、あっちの東待機列に並ぶねん」
竜華「そうなんか、お、列が見えてきたで」
セーラ「うわ、すっごい並んどるなー!これ全部人なん?」
怜「これでもまだ少ない方や、後からもっと増えるで」
セーラ「開場は確か10時やったっけ?」
怜「せやな、このぐらいの多さやと……入るのに10分ちょいはかかりそやな」
竜華「あれだけ早よ来とんのに、それでも入るのに10分もかかるんか」
セーラ「まーこれだけ人が多いとしゃあないやろなー」
怜「せやね、とりあえずあと4時間、適当に時間でも潰そか」
竜華「怜は暇つぶしに何か物持ってきたん?」
怜「一応”ヒサプラス”を持ってきとるけど」
セーラ「それ自分で遊ぶ用のものやん……」
『まもなく、コミックマートxxを開催致します!』
ワーワー パチパチパチッ
竜華「おーようやくや!」
セーラ「なんか俺、ワクワクしてきたでー」
怜「はは、まぁ入るのにあと数分かかるし、入ってからも企業列でまた並ばなアカンけどな」
竜華「また並ぶんかいなー」
怜「まぁ並ぶっちゅーても、最終日やしそこまで人気のブースやないから大丈夫やと思うで」
怜「初日はどこも凄かったらしいけどな」
怜「問題なのは、初日と2日目で在庫分を売り切ってしまう所や」
セーラ「んー?どゆことやねんそれ」
怜「各日均等に在庫を用意してるブースもあれば、初日でひたすら数を捌いてしまうブースもあるちゅーことや」
怜「せやな」
竜華「なんやそれ!そんなん酷いで!」
怜「最近はそういうブースも少ないけど、稀にあるんや」
怜「まぁ”アコス”も”きらめ”も大丈夫やから、心配せんでもええと思うよ」
竜華「そ、そか……」
セーラ「お、列が動き出したで!」
竜華「いよいよやな!」
怜「私とセーラは”アコス”へ、竜華は”きらめそふと”やな」
怜「買い終わった後の待ち合わせ場所は覚えとるよね?」
セーラ「バッチリや」
竜華「うん、問題ないで」
怜「よし、それじゃあ各自健闘を祈るでや!行くでセーラ!」
セーラ「おう!」
照「少し出遅れたか……」
照(ま、いいか。最終日に残したのは確実に売れ残っているであろう企業の物販と……)
照(……妹系のエロ同人だけだからね)
照(まずは西の企業を先に回って……あれ?)
照(あの後ろ姿……どこかで見かけたような……)
照(あれは……菫?)
照(……)
照(でも菫がこんな所に居るはずないし……)
照(きっと気のせい……)
塞(来る前にネットで昨日や一昨日の様子をチェックしたけど……)
塞(まさかこんなに人が居るとは思ってなかった……)
塞(もう10時は過ぎてるから開場は始まってるはずなのに、全然前に進む気配がないし……)
塞(コミマって……本当に凄いんだなぁ)
塞(目当ての物もついでに買えればいいかなって思ってたけど)
塞(この様子じゃ買えるかどうか分からないな……)
塞(塞いでおくか……財布を)
「TOMOさん!こっち向いてください!」
「こっち目線いいっすかー!」
巴「はーい」ポーズ
「うぉおおおおおおお!」
「すみません!こっちおねがいするでござるよ!!」
巴「こうですかー?」ポーズ
「おおー!なかなかのおもちだよぉ!!」カシャ
「TOMOちゃん最高っす!」カシャカシャ
巴「あははーありがとー!」
巴(九州じゃあんまりコスプレを披露する機会がなかったけど)
巴(遠い所、コミマに来てよかったです)
巴(沢山の人達が私の事を見てくれている)
巴(もう不人気だなんて言わせない!)
ワーワー パチパチッ
………
……
…
竜華「終わってしもたなぁ……」
セーラ「ほんまあっという間やなぁ」
怜「せやね」
竜華「怜達はちゃんとお目当ての物を買えたん?」
怜「バッチリやで」
セーラ「俺もや」
竜華「そか、うちも欲しい物全部買えたから満足やわぁ」
竜華「せやねー、食事にはまだ早いし……一応明日の分までホテルは取ってあるんよね?」
怜「あ、え……えと……」
竜華「……?怜?」
怜「実は私……これから用事があってな……」
竜華「用事?なんかあるん?」
怜「せ、せや、詳しい事は言えへんけど……」
セーラ「それは俺らにも言えへん事なんか?」
怜「い、いや、そゆわけでも無いんやけど……」
竜華「……怜?」
怜「……あー……実はな、私これからオフ会があんねん」
竜華「オフ会って……あのオフ会!?ネットで知り合った人とリアルで会うっちゅー」
怜「せや、18時から都内の定食屋で会う事になってんやけど」
竜華「アカンで怜!オフ会って、知らん人と会うんやろ!」
竜華「そんなん危険すぎるで!」
セーラ「そもそも、何の集まりなん?」
怜「エロゲーが好きな同志の集まりなんやけど……」
竜華「エロゲーマーの集まりやて!?」
竜華「それ余計にアカンやろ!汚いオッサンとかきっと来るで!」
怜「せ、せやけど、皆同世代の女子やって言うてたし……」
竜華「そんなん嘘に決まってるやろ!きっとうちの可愛い怜を誑かすための嘘や!」
セーラ(誑かすて……)
怜「これでバックれてしもーたら、私二度とあのチャットに顔出せへんわ……」
竜華「ぐぬぬ……」
セーラ「竜華も落ち着きや、そもそも今回のコミマも(建前は)怜が心配で俺らついて来たんやろ」
セーラ「怜のオフ会にも俺らがついて行けばええやん」
怜「えっ」
竜華「せや……それや!怜、うちらも怜のオフ会についてくで!」
怜「で、でも、竜華達は他の皆の事知らへんやろし……」
セーラ「まー他の奴らが大丈夫そうな奴やったら、俺らは影でこっそりしとるしな」
竜華「せやせや、それでええやろ?」
怜「……」
怜「はぁ、わかった……そこまで言うならついてきてもええよ」
洋榎「皆ようやってくれたで!」
恭子「ええ、私の方もなんとか最後の1冊を手に入れる事が出来ましたし」
洋榎「絹もよくやってくれたで!」
絹恵「はは……こっちの方も人は多かったんやけど」
絹恵「東や企業に比べてそこまで多くはなかったみたいで、なんとかなったわ」
由子「結果オーライなのよー!」
恭子「そうですね、では早速ホテルに帰って戦利品を置いてどこか食事にでも……」
洋榎「あー……うち、ちょっと食事は一緒に取れへんわ」
恭子「……?どういうことです?」
俺の地元の友達はたまに飲むと俺の知らんツレを連れてくるわ…
サシで飲みたいのに
それはツライな…
オフ会参加者めっちゃ増えそうだなw
絹恵「お、オフ会!?お姉ちゃんが!?」
恭子「え、聞いてないですよ?」
洋榎「今まで言わんかったからな」
由子「洋榎がオフ会に参加するとは珍しいのよー」
絹恵「なんのオフ会なん?」
洋榎「え、えっと……エロゲーマーの同志が集まるオフ会やねんけど……」
恭子「エロゲーマーのオフ会ですか!?」
由子「何その面白そうなのー」
洋榎「うち、結構前からチャットで同世代のエロゲーマーと仲良うなってな」
洋榎「今回、たまたま参加者が最終日のコミケに行く事になったからってんで、オフ会が開催される事になったんや」
絹恵「じゃ、じゃあ……お姉ちゃんはうちらと一緒のご飯は食べられへんのね……」
洋榎「すまんな、食事は3人で取ってや」
恭子「いえ、私達もそのオフ会にお邪魔しましょう」
洋榎「ファッ!?」
洋榎「うちはともかく、恭子達は全く知らん人達やで?来ても面白くないで?」
由子「でも皆エロゲーマーなのよー」
恭子「私も主将が普段からチャットで話している人達ならすぐに仲良くなれそうです」
洋榎「そ、そうは言うけどな……絹はどうなん?絹はエロゲーマーやないやろ」
絹恵「そ、そやけど……うちはお姉ちゃんが普段どんな人達と会話してるか興味はあるで」
絹恵「先輩たちが行くなら、うちも一緒について行きたいです」
恭子「決まりですね、主将」
由子「のよー!」
洋榎「あ、あのなあ……」
洋榎「……あああーもう!好きにせえや!ぼっちになっても知らへんからな!」
3日目なんてボドボドになった身体と戦利品と最高の気分を持ち帰ってで帰ってお風呂入ってご飯食べて
コミケスレ覗いて寝るに限る
除夜の鐘?知らんがな
照(今日も沢山の戦利品を手に入れられた……)
照(一旦家に帰りたい所だけど……一旦戻って荷物を置きに行くとオフ会の18時に間に合いそうにない)
照(どこか適当に荷物をしまえれば…………ん?)
照(あれは菫……?間違いない、あの後ろ姿は菫だ)
照(並んでいた時に見たのは見間違いではなかった?)
照(でも何故こんな所に……)
照(……いや、そんなもの声をかけて確認すればいいだけ)タッタッタッ
照「おい」
菫「はい?……なッ!!て、照!?何故ここに!?」
照「それは私の台詞だと思う」
菫「わ、私は……その」
菫「た、たまたまニュースでコミマのことを知って……見に来ただけだ」
照「そう……」
照「じゃあその”ソフトハウスダヴァン”の紙袋はなんなの?」
菫「なッ!!」
照「それ、18禁ゲームのグッズだよね」
菫「こ、これは……その、違うんだ」
照「なにが?」
菫「し、知り合いに頼まれて」
照「なにを?」
菫「え、えっと……フィギュアを……」
照「そうなんだ」
照「え、だって……私もそれ買ったし」
菫「……は?」
照「私もそれを買った、初日に」
菫「いや、私が言いたいのはそうじゃない」
菫「お前、これが18禁のゲームだと知って買ったのか?」
照「うん」
菫「……そ、それはつまり」
菫「お前は……エロゲーをやった事があるのか?」
照「……」
照「そうよ、私はエロゲーマーだから」
王者の風格よ
菫(照がエロゲーマー……だって?)
菫(何かの冗談だろ……?今まで麻雀部でずっと一緒にいた私が知らないはずがない)
菫(確かにこいつはシスコンで、妹に対しては病的なまでにおかしくなる奴だが……)
菫(……妹に対して病的……?まてよ、どこかで似たような奴を見かけた気がする)
菫(あれは確か……チャットだ……ピカリン……)
菫(ピカリン……?まさか、照がピカリンだと言うのか?)
照「……菫?」
菫「あ、ああ……いや、すまない」
菫(いや、照があのチャットにいる筈はない……が)
菫(……照がピカリンだと言うのであれば、確かに納得は行く)
菫(……)
照「……なに?」
菫「……お前、ス○イプとかやってないか?」
照「ス○イプ?あのインターネットで通話が出来る奴?」
菫「ああ、そうだ」
菫「それでその……エロゲーの話をしたりとかする、チャットをやっていないか?」
照「……?なんで菫が知ってるの?」
菫「ッ―――!?」
菫(こいつ……本当にピカリンだったのか……)
菫(しかし……何故?何故照が……)
菫「あ、いや、その……なんだ、たまたま知り合いがあそこのチャットの住人でな」
照「そうなの?」
菫「あ、ああ……」
照「それはすごい楽しみ、これからそのグルチャのオフ会があるから」
菫「オフ会……だと?」
菫(グルチャの皆とオフ会……)
菫(すごく……気になる)
菫(私も元とはいえ、あそこの住人だ……)
菫(あそこの空間は私に取って、もうひとつの安らげる場所でもあった)
菫(一体どんな奴らなのか、会ってみたい……すごく興味がある……が)
菫(……今はあそこの住人では無い以上、呼ばれてすらもいない私が行っていいものでもない)
菫(本当にそれでいいのだろうか)
菫(あそこの連中は、私に宥と生きる道の決心を付けさせてくれた)
菫(普段はくだらないエロゲの話をしている連中ではあったが)
菫(私にとって、また大切な友人達に違いない)
菫(……)
菫(私は――)
照「あ、ごめん菫、これ以上いると遅れるから……じゃあ」
菫「待った」
照「……菫?」
菫「……私も」
菫「私も……行っていいか? ――オフ会」
ゆみ「18時に予約した加治木だが……もう入れるか?」
「加治木様ですね、こちらへどうぞ」
ゆみ「ありがとう」
「……こちらの広間になります、お食事等は如何なさいますか?」
ゆみ「あとでまとめて注文するから、今は結構だ」
ゆみ「それと、”かじゅ”という人物を訪ねてきた人がいたら、ここの部屋に通して欲しい」
「承りました、何か御用があればこちらのボタンでお呼び出しください」カタッ
ゆみ(ふぅ……)
ゆみ(予定の人数は8人だが、まさか数十人は余裕で入れそうな広間を使わせて頂けるとはな)
ゆみ(実にありがたい)
ゆみ(時刻は……17時45分、もうそろそろ皆集まる頃だろう……)
ゆみ(同世代のエロゲーマーだ、それも同姓ときた)
ゆみ(果たしてどんな奴なのか……)
塞「時間は18時少し前、”かじゅ”さんが先に入ってるって聞いたけど」
塞(な、なんか急に緊張してきた……)
塞(もしも変な人達だったらどうしよう……)
塞(……)
塞(でもせっかく来たんだし……)
塞(私だけ行かないって訳にもいかないよね……)「あ、あのー」
塞「は、はいっ!?」
美幸「すみません、中に入りたいんですけどもー」
塞「は、はい、すみません」ササッ
塞(まさか出入り口を塞いでしまうとは)
塞(……もうここまで来たんだ。覚悟を決めて中に入ろう)ガララッ
美幸「あの……えっと、”かじゅ”って人が来てる筈なんですけどもー」
塞「えっ、”かじゅ”?」
美幸「……え?」
塞「私も”かじゅ”って人に呼ばれてるんですけど……」
「はい、かじゅさんですね、承っております。こちらへどうぞ」
美幸「えっ、そうなのー!?」
塞「う、うん」
美幸「えーっだれだれー!私、牛乳だよー!」
塞「え、牛乳さん?私は塞っていう名前で……」
美幸「塞ちゃん?やだもー、本当に塞ちゃんなのー!?」
塞「うん、まさかこんなふうに牛乳さんと会うとは思わなかったよ」
美幸「びっくりしたよもー!」
「こちらのお部屋になります、どうぞ」
哩(ここか?)
ガララッ イラッシャッセー
哩「”かじゅ”という人がおるはずなんけど」 ガララッ
『あのーすみません、”かじゅ”という方は既に来ておられますでしょうか?』
哩「……なんと?」クルッ
霞「……?何か?」
「はい、かじゅさんですね、承っております。こちらへどうぞ」
哩「そうやけど」
霞「まぁそれはそれは、私は”巫女みこカスミン”です」
哩「カスミンなんか!?そいは”舞Hime”ゆーて」
霞「あら、舞さんでしたか!名前もそうですけど、容姿も可愛らしいのね」
哩「なっ、何言うとん!」///
「こちらのお部屋になります、どうぞ」
竜華「な、なんかキンチョーするわぁ」
セーラ「竜華がキンチョーしてどないすんねん」
怜「はは、でも竜華達がいてくれて正直助かったわ、思ったよりキンチョーせんでいれるわ」
セーラ「で、どないすん?もう中に入るんか?」
怜「せやな、確か幹事の人が先に待っとるゆーとったし……入ろか」
『ちょ、なんでセーラ達がここにおるん!?』
セーラ「……ん?なっ、洋榎!?」
竜華「なんやて!?」
恭子「こんな所で会うとは珍しいですね、ここは東京ですよ。なんでこんな所におるんです?」
セーラ「それはこっちの台詞や、なんであんたらがここにおるん!?」
怜「……オフ会やと?」
竜華「え、オフ会って……まさか、この店でなん?」
洋榎「せや、18時からや」
怜「え、それって」
竜華「まさか、愛宕さんもオフ会のメンバーなんか!?」
恭子「もってことは……あなた方もオフ会の参加者なんですか?」
洋榎「ん?どういうことや……?」
セーラ「いや、参加者は怜だけで俺と竜華は付き添いやけど……」
洋榎「……怜?まさか、お前があの”トキ”なんか!?」
怜「せ、せやけど」
洋榎「ホンマかいな!うちやで!”ひろぽん”やで!」
怜「”ひろぽん”?ホンマに?なんや、めっちゃ身近な人物やなぁ」
洋榎「ホンマやな!世間は狭いでまったく」
由子「洋榎と園城寺さんがオフ会参加者だったのよー」
竜華「ちゅー事は……二人はネットでも知人同士やったって事なん?」
恭子「うーん、そういう事になるんやろか……」
セーラ「よーわからんわー」
洋榎「っとと、もう時間やで、ほな入ろか」
怜「しかしええんかな、私ら部外者多すぎやろ」
洋榎「なんとかなるんとちゃう、事情を話せば分かってくれるやろ」
怜「せやろか……」
ガララッ イラッシャッセー
「はい、承っております。お連れ様の方もご一緒ですか?」
怜「あ、はい、そですー」
「承知いたしました、ではこちらにどうぞ」
恭子「今更なんやけど、ホントにうちら来ても良かったんやろか」
セーラ「ええんちゃうの?店員さんもフツーに通してくれたしな」
竜華「怜も心配やし、うちは何が何でもついてくで!」
由子「でも洋榎が普段どんな人と話してるのか気になるよー」
絹恵「そうやね、うちもお姉ちゃんがチャットでどんな人と話をしてるのか気になるわ」
「こちらのお部屋になります、どうぞ」
菫「……」
菫「おい、照。まだ着かないのか?」
照「……もう少し」
菫「本当だろうな?」
照「……多分」
菫「詳細な場所とか調べて来なかったのか?」
照「場所はこれ」サッ
菫「ん?……ああ、なんだ、割と近くじゃないか」
菫「さっき行ったT字路を逆方向に行ってたんだな、戻るぞ」
照「わかった」
菫「ここだな、18時を少し過ぎてしまったが何とか着いたな」
照「菫には感謝してる」
「いらっしゃいませ、2名様で宜しいでしょうか?」
菫「え、えっと……」チラッ
照「”かじゅ”さんという方が、来ていらっしゃると思うのですが」キラキラッ
菫「無駄に営業スマイルを使うな……」
菫(妥当だな、あいつぐらいしかあのメンツを纏められる気がしない)
「承っております、こちらへどうぞ」
菫「いよいよご対面だな」
照「そうだね」
菫「……緊張はしていないのか?」
照「別に、いつも通りにするだけだから」
菫(それは照としてのいつも通りなのか、ピカリンしてのいつも通りなのか……どっちなんだ)
「こちらになります」ガララッ
美幸「ち、ちゃちゃ……!」
怜「チャンピオンやないか……!!」
洋榎「な……ホンマや、なんでこんな所におるん!」
菫「あ……あれは千里山の……!」
菫(それだけじゃない、姫松の愛宕洋榎……!あっちには永水の石戸霞……!)
菫(準決勝で対戦した新道寺の部長まで……)
菫(本当にここなのか?何かの間違いじゃないのか?)
照「ここがオフ会の会場?」
ゆみ「オフ会の会場……と言えばそうだが」
ゆみ「まずは確認ついでに名乗りでて欲しい所だな、出来ればス○イプネームで」
照「そう……私は宮永照、スカ○プではピカリンという名前でやってる」
怜「な……!」
洋榎「ピカリン……やと……?」
霞「あらあら」
塞「まさかチャンピオンがピカリンだなんて……」
絹恵(ね、ねえ、なんでチャンピオンがこんな所におるんやろか)ヒソヒソ
恭子(そりゃ、チャンピオンもオフ会の参加者やったんとちゃいますかね)ヒソヒソ
由子(それって、チャンピオンもエロゲーマーって事なのよー)ヒソヒソ
竜華(ホンマかいな、チャンピオンもエロゲーとかやるんかいな)ヒソヒソ
セーラ(人は見かけによらんなー)ヒソヒソ
ゆみ「……」コホン
ゆみ「つまり、今回のオフ会の参加者という訳だな、わかった」
ゆみ「して、そちらのお連れさんは?”トキ”や”ひろぽん”と同じ付き添いか?」
照「ああ、彼女は――」
菫「いや、私から言おう」
照「……菫?」
菫「今回はたまたま、コミマ会場で照と会う事があったから付いてきただけだが」
菫「実は、私も皆とは無関係の人物ではないんだ」
ゆみ「……?どういうことだ?」
菫「私の名前は、弘世菫……そして――」
――魔法少女すみれ
数ヶ月前までこのチャットにいた、張本人だ――
霞「……嘘、まさかスミレちゃんなの?」
照「菫……それ本当?」
菫「……ああ、事実だ」
菫「くる日もくる日もエロゲをプレイし続けた私が、遥か遠い場所に居る恋人との幸せを選び」
菫「財宝のようなエロゲを全て捨て、オタクとの関わりも断ち切り、ネットから姿を消した……」
菫「それが魔法少女すみれ……私だ……」
照「菫……」
洋榎「ホンマに……あのスミレなんか?」
ゆみ「ああ……だとしたら、ある意味奇跡に近い何かだな」
霞「スミレちゃん……」
塞「し、しかし何故スミレさんまで……?」
菫「……たまたま照と会った時に、このチャットのオフ会をすると聞いてな」
菫「照がピカリンと知って、ここのオフ会だと確信してね。ご一緒させてもらった」
菫「尤も、既にチャットを抜けた私には参加資格など無いかもしれないが……」
哩「……」
美幸「……」
ゆみ「……いや、正直な所、君が来てくれてとても嬉しいよ、スミレ」
ゆみ「もう一度会いたいと思っていた。私だけじゃない……皆もだ」
怜「カスミンは一番スミレと仲よかったからなー」
霞「ちょっと、トキさん!」
菫「カスミン……?君があのカスミンか!?」
霞「……ええ、私がカスミン。”巫女みこカスミン”よ」
怜「私はトキ、園城寺怜やで、インハイでは世話んなったな」
菫「千里山の園城寺怜、まさか君があの”トキ”だったとはね……」
ゆみ「丁度いい、ちゃんとした自己紹介がまだなんだ」
ゆみ「全員揃ったみたいだし、まずは自己紹介と行こうか」
塞「そうですね」
洋榎「賛成や」
ゆみ「本名は加治木ゆみだ」
塞「本名も言うの?」
ゆみ「いや、どちらでも構わないが……」
洋榎「殆どが顔見知りみたいやからええんちゃうの」」
怜「せやな」
怜「私は園城寺怜、”トキ”っちゅー名前でやってます」
美幸「ト、トキさん……」
怜「……?あんたは確かインハイ2回戦の時に戦った……」
怜「その節はどうも」ペコリン
美幸「は、はいどうも……」
塞「愛宕洋榎……って確か……」
哩「姫松高校のエースやと……」
霞「洋榎でひろぽん……なんだか可愛いわね~」
霞「私は先程申し上げました通り、”巫女みこカスミン”です、名は石戸霞と申します」
霞「みなさん、宜しくお願いします」ボヨヨン
塞(む、胸が大きい……)
怜(ええ乳しとるなぁ)
洋榎(絹のよりも大きいんとちゃうか?)
絹恵(あの人、うちと2回戦で戦った人や)
塞「あんまりログインしない私がオフ会に参加しちゃっていいのかわかりませんけど……」
塞「よろしくお願いします」ペコリ
ゆみ「イン率の問題ではないさ、あそこのメンバーで参加したいという気持ちがあればそれで十分さ」
哩「次は私、”舞Hime”というネームでチャットをやっとる」
哩「白水 哩と言う、宜しくと」
塞(この人リアルでもこんな喋り方なんだ)
洋榎(時々日本語なんか分からん時もあるからな)
怜(牛乳って言うほど乳はそこまで大きくないと思うけどな)チラッ
霞「……?どうかしましたか?」
怜「ええ乳しとるなと思って(いや、なんでもないで)」
竜華(言ってる事と思ってる事が逆やで……怜……)
ゆみ「……あとは」チラッ
照「……私?」
ゆみ「ああ、改めて自己紹介をお願いできないか?」
照「わかった」
照「好きなエロゲは”私の妹のエロさが嶺上開花でとどまる事を知らない”」
照「妹が姉に恋焦がれて誘惑するなんて実に素晴らしい作品だ、思わず全店舗で特典を揃えてしまった」
照「やはり妹は素晴らしいな、全世界に”IMOUTO”という単語が出来てもいいくらいに素晴らしい、すばらっ」
照「最近”リアル妹がいる宮永さんのばあい”もプレイしたが、義妹も悪くない」
照「実妹と違って義妹は結婚が出来るからね、実妹に出来ない事を義妹は出来るから最高」
照「しかし実妹というのは血が繋がっているという点だけで興奮できる。こう、いつも繋がっているというか」
照「私にとって、妹と言うのはかけがえの無い存在なんだと思う、自分の一部というか」
照「とにかく、私は妹が大好きだ。よろしく」
菫「……」
ゆみ「……」
怜「……」
洋榎「……」
霞「……」
ゆみ(こいつは本物だ……)
怜(分かっとったけど、マジでアカンやろこいつ……)
洋榎(アカン、ホンマにこいつとは関わらん方がええかもしれへん……)
霞(面白い子ね~)
セーラ(な、なあ……チャンピオンからなんかとんでもない事が聞こえたんやけど……)ヒソヒソ
竜華(しっ!静かにせんと聞かれてまうで!!)ヒソヒソ
絹恵(きゅ、急に寒気がしたような気がしてんねんけど……)ヒソヒソ
恭子(絹ちゃん……チャンピオンとは目を合わせん方がええで……)ヒソヒソ
由子(チャンピオン恐るべしなのよー……)ヒソヒソ
菫「……」
菫「一ついいか」
ゆみ「なんだ」
菫「確かに私は、ここのメンバーだった。しかしそれは元だ」
菫「しかも自分の身勝手でチャットを抜けてしまった……」
ゆみ「……そんな私がここにいる資格があるのか、と?」
菫「……ああ」
ゆみ「……」
ゆみ「スミレ、言ったはずだ」
ゆみ「私は……いや、私達は、もう一度君に会いたいと思っていた」
ゆみ「それは何故か」
ゆみ「私達にとってスミレは、他人ではなく”仲間”だからだ」
ゆみ「私達のグループに、すみれという人物が居ない事などない」
菫「かじゅ……」
菫「……私は……弘世菫」
菫「先程も言った通り、魔法少女すみれというハンドルネームでチャットに参加していた者だ」
菫「私も、心のどこかで望んでいたのかもしれない」
菫「こうしてみんなとまた会える事を……」
ゆみ「……」
ゆみ「……ああ」
霞「スミレちゃん……」
照「菫……」
怜「スミレがおらんと、ツッコミがかじゅだけやからなー」
洋榎「ははっ、それは言えてるわ」
ゆみ「全く……大体お前達がふざけすぎてるんだ!」
照「ふざけてない、全部本気」
ゆみ「だからこそタチが悪いんだ!特にお前だ、ピカリン!」
霞「あらあら、楽しいからいいじゃないですか」
ゆみ「カスミン……キミも煽るような事は言わないでくれ」
塞「はははっ、なんだかいつものチャットみたいになりましたね」
哩「全くや」
美幸「なんだか、ようやくオフ会って感じがしますよねー」
怜「え?自己紹介って……もう終わりとちゃうん?」
ゆみ「そっちの5人の事だ」
竜華「えっ、うちら?」
絹恵(すっかり忘れられてるよーな気してたんやけど……)
恭子(本当今更やけど、私らここにいてええんやろか……)
由子(全く話に付いていけないのよー……)
セーラ(お腹減ったナー)
ゆみ「そうだ、君たちは……トキ……園城寺さんと愛宕さんの付き添いだろう?」
ゆみ「どうせなら一緒に楽しんで行って欲しい」
竜華「ま、まあ……そういうことなら」
恭子「そうですね、せっかくですしご相伴に預かりましょう」
恭子「あ、それなら一応主将から聞いてますけど」
竜華「うちも怜から聞いとるけど……」
ゆみ「知っていながらついて来るという事は、君たちはエロゲーに理解ある人達なのか?」
セーラ「理解ある人達っちゅーか……」
竜華「まぁうちらもエロゲーマーやから……」
恭子「ええっ!?そうだったんですか!?」
由子「びっくりなのよー」
竜華「え、末原さん達はちゃうん?」
恭子「い、いやまぁ……私らもエロゲーマーなんやけどね……」ハハハ
由子「のよー」
絹恵「うちはギャルゲーの方やけどね」
ゆみ「それなら尚更大歓迎だ、ぜひ一緒に楽しもう」
照「どうせならチャットにもご招待したらいい」
霞「あらあら、それも面白そうねー」
怜「い、いくらなんでもそれはアカンやろ……」
洋榎「せ、せや、恭子達に迷惑かけるっちゅーか」
恭子「いえ、私も興味ありますから、こちらこそご迷惑でなかったら是非」
竜華「せやせや、うちらからお願いしたいところや」
セーラ「それよりお腹減ったデー!はよメシくおー!」
ゆみ「ははは、そうだな。そろそろ注文をしようか」
………
……
…
照「何?」
菫「家に妹さん置いてきて大丈夫か?今夜は遅くなるんだろう」
照「それが……さっき家に電話したんだけど、今日は友達の家に泊まるって言ってたみたい」
菫「言ってた?」
照「私が電話した時には、もう出かけてた」
菫「そうなのか」
照「咲に会えなくて寂しいけど……今は今を存分に楽しむ」
菫「……そうだな!」
『ぶ、部長……っ!私は……!』
『いいんよ……姫子の全て……私にくれる?』
『部長……ああっ!』
咲「……」ドキドキ
モモ「……」ドキドキ
一「……」ドキドキ
巴「……」ドキドキ
憧「……」ドキドキ
誠子「……」ドキドキ
淡「……」ドキドキ
咲(まさか百合スキー集会のオフ会で百合アニメの鑑賞会をするとは……)
咲(やっぱ”哩”さんと”姫子”さんが裸で抱き合うこのシーンはいつ見てもいいなぁっ)
咲(百合って最高だよぉ)
すばらです
ゆみ「……少し盛り上がりすぎてしまったな、もうこんな時間だったか」
洋榎「ホンマや、あと30分で新年やないか!」
怜「ちゅーか、少しどころやないやろ、5時間近くここにいたんかい……駄弁りすぎやろ」
ゆみ「なんだかんだ言って、みんな話が弾んで仲良くなったみたいだしな」チラッ
竜華『やっぱそうやよねぇ~!うちも一ちゃんと透華ちゃんルートが一番泣けたわぁ」
美幸『あの二人はガチですよねー!私、思わず何十周もやりましたもーん!』
絹恵『”kei”はやっぱええですよね、うちも今じゃ”Kei”が一番やと思ってるぐらいやし』
塞『”Kei”と”Sela”は鉄板ですね、作品的にも商業的にもトップクラスだと思ってます』
霞『あらあら、このお団子可愛いのね~』
由子『お団子じゃないよー!』
怜「これを仲良くなったって言ってええんやろか……」
ゆみ「このまま解散するのもなんだし、神社にでも行って初詣に行かないか?」
照「初詣……」
竜華「おー、ええやん!行こ行こ!」
哩「ええね、楽しみばい」
塞「うん、皆で行きたい」
ゆみ「よし、そうと決まれば早速出発するとしよう」
菫「みんなで初詣か……」
霞「スミレちゃん?」
菫「ん、ああいや……なんだか、楽しいなって」
霞「……そうね、とっても楽しいわ」
ゆみ「あ、もちろんここの料金は割り勘だからな、忘れるなよ」
ざわ ざわ
セーラ「結構人多いんやなー」
菫「ここはそれほど大きな神社では無いが、地元民がよく利用するようでな」
ゴーン ゴーン
霞「除夜の鐘ね……」
ゆみ「時刻は23時55分……あと5分だな」
竜華「最初はどうなるかと思っとったけど、なんやかんやで一緒に新年を迎えられそーやなー!」
怜「せやね、竜華達と来て良かったわ」
恭子「まさか東京にまで来て新年を迎えることになるとは思ってもなかったですね」
洋榎「せやなぁ……コミマに行くだけならまだしも、恭子達とオフ会にまで参加するとは思ってへんかったわ」
絹恵「でも楽しかったで、今日1日」
洋榎「ああ……ホンマに楽しい1日やったな」
怜「3……2……1……」
「「あけましておめでとうございまーす!」」
菫「はっは……まさか本当にこうして新年を迎えるとはな」
霞「そうね……まるで夢の中にいるみたい」
洋榎「ところがどっこいっ……!これは現実や……っ!」
ゆみ「ああ、今こうして皆と一緒にいる……紛れもない現実だ」
ゆみ「っと、みんな、あけましておめでとう」
由子「おめでとうなのよー!」
塞「あけましておめでとう」
哩「おめでとう」
竜華「怜、あけましておめでとうなぁ、今年も宜しくな」
怜「おめでとうや、今年も宜しくされるで」
洋榎「せやせや!沢山願い事したるでー!」
恭子「沢山願い事をするって……ええんですかねそれ」
洋榎「有り有りやろ!願い事はいくつあっても願い事なんやで!」
塞「そういう問題でも無いような……」
照「私は咲と結婚できるようにお願いしよう」
菫「まて、それは願い事以前の問題だ」
照「……何故?」
菫「いやいや、どう考えてもおかしいだろ!」
照「神様ならきっとなんとかしてくれる」
菫「だめだこいつ、早くなんとかしないと……」
怜「竜華、そうやなぁ……願い事したい事は正直沢山あるんやけど」
怜「……たった一つだけ、選ぶとしたらあれやな」
セーラ「あれ?あれってなんなんー?」
怜「……私らがこれから進む、未来への成功―――かな」
竜華「……」
セーラ「……」
セーラ「ああ、せやな」
竜華「……うん」
怜(せや……これは私の願い毎だけやない)
怜(私ら3人の願い……3人の想い)
怜(私らの願い事―――)
怜(どうか――)
………
……
…
ゆみ『く……今作もギリギリだな』
蒲原『ワハハ、ここで延期したら今後に相当響くかもなー』
ゆみ『ああ、ようやく中堅レベルまで持ってこれたんだ』
ゆみ『ここで信用を失うわけにはいかない』
ゆみ『睦月!マスターアップはいつ頃だ!?』
睦月『明日中にはなんとか!』
ゆみ『頼む、今月は他に競合ソフトがない。ここで売上を伸ばすぞ!』
ゆみ『蒲原は妹尾と一緒に睦月のフォローを、私はモモと一緒に店舗を回ってくる』
ゆみ『鶴賀ソフトウェアの一生がここで決まると言っていい、頼むぞ!』
蒲原『ワハハ、任せれたぞー』
恭子『だから言ったんですよ、無理をしないで発売日は来月にしましょうって』
由子『いくらなんでも無茶すぎるよー』
洋榎『せやけど、”トキハウス”が今月に来るんやで!ここは直接勝負するしかないやろ!』
絹恵『お姉ちゃん、そう言って前作も負けたやないの……無茶しすぎやって』
洋榎『絹までそないな事言うんかいな、誰かうちに賛同してくれる奴おらへんのかー!』
漫『あ、あのー、先ほど店舗の人から、数を減らしたいと電話を頂いたんやけど……』
洋榎『あぁっ!?なんやてぇー!そんなんうちが許さへんで!』ポカポカ
漫『痛いっ痛いですよぉ!私に八つ当たりせんといてください!』
竜華『怜……』
怜『竜華か……どしたん?』
竜華『いや……なんかぼーっとしとるみたいで、どしたんかなーと』
怜『……や、なんでもないで』
怜『マスターアップも無事に終わって、ちょっと気ィ抜けたんかな』ハハ
竜華『怜……』
怜『……』
怜『その……な』
竜華『サークルを立ち上げた時……?そらまた随分と懐かしいわぁ』
怜『……あの時は色んな事があったけど、あの時皆に出会えたおかげで』
怜『今の私らおるんやなと思うと……少しな』
竜華『怜……』
怜『……他の皆は、元気にしとるんやろかね』
「トーキー!リューカー!ちょっとこっち手伝ってやー!」
竜華『んもう、セーラはホンマしゃあないんやから……行こ、怜』
怜『……はは、ホンマやなぁ』
菫『……っ』
菫『この時期は休む暇も無いな……ったく』
「弘世さん、それ運んだら竹の間のお布団片付けてきて頂戴」
菫『はい!わかりました!』
宥『ふふ、菫ちゃんは頑張り屋さんだね』
菫『宥!そっちはこれからかい?』
宥『うん、沢山休憩取ったから頑張るよっ』
菫『はは、程々にな』
「弘世さん!いつまでそこにいるの!早く運んで!」
菫『は、はいっ!すみません!……じゃ、またあとでな、宥』
宥『うん、がんばってね』
咲『お姉ちゃん?』
照『準備は出来た?』
咲『うん、いつでも大丈夫だよ』
照『そっか……じゃあ行こう』
咲『うん』
………
……
…
照『……』
咲『お姉ちゃん?』
照『ん?どうしたの?』
咲『ううん、なんか遠くの方を見てたから……』
照『……』
咲『昔の事?』
照『”仲間たち”と出会った時のことだよ』
咲『ああ……一緒にエロゲーを語り合った仲間たちだっけ?』
照『うん』
照『あの人達に出会わなかったら、今の私もいなかったと思う』
咲『お姉ちゃん……』
照『……』
照『……咲、エロゲーは好き?』
咲『……うん、好きだよ』
咲『私も元々百合が好きだったから、すんなり馴染んだし』
咲『結果的に、こっちの道は私に合ってたみたい』
咲『エロゲーって楽しいよね!』
照『……うん、そうだね』
照『そう、咲がこれから働く……”KIYOSUMI”だよ』
咲『私、やっていけるかな……』
照『咲なら大丈夫だよ、天才的なライターになれる』
咲『お姉ちゃん……』
照『さあ、行こう』
咲『……うん』
――エロゲーは終わらない
私達のような人が エロゲーを心から愛する限り
私達の物語は終わらない
そして これから始まる
私と私達の新しい物語は
新たな歴史の1ページとして
人々に語り継がれていくだろう――
Fin
咲「……ふぅ、いい話だったなぁ……」
咲「やっぱエロゲーは最高だよぉ!」
咲「まさに人生だよね!」
咲「さて、おまけモードでも見ようかな……て」
咲「あぁっ!もうこんな時間!」
咲「早く学校に行かなくっちゃ!!」
咲「これ以上遅刻すると、また和ちゃんに怒られるよー!!」
咲「むぅ、徹夜でやってたから眠いけど……授業中に寝ればいいかっ」
咲「それじゃ、行ってきまーす!」
咲「エロゲーって楽しいよね!」 カン
当初は予定していなかったシリーズ物になってしまいましたが、
皆様のご協力と支援により無事完結する事が出来ました。
近々違うネタでここにSSを投下しようと思うので
また次のSSでお会いしましょう、ありがとうございましたっ(ぺっこりん)
乙としか言いようが無いですわ
面白かったぜ!
コークスクリュー乙
えっ最終回…?
Entry ⇒ 2012.10.25 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (3) | Trackbacks (0)
照「エロゲしてる所を咲に見られた……」
照「さ、咲っ!こ、これはそのっ……!」
照(なんてことだ……!よりによってエロシーンを見られたら言い訳できない!)
照(し、しかもまずい!今やっているゲームは!!)
咲「お、お姉ちゃっ」
照「さ、咲っ!冷蔵庫にプリンがあるんだ、一緒に食べ」ガタンッ ブツッ
『ふぁぁっ!!き、絹ぅ!アカン……アカンッうちもうっ!』
『お姉ちゃんっ……!お姉ちゃんっ!はぁっ……はぁっ!!』
照「」
咲「」
怜「うちがエロゲしてる所を竜華に見られてしもた……」
http://ssweaver.com/blog-entry-1836.html
洋榎「エロゲしてる所を絹に見られてしもた……」
http://ssweaver.com/blog-entry-1845.html
菫「エロゲしてる所を宥に見られた……」
http://ssweaver.com/blog-entry-1848.html
竜華「怜、今日もエロゲをするで!!」 怜「ファンディスクや!」
http://ssweaver.com/blog-entry-1852.html
照「さ、咲……これは……違うんだ……」
咲「……」
咲「……お姉ちゃん……そういう人なんだ……」
ガチャ バタム
照「さ……き……?」
照「……」
照(……え?)
照(どういうこと?)
照(咲に……エロゲしてる所を見られた……?)
咲「……」モグモグ
照「……」モグモグ
父「……なんだお前達、今日は随分と静かだな」
母「もう一緒に暮らし始めて、結構経つのにどうしたのかしらね?」
照「……」
照「さ……咲っ」
咲「ごちそうさま」ガタン
父「ん?もういいのか?」
咲「うん、この後やることがあるから」
母「あんまり夜更かしはするんじゃないわよ」
咲「うん」
照「……」
咲「……ふぅ」
咲(まさか……お姉ちゃんがえっちなゲームをする人だったなんて思わなかったよっ……)
咲(夕食の時、話しかけられそうになったけど……思わず逃げてきちゃったし)
咲(……)
咲(で、でもっ、お姉ちゃんがやってたゲームって……)
咲(多分……姉妹の奴だったよね……)
咲(お姉ちゃんも好きなのかな……)
咲(女の子同士の百合モノが……)
咲(……)
咲(あ、そういえば明日、コミック百合娘の発売日だ)
咲(早く寝ようっと)パチン
照「……」
照「はぁ……」
照(まさか咲に見られるとは思わなかった……)
照(それだけならまだしも……)
照(完全に無視されている……)
照(どうしよう……)
照「……」
照「そういえばトキとひろぽんが、エロゲバレしたとか言っていた気がする……」
照「あいつらの実体験から、何か得られるかもしれない」
照「私も相談してみよう」
――とあるネット掲示板で知り合った数人の猛者達が――
――互いに集い語り合う 淑女達のグループチャットである――
ピカリン:誰かいるか!
舞Hime:なん?
牛乳:もー、いきなりピコンて鳴るからびっくりしちゃったよもー
蓋:どうしたの?
ピカリン:誰だお前ら
牛乳:もー、ひどいなもー!
蓋:あまり私達はインしないから、忘れられてるのも仕方ないけどね
蓋:いつもログは見せてもらっとるけど
ピカリン:ああ……普段見かけないからすっかり忘れていた
舞Hime:仕方ないとよ
岩手の体エロい人
ピカリン:トキやひろぽんの奴はいないのか?
牛乳:今日はまだ来てないみたいですねー
蓋:珍しいね、あの人達はいつもいると思ってたけど
蓋:まぁ私達がこの時間にいるのも珍しいか
舞Hime:トキとひろぽの奴に何か用かと?
ピカリン:居ないなら仕方ない、この際お前達でもいい
牛乳:?
ピカリン:実は……
……
…
牛乳:えー!!妹さんにエロゲしてる所を見られたー!?
蓋:そ、それはまたなんというか……
舞Hime:どんまいだとよ
ピカリン:でだ、単刀直入に聞こう
ピカリン:私はどうすればいい
牛乳:どうすればいいって……
蓋:どうしたいの?
ピカリン:誤解を解きたい
舞Hime:正直に話した方がええとよ
牛乳:やっぱりそーだよねー
蓋:うん、正直に話すのがなんだかんだで一番だと思うよ
ピカリン:し、しかしだな
ピカリン:夕食の時も無視されたぐらいだ
蓋:無視は辛いね……
ピカリン:どう見ても嫌われているような気がする……
ピカリン:ああ……さきぃ……さきぃ……
牛乳:もー!くよくよしてても問題は解決しないよもー!
舞Hime:とにかく頑張るしかなかよ
蓋:話しかけなきゃ話も聞いて貰えないからね
照「……」
照「やっぱり正直に話すしかないか……」
照(でも今日はもう遅いし……)
照(明日にしよう……)
照(……)
店員「シャセェッス!!」
咲「これください」
店員「620イェンデァス!! チョゥドオァズカリシェス!! アリガトゥゴザィァシタ!!」
咲「……」
咲(きゅふふふっ)
咲(コミック百合娘、今週号は楽しみにしてるのがあったんだよね!)
咲(早く家に帰って読もうっと!)
「よよよ!?た、隊長~~!!あそこにサキちゃん似の子がいるでござるよ~~!!」
「なんだと~~!!我々の女神、サキちゃんがいたと言うのか!!」
「早速サキちゃんを保護するのだ隊員~!!!」
うらやま
咲「は、はい?」
「うひょ~~!!隊長~~!!まんまサキちゃんでござるよ~!!」
「こ、これはまんま”私の妹のエロさが嶺上開花でとどまる事を知らない”に登場するサキちゃんにそっくりなのです!!」
咲(え、な、なにこの人達……なんか怖い)カタカタ
「我々はついに2次元へと到達したのでござるな~~!!」
「ささ、サキちゃん!!我々とこっちに来るのです!!おねえちゃん達が保護するのだ!!」
咲「えっ、あ、あのっ、やめてくださいっ!」
「心配はいらないでござるよ~~!!隊長は超紳士でござるからね!!」
「さ、さあ、一緒に行くのだ!!」
咲「あ……や、やめ……」カタカタ
咲(や、やだ……!この人達気持ち悪い……!!に、逃げないとっ……!)
咲(誰か助けて……!!……――お姉ちゃん!)
照「……はぁ」
照(結局家に居てもやる事が無いから出てきてしまった……)
照(咲も家には居なかったみたいだし……)
照(適当に本屋で本でも買って帰ろう)
「えっ、あ、あのっ、やめてくださいっ!!」
照(……っ!咲の声!?)ピクッ
照(今の声……少し尋常では無い感じがする……!)
照(急ごう)
「さ、さあ、一緒に行くのだ!!」スゥーハァー
咲「あ……や、やめ……」カタカタ
『私の妹に何をしている!!』
咲「えっ……?」クルッ
「よよよ!!これはテルーでござるよ!!隊長!!」
「きたこれなのです!!姉妹キター!!」
照「私の妹に何をしていると聞いているんだ」ゴォッ
「お、おおふ……なんだこの人、テルーにそっくりなのになんかやばいよ玄さん」カタカタ
照「何をブツブツと言っている、さっさと私の前から消えろクズ」ゴォォオッ
「う、うぐぅ!!」
「う……お、覚えてやがれなのですーー!!うわあああああん、おねええちゃーーーん!!!」ドヒューン
咲「……」
咲「あ、あの……」
照「咲、大丈夫か?何かされなかったか?」
咲「えっ、あ、うん……だ、大丈夫だよ」
照「そうか……」ホッ
咲「……」
照「……」
照「……帰ろうか」
咲「……」
咲「うん……」コクッ
照「ただいま」
咲「……ただいま」
咲「……?お父さんとお母さんは?」
照「靴がなかった、どうやら出かけてるみたい」
咲「そ、そうなんだ……」
照「……」
照「じゃ、じゃあ、私は部屋に戻るから」
咲「あっ」
ギュッ
照「……咲?」
咲「……」
咲「もう少し……一緒にいて」
咲「……お願い、お姉ちゃん」
照「……」
照「わかった、咲の部屋に行こう?」
咲「……うん」
-咲の部屋-
咲「……」
照「……」
照「咲、大丈夫?」
咲「え、な、なに?」
照「……手、震えてる」
咲「あっ……」
照「ごめんね」
咲「え、お姉ちゃん……?」
照「私がもっと早く助けられてあげられたら……」
咲「お、お姉ちゃんが謝る事じゃないよっ!」
咲「わ、悪いのは……あの人達で……」フルフル
照「咲」
照「本当にごめん」
咲「……」
咲「……怖かったよ……お姉ちゃん」
照「うん……」
咲「私……あの人達に何かされると思うと……」フルフル
照「咲」
ぎゅっ
照「大丈夫」
照「咲はお姉ちゃんが守ってあげるから」
照「だから泣かないで?」
咲「おねえちゃん……っ……」
照「……」
照「咲」
照「私はね、咲に黙っていた事があるんだ」
咲「……?」
照「私は、ああいう連中の好きなゲームが大好きなんだ……」
咲「え……と……?」
照「その……えっちなゲームというか……ほ、ほら、咲も見ただろう、昨日」
咲「あっ……」///
照「もちろん私も違う、安心してほしい」
咲「……」
咲「お姉ちゃんは……」
照「……?」
咲「お姉ちゃんは……好きなの?その……女の子同士が恋愛してる……ものとか……」///
照(女の子同士の恋愛……?というと、百合……とかか?)
照(私が好きなのは妹モノだけど……一応女の子同士だし……)
照「まぁ……好きだけど」
咲「そうなんだ……」フフッ
照「咲?」
咲「……」
咲「あのね、お姉ちゃん。私もお姉ちゃんには言ってない事があるの」ガサガサ
咲「”コミック百合娘”……私、好きなの」
照「コミック百合娘……確か、女の子同士の恋愛をメインする漫画雑誌だったな」
咲「うん……私ね、こういうの憧れるんだ」
照「そ、そうなんだ」
咲「特ね、この”百鬼 藍子”さんが書いてる、”眼帯娘でも恋がしたい”が面白いんだよ」
咲「感情を顔に出すのが苦手な眼帯の女の子が、一つ上の先輩になんとか振り向いてもらおうと苦労するんだけど」
咲「麻雀をキッカケに、二人は通じ合うようになるの」
咲「これって、すごいロマンチックだよね」
照「う、うん、そうだね」
咲「あ、ごめん……私……百合の事になっちゃうとつい」
照「……いや、いいんだ」
照「咲はそうやって笑ってる方が可愛い」
咲「お姉ちゃん……」///
咲「……うん、お姉ちゃんと一緒にいたら安心したよ」
照「そっか……」
咲「あ、お姉ちゃん!」
照「……?」
咲「え、えっと……」
咲「さっきは……助けてくれてありがとう」
咲「あの時、お姉ちゃんが駆けつけてくれて……すごい嬉しかった」///
照「……ふふ」
照「私は咲のお姉ちゃんだからね」
照「咲の事は何があっても守るよ」
咲「お姉ちゃん……」
咲「うん、ありがとうお姉ちゃん」
照(ニコッ)
ガチャ バタム
照「……」
照「……ふふ」
照「ふふふ……ふふふふ」
照(咲と仲直りできたぞ……!)
照(エロゲ趣味を話しても引かれなかった)
照(咲がまさか百合趣味だったのは驚いたけど)
照(それはつまり、女の子同士の恋愛に興味があるという訳であって……)
照(姉との恋愛もオーケーという訳で……)
照「ふふふふ……」
ピカリン:諸君、私は最高に気分がいい
トキ:何言ってるんこいつ
ひろぽん:キモいわこいつ
ピカリン:今の私は何を言われても平気
かじゅ:妹さんと仲直りでもしたのか?
ピカリン:何故それを
蓋:過去ログ見れば分かると思うけど
ピカリン:誰だお前は
蓋:昨日相談に乗ってあげたのにそれは酷くない?
ピカリン:冗談だ
ひろぽん:しかしピカリンまで妹にバレるとはな
トキ:むしろこいつの場合、今までバレへんかったのがおかしいぐらいやろ
ピカリン:いや、普通に話したら受け入れてくれた
ひろぽん:ホンマかいな
蓋:言ったでしょう、こういうのは正直に話すのが一番なんですよ
ピカリン:しかも妹は百合が好きらしい
トキ:あー最近の高校生とか好きそうやもんな、ああいうの
ひろぽん:ピカリンの妹やから、てっきりエロいの読んでそうやと思ったけど案外普通なんやな
ピカリン:妹はいいぞ、最高だ
ピカリン:お前たちも妹ゲーをやってみたらどうだ
蓋:もしかしてその「妹」とはあなたの想像上の人物ではありませんか
ピカリン:ふざけんな!!私の咲はちゃんと実在すいくぁwせdrftgyふじこlp;
かじゅ:落ち着け
ピカリン:さすがだなひろぽん、妹の良さが分かるとは
トキ:ピカリンがシスコンなのは知っとったけど、ひろぽんお前もか
かじゅ:ひろぽんも確か妹がいるんだっけか
ひろぽん:いるでー!うちの絹はなぁ、そらもうおっぱいが大きいねんで!!
ピカリン:巨乳の妹などに興味はない、妹はやはり控えめなのが萌える
蓋:実の妹に萌えるとか、この人大丈夫?
トキ:知ってたけど相当やばい
かじゅ:私に妹はいないが、可愛い後輩がいてね
かじゅ:とても慕ってくれて可愛い子なんだ、なんとなく気持ちは分かるよ
ピカリン:妹と後輩と一緒にするとか……
ひろぽん:ないわー後輩は他人、妹は身内。しかもお姉ちゃんて呼んでくれる可愛い妹なんやで!
トキ:うちの後輩可愛くないしなぁ
かじゅ:こいつら……
トキ:さり気なくとんでもない事言いよったで
蓋:しかも今日はって言いましたよね、毎日やってるの?
ひろぽん:”妹に!メイド服を着せたら脱がすっ!”……雀荘で働く事になった妹がメイド服でお姉ちゃんを誘惑する奴やな
ひろぽん:うちも持っとるわ
ピカリン:さすがだな
ひろぽん:個人的にオススメなのは”メガネ妹は役満希望の大三元!?~責任とって中を捨ててよね!役満あねぇ!~”やで
ピカリン:メガネ妹が役満ばかり出す姉に、手取り足取り麻雀を教えるという……
ピカリン:さすがひろぽん、わかってるな
ひろぽん:せやろー
トキ:なんだこれは(驚愕)
かじゅ:こいつら本当に大丈夫か
蓋:この人たちの妹じゃなくてよかった……
蓋:コミマ?確か、東京で行われる大きなイベントですよね
かじゅ:そうだ
トキ:もうそんな時期なんやなぁ
かじゅ:みんなは行くのか?私は最終日に行く予定だが
ひろぽん:うちは初日に行く予定や
トキ:うちは2日目
蓋:私は行く予定が無いですね、興味はあるんですが……
ピカリン:私は全日だ
ひろぽん:ホンマやで、なんで大阪でやらへんのや!
かじゅ:しかし見事に全員バラバラだな、オフでも出来そうだったのに
ピカリン:私は全日だから誰とでも出来る
蓋:仮に行ったとしても、ピカリンさんとは会いたくないですね
トキ:せやな
ピカリン:なんでだ!!
かじゅ:お前は数行前の発言も読めないのか
ひろぽん:さすがのうちもちょっとピカリンとは会いたくないわぁ
ピカリン:こんなにも妹に愛される姉だというのに
トキ:だからやろ……
……
…
照「……」カタカタッーン
照「……ふぅ」
照(さて、エロゲをする前に……)ゴソゴソ
照(咲の写真でも見よう)
照(ふふ……やはり小さい頃の咲は可愛い)
照(もちろん、今の咲も可愛いけど)
照「……」ゴクリ
照(まずい、咲があまりにも可愛いものだから我慢できなくなってしまった……)
照(今日はエロゲまで我慢できない)
照(咲ニーで済ませてしまおう)
照「さ、咲っ……」ッチュ
照(ま、まずい、さっき咲の手を握った時の感触を思い出して……!!)
照(咲ニーが捗ってしまう……!!)
照「さ、咲ぃ……――――っ!!」ビビクンッ
ガチャ
咲「どうしたのお姉ちゃん?呼んだ?」
照「―――っ……!?さ、咲……?」
咲「」
照「」
つづカン
エロゲシリーズはネタ不足も相まってか、次回で最終回となります。
次も期待してる
Entry ⇒ 2012.10.25 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
照「演技の練習?」
いつもどおり行き当たりばったりでいきます
前スレのようなもの
菫「体育倉庫に閉じ込められるおまじない……?」
照「怜と久ってどっちがモテるの?」
照「怜と久どっちがモテるかに決着をつける」
照「保健室の荒川先生」
照(なんか……)
怜(久がまともなこと言い出した……)
久「私は演劇部の部長だし、こういうところでクラスに貢献しようかなー、って」ニコ
菫「おお……! 私は嬉しいぞ竹井! お前がそんなにもクラスのことを考えてくれてるなんて……!」
怜(委員長大喜びしとる……まあそらそうか。生徒会に演劇部に忙しいはずの久が、クラスに貢献、なんて言い出せば……)
久「そこまで珍しいこと言ってるつもりはないんだけど」アハハ
菫「しかし、とても良い事だとは思うが……あまりに気が早くないか? まだ劇の内容も配役も決まって無いぞ」
怜「ウチはとりあえず小道具あたりやろうと思ってたんやけども」
照「私も。目立ちたく無いから、出来れば裏方がいいんだけど……」
久「劇の内容もちゃんと考えて、配役もベストな人を選べば……ふふ、最優秀賞間違い無し♪」
久「きっとこの高校の歴史に名を刻むような物が生まれるわよ?」
菫「おお……!」
怜「なんかすごい話やなぁ」
照「あの、私は照明とかで……」
久「ってことでまあ、クラス劇を良くするためにも、今の段階から演技の練習をしておきましょう、ってことね」
菫「多いに賛成だ。準備は早いに超した事はない。早速今日から始めよう」
怜「まあウチは別になんでもええから、みんなに任せるけども」
照「えっと、私は人前で演技なんて絶対に出来ないから、裏方に……」
菫「演劇部? 大丈夫なのか?」
久「うん、小さい方の部室でやるから。それに何かあったとき部員の子たち呼べたりして便利だし♪」
怜「部長って立場は便利やなぁ」
照「あの、みんな。私の話を……」
久「面白い練習方法考えてるから、みんなきっと楽しいわよ♪」
―――――――――
久「さて、演劇の練習っぽくジャージにも着替えたし、早速演技の練習に移りましょう」
怜「具体的になにすんの?」
久「みんなにはこれからエチュードをしてもらうわ」
久「簡単に言うと即興劇ね。エチュードにも色々あるけど」
久「今回は何かシチュエーションを決めて、それに応じた役をアドリブで演じる。それだけ」
菫「それだけって……素人には難しく無いか? 」
怜「確かに。台本とかあった方が逆にやり易いと思うわ。いきなりアドリブで劇しろ言われても……」
久「普通はそうよね。だから、今回は台本半分アドリブ半分でエチュードをしてもらうわ」
久「シチュエーションや自分の役は最初から決められていて、台詞もある程度までは用意されている」
久「それで少し話が進行したあたりで台本に書いてある台詞が無くなるから、そこからアドリブ開始ってことで」
菫「なるほど……」
怜「それやったらまあ、ある程度はなんとかなるかもな」
照「あ、あの……」
菫「終わるタイミングはどうするんだ? 何か目的みたいなものがなかったら、寸劇がいつまで経っても終わらないぞ」
怜「途中で話が思いつかんなってアドリブが利かんくなるかもやしな」
久「それは大丈夫。こっちで寸劇における目標も指定しとくから、それを達成するために演技してもらえば」
怜「指定された目標を達成するために……」
久「ちょっと分かりにくいかもしれないけど、やってみればすぐに感じは掴めると思うわ」
久「最初は私がお手本を見せようかしら。相手は……あ、そこのあなた!」
>>22
菫さんの寿命がまた減ってしまう
宥「って、竹井さん? それに菫ちゃんたちも……」
久「ちょうど良いところに通りがかってくれたわ。松実さん今時間ある? 楽しいことしましょう」ニヤァ
怜(うわぁ……)
宥「た、楽しいこと……?」ゾクッ
菫「お、おい待て! 宥に何をする気だ竹井!?」
久「ちょっと練習に付き合ってもらうだけよ。取って食ったりしないから安心して」タハハ
菫「当たり前だ!! それより、付き合うって何に……」
宥「えっと、何の話、でしょうか……?」
久「松実さん、劇の練習しましょう! あなたの才能を腐らせるのはあまりに惜しいわ!!」
宥「ええっ!?」
久「そうそう。松実さんは主役級を演じるんだから、しっかりと練習しとかないと!」
宥「しゅ、主役!? そそ、そんなの無理です! クラス劇は私、小道具をするつもりで……!」アワワ
久「そんなこと私が許さないわ。松実さんみたいな素敵な人が小道具だなんて、断固拒否します」
宥「そ、そんなぁ……」
菫「何の権限があって物を言っているんだお前は……」
怜「でも松実さんが小道具は確かに勿体ない気がするなぁ」
照「小道具は私がするしね。松実さんはお姫様とか似合いそう」
宥「お、お姫様だなんてっ、わ、私には無理です!」
久「無理なのを出来るようにするために練習するのよ!」
久「やろうともしないで最初から諦めちゃうような子は……弘世さん嫌いって言ってたわよ?」
宥「え……」
菫「ま、待て待て。私はそんなこと一言も言っていない」
怜「似たようなこと照にいつも言っとるやん」
照『何故お前はやろうともせずに諦めるんだー。逆上がりくらい出来るようになれー』コエマネ
菫「何年前の話をしてるんだ!?」
久「それに弘世さんも松実さんのお姫様姿みたいわよね?」
菫「なっ……」
怜(お姫様やるのはもう決定なんや)
菫「……み、見たいか見たくないかなら、見たい、が……」シドロモドロ
照「素直に『見たいですだから頑張ってください』って言えばいいのに」
怜「そんな回りくどい言い方して。ホンマへたれやな」ハァ
菫「うるさい!!」
久「だ、そうよ?」タハハ
宥「で、でも……」モジモジ
久「松実さん、ちょっと頑張ってみない? 無理そうなら強要はしないから」
久「それに私が演劇部部長として手取り足取り優しく教えるから、ね?」
宥「竹井さん……」
菫(手取り足取り……)
照「卑猥な響きですわね。これはもう数時間後仲良く手を繋ぎながら下校する松実さんと久の姿が」
菫「……」ギロ
照怜「「ご、ごめんなさい……」」
久「よし、とりあえずやってみよう! はいこれ台本。これに書いてある通りに喋ればいいだけだから!」
宥「で、でもやっぱり……!」アワワ
久「だいじょーぶだいじょーぶ。初めての子はみーんなそう言うけどやってるウチにノリノリになるから」
久「はい、それじゃあ早速スタートねー」
宥「えええっ!? ま、待って……!」
怜(ゴリ押したなぁ……)
――――――――――
久『もうやめて宥……こんなことおかしいわ……』
宥「え、えっと……『ど、どうしたのお姉ちゃん、そんな顔して。何がおかしいの?』
久『早くこの鎖を解いて。もう一週間もこのままで……』
宥『く、鎖を解いたらお姉ちゃん逃げちゃうでしょ? そんなのダメだよ』
宥『お姉ちゃんは私と一緒にずっとここで幸せに暮らすんだから、絶対に逃げないって分かるまで鎖は解いてあげない……』
久『そ、そんなっ……』
宥『ふふ、ダメだよお姉ちゃん。そんなカオされると、私、変な気分に』
菫「おい、ちょっと待て」
久「どうしたの弘世さん。練習中だから邪魔しちゃダメよ?」
菫「どうしたのじゃない!! なんなんだその台本は!?」
久「いや、心を病んだ妹と気弱な姉だけど」
怜「なんていうか、薄々分かってたけども……」
照「面白そう……!」
久「まあまあ落ち着いて」
久「台本もそう数があるわけじゃないんだし、取っ替え引っ替えしてるとみんなの分なくなっちゃうから」
菫「こんなものが私たちの人数分あるのか……!」ワナワナワナ
怜(つまり、クラス劇の練習っていうのは表向きで)
怜(結局は遊びたいだけか……久らしいな……)
久「ふふふ♪」
宥「す、菫ちゃん落ちついて」アワアワ
照「二人とも、早く続きを。心を病んだ妹がどうなるか気になる」
宥「えっと、『そんなカオされると、私、変な気分に……』
菫「ゆ、宥!?」
照「菫うるさいっ」
―――――――――――
菫「んむっーーー!!」モガモガ
怜(割愛)
宥「す、菫ちゃん……」
久「練習の邪魔だからしょうがないわよね。クラスのためにも続きをしましょう」ニッコリ
照「松実さん、早く早く」
宥「は、はい……『そんなカオされると、私、変な気分になっちゃうよ……』
宥「あ、あ、あっ、あそっ……」カァァァ
怜「?」
宥『アソコもっ……! び、びしょびしょに……!』カァァァァ
菫「」
怜(エロい……)ドキドキ
久「松実さん、そこはもっとスラスラと言えるようにした方がいいわね」
宥「ふぇっ……!?」
久「変な気分になっちゃうよ、から少しやり直してみましょう。はい、どうぞ」
宥「え、えっ、えと……『へ、変な気分になっちゃうよ……あ、あ……アソコも、び、びしょびしょになって……!』
久「うん、さっきよりも良くなってるわ。あそこ、で噛んじゃったからもう一度言ってみましょう」ニッコリ
宥「は、はいぃ……」
宥『私、変な気分になっちゃうよ……あ、アソコも……び、びしょびしょに……』ナミダメ
久「うーん、可愛いんだけど、もうちょっとこう、感情を込め」
照「しゅ、修正はそのくらいにして、そろそろ次に……」
怜(アカン)
菫「……」ゴゴゴゴゴ
照(さ、殺気が……)
久「くふふ……弘世さん、顔赤く……くく……」
怜(ホンマええ性格しとるなぁ)
宥「あ、あの、竹井さん……こ、ここは帰って練習しときますから、次に……」プルプル
久「そ、そうね。くふふ……じゃあ、もう一度流れで通して進みましょう」
宥『私、変な気分になっちゃうよ……あ、アソコも……びしょびしょになって……お姉ちゃんのことが欲しいって……きゅ、きゅんきゅんするのぉ……』カァァァァ
久『な、なに言ってるの宥……? いや、やめて、来ないで……やだ……!』
宥「え、えっと」
宥(ゆっくりとにじり寄りながら……)
宥『うふふ、お姉ちゃん……宥と気持ちいいこと、しよ……?』
怜(なんやこの寸劇)
照「……」ドキドキドキ
宥(えっ!? こ、こんなこと……)ドキドキ
久「松実さん、続き続き」ボソ
宥「は、はい! 『……か、可愛いよお姉ちゃん、宥の大好きな、お姉ちゃん……』」ギュッ
菫「!?」
久『ひっ……! やだぁ、離してぇ……!!』
宥『お姉ちゃんが悪いんだよ? 私以外の女の人と仲良くするから……』
宥(く、首元に……キス……)
宥「……んっ」チュッ
久『あっ……』
宥(わ、私、竹井さんに……)
久「演技だから、ね?」ボソ
宥「は、はい……」
菫「……」
照「菫、可哀想……ちょっと泣いてる……」
怜「ロープ解いてもええんやけど、ごめんな委員長。これちょっとおもろいわ……くく……」
照「私も続きが気になるから……」
菫(コイツらを友人だと思っていた自分が恥ずかしい……!)
宥「え、えっと、続きいきますね」
久「うん♪」
宥『……お姉ちゃん、良い匂い。そのカオも可愛い……』
久『やめて宥……私たち、姉妹なんだよ……? こんなこと、もう……!』
宥『関係ないよ、そんなこと?』
宥『お、お姉ちゃんが私の事を好きになってくれないなら、好きになってくれるまで……え、えっちなこと、し続けるだけだから』
宥(う、内太ももをさする……)
久「っ……」
久(こ、こそばゆいっ……!)
久『ふぁっ……だめ、宥、それだけは……!』
宥『お姉ちゃん、宥と一つになろ? わ、私たち二人なら、いい、いっぱいいっぱい気持ちよくなれるから……』スリスリ
久『あっ……ふぁ……』
宥『ふふ、可愛いカオ。き、キス、するね…』
菫「……!!」
久『おねえ、ちゃん……』
久「ふふ、分かってるわよ。とりあえずフリだけで」ボソ
宥「は、はい……」
宥『ちゅ……』
久『んっ……』
怜(フリでもこういうの間近で見るんはキツいやろなぁ……)
照(このあとどうなるんだろう……)
菫(竹井……!!)
宥(えっと、次は)ペラ
宥「……あ、れ? 竹井さん、台本に台詞が書いてな……」
久「宥……」ギュッ
宥「!?」
久「やっとあなたの気持ちを理解できた気がする……」
宥「え、えとっ、たた、竹井さ」
久「ごめんね、宥……今まで寂しかったのよね、だから、こんなことっ……!」ギュウ
宥「ひゃあっ……!?」
照「きゅ、急展開……!」
怜「いや、明らかにアドリブ入っとるやろ」
菫「んんっーーーー!!」ジタンバタン
怜(まあ、久がどこまでやるかは知らんけども……流石に委員長が不憫やな)
宥「た、竹井さん! だ、だめ、ダメですっ! 私の台本、何も書いてなくてっ……!」
久「松実さん、アドリブアドリブ」ボソッ
宥「ふぇっ?」
久「そういう練習だから、頑張って」ニコ
宥「そそ、そんなこと言われても……!」アワワワ
久「これ、台本のここ読んで」
宥「ふぇ?」
宥「お姉ちゃんと幸せなキスをすると終了……」カァァァ
久「んで私が、妹を正常な状態に戻して終了」アハハ
宥(そ、そんなぁ……)
宥(え、えっと……)
宥「お姉ちゃん。やっと私の気持ちが通じたんだね……嬉しいよ……」
久「宥、今までの私を許して……あなたに怯え、あなたを理解しようとしなかった私を……」
宥「もういいよお姉ちゃん。そんな昔のことはもう……」
宥「で、でも、まだ許してあげない。お、お姉ちゃんの気持ちが本物だって証明してくれるまで、私は……」
久「証明って……」
宥「お姉ちゃんからキス、してくれたら……お姉ちゃんのこと信じてあげても、いいよ?」
久「そ、そんなぁっ……」
照(松実さんのアドリブすごい……!)
怜(早く終わらせたくてしゃあないんやろうなぁ……委員長がどう見るかは知らんけど)
菫「……」
久「違う! 嘘なんてついてない!」
久「私は本当に宥のことを……!」
宥「そ、それじゃあ、キス、出来るよね?」
久「それは……」
宥「ね、ねえ、キス、してよ……お姉ちゃんから、私に……」
久「宥……」
久(うーん、どうしよう……ぱっとやって終わらせてもいいんだけど……)チラ
菫「」チーン
久(……流石にこれ以上は可哀想ね)アハハ
久「……分かった。証明してあげる」キリッ
宥「ふぇっ!?」
宥「ひゃっ……た、竹井さん、まま、待って……!」
久「大好き、宥……」
宥(竹井さんの顔、近づいて……!)
宥「ごっ……」
宥「ごめんなさいこれ以上は無理です!!」バキィ!!
久「あぐぅっっ!?」
久(しょ、掌底……)
久「ばたんきゅう」
宥「あっ……」サーッ
怜(うわぁ……)
菫(宥……)ウルウル
宥「だ、大丈夫ですか竹井さん!? ごごご、ごめんなさい私反射的に……!」アワアワ
久「へ、平気平気……病弱娘とは鍛え方が違うから……」
宥「で、でもそんなにも辛そうに……! あ、荒川先生呼ばないと……!!」
久「それだけは勘弁して……」
怜「自業自得やな。でも結構おもろかったわ」
照「うん、面白かった。衝撃の結末だった。松実さんもお疲れ様。良い演技だった」
宥「へっ? あ、ありがとう……」
宥「だだ、大丈夫ですか竹井さん!?」
久「ノープロブレム。馴れてるから」ニッコリ
怜「なんで馴れてんねん」
照「流石女たらし序列1位だね」
久「その不名誉な呼び方はやめて欲しいわ」アハハ
久「……ひ、弘世さん? これはあくまで演技の練習だからね? 松実さんの合意の上だからね?」
菫「……」ジットー
宥「す、菫ちゃん……」
怜「まあ、あとで一発くらいは殴らせたり」
―――――――――――
久「」チーン
照(一発だけじゃすみませんでした)
宥「あわわわわ……」ガクガクガク
怜「委員長、ちょっとやり過ぎちゃう? 干物みたいになっとるで」
菫「……十分手は抜いたつもりだが」ギロ
怜「せ、せやろか」
照「でもちょっと可哀想。久は演技の練習でしただけなのに。松実さんも結構ノリノリだったし」
宥「ご、ごめんなさい菫ちゃん……でも、本気でやらないと練習にならないから……」アワワワ
菫「……バカ」
宥「す、菫ちゃん……」ウルウル
菫「どの口で言ってるんだお前は!!」
照「生き返った」
怜「殴られ馴れとるんやろ……」
久「とりあえず、やり方は教えたからもう大丈夫でしょう」
久「次行きたい人ー?」
菫「まさか続ける気なのか……?」
久「当たり前。このままだと殴られ損だわ」
怜「久はタフやなぁ」
照「さすが……!」キラキラ
久「もう適当に決めるわ。次>>108さんね」
照、菫、怜の誰かで
菫「わ、私?」
怜「頑張ってー。委員長なんか宝塚っぽいから案外イケると思うわ」
照「菫が演技するなんて信じられない。すごく楽しみ」
菫「あ、あのなぁ……」
久「松実さんもちょうどいるんだし、カッコいいとこ見せるチャンスよ?」ボソ
菫「うるさい。顔を近づけるな」グググ
久「ひどーい。そうだ。相手役松実さんにやってもらう?」
菫「もう黙れお前!!」
怜「でも実際のとこ相手どうすんの?」
照「今ここにいる私たちの誰かか……」
久「通りすがりの誰かでいいでしょ」
お相手 >>122
菫「誰も通らないな」
久「まあ、演劇部の部室って基本部員以外は来ないしね」アハハ
照「松実さんはどうしてここに?」
宥「えっと、教室のゴミ捨ての帰りに……」
怜「ウチゴミ捨てのときこんな場所通った事無いわ」
菫「そもそもお前は何かと理由を付けてゴミ捨てにいかないだろ……」
照「!」
照「誰か来る」
「「えっ?」」
久「そこのあなた!」
玄「は、はい!」
怜(犠牲者が決まってもうたか……)
菫(出来るだけ穏便に済ませたい物だが……ん?)
久「可愛い!」
玄「ええぇっ!?」
久「あなたみたいな可愛い子が演劇をしないなんて勿体ないわ! ぜひ演劇部に入ってちょうだい!」
玄「そそ、そんなっ……! いきなりそんなこと言われても困り」
玄「えっ、お、お姉ちゃん?」
玄「そ、それに……!」
照「?」
玄「み、宮永さん……」
照「この前はお世話になりました」ペッコリン
玄「いえ、そんな……」
宥「?」
菫「そうか、宥は知らないんだったな……」
怜「まあ、あの一部始終見てたのウチらだけやしな」
久「ふふ、これは面白くなりそうね♪」
玄「えっと……あ、お姉ちゃん。クラスの用事か何かで集まってるの?」
宥「うん、演劇の練習で……クロちゃんは?」
玄「私はゴミ捨ての帰りで……」
菫(宥の妹……そういえばあのとき、照や福与先生と一緒にいたな……)
菫(あの事件の被害者の一人でもあるし……一体何の縁なのか……)
久「松実玄さん、単刀直入に言うわ。演劇の練習に付き合ってくれない?」
玄「え、演劇の練習?」
玄(ってこの人、生徒会長だ……)
久「そうそう。実はね……」
照(なんか)
怜(蚊帳の外になりそうな予感……)
―――――――――――
玄「そうなんですか……でも、どうして私に……?」
久「弘世さんの練習相手は松実さんの妹である玄さんにしか努められないの」キリ
怜(嘘付け)
玄「わ、私だけだなんて、そんな……」アワワ
玄「クラス劇なら、私みたいな下級生で部外者の人間が関わるよりも、それこそ宮永さんやお姉ちゃんの方が……」
久「宮永さんさっきからずっと嫌がってるのよ。照明がやりたいとかで」
照「目立ちたく無い」
久「それで、松実さんはさっき私と一緒に練習しちゃって」
宥「う、うん」
久「んで、もう一人は病弱だから動きたくないんだって」
怜「なんでもええよー」
玄(り、理由が……)
玄「用事は無いです、けど……」
菫「……嫌がっているんだ。無理にやらせることもないだろう」
菫「練習ならいつでも出来るし、それこそ照や園城寺に付き合わせればいい」
照怜「「え」」
菫「引き止めて悪かった、松実玄さん。もう帰ってもいいよ」ニコ
玄「弘世さん……」
宥「年上で知らない人ばかりだし、無理しなくていいよクロちゃん?」
菫「そうだな。わざわざ宥の妹さんを巻き込むことでもない」
玄(お姉ちゃんのこと、下の名前で呼んでる……)
宥「菫ちゃんの相手は、その、別に私でも……」ゴニョゴニョ
玄(お姉ちゃんも、弘世さんのこと……)
久「ふむふむ……」
玄「は、はい……?」
久「この機会を利用すれば、弘世さんのことを詳しく知れるかもしれないわよ?」ボソ
玄「!」
久「気になるんでしょ? 弘世さんのこともお姉さんとの関係も」
玄「そ、それは……」
久「ここは私に任せてみない? きっと玄さんの胸の中をスッキリさせることが出来るから。ね?」
玄「……分かりました。私、やってみます」
久「ふふ、決まりね♪」
菫(一体何の話を……?)
菫「えっ……? あ、ああ……」
宥「く、クロちゃん……?」
久「お姉ちゃんのクラスに貢献できるなら、って。快く承諾してくれたわ♪」
怜(口説き文句が気になるなぁ。ま、松実さん関連やろうけど……)
照「菫と松実玄さん……不思議な組み合わせ……」
菫「お前と玄さんのがよっぽど不思議だ」
宥(菫ちゃんと、クロちゃんが……)
久「それじゃあ、はいこれ台本。二人とも頑張って頂戴」
照「楽しみ」
菫「はぁ……」
玄(弘世さん……お姉ちゃんの……)
――――――――――――
菫『こんばんは、玄』
玄『菫さん……こんばんは。今日も、来てくれたんですね」
菫『ああ。二日に一度は来ると彼女に約束したからな』
玄『本当にありがとうございます……どうぞ、あがっていってください』
菫『ああ、お邪魔するよ』
照「これはどういう設定なの? なんだかシリアスな雰囲気」
久「それはまあ、お話が進んでからのお楽しみで」
怜「てかあの二人普通に上手いな。全然噛まんし、自然やわ」
照「二人がどういう関係なのか気になる……!」
宥「……」
菫『……ああ、そうだな。だからと言って、することは特に変わらないが』
玄『お姉ちゃん、きっと喜んでいます。こうやって、今でも菫さんが会いに来てくれて』
菫『……こうやってここで目を閉じると、彼女がすぐ側にいるような……そんな温かい気持ちになるんだ』
菫『ただその温もりを少しでも感じたくて、風化させたくなくて……私はここに来続けてるのかもしれない』
玄『菫さん……』
菫『自分でも未練がましいと思う。いつまで前を向かないつもりだと周囲に諭されることもある』
菫『ただ、それでも……私にとって最愛の人は彼女ただ一人だけなんだ』
菫『いなくなっても、会えなくても。この気持ちが変わることは絶対にない』
菫『だから安心してくれ、玄さん。私は死ぬまで彼女を思い続ける』
玄『……菫さん。お昼、食べましたか?』
菫『いや、そういえば何も……』
玄『何か作ってきますね、少し待っていてください』ニコ
菫『ありがとう。助かるよ』
照「……」ウルウル
怜「なあ久、この脚本流石に酷すぎると思うんやけど……」
久「あ、あくまでフィクションだから。それに、この二人が演じるから無粋なことを妄想してしまうだけで」タハハ
宥「……」
―――――――――――
玄『お待たせしました。昨日余った食材で作った簡単なものですけど……』
菫『とんでもない。ありがたく頂くよ』
菫『……うん、おいしい』
玄『ふふ、ありがとうございます』
菫『やっぱり、玄さんの料理は彼女が作る料理の味にとても似ているな』
玄『ここでご飯食べるたびに言いますよね、それ』フフ
菫『実は泣きそうになっていたりするんだぞ? あまりに似ていて……懐かしくてな』アハハ
玄『菫さんさえよければ、私はいつでも待ってますから』ニコ
菫『ふふ、ありがとう。その気持ちだけでもすごく嬉しいよ』
菫『玄さんは本当に優しくて綺麗で、よく出来た女性だ。どうして今でも独り身なのか不思議でならないよ』
玄『また、そんな冗談を……』
菫『本心からそう思ってる。まだまだ若いし、魅力的なのに……どうして身を固めようとしないんだ?』
菫『君ほどの女性なら、相手には困らないだろうに』
玄『そ、それは……』
玄『……』
菫『玄さん?』
玄『わ、私にも、色々と事情があるんです。それに、今はお姉ちゃんのことも……』
玄『そんな……』
菫『心配しなくとも、私は再婚なんて絶対にしない。死ぬまで彼女一人を愛し続けると誓う』
菫『彼女が住んでいたこの家だって、玄さんがいなくなっても私が守り続ける』
菫『だから、玄さんはもっと自分の幸せを考えて……』
玄『それなら、菫さんの幸せはどうなるんですか……?』
菫『えっ……?』
玄『さっき年齢のことを言いましたけど、菫さんだってまだ28歳です……』
玄『こんなにも若い時期から最愛の人を亡くして、それでいて残りの人生、全てを捧げるなんて……そんなの……!』
菫『私は彼女を裏切るような真似は絶対にしない』
菫『彼女を失ったその時に決めたんだ。彼女と彼女が残した全てのものを、この残りの人生の全てで守り通すと』
玄『菫さん……』
菫『玄さん。私にとって君もそうだ。かつて彼女が愛した、たった一人の妹』
菫『私はそんな君を幸せにする義務と責任もあるんだ』
玄『やめてください……義務や責任なんて言葉、聞きたく無いです』
菫『玄さん……』
玄『それはつまり私がお姉ちゃんの妹だから、色々と良くしてくれたり気遣ってくれているってことでしょう……?』
玄『そんなもの……!』
菫『っ……』
玄『……菫さんにとって、私ってなんですか……?』
菫『玄、さん……?』
玄『お姉ちゃんの妹じゃなかったら、菫さんにとって私はただの他人なんですか……?』
菫『そ、そんなことは……』
玄『菫さんは、私に死んだお姉ちゃんを重ねています……』
菫『……!』
玄『この家に来て、私に会うことで……今でも死んだお姉ちゃんの名残を探して、しがみついているんです』
菫『ち、違う……私は……そんな……!』
玄『お姉ちゃんの気持ちを勝手に想像して、自分の体に巻き付けて』
玄『私にお姉ちゃんを重ねて……覚めない夢を見続けて』
玄『でも……私はどうなるんですか……?』
玄『お姉ちゃんが愛した菫さんを……好きになってしまった私はどうすればいいんですか……?』ポロポロ
菫『玄……さん……』
玄『それでも菫さんと一緒にいたいから、菫さんを少しでも感じていたいから、お姉ちゃんの真似をして……』
玄『私という要素を少しずつ削って、そこにお姉ちゃんの面影をあてはめて……』
菫『……』
玄『菫さん……好きです、愛しています……』
玄『お姉ちゃんばかり見続けないでください……私のことも見てください……』
玄『松実玄を、愛してください……』ギュウ
菫「……玄、さん……』
照「ひぐっ……」ポロポロ
怜(なんでガチ泣きやねん……)
久「それにしても、迫真の演技ね……」
宥「あぅ……」
怜(松実さん、顔めっちゃ赤い……)
怜(まあそりゃ、あんだけ自分と思われる人物のことで盛り上がってればなぁ……)
菫(……ここから台詞が無くなっている)
菫(台本には、告白を受けてもなお、最愛の人を思い続けて終了、とだけ書いていて……)
菫(つまりはアドリブ開始……はぁ。竹井のヤツ、こんな台本をよりによって私に……)
菫(最愛の人を、思い続けて……)
玄(台本には、死んだ姉の最愛の人と結ばれて終了、って書いてあるけど……)
玄(ど、どうすれば結ばれて……)
菫「……ごめんなさい」
玄「えっ?」
菫「私には……松実宥さん以外の女性を愛することは出来ません……」
宥「……!!」
玄「そ、そんな……」
菫「私が玄さんに彼女のことを重ねてしまっていたのは……事実です」
菫「彼女の言葉を自分の中で作り上げ、それを糧にあの日から生きてきたのも……事実です」
玄「……」
菫「私は自分自身のエゴで、玄さんを深く傷つけてしまっていた……」
菫「玄さんを私という存在に縛り付けてしまっていた……」
菫「どれだけ謝罪の言葉を重ねても、今の私に償う事はできません……」
玄「謝罪の言葉なんて、いらないです……」
玄「私が本当に欲しいのはただ一言、菫さんの……」
菫「……その言葉を紡ぐ事も、できません」
玄「どうして……どうして……!?」
菫「彼女以外の人に愛の言葉を手向ける事は……私の彼女に対する想いの全てを」
菫「私と彼女が過ごして来た在りし日の全てを否定する事になります」
菫「それだけは……私には出来ません……」
玄「……なら、嘘でもいいです……」
玄「嘘でもいいから……心はいらないから……」
玄「今日だけ私を、好きになってください……」ギュゥッ
菫「玄さん……」
玄「私のこと、お姉ちゃんと思ってくれてもいいです……菫さんが望むなら、私の全てをお姉ちゃんにします……」
玄「だから……だからっ……」
玄「そんな顔、しないで……」
菫「……ごめんなさい」
玄「……!!」
玄「そん、な……」
菫(……もういいだろ。終了条件はとっくに満たしているはず……)チラチラ
久「?」
久「……」ウーン
久(続行!)
菫「!?」
菫「い、一体どういうつもりだたけ……」ガシ
菫「く、くろ、さん……?」
玄「……」
菫「へっ……?」
玄『嫌です……そんなの、絶対に……!』グイッ
菫「きゃっ……!」
宥「!?」
菫(お、押し倒されて……)
玄『菫さん……好きです……』
菫「なっ……」
玄『菫さんが愛してくれなくても、私は愛してます……誰よりも、菫さんのことを……』
菫(ま、まだ続行する気なのか……!?)
照「な、なんか盛り上がって来た……」
怜「松実玄さんの様子おかしない?」
久「もしかしたら役になりきっちゃってるかもしれないわね」
宥「……!」
菫(くっ……!)
菫「や、やめてください玄さん! こんなこと……!!」
玄『菫さんがいけないんですよ……?』
玄『私の気持ちも知らずに、お姉ちゃんお姉ちゃんって……』
玄『お姉ちゃんのことなんて、私が忘れさせてあげます……』ウフフ
菫「!?」
菫「や、やめっ……」
玄「ごふぅぅっ!?」ドガッシャーン
菫「ゆ、宥!?」
怜(ものすごいタックル……)
久(また綺麗に机と椅子の山に突っ込んだわねー……)
宥「あっ……クロちゃ……」サーッ
玄「だ、大丈夫だよお姉ちゃん……おかげで、目が、覚めた……」チーン
宥「クロちゃぁぁん!?」
照「またしても衝撃の結末……死んだはずのお姉ちゃんが生き返って、菫を守った……」
怜「なんでやねん」
菫(今……本気でキスされそうに……)ドキドキドキ
―――――――――――
照(玄さんは菫と松実さんの手で保健室へと運ばれました)
久「弘世さん行っちゃったし、今日はこれ以上練習出来そうにないわね」
怜「結局このオチ……既視感すごいわ……」
照「松実さんは口より先に手が出るタイプらしい。今日で確信した」
久「それにしても、弘世さんも松実さんも今日でかなり演技上達したと思うわ」
久「いやー、また優秀な人材を育ててしまった」エヘヘ
怜「委員長は元から上手やったし、松実さんは台本朗読やったと思うけど……」
怜「てか演技練習してる人、ロクな目に遭ってない……」
久「次は宮永さんと園城寺さんの番ね。これまた面白くなりそうで楽しみだわ♪」
照怜「「勘弁して……」」
終わり
遅くまで支援ありがとうございました
お疲れ様でした
Entry ⇒ 2012.10.24 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (2) | Trackbacks (0)
菫「魔法少女シャープシューター☆スミレだ」
菫の部屋
仁美「ふー。やーっと落ち着いたばい。やっぱ風呂はよかね。気持ちリフレッシュ」ゴシゴシ
仁美「おー。ドライヤーで急速に髪が巻き戻るー」ゴーーーー
仁美「…ふう」
仁美「…」チラッ
仁美「…お、そうだ。冷蔵庫にカフェオレ入れてたんやった」ガチャッ
仁美「うしうし、冷えとる冷えとる」
仁美「…」チラッ
仁美「…いただきます」プスッ
仁美「チュー…」
仁美「…」チラッ
菫「…」イライラ
仁美(めんどくさ。まーだ引きずってるんかいあいつは)
菫「あの石戸霞とかいうババア。いつか殺す。あっさり殺す。絶対殺す…」ブツブツ
仁美(しかも自分の目指す正義の味方像にあるまじき呪詛吐いとるし)
仁美「ん?」
キラキラシャラーン
仁美「な、何の音だ!?」ビクッ
キラキラシャラーン キラキラシャラーン キラキラシャラーン
仁美「あわわ、ま、まさかかすみんが何か仕掛けて!?ば、馬鹿な。昼にやっとこさ逃げたのに…」
菫「…はい、もしもし。弘世ですが」ピッ
仁美(着信音だとぉおお!?)メェー!?
菫「…あ」
『こんばんわー☆菫ちゃん!それに、仁美ちゃんもっ!』
仁美「おおう。その声」
菫「瑞原プロ…」ホッ
仁美(…なんだはやりんか)ホッ
菫「…一体どうされたんですか?」
はやり『んー?あはは。聞いたよ、仁美ちゃんから。こっぴどくやられたんだって?』
仁美「ん。うちが連絡した」
菫「…はあ」ガクッ
仁美「チュー…」
菫(…まあ、あれだけ好き放題されて、師匠に報告しない訳にもいかないよな。くっそ。格好悪い…)ズーーン
はやり『あれ?菫ちゃん?』
菫(あれもこれも全部あの奇乳のせいだ。糞。糞。舐められっぱなしで終われるか。絶対復讐してやる。畜生…!)
はやり『おーい』
菫(…仕方ない。ここは正直に話すか…)
はやり『菫ちゃーーーん』
菫「…すみません」
はやり『ん?』
菫「聞いてくださいよ!瑞原プローーーー!!」ガーーーー!!
はやり『うわっ!?』
「おまえには魔法少女の才能がある」
「魔法少女?」
『メェー』
「『風潮』被害」
「ネトウヨだこいつ!?」
「ふはははー!全てはヒトラー総裁の為にーーーー!!」
「いえーっす☆はやりんだよー☆」
「ふふ…面白い子、見ぃつけたぁ♪」
「あ、あの…どうしたの菫…怖い顔…」
「ポリポリ」
「あの野郎逃げやがったああああああああああああああああああああああ!!!」
「次は…殺すわ…」
菫「いいだろう。なってやるよ、魔法少女!!」
http://ssweaver.com/blog-entry-1778.html
仁美「チュー…」コクコク
菫「ええ…ええ…で、それで、情けないことに全然歯が立たなくて…」
はやり『そうだったんだ。ごめんね。朝までの段階では、まさかかすみんが帰って来てるなんて思わなかったんだ。昨日の夜に大阪で風潮被害を追いかけてるって情報があって、それで問題ないと考えちゃって』
菫「悔しいです…仁美から聞きましたよ。奴も私とそれほど変わらない時期に魔法少女になったんでしょう?なのにあそこまで実力の差があるだなんて」
はやり『あの子は特別だからねー。私だってあの子相手には多分結構手こずるんじゃないかな』
菫「けど、一矢だって報いることが出来なかった。こんな屈辱は生まれて始めてです。…くっ!」
はやり『随分落ち込んでたみたいだね。もっと早く電話してあげられれば良かったんだけど、本業の方が忙しくて電話にも出られなくって。…私のミスだね』
菫「…」チラッ
はやり『今やっとプライベート携帯確認出来たくらいなんだ』
仁美「」ゴソゴソ (←本棚の少女漫画漁ってる)
菫《カフェオレで汚すなよ。殺すぞ》(念話)
仁美「」ビクッ
はやり『菫ちゃん?』
菫「あ、すみません。少々しつけを」
菫「あ、あと、電話の件。仕方ないですよ。瑞原プロの落ち度では無いのでお気になさらず。念話も離れすぎていると出来ないようですし」
はやり『念話は精々1kmってところかな。そうだねー…。…ねえ、菫ちゃん。かすみんの事、どう思う?』
菫「ある意味、暴走風潮被害よりも許せません。魔法少女の力をあんな風に使う奴が居るなんて。それも強大な力の持ち主が」
はやり『うーん…普段は意外に結構真面目に魔法少女してる子なんだけどね?』
菫「そうなんですか!?」
はやり『うん。実際ね。あの子一人で九州の南部の風潮被害の大半を抑えられてるし。お陰で九州の魔法少女はみんな随分楽が出来てるって聞くし。ちょっと怖がってるけど」
菫「それほどの奴なんですか」
はやり「どころか、最近は暇を持て余してるのか強大な風潮被害者が多い大阪とかまでよく出張してるくらいだもん』
菫「それって私が鹿児島まで行く必要なかったんじゃ…」
はやり『それは菫ちゃんに経験値を積んで貰う意図も有ったからだよ。それにあの子、さっきも行ったけど前日の夜に大阪に居たしね。…結果的に私の判断ミスだったし、そのせいで菫ちゃんを危ない目に合わせちゃったけどね」
菫「…」
はやり「けど、かすみんだって目に付いた魔法少女全部襲うような子でもないし、凶暴性を唆られるような強い子以外だったら他の魔法少女と協力する事さえあるんだよ?』
菫「…俄には信じられません。あいつ、私を大阪で見かけた時から目を付けていたと言っていましたし」
はやり『普通の新人さんに目を付けるような子じゃないんだけどね。あ、あと、私と再会した時も意外と礼儀正しかったな。「あの時は暴走する前に助けて下さってありがとうございました」って』
菫「あまり嬉しくないです。それに私はあいつ大嫌いですしね」
はやり『まあまあ。きっと、いつか和解出来る日も来るって』
菫「少なくとも、それは私が一回はあいつを叩きのめしてからですが」
はやり「もぉー」
菫「今度あったらギッタンギッタンに…」イライラ
仁美「やめとけやめとけ。されんのがオチたい」
菫「…」ポカッ!
仁美「メ゙ッ!?」
はやり『菫ちゃーん。どうしたのー』
菫「いえ、あはは。なんでも…」
仁美「いたたた…凶暴性だけならほぼ互角だって保証してやるよ」サスサス
菫「しかし、憧れの瑞原プロとこうして電話出来るようになったっていうだけでも魔法少女になった価値があったなぁ」ギリギリ
仁美「ヒールホールドはガチ過ぎるからラメェェエエエエエ!!」ジタバタ
はやり『じゃ、じゃれ合いもほどほどにねー…☆』
菫「っと、いけない。話の腰を折ってしまった。申し訳ありません」
はやり『う、ううん…。仲いいねー』
菫「そんな事は無いと思いますが…ところで、今回電話して下さったのには、どんな用件が?仁美の事です。報告なんて私がかすみんにやられたっていう話くらいでしょう?」
はやり『うん。メールで菫ちゃんがギッタンギタンのケッチョンケッチョンのボロッカスにやられて、仁美ちゃんのとっさの機転でギリギリ紙一重切り抜けたって書いてあったから、心配で…』
菫「へえ…」ギロッ
仁美「」ダラダラ
菫(…ま、あながち間違ってもいないんだが)
菫「…まあ、当たらずとも遠からずと言ったところです。さっきも言ったようにまるで手も足も出なかった」
はやり『そっか…』
菫「…」ギリッ
はやり『…ちょっと安心したな』
菫「へ?」
はやり『気持ちまで折られてない感じで』
菫「…まあ、これでも曲者ぞろいの白糸台麻雀部で1年間部長をしてきた人間ですので。多少の挫折如きで一々折れていられませんから」
菫「や、止めて下さい。なんか照れくさい…」
はやり『そんな菫ちゃんに、私からのプレゼント☆』
菫「は…はあ」
はやり『魔法少女としての特訓方法教えちゃいますっ!』
菫「!!」
はやり『ついでに、軽く魔法少女と風潮被害についておさらいしておこうか』
菫「よろしくお願いします!」
はやり『お~。ヤル気ある良い返事だね~☆』
菫「それで強くなれるなら!」
はやり『よしよし。それでは~』
菫「…」ドキドキ
はやり『まず、私達魔法少女について!』
菫「はい!」
菫「…」チラッ
仁美「チュー…」ペラッ
菫(頼むから本汚してくれるなよ)ハラハラ
はやり『うん。よし、それじゃあ、魔法少女とは何なのかっていうところから!』
菫「なんなのか…ですか?」
はやり『そうでーす☆魔法少女とは、何者か!実はよくわかっていません!』
菫「え?」
はやり『魔法少女がいつから現れ、何故存在するのか!その正体を知ってる人はゼロです☆』
菫「ぜ、ゼロって…」
はやり『わかってるのは、マスコットって言われる子達が先に存在して、その子達に導かれるようにして私達魔法少女が生まれるっていうこと』
菫「そうなんですか…」
はやり『だから、よく魔法少女の仲間内でも色々議論あるんだよね。私達は一体どこから来てどこへ行くのかー!って』
菫「…」
はやり『でもまあ、一応目下の目的があるからみんなそんなに悩まないでやってられるんだけどね』
はやり『そう。風潮被害』
菫「…私には、こっちのほうがわからない。風潮被害とは一体なんなんですか?一体何故そんなものが」
はやり『それもあんまり良くわかってないの』
菫「…」
はやり『風潮被害って言うのは、読んで字の如く人々の間で広がる虚偽の風潮がそうであるように世の中を書き換えてしまう事象。それはもはや強制力をすら持って発動し、やがて暴走する』
菫「…」
はやり『酷い話だよね。例えば、一人の女の子が居るでしょ?その子が本当は心優しい文学少女だったとして、その子が驚くぐらい凶悪な人間だってっていう風潮が出来たら、その子は本当に凶悪な人間になってしまう』
菫「ええ。私も何人かと対峙しましたので、わかっているつもりです」
はやり『風潮によっては性格どころかポンコツになったり、体格まで変わったり、ひょっとしたらもっと凄い、私達も知らないような風潮もまだまだあるかも…』
菫「…」
はやり『けど、それで不幸になる人が現れないように、被害を未然に防ぐのが私達魔法少女でもあるんですっ☆』
菫「…ふふ。ですよね」
はやり『魔法少女とはこの世の法則より解放されしモノ。魔を操り、超常の力を行使する…常套句だけどね』
菫「ああ。それは仁美からも聞いたことがあります」
菫「ええ」
はやり『そういう超常的な力、その中に風潮被害を浄化する力も備わっている私たちは、清く正しく有りましょうって事で。ようは…』
菫「ええ」
はやり『魔法少女の本質は愛と希望の象徴なのです☆』
菫「ですよねっ!」
はやり『うんっ!それだけ覚えてれば十分!』
菫「やあ、やはり瑞原プロの講義は勉強になるなぁ!」ウキウキ
はやり『いえー☆』
仁美(アホらし)チュー
菫「よーし!俄然ヤル気が上がってきたぞ!瑞原プロ!次の講義を!」
はやり『おまかせあれ!それじゃあ、次はマスコットについて』
菫「はい!」
はやり『マスコットはね。人を、魔法少女に導く者』
はやり『そして、人をマスコットへと導くものは、『声』。…らしいね』
はやり『マスコットたちの話によると、ある日突然、『声』が聞こえてきて、使命に目覚めるらしいよ』
菫「…なのか?」
仁美「ん」ペラペラ
菫「…」
仁美「まあ、どっかからな。聞こえてくるんよ」
仁美「『パートナーを探せ』。『魔法少女を生み出せ』。『共に戦い、風潮被害を倒せ』。…で、こうムラムラと行動しなきゃいかん気になって…」
菫「…」
はやり『…私たちは自分自身に関して余りにも色々わからない事だらけだけど…まあ、これが一番の謎…かもね』
仁美「…」チュー…
菫「謎の声…か」
はやり『で、その声とともにその子は強制的にマスコットとなって、パートナーとなる魔法少女になる才能のある人間を探すの』
はやり『普通手がかりなしでそんな出会いは出来ないと思うんだけど、まるで引かれ合うように巡り合う…らしいよ』
菫「…それが、仁美には、私だったと」
はやり『素敵な縁だよね☆』
菫「…結構多彩ですね」チラッ
仁美「…」シャカシャカ
菫(歯磨いてるし。もう寝る気だコイツ)ハァ
はやり『だよねー。特に風潮被害の感知に関しては普通の魔法少女とは比べ物にならないくらい凄く優秀だから、凄く助かるよ!』
菫「へえ…」
はやり『マスコットに関してはこれくらいかな?えーっと、あとは…何話そうか。何か質問ある?』
菫「そうですね…」
はやり『私に分かることだったら、なんでも答えるよー』
菫「なら、一点」
はやり『はい!』
菫「その…魔法少女っていうのは、何か組織だったものとかはあるんですか?」
はやり『うーん…』
菫「?」
はやり『有るって言えばあるし、無いって言えば無いって言うか…』
はやり『基本的にみんな自由にやってるんだけど、連絡網だけはしっかりしてる。みたいな』
菫「なんですかそれ」
はやり『風潮被害が凶悪で自分一人の力で手に負えない時は助けを求めるのも簡単だし、協力もしようって思ったら出来るけど、なんかやり辛いと言うか…』
菫「…ますますわかりません」
はやり『…つまりね』
菫「…ええ」
はやり『魔法少女って、みんな成る前から大体知り合いなんだよね』
菫「…」
はやり『…』
仁美「くー…かー…」
菫「…はい?」
はやり『知り合い』
菫「…」
はやり『もっと言うと、麻雀部』
はやり『びっくりしたでしょー』
菫「…ええ」
はやり『ちなみに風潮被害者もそうだよー☆』
菫「…確かに、今まで出会った風潮被害者は…」
はやり『なんでなんだろうねぇ~』
菫「…」
はやり『麻雀をやってる人間の中に特別な才能を持ってる人間が多いのか、才能持ちが麻雀に惹かれるのか、はたまた偶々なのか。わかんないけど』
菫「はあ…」
はやり『知らない街で魔法少女に会った!って言ったら、大体知り合い』
菫「ははは…」
はやり『まあ、最近は若い子も増えてきて、私は知らないけど私の番組見てましたーって子も多いけど』
菫(マジか!)
はやり『あははは~☆』
菫(こんな狭い業界だったのか!)
菫「…ああ」
はやり『がっかりした?』
菫「え?」
はやり『思ったよりスケール小さくって』
菫「いや…そんな事はないと思いますけど…一歩間違えたら被害事態は甚大じゃなくなりそうですし」
はやり『…ま、なんにせよだけど』
菫「…ええ」
はやり『わからないことが多過ぎるんだ。今は。だから深く考えてもしょうがないよ』
菫「…」
はやり『私達に出来ることは、風潮被害を未然に防いで、不幸になる人を一人でも減らすことだけ』
菫「…そうですね。それが一番大切です」
はやり『うんっ☆』
菫「…ふふ」
はやり『それじゃあ、次に、菫ちゃんが魔法少女として強くなる方法!』
はやり『まずは、変身前』
菫「はい!」
はやり『筋トレ。単純に変身した時の身体能力も上がります。スタイルも良くなって一石二鳥』
菫「…はい。地味ですが、説得力があります」
はやり『格闘技…も、習った方が有利に成るだろうけど、そこまでは難しいか』
菫「うーん…まあ、DVDで勉強くらいはしてみます」
はやり『それでも効果はあるよ。変身したら単純な身体能力以外にも運動神経とか反射神経諸々向上するから。やろうと思えばどんな技でも出来ちゃう』
菫「はあ…」
菫(肉弾重視だなぁ…まあ、プリキュアも結構格闘してるし良いんだが、もっとこう…魔法的な…)
はやり『あとは、魔法だね』
菫「!!はい!!」
はやり『魔法は、沢山戦闘経験を重ねて、今使える魔法を実戦で沢山使って、徐々に慣らしてくしか無いかな』
菫「…」
はやり『ちなみに私は最初からなんでも使えちゃいました。ごめんなさい…』
はやり『ご、ごめんね…』
菫「いえ、いいんです。才能という壁に立ち塞がられた経験なんて、それこそこの3年間何度でも…」
はやり『あわわわ!菫ちゃん!ご、ごめん!ごめんなさいって!落ち込まないで~』
菫「はあ…まあ、なんとか工夫してみますよ」
はやり『う、うん…協力は惜しまないから…』
菫「それよりも」
はやり『うん?』
菫「私なんかのために色々とお手を煩わせてしまって、申し訳ありません」
はやり『へ?』
菫「だって。基本、魔法少女は群れないんでしょう?」
はやり『…』
菫「それなのに、私みたいな唯の新人を最強の魔法少女たる瑞原プロが目をかけてくださり…」
はやり『ああ…それなんだけどね』
菫「はあ」
菫「?」
はやり『…勿論これは風潮被害じゃなくて、実際に形成されてきた風潮だし、暴走とかはしないけど』
菫「…ええ」
はやり『私、寂しいなって』
菫「…」
はやり『常々思ってたんだけどね。ただ、なんとなく慣例的な物があって誰も異議を唱えてこなかったし、そうする必要性も今まで無かったし、それで上手く回ってたんだけど』
菫「…」
はやり『…でも、なんとなく、ね。この風潮も、打破…してみようかなって』
菫「…」
はやり『ねえ、菫ちゃん』
菫『…はい』
はやり『だから』
はやり『私と』
はやり『魔法少女隊、結成してみない?』
はやり『…どう?そしたら、その…危ない時に助け合ったり、師匠みたいな事も、沢山してあげれるし…』ゴニョゴニョ
菫「喜んで」
はやり『やた!』
菫「…ふふ」
はやり『やった!やった!ありがとう!ありがとう!』
菫「ふふふ…いえ。こちらこそ。憧れの人の傍で戦えるなんて、こんなに素晴らしいことはありません」
はやり『ありがとうねー!それじゃあ、今この瞬間に、魔法少女隊結成だ!』
菫「ええ。初代プリキュアのような最高のタッグを目指して行きましょう」
はやり『え?』
菫「…ん?」
はやり『…』
菫「…」
はやり『…あ、そっか』
菫「…へ?」
菫「…何を…ですか?」
はやり『うんとねー。確かに今はまだ二人なんだけど』
菫「…ええ」
はやり『最終的には、もっと…初代セーラームーンみたいに5人は欲しいかなーって』
菫「…おお」
はやり『それでね。勿論前口上とか決めポーズとかも格好良いの付けたりなんかして』
菫「うんうん。それは必須ですね」
はやり『で、最終的には、合体技なんかも作っちゃったりして』
菫「いいですねぇ」
はやり『それでね!それでね!お揃いのコスチュームとかも揃えて!』
菫「おおー!あ、でも衣装は変わらないんじゃ…」
はやり『魔法で瞬間着替えするのあるよ!頑張って覚えて!』
菫「やった!頑張ります!」
はやり『あと、イルミネーション魔法も!』
はやり『おお!わかってるねあの子!』
菫「いけ好かないやつですが、口上も有ったし、美学には共感出来るところが多々…」
はやり『うむむむむ!欲しい!』
菫「えー…」
はやり『いいじゃない!反発する者同士、共通の目的の為に共に戦う的な!』
菫「それは確かに王道ですが、実際にやるとなるとどうしても心情が…」
はやり『うー…じゃあ、仲直りしたらねっ!絶対だからねっ!』
菫「無いとは思いますが…」
はやり『いえ~い☆』
菫「…で、話を戻しましょう!」
はやり『ん?』
菫「ここはやはり、取り敢えず二人でもキメれるような口上を…」
はやり『うん!うん!そうだねー!それじゃあ…~~~!』
菫「いやいや、ここは…~~~!」
菫「いいですね。そうしたらまず瑞原プロが~~~~」
はやり『もうっ!水臭いぞ!はやり☆って呼んで!』
菫「わかりました!はやりん!」
はやり『変身後はマジカル☆はやりんだよっ!』
菫「あっ!そういえば私まだ決めて無かった…!」
はやり『なに~!それじゃあ今から考えるよー!』
菫「わかりました!はやりん!」
仁美「…」モゾッ
はやり『~~~~~』
菫「~~~~~」
仁美「…」チラッ
はやり『~~~~~~~~~~!!』
菫「~~~~~~~~~~~~~~!!!」
はやり『~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!』
菫「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!」
はやり『~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!』
仁美「…」
仁美(うるせーーー…)ゴロン
菫「それじゃあ、私は魔法少女シャープシューター☆スミレを名乗るということで!!」
仁美(決まったんかい)
はやり『オッケー☆じゃあ、前口上、一回合わせてみようか!』
仁美(今やるんかい)
菫「人々の小さな幸せを踏みにじる風潮被害は許さない!純潔なる一輪の花!魔法少女シャープシューター☆スミレ!」
仁美(何が一輪の花だ。ってかスミレの花言葉並べただけやろがそれ。お前毒持ちのニオイスミレだろが)ゴロゴロ
はやり『お星様に変わって、お仕置きよ!キラキラ光るみんなのアイドル!魔法少女マジカル☆はやりん!』
仁美(表現が一々古いな!)
菫はやり「『二人は!シューティグ☆スター魔法少女隊!!』」バーーーン!!
仁美(だっせえええええええええええええええ!!!)メエエエエエエエエ!!!
仁美(…静かになりおった)
菫「…マズイです。はやりん」
はやり『…うん』
仁美(ようやく我に返ったか。恥じれ恥じれ)ゴロゴローン
菫「テンション上って来た!!」
はやり『私も!!』
仁美(マジで!?)メェ!?
菫「これは…!今晩は眠れないかもしれない…!!」
はやり『私も!!』
菫「もう一個!もう一個考えましょう!」
はやり『わかった!!』
菫「それじゃあ、今度は敵が悪さしてるところに割り込むシチュエーションで…」
はやり『絶対許さない!って言う台詞はどっかに欲しいよね…!それとそれと…』
仁美「…」
仁美「…せからしかぁ…」ハァ
仁美「メェ~…」
第六話
「シャープシューター☆スミレとグダグダ前口上」 終わり
ガチャッ
菫「お、お邪魔します…」コソコソ
仁美「ちーっす」テクテク
「ん?おや、君は白糸台高校の…」
菫「ど、どうも…弘世です」カチコチ
「これは珍しいお客さんも来たもんだ。…ああ、もしかしてお目当ては瑞原プロかい?」
菫「ええ。彼女とはその…多少親交がありまして。本日、公開収録のご招待を預かりました」
「ははは。今は、牌のおねえさんとして子供達に麻雀の指導をするコーナーの収録中だよ」
菫「そうですか…」
「そう。そしてここは、子供達の保護者の皆様方がその様子を見届けられる観覧席って訳さ」
菫「はあ…」
仁美「チュー」ゴクゴク
「あ、ちょっと君。ここは飲食は禁止だよ」
仁美「チッ」
仁美「…分かった分かった。今飲み終わったから捨ててくるばい」スタスタ
「…」
菫「あ、すみません。連れがとんだ無礼を…」ペコリ
「あ、いや…構わないさ」
菫「どうも今日はあいつ機嫌が悪くて」
「ははは…」
菫「しかし凄いご父兄の人数ですね」
「ふふふ。まあね。なんて言ったって、この番組は超人気番組だから」
菫「…」
「この、『麻雀で遊ぼう!』は」
菫(某局教育テレビの超人気番組『麻雀であそぼう!』)
菫(牌のおねえさん演じるはやりん…瑞原はやりプロは、この生放送番組で子供達相手の授業方式という形で、麻雀の基礎を教えている)
菫(基本的なルールから点の計算方法、麻雀の楽しさ、トレーニング方法などをコミカルな歌や遊びで誰にでも分かりやすく説明する、麻雀への入門番組だ。広く若年層への麻雀普及への貢献度は、テレビ史上でも白眉に値する)
菫(どころか、毎年状況判断や河の見極めなどについても最新の理論を取り入れて再構成が為され、何年経っても新鮮さが薄れず、その視聴層は若年者に留まらず、プロにも参考にされる程だという)
菫(…かく云う私も、そのファンの一人だ。毎回勉強になるし、なにより難解な筈の最新の理論をプロの解釈で噛み砕いたものを分かりやすく勉強できるという点で、非常に勉強になる)
菫(それと、衣装とか可愛い)
菫(…こほん)
菫(…ところで、何故そんな番組に私達が今日招待されているのかと言うとだが…)
仁美「…」テクテク
菫「戻ってきたか」
仁美「…けったくそ悪いわーここ」
菫「ふふ…まあ、そう言うな」クスッ
仁美「なんで善良なる一般市民たるうちが売国奴のマスゴミの連中共と同じ空気を…」ブツブツ
菫(マジカル☆はやりんから、風潮被害の微かな反応を感じ取ったと連絡が有ったからだ)
菫の部屋
菫「テレビ局に…ですか?」
はやり『うん。どうも、最近教育テレビのスタジオに出入りしてる子の中に、風潮被害者が居るみたいで』
菫「ええ」
はやり『まだ反応が微弱で誰かっていうのは特定できないんだけどね。たまにスタジオや帰り道の廊下で、気配の残渣を感じるんだ』
菫「大変ですね。もしも万が一、生放送中にでも暴走なんてされたら」
はやり『うん。最悪だね。日本中に風潮被害の事がバレてしまう。そこまでなっちゃったら、魔法で被害者の記憶を消すとかももう追いつかないだろうし…』
菫「そうしたら、どうなるんです?」
はやり『風潮被害のキャリアってバレたら、きっと迫害されるよ。石持て追われる、ってやつだね。いつ暴走されるかわからない隣人なんて、たまったものじゃない』
菫「…」
はやり「勿論一般人には簡単に特定は出来ないだろうけど…でもだからこそちょっといつもと様子が変だぞってなったら、どんどん疑心暗鬼が広がっていっちゃう」
菫「…想像するだに恐ろしいですね」
はやり『それに、私達魔法少女だって同じ。特定だってされやすいしね。人間を超えた力を持ってる者は、ただの人間には怖がられる』
菫「やれやれです。お約束とは言え、現実は厳しい」ハァ
菫「聞いたか羊。お前いつか言ってたが、新聞社なんて襲撃したら歴史に残る大悪人として魔法少女に滅ぼされるってよ」
仁美「どーせ力奪うために魔法少女に集団レイプされるだけやろ。おまえが。うちに関係なか」メッヘッヘ
菫「あ?」スッ
仁美「なんでもなか!」
はやり『…ま、それはともかく。私はこれから数日の間に暴走するであろう風潮被害者を未然に特定して、浄化しようと思ってます』
菫「なるほど。まだはっきりと特定出来ないような段階でも、風潮被害者に最接近すれば特定して浄化出来るんでしたっけ」
はやり『そーそー』
菫「となると、必要なのは調査力…」
はやり『あと、人手だね!』
菫「…うん?」
はやり『ところで菫ちゃん。明日のお休み、夕方って暇じゃないかな~』
菫「…ええ、そうですね。その時間は私はいつも家で『麻雀であそぼう!』を見ているので…」
はやり『おっ!視聴者様でしたか!いつもありがとうございます☆』
菫「いや…あの…はい。…それで?」
菫「ええ」
はやり『その日公開収録があるから、その時間に教育テレビのスタジオにおいでよ!話は通しておくから☆』
菫「な!い、いいんですか!?」
はやり『もちもち♪私を誰だと思ってるの!牌のおねえさんだよ~☆』
菫「それは…確かにそうですが…」
菫(だからと言って、いいのか?番組に参加する子供だけでも競争率何十倍、大友入れれば何百倍の超人気番組の公開放送に、コネで入らせて貰うなんて!)
はやり『勿論タダだとは言わないよ?ちゃーんと、菫ちゃんにも働いてもらいます!』
菫「…それは勿論構いませんが…と、言うと」
はやり『放送終わった後に番組の責任者の人達と番組に関して何十分かの打ち合わせがあるんだけど、その前にスタジオの撤収があって、いっつも私は1時間の休憩を貰っているの』
菫「…はい」
はやり『その間に一緒に風潮被害者を探して欲しいなって』
菫「!!」
はやり『私あんまり探しものは得意じゃないし、時間も少ないし、菫ちゃんと仁美ちゃんが一緒に探してくれるとすっごく助かるんだ』
菫「~~っ!なっ!なるほど!」プルプル
菫「っ!っ!っ!」ピョンピョン
はやり『駄目…かな?』
菫「万難を排して行きます!!」
はやり「そ、そっかー。それじゃあよろしくね。詳細は後でメールで送るから…」
菫(ついに…)
菫「はい!!」
菫(ついにはやりんと一緒に戦える!!)
仁美「…」
仁美「…ふぅ」
菫「ふふふ…楽しみだ…」ニヤニヤ
仁美「だらしない顔しおってからにこの女は…」
菫「はやりん…すみすみ…二人は魔法少女…」ブツブツ
仁美「おい。おい。菫」ユサユサ
菫「…おっと、なんだ仁美。急に揺するな」
仁美「やかましい。変な妄想に浸ってるな怪しまれるぞ」
菫「…むう」
仁美「しっかりせーよ?ったく…ここは日本人の敵の総本山ばい。気を抜いたら何されるかわからん」
菫「お前はまだそんな…」
仁美「それと」
菫「ん?」
仁美「収録終わったっぽい」
はやり「みんなー!今日もありがとうねー!それじゃあ、またあしたー!ばいばーい☆」フリフリ
子供達「「ばいばーーーい!」」
はやり「…」ニコニコ
「…はい、カットでーす」
はやり「…ふう」
はやり「君たちも、ありがとうねー☆」
子供A「わーい!」
子供B「はやりおねえさん、ありがとー!」
子供C「ありがとうございましたー!」
子供D「楽しかったー!」
はやり「うふふふふー。はやりも楽しかったよー☆」
子供E「わーい!」
はやり「さあ、みんな。パパとママがあっちのお部屋で待ってるから、はやりおねえさんと一緒にスタジオに出ようねー」
子供F「はーい!!」
はやり「あ、ADさん!すみません。私はこのまま子供達を親御さん達に引き渡してきますので、その後は…」
AD「はい、わかってます。明日の打ち合わせの前に1時間ほど休憩ですよね?もうDからは承諾得てますので」
はやり「すみません。すぐにするべきだとは思ってるんですが…」
AD「仕方ありませんよ。子供たちの相手は体力を使いますし」
はやり「ふふ。なんだかんだ年ですかねー」
AD「えー?瑞原プロ全然お若いですってー。羨ましいくらい」
はやり「あはは。お世辞はよして下さいよ。褒め殺しなんて、怒りますよ?もうっ!」
AD「ははははは」
子供G「はやりおねえさーん!早く行こうよー」
はやり「おっと。ごめんねー?キミ。それじゃあ、行こうか」ナデナデ
子供G「うんっ!」
はやり「では、失礼します」ペコリ
AD「…立派な人だなぁ。あの若さでプロとしての地位も確立して、テレビの仕事すら卒なくこなすとは…」
AD「あの人になら、親御さんも安心して、子供達を任せられるな」ウンウン
「…」キョロキョロ
「…ここじゃ…ない」ボソッ
「…」コソコソ
バタン
はやり「お疲れ様でしたー」ガチャッ
菫(あ、はやりん!)
子供A「わーい!おかあさーん!」タタタタ
母親A「おかえり~。どうだった?」
子供A「楽しかったー!」
母親A「そっかー。よかったねー。おねえさん、優しかった?」
子供A「うん!」
はやり「ふふふ。ありがとう。はやりも楽しかったよ~☆」ナデナデ
子供A「おねえさん!」
はやり「また遊びに来てねー?」ニコニコ
子供A「うん!」
菫「いいなぁ…」
仁美「ほー」
仁美「あんなに子供にも保護者にも好かれて…なんだかんだ人気者なんやねー」
菫「素晴らしい。やはり憧れのはやりんは人格者だった」
仁美「メェー」
菫「その羊の鳴きマネして茶化す癖止めろ…って、瑞原プロ来た」
はやり「ごめんねー。お待たせっ☆」
菫「いえ。お構いなく。…大変ですね」
はやり「そう?子供達の相手、楽しいよっ!」
菫「ふふ…羨ましいです。私は子供や動物に怖がられるから」
はやり「そうなの?」
仁美「やはり本能的な危険を察知し…いたたた!こら!止めい!穏やかな会話のままの表情で首引っ掴むな!」
はやり「本当、短期間で随分仲良しになったねー。それじゃあ衣装の着替えもしたいし、まずは楽屋に一緒に行こっ☆」
菫「ははははは。ええ、よろしくお願いします」スタスタ
仁美「メェヘエエエエ!?」ズルズル
菫「…で、風潮被害者を見つける手段なんですが」
はやり「うん。ごめんね。私だけだとどうしても反応が追いきれなくて」
菫「まあ、我々は魔法少女ですので」
仁美「…ん?」
はやり「うん。そこで、マスコットの仁美ちゃんに…」
仁美「タンマ」
菫「仁美?」
仁美「…」ジー
はやり「…どうしたの?」
仁美「いや、どうしたのっち言うか…」
はやり「…」
菫「…あ」
仁美「はやりんのマスコットは?」
はやり「…」
はやり「あー…」
仁美「思えば、今までの会話に一回も名前すら出とらん」
菫「確かに。今どちらに?遅ればせながらも、はやりんと魔法少女隊を結成したからには、御挨拶をしなくては」
はやり「…」
仁美「…ん?」
菫「…あの」
はやり「…」
仁美「…?」
菫「えっと…」
はやり「ま、まあ、その辺の話は追々って事で」
仁美「はぁ~?」
菫「え…」
はやり「う、うん!そうだ!今ちょっと遠くに行っててね!皆に会わせてあげられないんだ!だから、帰ってきたら!帰ってきたら改めて紹介するから…」
菫「は、はあ…」
仁美「んー…」ジトー
はやり「うわーん!お、お願いだからそんな目で見ないでよー!」ギュー
仁美「…なんやこれ」
菫「仁美」
仁美「ええの?」
菫「はやりんが口を濁したという事は、私達に伝えられない事情でもあるんだろ。余計な詮索は好きじゃない」
仁美「…まあ、ええけど」ブツブツ
はやり「ご、ごめんねぇ…」
仁美「貸一個…」
菫「いやいや。協力体制にそんなの要らんから」
はやり「ううう…本当にごめんね」
仁美「ま、それじゃあパパっと探してみますかねー」
仁美「……すー……はー……すー…」
仁美「…んーーーー」
仁美「何人か怪しいなーってのの気配はおるけど…」
仁美「…ん。こん人かいな?」
菫「この人?」
はやり「…」
仁美「…うん。近か。3部屋隣の楽屋たいね。そこに居る人、なんかそれっぽい気配感じる」
はやり「!!」
菫「随分精度が高いな…って、3部屋隣の楽屋?」
仁美「ん…多分やが…あんま確信は持てんっちゅーか…」ブツブツ
菫「煮え切らないなぁ…」
仁美「仕方なかろう。なんつーか、反応がまだ微弱たい」
菫「…まあ、とにかく近くに行ってみないことには始まらないか。どんな人物がそこに居るのかも気にな…」
はやり「小鍛治プロ」
菫「…」
はやり「…その部屋は、小鍛治健夜プロの楽屋…だね」
本当にアラフォーになってるとか?
健夜「…」ペラ…ペラ…
健夜「ズズ…」
健夜「…コクン」ペラ…
健夜「…ふう。ちょっと目が疲れちゃった。休憩」パサッ
『スイート婚活女子応援特集 30代の輝ける貴女へ 年収1000万以上のイケメン高身長爽やか男子と結婚するための方法』
健夜「ふふ…なんだか、この雑誌読んでたら私も今年中に結婚出来る気がしてきた。結構簡単なんだね」
健夜「早速この本に載ってる事を実行して、近所でやってるお見合いパーティーに行こう」
健夜「どんなパーティ-が良いかな。雑誌で紹介してるやつだと…あ、これなんか良さそう。参加費1000円。お持ち帰り自由。一緒に爽やかな汗を流しましょう」
健夜「新じゃが芋掘り大会」
健夜「えーっと、連絡受付の電話番号は…」
コンコン
健夜「…ん?」
コンコンコン
健夜「誰だろう?」
健夜「こーこちゃんかな?さっきオフだから遊びに来るって言ってたし。…はーい。開いてますよー。どうぞー」
ガチャッ
健夜「いらっしゃい。今コーヒーでも…」
健夜「…」
健夜「…え」
菫(青のミニスカメイド服+黒ニーハイ)「どうだ?」ヒソヒソ
はやり(白の同上+白ニーハイ)「ここまで近づいたらわかると思うけど…」ヒソヒソ
健夜「瑞原…プロ…?」
仁美「うん。間違いなさげやね」ヒソヒソ
はやり「よし。それじゃあ、本人はまだ自覚無さそうだけど、やっちゃうよ。記憶操作は後でなんとでもなるから」ヒソヒソ
菫「しかし、まだ唯の一般人みたいなものなのに、大丈夫なんでしょうか…」ヒソヒソ
仁美「面倒なる前にやっちまったほうが楽ばい」ヒソヒソ
健夜「あ、あのぉ…その格好は…それに、一体何の話を…」
はやり「それじゃあいくよ。せーの…」ボソッ
菫「変身!」シャランラ
はやり「変身☆」キラリン☆
健夜「え…」
菫「人々の小さな幸せを踏みにじる風潮被害は許さない!純潔なる一輪の花!魔法少女シャープシューター☆スミレ!」
健夜「…」
はやり「お星様に変わって、お仕置きよ!キラキラ光るみんなのアイドル!魔法少女マジカル☆はやりん!」
健夜「…」
菫はやり「「二人は!シューティグ☆スター魔法少女隊!!」」
健夜「…」
菫はやり「「悪い風潮被害は、ポイポイのポイー!」」ビシッ
健夜「…」
菫はやり「「…」」ドヤァ
健夜「いや、特に姿変わってないよね!?むしろ最初っから変身後みたいな格好してきたよね!?」ビクッ
健夜「っていうか、何しに来たんですか貴女達は!!」
はやり「私としては、もうちょっと口上までに溜めを作った方が…」
仁美「帰りたい」
健夜「しかも速攻で反省会もみたいなのしてるし!?」
菫「…っと、そうでした。今はこんなことをしている場面ではなかった」スッ
はやり「あ、うん。そうだよね。てへぺろ」
健夜「もういい加減そろそろきついです!瑞原プロ!」
菫「…」パタン…ガチャガチャ
健夜「なんでさり気なく入り口のドアの鍵かけてるの!?」
菫「仁美。人が近くに来たら声かけろ」
はやり「一応防音の結界と人払いの魔法はかけておくから…」
健夜「な、なに…何が始まるの…」カタカタ
菫「小鍛治プロ。これより浄化作業に入ります。なるべく苦しまないように努力いたしますので、抵抗はされない方が懸命かと」ジリジリ
はやり「大丈夫。ちょっと苦しかったり痛かったりするけど、目が覚めた後にはもう記憶とか抜け落ちてるから…」
健夜「怖いよ!?不安だらけだよ!?」
健夜(なんか拳鳴らしてるし)
はやり「菫ちゃん、一人でやってみる?」
菫「そうですね」
健夜「何を!?」
菫「では、申し訳ありませんが…」スタスタ
健夜「ちょ…ちょっと…ホント、なんなの…」オロオロ
菫「んー…効率良く且つ格好良く相手を無力化する技は…」ブツブツ
健夜「や…ちょ、やだ、やめて、来ないで…」ブルブル
菫「よし、決めた。マジカル☆ボーアンドアローで」
※参考画像
健夜「超地味かつ肉体派!?」
菫「すみません。これも仕事なんです。被害は未然に防げるに越したことがありませんし」ジリッ
健夜「ちょ…」タジッ
菫「本当はこんな事やりたくないんですが」ウキウキ
健夜「だったらなんでそんな嬉しそうなの!」
健夜「や、やめて!今日私服のワンピースなんだからそんな技かけられたら…」
菫「引っ掴んで引きずり倒すっ!」ブンッ
健夜「いやああ!?」ドサッ
菫「ふんっ!」メキメキッ
健夜「いたああああああああああ!!?」ボキグキグキッ
菫「はっはっはー」ユサユサ
健夜「あががが」メシメシメシ
仁美「おーおー。効いとる効いとる」
はやり「頑張れ菫ちゃーん!」キャッキャ
菫「がんばりますよー!」ユッサユッサ
健夜「あ、あふ…ケホ…」
はやり「そういえば」チラッ
仁美「うん?」
はやり「あの子の風潮被害ってなんだったの?」
健夜「は…あ…あう…たすけ…こー…ちゃ…」
仁美「ああ」
菫「んー。なかなか落ちませんね。小鍛治プロ、早く落ちないと大変な目に合いますよ」ギシギシ
健夜「こ…ちゃ…」ビクッビクッ
仁美「あれは」
菫「まあ…その、突如降って湧いた理不尽な暴力に対する怒りと絶望と諦観に満ちた怯えた小動物の目も…嫌いじゃないですがっ!」ギチッ!
健夜「はぐっ!?」
はやり「うん」
菫「けど…可愛すぎて、私、歯止めが効かなくなってしまいそうです」ギチギチ…
健夜「…」ビクビクビクッ!
仁美「未然に防げたからまだ兆候くらいしか見えてなかったけど」
菫「…ん?」
はやり「うん」
健夜「…」ガクガクガク
健夜「…」ドサリ
菫「…調子に乗ってやり過ぎてしまった。一応退治、完了…です」
はやり「…お疲れ。それは…なんていうか、私達の年代にとっては究極に恐ろしい風潮の1つ…だね」
菫「…も、申し訳ありません小鍛治プロ…って、気絶してるよな…」
仁美「よくやった。では誰かに見つかる前にさっさとずらかるばい」
はやり「お疲れ様。今後も今回みたいに早期解決できれば楽なんだけどね。…そろそろ時間も無いし、アフターケアは勘弁してもらおうか。一旦私の楽屋に戻ろう」
菫「…ふう」
仁美「チュー…」
菫「何飲んで…ああ、自販機の紙パックか。好きだな。カフェオレ」
仁美「ん」チュー
菫「はやりんも仕事に行ってしまったし」
仁美「仕事終わりにファミレスば行くんだっけか?」
菫「ああ。祝勝記念に奢ってくれるらしいぞ」
仁美「よっしゃ」
菫「ふふ…なんだか、好き放題暴れてそのご褒美っていうのも、なんだか妙な感じもするが…」
仁美「…チュー…」
菫「…そういえばお前、あれだけ嫌がってた割に今回意外とおとなしかったな。なんだかんだ弁えてるしサポートとしては…」
仁美「…」ビクッ
菫「有能…ん?」
仁美「…」サッ
仁美「メ、メヘ…」ダラダラ
菫「何故冷や汗をかく」ジーーーー
仁美「え、えっと…」ダラダラダラ
菫「…」
ダダダダ
はやり「大変だよ二人共!!」
菫「はやりん!?」
仁美「…」
はやり「大変大変大変なんだから!」
菫「お、落ち着いて下さい!一体に何が…」
仁美「…」ソーッ
はやり「さっき、なんだかスタジオをこそこそ見回ってるスタッフの人が居てね!」
菫「…はあ」
はやり「怪しいんで声掛けて事情をこっそり聞いてみたら、なんとさっきテレビ局に爆弾を仕掛けたって言う犯行声明が!!」
菫「…」チラッ
仁美「…」カサカサ
はやり「なんでも、『コノ国ノ腐敗ノ根源タル貴様等マスゴミニ天誅ヲ下ス』って…」
菫「…」ガシッ
仁美「!?」ジタバタ
菫(まさか、最初にジュースを見咎められてどっか行った時か…まさかまさか、あそこで見咎められたのすらコイツ、計算ずくか)
はやり「怖いよねー…私達魔法少女も、風潮被害が噛んでないと流石に手を出しにくいし…」
菫「…悪戯なのでは?」ハァ
はやり「私もそうだとは思うけど…けど、最近ほら、マスコミに対する嫌がらせとかも多いし、みんなこういうのにピリピリしてるんだ」
仁美「ククク…ザマア反日組織め。怯えるが良い。貴様らが敵に回した救国レジスタンス、我ら『ネトウヨ』の見えざる影に…」ボソボソ
菫(こいつは…)
はやり「と、とにかく!万が一の事があったら事だし、閲覧の人達はもう大体帰ってたけど、関係者以外は早急に避難を…」
菫「…」
仁美「メッヒヒヒ…ざまあ。ざまあ。帰った後の2chが楽しみばい…」ニヤニヤ
菫《おい羊》 (←念話)
仁美《し、知らんし!うち何のことだかさっぱりわからんたい!》
菫《本当に仕掛けてはいないんだな?あ?答えろよ殺すぞ》
仁美《…お、おう。仕掛けてません》
菫「…」
仁美《…あ、あの…》
菫「…はあ」
はやり「ね、だから二人共。申し訳ないんだけど、祝勝会はまた今度にして…」
菫《お前なぁ…》
仁美《れ、連帯責任…》
菫《脅すな。…くっそ…だが、ここでお前突き出したら公開収録に招待したはやりんまで責任追及されるだろうし…》
仁美《まあ、それは考えた》
菫《悪魔の知恵かお前は!》
菫《あああああ!もうっ!分かったよ!今回だけは知らなかったことにしてやる!!》
仁美「…ふひ」
菫(寧ろやっぱ悪だコイツ!)
菫(ああああああああ!!!)
菫(勝ったのに大負けした気分だ!!)
第七話
「アラフォーと読んでる時点でもう色々終わってる婚活雑誌」 終わり
奈良・阿知賀
菫「…ふう。やっと着いたか」
仁美「メエー…」
菫「朝に出て、もう昼近くだ。宿に行く前に、どこかで昼食でも摂るか?」
仁美「そーだなー。腹減ったばい」
菫「ん。それじゃあ適当にファミレスでも…って、何もないな、ここ」
仁美「この間の鹿児島よりど田舎…」
菫「どうする?」
仁美「仕方なか…やっぱ宿まで行って、近所で食事できるとこ聞こうか」
菫「ん…」
仁美「なんだっけか?宿の名前」
菫「ああ、ちょっと待て。今住所書いた手帳を確認するから…」
仁美「…」
菫「ああ。あったあった」
菫「松実館だ」
仁美「松実館かー。なんか高そうな名前やね」
菫「そうだな。向こうで調べたが、ネットでも評判は上々だった」
仁美「そりゃあ楽しみばい」
菫「しかし、幾ら複数の風潮被害が確認されたとは言え、土日を利用するために宿まで手配してくれるなんて…」
仁美「またはやりんが金出してくれたんだって?魔法少女になって良かったことの1つは、ただで色んな土地に行けることやね」
菫「遊びでやってるんじゃないんだぞ。はやりんはついでに楽しむのも大事と言ってくれたが…」
仁美「まあええやんええやん。…はやりんは遅れてくるんやったっけ?」
菫「軽いなぁ…お前は。…ああ。今日の夜にこっちに着くそうだ。…はあ」
仁美「またそうやって溜息吐いて…仕方なかろう。うちら学生やもん」
菫「うう…心苦しい。早く稼げるようになって恩返しをしなくては…」
仁美「あの人に返せるくらいっち言うたら、相当稼げるようにならんとな」メッヘッヘ
菫「…まあ、精進するさ。大学に行ったら、バイトだって出来るし…」
仁美「進学かー。何処受けるかもう決めてるん?」
菫「ああ。もう秋だしな。だが、幾つか貰ってる推薦のお誘いのうち、実はまだ数校のうちで悩んでるんだ…」
菫「そういえば、お前はどうするんだ?進学とか、就職とか…」
仁美「ん?んー。そうやねー」
菫「ああ」
仁美「どーすっかねぇ」
菫「おい…」
仁美「メハハハハ」
菫「笑い事じゃないぞ?もし推薦無いなら進学するなら早めに準備も必要だろうし、就職するにしてもだな…」
仁美「…っと」ピタッ
菫「…なんだよ。どうしたいきなり立ち止まって」
仁美「ほれ、横見てみ」
菫「ん?」チラッ
仁美「いつの間にか着いとるばい」
菫「…おお」
菫「ここが松実館か」
玄「いらっしゃいませ!ようこそ松実館へ!」
菫「…へ?」
仁美「おおう」
玄「え?あっ!うわわ」
菫「君は…」
仁美「確か、阿知賀女子の…」
玄「ま、松実玄です!お久しぶりです!」ペコリン
菫「驚いたな…そういえば、ここは阿知賀で君は実家が旅館だと実況が言っていたものな。今思い出したよ」
玄「ま、まさかお客様として白糸台の弘世さんと新道寺の江崎さんがお越しになられるとは…」
菫「なんだ?私達の名前は聞いてなかったのか?」
玄「はい。お父さんに、私と同年代のお客様がお目見えになられるのでご挨拶するようにとしか…」
菫「へえ…実家の手伝い、しっかりやってるんだな。尊敬するよ」
玄「えへへ…」
菫「ところで、ちょっと早いがチェックインはもう大丈夫かな?」
菫「いや、別に謝らなくても…」
玄「えーっと…二名様でしたっけ?」
菫「ああ。取り敢えずはね。今晩遅くにもう一人。その人だけは外で食べてくるので夕飯は要らないよ」
玄「かこまりました!」ビシッ
仁美「敬礼っち…」
菫「ははは…」
玄「それではお部屋にご案内しますね。お荷物お預かりしますが」
菫「いや、大丈夫だよ。結構重いし、自分で持っていくさ」
仁美「うちも」
玄「あ、そ、そうですか…」シュン
菫「…」
玄「みゅー…」ショボーン
仁美「…」
菫「…気が変わった。じゃあ、このボストンバッグの半分だけ持ってくれるかな」
玄「はい!おまかせあれ!」
菫(一生懸命で素直な子だなぁ…)
菫「あ、そうだ」
玄「それじゃあ私こっち持ちますねー…はい?」
菫「そういえば」
玄「よいっしょ…はい!なんでしょう!」ヒョイッ
菫「君のお姉さんは今どちらに?」
仁美「プッ」
玄「?」キョトン
菫(…なんて言うか)
仁美「ククク…」
菫「…いや、もし此方に居るのなら、後で挨拶にでもと」ゴチン
仁美「メッヘ!?」
菫(あの子は…インターハイで中々痛い目合わされてるんでちょっと苦手なんだが)
菫「あ、ああ…」
玄「おねえ…姉は、今日は学校で赤土…うちの顧問とちょっとお話をしていまして」
菫「そうなのか」
玄「はい。なんでも、進路についてちょっと相談したいことがあるらしくって」
菫「ふーん…」
玄「後で帰ってきたら、姉からご挨拶に伺わせますので」
菫「ああ、ありがとう。お構いなく…すまない。それと質問ついでにもう一つ」
玄「はい?」
菫「この辺で、どこか手頃な食堂は無いかな」
玄「ああ、それでしたら…」
玄「…」
玄「…あっ!またお客さんだ!」
玄「いらっしゃいませ!ようこそ松実館…!!!?」
玄「…」ポヘー
玄「…あ、ああ。すみません。大丈夫です。ちょっとボーっとしちゃっただけですので…」
玄「えっと、二名様でよろしいですね?」
玄「はい!もうチェックインは大丈夫ですよ。この名簿に名前を書いていただいて…はい!」
玄「…え?どうしました?」
玄「…?なんだか嬉しそうですけど…」
玄「…あ、はい!ご案内します!」
玄「どうぞごゆっくりー」パタン
玄「…ほえー」キラキラ
玄「ものすっごいおもち…」ワキワキ
仁美「ふー。美味かった美味かった」
菫「…」
仁美「ジンギスカン定食」
菫「だから何故そのチョイスを…」ゲンナリ
仁美「メヘ?」
菫「…なんでもない」
仁美「お、おう。さってー。それじゃあ、これからどーすっかねー」
菫「そうだな…荷物も置いてきたし、このまま風潮被害者の探索に出るとしようか。まだ反応が薄くてお前でも察知し切れないんだろう?」
仁美「ん」
菫「そこで前回のように事前に当たりを付けて、あわよくば未然に防げるように、まずは一番可能性の高い麻雀部のある所を探してみようと思っているのだが…」
仁美「ん?」
菫「この辺、麻雀部のある学校は二つあるらしい」
仁美「ほう。調べてきとるねぇ」
菫「当たり前だ。こういう時、時間は有意義に使わねば。…話を続けるぞ」
菫「一つは、松実姉妹も属す阿知賀女子。但しこちらは部員数も少なく、部の中心人物の一角であろう姉妹の妹が家に居た事からも今日は休みの可能性が高い」
仁美「おう」
菫「もう一つは、奈良一番の名門、晩成高校。調べたところによると、この辺で麻雀をやる人間はほとんどここに行くらしい」
仁美「ほー」
菫「当然、部員数も圧倒的に多く、確率的にも風潮被害者に当たる確率は高い」
仁美「なら」
菫「ああ。流石に全員と会うことは不可能かもしれないが…それでも、訪ねて見る価値があるのはこっちだろう」
仁美「よっし。そうと決まったら…」
菫「早速行こう」
仁美「…待った」
菫「ん?」
仁美「…その前にちょっと」
菫「どうした?」
仁美「…やっべ。今、なんか感じた。もうすぐ誰か一人暴走するぞ」
仁美「反応が小さすぎて今まで気付けんかった。そんなに強い奴じゃなかぞ。それにここから近い。こげん感知から暴走までん間の短かとは…」
菫「くっ…!どこだ!?」
仁美「あっちたい!!」
菫「変身!人々の小さな幸せを踏みにじる風潮被害は…」シャランラ
仁美「うるさい!急げ!」
菫「…わかったよ」ショボン
仁美「えーっと、こん感じだとここから1~2kmくらいだっち思うばってん…」
菫「じゃあお前背負ってくからナビしろ!」ヒョイッ
仁美「うおっ!?わーかったわかった!じゃあまずあっち!」
菫「応!!」ダッ
仁美「この反応は…うーん…」
菫「どんな風潮被害だ!」
仁美「…んー?なんだこれ、わけわからん」
菫「何だ!」
菫「…は?」
仁美「…あと、Tシャツの胸のアライグマが意思を持ってるっち風潮」
菫「…」
仁美「…」
菫「訳わからん」
仁美「うん」
菫「…とにかく、現場行くか」
仁美「ん」
タタタタタ…
灼「…誰?」
菫「…君か」ハァ
仁美「きっ!貴様はーーー!」キシャーー!!
灼「あ…白糸台と真道寺の…」
菫「弘世菫だ」
仁美「グルルルル」
菫「そして、こちらが三年生なのに準決勝で君に稼ぎ負けた戦犯の九州羊」
仁美「おい!おまえもマイナスやったろうが!!」
菫「な…!なんだやる気かお前!」
灼「えーっと…」
菫「おっと、すまない」
仁美「くっ…!この暴君魔法少女め…」
灼「その、なんで二人がうちに…来てるのかがよくわからない…です」
菫「…」チラッ
菫(本当にTシャツの柄がアライグマだ…)
仁美《おい。もうこいつ暴走しとるぞ》
菫《何!?》
灼「…何しに来たの」
菫《どういう事だ?彼女、一見何の変哲もない感じだが…》
菫「…ちょっと聞いても良いかな?」
灼「え?あ…はあ。答えれることなら」
菫「そのシャツ、いつどこで買ったか覚えているかい?」
灼「あ、このシャツ…ですか?ふふ…可愛いでしょ。今年の夏おばあちゃんがジャスコで買ってきてくれたんです。ハイカラで灼にピッタリだって…」
仁美《おい!風潮被害に虚飾有りだぞ!こいつハイカラの意味わかっとらん!》
菫《そもそもこれは…なんだろう。うーん…被害って言うか…被害なんだろうけど…》
仁美《どうする?ボコるか?いつもみたく、さながら有言実行の北朝鮮のように》
菫《お前後で無慈悲な制裁な》
灼「えへへ…けど、なんだか嬉しいな。都会に住んでてしかもこんな美人な人に着てるものをどこで売ってかって聞かれるだなんて…」
菫「…」キュン
仁美《穢れとらんなー。お前と違って》
菫《…ぐ、浄化されるところだった》
仁美《さて、どうしたもんか…》
菫《放っておいて良いじゃないか?これは》
仁美《んー…》
菫《特に実害も無さそうだし…》
仁美《けど、どげんかして退治しとうしなー》
菫《なあ、いいだろ?なんだか流石にこの子を傷付けるのは、人としてやってはいけないような…》
仁美「…」
灼「…ね、たぬタンもそう思うでしょ?」
菫「…へ?」
仁美「…メ?」
狸「ソウデスネ。アラタサン」
仁美「メエエエエエエエエエ!!?」
灼「あ、いけない…つい」
アライグマ「ドンマイデス。アラタサン。間違ッテ上デ狸ッテ書イチャッタノモ、ドンマイ」
菫「ど根性ガエルのラスカルバージョンかお前は!!」
仁美「よく見たら目が怖い!?当然たい!奴は凶暴にして残虐な雑食獣!日本生態学会によって日本の侵略的外来種ワースト100のひとつに選定されとる凶悪な生物ばい!!」
アライグマ「アラタサン、オハダツルツルスベスベ、アッタカイ…」
灼「ふふ…たぬタンも。綿100%で生地厚なのに柔らかく、ゆったりした着心地。こういった暖かい緩やかなオフの日には、日中なら秋でもたぬタン一枚で過ごせちゃうよ…」
アライグマ「アラタサン…アラタサン…アラタサン…ハァ…ハァ…ハァ…」
灼「あん…くすぐったい…衣擦れ…やだ…えっち…」モジモジ
アライグマ「フヒヒヒ…アラタサンノ、乳臭イ体臭クンカクンカスーハースーハー」
菫「しかも淫獣だった!!」
仁美「流石外道よ…毎年日本だけで3億近い農業被害を出しているだけはある」
菫「これは…やはり滅ぼすべきだな。主にシャツの方を」
仁美「異議なし」
灼「…え?」ビクッ
菫「すまないね、君」ジリッ
灼「え…」
菫「そのシャツ…大切なものなんだろうが、破壊させてもらう」
灼「あ、あの…」
アライグマ「スーハースーハースーハー」
菫「この期に及んでまだ深呼吸してるし…」
灼「ちょ…やめ…誰か、あ、あれ…もがっ?」
菫「ちょっと二人で誰も居ないところに行こうか…」
仁美「ククク…催眠術による隠蔽は任せろー。客少ないし楽勝ばい」
灼「もがー!」
菫「大丈夫…苦しいのは一瞬だから」
灼「もがっ!もぐー!」ジタバタ
菫「力も大した強くないな。これなら簡単に退治できそうだ」
菫「さて…」ドサッ
灼「や、やだ…助けてたぬタン…」
菫「そのシャツ、ビリビリに破かせてもらおうか!!」ビリビリー
アライグマ「ア、アラタサーーーーン!!」ビリビリー
灼「いやああああああああああああああああああ!!!?」
仁美(おお、流石魔法少女。素手で半紙破るが如くシャツ引き裂いとる)
灼「たぬターーーーーン!!」
菫「この淫獣が!!可愛い見た目笠に着て主人の肌に密着して好き放題やりやがって!キモいんだよ!死ね!!」ビリビリー
アライグマ「ヌワアアアアアアアアアアアアアア!!!」
菫「細切れにしてやるー!!」ビリビリビリー
灼「たぬターーーーーーーーーーン!!!」
アライグマ「モットノノシッテエエエエエエエエ!!」
菫「…」
仁美「…ノーブラだったか。周りにシャツの残骸散らばって、なんかレイプされた後みたくなっとる」
灼「ううう…たぬ…たぬタン…」シクシク
菫「…と、取り敢えず、ついでだし絞め落としとくか?」
仁美「やっとけやっとけ。暴走した後の記憶消しとけ」
菫「なんか、どんどん取り返しのつかないことしてるような気がしてきた…」ミシッ
灼「あうっ!?」
菫「…」ギリギリ
仁美「今回はシンプルにスリーパーやね」
灼「かは…うう…」ジタバタ
菫「早く落ちろ…」ギリギリ
灼「うううう…う…あう…けほっ…」
菫「…ここ最近ずっと後味悪いなぁ…」ギリギリ
灼「あ…あああ…た、たすけ…」
菫「…」
仁美「ご苦労」
菫「…自宅の裏とは言え、半裸で気絶したまま放置はヤバイ。絶対にヤバイ」
仁美「ならどうする?」
菫「…はあ」
仁美「…」
菫「…ちょっと頑張ってみる」
仁美「ん?」
灼「…ん」ムクッ
灼「…あれ?ここ…」キョロキョロ
灼「家の裏?いつのまに出たっけ…しかも寝ちゃってたし」
灼「…」ブルッ
灼「…さむ」
灼「流石に秋風は冷えるなぁ」
灼「シャツ一枚じゃ、もう限界だね…」スタスタ
灼「…あれ?」
灼「なんか、このアライグマ、ちょっといつもと表情違うような…」
灼「…馬鹿らし。そんなわけないか」
ヒューー
灼「…早く中に入ろう。店番の続きしなきゃ」スタスタ
菫「…疲れた。魔法使いたい…」グダーー
仁美「…力技やね。ビリビリに破いたシャツ、魔法少女の身体能力と集中力で自力で縫合とか…」
仁美「メエー」
菫「…で、はやりんが来た頃に起きてまた魔法少女談義するんだ」
仁美「…げっ」
菫「松美館戻るぞー」
宥「ただいま玄ちゃん」ブルブル
玄「うん。お帰り、お姉ちゃん…」ユラリ
宥「?」ブルブル
玄「お姉ちゃん、後でお客さんに挨拶行ってあげて。白糸台の弘世菫さんが泊まりに来てるの。今出かけてるけど」
宥「え?そうなの?インハイで対戦した…うん、わかった。じゃあ後で挨拶してくるね」
玄「…おもち」ボソッ
宥「え?」ブルブル
玄「じゃあ、私はこれで…」スタスタ
宥「…」
宥「…玄ちゃん?」
バタン
玄「…」
玄「おもち…」
第八話
「こけし灼と淫獣アライグマ」 終わり
菫「…ふう。あったまる…」チャポン
仁美「…」ワシワシワシワシ
菫「大変そうだな仁美。その…なんだ。巻き毛」
仁美「くせっ毛たい。ストパー掛けても3日で戻る」
菫「本当、羊毛みたいだ…」
仁美「くぬくぬ…」ワッシャワッシャ
菫「あんまり乱暴に扱うなよ。痛むぞ…」
仁美「ぐぬぬぬ…」ワシワシワシ
菫「それにしても…ふぅ~…」
仁美「なんぞ婆臭い」ワッシャワッシャ
菫「いや…広い風呂は久しぶりだなと…」
仁美「ん。まあ、おまえの寮の風呂に比べたらな」ワシワシワシ
菫「あ~…いいなぁ。広い風呂。東京でもたまには照達誘ってスーパー銭湯とか行くかー」ノビーー
仁美「好きにせー」ザバーーー
仁美「おまえの髪質羨ましかー!うちより長いのに余裕で早く洗い終わっとるし!」ケッ
菫「ははは…」グテー
仁美「随分緩んどるなぁ」チャプッ
菫「ああー…身体が暖まるー」
仁美「おまえいっつも張り詰めとうからなあ。こういうとこでやっと緊張緩むタイプか」
菫「ん…まあ、ここのところ色々ストレスも溜まってたし。…主にお前のせいで」ジトッ
仁美「メッヘッヘ」
菫「風呂上がったら食事か。楽しみだ…」
仁美「うちも腹減ったばーい」グテー
菫「おー」グテー
仁美「他に人おらんち、貸切状態ええねー」
菫「そうだなぁ。今はシーズンも微妙にズレてるらしく、客が全然居ないらしいし」
仁美「今泊まっとるの、他に一組だけやったっけ?」
菫「ああ、らしいなー。まだ会ってないけど」
菫「ん?」
仁美「泳ぎたくなるばいね」
菫「やめい」
仁美「メッヘヘヘ…」バシャバシャ
菫「あっ!こら!行儀の悪い…ぶっ!おい!顔にお湯がかか…おい!!」
仁美「」バシャバシャ
菫「ぶふっ!?この…!しかも犬かきか!羊のくせに!」
仁美「メハハハハハ!!」バシャバシャバシャ
菫「うがっ!?お前わざとバタ足で私に飛沫浴びせてるな!?いい加減に…」ザバッ
「あら、広くて素敵ねぇ。ここの温泉」ガラガラッ
「…」
菫「…っ!おい、人来たぞ!マジで止めろ!」ヒソヒソ
仁美「…おっととと」チャポン
菫「…ったくこいつは…」
「…」
菫「…ん?」
菫(この声…何処かで聞いたことがあるような)
「うふふ…そう。いやねぇ。まさかこのタイミングで会っちゃうなんて…」
菫(なんて言うか、物凄くムカツク声…)
仁美「…おい、菫」タラリ
「失敗したわぁ。着替えが何処に置いてあったのか気付かなかったんだもの。知ってればゴミ箱にぶち込んでおいてあげたのに」クスクス
菫(それと、湯けむりで姿が隠れてるが、それでも分かる糞特徴的なボディライン…)
仁美「これちょっとヤバくなかとか」
菫(うるさい。わかってる)
「…え?…何?流石にやり過ぎ?」
仁美「おい。菫。ここは戦略的撤退をだな…」グイグイ
菫「…」
「…も、勿論冗談よ…冗談ですから…」
仁美「おい!菫!」ヒソヒソ
菫「うるさい。女にはな。分かってても退けない事ってあるんだ」
仁美「こんの阿呆…」ハァ
菫「第一、今更どうやって逃げんだよ」
仁美「…ブクブク」
菫(潜水しやがったこいつ)
霞「うふふふふ。相変わらず性格悪そうな顔してるわね?お久しぶり。弘世菫」
菫「…そっちこそ、婆臭さが相変わらずで何よりだ。石戸霞」
霞「うふ♪」ニコッ
菫「…ちっ」ギロッ
霞「お風呂ご一緒しても良いかしら?必然色んな所比べちゃうことになるし申し訳ないのだけど」ニコニコ
菫「ちゃんとその加齢臭漂う身体洗浄してから湯船入れよ」
霞「…」ゴゴゴゴゴ
菫「…」ドドドドド
霞「…」ゴシゴシゴシ
菫「…」グテー
仁美「…」プカー
菫(連中が身体洗いに行ったら浮上してきやがった)
仁美「おい。菫」ヒソヒソ
菫「なんだ羊」グテー
仁美「大物ぶって緩んどる場合か。今の内にあがるぞ」
菫「やだ」ツーーン
仁美「このアホ…」ワナワナ
菫「なんで私が逃げるように出ていかなきゃならないんだ。私は長風呂なんだ」グテー
仁美「強情っぱりも大概にせーよと…」ハァ
霞「あら。いいのよ?別に。どの道こんな素敵なリラックス出来る空間で弱い者いじめなんてするつもり無いし」クスクス
菫「へえ…」ビキッ!
仁美(お前ら来た時点でここはもう極上のストレス空間ばい…)ガックリ
菫「大体なんでお前らが居るんだ」
霞「あら、それはこっちの台詞だわ。なんで東京者が奈良くんだりまで」
菫「…分かってるくせに」
霞「そっちこそ」クスクス
菫「…はー」
霞「くすくす…」
菫「…潮被害だよ。はやりんも夜中には来る」
霞「あら、瑞原プロも?だったら挨拶しておかなきゃ。以前は危ない所で風潮被害から救って頂いた恩もあるし」
菫「…ああ。そういえばお前そうだったらしいな」
霞「…」
菫「…暴走ねえ」
霞「…」
菫「ま、大変だったんだろうから、ご苦労さんって言っておいてやるよ」
霞「…」
菫「ま、私はする前に魔法少女になったけどな」フフン
霞「…」
菫「…んーーーーっ!」ノビーーー
霞「…」
菫「…ふう」グテー
仁美「…ブクブクブク」
菫(何潜水と浮上繰り返してんだこいつ)
霞「そうね。暴走、しんどかったわね」
菫「あ?」
霞「…いっそ死んでしまいたかったほどに」ボソッ
菫「…」
霞「…」
美子「…」
仁美「…」プカーーッ
霞「それにしても、瑞原プロも大変ねぇ」
菫「ん?」
霞「育成枠だか知らないけど、わざわざこんな才能無しのために色々動いたりして」クスクス
菫「ああ?」ギロッ
霞「才能ないんだから、危ない目に合う前に自分でバイブでも突っ込んでさっさと引退しちゃえばいいのに」バシャァ
菫「なんだと?」ザバァ
霞「…ふう。美子ちゃん、先に湯船行ってますからね」
美子「」コクコク
菫「やっぱり喧嘩売ってるだろお前」
霞「何が?」
菫「傲慢な糞女が」
霞「ふふ…身の程知らずの馬鹿女に言われたくないわね」チャプッ
霞「…ふう。いいお湯」
仁美「…」ビクビク
霞「…何よ。全裸で湯船に仁王立ちなんかしちゃって。はしたない」
菫「っ!」チャプンッ!!
菫「…ブクブク」
霞「…呆れるわ。今度は口元まで浸かるのね」
菫「…」
霞「子供っぽいわぁ。…餓鬼」クスクス
菫「…」スッ…
霞「?」
菫「喰らえ」ピューーーッ
霞「きゃっ!?」
仁美(やりおった。水鉄砲とか…)
霞「ちょ、やめなさ…わぷぷっ!?」ワタワタ
菫「ほらほらほら。口開けたらお湯入るぞー」ピューーーーッ
霞「はぷっ!んぐっ!こ、この糞餓鬼…きゃっ!?」コケッ
霞「ガボガボ」
霞「何するの!!」ザバーーーン!!
菫「やっぱり思ったとおりだ。お前、あれだな。変身したら強いが、変身前は運動音痴だ。それを確認したかったんだよ」フフン
霞「この…!!人が下手に出てれば!調子に乗るのも大概になさいよ!?」
菫「何処が下手だった!なんだ!?やるか!!?」
霞「変身さえすれば貴女なんか…!」ワナワナ
仁美「ちょ…!こら!おい菫!」
菫「上等だ!なんなら文字通り今ここでお前を風呂に沈めてやろうか!」
霞「あはははは!!言ったわね!?良いわ!それじゃあここでこの間の続きしましょうか!『阿知賀松実館拷問殺人事件 羊は見た!湯船に沈む菫の花は最初から枯れていた』今から2時間たっぷりロードショーしてやるわよ!!」
菫「なんだとこの奇乳がコラァ!!」
霞「目付き悪いのよ貴女!!」
仁美「ちょ…!お、おい…!!」
菫霞「「ぶっころ…!!」」
仁美(いかんいかんいかん!?こうなったらもう巻き込まれる前に逃げるしか…)
仁美「!?」
仁美(美子!?狂犬共に洗面器に汲んだお湯ぶっかけた!?)
菫霞「「…」」
美子「…」スッ
菫「…」ポコン
霞「…」ポコン
仁美(しかも追撃に洗面器の腹で頭殴っただとぉ!!?)
美子「…」チャプン
菫「…」ビショビショ
霞「…」ビショビショ
美子「…」キュー…
菫「…」ポタポタ
霞「…」ポタポタ
美子「…マナー違反」ボソッ
菫「…」
霞「…」
仁美「あわわわ」オロオロ
菫霞「「…すみませんでした」」ブクブク
仁美(収まった!!)
仁美「~ったく、お前はだなぁ…どうしてこう、喧嘩っ早いっていうか、肝心なところで我慢をしないっていうか…」グチグチ
菫「…はい。はい。反省してます」
仁美「あそこで万が一バトルファイトになってたらどう考えてもなぶり殺しばい。どうせ戦うにしても、もっとこう、搦め手をだなぁ。例えば寝込みを襲うとか」
菫「それじゃあ勝った気にならないから却下だ。それに私のプライドが許さないし」プイッ
仁美「はぁ~…」
菫「…悪かったよ。久しぶりに奴の顔見てつい頭に血が昇ってしまったんだ」
仁美「ホントに勘弁してくれ。どうせバンザイアタックするにしても、うち居ないところで頼むわ…」
菫「…以後気を付ける」
仁美「いまいち信用ならんなぁ…」
菫「…今回ばかりは返す口もない」
仁美「それって約束破る気満々って事じゃ…いや、まあええわ。向こうこそ美子にがっつり絞られとるやろうし」
菫「なんか変な迫力有って逆らえなかったなぁ」
仁美「昔からあいつ、怒ったら部で一番怖かったばい」
菫「そうか。お前あの子とチームメイトだったな」
菫「なのにお前この間彼女人質に…」
仁美「ま、まああれは緊急事態だったし!?」
菫「…」
仁美「そ、それより夕飯たい!いい加減腹減って仕方なか~!」
菫「…まあ、私も確かに空腹ではあるが」
仁美「…食堂でアイツらと4人で食うのは気まずかな~」
菫「私は別に」
仁美「うちと美子が気まずかな~」
菫「…分かったよ。確か、部屋まで配膳してくれるんだっけ?松実さんに頼んでくるから」スクッ
仁美「んー」
コンコン
菫「ん?」
仁美「お。誰か来たか?はやりんにしては早すぎる気がするが…」
菫「はいー。開いてますがー」
スーーッ
菫「!」
宥「こ、こんばんわ~」カタカタ
菫「君は…」
宥「本日は当松実館をご利用頂きありがとうございます~」カタカタカタ
仁美「相変わらず寒そうな…」
宥「お久しぶりです。松実宥です~…カタカタ
菫「あ、ああ。お久しぶりです。弘世菫です…」
仁美「江崎仁美たい」
宥「先程妹からお二人がお越しくださったと聞き及んだものですから~」カタカタ
菫「あ、ああ…取り敢えず中に入ったらどうだい?この季節の夜は廊下も冷えるだろうし…」
仁美「なんか今にも凍死しそうばい。冬どうやって生きとるん?」
宥「なんだかすみません…」カタカタ
菫「え、エアコン入れようか。暖房で…」ピッピッ
菫「いや。その…。まあ、こっちも寒かったからな。気にしないでおくれ」
仁美「ところで、なんか用事でもあったんと?」
宥「あ、そうでした」ポン
宥「一つはお二人へのご挨拶のつもりだったんですけど、もう一つは、お食事をどちらで召し上がられるのかを伺おうかと」カタカタ
菫「それは助かるよ。ちょうど今からそれを伝えに行こうかと思っていたところなんだ」
宥「そうだったんですか?」
菫「ああ。部屋で食事をさせて貰えないかと…」
宥「畏まりました~」ニコッ
菫「ありがとう」
宥「では、もう一組のお客様のところにもご挨拶と、同じ要件がありますので失礼しますね」スクッ
菫「わかったよ」
仁美「どーもね~」
宥「それでは~」トテトテ
スーーーッ…パタン
宥「…あ、いけない。忘れてた。混ぜご飯と白いご飯があるけど、どっちが良いか聞くように言われてたんだった」
宥「申し訳ないけど、もう一回…」スッ
「…さて、それじゃあ食事まで暇だし明日の風潮被害者捜索の話でもしていようか…」ボソボソ
宥「…え?」
「メェー?お前とことん真面目やな~。そんなのはやりん来てからでええやろ」ボソボソ
宥「風潮被害…?」
宥「…」ソッ
宥(盗み聞きみたいで申し訳ないけど…)ピトッ
「何言ってるんだ不真面目羊。いいか?私達は魔法少女とそのマスコットして一刻でも早く風潮被害者をだな…」
宥「…」
「わーかったわかった。それじゃあちょっとだけなちょっとだけ。メェー…早くご飯来ないかな」
「こら!」
宥「…」
菫「…で、私はやはり明日こそ晩成高校にだな…って、おい羊」
仁美「…?」ジーッ
菫「…どうした?入口の方見たりして」
仁美「いや…なんか」
菫「誰かの気配でも感じたか?…はっ!まさかあの霞ババア私達の作戦の盗み聞きを…!!」タタタタ
菫「こらぁ!」ガラッ
菫「…」
菫「…」キョロキョロ
菫「…誰も居ないじゃないか」
仁美「…」
菫「…お前の勘違いだったんじゃないか?」パタン
仁美「…」
菫「さあ、話を続けるぞ。で、明日の午前中ははやりんと晩成高校に行って…」
仁美「…菫。話があるたい」
仁美「夕方こっちに帰ってきてから気付いたんやけど…」
菫「ああ」
仁美「松実姉妹」
菫「?」
仁美「あいつら、どっちか風潮被害者やぞ」
菫「!?」
第九話
「あったか温泉と狂犬魔法少女達」 終わり
宥「お待たせしましたー」ブルブル
菫「…」チラッ
仁美「…」フルフル
菫「…」
玄「…弘世さん?」
菫「ん?…ああ、すまない。ありがとう。ちょと考え事をしていてね」
玄「はえー」
宥「あったかいうちにどうぞ~」
仁美「おお、混ぜご飯!」
菫「…と、白いご飯もかい?ありがたいが、食べきれるかな…どちらかで良かったのに」
宥「…」
玄「おねーちゃん?」チラッ
宥「あ、え、えっと、う、うちはどっちも自慢ですので、お二人に両方味見してもらいたくて~」
玄「おお、なるほど!そういう事なのです!」
仁美「うち、どっちも食べきれるばい」
玄「おお~」
菫「食べ過ぎで腹壊すなよ?」
玄「万が一食べ過ぎてしまっても、お腹壊してもお薬ありますよー」
仁美「メヘッ!?」
菫「はははは…」
宥「…く、玄ちゃん!」
玄「?はいなのです?」
宥「つ、次!」
玄「んにゅ?」
宥「次、石戸さん達待たせてるから、行こ?」
玄「おお!そうでした!すみませんお二方!我々はお仕事の最中でしたので、これにて失礼をば!」
菫「あいつらか。ああ、あの石戸霞ってやつは今ダイエット中らしいからご飯減らしてやってくれ」
玄「そうだったんですか!ではそうしておきますね」ニコッ
菫「…駄目か?」
仁美「んん~…なんか、よくわからん」
菫「結構進行しているんだろう?」
仁美「もう暴走一歩手前やね。なんやけど…なんっつーか、二人がボヤけて見えるっつーか…」
菫「ボヤけて見える?」
仁美「二人が姉妹で近くに居るせいなんかね?まるでこう、風潮被害の気配が3D映画を肉眼で見たみたくダブってる感じばいね」
菫「それで、正体が掴めないと?」
仁美「こんなケース初めてよ…」
菫「うーん…困ったな。どちらかはほぼ確実だというのに、このままでは手を出せないのか」
仁美「いっそまとめてやっちまうか?」
菫「馬鹿。風潮被害者は感染時の記憶が消えるから良いかもしれないが、違う方はがっつり記憶に残るんだろう?」
仁美「ちっ…面倒な…」
菫「参ったな…霞の奴の方は大丈夫だろうな?多少の被害は目を瞑ってやったりしそうな女だし」
仁美「んな事しようとしたら美子がブチ切れるやろ」
仁美「それよりも、たい。うむむむ…さあ、どうするか…」
菫「…ふう。まあ、仕方ないか」
仁美「ん?」
菫「確実な方法は一個しか無いだろ」
仁美「…?っつーと?」
菫「簡単な事だよ」
仁美「??」
菫「暴走したら流石にわかるだろ」
仁美「…おおう。力でねじ伏せに来たか」
菫「気配ちゃんと探っておけよ。霞の奴に先んじて私が獲る。必ずな」
仁美「猟犬かお前は」
菫「…話はここまで。食べよう。…いただきます」ペコッ
菫「…モグモグ」
仁美「…はぁ~…なんでお前白糸台の部長やってこれたん?その脳筋で」
菫「ん」モグモグ
仁美「…いただきます」ペコッ
菫達の部屋
シーーーーン
菫「…」
仁美「…」
菫「…」
仁美「…」モゾッ
菫《動くな》
仁美「…」
菫「…」
仁美《…なあ》
菫《…なんだ》
仁美《…なんていうか、これでええんか?》
菫《何がだ》
仁美《何っち…結局やることと言うたら、電気消して布団潜って、寝たふりして待ち伏せ?》
菫「…」
仁美《さっきあんだけ威勢よく狩人みたいな事言っといて待ち伏せ型ハンティングかい》
菫《…どこかで反応があったら飛び起きて向かうさ》
仁美《じゃあなんでこんな事してんのうちら》
菫《ここは風潮被害者の、文字通りホームだろう?》
仁美「…」
菫《もしかしたら、どこかでこっそりこちらの様子を伺っているかもしれない》
仁美「…」
菫《もし私が風潮被害者なら、このタイミングで泊まりに来た若い女…魔法少女になりうる人間は、魔法少女だと疑うに決まってる》
仁美《…ふむ》
菫《だとしたら…暴走して力を得たら、勘付かれる前に直ぐに潰すのが上等だろう》
仁美《…つまり、隙を見せて炙り出すと?》
菫《上手くいくかはわからないがな。それでも何もしないよりは良いだろうさ》
仁美《布団気持良か~…》
菫《おい、寝るなよ。飽くまでもお前の感知が最良の手段なんだからな》
菫《おい。叩き起こすぞ》
仁美《五分だけ休憩…》
菫《こいつ…いい加減に…!》
菫「…」
菫《…いや。やっぱ寝てて良いぞ》
仁美《んぁ~?》
菫《そのまま寝たふりしてろ》
菫《どうやら掛かったみたいだ》
仁美《うそん》
スス…
「…」チラッ
「…」キョロキョロ
スス…スーーーーッ…
「…」コソコソ
仁美「…」
「…」ジーーッ
菫「…」
仁美「…」
「…」ゴクリ
菫《…用心してるな》
仁美「…」
菫《仁美?》
仁美「…」
菫《おーい》
仁美「…」
菫《仁美ーー》
仁美「…くぅ」
菫(この羊、マジで寝やがった…)
菫(ふふふ…霞の奴悔しがるだろうな。私の頭脳プレイが風潮被害者をここへ向かわせたんだ。1杯食わせてやったって訳だ)
菫(後は、奴がこちらが完全に寝入ってると確信して近づいてきたタイミングを見計らって、奇襲をかけてやれば…)
「…」
菫(完璧だな)
「…寝てる…よね?」ボソッ
菫「…」
「…新道寺の人も寝息立ててるし…うん」
菫「…」
「…この人達、魔法少女らしいし…」
菫(…ふっ…私の作戦、完璧だったな)
「…ごめんなさい」
菫(なに。謝る事は無いさ)
「私…」
菫(こっちこそ、今から君を気絶させなくてはいけないんだからね)
菫(…へ?)
宥「変身っ!」
菫「…」
菫「…はああ!!?」ガバッ
宥「っ!!起きてた!?」シャランラ
菫「な…!」
宥「…ごめんなさいっ!えいっ!」ブンッ
菫「くっ…うおっ!?」
宥「あっ!」スカッ
菫(っ!危なっ!身を引いた場所をフックが掠めてった!)
菫(このっ!反撃だ!蹴り飛ばしてやる!)
菫「ふっ!」ブンッ
宥「きゃっ!?」サッ
菫(かわされた!?くっそ!コイツに攻撃かわされるとインハイの準決勝思い出す…って、それより確認しなくてはいけないことがっ!)
菫「おい!」
宥「ひっ!?」
菫「き、君!どう言うことだ!?答えろ!」
宥「あ、あううう…この人怖い…」ブルブル
菫「なんで君が魔法少女に!?」
宥「え、えっと…」オロオロ
菫「他にもだ!なんで私を襲った!それに、妹さんを守るだと!?なら彼女が風潮被害者なんだな!?」
宥「っ!」ギュッ
菫「それにさっきの口ぶり…君はそれを知っていて放置してたのか!!」
宥「…っ!」
菫「どうなんだ!答え…」
宥「えいっ!」ブンッ
菫「ろおおお!?」サッ
菫(大振りストレート!?危なっ!)
菫「くっ…問答無用か君は」
宥「絶対に…絶対に…私お姉ちゃんだし…」ジリジリ
菫「馬鹿言うな!妹さん、風潮被害者だぞ!?早いとこ浄化してやらないと周囲にエラい被害が…」
宥「それでもっ!」ダッ
菫「…っ!」グッ
宥「私には玄ちゃんが一番大切だもん!」ドカッ
菫「がふっ…!」
菫(ぐえ…体当たり…衝撃受け止め切れなかった…)
菫「…ちっ!」ドサッ
宥「玄ちゃんは私が守るんだから~!!」ピョンッ
菫「くっ!?」トスン
菫(マズい、マウント取られて腕も抑えられた!ぐ…!動か…ない…!)グググ
宥「そ、そのためには、あ、貴女のしょ、処女だって…奪うんですから…ご、ごめんなさい…」カタカタ
菫(この子、性格と裏腹にかなり力あるぞ…!)
菫「ぐぎぎぎ…!」ググググ
菫(駄目だ…力じゃ向こうが上だ…)
宥「ううううう~~~!!」ギチギチ
菫(第一、処女奪うって言いながらずっと腕抑えたまんまだし…!何する気だ?)
宥「えいっ!」
菫「くあっ!?」ビキッ
宥「はぁはぁ…!うううう~~~!!!」
菫(抑え付けられた腕が攣りそうだ…!どんな力だよ!)
宥「やっつける!やっつけるもん!」ギチギチ
菫「この…いい加減に…」
菫「離れろ!」バッ
宥「え…あれ…?え…脚…?なんで…」
菫「首捕ったぞ!この野郎!」グイッ
宥「きゃ!?」ドサッ
宥「うううううう~~!!」ジタバタ
菫「け、けど、はぁ…こ、これで完全に極まったぞ。もう逃げられると思うなよ」ギチギチ
宥「かふっ…!」ビクビクッ
菫「ふぅ…ふぅ…っ!よ、よし!それじゃあ答えろ!何のつもりだ魔法少女!」
宥「く、玄ちゃんを守るためだもん!」ジタバタ
菫「ああ!?風潮被害者暴走したの魔法少女が止めないでどうするんだよ馬鹿野郎!」ギシッ
宥「ぐっ!だ、だけどっ!玄ちゃん、大事なんだもん!たった一人の妹なんだも…あああっ!」メシメシ
菫「ふざけるな!だったら尚更だろう!早いとこ浄化してやらないと悪戯に罪を増やすだけだ!姉だって言うならむしろお前こそが…」ギチギチ
宥「やだ!絶対にやだ!!」ポロポロ
菫「泣くほど嫌か!このわからず屋!」
宥「わからず屋でも…!暴走風潮被害でも…!!」
菫「だったらまずお前を絞め落として…」グググ
宥「あぐ…っ!かっ…!け、けどっ!負けないっ!」
宥「絶対に玄ちゃんは殺させないもん!」
菫「…え?ころ…」
宥「たあ!」コロン
菫(あ、抜けられ…って、待て待て。なんか双方重大な勘違いしてないか?)
宥「はぁ…はぁ…うう~…く、苦しかったよぉ…」ヨロヨロ
菫「えーっと…君、なんか勘違いしてないか?魔法少女は別に…」
宥「とぼけないで!魔法少女は風潮被害者を殺すために現れるんでしょう!?」キッ
菫「いやいや、幾らなんでもそこまでバイオレンスな世界観じゃないが…」
菫(えー…そこから勘違い?)
菫「っていうか、どこからの情報でそんな勘違いを…」
宥「…え?だって、マスコットの穏ちゃんが、風潮被害をやっつけるのが魔法少女の使命って…」
菫(穏って…もしかしてあの阿知賀の大将の子か?)
仁美「あの大将か?あいつアホっぽそうやったからな~。説明じゃんじゃん端折ってる内に勘違いさせてそうたいね~」ムクリ
菫「仁美…」
仁美「ちなみに、お前さん魔法少女初めてどんくらいよ?」メェー
菫「超タイムリーだなぁ!」
仁美「ほーほーほー」
宥「赤土先生に進路相談して、その後校舎で遊んでる穏ちゃんに会ってお話して、そしたら『なんかきたー!』って穏ちゃんが突然叫びだして…」ブルブル
菫「マジか」
宥「それから私と穏ちゃんがパートナー?っていうのらしいからキスしようってなって…」
菫「アバウトだな!」
仁美「風潮被害とか魔法少女について知ってることは?」
宥「風潮被害は、悪い噂に従わなきゃいけなくなることで、魔法少女はそのかかった人をやっつける専門の人って…」
菫「おお…」
仁美「…まあ、勘違いしてもおかしくない説明たいね」
菫「はぁ~…」シオシオ
宥「え?ええ!?」オロオロ
菫「羊。説明任せた」
仁美「仕方なかね~…」
仁美「以上。魔法少女に関する講義終了」
宥「そ、そんな…それじゃあ、私勘違い?」
菫「あ~…どうやらそのようだね」
宥「ごっ!ごめんなさい!私そうとは知らずお客様にとんだ失礼を!」ペコリン!!
仁美「メェ~…」
菫「…まあ、妹さんを守ろうとした気概は立派だと思うよ」
宥「うううう…」シュン
菫「しかし…そのマスコットの子…ええと…」
宥「高鴨穏乃ちゃん」
菫「なんて言うか、ちょっと説明力が無さ過ぎるというか…」
仁美「アホたい」
宥「ほ、本当はいい子なんです!ただちょっと落ち着きが足りないというか…」オロオロ
菫「まあ、今度会って話しようか。明日にでも」
仁美「…と言うことは」
宥「え?」
仁美「…おお。暴走しとる暴走しとる」
菫「ああ!」
宥「え…ああっ!」
仁美「妹さんド派手に暴走しとるね~。これは…アホの子という風潮に腹黒い犯罪者という風潮に…おもちマイスターだという風潮?トリプルやね」
菫「げっ!」
宥「えっと…それって」
仁美「初陣で菫が手も足も出なかったタイプ」
菫「くっ…け、けど今ならあの頃とは違うしなんとか…」
宥「大変!玄ちゃんを止めなきゃ!」
菫「松実宥さん。だったら、私も手伝うよ。さっきはああ言ったが新人一人じゃ手に余るだろう」
宥「すみません。恩に着ます。早く玄ちゃんを助けてあげなきゃ…」
仁美「ん?あ~…れ~…?」
菫「どうした?」
菫「仁美?」
宥「?」
仁美「…や、ええよ。行かんでも」
菫「は?」
宥「駄目!」
仁美「いや。駄目ち言うても…」
宥「玄ちゃんきっと苦しんでる!私が助けてあげなきゃ!」
仁美「ん~…」
菫「どうした羊。なんだか煮え切らないが」
仁美「…うん。もう終わったわ」
宥「へ?」
菫「…」ピクッ
宥「え…?それは…つまり?」
仁美「解決。お疲れ。おめでとう」
菫「おい、羊。まさか…」
仁美「ん」
宥「????」
仁美「かすみんが一晩でやってくれました」
霞達の部屋
スス…
玄「…」チラッ
玄「…」キョロキョロ
スス…スーーーーッ…
玄「…」コソコソ
玄「…くふふふ」
霞「…すー…すー…」
玄「ふふふ…よく眠っているのです」ニヤニヤ
霞「…すー…すー…」
玄「これから私に手篭めにされ、調教され、骨抜きにされ…己の意思すら持たぬ哀れなおもち人形として一生を終えるとも知らずに」クフフフフ
霞「…すー…すー…」
玄「可哀想なギニーピッグよ…恨むなら、己の呑気さと神すら恐れる至高のおもちに育ってしまった自分を恨むのですね」ジリジリ
霞「…すー…すー…」
玄「貴女のそのおもちは、この瞬間よりこのクロチャー様の所有物なのです…」ジリジリ
玄「ふふふ…素晴らしい…寝息で呼吸するだけで大山鳴動…もはや我慢できません」
霞「…くす…すー…」
玄「さあ、いざ霊峰へ我が魔手にて征服をせんや…!」スッ
霞「はい♪」バサッ
玄「へ?」
霞「一名様ご案な~い♪」グイッ
玄「むきゅっ!!?」
ボフッ
霞の布団「ドタンバタン!!」
霞の布団「ドタバタ!!」
霞の布団「ドタ…」
霞の布団「…」
シーーーーン
…
美子「…」ボーー
美子「…」キョロキョロ
美子「…」ジーー
霞「…すー…すー…」
美子「…?」キョトン
霞「…すー…すー…」
美子「…」ポリポリ
霞「…すー…すー…」
美子「…」ポケー
美子「クアー…」
美子「…」コシコシ
美子「…」コロン
美子「…すー…すー…」
玄「 」ピクピク
宥「はい?」
菫「妹さんは、その…」
宥「はあ」
菫「…まあ、野良犬にでも噛まれたと思って…」サッ
仁美(あ。目逸らした)
宥「何があったんですか!?」ガーーーン
第十話
「松実姉妹と恐怖のおもち」 終わり
菫達の部屋
はやり「みんなー☆お待たせこんばんわ~…てぇ…」
菫「…」ゴツッゴツッ
霞「…」ゴチンゴチン
宥「あわわ」オロオロ
仁美「チューチュー」
美子「すやすや…」
玄「 」チーーーーン
はやり「何この状況」タラリ
菫「あ、はやりん。お疲れ様です。お待ちしていました」ゴツンゴツン
霞「あら瑞原プロ。いつぞやはお世話になりまして、大変感謝しております」ゴッ!ゴッ!
はやり「ふ、二人はまずその激しい頭突きのし合いっこを止めてからお話しようね…」タジタジ
玄「新たなおもちの気配!?」ガバッ
仁美「おい。こいつ風潮被害消えとらんのじゃなかか」
宥「玄ちゃんいつもこんな感じだよ~」ブルブル
はやり「はぁ~…まさか、この局面で新しい魔法少女に出会うとはねー」
宥「あ…ま、松実宥です…瑞原プロですよね?」ペコリン
はやり「ども~。はやりんだよ~☆」
玄「みなさん!お茶を淹れてきたのです!」ガラッ
仁美「おお、気が利くね」
美子「…」ペコペコ
霞「あら…確かにあんまり変わってないわねこの子」
菫「…と、まあ、こんな感じなんですが…」
はやり「暴走風潮被害、今日だけで2人かぁ~…」
仁美「ついでに言えば、マスコットと魔法少女も一人ずつ出来とる」
はやり「なるほどねぇ…って事は、やっぱり…」ブツブツ
菫「?」
霞「あら。と言うことはやはり、瑞原プロも?」
はやり「霞ちゃんも?…うん。多分、間違いないんじゃないかな」コクン
はやり「面倒臭いなぁ…」ヤレヤレ
菫「あの…」
はやり「ん?…ああ、たはは…ごめんごめん」
菫「あの…申し訳ありません。話の腰を折るようで。けど…」
はやり「うん。わかってるわかってる。説明だよね?」
菫「ええ…何やら、わかって無いのは私と宥さんだけのようですので…」
宥「…?」キョトン
美子「…」
玄「私もわかってないのです!」ビシッ
仁美「はいはい」
霞「くすくす…」
菫「むっ…なんだよ。ちょっと知ってるからって古参気取りか」
霞「いえいえ…そんなつもりではないのだけど…」
菫「ああ?」
菫「ぐぬぬ…」
はやり「霞ちゃんもね?あんまり喧嘩しないでね?」
霞「…ぷう」
はやり「はい、それでは今から、私達…って言っても霞ちゃん達はたまたま合流しただけなんだけど、目的同じっぽいから良いよね?」
霞「ええ♪」ニコッ
美子「…」コクン
はやり「…私達が何故宿泊までしてここ、阿知賀にやってくることにしたのかのネタばらしをしようとおもいま~す☆」
菫「ネタばらしって…風潮被害が多く発生する前兆を感じたからでは?」
はやり「それもそうなんだけどね~。けど、そっちはどっちかって言うと、オードブルって感じ」
菫「…はあ」
はやり「メインディッシュは、その後に控えています」
菫「…?」
はやり「今回のメインディッシュの名前はー…大風潮被害」
菫「大風潮被害?」
菫「それは…一体?」
はやり「うん。ぶっちゃけて言うとね。超々強力な風潮被害の事」
菫「…はあ」
はやり「どれくらい強力かって言うと、その感染者のイメージを全て、真っ白から真っ黒にまで塗り替えるといっても過言ではないくらいの強力なもの」
はやり「まるで風潮被害自身が意思を持ち、人格を形成し、一人歩きし、元の人格を完全に乗っ取るかの如く。しかも、それがあっという間に広がっていく。まさに風のような速さでね」
菫「それは…恐ろしいですね」
はやり「あまりに強力なその風潮被害は、感染者本人だけに留まらず周囲の人間にまで風潮被害汚染を引き起こすと言われているよ」
菫「っ!まさか、それで今回も!」
はやり「うん。ここ阿知賀で数多くの風潮被害者が急に発生しているのは、大風潮被害者が生まれようとしているからじゃないかな」
菫「やっぱり…」
はやり「そんな状況で魔法少女とマスコットが急に生まれたっていうのも、過去に結構事例があるね。まるでウィルスに対して身体が免疫が作り出すかのように、大風潮被害者の周囲には魔法少女が発生し易くなるらしいの」
宥「それが、私と穏ちゃん…?」
はやり「多分ね。そういうケースで発生した魔法少女は強大な才能を持ってる事が多いって言うけど…どう?君。私達と一緒に魔法少女隊やってみる気ない?☆」
宥「え?え?」オロオロ
はやり「あはは…ごめんごめん。でも、良かったら真剣に検討して欲しいな」
霞「へえ…面白そうなことやってるのね貴女達」
菫「なんだよ。お前も入れて欲しいのか?」
霞「まさかぁ?確かに瑞原プロとチーム組むのはとても魅力的だけど…貴女と一緒じゃ…ほら…ねえ?」クスクス
菫「…」ビキビキ
はやり「喧嘩駄目だヨー」
菫「…コホン。では、先ほどの話の続きを。その、大風潮被害に関してですが。それほどまでに強力なケースなら、感知も容易で暴走前に未然に止めることも簡単なのでは?」
はやり「それが、そうもいかないんだよねぇ~…」
菫「…というと?」
はやり「…大風潮被害者は、完全暴走前から私達魔法少女に敵意を剥き出しにするの」
はやり「風潮に従った行動をするのは暴走後なんだけど…大風潮被害はその強大さ故に暴走までの期間が凄く長くて、それまでに自己防衛みたいな機能を働かせるようなの」
はやり「暴走前から通常の風潮被害体を遥かに超える能力を有し、狡猾に身を隠し、羽化の時を待つ」
はやり「察知するには、その強大な波動を一瞬でも感知するより他にない。だから、こうやって近くまでは特定できてもその先、個人の特定が難しい」
はやり「…ねえ?霞ちゃん」
霞「…ふふふ。ええ、そうですね。私もその大風潮被害者だった一人」
菫「お前が…」
霞「本当に辛いのよ?自分が自分でなくなる感覚…やりたくないことをやりたいと考えている自分。やらなきゃいけないという使命感に必死に抗う孤独」
霞「…誰かに必死に助けって!って叫んでも、喉元にすら言葉は上がってこない」
霞「あの時暴走前に瑞原プロに見つかっていなかったら…ふふ。考えるだけで虫酸が走るわ」
菫「そうだったのか…」
霞「兎に角、今この瞬間にでも同じ思いをしている子が居るのなら救ってあげたい…」
霞「…」
霞「…なんて、冗談。ただ歯ごたえのある遊び道具があるから遊びに来ただけ」
霞「…それだけだわ。それだけで十分」
はやり「…うん。それでもいいと思うよ。私は」
霞「…」
はやり「大事なのは、救うこと。理由なんて二の次」
はやり「だから、そのためにみんな。今この瞬間から、その時まで…力と知恵を私に貸してね」
霞「当然ですね♪」
宥「わ、私で力になれるなら…!」
美子「…」コクン
玄「わ、私だって力になれることが有ったら言って下さい!」
はやり「みんな…ありがとう…」
仁美「…」
菫「…仁美?」
仁美「…面倒くさ」ボソッ
菫「…お前なぁ」ハァ
仁美「あーめんどくさめんどくさめんどくさ…っ!」ガリガリガリ
はやり「ふふふ…」ニコニコ
菫「はやりん?ちょっとはやりんからもこの羊になんか説教の一つでも…」
はやり「大丈夫☆」
菫「…」
仁美「なるったけ早く終わる手段考えるばい…!」
はやり「それじゃあ、手筈通りに☆」
菫「ええ。お互いの健闘を祈りましょう」
霞「みなさん、お気を付けてくださいね。口だけの3流魔法少女以外」
菫「ああ!?なんか言ったか垂れ乳!」
霞「何!?図星突かれてトサカにきちゃった!?」
はやり「もー!こら二人とも!」
菫「ちっ…!」
霞「くっ…!」
はやり「…本当に大丈夫?」
菫「…ええ。頭を冷やしました。これからは白糸台の部長やっていた時のモードです。冷静沈着に行きますよ」
霞「なら私も永水女子モードで…」
菫「2回戦ガール(笑)がなんだって?」
霞「!!」ビキビキッ
はやり「…あー。これこれ。仲いいのはわかったから、お姉さんだって怒る時は起こりますぞ」
菫「Aチーム:はやりん、宥さん、玄さん。Bチーム:霞、美子さん。Cチーム:私、仁美 の編成です」
はやり「よろしい。じゃあ次。宥ちゃん、仁美ちゃん、霞ちゃん。それぞれの所属チームの行動目的言える?」
宥「Aチームは、まず私のマスコットである高鴨穏乃ちゃんと合流します。その後瑞原プロが彼女に事態の説明。使用可能な魔法等の確認。私と穏ちゃんの総合的な戦力を瑞原プロが分析し、決戦に参加可能と判断すれば参戦します」
霞「Bチームは晩成高校の調査です。大風潮被害者として疑わしき人物が居ないかを観察及び近日行動の変わった人物が居ないかを聞き込み。随時各チームに報告も行い、最終的な判断は瑞原プロに任せます」
仁美「Cも大体おんなじ。ただしこっちは阿知賀女子の調査。当該人物が少ないんで問題ないと判断したら速攻晩成に移動」
はやり「オッケー。あとは、玄ちゃんだけど…」
玄「はい!なんでもします!」フンスッ!
はやり「あ~…」
はやり「…私とお姉ちゃんから離れないように」
玄「了解なのです!」ビシッ
はやり「…そ、それじゃあ、行動に移りましょうかー。みんな。各チームでの行動はいいけど、深追いはしないように!確信を得たら、すぐに他のチームに連絡すること!1対1で戦おうなんて考えちゃ駄目だよ!」
はやり「特に二人は!!」
菫「こ、心得ています…」
霞「わ、わかりましたから…」
菫「それは勿論」
霞「当然よね」
はやり「…」
はやり「…じゃあ…」
はやり「みんな、行くよっ!」
はやり「…ふぃ~。BとCは行ったね~?…不安だぁ~」ガクー
宥「あ、あのあの…」
はやり「…おっとぉ。ごめんごめん。はやり、一番お姉さんだもんね。ごめんね?みんなに心配かけるような事言っちゃって…」
宥「いえ、そんなことないですけど…」
玄「携帯準備出来ましたよー」
はやり「…ああ。そっか。ありがとうね~」
宥「まず穏ちゃんの携帯に掛けてみます」プルルルル…
はやり「…これで繋がってくれれば話は早いんだけどねぇ~」
玄「穏乃ちゃん、すぐに携帯置いてっちゃうから…」
宥「…やっぱり駄目です」
はやり「あう…」ガックリ
宥「次、お宅の方に電話してみます…」プルルルル…
はやり「何処に行ったのかな?」
玄「休日は顧問の先生が監督していないと部活出来ないのです。で、顧問の赤土先生が先生の方のお仕事で出張中なので、それに合わせて部活もお休み。一日休みだから山の方に行ってるかも…」
宥「…あ、高鴨穏乃さんのお宅ですか?いつもお世話になっています。私、穏乃さんの麻雀部の友人で、松実宥と申しまして…」
はやり「…山だったら時間かかるなぁ…」
宥「…ええ、ええ。そうです。玄の姉です。…あの…穏乃さんは今どちらに居らっしゃるかご存じないでしょうか…」
はやり「…」
宥「…はあ…山が呼んでいると…はあ…」
はやり「…」
宥「…わかりました。ありがとうございます」
宥「…」ピッ
宥「…」
はやり「…」
玄「…」
宥「…山です」
テクテク…
霞「晩成高校か…ねえ、美子ちゃん」
美子「?」キョトン
霞「そこに居ると思う?」
美子「…」
霞「…ふふ。そうよねぇ?わからないわよねぇ?」
霞「けど」
霞「…鷺森灼」ボソッ
美子「?」
霞「松実玄」
美子「…」
霞「松実宥」
霞「…そして、高鴨穏乃」
霞「…全部、何かしら成ってるのよねぇ…」クスクス
霞「…阿知賀女子は、今日部活休みなんだっけ?」
美子「…」コクコク
霞「だったら阿知賀なんか行っても無駄骨だと思うんだけど」
美子「…」
霞「…羊が提案したチーム分け…晩成はここから一番遠い…」
美子「…!!」
霞「…まあ、良いけどね。面白いから真面目に役割こなしてあげましょうか。何か考えがあるんでしょう」
美子「…」
霞「…けど、あの子、何企んでるのかしらね?」
霞「ふふ♪」
菫「…ん?どうした仁美。そっちは阿知賀女子じゃないぞ」
仁美「いや…その前にちょっとな」
菫「寄り道は許さんぞ」
仁美「ちょっとだけいいだろ?」
菫「は?」
仁美「大勝負前の神頼みたい」
菫「神頼みって…」
仁美「ちょっと神様に一参り。必勝祈願にお祈りしてくるくらい良かろ」
菫「お前信心深かったっけ?」
仁美「…ま、そこそこな。駄目か?」
菫「…まあ、それくらいなら」
仁美「助かるわ~」
菫「…で、肝心の神社って何処だよ。あまり時間は取れないぞ」
仁美「大丈夫大丈夫」メッヘッヘッヘ
仁美「偶然、な」
第十一話
「大風潮被害と魔法少女達」 終わり
アコチャーの風潮被害はやばい
Entry ⇒ 2012.10.23 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
はやり「歳の差っていけないこと?」
「オッケーでーす! お疲れ様でしたー」
はやり「お疲れ様でした☆」
D「はやりちゃん今日も良かったよー」
はやり「ありがとうございまぁす☆ はやり嬉しいっ」
みんなに笑顔を振りまいてお仕事終了。
元々こういった人前に出るお仕事は好きだし、この歳でアイドルだとか、そういう体裁を気にしたことはない。
幸い容姿的には-十歳でも通用するし――キツいと言われることがない訳ではないけど――何より自分が楽しんでいるから。
ほんの少しのキャラ付け、興味のあったロリータファッション。お砂糖スパイス素敵なモノ。
これら全てが私の一部。
アイドルモードと素の自分は正反対! なんて意外性はないにしたって、されど私は28。
経験だってそこそこあるし、いわゆる「大人の世界」も一通りは見てきたつもり。
中身までがクリームたっぷり夢見がちなメルヘン少女という訳ではないのだ。
はやり「……はぁ」
だから分からない。今更、初体験をしていることが。こんなにも心を掻き乱されていることが。
どうやら私は本当に、恋をしているみたいです。
それは今から二年前くらいの話。
夏、茹だるような暑さに参っていた私に与えられたお仕事は毎年恒例インターハイの解説。
トッププロ入りしてから早……何年くらいかなぁ。とにかく、私は決勝戦の解説を任されるくらいのベテランになっていた。
今年はどんな面白い子がいるのだろうと未来のホープに期待を込めながら打ち合わせを重ね、いよいよ本選が始まった。
自分の出番はまだだけれど、そのときのために各校のチェックは欠かさない。
はやり「うわわ、やっぱりこの子凄いなぁ。東三局で飛ばしちゃってる……親番で連荘かぁ」
その年特に騒がれていたのは宮永照さん。白糸台高校の先鋒で一年生。
インターミドルなどでの成績が一切ない上、打点が上昇していくという特異な打ち筋で、そのミステリアスな強さに日本中が注目していた。
無名校や初出場校が勝ち上がったり、先の宮永さんのようなスーパールーキーが入学して勝ち進んだりと、予想だにしないドラマがあるのもインターハイの醍醐味の一つ。
この大生院女子は、インターハイ自体には何度か出場しているけれどいつもパッとしない成績だった。
だから、この年はきっと凄い一年生が入ってきたんだと思った。ワクワクしながら選手を確認する。
――――予想外だった。
大生院女子の先鋒は、三年生。それも、何とインターハイ初出場の。
三年にして初のレギュラー入りということだろうか?と思うも、牌譜がその考えを否定する。
宮永さんのような派手さはないけれど――トッププロでなければ見抜けはしないだろう――オカルトじみた打ち筋は、さながら鷹が爪を隠しているようだった。
まだ、本気じゃない……きっとこの子が本気になるのは決勝なんだ。
私は高揚するままに、その名前をしっかりと目に焼き付けた。
戒能良子。大生院女子先鋒の、不思議な三年生。
泣いても笑っても、これが最後の試合。
決勝に勝ち進んだのは、白糸台、臨海女子、姫松。そして――大生院女子。
身体が震えた。もう何年も解説のお仕事はしているけれど、これほど楽しみな試合はなかった。
結果から言うと、その年の優勝校は臨海女子。
大生院女子も白糸台も、先鋒以降では打ち負けてしまった。
お互い先鋒で稼ぐというスタンスなんだろうけれど、宮永さんと戒能さんが削り合った結果、それほど大きなリードを取れずにその後失速してしまったのだ。
解説している間、私は自分がトッププロで牌のおねえさんであるがゆえの守るべきラインとかキャラだとかを、すっかりどこかに置き忘れてしまっていた。
ただ純粋に、あの空気に触れたいと思った。
そして、オーラス。戒能さんが宮永さんに跳満を直撃、大生院女子がトップに躍り出た。
やり切った表情をして会釈をし合う彼女たちを見ながら、私は頬が熱くなるのを感じた。
はやり(戒能……良子、ちゃん)
思えばこのとき、きっともう始まっていたんだろうな。
私の胸の高鳴りが、確かにそれを告げていた。
一言にまとめるのは簡単だけれど、その現実を直視するのは何というか、難しい。
はやり(ハタチって……若っ。プロ入りしてなきゃまだ学生やってる歳なんだよね……)
いつからこんなに年寄りじみた考えを抱くようになったんだろう。私だってまだまだイケると思うんだけどなぁ。
けれどそんなものは虚勢でしかなく、つまり私は怖いんだ。
こんなに年下で、一目惚れに近くて、ろくに話をしたこともない相手に恋をしているということが。
牌のおねえさんをやっていて、年齢を気にしたことなんてない。
いつもいつまでも自分らしく、自分のやりたいことをやるのが私のモットーだもん。
相手が自分と同じプロだから? 違う。とあるプロと付き合っていたときはこんな風に悩まなかった。
面識が浅いから? 違う。あの日知り合った子と一晩だけ関係を持ったこともあった。
はやり「やっぱり……歳の差、なのかなぁ」
声に出して、ため息をつく。何かがひっかかる。
年齢なんてものに囚われないで生きてきた私が、どうしてそんなものに悩むことがあるだろうか。
そんなことは、ない、と思う。けれど、自分がこうやって考え込んでいる原因なんて、それくらいしか見当たらない。
次から次へと溢れて止まらない至高の波を、着信音が遮る。
はやり「……咏ちゃん?」
意外な人物からの突然のお呼び出し。
モヤモヤした気持ちを晴らすためにも、ここはお誘いに乗りましょう。
はやり「今日はまた、どうしたのー? まぁオフだったしいいんだけど」
咏「最近働き詰めだったかんね、ちょっと飲みたくなっちゃってさー。お、来た来た」
健夜「あれ、私が最後か。待たせちゃったかな」
咏「いんやー、今来たばっかだよ」
はやり「健夜ちゃんも呼ばれてたんだぁ。久しぶりっ」
健夜「結構久々だね……はやりちゃんも、急に?」
はやり「うん。お家でゴロゴロしてたらいきなり電話がかかってきてびっくりしたぞ?」
咏「いまさらそんなん気にする仲じゃないっしょ! ってことで飲み行くぞー!」
はやり「おー☆」
健夜「わ、私明日仕事なんだけど……」
咏「んぐっ、んぐっ……ぶっはー! 疲れた身体にビールが沁みるー!」
はやり「咏ちゃんオヤジくさぁい☆」
咏「ほっとけー! なんならオヤジらしくセクハラしてやっても良いんだぜー?」
はやり「そーいうのは事務所通してくださーい☆」
健夜「ん……砂肝おいし」
はやり「えっ……そうかな?」
健夜「確かに……何か悩んでるっていうか、ため息も増えたよね」
はやり「うっそぉ……」
咏「私が飲みたかったってのもあるけどさ、何でこの面子かっていうとだ」
健夜「ああ、それ気になってたんだ。何で?」
咏「そりゃもちろん女関係の悩みを持つもの同士!」
健夜「ブッ」
健夜「ごめ……ゲホッ、咏ちゃん何言ってるの!?」
咏「ああゴメンゴメン、すこやんは円満だから悩みじゃねーわな」
はやり「羨ましいぞーこのこのぉ☆」
健夜「そうじゃなくて……えぇ……なにこの空気」
咏「まー私も? 別に喧嘩したとかじゃないけど? えりちゃんのモテモテっぷりには嫉妬もする訳よ」
健夜(絶対喧嘩してる……)
咏「でっしょ!? 私がいながらさー、無防備すぎんだよえりちゃんは!」
健夜「それはえりちゃんのせいじゃないんじゃ……」
咏「いーや! えりちゃんフェロモンのせい!」
健夜「フェロモンって……」
はやり「んん~……それはわかったけど、それで何で私なの?」
咏「え。だってはやりんが元気ないのって女絡みでしょ?」
健夜「あ、それは私も思ってた」
はやり「えー? なになに、そんな感じ出てた?」
健夜「何か珍しいタイプの悩み方だもんね。思春期の恋煩いみたいな」
はやり「ぐふぅっ」
咏「おー! すこやんの攻撃! はやりんのHPが500ダウン!」
健夜「えぇっ!? ご、ごめん?」
はやり「うぅ……聞いても、笑わない?」
健夜「それは聞いてからじゃないと……」
はやり「ぐはぁっ」
咏「さらに追撃ーっ! はやりん死亡!」
健夜「えぇぇえ!?」
咏「なーんか遠まわしじゃね?」
はやり「自分でもちょっと混乱してて……」
健夜「はやりちゃんがこういう風に悩んでるのって新鮮かも」
はやり「それは自分でも思ってるよぅ!」
咏「で? 誰が好きなん?」
健夜「?」
はやり「……戒能、良子ちゃん」
咏「うっひょ! マジかい!」
健夜「良子ちゃんってあの良子ちゃんだよね!?」
はやり「う、うん……プロの、新人賞取った……」
咏「こりゃまた……はやりんがあの子に……へぇぇぇ……」
健夜「何ていうか、ごめん、正直ビックリ……」
咏「いやいや、悪いって言ってる訳じゃねーよ? ただちょっと意外だっただけで」
健夜「そうそう。はやりちゃんって何となく年上とお付き合いしてるイメージあったし……」
はやり「そう!!」
健夜「は、はいっ!?」
はやり「そこなの! 私、もう28だよ!? それなのに、ハタチの子に恋なんて……はぁ……」
咏「んー? 別に歳とか関係なくねー? 知らんけど」
健夜「好きになったものはしょうがないんじゃないかな?」
はやり「そうなの……? でもほら、歳の差って変な風に取り上げられやすいし……」
咏「その歳でアイドルやってるはやりんが言えたことじゃないっしょ~」
健夜「はやりちゃん、歳の差に悩んでたの?」
はやり「え……?」
健夜「はやりちゃんって、年齢とか気にしてなさそうだったから」
はやり「……わかんない」
はやり「別の、とこ……」
健夜「うん……何ていうか、年齢を言い訳にしてるみたいな感じがするかなって」
咏「おっ、言うねーすこやん!」
健夜「あっ、その、悪い意味じゃなくてね!?」
はやり「……」
咏「さすがアラフォーは言葉に重みがあるわぁ~」
健夜「アラサーだよ! 咏ちゃんまでこーこちゃんみたいなこと言って!」
健夜「どこまでって……私とこーこちゃんはそういうのじゃ……」
はやり「……えぇ~? そんなことないでしょ☆」
健夜「はやりちゃんまでっ!」
咏「いつまでカマトトぶっこいてんだよー、やることやってるくせしてー」
はやり「健夜ちゃんってそういう関係は段階を踏んでからなるものだと思ってそうだしねぇ☆」
健夜「だ、だって……告白とか、大事でしょ?」
はやり「私もその場の勢いとか多いかも~」
健夜「そんなものなの……? いやでも、あれは事故っていうか……」
はやり「あれって何? おねーさん教えてほしいなぁ☆」
咏「もっしかして、この間ふくよんが泊まったとき?」
健夜「まぁ……そう、だけど」
咏「マジで! 何があったん?」
健夜「えっと……その、き、キス……しちゃったっていうか……」
はやり「えー! それホント!?」
咏「うっひょ! すこやんやるねぃ!」
健夜「し、してきたのはこーこちゃんの方だから! じゃなくて、あれは事故っていうか!」
はやり「まさか健夜ちゃんの口からそんな言葉が聞けるなんて……はやりん泣けちゃう……☆」
咏「これが大人になるってことなんだねぃ……はやりん、乾杯っ!」
はやり「かんぱぁいっ!」
健夜「ちょ、ちょっとぉ!」
飲みすぎ。
健夜ちゃんをいじったり、咏ちゃんのえりちゃん自慢を聞いたりと、楽しい時間が過ぎるのはあっという間だった。
健夜ちゃんは最後ヤケ酒してたけど、明日のお仕事大丈夫なのかな?
そして、私はというと。
はやり「もっと、別のところ……かぁ……」
ここ最近、ずっと胸に引っかかっていたのはそこだったのかもしれない。
確かに私は健夜ちゃんの言うように、歳の差という言葉を盾に、何かもっと大きな悩みに気づかないようにしていた気がする。
だからといってその悩みがわかった訳ではないし、根本的な解決には至っていないのだけれど。
それでも、早くそれに気づけなければ、きっとまた私は自分の弱さに蓋をしようとしてしまうだろう。
酔って重力に耐え切れなくなった身体と対照に、少しだけ心は軽くなった気がする。
瞳を閉じると、あのときの彼女の姿がすぐそこにあるようだった。
もう一日あった休みは有意義に使うことが出来たと思う。今日はレギュラー番組の収録だ。
多少気持ちが落ち着いたからか、笑顔がいつにも増して良いと褒められた。嬉しいな。
「お疲れ様でしたー」
はやり「お疲れ様でしたぁ、今日も楽しかったです☆」
収録も終わり、次のお仕事までは少し時間が空く。
いつもなら一人で洋服を見たりしているところだけど、今日は何故かしばらくスタジオから出る気にならない。
まぁ、こんな日もあるよね。控え室で次のお仕事の準備でもしてようかな?
なんてことを考えながら廊下を歩いていると、これはどういうことだろう。
意中の彼女の姿が見えた。
口から心臓が飛び出すくらい、なんてものじゃない。
ピンと伸びた背筋に、長い睫毛。すみれ色の綺麗な髪はコンパクトにまとめられていて、まだまだ着慣れていないはずのスーツはしっくりと似合っている。
そこにいるのは間違いなく、戒能良子その人だった。
良子「ん……?」
目と目が合う。それだけで通じ合う、なんて仲ではないけれど、彼女はこちらに歩を進める。
良子「瑞原プロじゃないですか。すっげーお久しぶりですね」
鈴の鳴るような透き通った声が、私の心をノックした。
私はしどろもどろに――なっていたのは心中だけだと思いたいけれど――なりながら、何とか食事の約束を取り付けた。
玄関ホールで待ち合わせをして、喫茶店にでも行かないかと誘った私の顔は不自然に赤くなかっただろうか。
彼女は表情を崩さないまま、「いいですね」と快諾してくれた。
小走りで控え室へ戻り、自分がどんな洋服を着てきたか改めて確認する。
今日は一日フルでお仕事が入っていたから、それなりにお洒落な格好をしてきていた。
心底ホッとしてから、気合を入れて化粧を整える。
こんなにも誰かに見てもらうための努力をするのも久しぶりかもしれないな、と思うと、チークがいらないくらいに頬が火照った。
本当はこの言葉をかける五分ほど前に玄関に着いていたのだけれど、緊張だの心配だのがピークに達して深呼吸を繰り返していた。
髪の毛とか変じゃないかな?今見ると服もちょっと派手かもしれない。
けれど一人で何を悩もうが結局はこのまま出て行くしかないのだから、と割り切るまでに、いっそ帰りたいと何度思ったことだろう。
彼女は気取った様子のないいつものスーツ姿で、芯が一本通ったようなブレのない姿で立っていた。
良子「ノープロブレムです。行きましょうか」
はやり「う、うんっ!」
一歩踏み出した脚が震えていたことは、気づかれていないと思いたい。
はやり「そうだね……良子ちゃんとお話したいなぁって思ってたんだけど、なかなか現場も一緒にならないし」
良子「私はテレビなんかの仕事は少ないですし、誘っていただけたらいつでもついていきますけどねー」
はやり「でもでも、新人王さんは引っ張りだこなんじゃないの?」
良子「ないないノーウェイノーウェイ、瑞原プロ程じゃないですよ」
はやり「あはは……良子ちゃんもやってみる? 牌のおねえさん」
良子「ノーサンキューです」
いざ向かい合って話をしてみると、なかなかに落ち着いて喋れている気がする。
ここは年の功、経験が役に立ったかな、とこれまでの自分を褒めてあげたりなんかして。
はやり「あ……そうだ、言いそびれちゃってたけど、この間の大会も優勝してたね。おめでとう☆」
良子「ああ、ありがとうございます。日本代表クラスが出場してないもんで、助かったですけど」
はやり「ううん、良子ちゃんは最近どんどん強くなってると思うよ? これは本当」
良子「トッププロに言われると嬉しいですねー」
はやり「あなたもトッププロでしょっ。伸びしろがあって羨ましいぞ☆」
はやり「ふぇ? み、見てくれてたの?」
良子「いえす。相変わらずすっげー速いわ強いわで、見てるほうも楽しかったですよ」
はやり「あ、ありがとう……」
まさか、試合を見てくれているなんて思わなかった。またもかぁっと頬が熱くなる。
ちなみに私は良子ちゃんの出場する大会は細かくチェックしている。彼女の変幻自在ともいえるプレイスタイルは、毎度私に感動を与えてくれるものだ。
良子「ところで、今日はこの後また仕事ですか?」
はやり「うん。あと……二時間後かな。ラジオの収録があるの」
良子「あー、そうでしたか。暇ならこのまま買い物でもどうかと思ったですけど、しょーがないですね」
はやり「えぇっ!?」
――あ、マズイ。
思ってもいない嬉しいお誘いに、つい大きな声を出してしまう。
変な人だと思われちゃったらどうしよう。
良子「気にしないでくださいー。今度オフの日にでも改めて誘いますよ」
はやり「ありがとう……そのときは絶対! 何が何でも! 行くから!」
良子「オーキードーキー。んじゃ、アドレスとか教えてもらっといていいですか?」
はやり「う、うん! ちょっと待ってね」
良子「いえす」
光陰矢のごとし。
そろそろ次のお仕事に行く時間だ。
後ろ髪を二トントラックに引っ張られているような思いはあるものの、それはそれ、これはこれ。
社会人として大人として、お仕事はしっかりこなさなければいけない。
良子「楽しかったです。誘ってくれてありがとうでした」
はやり「こちらこそ☆ 急だったのに付き合ってくれて嬉しかったよ~」
良子「こっちからメールしておきますんで、登録よろしくですー」
はやり「はぁい、待ってるね☆」
控えめに手を振る彼女がかわいくて、話が出来て嬉しくて、私は今にもスキップしそうなほど舞い上がっている。
彼女に対する恋心を自覚してからこんなにも長く彼女といたのは初めてのことで、つまり口角が上がるのも当然のことで、私は身体中が幸せに満ちるなんていう感覚を久しぶりに味わった。
sub:戒能です
―――――――――――――――
グッドモーニング。
今日はありがとうございました。
またご一緒させてください。
もう何度も見返した受信メール。保護はとっくにしている。
メール画面を閉じて電話帳を開いてみても、そこに彼女の名前があることが嬉しくて、私はここ一時間ほど枕に顔を埋めて脚をバタつかせている。
はやり(まずいなぁ……私、ほんとに好きなんだ)
これまで経験だけを積み重ねてきた私にとって、ここまで盲目的に恋をするというのは珍しいことだった。
何もかもが新鮮で、こんなにも胸が温かくて、そしてちょっとだけチクリと痛い。
幸せに浸りながらも、ひとりになって思い出すのは咏ちゃんのあの言葉。
何かがわかりそうな気がしている。けれど、それをわかりたくない気もしている。
出口まではあと少しなのに、ふわふわとした足取りでなかなか距離が詰まらない。
はやり「……良子、ちゃん」
もう何度も呟いた彼女の名前。
掴みどころがなくて、たまに見せるお茶目さがかわいくて、私よりずっと年下の、私の好きな人。
この気持ちの終着点って、どこだろう?
とりあえず、今日はこのまま幸せの海に漂っていたい気がする。
ゆっくり考えていけばいいなんて、都合のいい余裕かもしれないけれど。
着信を示すランプが紫色に点灯しているのを見て、慌てて携帯をチェックする。
from:良子ちゃん
sub:無題
―――――――――――――――
ハローですー
明日とかお暇ですか?
簡潔な文章に彼女らしさがよく出ていて、思わず笑みがこぼれる。
偶然にも明日はオフなので、手早く返信。
from:良子ちゃん
sub:Re:はろー☆
―――――――――――――――
それはラッキーでしたね。
楽しみにしてます。
彼女が楽しみにしてくれているというだけでこんなにも心が躍るのだから単純なものだ。
明日の準備を入念にするためにも、今日のお仕事は張り切ってささっと切り上げなくちゃ。
良子「グッドモーニングですー」
今日は暑くもなく寒くもなく丁度良い気温に、空は雲ひとつない快晴。絶好のお出かけ日和だ。
彼女の私服は色々と想像していたけれど、それに反していつものかっちりとしたスーツ姿だった。
はやり「良子ちゃんはいつもスーツだね~」
良子「あまり私服を着た経験がないもので、どういうのがいいとかわかんないんですよね」
はやり「へぇ、珍しいね……じゃあじゃあ、今日は私が良子ちゃんをコーディネートしてあげる!」
良子「サンキューです。じゃあ、行きますか」
はやり「レッツゴー☆」
彼女は私より十センチほど背が高いので歩幅が合わないかもしれないと一瞬だけ寂しさを感じるも、いざ並んで歩くと意外と控えめというか、足運びにお淑やかな印象を受ける。
最初は私に合わせてくれているのかな? と思ったけれど、ともすればそれは私よりも小さいようで、どうやら生まれつきのようだった。
はやり「そういえば、私服を着た経験がないっていうのは、どういう……?」
良子「ああ、私の家系が神職でして。高校までは巫女をしてたんですよ」
はやり「そうだったんだ……なんか意外かも。良子ちゃんってどこか外国風というか」
良子「高校2年間は親に付いて留学してましたから、そのせいじゃないですかね」
はやり「ほぁー……なんだかスゴいね」
良子「ノーウェイノーウェイ。家系といえば、うちの従姉妹が今年のインハイに出るみたいなんです」
良子「滝見春って子です」
はやり「春……ああ、永水女子の!」
良子「いえす。あの辺はみんな血縁でして」
はやり「確かにみんな巫女さんだったなぁ、あそこ……麻雀の強い家系なんだねぇ」
良子「まぁ色々と特殊ですけどねー」
なるほど、巫女服で生活をしていたから歩幅が小さいんだ。
お家の話や従姉妹さんの話も聞けて、彼女のことをどんどん知っていくのが嬉しい。
傍から見ているとクールな印象を受ける彼女だけれど、こうして一緒にいるとお喋り好きな一面も見える。
そして何より、そんな彼女を今だけは自分が独占しているのだという事実が私の心を浮き立たせた。
はやり「そうだよ☆ 私が着てるようなかわいい系だけじゃなくて大人っぽいのもあるから良子ちゃんにも似合うと思うな」
良子「私はよくわからないんで、お任せします」
はやり「おまかせあれー☆」
ところで、たった今気づいたことがある。
――――良子ちゃんは私のこと、名前で呼んでくれないのかな?
思い返せば誰に対してもきちんとした態度を崩さない彼女ではあったけれど、休日にお出かけするような仲になったからには高望みしてしまうのも致し方ないことだろう。
良子「あ、嫌でしたか? じゃあ瑞原さんとか……」
はやり「んもぉ、そうじゃなくて! はやり、って、呼んでほしい……な?」
話を切り出したときは冷静なそぶりを繕えたというのに、どうしても尻切れトンボになってしまう。
不自然に区切られた私の声を受け取った彼女の返事を待ちながら、激しく打つ胸を静めるためにこっそりと深呼吸をする。
良子「オーケーです。それじゃ、はやりさん……でいいですか?」
はやり「おっ、おっけー、です!」
失礼なことだとは思うけれど、返事を返してすぐ後ろを向いた。
髪の毛を伸ばしていて良かった。もし短かったとしたら、いくら顔を隠しても真っ赤になった耳が見えてしまうだろうから。
それに少しでも記念になればいいと思って、彼女にアクセサリーをプレゼントした。
あまり高いものは遠慮させてしまうし、お友達として付き合う上ではネックになるだろうから小さいものだけれど。
それでも彼女は喜んでくれて、つられて私も笑顔になる。
そしてふと、プレゼントをあげる立場になったのも初めてのことだな、と気づいた。
良子「今日はありがとうございます。アクセサリーまで頂いてしまって」
はやり「いいのいいのっ。年上なんだから、プレゼントくらいさせて?」
良子「今度お返ししますよ。それまでに勉強しときますー」
はやり「ホント? 期待してるぞ☆」
彼女とのお出かけは本当に楽しかった。
こんな時間がいつまでも続けばいいのに、そう思わずにはいられないほどに。
良子「そうですねー。近いところで大きいのだと秋の交流戦ですか」
はやり「あ、やっぱり出場するんだね☆ 私それの解説」
良子「解説なんですか? 残念ですー」
はやり「はぇ? どうして?」
良子「はやりさんは選手として出るのかと思ってたですから」
はやり「あぁ、なるほど……私も良子ちゃんとは打ってみたいけど、あれは未来ある新人さんのための大会だからねー」
そこまで言って、ハッとする。
アイスティーのシロップをかき混ぜていた手が止まる。
――――わかった。わかって、しまった。
これまで私が抱えていた悩みが、どうしても靄がかかって見えなかった本質が、見えてしまった。
良子「……? はやりさん?」
彼女の声で我に返る。
名前を呼ばれるたびに高鳴っていた胸の奥が、今は冷え切っている。
はやり「あっ、ご、ごめんね。えっと、そんなことないと思うよ? 良子ちゃんすっごく強いもん」
搾り出すような生返事に、彼女の眉が少し下がったような気がした。
また連絡する約束をして別れた。
最後まで私の心は揺れていて、彼女の言葉もなかなか耳に届かなかった。
心配そうな彼女の表情に気づかないフリをして、精一杯の笑顔で手を振ることが、果たして本当に出来ていただろうか。
気づいてしまった。違和感の正体。
歳の差なんて簡単な話じゃない、それよりもっと別のところ。
はやり「……本気だから」
強めのシャワーが全身を濡らす。
顔に垂れてくる水を鬱陶しいとも思わないのは、感覚が身体と乖離しているからか。
はやり「……本気だから、くるしいんだ」
顔出しのないお仕事で良かったと思う。きっと私は今、ひどい顔をしているだろうから。
本気だから、苦しい。
本気で好きになってしまったから、同じ歩幅で歩けないことが寂しい。
彼女の「これから」と私の「これから」は違うと知ってしまったから、こんなにも悲しいんだ。
きっと彼女はこれから、もっともっと強くなって、最高峰の力を持ったプロになるだろう。
――――でも、私は?
可能性に満ちた彼女の隣に、胸を張って立つことができるだろうか?
はやり「ああ、なるほど……それも含めて、歳の差、かぁ」
私がどんなに彼女を好きでいようと、彼女に相応しい人は他にいる、そしてこれからも増え続けるだろう。
どんなに想っても、彼女と私が過ごしてきた年月は離れすぎていた。
sub:無題
―――――――――――――――
今日はありがとうございました。
別れ際、体調が優れないよう
だったですけど、大丈夫ですか?
無理しないでくださいね。
私のためを思って送ってくれただろうメールを見つめる。
せっかくのお誘いだったのに、勝手に悩んで勝手にへこんで、悪いことをしてしまった。
馬鹿だなぁ、私。こんなに若くて、未来があって、そんなあの子に不釣合いな恋をしてしまった。
諦められればいいけれど、胸にはっきりと残る熱さが頑なにそれを拒否している。
涙を流すことこそなかったものの、精神が疲弊しているのは間違いなさそうだった。
そんなとき、いつかのように着信音が鳴る。
はやり「……咏ちゃん」
電話に出るかどうか逡巡したけれど、結局通話ボタンを押してしまう。
相談に乗ってもらったのだから報告はするべきだと思うし、話して楽になりたい気持ちもある。
こんな身勝手な人間は尚更彼女には相応しくないと、自虐的な笑みを貼り付けた私がそこにいた。
咏「はっやりーん! よく来たねぃ!」
健夜「この間ぶり……っていうか、またこの面子なんだね」
咏「まーねー、飲みたい気分のときはこの三人が一番だわー」
はやり「咏ちゃん都合いいー☆」
咏「言ったなー? このわがままボディめ!」
健夜「……?」
咏「んぐんぐ……ぷはっ! うんめー!」
健夜「ん……おいし」
はやり「……」
咏「いやー急に呼び出して悪いねー二人とも」
健夜「ほんとだよ……今日はどうしたの?」
咏「この間えりちゃんフェロモンの話したじゃん? まぁあんとき実は喧嘩中だったんだけどー」
はやり「そうだったんだぁー☆」
健夜(やっぱり……)
咏「めでたく和解しましてー、愚痴に付き合わせたお詫びに奢ろうかなーと思ってさ!」
はやり「よっ、ふとっぱら~☆」
健夜「うーん、じゃあありがたくご馳走になろうかな……」
はやり「へっ? あっ、あぁ……」
健夜「……はやりちゃん、何かあったでしょ?」
咏「お?」
はやり「……」
健夜「今日のはやりちゃん、目に見えてカラ元気だから……私たちでよかったら、話くらいなら聞けるよ?」
咏「……すこやーん、そういうのはもっと温まってからじゃね? 知らんけどー」
健夜「えっ今タイミング良かったよね!? 駄目だった!?」
咏「早すぎだろ! せっかく私が楽しげな感じで始めたっつーのにさー!」
健夜「えぇ……そんなぁ」
はやり「……ぷっ」
咏「へ?」
健夜「ん?」
健夜「は、はやりちゃん?」
はやり「あのね……食事もしたし、アドレスも交換したし、この間なんて遊びに行っちゃった」
咏「お、おおっ、進んでるねぃ」
はやり「でもね、ほら、前に咏ちゃんたちが言ってたでしょ? 私の悩みはもっと別のところにあるんじゃないかって」
健夜「うん」
はやり「ずっと考えてたんだけど答えが出なくて……でも、気づいちゃったんだぁ」
はやり「私、怖かったみたい。ずいぶん年下なのにしっかりしてて、おまけにあの若さでトッププロで……すごいよね?」
咏「……」
はやり「そんな、まだまだすごい可能性を持ってる子の隣に、私がいていいのかなって」
はやり「私がいることで、あの子の芽を摘んじゃうんじゃないかなって……」
はやり「……私、馬鹿だよね」
健夜「はやりちゃん……」
はやり「あの子の負担になることも、自分が本気の恋してるってことも、全部、怖くて……っ」
咏「……はやりんさぁ」
はやり「ぐすっ、……?」
咏「ばっっっ……かじゃねーの?」
はやり「へ」
健夜「う、咏ちゃん!?」
咏「なに? 自分、そんなことで悩んでたん? 呆れた、ドン引きだわこりゃ」
はやり「……咏ちゃんはまだ若いから、そういうこと言えるんだよ」
健夜「ふ、ふたりとも、おちつ」
咏「関係ねーっての。なに急に年齢とか感じちゃってんの? しかも自爆してるし。バッカみてー」
はやり「だって! あの子はまだまだ強くなるんだよ!? こんなアラサーが一緒にいていいと思う!?」
はやり「……え?」
健夜「……!」
咏「相手に可能性があるように、自分にもまだまだ可能性があるって思わないわけ?」
咏「解説やらテレビやら、そういう仕事ばっかりやってぬるくなっちゃったってこと?」
咏「……ふざっけんな!」
はやり「咏、ちゃん……」
咏「私はさぁ、はやりんとかすこやんとは一世代違うじゃん。黄金世代の後なわけ」
咏「二人の試合見て、すげーって思ったよ。私もあんな風になりたいって思った」
咏「直接戦えないのがほんとに悔しくて、何でもっと早く生まれなかったんだって思った」
はやり「!」
咏「こんな風に思ってるやつがいるってのに、何自分のこと諦めようとしてんの?」
咏「戒能ちゃんがさ、あの歳でトッププロになれたのも、はやりんとか、そういう人らを見てきたからじゃねーの?」
健夜「咏ちゃん……」
咏「釣り合わないとか、怖いとかさぁ……そんなこと思ってる暇あったら、まだまだ一線張りますって、強くなろーよ」
咏「そんで、自分の生きたいように生きてきたはやりんならさ、出来るっしょ」
咏「もちろん、そこでいい子ちゃんしてるすこやんもね」
健夜「えっ!?」
はやり「う……」
咏「はー、らしくねぇー! キャラじゃねぇー! もう全部わっかんねー!」
はやり「うだぢゃあああああああん!!!」
咏「ぎゃー! 苦しい! 苦しいってはやりん! ギブギブ!」
健夜「咏ちゃん、その、大丈夫……?」
はやり「そうだよっ、私、臆病なだけだよっ、一番おねーさんなのにっ、情けないよぉっ」
咏「いや大丈夫じゃな……ぐるじ……」
はやり「色々理由付けてっ、言い訳してっ、結局自分がかわいかったのっ、怖いだけだったのっ」
健夜「あ、あはは……」
はやり「わだじっ、もうやめるからっ! うじうじするの、やめるからっ! ぢゃんと告白するからぁっ!」
咏「わら、え、ねー……」
はやり「うえええええん! ふえええええええええん!!」
はやり「えっと……あのぅ……取り乱して、迷惑かけて、ゴメンナサイ?」
咏「ゆるさーんっ! 死刑!」
はやり「や~ん!」
健夜「まぁまぁ、落ち着こうよ……ほらお水飲んで」
咏「んぐんぐ……」
はやり「こくっ、こくっ……ぷはっ」
健夜「それで、決心ついた?」
はやり「……うん。私、甘えてただけだった。だから、ちゃんと告白するね」
健夜「……そっか。良かった」
健夜「咏ちゃんがね、電話かけてきて。はやりちゃんが元気ないみたいだから励ましてあげようって」
咏「ちょっ、すこやん!?」
健夜「何日か前から気にかけてたみたいだよ? はやりちゃんのこと」
はやり「咏ちゃん……」
咏「う~……」
はやり「……ぐじゅっ」
咏「は」
はやり「だいすきいいいいいいいいい!!」
咏「うおおおおい!!!」
咏「私らにここまでさせたんだから、いい報告持ってきてねぃ?」
はやり「どうなるかはわかんないけど……自分の気持ち、ちゃんと伝えるよ。ありがと。咏ちゃん、健夜ちゃん」
咏ちゃんと健夜ちゃんと別れて、携帯を出す。
指先が震えているけれど、大丈夫。あんなにたくさんの勇気をもらったのだから、もうしり込みなんてしない。
送信ボタンを押して、ありがとう、と呟いた。
まだほのかに明るさを残す午後八時、一秒が永遠にも感じる緊張の中で、彼女が現れる。
良子「グッドモーニング、はやりさん」
はやり「……ふふっ、もう夜だよ?」
久しぶりに聞く彼女の声は、相変わらず私の心を包み込むようだった。
はやり「ごめんね? 急に呼び出しちゃって……どうしても、聞いてほしいことがあったから」
良子「ノープロブレムですよ。それで、どうしたんですか?」
はやり「え、っとね……」
いくら決心したとはいえ、人生初の本気の告白なのだ。いざとなって身体が竦むのは予想していた。
目をゆっくりと閉じて、大きく深呼吸。そして、彼女に向き直る。
はやり「戒能良子ちゃん。――好きです」
しっかりと彼女の目を見据えて、言葉を紡ぐ。
グッとくる台詞だってあれこれ考えたけれど、結局はシンプルなもの。
だって私はまだまだ成長中の、本気の恋愛初心者だから。等身大でいいんだと、今はそう思える。
長い沈黙。
そりゃ、そうだよね。何とも思ってないだろう年上の女に、急に告白なんてされてもどうしたらいいかわからないだろう。
けれど私は彼女がどんな返事をしたとしても、しっかりと受け止めるつもりだ。自分勝手な告白だけど、許してね。
彼女が口を開く。ぽつり、ぽつりと、思案しながら言葉を選んでいるようだ。
良子「あのときは、久しぶりにはやりさんとお会いできて、単純に嬉しかったです。プロ入りしてもほんの少ししか話す機会がなかったですから」
良子「それで……食事に誘ってもらえて、楽しそうなはやりさんの顔が見られて、それも嬉しくて」
良子「あぁ、この人と一緒にいると、落ち着くなぁって思ったんです」
これまでのことを振り返るように、静かに呟く彼女。
私も、情景をひとつひとつ思い浮かべながらうん、うんと頷く。
良子「隣を歩くはやりさんを見てると、そういう余計なことはなしにして、純粋に楽しめたんです」
良子「……プラス、別れ際の悲しそうな顔を見たとき、胸が詰まりまして。原因とか考えてみたんですけど」
さっきまではあの日の町並みが鮮明に浮かんでいたのに、今は目の前が滲んで見えない。
お化粧もばっちり決めていたのに、もうアイドルなんて名乗れないような顔をしているだろう。
良子「――私も、はやりさんが好きみたいです。ライクじゃなくて、ラブの方で」
――――おかしいなぁ、我慢できてたはずなのに。
ぼろぼろとこぼれる涙を拭うのも忘れて、彼女の胸に飛び込んだ。
はやり「そ、そう……だね。こ、恋人って……やつかな」
良子「はやりさんは経験豊富かと思ってたですけど」
はやり「経験だけだよ。こんなの初めて」
人通りのない場所を選んだとはいえ、私たちは一応有名人な訳で。
あのまま抱き合ってわんわん泣いている――もちろん私だけなのだけれど――訳にもいかず、今は少し歩いたところの公園にいる。
良子「ところで、あの日は何であんな顔してたんですか? 私が何かしたんじゃないかと思ってたんですが」
はやり「うわわっ、ち、違う違う! あのときは……えっとぉ」
歳の差のことも、相談にのってもらったことも、本気で好きになったんだと気づいて、どうしたらいいかわからなくなったことも。
それを聞き終えると、彼女はいつものケロリとした表情で「バカですね」と言った。
はやり「ひ、ひどいっ!?」
良子「だってそんな悩み、本来なら私の方が思うことですよ」
はやり「ふぇ?」
良子「私なんて、プロの世界にやっと一歩踏み込んだだけのひよっこですよ?」
良子「私よりもずっと前から一線を張り続けてるはやりさんの負担にはなりたくないですし」
はやり「で、でも、伸びしろは良子ちゃんの方が……」
良子「そんなもん、はやりさんだって私ぐらいのときはそうだったでしょう。今も伸び続けてる人が何を言うかと思えば」
はやり「伸び続けてる……? 私?」
はやり「親善試合だよね?」
良子「いえす。あのときのはやりさんの打ち筋、それ以前よりさらにパワーアップしてましたよ」
はやり「そ、そうだったんだ……」
良子「実際はあの試合を見てたから、スタジオではやりさんに話しかけられたのかもしれないですね」
はやり「そうそう、あのときまさか良子ちゃんから話しかけてくれると思わなくて……」
良子「私は人付き合いとか得意な方じゃないですけど、あのとき既にこの人のことをもっと知りたいって思ってたですから」
はやり「あ、ありがとうございます……☆」
――――なんだ、私も良子ちゃんも、同じ気持ちだったんだ。
こうなってくると、ズレた悩みで悶々としたり落ち着いた態度で諭されたりしている自分が恥ずかしくなってくる。
告白したとき以上に顔が熱いのは……たぶん気のせいじゃないんだろうなぁ。
はやり「うん。ずいぶんお世話になっちゃったなぁ」
良子「また報告会するんですよね? 私も行きますよ」
はやり「えっ! な、何で!?」
良子「間接的にお世話になったことですし、私の方からもお礼をと思って」
はやり「い、いいよぉそんなの! ていうか絶対からかわれちゃうよぉ!」
何だかこの子、この歳にして人間が出来すぎている気がする。
それに世間ズレしたところも加わって、こっちが恥ずかしくなることを平然と口にするのだ。
このままではいけない、と私の中の年上の威厳とか見栄とかプライドが思い出したかのように覗いてきたので、私は彼女よりリードを取ることにする。
良子「? はい」
はやり「ちゅっ」
キスしてしまった。もちろん私は違うけれど、彼女はきっと初めてだろう。現に唇に指を添えて俯いているし。
そんな彼女を横目に見ながらしたり顔を浮かべている私の耳に、小さいけれどはっきりとした声が聞こえて――
良子「ざっつらいと。キスはこうやってするんですね」
――きたと思った瞬間には、もう唇は塞がれていた。
先ほどまでの威厳云々はどこへやら。
どうあがいても一歩上手な彼女に、私は真っ赤な顔で抗議の視線を送ることしかできないのだった。
おわり
「かぁんっぱぁーい!」
咏「んぐんぐんぐっ! っぷぁー! はやりんかいのん結婚おめでとーっ!」
健夜「違うから! はやりちゃん、良子ちゃん、両思いおめでとう」
良子「サンキューですー」
はやり「……ぶくぶくぶく」
良子「はやりさん、コップでぶくぶくやるのは行儀悪いですよ」
はやり「知ってます! 大人だもん!」
咏「いや~熱いね~」
健夜「良子ちゃん、ほんとしっかりしてるね」
はやり「もーうっ! だからヤだったのにぃ! こういう感じになるじゃん!」
良子「ですけどテーブルマナーはちゃんとするもんですし」
はやり「そうじゃなくてぇ……うぅ……」
私はここ、まさか実現するとは思いもしなかった報告会という名の飲み会、ただし恋人同伴(!)に来ています。
先ほどから逃げ場がありません。へるぷ、みー。
咏「いや~しかしビッグカップルが出来ちゃったねぃ?」
健夜「片やベテラン、片やルーキーのトッププロカップルだもんね」
良子「その節はどうも。はやりさんがお世話になったみたいで」
はやり「や、やめてよそういうの!」
咏「いやいや、私はいいと思うぜ? どっちが年上かわっかんねーけど」
健夜「ほんと、お似合いだよね」
良子「サンキューベリーマッチ」
はやり「もー!」
穴があったら入りたいとは正にこのような状況を言うのでしょう。
良子「聞くところによると、三尋木プロも小鍛治プロも順調だとか」
咏「まぁね~! 私はえりちゃんと同棲始めたし、すこやんはついに告ったし!」
健夜「情報流れるの早いよ……おかしいよ……なんで私が話す前に知ってるの……」
はやり「……ぶくぶくぶく」
というか、馴染みすぎじゃありませんか?
あなたこの二人と飲むの初めてでしょ、良子ちゃん。
咏「そーいやそうだねぃ、かいのんてなんっか謎めいた感じだし」
良子「私もお話できて嬉しいですよ。なんたって日本のトップツーですし」
咏「いやーそんなすげーもんでもないよ? すこやんはすげー強いし怖いし得体知れないけど」
健夜「なんで私だけ!? ていうか何かひどくない!?」
良子「オーライ、わかってますってグランドマスター小鍛治。お気をお鎮めください」
健夜「良子ちゃんまで!? しかも何その呼び方に態度! 普通に恥ずかしいよ!」
咏「かいのん、わかってるねぃ」
良子「いえす。任せてください」
健夜「息ピッタリだね!?」
はやり「……ぶくぶくぶくぶく」
健夜ちゃんいじりはいつものこととして、何だかずっと前からの親友のような雰囲気なのはどういうことなのでしょう。
というか一方的に私が恥ずかしい。そして蚊帳の外。
健夜「うんうん、普段からは想像もできないよね」
良子「そうですか? 確かに、居心地が良いんで喋りすぎてる感じはありますけど」
咏「おっ嬉しいこと言ってくれるじゃーん! んじゃ私とすこやんとかいのんで遊びにでも行くかい?」
はやり「だっ、ダメーっ!!」
健夜「ふわっ」
咏「おぉ~? どしたんはやりん?」
はやり「良子ちゃんは私のなの! だから三人で遊びに行くとかそういうのはだめっ!」
咏「……へぇ?」
健夜「……ふふっ」
はやり「あ」
咏「いやいや、熱いわぁ~」
健夜「もう真夏になっちゃったのかなー?」
しまった。私の反応を見ていることくらいわかっていたはずなのに、ついムキになってしまいました。
テーブルに手を付いて身を乗り出したまま固まった私を、彼女が微笑んで見ています。
はやり「……なに?」
良子「ノープロブレム。はやりさんを置いてどこかに行ったりしませんから」
はやり「……もぉぉ~っ!」
私はきっと、この八歳も年下であるはずの彼女に一生敵わないのでしょう。
まだまだ始まったばかりの恋人生活ですが、そう思わずにはいられないのでした。
はやり「おわりっ!」
ベリーグッドでした
ところで俺のIDハートビーツっぽくない?
珍しいカプだったな
ブラボーです
Entry ⇒ 2012.10.23 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
咲「いったい何者なの…コマキちゃん」
前回
京太郎「な、なんだこの生き物は?」鬼巫女「……」ビクビク
http://ssweaver.com/blog-entry-1749.html
前回のあらすじ
・小蒔ちゃんが霞ちゃんとケンカ
・小蒔ちゃん鬼巫女化して家出
・なんやかんやで京太郎のうちに居候
前回「ネトマで能力は使えないだろ」と指摘がありました マジそのとおりです
所詮SSってことで勘弁してください 何でもしますから!
京太郎「おはよう母さん、コマキは?」
京ママ「おはよう、掃き掃除をしてもらってるわ」
コマキ「~~♪」サッサカサッサカ
京太郎「母さん、コマキに何やらせてんだよ…」
京ママ「自分からやりたがったのよ?箒をもってうろうろするからお願いしたの、いい子よね~ あんたよりよっぽどお利口さんだわ」
京太郎「ほっとけ!」
京ママ「コマキちゃ~ん お掃除はその辺でいいから、朝ごはんにしましょう」
コマキ「!」テテテテ
京ママ「だとしても、お菓子だけ食べさせるのは不摂生でしょ ちゃんとお野菜もあげないと それに…」
コマキ「!」wktk
京ママ「この子、とにかく食べるの大好きみたいじゃない」
京太郎「まあ、確かに」
コマキ「!」テテテテ
ピトッ
京太郎「こらコマキ、俺は学校に行くんだから お前は家でおとなしく…」
コマキ「…」ショボン
京太郎「う…学校には小動物を連れていっちゃいけなくてだな…」
コマキ「…」ジーーー
京太郎「…部活の時間になるまでは構ってやれないぞ?いいのか?」
コマキ「…!」コクン
コマキ「!」パア
京太郎「万一誰かに見つかったら…ぬいぐるみのフリでやり過ごすこと、いいな?」
コマキ「!」コクン
京太郎(どうにも俺はコマキに甘えられると弱いな…)
京太郎「うーん これだと角がはみ出るな… まあいいか」
京太郎「いってきまーす」
咲「おはよう京ちゃん」
京太郎「おう、咲」
コマキ「…!」ピョコ
咲「わっコマキちゃん!? 連れてきたんだ?」
京太郎「くっついて離れてくれなくってな、ちゃんと大人しくしてるならって約束で」
咲「大丈夫だよね、コマキちゃん」ナデナデ
コマキ「~♪」
咲「へえ、すごいね!」
京太郎「あの調子が続いてればお前だって負かせそうだぜ 放課後楽しみにしてろよ!」
咲「ふふ、もうすぐ県予選だしね 京ちゃんが強くなってくれたなら私も嬉しいよ」
京太郎「すっかり上から目線になりやがって、調子に乗っていられるのも今だけだぞこいつ~」グリグリ
咲「あうう~ い、痛いよ京ちゃん…」
コマキ「…!」サクッ
京太郎「いでっ!な、なんだぁ!?」
咲「どうしたの京ちゃん?」
京太郎「たぶん…コマキの角が脇腹に刺さったんだな コマキ、気をつけてくれよ けっこうお前の角鋭いんだから」
コマキ「…プイッ」モゾモゾ
京太郎「潜っちまった ほぼ潜れてないけど」
コマキ「……」
咲「きっと京ちゃんがいじわるするから怒ってくれたんだよ ね、コマキちゃん」
京太郎「そうなのか? あのなコマキ あれは幼馴染のスキンシップってやつで…」
コマキ「…!」サクッ
京太郎「いてぇっ!」
咲「コ、コマキちゃん その辺で…」
コマキ「…」
京太郎「ふわぁ~ 眠い…昨日調子に乗って遅くまでネトマしてたからかな…」
京太郎「…ぐ~」
コマキ「!」クイクイ
コマキ「……」スラスラ ヒラ
先生「え~じゃあ次の問を 須賀、やってみなさい」
京太郎「ファッ!?は、はい」
京太郎(やべえ!全然聞いてなかった!)
京太郎「あ、あれ?えっと、x=4です…?」
先生「うむ、正解だ 寝ているように見えたがちゃんと聞いていたようだな」
コマキ「…」クイクイ
京太郎「ん?どうしたコマキ?」(小声)
コマキ「…」チラッ
京太郎「…外に出たいのか? さすがにそれは危ないんじゃ…」(小声)
コマキ「…!」グッ
京太郎「見つからないように行くって?」(小声)
京太郎「…気をつけて行けよ? あと食いもの盗んだりしないこと、遅くても昼には帰ってくること」(小声)
コマキ「!」ピョン カサカサカサカサカサカサ
京太郎「て、天井に張り付いていきやがった…スパイダーマンかあいつは」
コマキ「…」カサカサカサ スタッ
コマキ「…」ピッ
PC「ウィーン」
コマキ「…」カタカタ
PC「○月×日 鹿児島県○○市永水女子高校で女子生徒一人が行方不明になるという事件が………
家族や友人は安否を…………警察は捜査を…………」
コマキ「…」
コマキ「…」グスッ
コマキ「……」カタカタ
「天鳳」
コマキ「…」カチッ…カチッ…
PC「ツモ、1000,2000」
コマキ「!!」ガーン
霞(今日もマイナス…かわいそうだけど…おやつは抜きね…抜きね…きね…)エコー
コマキ「…」グスグス
??「誰かいるの?」ガチャ
コマキ「!!」ドヒューン
??「誰もいない…? あら、一台つけっぱなしじゃない」
??「天鳳?誰か遊んでたのね~ あら、ひどい点数」
コマキ「…」トテテテテ
京太郎「お、帰ってきたか 誰かに見つかったりしなかったか?」(小声)
コマキ「…」コクン モゾモゾ
キーンコーンカーンコーン
京太郎「お、ちょうど昼だな 部のみんなと食うって約束してるんだ 売店でメシとお菓子買っていくぞ」
コマキ「…」
京太郎(元気がないな…?お菓子って聞くとテンションあがるのに)
京太郎(もっとコマキの考えてること分かってやれたら…こいつが何者なのか分かるのかな…)
巴「霞さん インハイの出場選手の登録 済ませてきました。」
霞「ありがとう、ごめんなさい巴ちゃん 本来なら私の仕事なのに…」
巴「気にしないで下さい、お話したとおり姫様は先鋒に入れておきました 一応補欠も…」
霞「ええ…」
初美「きっと姫様もすぐ帰ってきてくれますよー 私たちは私たちにできることをしましょう! さあ、練習ですよー!」
霞(皆が気を使ってくれてるのに 駄目ね…本当なら私がしっかりしないといけないのに)
霞(小蒔ちゃん…)
巴「はるる?」
ガチャ…
良子「グッドアフタヌーンですー」
霞「あ、あなたは…」
初美「戒能プロ!?」
良子「お久しぶりです皆さん、ハルも大きくなったね」ナデナデ
春「お姉ちゃん…」ギュッ
初美「シャーマンの王になるために修行中って聞きましたよー?」
良子「ないないノーウェイノーウェイ ハルから大まかな事情をきいてね
一大事だそうで 行方不明のお姫様を探す手伝いをして欲しいとか何とか」
初美「はるるが前に言ってたのって、戒能プロのことだったんですかー」
霞「お手伝いって…」
良子「捜索透視はイタコの十八番 とりあえず お姫様の私物や写真があると一層詳しく調べられますよー」
霞「す、すぐにお持ちします!」パタパタ
初美「い、イタコって…信用していいんですかー?」
春「的中率…10割…」
初美「す、すごいですねー」
春・良子「それが自慢」ニコ
優希「部長たちはまだ来てないようだじぇ」
和「今メールで連絡が、学生議会で少し遅れるそうです。
今日は大会の出場登録に行く予定だからすぐ出られるよう準備しておくように、だそうです」
京太郎「そうだったな でも準備といっても用意するものはあまりないし、部長たちがくるまでちょっと打たないか?」
優希「おーぅ、ノリノリだな京太郎!」
優希「ふん!調子こいた飼い犬に躾をするのは飼い主の義務だじぇ、身の程を教えてやるじょ!」
京太郎「上等だぜ!吠え面かかせてやるよ!」
和「それじゃあすぐ終われるよう東風戦にしましょうか」
優希(クックック 東風戦とは好都合だじぇ! 殲滅してくれるわ!)ギラーン
京太郎「ぐわー!また優希かよー!」
咲「やっぱり東場の優希ちゃんはすごい…」
和「くっ……」
優希「はっはっは、ちょろすぎるじょ犬!吠え面かかせる前にこの笑いを止めてほしいもんだじぇ!」
京太郎「くぅ~~っ!」
京太郎「そ、そうだよな…」
コマキ「……」クイクイ
京太郎「コマキ、まだ慰めるのは早いぜ 昨日だって大逆転できたんだ ここからまくってやるさ!」
コマキ「……グッ」ピョン
京太郎「おう、応援しててくれよコマキ!」
コマキ「…!」ペカー
咲「…!?うっ!!げほっげほっ!」ガタッ
和「み、宮永さん!?優希!?大丈夫ですか?」
京太郎「ど、どうしたんだ?いきなり立ち上がったりして」
咲「ご、ごめんね 大丈夫だよ、大丈夫…」スッ
和「それなら、いいんですが…」
京太郎「なんかよくわからんが…無理すんなよ?」
咲(い、今の…お姉ちゃんみたいな感じ…)ブルッ…
優希(今…京太郎の方から咲ちゃんみたいな感じがしたじぇ…)ドキドキ
コマキ「…」
優希「よ、四本場…」カチッ
京太郎「ダブルリーチだ!」
三人「!?」
優希「そ、そういうのは私のお株だじょ…」パシッ
咲(やっぱり、気のせいなんかじゃない…!)パシッ
和(……)ピシッ
京太郎「来た!ツモだ!」
三人「!?」
京太郎「えーっとダブリー一発メンタンピン…?あとドラ2!倍満!4000、8000か?」
和「須賀くん、4本場ですから4400,8400です」
京太郎「あ、そうか サンキュー和」
コマキ「…!」
京太郎「ありがとなコマキ、お前の応援のおかげだぜ!」ナデナデ
コマキ「♪」
京太郎「へへ、どうだろうな 昨日もいきなりでかいのが来てその後ずっとバカヅキ状態だったんだ ほんとに逆転しちまうぞー」
咲「わ、私が親だね…」カチッ
コマキ「…!」ペカペカー
咲(!!さ、さっきよりもずっとすごい…!?いや…!ここにいたくない…!!)カタカタ
優希「な、なんか体が震えるじぇ…」カタカタ
和「…ッ」ブルッ
久「はーい、皆おまたせー!連絡したとおり出場登録に行くわよー」
まこ「ほれ立った立った、議会で時間食っちまったからのう、急がんと!」
咲「ぶ、部長…」ハア…ハア…
コマキ「…!」ピョン テテテテ
久「あらコマキちゃん 須賀くんに連れてきてもらったの?」
京太郎「あー、時間切れかー!せっかくここから大逆転するつもりだったのに」
和「須賀くん、ダブリーなんて運要素しかない役ですよ
実力ははっきり言ってまだまだなんですから慢心しないようにしてください」
和「そんなオカルトありえません」
京太郎「えー?」
優希「そんな豪運は京太郎にあるはずがないじぇ とにかく行くじょ!」
久「なになに、何の話ー?」
京太郎「実はですねー、昨日からすごく調子がよくてー」
コマキ「…」テテテテテ
ガヤガヤ
咲「さっきの嫌な感じ…ほんとに京ちゃんが…?」
咲「ううん、今のはたぶん…」
咲「あ… 東二局の京ちゃんの配牌、伏せたままだ…」
咲「…」ドキドキ
チャッ
咲「こ、これ…!?」ゾクッ
咲「うっ…うぐっ…」ヨロ…
咲「ツモ牌は…」
咲「だめ…怖くて開けない…」
咲「…! う、うん 今行くよ!」アセアセ
咲(い、一体何者なの…)
咲(コマキちゃん…)
霞「…」
初美「戒能プロ…見つけてくれるでしょうかー?」
春「お姉ちゃんはすごい人…きっと大丈夫」
巴「奥の部屋にこもりっきりですけど なにをしてるんでしょう…」
初美「そりゃあイタコっていうくらいですから霊を降ろして対話して見つけ出すんですよー!」
巴「いやいや、もしかしたら地図の上にペンデュラムを垂らしてダウジングかもですよ!」
???「あら~、もしかして良子ちゃん?久しぶり、大きくなったわね~」
良子「久しぶりでもないですよ?三日くらい前に呼んだのお忘れですか?」
???「そうだったかしら?一年ぶりくらいだと思ってたわ~ 幽霊になるとどうも時間の感覚がおかしいのよね~」
良子「…早急に調べたいことがありまして、協力をお願いしたいのですが」
???「おまかせあれ! 娘を見守ってばかりってのも退屈だったしね~
あーそうそう聞いて~ うちの娘たちがね、麻雀のインハイ出るって今頑張ってるのよ~」
なるほどなるほど
なるほどー
???「千里眼ね~なるほどなるほど~ この子もなかなかのおもちをお持ちね~
うちの娘のチーム、いい子たちなんだけど~どの子もおもちが物足りないのよね~」
良子「塩かけますよ?」
???「きゃ~やめてやめて、真面目にやりますから~」
良子「…まったく」
良子「どうぞ 国内でいいですよね」
???「ええ、 ん~~~~~~~~…」
???「…ここ?」
ぷにょっ
???「ん~ただ大きいだけじゃない、はりのあるいいおもちね~ 若いっていいわね~」プニョプニョ
良子「……」バサーーーッ
???「キャーちょっとしたジョークよジョーク!熱い熱い!塩はやめてー!!」
良子「今度やったら問答無用で祓いますので」
???「うっ…うっ…冗談の通じない子になっちゃったわね良子ちゃん…」
良子「…長野…ですか?そんな遠くに?」
???「うん、長野の~この辺かなー」グリグリ
良子「ずいぶんピンポイントですね、根拠は?」
???「うん、その探してる子って、たしか永水の神様降ろす子よね~
この辺からね、神通力っていうの?すっごい力をビンビン感じるのよね~」
???「大丈夫だと思うわよ?ただ…」
良子「ただ…?」
???「さっぱりおもち力を感じないのよね~ なんでかしら この写真、フォトショで加工とかしたの?」
良子「ノーウェイノーウェイ、別人という可能性は?」
???「ノーウェイノーウェイ~ さっきも言ったけどこれほど強い力は間違えようがないもの~」
良子「…有力な情報を頂けました ありがとうございました 松実さん」
松実「どういたしまして~ それじゃあ報酬に良子ちゃんのおもちをもう少し揉ませて…」ワキワキ
良子「…」塩ファサー
松実「あぁ~~」ジュワァ~~
良子「と、いうわけで 探し人は長野にいるそうです」
初美「ず、ずいぶん遠くですねー」
霞「無事なんですか!?小蒔ちゃんに何かあったら私…!」
良子「…安心して、息災なようだよ」
霞「よかった…小蒔ちゃん…」ヘタッ
初美「よかったですねー霞」ナデナデ
巴「しかし、どうして長野になんて…」
良子(どんな状況に置かれているかは分からないけど、不安にさせてしまうことはわざわざ言うことはないでしょう)
春(よかった…)ポリポリ
巴「か、霞さん…?」
霞「長野に行きます…」
巴「言うと思いました、県予選は十日後なんですよ?」
霞「それまでに、必ず小蒔ちゃんを見つけてくるわ」
巴「警察に任せるというのは…」
霞「証拠もないのにいきなり長野なんて、警察が信じてくれるかしら?」
巴「ですが…」
霞「お願い、巴ちゃん…小蒔ちゃんに謝らないといけないの…私が行かないといけないのよ…」
巴「必ず、県予選の前に帰ってきてください 姫様もつれて」
初美「大丈夫ですよー もし霞まで予選に出られないとしても私が大将に回さず終わらせてやります!」ムンッ
春「…二人の留守は私たち三人が預かる」
霞「ありがとう、皆…」
春「…お姉ちゃん?」
良子「長野にいらっしゃるプロ雀士の先輩に連絡しておいたよ
長野までは私が送っていくから向こうにいる間はその人の世話になるといい」
霞「戒能プロ…何から何まで…ありがとうございます」
良子「本当は最後まで面倒みてあげたいんだけどね さて、出発は?」
霞「今すぐに」
霞(待っていてね、小蒔ちゃん…)
巴「戒能プロ、すごく頼りになるじゃない いいお姉さんね、はるる」
春「それが自慢…」ニコ
久「みんなお疲れ様、出場登録は無事終了ね」
久「明日の休みから合宿だから集合には遅れないように、それじゃあ解散!」
和「それじゃあ帰りましょうか」
京太郎「あーあ、それにしても残念だ」
優希「どうした?犬」
京太郎「団体戦さ、うちは男子部員が俺一人だから個人戦しか出られないんだぜ?」
和「確かに、団体と個人で全国へ行くチャンスが私たちには二回あるということですが…」
優希「ないものねだりは見苦しいじょ犬!自分に与えられたチャンスを最大限に生かすよう努力するのだ!」
咲「そうだよ京ちゃん 個人戦に自分の持てる力を全力でぶつけよう?京ちゃん毎日頑張ってるもん きっといい結果出せるよ」
京太郎「うーん まあ今の俺なら全国優勝だって夢じゃなさそうだしな!きっと大丈夫だ!」
咲「えっと…」
京太郎「コラ咲!そこはノるところだろうが!励ましてるんじゃないのかよ」グニグニ
咲「あうぅ…痛いよ京ちゃん…」
咲「あ、うん じゃあね原村さん」
コマキ「…!」フリフリ
和「コマキちゃんも、また明日」
優希「よし、犬!私たちも行くじょ!またな咲ちゃん!」
京太郎「おう、じゃあな咲 また明日」
咲「あ!あの!京ちゃん…!ちょっと…二人でお話いいかな…?」
優希「じょ?」
コマキ「?」
咲「優希ちゃんごめん、いいかな?」
優希「ふむ、それじゃあ私は先に帰ってるじょ!また明日な!」
咲「うん、じゃあね!」
京太郎「?」
京太郎「ん?」
咲「昨日京ちゃん、ネット麻雀ですごく調子がよかったって言ってたよね…?」
京太郎「おう、なんだ?俺の暴れっぷりをもっと聞きたいってか?」
咲「ううん、その時って…もしかしてコマキちゃんが膝に乗ってた?」
コマキ「…!」
京太郎「コマキが…?なんでそんなこと… ああ いたよ、確かに」
京太郎「?」
咲「今日、部室で少し打った時も、京ちゃんのダブリーが決まったのはコマキちゃんが膝に乗ってから…だったよね?」
京太郎「た…確かにそうだけど…咲、何が言いたいんだ?はっきり言ってくれよ」
咲「えっと……もしかしたら…京ちゃんが麻雀ですごく強かったのは…コマキちゃんの力のおかげなんじゃないかな…って…」
京太郎「そ、そんなまさか…」
咲「ダブリーの後の東二局、部長たちが来てお開きになったけど…
あの後伏せてあった京ちゃんの配牌を見てみたの…そしたら…清老頭一向聴だった…」
京太郎「チ、チンロウってたしか…」
咲「老頭牌、一と九だけで作る役満だよ」
咲「普通の打ち手だった京ちゃんにいきなりこんな豪運が宿るとは思えないの…個人戦の前に、確認しておきたくて…」
京太郎「…俺が昨日から好調だったのは、お前の力のおかげだったのか?コマキ」
コマキ「…」コクン
京太郎「………そっか…強くなれたと思ってたのは…俺の勘違いか…」
咲「京ちゃん…きっとコマキちゃんは…負けてる京ちゃんを元気づけたくて…」
咲「怒らないであげて、ね?」
コマキ「…」ビクビク
京太郎「…すごいんだなコマキは! 本当に何者なんだ?咲にカン材が集まるのと同じようなもんなのかな?」ナデナデ
コマキ「…」シュン
京太郎「そんな顔するなよコマキ、お前はただ負けてた俺を助けたくて力を分けてくれただけだ、悪気はなかったんだろ?」
コマキ「…」コクン
京太郎「ならいいさ、俺がコマキの力だって気付かずにうかれちまっただけの話だよ」ナデナデ
京太郎「自分の持てる力を出し切って戦ってこそ麻雀ってのは楽しいんだもんな そうだろ?咲?」
コマキ「…!」
咲「…そうだよ、頑張ろう!予選までまだ時間はあるんだから!京ちゃんも私もまだまだ強くなれるよ」
咲「?」
京太郎「部のみんなに偉そうに啖呵切っちまったよ!個人戦では勝利を手土産に帰ってきてやるとか何とか!」
咲「そ、それは…勘違いだったし仕方ないんじゃ…理由を話せば…」
京太郎「いや駄目だ!今更勘違いでしたって撤回するなんて男としてかっこ悪すぎる!
部長なんて『期待してるわね須賀くん(はぁと)』なんて言ってくれたんだぞ!」
咲「え、えっと…」
咲「えっ」
京太郎「ヒマだよな!どうせ帰っても本読むだけだもんな!」
咲「ひ、ひどいよ京ちゃん…人を本以外趣味のない女みたいに…」
京太郎「ん?なんかやることでもあるのか?」
咲「……ないけど」
京太郎「じゃあ俺ん家こい!麻雀指導してくれ!」
咲「えぇ!?今から!?」
京太郎「あぁ、いいよな?」
咲「で、でもこんな時間に男の子の家にあがるのはちょっと…なんていうか…」ゴニョゴニョ
咲「わっちょっ…!引っ張らないで」
コマキ「…!」テテテ
京太郎「お、コマキも教えてくれよ!すっげー力持ってるんだから当然強いんだろ?ただし力を貸してくれるのは無しな!」
コマキ「…!」コクコク
京太郎「目指すは個人戦全国だー!」
咲「分かったから引っ張らないで~」
咲「うん そう、河を見ればホンイツにしたくても2,3sがもう使えないのが分かるよね」
京太郎「おう、なんかだんだん相手が何を狙ってるかも分かってきたぜ お、字牌だ ポン!」
京太郎「よし、ロン!えっとホンイツ役牌ドラ1 7700だ!」
咲「やったね京ちゃん!」
京太郎「ん?どうしたコマキ?」
コマキ「…!」フンッ
咲「もしかして、やりたいんじゃない?」
コマキ「!」コクコク
京太郎「えっでもコマキ、謎パワーで勝ちあがっちまうんじゃ?」
コマキ「…!」フルフル
咲「京ちゃん、やらせてあげなよ」
コマキ「…!」フン゛ン゛ー
咲(あれ?部室で感じたような嫌な感じが全然しない?)
咲「あっ コマキちゃんそれ!」
PC「ロン、トイトイ、役牌2」
コマキ「…!!」ガーン
京太郎「あ、あれ?」
京太郎「な、なに、気にするなよ たまにはこういうことだってあるさ」
コマキ「…」クルッ
咲「もしかしてコマキちゃんって 不思議な力を使わないで打つのは得意じゃないのかも…」
コマキ「……」コクコク
京太郎「そ、そうなのか…意外だな」
コマキ「…」ジーッ
咲「な、なにかな…コマキちゃん?」
京太郎「はは、わかった コマキも咲に麻雀教えてほしいんだよ きっと」
咲「そ、そうなの?」
コマキ「…!」コクコク
京太郎「いいじゃないか 生徒が一人増えたところであんまり変わらないだろ?」
咲「う、うーん」
京太郎「頼むぜ咲先生!できの悪い俺たちを大会でも勝ち抜けるように鍛えてくれ!」ぺっこりん
コマキ「!」ペッコリン
咲「わ、わかったから 先生って呼ばないで!頭上げて!」
京太郎「悪かったな、夜中まで付き合ってもらって」
咲「ううん、そっちこそ わざわざ送ってくれなくてもよかったのに」
京太郎「まあ、これくらいはな な、コマキ」
コマキ「!」フリフリ
咲「うん、また明日ねコマキちゃん」
京太郎「それじゃあな 明日寝坊すんなよ!」
咲「だ、大丈夫だよ お父さんに起こしてもらうから! もうっおやすみ!」
京太郎「おやすみー!」
コマキ「…」トテテテ ポテッ
京太郎「あーまてコマキ 眠いだろうがベッドインはまだ我慢しろ、風呂に行くぞ」ガシッ
コマキ「~~っ!!」ジタバタ
京太郎「コラッ暴れるな、風呂はいらずに寝たら明日におうぞ!」
コマキ「~~~っ///」
京太郎「まったく、コマキはいい子なのに風呂だけは必死に抵抗するよなー」スタスタ
コマキ「~~~っっ!!」
コマキ「……」
京太郎「しかし、意外だったよ コマキが不思議な力を使わないと俺と同レベルだったとはなー」
京太郎「一緒に強くなろうなーコマキー そんで大会では応援してくれよー」
コマキ「…!」コクッ
京太郎「さて、十分あったまったな まず頭洗おうなー」ザバァッ
コマキ「~~~~っ!!!」サクッ
京太郎「アッーーーー!!!」
コマキ「…」プイッ
京太郎(うーん ちんちくりんなくせに一丁前に恥ずかしがってんのか?ちんちくりんのくせに)
京太郎「よし、乾いたぞ」
コマキ「…」トテテテ ポテン
コマキ「Zzz…」
京太郎「…寝付きのいい奴だ」
京太郎「おやすみ、コマ…」
小蒔「Zzz…」
京太郎「!?」ガタンッ
コマキ「Zzz…」
京太郎「い、今…コマキが超絶美少女に見えた…!?幻覚か…!?」
ひとまずカン!
ひとまず終わります
前回から長いこと待たせてしまってすみませんでした
しかしこれからどう話を着陸させればいいのか…
ちょー乙だよー!
コマキちゃんかわいい咲ちゃんかわいい京ちゃんいいやつ
乙乙
Entry ⇒ 2012.10.22 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
愛宕洋榎「はいらっしゃいらっしゃい、美味しいたこ焼きやでー」
由子「お好み焼きもありますよー」
絹恵「あ、そこの人どうですかー」
洋榎「おっようみたらそこにおるんは清澄の中堅やないか」
久「え?あら?あなた達……」
洋榎「どや?よかったらたこ焼きかお好み焼き買ってかへん?」
久「というかあなた達、どうして会場の近くでこんな事を?」
洋榎「いやーあんたらに姫松が負けてしもうたやん?」
久「え、えぇ……」
洋榎「そしたら代行……あ、監督の代行な?」
洋榎「代行が帰りの電車代は自分たちで稼げとか言い出しおって」
洋榎「屋台も突貫で作ったんやわーお陰で漫と恭子は今ぐったりしてるわ」
久「そ、そう……」
洋榎「そうか?まぁそれはええけど、私らを少しでも助けるつもりで買ってかへん?」
絹恵「今ならサービスしますよ」
洋榎「あーもうしゃあないなぁ、本当はたこ焼き8個のところをメンバーが1個ずつ食べられるように10個にしたるわ」
洋榎「どや?買わへん?」
久「え?あ、じゃあいただくわ」
洋榎「300万になるでー」
久「え、えっと300円ってことでいいのよね?」
洋榎「まいどおおきにーありがた山のとんびからすやでー」
洋榎「あ、そうそううちの学校倒したんやで優勝せな許さへんでー」
久「ふふっありがとう」
久「いやー実はうちの部員って6人なのよ、それに同室に他校が3人いたりして」
洋榎「こっちも帰りの費用がかかってるのにまだサービスせいってかー冗談きついでほんま」
久「あぁ、そうじゃなくて後3つたこ焼きを購入してもいいかしら?」
洋榎「おっほんまか?よっしゃ、じゃあサービスもしたらなあかんなぁ」
洋榎「たこ焼き3パックサービスつけて頼むわー」
由子「ちょっとまちいよー」
洋榎「爪楊枝は何本いるんや?」
久「そうねぇ、6本もあれば使いまわせるわ」
洋榎「6本やな?いれとくでー」
絹恵「美味しかったら他の方にも薦めたってください」
久「えぇ、ありがとう」
絹恵「ありがとうございましたー」
恭子「まだまだ目標金額は遠いですわ」グター
洋榎「ほんまか!結構売れてる思うんやけどなぁ」
漫「主将がサービスやサービスやいうてたこ焼き多く入れてるからやないですかー」グテー
洋榎「しゃあないやろ、サービスは大切やで!」
洋榎「それより恭子と漫もそろそろ働かんかい」
恭子「屋台作りで寸法とかわからへんってほとんどやったん私やってのに……」
漫「私も手伝いましたやん末原先輩……」
絹恵「じゃあ私がいくわ」
洋榎「じゃあタコとあの例の白い粉を頼むで絹」
絹恵「あの例の白い粉やね?わかったわ」
洋榎「とびっきりの頼むで?」
絹恵「まかしといてぇお姉ちゃん、私ほど白い粉に詳しい人おらへんで」
由子「そう言う危ない発言はやめんかい」
洋榎「おっこれはまた長野の面子やな」
衣「ん?衣達を知っているのか?」
洋榎「対戦校の県大会の相手ぐらい調べるのが当然やろ」
衣「おおっよく見ればお前は清澄と戦っていたやつだな」
洋榎「にしてもほんまちっこいな、子供やん」
衣「衣を子供扱いするな!」
洋榎「おおっと怒らんといてぇ可愛らしいって意味で言うたんや」
洋榎「せや、たこ焼きかお好み焼き買ってかへん?いまならサービスすんで?」
衣「本当か!」
洋榎「ほんまやほんま、そうやなぁ、お好み焼き4パック買ってくれたら1パックサービスしたるわ」
洋榎「そしたらお得な値段で他のメンバーと食べれるで」
純「って姫松!?」
洋榎「お、ちっこいのの仲間やん」
恭子「ひぃ!?」
純「え?何?なんかしちゃった?」
洋榎「あー気にせんといたって、ちょっと今背の高い女性と胸のでかい女性が怖いらしいんやわ」
恭子「……」カタカタ
洋榎「で、お好み焼きとたこ焼き買わへん?」
衣「とーか達と食べよう!」
純「っても今手持ちの金がそんなに……」
衣「ハギヨシ」
ハギヨシ「はっ」
洋榎「お、おぉ……びっくりしたわ……」
由子「ほんまか!」
洋榎「……由子、サイフの中に千円札とかあるか?」
由子「もうないよー」
洋榎「まずいで、絹恵にお金持たせて行ってもろたでお釣りがないで……」
漫「私もないですわ」
ハギヨシ「お釣りが出ないように払う準備はできておりますが、おいくらでしょうか?」
洋榎「おお、客なのになんて腰が低いんや……こういう客やったら神様って崇めたくなるで」
由子「ほんまやわー」
純「あ、すんません、衣は子供なんで辛くし過ぎないように頼める?」
洋榎「任せとき、この秘伝のソース調合でやな」
由子「市販ソース混ぜてるだけやん!」
衣「その前に衣を子供扱いするなー」
洋榎「こんなもんやな」
衣「おぉ、ソースたっぷりだ」
洋榎「子供は口周りにソースべったりが定番やでちょっと多めに塗ってもうたわ」
純「あー確かに子供な衣に似合いそうだわ」
衣「ジュンー何度いえばわかるんだー」
洋榎「後はいっぱい買ってくれたサービスでお好み焼きパック一つにつき1個たこ焼きもサービスやで」
衣「うわー」
洋榎「子供は笑顔が一番やで」
衣「だ、だから子供扱いするなー」
漫「美味しかったら周りにオススメしたってください」
由子「ありがとうなのよー」
恭子「……」カタカタ
洋榎「あかん、恭子のトラウマが完全に再発してもうた……」
由子「ほら、もうおらへんよ」
恭子「あ、す、すんません」
洋榎「負けたんは恭子のせいやないんやから気にせんでええって」
洋榎「それより今は帰りのために稼ぐでー」
洋榎「お、じゃあそこに材料置いといてぇ」
怜「たこ焼きのええ匂いがする……」
竜華「へー本場の味やて」
洋榎「あ、すんません、営業妨害しないでもらえますか?」
竜華「営業妨害してへんわ!」
洋榎「なんで千里山がくんねん」
竜華「怜は何食べたい?」
怜「たこ焼きやな、お好み焼きよりたこ焼きの方が美味しそうやわ」
洋榎「1個300万になりますわ」
竜華「高ない?もうちょいまけれへんの?」
洋榎「こっちももっと安く提供したいんやけど難しいんやわ」
竜華「250」
洋榎「300や」
竜華「260」
洋榎「……」
竜華「280」
洋榎「あーもうわかったわ!280でええわ!」
竜華「おおきに」
怜「さすが竜華やなぁ」
由子「主将が負けたのよー」
竜華「おおきに、怜と食べさせてもらうわ」
洋榎「もうこやんでええからな」
竜華「美味しかったらメンバー全員で買いに来るわー」
怜「ほな」
洋榎「300円予定のものを値切られて支払いで300円だされるなんてなんちゅう敗北感や……」
絹恵「お姉ちゃん気を落としたらアカンで」
恭子「清水谷竜華が園城寺怜とおる時は要注意やで」
洋榎「普段もっと天然ボケやったやろあいつ……」
洋榎「お、また清澄か、ええでーどんどん作るでー」
絹恵「あ、大会ではどうもでした」
和「あ、いえこちらこそ」
優希「へい親父、タコスはないのか?」
洋榎「親父ちゃうわ!あとタコスはないわ、たこ焼きならあるで」
優希「まぁタコがつくなら私のパワーになるから我慢してやるじぇ」
洋榎「生意気な事言うてくれるわ」
咲「でもとっても美味しくて部長も風越の人からも大好評でしたよ」
和「というか大好評でせっかくだしまた買ってこようって事になってきたんですけどね」
洋榎「おっリピーターは大歓迎やで、いつもよりサービスしたらなあかんなぁ」
恭子「あ、あぁ……」カタカタ
由子「トラウマの3人のうち一人+胸が大きい人なのよー」
漫「こ、これはほっといてぇ」
優希「きになるじぇ……」
恭子「めげるわ……」カタカタ
由子「ちょぉ、恭子も働いてもらわんとうちら帰れへんて」
洋榎「2つずつやったな、ちょいまっといて、お好み焼き係がちょっとトラウマ思い出して作れへんで」
洋榎「由子、頼むわ」
由子「わかったわ、じゃあ恭子は漫ちゃん頼むで」
漫「あ、わかりましたわ」
絹恵「ドタバタしてるもんで待たせてしまってすんません」
和「あ、いえ、出来立てのほうが美味しいですし、かまいませんよ」
洋榎「とびっきり旨いの作るでなー」
洋榎「せやろーさすがやろー」
優希「普通こんな事させるような監督いないじぇ」
絹恵「まぁ言われた時は驚いたけどやってみると楽しいもんやわ」
由子「帰りの心配がなければもっと楽しいと思うのよー」
洋榎「まぁ何にせよ負けは負けや、勝ったあんたら応援してるで優勝頼むで」
由子「優勝したら一番の強敵は姫松って答えといてぇな」
恭子「あかん……」
漫「そうやで末原先輩、めげたらあかんで」
恭子「やっぱめげるわ……」カタカタ
優希「それにしても元々サービスしてくれていたのをさらにサービスしてくれるなんてなかなかだじぇ」
洋榎「さすがやろー」
絹恵「熱いうちに食べえや」
咲「それじゃあ頑張ってください」
洋榎「ありがた山のとんびからすやでー」
由子「帰る途中で転んでも商品返品は不可やでー」
漫「末原先輩、もう行きましたから大丈夫ですて」
恭子「あ、うん、ありがとうな漫ちゃん……」
恭子「やっぱ主将がノリでサービスしすぎですわ」
恭子「一人帰る分じゃなくて全員帰る分なんやで主将」
洋榎「そ、そういうてもやっぱサービス精神は重要やろ」
絹恵「ま、まぁまぁこれでいろんな人が大阪きてくれたらええなってことでええですやん」
漫「この調子で帰れるんかなぁ」
洋榎「余計なことをいう漫はデコペンやな」
漫「あ、す、すんません主将」
洋榎「許さへんで、絹!ペン貸したって」
絹恵「ちょいまってぇな」
由子「これで末原まで書けたな」
洋榎「あとは恭子やけど漫ちゃん次第やな」
恭子「な、なに書いてるん!」
洋榎「いやだって……なぁ?」
由子「なぁ?」
洋榎 由子「恭子の名前書いてったら面白そうやん」
絹恵「息ぴったりや」
恭子「そんな事で息合わせやんといて!」
絹恵「うちが変わるわ」
洋榎「頼んだわ絹……」
由子「主将はずっとたこ焼き焼いてたから暑いに決まってるのよー」
洋榎「皆暑いやろうし飲み物買ってくるわ」
恭子「お願いしますわ」
洋榎「5本適当に……」
宥「温かい飲み物あったよー」ピッ
ガコン
洋榎「この暑さのなかでなんで温かい飲み物やねん!」
洋榎「っていうかなんでマフラーとかしてんねん」
宥「あ、あわわわわわ」
洋榎「あ、すんません思わず突っ込んでしもうたわ」
宥「で、でも暖かいのはいいんですよ」
洋榎「……もしかしてものすごい寒がりなん?」
宥「あ、はい」
洋榎「うーん、せや!」
洋榎「あっつい食べ物食べとうない?」
宥「え?え?」
洋榎「この先のところでうちと仲間でたこ焼きとお好み焼き売ってるんやわ」
宥「あ、でも他の皆が……」
洋榎「他に人がおるなら是非一緒にきたってぇ!」
宥「は、はい」
洋榎「って冷たい飲み物探さへんと……ほな後でなー」
由子「ひんやりしてるわ―」
絹恵「ありがとうお姉ちゃん」
漫「ありがとうございます主将」
恭子「熱中症対策は大切やってこの暑さやと実感するわ」
宥「あ、その……暖かいものって聞いたから……」
玄「お姉ちゃんが言ってたのはここなんだ」
穏乃「あ!清澄と戦ってた姫松の人!」
憧「え?あ、本当じゃん!」
灼「どうしてたこ焼き屋?」
洋榎「語るも涙な話があってなぁ……話すと長いんやけど……」
洋榎「負けたから帰る費用自分達で稼げっていわれてもうたんやわ」
絹恵「一言で説明してるやん」
洋榎「まぁそんな感じやわ」
玄「だねー」
洋榎「でたこ焼き1000個か?お好み焼き1000個か?」
憧「そんなに食べれませんって」
洋榎「もっと食べへんと胸も成長せえへんで」
洋榎「うちみたいに……」
恭子「自分で言って自分で落ち込むんやめんかい」
洋榎「なんで絹は成長したんやろ……」
絹恵「そう言われてもなぁ……」
由子「コントするならお客さんの注文聞いてからにしいよー」
洋榎「5個ずつか?5個ずつやんな?5個ずつなんやろ?」
絹恵「お客さんにプレッシャーを与えたらあかんて」
絹恵「ほんますんません、好きな個数言ってください」
憧「晴絵の分も考えると」
灼「6つずつお願いします」
玄「そんなに食べれるかな?」
宥「私はあんまり自信ないかな」
憧「まぁいざとなれば穏乃が食べますって」
洋榎「ほんまか!ほんまに6つでええんやな!よーしこれはまたサービスせなあかんなぁ」
洋榎「恭子、お好み焼きは頼んだで」
恭子「わかってますて」
恭子「……」ブツブツ
由子「恭子は何言うてるんやろ……」
恭子「あれぐらいの胸ならギリギリセーフあれぐらいの胸なら……」ブツブツ
由子「あのサイズが限界みたいやな」
漫「永水女子の大将の人大きかったですしね」
由子「絹恵ちゃんは大丈夫なのはなんでなんやろなー」
絹恵「さすがにあそこまで大きくないですよ」
洋榎「ふふん、サービスや」
灼「帰る費用のために儲けなくていいの?」
絹恵「地道に稼いでますから気にせんといたってぇ」
憧「お好み焼きも美味しそう」
恭子「お好み焼き6パック袋にいれとくでー」
宥「とっても暖かそう」
洋榎「暖かそうなんやない、暖かいんやで」
憧「さっそく晴絵のとこいって食べよっか」
漫「気ぃつけて帰ってぇな」
由子「ありがとうなー」
穏乃「こっちこそありがとうございましたー」
洋榎「美味しかったらクチコミ頼むでー」
漫「可愛い人や美人な人が店番すると人が増えるって言いますよね」
洋榎「それはなんや漫、私が可愛くないいいたいんか?」
漫「きゃ、客寄せの一般論を言うただけですて」
由子「これは恭の字を書かなあかんわー」
漫「そ、そや!他にも匂いを広げて食べたくさせるとか」
洋榎「なるほどな、確かにたこ焼きの匂い嗅いだら食べたくなるのが人ってもんやわ」
漫「……」ほっ
洋榎「まぁ案をだしてもデコに書くんやけどな」
漫「あんまりやわ……」
絹恵「後ろからうちわで仰いだらええんちゃう?」
洋榎「魚やあるまいし」
由子「やっぱ呼び込みが一番なのよー」
恭子「立ち食いスペースが作れれば美味しそうに食べる人を見て来る人増えるかもしれへん」
洋榎「あー確かにテレビでラーメンとか特集してるとラーメン食べたくなるもんなぁ」
照「……」ジィー
洋榎「うわ!インハイチャンプやないか!」
照「……」ジィー
洋榎「ん?もしかして買ってくれるんか?」
照「美味しそうな匂いがしていた」
洋榎「たこ焼き、お好み焼き、どっちも美味しそうやなくて美味しいで」
洋榎「どや、今ならサービスすんで?」
由子「清澄の子に似てるからまたトラウマ再発なのよー」
絹恵「あんな麻雀されたらしゃあないですて」
由子「じゃあ漫ちゃん頼むわ」
漫「あ、はい!」
照「あぁ」
洋榎「お、弘世菫やないか、たこやき買わへん?」
菫「愛宕洋榎か……何をしているんだ」
洋榎「見ての通りたこ焼きとお好み焼き屋や」
菫「いや……まぁいい」
菫「はぁ……照も食べたそうにしているしいいだろう2つずつ頼む」
洋榎「ホンマに2つでええんか?」
菫「どういうことだ」
洋榎「確か白糸台のインハイチャンプとお前以外のメンバーは後輩なんちゃうか?」
菫「そうだが……」
洋榎「先輩やったら後輩になんか買って行ったらな後輩もかわいそうやなぁ」
洋榎「なぁ漫ちゃん」
漫「え?あ、そうですね、やっぱ先輩から差し入れとかされるとめっちゃ嬉しいですわ」
菫「……はぁ、5つ買えと言いたいんだな」
洋榎「なんなら白糸台部員全員分でもええで」
洋榎「お、さすがインハイチャンプ、3年としてもできてるわ」
洋榎「それで、お好み焼きは買わんの?」
菫「はぁ……5つもらおう」
洋榎「まいどおおきに」
由子「5つやねー」
絹恵「美味しかったら白糸台の部員さんに教えてあげてください」
照「あぁ」
恭子「少しはねた髪型怖い……」カタカタ
照「あぁ、ありがとう」
洋榎「全国大会もほどほどに頑張りやー」
照「あぁ」
菫「なんだほどほどにって……」
洋榎「せやから負けてもええよって想いを込めた応援やで」
菫「応援になっていないな……」
洋榎「そらそうやろ、うちを負かした清澄応援してるでなぁ」
由子「負けたからには負かした場所の応援よー」
照「ふっ誰であろうと叩き潰す」
洋榎「おーこわ」
由子「そうやね、5人で何とか回してるのに一人抜けるときっついわ」
絹恵「そういうてもなんかいい方法あるん?」
洋榎「特にない」
漫「ないんですか……」
洋榎「せや、怪物やおもてた奴も話してみると案外普通やったよな」
由子「清澄の子は特にいい子そうだったのよー」
洋榎「本人がきたら恭子に対応させてショック療法でどうやろ」
漫「それ意味あるんですか?そもそも宮守と永水が通らんとどうしようもないですやん」
絹恵「あ、噂をすれば永水女子や」
絹恵「どうもです」
霞「あらあら、どうしてたこ焼き屋を?」
洋榎「悲しいドラマがあってな」
恭子「あ、あぁ……」カタカタ
霞「あ、あら?何かしてしまったかしら……」
由子「恭子、お客さんに対応せんでどうするん」
恭子「い、いらっしゃいませー」カタカタ
漫「声裏返ってますわ」
由子「まるでマクドの新人やで」
春「……」ポリポリ
洋榎「お、黒糖のもおったんか」
春「ん……」ポリポリ
洋榎「甘いもんばっか食べてると太るで、ここはたこ焼き買わへんか?」
春「太らない体質……」
洋榎「まさか、鹿児島は脂肪は胸にいくような奴ばっかりって言いたいんか!」
洋榎「おっぱいお化けばっかりやでほん……ま……」チラッ
初美「?」
洋榎「そうでもなさそうやな」
初美「今この人絶対失礼なこと考えたのですよー」
恭子「さ、3パックですね!しょ、少々お待ちください」カタカタ
由子「初めてのアルバイト、飲食店のレジって感じなのよー」
初美「お好み焼きの方も3つほどいいですかー」
恭子「お、お好み焼き3パック入りました―」
漫「末原先輩いっぱいいっぱいになってるで……」
絹恵「大丈夫やろか……」
洋榎「そういえば、神代放っておいて大丈夫なんか」
洋榎「ふわふわしてそうやし天然ボケ入ってそうやし放っておいたら危なくないんか?」
霞「小蒔ちゃんには巴ちゃんが付いているから心配無用よ」
初美「無用とはいいきれない気もしますですよー」
洋榎「まぁええわ、もうちょい待ってぇな、もうできるで」
初美「美味しそうですよー」
洋榎「美味しそうやなくて美味しいんや」
洋榎「そうそう、ソースが服についても責任は取らへんからな?」
洋榎「神代と分けて食べるんなら注意しいや」
霞「あら、じゃあ小蒔ちゃんには制服に着替えて食べてもらおうかしら」
絹恵「普通制服も汚したらあかんのとちゃうんですか……」
洋榎「ショック療法では厳しいんやろか」
由子「でも震えながらもちゃんと対応はしてるで」
漫「大丈夫なんやろか」
絹恵「あんなトラウマの治す方法なんてわからへんって……」
洋榎「まぁとにかくこの調子でリハビリと電車代稼ぐでー」
健夜(私みたいなアラサーをお姉さん!)ピク
洋榎「ってようみたら小鍛治プロやん!」
由子「ほんま!小鍛治プロ?」
絹恵「ほんまやー」
健夜「あれ?あなた達って姫松の……」
洋榎「南大阪代表姫松高校ですわ」
健夜「どうしてたこ焼き屋?」
洋榎「色々とありまして」
健夜「うーん、こーこちゃんと今はぐれちゃってて」
洋榎「ここを待ち合わせ場所にしてその待ち時間の間にたべてくとかどうですか」
健夜「うーん、ここで食べるのはいいんだけどこーこちゃんと約束してて……」
恒子「あ、すこやん発見」
健夜「あ、こーこちゃん」
恒子「むむっこんなところに屋台!?」
洋榎「どうも、南大阪代表姫松が送る本格たこ焼き、お好み焼きですわ」
恒子「代表選手がなんか営業してる!?」
恒子「これは取材してみる価値が!」
健夜「そうだね、時間を取るなら売上にぐらい貢献しないとね」
恒子「じゃあまずは作ってるところを映像にでも」
由子「確か福与アナって勝手にネットに動画あげたりせえへんかった?」ヒソヒソ
洋榎「下手なところ見せれへんってことやな」ヒソヒソ
健夜「じゃあ2パックずついいかな?」
絹恵「まいどおおきにー」
洋榎「こっちももう出来るわ」
恒子「ふむふむ」
健夜「てきぱきしててすごいね」
絹恵「私らがつこうてる椅子と机を一時的に利用してもらおか」
漫「じゃあ移動させやなあかんね」
健夜「えぇ!」
恒子「すこやんもアラフォーになるほど生きているのでそのリアクションはきっとその年令に見合った深みのある」
健夜「アラサーだよ!」
健夜「何言わせるの!?」
絹恵「というわけでってことは作ってるところはすでに配信されてたんですかね」ヒソヒソ
由子「あの人小鍛治プロの家に突撃取材生配信よくしてるしね」ヒソヒソ
漫「よく訴えられないですね」ヒソヒソ
恒子「……」
健夜「こーこちゃんどうしたの?」
恒子「もっとこうオーバーな感じでもう一回リアクションしてすこやん」
健夜「やらないよ」
恒子「えー今時高校生でももっとましなリアクションするって」
恒子「ねぇ?」
洋榎「そんなん突然過ぎて無茶ぶりですわ……」
恒子「まぁまぁそう言わずに一つ自分で食べてリアクションをどうぞ」
パク
洋榎「はっ!なんやこれ!うますぎるで!まず外はカリカリ中はふんわり、からまったソースによるべたつきもなくタコが~」
由子「さすが主将なのよー」
健夜「無理無理、無理だって」
恒子「そう言わずさぁさぁさぁさぁ」
洋榎「これはある意味宣伝になったで」
絹恵「ただ店やってる理由は答えにくいわ」
由子「そやね、帰りの費用稼ぎなんて言うたら問題になりかねへんし」
漫「面倒がごめんやわ」
恭子「そういうてもやってる理由聞かれたら答えれへんで?」
洋榎「はいはい、お待たせしてもうたわって今度は三尋木プロやん!」
咏「おーう」
洋榎「っとたこ焼きとお好み焼きどっちがええですか?」
咏「うーん、着物でも食べやすい方かなー」
洋榎「ならたこ焼きの方がええかなぁ」
絹恵「そこにいる小鍛治プロに会いに来たとかですか?」
咏「匂いにつられてきただけだから知らんけど」
洋榎「まいどー」
絹恵「三尋木プロは小鍛治プロみたいにアナウンサーの人と一緒やないんですね」
咏「おーう、えりちゃんには振られちったー」
由子「振られたって針生アナに用事があったんですか?それとも……」
咏「んー、両方の意味でかなー知らんけど」
由子「ほんまですか!?」
咏「いや知らんし」
咏「よーし、あそこの二人の仲でもおちょくって楽しみますかねー」
由子「あ、やっぱりあの二人ってそういう感じなんですか?」
咏「ふははーわかんねーでもそれっぽいんだよねー」
絹恵「怪しいからつついて楽しもうってことですか」
咏「そそ」
漫「なんや馬に蹴られそうやわ」
咏「おーう、気をつけるよー」
洋榎「ってさっそくあの小鍛治プロとアナウンサーのふたりきりの空気に乗り込んだで」
恭子「やっぱプロは違うなぁ」
睦月「うむ……え!?」
睦月「さ、サインもらわないと!」ササッ
智美「ワハハ、むっきーがプロ麻雀せんべいカードを片手に飛び込んでしまったぞ」
ゆみ「仕方がない、ちょうどそばにたこ焼き屋もあるみたいだし皆で買って食べよう」
佳織「そうですね」
ゆみ「あぁいや、あっちに1人とこっちに4人だから5人だ」
ゆみ「食べやすそうだしたこ焼きを5つ……って姫松高校!?」
洋榎「ん?そうやけど、そっちもどっかの代表校か?」
ゆみ「あぁいや、私は長野の清澄応援にきたんだ」
洋榎「ってことは長野の決勝の風越か鶴賀のどっちかあたりか?」
洋榎「悪いなぁ、牌譜は見たんやけど龍門渕みたいに以前見かけたわけやないだけにわからへんわ」
智美「ワハハ、そこまで清澄も研究していたんだと驚かされるなぁ」
洋榎「強豪校がただ強いやつを集めただけの集団や思うたら大きな間違いやで、相手のことは調べるわ」
洋榎「まぁそれはええとして、うちらと同じ清澄応援校ってことでサービスせなあかんな」
ゆみ「清澄を応援しているのか?」
洋榎「うちのチームを倒したチームに優勝して欲しい、その気持ちはそっちもわかってるんやろ?」
ゆみ「ふっ確かにな」
桃子「にしてもどうしてたこ焼き屋やってるんっすか?」
絹恵「う、うわ!お化け!?」
桃子「あ、どうもっす」
洋榎「や、やばいで……目をそらしたらこれ呪われるんちゃうん」
絹恵「じゃ、じゃあ私呪われたん!?」
智美「ワハハ、モモは影が薄いだけでちゃんと生きてるぞー」
洋榎「いや影が薄いてちょっと透けて見えるんやけど」
絹恵「なんか意識せな見失いそうやわ……」
恭子「主将、遊んでないで早く作らなお客さんに悪いて」
由子「そうやで主将」
洋榎「い、いやさすがにびっくりするやろこれ……」
洋榎「昨日突貫工事で作ったんやわ」
絹恵「鉄板とかも監督代行に借金して全部買って、その分のお金も稼がんとなぁ」
ゆみ「というか何故たこ焼き屋を開いて稼ごうとしているんだ?」
洋榎「いやな、監督代行が負けたから帰りの電車代とか自分で稼げ言われてもうてな」
佳織「た、大変ですね……」
智美「ワハハ、笑えない境遇だな」
洋榎「って笑ってるやないかい!」
智美「ワハハ」
絹恵「熱いんで気をつけてなー」
由子「でも熱いうちに食べるんやでー」
桃子「美味しそうっす」
ゆみ「あぁ、それに値段のわりに祭りの屋台よりはるかにサービスもいい」
恭子「主将がサービスばっかしてるから売れても全然儲からへんねん」
智美「ワハハ、本末転倒だなー」
洋榎「う、うっさいわ」
洋榎「……」
佳織「あ、あれ?変なことを言ってしまったでしょうか?」
洋榎「皆集合やで」
洋榎「えー今お客さんから新しい商品が飛び出たわ」
絹恵「焼きそばやったらお好み焼きの鉄板で作れそうやね」
由子「モダン焼きもいけるのよー」
洋榎「どうする、恭子」
恭子「……漫ちゃん、焼きそば材料追加や!キャベツは消費が早いから多めに買ってきて」
漫「は、はい!」
桃子「チームワークいいっすね……」
ゆみ「あぁ、そしていけると判断してすぐに実行に移せる行動力もなかなかのものだ」
ゆみ「サインはもらえたのか?」
睦月「はい!」
洋榎「お、行くんか」
ゆみ「あぁ、戻ってたこ焼きでも食べさせてもらうよ」
洋榎「あんま遠いなら今のうちに食べやなあかんで」
由子「そうよー美味しいうちに食べやな」
ゆみ「大丈夫だ、それじゃあ」
洋榎「美味しかったら周りにもすすめるんやでー」
絹恵「さっき行ったばっかやで、にしても……」チラッ
恭子「椅子返せとはいえへんし我慢しいや」
由子「小鍛治プロはたまに申し訳なさそうにこっちをうかがってるのよー」
恭子「まぁ三尋木プロと福与アナに絡まれてもう行こうと言い出せないみたいやね」
洋榎「逆に申し訳ないわ、気にしてない感じでおったらなあかんで絹」
絹恵「そやね」
恭子「ちょっと見に行ったほうがええかもしれませんね」
漫「今もどりましたわー」
由子「あ、漫ちゃん遅……」
絹恵「ナースがおる……」
憩「噂聞いて見に来たんやわー」
漫「なんか絡まれまして……」
洋榎「ふぅ……何言うてるんや絹、そんなアホおらへんて、仕事に戻るで」
憩「無視せんといてー」
洋榎「せや」
憩「そこ、中継されてるんやわ」
恒子「すこやん、アラフォーの意地を見せるしかないって」
咏「おーう楽しみー」
健夜「だからアラフォーじゃないよ!」
洋榎「あぁ、あそこか……」
恭子「やっぱ配信してたんですねあのアナウンサー」
由子「カメラ持ってるように見えへんけどどこに持ってるんやろ」
洋榎「宣伝されてるらしいし客入り良くなるかもしれへん、気合い入れていくでー」
恭子「そうですね、プロ見たさに来る人は増えると思いますわ」
由子「チャンスなのよー」
憩「だから無視せんといてー」
恭子「ナース服の女子高生をプロの中に突っ込んでさらに客寄せを狙うなんてさすが主将ですわ」
由子「しっかり三尋木プロに絡まれてるしこれはありがたいな」
洋榎「こうなると巫女服の永水も確保しとけばよかったんかもしれへんな」
絹恵「いや、それもどうなんやろ」
漫「あ、あれ宮守の人やわ」
洋榎「お、獲物やな」
エイスリン「シロ、タコヤキ」
シロ「んー……」
豊音「チョー美味しそうな匂いがするよー」
胡桃「あれって……」
塞「姫松だね……なんでたこ焼き屋?」
洋榎「一緒の卓で打った仲やないかーちっこいのー」
胡桃「うるさそうだし行こ」
洋榎「ってそれはないやろ!」
胡桃「……押し売り?」
洋榎「まぁまぁそう言わへんと、めっちゃうまいから」
シロ「いいんじゃないの?」
豊音「大阪の人が作るたこ焼きチョー食べてみたいよー」
エイスリン「ワタシモ、タベテミタイデス」
塞「別に食べていってもいいんじゃない?」
洋榎「いやーやっぱ他の人は話がわかるなぁ」
胡桃「はぁ……」
洋榎「あ、そういえばリハビリ中やったわ」
由子「案外大きな胸も問題なくなってたから大丈夫かと思ってたのよー」
絹恵「やっぱ本人となると違うんちゃうんですか」
豊音「あっ大将戦ではどうもー」
恭子「追っかけリーチされる……追っかけリーチ……追っかけ……」ブツブツ
由子「あ、あかんみたいやわ」
洋榎「しゃあない、漫ちゃん頼むわ」
漫「あ、はい」
塞「さすがに焼きそば、たこ焼き、お好み焼き全部は食べきれないね」
豊音「でも全部食べてみたいかなー」
絹恵「たこ焼きなら食べさせあったりできますし」
絹恵「たこ焼き数パックにお好み焼きと焼きそば好きな方選ぶとかどうですか」
塞「それがよさそうだね」
シロ「だるい……」
洋榎「よーし、同じ卓囲んだ仲やしサービスすんでー」
洋榎「ん?なんや?」
エイスリン「デキタ」トン
洋榎「え?なんか店で左腕に指さしてる人?ってあぁ腕時計やな」
洋榎「よくみるとお腹が鳴ってるみたいに……あぁ、はよ作れいいたいんやな」
洋榎「日本語もっと喋れたらけったいな人間なんかあんた」
エイスリン「?」
洋榎「ん?なんや?」
豊音「焼きあがったら上に打ち上げてパックにいれるんだよねー」
豊音「チョー楽しみだよー」
洋榎「どこの知識やねん!」
豊音「テレビでやってたよー」
洋榎「なんちゅう無茶ぶりや……」
由子「いや、失敗したらもったいないからやらんでええからな」
洋榎「確かお前の名前は姉帯やったな、ええか?」
洋榎「たこ焼きを打ち上げたりしたらその分冷めてしまってまずくなってまうやろ?」
洋榎「やからそんな事はパフォーマンスでもないとせえへんねん」
洋榎「例えばアニメとか漫画とかそういうのじゃないとやらへんねん」
由子「そうやで、本気にしたらあかんよー」
豊音「残念だよー」
洋榎「やから……1回だけやで?」
由子「ちょ!主将!」
洋榎「行くでー」
由子「本当に打ち上げたのよー」
漫「しかも空中でちゃんと青のりとソースかけれてるで!」
由子(主将、絶対練習してたわこれ……)
洋榎(アカン、パックからそれた!)
絹恵「キーパー舐めたらアカンでえええええええええ」
塞「あ、キャッチした」
絹恵「あっつあっつ!」
洋榎「き、絹!持ってないで食べ!はよ!」
絹恵「あ、あむ……はっ!なんやこれ!うますぎるで!まず外はカリカリ中はふんわり、からまったソースによるべたつきもなくタコが~」
由子「さすが姉妹なんよー」
豊音「チョー感激だよー」
胡桃「馬鹿みたい……」
由子「主将、ソースはうまくいったんかしらんけど、青のりが髪にかかってるよー」
漫「これウエットティッシュ」
絹恵「ありがとうな」
豊音「大阪の人チョー面白かったよー」
洋榎「そう言ってもらえたらみせたかいもあるってもんやわ」
由子「というかあれだとパックに入ってもべちゃってなるのよー」
漫「売り物としてはアウトですわ」
洋榎「……漫、後でデコに子書いたるわ、これで恭子の名前が完成やな」
漫「冗談ですって主将!」
絹恵「熱いんで気ぃつけてください」
塞「ありがとう、あとその前にそっちこそ手大丈夫?」
絹恵「こんなん慣れっこですわ」
塞「ならいいけど……あ、あとそこで食べていっても大丈夫?」
洋榎「ええけど椅子とかはあっちのプロが独占してるから貸し出せやんわ」
塞「あぁそれはいいんだけどシロがそこに座っちゃっててねー……」
豊音「多分しばらく動かないねー」
シロ(だるい……)
洋榎「うちらの土地やなし好きにしたらええんちゃう?」
塞「その解答もどうなのかな……」
シロ「あー」
豊音「美味しいよー」
塞「これは確かに美味しい」
洋榎「せやろーさすがやろー」
胡桃「……あ、美味しい」ボソ
洋榎「んーなんやー聞こえやんだなーもっかい大きな声で言ってみ?」
胡桃「う、うるさいそこ!」
洋榎「おっと、怒らんと素直にもう一回言うてみ?」
胡桃「しょ、食事中に騒がない!」
洋榎「騒いでるんはそっちやないかい」
由子「子供の喧嘩なのよー」
絹恵「今日で結構稼げたんかな?」
由子「恭子、もうおっきい人おらへんて」
恭子「追っかけリーチ……え?あ、あれ?なんか暗いな」
漫「意識飛んでたんですか末原先輩」
恭子「なんで漫ちゃん私の名前デコに完成してるん?」
由子「それより恭子、今日の売上計算頼むわ」
恭子「ん?あ、ちょいまってぇな」
洋榎「ほんまか!」
恭子「ただ、初期費用のマイナス分を考えるともうちょいですわ」
恭子「代行が利子つけてとか言うてたから明日も屋台出せば問題無いと思いますわ」
洋榎「明日も朝から頑張るでー」
絹恵「今日はつかれたし汗だくやわ」
由子「ずっとあっつい鉄板の近くやでなぁ」
漫「私もお風呂はいりたいわ」
由子「あ、漫ちゃんはそのデコ消したらアカンよー」
洋榎「そうやで漫」
漫「そんなぁ」
洋榎「なんやこれ……」
絹恵「なんかどんどん人が増えてってるで」
由子「これ捌ききれるん?」
恭子「さすがに無理やわ」
漫「やっぱ配信されてたせいですかね」
洋榎「お、おお、ちょい忙しすぎてまともに相手できそうにないわ、すまんな」
まこ「ネットであんたら噂になってるけぇしょうがないじゃろうて」
洋榎「ほんまか!」
久「まぁもうこの状況ってだけでどういうことになってるかわかってると思うけど」
久「頑張ってね」
まこ「がんばりんさい」
胡桃「別にいいでしょ、美味しかったし」
洋榎「素直が一番やな」
胡桃「う、うるさいそこ!」
洋榎「まぁあんま相手する暇はないんやわ、すまんなぁ」
由子「お肉もすくなくなってきたのよー」
竜華「大変そうやなぁ」
洋榎「うっさいわ、営業妨害すんなら帰ってくれへん?」
竜華「せっかく差し入れもってきたったのに」
浩子「キャベツこんなもんでええです?」
セーラ「竜華ー肉買ってきたでー」
泉「タコ確保しましたよー」
洋榎「うっ……」
由子「主将ここは素直に謝って助けてもらったほうがいいのよー」
洋榎「わ、わかっとるわ」
洋榎「うわ、なんや白糸台のやつか」
淡「あ、たこ焼きもらえますか?」
洋榎「どんだけいるんや?」
淡「えーっと……80ぐらい?」
洋榎「え?」
淡「菫先輩が絶賛してて皆食べてみたいって白糸台の部員ほとんどがいまこっちに向かってるんですよ」
恭子「す、漫ちゃん急いでさらに材料買ってきて!」
漫「は、はい!」
淡「やっぱり無理ですよねー」
洋榎「や、やったろうやないかい!」
初美「やきそばが欲しいのですよー」
洋榎「って永水の薄墨!?」
初美「昨日来たときなかったやきそばも食べてみたいと皆がいったので買いに来たのですよー」
初美「お願いしますですよー」
洋榎「嬉しいこというてくれるわほんま」
絹恵「喋っとらんとどんどん作ってかな間に合わへんでお姉ちゃん」
恭子「このペースでお客さんがくるなら作り続けても出来立てでなくなってくはずやで」
由子「とにかく作るしかないのよー」
健夜「こーこちゃん、順番待ちしてるなら待たないと」
洋榎「あ、小鍛治プロまたきたんや」
恒子「突如現れた大人気のたこ焼き屋の謎に迫ります」
恒子「えー店員さん、なにか一言」
洋榎「そうですね、やっぱ美味しい言われると嬉しいわ」
恒子「さすが、プロは違いますね、美味しいと言われると幸せを感じる、まさにプロ!」
健夜「え?えっと、この子達はプロじゃ……というか代表校……」
恒子「次の質問いってみよー店員さんが今目指しているものはなんですか」
洋榎「そんなん団体戦では果たせへんかったから代わりに全国個人戦優勝にきまってるで」
恒子「なんと!店員さんの目指すものはたこ焼きチャンプ!」
洋榎「ちゃうて!たこ焼きチャンプやなくて個人戦チャンプや!」
恒子「たこ焼きで個人戦?たこやき部?」
健夜「恒子ちゃん、少しは代表校の事覚えようよ……」
洋榎「うちらは麻雀部なんやって!たこやき部ちゃうんやああああああああ!」
胡桃「馬鹿みたい」
終われ
本編側もキャラをわかってないの多いけど、それ以上に阿知賀側のキャラ全然わからない
麻雀描写が薄いせいなのかわからない
あと関西弁ムズイ、チョームズイ、わかんねー全てがわかんねー
洋榎ちゃんと胡桃ちゃんもっと絡んでください!あと部キャプも絡んでください!
面白かった。ありがとう
色んな絡みがあって面白かった
Entry ⇒ 2012.10.22 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
菫「で、何の真似だ」京太郎「えっと…その…」
京太郎「えっと…その…」
菫「お前が私をつけていたのは申し訳ないくらいにバレバレだ、理由によっては赦してやる。話せ」
京太郎「すいません、でも話しても許して貰えそうにないですし…」
菫「それは私が判断するから早くするんだ、このまま通報されたいなら話は別だが」
京太郎「そ、それは勘弁してください!お話しますから!」
京太郎「えーっと、こんな感じです…」
-全国大会ちょっと前-
久「須賀くん、君には全国大会では偵察をしてもらうわ!」
京太郎「はぁ…でも一体どうやって?もしかしてそこの練習風景を覗き見て牌譜でもとれと?」
久「まあそんな感じね」
京太郎「ほとんど無理なこと前提じゃないですか…」
久「冗談よ、冗談!ただ私たちと別のブロックの試合に注目してもらって要対策なところの対策をあらかじめ練って欲しいの、私は自分達のほうのブロックの対策に注力するから」
京太郎「それならなんとかできそうですが…」
久「じゃあよろしく頼むわね、須賀くん。わからないことがあれば何でも聞きに来ていいから」
京太郎「了解です、力になれるように頑張ります」
京太郎「まだ続きがあってですね…」
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まこ「それはちょっと無茶すぎんかの?」
久「それくらいしておかないと彼を腐らせることになるでしょう?」
まこ「だったら他の方法もあったじゃろに…」
久「きっと別ブロックの有力校はシード校になると思うの、つまりね」
まこ「つまり?」
久「須賀くんが多少しょっぱい対策を練ったとしても、全国に行く以上シード校の対策は既にある程度あるわ」
まこ「あまりにも京太郎が不憫じゃろ…」
久「そうじゃなくて、須賀くんが何か報告さえしてくれれば、彼のおかげで対策も取れるって形になるの、むしろ彼の面子を立ているわ」
まこ「なんつーか、怖い女じゃ。わしですら寒気がする」
久「褒め言葉として受け取っておくわね」ニッコリ
京太郎「うわぁ~ショック、なんてことはないですね!その分みんなを見返してやれるんだから!」
-回想終了-
菫「まぁ…なんだ…ご苦労なことで」
京太郎「だから白糸台部長の弘世菫さんをつけて来たんです!」
菫「確かに動機もわからんでもないし、気持ちはわかる。だからといって他校の偵察を受け入れるほど甘くはない」
菫「今日の出来事はなかったことにするから、素直に帰るんだ」
菫「あのなぁ…赦してやるから素直に引き下がれって言ってるんだぞ?」
京太郎「弘世さんの言うことは確かに尤もですが、清澄麻雀部員としてこの機を逃すつもりは毛頭ありません!」
菫「清澄…というと、君は長野の高校の子か」
京太郎「はい、今年初出場なんですよ」
菫「つまり大会本部に清澄の部員が云々と言えば解決できると」
京太郎「えっと…それは…」
菫「世辞じゃなく君の気持ちはわかる、だから何もなかったことにしたい。それじゃ駄目なのか?」
京太郎「ただ俺一人のプライドのためにあなたたちの弱点をリサーチします!」
菫「えっと…須賀君でいいか、そこまで正直だと逆に好感が持てる、だが私も白糸台の部長としてのプライド…」
照「菫、何やってるの?」
菫「あ、照かちょっと面倒なことに巻き込まれてな」セツメイセツメイ
照「じゃあ二人から意見を聞いて、私が判断する。それでいい?」
菫「ああ」
京太郎「大丈夫です」
照「なるほど、判断をする前に京ty…須賀くんに少しの質問と要望、大丈夫?」
京太郎「はい」
照「本当にどうしても私達のリサーチがしたい?」
京太郎「はい!」
照「そのために何でもしてくれる?」
京太郎「何でもしますから!」
照「じゃあ、一局打って、ちょうどここにカード麻雀があるから」
菫「?」
菫「あぁ…」
照「せっかくの出会いを祝して半荘で、よろしく」
京太郎「よろしくお願いします!」
菫(意図がわからないが…まあ考えあっての事だろう)
京太郎「うぅ…断トツ最下位…」
菫「言うまでもなく照の独壇場だったな、で、照の判断とやらは?」
京太郎(どう見てもダメだよなぁ…今の対局から何かわかることは…)
照「他レギュラー達に紹介してあげる、今から時間ある?」
菫(…え?)
京太郎「…」ポカーン
京太郎「あ、あります!」
京太郎「はい、では一旦失礼します」タタタッ
菫「…どういうことだ?」
照「ただの気分のせい…」
菫「そんな訳あるか、正直に言え」
照「京ちゃんは菫に一回も振り込んでなかったこと気付いてた?菫が狙い打とうとしてたのに」
菫「言われなくても…そんなことわかっている」
照「正直狙い撃ちをする菫への対処法は私にもわからない、きっと京ちゃんは何か菫への対策はとれていたと思う」
照「その対策を研究して、それを対策して私は菫に全国で活躍して欲しい、それじゃダメ?」
菫「…ダメじゃない、わかったよ。ありがとう、照」
照「どういたしまして」
京太郎「ちょっと早く来すぎたかな、自販機でアイスコーヒーでも…っと」ガシコーン
菫「なんだ、早いな」
京太郎「弘世さん、こんばんは」ニコッ
菫「あぁ…こんばんは」
京太郎「弘世さんが案内をして頂けるのですか?」
菫「いや、照…じゃない、宮永がここに来ると言っていた。さっき照と言っていたカード麻雀を一緒にやった奴だ」
京太郎「流石に偵察する相手のフルネームくらい把握してますから、自分の前で照って呼んでも通じますよ、菫さん?」
菫「ま、まだ知り合って間もない女性に対して下の名前でだな…」
照「あれ、菫もいたの」
菫「照が迷子になったらアレだから先に着ておいた」
照「…」ムーッ
菫「すまなかったな、じゃあ行こうか」
京太郎「今日はよろしくお願いします」ペッコリン
菫「で、どこでみんなと顔を合わせるんだ?」
照「え?ホテルでしょ」
京太郎「!?」
菫「だ、男女がホテルの同室など…は、破廉恥にもほどが……//」
照「ただ私達の麻雀の練習風景の見学でしょ、他に破廉恥な要素はない、むしろ破廉恥な要素はあった?」
京太郎「確かにそうですが…人目が…」
照「さっき何でもするって言ったでしょ、京ちゃん」
京太郎「確かに…って、まさか照さんって…」
照「やっと気付いた?積もる話は後で」
亦野「君が須賀くんか!亦野だ!よろしく頼む!」ガシッ
京太郎「はは…よろしくお願いします」
淡「私は大星淡、同い年だし私は京太郎って呼んじゃうね、京太郎も淡って呼んじゃっていいから!」
京太郎「えーと、よろしくな、淡」
照「自己紹介は済んだ?じゃあ…」
菫「その前に一つ質問いいか、照」
照「構わない」
菫「なんで私の部屋が集合場所なんだ!」
照「多数決…」ボソッ
亦野(私の部屋の軍備を見られる危険に晒すなんて言語道断!)
淡(別に部屋は綺麗だったけど、面白そうだったから片付いてないことにしちゃったし)
菫「お前ら…部屋はある程度整理しておけと…」
照「京ちゃん、さっそくだけど、私達の中に入って打つ?それとも外野で見学する?」
京太郎「えっと…」
菫「せっかくだ、入って行け、もし牌譜が欲しいなら後で寄越すから」
京太郎「ありがとうございます、ではよろしくお願いします」
淡「じゃあ私も入るねー!」
京太郎(そんな見られるとやりにくいな…)
京太郎「ではよろしくお願いします」
菫(私の弱点…今ここで見極めなければ…!)
照「事情は言ってあるけど、みんな偵察だからってわざわざ打ち方を変えないで」
照「偵察されて得たデータ如きに負けるような白糸台とは私は思ってない、安心して」
照「悪いけど少しの間、一人の人間のプライドのために付き合ってあげて」
京太郎「すみません、照さん…」
京太郎(どんな惨めでも俺は勝ってみせる…!)
淡「じゃ、やるよー!」
菫(また…狙えなかった…!)
淡「京太郎ちょっと弱いよ、もっと頑張ってくれないとつまんない!」
京太郎「悪い、きっと弱いから偵察なんて負かされてるんだな…ハハッ」
淡「もう少し京太郎が強くならないと偵察としての意味もないよ?もっと上達してからにしたら?」
京太郎「正論だけど…今日一日だけだし…」
照「いや、二日目以降も構わない」
京太郎「えっ?」
照「さっき言ったとおり白糸台は偵察された程度で負けないし、京ちゃんが来てくれるのはこちらにもメリットがある」
京太郎「では…またお邪魔しても…?」
照「大丈夫、気にしないで」
京太郎「じゃあ淡に頼もうかn」
菫「もしよければ私にその役目を譲って貰えるか、淡?」
淡「んーいいよ!菫がどうしてもって言うなら!」
菫「そんなこと言ってないだろ!」
淡「あー照れてる菫可愛い」
菫「馬鹿言え!」
渋谷「…」ズズー
亦野「はい!これが牌譜だ!今日はご苦労だった!」
渋谷「…また」
淡「まったねー!」
菫「え、えーっとだな君に麻雀を教えるにあたって連絡先が欲しい」
京太郎「ええ、いいですよ」ポチポチ
菫「じゃあ、明日の朝頃連絡するけど、返事できるか?」
京太郎「はい!わざわざありがとうございます!今日は失礼します!皆さんおやすみなさい!」
照「道がわからないだろうから、私が送ろうか」
京太郎「正直道がわからないんで助かります」
淡「京太郎ー!テルーに手を出すなよー!」
京太郎「出さないって、では」ガチャッ
照「昔話代なら120円でいい…」
京太郎「相変わらずちゃっかりしてますね…アイスティーでいいですか?」
照「ありがとう。それと敬語やめて、他人行儀は嫌」
京太郎「だって、最初は照さんって気付かなかったし」
照「そんな変わったつもりはない…」
京太郎「いや、やっぱり変わったよ、より可愛くなってる」
照「あ、ありがとう…」カア…
京太郎「で、照さん…」
照「いいよ、本題に入っても。真剣な時の京ちゃんの表情はすぐわかる」
照「咲のこと…でしょ?」
京太郎「…」
照「そういうときの沈黙は肯定を表す。言いたいことはある程度わかるけど無理だから、ゴメンね」
京太郎「でも咲は照さんに会いたいって麻雀を再開して!」
照「やっぱり今傍にいる分、京ちゃんは咲派なんだ」
京太郎「そういうわけじゃ…」
照「言い方が酷かった。ゴメンね」
照「きっと京ちゃんのことだから、二人を中立的な立場から和解させたいのはわかる」
京太郎「なら…」
照「そのことは咲が私に勝たないと、お互い納得できない。道理が通ってないけど、姉妹喧嘩なんてこんなもの」
照「道理がないからこそ、解決策は単純。力を示せばいい、そこに綺麗な合理性はいらない」
京太郎「…それが団体戦での勝利でも?」
照「当然、白糸台を舐めないで。まあ、勝てたらの話だけど。だから京ちゃん、私達の仲直りの為に偵察頑張ってね」
京太郎「そういうことか…なら完膚なきまでに俺の偵察力をもって叩き潰すから待ってろ!」
照「うん、待ってる」ニコ…
淡「スミレー♪」ニヤニヤ
菫「な、何だ気持ち悪い」
淡「いやいやー、京太郎に惚れでもしたの?先生に立候補なんて柄にもないじゃん」
菫「いや、彼は私の狙い撃ちを完全に回避してきた、彼の先生役をやる内にその理由を見つけたい」
淡「ふぅ~む、なるほどなるほど~」
渋谷「…」ズズー
亦野「ああ、菫先輩にも今日の牌譜です、どうぞ」
菫「牌譜を見ても全くわからん…淡、何かこれを見て心当たりはないか?」
淡「まったくもって!」
菫「はぁ…答えは明日以降か…」
京太郎「朝かー、今日はAブロックの試合だったっけ…注目校はどこだっけ…」ユゥガッタメイル
京太郎「メール…って弘世さんか、えっと」
From 弘世 菫さん『昨日の夜の待ち合わせ場所に11時頃で大丈夫か?』
京太郎「『おはようございます、その時間で大丈夫です。本日はよろしくお願いします』送信っと」prrr
京太郎「もしもし?」
咲「おはよう、京ちゃん?朝からゴメンね?もし暇ならAブロックの試合見に行かないかな?」
京太郎「悪い、部長から野暮用頼まれてて行けそうにない、和達とでも行ってくれ」
咲「じゃあ和ちゃん達と見に行くね、京ちゃん。いつもご苦労様、ありがとう」ピッ
京太郎(いかなる理由であれ嘘は気が引けるな…まあ支度しないと)
菫「遅いぞ、どれだけ待たせる気だ、もう10時50分だろ」
京太郎「すみませんでした…」
菫「先に言っておくが私は基本的に15分前行動を心がけている、留意しておけ」
京太郎「はい…ところで」
菫「なんだ?」
京太郎「その服お似合いですね、大人って感じがして美人オーラが出て」
菫「そ、そういうのはやめてくれ…!自分が設定しておいて悪いが中途半端な時間だし指導は昼食を済ませてからでいいか?」
京太郎「大丈夫ですよ、何にしましょう?パスタにします?それとも…」
京太郎「えーと、何か不満でした?」
菫「正直に言うと、店を選ぶセンスがいい。こんなに落ち着けるカフェで不満になる訳がない」
京太郎「ありがとうございます、正直ホッとしました。弘世さんの好みに合うかどうか不安で…」
菫「割と合ってるから安心しろ…で」
京太郎「はい?」
菫「注文は決まったか?」
京太郎「じゃあ、ハムサンドと食後にホットで」
菫「っと、私はBLTサンドにしたいのだが後で一切れ交換しないか?どんなものか気になる」
京太郎「こちらこそ、喜んで。…店員さーん!」
店員「召し上がりましたら食後のコーヒーお持ちしますので、お知らせください。ごゆっくりどうぞ」
京太郎「じゃあ、頂きます」
菫「頂きます」
菫「ん、おいしい…」
京太郎「えっと、一切れ頂いていいですか?あまりに美味しそうなんで」
菫「あぁ、大丈夫だ。ほら、あーん」
京太郎「あーん…って、弘世さん!?」
菫「こ、これはだな照とか淡とかにあげる時の癖で、カ、カップルがやるようなあーんの意図はなくてだな…その…ちが…」
菫「…!ちょっと席を外す…」
京太郎「両方とも美味しかったですね、おいしいコーヒーもありますし、何か甘いものでも頼みません?」
菫「私は須賀くんと同じ奴でいい、さ、さっきの反省を生かしてだな」
京太郎「じゃあブラウニーでいいですか?」
菫「構わない」
店員「ではこちらブラウニーです、ごゆっくりどうぞ」
京太郎「ブラウニーも美味しかったですね」
ブブブブ
菫「ん?すまない電話みたいだ、ちょっと席を外す」
京太郎「はい、お構いなく」
菫『もしもし?』
淡『やっほー!スミレー!上手くやってるー?』
菫『淡か…』
菫『何の話をしているんだ』
淡『誤魔化さなくていいよ、通話時間もったいないし』
菫『わかった、須賀くんと一緒にいるのはお見通しと言う訳か、で、何の用だ?』
淡『さっきも言ったじゃん、へーじょうしんが大事だって』
菫『それだけか?』
淡『それだけだけと、へーじょうしんだよ!』
菫『…切るぞ』プッ
菫(むしろ平常心ってなんだ、普段意識しないから全くわからんぞ…)
菫(それでもさっき、恥をかいたのは平常心を失っていたというのも大いにありうる)
菫(平常心平常心平常心…ああゲシュタルト崩壊してきた)
菫「す、すまない、待たせた」ギクシャク
京太郎「大丈夫ですよ」
菫「そろそろ出ようか、指導する時間がなくなるしな」
京太郎「そうですね、じゃあ出ましょう」
菫「えっと会計は…」
京太郎「ああ、もう会計は済ませておきましたよ」
京太郎「今日の授業料ということで受け取ってください、むしろこうでもしないと俺が申し訳ないですよ」
菫「なんだ…その…ありがとう…」
京太郎「すごく今更ですがどこで指導をして貰えるんですか?」
菫「えっと…だな…その…ネットカフェでネトマを打ちながら添削しようとは思ってたんだが…」
菫「公共の空間ゆえ声を出しにくい…から…」
菫「わ、私の部屋でやるぞ!」
菫(平常心…平常心…)
京太郎「お邪魔します」
菫「パソコンの用意するから少し待っててくれ、とりあえずネトマを打ってもらって添削する、さっき言った形でいいか?」
京太郎「はい!よろしくお願いします!」
菫「そこでだ、私が隣からすぐ口出しできるように牌を切る時に理由などを可能な限り話しながら打ってくれ」
菫「集中が途切れるだろうが、時間も限られているしな…よし立ち上がった、ほれ」
京太郎「はい…その…マウスカーソル可愛いですね」カタカタ
菫「こ、こう見えて、ネコが好きだからいいだろ!…それはさておき指導を始めようか」
京太郎「テンパイ即リーワーイワーイ」
菫「トップだしリーチのみの手より手代わりでタンピン期待のダマでいくべきだろ…」
京太郎「そうですかね?」ロン!
京太郎「あー捲くられてる」
菫「あのなぁ…」
菫(どう見ても素人の中でも酷いレベルじゃないか…これは)
菫「一旦やめにして、牌譜を検討しよう、あと基礎的な理論も今叩き込む」
京太郎「はあ…」
菫「飲み物買ってくるからその間にそのサイトを…えーっとここだ、ここを全部読んでおく事」
京太郎「わかりました」
菫「須賀くんの分も適当に買ってくるけど何でもいい?」
京太郎「大丈夫です、ありがとうございます」
菫「じゃあ、少し行って来る」ガチャ
亦野「菫先輩、お疲れ様です。例の子はどうですか?」
菫「悪い意味で想像以上だったよ…」
亦野「それはご愁傷様です」ハハ
菫「他人事みたいに言うな、巻き込むぞ」
亦野「謝りますから冗談はやめて下さいよ、そうするとより不思議ですね」
菫「何が?」
亦野「彼が菫先輩に絶対に振り込まないことですよ、きっと彼がわかりやすいアナログの癖でも捉えたのですかね」
菫「私にそんな癖あったか?」
亦野「いえ、私にはわかりません。これはただの仮説ですし冗談程度に聞き流してください。では!」
菫(確かに須賀くんの昨日の牌譜と今日の打ち筋と大差はないし…誠子の仮説が正しいのか?)
菫(もしアナログ的な癖があるとしたら矯正しなければ…マズいだろうな)
菫(かといってそんなもの自分でわかる訳ないだろ、本人に直接聞くか…?)
菫(はぁ…こんな状態で大会に出て大丈夫か…)
菫「って、考えてたらかなり時間が経ってるじゃないか、お詫びになんか甘いものも買って…」
菫「急ぐか」
京太郎「…zzz」
菫「なんだ寝てるのか…ちゃんと最終章まで目は通したようだな」
菫「淡が昼寝していたときより幸せそうに寝てて、起こしにくい…」
菫「自分でもキャラじゃないと思うのだがな…冷房つけっぱなしだし風邪引かれても後味が悪いし、一般道徳としてだな…」ファサ
菫「って、私は誰に言い訳しているんだ…」
菫「やれやれ…」
菫「っと、本当に私の柄じゃないんだが…」カタカタ
京太郎「…zzz」
菫「アメを与えるのも大事だしな…」カタカタ
菫「かと言って、ムチを寄越すってほど厳しくするつもりはないがな…」ハッ
菫「独り言が過ぎたな、作業に集中しよう」カタカタ
菫「おはよう須賀くん、よく眠れたか?」
京太郎「えっ、俺まさか…」
菫「寝てたぞ、全力で」
京太郎「あ、あの…すみません」
菫「構わない、きっと疲れが溜まっていたのだろう、疲労した身体に指導は無意味、無理はせずちゃんと休め」
京太郎「はい…」
菫「だから気にするなと言っただろ、これ牌譜に対しての私のコメントだから参考程度に…」
京太郎「ありがとうございます!」ガシッ
菫「ひゃっ!てっ、手をいきなり握らないで!」
京太郎「ご、ごめんなさい、つい…」
菫「わ、わざとじゃないなら構わないから…さっきのネトマの牌譜を見ながら解説する、いい?」
京太郎「はい!」
京太郎「ありがとうございます…ってえぇっ!」
菫「ど、どうしたんだ?」アセアセ
京太郎「オランジーナは最近一番好きな飲み物なんですよ!」
菫「な、ならよかった、じゃあ始めるぞ」
京太郎「よろしくお願いします」
菫「じゃあ東二局のこの場面から…」
京太郎「あっ、なるほどなるほどなるほど~」
菫「解説は不慣れだけどわかって貰えた?」
京太郎「十二分ですよ!そこらへんのサイトより何倍もわかりやすかったですよ!」
菫「あ、ありがとう…」
京太郎「今までの事を踏まえてネトマでもう一局打ってみたいんですが、大丈夫ですか?」
菫「ああ、構わん、成長した証を少しくらい見せてくれよ、そうじゃないと、私が報われんからな」ニヤッ
京太郎「プレッシャーかけられると困りますよ…」
菫「お、マッチングしたか、今回は何も喋らずに君の自由に打ってくれ」
京太郎「はい、…この初手ならこう動くべきかなー」
菫(いや…これは…もしかして…)
菫「いや今回はトップのツモが良過ぎた、君の打ち方自体は悪くなかった」
京太郎「世辞でも嬉しいです、これも菫さんのご指導のおかげです!」
菫「少しでも上達してくれて私も嬉しいよ、指導した甲斐がある」
京太郎「そうでしょうか?」
菫「少しくらいは自信を持て、自信がない打ち筋はジリ貧になりやすいからな…」
菫「君に基本的な指導をすることで、私も初心に帰れた、例を言う」
京太郎「こ、こちらこそお礼をイワナ…」
菫「例なら実践で打った後に言ってくれ、じゃあ、行くぞ」
菫(わざわざ気にすることでもないし、むしろ…)
菫「流石に焼き鳥は勘弁してくれよ、教師役の私が何をしていたか疑われる」
京太郎「はい…!」
……
淡「やっほー!」
照「どうも…」
京太郎「俺の成長、見せ付けてやりますよ!」
淡「あんな大口叩いた割にトばれるとかえって反応に困るよー」
京太郎「…」
照「まあ…残念だけど予想通り」
菫(結局須賀くんからまたロンあがりできなかった…)ズーン
京太郎「今日はありがとうございます、勉強になりました」
淡「まあ、勉強されるべきな私達だしね」ドヤッ
菫「アホかお前は…」
京太郎「では失礼します、今日はありがとうございました!」
照「帰り道の案内いる?」
京太郎「二回目なんで、大丈夫です、お気遣いありがとうございます。では、失礼します!」
菫「ああ、またな」
淡「じゃーねー!おやすみー!」
照「気をつけて…」
京太郎「みなさんおやすみなさい!」ガチャッ
照「どうぞ」
淡「今更だけど照と京太郎ってどんな関係なの?元恋人だったり?」ワクワク
照「そんなことはない、ただの長野にいた時の旧友だ」
菫「ただの旧友にしてはやけに仲良くないか?」
照「私は友人が少ないから、数少ない友人を大事にするのは当然…」ドヤァ
菫「そのなんだ…すまないことを…」
淡「テルー、可哀想!私はいつまでもテルーと仲良しだよー!」ガシッ
照「あ、ありがとう淡…ちょっと…苦しいから…離して、あ、菫はその哀れむ目を止めて」
京太郎(菫さんのおかげで何か掴めた気がする)
京太郎(ああ、ここでこう打った理由が自分でもわかるな)
京太郎「少しは成果が出た…のかな」
咲「京ちゃん、ボーっとしてどうしたの、会場に行くよ」
京太郎「ああ、悪いな」
咲「私、一回戦から活躍するから見ててね!」
京太郎「おう、頑張ってこい」
京太郎(早く何か、Aブロック側の対策を立てないとな…)
京太郎(実際、対策する時間はかなり限られてる、時間を無駄にできない)
咲「出番がなかった…」
京太郎「ま、まあ落ち込むなよ。とりあえず一回戦突破おめでとう」
咲「ありがとう、でも早いうちに全国の舞台で打ってみたかったよ」
京太郎「まあ咲なら強ければ強い相手のほうが緊張せずに楽しんで打てるだろ?」
咲「もう、少年漫画の主人公みたいに言わないでよ…」
京太郎「二回戦の活躍楽しみにしてるから、頑張れよ」
咲「うん頑張る!」
…プルルル
菫「もしもし?」
京太郎「もしもし、弘世さん?どうかしましたか?」
菫「いや、清澄の一回戦突破のお祝いだ、おめでとう」
京太郎「はは…自分は全く力になってませんがね…」
菫「まあこれで私達Aブロックの対策がより必要になったわけだ、頑張れよ」
京太郎「はい」
菫「明日は白糸台の試合がある、試合を見て対策があるなら練ってみせろよ?」
京太郎「ど、努力します」
菫「せいぜい頑張れよ、じゃあな」
菫「どうかしたか?」
京太郎「ちゃんと明日は勝って下さいよ?俺が編み出した弘世さん対策が無駄になるので」
菫「え、私対策って具体的になんなん…」
京太郎「明日はお互い早いですし失礼しますーおやすみなさい」
菫「…切られたな。私対策がどうとうとか言ってたけど本当に具体的な策でもあるのか?」
菫「もういい、今度須賀くん本人に直接聞こう、明日さえどうにかすればいいんだ」
菫「で、今度っていつだ?…まぁいい、寝るか」
京太郎「今日は二回戦突破おめでとう、今までの礼をこめて差し入れもって来た!是非みなさんで」
照「ありがとう、甘いものは本当に助かる」
京太郎「そういえば今日は他のみなさんは?」
照「疲れたみたいで部屋で個別に休んでる、体調管理もレギュラーの仕事のうちだもの」
京太郎「じゃあ照さんも休まなくて大丈夫なの?」
照「大丈夫、私は先鋒だから。体力的には大丈夫」
京太郎「ならいいんだけど…」
照「じゃあせっかくだし120円で昔話、いいかな?」ニコッ
京太郎「それ普通は男が言うセリフじゃないかな…」
照「普通は、ね」
京太郎「あー悪かったよ、帰り道には気をつけさせて頂きますよー」
照「じゃあ、バイバイ」
京太郎「照さんも気をつけてー」
…
京太郎「弘世さんにはさっき直接祝おうと思ったけど、いなかったら仕方がない、メールでっと…」
京太郎「流石にこの時間はまずいか、明日の朝にでも送るか」
菫「…」
菫(…どう考えても祝辞の一つ寄越さないのは失礼だろ!世話になっておきながら!)ソワソワ
淡「すみれー、ほら、落ち着いてー。どーどーどー」
菫「おい、動物扱いするな」イラッ
淡「人間だって立派な動物だよ!つまり菫も動物!よーしよしよしよし」ワシャワシャ
菫「ちょっ…やめ…」
淡「イライラしても何も解決しないよ、もっと大雑把に行こうよ」
菫「なにを言って…」
淡「菫は真面目だから可愛がりようがあっていいよねーってこと」ワシャワシャ
菫「やめろって…あぁもう!」
菫「はぁ?今何時だと」
淡「菫は真面目だなぁ、もっと大雑把に行こうって言ったばっかりなのに」
prrr
京太郎『もしもし、弘世さん?』
淡『残念、淡ちゃんでした!』
京太郎『おう、淡か。とりあえず二回戦突破おめでとう、格好良かったぞ』
淡『でしょー、カッコいいでしょー。京太郎は見る目あるよ!』
京太郎『どーいたしまして、つーかなんで淡が弘世さんの携帯から?』
淡『やっぱり菫と話したいのー?しょうがないなー青春しちゃって!今電話代わるよー』
淡「はい、菫。どうぞ」
菫「えっ」
菫「わ、私が電話に出る必要もないだろ」
淡「京太郎を待たせたままにするほど菫は礼儀がないなんて、ガッカリだよ」
菫「いや…そうじゃなくて」
淡「いやいや、そうだよ。普段人に礼節を説く人間がすることとは思えないよ」
菫「あー、もう電話に出るから黙ってろよ!」
淡(菫は扱いやすくて可愛いなぁ!)
京太郎『もしもし、弘世さん。遅れましたが二回戦突破おめでとうございます』
菫『まあ当然の結果だが、ありがとう』
京太郎『…』
菫『…』
京太郎『今日は弘世さんもお疲れみたいですし、お祝いだけさせてもらって早めに失礼させていただきます。お休みなさい』
菫『ああ、お休み。そちらも頑張ってくれ』
京太郎『ありがとうございます、では』
ツーツーツー
淡「何この糖分が全くない会話は!やる気あるの!」
菫「会話にやる気ってなぁ、淡…」
菫「いや、ここ私の部屋だし」
淡「そうやってツッコミできるならなんで京太郎と会話のキャッチボールをしないのさ!」
菫「その…してだな」ボソボソ
淡「え?」
菫「緊張してたんだよ悪いか!私だって人間だぞ!」
淡「じゃあもう一回電話しようよ、諦めたらそこで試合終了って偉い人も言ってたしねー」prrr
菫「ちょっ、待て少しは猶予期間をだな…」
淡「はい」
菫「は?」
淡「もう繋がってるよ」
京太郎『構いませんよ、迷惑と思っていませんし』
菫『その…なんだ、迷惑じゃないならまた電話しても大丈夫か?大会中は心労が積もって仕方がない、愚痴でも聞いてくれ』
京太郎『今までのお礼もありますし、清澄の試合中じゃなければいつでも大丈夫ですよ。』
菫『ありがとう…またの機会に電話する、じゃあ本当にお休み』
京太郎『お休みなさい』
ツーツーツー
菫「ふぅ…これで満足したか、淡?」
菫「って、なんでこういうときだけ無駄に空気読んで席を外す…」
菫「お疲れ様。決勝進出、やったな」
照「当然のこと、むしろ決勝以外眼中にない…」
淡「というか私がいれば宇宙単位で敵なしだしね!」
…
菫「はいはい、そうだな。じゃあ帰るぞ」
淡「うー、ノリが悪いよー」
照「流石に凹む…」
照「やっほ」
菫「何しにきたんだ」
照「数少ない友人との交友を深めに」
菫「…そうか」
照「…流石の菫でも決勝の前は緊張してる?」
菫「そりゃするさ、私だって普通の女子高生だぞ」
照「面白いジョーク…」
菫「照の好みに合って良かったよ」イラッ
照「私は菫を信頼してる、だから緊張する必要はない。菫のミスくらい簡単に取り返せる」
照「だからそんな表情しないで」
照「…心外」
菫「悪かった、じゃあ明日は優勝しよう!」
照「もちろん」
--
prrr
照『やっほ、京ちゃん。私達に勝てそう?』
京太郎『正直余裕だよ、相性で8:2くらいかも』
照『それは楽しみ、ところで一つ質問いい?』
京太郎『?』
照『京ちゃんがやってた、菫対策、ヒントだけでも教えてくれる?純粋に興味がある、もちろん菫達には黙っておく』
京太郎『んー、恥ずかしいから、秘密で』
照『何それ…まあ大会終わったらちゃんと聞かせて。最後に一つ』
照『勝ってね』
京太郎『頼まれなくても』プツッ
久「正直驚いたわ、阿智賀一校だけでもこんなに綺麗な対策を示してくれるなんて」
京太郎「いえそれほどでも…」
久「やっぱり白糸台のはないの?あれば期待したいけれど」
京太郎「さすがに去年の優勝校は部長がきっとすでに対策立ててるかなーて、阿智賀に研究時間を注ぎました」ハハハ
久「そう…残念ね。でもこの濃度のデータなら一校でも十二分よ、ありがとう」
京太郎「白糸台に手をつけてなくてすいません…」
久「想像通り白糸台は対策を練ってあるから安心しなさい!」
久「…じゃあ、みんな!勝つよ!」
菫「…ゴホン」
菫「私達は勝って当たり前だ、今更何も言う必要はない」
菫「だが敢えて宣言する、皆の者、勝つぞ!!」
シーン
菫「えっ」
照「菫が昨日一時間くらいかけて考えたセリフなんだからみんな乗ってあげて…」
菫「そんな長く考えてもないし、お前も乗ってなかったじゃないか!」
照「まあ、場も和んだところで、頑張っていこう」
照「負けちゃったね…」
淡「み、みんなゴメンね…私が…私が…」
照「いいのいいの淡は悪くない…」ヨシヨシ
菫「それでも準優勝だから、恥じることはっ…」
照「菫も泣かないの、決勝で一番頑張ってたでしょ」
照(本当に負けるとは思ってなかったから驚嘆の感情のほうが強いなぁ…)
prrr
照『もしもし。ん、約束通り顔を出す。時間はまた連絡して』
照『あとさ』
照『ゲスト呼んでいい?』
京太郎「こんばんわ、照さん」
照「…」
京太郎「変な話だけど、ここで仲直りして欲しい、約束したよね?」
照「構わない」
咲「お姉ちゃん…」
照「咲…久しぶり、優勝おめでとう」
咲「お姉ちゃん!」ダキッ
京太郎「あれ?想像してたのよりスムーズすぎ…」
照「喧嘩こそしてたけど、仲自体は悪くないから…」ナデナデ
咲「…そうだよ、京ちゃんはどんなのを想像してたの?」
京太郎「まぁ…いいか」
照「ところで」
京太郎「いや、俺は白糸台についてはノータッチだよ、卑怯なことしたくないし」
咲「…?」
照「ゴメン、咲しばらく静かにしてて後で事情は話すから」
京太郎「というか、本当に俺じゃ対策は取れなかったってのが実情かな」
照「あれでも、菫は完全に京ちゃんが対策取れてたよね?」
京太郎「それは…えーっと」
京太郎「いや…菫さんって美人じゃないか…その」
京太郎「あんな可愛い人と対局したらさ、視線とかより敏感に感じるっしょ…」ゴニャゴニャ
照「本当にゴメンね、咲」ギュッ
照「京ちゃん、悪いけどグダグダ言わず簡潔に纏めて。私の意図を察して」
京太郎「…なら一目惚れして対局中も全神経が菫さんに向いてたからと言えば満足か」
照「うん、満足した」
照「だから咲、諦めようね?私も諦めるから」
咲「お、お姉ちゃん…!」
照「ゲストはお約束通り後ろにいるから、後は頑張ってね」ニッコリ
京太郎「…ごめんなさい」
菫「どれだけ塞ぎ込んでたかも語ると一日を越えるんだぞ…睡眠時間も減ったし…」
京太郎「…本当にすみませんでした…!」
菫「あーもう!だ、だからだな、怒ってはないから!」
菫「君から私になしかしら直接的な言葉とか、行動が欲しいんだ」
京太郎「じゃあお言葉に甘えて…」ダキッ
菫「ふぇっ?」
菫「で、な、何の真似だ」
京太郎「えっと…その…」
「付き合ってください」
カン
支援と保守をしてくれた人、今まで本当にありがとうございました。
菫さんは可愛い(確信)
Entry ⇒ 2012.10.21 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (3) | Trackbacks (0)
淡「女子高校生の日常」
『淡と誠子』
淡(――ああ、燦々と輝く太陽と、森に騒めく小鳥のさえずり)
淡(小川はせらせらと流れる。私は今そんな中――)
淡(……なぜ釣りをしているのでしょうか…)
ザパーンッ
誠子「20匹目~♪」チャポン
淡(私の隣で機嫌よさげに魚をバケツに入れているのは亦野誠子――二年生で、私の先輩になります)
淡(麻雀においては『白糸台のフィッシャー』などと言われています。実生活でも釣りが趣味だったようです)
淡(たまに部室に持ってくる釣竿やら釣りトークやらでもそれは確認できた気がしますが、単なるキャラ付けだと思っていました)
淡(そうです、この先輩が私をここに連れてきたのです)
淡(それもこれも3日前――)
~~
誠子「なあ淡」
淡「ん~?なに?」
誠子「今度の祝日、部活休みじゃないか」
淡「うん」
誠子「予定ある?」
淡「いや、特に。家でのんびりしようかな~って」
誠子「折角休みなんだからさ、遊ばないか?」
淡「え……セーコと?」
誠子「ああ。いいところ連れて行ってやるから」
淡「!」
~~
淡(何が『いいところ連れて行ってやるから』だよ、全く!)
淡(こんなんだったら家でゴロゴロしてたほうがマシだったよ!)
淡(朝っぱら起こされて長い間電車に揺られ、連れてこられたのが山の中っておかしくないかな!)
淡(勘違いして一番可愛いワンピースとか来てきた私がバカみたいじゃん!)
誠子「よっと」ザパーンッ
淡(しかも何でアンタは制服なんだよ!)
淡(でも聞いたら、『制服が一番動きやすいから』とか言いそうで怖いよ!)
淡(というかいつも思ってたけどその着こなしなんなの!理解できないよ!)
淡(でもこれは心の中に留めておく、だって私は従順な後輩なのだから)フフン
誠子「どうした淡……。一匹も釣れてないのにしたり顔とかして」
淡「な、なんでもない!」
誠子「っていうか反応してるじゃないか!ほら、速く!」
淡「えっこれって釣れてるの!?」
淡「てやっ!!」ザパーンッ
誠子「……残念、逃げられたな」
淡「む~~悔しい……」
誠子「これは一から教えたほうがいいかもな」グイッ
誠子「ほら、こんな手応えがあったときは~~」ギュッ
淡「……ねえセーコ」
誠子「うん?」
淡「胸、全然無いね」
誠子「運動に邪魔になるから要らん」キリッ
淡(だよねー)
淡(結局セーコがバケツいっぱいに釣って、お昼に一緒に食べました)
淡(おいしかったけど、これからはセーコの誘いには応じないようにしようと思いました)
『淡と尭深』
淡(祝日も終わり、久しぶりの学校です)
淡(授業はいつも通り退屈ですが気にしません)
淡(正直なトコロ、私は学校に麻雀をしに来ているようなものです)
淡(更にぶっちゃけると麻雀で推薦とかもらい放題でウハウハなので勉強なんてしなくていいのです)
淡(ということで学校生活での長い長い前座が終わり、ようやく本番がきました)
淡「こんにちはーっ!!」バンッ
淡「ってあれ?私が一番乗りか」
淡「まぁいーや。卓の準備でもしとこっ」フフン
淡「電源オンっと。よーし完璧」
淡「おやつあるかなー?」
淡(白糸台高校の麻雀部室は2部屋に別れています)
淡(うぞーむぞーがよってたかっている練習部屋、そしてこの一軍部屋です)
淡(一軍部屋はなぜかマンションの部屋みたいな感じで広々としていますが、入れるのはチーム虎姫の5人だけです)
淡(中身はソファ、机と椅子、小型の冷蔵庫や給湯器もあったりします。マンションというよりホテルの一室)
淡(まぁそんなことですからみんな好き勝手にやっています。麻雀も一日に1、2回しか打ちません)
淡(そんな部屋に一年生で入れる私はやはり天才なんだなーっていつも思っています)フフン
淡(ま、そんなフリーダムな部屋なのでテルがよくお菓子を隠しています)
淡(スミレやセーコが自分の武器を持ち込んで磨いていたりするのもよく目撃します)
淡(あ、スミレはたまに弓道部に赴いて指導もしているらしいです。ホント大変だと思います)
淡(スミレは部長でもあるので、雑居部屋に行って指導することもあるようです)
淡(私はそんな事もないので、いつもホームルームが終われば一軍部室へと直行です)
淡(今日は私が一番乗りでした。一年生が私一人というのを考えると、そう珍しいことではありません)
淡(それに、一番乗りだとテルの隠しているお菓子を勝手に開けるというイタズラができます)
淡(テルも自分のお菓子を他人に分けないなんて頭の固い人間じゃないけど、先に開けとくと反応が可愛いんです)
淡(だからやめられないっ!今日もいつもの戸棚の中に入れているはず!)
ガチャッ
淡「!!」
尭深「……あ、淡ちゃん。おはよ」
淡「お、おはよーございますっ!」ペコッ
尭深「どうしたの、珍しいね……」ドサッ
淡(この方は渋谷尭深、二年生で私の先輩にあたります)
淡(メガネをかけてて、物静かな人です。よくお茶を携帯しています)
淡「せ、セーコは一緒じゃないの?」
尭深「うん。誠子のクラスは先生のお話が長いから……」
淡「へー…」
尭深「………」
淡「どうしたのタカミー?」
尭深「淡ちゃん、また宮永先輩のおやつ探してたの?」
淡「!!何でバレたの……」
尭深「棚の戸に少しだけだけど隙間ができてる……」
淡(そんなの気づくかよ!?って思うけど、気づいちゃうんです。タカミなら)
淡(それというのも戸棚に一番触っているのはタカミなのです。何故なら――)
尭深「あんまり悪戯すると宮永先輩怒っちゃうよ?もう……」
淡「え、えへへ……」
尭深「お茶でも淹れるね」カチャッ
淡(そうです、戸棚の中にはタカミのお茶コレクションが詰まっているのです)
淡(これでも家のコレクションに比べると少ないらしいですが……。こんなにあって飲みきれるのかなといつも思っています)
尭深「」コポコポ
淡(お茶を淹れているタカミを見ているとなぜか癒されます)
淡(この学校に茶道部があれば麻雀部と兼業していたかもしれません)
淡(一度でもいいから和服に身を包んだタカミを見たいものです)
尭深「はい、どうぞ」
淡(タカミは時たまお茶と一緒にお菓子も出してくれます)
淡(テルのお菓子を盗み食いしたあとだったりするときつかったりするのですが……今日はそんなこともありませんでした)
淡「ありがとー」ズズ
尭深「おいしい?」
淡「うん、とっても」
淡(実はお茶のおいしさなんてあまり分からないのですが、報いるためにいつも『おいしい』と言っています)
淡(たまにめちゃくちゃ苦いお茶を出してきたりすることもあり、大変です)
尭深「………」ズズ
淡(ま、そういうことで、用が終わるとタカミはまた物静かな少女に戻ってしまいます)
淡(しかしそんな時間も悪くはありません。私もぼーっとお茶を楽しんでいます)
淡「ねえタカミー」
淡(しかし、ふと今日は疑問があったのでそれを聞いてみることにしました)
尭深「なに?」
淡「セーコの『フィッシャー』とかスミレの『シャープシューター』とかって周りが言い出したことじゃん」
尭深「うん」
淡「……タカミの『ハーベストタイム』って誰が命名したの?」
尭深「わたしだけど……?」
淡「そ、そう……」
淡(案外人って分からないものなんだな、と痛感する私でした)
『淡と菫』
ガチャッ
淡「……今日も私一人かぁ」
淡「おやつおやつっと~~」
菫「残念だったな」
淡「!いつから!」
菫「お前と同時だ」
淡(この背の高いお方は先程述べた弘世菫先輩です)
淡(三年生で、麻雀部の部長)
淡(しかしこれが固い性格で――)
菫「淡、久々に二人きりだ。話がある」
淡(これで三度目。内容はわかりきっていますが……)
菫「お前さ、先輩に対してため口を聞くのは百歩譲ってよしとしよう」
菫「だけど、照のおやつを黙って食べるのはどうかと思う。さすがにそれは年長を舐めすぎだ」
淡(……と、これが日常)
淡(スミレはいつも私にお説教して、まるで先生かお母さんみたいです)
淡(楽しい麻雀部の中のただ一つの懸念になっているのがスミレなのです)
淡(もちろん、スミレが嫌いだとか苦手だとか、そういうことはあり得ません。敬愛すべき先輩だから)
淡(だけどテルにくっついたりするとやたらとお説教を貰います)
淡(他にもテルのことについては過敏です。やはり麻雀部のエースだから気がかりなのでしょうか)
淡(そんなこんなで、私とスミレは端から見てもあまり相性が良いようには見えていないらしいです)
菫「…………わかったか?」
淡「………」
菫「返事は?」
淡「え?」
菫「……お前まさか全部聞き流してたんじゃ…」
淡「え、いや!はい!聞いてました!」
菫「………」ジト
淡(こういう目をしたスミレは100%私を疑っています)
淡(まぁ今のは私が悪いんだけど……)
菫「ま、これから気を付けるように。わかったな」
淡「アイアイサー!」ビシッ
菫「………」
淡(……もう一つありました。菫には冗談が通じないのです)
淡(要は頭が固いのです。実直で真面目と言えば聞こえは良いのでしょうが)
淡「そ、それにしても誰も来ないね~」
菫「ああ、そうだな」
淡「将棋でもしよっか」
菫「終わる前に誰か来るだろう」
淡「むぅ……」
淡(正直なトコロ、スミレはテルよりとりつく島がありません)
淡(脚を組んで仏頂面をしているスミレを見て、私の中で反撃したい気持ちが昂ってきました)
淡「ねえ、スミレ」
菫「何だ?」
淡「私、これからテルにイタズラするのやめる」
菫「当然だ。さっき約束しただろう」
淡(少しは誉められるかと期待していましたが無駄でした)
淡(……私が話を聞いていなかった所為でもありますが)
淡「でもさ、テルにイタズラできなくなったらストレスが発散できなくなるの」
菫「お前にストレスなんてあるのか?」
淡「私にもあるよ~ストレスくらい」
淡「学校なんて部活くらいしか楽しくないし」
菫「確かにお前同学年の友達いないな」
淡(何という憎まれ口を叩くのでしょう)
淡(……事実だけど)
菫「それで?何が言いたい?」
淡「……代わりに、スミレにイタズラしてもいい?」
菫「は?」
淡「スミレはお菓子とか持ち込まないから、物理的なイタズラはできなくなるけど」
菫「悪戯って……どういう?」
淡「先に言ったらイタズラじゃない!」
菫「む……まあ確かにな」
淡(菫は頭が固いという割には人の意見はちゃんと聞きいれます)
淡(要は理屈に固められた人……ってことですね)
菫「私へ悪戯するようになれば、照にはしないんだな?」
淡「うん」
菫「……なら好きにしろ」
淡(本当にテル思いの部長です。何か特別な想いを抱いているのではと勘違いしそうな程に)
淡「じゃ、まず」ゴロン
菫「っ?!」
淡「まずは膝枕」
菫「悪戯って、召使いにすることじゃないぞ」
淡「大丈夫、そこは解ってるから」
淡「スミレの太もも気持ちいーねー♪」ゴロゴロ
菫「うっ……」ゾクッ
菫「こ、こら淡。大人しくしろ」
菫「それにスカートの上からなんだから太ももの感触なんて分かったもんじゃないだろ」
淡「そんなことないよ、スミレも私が脚の上でゴロゴロしたのちゃんと感じたでしょ?」
菫「う……。そ、その通りだが」
淡(顔を上げて見てみると、そこには俯いたスミレの顔が)
淡「」ジーッ
菫「そ、そんなにじろじろ見るな……」フイッ
淡「スミレ、変な声出たね」
菫「膝枕やめるぞ」
淡「大人しくしまーす」ゴロン
淡(実を言うと、私の方も少しドギマギしていました)
淡(変に高いスミレの声と、明らかに赤らんでる頬を見て気分がおかしくなったのでしょうか)
淡(そんなわけで顔を横向きに倒して、スミレの顔が視界に入らないようにしたのでした)
菫「……なあ、淡」
淡「何ですか?」
淡(スミレのその声は、さっきの変な声よりは幾分か元には戻っていました)
淡(ですがやはり本調子ではなく。逆に中途半端で、私に不安感を募らせました)
淡(しかし、スミレが次に発した言葉は完全に予想を裏切るものでした――)
菫「私のこと、嫌な先輩だと思ってるか?」
淡「え?」
淡(それは私がスミレから初めて聞く『自分』についての問いでした)
淡(そういえば聞いたことがなかった。スミレと言えばお説教とお小言でした)
淡(でもそれは全て私に対する注文であり、スミレが自分自身を語るなんてことは無かったのです)
淡「……嫌だなんて思ったことは、一度もないよ」
菫「そうか……」
淡(『嫌な先輩か?』などと聞いておきながら、今までのことに対する謝罪などはありませんでした)
淡(でも、それは当然です。スミレは部長で、自分の行うことに責任を持たなくてはいけない立場だから)
淡(自分について自信が持てなくなっても――自分のしたことに自信があれば、それを覆すような真似はしてはいけないから)
淡「私は先輩のこと……立派だと思います」
淡(それは、自然に口から出た敬語でした)
菫「……ありがとう」
淡(そう言って、スミレは私の頭を撫でてくれました)
ガチャッ
照「ごめん、遅れた」
菫「待ちくたびれたぞ……」
淡「やっぱり将棋でもしてた方がよかったじゃん」
淡(そんな憎まれ口を叩いた私に対して、スミレは苦み混じりの笑みで答えてくれました)
淡(私は思いました、この先輩のために――全国の頂点に立ちたいと)
『女子高校生と将棋』
淡(前も言った通り一軍部屋はいろいろやっているので、麻雀以外のことにぼっとーすることがあります)
照「」パチッ
堯深「3五桂打」
淡「」パチッ
堯深「2一飛打」
照「リーチ」パチッ
堯深「2三桂成」
菫「………」
淡「うーん……」
誠子「大星零段、持ち時間の25分が経ちましたので、これから持ち時間3分です」
淡「チー」パチッ
堯深「同金」
菫「………」イラッ
照「リーチ」パチッ
堯深「同桂成」
菫「だあああああーーーーっっ!!!!!」ダイパンッ
照「」ビクッ
淡「!?どうしたのスミレ!」
菫「お前ら!!王手をリーチって言うのやめろ!!」
菫「あと何だよチーって!!食っただけじゃねーか!!」
照「職業病で」
菫「意味ちげーよ!!」
淡「」パチッ
菫「何事もなかったかのように再開するな!」
照「ダイレクトアタック!」パチッ
菫「麻雀ですらねーよ!」
淡「ぐ……うわぁぁあっ!!」バタッ
菫「何で倒れるんだよ」
堯深「大星零段の魂が奪われてしまった為、宮永零段の勝ちです」
菫「魂!?」
誠子「次回、『淡、死す』。デュエル、スタンバイ!」
淡「ところがどっこい、生き返るんだよねこれが!」
宮永「バカな……!このリーチでお前の王は完全に詰んだハズ……!」
淡「私はここに布石を置いていた!トラップ発動!『実は居た角』!」バシィィィィッッ!!!
堯深「同角」
菫「うるせーよ!!もうやめろ!!」
菫「何悪乗りしてんだお前ら!!」
淡「はぁ~あ、折角いいところだったのに」
照「ねー」
堯深「はい」
誠子「ですよ」
菫「え、何……これ私が悪いのか……?」
淡「一言でいうならっ!K!Y!」ビシッ
菫「!!」ガーンッ
菫「そ、そうだったのか……」ガクッ
照「ま、将棋ばっかりやってる訳にはいかないから……」スクッ
菫(!やっと麻雀を……)
照「」タン
淡「甘いよ~!カン!」タン タン タン タン
菫「オセロしながらカンとか言うな!!」
堯深(チーム虎姫は今日も平和でした)
『女子高校生と決め台詞』
照「」タンッ
堯深「」タンッ
誠子「チー」タンッ
淡「」タンッ
菫(よしよし、今日はみんな真面目に麻雀してくれてるな)
誠子「ポン」タンッ
菫(これで三副露……そろそろ来るか)
堯深「」タンッ
誠子「……深淵に潜む主」スッ
菫(えっ?)
誠子「足掻いても無駄だ、このフィッシャーから逃れる術は無し――」
誠子「ツモ!3000・6000っ!」
菫(ええぇぇぇっ!!!?)
淡「うわードラ3つ抱えてるとかあ」ジャラッ
照「親っかぶり……」ジャラッ
菫(え、ちょ!?何でみんな無反応なの!?)
堯深「」ジャラッ
菫(ま、また変なことやってるのかこいつら……)
~南二局~
堯深「」タンッ
淡「ふふっ、甘いねタカミ」
堯深「え……っ!?」
淡「ロン!!《宙に揺らめく夢幻の星》……と書いてメンチンイッツー!16000!」
菫(そらにゆらめくむげんのほし……!?)
堯深「うっ……!」ガクッ
菫(何でリアルダメージ入ってんだよ!)
照「淡零段……まだそんな奥の手を隠していたのか……!」
誠子「馬鹿な……ここにきて……っ!」
菫「おい待て!ストップ!」
淡「なに?」
菫「なに?じゃねーよ!さっきから何言ってるんだお前ら!」
淡「?真面目に麻雀してるよ?」
菫「してねーだろ!」
照「菫、もしかして知らない?」
菫「な、何を……」
照「自分の必殺技にね、名前をつけるの。そうした方が愛着が湧くしその熟練も早くなるって言うよ」
菫「は……?」
照「ま、そんなことで。私たちはいたって真面目に麻雀してる」
菫「あ、ああ……そう、なのか」
菫(確かに……さっきの誠子は三副露してから一巡でツモっていた)
菫(ほ、本当なのかな……?)
~南三局~
照「」ガシッ!!
淡「来るか……あの技が!」
誠子「何ていう風圧……!」
菫(なんだこれ)
照「受けてみろ――《約束された勝利の天地解離す開闢の剣》!!」バシィッ!!
照「300・500!」
誠子「くっ……!」
淡「ふん……猪口才な!そんな安手で我が進撃を防げるか!」
照「……止めてみせる!さぁオーラスだ!」
淡「ふっ……この親でうぬら纏めて飛ばしてくれるわぁ!!」
照「っ……!望むところだ!」
菫(いや違うだろこれは)
~オーラス~
菫(オーラス、堯深の能力か)
菫(……堯深も変な台詞叫ぶのか?まさか…)
淡「」タンッ
堯深「ポン」タンッ
照「ポン」タンッ
堯深「ん――」スッ
菫「」ゴクッ
堯深「――収穫の時は来たれり」
菫(やっぱ言うのかよ!!)
堯深「燦々と輝く陽を受けし、豊穣の化身たちよ」
菫(なげーよ!!)
堯深「私の元へ集いなさい!ツモ!」
堯深「大三元。8000・16000です!」パラッ
淡「う、うわー!!」
照「ま、眩しい……!」
誠子「最後の最後に……!ぐあ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」
菫(誠子の演技上手いな)
堯深「世に再び安寧は齎され、大地には光が降り注ぐでしょう……私の逆転トップです」
淡「うー負けたかぁ」
照「私が最下位……」
堯深「珍しいですね」
照「連チャン狙いに行ったら堯深が怖いなぁって思って点数稼げなかった」
誠子「確かに和了が窮屈そうでしたね」
菫(何お前ら普通に感想言い合ってるの!?)
照「さて、次は菫がここね」スクッ
菫「あ、ああ……」ストン
~東一局~
菫(張った……)
菫(こっちの待ちなら誠子から溢れそうだな)タンッ
堯深「」タンッ
菫(……私も言わなくちゃならないのかな)
菫(た、確かにあの理屈は一理ありそうだし……)
菫(け、決して言いたいとかじゃないからな!うん)
誠子「」タンッ
菫「――暗闇を切り裂く一閃」
菫「ロン!シャープシューティング、8000!」
照「ぷっ」
菫「え」
淡「ぷっ……くくっあははははっ!!」バタバタ
照「~~~!!」バタバタ
菫「ちょ」
誠子「~~~っ!!」プルプル
堯深「……ふっ……ふふっ……っ!!」プルプル
菫「」
淡「や、やめて……お腹っ……痛い……」パタパタ
淡「テル、録れたー?」
照「も、もう~~バッチリ……!ふ、ふふっ……くくっ……」
菫「お、前らぁ~~っ!!」プルプル
菫「全ッッ員!!そこになおれぇーー!!」
淡(その後レコーダーは弓道場の的に設置され、13射目に菫の手で破壊されたとさ)
『女子高校生と写真撮影』
菫「みな聞いてくれ」
淡「はーい」
堯深「」コトッ
誠子「」ピタッ
照「」モグモグ
菫「今度新聞部が私たちの特集を組みたいそうだ」
淡「へえーお目が高いね」
菫「それでチーム虎姫の一人一人の写真を撮りたいと言ってきている」
誠子「いつですか?」
菫「……それが、今日なんだ」
照「今日?」
菫「すまん、すっかり言うのを忘れてた」
菫「16:30くらいに来るらしいから……」
淡「はーい」
菫「じゃ、まだ野暮用があるので行ってくる」ガチャッ
バタンッ
照「………」スクッ
淡「テルー?」
照「」ビシッ
誠子「………」
淡「なに……してるの?テル」
照「ポーズの確認」
照「うーん……こっちの方が可愛いかな」ビシッ
誠子「前の雑誌みたいな感じでよくないですか?キラッ☆みたいな」
照「あれか」キラッ☆
照「でもまたこれ?って思われたらどうしよう」
誠子「あー確かに……」
誠子「じゃあ、このソファ使ってこういうのは……」
誠子「ここに三角座りして、膝におでこつけながら横を向くっていう」
照「雑誌とかでよく見るポーズ?」
誠子「そうですそうです」
淡「テルもセーコも雑誌とか見るの!?」
照「どんな感じの笑顔がいいかな」
誠子「少し妖しげな感じで。普段みたいに笑いすぎるのはアウトです」
淡「なんでスルーされたの……」
堯深「」スクッ
淡「あれ?タカミどっか行くの?」
堯深「……トイレ」
照「」フッ
照「さっきみたいな感じで?」
誠子「完璧です。モデルになれますよ」
照「そ、そうかな……」テレテレ
淡「休日でも制服系女子のくせに何を偉そうに……」
誠子「何か言ったか?淡」ギロッ
淡「なんでもないですー」
照「さて、私のポージングは決まり」
誠子「じゃ、私のも見てください。私はかっこいい系でお願いします」
照「それならリーチ棒をこう構えて……」
淡(意外にもあの二人は話が合うのでした)
誠子「じゃ、これでいいですかね」ビシッ
照「うん。完璧」
淡「」ウズウズ
照「さて、堯深も戻ってきてることだし麻雀を……」
淡「えぇーーっ!!?」
照「?どうしたの」
淡「私はスルーなの?!」
照「……考えてほしいの?」
淡「ほしいよ!私だけ棒立ちって嫌じゃん!」
誠子「そうだったのか」
照「淡はどんな感じがいい?」
淡「やっぱりねぇ、不思議というか神秘系がいいね!」ムフー
誠子「却下」
淡「なんで!?」
照「普通の可愛い系にしよう」
誠子「だったら先輩のアレでよくないですか?キラッ☆で」
淡「更にまたスルーするの!?」
淡「というか扱いがぞんざいじゃない?!テルのお下がりって!」
照「……イヤなの?」
淡「え」
誠子「せ、先輩……あまり気を落とさないで……」
照「でも……ッ、可愛がってた後輩が急に反抗期になって……」
淡「私、テルの子供なの!?」
誠子「あーあー泣ーかしたー泣ーかしたー」
淡「なんなの!?小学生なの!?」
淡「っていうか別にイヤじゃないよ!扱いがぞんざいじゃないかって思っただけで!」
照「そう?」ケロッ
淡「泣いてないじゃん!!」
誠子「え、騙されたのかお前」
淡「いや別に信じてないよ?!」
淡「ぜーぜー……」
堯深(淡ちゃんが突っ込み役なんて相当な非常事態ね……明日は雪かなぁ)
堯深「ほら淡ちゃん。お茶」
淡「ありがとタカミー、突っ込みすぎて喉枯れちゃった」ズズ
コンコン
新聞部「あのー、これから撮影よろしいですかー?」
照「どうぞ」
淡(みんなが撮り終わった後にスミレが合流し、無事に撮影は終了したのであった)
~一週間後~
淡「みんなー!部誌発行されてたよー!」
誠子「どれどれ?」
菫「……って、あぁ!?」
淡「あははー菫だけ棒立ちで証明写真みたい!」ケラケラ
菫「う、うるさい!っていうかなんでお前らポーズとか決めてるんだよ!」
菫「道理で撮影の時に不思議がられたわけだ!」
菫「……っておい、堯深」
堯深「!」
菫「……こ、これって何だ?どこの魔法少女だ?」
堯深「え……」
誠子「ひ、弘世先輩!そんな言い方っ……」
照「堯深」ポンッ
堯深「……え」
照「……若い頃には、色々やりたくなるものだよね。わかるよ」
照「でも、その後に振り替えって赤面するような事も……一つの経験になる」
照「あまり、深く考えないないようにね」
堯深「えぇぇーーー!!!?」
淡(そうしてタカミーの心には深い傷跡が残っちゃったとさ)
『女子高校生と盗み食い』
照「………」
淡「………」
淡「あ、あの~」
照「」ギロッ
淡「ひっ」
淡「………」
淡(ダメだ……完全に人殺しモードに入っちゃってるよ……)
照「今私のこと人殺し、とか思わなかった」
淡「ふきゅっ!?」
照「ふんっ」フイッ
淡「うぅ……」
淡「い、いいじゃん……プリン一つくらい……」
照「く・ら・い……!?」ゴゴゴゴゴ
淡「ひぃぃっ!?」
照「言っとくけど!あのプリンは産地直送の最高級プリン!何のために私が雀荘に赴いたと思ってるの!」
淡「雀荘行ったの!?」
照「背に腹は変えられないから」
淡(……そうです、今日テルにイタズラしてやろうと思って食べてしまったプリン)
淡(五人分あったから大丈夫と思ったのですが、その中の一つが最高級プリンだったようで……)
淡「そ、そんなに大切な物なら部の冷蔵庫になんて入れなきゃ良かったんじゃ……」
照「」ギュルルルルルルル
淡「ひぇぇっ!?ごめんなさい!反省してますから!」
照「賠償金、反省文100ページ、一週間部室の掃除、肩揉み、家の手伝い、奴隷……」
淡「そ、そんなぁ……」ナミダメ
ガチャッ
菫「お……何だこの空気は」
照「菫聞いて。淡が私の最高級プリンを泥棒猫のように盗み食いしたの」ビシッ
菫「ははあ。最高級をピンポイントに食べてしまったということか?」
淡「はい……」
菫「淡はこれに懲りて盗み食いなんてしないことだな」
淡「はい……」
菫「照、許してやれ。淡が敬語使ってるなんて相当参ってるってことだぞ」
照「」ギュルルルルルルルルル
菫「おう、悪は断じて許すな」
淡「ええ!?」
ガチャッ
誠子「こんにちはー……ってなんか物騒な空気ですね」
照「誠子聞いて。淡が私の最高級プリンを泥棒鼠のように盗み食いしたの」ビシッ
淡「泥棒鼠!?」
誠子「ははあ。最高級をピンポイントに食べてしまったということですか?」
照「うん」
淡「みんな理解力半端ないね!?」
誠子「ん……でもいつも被害に会ってるのに書き置きもせずに冷蔵庫にほっといたのは……」
照「」ギュルルルルルルルルル
誠子「淡、今回ばかりは年貢の納め時だな」ポン
淡「なんなの!?恐怖政治!?」
ガチャッ
堯深「こんにちは……ってなんか物々しい雰囲気ですね」
淡「みんなすごくない!?何で空気とか読めるの!?風使いなの!?」
菫「お前が読めなさすぎるんだ」
淡「え!?少なくともスミレには言われたくない!」
照「堯深聞いて。淡が私の最高級プリンを火事泥棒のように盗み食いしたの」ビシッ
淡「その例えはおかしくない!?」
淡「っていうかそれはもういいですって!」
堯深「ははあ……。最高級プリンをピンポイントに」
淡「もういいよ!どんだけ国語力あるのみんな!」
堯深「淡ちゃん、反省してる?」
淡「う、うん……。もうこんなことしません」
堯深「って言ってることですし宮」
照「」ギュルルルルルルルル
堯深「やっぱり許せないですね。食べ物の恨みはちゃんと骨身に染み込ませないと」
淡(だよねー)
堯深「でも丁度よかった。親戚から最高級プリンが送られてきてたんです」
淡「!!」
照「そ、それは本当……?」
堯深「はい。それに、五人分あるんです。独り占めするより、みんなで美味しくいただきましょう」
淡「タカミー…!」ウルウル
堯深「だから宮永先輩。淡ちゃんを許してあげてください。反省してることですし」
誠子「私からもお願いします」
菫「部長命令だ」
淡(何を都合のいいことを……)
照「……しょうがないな」
照「今回のことは笑って水に流そう」
淡「ありがとうございますっ!」ドゲザッ
淡「で、そのプリンはどこに~?」ワクワク
菫「……反省しろよ?」
淡「す、するする!じゃなくて……します!」
堯深「昨日から冷蔵庫の上段に……。昨日は他にお菓子あったから出さなかったんだけど」
淡「え?冷蔵庫の上段……?」
堯深「これこれ。……あれ、何か軽い?」
淡「」
堯深「」パカッ
堯深「な、無いっ!?」
誠子「まさか……」
照「淡っ!!」バッ
菫「もういないぞ!!」
誠子「追いましょう!」
堯深「あわいちゃんーーっ!!」ダダダッ
淡「ごめんなさい~~っ!!あまりにもおいしかったからぁ!!」
照「今度ばかりは……許さないっ!!」ダダダッ
淡(イタズラで済まないこともある。逃げ惑いながらそう心に刻む女子高校生の日常でした)
おわれ
今日も白糸台は平和ですね
これは良いあわあわ
Entry ⇒ 2012.10.21 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
竜華「怜、今日もエロゲをするで!!」 怜「ファンディスクや!」
http://ssweaver.com/blog-entry-1836.html
洋榎「エロゲしてる所を絹に見られてしもた……」
http://ssweaver.com/blog-entry-1845.html
菫「エロゲしてる所を宥に見られた……」
http://ssweaver.com/blog-entry-1848.html
今回は、怜「うちがエロゲしてる所を竜華に見られてしもた……」のアフターストーリーです。
又、今回より怜の一人称をうち→私に変更。
(ご指摘感謝です)
怜「お、ノートPCやん、どしたんそれ」
竜華「ふふ、実は新たに買うてしもうたんよ」
竜華「これでいつどこでも寝ながらでもエロゲが出来るで!!」
怜(エロゲの為にノートPCを買うとか竜華もようやるわ……)
竜華「ついでにこれも買うたんよ!」
怜「お、”戦国ヒサ”やないか!!」
竜華「せや、怜がオススメするからうちもやろかなーて思うて」
竜華「という訳で、早速怜ン家でやろ!怜、色々教えてな!」
怜「ええで、私はこう見えて30周近くプレイした廃人プレイヤーや」
竜華「インストールは済んどるから、早速やろか!」
怜「あ、ちょいまち、もう一人呼んどるから」
竜華「もう一人?」
セーラ「怜ー、きたでー」ガチャ
竜華「え……セーラ!?」
セーラ「な……っ、なんで竜華がここにおるんっ!?」///
怜「竜華が来るっちゅーから、セーラも呼んだだけやけど」
竜華「えっ、だって今日は”戦国ヒサ”をやるんじゃ……」
セーラ「俺も怜に”戦国ヒサ”やるから来いって……」
竜華「えっ?」
セーラ「え?」
セーラ「お、おう……せやで」
竜華「ちょ、なにそれ!セーラって、エロゲーやってたんか!?」
セーラ「やってたっちゅーか、やりはじめたっちゅーか……」
竜華「ど、どーゆーことやねん!」
怜「それは私から説明しよか」
竜華「怜!」
怜「……そうやな」
怜「あれは今から36万……いや、一週間前やったか――」
………
……
…
『ひゃあっ!ら、だめっ!お姉ちゃんっ……!もううちイッてまうの!!』
『ええでっ……!イってやっ……!一緒にイこやっ……!うちもイくでっ!!』
竜華「―――…‥へぁっ?」ビクビクッ
セーラ「」
竜華「」
セーラ「……りゅ、竜華……何しとん……」
竜華「セ、セーラ……こ、これはっ……ちゃうんやっ」
セーラ「……っ」
セーラ「す、すまん……!ごゆっくりぃ!!」ドタドタッ
竜華「ちょ、セーラ!!」
竜華「ア、アカン……」
竜華「エロゲしとる所をセーラに見られてしもた……」
竜華(しかも一人エッチしとる時に……最悪や……人生終わった……)
セーラ(りゅ、竜華の奴……っ、一体な、何をしてんのや……!)
セーラ(あ、あれって……その、あれやろっ!!そ、そのっ)
セーラ(……~~~~!!!)///
セーラ「と、とにかく!怜のトコに行こ!!」
タッタッタッタッ
ガチャ
セーラ「と、怜ー!!竜華が、竜華がーっ!!」
『ひゃっ……あっ……しろっ……!もっとっ…!もっときてっ……!』
『ふっ……!はっ……はっ……胡桃っ……イくよっ……!なかに……っ!』
怜「あ」
セーラ「」
怜「」
怜「え、これか?エロゲーやけど」」
セーラ「え、エロゲイ……?」
怜「えっちなゲームや」
セーラ「……い、いや、見れば大体わかるけど、おかしいやろ……」
怜「おかしい?なにが?」
セーラ「なんで怜がそんなゲームしとるんや」
怜「そりゃ好きやからに決まっとるやろ」
セーラ「い、いやいや……やっぱおかしいて」
セーラ「いくら好きゆーても、俺らがするもんとちゃうやろ……」
怜「別に年齢的には問題あらへんよ?」
セーラ「そういう問題とちゃうねん……!あーもー!!」
セーラ「とにかくや!!そーゆーのやったらアカンの!!」
怜「……は?」
怜「ちゅーか、なんでセーラにそないな事言われなアカンの?」
怜「何を持ってしてアカンのかそれをまず言えや」
セーラ「と、怜……?」
怜「別に私がエロゲーしとったトコで何も悪うないやろ」
怜「それともなんや、女の子がエロゲーしたらアカンっちゅーのか?」
セーラ「そ、そらアカンやろ…‥そーゆーのて、普通大人の男がやるもんやろ……」
怜「エロゲーは大人の男がやるもんて誰が決めたんやボケェ!!」
怜「年齢条件を満たした女がやったらアカンのか?アカンくないやろ!!」
怜「アカンのはお前の単細胞な脳みその方やないのか!!」
怜「は?喧嘩?ちゃうやろ、私が言うとるんは全部事実やないか!」
怜「何かおかしい事言うたか?私がエロゲしたらアカン事あるか?言うてみぃやタコォ!!!」
セーラ「そ、それは……っ」
セーラ(あ、アカン……怜めっちゃブチ切れとる……こんなん初めて見たわ……)
怜「言えんやろ!?言えへんよな!?そらそうやろな!!」
怜「エロゲの事を何も知らん奴がエロゲの何を知っとるっちゅーんや!!」
怜「見た目が子供に見えるから規制やと?アフォか!!」
怜「エロゲをやった事も無い連中が何勝手にホザいとるんや!!」
怜「やった事もない連中に批判される覚えは無いんじゃボケェ!!」
怜「……」ハァ...ハァ...
怜「……セーラ、そこ座れ」
セーラ「は?」
怜「ええから!!」
セーラ「お、おう……」ドサッ
怜「……」ゴソゴソッ
怜「……よし、これでええやろ」カチッ ゥィーン
セーラ「怜、何しとん……?」
怜「今からセーラにはエロゲしてもらうで」
怜「セーラは勘違いしとるんとちゃう?エロゲはただえっちするだけのゲームやと」
セーラ「……ちゃうんか?」
怜「ちゃう、全然ちゃう。柴犬と秋田犬くらいちゃうわ」
セーラ(秋田犬とか見た事ねーから分からんわ……)
怜「エロゲっちゅーんはな、人々に夢と希望と青春と感動を与えてくれる、人類が生み出した最高の文化やねん」
怜「エロゲを知らん奴は人生損しとる。なんて言わへんけど、知らずに批判するよりはやった方がマシや」
セーラ「……?よ、よく分からんけど、とりあえずやればええん?」
怜「せや、マウスを動かしてクリックで決定やから」カチカチッ
セーラ「……”阿知賀女子、ドラゴンの少女”? これどーゆーゲームなん?」
怜「麻雀部を作る為に、主人公の高鴨 穏乃が部員を集めて大会に出る話や」
セーラ「話?」
怜「エロゲっちゅーんは、基本読み物なんや。一人称のドラマみたいなもんや」
怜「ま、とにかく進めてみ」
『――あんた馬鹿ぁ?部を作るには5人必要なのよ?それに私はやらないから』
『えぇー!!なんでだよー!やろうよ麻雀!!』
『ごめん、私もう麻雀は辞めたから……じゃ』
セーラ「……」カチッ
セーラ「……麻雀の競技人口が増えても、麻雀部の無い学校やとやってる人少ないて聞くもんなー」カチッ
セーラ「穏乃は苦労しそやー」カチッ
『――私、やるよ!麻雀!一緒に頑張って作ろう、麻雀部!!』
『っ……玄さん!』
セーラ「おー!ようやく1人目が入ったなー!」カチッ
セーラ「でもまだ残り4人、先は長いでぇ」カチッ
………
……
…
『強豪校に勝つ為に全ての力を注いだ。決勝まで体力が持たなかったのはしょうがない』
『で、でも!憧が個人戦優勝だよ!すごいよ!』
『そうね……おめでとう、憧ちゃん』
『あ……あり……がとっ /// ポッ』
セーラ「……っ」カチッ
セーラ(ええはなしやなーー!!!)ポロポロ
セーラ(結果、勝てはせぇへんかったけど……バラバラだった皆の絆がここに来てようやく一つになったんや……)
セーラ(めっちゃ泣けるで……っ)ゴシゴシ
セーラ「……っ!?」ハッ
怜「……」ニヤニヤ
セーラ「」
……
…
怜「その後、不覚にも感動してしまったセーラはエロゲにハマってしもたんや」
竜華「……セーラ」
セーラ「……なんや、何も言わんでええ」
竜華「セーラもエロゲで泣けるくらいの乙女なんやなぁ」
セーラ「う、うっさいわボケェ!!」///
セーラ「ま、まあ!そゆわけで、今じゃ俺も竜華たちの仲間なんや!」
怜「まぁまぁ、今日は”戦国ヒサ”をやりに来たんやろ?」
竜華「せやったせやった、さっさと始めよ」
セーラ「おう」
竜華「なんや、いきなり対戦?になったで。これどーするん?」
怜「一対一の麻雀対決や、今選択してるキャラで敵キャラを選んで戦うんや」
竜華「こうかっ、おお、相手を倒したで!」
セーラ「なんか数字が1500から1200に減ったで」
怜「点棒やな、まぁヒットポイントみたいなものや。0になったらそのキャラは二度と使えへん」
怜「基本的には点棒の数が多ければ多いほど有利やけど、お互い相性があるから注意や」
竜華「なるほどなー、で、これからどうしたらええん?」
怜「最初のうちは部員を増やすのがええけど、まぁ好きなように選んでもええと思うよ」
怜「重要イベントはターンが進めばに起きるからな」
セーラ「そーなんか」
……
…
竜華「はぁーっ、結構進んだなぁー……ちょっと休憩しよか」
セーラ「せやなー、しかし面白いな”戦国ヒサ”」
怜「せやろ、天下の”アコスソフト”やからな」
竜華「怜は”アコスソフト”が好きやねー」
怜「当たり前やろ、今も昔も私は”アコス”がエロゲ界トップやと思っとるわ」
セーラ「俺は最初にやった奴もなかなか良かったと思うけどな」
怜「あれもええ作品なんよな、さすが”ゆうねぇそふとつぅ”や」
怜「ただ、”阿知賀女子、ドラゴンの少女”は前作があまりにも良すぎて、影に隠れてしもただけや」
セーラ「前作なんかあったんか?」
怜「直接の続編っちゅー訳ではないんやけど、”車輪の国、嶺上の少女”って奴が一応前作なんよ」
竜華「あ、それうちが初めて買ったやつやな」
怜「せや」
セーラ「そうなんか、興味出てきたわー今度買うてみよ」
怜「ん?なにが?」
セーラ「こっちの棚にあるやつ、全部エロゲやろ?ぎょーさんあるやないか」
怜「まぁな、ここまで買い集めるのに結構苦労したで」
セーラ「ちょっと見てもええ?」
怜「ええよ」
セーラ「ほー……色々あるなぁ、この”牌を/ステナイト”ってどんなゲームなん?」
怜「7人の雀士がそれぞれ一人のパートナーと契約して、麻雀で戦わせるゲームや」
セーラ「へー、じゃあこの”シンドウジの羊”っちゅーんは?」
怜「主人公の江崎 仁美が、親友の安河内 美子を巻き込んで政治デモ活動をする話やな」
セーラ「政治デモをするゲームとか斬新すぎやろ」
怜「主人公の福路 美穂子が、麻雀部に入部していきなりキャプテンになっちゃう物語」
怜「そんでもってこれが”絶対★妹嶺上開花!!”、史上最強の妹を持った姉が苦労する毎日を送る話や」
竜華「ホント怜はすごいで……まるで野生のエロゲショップや」
セーラ「だよなー」
怜「まだまだ、私より沢山持っとる人は他にもいるで、こんなの序の口や」
セーラ「この”穏乃アフター~It's a Mountain Life~”っちゅーんは?」
怜「元は”CLONNAD-クロナド-”っちゅー別のゲームのキャラクターなんやけど、作者があまりにも好きすぎて外伝作品が出たんや」
怜「”CLONNAD-クロナド-”はエロゲやないけど、ゲーム・アニメと共に評価されとる作品やからオススメやで」
セーラ「へー、アニメ化もしとるんか」
竜華「うちはあまり”アコス”のゲームはやらんけど、名前だけは知っとるわ」
竜華「”超昂天使スミレイヤー”……”LEGENDアイランド”……”闘牌都市Ⅲ”……”咲が来る!”……」
怜「個人的には”LEGENDアイランド”が好きやったな」
怜「女の子魔物使い”小瀬川 白望”が、呪いをかけられた女の子モンスターを救う為に”レジェンゴ”と戦うやつなんやけど」
怜「この女の子モンスターっちゅーのが、すごい可愛くてな」
竜華「ホンマか、それはちょっと見て見たいわー」
竜華「こっち”咏しぼり”ってのはなんなん?」
怜「お見合い相手の”三尋木 咏”と監視役でやってきた”針生 えり”と同棲するゲームや」
竜華「この咏ちゃんて子かわええなぁ」
怜「その子24歳やで」
竜華「なんや……24か……」
竜華「”Hisa-女を求めて-”……”HisaⅡ-清澄の少女たち-”……”HisaⅢ-龍門渕陥落-”……古いシリーズも全部揃ってるやないか」
竜華「この”ヒサ・クエスト ダブルリーチ”ってのは新作やな」
怜「せやな、”ヒサ・クエスト”の追加アペンドやけど、これとダブリーを含めて完成品と言われとる」
竜華「ヒサシリーズはうちもシリーズ通してやってみたいわー」
怜「世界観とか設定を見始めると、よりハマるで」
竜華「ホンマか、今度見てみるわー!」
怜「せやね、んじゃそろそろ”戦国ヒサ”再開しよか」
セーラ「おう」
……
…
『――へぇ、貴方なかなか可愛いのね。もし良かったら私達に手を貸してくれないかしら』
『私で良かったらちょーお手伝いするよー!』
『ありがとう。でもその前に一つだけして欲しい事があるの……』ニタァ
セーラ「……っ!?」
竜「……」ポチッ
怜「え、ちょ、竜華なにCtrl押してん」
竜華「えっ、いや、そのっ、なんちゅーか、皆でエロシーンをわざわざ見んでも……」
怜「アホか!エロシーンを見ないで何を見ろっちゅーねん!」
セーラ「エロシーンをダチと囲んで見るとか、どこの男子中学生やねん……」
怜「とにかくスキップ禁止や、エロシーンもちゃんと見な製作者に失礼やろ」
竜華「ちゃんと見ろって言われてもなぁ……」
『んぁっ……んはぁっ……!ひあぁ!ちょぉ……ちょぉー気持ちいいいよっ!』
『そろそろ出すわよぉっ……!!っとぉ――――――!!」ビュビュビューーーッ
竜華「……」モジモジ
竜華「……」チラッ
セーラ「……」///
怜「……」
竜華「……」クチュ
竜華「ちょ、ちょっとうちトイレ行ってくるわ……!」
怜「おーいてらー」
セーラ「……」///
セーラ「お、おなっ!?」///
怜「めっちゃソワソワしとったもんなー、ありゃ間違いないで」
怜「つか、人ン家のトイレでオナるってどういう神経しとんや竜華は……」
セーラ「……」///
「―――…‥へぁっ?」ビクビクッ
セーラ(ア、アカン……竜華が……してる所を思い出してしもて……!)///
セーラ「……っ~~~!!」///
怜「ん?どなんしたんセーラ」
セーラ「……あ、あのなっ」
セーラ「怜も……その、一人でえっちな事とか……するん?」///
怜「ん?なんやそんな事かいな、まぁ稀にやけど」
セーラ「や、やっぱ怜もするんか……」///
怜「……」
怜「なんやセーラ、セーラだってした事ぐらいはあるやろ?」
セーラ「え、ええっ!?お、俺は……っその……っ」///
セーラ「……あ、あのなっ」
セーラ「怜も……その、一人でえっちな事とか……するん?」///
怜「ん?なんやそんな事かいな、まぁ稀にやけど」
セーラ「や、やっぱ怜もするんか……」///
怜「……」
怜「なんやセーラ、セーラだってした事ぐらいはあるやろ?」
セーラ「え、ええっ!?お、俺は……っその……っ」///
セーラ「なっ……!お、俺はっ……」///
セーラ「べ、別にっやった事無くてもええやろ!!」///
怜「……え?ホンマに?今までエロゲやってきたやろ?」
怜「エロシーンの時とかどないしてたんよ」
セーラ「そ、それは……っ……そのっ……目ェ瞑ってスキップしてた……」///
怜「うわ、ホンマかいな……」
怜(まさかセーラがオナった事も無いなんて……どんだけ初心やったんよ)
怜「じゃあ、一緒にしてみる?」
セーラ「ファッ!?」ガタンッ
怜「いや、そんなに驚かんでも」
セーラ「お、おおっ、驚くわボケェ!!いきなり何言うとんの!!」///
怜「セーラが興味有り気にしてたから」
セーラ「せ、せやからって!!なんで一緒にする事になるんや!!」///
怜「ん?アカンの?」
セーラ「アカンやろ!!」
怜「なんや、つまらん」
セーラ「な、なんでもないで!!」///
怜「おかえり」
竜華「……?まぁええけど、この後どないしよっか」
セーラ「……う、うち!もう帰るわっ!」
竜華「え?まぁ確かに真っ暗な時間やけど……」
セーラ「あっ明日も学校があるやろ、竜華もはよ帰った方がええで」
竜華「んーまぁそうやなぁ、今日はここまでにしとこかなー」
竜華「それじゃあ怜、うちとセーラ帰るで」
怜「わかった、また明日やな」
竜華「またなー怜ー」
セーラ「お、おう、またなっ……!」
竜華「……」
セーラ「……」
竜華「なぁセーラ」
セーラ「なっ、なんや!?」
竜華「?どしたんセーラ、さっきからおかしいで」
セーラ「な、なんでもないで!!」///
竜華「んー?そう?それならええねんけど」
竜華「それより早よ帰るで!さっさと帰って続きをやるんや!」
セーラ「お、おう……!」
怜「……」
怜「んー、二人が帰ってしもたのはまぁ別にええけど……」
怜「何しよ」
怜「エロゲしてもええけど、なんかこう物足りないんよな……」
怜(グルチャに誰かおるかな)カチカチッ
――ス○イプのとあるグループチャット――
――とあるネット掲示板で知り合った数人の猛者達が――
――互いに集い語り合う 淑女達のグループチャットである――
トキ:おるかーー?
巫女みこカスミン:えっ?
トキ:よーし、おるな!
ひろぽん:ここやで (トントンッ
ピカリン: 西 濃 は 神
かじゅ:お前らもよく飽きないな
ひろぽん:重大な用事なんやろな?
トキ:いや、別になにもないけど
ひろぽん:ないんかーい!
トキ:つい暇だったもんで、めんごめんご
かじゅ:なんだ、暇だからこそエロゲをすればいいんじゃないのか
トキ:んー、なんかエロゲって気分でもないんよなー
ひろぽん:なんやそれ
巫女みこカスミン:あーありますよねぇ
巫女みこカスミン:私もそういう気分じゃない時は姫様の寝顔写真を整理したりしてます
ひろぽん:あんたは何しとんのや……
ピカリン:わかる。私も咲の写真をよく眺めてはペロペロ舐め回してる
ひろぽん:おまわりさん、こいつです
かじゅ:私は勉強をするか本を読むかだな
ひろぽん:うわ、真面目やな
かじゅ:受験生なんだ、察してくれ
トキ:ひろぽんは?こういう時どないするん?
ひろぽん:ん?そやなぁーうちは息抜きにネトマをやるぐらいやな
トキ:ネトマかぁ、うちやった事あらへんわ
ひろぽん:興味があるんやったら教えるで?
トキ:そのうちな、今はええわ
トキ:そいや、すみれを見かけないんやけど……というか、グルチャから抜けてるやんけ
ピカリン:トキはあの時いなかったから、知らないのも仕方ない
トキ:?何があったん?
かじゅ:彼女自らが、ここを抜けると言ったんだよ
巫女みこカスミン:私もその場には居なかったのですが、一体何があったのですか?
ひろぽん:すみれに恋人がおるのは知っとるやろ
トキ:言っとったな、恋人が泊りに来るゆーてたけど
かじゅ:ああ、予定の1日早く泊まりに来たんだそうだ
トキ:1日早く?なんでや
かじゅ:いや、詳しい事は私も分からないが
かじゅ:エロゲよりも大事にしたいものがある
かじゅ:だから、エロゲとは一切関係を絶って恋人と幸せになるんだそうだ
ひろぽん:うちらがこの前言ってた奴な、後で見たらしくて
ひろぽん:それで決心したんやとさ
トキ:そうやったんか……
トキ:……ちょっと残念やけど、それですみれが幸せになるんやったらええんちゃうの
巫女みこカスミン:そうですね、恋人と幸せになるのが一番だと思います
かじゅ:私としてもその通りなのだが、これ以上ツッコミ役が減るのは正直勘弁してもらいたい……
ひろぽん:減ったんは一人だけやろ
トキ:いや、そーなんやけど
トキ:メンバーは結構いるのに、見かけたことの無い人とか多すぎやろ
巫女みこカスミン:私、”舞Hime”さんって人と一度も喋った事ないです
ひろぽん:あー、舞は遅い時間に時々見かけるな 深夜2時とかそのへん
トキ:うちも一度見かけただけで、それ以降全く見てないわ……
ピカリン:私も”牛乳”って人を見たことない
かじゅ:私も”蓋”って人を見たことがないな
巫女みこカスミン:みなさん忙しいんでしょうか……
トキ:時期が時期だけにしゃーないんとちゃう?
かじゅ:そうだな、私もこれからは受験勉強に時間を取られそうだから、あまりここには来れなくなる
ひろぽん:うちもええ加減進路とか決めなアカンなー
かじゅ:まだ決まってないのか……
怜「そっか……なんだかんだ、みんな先の事を考えとるんやな」
怜(私はどないしようかな)
怜(適当に行ける所の大学に行って、フツーに生活するんも有りやけど……)
怜(なんかそれやと物足りないんよなぁ……)
怜「……」
怜「ま、とりあえずエロゲでもしよ」
………
……
…
セーラ「おはよーさん、怜ー竜華ー」
竜華「おはよー」
怜「おはよう」
セーラ「って、竜華……目の隈がすごいで?」
竜華「あはは……徹夜でやりこんでしもてな……」
怜「気持ちはわかるけど、程々にせな……」
竜華「授業中に沢山寝て、帰ったら沢山出来るよーにしとかんとなぁ」
セーラ「いやいや、授業は受けなアカンやろ!?」
竜華「よしゃ!!帰るで!!怜、セーラ!!」
セーラ「うわ、めっちゃ元気になっとる」
怜「竜華の奴ホントに寝とったからなぁ……授業中……」
セーラ「ちゃんと授業は聞いとかなアカンでー、俺ら受験生なんやから」
竜華「ええよ別に、うち怜と同じ大学に行くんやから」
セーラ「え、そうなん?怜」
怜「いや知らんけど」
竜華「そんなぁ~!とーきー!」
セーラ「面白い?さあーどーなんやろーなー」
竜華「うちは怜と一緒ならなんでも楽しいで!」
怜「んー、なんちゅーか、フツーに大学生活過ごしても面白くなさそーな気ぃがしてなぁ」
セーラ「怜は大学生活でやりたい事とか無いんか?」
怜「やりたい事……なんやろ」
竜華「何言うとん、エロゲがあるやろー」
怜「いやまぁエロゲもせやけど……そうやなぁ、エロゲかぁ……」
怜「……」
怜「……エロゲを作ってみたいな」
怜「……えっ、あ、いやっ、今のはなんちゅーか……」
怜「な、なんでもないんやっ、ハハハッ……」
竜華「……怜、エロゲ作りたいん?」
怜「い、いや……まぁ、せやな……興味はある……かな」
怜「で、でも私はモノとか作った事ないし……まず無理やろな」
セーラ「……」
セーラ「……ええやん」
怜「えっ?」
セーラ「作ろやないか」
セーラ「俺らで作るんや、エロゲーを」
竜華「……うん、せやな」
竜華「怜、うちらでエロゲを作ろうや!」
怜「絵は誰が描くねん、シナリオは?プログラムは?音楽は!?」
セーラ「んー、まーなんとかなるやろ」
怜「いやいや……なんとかなるっちゅーもんでもないやろ……」
竜華「でも怜、エロゲ作りたいんやろ?」
怜「そ、そらまぁ……出来るなら作ってみたいとは思うけど」
竜華「なら作ろうや!」
怜「せやから無理やろ、私らにはなんの技術もないで?」
セーラ「そんなもん、今から猛勉強して覚えればええねん」
竜華「せや、大事なのはやる気と根性やで!」
怜「せ、せやろか……」
セーラ「せやろ!」
竜華「怜、作ろうや!エロゲを!」
竜華「自分が出来ない事は他の人を頼ればええ」
竜華「大事なのは自分がやりたいかどうかやねん!」
怜「……私はっ」
怜「私は……エロゲが作りたい」
怜「竜華やセーラ達と一緒に、エロゲが作りたい!」
怜「もっともっと、エロゲと関わって行きたいんや!」
セーラ「……ああ!」
セーラ「作ろうや!一緒に!」
竜華「……うん、作るんや!うちらのエロゲーを!」
――正直なトコ 先行きは不安だらけやけど――
――不思議な事に 竜華達とならなんだって出来る気がする――
――竜華達といること これが私にとっての人生なのかもしれへん――
怜「――始めよか、私達の作品を」
怜編 END
Entry ⇒ 2012.10.20 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
菫「エロゲしてる所を宥に見られた……」
http://ssweaver.com/blog-entry-1836.html
洋榎「エロゲしてる所を絹に見られてしもた……」
http://ssweaver.com/blog-entry-1845.html
前作の続きという訳ではありませんが、
前作から話は繋がっているので、前作も読んだうえ見て頂けると楽しめるかと思います。
菫「有が泊まりに来るまであと1日……」
菫「なんとかエロゲの山は押入れに隠す事が出来たが……油断は出来ない」
菫(万が一ここを開けられたら、宥に引かれるどころか私の人生はおしまいだ……)
菫「……」
菫「……しばらくエロゲも自重しておくか」
菫(とはいえ、宥が来るのは明日だ……)
菫(今日ぐらいはやっても平気だよな……?)
菫「……」
菫「よし、”松実屋温泉記”の続きを進めておくか……」
『おまかせあれっ!』
菫(”松実屋温泉記”……このゲームは奈良にある温泉旅館の経営をする温泉旅館経営シミュレーションゲームだ)
菫(やはりというか、”ソフトハウスダヴァン”のゲームは面白い)
菫(中には”アコスソフト”や”ヤエシュリー”の方が面白いという奴もいるそうだが……)
菫(経営や育成シミュレーションゲームを多く発売してくれるこのブランドの方が私には合っている)
菫「……」
菫「しかし……なかなか売上が伸びないな……」
菫「やはり多少の経費を覚悟して宣伝をもっとした方がいいのだろうか……」
菫「いや……それとも施設の増設をして売上アップを狙った方が……」
ピンポーン
菫(もう22時だぞ?外は真っ暗だって言うのに、一体誰だ)
菫(宅配を頼んだ覚えもないし、宗教や勧誘もこんな時間に来るとは思えないが……)
ピンポーン
菫「あ、ああ!今出る!」
ガチャ
菫「はい、どちらさまで……」
宥「こんばんわ……菫ちゃん」
菫「ゆ、宥っ!?」
宥「うんっ、そのはずだったんだけどね……」
宥「……菫ちゃんに早く会いたくて……来ちゃったっ……」///
菫「宥……」
菫(私に早く会いたくて……来ちゃった……だと……?)
菫(そ、それってつまり……あ、あれだよな……)ゴクリ
宥「……?菫ちゃん……?」
菫「あ、ああ、すまない、とりあえず上がってくれ」
宥「うんっ」
宥「ううん、大丈夫だよ」
宥「でも菫ちゃん……一人暮らしをしてるなんてすごいね」
菫「ああ……大学が始まってから一人暮らしをするようでは慌てるだろうから」
菫「早いうちに一人暮らしに慣れておけってね、親に言われてしまった」
宥「ふふっ、そうなんだ」
菫「……」///
菫「と、とりあえず布団を敷こう、な!」
宥「うん」
菫「ふぅ……宥はどっちで寝る?」
宥「えっ……私は布団でいいよ……?お客様だし……」
菫「いや、そういう訳にも行かん。わざわざ遠くから来て疲れてるだろう、ベッドで寝た方がいい」
宥「でもっ……」
菫「……じゃあ、こうしよう」
菫「しばらくの間、交互に使おう。今日は宥が、明日は私が。それでいいか?」
宥「……うん、わかった。…………あれ?」
菫「……?どうした?」
宥「菫ちゃん……パソコンで何かしてたの?」
菫「パソ……?……ッ!!?」
菫(しまった、ゲームを放置したままだった……!!)
菫「あ、ああ……!これは、その、温泉旅館の経営ゲームをな!やっていたんだ、うん」アセアセ
菫(嘘は言ってないぞ、うん、嘘は言ってない)
宥「温泉旅館の経営……」
菫「ま、まさか宥が今日来るとは思わなかったからっ……!ついさっきまでやっていたんだっ」
菫「ははッ、宥が来たからにはこんなものをやっている場合じゃないけどな!」
菫(さっさとセーブして閉じてしまおう)カチッ
宥「……菫ちゃん」
菫「ん?どうした?」カチッ
宥「……私もそのゲーム、やってみたいなっ」
菫「ファッ!?」
菫「このゲームは、宥がやるようなゲームでも無いと言うかっ」
菫「宥がやっても、全然おもしろくないんじゃないかなーって……ハハ……ハ」アセアセ
宥「……」
宥「菫ちゃん……私ね」
宥「実家の旅館を継ぐためにね……良い大学に入って経営学を学ぶ為に、東京の大学を見に来たの……」※設定を変更しました
宥「だから……少しでも旅館の経営に関わる事なら何でもしてみたいの……」
菫「……」
菫「し、しかしだな……」
宥「……」
宥「だめ……?」ウルッ
菫「うっ……」
菫(か、可愛いい……)///
菫(……だが、ここは何としてでも阻止せねばならない!!)
宥「え、えっと……こうかな」
菫「ああ」
菫(結局押し切られてしまった……)
菫(しかし、まだ慌てるような時間じゃあない)
菫(一番簡単なモードを選んだんだ、少なくともエロシーンは当分やってこない)
菫(要はエロシーンさえ見られなければいいんだ)
菫(序盤は小さなイベントと経営ばかりひたすら続く)
菫(そのうち飽きるか、寝る時間が来るかのどちらかだろう……)
菫(問題は無いはずだ……!)
菫「……」
宥「……えっと」
菫「ん?ああ……これはここをこうしてだな……」
宥「ありがと……」
宥「……私ね、ゲームとかは全然しないんだけど……」
宥「こういうゲームも、面白いんだね」
宥(可愛い女の子ばっかり出てくるのが不思議だけど……)
菫「……」
菫「ああ……そうだな」
菫(宥が思ってるようなゲームでは無いんだがな……)
菫(いや、見たことあるような……確かこのランダムイベントって…………っ!!!?)
菫「ゆ、宥!ちょっと待ったっ!!」
宥「えっ?」カチッ
『っやぁっ……だっ……だめだよ巴ちゃん……っ!』
『姫様っ……!はぁっ……はぁっ……!もっと激しくしますね……!!』
『んっ……!ふあぁっ……んっんっ……んっ!ひゃうぅ……!』
宥「」
菫「」
宥「な……なに……これ」
宥(裸の女の子が抱き合ってる……?)
宥(ううん……抱き合ってるだけじゃない……よね)
宥(……こ、これって……玄ちゃんが言ってた……えっちなげーむ……だよねっ……)///
宥「……」///
菫「そ、その……こ、これは……だな」
菫「……えと……はは……」
菫(見られてしまった……もうおしまいだ……)
菫「……」
菫「と……とりあえず、ゲームは止めにしようか……」
宥「……」
宥「……うん」コクッ
菫「……」カチカチッ
菫(さて……どうしたものか……)
菫「ゆ、宥……えっと……」
宥「……」
宥「さ、さっきのって……」
菫「え……?」
宥「さっきのって……その……えっちなげーむ……だよね……」
宥「……」
菫「……」
菫(おしまいだ……これは完全に引かれたに違いない……)
菫(よく考えたら……恋人持ちでエロゲーをやっている方がおかしいんだ……)
菫(私はやってはいけない事をやっていた……)
菫(その過ちが今、罪となって私に降りかかってきた……)
菫(なるべくしてなった……のかもしれないな)
宥「……」
宥「……菫ちゃん……」
菫「……」
菫(……全部話してしまおう……)
菫(それで許して貰えるとは思えないが……せめてもの償いに……)
菫「私は……こういうゲーム、その……エッチなゲームが大好きなんだ……」
菫「……はは」
菫「引いたか……?」
菫「学校ではシャープシューターや菫お姉様などと呼ばれ、誰にでもクールに振舞っていた私が……」
菫「家に帰ればエッチなゲームを楽しむ、ただのオタクだ……」
菫「宥という可愛い恋人が居るにも関わらずだ」
菫「……我ながら、実に最低な人間だ」
宥「……」
菫「こんな私に、宥みたいな恋人が居る事自体が」
菫「私はエロゲーマー、世間の影でひっそりと生活する日陰者だ」
菫「決して表立って生活する事は出来ない、醜き存在だ」
宥「菫ちゃん……」
菫「……」
菫「……宥」
――私たち……別れよう――
菫「……自分の恋人がエロゲーをやっているなんて知れたら、きっと宥まで変な目で見られてしまう」
菫「私が何を言われようと構わない……だが」
菫「宥にはそんな目に遭って欲しくない」
宥「……で、でもっ、見ちゃったのは私だけだし……」
宥「他の誰にも言わないよ……?」
菫「たとえ宥が黙っていてくれたとしても、今回見られてしまったのは事実だ」
菫「今後いつボロを出して、バレるか……」
宥「……」
菫「……わかってくれ、宥」
宥「……」
宥「……ぃ……だっ」
菫「……え?」
宥「菫ちゃんとせっかく恋人になれたのにっ……」
宥「なんでそんな事で……別れなきゃっ……」
菫「宥……」
宥「……私はっ、別れたくない……!」
宥「菫ちゃんのことがっ……好きだから」
菫「……」
宥「……菫ちゃんは……どうなの?」
菫「えっ……?」
宥「菫ちゃんは……本当に別れたいの……?」
菫「……」
菫「……そんなわけ……ないだろう!!」
菫「当たり前じゃないか……!こんなにも宥の事が好きで好きで!」
菫「宥の事を考えるだけでも胸がはち切れそうなのに……!」
菫「何故こんなにも苦しい思いをしなければならないっ!!」
菫「宥の事は好きだ……でもそれじゃあダメなんだ!!」
菫「これ以上は……宥を傷つけてしまうんだ……」
菫「他に……」
菫「他に……どうしろって言うんだ……」
ダキッ
菫「……っ、宥……?」
宥「……大丈夫だよ」
宥「悪口とか……言われ慣れてるから……」
菫「宥……っ」
宥「それにね……菫ちゃんだけにそんな辛い思いをさせたくないよ……」
菫「で、でもっ……!それだと宥が……!!」
宥「菫ちゃん」
菫「っ……」
宥「菫ちゃんは……私に何かあった時は、守ってくれる?」
菫「……っ……!ああ……!当たり前だろ……っ!」
宥「じゃあ、菫ちゃんに何かあった時は私が菫ちゃんを守ってあげる」
菫「……ッ……ゆ……うぅ……っ!」
宥「……ね?」
菫「…………――――っ!!」
『う……あああああ……――――!!!』
…
宥「……落ち着いた?」
菫「……っ」コクン
宥「そっか……」
菫「……宥」
菫「私は、エロゲーが大好きな女なんだ……」
菫「周りにどう思われようと別にいいが……宥だけには嫌われたくないんだ……」
菫「宥は気持ち悪いとか思わないのか……?」
菫「こんな、エロゲーが好きな私を……」
宥「……」
宥「さ、最初は……びっくりしたけど」
宥「菫ちゃんが……その、えっちなゲームをしていても……私は何とも思わないよ」
宥「私が好きになったのは……菫ちゃんだから」
宥「えっちなゲームもやっている菫ちゃんを含めて、菫ちゃんだから」
菫「……宥」
菫「……?」キョトン
宥「あっ……」
宥(か、顔が近い……ど、どうしよう)///
宥(そ、そういえば抱きしめたままだったよぉ……)///
宥(……あっ……菫ちゃん……睫毛長いなぁ……)
宥(本当に美人さんなんだぁっ……)
菫「……」
菫(ど、どうしよう……顔が近い……っ)///
菫(まだ目が腫れていて……恥ずかしいっ……)///
菫(……しかしこうして間近で見ると、本当に宥は可愛い……)
菫(本当に……好きなんだ、私は……宥のことが)
菫「……宥」
宥「……?す、菫ちゃん?」
チュッ
菫「……好きだ」
宥「……?う、うん、私も好き……だよ」
菫「違う、そうじゃないんだ」
菫「その……本当に好きなんだ」
宥「……?え、えっと、どう違うの……かな」
菫「……そ、その、つまりだな」
菫「……こういうことだ」
ンチュッ
宥「んっ…………」
菫「………っ……」
菫「……っはぁ」
宥「っ……菫ちゃん」
宥「……ううん」
宥「……もっと、して欲しい」
菫「……宥っ!」
がばぁっ
宥「す、菫ちゃんっ……!?」
菫「……これ以上は歯止めが効かなくなるぞ」
宥「……」
宥「……」コクリ
宥「菫ちゃ……んっ……ぁっ……」
菫「んんっ……くちゅっ……んちゅっ……」
宥「んっ……はっぁ……す、すみれちゃっ……そ、そこはっ」
菫「……」
菫「……いやか?」
宥「……ううん、ち、ちがうのっ」
宥「その……ね……は、はじめてだから……」
宥「や、やさしく……して……」///
菫「……宥っ」
………
……
…
菫「ん……寝てしまっていたのか」
菫「宥は……」
宥「……zzz……zzz」
菫「はは……全く」
菫(結局、あの後身体を交わせてしまった)
菫(最初はお互いぎこちなかったが、何回か続くと宥の方からも求めてくれた)
菫(……エロゲの知識も大して役に立たなかったな)
菫「……ん?なんだ、パソコン付けっぱなしだったのか」
菫「いい加減電源落としておかないと……ん?」
菫「ス○イプで誰か話していたのか、何々……」
――とあるネット掲示板で知り合った数人の猛者達が――
――互いに集い語り合う 淑女達のグループチャットである――
ひろぽん:”恋と麻雀とチョコレート”とかなかなか良かったと思うんやけどな
トキ:あーこの前アニメ放送もしてたな
かじゅ:学内麻雀で優勝した人物が生徒会長になるとか言う奴だろう?実に馬鹿げてると思うがな
巫女みこカスミン:でも、絵も音楽もなかなか良かったわよね。私は好きよ
ひろぽん:せやろー
トキ:やーそれやったら、”アトカラ=スコヤ”の方が全然ええわ
ひろぽん:うわ出たでーアコス厨
かじゅ:でもわかる
巫女みこカスミン:わかる
ひろぽん:いや、そら名作やからそうやろけど、そもそも比べるもんとちゃうやろ
トキ:せやろか
ひろぽん:せやろ
巫女みこカスミン:とある女の子からお姉様って呼ばれるのがイイのよね
ひろぽん:あんたら自分がお姉様って呼ばれたいだけとちゃうんかと
トキ:すみれとか”アトカラ=スコヤ”めっちゃ好きそうやな
かじゅ:ああ、好きそうだな
巫女みこカスミン:その張本人はインしてるようだけど、今いないのかしら?
ひろぽん:なんか反応ないんよな
トキ:恋人が泊まりに来るとか言うてなかったっけ
かじゅ:それは明日じゃないのか?
トキ:や、しらんけど
巫女みこカスミン:恋人かぁ、羨ましいわねぇ
ひろぽん:せやな
ひろぽん:せやけど、恋人がおるんなら……エロゲなんてせーへんで幸せになってほしいトコやけどな
トキ:うちエロゲめっちゃやっとるけど、幸せやで
ひろぽん:や、確かにそういうんもあるかもしれへんけど
かじゅ:それを言うなら日陰者だ
ひろぽん:な、なんでもええやろ!でーまー、なんちゅーの
ひろぽん:仮に相手の親御さんに挨拶しに行った時とか、趣味はエロゲですなんて言えへんやろ
トキ:まぁ言ったら交際を反対されるやろなぁ
ひろぽん:やろ、いくらエロゲ趣味を隠していても、いつかバレる日が来ると思うんや
トキ:まぁ実際にバレたしな、親友にやけど
ひろぽん:うちも妹にバレたけどな
かじゅ:なんというかお前ら……
巫女みこカスミン:苦労してるのねぇ
ひろぽん:別にエロゲをやるなとは言わへん、せやけどエロゲよりも大事にしなきゃいけないモンが別にあるんやないのかと
かじゅ:……
ひろぽん:せやから幸せになってほしいねん、ちゃんと
ひろぽん:エロゲをやるのも幸せやろけど、恋人がおるなら恋人も幸せにせなアカン
かじゅ:……そうだな
ひろぽん:うおーい、それはゆーたらアカンやろー
巫女みこカスミン:あらあらまぁまぁ
菫「……」
菫「……みんな」
菫(そうだな……私はもう一人じゃない)
菫(宥も一緒なんだ、私の問題は宥の問題になる)
菫(……なんとかしないといけないよな……)
チュンチュン...
宥「……ふぁ……菫ちゃん……?」
菫「ん?ああ、起きたのか。おはよう」
宥「おはよう……何してるの?」
菫「ちょっとゲームをな……ダンボールに積めてるんだ」
宥「……?」
菫「……売ろうと思うんだ、エロゲーをな」
宥「えっ……別にそこまでしなくても……」
菫「決めたんだ、エロゲーがある限り……」
菫「私は宥を幸せにする事は出来ないんだ」
宥「で、でもっ……」
菫「……教えられたよ、私にはエロゲよりも大事にしなきゃものがあるってね」
宥「菫ちゃん……」
菫「……そ、それで……その、なんだ」
菫「宥がこっちの大学に入る事になったら……その……」ゴニョゴニョ
菫「…………一緒に暮らさないか」
宥「えっ……?」
菫「い、嫌ならいいんだ……宥の事情もあるだろうし……」
宥「……」
宥「ううん……一緒に暮らしたい」
菫「え……?」
宥「私も……菫ちゃんと一緒に暮らしたいっ」
菫「宥……っ」
宥「一緒にご飯食べて……一緒にお出かけしたり……一緒のベッドで寝たり……」
宥「そんな生活がしてみたいなっ」
宥「……」///
菫「……」
菫「……宥」
宥「……菫ちゃん?」
菫「……――」
――結婚しよう――
くろちゃーはおもちゲーでもやってたくましく生きるよ
菫「プロポーズ……だな」
宥「で、でも……私達まだ学生だよ……?」
菫「……今すぐという訳じゃないさ」
菫「まずは一緒に暮らして、同棲からはじめよう」
菫「そして大学を出たら……結婚してほしい」
宥「菫ちゃん……」
菫「……嫌か?」
宥「私も……菫ちゃんと結婚したい」
宥「結婚して、菫ちゃんの家族になりたいっ」」
菫「……ああ、私もだ」
――幸せとは 画面の中にあるものではない――
――目の前にある かけがえのない存在こそが――
――私の本当の幸せなのかもしれない――
菫「――家族になろう、宥」
つづカン
正直な所、今回の話は自分が書きたかった物と全く違う物になってしまったので
納得の行かない部分がかなり……
菫宥にはやっぱ幸せになってほしいなーという思いから
こんな話になってしまいました
明日はがっつりエロゲを絡ませて行きたいと思いますので、明日も宜しければぜひ。
イイハナシダナー
久しぶりにエロゲーやろうかな…
Entry ⇒ 2012.10.19 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
洋榎「エロゲしてる所を絹に見られてしもた……」
引用元: http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1350385200/
洋榎「き、絹……これは……ちゃうねん」
絹恵「ちゃうって……何がよ……これは一体なんなん……」フルフル
洋榎(アカン、よりによってエロシーン見られてもうた)
絹恵「……っ!!」ダッ
洋榎「ま、待つんや!絹っ!!」ガタンッ ブツッ
『きっ!キちゃうよおっ…!お姉ちゃんっ……!!いっぱいきちゃうよおぉっ……!!』
『妹に欲情するお姉ちゃんでごめんねっ……!はぁっ……はぁっ……気持ちいいよっ……咲っ……!!』パンパン
洋榎「」
絹恵「」
絹恵「……」
ガチャ バタム
洋榎「ア、アカン……」ガックシ
洋榎「確実にドン引きしとったわ……」ハァ
洋榎「このままやとやばいで……絹に嫌われてまうどころか……」
洋榎「一生口を聞いてもらえなくなるかもしれへん……」
洋榎「一緒の家に住んどいてそれはきっついやろ……」
洋榎「ああー……どないすればええねん!」ジタバタ
洋榎「……」
洋榎「はぁ……」
洋榎「とりあえず ”神降ろしコマキマイスター”でもやろ……」カチカチッ
絹恵「……」
絹恵「おねーちゃん……」
絹恵(お姉ちゃんがやってたゲーム……多分えっちなゲームや……)
絹恵(そ、それも……えっちしてるキャラクターが……)
絹恵(お姉ちゃんて言うてた……)ドキドキ
絹恵(……お姉ちゃんも妹にああいう事したいんやろか……)ドキドキ
絹恵「……」ドキドキ
絹恵「っ!」バッ
絹恵「う、うちは何考えてんのや……!」
絹恵「た、たまたまやろ!せや、気のせいやきっと!!」
絹恵「そうや、お姉ちゃんがあんなゲーム好きな訳あらへん!」
絹恵「さっさと忘れてサカつく進めよ!」
『でも本当に申し訳ないので、ここからは全力以上で造らせてもらいます!』ゴッ
洋榎「おおお!突然変異や!」
洋榎「っしゃー!レア装備きたでこれ!」
洋榎「さすが小蒔や!!」
洋榎(”神降ろしコマキマイスター”……この作品は、主人公の神代 小蒔が工房を運営しながら迷宮探索するゲームや!)
洋榎「やっぱ”ヤエシュリー”の作品は面白いで!」
洋榎「トキの奴は、”アコスソフト”派っちゅーてたけど、うちはやっぱこっちの方が好きやなー」
洋榎「……て」
洋榎「……ホンマはこんな事してる場合やないんやけどな……」ハァ
洋榎「……寝よ」パチンッ
洋榎「はー……部活行く気せーへんわぁ……」
洋榎「今朝は絹が早めに出たから会わんかったけど……」
洋榎「部活ではどうしても鉢合わせしてまうやろしなぁ……」
洋榎「かと言って部活サボる訳にも行かへんし……」
洋榎「……覚悟を決めるしかあらへのんか」ガチャ
恭子「お、主将きましたね」
由子「なのよー」
恭子「はい、では部活はじめるでー!みんなそれぞれ卓につきやー」
洋榎「……?絹は来てないんか?」
漫「絹ちゃんですか?今日は用事がある言うて休む言うてましたけど、聞いてないんですか?」
洋榎「いや……聞いておらへんわ……」
恭子「絹ちゃんが主将に何も言わずに休むなんて、珍しいですね」
洋榎(絹……やっぱうちを避けとるんやろか……)
恭子「じゃあ今日はこれで終わりやー」
由子「のよー」
漫「ではお先ですー」
恭子「おつかれー」
洋榎「……」
洋榎「はぁ……」
恭子「主将、どうしたんです?今日は調子悪かったですね」
洋榎「恭子……」
由子「何か悩み事があるなら何でも聞くよー」
洋榎「由子……」
洋榎「……」
洋榎「……せやな、お前達なら別にええか」
洋榎「……実はな」
由子「それは一大事なのよー」
洋榎「せや……めっちゃドン引きしてもうて、それ以来会話どころか顔も見てないねん……」
恭子「それはなんちゅーか……」
由子「運が悪かったのよー」
洋榎「ホンマどうしたらええんやろな……」ハハッ
由子「……」
恭子「……」
洋榎「……もううち、エロゲやめよかな……なんて」ハハハッ
恭子「……」
恭子「……なんや、主将らしくないですね」
洋榎「……なんやと?」
洋榎「あ?恭子、お前喧嘩売っとるんか?」
恭子「ちゃいますよ、いつもの主将なら無理矢理にでも誤解を解かせて納得させたりするやないですか」
恭子「なのに、絹ちゃんにエロゲしてる所を見られただけで何落ち込んどるんですか」
洋榎「そ、そうは言うけどな!絹になんて言えばええねん!」
洋榎「実はうちエロゲが大好きなんですーって言えるか?」
洋榎「アホか!んな事言うたらマジで一生口聞いてもらえなくなるで!!」
恭子「知りませんよ……とにかく、ちゃちゃっと仲直りしちゃってくださいよ」
恭子「このままやと部の士気にも関わりますから」
洋榎「他人事やと思って好き勝手言いよって……」
恭子「他人事ですし」
由子「他人事なのよー」
洋榎(こいつら……ホンマ腹たつわー……)
恭子「それじゃ主将、うちとゆーこはここで」
洋榎「え?二人なんか用事でもあるん?」
由子「日本橋に行くのよー」
洋榎「は?日本橋?何しに?」
恭子「日本橋に行くゆーたら一つしかないじゃないですか」
由子「エロゲを買いに行くのよー」
洋榎「え、エロゲやて!?」
洋榎(……いかんいかん、エロゲは少し自重せな……これ以上絹にヘンな誤解はされとうない)
恭子「……あ、もしかして、主将も行きたいんやないですか?」
洋榎「ア、アホ!ちゃうわ!な、ななな、なんでうちが行きたいなんて!お、思うとる訳ないやろ!!アホ!」
由子「じゃあ30分後に駅前で集合なのよー」
恭子「ええ、では後ほど」
洋榎「まてや!なんで勝手に話が進んどんねん!」
洋榎「っておい!ちょまてっ!……行ってもうた……」
洋榎「……」
洋榎「う、うちは行かへんからな……!」
洋榎(……せや……もうエロゲは卒業するんや……!!)
洋榎(うちは行かへんで……!)
由子「おまたせー」
恭子「揃いましたね、じゃ行きましょか」
洋榎(結局来てしもーた……!!)
洋榎(気がついたら服着替えて財布握って出かけとる自分がおった……)
洋榎(習慣ってホンマ恐ろしいわ……)
恭子「主将、何しとるんです?行きますよ」
洋榎「あ、ああ……行くで」
洋榎(ま、まあ今日だけ……今日だけや、今日を最後にエロゲを買うのは卒業や)
洋榎(……せ、せやから沢山買うても別にええよな……)
恭子「じゃ、各自好きなように見てまわるっちゅー事でええですか?」
由子「のよー」
洋榎「じゃ、また後でな」
洋榎(さて……どないするかな……と)
洋榎(今話題の作品コーナーか……えーと、何があるんや)
洋榎(……”大星のメモリア”……突如現れた謎の女の子、大星淡と一緒に昔の記憶を取り戻す物語……)
洋榎(これファンディスクも出とるんよなぁ、結構面白いって聞くで)
洋榎(次は……”コシガヤ☆エクスプローラー”……埼玉県越谷市に住む女子学園生が全国学生麻雀大会に挑む……か)
洋榎(確かこの作品、ヒロインが全員貧乳なんよなぁ……見た目もどこかズレてるのばっかやし)
洋榎(ほな次は……”すばら式日々~不連続和了~”……主人公、花田 煌が世界の救世主となり、様々な謎に立ち向かう奴か……)
”
洋榎(これトキがハマったとか言ってたなぁ、それ以来すばらすばら言うようになってうっとおしいったらありゃせんわ)
洋榎(恭子や由子は何見とるんやろ……)チラッ
由子「これですかー? ”ドラ、置き場がない!”ですよー」
洋榎「ああ、麻雀大会で負けまくってチームメイトや出場選手に犯されまくるっちゅー……」
由子「はい、でもそれ以上に笑える要素が多いのでオススメらしいですよー」
洋榎(そうなんか)
洋榎「恭子は何にするん?」
恭子「私ですか?私は”世界で一番NGな漫”を……」
洋榎「あー、恭子好きそうやもんなそれ」
恭子「あ、分かります?なんかパッケで唆られるんですよね、こうラクガキがしたくなるといいますか」
洋榎「ラクガキするのは買うてからにしとけや」
恭子「わかってますよ、私はこれにしときます」
恭子「主将はもう決まったんですか?」
洋榎「あ、あー……」
NGな漫ワロタ あれは名作
洋榎(今日でエロゲ買うのも最後って決めとったんやけどなぁ……)
洋榎(ここに来てまうと色々目移りしてまうなぁ)
洋榎「そや、トキの奴が言ってた……これや、”この大阪に、翼をひろげて”」
洋榎(主人公の江口セーラが病弱な女の子や黒髪ロングの女の子達と、グライダーで大阪の空を目指すお話やな)
洋榎(これは今日買うて……おおっ!?)
洋榎「”卓上の魔王”やないか!前に来た時は売ってへんかったのに、もう入っとるんかいな!」
洋榎(卓上の魔王、突如現れた魔王と名乗る人物を、転校してきた大星淡と探し出し事件の真相を追う物語……!)
洋榎(美少女ゲームアワード大賞受賞作品になるくらい、名作中の名作やな!)
洋榎(これも追加や……!これは今日帰ったら早速やるで……!)
洋榎(……しかしこれだけやと物足りないな、あと何本か追加しとこか)
洋榎(”トキ-黒い竜華と優しい部員-”……あるキッカケで仲間になった5人が、「麻雀」というデスゲームに巻き込まれていく……)
洋榎(”ゴア・コークスクリュー・ショウ”……異形の魔物テルと関わる羽目になってしまい、平穏な日常に戻るために努力するお話……)
洋榎(この3本も名作や、こんだけあれば十分やろ)
洋榎「待たせたなー、ほな、帰ろかー」
恭子「そうですね、早くやりたくて待ちきれませんよ」ハハハ
由子「のよー」
洋榎「ただいまーっと」
雅枝「おかえり、もうすぐメシできるで」
洋榎「オカン、帰ってたんかいな」
雅枝「今日は特別早かったんや、さっさと荷物置いてメシの準備し」
洋榎「わかってるでー……っ!?」
絹恵「あ……お姉ちゃん……おかえり」
洋榎「き……絹……た、ただいま……」
絹恵「……」
洋榎「……」
雅枝「……?」
洋榎「……」モグモグ
絹恵「……」モグモグ
雅枝「……」
雅枝「なんやあんたら、そんなに黙って……なんかあったん?」
洋榎「はっ……はぁっ!?べ、別になんもないで?」
雅枝「そーかー?ヒロがそんなに静かやなんて、頭でも打ったんちゃうの?」
雅枝「いつもぴーちくぱーちく言うとるのに」
洋榎「アホか!うちは普段からそんな喋りまくってへんわ!つか食事中くらい静かに食べェや!」
雅枝「せやせや、いつものヒロはそんな感じやで」ハハハッ
洋榎「アホか!」
絹恵「……」
洋榎「ふー……オカンの奴」
洋榎「さーて、風呂も入ったし……まずは卓上の魔王からやろか!」
洋榎「っと、せやせや……ス○イプにログインしとかな……」カチカチッ
洋榎「おっ、今日は結構人おるやん……珍しいなぁ」
洋榎「……」
『とにかく、ちゃちゃっと仲直りしちゃってくださいよ』
洋榎「……」
洋榎(ついでにちょっと相談に乗ってもらおかな)
――とあるネット掲示板で知り合った数人の猛者達が――
――互いに集い語り合う 淑女達のグループチャットである――
ひろぽん:おるかーー?
魔法少女すみれ:えっ?
ひろぽん:よーし、おるな!
トキ:ここやで (トントンッ
ピカリン: 西 濃 は 神
魔法少女すみれ:西濃厨うぜぇ
ひろぽん:ちょいとやばいことになってもーてな、助けてくれ
魔法少女すみれ:何があったんだ?
ひろぽん:妹にエロゲバレした
ピカリン:なんだと!お前妹いるのか!?どんな子だ!
魔法少女すみれ:シスコンは黙っとけよ
トキ:シスコンは病気やから無理やろ
ひろぽん:真面目な話なんや、頼むで
トキ:せやろなー
ひろぽん:どうにかして誤解を解きたいんやけど、どしたらええやろか
ピカリン:犯す
魔法少女すみれ:お前は本当にしそうだから怖い
魔法少女すみれ:誠意を持ってちゃんと話をすればちゃんと分かってくれるんじゃないか?
ひろぽん:そやろか、めっちゃドン引きしとったで
トキ:うちも親友にエロゲしてる所見られた事あったけど
トキ:ちゃんと話をすれば分かってくれたで
ひろぽん:まじか
トキ:ただそいつが今度はエロゲにハマってしもうてな
魔法少女すみれ:一体何をしたらそうなるんだ
トキ:エロゲをやらせたらいつの間にかハマってた
ピカリン:バロスwwwwwwww
『――ここからが勝負だじぇ!』ドヤァ
『――後ひっかけの洋榎とは うちのことやで!!』ドヤァ
『――おまかせあれっ!』ドヤァ
『――そろそろまぜろよ!』ドヤァ
竜華「ヘックチ!!」
竜華「さすがに徹夜でやりすぎたんかな……今日はちょいと暖かくして寝た方がええな」
竜華「しかしみんなかわええなぁ」
竜華「”どやきす” ヒロイン全員がドヤ顔をするちょっと変わったゲームやけど、面白いわ」
竜華「いちいちドヤ顔しまくるのが最高に笑えるで」
竜華「しかも”どやきす2本場”と”どやきす3本場”もあるっちゅーし」
竜華「ホンマ、エロゲって最高やなぁ!」
ピカリン:むしろ英雄
トキ:HとEROだけに
ピカリン:だれうま
ひろぽん:でもうちの妹は17の高2やで?エロゲはさすがにアカンやろ
トキ:ギャルゲがあるやろ
魔法少女すみれ:妹にギャルゲを勧める姉なんて
ピカリン:アリですね
トキ:せやろ
魔法少女すみれ:ねぇよ
ひろぽん:うちの妹をその手の道に引き込むのはさすがに気が引けるで
魔法少女すみれ:まぁ普通はそうだろうな
トキ:でもうち思うんや、エロゲの良し悪しは実際にやった人じゃないと分からないって
トキ:エロゲをやった事のない奴にエロゲを悪く言う資格はないで
ひろぽん:まぁそうかもしれへんけど……
トキ:やったうえで、悪く言われるならしゃあないやろけど
トキ:少なくとも、考え方は変わってくれると思うで
ひろぽん:なるほどなー
魔法少女すみれ:経験者は語るか
ひろぽん:しかしなぁ……あんま気が進まへんで
トキ:何だかんだ言ってみんなエロゲやギャルゲが好きなんや
トキ:ええからやらせてみーな
ひろぽん:まぁトキが言うなら……考えとくわ
ひろぽん:じゃあうち先に落ちるで
トキ:おー おつかれさーん
ピカリン:おつ
魔法少女すみれ:またな
洋榎「ホンマ無茶言いよるで……」
洋榎「せやけど妹にギャルゲを勧める言うたって、普通はありえへんやろ……」
洋榎「素直に受け取ってくれるとも思えへんで……」
絹恵「母ちゃん、風呂上がったで」
雅枝「おー、さんきゅー」
絹恵「……」トタトタ
雅枝「あ、ちょい絹、まちぃ」
絹恵「ん?なんや母ちゃん」
雅枝「……」
雅枝「絹、あんたヒロとなんかあったん?」
絹恵「えっ……」
雅枝「なんかあったんやな?」
絹恵「……」
絹恵「……ないで」
雅枝(図星か)
雅枝「感付かんとでも思っとったか?」
雅枝「何の悩みか知らんけど、うちに話せる事なら話してほしいねん」
雅枝「な?絹、話してみ」
絹恵「……」
絹恵「……わかったで」
………
……
…
雅枝「ほれ、とりあえずお茶でええな?」
絹恵「……」コクッ
絹恵「実はな……お姉ちゃんが」
雅枝「……ヒロがどしたん?」
絹恵「……えっちなゲームしとったん」
雅枝「」
絹恵「声をかけても全く気づかへんから、驚かそうと思って近づいたんやけど……」
絹恵「……その、丁度えっちなシーンで……しかもえっちしてたのが姉妹らしくて……」///
雅枝「……」
雅枝(ヒロがいつもと違うのも、そのせいやったんか……)
絹恵「そんでそのまま……顔合わせ辛くなってしもて……」
雅枝「そ、そうか……」
絹恵「……母ちゃん、うちどうしたらええんやろか」
雅枝「……」
雅枝「絹はどうしたいん?」
絹恵「えっ」
ネキが終わっちゃうだろ……!
雅枝「でも……知ってしもうたから出来ないっちゅーんか?」
絹恵「……」
雅枝「……絹」
雅枝「人間、誰でも一つや二つの秘密はあるもんや」
雅枝「その秘密を知ってもうたからって、その人を嫌いになったり引いたりするんか?」
絹恵「……」
雅枝「人間、皆それぞれ違う生き物なんや」
雅枝「たまたまえっちなゲームをやってたからって、その人の事を全否定するのはおかしいと思わへん?」
絹恵「そ……やけど」
雅枝「他人を嫌う前に、まずは自分からその人の事を理解せなアカンのや」
雅枝「わかったか……?」
絹恵「……」コクッ
雅枝「よし、行ってこい!」
絹恵「……うん、お姉ちゃんと話してくる!」
雅枝「……ふっ、青春やな」
雅枝(頑張れ……絹……ヒロ……!)
雅枝「……」
雅枝「……しっかし、ヒロも甘いで」
雅枝「妹にエロゲやってる所を見られるなんて、エロゲーマーとしてまだまだやな」
雅枝「うちなら絶対にバレへんで」
雅枝「……」
雅枝(でも……)
雅枝(うちがロリゲーやってる所を見られへんで助かったわ……!!)
雅枝(見られてしもたら、親の威厳は疎か下手すら家出されるレベルやしな……!!)
雅枝(ヒロには悪いが、見られたのがヒロでホント助かったで……)
雅枝(……)
雅枝(……今度何かおごっちゃるからな!ヒロ!)
コンコンッ
絹恵「……おねえちゃん、うちや」
洋榎「っ!?き、絹っ!?」
絹恵「入るで」ガチャッ
洋榎「お、おう……どしたん……」
絹恵「……」
絹恵「ごめん!!お姉ちゃんっ!!」ペコリン
絹恵「その……お姉ちゃんがえっちなゲームをしとる所……見てしもうて……」
洋榎「い、いや……うちの方こそ見せてしもてすまんというか……」
絹恵「お姉ちゃん……うち」
洋榎「絹」
洋榎「……まずはうちから言わせて欲しいんや」
絹恵「……えっ?」
洋榎「絹がうちのことをキモいとか思うたりするのも、別にしゃあないと思うわ」
洋榎「せやけど、それで絹との会話が出来なくなったり無視されんのは嫌やねん……」
洋榎「勝手がましいかもしれへんけど、うちと今まで通り接してほしいねん……」
洋榎「……だめか?」
絹恵「お姉ちゃん……」
洋榎「はは……ごめんなぁ絹……こんなダメなお姉ちゃんで……」ハハッ
絹恵「……ダメやない」
洋榎「……えっ」
絹恵「お姉ちゃんはダメなんかやない!!」
絹恵「むしろ、うちの方が悪いねん……!」
絹恵「人間誰しも、人には知られたくない秘密なんて1つや2つ当たり前にあるっちゅーのに……」
絹恵「勝手にお姉ちゃんの秘密に踏み込んだりしてしもうて!」
絹恵「勝手に秘密に踏み込んで、自分で勝手に距離を置いて!!」
絹恵「自分勝手すぎるわ……!自分が……情けない!!」
洋榎「……絹」
ダキッ
絹恵「おねえ……っ」
洋榎「うちは嬉しいんや……絹がちゃんとこうして話してくれて」
洋榎「情けないんは、むしろ自分の方や……」
洋榎「もっと早く絹に教えてあげられたら、良かったって思うとる」
洋榎「……怖かったんやな、言うのが」
洋榎「話す事でどこか関係が壊れてしまうんやないかと思って……怖かったんや」
洋榎「結果、最後の最後まで言わなかった結果がこれやねん……」
洋榎「うちらは姉妹や……むしろ秘密がある方がおかしいねん」
洋榎「これからは、お互い秘密なしにしよ……な?」
絹恵「お姉ちゃんっ……!」ポロポロ
……
…
洋榎「……落ち着いたか?絹」
絹恵「……」コクッ
洋榎「……そか」
絹恵「……お姉ちゃん……私な、もっとお姉ちゃんの事が知りたいねん」
洋榎「えっ……それ……どういう……」
洋榎(え、なんやこれ……なんかフラグみたいなん立っておらへんか……?)
洋榎(この雰囲気はうちもよく知っとるで……これ、エロシーンの前にあるやつや!)ドキドキ
洋榎(って、これアカンのとちゃう!?え、なんや、ヨ○ガってまうのはアカンやろ!)ドキドキ
洋榎(き、絹はどうなんや……)チラッ
絹恵「……」ソワソワ
絹恵「……」ポッ
洋榎(むっちゃ赤くなっとるぅぅーーー……!!)
洋榎「ちょ、ちょっと待ってほしいねん、絹」
絹恵「えっ、なん……?」
洋榎「ええか、よーく考えてや」
洋榎「確かにうちはエッチなゲーム……エロゲーが好きや、大好きやねん」
洋榎「でもな、うちはあくまでエロゲーが好きなだけで、実際のエッチとかは全く興味ないねん」
洋榎「だ、だからっ……絹がそう言ってくれるのは……その、嬉しいんやけど」
洋榎「その、やっぱりアカンと思うんや……うん、うちら姉妹やし、余計にアカンやろ」ハハッ
絹恵「……えっと」
絹恵「お姉ちゃん、さっきから何を言うてるん?」
洋榎「……えっ?えっと……」
絹恵「うちが言いたいんは、お姉ちゃんがやってるエッチなゲームをうちもやりたいねんって事や……」///
洋榎「」
絹恵「せやけど……お姉ちゃんが好きなものを、うちも自分の手で知りたいねん」
洋榎「そう言われてもアカンものはアカンやろ……主に年齢的な意味で」
絹恵「……二度言うほど大事な事なんか?」
洋榎「18歳未満がエロゲしてる描写を書いたらこのSSが叩かれそうやからな……」メタァ
絹恵「……そっか」
洋榎「……」
洋榎「ね、年齢的に問題無い奴なら、あるから……そっちで良かったらやけど」アセアセ
絹恵「っ……!ホンマか!?」パアァッ
洋榎「お、おう……」
洋榎「これや」
絹恵「”コロモバスターズ!”……?」
洋榎「せや、天江衣を中心とした友達兼家族のメンバー達が、最後の夏に様々な事をチャレンジしていくゲームや」
洋榎「無印版やから、18歳未満の絹でも出来るで」
洋榎「丁度いまアニメ放送もやってるトコやし、楽しめると思うで」
絹恵「これが……」
洋榎「あと、もう1本、これもや」
絹恵「”CLONNAD-クロナド-”……?」
洋榎「至って平凡な学園生活を送るゲームなんやけど、それぞれキャラの魅力が良くてな」
洋榎「偉い人はこの作品をこう言ったんや、『CLONNADは人生』……と」
洋榎「高校生活を送る学園編、卒業後のアフターストーリー……人間の大切な時期を描い作品は……まさに人生や」
洋榎「ないな、あったら貸さへんしな」
洋榎「それでもうちがやってるゲームと大差ないで、えっちシーンがあるかないかの問題やからな」
絹恵「そうなんか……」
絹恵「うん、わかった、やってみるで」
絹恵「じゃあお姉ちゃん、おやすみっ」
洋榎「お、おう……おやすみやで」
ガチャ バタム
洋榎「……」
洋榎「結局、絹にギャルゲ渡してもうた……」
洋榎「これでハマったらどないしょー……絹がうちみたいなエロゲーマーになったらどないしよ……」
洋榎「そないになったらオカンに申し訳立たへんわぁ……」ガックシ
絹恵「……」ゴクリ
絹恵「……よし、インストール完了」
絹恵「お姉ちゃんを理解するに、お姉ちゃんをもっと知るために、うちは”ぎゃるげー”に挑戦するで!」
絹恵「ゲーム、スタートや!」カチカチッ
………
……
…
『……はじめ?』
『いつも衣がリーダーだった……なにかワクワクする事を、始める時は――』
『……なら、今しかできない事をしようではないか――』
『……衣』
『……「麻雀」をしよう――』
『麻雀でインターハイを目指す……チーム名は……【コロモバスターズ】だ!!』
絹恵「なるほど、選択肢を選択して物語を進めていくっちゅー訳ですね」
絹恵「まだ始めたばっかやど、笑える部分がかなりあったから不思議と面白いわ」
絹恵「このあとどーなるんやろなぁ」
絹恵(……お姉ちゃんも今頃ゲームをやっとるんやろか)
『照うううぅぅっ―――――!!!』
『"魔王"よ!聞けっ!!!』
『悪とは、いまだ人のうちに残っている動物的な性質にこそ起源がある!!!』
『復讐に救いを求め、救いに悪を成さんとする貴様は、遠からず己が悪行のもろさを知るだろうっ!!!』
『――嗤おう、盛大に!!!』
『…………ッタ―――――ンッ』
洋榎「うおおーー!弘世ぇぇぇっ!」
洋榎「最後の最後まで怖いオネーさんやったけど、いい人やないか……」
洋榎「アカン、涙出てきた……これはアカンやろぉ……なんで死んでまうん……」
洋榎「くそ……魔王……一体誰なんや……」
『うん……』
『だったら、私は……』
『――勇者を守る、仲間になる!』
『照ぅぅっ――――!!!』
『……咲っ……いや、"魔王"!!』
洋榎「魔王……まさかの妹やったんか……!!」
洋榎「その発想はなかったわ……なんや、むっちゃ熱い展開やないか……!」
洋榎「ちゅーか色々と複雑すぎやろこの家庭……」
洋榎「一体何がこの家庭をこんなにしたんや……」
『ツモ、3000・6000!』
『ロン!18000!!』
絹恵「……」カチッ
絹恵「……」カチッ
絹恵(このゲーム、麻雀も打つんかいな)カチッ
絹恵(まぁ麻雀部のうちからすれば、ただのお遊びなんやけど……)カチッ
絹恵(おっ……大三元テンパイきたで……!)トンッ
『それロンです、3900!』
絹恵「……」イラッ
『んっ……やっ……テルッ……!!ふぁぁぁんっ、はぁっ……!んんっ!』
『はぁっ……ふぅっ!淡っ……!すごく……っキツくて……気持ちいいっ……!』
洋榎「お、おおう……」///
洋榎(正直言うと、うち激しいエロシーンはあんま得意ではないねん……)///
洋榎(でもエロシーンを飛ばすのは作者に対して失礼や……ちゃんと見るで……)
洋榎「……」
洋榎「……」ムズムズ
洋榎(……と、トイレいこ)
菫「……ん?こんな夜中にメールか?」ピロリロリーン
菫「宥か……えっと……来週は大学受験の為、東京に行こうと思います?」
菫「その間、もし宜しければ……数日間菫ちゃん家にお泊りしたい……だと……!?」
菫「宥が……私の家に来てくれるのか……」ピッ
菫(また宥に会える……)
菫(こんなに嬉しい事は他にはない……)
菫(……だが)チラッ
菫「…………このエロゲパッケージの山はどうしたものか」
菫(処分は出来ればしたくない……私にとってこれは、今まで集めてきた財宝のようなものだ)
菫(……さて、どうしたものか)
チュンチュン....
絹恵「おはよう、お姉ちゃん」
洋榎「おう、絹、おはよーさん」
雅枝「お、丁度朝メシできとるで」
洋榎「ってうおーい!朝から唐揚げは無いやろー、ちと重いやろー!」
雅枝「いらへんのやら食わんでもええよ」
洋榎「誰もいらんて言うてへんわ!食うて!食うわ!」フガフガッ
絹恵「んもう、お姉ちゃん。そんなにガッついたら……」
洋榎「なん……んグッ!ケッホケホ!」
絹恵「せやから言うたやろー……ほら、お水やで」
洋榎「……っぷはー、当然やないか!うちと絹はチョー仲良しの最高姉妹やで!」ゴクゴクッ
絹恵「お姉ちゃん行儀悪いで!」
雅枝「せやな、仲よきことは美しきかな、や」ハハッ
絹恵「んもう、母ちゃんもちゃんと言ったってや……」
絹恵「ふふっ」クスッ
絹恵(少しだけ……お姉ちゃんの事が分かった気がする)
絹恵(お姉ちゃんが大好きなセカイの事――)
洋榎「きーぬー!何しとん、ガッコいくでー!」
絹恵「あ、まってぇ、お姉ちゃん!」
絹恵(そして自分の気持ちも――)
絹恵(私は……大好きなお姉ちゃんと)
絹恵(いつまでも――一緒にいたい――)
絹恵(これからも……ずっと――)
つづカン
『カン!ツモ、嶺上開花!』
竜華「うお、強いな咲!」
怜「せやろ、チートすぎやよな」
竜華「この”大魔王”ってゲーム面白いなあ」
怜「”アコスソフト”では割と有名な地域制圧型シミュレーションゲームや」
怜「学校、長野と制圧して、全国の強豪と麻雀(物理)で戦っていくんや」
竜華「へー、こういうゲーム性のあるゲームも、ホンマにゲームって感じがして面白いで」
怜「竜華も”アコスソフト”の作品を沢山やったらええよー、絶対ハマるで!」
竜華「せやなー、怜がハマっとった”ヒサシリーズ”もめっちゃ気になるしなー!」
ハハハッ
今度おしまい。
支援ありがとうございました。
Entry ⇒ 2012.10.18 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
洋榎「これからよろしくな!」 絹恵「……」
絹恵「……」
父「ほら絹」
絹恵「……っ」プイッ
父「ハァ……ごめんな、洋榎ちゃん。こいつ人見知りだからさ」
洋榎「あはは、別にええよ。そのうち打ち解けてくるやろし。なあ絹江ちゃん?」
絹恵「……」
絹恵「……別に」
洋榎「別にってなんや別にって」アハハッ
絹恵「……」
洋榎「大阪もええとこやで~。ま、そのうちいやでも慣れるから安心しいや」
絹恵「……」
洋榎「あとで本場のたこ焼きでも食いいこな? うまいとこ知ってるんやで~」
絹恵「……」
絹恵「は……うちら?」
洋榎「そ、二人部屋なんやて。まあもともとうち一人で寝るんには広すぎたしな」
絹恵「……最悪」ボソッ
洋榎「ん、なんか言うた?」
絹恵「……別に」
洋榎「絹恵ちゃんさっきからそればっかやな~。口癖なんか?」アハハッ
絹恵「……」
絹恵「……」ストン
洋榎「ちょっと待っててや。今なんか飲み物持ってくるから」スタタ
絹恵「……」
絹恵(……ハァ、息苦しい)
絹恵(……これからあんなうるさい人と一緒に生活しろなんて……)
絹恵(……なんかもう、色々と最悪……)
洋榎「お待たせ~」ガチャ
洋榎「どう? うまい?」
絹恵「……ただの麦茶じゃん」
洋榎「まあな~」アハハッ
絹恵「……」
洋榎「絹恵ちゃん物静かやな~。東京にいたときもそんなやったん?」
絹恵「……」
洋榎「ええ~、無視せんといてえな~」
絹恵「……」イラッ
洋榎「あ、場所わからへんやろ? 案内するで」
絹恵「……っ」
絹恵「……やっぱ外の空気吸いに」
洋榎「あ、そんならうちも行く~。ついでにさっき言ったたこ焼き食いいこうな」
絹恵「……ハァ」
洋榎「??」
絹恵「……もういい」ボフンッ
洋榎「あれ、出かけるんやないの?」
洋榎「ええ~、まだ昼の3時やで? 今寝るとかもったいないやん!」
絹恵「……」
洋榎「たこ焼き食いいこうや~、絹恵ちゃ~ん!」ユサユサ
絹恵「……っ」
洋榎「そんな寝てばっかいると太るで~」
絹恵「……」ブチッ
絹恵「うるさいなぁ! いいからほっといてよ!」
洋榎「ぇ……ぁ、ごめん……」
洋榎「……ぁ、あの……ごめんな絹恵ちゃん」
絹恵「……」
洋榎「そ、そりゃ疲れるよなぁ。東京からの長旅やったもんな」
絹恵「……」
洋榎「ごめんな、うち気づかへんで……」
絹恵「……うるさくて眠れないんですけど」
洋榎「ご、ごめん……」
絹恵「……」
絹恵「……」
洋榎「おやすみ……」
バタン
絹恵「……」
絹恵「……ハァ」
絹恵「……ほんとうざい。私にかまうなっつーの」
絹恵「……」
絹恵「やば……ほんとに寝ちゃった」
絹恵「携帯、携帯……」ガサガサ
コンコン
絹恵「っ!」ビクッ
「絹恵ちゃん、起きとる?」
絹恵(……あいつか)
「お母さんがご飯やから降りてきいって」
絹恵(……うわ、めんど……)
「絹恵ちゃん? ……開けるで」ガチャ
絹恵「ちょ……!」
洋榎「うわっ、な、なんや……?」
絹恵「か、勝手に開けないでよ!」
洋榎「いやノックしたやん……」
絹恵「ノックすればいいってもんじゃないでしょ!?」
洋榎「で、でもでも、ここうちの部屋でもあるんやで?」
絹恵「そ、それは……っ」
洋榎「ていうか別に女同士なんやから気にせんでええやん。それにこれからはもうお互いに家族やろ?」
絹恵「……」
絹恵「……」
洋榎「とりあえず下いこ。な?」
絹恵「……先いってて」
洋榎「いや、あんたリビングの場所知らへんやろ? だから一緒に……」
絹恵「……っ!」
絹恵「じゃあドア閉めて外で待っててっ!」
洋榎「は、はいっ!」ダダッ
絹恵「……ハァ、ハァ」
絹恵「……」
雅枝「お、絹ちゃん。久しぶりやな~」
絹恵「……どうも」コクッ
雅枝「お疲れみたいやな。よく寝れた?」
絹恵「な、なんでそれを……!///」カァア
雅枝「ん、洋榎から聞いたんやけど」
絹恵(あ、あんた……余計なこと……!)キッ
洋榎「~♪」パクパク
雅枝「ははっ、ここはもう絹ちゃんの家なんやから、そんなん気にせんでええで~」
絹恵「……っ」
絹恵「……はい」
父「まぁ、絹にとっても早い方がいいだろうしな」
雅枝「せやな。絹ちゃんには早いとこ大阪の空気になじんでもらわんと」
絹恵「……」
父「洋榎ちゃん、こいつのことよろしくな」
洋榎「ん、ふぁふぉい!」
雅枝「こら、口に物入れて話すなバカ」ベシッ
洋榎「ふぁい……んぐ……了解や、任せとき!」
絹恵「……」
洋榎「いってきまーっす!」
雅枝「おう、いってらっしゃい」
洋榎「ってカバン忘れとった! やばいやばい!」ダダッ
雅枝「なにやっとるんやあいつは……」
絹恵「……」
雅枝「……絹ちゃん、がんばってき」
絹恵「……」
雅枝「あの子アホやけど、根は真っ直ぐやから。いざとなったら頼りにせえ」
洋榎「お待たせぇええええ!!」ダダダッ
雅枝「こら、階段で走るな!」
絹恵「……」
雅枝「それじゃ今度こそ、いってらっしゃい」
絹恵「……」スタスタ
洋榎「絹ちゃん!」
絹恵「っ!?」ビクッ
洋榎「絹ちゃん……お母さんもそういってたし、うちもそう呼んでええ?」
絹恵「……」キッ
洋榎「……」ジッ
絹恵「……か、勝手にすれば」スタスタ
洋榎「うん、勝手にするで!」ニコッ
絹恵「……」
絹恵(……だ、ダメだ……こいつらに心を許すな)
絹恵(……近っ)
洋榎「近いやろ~? もしかして前んとこでは電車通学とかやった?」
絹恵「……まぁ」
洋榎「あれって朝は人でギュウギュウなんやろ? つらくないん?」
絹恵「……慣れれば、別に」
洋榎「へえ、うちは絶対無理やわそんなの~」
絹恵「……」
洋榎「ついたで~。ここがうちらの中学校」
絹恵(……ふーん、まぁまぁきれいかな)
洋榎「なかなかいいとこやろ? 本館はまだ改装したばっかなんやで~」
洋榎「ほな、さっそく職員室いこか」
―――――――――――――――――――
「おはよー洋榎」「おっす愛宕」
洋榎「おはようさん~」
絹恵「……あれ全部友達?」
洋榎「ん、まぁな~」
絹恵「……」
洋榎「お、由子やん。おはようさん」
由子「今日はちゃんと寝坊せずにこれたんやね~」
洋榎「まぁな~」ヘヘン
由子「ん、そっちの子は……」
洋榎「あ、こいつ絹恵。前言ってたうちの妹になるって子や」
由子「あぁ、その子が~」
絹恵「……」
由子「私、真瀬由子っていうのよ~。洋榎と同じ部活なの。よろしくね~」
絹恵「……」コクッ
洋榎「おう、また放課後な~」
絹恵「……」イライラ
洋榎「待たせてごめんな~。職員室はすぐそこやから」
絹恵「……じゃああんたもういいから」
洋榎「えっ」
コンコン
絹恵「……失礼します」ガラッ
先生「おう、どうしたん~?」
絹恵「……あの、今日転入することになってる……あ、」
先生「ん?」
絹恵「あ、愛宕……絹恵といいます」
先生「おお、お前さんが愛宕の。聞いとる聞いとる」
絹恵「……はい」ストン
洋榎「ほーい」ボスンッ
絹恵「……ってあんたなんでいるの!?」
洋榎「え、だって絹ちゃんのこと心配なんやもん」
絹恵「い、いいから自分とこ行ってよ!」
洋榎「ええ~、別に始業までまだ時間あるしええやん」
絹恵「ジャマなの!」
洋榎「なんもせえへんて~」
絹恵「~~~~っ!!」
絹恵(……ああもう、恥ずかしい!)
洋榎「先生、おはよ~」
先生「おう、おはよう。しかしお前さんに妹ができるとはな~」
洋榎「ふっふーん。ちょっとはお姉ちゃんっぽくなったやろ?」
先生「いや全然」
洋榎「ひどっ! そこはお世辞でも同意してえな~!」
先生「せやかて、身長からしてお前の方が年下っぽいやん」
洋榎「そ、それは言わん約束やろ~!」
先生「ははっ、まぁ少しはお姉ちゃんぽく見られるようこれから頑張ってき」
洋榎「ちぇ……は~い」
先生「っと、せやった。これから教室案内するわ。ついてき」
絹恵「……はい」
洋榎「ほいほ~い」
―――――――――――――――――――
先生「ここがお前さんのクラスや。ちなみに俺がお前の担任やから」
絹恵「……はい」
先生「俺の後について入ってき」
絹恵「……」ゴクリ
洋榎「絹ちゃん大丈夫? トイレ行っといた方がいいんやない?」
絹恵「……あ、あんたはいいから自分とこ戻ってよ!」
先生「そうやで。もうチャイム鳴るし。はよ行け」
洋榎「む……仕方あらへんかぁ」
洋榎「んじゃ、絹ちゃんがんばってき~! ファイトやで~!」
絹恵(……は、恥ずかしいからやめてってば!!)
先生「おらー、席につけー」
絹恵「……」
ザワザワ...
先生「えーっと、今日はまず転校生の紹介から。愛宕、大丈夫やな?」
絹恵「……」コクン
絹恵「……」
絹恵「えっと、東京から来ました……あ、愛宕絹恵です」
絹恵「これからよろしくお願いします」ペコッ
パチパチパチ...
先生「よし、みんな仲良くするようになー」
先生「愛宕、お前は窓際の一番後ろに席や」
絹恵「……はい」スタスタ
絹恵(ハァ、疲れた……なんで私がわざわざこんな面倒なこと……)
絹恵(……でも、いい席もらったな)チラッ
洋榎(おーい! 絹ちゃーん)ブンブンッ
ガタンッ...!
先生「どないしたん? 愛宕」
絹恵「な、ななな……」
なんであいつが向かいの校舎に……!
ガヤガヤ...
先生「大丈夫かー?」
絹恵「え、ぁ……ご、ごめんなさい!///」
絹恵(あ、あいつ~~~~~~~っ!)
「じゃあねー」「またなー」
絹恵「……」スタスタ
ガラッ
洋榎「お、早かったなー絹ちゃん」
絹恵「!!」
絹恵「……っ」スタスタ
洋榎「ち、ちょっと待ってや~」タタッ
絹恵「……」スタスタ
洋榎「絹ちゃん、自己紹介はうまくできた? 友達は?」
絹恵「……」スタスタ
洋榎「うちのこと見えたやろ? いや~、まさかとは思うたけどちょうど真向いなんてなぁ」
洋榎「これならいつ何があっても平気やな。困ったときはお姉ちゃんを……」
バシッ...!
絹恵「……あんた、なに? ……なんなの?」
絹恵「人の心に土足でグイグイと入ってきて……気持ち悪い!!」
洋榎「……う、うちは……」
絹恵「困ったときはお姉ちゃんを頼れ……? バッカじゃない!」
絹恵「私はあんたのこと、姉なんて……家族なんて認めてないから!」
絹恵「もう私にかまわないでよ!」ダダッ
洋榎「……」
洋榎「絹……ちゃん……」
絹恵「……っ」
絹恵(あいつ……これで少しは大人しくなるかな……)
絹恵「……」ジクッ
絹恵(わ、私は何も間違ったことは言ってない……!)
絹恵(こっちの気持ちも知らないで馴れ馴れしくしてくるあいつが悪いのよ……!)
絹恵「……っ」
絹恵(……なのに……)
絹恵「なんで……なんでこんなに、胸が痛いんだろ……」
洋榎「……」
由子「あら、洋榎。お疲れなのよー」
洋榎「……」
由子「? どうしたのよー?」
―――――――――――――――――――
由子「うーん……それは難しい問題やね」
洋榎「うちが馴れ馴れしくしすぎたんかな……」
由子「環境がガラッと変わったせいで、きっと絹恵ちゃんの心はナーバスになってたのねー」
由子「まぁ、洋榎のやり方もちょっと無神経だったかもなのよ」
洋榎「無神経……」ガクッ
由子「でもそこが洋榎のいいところでもあるのよ」
由子「まずは絹恵ちゃんに会って謝って、彼女の気持ちを聞くことが大事だと思うのよー」
由子「そんないきなり認められるはずないのよー」
洋榎「うちはもう、絹ちゃんのこと家族やって思うてるで?」
由子「誰もが洋榎みたいになれるわけじゃないのよー」
由子「相手を認めるだけなら簡単……問題なのは、相手と認め合うことができるかどうかなのよー」
洋榎「絹ちゃんと、認め合う……」
由子「相手に認めてもらうために洋榎には何ができるのか、まずそれを考えることが大事なのよー」
洋榎「……」
洋榎「うん、まだどうしたらええかわからへんけど、ともかく今うちにできることをしてみようと思う」
洋榎「恩に着るで、由子!」
由子「がんばってこいなのよー」
お母さんはとても優しかった。私が学校であった出来事を話すと、いつも楽しそうにそれを聞いてくれた。
そして私はお母さんのする話が大好きだった。日常の些細な出来事に関する話でも、お母さんの話術にかかれば、それは一つの絵本のように私の心を湧き立たせてくれた。
しかし私が小学5年生にあがる頃、お母さんは交通事故に巻き込まれ、命を落とした。
それから私は変わってしまった。何をしても楽しいと思えず、そして次第に他人との付き合いも煩わしくなっていった。
いつしか私は、お母さんとの楽しい思い出に浸ることで、孤独を紛らわせるようになっていった――――。
私はそうやって他者との関わりを絶ってきた。だって私はお母さんがいる限り、孤独じゃないから。
父が再婚すると言い出したとき、私はあまり驚かなかった。
心底どうでもいいことだったし、なにより私の中でのお母さんは一人と決まっていたからだ。
しかし私は甘かった。世の中には、こちらが拒んでいても繋がりを求めてくる物好きな輩もいる。
“家族”という立場上の問題もあったのだろうが、愛宕雅枝という人は、まさにそういう人だった。
そして、愛宕洋榎……彼女を見たとき、私は不覚にも「お母さんに似てる」と思ってしまった。そしてそう感じた自分を呪いたくなった。
だから私はあの人たちを拒む……拒まなければいけない。そうしなければ、私の中の“お母さん”が消えてしまうように感じたから。
―――そんなことさせない……
私に“お母さん”一人さえいればそれでいいんだ……誰にも邪魔なんてさせない!
誰にも―――――
「絹ちゃん!」
絹恵「……っ!」ビクッ
洋榎「……ハァ、ハァ」
絹恵「……あんた……」
洋榎「……き、絹ちゃん、うち……」
絹恵「……もうかまうなって言ったでしょ」
洋榎「……うん」
絹恵「じゃあ、もう私に関わらないでよ」
洋榎「わかった……だけど、これだけ言わせて」
絹恵「……?」
洋榎「絹ちゃん……ごめんなさい」ペコッ
絹恵「!?」
洋榎「……謝ってる」
絹恵「そりゃ見ればわかるわよ! なんでそんなこと……」
洋榎「うち、少し無神経やったから……絹ちゃんの気持ち考えないで、一方的に仲良くしようって……」
洋榎「ほんま自分勝手やった……だから、ごめんなさい」
絹恵「なっ……や、やめてよ……」
洋榎「……絹ちゃん、うちのことやっぱり嫌い?」
絹恵「そ、それは……」
洋榎「嫌いやったら嫌いやったでええ。ただうちは知りたい……絹ちゃんの本当の気持ちを」
絹恵「……本当の、気持ち……」
なんだこの気持ちは……
これが……私の、本当の……
絹恵「……」
洋榎「……すぐには答えられへん?」
絹恵「……っ」
洋榎「んじゃ考えてる間に、うちの気持ち聞いて」
絹恵「え……」
洋榎「うちは、やっぱり絹ちゃんのこと気になる」
絹恵「!!」
洋榎「なんでやろな……放っておけないっていうか、あんたのこと、どうも他人のこととは思えないんや」
絹恵「……それってもしかして、私を憐れんでるっていうこと……?」
絹恵「え……」
洋榎「絹ちゃんは昔はもっと笑ってたってパパさんから聞いたで」
洋榎「うちは見てみたいのかも……絹ちゃんの笑った顔を」
絹恵「……」
なんで……なんでそんなに……
洋榎「で、どう? さっきの質問の答え、決めてくれた?」
絹恵「……っ」
絹恵「わ、私は……」
私は――――
絹恵「……私は、あんたのこと、好きじゃない」
洋榎「……そっか」
絹恵「……らない」
洋榎「……?」
絹恵「わかんない……わかんないよ……」
洋榎「絹ちゃん……?」
絹恵「どうして……あんたのこと、好きじゃない……好きじゃないのに……」
洋榎「……」
洋榎「……もしかして、嬉しいって、思ってくれた?」
絹恵「なっ……!」
洋榎「勘違いならごめんな……でも、もしかしたらって思うて」
絹恵「……」
絹恵(嬉しい……か)
嫌わないと、自分を保てなくなるから。お母さんが消えちゃうから―――。
洋榎「……お母さんのこと、パパさんから聞いたよ」
絹恵「……」
洋榎「お母さんが亡くなってから、絹ちゃん変わっちゃったって……」
絹恵「……」
洋榎「うちも小っちゃい頃にお父さん死んどる。だから気持ちがわかるなんて言うつもりはないけどな」
絹恵「……」
絹恵(そっか……この子には、お父さんがいないんだった……)
絹恵(どうして私、そんなことにも気づけなかったんだ……)
洋榎「でもこのままじゃ、絹恵ちゃんはもったいないと思うんや。もっと絹恵ちゃんらしい生き方してみてもいいと思う」
洋榎「うちはその手助けをしたい。だって……仮ではあっても、うちは愛宕の姉やから」ニコッ
絹恵「……っ」
絹恵「わ、わた……し……」
絹恵「お、お母さんのことが……っぐ……だ、大好きで……」
絹恵「でもお母さん死んじゃって……っ! それで……なんか、全部イヤになって……」
洋榎「うん……うん……」
絹恵「たぶん現実を受け入れたくなかった……お母さんがいない日常なんて、知りたくなかった……」
絹恵「けど、そんなのダメだった……自分勝手なことでしかなかった……っ」
絹恵「私……っく……今まで、なにやってたんだろ……」ボロボロ
絹恵「人の気持ちをないがしろにして……っ! 自分の殻に閉じこもって……っ!」
絹恵「最低だ……私……」グスッ
洋榎「……」
絹恵「お墓参りにも、行ってない……っ」
洋榎「……」
洋榎「……それじゃ、うちと行こう?」
絹恵「……ぇ」
洋榎「うちと行って、それでお母さんに笑った顔見せよう?」
洋榎「お母さん、きっとそれだけでめっちゃ喜んでくれると思うで」
絹恵「……っ」
――――お母さん……
絹恵「ぅ……うぇ……うええええん!! うええええんっ!!」ボロボロ
洋榎「よしよし……」ギュ
私は、お母さんが死んでから初めて、声をあげて泣いた。
たぶんそれは、3年間積りに積もった感情すべてを精算するための声と、涙だった。
お母さんは、もういない。でも、私にはまだ家族がいる。
お父さん……雅枝さんと、そしてこの―――お姉ちゃんが。
絹恵「……っ……ぇぐ」
洋榎「もう大丈夫?」
絹恵「……っく……うん……ありがとう」ゴシゴシ
洋榎「ありがとうって……なんか嬉しいな」
絹恵「ごめん……私、ひどいこと……」
洋榎「ん? なんのことや?」
絹恵「だって……会ってから今まで、散々……」
洋榎「うちは過去の細かいことは気にせん女なんや。だからごめんとか、もう言いっこなし」
絹恵「……うん」
洋榎「さ、帰ろ。うちのおかんとパパさんが待っとるで」
絹恵「……うんっ」
洋榎「ただいま帰ったで~」
雅枝「おう、遅かったな」
絹恵「……」
雅枝「絹ちゃんも一緒か。ちょうどええ、飯にしよ」
絹恵「あの……」
雅枝「……ん?」
絹恵「……」
絹恵「えっと……ただいま、です」
雅枝「……ふふ」
雅枝「ああ、おかえり絹ちゃん」ニコッ
雅枝「うちは昔っから中辛やけど、絹ちゃんは平気か?」
絹恵「えっと、大丈夫です」
父「父さんは甘口のがいいけどな」パクッ
洋榎「えぇ~、あんなの甘すぎて食えへんわ」
雅枝「イヤやったら無理して食わへんでもええで~」スッ
父「え……いや食います、食わせてください」
あははははっ!!
絹恵「ふ、ふふっ……」
洋榎「……」ニコッ
絹恵「おいしかったね」
洋榎「せやろ~? うちのお母さんはあれでなかなか料理上手なんやで」
洋榎「ま、めんどくさがってあんま作らへんけどな」アハハッ
絹恵「え、っと……ひろえさんは……その」
洋榎「むっ」ムギュ
絹恵「ぶっ! ばびぶんぼ!」(なにすんの!)
洋榎「絹ちゃん……いや、絹。この際やからはっきりさせとくで」
洋榎「うちのおかんをお母さんと呼ばんのは別にかまへんけど、さすがに姉妹でさん付けはないやろ」
絹恵「ばびば……」(それは……)
洋榎「……うん、なにゆうてるかわからへんわ」パッ
絹恵「ん……じゃあ、なんて呼べばいいの?」
洋榎「まぁ? 無理じいはせえへんけど?」
絹恵「……?」
洋榎「妹が姉のこと呼ぶんやったら、ほら、あれしかないやん?」
絹恵「えっと……」
洋榎「お、お……」
絹恵「……?」
洋榎「お、おね……」
絹恵「……あぁ」
洋榎「ん……いやまぁ、呼べって言うてるんやないで? これは絹ちゃんがそう呼びたかったらの話で……」
絹恵「……」ニヤッ
絹恵「いや別に私は呼びたくないけど……」
洋榎「えっ」ガーン
洋榎「え、どっちやねん……」
絹恵「……お姉ちゃん」
洋榎「っ!」ドキッ
絹恵「これでいい……かな?」
洋榎「う、うん……」
絹恵「……っ」
絹恵(い、言うの恥ずかしい……でも『お姉ちゃん』……悪くないかも)ドキドキ
洋榎(なんやこれ……胸の奥がこう、ふにゃあっとするわ……)ドキドキ
洋榎「そ、それじゃ部屋いこか!」
絹恵「うんっ」
絹恵「え、なんかお姉ちゃんの方が広くない?」
洋榎「うーん、じゃあこう……ふんっ!」グイッ
洋榎「これでええやろ?」
絹恵「あんま広がってない……まぁもういいけどさ」ヨイショ
絹恵「でも、お姉ちゃんの部屋って意外と片づいてるね。無駄に物は多いけど」
洋榎「意外と、と、無駄に、は余計や!」
絹恵「ん……これなに?」
洋榎「麻雀牌やで~。こっちにマットもある」
絹恵「へえ、お姉ちゃんって麻雀するんだ」
洋榎「これでも部内ではランキング一位なんやで~」ヘヘン
絹恵「それってすごいの?」
洋榎「え、すごいやろ! この学校で一番最強ってことなんやで!?」
絹恵「ふーん……」
洋榎「ええ~、なんやその興味なさげな空返事は」
この絹はどうすんだろ
家族麻雀するぐらい麻雀覚えて
次第に勝ち始めちゃって
洋榎お姉ちゃんが可哀想になったから、自分は±0で抑えて麻雀やらなくなってサッカー部に入ると思います
それなんて咲さん…
お姉ちゃんが転校フラグやそれ
洋榎「絹もやってみいよ。うちが教えたるから」
絹恵「ううん、いいよ」
洋榎「そ、そんなナチュラルに拒否されると傷つくわ……」ガクッ
絹恵「ご、ごめんごめん。でも私、ちょっとやってみたいことがあるから」
洋榎「なになに? 部活?」
絹恵「うん……あの学校って女子サッカー部あるんでしょ?」
洋榎「あったかなぁ……あーうん、あったかも」
洋榎「でも絹ってサッカーできるん?」
絹恵「ううん、見るのが好きってだけだけど」
洋榎「ええ~、見るのとやるのは全然違うやろ。ほんとにできるんか~? 絹、メガネやし」
絹恵「そ、そんなのやってみなくちゃわかんないじゃん!」ムスッ
洋榎「うーん、せやけどそのメガネはどうなん……?」
絹恵「試合中はコンタクトにするってば!」
洋榎「持ってないんかい」
絹恵「だからさ……今度買いに行くから、その……」
洋榎「ふっふーん……お姉ちゃんについてきてほしいんやな?」
絹恵「いや、お金……」
洋榎「っておぉい!」ビシッ
絹恵「冗談だよ冗談。でもついてきてくれるんなら嬉しいな」
洋榎「絹って案外おちゃめさんやな……」
洋榎「ま、まぁ仕方あらへんな! ええよ、ついてったる! ただしお金はださへんけどな!」
絹恵「ふふ……はいはい」
洋榎「ふぃ~、疲れたわ……」
絹恵「ありがとね、お姉ちゃん」
洋榎「別にええって。それよりもう10時やで。風呂入ってき」
絹恵「うん、じゃお先に」ガチャ
スタスタ...
洋榎「さーてマンガマンガっと……」
スタスタ...ガチャ
絹恵「お姉ちゃん、お風呂の場所ってどこ?」
洋榎「あぁ、そういや知らへんのか。案内するわ」
洋榎「……ここがトイレ」ガチャ
絹恵「へえ、ありがと」
洋榎「じゃ、ごゆっくり~」スタスタ...
ガチャ...ボフンッ
洋榎「よし、マンガ読むでー」ペラッ
スタスタ...ガチャ
絹恵「お姉ちゃん、お湯が出ないよ~」
洋榎「ええ~」
―――――――――――――――――――
洋榎「ここのスイッチ押さんと出えへんからな。ほいじゃ」スタスタ
絹恵「わかった。ありがと」
ダダダッ...ガチャ
絹恵「お姉ちゃ~ん」
洋榎「もう! 下の階なんやからおかんに聞いてや!」
―――――――――――――――――――
洋榎「はい、これでええ?」
絹恵「うん、ありがとお姉ちゃん」
洋榎「……」
洋榎「なんかまた呼ばれるんも面倒やから、いっそうちも一緒に入るわ」ヌギヌギ
絹恵「えええっ!? や、やだよ!」
洋榎「別にええやん。女同士っていうかもう姉妹なんやし」
絹恵「そりゃそうだけど……」
絹恵「なんかそれおじさん臭い……」
洋榎「ええやん、大阪じゃ湯船に浸かるときはみんなこういうんや」
絹恵「それうそでしょ」
洋榎「ほんとほんと~。絹も早く大阪のしきたりに慣れなあかんで~」
絹恵「はいはい」ジャー
洋榎「……」ジーッ
絹恵「……ん、なに?」
洋榎「絹……おっぱいでかいな」
絹恵「なっ……///」
洋榎「なんか年下ってちゅうか、中学生に見えへんわ」
絹恵「そ、そんなこと……お姉ちゃんの方だっt」
洋榎「……」ペタン
絹恵「あの……気にしないでね」
洋榎「なんやろ……今すごくバカにされた気がするわ」
洋榎「え……なにいうてるん? あんたまだ風呂入ってないやん」
絹恵「うん、だって私シャワー派だし」
洋榎「し、シャワ……?」
絹恵「シャワー派。シャワーだけで済ませる人のこと」
洋榎「え、なんやそれおかしいやろ」
絹恵「おかしくないよ」
洋榎「いやおかしい。絹、ちゃんと風呂入りなさい」
絹恵「え、やだよ。暑いし」
洋榎「ダメや! ちゃんと入りんさい!」グイッ
絹恵「ちょ……!」
バシャンッ...!
絹恵「ぷはっ……あ、危ないじゃないの、お姉ちゃん!」
洋榎「うるさいわ、ちゃんと100数えるまで湯船からはださへんからな」
絹恵「お、お姉ちゃん……狭いんだけど……」
洋榎「さーん、我慢しーい、ごーお……」
絹恵「……なんか数えるの遅くない?」
洋榎「ろーく、しーち、はーち……」
絹恵「……」
―――――――――――――――――――
洋榎「ごじゅろーく、ごじゅしーち……」
絹恵「……お姉ちゃん、もういいでしょ?」
洋榎「ダメや、まだ半分も、残っとる……」
絹恵「……」
―――――――――――――――――――
洋榎「……ひゃーくっ! はい、よくできたで絹ちゃん」
絹恵「ハァ……軽くのぼせた……」
絹恵「それは、絶対、ないっ!」
―――――――――――――――――――
洋榎「電気消すでー」
絹恵「……うん」
カチッ
「……」
「……お姉ちゃん、今日はありがとうね」
「……ええっていうたやろ」
「うん、そうやったね……て、あっ///」
「はは、絹もだんだんと大阪色に染め上げられつつあるなぁ」
「うぅ……なんか恥ずかしい///」
「……絹」
「なに?」
「明日はお墓参りいこ」
「……うん」
「んで、帰りは昨日言ったたこ焼きおごったる」
「コンタクトも買いに行っていい?」
「おごらへんけどな。おかんかパパさんにお金もらっとき」
「うん」
「……ん」
「……これからもずっと、お姉ちゃんでいてね」
「なんや……そういうのもう恥ずかしいからやめ」
「……恥ずかしいから今言ってるんだよ」
「そーですか」
「……それで?」
「……ん、なんや?」
「ハァ……もういいよ」
「……うそうそ。ずっと絹のお姉ちゃんでおるで」
「……」
「……やで、お姉ちゃん」
「え……今なんて言うた?」
「な、なんでもないっ! おやすみ!」バッ
「……」
ありがとう……
大好きやで、お姉ちゃん―――
カン(カチッ...でどうすか
槍槓だ
そのカン、成立せず
ほんとは銀縁メガネだった絹ちゃんが、洋榎ちゃんに言われて今のピンク縁のメガネに替えるシーンとか入れたかったです
お疲れっした
>>295
なんであきらめるんだそこで
続き待ってるでー!
Entry ⇒ 2012.10.17 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
怜「うちがエロゲしてる所を竜華に見られてしもた……」
怜「りゅ、竜華!これは!」
怜(アカン、よりによってえっちシーンを見られたらなんも言い訳できへん!)
竜華「これ……何……」
怜「ち、違うんや竜華!これは!」ガタンッ ブツッ
『モモッ……モモッ!!』
『あっああっ……!そんな……!せっセンパイッ!もっと……っ!!』
怜「」
竜華「」
怜「……」
怜「……なんや」
竜華「……い、いや、その……な?」
竜華「べ、別にうちは、怜がそのような趣味を持ってても別に気にせんというか……」
竜華「趣味は人それぞれって言うしな、ハハハ……」
怜「……」
怜「……そんな目でうちを見んなや」
竜華「え……?」
竜華「そ、そんな!うちはそんな事思ってないで!」
怜「嘘や!!みんなそうやって嘘つくんや!」
怜「心の底では馬鹿にしたり気持ち悪いとか思うとるんやろ!!」
竜華「思わへんて!た、たかがゲームでそんな大げさやで!」
怜「……」
怜「……おい、今なんて言うたんやタコ」
竜華「えっ……」
怜「たかがゲームやて?何言うてんのや、ふざけんな!」
怜「この”作品”はな!先輩と後輩の甘くとも切ない感動的な恋愛劇なんや!」
竜華「で、でも、それエッチなゲームやろ……?」
竜華「いやいやおかしいやろ、怜は女の子やで……」
怜「女がエロゲしたらアカンのですか!!」
竜華「えっ、ア、アカンというか、その……」
怜「そうや、うちはエロゲーが好きや、大好きや!せやけどそれの何が悪いねん!」
怜「ええやろ別に、誰に迷惑をかけてる訳でもないし、うちの好きにさせてくれや!」
竜華「で、でも……」
怜「大体、竜華は勘違いしとるんや」
怜「エロゲーっちゅーんは、何もエッチだけを頼むゲームやないんや」
怜「エロゲーっちゅーんは、人々に夢と希望と青春と感動を与えてくれる、人類が生み出した最高の文化やねん!」
怜「それをたかがゲームだとか、エッチなゲームの一言で済ますなんてうちが許さへんで!!」
竜華「え、えー……」
怜「たまたまゲーム内で恋人がエッチしとるだけで、すぐエッチなゲームと決めつける」
怜「恋人がエッチをしたらアカンねんか!?お前らは父ちゃん母ちゃんがセックスして産まれたんやぞ!」
怜「それを全否定とか、自分自身を否定するもんやないか!」
竜華(うちにそんな事言われても……)
怜「エロゲーがアカンっちゅーんなら、世の中の昼ドラや洋画もアウトやろ!」
怜「濡れ場とかベッドシーンとかアリアリやないか!」
竜華(まぁそういう映画も結構多いみたいやけど……)
怜「大体、竜華も興味あるんやないのか」
竜華「えっ」
怜「みんなそうや、本当は興味あるけど周りの目を気にして手に取らないだけや」
怜「本当は興味があって仕方ないんとちゃうか?」
竜華「そ、そんなことは……」
竜華(アカン、実はちょっと興味あったなんて言えへんわ)
怜「これ持ってき」
竜華「え、なんなんこれ?」
竜華(”君が主でメイドがボクで”……?)
怜「エロゲーや」
怜「竜華はなんも分かっとらんから、うちが貸したる」
怜「まぁ本来はちゃんと購入して貰うのが一番なんやろけど、今回は特別や」
竜華(別にやりたい訳では無いんやけどな)
怜「ひとまずはそのエロゲーを1日でクリアしてくるんや」
竜華「ええっ!?1日で!?それはちょっと早すぎるんとちゃう?」
怜「何言うとるんや、半日もプレイしてれば1日で全ルートとか余裕やろ」
竜華(どんだけパソコンの前におるねん……)
怜「エロゲーを知るには、まずはエロゲーをする事やからな」
怜「それで竜華がエロゲーはアカンと思うなら、それでもええ」
竜華「怜……」
怜「……」
竜華「……うん、わかった。とりあえずやってみるわ」
怜「……」
怜「……そうか」
竜華「……うん、じゃあうち帰るで?」
怜「ああ」
ガチャ バタム
怜「……ふう」
怜「まさか竜華に見られてしまうとは思ってへんかった……」ガックシ
怜「あれはドン引きされてもうたやろなぁ……」ハァ...
怜「……」
怜「……まあええか」
怜「戦国ヒサでもやろ」カチカチッ
『よし、美穂子。セックスするわよ!!』
『はぁっ……!はあっ……!上埜さん!上埜さんっ!!』
『ガハハ、グッドよ!』
怜「さすがヒサやなぁ、不思議と憎めないわこの主人公」
竜華「……」
竜華(勢いで怜に渡されたけど、どないしよ……これ)
竜華「……」
竜華「ま、まあ!怜にあれだけ言われたことやし、ちょっとだけやってみるのもええかな!」
竜華(早速インストールしよ)カチカチッ
竜華(インストール中にゲームのあらすじも読んどこ)
竜華(えーと、何々……)
竜華(主人公・国広一と親友の井上純があるキッカケで龍門渕家と関わりを持ち、事情を知った龍門渕 透華によってメイドとして仕える……)
竜華(なるほどな、この一ちゃんというのがメイドで透華っちゅー子が主なんやな。それで君が主でメイドがボクで、”きみある”か)
竜華(おっ、インストール終わったで)
竜華(早速やってみよ)カチカチッ
『ステルスモモの独壇場っすよ』
怜「さすがモモやで、暗殺率100%とかチートすぎるやろ」
『カン!ツモ、嶺上開花!』
怜「咲も強すぎるやろ……圧倒的すぎるやないか我が軍は!」
『ガハハ!いくわよ美穂子!そろそろ出すわよぉ!』
『っとぉ――――――ぅ!!」ビュビュビューーーッ
『ああっ……!上埜さんのが、たくさんっ!たくさんきてるっ……!』
怜「ほんまこいつはエロい事しかしておらへんな」
怜「……」
怜「さて、もう夜遅いしそろそろ寝よ」
『――1週間おこなったメイド試験の結果を言い渡しますわ』
『――国広一、龍門渕家に対する損害は断じて許しがたいですわ』
『――ですが、あなたの普段の仕事ぶりや活躍ぶりは、誰よりも見ているつもりです』
『よって損害には目を瞑り、合格――としますわ』
『透華お嬢様……!』
竜華「おお……やったなぁ一ちゃん……壺を割った時はどうなるかと思ったで……」カチッ
竜華「しかしこっちのメガネの子はスタイル良さそうやなぁ……」カチッ
竜華「おもちも大きそうやで……」カチッ
竜華「お嬢様もええけど、こっちの子もええなぁ」カチッ
『……もしかして嫌だった?』
『……そんな事ありませんわ、わたくしだってこうしたいと思ってましたの』ギュッ
『透華……っ!!ぼ、ボクもうっ!!』ガバッ
『はじめっ……!』
竜華「お、おおおっ、ついにはじめちゃんと透華ちゃんのえっちシーンや……!」
竜華「透華ちゃん普段はあんなきつい事言うてるのに、めっちゃ可愛ええやん……」
『は、はじめっ!んっ……あっ……そんなことしたらっ……あっあぁっ!』
『透華っ……透華ぁっ……はぁっ……はぁっ……きもちいいよっ……!』
竜華「……」ゴクリ
竜華(な、なんかヘンな気分になってきたわ……)
竜華(……)
竜華「んっ……」クチュッ
セーラ「おはよーさん」
怜「おはよう」
セーラ「竜華はー?一緒やないのー?」
怜「そういえば見とらんな、もう先に行っとるんかな」
セーラ「せやなー」
-教室-
セーラ「あれー、竜華の奴まだ来とらんよー」
怜「ホンマや、もうすぐホームルームはじまるで」
竜華「はぁ……はぁっ……間に合っわ、お、おはよー」ガララッ
怜「なんや寝坊か?随分遅かったな」
竜華「ちょっと徹夜でプレイしてもうて……」ハハハ...
怜「徹夜て……」
怜(ホンマに半日で終わらす気やったんかいな)
セーラ「怜ー、竜華ー、帰るでー」
竜華「あ、うち怜とちょっと用事があるから
怜「は?用事?別にないんやけど」
竜華「何言うとんの怜」
竜華「……”きみある”の件や」ヒソヒソッ
怜「あ、ああ……」
竜華「という訳でセーラ、うちら先に帰るからな!まなまた明日なー!」
セーラ「お、おう……」
怜「……」
竜華「……」
怜「……で、どうやったん?」
竜華「……あのな、怜」
怜「やっぱりアカンかったか?」
竜華「……ちゃうねん」
竜華「すっっっっっごい良かったんや!!」
怜「……」
怜「は?」
竜華「屋敷の人が全員、一ちゃんはうちの家族や!って守ってくれて感動したわぁ……」
竜華「ともきーもめっちゃ可愛いし、ああ、うちもあのお屋敷で働きたいわぁ……」
怜「そ、そうか……」
怜(めっちゃハマっとるやんけ……)
竜華「ねぇ怜、他には?他にはなんかないん!?うちどんな奴でもやるで!!」ア、コレ カエスデ
怜「そうは言われてもなぁ……」
怜「ゲームの貸し借りはあんましたくないねん。SS書きながら調べたけど、エロゲの貸し借りって限りなくグレーやもん」メタァ
竜華「ぐぬぬ……でもっ……」
怜「あとは自分で買ってもらうしかないなぁ」
竜華「……!」
竜華「よし、じゃあ買いに行くで!」
怜「えっ」
竜華「日本橋にそういうの沢山売っとるんやろ?」
竜華「電車なら1時間もかからんうちに着くから、今からでも行けるで!」
怜「いやいやいや、確かに日本橋は大阪の秋葉原っつーぐらいオタク街やけど」
怜「いきなりどしたん、昨日までエロゲは否定的やったやないか」
竜華「……怜、うちが間違っとったわ」
竜華「正直な所、ホンマにただえっちするゲームやと思ってたわ」
竜華「でも実際にやってみると全然ちゃうんやな」
竜華「上手く言葉には出来へんけど、あそこにはうちの全てが詰まっとる気するわ!」
怜(それはないやろ)
怜「ちょ、まてやまてい!制服で行く気かいな!」
竜華「なんや、何か問題でもあるんか?別に年齢は問題ないやろ?」
怜「有り有りや、年齢条件をクリアしても場所によっては制服では売ってくれない所もあんねん」
怜「だから一度着替えて行った方がええよ。あ、派手すぎると目立つから地味な服の方がええで」
竜華「ぐぬぬ……それならしゃあないわ。じゃあ一旦着替えて駅前に集合しよか!」
怜(って、うちも行くんかいな)
-十数分後-
竜華「それじゃ、行くで!日本橋!!」
怜(テンション高いなあ)
竜華「という訳で日本橋オタロードにやってきたで」
竜華「早速エロゲショップに入るで!!」
怜「ここに来るのも1週間ぶりやな」
竜華「おお、ぎょーさんあるで……エロゲってこんなにあるんかいな」
怜「新品フロアでこれやからなぁ、あっちの中古フロアも含めると相当やで」
竜華「ホンマかいな!これだけ多いと目移りしてまうなぁ」
怜「なんや、買うもの決めておらんの?」
竜華「そこまで考えておらんくて……一応、怜にオススメでも聞こうかなーて」
怜「オススメって言われてもな、こんだけ数あるんやし……」
怜「ジャンルも色々あるからなー、竜華はどういうのがええのん?」
竜華「そうやなぁ……」
竜華「ドラマチックな展開で燃えるような恋愛もええけど、とにかくヒロインとイチャイチャする奴もええなぁ……」
怜「曖昧やなぁ」
怜(割とライトな奴でええやろ)
怜「そうやなぁ、ここ最近うちが面白いと思ったのは”麻雀で私に恋しなさい!”シリーズとかやな……」
怜「”屋上のステルスさん”も良かったわ」 ※本家の人ごめんなさい。
怜「あとは”恋愛0まいる”もええしなぁ……」
怜「って、これじゃあうちの好みになってまうな」
竜華「名前だけ言われても全然わからんわ……」
怜「まぁ実際に手に取って見るのがええよ、うちもそこらへん回ってるから何かあったら声かけてや」
竜華「わかったで」
竜華(選ぶに選べへんわ……)
竜華(実際に手に取って見るのがええらしいけど……)
竜華(とりあえずこれ見てみよ)カタッ
竜華(”マツミノソラ”……姉妹が田舎に引っ越すお話?うちずっと大阪やから田舎系も面白そうやなあ)
竜華(これはなんやろ、”黄昏のエイスリン”……これも岩手の田舎系やな)
竜華(次は……”愛宕姉、ちゃんとしようよっ!”……タレ目のお姉ちゃんと過ごすドタバタコメディ……面白いんかそれ)
竜華(他には……”おしえて!赤土先生”……主人公が先生に性教育を教わるゲーム?こんなんもあるんか)
竜華(んーホンマ色々ありすぎて何から手にとっていいのか分からんわ……)
竜華「そういえば怜は何しとるんやろ」チラッ
なんでや!ハルちゃんかわいいやろ!!
あらたそ~
怜(まだあるかな……と、あったあった!)
怜(”関西の空を越えて”)
怜(関西人ならこれはやっといて損はないで!って知人に勧められたんよなぁ)
怜(以前から気になっていた作品ではあるしな、今日これ買うてくか)
怜(他にもなんかあるかな……っと)
怜(なんや、今週の処分セールは鶴賀ソフトウェアかいな)
怜(”秋色透華”に”みはる”、”明日の尭深と逢うために”に”しあわせ麻雀部”)
怜(うち好きなんやけどなぁ、鶴賀ソフトウェア……)
怜(そういえば竜華はどうしとるんやろ)チラッ
竜華「いやそれがなー、色々手にとって見ても数が多すぎて……」
怜「なんや、最初のうちは何でもええから買うてしまうのが一番や」
怜「エロゲってのは、数をこなしていくうちに自分の好きなジャンル、欲しいジャンルってのがわかってくるもんや」
怜「色々なジャンルを知っておくのも大事やから、最初はとにかく幅広くプレイするのがオススメや」
竜華「とか言われてもなー……」
怜「ホンマに最初はテキトーでええねん、次に手にとった奴をレジへ持っていけばええんよ」
竜華「怜がそこまで言うなら……わかったで!」
竜華「……えっと、”車輪の国、嶺上の少女”やて」
怜「あー、それを引き当ててしまいましたかぁ」
竜華「え、なんかやばいん?」
怜「いや、やばいというか名作も名作やな」
怜「ただ、あまりにも定番作品すぎてニワカ扱いされたりするぐらいや」
竜華「そうなんや、じゃあうちこれにするわー」
怜「せやな、ええと思うよ」
竜華「そんな訳で帰ってきたでー」
怜「なんだかんだで長く居てもうたな、すっかり真っ暗やわ」
竜華「よおし、帰って早速プレイするで!」
怜(すっかりハマっとるなぁ、竜華)
竜華「じゃあうち先帰るで、怜。また明日や!」
怜「ああ、また明日な。遅刻ギリギリになるまで徹夜せんようになー」
竜華「わかっとるってー!」タッタッタッ
怜「……」
怜(ホンマにわかっとるんやろか)
竜華「ふう……ご飯もお風呂も済ませたで!」
竜華「インストールも終わっとるし、早速プレイやな!」カチカチッ
竜華「っと、そや。ヘッドホンもちゃんとつけな」ガサガサ
『まずは自己紹介をしましょう』
『私は宮永咲、読書とお姉ちゃんが大好きです』
『訳あって故郷でとある最終合格試験を受ける事になったのですが……』
『………タ―――――――ンッ』
竜華「開始5分で人が死んだで」
怜「さーって、うちも買うてきた奴やるかー!」ポチッ
怜「この作品は、関西の航空学生……っと、予備生徒やったっけか。が、内戦しとる関西軍と関東軍の争いに巻き込まれていく作品や」
怜「”ひろぽん”の奴が勧めてくれたんやから、多分面白いやろ」
『セーラ、何見ているの!!』
『君はペアを見捨てるパイロット?それとも共に戦うパイロット?』
『じ、自分は常にペアを戦うパイロットであります!!』
『ならどうして、相棒が倒れているのに案山子のように突っ立って見ているの!』
怜「うわ、この赤土教官って人厳しいなあ』
怜「ホンマ、パイロットは地獄やでぇ……」フゥハハハーハァー
怜「しかしまぁ、これはこれで面白そうや」
『咲……』
『……助けて』
『―――任せて』テテーテテテーテテーン
竜華「咲さんかっけーー!!」
竜華「これはイケメンすぎやろ」
竜華「アカン、このゲーム面白くて辞めるに辞められへんわ」
竜華「もう寝なアカンのに、ちっとも寝る気にならへん……」
竜華「……」
竜華「ケ、ケホッ……ケホッ……う、う~ん、ウチちょっと風邪気味やなー(棒)」
竜華「怜に風邪移したら悪いし、明日はちょっとお休みさせてもらおっと……」
竜華「……」カチカチッ
『俺なんか忘れれば、お前はこれからいくらでも幸せになれる。スマン、許せや』
『セーラぁぁぁぁ!!』
『うおおおおおっ!!』
『――――今後も我々の志を継ぎ、戦い続けるすべての人々に幸あらんことを』
『関西……万歳』
怜「関西……万歳!!」
怜「セーラが一人F2で突っ込む所とかカッコ良すぎやわ……」
怜「しかしまぁ戦争なんかやからしゃあないんやろけど、人が死にすぎやろぁ……切ないちゅーかなんちゅーか……」
怜「……っと、もうこんな時間かいな」
怜「……」
怜「ケホッ……ケホッ……あー、うち病弱やからなぁ……たまにはガッコ休んでゆっくりしとこかな(棒)」
怜「……」
怜「これはちょっと休憩して、STEALTH ALBUM2やろ……」カチカチッ
「それでは、皆さん席についてくださいホームルームをはじめますよ」
「……おや、園城寺さんと清水谷さんは欠席ですか」
セーラ「怜と竜華の奴、無断で休むなんて珍しいナー」
セーラ「怜が休む時は大抵俺か竜華に連絡が来るはずなんやけど……」
セーラ「肝心の竜華も連絡ないし、一体どうしたんやろなー」
セーラ「……」
セーラ(帰りに怜ン家と竜華ン家に寄ってくか)
『ああっ……おねえちゃんっ!そろそろ……!んっ!!』
『んっあっ……!ええよっ…‥!沢山うちに…っんあっ!出してええよっ……!絹っ!』
『お姉ちゃんっ……!!うっ……!!』
竜華「あっ……うちもイキそやで……」クチュ
竜華「絹ちゃんっ……絹ちゃんんっ!」クチュクチュ
竜華「―――――っ!」ビクンビクン
竜華「……」
竜華「……ふぅ」
竜華「良かったわ……洋榎ちゃんも絹ちゃんも可愛すぎやわぁ……」
竜華(まさか学校休んでエロゲ買いに行くとは思わんかったけどな)
竜華(愛宕姉、ちゃんとしようよっ!昨日見た時面白いか疑問に思ったんやけど買うてよかったわ)
竜華「よし、もう1回やるで……!」
『お、お姉ちゃんそこはっ…あっ!んなっ……そこはアカンて!』
竜華「はぁっ……はぁっ……ええよ絹ちゃん、かわええで……」クチュクチュ
竜華「うちっ……またっ……イキそっ………―――っ!」クチュ
セーラ「ピンポーン、勝手におじゃまするでー、竜」ガチャ
セーラ「か……」
『ひゃあっ!ら、だめっ!お姉ちゃんっ……!もううちイッてまうの!!』
『ええでっ……!イってやっ……!一緒にイこやっ……!うちもイくでっ!!』
竜華「―――…‥へぁっ?」ビクビクッ
セーラ「」
竜華「」
怜「ふぅ、結局ロクに寝ずにぶっ続けでプレイしてもうたわ」
怜「やっぱかじゅモモは正義やなぁ」
*ひろぽん
がオンラインになりました。 ポンッ
怜「お、ひろぽんがス○イプにログインしよった」
怜「なかなか良い作品教えてもろたしなぁ、報告ついでにお礼も言っておこか」
ひろぽん : ここやで (トントンッ
トキ@ヒサⅨ楽しみや : 関西の空を越えて やったで。なかなかすばらやったわ
ひろぽん : せやろー!すばらやろー!
ひろぽん : ところで、トキのオススメはなんかないんか?うち丁度この前買った奴終わってもうてな
トキ@ヒサⅨ楽しみや : そうやな、なら飛行機繋がりで……”この関西に、翼を広げて” とかどや
トキ@ヒサⅨ楽しみや : ひろぽんは関西モノ好きやろ
ひろぽん : あー、一時期話題になっとったな。結局買うてなかったんよな
トキ@ヒサⅨ楽しみや : ちょっと病弱な子とかおっぱいの大きいロングヘアの女の子とかかわええからオススメやで
ひろぽん : ホンマか じゃあ今後行った時にチェックしてみるわ
トキ@ヒサⅨ楽しみや : おう
怜「ふー、やっぱエロゲ友達とエロゲの会話をするのは楽しいな」
怜(竜華もエロゲにハマっとったみたいやけど、まだまだ深い会話はできへんしな)
怜「……」
怜「暇やな、”宮守ラブラブル”でもやるか」
『ふっ……!はっ……はっ……胡桃っ……イくよっ……!なかに……っ!』
ドピュピュピュッ
怜「シロは凄いなあ、ちっこいの子にも容赦ないでぇ……」
ガチャ
セーラ「と、怜ー!!竜華が、竜華がーっ!!」
怜「あ」
セーラ「」
怜「」
つづカン
一番エロゲっぽいのは間違いなく永水女子
ワカメ色に染まる坂
Entry ⇒ 2012.10.16 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
淡「アコ。早く脱いで」憧「くっ……」
憧「……」
淡「アコがいうこと聞かなかったら阿知賀の大将さん……、潰すから」
憧「やめてっ!」
淡「へー。必死」
憧「なんでも言いなりになるからシズに酷いことするのだけは……」
淡「大丈夫、私の好みはテルーみたいに目の鋭い子」
淡「そしてあなたの目はテルーやスミレよりも更に私好み」
淡「アコをはじめて見たとき、まったくもって私の理想そのままで驚いたんだよ」
淡「アコが言いなりになってくれるなら悪いようにはしないから、ね?」チュッ
憧(シズ……)
憧「……」
淡「ふふ。ほっぺがリンゴみたいにまっかっか」
憧「あっ、赤くなんてなってない!」
淡「意地はっちゃって」
憧(あたしがシズ以外の相手に赤面するなんて、そんなの、ありえない!)
淡「……」チュッ
憧「きゃっ!?」
淡「あはは。きゃっ、だって。可愛いー!」
憧「……」
淡「ほっぺのリンゴにチューしただけなのにねー。うぶなんだー」
憧「何よ」
淡「このままじゃ不平等だから私も脱ぐね」
憧「好きにすればいいじゃない。どうせあたしに拒否権はないんだし」
淡「ま、そうなんだけどね」バサッ
淡「それでもせめて少しでも心の距離を近付けたくて」バササッ
憧(……肌、白いなぁ)
淡「あー。アコが私の身体じろじろ見てるー」
憧「はぁ!? だだ、誰がそんな!」
淡「やーい、エロエロー!」
憧「あんたにだけは言われたくない!」
憧「っ……」
淡「胸がドキドキいって、ほっぺがリンゴで、まるで私より憧の方がこの状況に夢中みたいだね」
憧「誰が……。シズのことがなければ絶対こんなことしないわよ」
淡「ふふん。説得力ない」
憧「……」
憧(目を閉じて、想像するんだ)
憧(あたしを抱き締めてるのは大星淡なんかじゃない。シズだ)
憧(あたしはシズに抱かれてるんだ。シズに……)
淡「私は、お・お・ほ・し・あ・わ・い、だよ」
憧「……」
淡「あなたをはじめて抱いている女は大星淡。タカカモシズノじゃない」
淡「現実逃避っていうんだよ、そーいうの」
憧「いちいち聞かなくても好きにすれば」
淡「違う違う、そうじゃないの。ただキスするんじゃ足りないよ」
淡「私は、アコから私にチューして欲しいんだ」
憧「あたしからあんたに……?」
淡「うん。ねー、いいでしょ?」
憧(嫌だ嫌だ嫌だ)
憧(自分からこいつにキスするだなんて、そんなの……)
淡「大将戦……、忘れてないよね」
憧「この卑怯者!」
憧「……」チュッ
淡「ふふっ。アコにキスされちゃったー」
淡「はじめては一度だけなの」
淡「この先アコがどんなに願おうが、大金を積もうが、タイムマシーンを発明したって……」
淡「アコのファーストキスは私。もうくつがえらない」
憧「……んなこと、わかってんのよ」ギリッ
淡「怒ってる怒ってる。でも怒った目も可愛いよ」
憧「……」
淡「嫌なヤツだよね、私。ごめんねアコ、こんなんで」
憧「謝るぐらいなら終わりにしてよ」
淡「それはダーメ。悪いことだとわかりつつも止められないのが恋なんだよ」
憧「恋……?」
憧「こんな最低のやり方で、しかも面識もまだほとんどないのに! これのどこが恋だっていうのよ!」
淡「そっかー。アコは恋ってものを綺麗な宝石かなにかと勘違いしてるんだー」
憧「……」
淡「ほら。アコはこんなに濡らしてるでしょ」サワッ
憧「ちょっ、やだっ!」
淡「私もおんなじ。アコを目の前にして、胸が高まって、あそこが落ち着かないの」
淡「恋っていうのは人間の中のドーブツ部分に過ぎないんだよ」
淡「だから理性じゃ御せないし、理由がめちゃくちゃでも恋できるの」
淡「どうやら憧のドーブツ部分は私に興味津々みたい」ナデナデ
憧「だとしても……、あたしは、シズ一筋だから」
淡「一途なんだね」
憧「ずっと好きだったから……」
淡「へー」
憧(シズ……)
淡「だいたいさ、不公平なんだよねー」チュッ
憧「何がよ……」
淡「アコみたいにキラキラした世界を信じて生きていられる子がいるってのに、片や私は……」
憧「あんたは?」
淡「……ねえアコ。想像できる?」
淡「少し前まで仲良しだった相手から嫌われる気持ちが」
憧「……?」
淡「アコは大好きな相手に話しかけても無視されるようになったことがある?」
憧「ない、けど……」
淡「ズルいよそんなの。なんで私だけ」
淡「私はただ自分を見てほしかっただけなのに……」
憧(さっきから何を言ってるのこの子?)
憧(支離滅裂すぎる、けど……。なんでだろう、何か……)
憧「……」
淡「麻雀が上手くなれば誉めてくれたから、そのために頑張ったりして」チュッ
憧「……」
淡「それが何、ある一線を越えたら化け物呼ばわり」
淡「だから私、人間の中のドーブツしか信じないの」
淡「損得とか利害とか理性とか、そんなのよりこっちの方がよっぽど信用でるよ」
淡「だからドーブツ部分が大好きだって囁いたアコに恋しようと思ったの」
淡「恋はドーブツ。綺麗なキラキラなんかじゃない」
憧「……事情はよくわかんないけど。あんたの話聞いててわかる部分もあったよ」
淡「えっ?」
憧「あたしも気を惹くための努力が上手くいかずに悲しくなることはあるから」
淡「私とアコとじゃ事情が違うよ。一緒にしないで」
淡「……」ガジッ
憧「いたっ!?」
淡「なんか見透かしたような言い方されるとムカつく」
憧「あーもう……。痣になってる……」
淡「……痛いことしてごめんね。謝るから私のものになって」ギュッ
憧「だからあたしはシズに」
淡「無理だよ。どうせ叶わないって」
憧「だとしても……」
淡「こんなにビチャビチャなのに一途気取って」スリスリ
憧「……っ!!」
淡「アコ。私アコならずっと好きでいられそうだよ」
淡「だからアコも私のこと好きになって」
憧(凄く必死に、あたしの太ももへアソコをこすりつけて)
淡「私、もうっ……、こういう恋しか……、でき、ないの……」スリスリ
憧(必死にあたしにすがりつこうとして……)
淡「だからアコ。最後の拠り所をっ……、否定、しないで……」スリスリ
淡「アコ……」スリスリ
憧(なんだか他人事じゃないみたい)
憧(あたしだって、明らかに片想いだと分かりつつもシズに振り向いてもらおうと、必死で……)
憧「淡」ギュッ
淡「アコ……?」
憧「やっぱり根っこは同じなのよ。あたしとあんたは……」ギュッ
憧「そうね」
淡「なのに抱き締めてくれるの?」
憧「うん。嫌だった?」
淡「嫌じゃない、けど……」
憧「じゃあいいでしょ」
淡「……うん」ギュッ
憧「……」
淡「……ふふ、アコ落ち着いてるふりしてるけど心臓がマッハで動いてる。やっぱ一年坊だねー」
憧「あのねー。こちとらいっぱいいっぱいだっての。っていうかあんたも一年だし」
淡「うん。同じだね」
淡「なんだかドーブツのドキドキよりあったかくなってきた……」
憧「……」
淡「アコはシズノが好きなんだよね?」
憧「うん」
淡「じゃあ私は?」
憧「そうね。姑息な手を使うし、むりやりファーストキス奪ったし、嫌い……」
淡「……」
憧「……になりそうなものなんだけど、不思議とそんなこともないかな」
淡「物好きだね」
憧「あんた歯に衣着せないわよねー……」
淡「でも今はその物好きに感謝!」チュッ
憧「わっ!? そ、そういう不意打ちはやめてったら!」
淡「アコ……。シズノはアコにこんなことしてくれる?」
憧「それはまだ、だけど……、いつかはきっと」
淡「私ならアコにちゃんと応えてあげられるよ? いつかもきっともつかないよ?」
淡「淡ちゃんが好きです?」
憧「そう、アワイが……、って何言わせようとしてんのよ!」
淡「あはは、ノリ突っ込み」
憧「あたしはさ。何度も言った通りシズが好きなの。この気持ちは裏切れないよ」
淡「ふーん。でもその選択って、アコの中にある別の気持ちは裏切ることになるよね」
憧「別の気持ち……?」
淡「そ。私を欲しがる気持ち」
憧「ばっ! そ、そんな気持ちなんて!」
淡「ない、とは言わせないよ。だってアコ、ドキドキしてるんだもん」
憧「うっ……」
淡「アコが綺麗な恋を好きなのはわかったよ」
淡「でもね。キラキラの恋心と、ドキドキするエッチな気持ちと、そこに尊いとか劣るとかいう違いは無いと思うの」
淡「だから……、エッチな気持ちに身を任せちゃおうよ。そしたら私、アコ一筋になってあげるから」
憧「あたしの牌譜を?」
淡「そしてわかったことが一つ! アコは不確実な賭けよりも、手近な現実を選ぶ!」
憧「いや。それは麻雀に限ったことだから」
淡「ううん、違うよ。牌譜はその人の人格や価値観まで写すの」
淡「期待値よりも目先の確実を選ぶ。アコ、そういうとこあるでしょ?」
淡「マウストゥーマウス!」チュッ
憧「むぐっ!?」
淡「今一番アコのそばにいるのは私だよ」
淡「アコのエッチなムラムラに一番応えてあげられるのも、私だよ」
淡「アコ……。ここまで言っても求めてくれないの? 私は――」
憧「淡……」ムニッ
淡「あ……」
憧「淡、あたし……」ムニムニ
淡「えへへ。私の太もも気持ちいいでしょ?」
憧「うん……」ムニムニ
淡「憧から私に触ってくれて嬉しい」
憧「あたしこんなことしていいのかな?」チュッ
淡「身体がしたがってることはしていいことなんだよ」チュッ
憧「そう……、なの?」
淡「そうだよ。初志貫徹の美徳なんて後付けの価値観」
淡「人間の本音を一番よく知ってるのは身体なんだから」クリッ
憧「ま、待って! そっちは、本当に恥ずかしい……」
淡「でも気持ちいいんでしょ?」クリクリッ
憧「……うん」
淡「かわいいよアコ。だから面倒なもの全部投げ捨てて、私に飛び込んでよ」
淡「今、アコの身体が本当に欲しがってるのは、シズノじゃなくて私なんだから」
憧「……」ツンツン
淡「ふふっ。こうされるの好き」ナデナデ
憧「ちゅー……、ちゅっ」
淡「あのさ、アコ……、んっ。ここは2回戦までぇ……、選手控え室としてっ、使われてた部屋なんだ……」
憧(どうしてこのタイミングでそんなことを?)チュッ
淡「だからインハイ団体戦が終わるまで……、はっ、飽き部屋なん、だけど……」
憧「へ?」
がちゃ
穏乃「憧……?」
穏乃「えーと、呼ばれて……、ととっ、とにかく! 失礼しました!」
ばたん
憧「あ……」
淡「アコ。私の牌譜、見たことある?」
淡「麻雀をする時、普通の人にとって見渡す世界は雀卓の上だけになる」
淡「だけど私は違う」
淡「私は雀卓の外側を、世界の外側を、宇宙を、躊躇わずに利用できる」
淡「ちょうど今みたいに、ね。私は遠慮も容赦もしないんだよ」
淡「アコが欲しいの」
淡「そんな上着だけはおってどこいくつもり?」
憧「あた、し……、追いかけてシズに説明しなきゃ……」
淡「なんて説明するの?」
憧「それは……」
淡「脅されてキスしてましたー。ペッティングしてましたー」
淡「そんな説明であの子の心は元通りになると思う?」
憧「……」
淡「今、アコの手の中にあるのは全部危険牌」
淡「振り込む相手は……、私」ギュッ
憧「あ……」
淡「恨んでくれてもいいけど離さないんだから」ギュッ
淡「泣いてもいいけどこっちを見て」
憧「あたしっ……、シズのことずっと好きだったのに……」
淡「好きならむくわれるとは限らないんだよ。自分から動かなきゃ」ナデナデ
淡「まあもう遅いんだけどね」
憧「……ぐすっ」
淡「でも大丈夫。アコには私がいるから」サワッ
憧「あっ」
淡「好き好き」サワサワッ
憧「うっ……、く……」
憧「淡……」ギュッ
淡「アコ」ギュッ
憧「うっ、うん……」
淡「えいっ。ちゅっちゅっちゅ」
憧「……ちゅっ」
淡「ちゅっちゅっ」
憧「ちゅっ……」
淡「えへへー。きちんとアコからもキスしてくれて嬉しいよ」
憧「そういうことあんま口に出して言わないでよ……」
淡「やーだよん。アコの頭がふわふわしてるうちに淡ちゃん大好きって気持ちを定着させたいんだもん」
淡「こう見えて私だって必死なんだからね?」
憧「えっ?」
淡「たまにはアコの方からしたいことを選んでよ。なんでもいいよ」
憧「……」
淡「あ、でも、あんまり痛いのとかは怖い……、かな」
淡「アコのためならできる限りは頑張るけど」
憧「じゃあ、太もも……」
淡「太もも?」
憧「あたしと淡の太ももをすりすりってしたい……」
淡「なるほど。アコは太ももフェチと!」
憧「……うん」
淡「そういえばさっきも私の太ももさわさわしてきたもんね」
淡「好きなんだね、女の子の太もも」
淡「気持ちいいね」スリスリ
憧「うん……」スリスリ
淡「私、思ったんだけどね」
憧「……?」スリスリ
淡「アコがシズノのこと好きだったのって、あの子がいつも太もも出す格好だったからなんじゃない?」
憧「えっ……?」
淡「つまりー。けっきょくシズノへの気持ちも、根本たどればエッチ心に繋がるってわけ」
憧「違う! あたしはただ純粋に!」
淡「でもどうせシズノでオナニーしたことあるんでしょ?」
憧「それ、は……」
淡「そうだ。妄想の中でシズノにしたこと、全部私に再現してよ」
淡「そしたらきっと絶対もっと気持ちよくなれるよ?」
憧「あんたはあたしのシズへの気持ちまで踏みにじろうというの……?」
淡「だってアコのこと全部まとめて好きになりたいんだもん」
淡「だから恋を私で上書きしちゃおうよ……、ね? ムラムラしてるんでしょ?」
憧「淡……」
淡「愛してるよ」チュッ
憧「……たしも」
淡「ん?」
憧「なっ、なんでもない!」
淡「そうー?」
憧(ああもう、なんなのよあたしは!)
憧(淡相手にドキドキして、これじゃまるで本当に気持ちを上書きされちゃったみたい……)
憧(淡……、淡……)
淡「うん。アコがシズノにしたかったことは全部して」
憧「それなら足を大きく開いてくれる?」
淡「えっ!? それはー……、さすがに恥ずかしいような……」
淡「でっ、でもアコのためだもんね! わかった開くよ!」
憧「……」スッ
淡「って、わーっ!? 何そんなに顔近づけてるの!?」
憧「ちゅっ」
淡「あ、あの……、私のアソコ、臭くない? 形とか大丈夫かな?」
憧「うーん。エッチな匂いかな」
淡「それって嫌な匂い……?」
憧「ううん。そんなことない」チュッ
淡「よかったぁ……」
淡「えへへ……。そ、そうかな」
憧「ちゅっ、ちゅ、ちゅっ」
淡「……」
憧「どう、かな? 気持ちいい?」
淡「うーん。ぎこちない感じだしまだあんまり気持ちよくはないかなー」
憧「うっ……」
淡「でもね。代わりにとっても幸せな気持ちだよ!」
憧「幸せな気持ち?」
淡「うん。アコに女の子の部分をたくさんキスしてもらって、とってもキュンキュンするの」
憧(ぐっ。不覚にも可愛いと思ってしまった……)
淡「ところでアコ。妄想の中では、アコはキスするだけだったの?」
淡「自分がシズノにされる妄想はしなかった?」
淡「つまりしたんだね。シズノにまん……、えっとあの、アソコをキスされる妄想」
憧「うん……」
淡「じゃ、私が代わりにキスしてあげる!」
憧「い、いいってそんな! ハズいって!」
淡「いいからいいから。ほら、足を開いて?」
憧「……うん」
淡「わっ。ぬらぬらしてる! アコ興奮してるねー」
憧「だだだって! 仕方ないでしょこの状況じゃ!」
淡「ぺろっ」
憧「ひゃっ!?」
淡「へー。憧ってもしかして敏感?」
憧「かも、しれない……」
淡「エッチな身体だこと」
憧「言わないでよ、もうっ……」
憧(自分のアソコに淡が吸い付いて……)
淡「ちゅ。ちゅぅー、ちゅ」
憧(変な気分)
憧(だんだん淡が愛しくなって……)
憧(ハッ! 違う違う! あたしシズが……、シズが……)
憧(……こんなことしておいて、今さらシズが好きなんて言う資格あたしにあるのかな?)
淡「かぷっ」
憧「んっ……」
淡「ちゅー、かぷっ」
憧「やっ……、やぁ……」
TELLLLL TELLLLL
憧(あ、え……? 電話?)
憧(携帯、携帯、と。相手は……、シズ!?)
淡「出ないで」
憧「え?」
淡「シズノの電話に出ないで」
憧「や、それは……」
淡「出ないで」ギュッ
憧「あ、淡っ!?」
淡「私だけ見てよ」クニクニ
憧「ちょっ! 指が中に入ってきて……」
淡「ちゅーっ」
憧「んぐ!?」
憧(キス、今度は舌まで入れられちゃった)
淡「ん、んっ……! んっ!」
憧(たくさん舌が絡んでくる……。淡は、電話からあたしの気を反らそうとこんなに必死で……)
憧(もしかしたらまだ引き返せるかもしれない……)
TELLLLL TELLLLL
憧(シズは自分からあたしと対話しようとしてくれている)
TELLLLL TELLLLL
憧(だから今ならまだ……、でも)
淡「アコ……」ギュッ
憧(淡はこんなにも一生懸命あたしに抱き付いてきて……)
憧(あたしは……)
憧「……」
TELLLLL TELL カチッ…
淡「電話、切っちゃったの……?」
憧「うん」
淡「私のために?」
憧「……うん」
淡「アコーっ!」ギュッ
憧「淡……」
淡「えへへ、アコぉ、嬉しいよ……」
憧「うん」ギュッ
憧(ああ。これでもうあたしは本当に選んじゃったんだな)
憧(さよならあたしの初恋……)
憧「ああ、うん」
憧(いつかシズと……、なんて考えたこともあったから)
淡「あのね。私、貝合わせがやってみたいの」
淡「あんまり気持ちよくないって話も聞くけど……」
淡「でもね! それ以上に、アコと私の大事なとこくっ付け合いたいなって思うんだ!」
憧「わかった。してみよう」
淡「うん!」
憧「うーん。位置を合わせるのってけっこう難しいね」
淡「そだねー。んしょ、んしょっと」ピトッ
憧「あっ……」ヌルッ
淡「うわー! こうやって合わせるだけでなんだかエッチな感じ!」
憧「あはは、たしかに。……ドキドキしてきた」
淡「私もドキドキで叫びたいぐらいだよ」
淡「ただ、この姿勢だと上の口同士ではキスできないねー」
憧「それは後からだってできるよ」
淡「うん! そうだよね!」
淡「これが終わっても、私アコとキスできるんだよね……?」
憧「うん」
淡「じゃ、じゃあ! シズノに手出しするって脅しがなくなってからは?」
憧「脅しがなくなってからも……、できるよ、キス」
淡「やったー!」
淡「思わない。だってアコは嘘も建前も嫌いな子だもん」
憧「どうしてそんなこと断言できるのよ」
淡「ふふっ。それも牌譜からわかるって言ったらどうする?」
憧「いやいや、牌譜心理学はなんでもありかい」
淡「でしょー、凄いでしょ! ……なんてね。さすがにこれはジョーダン」
淡「アコがそういう嘘を嫌いそうだってのは、本人を見てればなんとなくわかるよ」
憧「んなこと嬉しそうに言われたら……、ますます裏切れなくなるじゃない」
淡「やったね嬉しい誤算だ」
淡「……さ、動くよ」
淡「なんかっ……、気持ちいとこが上手く、こすれあう、ね……」クチュクチュ
憧「そう、ね……」ヌルヌル
室内に湿った音が響く。
息づかいが熱を帯びていく。
淡「もしかしてっ……、私と、アコって……」
憧「あっ、あっ……」ヌルヌル
淡「身体の相性バッチリなんじゃないかなぁ……?」
憧「そう……、かもっ」ヌルヌル
淡「なんだか私よりアコの方が夢中で腰を動かしてるね」
憧「だっ、て……」ヌルヌル
淡「かわいい。好き」
その淡の言葉に、胸の中で血潮がひときわ大きく波打つ。
跳ねるような水音がして、更に大きな快楽が下腹部へと広がる。
淡「アコっ……、アコっ……」ヌルヌル
淡はあたしの太ももを掴んで姿勢を安定させると、より強い力で股間をこすり付けてきた。
無理やり自分の身体を使われるような感覚に、気持ちの昂りがますます勢いを増していく。
憧「あっ……、……ぁ」
堪えようとしても、自分のものとは思えないような細く絞る声が漏れでてくる。
憧「あわっ、い……」クチュクチュ
淡「うっ……、ん……」クネクネ
淡「はっ、はあっ……、はあっ……」スリスリ
憧「あわいの、ことっ……」ヌルヌル
淡のことが好き。
そう口にした瞬間、淡の身体が小さく震えた。
淡「ううっ」ピチャピチャ
淡の達した震えが身体から直に伝わってくる。
事後。
絶頂の感覚に頬を染めながらも、淡は泣いていた。
淡「アコを手に入れるためにひどいやり方して……、そのくせ一人で先にいっちゃって……、ごめんね……」
憧「だい、じょうぶ……」
淡「え……?」
憧「淡がいった時の震えで、あたしも……、一緒にいけたから」
淡「……ふぇぇ」
憧「ちょっと淡!?」
淡「アコぉ……、好きだよアコぉ……」ギュッ
憧「……うん。あたしも」ギュッ
憧「うーん。ちょっと疲れたかな」
淡「私もー。じゃ、晩御飯食べにいこうよ!」
憧「あ、それならちょっと部のみんなに連絡いれなきゃ」
淡「シズノに電話かけるの……?」
憧「……」
淡「かけるんだね……」
憧「大丈夫」
憧「もう……、割りきった、から」
淡「ウソ」
憧「……今は嘘でも、本当にするから」
淡「そっかー……。わかった。アコを信じる!」
「うん。あの人とは……、妙に気が合って、恋人みたいな関係になっちゃった」
「え? そんなの嫌だ、って……」
「そんなこと言われても……、もう、遅い、よ……」
「……」
「うん。ありがとう」
「……ごめんね」
「そうそう。晩御飯、外で食べてくるから玄達にも伝えておいてくれる?」
「うん……。大丈夫、ちゃんと帰るから……」
「またね。バイバイ」
憧「どうして淡が沈んだ顔するのよ」
淡「だってアコ、泣いてるから……」
憧「……」
淡「ごめんね、アコ。ごめんね」
憧「……淡」
淡「アコ……。それでも私、アコが欲しいの……」ギュッ
淡「はじめはただ好みってだけの理由だった」
淡「でも今は、私の全部がアコを求めてるの……」
憧「うん……。それはあたしも」
憧「今はちょっと、大人になる痛みに泣いてるだけ、だから……」
憧「後悔はしてない、よ……」
淡「本当?」
憧「うん……」
淡「よかったぁ……」
インターハイ会場の外に出ると辺りはすっかり日も落ちていた。
生まれ育った阿知賀とは違う、どこか無機質な風景。
「アコー、暗くて道がよく見えなーい」
淡はわざとらしくおどけながら腕を深く絡めてきた。
ひときわ小柄なシズとは違うその高さに、自分の選択の意味を改めて知る。
「ここの空は星がほとんど見えないんだよね」
「うん」
「星といえば……、もしも今流れ星が見えたら、アコはなんてお願いする?」
「願い事? そうね、あたしの願いは……」
「願いは?」
私の、願いは――、
水遊びした河原。
何度も一緒に通った部室。
全部全部、追い払って。
「……ずっと淡といっしょに、かな」
「わー! 私もおんなじ!」
都会の夜風はほんの少しだけ大人の匂いがした。
このほろ苦い空気を浴びて、きっと夢見がちな少女だったあたしも変わっていくのだろう。
胸の痛みを夕食の考え事で無理やり追い出したりなんかして――
おわり
Entry ⇒ 2012.10.15 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
照「保健室の荒川先生」
宥「失礼します……」
憩「弘世さんに松実さん。ってことは……あはは、今日もやってもうた感じか」
宥「ごめんなさい……」
菫「本人は大丈夫だと言い張るんですが、何分血が出てて……」
憩「傷口そのままにしとくんは危ないからなぁ。消毒するからこっち来てー」
宥「はい……」
菫「宥の運動音痴は筋金入りだな……」
憩「今日はどうしてもうた感じ? この前はバレーで転けて、その前はバスケで突き指してたけど」
宥「マラソンの最中に足がほつれて転んじゃって……」
憩「はは、マラソンで転んだか。松実さんはおもろいなぁ」
菫「笑いごとじゃありません……」
憩「うーん、別に気にせんでもええと思うで? ウチはこれが仕事やし」
憩「弘世さんもこうやって二人で授業抜け出せて、満更でも無さそうやし」
菫「なっ……」
宥「えっ……?」ドキッ
憩「こんなちょっとした怪我でおんぶしてくるなんて、なぁ?」ニヤニヤ
菫「わ、私は宥の大事を取っただけでそんな下心は……!」
憩「あはは、冗談冗談。ほい、終わりっと。二日もすれば綺麗に治ってると思うわ」
宥「あ、ありがとうございます」
宥「ごめんなさい……」
憩「こんなしょっちゅう来られるとワザと怪我してるんかな思ってまうわ」ケラケラ
宥「そそそ、そんなことは……!」
憩「保険委員でも無いのに毎回弘世さんが付き添ってきたり、ホンマ二人は仲良しやね」
宥菫「「……」」カァァ
憩「そんじゃま、いつもどおり見学届け渡しとくわ」
憩「……寄り道してもええけど、怪しまれん程度に戻りや?」ニッコリ
菫「寄り道なんてしません!!」
>>12
憩「どうぞー」
玄「失礼します……」
憩「はいはい。あ、初めてやんな? この入室確認書ぱぱっと書いちゃって」
玄「は、はい」カキカキ
憩「ありがとー……ふむふむ、松実玄さん。3年生に松実宥さんっていうお姉さんおったりする?」
玄「え、どうしてお姉ちゃんの名前を……?」
憩「お姉さんはここの常連さんやからなー。二回も来てくれれば顔と名前は覚えるわ」
憩「うん、確かにお姉さんによく似てる……」ジーッ
玄「そ、そんなにまじまじ見られると恥ずかしいです……」
玄「ほ、本当ですか!?」
憩「まあ大した怪我やないから」アハハ
玄「そうですか……」ホッ
憩「二人は仲良さそうやね、そんなにも心配して」
玄「お姉ちゃん昔から怪我とかよくしてたし、目が届くところにいない時は少し不安です……」
憩「そっか。でも大丈夫やと思うで? 松実宥さんには過保護なくらい親身に接してるクラスメイトがおるから」
玄「えっ……そ、それって、誰ですか……?」
憩「弘世菫さん、って子なんやけど、知らん? 濃い青髪でロングヘアーで、真面目そうな弓道部の子」
玄「もしかして、あの時の……!」
玄「す、すみません、こっちの話です……」
憩「二人ともホンマに仲良くてなぁ。よく二人でここに来るんやわ」
玄「それは一体どういう理由で……?」
憩「体育の時間に怪我した松実さんを弘世さんが連れてくる、ってパターンがよくあるかな。週1くらい」
玄「そうですか……」
憩「お姉さん取られたみたいで寂しかったりする?」
玄「っ……い、いえ。そんなことは……」
憩「察するに、嫉妬半分安心半分って感じやね」
憩「まあスクールカウンセラー兼任やから、そっち方面の勉強もしとるんやわ」ニコ
玄「なるほど……」
憩「たぶんお姉さん昔からあんな感じで、自分がしっかりせえな、とか、お姉ちゃん守らな! とかっていう気持ちが強かったんやろうけど」
憩「お姉さんもええ年やし、ちゃんとお姉さんのこと見てあげてる子も今はおるから、妹ちゃんがそこまで気張らんでええと思うで?」
玄「……」
憩「まあお姉ちゃん好きで、お姉ちゃん離れでけへん、って言うんやったら話は別やけども」アハハ
玄「そ、そんなことないです! たぶん……」
玄「自分のこと……」ドキッ
憩「用件に相談、って書いてあるけど。今日はどういった相談? お姉さん関係あったりする?」
玄「お姉ちゃんのことは……気になるけど、しばらく見守ろうと思ってて」
憩「なるほど」
憩(思ったより理性的な子やなー)
玄「今日は、その……別の相談が」
憩「ふむふむ。内容はどんなもん?」
玄「先生は、そのっ……初対面の相手に好き、って言われたら、どうしますか……?」
憩「……えっ?」
玄「こ、恋、かどうかは、自分でも正直分からないです……ただ……」
憩「とりあえず、何があったか説明してくれる?」
玄「は、はい」
―――――――――
憩(要約すると、初対面の先輩に告白されてキスを迫られたそうです)
憩(そして流されるがままに唇……とまではいかなくてもおでこにキスされたと)
玄「……どう思いますか、先生?」
憩「ど、どう思うって言われても……」
憩(すごい話やなぁ、っていうのが正直な感想なんやけども……)
玄「で、でも! これって普通じゃないですよね……? 普通だったら、付き合ってください、とか、お友達になりましょう、とか……」
憩「いくら惚れたから言うても、いきなりキス迫るようなアホはそうおらんとは思うわ……」
憩(それで迫られるがままにキスされたこの子も相当アレやと思うけど……)
玄「あの人はどういう気持ちで私にあんなことをしたんでしょう……」
玄「キスし終えると、お礼だけ言って帰っちゃったし……」
憩「うーん、どういう気持ちで……」
憩(ホンマに惚れとるんやったらいきなりそんなこと出来るわけないし)
憩(ってことは……罰ゲームとか? いや、そんなことでそこまで必死にはならんか)
憩「うーん……」
玄「そう、ですか……」
憩「相手さんに訊いてみるのが一番早そうやな……名前とか分かる?」
玄「えっと……3年生の宮永照さん、です」
憩「!?」
憩「え、そ、それはホンマなん? 間違いとかじゃ……?」
玄「赤い髪の毛でおもちがあまり無くて、すごくカッコいい人、ですよね……?」
憩(初対面の相手にはあの子がカッコ良く見えるんか……てかなにやってんねん……)
憩(あー、でも。なんとなーくやけども事情が見えてきたような……)
憩「とりあえず相手側のことは置いとこか。またウチから詳しく話聞いて、また妹ちゃんに知らせるわ」
憩「それで、妹ちゃんは好きって言われてどう思ったん?」
玄「え、えっと……ドキドキ、しました……」
憩「そっか。それでなし崩しでもキスされて、相手のことが気になって仕方が無いと」
玄「はい……」
憩(これは呼び出しやなぁ……場合によっては鉄拳制裁せんと)
玄「これって、その……恋、なんでしょうか……?」
憩「う、うーん、そうやなぁ……他人に好意向けられて嫌な気分する人なんておらんし」
憩「そういう嬉しいと思う気持ちと恋心をごっちゃにしとる可能性がある、と思うかな」
玄「なるほど……」
憩「ウチもめちゃくちゃタイプの人に好きって言われたり」
憩「でこチューさせてって本気で言われたら、冷静じゃなくなってええよ言うてまうかもやし」アハハ
玄「そうですよね……わ、私が別段おかしいってわけじゃないですよね……」
憩「う、うん。だからそんなに思い詰めんでも大丈夫やで。でこチューくらいスキンシップみたいなもんやよ」
玄「そうですよね! スキンシップですよね!」
憩「そうそう。なんならウチでも妹ちゃんにでこチュー出来るで」ニッコリ
憩(とりあえず、どんな事情があっても妹ちゃんが傷つかんようにだけ心持ちを上向きにせんと)
玄「ありがとうございます。私、直接訊けるような勇気なかったから……」
憩「まあそれが出来ればウチに相談なんてせえへんわな」アハハ
玄「荒川先生、今日はどうもありがとうございました。おかげで、胸がすっと楽になりました」
玄「私、ずっとそのことばかり考えてて、自分はおかしいんじゃないかと思っちゃって……」
憩「妹ちゃんは何にもおかしくないから心配せんで大丈夫やで」ニコ
玄「先生……」ウルウル
憩(この子も涙もろいんやなぁ)
玄「あっ、もうこんな時間……料理研でミーティングあるので、失礼します」
憩「はーい。思い詰めすぎず、気楽に構えなさいね」
玄「はい! 改めて、ありがとうございました」ペコリン
憩(とりあえずは相談解決……かな?)
―――――――
憩「今日はまあ、今のとこはいつもくらいの訪問者かな……」
胡桃「失礼します」ガラ
憩「あ、胡桃ちゃん。こんばんはー」
胡桃「こんばんは先生。今日も……いいですか?」
憩「ええよ。ほんじゃ、早速しようか」ニコ
胡桃「よろしくお願いします」ペッコリン
憩(鹿倉胡桃ちゃん。2年生。その小さい身体がコンプレックスなのか、月2回ほどこうやって身長を測りに来ます)
胡桃「今月こそ伸びてるはず……!」
憩「えーっと……130cm。ぴったりやね」
胡桃「み、ミリも変わってないですか……?」
憩「残念ながら」ニコ
胡桃「そんな……」
憩「みんなまったく伸びへんなぁ。1年生の頃から測ってるつもりやけど、誰一人として成長してないような気がするわ」
憩「この前も天江さんと薄墨さん来とったけど、まったく変わり無しやったし」
胡桃「あの二人も……!」
憩「ウチとしては同じ学年クラスなんやし、三人まとめて来て欲しくはあるんやけども」アハハ
憩「まあそうやわな。普段仲良くしてても、身長に関してはみんなライバルやもんな」
胡桃「衣に負けたくも無いし、初美にもいつか勝ちたいです。そのために毎日牛乳飲んで9時に寝てるのに……」
憩(優等生やなぁ……てか三人ともぱっと見まったく変わらんけども)
胡桃「先生……どうすれば身長って伸びますか?」
憩「難しい質問やなぁ。一般的には胡桃ちゃんがしてるみたいな方法って言われとるけど、結局は遺伝が大きいから」
胡桃「い、遺伝……」
憩「まあその遺伝もあやふややから、体質って言った方がええかな?」
憩「身長伸びる人はなーんもせんでも180cm超したりするし、逆に胡桃ちゃんらみたいな子たちもおるし」
憩(かなり珍しいけども)
胡桃「背が高い人って言えば……」
憩「胡桃ちゃんらと同じクラスで2年の井上さんとか、あとは有名人で3年生の姉帯さんかな」
胡桃「純に姉帯さん……」
憩「まあ二人とも女の子にしてはかなり規格外やね。姉帯さんは井上さんもびっくりしてたくらい大きいけど」
胡桃「その二人に話を訊けば、何かヒントが……!」
憩「でもまあ正直、あんまし期待できんとは思うかなぁ」
憩「あの子らも胡桃ちゃんらがちっちゃいのと同じ理由でおっきい訳やし」アハハ
胡桃「ですよね……」はぁ
胡桃「あ、初美!」
憩「あらら。なんとも奇遇やね」ニコ
初美「な、何してるですか胡桃? こんなところで」
胡桃「そ、そういう初美こそ保健室に何か用なのかな? 超健康優良児のクセに保健室なんて」
初美「うるさいですねー……私だって保健室に用の一つや二つくらい……」
憩「はっちゃんも身長測りにきたのー?」
初美「せ、先生それは言わない約束!」
憩「まあまあ。胡桃ちゃんもよう来とるから」
胡桃「ちょ」
初美「同類はみんなライバルですよー……!」ゴゴゴ
胡桃「ただでさえ小さいのにその中でも小さいなんて屈辱以外の何物でもないからね……!」ゴゴゴ
憩「あはは、なるほどなー」
憩(二人ともかわええわぁ)
憩「それじゃあ早速はっちゃんも測ろうか。ちなみに胡桃ちゃんの身長は」
胡桃「せせせ、先生!!」
憩「トップシークレットらしいわ」
初美(気になる……)
初美「はいですよー」
胡桃「てか胡桃、水泳部は? この時間帯なら絶賛部活中だと思うけど」
胡桃(だから鉢合わせにならないようにこの時間帯狙ったのに……)
初美「排水溝? が壊れたとかでプール使えないらしいんですよー。一日でも水に浸かっていないなんて落ち着かないです」
胡桃「なるほど。そんなことってあるんだ」
初美「胡桃も部活は……って、あんなお遊びサークルは基本自由参加ですか」
胡桃「まあね」
憩「んじゃそろそろ身長発表するね。ひゃく……」
初美「せ、先生!?」
憩「あはは、冗談冗談」
憩「そんじゃま、耳打ちで」ニコ
初美「当たり前ですよー……」ジトー
憩「……」ボソボソ
初美「うぅ……」
胡桃(よし、伸びてない)
憩「ま、はっちゃんも気にしないで。な?」
初美(胡桃より高いのか気になります……)
胡桃(たぶん負けてると思うけど、もしかしたら……)
憩(熾烈な戦いやなぁ)
憩「ん? 今日はえらい多いな。はーい、どうぞー」
衣「失礼する」ガラ
胡桃「あ」
初美「あ」
衣「あっ……お、お前らなんでここに……!?」
憩「今日は面白い日やわぁ。三人が同時に揃うなんて初めてやでー」ニコニコ
胡桃「そ、そういう衣こそ、放課後のこんなところに何の用かな?」
初美「ひ、引きこもりの衣には似合わない場所ですねー」
衣「ふ、二人も十分に似合わないと思うが?」
衣「衣『も』? ってことは……」ジロジロ
胡桃「な、なに?」
初美「なにか文句あるですかー……」
衣「ふっ」
初美「あー! 今鼻で笑いましたよコイツ!」
胡桃「私たちの中で一番ちっちゃいクセに生意気だね……!」
衣「何を言う! お前らなんかに遅れを取った覚えなどない! 寝言は寝て言え!」
憩(小学生の喧嘩にしか見えない……)
初美「その通りなのですよー。衣ほど乳臭い高校生なんてこの世に存在しないです」
衣「そんなことはない! 衣が一番お姉さんだ! てかこども言うな!!」
憩「まあまあ三人とも落ち着いて。身長のことで熱くなんのは分かるけども」タハハ
衣「憩! この中で誰が一番お姉さんに見える!?」
憩「へっ?」
胡桃「私だよね先生!? こんな小学生にしか見えない二人と比べたら一目瞭然だよね!?」
憩「え、っと……」
初美「何をふざけたことを言ってるですかー!」
初美「ちんちくりんで色気の欠片もない胡桃と衣に比べたら私が一番レディーに決まってます! そうですよね!?」
憩「」
胡桃「答えを!」
初美「聞かせてください!」
憩(きゅ、究極の選択や……先生としてウチはどういう答えを出せば……)
憩「えっと、そうやな……ここは分かりやすく、身長の高さで決めよか」
「「!」」
憩「ほら、ウチの主観が必ずしも正しい答えやとは限らんし」
憩「そういう不明瞭な尺度で順序を決めるのは良く無いから……」アセアセ
衣「確かに一理ある……」
胡桃「ちゃんとした基準がある方が言い訳もつかないしね」
初美「それじゃあそれでいいです。衣、身長ちゃっちゃと測ってください」
衣「ふっ、そんな強気でいいのか? 衣の身長を聞いたとき、泣く事になるのは貴様だぞ?」
胡桃「先生! やっちゃって!」
憩「了解でーす……」
憩(胡桃ちゃんと初美ちゃんの身長は同じやった)
憩(まあミリ単位の違いはあるけど、それは伝えてないから問題ないとして……)
憩(重要なのは衣ちゃんの身長やな)
衣「よ、よろしく頼んだ」ドキドキ
憩(もしこの子の身長が130cmより大きかったり小さかったりしたら……)ドキドキ
胡桃「……」ジーッ
初美「……」ジーッ
憩(128cm……)
衣「な、何センチだ?」
憩「……」
憩「……」ボソボソ
衣「本当に!?」
胡桃「!?」
初美「な、何センチですか衣!?」
衣「130cm! 2センチも大きくなった!!」
「「えええ!?」」
胡桃「ってことは……」
初美(まったく同じ……)
初美「な、何を言うですか! 私も130cmです!」
胡桃「ええ!? 初美も!?」
衣「ほ、本当なのか憩?」
憩「う、うん。全部本当だよ」
憩(衣ちゃんの身長以外は……)
胡桃「ってことは……」
初美「引き分けですねー……」
衣(二人とも意外と大きかった……成長してなければ負けていた……)
衣「ふ、ふっ、それでこそ我がライバルであり同胞だ」
胡桃「まさか衣と同じとはねー……なんかショックだなぁ……」
初美「私もですよー」
衣「失礼なー!」
憩「いやぁ、三人ともまったく同じ身長なんてびっくりやわー」
胡桃「ま、良い勝負だったね」
初美「次やるときは私が一番でしょうけどねー。運動してるし」
衣「成長期に入った衣に勝てるわけあるまい! 次来たときには3cmは伸びてるはず!」
胡桃「どうせ2年くらい測ってなくてその結果でしょ」
初美「なるほど。それなら納得です」
衣「そんなわけあるか!」
憩「まあまあその辺にしといて」
胡桃「まさかの展開だしね……」
衣「衣は身長が伸びて嬉しい!」
胡桃(素直に羨ましいなぁ……)
初美「そんじゃま、衣の130cm祝いに三人でどこか行きましょうか」
衣「おお! それは良いはみれす行こう!」
胡桃「なんでお嬢様なのにそこでファミレス?」
初美「お嬢様だからこそじゃないんですかー」
憩(ふふ、仲良しで微笑ましいわ……)
胡桃「っと、先生、今日はどうもありがとうございました。またよろしくお願いします」ペッコリン
憩「喜んで」ニコ
初美「次来る時はなんかお土産持ってくるですよー」
衣「ばいばい憩! また会おう!」
――――――――――
憩「昨日はなんだかんだで忙しかったなぁ」
憩「一日誰も来ないときもあるし……今日はどんなもんでしょう」
コンコンコン
憩「お、3限目にして遂に」
憩(しかもこのノックは……)
憩「どうぞ、園城寺さん」
怜「こんばんは。ノックで分かるとは、先生は流石やなぁ」
憩「アンタが一番保健室によう来るからな。んで、今日はどないしたの? はい入室確認書」
怜「今日は、まあ……こんなところで」カキカキ
憩「……持病て」
怜「別にええやん。ウチと先生の仲やし」
憩「サボりやったら帰って欲しいんやけどもなー」
怜「そんな殺生なこと言わんとってや。藤田先生の理科がウチには難解過ぎて、頭痛が酷くなったんや」
憩「藤田先生にそのまま言っときますわ」
怜「やめてー」
憩「ふふ。ま、いつもの場所空いてるから、寝ていき」
怜「おおきに」
―――――――――
怜「……なぁ、憩」
憩「学校でその呼び方はやめて欲しいんやけど……」
怜「ええやん。どうせウチら二人きりやし」
憩「はぁ……」
怜「ところで、なんかナース服変わってない?」
憩「!」
怜「図星か」
憩「まさか気付かれるとは……」
怜「ウチで気付かんかったら誰も気付かんやろ」
憩「ふふ、まあそやろな」
憩「うっ」
怜「寒くなってくる季節やのにまたなんでやろ、思って」
憩「……別になんでもええやろ。黙って寝とき」
怜「ええー、気になるやん。教えてや。誰かに色目使ってたり?」
憩「そんなことしてません」
怜「またまたー。でも憩と仲良い人なんてパッと思い浮かばんしなぁ……ウチくらいしか」
憩「と、友達少ないみたいな言い方やめてくれへん?」
怜「だって本当のことやん。年の差結構あって、先生らとも心の底から打ち解けてる雰囲気なさそうやし」
憩「それは怜が先生らと過ごしてるウチを知らんだけや」
怜「……へぇ」
怜「例えば?」
憩「恒子さん……じゃなくて福与先生とか、えり……じゃなくて、針生先生とか」
怜「ふーん」
憩「あと誰やろ。あー、理事長とか三尋木先生もたまに来るわ」
怜「あの二人が……想像できん……」
憩「スクールカウンセラーは生徒以外の相談にも乗るからなー」
怜「……どんな話すんの?」
憩「えらい突っ込んでくるんやね。らしくないやん、園城寺さん」
怜「その呼び方やめて」
憩「ウチは公私混同はせえへんの。社会人の常識や」
怜「むかつくわぁ……年下のクセに……」
憩「……何度も言っとるけど、年齢について他の子に話したら怒るからな」
怜「ウチと憩だけの秘密やな」
憩「先生方は知っとるけどな」
怜「……ホンマ、おもろないこと言うんやなぁ」ハァ
憩「本当のことやからねー」
怜「……寝るわ」
憩「おやすみ」
――――――――――
コンコン
憩「はーいどうぞー」
「すみません先生、ちょっと擦りむいちゃって……」
憩「あらら。とりあえず見せてくれる?」
怜(憩はいつも通りやなぁ)
怜(ウチと接するのも他の子と接するのも、大して変わらずに……)
怜(……特定の生徒に対してえこひいきすんのはアカンやろうし)
怜(公私混同せん、ってのも立派やとは思うけど)
怜(……やっぱりおもろないなぁ)
怜(ウチと憩、二人だけの空間に誰かが入ってくるのも気に食わんわ……)
「ありがとうございました、先生」
憩「お大事にねー」
憩「ふぅ……」
怜「お疲れさん」
憩「こんなもんで疲れてたら身体もたんわ。てか起きたてたんや」
怜「さっきからずっと起きてるで」
憩「頭痛いんとちゃうかったっけ?」
怜「うーん、この枕固いからなぁ。あんまり良くはならんなぁ」
憩「そんなことばっか言って……」ハァ
憩「うーんと……11時ちょうどくらいやから、授業終わるまであと20分ほどかな」
怜「そっか……」
憩「授業参加する気になった?」
怜「うぅー、元素記号がウチの前頭葉を襲うぅ……」
憩「なんやそれ」アハハ
怜「……なあ憩」
怜「膝枕してくれへん?」
憩「嫌です」
怜「辛辣やなぁ……」
憩「どこの学校に生徒に膝枕する先生がおるの」
怜「憩が第一人者やな」
憩「アホ言いなさんな」
憩「言ってるやろ。公私混同はせえへんて」
怜「……ええやん。ちょっとくらい。他の生徒と同列なんて、嫌や」
憩「あのなぁ……」
怜「なー。やってーやー。ひーざーまーくーらぁー」
憩「駄々こねない。それでも年上か……」
怜「……膝枕してくれへんかったら憩の年齢言うからな」
憩「なっ」
怜「本当はきゃぴきゃぴのセブンティーンや言いふらしたる」
憩「……そ、そんなこと言ってもやらんからな」
憩「アホはと……園城寺さんでしょ。そんなに元気やったら教室戻りなさい」
怜「あぁ、貴重な時間が……次の時間も休もかな」
憩「こら」
怜「膝枕してくれるまで絶対に動かへん……無理やり連れてこうもんなら教育委員会訴えたる……」
憩「……今日はどうしたん、我がままばっか言って。お利口さんな園城寺さんらしくないで」
怜「憩がそんな呼び方でウチのこと呼ぶからや」
憩「保健室ではいつもこうやろ」アキレ
怜「……アホ」
憩(学校外では頼りになるお姉ちゃんやのに、どうしてここまで変わるのか……)
キーンコーンカーンコーン
憩「あ、チャイム」
怜「……」
憩「動く気なして」
怜「……学校終わるまで動かんもん」
憩「……はぁ。ホンマ、しょうがないんやから……」
怜「!」
憩「……4限目のチャイム鳴ったらすぐに帰るんやで」
怜「うん……」
憩「はぁ。短い時間でも居留守使うなんて、養護教師(保健室の先生)失格や……」カラン
出張中
怜「鍵も締めて」
憩「当たり前や……」
憩「はいはい」トサッ
怜「……やっぱり、丈短い。太ももの面積広なってる」
憩「別にええやろ。……ウチかってたまにはそういう気分になるの」
怜「セブンティーンやもんな」
憩「うるさい」
怜「それじゃあ、失礼するな……」
憩「っ……」
憩(やっぱこのくすぐったい感じ馴れへんわ……)
怜(憩の膝枕……久しぶりや……)
憩「チャイム鳴ったら終わりやで」
怜「そんな寂しい事言わんとってや……あったかいんやから……」
憩(うぅ、いくらプライベートで親交が深いとは言え、一人の生徒と先生がこんなことしてるなんて……)
怜(この背徳感というか、学校でみんなに内緒で憩とこういうことしてる、ってのがたまらんわ……)
怜(校内屈指の人気者、荒川先生。そんな人の素性を知ってて、下の名前で呼んでるのはウチだけか……)
怜「ふふ……」
憩「はぁ……」
憩「なんですか」
怜「下の名前で呼んでや」
憩「これ以上は何も出来ません」
怜「ケチ」
憩「十分大盤振る舞いしてるつもりですけどもー」
怜「呼んでくれるまで離さへんから」ギュッ
憩「なっ」
キーンコーンカーンコーン
憩「ほ、ほら、チャイム鳴ったで! 約束守って!」
怜「嫌や」
憩「と、怜!?」
怜「別にええやん。昼休みまで……」」
怜「ええやん、憩も一緒に寝よ」グイッ
憩「きゃっ……ちょ、ちょっと……!?」
怜「おやすみー」
憩(結局昼休みまで付き合う事になりましたとさ)
安価なら洋榎
――――――――――
憩「はぁ……酷い目に遭った……」
憩「おかげで午前中に終わらそうと思ってた仕事残してまうし……」
憩「今日は残業かもなぁ……」
洋榎「失礼しまーす……」ガラッ
憩「はいはい……って愛宕さん。珍しいね、愛宕さんが授業中に保健室やなんて」
洋榎「体育の授業中にちょっとぼーっとしてもうて……」
憩「ぼーっと? ……とりあえず、どこ怪我したの?」
洋榎「この辺にデカいたんこぶが……」
憩「あっちゃー。また派手にやったなぁ……軽い打撲かもやでこれ」
洋榎「とりあえず冷やしといたら治る感じのアレやないの?」
憩「まあマシにはなるけど……でも病院行くほどじゃないかな」
洋榎「そらよかったわー」
洋榎「ほーい。って冷めたっ……こういうのって氷持ってる手が痛くなってくるよなー」
憩「あるあるやねー。タオルあげるわ、これ使って持ったらマシちゃう?」
洋榎「さすが憩ちゃん。至れり尽くせりやで」
洋榎「ところで。授業戻ったらアカン?」
憩「うーん、出来ればここで安静にして欲しいかなぁ」
洋榎「そっか……んじゃあそうするわ」
憩(なんか、聞き分けが良い愛宕さんって不気味やわ……)
憩「で、何やっててこんなんなったの?」
洋榎「ソフトボールやな。フライ取り損ねて」
憩「愛宕さんが?」
洋榎「情けない話やけどもなー」
憩(信じられない……体育の授業で初心者が打ち上げるようなフライをあの愛宕さんが……)
洋榎「ふいー。冷たい冷たい」
憩(妙に大人しいというか、しおらしい雰囲気も気になるし……ちょっとお話してみようかな)
憩「最近ソフトボール部はどんな感じ?」
洋榎「まあ基本的には普段と変わらず……やけども」
憩「?」
洋榎「副部長がここ最近めちゃくちゃ不機嫌やなー……」
憩「ソフトボール部の副部長といえば……末原さん?」
洋榎「そうそう。ちょっと前に面倒なことがあって、それ以来なぁ」
洋榎「もちろん。普通やったら笑い話にもならんくらいくだらん話やで」
洋榎「ただ、どうしてかそれが恭子の逆鱗というか、なんか気に入らんことに触れたらしくて」
憩「何があったんか訊かせてや。面白そう」
洋榎「えっとな……」
―――――――――――
憩(簡潔にまとめると、生徒会長……もとい竹井さんの悪ふざけで愛宕さんがキスされて、その現場を見られたそうです)
洋榎「まあ確かにウチが目撃した立ち場としても、練習が始まってるにも関わらずそんなふざけたことしとる部員がおったら蹴っ飛ばすと思うわ」
洋榎「ただ、それにしては尾を引きすぎてるというか……ウチとしてはいつまでそんなくだらんこと引きずんねん、って感じで……」
憩(うーん、これは末原さんが憤慨するのも無理はないかなぁ……)
洋榎「なぁ、どう思う憩ちゃん? いくらなんでも怒りすぎやと思えへん?」
洋榎「一週間前くらいから今までずっとやで。口聞いてくれへんし……」
憩「ウチは末原ちゃんの気持ちわかるかなぁ」
洋榎「えっ……ほ、ホンマに? なんで恭子はそんなに怒っとんの?」
憩(洋榎ちゃんは鈍感なんかなぁ……結構賢そうに見えるけども、恋愛は別なんかな?)
憩「自分が何とも思ってない人がそんなことしてたら、何やってんねんコイツ、くらいで済むんやろうけど……」
憩「末原ちゃんにとって愛宕さんはそうじゃなかったってことやなー」
洋榎「ウチの部長という立場がまずかったんか……」
憩(うーん、そうじゃないねんなぁ)アハハ
洋榎「半分くらい?」
憩「末原ちゃんはソフトボール部一筋やから、めちゃくちゃ部を愛してると思うねん」
憩「で、その愛する部の象徴とも言える愛宕さんは、生徒会の役員でもあるわけやん」
洋榎「うんうん」
憩「自分が末原ちゃんの立場としたら、なんかそれだけでも嫌じゃない?」
洋榎「む……」
憩「例えば、自分が本気で好きな人が自分のとこだけやなく、別の人らのところでも仲良さげ楽しげにしてるというか……」
洋榎「それは確かに気に食わんな。どっちかハッキリせえ! ってなる」
憩(うん、いやまあ、まさにその通りなんやけど……)
洋榎「でもウチは両方本気でやっとるし、疎かにしたことなんて無いって断言出来……!」
憩「うん、まさにその通り。だから愛宕さんが部と生徒会を両方やってることについては、末原ちゃんも認めてるし納得いってるねん」
憩(心の奥底ではこっち一本にして欲しいとか、そういう気持ちはあるやろうけど)
洋榎「じゃあなんで……?」
憩「今度はこれが部と生徒会じゃなくて、末原ちゃんと竹井さんに置き換えて考えてみ?」
洋榎「!」
憩(愛宕さんは恋愛ごとに鈍感なだけで、頭も良いし勘も鋭いから……)
洋榎「ひ、久に嫉妬した、ってこと……?」
憩「そういうこと」ニコ
洋榎「つまり、恭子はウチのこと……」
洋榎「……!!」
憩(やっと分かったか)
憩「まあ、そんな生徒会のボスでもあり恋敵でもある竹井さんと」
憩「ソフトボール部の部長で主将で、自分の好きな人でもある愛宕さんがキスなんてしてるとこ見た日には……ね?」
洋榎「……」
憩(愛宕さん可愛い顔しとるなぁ……相当動揺してるみたいやけど……)
憩「それってつまり竹井さんを受け入れたってことで、愛宕さんは軽い気持ちでやったことかもしれんけど……」
憩「生徒会とソフトボール部とか、末原ちゃんの気持ちとかもろもろ考えたら……相当まずいことしたと思うで?」
洋榎「……!!」
憩「まずはちゃんと謝って、自分がどう思ってるのかを話さんとな」
憩(しかし、竹井さんはホンマにトラブルメイカーやなぁ……何の目的でそんなことを……)
洋榎「……すまん、憩ちゃん。いや、ありがとう。頭思いっきりぶん殴られた気分やわ」
洋榎「恭子のとこ行ってくる」ダッ
憩「ちょ、まだ授業中……」
憩「思い立ったらすぐに行動で、愛宕さんらしいなー。安心したわ」
憩「これも青春、なんやろうなぁ……」
憩(……ウチまだ17やのに、なんでこんな年寄りみたいなこと……)
憩(後日談。愛宕さん3ーC乱入事件は後の伝説になりましたとさ)
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>>179
安価ならたかみちゃん
―――――――――
憩「言うてる間に放課後かぁ」
憩(愛宕さんどうなったんやろ……)
憩(まあ、あの子も有名人やし、そのうち風の噂として耳に入ってきそうやな)
コン…
憩(……ん? 今のは……ノック?)
憩「はーい、どうぞー」
尭深「失礼します……」ガチャ
憩「初めて……だよね? これぱぱっと書いちゃってくれる」ニコ
尭深「……」コク…
尭深「……」カキカキカキ
憩(これまた保健室には似合わないくらいに奥ゆかしい子が来たなぁ……)
憩(どういう用件だろう?)
憩「ありがとー」ニコ
憩(渋谷尭深さん。2ーB、茶道部……部長、か)
憩「茶道部の部長なんだね。二年生なのにすごいわぁ」
尭深「部員が少ないから、必然的に……」
憩「それでも何かの集団の長になるってことはすごいことやで。もっと誇ろう!」
尭深「……」
憩(顔赤いけど……シャイな性格なのかな?)
憩(保健室に来る子は黙ってれば勝手に喋りだすような子ばっかりだから、こういうこの相手は大変かも……)
憩「えっと渋谷さん、今日はどういったご用件で保健室に?」
尭深「……猫」
憩「え?」
尭深「……付いて来て、欲しいです……」
憩「う、うん……?」
尭深「……」ギュ
憩「あっ、ちょ……し、渋谷さ……」
―――――――――
憩(手を掴まれ連れ出されてしもた)
憩(見た目よりずっと積極的なんかなぁ……)
尭深「……」テクテクテク
劔谷の梢ちゃんが部長でもよかったかもな
尭深「……茶道部室」
憩「茶道部室……そういえば茶道部って部員何人くらいおるの?」
尭深「……私を入れて、5人くらい?」
憩「ぎ、疑問系で訊かれても困るかな……」
憩「そういえば、茶道部って普段なにしてるの?」
尭深「……お茶を淹れて、飲む」
憩「そっか……お茶飲むのかー……また用事は済んだらでいいから、私にも淹れてもらえるかな?」
尭深「……どうして?」
憩「うーん、どうして、か……渋谷さんが淹れたお茶を飲んでみたいから、かな?」
尭深「……」
憩「ふふ、楽しみにしとくわ」
憩(相変わらず用事が何なのか分からないままやけど……ま、なんとかなるか)
憩(茶道部室に行けば他の子から事情を訊ける、はず……)
――――――――――
尭深「着いた」
憩「ほえー。茶道部室ってこんな場所にあるんやね……」
友香「あ、尭深先輩帰って来た!」
美幸「やっと帰って来たよもー……」
尭深「二人ともただいま」
憩「えっと、お二人は……?」
尭深「茶道部の部員。この子が1年で」
友香「ども!」
尭深「この人が3年」
美幸「あ、よろしくお願いします……」
美幸「茶道部は代の移り変わりが早くて、この時期にはもー部長は変わるんです」
友香「まだ他にも部員はいるっすけど、今日は私ら三人以外休みです!」
尭深「……休みです」
憩「な、なるほど……」
憩(まあ、こういう部活は基本自由やからなぁ……)
憩「っと、で、用事って何かな? ウチ、渋谷さんに何も告げられずにここまで連れて来られてんやけど……」
友香「せ、先輩……」
美幸「尭深ちゃん、ちゃんと訳は話さないとー……」
尭深「……ちゃんと言った。猫って」
憩「猫? あ、そういえば……」
友香「えっと、説明させてもらうと、茶道部室の窓から見えるところに猫がいて、そいつが怪我してるんです……」
憩「猫が怪我……」
尭深「……足のところから血が出てて、動けないみたい。助けて欲しい」
憩「あー、なるほど。そういうことなんやなー」
美幸「説明不足でごめんなさい……」
友香「自分からも謝るんでー……」
尭深「……ごめんなさい」
憩「あはは、まあようあることやから気にせんとって」アハハ
憩(しかし、なるほどなー……猫、か……)
憩「おー、かなり本格的な和室やねー……」
友香「私らいつもここでお茶淹れたりしながらくっちゃべってます!」
美幸「茶道部ではお茶は立てる! 何度も言わせないでよもー……」
憩(なかなか雰囲気良さそうな部やな……全然どんな部か知らんかったけど……)
尭深「……あそこ」
憩「あー……本当だ。素人目で見ても酷そうだね……」
尭深「……助かる?」
憩「助ける、やで」ニッコリ
尭深「……!」
友香「カッコいい……」
美幸(保険の先生って、動物治せるのかな……?)
憩(保険の先生言っても、人と動物なんて処置の仕方絶対違うやろし……)
憩「……とりあえず、なんでも出来そうな人呼ぼか」
「「?」」
―――――――――
戒能「ハロー、みなさんこんばんは」
憩「どうも、お忙しいところすみません」
美幸「か、戒能先生……」
友香「ど、どういうことでー……?」
尭深「荒川先生……?」
憩「いや、ごめんな渋谷さん。ちょっと専門外やわ。素人が下手なことするより、ある程度知ってそうな人のがええかな、と思って」アハハ
憩「いや、戒能先生、アフリカで獣医の助手してたらしいとかっていう噂聞いたから……」アハハ
友香「噂!?」
美幸「どういうことなのよもー……」
戒能「なるほど。あの猫は怪我をしているんですね。了解です。応急処置だけならなんとかしてみます。とりあえず、保健室からこれだけの道具を……」
憩「ふむふむ……」
友香「マジでー!?」
美幸「この人めちゃくちゃだよー……」
尭深「治りますか……?」
戒能「あの状態なら、早い段階で処置してちゃんとした獣医に見せればノープロブレムです」
尭深「……!」パァァ
憩(いやぁ、戒能先生は頼りになるなぁ……大抵のことは出来るって聞いたけど、まさか本当やとは……)
―――――――――――
憩(戒能先生の応急処置の後、猫は動物病院に連れて行かれました)
憩(怪我の具合は見かけだけで、戒能先生が大雑把な作業はやっていたので消毒とかしかすることはなかったそうです)
憩「……以上が猫ちゃんの経緯でした」
尭深「良かった……」ホッ
美幸「心配して損したよもー……」
友香「遅くまで学校に残ってる意味なかったですね」アハハ
憩「応急処置をした上に、動物病院にまで連れて行ってくれた戒能先生にあとで土下座せえなな」ニコ
美幸「ございましたー……」ペコ
友香「感謝です!」
憩「いえいえ。ウチ、なんもしてないし」
憩(割とホンマに)
尭深「……きっと先生を呼んでいなければ、私たちだけで無理に獣医に連れて行こうとして……」
尭深「猫の様態が酷くなっていました」
尭深「本当に、ありがとうございました」ペッコリン
憩「……自分の力じゃどうにもならんときに人のこと頼れるって結構すごいことなんやで?」
憩「ま、三人ともよく出来ました、ってことで」ニコ
尭深「先生……」
美幸「本当だ……もーこんな時間……」
友香「ずっと猫の心配してましたからね」アハハ
憩「渋谷さん。今日は遅いから無理やけど、また遊びに行くからお茶お願いな?」
尭深「……はい」ニコ
荒川(……さて、ウチは残業やなー……こういう仕事と承知でやってますけども……)
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>>225
――――――――――
憩(昨日はホンマに忙しかったなぁ……)
憩(午前は怜に振り回され、午後は愛宕さん、立て続けに渋谷さんで……)
憩「それに関係あるかは知らんけど、今日は放課後まで特に何もなかったなー……」
憩(ウチが働かんでええのが一番幸せな状態なんやと思うけど……)
コン コン
憩(そういう訳にもいかんよなぁ)
憩「はーい。いますよー」
咲「失礼します……」ガチャ
憩(1年生かな? 何にせよ初めてやなー……)
咲「は、はい」
咲「……」カキカキカキ
憩(物静かな雰囲気の女の子やなー……いかにも文学少女って感じの……)
咲「あ、書けました」
憩「ありがとうね」ニッコリ
憩(……宮永咲。1ーB、文芸部)
憩(うーん。なんか、所々既視感のあるプロフィールやなぁ……)
咲「……」モジモジ
憩「あ」
咲「へっ?」
憩「もしかして、3年にお姉ちゃんおる? 宮永照っていう赤髪の」
咲「えっ……あ、は、はい。宮永照は私の姉です……」
憩「なるほどなぁ、通りで……」ジロジロ
咲「あ、あの……」
憩「いやぁ、ごめんな。しかし、お姉さんに似てるね」
咲「えっ……ほ、本当ですか?……」
憩「うん。顔立ちも面影あるし、髪型の特徴もそっくりやし、同じ文芸部やしな」ニコ
憩(この子もお姉ちゃん子なんやろうなぁ……そんなオーラが滲み出てるわ……)
憩(まあ、この学校の妹ちゃんはみんなお姉ちゃん大好きな子ばっかやけど……)
憩「で、今日の用事に相談って書いてあるけど……どんなお悩みで?」
咲「その……お姉ちゃんのことなんですけど……」
憩「宮永さんのこと?」
咲「じ、実は……私……!」
咲「お姉ちゃんのことが好きなんです!!」
憩「……」
憩「そ、そっか。えっと……それはどういう……?」
咲「……」カァァァ
憩(な、なんか。今までで一番ヤバげな雰囲気が……)
???「ナシですね」
憩「その好きは……その、ライク? ラブ?」
咲「……ライクです。たぶん」
憩「そっか……ライクか……」
憩(限りなく黒に近そうなグレーって感じやな……)
憩「まあ、お姉ちゃん離れでけへん子はいっぱいおるし、そこまでマイノリティでもないと思うで?」
咲「出来れば、お姉ちゃん離れはしたくないです……」ウルウル
憩(何か惹かれるモノがあるんやろうなぁ。松実玄さんにしろ、この子にしろ……)
咲「……はい」
憩「出来ればこの先も末永く今の姉妹関係でいたいと」
咲「……もうちょっと、距離が近くなっても大丈夫、です」モジモジ
憩「な、なるほど……咲ちゃんがお姉さんのこと大好きなんは分かったわ。それを前提にどういったお悩みで?」
咲「実は……最近、お姉ちゃんの周りにたくさん女の人が増えてきていて……」
憩「つまり、お姉さんがどこぞの馬の骨かも分からん誰かに取られるのが怖い、ってことかな」
咲「! ……すごいです先生、その通りです……」
憩(ただ単に大好きなお姉ちゃんが取られるのが怖い、ってだけやったらええんや けども)
憩(この子の場合、何かそれ以外の、ただならぬ理由がありそうなオーラが……)
咲「先生、私どうしたらいいんでしょう……?」ウルウル
咲「お姉ちゃんがいなくなったら、私……!」
憩「うーん、正直に言うと、そない心配せんでも大丈夫やと思うで? あの宮永さんが誰かとお付き合いしてる姿なんて想像でけへんし」
憩「そもそも誰かと付き合ったからと言って咲ちゃんを蔑ろにするとも思えんし」
咲「……蔑ろにされなくても、お姉ちゃんが誰かと付き合ったりキスしたりするなんて……嫌です」
憩「神聖なお姉ちゃんに気軽に触れられたくない、ってこと?」
咲「はい……」
咲「昔からの馴染みの人とか、私がよく知ってる人とかならまだいいんですけど……」
憩「ウチが知る限りじゃ、宮永さんの昔からの馴染みって弘世さんくらいかなぁ」
咲「菫さんは、はい。大丈夫です。お姉ちゃんとは幼稚園児のときからのお友達なんで」
憩「ほえー。あの二人そんな長かったんや」
咲「まあ、だからと言って私とかと特別仲が良いってわけでもないんですけど」アハハ
憩「他に宮永さんと付き合い長い人っておるの?」
咲「私と菫さんくらいに長いのは、この学校の1年生で私と同じクラス大星淡ちゃんですね」
憩「あのダンス部の元気な子?」
咲「はい。知ってるんですね」アハハ
咲「昔からずーっと一緒に三人で遊んでたように思えます」
憩「そっかぁ。大星さんと宮永さんらがそんな関係やとは……」
咲「この高校に入ってから、お姉ちゃんにも同年代の仲の良い友達が増えてることを知って……」
咲「良い事だとは思うんですけど……やっぱり、私たちが知らないお姉ちゃんがいることは……すごく寂しいです」
憩「なるほどなぁ」
憩(なんか咲ちゃんの気持ちが分かってきたように思えるなぁ……)
咲「あ、そうだ。聞いてください先生、この前、お姉ちゃん知らない女の人にキスしてたんです……!」
憩(松実さんか……)アハハ
咲「あんなにも簡単に好きとか言って、キスして……羨ましい……」ブツブツ
憩(なんか羨ましい聞こえたような気が)
憩「そやなぁ……もしかしたらキスされてたその人、宮永さんにとってすごく付き合いが長くて」
咲「あり得ないです。お姉ちゃんにあんな知り合いいませんでした。断言できます」
憩(なんで断言出来るんでしょー……)
憩「えっと、それじゃあ、宮永さんが一目惚れしちゃった」
咲「そんなことあり得ません!!」
咲「……たぶん」
憩「はは、そこは自信ないんや」
憩(所々理性的なのが救いやなー)
咲「お姉ちゃんがその人に一目惚れって、あり得ますかね……?」
咲「2年生の松実玄さん、って人らしいんですけど……」
憩(ある程度のことは調べてそうな雰囲気……)アハハ
憩「うーん、あり得へん話ではないんちゃうかな? 宮永さんも人間やし、松実玄さん可愛いし」
咲「そ、そんな……」
咲「……胸、ですか?」
憩「……え?」
咲「私が胸小さいからお姉ちゃんは……」ジワァ
憩「なんでそうなるの!?」
咲「それに引き換え私は……」
憩「さ、咲ちゃん落ち着いて。胸の大きさは関係ないと思うから……」
咲「じゃあどうして……?」
憩(まあ、そう言われるとこれと言った答えも浮かばへんのよねぇ)
憩「うーん、考えてもしゃあないし、お姉さんに直接訊いてみたら?」
憩「なんかきっと重大な事情があるんやって」
咲「キスしないと死んじゃう病気とか……?」
憩「いや、そこまで重大でもアホらしくも無いと思うけど……」
憩「ちょっと勇気ない感じ?」
咲「はい……」
憩(宮永さんに関してかなりアグレッシブに動いてそうやのに)
憩(なんで直接ってなったら臆病になるんや……)
憩「……よし。ほんならウチが手伝ったるわ」ニッコリ
咲「えっ……? でもどうやって……」
憩「まあまあ。ちょっと待っといて」
憩「……」
キーンコーンカーンコーン
憩『3年A組宮永さん。宮永照さん。校内にいましたら、至急保健室まで来てください』
憩『繰り返します。3年A組宮永さん……』
―――――――――
憩「さ、これであとは来るの待つだけやな」ニコ
憩(松実さんの相談に対してもケリ付けなアカンかったし、ちょうどよかったわ)
咲「お、お姉ちゃんがここに……!」アワワ
憩(急にそわそわし出すあたり咲ちゃんも分かりやすいなぁ……)
憩「ま、この際やし、思ってること全部ぶつけたらええで」
憩「もっと構えとか、あんまし知らん子とイチャイチャするなとか」
咲「そう、ですよね……ちゃんと気持ち伝えないと、ダメですよね……」
憩「うんうん♪」
憩(宮永さん、早く来てくれたらええけど……)
――――――――――
咲「……来ない、ですね」
憩「う、うん……おかしいなぁ、帰ったんやろか」
咲「今日は文芸部あるので、学校にいるとは思うんですが……麻雀部の方に行ってるかもですけど……」
憩「……もしかして、迷ってるとか?」
咲「えっ」
憩「いや、あの子保健室に来るときいつも誰か側におったから……」
菫「失礼します」ガラ
照「失礼します……」
憩「あ、来た」
照「うぅぅぅ……」
菫「申し訳ないです先生。遅れました」
憩「いや、全然大丈夫やで?」
菫「コイツ、呼び出された瞬間帰ろうとして」
憩「あらら」
菫「行けと言っても逃げそうな雰囲気だったので……無理やり連れてきました」
照「うぅぅぅ……」
咲「お、お姉ちゃん……」
憩「なるほどなー。ってことは、呼び出されることに対して心あたりがあるわけか」
照「こ、心あたりなんて無いです。私なにもしてないです」
菫「おまえなぁ……」
憩「じんも……じゃなくて、質問にはちょうどええわ」ニコ
照「」
菫「しっかりと報いを受けろ。あんな連中集めてあんなことしておいて、何も音沙汰が無いわけがないだろ……」
照「うぅぅ……賢者はいつも愚者の犠牲になる……」
菫「殴るぞお前」
憩「まあ、質問するのは私やなくて咲ちゃんなんやけどね」
照「咲……?」
咲「うぅぅ……」モジモジ
憩「さ、弘世さん。こっちこっち」
菫「は、はい……」
照(菫と先生がいなくなった………)
照(これは……チャンス……)ソローリ
咲「あ、あの……」
照「!」ビクッ
照「な、なに……?」
咲「お姉ちゃん一体何をして……?」
照「い、いや、ちょっと花を摘みに……」
菫「アイツ……」
憩「なんかもう見てて気持ち良くなってくるな」アハハ
咲「あの、お姉ちゃん。話があるんだけど……いいかな?」
照「は、はい……」
咲「と、とりあえず座ろうよ。ね?」
照「いや、花を……」アセアセ
咲「お姉ちゃん……?」
照「あ、後で行きます」
照「……」
咲「なんか、こうやって向かい合って話すって珍しいね」アハハ
照「そうだね……なんか悪い事したみたいな気分……」
菫(いやいやいや)
咲「その、ね。今日お姉ちゃんをここに呼び出してもらったのは、私なんだ」
照「咲が……?」
咲「色々と訊きたいことがあって……」
照「それは家では話せないことなの?」
咲「う、うん。淡ちゃんとかもよくいるし、ちょっと話しにくいと言えば話しにくいかも」
照「そっか……」
照「す、好きな人……?」
咲「うん……」
照「えっと、それはどういう意味の好き?」
咲「……キスするとかの好き」
照(キスするとかの好き……)
照「……うん。そういう意味なら、好きな人はいるよ」
咲「えっ……!?」
憩「そ、そうなんや……なんか意外やわ……」
菫「いや、アイツのことです。また何か意味をはき違えてそうな……」
照「咲が知ってる人もいるよ?」
咲(えっ……どど、どういうこと!?)
咲「お、お姉ちゃん? 好きな人だよ?」
照「うん、好きな人」
照「咲のことも大好きだよ」ニコ
咲「!?」ドッキーン
菫「またあんなこと言って……」
憩「松実玄ちゃんが勘違いするのも分かる気がするわ……いや勘違いかはまだ分からんけども…‥」
菫(何の悪気もなく純粋な気持ちで言ってるんだから厄介なんだアイツは……)
咲「あぅ……ぁ……」カァァ
照「どうしたの咲? 顔が赤い」スッ
咲「ふぁ!?」
咲(お姉ちゃんの手……ほっぺに……!)
照「熱でもある? 先生呼ぼうか?」
咲「だ、だだ、だいじょぶ……」
照(また赤くなってる……)
憩「なんか宮永さんってすごいんやね……」
菫「アイツが人見知りのおかげで被害は最小限で済んでますがね……」
菫(私も昔、本気で……)
照「なに?」
咲「お姉ちゃんは……私のこと、大好きなんだよね……?」
照「うん」
咲「それなら、その……」
咲「キス、して欲しいです……」ウルウル
菫(完全にネジを飛ばされてるな……)
憩(あっちゃー……これはまずい気が……)
照「うん、いいよ」ニコ
咲「……!」
照(キスくらい言ってくれればいつでもしてあげるのに)
照「それじゃ、するね」スッ
咲「ま、待って! ここ、心の準備が……!」
照「ふふ、咲は可愛いね」チュッ
咲「ぁ……」
咲(おでこ……)プシュー
照「咲?」
憩「はいストップストップー……」
菫「尋問されて責められるはずがどうしてこうなるんだ……」
照「せ、先生に菫……いたんだ……」
菫「自制出来ない分、竹井や園城寺よりタチが悪いぞお前……」
照「ふ、二人とも一体何を……」
咲「ふにゃぁ……」
憩(咲ちゃんの相談何一つ解決出来てないと思うけど、本人幸せそうやからこれでいいんかな……ってよくないか)
憩「宮永さん!!」
照「は、はい!」
憩「さっき弘世さんから訊いたで……? 宮永さんずいぶん面白い事やってたみたいやなぁ……」ゴゴゴゴ
照「ひっ!?」
憩「反省文、400時詰め原稿用紙20枚分と明日から1週間校内清掃をすること」
照「そ、そんな……何も悪い事してないのに……」
菫「悪い事してる自覚がないのが一番悪いんだよ……」ハァ
憩「分かりましたか?」ニコ
照「あ、あれは高尚な研究であって……」
憩「分かりましたか?」
照「分かりました……」
憩「それとちゃんと松実さんに事情説明して謝る! 他の子も連れて来なさい!」
照「はい……」シュン
菫(あぁ、なんという常識人……)ジーン
―――――――――――
菫(その後、続いて呼び出しを食らった竹井と園城寺も仲良くお説教を食らった)
怜「委員長がチクるから……」セイザ
久「私は反省してたつもりなんだけどなー……」セイザ
照「賢者はいつの時代も愚者の犠牲に……」セイザ
菫(その後、各々謝罪に出向いたりしたのだが……それはまた別の話)
―――――――――――
憩「はぁ……宮永さん、気軽に人に好きって言ったりキスしたらアカンで?」
照「そんなことしてな……」
憩「してなかったら咲ちゃんはこんな風にはなりません」
咲「……ふふっ」ポケー
憩「……そういうことは本当に好きな人が出来たとき、その子だけにしてあげ」
憩(いっぺん襲われるかなんかせな分からなさそうやなこの子……)ハァ
憩「まあええわ。いつか身を以て学ぶときが来るから……」
憩「宮永さん、咲ちゃんと一緒にもう帰り。これからはアホなことしたアカンで?」
照「はい。……咲、咲」ペチペチ
咲「ふぇ……? あ、お姉ちゃん……」ポケー
照「帰ろうか」ニコ
咲「うん……」ニヘラ
憩(これで解決……なんかな? いや、ウチではこれ以上何も出来そうにないし、被害出るとしても宮永さんやから別にええか……)
憩(もうこんな時間……明日も明日で大変そうやなー)
憩「ま、楽しいからええけどな♪」
終わり
途中で死んたり席外して申し訳なかったです
次からこの設定で書く時は前スレ貼ります
お疲れ様でした
咲さんが幸せそうでなにより
Entry ⇒ 2012.10.15 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
照「……ごめん、菫。 付き合うことはできない」
私と照は、”気兼ねなく話せる友人”だ。
お互いに、あまり感情任せな性格はしていないから、こういった友人は一人いるだけで助かるもの。
菫「照、大丈夫か?」
照「大丈夫……少しは、落ち着いた」
とはいえ、悲しむことも、落ち込むことも、怒ることもある。
そんな時には、私は照に、照は私に相談して、お互いに隠れて宥めている。
この関係が変わったのは、いつ頃だったろうか――。
二年生のインターハイが終了し、私たちは晴れて二連覇を成し遂げることに成功した。
あらゆるメディアから引っ張りダコだった状態も落ち着き始めた、秋の中頃の話だ。
菫「今は部活中だ。 そういう話は後にしろ」
「あ、先輩すみません」
「それじゃ、あっち行って打とうか」
卓につくこともなく恋話をしていた、一年生の二人に注意をする。
白糸台が二連覇を達成したことにより発生した結果は、決して良い物ばかりではない。
一軍の座に座ろうと精進する生徒こそ多かったものの、諦めてしまう生徒もまた多かった。
菫「お前、誰かと付き合ったことあるのか?」
照「ない」
菫「だろうな」
照「もし付き合うことがあれば、真っ先に菫に報告する」
少し、胸の温度が変化した。
すぐに原因を探るものの、どうもよくわからない。
照「それに私は、誰かに恋するつもりもない」
菫「……そうか」
再び、温度が変化した。
上がったり下がったり、妙な気分。
二回目のそれは温度の変化に加えて、少量の痛みまで伴うようになっていた。
照はどうも、人との間に壁を作りやすい節がある。
一番近くにいるであろう私ですら、時折壁を作られているのではないかと感じてしまうほどに。
照が恋人を作ったことをないという話も、恋をするつもりがないという話も、実に照らしい回答だと思う。
それなのに、なぜ、私は妙な気分になってしまったのだろうか。
菫「……ああ」
閃いた時、思わず声が漏れてしまった。
一回目の変化は、照に恋人がおらず、安堵したところから来ているのだろう。
二回目の変化は、照に恋する気がなく、落胆したところから来ているのだろう。
それらを繋げると、設問の答えは簡単に浮かび上がってしまった。
菫「……私は、照が好きなのかもしれないな」
その日は、うまく眠れなかった。
菫「…………」
照「どうしたの? ずっとこっち見て」
菫「あ、いや……」
照「最近、ぼーっとしていることが多い」
菫「ん、ああ、すまない」
私の照に対する恋心は、加速度的に成長していった。
照の挙動が一々気になってしまうし、そっぽを向いていればいい機会だと思うのだろう、無意識の内に眺めてしまうことがある。
赤面しやすくなり、指摘された通り、上の空になってしまうことも多くなっていた。
照「どうかしたの?」
菫「……別に、なんでもないさ」
記憶にある限りでは、その日初めて、照に隠し事をした。
人に言いにくいことは、大体この時に全て処理してしまうのだ。
とはいえ、私も照もあまり喋る性分ではないから、話はいつもそこそこに終了する。
照「おやすみ」
菫「ああ、おやすみ」
それからしばらくは、とても眠れる状態になかった。
時計を確認すると、会話を切り上げてから一時間も経過している。
すぐ隣には、心を寄せている照がいる。
その事実を確認する度に、私の心臓は段々と活発になっていた。
少しだけ、休息している照の手に触れてみた。
触れてみて、緊張と罪悪感で、咄嗟に離してしまった。
離してしまったけれど、やはり照には触れていたい。
再び手に触れて、今度は握ってみると、顔が簡単に沸騰して、秋だというのに真夏のように熱くなってしまった。
――私はこの時、多少なりとも発情してしまったのだと思う。
菫「……ぁ……んっ」
私は、照の隣で自慰をしてしまった。
かつてない勢いで絶頂したのと同時、同じ程度の後悔が押し寄せてきたのは言うまでもない。
が、それも虚しい。
照「……菫、聞いてる?」
菫「え、ああ……」
照「先生が呼んでる」
菫「そっか、悪い」
照「また、ぼーっとしてる」
菫「…………」
結局その抑圧は、三日と持たずに終了してしまったのだ。
麻雀にも精が出ないし、最近は家の中ですらぼーっとしてしまうことがあった。
これを断ち切る方法など、実際のところはとっくに気が付いている。
照とは今のように、このまま大人になり環境が変わっても話し続けられる仲でありたいと思う。
照とは今と違い、恋人になりもっと進んだ仲になりたいと思う。
どちらかを選択すれば、その逆を切り落とさなければならない。
私はこの答えを決められないまま、腹をくくった"つもり"で、照に告白しようと決心した。
誰もいなくなったことを確認して、照をここに呼び寄せた。
照が来るまでに済ませた心の準備は、足音が聞こえただけで軽く吹き飛んでしまっていた。
照「話って、どうしたの」
菫「…………」
照「菫?」
好きです、と、ただ一言の言葉が出てこない。
毎日毎日、心の中は復唱した言葉。
今だって、復唱している。
けれどいくら口を開けたって、出てくるのは熱い息ばかり。
照「大丈夫?」
照の方からは、私が病人にでも見えたらしい。
私は、照に手を握られた。
それがただの気遣いであることは、重々承知している。
照「菫……っ!」
菫「…………」
照「……ねえ、ちょっと」
――気が付けば、照を抱擁していた。
あの時と同じく、照の手に触れたことで、私の中の枷が弾け飛んでしまったのだろう。
抱きしめる力が強すぎると、なんとなくわかっている。
照がやや混乱していることも、なんとなくわかっている。
それらに対して、照は何一つ言及しない。
私も、照に対する気遣いなど全くもって忘れてしまっていた。
菫「……照、好きです」
照「え……」
菫「私と、付き合ってくれ……」
私はただ、勢いに任せて自分の恋心を照にぶつけたのみだ。
照「……ごめん、菫。 付き合うことはできない」
元々、たったの1%しかない、あるいはそれよりもっと低い希望にかけて告白したのだから。
これは当然のもの、こんなことはわかっていた、はずなのに。
なのになぜこうも、胸の奥がぽっかりと空いたような気分になるの?
泣き声だけは、なんとか堪えられている。
その代わり、恋心だけは堪えきれずに、その辺りに散らばってしまっていた。
それから照は、私に追い打ちをかけてきた。
実際追い打ちではなく、黙っている私を見兼ねてのことだと思う。
しかし私には、照が言う”付き合えない理由”というのが、全く追い打ちにしか感じられなかった。
照「菫のことはいい友達だと思っているし、一番仲もいい」
菫「……ああ」
照「それでも、恋愛感情は持っていない、持てない。 ごめん」
胸のほうに、得体のしれない気味の悪さが押し寄せてくる。
私はきっと、激情でひどい顔をしているはずだ。
その表情を隠蔽するように、耳をくっつけて、照の理由全てを聞いていた。
照が今どんな顔をしているのかは、よくわからない。
抱きついた時と同じく、この時もまた、照は一言も喋らない。
私達の仲は、これで終わってしまうのだろうか。
もしかしたら関係を切られるかもしれないと、片隅では理解した上で告白している。
それについて、腹はくくっている――つもりだった。
照「……帰ろっか」
その言葉が、あろうことか別れの言葉に聞こえてしまう。
こうして帰宅して、一度照と別れれば、それ以降一緒に歩くこともなくなるのだろうか。
頭に過るその考えは、照に対する恋心と同じく、どうしても振り払えないものだった。
どうにかして、繋ぎ止めないといけない――そんな焦燥から出た言葉は、最悪のものだった。
菫「なんでもいいんだ! ……身体だけの関係でも」
照「…………」
菫「照、私を見捨てないでくれ!」
振り向いた時に見えた照の顔には、僅かな哀れみが色濃く反映されていた。
可哀想だと思われていることは、わかっている。
でも、後に引くことなどできない。
それに、もし引くことができたとしても、私はきっと引かないことを選択すると思う。
照「それで、どうすればいいの」
菫「いつも一人でするようなのと変わらないさ……ただそれが、二人に増えただけ」
照「私、ほとんどしないけど」
菫「それならそれで、構わない」
それからは、照の制服を上から脱がしていった。
ブレザーを剥がして、ネクタイをほどいて、ボタンを上から順に弾いていく。
私がする行為を、照はただただ静観していた。
これからする行為がわからないわけじゃないだろうに、全く緊張している様子が見られない。
照にとっては自慰の延長線上であり、同時に私を慰めるための儀式でしかないのだろう。
私も私で、半分程度は線が切れてしまっているから、取り乱したり、必要以上に赤面することはなかった。
切れたのが緊張の線ではなく、恋心の線であったのなら、どんなに良かったことか。
そうして、私たちは何もなくなった。
双方ともに、脱がし終えた服を畳むことなど忘れてしまっていた。
菫「照、触るぞ」
照「待って」
菫「何?」
照「こういうの、最初はキスするものじゃないの?」
しよう、ではなく、するもの、か。
やっぱり照にとっては、こんなことはとことん儀式らしい。
先の言葉は、それを私に知らしめるかのよう。
そして同時に、哀れんでいる様が見て取れる言葉でもある。
それらのことを知りつつも、この行為を中断する気など、私は持ち合わせていなかった。
菫「照、目を閉じてくれ」
照「……んっ」
照の頭に手を添えて、私たちは静かに唇を重ねる。
初めてのキスは、よくわからない味、ヘドロのような感触がした。
私達は、それから幾重にも身体を重ねていった。
正確な回数は、もう覚えていないし、取り立てて数えることもしていない。
いくら歪な関係になろうとも、本質である照との友人関係は未だ変わらず。
――いいや、実際には、少しは変わってしまったかもしれない。
少なくとも私は、あれ以降ガラス張りの壁のようなものがあるのではないかと、不安で仕方がなくなっている。
二年の春も終わり、私達は三年生へと進級した。
一軍である私たちは、そのまま成り行きで指揮を取るような立ち位置につくこととなった。
インターハイを二連覇に導いたのは、一軍の地力もあることだろうが、私は偏に照の功績だと思っている。
それはなにも、私だけの思考ではないらしい。
新入生が皆、口を揃えて宮永照、宮永照と言っているのがその証拠だった。
公平のために口に出さないものの、教師陣も皆同じような考えに至っているはずだ。
菫「目ぼしい生徒はいたか?」
照「正直、全然。 菫は、いた?」
菫「私も同じ意見だ」
けれど皆、憧ればかりが先行していて、実力がそれに追いついていなかった。
いくら入部者が殺到しても、力なきものは一軍には入れない。
菫「今年は、不作だな」
そう思った、直後の出来事だった。
普段ならば気にすることではないのだが、入室者の一声によって、部室内の全員が彼女に注目することとなった。
淡「ごめんなさーい、遅れちゃったよ」
金髪のその少女は、全く悪びれる様子も見せずに、挑発と勘違いしてしまうようないい加減な謝罪をした。
白糸台は、照が二連覇へ導いたことも影響して、その実力重視は完璧なものとなっている。
そのため一軍に上がった者達はともかく、それよりも下に位置する者は、皆多少なりとも神経質になる。
あるいは先のように、やる気をなくしてしまうかのどちらかである。
この金髪の少女は新入生と見えるが、入学早々やる気がないのだろうか。
フランクなのは結構だが、時と場合を考えてもらいたい。
菫「遅れちゃった、じゃないだろう。 一時間は経過しているが」
淡「だから、ごめんなさいって」
菫「……お前、名前は」
淡「大星淡、一年生!」
菫「入部希望か?」
淡「うーん、私は……宮永照を、倒しに来ました!」
大星の発言により、部内の雰囲気は注目から清寂へと変化した。
照相手にも、全く引けをとらない。
あるいは、半荘の途中に限って、一時的に優位になることすらあった。
照を相手にそれほどの闘牌ができたのは、他に誰がいただろうか。
照の苦境を見るのは、何時ぶりだろうか。
照「ツモ、12900オール」
淡「うわ、噂通りだねー」
最後の半荘は、照の親番、東二局九本場の二巡目で終了する。
この五回の半荘、結局、照が一度もトップを逃すことはなかった。
それでも、私には大星が照に劣るようにはとても思えなかった。
確かに負けは負けだが、彼女もまた常に二位をキープし、照と棒一本分程度の点差しかなかった半荘だって、二回もあったのだから。
淡「こんな面白い人と打てるなら、ここに入部する!」
それからは、一ヶ月も待たずに大星は白糸台の一軍に参加することとなる。
もしかしたら、照は最初の対局時に、大星を一軍にすることを決めていたのかもしれない。
ただ、皆のことを考えて、すぐに迎え入れなかっただけで。
麻雀部での照は、彼女といることが多くなっていった。
最も照の方からそうしているわけもなく、専ら淡が照へちょっかいをかける形だ。
照も全面的に受け入れるわけではないが、かといって拒絶もしていない。
それを見ると、ひどく胸焼けがする。
時が経ち、早くもインターハイの時期が迫ってきた。
この一年は、白糸台の三連覇がかかった重要な年。
必然、実力主義に更に磨きがかかる。
そうなると他の三年生を押しのけて、大星もメンバーに入ってくることだろう。
「先鋒、宮永照」
照「はい」
「次鋒、弘世菫」
菫「はい」
入ることはわかっていたけれど、いざ発表されると、照と同じチームでいられることに安堵してしまった。
全く、情けない。
「中堅、渋谷尭深」
尭深「! はい……」
彼女もまた、同じく安堵の体だった。
そういえば、渋谷は今年が初めてだったか。
「副将、亦野誠子」
誠子「はい」
「大将……大星淡」
淡「はいはーい」
大星が、大将。
照が先鋒として選ばれた時点で、薄々は理解していたことだ。
彼女の実力なら、その大将の座もしっかりと務まることだろう。
照が座ったことのあるその席を大星に任せることには、誰も異論はない様子だった。
それもそうだ、彼女が照に引けをとらない実力を持っていることは、否定しようもない事実なのだから。
帰りの道で、私は照に対して、大星について問いかける。
大将の座に、自分が座らなくていいのかという旨の問いかけだ。
菫「いいのか? お前じゃなくて、大星を対象に置いて」
私はてっきり、照が大星を褒めるだけの返答を寄越すと思っていたのに。
照「私が、大星に大将を譲った。 あそこはあの子にこそ相応しいから」
照の返答は、予想も濃度の高いものだった。
照「他の誰にもできないと思う」
――また、胸焼けがした。
その原因がただの醜い嫉妬であることは、既に気が付いている。
気が付いていても、どうしようもできない。
菫「んっ、照っ……」
照「う、あ、あっ……」
菫「ん、んうっ!」
どうしようもできないから、乱れた。
私達の行為は、大星が入学してきてから明らかに変化している。
端的に言えば、激しくなっていった。
今日もまた、同じ場所を重ねて、快楽を共有するばかり。
他には、何も考えてない。
こうしている内は、考えなくていい。
菫「照……んむっ」
照「ん、ぅ……」
一通り終えた後は、汗だくになりながら、体液の塗りたくられた身体を重ねあって身体を休める。
と言っても、私はその際にも照の口へ自分の舌を繋げるのだから、実際は名前ばかりの休憩だ。
それが終われば、再び先のような行動を機械的に繰り返して、脳に快楽を命令するのみ。
これでもう、今日は三度目だ。
照「菫、苦しいっ……」
菫「す、すまない」
その言葉で、頭が一気に冷却されてゆく。
照の腰から自分の腰を下ろしてすぐ、照は自分の身体を起こして、胸に手を当てて深呼吸を始めた。
それほどまでとは、私は一体、どれほど錯乱していたんだろうか。
照「今日、なんか、強引……」
菫「……悪かった」
照「今日はもう、休憩したい」
菫「……そうだな」
照「ねえ、菫、何かあったの?」
そんなこと、一々聞かないでくれ。
照、お前はどうして、そうやって私の心を分解しようとするんだ。
菫「……お前は、大星のことをどうしたいんだ、どう思っているんだ」
自分でも、見苦しい返答をしたと思う。
大星が照とよく対決するのも当然のことだ。
照が大星を一軍へ引き入れたことも、大将の座を譲ったことも、納得できないわけがない。
その上で、大星に嫉妬の念を抱いているわけだ。
むしろ、それだけならまだ可愛いものだろう。
私はあろうことか、照の彼女面をしているのかもしれない。
自分が憎らしい――そう考えれば、全ての感情に説明がつくのだから。
照「どう、って……。 実量があるから、一軍に推薦したし、大将の座も譲った」
菫「確かに、実力はあるが……」
照「菫だから言うけど、私が抜けた後、白糸台を支えるのは尭深でも誠子でもなく、淡だと思ってる」
"菫だから"なんて本来なら嬉しいはずの言葉は、この時ばかりはむしろ嫌悪してしまった。
照「念のため言っておくと、私は……淡のことは、後輩としか思っていない」
そういった照の赤い視線は、真っ直ぐに私の目を突き刺してきた。
思わず、目を逸らしてしまった。
その言葉の役割は、本来なら、私を宥めるものであるはずなのに。
淡がどう思っているかはともかく、照はただの後輩としか思っていない、それだけの意味しかないはずなのに。
どうしてだろうか。
”菫のことも、彼女ではなく友人としか思っていない”――そんな風に、聞こえてしまうのは。
照「私は、菫が一番の友人だと思ってるから」
現在考えていた思考を読み取られたかの如く、照は顔を変えずにそんな言葉を投げかけてくるのだった。
胸焼けこそしなかったけれど、今度は吐き気がこみ上げてくる。
照は最初から、私とは恋人ではないと、言葉にして伝えてきているじゃないか。
そんなことはどうでもいい、私たちはただ、身体だけ重ねていればそれでいいはずである。
勝手に期待しているのは、私だけ。
先の発言だって、そんな風に聞こえるもへったくれもない。
照は一貫して、最初からそんな風に言ってきているじゃないか。
――それでも私は、照が好きだ。
大星が一方的に照に擦り寄るように、私もまた、照に一方的な恋慕の情を抱いている。
菫「お前はどう思っているか知らないけどなぁ!」
照は私も大星も等しく否定するだろう、そんなことはわかっている。
わかりきっているのに、何度も否定されているのに、求めてしまう。
菫「私は、お前のことが好きなんだよ……! なんでわかってくれないんだ……」
そんな自分に、嘔吐感を覚えてしまったわけだ。
腹中に渦巻く気持ち悪さは、全て言葉にして吐き出すことで、なんとか誤魔化すこととした。
照「……それでも、私は」
照はただ、淡々と告げる、そこには何の感情もない。
強いて言えば、友人である私に対する哀れみが含まれているばかり。
その口から出てくる言葉は、もう、わかっている。
照「菫に恋愛感情は抱けない、抱くこともない」
だろうな。
照も、異存はない。
大体、求めているのは照のほうではなく、私だけなのだから。
菫「……すまない、今日はもう帰る」
照「シャワー浴びて行かないの?」
菫「いい」
いつもなら、シャワーを浴びてから二、三の会話をして帰るのだが、今日はもう早く帰りたい一心だ。
体液を落とすためにここに居続けるよりも、湿った格好でもいいから、とにかくこの場から離れたい。
本当、自分勝手だと思う。
家に帰ってからは、靴を脱ぐのを待たずして、玄関で泣き崩れてしまった。
服も髪も、汗でとっくに汚されているから、涙が出てくることは特に気にならない。
先刻の嘔吐感が再発して、咄嗟に手のひらを口に当てるも、何か出てくることはなかった。
服を汚さずに助かった、などとは思えなかったし、また何か出てきてしまっても、同じように何も思わなかったろう。
菫「……照」
無意識に、恋愛対象の名前を呟いてしまった。
私はどうやら、まだ照のことが好きらしい。
恋は病と言うが、全くその通りだと思う。
できることなら、薬で治してしまいたい。
こんな関係になってから、嫌悪感を抱かなかったことが無い、といえばそれは嘘になる。
けれど、それは照に対してではなく、むしろ不可能な恋をしてしまった自分に対して、だ。
偽りの罵倒を頭の中にいる照にいくら投げかけても、どうしても嫌いになることができない。
身体を重ねる行為だって、やめたくない。
これが唯一、崩れた私達を繋ぎ止める糸に見えて仕方がないのだから。
繋げるというよりも、縛っているといったほうが適当だろう。
どちらにせよ、照との関係がなくなるよりは、ずっとマシだ。
シャワーを浴びて、体液を全て削り落とした後は、夕食も食べずに眠ってしまった。
あれから三日が過ぎる。
大星は、相変わらず照に懐いていた。
私と照も、表面上こそ変わりない。
亦野はしっかりしているし、渋谷も気を使いながら落ち着いている。
麻雀部の風景は、全く変わっていない。
この三日間、私達は身体を重ねていなかった。
無論、行為をやめることはできる限りしたくない。
かといって、積極的に身体を重ねることも、またしたくはなくなっていた。
あの吐き気が襲ってくるかもしれない――そう考えるだけで、身体が縮こまってしまう。
照はただ、私が求めれば素直にそれに従うのみ、照のほうから私を求めてくることなど一度もない。
そんな理由が重なったのが、身体の関係が疎遠になった理由である。
それに。
菫「調子は、大丈夫か?」
照「大丈夫。 準決勝と、決勝だけ問題にしていればいい」
菫「お前が負けるということはないだろうが……油断はするなよ」
照「わかっている」
もう、三日後にはインターハイがある。
照の雀力に関しては、私なんかが文句を言えるものでもない。
しかし、身体の問題は別だ。
いくら強くとも、雀卓につけなければ意味がない。
破綻した今の状態では、照の身体を崩してしまいかねない行為に及ぶ可能性が十分にある。
照との関係が壊れるよりも、照自身が壊れることのほうが、私には耐えられない。
菫「照」
照「なに?」
菫「……しばらく、私達の関係は終わりにしよう」
照「…………」
だから私は、自分の感情を押し殺して、照との関係を断つことにした。
照「……どうして?」
菫「もう、インターハイだ。 万が一身体を壊してしまったら、私は責任を負いきれない」
照「最近してなかった理由も、そういうこと?」
菫「……ああ」
本当は、違う。
照の彼女になれない現実、それを見つめたくなかったから。
これで私は、照に二度目の嘘をついたことになる。
照「わかった」
菫「…………」
照が理由を聞いてきて、正直、内心では期待していた。
もしかしたら、照のほうからこの関係を繋ぎ止めてくれるのではないか、と。
しかし、そう都合良くいくはずもなく。
照の淡白な返事からは、そんな影は全く見られなかった。
それもそうだ、元々私が勝手に求めて、私が勝手に断ち切ろうとしているだけなのだから。
どんな行動を取ろうとも、照の彼女ではいられない。
そういった現実を自覚するのには、もう十分すぎる期間が経過している
照「ツモ、2000.4000」
淡「おー」
白糸台は、何の問題もなく勝ち進んでいる。
そのためだろうか、他の学校は知らないが、少なくとも白糸台の控え室は重苦しい空気にはなっていない。
それ故に、大星はいつものように照にべたついていた。
淡「おかえりテルー、やっぱりすごいね!」
照「今回は相手が弱かっただけ」
淡「ま、それもそうだけどね。 決勝にさっさと行っちゃえば、少しは楽しめそうだけどなー」
また、胸焼けがする――だが、意外にもそれもすぐになくなった。
私の心中に、触った端から肉が腐り落ちてしまいそうな、どす黒い感情が宿ったためだ。
大星は、照のことを友人以上、先輩以上だと思っているのだろう。
大星ほどの実力であれば、自分より強い人間を見たら敬愛してしまう気持ちもわからないじゃない。
私も照のことを友人以上だと思っているし、願わくばそれをしっかりとした形にしたいと思っている。
しかし照は、両者共に、明確な言葉にして否定した。
その事実は、私だけが知っているもの。
照に対しては、大星はそんな事情を知らずに突っ込み、私は知っていても尚突っ込んでいる。
ああ、なんだ。
大星も、結局、私と同類じゃないか。
その頃になって、私の元に一つの転機が訪れる。
廊下を歩いている時に、どこかの記者に質問を求められたのが発端だ。
「ちょっと、いいですか」
菫「はい、なんでしょう」
「宮永照選手について、聞かせてもらいたいんです」
菫「本人に、直接伺ったほうがいいと思いますが」
「そう言わずに……ほら、これ見てください」
菫「……?」
その記事には、清澄高校・宮永咲のことが記述されていた。
宮永咲――照の妹。
照の家庭はどうも複雑らしいが、私は未だにその全貌を教えてもらったことはない。
しかし長いこと一緒にいる身だ、妹がいることなど、とっくに知っているさ。
無闇矢鱈に、こんな人間にお喋りするつもりもない。
「あなた、宮永照選手のご友人ですよね? 妹さんについて、何か知りませんか?」
菫「いいえ、全く」
「そうですか……残念」
なんの嫌悪感も抱くことなく、記者に嘘をついた。
照が私を拒絶する際も、きっとこんな風に、何も思っていないのだろうか。
そう思うと同時、先程大星の方を向いていた黒い感情は、今度は照の方を向いてしまった。
気が付いた頃には、もう遅い。
いくら修正しようと思っても、命令を受け入れてくれない。
修正しようと思いつつ、心の底のほうでは照を独占したいと思っているためだろうか。
菫「この記事……」
「はい?」
菫「私も、照のことについて知らないことは多くあります。 ですから、この記事をお借りしたいのですが」
「あ、ああ、はい! 構いませんよ、いくらもっていっても」
菫「ありがとうございます」
私は、照に振り向いてもらいたい一心で、こんなことをする。
こんなものは、言い訳にしかならないか。
照「おかえり、ずいぶんと長かったけど……何持ってるの?」
菫「ああ、これか」
そう言った切り。
大星が帰ってきたために、この会話は中断される。
大星と照が二、三の会話をぽつぽつとした後。
私は手元の記事を、先ほどのお望み通り、照の側へと投げつけてやった。
菫「……お前、妹がいたんじゃないのか?」
照は何も喋らず、ただその記事を読み取るのみだった。
照の家庭が複雑であることは、私だけが知っている事実。
同じ秘密を共有できる唯一の相手として、私を頼って欲しい。
照の方から、私を求めて欲しい。
真っ黒な感情に突き動かされてとったこの行動は、すぐに後悔することになる。
照「……私に、妹はいない」
照の身体に走る、確かなショックを見つけてしまったから。
新聞を投げた一件以降、照とは会話をしていない。
夕食や風呂など諸々の事柄を済ませて、各自ホテルの自室へと戻る。
大星なんかは、もしかしたら照にちょっかいを出しているかもな。
どうせ実らないのだから、好きにすればいい。
私も、実らないと知りつつ好きにしているのだから。
そう思った直後、ドアに軽い音が二つ鳴り響き、用心することもなく鍵を開けた。
菫「照か」
照「明日の対戦校の牌譜を、一通り見せて欲しい」
菫「……わかった」
用事があるのは、私ではなくて、牌譜ってわけだ。
牌譜の入った端末を持って、照に渡す。
受け取った照はそのままベットへと座って、膝の上に端末を乗せて牌譜を眺めはじめたのだ。
てっきり、さっさと帰ると思っていたのに。
菫「自分の部屋で見なくていいのか?」
照「さすがにこれを持ち出すのは申し訳ない。 全部覚えて帰る」
違う、帰ってくれ。
困るのはお前じゃなくて、私なんだよ。
それからも、照は居座っている。
菫「帰らなくていいのか?」
照「帰って欲しいの?」
菫「そういうわけじゃないが……」
照「もう少し、居たい気分」
私はお前と違って、淡白な性格はしていない。
私がいつからお前に抱かれてないと思っているのか、覚えているのか?
そんなこと、お前は興味がないのか?
照「飲み物、もらっていい?」
菫「ああ……その冷蔵庫に入ってる」
腰の低い冷蔵庫に合わせて、照はやや屈んでその中身を覗いていた。
こちらから見える横顔と腰を見ると、とても我慢できそうにはなかった。
いつもいつも、行動ばかりが先行する。
そんなだから、私たちはこんな醜い関係になってしまったのかもしれない。
照「……あっ!」
私は、とことんバカだ。
腰を起こした照の両腕を掴み、そのまま床に押し倒してしまったのだから。
暴発してしまったら大変だけれど、今の私はそれに構っている余裕はない。
菫「照」
照「んっ……」
それから、強引に照の唇を奪った。
照は全く抵抗しない。
それどころか、いつもより少しばかり火照っているようにも見える。
こんな表情、燃料としては十分すぎる。
それからは四回ほど、互いの舌と舌を、唾液と唾液を混ぜ合った。
どちらの口にどちらの唾液が入っているのか、もう、わからない。
私たちはそのまま服を脱ぎ終えて、あろうことか床の上で行為に及んでしまう。
照はいつもよりも数倍乱れて、喘ぎ声は下手したら騒ぎ声にも錯覚してしまうほど。
今まで照が、なんで私とこんなことをしているのかわからなかったのだが、その時、ふと気が付いてしまった。
照はきっと、家族関係に関するストレスを解消するために、私を抱き続けていてのだろう、と。
お互いに、決して埋められることのない傷を埋めたいがために、こんな行為に及び続けているわけだ。
私は照を利用しているし、照も私を利用している。
照と同じ堕ち方をしているのは、なんだか嬉しく思えてしまう。
払いきれない冷たさと、湿っぽい熱さ。
その二つを同時に、互いに感じながら、私たちは同じ頃に果ててしまった。
――結局この年、白糸台は三連覇を逃してしまった。
けれど、元々は白糸台を勝ちへと導くために始めた禁欲だ。
それを解除した途端の敗退。
これで責任を感じるなという方が、無理な話だ。
菫「照、ごめん、ごめん……!」
照「菫のせいじゃない、誰のせいでもない。 ただ、相手が強かっただけ」
菫「でも!」
照「三連覇を逃したのは、私だけじゃなくて菫も同じ。 一方的な責任を感じないで」
私には自分の"無理"を押し付けてくる癖して、私の"無理"は無視しようとする。
お前は、どうしてそうなんだ。
こんなの、私を責め立てればそれで終わる話じゃないか。
私のことを一発や二発でも叩いて、菫が襲ったせいと一つ言うだけで、全てが丸く収まる。
もう関係は終わりなんて言えば、ちょうどいい機会だ、綺麗サッパリ関係を断てることなのに。
そう言われてしまえば、私が次に返せる言葉はない。
そんなこと、お前ほどの人間が、理解できないわけがないだろ。
どうしてお前は、中途半端に私に優しくするんだよ。
インターハイ中の一件があってからは、どちらが言い出すまでもなく、自然と行為は再開していった。
そのペースは、意外にも安定している。
私も照も、あれから極端に乱れることはなくなっていた。
ただただ、作業的に快楽に包まれているだけだ。
この頃はもう、どうして身体を重ねているのか、なんだかよくわからなくなってしまっていた。
私にわかっていることは、私が照を好きでいることと、その恋は永遠に成熟しないこと。
そして、関係を断ち切りたくないこと――この三点のみ。
だから私は、今日も照に身を委ねる、照もまた同じだ。
ある日の帰り道で、照とこんな会話をした。
照「菫は、卒業したらどうするの?」
菫「進学しようと思う」
照「プロ行きの推薦は?」
菫「一旦、保留だろうな」
最高学年ともなると、当然のように進路の話を進めなくてはならない。
照にはもちろん、幸い私にもプロ行きの話は転がってきたのだが、私はこれを蹴って、大学へ進学することとした。
大学に行って、何かしたいわけではないし、将来的にはプロになるつもりでもある。
ただ、今はその地位は欲しくない。
今そんな地位を入手して、一体何になると言うんだ。
少なくとも、照に関しても、麻雀に関しても、気持ちの整理が全くついていないことは事実であった。
照「なら、私と同じ」
どうやら、照も進学を決めたらしい。
普段ならば喜ぶ、以前ならば喜んでいたのかもしれないことなのに、全く喜べずにいたのが不思議だった。
最終的に私たちは、別々の大学へ進学することを決定した。
その方が、後腐れなく済むだろう。
進路を固めた後は、少しばかりペースの落ちていた例の行為を、再び元のリズムに戻した。
もう、照に溺れる必要もないのに、未だにこんなことを続けてしまっている。
自分の選択、照の心中、自分の非力さ、現状。
全てが、よくわからなくなる、満足とも不満足ともつかない。
そんな不安定な状態だからこそ、強引に精神を安定させるために、互いの身体を貪りあっているのかもしれない。
願わくば照の方にも、多少なりとも似たような感情が宿っていてほしいものだ。
未だに照のことは好きだ、だけど、付き合う希望はもう抱いていない。
実のところどうかはわからないものの、そう決心したのは事実である。
だからクリスマスは、照と会わないことにした。
もし会ってしまえば、再び処理し切れない希望を抱いてしまうかもしれないから。
余談だが、大星は私の予想通りの感情を抱いており、卒業式の今日の日に告白をしたらしい。
結果は言うまでもないだろう。
同類だと思うものの、私のように泥沼に陥らなかっただけ、彼女はまだましだ。
それだけは、素直に羨ましかった。
こいつは、最後まで一貫していた。
対して私は、最後までブレ続けていた。
照「お疲れ」
菫「ああ、背中が痛くて仕方ない」
照「……なんだか、こうなると少し寂しくなる」
菫「全く動じなかった癖にか?」
照「それとこれとは別、菫だって動じてなかったでしょ」
菫「まあ、な」
照の言うとおり、私は泣いてはいなかった。
でも――何が"動じてなかったでしょ”だ。
菫「……すまない、先に出ててくれ」
照「わかった」
こんなちぐはぐな感情を抱えたままの卒業式で、感傷に浸らないわけがないだろう。
気持ちはもうとっくに整理した、はずなのに。
菫「照……照……」
もう、照と付き合うことは考えないようにしよう。
プロ行きも、一旦はやめにしよう。
私はまだ、大人ではないから。
そんな諸々のことは、先程までは確固たる思考として、確かに私の中に存在していたものだ。
でも、照に話しかけられただけで、"寂しくなる"と一つ言われただけで、それらは簡単に崩れ去ってしまった。
どうやら自分に言い聞かせて、無理矢理、自己暗示的に納得していただけらしい。
本当はもっと、照と一緒にいたい。
本当はもっと、照と麻雀を打ちたい。
全て、叶わない。
もう、遅い、遅すぎる。
それどころか、叶うタイミングすら、最初から存在していなかったのだろう。
照と出会ったことそのものが、間違いだったのかもしれない。
私の初めては両方とも、快楽ごと照に預けてしまったのだ。
そのことを理解すると、また、少しばかり吐き気がこみ上げてきた。
照は玄関のすぐ側にいた。
菫「すまない、待たせた」
照「……泣いてきたの?」
なんで、一発で見抜くんだよ。
しっかりと、鏡で跡を直してきたはずなのに。
なんでこいつは、私のことを知り尽くしているんだ。
なんで私は、こいつのことを知り尽くしているんだ。
ああ、なるほど。
こうして互いを理解し合えるほど深い関係だったなら、せめてもの救いと言える。
結果がどうあれ、私たちはただ、身体を重ねるだけの関係ではなかったのだ。
照「っと……大丈夫?」
奇しくも、最初の頃と全く同じ状況だった。
照に寄っかかるように強く抱きついて、耳をくっつけて、お互いの顔を隠している。
私が泣いていることは、照は察しているだろう。
だからこそこうして抱きついていることも、照は知っているはずだ。
内面が筒抜けだろうと、それで構わない。
もう最期になるのだから、せめて外面くらいは、破綻していない弘世菫として過ごさせてほしい。
口に出して決めたことではない。
けれど私も、照も、これが最後になるであろうことは察している。
照「っ、あっ、うぁっ……」
菫「はあっ、あっ……んぅっ!」
私は、照よりもやや遅く絶頂を迎えた。
いつもは、照の名前を呼びながらすることなのに――なあ。
喉の方まで出かけた想い人の名前は、口に出さず身体の中へ押し返すことにした。
くたびれた私たちは、お互いに胸を重ねて、倒れたまま休憩する。
最後の最後は、ひどく疲れてしまった。
耳には、照の激しい呼吸音が侵食してきている。
恐らく照の方にも、私のそれが侵食しているはずだ。
しばらく荒い呼吸をした後、私たちは一言も喋ることなくキスをした。
舌を重ねない、軽いキス。
行為の最初と最後には、毎回キスをするのだから、これが正真正銘最後の触れ合いだ。
この触れ合いで、私達の関係は全て解除される。
最後のキスは最初と違って、不思議と甘い味がした。
お互いに、最後はどうやってケリをつけるべきか手探りしている状態だ。
照はどうだかわからないが、私にはただ一つだけ、やり残したことがある。
それだけは、どうしても実行しておく必要があった。
もし照にやり残したことがあったら申し訳ないけど、その枠はどうしても私に譲って欲しい。
菫「照、私は今から告白する。 こっびとく振ってくれ」
照「……わかった」
トイレで泣いた通り、私には確かに未練が残っていた。
それを本当の意味で断ち切らねば、お互いに先へは進めない。
告白の言葉は、最初と違って簡単に口から出ていってくれた。
菫「照、好きだ。 付き合ってくれ」
照「菫に恋愛感情を抱くことは"絶対に"ない」
菫「……ふふ、ありがとう」
照「…………」
最後にしぶとく残っていた未練は、心の中心部を道連れにして切り落とされていった。
ぽっかりと空いた穴を見つけた後――身体が、なんだかひどく軽くなった気がした。
私は、ありがとうの言葉と一緒に、うまく笑えているだろうか。
涙を流しつつも、最後に相応しい顔を作れているだろうか。
なあ、照――。
時が過ぎて、私と照は大学二年生になっていた。
年齢も互いに二十歳になり、もう酒も飲める。
自分で言うのもなんだが、高校生の頃と比べると、随分と大人になったと思う。
少なくとも、二十という年齢に恥じない程度の精神力は身につけたつもりだ。
照との最後の日を補足しよう。
私は帰宅してから、照のアドレスを削除しようと考えたのだ。
アドレスを削除しても、向こうからメールが来たら意味がないから、まずはアドレスを変えることとした。
そうした後で、照へ別れの連絡を入れるために、メールの作成画面を開いた。
"さようなら"
――この一文が打てたら、どんなに楽なものか。
未練こそない、が、やはり照のことは好きなのだ。
友人としても、それ以上のものとしても。
私はただ、こいつと連絡を取り合える仲であれば、それで十分だ。
最終的に、最初の”さ”すら打つことなく、打つことができず、この計画は断念してしまう。
"さようなら"と打つべきはずだった入力欄には、"アドレスを変えた"とだけ入力して、送信ボタンを押した。
私は大学に不慣れなこともあって、勝手がわからずに講義を入れすぎてしまった。
それに加えて、照への想いを埋葬するかの如く、麻雀へと没頭しいった。
照も淡々とした性格だから、多少のやりとりこそするものの、向こうから遊ぼうなどといった連絡は寄越さない。
そんな様々な要素が重なったせいか、一年の内はメールこそすれど、一度も照に合わずに終わってしまった。
もしかしたら、それでちょうど良かったのかもしれない。
今の私は照の横に並んで、照と競い合いながら麻雀をできる、なんて、それだけの自信と力を身につけることができたのだから。
本当は、わざと講義をたくさん入れたことも、わざと麻雀漬けになっていたこともわかっている。
こちらから会おうと申し出れば、照はきっと空いている日時を教えてくれただろう。
私のほうから空いた日時を教えてやってもいいし、それを無視するほど照は冷めた性格ではない。
調整なんて、いくらでも可能だ。
つまるところ、私は再会するという選択から、敢えて目を逸らしていたらしい。
年齢的に区切りがつき、大人になったと自覚できる二十になるまで。
菫「久しぶりだな」
照「変わらないね」
菫「照もな」
今日が、その再会の日である。
先刻は照に対して"変わらない"とは言ったものの、実際、照はそれなりに変わっていた。
なんだか背も少しばかり伸びたように思えたし、見たところ雰囲気が大人びている。
元々照は大人びていたのだが、大人びている高校生とはまた違った、本物の大人の雰囲気を身に着けていた。
加えて、整った顔立ちも相まって、高校の時よりも更に美人に成長している。
昔の私が見たのなら、顔を真っ赤にして動けなくなっていたろうな。
無論、今ここにいる私も、頬がやや熱くなったのは自覚している。
当時と違うのは、吹っ切れたような熱さを持ち合わせていないこと。
それと、仮に持ち合わせていたとしても、それを実行する気がないということ。
「お待たせしました」
菫「ありがとう」
照「じゃあ、乾杯」
菫「乾杯」
大人になっても、私達の関係は変わらない。
それを今日この時になって、やっと自覚できた。
口に入れたビールは、確かに美味しいけれども、ひどく苦い味をしていた。
私も私で調子がよくなり、高校の頃を思い出して、照に一つの質問をする。
あの時と、同じく。
菫「お前、恋人とかできたのか?」
照「全く、作るつもりもない」
それにはもう、何も思わなくなっていた。
ただただ、こんな美人がもったいないな、なんてと思うばかり。
照「菫は?」
菫「私だって、いないさ」
照「もったいない」
菫「そうはいっても、気がないんだから仕方ないだろ」
そう、私はもう、恋人を作る気など持ち合わせていなかった。
なぜなら、照――お前の存在があるからだよ。
私の片思いは、弘世菫か、宮永照のどちらかが生き続ける限り続くものだろう。
それは仕方ないさ、回避する手段も、成熟させる手段も、高校に置き忘れてしまったから。
この恋を実らせることもなく、ただ照の友人でいること――それが現在、私が唯一願っていることだった。
卒業式の日にできた、埋まる兆しのない心の空洞は、もうどうしようもないから目を背けることにした。
おわれ
死にたい
Entry ⇒ 2012.10.14 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
憧「にゃっ!」穏乃「にゃ?」憧「あっ」
憧(我ながら何よ、にゃって)
憧(恥ずかしい恥ずかしい)
憧(というか絶対シズにキモがられた……、よね)チラッ
穏乃「……」フイッ
憧(ガーン! 露骨に目ぇそらされたー!?)
憧(そんなに引かれちゃったかな……)
穏乃(やばいやばいやばい!)
穏乃(さっきのが可愛すぎてまともに憧の顔が見れない!)
穏乃(このまま黙ってても気まずいだけだ)
穏乃(なんとか会話をしないと……、落ち着け私)
穏乃「あのさ憧」
憧(シズの方から話しかけてきてくれた!?)
穏乃「さっきのにゃってやつさ、けっこう可愛いかったよ」
憧(か、かかか、可愛い!? 今シズが可愛いって……)
憧「ふみゅー」
穏乃(ふみゅー? えっ?)
憧(ぎゃー!! テンパってまた訳わかんないこと口走ってしまったー!)
穏乃(憧の顔が真っ赤になってる……)
穏乃(口にしてから恥ずかしくなったのかな)
穏乃(か、可愛い……!)
穏乃(えええっ!? 憧ってこんなに可愛かったっけ!?)
憧「シズ、あの……」
穏乃「うっ、うん」
憧「今の変な声はわざとじゃなくって、つい口がもつれたというか……」
穏乃「あ。そうなんだ……」
憧「だからお願い! 聞かにゃかったことにして!」
憧(って、わあー!? 肝心なところで噛んだー!!)
憧(よりによってシズの前でこんな恥ずかしい発現連発して……)
憧(穴があったら入りたい……)
穏乃(可愛いのはいいんだけど、いったいどうしちゃったんだろ憧?)
穏乃(さっきから落ち着きがないというか、めちゃくちゃ恥ずかしがってる様子だし……)
穏乃(よーし! ここは幼馴染みの腕の見せどころ!)
穏乃(混乱してる憧を私がリラックスさせてあげるんだ!)
穏乃(それで恥ずかしくもなんともないよって安心させてやろう)
穏乃(そうと決まればー)
憧(だ、だだ抱きつかれた!?)
穏乃「こんなことで照れるなよー。私と憧の仲だろ?」
憧(わ、私とシズの……、仲?)
穏乃「小さい頃からお互いのこと知ってんだもん。今さら恥ずかしいも何もないって」
憧(恥ずかしいも何もない……?)
憧(ああ駄目! 恥ずかしさとシズに抱き締められた緊張とで、頭が上手く回らなくなって……)
穏乃「ほら。裸の付き合いもした仲だろ?(風呂的な意味で)」
憧(あ。駄目だあたし、頭がオーバーヒートして……)
憧「……好き」
穏乃「えっ?」
憧(……あれ? 今あたし、なんて?)
憧(……)
憧(……)
憧(いやああああああ!!)
憧(なんばしよっとあたし!?)
憧(あわわわわ! とっ、とにかく弁解しなきゃ!)
穏乃(そっ、そんなに顔を赤くして言われても……)
憧「だからあたし、あたし……」
憧(……っていうか)
憧(よく考えるとわざわざ弁解する方が怪しくない!?)
憧(どうしよ、えっと、弁解の弁解……、ああでもそれだと気持ちを認めることに)
憧(だからあの、今からでも何でもないふりを、その……)
穏乃「落ち着いて憧」ポンポン
憧「ふきゅっ!」
憧(あ。シズに背中ぽんぽんされたら、また変な声が……)
憧(やだもう……。なんであたしこんなんなんだろ……)
穏乃「あ、憧……?」
憧「うっ、ひっく、ひっく……、うぁぁん……」
穏乃「……」
憧(最低だ……)
憧(ワケわかんないことわめいたあげく勝手に泣き出しちゃって……)
憧(これじゃあたし、シズの後ろをちょこまかしてた頃と何も変われてないよ……)
憧(一方的に迷惑かけて……)
穏乃「そういえばちっちゃい時は憧ってけっこう泣き虫だったよな」
憧「……うっ、ん」
穏乃「なんだか久々に憧が泣いてるの見た」
憧「ぐすっ、ずずっ……」
穏乃「今だから白状するけどさ、憧に泣きつかれるのって嫌いじゃなかったんだよ」
憧「え……?」
穏乃「だから頼ってもらえると、それだけ私に気を許してくれてるのかなー、なんて思えて」
穏乃「あはは、じいしきかじょー?」
憧「……ぐすっ」
憧「シズ……」
穏乃「うん」
憧「ぜんぜん、自意識過剰なんかじゃないよ」
憧「あとね……、さっきの言葉は、その……」
憧「好きって言ったのは、本当は……」
穏乃「うん」
憧「特別な……、ひっく」
穏乃「へ?」
憧「ひっく、ひっく、ひっく!」
穏乃「ちょ、憧!?」
憧「ど、どうしようシズ!? 緊張、ひっく、した、ら……、ひっく」
憧「しゃっくり、ひっく、止まらなく……」
穏乃「だ、大丈夫憧……?」
憧「ひっく、ひっく、ひっく……」
憧「……、あ、おさまったかも!」
穏乃「おおー!」
憧「気を取り直して……、オホン」
穏乃「……」
憧「あたしね、シズ。シズのことが……、ひっく!」
穏乃「えっ?」
憧「ひっく、ひっく! ひっく!」
憧(もうやだぁ……)
穏乃「うん」
憧「それでは、改めて!」
憧「あのねシズ。あたしあんたのことが……、はくちゅん!」
憧「ま、待ってシズ、あたし……、はくちゅん! はくちゅん!」
憧「はくちゅん!はくちゅん! はくちゅん!」
穏乃「憧ー? 大丈夫?」
憧「はくちゅん!」
憧(死にたい……、どんだけヘタレなのよあたし……)
穏乃「頑張って憧!」
憧(シズに応援してもらえた!)
憧(よーし……)
憧(「あ」「た」「し」「は」「シ」「ズ」「が」)
憧(……)ガクガクガク
憧(……あ、あれ?)
憧(……)ガクガクガク
憧(どど、どうしよう!? 緊張のあまり手が震えて字が打てない!)
穏乃(憧……)
憧(げっ。打ち間違えた、消さないと……)
憧(あ。消さなくていい文字まで消しちゃった……)
憧(どうしよどうしよ……)
穏乃「もういいよ憧」
憧「えっ?」
憧(も、もしかしてあたし、あんまり要領悪いから呆れて見限られた?)
憧「ま……、待ってシズ……」
憧「あたし頑張るから……、もう一度だけ気持ちを伝えるチャンスを……」
穏乃「あっ。違う違う! そうじゃなくって!」
憧「……?」
穏乃「今の憧の調子を見てたらはっきり言われなくてもなんとなく気持ちが伝わってきたってこと」
穏乃「私が言いたかったのはそういう意味での十分」
憧「と、いうことは……」
憧(あたしがシズをそういう好きだって、もうバレて!?)カアアアアッ
憧「か、勘違いじゃないと、思う……」
憧(……)
憧(シズに気付いてもらえることに甘えるんじゃなくて、やっぱりきちんと好きって言いたい)
憧(でも、あたしはこの気持ちを緊張して上手く言葉にすることができない……)
憧(言葉にできない、なら……)
憧(行動で示さなきゃ!)
憧(好きな気持ちを伝えられる行動といえば……、いえば……!)
憧(きっ、きき、キス……、だよね!?)
憧「しっ、しし、シズ!」
穏乃「うん!」
憧「めっ、目を閉じてください!」
穏乃「わかった。いいよ……」
憧(これであとはあたし次第)
憧(あー、緊張する)
憧(でも気合い入れなくちゃ!)
穏乃(頑張れ憧)
憧(やっぱりまつ毛長くて可愛いなあ)
憧(……いやいや見とれてる場合じゃなかった!)
憧(シズにキスをしなくちゃ、キス、を……)
憧「……」
憧「……」
憧「……ちゅっ」
穏乃「って、顔じゃなくて手にするのー!?」
憧「だだだだってだって! 恥ずかしくって!」
憧「シズのことになるとあたし、頭がこんがらがって……」
憧「本当はあたしも勇気さえあれば……」
穏乃「えいっ」チュッ
憧「って、え……、あ、え……?」
穏乃「ほら。私達って、得手不得手がバラバラじゃん」
穏乃「こうやって補いあおうよ。ねっ?」
憧(いま口、に……)
憧(口にチューされちゃった!?)
穏乃「憧ー?」
憧「……」
穏乃「おーい」
憧「……」
穏乃「もしかして、勝手に口にキスしたの嫌だった?」
穏乃「だとしたらごめ……」
憧「ふぁぁ……」ヘタヘタ
穏乃「あっ、憧!? 大丈夫!?」
憧「あはは……。なんか嬉しすぎて力抜けちゃったよ……」
穏乃「えー。無理しないでもいいよ?」
憧「大丈夫、キスした後なんだからそのぐらい平気だよ」
穏乃「そっか……。わかった!」
穏乃「……」
ふっ、ふきゅっ!
憧「にゃっ!」穏乃「にゃ?」憧「あっ」
おわり
ちょー可愛いかった
すばらでしたよ
かわいい
Entry ⇒ 2012.10.12 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
幼咲「シローシロー」シロ「…ダル可愛い」
シロ「……」プイッ
幼咲「っ!?」
シロ「………」スタスタ
幼咲「シロー…!」トテトテ
幼咲「あうっ…!」ドテッ
シロ「………」ピタリ
幼咲「シロ…シロー…」グスッ
シロ「…」クルリッ
幼咲「シロー!」ニパーッ
シロ「…」プイッ
幼咲「!?」ガーン
シロ「…(…可愛い)」
シロ「…なに?」
幼咲「絵本読んでっ」
シロ「……だる」
幼咲「!?」
シロ「…だるいなぁ」
幼咲「うぅっ…」
シロ「…心の底からだるい」
幼咲「……」ウルウル
シロ「…嘘」ナデナデ
幼咲「あっ…」
シロ「ほら…おいで…」ポンポン
幼咲「うんっ!」ストン
シロ「…どれどれ」ペラペラ
シロ「……咲。これ、誰の?」
幼咲「久ちゃんから借りたのっ!」
シロ「……あぁ」
幼久「…ニヤニヤ」
シロ「……」スタスタ
幼久「にげろーっ!」ダッ
幼久「な、なによ!そんなにおこることないじゃない!ちょっとしたおちゃめなのに!」セイザ
シロ「…咲にも久にもこういうのはまだ早い」キッ
幼久「うっ…ご…ごめんなさい」
シロ「……反省した?」
幼久「……した」
シロ「よしよし…」ナデナデ
幼久「……」ウツムキ
シロ「…(キツく言い過ぎた…かな?)」
幼久「……シロ」
シロ「……なに?」
幼久「……これ、なに?」ピラッ
シロ「な…!?」
幼久「おとーさんおかーさんのへやで見つけたのーねーねーこれなに?
ギザギザの付いたふくろにまるいわっかみたいなのがはいってるのー」ニヤニヤ
シロ「………」プルプル
幼久「(こ…これって…!?)」
シロ「…死刑」ダッ
幼久「全力で逃げろぉぉぉー!」ダッ
幼咲「むーー…」
シロ「…なに?」
幼和「あいぴーえすさいぼーというものでどうせいでもこどもができるんですよ!」フンスッ
シロ「…和は物知りだね」ナデナデ
和「べ…べつにそんなことは」テレッ
シロ「…和、これは知ってるかな」
和「なんですか?」
シロ「わらび餅はワラビーを粉末状にして作るんだよ」
幼和「!?」
シロ「…嘘だと思うなら咲に訊いてみなよ。本当だっていうはずだから」
幼和「え…?いや…でも…そんなばかな……」
幼咲「……」ジー
シロ「…お…ちょうど良いところに…咲、こっちにおいで」
幼咲「……」プイッ
シロ「…?」
幼咲「………」スタスタ
シロ「………(あぁ、なるほど)」
幼咲「(……シロはわたしのこと…きらいなのかな…)」ジワッ
シロ「……咲」ダキッ
幼咲「……っ」ビクッ
シロ「…拗ねてるの?」
幼咲「…すねてないもんっ」
シロ「……本当に?」
幼咲「…本当に。だからシロはわたしのことはほうっておいてみんなの相手をしてればいいよ」
シロ「………そっか…わかった」パッ
幼咲「あっ…うぅ…」ジワッ
シロ「(…可愛い)」
シロ「(だるい…やりすぎた)ごめんごめん」ダキッ
幼咲「っ!………こんなことしてもだまされないもんっ」ニパーッ
シロ「そう…」ナデナデ
幼咲「……ぜんぜんうれしくないしきもちよくもなんともないかなー」ニヘラッ
シロ「……じゃ、止めるね」
幼咲「そ、それはだめ!」
幼咲「だめなものはだめなの!」
シロ「そっか…だめなものはだめなんだ」
咲「そうなの!だから」
シロ「…じゃあやっぱり止めるね」
咲「え……?」
シロ「…だって撫でるのを止めるのがだめで、
それがだめなんだったらやっぱり撫でるのを止めなきゃいけないよね」
咲「え…?え…?」
咲「な…ならやめるのをだめなことがだめで…でもそれはよくてけどだめで…」アセアセ
シロ「(…やめられないとまらない)」
シロ「…そう言われるとだるい」
幼咲「な…ならなでないでっ!だきしめないで!ぜったいだよ!ぜったいだよ!?」
シロ「…オッケー」
幼咲「ぐっ………むぅぅぅぅ…!」プルプルプルプル
シロ「(…わくわく)」
幼咲「シロのばかーー!」トツゲキッ
シロ「…」アタマオサエ
幼咲「このっこのっこのー!」ブンブン
シロ「(…届かないのに一所懸命腕をブンブン振ってる…可愛い)」
シロ「……大丈夫?汗だくだよ」
幼咲「シロのせいでしょ!」
シロ「…酷い冤罪」
幼咲「…?むずかしいことばでごまかさないでよ!そうやってシロはいつもいつも…!」グゥー
シロ「……お腹、空いたの?」
幼咲「………うん」
シロ「……そろそろお昼だからちょうどいい…だるいけど続きはご飯を食べてから…ね?」ナデナデ
咲「……うん、わかった」
シロ「…今日のお昼は………照焼き」ボソッ
咲「!?」
シロ「…だから…照焼き」
幼咲「だからなんの!?」
シロ「…だから照焼きだって」
幼咲「…ま…またそうやってわたしのことをばかにして…」
シロ「…しまった…咲は知らなかったのか」
幼咲「え…?な、なにが?」
シロ「…調理師のトヨネはどうしてあんなに背が高いのか…考えたことはない?」
幼咲「…トヨネさんが…なんなの?」
シロ「…栄養満点の美味しいものを定期的に食べてるから」
幼咲「……!?」
シロ「……若い肉」
幼咲「」ビクッ
シロ「…瑞々しい肌」
幼咲「」ビクビクッ
シロ「…サラサラの血液」
幼咲「」ビクビクビクッ
シロ「…新鮮な臓物」
幼咲「で…でもそんなことしたらおまわりさんにつかまっちゃうんだよ…!
それに小さい子がいなくなったなんてテレビでやってないもん!」ガクガクブルブル
シロ「…はぁ…エイスリン」
幼咲「っ…エ、エイさんは実家に帰ったって…」
シロ「…うん。還ったよ」
幼咲「な…なに…どういうことなの…?」ガクガク
幼咲「あ…あぁ…!」
豊音「?咲ちゃんどうしたの?ちょーおいしいごはんの時間だよー」
幼咲「…え…て…」
豊音「え?なに?聞こえないよー?」
幼咲「かえしてーー!!」トツゲキッ
豊音「なにをーー!?」
幼咲「このっこのっ…!くそぅっ!このー!よくも!
これはおねーちゃんのぶんっ!これはエイさんのぶんっ!」ポカポカ
シロ「(…ちょーたのしいよー)」
豊音「シロ…嘘ばっかりついてると咲ちゃんに嫌われちゃうよ」
シロ「…そんなオカルトありえない。私は咲が好き。咲も私が好き。WIN-WINの関係」
豊音「…はたしてそうかなー?」
シロ「…?」
豊音「さっきは本当に怒ってたっぽいし」
シロ「」ピクッ
豊音「もうしばらくは口をきいてあげないってさー」
シロ「…だ…だいじょうぶ…なんだかんだで許してくれる」
豊音「仏の顔も三度までって言うしねー…ねー」
シロ「…咲は大天使だから(震え声)」
シロ「(…言われてみれば、この昼寝の時間咲は必ず私に添い寝をねだる…なのに…)」
幼咲「すぅ…すぅ…」ギュー
塞「よしよし」ナデナデ
シロ「(…お洒落眼鏡め…!!)」ギリギリ
塞「」ゾクッ
塞「(すごい視線を感じる…息の根が塞がれそう)」ダラダラ
シロ「(そうとわかれば…)…塞」
塞「なっ…なに?」
シロ「…ちょいこっちきて」
塞「どうしても?」
シロ「…親の死に目に会えなくとも」
塞「(嫌な予感がするけど…逆らえない!)…わかったわ」
塞「……シロ?どこまで行くの?」スタスタ
シロ「…ここらでいい…かな?」
塞「…で、要件はなに…」
シロ「…隙有りっ…!」ガバッ
塞「ちょぉぉぉっ!?」ヨケッ
シロ「…ちっ……」
塞「いきなりなにするのよ!?」
シロ「…そのモノクルは今日から私の物。そしてお前は今日から腰つきが
エロいだけの女になり、マヨヒガ(北○鮮)に送り将軍様を喜び組」
塞「なに言ってるの!?」
塞「(マズいわ…なにがマズいって全部マズい!言ってることはわからないけど…兎に角今のシロは漲ってる!)」
シロ「…分かってるよ。あなたのシアワセ、ウチのシアワセ。塞ならそう言ってくれると信じてる」ジリジリ
塞「それは違うわシロ!信じることは疑うことなのよ!」
幼霞「先生方」
シロ「…か…」ビクッ
塞「かすみ…さん?」ビクッ
幼霞「静かに、してもらえますね?」ニコッ
シロ「…命に代えても」
塞「モノクルが割れても」
シロ「…全く…塞が素直にモノクルを渡さないから」
塞「え?私にも過失があるの?…まぁ、いいわ。兎に角色々なことがもういいわ。
で…なんで急に私のモノクルに狙いを定めたのよ」
シロ「……知的系モテカワキャラになりたくて」
塞「そういうのはいいって言ってるでしょ」
シロ「…………だるいから言いたくない」
塞「はぁ………」
キライなんて欠片もなかったのに」
シロ「…時が経てば誰でも変わる」
塞「たとえ本気の言葉であっても、冗談っぽく言えば万が一の事があっても傷つかないものね。冗談で済むものね」
シロ「…………」
塞「…咲ちゃんと出会ってからよね」
シロ「…そんなこと…」
塞「あるわよ」
シロ「……だるいから考えたことない」
塞「はいはいだるいだるい」
シロ「…私…病弱だから」
塞「それは違う子の持ちネタでしょ」
シロ「………」
塞「…本気なら、相応の態度で接しなさいよ」
シロ「……分かってる」スタスタ
シロ「(……だるい。だるいだるいだるいだるいだるい)」ゴロゴロ
シロ「(…塞のせい…塞のせいで……)」ゴロゴロ
シロ「(…変わった…変わったのか…私は…昔は…どうだったんだろう…)」ゴロゴロ
シロ「(…思い出せないし…思い出せたとしても戻れない…)」ゴロゴロ
?「シロー」
シロ「っ!」ガバッ
幼久「ひまならあそびましょうよ」
シロ「……久」
幼久「ん?」
シロ「…私は今後一切、久になにも期待しない」
幼久「ひどいっ!?」ガーン
幼和「はい」
幼咲「まだかすみさんとかまこちゃんとかタコスちゃんとかせーらちゃんとかいっぱいいるよ?」
幼久「わかってないわね!そんなにだしたらしゅうしゅうがつかなくなるじゃない!」
幼和「デジタルてきにしゅうしゅうがつかなくなるのはよろしくないですね」
幼咲「…わかったよ…わからないけど」
幼和「……………はぁ」
幼咲「……………いつものことだよね?」
幼久「……咲、和…」
幼和「?」
幼咲「?」
幼久「わたしはこんごいっさい、あなたたちにきたいしないわ」
幼和咲「」ガーン
幼久「というのはじょうだんで」
幼咲「わたしっ!?」
幼和「…ふむふむ」
幼久「よくもまぁそこでいがいそうなかおができるわね」
幼咲「だって、いっつもいじわるされてるのはわたしだよ!だるいのはわたしのほうだよ!」
幼久「へーっだるかったんだー(棒読み)」
幼咲「だるくない…こともないけど」
幼和「ふむふむ(はなしのながれがまったくわかりませんが
きゃらてきにわかったふりをしておきましょう)」
幼和「ふぇっ!?」
幼久「シロがいつもよりだるそうなげんいんよ」
幼咲「のどかちゃんわかるの?」ジー
幼和「そ…そうですね…(どうしましょう…このじょうきょうはすばらくありませんでじたるてきに。
と…とりあえず…いつもとちがったことをあげれば)」
幼和「あっ…お…おひるねのとき…咲さんは塞さんといっしょに…ねてましたよね?それがげんいんだったり…なかったり…だったり」
幼咲「…そうなの?」
幼久「………」
幼和「………」ドキドキ
幼久「さすがのどかね。わかってるじゃない」
幼和「!!とうぜんです!わたしはでじたるですから!」フンスッ
幼久「(てんしょんたかすぎでしょ)」
幼咲「………なんでっていわれても…とくにないけど」
幼久和「……え?」
幼咲「ただそういうきぶんで…ふかいいみはないよ?」
幼久「………ふーん」
幼和「わかってましたよわたしはなにせでじたるですからっ」
幼久「そうなんだ。いみはないんだ。へー、ふーん、ほー」
幼咲「…………」
さてさて、ぎもんもすっきりとけたところでのどか。どう?ふたりでじゅうななほでもやらない?」
幼和「でじたるてきにことわるりゆうがありませんねっ」
幼久「それじゃ、じかんをとらせてわるかったわね咲」フリフリ
幼和「咲さん。またおはなししましょうねでじたるてきに」フリフリ
幼咲「うん、またね」
幼咲「……………」
幼咲「…………そっか…」
幼咲「……ちがうひとといっしょにねてたから…すねてたんだ…」フルフル
幼咲「わーい!わーい!ざまぁみろー!いっつもわたしにいじわるするからそのしかえしだー!」ピョンピョン
幼咲「これをきにわたしにもっとやさしくすればいいんだ!ばーかばーか!」
幼咲「……えへへ…きらわれてるわけじゃなかったんだ…よかった」
シロ「(……本当に嫌われたのか…?咲に嫌われランク世界一なのか?よしんば私が二位だったとしても世界一なのか?)」
シロ「(……もし、万が一仮に嫌われていたとしても…私は悪くねぇ!ヴァン先生がやれっていったから…!)」
シロ「(……こういう知識も無駄についたなぁ…子供が好きそうなもの片っ端からリサーチして…)」
シロ「(正に無駄知識になってしまったわけか…)」
シロ「(…この世に神はいないのか)」
?「シロ」
シロ「っ!?」ガバッ
幼セーラ「おれや」
シロ「…おまえだったのか」
幼セーラ「まただまされたな」
シロ「…暇を持て余した」
幼セーラ「かみがみの」
シロセーラ「あそび」
シロ「…帰れ」
シロ「(真面目に…本気で…かぁ…)」
幼咲「(どうしよう…ほんとうにだるそうだよ……あやまったほうがいいのかな…?)」
シロ「(…でも…今は自殺行為だよね…
雌伏の時を耐え忍ぶ極楽の山本さんを見習わなきゃ…諦めなければまた油谷さんに会えるんだ…)はぁ…」
幼咲「(…あやまろうかな……いじわるされたからっていじわるしかえすなんてだめだよね…)」テクテク
シロ「(…山本さんが帰ってくればスタンプも復活するはず…そうや…山本さんがいれば新メンバーなんていらなかったんや!)」
シロ「(またか…)」
咲「あの…」
シロ「…今、考え中」
咲「」ビクッ
シロ「後にして」
咲「…ごめんなさい」ペッコリン
シロ「…ふぅ…まったくもー…」
シロ「………………………ん?」
シロ「(…今の声……まがう事なく咲だったような…)」
シロ「(………ありえないな…デジタル的に)」
シロ「(…どうやら悶々としすぎた結果、脳内願望が耳から漏れ出てしまったようだ……)」
シロ「(…駄目だ…このままじゃ駄目だ…自分から行かなきゃ…謝らなきゃ…)」
シロ「よしっ」グッ
?「……」スタスタ
幼咲「……はぁ」ピタッ
?「……」ピタッ
幼咲「……?」クルリッ
?「…っ」サッ
幼咲「……はぁ…」テトテト
?「……ふぅ」
塞「……シロ?」
シロ「な…」ビクッ
塞「なにしてるの?なんなのその格好」
シロ「……マクミラン大尉ごっこ」
※分からない人はマクミラン大尉 ギリースーツでググってください
塞「……わかったわ。わかったことにしてあげるわ…で…なに?
ギリースーツ着込んで咲ちゃん尾行して、なにをする気だったの?」
シロ「……謝ろうと思って」
塞「両親に?生まれてきたことに」
シロ「…酷い…酷すぎる」
塞「あのさぁ…言ったわよね?真面目にやんなさいって」
シロ「…私は大真面目」
塞「」ギロリ
シロ「ふざけてましたごめんなさい」
塞「正直でよろしい。ところで…まさかこのおふざけに誰か巻き込んでないわよね?」
シロ「…やだなぁ…単独犯に決まって…」プルルップルルッ
塞「…携帯、鳴ってるわよ」スッ シロ「ちょ…」
竜華「こちらHQ。シロ。応答しーや」
塞「作戦終了。速やかに帰投するわ」
シロ「(…なんて言ってらんないよね。全面的に私に非があるんだから。私が謝らないと)」
シロ「よしっ」
塞「言い訳は?」
シロ「…ナルガ装備なら…ナルガ装備なら間違いないと思って…!」
咲「…(塞さんとシロ…なかよしさんだなぁ…)」
咲「…でも、よくかんがえたら…シロはみんなにやさしい…みんなのことがすき」
咲「…あたりまえのこと…なのかなぁ」
咲「……」グスッ
その頃
竜華「どうやシロ!このサイコガンなら咲ちゃんもイチコロやで!」
シロ「…ヒューっ!」
塞「いい加減にしなさいよあんた達っ…!」ビキビキ
塞が最後の良心
塞「みんな、さようなら」
「さようならー!!」
シロ「(……私は…一体何をやっているんだ…)ガックリ」
塞「シロ…シロ!」
シロ「……なに?腰つきのエロい人」
塞「うん、許す。全部許すわ。だからシロ、咲ちゃんの面倒よろしく」
シロ「…なんと?」
塞「親御さんから連絡があったのよ…急に仕事が忙しくなって今晩は帰れないそうよ」
シロ「………つ…つまり…?」
塞「きちんと面倒、みなさい」
シロ「(…神は生きていた)」パァァ
幼咲「(シロ…くらいかおでなにかブツブツ呟いてる…やっぱり……いやだよね…おしごとでもないのに…めんどうくさいよね)」
幼咲「…シロ…いやならいやっていってもいいよ」
シロ「……どうしてそんなこと言うの?」
幼咲「だって…めんどうくさいでしょ。だいじょうぶだよ。わたしひとりでおるすばんできるよ」
シロ「……一人でお留守番できるんだ…偉いね」ナデナデ
幼咲「っ…うん……だから」
シロ「でも…咲が一人で寂しくお留守番してる所を想像すると死にそうなくらいだるくなるから」ギュッ
幼咲「……あっ…」
シロ「…一緒に帰ろう」
幼咲「……うん」コクリ
シロ「(…うーん…どうしよう…即オッケーしたものの…コンビニにお世話になりっぱなしの私になにができるのか…)」トテトテ
咲「(シロ…あるくはやさ、あわせてくれてる…やさしいなぁ…やさしいよ)」トテトテ
シロ「(…そして謝る。家事と謝罪…両方やらなきゃならないのが辛いとこだね)」トテトテ
咲「(でも…とくべつだから…じゃない…)」シュン
シロ「………寂しいの?」ナデナデ
咲「え……あぅ…」
シロ「…大丈夫。今日は一緒だから…」
咲「(……ずるいなぁ)」
シロ「(えーと…塞いわく、確か合い鍵は玄関の上の…あった)」ガチャガチャ ガララ
シロ「…おじゃまします」
幼咲「(……わたし…わるいこなのかな…シロはわたしがさみしくないようにきをつかってくれてるのに…)」
シロ「…咲…入って」
幼咲「あっ…た…ただいま」
シロ「…ん…おかえりなさい」ニコッ
幼咲「~~っ!?(わ…わらった…シロが…うわ…すごいきれい…かお…あついよぉ…!)」
シロ「…これ、ひさしぶりに言いたかったんだよね…一人暮らしだと言う機会が…咲…咲ー?」
幼咲「…な、なんでもないもん!」
一方その頃
竜華「邪魔するんなら帰ってやー」
塞「…急になに?」
竜華「言わなあかんねん」
塞「(そして私は考えるのをやめた)」
シロ「(…よし…風呂は焚けた…さすが私。やれば出来る子。後は料理……自分を信じるしかないかぁ…)」
咲「(うぅ…シロのえがおが…あたまのなかからきえないよぉ…)」モンモン
シロ「(冷蔵庫の中には…おぉ…カレールー…天の恵み…野菜もバッチリ。これならサラダも…)」
咲「(どうしようどうしよう…たぶんかおまっかだよぉ…!)」
シロ「…そうだ、咲。お風呂はご飯のあと、さきどっち?」
幼咲「はいぃっ…!?えっと…さ…っ…じゃなくてあと!あとで!」
シロ「…そっか…あ、でも時間かかりそうだから先に…」
幼咲「いいからっ!あとでいいから!」ズイ
シロ「…お…おう」
幼咲「シロ。わたしもてつだう」
シロ「(手伝わなくてもいいって言ってもきかないだろうから…ケガしないやつを…)」
シロ「…じゃあピーラーでジャガイモとニンジンの皮むきを」
幼咲「うん、がんばるよっ」
シロ「…ほどほどにね」
幼咲「よいしょっよいしょっ」スーッ
シロ「!?」
幼咲「よいしょっうんしょっ」
シロ「(咲が皮を剥いている)」
幼咲「よいしょっ」
シロ「(咲が皮を剥いている…!)」
幼咲「うんしょっ」
シロ「(咲が一所懸命皮を剥いている…!)」
シロ「…クールクールクールクールクールクールクールクール…!」ガンガンガンッ!
咲「シロ!?シロー!?」
シロ「…我ながらよくできたもんだ」
咲「(よしきめた……いまはいろいろかんがえるのはやめよう…シロはわたしをさみしくさせないようにがんばってる。
ならわたしもシロをたのしいきもちにさせるためにがんばる!)」
咲「すごいよシロ!とってもおいしそうっ!」
シロ「…せやろーさすがやろー」
咲「さすがだよぉー」ニコニコ
シロ「……でも…ちょいタンマ」
咲「(どうして、さ…さむけが)」ゾクッ
シロ「…たしか…隠し味にチョコレートを入れると美味しくなるとか…」
咲「!?」
幼咲「(止めなきゃ…!)あの…シロ」
シロ「…ちょい待っててね咲。咲のために作ったカレー。とびきり美味しくするから」ニコッ
咲「」プシュー
シロ「…えーっと…ここらへんだったかな?」
咲「(うんもんだいないもんだいないよねシロがわたしのためにつくってくれるんだからおいしくないなんてことがあるだろうかいやないありえない(0.1秒)」
シロ「…っと。随分深いところにいたなぁ…」
シロ「あとは…牛乳と…」
咲「(のむヨーグルト!?)」
シロ「…コーヒーとー…」
咲「(インスタントコーヒー!?)」
シロ「……はちみつは…これでいいかぁ」
咲「(はちのこ!?)」
シロ「……では、いざとうにゅ」
咲「やっぱりだめーっ!!」
幼咲「とっても美味しいよシロ!」パクパク
シロ「…そう…よかった」
シロ「本当によかった…」チラッ
幼咲「?」ニコッ
シロ「っ……けど…最後の最後…咲は私を信じてくれなかった…」シュン
幼咲「うっ…」ズキンッ
シロ「…悲しかった」ジー
幼咲「うぅ…ごめんなさい…けど、あのままじゃなたいへんなことになって…
で、でもわたしのためにっていうきもちはうれしくて…」タジタジ
シロ「(…可愛いなぁ)…嘘」ナデナデ
咲「…はえ?」
シロ「…あんなの入れるわけない。常識的に考えて」ナデナデ
咲「もーっ!またすぐそうやっていじわるばっかり!」
シロ「(…だめだなぁ…私は)」
シロ「(分かってる…私がこうなった理由…痛いほど。色々な感情をこじらせすぎて…結果現在に至る)」カチャカチャ
シロ「(その元凶が…)」
幼咲「~♪」キュッキュッ
シロ「(…このちんちくりん)」ツンツン
幼咲「きゅっ…急にほっぺたつつかないでよぉ」
シロ「(…我ながら、どうかしてる…)…終了っと」キュキュッ
咲「(…きた…ついにきたよぉっ!ごはんはたべた!はもみがいた…あとは)」ドキドキ
シロ「…咲、お風呂…」
幼咲「…っ」ドキドキドキ
シロ「…先に入ってきて」
幼咲「……ゑ?」
幼咲「……うぅ」モジモジ
シロ「(…あぁ…そっか…一緒に入らないとダメか)…なんてね」
幼咲「もぅー!すぐこれだよ!」
シロ「…ごめんごめん。着替え、持っておいで。一緒に入ろう」ナデナデ
幼咲「…うん」トテトテ
シロ「……………おかしいなぁ」
シロ「(一緒にお風呂…咲の年齢を考えたら当たり前なのに…というかそれをネタにいじり倒すはずなのに…)」
シロ「(…本当に…本物…なのかな…私)」
シロ「…」ブンブン
シロ「…考えちゃいけない…よなぁ」
幼まこ「きんぐくりむ…」
胡桃「うるさいそこ!」
幼まこ「はいっ」ビクッ
お風呂中
シロ「…さぁ咲…座って…隅々まで洗ってあげるから…」
幼咲「…お…おてやわらかにおねがいします……」ストン
咲「…あ…ありがとぅ(ほめられるのはうれしい…うれしいけど…シロにほめられても)」チラッ
シロ「……」ワッシャワッシャ
幼咲「(……れべるがちがいすぎるよぉ…おはだのしろさも…)」
幼咲「(おもち…はしかたないよね…!わたしにはみらいがあるもん!だいじょうぶだもん!)」
シロ「………」スッ
幼咲「ひゅぅっ!?シ…シロ…きゅうにまえは…ちょっ…くすぐったいよぉっ!」ジタバタ
シロ「…暴れちゃだめ」ギュッ
幼咲「ひゃふっ…!?(あったかいすべすべぷにぷにきもちいいくすぐったいはずかしいなにこれなんなのどういうことなの)」プシュー
シロ「…そう、いい子いい子」ワッシャワッシャ
幼咲「」ドキドキドキドキドキドキドキドキ
咲「そんなにかみ、ながくないし(まださっきのぷにぷにがからだにのこって…というかせなかにあたってるよぉ…!)」
シロ「……流すよ。目、瞑って」
咲「ん…」
シロ「……」シャー
咲「(なんでだろう…めをつむったらぷにぷにがおおきくかんじて…!)」
シロ「……」シャー
咲「(は…はやくおわってよぉっ…)」
咲「う…うん(お…おわった。あぶなかったー。ぷにぷにのせいであたまがどかーんてなるところだったよぉ)」ガララ
咲「(あ…おゆがあさめになってる…)」チャポン
咲「(…あつくないけどぬるくない…いいかんじ)」ハフゥー
咲「(こういうときはやさしいんだよね…)」ジー
シロ「……」ワッシャワッシャ
咲「(あれ…なにかわすれて…あぁっ!?)」
シロ「……」ワッシャワッシャ
咲「(シロのからだ…あらわないと…!で…でももうせなかはおわってるし…まえだけ…なんてはずかしくていえないよぉ…!)」
シロ「………」ワッシャワッシャ
咲「(せめてかみだけでも…あ…あ…あーー!)」
シロ「……咲、楽しいのそれ?」チャプン
咲「……ブクブクブク」コクリ
シロ「…体…ちゃんと拭かないとね」フキフキ
幼咲「それくらいじぶんでできるってばっ」
シロ「……次は服を」
幼咲「それもできるよっ」フンスッ
シロ「…よしよし…えらいえらい」ナデナデ
幼咲「……えへへ」
シロ「……」ドキッ
幼咲「~♪」キガエチュウ
シロ「……着替えたね…行こうか」
幼咲「うんっ!ってシロ!?なんでパジャマきてないの!?」マッカ
シロ「……だってあとは髪を乾かして寝るだけだよ…なにも問題ない」
咲「え…そ…そうなの?おとなのひとはなにもきないでねるの?でも…おとーさんは…」
シロ「…ちっちゃいことは気にするなー」スタスタ
咲「気にするよぉっ!」
シロ「………うん……だいじょうぶ…私はだいじょうぶ…私は咲の傍にいていい…はず…」
シロ「そろそろ…あやまらないとなぁ」
ベッドイン
幼咲「……」モジモジ
シロ「…そんなところに突っ立ってないで…おいで」ポンポン
幼咲「(おもちが…!おはだが…すべすべぷにぷにが…!)」ゴクリ
シロ「……」ジー
幼咲「……し…しつれいします」バサッ
シロ「……どうぞ、おかまいなく」
幼咲「」ドキドキドキドキドキドキドキドキドキドキ
シロ「……」ギュッ
幼咲「!!??γαβ」
幼咲「わ…あわわわっ」ドクドクドクドク
シロ「……ねぇ、咲…」
幼咲「ななななに…」ドクドクドクドク
シロ「…咲は…私のこと…どう思ってる…?」
幼咲「ど…どうって…」
シロ「……嫌い?」
幼咲「そんなこと…!」
シロ「………だよね。ごめん。そういうに決まってるよね。
咲は優しい子だから、嫌いな相手でも嫌いだなんて言えないよね…わかっててきいた……卑怯だなぁ…私は」
そしたら頭の隅に追いやってた不安要素がドンドン湧き出て…たまらなくなって」ギュー
幼咲「…」ギュッ
シロ「…他にも考えることがあって…気がついたらいつの間にか
好かれてるわけがない…そうとしか思えなくなった」
咲「……うん」
シロ「…素直に謝ろうって…そう思ってたはずなのに…その謝罪を素直に受け入れられた時のこと、
悪い意味で跳ね返された時のことを考えたら怖くなって…私は結局咲の優しさに甘えることにした」
幼咲「……そうなんだ」
シロ「………………ごめん。全部ごめん」
幼咲「……シロ」ギューッ
シロ「……」
幼咲「わたしも…そのきもちわかるよ…」
シロ「……?」
幼咲「…わたしも…わたしのせいでシロが色んな人にいっぱい怒られて…」
シロ「……(…なんだっけ?)」
幼咲「それがきっかけで…みんなバラバラになっちゃって」ギュー
シロ「(なんだっけ…それ)」
幼咲「せっかくシロがたすけようとしてくれたのに…わたし…もっとくらいこになって…」ギューッ
シロ「(………そんなこと…あったような…)」
ともだちのいないわたしにともだちをつくるきっかけをくれたり」
シロ「(……あ…)」
幼咲「うれしかったよ。でも……こころのなかではごめんなさいでいっぱいだったの。
そのごめんなさいをシロにみせちゃうと、もっとむりするからがんばってギュッとして」ギューッ
シロ「(………あぁ)」
幼咲「ときどきギュッとしきれなくて……シロにみせちゃって…わたしはシロにとってめんどくさい
だけのこどもなんじゃないのかって…
」
シロ「(思い出した)」
咲「そうかんがえちゃうとひょっとしたらへんなこともただあいてをするのが
めんどくさくていいかげんにつきあってるだけなんじゃないのかって」
シロ「(なんで…私は…こんな大切なこと)」ギュー
幼咲「よかった…よかった…よかったよぉぉぉぉぉ!」ギューッ
シロ「(そっか…いたなぁ…できそうな人…できるもんなんだ…そんなこと)」ポロポロ
幼咲「ヒック…えぐ…シロ…シロ…大好きだよぉっ!」
シロ「…私も…大好き…」ギュー
同時刻某所
塞「っ!?」パリンッ!
竜華「うわっ!モノクルが割れよった…ってことはまさか…!?」
塞「……えぇ、思い出したのね…シロ」
竜華「そっか…そっかぁ…ひっく……グス」
塞「ちょっと…泣かないでよ竜華。私まで変な気分に…」
竜華「だって…だって…!エビスにモノクルの破片がはいったんやもーん!!」ビャービャー
塞「……あんたつくづく大物だわ…」
…どうしたの?
幼咲「」ビクッ
……だいじょうぶ。私は怖くない。咲ちゃんの味方。
幼咲「……」
なんで泣いてたの?
幼咲「………わたし」
うん
幼咲「まーじゃんきらい」ポロポロ
…詳しく聞かせて
咲「せ…せんせー…」オドオド
…勝つな負けろだなんて…ヤクザより質が悪い。…いえ、違います。ヤクザ以下だと言っているんです
塞「バカ…!やめなさいっ!」
……反論、ありませんよね。兎に角、咲ちゃんには麻雀を打たせないでください。
幼咲「せ…せんせー…おかーさん…やめてよ…」
…家庭の問題に口を出すな?こっちの問題でもあるんです。…現に咲ちゃんは暴力団のシノギ紛いの家族麻雀のせいで
心身共に疲弊し園内でも塞ぎ込んでいます。
無理もありません。勝てば褒められる…と思いきやまさか怒られるとは…夢にも思わなかったでしょうねぇ
…あぁ……こんな小娘に言いたい放題言われて苛々するというその気持ち…わかります…私も全く同じ気持ちです
暗転
照明
咲父「君の気持ち…わからなくもない…現にすれ違いは年々増していった…
こうなるのは時間の問題だったのかもしれないが…ここまで壊れるはずじゃなかった!」
塞「言いたいこと…?なにもないわよ。強いて言うならいっぱい食べて、いっぱい寝なさい。酷い顔、してる」
竜華「で、でたー!保護者にマジ切れ奴ーwwwww」
バキッ!
竜華「あぁーー!?シス仕様のライトセイバーがぁぁぁぁ!!」
塞「ほんとバカよね…」
シロ「…めんぼくない…」
塞「…どっからどうみてもバカップルの分際で…嫌われてるかもしれない?」
シロ「………」
塞「バーカバーカ。あー痒い痒い全身痒いわー」
シロ「…背中…掻かせていただきます…」
塞「触らないでよ。シロミ菌がうつるじゃないの」
シロ「シロミ菌…!?」
塞「感染者を皆鬼畜ロリペド野郎にする悪魔の病原菌よ」
シロ「…いじめだ。小学生のいじめだ」プルプル
塞「このくらい言わせなさいよ。今までどれほど神経を集中させてあげたことか」
シロ「……ごめん」シュン
シロ「……」
塞「だから私は塞いだわ…現実に立ち向かえるその時まで…がしかしよ。その間まさかここまで悩みこじらせ性格こじらせ性癖こじらせるとは思わなかっ」
シロ「……私はペドじゃない!しっかり確かめたんだ!」
塞「確かめた?」ヒキッ
シロ「…ん…全くこれっぽっちも反応しなかった。つまり私は十年待てる逸材」ドヤ
塞「あぁ…自白か」
シロ「ちがう…!?」
幼咲「ぅ…むぅ…」スヤスヤ
シロ「…大声出させたくせに…」ナデナデ
塞「これから…どうするの?」
シロ「…ん」
塞「お姉ちゃんとは親交があるようだけど…母親は絶望的じゃない」
シロ「…なんとかする。必ず、絶対」
塞「その時は…私も呼びなさいよ。私にも責任はあるんだから」
シロ「でも…」
塞「デモもストも無いわ。ずっと面倒みてあげてたのよ。最後まで付き合わせなさいよ」ニコッ
シロ「……腰つきのエロい人」
塞「許さない。絶対によ」
シロ「…ありがとう」
塞「最初から素直にそう言いなさいよ」
竜華「トキィ…!!この清水谷竜華大先生にキングボンビー憑かせるとはいい度胸やないかい!表出ろやぁぁ!!!」
幼トキ「うわーっちっさいちっさいわー。某国しかりじぶんに大つけるやからはこものと決まってるんやでー」
竜華「ななな…なんやと…!?そんな生意気な口きくやつには二度と膝枕させてあげへんで!」
幼トキ「べつにええもーん。塞せんせーの腰枕があるし」
竜華「こ…腰枕…!?なんやその素敵な響きのする単語は!?」
幼トキ「なんや竜華だいせんせーはまだみたいけんなんかー。ひょっとして嫌われてるんちゃう?」
竜華「そんなことあるかい!塞とはツーカーの中や!頼めば腰枕だろうが腹枕だろうが胸枕だろうが恥骨枕ろうがノー問題や!」
塞「…さぁて、私は園児より手のかかる大きなお友達の相手をしてくるわ」
シロ「…お疲れ様です」
シロ「…竜華のこと、悪く言わないで」
塞「…ごめん。そんなつもりじゃ」
シロ「…わかってる。でも、私が変われたのは竜華のおかげでもある」
塞「私だってそうよ」
どしたー塞?景気の悪い面しよって。あ?理想と違う?アホかい。んなもん当たり前やんか!
大体なーグチグチ言いながら仕事しとるってことはどっかで手ぇ抜いとる証拠や。
全力で事にあたり、仕事覚えて余裕を持てるようになれば、気付かなかったやりがいに気付くはずや!そうすりゃきっと楽しくなるで!
なんやシロ…子供と仲良くなる方法…?んな今更…まぁええわ。そんなもん、全力で楽しむことに決まっとるやないかい!
大人がこれごっつ楽しいねんでーって心の底から本気で思わな子供が興味持ってくれるはずないやろ
無愛想?気にすんなや!一所懸命ってもんは子供に絶対伝わるもんやで!
シロ「…竜華によろしく」フリフリ
塞「一つ…言い忘れてたわ」
シロ「……?」
塞「その特別扱い…大っぴらにやらないでよ」
幼咲「……」スヤスヤ
シロ「…無理…何故なら咲は特別な存在だからです」
塞「一人の子供を特別扱いしてるのが親御さんにバレたら問題になるのがわからないほどあなた様の脳みそは色ボケしちゃったわけ?」ギリギリ
シロ「…心得ました」
塞「はぁ…じゃ、ごゆっくり」スタスタ
シロ「…咲は…塞いでなかったんだよなぁ…」ナデナデ
幼咲「…むぅ」ゴロゴロ
シロ「…強いよ…咲は。私も強くなりたいな…」ナデナデ
幼咲「えへへー」ムニャムニャ
シロ「…なりたいじゃだめだ。強くならなきゃ…」
シロ「…咲、あんまり強くなりすぎないでね。守られてばっかりじゃ…だるいから」
咲「んんー」ゴロン
シロ「(咲の唇…!?)」
シロ「……」キョロキョロ
咲「うぅ…ん…」スヤスヤ
幼咲「…」スヤスヤ
シロ「…いざ…」グッ
幼咲「……」スヤスヤ
シロ「………」ググッ
シロ「…ちょいタンマ…!だめだめ…十年十年」
幼咲「……ちぇっ」ボソッ
シロ「…んん…?」
幼咲「…」スヤスヤ
シロ「…気のせいか」ナデナデ
幼咲「……」スヤスヤ
シロ「…今はこれで我慢してね…私も我慢するから」ナデナデ
幼咲「(…しょうがないなぁ)」
なんや?
あの二人…うまくいくと思う?
まぁ…立場的倫理的に応援し辛いのは確かやな
そうじゃなくて…
勝手に背負って勝手に抱えて勝手に悩んで勝手に泣いて…今世紀最高の遠回りカップルやけど…なんとかなるやろ
どうして?
シロの持ち味は、わけわからんところで悩んで迷って頓珍漢な一打を打って…
そんでも結果最高系…それが持ち味やろ?
そうね…その通りだわ
もし、本当に出口の見えない迷路に迷い込んだとしても…咲が入れば安心や。
なんせあの子は、森林限界の山の上だろうと花咲かせる一輪の花。
どんな場所に迷い込もうと、道標になってくれるわ
カン
相当行き当たりばったりで書いたんでめちゃくちゃです。
初SSなもんで許してください
…寝ます。お休みなさい
ちょーよかったよー
Entry ⇒ 2012.10.11 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
菫「話があるんだ」 宥「何ですか?」
菫「宥!」
菫「私と……」グ…
菫「結婚してくれー!」シャープシュート
宥「ごめんなさい」ヒラリ
菫「何故だ!」
宥「私には玄ちゃんが……」
菫「いかん!」
菫「姉妹など……!」グ…
菫「いかーん!」シャープシュート
宥「ごめんなさい」ヒョイ
菫「ぐぬぬ……」
菫「……よしわかった!」
菫「妹も一緒でいい!」
菫「だから宥!」
菫「私のものに」グッ
菫「なってくれー!」シャープシュート
宥「ごめんなさい」ピョン
玄「おねーちゃーん」
宥「あ、玄ちゃん」
玄「迎えに来たよー」
宥「ふふ、ありがとう……」ナデナデ
玄「えへへ……お任せあれ!」
菫「くっ……」グ…
菫「私にもナデナデしてくれー!」シャープシュートッ
宥「わわ」スッ
菫「避け……られた、だと……」
宥「弘世さん?」
菫「……なんだ」グスッ
宥「それくらいなら良いですよ?」
菫「えっ」
宥「……いい子いい子」ナデナデ
菫「……っ///」カーッ
宥「耳まで真っ赤ですね」ナデナデ
菫「……!」
菫「宥!」バッ
菫「このまま私と結婚してくれ!」ギュッ
宥「ごめんなさい」ニコッ
菫「……」ズーン
菫「宥……何故……」ブツブツ
照「ねぇ」
菫「……なんだ」
照「まだ松実さん(姉)にご執心なの?」
菫「何か文句があるのか?」キッ
照「いや別に」
菫「あの準決で宥に私のシュートを躱されて以来……」
菫「奴のことが頭から離れないっ……!」
菫「初めてだったんだ……」
菫「私が……狙った獲物を逃すなんて……!」ワナワナ
菫「……」フッ
菫「……気付けば、私の方が宥に射抜かれていたんだな」
菫「このハートを、さ……」
照「そうだね」
次の日
菫「宥ー!」
宥「はい」
菫「今日こそ私と……」グッ
菫「結婚してくれー!」シャープシュート
宥「ごめんなさい」サッ
菫「何故頑なに断られるんだあああああ!?」
菫「いい加減、私の愛をっ……」ググッ
菫「受け取れええええ!」
シ ャ ー プ シ ュ ー ト 乱 れ 打 ち ッ !
宥「わわわ……」ヒョイヒョイッ
菫(全て……躱され……!?)
/
アッ、アブナーイ
\
泉「は……?」クルッ
泉「」サクッ
宥「あっ」
菫「あっやべっ」
菫「だ、大丈夫か!?」
泉「……ぅ」
菫「よ、よかっ……」
泉「好きです!」ギュッ
菫「えっ」
泉「好きです好き好きっ」
泉「私のお姉様になってください!」キラキラ
菫「えっ?」
泉「お姉様ぁ」ギュッ
菫「ま、待て待て、落ち着け君……はっ!?」
宥「……」ジト…
宥「ひどい……」
菫「は……?」
宥「あれだけ私に結婚を迫っておいて……」
菫「!? ち、違う! 違うんだ宥!」
宥「さよなら、弘世さん」タッ
菫「宥――――――っ!!」
泉「お姉様お姉様」スリスリ
照「で?」
菫「」
泉「お姉様好きですお姉様」スリスリ
照「通りすがりの二条さんを射抜いてしまったと」
菫「……うん」
照「シャープシュート(笑)」
菫「……うるさい」
泉「お姉様お姉様」ラヴラヴ
照「彼女どうするの」
泉「お姉様ぁ」ギュー
菫「……うぐ」
照「離れてくれそうにないね」
菫「……いいさ、明日もこのまま宥の所へ行ってやる」
照「まじで?」
菫「まじで」
泉「ほんまですか!」
菫「……宥への想いは変わらないからな」キリッ
泉「さすがお姉様! かっこいいです! 好き!」ギュースリスリ
照「二条さんはそれで良いのか……」
次の日
菫「宥」
宥「……」
菫「今日こそは私と結婚してもらう」
泉「キャーお姉様頑張ってください!」ギュー
宥「……他の女の子に抱き着かれながら、よくそんなこと言えますね」ジトー
菫「うっ……」
泉「お姉様、ファイトですよ!」
菫「た、確かに……泉から好かれてはいるが」
泉「好きですお姉様っ」スリスリ
菫「私の目に映っているのは、宥だけだからな……!」グッ
泉「キャー/// お姉様シビれますぅ!」
宥「……寒い」
菫「私が……暖かくしてやる!」シャープシュートッ
宥「遠慮します」ヒラッ
菫「!!」ガーン
泉「あっ、松実さんの後ろに誰かいますよ?」
菫「えっ」
宥「?」
泉「避けられた矢が……」
淡「へ?」クルッ
淡「」サクッ
泉「刺さりましたね」
菫「何っ!?」
菫「あ……淡!?」
淡「きゅー」
菫(まずいくないかこれは)
泉「大丈夫ですー?」ペチペチ
淡「うぅ……」パチ
菫「あ、淡……」
淡「……」
淡「スミレ……?」ボー
淡「……」ピコーン
淡「菫愛してるっ!」ガバッ
菫「!?」
泉「は……?」
淡「なんだろ、いきなりズキューンってキちゃったよ菫ぇ」ギュー
菫「」
淡「ドキドキが止まんないよ菫、愛してるぅ」スリスリ
泉「わ、私も好きですよお姉様!」ギュ
菫「」
泉「お姉様ぁ」
淡「愛してるよ菫ぇ」
菫「」
菫「はっ」
宥「…………」
菫「ゆ、宥……私と、結婚……」
宥「……」プイ
菫「宥うぅぅぅぅぅ!!」
淡「スミレスミレ」
泉「お姉様お姉様」
宥「……知りません」
照「あれ?」
菫「」
泉「お姉様好きですお姉様」スリスリ
淡「菫愛してる菫」スリスリ
照「なんか増えてない?」
菫「……」
照「淡じゃなくて松実さんを狙いなよ」
菫「狙った結果がこれだよ!」
泉淡「「スキスキー」」
菫「何故……何故宥は私と結婚してくれないんだ……」
照「なんでだろうね」
菫「メゲそう……」
淡「大丈夫! 私が菫と結婚するよ!」
泉「私もお姉様と結婚します!」
照「菫モテモテだね」
菫「はは、は……はぁ」
泉「憂い顔のお姉様……素敵……」キュン
淡「うん……もっとメチャクチャにしてあげたい……」キュン
菫「……私は、宥を諦めた方がいいのだろうか」
照「さぁ」
菫「もしかして私、宥にかなり嫌われているんじゃ……」
照「どうだろうね」
菫「ここまでしても振り向いてもらえないなんて……もうここらでやめに……」
照「……それでいいの?」
菫「仕方ないじゃないか……宥に嫌われているんじゃ、どうしようもない」
照「松実さんがどう思ってるかじゃなくて、菫はどうなの?」
菫「え……?」
照「好きなんでしょ? 松実さんのこと」
菫「当たり前だろ……!」
照「じゃあ、やることなんて決まってるじゃない」
照「今までみたいな数打ちゃ当たる、みたいな告白じゃなくてさ」
照「ちゃんと真っ直ぐ気持ちを伝えてみたら」
菫「……照」
照「大体、結婚結婚って……菫は先走りすぎだと思う」
照「逸る気持ちもまぁわからないでもないけど。物事には順序があるんだよ」
菫「そう、だな……」
菫「……ありがとう。私が弱気になるなんてな……どうかしていた」
照「うん。最近の菫、頭おかしいもん」
菫「ははは、こいつぅ☆」グリグリ
照「ほら、じゃれてないで。明日のために今日やっておくことは?」
菫「あぁ! シャープシューティング告白の練習だな!」
泉「私が的になりますお姉様!」
淡「ほら、みんなも菫の的になるよ、協力して!」
白糸台麻雀部員「「おー!」」
次の日
宥「……また、ですか」
菫「あぁ」
菫「やはり、宥への気持ちは変わらないからな」キリッ
泉「お姉様お姉様」
淡「菫愛してる菫」
尭深「玉露よりも先輩が好きです……///」
誠子「先輩の竿で一本釣りにして下さい!」
美子「好きですたい」
澄子「私もよろしくお願いしまーす」
花子「うーわ競争率マジぱねーっすわー」
宥「……更に増えてますね」
菫「気にするな、練習の成果だ」
菫「ほらお前ら、離れてくれ」
泉淡尭深誠子美子澄子花子「「は~い」」ワラワラ
菫「さて、宥」キリッ
宥「……はい」
菫「私と結婚してくれ」
宥「……、ごめんなさい」
菫「だろうな」フッ
宥「え……?」
菫「いきなり求婚されて、あっさり『はい』なんて言えるものじゃないよな」
宥「……」
菫「好きだ、宥」
菫「……だから」
菫「私と、結婚を前提に……!」グッ…
菫「付き合ってくれええええええええ!」SHARP SHOOOOOOOOT!
菫(このシュートに、私の全身全霊の愛を込めた……!)
菫(これを避けられれば……もう私に次の矢は無い……)
菫(必ず当たる……いや、当てる……射抜く!)
菫(宥のハートを!)
宥「……」
宥「ごめんなさいっ」ヒョイッ
菫「あれっ」
泉「余裕で避けられてますやん……」
淡「あちゃー」
菫「え? そこ避けるか普通?」
宥「……えへ」
菫「な」
菫「なっ……何故なんだああああああ!」
菫「ああああ……」
菫「……うぁぁ」
菫「もう嫌だ……宥なんかもう知るか……帰る……おうち帰る……」
宥「あっ、弘世さん待って……」
菫「何だよ触るなよ帰るんだよおぉ……」
宥「弘世さん」
菫「だからなん……」
チュッ
菫「」
宥「……」
菫「え」
宥「弘世さんには散々打ち抜かれちゃったので」
宥「今度は私があなたを打ち抜く番です」
菫「え」
宥「弘世さん」
菫「え」
宥「私と、お付き合いしてくれますか……?」
菫「」ズキューン
菫「も」
菫「勿論だ……! 愛してるぞ宥うううう!」ガバッ
宥「わわ」ヒョイッ
菫「」
淡「ええええ!? そこくっつくの!? 私は!?」
泉「良かったですねお姉様ぁ……ルパンダイブは避けられましたけど」
それから
玄「おねーちゃん、おめでとう!」
宥「うん。ありがとう、玄ちゃん」ナデナデ
玄「でも、何ですぐにオッケーしてあげなかったの?」
玄「おねーちゃんも、前から弘世さんのこと好きだったのに」
宥「ふふ……断られて愕然としてる弘世さんとか、涙目の弘世さんとか、すごく可愛いかったから……」
宥「ちょっと意地悪したくなっちゃって」ニコ
玄「ふ~む、なるほどなるほど、なるほどー」
菫「宥!」
泉「お姉様好きです!」
淡「菫愛してるよ!」
菫「うるさいお前ら!」
宥「今日連れてるのは二人だけですか?」
菫「つ、ついてくるなと言ったんだが……」
淡「ユウばっかり菫独り占めしてズルイズルイー!」
泉「私は何番目でも構いませんからお姉様ぁ」
菫「あぁもう……少し何処か行ってろお前ら!」
泉淡「「わーい」」タター
菫「全く……」
菫「さて、宥」
宥「はい」
菫「今日は雲ひとつ無い快晴だ、結婚しよう」キリッ
宥「ごめんなさい」ペッコリン
菫「ですよねー」
宥「……もっとお話して、もっと色んな所へ行って、もっと好きになりたいんです、菫さんを」
宥「だからそれは……もう少し先で」
菫「……!」パァッ
菫「そうだな……! その時になったら結婚しよう!」
宥「ふふ……はい」ニコ
カン
書いてて気付いた
次鋒は○子って名前が多い
ちょいおまけ
シャープシューティング告白練習中
菫「シャープシュート! シャープシュート! シャープ……シューット!」シュババッ
泉「一心不乱に矢を射るお姉様……素敵です……///」ホゥ…
淡「こら的、動くな」
菫「……」
菫(く……ただ打っているだけじゃ駄目だ……)
菫(集中……宥への気持ちを……)
菫「はっ!」シャープシュートッ
ヒュンッ
泉「あれ?」
淡「盛大にすっぽ抜けてね?」
泉「しかもその先に……」
淡「テル!?」
照「え……」
照「」サクッ
菫(またやっちまったー!)
菫「だだだ、大丈夫か照……」
照「いた……」
菫(あわわわわわわ)
照「……」ジ…
菫「……!」ドキッ
照「……なに慌ててるの」
菫「え……な、何ともないのか?」
照「何が?」
菫「え……」
照「?」
菫「いやその……菫スキスキーってならないか?」
照「何言ってるの……菫って自意識過剰?」
菫「んなっ……なわけないだろ!///」カーッ
菫「もういい、心配した私が馬鹿だった……告白の練習に戻る!」スタスタ
照「……」
照(ふぅん)
照(もともと菫が好きだった場合はシャープシュートされても変化は特に無し、か……)
カン
ありがとうございました
日付が変わる前に終わってよかった(小並感)
もしかしてこれ練習の意味なかったんじゃ
乙
Entry ⇒ 2012.10.11 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
白望「……ダルくないよ」塞「……え?」
塞「女同士が、何だって!?」
エイスリン カキカキ サッ『♀×♀=?』バッ
豊音「えっとえっとー……」
白望「ただの独り言だけど……」
塞「どんな経緯からそんな独り言が!?」
白望「……ダルい」
塞「シロ!」
胡桃「塞ちょっとうるさい!」
胡桃「シロ、何かあったの?」
白望「別にそういうわけじゃないけど……」
塞「じゃあどういうわけよ!?」
豊音「塞の目が血走ってるよー」オロオロ
エイスリン「♪」 カキカキ サッ 『<●> <●>クワッ』
白望「塞はどうして怒ってんの……?」
胡桃「そっちより質問に答えて!」
胡桃「うんうん」
白望「名前も知らない女の子に、告白されただけっていう……」
胡桃「ほうほう、なるほど、女の子に……告白、され……た……?」
胡桃「はぁぁぁぁぁぁぁ!?」
豊音「く、胡桃ー?」オロオロ
胡桃「何それ! 何それ!? シロに告白とか!! バッカみたい!!」
チョンチョン
白望「ん?」
エイスリン「ン!」→指差し
塞「orz」ズーン
白望「……」
胡桃「バカみたい! バカみたい! バーカーみーたーいー!!」
白望(なにこのダルい状況……)
ギャー!! ギャー!!
豊音「まったく収集つなかないよー」オロオロ
豊音「塞、塞はー」
塞「」
豊音「塞が息してないよー」ジワァ
豊音「誰か助けてよー……」シクシクシク
白望「よくわかんないけど……ダルいから泣かないで」ポンポン
豊音「うう、シロ~……」ギュッ
エイスリン「♪」 カキカキ
エイスリン サッ『ハートマークの絵』
塞・胡桃「……ハッ!?」
塞「シロ!その後の返事は!?」
胡桃「いえすおあのー! どっち!?」
白望「えーと」
塞「……」ゴクリ
白望「h」
胡桃「うわーー! わーー!!」
塞「胡桃うるさい!」
白望「二人ともうるさいけど」
豊音「全然事態が進まないよー」オロオロ
塞「ごめんシロ。 胡桃は黙らせたから」
胡桃「むー! むー!」←ガムテで口を塞がれました
豊音「ごめんねー」←胡桃を拘束しています
白望「えーと…………あれ」
塞「どしたの?」
白望「……どこまで話したっけ」
塞「もう! シロが女の子に告白されたって言ったんでしょ!!」
白望「あー……そっか」
エイスリン「♪」ワクワク
白望「うーん……」
白望「実はね」
塞「……」ゴクリ
豊音「……」ドキドキ
胡桃「……」ベリベリ←ガムテを剥がす音
エイスリン「♪」ワクワク
白望「返事――できなかったんだ」
塞「えっ?」
豊音「ど、どうしてー?」
白望「その子、終始一方的で……答える間もなく走り去っちゃったんだ」
胡桃「え? え?」
白望「えっと……まァ、そういうことで」
胡桃「どーゆうことさ!?」
豊音「胡桃、ちょっと落ち着いてー」アセアセ
豊音「シロ、それはつまりー」
胡桃「……言い逃げってこと?」
白望「……多分」
エイスリン「シロ、オイカケタ?」
白望「一応追ったけど、逃げられた」
豊音「……その娘、途中で怖くなっちゃったのかなー」
胡桃「モヤモヤが残りそうなやり方だよね……ってそうじゃなくてね!?」ドンッ
豊音「ひぅ!?」
白望「?」
胡桃「本題はそこじゃなくてっ、もっと別のところにあるでしょ!」
豊音「もっと別……?」
胡桃「うん、最も重大なこと! それは……」
エイスリン「シロジシンノ、キモチ!」
塞「」ピクッ
胡桃「それだよそれ!」
白望「私、の?」
胡桃「そう! その娘に告白されて、どう感じたか、どう思ったか! その辺りがいっちばん重要でしょ!」
白望「……私の気持ちかァ」
白望「んー……」ホッペポリポリ
胡桃「どう?」
白望「……今さらだけどさ」
胡桃「うんうん」
白望「恋愛って、男女間でするものじゃないの?」
胡桃「え!?」
豊音「へ?」
塞「……!」
エイスリン「?」
白望「みんな、何故か私に告白してきた女の子に対して何の疑問も抱いてないけど」
白望「……その辺り、どうなの?」
豊音「えっと、えーと……」オロオロ
胡桃「あー、うー……」アセアセ
塞「……」ズキ
白望「……ごめん、やっぱ今の質問はわすれ」
エイスリン「モンダイ、ナイ!!」グッ
一同「「「「!?」」」」
胡桃「え、エイちゃん?」
豊音「それってどういうー……」
エイスリン「……」 カキカキ
エイスリン「」 バッ
塞「……?」
胡桃「シロ、翻訳!」
白望「……『愛に形はない』かな」
エイスリン「」コクコクッ
エイスリン「♪」ニコッ
胡桃「でも、でもそれは……」
豊音「その、シロが言うように、やっぱり女のコ同士は……」
エイスリン「……」カキカキ バッ
白望「……『好きなものは好きなんだから仕方がない』?」
エイスリン「」コクコクッ
エイスリン「スキハ、スキ!」
塞・胡桃・豊音「「「!」」」
白望「……」
豊音「エイスリンさん……」胡桃「エイちゃん……」
エイスリン「」フンス
豊音「うわーん! なんだかとっても素敵だよーー!」ガバッ
胡桃「前から思ってた! エイちゃんってやっぱ天使だよ!」ガバァッ
エイスリン「What!?」
胡桃「もういいや! エイちゃん今日から私のモノね! 今日も一緒に帰ろうね!!」スリスリ
豊音「私も! 私も一緒に帰りたいよー!」ピョンッ ピョンッ
胡桃「トヨネの家は反対方向でしょ!!」
豊音「うぇぇぇぇんそぉだったぁぁぁぁー!!」グスグス
エイスリン「エ? エ?」
白望「……ダル」
塞(……好きは好き、かァ)
塞「あ」
塞(……そういえば、結局シロの話が曖昧になっちゃったな)
塞(まあ、いいか)
塞(シロもあんまり気にしてないみたいだったし)
塞(気にして……)ズキ
塞(……シロ)
胡桃「みんな、忘れ物はないー?」
豊音「問題ないよー」
エイスリン「ナイヨー!」
塞「おっけー」
白望「ダルい……」
塞「いつものことでしょそれ。 ほら立った立った」
白望「むぅ……」スッ
胡桃「じゃあ部室のカギ締めるよー」
豊音「はーい」
豊音「また明日ー!」フリフリ
塞「うん、お疲れー」フリフリ
白望「……」フリフリ
\エイチャン、テ、ツナゴッカ/// / \アッ、ズルイズルイー!/ \ミンナ、ナカヨシ!/
塞「本当、仲良いねぇあの三人」
白望「うん」
塞「私たちも、帰ろっか」
白望「」コクリ
――――帰路
白望「……」テク テク
塞「……」
白望「……」テク テク
塞「……」
白望「……」テク テ
白望「塞」
塞「なに?」
白望「んー……」
白望「……あのさ」
塞「うん」
白望「……ごめん、やっぱり何でもない」
塞「え?」
白望「……」
塞「えと……シロ?」
白望「……」ハァ
塞「無言でため息を吐かれた!? ちょちょ、どうしたってのシロー!?」
塞(私なにかしたっけ!? え? え!?)アタフタ
白望「……」クス
塞「!?」
塞(い、いま一瞬だけ……)
塞(……シロの、口元が緩んだ――!?)
塞「……」チラッ
白望「……なに?」
塞「あ、いや、別に」
塞(……気のせい、なのかな)
塞(いや、でもあれは確かに……)
塞「んぅ……?」
白望「塞」
塞「!?」
塞「な、に?」
白望「止まってるよ」
塞「な……なにが?」
白望「……足」
塞「あっ、ご、ごめん」
白望「……」
塞「うぅ……」
塞(さっきのは見間違いだったのかな……)
塞(……いや、でもあれは間違いなく)
塞(……)
塞(シロの笑顔、か)
塞(……きっと超絶可愛いんだろうなぁ)
塞(――いや、どっちかというと格好いいのかな?)
塞(男装とか似合いそうだし……)
塞(……まあ、それはそれで……)
塞(あぅ///)
白望「……?」
ピタッ
塞「ん」
白望「うん」
塞「それじゃ、私こっちだから」
白望「うん」
塞「それじゃ、また明」
白望「塞」
塞「た……え?」
白望「……」ジー
塞「し、シロ?」ドキッ
白望「……」
白望「……ん、また明日」
塞「う、うん……また明日」フリフリ
テク テク
テク テク
……
――――
――――
塞「なん、だったのかな……」
塞(あの、シロの眼……)
塞(何かを、探るような……見極めてるような)
塞(そういう、眼だった)
塞(……)
塞(考えても仕方がない、か)
塞(わからないのなら、本人に聞けばいいんだ)
塞(うん)
塞(明日、聞いてみよ)」
塞(……ま、十中八九はぐらかされると思うけどね)
――――翌日
塞「おっはよー」フリフリ
白望「うん」
塞「待たせた?」
白望「……今来たとこ」
塞(……待たせたかな、こりゃ)
塞「……それじゃ、行きますかー」
白望「うん」
塞(……本当、優しいんだから)
胡桃「おいっす、お二人さん!」ギュー
エイスリン「Good morning!」ナデナデ
塞(うわ、なにそのベタベタっぷり)
塞「お、おはよー」ヒク
白望「……」フリフリ
塞「(……何かやけにベタベタしてない?)」
白望「(……昨日の帰り際に、何かしらあったのかも)」
塞「(にしたってこれは……)」
胡桃「エイちゃんは温かいなぁー」スリスリ
エイスリン「クルミ、クスグッタイ///」
塞「(……進展し過ぎじゃない?)」
白望「(……昨日のあれそれが影響してるんじゃないかなァ)」
塞「(だよねぇ……)」
塞(あんな話をした翌日にこれだもん……)
塞(……羨ましいな)
塞(あっ)
塞(いやいやいや!)ブンブン
塞(思ってない! そんなこと考えてないから!)
塞(私もシロに抱きつきたいとかそんなことは全然っ……ハッ!?)
「――え」
塞(いやでもシロの身体って女っぽいし、かなり抱き心地良さそう……)
「塞」
塞「!?」
塞「なななななななにっ!?」
白望「……いや、ボーっとしてたから」
塞「シロに言われると何かショックだわそれ……」ズーン
白望「え、ごめん」
塞「……あれ? 胡桃たちは?」
白望「先に行っちゃったよ」
塞「え!?」
白望「なんかあの二人の世界が出来上がってたから……塞がボーっとしてる内に置いていかれた」
塞「なんつーバカップルよそれ……」
白望「……まあ、仲が良いのは悪いことじゃないし」
塞「そりゃそーかもしれないけど……」
塞(……シロから見て、あの二人の関係がどう見えてるのかが重要なわけで)
※塞シロ組。胡エイ組と合流。
豊音「みんなーおはよー!」ブンブンッ
塞「おはー」白望「ん」
胡桃「はいはーい」スリスリ
エイスリン「オハ、ヨー!」ニコニコ
豊音「……んん?」キョトン
塞(あ、気付いた)
豊音「(……胡桃たち、何かあったのー?)」
塞「(わっかんない)」
白望「(会った時からこんな感じだったよ)」
豊音「(へぇー!)」
豊音「何だかとっても微笑ましいね!」キラキラ
塞「それは否定しないけどさー」
塞「っていうか、豊音は昨日一緒に帰ったんじゃないの?」
豊音「んーんー。 一緒に帰ったのは途中までだからー」
塞「じゃあ、別れた後に何かがあったのか……」
白望「……」
豊音「シロー?」
白望「……また置いてかれてるよ、私たち」
塞「また!?」
トコトコ
塞「うー……マイペース過ぎるでしょあの二人」
豊音「桃色の空気が流れてたねー」
塞「だよねぇ。 あんなに引っ付いちゃって、お熱いわー」
白望「……エイスリンの抱き心地の良さは認めるけどね」
塞「あれ? それさらっと凄いこと言ってない?」
豊音「確かにエイスリンさんって温かいよね!」
白望「うん」
塞「あれ!? もしや私だけ出遅れてない!?」ガビーン
――――学校、到着
塞「着いたァー……」
白望「……大丈夫?」
豊音「まだ授業前だけど、疲れちゃった?」
塞「だいじょぶだいじょぶ。 朝からお腹いっぱい過ぎて疲れただけだから」
胡桃「だらしないなぁ、塞はー」
塞「主にアンタらが原因だけどね……」
エイスリン「」カキカキ
エイスリン「」サッ
白望「……『具合悪いなら保健室行く?』だって」
塞「平気だって。 エイスリンは優しいなァ」ナデナデ
エイスリン「///」
胡桃「むむ!」
塞「じゃ、また後でねー」
白望「……うん」
エイスリン「♪」フリフリ
――――
塞「やっぱあの二人も仲良いよね」
胡桃「私とエイちゃんほどじゃないけどね!」
塞「むむ、惚けるねぇ」
胡桃「フフン!」
塞(時折、本当に同い年かと疑ってしまうのは私だけじゃないよね……?)
豊音「あぅぅー、一人ぼっちは寂しいよー!」グスグス
塞「いや泣くほどのことじゃ……」
胡桃「豊音ってクラスじゃ弄られキャラでしょ? 別に寂しくないじゃん」
豊音「確かにみんなみんな仲良くしてくれるけどー、塞たちと一緒にいられないのが寂しいんだよー!」グスグス
塞「はいはい。 授業中にメールしたげるから、今は我慢しときなさい」
胡桃「携帯禁止!」
塞「えー?」
塞「胡桃は豊音が可哀想じゃないのー?」
胡桃「規則が大事!」
塞「なら……この豊音を直視しながら同じ台詞を言ってみろー!」→豊音「うぅ~」ウルウル
胡桃「…………クッ」
胡桃「……きょ、今日だけ特別ね! と・く・べ・つ!」
塞「はいはいっと、特別特別ー」
豊音「胡桃優しいー♪」ガバッ
胡桃「うわっ、重い! トヨネ重いー!」ジタバタ
――――放課後
胡桃「さてさて、部活部活っと」
塞「おー、やる気だねぇ」
胡桃「シロたちはまだ教室かな?」
塞「どうだろね。 とりあえず覗いてみようよ」
胡桃「だね。 行こ行こー」
ガラガラ
塞「ん?」
塞(シロが……いない?)
胡桃「エイちゃーん!」タタタッ バッ
エイスリン「クルミ!」パァッ
胡桃「会いたかったよぉ!」スリスリ
エイスリン「ワタシモ!」ナデナデ
塞「お昼一緒に食べてたじゃん……って聞いてるわけないかー」ハァ
塞「エイスリン、まさかと思うけど……シロは先に部室行ったの?」
エイスリン「」フルフル
塞「だよねぇ……」
胡桃「帰ったってわけでもなさそうだね。 鞄残ってるし」
塞「エイスリンは何か聞いてる?」
エイスリン「シロ、ヨウジ、アル!」
塞「あれ、そうなの?」
エイスリン「」コクコクッ
胡桃「シロが用事……珍しいね」
塞「だねぇ」
胡桃「とりあえず、先に部室行ってよーか」
塞「うん。 教室で弄り倒されてるであろうトヨネを救いがてら、ね」
胡桃「エイちゃんはどうする?」
エイスリン「」カキカキ
エイスリン「」サッ
塞「……エイスリンとシロの、絵?」
胡桃「これは多分……シロから『先に行ってていいよ』って言われた的な意味じゃないかな」
エイスリン「♪」コクコクッ
塞「おお、正解っぽい!」
胡桃「フッ、さすが私」ドヤァ
塞「殴ってもいい? というか殴る」
胡桃「痛い!」ペシッ
胡桃「シロの鞄どうしよ」
エイスリン「ワタシ、モツ!」
塞「ならメールで伝えとこっか」スッ
胡桃「なんて?」
塞「『お前の鞄は預かった。 返してほしくば部室まで来い! byクルミ怪人』」
胡桃「なんで脅迫気味なの……しかも怪人て」
エイスリン「カイジン! モンスター!」キラキラ
胡桃「そこ喜ぶポイントなんだ!?」
――――
ガラガラ
塞「トヨネいるー?」
豊音「ふぇぇぇぇぇん塞ぇぇぇぇぇぇぇ!」ガバァッ
塞「うわぁ!?」胡桃「どしたのトヨネ」
豊音「みんなが意地悪するんだよぉぉぉぉ!」グスグス
塞「へー」
豊音「私のこと八尺様って呼ぶんだよぉぉぉぉ私八尺様じゃないのにぃぃぃぃぃぃ」グスグス
塞「おーよしよし」ナデナデ
豊音「うぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!」グスグス
エイスリン(カワイイ)
胡桃(かわいい)
塞(かわいい)
胡桃「もう……あの娘らにはまた説教しなきゃね!」
豊音「だ、ダメだよー、みんなに悪気はないんだからー」オロオロ
胡桃「どうしてトヨネが庇うの!?」
豊音「だってだってー……」オロオロ
塞「もうこれも毎度のやり取りね」
エイスリン「オナジミハ、ダイジ!」
塞「確かに、見てる分には飽きないかも」
エイスリン「♪」ニコニコ
――――部室
豊音「え、シロが?」
胡桃「そうそう」
塞「何か用事があるらしくてさ」
エイスリン「メズラシイ!」
塞「もしかしたら、どっかで寝てるだけかもね」ケラケラ
胡桃「あり得るよ、シロなら」
豊音「でもでもー、さっきおそーじしてる時に廊下歩いてるの見掛けたよー?」
胡桃「へー」
豊音「何となくキョロキョロしてた気がするけどー、何でだろー?」
塞「キョロキョロ、ねぇ」
胡桃「ま、その内来るでしょ。 ダルいダルい言ってても何気にサボったことないし」
豊音「実はしっかりものだよねー」
エイスリン「シロ、エライ!」フンス
塞「それでも基本は怠け者だけどねぇ」
豊音「アハハッ」
胡桃「間違いないねー」ケラケラ
塞「四人いるし、そろそろ始めよっか」
豊音「わーい!」ピョンッ ピョンッ
エイスリン「♪」ワクワク
胡桃「今日は勝つよ!」
豊音「させないよー♪」
エイスリン「マケナイ!」
塞「それじゃ場決めから行くよー」
――――
――
塞(……そういえば)タン
塞(シロに昨日のこと聞くの、すっかり忘れてた)
塞(朝も昼もタイミングはあったのに)
塞(昨日からどこか抜けてるな、私……)
塞(でも考えてみれば……)タン
塞(二人きりの時に聞いた方が良い気がするし……)
塞(今日の帰りでも、いいかなぁ)タン
塞「あ、それロン、7700」
胡桃「ぐぁー!」
――――半荘終了
豊音「トップだよー!」キャッ キャッ
塞「まあ、妥当なところかな」←二位
エイスリン「クヤシイデス……」←三位
胡桃「焼き鳥じゃないもん……一回は和了ったもん……」←四位
塞「一回の和了でもあんなに低い打点じゃ、焼き鳥と変わらないんじゃない?」ニヤニヤ
胡桃「うぐぅっ」
エイスリン「サエ、イヂワル!」
豊音「いじめっこみたいだねー」
塞「敗者に口無し、ってね!」
胡桃「うぐぐぐっ」
ガチャリ
白望「ごめん……遅くなった」
豊音「あっ、来たー」
エイスリン「シロ!」
胡桃「ほんとに遅いよー?」
白望「知ってる。 ……だから、これ」スッ
豊音「おぉー」
エイスリン「――ジュース!」パァッ
白望「適当だけど、受け取って……」
胡桃「はいはい、お礼は言わないよー♪」
白望「うん」
塞(……ちゃんと皆の好きな種類が揃ってる。 相変わらずというかなんというか……)
白望「塞も、はい」
塞「さんきゅ」
白望「はぁ……ダルかった」プルプル←腕を振る音
塞「お疲れ様」
塞「……何やってたの?」
白望「あー……うん」
白望「……気が向いたら、話す」
塞「……ん」
塞(多分、教えてくれないんだろうなぁ)
胡桃「それじゃあドベの私が抜けるから……シロ! 仇は任せた!」
白望「え、やだ」
胡桃「たまにはノってくれても罰は当たんないでしょ!」
白望「……ダルい」
胡桃「……ですよねー」
エイスリン「マカセテ、クルミ!」
胡桃「エイちゃん!」ガバッ
エイスリン「カタキ、トル!」ナデナデ
胡桃「うん、お願い///」ギュッ
塞「……もうお腹いっぱいなんだけど」
豊音「微笑ましくてちょーかわいいよー」
白望「……ダル」←トップ
塞「意外な結果になったねー?」←二位
エイスリン「カタキ、トレナカッタ……」シュン←三位
豊音「まんまと塞がれたよー……」グスグス←四位
胡桃「エイちゃんは悪くないよ……悪いのはあのボンバーマンだよ!」ビシィッ
塞「超失礼だからそれ!」
――――帰り道
テク テク
塞(……さて)
塞(いつも通り、シロと二人で帰路についてるわけだけど)
塞(あー……)
塞(……切り出し方がわからない)
塞(ストレートに聞く? 変化球で攻める? それとも――)
白望「塞」
塞「あ、なに?」
白望「危ないよ……目の前」
塞「え?」クルッ
│電柱│←塞「うぉ!?」
白望「……前見て歩かないと」
塞「う、うん。 ありがとシロ」
白望「……何か悩み事?」
塞「へ?」
白望「さっきからずっと、難しい顔してるから」
塞「あー」
塞「……うん。 まあ、ちょっとね」
白望「聞かない方がいい?」
塞「んーん。 むしろ、今その悩みを解決させてもらおうかな」
白望「?」
塞「――単刀直入に聞くよ、シロ」
白望「……うん」
塞「昨日の帰り際、シロは妙な雰囲気だった。 その理由を、教えてほしい」
白望「……」
塞「」ジッ
白望「……」
塞「……やっぱり答えてくれない、か」
白望「……」
塞「そっか」
塞「……やっぱ、気が向くまでは、教えてくれないつもりなんだ?」
白望「……」
塞「だんまりね……」
塞「……わかった」
白望「……塞」
塞「や、ごめん。 気にしないで。 答えたくないことだって、そりゃあるよね……うん、わかってる」
白望「……」
塞「誰しも、あるものだよね。 秘密というか、言いたくないこととか……」
白望「……」
塞「……ほんと、ごめん」
白望「……塞」
塞「さっ、日も暮れてるし、とっとと帰ろーよ」
白望「……うん」
白望(……ごめん)
――――翌日
胡桃「え、今日は部活出られないの?」
白望「うん」
豊音「どうしてー?」
白望「外せない用事があって」
エイスリン「サビシイデス……」シュン
白望「ごめんね」
塞「……」
白望「明日は普通に出られるから」
胡桃「差し入れを持ってくるなら許してあげよう!」
白望「……それはちょっとダルい」
豊音「アハハっ」
――――授業中
教師「――であるからして……」
塞(……シロ)
塞(用事って、なんだろ)
塞(放課後に、何やってんのかな)
塞(……)
塞(どうして私は、こんなにも不安な気持ちになってるんだろう?)
塞(何があったわけでもないのに)
塞(……いや)
塞(なかったとは、言えないか)
塞(……確かにあったよね、特別なこと)
塞(やっぱりそれが……?)
塞(……)
――――昼休み
胡桃「塞ー、お昼行くよー」
塞「ああ、うん」
胡桃「よっし、今日こそ私からエイちゃんに『あーん』してやるぞー」
塞「そうだね」
胡桃「あれ……?」
塞「どしたの?」
胡桃「あ、いや、なんでもない」
塞「?」
胡桃「(いつもなら何かしら突っ込んでくるのに……)」
胡桃「(……うーん)」
ガラガラ
胡桃「エイちゃーん!」ヒラヒラ
エイスリン「!」
エイスリン「クルミ! サエ!」パァァッ
塞「やっほー」
エイスリン「」カキカキ
エイスリン「」バッ!
塞(山? に、人が……反響?)
塞「……し、シロ翻訳!」
塞「ってあれ!? いないの!?」
胡桃「戸を開いた段階で気付かなかったの……?」
胡桃「エイちゃんや、シロさんはどこぞに行ったのかね」
エイスリン「」チョイチョイ
胡桃「?」スッ…
エイスリン「(シロ、ヨウジ)」
胡桃「(え、また?)」
エイスリン「」コクコクッ
胡桃「(……そか、わかった)」
塞「なにコソコソ話してんの?」
胡桃「ちょっとね。 それよりシロだけど、なんか先生に呼び出されたっぽいよ?」
塞「? 何だって呼び出しなんか」
胡桃「提出物でも出し忘れれたとかじゃない? あるいは、居眠りのしすぎで指導、みたいな」
塞「ふぅん……」
塞「まあ、シロならあり得るかー」
胡桃「だよねー」ケラケラ
胡桃(後でシロに謝礼を要求しよう、うん)
塞「」モクモグ
エイスリン「クルミ、アーン」
胡桃「あーんっ」パクッ
胡桃「んん~、おいひぃ♪」
エイスリン「♪」ニコニコ
塞「……」モクモグ
塞「……」ゴックン
塞「……」
塞(……誰かこの桃色空間どうにかして)ズーン
――――5時限目
塞(……結局、シロは昼休みが終わるギリギリの時間まで、教室に戻ってこなかった)
塞(それとなく尋ねてみたら、同様にそれとなくはぐらかされた)
塞(胡桃たちに聞いても、困惑気味に首を傾げられた)
塞(程なくしてチャイムが鳴って、タイムオーバー)
塞(せっかくのシロと話せる機会が、また失われた)
塞(神様は……いぢわるだ)
――――
塞(……どうしてだろう)
塞(酷く、落ち着かない)
塞(肩が重い)
塞(思考がまるで働かない)
塞(授業の内容なんて、これっぽっちも頭に入ってこなかった)
塞(……唯一頭に浮かぶのは、あいつの顔)
塞(あいつのダルそうな顔だけ)
塞(……シロ)
塞(……息苦しい)
塞(胸の奥が、ざわめいてる)
塞(私……動揺してるの?)
塞(……どうして?)
塞(……シロが、どこか遠くに行ってしまいそうな、言い知れぬ不安を感じるから……?)
塞(そんなわけ、ない)
塞(シロが、離れていっちゃうなんて、そんな)
塞(そんなわけ……)
塞(……)
――――放課後
胡桃「さてさて、今日も部活頑張るよー」ヨイショ
塞「……うん」
胡桃「今日こそ雪辱を晴らすからね、覚悟しておくといいよ!」
塞「……うん」
胡桃「……」
胡桃「私とエイちゃんの相性は最高だよね!」
塞「……うん」
胡桃「だめだ、完全に心ここに在らずになってる」
胡桃「塞ー? 帰ってこーい」ペチペチ
塞「……うん」
胡桃「困ったなー……」
――――部室
胡桃「無理矢理連れてきたはいいけど……」
エイスリン「ウー……」
豊音「さ、塞ー……?」
塞「うん」ポケー……
胡桃「午後からずっとこんな感じだから、さすがに困っちゃって」
豊音「何があったのー……?」
胡桃「……私も、詳しく知ってるわけじゃないんだけどね」
胡桃「多分――」
胡桃「とまぁ、かくかくしかじかで」
豊音「昨日のお話の延長上にあるのかなー……?」
胡桃「多分、ね」
豊音「……胡桃ー。 実は大したことじゃないかなーって、黙ってたことがあるんだー」
胡桃「なになに?」
豊音「えっとねー……」ゴニョゴニョ
胡桃「ふんふんふん…………えっ?」
胡桃「(人を、捜してるの? あのシロが? ……誰を?)」
豊音「」コクコクッ
豊音「噂が色々あるから、『誰を』まではわからなくって。 ただ、学校中を捜し回ってるみたいなんだー」
胡桃「あのシロが、そこまでして捜す相手って……?」
豊音「何者だろうねー……」
胡桃「想像もつかないよ……」
エイスリン「ハイ」ピンッ
豊音「?」
胡桃「どしたの、エイちゃん」
エイスリン「コタエガワカッタ、カモデス!」
胡桃「え……」
豊音「シロの捜してる人がわかったのー!?」
エイスリン「タブン!」
胡桃「じゃ、じゃあちょっと耳打ちで……」
エイスリン「エーット……」ゴニョゴニョ
胡桃「な、なるほど……」
豊音「確かにその線が濃厚かもー……」
エイスリン「」フンス
胡桃「でも」スッ
胡桃「(それ、今の塞には伝えない方が無難かも)」
胡桃「(朝から色々と思い悩んでたみたいだし、昼休みの間も様子がおかしかったからねー……現に今だって)」チラッ
胡桃「ってあれ!?」
豊音「さ、塞がいなくなってるー!?」
エイスリン「!」
エイスリン「クルミ! トヨネ!」
豊音「うん!」
胡桃「捜さないとまずいね! 行こう!」
――――
白望「……やっと見つけた」
――――
タッタッタッタッ
塞(……)
塞(シロに、)
塞(シロに会わなきゃ)
塞(会って、話をして)
塞(それから……)
塞(……それから?)
塞(……何で走ってんだろ、私)
塞(シロがまだ学校にいるかどうかも、わかんないのに)
塞(……)
塞(っ!)
塞(靴箱! 靴箱を見れば!)
塞(……よしっ)タッ
塞(シロの靴箱は確か……)
塞(!)
塞(外靴……)
塞(シロは、まだ学校にいるんだ)
塞(胡桃たちの話、やっぱ本当なのかも……)
塞(でも)
塞(それならなんでシロは、その子のこと……)
塞(……ダメだ)
塞(嫌な未来しか、想像できない)
塞(……会いたい)
塞(会って、直接シロに訊きたい)
塞(『何してんの?』って)
塞(……それでどう転ぶかは、わかんないけど)
塞(でも)
塞(それをしなきゃ、私は前に進めない気がするから)
塞(だから私は)
塞(……)
――
ガラガラ
白望「……ふぅ」
白望(……ダル)
白望(慣れないこと、したもんなァ)
白望(我ながら情けない)
白望(でも……)
白望「……」
白望(……帰ろう)
トボ トボ トボ トボ
白望「」チラッ
白望(16時過ぎ、か)
白望(塞たちは、楽しく打ってるかな)
白望(んー……)
白望(……無駄な心配かァ)
白望(あ)
白望(……自販機)
白望(お財布は)スッ
白望(……軽い)
白望(……ダル)
白望(……帰ろ)
白望()トボトボ
白望(……んー)
白望(……なんか)
白望(……空しい)
白望「……はァ」
?「――――見つけた!」
白望「!」
白望「どうして、ここに」
白望「――塞」
塞「……シロ」
白望「……」
塞「用事があるって、言ってたよね」
塞「それ……もう済んだの?」
白望「……はァ」
白望「しくじったなァ……」
塞「……どういう、意味……?」
白望「……」
白望「ついてきて」
塞「っ」
塞「……」コクリ
白望「ここなら、いいかな」
塞「」コクリ
白望「ん……」カミクシャ
白望「……本当は、明日にしようと思ってたんだけど」
塞「なにが……」
白望「まあ、いいか」
白望「これも多分、“そういうこと”なんだろうし」
塞「だからなにが」
白望「塞」
塞「っ!」ビクッ
白望「塞は、どう思う?」
白望「……同性間の、恋愛について」
塞「!」
塞「な、なんでまたそんなこと……」オロ
白望「聞かせて」ジッ
塞「っ」
塞「私、は……」
塞「互いに、好き合ってるんなら……」
塞「当人たちが、受け入れているなら」
塞「……そこに、性別は関係ない……と思ってる」
塞「だって、仕方ないし」
塞「たまたま好きになった相手が同性だった、ってだけだもん」
塞「好きなものは好き。 エイスリンが言ってたように、それが真理なんじゃないかなって」
塞「そう、思ってるよ」
白望「……」
白望「……」
白望「塞の意見はわかった」
白望「……ごめんね」
白望「私はずるいことをした」
塞「……?」キョトン
白望「……」
白望「塞」
塞「な、なに?」
白望「……あのね」
白望「何となく、塞が勘違いしていそうだから」
白望「敢えて……暴露する」
塞「……」
白望「私は普段……超が付くほどの物臭だけど」
白望「……塞と、一緒にいるのは」
白望「……ダルくないよ」
塞「……え?」
塞「あの、えと、それって……」
白望「……ん」ギュッ
塞「ふぇっ!?」
塞(こ、腰に手を回されてっ……)
白望「――これなら、伝わる?」キュッ
塞(シロの目が、いつもとちがう……)
塞(そんな……そんな真剣な眼差し)
塞「……ずるいよ、シロぉ……」ポロ
白望「……うん、知ってる」
白望「……塞」
塞「…………うん」キュッ
白望「返事……聞かせてくれる?」
塞「……」
塞「……」ギュー
白望「!」
塞「えへへ……」
塞「……これじゃ、答えにならないかな?」
白望「……」
白望「大丈夫……ちゃんと、伝わってきた」キュッ
塞「……」ギュウー
白望「ん……」
塞「心臓、早くなってるよ」
白望「塞こそ」
塞「……バレたか」クスクス
白望「体……温かいね」
塞「そりゃあ……シロに抱き締められてるし?」
白望「照れてるってこと?」
塞「有り体に言えばそうなる」
白望「言わなくてもそうなるよ?」
塞「う、うるさいな///」
塞「それより……ごめんね」
白望「なにが」
塞「や、その……私」
白望「誰も悪くない」
白望「悪くないから」
白望「……謝らないで」ナデナデ
塞「……そういうの、本当ズルいよ」カァァ
白望「そう?」
白望「……そうかもね」ナデナデ
塞「……///」
白望「もう一つ、おまけに暴露しとこう」
塞「なに……?」
白望「実は私のコレは……三年前から」
塞「……え?」
塞「こ、“コレ”って……“ソレ”?」
白望「うん」
塞「ええええええ!?」
白望「そんなに驚くこと?」
塞「びっくりもするでしょ!?」
塞「だってっ……だって……」
塞「シロが、三年も前から私のこと…………なんて///」
白望「迷ってたから」
塞「う、ん」
白望「ずっとずっと、迷ってたから」
白望「……麻雀の時みたいに」
白望「……迷って、迷って、迷い続けて」
白望「ようやく最近、決心がついたんだ」
塞「うぅ~……///」
白望「質問していい?」
塞「……答えられる範囲なら」
白望「塞は、いつから?」
塞「それは答えられない範囲」
白望「不公平」ジッ
塞「は、恥ずかしいから……」テレ
白望「答えないと」
塞「……ないと?」
白望「……塞いじゃうよ?」
塞「だからそーいうのズルいってぇ……///」
白望「ごー、よーん、」
塞「うっ」
白望「さーん、にーい、」
塞「うぅぅっ」
白望「いーち、」スッ
塞「に、二年前!」
白望「ん……」ちゅっ
塞「んん!?」
塞「けけけ結局するんじゃない!///」
白望「コンマ2秒、言うのが遅かった」
塞「そんなのズルい!」
白望「ズルい、って今日だけで何回言ったかな」
塞「シロがそーゆーことばっかりするからでしょー……」
白望「それにしても」
白望「二年前かァ……」
塞「う……」カァァ
白望「きっかけは?」
塞「……ヤダ、言いたくない」
白望「また塞い」
塞「にっ、2年に進級した時にっ」
塞「……シロとクラスが別れてから、色々あって」
白望「色々って?」
塞「い、色々はいろいろ……」
白望「詳しく聞きたい」
塞「なんでこーゆー話題に限ってそんな積極的なの!?」
白望「好きな人の話が気になるのは当たり前のことじゃ」
塞「っ~~!!」カァァ
塞「バカ! シロのアホ! タラシ!」
白望「……タラシは心外だなァ」
塞「そ、そういうシロは……どうなのよ」
白望「気になるの?」
塞「当たり前でしょ! だってその、私はシロが……」モジモジ
白望「……かわいい」ボソッ
塞「そっ、そーゆーのはいいから! きっかけ!」
白望「直感的に」
塞「えっ?」
白望「一目見た瞬間、思ったんだ」
白望「『私この人好きだ』って」
塞「そ、それってっ」
白望「一目惚れに近いかなァ」
塞「あぅぅ///」
塞「なにそれ、何なのよそれぇっ///」ジタバタ
白望「本当のことだよ」
塞「くぅぅっ!」ドタバタ
白望「塞ちょっと落ち着いて」
塞「ムリに決まってるでしょ!」
白望「……わかった」
ギュッ
塞「あっ……」
白望「力ずくで、黙らせよう」ナデナデ
塞「っ~~……」カァァ
塞「……なんか、さっきから抱き合ってばっかりだね、私たち」
白望「嫌?」
塞「ううん」フルフル
塞「むしろ…………好き」
白望「よかった」ナデナデ
塞「ん……」
塞「ねぇ、シロ」
白望「なに?」
塞「……さっきまで、どこで何をしていたの?」
白望「……多分、塞の想像通りだと思うけど」
塞「……告白してきた子に関係することだよね?」
白望「うん」
塞「……何のために?」
白望「ケジメをつけるために」
塞「そっか……」
白望「……あの子には、酷なことをした」
塞「……だとしても」
塞「それが、シロなりの誠意の見せ方だったんでしょ?」
塞「なら、それで十分だと思うんだけどなァ……」
白望「塞……」
白望「……ありがと」キュッ
塞「ん」
白望「塞」
塞「ん?」
白望「目、閉じて」
塞「ん……わかった」スッ
白望「……」チュッ
塞「んっ」
塞(シロの手が、頭の後ろに回って……)
塞(優しく撫でられて……)
塞(なんか……頭ん中ふわふわしてきちゃう)
塞(あー……まずいなぁ……)ギュウ
塞(このままずっと抱きついてたいなー……)ギュウウ
塞(……シロの体、色々と柔らかいしさー)ギュウウウ
白望「塞」
塞「なぁにー?」
白望「甘えてくれるのは、嬉しいんだけどさ」
塞「んー」
白望「――部活、戻んなくていいの?」
塞「えー?」
塞「……」
塞「……」チラッ→時計見る
塞「……」
塞「完っ全に忘れてたー!!」
――――
エイスリン「サーエー!」
豊音「どこにいるのー? おーい!」
胡桃「はぁー……見つからないねぇ」
豊音「もう帰っちゃったのかなー?」
胡桃「いや、靴箱に外靴残ってたし、校内のどっかにいるのは間違いないよ」
エイスリン「……チョット、ツカレマシタ」シュン
胡桃「うーん……とりあえず一回部室に戻ろっか? もしかすると、戻ってきてるかも」
豊音「はーい……」
――――
白望「部室、戻らないの?」ポンポン
塞「……ダルくて動けないー」ギュー
白望「それ私の台詞……」
塞「おんぶしてー……」
白望「……」スッ
塞「なんてね。 今いk……ってうわっ!?」
白望「部室、連れてくから」ヒョイ
塞「あわわわっ」
塞(本当におんぶされちゃったよ///)
白望「私の鞄持っててくれる?」
塞「え、あっ、はい」
白望(塞、軽いなァ……)
塞(シロ、温かいなァ……)
トボ トボ
塞「ね、ねぇ、やっぱり自分で歩くから下ろしてっ」
白望「ダメ」
塞「なんで!? いくら人気がないからって、さすがに恥ずかしいんだけど!」
白望「私がやりたいからおんぶしてる。 はい、交渉決裂」
塞「シロのくせにアグレッシブすぎる!!」
白望「まあまあ」
塞「しかも適当に押し切られるだなんて……っ!?」
白望「とーちゃく」
塞「そうこうしてる内に着いてしまった……」
白望「塞、鞄ありがとう」
塞「あ、こちらこそ」
塞「って何かこのやり取り妙じゃない!?」
白望「ほら、入ろう」
塞「しかもいつも以上にマイペースだね!?」
白望「入らないの?」
塞「ま、待ってっ……色々と心の準備が……さっきなんて部室飛び出してきちゃってたし……」
白望「……」
白望「」クルッ
塞「シロ? 急に振り返って、どうし――」
チュッ
塞「っ!?」
白望「……ん……」
塞「ん、んっ……ちゅっ……」
塞「……ぷはっ」
塞「な、なんなの!?」カァァ
白望「……」
白望「隠すつもりなんて、ないからね」
塞「……え?」
白望「部活中でも、堂々といちゃつきたいし」
塞「や、そっそれはさすがに控えた方が、ねっ!?」
白望「どうして?」
塞「そりゃ、恥ずかしいから……」
白望「ならなおさらいちゃつかないと」
塞「なんで!?」
白望「……照れ顔が見たいから?」
塞「却下! ぜったい却下!///」
白望「無効」
塞「なんで!?」ガビーン
白望「私が法だから」
塞「意味わかんないだけどっ///」
塞「もう……」
塞「わかったよ……」
塞「……皆になんて説明しよっか?」
白望「……適当に」
塞「相変わらず無計画なのね……」タハハ
白望「……あ」
塞「どうしたの?」
白望「差し入れ……持ってきてない」
塞「……明日の予定だったし、別にいいんじゃない?」
白望「胡桃に叱られる……」
塞「っていうか私も叱られるわ……多分」
白望「塞と一緒ならいいや」
塞「切り替え早いね……嬉しいけどさ」
白望「……そろそろ入ろうよ」
塞「そうだね……うん、覚悟決めた!」
白望「行けそう?」
塞「平気平気! シロこそダルくない?」
白望「大丈夫だよ」
白望「何があっても」
白望「塞と一緒なら」
白望「……ダルくないから」
塞「……うんっ」
カン!
塞「あ、こら。 髪の毛触っちゃダメだってば」
白望「……なんで?」
塞「集中できないのっ。 そーゆーのは後でいくらでもしていいから今は、ね?」
白望「……待つのがダルい」
塞「そう言われてもねー……んー」
塞「あ、そうだ」ピンッ
塞「シロ、手出して」
白望「……」スッ
塞「ん、それをこう、私のお腹の方へ回して……」
白望「あ」
塞「じゃじゃんっ。 どう? 胡桃にしてたみたいに、この密着感があればちょっとは我慢できない?」
白望「いい、凄くいい」bグッ
塞「でっしょー?」ニコニコ
胡桃「ちょっと待てそこのお二人さん!!」
塞「なにー?」ニコニコ
白望「どうしたの胡桃」
胡桃「今っ、私たちは何をしてる最中だっけ!?」
白望「?」キョトン
塞「麻雀だけど?」キョトン
胡桃「そうだね! 対局中だね! じゃあお二人さんは何をしてるのかな!?」
塞「何って……」
白望「抱っこして座ってるだけだよ?」
胡桃「それが問題だって言ってるんだよこのお惚けコンビがぁ!!」
豊音(胡桃たちも人のこと言えないと思うんだけどなー?)
エイスリン「フタリハ、ナカヨシ!」
エイスリン「デモ!」
エイスリン「ワタシト、クルミモ、ナカヨシ!」
エイスリン「♪」bグッ
胡桃「あぁっ、エイちゃんの笑顔は天使のようだよぅ///」
エイスリン「クルミ///」
塞「……人のこと言えないよねぇ?」
白望「うん」ナデナデ
塞「ぁ、こら、くすぐったいってー」ニコニコ
白望「ぐーぜんぐーぜん」
塞「アハハっ、何それ~」
豊音(目の保養だよー)ホクホク
――――休日
ピンポーン
白望「ちわー」
塞「はいはーい」
ガチャリ
塞「いらっしゃーい」
白望「お邪魔します」ペコリ
塞「邪魔するんなら帰ってねー」
白望「どこで大阪のノリを覚えたの?」
塞「たまたまテレビで」テヘペロ
白望「かわいい」
塞「いいから上がってよ///」
白望「あれ、親御さんは?」
塞「可愛い一人娘をほっぽり出してラブラブデート、だってさー」
白望「……ふーん」
塞「シロ?」
白望「なに?」
塞「あ、いや、なんでもないんだけど」
塞(……?)
塞「シロがウチに来るのなんて久しぶりだねー」
白望「うん」
塞「あはは、なんか恥ずかしいなー」ホッペポリポリ
白望「模様替えした?」
塞「うん。 ちょっとだけね」
白望「……ぬいぐるみが増えてる」
塞「集めてるつもりはないんだけど、つい」タハハ
白望「塞っぽくて、いいと思う」
塞「そう、かな? 自分じゃよくわかんないけど」
白望「温かい空間というか……とにかく落ち着く」
塞「あはは。 ありがと」
塞「ね、シロ」
白望「なに?」
塞「その……隣、座ってもいいかな?」
白望「……もちろん」
塞「ん……」スッ
白望「……」
塞「……」
塞(……無言でいるのが、気まずくない)
塞(むしろ、心地いいくらい)
塞「……」トン
塞(シロに寄り掛かっちゃった……重かったり、しないよね?)
白望「……」トン
塞(!)
塞「……えへへ」
塞「……」
白望「……」スス
塞「?」
白望「……」ギュッ
塞「!」
塞(シロに、手握られちゃった)
白望「……」キュッ
塞(しかも恋人繋ぎ……)
塞(……恥ずかしい)カァァ
白望「……」
塞「……」
白望「……」
塞「……」
白望「……」
塞「……」
白望「……」
塞「……なんか」
白望「……うん」
塞「……心地好すぎて」
白望「……眠くなるね」
塞「……えへへ」キュッ
塞「……このまま寝ちゃう?」
白望「……それも、魅力的だけど」
塞「……なんかやりたいことでもあるの?」
白望「……うん」
塞「なに?」
白望「……ただ」
白望「ただ、塞に触れていたいな」
塞「シロ……」カァァ
塞「……ね、こっち向いて」
白望「……」
チュッ
白望「……塞?」
塞「えへへ」
塞「まだ、私からしてないなって思ってさ」
白望「……」
白望「次は、私から」スッ
塞「ん……」
塞「……なら、お返しってことで」スッ
白望「んんっ……」
白望「……じゃあお返しのお返しで」スッ
塞「んむっ――」
――――
――
塞「……んー」
塞「どのくらい、経ったかな……?」
白望「たぶん……一時間くらい」
塞「あはは……」
塞「……いちゃつき過ぎかな?」
白望「……まだ足りないよ?」
塞「……実は、私も」カァァ
白望「塞……」
白望「……おいで」スッ
塞「……」コクッ
塞「お腹、空いちゃったね」
白望「うん」
塞「簡単なものなら作れるけど」
白望「食べたい」
塞「ならリビング行こっか」
白望「ん」
白望「ご馳走さまでした」
塞「ん、お粗末さまー」
塞「……あっ」
白望「どうしたの?」
塞「や、別に」
塞(今のやり取り、なんか夫婦みたいだったな///)
白望「……」
白望「小瀬川塞」ボソッ
塞「!?」
白望「どうしたの?」
塞「え、あっ、いや今、え?」
白望「ご馳走になったし、洗い物は私がしていい?」
塞「ええっ、いいって、私がするよー」
白望「だめ」
塞「なんで?」
白望「エプロンした塞の後ろ姿は凶悪だから」
塞「何それ///」
\You got a mail ! /
塞「あ」
塞(お母さんからだ)
塞(えーと)
塞(……)
塞(えっ)
カチャッ
白望(おしまい、っと)
白望(二人分だから、言うほど洗うモノ多くなかったなァ)
白望「んー」フキフキ
白望「よし」
白望「塞ー、洗い物終わっ――」
塞「シロ!」
白望「……慌ててどうしたの?」
塞「えっと……えっとね……あの、」
白望「深呼吸、深呼吸」
塞「うんっ」スーハー スーハー
白望「落ち着いた?」
塞「……うん。 ちょっとだけ落ち着いた」
白望「……それで、どうしたの?」
塞「えっと――」
白望「親御さん、今日は帰ってこれないんだ」
塞「お父さんがお酒飲みすぎてべろんべろんらしくって……恥ずかしい親なんだからっ」
白望「……」
塞「だから、ものは相談なんだけど……その」
白望「……ねぇ」
塞「え? な、なに?」
白望「――今日、泊まっていってもいい?」
塞「……へっ?」
塞「あ、ぅ、ぇっ」
白望「こんな時間に、年頃の女の子が家で一人ぼっちだなんて不安だし」
白望「塞を、一人ぼっちにさせたくないし」
白望「何より……私がもっと塞と一緒にいたいから」
白望「……ダメかな」
塞「……」
塞「ううん……」フルフル
ル塞「……ありがと、シロ」
塞「もちろんっ、大歓迎だよ!」
塞(とは言ったものの……)
塞(どうしよ……)
塞(あれからしばらく経ったのに、シロの顔を一度も直視できないでいる)
塞(なんでって?)
塞(そんなの恥ずかしいからに決まってるでしょ!///)
塞(いざこうなると必要以上に意識しちゃうというか)
塞(一夜をシロと過ごせるんだって思うと心臓が破裂しそうになるというかっ)
塞(あ~ぅ~……///)
白望「塞」
塞(うぅ……)モジモジ
白望「塞?」
塞(どきどきが止まんないよぉ……)モジモジ
白望「……」
塞(もしかしたらもしかするかもしれないんだから、色々と覚悟し――)
チュッ
塞「……」
塞「!?」
塞「ふっ、不意打ちはダメだって前にあれほど!///」カオマッカ
白望「塞がさっきからずっとぼんやりしてるから」
塞「あっ、ぅ……」
白望「テンパりすぎ」
塞「でも、でもぉ……」
白望「……」
白望「ねぇ」
白望「塞は明日、用事とかあるの?」
塞「……なんにもないよ」
白望「そっか……よかった」
塞「……なんで?」
白望「――今夜は寝かせないから」
塞「っっ!?」
塞「シ、シロ、それってどういう」
白望「……こういう意味」スッ
塞「ひぅっ!?」
塞(シロの手が、私の身体にっ///)
白望「ベッド……行こっか」
塞「はぃ……///」
カン
感想くださった方々、ありがとうございました
後日談は、ただいちゃつかせたかっただけでした
書いててニヤけちゃって我ながらキモかったです、まる
シロ塞好きが増えたらいいなぁ……
では、またどこかのスレで
Entry ⇒ 2012.10.10 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (2) | Trackbacks (0)
照「怜と久どっちがモテるかに決着をつける」
照「もちろん。勝負にはしっかりと決着をつけないと」
久「危害が無いのなら喜んでするんだけど、流石に昨日みたいになるならちょっと……」
照「大丈夫。菫に内緒でやればいい」
菫「……誰に内緒でするんだって?」
照「!?」
菫「まだ懲りてなかったのかお前……」
照「こ、これは崇高な知的欲求のためであって邪な気持ちはない」
菫「人の心を弄ぶ時点で邪だろ!」
怜「ま、正直ウチは遠慮したいかなー。もう二回もやったし」
久「私はどっちでもいいかな。ボコボコにされるのは嫌だけど」ニコ
照「……菫が怒ったのは松実さんに手を出したから。それ以外の子なら問題ないはず」
菫「おいコラ」
照「菫だって途中までノリノリだったクセに、終わった後に文句言うのはおかしい!」
菫「そ、それは……」
照「それに昨日だって松実さんとしっぽり出来たのは私たちのおかげとも言える」
菫「そんなことはしていない!」
久「でもまた一つ距離が近づいたってことは事実なんじゃないの?」
怜「ウチらは委員長のために犠牲になったんやな」
菫「お前らいけしゃあしゃあとそんなこと……!」
菫「意味わからんことを言うな! こんなことはもう絶対に……」
久「体操服」
菫「!?」
久「松実さんのたい」
菫「ちょ、ちょっと待て!! ……ど、どういうことだ……?」
久「別に何も?」
照「体操服がどうしたの?」
怜「さあ、意味分からん」
久「ふふふ……」ニヤニヤ
菫(こ、コイツ……まさかあの時……)
菫「待て! ……お、脅す気か?」
久「別にそんなつもりはないわ。ただ、見守ってくれればいいだけで♪」
菫「た、竹井……!」
照「……え、二人とも何の話してるの?」
怜「久が照のために交渉してくれてるんや。優しいなー」
久「別に弘世さんにこれ以上のデメリットが生まれるわけでもないし、ね? ちょっとくらい肩の力抜きましょうよ」
菫「……何か問題が起こった瞬間に止めるからな」
久「だそうよ、宮永さん」
照「さすが菫! 話がわかる!」
怜(久は絶対に敵に回したくないなぁ)
久(人がいない時間だったとは言え、教室であんなことしてる方が悪いと思うけどね……)タハハ
照「それじゃあ早速くじを引いて行こう」
久「いっきまーす。……えっと、>>24?」
怜「また悪い顔しとる……」
照「愛宕さんって、隣のクラスでソフトボール部の?」
菫「体育の時間、よく声を出して目立ってる彼女だな」
怜「久と友達なん?」
久「まあね。1、2年まではクラス同じだったし、そもそも同じ生徒会だし」
照「生徒会……あ、副会長だ」
菫「知らなかったのか……」
久「まったく顔も知らない1年生とかに比べたらまだやりやすいわね」
照「これもまた好記録が期待される。怜は二回目失敗だから、タイム次第では決着がつくかもしれない」
久「とりあえず行ってくるわー。たぶん……ソフトボール部の練習中でしょうね。連れ出すのに骨が折れそうだわ」
怜「生徒会があるー、とか言えばホイホイ付いてくるんとちゃうん?」
久「あの子はそんな簡単な性格じゃないのよね……」タハハ
照「これは4回目にして最大の強者なのかもしれない。とても楽しみ」
――――――――
久(さて、どうしたものか)
久(ある程度なら良いんだけど、あまりにも身近な人間になると逆に難しいわよね)
久(ゆみもかなり厄介だったけど、昔の話があったからまだやりやすかったのよね)
久(洋榎の場合は……ふふ、まあ。分の悪い勝負ほど面白いしやりがいもあるわ)
洋榎「なにやっとんねアホー! そんくらい2年やったらしっかり取れや! 次レフトー!」
久(やっぱり絶賛練習中かー。同じ部長なのにこっちは精が出るわねー)
末原「あ、会長」
久「ん?」
久「あら、末原さん」
末原「珍しいですね、会長がこんなとこにいるなんて」
久「まあね。ちょっとあなたのとこの部長に用があって」
末原「主将に? ……あ、生徒会ですか」
久「ま、そんなとこねー」
末原「ホンマすんません。所属してるにも関わらずあの人ロクにそっち行かんくて」
末原「ホンマですか? 生徒会長の肩書きが欲しいとかっていう不純な動機で立候補したあの人が仕事こなしてるなんて……」
久「興味が色々なところに向くってだけで、根は真面目だから」
久「それに部長としての役割もしっかりこなしてるじゃない」
洋榎「そんくらいのフライ追いつけやどアホー!!」
末原「ま、頼りになる主将ですよ」
久「本当ならもっと生徒会に来て欲しいんだけどねー」
末原「あんまり独占されるのはウチらとしても困りますからね」
久「今でも十分独占してると思うけど? あなたたちが」
末原「そう簡単には渡しません。生徒会立候補するって言うたときも全員で反対したくらいですからね」
久「ホント、愛されてるわねー」
末原「っとすみません。今はあんまり構えそうにないです」
久「いえいえ。お忙しいところごめんなさいね」
末原「もうすぐしたら昼休みなんで、そんときなら主将も暇やと思います」
久「ご親切にどうも。ゆっくり見学でもさせてもらうわ」
末原「よろこんで」ニコ
末原「今行きまーす!」タタタッ
久(上がしっかりしてる組織はやっぱり違うわねー……今年の全国も楽しみね)
久「いい天気……ま、のんびり行きましょう」
――――――――
洋榎「よし、休憩や! 各自しっかり水分取るようになー」
洋榎「練習再開は……任せたわ恭子!」
恭子「了解です」フフ
洋榎「ふー。あっちっちー……」
久「お疲れ様」ピタ
洋榎「ひゃっ!? ふ、普通に水も渡せんのか……って、久?」
久「はろー。今日も気持ち良さそうにやってるわね」
洋榎「なんでここにおんねんお前……」
久「あら、私が放課後のグラウンドにいちゃおかしいかしら」
洋榎「おかしいな。何か企んでるようにしか思えん」ジト
久「あ、あはは……」
久(のっけから手強いんだけど……)
久(ゆみと言い洋榎と言い、頭が回る子は厄介ねー……)
洋榎「言うとくけど、今日はフルで練習あるからそんなには構えんぞ?」
久「分かってるって。私だって部活中のあなたの邪魔をしようなんて思ってないから」
洋榎「ほんなら何の用やねん……」
久「えーっと……あ、そう言えば。昼休みってだいたいどのくらい?」
洋榎「1時間かそこらやな。それがどうした?」
久「いえ。いつまで洋榎と話ができるか気になって」
久(制限時間付き……これはもしかしたら無理かもしれないわね)
洋榎「なんやねん変なヤツやな……話なんて部活終わったあとかクラスでも出来るやろ」
洋榎「ん、ああ……どこ行く?」
久「適当な木陰でいいわ。部室は人が多いでしょうしね」
洋榎「んじゃそれで。っとその前に飯を調達せんとなー……」
洋榎「ふふ、おごってや久。お話料金ってことで」キラーン
久「分かったわよ……ホント、ちゃっかりしてるんだから」
洋榎「やた!」
―――――――――
洋榎「ふー。やっぱここは涼しくてええなぁ」
久「ええ、そうね。グラウンドも良く見えるし」
久(……油断してるときにキスするってアリかしら?)
久(相手の同意を得て、だからアウトよね…………難しいなぁ)
久(部活中の洋榎ってのも普段あまり見ないから新鮮ね。上は黒シャツ、下はユニフォームで……可愛い)ジー
洋榎「……なんやねんジロジロ見て。あげへんぞ」
久「そんなこと言わないでよ。一口ちょうだい?」
洋榎「お前一口とか言ってほとんど食べてまうやろ。あげへん」
久「それはいつも洋榎がしてることじゃない」アハハ
久「ね? ちょっとだけだから」
洋榎「たっく、しゃあないな……ほれ」
久「あむ」
洋榎「あっ!?」
久「ふふ、おいしー♪」
洋榎「このどアホ!! やっぱりほとんど食ったやんけ!」
久(指ごと食べたのはスルーなのね……)
洋榎「その焼きそばパン寄越せ! それでチャラや!」
久「しょうがないなぁ……少しは残してね? はい、あーん」
洋榎「あーんむっ」スカッ
洋榎「……おい」
久「なに?」ニコニコ
洋榎「なにちゃうわ! ちゃんと食べさせろやボケ!」
久「もう、そんなに怒らないでよ 。ちょっとした冗談じゃない。はい、あーん」
洋榎「あーんむっ」スカ
洋榎「おいコラ!!」
久「くふふ……! お腹いたい……」
洋榎「お前なー……!!」
洋榎「なにが犬や! それ寄越せ!」バッ
久「ちょ、やめっ」
洋榎「その焼きそばパン全部食ったる……!」グググ
久「な、なんでそんなに必死なの!?」グググ
久(あれ、これってもしかして……チャンス?)
洋榎「よーこーせー……!」
久(わざと力を抜いて……)
洋榎「のわ!?」
久「きゃっ」
「「…………」」
洋榎「……す、すまん」
久「べ、別に大丈夫よ?」
久(押し倒されてるってなんか新鮮な気分だわ)
久(しかも相手が洋榎……新聞部あたりに抜かれたら一面飾りそうね)
洋榎「重いやろ? 今退くわ」
久「待って」
洋榎「え?」
久「……」スッ
洋榎(久の手、顔に添えられて……)
洋榎「はっ……?」
久(って流石に無理か)
久「いや、なんかこうね、むらむらーっとしちゃって」ハハハ
洋榎(コイツ、今……キスしようとしたんちゃうか……?)
洋榎「……なんのつもりや、久」ジト
久「別になんのつもりもないって」
洋榎「嘘つけ。今明らかに変なことしようとしてたやろ」
久「やあね。キスなんてスキンシップみたいなもんじゃない」
洋榎「……」ジットー
久(すっごいジト目……半分睨んでるし……)
久「えっ……あ、あはは。情報早いわね。え、誰から聞いたの?」
洋榎「んなことはどうでもいい。……生徒会の仲間にまで手出すとはどういう了見や」ギロ
久「あ、あれは、えと、昔を思い出しというか、その……」シドロモドロ
久(ヤバい、怖い)
洋榎「久、お前がどこぞの女と一緒にいようが何をしてようがウチは知らんしどうでもええけどな、これだけは覚えとけよ」
洋榎「超えて良いラインとあかんラインの線引きだけはしっかりしろ」
久(なんか私お説教されっぱなしね……)
久「酷いこと言うのね」
洋榎「酷いのはお前や。地に足着かんとふらふらふらふら……」
久「地に足着いちゃうと空を飛べなくなっちゃうじゃない。そんなの不自由だわ」
洋榎「不自由さの中に幸せがあるもんや」
久「そんな幸せ、いらないわ」
洋榎「お前なぁ……」
洋榎「……で、ゆみに何したんや? アイツ今日一日上の空やったんやぞ」
久「マジかー……これはワンチャンあったり?」
洋榎「質問に答えろ」
洋榎「は?」
久「いや、してもらった、って方が正しいのかしら」
洋榎「お前、ゆみには……」
久「心配しないで。とっくに諦めてるし、今さら何かしようなんて思ってないから」
久「ただ昨日は……昔を思い出しただけなの」
洋榎「……」
久「いいじゃない。私だって、清算したい過去の一つくらいあるわ」
久「その一つを片付けた。ただそれだけ」
久「明日にはゆみも元に戻ってるわよ。断言していいわ」
洋榎「はぁ……お前ら二人に何があったとか詮索はせんけども……」
久「分かってるって。副生徒会長様」
洋榎「分かっててなんでウチにキスなんてしようとした? おぉ?」
久(うっげー……)
洋榎「何が目的か洗いざらい吐いてもらおうか……」
久(これもう無理だと思うんだけど……)チラ
照(続行!)
久「はは、なかなかの無茶ぶりね……」
洋榎「?」
久「そんなものはないわ。洋榎とキスがしたかった、それだけじゃダメかしら?」
洋榎「っ……お前、本気でウチをたらし込もうと思っとんのか」
久「だとしたらどうする?」
洋榎「死んでも断る。さっき言ったやろ。今の生徒会に悪影響を」
久「どうでもいいわ」
洋榎「えっ?」
久「そんなもの、どうでもいい」ギュ
洋榎「ひ……さ……?」
洋榎「……ふざけんな。冗談も休み休み言え。離れろ」
久「洋榎には冗談に聞こえるの? 私の言葉が」
洋榎「年中女を取っ替え引っ替えしてるお前の言葉なんか信用できるわけないやろ。離れろ」
久「そう。やっぱり私ってそんな風に思われてるのね……悲しいわ」ポロ
洋榎「っ……!」
洋榎「……お得意の嘘泣きか? そんなもんじゃウチは騙されへんぞ」
久「本当か嘘かは洋榎次第でしょ。私の気持ちは関係ないんじゃないのかしら」
洋榎(コイツ……)
洋榎「……」
久「洋榎がただ単に優しいから? それとも……」
洋榎「お前が思っとるようなことだけは無い。断言したる」
久「ふふ、そっか……それを信じるかどうかも私次第ね」
洋榎「はぁ……まず大前提として言うとくけどな、ウチにそういう趣味は無い」
久「愛に性別なんて関係ない。洋榎はそう思わない?」
洋榎「……思わんな。永遠に続くわけでもない、ただ将来不幸になるだけの恋愛なんて、不毛や」
久「好きって気持ちの前じゃ、そんなこと考えられなくなるの」
洋榎「ウチには一生分かりそうにもない感情やな」
久「本当にそう思うなら試してみる?」
洋榎「……」
久「私ならあなたに……この素敵な気持ちを知ってもらえる自信がある」
洋榎「……はぁ。もうええやろ。これ以上やってもウチはお前とキスなんて絶対にせん。時間の無駄や」
久「怖いのね」
洋榎「……どういうことや?」
久「私にキスされて……恋に落ちることが」
久「ならしましょう。洋榎の言うことが本当なら何の問題もないわ」
洋榎「……それとこれとは話が別やろ」
久「そんなことないわ。私は自分の気持ちをあなたに伝えるためにキスをする」
久「洋榎は自分の恋愛観が正しいと証明するためにキスをする」
久「これ以上に利害が一致していることも無いと思うけど」
洋榎「……お前がキスしたいがためだけの口車には乗せられん」
久「どうしてそこまで拒むのかしら。洋榎が私とのキスを友人同士のスキンシップだと思えていないように思えるわ」
洋榎「そっ……そんなことあるか!」
久「なら、どうしてそんなにも拒むの」
洋榎「そ、それは……」
洋榎「……!!」
久「それでいて生徒会が今の生徒会じゃなくなって、私たち四人の関係が変わるのが怖くてたまら……」
洋榎「もうええ。邪魔臭い」
久(おっ?)
洋榎「お前には何をどう言うても無駄らしいな……」
洋榎「どうせこのままウチが逃げたとしても、自分の考えが合ってたと満足するんやろ……」
久「その通りだから逃げるんじゃないの」
洋榎「ふざけるな。お前のふざけた妄想、真っ向から叩き潰したる」
久(キター)
―――――――――
菫「信じられん……あそこまで頑なに拒んでいたのに……」
怜「洋榎のあの性格が災いしたな。挑発に乗せられたもんやろ、アレ」
照「相手によって巧みに戦術を変える……さすが久……」
怜「でも最後まで油断は出来んのとちゃう? って本人その気やし大丈夫か……」
照「わくわく」
―――――――――
洋榎「キス一つでウチがお前に惚れるわけないやろ。ふざけたこと抜かした上に妄言をぺらぺらぺらぺらと……」
久「それは実際にしてみないと分からないことだからねー♪」
洋榎「ほら、さっさとしろ。数分後久の吠え面が聞こえるわ」ドキドキ
久(一時はどうなることかと思ったけど……案外なんとかなるもんねー)
洋榎「な、なにジロジロ見とんねん。はよしろや」ドキドキ
久「えっと……洋榎? キスするときは普通目は閉じるのよ?」」
洋榎「なっ……!?」
洋榎「そそ、そんくらい言われんでも分かっとるわアホ!!」
久(ふふ、ウブウブねー……洋榎、絶対に初めてだわ……)
洋榎「ぅぅ……くそぉ……なんでウチはこんなこと……」
久(……洋榎のキス顔。写メ撮っとこ)パシャ
洋榎「……おい、なんやねん今のお」
久「ん……」チュッ
洋榎「……!?」
――――――――
洋榎「……」ポケー
久「……くふふ、毎度アリ♪」
洋榎「……は!?」
洋榎(あ、アカン、ぼーっとしてた……い、今のが……)ドキドキ
久(なんか顔赤いし、これもしかしたらもしかしちゃったり……ん?)
久「あ」
洋榎「あ?」フリムキ
末原「……」
絹恵「……」
久(あっちゃー。すっかり野外だってこと忘れてたわ……)
久(でもなんか面白くなりそう)ワクワク
末原「主将……?」ユラユラ
絹恵「おねえちゃん……今、なにを……?」ユラユラ
洋榎「ご、誤解や二人とも! ここ、これには深いわけが……!!」
久「洋榎のファーストキスはこの竹井久だぁ!!」バァン
末原「!?」
絹恵「!?」
洋榎「なにいうとんねんお前!?」
久「いやー、これ言ってみたかったのね。あ、ちなみに無理やりでもないしオッケーしたのは洋榎だから。それじゃあ」タタ
洋榎「お、おい!?」
洋榎「……」サーッ
末原「……他の子は練習始めてるのに、自分一人だけええご身分ですね、主将」
絹恵「お姉ちゃん、おっけーしたってどういうこと……?」
洋榎(……あ、アカン……悲惨な未来が……)
絹恵「きっちりと」ゴゴゴゴゴゴ
末原「説明してもらいましょうか……?」ゴゴゴゴゴ
洋榎「」
―――――――――
久「ただいまー。いやぁ、今回はキツかった」
怜「ほんまいつか刺されんで」
菫(愛宕……)
照「タイム、1時間26分。戦略、技術、どれを取っても文句無し。見事なお手並みだった」
久「昼休み入るまでの時間が無かったらもっと早かったんだけどなぁ」
菫「愛宕相手と考えれば唇を奪っただけでも恐ろしい話だ……」
怜「もうこれウチの負けでええと思うんやけども……」
照「まだ分からない。逆転のチャンスは……あるのかな?」
久「どうかしら? 私もかなり身を削った結果だしねー。洋榎にボコボコにされる気がするわ」
菫(愛宕だけで済むのか……?)
照「……たぶんかなりリードして久が勝ってる」
菫(タイム忘れたのか……)
照「早速、各々最後の検証に」
怜「なあ、ウチら二人はもうええと思うんやけども」
照「……どういう意味?」
久「ここにもう一人いるじゃない。モテモテな女の子が」
菫「……ああ、なるほどな」
照「?」
怜「ウチと久のどっちかが3回やったまま終わるのはキリも悪いから」
怜「最後に照がやってみれば?」
照「……えっ」
菫「妙案だな」
久「私も賛成ね、面白そう」
照「ま、待ってみんな。これは怜と久、どっちがモテるかの崇高な研究であって……」
怜「二人ずつやって思ったけど、たぶん同じくらいやで」
久「私が松実さん引いててもキス出来なかっただろうしね」
菫「それよりもまだやってないヤツを検証した方が、研究結果としても有用なデータになるだろ」
照「私はモテたことなんて一度も無い」
怜(なに言うとんねんコイツ)
久(自覚ないのも重傷ね)
菫「いつもお前にべったりなあの後輩二人はどう説明するつもりだ……」
照「そ、それは……」
怜「まあつべこべ言わずに引きや」
久「そうそう。案外隠された才能が開花するかもよー?」
菫「このくだらん研究のラストを発案者が飾らずにどう落としまえをつけるんだよ」ニッコリ
照「」
怜「おおー」パチパチ
久「さすが宮永さん」パチパチ
菫「ほら、とっとと引け」
照「……」ガサゴソ
照「……>>215さん」
菫「は!?」
照「玄さん」
菫「……」ジットー
照「ふふふ……いたい!?」
怜「松実玄? 松実さんと同じ名字やけども、なんか関係あるのん?」
久「妹さんね。一個下で2年生の」
菫「……おい照、宥の親族だ。ふざけた真似はするなよ」
照「……初対面の相手にどうこう出来るほど、私は出来た人間じゃない」
怜「そういえば人見知りやったな、照」
久「なんか面白くなりそうね♪」
怜「ギブアップ無し言うたの誰や」
久「さっきの無茶ぶりもだいぶ効いたわよ?」
照「うぅ……」
菫「ま、覚悟を決めるんだな」
久「松実玄さんも確か料理研だから、今なら部室にいるんじゃないかしら」
怜「おらんかったら教室やな」
照「……知らない人のところに行くのは怖い」
菫(見つけるのが一番時間がかかりそうなんだが……そもそも場所を分かってるのか……?)
――――――――――
照(遂に一人になってしまった……)
照(そもそも前提がおかしい。初対面の相手にキスなんて出来る訳がない)
照(みんな頭おかしい……)
照「とりあえず料理研に行かないと」
照「家庭科室は確か……」
照「北」
照「……」テクテクテク
―――――――――――
菫「おい、アイツどこに向かって歩いてるんだ」
久「あの方向だと一年棟ね」
怜「これウチらが途中まで付いてった方がええんとちゃうん?」
久「面白そうだしもう少し観察しましょう」
―――――――――
照(あれ……ここ……1年の時の私たちの教室……)
照(家庭科室はこんなところには……)
照(ん? あれは……ダンス部の1年生たち? ってことは……)
淡「ワン、ツー、スリー、フォー、ワン、ツー……」
照(淡だ……)
照(そうだ、淡に家庭科室の場所を聞けば。いや、でも練習中だし……)
淡「……?」
照「うーん……」
淡「あ、テルー!」
淡「どうしたのテルー!? 一年棟にいるなんて!? 珍しい!」ピョンピョン
淡「あ! もしかしてダンス部に入部……!」
照「ち、違う。道に迷っただけでここに用はない」
淡「そうなんだ……面白くなーい」ブー
照「淡、練習中だったんでしょ? 勝手に抜け出したらダメだよ」
淡「確かに」ハッ
淡「でもせっかくテルが来てくれたんだからお話したいな……」
照「家隣だし、いつもしてると思うんだけど……」
淡「テルー暇なの? 暇なら私たちのダンス見てってよ!」
照「ごめん。会いに行かないといけない人がいる」
淡「え」
照「それじゃあ、練習頑張って」テクテクテク
淡「あっ……」
淡(こんなところまで来て、一体誰に……?)
――――――――
照(うーん……家庭科室が見つからない……)
照(そもそも学校にこんな場所あったっけ……?)
照(迷った……)
――――――――
菫「部室棟で何してるんだアイツ……」
久「完全に迷ってるわね」
怜「さっきいつもの後輩ちゃんと出くわしたんやから道訊けばよかったのに」
菫「そこまで頭が回らなかったか、よっぽど急いでるのか……」
久「その後輩ちゃんも私たちと同じことしてるけどね」
怜「えっ? ……あ。ほんまや」
菫「こっちには気付いてないらしいな……」
久「なんか面白くなってきたわね……!」キラキラ
―――――――――
照(見慣れた場所に出て来た……そうか、ここは部室棟だったのか……)
照(部室棟……ってことは……)
照「……文芸部だ」
照(いるかは分からないけど、もし咲がいるなら家庭科室まで……)
照「す、すみませーん……」ガチャ
咲「はい……って、お、お姉ちゃん?」
照(いた!)パァァ
咲「えっと、どうしたの? 今日は部活ないけど……」
咲「えっ? う、うん。部室の掃除してただけだから暇だけど……」
照「家庭科室まで連れて行って欲しい!」
咲「か、家庭科室? ど、どうしてそんな場所に……」
照「大切な用事があって」
咲(大切な用事……?)
咲「よ、よく分かんないけど家庭科室まで行けばいいんだよね?」
照「うん」
咲「分かった。それじゃ行こっか」
咲「あ、戸締まりするからちょっと待っててね」
照(あぁ……咲みたいな妹がいて良かった……)
方向音痴2人いたらさらに迷うんじゃ・・・
――――――――
怜「あれ、後輩ちゃんコンビの片割れが」
菫「照の妹……やっと案内役を見つけたか」
久「宮永さんにこんな迷子癖があるとはね……ん?」
久(金髪ちゃんの方がめちゃくちゃ睨んでる……)
怜「だ、大丈夫かあの子? 今にも飛び出しそうな雰囲気やで」
菫「こっちにまで影響が出るなら私たちで止めるしかないだろうな」
菫「っておい、あの二人一体どこに向かって歩いてるんだ……家庭科室は真逆……」
――――――――――
咲(あ、あれ……家庭科室って、こっち、だよね……?)
照(この辺り、昨日来たことがあるような……)
照「ねえ咲。道、あってるよね?」
咲「う、うん! あともうちょっとだから私に任せて!」
照「さすが咲。頼りになる」
咲「えへへ……」
照(松実玄さん……いったいどんな人なんだろう……)
咲「あ、あそこの角を曲がれば家庭科室だよ!」
照「おお、遂に」
―――――――――
久「家庭科室、だけど……」
怜「第二家庭科室やんな、あそこ」
菫「本来の家庭科室からは真逆だし、そもそも家庭科室は3階じゃなくて1階なんだが……」
久「いつになったらターゲットに巡り会えるのかしらね」タハハ
―――――――――
照「咲、あとはもう分かるから大丈夫。部室に戻ってくれていいよ」
咲「えっ……そ、そう? どうせだし、最後まで付き合おうか?」
照「私一人じゃないと色々と都合が悪いから……」
咲(ど、どういうことなんだろう……)
照「ここまでありがとう咲。それじゃあ」テクテク
咲「あっ……」
咲(……)
―――――――――
照「ふぅ。やっと着いた。やっと松実玄さんに会える……」
照(やっぱり部室の中にいるのかな……?)
照(でも、部員の注目を浴びて中に入った結果、いなかったら恥ずかしすぎる……)
照「迂闊に動けない。どうすれば……」
玄「それでは、失礼しました」ガラッ
照「!」
照(誰か出て来た! たぶんお料理研の部員……ここは……)
照「そ、そこのあなた」
玄「えっ? は、はい、なんでしょう?」
玄「えっ……あ、えっと、松実玄は私ですけど……」
照「あなたが!?」
玄「ひっ!? は、はい……」
照「……会いたかったです」ウルウル
玄「!?」
――――――――――――
怜「……どういうこと? なんで松実さんの妹が第二家庭科室におるん?」
久「お姉さんが手芸部だし、お姉さんに何か用があってここまで来たんじゃないかしら」
菫「ということは、家庭科室に行っていたら会えなかったわけか……すごすぎるだろ……」
久「妹さんも金髪ちゃんと合流して監視始めてるし、これは面白いことになるわよー」
――――――――――
玄(知らない人だけど、どうして私のこと知って……)
照「……っとすまない。感極まって名乗り遅れた。3年の宮永照です」ペコリン
玄「えっ、あっ、ご親切にどうも。2年の松実玄です」ペコリン
照「……」
玄「……」
照(こ、ここからどうすればいいんだろう……)タラタラ
玄(この状況は一体……)タラタラ
玄「み、宮永さん、でよろしいでしょうか?」
照「は、はい」
玄「えっと……私に何か御用でしょうか……?」
照「ご、御用? あっ、キスしてください」
玄「……ふぇ!?」
照「は、はい。御用はそれだけです」
玄(ど、どどどどういうこと……!?)アワワワワ
――――――――
怜「くふふふ……!!」
久「お腹いたい……!!」
菫「ふふっ……わ、笑うなバカ……ふふっ……!」
――――――――
淡「んーっ!! んっー!」
咲「だ、ダメだよ淡ちゃん! 大声だしたらバレちゃうって!!」
咲(お、お姉ちゃん一体何を……?)
――――――――-
照「え、えっと……返事を聞かせてもらってもいいでしょうか……?」
玄「へっ? あ、えっ、そそそ、そのっ……ご、ごめんなさい!!」ペコ
照「」ガーン
玄(しょ、ショック受けてる……)
照「そう、ですか……理由を訊かせてもらってもいいですか……?」
玄「り、理由!?」
玄「え、えっと、初めてお会いした方と、キスは、出来ません……ごめんなさい……」
照「初めて、会ったから……で、でもっ!」
照「片岡優希さんは初対面の人とキスしてました!」
玄「えええ!?」
照「はい。軽くですが……初対面の私の友人とキスしてました」
玄(ど、どどど、どういうこと……!? )
玄「ほ、本当、ですか……?」
照「本当です。証拠もあります。これ……」ピラッ
玄「しゃ、写真?」
玄「」
照「だから、その……初めて会ったから、というのは理由にならないと思うんですが……?」
玄「り、理由にならない……?」
玄(で、でも……!)
照「キス、してもらえないでしょうか……?」
玄「えっと、その……」
玄「キスは、好きな人とすることですから、その……私なんかとじゃ……」
照「私は松実玄さんが好きです!」
玄「そ、そんなっ……そんなこと急に言われても……」カァァァ
照「松実玄さんは、私のこと好きですか?」
玄「えっ!?」
玄「は、初めて会った人なのに……好きとか、嫌いとか……」
照「嫌い、ですか?」
玄「……き、嫌いでは、ないですけど……」
照「じゃあ好き、ってことですよね?」
照「それなら、私とキスして欲しいです」ギュッ
玄(あっ……手……)
玄「そ、そんな、でも……あ、あぅぅ……」カァァ
―――――――――
怜「なんやねんあの小学生並みの押し問答は……」
久「相手の冷静さを徐々に奪い、思考能力を低下させた上で懇願する……案外良い作戦かもね」
菫「本人は何も考えずに頼み込んでるだけだろうけどな……
玄(それに、じっと私の目を見つめる宮永さんの顔……すごく凛々しくて……)
玄「あぅ……」ドキドキドキ
照「もう一度言います。好きです、松実玄さん。もしよろしければ……私とキスして欲しいです」ギュッ
玄「み、宮永さん、そんなことっ……」
照「お願いします……一瞬だけでいいんです。だから……」
玄「……わ、分かり、ました……」
照「!」
ドンガラガッシャーン!!
照「猫です」
玄「ね、猫……?」
照「それじゃあ……えっと、失礼します。松実玄さん」
玄「へっ? は、はいっ……! よ、よろしくお願い、します……?」
玄(考えてみたら、私、なんで知らない先輩にキスされそうになって……)
照「……」チュッ
玄「!」
照「ありがとうございました。松実さん」キリッ
玄「は、はい……」ヘナヘナ
玄(おでこ……)
――――――――――
照(ふぅ……大変だった……)
照「ってわぁ!?」
照「な、何やってるのみんな? って、咲と淡、なんでそんな……」
怜「いや、ロープ……」
咲「んーっ!!」ジタバタ
淡「~~~!!」モガモガ
久「宮永さんが松実玄さんに好きだって言ったあたりで取り押さえたわ」
菫「私もつい雰囲気に流されて手伝ってしまった……」
照「二人とも私を心配して付いて来てくれてたのか……」
久「タイムは1時間26分。1時間ほど彷徨ってたから、あなたが一番恐ろしいタイム叩き出してるわよ」
照「誰も唇になんて言ってない。二人は勝手に唇にしてたけど」
久「そりゃ、キスって言えば唇でしょ」
怜「ウチもそう思うわ」
菫(二人は勝手に難易度を上げてた、ってことか。それであのタイム……)
照「さて、実験も円満に終了したし……結果発表しないと」
怜「もはやどうでもいい……」
久「まあ、締めくくりってことで」タハハ
照「まず1位は久ね。二人の強者を落としてタイム的にも文句無し」
菫「まあ異論はないな」
怜「おめでとー」
久「全然名誉なことじゃないと思うんだけど……」
照「松実さんは落とせなかったけど、十分健闘したし2位に値する。おめでとう」
久「拍手ー」パチパチ
怜「うーん、嬉しく無い……」
照「以上。実験終了」
菫(……見事に三者三様の落とし方とその力を見せつけた訳か。実質全員1位みたいなもんだろこれ……)
照「もう帰っていいよ、みんな。協力してくれてありがとうね。夜道には気をつけて」
「「おい」」
終わり
これがきっかけでギクシャクしちゃったかじゅモモとかも見てみたい
Entry ⇒ 2012.10.09 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (3) | Trackbacks (0)
照「怜と久ってどっちがモテるの?」
菫「いきなり何を言ってるんだお前は」
照「二人ともすごくモテるって聞いた」
照「実際、怜も久もよく色々な女の子と一緒にいるし、たくさん告白もされてる」
怜「それは、まあ……」
照「ここで一つの疑問が生まれた。最強の女たらしはどっちなのか」
怜「ちょ」
菫「言いようがいきなり酷くなったな……というより嫌な予感しかしないのだが……」
照「ここは白黒ハッキリ決めるべきだと思わない? いや、私が気になるから決めて欲しい」
照「じゃあ怜が最強の女たらし? 病弱を武器にたくさんの女の子を弄んでる外道?」
怜「ふざけんな! 風評被害も良いところや!」
照「じゃあ久が最強の女たらし? 数々の甘い言葉で女の子を弄んでる外道?」
久「……本人に聞こえるところでそういうこと言わないでくれるかしら?」
照「あ、ちょうどいいところに」
久「一体なんの話をしてるのあなたたち……」
菫「竹井と園城寺、どっちがモテるのか気になるそうだ」
照「気になる」
久「も、モテるって……」
照「おおー」
久「あ、あれはあの子に無理やり手を引かれただけだから、私は何もしてないわ」
久「そういう園城寺さんだって色々な女の子に膝枕してもらってるって聞いたけど、どうなのかしら」
怜「そ、それはちょっとしんどなった時に、たまたま居合わせた子にやってもらっただけで……」
菫「お前ら二人とも……」
照「さて、アピールタイムはこの辺にして」
怜「おい」
照「これはもう勝負で決めるしかない」
怜久「「……勝負?」」
うえのさんにもわたしがいます
怜「なるほど」
久「確かに分かりやすいわね」
菫「お前らなんで乗り気になってるんだ……」
怜「ウチが女たらしなんて風潮見過ごすわけにはいかんからな」
怜(ちょっとおもろそうや)
久「ま、同じ理由ね」
久(すごく面白そうだわ)
怜「で、落とすの定義は具体的になんなん?」
久「それもそうね。告白して付き合うまでなんてやってると一日じゃ終わらないわ」
照「落とすの定義……うーん……」
菫「……相手の同意を得た上でキスをする、はどうだ」
久「あら、良い案ね」
怜「お堅い委員長の口からそんな言葉が出るとは」
菫「うるさい」
菫(この辺りで落としどころをつけておかないと、ターゲットにされる人が不憫だからな……)
照「それじゃあ実はムッツリな菫の名案を採用させてもらう」
菫「おい!」
怜「なんでもええよ」
久「特に異論はないわね」
照「それじゃあ早速スタート。この箱の中に紙が入ってあるから、それに名前が書いてる子がターゲットね」
菫「お前いつこんなもの作ってたんだ」
照「授業中」
菫「はぁ……」
怜「順番はどうする?」
久「うーん、別にどっちでもいいわよ? 短縮期間で時間もあるしね」
照「怜が女の子をはべらしてるとこを間近で見られるなんて感動」
久「ふふ、面白そうで何よりだわ♪」
菫(参考になったり……するのだろうか……)
怜「ホンマぶれへんなアンタら……えっと……>>48?」
照「1年生で咲のお友達」
菫「照の妹の……」
久「お料理研究部に所属してる子ね。美穂子から聞いたことあるわ」
怜「初対面の人に当たるとは……」
照「怜の手腕が問われる。すごく楽しみなマッチアップ」
菫(相手の子が不憫でならん……)
久「今の時間帯なら教室か料理研の部室にいるんじゃないかしら?」
怜「そっか。んまあ、とりあえず行ってくるわ」
照「頑張って。見えないところで監視しとくから」
怜「やっぱり後つけられんのか……まあええけども」
原作の設定じゃないんだな
―――――――
怜(さて、どうしたものか……)
怜(いくらなんでも初対面の子からキスしてもらうて……無茶やろ)
怜「なあ照ー、これってギブアップとかありなんー?」
照「ギブアップは宣言と同時に負けー」
怜「厳しいなぁ……」
怜(って言うてる間に一年棟か。進級してからはほとんど来ることなんてなかったなぁ……)
怜「……この教室か」
怜(上級生が単身教室に乗り込んでくるなんて、注目の的やろなぁ)
泉「はい、なんですか?」
怜「片岡優希さんってのはどの子? 今クラスにおる?」
泉「片岡ですか? 片岡ならあそこに……」
優希「うぅー、宿題終わらないじぇー……」
憧「なんで一週間前のヤツを今やってるのよ……」
和「宿題の存在を忘れてたそうです」
穏乃「あはは、優希は相変わらずだなー」
和「穏乃もしてませんでしたよね、その宿題」
穏乃「え」
怜(……優希って呼ばれてたあの子か。ふむ、なるほど……)
泉「は、はい」
泉(三年生が一年の教室に何の用だろう……?)
ザワ……ザワ……ザワ……
怜(……目立つんも趣味やないし、早く教室から出たいんやけど)
怜(はたしてどういう作戦でいくか……)
怜(……まずは二人きりになることからか)
怜「楽しそうにしてるとこ悪いけど、片岡優希さんってのは君かな?」
優希「ん……? お姉さんだれだじぇ?」
穏乃(三年生?)
和(上級生がこんなところに……珍しいですね)
優希「部長が? 一体なんの用だじぇ」
怜「なんでも至急部室に来て欲しいとかで、さっき一年棟の近くで通りすがったときに連れ出すよう頼まれたんや」
優希「おお、それは一大事だじぇ! これは今すぐ向かわないと!」
憧「宿題しなくてもよくなると急に元気になったわね……」
和「優希、早く用事を済ませて続きをやるんですよ?」
優希「心配しなくても大丈夫だじょ! 伝言ありがとう見知らぬお姉さん! 早速行ってくる!」
怜「あー、ウチも福路さんに話あるから一緒に行くわ。部室まで連れてって」
怜「うん。クラスのことでちょっとな」
優希「分かったじぇ。それじゃあみんな、ちょいと行ってくるから待っててくれ」
憧「はいはい。帰ってこなかったら承知しないからね」
和「本当に進級できなくなっちゃいますよ?」
優希「二人とも心配しすぎだじぇ」
憧「一人もっとヤバいのがいるから心配してあげてるんでしょ」
穏乃「う、うるさいなー! 今は私は関係ないだろ!」
和「関係あります。優希が席を外してる間に宿題見てあげますから、今すぐやってください」
穏乃「そんなぁ……私学食行きたいのに……」
憧「はぁ、このおバカは本当に……」
怜「急に現れてごめんやで。そんじゃ行こか、片岡さん」
優希「おう! 案内は任せるじょ!」
――――――
優希「~♪」
怜(連れ出すのには成功したけど……ここからやなぁ)
怜(いかんせんこの子がどういう子かも知らんし、仲良くなるのも踏まえて色々話てみよかな)
怜「……片岡さん料理研らしいけど、なんで料理研に入ったん?」
優希「タコスの作り方を学ぶためだじぇ!」
怜「た、タコス? なんやそれ、タコ焼きみたいなもんか?」
怜「そんなにか」
優希「ここの学食にもあるから一度食べてみるといいじぇ。次の瞬間にはお姉さんも料理研に入部してるじょ!」
怜「ほー。それは興味深いなぁ。また頼んでみるわ」
優希「ぜひ!」
怜「タコスを作れるようになるために入ったってことは、片岡さんタコス作れるのん?」
優希「……まだ勉強中だから、美味しくはできないじょ……」
怜「はは、料理は苦手か」
優希「うん……部長はとっても料理上手だから、羨ましいじょ……」
優希「タコスにかける情熱だけは誰にも負けないじぇ!」
怜「そっか。ほんならあとは努力あるのみや。また美味しく作れたら食べさせてや」
優希「もちろんだじぇ! みんなにタコスの美味しさを知ってもらうのも私の役割だ!」
怜(ふふ、おもろい子やなぁ……どんだけタコス好きやねん……)
優希「ところで、お姉さんのお名前を訊いてなかったじょ」
怜「ん、そういえばそうやな……名乗るほどのもんでもないと言えばそれまでやけど……」
優希「教えて欲しいじょ! タコスの良さを知ってもらわないと!」
優希「園城寺先輩……」
怜「言いにくいやろ。さっきまでと同じお姉さんでええよ」
優希「了解だじぇ! 私は1ーA片岡優希……って知ってるのか」
怜「ああ、教えてもらってたからな」
怜(久に)
怜「ま、学年もちゃうしそない顔会わせる機会もないやろうけど、よろしゅう頼むわ」
優希「よろしくだじぇ。料理研はいつも家庭科室でやってるから、どんどん遊びに来て欲しいじょ」
怜「ふふ、了解」
――――――
久「あの二人、早速いい感じになってるわね。初対面なのに」
菫「単身1年の教室に乗り込んで連れ出し、数分でここまでするなんて……」
照「菫の3年間はなんだったんだろうね」
菫「……」
照「ご、ごめんなさい」
久「にしても園城寺さんやるわねー。ってここまでくらいは普通かしら?」
菫(普通なわけないだろ……)
照「でもここからが本番。どうやって唇を奪うのか」
久「案外何かの拍子にキスしちゃいそうな気もするわね」
――――――
優希「着いたじぇ!」
怜「やっと家庭科室……1年棟から遠いなぁ。ちょっと疲れてもうたわ」
優希「この学校は無駄に大きいからなー。ってお姉さん体力無さ過ぎだじぇ」
怜「病弱やからなぁ」
優希「病弱? お姉さんどこか体が悪いのか?」
怜「まあちょっとばかしな。1年のときはよう入院もしとったし、今でも保健室にはお世話になってるわ」
優希「そうなのか……しんどくなったら遠慮せずに言うんだじょお姉さん?」
怜「ふふ、ありがとう。嬉しいわ」
怜(このこと話すと大抵の子は心配してくれるんやよなぁ……みんな優しいわ)
怜(まあ口からでまかせやからな……来てる方が驚くわ)
怜「なんか急いでたし、他にも用があったのかもしれんなぁ。ま、ゆっくり待っとこうかや」
優希「うん、そうするじぇ」
怜(さて、ここからどうしたものか……タコスが好きってくらいしか情報もないしなぁ)
怜(……この子ちょっと頭弱そうやし、それを利用できるかもしれん)
怜(ま、のんびりいこうかな)
優希「うぅ。にしてもお腹空いたじょ……」
怜「お昼食べてないん?」
優希「うん、宿題やってたから……」
優希「本当か!? タコス作って欲しいじょ!」
怜「それはレパートリーにないから、お任せしてもらえると嬉しいわ」
怜「そもそも中に入れたらの話やしな」
優希「中に……あ、ドア空いてるじょ」ガラ
怜「えっ?」
怜(なんで?)
――――――――
菫「お前の仕業か?」
照「そんなわけない」
久「私でした。なんか家庭科室使いそうな雰囲気だったから、さっき電話で」
照「さすが生徒会長」
菫(よく考えないでも恐ろしい話だな……)
―――――――
怜「まあ別にどうでもええか」
怜(密室の方が何かと都合もええかもやし)
優希「部員の私が許可するから、冷蔵庫にある食材使ってなんか作ってくれ!」
怜「りょーかい。って普通は料理研の片岡さんがなんか作ってくれるのが普通ちゃうのか?」
優希「確かに……でもタコス以外何も作れないじょ」
怜(大丈夫なんか料理研……)
怜「えっと、普段はタコス以外にはなんか作らんの?」
優希「うん。それにみんなが作った料理食べてる方が美味しいじょ」
怜「なるほどなー」
優希「うっ……責任重大だじぇ」
怜「ま、楽しく行こうや」
――――――――
菫「おい、料理し始めたぞあの二人……」
照「しかもなかなかに距離が近い」
久「雰囲気も良さげだし楽しそうだし、いやー、やるわね園城寺さん」
照「まだ1時間も経ってないのに……これは好記録が予想される」
菫(本当に初対面なのか……?)
――――――
怜(しかし、普通に料理してるだけじゃキスは出来んよなぁ)
怜(何か距離を縮めるようなことを……って言っても今までは基本向こうから行動起こしてくれたし)
怜(難しいなぁ……)
怜「痛っ」シュッ
優希「どうしたんだじぇ? 大丈夫かお姉さん?」
怜「考え事してたら指切ってもうた。はは」
優希「結構血が出てるじょ……絆創膏取ってくるじぇ」
怜(冗談半分でなんかやってみるか)
怜「うあ~、血を流しすぎて持病の一つの貧血が~」
優希「!?」
優希「だ、大丈夫かお姉さん!?」アワワ
怜(この子ほんまに言うとるんか……?)
怜「うぅ、出血が止まらない……このままやと……」
優希「どど、どうしたらいいんだじぇ!?」
怜「まずは、血を止めんと……」
優希「ば、絆創膏っ……」
怜「アカン、そんなもん探してたら出血多量で……」
優希「そ、そんな……! じゃあどうれば……!」
優希「!」
優希「……」モジモジ
怜(……なんかもじもじし始めた……)
怜「ああ……目の前が……暗く……」
優希「し、しのごの言ってられないじぇ!」
優希「あむっ」
怜「あっ」
外野「「!?」」
優希「……」ドキドキ
怜(他人の口の中ってあったかいんやなぁ……)
怜(これは一つ進展なんちゃうか? ウチがこの指くわえて間接キスとかって無しなんかな。そりゃ無しか)
―――――――
照「まさかの急展開。次の瞬間にはキスしているかもしれない」
菫「そ、そんなわけあるか!」
久「でも案外分からないわよ。あの棒演技に気付かないくらいだから、キスしてくれないと病気がー、とかって」
照「うん、あり得る」
菫(あの1年の将来が心配だ……)
―――――――
優希「んっ……」
怜「ありがとう片岡さん。たぶん血止まったから、もう大丈夫やで」
優希「……そ、それは良かったじぇ」
怜「ごめんな。病弱やとこういうことがようあって」
優希「お姉さん、そんな大変な体で今まで……」ギュッ
怜(うーん、いたいけな子を騙すのは心が痛いな……)
怜「よっと……」
優希「お、お姉さん、一人で立てるか?」
怜「ちょっと辛いわ……体貸してくれるか?」
優希「任せるんだじぇ」
優希「っ……」
怜「ほんま、安心出来るわ……」
優希「お、お姉さん……」ドキドキ
――――――
照「本領発揮してきた」
久「病弱だからこそ出来るお家芸ね」
菫(あんなにも儚げで弱々しい姿を見せられたら、誰でも引きつけられるだろうな……)
照「これはもう一押しでキスシーンまで発展するかもしれない」
久「でもその一押しが難しいのよねぇ」
―――――――
怜(うーん、どうしたものか……この子初心そうやから、キスしてくれそうにはないし……)
優希「だ、大丈夫かお姉さん? 保健室まで連れて行こうか?」
怜「いや、そこまでしんどくないから……」
優希「お姉さん無理しちゃダメだじぇ。 すごく顔色悪いじょ……」
怜(かなり心配してくれてる……これなら多少無茶な注文でも言いようによっては聞いてくれそうやな)
怜(……さっきと同じ作戦でいこか)
優希「お姉さん横になるか? 準備室のところにベッドがあるじょ」
怜「ベッドかぁ……ごめんやけどお願いするわ。やっぱりちょっとしんどくて……」
―――――――
優希「よっと」
怜「ふぅ。ありがとうな。助かったわ」
優希「どういたしましてだじぇ。何かして欲しいことはあるかお姉さん? 水飲むか?」
怜「今は片岡さんが側にいてくれたらそれでええわ」ニコ
優希「っ……そ、そっか」ドキッ
怜「……なぁ片岡さん、頼みたいことがあるんやけど、聞いてくれるやろうか?」
優希「なんだじぇ?」
怜「実はうちな……キスしてもらったら体調が良くなるねん」
優希「……へ?」
怜(自分で言っといてアレやけども、流石に無理がありすぎるか……)
怜「そう、キスや。かるーくで良いから、唇にちゅってしてもらったらたちまちに元気になるんや」
優希「ほ、本当なのかお姉さん? そんなの聞いたことないじぇ……」
怜「世界中でウチしか持ってない持病の一つやからなぁ」
優希「本当にそんな病気があるんだじぇ……? でもお姉さんが嘘つくようには思えないし……」
怜(アカン、心が痛くなってきた)
優希「でも、さすがにキスするのは恥ずかしいじょ……」モジモジ
怜(……かわええなぁ)
怜「まあ、無理にとは言わんから。片岡さんも出会って間もない人間にそんなことするの嫌やろうし」
怜「キスしてくれんでもウチがしんどくなるだけやから……ごほっ、ごほっ……!」
優希「お姉さん……!」
優希(とっても辛そうだじぇ……)
怜「うっ……なんか知らんが頭も痛く……」ハァハァ
優希「っ……!」
優希「お、お姉さん、そのっ……私でよければ……」
怜「!」
怜「そ、そっか……じゃあ、えっと、気が変わらんうちにお願いするわ」
優希「気なんて変わらないじょ……お、お姉さん、目、つむってもらっても……いいか?」
怜「ま、任された」
優希「……」
優希「……ん」チュッ
――――――――
怜「はぁ。ただいま」
久「おっかえりー」
照「所要時間1時間31分。初対面の相手にこのタイムはすごい」
菫(こ、こんなことが本当にあっていいのか……?)
怜「今回は片岡さんの優しさと少し残念な頭に救われたわ……」
久「あのあとも終始良い感じの雰囲気だったわね。結局料理も最後までしてたし」
怜「タコス美味かったわ。また遊びにいきたいなぁ」
久「うーん……正直相手の子にもよるわね」タハハ
久「私も片岡さんみたいな子だと扱いやすいんだけど……」
怜「ある意味くじ運良かったんか……?」
菫「……この勝負は不純すぎる。今すぐやめるべきだ」
怜「お? なんか委員長が委員長っぽいこと言っとる」
照「条件を提示したのは菫なのにね」
菫「うるさい!! 乙女の純情を弄ぶようなこんな行為は許されては……」
久「私の相手はっと」
菫「おいこら!」
久「いいじゃない。相手の子もそんなに悪い気はしてないって」
怜「うわぁ……」
照「久、すごく悪い顔してる……」
久「同じ生徒会の役員だし普段仲も良いし、園城寺さんに比べれば楽そうね」
菫(なんだこの余裕……? あの真面目な加治木が唇を許すっていうのか……? そ、それに楽そうって…… )
久「この時間なら生徒会室にいそうね。んじゃま、行ってくるわー」
怜「なんかすぐ帰ってきそうな気するんやけど」
照「さて、仲の良い友人相手にどんなタイムを叩き出すのか。興味深い」
菫「お前なぁ……」
―――――
久(ゆみかー。幼馴染みだっていうあの後輩ちゃんがちょっと怖いけど)
久(軽いキスくらいなら大丈夫でしょう。スキンシップスキンシップ♪)
久(……やっぱり来てるわね。生徒会が無い日も欠かさず……真面目だわ)
久「はろー」ガチャ
ゆみ「ん、久か。どうした? 今日は生徒会はないはずだが」
久「生徒会がある日じゃないと私は来ちゃいけない?」
ゆみ「まさか」
ゆみ「ただ、普段お忙しい生徒会長様が何も無い日にここに来るのも珍しいと思ってな」
久「ゆみの顔が無性に見たくなっちゃってね」
ゆみ「ふっ、相変わらずだなお前は」
ゆみ「みんないつも通りだろ。料理研にソフトボール部。久も本来なら演劇部のはずだが」
久「んー、今日はちょっと面白いことに巻き込まれててね。部活はお休みしてるわ」
ゆみ「面白いこと、か……たまには真面目に部員の面倒見てやれよ」
久「あの子たちなら大丈夫よ。むしろ私がふらふらしてるおかげでたくましく育ってるとも言えるわ」
ゆみ「ふっ、あながち間違いじゃ無さそうだ。今年の文化祭も楽しみにしてるよ」
久「個人的にはあなたにもぜひ我が演劇部に入部して、文化祭を盛り上げて欲しいんだけどね」
久「あなたほど男役の似合う子もいないし、入ってくれたら宝塚みたいなことも出来て面白いんだけど」
ゆみ「その話はいつも断ってるだろ。私には生徒会だけで手一杯だ」
ゆみ「この前の地震で備品が壊れた部が多発してな。今は予算を捻出するのに頭を悩まされてるよ」
久「あー、あの時のことね。ウチも小道具が何個かやられたわ」
ゆみ「吹奏楽部なんかはやられた楽器もあるらしくてな……頭が痛くなるよ」
久「本当にお疲れ様ね……肩でも揉んであげましょうか?」
ゆみ「ふふ、なんだそりゃ。随分とらしくないことを言うんだな」
久「私は部員や役員のことは人一倍気遣ってるつもりだけどー?」
ゆみ「気遣ってるなら部活動に参加してやれ」
久「今はあなたの方が優先よ」ギュッ
ゆみ「ふっ……生徒会長様直々の好意は痛み入るな」
ゆみ「高1の時からの付き合いだが、そんなこと初耳だぞ」
久「能ある鷹は爪を隠すってね」トントン
ゆみ「用法がおかしいぞ」タハハ
ゆみ(しかし……本当に上手いな。緩急を付けて、的確にツボを押してくる……)
久「凝ってるわねー。日頃の苦労が垣間見えるわ」ギュッギュッ
ゆみ「お前がもっと生徒会業務をこなしてくれたら楽が出来るんだがな……」
久「ゆみが働きたがってるから仕事を回してるだけよ。暇よりかはいいでしょ?」
ゆみ「まあそうだが……」
久「働きぶりで考えると、実質の生徒会長はゆみみたいなもんだしね」モミモミ
ゆみ「それはどうだろうな。久はある意味一番生徒会長らしいことをしている。それは私には出来ないことだ」
ゆみ「分かりやすい例を挙げると、生徒たちから好評なイベントやら校則やらは全て久の発案だしな」
久「私は発案して声高らかに宣伝してるだけじゃない。実行や準備、根回しは他のみんなのおかげだし、私一人じゃ何もできやしないわ」
ゆみ「それはそうだが、組織の中で一番大切な部分を担ってるのはお前だということに変わりはない」
久「……そんなにも褒められると照れくさいんだけど」
ゆみ「事実を述べてるだけだ。久には求心力も人徳もある。お前以上に生徒会長の役職を努められる人間はこの学校にいないよ」
久「手放しで褒められると裏を疑ってしまうわね。何か目的でもあったり?」
ゆみ「そうだな……このままマッサージを続けてもらうと嬉しいかな」
久「ふふ、言われなくてもさせて頂くわよ。会計様」
―――――――
照「なんか……」
怜「めちゃくちゃ良い雰囲気やなあの二人」
菫「こうやって覗いているのが野暮に思えるほどだ……」
怜「もうこれ今すぐチューしても問題ないんとちゃうん?」
照「いや、完璧な信頼関係が構築されてるからこそ、躊躇される行為もある」
照「ここからどう踏み込むかが勝負」
菫(竹井に対してその心配は杞憂に思えるが……)
―――――――
久(さて、良い感じの雰囲気にしたところだし、そろそろ何かアクションを起こすべきかしら)
久(でも相手はゆみなのよねぇ……考えてみれば、さらっと受け流される可能性も……)
ゆみ(まだ仕事も残ってるし、このあとはモモとの約束もあるから……)
ゆみ「ありがとう久、もう大丈夫だ」
久「えっ?」
ゆみ「おかげで随分と楽になった。仕事に戻るよ」
久「そ、そう。それは良かったわ」
ゆみ「私はもうしばらくここにいるが、お前も暇があるなら演劇部に顔を出すか何かしろよ」
久(か、完璧に動くタイミング外したわね……)
久(後ろから抱きしめるなりいっとけば、今頃……)
久「……ま、後悔しても意味ないか」
ゆみ「?」
―――――――
久(……うーん、あれから動くきっかけが無い)
ゆみ「……」ウーン
久(ゆみも黙々と書類業務こなしてるし、構って貰えないのは悲しいわねー……)
ゆみ「……」カタカタ
久(にしてもめちゃくちゃ集中してる……なんかイタズラしたくなっちゃうわよね、こういうの見てると)
久「……」スッ
ゆみ「……」
久(席を外すかのように立ち上がり、ゆっくり後ろから近づいて……)
久「フッ」
ゆみ「ひゃ!?」ゾクゾク
ゆみ「か、かわっ……!?」
久「うん可愛い♪」
ゆみ「……はぁ」
ゆみ「一体なんのつもりだ。邪魔をするなら帰れ」ジト
久「そんな顔しても照れ隠しで怒ってるようにしか見えないわよ? まだ顔赤いし」
ゆみ「う、うるさい。顔なんて赤くしてない」
久「赤いわよ。鏡見る?」
ゆみ「見ない。ってなんなんだお前は!? そんなに私に構って欲しいのか?」
久「うん♪」
ゆみ「あのなぁ……」
ゆみ「しょうがないだろ、仕事なんだから……ってそもそも二人きりってどういう意味だ。一体何を企んでる?」
久「別に何も? ただゆみと一緒にお話したいだけ」ギュッ
ゆみ「っ……離れろ。気持ち悪い」
久「ひどい。昔はよくこうしてたじゃない。ゆみだってあんなにも強く抱きしめてくれて……」
ゆみ「そんなことはしていない。勝手に記憶を捏造するな。離れろ」グググ
久「なんでそんなにも蔑ろにするのよー。私だって女の子なんだから泣いちゃうわよ?」
ゆみ「お前が涙を流すときは嘘泣きするときだけだろ……ええいくっつくな!」
ゆみ「そもそもお前に泣かされた女はいてもお前を泣かせる女なんてこの世に存在するはずがない」
久「ず、随分と酷いこと言うのね……」
ゆみ「事実を述べて何が悪い」
久「あら、それはどういう意味? まるで私が普段遊んでるみたいじゃない」
ゆみ「事実遊んでいるだろ。この前も街で下級生と腕を組んで歩いているところを目撃されているぞ」
久「わ、私だって後輩とショッピングくらいするわ。それにあれはあの子から腕を組んで来たからで……」
ゆみ「お前は相手の誘いを断るという行為をしなさ過ぎるんだ」
ゆみ「そこから無意識の行動で相手をさらに勘違いさせるんだから、余計タチが悪い」
ゆみ「そんなことばかりしてると、本当に大切な誰かが出来たとき、その誰かを悲しませることになるぞ?」
久「本当に大切な誰か……」
久「ゆみのことね♪」ギュッ
ゆみ「おいっ」
久「そもそも今は独り身なんだから、何をしようと後ろ暗いことなんてないわ」
ゆみ「お前なぁ……」
久「そんなことを言うゆみには、誰か大切な人がいるのかしら?」
ゆみ「……あぁ。いるよ」
久「あの影の薄い後輩ちゃん?」
ゆみ「そこまで分かってるならもういいだろ」
久「……私はあなたにとって、大切な人じゃないのかしら?」
ゆみ「……久?」
久「私にとってゆみは……今でも大切な人よ」ギュウ
ゆみ「……久は大切な友人だ。そういう意味では、大切な人の一人であってると思う」
久「でも特別にはなれない。そうでしょ?」
ゆみ「……さっきから一体何を言ってるんだ。らしくないぞ」
久「ゆみは何も分かっていないわ。三年も一緒にいたのに……本当の私を分かってない。いや、見ようとしていない」
ゆみ「……どういう意味だ?」
久「あなたは自分自身が見ていたい私だけを見続けていたのよ。求心力があって人徳のある、あくまで生徒会長としての私を」
ゆみ「……」
久「そしてそんな私にとって、あなたはどこまでも特別だった」
久「……私の初恋の相手、教えてあげようか」
ゆみ「やめろ」
久「ふふ、そう言うと思ったわ」パッ
ゆみ「……すまない」
久「……ねえ、こんな雰囲気だし一つ訊いていいかしら」
ゆみ「……答えられることは、出来るだけ答えよう」
久「1年の時でも2年の時でもいい。気付いてた?」
久「そっか。やっぱ、気付かれてたか……それも結構早い時期に……バレてない自信あったんだけどなぁ」
ゆみ「……久、私からも訊いていいか」
久「なに?」
ゆみ「どうして……自分の気持ちを打ち明けなかった?」
久「……」
ゆみ「当時の私は……ただそのことだけが怖かった。いつ話を切り出されるか、いつ私たちの関係が壊れてしまうのか……ただそれだけが」
久「臆病だったのね。ゆみらしくもないわ」クス
ゆみ「今でも私は臆病だよ。この話をいつまで経っても訊こうとしなかったくらいにはな」
久「勝てる見込みが100%無い勝負は絶対にしないの」
ゆみ「……」
久「それが理由かな。分かりやすいでしょ?」
ゆみ「……ああ」
久「結局私もゆみと同じ。この関係が壊れるのが怖かったのよ」
久「そして最後まで馬鹿にはなれなかった。当たって砕ける勇気がなかった」
久「それが全てよ」
久「ま、遠い昔の話だけどねー」
ゆみ「……もしあの時、」
久「やめて」
久「もしもの話なんて、しないで。それだけは絶対に聞きたく無い」
ゆみ「……すまない」
久「……こっちこそ、変なこと言い出したり、昔のこと掘り返すような雰囲気にしてごめんね」
ゆみ「……」
久「最後に一つだけお願いしていい?」
ゆみ「……なんだ」
久「私の初恋を終わらせて欲しいの」
ゆみ「……」
久「この気持ちを完全に終わらせられるのは……あなただけだから」
ゆみ「……どうすればいい?」
久「キス、して欲しい。……一瞬でいいから」
ゆみ「……」
ゆみ「目をつむれ」
久「……ありがとう」スッ
ゆみ「……すまなかった」
「「ん……」」
―――――――
久「……」
ゆみ「お、おい久。だいじょう……」
久「くふふ、毎度ありー♪」ニコッ
ゆみ「……は?」
ゆみ「ひ、久? 一体何を……」
「えっ、これ出て行っても大丈夫なの?」
「わ、分からんわ。でも久のあの様子やと……」
久「もう出て来ても大丈夫だから。ネタバらしちゃいましょう」
照「ほ。本当にいいの……?」ガラ
ゆみ「!?」
怜「本気で言うとんのか久……」
ゆみ「!?!?」
菫「信じられん……まさか、今の全部……」
久「演劇部の部長舐めないで欲しいわ」
久「言ったでしょ。面白いことやってるって」
照「タイム、1時間5分。……園城寺さんより30分ほど早い」
久「んー、やっぱそんなもんか……もう少し早く出来たかなぁ……」
怜「十分早いわ……」
照「さすが久。素晴らしい技術。ここにいる全員騙された」
菫「すまない加治木……本当にすまない……」
ゆみ「……どういうことか説明してもらおうか。久」ゴゴゴゴゴ
久「あ、あはは。ゆみ、ちょっとそのオーラは笑えないわ」
――――――――
久「いたい……」ナミダメ
菫「自業自得だ馬鹿者」
照「むしろよくげんこつ一つで済んだよね」
怜「ウチら全員三枚に下ろされても文句言えん状況やったな」
久「それにしたって本気で殴らなくても……あれから結構時間経ってるのにまだ痛いわよ……」ジンジン
菫「加治木が怒るのは当たり前だ。ネタバレなんてどういう精神で出来るんだ……」アキレ
久「別にいいのよ。それに相手がゆみじゃなかったらあんなこと絶対にしなかったし」
照「どういうこと?」
照「?」
怜「ホンマ、ええ性格しとるわ……」
菫「なあ、もうこんなことはやめよう。これはお前ら二人の凶悪さを証明するだけのえげつない行為だ。一体これで誰が幸せになる?」
照「私は二人のすごさを間近に見れて幸せ」
怜「ウチも片岡さんと仲ようなれて幸せっちゃ幸せやな」
久「私も殴られたけどあんなにも愉快なゆみの顔見れたし、幸せっちゃ幸せね♪」
菫「お前ら……!」
怜「さーて、次はウチの二回目か」
久「なーにお堅いこと言ってるのよ」
怜「ホンマ委員長は委員長やなぁ。そんな頭でっかちやと松実さんに嫌われるで?」
菫「うるさい!」
照「菫は私が取り押さえとくから、くじ引いて」ガシッ
菫「て、照っ、おまっ」
照「懐かしいね、この感じ」
怜「えっと、次は……」ガサゴソ
怜「>>275さん?」
って書きたいから早く3レスして
菫「」
久「あらまー」
怜「なんかこの文字めっちゃデコレーションされとるな」
照「大当たりだからね」
菫「照……!!」ゴゴゴゴゴ
照「お、落ち着いて菫。後ろから阿修羅が出てる」
久「だ、大丈夫だって弘世さん。そんな悲しい未来にはならないはずだから」
怜(これウチが一番危ないんとちゃうの?)
菫「ぜっっっっったいに許さん!! お前ら淫獣の毒牙を宥にかけるのだけは何があってもこの私が許さない!!」ギュウウウ
照「お、落ち着いて菫。締まってる、締まってるから」パンパン
怜「淫獣て……」
久「酷い言われようね」アハハ
久「実際宮永さんは今まさに生命の危機に立たされてるしね」
照「ふたりとも、たすけ……」
菫「お前ら、手を出したらどうなるか分かってるだろうな……!」
怜(うん、ほんまに怖い)
久(でも最高に面白そうなのよねー)ワクワク
照「あ、松実さん!」
菫「えっ」
照「二人とも今! 菫を取り押さえて!」
久「任せなさい!」
怜「病弱なりに丈夫なロープを見つけてきたから、これ使って」
菫「ちょ、おまっ」
―――――――
照「縛ってみた」
怜「病弱なりに口にガムテープも貼ってみた」
菫「んー!! んー!!」モガモガ
久「いやー、弘世さん縛られてる姿が最高に様になるわ。写メ撮って良い?」パシャパシャ
菫「んむーっ!!」
照「菫にはこの台車に乗って同行してもらう。仲間外れにはしないから安心して」ニコ
怜(ある意味一番残酷やと思うんやけど……)
久「そろそろ行って来たら園城寺さん?」
怜「それもそやな。放課後って松実さんどこにおるの? 帰ってたりせえへん?」
怜「そっか。ほなぼちぼち行ってくるわ」
照「今回はクラスメイトだから大幅なタイムの更新が期待される。すごく楽しみ」
久「私は弘世さんの反応を見るのが楽しみだわー」
菫「んんっーー!!」ジタバタ
――――――――
怜(しかし第二家庭科室も遠い……2年棟の一番端やからなぁ……)
怜(今回はどういう作戦でいこうか……部活動中やから、やっぱり二人きりになるところからか)
怜(となると……保健室やな)
怜(何か良い感じのでまかせを考えて……もう面倒やから思いつきのままいこか)
怜「失礼しまーす」ガラ
「「ザワ……ザワザワ……」」
怜(まあ、部外者が入ってきたらこうなるわな)
怜「あ。姉帯さんや」
豊音「? あっ、園城寺さん! 珍しいね! 放課後に手芸部に来るなんてどうしたのー?」
怜「実は松実さんに用事があってな」
豊音「松実さん? 松実さんなら横の部屋でマフラー編んでるよー?」
怜「おおきに。ちょっとお邪魔するな」
豊音「喜んで! お客さんあんまり来ないからちょー嬉しいよー。ゆっくりしてってね」ニコ
怜(さて、委員長のお姫様はっと……)
宥「……」
怜(相変わらずの重装備やなぁ。見てるだけで暑なるわ……)
怜「こんばんは、松実さん」
宥「ふぇっ?」ビク
宥「お、園城寺さん……?」
怜「驚かせてごめんやで」
宥「えっと、どうしたんですかこんなところまで? 何か用事でも……」
怜「そうそう用事。ちょっと松実さんに用があってなぁ」
宥「私に……?」
怜「そう、 委員長が松実さんを呼んでてな」
宥「えっ? 菫ちゃんが?」
怜「うん。でもその当の本人は今かんぴょう巻き……じゃなくて、ちょっと手が離せんくて」
怜「そんな忙しい委員長の代わりにウチが松実さんを呼びに来たんや」
宥「そうなんだ……えっと、菫ちゃんは何の用事か言ってた?」
怜「うーん、そこまでは聞いてないなぁ。……ただ、なんかそわそわしてたから、大切な用事やと思うなぁ」
宥「た、大切な用事……?」ドキッ
宥(大切な用事で呼び出しって……なんだろう……)ドキドキドキ
怜(これはアカンぞー。さっきとは比べ物にならんくらい胸が痛くなってきた)
宥「保健室?」
宥(なんで保健室なんだろう……)ウーン
怜(ヤバい。流石に疑問に思っとる。そら片岡さんほど分かりやすくはないわな、普通……)
怜「 だ、大丈夫そう松実さん? 今ちょっと忙しそうやけども……」
宥「う、うん。大丈夫だよ。えっと、今から保健室に行けばいいんだよね?」
怜「委員長はそう言っとったで」
宥「分かった。それじゃあ行ってくるね。……ありがとうございます園城寺さん。わざわざ伝えてもらって」
怜「いや、全然大丈夫やで? ウチもちょうど保健室に用があったから」
怜「それもそやな。よろしゅう頼むわ」
怜(ん……? 紺色のマフラー……)
怜「……松実さん、このマフラーは自分で着けるの?」
宥「えっ? どど、どうしてそんなこと……」
怜「いや、松実さんが着けるにはちょっと似合わんから、誰かへのプレゼントかな、と思って」
宥「えっと、これは、その……」アワワ
怜(紺色……なるほどな。そういうことか。しかもかなり長いなこれ……)
怜「可愛い刺繍も入っとるし、よう出来とるわ。きっと貰う人は大喜びやろなぁ」
宥「えっ……ほ、本当に?」
怜「うん、ウチが欲しいくらいやし」
宥「ご、ごめんなさい。これはもう、あげる人が……」
怜(あげる言われても受け取れんやろなぁ……)
怜「っと無駄話してごめんな。そろそろ行こか」
宥「は、はい」
―――――――――
怜(特にこれと言った会話もないまま保健室に着いてもうた)
怜(松実さんは委員長のことで頭いっぱいなんやろなぁ)
怜(二人きりになるためとは言え、ちょっとリスク高い嘘ついてもうたかな……)
宥「……菫ちゃん、もう来てるかな」
怜「ま、中に入れば分かるやろ」ガラ
宥「……誰も、いない」
怜(委員長は当たり前やけど、まさか先生までおらんとはな)
怜(まあ久の仕業やろうけども)
怜「とりあえず、委員長来るまで待っとこか。ウチらのが早かったみたいや」
宥「うん、そうだね……」
宥「そういえば、園城寺さんはどういう用事で保健室に……?」
怜「え」
怜「えーっと、ウチは保健室の先生に用があってな。それでや」
宥「そうなんだ……先生がいないって珍しいよね。不在なのに鍵も空いてるし……」
怜(松実さんは流石に頭ええから、不審な点に気付いてきよるなぁ)
怜(さっきみたいな無茶なことは出来んな。どういった作戦で行くべきか……)
―――――――――
照「怜が攻めあぐねてる」
久「そりゃ、相手が相手だしね。前みたいにはいかないでしょ」
照「ここからどう足がかりを付けるか。手腕の見せ所」
菫「んんー!! んんーーっ!!」ジタバタ
久「しかし暴れるわね弘世さん……」
照「自分をダシに使われてた時はもっと激しく暴れてた」
照「ガムテープ上から張り直したくらい」
久「マフラーの話になった途端大人しくなるあたり、分かりやすくて可愛いわ」タハハ
菫「……」ギロ
照「……こ、怖いよ菫……」
久「解放した時のことは考えたくないわね……」
―――――――――
怜(案が浮かばん。ここは王道に、いつもの作戦でいくしかないか……)
怜「うっ……」フラッ
宥「お、園城寺さん!?」
怜「ありがとう松実さん……結構な距離歩いたせいか、いつもの貧血が……」
宥「大丈夫……? もしかして、病気のことで先生に……」
怜「……さすが松実さん。察しがええなぁ」
怜(頭ええせいか、勝手に深読みしてくれのはありがたいな)
宥「私、先生探しに……!」
怜「待って松実さん」ハシッ
宥「お、園城寺さん……?」
怜「一人にされるのは、ちょっと辛いわ……」
宥「うん……私なんかでよければ……」
怜「ありがとうな、松実さん……」ギュッ
――――――――
菫「んんーーっ!? んんーーっ!!」
照「菫うるさいっ」
久「キスなんてした日にはロープ引き千切りそうな勢いね……」
照「怖い」
久「……もう一本使って縛っておきましょう」
――――――――
怜「そやな……横になった方が楽そうやわ」
宥「ちょっとしんどいかもしれないけど、頑張って歩いてね」
怜「うん……」
怜(ここまで行くのは簡単に予想できるけど、問題はここからやねんなぁ)
宥「うん、しょっと……」
怜「ふぅ……ありがとうな松実さん。おおきに」
宥「ううん。困った時はお互い様だから」ニコ
怜(うーん、神々しい。笑顔に後光が)
怜「よろしゅう頼むわ……」
宥(……園城寺さんも心配だけど。菫ちゃん、まだ来ないのかな……)
怜(あんまり無駄な間を作りすぎると、松実さんが色々考えてまう可能性が高いな……)
怜(委員長を捜しにいくなんて言い出す可能性もゼロやない。ここは関心の比重がウチに寄ってる間に勝負仕掛けんと)
怜「……松実さん。早速やけども、我がまま訊いてくれる……?」
宥「な、なに?」
怜「ちょっと枕の高さが合わんくて。それに材質も固めやから寝にくいんや……」
宥「ど、どうしよう。代わりの枕探して来る?」
怜「いや、探す必要は無くて。松実さんがええなら、なんやけども……」
怜「膝枕して欲しいな、って……」
宥「ふぇ……?」
ドンガラガッシャーン!!
宥「ふぇっ……!?」
怜(委員長か……)
怜「でかい猫が暴れてるだけや。気にせんでも大丈夫やで」
宥「猫……?」
怜「うっ、頭が……」
宥「だ、大丈夫園城寺さん!?」
怜「やっぱ枕が合わんと血流も悪うなってな……松実さん、膝枕、頼めんやろか……?」
宥「……ちょっと恥ずかしい、けど……大丈夫」
怜「そっか。ありがとうな……」
宥「えっと、どういう風にしたら……?」
怜「とりあえず、このベッドに腰掛けてくれるか?」
宥「わかった」
怜「そんじゃ、寝かせてもらうな……」
宥「う、うん……」
怜「……」トサッ
怜(これは……)
宥「ど、どう? 大丈夫園城寺さん?」
怜(めちゃくちゃ寝心地ええ……)
怜「うん、大丈夫……めっちゃ気持ちええわ……」
怜(この太ももの柔らかさ、体温の温かさ。膝の高さ、匂い、全てにおいて完璧や……)
怜(あかん……本気で寝てまうかもしれん……)
――――――――
照「怜、すごく気持ち良さそう……」
久「目的忘れてそうね。あの様子だと寝ちゃってもおかしくないわね」タハハ
菫「……」
照「菫がさっきの爆発以降死んだように大人しくなってる」
久「力尽きちゃったんじゃない? 取り押さえる苦労もなくなるから好都合だわ」
照「ほんの少しだけ瞳から涙が……菫、可哀想に……」
久(元凶はあなたよ、宮永さん……)
――――――――
怜「……はっ!?」
怜(あかん、一瞬寝とった。これはある意味まずい状況なのかもしれん……)
宥(菫ちゃん何してるんだろう……)
怜(そろそろ仕掛けにいかんと。でも、膝枕してもらってるだけで全然進展ないし……)
怜(……もうちょい攻めるか)
怜「うん……」
宥「ゃっ……!」
宥(ね、寝返り……!?)
怜「ごめんな松実さん。同じ体勢はちょっと辛くて……」
宥「お、園城寺さん……あ、あの、さすがにこれは……!」
怜「すぅ……はぁ……松実さん、やっぱりええ匂いやわ……」ギュウ
宥「っ~~~!!」
宥「ひゃっ……」
宥「園城寺さんっ、く、くすぐったいよ……あっ……」
怜「ごめんな……でもこれ、気持ち良くて……」クンクン
怜(自分からしといてクセになりそうや……)
怜(将来松実さんを独り占めする委員長が素直に羨ましくなってきた……)モゾモゾ
宥「あっ……だ、だめぇっ……」フルフル
怜(委員長と松実さんの幸せな未来を邪魔したらあかん)
怜(分かってるはずやのに……邪な気持ちが……)
宥「んっ……」
宥「……ふぇっ?」トサッ
怜(……お、押し倒してもうた……)
宥「お、園城寺、さん……?」ナミダメ
怜「……松実、さん」
怜「……キス、してええ……?」
宥「!?」
ドガッシャーン!!
――――――――
菫「~~~~~~~~!!!」ジタンバタン!!
照「お、落ちついて菫!」
久「そうよ弘世さん! 冷静になって!」
菫「ッッーーーーーー!!」
照「ろ、ロープ! ロープほどける!」アワワワ
久「さっきから着々とボルテージを上げてって今が最高潮ね! 宮永さん私逃げていい!?」グググ
照「ダメ!」グググ
久「さすがにまだ死ぬのは嫌なんだけど!?」ググググ
照「松実さんがなんとかしてくれるしか生きる希望はないと思う!」
――――――――
怜「松実さん見てたら、委員長のこととかもうどうでもよくなってきて……」ハァハァ
宥「そ、そんなっ……だ、ダメだよ園城寺さん。だって、だって……!」
怜「……ごめん、松実さん……」スッ
宥「ひっ……!?」
宥「だっ……」
宥「だめえええええ!!」
怜「うぐぅっ!?」
怜(しょ、掌底……)
怜「……ばたんきゅう」
宥「わ、私ったら咄嗟に……! ごご、ごめんなさい園城寺さん! 大丈夫ですか!? 園城寺さん!?」
怜「だ、だいじょう、ぶ……目、覚めた……わ」チーン
宥「お、園城寺さん! 園城寺さん!」
宥「せ、先生呼ばなきゃっ……!」ガラッ
照「あ」
久「あ」
宥「へっ……? 宮永さんにたけ……す、菫ちゃん!? どど、どうしてそんなっ……!?」
照(こ、これは……)
――――――――
久「」チーン
菫「はぁ……はぁ……はぁ……!!」
宥「すす、菫ちゃん……もも、もうそれくらいに……」ガクガクブルブル
菫「こいつらだけはっ……絶対に……!」
宥「だだ、ダメだってば!?」ギュウ
菫「離せ宥! この淫獣どもは君の気持ちを弄ぼうと……!」
宥「わ、私は大丈夫だし何もされてないから!」
菫「嘘をつくな! そうだ、園城寺はどこだ! こいつらも許せないがアイツが一番羨ま死……」
宥「園城寺さんにこんなことしたら死んじゃうよ!?」
――――――――
照(菫は松実さんに引き取られました)
照(おかげで私たちは生きています)
怜「いやぁ、酷い目に遭ったなぁ」
久「園城寺さんは一番マシでしょ……私たち本気で殺されるかと思ったわよ……」
怜「病弱にあの掌底は辛かったで……おかげで気も失って今も顎に違和感ありまくりやからな」
照「……菫の逆鱗に触れるとヤバい。これを学べただけでも進歩」
久「しかし、松実さんがいなかったら三人とも確実に死んでたわね」
怜「松実さんがいたからこそこんなにもボロボロにされたとおも考えられるけどな」ハァ
怜「そもそも松実さんにどうこうすんのは良心が痛むわ」
久「半分襲いかけてたくせによく言うわ」
怜「うっさいわ」
照「今日はここまでだね。時間的な問題でも、私たちの体力的な問題でも」
久「ねえこれ明日も続けるつもりなの? あんな目に遭うのはもうごめんなんだけど」
照「個人的にはあと久に二回、怜に一回トライしてもらいたい」
照「その結果で最強を決める」
怜「今は心の底からどうでもええと思えるわ……」
照「では二人ともまた明日。しっかりとコンディションを整えて」
久怜「「もう勘弁して……」」
とりあえず終わりです
今日帰ってこれるのが確実に19時を回る上、続きもこのスレで書けるかどうか、自分自身書くかどうかも分からないので、落としてもらって構わないです
お疲れ様でした
宥姉がたらしに引っかからなくて心から安心した
Entry ⇒ 2012.10.08 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
菫「体育倉庫に閉じ込められるおまじない……?」
菫「にしても誰の本だこれ……おまじないの本、って……」
菫「……」
菫「ま、暇つぶしにはなるだろう」ペラ
菫「……」
菫「『思い浮かべた人と一緒に体育倉庫に閉じ込められるおまじない』……ふっ、まさかな」
菫「……」
菫(えっと、十円玉……)
菫(そして思い浮かべた人と……)
菫「……」
菫「……はぁ。一体何をやってるんだ私は」
菫「こんなくだらない、神頼みにもならないことに時間を割くなんて」
菫(……本当に、どうかしてる。彼女が私の隣の席になってからは特に……)
照「菫」
菫「ひぁっ!?」
照「どうしたの? 変な声出して」
菫「う、後ろからいきなり話しかけてくるな! いつ部屋に入って来た!?」
菫「そ、そうか……」
照「それ何の本? それに、十円玉なんか机に並べて……」
菫「そ、そんなことより、部室に一体何の用だ? 今日は休みのはずだが」
照「部室に用事はない。菫を探しに来た」
菫「私を?」
照「菫、体育祭の実行委員だったよね」
菫「ああ、そうだが」
照「もうすぐ体育祭のリハーサルだから、グラウンドにテント出しといてって福与先生が言ってた」
照「うん。菫HR終わったあとすぐにクラスから出て行っちゃったから、伝え損ねたって」
菫「そうか……手間をかけさせてすまなかった。今すぐ体育倉庫に行って……」
菫「た、体育倉庫!?」
照「? どうしたの菫?」
菫「いや、なんでもない……」
菫(ま、まさか、な……)
照「そういうことだから、よろしくね」
――――――
菫(……偶然、なのか……?)
菫(もし本当におまじないが効いたとしたら、体育倉庫には……)
菫「……いや、それこそあり得ない。彼女が体育倉庫に用があるなんて……」
恒子「あ、弘世さん!」
菫「っ!? ……ふ、福与先生?」
恒子「いやー、探した探した。あ、もしかして宮永さんから話聞いてたりする?」
菫「テントの件ですか?」
恒子「それそれ。小道具係の松実さんにも手伝うように言ってるから、二人で頑張ってね」
菫「ま、松実!?」
恒子「うん。女の子が一人であんなクソ重いもん出せるわけないし」
菫(ほ、本当におまじないの効果が……)
恒子「あと、先に行った松実さん頑張ってると思うから、出来るだけ早く行ってあげて。そんじゃよろしくー」
菫(……こ、こんなことがあり得るのか……?)
――――――
宥「うぅ……重い……」
菫(ほ、本当にいた……)
宥「こんなの一人で動かせないよぉ……」
菫(松実、宥……)
菫「……」
宥「あっ、弘世さん」
菫「っ……お、遅れて申し訳ない。手伝いに来た」
菫(……ま、まずい。ドキドキしてきた。二人きりってだけなのに、こんな……)
宥「え、えっと、弘世さん……?」
菫「す、すまない。少しぼーっとしていた。早く済ませてしまおう。そっち、持ち上げられそうか?」
宥「うん、っと……ご、ごめんなさい、これが、限界です……」
菫(全然上がってない……)
宥「ほ、本当にごめんなさい! 私全然力なくて、運動も出来なくて……!」
菫「そ、そんなにも卑屈になるな。こんな重いもの、普通の女の子は持ち上げられない」
宥「でも弘世さんは……」
宥「麻雀部と……弓道部、ですか?」
菫「ああ、弓を引くだけでも随分な力がいるから、計らずしも力はつく。だから私のような女の方が珍しいんだ。松実さんは何もおかしくない」
宥「弘世さん……」
菫「持ち上げられないなら、持ち方を変えよう。二人で同じ方向から力をかけて引っ張ればいい。こっちに来てここを持ってくれるか?」
宥「は、はい。え、えっと、こうですか?」
菫「っ……!」
菫(ち、近い……一つの取っ手を二人で持ってるんだから、当たり前なんだろうけど……)
宥「えっと、それじゃあ引っ張りますね」
菫「あ、ああ。呼吸を合わせよう」
宥菫「「いち、にの、さんっ!!」」
――――――
宥「はぁ、はぁ、はぁ……重いです……」
菫「出口付近までには持って来れたが……ここからもっと骨が折れそうだ……」
菫「外に出て休憩しよう。ここは少し暗いし埃っぽい」
宥「はぃ……わかりました……」ハァハァ
菫(一緒に体育の授業を受けてて分かってはいたが、本当に体力が無いんだな……少し重いものを運んだけなのにふらふらだ)
菫「……手を貸そうか?」
宥「だ、大丈夫……私、そこまで貧弱じゃ……きゃっ!?」
菫「っと……暗いから足下には気を付けて」
宥「あ、ありがとうございます……」
菫(……温かい。それに、とても良い匂いが……)
菫「……え?」
宥「も、もう大丈夫ですよ?」
菫「っ! す、すまない!」
菫(わ、私は一体なにを考えて……!)
宥「え、えと、それじゃあ外に出ましょうか」
菫「あ、ああ。そうだな」
菫(……思った以上に重傷なのかもしれない)
宥「それにしても……すごくたくさんの機具がありますよね」
菫「もうすぐ文化祭だから、奥にしまってあった物を出入り口付近に置いてあるんだろう」
菫(こんなにも高く積み上げて……何かの拍子に崩れたら一大事だぞ)
菫「どうした?」
宥「マフラー奥の方に置き忘れてる……」
菫(付けてないと思えば外していたのか……)
宥「汚れそうだと思って外したままで……取ってきますね」
菫「ああ。奥は暗いけど、一人で大丈夫か?」
宥「はい、少しだけ待っててください」
菫(……しかし、落ち着かないな……いつもとは違う空間に二人きりというだけで、こんなにも緊張するものなのか)
菫(……いや、考えてみれば、彼女と話すときはいつだって緊張しているのかもしれない)
菫(何がきっかけだったのか。分からないし身に覚えも無い。気付けば目で追っていて、彼女を意識していて―――)
宥「きゃあっ!!」
菫「!」
宥「いたた……ご、ごめんなさい。その、つまずいちゃって……」
菫「……はぁ。足下には気を付けろと言っただろ……」
宥「ご、ごめんなさい……」
菫「怪我はしてないか? どこかひねったとか」
宥「ううん、大丈夫。本当に少しつまずいただけだから……」
菫「そうか。マフラーは……見つかったみたいだな。ここは思った以上に危ない場所なのかもしれない。早く出よう」
宥「うん、そうだね……」
――――-ゴゴゴゴゴゴゴ
菫(……な、なんだこの音? しかもこれ、揺れてないか……?)
菫(ま、まさか……)
菫「地震だ! しかもだんだん大きくなってる!!」
宥「きゃあ!? ひ、弘世さっ……」
菫「こっちだ! 伏せろ宥!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ――――――
菫「……止んだ、みたいだな」
宥「うぅ……怖かったよぉ……」ガクガクブルブル
菫「もう大丈夫……安心して……」ナデナデ
宥「弘世さん……」
菫(しかし大きかったな……震度5~6はあったんじゃないか?)
菫(外の様子も気になる……とにかくここから出よう)
宥「ごめんなさい……あともう少しだけ、ぐすっ、このまま……」ギュウ
菫「わ、分かった。急かしてすまない。落ち着くまで待つから、リラックスして」
菫(こ、こんなにも強く抱きしめられて……む、胸が……)
宥「あうぅぅぅ……」
菫(こんなときにまで何を考えてるんだ……落ち着くのは私の方じゃないか……」
――――――
宥「……ありがとうございます、弘世さん。ぐずっ、もう、大丈夫です……」
菫「ほ、本当に大丈夫か? 腰が抜けて立てないんだろう? 無理はしない方が」
宥「このままここに居たら、弘世さんまで危険な目に遭います……だから、私のことは置いといて弘世さんだけでも外に……」
菫「何を言ってるんだ!?」
宥「ひっ」
菫「松実さんをここに置いて行くくらいなら死んだ方がマシだ! 二度とそんなことは言わないでくれ!」
菫「まだ余震の危険もある。ますます一人にするわけにはいかない。立てないなら私が松実さんを背負うから、とにかく二人で外に出よう」
宥「ぐずっ、はい……わかりました……」
菫「手を首に回して? そう、それで体を私の背中に預けて。しっかり掴まっててくれ」
宥(弘世さんの背中……体はすごく細いのにしっかりしてて……)
宥(安心する……あったかい……)
菫「……さっきは、その、怒鳴ったりして悪かった。ただ、弱気なことも自分を蔑ろにすることも言わないで欲しい」
菫「私にとって松実さんは……」
宥「えっ……?」
菫「も、もうすぐ出入り口だ」
菫(……出入り口付近にうず高く詰まれていた機具が崩れ落ち、扉を塞いでいた)
菫「……あれだけの揺れだ。普通に考えてこうならない方がおかしい」
宥「私たち……閉じ込められて……」
菫(これもあのおまじないの効力だと言うのか……クソっ)
菫(なんて馬鹿なことをしてしまったんだ……私のせいで、松実さんを危険な状況に……)
宥「弘世さん、どうしよう……このままじゃ私たち……」
菫「……落ち着いて、松実さん。私たちがここに来たことは照や福与先生が知ってる」
菫「私たちが校内に居ないことに気付けば、すぐにでも助けに来てくれるはず」
菫「だから、それまでは比較的安全な場所で助けを待とう」
菫「ああ。だからそれまでは……私が松実さんを絶対に守るから」
宥「……うん。ありがとう……」
宥(私、また誰かに助けられてばっかり……)
菫「とりあえず、さっきの場所まで戻るからしっかり掴まってて」
―――――――
菫「降ろすぞ」
宥「うん……」
菫「とりあえず、ここなら余震が来ても物が降ってくることもないし、安全だろう」
宥(どうしよう、弘世さんから離れたせいで……寒い……)
宥「あの、私……知ってのとおりすごく寒がりで……」フルフル
菫「さ、寒いのか? この場所が?」
菫(確かに今は秋の中旬で、少し前までに比べれば気温は下がって来てはいるが……)
宥「うぅぅ……」
菫「す、少し待ってて。何か羽織れるようなものを探してくる」
宥「あっ……ま、待って!」
宥「一人に……しないでください……」ウルウル
菫「っ……!?」ドキン
宥「私、我慢します……弘世さんがいなくなるくらいなら、寒いままでいいです……」ブルブル
菫(あんなにも顔を白くして、体を震わせて……)
菫「……」
宥「弘世さん……?」
菫「その、何も無いよりはマシだと思う。上からこれを着てみてくれ」
宥(弘世さんの……ブレザー……)
宥「で、でもそれじゃあ弘世さんが……!」
菫「バカ言え。冬山に遭難したんじゃないんだぞ……常人は上を脱いでも涼しいくらいだ」
宥「あっ……そ、そうですよね」
菫「それでも寒いようならまた何か考える。とりあえずはそれで我慢してくれ」
宥「ありがとうございます……」
宥「あったかい……」
菫(……とりあえずは大丈夫、なのか……?)
宥「はぁぁ……」
菫(しかし、彼女の体質は未だに信じられない……今朝も真冬でもしないような防寒具を着ていたし……)
菫(そういえば、始めて彼女と出会ったときも驚かされたな……)
菫「懐かしい……」
宥「えっ?」
菫「あ、いや。その……異様に寒がってる松実を見て、初めて会ったときのことを思い出してな……」
宥「初めて会ったときのこと……?」
宥「私、いつもそうなんです。周囲の環境が変わるたびにみんなに注目されて……入学式の日とかは特に……」
菫「担任になった福与先生に質問攻めにあって、あたふたしていたのも印象深いな」
菫(まあ、あの人の性格の濃さも相まってだが……)
宥「あの時は大変でした……緊張して全然喋れなくて……」
菫「あんなマシンガントークを受けててまともに受け答え出来る人もそういないよ」クスクス
宥「ふふ、そうですよね」
菫「始めて話しかけられた時のこと?」
宥「教室の中で防寒具を付けるなんてマナー違反だ。今すぐ取れ、って……」
菫「あ、あぁ……あの時のことか……」
宥「すごく厳しい口調で注意されて……ふふ、少し怖かったのを覚えてます」
菫「ご、ゴーグルにマスクまで付けて来られたら黙って見過ごせるわけがないだろ……」
宥「でも私、ああやって注意されたのは始めてでしたから……」
菫(小動物のような挙動で涙目になった彼女を責め立てる私は、端から見れば悪役だったな……)
菫「……なかなか指示に従わない松実さんに腹が立って、無理やり防寒具を取ろうとした……」
宥「ふふ、あの時はすごく騒ぎになりましたよね。喧嘩だ事件だって……」
菫「今でもよく覚えてるし、忘れるわけも無い。あの照に羽交い締めにされるまで止まらなかったくらいだから、よっぽど我を失っていたんだろうな……」
菫(思い出すだけで恥ずかしくなる……どうして私はあそこまで……)
宥「でも、そのあとはちゃんと仲直り出来ましたよね」
菫「学校長直々の許可書を持って来られたからな……最初から事情を説明してくれればよかったものを……」
宥「詰め寄られることなんて普段なかったし、ほとんど初対面だったから……上手く話せなくて……」
菫「あの時は随分と恥をかいたよ」
宥「私が弘世さんの立場なら、絶対に……」
菫「実際はいけないことじゃなかったんだから結局は私の早とちりだ。冷静に事情を聞き出そうとしなかったのも悪い。改めて、あの時はすまなかった」
宥「そ、そんな、とんでもないです……むしろ謝るのは私の方で……」
菫「ふふ、今さら昔のことを掘り返すこともない。今ではこうやって仲良く……」
宥菫「「……」」
宥「わ、私たちって、普段あんまりお話しませんよね」
菫「た、確かに」
菫(いつも目で追うだけで、話しかけようなんて……)
菫「松実さんも、クラスでは姉帯や岩戸、それに妹さんたちと……」
宥菫「「……」」
宥「……こ、これを機に互いのことをもっと知れるといいですね」
菫「そ、そうだな」
――――――――
菫(……閉じ込められてから1時間は経ったか……?)
菫(未だに助けが来る様子はない。あんなにも大きな地震があったというのに、あまりにも静かすぎやしないか……?)
菫「……松実さん、携帯は持ってたりしないか?」
宥「ごめんなさい。すぐ戻れると思って、教室に置いたままで……」
菫「私も鞄ごと部室だ。期待はしてなかったが、助けを呼ぶのは無理そうだな……」
宥「私たち、いつまでこのままなんでしょう」
宥「結構時間は経ってるのに、まだ誰も来ない……」
菫(……何か理由を付けてポジティブに考えたいものだが、どれだけ推測しても……)
宥「もしかしたら、ずっとこのまま……」
菫「それはあり得ない。明日は体育祭のリハーサルがあるから、この倉庫は絶対に使うことになる」
菫「今日中に出られるかは分からないが……明日までには絶対に出られるよ。それは断言できる」
宥「そ、そうですよね。ごめんなさい、暗いこと考えちゃって……」
菫「この状況じゃ不安になるのも仕方ない。ただ、気持ちを後ろ向きに持っても何も出来ないことには変わらない」
宥「あっ……」
宥(弘世さんの笑顔……始めて見たかもしれない……)ポー
菫「どうした? 私の顔に何か付いてるか?」
宥「いや……その、弘世さんが笑ってるところ、始めて見たような気がして……」
菫「なっ」
宥「とっても綺麗でした……笑ってる方もすごく弘世さんは素敵ですね」ニコ
菫「っ……」
菫(松実さんの笑顔の方が素敵だ、なんて口が裂けても言えないな……)
――――――
菫(あれからまたしばらく経ったが……話題が尽きると無言が気まずく感じるな……)
菫(松実さんの様子は……)
宥「……」
菫(……あまり良いとは言えないな)
菫(何か気晴らし出来るようなことがあれば……)
―――――ゴゴゴゴゴゴゴ
宥「ひっ!?」
菫(っ……! よ、余震か……!?)
宥「ひ、ひひ、弘世さん……!」
菫「落ち着いて。大丈夫だから」
宥「ひぃぃ……」ガクガクブルブル
菫(彼女には関係ないらしい……)
菫「松実さん、怖がらないで。揺れは小さいし、本当に大丈夫だから」ギュ
宥「弘世さん……」ナミダメ
菫「深呼吸して。不安なら、私にしがみついててもいいから」
宥「はぃ……」ギュウ
菫(……こんなにも近くに、松実さんが……)
菫(この揺れがいつまでも続けばいいなんて思ってる私は……)
―――――――
菫「……ほら、何もなかっただろ? 少し音がうるさかったくらいだ」
宥「はい、そうでした……」ギュゥ
菫「……その、もう大丈夫だと思うから、離れても」
宥「……もう少しだけ、このままでいいですか」
菫「えっ? あ、ああ。わ、私は別に構わないが……」
宥「弘世さん……やっぱりすごくあったかくて、とても安心するんです……」
菫「っ……!」ドキッ
宥「抱きしめるのが気持ち良くて……良い匂いも……」
菫「ま、松実さん……?」
宥「!」
宥「ご、ごめんなさい! わ、私ったら、変なこと言って……」
菫「待って!」
宥「っ!?」
菫(咄嗟に腕を掴んでしまった……手首、細い……)
宥「ひ、弘世さん……?」
菫「……えっと、なんだ。その、別に何も気にならないし嫌でもないから、その……」
菫「抱きついてもらっても……構わない」
宥「……」
宥「あ、改めてそう言われると……恥ずかしいです……」
菫「うっ……」
菫(い、一体何を言ってるんだ私は……!! )
宥「えっ……わ、忘れないといけないんですか……?」
菫「っ……いや、もう好きにしてくれ……」
宥「は、はい」
菫(……確実に自分自身がおかしくなってる。この閉鎖的な空間の所為なのか、はたまた……)
宥「……?」
菫(……今は出来るだけ何も考えないでおこう)
―――――――
菫(閉じ込められたのは、推測だが午後の17時頃。体感時間では結構経ってるが、今は何時なんだろう……)
菫(この体育倉庫に気付かない方がおかしくないか……? 外も混乱してると考えてもこれは……)
宥「あ、あの弘世さん」
宥「その……また、だんだん寒くなってきて……」
菫(言われてみれば……確かに肌寒い。日が落ちて来た証拠か……?)
宥「だから、弘世さんが良ければでいいんですが……」
宥「あたためてもらってもいいですか……?」
菫「……」
菫「はぁ!?」
宥「ご、ごめんなさい! やっぱりダメですよね、こんなこと……」
菫「い、いや。え、っと。あ、温めるって、具体的にどうやって……?」
菫「す、すまないがもう一度大きい声で言ってもらえるか? 声が小さくてよく……」
宥「ご、ごめんなさい! やっぱりさっき言ったことは忘れてください!」
宥「わ、私ってば、本当に何を考えて……」
菫(顔が真っ赤だ……は、裸とかって聞こえたが、一体何を言おうと……?)
菫「……よく分からないが、寒いのか?」
宥「は、はい……少し、辛いです……」
菫「……」
宥「弘世さん……?」
菫「……この体育倉庫には暖を取れるものなんて無いと思う」
菫「それで、なんだかんだでやっぱり人肌が一番温かいと……思う」
宥「そ、それって……」
宥「!」
菫(わ、私は一体何を……でも、これで彼女が楽になれるなら……)
宥「ひ、弘世さん……ほ、本当に、良いんですか……?」
菫「あ、ああ。言っても私たちは同性だ。抱き合うくらい、それほど気にすることでもないだろう」
菫(私自身は、気になって仕方がないが……)
宥「ありがとうございます……弘世さん、私なんかのために、本当に……」ウルウル
菫「泣くのはやめてくれないか……」
宥「ご、ごめんなさい……ぐずっ、それじゃあ、ふつつか者ですが、よろしくお願いします」
菫「あ、ああ。よろしく」
菫(ってなんなんだこの挨拶は……)
宥「それじゃ、その……見られてると恥ずかしいので、後ろ、向いててもらっていいですか?」
菫「……どういう意味だ?」
菫(だからなんで泣きそうになるんだ!? しかも顔まで赤くして……)ドキドキ
菫「……分かった。後ろを向いてればいいんだな?」
宥「は、はい。その間に、その……弘世さんも準備しといてもらえれば嬉しいです……」
菫「あ、ああ」
菫(準備? 何の準備だろう。心の準備の時間は確かに欲しいが……そもそもどうして私が後ろを向いて……)
シュルシュル――――
菫(な、なんだ今の音は? まるで衣擦れのような……)
ファサ――――――
菫(……何が起きてる……?)
宥「はぁ……はぁ……」
宥「す、すみません。もう少しだけ待ってください……あとちょっとで脱ぎ終わるので……」
菫(……な、なんだって? 今、脱ぎ終わるとか……)
宥(ど、どうしよう……すごく恥ずかしいし、めちゃくちゃ寒い……)
宥(でも、弘世さんはこんな私のために……一生懸命……)
菫「……すまない松実さん。状況を確認したいから振り向いてもいいか?」
宥「えっ!? だ、ダメです! ま、まだ途中で……」
菫「一体何をしているんだ? まったくもって意味が……」
宥「あっ、だ、ダメっ……!」
菫(後ろを振り向くと、そこには上半身裸の―――)
菫「んなぁっ!?」
宥「やぁ……み、見ないでください……」
菫「す、すまない!」サッ
菫(ってどうして私が謝る!?)
宥「うぅ……弘世さんひどいです……後ろ向いといてって言ったのに……」
菫「そ、そんなことよりどうして服を脱いでるんだ? 寒いんじゃないのか?」
宥「すごく寒いです……だから、早くあたためて欲しいのに……弘世さん、服脱いでない……」
菫「あ、当たり前だろう!? 何故服を脱ぐ必要がある!?」
宥「ひっ……」
菫「っ……お、大きな声を出してすまない。ただ、その、私と松実さんの間に大きな意思の齟齬があるように思えるのだが……」
菫「あ、ああ。でも、だからと言ってどうして服を脱ぐ必要があるんだ……?」
宥「は、裸で抱き合うのが一番あったかいらしいって、私……」
菫(……あの時か。まさかそんなことを言っていたなんて……)
宥「もしかして、伝わっていたと勘違いして……」
菫「……すまない。どうやらそうらしい」
宥「……!!」
宥「ごご、ごめんなさいっ!! わわ、私ったら、一人で勝手に思い違いして……!」
宥「じょ、常識的に考えてそうですよね、裸で抱き合うなんて、そんなの、普通、あり得ないのに……」ジワァ
菫「な、泣かないでくれ! ちゃんと確認しなかった私も悪いし、そのっ……」
宥「ひぐっ……ひ、弘世さんは、何も悪くなんかっ……」
菫「まずは服を着てくれないか……?」
宥「……はい」
菫(それは今にも消え入りそうな声だった)
―――――――
宥「着直しました……」
菫「あ、ああ……」
菫(後ろを向いている最中にすすり泣く声が聞こえていた……今も顔は赤くて、涙目で……)
菫「……謝る必要はない。何も悪いことはしていないんだ」
宥「……」
菫(……落ち込んでいる姿が、こんなにも愛おしく思えるなんて……)
菫(儚げで、触れれば壊れてしまいそうな危うさがあって……)
宥「……弘世さん……?」
菫(あぁ……すごく……抱きしめたい)
菫「……松実さん。改めて、約束を守らせてもらうよ」スッ
宥「えっ?」
宥「あっ……」ギュ
宥「弘世さん……」
菫(……本当に温かい)
宥(やっぱり、すごく安心する……この気持ちも……あったかい……)
菫(……幸せな夢の中で浮いているような、そんな気分だった)
―――――――
菫「ん、んぅ……」
菫(……いつの間にか寝てしまっていたらしい)
菫「松実さん……も、寝ていたか」
宥「すぅ……すぅ……」
菫(しかし、いよいよ時間の感覚が無くなってきた……気温からして夜であるのは間違い無さそうだが……)
宥「ん、んぅ……ひろせさん……」
菫(……彼女のおかげで温かい。こんなにも近くで触れ合えて、あろうことか抱き合ってるなんて……少しはあのまじないに感謝してもいいのかもしれない)
菫(……松実、宥)
宥「すぅ……すぅ……」
菫「……どうやらこの気持ちは本物らしい」ナデナデ
菫「いつの日か、きっと……」
宥「ひろせ、さん?」
菫「……おはよう、松実さん。どうやら二人とも、いつの間にか眠ってしまっていたらしい」
菫「今日中には、いや、日付が変わってる可能性もあるが……助けは来そうにもないな」
宥「そうですね……」
宥(もうしばらくは、このままでも……)
菫「特にすることも無ければ話すことも無い。……もう一眠りするか?」
宥「いえ、大丈夫です。それより……このまま弘世さんとお話していたいです」ギュウ
菫「ま、松実さんがそう言うなら、私は構わないが……」
宥「……弘世さん。もしよろしければ……私のこと、下の名前で呼んで欲しいです」
菫「っ……」ドキ
菫「ど、どうして急にそんなこと……」
宥「弘世さん、自分では気付いてないかもしれませんが……たまに私のこと下の名前で読んでるんですよ?」
菫「なっ」
菫(ま、まったく自覚がない……)
宥「弘世さんは、咄嗟に私を呼ぶ時はいつもそうなんです」
宥「私が体育でこけそうになったり、何かに当たりそうになったときとか、いつも……」
菫「……」
宥「普段あまり話したりしないけど、何かあったときには真っ先に気付いてくれて、それでいて助けてくれて……」
宥「私、そのことがすごく嬉しくて……いつかちゃんとお礼を言いたいと思っていて……」
宥「その、弘世さん。これからはもっと私と仲良くして頂けると……嬉しいです。だから……」
菫「……断る理由なんかない。喜んでそうさせてもらうよ」
菫「……宥」
宥「!」
宥「……ありがとうございます。弘世さん」
菫「ところで、その……なんだ。私だけ下の名前で呼ぶってのも、不公平だと思わないか?」
宥「えっ?」
菫「弘世さんなんて呼ばれるのは顔見知り程度の人間か教師だけでいい。……菫にしてくれないか」
宥「い、いいんですか? 私なんかが……」
菫「その言葉の意味が分からない。宥にだから呼んで欲しいんだ」
菫「す、菫ちゃん!?」
宥「えっ……な、何かおかしいですか……?」
菫「い、いや。ちゃん付けで呼ばれたのなんて小学生以来だからな……」
宥「さん付けはよそよそしいと思って……」
菫「……よそよそしいと思うならまずは敬語をやめるべきだと思うんだが」
宥「ご、ごめんなさい……最初に話したときの印象がずっと強くて……」
菫「敬語で話されるのも後輩だけで十分だ。これからは普通に、他のみんなと接するように頼むよ」
宥「うん、わかった。……私たち、これからもっと仲良くなれそうだね。菫ちゃん」
菫「っ……出来ればそれはやめて欲しいな……普通に菫じゃダメなのか?」
宥「呼び捨てってあんまり馴れなくて……菫ちゃんじゃダメ?」
菫「……はぁ。好きにすればいい」
宥「ふふ、ありがとう」
――――――――
菫(しかし……どうしたものか……)
菫(本当に助けは来ないのか……これもあのまじないの効力だとしたら、明日になっても……)
菫(……そういえば、あの本のまじないが書いてあった同じページに解呪方法が書いてあったような気が……)
菫「……」
宥「どうしたの菫ちゃん? なんだか険しい顔してるけど……」
菫「い、いや……ここから出られる方法に少し心あたりがあってな……」
宥「そ、それって本当に?」
菫「ああ、限りなく信憑性は高いと思う……」
菫(まじないが本物なら、あれもきっと……し、しかし……!)
菫(……ためらってる場合なんかじゃない。次の瞬間にも大きな地震が来る可能性もある)
菫(これ以上宥を危険な目に遭わせるのも、怖がらせるのも絶対に……!)
菫「……はぁ。すまない、宥。少しの間だけ後ろを向いていてくれるか?」
宥「えっ? で、でも……」
菫「私から離れると寒いかもしれないが、すぐにでもここから出られるようになる。だから……」
宥「……分かった。私、菫ちゃんを信じる……」スッ
宥(うぅ……寒い……)
菫(元はと言えば全て私が引き起こしたことだ。私自身の手で、責任を持って終わらせる)
菫「……く、くそぉっ……」ヌギヌギ
宥(な、何してるの菫ちゃん……?)
菫(すぐ目の前に宥がいる中で、こんなっ……)シュル
菫「ゆ、宥……頼むから後ろは向かないでくれ……」
宥「う、うん。分かったよ……」
菫(ここまでしたんだ。もうなるようになれ……!)
菫「呪いなんてへのへのかっぱ!!」
宥「へっ……!?」
菫「呪いなんてへのへのかっぱ!! 呪いなんてへのへのかっぱ!!」
宥「す、菫ちゃん? いきなり何を……」
―――――――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
宥菫「「!!」」
菫「危ない! 伏せろ宥!!」
宥「きゃあっ……! す、すみれちゃ……ふぇえ!? は、はだっ……!?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ――――――――
宥菫「「……」」
菫(……止んだ、か……?)
菫「大丈夫か宥? かなり大きかったが、どこか打ったとか……」
宥「すごく怖かったけど、大丈夫……」
菫「……そうか。それはよかった」
宥「す、菫ちゃん……ど、どうして……上、裸なの……?」
菫「!?」
菫(し、しまっ……)
菫「こ、これは、その……!」
玄「お姉ちゃん!!」
照「二人ともだいじょう……ぶ……」
「「…………」」
恒子「えーっと……もしかしてお楽しみだったりした?」
玄「うそ……こんなの……」
照「……」
菫「ち、違う。これには訳があって……」
宥「よかったぁ……助けにきてくれたんだ……」ギュウゥ
照「菫……」ドンビキ
玄「」
菫(どうしてこうなった……)
宥「あ、あの。菫ちゃん、とりあえず、服、着た方が……」
恒子「ま、私たち3人以外はみんな外にいるから問題ないよ!」
照「どこが問題ないんですか先生……」
玄「」
宥「えっと、とりあえず、みんな外で待っててくれるかな……?」
宥「見られてると、菫ちゃん私から離れられないと思うから……」
恒子「それもそうだ。よし、無事も確認したし先に出てるよ! 二人とも!」
恒子「ほら、妹ちゃんも放心してないでテキパキ歩く!」
宥「えっと……だ、大丈夫? 菫ちゃん」
菫「……大丈夫じゃない。今後のことを考えると気を失いそうだ……」
宥「さ、三人ともいい人だから心配しなくて良いと思うけど……私も気にしないし……」
菫(どうして気にしないんだ……)
宥「と、とにかく。私後ろ向いてるから服着て?」
菫「……ああ。そうだな」
菫(これが悪ふざけの報いか……自業自得だな……)
菫(こうして一連の事件は幕を閉じた――――)
―――――――
菫(学校に行きたく無いと思ったのも、教室に入りたく無いと思ったのも初めてだな……)
菫(奇異な目で見られないことを祈りたいが……)ガラ
「「……」」ザワ…ザワ…ザワ…
菫(まあしばらくは無理そうな話だな……)
照「おはよう、菫。昨日はお楽しみだったね」
怜「おはよーさん委員長。昨日は災難やったな。いや、むしろラッキーか」
菫「……はぁ」
怜「学校中の噂になっとるで? 松実さんと委員長が体育倉庫であはーんうふーんって」
菫「くっ……福与先生の仕業か……! 断言するが宥とは何もなかったからな」
照「松実さんじゃないんだ」
菫「うっ」
怜「下の名前で呼ぶようになっとるなんて、何があったんやろうなぁ」ニヤニヤ
宥「あわわわわ……」ワイワイガヤガヤ
菫「……」アゼン
怜「松実さんゆっとったんやでー。菫ちゃんにあたためてもらったって」
菫「なっ」
照「……それもそうだけど、菫が菫ちゃんなんて呼ばれてることが一番おかしい。何かあった以外に考えられない」
怜「なあ、それもそやけど、どないしてあたためたん? やっぱりやらしーことして」
菫「もう黙れお前!!」
菫「ゆ、宥! ちょっとこい!!」
宥「へっ? あ、菫ちゃん……」
菫「話すんじゃない!! ええい道を空けろ! 退け!」
怜「はは、連れてってもうた」
照「あんなにも荒れてる菫は初めて見る」
怜「確かに。委員長のキャラやないわ」ケラケラ
怜「にしてもよかったやん。永遠の片思いに進展があって」
照「それは、まあ」
怜「照もあの後輩二人に振り回されてばっかやと婚期逃すで?」
照「うるさい」
―――――――
宥「はぁ、はぁ……ま、待って菫ちゃん、引っ張らないで……」
菫「あっ……す、すまない」
宥「歩くの早いよぉ……」
菫「しょうがないだろ……あんなにもじろじろ見られるんだから……」
菫「そ、それより! 宥、どこまで話した?」
宥「昨日の話? えっと、菫ちゃんと仲良くなって、あっためてもらって、それがすごく気持ち良かったってくらいしか……」
菫「ほ、本当にそう言ったのか!? あの人数に!?」
宥「う、うん……」
菫(どうしてそんなにも誤解を招くような言い方を……!!)
菫「……はぁ。もういい。そもそも福与先生の口止めを徹底しなかった時点で手遅れだったんだ……」
宥「で、でも、私嘘は付いてないよ? つ、付き合ってるの、って訊かれても違いますって言ってるし、キスしたの、って訊かれてもしてないって答えて……」
菫(たぶん、宥の口ぶりだとただの照れ隠しに聞こえるんだろうな……)
菫「……もう何も言う必要がないな。急に連れ出したりして悪かった。教室に戻ろう」ギュ
宥「う、うん……」
宥(手……)
菫(……私は宥のことが好きなんだ。それなら、周りには私たち二人が両思いだと思わせて、ライバルを減らすのも一興かもしれない)
菫(利用するだけ利用してやろうじゃないか)
宥「あの……菫ちゃん」
菫「……なんだ?」
菫「……当たり前だろ。今さら何を言ってるんだ」
宥「ありがとう。すごく嬉しい……」
宥(友達に、なれたんだ……菫ちゃんと、私……)
菫「宥?」
宥「ふふ、なんでもない。早く教室に戻ろう」
菫「あ、ああ」
菫(なんなんだ一体……)
菫(しかし、友達、か……)
菫(……やはり、あのまじないには感謝しないといけないな)
終わり
部長、愛宕ネキ、キャップの生徒会とか
福与先生を初めとする麻雀プロ、アナウンサーの教師陣とか
クロチャー嫉妬爆発で菫さんライバル視とか
咲、淡、和、シズの一年生組とか
ぱっと思い浮かぶだけでこんだけ書いてみたいのはある
気分が乗ったらいつか書きたいな。もちろん書いてくれてもいいし
宥菫すばらしい
何か重要な示唆を与えられた気がする
乙乙
続き気になってたんだ
乙!
Entry ⇒ 2012.10.08 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
照「じゅ、充電、充電……」白望(ダルい……)
ID:i2nxSJz30
シロのマイナーカプSSらしいぞ!
マイナーカプが苦手な人は気をつけろ!
塞「好きな人ができたァ!?」白望「うん」
白望「芋けんぴ、髪に付いてたよ」
純「ダリィ」白望「ダルい」
一応前作だけどお話のつながりはないです
豊音「遊園地だよー!」ピョンピョン
エイ「Ferris wheel! Coffee cup! Roller coaster!」
胡桃「うるさいそこ!トヨネもエイちゃんもはしゃぎすぎ!」ワクワク
塞「胡桃も人のこと言えないでしょ!」ソワソワ
白望「塞もね……」
塞「熊倉先生も遊ぶんですか!?」
トシ「あら、私だけ除け者にする気だったのかい?」
塞「い、いえ、そういうわけでは……」
塞(絶叫マシンとか乗っても大丈夫なのかなぁ……)
胡桃(ん……ちょっと待てよ)
塞(3人ずつってことは……)
エイ(シロトイッショニナレルノハフタリダケ!?)
塞(……なんとしても)
胡桃(シロと一緒のグループに!)
エイ(マケラレナイ!)
豊音(な、なんか3人が怖いよー……)
白望(だる……)
トシ「それじゃ、グーとパーでわかれましょ」
トシ「じゃあ行こうか。シロ、豊音」
白望「はい」
豊音「私ジェットコースターに乗りたいなー!」
塞「……あれ」
胡桃「……どうして」
エイ「……コウナッタ」
菫「全員揃ったか?」
照「うん」
淡「はーい!」
誠子「はい」
尭深「はい」ズズ…
誠子「3年のお二人は分かれたほうがいいんじゃ?」
菫「あ、いや、ほら、照はすぐに迷子になるから私が見てなくちゃいけないというか……その……」ゴニョゴニョ
照「私も菫と一緒がいいな」
菫「……!て、照っ!」
尭深(今日も菫照でお茶がおいしい)ズズ…
誠子「まぁ、宮永先輩がそう言うなら」
淡「スミレはしょうがないなー」
菫「じゃあ行こうか照!まずはメリーゴーランドだ!」グイグイ
照「そんなに引っ張らなくても……」
菫「あっ、すまない」
誠子「じゃあ私たちもいこうか」
淡「はーい!」
尭深(淡誠は……うーん……)ズズ…
誠子「乗りたいのはある?」
淡「ジェットコースター!」
誠子「いきなり絶叫マシンかー。尭深はいい?」
尭深「うん」
誠子「ははは、そんなに急がなくてもジェットコースターは逃げないよ」
尭深「……」
尭深(お父さん誠子と愛娘淡……すごくいい!)
ーーー
豊音「遊園地ちょーたのしいよー!」
トシ「たまには絶叫系もいいもんだね」
白望(絶叫マシン4連続……さすがにダルいなんてもんじゃない……)グッタリ
豊音「次は登って落ちるやつがいいなー!」
トシ「フリーフォールかい?いいねぇ」
白望「ちょ、ちょいタンマ……」
豊音「どうしたの?」
白望「少し疲れたから、私はあそこのベンチで休憩してる……」
豊音「えー!」
白望「二人で楽しんできて……」
トシ「しょうがないねぇ、二人で行こうか」
豊音「はーい」
トシ「休憩終わったらメールしてね」
白望「はい……」
白望「…………」
白望「まずい、眠い……」
ーーー
菫「じゃあ次はあれに乗ろう照!」
シーン
菫「……照?」
照「……あれ、菫?」
照「……」
照「菫ー。弘世菫さーん。シャープシューターすみれー」
照「……」
照「菫が迷子になった……!?」
照「あ、忘れてきてる……」
照「仕方ない。歩いて探そう」
照「菫も迷子のときは動いちゃいけないことくらいわかってるだろうから」
照「すぐに見つかるはず」
…
照「……見つからない」ゼーゼー
照「あのベンチ、人がいるけどいいよね……」
白望 ウトウト
照「……お隣失礼します」
照 ストン
白望(……んー?)
照「あ、起こしてしまいましたか?」
白望「いえ……お構いなく……」
白望(んー?この人、どこかで見たような……)
照「……何か?」
白望「いえ……」
白望「菫……?」
照「はい。私と同じ制服で、青みがかかったロングヘアの子なんですけど……迷子になっちゃったみたいなんです」
白望「見てません……」
照「そうですか……」
白望「お力になれず……」
照「あ、いえ、こちらこそ突然すみません」
胡桃「ねぇ、あれシロじゃない?」
エイ「ホントダ」
塞「トヨネと先生はいないみたいだけど……」
胡桃「シロ、なにやってんの?」
白望「あ、胡桃……疲れたから休憩してる……」
塞「はは、シロらしいね……」
塞「って、隣の人……もしかしてチャンピオン!?」
白望「ああ、どこかで見たことあると思ってたけど、それでかぁ」
塞「もう、勝ち進んだらきっと当たるから、研究しときなさいって言ったでしょ?」
白望「牌譜は見た……」
照「あの、皆さんは、菫って子見ませんでしたか?」
塞「菫って……白糸台の次鋒の?」
照「はい」
胡桃「見てないよ」
エイ フルフル
照「そうですか」
胡桃「シロ、とりあえず充電!」
白望「この往来で……?」
胡桃「充電不足なの!」
白望「しょうがないなぁ……」
胡桃「よろしい!」ポスン
胡桃「充電充電!」
照(なるほど、片方を充電器に、もう片方を電池に見立てて充電ごっこをするのか……)
照(いや、お団子の子が羨ましそうに見てるあたり、何か効果があるのかも……)
照(今度菫でやってみよう)
照(忘れないようによく観察しないと……)ジー
胡桃「わわ、ひっぱらないでよ」
塞「せっかく遊園地来てるんだから、アトラクションで遊ばないと!」
胡桃「むー」
塞「じゃ、シロ、またあとでね!」
エイ「デハマタ!」
白望「んー」
エイ「サヨナラデス」
胡桃「さよならー」
照「はい。さようなら」
照「じゃあ、私もそろそろ菫を探しにいきますね」
白望「はい、さよなら……」
白望「……」
白望 スヤスヤ
…
照「むむ、まだ見つからない……」
照「まったく、どこに行ったんだろう菫は……」
照「あ、あの人まだいる」
照「……寝てる?」
照「……これは、充電を体験するチャンス……!」
照「そろーり……、そろーり……」
照「失礼します……」ポスン
白望(何か重たい……)
白望(……前が見えない……誰かの頭?)
照(こ、これが充電……!)
照(柔らかく、暖かく、気持ちいい……これはまさに)
照(肉ベンチ!)
白望(ダルい……)
白望(って、なんで宮永さんが……?)
白望(……まあいいか、寝たふりしとこう)
…
菫「あ、あれは照!ようやく見つけたぞ!」
菫「……照……と、誰?」
菫「て、照の座椅子になっているだと!!?」
菫「なんて羨ましい!」
菫「くそう、照ー!!」ダダダッ
菫「照っ!!」
照 ビクッ
照「す、菫?」
菫「はぁ……はぁ……!て、照っ!」
照「……は?」
菫「さぁ、はやく!」
照「ちょ、ちょっと待って菫」
菫「な、なんだ、私なんて座椅子にできないとでも!?」
照「ううん、そうじゃなくて……」
照「そ、その、人目のある場所で菫で充電するのは、恥ずかしいから」
菫(そいつとはしてたのに……?き、基準がわからん……というか充電ってなんだ?)
菫「じゃあ、観覧車に乗ろう!」
照「う、うん」
白望「……なんだったんだ……」グデー
…
-観覧車-
菫「さぁ、照……きてくれ」
照「うん……」
菫「…………!」
菫(て、てるのはだが!おしりが!においが!)
菫(てる、いいにおいだよォ……)ハァハァ
照(うーん……)
照(……なんかカタいし、首に息があたってるし……)
照(……微妙)
菫(もう終わりか……)ショボン
菫「ど、どうだった、私の座り心地は?」
照「正直、さっきの人のほうが良かった」キッパリ
菫「え」
照「さっきの人、まだ寝てないかな」
菫「ま、また座りにいくのか!?」
菫「ま、まってくれ照!捨てないでー!」
照「安心して、菫のことは好きだから」
菫「えっ///」
照「でも、私にはあの座り心地が忘れられないんだ……」タタタッ
菫「そんな!て、照ー!」
白望(またか……)
照「失礼します」ポスン
照「充電、充電……」
白望(…………だるっ)
おしまい
ラブコメ期待してた人がもしもいたならすみませんでしたー
菫さんがなんかアレな役回りになってしまったことに関しては本当に申し訳ない
Entry ⇒ 2012.10.08 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)