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和「君がいない冬」
諸事情によりオール地の文
苦手な人はごめんなさい
高校生活最初の夏。
今なお、忘れようと思っても忘れることのできない、あの熱かった夏の日々。
私たちは、夢のように遠いと思っていた目標――――全国制覇を成し遂げた。
正直、その瞬間のことはよく覚えていない。
まるで自らが対局しているかのごとく、熱に浮かされたまま大将戦の行方をモニターで見守って。
優勝が決まった瞬間、全員で対局室に駆け出して。
私はおそらく、いの一番に彼女に抱きついて、泣いたのだろう。
これで来年も、清澄で麻雀ができる。
この仲間たちと、これからも一緒にいられる。
ただ難しいことは考えずに、そう思って泣いたのだろう。
そして彼女は視線の先に、ずっと目標にしていたお姉さんの姿を見つけて――
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「そういうこと言うのは……この口かーっ!」
「いは、いはいいはい! ……もう、京ちゃんってば!!」
通い慣れた部室の扉をくぐると、賑やかなじゃれあいが聞こえてきた。
宮永さんと須賀くんがまた他愛もないことで、可愛らしくいがみ合っていたのだろう。
この数年で、すっかりおなじみとなった光景だ。
「二人とも、こんにちは」
「おっす、和」
「あ、和ちゃん! ちょっと聞いてよ、京ちゃんったらね……!」
「それはひどいですね。謝ってください須賀くん」
「せめて最後まで聞いて!? 原告の証言すらロクに聞かないとかどんな魔女裁判だ!」
やれやれと大げさに頭を振った須賀くんに、宮永さんと二人、顔を見合せて笑う。
彼はちょっとげんなり表情を曇らせたと思ったら、次の瞬間には誰よりも快活に歯を光らせていた。
「原村部長は宮永さんばっかえこひいきしてていけないと思いまーす」
「ひいきなんてしてません。だいたいもう部長じゃありません」
「あれがひいきじゃなきゃなんだってんだよ……」
「女子をひいきしてるんじゃなくて、単に須賀くんに信用がおけないだけです」
「なお悪いわ!」
「……ふふ」
こんな軽口を彼と叩けるようになったのは、いつからのことだったろう。
思い返すにおそらく、竹井元部長の引退が契機だったのではないだろうか。
同じ女性とは思えないほど凛々しく、しかし女性らしい魅力に満ち溢れていた竹井先輩の後ろ姿は、今でも鮮明に思い出せる。
何事にも率先して先頭に立ち、常に清澄麻雀部を引っ張り続けてきた頼れるリーダーの引退は――それだけが原因ではなかったが――私たちの上に、一時的だが暗い影を落とした。
そんな時に声を張り上げたのが、須賀くんだった。
物怖じしない笑みと良く通る声で、竹井先輩がよく使っていたホワイトボードに大きく書き殴りながら、
『清澄、全国制覇おめでとう!!! 来年もきばって、目指せV2!!!!!』
と叫んだのだった。
染谷前……いや、元部長などは、あれで再始動したようなものだった。
竹井先輩の良き右腕であり、清澄のNO.2であり続けた先輩が、一つ殻を破った瞬間だったのかもしれない。
静かに不敵にふてぶてしい染谷部長。
そしてその隣で、須賀くんがみんなを鼓舞しサポートする。
私は形式上の副部長に据えられてこそいたが、元より誰かの上に立つなど性分ではなかった。
ゆえに。
本来自分がやるべきことを肩代わりしてくれたから――というわけではないが、あの時期須賀くんには感謝の気持ちでいっぱいだった。
そしてそれは、染谷先輩が引退し、私が部長に就任してからも何も変わらなかった。
私などは竹井先輩とも染谷先輩とも違って、厳しくするしか能のない部長だった。
ダメなものはダメとはっきり言いすぎる嫌いがあるし、お世辞にも後輩に慕われていたとは思えない。
自然、潤滑油としての須賀くんの負担はいたずらに増し、大変な迷惑をかけてしまったのだろう。
麻雀部について、部員について、須賀くんとは何度も話し合った。
あいつはちょっと落ち込んでたからメシおごっといた、とか。
逆にあいつは調子のりすぎ、もっと和がへこませてやるのも勉強だ、とか。
私では絶対に気の付かなかった部分まで、彼は実に細やかに心を配っていた。
須賀くんに不思議な人気があるのも頷ける話しだった。
彼は男女問わず、とても友人が多い。
けしてモテる、というわけではないのだが、人が集まってくるところに自然と彼がいる印象はあった。
宮永さんも、あるいはそうだったのかもしれない。
「まっ、京ちゃんの味方なんてハナからここにはいないってことだよ」
「言ったなテメ、なんなら今から部員全員招集して、俺とお前のどっちに非があるのか聞いてみるか?」
「須賀くんは天性のいじられキャラなんだから、ヘタに敵を増やすのはやめといた方がいいと思いまーす」
「お前に言われたくないよ」
「違うよ! あたしいじられキャラじゃないよ!」
「……だな。お前はどっちかというとぼっちキャ」
「むむーっ! ぼっちじゃないもん!」
「お前この学校来たばっかりの頃、俺以外に話すヤツいなかったじゃん」
「やーめーてー思い出さないようにしてるのに! 京ちゃんのいじわるー!!」
……もう何回も何回も、食傷気味になるほど見飽きた光景だというのに、いまだ胸がじくりと痛む。
二人はお付き合いしてるんですか。
っていうか、いっそ付き合っちゃったらどうなんですか。
我慢しきれず、そう声を掛けそうになったことが何度もある。
そして、その度に思いとどまってきた。
余人の踏み入ってはならない領域というものは、確かに人間と人間の間には存在する。
人の心の機敏に疎い私でも、どうにかそのくらいは理解できた。
須賀くんは分け隔てなく色んな人に笑いかけて、その度に人から色とりどりの笑顔を返されている。
しかし彼の心の中には、たった一人のために空けてある特等席があるのだ。
そのことを思うと、下手な口出しはできなかった。
「おおーーっす! 待たせたなお前らっ!!」
「いちいち声がでかいんだよなお前……」
「ご主人様に口答えするない、バカ犬!」
「まあまあ、優希ちゃんも京ちゃんも落ち着いて」
そのうち優希が、底抜けの陽気とともに部室に飛び込んできた。
二言三言、いつものやりとりを交わすと、誰からともなく自動卓の前に。
この四人が、清澄麻雀部の現三年生。
最も長きに渡って、苦楽を共にしたかけがえのない仲間。
この夏の大会をもって清澄高校麻雀部を引退した四人が、久々の全員集合を果たしたのであった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
気が付けば夕陽もすっかり沈み、窓の外は一面の闇に彩られていた。
「だああああっ!!」
「また負けたじぇぇ!!!」
須賀くんと優希、4位と3位に沈んだ二人が二人して卓に突っ伏す。
私が2位で、宮永さんがトップ。
統計的に、長期的に考えて、いつも通りの結果が出ただけだ。
それなのになぜだろう。
私はなんだか、理由もなく泣きたい気分になっていた。
「そういやさ、和はプロ入り蹴って進学すんだっけ?」
須賀くんが卓に伏していた顔を上げて、何気ない口調で言った。
多分、私の内心のどうしようもないやるせなさを察して、気の紛れるような話題を振ってくれたのだ。
本当に、頭が上がらない。
「もったいないよねー、和ちゃんの実力なら活躍間違いなしなのに」
「父が、将来のために大学だけは出ておけと……かくいう私も、今回は父の考えがよくわかりますから」
「のどちゃんの人生設計は麻雀同様、実に堅実だじぇ」
優希の揶揄するような言葉に、宮永さんが頬を掻きながら苦笑する。
彼女は全国大会で見せた圧倒的な個人成績を武器に、すでにプロ入りを決めている。
彼女の実力をもってすれば、プロ入りというリスキーな選択肢もギャンブル足り得ないだろう。
「優希ちゃんと京ちゃんは……」
「私は池田……センパイと同じ大学で麻雀続けるじぇ」
「ああ。そういやお前、あの人には何かと気ぃかけてもらってたよな」
「それじゃあ、優希と私は大学ではライバル同士、ということになりますね」
「おう、負けないじぇのどちゃん!」
「ちぇー、いいよなぁみんなは。俺一人だけ一般入試でヒーヒー言ってんのにさ」
「なんならあたしんとこ、一芸入試で受けてみるかー?」
「バカ言え、俺の麻雀は大学で続けられるレベルにゃねえよ。優希だって知ってんだろ?」
「そうじゃなくて、マネージャー力でだな」
「それこそ無理に決まってんだろーが!」
須賀くんのツッコミにつられて、三人して大笑いした。
彼は憮然としてそっぽを向いたが、ポーズだけだということはこの場の全員が承知だ。
笑いながら、私は優希の提案も案外理にかなっているのでは、などと埒もないことを考えていた。
二年前に全国制覇を果たして以降、麻雀部への入部希望者は激増した。
というより長野県全体で、清澄高校進学を目指す学生の母体数そのものが、相当増えたらしい。
そうなれば当然、レギュラーに入れない後輩も出てくる。
須賀くんが今まで一人でこなしていた雑用まがいの仕事を、分担させられるだけの人数はゆうにいた。
しかし、それでも私や染谷先輩は、須賀くんのサポートこそを欲した。
無論本人の意思は尊重した上でだ。
頭数や麻雀の実力では語れない、えも言われぬ安心感を、須賀京太郎という少年は私たちにもたらしてくれる。
私たちにとって最後のインハイの直前、私は遠慮がちに話を切り出し、頭を下げた。
すると須賀くんはやはりというべきか、笑って快諾してくれたのだった。
あまりの即答ぶりに、尋ねた私の方から何度も確認をとってしまったほどだった。
いいんですか、本当にそれで。
須賀くんが自分の練習に専念したいなら、絶対に無理強いはしませんから。
だから、もう少しよく考えてみてください。
……その上で私たちを助けてくれるのなら、すごく嬉しいですけれど。
悔しくなかったはずがない、と思う。
彼だって聖人君子ではない。
私たちが何度も全国の舞台で脚光を浴びる傍ら、須賀くんは結局三年の間一度も、県予選を突破できなかった。
忸怩たる思いが、なかったはずがないのだ。
それでも須賀くんは、最後まで私たちのサポートに徹してくれて――――その結果清澄高校は、見事に二度目の入賞、すなわち全国準優勝を成し遂げたのであった。
「あー、そっか。ってことは……」
私の益体もない思索を遮ったのは、宮永さんのどこか寂しげな声だった。
「来年からは、みんなバラバラなんだね」
沈黙。
心地よさとは程遠い、肌に突き刺ささるような三十秒。
そんな気まずい空気を払拭するのは、たいていの場合彼の仕事だった。
「……うし。せっかくだから、みんなで帰ろうぜ」
「京ちゃん?」
「みんな、進路のことでこれからも色々とごたごたするんだろ? まあ一番ごたごたすんのは、間違いなく俺だろうけどな」
須賀くんが立ち上がって、頭をガシガシ掻きながら照れたように言う。
「今日だってホント、久しぶりに集まれたんだよな。今日が12月の2日だから、いったい何日ぶりに……まぁ、それはいいや」
「犬は計算が大雑把だじぇ」
「うっせ……んでさ、今後何回、こういう機会があるかもわかんないじゃんか。だったら少しでも、つまんないことでもいいから……お、思い出とか、作っとこうぜ」
……照れたように、じゃなく、本当に照れた。
それはもう、くさい台詞だったのだからしょうがない。
聞いてるこっちまで恥ずかしくなるような。
「……いいこと言うね、京ちゃん!」
頬を赤くする代わりに目を輝かせた、宮永さんを除いて、だったけど。
いそいそと通学カバンを肩にかけた彼女は、駆け足で部室を出て行く。
「玄関で待ってるねー!」
「おい、ちょ、待てってば!」
そのすぐ後を、慌てて須賀くんが追いかけていった。
暗がりを早足で駆け抜けようとする宮永さんのことが、よほど心配なのだろう。
残されたのは私と優希の二人。
「ったく、京太郎はホント過保護だじぇ」
「別に、過保護なのは宮永さんに対してだけ、じゃないと思いますよ?」
「……わかってる」
ちょっぴり拗ねたような優希をなだめる。
そう、優希だって本当はわかっている。
須賀くんは誰に対してだって、老若男女問わず“ああ”なのだ。
あるいは、私たちがそうさせてしまったのかもしれないけれど。
部室の隅っこに飾った写真立てを眺めながら、私は口の中だけでそう呟いた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「さっむいねぇ。明日は雪降るかな?」
「あー……そりゃ勘弁だな」
「え、なんで? 京ちゃん、雪嫌いなの?」
「積もるぐらい降ったら、お前が滑りまくって学校まで辿りつけないかも、だろ」
「……えいっ」
「いってぇ! カバンで叩くなよなお前!」
数メートル先も満足に見渡せない暗がりの真っただ中。
キラキラした金髪と、軽くウェーブがかったショートブラウンが、楽しそうに嬉しそうに跳ね回っている。
私と優希は二人の少し後ろから、それを言葉少なに並んで眺めていた。
「やっぱり、さ」
優希がぼそと呟く。
消え入るような声だった。
涙を堪えているようでさえ、あった。
「京太郎には、咲ちゃんがお似合いなんだよな」
「……優希」
私にはただ、彼女の名前を呼んであげることしかできなかった。
他の言葉は、どこを探しても見つからなかった。
そんな私の心境を知ってか知らずか、優希は突然パッと顔を上げると、先を行く二人目がけて駆け出す。
「……そーれ、二人でイチャついてないで私も混ぜるじぇーい!!」
「うおっぷ!? いきなり飛びかかってくるんじゃねえよ!」
「あー優希ちゃんずるーい! 私も私もー!」
心底困った声を張り上げながらも、須賀くんが本気で二人を振り払うことはついになかった。
私はといえば、やはりその光景を遠い目で遠巻きにしていただけだ。
「どうして」
切ない。
悔しい。
やるせない。
単純な感情の羅列がのしかかるように去来して、胸のうちのどこかにしんしんと堆積した。
どうして、いったいどうして――――
「……は、あの輪に加われないんですか」
独白は誰にも受け取られることなく、冬の真っ黒な夜空に融けていった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「あ」
「よう、和」
結局雪は降ることなく、数日後の通学途中。
高校の最寄り駅で改札をくぐったところで、須賀くんとばったり出くわした。
「おはようございます、須賀くん」
「おう、おはような」
そのままどちらからともなく並んで、校舎までの道のりを二人行く。
二年前ならばいざ知らず、今の私たちが、十分やそこらで道連れの与太話に欠くことはない。
「……須賀くん?」
ふとした瞬間、会話が途切れた。
ちらと横目で彼を見やった瞬間、反射的に眉尻が吊り上がった。
「また見てましたね」
「い、いやいやいや! 誤解するなよ和! これは男にとって、心臓が拍動するのに等しい自律行為であってだなー!」
「眼球が不随意に女性の胸部に対して自動追尾を行うなんて、そんなオカルトありえません。あなたのそれは明らかに随意運動です」
これだ。
こればかりは、彼が一年生の頃から何も変わらない。
女性の……その、何というか……豊かな、胸部……もう!
それが放つ何がしかの何かは、須賀くんの眼球運動に誘蛾灯のごとき作用をもたらしてしまう、らしいのだ。
これだから私は、彼のことを一人の男の子として見る気になれないのだ。
いや、確かにこの事実は、彼が立派な男性であることの証左ではあるのだけれど。
「私は慣れているからいいですけど」
「よっ、さすがは原村大明神! 器と胸がデカい!!」
「後輩が何かしらの訴えを提起してきたら、父に相談しますからね。弁護士として」
「おいやめてくれガチ犯罪者になっちまうよオレ」
まあ、ちなみに実際の犯行現場では、
『須賀先輩さいてーい』
『セクハラなのですセクハラ!』
『慰謝料としてアイス奢ってくださーい』
『ついでにタコスも買ってこい犬』
ぐらいの糾弾で、事件はすっかり終息を見てしまうのだが。
須賀くんの人徳が時々、逆に恐ろしくなることがある。
……被害に遭いそうにない人物からの賠償請求ばかりなのは、きっと気のせいだろう。
「ああそうだ、そう言えばさ」
須賀くんは言うが早いか、いきなり鞄に手を突っ込んでまさぐりはじめた。
どうやら何かを探しているようだ。
「ん、あったあった」
差し出してきたのは、一枚のくしゃくしゃになったチラシだった。
「へえ。諏訪湖畔で、冬の花火大会ですか。夏のそれは、全国有数の大花火大会で知られてますけれど……」
折り目があちこちに付いたチラシを丁寧に伸ばすと、力強い字体が目に飛び込んできた。
華やかながらもどこか侘びしい、空に咲く花の写真がバックを飾っている。
綺麗だな、と素直にそう思った。
「もしかして、デートのお誘いですか?」
内心の動揺を辛うじて押し殺し、にっこりと笑いかける。
すると須賀くんは頬を掻いて、
「ま、そんなところかな」
「っ」
ぎゅっ、と拳を握り締めた。
悟られないように俯いて、唇を軽く噛む。
「……うして、そんな」
「あいつらも誘ってさ、三年生四人で見に行かない?」
「……」
「ほら、ちょうどこの日はガッコないじゃん。だからってぇぇぇぇ!!!!?」
思いきり向こう脛を蹴飛ばしてやってから、悶絶してうずくまる須賀くんを無視して先を急ぐ。
紛らわしいことを思わせぶりな顔で言わないでください、このおバカ。
ため息まじりの罵倒は、胸の内に閉じ込めておいた。
「まっ、つつぅぅ…………ま、待てってば和!」
と思っていたら、あっさり立ち上がって私の背中に追いついてきた。
渾身の力でサッカーボールキックを叩きこんだつもりだったのに、こういうところはさすがに男の子である。
「……どうして、急にこんなことを?」
今度は包み隠そうともせず盛大に息をつくと、一応は話に取り合ってあげる。
なんだかんだ言っても、私は須賀くんのことを信用している。
こういう時の彼に、下卑た下心は決してない。
1%たりとも、砂粒一つ分もない、とまではさすがに言わないが。
「いや、さぁ」
すると意外にも彼は言い淀んだ。
目線で促すと、心なしか頬が上気したようにも見えた。
「ああ、えっと……だな、この間。部室で言ったことなんだけど」
「部室? 麻雀をした時ですか?」
「ん」
「あの時、須賀くん何か言って……あ」
『今後何回、こういう機会があるかもわかんないじゃんか。だったら少しでも、つまんないことでもいいから……お、思い出とか、作っとこうぜ』
目を丸くして視線を向けると、今度ははっきり頬を赤らめて、須賀くんがそっぽを向いた。
「あれ、本気だったんですか?」
「ほ、本気じゃダメ?」
「ダメってことはないですけど」
「じゃ、じゃあ行こうぜ……えと……」
「思い出づくり?」
「……あらためて言われると、なんか恥ずかしいなぁ」
「ぷっ」
「えーい笑うなっ!」
「ぷっ、はは、あははははっ!」
「このやろ、笑うなっちゅーとんのに!」
「だ、だって、恥ずかしがるぐらいなら……最初から、言わなければいいのに……ふふっ!」
人目も気にせず、お腹を抱えて笑ってしまった。
こんなにも大笑いするのは何時ぶりだろう、というぐらいには笑ってしまった。
だんだんと呼吸が苦しくなって、ひいひい言いながら息を整えていると、
「だってよ、欲しいじゃんか」
絞り出すような重苦しい声。
何かを諦めたはずなのに、本当は諦めたくなかった、そんな想いの乗った声。
「俺らが、この長野で、三年間一緒だったんだって証拠、欲しいじゃんか」
すう、と背筋が冷えて、私は笑いを引っ込めた。
頬骨がわずかに震えて、歯を一度、かちりと噛み合わせる。
中で燻るものを、閉じ込めるかのように。
「……わかりました。宮永さんには私から伝えておきますね」
吐き出したのは、一分後だったのか、十秒後だったのか、刹那の後のことだったのか。
そんなこともわからないまま、くるりと須賀くんに背を向け、いつの間にか眼前でそびえていた校門をくぐる。
須賀くんが小さく吐いた湿り気のある呼気を背中で受け止めながら、私は部室の写真立てのことを思い出していた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「あ、おはよう和ちゃん」
教室のドアをくぐると、一番に気が付いた宮永さんが声をかけてくれた。
「おはようございます、宮永さん」
「和ちゃんにしては珍しく、遅刻ギリギリだったねー」
「今日は須賀くんと一緒でしたから」
「あはは。京ちゃんはどれだけ予鈴スレスレで登校できるのか、を生きがいにしてるからね」
「なんだか聞いてて切なくなる生きがいですね……」
鞄と畳んだコートを机に置いて、深い意味も重たい思惑もない雑談に耽る。
こういうのは長野に来てから身につけた所作だと、我ながらつくづくそう思う。
なにせ高校一年生までの私と来たら、思い返すだに無愛想な小娘だった。
「あとは……和ちゃんのおっぱい……かなぁ。京ちゃんの生きがい」
「ば、バカなこと言わないでください!」
そんな私を変えてくれたのが、清澄高校麻雀部だったことは言うまでもない。
人差し指を尖らせた唇に当てて、拗ねたように呟く目の前の少女。
彼女ももちろん、私にとって大事な仲間であり、大切な親友だ。
今年四月のクラス分けで初めて一緒の組になってからも、特別彼女との付き合いに何か変化があったわけではない。
ただ、のちにクラス分けの結果を聞いた須賀くんが、
『がんばれよ、和』
そう言って、私の肩を慰めるように叩いたことだけが、不思議と言えば不思議だった。
「……あ。あああああ~~!!」
その疑問は新学期開始後一週間とせずに、綺麗に解消されることとなったが。
「どどど、どうしよ和ちゃん!」
「……いったい今日は、なんの教科書を忘れたんですか?」
「数Ⅲと倫理と世界史と、あと古典のノートがががが」
「…………はぁぁ」
これだ。
こればかりはいくら親友だからといっても、いや、親友であるからこそ嘆息を禁じえない。
兎角この少女、麻雀が絡んでこない世界での日常生活スキルがポンコツにすぎる。
女の子なのだから愛嬌のうち、で済ませるにも限度というものがあるのだ。
「数Ⅲは私と教室が同じだから、見せてあげられます。倫理は優希とクラスが被ってますよね? 先生に言って、優希の隣の席を確保させてもらいなさい」
「あうあう」
「世界史は……私も須賀くんも優希も取ってませんね。前に忘れた時はどうしましたっけ? 古典のノートはルーズリーフ貸しますから、それでどうにかしてくださいね」
「うーうー」
「もしかしたら部室に、竹井先輩か染谷先輩が置いてった教科書が、億が一ぐらいの確率で埋もれているかも……」
「あわあわ」
「……少しは自分でも打開策を考えてくださいっ!」
「あいたぁっ!?」
拳・骨・一・閃。
涙目混じりの宮永さんの上目づかいがちょっとだけ『そそった』のは原村和の墓場まで持っていきたい秘密その149です。
「ううう……和ちゃぁん、なんか同じクラスになってから容赦なくなったよね?」
「気のせいです」
「いや、気のせいじゃないよ! 拳骨なんて三年生になるまで一度も貰わなかったよ!?」
ぷんぷん、と頬を膨らませて抗議する彼女は、同性の目から見てもとても可愛らしかった。
そういえばiPS細胞というので同性の間でも子供ができるらしいです。
役に立たない豆知識というやつである。
とにもかくにも、私はそんな彼女の幼い仕草にほだされて、
「そんなことはありません。部室で初めて会った頃から、わりと私は宮永さんに対して――」
気の緩みから、口を滑らせてしまった。
「……大丈夫、和ちゃん?」
数瞬の間、口を半開きにして呆けていたようだ。
気が付くと目と鼻の先で、宮永さんの心配そうな眼差しがゆらゆら揺れていた。
私は半歩だけ後ずさると、軽く首を横に振った。
「いえ、なんでもありません」
「そう……? ならいいんだけどねー」
得心いったとは言い難い表情の宮永さんが、渋々と引き下がっていく。
同時に担任の教師が教室のドアをくぐり、SHRが始まった。
受験に向けて自由登校期間も近づくこの季節、悪さをして進路を危うくすることのないように。
面白みのない注意文句で朝の挨拶を締めくくった教師の声を右から左に流しながら、私はふと思い出した。
(そういえば、須賀くんの提案について、宮永さんに伝え忘れてました)
大した問題ではない。
そう思いながら、前列二番目で教室移動の準備に取り掛かる彼女の後ろ姿をなんとなしに見やった。
大した問題ではないのだ。
彼女とは同じクラスなのだから、いくらでも話す機会がある。
事実私はこの数時間後に、食堂で出会った宮永さんに花火の件を無事伝えることができた。
だから、大した問題ではなかったのだ。
ただ、何かがしこりとなって胸の奥で引っかかった。
朝の一時の他愛もないやりとりの中で、なぜかそのことだけを容易には切り出せなかった。
そのどうでもよい事実が、無意味に私の内側で重みを増していく。
いったい何が、私の舌の滑りに制止をかけたのか?
須賀京太郎という名前か?
二人きりで登校したという事実か?
色鮮やかに空を彩る、火花の祭典へのいざないか?
どれ一つとっても、宮永さんへの告白を躊躇させるに十分な要素が見当たらない。
だから私は結局、大した問題ではないのだと自分に言い聞かせて、この問題を脳内から追い払った。
そして、まさにその時が訪れてしまうその瞬間まで、見て見ぬふりをし続けたのだった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「たーまやー、だじぇぇぃ!!!!」
「はえーよ」
「早すぎです」
「フライングゲットだじぇい!」
年の瀬を目前に控えた冬のとある一日、湖上の空を一発の快音が響いて抜けた。
諏訪湖の四方を囲む山々のうち、西側の日本アルプスの山肌はいまだ、燃えるような赤に支配され続けている。
今しがた鳴った華々しくも孤独な号砲は、本番前の試し撃ちか何かなのだろう。
「思ってたより人出が多いなぁ」
「それはもう、諏訪湖畔の花火大会といったら、夏は五十万人からの人出になるという一大イベントですよ?」
「でも、こんなクッソ寒い時期でもウン万人集まるなんて……そんなん考慮しとらんかったじぇ」
白のダッフルコートにニット帽、もこもこした耳当ての優希が、肩をすくめて呟いた。
未曾有の人混みに向かい長身を伸ばして覗きこむ須賀くんは、某メーカーが開発したライトグリーンの防寒ウェアにジーンズと簡素なレザーグローブ。
かくいう私は少女趣味全開、レースたっぷりワンピースの上から薄手のボレロを羽織って、その上にフェイクファーのコートを着込んでいる。
エトペンの絵柄が編み込まれたピンクのマフラーは、後輩たちに何度からかわれても手離さなかったお気に入りの一品だ。
三者三様の態で待ち合わせ場所に無事集合した私たち。
そう、三者三様。
三人。
「……で、宮永さんはどうしたんですか?」
「……迷子にでもなったんじゃないのか」
「……ほんっっと、手間のかかるヤツだよなぁ」
待てども待てども、待ち人来らず。
誤解のないように言っておくが、宮永さんが私たちのお誘いを断ったとかそういう事実はない。
こと須賀くんのお誘いに関して、宮永さんが丁重にお断り申し上げる光景など、私にも優希にも想像が付かない。
要するに、至極単純に、彼女は待ち合わせ場所まで、無事辿りつけていない。
と、そういうことなのだ。
「携帯に電話は……」
「とっくにしたけど出ないじぇ」
思わずため息が漏れ出て、大気をわずかに白く染める。
隣を見れば優希も、悟りを開いた仏陀の表情で堆くなりつつある天を仰いでいた。
「あいつよく、ケータイマナーモードにした挙句カバンの奥につっこむからなぁ」
「なんのための『携帯』電話なんですかっ……!」
「いや俺にキレられても」
三人で探し回るのも手だが、はぐれてますます泥沼になるのも避けたい。
そうこうぼやいているうちに、プログラム上の開始時間が刻一刻と迫ってくる。
優希が、そして私もしびれを切らしかけたその時、
「仕方ねえ、俺が探しに行ってくるよ」
須賀くんが、左手で後ろ頭を掻き毟りながら声を上げた。
「和と優希は、二人で適当に花火楽しんでな。俺はあいつを見つけてから合流するからさ」
制止する間もなく、彼は雑踏に向けて一歩踏み出す。
その横顔がどこか満足げだったのは、おそらく私の目の錯覚ではなかった、と思う。
「和ちゃ~ん、優希ちゃん、京ちゃ~~ん! ごっめ~~ん!」
その時だった。
人混みの中から、一際まばゆい輝きを放つ笑顔が飛び出してきた。
ベージュのタートルネックに同色の毛糸手袋。
下は黒のレギンスにミニスカートという、垢ぬけているのかそうでないのか、よくわからないファッションセンス。
どこか掴みどころのない彼女の魅力を際立たせるのは、やはりそのふわりときらめく無垢な笑顔なのだと、あらためてそう思わされた。
「おーまーえーなー。いくらなんでもおっそすぎんだよ、今度首輪とネームプレートでもプレゼントしてやろーか?」
「た、確かに悪いのはあたしだけど……こっちの人権もちょっとはそんちょーしてよー!」
「ケータイ常時マナーモードにしてる女子高生に現代人の資格なんてないじぇ!」
「え……ああああ!! ほ、ほんとだ! 着信13件ってなってる!」
「ぎるてぃーだな」
「ぎるてぃーすぎるじぇ」
「ごめんなさいごめんなさい許して下さい! なんでも奢りますから!」
「ん?」
「んん~? 今のを聞いたかえ、片岡さんや」
「おうおう、ばっちり聞いちまったじぇ須賀さんや」
「なんでも奢るって言ったよね?」
「な~んでもかんでも奢るって言ったじぇい。言質はとったぞ、言い逃れはできぬ!」
「ひええええええっっ!! へ、へるぷみー和ちゃん!」
「宮永さん、私はあっちのさつまいもクリームたい焼きなるものを食してみたいです」
「あうち!」
そして始まったおバカなやりとり。
涙をちょちょぎれさせながらお財布の中身を確認する宮永さんと、謎のテンション爆上げを果たしたその他二名。
私はそれらの光景を尻目に、一人後ろを向いて、密かに胸をなで下ろす。
宮永さんが無事に姿を見せた瞬間、安堵と同時に湧き上がってきた、ある感情を整理するためだった。
その感情に名前を与えることは、どうもできそうにない。
私自身『これ』が苦しみなのか悲しみなのか、怒りなのか喜びなのか、それすら把握できていなかった。
ただ、その感情がなぜ、胸の内に生じたのかだけは理解できている。
誰の助けも借りず、一人で目的地に辿りついた宮永さん――
「うし、じゃあ俺はたこ焼きに焼きそばにフランクフルトの定番フルコースで」
「ちょちょちょ、京ちゃん! 一人一品までにしといてよ!」
「な~に~? 聞こえんなぁ~?」
「おに! あくま!」
「迷子の迷子の宮永さんに言われたって痛くも痒くもありませーん」
――を目の当たりにした瞬間の、須賀くんの落胆しきった表情。
宮永さんにずっと迷子でいてほしかったと、口より雄弁に語るその表情。
その一シーンだけが、私の瞼に焼き付いて離れてくれなかった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
糸を引くように天高く昇った光線が、放物線運動の頂点で弾ける。
誰もが見上げた視線の先で、冬の夜空に大輪の花が咲き誇った。
「たーまやー!」
「たーまやー……っておい、足下見ろ見ろ! つまずくぞ!」
「京ちゃんは心配症だなー、だいじょぶだいじょぶ」
「こらこらこら待て待て待て、走るな!」
「『こら』と『待て』は一回聞けばじゅーぶんでーす」
「とか言いつつ一回たりとも聞いた試しないだろ!?」
「……ほんと、仲いいじぇ」
「あれで来年から大学生だっていうんだから、頭が痛くなります」
「あっはっは、のどちゃんは二人のお姉さんか何かか?」
「手間のかかる妹なら、今私の隣にも一人いますけどね」
「がーん!」
じゃれ合う二人と後ろを行く二人。
いつかの帰り道をなぞったかのような。
その構図のまましばらく、ぽつぽつと二組の足音が混ざっては分かたれる。
「わっ! 見た京ちゃん、今のすっごく近かったよ!?」
「わかったからはしゃぐなって……うっひょー、でけー!」
「京ちゃんだってはしゃいでるじゃん」
「うっせうっせ」
そして時折、花火の轟音が宙を裂いては消える。
いつの間にやら人気の少ない一角に迷い込んでいたようだ。
私たちの周囲にさざめく物音が、徐々に徐々にその種類を減らしていく。
「咲ちゃん……」
優希が囁いたのは、空を振り仰ぎながら何度目かもわからない花火に目を奪われている時だった。
花。
大輪の花。
空に咲いた一輪の花。
山に囲まれた湖の上で、夜空を彩った美しい花々。
誰もが空を見上げて、一夜限りの芸術作品に酔いしれていた。
私も、優希も、須賀くんも、宮永さんも。
瞬間、全員の注意が天空高くへと集る。
各々歩みは止めぬまま。
すると、必然。
「わ、わ……!?」
整備の行き届かない畔道に、足をとられる者が出る。
それが偶然、たまたま、私たちの中では――――宮永さんだった。
「っ、と」
隣を歩く須賀くんが事態に気が付き、手を伸ばすが時すでに遅し。
少女の華奢な身体は、少年の逞しい腕をかすめて、スローモーションで地面に吸い込まれ
「おわわ、っ、とと、と……セーフ! あはは、失敗失敗」
……はしなかった。
たたらを踏み、脚を必死に空転させて、元の姿勢に戻った。
何事もなかったことに私と優希はほっと一息、宮永さんは照れたように頬を掻く。
そして須賀くんは、
「………………咲?」
須賀くんに、異変が起きた。
「……京ちゃん?」
須賀くんの右腕は明らかに、『転んで地べたにお尻を着いてしまった宮永さん』に対して、差し伸べられる形で伸ばされていた。
宮永さんは、本当ならば転んでいた。
『宮永さん』なら、ここで転んでいて然るべきだった。
須賀くんの挙動がそう発話していることを、その場にいる全員が感じとった。
感じとって、しまった。
「京ちゃん……」
それが、崩壊の序曲だった。
「あ、いや、わり。ついつい、どんくさいお前のことだから、さ。転んじゃったもんだと思ったよ」
異変は刹那で終息した。
快活に人懐っこく笑う須賀くんは、すっかりいつも通りの彼だった。
「……ごめんね、京ちゃん」
しかし異変は伝播する。
伝播して、その先で増大する。
「お、おいおい。なんでお前が謝って」
「本当にごめんね、京ちゃん」
宮永さんは、綺麗に笑っていた。
笑いながら、綺麗に綺麗に泣いていた。
私は凍りついて、地に足を縛りつけられて、指先一本動かすことができなくて。
優希はうつむいて、全てを悟ったように地に向けて顔を伏せていて。
「やっぱり、あたしには無理だったんだよね」
「おい、なに言ってんだよ」
ただ須賀君だけが、食い入るように彼女の眼差しに抗っていて。
そして彼女は。
「あたしじゃ――」
「やめろ――」
「咲ちゃんのかわりになんか、なれっこないんだよね」
「やめろ、淡ッッッ!!!!!」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
高校生活最初の夏。
難しいことなど何も考えず、勝利の熱狂と明日への希望に、私が泣いた夏。
それは、彼女がまだ、私たちのすぐそばにいた夏。
大将戦を終えた彼女――――宮永咲さんは視線の先に、ずっと目標にしてきたお姉さんの姿を見つけた。
歩み寄る二人。
感動的な姉妹の再会。
余人の立ち入ることかなわぬ邂逅は、二言三言でその時を終え。
その数週間後、咲さんは東京へと転校していった。
それ以来、私は彼女に会っていない。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「……どうしてあなたは、『宮永さん』なんですか?」
気が付けば私は彼女――――宮永淡さんに向けて、そう問い掛けていた。
二年前、彼女が咲さんとほとんど入れ替わりに転校してきた時。
まさにその日に投げかけた質問と、まったく同じものだった。
「離婚した母親の旧姓が、宮永だったから、だよ。和ちゃん」
そしてその答えも、二年前と寸分違わぬものだった。
何度聞いても同じ答えだった。
私が聞いても、優希が聞いても、竹井先輩が聞いても、染谷先輩が聞いても。
須賀くんが聞いても、宮永さんは首を横に振って、それ以上のことは何も言わなかった。
「なあ、淡ちゃん」
優希が、堪えられなくなったように問いかける。
「どうして咲ちゃんは、私たちに何も言わずに、いなくなっちゃったんだ?」
あれから二年も経つというのに、その答えはいまだ闇の中に埋もれたままだ。
咲さんはまさに転校するその日まで……いや、転校してからも、私たちに何かを語ることはなかった。
私たちは何一つ聞かされていなかった。
ただ彼女のクラスの担任が、淡々と、トレーシングペーパーを転写したかのように、
『宮永咲は東京へ転校した』
と知らせただけだ。
彼女は携帯電話を持っていなかったし、正確な転居先が何処なのかも杳として知れなかった。
何より彼女はその後二年間、麻雀の公式大会に姿を現すことはなかった。
私は東京のみならず、すべての県予選の全部門の全記録を、目を皿のようにして眺め続けた。
しかしついに、「宮永咲」の名を高校麻雀界で目にすることはなかった。
時を同じくして「宮永照」の名もまた、日本の麻雀界から消えた。
プロ入りを確実視されていた高校生チャンプの失踪は、一時は凄まじい狂騒を巻き起こしたものだ。
そして私たちは、事ここにいたってようやく、事態の異常性をはっきりと認識したのであった。
咲さんは、消えてしまった。
この世にいた痕跡を残さず、跡形もなく、消えてしまったのだった。
ただ一つ、部室の写真立てに飾られた、六人の麻雀部員が笑い合う―――あの写真を除いては。
手掛かりがあるとすればそれは、目の前の少女の証言をおいて、他にはないはずだ。
優希が悲痛に訴える主張と同じものを、誰もが同じように、同じ胸の奥に秘めていた。
「……ごめんね、優希ちゃん。私には、何もわからないんだ」
「でも! 咲ちゃんと淡ちゃんは、入れ替わりでこの長野にきたんだ! そんで淡ちゃんは、咲ちゃんのお姉さんと同じ学校だったんだ! それで、それで……」
「それで、関係ないはずが、ないって? ……うん。それは、あたしもそう思うよ」
「だったら!」
「でも、ごめんね」
それでも。
昏い瞳をかすかに瞬かせた優希の希望は、即座に切って捨てられる。
「あたしにも、その理由まではわからないんだ。あたしはただ、母さんと一緒に、こっちに引っ越してきただけだから」
失望の暗さが、重く肩にのしかかる。
今さら有益な情報など得られはしないだろうと、わかっていても胃にずしんとくる。
彼女は。
宮永さんは。
やはり、何も知らないのだ、と。
「……だったら」
肩を落とす私と優希。
しかし彼は、悲痛そのものの泣き笑いを浮かべながら、なおも宮永さんに食い下がった。
「だったら、淡。どうしてお前は、そんな格好してるんだ?」
「……」
「どうして、髪を茶色く染めて、短く切って、整えてまで、どうして……」
「……」
「どうして、咲の真似なんかしてるんだよ」
ウェーブがかったショートブラウンの少女に向けて、問うた。
「やだなぁ、そんなの決まってるじゃん」
返答の代わりに、淡い微笑み。
「京ちゃんのこと、好きだったからだよ」
「……………………な?」
「転校してきたばっかの私に、最初に話しかけてくれたの、京ちゃんじゃん」
「それ、が、なんだって」
「それだけだよ。それだけで好きになっちゃうチョロい女の子も、この世にいないわけじゃないんだよ?」
「でも、京ちゃんの心の中には、いつだっていなくなったあの子が棲んでたから」
淡くて、消えてしまいそうな儚い笑み。
「だから、あの子の、咲ちゃんの、真似してみよう、って」
今にも壊れてしまいそうな、しかし。
「そしたら、京ちゃん、振り向いてくれるかな、って」
「――――っ」
微笑みかけられた須賀くんごと、何もかも壊してしまいそうな笑み。
「ごめんね……期待させちゃったなら、ごめんね。咲ちゃんに繋がる手掛かりがあるんじゃないかって、勘違いさせちゃったならごめんね。いきなり、好きだなんて言って――――ごめんね?」
少年が、がくりと膝から崩れ落ちた。
処理しきれない情報量が、彼の脳の内側と外側でパンクしかけている。
「違うんです……宮永さんが悪いんじゃないんです」
私は、気が付けば声を上げていた。
「ただ、私は悔しいんです」
気が付けば、自然に声は張り上がっていた。
「どうして、どうしてこの場に」
気が付けば、大きくかぶりを振っていた。
「どうしてこの輪の中に、咲さんがいないんですかっ!?」
気が付けば――――私もまた、泣いていた。
「なあ、淡。教えてくれ」
「俺たちは、どうすれば、咲を失わずにすんだんだ?」
「お前が、淡がいて」
「俺がいて、優希がいて、和がいて、先輩たちがいて、後輩たちもいて」
「――――咲が、いて!」
「どうして、それじゃダメだったんだ?」
「……なんでだよ?」
「なんでなんだよおおおっっ!!??」
気が付けば、その場にいる全員が泣いていた。
私は啜り泣いていた。
優希はへたりこんで嗚咽していた。
須賀くんは地に腕を叩きつけ、慟哭していた。
そして、宮永さんは。
「……残酷なことを言うようだけれど、あたしはこう思う。あたしが勝手にこう思ってる、って意味なんだけど」
はらはらと珠の様に、落涙していた。
「多分、みんなは、咲ちゃんを」
「テルに会わせちゃ、いけなかったんだよ」
「離れ離れでいることが、あの二人にとっての幸せだったんだよ」
「すべてが終わっちゃった今だから、そう言えるんだけど、ね」
終わった。
何が終わったというのか、宮永さんははっきりと言葉には出さなかった。
それでも私は、彼女の言わんとするところを、なんとなくだが理解できてしまった。
ああ、もう――――何もかも、終わってしまったことなんだ、と。
山の上の空に花が咲く。
彼女が大好きだった麻雀役の由来が、私たちのあんな近くにいる……というのは、少々こじつけに過ぎるだろうか。
どこかで彼女も、この花を見ているのだろうか。
仕様もないことを考えてから、私は小さくかぶりを振った。
咲さんが、私たちの隣にいない冬。
もう戻らない夏に向かって、小さな祈りを捧げながら。
この冬という現実を、私は強く強く噛みしめた。
完
咲さんがどうなったのかは多分あなたの想像通りです
それじゃ、お付き合いいただきありがとうございました
面白かったよー
Entry ⇒ 2012.10.07 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (3) | Trackbacks (0)
咏「もっと甘えて良いんだぜ?」
えり「♪」ギュー
咏「えりちゃん?」
えり「はーぁい♪」スリスリ
咏(…わかんねー…)
えり「なんですかー?」ゴロゴロ
咏「そのー…」
えり「三尋木プロー?」
咏「な、なに?」
えり「ふふ……だーいすき♪」ニコッ
咏「……」キュンッ
えり「♪」ギュー
咏(…えーっと、なんでこうなったんだっけ…?)
――――――
咏「えーりちゃん!」ギュ
えり「わっ……み、三尋木プロ」
咏「今帰り?一緒に帰ろ?」
えり「ええ、いいですよ」
咏「よっしゃー」ギュー
えり「…三尋木プロ?そんなにくっつかれると歩きにくいんですが…」
咏「知らんしー」ギュゥー
えり「ですが外では…」
咏「別によくねー?」
えり「…………わかりましたよ」
咏「へへっ♪」
咏(変わったことっつーと、こうしてえりちゃんに堂々とくっつけることとか)
えり「…帰りましょうか」
咏「うんっ」
咏(前より一緒にいる時間が少し増えた。くらい)
咏(…っつーか…)
えり「…………」テクテク
咏「…………」テクテク
咏(……えりちゃんは、変わらない。付き合う前と)
咏(クールで、堅くて、真面目。…でもさ…わかんねーけど…)
咏(甘えたり、甘えられたり…いや、えりちゃんが甘えてるトコなんて想像つかないけど)
咏(なんか…自分だけ変わっちゃった、みたいな。ホントに、よくわかんねーけど)
えり「…どうしました?」
咏「え、な、何が?」
えり「いや、なんだか元気がないような……」
えり「そうですか…?」
咏「そーそ。いっつも元気だぜ?」
えり「…なら、良いんですけど」
咏(えりちゃんは変わらない。こういうとこだけ、鋭いところも)
咏(……変なとこで、ニブいのも)
えり「はい?」
咏「今日ウチ来ない?」
えり「また、晩ごはん作らせる気ですか?」
咏「うは、バレたか」
えり「別に構いませんよ。でも、明日は早いので……」
咏「泊まっていきなよ」
えり「………は」
咏(そんでさ、たしかめさせてよ)
咏(…とか。言えないけどねぃ)
えり「………」
咏(……ああ。無理かね、こりゃあ。呆然としちゃってさ)
えり「…………」ウツムキ
咏「…あ、あのさ、無理なら……」
えり「……お邪魔、します」
えり「三尋木プロが大丈夫であれば、泊まっても良いでしょうか」
咏「……もっちろん。誘った側が断るわけねーっしょ。知らんけど」
えり「それもそうですね」
咏「晩ごはんは豪勢に行こうぜ~」
えり「何を作らせる気です?」
咏「知らんし~」
咏「いんや、必要なもんは買ってこうぜ」
えり「え?」
咏「そんで、家に置いてっちゃっていいから。そしたらさ、いつでもえりちゃんは家に泊まれるじゃん?」
えり「…………」
咏「早く行こ?いい加減店閉まっちゃうからねぃ」
えり「……はい……」
咏(初めての、お泊まり。とか…!うわ、うわわ、やべーッ!)
咏(晩ごはん作りに来てくれたことはあったけど、お泊まり!
咏(一緒の家で、ご飯して、お風呂入って、お喋りして…!その後は……)
咏(…べ、別にさ、やましい気持ちは…ゼロではないけど…もうコイビトになって一ヶ月だぜ?)
咏(キス、くらいしても…良いよねぃ?)
咏「たっだいまーっと」
えり「お邪魔します」
咏「どーぞどーぞ」
えり「前に晩ごはん作りに来て以来ですね…10日くらい?」
咏「めちゃめちゃ美味かったぜー」
えり「ありがとうございます」
咏「今日も期待してるかんな~?」
えり「ご期待に答えられれば良いですが…」
咏「えりちゃんのご飯はなんでも美味いに決まってる!」
えり「…もう。ハードル上げすぎですよ」
咏「知らんし~」
えり「えっと…お砂糖お砂糖…」パタパタ
咏(前も思ったけどさ、いいな~こーゆーの!)
咏(仕事で疲れてたのも、えりちゃんが一生懸命ご飯作ってくれるのを見てると、癒されるわ~)ホクホク
咏(しかもそれが!コイビトのための料理!ってね!コイビトってね!!)パタパタ
えり「………」ジュー
咏(…………)
えり「はい?」ジュージュー
咏「なんか、手伝えることとか…あるかい?」
えり「大丈夫ですよ。三尋木プロは座っていてください」
咏「でも…」
えり「お疲れでしょう?私は大丈夫ですから」
咏「…そっか」
咏(…えりちゃんは、いつもどおり。クールで、堅くて、真面目)
咏(思い上がりすぎてた…かねぃ……一人で舞い上がってさ)
咏(えりちゃんはどうなのさ。嫌ではないみたいだけど)
咏(えりちゃんは、楽しいの?)
咏「待ってましたぁ~っ!」
えり「そんなにお腹空いていたんですか?」
咏「もーめっちゃめちゃ減った!はーやーくー」
えり「はいはい」クス
咏「うひょーうまそー!」
えり「お口にあえば、良いですけど…」
咏「いっただっきまー!」
咏(めちゃくちゃ幸せだ。だってえりちゃんのご飯だから。目の前にいるのがえりちゃんだから)
えり「ありがとうございます」ニコ
咏(えりちゃんの笑顔を見るのも好きだ)
えり「…ん、塩加減足りなかったかな…」
咏(えりちゃんは、どうなのさ。人をこんだけ幸せにしておいて、自分はどうなのさ)
咏「ちょーどいいぜ~塩加減も愛情も絶妙!」モグモグ
えり「そうですか?」
咏「あったり前~!」
えり「…良かった」ホッ
咏(…こっちのことばっかりで、自分のしてほしいことなんも言わないでやんの)
咏「ごちっ!」
えり「お粗末様でした」
ピピピッ
咏「お、ちょーど風呂わいた。えりちゃん、先に入ってきなよ」
えり「お風呂…私が先に?」
咏「えりちゃんはお客様なんだから遠慮なし~」
えり「でも、三尋木プロ…」
咏「ごちゃごちゃ言うなら一緒に入ろっか~?」ニヤ
えり「!」
咏「どーよ、一緒にお風呂。んん?」
えり「…………じゃあ、お先に…」
咏「そそ、遠慮しない遠慮しない。かったいんだから~」
咏「おー」フリフリ
咏「………」
咏(…ちょーっち期待したんだけどねぃ~)
咏(そーうまくはいかないよな~知らんけど)
咏(…………)
咏(……お、おお!?)
咏(今えりちゃんウチの風呂だよな!?霰もない姿でウチの…)
咏(うわー、うわ、うわー…なんだ、ドキドキしてきた!)
咏(…あわよくば…あわよくば……)
咏(…あわ…よく…ば………)
咏(…………)
咏(何考えてんだー!?)ガーン
咏(てかさ、お泊まりってアレじゃね、バイオレンス感アリアリじゃね!?)
咏(うっひょ、やっべー!マジやっべー!!)
咏(…だから何考えてんだぁー!?)ジタジタ
咏(………疲れた。一人で何やってんだか)
えり「三尋木プローあがりましたよー」
咏「あ、ああ!わかっ………」
えり「良いお湯でした」ホカホカ
咏「…うは。えりちゃんのパジャマ、初めて見た」ジー
えり「あ、ああ……えと……」
咏「………」ジー
えり「…変、ですか?」
咏「いや、かわいい」
えり「…へ」
咏「いっつもカッチリした服しか着ないじゃん?なんか新鮮だわー可愛い!」
咏(あれ?)
えり「…三尋木プロも、お風呂入ってきては?」
咏「お、おう!入ってくる!」パタパタ
咏(…地雷踏んだかねぃ…?わっかんねー)
えり「…………」
――――――
咏(やっべ、長風呂しすぎたかねぃ?)
咏(…さっきまでえりちゃんの入ってたお風呂って考えるとさぁ~…)
咏(…いやいや、やめやめ)ブンブン
咏「えりちゃーん、おまたせー」ガチャ
えり「!」ピク
咏「さーてと、なんか半端な時間だよねぃ~どうする?」
えり「…………」
咏「あ、ノド乾いてね?なんか飲むかい?」スッ
えり「あ……」
キュ
咏「…ほ?」
咏「ど、どしたん?えりちゃん」
えり「あの…飲み物は、大丈夫なので…」
咏「そ、そう?」
えり「大丈夫だから…そばにいて?」
咏「そ、そ…………えっ」
えり「……隣に、いて?」ジッ
咏「」ドキュン
咏(な、え、な、な…なにって?)
咏(えりちゃんが?え?え?わかんねー)ボーゼン
えり「…だめですか?」
咏「」
咏「だ、だめなわけないぜ!?知らんけど!知らんけど!!」
えり「…ありがとうございます」ニコ
咏「…え、えっとさ、どうしたん。えりちゃん」
えり「?」キョト
咏「な、なんか、いつもと違うような…」
えり「………」ジー
咏「…な、なに?」
咏「うん?」
えり「一つだけお願いして、いいですか?」
咏「い、いいよ?全然、なんでもどんとこい!」
えり「…ぎゅーってしても、いいですか?」
咏「どんとこ………」
咏「…………」
咏「………ごめん、もう一回言って」
えり「ぎゅーってしても、いいですか?」
咏「」キュンッ
咏「い、いいよ…」ドキドキ
えり「……」ギュ
咏(あんなの誰も断れねーよ…)ドキドキドキ
えり「………」ギュー
咏「…え、えりちゃん?」
えり「……ふふ……♪」ニコッ
咏「」
咏(かわえええええ!!何!?何これ!?)
咏(つーか!腕に!なんか!柔らかい何か!何これ!?)
えり「三尋木プロ?」
咏「なにっ!?」
えり「…もっとぎゅーってしていい?」
咏「」
咏(大歓迎、喜んで!!)コクコク
咏(…おもちの感触が…)ドキドキ
えり「三尋木ぷろー…♪」スリスリ
咏「」
咏(うひゃーかわえーかわえー!)キュンキュン
咏(嬉しそうにさーニコニコしててさー頬擦りなんてしちゃってさー)
咏(普段のえりちゃんからは想像もつかないよねぃ~♪)
咏(………)
咏(……………)
咏(……いや、誰よ。この人)
咏(だってさ、あのえりちゃんだぜ?)
咏(クールで、堅くて、生真面目なえりちゃんだぜ?)
咏(そのえりちゃんがさ、えりちゃんが……)
咏(だーいすきって……)
えり「ふふ…言っちゃった♪」ギュー
咏(だーいすきって…………)
咏(大好きだよこのやろぉぉぉ!!)
咏(あああ腕に抱きつかれてなけりゃこっちから抱きしめるのに!!)
咏(ぎゅーってしてナデナデしてスリスリしてぇぇぇぇ!!)
咏(…いやいや、何おんなじこと繰り返してんだか)
咏「えりちゃん。どうしたん、急に」
えり「?」
咏「い、いやその…いつもと違うなーっつーか…」
えり「あ……」
咏「い、いやその、嫌って訳じゃねーけどさ、むしろ嬉しいんだけどさ…」
えり「…本当に?」
咏「ホントホント!!」コクコク
えり「…よかったぁ…」ボソッ
咏「えりちゃん…?」
えり「あの、三尋木プロ?」
咏「う、うん!なに?」
咏「…!?」
えり「……」ギュ
咏「う、う、う……」パクパク
えり「…だめ、ですか?」シュン
咏「いい!凄い良い!!咏さん!」
えり「!」パァッ
えり「ふふ…咏さーん…♪」スリスリ
咏(なんかもう…なんでもいっかぁ~♪)
咏「…ね、ねぃえりちゃん?」
えり「?」
咏「明日…早いんじゃなかったっけ?」
えり「あ……」
咏「そろそろ寝よ?」
えり「………」シュン
咏(かわいい)
えり「…………」ジッ
咏(うっ)ドキッ
えり「…………」シュン
咏「い、い、一緒に布団入る?」
えり「!」
えり「…狭くないですか?」
咏「う、うん…あったかいからむしろ…良い」
えり「私も、心地良いです…」
咏(一緒の…布団。一緒の……)ドキドキ
咏(これ…いいんだよな?その……いいんだよな!?)
咏(いくぞ…言っちゃうよ!?)
咏「えりt」
えり「咏さん」
咏「ほい!?」
えり「…おやすみなさい」ニコッ
咏「お、お、おう!おやすみ!」
咏(……ん?)
咏「…え、えりちゃーん?」コソッ
えり「……すぅ……」zzZ
咏(早っ!?)
咏(ってか、えー!え、えぇー!?)
咏(あれだけ期待させて、…えぇー!?)
えり「…んん……すぅ……」zzZ
咏(…………)
咏(…なんだったんだろうなぁ…)ハァ
咏「……ふぁ~あ」
咏(……寝よ。明日また、聞いてみよう)
翌朝
えり「……ん……」
えり「…………」
えり(あ…そうだ、昨日の夜は三尋木プロの家に泊まって……)
咏「ふわ~……ぁ」
えり「」
咏「ん~……あ、おはよ~えりちゃーん…」
えり「………あ、……え……?」
咏「あーよくねたー」ノビー
えり「……な……なんで……」
咏「ほ?」
えり「どうして私、三尋木プロと同じ布団で……?」
咏「…え?」
えり「わ、私が!?夕べは……あれ……?」
咏「えりちゃん?」
えり「ええと……お風呂入って……それから……」ブツブツ
咏「どうしたん?」
えり「…たしか…、………」ハッ
えり「……まさか」ボソッ…
咏「?」
咏「あ、そうだ。ねー昨日のさー」
えり「三尋木プロ」
咏「お?」
咏「あ、ああ…りょーかい」
えり「では」スッ
咏「…………」
えり「…あ」
咏「?」
えり「朝ごはん、作りましょうか?」
咏「…おっ、いいねぃ」
えり「じゃあ、パンと卵焼きで良いですかね」
咏「卵焼きはだし巻きでー」
えり「はいはい」
咏「よっしゃ~」
咏「…………」
咏(……あれ?もしかして今はぐらかされた?)
えり「では、行ってきます」
咏「いてら~」フリフリ
パタン
咏「…………」
咏「……う~ん?」
咏(絶対なんかオカシイよなぁ?)
咏(起きて目ぇあったらスゲー驚いてたし…そのあともブツブツ言ってたし…)
咏(聞こうと思ったら遮られたし……でも、ホントにワケわかんねーみたいな顔……)
咏(……もしかして…マジで覚えてなかったり?)
咏(…いやいや、まっさかーそんな、ねぃ?)
咏(………)
咏「…わっかんねー…」
えり「……はぁ」
ピリリッ
えり「?……メール……あ」
えり(…三尋木プロから…)
『えりちゃん忘れ物したっしょ~?とりあえず仕事終わり次第ウチに来るべし』
えり(…忘れ物?)
えり(…そんなのしたっけ…?)
えり「…………」
えり(取りに行くだけ…一瞬会うだけなら…そのくらいなら…大丈夫)グッ
ピッピッ
『今から向かいます』
ピンポーン
咏「へいへーい」ガチャ
えり「こんばんは、三尋木プロ」
咏「おっす、えりちゃーん」
えり「ええと、すみません私…忘れ物なんて…」
咏「んーんー、とりあえず上がって上がって」
えり「いえ、ここで、その…」
咏「いーからいーから~」グイグイ
えり「ちょ、ちょっと…!」
えり(さっそく予定崩れる…いつものことか…)タメイキ
咏(よし、予定通り!)
咏「ん~?」
えり「私、忘れ物に心当たりがなくて…何を忘れて行きましたか?」
咏「忘れ物っつーか…」
えり「はぁ」
咏「…晩ごはん?」
えり「…は」
咏「昨日えりちゃんの寝間着とかのついでに材料スゲー買ったじゃん?」
えり「そういえば…」
咏「正直材料だけあってもねぃ~料理作れんし」
えり「…それで、結局…?」
咏「晩ごはん作ってくの忘れてんよ~」ヒラヒラ
えり「……はぁ……」タメイキ
えり「三尋木プロ…」
咏「ん?」
えり「急に連絡が入ったと思えば…ソレですか…!」
咏「うん」
えり「………」アタマカカエ
えり(こっちは、正直気まずいのに…人の気も知らないで…!)
咏「…だってさ…」
えり「はい?」
咏「…えりちゃんに会いたかったんだよねぃ」
咏「えりちゃんに会って、えりちゃんのご飯食べたかったんだよ」
えり「………」
咏(…………)
えり「…晩ごはん…」
咏「!」
えり「何が、良いですか…?」
咏「いいの?」
えり「…………」コクッ
咏「よっしゃあ!大好きだぜえりちゃーん!」ギュ
えり「!」
咏「…へへ。今日はくっついてなかったからねぃ~」ギュー
えり「み、………っ」
咏「あれ?えりちゃんもしかして照れてる?」
えり「!」
えり「そんな、ことは…」
咏「照れんなよー」ギュー
えり「で、ですから…」
咏「かわいいねぃ、えりちゃんは」
えり「……は」
えり「…………」
咏「んー」ギュー
えり「……~~っ」
咏「…えりちゃん?」
えり「………」
咏「おーい、えりちゃ…」
キュ…
咏「お?」
咏(…抱きしめてたら腕回してくれた…)
えり「……♪」ギュー
咏(……わお)
咏「えり…ちゃん?」
えり「咏さん♪」ニコッ
咏(呼び方……!)
えり「咏さん咏さん」
咏「…なぁに?」
えり「あったかいですね」ニコッ
えり「落ち着く…」ギュー
咏「」キュンッ
咏(おぅふ、間違いねぇ…夕べのえりちゃんだ…)ドキドキ
咏(………)ドキドキ
咏(…さーて)
咏「詳しく聞かせてもらおうかぁ?」
えり「………!」
咏「すっとぼけんじゃないぜ~?なぁんか隠してるっしょ」
えり「………」
咏「さぁさ、言っちまいな?」
えり「……し」
咏「お?」
えり「知らんしー……」
えり「……です」プイ
咏「」
咏(やばい、なんだ今のカウンターパンチ)キュンキュン
えり「………」
咏「言わないと、アレだよ?えーっと…」
えり「…?」
咏「えっと、えーっと……ち、ちゅーするよ!?」
えり「っ!」
咏「ほ、ほら、どうなのさ!」
咏(うわー勢いでなーに言ってんだ…でも)
咏「ほら、しちゃうよ~ちゅー」ジリジリ…
えり「…ぁ…あ…っ…」
咏「正直に言ったら許したげるぜ?」
えり「わ……わかりました……」
咏「よぅし」
咏(…なんだこの複雑な気分…)
咏「おぅ、はけはけ」
えり「えっと、その前に。…お腹、空いてません?」
咏「……そういやそーだねぃ」
えり「ご飯食べてからにしましょう?」ニコッ
咏「ん!」
えり「何が食べたいですか?」
咏「んーと、シチューの素買わなかったっけ?シチュー食べたい」
えり「はーい♪」パタパタ
咏「…ご機嫌だねぃ」
えり「♪」コトコト
咏(うーむ……わっかんねー…)
えり「咏さん?」
咏「お、おう!?」
えり「そろそろできますから、お手伝いして貰っても良いですか?」
咏「なになに?」
えり「お皿出して、並べててください」
咏「おっけぃ!」
咏(えりちゃん……だよな?間違いなく…)カチャカチャ
咏(…ま、考えても仕方ない。後でジックリ聞くかねぃ…)カタン
えり「さ、どうぞ♪」
咏「うひょーっ!うまそーっ!」
咏(楽しんだモン勝ちじゃね~?知らんけど!)
咏「いっただっきまー!」
えり「………」ドキドキ
咏「うん、美味い!美味いよえりちゃん、天才!」
えり「…よかった」ニコッ
咏「食べ終わったし?」
えり「……」
咏「さぁて、聞かせてもらおっか~?」
えり「…わかりました…」
咏「まず、」
えり「あ、あの!…は、話す前に、その…」モジモジ
咏「?」
えり「…お隣…いいですか…?」
咏「隣?」
えり「…咏さんの隣に…座っても…」カァァ
咏「………」キューン
咏「…へいカモン」ポフポフ
えり「!」
えり「…♪」イソイソ
えり「ええ。正真正銘、針生えりです」
咏「ん~…?」
えり「まぁ、単刀直入に言ってしまうなら…」
えり「別人格とでも思っていただければ」
咏「…………」
咏(…予想は、してたけど…ねぃ)
咏「……マジで?」
えり「後日でよろしければ、医師の診断書を見ますか?」
咏「…いんや、いい。信じる」
えり「!」スッ
咏(別人格って言うには、えりちゃんはえりちゃんって感じだし…)
えり「…………」ニギ…
咏(えりちゃんって言うには、あまりに駆け離れている)
えり「………♪」キュ
咏「…何してるん?」
えり「咏さんに手のマッサージを」キュッキュッ
咏「…………」
えり「指のここの部分をつまんでグリグリすると良いんですよ?」グリグリ
咏「~~~…!」
咏(これが…これがコイビト同士のイチャイチャ…!)シアワセカミシメ
えり「もう少し細かく言いますと……あ、次は人差し指やりますね」
咏「う、うん…」
えり「私って…ええと。普段の私、今の私じゃない私…“表”とでも言いましょうか」キュッキュッ
えり「表の私はストレスを溜め込むタイプ、というのはなんとなく知っているでしょう?」グリグリ…
咏「そ、そうだねぃ」
えり「そのストレスって、大抵は何かをやりたいのに抑え込んでるから生まれてるんです。私の場合は、ですが…」
咏「……」
えり「それで生まれたのが、今の私…そうですね…“裏”の針生えりでしょうか」グリグリ
えり「表がどうしてもやりたいのに、どうしてもできない。そんなジレンマの解消のためだけに出てくるのが私…裏です」
咏「………」
えり「次は小指…薬指はダメなんです。…何か質問はありますか?」キュッキュッ
咏「えーっと…何から聞けば良いのやら」
えり「無理もないです」グリグリ
咏(つーかマッサージで若干集中して聞けねぇっつの…)
えり「ええ。…あ、ご心配なく。モラルや常識は守れますから」グリグリ
咏「あ、ああ…」
えり「…と、言いますか。“針生えり”が常識はずれなことをしたがるって想像、できます?」
咏「…無理だねぃ」
えり「でしょう?基本的には理不尽なことや…自分にとって不慣れなこと、そのくらいです」
咏「…じゃ、じゃあ、さ……」ドキドキ
咏「お、おう…。昨日とか、さっきも…その、裏えりちゃんのやってたことって…」
えり「表…いや。針生えりがやりたいこと、です。今しているマッサージを含めて」キュッキュッ
咏「………!」ドキドキ
咏「じゃ、じゃあ、言ってることも……」
えり「私が、どうしても言いたいこと……」
えり『ふふ……だーいすき♪』ニコッ
咏(きたあああああああ!!!)キラキラキラ
咏「あ、あとさ…」
えり「ええ」
咏「ストレスって言ってたけど…ストレス発散とか、えりちゃんは無いの?」
えり「ありますよ?」
咏「でも、今裏がいるっつーことは発散できてなくね?」
えり「…針生えりのストレス発散は…仕事ですから」
咏「仕事……?でも仕事なら…」
えり「…咏さんとの仕事は…ストレスが溜まる、とは言いませんが…」
えり「かなりのジレンマがおきますから」
咏「…なるほど。素直に言ってくれりゃいいのに」
咏「不慣れ?」
えり「ええ。経験は人並み以下、限りなく0に近いかと」
咏「えりちゃんモテそうなのにねぃ」
えり「…まぁ、昔色々ありまして」
咏「ふーん?そういえばさ、裏えりちゃんが出てきたのって、初めてじゃないよねぃ?」
えり「ええ。ここ最近は全くなかったですが…」
咏「大体どのくらい?」
えり「ストレスの種類で言えば、4個目くらいですね。回数もあまり」
えり「高校…でしょうか」
咏「……結構早いねぃ」
えり「……昔のことです」
咏「もしかして、さっきの恋愛がどーちゃらの、昔の色々?」
えり「……よくわかりましたね」
咏「い、いや、なんとなくだけど」
えり「さ、他に質問は?」
咏「…あ、大事なこと聞くの忘れた」
えり「どうぞ」
えり「ああ、簡単です。まず、戻るにはですが…」
咏「ま、なんとなく察しはついてるけどねぃ」
えり「ええ。寝れば戻ります」
咏「単純だねぃ」
えり「そして裏になる方法ですが、今回の場合…」
咏「………」ゴクリ
えり「“恥ずかしい”って感情が限界を突破したら、ですね」
咏「…恥ずかしい?」
えり「ええ」
えり「…あ、有り体に言えば」
咏「全然そんな風に見えなかったんだけど」
えり「…………表情に、出ないんですよ」
咏「出ない?」
えり「…いえ、出なくなった…が正しいでしょうか」
咏「…それも、昔の色々?」
えり「…ええ」
咏「…ん?昨日ってさ、えりちゃんはいつ裏になったん?」
えり「たしか…咏さんがお風呂に入っているとき、だったかと」
えり「…………」ウツムキ
咏「だってさ、こっちは風呂入ってたわけだし。えりちゃんに何も…」
えり「…お風呂入る前に…何て言っていたか覚えていますか?」
咏「入る前?えーっとたしか、えりちゃんが出てきてー…」
咏『いや、かわいい』
えり『…へ』
咏『いっつもカッチリした服しか着ないじゃん?なんか新鮮だわー可愛い!』
咏「…おお」
えり「…思い出しました?」
えり「…………」ウツムキ
咏「そういえばさっきも、かわいいって言ったら裏になったねぃ~」ニヤニヤ
えり「…そりゃ、恥ずかしいですよ…」
咏「なーるほど。恥ずかしいと俯くんだねぃ~?」
えり「あ……」カァ
咏「…裏えりちゃんは表えりちゃんより表情が豊かだねぃ」
えり「そ、そうかもしれません」
咏「ちょっと赤くなったよ、顔」
えり「えっ!?」ペタ
えり「咏さんのいじわる…」
咏「」キューン
咏「…そだよ~咏さんはいじわるだぜ~?」ナデナデ
えり「うぅ……」
咏「お、抵抗しないんだ?」
えり「…わ、私は…裏ですから…」
咏「嬉しいんだ?」
えり「……あぅ……」カァァ
咏「ほら、また赤くなったー♪」
えり「あ、あんまりいじめないでください!」
咏「知らんしー♪」
咏「あ、そだそだ。もう一個」
えり「どうぞ」
咏「裏の記憶は、表には引き継がれないの?」
えり「基本的にはそうです」
咏「基本的には?」
えり「ええ」
咏「……そんだけ?」
えり「ええ、それだけ」
咏「表えりちゃんは裏えりちゃんのこと…」
えり「知っていますよ、もちろん」
咏「そ、そか…」
えり「…以上ですか?」
咏「ん。だいたいわかった。多分」
咏「うん」
えり「……ぁ……」
咏「ん?」
えり「…………」チラッ
咏「?」
えり「…………」メソラシ
咏「えりちゃん?」
えり「…あの…」
咏「うん」
えり「わ、我が侭…言っちゃうと…」
えり「……帰りたく、ないなぁ…って…」
咏「!」
咏「ぜ、ぜんぜん!」ブンブン
えり「じ、じゃあ…!」
咏「また泊まってってよ!」
えり「ありがとうございます…」ギュ
咏「お…」ドキ
えり「♪」ギュー
咏「…え、えりちゃん、さ。腕に抱きつくの、好きだよねぃ」
えり「…いつも、咏さんがするから…その。羨ましくて…」
えり「ぎゅーってされるのも好きだけど…するのも、好きになりました」ニコッ
咏(かわいい)
えり「はい?」
咏「…こっちからもしたいんだけど…ぎゅーって」
えり「!」
咏「ちょっと離してくんないかねぃ?」
えり「あ、は、はいっ!」ワタワタ
咏「んー」ギュー
えり「ぅ……」
咏「へへ…正面からぎゅーってするのも良いもんだぜ?」カオウズメ
咏(昨日までは戸惑ってたけど…この人も“えりちゃん”なら話は早い)
咏(…えりちゃんとくっついていられるなら、なんでも良いよねぃ~♪)
咏「えりちゃん?正面からぎゅーってされるのは嫌かい?」
えり「い、いえ!そうじゃなくて…その」
咏「?」
えり「今日は…まだシャワー浴びてなかったなぁ…って…」
咏「知らんし。気にすることないぜー」
えり「い、いえ!気になります!」
咏(…えりたそ~)
えり「で、ですから…咏さん、先にお風呂に…」
咏「だーかーら、えりちゃんが先に入れっつーの!」
咏「じゃー一緒に入るかい?」
えり「え……」
咏「ほれ。一緒のお風呂。どうよ」
えり「…………」
えり「…じゃあ、ごめんなさい。先にお湯、貰いますね」
咏「そそ。昨日も言ったじゃんか、遠慮なんかいらんし~」
咏「………」
咏(裏えりちゃんは、表えりちゃんの本当にやりたいことをやる存在…か)
咏(さっきの、ちゅーのときもだったけど…)
咏(えりちゃんは、キスとか一緒に風呂入るのが…本気でイヤなのか!?)ガーン
咏(あんなにくっついて…だーいすきって…)ニヤニヤ
咏(…なのに…風呂やキスは嫌?)
咏(…………)
咏(ま、いっか)
咏(それで幸せなら、こっちも幸………)
咏(……ん?)
咏(なーんか引っかかる。なんだっけ…モヤモヤする)
咏(…ん~?忘れたっつーことは…わりとどうでも良いことなのかねぃ?)
咏(じゃ、いっか~えりちゃん待ち~…)
咏「お互い、風呂も済ませて、あと寝るだけって感じになったけど~」
えり「そうですね…」
咏「ちなみに明日の予定は?」
えり「朝から実況…って咏さんも一緒に実況ですよ」
咏「うは、マジで?」
えり「はい。一緒のお仕事ですよ」
咏「じゃー一緒に会場まで行けるねぃ♪」
えり「そうですね…」
咏「…ちなみに何時集合?」
えり「たしか…10時前くらいだったかと」
咏「10時か…じゃー朝はそんなに急がなくて良いねぃ~」
咏「いやぁ~…ね?」ドンッ
えり「…お…お酒…」
咏「大人二人いたらそうなるっしょ~」
えり「は、はぁ…」
咏「どーよどーよ、ちょっとくらいさ!集合もそんなに早くないし~」
えり「…お酒…」
咏「ほらほら、呑も呑も!」カチャカチャ
えり「……じゃあ、少しだけ……」
えり「乾杯」
チンッ
咏「んぐっ…んぐっ…」グビグビ
えり「……コクッ……」チミッ
咏「ぷはーっ!」
えり「い、一気……」
咏「ん?」
えり「ペース早すぎませんか?」
咏「ダイジョブダイジョブ。全っ然酔わないから」
えり「え」
咏「ザルまではいかないけどねぃ。どんだけ呑んでもちょーっとフワフワするくらい」トクトク…
えり「…へぇ…」
えり「呑みましたよ?」
咏「一口くらい?」
えり「…まぁ」
咏「もっと呑め~ぃ」フリフリ
えり「お酒って苦手で…。すぐに酔っちゃうので」
咏(酔っ払ってるえりちゃん超見たい)
えり「だから少しずつ…」
咏「まぁまぁまぁ~」トクトク
えり「ちょ、ちょっと、こぼれ……っ」
咏「呑め呑め~」
えり「あわわっ」ゴクンッ
咏「そそ。それくらいは飲まなきゃねぃ」ニヤリ
咏「どうよどうよ、おいし?」
えり「え、えと…」
咏「チミッチミ呑んでたら味なんてわからんっしょ~?」
えり「えと……」
咏「意外と良い酒なんだぜ~これ!勿体無い勿体無い!」グビッ
えり「…………」
咏「…おぅーい、えりちゃーん?」
えり「?」クビカシゲ
咏「いや、? じゃなくて。仕草かわいいけど」
えり「…………」ポケー…
咏「えりちゃん?」
咏「おぉ?」
えり「………♪」スリスリ
咏「…また腕かい?」
えり「ん…」コクリ
咏「抱きついては来ないの?」
えり「…これ、好きです」ギュー
咏「…酔ってんの…か?」
えり「知らんし~…ですー」スリスリ
咏(だから…それヤバいって…かわいいっつの…)
咏(裏えりちゃんが酔っ払っても、あんまり変わらない感じかねぃ?)
えり「ふふ…うーたさん♪」
咏「なーに?」
えり「呼んだだけー♪」ニコニコ
咏(おぅ)キュン
えり「んー…」ハナレ
咏「? どしたん?急に離れちゃって」
えり「…私ばっかり甘えてます」
咏「良いんだよ?」
えり「咏さんは何かしたくないですか?」
咏「何か?」
えり「ん」コクリ
咏「…えりちゃんに?」
えり「…ん」コクリ
咏「………」
えり「………」ジー
咏(…つまり…“なんでもしていいよ”っつーこと…?)ドキドキ
咏「~~~!」グビグビ
咏(かなり……その、なんだ。かなり、…ねぇ?)
えり「………」ジッ
咏「……目ぇ、瞑って?」
えり「…はい」メトジ
咏「…………」
咏(…どうする気だよ…目、瞑らせて…)
えり「…咏さん?」
咏「ちょ、ちょっと…待って…」
咏「…………」ドキドキ
ソッ…
えり「っ」ビクッ
咏「だから、目隠ししたからな?手で、だけど…なんも、見えない…よな?」
えり「…ん」コクリ
咏「………」ドキドキ
咏(…やばいな、最初っから一気はダメだったか)
咏(…ちょっと、酔ってるかも)
咏「…………」ジリジリ…
咏(……もう、少しで……)
えり「………」
咏(えりちゃんの………)
咏(こんなに近くで顔見たの…初めてかも…)
咏(えりちゃんの……唇……)
えり「………」
咏「―――ッ!!」
パッ
咏「もういいよ!!」
えり「?」
咏「目ぇ開けていいから!」
えり「は、はい……」パチ
咏(うわー、うわあーもー!!)
えり「あの…何かしましたか?」
咏「し、したよ、した!」
えり「…?」クビカシゲ
えり「………」
咏(えりちゃんは…キス、嫌なんだよ…なのにさぁ…)
咏(酔ったイキオイとか…酔ってる人の言葉にほだされるとか…)
えり「…………」ウトウト
咏(…これ、最低じゃね!?)ガーン
咏(良かった!思いとどまって良かったぁぁアブねえぇ!!)
えり「………」コックリ
咏「え!?」
えり「………」コックリ…
えり「!」ハッ
えり「………」ウトウト
咏(あ…眠いだけか…)
咏(ビビったぁ…頷かれたかと思った…)
咏「えりちゃん、もう寝よっか」
咏「じゃあ、」スッ
キュ…
咏「お?」
えり「あの…」ソデツマミ
えり「…また、おんなじお布団で……」
咏「………」
えり「……だめですか?」ジ…
咏(上目遣いは反則)
咏「………」ゴソゴソ
えり「………」ポフッ
咏「…ふぅ…」
えり「…咏さん?」
咏「…んー?」
えり「…だーいすき」ニコッ
咏「………」キュン
えり「ふふ……おやすみなさい」
咏「おやすみ」
咏「…………」
咏(…罪悪感がヤバい)ズーン
咏(嫌われてることは多分100%ないみたいだけど…)
咏(…なんで嫌なんだろ。わかんねー…)
咏(好きなら…したくなるもんなんじゃないかねぃ……知らん、けど)
咏「……んぁー……」
咏「……ふぁ~ぁ」ノビー
咏「…あれ…えりちゃん?」
咏「……仕事行ったのかな……」
咏「……お?」
咏(メモ用紙…)
『ごめんなさい 針生』
咏「…………」
グシャグシャ ポイッ
咏「…知らんし」
咏(……何に対して謝ってんだかわかんねーし。謝られるようなことなかったし)
咏(…………)
咏「……今日も問い詰めるかねぃ」
咏(ついでに、晩ごはんも頼んじゃおーっと)
咏(今日は何を頼もうかねぃ~♪)
――――
えり「……クチュンッ」クシャミッ
えり(…マズイ、風邪かな……)
――――
えり「……はぁ……」
えり(…今日は…)チラッ
えり(よし、携帯に連絡なし)
えり(…もう、しばらくは会えないだろうな…)
えり(……私、何してるんだろ……)
ピリリリッ
えり「!」ビクッ
えり「で、電話!?」ピッ
えり「も、もしもし針生ですが…」
咏『やっほーえりちゃん』
えり「う、咏さん!?」
えり(し、しまった…焦って誰だか確認せずに通話ボタンを…)
咏『あー違う違う』
えり「では…?」
咏『えりちゃんの“かわいい”声が聞きたくなってねぃ~♪』
えり「………は」
咏『あー今多分ボーゼンとしてるでしょ?』
えり「い、いや、その…」
咏『照れてんだ~かーわい~』
えり「…からかってます?」
咏『本音に決まってんじゃん。わっかんねーかなぁ、えりちゃーんちょーかわいいぜー』
えり「な……な………」パクパク
咏「えりちゃーん」
えり『っ…よ、用がないなら、もう切りますよ?私今仕事終わったばっかりで…』
咏「愛してるぜ」
えり『』
咏「ちょっとでも長く一緒にいて、ちょっとでも長く話していたいじゃん」
咏「…コイビトだろ?」
えり『…………』
咏(…………)
咏「ところでえりちゃん」
えり『は、はい!』
咏「…今日の晩ごはんは、スパゲティがいいな」
えり『…………』
えり『いいんですか?』
咏「頼んでるのはこっちだっての」
えり『…♪』
咏(お)
えり『…材料買ってから、向かいますね』
咏「おう」
えり『…他に何かありますか?』
咏「晩ごはんにさ。えりちゃんの愛情、入れてくれる?」
えり『………はい♪』
咏(大・成・功)
ピンポーン
咏「ほーい」ガチャ
えり「こんばんは」
咏「おっかえりぃ~」
えり「あ……」
咏「ん?」
えり「え、えーっと……」
えり「…ただいま、あなた」ニコッ
咏「」
えり「…なんて」カァァ
咏「お、おかえりぃぃぃ!!」ギュゥー
えり「きゃっ…」
咏(やべー破壊力やべぇぇー!)
咏「ん?」
えり「わざわざ“私”を呼び出すなんて、何を企んでいるんですか?」
咏「企みとか知らんし。さっきも言ったじゃんか。少しでも一緒にいたいんだよ」
えり「!」パァ
えり「…♪」ギュー
咏(かわええのうかわええのう)ナデリナデリ
えり「えへへ…だーいすき♪」
咏(このやろ…あとで抱き締めてやる、覚悟しとけぃ…)
咏「期待してるねぃー」
えり「愛情込めて、作ります」ニコッ
咏「ひゃっは~!」
えり「あ……えっと……」ゴソゴソ
咏「お?」
えり「咏さんの家って、エプロンないでしょう?だから…買ってみました」
咏「おぉーっ」
えり「ん、と……」イソイソ
咏「………」
えり「…こ、こんな感じ…ふふ、ちょっと恥ずかしい…かも」
咏(たまんねー新婚みてー!たまんねー!)キュンキュン
食後
咏「いやーえりちゃんの料理やっぱウマイわー」ポンポン
えり「お粗末様でした」
咏「毎日作ってくれん?」
えり「いいですよ」
咏「そうだよねぃ~……え、マジで!?」
えり「できる限りは」ニコッ
咏「お、おぉっ…」
咏(…一緒に住んだら………いや、今言うのは卑怯だよな…)
咏「…えりちゃん、明日の予定は?」
えり「明日、ですか?」
咏「ふむ。…よぅし、今日も泊まってけぃ!!」ズビシ
えり「!」
咏「そうと決まれば風呂入ってこぉい!えりちゃんの寝間着、洗っといたぜ」
えり「あの、咏さn」
咏「もう風呂入ったから。えりちゃん入った入った!」
えり「………」
えり「はい!」ニコッ
咏(…実は、オフって知ってて全部先に準備したんだけどねぃ~)ニヤリ
咏(調子乗って高い酒開けちゃったよ…えりちゃんまだ風呂だけど)
咏「~♪」トクトク
咏(やばいなぁ…幸せすぎる。えりちゃんの本音を、あーんな聞けちゃうとか!)グイッ
咏(ちょっと前まで、スゲー不安だったのにねぃ…えりちゃんも、素直に言ってくれりゃいいのに!)プハーッ
咏(…そう簡単にはいかねーか。不慣れ、とか言ってたし)
咏(それ言ったらこっちだって慣れちゃいないけどさ~…)トクトク…
咏(一緒にいて…ラブラブしてー……らぶらぶ……)グイー
咏「ぷはっ……」
コトッ…
咏(…ちゅーぐらい良くね?)
咏(えりちゃんのことだから、照れてるだけっしょ?知らんけど~)
咏(最近圧倒され気味だけどさ~…ちーとばかし積極的にいっちゃうかねぃ?)ニヤニヤ
咏「んぐっ…んぐっ…プハーッ!」
咏「…けふっ」
えり「良いお湯でしたー」ホクホク
咏「おーぅおかえりぃー」フリフリ
えり「ただいまです。…あれ、咏さん?」
咏「ほいな~」
えり「…お酒?」
咏「おう!えりちゃんも呑む~?」
えり「い、いえ……咏さん、ずいぶん呑んだみたいですね…」
咏「あーそーかもねぃ」
えり「珍しく酔ってるみたいな…」
咏「そんなことよりえりちゃ~ん」
咏「いつもみたいにくっついてくれないの?」
えり「!」
咏「ほれほれ、この胸にどーんと」テヒロゲ
えり「…良いんですか?」
咏「かも~ん」
えり「…じゃあ…」
えり「………♪」ギュー
咏「おーよしよし」ナデナデ
えり「昨日は、お風呂入る前だったから…今日は…」
えり「……♪」ギュー
咏「ん~…」スリスリ
えり「はーい?」
咏「…こっち、見て」
えり「?」
咏「ん~…」
えり「…咏、さん?」
咏「むちゅちゅ~」ジリジリ
えり「!」ビクッ
えり「っ……!」ポフッ
咏「えーえりちゃーん、顔うずめんなよー」
えり「……」フルフル
えり「あっ…」
咏「照れんなよー」ジリジリ
えり「だ、ダメ…」ニゲ…
咏「えーりーちゃーぁーん~」グイグイ
えり「ダメで……きゃあっ!?」
ドサッ
咏「ほら、逃げらんないぜ~?」
えり「…あ……ぁ……」
咏「いーでしょ?」
えり「だ、だめ……」
咏「まだ言うか、こいつぅ」スッ
えり「ぁ…っ」ビクッ
咏「ね、えり…、……?」
えり「…だめ……だめ……っ」ギュゥ
咏(震えてる…?)
えり「お願い、…だめ、お願い……!」ジワ
咏「…えりちゃん…?」
えり「……うぅ……」フルフル
咏「え、えりちゃん…?」
えり「…………」ウルウル
咏「…………」
ギュ
えり「ぁ……」
咏「ごめん。何もしないから…怖がらないでよ」ナデナデ
えり「………うた、さん………」
咏「うん。ごめんね、もうしないから」
えり「…………」
えり「……ごめんなさい」
咏「ううん、えりちゃんは悪くないよ」
えり「…違うんです」
えり「………まだ私、咏さんに言ってないことが…あって…」
咏「…!」
えり「……私の……」
えり「……昔の色々に、ついて……」
咏「…昨日言ってたやつ?」
えり『…恋愛に不慣れなんですよ』
咏『不慣れ?』
えり『ええ。経験は人並み以下、限りなく0に近いかと』
咏『えりちゃんモテそうなのにねぃ』
えり『…まぁ、昔色々ありまして』
咏「あ、ああ、ごめん!」
えり「いえ…私も、取り乱してしまって…」
咏「いや……」
えり「……」
咏「…何か飲むかい?」
えり「…お願いできますか?」
咏「んーじゃ、ホットミルクでも作るかねぃ」
えり「………」ニコッ
咏「ん」ニコッ
咏(…無理して笑顔なんて作っちゃって…涙目、なってるぜ?)
咏(…肩も、まだ震えてて……)
咏(…なぁにやってんだろ…えりちゃんにあんな顔させてさ…)
えり「…ありがとうございます……ん…」コクッ
えり「…おいしい…」
咏「ちょっと落ち着いた?」
えり「……はい」
咏「…………」
えり「…私、その…」
咏「…うん」
えり「……昔、…襲われたことが、あって…」
咏「!」
えり「押し倒されて…おさえ、こまれ……っ」
咏「えりちゃん」
えり「…大丈夫です、…だい…じょ……」
えり「……っ」ブルッ
咏「……」ナデナデ
咏「大丈夫だよ、大丈夫だから…」
えり「……っ…うぅ…」フルフル…
咏「無理に話さなくても…」
えり「い、いえ…聞いてほしい、から……」
咏「………」
えり「…高校生のとき、告白してくれた方がいて…でも私、そのころ恋愛に興味がなくて…」
えり「一度お断りしても、…何度も……段々、その…ストーカー…といいますか…」
えり「それで…学校の、放課後…」
えり「……っ」
咏「………」ナデナデ
えり「……っ…」コクッ
えり「それ以来…なんだか、その…」
えり「い、一応…全部未遂では…あるんですが…」
咏「…………」
咏「…ちょっと待って?」
えり「は、はい…?」
咏「“それ以来”?“全部”?」
えり「え、ええ……途中で、助けていただいたり…あとは…」
咏「…ごめんね、ちょっとツラいこと聞くかも」
えり「…どうぞ…」
咏「…どれくらいの人に、何回くらい、襲われた?」
えり「……ええと……」
えり「中学は近所でしたから徒歩だったんですけど、高校からは電車通学になりまして」
えり「…満員電車…とか……その…スカートの、………っ」
えり「…さすがにもう電車に乗るのは、と思って免許をとって…それ以来は車で…」
えり「あと、仕事で上司の……」
えり「…………っ」ジワ
えり「………も、もう……いいですか……?」プルプル ウルウル
咏「…ごめん、ありがと」クラッ
えり「?」
咏「調べて殴ってくる」
えり「あの…私、女子校で……」
咏「…え?」
えり「男性では……」
咏「………」
咏「うん、何でもない。気にすんな」
えり「は、はい…」
咏「………」
えり「……多分……」
咏「え?」
咏「…何が?」
えり「“私”が」
咏「……!」
咏『初めて出てきたのはいつ?』
えり『高校…でしょうか』
咏『……結構早いねぃ』
えり『……昔のことです』
咏「…裏…えりちゃん…」
えり「……」コクリ
咏「あー、ある…んだ?知らんけど」
えり「ええ。それが、ちょっと過激なものだったりして…」
咏「例えば?」
えり「た、たとえば………ボディタッチがエスカレートして、その……素肌……に…」
咏(それスキンシップじゃねぇ。ただのセクハラだ)
えり「…私が」
咏「…なるほど」
えり「表には何がなんだか判らなかったでしょうね」
えり「意識が戻ったら、同級生が反省文50枚土下座しながら渡してきましたから」
咏「…おお…」
えり「それ以来、過激なスキンシップは無くなりましたけど…」
咏「そっか…」
えり「あ、でも。こういうことばかりじゃないんですよ?」
咏「?」
えり「誰かに…その、身体を…まさぐられて……怖くて、嫌と言えない自分、だけじゃなくて」
えり「仕事で、絶対に間違ってると思っても話が進んでいってしまっているとき、とかに呼ばれたりもしました」
咏「…大変だねぃ」
えり「言いたいこと、言えちゃいますから。そのときはちょっとスッキリしました」ニコ
咏「なにが?」
えり「今までは、嫌なことを嫌と言えない…駄目なことを駄目と言えない…」
えり「裏の私は裏らしく、負の部分ばかりをやってきました」
えり「…でも、今は…」スッ
咏「あ……」
えり「好きな人に、目を見て…はっきりと“好き”って言える」
えり「すごく、幸せなんです」ニコッ
咏「!」ドキッ
咏「ん…」
えり「………」
咏「………」ウツムキ
えり「私……咏さんと…したくないってわけじゃ…ないんです」
咏「…!」
えり「…でも…私…未遂とはいえ、…唇、だけは…」
咏「あ……」
えり「…守り、きれませんでした。…この年になっても、好きな人とは……」
えり「一度も…したこと、ない…のに…」
咏「な、なんで?」
えり「私の唇は……汚れているから」
えり「あなたに、そんな―――」
グイッ
…チュ…ッ…
えり「――――!?」
えり「う、……うた、さ……どうして……!?」
咏「知らんし」
えり「わっ…私は!わた、…し…は……!」
咏「わっかんねーよ。そんなの」
咏「えりちゃんはえりちゃんだ。汚れてなんかいない、綺麗だよ」
咏「…もし、汚れてるって思うなら…」
咏「…私が、消毒ついでに、上書きしてやる」ギュ
えり「……うた……さ…ん……」
えり「…私……わたし……」
咏「えりちゃんは、綺麗だよ」
えり「でも………!」
咏「まだ言うか…もっかい消毒、するかい?」
えり「!」
咏「えりちゃんが納得するまで、何回でもしてやるよ」
えり「………」
えり「…わたしを……」
咏「…うん」
えり「…わたしを…きれいに…してください…」
えり「嫌な思い出…全部、上書きしてください…」
咏「…任せとけ」
チュ…
翌朝
えり「……ん……」
えり「……………」
えり「………!?」ガバッ
えり「また…三尋木プロの……家……!」
咏「なにさ、文句あるかい?」
えり「!!」バッ
咏「おっはよーえりちゃん♪」
えり「み、三尋木プロ…」
咏「ほれ、一日の始まりは挨拶から。っしょ?」
えり「…おはよう、ございます…」
咏「おぅ、おはよ」ニコッ
咏「………」ニコッ
えり「……あの、私…また泊まったりなんかして…」
咏「いーのいーの、全然いーんだよ」
えり「…わ、私そろそろ仕事の……」
咏「オフ、だよねぃ?」
えり「…!」
咏「えりちゃんは今日はオフの日だぜ。忘れたん?」
えり「………そ、そう…でした、ね」
咏「………」
えり「…で、では私はお暇させていただ……」
咏「だめ」
咏「帰さない」
えり「な、何を言っているんですか…三尋木プロ」
咏「すっとぼけんのもいい加減にしな?」
えり「…と、とにかく、私はこれで…」スッ…
ジャラッ…
えり「…!?」
咏「もう既に、逃げらんないようにしてあったりするんだよねぃ~」
えり「こ、これは一体!?」
咏「手錠だよ手錠。まんま」
えり「だから、どうして私が手錠に……」
咏「…“アッチ”のえりちゃんには、言っておいたよ」ニヤ
えり「………!」 サァァ
えり「………っ」
咏「一昨日ははぐらかされたし、昨日は逃げられた」
咏「…今日はどうする?」ニッ
えり「っ……卑怯ですよ」
咏「知らんし」
えり「……どうする気ですか」
咏「別に?えりちゃんとお喋りしたいだけだぜ~?」
えり「じゃあ、これを外してください」
咏「それは駄目」
えり「何故!」
咏「知らんし~」
えり「………」イラッ
咏「お、お喋りしてくれる?」
えり「…ほとんど脅迫じみていますがね」
咏「人聞き悪いねぃ」
えり「やってることは脅迫です」
咏「だから合意の上で…」
えり「なんの話ですか」
咏「だから」
えり「アッチの…とか、合意とか…意味が、わかりません…」
咏「……ふーん?」
咏「…ホントに?」
えり「…何故ですか」
咏「ねぃえりちゃん。昨日の電話、覚えてっかい?」
えり「電話…ああ、それなら…」
咏「じゃあさ…一番最初のクダリ、思い出してみ」
えり「一番最初……?」
ピリリリッ
えり『も、もしもし針生ですが…』
咏『やっほーえりちゃん』
えり『う、咏さん!?』
咏「…………」
えり「驚いてしまったのは、考え事をしていた時に電話がかかってきたからで…」
咏「ねーえりちゃーん」
えり「…なんでしょう」
咏「………」
えり「……三尋木プロ?」
咏「ソレだよ」
えり「え?」
えり「………あ………っ…」
咏「電話で驚いて、つい言っちゃった感じ?珍しいミスしたねぃ、えりちゃ~ん?」ニヤ
咏『やっほーえりちゃん』
えり『う、咏さん!?』
咏「“咏さん”って呼んでるのは、裏えりちゃんのハズでしょ?」
えり「………ッ」
咏「…記憶、残ってるんじゃないの~?」
咏「ねい、表えりちゃん♪」
咏「どーせ逃げらんないぜ?素直に言っちまいな」
えり「……まさか…あれだけのミスで、勘づかれるなんて…」
咏「お?」
えり「……仰るとおり、です」
咏「…へぇ♪」
えり「ただ……少し違うのは…」
咏「え、違うの?」
えり「記憶は、断片的にしか残ってないこと。実際に何があったり何を話したかは、ほとんど…」
咏『裏の記憶は、表には引き継がれないの?』
えり『基本的にはそうです』
咏『基本的には?
えり『ええ』
咏「…なーるほど。嘘はついてないわけだ?」
咏「ごめん、結構色々聞いちゃった」
えり「では……」
咏「高校時代とか、仕事先とか、免許取った理由とか」
えり「そこまで……」
咏「…ごめん」
えり「謝らないでください。…いずれ、話すことにはなっていたでしょうから」
咏「………」
えり「今回の切り替わりの条件とか…聞きました?」
咏「ああ…“恥ずかしい”っつー感情が限界突破すると、だって」
えり「なるほど…今回はソレでしたか…」
咏「?」
咏「ん?」
えり「…もう、あの子を呼ばないで欲しいのですが…」
咏「え……」
えり「昨日は故意的にやったでしょう?」
咏「あ、ああ……。なんで?」
えり「…………」
咏「えりちゃん?」
えり「…わかっている、つもり…なんですけど…」
えり「……いや、やっぱり…わからない」
咏「何が?」
えり「…自分が、何をしたいのか」
えり「…わかりますか?やりたいことだけやって、あとの記憶はハッキリしない…」
えり「私は、……何をしていたのか、……わからない……!」
えり「怖いんですよ……っ」
咏「…えり、ちゃん…」
えり「私が本当にやりたいことって何!?私は何をしているの!?」
えり「私はっ……あなたに、何をしたんですか……?」
咏「…ううん」
えり「朝起きたら、一緒の布団に入っていて……でも、記憶はなくて…」
えり「憶えているのは、…ううん、身体が憶えてるんです」
えり「“咏さん”と言う言葉と…あなたの、暖かさ…!」
えり「私は……わたし、……ッ」ジワ…
えり「もし、あなたに何かあったら、私は…あなたに、顔向けできない…」
咏「…………」
ギュ
咏「やだ」ギュー
えり「離して……」
咏「知らんし」
えり「三尋木プ、……っ」
チュ
えり「…ん……んんっ…」
チュルッ
えり「!?…ふ、ぁぁ…!」ビクッ
咏「……チュ、…ん、レロッ……」
えり「ん、ンー……っ…!」イヤイヤ
えり「ッ…はぁっ…はぁ…は…」
えり「なんで…なんでぇ…!」ウル
咏「ねぃ、えりちゃん」
えり「…どうして、こんなことするの…っ…?」
咏「身体は憶えてた?」
えり「そんなわけなっ――」
えり「――憶えて、…ない…」
咏「…でしょ?」ニッ
咏「じゃあ、これは?」ギュ
えり「…憶えて…ます…」
咏「わかった?」
えり「………」
咏「ちゅー以上のことなんてしてないし、“酷いこと”なんてのもなかったんだよ」
えり「…でも」
咏「クドい。酷いことなんてなかった」
えり「………」
咏「おっけー?」
えり「……はい……」
咏「…ちゃんと、幸せだったよ」ギュー
えり「!」
咏「でも…でもさ、えりちゃんは…変わんないし。告白して、コイビト同士になって」
咏「それでもえりちゃんはクールで、堅くて、生真面目で。…ホントに好きなのかー?って」
えり「それは!」
咏「うん…裏えりちゃんと会って、話して…わかったから」
咏「酷いことなんてない。むしろ…凄く幸せだから」
えり「………」
えり「……それは……そう、です」
えり「裏とは言っても、私は私。…酷いことをしていなくても」記憶が、ないのは……」
えり「…不安です」
咏「じゃあ、裏にならなきゃいい」
えり「え…」
咏「なんなきゃ良いじゃん。裏えりちゃんっつーのは、表えりちゃんの一部なんでしょ?」
えり「そ、そうですが…」
咏「表えりちゃんが裏えりちゃんみたいなことすりゃいいんだよ」
咏「裏えりちゃんは“えりちゃん”の、本当はやりたいけど出来ないことをするんだよねぃ」
えり「ええ…」
咏「それって、えりちゃんがやりたいことやっちゃえばさ。ジレンマもストレスもなしってことっしょ?」
えり「……そう、簡単には……」
咏「わかんねーじゃん」
えり「…裏は、何をしていましたか?」
咏「えりちゃんのやりたいこと」
えり「………」
咏「ほら、遠慮なんかすんなよ~」
咏「もっと甘えて良いんだぜ?」
えり「……あの……」
咏「うん」
えり「……良いん…ですか…?」
咏「もちろん」
えり「…………」
咏「………」
えり「…えっ…と……」
えり「………っ///」
咏「……へへっ♪」ギュ
えり「な、なんですかっ」
咏「べーつにぃ~」
咏「ほら、前は顔に出なかったじゃん?」
えり「…………」
咏「えりちゃん?」
えり「…私の昔の話は、きいたんですよね?」
咏「う、うん……もしかして?」
えり「ええ。…私、昔は気持ちがすぐ表情に出てしまって…なのに、普段は無愛想だから…」
えり「…面白がられたんでしょうか。余計に相手を調子に乗させてしまうことが何度かあって」
咏「………」
咏(いや、多分そうじゃなくてさ…えりちゃんの照れ顔、普通にソソるかんな?知らんけど)
咏「…なるほど」
えり「でも、裏の私には関係ありませんから。…しばらく裏が続くと、緩んでしまうみたいで…」
咏「そっちのが良いぜ?」
えり「そう…ですか?」
咏「かわいいから」
えり「っ!……///」
咏「ほらかわいい」
えり「…か、からかわないでください!」
えり「……こっちは必死なんですからね?」
咏「知らんし。…えりちゃんが素直じゃないだけだし~」
えり「…う…」
咏「素直に言っちゃえば良いんだよ。拒否とかするわけないし」
えり「…仕方ないじゃないですか……不安、だったんですから」
咏「?」
えり「…恋愛って、は…初めて、だったから…どうしたらいいか、わからなくて」
咏「…馬鹿だねぃえりちゃんは」
えり「なっ!?」
咏「どんなえりちゃんでも、えりちゃんはえりちゃんなの!」
咏「その上で、えりちゃんが好きなんだよ。何度も言ってるっしょ~?」
えり「…咏さん…」
えり「…仕方ないでしょう…わかんないんですから…」
咏「もうわかった?」
えり「…少し」
咏「ちょーっとずつで良いから、いろんなえりちゃん見せてみな?」
咏「ぜってー嫌いになんか、なんないから。かけてもいい」
えり「………」
咏「そんでさ。恋愛にも、少しずつ慣れていこうよ。…二人でさ」
えり「……躓いても、引っ張って行ってくれますか?」
咏「それ助け起こすのが先じゃね?知らんけど」
えり「……ふふ……」
咏「……へへ」ニコッ
咏「おぅ」
えり「……お願いしても、いいですか……?」
咏「もちろん。えりちゃんのやりたいこと、言ってみ?」
えり「……………///」
えり「……っ…」メソラシ
咏「ん?」
えり「………」ジ…
咏「………」ニコッ
えり「…ぎゅーってしても…いいですか……?」
咏「…大歓迎」
おわり
ありがとうございました
咏えりかわいい
乙
Entry ⇒ 2012.10.07 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
憧「お見合いしなきゃいけないんだ…」穏乃「え…?」
憧「う、うん…」
穏乃「だ、だって私たちまだ16歳だぞ!?」
憧「でも、結婚できる年齢でしょ?」
穏乃「そうだけど…でも」ブツブツ
憧「うちも一応神社だしねーいろいろあるんだよ」
穏乃「でもやっぱり憧には早いって!」
穏乃「う、うるさい!びっくりしただけだって!」アセッ
憧「ふふ、じゃあそういうことにしといてあげる」
穏乃「くぅ…なんか悔しいなぁ」
憧「でね、その相手なんだけど」
穏乃「そ、そうだよ!誰なの!?地元の人?」
憧「ううん、違うのえっと…確か2つ年上だから高3の>>18さん」
憧「えっとね、鹿児島にある神社の巫女さんなの」
穏乃「か、鹿児島!?なんでそんな遠くの人とお見合いなの!?」
憧「もうシズ声がでかいって」
穏乃「うぅ、ごめん」シュン
憧「なんかお父さんの知り合いがどうのって詳しいことは知らないけどさ」
穏乃「そ、そうなんだ…どんな人?」
憧「あ、インハイ出てたよ?」
穏乃「うそ!?そんな名前の人いたっけ…?」
穏乃「永水…?そんなのいたっけ?」
憧「もう、シズは清澄しか見てないんだからー」
穏乃「ご、ごめん」
憧「清澄で、和の友達の宮永咲さんと戦ったんだ、霞ちゃんは大将だから」
穏乃「え、え!?か、霞ちゃんって呼んでるのか!?」
憧「ん、インハイの会場で一度だけ会ったしねー」
穏乃「ぜ、全然知らなかった…」
憧「ごめん、シズ…ちょっと言いづらくてさ」
穏乃「じゃあ、永水ってとこが勝ってたら私と戦ってたかもしれないんだ?」
憧「そだねー」
憧「小さいときに1回会ってるって霞ちゃんは言ってたけど
あたしは全然覚えてないんだよねー、で、この間が2回目なのかな?」
穏乃「そうなんだ…ひょっとしてお見合いというより許婚なのか?」
憧「それに近いんだろうけど、一応体裁はお見合いなんだってさー」
穏乃「てかどんな人なんだ?」
憧「んー、おっぱい」
穏乃「はぁ?」
憧「だから、おっぱいだよ」
穏乃「憧、全然わからない」
憧「おっぱいさんなの、めっちゃ大きいよ~」
穏乃「な、なんだよそれ!そういうことじゃなくてさ!」
結婚したらあれを独り占めできると思うと…ぐふふ」
穏乃「憧、顔が気持ち悪いよ」
憧「ごめーん」
穏乃「(お、おっぱいの大きいお姉さんか…くそ、それは絶対勝てない!
何か勝てることはないかな?あ、麻雀!)」
穏乃「(私たちは決勝まで行ったんだし、永水は二回戦敗退!
なら、私にも勝てることが…!!)」
憧「でねでね、おっぱい大きいでしょ、それからすっごい優しくてね」
穏乃「う、うん…あ、あのさ憧…その人って麻雀強いの?」
憧「え?当たり前じゃん、シズはもう全然知らないんだね」
穏乃「ん?」
憧「永水は去年の決勝進出校だし、霞ちゃんはそこの大将だよ?
今回はたまたま相手が悪かったんだって!」
穏乃「(で、でも!今年は阿知賀の方が強かったんだ!)」
憧「あたし、永水と阿知賀が試合したら負ける気がするなぁ」
穏乃「な、なに言ってんだよ!」
憧「霞ちゃんほんとやばいもん、シズもやられちゃうかも」クスクス
穏乃「」
憧「あ、でもさ…」
穏乃「な、なんだよ?」
憧「…霞ちゃんはいい人だし、嫌いじゃないけどさ」
穏乃「ん?」
憧「お見合いなんか、したいはずないよ」
憧「いや、まあ…シズが面白い反応だから遊んだだけだよ~」
穏乃「な、なんだよもう」ブツブツ
憧「てか冷静に考えてよ。なんでこの年でお見合い?」
穏乃「お前が16歳は結婚できるって言ったんじゃないかー」
憧「そうだけどさ、普通は嫌でしょ?」
穏乃「ま、そうだね」
憧「なんて、あの頑固なお父さんには言えないからね~」
穏乃「なんだ、憧やっぱり嫌なんじゃん…」
穏乃「(なんだかホっとしてる…この感情はなんだろ?)」
穏乃「じゃあ、素直にそう言った方がいいんじゃないか?」
憧「無駄無駄、お姉ちゃんやお母さんも乗り気だしね」
穏乃「け、けど」
憧「シズありがと。嬉しいよ、でも仕方ないんだ。」
憧「それに霞ちゃんはさっきも言ったけど超いい人で優しいしんだ。
断ったりしたら可哀想でしょ?」
穏乃「そういう問題かなぁ…」
憧「ま、別にお見合い=結婚じゃないしね~」
穏乃「それはそうかもしれないけど…」
憧「シズどしたの?あたしがお見合いしちゃいけない?」
穏乃「……」
憧「シズ?」
憧「な、なに!?」
穏乃「憧!そんな、可哀想とかそんな理由で会うほうが可哀想だよ!」
憧「でも…」ブツブツ
穏乃「お見合いの前に1回会ってるのに、なのに憧は
お見合いしたくないって言ってるじゃん!」
穏乃「ってことはやっぱ嫌なんだよ!嫌なことを無理にすることないじゃん!」
憧「あのねシズ、嫌なことを避けてばかりもいられないんだよ?」
穏乃「そ、そうかも、…しれないけど!でも!」
憧「それにこれは私だけの問題じゃないんだよ?
うちの神社にも関わることだし…お見合いしたくない、嫌だ」
憧「なんて言って破談に出来ることじゃないんだ。
さすがにシズもそのことはわかってくれるよね?」
憧「じゃあなに?」
穏乃「大人の都合とかそんなの全然わかんないけど!
でもお見合いするのは誰だよ!?憧だろ!?」
憧「…そうだよ」
穏乃「その憧がしたくないってことはしたくないでいいじゃん!
嫌なら嫌って言えよ!そんなとこで大人ぶるなって!」
憧「…シズ」
穏乃「…って言ってるけどさ、」
憧「ん?」
穏乃「違うんだ、憧ばっか責めるようなこといってごめん…」
憧「なにが違うの?」
憧「なによぉ、シズ?」
穏乃「わ、私が…その」
憧「ん?」
穏乃「私が憧にお見合いなんかして欲しくないんだよ!」
憧「し、シズっ//」
穏乃「…って思った、ごめん」
憧「そ、それはなんでか教えてくれる…?」
穏乃「…いや、それはわかんないけど…でも、嫌なんだよ!」
憧「もう、…そんな子どもみたいな理屈で…」ハァ
穏乃「じゃ、じゃあお見合いしない?」
憧「ん~…まあ、会うだけ会おうかな」
穏乃「そ、そか…」
憧「そんな顔しないでよシズ…」
穏乃「…ま、まあ優しい人なんだろ?ならいいじゃん!」
憧「そうやって無理にテンション上げなくていいのにぃ」ツンツン
穏乃「う、うるさいなぁもう//」
憧「シズ、ねぇ」
穏乃「ん?」
憧「シズもお見合いに同席する?」
憧「いいじゃん、親戚~とか言って隣にいれば?」
穏乃「そ、そんなことできるわけないだろ?」
憧「いけるいける、たぶん」
穏乃「そ、そうかな…無理だと思うんだけど…」
憧「シズなら多分大丈夫だよ?」
穏乃「…憧のその自信はなんだよもう」
憧「あ、じゃあ決まりね!」
穏乃「ほ、ほんとにいいのか?」
憧「いいのいいの!」
どっかのホテルの料亭
穏乃「ほ、ほんとによかったんですか?」
望「いいのよ、穏乃ちゃんなら全然」
憧母「憧もそのほうが緊張ほぐれていいわよね?」
憧父「穏乃ちゃん、憧をフォローしてやってくれ」
憧「ね?シズ、平気でしょ?」
穏乃「あ、うん…(なんか釈然としないけどまあいいや)」
霞「あ、憧ちゃん久しぶりね、ふふ」
憧「霞ちゃん!ってあれ?その方は…?」
霞「あぁ、この子は>>102ちゃんよ」
(永水じゃなくても、誰でもいいです。ただできればある程度キャラのハッキリする人)
初美「薄墨初美ですよー」
憧「え、でもどうして?」
霞「私が奈良にお見合いに行くって聞いて
どうしても一緒に来たいって言うものだから…」
霞「ごめんなさいね、こんな場面に…」
憧「い、いえ!私にも付き添いというか…」
穏乃「ど、ども…憧の親戚です」
穏乃「(ってかほんとにすんごいおっぱい!…くぅ、完敗だぁ…)」
穏乃「(え、てか…高校3年生?ほんとかな?)」
憧「あ、あはは//」
穏乃「(憧のヤツ照れてる…)」
初美「むむ、なんだか同じ匂いがするのですよー」
穏乃「お、同じ匂いですか?え、な、なんのことだろ?」クンクン
初美「内緒ですよー」
霞側の大人「さて、一応お見合いという体を成すために挨拶からはじめたいと思います。」
憧父「あぁ、そうだな。はじめよう」
憧「(くぅ…霞ちゃんとはすでに打ち解けているものの
大人がたくさんいて妙に緊張してきた…)」
穏乃「(憧…大丈夫だよ、私がついてる)」テーブルの下で手をつなぐ
憧「(シズ…)」
よろしくお願いします」
穏乃「(ほ、ほんとに高3なんだ…)」
初美「(この人なんか失礼なこと考えてる気がするですよー)」クスクス
初美「(しっかし、この相手の子はなんか派手ですねー)」
初美「(…霞さんには似合わないですよー)」
憧「あ、えっと、新子憧、16歳、阿知賀女子1年です
よ、よろしくお願いします…」
穏乃「(憧がキョドってる…よっぽど緊張してるな)」
ちょっと時間が経って・・・
霞側の大人「はっははーそうですなぁ」
憧父「ははは、ええ、そうですそうです」
憧母「ふふ、お二人とも、主役はこの二人でしてよ?」
霞側の大人「じゃあ、そろそろ若いものに任せますか」
憧母「憧、上手くやるのよ…あ、穏乃ちゃんも一緒に来て?」
穏乃「え!?あ、はい…」
憧「シズ、あの、あとでね」
穏乃「う、うん…憧、頑張って」
霞側の大人「初美、君も一緒に出なさい」
初美「うぅ…」
霞「はっちゃん、行って?」
初美「あ、あとでまた来ますねー」
霞「うふふ、はいはい。あとでね」
憧「か、霞ちゃんあのっ」
霞「あのね、憧ちゃん…ほんとは来たくなかったんでしょ?」
憧「そ、そんなことないよ?」
霞「見てればわかるもの、あの、親戚の子?あれはチームメイトでしょ?」
憧「あぁ…ごめんなさい」
霞「もう、私もチームメイトを連れてきているんだからそれはいいのよ」
憧「そうだったね、そういえば…」
霞「憧ちゃんは大人でいい子だから断れなかったのよね?」
憧「う、ううん。違う、霞ちゃんに会いたかっただけ」
霞「もう、強がらないの」
憧「で、でも!…家こととか考えたら…」
霞「ふふ、そうねぇ。まあ大変なことになるかもしれないわねぇ」
憧「霞ちゃんはこれでいいの?」
霞「まあ、憧ちゃんは可愛いしお嫁さんにはぴったりだし
悪くはないわね…でも、」
憧「でも?」
霞「でも、憧ちゃんには好きな人がいるものね」
憧「えっ、いや、いないから!」
霞「そうかしら?…あのね、憧ちゃん断りなさい。このお見合い」
憧「えっ?」
憧「でもっ、いいのかな…てか断れるかな?」
霞「こっちはなんとかするから、憧ちゃんは家族を説得すればいいのよ」
憧「どうかな…家族はすごく乗り気なんだ」
霞「そう、困ったわねぇ…でも、それは憧ちゃんの頑張り次第ね」
憧「そうだけど、難しいよ」
霞「ならもう好きな人がいるって言ってしまえばいいのよ」
憧「だ、だから!好きな人とかいないし!」
霞「うふふ、あくまで突っ張るのねぇ」
霞「まあ、とりあえず大人の顔を立てるという意味でお見合い開催はしたのだから
私たちに進展がなくても問題ないと思うわ…そうでしょ?」
霞「ええ、そうしたほうがいいわ」
憧「てか、お見合いしてるのに二人で破談の相談なんてあれだね」
霞「そうねぇ、でもいいのよ。お互い納得しているんだから」
憧「そっか、そうだよね」
憧「ねぇ、そういえばなんとなくなんだけど」
霞「なぁに?」
憧「…霞ちゃんって結婚相手っていうよりは」
霞「なにかしら?」
憧「いや、やっぱ言わない」
霞「なによぉ、気になるでしょ?」
憧「…お、お母さんっぽい」ボソッ
穏乃「やっぱり二人きりになりますよね」
初美「ですねー」
穏乃「(憧大丈夫かな?心配だなぁ)」ウズウズ
初美「(霞さん大丈夫ですかねー?あの派手な子に
いいようにやられたりしてないですかねー?心配ですよー)」ウズウズ
穏乃「はぁ」
初美「はぁ」
初美「なんですかー?」
穏乃「石戸さんってどんな人なんですかね?」
初美「霞さんは大人ですよー落ち着いてるのですよー」
穏乃「ふむふむ」
初美「ちょっとお母さ「はっちゃん!」
霞「二人とも、入りなさい」
初美「き、聞かれてたですかー!?」
憧「で、…まあ、そうなったわけよ」
穏乃「じゃ、じゃあこのお見合いは破談ってこと?」
憧「お父さんが納得したらね」
穏乃「ほら、やっぱりお父さんにちゃんと言うべきだったんだよ!」
憧「それは今日霞ちゃんに会ったから言えることでしょ!」
穏乃「そ、それはそうだけど!でも!」
憧「はいはい、シズありがとう」
穏乃「う、うん…あの、説得は手伝うからさ」ボソッ
憧「助かる…」
霞「(うふふ、仲良しさんは見ていて癒されるわねぇ)」
霞「(しかし意外と大変そうね、私側の大人を説得するのは…)」
霞「(まあでも、憧ちゃんはもうお嫁さん候補から外したし
次を考えようかしらねぇ)」
霞「そうかしら?とってもマジメそうないい子よ?」
初美「うぅ」
霞「はっちゃん、言いたいことがあるならはっきり言わないと」」
初美「い、今は言わないですよー」
霞「じゃあ、またあとで聞かせてね?」
初美「か、霞さん次第かもです」
霞「私?そう、何をしたらいいのかしらねぇ」ニコニコ
初美「さ、さぁ…自分で考えてくださーい」
霞「うふふ、もう、素直じゃない子ねぇ」ナデナデ
初美「う、うぅ//」
憧「ふぅ、お父さんもほんと頑固だわー」
穏乃「でも、ちょっと前進だって」
憧「私の幸せを本気で考えてよってやつ?」
穏乃「そうそう、それ言われてお父さんが一瞬黙ったじゃん」
憧「まあ、前進だったらいいけどさー」
穏乃「あのさ、憧…」
憧「んー?」
穏乃「私さ、憧が見合いするっていう話を聞いてから
実際お見合いしてさ、そこに同席させてもらってさ、」
穏乃「それで…ここ何日かは憧のお父さんを説得したりしてるでしょ?」
憧「うん…」
穏乃「でね、だから、いや、それで、」
憧「シズ、ちょっと落ち着いて」
憧「いいよ、言って」
穏乃「…うん、でね、思ったことがあって」
穏乃「いや、多分ずっと思ってたんだよ」
穏乃「でも、それが自分の中でよくわかってなかったんだ」
憧「うぅ…ちょっと待って」
穏乃「な、なんだよ?いいとこじゃん」
憧「それ、あたしが言いたいんだけど」
穏乃「だ、だめだよ。私が言うから憧は聞いてて」
憧「はいはい、わかったよ(霞ちゃん、私、素直になるよ…)」
穏乃「憧…私は、憧が好きだよ!」
穏乃「今思えば憧のお見合いとか超嫌だった!
なんで嫌なんだろ?って考えたら…」
穏乃「た、確かに石戸さんって人いい人だったけど!」
穏乃「憧があの人と付き合うとか結婚とかそんなの!
そんなの絶対嫌だよ!ダメなんだよ!」
穏乃「…憧、…憧が大好き」
憧「う、うぅっ」グス」
憧「う、嬉しいよぉシズぅ」抱きつく
穏乃「わ、わぁっ」抱きしめる
憧「あたしもシズが好き…ずっとそう言って欲しかった
好きだから、お見合いなんかするなって言って欲しかったのっ!」
穏乃「ご、ごめん…私が鈍くて…」
霞ちゃんがそう言えばいいのにって言ってたんだ」
憧「そんなの…シズはそんな気がないのにそんなことできないって
そう思って…お父さんにはほんとのことは何も言えてなかった」
穏乃「…じゃあ、そのことを憧のお父さんに話そうよ」
憧「うん、シズ…そばにいてくれるよね?」
穏乃「当たり前じゃん!憧のためならなんでもする!」
憧「じゃあ、もう一度お父さんに言いに行こう?」
穏乃「うん!」手をつなぐ
憧「し、シズ//恥ずかしいよ//」
穏乃「そだね…今までもつないでたのにね…//」
穏乃「一緒に怒られるから大丈夫だよ、憧」
憧「シズ…あんたどこまでも優しいのね」
穏乃「憧にだけだよ、ほんと」
憧「ば、ばかシズ//」
穏乃「照れて言っても可愛いだけだよ?」
憧「う、うるさいなぁもう//」
穏乃「…ねぇ、憧?」
憧「ん?」
穏乃「お父さんに怒られに行く前にさ…」
憧「もったいぶらないでよー」
穏乃「うー…んー…」
チュッ
憧「あ、あわわ…へ?え?///」
穏乃「ご、ごめん…つい」
憧「…はじめてのキスだったのに」
穏乃「私もだよ?」
憧「もう!もっとこう、…ロマンチックなのがよかったの!」
穏乃「私たちにそんなん似合わないってー」
憧「そ、それはその…そうかもしれないけど…」
憧「う、うん…絶対しない」
穏乃「てか、必要ないよ」
憧「ん?」
穏乃「…だ、だってその、憧は…ずっと私と一緒なんだからさ//」
憧「シズ…だ、だからそういうのはもっとロマンチックに!」
穏乃「ご、ごめ~ん!!
カン
初美「大人の都合はどうなったですかー?」
霞「うふふ、もう万事解決よ」
初美「さすがですねー」
霞「憧ちゃんは可愛くていい子だったから惜しいと言えば惜しいけどね」
初美「うぅ、派手っぽくて私は苦手ですよー」
霞「もうまたそんなこと言って」
初美「そもそもなんでお見合いなんかになったですかー?」
霞「憧ちゃんのお父様がどうとか聞いたけれど
詳しいことはわからないわ」
初美「そうですかー」
霞「小さい頃に会った憧ちゃんはそれはそれは可愛い子だったわ
将来お見合いする相手なんて思ってもみなかったけどねぇ」
初美「(…さっきから可愛い可愛いって…ちょっと面白くないですよー)」
霞「可愛いわよ、だって年下だもの」
初美「お、同い年だったら可愛くないですか?」
霞「あら、そんなことないわ。はっちゃんは可愛いもの」ナデナデ
初美「か、可愛いの意味が違う気がするですよー//」
霞「ところではっちゃん、お見合いのときに言っていたことは
いったいどうなったかしら?」
初美「へっ?なにかあったですかー?」
霞「もう忘れないで、何か私に言いたいことあったでしょう?」
初美「さ、さぁ?」
霞「今はいえないって言っていたからそろそろ言ってくれるかなって待ってるのに」
霞「…ほら、言いなさい」
初美「うぅ」
霞「怒らないから、ね?」
初美「…やっぱりお母さ
霞「はっちゃん、早く言いなさい…で、誰がお母さんですって?」
初美「な、何も言ってないですよー」
霞「…もう、素直にならない子ねぇ」
初美「霞さん、あの、…」
霞「なぁに?」
初美「…お見合いとかもうしないでくださいって言おうと思ってたですよー…」
霞「それはどうしてかしら?」
霞「私がお見合いするって聞いてそう感じたの?」
初美「うぅ、そうですよー…//」
霞「うふふ、なんて嬉しいことを言ってくれるのかしらねぇ」ナデナデ
初美「こ、子ども扱いは止めて欲しい…かな、なんて//」
霞「そうね、ごめんなさい…それで、ざわざわっとした理由はわかった?」
初美「うーん…たぶん」
霞「じゃあ、それを教えてくれる?」
初美「…面白くなかったんですよー…霞さんのお見合いなんて。
だから絶対付いて行ってやろうって思ったです」
霞「うん」
初美「…で、そ、その…(うぅ、覚悟決めなきゃいけないですね…)」
霞「そうね、そういう漠然とした気持ちを言い表すのも
受け入れるのもなかなか難しいものよね」
霞「でもね、一度口に出してみると『あぁ、そういうだったんだ』なんて
自分の気持ちを確かめることも出来るのよ。さあ、言ってみて」
初美「あー…ほんとに怒らないですかー?」
霞「あのねはっちゃん、しつこいわよ?」
初美「う、うぅ」
霞「ほら」
初美「え、っと…その、お母さんが再婚して寂しいみたいな気持ちになったですよー」
霞「」
おしまい
いや、なんていうか、ごめんw
てか鬼畜代行された割にはちゃんと書いただろ?だから許してください
支援や感想ありがとです、シズアコは初めて書いたけど楽しかったです
じゃあまたどこかの鬼畜代行スレでお会いしましょう、おやすみー
乙乙
おい
はっちゃんは自分から地雷を踏みに行くのか・・・
Entry ⇒ 2012.10.07 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
蒲原「久しぶりー」ワハハ 睦月「あ、先輩……」
睦月「え、ええ……まあ」
蒲原「お土産だぞー」ドサッ
睦月「どら焼き……ですか」
蒲原「おいしそうだろー」ワハハ
睦月「どこか有名なお店のものですか?」
蒲原「いや、そこのスーパーで買ってきたー」ワハハ
睦月「なんですかそれ……」
蒲原「ワハハー、うまいかー?」
睦月「……んぐ……え、ええ」
蒲原「ところでむっきー、佳織やモモはどうしたー?」
睦月「えっと……」
蒲原「??」
睦月「先輩、実はですね……そのことでひとつ、先輩に相談がありまして……」
睦月「はい……」
蒲原「どうしてまた……」
睦月「……」
睦月「おそらくですが、私なんかが部長を務めるこの部に、嫌気がさしたんだと思います……」
蒲原「そ、そんな……来なくなったのはいつ頃からなんだ……?」
睦月「……先輩方は引退後もちょくちょく顔を出しに来てくれましたよね?」
睦月「そのおかげか、3月まではまったく問題もなく活動していたのですが……」
睦月「先輩方が卒業し、新学期になったとたん、二人とも部室にくる回数が極端に減っていって……」
睦月「その頃はまだ、妹尾さんも桃子もしぶしぶながら活動には参加してくれていたので……」
睦月「ですが、興味を持ってくれるような子は誰一人いなくて……」
睦月「……」
蒲原「……」
睦月「そして今では、二人とも月に何回か足を運んでくる程度になってしまいました……」
睦月「今月に至ってはまだ顔も見ていません……」
睦月「……っ」
蒲原「むっきー……」
睦月「ご、ごめんなさい……! いきなりこんな暗い話をしてしまって」
睦月「今日はせっかく先輩が遊びに来てくれたというのに……私ったらダメですね、ほんとすみません……」
蒲原「いや、いいんだむっきー……」
睦月「た、楽しい話をしましょう! あ、そうだお茶入れてきますね?」タタタッ
蒲原「……」
蒲原(私が卒業してから、こんなことになっているなんて……)
蒲原(……)
蒲原(わたしはどうしたらいいんだ……ゆみちん……)
蒲原「え、えっと……うん、まあそれなりだぞー」
蒲原「大学は、残念ながらゆみちんとは違うとこになっちゃったけど、まあ充実してるかなー」
睦月「充実……ですか。それはよかったです」
蒲原「……む、むっきー」
睦月「せ、先輩はたしか一人暮らしですよね。大変じゃないですか?」
蒲原「うん、大変だぞー。なにしろ掃除に洗濯、料理までぜーんぶ自分でこなさなきゃならないんだからなー」ワハハ
睦月「でも、たしか門仲におばあさまの家があるとか言ってませんでした?」
睦月「同じ東京といっても乗り換えとかあるとけっこう大変そうですしね」
蒲原「うんうん、それに母ちゃんが『もう18なんだから一人暮らしくらいしてみなさい!』って言って無理やり……」
睦月「厳しいお母さまですね」
蒲原「まあ、早起きするのはつらいけど、それなりに頑張ってるよー」ワハハ
睦月「ふふ、それはなりよりです」
蒲原「……むっきー」
睦月「ん、なんですか?」
蒲原「私のことなんかより、お前の方は……」
睦月「……っ」
蒲原「で、でも……!」
睦月「……せめて」
蒲原「……?」
睦月「せめてこんな時くらい……楽しい気持ちでいさせてください……」フルフルッ
蒲原「……」
蒲原(むっきー……すごくつらそうだ……)
蒲原(私はむっきーのこんな姿、見たくない……でも)
蒲原(私に何ができるっていうんだ……っ)
蒲原「……」
睦月「……先輩」
蒲原「……な、なんだ? むっきー」
睦月「……」
睦月「……麻雀、打ちませんか?」ニコッ
蒲原「……」
蒲原「……うん」
―――それは、今にも涙がこぼれてきそうなほど、脆く儚い笑顔だった……
蒲原「……」カチッ
蒲原(……)
蒲原(こんなことをしていて……いいのか?)
蒲原(今はいいのかもしれない……だけど、私が東京へ帰ったあと、むっきーはどうなる……?)
蒲原(……)
蒲原(これは、逃げでしかない……むっきーにとっても、私にとっても……)
蒲原(……)
蒲原(こんなとき、ゆみちんならどうするんだろうな……)
蒲原(またゆみちんゆみちんって……私はいつもそればっかりだな……)
蒲原(自分では成長した気になっていても、何も変わっちゃいない……)
蒲原(後輩ひとり救えないようじゃ……部長失格だ)
蒲原(いやそもそも、私はもう部長じゃないんだったな……)
蒲原「ワハ、ハ……」カチャ
睦月「先輩……どうかしましたか?」
蒲原「……」
睦月「先輩……?」
蒲原「……むっきー」
睦月「は、はい……」
蒲原「……」
蒲原「ちょっとドライブにでも行かないか?」ワハハ
睦月「え」
―――――――――――――――――――
車内
睦月「あれ……普通だ」
蒲原「どうしたー? むっきー」ワハハ
睦月「先輩……運転うまくなってません?」
蒲原「そうかー? 東京の道路に慣れすぎたのかもなー」ワハハ
蒲原「いやぁ、なんだ。室内で麻雀ばかり打ってても退屈だろうと思ってなー」
睦月「……まさか先輩、さっき私に負けてたから中断したわけじゃないですよね……?」ジトッ
蒲原「ま、それもちょっとはあるけどなー」
睦月「あるんですか!」
蒲原「ワハハー」
睦月「もう……」
蒲原「……むっきー」
睦月「なんですか?」
蒲原「もういいんだぞ」
睦月「えっ……」
睦月「……」
蒲原「たぶんお前のことだから、『先輩たちが残してくれた麻雀部を守りきらなければ!』なーんて思ってたんだろー」
睦月「そ、そんなこと……」
蒲原「……むっきー、あのなー」
睦月「……」
蒲原「鶴賀の麻雀部での思い出は、私の中では宝物だ。それは死ぬまで……いいや死んでからも変わらないさー」
蒲原「それはおまえも同じだろー?」
睦月「……」
蒲原「でもなー」
蒲原「そのことがお前を縛り付けて、苦しめてるんなら、私はそんなもの捨ててしまってもかまわないと思ってる」
睦月「……」
蒲原「だって本末転倒だろー? 楽しむために部活やってるのに、それを守るために苦しまなきゃならないなんて」
睦月「……で、でも」
蒲原「ん?」
睦月「でも……楽しいことばっかりじゃないはずです。苦しいことだってあります……」
睦月「それが部長という立場ならなおさらです。だから私は……!」
蒲原「……」
蒲原「そうだなー。苦しくても頑張った思い出があるからこそ、楽しかったときの思い出が映えることだってあるなー」
蒲原「でもそれは、みんなで、だろ?」
睦月「……」
蒲原「それは、ちゃんとこういうことをお前に教えてこなかった私の責任でもある」
睦月「そんな……先輩のせいなんかじゃないです……」
蒲原「……」
睦月「先輩は……私にとっては憧れの先輩でした」
睦月「部員を縛りつけることなく、それでいてチームの心を引きつけ、まとめあげてしまう……」
睦月「たしかに加治木先輩に比べたら少し頼りないですし、いつも飄々としていてふざけてるように見えます……けど」
睦月「そんな先輩が……私は誇らしかった」
睦月「そして……私もこんな部長になりたいと、そう思ってました」
蒲原「でも……ありがとう」
睦月「……はい」
蒲原「……」
蒲原「……むっきー」
睦月「……はい」
蒲原「あとは考えるだけだ。むっきー自身が」
蒲原「一人で部を守っていくもよし、佳織やモモに向き合うもよし」
蒲原「少し活動を休めていろいろ考えるもよし、全部投げ出して新たな一歩を踏み出すもよし、さ」
蒲原「むっきーが考えて考えて、考え抜いた末に出した結論なら、私は応援するよ」
蒲原「だってそれは、『ただがむしゃらに部活を守っていかなくちゃ』っていう責任感に囚われていた今までのものとは違うんだから」
睦月「……」
蒲原「……うん」
睦月「考えて、考え抜いて、そして自分で決めます……自分のやりたいことを」
蒲原「うん、がんばれよ」
睦月「……」
睦月「……っ」ポロッ
睦月「……ぅ……っく……」
蒲原「ど、どうしたんだ?」
睦月「!」ゴシゴシ
睦月「な、なんでも……ありません……っ」
睦月「それより先輩、前見てください……」
蒲原「え……ああああっ!!」
衣「ふぇ……」
衣「ふぇえええええええええええええええん!!」
透華「衣、大丈夫ですの!?」
―――――――――――――――――――
蒲原「ふぅ……危なかったなー」ワハハ
睦月「よそ見するからですよ、まったく」
蒲原「だってむっきーが泣いたりするから……」
睦月「泣いてませんっ!」
蒲原「んー? ほんとかー?」
睦月「ほんとですよ!」
蒲原「それならいいがなー」ワハハ
蒲原「んー? 海」
睦月「……え? 今なんて?」
蒲原「だから海だって」ワハハ
睦月「えええええっ!? わたし明日学校ですよ!」
蒲原「まあいいじゃないかー、一日くらい」
睦月「よくないです! 私たちは大学生とは違うんですから!」
蒲原「ワハハ、ちょっとスピード早めるぞー」ブィーン
睦月「ちょ、ま、待ってくださいっ!!」
蒲原「長野の道路は広いなー」ワハハ
睦月「だ、誰かとめてぇえええええええ!!」
睦月「……」
蒲原「大丈夫かー? むっきー」
睦月「うっ……!」ダダッ
ゲェエエエエ
蒲原「おいおい……あんまり無理するなよー」
睦月「だ、誰のせいだと思ってるんですか……それにもう夜ですよ! 帰れないじゃないですか!」
蒲原「飛ばせばまだ間に合うぞー」ワハハ
睦月「もう乗りたくありませんっ!」
蒲原「まあまあ、ウチに泊まってけばいいじゃないかー」
睦月「はあ……もういいです」
蒲原「ごめんごめん、謝るよむっきー」
睦月「もう知りませんよ!」プイッ
蒲原「……」
睦月「……なーんて」
蒲原「え」
睦月「少しからかってみただけですよ」フフッ
蒲原「び、びっくりさせるなよー……」ハァ
睦月「先輩……ありがとうございました」
蒲原「ん、なにがだ?」
睦月「先輩のおかげで、なんかいろいろと吹っ切れました、わたし」ニコッ
蒲原「そのことはもういいってー」ワハハ
睦月「……」
睦月「……これからも」
蒲原「えっ?」
睦月「これからも、また遊びに来てくれますか?」
睦月「そう……ですよね」
蒲原「なに落ち込んでるんだよむっきー。誰も来ないとは言ってないだろー」
睦月「先輩……」
蒲原「暇になれば行くさー。むっきーの楽しそうな姿を見になー」ワハハ
睦月「……ふふ」
睦月「それじゃ、私も楽しくしていられるよう、がんばらなくちゃいけませんね」
蒲原「ああ、素敵な笑顔を見せてくれよー」
睦月「はい!」
カン
まあワハハのウチに泊まった二人のその後は、各自で補完もとい妄想しといてください
支援ありでした
おつです
乙
GJ
おつ
Entry ⇒ 2012.10.06 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
菫「いいだろう。なってやるよ、魔法少女!!」
白糸台駅
照「ごめん。遅れた」トテトテ
淡「テルーおっそーい!」
尭深「おはようございます」ペコリ
誠子「おはようございまっす!」
菫「おはよう、照。別にまだ集合時間は過ぎていないぞ。まあ、お前が一番最後っては珍しいな。たいていは淡だし」
照「楽しみにしてたから早く出てきたのに…」
淡「嘘だー。どーせ寝坊したんでしょー」
誠子「淡じゃないんだから、宮永先輩が寝坊なんてするわけないだろ!」
淡「ぶー!」
照「ふう…」
菫「なんだ?お疲れ気味だな」
尭深「そんなに気にするほどのことでも無いと思います…けど」
淡「やっぱり寝坊だ!それで走ってきたから…」
淡「痛い痛いすみません」
照「誠子。許してあげて」
誠子「むぅ…宮永先輩が言うなら…」スッ
淡「ありがとテルー!セイコ意地悪!」ササッ
尭深「あ。宮永先輩の後ろに隠れた」
誠子「ぐぬぬぬ…」ワナワナ
菫「相変わらずお前は淡に甘いな」
照「そんな事無い…と、思うけど」ナデナデ
淡「むっふー」スリスリ
尭深「頭撫でながら言っても説得力無い…です…」
照「ん?」
菫「まあいいさ。で、どうしたんだ?」
照「ここに来るまでに迷っちゃって」
菫「ぶっ!?」
尭深「ナイスジョーク…?」
淡「それはいくらなんでもないよ。テルー…」
照「それが、嘘じゃないんだ。今日に限っていつも歩いてる道が知らない道に見えて」
菫「お前…そんな電磁波で方向感覚狂った鳩みたいな」
照「困ったから途中でコンビニ寄って道聞こうと思ったら、ただ聞くのも悪いしと思ってお菓子買ってるうちに目的忘れちゃって」
菫「ダメダメだなぁ!」
淡「テルーポンコツ!」
誠子「宮永先輩って、部活中はしっかり者でも、アレですかな。プライベートは結構うっかりさん的な」ヒソヒソ
尭深「あざと可愛い」
照「…」グスッ
淡「あー!泣~かした!泣かした!」
誠子「あわわわ」
尭深「ご、ごめんな…さい…」
菫「こんな程度で泣くなよ…」
淡(かわいい…)
誠子(かわいい…)
尭深(かわいい…)
照「そ、それじゃあ、早く行こうか」
菫「おお、そうだったな」
誠子「おっと、そうでした!」
尭深「はい。早くしないと、時間、間に合わないかも…」
淡「大変だ!」
菫「各自Suicaのチャージは足りてるな?早速街まで行こうか」
誠子「はい!宮永先輩、荷物持ちましょうか!」
照「いや、いいよ。ありがとう誠子」
菫「誠子、私の時も言ったが、今日はプライベートだから」
誠子「いっけね。そうでした!わかりましたー」
淡「みんな早く早くー!」
照「そういえばさ、菫」
菫「なんだ?」
照「今日って、何しに行くんだっけ」
誠子「」ズルッ
尭深「宮永先輩…」
菫「お前…」
照「いや…その…ごめん」
誠子「先輩~」
尭深「本当に…大丈夫、ですか…?」
照「うん。…多分」
菫「頼むぞ?まったく…」
照「い、今は、そう。朝。朝だし。まだちょっと寝ぼけてるのかも…」
菫「まあいいけど…」
淡「早くー!」
誠子「あー!わかったわかった!今行くから待ってろ!」
尭深「先行ってます」ペコリ
菫「ああ。淡がふらふらどこか行かないよう監視頼む」
照「菫。菫。で、目的って…」
菫「本当に忘れたのか?」
照「…」
菫「今日は部活休みで、『元』レギュラー陣で街の方へ遊びに行く約束だっただろ」
菫「私達も引退したことだし、な」
菫(夏は終わった)
菫(私達3年生は引退し、今は誠子が部長)
菫(本格的な受験勉強…と言っても私も照も推薦はほぼ決まったようなものだが…受験勉強前の息抜きに、と誠子達が企画してくれたのが今日)
菫(元レギュラー陣だけでの、初めてのプライベートの遊び)
菫(淡が照と離れたくないとワガママ言ってたのがきっかけ…らしいが、まあ、今日は新部長達の心遣いに甘えさせて貰って気を緩めて目一杯遊ぼうと思う)
菫(もしかしたら、今日の照のポンコツも、今までの全国3連覇という目標への重圧から解放されたが故の、本来の気性…なのかもしれんな)
ガヤガヤ
淡「おおー。やっぱこっちはちゃんと東京してるねぇ~」
誠子「ちゃんとって…白糸台だって一応立派な東京都なんだけど」
淡「あっちはなんか東京っぽくないんだもん!」
菫「まあ、言いたいことも気持ちもわからんでもないが…」
照「24区はやっぱり特別だよね」
尭深「ん?」
誠子「へ?」
淡「テルー?」
菫「…」
照「あれ…?わ、私、今なんか変な事言った?」オドオド
誠子「今、24区って…」
菫「どこ増やした」
照「えっ」
誠子「…」ゴチン
淡「ごめんなさい!」
誠子「あんまり失礼なこと言わないの!」
尭深「調子悪いならまた今度の機会でも…」
照「い、いやいや!大丈夫だよ!ちょっとボケてみただけだから!」
菫「お前のボケは分かりづらい」
誠子「空気を切り裂く感じで発言するんで、なんかマジな雰囲気が怖いです」
尭深「こう、冗談にしても、手心をですね…」
照「ご、ごめんごめん。そんなみんなで集中砲火しないで」アワアワ
淡「テルーギャグの才能ないよ」
照「あう」ショボン
菫(なーんか変だな今日のコイツ。いくらなんでもポンコツ具合が半端じゃない。みんなと遊びに出るってんでハシャぎ過ぎてんのか?)
誠子「おう!まっかせとけ!」
淡「隣の家にへいが出来たってね~」
誠子「かっこい~!」
尭深「古典的かつつまらない。3点」
誠子淡「「手厳しい!!」」
菫「…まあ、いいか。最初はどこに行きたいって話だった?淡」
淡「映画館!」
菫「映画館…ねぇ」
菫(映画館…か。そういえば、今年はまだプリキュア見てなかったな。今、見そびれた春の映画の再上映やってるんだよな)
菫(っていうか、そろそろ一人でコソコソ見に行くのも辛くなってきた。年齢的に)
菫(まわりお子様連れか大きいお友達ばかりだし)ガックリ
菫「…」チラッ
淡「どしたのスミレー?」キョトン
菫「いや…」
菫「…何見たいんだ」
淡「ふっふっふ~」
菫(…趣向がお子様っぽいし、結構期待してるんだが)
淡「ホラー」キリッ
菫「え゙」
映画館
菫「…」ボーーー
誠子「んー!肩凝ったー!」ノビー
淡「きゃー♪怖かったねーテルー」ダキッ
照「…」カタカタ
誠子「マジビビリしてますね。宮永先輩ホラー弱いんだ。でも、へー。貞子ってこんな話だったんだー。なんか思ってたよりショボ…ゲフンゲフン」
尭深「…」ブルブルッ
誠子「大丈夫?尭深。アンタもホラー苦手か」
尭深「せ、誠子ちゃん。ちょっとお手洗い付き合って…」
誠子「はいはい。じゃあ、弘世先輩。私らちょっと行ってきますんで、待ってて下さーい」
菫「ん」ボーー
淡「あ、私もー!」
照「わ、私も…!置いてかないで誠子!」モジモジ
誠子「私は今度映画見るならアクションがいいなー。ランボーとかエクスペンタブルズみたいなの」スタスタ
淡「えー?今度はコメディがいいー」トテテテ
照「ジブリかディズニーか動物…」フラフラ
菫「ああ…行ってこい…」ボー
菫「…」
菫「行ってこい…」ボー
菫「…ハッ」
菫「っ!」バッ
菫「~~~っ!!」キョロキョロ
菫「あ、あれ!?みんなは…」
菫「…」
菫「…ああ。トイレか」ホッ
菫「…」ヘナヘナ
菫「あう」ペタン
菫「こ、怖かった…」
菫「特にあの貞子が井戸から這い出てくる場面とかモニターから手伸ばして来る場面とか…なんだよあれ…絶対劇場で心臓麻痺起こして死んだ人いるぞ」ブツブツ
菫「あ、あわわわ…」カタカタ
菫「だ、駄目だ。体の震えが止まらない。みんなが帰ってくるまでに平静になっておかないと私のイメージが…」
菫「何か元気になれる要素…元気になれる要素…」キョロキョロ
菫「…あ」
菫「…プリキュアの劇場グッズ…」
【女の子は誰でもプリキュアになれる!!プリキュアオールスターズ、新たなるステージへ――】
菫「…見たかったな」ボソッ
菫(今日を逃したらもう劇場には来れないよな…)
菫「…」
菫(昔っから、憧れてたんだ。プリキュアとか、魔法少女とか、そんな子供染みたヒロインに)
菫(可愛い格好して、魔法でみんなの夢を叶えて、悪い敵をやっつけて…恋をして)
菫(そんな、どうしようもない子供染みた、妄想を。未だ、捨てきれずにいる)
菫(馬鹿馬鹿しい。私はもう受験生だぞ)プイッ
菫「…」
菫「…」チラッ
菫(グッズ。デコレーションステッカーくらいなら…有り…か?)
菫「…」コソコソ
「いらっしゃいませー」
菫「す、すみませーん…」
「はい!何をお求めでしょう!」
菫(…うん。デコステくらいならありだ)
菫「そ、その…」
「はい!」
菫「そ、その…プリキュアの、デコステッカーを」
「…(哀れみ)」
菫(ぐああああ!!一気にアレな人を見る目になったぁああああ!!?)
菫「その。つ、包んで戴けますか?……め、姪が、どうしても欲しいと言っていたものですので」
「包装ですか?生憎プレゼント用の包装はありませんが…」
菫「そ、それでいいです!」
菫(よし通ったーーー!!)
(この人、姪とか嘘なんだろうなー)
菫「あ、すみません。それと」
「…はい。なんでしょうか」
菫「パ…パンフレットも…一緒に…あの、紙で見えないように包装してか…」
淡「スミレー何買ってるのー」ヒョコッ
菫「あksdljそいふぃあうhふじこ!!?」
(あーあー)
淡「…って、あー。これプリキュアだ~」
菫「あ、淡!?いつの間に…」
淡「これもうお会計済ませたー?」
「え、ええ…」
「へ?」
菫「あ、ちょっと…」
淡「テルー!見てみてー!」ダッ
菫「淡ーーーーーーーーーーーーー!!!!」ダッ
(哀れな…)
照「どうしたの淡」
誠子「なに子供っぽいの買ってんの淡」
尭深「子供っぽいとは思ってたけど、そこまで子供っぽいとちょっと引くよ。淡ちゃん…」
淡「菫がこんなの買ってたーーー」
誠子「は?」
尭深「う」
照「ん?」
菫「わ、私のイメージがあああああああああ!!」
「…」
「…あいつか」
菫「…」ブッスー
照「菫。ごめんね。許して」
誠子「すみません弘世先輩。いや、あまりにも意外で…」
尭深「ごめんなさい」ペコリ
淡「まったくだよ!みんな、あのあと爆笑するだなんて…」
菫「誰が諸悪の根源だ!」ポカッ
淡「申し訳ありません!!」
菫「この!この!アンポンタン!礼儀知らず!天然畜生!」ブンブン
淡「ごーめんーねースーミーレー」ガクガク
照「す、菫。その辺で許してあげて。淡が首振り人形みたいに揺れてるよ…」オドオド
誠子「これ以上脳みそ揺すってこれ以上馬鹿になったら面倒見切れないので」
尭深「先輩。びーくーる。びーくーる」
菫「むぅ…」ピタッ
淡「おーほーぅー揺れるー」カクンカクン
淡「かしこまり!」ビシッ
菫「…みんな、無様を晒してすまなかったな。つい取り乱してしまった」
照「ううん。私達の方こそごめんね」
誠子「人間、隠したい趣味の一つや二つありますって!私はむしろ弘世先輩のその趣味、知れて好感度上がりましたけどね!」
菫「は?」
誠子「だって、ねぇ?」チラッ
尭深「うん。完璧人間の弘世部ちょ…元部長の可愛いとこ、見つけた」ニコッ
菫「完璧って…止してくれ。私はまだまだ未熟者で…」
誠子「何事も卒なくこなし、曲者ぞろいの白糸台麻雀を部長として1年間見事に統率してきた人間の言う台詞じゃないですよ。それ」
菫「あのなぁ誠子。お前だってこれから1年同じ役割を…」
照「菫。今はお小言はいいから」
尭深「ギャップ萌え」
菫「萌えって…」ガックリ
菫「…わかったよ。取り敢えず私の恥ずかしい少女趣味を受け入れてくれてありがとうな。あんまり公言するんじゃないぞ。特に淡」
菫「なんだかなーって感じだが、まあ結果的には…って、照!?お前いつの間に!」
淡「ああー!テルーのデラックスジャンボプリンパフェもう来たの!?」
誠子「でかっ!来るの早っ!そして食べるのも早っ!」
照「おいしいよ」パクパク
淡「うー。いいなー」
菫「みんなの分待てよ。協調性のな…」
誠子「ん?」クルッ
菫「…ん?どうした誠子」
誠子「…あ。いえ…なんか、視線を感じたんですが…」
菫「視線?その方向には誰も居ないが」
誠子「あれー?」
淡「もしかしてオバケ!」
尭深「やめてください」
菫「私も尭深に賛成だ。ひ、非科学的な」キョロキョロ
淡「やっぱりオバ」
菫「殴るぞ」
淡「何卒御容赦下さい」ペッコリン
尭深「あ、私の緑茶と宇治金時も来た」
淡「宇治金時美味しそう!」
菫「いつも緑茶だな尭深」
尭深「アイデンティティですので」
菫「はあ」
淡「わーい!私のプリンケーキも来たー!!」
照「それも美味しそう。ねえ淡。ちょっと食べっこしようよ」
淡「うん!」
菫「あとは、私のだけか…それ、渋いな。いつもはこういう場面だとがっつり食べるのに」
誠子「なんとなくです。先輩のまだですかね?今度店員近くに来たら聞いてみましょうか」
菫「ああ、誠子。ありがとう、助かるよ。後、みんなは遠慮せずに先に食べていてくれ。待たせるのは心苦しいから」
淡「わかった!」
誠子「それでは失礼して…」
尭深「先に頂きます」
菫「ああ」
菫「…」
菫(早く来ないかな。楽しみだな。クレーム・ブリュレ。ここのカフェのスイーツはどれもネットで評価高いしな…)
菫「…」ソワソワ
照「パクパク」
菫「…」ソワソワ
尭深「ズズ…」
菫「…」ソワソワ
照「うん」モグモグ
誠子「ああ、淡。口にクリーム付いてる…」フキフキ
淡「モガモガ」
尭深「ふふ…」クスッ
菫「…」ソワソワ
菫(…まだか)イラッ
「…あの、すみませんお客様」
菫(来たっ!!)
菫「はい。なんでしょうか」クルッ
「その…大変申し上げにくいのですが…」
菫「は?」ピクッ
「あ、あの…お客様のご注文なされたアイスコーヒーとクリーム・ブリュレなのですが…」
菫「はい」ヒクッ
菫(…なんで何も持ってきてない?)ヒクヒク
菫「…」ピクッ
「…いえ。その…確かにさっきまでは確かに有ったんですが…」
菫「な…ななな…」ワナワナ
「い、今、急いで新しいのを作っておりますので…」
菫「なんじゃそりゃああああああああああ!!!」
「…ゲッフ」
「…チュー」
菫の部屋
菫「…ふう」ボフッ
菫「…」ガサガサ
菫「…えへへ」
菫(プリキュアのステッカー。かわいいな)
菫(パンフレットは…明日読もう)ウキウキ
菫(枕元においておこうか。いい夢が見られるように)ゴソゴソ
菫「…」
菫「…楽しかったな、今日。ありがとう。誠子。尭深。それに、淡」
菫「私と照に、想い出を作ってくれたんだろう?まったく…私たちは良い後輩に恵まれたよ」
菫「映画も怖かったが楽しかったし、あの後結局出てきたクリーム・ブリュレとアイスコーヒーも、多少のトラブルはあったがとても美味しかった」
菫「その後はみんなで買い物もしたし…」
菫「…」
菫「…私としたことが、大人げないことで怒ってしまったな。情けない」
菫「どうも、最近短気で困る。ケアレスミスも多いし…調子が良くないというか…」
菫(…だとしたら、少々気を引き締め直さねばいかんな。引退したとはいえ、私は白糸台の弘世菫なのだ。情けない姿を衆目に晒すのも憚られる)
菫(推薦があるとはいえ、学業を疎かにする訳にもいかないし…)ウト…
菫(兎に角、明日は日曜だし、早起きして…授業の…予習…で…も…)ウツラ…ウツラ…
菫「…」
菫「…」スヤスヤ
「…ふむ」
「…」ゴソゴソ
菫「すー…すー…」
「なんやこれ」
「…プリキュア?」
「ふん」ポイッ
「…」
「こいつが」
「やっぱ『そう』なんか?」
「そげな感じしなかったばってんなー」
「…ま、しゃーないか。それでもこいつだってんだから」
「えーっと…名前名前」ゴソゴソ
「弘世菫…って、げっ!今思い出した!こいつ、あいじゃなかか!白糸台の!」
「うげ~…マジですか」
「…ま、よか」
「初仕事。やったるけん」
「おい。おい、おまえ。起きろ」
菫「すー…」
「おい。おまえ。起きろ」
菫「ん…」
「寝ぼけとう場合じゃなかぞ」ユサユサ
菫「ううー…」ギュッ
菫(誰…?ママ?うるさい…今日は休日だよ…)
「こんガキ…布団掴みやのっち。意地でも起きなか気か」
菫「プリキュアまでには起きるから…」ムニャムニャ…
「こいつ。いい歳こいてからに…いい加減に…!」ギュッ
菫(うるさいなぁ…)
菫「うみゅ…」モゾモゾ
「起きんかい!!」バサッ!!
菫「おわあああああ!?」
菫「いたたた…ぐお…腰打った…」サスサス
「ようやっとお目覚めか眠り姫」
菫「っ!?なっ!?なんだなんだ!?ってか。誰だ!?」キョロキョロ
菫(くっ!部屋が暗くて姿がよく見えない!)
「くくくくく…」
菫(携帯…駄目だ、枕元だ。布団ごと引き摺り落とされたせいで私が離れてしまった!)
菫「なんでこの部屋に人が居るんだ!?窓は鍵かけたし、第一此処は2階だぞ!」
菫(なんとか会話して注意を引きつつ明かりを付けて…)
「ふん。そんな事か。容易か事よ」
菫(眩しさに怯んだところを取り押さえる!この声は女だし…シルエットからも武器の類は持っていなさそうだ。いけるか?)ジリッ
「うちは魔法んマスコットやけんな」
菫「は!?」
「ふひひひ…やはり驚いたか」
菫(こ、こいつ!気狂いか!?)
「そしておまえはうちのパートナーとしての才能の保持者…らしい」
菫「!!?」
「お?動揺したばいな。そうやろう!そうやろう!」
菫「よ、世迷言を…」ジリッ
菫(こ、こいつ…本格的にヤバイぞ!)
「ふん。そう言われるんは分かっとったわ」
菫「あ、当たり前だ!」ジリッ
菫(放っておいたら何をするかわかったもんじゃない!先手必勝だ。やはり暴れ出す前に急いで取り押さえ、然る後に大声を上げて人を呼ぶ!)
「そして、そう言われた時の対策も」
菫「…言ってみろ」コツン
菫(…よし、リモコンが足に当たった。この部屋のライトは点灯するまでのログタイムが1~2秒ほどある。スイッチを押してすぐに仕掛けるぞ。それにこいつ、少し喋ってから大きく息を吸う癖があるな)
「よか。ならば聞くが良い」
菫(その時が何か語りたそうにしてるし、気持ち良さそうに存分語るが良い。隙を見て直ぐ様襲いかかってやる…!)ググッ
菫(今だ!足で明かりを…)カチッ
チカッ
「おまえには…」
チカッ
菫(そして…!その足に力を貯めて、直ぐ様奴の足元にタックルを…!)ググッ
「魔法少女の才能がある」
菫(今だ…って、え!?)
菫「…え」
菫「…魔法少女!?」ビクッ
「そう。魔法少女」
パッ
菫「…何言ってんだお前」
菫(…明かりが…点いた。最悪だ。攻めのタイミングを逃した)
菫(…くっ。奴の方が一枚上手だったか?癪に障るな。いや。だが、もう今更嘆いても仕方ない。別の手を考えるか)
菫(冷静になれ。相手は異常者だ。隙を見せずに相手を観察しろ。なに、麻雀でいつもやっている事だ。私には出来る。そうだな、まずは…)
菫「…すまないが、その前にまず、君が何者なのかを教えてくれないか?」
菫(『未知』は人を不安にさせ、相手をより大きく見せる。少しでも意味の分かる情報を得なければ)
「魔法少女とは、この世の法則より解放されしモノ。魔を操り、超常の力を行使する」
菫「聞けよ」
「…せからしかぁ」
菫「…ってか、君は、あれだな。その方言、博多の人だな?同い年くらいか?こんな真似をして…ご両親が泣くぞ」
「なんや。うちん事忘れとうん?かー!せからしか!せからしか!」
菫「忘れて…って、君は私の事を知ってるのか。いや、そもそも君のような…子…は…あー」
「思い出したばいか!!そーだ!直接やないけど、おまえんとこの高校っちは何度も戦っちいる!」
菫「…確か、新道寺の中堅の…」
仁美「江崎仁美たい!!」メェー
菫(なんだその鳴き声(?))
菫「…で。なんだってんだ一体。…ほれ、コーヒー淹れてきたぞ」スッ
仁美「どうも。ズズ…うん。良い豆使っちるね」
菫「これインスタント……って!だから!何だったんださっきのは!」ズイッ
仁美「まあそう焦んなさんな」
菫「人の家に不法侵入しておいて、よくもそんな言い草を…!」ワナワナ
仁美「うん。わかった。わかったから国語辞典振りかぶらんといて」ドードー
菫「…」コトン
仁美「言うても、大体主題は全部伝えたえましたしなぁ~」ズズー
菫「魔法少女がなんちゃらってのか」
仁美「うむ」コックリ
菫「今度は警察呼ぶぞ」ギロッ
仁美「タンマタンマ」アセアセ
菫「…はぁ。わかったよ。取り敢えず最後まで聞いてやるから。気が済んだら帰れ。ってか、なんで東京まで出てきてるんだお前は」
菫(いきなり凄いとこから話し始めやがったこいつ)
仁美「そしておまえはうちの相方の魔法少女足り得る素質を持っちる」
菫「はあ。それで」
仁美「うちと契約して、魔法少女になってよ!」メェー
菫「却下だ」
仁美「即答!?」メェー!?
菫「友人3人の内一人だけ魔法少女になれないような名前しやがって、何が『魔法少女になって』だ馬鹿馬鹿しい。生憎カルトや酔狂のごっこ遊びに付き合ってやれる暇は私には無い。お帰り願おうか」
仁美「まあそうつんけんなさんな」メェー
菫「五月蝿い。これ以上の会話は必要ないと判断させて貰った。君の与太話にいつまでも付き合ってやれるほど私の人間の器は大きくない。痛い目を見たくなければ早急にこの部屋を…」
仁美「あー…そーは言われてもうちだっておまえに契約してもらわんっち都合の悪かし」メッヘッヘッヘ
菫「くどい。そしてうざい」
仁美「それにね」
菫「…うん?」
仁美「契約せんと…後悔するよ?」ジーッ
菫(あれ…急に…眠気…が…?)
仁美「メーッヘッヘッヘ。秘技、羊催眠。うちやって魔法少女のマスコットとしてこんくらいはかけられるようになっちるんばい」
菫「ぐ…!」フラッ
菫(まさか…!ほ、本当に…魔法が…!?)
仁美「おまえ、魔法少女に憧れよったんやろー?んー?」グルグル
菫「何故…それ…を…」
菫(目だ…あの…目が…)クラクラ
仁美「プリキュア」
菫「…」
仁美「好いとっちゃんちゃなぁ?」
菫「け、けど…ま、魔法なんて、現実には存在しない…し…」
仁美「好いとっちゃんちゃなぁ?」
菫「…ああ…うん…」
仁美「ならなんば迷う必要のある事か。受け入れるのよか。契約せんね…契約せんね…」ゴゴゴゴゴ
仁美「ほれ…ほれ…契約しろ…契約しろ…『うん』と言え…『うん』と。それだけでええ…ええよ…そしたらおまえはその瞬間から人の枠を超越した魔人と化す…」グルグル
菫「ぐ…うう…こいつどう見ても暗黒寄り…」
仁美「ほれ!言え!!言って楽になれ!!メーッヘッヘッヘ!!」グルグル
菫「だ、誰か…助け…ぐあああ…!!」
仁美「さあ!『うん』と言え!!」グルグル
菫「こ…かっ…!」
菫(く、口が…勝手に…!)
菫「う、うう…う…」
仁美「うん!うん!うん!」
菫「ううー!」ポロポロ
仁美「言え!!さあ!!言え!!『うん』と!!」
菫「こ…」
仁美「…うん?」
菫「この…!」ガシッ
仁美(あれ…なんでうち首の後ろ掴まれと…)
菫「このうんこ野郎ーーーーーー!!」ゴスッ
仁美「ゴフッ!!?」
仁美(こ、腰の入った膝蹴り…!?)
菫「はぁ…!はぁっ!はぁっ!このっ!このっ!このっ!」ゴスッ ゴスッ ゴスッ ゴスッ
仁美「ラメ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙!!?」
仁美(すかさず首相撲からの連続ティー・カウ(膝蹴り)だとぉおおお!!?)
菫「ふっ!はっ!死ねっ!」ゴスッ ゴスッ ゴスッ
仁美「がはぁっ…!」
菫「はぁっ!はぁっ!くっ!」
仁美「」フラフラ
菫「これでどうだっ!!」ドゴォッ!!
仁美「かっ!?」
仁美(な、ナイス…)
仁美(ミドルキック…)
仁美「…メェー」バタリ
菫「…はぁ…はぁ…」
仁美「」シーーーン
菫「…や、やってしまった…いや、助かったのか?」
仁美「…」ピクピク
菫「…やり過ぎた。仕方ない。一応…うん。一応。このまま捨てるのも寝覚めが悪いし…起きるまで待ってよう…か……うん。一応…」
菫「…」
菫「…一応…な」
仁美「ボーダーデール!?」ガバッ
菫「起きたか」
仁美「こ、ここは!?」キョロキョロ
菫「私の部屋だ。不法侵入者」
仁美「ぬ。弘世菫!よくもやっちくれたな!」キシャー!
菫「まあ…悪かったよ。お前の方が絶対悪いと思うけど」
仁美「そいに、いつん間にか縄で縛られとう!?ぐお…しかも荒縄やけん。動くっち痛か!」
菫「悪いが、拘束させて貰ったよ。目が合うと怖いことになりそうだから、君の顔の向きも私の居る場所の逆だ。荒縄なのは…たまたま部屋にあったからだな」
仁美「なしけん荒縄なんかがたまたま部屋に…」
菫「黙秘権を行使する」
仁美「…焼いて食う気か」
菫「するか!!」
仁美「いやあああああ!!ジンギスカンはいやぁああああああ!!」
菫「ええい叫ぶなうっとおしい!お前の話、聞いてやるからもうちょっと詳しく聞かせろ!!」
菫「…」
仁美「…メヘヘヘ」ニヤニヤ
菫「…べ、別に…その…興味があるとか、そういうのでは無いんだが…」
仁美「ほうほう。純情乙女すみれちゃんは、受験生にもなって魔法少女に憧れちゃうんでちゅかー?魔法処女が」ニヤニヤ
菫「ギギギ…!!」
仁美「…で?何言わんっちしとった?『だが…?』『だが』、なんなん?うん?だが、魔法少女に…?」
菫「ふ、ふんっ!魔法少女?馬鹿馬鹿しい。そんなものが本当に存在するとでも言いたいのか?」
仁美「…」ニヤニヤ
菫「…くだらない」
仁美「…」
菫「…」
仁美「…」
菫「…ま、まあ、だが、もし」ソワソワ
仁美「…」
仁美「…」
菫「…仮に、そんなものが実在するというのなら」モジモジ
仁美「…」
菫「…なってやっても…良いけど…」ゴニョゴニョ
仁美「…」
菫「ば、場合によっては…だからな!!」
仁美「メェー…」
菫「あ、哀れみの声を出すな!!」
菫「…」
仁美「まあ、説明してからやっちもよかばってん『プリーズ』って言葉が欲しかなぁ」
菫「…」イラッ
仁美「契約前に魔法のマスコットボコって荒縄で縛ってベッドに放置とか…そんな魔法少女聞いたこともなか」
菫「…」
仁美「これは謝罪の言葉と『お願いします』って言葉が聞きたかなぁ~…」
菫「…」
仁美(くくく…勘違いすんなや。うちが上。おまえは下だ。その辺のとこきっちり条件付けたるけん)
菫「…」スッ
仁美「」ゾクッ
菫「…」
仁美「ひっ!?」
菫「…カリッ」
仁美(み、耳甘噛されとう!?)
菫「『プリーズ(お願いします)』」
菫「『耳噛み千切られたくなかったら言うべき事を全部話せ』」ゴゴゴゴ
仁美(こ、こいつ怖か~~~~!?)
仁美「わ、わかった。今は、話すから…」
菫「…ぷは」スッ
仁美(この胸の鼓動は…恋!?…では絶対に無い)ドキドキ
菫「…で?魔法少女がなんだって?」ドカッ
仁美(胡座かいて地べた座んなさんなや。いい年の女子が)
仁美「…魔法少女とは」
菫「…ああ」
仁美「この世の法則より解放されしモノ。魔を操り、超常の力を行使する」
菫「…それはさっきも聞いた。もっと具体的に」
仁美「…つまり、魔法を使って常人よりいろんな事が出来るって事」
菫「…」
菫「…何故そんなものが」
仁美「わからん。うちも『選ばれて』マスコットになっただけやし」
菫「選ばれて?」
仁美「ある日、突然な。目覚めたんやけん。使命に。パートナーになるべき魔法少女の才能ば持った少女ば探せっち」
菫「突然?」
仁美「うん。それ以外はわからん。で、そうは言われてもどうすれば良いのか途方に暮れていたところを…」
菫「…ああ」
仁美「『ある人』に、助けられた」
菫「ある人?」
仁美「そう。その人は、色々なことを知っていた。魔法少女の使命、マスコットの役割、そして、どうすればパートナーになるべき少女に出会えるのかも」
菫「…待って欲しい」
仁美「おう」
菫「…色々整理させてくれ」
仁美「…」
菫「そうだな。まずは、そう。突然目覚めた。そこだ」
仁美「…」
菫「どういう事だ?その…マスコットって、あれか?魔法少女に付き物の可愛い謎の生物ポジションって事だろう?」
仁美「然り」
菫「…どう見ても君、人間じゃないか…いや、若干羊っぽい見た目ではあるが」
仁美「なんで目覚めたんかはうちもわからなかった。ある日、部活帰りに帰り道を歩いていると突然頭に指令が来て、それに居ても立っても居られず衝動的にその足で東京行きの新幹線に飛び乗った」
菫「凄い行動力だな」
仁美「金が無かったんで駅員に催眠を…」ゴゴゴゴ
菫「あー!それはいいから!」
仁美「…だが、別に何をする為に東京に来たって訳も無かった。半日歩いて疲れて、もう帰ろうかと思った」
菫「なんて行き当たりばったりかつ無意味な…」
仁美「駅に向かう途中、折角だからスタバでも寄ってから帰ろうと思って、適当なスタバに寄ったところで…」
菫「…」
仁美「…『あの人』に出会ったんだ」
仁美「『あの人』はいろんな事ば知っちいた」
菫「…」
仁美「魔法少女の事、パートナーの事、そして、うちらがやるべき、いや、成さねばならぬ事についても…」
菫「…それは、誰だ」
仁美「…お前も知っているはずだ。有名人やけんな」
菫「有名人…だと…」
仁美「そう。その人は、魔法少女」
菫「!!」
仁美「…現存する、最強の魔法少女…!数々の異名を持つ…!!」
菫「…っ!」ゴクリ
仁美「『星の魔法少女』、『英雄』、『爆乳』、『もうそろそろちょっと年齢的にきつい』、『喰らう者』、『守護者』、『天使の屑(エンジェルダスト)』、そして『牌のお姉さん』!!」
菫「っ!それは、まさか!!」
仁美「瑞原はやり(28)たい!!」メェー!!
菫「はやりんだとぉおおおおおおおおお!!?」
菫「な…あ、あの人も魔法少女だと言うのか!」
仁美「この道10年の大ベテランだと!」
菫「凄いな!18で魔法少女デビューか!別の意味でも凄いな!」
仁美「まあ…兎に角。同じ魔法少女の波長を持つはやりんに声をかけられ、ついでになんか長ったらしい名前の甘ったるい飲みもん奢って貰いつつ話を聞いたのだ」
菫「で…!で…!はやりんはなんと!」
仁美(なんやこいついきなりテンション上がった)
菫「おい!早く!」ウキウキ
仁美「…で、だ。まず、魔法少女のなんたるかってのを教わったんやけど」
菫「うん!うん!」
仁美「その目的は」
菫「目的は!?」ワクワク
仁美「風潮被害を防ぐ事」
菫「…は?」
仁美「『風潮』被害」メェー
仁美「ん」コクリ
菫「…なんだそれ」
仁美「…この世には、様々な噂が流れている。正しい話も、全くを持って見に覚えもないような話も。それはわかるか?」
菫「…まあ」
仁美「風潮被害。それは、人々の悪意無き悪意が産んだ、恐るべき悲劇なのじゃ」
菫「口調変わってるぞ」
仁美「その被害に晒されたものは、無意識の内にその風潮に従った行動に向かってしまう。そう、あたかも…ほら、電柱…じゃなかった、あの、鉄の、高い明かり光ってるやつへ向かう昆虫のように」
菫「走光性を例に出してるのか?ってか、語彙力…」
仁美「おまえのように被害の軽い奴は良い」
菫「私も!?」
仁美「どころか、お前はもうかなり侵食されている。かなり進行が早い部類だ」
菫「な…!」
仁美「どんな影響があるのか、それは詳しくはわからない。もしかしたら。…あるいは。お前のその魔法少女好きすらも…」
菫「…」
菫「それ…は…」
仁美「恐るべきは、風評被害と違って、風潮被害には実際に本人がその行動を取ってしまうという点」
菫「…」
仁美「特に悪質な風潮は、大変なことになる。場合によっては、その尊厳の本質や命までも奪われかねない」
菫「…どうすればいい」
仁美「そのために魔法少女が居る」
菫「…」
仁美「魔法少女には、風潮被害を浄化する力がある。その力を使って、被害ば未然に防ぐのだ」
菫「…」
仁美「勿論危険はある。すでに風潮被害によって凶暴化し、悪辣の限りを尽くして暴れまわる者も居る。そいつらとは、戦う事になる。傷付く事もあるだろう」
菫「そのための、力…か」
仁美「…力ば貸せ、弘世菫。うちは力が欲しい。そのためには、お前の協力が居る」
菫「何故、そこまでして?」
仁美「…目的がある。とても、大切な。守りたいものも、ある。この国に住む、全ての人達の為に…成さねばならぬ事が…あるたい」
仁美「…」ギリッ
菫(決意の瞳。固く握られた拳。真剣な表情。…覚悟を持った人間の表情)
仁美「頼む!」ペコッ
菫(本気の声。彼女の態度に、嘘は無い。これは…信頼に値する人間のそれだ)
菫(江崎仁美。君は…いったいそこまでして、なんの為に戦う事を選んだ…?)
菫「…1つ、聞きたいことがある」
仁美「…答えられるなら」
菫「その魔法の力で、君は一体何を成そうというのか」
仁美「決まってる。風潮被害に苦しむ人の為。それが全て…!今、うちは誰からかもわからぬ『声』よりも、自分の意志で戦うことを望んでいる!」
菫「…そのために、傷付くことも、傷付けることも受け入れると?」
仁美「覚悟の上!!」
菫「…ふう」
仁美「…」
菫「…ま、どうせ、私もそんな事知って、放っておくわけにはいかんしな」
菫「ああ。試すような質問して悪かった」
仁美「なって…くれるか…!!」
菫「ああ。構わんさ。どうせ兼ねてより年甲斐もなく魔法少女に憧れていた身だ。こんなのも、やってみると案外面白いかもな」
菫「…例えそれが、風潮被害とやらに毒された結果だとしても、だ」
仁美「じゃ…じゃあ!!」
菫「ああ」
菫「いいだろう。なってやるよ、魔法少女!!」
菫「いいさ。それより、どうやって契約するんだ?こう、魔法のグッズとかあるのか?杖とか」
仁美「…」
菫「…何故そこで黙る」
仁美「…」ジリッ
菫「…なんだよ」タジッ
仁美「…魔法少女になるには、いくつかの条件がある」ジリッ
菫「お、おう…」タジッ
仁美「一つは、契約者に魔法少女としての才能がある事」ジリッ
菫「ああ…それは…さっきも、きい…た…」タジッ
仁美「ニつ目に、契約者と、そのパートナーの相性。うちにはお前。おまえには、うち」ジリッ
菫「そ、それも…把握してる」タジッ
仁美「三つ目。契約者とパートナーの間で、契約に関して合意の言葉が交わされる事。一方的な契約出来ない」ジリッ
菫「だからさっきあんなに『うん』と言わせようとしたのか…」タジッ
仁美「そして、四つ目。契約に関する合意が互いに為されたら、最後に…」ゴゴゴゴゴ
仁美「両者がキスする事じゃああああああああああああああ!!!」ガバッ
菫「『じゃ』は広島弁だ!!!!」
仁美「ムッチュー」メェーーー
菫「ムグッ!?」
菫(羊臭っ!!?)
仁美(さっきジンギスカン食ったからな)
菫(こいつ、直接頭の中に…!)
仁美(念話は基本)
菫(こんなタイミングで知りたくなかった!それに羊もどきのくせに羊食うな!そもそも人んち来る上にキス前提でんなもん食うか!?)
仁美「チューーー」
菫(…ってか)
菫「いい加減に離れろぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!」ゲシッ
仁美「メヘェエエエエエエエエ!!?」
菫「はぁ…っ!はぁ…っ!ぜぇ…っ!はぁ…っ!」
菫「う…ううう…ひ、酷い…は、初めてだったのに…うううう…」ポロポロ
菫(ファーストキスがジンギスカン味とか…)シクシク
仁美(ラムにレモンかけたからレモン味で可ばい)
菫「黙れ!死ね!!」ゲシゲシ
仁美(ぎゃああ!!)
菫「こ、この…変態羊!詐欺羊!強姦羊!その巻き毛全部刈り取って枕に詰めてやる…!!」ゲシゲシ
仁美(や、やめ…!痛か!あと、なんかに目覚める!!)
菫「こ、この…!!第一、何も変わってないじゃないか!!全部嘘か!!」プルプル
仁美「よーっこらせーっくす」ムクリ
菫「…」イラッ
仁美「いや。既に契約は成立しとる」
菫「…じゃあ、なんで変わんないんだよ!」
仁美「衣装は自前だ」
菫「…」ポカーーーーーン
菫「…そ、そうなのか?」
仁美「おまえまだレベル1やけん。別段他の魔法少女に比べて才能ある訳でも無いし」
菫「」ガーーーン
仁美「…ついでに言えば、武器とかもまだ無理っぽいな」
菫「ま、魔法は!」
仁美「ふむ…」
菫「」ドキドキ
仁美「おお。これは凄い」
菫「!!」パアアア
仁美「消しゴムのカスを狙ったところに飛ばせるとは。レベル1でここまで出来るやつは中々居ないかも。いや、他の例知らんが」
菫「役に立つかぁああああああああああ!!!」
菫「なんだそれ!なんだそれ!衣装も無い、武器も無い、おまけに魔法は消しゴムのカスをシャープシュート!?ふざけるな!!」
仁美「うちに言われても」
菫「そんなんでどうやって戦えってんだよ!!」
菫「…」ジトー
仁美「そこのベッドを持ち上げてみろ」
菫「…持ち上げ…って、無理だろそんな…」ヒョイ
菫「…軽」ポカーーン
仁美「どやぁ」ドヤァ
菫「…」
仁美「お前は、魔法少女が何故強いと思う」
菫「…魔法が使えるからだろ」
仁美 「それは決定的ではない」
菫「…強力な魔法の武器」
仁美 「少々役不足だ」
菫 「仲間との絆で奇跡を起こす?」
仁美 「それは確かに恐るべきことだ。だが無敵か、とは少し違う。もっともっともっともっと単純なことだ」ゴゴゴゴゴ
菫「…お前の言わせたいことは分かった」
菫(こいつたまに口調変わるなぁ)
仁美「反射神経、集中力、第六感、身体能力、特殊能力、耐久力、魔法、変身能力 etc etc」
菫「…」
仁美「しかし最も恐るべきはその純粋な暴力・・・『力』だ。人間達を軽々とぼろ雑巾の様に引き千切る」
菫「いや。人間引き千切っちゃ駄目だろ」
仁美「そして魔法少女はその力を自覚する事が出来る。単一能としてでなく 彼女の理知を持って力を行使する『暴君』だ」
菫「いや、正義…」
仁美「魔法少女との近接戦闘は死を意味する。いいかね弘世菫。魔法少女とは、知性ある幼い『魔女』なのだ。これを最悪といわず何をいうのか…」
菫(はやりんは既に幼くは…いや、これは口が裂けても言うまい)
仁美「そいでな?弘世菫。おまえは1つ勘違いばしとる」
菫「…なんだよ」
仁美「人間ば敵に回さない、思っちおるかもしれんけんの、そいな、間違いだ」
菫「何!?」
仁美「いや。確かに、人間では無か…っち言うても良かかもしれん。そん意味では、善良なる人類ば滅ぼす必要は存在せんのか…」
仁美「この国の為たい」
菫「…」
仁美「風潮被害も大事だが、手始めにまずは…そん力でマスゴミ在日中韓全部ぶっ潰すぞ!!」
菫「はあ!?」
仁美「決まっとる!こん国に巣食う蛆虫ども全部叩き潰す暴力が手に入ったんだ!そん力を行使せずにどげん使う!!」
菫「ば…お前、何言って」
仁美「手始めに朝日新聞に行っち一人残らず八つ裂きに行くぞ!さあ!HARRY!HARRY!HARRY!」
菫「ネトウヨだこいつ!?」
仁美「メーッヘッヘッヘ!!KYは空気読め無かやなくっち、自作自演でサンゴに刻んだイニシャルの事たーーーい!!」
菫「待て待て待て!!」
仁美「む?毎日変態新聞先んのがよかか?まい、そんならそんでからもよかの…」
菫「お前!さっき全ては風潮被害に苦しむ人の為が全てって…」
仁美「詭弁に過ぎん!!契約のためのなぁ!!」
菫「お前ってやつはぁあああああああ!!」
新しい風潮が誕生した
菫「あああああああこいつはもおおおおおおおおおおおおお!!!」
仁美「メェエエエエエエエーヘッヘッヘ!!!」
仁美「メエエエエエエエエエエエエエエエエッヘッヘッヘーーーーーーーーーーーーー!!!」
第一話
「サディスト菫とネトウヨ羊」 終わり
仁美「むっ!?」ピクッ
菫「なんだ。今度はどうした」
仁美「感じるばい…新たな風潮被害が誕生するのを…!」
菫(感じるって…)
仁美「仕方ない。国賊滅ぼすのは後ばい。まずは風潮被害の拡大し、取り返しん付かん事になるんば防がねば」
菫「お、そこは真面目にやるのか」
仁美「仕事サボっとったら、後ではやりんに叱られるからな」
菫「ふっ…」ニヤリ
仁美「…記念すべき初仕事だ。どうよ?気分は。…怖いか?」
菫「…そうだな」
菫(魔法少女の初仕事…か。ふふ…笑えてくるな。いや、本当はそんな状況では無いのかもしれんが…)
菫「…いや」
菫「楽しみだよ」
菫(私もまだまだ子供だな)
仁美「ちょっと待て…」
菫「…」
仁美「大阪だ!!」
菫「え…」
菫(ま、間に合うのか!?空飛ぶ魔法とか…)
仁美「明日ん朝だな。始発で行けば間に合うわ。ついでに朝食食べる時間もあっけん」ゴロン
菫「へ?」
仁美「今日はここ泊めてくれ。宿探すのダルい。金無かし」
菫「…そ、そんな…ユルいもんなのか」
仁美「ん」
菫「…だったら、私の風潮被害も誰か解決出来たんじゃ…」
仁美「軽度ん奴はよっぽど余裕なか限りほっちくけんね。実害なかし」
菫「そ、そういうもんなの…か?」
仁美「ん。それに、むしろその風潮被害を喜んで受け入れ、其れとともに生きていく選択ばした者も居る。風潮ってのはそんなもんだ」
仁美「ま、影響の深刻化したら大概助けるさ。ほとんどはそーやけん。最後に一気に風潮の暴走する、そんタイミングでしか感知も風潮退治も難しい」
仁美「やけん、うちもおまえの傍に来て、ようやくお前の中に風潮被害に影響されとうんわかったくらいやし」
菫「そういうものか」
仁美「ん。風潮ってのは、既にある部分ではそいつの一部なんだ。だから、普段は唯のそうしたいという欲求としてほぼ本人っち一体化しとる。やけん、最後の最後にそん欲望の暴走してから本人ば取り込む」
菫「取り込む…」
仁美「そん取り込もうっちした時ん意志ば、うちらマスコットは感知するとよ。ただ、そうと決めた意志も、動き出し表に出るんにパワーが居る。やけん出てくるまでにタイムラグのあるって事」
菫「…」
仁美「そん時ば叩く。そのタイミングで、しかも魔法少女にしか出来ん事たい。他でやったら、最悪本人は死ぬ」
菫「…」
仁美「わかった?」
菫「…済まない。博多弁で、少々噛み砕き切れなかった事がある。つまり…まとめるとどういう事なんだ?」
仁美「風潮被害が暴走したら本人が暴れるんで、そしたら魔法少女がぶん殴って沈める。風潮被害が収まる」
菫「…よくわかった」
仁美「メッヘッヘ…んじゃ、寝るわ」
仁美「おやすみ…」
菫「…って、待て!」グイッ
仁美「メッ!?」
菫「来客用の歯ブラシやるから歯磨け!風呂入れ!ジンギスカン臭いんだよ!!」
仁美「メェー…」
菫「風呂場はそっち!脱衣所の下の棚に歯ブラシもあるから!綺麗にして寝ろ!じゃあな!私は先に寝る!」
仁美「おま…んな適当な…」
菫「…すー…すー…」
仁美「うお…マジ信じらんねー。2秒で寝やのった」
仁美「…」
仁美「…やーい。キチガイ暴力女~」
菫「…」
仁美「…ちっ」
仁美「…ま、ただで使わせてくれんなら使ってやるメェー」トテトテ
大阪
仁美「やって参りました。食い倒れの街、大阪!」
菫「しまった…早く起きたからプリキュア録画するの忘れてた…」サアー
仁美「ん?どうしたん?同志菫。顔面キュアビューティだぞ」
菫「青い顔って言いたいのか…」
仁美「まあまあ。どうせアニメなんざ後でネットでゴニョゴニョして…」
菫「堂々犯罪宣言かこの羊悪魔!!」ギュッ
仁美「や、やめりぃ!首締めるな!」
菫「この…!ぷ、プリキュアを穢すな!それに、アニメはリアルタイムで見てこそその価値が…」ギシギシ
仁美「ま、待て!落ち着け!同志菫!今はそんな事をしている場合じゃない!!」
菫「ああん!?」メシッ
仁美「あ、あいつらを見ろ!!」ビシッ
菫「…あいつらって」チラッ
「あかん!これ以上はもう止めて!怜!!」
「喧しい!!今日こそは出るんや!!うちが勝つんや!!」
怜「硬っ苦しいなぁ竜華は!せやから、うちが愛する部の為に部費を何倍にも増やしてやろうって」
竜華「そんなんでお金増えても嬉しくない!!それに、怜アンタ、勝って帰ってきた試しないやろ!!」
怜「途中までは勝ってん!せやけど、あと一回勝ったら止めようって時に限って当たらんのよ!」
竜華「負けるまで打つからそうなんねん!!」
怜「えーーーい!五月蝿い五月蝿い!竜華うざい!うざい!!どっか行け!!」
竜華「そんな!」ガーーン
菫「…」ボーゼン
仁美「…風潮被害、末期に近い被害者だ」ヒソヒソ
菫「お、園城寺怜…」ヒクヒク
仁美「どうやら、この風潮被害はギャンブル中毒…っちいったところかね」
菫「あ、あの園城寺怜がここまで変わるのか…」
怜「…ん?お姉さん…どっかで見たことあるなぁ」
菫「あ…ああ。やあ。インターハイで会っただろう?弘世菫だよ。園城寺さん」
竜華「ああっ!これは白糸台の!すんません、エライ見苦しいとこお見せしてしもうて!ほら、怜!行くで!」
怜「んー…」
竜華「怜!」
怜「…ねえ、お姉ちゃん」
菫「なんだい?」
怜「ええ太ももしとるなぁ。ちょっとうちの事膝枕してくれへん?」
菫「は?」
竜華「怜!?」
怜「ね?ね?ちょっとだけ。ちょっとだけでええから~」クイクイ
菫「えーっと…」
竜華「怜!?急にどうしたん!?怜の膝枕はうちだけとちごたん!?」
怜「もう竜華なんかポイーや」ツーン
竜華「ポイー!?」ガーーン
菫(…どうしよう)
菫(羊!?なんだ、念話か…)
仁美『羊っち…まあよかや。これな、複合型かもしれん』
菫『複合型だと?』
仁美『そう。たまにな。居るんよ。風潮被害ばやたらに受けやすいやつ』
菫『と、言うことは…?』
仁美『参ったなぁ…話には聞いよったばってん、あんま居なかっち話やったし、初回でいきなり当たるっちは…』
菫『おい!風潮被害が複合したらどうなるんだ!答えろ!』
仁美『うん。風潮被害が重複したらな』
菫『ああ』
仁美『単純に強くなる』
菫「な…」
怜「…」ピクッ
竜華「…怜?」
怜「…」
仁美『おい。ルーキー。これはマズイかもしれんぞ』
菫「どうしました?」
竜華「あ、弘世さん。なんか、怜が急に動かなく…」
怜「…」
仁美『おい。聞いっちんんかアバズレ』
菫『黙ってろ。なんだか彼女の顔色が悪い。病弱な子だった筈だしもし何か有ったら事だ』
竜華「怜?怜?どうしたん?」ユサユサ
怜「…」ガクガク
菫「落ち着いて。あまり動かすのは良くない。今救急車を呼びますので、その後でゆっくり日陰に運びましょう」
竜華「あわわわ…怜?怜?いやや…こんなの初めてやん…ねえ…怜?怜?」ポロポロ
怜「…」
菫「ええと、すみません。彼女の行きつけの病院の電話番号などは…」
竜華「あ…そ、それは…待って下さい。今携帯を…」ゴソゴソ
仁美『おい!』
仁美『来るぞ!!』
菫「へ?」
怜「オールジークハイル!!」ブンッ
菫「うおっ!!?」サッ
竜華「怜!!?」
怜「ふははははははーー!!」
菫「な…」
菫(今…園城寺さんが殴りかかってきた…!!?)
怜「ふはははー!全てはヒトラー総裁の為にーーーー!!」
菫「…」
竜華「怜!!?」
怜「黙れ黄色人種!!うちは偉大なるゲルマンの魂なるぞ!!」
菫「…」
怜「ジーークッ!ハイルッ!!ジーークッ!ハイルッ!!ジーークッ!ハイルッ!!」ビシッ ビシッ ビシッ
仁美『トリプルだと!!?』
菫「トリプルって…ってか、お前念話使う必要なくないか」
仁美「…いかん。彼女はギャンブル中毒、セクハラおっさん、ネオナチ被れの3つの風評被害を受けていた…!」
菫「いきなり大盤振る舞いだな」
仁美「これは…新人には危険過ぎる…!!」
菫「はあ」
菫(なんでか危機感を感じられないのは)
怜「ジーークッ!ハイルッ!!ジーークッ!ハイルッ!!ジーークッ!ハイルッ!!」ビシッ ビシッ ビシッ
竜華「怜ーーーーー!!」
菫(この間抜けな絵面のせいなんだろうなぁ…)ゲッソリ
竜華「あかん止めて怜ーーーーー!!」
菫「えーっと…殴ればいいんだったか?」
仁美「だからー!危ないって…」
菫「大丈夫だって。たぶ…」
菫「な…どこに…」
仁美「後ろたい!!」
菫「え」
怜「ふふ…アカンなぁ。敵を前にしてアホみたく油断するなんて…」ボソッ
菫(耳元…!声!?馬鹿な、いつの間に…)
怜「アンタ、魔法少女やろ?きちっとわかっとるんよ…うち、今、体の奥から声が聞こえるん」
仁美「くっ…!暴走風潮被害たい!」
怜「アンタをここでやっつけんと…ウチ…消されてまうんやろ?それは嫌やから…」ガシッ
菫「がっ!」
菫(しまった…!羽交い締めにされ…!ぐっ!凄い力だ!)
怜「アンタをここでやっつける」ニヤッ
菫「こ、この…!」
菫(どう来る!?打撃…極め技…投げ技…な、なんとか反撃を…)
怜「覚悟しいや」モニュッ
菫(え…む、胸?)
怜「ふむ…太もももなかなかの物をおもちだと踏んでたが、おもちの方もなかなかのなかなか…」モニュモニュ
菫「ふぁ…」
菫(え…ちょ…なんで、胸…揉んで…)
怜「白いうなじもたまらんなぁ…」ペロッ
菫「ひゃんっ!」
怜「レローー…じゅるっ!」
菫「くんっ!」
仁美「おおお!?園城寺怜の細く長い指が同志菫の制服越しのバストを生き物のように柔らかく揉みしだき、同時に真っ赤な舌がゆっくりとねちっこく、絡めとるような蛇の動きで白い首筋を伝ってゆく!?」
菫(なんで官能的な実況してんだお前は!!)
怜「ふふ…感じとる…?可愛い声…飴玉転がしたようなちっさくて、可愛い悲鳴…」
菫(コイツもコイツでなんかアレだし!!)
怜「…はーむっ」パクッ
菫「うふっ!?」
菫「ちょ…」
菫(なんで清水谷さんまで実況してるんだ!)
怜「じゅぷ…じゅぶぶ…くちゅ…」
菫(耳がくすぐった…あふうう!?)
菫「ま、待って!」
怜「…ぷは。…な~に?」クスクス
菫「な、なんで、やっつけるでこんな、セクハラ紛いな…」ハァハァ
怜「ふふ…知らんの?あんた、新人さんやね」
菫「…」
怜「ええよ。教えたる」
菫「何を…」
怜「魔法少女は、処女しか成れんのよ」モニュッ
菫「ふあああああ!?」
怜「せやから、犯されたらあんたらはゲームオーバー…」モニュモニュ
菫(ちょ…!これ…まず…!)
怜「ふふ…可愛い。ええ子やね。強気な眼差しが涙で潤んで…唆るわ…」
菫(ま、待って待って待って…!)
怜「ロングスカートたくし上げて…ほら。もうひざ上まで来とるよ?ん?どうする?ん?」
菫「ちょ…や、やだ…」
菫『ひ、仁美!助け…』
仁美「最近んスマホはデジカメっちなんら変わらんけんなぁ。病弱系女子高生に後ろから羽交い締めにされて犯されるクールビューティーの図。これ、幾らで売れるかいな」パシャパシャ
菫『助かったらお前を真っ先に殺す!!助からなくても殺す!!』
怜「ここまでスカートたくしあげたら…うちの手、あんたの大事なとこ、弄れるよ?ん?どうする?ん?」ツツッ…
菫「ひ…」
菫(し、清水谷…さん…っ!い、一般人だけど、親友がこんな状態だったらせめて注意を引く援護射撃を…)チラッ
竜華「はぁ…はぁ…あかん…はぁ…怜…そんな、うち…はぁ…あんたのことは…はぁ…うちが一番愛してるのに…はぁ…そんな、寝取りだなんて…はふぅ」ビクンビクン
菫(寝取られて感じてるぅうううう!!?)
仁美「おや。こっちも風潮被害者やったか」パシャパシャ
怜「ふひひ…さあ、行くよ…今、うちの指があんたのあそこに入るよ?ほら、カウントダウン…」
菫「ひっ!い、いや…」
怜「3…」
菫「だっ!嘘だろ!?」
怜「2…」
菫「うううーっ!」ジタバタ
怜「暴れても無駄よ。さあ、1…」
菫(も、もうダメだ…!)
怜「ふひひひひ、ぜ…」
「はいそこまでーーー!!」
怜「!?」
菫「え…」
「マジカル☆ラリアーーット(はあと)」ドゴオ
怜「ちょ…ごふっ!?」ドカーーン
怜「が…こ、この威力…は…!」ガクガク
菫(園城寺さん生まれたての子鹿みたいになってる!)
「ふふふー。大丈夫?君。怪我…なかった?」
菫(いや…違う。今注目すべきはそこじゃなくて…)クルッ
「うん、大丈夫そうだね。けど、新人さんだからってはりきって危ない事、あんまりしちゃダメだぞっ☆」
菫「あ…貴女は…」
「でも、よくやったね。一人で、頑張った。あとは、もう、大丈夫だから。この私…」
菫「き、来て…くれたんですね…!」ウルッ
「ここは危ないよ。早く逃げて、みんな!はやりが来たからには後はもう大丈夫だから☆」
菫「瑞原プロ!!」
はやり「いえーっす☆はやりんだよー☆」キャルーン☆
菫「や、やったぁ!!」
はやり「はやりんはやりんマジカルきゅーん♪魔法少女☆プリティープリティーマジカル(はーと)はやり!推参っ!とうっ!」
仁美(このプロきつい…)
竜華「と、怜!大丈夫!?」
怜「許せん…!こ、この…!黄色人種の癖に…!日独伊三国同盟も忘れてうちの事360度回転する勢いでラリアットなんざ…許せへん!竜華もそう思わへん!?」
竜華「と、怜…!やっぱ、アンタは結局うちのとこ帰ってきてくれるんやね?」ジーーン
怜「一緒にアイツらやっつけよう」
竜華「うん!!」
怜(邪魔な元嫁は使い捨てたる)ニシシシ
竜華「覚悟しいやー!魔法少女どもーー!」ガオー
菫(風潮被害って怖いなぁ…)
仁美「ふっ。無事やったか」ヒョコヒョコ
菫「お前は後で解体して殺す」ギロッ
仁美「待て待て待て!こっそり命の恩人にそん仕打ちはいかんぞ!」
菫「ああ!?」
仁美「実は、携帯カメラでお前を撮影しとるごと見せかけて、はやりんに救助ば求めとったんだ」メェー
菫「お。お前…!?」ジーン
仁美「ふっ。よすたい。照れる」
仁美(まあ、写真は撮ったけど)
菫「はっ!そうだ!はやりん!か、加勢しなければ!流石に2対1では…」
仁美「そん必要はなか」
菫「え…」
仁美「あの人は、最強の魔法少女(28)やけんね」
菫「何?」
仁美「もうすぐ決着着くちゃ」チラッ
菫「な…」
仁美「よく見ておけ。あいの最強戦士ん戦い方だ」
菫(す、凄い…!やっぱり、はやりんくらいになると私みたいに不恰好な戦い方じゃなくって、こう、必殺技的な光線出したり出来るのか!?)
菫「べ、勉強させていただきます!」
菫(そして…ゆくゆくは、貴女に肩を並べられるような魔法少女に…!)
怜「がぶっ!?」
菫「予想外の超パワー型!!?」
はやり「か・ら・のー☆」ギシッ
竜華「怜ーーーーー!!」
はやり「マジカル☆餅つき式☆パワーボムー☆」ドゴォ!! ドゴォ!! ドゴォ!!
怜「」ゴッ ゴッ ゴッ
竜華「怜ーーーーーーーーーー!!!」
はやり「まず一人っ☆」ポイッ
怜「…」グチャッ
竜華「怜ーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
怜「」クタァ
菫「おい。あれ、死んでないか」
仁美「下、コンクリ…まあ、あれたい。今の園城寺怜は風潮被害の暴走で身体能力も大幅に向上してる設定だから…」
菫「設定言うな」
竜華「あわわわ…」オロオロ
はやり「逃げられない」ジリッ
竜華「ぐううう…!と、怜の仇ーーーーー!!」タタタタ
はやり「たあーっ!マジカル☆ベアハッグ(はーと)」メギョッ!
竜華「」ボギゴギッ
菫「なんか砕ける音…」
仁美「なんもかも政治が悪い…」
菫「…」
はやり「えいえいえい!追撃!追撃☆」メシッ ボキッ メコッ
竜華「」ガクガク
仁美「痙攣やばい」
菫「そろそろ止めた方が」
はやり「これでとどめだー!はやりん☆ブレーンバスター!」ゴキッ
竜華「」ゴッ
竜華「」チーン
はやり「ぶいっ☆」
菫「…」
仁美「惜しい人材を亡くした…」ナムナム
菫「おい!まだ死んで…ない…よな?」ヒソヒソ
はやり「大丈夫だよ!はやりの魔法で死んだ人はいないから☆」
菫「そ、そうですかー!」
仁美「もはやそれこそが奇跡」
はやり「これで二人が気付いたら、元通りになってるはずだよ☆」
菫「乱暴だ。やり方もそうだけど、アフターケアが何より乱暴だ」
仁美「流石近距離パワー型魔法少女(28)」
菫「そんな区分あるのか!?」
はやり「まあ、こんなところで立ち話もなんだから、二人共、一緒においで☆はやりが頑張った二人にご飯を奢ってあげる!」
菫「こんなパチンコ屋の前なんかに二人を放置したら、浮浪者に何されるかわかりません。連れてきますからね」
はやり「それじゃあここにしよー!」
菫「え」
はやり「…嫌?」
菫「いや…い、嫌って…訳じゃ…た、ただ瑞原プロとちょっとイメージが合わなかっただけで」
菫(ま、松屋…!?)
はやり「そう?じゃあ食券買ってねー。好きなの頼んで良いからね☆」
仁美「ココ壱の良かなぁ。安倍さん応援するつもりでカツカレー食えたんに…」ブツブツ
菫(こいつはこいつで微妙に図々しい事言ってるし!)
怜「あ、あれ…うち…」パチッ
竜華「うう~ん…あれ…?ここどこ…」ムクリ
菫(普通に起き上がった!)ビクッ
仁美(むしろ生きてた!)ビクッ
はやり「おっ!起きたね?少女達折角だし君たちにもご飯奢ってあげる☆」
怜「え…あれ?なんではやりんがこんなとこにおるん?え?あれ?あれれれ?」アワワワ
竜華「そんな…俄には信じられへんよ…」
怜「魔法少女…?風潮被害…けど、うち、確かにそんな事やったような…うう…」
菫「いいのか?こんあ簡単に何があったか話しても」ヒソヒソ
仁美「暴走状態から意識の戻るっち、風潮被害に合っとった時ん記憶は霞のかったごと虚ろげなんやけん。ばってん、やったこつは残るけん、アフターケアきちんっちやるなら、そこ説明してからやらんっち混乱するたいね」
菫(博多弁むずっ!)
怜「そ、そうだ!部費!部費はどうなったん!?」
竜華「あっ!確か、怜が持ってたカバンの中に部費入った茶封筒が…」
怜「…これや」スッ
竜華「…中身検めるで」
怜「…」コクン
竜華「…」ゴソゴソ
怜「…」
竜華「…中身、一銭も減ってへん…」ホッ
怜「」よ、良かったぁ…」ヘナヘナ
竜華「本当に、ありがとうございます」ペコリン
怜「もしうちがこのみんなの大切なお金使ってしもうとったなんて事になってたら…自分で自分許せなくなるところでした。本当に、感謝してもし切れないです」ペコリン
菫(なんか、こういうのいいなぁ…)
仁美「ん?あれ?けど、さっきの会話聞いてると初犯じゃないような…」
はやり「あー!きたきた!」
菫「へ?」
はやり「みんなのメニュー、来たよ!ほらほら、みんな!ご飯食べた食べた!」ズイズイ
仁美「おおう?」
怜「わっ」フラッ
竜華「おっと、大丈夫?怜」サッ
怜「うん…ありがと」
竜華「ええって」
はやり「」ニコニコ
菫(…ん?)
仁美「いただきまーす!」
はやり「ああん!おいしいとこ取られた!?」ガーン
怜「あはは…いただきます。瑞原プロ」ペコリ
竜華「いただきます。…ごちそうになります」ペコリ
菫(もしかして…)
はやり「とほほ…はーい。どうぞー」ショボーン
菫『瑞原プロ。瑞原プロ』
はやり「じゃあ私もいただきまー…って」
はやり『どうしたの?菫ちゃん…だっけ?』
菫『ええ。弘世菫です。今後共宜しく御指導御鞭撻お願い致します』
はやり『ふふ。真面目な子だなぁ。なーに?ご飯食べないの?』
菫『その前に1つ、伺いたいことが』
はやり『はいはーい☆答えれることならなんでも答えちゃいますよー☆』
菫「…」
はやり『んー?』
菫『…誰かがギャンブルで浪費したお金を把握して、その分だけお金を茶封筒の中に補充する魔法、とか使えます?』
はやり「…」
菫『…例えば、自腹ででも』
はやり「…」
菫『…その…結構な高給取りでも松屋でご飯食べざるを得なくなる…よう…な…』
はやり「…ふふ☆」ニコッ
菫「…」
はやり『はやり、わっかんなーい☆』
菫「…ふっ」
菫『ですよね』
仁美「カレギュウ大盛りおかわり!!」メェー!
第二話
「爆乳ロリ(28)と今月の給料」 終わり
「ふふ…面白い子、見ぃつけたぁ♪」
「…」
「私の遊び相手になってくれるかも♪」
「…」
「ね、そう思わない?」
「…」
「美子ちゃんも」
・まこがスタンド使いだという風潮
・ハギヨシ&京太郎はただのタコス師弟なのにそれ以上のガチホモだという風潮
・福路美穂子がヤンデレだという風潮
・蒲原と衣が仲がいいという風潮
・睦月が投牌戦士だという風潮
・照が方向音痴かつシスコンだという風潮
・菫が可愛いもの好きな乙女だという風潮
・亦野が歴戦を経た軍関係者だという風潮
・Megan Davinがおっさんだという風潮
・セーラがガスを出すという風潮
・泉がワキガだという風潮
・憧が売春しているという風潮
・宥が油ものの暖かい空気を浴びていた空調
・小走がなんでも解決してくれるという風潮
・ギバードがマジキチだという風潮
・霞の実年齢が社会人クラスだという風潮
・滝見春がデブだという風潮
・哩と姫子が花田ラブな風潮
・小鍛治がアラフォーだという風潮
・三尋木がヤクザの愛人だという風潮
いくつかつっこみたいがいろいろあるんだな・・・。
小走先輩はそのままでも何ら問題無いというか魔法少女より役に立つような気が
菫の部屋
菫「…」カリカリカリ…
菫(結局あの後、私達3人は園城寺さんと清水谷さんを家まで送って、新幹線で帰宅した)
菫(どこかの違法羊と違って瑞原プロはきっちりと乗車料金も支払っていたし、どころか私達の分の運賃すら支払ってくれた)
菫(曰く『これも社会人の務めだから☆』との事だったが、心苦しい所はあった。学生という立場ではあるものの、自分の幼さを思い知らされる気分でもあったからだ)
菫(東京に帰ってから、彼女はすぐに番組の収録があるらしく、直ぐにテレビ局へ向かってしまった)
菫(だが、電車の中で今後風潮被害退治の際に一緒に行動する約束を交わしたし、定期的な念話でのやり取りや魔法少女としての修行の方法の指導等もして戴ける事になり、実質的な師弟関係と言えよう)
菫(…助けて戴いた上に世話になりっぱなしで、情けないものだ。早く一人前…そう、魔法少女としても、人間としても一人前になって、恩返しをしたいものだな…っと)
菫「…」カリカリカリッ…トンッ
菫「…本日の日記終了、っと」パタン
菫「…ふう」
菫「…」
菫「…ところで」
仁美「…チュー」
菫「なんでお前うちに居るんだ」
菫「しかも何飲んで…って!おい!それ私が買って冷蔵庫に入れてた抹茶オレじゃないか!」ガタッ
仁美「この渋味と甘さの絶妙なハーモニーがなんとも…」チュー
菫「なーんで勝手に飲んでるかこの卑し羊は!」ギリギリギリ
仁美「ぐおおおおお!?頭が!頭が割れる…っ!?わ、分かった!分かったから離せ!!」
菫「ふんっ!」ポイーッ
仁美「メヘッ!」ドサッ
菫「お前は、ほんっとうに、なんて言うか、酷いな!」
仁美「おまえだって変わらんわ。このサディスティック魔法少女め。…いたたた。どういう握力してんだ」サスサス
菫「っていうか、どうやったら元に戻るんだ」
仁美「うん?」キョトン
菫「いや…魔法少女になったはいいけど、姿変わらないからこう、メリハリも付かんし、どうやって変身前に戻れば良いのか…」
仁美「ああ」ポンッ
菫「『ああ』って…私も今言うまで随分悠長だったが、お前は大概…」
仁美「変身解除ん方法はな」
仁美「…」
菫「?」
仁美「…ちょっとそこにまっすぐ立ってみろ」
菫「…こうか?」スッ
仁美「両拳を握って」
菫「…」ギュッ
仁美「脇を締めて、握り拳を鼻先まで持ってくる」
菫「…」スッ
仁美「身体を左右に揺するように動かし」
菫「…」ユラユラ
仁美「両足を交互に、膝から下だけ後ろに投げ出すように跳ね上げる」
菫「…」ブンッ ブンッ
仁美「リズミカルに、全て同時に」
菫「…なんか恥ずかしいなこれ」クネクネ
菫「…ま、まだか…」クネクネ
仁美「まだたい」
菫「うううう…」カアアア
仁美「まだ…」
菫「は、恥ずかし…」クネクネ
仁美「まだ」
菫「うううう…」ユラユラ
仁美「…」
菫「…」クネクネ
仁美「…」
菫「…」クネクネ
仁美「…まあ」
仁美「…別に念じれば戻るんばってんね」
菫「嫌がらせかこの野郎ぉおおおおおおおお!!!」
菫「ぐううう…!この羊頭のバフォメットめ…!!」プルプル
仁美「…まあまあ。ところで、念じてみな?元に戻るー元に戻るーっち」
菫「…」
菫(元に戻るー元に戻るー)
菫「…」ガクン
菫「…あ」
菫(今…何か、私の身体から出た…感じが…)
仁美「ん。元に戻ったな」ニコニコ
菫「…」
仁美「ん?どうした?」
菫「…なんだか、喪失感が…」
仁美「…ふ~~ん」
菫「…変身解除すると…なんだか、寂しい…ん、だな…」
仁美「…まあ、またいつでも変身すれば良かよ」
仁美「うん?」
菫「変身だよ!じゃあ今度はどうやって変身すれば良いんだ!?」
仁美「そーやねぇ」
菫「…嘘教えんなよ」
仁美「変身は条件付けよ」
菫「条件付け?」
仁美「ん。条件付け。訓練されれば解除の時みたく簡単にオンオフ出来るが、緊急に変身しなけりゃいかんタイミングもあっけんちゃろうしな」
菫「…それで?」
仁美「だから、初心者はまず、変身に儀式を織り込むたい」
菫「儀式って…」
仁美「まあ、一般的な魔法少女の『あれ』たいね」
菫「『あれ』…ってまさか…」
仁美「そう」
仁美「変身ポーズと名乗り口上。あと、変身後の名前も付けておこうか。切り替えって大事よ」
菫(あ、憧れてはいたが、実際にやるとなるときつい…)
仁美(おまえの考えとうこつが手に取るようにわかる)
菫「…け、けど…まあ、仕方ない…のか。うん。わ、私の体裁とか気にしてる場合でも無い…し…な…」ニヤニヤ
仁美(そいでやってみたい衝動に一瞬で負けやのった)
菫「え、えーっと…まずは、こうポーズ取って…こうして…ああ、こっちの方が見栄えいいかなぁ…」ワキワキ
仁美「…あんま複雑なん止しとけよ」
菫「あ、あと…前口上は…どうしようか。えーっと…『罪の無いみんなを苦しめる悪い風潮被害は、スミレにお任せ☆』…キャラじゃないな。クール系魔法少女の方針で攻めるべきか…」ブツブツ
菫「『優しい月光の光を浴びて闇を切り裂く…』いや、日中だったら格好が付かんな。えーっと…『あなたのハートを狙い撃ちっ!』…うん。この路線は良いかも。もうちょっと突き詰めて…」ブツブツブツ
菫「取り敢えず名乗り口上は保留として、後で辞書で良さそうな単語を拾っておこう。それより、魔法少女名。魔法少女名は非常に大事だぞ。これに大半がかかっていると言っても過言ではない」ウーーーン
仁美(凄い勢いで考えとっとうと…)
菫「そういえば、はやりんはなんて名乗ってるんだ?」
仁美「ん…ああ。あの人は魔法少女マジカル☆はやりん名乗っちるちゃ」
菫「なるほど…あの人らしい、実にシンプルかつ機能美溢れる美しい名前だ」ホウ…
仁美(わかんねー。さっぱりわかんねー…)
菫(そしていつかあの人と肩を並べられるように…)
菫「うーん…どうする?えーっと…やはり何某☆スミレで行くべきか。うん、そうだな。その系列で、私のイメージに合いそうな単語を…」
仁美「バイオレンス☆スミレ…サディスティック☆スミレ…シリアルキラー☆スミレ…」ボソボソ
菫「うーん…迷うなぁ…」ギリギリギリ
仁美「おおおお!?いつの間に足四の字の体勢に!?」
菫「ラブリー…ビューティー…いや、流石に烏滸がましいか…」ギリギリ…
仁美「がぁあああ!?あ、足が…!!」
菫「なあ、どうする?仁美。お前も良い名前有ったら考えてくれないか」ギシギシッ
仁美「や、やっぱりバイオレンス☆スミレじゃなかか!」
菫「まだ言うか!」メキッ!
仁美「ラメエエエエエエエ!!?」
仁美「…」ピクピク
菫「…おっといかん。もうこんな時間か」
仁美「なんや?どげんした?」ムクリ
菫「もう寝る時間だ。明日は学校だからな」イソイソ
仁美「受験生なんに自由登校まだなんか?」
菫「ああ…それでお前はあっちこっちふらふら出来るのか。受験勉強はいいのか?」
仁美「…まあ、うちはなんげななるけん」
菫「なんとかなるって?意外と頭いいのかお前」
仁美「ふふん」
菫「…まさか受験でも催眠を…」ジトー
仁美「せんわ!!」
菫「どうだか…まあいい。お前もさっさと歯磨いて寝ろ」
仁美「ういうい」
菫「…来客用の布団は、クローゼットに入ってるから」
菫「…なんで布団貸してやるだけでデレ扱いされねばならないんだ。私はそこまで鬼じゃないぞ」
仁美「そっか。おまえ、修羅ん類やもんな」
菫「ベランダで寝るか?」
仁美「それは勘弁」
菫「ったく…まあいい、おやすみ。明日帰ってきたら、また色々考えるぞ。お前も良いアイディア考えておいてくれよ」
仁美「メェー」
菫「なんだそれ…あふ…」
仁美「…」
菫「…本当、お前の顔見てたら…羊過ぎて…眠…く…な…る…」
仁美「…」
菫「…すー…すー…」
仁美「…おやすみ。菫」
仁美「…どーっこいしょーと」コロン
仁美「メッヘッヘ。ラテ飲んだくらいで歯なんざ磨いてられっか面倒臭か。こんまま寝かせて貰うに決まっちる」ゴロゴロ
仁美「…っ!」ビクッ
菫「うーん…」モゾッ
仁美「…」ドキドキ
菫「…仁美…」ムニャムニャ
仁美「お、起きんしゃいた?」ビクビク
菫「…歯…ちゃんと…みが…」
仁美「…」
菫「虫歯…歯医者…怖い…から…」
仁美「…」
菫「…くぅ」
仁美「…」
仁美「…仕方ない」ムクリ
仁美「やっぱ、歯ぁ磨いてくるか」テクテク
菫「んー…むにゃ…」
菫「それじゃあ、行ってくるよ」
仁美「ん」
菫「くれぐれも問題起こすなよ」
仁美「ん」
菫「…親御さんには連絡したか?」
仁美「ん」
菫「…本当にしたんだな?突然娘が消えたら、絶対に心配するぞ」
仁美「東京の友達んとこ泊めて貰って一緒に勉強しとる事になっとるばい」
菫「…」
仁美「ほれ、さっさち行かんか」シッシッ
菫「あ、ああ…わかった。それじゃあ行ってくるけど…」
仁美「なんかあったらすぐ念話せんねちゃ」
菫「ああ。わかってる」
菫(なんだか不安だなぁ…)
菫「着いた」
菫(…土日挟んだだけなのに、なんだか物凄く久しぶりに来たような気分だ…)
菫「…」
菫「…行くか」
照「あ、菫だ。おはよう」
菫「ん?ああ…照。おはよ…!」
菫「て、照!!?なんだそれは!!」
照「え?」ギュルンギュルン
菫「なんなんだその右腕はああああああああああ!!?」
照「え?右腕?」ゴウウウウウウウウン
菫「うおおおおお!!?」サッ
菫(な、なんかトルネード状の低気圧が掠めてったぞ!?)
照「あれ…なにこれ…」ギュルンギュルン
菫「しかも今気付いた風!!?」
ギュゴゴゴゴ
菫「うわあああああ!!?」ササッ
照「あっ!ごめ…大丈夫…」スッ
ギュリリリリリリ
菫「ぎゃあああああああ!!照!落ち着け!お前の右腕に纏ってる台風みたいなのが、お前が手伸ばしたら私襲ってくるんだよ!」サッ
照「わわわわ!ど、どどどどうしよう!菫!」
菫「そんなの私が聞きたいわ!」
照「ど、どうしよう!こんな腕じゃ授業受けれない!今日は学食のプリン安いのに!」
菫「ズレ過ぎだ!!このポンコツ!!」
照「ぽ、ポンコツって…」ウルッ
菫(なんだ!?誰だこいつ!こいつ本当に『この程度じゃ調整にもならない』とか言ってた宮永照か!?)
照「うえええ…」シクシク
ゴゴゴゴゴゴゴ
菫(低気圧が暴れまわって…はっ!まさか、これも風潮被害の一種か!?)
菫「くっ!」サッ
菫『おい!おい!羊!聞こえてるか!!』
仁美『うるっさいメェー。今おまえの部屋でハチクロ全巻読破にチャレンジしてるんだから邪魔すん…』
菫『うるさい!それどころじゃない!おい!感じるか!風潮被害だ!』
仁美『メェ?』
菫『タイムラグあるんじゃなかったのか!』
仁美『…おおう』
菫『なんだその反応!』
仁美『思ったより成長早いなぁ。さっきまだ大した反応やなかったから、放課後でも間に合うっち思っとったんやけど』
菫『お前の悠長さが原因かこの役立たず!!』
仁美『まあ、仕方なか。今から行くから、おまえそいつばなんとかしとけ』
菫「くっそ…!」サッ
仁美『幸い、まだ完全に暴走しとらんばい。今ならまだそんな手強くなか。ってか、多分風潮事態が…』
菫『なんだ!?』
菫「ショボイって…」
照「あ、淡だ。おはよう淡」フリフリ
ギュルルルルル
菫「おわあああ!?」ササッ
菫(どこがショボイんだ!!)
淡「うわ…テルーどうしたの?その手の凄いやつ。一昨日買った?」
照「うーん…いつ付いたのか…」
菫『羊ぃいぃいいいい!!』
仁美『せからしかぁ…能力の凄いんなら、多分本体のポンコツなんやちゃ』
菫「ほ、本体…だと…」チラッ
淡「それじゃあまた後でねー。テルー」フリフリ
照「うん。またね」フリフリ
ギュウウウウウウウン
菫「…い、いける…か…?」ゴクリ
菫「プリンの優先順位高いなおい!」
照「むっ!何言ってるの!私の優先順位の一番はいつだって妹の咲だよ!ペロペロしたい」
菫(こいつも複数の風潮被害を受けてるのか!?だが、羊の予想通りポンコツって風潮被害がその中に含まれてるなら…!)
照「菫?」
菫(能力はとんでもなくても、本体の強さは大した事が無いはず…!)ギロッ
照「あ、あの…どうしたの菫…怖い顔…」
菫(怖いのはあの右腕だけ…ならば…!)
照「すーみーれー」ピョンピョン
菫(後ろを取って…!)バッ
照「あれ?菫が消え…」
菫「足を掴んでうつ伏せに引きずり倒す!!」グイッ
照「ひゃっ!?」ズテッ
照「いたたた…」グスッ
菫(そしてすかさず腰に乗って…キャメルクラッチだ!)グギギギギ
菫「すまん照…だが、お前を救うにはこれしか…」メキメキ
照「腰!腰が死んじゃう!壊れる壊れる!」
菫「」ゾクッ
照「い、痛い…すみ…助け…」シクシク
菫「こ、これ…は…」
菫(照の泣き顔…)
照「うえええ…」グスグス
菫「…」ゾクゾクッ
菫(…いい)メキメキメキ
照「うあああああ!!?」
菫「ふ…ふふふ…いいな…この表情…」ニイー
照「あ…はぁ…はぁ…や、やめ…て…すみれ…私…これ以上…死んじゃう…」ポロポロ
菫「大丈夫。まだいけるさ」メキメキ
照「ふああああああ!!?」ジタバタ
菫(ま、まだ…大丈夫だよな?その…風潮被害のお陰で頑丈になってるはずだし…)ドキドキ
照「うああああ!!」
菫「もっと…もっと泣いてくれ…いい声で…」ゾクゾクッ
照「はっ…はっ…ご、ごめんなさい…菫…わ、私、なにか菫怒らせることした…なら…あ、謝るから…」
菫「いや、別にお前は悪くないさ…」ユッサユッサ
照「あああああああ!!」
菫「ところで、いつになったら消えるんだ?風潮被害」メシメシ
照「うぐ…うううう…」
照「」ガクン
菫「あ、落ちた」
照「」
菫「…ふう」
菫「風潮被害、退治完了…!」
仁美「なんばしよっとおまえは」
菫「ああ、仁美。見ろ。私一人の力で風潮被害を退治したぞ。意外とあっけなかった」
菫「ふふ…結構簡単なもんだな。まあ、油断は出来ないが、やっとこれで私も魔法少女として第一歩を歩んだ事に…」
仁美「…菫。おまえ…」
菫「ん?」
仁美「…おまえ、よくもまあ変身せず風潮被害を…」ドンビキ
菫「…」
仁美「…」チラッ
照「」ピクピク
仁美「…気絶してるだけたい。今のうちに変身して殴っとけ。前口上とか無くても、集中しまくれば出来るたい」
菫「…あ、ああ…」
菫「…」
菫「…」シャランラ
菫「…出来た…のか?この、何か温かいものに包まれるかのような多幸感というか、万能感というか…」
仁美「ほれ、ポカッと」
菫「…てい」ポカッ
菫「…なんか煙みたいのが出たぞ」
仁美「風潮被害の残滓たい」
菫「これが…」
仁美「…おめでとう。バイオレンス☆スミレ」
スミレ「その名前を定着させようとするな!!」
照「う・・・うーん・・・」
仁美「おっ。起きた起きた」
菫「あ、そうだ!照!だ、大丈夫か!?すまない!調子に乗ってやり過ぎた…」
照「あ、あれ・・・私…」フラフラ
菫(良かった…無事だった…)
菫「照…」
照「菫…?」
菫「…」
照「…」ボーー
照「…なんだかよくわからない…けど…」
菫「…」
仁美『こん子は特になんもおかしな事しとらんし、余計な説明して巻き込む必要も無かね。黙っちおこうか』
菫『…わかった』
照「あのね?菫」
菫「…なんだ」
照「私、菫に、お礼を言わないといけない気がするんだ」
菫「…照」
照「ありがとう。菫」ニコッ
菫「…」
菫「…ううん。こっちこそ…ごめんな…」ギュッ
菫「…」ギューーーッ
照「…?」キョトン
仁美「…風潮被害退治完了、やね」
照「…菫。あったかいけど、ちょっと痛い…」
菫「…あ、ああ。すまんすまん」パッ
仁美「…ところで、お取り込みのとこ申し訳なかんばってん」
菫「…ん?」
仁美「授業」
菫「あっ!」
照「ああっ!」
菫「い、急げ照!遅刻する!」
照「う、うんっ!」
菫「走るぞーーー!!」タタタタ
照「わかった!」タタタタ
仁美「いってらっしゃーい」
仁美「…」
仁美「…」チラッ
仁美「…」
シュルルル…
仁美「あー…」
シュルシュルシュ…バクッ
…
仁美「…モニュモニュモニュモニュ」
仁美「…」
仁美「…コクン」
仁美「…」
仁美「帰りにスタバ寄ってこ」クルッ
仁美「…」テクテクテク
仁美「…ケプッ」
第三話
「ポンコツ照と低気圧」 終わり
春「ポリポリ」
仁美「いたぞ!暴走風潮被害だ!」
菫「こいつが…!」
春「ポリポリ」
菫「…なんか食ってるな。黒糖か?さっき覗いた土産物屋にもあったし。で、これはなんの風潮被害だ?羊」
仁美「うーむ…」
菫「彼女は永水女子の選手だったな。見た感じどこも変わらないが…」
仁美「…デブだという風潮」
菫「何?」
仁美「…間違いない。この感じ、デブだっちゆう風潮たい」
菫「デブって…別に見た感じそんなんでもないが…」
仁美「それは暴走が始まったばっかだからやね。今黒糖食ってるから、多分放おっておいたらどんどんデブる…!」
菫「それはかわいそうだ…さっさと助けてやろう。手荒になるが許してくれよ」
仁美「変身せーよ」
仁美「お?前口上や決めポーズは諦めたか?」ニヤニヤ
菫「…まだ良いアイディアが無いんだ」
仁美「…まあ、頑張れ」
菫「さあ、行くぞ…!」ジリッ
春「ポリポリポリ」
菫「まずは様子見…」シュッ
春「ポリポリ」ポヨン
菫「何!?」
仁美「菫ん左ジャブがおっぱいに吸収された!?」
菫「な…拳が…抜けない…!拳法殺しか!」ジタバタ
春「ふふ…」ニコッ
菫「くっ!?」
仁美「菫!」
春「ばん」ゴスッ
仁美「腹に膝がめり込んだ!」
菫「こ、この…!」フラッ
菫(くっ!手、手が…胸から抜けない…なんだこれ!?藻掻けば藻掻くほど脂肪の奥に吸い込まれる…!)
春「ばん。ばん。ばん」ゴッ ゴッ ゴッ
菫「がふっ…!くっ!あぐぅ…」
仁美「菫!何おっぱい手に突っ込んだままヤラレっぱなしになっちるんだ!一回距離取れ!」
菫「そ、れが出来たら苦労しな…」
春「もう一回」ゴスッ
菫「かっ!」」ズルッ
菫「…」ペタン
春「膝から崩れ落ちた。無様。汚い。惨め。…ふふふ」
菫「こ、いつ…!調子に乗るなよ…!」
春「調子に乗ってるから、貴女の膝、踏んであげる」グリッ
菫「ああああっ!?」ビクビクッ
菫「あ…ぐぅ…!」
春「けど、苦痛に歪んだ顔だけは可愛いかも。ね、もっと泣いて。叫んで。その後で、ゆっくり犯してあげる」ギュッ
菫「うわあああああ!」
菫(くっ!手さえ自由になればこんな奴…!)
春「年下に踏まれて…だらしない悲鳴あげて…情けないね…」
菫(こ、この…!)
菫「くっそデブがぁあああああああああああ!!」ギリッ
春「っ!?」
菫「どうだこの豚野郎!ガキの癖にいっちょ前にでっかい脂肪の塊ぶら下げやがって!うっとおしいんだよこの!!」ギリギリギリ
仁美(僻みたい…自分だってそこそこええ乳しとる癖に)
春「い、いたたたたた…」
仁美「なんだ?菫おまえ何を…ああ。飲み込まれた手ば使っておっぱいに握撃かましとんのか」
菫「潰れろ。豚」ギチッ
春「い、痛い…や、やめ…あううう…」ペタン
春「や、やだ…もう…やめ…ちぎれる…」ハァハァ
菫「ふん。だがこんなんじゃ気絶はさせられないよなぁ…?」パッ
春「はぁ…はぁ…い、痛かった…」ギュッ
菫「おや、いいのか?便利な両手を大事な胸を隠すのなんかに使っていて」
春「え…」
菫「もっと大事な首が空いてるぞ」ニヤリ
春「ちょ…」
菫「ほっ!」スルッ
春「かっ!?」
仁美「出たーーー!バイオレンス☆スミレのフロントチョークばーーーい!!」
菫「その呼称止めろ!!」ギリギリ
春「…くふっ…!」ジタバタ
菫「残念。もう逃げられない」ギリギリ
仁美「おっとっせっ!おっとっせっ!おっとっせっ!」
菫「…」ギチギチ
春「あ…ふっ…!」ジタバタ
菫「…」ギチギチ
春「くっ…」ジタバタ
菫「…」ギチギチ
春「…」ジタ…
菫「…」ギチギチ
春「…」バタ…
菫「…」ギチギチ
春「…」パクパク
菫「…」ギチギチ
春「…おえっ」
菫「…」メキッ
春「ブクブク」
春「」ドサリ
仁美「流石ばい。暴力の権化」
菫「黙れ悪徳の権化」
仁美「さあって。そんじゃあ目的も達成した事やし、その子ん目覚めたらとっとと東京帰るかね」
菫「いいのか?お前の実家九州だろう?折角こっちにきたんなら顔くらい出していけば…」
仁美「そげな日も経っちなかし、気にするこつ無かっち」
菫「まあ、確かにお前に出会ってからまだ4日だが…」
仁美「宮永照の風潮被害倒してから順調たい。今が波の乗り時ぞ」
菫「そうだなぁ。あれから2件ほど解決してるが…っていうか、意外と多いな。風潮被害」
仁美「ん」
春「あ…あれ…私…」ヨロヨロ
菫「気が付いたか」
春「えっと…」キョロキョロ
菫「黒糖ばかり食べていては栄養が偏ってしまうよ?ちゃんとバランスの良い食生活を心がけるように」
菫『わかったようるさいなぁ…』
春「あの。貴女は…?」キョトン
菫「…」
菫「…通りすがりのおせっかいさ」
春「はい?」キョトン
仁美「ぶふっ!」
菫「…」カアアア
仁美「くっ…くくく…通りすがり…通りすがりのおせっかいって…」プクククク
菫「う、うるさい!行くぞ羊!」
仁美「わかったわかった。通りすがりの羊はクールに去るメェー」スタスタ
菫「こ、このやろう…!スタスタ
春「…なんだったんだろう。あの人達…」
春「…」
春「…まあいいや。神社のお掃除の仕事の最中だったし。お掃除の続きしよ」
春「…」サッ…サッ…
春「…あ」
春「おはようございます」ペコリ
春「…え?体調…ですか?ええ、別にこれといって悪くはありませんけど…」
春「…体重?やだ。私太ってないですよ?」
春「ほら、身体もこんなに軽い」ピョンピョン
春「…胸が揺れるのは仕方ないじゃないですか」ササッ
春「…というか、それは貴女にだけは言われたくないです…」
春「…お出かけですか?ええ、いってらっしゃい。いつも大変ですね」
春「霞さん」
「くすくすくす…」
仁美「まさか無人駅っちは…電車も1時間に1本とかクラスっちは…」ボーー
菫「お前のとこはもうちょっと発展してるのか」
仁美「大都会たい」
菫「そうかー」ボーー
仁美「そうよー」ボーー
菫「…さっき電車通ったばかりだから、次は…げ。50分後!?」
仁美「携帯ゲームでも持ってくれば持っちくれば良かかねー」
菫「勉強道具は持ってきたけど…この風景の中だとさすがになー」
仁美「糞マジメ」
菫「お前がふざけ過ぎなんだよ」
仁美「…はー。スタバも有るわけで無し。コンビニすら無し…」
菫「確かに喉乾いたな…構内の自販機で何か買うか。何飲む?」
仁美「ん。カフェオレ」
菫「はいはい。待ってろ。今買ってきてやるから」
仁美「んー?なんだってー!?」
菫「はやりんと来れなくて残念だってー!」
仁美「まあ、しょんないー!あん人社会人やし、大事な収録の重なっちしもたからなー!」
菫「だよなー!いや、わかってはいるけどさー!」
仁美「交通費だして貰っただけ感謝せなつまらんーー!」
菫「わかってるってーーー!」
菫「…まあ、それでも、あの人と一緒に戦ってみたいって思いは、中々誤魔化せないんだよな」ボソッ
菫(…だから、せめてまたあの人と一緒に戦えるその日までに、少しでも強く…強くなっておかなくては…)
菫「…っと。自販機の前に着いたか。えーっと、小銭小銭…」ゴソゴソ
菫「…」ピタッ
菫「…」
「…」
菫「…何か、御用ですか?」
「うふふ♪」
「貴女に…お礼を言いたくて」
菫「お礼?」
菫(…なんだこの感じ。なんだか…物凄く嫌な感じがする。まるで背中に凍りついた鉄柱でも突っ込まれたかのような…)
「ええ。お礼です」
菫「…身に覚えがありません」
菫(この声…どこかで聞いたことがあるような…?)
「いいえ。身に覚えがあるはず。とぼけても、むぅ~だ♪」
菫「とぼけてなんて…」
菫(くっ…!振り向かなければいけないのに、身体が云う事を聞かない…?)
「いいえ。私の大事な分家の子を…風潮被害から救ってくれたお礼、言わなきゃね」クスッ
菫「ふ…」
菫(何!?)
仁美『変身して前に翔べ!菫!!』
菫「っ!?」シャランラ
「あら」スカッ
菫「なっ!?何を…」
「ふふ…バレちゃった。結構勘の鋭い子ねぇ。それとも…ふふ。誰かが声をかけてくれたのかしら?」ニギニギ
菫「お、お前は…永水女子の…!」
霞「うふふ♪こんにちわ、弘世菫さん。石戸霞です。さっきは春ちゃんを助けてくれてありがとう」ペコリン
菫「な…今、何を…」
霞「何を…って。ちょっと肩を掴もうとしただけよ?そんなに怯えられても…傷ついちゃうわ」クスクス
菫(なんだ?こいつ…なんか…やばい…!)ゾクッ
仁美『菫!逃げるぞ!』
菫『は!?』
仁美『こいつはヤバイ!』
菫「ヤバイって…」
仁美『こいつは…こいつだけは…!この…この…!』
仁美『この『魔法少女プリティー☆かすみん』だけは危険過ぎるばい!!』
霞「」ニコニコ
菫「ま、魔法少女だとぉおおおお!!?」
霞「あら、もう気付いたの?」
菫「ば、馬鹿な!だって…お前、私も…魔法少女で…!」
霞「ええ知ってるわ。だって、貴女、この間大阪に居たでしょ?見てたもの」
菫「!!」
菫(園城寺怜の時か!)
霞「あれが初めての実戦で…無様な初戦ではあったけど、私の目は誤魔化せない。貴女…『持ってる』わ」
菫「な…」
霞「貴女から感じる才能の塊…強者たるべくして生まれた人間の匂い…闘争の匂い…血に飢えた野獣の匂い…」
菫「何言ってるんだお前…」
霞「貴女なら私の渇きを癒してくれる…一目見てそう感じた…そう。これは一目惚れ…」ジリッ
菫「何を…訳のわからないことを!!」
霞「貴女は知らないの?まだ気付いてないの?分からないの?いいわ。なら教えてあげる。貴女は同じ…私と同じ…そう…」
霞「それは貴女が私と同じ、生粋のドSの才能の持ち主だから!!」
菫「!!?」
霞「くすくすくす!気付いてないの?本当に!?本当に気付いてない!?嘘でしょ!?だって、貴女暴力を楽しんでる!!魔法少女になって良かったって思ってるでしょう!!」
菫「おい羊!魔法少女にも風潮被害はかかるもんなのか!!」
仁美「かからない…が、魔法少女になった時点までにかかっていた風潮被害は、消えない」
菫「!!」
仁美「魔法少女プリティー☆かすみん。九州最強の魔法少女にして、最新の魔法少女。その雷名は全国の魔法少女に響き渡っているという」
菫「九州最強…だと…」
仁美「風潮被害者として暴走5歩手前くらいで既に史上最大級の強大さを誇る風潮被害者だったのを、マジカル☆はやりんが三日三晩かけて取り押さえた化物中の化物」
菫「何!?」
仁美「だが風潮被害を浄化している途中で脱走し、数週間姿を消した後、魔法少女になって世に再び現れた」
菫「…」
仁美「大分浄化されて風潮の力は相当落ちてはいるものの、魔法少女としての才能も高く、新人ながらそこらのベテラン魔法少女数人を軽く凌駕する」
仁美「惜しむらくは、その風潮の凶悪さ故に、血の気が非常に多い事。強い者、気に入った者を見つけると、誰でも嬲ろうとする習性がある…らしい」
菫「なんだってそんな奴が…」
霞「だから、言ったでしょう?貴女…良いわ…その気の強い眼差し、威風堂々とした態度、知的な風貌、クールな佇まい、スラっとした抜群のスタイル…どれを取っても立派な王者然としていて…それでいてその本質は、ドS」
霞「隠し切れない血に飢えた獣の本性が見え隠れして…だからこそ…屈服させてしまいたい…叩き潰して…這いつくばらせて…泥まみれの顔を踏んで、命乞いをさせたいの…ねえ…わかるでしょ…」
菫「わかるか変態サド女!!」
霞「…良い」ゾクッ
菫「ひっ!」
霞「良いわ…その可憐な花弁のような唇から漏れる、鋭くハスキーな口汚い罵り声…ああ、でもだからこそその声で泣かせたい…鳴かせたい…啼かせたい…哭かせたい!!」
菫「…」ジリッ
霞「逃げられないわよ?ここは私のホーム。どこに逃げようと逃がさない。ふふふ…うふふふ…ふふふふふ…」
菫「…仕方ない…こうなったらもう、覚悟決めるぞ。羊」
菫「…」
菫「…羊?」クルッ
シーーーーーン
菫「あの野郎逃げやがったああああああああああああああああああああああ!!!」
菫「あの…あの羊…羊め…羊…くそう…!絶対後で刈る…刈り殺してやる…くそ…畜生…畜生…!」プルプル
霞「えーっと…いい?」
菫「…」
霞「…そんなにテンション下げられるとなんだかちょっと調子が狂うのですけど…」
菫「…いいよ。もうなんだっていいよ。かかってこいよ」クイクイ
霞「えーっと…じゃ、じゃあ、行きます」
霞(なんだか想像してたのと違う…もっとこう…お互い憎悪し合うような…そんなの期待してたのに…)シュン
菫「ん。来ないんならこっちから行くぞ奇乳」
霞「き…っ!?」
菫「先手必勝っ!」バッ
霞「しまっ…」
菫(こいつ、背が私より低い分リーチも短いし、胸がアホみたいにでかいから動きがトロそうだ。なら、まずヒットアンドアウェイで攻めて、冷静さを奪ってみるか)
菫(って訳で、ビンタ!)パーーーンッ
霞「痛っ!?」
霞「痛たた…」ヒリヒリ
菫(結構あっけなく入ったな…)
霞「よくもっ!」ブンッ
菫(掴みかかってきた!)サッ
霞「っ!?」スカッ
菫(…思った以上にトロいぞ?)
霞「くっ!」ブンッ
菫「ふっ!」ヒョイッ
霞「またっ!?」スカッ
菫(…念のため、試してみるか)
菫(もう一発ビンタ!)パーーーンッ
霞「あうっ!?」
菫「…あれ?」
霞「う…ううう…」ヒリヒリ
霞「あうっ!?」ヨロッ
菫「…」パーーーンッ
霞「あぐ…!」
菫「…」パパパパパパーーーーン
霞「あ、あふ…」ペタン
菫「…え」
菫(蹲った…)
霞「…」
菫(…罠か?)
霞「…」
菫(…ちょっと腹に蹴りいれてみようか?)
霞「」ウルウル
菫「…気が引けるなぁ」ゴスッ
霞「うぶっ!?…がふ…!」
霞「かふっ…!えほっ!えほっ!」
菫「…嘘だろ…」
菫(私が強くなったとか…な、訳…無い…よな…?幾らなんでも九州最強がこんな手応えない訳…)
霞「ふ…ふふふ…ど、どうしたの…お、おいでなさい…こ、この程度じゃ私は倒せ…」ガクガク
菫「膝震えてるぞ」
菫(…結局、噂なんてこんなもん…なのか…?それとも、名を騙った紛い物か…何にせよ、期待はずれで面白くも無い…)
菫(…って、私は何を考えてるんだ)ブンブン
霞「ぐっ…!はぁ…はぁ…!く…だ、駄目…もう立てない…」ペタン
菫「…もう止めにしようか」
霞「はぁ…はぁ…」
菫「…なんか、弱いものいじめな感じでその…気分悪いし…」
霞「ペッ」
菫「…」ビチャッ
菫「…」ビキッ
霞「ああああああああ!!」
菫「…」
霞「はぁ…はぁ…はぁ…」
菫「…流石にもう駄目だな。これ以上は…」
菫『…はぁ。羊。おい。終わったぞ。なんかやたら弱かった。逃げたの許してやるから戻ってきて…』
仁美『いいから今のうちに逃げろ!!』
菫『はあ?だから、かすみんはお前が言ってたより全然弱…』
仁美『馬鹿!!かすみんはまだ…』
菫「っ!」ゾワッ
菫「っ!?」クルッ
菫「…」
菫(だから…!)
美子「…」
菫(…だからいつの間にお前らは湧いて出てくるんだよ!!)
美子「…」クイクイ
霞「美子…ちゃん…」
美子「…」ナデナデ
霞「…ふふ。ありがとう。痛いの、撫でてくれてるのね?」
美子「…」コクコク
霞「うふふふ…痛いのが飛んでいきます…」ナデナデ
美子「…」キュー
菫「なんだあいつは…」
仁美『菫!おい!?どげんした!?菫!』
菫『仁美…お前の友人が居るぞ』
仁美『は?』
菫『インハイで私と対戦もした…ええと、なんだったかな。安河内美子さん。彼女が石戸霞のパートナーか』
仁美「なんやっち!?」ガサッ
菫(なんで駅の対面の植え込みに居るんだよ)
仁美「美子…」
美子「…」ジーッ
仁美「…ひ、久しぶり…」
美子「」プイッ
仁美「…っ!」
菫(なんだ?)
美子「…」クイクイ
霞「ん…そうね。ちょっと、遊び過ぎたかもね。結構ギリギリだったわ…ちょっとだけ手加減してくれてたから怪我しないで済んだけど…」
菫「ん?」ピクッ
美子「…」
霞「ふふ…わかったわ。これが終わったら、二人で一緒にチキン南蛮食べに行きましょうね?」ナデナデ
美子「」コクコク
菫(だから、何故お前たちマスコットは共食い(?)をしたがる)
仁美「…菫。気を付けろ」
菫「無理するなよ。一発小突いたら崩れ落ちそうだぞ」
霞「ふふ…気にしなくていいのよ」
菫「…」
霞「終わるのは貴女だから」シャランラ
菫「な…」
菫(馬鹿な!?ま、まさか…まだ変身していなかったと言うのか!!?)
霞「変身!」ピカーーーッ
菫「発光っ!?」
菫(いいなーーーーーー!!)
霞「フレッシュ・プリティー・キャルルルーーン♪」クルクルー
菫「前口上と変身ポーズまで!?」
霞「ちょっとヤンチャでドジっ子だけど♪」キュピーン
霞「正義の心で悪い子には♪」
霞「お仕置き」クスッ
霞「くすくすくすくす…」ニヤニヤ
菫(非常に悪い顔してる!!)
霞「愛と正義と希望と憎しみの魔法少女、プリティー☆かすみん、ここに推参♪」ビシーッ
菫「…」
霞「…」
美子「…」
仁美「…」
霞(決まった…!)
菫(くっ…!悔しいが格好良い…!!)
美子「…」
仁美(この業界きつい…)
菫「くっ…!さっきまで変身もせずに戦ってた…だと?馬鹿な。何のためにそんな事を」
霞「ふふ…ハンデよ」
菫「ハンデ…だと?」
霞「ええ。正直結構ダメージ大きいのだけど…けど、それくらいでもしないと、今の貴女じゃ余りにつまらなすぎるから」
菫「つまらない?」ピクッ
霞「ええ。退屈と置き換えてもいい。サメとメダカくらいの戦力の差があるから…」
菫「…!」ギリッ
仁美(あ、いかん。挑発にがっつり乗っちる)
仁美「お、おい菫。ちょっと冷静にだな…」
菫「…」ゴツン
霞「…くすっ」
菫「…」
霞「…」
仁美(…デコぶつけてメンチ斬り合っちる)
霞「あらあら。尻に付いた殻も取れない稚魚の間違いだったかしら?世の中を知らない小物はどちら?」
菫「世界で初めて稚魚に負けた鮫を演じてみるか?自信過剰」
霞「トラウマになるくらい世の中の仕組みを叩きこんであげる。世間知らず」
菫「…殺す」
霞「潰す」
菫「くくくくくく…」
霞「うふふふふ…」
菫「来いよ。小娘。可愛がってやる」ニヤニヤ
霞「おいで。お嬢ちゃん。相手してあげる」ニヤニヤ
菫「…ふふふふふ…」
霞「・・あはははは…」
菫霞「「あーっはっはっはは!!」」
仁美「メ、メェー…」
第四話
「クスクス霞と無言のインコ」 終わり
哩さんも人妻風潮があるんですがその辺は……
仁美「…」
美子「…」
仁美「…あの」
美子「」プイッ
仁美「…」
仁美「…わかった。話しかけんばい」
美子「…」
仁美「…はぁ」
仁美(いやぁー…参った…)
仁美「…」
仁美(参った参った…)
霞「うふふ…ねえ…もう終わり?ねえ…ねえ…?私まだ30%も出してないわよ?ねえ?」グリグリ
菫「ぐ…うう…この…!顔を…踏むな…!」ボロッ
仁美(まさか、ここまで実力ん差のあっけんっちはねー。やっぱ逃げとくべきやったか)
菫「ぶっ!黙れ…奇乳…気持ち悪いんだよ豚」
霞「顔地べたに擦りつけて言う台詞がそれ?良いわ…身の程をわかってない感じが実に良い…ねえ?ゴミクズさん」グリッ
菫「がっ!」
霞「ふふ…でも…綺麗な顔を踏み躙るのは興奮するけど、あんまり汚したら駄目よね。後でクシャクシャに歪んだ泣き顔を拝むんですもの」スッ
菫(顔から足を退けた…?)
霞「ほら、立ちなさい?仕切りなおしましょうよ」
菫「くっ…」ヨロッ
霞「先手も取らせてあげる」
菫「…後悔させてやる!」
菫(さっきは打撃を全部裁かれた。こいつ、打撃防御が半端じゃない。それなら今度は組み技で仕掛ける!)
菫(おあつらえ向けに向こうは巫女服、柔道着とつくりは大体同じだ。投げ飛ばしてやる!)
菫「獲った!」ガシッ
霞「うふふふ…」
菫(よし!このまま背負投げで…)ググッ
霞「うふふ…うふふふふ…」
菫(動かない…)
霞「馬鹿ねぇ…こんな子供騙しの技で…」グイッ
菫「なっ…!」
霞「私に…勝てるとでも…」グググ
菫「ぐあ…」ヨロッ
菫(や、やばい…後ろを向いたまま押し潰される…)
霞「襟が開いてしまったわ。でも、それだけ。うふふふ…寝技に持ち込んで欲しい?…嫌だって言っても押し倒してあげる」ググッ
菫(だ、駄目だ…耐えられ…ない…)
霞「えいっ!」ギュッ
菫「」グシャッ
霞「よいっしょ」ギュッ
菫(胴を脚で挟まれた!)
霞「送り襟絞め」ギュッ
菫(喉…!締められ…っ!)
霞「えいっ♪」コロン
菫「ぐえっ!」
菫(仰向け…!まず…い…)
霞「…」ギュー
菫「かっ…」
菫「が…ぁ…」バタバタ
菫「…」
菫「」カクン
霞「はい、また私の勝ちですね」スッ
菫「ひゅっ!?こふっ!けほっ!えふっ!」
霞「くすくすくす」
菫「はぁ…!はぁ…!はぁ…!」
仁美(一方的過ぎる…ああやっち落としたりダウンする度に技ば解いて仕切り直させるとよ。これは心の折れる…)
霞「ふふ…良いわぁ…まだ心が折れないのね…殺意が消えないのね…良い…良いわ…貴女」
菫「ふ、ふらへんら…」ヨロヨロ
霞「今回は味見だけのつもりだったのに…食べ過ぎちゃうかも…」クスクス
菫「ら、らめんら…」
仁美(駄目やん。もう呂律も回っちなか…今すぐにでも奴から逃げなかっち、壊さるる)
霞「さあ、次はどうする?また殴りかかってくる?それとも、組み合う?寝技はお勧めしないわ。私の得意分野だから」クスクス
菫「あ…う…」ガクッ
霞「あら。それとも…ここで終わってしまうの?」
菫「~~~っ!」ガリッ
霞「っ!」
菫「…いて」ツーッ
霞「…くふ…くふふふ…くふふふふ…!舌を噛んで気付け…!!やっぱり最高…!!」
菫「…ふん」ゴシッ
菫(さて、どうしたものか…)
菫(ちょっと…今の私じゃ手に負えないなぁ…こいつ)
菫「五月蝿い小娘が。ちょっと待ってろ、今直ぐにお前に屈辱を味あわせてやるから」
霞「まあ!怖い!」クスクスクス
菫(むかつく…!!)
霞「…いいわ。なら5分だけ待ってあげる。けど、もしその間に何も思いつかなかったら…そうね。もう貴女、いらないわ。魔法少女を引退させてあげる」
菫「…っていうのは」
霞「犯して…壊して…捨てるの」
菫「…ふん。いつまでも余裕の上に胡座かいてると、足元を掬われるぞ。天狗」
霞「ふふふ…じゃあ、今から5分…」
菫(ふぅ…)
菫(…もしこれで相手が羊みたいな奴だったら…)チラッ
仁美「…」ソワソワ
菫(1分くらいしたら問答無用で襲いかかって来そうだが。まあ、この糞生意気な餓鬼ならそんな事はしまい。性格的に)
菫(その間に、何か奴に一泡吹かせる策を練らなくては…)
菫「…」
菫(殴りに行ったら捌かれる。投げに行ったら潰される。組んだら寝技に持ち込まれてアウト。極め技…?どうやってそこまで持ち込むかもわからないな)
菫(…魔法は、消しゴムのカスを好きな場所に飛ばせる、だっけか。使えん)
菫(…割かし詰んでないか?これ)
菫「…」
霞「2分経過ー」
菫(ここは…やはり、癪だがなんとか逃げて後日リベンジだ。絶対に地べたに這い蹲らせて土の味を叩きこんでやる)
菫(…逃げる策…かぁ)
霞「3分ー」クスクスクス
菫(逃げる策…どうやって逃げる?走って逃げる…?いや駄目だ。あいつの機動力がわからんし、第一ここはアウェーだ。土地勘が無い場所で逃げ果たせる相手では無い)
霞「ふふふ…4分…」
菫(だったら、ここはやはり…)
霞「4分30秒」クスッ
菫(…電車か)
菫(次の電車は…カウント終了の3分後か。中々良いタイミングだ)
霞「25-」
菫(結構経ったんだな。遊ばれていたとはいえ、奴相手によくここまで無事で入れたものだ)
霞「20-」
菫(だが、カウントが終わったら本気で来るかもしれん。いや、あの口ぶりと性格からして、絶対に来る)
霞「15-」
菫(3分…保たせて、隙を作って電車に乗り込む。いけるか?)
霞「10」
菫(…いや。それだけでは駄目だ)
霞「9」
菫(電車に一緒に乗られたら詰む)
霞「8」
菫(電車に飛び乗り、同時に奴が乗り込めないように仕向ける必要がある)
霞「7」
霞「6」
菫(ここは無様でも距離を取って応戦するしかない…か)
霞「5」
菫(…よし。来いよ。糞アマ)
霞「4」
菫(そっちが全力で来るなら)
霞「3」
菫(こっちだって全力で相手してやる)
霞「2」
菫(精々気を付けるこった)
霞「1」
菫(うっかり喉元食い千切られんようにな)
霞「ぜ…」
仁美「メェッヘッヘッヘーーーーーーーー!!!」
霞「…へ?」
仁美「動くなきさんらー!」
菫「きさんらって…私も?」
霞「もう…何よ羊ちゃ…ああっ!!?」
菫「…」
菫「…おお…もう…こいつは…」ガックリ
仁美「こんおなごしん命は預かったーーーー!!」グイッ
美子「…」
霞「美子ちゃん!!」
菫「お前…」
仁美「おおーっとぉ!動くんじゃねぇ!一歩でも動いたらこん女の大事な冠羽がバッサリよ!!」シャキーン シャキーン
菫(どっからハサミ出した)
霞「やめて!威嚇でもやめて!!お願いだから!!」
仁美「動くんじゃなかぁあああああああ!!」シャキシャキシャキシャキシャキシャキ シャキーン
菫「お前…その子、チームメイト…」
仁美「メェエエエエエッヘッヘッヘーーーー!!」
霞「やめて!お願いだから!ねえ!!」
仁美「なら交換条件…分かっとるよなぁ?ええ?」
霞「くっ…!わ、分かったわ…あなた達にはこれ以上手を出さないから…」
菫(こっちが完全に悪役だ!?)
仁美「おおん?手を出さないから?随分と強気に出たもんたいなぁ?あん?」
霞「こ、この…!」プルプル
菫(やめろ!無駄に挑発するな!)
仁美「手を出さないで下さいお願いします…やろ?」メェー
霞「て、手を…出さないで…下さい…!おっ!ねっ!がい…っ!しますっ!!」プルプル
菫(くっ!悔しいが超気持ちいい!!今回ばっかりはちょっとだけ褒めてやる羊!!)
仁美「メェハァッハァアアアア!!」
ガタンゴトンガタン…
霞「」ギリギリ
菫「…電車、来た」
仁美「ふん…ならば行くぞ菫。王のように。勝者のように」
菫「…なんか、すまん」ペコリ
霞「次は…殺すわ…」
菫「…」
霞「…はっきりと分かった。やはり貴女…くだらない。あんな羊如きに助けられて…そんなゴミ…要らない…」
菫「…お前はその羊に一杯食わされたけどな」
霞「っ!!」
菫「…ふん」
霞「…覚えてなさい。弘世菫」
菫「覚えておいてやるよ。プリティー(笑)かすみん」
霞「っ!!」ギシッ!!
仁美「おい!早く乗れ!」
霞「…雑魚が調子に乗るな」
菫「…」クルッ
ドアガシマリマース
仁美「…」ドン
美子「…」ヨタヨタ
霞「…大丈夫?」ギュッ
美子「…」ピトッ
プッシュー
菫「…」
ガタン…ゴトン…ガタン…
菫(…次は殺す…か)
菫(悔しいが、今回は完敗だ。力も、技も、経験も…)
菫(…だが、覚えてろよ。糞女。今度会った時こそは…)
菫「…私が勝つ」ボソッ
菫「…ふう」
仁美「…ふう」
菫「…仁美。すまない、今回は助かったよ。とっさの機転だったな。必死に策を考えたが、結局逃げるまでの時間稼ぎにすらならないような手段しか思い浮かばなかった」
仁美「だろうっち思っとったんたい」
菫「…そうか」
仁美「ばってん今回はお互い様ちゃ。うちも他に色々やっちみたの、結局時間内までには不発やったし」
菫「ん?」
仁美「いやぁ、まあ、でも結果オーライか?多分今頃…くくくくく」
菫「…どうした?何か他に策が有ったのか?凄いな。私には全然思いつかなかった。参考までに教えてくれないか」
仁美「メッヘッヘ…よかよか。今頃きっと面白かこつになっちるし、特別に教えてやる」
菫(面白い事?)
仁美「ちょい耳を拝借」
菫「う、うん…」
仁美「ヒソヒソ」
仁美「メヘヘヘ。どうよ。最高だろう?…って、ん?どげんした菫。頭抱えて」
菫「今回は完敗だ…!」
仁美「ん?あー…まあ仕方なか。奴は特別たい。やけん今度は喧嘩売るにしてからも、もうちょっと与し易い奴だけ選んで因縁付ける事に…」
菫(完敗だ!力も、技も、経験も…!)
菫(そしてなにより…)チラッ
仁美「まあ、このうちの叡智さえあらば、大抵ん奴はなんげななるっち思うのなー!」
菫(パートナーの性根において!!)ガックリ
仁美「メーーーーヘッヘッヘーー!!」
霞「ごめんね?美子ちゃん。私がついあんな女に夢中になっちゃったせいで、貴女を危険な目に遭わせてしまって…」
美子「…」フルフル
霞「…ありがとう、優しいのね…」ギュッ
霞「…」
美子「…」ナデナデ
霞「…ふふ。私、駄目ね。美子ちゃんにはお世話になってばかり」ギューッ
美子「…」
霞「…おねえさんキャラ…たまに、しんどいな」
美子「…」
霞「…」
美子「…………あ」
霞「!」
美子「…あの…ね」
霞「…」
霞「…」
美子「おないどし…だから…」
霞「…」
美子「あまえても…いい…よ…」ポンポン
霞「…」
霞「…ありがとう」ギュッ
美子「…」ナデナデ
霞「…」ギュー
霞「へっ!?」ガバッ
「あらー。どげんかっかで見た格好のべっぴんさん居るって思っよーねぇ、石戸さんとこん霞ちゃんこつせんかー」
「隣の子は都会の子かねー?ぎやまん付けとるねー」
霞「え?えっ!ちょ…ご、ご近所のご老人会のみなさん!?」
「霞ちゃんおっぱい見えちょるじーー」
霞「え…あ…きゃあ!?」ババッ
「立派に育ったなぁー。こっさめ来た頃まだこーんなちっちゃかったちー」
「霞ちゃん小さい頃から田吾作さんとこの牛っこの乳好きだったからー」
「じさま方、そりゃ『せくはら』言じゃっとよー」
「おお、横文字ー」
「ハイカラやのー」
霞「な、なんで皆さんがここに…」
「んー?なんかなー。羊のカッコしたつ変な子がこっさめに外人さん来ちょるじーーって言うもんじゃからよ~」
「サイン貰おうかと」
霞(やられた!!)
「まあ、霞ちゃんが元気そうで良かったわー」
「そうだねー」
「霞ちゃん煮豆食べるかい?」
「うち寄ってイモ食ってけ」
「おはぎあるよ」
霞(なんで田舎の御老人は人に物食べさせるの好きなわけ!?)
「焼酎」
「こら!まだ霞ちゃん娘っ子じゃろが!」
「あれ~?じゃっどっけかー?」
「まあええ、ええ。20も18もワシらの歳なっよーねぇ一緒たい」
「それもそだなー。村の集会所空いちょるじゃろか?宴会しごつ」
「じーーし!そんじゃ今日は霞ちゃんのおっぱいのますますの発展と健康を願って!」
「飲むどー!」
「ほれ、そこな都会っ子も」
美子「」オロオロ
霞「ま、待って下さ…」
「今年はええ酒出来たんだどー」
「あら、ゴンベさんとこん焼酎今年いいんかい!そら楽しみだなー」
「じゃっどなー」
「神代さんとこん神主さんも呼ぶかー」
「だーなー。神様んとこん子のおっぱい見よーねぇ神主さんも呼ばんとな」グイグイ
霞(ひいいいいい!?)ズルズル
「ん~だもこ~ら~い~けなもんな~♪」
「あっそーれ♪」
「集会所カラオケあったよなー」
霞(お、覚えてなさいよーーー!!弘世菫!!それと、羊ーーーーーー!!!)ズルズル
第五話
「誓いの霞と決意の菫」 終わり
ネイティブの人、怒らないでね
もう今日終わりかなー?けど、ちょっと目休めてから判断する
そういえば、霧島神宮駅は有人駅(深夜早朝のみ無人)なのに
あたかも終日無人駅であるかのような風潮被害が…
鹿児島はなんか秘境みたいなイメージあったわ
次はどんな子が出てくるのか楽しみだ
Entry ⇒ 2012.10.05 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
蒲原「ワハハー、須賀神社かー」
アリガトウゴザイマシター
蒲原「ふー。やれやれ、もう10月だってのに暑いなー」シャリシャリ
蒲原「ん? この看板…『須賀神社、東に100m』」
蒲原「ワハハ、何だかあいつを思い出すなー」
蒲原「元気にしてるかなー」
久「はい皆ちゅうもーく!」
優希「お、なんだじぇ?」
まこ「なんじゃなんじゃ」
久「ふふ、今日は特別ゲストに来てもらったわよ。さ、入って」
ギィ…
蒲原「ワハハー、お邪魔するぞー」ジャーン
咲「あ、あの人は…」
咲(…あの人誰だっけ、和ちゃん)ヒソヒソ
和(もう、咲さんったら…。鶴賀の中堅、三年生の蒲原さんだよ)ヒソヒソ
咲(あー、あの人ね。ありがと)ヒソヒソ
咲(こんな人いたっけ…覚えてないよ)
優希「おー!で、ぶちょー、この人は誰なんだ?」ワクワク
全員「おいおい」
まこ(部長じゃったんか…)
和(部長だったんですね…)
久「今日はこの人を入れて打ってもらうわ」
久「特に優希、これはあなたの特訓でもあるのよ」
優希「じぇ? 私?」
久「そう。蒲原さんは降りることに関しては一級品」
久「優希、あなたは東場においてあがることに関しては一級品だけど、誰かを狙い打ちしたり
テクニカルなことに関してはさっぱりよね」
優希「うー…ツモるから関係ないじぇ!」
久「これから学年も上がっていくのに、そうも言ってられないでしょ?」
久「そこで、優希に一つ課題をあげます。今日の部活で蒲原さんから直撃をとること」
久「それが出来たら、私が直々にタコスをおごってあげるわ」
優希「おー!俄然やる気でてきたじぇー!」
優希「覚悟するじぇ!鶴賀のぶちょーさん!」
蒲原「ワハハー、おてやわらかに頼むぞー」ワハハ
蒲原「ワハハー、須賀君は気が利くなー」
須賀「いえ、俺に出来ることはこれくらいですから」ハハハ
優希「もう張ってから何巡も経つのに全然あがれないじょー」
和「これが海底…流局ですね」
優希「くそー、このままじゃタコスが…」
蒲原「ワハハー、そう簡単にはあがらせないぞー」
久「そうね、さっきの優希の手牌がこう、蒲原さんの捨て牌がこうだから…」
白板 キュキュキュ…カサ
久「あら、マジックのインキが切れちゃったわ」
須賀「えー、またですか? まあいいですけど…」
須賀「こっから店まで遠いんだよなぁ…もう購買閉まってるし…」ブツブツ
蒲原「ワハハー、私が車出そうか?」ワハハ
須賀「え、いいんですか!?」
久「あら、気を遣わなくてもいいのよ」
優希(部長はもっときょーたろーに気を遣うべきだと思うじぇ…)
蒲原「ワハハー、だいじょぶだいじょぶ。お安い御用さ」
久「そうねえ、さっきの局について優希と検討もしたいし、ちょっとお願いしようかしら」
須賀「やった!蒲原さん、ありがとうございます!」
蒲原「ワハハー、礼には及ばないさー」
須賀「本当ありがとうございます、蒲原さん」
蒲原「ワハハー、いいって言ってるだろー」
須賀「いやー、いつも部長にはパシらされて…本当に有り難いです」
須賀「蒲原さんがこっちに来てくれたらいいのに」ハハハ
蒲原「ワハハー、それはさすがにないなー」
蒲原「こっちじゃゆみちんに勉強教えてもらえないしなー」
須賀「そういえば蒲原さんは受験ですか…う…受験…」ハァ
蒲原「そうだぞー、受験は怖いぞー。勉強すること沢山だぞー」
須賀「ヒィッ!嫌だあ…」
蒲原「ワハハー、そんなに嫌かー」ワハハ
蒲原「まあ私も人のこと言えないしなー。というか、よく分かるよその気持ち」
蒲原「勉強はいやだよなー。私こないだの模試でE判定だったよ」ワハハ
須賀「うわ…俺と一緒じゃないですか」ハハハ
蒲原「同じ穴のムジナかー」ワハハ
須賀「でも意外だなぁ。蒲原さんって勉強出来そうなのに」
蒲原「そうかぁ?」ワハハ
蒲原「数学の教科書を見ると虫酸が走るよ」
須賀「俺もそうです!物理なんかになるともう眠気がひゅんひゅん来て!」
蒲原「英語もダメだよなー。なんで日本人なのに英語の勉強しなきゃいけないんだか」
ワイワイ(しばし勉強の愚痴で盛り上がる)
蒲原「そーそー、それで先公がさー…」
蒲原(ん、信号変わりそうだけどいけるかな)
キキキキキ ゴオオオ
須賀「わっ!?」ガタン
蒲原「ワハハー、こんなもんだろ」
蒲原「もっと飛ばすぞー」
キキキキ ガタンゴトン
須賀「わあっ、ちょ、ちょっと蒲原さん!」
蒲原「ワハハー、無事帰って来れたなー」
久「おかえりー。ありがと、お二人さん」
優希「きょーたろーに鶴賀の部長さんお帰りだじぇ!早速続き打とうじぇ!」
―――夕刻
蒲原「んー、こんなもんかなー」
優希「結局蒲原さんから一回も上がれなかったじぇ…タコスが…」
咲「まあまあ、また学食で食べればいいじゃない」
優希「咲ちゃん分かってないじぇ!他人の金で食べるタコスは格別なんだじぇ!」
蒲原「ワハハー、じゃあ私はお暇するとするかー」
須賀(蒲原さん帰るのか…)
須賀「ちょ、ちょっと待ってください、蒲原さん」
蒲原「んー、どうした?」
須賀「蒲原さんと車の中で話してて楽しかったですし…」
須賀「俺、周りが勉強出来る人ばっかりなんで…また勉強の愚痴とか聞いてもらいたいんですよ」ハハハ
蒲原「ワハハー、いいぞー」
蒲原「私も周りがそんな感じだからなー。またドライブでもしながら話そうやー」
須賀「あ、いや。それはちょっとご遠慮願いたいかな…」
蒲原「むぅ、どういう意味だー」ワハハ
優希「むー…蒲原さん、用が済んだらさっさと帰るじぇ!」ガルル
まこ「失礼なこと言うんじゃない」ポカッ
優希「あたっ」
蒲原「思えばあれっきり電話もメールもしてなかったしなー」
蒲原「ちょっと呼び出してみるかー」
蒲原『もしもしー、須賀くんかー?』
須賀『蒲原さん!どうしたんですか?』
蒲原『いやー、ちょっと来てほしくてなー。今からローソンS店の前まで来れるかー?』
須賀『いいっすよ、丁度暇してましたし!今から行くんで10分くらいで着きますね』
蒲原『ワハハー、そんな急がなくていいぞー』
須賀「いえいえ。お久しぶりです。元気でしたか?…って聞くまでもなさそうですね」
蒲原「おー、須賀くんも元気そうで何より」
蒲原「じゃあ今からこの神社に行くぞー」
須賀「神社? …ってこれ、『須賀神社東100m』…」
須賀「蒲原さん、まさか…」
蒲原「ワハハー、そのまさかさー」
須賀「偶然この看板を見つけて俺のこと思い出して、それで呼び出したとか言うんじゃないでしょうね」
蒲原「偶然この看板を見つけて須賀くんのこと思い出して、それで呼び出したのさー」
須賀「ぷっ、あはは!蒲原さんどんだけ行き当たりばったりなんですか!」
蒲原「ワハハー、私は基本行き当たりばったりだからなー」ワハハ
蒲原「ほら、行くぞー」
須賀(蒲原さん、面白いひとだなー)
須賀(でも俺に会いたくて呼び出したんじゃないのか…ちょっと残念だな…)
蒲原「そうだなー。こんないいとこがあったんだなー」
蒲原「お、和菓子屋さんが二つもあるぞ」
須賀「ほんとだ。喧嘩になったりしないんですかね」
蒲原「和菓子のいい匂いがするなー。須賀ー、一つ買ってやろうか?」
須賀「太っ腹ですね」ハハハ
蒲原「遠慮することないぞー」
須賀「気持ちだけ頂いておきます」
蒲原「ワハハー、和菓子は嫌いかー?」
須賀「いえ、好きですけど。買ってもらうなんて悪いですよ」
須賀「逆に俺が今度ご馳走しますって」
蒲原「そうかー? じゃあその時は遠慮なく頂くぞー」
須賀「ちょっとくらい遠慮してくださいっ」ハハハ
須賀「んー、なんか書いてある名前が違いますよ。ここじゃないみたいです」
蒲原「じゃあもうちょっと先かー」
須賀「みたいですね」
次は白組による組体操です! ワーワー
蒲原「ワハハ、運動会でもやってるっぽいなー」
須賀「近くに小学校でもあるんですかね。そういえばもうすぐ体育祭か」
蒲原「ワハハー、私は全種目エントリーしたぞー」
須賀「すごっ。まじっすか」
蒲原「運動は得意だからなー。っと、須賀神社。ここかー」
蒲原「なんかちっぽけな所だなー。須賀くんの存在くらいちっぽけだ」
須賀「ちょ、それ神社の人に失礼ですよ!」
蒲原「ワハハ、冗談冗談」ワハハ
須賀「経営って」ビシッ
須賀「でも、本当にそんな感じですね。目の前におっきな神社があるから尚更」
蒲原「私はこういうところの方が好きだぞー」
須賀「俺もです」ハハハ
蒲原「大理石に夕陽が反射して綺麗だなー…」
須賀「蒲原さんの方が綺麗ですよー」
蒲原「ワハハー、気持ちが込もってないぞ、気持ちがー」ワハハ
須賀「はは。ていうかそういうセンチメンタルな感情あったんですね」
蒲原「ワハハー、どういう意味だ須賀ー」ガシッ グリグリ
須賀「ちょ、いたたた痛い痛い!さっきの仕返しですよ!」
蒲原「一年の癖に生意気だぞー」パッ
須賀「ほっ…。横暴ですよー」
須賀(蒲原さん、そんな密着するなんて…思わず体の一部が熱くなっちまったぜ)ドキドキ
須賀(にしても、柔らかいし良い匂いだったな…やっぱり女の子なんだなー…)ドキドキ
須賀(美福!? 福…美しい…)もんもん
蒲原「ワハハー、須賀くんが今考えてること、当ててやろうか?」
須賀 ビクッ
須賀「い、いや!決して美しい福路さんのことなど考えてな…はっ」
蒲原「ワハハー、予想的中だー。まあ私も考えたし、許してやろう」
須賀「いやー、ですよねー。この字の並び見るとしょうがないですよ」
蒲原「むっ…。しかし私という者がありながら他の女のことを考えるなんて、やっぱり許せないかもなー」キラン
須賀「いやいや、何を言い出すんですか」ハハハ
蒲原「浮気はいかんぞ浮気はー」
須賀「浮気って…」ハハハ
須賀(やべー、冗談だと分かっててもドキドキしちまう…)ドキドキ
須賀(蒲原さんって、改めてみるとすっごい可愛いな…笑顔も似合ってるし…)ドキドキ
須賀「蒲原さん、お守りでも買った方がいいんじゃないですか?」ニヤリ
蒲原「ワハハー」
蒲原「マジでそうかも…」ズーン
須賀「ちょ、ちょっと!何マジに落ち込んでるですか!」
須賀「お、俺はいいと思いますよ、蒲原さんの運転!何と言うかこう、スリルがあって!」
蒲原「ワハハ、フォローになってないぞ須賀ァ…」
須賀(なんだ、ヘッドロックは来ないのか…って何期待してるんだ俺は!)カァッ
須賀「ま、まぁ、いつか上手くなりますって!ほら元気出して!」
蒲原「そうだなー!」シャキーン
須賀「立ち直るのはやっ! …で、えーっとなになに…」
須賀「S地区一体の産土神とされ、また縁結び、厄除け、交通安全の神として …」
蒲原「ワハハー、産土神って音読みするとポケモンみたいだなー」
須賀「可愛いですよね、サンドパン」
蒲原「にしても、縁結びかー」
蒲原「どうなんだ、須賀は好きな人とかいるのか?」ニヤリ
須賀「えっ…」ズキン
須賀「い、いやぁ、俺はそういうのはないかなー…」
須賀「強いて言うなら、蒲原さんとなら笑顔の絶えない明るい家庭が築けそうかなー、とか思ったり…」ゴニョゴニョ
蒲原「そうかー、私もそういうのとは全く無縁だなー」ワハハ
須賀(…って後半聞いてない!? ってその方が良かったか…寧ろセーフ!)
須賀(でもちょっと、どういう反応するか見てみたかったり…)ドキドキ
蒲原「どれどれー向こうにも看板があるぞー」トタタ
蒲原「須賀神社懸想文は縁談・商売繁盛など人々の欲望をかなえる符札…」
蒲原「ワハハー、なんだか俗っぽいなー」ワハハ
須賀「ですね。神社ってそういうもんなですね」クスクス
須賀「本当にこじんまりした境内ですね。部室にすっぽり収まっちゃいそう」
蒲原「ワハハー、そんくらいがいいんだよ、何事も」
蒲原「大きくなりすぎると収拾がつかなくてロクなことがないからなー」
須賀「なんか具体的ですね」
蒲原「これでも一応文化祭仕切ったりしてたからなー」
須賀「へぇ、そうなんですか」
須賀「いやドラって。それを言うならドラゴンでしょ」
蒲原「ワハハー、知らないのかー? ドラの由来ってドラゴンなんだぞー」
須賀「あ、そうなんだ。知らなかったですよ」
蒲原「ワハハー、うたちゃんが言ってただろー」
須賀「あれぇ、おかしいな。聞いてたはずなんだけど」
蒲原「ワハハー、須賀くんはバカだなー」
須賀「人のこと言えないでしょ」ハハハ
蒲原「生意気だぞ須賀ー」ポス
須賀「おうふ」
蒲原「お、なんか変わった形の植物があるぞー」タタタ
須賀「っと、ちょっと待ってくださいよー!」タタッ
須賀「なんですかその説明口調は。これ、ささげって奴じゃないですか?」
蒲原「お? 知ってるのか須賀?」
須賀「ええ、まあ。これは豆の一種なんですよ」
須賀「このさや豆のように沢山の氏子が繁栄を祝うって意味なんですかね」
蒲原「お、おおー…なんか須賀が賢そうだぞ…」パチパチ
須賀「なーんつって、ほんとはさっきの看板に書いてあったのを見たんですけどね」テヘペロ
蒲原「私の感心を返せ!」デュクシ
須賀「おうふ」
須賀「そうですね」
パンパン
須賀(…願いかぁ…)
須賀(本当は麻雀が上手くなりますようにとか、そういうことをお祈りするべきなんだろうけど…)
須賀(…でも…今ここにいる俺は…この蒲原さんとの時間がもっと続きますように、とか)
須賀(そんなことをお祈りしたいなんて考えている…)
須賀「…はい」
蒲原「ふむ。ちゃんと麻雀が上手くなるようにお祈りしたかー?」
須賀「うっ!いやそれは…」ドキン
蒲原「ちゃーんとお祈りしとかないと、いつまで経ってもお茶出しだぞー」
須賀「うぐっ!耳が痛い…」
蒲原「ははは。まーまー、いざとなったら私が特訓でもつけてやるよ」
蒲原「まー、私より清澄の奴らにつけてもらった方が強くなれそうだがな」ワハハ
須賀「! いや、お、俺、その…蒲原さんがいいです!蒲原さんに特訓つけてもらいたいです!」
須賀(って何言ってんだ俺はぁぁぁぁぁ!恥ずかし!)
蒲原「ワハハー、清澄の奴らは強すぎるから私が丁度いいって意味かー?」
須賀(あ…)
須賀「そ、そうですね。そう意味です」アハハ
蒲原「生意気だぞー」ポカッ
須賀「あだっ」
須賀「は、はい!是非お願いします!」
蒲原「何せ暇だからなー」
蒲原「さて、神社も堪能したし、そろそろ帰るとするかー」ノビー
蒲原「楽しかったぞー。付き合ってくれてありがとうな、須賀ー」ニコッ
須賀(! 蒲原さんの笑顔…!)
須賀(なぜだろう、蒲原さんは終始笑っていたはずなのに、今日初めてこの人の笑顔を見たような気がする)
須賀(出来ることなら、ずっとこの人の笑顔を見ていたい…もっと近くで、もっと沢山の笑顔を…)ドキドキ
蒲原「んー? どした須賀ー?」ニコニコ
須賀「蒲原さん…俺っ…!」
京太郎「すごく楽しくて、すごく居心地がよくて…」
京太郎「なんか蒲原さんといると元気になれるんです。いつもより何倍も」
京太郎「さっき言ってた麻雀のことも、蒲原さんと一緒なら頑張れる気がするんです」
京太郎「蒲原さんとずっと一緒にいたいんです…蒲原さんと笑顔の絶えない時間を過ごしたいんです!」
京太郎「だから、蒲原さん…俺と…!」
智美「ストップ。それ以上言わなくていいぞー」
京太郎「…はい」
智美「それ以上言われると…」
なんでこんなので笑ったんだろうな・・・
なんでだろうな……
京太郎「! そんな…じゃあ…」
智美「そっかー…そんな風に思ってくれるなんて、思ってもみなかったよ」
智美「私のことをそういう風に見てくれる人もいるんだな…」
智美「ちょっと恥ずかしくて、でも嬉しいよ」ニコッ
京太郎(蒲原さん…)キュン
智美「須賀くん。…いや、京太郎。私も今日京太郎と一緒に遊んで、すごく楽しかった」
智美「私も須賀くんと一緒にいたいと思うよ」
智美「でもなー。その気持ちはまだ、私がゆみちんやかおりん、モモにむっきーに対して思うのと同じくらいの気持ちなんだ」
京太郎「…そうですか」
智美「この際ズバっと言ってしまうと、京太郎は男としての魅力に欠けるんだよー」ワハハ
京太郎「そんなっ!」ガーン
智美「でも、これからもちょくちょく遊ぼうなー」
智美「それで、京太郎のことが好きで好きで仕方がなくなるくらい、私を落としてくれー」
智美「私のこと、好きになってくれてありがとうなー」
智美「そして、これからもよろしくな、京太郎!」ニコッ
京太郎(蒲原さんの笑顔…なんて素敵なんだろう)
京太郎(この笑顔の為ならなんだって出来る、そんな気がする!麻雀だって強くなれる気がする!)
京太郎「分かりました!俺、フラれちゃったけど…」
京太郎「また、蒲原さんと遊べるなら、落ち込んだりしません!」
智美「ふふ、そう言われると照れるなー」
智美「じゃあ、今度こそ帰ろうか」
京太郎「はい!」
智美「あ、私車で来たんだけど送ろうかー?」
京太郎「…俺、今度自動車免許取りますね」
蒲原「京太郎の年齢じゃまだ取れないぞー」
カン!
乙!
二人の笑顔の絶えない家庭生活編はまだですか?
Entry ⇒ 2012.10.04 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
小蒔「今夜はついに初めての夜伽ですね……」
小蒔「熱が出て寝込んでいる霞ちゃんに夜伽します!」
巴「……姫様、意味わかって言ってますか?」
小蒔「もちろんです!」
小蒔「夜伽とは、看病などのために夜通し眠らないでそばに付き添うことです!」ドヤァ
巴「夜通しは合ってますけど……」
小蒔「いつも霞ちゃんのお世話になってるので今夜は私がお世話しようと思います」
巴(まあ看病なら平気かな……)
小蒔「行ってきます!」
小蒔「失礼します」
霞「小蒔ちゃん?」
小蒔「調子はどうですか?」
霞「相変わらずよ、心配してくれてありがとう」
霞「でも移しちゃうと悪いから、私に構わなくていいわよ」
霞「……夜伽?」コホッ
小蒔「今夜私はずっとここに居ます!」
霞「あらあら」
霞(意味分かって……ないわよね。小蒔ちゃんだし)
霞「そうねぇ……」
霞「じゃあこのタオルの水変えてきてくれる?」
小蒔「分かりました!任せて下さい!」
霞(看病っていっても微熱よりちょっと高いくらいだからやること無いのよね)
小蒔「こんな時広いお屋敷は不便ですね……」テクテク
初美「あれ姫様何してるんですかー」
小蒔「!わっ、とっと」ワタワタ
初美「大丈夫ですかー? 」
小蒔「大丈夫ですっ」
小蒔(零すところだった……)
小蒔「これを霞ちゃんの部屋に持って行くんです」
初美「どうしてですかー?」
小蒔「夜伽をする為です!」ドヤッ
初美「……夜伽?」
小蒔「はい!あ、霞ちゃん待たせているのでごめんなさい!」トコトコ
初美「姫様が夜伽……」
初美「これは一大事ですよー」
霞「ごめんなさいね、大変だったでしょう?」
小蒔「これくらい何でもありません!」
霞「そう?ありがとう」
小蒔「他に何かありませんか?」
霞「そうねえ……」
小蒔「はいっ」
霞(正直もう無いんだけど……)チラッ
小蒔「」キラキラ
霞「そうねえ……」
小蒔「はいっ」キラキラ
霞(この時間帯なら巴ちゃんが厨房に居るはず……)
霞「厨房に巴ちゃんが居るはずだから、お粥を作ってくれるようにお願いしてくれると助かるわ」
小蒔「お粥ですね!分かりました!」
巴「姫様?看病の方は?」
小蒔「霞ちゃんのおつかいです」
巴「ああなるほど。それで霞ちゃんは何だと?」
小蒔「お粥を作って欲しいとのことです」
巴「そういえばお昼に食べたっきりですね。分かりました」
小蒔「」ジーッ
巴(あとネギとかかな)
小蒔「」ジーッ
巴「……あの、姫様?」
小蒔「」ジーッ
巴「……一緒に作ります?」
小蒔「!」
小蒔「はいっ」
小蒔「それは平気です」
巴「じゃあ大丈夫ですね。私はちょっと納屋のほうにネギを取りに行ってきますから」
小蒔「はい!」
小蒔「えーっと、お米を研いで水を捨てて……」
小蒔「あっ、お米は捨てないようにしなきゃっ」ワタワタ
小蒔(そういえば)
小蒔(前見たアニメ……何と言いましたっけ)
小蒔(あんぱんのヒーローがみなさんに施しをする……)
小蒔(それの職人のおじいさまがパンをこねる時にやってた……)
小蒔「お、美味しくなーれー 」ワシャワシャ
小蒔「えへへっ」
霞「巴ちゃんと一緒に作ってるのかしら」
ガラッ
初美「失礼するのですよー」
春「」ポリポリ
霞「あらあら」
春「姫の手伝い……」ポリッ
初美「姫様のサポートですー」ズルズル
霞「……ねえ、引きずってるそれは何?」
初美「姫様のお布団ですよー」
春「」ポリッ
春「ん」ポリポリ
霞「ねえ、お布団の距離近過ぎない?」
初美「当たり前ですよー」
春「今夜はついに初めての姫様の夜伽」ポリポリ
初美「私たちは全力でサポートしますよー。霞ちゃんが相手なのはビックリしましたか」
霞(……私風邪引いているのだけれど)
初美「お布団の準備終わりましたー」
春「うん」ポリポリ
霞「あのね、」
初美「おっと、はるる大事なものを忘れていましたね」
初美「これが無いと始まりませんよ」
春「……はい、これ」ポリポリ
初美「ティッシュここ置いときますねー」
春「ここが定位置って昔から決まってる」ポリポリ
初美「明日はお赤飯ですよー」
春「……頑張って」グッ
霞(はっちゃん、治ったら覚えていてね)
巴「姫様、お米出来ました?」ヒョコッ
小蒔「っ!」ビクッ
巴「あれ、どうしたんですか?」
小蒔「な、何でもないですっ」
小蒔(聞こえていたらどうしようかと思いました……)ドキドキ
巴「後はネギ切って……」
小蒔「」キラキラ
巴「……姫様やります?」
小蒔「はい!」
巴(本当は姫様に包丁持たせたって知られると叱られちゃうんだけど)
巴(まあいいか)
巴(……大丈夫かな)ドキドキ
小蒔「ふーっ」キラーン
巴「ひ、姫様そんな包丁を振りかぶらないで下さいっ」
巴「ええっとですね、包丁を使うときは左手で抑えながら手を丸めて猫の手みたいにするんです」
小蒔「猫の手……」
巴「包丁はそんなに振りかざさないでも切れますから」
小蒔「はい!」
巴(緊張するなあ……)
小蒔(なかなか大変な作業ですね……)トンッ
巴「」ドキドキ
小蒔「」トンッ
巴「」ドキドキ
小蒔「!っ」
巴「ひ、姫様!」
巴「大丈夫ですかっ?絆創膏……」
小蒔「でもネギもちゃんと切れましたよ!」
巴「それ所じゃないです!」ワタワタ
巴(姫様に怪我させちゃった……)
巴(霞ちゃんに殺られる……!)
巴「はい」
小蒔「迷惑かけて本当にごめんなさい……」
巴「いえ、姫様の気持ちは分かっているつもりですから」
巴「後片付けは私がやっておくので、姫様は持って行ってあげてください」
小蒔「はい、ありがとうございますっ」
初美「姫様ー!」
小蒔「」ビクッ
初美「あれ、お粥ですかー」
春「部屋に運ぶの?」ポリポリ
小蒔「びっくりしました……」ドキドキ
小蒔「はい」
初美「そして夜伽にー?」
小蒔「?はい」
春「間にあった」ポリポリ
小蒔「何がですか?」
初美「姫様に大事なアドバイスですよー」
小蒔「わっ、本当ですか?ありがとうございますっ」
初美「夜伽にはやるべき事があるのですよー」
小蒔「やるべき事ですか?」
春「これをすれば間違いない」ポリッ
初美「あのですねー……」
霞(出来れば片付けておきたいのよね……小蒔ちゃんに移しちゃうし)
霞(でも今お布団を運ぶ程元気では無いし……)
霞(巴ちゃんが来てくれれば片付けて貰うのだけど)
ガラッ
小蒔「持ってきましたー」
霞「ありがとう小蒔ちゃん」
霞「はっちゃん達が置いていったのよ」
小蒔(そういえば夜伽に必要だとか言ってましたね……)
小蒔「でも今はそんなことよりお粥です」
小蒔「はい、霞ちゃん」
霞「ありがとう」
小蒔「……」
霞「あの、器渡してくれないと食べられないのだけれど……」
小蒔「巴ちゃんが教えてくれたんです」
小蒔「看病と言ったらこれだって」
小蒔「霞ちゃん、あーん」
霞「あらあら……」
小蒔「ほら、霞ちゃんっ」キラキラ
小蒔(霞ちゃんに初めてのあーんです!)
霞「……あーん」
小蒔「美味しいですか?」
霞「ええとっても。……でも恥ずかしいわね」
霞「もしかしてこれ、小蒔ちゃんが作ったの?」
小蒔「どうして分かったのですか?」
霞「そりゃあねぇ」
霞(凄く期待を込めてこっちを見てるし、指に絆創膏あるし……)
霞「小蒔ちゃんの事だから分かるのよ」
小蒔「えへへ」
小蒔「はい、あーん」
霞「あーん」
巴「2人で居るのにそこにお邪魔するのも悪い気がするけど……うーん 」
巴「ちゃっちゃと渡して去ればいいか」
巴「……」
初美「……」
春「……」ポリッ
春「静かに。バレちゃう」ポリッ
初美「六女仙の1人として私達はこれを見届ける義務があるのです」
巴「ていうか襖に穴開けちゃって。後で霞ちゃんにバレたら怒られるよ」
初美「それはそれ、これはこれですー」
巴「もうっ」
初美「ああっ」
春「」ボリィッ
小蒔「あ、巴ちゃん」
霞「……はっちゃんに春ちゃん?」
巴「お薬渡すの忘れてました。食後に二錠ですよ。はいどうぞ」
霞「ありがとう」
巴「いえいえ。ほら、2人とも覗き見なんてしないで帰るよ」
春「……私は通りかかっただけ」ポリッ
初美「はるるが私の事売りましたー!」
巴「ほらほら。霞ちゃん、ちゃんと早く寝てね」
霞「ええ」
巴「姫様もよろしくお願いしますねー」
小蒔「はい」
巴「ほら、行くよ」ズルズル
霞「確かに巴ちゃんは早く寝ろって言ったけれど」
霞「まだ8時よ?」
小蒔「早く寝れば寝るほどきっと早く治りますよ」
小蒔「私が添い寝しますから!」ニコニコ
霞(添い寝したいのね)
霞「?小蒔ちゃん正座なんてしてどうしたの」
小蒔「えーっと、」
小蒔(いざ言うとなると緊張しますね……でもこれをやらなくては夜伽にはならないと聞きました)
小蒔「ふ、不束者ですがよろしくお願いします」
霞「」
霞(……どうしようかしら)
霞「いきなりどうしたの小蒔ちゃん」
小蒔「あの、夜伽にはこれが必要だって聞いて……」
霞(吹き込んだのは、絶対はっちゃんよね)
霞(ていうかあの子私の部屋の襖に穴開けていったわね)
小蒔「」イソイソ
小蒔「初美ちゃんから聞いたんですっ」
小蒔「よ、夜伽にはお互い服を脱ぐんだって」
小蒔「私それを知って驚きました」
霞(一応私風邪引いてるのだけれど)
霞「ちょっと待って、ね、小蒔ちゃん」
小蒔「はい」
霞「夜伽についてあの子は何てあなたに言ったのかしら」
小蒔「えーっと、お互いに裸になって寝ると」
霞「それで?」
小蒔「その先は霞ちゃんに任せれば大丈夫だって言ってたんです」
霞「」
霞「……なあに? 」
小蒔「霞ちゃんに……しょじょ?を捧げるんだそうです」
小蒔「しょじょって何ですか?」
霞(薄墨初美ぃ……)
霞(知識があのはっちゃん以下だなんて思ってなかったわ)
霞(本当のこと言ったら……ふむ……)
霞「……初めてのことよ」
小蒔「初めて?」
霞「ほら、作家さんの初めての作品を処女作とか言うでしょう?」
小蒔「そう言えば……じゃあそこから来ているんですね」
霞「人が今まで未経験なことを経験したとき、処女を失うことになるの」
霞(我ながら上手いわ)
霞「(語弊はあるけど)まあそういうこと」
霞「でもね小蒔ちゃん。それをするのは好きな人じゃなきゃ駄目なのよ」
小蒔「?私は霞ちゃんの事が好きですよ」
霞(うーん……伝えるのが難しい……)
小蒔「とにかく初めてなことをやればいいんですよね」イソイソ
小蒔「裸で寝たことは無いのでそれは私の処女ですねっ」
霞「こ、小蒔ちゃんっ」
小蒔「……霞ちゃん」
小蒔「私と夜伽をするのは嫌ですか?」ウルウル
霞「そ、そういう訳では無いけれど」
小蒔「じゃ、じゃあ私の処女を貰うのは嫌ですか?」ウルウル
霞(とんでもない殺し台詞を吐くのね……)
霞(でもここで小蒔ちゃんを泣かせるのも……)
霞「夜伽については裸で寝るとだけ聞いてるのね?」
小蒔「はい」
霞「……はぁ」
霞「分かったわ」スルッ
小蒔「え、霞ちゃん?」
小蒔「か、霞ちゃん……」
霞「さて、そんな話しているうちに9時になっちゃったわね」
霞「もう寝ましょうか」
小蒔「はい!」
小蒔(裸で霞ちゃんと寝るの凄いドキドキする……)ドキドキ
霞「おやすみなさい小蒔ちゃん」ナデナデ
小蒔「ん……」
霞「おはよう小蒔ちゃん」
小蒔「……!?な、なんで裸……」
霞「昨日小蒔ちゃんが裸で寝たいって言ったじゃない」
小蒔「え、あ、そうでした……」
小蒔(つまり私は夜伽に成功したんですね)
霞「ほら小蒔ちゃんも服を着て。朝ご飯に遅れちゃうわ」
小蒔「はいっ。あ、霞ちゃん熱は……」
霞「起きたら下がってたから小蒔ちゃんのおかげかしらね」
小蒔「えへへ」
霞「じゃあ朝ご飯に行きましょうか」
小蒔「はいっ!」
霞(何かザワザワしてるわね)
小蒔「遅れましたー」
ザワザワ ヒメサマダ ヒメサマガキタゾ カスミサンモイッショダ ザワザワ
霞(……何かしら)
初美「姫様ー」
小蒔「初美ちゃん、おはようございます」
シーン……
霞(まわりが静まった……)
小蒔「昨夜ですか?」
小蒔「無事に役目を終える事が出来ました」
オオオオオオオ
ワイワイ ワーマツリダー オセキハンモッテコーイ! ワイワイ
霞「!?」
初美「やりましたね姫様ー!」
小蒔「??はいっ」
霞「いっ、一体これは何の騒ぎ……なの?」
巴「お赤飯持ってきましたー!」
巴「いやー驚きましたよ!」
霞「え」
巴「はっちゃんが懲りずに覗き見してたみたいで」
初美「霞ちゃんが姫様の服を脱がしてるのを見ましたー 」
小蒔「改めて言われると恥ずかしいですね」
春「めでたい」ポリッ
アトツギダー コレデアンタイダー コンインノジュンビイソゲー
霞「こ、これ……まさか私と小蒔ちゃんのを皆知って……?」
初美「姫様の一大イベントですから。私がみんなに知らせました」ドヤッ
霞「」
小蒔「何だか皆さん楽しそうですね」
霞「婚姻ってちょっと待って。小蒔ちゃんは子供を残さなきゃいけないのよ?」
春「心配ない」ポリポリ
巴「はるるがこの新聞を今朝方持ってきてからずっとお祭りなんです」
霞「……」ガサガサ
小蒔「何が書いてあるのですか?」ヒョコッ
霞「……iPS細胞?」
カン
夜のは一応してない設定
乙
おつー
はっちゃんかわいい
Entry ⇒ 2012.10.04 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
咲 「県予選で大将だった四人でお酒を飲みに来ました」
店員 「いらっしゃいませ~」
咲 「予約していた宮永ですけど席はどちらでしょうか?」
店員 「宮永様……はい、幹事様は池田様ですね?もう揃われてますから一番奥の席へ進まれて下さい」
咲 「ご親切にありがとうございます」ペコッ
店員 「宮永様、…神域杯優勝おめでとうございます」
咲 「いえいえ組み合わせに助けられただけですよ」
書き溜めをコピペするから少し遅くなります
ガラッ
池田 「おー来たか清澄」
咲 「もう…いつまでも『清澄』って呼ばないでよ」
池田 「じゃあ宮永プロと呼ばせて貰おうか?なぁ加治木プロ」
かじゅ 「ふっ…そうだな」ニッ
咲 「どうしてそんな他人行儀な呼び方で呼ぶかな?…ねぇ衣ちゃん」
衣 「池田に加治木もノリが良いな…宮永プロも早く席に座れ、衣の隣だ」
咲 「…」ゴッ
池田 「じょ、冗談だって…今日は咲の神域奪取を祝う集まりだからほんの茶目っ気だって」
かじゅ 「そ、そうだぞ…だからその状態になるのはやめてくれ」
咲 「冗談だよ」ニコッ
衣 「どうかな…それにしても方向音痴は相変わらずだな」
かじゅ 「だから地図を書くと言ったのに…」
咲 「そこまで迷惑は掛けられないよ…」
衣 「タルタル!衣はハンバーグエビフライが食べたい!」
池田 「はいよ…加治木はどうする?」カキカキカキ
かじゅ 「皆でシェア出来るようにサラダなんかはどうだろうか?後は軽く摘めるように餃子や唐揚げといった小さな物を頼むのが良いだろう」
咲 「やっぱり加治木さんが居ると効率的に進むね!…あっ…」
衣 「こ、これは別に加治木を仲間外れにした訳ではないぞ?」
池田 「そうだぞ?加治木はフリースタイルの解説に呼ばれてたから誘えなかったんだ」
かじゅ 「私達も社会人なんだ…都合の善し悪しは解ってるよ」
池田 「ドリンクだけど衣はジュースで良かったか?」
衣 「りんごサワー!衣だってやっと少し飲めるようになったんだぞ!」エッヘン
咲 「この前までは酎ハイ一口で酔ってたのにね」クスッ
衣 「むっ…」
池田 「加治木はいつも通りワインで良いんだろ?」
かじゅ 「あぁ、赤を頼む」
池田 「咲はどうする?」
咲 「私は…『魔王』をお願い」
池田 「!」ガタッ
かじゅ 「なっ…!」ガタッ
衣 「?」キョトン
池田 「さ、咲が焼酎を飲むなんて意外だなぁ…ハイボールと思ってたよ…なぁ加治木」
かじゅ 「そうだな…いつもハイボールを飲んでたから面食らったよ」
咲 「私だって強いお酒くらい飲むよ…それとも『魔王』ってお酒に何か?」ゴゴゴゴゴッ
衣 「全く…飽きない奴等だな」クスッ
かじゅ 「いの一番に反応した癖に…」
池田 「声を出したのはお前が最初じゃないか」
衣 「そこまでにしておけ…池田、そろそろ注文を頼む」
咲 「こうして騒ぐのも久しぶりだから…ごめんね?」
かじゅ 「なぁに気にするな」
池田 「すいませーん!」
店員 「お待たせしました、ご注文をお願いします」
池田 「ハンバーグエビフライタルタル乗せ、シーザーサラダ、一口餃子三人前そして唐揚げを三人前お願いします」
店員 「…ドリンクの方はどうされますか?」
池田 「りんごサワー、赤ワインを一本、ハイボールに魔王を」
咲 「魔王はお湯割でお願いします」
店員 「かしこまりました…失礼ですが年齢確認を取らせて頂いても良いでしょうか?」
池田 「私は22歳だ」
咲 「私は21歳です」
衣 「衣も22歳だ」
店員 「え…?」
店員 「申し訳ありません、身分証…あっ、これは大変失礼しました」ペコッ
店員 「天江プロと気付かず本当に申し訳ありません」ペコッ
衣 「衣は慣れっこだからな…気にせず続けてくれ」
池田 (あの決勝の時のままだもんな…知り合いじゃなかったら華菜ちゃんでも確かめるし)
店員 「お酒は先にお持ちしますか?」
かじゅ 「そうだな…先に飲みたいが口寂しい、すぐに出せる物はあるかだろうか」
店員 「それでしたら…おでんなんていかがでしょう?」
かじゅ 「じゃあ…おでんを適当に見繕って持ってきてくれ」
店員 「おでんにご注文されたお酒をお持ちしました、…ごゆっくりどうぞ」カチャッ
池田・かじゅ・衣 「かんぱーい!」カチャッ
咲 「っ…みんな…」ポロッポロッ
衣 「泣くなんて咲は子供だな」チビッ
池田 「似合わないし」クビッ
かじゅ 「祝いの席なんだ…笑ってくれ」
咲 「そんな事急に言われたって…」ポロッポロッ
池田 「全く…麻雀は鬼みたいな癖にこういう所は繊細だな」モグモグ
咲 「余計なお世話だよ!」プンスカ
咲 「あ、大根凄く味が染みて美味しい…」モグモグ
かじゅ 「だろう?…牛すじも中々…」
池田 「衣、気をつけて食べろよ?熱くて火傷するかもしれないからな」モグモグ
衣 「見くびるな…衣はそんなドジじゃ…熱ッ…」
池田 「あー…ほら、言わんこっちゃない…」フキフキ
衣 「よせ!…これぐらいなんともない!」
咲 「優希ちゃんに衣ちゃんも口には出さないけど池田さんを大好きなんだもんね」
かじゅ 「違いない…私も口うるさい奴だと思っていたが実直で素直な良い奴だと思っているよ」
咲 「うん、最後まで勝負を投げ出さない所もね。覚えてる?県予選のオーラス、池田さんは四暗刻単騎を和了放棄して勝ちに来た事」
かじゅ 「牌譜や録画を見て驚いたよ」
咲 「池田さん、プロに転向しないのかな?」
かじゅ 「実力の程は申し分ないはずだ…ほぼ必ず満貫以上には仕上げてくる手作りのセンスはあるからな」
咲 「怖いよね、ヤミテン倍満なんて結構あるし」
池田 「どうした?」
咲 「んー…池田さんがプロに転向しないのは何でなんだろうって話してたの」
衣 「最後まで衣に刃向かったお前だ、実業団程度に埋もれさせておくには惜しい」
池田 「…」
かじゅ 「話がない訳じゃないだろう?三尋木プロが何回も足を運んでいると聞くが」
咲 「“迫り来る怒涛の火力”あの高火力麻雀に憧れる人も少なくないって聞くもん」
池田 「確かに実業団の監督を通じて話も来てるし、加治木の言うように三尋木さんからも誘われてる」
衣 「だったら頂きの上を目指すのが道理だろう?今よりずっと収入も上がる」
池田 「ははっ…華菜ちゃんは自分の実力は良く解ってるし、原村和や竜門渕みたいに判断良く打てないし衣や咲達のように華があるわけじゃないからな」
店員 「お待たせしましたーご注文の品です」
池田 「さぁ!飲むぞ騒ぐぞ!今日はお祝いなんだ…飲め飲め咲ィ!」トクトク
咲 「こ、零れるよ…」
衣 「…」
池田 「どうした?衣に加治木、飲まないのか?」
かじゅ 「あぁ、飲もう…」クビッ
衣 「衣が唐揚げにレモンをかけるぞ!」
咲 「…」ゴッ
衣 「…!」ビクッ
咲 「私ね、大皿に盛られた料理の味を勝手に変える人…一番嫌いなの」ゴゴゴゴッ
咲 「ピザにタバスコを全員分かけるような人はね…ゴッ潰すって決めてる」ゴゴゴゴッ
かじゅ 「同感だな、私も好きではない味の強要は良く思わない」
衣 「衣…何か悪い事したのかな?」ジワッ
咲 「うん、実際にはしようとしたが正解だけどね」
池田 「ま、まぁ…ギリギリだったんだし良いじゃないか…な?小皿に分けて個別に味付けすれば良いんだし」
衣 「…うん」シュン
池田 「な、泣くなよ…ほら」フキフキ
何も言わず許してたんだな
モンブチメンバーのぐう聖っぷり
衣 「須賀京太郎とかいったか?」
咲 「京ちゃん?うん…今は一緒に暮らしてるよ…///」デレデレ
池田 「原村和が聞いたら泣きそうだな…」
咲 「原村さんなら隣の家だよ?」
衣 「ののかが?…まさかとは思うがお前を…」
咲 「やめて!それはちょっと怖いから…」
池田 「ゴシップ記事で読んだんだけど滝〇プロが相当アタックしてきたんだろ?」
咲 「うん…でも、結婚するならやっぱり幼なじみの京ちゃんが一番だもん////」
??? 「そ、そんなオk…むぐっ
??? 「おやめなさいな…そんな事で目立っても私は嬉しくありません」ヒソヒソ
かじゅ 「あぁ…///…モモは私の子を身篭ってるよ…」
咲 「ゆみさんおめでとー」カチャン
衣 「飲み過ぎだぞ…咲」
池田 「まぁ祝いの席なんだし良いじゃないか…帰りは旦那さんに迎えに来て貰うんだし…このこの!」ゲシゲシ
咲 「幸せでーす」テヘッ
かじゅ 「あぁ…私も幸せだ」クスッ
池田 「キャプテンは清澄の部長に持っていかれたし…」チビッ
かじゅ 「な、なんだと…!」ガタッ
衣 「ふぇ?」
かじゅ 「あぁ…久のヤツ……私を振ったのは…」ブツブツブツ
池田 「姫松に居た愛宕洋榎、永水の滝見春、キャプテンに…竜門渕の国広一」
衣 「なにっ!」ガタッ
??? 「なんでsむぐっ
??? 「静かにしないと迷惑が掛かりますよ」ヒソヒソ
??? 「貴女に言われたくありませんわ!」ヒソヒソ
咲 「あはは部長、相変わらずだなぁ…」グビッ
池田 「最近では自分で竹井塾?ってのを開いたら女流男流問わず入門殺到らしいな」
かじゅ 「竹井塾か…」ボソッ
池田 「大星淡も入ったらしいな」
咲 「…あぁ、あの娘ね…無駄な事するだ」クスクス
衣 「…咲、慢心は足元を救われるぞ」
咲 「慢心せずして何が魔王か!…なんてね、どうして私…魔王なんて呼ばれるんだろ」グスン
池田 (な、泣き上戸!)
池田 「ま、まだプラマイゼロやってたのか?」
咲 「だって卓にお姉ちゃんに淡がいるんだもん」
衣 「仲直りしたんじゃなかったのか?」
咲 「したよ?…でも、今度は私の生シュークリームを食べたんだよ…許せないよ」
かじゅ 「食べ物の恨みは恐ろしいと言うからな…」
池田 「どうする?調度なくなったしお開きにするか二次会に行くか…」
衣 「麻雀!衣はあの時以来に四人で麻雀が打ちたい!」
咲 「良いね!隣に雀荘あるし打ちに行こうよ!」
かじゅ 「四人か…懐かしいな」
池田 「よーし、華菜ちゃん今度は負けないし!」
カランカラン
ボーイ 「いらっしゃ…えっ?…えぇぇっ!」ガクッ
客1 「み、宮永プロだ…」
客2 「北関東のコンピューターと名高い加治木プロも」
客3 「海底の天江…!そしてもう一人は…」
??? 「池田華菜、名門風越で三年連続大将を勤め近々プロ転向とも言われてる未完の大器…知らんけど」
客1 「み、三尋木プロ!」
池田 「……うわっ」
三尋木 「うわっとは失礼だな華菜ちゃん、どうだい考えてくれたかな?」
池田 「言ったじゃないですか…私はそんな器じゃないって」
三尋木 「過小評価しすぎなんじゃないかなぁ?ドラゴンロードちゃんプロになるみたいだし…知らんけど」
宥ちゃんはどうなったんだろ
かじゅ 「そうだぞ」
衣 「また衣が海底で全員を震えさせてやる」
咲 「また私が責任払いで負かすけどね」
かじゅ 「ふっ…その嶺上また私が潰そう」
池田 「今度も華菜ちゃんは役満和了るし!」
三尋木 「ねぇ、…君がもしこの半荘で満足のいく結果を出せたらプロ転向考えくれるかな?」
池田 「……わかりました、この三人に満足の結果を出せたなら」
三尋木 「期待してるからね」
咲 「さぁ、麻雀を楽しもうよ!」チャッ
かじゅ 「あぁ…望む所だ」チャッ
衣 「完成した一向聴地獄味わうといい…!」チャッ
池田 「さぁて魔物退治といきますか!」チャッ
衣 「海底模月!」
かじゅ 「槍槓!だ…そのカン成立せず…!」
客1 「一進一退の攻防…これは今日の負け分払ってもお釣りが来るぞ…」
客2 「役も滅多に出ないのばかりだしな」
客3 「あの三尋木プロお気に入りの娘も負けてないぞ…ほら…!」
池田 「…やっと来たな、ツモ…四暗刻単騎!」
かじゅ 「ばかな…こんな序盤で!!……無駄ツモなしだと?」
咲 「カン…!もういっこカン!…カン…カン!」
客1 「ス、スーカンツ…!」
かじゅ 「ツモ、大車輪」
衣 「リーチ、一発、海底、タンヤオ、チートイ、ドラドラ」
池田 「くそっ…三位か…」
池田 「三尋木さん…私、プロになります…!…まだまだ弱いけど三尋木さんの元で勉強させて下さい」
三尋木 「良いよ~…でも私の門下に入るからには覚悟しなきゃダメだよ?…知らんけど」
池田 「あーもう全てがわっかんねー」
三尋木 「ははっこりゃ期待出来そうだね」
かじゅ 「良かったな」
咲 「うん…これでまた四人で…プロの世界で麻雀が打てるね」
衣 「楽しみだ…なぁ咲」
咲 「なぁに?」
衣 「麻雀は楽しいな!」
咲 「う……っぷ」
咲 「違う…これ、つわりだよ」
かじゅ 「二つめのお祝いだな、おめでとう」
衣 「おめでとう」
池田 「おめでとう!」
咲 「ありがとう…みんな大好き」
――――
『さぁ、女流モンド決勝も残り半荘一回となりました』
『“迫り来る怒涛の火力”池田プロ』
『卓上に開くは白百合の花!嶺上の宮永プロ』
『対峙すればまるで深海の圧力!海底の天江プロ』
『その打ち筋はまるでコンピューター…!七対の加治木プロ』
『藤田プロ…どう見ますか?』
藤田 「この四人が揃うのはIH県予選以来だな、あの時は宮永プロが勝ったが今回は――――やはり衣が何もせずに終わるとは思えないな」
『…………ありがとうございます、さぁ闘牌開始!!』
おわりです、読んでくれてありがとうございます
カツ丼さんはやっぱりころたんびいきだなwww
隣に住んでるガチ村さんが怖すぎるんですが・・・
京ちゃんさん勝ち組すぎぃ
Entry ⇒ 2012.10.03 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
咲「もしも三年生と一年生が逆だったら…」
久「最近落ち目の風越より、随分と学費が安くて助かったわ。まぁ、清澄は二年前に突然現れた無名の高校だったし…」
久「しかし、麻雀部に入部届けを出しに来たけど、人多いわねぇー」
久「全国個人戦の一位と三位と十位を抱えてるから当たり前か。原村和さんなんて、アイドル並みにカワイイし、胸もボインボインだし」
まこ「おお、一年か?入部希望か?」
※全国の一年と三年が逆です。二年生は据え置き。
まこ「おぉ、見た事ある顔じゃと思ったら、上埜の所の嬢ちゃんか!って今は竹井じゃったか」
久「はい、雀荘ではお世話になりました」ペコリ
まこ「お主なら、入部テストも合格して一年からレギュラーに選ばれるかもなー。すまんなー、今年は入部希望者が多くて部長が入部テストするゆうてなー」
和「まこ、お知り合いですか?」
久(うわー、本物の原村さんだー!テレビで見たまんま!オッパイすごーい!)
和「そうですか。まぁ、打ってみないとわかりませんが」
優希「だじぇー。聞いて驚けー、一年坊主達よ。今日の入部テストは、あの宮永咲直々に相手してくれるんだじぇー」
モブ一年A「うそっ!あの宮永咲さんが!」
モブ一年B「私、麻雀楽しまされるのかなぁ」ブルブル
久(楽しそうじゃない!)ニヤリ
和「…」
まこ「ふふふ」
和「入部テスト辞退する一年生も出ましたね」
まこ「そりゃー、全国大会のチャンピオンと麻雀打って勝てるなんて思う小娘はなかなか居ませんよー。まぁ、一人闘志を燃やしてるようじゃが…」
優希「咲ちゃんは相変わらず、大人数の前で喋るのは苦手なんだじぇー」
和「コホン、部長の原村和です。みなさん、入学おめでとうございます。我が清澄高校は…」
長いのでキンクリ
和「では、咲さん。いつものアレお願いしますね」
咲「あっ、うん。最近、封印してけど、多分大丈夫。わかった、調整してみる」
咲「お疲れ様です。±0で二位です」
モブA「やったーーーー!!!!!!!!チャンピオンに勝ったーーーーーーー!!!!!!!後でクラスのみんなに自慢しよっと!!」ワーイ
和「…」
優希「…」
まこ「…」
久「」プルプル
久「あ、あの!もう一度、打たせて下さい!!お願いします!!」
まこ「ほぅ…」
モブA「えー、私も入っちゃおうかなー。チャンピオンに二連勝しちゃったりしてー」チラッ
優希「ダメだじぇー。一位を取った子は、テスト終わりだじぇー」
まこ「じゃといいなー」
久(あの子、気づいてないの!?宮永先輩、ずっと±0で二位しか取ってないのに!!)
久「…」
優希「おぉー、あの一年根性あるなー。もう四回目だじぇー」
モブB「あの竹井って人、ずっと最下位なのに、まだ打とうとしてる。麻雀弱いんだから、大人しく帰ればいいのに」プッ
まこ「こらぁ、一位取った人は終わりじゃゆうとろーが。さっさと帰るー」
宮永咲 37000
竹井久 15000
モブC 24000
モブD 24000
モブE「おっ、やっとチャンピオンが一位かー。でも、もう何局も打って、やっと一位だなんて…。これなら龍門か風越行けば良かったなー」
久「…ありがとうございました」
咲「えーっと、竹井さんだったよね?貴方の悪待ち、面白いね」ニコッ
久「自信喪失だわー。しかも収支もダントツで一年生で最下位。これは来年に賭けるしかないわねー」
久「まぁ、高校生活は三年もあるし一年くらい待っても…」トボトボ
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
和「咲さん、最後の局」
咲「うん、出来なかったね。±0」
優希「あの一年、かなり面白いじぇ。次は私が東風戦で打ちたいじぇ」
和「ハッキリ言って私から見れば、そう大した事ないように思えましたけどね。わざと待ちを悪くするとか何を考えてるんでしょうか」
あっ(察し)
流石に2年間咲さんにボコられたら身の程をわきまえると思う
多分
アレは決して本心からそう思ってるわけではなくて、
自信なんてない自分を必死で奮い立たそうとしてるだけだろいい加減にしろ
咲「そうだね。レギュラーもほぼ確定だね。染谷さん、頑張らないと?」フフフ…
まこ「えぇー、わしのレギュラーも危ないんですかー!」
優希「ワカメスープでも飲めば、強くなるんじゃね?」
和「こらっ、優希。私達もレギュラー落ちもありえますよ!実力主義ですからね!」
咲「うーん、私も油断してたら二軍かなー」
まこ・優希・和「「「そんなオカルトありえません(ありえないじぇ)」」」
誠子「くっそー、また逃げられた!」
尭深「大星先輩、めんどくさい事はいつも私達に押し付けるんだから」ズズズ
誠子「入部テストだって言うのに、部長が居なくてどうするんだよ!」プンプン
尭深「あの人、打倒宮永咲にしか興味ないから…。とりあえず私達で、入部テストやろうよ」
白糸台高校屋上
淡「あーあー、かったるいなー。なんで私が部長に選ばれたんだかー」
淡「そりゃー、私が原因でもありますよー?」
淡「去年は、一回戦で清澄と当たっちゃったからなー。大将戦前で、6万点も差つけられて、あの魔王咲ちゃんだよ?」
淡「諦めなかった、私は偉い。まぁ、負けたのは事実だけどねー」
淡「にしても、阿知賀の脳筋猿にすら負けたってレッテル張られたのは…、ぐぬぬ」
淡「あの猿の諦めなさは、私以上だよー。まぁ、所詮は脳筋猿だけどねー」
淡「とりあえず、入部テストで上位20位とか入れればいいんじゃない?そう考える私は屋上で、サボってるわけだよ諸君」
淡「さてさて、そろそろ入部テスト終わったかなー。見に行きますかー。もし、誠子か尭深を飛ばすようなルーキー居たら、私が打っちゃうんだけどなー」
淡「居るわけないよねー」
・
・
・
淡「なに…ここれ…」
誠子「トビで」
尭深「トビ」
白糸台一軍三年「トビっす」
淡「ちょっと待ったーーーーー!!これアンタの牌譜表?」
照「はい、そうです。大星淡さん、ご活躍、テレビで拝見しておりました。お会い出来て光栄です」
淡「ふーん。まぁ、私、有名人だしーって…、そんな事はどうでもいいのよ!ねぇ、アンタ、私と打たせてあげる!光栄に思いなさい」
照「…はい、ぜひ、お手柔らかにお願いします」ペコリ
淡(あぁ…、ゾクゾクする。この小娘、間違いなく魔物級!!捻り潰してみたい!!二度と麻雀したくないって思うくらい!!)
水着とネコミミが似合う小学生雀士すこやん
淡「えっ…、私、二位?」
照「飛ばせなかった…」チッ
誠子「ってか、大星先輩が二位とか、しばらく見た事無かったな」
尭深「あの宮永照って一年生、怖い」ブルブル
照「あの、もう一局打ちませんか?」
淡「えぇー、いいですともー、いいですともー、クソ生意気な一年のお嬢ちゃんをボコボコに沈めるまで、勝ち逃げなんかさせませんよー、ほほほほー」ピキピキ
淡「はっ!?ここはどこ!私は誰!」
誠子「おはよーっす。あぁ、大星先輩は、宮永と麻雀打って倒れましたよ」
淡「私、一位取った!?」
誠子「あっはい。倒れる直前に。しかし、あの一年、先輩より強…」
淡「コホン、その先は言わなくてよろしい。わかってるから、その辺は」
誠子「でも、チャンピオンの関係者が清澄に入らないとか変ですよね。なんでわざわざこんな所に」
淡「そんな事はどうでもいい!って、一応聞いてみるか」
誠子「珍しく部長っぽいですね、大星さん」
淡「あー、そうですねーそうですねー。ってか一年に部長補佐出来そうな真面目で成績優秀な子居ない?」
誠子「居ますよー。去年のインターミドル一位かつ、入学試験でも主席の一年」
誠子「名前は確か、弘世菫とか言ったような」
菫「はい!私、○○中学からやって参りました…」
淡「あーうん。わかったわかった。あんたとは確か照と打った時に同卓してたわね。えー合格。ついでに一軍の座もくれてやるよー。まぁ、何と言いますか…」
菫「はい」ドキドキ
淡「三年神、二年人間、一年奴隷。アンタ、私の奴隷になりなさい!」
菫「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!」
・
・
・
淡「スミレー、あの書類、全部やっといてねー」
菫「…了解です(この金髪クソビッチ早く死ねばいいのに)」
照「はい」
淡「でさー、なんでアンタ、清澄に入らなかったわけ?」トン
照「大星さんは、宮永咲さんと何度も打った事ありますよね?」チー
淡「うん、あるよー。なんと言うか人の皮を被った魔物だよねー。私の永遠のライバルだよ!」トン
照「そうですか…。対局してみてどうでした?」ポン
淡「んー、手加減されてる感じが半端なくウザいよね。ライバルって言ったけど、まずあの女の本気の本気を出させてみたいかな」トン
淡「で、あんた。咲やんの何なの?」トン
照「妹です」
淡「やっぱりねー。だと思ってた」トン
照「私、全国で本気のお姉ちゃんと闘ってみたいです!!」チー
淡「ふーん、あの女、家族麻雀とかでも手加減してるわけだ」トン
照「はい、優しい姉で、自慢の姉です」ロン
淡「ふーん、あんた姉を超えたいんだ。まぁ、気持ちはわかるなー。手加減されてるってわかったのいつくらい?」
照「小学生の時、負け続けて、ずっとコツコツと貯めてた豚さんの貯金箱を壊した日からです。あの日からちょっとずつ、賭けてたお年玉が返ってきて…」
淡「ふむふむ、いつの間にか失ったお年玉が返って来たっと」
照「はい、そしてお姉ちゃんの貯金が減ってるのも気づきました」
照「全然、うれしくなかった!!私はずっと、手加減されて、恵んで貰えた勝利に喜んでたなんて!!」
照「はい、自慢の姉ですが、麻雀は別です。最低の打ち手だと思ってます」
淡「あの女さー、あれだけの実力持ってながら、プロになる気ないんだって。高校で三連覇達成したら、麻雀も辞めるんだと」
照「…」
淡「このまま引退させたら、私の負け越し確定なんだよねー。だから、私は私自身のために麻雀やるわけだよー。負けず嫌いだからねー」
照「そうですか。私も姉が居ない、長野以外ならどこの強豪校でも良かった。負けず嫌いですから」
照「負けず嫌いです」
淡「先鋒で10万点削らなきゃ、負けって言われたら?」
照「削ります。私の能力なら、可能ですから」
淡「ふーん、言うねー。咲やん以外にも、強い高校生はいっぱい居るよ?二年の神代小蒔とか」
照「私の敵は姉だけですから」
淡「私は大将と言うポジション動けないわけだから…、そうだなー。じゃあ、白糸台の先鋒はクソ生意気な一年生にしちゃおうかな」
照「えっ?」
淡「まぁ、せいぜい各高校のエースにボコボコにされて来なさいな。お姉ちゃんに会う前に負けたら、それまでって事ね」
照「先鋒はエースを置くのが、主流とされますが…。私でいいんですか?」
淡「いいよー。まぁ、大量失点されても、主将にはこの白糸台の真のエース、大星淡ちゃんが居るわけだからね!」ドヤッ
淡「菫のヤツ、もうちょっと鍛えてみようかなー。一年で二人もレギュラー出したら、三年生が怒るかなー。でも仕方ないよねー。」
淡「勝ちたいんだから!」
淡「さぁ、今年の夏は団体戦も楽しめそうだなー」フフフ
終わり
泉「船Q、今日は入部テストの日やで!!今年は私の最後の年や!最強の千里山女子に二条泉ありと言われたるでー」
船Q「えぇ、まぁ先輩は最後の年ですね、張り切る気持ちはわかりつもりです(うっざいなー、ここ最近ベスト8にも入ってないやんけ)」
泉「いい新人入って来るとええけどな!ちょっと、私が揉んだるでー」
船Q「はいはい、 データありますけど見ます?」
泉「いらん。一年坊主達なんか、私の実力で粉砕してくれるわ!まぁ、あんまりやり過ぎても、誰も入部しやんからなー」
泉「ほどほどに、ほどほどに、手を抜かんとなー」ニヤニヤ
船Q「二年の船久保浩子です。このアホ…いえ部長の補佐をしてまして、副部長です」
泉「今から、入部テストを行う!全国大会クラスの実力を身を持って体感して欲しい」
泉「正直、飛ばなければ合格と言ってもいいくらいや」
セーラ(あっちゃー、あのタレ目女おらんやん…。アイツは姫松受けたかー)
泉「おい、そこの学ラン!お前は、男か!」
セーラ「むっ」カチン
泉「公式戦は、制服じゃアホー」
セーラ「先輩こそ、改造制服ですやん」
泉「うちはいいんや。うちは」
セーラ「そんなん筋が通ってないっす!」
泉「生意気な一年めー(でもアイツ、特待生か。カモ二人欲しい所やな)」
怜「」ゴホゴホ
泉「むっ、そこの一年!先輩が喋ってる途中に、音立てるとはなんやこらー!やる気がない証拠や」
泉「体弱い?今年の夏は、うちの最後の年やからビシバシしごくで。そんな調子じゃ入部しても、パシリも出来んやん」
竜華「…怜をパシリですか?」
泉「せや。実力主義の世界やで千里山女子は。しかも一年。パシリでもありがたいと思わな」
竜華「…」ゴゴゴ
怜「竜華、うちはいいんや。うちは元々、ここの入部テストに受かる雀力を持ち合わせてないんやから…」
泉「はっ!?誰に物言うてるんや!うちは全国大会で、活躍する二条泉やで!?今年のドラフトの目玉にもなるんやで!」
船Q(清水谷竜華っと、あーあかん。アレ怒らせたら、あかんタイプや)ポチポチ
泉「いいやろ。やれるもんなら、やってみ!船Q、同卓入って!」
船Q(うちが三年の時に最強の千里山作ればいいわ…。さて、今年は清水谷と江口のために犠牲になって貰おか…)
船Q「来年の夏が非常に楽しみやね」
勝敗はもちろん、泉ちゃんの飛び終了
もう一個カン
憧「今年でうちらもいよいよ引退かー」
穏乃「うん、今年の夏は和と長く長く遊んでたいよね」
玄「負けなければ、ずっと遊んでられますねー」
憧「玄の妹さん、今年入って来るんでしょ?」
玄「はい、宥ちゃんって言うんですよー。とってもカワイイ妹で、そしておもちは姉の私より大きくてですねー、うへへ」ポワーン
灼(おっぱい偏差値、上がっちゃうのか)スカスカ
やえ「このニワカ先生、なかなかいい目利きをしてる。この私の圧倒的、麻雀力に気づくとは」
やえ「この私が入ったからには、全国優勝も夢ではないぞ。ニワカども。奈良県をおおいに盛り上げよう」
やえ「略して、N(奈良県を)O(おおいに盛り上げる)K(小走やえ)、NOK団」
憧「こらぁ」ゴチン
やえ「あ、いッッー。なにをするニワカ!」
憧「先輩には敬語を使う!中学校で習ってこなかったの!これだから、最近のゆとりは…」
やえ「貴様もニワカでゆとりだろうがー」
憧「敬語!」ゴチン
やえ先輩は憧が卒業するまで最後まで敬語を使いませんでしたとさ
もう一個カン
ていうか書いてください
桃子「この子、スポンジが水を吸収するがの如く、どんどん成長するっすねー」ポチポチ
桃子「才能あるっす。いやー、麻雀教えるのがこんなにも楽しいとは。ここはこれを切ると待ちが増えるっすよー」ポチポチ
東横桃子はネット麻雀が趣味だった。どうせ誰も入らないだろと、麻雀同好会まで作った始末だ。
ホントはのんびりサボれる場所が欲しかっただけだが。
ゆみ「私、桃子お姉さんの学校に行きたいです!」カタカタ
桃子「辞めとくっすよー。ゆみちんは、才能あるから清澄でも風越でも龍門でも好きな所に行くといいっすよ」カタカタ
ゆみ「私は、麻雀を教えてくれた桃子お姉さんに恩返しがしたいんです!」カタカタ
桃子「いやー、カワイイ中学生っすねー。まぁ、気持ちだけで十分っすよ。どーせ誰も私に気付かない…」
そうして東横桃子二年の冬が終わり…。
睦月「うむぅ。ここなら投牌の練習が好きなだけ出来る」
睦月「いやー、いい場所見つけたなー」
桃子(まーた、来たあの一年。今は二年っすかね。注意したくても、私の声聞こえるんっすかねー。私のサボり専用部室になってますし)
桃子(うーん、言うべきか悩む。麻雀同好会の活動らしい活動もしてないし)
桃子(まぁいいっす。ほっとけば飽きて、来なくなるかもしれないっす)
ゆみ「桃子姉さん、どこだ!私は君に会うために鶴賀に入学して来た!!」
ゆみ「居たら返事をして欲しい!!」
睦月「う、うむぅ!?」ビクッ
蒲原「わはは、先輩ですか?ゆみちんがご迷惑かけてすいません。わははー」
佳織「あっ、同じ学年の津山睦月さんだよ。こんにちわー」
睦月「あぁ、妹尾佳織ですね。こんにちわ」
蒲原「わはは、もう探してない部屋はここくらいだしなー。麻雀同好会って言うから、ここがビンゴだと思ったけど、わははー」
桃子(あれは…いつかの写メ交換で見せて貰った、ゆみちん!)
桃子(本当に私に会いに、鶴賀に入学するなんて…。清澄にも簡単に入れるくらいの子なのに…)
桃子「バカな後輩っすね。先輩がきっちり指導してあげないと」
ゆみ(あれ、急に目の前が真っ暗になった!)
桃子「えへへ、だーれだ//」
もう一個、カン、四槓子
Entry ⇒ 2012.10.02 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
絹恵「お姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃん……」
洋榎「何や」
絹恵「今日、末原先輩と二人で話しとったやろ……」
洋榎「最近そればっかりやなー」
絹恵「気になるもんはしゃーないやん」
洋榎「ふふふ、まあ絹はうちのこと大好きやしなー」
絹恵「……好きやで」
洋榎「おー、うちも絹のことは……」
絹恵「……っ、ちゃう! あんな、恋愛対象として好きなんや……」
洋榎「……えっ」ドキッ
絹恵「……お姉ちゃんが他の子と仲ようしとるのを見るのは耐えられへん」
洋榎「なっ……なこと言われても……」
洋榎「……それは、ちょっと」
絹恵「な、なんで! もし私にダメなところがあるなら、なんでも……」
洋榎「ほ、ほらな? うちら、同性やし……」
絹恵「でも、私は本気で!」
洋榎「第一な、姉妹やんけ……」
絹恵「な……それだけ?」
洋榎「ん……まあ、そうなるんかな……」
絹恵「…………」
絹恵「うん……おやすみ」
洋榎「お、おやすみ……」
洋榎の部屋
洋榎「……ふぅー、あかんあかん、むっちゃドキドキしてもうた」
洋榎「……絹、あの子一人で大丈夫かいな?」
絹恵の部屋
絹恵「お姉ちゃん、なんであかんの……」
絹恵「同性やから?姉妹やから? だから、あかんってゆうてんのか……?」
絹恵「なんで……じゃあもう、チャンスなんかないやん……」
絹恵「……他に、気になる子でもおるんか? お姉ちゃんが私より、他の子を優先するのは嫌や……耐えられるわけあらへん」
絹恵「あかん、なんで、なんでなんでなんでなんで……」
絹恵「お姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃん……」
絹恵「お姉ちゃん、おはよ」
洋榎「おおう、おはよう……」
絹恵「……どないしたん?」
洋榎「ん、いや」
洋榎(案外、平気そうやんな、よかったわ)
通学路
絹恵「なあ、お姉ちゃん」
洋榎「なんや?」
絹恵「手え繋がへんか」
絹恵「……えへへ」ギュッ
洋榎「…………」
絹恵「………‥」
洋榎「な、なんか喋らへんのか」
絹恵「え? うん……」
洋榎(なんや絹、ようわからへんな……)
洋榎「トイレートイレー」
絹恵「もしかして、これ」
絹恵(お姉ちゃんの飲みかけに口つけるチャンスやないの……間接キス……)
絹恵「…………」
絹恵「……んっ」
洋榎「何しとるん?」
絹恵「うわあっ!」
絹恵「え、えっと、私もお姉ちゃんが飲んどるののみたいなー、なんて」
洋榎「んー、せやったら全部飲んでも構わへんで」
絹恵「じゃ、じゃあ……」ゴクッ
絹恵(…………)
絹恵「……はい」
洋榎「どないしたん? 全部飲んでええよ」
絹恵「さすがに、全部飲むのもどうかと思うて……」
洋榎「ええ子やなー。 ま、んならもろうとくわ」ゴクッ
絹恵「……っ」
絹恵(あかん、なんやこれ、興奮する……ごめんなさい、お姉ちゃん、ごめんなさい……)
絹恵(……よだれ入れてもうて、ごめんなさい)
洋榎「んー」
絹恵「聞いとる?」
洋榎「CM入ったらなー」
絹恵「……私が乾かしたろか」
洋榎「お? せやったら頼むわ」
絹恵「どう?」
洋榎「うーん、ええ感じ」
洋榎(ただ正直、やかましくてテレビの音が聞こえへんけども……ま、ええか)
絹恵(……ずっと、こうしていたいな)
絹恵「はい、終わったで」
洋榎「ありがとなー」
絹恵「……ふふ」
洋榎「なあ恭子、最近うちの私物がようなくなるんやけど」
恭子「そないなこと、私が知るわけないやないですか」
洋榎「うちが凍死してもええっちゅうんか! 昨日なんか毛布がなかったんやで!」
恭子「雅枝さんに言わなかったんですか」
洋榎「酒飲んだ後で、思いっきり寝とった……」
恭子「はぁ、それで」
洋榎「まあ結局、絹と一緒に寝ることにしたんやけどな」
恭子「主将、ほんまに絹ちゃんと仲ええみたいですね」
洋榎「ん……仲ええだけやったら、なあ」
恭子「喧嘩でも?」
洋榎「あんなあ……この前、絹に告白された……」
恭子「……はい?」
恭子「え、告白って、あの告白?」
洋榎「その告白以外あらへんわ」
恭子「返事はなんて?」
洋榎「咄嗟に、姉妹やから無理、って……」
恭子「あー、それ絹ちゃん傷ついとるやろなあ。 断るにしても、もうちびっと言葉選ばんと」
洋榎「う……」
恭子「……で、実際のところ、主将はどう思っとるんですか?」
洋榎「もう、もうええやろこれは!」
恭子「自分が言っといて逃げるのはなしですわ、むっちゃ気になりますやん」
洋榎「……そんなん、ようわからへんわ」
洋榎「絹ー? うちのシャツ知らへんー?」
洋榎「……おらんな。 絹が着とるもんやと思ったのに」
洋榎「しゃーない、後は絹の部屋やな」
洋榎「……絹、入るでー」ガチャッ
絹恵「っ!」
絹恵「あ、ノックくらいして……」
洋榎「すまんな、うちのシャツしらへ……ん……」
洋榎(な、なんで絹のとこにうちの毛布……昨日はなかった……)
絹恵「う、あ……」
洋榎「……それと、絹」
洋榎「なんや、あの瓶に入ってる赤いの……」
絹恵「あれ? ……わかっとるくせに」
洋榎「え……」
絹恵「……お姉ちゃんの、髪の毛やで」
洋榎「なっ……!」
洋榎「ひっ……」
絹恵「なんで逃げようとするん……なんで受け入れてくれへんの」
絹恵「ねえなんで?なんで?なんでなんで……」ギリッ
洋榎「いたっ……き、絹……」
絹恵「私は、こんなにも好きなのに!」
洋榎「……っ」
絹恵「……あはは、油断した」ガチャッ
洋榎「……はっ? て、手錠……?」
絹恵「決まっとるわ、ずっとこうしたかったんやから」
絹恵「これでお姉ちゃんを独り占めできる……やっと……」
洋榎「い、いや……」
絹恵「お姉ちゃん……ちゅっ」
洋榎「……ぁ」
絹恵「ふ……んっ」
洋榎「っ……」
洋榎「ぅ……ん、ぁ……」
絹恵「好き、好き……ちゅ」
洋榎「絹、絹……もうやめ……っ!」
絹恵「んむっ……ん……」
洋榎(あ、舌が……この子、本気かいな……)
洋榎「……ふぁっ」
洋榎「はぁ、はぁ……」
絹恵「幸せ……えへへ」
洋榎「なあ、絹、離して……」
絹恵「あかんわ……ぺろっ」
洋榎「ひぅ!」
絹恵「んにっ」
洋榎「ぃ、たっ……噛むな……」
絹恵「……ふふ、ええこと思いついてもうたわ」
洋榎「え……」
絹恵「お姉ちゃん、私のものにならんかな? ……えへへ」
洋榎「や、いやや……堪忍……」
絹恵「んぎっ」
洋榎「いっ、がぁっ!」
絹恵「……お姉ちゃん、可愛い」
洋榎「ぇ、げほっ……」
絹恵「……あぐっ」
洋榎「あ、いだっ……ぃ」
洋榎(痛い、染みる、痛い痛い……)
絹恵「……ふぅ、はぁっ……あぁっ」
洋榎(お……終わったんか?)
絹恵「お姉ちゃん、舌出して」
洋榎「なっ、まだ……」
絹恵「……んむっ」
洋榎「ぅ……んっ」
洋榎(……て、鉄の味? まさか……)
洋榎「ふぅ、っ……き、絹……」
絹恵「……えへへ、お姉ちゃん?」
洋榎(なんやねん……怖い怖い、痛い、嫌や……)
絹恵「……美味しかったで」
恭子「主将、おはようございます」
洋榎「ん、ああ……」
恭子「ちゅうかどないしたんです、そのマフラー」
洋榎「……最近、寒くなってきよったからな」
恭子「そんなでもないでしょう。 阿知賀女子にでも憧れたんですか」
洋榎「……そんなところや」
恭子「なんや歯切れの悪い」
洋榎(おかんが帰ってくる前に、絹に解放されて)
洋榎(風呂入る前に鑑を見たら、首から、血……)
洋榎(こないな傷晒して街中あるけへん……それに、舌に、鉄っぽいのがあたったのは……)
洋榎(嫌や……絹が、怖い……)
洋榎(怖いけど……うちが拒絶したら、絹はどうなってまうんやろ……)
恭子「主将、今日どないしたんですか」
洋榎「何がや」
恭子「振り込みばかり、それ以前に、リーチして当たり牌見逃して流局はないでしょう」
恭子「顔色もあかんし、これで何もあらへんほうがおかしいですよ」
洋榎「……なんでもあらへん、って」
恭子「手、震えてます」
洋榎「…………」
恭子「……失礼します」バサッ
洋榎「ちょ、取ったらあかん……」
恭子「っ!」
洋榎「…………」
恭子「主将!」
洋榎「……うぁっ」
恭子「ちょ、何があったんですか!?」
洋榎「……なぁ、聞いてくれるんか?」
恭子「当たり前やないですか」
洋榎(黙る気でおったのに……はは、結局、喋らずにはいられへんっちゅうことか)
洋榎(絹、弱いお姉ちゃんを許したってや……)
洋榎「……なんか言ったらどや」
恭子「……なんでそんなん黙っとったんですか」
洋榎「元々は、うちが絹の気持ちに気付かれへんかったのがいけなかったしなぁ……」
恭子「だからって……」
洋榎「絹が満足するんやったら、うちはそれでええわ」
恭子(手、まだ震えとるやないですか……)
恭子「……せやかて、こないなこと続けても、主将はもちろん絹ちゃんにもあかんやろ」
洋榎「……まあ、正直むっちゃ怖いしな……はは」
洋榎「できれば、普通に愛して欲しいわ」
恭子「…………」
恭子(主将も、もう、壊れとるんやないんですか……?)
絹恵「末原先輩と、何の話しよったん……?」
洋榎「ん……絹の話をちびっと」
絹恵「違うやろ!」
洋榎「なっ……」
絹恵「私が傷つけたって相談しとったんとちゃうか……?」
洋榎「……っ」
絹恵「なんでや、なんで……嫌、お姉ちゃん……私から離れないで、ダメダメダメ……」
絹恵「嫌や、嫌や嫌いやいや!……離れないで、お姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃん!」
絹恵「……あ、はは、ははは……そっか、末原先輩が悪いんやな……やったら話は早いわ!」
洋榎「ちょっ、絹!」
洋榎(恭子も絹も傷つけとうない……なら、うちが傷つけばええんか? なぁ、絹……)
洋榎「……ちゅっ」
絹恵「っ!」
洋榎「……すまんな、前はあんなこと言うて」
洋榎「うちらは姉妹やけど、なら一緒にいられる。 なあ、絹……好きやで」
絹恵「うん、うんうん……私も……」
絹恵「……お姉ちゃんは私の、私だけの……私も、お姉ちゃんだけのもの……」
洋榎「……せやな」ギュウ
洋榎(……うちがこうしていれば、絹は落ち着ける……せやろ、絹)
洋榎(やったら、うちは構へんわ……へへ)
絹恵「お姉ちゃん……」
洋榎「……なんや」
絹恵「好き、好き……愛してる……なぁ、も一回、も一回」
洋榎「っ……んっ」
絹恵「……幸せ」
洋榎「…………」
おわれ
Entry ⇒ 2012.10.01 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
純「ダリィ」白望「ダルい」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1348923405/
マイナーカプが苦手な人は気をつけろ!
塞「好きな人ができたァ!?」白望「うん」
http://ssweaver.com/blog-entry-1723.html
白望「芋けんぴ、髪に付いてたよ」
http://ssweaver.com/blog-entry-1729.html
一応前作だけどお話のつながりはないです
期待
白望「ダルい……」
純「え?」
白望「んー?」
純「…………」
白望「…………」
純「…………」
白望「…………」
純「……なんか喋れよ」
白望「……ダルい」
白望「うん」
純「二回戦見てたぞ」
白望「サインなら書かないよ」
純「いらん」
白望「そう」
白望「……なに、ナンパ?」
純「違う!」
白望「そう」
純「……言っておくが、オレは女だ」
白望「見ればわかる」
純「……そ、そうか」
純「え?」
白望「そこの自販機に」
純「あ、ああ、さっきの質問の返事か」
白望「うん」
白望「で、買う前にベンチに座ったら、ダルくて立てなく……」
純「おいおい」
白望「仕方なく迎えを待ってる」
純「ダメ人間のお手本だな」
白望「ん?」
純「送ってやるから、さっさと立てよ」
白望「……やっぱナンパ?」
純「違うわ!」
白望「冗談」
純「ったく……」
白望「まっすぐ行って左」
純「すぐそこじゃねぇか!ダラけすぎだろ!」
白望「歩き始めるまでが一番大変」
純「……それはまぁ、わからなくもない」
純「1分もかからなかった……」
白望「……あ」
純「?」
白望「ジュース買い忘れた」
純(こいつ……)
白望「買ってくる」
純「戻るのかよ!」
純「どうした?」
白望「なんで着いてきてるの?」
純「……なんでだろう」
白望「まあいいけど」
純「気になるならどっかいくぞ」
白望「別に……」
純「え、買ってくれんの?」
白望「迷惑かけたお詫びに」
純「おぉ、迷惑という言葉を知ってたのか。コーヒーで」
白望「失礼な……」ピッ ガコン
白望「はい」
純「サンキュ」
白望「オレンジ」ピッ ガコン
純「へぇ、ほうじ茶とか飲むのかと思ってた」
白望「それは偏見……」
…
-宮守女子控え室-
塞「……遅い」
豊音「そろそろ30分だよー」
エイ カキカキ
胡桃「ん、寝てる人の絵?……シロ寝てるんじゃないかって?」
エイ コクコク
塞「いや、さすがにそれは……んー、でも、シロだしなぁ」
胡桃「ないとも言い切れないんだよね」
塞「寝てたら叩き起こしてね」
胡桃「まかせなさい!」
豊音「ら、乱暴は駄目だよー」
胡桃「わかってるよ。じゃあ行くね」
エイ フリフリ
胡桃「まったく、世話が焼けるなぁ……」
胡桃「ベンチに座ったら立てなくなったとかかな」
胡桃「ダルいダルい言ってたりして」
純「で、透華だけがユニフォーム着て来てさ」
白望「まじめな人だね」
胡桃「……?誰かと話してる?」
胡桃 ヒョコッ
胡桃「……」
胡桃「……!?」
胡桃「シ、シロがイケメンにナンパされてる……!!」
バタンッ!
胡桃「大変だよみんな!」
豊音「わっ、びっくりしたー」
塞「どうしたの?」
胡桃「シロがイケメンにナンパされてるんだよ!」
豊音「えっ!?」
エイ「!?」
塞「はぁ?」
胡桃「でも、結構話弾んでるみたいだったよ!」
エイ「シロガ……?」
豊音「プロのナンパ師さんとかかなー?」
塞「そんなのいるの!?」
胡桃「と、とにかくみんなきて!このままじゃシロが傷物に!」
純「国広くんがタバスコジュース引き当ててな」
白望「おっちょこちょいなんだ」
エイ「ナ、ナイスガイ……!」
塞「イケメンだ……!」
胡桃「だから言ったでしょ!」
豊音「……どこかで見たようなー……?」
白望「楽しそうだね」
エイ「ホントニハナシハズンデル……」
塞「話術まで得意とは、なんたるイケメン……!」
胡桃「ああ、このままじゃシロの初めてが……」
豊音「うーん、どこだったかなー?」
白望(何してんだろ……)
純「んで証拠隠滅に……って、どうかした?」
白望「んー、……何でもない」
純「?」
白望「……」ジー
エイ「シロ、コッチミテル……?」
塞「うえ、ばれた!?」
胡桃「気づいたなら声かけてくれれば……」
胡桃「ナンパがしつこくて抜けられないんだ!」
塞「……いや、なんか違わない?」
エイ「シロタスケル!」
塞「エイスリンまで乗り気になってるし……」
豊音「テレビで見たようなー……」
胡桃「いくよみんな、ほら、トヨネも!」グイッ
豊音「えっ、えっ?」
純「あれ、あんたのお仲間さんじゃね?」
白望「うん」
純「なんで殺気立ってんだ?」
白望「……さぁ」
胡桃「シロ、大丈夫?体とか触られてない!?」
白望「……え?」
純「は?」
純(こいつオレをナンパと勘違いしてんのかよ!)
純「おい、誤解d」
胡桃「ほらシロ、こんなナンパほっといて控え室戻るよ!」グイグイ
白望「ちょ……タンマ」
エイ「ハヤクアルク!」
白望「えぇ……」
塞「し、失礼しました」ペコリ
純「…………」
純「戻るか……」トボトボ
一「おかえりー。ずいぶん遅かったね?」
透華「何かございましたの?」
純「ああ、聞いてくれよ」
…
一「あっはっはっはっは!」
純「……笑うなよ」
一「いやごめんごめん。何とも純くんらしいエピソードでつい」
一「今日の純くん、それほど女の子らしい格好でもないのにねー」
純「……そういやそうだな」
一「何て人だっけ?」
智紀「岩手の先鋒は、小瀬川白望」
純「へー、そんな名前だったのか」
純「小瀬川白望か……」
胡桃「撒いた!?」
塞「そもそも追ってきてないよ」
白望「だる……」
胡桃「で、シロ、あのナンパに何かされなかった?」
白望「別になにも。というかあの人ナンパじゃないよ」
胡桃「えっ!?」
胡桃「そ、そんなことが……」
塞「失礼なことしちゃったなぁ……謝らないと」
エイ「シャザイ?ユビツメ?」
胡桃「何怖いこと言ってんのエイちゃん!?」
白望「見ればわかるでしょ」
胡桃「わかんないよ!」
塞「高身長のイケメン以外の何者でもなかったよね」
エイ「ナイスガイデシタ」
豊音「あーーー!!」
豊音「思い出したよあの人!」
豊音「去年の長野代表の、龍門渕高校の先鋒だった人だよー!」
胡桃「あの人が!?」
白望「へー」
豊音「ど、どうしよー。サイン貰いに行かないとー」アワアワ
塞「いや、さすがにもう遅いから諦めなよ」
豊音「ううー」クスン
胡桃「明日からは清澄と姫松の応援だよ!……あ、そういえば清澄って」
塞「ああ、長野の代表だね。あの人も清澄の応援に来てたのかもね」
豊音「じゃあ、清澄を応援してればまた会えるかも!」
豊音「天江衣さんもいるのかなー」ワクワク
エイ「コロモ?」
豊音「去年のインターハイの最多得点プレイヤーだよー!」
エイ「スゴイ!」
白望「…………」
塞「シロ?」
白望「あ、ああ、うん」
エイ「ドウカシタ?」
白望「……なんでもない。帰ろう」
胡桃「…………」
胡桃(これは、まさか……!?)
-宮守女子宿泊先-
白望「うーん」
エイ「シロ?」
白望「……ちょっと散歩してくる」
エイ「ジャアワタシモ、」
白望「ごめん、一人になりたいから」スタスタ
エイ「……シロ?」
白望「んー……」
白望「まいったなぁ……」
白望「さっきから、あの人のことばっかり考えてる」
白望「……そういえば、名前なんていうんだろう」
白望「トヨネに聞いておけばよかったかな」
白望「……独り言ダルい」
白望「座ろ……」
白望 ポケー
「夜に女一人で出歩くのは危ないぞ?」
白望「え?」
ガバッ!
白望「!!?」
白望(何……!?)
純「オレだよオレ」
白望「……!?」
白望「なんでここに」
純「いや、散歩してたらあんたがいたから、驚かせようかと」
白望「……びっくりした」
純「ごめん。まさか泣くほど驚くとは思わなかった」
純「涙目だぞ」
白望「……!?」
白望 ゴシゴシ
白望「泣いてない」
純(やべぇ、かわいい)
純「……もっと動じない性格だと思ってた。ごめんな」
白望「泣いてないって」
純「はいはい」
純「人のこと言える立場か?」
白望「う……」
純「まああれだ、ちょっと一人になりたくてな」
白望「なら、声かけなくても良かったんじゃ……」
純「いや、あんたのこと考えてたからさ」
白望「!?」
純「あ、べ、別に変なことは考えてないぞ」
純「ほら、初対面でオレのこと女だってわかってくれる人って少ないからさ」
白望「あ、ああ、そういう……」
純「……なぁ、なんでオレが女だってわかったんだ?」
白望「え?」
純「オレってどう見ても男顔だし……服とかも女っぽくなかっただろ」
白望(どう考えても女の子としか思えなかったし……)
白望(んー……強いて言うなら……)
白望「匂い……かなぁ?」
純「!?」
白望「うん、よく考えれば、見た目よりそっちのほうが大きかったかも」
白望「うん、女の子の匂い……っていうのかな」
純「……お、女の子の……オレが……」
純(な、なんかわからないけど、嬉しい……のか)
純(やば、顔赤くなってるかも)
白望「……それに」
純「お、おう?」
白望「綺麗だったから、かな」
白望「本心なんだけどなぁ……」
白望「肌綺麗だし……。指とか、結構気使ってるんじゃない?」スッ
純「ちょ、……!?」
白望「うん、やっぱり綺麗」
純「お、おお……」
白望「まぁ、大体そんな感じかな」
純「そ、そうか」
純「帰んの?」
白望「んー、そうだね」
純「そうか……」
白望「……あ、そういえば」
純「?」
白望「名前、聞いてない」
純「そういや言ってなかったな」
純「オレは井上純。改めてよろしく」
純「あーちょいちょい、こっちきて」
白望「?」
純 チュッ
白望「……!?」
純「じゃーな、白望♪」タタッ
白望「え?名前?なんで?」
白望「……キスされた///」
純「あー、格好つけすぎた///」
純「失敗したら超恥ずかしいことになってたなぁ……」
純「上手くいってよかった」
純「それにしても、何か忘れてるような……」
純「…………あ、連絡先、聞いてねえ」
白望「ただいま……」
エイ「オカエリ、オソカッタネ?」
白望「うん、……ちょっとね」
エイ「?……カオアカイ……ネツ?」
白望「ううん……。今日は寝る」
エイ「??」
白望(初めてだったんだから、責任取って貰わないと……)
白望(次に会うときは、覚悟して……純)
おしまい
こんな二人もいいものですね
Entry ⇒ 2012.09.30 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
京太郎「な、なんだこの生き物は?」鬼巫女「……」ビクビク
小蒔「……」ドキドキ
初美「あ、姫様 それロンですー」
小蒔「ええ!?」
初美「8000いただきますよー」
小蒔「は、はい…お疲れ様でした…」
霞・初美・春「お疲れ様でした」
小蒔「か、霞ちゃん…」
霞「小蒔ちゃん、気の毒だけど、ルールはルールだから…」
小蒔「うぅ…」
霞「今日も小蒔ちゃんはおやつ抜きね」
小蒔「」ガーン
霞(県予選までの間に 神様を降ろさない素の小蒔ちゃんを強化したくて始めた罰ゲームだけど…なかなか上達しないわねえ)
小蒔「春ちゃぁん…」ウルウル
春「…ポリポリ」チラッ
霞「小蒔ちゃん、もちろん黒糖もダメよ?」ニコッ
春「と、いうわけなので」ポリポリ
小蒔「うぅ~」グスン
霞(心を鬼にしないと…)
小蒔「…」グゥ~
小蒔「お腹がすきました…」
小蒔「朝昼夕三食だけじゃ足りないよぉ」
小蒔「でも六女仙を従える巫女として買い食いなんてできませんし…」
小蒔「甘いものが食べたい…別腹が空っぽです」グスン
小蒔「わかってる…神様を降ろせない時でも最低限戦えるくらいに私を鍛えるため…だけど…」グゥゥ
小蒔「お腹すいたよぉ…」
小蒔「霞ちゃんなんて…霞ちゃんなんて…」グスッ
小蒔「きらい…」
ボンッ
鬼巫女「……」テテテテテ
-朝-
霞「小蒔ちゃん、起きてるかしら?そろそろ学校に…」
霞「…小蒔…ちゃん…?」
その日、神代小蒔は鹿児島から姿を消した――――
ついでに神代家の冷蔵庫の中身も―――
和「ロンです、7700」
京太郎「なんですとーーー!?」
和「須賀君…それは明らかに危険牌じゃないですか、不用心すぎます」
優希「おい犬!最下位の罰だじょ!学食でタコス買ってこーい!」
京太郎「はいいいいいい!」
咲「京ちゃん…」
京太郎「東場の時点で優希に絞られて、いけると思ったら咲に鳴かれて嶺上嶺上…」
京太郎「あいつらに勝てる自分が想像できない…はは、泣きそうだ…」
京太郎「こんなんで俺、個人戦で生き残れるのかな…体力ばかりついてくぞ…」
京太郎「あれ?学食が閉まってる?おかしいな まだ閉店時間じゃないはず…」
京太郎「なんでだよ!?これじゃ町までタコス買いに行かなきゃならねーじゃねーか!」
京太郎の友達らしきモブ「俺もよく知らんけどさ、噂によると食材が何者かに盗まれたんだとさ、クックック」
京太郎「マジかよ・・・食材泥棒なんて今のご時世いるのか…?」
京太郎の友達らしきモブ「学食はあきらめろ、じゃーな 部のパシリ頑張れよ!クックック」
京太郎「ちくしょおおおおおおおおおおお誰だよお前ええええええええ」
京太郎「た、タコス…4つ、いや6つください」
店員「ぁありゃしたー!!」
京太郎「ふう、なんとか入手できた…早く帰らないと優希にドヤされるぞ」
京太郎「それもこれも、なんもかんも泥棒が悪い!もし俺の前に出てきたらとっ捕まえて警察に突き出してやる!」ゴゴゴゴ
キャードロボウヨーダレカー
京太郎「わお」
京太郎「待ちゃあがれぃ!おめえの悪行!お天道さんが許してもこの俺が!」
鬼巫女「っ!!」テテテテテテテ
京太郎「な、なんだありゃ!?人?いや動物か!?」
京太郎「と、とにかく捕まえる! ってはえええええ!!?」
京太郎「だがしかし!部活(パシリ)で鍛えた俺の脚力をなめるなよ!アイシールド21もびっくりだぜ!」
京太郎「だらっしゃあああああとったどーーー!」
鬼巫女「っ!!」ジダバタ
京太郎「こら、暴れんな!盗ったもんを返すんだ!」
京太郎「よかったな、許してもらえて」
鬼巫女「…」ショボン
京太郎「しかしお前、ほんとになにもんだ?子供…にしちゃ小さいし、角生えてるし、巫女服か?それ」
京太郎「どこから来たんだ?帰るところあるのか?家族とか…」
鬼巫女「っ……」ジワ
京太郎(ワケありか…)
鬼巫女「……」グウゥゥゥ
京太郎「んで、腹減ってんのか」
鬼巫女「…?」ビクビク
京太郎「たくさんあるから一個くらいはくれてやるよ いらないんなら俺が食っちまうぞ?」
鬼巫女「…!」ムシャムシャムシャ
京太郎「はは、すげえ食いっぷり 腹減ってたんだなー」
鬼巫女「…!…!」ペコペコ
京太郎「いいっていいって気にすんな そんでさ お前、これからどうするんだ?行くあてでもあるのか?」
鬼巫女「……」ショボン
京太郎「ないのか… んー、だったらさ」
鬼巫女「?」
京太郎「悪い悪い 学食が閉まってて街まで買いに行ってたんだよ ほら、みんなの分もあるぞ」
咲「わあ、ありがとう京ちゃん」
京太郎「あー…それでさ みんなに相談したいことがあるんだよ」
和「相談?」
京太郎「皆の家でさ ペットっつーか…その、家族が一人増えても大丈夫ってとこはないか?」
咲「そんな家、あるほうが珍しいと思うけど…?」
カピバラ自体が高い50万円前後
鬼巫女くらい余裕で養えるわ
京太郎「犬っていうか、鬼っていうか巫女っていうか……」
和「??? 意味がわかりません」
京太郎「だよな…ま とりあえず見てくれよ おーい、入ってこいよ」
鬼巫女「……」ビクビク
和「きゃあああああああ!! なんですかこれはーー!?」
京太郎「実はかくかくしかじかで…」
鬼巫女「……」ショボン
京太郎「なんかほっとくのもかわいそうになっちまってさ」
咲「京ちゃん…」
和「すみませんがうちは父が生き物…?は苦手で…連れて帰るのは難しいかと…」
優希「うちも無理だじぇー」
咲「私も…ちょっと難しいかな」
京太郎「そっか…」
咲「ごめんね、京ちゃん」
バンッ
??「話はきかせてもらったわ!!」
久「全部聞いてたわ、なかなかおもしろいのを拾ってきたわね~ 須賀くん?」
まこ「ほほ~確かに巫女で鬼じゃのう、服も…おぉう!ちゃんと脱げるんか!?」
鬼巫女「~~~っ!!」ジタバタ
京太郎「部長はどうですか?こいつ、連れて帰るわけには…」
久「悪いけどうちは無理ね~ それほど大食いだとちゃんと世話できる自信ないわ」
まこ「うちも雀荘じゃし…食べ物も扱うからペットは無理じゃのう」
京太郎「そうですか…」
京太郎「うーん うちにはもうカピバラがいるんですよね…この部室でってわけには…」
咲「京ちゃん こんなところに置いておくのはかわいそうだよ…」
京太郎「だよな…」
鬼巫女「…」シュン
京太郎「そ、そんな顔すんな!わかったよ、部長の言うとおり ここまで連れてきた俺に責任がある!嫌じゃなければうちに来い!」
鬼巫女「…!」パアア
ひしっ
優希「おおう、すっかり京太郎になついてるじぇ」
京太郎「名前…そう言えばなにも考えてなかったな」
和「あなた、お名前はあるんですか?」
鬼巫女「…!」テテテテ ピョンピョン
まこ「ホワイトボードの前でジャンプし始めたぞ」
久「須賀くん、だっこしてあげなさいな」
京太郎「はい ほら、ペン持てるか?」
和「それより、字が書けるんですかその子…」
鬼巫女「~~♪」
「コマキ」
京太郎「ふう…なんとか家族も説得できてよかった、小遣いが減らされちまったのは痛いが」
※説得シーンはワカメがキンクリしました
コマキ「…」グウゥゥ
京太郎「もう腹減ったのか?夕飯までまだ時間あるし…ほら、ポッキーでも食っとけ」
コマキ「!!!」パアアアアアアア
コマキ「♪」ペカー
ポテ
京太郎「あれ?まだ残ってるぞコマキ?」
コマキ「♪」ブンブン
京太郎「満足したのか…?もしかしてコマキの主食って…お菓子?」
京太郎「た、助かった…かもしれん」
コマキ「♪」ゴロゴロ
京太郎「やれやれ、のんきな奴だな さて、俺は夕飯までネトマでもやってるか」
京太郎「うがああああああやっちまったああああああ…だって!俺も聴牌してたんだもんんんんん!」
京太郎「も、もう駄目だ…まくるには次のオーラスで倍満は出さないと…」
コマキ「…」テテテテ ピョン
京太郎「うぅ…コマキ…見ないでくれ、こんな俺の体たらくを…」グスン
コマキ「……!」ペカーーーー
PC「南四局」
京太郎「配牌は…え?な、なんか筒子がやけに多いな…」
PC「ツモ 清一色 三暗刻」
京太郎「な、何いいいいいいいいいいいいいいい!?」
巴「か、霞さん 元気を出してください 姫様もきっとすぐに見つかります…」
霞「えぇ……そうね」
霞(小蒔ちゃん…どこへ行ってしまったの…)
初美「霞さん……」
霞(あの子を強くしたい一心で…傷つけてしまっていたのね…また会えたら謝らないと…)
霞(昔から お菓子が大好きだったものね…)
春「……」スック
初美「はるる?どこに行くんですかー?」
春「…電話、人探しが得意な人に心当たりがある」
春「…霞、元気出して… きっとお姉ちゃんがみつけてくれる」
~ひとまずカン~
だいたいストックたまったらまた立てて書くんで このスレは落としちゃってください
見てくれてありがとうございました
県予選とか全国とかやれたらやりたい
おう、京ちゃんに懐いたから添い寝もするし一緒に風呂も入る
責任取らないとな
次も楽しみにしてるで~
乙だし
Entry ⇒ 2012.09.30 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (7) | Trackbacks (0)
華菜「人の心が読めるメガネ?」
華菜「これでキャプテンの心をのぞいてやるし!」
美穂子「~♪」
華菜「キャプテン引退したのにまだ雑用してるし…」
華菜「…」
華菜「はっ!しまったし!」
華菜「本来の目的を忘れてたし!」
華菜「とりあえずメガネかけるし」カチャ
華菜「装着完了!」
華菜「早速、キャプテ~ン」タタッ
美穂子「あら華菜、おはよう」
華菜「おはようございますだし!」
美穂子(なぜ、メガネをかけてるのかしら?)
美穂子(目は良かったほうだと思うけど)
華菜(なんでメガネかけてるのとか思ってるし!)
華菜(見える!見えるぞ!キャプテンの心が!)
華菜「キャプテン、これただの伊達メガネです」
華菜「ファッションってやつです!」
美穂子「そうなの。安心したわ華菜の目が悪くなったとばかり…」
華菜(キャプテン優しいな~)
華菜(でも今日はとことん心を読んで)
華菜(キャプテン好みの女を目指すし!)
華菜「キャプテン、質問何個かいいですか?」
美穂子「質問?別に構わないけど…何を聞きたいのかしら?」
華菜(まずは、ストレートに聞くし!)
華菜「キャプテンはどんなタイプの人が好きなんですか?」
華菜(さぁ、どんなタイプが好きか言うし!)
華菜(キャプテン可愛いな~)
美穂子「そ、そうね強いて言うなら…大人で、優しくて」
華菜(フムフム)
美穂子「私のすべてを受け入れてくれる人かしら?」
美穂子(そうね、上埜さんのように大人で、優しくて)
美穂子(私のこの右目をきれいといってくれる…)
華菜(…)
華菜(もしかして一発目の質問からBAD END?)
華菜(キャプテンがあの女を気にかけていたことは知ってたけど…)
華菜「つ、つまり清澄の部長みたいな人ですか?」
華菜(って、華菜ちゃん何聞いてるし!?)
美穂子「べ、別に上埜さんのこととは…//」
華菜(バレバレだし。心を読むまでもないし…)
華菜(だめだなー私。)
華菜(こうなるって分かってたのに)
美穂子「華菜、部活始まるわよ!」
華菜「え?」
華菜「は、はい!」
華菜(キャプテン、あなたは私の手の届かないところにいるんですね…)
華菜(何か、今日はもうやる気でないなぁ)
久保「…以上だ」
久保「それじゃあ各自、卓について始めてくれ」
部員「ハイ!」
華菜「…はい」
久保「池田ァ!気合が入ってないぞ!やる気あんのかてめぇ!?」
華菜「は、はい!すいません!」ペコペコ
久保(ん…こいつメガネなんてかけてたか?)
華菜「は、はい!」
華菜(まだ何か用だし?)
久保「てめぇ目でも悪くなったのか?」
久保(メガネかけた池田も悪くないな…)
久保(いや、むしろ可愛い!これはこれでアリだな!)
華菜「」
華菜(メガネかけたまんまだったし!)
華菜(て、ていうかコーチ何考えてるし!!)
久保「池田…?」
華菜「い、いやこれは伊達メガネだし!」
華菜「ファッションの一環だし!」
久保「そ、そうかファッションか…」
久保「そ、その何だ似合ってるぞ…//」ボソ
華菜(ボソっと言ってるつもりかもだけど)
華菜(心読めちゃってますからー)
久保「すまん。無駄な時間を取った」
久保「練習に戻ってくれ」
久保(今晩はメガネだなメガネ)ウンウン
華菜「」ガクガク
華菜「あ、あそこが空いてるし」
華菜(メガネはかけたままで良いか)
==30分後==
華菜「ツモだし!4000オールだし!」
華菜(よしっ、今日は調子いいし!)
部員A「す、すいません先輩。私少し頭が痛くて」
部員A(体重いな熱かな?)
華菜(本当に辛そうだなー)
華菜「早く保健室行くし」
部員A「すいません。失礼します。」
華菜(誰か空いている人は…)
華菜「」チラ
久保「」メトメガアウ
華菜(コーチと目が逢ったし、嫌な予感が…)
久保(しかし、ランキング制のこの部活でコーチが打つのはなぁ)
久保(いやでも、風越の未来のためにはコーチの私が打って教えるというのも)
久保(そ、そうだ風越のためだ!私は風越のために打つんだ!)
久保(決して池田と打ちたいわけではない!決して!)
華菜(いらんお世話だし…)
久保「私が直々に打ってやろう」
華菜「い、いやランキングに関わってくるのでコーチが打つのはちょっと…」
華菜(何が何でも阻止するし!)
久保「…」シュン
久保(断られた。そりゃそうだよな)
久保(あれだけひっぱたかれた奴と打ちたくないよな…)
華菜(…なんだか可哀相になってきたし)
部員C「私も、もっと強くなりたいです!」
部員B、C「「だからよろしくお願いします!!」」
部員B(ここで、池田とコーチに勝てば一気にランキングは上がるはず!)
部員C(コーチが池田を潰せば私のランキングがあがるのは必然)
華菜(先輩には敬語使えし…)
華菜(ていうか考えてることが黒いし…)
華菜(でも、二人ともレギュラーに入りたいのは事実)
華菜(レギュラーの私がこんなんじゃダメだし!)
華菜「コーチ先ほどはすいませんでした」
華菜「自分からもよろしくお願いしますし!」ペコ
久保「」パァア
華菜(メッチャ笑顔だし)
対局中はメガネはずしてることにしてください。
==約10分後==
久保「ロン、3900」
華菜「っはい…」
華菜(やっぱりコーチは一筋縄ではいかないし)
華菜(でも天江や宮永咲を超えなきゃ全国はないんだし!)
華菜「リーチだし!」
・・・
久保「最後のやつは部室の鍵を事務に返しておけ!」
部員「ありがとうございました!」
華菜(結局、コーチには及ばなかったし)
華菜(でも、諦めないし!来年は風越を私が全国に連れて行くんだ!)
華菜「よし、特打ちするし!」
華菜「と、暇そうなみはるん発見!」
未春「うん、いいよ」
未春「ちょうど、キャプテンと打とうと思っていたから」
華菜「キャプテン…」
華菜(コーチのことがあって完全にキャプテンに振られたこと忘れてたし!)ハッ
華菜(なんか、キャプテンと打つの気まずいな~)
華菜(別に、直接振られたわけじゃないけど…)
華菜(こんなことならあんなこと聞くんじゃなかったし)
未春「華菜ちゃんどうしたの?」
華菜(ま、今は麻雀を打つことだけ考えよう!)
華菜「そういえば、もう一人はどうするし?」
未春「そうだね…どうしようか?」
華菜「文堂はいないし?」
未春「用事があるからーって帰っちゃった」
華菜「そうなのか」
久保「ッフン」チラ
未春(今の咳コーチだよね?)
未春(あ、そうだコーチにお願いしてみよう)
未春「コー、ガシッ華菜「みはるんダメだ、それだけはダメだ」
華菜(コーチはあからさまにこちらに入りたがっている)
華菜(さっきは可愛い?後輩のために一緒に打ったが今回は…)
華菜(それに対局にはキャプテンもいるし)
美穂子「ごめんなさいね吉留さん待たせてしまって」
未春「いえ、それよりまだもう一人相手が見つからなくて」
美穂子「そうなの困ったわね」
久保「」チラチラ
華菜(キャプテンダメだ、気づいたらダメだ)
華菜(その視線に気づいたら最後だしぃ~)
美穂子「誰も余ってないようだし」
未春「そうですね」
華菜(華菜ちゃん勝ったし!コーチに勝ったし!)
久保「…」
久保(強攻策にでるか)
華菜「!?」
華菜(なぜこっちに来るし…)
華菜(なぜそんなにニコニコしながら華菜ちゃんたちの卓に向かってくるし…)
華菜(なぜ!?)
久保「一人足りないようなら、混ぜてもらって良いか?」
未春「コーチが?」
美穂子「私は全然構いません」
未春「私もコーチがいいんでしたら、よろしくお願いします」
華菜(終わったし…)ゼツボウ
華菜「あ、すいません」
華菜「コーチまたよろしくお願いします」
久保「あぁ」
久保(やっぱり池田は可愛いなぁ)
華菜「・・・」
華菜(なんで今日のコーチはこんなに積極的だし?)
華菜(よりによってこんなメガネかけているときに…)
華菜「やっと終わったし」
未春「ありがとうございました」
美穂子「いいのよ、引退した私にはこんなことくらいしか出来ないから」
華菜「そんなことないしキャプテンがいないと私たち全然ダメだし!」
美穂子「華菜…」
美穂子「ありがとう」ナデナデ
華菜「えへへ」
久保「」ムッ
久保(池田のやつ、福路にデレデレしやがって)
華菜(コーチがキャプテンに嫉妬してるし)
久保「お前らも気をつけて帰れよ」
三人「はい!」
未春「今日のコーチなんか積極的に卓についてましたね」
美穂子「そうね、たまには打ちたくなるんじゃないかしら?」
華菜(言えない、私目当てで卓についてたとは言えない)
華菜「結局このメガネも出落ちだったし」
華菜「キャプテンは清澄の部長ことしか眼中にないみたいだし」
華菜「はぁ、このメガネもういらないな捨てちゃおう」
華菜(にしてもコーチがまさか自分をそういう風にみていたとは驚きだし)
華菜「明日からどう接すればいいんだし~」
華菜「・・・コーチか」ボソ
華菜(でも、そのたびにキャプテンが抱きしめてくれて…)
華菜「きゃぷてぇん」グス
==30分後==
華菜「…よし、泣いてても仕方ないし!」ゴシゴシ
華菜「キャプテンが誰が好きでも、誰と付き合ってもキャプテンだし!」
華菜「キャプテンを応援するし!」
華菜「明日も頑張るし!」
華菜「結局メガネ捨てられなかったし…」
華菜「べ、別にまだコーチの心を読みたいわけじゃないし」
華菜「でも人間好かれることに抵抗はないわけで」
華菜「むしろ好かれるのが嫌いな人間なんていなし…」
華菜「と、とりあえず学校行くし!」
久保「それじゃあ各自始めてくれ」
部員「はい!」
未春「華菜ちゃん一緒に打とう」
華菜「喜んでだし!」
華菜「」チラ
華菜(コーチは携帯いじってるし)
久保「」クス
華菜「!?」
華菜(コーチが笑ってやがるだと…)
久保(やっぱり靖子は面白いな)
華菜(靖子?)
久保(今日当たり晩飯でも誘ってみるか)
華菜「・・・」ムッ
華菜(って何で華菜ちゃんが嫉妬してるし!)
華菜(華菜ちゃんには関係ないし!)
華菜(そういえばコーチ可愛いとは言うけど好きとは言わないんだよな…)
華菜(もう、考えるのは辞めたし!とにかく打つし!)トン
未春「ロン、12000」
華菜「」
久保「池田ァ!てめぇまた適当な牌捨てやがったな!」
華菜「す、すいません!」
華菜(あんたのことが気になって集中できなかったんだし!)
久保「てめぇまた決勝でへま踏みてぇのか!?」
華菜「すいません…」
華菜(メガネかけるし)カチャ
久保(お前の悲しい顔はもう見たくねぇぞ、こんちくしょう)
華菜「…コーチ」
華菜「来年は絶対に全国行くし!」
久保「??お、おうその意気だ頑張れ…」
久保(私何かへんなこと言ったか?)
華菜「よし、やるし!やってやるし!」
未春(まぁいいか、楽しそうだし)クス
久保「…私からは以上だそれでは解散」
部員「ありがとうございました!」
華菜(靖子って結局誰だし)
華菜(後をつけるか?)
華菜(チビたちの迎えにはまだ時間あるし!)
華菜(あっ、でも会うのは今晩だっけ…)
華菜(とりあえず後をつけるし!)
華菜(歩き携帯は危険だしコーチ!)
華菜(ほら、自転車とぶつかりそうになったし!)
華菜(ちゃんと前見て歩くし!)
華菜(ん、建物の中に入っていくし!)
華菜(ここが家なのかな?)
華菜(インターフォンを押したってことは自宅ではない)
靖子「はーい」
ガチャ
靖子「お、来たか。とりあえず上がってくれよ」
久保「ああ」
華菜「あれが、もしかして靖子?」
華菜「ていうか今の藤田プロじゃあ?」
華菜「藤田…靖子」ハッ
華菜「ピカンと来たし!」
華菜「そうか藤田プロのことだったのかあ」
華菜「って何も解決していない」
華菜「こうなったら藤田プロとの関係を暴いてやるし!」
華菜「宅配業者に化けてこのメガネで藤田プロの心を読んでやるし!」
華菜「では早速」ピンポーン
華菜「宅急便でーす!」
靖子「はーい」
靖子「なんか頼んだっけ?」
靖子「貴子荷物とってきてよ」
久保「なんで私が行かなきゃならないんだ!」
靖子「お前ののろけ話に付き合ってやるのは誰だ?」
久保「ハイ…」
久保「すいませんお待たせしました」
華菜(ってえええええーー!!)
華菜(なんでよりによってコーチが出てくるし!)
久保「あの、すいません荷物受け取りますが…」
華菜(仕方ない何とかやり過ごすし)
華菜「では、こちらにサインを…」ウラゴエ
久保「…ん?」
久保(この手、この声、この身長…)
久保「お前!池田じゃねぇか!?」
華菜(ば、ばれたしー!)
久保(バイトしないといけないくらい家が大変なのか!?)
華菜(あれぇ?勘違いが思わぬ方向に)
華菜「い、いえ別に何も…」
久保「困ってるんだったらなぜ相談しないんだ!?」
久保(私だったらいくらでもお前の助けに…)
華菜(コーチが助けてくれるだって、初めて聞いたし!)
華菜(まぁ、実際言ってないんだけど)
華菜(わざと、らしいけどこれで撒く!)
華菜「じゃあ荷物は渡しましたんで失礼しましたし!」ピューン
久保「ちょ、まて池田ァ!」ダッ
靖子(閉めていってくれよ)
久保「まてぇぇ池田ァ!!!!!」
華菜(なっ!?早い!)
華菜(何なんだしこのスピードは!?)
久保「池田ァアアアアア!!!!!!」
華菜(やばい追いつかれるし!)
久保「捕まえたぁあああああ」ガシ
華菜「つかまったしぃ」
華菜「追いかけられる覚えはないし!」
久保「それは…お前が心配だからだ」
久保(まぁ体が勝手に動いちまったってのが本音だが)
華菜「…コーチ」
華菜(なんかよくわかんないけど、今聞いてみたいことがあるし!)
久保「何だ言ってみろ」
華菜「コ、コーチは藤田プロのことが好きなんですか?」
華菜(そうじゃないし!聞きたいことはそうじゃなくて)
久保「んあ?なんだその質問?靖子は普通に好きだが…」
久保(でも恋愛対象としてお前が好きだぜ!なんて言えねぇ)
華菜「えっ?今なんていったし…?」
華菜「そっちじゃないし!」
華菜「華菜ちゃんに対して何て言ったし!」
久保「だから、靖子は普通に友達として好きだといってじゃねぇか」
華菜「あ~もう単刀直入に聞くし!」
華菜「華菜ちゃんのこと好きか?って聞いてるんだし!//」
久保「・・・」
久保「なっ//」ボッ
久保「それなりに後輩として、私なりに可愛がってるつもりだ…」
華菜「意気地なしだし…」
華菜「恋愛対象としての意味で聞いてるんだし!」
久保「ちょ、おま//」
久保「そりゃ、もちろん」
久保(なんだこいつ?誘ってやがんのか?)
久保(なら、いけ!貴子勇気を振り絞って…)グッ
久保「わ、私は…お前が好きだ!大好きだ!」
久保「池田ァ!のすべてが大好きだ!」
久保(女同士とはいえ教師が生徒に告白しちまった…)
久保(終わっちまった…)
華菜「終わってないし!」
華菜「別に教師と生徒が付き合っても、バレなきゃいいだけだし!」
久保「へっ?どういうことだ?」
華菜「コーチさえ良ければ、華菜ちゃんが付き合ってやるし!」
久保「お前を何回もぶったんだぞ?」
華菜「でも大将に任命して期待してくれたのはコーチだし!」
華菜「華菜ちゃんは愛のムチってことで大目に見てやるし!」
久保「池田ァ…ありがとう」
華菜「じゃ、じゃあはい」ス
久保「?」
華菜「手つないで帰るし//」
久保「あ、あぁ//」ギュ
華菜「と、とりあえず妹達を迎えにいくし!」
華菜「おねぇちゃんの彼女だって自慢してやるし!」
久保「い、池田ァ!//」
=====
靖子「良かったな、貴子」
カンだし!
本当は未春も交えた話にしようと思ったのですが
いかんせん文章力がへたくそで…
国語をもうちょっと勉強してきます。
最後まで読んでくださった方ありがとうございました。
池久保は流行るべきだし!!
Entry ⇒ 2012.09.29 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
咲「和ちゃんと二人でお寝んね」
和「い、いえ (こ、これは……)」
咲「せっかくお泊りに来て貰ったのに、お布団用意出来なくて、1つのベッドで一緒に寝てもらう感じになっちゃって……」
和(昨晩、どうやって一緒のベッドで寝る展開に持ち込もうかと寝ずにずっと考えたのですが……)
咲「せ、狭くて嫌だよね?」
和「そ、そんな事ないですよ! (こんなあっさりと望んだ通りになるなんて……)」
和(お、お風呂上がりの咲さん……)ゴクッ
咲「じゃあ一緒に歯磨きしに行こう」
和「はい」
咲「……」シャカシャカ
和「……」シャカシャカ
咲「楽しいね」シャカシャカ
和「……?」シャカシャカ
咲「お泊り」シャカシャカ
和「! は、はい!」シャカシャカ
和「……」ギュチュグチュ
咲「……」ペッ
和「……」ペッ
咲「ふふ」
和「うふふ」
咲「じゃあお部屋行こっか」
和「はい」
和(こ、これで後は……もう寝るだけ……!)ドキドキ
咲・和「「……」」ドキドキ
咲「じゃ、じゃあ……」ドキドキ
和「は、はい」ドキドキ
咲「寝よっか」ドキドキ
和「は、はい」ドキドキ
咲「和ちゃん、どっちが良い?」ドキドキ
和「どっち……?」ドキドキ
咲「ベッドのこっち側とこっち側で……(な、なんか……緊張しちゃって……)」ドキドキ
和「ど、どっちでも良いですよ」ドキドキ
咲「そ、そっか。そうだよね。えへへ (すごくぎこちないよ~……)」ポリポリ
和「は、はい」ドキドキ
咲「……」スッ
咲「はい、良いよ」ドキドキ
和「では、私がこっち側に」ドキドキ
咲「うん」ドキドキ
和「……」スッ
咲・和「「……」」
咲「じゃ、じゃあ、横になろっか」ドキドキ
和「は、はい」ドキドキ
咲・和「「……」」ポフッ
咲・和「「……」」ドキドキドキドキ
和「は、はい」ドキドキ
パチッ
咲「ふぅ」ドキドキ
和「……」ドキドキ
咲「あのさ」
和「は、はい?」
咲「明日の朝、冷えるらしいからさ」
和「は、はい」
咲「もう少し、こっちに寄った方が良いよ」ドキドキ
和「! は、はい」ドキドキドキドキ
咲「……」ドキドキ
和(完全に密着した状態に……)ドキドキドキドキ
咲「の、和ちゃん」
和「は、はい?」
咲「……」
和「……ど、どうしたんですか?」
咲「なんでもないよ~」
和「な、なんですか」
咲「ちょっと……」
和「ちょっと……?」
咲「ちょっと呼びたくなっちゃっただけだよ。えへへ」
和「なにを言ってるんですか……(か……可愛い過ぎる……)」
咲「ふぅ」
和(胸の鼓動が……このまま今日は寝れるんでしょうか……)ドキドキドキドキ
咲「ね、和ちゃん」
和「!」
和「は、はい?」
咲「そっちに顔向けて良い?」
和「!」ドキッ
和「こ、こっちにですか……?」
咲「うん。いつも上を向いて寝る事ってあんまりないからさ」
和「そ、そうですか。い、良いですよ」ドキドキ
咲「……」スッ
和「……」ドキドキドキドキ
咲「今日はたくさんお話したね~」
和「そ、そうですね(今、私の顔のすぐ横には、こっちを向いた咲さんの顔がある……!)」ドキドキ
咲「いくらお話しても話が尽きないよね」
和「そ、そうですね」ドキドキ
咲「和ちゃんみたいなお友達が出来て嬉しいよ」ギュッ
和「!」
和(う、腕に……!)ドキドキドキドキ
咲「……」ギュッ
和「……っ」ドキドキドキドキ
和「……」ドキドキ
咲「和ちゃん」
和「は、はい?」ドキドキ
咲「原村さん」
和「……?」
咲「のどちゃん」
和「……」
咲「のどっち」
和「……」ジトーッ
咲「えへへ」
和「……なんですか」ジトーッ
咲「なんでもないよぉ~」
和「……(か……可愛い……)」
和「……」ドキドキ
咲「な、なんかごめんね」ギューッ
和「……?」ドキドキ
咲「こ、こんなくっついちゃって……えへへ」
和「! い、いえ……」
咲「なんか、人と一緒に1つのベッドで寝るのなんて、お母さんやお姉ちゃん以来だからさ……」
和「……」ドキドキ
咲「甘えたくなっちゃってさ。えへへ」ギュッ
和「!」
和「は、はい?」ドキドキ
咲「原村さんってさ」ギューッ
和「……」
咲「のどちゃんってさ」ギューッ
和「……」ジトーッ
咲「のどっちってさ」ギューッ
和「……」ジトーッ
咲「えっへへ」
和「さっきからなんなんですか……それ」ジトーッ
咲「なんでもないよぉ~」ギューッ
和「……」
和(なんなんですかこの愛らしさは……)ドキドキドキドキ
和「……」
和(またどうせあれですね)ツンッ
咲「あ! ツンってした~!」
和「またどうせ、原村さんだののどちゃんだのって言うだけしょ」ツン
咲「違うよ~! 用事があるんだよ~」
和「なんですか?」ツンツン
咲「あ~! ツンツンってしてる~!」
和「用事があるなら早く言って下さい?」フフン
咲「む~! じゃあ言うよ」
和「なんですか?」フフン
咲「和ちゃんってさ」
和「はい?」
咲「和ちゃんってさ、可愛いよね」
和「!」
和「なっ……なんですか……! いきなり……」ドキドキドキドキ
咲「? なにって……?」
和「いきなり……そ、そんな……可愛いだなんてゴニョゴニョゴニョ」ドキドキドキドキ
咲「だって……部屋の暗さに目が慣れてきてさ」
和「……」ドキドキドキドキ
咲「和ちゃんの横顔ずっと見てたらさ」
和「……」ドキドキドキドキ
咲「本当に綺麗なお顔してるなぁって思ったんだもん」
和「……」カァッ
咲「率直な感想を言っただけだよ」ニコッ
和「……」ドキドキドキドキ
和「……」カァッ
咲「そんな人と一緒にたくさんお話して」
和「……」
咲「こうやって一緒に寝れるなんて」
和「……」
咲「私、幸せ者だよぉ」ギュッ
和「……」ドキドキドキドキ
咲「……」ギューッ
和「……」
和「……」キリッ
咲「……?」
和「そ、そろそろ交代してください」
咲「? 交代……?」
和「は、はい」
咲「交代って……?」
和「わ、私も……」
咲「和ちゃんも……?」
和「その……さ、咲さんに……あ、甘えたいです」カァッ
和「……なっ……なにいきなりあせあせしてるんですか」ジトーッ
咲「い、いざ甘えたいなんて言われると……」アセアセ
和「自分だって言ったじゃないですか……」ジトーッ
咲「そ、そうだけど……それは和ちゃんだからこそであって……」アセアセ
和「どういう事ですか」ジトーッ
咲「わ、私ってば、そんな……人を甘えさせられるような……包容力みたいなものないし……」アセアセ
和「……」
咲「ど、どうしたら良いのか……」アセアセ
和「……」スッ
ギュッ
咲「!」
和「良いですよ。勝手に甘えますから」ギューッ
咲「……!」ドキドキドキドキ
咲「……」ドキドキ
和「……」ギューッ
咲「……ね、ね?」ドキドキドキ
和「……なんですか?」
咲「その……なんていうか……甘え甲斐が無い……でしょ?」アセアセ
和「……」
咲「……」ドキドキ
和「……」ギュッ
咲「!」
和「それは甘える側が決める事です」ギューッ
咲「……!」ドキドキドキドキ
咲「……」ドキドキ
和「咲さん」
咲「な、なに?」ドキドキドキドキ
和「宮永さん」
咲「!」
和「咲ちゃん」
咲「……」
和「咲っち」
咲「……」
和「ふふ。どうしたんですか?」フフン
咲「……」
和「さっきこういう事してたんですよ?」フフン
咲「……」
咲「……」
和「? どうしたんですか?」
咲「……も、もう一回」
和「もう一回……?」
咲「もう一回、咲ちゃんって呼んでよ」
和「!」
咲「あれ? なに恥ずかしがってるの~?」
和「そ、そんな……」アセアセ
咲「たった今、自分からそう呼んだんだよ~?」ニヤニヤ
和「! そ、そうですけど……」アセアセ
咲「自分から言っておいて、もう言えないなんて事ないよね~?」ニヤニヤ
和「……」
和「……」プクッ
咲「あ! なにほっぺ膨らましてるの~?」ツンツン
和「なんていうか……卑怯ですよ」プンプン
咲「卑怯なんかじゃないよ~。和ちゃんが自分から言ってくれたんじゃん~!」
和「手の込んだ誘導尋問です」プンプン
和「そ、それは……」カァッ
咲「さっきすっごく普通に言ってくれたじゃん」
和「で、でも……」アセアセ
咲「でも?」
和「普段、人の事をちゃん付けで呼ぶ事が一切無いので……」アセアセ
咲「そう言えばそうだよね。みんな、さん付けか呼び捨てだよね」
和「は、はい」
咲「じゃあ……」
和「……じゃあ?」
咲「咲でも良いや」
和「……!」
咲「咲って呼んで」
和「そ、それならまぁ……ゴニョゴニョゴニョゴニョ」
和「っ……」ドキドキ
咲「……」
和「さ、咲……」
咲「!」
和「……………………さん」カァッ
咲「! あぁ~!」
和「……ちゃんと言いましたよ?」ツン
咲「ダメだよ~! それじゃあ結局いつもと同じだよ~」
和「同じじゃありませんよ?」
咲「咲さんって、いつもと同じだよ~!」
和「最後の「さん」は、数字の3ですから」フフン
咲「……」ジトーッ
和「良いですよ?」
咲「……」
和「咲……」
咲「!」
和「……………………さん」カァッ
咲「……」ジトーッ
和「咲……」
咲「!」
和「……………………………………………さん(やっぱりどうしても……)」カァッ
咲「……」ジトーッ
和「こ、これだけ間を空けたんですから、もう良いでしょう」アセアセ
咲「……」プクーッ
咲「……」プイッ
和「さ、咲さん!」アセアセ
咲「……」
和「さ、咲さん」ユサユサ
咲「ふーんだ」プイッ
和「全く……」
咲「……」
和「では……」
咲「……?」
和「私ももう、寝ますから……」プイッ
咲「あ! だ、ダメだよぉ!」クルッ
和「冗談ですよ」クルッ
咲・和「「!」」
咲(め、目の前に……!)ドキドキドキドキ
和(ち、近い……!)ドキドキドキドキ
咲「だ、だって、和ちゃんが言う通りに呼んでくれないんだもん(もう数センチずれてたら顔がくっついてた所だったよ……)」カァッ
和「ふぅ」ドキドキドキドキ
咲「ふぅ」ドキドキドキドキ
和(胸の鼓動が……)ドキドキドキドキ
咲(収まらないよ……)ドキドキドキドキ
カチ カチ カチ カチ
和「……も、もう結構な時間ですね」
咲「あ、本当だね」
和「そ、そろそろ寝なきゃですね(ただでさえ寝付きにくい環境だと言うのに、こんな事してたら本当に徹夜してしまいます)」
咲「そうだね」
和「はい」
咲「……」
和「……」
咲「……あのさ」
和「はい……?」
咲「お手手、つないで寝よう?」
和「!」
咲「い、嫌かな……」テレテレ
和「いや、そんな事はないですけど……」ドキドキ
咲「もちろん、寝ちゃったらすぐほどけちゃうんだろうけど……」テレテレ
和「……」ギュッ
咲「!」
和「……」手ギュッ
咲「じゃ、じゃあ」ドキドキ
和「は、はい」ドキドキ
咲「寝よっか」ドキドキ
和「はい」ドキドキ
咲「……」目ギュッ
和「……」目ギュッ
咲・和「「……」」ドキドキドキドキ
咲父「さすがにそろそろ起きた方が良いぞー」コンコン
咲・和「「……!」」パチッ
咲・和「「……」」ムクッ
咲「……」ポケーッ
和「……」ポケーッ
13:00
咲・和「「……」」
咲(結局あのままかなりの時間まで寝つけずに……)
和(お寝坊もお寝坊です……)
咲(一体何時間……)
和(無言でずっと手をつないでいたんでしょうか……)
咲・和「「……」」チラッ
咲・和「「……」」カァッ
終
やっぱり咲和だな
かわええなぁー
乙
乙乙
Entry ⇒ 2012.09.28 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
京太郎「コーエー龍門渕から咲無双が発売したらしい」
京太郎「予約してるし、コンビニに取りに行ってから部室行こうっと」
・
・
・
店員「あざーっした」
京太郎「さてさて、早速部室でプレイしてみますか」
京太郎「って誰も居ないね。まぁ、みんな来るまでゆっくりゲームでもして待つか…」ウィーン
京太郎「早速、起動っと。ストーリーモードはやっぱり清澄ベースか。あれ?咲が居ない?選べないな」
優希「おーい、犬。おはようだじぇー。咲ちゃんは、隠しキャラだじぇ。強キャラだからな」
京太郎「おおっ、優希。居たのか!」
京太郎「おおっ、はえーな。まぁ、二人居ればサクサク進むしな。よし、頼む」
優希「うむ、おまかせあれだじぇ。犬、優希は私の使用キャラだから使うな!」
京太郎「はいはい、わかりましたよー。じゃあ、和、部長、まこ先輩のどれかだな」
優希「簡単にキャラ性能説明してやるじぇ」
京太郎「へぇー、まぁそんな感じだよなぁ」
優希「アイアンクロー、ジャーマンスープレックス、ジャイアントスイングとか使うじぇ。無双ゲージが貯まれば戦慄のお仕置きタイムだじぇ」
優希「初心者にはちょっと使いにくいキャラだと私は思う。ワンチャンスに無限の可能性を秘める、使い込みがいのあるキャラクターと言えるじぇ」
京太郎「うーん、投げキャラはあんまり好きじゃないんだよなー」
優希「まこ先輩は、メガネから放つビーム攻撃が強いじぇ。接近戦はイマイチだが、中距離遠距離ではかなり使いやすいじぇ」
優希「まこ先輩のメガネから放つ、オプティックブラスト、オプティックスィープ。無双ゲージが貯まれば、スーパーオプティックブラストで敵を一掃出来るじぇ」
優希「ちなみにメガネ外した時の技もあるらしい」
京太郎「へぇー、使いやすそう。保留だな。次の和を聞いてから決める」
優希「接近戦に優れた性能だじぇ、なんでも輻射波動おもち機構を搭載だと何とか」
優希「初心者向けのキャラだと思うじぇ。とにかく暴れてれば、いいキャラだじぇ。無双ゲージが貯まれば、スーパーのどっち聖天八極式となって空も飛べるじぇ」
京太郎「ふーん、じゃあ和にしようかな。お手軽キャラっぽいし」ポチッ
和『咲さんは私が守る!!』
京太郎「ちなみにお前のキャラはどんなのだよ?」
優希「私か?灼眼の優希ちゃんだじぇ。刀振り回して戦うじぇ。タコスを食べれば、色々と技が使えるんだじぇ」
京太郎「二人とも接近戦タイプかー。まぁ、無双だから何でもいいんだけど」
・
・
・
優希「よし、雑魚キャラの池田を倒して無双ゲージを貯めるじぇ」
池田『にゃーにゃー』ワラワラ
京太郎(おぉ…、ゲームでも走った時の和のおもち揺れも再現されてる…。流石、コーエー龍門渕の無双シリーズだぜ)
優希「・・・」ジトー
優希「犬、鼻の下が伸びてるんだしぇ。池田は、反撃もあんまりして来ないけど当たったら大ダメージだじぇ」ポチポチ
優希「こっちの末原軍は私が引き受けるじぇ」ポチポチ
優希「気をつけるじぇ。防御力も高い上に三体揃うと、ジェットストリームアタック仕掛けて来たりするじぇ。突っ込まない方がいい」
京太郎「でも、突っ込んじゃうんだなーこれが」ポチポチ
和『てい、てい、てりゃー!』
京太郎「おいおい、体力半分も減っちまったぞ…」
優希「あーあー。だから言ったんだじぇ。もうボスが現れたじぇ」
~warning~、敵大将を見事討ち取れ!
優希「出たな、お猿の大将。コイツはとにかく素早いじぇ。攻撃当てるのが大変なんだじぇ」
優希「しかも逆転スキルまで持ってるから、体力が減ると野生化して攻撃力アップだじぇ」
京太郎「お、おぅ。気をつける」
優希「私がタコス食べる時間をちょっと稼いでくれ!」ポチポチ
京太郎「って俺も、体力半分だしなー。スーパーのどっち聖天八極式で逃げ回ってようっと」ポチポチ
和『咲さん!咲さん!ねだるな、勝ち取れ!さすれば与えられん!はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』ゴゴゴ
穏乃『次は絶対勝つからーーーーー!!覚えてろよー!!』
京太郎「ふー、あぶねー。死にかけだった」
優希「犬は下手っぴだじぇ。まだ一面だじぇー。この先は、もっともっと強いボスがいっぱい出てくるじぇ」
京太郎「意外に難しいなーこのゲーム」
優希「私のセーブデータだから、ハードモードだからな!」
京太郎「まじかよ!」
京太郎「あぁ、ワハハさんの暴走車に轢かれたり、透華さんが和しか狙わなかったり、天江さんが超強かったり」
京太郎「神代が起きてる間に倒せだとか、石戸さんの睾丸潰し攻撃で一撃死しかけたり」
京太郎「なんか色々あった気がするけど、最終ステージだ」
優希「うむ、最終のステージのボスはやっぱり咲ちゃんのお姉ちゃんだじぇ!まぁ、私もここまで進んだ事は無かったんだが」
照『ひゃあああああああああッ!!!一撃で叩き割ってあげるよおおおおおおおッツ!!!!!』
菫『・・・目標を狙い撃つ!』
優希「ひぇー、ボスが二体も居るじぇ。近接戦タイプと遠距離タイプだじぇー」
京太郎「先にあのシャープシューターから倒そうぜ!」
京太郎「ふぅ、何とか倒せた」
優希「タコスを使うじぇ!犬、任せた!」
京太郎「おぅよ!」
和『お義姉さん!咲さんは私が守ります!安心して死んで下さい!』ドガッ、バキッ、バシーン
照『…触るな、汚らわしい。淫乱ピンク!』ガード
照『乳袋の死体を砕いて細かくして、この地上から抹消しなくてはな!!』バシ、バシ、バキッ
優希「おぅ!犬、またせたな!天破壌砕(てんぱじょうさい)いくじぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
照『私が負けるなんて、嘘だッ!嘘だッ!嘘だッ!うわああああああああ!!』バシュー
優希「ふぅ、正義は勝つ!危なかったじぇー」
京太郎「クリアー出来たか。まぁ一日でクリアー出来るのが無双のいい所だよなー」
優希「げぇ!?咲ちゃんのお姉ちゃん、中ボスだったんだ!」
京太郎「あれだけ、手こずったのに中ボスだと!とりあえず回復だ!」
優希「まぁ、さっきみたいに二体じゃ無ければ、倒せそうな気がするじぇ。防御固めながら戦うじぇ」
・
・
・
誠子『私は戦うことしかできない破壊者・・・だから戦う、争いを生む者を倒すために!この歪みを破壊する!』
優希、京太郎コンビが、ラスボス亦野誠子を倒すのに、一か月もかかったとさ
終わり
敵キャラが濃かったw
Entry ⇒ 2012.09.28 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
憧「シズはあたしの嫁!」玄「違うもん!」
憧「あたしの方がシズにふさわしいし!」
玄「私の方が穏乃ちゃんのこと好きだもん!」
憧「ぐぬぬぬぬ」
玄「むむむむむ」
玄「誰も来なくなった部室にシズちゃんが駆け付けてきてくれた時からだよ!」
玄「私とっても嬉しかったんだぁー」
憧「勝った! あたしなんて小学生の頃からよ!」
玄「ええー。小学生の時から女の子が好きだなんて引いちゃいますねー」
憧「うっさい! とにかくあたしの方がシズへの愛は上のようね」
玄「愛は長さじゃなくて密度だもん!」
憧「あたしは長さも密度も兼ね備えてるわよ」
玄「この前おねーちゃんに抱きついてた癖に……」ボソッ
憧「なっ!?」
玄「ふつふっふ。声に力がないのは後ろぐらいところのある証拠なのです!」
憧「うっ……」
玄「浮気者な憧ちゃんよりシズちゃんには私の方がふさわしいよね」
憧「……で、でもっ! あたしの一番はやっぱりシズのままだから!」
玄「私の方がシズちゃん一筋だよ!」
玄「私がいつそんなことを言ったの?」
憧「直接聞いた覚えは……、ないけど」
玄「憧ちゃんは勘違いしてるよ」
憧「勘違い……?」
玄「私が好きなのは大きいおもちじゃない。手触りの良いおもちなの」
玄「だからシズちゃんみたいに手触りさえよければちっちゃいおもちでも大好きなんだよ」
憧「たっ、たしかに、手触りのよさという点ではシズの胸は抜きん出てる……」
憧「っていうか、なんで玄がシズの胸の感触知ってるのよ!」
玄「それは憧ちゃんこそだよ!」
憧(ラーメンを餌にだけど)
玄「私だって同じだもん!」
玄(あんぱんを餌にだけど)
憧「あたしに胸を触られてる時のシズは幸せそうだったなぁー」
憧(ラーメンを食べられる喜びに、だけど)
玄「私が触ってるときの方がシズちゃん幸せそうだったもん」
玄(あんぱんを食べられる嬉しさに、だったけど)
玄「憧ちゃんこそ調べた知識だけの耳年増なんでしょ!?」
憧「そそそそ、そんなことないわよ!」
玄「本当かなぁー」
憧「……なっ、なんだったら証拠を見せてあげようか?」
玄「証拠……?」
玄「まま、負けないもん!」
憧(大丈夫! いけるはず! シズニーしてつかんだ感覚そのままにいけばきっと!)
玄(おねーちゃんのおもちで鍛えてるもん! 憧ちゃんには負けないよ!)
憧「……」モミモミ
玄「……」モミモミ
憧「……」モミモミ
玄「……」モミモミ
憧「……」チラッ
玄「……」チラッ
憧(って、なな、なんで玄のやつ顔が赤くなってんのよ!?)ドキドキ
玄(憧ちゃんなんでそんなに色っぽい顔してるの!?)ドキドキ
玄「……」モミモミ
憧「玄。顔赤い」モミモミ
玄「えっ!? ……憧ちゃんだってエッチな顔してるもん!」
憧「そっ、そんなわけないでしょ! あたしがシズ以外の相手に!」
玄「私だってシズちゃん以外の子に顔赤くしたりしないもん!」
憧「……」
玄「……」
憧「引き分けにしよっか……」
玄「そうだね……」
玄「置いとくとして?」
憧「シズへの知識の深さ! これなら負けないわよ!」
玄「私だってシズちゃんのことよく知ってるよ! 血液型とか、誕生日とか……」
憧「じゃあ問題。シズの昨日のあくび回数は?」
玄「えっ?」
憧「シズの昨日の寝返り回数は?」
玄「えと、えっと」
憧「シズの生理は今から何日後にくる?」
玄「……わ、わかりません」
憧「ふふふ。勝った!」
玄「普通こんなのわからないよー!」
玄「ううーっ。なんかモヤモヤする……」
憧「ま、シズのことはあたしに任せて玄は大人しくおもちでも眺めてなさいってこと」
玄「……、だ、大事なのは本人の気持ちだよ」
憧「へっ?」
玄「そうだよ! 大事なのはシズちゃん本人の気持ちだもん!」
憧「それは……」
玄「私今からシズちゃんに確かめてくる!」
憧「ちょっ!?」
憧「いやちょっと! 待ちなさいってば玄!」ギュッ
玄「ひゃっ!?」
玄(う、後ろから抱きつかれた……)
玄「どっ、どうして止めるの?」
憧「それは……」
玄「それは?」
憧「……振られたらどうしようって考えると怖くて」
玄(涙声の憧ちゃんかわいい……)
玄(ハッ! じゃなくて!)
玄「でも穏乃ちゃん本人に聞かないとどちらがふさわしいかわからないよ?」
憧「それはそうだけど……」
玄(声が震えてる! かわいい!)
玄(ハッ! ……違う違う!)
憧「ごめん……」
玄「告白は先送りにしてあげる」
憧「ありがと」
玄「ううん」
憧「ところで玄。あんたはシズのどんなところが好きなの?」
玄「んー。可愛くていい子でおもちに張りがあるところかな」
憧「わかるわかる! あそこまで可愛くていい子なのはシズだけだよ!」
憧「あの穢れのない感じがさー」
玄「うんうん!」
憧「そういえばシズってまだオナニーすらしたことないんだよ。かわいいよねー」
玄「ん……? なんでそんなこと知ってるの?」
憧「あ。いや、なんでも……」
憧「ほっ、本人から聞いたのよ!」
玄「ふぅーむ。なるほどなるほどなるほどー」
憧(あぶなかった……)
玄「むかむかむか」
憧「……なんかイライラしてる?」
玄「そんなことないのです。むかむかむか」
憧(どう見ても露骨にイラついてるようにしか。何か気にさわること言っちゃったかな?)
玄「そうだっ! 告白の練習だよ憧ちゃん!」
憧「え? いきなり何言ってんの?」
玄「告白の練習しようよ!」
憧「どうしてまたそんなこと急に」
玄「どっち付かずな状態は落ち着かないから、練習して告白できる勇気を持とうよ!」
玄「そうすれば二人でシズちゃんの前に立ってシロ玄つけられるでしょ? 玄だけに」
憧(……たしかに。いつまでも気持ちを伝えるのを避けたままってわけにもいかない、か)
玄「新子と玄であたらシロ玄~。面白ジョーク」
憧「や。あたしまだやるだなんて一言も」
玄「今から私は穏乃ちゃんになります!」
憧「聞いちゃいないし……」
玄「なので憧ちゃん……、じゃなかった、憧は私に告白して!」
憧「玄をシズだと思い込んで仮想告白すりゃいいのね?」
玄「ざっつれふと!」
憧「分かった。まあ玄が相手なら多少は気楽に言えそうかな」
憧「うーわー。えらく具体的に設定するー」
玄「リアリティーは大切だよ」
憧「それもそっか。んじゃ、いくよ」
玄「オホン! ……憧、話って何? ラーメン食べたい!」
憧「あのさ、シズ。ラーメンもいいんだけどその前に伝えたいことがあるの」
玄「……?」
憧「あたしあんたのことが好き」
玄「!!」ドキッ
憧「よかったら付き合って……」
憧「って、玄? なんで顔赤くしてんのよ。相手はシズじゃなくてあたしよ?」
玄「べべべ別に普通だよ普通だよ!」ドキドキ
憧「??」
玄「なるなるなるよー!」
憧「いまいち実になる感じがしないんだけど」
玄「……と、ところで憧ちゃん」
憧「うん?」
玄「もう一回好きって言って?」
憧「えー、なんでよ」
玄「えと……、さ、さっきのはいんとねーしょ? がよくなかったから!」
憧「え? そんな変だった?」
憧「そういうことならもう一回……」
玄「……」ドキドキ
憧「好きよ」
玄「あわわわわ!!」ドキッ
憧「ね、玄。今度の好きは大丈夫だった?」
玄「へっ!? ……あっ」
玄(そうだった……。今の好きは、シズちゃんに向けたもの)
玄「……」ムカムカ
憧「玄ー?」
玄「0点です!」
憧「ええーっ!?」
玄(あれ……。どうして私こんなにイライラしてるのかな)
玄(憧ちゃんの告白が成功したらシズちゃんをとられちゃうから?)
玄「私が!?」
憧「うん。目指すビジョンが見えないまま練習しても非効率極まりないでしょ?」
憧「だからここはビシッと玄先生のお手本を!」
玄「うっ、うん」
憧「状況は……、そうね、部活帰りに二人で並んで歩いてるところにでもしましようか」
玄「わ、わかった!」
玄「そっ、そうですね!」
憧「早く家帰って休みたいよー」
玄「わた、私もそう思います!」
憧「そんじゃ私こっちだから」
玄「お、お気をつけて!」
憧「……」
玄(ふうっ。やりきった)
憧「いや引き留めて好きって言いなさいよそこは!」
玄「そうだった!」
玄(うううう、緊張して頭の中真っ白だったよ……)
玄(玄なのに真っ白……、面白い)
玄「えへへへ」
憧「あたしなんか相手に緊張するようで、よく本命のシズに告白しようとしてたよね」
玄「……」
玄(そういえばシズちゃんに告白しにいこうとした時は今ほど緊張しなかった)
玄(あれれ? おかしいな?)
玄「う、うん……」
玄(本当はちょっとだけ違うんだけどね)
玄(あの日。シズちゃんが部室にきた少しあと、憧ちゃんが駆け付けてきて)
「二人で和の前に立てるでしょ!」
玄(そう。憧ちゃんが無意識で私を数から外していたから……)
玄(心がざわざわして……)
玄(こんな気持ちになるのはシズちゃんを憧ちゃんにとられたくないからなのかな? それなら私シズちゃんが好きなのかな?)
玄(そんなふうに思い始めて……)
玄(……あれれ?)
玄(本当にそうなのかな)
玄(私が好きなのは本当にシズちゃんだったのかな……?)
玄「羨ましい?」
憧「うん。好きになった瞬間があるなんて、ドラマ的じゃない」
憧「あたしはなー。いつの間にかシズにまいっちゃってたから」
玄「ふむふむ」
憧「気が付けば好きになってたせいで、特にそういうエピソードとかないんだよね」
玄「そうなんだ」
玄(気がついたら好きになってた。そういうのもありなんだ……)
玄「何のコレクション?」
憧「ふっふふー。シズの秘蔵写真集!」
玄「……」ムカッ
玄「見せてくれなくてもいいよ」
憧「そう遠慮せずに!」
玄「……遠慮じゃないよ」
憧「そう? ま、それなら無理強いはしないけど」
玄(うー……。嫌な気持ち……)
玄(胸がぐつぐつして、自分が凄くわるい子になっちゃった気分……)
玄(よくわかんない……)
玄「は、はい!」
憧「大丈夫? 顔色悪いよ?」
玄「大丈夫……。たぶん」
憧「自己申告がたぶん大丈夫って、また微妙に不安になる返しなんだけど」
玄「ううー」
憧「本当大丈夫? さっき顔がほてってたことだし熱でもあるんじゃない?」
玄「そんなんじゃないよぅ……」
憧「……」
憧「えいっ」ギュッ
玄「わっ!?」
憧「あんまり無理するなよー」
玄「うっ、うん……」ドキドキ
玄(憧ちゃん果物みたいな匂い……。かわいい……、シャンプーかな?)
憧「んー?」
玄「もしシズちゃんが憧ちゃん以外の人のことを好きって言ってたらどんな気持ちになる?」
憧「なっ!? シズがそんなことを!?」
玄「た、例えばなしだよー……」
憧「よかった……」
憧「あたしなら、そうだな。相手に嫉妬するかな」
玄「嫉妬?」
憧「うん。シズに好きって思われた子に対して、嫌な感情を持っちゃう」
玄「むむむ」
玄(シズちゃんは嫉妬してもらえる……)
憧「へ?」
玄「私が憧ちゃん以外の人のこと好きだったらどんな気持ちになる?」
憧「仮定じゃなくて事実として玄はシズのこと好きなんでしょ」
玄「それは……」
憧「ま、あたしもシズを好きなわけだから素直に応援はできないよね」
玄「……」
憧「ただ。そういう事情さえなければ、玄の気持ちは叶ってほしいよ。友達だもん」
玄「嫉妬はしてくれないの?」
憧「いやいや。友達にまで嫉妬しだしたらキリないでしょうよ」
玄「むむむ……」
玄(なんか悔しい! 悔しい!)
玄(シズちゃんばっかり憧ちゃんに好きって思われてずるい!)
憧「くーろ。本当に大丈夫? 今、らしくない表情してる」
玄「えっ!? ど、どんな顔してた?」
憧「しかめっ面」
玄(憧ちゃんの前でしかめっ面……)
玄「あぅぅ……」カアアアッ
憧「まあそんなに気にしない、気にしない!」
憧「長い付き合いだし恥ずかしがることないでしょ」
玄(憧ちゃんに変な顔見られたら気にするよー……)
玄(うう。私、私……)
玄(シズちゃんじゃなくて憧ちゃんのことが好きだったのかも……)
玄「おでかけ……、デート!?」
憧「あはは、呼び方はなんでもいーよ。情緒不安定そうな玄を気分転換させたげようかなと」
玄「なるほどー」
憧「どこいく? 自然の多い場所か、電車に乗って町か」
玄「いくところ私が決めていいの?」
憧「そりゃ玄の調子を取り戻させるためのデートですから」
玄「だったら私いきたいところがあります!」
憧「いらっしゃいましー」
憧「にしても玄があたしの部屋に行きたがるだなんてね。予想外だったわ」
玄「え、えへへ」
憧「ひょっとして!」
玄「!?」ビクッ
玄(もももしかして憧ちゃんのお部屋を見たいって下心がバレた!?)
憧「やっぱりあたしのシズ写真コレクションが見たくなったとか!」
玄「……」
玄「違いますよーだ!」
玄「憧ちゃんの匂いがするねー」
憧「なんか今の発言変態っぽい」
玄「ええっ!?」
憧「さってと。飲み物持ってくるね。ベッドにでも座ってて」
玄「あ、うん!」
玄(引かれた? だ、大丈夫だよね?)
玄「……」
玄「憧ちゃんのベッド……、いつも憧ちゃんが寝てる場所……」ドキドキ
玄「あれ?」
玄「こ、これは! ベッドカバーに謎のシミがついてる!」
玄「ベッドのシミ……」
玄「もしかしてこれ……」
玄「憧ちゃんがそういうことした時のシミだったり……」カアアアッ
玄「くんくん……」
玄「甘い香り……」
憧「……何やってんの?」
玄「ひゃあっ!?」
憧「ほい。ジュース持ってきたよー。こぼさないでね」
玄「あ、ありがとう」
憧「この前シズがウチにきた時、あいつベッドの上でジュースこぼしてさー」
玄「それはなかなかのなかなかだね……」
憧「せめてこれ以上シミが増えるのはご勘弁願いたいんだよね」
玄(ジュースをこぼしたシミ……)
玄(な、なーんだー。あははは……)
玄「それ髪ごむ?」
憧「そだよ。玄って髪長いから、実は前から一度いじってみたかったのよー」
玄「憧ちゃんが私をいじりたかった!?」ドキッ
憧「誤解を招くような要約をしない!」
玄「てへへ」
憧「あとで玄の髪結んでみてもいい?」
玄「うん。いいよー」
憧「どうせだしあたしとお揃いの髪型にもしてあげよう!」
玄「おおー! 楽しそう!」
玄「これなぁに? Album……、ある……、あるぶむ?」
憧「アルバムだよー。一緒に見よ」
玄「アルバムということはシズちゃんコレクションでしょうか?」
憧「あー、これは違う違う。普通のアルバム」
憧(シズコレクションはもっと厳重に管理してるし……)
玄「ふむふむ。普通のアルバムなら私も写ってるのかな?」
憧「そりゃもちろん。子供麻雀クラブ時代の写真がいろいろと」
玄「いいね!」
玄「ええー。たまたま肩に手が置かれてるだけだよー」
憧「むむむ」
玄「あ。こっちの写真! 私と憧ちゃんツーショット!」
憧「あー、それね。シズがカメラ使ってみたいとか言った時のだから」
玄「よく覚えてるんだね」
憧「まあねー。シズのことならバッチリ」
玄「私のことは?」
憧「普通?」
玄「あうう……」
玄「憧ちゃんが紙のアルバム持ってるなんて思わなかったなあ」
憧「あー。PCとデジカメでDVDでも焼いてそうなイメージ?」
玄「うん。どちらかというと」
憧「そういうの利便性の面ではいいんだけどね」
憧「それでも手で触れられる安心感っていうのは捨てがたいメリットだから」
玄「触れられる安心感……」
憧「最近はあんまり。ただ中学上がりたての頃は寂しくて毎日見てたかな」
玄「もー。それなら憧ちゃんも阿知賀にくればよかったのに」
憧「んー……。当時の仲良し組と離れることでわかった気持ちもあるからなあ……」
憧「進学先の選択はベターだったと思ってるよ」
玄「むむ。そういうものなんだ」
憧「中学生活を経て玄に対する目もちょいと変わったしねー」
玄「ええ!? どんなふうに!?」
玄「ぽやーん……、微妙……」
憧「中学でまあ、小学生の時とは違って、陰口やらなんやらする奴らが増えてさ」
憧「ああ。本人がいない時でも相手のことを誉めてあげられる玄は優しい子だったんだな……、って改めて思ったんだ」
玄「やさし……、ふっ、普通だよ私なんて」
憧「んーん。玄は優しくていい子だよ」
玄「……えへへ。そうかな」
憧「ま。優しくていい人って人物評、巷では振られフラグとか言われてるらしいけどさ……」
玄「振られ!? ガーン!」
憧「ふふっ。でも玄はそのままでいてよね。優しい玄があたしは一番好きだよ」
玄「い、いちば、好き……」カアアアッ
玄「……」
憧「まずはシズみたいなポニテにしよっかな」
玄「……」
憧「あの……。じっとしててとは言ったけど口は動かしていいから」
玄「え!?」
憧「まったく玄は抜けてるんだからー」
玄「てへへ……」
↑ ↓
麺←穏
麺→宥でも可
と思ったけどあれか 器によく描かれてるドラゴンか
なるほど
そしたら透華も竜華も玄ちゃんに惚れるってことになるで
なにいってんだ当たり前だろ
憧「よいしょ、と」
玄「ね、憧ちゃんは穏乃ちゃんが好きなんだよね」
憧「そうよ」
玄「だよね」
憧「ま、実は正直、付き合うのは無理なんじゃないかって気はしてるんだけどねー」
玄「そんなことないよ!」
憧「うん、そうだったら嬉しい。でもたぶんあたしの一方通行だよ」
玄「憧ちゃん……」ズキ
玄(なんだかつらそう……)
憧「え?」
玄「かわいくて頭もいいし、私よりいろいろ知ってるし、憧ちゃんのこと凄いと思う!」
憧「あ、ありがと……。本当かどうかはともかく、なんか照れるな」
玄「全部本当だよ。だから憧ちゃんならきっと……」
憧「ううん。シズが求めてるのは可愛いとか勉強がどうとかそういうんじゃないと思うの」
玄「といいますと?」
憧「アイツさ。なんでも高いところが好きなのよ。山とか」
玄「高い山……。シズちゃんが好きなのは高山さん?」
憧「誰なのそれ!」
玄「ジョークだよジョーク。えへへ」
玄「はい!」
憧「あいつは高みに登ることが好き……」
憧「だから今のシズが夢中なのは、ある大きな目標……、つまりは和なんじゃないかなって感じるんだ」
玄「和ちゃん?」
憧「そ。きっと今のシズ一番の関心の的は和。あたしは二の次。なんとなくわかるんだ」
憧「あたしも中学で頑張ったんだけどね。シズに目指されるような場所へはたどり着けなかったな」
玄「ひょっとして憧ちゃんはそれで麻雀の強い中学に……? いつかシズちゃんに、自分を追いかけてほしくて……」
憧「さあねー、理由はいろいろよ。……よし! 完成!」
玄「え? わああー!? 髪の毛がちょんまげみたいに盛り上がってる!? 桜子ちゃんみたい!」
憧「あはは、びっくりした?」
玄「憧ちゃんてばー! 私の長さにこの髪型は合わないよー」
憧「ぷっ。ごめんごめん」
憧「大丈夫かー?」
玄「お任せあれ!」
憧「じゃ、よろしくね」
玄「はーい」
憧「……」
玄(憧ちゃんの髪やわらかい)
玄(それに触ってみるととっても頭がちっちゃくて可愛い)
玄(また一つ憧ちゃんのことを知れたような気分。少し楽しい)
憧「あんま変なことしないでよ?」
玄「うむー。それはお約束できかねます」
憧「うわ。めっちゃくちゃ不安になってきた」
玄「髪をほどいて、と」
玄「それからそれから……」
憧「……」
玄「……」
憧「……ん? どしたの玄?」
憧「え? まさか髪結ぶの失敗した?」
玄「そ、そうじゃなくって……」
玄「憧ちゃんはこんなにもシズちゃんのことが好きで、でも憧ちゃんの目からはシズちゃんが和ちゃんを好きなように見えて、それに私も……」
憧「んー。人生って往々にして上手くいかないもんだよね」
憧「ま、ほら。それでもあたし諦めきってるじゃないから」
憧「今はまだ無理でもいつかはシズを振り向かせるつもり」
憧「玄だってそうでしょ?」
玄「私? 私は……」
玄「……」
憧「あたしが、何?」
玄「ななな、なんでもないです!」
憧「……?」
玄(そ、そうだよ! こんなこと言うべきじゃない!)
玄(憧ちゃんが好きなのはシズちゃんで、私が好きって言っても憧ちゃんは振り向いてくれっこない)
玄(あはは。なんだか憧ちゃんと私とで少し状況が似てるな)
玄(片思いだって分かってるから言い出せない……)
玄(もしもいつか憧ちゃんの気持ちがシズちゃんから離れるようなことがあったら、その時は……)
玄(って、私何を考えてるの!?)
玄(また私はただ待つつもりなの……?)
玄(麻雀部の時みたいに、何日も黙って待ち続けるの?)
玄(今度は待っているものが来てくれるかどうかもわからないのに……)
玄(……)
玄(……もう待つのは嫌、かも)
憧「あれ? どこも結んでないただのストレートじゃない?」
玄「のーのー。ここに注目だよ」
憧「……あ。玄がいつもつけてる髪飾り」
玄「ふふん。どう? 松実玄ヘアーだよ」
憧「似合ってる……、のかしら?」
玄「リアクションが思わしくない……」
憧「でもありがと。このビーズいつもつけてるってことはお気に入りなんでしょ?」
玄「うん! 宝物だよ」
玄「あ、あのね、憧ちゃん」
憧「うん」
玄「えっとね」
憧「どしたの?」
玄「あっ、憧ちゃんは、その……」
憧「別に何を言っても怒らないって」
玄「……」
玄「憧ちゃんは、穏乃ちゃんじゃないと嫌?」
憧「シズはあたしの嫁!」
玄「違うもん!」
憧「ふふっ、宣戦布告ってわけ? いいよ、玄より先にシズのこと振り向かせてーー」
玄「そうじゃなくって」
憧「へ?」
玄「今はまだ憧ちゃんとシズちゃんはそういう関係じゃないでしょ?」
憧「そうね」
玄「つまり憧ちゃんの隣は空席で……」
玄「憧ちゃんはシズちゃんしか選べないわけじゃなくて、だから……」
玄「わっ、私じゃ、駄目……?」
玄「つまり私が好きなのは憧ちゃんなの!」
憧「ええええっ!?」
玄「ううう、どうしようおねーちゃん、とうとう言っちゃった……」
玄「わーん! こうなったら止まらないもん! 憧ちゃん大好きー!」ギュッ
憧「ちょ、ま、ま、待って!」
玄「やだ。返事くれるまで離れないもん」
憧「でも玄もシズのこと好きなはずじゃ……?」
玄「そう思ってた、けど……。本当に好きなのは憧ちゃんだってことに気付いたの」
憧「玄が、私のことを……」
憧「……」モジモジ
玄「って、顔すごく赤いよ!?」
憧「しょっ、しょうがないでしょ! こういうのはじめてで……」
玄「かわいいー!」スリスリ
憧「ちょ、こら! 頬擦り止めなさいって!」
玄「憧ちゃん好きー!」スリスリ
憧「だーからぁ……」
玄「ふふ。なんだかんだいって憧ちゃん、私のことむりやり突き放したりはしないんだね」
憧「だって……、玄、真剣なんでしょ?」
憧「そんな相手を突き飛ばせるはずなんてないよ……」
玄「そういう優しいとこも好きだよ」ギュゥ
憧「……普通よこんなの」
憧「やっと解放された……」
玄「憧ちゃんが告白されたことなかったなんて意外だったなあ」
憧「中学じゃあたしずっと周りにシズシズ言ってたから……」
玄「それはなかなかのなかなかだね……」
玄「ねえ憧ちゃん。憧ちゃんはまだシズちゃんに気持ちを伝えたわけじゃないよね」
玄「だから駄目って決めつけるには早いよ」
憧「……」
玄「もし勇気が出たら頑張ってね……、応援してるから」
玄「えっと、それでは」
憧「何ひとりでまとめて勝手に帰ろうとしてんのよ」ギュッ
玄「ぐえっ!? ふ、服のえり掴まないでぐるじい……」
玄「返事は聞かなくても分かってるもん……」
憧「抱きつき紛れに、返事聞くまでは離さないー、とか言ってたくせに」
玄「うう……。だって、振られるのはやっぱり怖いよ……」
憧「いいからあたしの方を振り返るの」
玄「……」クルッ
憧「みっ、見てよ玄……」
憧「これが相手を振ろうって女の顔?」カアアアッ
玄「……憧、ちゃん。ほっぺ真っ赤」
憧「だっ、誰のせいだと思って!」
玄「えへへ。可愛い」ナデナデ
憧「うぅぅー、玄絶対あたしのこと舐めてるでしょ! なんか悔しい!」
憧「何?」
玄「こっ、告白をオーケーされると思ってなかったから、現実味がなくて……」
憧「……たしかに、なんで玄なんだろう」
玄「わああー!? これは上げて落とされる展開!?」
憧「落ち着きなさいっての」
玄「落ち着けないよ……」
憧「もー。心配性過ぎ」
玄「だってぇ……」
憧「……」
憧「えいっ……」ギュウッ
玄「あわわ!? 憧ちゃん!?」
憧「すこしはあたしを信用しろっての……。撤回なんかしないよ」
玄「……うん。ごめんね」
玄「ごくり」
憧「玄はさ、駄目だと思いながらもあたしに告白してくれたわけじゃん」
玄「うん……」
憧「そうやって自分に必死になってくれたことが私は嬉しかった……、んだと思う」
玄「あっ、曖昧な理由だね」
憧「もちろん相手が誰でもよかったってわけじゃないよ」
憧「もともといい子だと思ってた玄だからこそって面は強い」
憧「でもたしかに、玄の言う通りあたしの好きはあやふや」
憧「だからさ……、まだ曖昧な好きを絶対の好きに変えてよ」
憧「あたし、玄のこともっと好きになりたい」
憧「だからさっき以上のことをしてくれないかな……?」
玄「!!」ドキッ
玄「お、おお、お任せあれ!」ドキドキ
憧「ふふ。ありがと」
玄「えっ、えーっと、それでは!」
憧「うん……」ドキドキ
そして唇を交わす音が響くと、玄の手がスカートの裾へと伸びていった
おわり
穏乃「宥さん! この激辛ラーメン美味しいてすね!」
宥「からだの中からあったか~くなるね」
穏乃「よーし! この調子で次のお店梯子しましょう!」
宥「うん」
穏乃「あったかラーメン同盟しゅぱーつ!」
宥「そっ、その名前は恥ずかしいかも……」
おまけおわり
玄憧とか俺得
良かったよ
阿智賀のメンバーは5人いたはずなんだよなあ
>>267
レジェゴとよろしくやってんだろ多分
おつつつ
Entry ⇒ 2012.09.28 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
竜華「怜の胸が大きくなってる…」ワナワナ
竜華「よし!早速買ってきたでー!」
竜華「さてさて、あれから怜のお胸は成長してるのかなぁと」ペラッ
竜華「ま、そんな短期間で大きくなるわけ…」
竜華「……」
竜華「でかっ!!」
竜華「……」ムニムニ
竜華「……」パタン
竜華「いやいや、まさかそんな…」ペラッ
竜華「でかっ!!」
竜華「はっ!?」キュピーン
竜華「ま、まさか…」
竜華「ここに写ってる誰かに揉まれたんか!?」
竜華「怜ぃ…浮気なんて酷すぎるわぁ…」
竜華「「竜華のおっぱいになりたいわぁ」って言ってたのは嘘やったん…?」
船Q「なにしてはるんですか?」
竜華「あ!船Q!」
竜華「聞いてや船Q~~、怜が浮気しとったんよ~」エグエグ
船Q「は?浮気?」
船Q「ほうほう、これは皆さんなかなかのものを…」
船Q「…園城寺先輩、やたらおっきくありません?」
竜華「せやろ!絶対先鋒の子達に揉まれてでかなっとるんや~」エグエグ
船Q「はぁ…しかしこれは驚きですね…早急にデータの更新を」
竜華「きっと玄ちゃんに右、新道寺に左を揉まれてチャンピォンにコークスクリューマッサージとかされてるんよ!」
船Q「落ち着いてください、全く意味が分かりません」
船Q「でもこれは一大事ですね…泉と江口先輩も招集しましょか」
竜華「そやね!皆で怜のおっぱいが大きくなった秘密を探るで!」
泉「まあ先輩は今日は病院で休むって言ってはりましたけど」
竜華「二人とも、一大事なんや、まずはこれを」パラッ
セーラ「なんやこれ?ポスター?」
泉「わー、阿知賀の子かなり際どいですねー、新道寺も背のわりになかなか」
セーラ「よーこんな水着着れるなー、ウチやったら絶対無理やわ」
泉「アハハ、ウチもちょっと…」
竜華「二人とも、見るとこはそこじゃないで」
セーラ「わかってるって、怜やろ?怜も病弱やのによくこんな水着…」
泉「先輩?どないしたんで…」
セーラ泉「「でかっ!!」」
竜華「きっとこれは誰かに揉みしだかれたからに決まってるんや!」
竜華「くそっ、あの時にもっとしっかり見ておけば…」
泉「なんかテンパってて凄い事暴露してはりますね」
セーラ「いつもの病気や、気にしたらあかん」
船Q「まあ先輩の意見はともかく」
船Q「盛ってるにしても流石に大きすぎじゃないですか?ってことですよ」
セーラ「確かに…怜が着やせするなんて聞いたことないしなぁ」
泉「園城寺先輩が着替えてるとこをそもそも見たことないんですけど」
なにこれでかすぎだろ
竜華「この前の体育のとき怜の着替えをガン見しとったからな!」
船Q「部長、もう喋らん方がええと思いますけど」
セーラ「ならなんでこんなおっきくなったんやろなぁ…」
泉「…どうやっておっきくなったか聞いてみたいですわ」ペタペタ
竜華「怜ぃ…おっぱいおっきい怜なんて怜じゃ…」
竜華「…アリじゃない?」
船Q「いやホンマもう黙っといてください」
船Q「一つ目は本当に園城寺先輩の胸が大きくなったかを確認する事」
船Q「二つ目はもし大きくなってたらその手段を聞く事」
竜華「そして怜が浮気してるかどうかを確かめる事や!これが一番重要やで!」
船Q「はいはいそうですね、じゃあそれも追加で」
セーラ「つってもどないするん?直接問いただすんか?」
泉「素直に答えてくれますかねぇ…」
竜華「直接なんてアカン!もし怜の口から浮気してるなんて言われたら…」
竜華「…もうこの太ももに怜の頭を貼り付けるしか」
セーラ「手段が猟奇的やなオイ!」
泉「めっちゃ歩きづらそうですね…」
泉「ウチですか!?いきなり言われても困りますけど…」
泉「そうですねぇ…ありきたりですけど海に誘うとかどうですか?」
泉「合法的に水着を見れますしなにより着替えてるとこも見れるじゃないですか」
船Q「えーと、海に誘う・・・と」
セーラ「いやいや、もう流石にそんな時期じゃないやろ…二色ノ浜でも開いてないで」
泉「あ、やっぱそうですかね」
船Q「まあそこらへんは温水プールでも代用できますし、ええ案やと思いますけど」
船Q「じゃあ次は江口先輩、なんかあります?」
セーラ「うーん…直接聞くのが一番やと思うんやけど…」
竜華「」フルフル
船Q「ほうほう、それはいいですね」
セーラ「へへっ、せやろー」
船Q「じゃあ…、一応聞きますけど先輩は何か?」
竜華「怜のおもち…なかなかのなかなか…えへへ、怜ぃ…」
泉「(こわっ!!)」
船Q「はい、じゃあないということで二人の案を採用しようかと…」
ガララッ
怜「ごめんごめん、お待たせー」
セーラ「と、怜!?」
船Q「(泉ポスター隠して!)」
泉「(は、はい!)」ササッ
セーラ「い、いやぁ、ただの雑談や」
怜「ふ~ん」
船Q「(どうですか?見た目なんか変化あります?)」ヒソヒソ
セーラ「(特別おっきいようには見えへんけど…)」ヒソヒソ
泉「(やっぱり着やせするタイプなんですかねぇ)」ヒソヒソ
怜「ちょ、目の前でヒソヒソ話とか感じ悪いで」
船Q「ああすんません、ちょっとね…」
怜「なんや内緒話か?ウチの悪口でもいっとるんやろー」
泉「そ、そんなんちゃいますって!」
怜「あれ、泉それなにもってるん?」
泉「(!?!?!?!)」
船Q「(泉!耐えて!)」
セーラ「(絶対見られたらアカンで!)」
怜「なんで後ろに隠してんの?ウチにもみしてーな」
泉「これはですねぇ…そのぉ…」
泉「(無理!無理です船久保先輩!)」フルフル
船Q「(…しゃーない)」
船Q「いや実はですね、泉が自分で書いてきた漫画を持ってきたんですけど」
泉「(え?)」
怜「マジで!?ウチにもみしてー」
船Q「その内容が…」
船Q「クッソ汚いホモ漫画なんですよ!」ドドーン!
泉「(えええええええええ!?)」
船Q「ええ、まったくですよね」
泉「ちょ、いや、あの」
セーラ「いやウチらもドン引きやったんやけどな、これはちょっと怜には見せられへんなぁって話しとったんよ」
泉「(江口先輩!?)」
怜「ま、まあ趣味は人それぞれやし…別にウチは気にしてへんよ」ポン
泉「はい…もうなんでもいいです…」シクシク
船Q「で、園城寺先輩もどうですか?」キラーン
怜「い、いやぁ…ウチはちょっといいかな…」
泉「やっぱり引いてるじゃないですかぁ!」(迫真)
セーラ「(泉…後でなんかおごっちゃるからな…)」
船Q「そこでうずくまってますけど」
竜華「」ズーン
怜「うわっ、暗…おーい竜華ー?」
竜華「ウフフ…怜の声が聞こえる…私を迎えに来てくれたんやね…」
怜「いや迎えに来たというかなんというか」
竜華「怜ぃ!」ダキッ
怜「ちょっ!いきなりどうしたん」
竜華「」モミモミ
怜「んんっ・・・!」
船Q泉セーラ「「「(直接いったーーーっ!!!??)」」」
怜「やっ、りゅうかぁ、いきなりっ」
竜華「……」モミモミモミモミ
怜「んんんっ、ちょっ、アカンてっ」
竜華「…同じや」モミモミ
怜「ふぇ…何が…」
竜華「胸の大きさが前と同じや!!」
怜「当たり前やろっ!!」バシーン!
竜華「痛っ!なにするんよ怜ー」
怜「それはこっちのセリフや!セクハラはウチの専売特許やろ!!」
船Q「いや、それもどうかと思いますけど」
船Q「実はですね…」
かくかくしかじか
怜「あ、あのポスター見たん…?」
竜華「ちゃんと保存用と観賞用と使用用に3枚買ったから!!」
セーラ「(使用用ってなに?)」ヒソヒソ
泉「(…江口先輩はそのままでいてください)」カァーッ
セーラ「???」
船Q「まあ正直失礼な話なんですけど、流石に盛りすぎちゃいます?」
怜「ちゃ、ちゃうんよ!あれはなんというか…」
竜華「やっぱり浮気か!ウチ以外の子に揉ませてたんか!」
怜「竜華以外に揉ませるわけないやろ!」
竜華「怜…」
怜「竜華…」
船Q「なんですかこれ」
怜「いやぁ、ほら、ちょっと前にあれでたやん?マウスパッド」
竜華「ああ、ウチと怜のやつやったっけ?」
怜「そうそう、アレ作ってる人が「やべぇ、盛りすぎた」とかふざけたこと言い出してな…」
怜「んで今までとった写真やと正面向いてるのがなくて」
怜「この際やからこのサイズにしようってことになって…」
怜「…別にちっちゃくないやんな?」
竜華「むしろウチ的にはジャストサイズやで?」
船Q「まあ普通ですよね」
せーら「ウチより大きいやん」
泉「私よりも…」
セーラ「なーんや、竜華が一大事っていうから何事かと思ってたわ」
泉「大きくなる秘訣を教えてもらおうと思ったんですけど…」ショボーン
怜「そんなんあったらウチが教えて欲しいくらいやわ」
船Q「まあまあ、なんもなくてよかったやないですか、ねえ先輩」
竜華「ウチは最初から怜を信じとったよ!」ボイーン
セーラ「」
泉「」
船Q「」
怜「」
竜華「と、怜?いきなり何ゆってんの?」
船Q「そうですね、先輩一人ってのは不公平ですよね」ワキワキ
泉「みんなに分け与えるってのが部長と思いますよ」ワキワキ
セーラ「まあこれも部長の定めってやつやな」ワキワキ
竜華「ちょ、皆手つきがやらしい…あれ?これピンチ?」
怜「素直にそのおっぱいを明け渡すなら軽めで許したる」
竜華「それ結局やってるやん?4人の軽めっておもすぎってレベルじゃないやん?」
怜「問答無用!おっぱいよこせええええええ!」
竜華「や!ちょ!ひにゃあああああああああ!!」
カン
哩「のう花田」
煌「なんですか部長?」
哩「これ…かなり盛ってねか?」
煌「……」
哩「どっち向いとる」
煌「その質問は…すばらくないですね…」
哩「お前…」
煌「いいじゃないですか…初めてポスターになったんですから…ちょっとくらい」グスッ
哩「まぁ…気を落とさんごっに」
煌「はい…」ムニムニ
カン
照「……」
菫「おい照、このポスター…」
照「何も…言うなっ…」グスッ
菫「…すまん」
カン
つ乙ぱい
Entry ⇒ 2012.09.27 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
照「プリンに醤油でウニの味に」 菫「まさか!?」
菫「いや、確かに聞いたことあるような気もしないではないが・・・」
淡「えぇ~、食べたことないの~?おっくれってる~」
菫「ムッ・・・」
照「ちょうどここにプリンがある」
菫「いいのか?」
亦野「うわ~、いいですね~。あ、じゃあお醤油も・・・。はい、どうぞ」
菫「ありがとう・・・。だが・・・」
渋谷「私も食べたい・・・」
菫(渋谷が食べたいなんて言うってことは、まさか本当にウニの味に・・・?)
菫「醤油の量はこの位か?」
照「ダメだ」
亦野「それじゃ初心者にも程がありますよ」
淡「だっさーい」
菫「そうなのか・・・」
渋谷「最初はプリンのカラメル部分を少しスプーンですくう。そして、その窪みに醤油をたらし、そこから少しずつプリンと一緒に食べるのが通」
菫「なるほど・・・」
菫「これでいいか・・・?」
亦野「ええ。醤油とプリンのバランスがナイスです」
淡「知ってる!黄金比っていうんだよね!」
照「淡は物知りだな」ナデナデ
淡「えへへ~」
菫「そ、それじゃあ食べてみよう・・・」ドキドキ
チーズ+ハチミツ→栗
きゅうり+ハチミツ→メロン
淡「ねえ、どう?どう?」
亦野「美味しいですよね」
照「私の最後のプリンなんだ。美味しくないわけがない」
渋谷「お手軽価格で味わえる高級感。すばら・・・しいです」
菫(ま、不味い・・・!何なんだこれは・・・!?)
菫(クッ・・・不味いだなんて言えるものか・・・)
菫「ああ、美味い・・・な・・・。まさかプリンがウニの味になるとは知らなかったよ・・・」
照「ほらな。騙されたと思って食べてよかっただろ」
菫「あ、ああ・・・」
亦野「これが家庭で楽しめる高価な味です」
渋谷「お茶もどうぞ」
菫「助かる」
照「でも、まさか菫がここまで無知だったなんてな」
亦野「確かに」
淡「じゃあアレも知らないんじゃないかな」
菫「アレ・・・だと・・・?」
渋谷「牛乳とたくあんでコーンスープになる」
菫「まさか。ありえないだろそんなの」
照「嘘だと思うのか?いいだろう、実際に試せばその意固地な考えも変わる。淡、冷蔵庫からアレを」
淡「はいは~い」
亦野「弘世先輩、どうぞ」
菫「だがしかし・・・」
菫「そうなのか?」
渋谷「ええ。そこで代用食として考案されたのがたくあんと牛乳を組み合わせるという方法です」
亦野「牛乳やたくあんなら家庭にありますもんね」
淡「ミルクは普通にスープにも使われるから合理的なんだよね」
菫「なるほど・・・。だが、たくあんと牛乳か・・・」
照「まあ、騙されたと思って一口」
菫「うぅ・・・。たくあんがたくあん臭い・・・」
亦野「はい、牛乳です」
菫「んくっ・・・・」ギュウニュウゴクー
照「どうだ?」
菫「どうって・・・別に普通にたくあんと牛乳だったが・・・」
淡「ちーがーうー!そうじゃないのー!」
渋谷「ノンノン、たくあんと一緒に食べるんデス」
菫「何故カタコトに」
照「そうか、菫は間違った食べ方をしてたのか。たくあんを口の中で細かくかみ砕いた後に牛乳を口に含むんだ」
菫「そんなので味が変わるわけが・・・」ポリポリ
照「どうだ?わかったか?」
菫「あ、ああ・・・。たくあんの独特な匂いが牛乳で中和され、味も混然一体として・・・。確かにこれは悪くないな・・・」
渋谷「おわかりいただけただろうか。これが人類の知恵である」
亦野「人類の知恵様サマですね!」
淡「テルー、中途半端に食べさせてたらお腹空いちゃうんじゃない?」
照「そうだな。菫にはもう少し腹にたまるものを食べさせてあげようか」
菫「また変なものを食べさせる気だろう」
照「失敬な。さ、次はこれをいってみようか」
菫「・・・これは一体」
菫「いやいや、どう見ても豆腐とヨーグルトなんだが」
渋谷「ダイエット食品が冷蔵庫にあってよかった。これでレアチーズケーキが食べられる」
照「さ、菫。遠慮はいらない。食べてくれ」
菫「だがしかし・・・、どう考えても豆腐とヨーグルトなんだが・・・」
菫「何だ?」
照「私がお前に嘘をついているとでも・・・?お前は私が・・・私たちがお前に嘘をついているとでもいうのか・・・?」
菫「それは・・・」
淡「そうだったら悲しいな・・・」
亦野「私たちは信頼されてなかった・・・ということですか・・・」
渋谷「デンプシーロール・・・」
菫「わかった・・・。食べてみるさ。私はお前達を大切な仲間だと思ってるからな」
照「菫・・・」
亦野「先輩・・・。じゃあ、今お皿に取り分けますね」
菫「ああ、ありがとう、みんな」
照「待て」
菫「何だ?」
照「私が食べさせてやろう。はい、あーん・・・」
淡「ずるーい!」
菫「あーん・・・///」パクッ
亦野「どうですか弘世先輩?」
菫「!?」
菫(これは・・・合うな・・・。豆腐は大豆の香りがかすかにするだけであまりクセがないし、食感もなめらかでヨーグルトの甘みと酸味との相性が抜群だ・・・)
菫「おい・・・しい・・・」
照「そうか」
照「いや、そういう意味じゃない。ただ、私たちは今までの食べたことなかったから菫の味の感想が気になっただけ」
菫「何・・・だと・・・」
照「そうか・・・。美味しかったのか・・・。よし、みんな、買出し行くぞ!2000円で満漢全席を作ろう!」
渋谷「素敵です」
亦野「サイコーです!」
淡「やったー、テル大好きー」
照「菫が様々なレシピが美味いものだと実証してくれた。ならばもう躊躇うことはない!満漢全席だ!」
淡亦野渋谷「おー!」
菫「私はもうお腹一杯だから帰らせてもらうよ・・・」
照「そうか、残念だ」
そして満漢全席?ができた・・・
照淡亦野渋谷「ふぁ~ん、不味~い!菫に騙された~!」
完
おつおつ
Entry ⇒ 2012.09.27 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
白望「芋けんぴ、髪に付いてたよ」
シロのマイナーカプSSらしいぞ!
マイナーカプが苦手な人は気をつけろ!
塞「好きな人ができたァ!?」白望「うん」
http://ssweaver.com/blog-entry-1723.html
一応前作?だけどお話のつながりはないです
ーーー
洋榎『清老頭や。32000──思ったより痛いんちゃうか?』
いちご『そんなん考慮しとらんよ……』
ーーー
チュンチュンチュンチュン
いちご「…………」パチッ
いちご「……チュンチュンが、チュンチュン鳴いとる……」
いちご「……最悪の寝覚めじゃ……」
いちご「もう何日もたつのに、いまだに立ち直れん……」
『今日の占い、カウントダウーン!』
『今日もっとも良い運勢は――』
いちご「はぁ……」
『――そして今日最も悪い運勢なのは、ごめんなさい、??座のあなた――』
いちご「占いまで最下位……ちゃちゃのんはもう駄目かも……」
いちご「…………」
いちご「芋けんぴ、買いに行くかのう……」
…
アルバイト「ありゃっしたー!」
いちご「……けっこう美味いのう」カリカリ
いちご「なんかいいことな――」
いちご「――わぷっ!?」白望「わっ」ドンッ
いちご「いたたた……」
白望「ごめん……大丈夫、立てる?」
いちご「あ、こちらこそすみません……つっ!」
白望「膝、怪我してる」
いちご「あ、お、お構いなく……」
いちご「ぇっ?」
白望「ん……」ダキッ
いちご「!?!?!?!?」
いちご(お、お姫さまだっこぉ!?)
白望「近くにベンチがあったから……そこまで我慢して」
いちご「は、はいぃ……」
いちご「わ、わざわざすみません……」
白望「私のせいだから、気にしないで」
いちご「そんな……」
白望「そこの薬局で水と傷薬買ってくるから、少し待ってて」
いちご「あ、そこまでは……行っちゃった」
いちご「これはラッキーなのか、アンラッキーなのか……どっちなんじゃろ」
いちご「あ、おかえりなさい」
白望「とりあえず、応急処置」テキパキテキパキ
白望「ん、できた」
いちご「ありがとうございます」
白望「うん」
白望「…………」
いちご「…………」
白望「…………」
いちご「…………?」
いちご「あ、あの……」
白望「んー?」
いちご「ここにおっていいんですか?用事とかは……?」
白望「散歩してただけだから……。君が歩けるようになるまではいるよ」
シロの二人称よくわからんから君使いました。間違ってたらごめんね
白望「あ、迷惑ならどっか行くけど」
いちご「そ、そんな、迷惑なんて!」
白望「そう……よかった」
白望「君可愛いから、一人にするのはちょっと心配だった」
いちご ボンッ!
いちご「か、可愛いなんて……」
いちご(い、言われ慣れとるはずなんに、何じゃろこの気持ちは……)
白望「……」
いちご「……」
いちご(無言なんに居心地悪くない……不思議な人じゃのう……)
白望「……」
いちご「……」
いちご「あの、そろそろ……」
白望「動ける?」
いちご「はい。ありがとうございました」
白望「ん……、ちょいタンマ」
いちご「え?」
白望 スッ
いちご「え?え?ええええ?な、なんじゃあ!?」
白望 ヒョイ
白望「芋けんぴ、髪に付いてたよ」カリッ
いちご「う……」
いちご(わ――――///)カァァ
いちご「あ、ま、待って!」
白望「?」
いちご「お名前、教えてください!」
白望「小瀬川白望。じゃね」
いちご「小瀬川さん……」キュン
いちご「個人戦じゃ!」
鹿老渡A「ちゃちゃのん気合はいってんね?」
鹿老渡B「団体のアレから立ち直れてよかったのー」
鹿老渡C「がんばって!」
いちご「うん!」
いちご(もしかすると小瀬川さんが見とるかもしれんしな!)
いちご「ありがと、最初に当たるのは……埼玉と、京都と……」
いちご「……岩手、小瀬川白望……!?」
ーーー
いちご「うん、見間違えじゃない」
いちご「こういう珍しい名前が何人もおるとは思えんし……」
いちご「たぶん、小瀬川さんで間違いないな」
※個人戦代表シロ&ちゃちゃのんはオリ設定やで
岩手と広島の代表は判明してなかったよね?
いちご「……どうしよう……」
いちご「……どどどどどどうしよおおおおお……」
いちご「まままままさかこんな展開になるなんてそんなん考慮しとらんよおおおお」
いちご「あわわわわわわわ」
いちご「お、おちつけちゃちゃのん、平常心じゃ……」
いちご「ひっひっふー、ひっひっふー」
いちご「うん、これで小瀬川さんとも……もも、もももももももも」
いちご「い、いかん、こんなんでまともに打てるわけない……」
いちご「ど、どうすりゃええんじゃ……!?」
…
いちご「そんなこんなで個人戦当日になってしまったんよ」
白望「だる……」
いちご「!」
いちご(い、今の声は――!)
白望「ん……?あれ、こないだの」
いちご「ここここっここここ」
白望「……?」
いちご「ここここここここ」
白望「んー……?」
埼玉「ちわー」
京都「わ、ちゃちゃのんだ!本物だ!」
いちご(み、みんな揃ってしまった……)
埼玉「よろしくお願いします」
京都「お願いしまーす」
白望「よろしく……」
いちご「よ、よろしくお願いします」
埼玉と京都は日本地図開いたらたまたま目に入っただけですはい
キ ン ク リ !
…
いちご(終わった……)
いちご(結果は対局に集中できなかったちゃちゃのんの一人沈み……)
いちご(小瀬川さんは終始だるそうな顔しとった……)※素です
いちご(あきれとったんじゃろうか……?)※素です
いちご(泣きたい……)
いちご「あ……」
いちご(小瀬川さん、行っちゃう……)
いちご(そりゃそうじゃ、対局が終わったら用ないもんな……)
いちご(……お別れか……広島と岩手じゃもう会うことも……)
いちご「…………」
ガシッ
いちご「…………」
いちご(か、体が動いちゃった……)
白望「なに?」
いちご「あ、あの、あの……」
いちご(いかん、何も出てこん!)
白望「……控え室、行く?」
いちご「ひ、控え室?」
白望「あそこなら、二人になれると思う」
いちご「は、はい……」
埼玉「なんだあの空気」
京都「私のストロベリーがパニックしそう」
白望「で、なに?」
いちご(い、いかん、二人っきりになってもなんも好転しとらん……)
いちご(何て言えば正解なんじゃ……)
いちご(好きです付き合ってくださいとかか!?絶対引かれるわ!)
いちご(ぬぬぬぬ……)
白望「!?」ビクッ
いちご「女は気合じゃ!小瀬川さん!」
白望「う、うん」
いちご「ちゃちゃのんと――」
いちご「ちゃちゃのんと友達になってください!!
いちご(まずは友達からじゃな。うん。決してちゃちゃのんがヘタレなわけじゃないよ)
白望「……ちょいタンマ」
いちご「ふぇっ?」
いちご(え、え、なんでここでタンマ……!?)
いちご(ちゃ、ちゃちゃのんと友達なんてごめんとか!?)
いちご(ああ、傷つけずに断る言葉でも探してるのかもしれん……)
白望「…………」
白望「んー、ねえ、佐々野さん」
いちご「は、はい」
白望「それ、佐々野さんが一番したいことじゃないよね?」
いちご「……え?」
白望「なんとなくだけど、佐々野さんが一番したいことは別にある気がする」
いちご「え?え?」
いちご(いやでも、もしちゃちゃのんの恥ずかしい勘違いで、断られたら、友達にすら……)
いちご(……ここで断られるようなら、ずっと脈なしか)
いちご(行くしか、ないのう!)
いちご「小瀬川さん!」
白望「うん」
いちご「ちゃ、ちゃちゃのんと、付き合ってください!」
ーー
ー
―広島、鹿老渡高校―
いちご「~♪」
鹿老渡A「あー、またちゃちゃのんケータイ見つめてにやにやしとるー」
いちご「に、にやにやなんてしとらんよ!?」
鹿老渡A「えー、してたよー」
鹿老渡B「しとったのー」
支援
ペロペロして砂糖溶かしてから髪の毛にくっつけながら乾くまで握りしめる
そしてイケメンと衝突する
簡単
鹿老渡B「はい!岩手の某恋人さんなどが怪しいと思います!」
鹿老渡C「わたくしも同意見であります!……あ、逃げよった」
鹿老渡A「追うぞー!」
鹿老渡BC「おー!」
…
いちご「……ふぅ、何とか撒いたな。まさか立ち入り禁止の屋上にいるとは思わんじゃろ……」
いちご「さて、メール、メール……」
いちご「ふふっ」
いちご「シロー!大好きー!!……なーんて、」
鹿老渡A「おやおや、聞きましたか?」
いちご「え」
鹿老渡B「愛の告白ですのう」
いちご「ちょ、」
鹿老渡C「熱々ですなー」
いちご「な、なんでおるんよ!?」
鹿老渡A「ちゃちゃのんの行動パターンなどお見通しよ!」
鹿老渡B「ハイパーニヤニヤタイムの始まりじゃー!」
鹿老渡C「ニヤニヤニヤニヤ」
いちご「や、やめてー!!」
白望「うん、私も大好きだよ」
白望「……いちご」
おしまい
残:部長、クロチャー、衣、とーか、純、はっちゃん、すばら、タコス、小蒔、照、もーちゃん
はやりんはスラスラっといけたのにちゃちゃのんは難産過ぎた
ほとんどちゃちゃのんとシロの二人でセリフ回したからかしら
次はてるてるの予定だけど、なんも思い浮かばんのでシチュエーションとか募集してみる
Entry ⇒ 2012.09.26 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
豊音「わ~い東京観光」池田(あ、あの人は…)
華菜「なんだっけ?」
豊音「あれ……?」キョロキョロ
華菜(どうしたんだろう、急に辺りを気にし始めたけれど)
豊音「みんないない……!?」
華菜「……迷子かァ?」
豊音「はぐれちゃったよー……」オロオロ
豊音「……」キョロキョロ
華菜「というよりタコス娘……待ち合わせ時間とっくにすぎてるっつーのに」
豊音「みんなと、東京観光のはずが……」
華菜「なにがタコス巡りしようじぇ!だし」プンプン
豊音「う、うぅ……」じわ
華菜「……待ち合わせ時間から三十分経ってる」
豊音「ここ、どこぉ……」グスッ
華菜「はー、まだかねぇ」パタパタ
豊音「ぐすっ…えぐっ……」
華菜「……」
豊音「んー?」グスグス
華菜「もしや、迷子ですか?」
豊音「ビクッ……ま、迷子じゃ、ないよー」
華菜「……そうですか」
豊音「うう、みんな探しにいかないといけないけど、ここがどこかもわからないんだー……」
華菜「そうですか」クルッ
豊音「ちょ、ちょっとま」
華菜「ダッシュ!」
豊音「ちょ、追っかけるけどー!」
豊音「ぼ、ぼっちにしないでよー!!」
華菜「ばったり、そこで、あったような人に、かまってあげる義理なんか!」
豊音「ともびき、だーよー!!」
華菜「はァ!?」
豊音「ぼっちじゃないよー!!」ガシッ
華菜「ひいっ」
豊音「捕まえたー」ニコニコ
華菜「……まて、待ち合わせしてるやつがいるんだ」
豊音「えー」
ヤクソクーノバーショーヘオーバーフューチャー
華菜「はい」
優希『ごめん、ちょっと野暮用でいけないじぇ』ブツッ
華菜「…………」
華菜(あんのタコス娘ェ……)ギリギリ
豊音「あの、手伝って欲しいんだけどー……」
華菜「わかったよ!手伝えばいいんだろ!!」フシャー
豊音「ありがとうだよー」
豊音「姉帯豊音だよー」
華菜「ふんふん、豊音っていうんだな。よろしくだし」
豊音「猫さんは?」
華菜「池田華菜ちゃんだし」フンス
豊音(いきなり偉そうな態度になったよー……)
豊音「よろしくねー、カナちゃん」
華菜「で、どうしようかまずは>>25でも行ってみようか」
豊音「おー、ちょーすごそうー」
華菜「なんたって平将門が祭られてるところだからな」
豊音「ちょーたのしみだよー……」
豊音「そうだねー……」
華菜「はぁ、なんでカナちゃんこんなことしてるんだし……」
豊音「迷惑かなー……」
華菜「……私も暇だったし、別にいいんだけど」
豊音「ごめんねー」
豊音「おー、東京にもこんな所があるんだー」
華菜(んー、あの時タコス娘の誘いじゃなくてみはるんのほう選んでおけば良かったし……みはるんは絶対バックれたりしないし……)
豊音「どうしたのー?入ろうよー」
華菜「あぁ、今いくしー」タタッ
華菜「……あんたがでかいだけじゃ」
豊音「手が届きそうだーー」ピョンコピョンコ
華菜「やめい」
豊音「はーい」シュン
豊音「いいところだねー」
華菜「一度きてみたかったんだよなー」
豊音「あや、東京住みじゃないんだー?」
華菜「私は長野だけど」
豊音「長野っていうと清澄だけど……」
華菜「うちは風越、私は個人戦に出てるキャプテン……福路美穂子の付き添いだし」
豊音「お、おぉ……」キラキラ
華菜「……ん?」
華菜「キャプテンに頼んでみるし」
豊音「わー」
華菜「さて、ここはもういいか……」
豊音「そうだねー」
胡桃「豊音みつかったー?」
白「だる……」
塞「いや、全然……」
エイ「ドウシヨウ」
白「まってりゃいいじゃん……はぁ」
塞「そういうわけにもいかないでしょ」
トシ「携帯、持たせておくべきだったね」
胡桃「はぁ……まさか一番目立つはずの豊音が迷子になるとはね……」
トシ「とりあえず、もう一回周囲を探してみようか」
塞「そうですね……」
胡桃「シロはここでまってて……あれ?」
塞「エイスリン、シロは?」
エイ「シラナイ」ふるふる
トシ「…………はぁー」
豊音「色々買っちゃったよー」
華菜「お守りなら私も一個」
豊音「カナちゃんは歴史にも詳しいんだねー」
華菜「源平の話が大好きで……」
華菜(アハハ……大河ドラマで興味持ったなんて言えないよなぁ)
豊音「私もちょー詳しくなった気分だよ」
華菜「そりゃよかった」
豊音「おー」
豊音「にゃっ!?」ピクンッ
華菜「どうなんだい?お嬢ちゃん……」
豊音「ちょー行きたいよぉーー!!」
華菜「ふっ、なら決まりだな」
まー、なんとかなるはず
華菜「とりあえず、ここから歩いてけばいいし」
豊音「道順とかわかるのー?」
華菜「カナちゃんに任せなさい!」
豊音「まかせたー」
華菜「とりあえず駅までっと……」
華菜「豊音さんは身長が高いから見失うことがないし!」
豊音「そ、そうかなー」テレテレ
華菜「にゃはは……ん?」
豊音「ん?……あ」
華菜「あいつもひとりっぽいけど」
豊音「声、かけてくるー」
豊音「しろー」
白「……」ボー
豊音「しろー」トントン
白「あ、トヨネ……」
豊音「ビックリしたよー、シロ、みんなはー?」
白「ん、あー……おいてきたんだった」
豊音「ずこー」
白「あるけど……」
白(……誰?)
華菜「それで連絡してみんなにここまできてもらえばいいし」
豊音「なるほどー」
豊音「えーっと……これから」
豊音「あ、つながった、うん、豊音だよー」
豊音「御茶ノ水?駅にいるよーうん、うん」
華菜「連絡ついたみたいだし、私はこれで失礼するし」
豊音「え?」
華菜「皇居だってみんなでいけばいいし」
豊音「んー、そうだねー……」
豊音「皇居……」
華菜「君たちの空間に私が入っても邪魔になるだけだ」
豊音「皇居ー……ねぇ、皇居……」
華菜「だから私はここで……」
豊音「皇居」
華菜「……」
豊音「……」
豊音「えー、カナちゃんと行くって言った……」
華菜「き、急用を思い出した!」ダッ
豊音「逃がさないけどー」ガシッ
華菜「……」
豊音「……」
カン
たまにはこんな組み合わせもイイネ
Entry ⇒ 2012.09.26 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
塞「好きな人ができたァ!?」白望「うん」
胡桃「シロ、それロン!」
白望「あ……うん」
豊音「ロン」
白望「ん……」
胡桃「シロ、飛びだよ」
白望「うん……」
塞「…………」
キンコンカンコン
豊音「あ、時間だよー」
塞「今日はお開きだね」
白望「じゃあまた明日……」
エイ「シロ!ワタシモ!」トテトテ
白望「ん……」
塞「シロの様子がおかしい……」
胡桃「あ、やっぱり塞も気づいてたんだ」
塞「そりゃあ気づくよ。なんか上の空だし、いつもはやらないミス連発するし」
塞「なんか病気だったりするのかも」
豊音「えー!?大変だよ!救急車呼ばないと!」
胡桃「もう帰ったからね。呼んでも意味ないからね」
豊音「なんか悩み事があるのかもー」
胡桃「あのシロに悩み事?」
塞「んー……悩み事かぁ……」
豊音「違うかなー?」
塞「んー、まぁ、明日にでも私が聞いとくよ」
豊音「うん。任せたよー!」
塞「んで、何があったの?」
白望「何がって……」
塞「ちょっと前から変じゃない。何もないとは言わせないよ」
白望「いや特に何も」
塞「正直に言わないと塞ぐよ」
白望「だる……」
塞「ほら、早く言った!」
白望「ん……。あー、実は……」
白望「うん」
塞「シロが!?まさか!?冗談でしょ!?」
白望「そこまで言われるとかさすがに心外なんだけど……」
胡桃「朴念仁オブ朴念仁のシロに好きな人ができた!?ありえない!」
白望「朴念仁って……。って、胡桃、いつからいたの?」
胡桃「あ、思わず出てきちゃった……」
豊音「もー、駄目だよ胡桃!」ヒョコッ
白望「トヨネまで……ということは……」
エイ「エヘヘ……」ヒョコッ
白望「やっぱりか……」
白望「え、言わなきゃ駄目なの?」
塞「うん」(実は私だったりして……)
胡桃「当然!」(いつも充電させてくれるし、私だったり!)
エイ「キニナル!」(ワタシトイウカノウセイ……)
豊音「隠し事は駄目だよー」
白望「えー……」
胡桃「早く!」
エイ「ハリーアップ!」
豊音「早くー!」
白望「あー……だる……」
白望「…………はやりん」ボソッ
胡桃「」
エイ「」
豊音「えっ……」
塞・胡桃・エイ・豊音「ええええええええええええええええええ!!?」
白望「うん」
エイ「? ? ? ?」
塞「あのロリ巨乳!?」
白望「はやりんのことを悪く言わないで」
豊音「はやりんかわいいよねー!」
白望「うん、すっごくかわいい。なでなでしたい」
胡桃「うわぁガチだぁ……」
白望「数日前。テレビ付けたらはやりんが出てて……」
白望「一目惚れしちゃった///」
塞「なん……だと……」
塞(これは本当に私の知ってるシロと同一人物……?)
胡桃(きもちわるい!)
エイ「アウアウアウアウ」
豊音「は、はやりんは可愛いからねー。シロの気持ちもわかるなー!」
白望「でしょ?さすが豊音はわかってるね」
塞「……つ、つまりなに?ここ数日シロがおかしかったのは……」
胡桃「牌のおねえさんの番組が待ち遠しくてソワソワしてただけってこと!?」
白望「う……まぁ、そうなるのかな」
塞「…………」
胡桃「…………」
エイ「…………」
豊音「は、はやりんはかわいいからね!仕方ないよ!」
エイ「ウン……」
胡桃「おー……」
塞「なんだこれ」
エイ「ナンダコレ」
胡桃「まじでなんだこれ」
塞・エイ・胡桃「はぁぁぁぁぁぁぁ……」
エイ「シロ!ブカツイク!」
白望「あー、ごめん、今日は夕方の便で東京に行くから」
エイ「ト、トウキョウ!?」
白望「うん、これ」
『はやりーん☆握手会』
エイ「」
白望「じゃあ行くね。塞たちに伝えておいて」
塞「大会前の大事な時期だというのに……」
胡桃「まぁ……やる気なくされてもあれだし……」
塞「シロはいつもやる気ないようなもんでしょ……」
胡桃「まあね……」
豊音「と、とりあえず打とうよー!」
塞「ああ、そうだね……」
胡桃「なんかダルくなってきた……」
エイ「シロノガウツッタカモ……」
ダンゴダンゴダンゴダンゴ ダンゴサンキョウダイダンゴ
塞「……ん、電話?胡桃から?」
塞「もしもし……」
胡桃『塞!?今朝の新聞見た!?やばいよ!』
塞「うん……?見てないけど、どうしたの?」
胡桃『とにかく早く見て!』
塞「うん……」
『女子高生、握手会ではやりんに熱烈告白!!』
塞「……ごばぁっ!!?」
塞「い、いや、落ち着け、まだシロと決まったわけじゃない……」
『×日午後、人気アイドル雀士瑞原はやりプロ(28)の握手会で、岩手在住の女子高生Kさんが……』
塞「…………」ピクピク
塞「なにやってんだあいつはああああああああああああ!!?」
はやり『いやー、あれには驚きましたね☆』
塞「……ん?」
アナウンサー『最近の若者は非常識といいますが……』
はやり『でも、あれほどのファンがいてくれると思うとうれしいですねっ☆』
塞「……○ざましテレビ?」
塞「全国ネットオオオオオオオオオオオ!!?」
塞「みんな、今朝の新聞とテレビ見た!?」
胡桃「見たよ!本当に何やってんのシロ!」
エイ「? ? ?」
豊音「エイスリンさんは見てないんだねー……実はかくかくしかじかでー……」
エイ「oh...」
塞「ほんとどうすんのこれ!?」
胡桃「どうしようもないよ!」
ガチャッ
白望「ただいま……何騒いでるの?」
塞「てめえは何してくれてんだああああああああ!!?」ガシッ
白望「ちょ、タンマ、首絞まる……」
塞「あんたの告白全国ニュースになってるよ!」
白望「……そこまでのことをした覚えは……」
塞「なにやったんだよ!」
白望「本当に大したことは……」
塞「えっ、えっ、」
白望「はやりんの目を見ながら」
塞「わ、私で実演すんなっ」
白望「『あなた好きです。私と付き合ってください』」
塞「……!」ボッ
塞「」フニャ~
白望「……って言っただけだよ。……塞?何ふにゃふにゃしてんの?」
塞「あ、あんた馬鹿なの!?衆人環視のなかそんなことするとか!」
白望「だってはやりんと二人きりになれる機会なんてないし……」
エイ「アグレッシヴ!」
胡桃「これって尊敬するべきなのかなぁ……」
豊音「シロ、ちょーすごいよ!」
塞「あーすごい。すごいのは認める。でもそれ以上に馬鹿だよ」
塞「だって、そんなことしたら牌のお姉さんのイベントなんてもう行けないでしょ」
白望「イベントのほうはね。ファンのみんなに殺されるかも」
胡桃「そりゃそーだ……」
豊音「はやりんは人気アイドルだからねー……」
塞「……イベントの『ほう』?」
ーーー
ーー
ー
白望「わが人生に一片の悔いなし……」
はやり「何言ってるの?」
白望「え、はやりん!?なんでここに!?」
はやりんの口調わからないんで適当ですー
はやり「だから文句のひとつでも言おうかなーって☆」
白望「ご、ごめんなさい」
はやり「……思ってたんだけど」
白望「?」
はやり「あなたのことが気になってね☆」
白望「……まじすか?」
白望(え?もしかして脈あり!?)
はやり「あ、もちろんOKはしないよ?」
白望「…………………………そうすか」
はやり「でも、これで終わりにするには惜しいな、とは思ったから」
スタッフ「そろそろスタンバイお願いしまーす!」
はやり「あ、はーい☆」
白望(スタッフ空気読めええええええ!!)
白望「はい……」
はやり「……名前は?」
白望「? 小瀬川白望です」
はやり「じゃあ、白望ちゃん……これ」スッ
白望「え?紙……?」
はやり「ばいばい☆」
白望「あ、はい……さよなら」
白望「……メールアドレス? ひょっとしてはやりんの!?」
白望「とりあえず一通送ってみよう」
白望「文面は……」
ー
ーー
ーーー
白望「ということがあって」
豊音「そのアドレス本物だったの!?本物だったらちょーすごいよ!」
白望「うん。返信も来た」
胡桃「いいのかアイドル……それでいいのか」
エイ「アイドルモ、ニンゲンッテコトサ……」ドヤァ
塞「何いいこと言った風な顔してんのさ……」
塞「!?」
胡桃「は!?」
エイ「マジデ!?」
豊音「すごーい!」
白望「全国までは絶対負けられない。練習始めよう!」
胡桃「まぁ、シロがやる気になったってことで……」
エイ「イイノカナァ……」
豊音「な、なんだかんだでシロがやる気になってくれてちょーうれしいよ!」
白望「待ってて、はやりん!」
おしまい
残:部長、クロチャー、衣、ちゃちゃのん、とーか、純、はっちゃん、すばら、タコス、小蒔、照、もーちゃん
最難関っぽいはやりんを最初に書いてみたけど意外とすらすら行けた不思議!
ひとりひとりこの長さだと終わる気がしないね!
頑張れ 期待してるで
壮大な構想だな
期待してる
Entry ⇒ 2012.09.25 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
菫「お茶を飲んだら尭深がちっちゃくなった?」淡「うん!」
ガチャ
尭深「おはようございます…」
尭深「…誰もいない。今日は一番のりか…」
尭深「あれ、なんだろこのお茶の缶?『若返りの茶』…?」
尭深「そういえば今日、誠子が珍しいお茶を見せるとか言ってたっけ…」
尭深「……」ソワソワ
尭深「飲んでも…いいよね?」
尭深「…いただきます」ゴクリ
~~~~~~~
バタン
淡「みんなおっはよー」
淡「やったーいちばんのりだー」
淡「みんな来るまでソファーで寝てようかな~」トコトコ
たかみ「Zzz…」スヤスヤ
淡「…だれ、この子」
淡「ちょ、ちょっと起きなさいあなた!」ユサユサ
たかみ「ふにゃ…?」ムニャムニャ…
淡「起きた?」
たかみ「…おねえちゃんだれ?」
淡「あたしは淡、大星淡よ。あなた、自分の名前言える?」
淡「そうなんだ、タカミちゃんって言うんだ~……へ?」
たかみ「どうしたの、おねえちゃん?」キョトン
淡「タカミって…え、なに?…同姓同名?」ブツブツ
たかみ「お、おねえちゃん?」
たかみ「おねえちゃん?」ウルウル
淡「こんな小学1年生くらいの子供がいるわけないじゃん」ブツブツ
たかみ「うぅ……」ウルウル
淡「…ってなんで泣きそうになってるの!?」
たかみ「おねえちゃん…たかみをむししないでよぉ…」ウルウル
たかみ「…うん」ニコッ
淡「ふぅ…なんとかなった、かな?」
たかみ「あわいおねえちゃん!」
淡「なにかな、タカミちゃん?」
たかみ「だいすきー」ダキッ
淡「はいはい、タカミちゃんはあまえんぼうだね」ヨシヨシ
淡「はいはい…にしても…この子はいったい…」
ガチャ
亦野「おはようございマス」
淡「セーコ!」
たかみ「!?」
亦野「その子は…」
淡「なにか知ってるの!?」
亦野「まあね。ほら尭深~、怖くないよ~」
たかみ「おねえちゃん…だれ?」ビクビク
亦野「お姉ちゃんはね、誠子、って言うんだ。よろしくね」
たかみ「…はじめまして」ビクビク
淡「セーコ…その子のことなにか知ってるの?」
亦野「知ってるも何も…淡もよく知ってる、渋谷尭深本人だよ」
淡「……………は?」
淡「お茶?」
亦野「通販で買ってみたんだけどね…若返りの茶…まさか本物とは…」
淡「なんでそんなもの買ったの?」
亦野「興味本意…かな?胡散臭い商品ってつい買ってみたくなるんだよね」ハハハ…
淡「それで…タカミはずっとこのままなの?」
亦野「効果は半日くらいだとかいってたかな?それまで淡が面倒みてあげなよ」
亦野「いや…なんだか今の尭深はアタシのこと怖がってるし、それに…」チラッ
たかみ「……」ヒシッ
亦野「さっきからずっと淡にしがみついてるしさ」
ガラッ
菫「すまない、遅くなった」
照「おはよう、みんな」
淡「あ、テル、菫…」
たかみ「……」ギュッ~
菫「ん?なんだその子供は…それに尭深は遅刻か?」
亦野「アタシが説明します。実は……」
~~~~~~~~~
菫「…にわかには信じられない話だが…」チラッ
たかみ「?」チョコン
照「たしかに渋谷さんに似てる…かな?」
亦野「それで…お茶の効果が切れるまで誰かが面倒見ないと…」
淡「よしよしタカミちゃんはいい子だね~」ナデナデ
たかみ「えへへ~!」ニパー
渋谷さんが淡ちゃんに充電スタイルで座ってます
照「え?菫って子供好きだったっけ?」
菫「部の面倒ごとを解決するのは部長の仕事だろ?」
菫(尭深に私の秘蔵の衣装を着せて遊びたい!…とは言えないな)
菫「ほら、尭深。菫お姉ちゃんのところにおいで」
たかみ「すみれおねえちゃん…なんだかこわい…」フルフル
菫「」ズーン
照「す、菫!大丈夫だよ、こわくなんかないよ!」アワアワ
亦野「ねぇ淡…尭深は淡になついてるみたいだし淡が面倒みてやってくれない?」
淡「え…でも…」
たかみ「あわいおねえちゃん…たかみのこときらいなの?」ジッ…
淡「うぐっ……」
たかみ「おねえちゃん…」ウルウル
淡「あ~…もう!わかった!あたしがタカミちゃんの面倒みてあげるよ!」
たかみ「あわいおねえちゃ~ん!」ギュッ~
照「菫!あなたまで幼児退行しないでよ!」
亦野「これは今日の部活は中止かな?」ハハハ…
淡「…だね」
たかみ「あわいおねえちゃん」クイクイ
淡「どうしたの、タカミちゃん?」
たかみ「…おしっこいきたい」
あ?
亦野「子供なんだからついていってあげなよ、淡」
淡「あ…そうだね。タカミちゃん、トイレまでいっしょにいこうね~」
たかみ「うん…」モジモジ
亦野「いってらっしゃ~い」フリフリ
淡「………」テクテク
たかみ「………」トコトコ
淡「……大丈夫?我慢できる?」テクテク
たかみ「…うん」トコトコ
淡(うわ…ヤバいかも…急ごう!)
淡「ちょっと急ごうか、タカミちゃん?」テクテク
たかみ「………」ピタッ
淡「タカミちゃん?」
たかみ「あわい…おねえちゃん…」プルプル
淡「ほら!あとちょっとだから…ね?」
たかみ「……」ウルウル
淡「よしよし、いい子いい子」ナデナデ
淡「あ…」
たかみ「ごめんなさい…」チョロチョロ…
たかみ「ごめんなさい…ごめん…なさい…ごめん…なさい…」チョロ…
たかみ「…」ペタン
たかみ「ふぇぇぇええええん!!!!」ポロポロ
たかみ「ふぇえぇぇええん!!!!」グスッ
淡「泣かないでタカミ!」
たかみ「」ビクッ
淡「よかった…泣き止んだ…」ホッ…
たかみ「うわあぁぁあぁあん!!!!あわいおねえちゃんにおこられたぁ~!!」ボロボロ
淡「」
~~~~~~
淡「…落ち着いた?」
たかみ「…うん」グスン
淡「大丈夫だから…安心しなさい!」
たかみ「たかみのこと…エグッ…きらいに…エグッ…ならない?」グスン
淡「なるわけないでしょ!」
たかみ「あわいおねえちゃん…ごめんなさい…」グスン
淡「次からはもっとはやくいうこと!いいね?」ナデナデ
たかみ「…うん!」ニッコリ
淡「おもらしの後始末も終わったし…部室に帰ろっか?」
たかみ「うん!」
淡「服も汚れちゃったし着替えないとね…あたしの体操着でなんとかなるかな?」
たかみ「あわいおねえちゃんのたいそうぎ!?いいの?たかみがきてもいいの?」キラキラ
淡「着られればね」
たかみ「わーい」
淡「もどりました~」
たかみ「ました~」
亦野「おかえり。戻ってきてなんだけど今日の部活は中止だってさ」
淡「菫ェ…」
亦野「淡、今日ははやく帰って尭深と遊んであげて」
淡「そうする…でもその前に着替えさせないと…タカミちゃ~ん、こっちおいで」ゴソゴソ
たかみ「はーい」トコトコ
淡「タ、タカミちゃん、バンザイしてちょうだい」
たかみ「ばんざーい」
淡「脱がせるよ」ヌギヌギ
淡(うわっ…まだ毛が生えてないよ…小学生くらいなら当たり前か…)ジィ
たかみ「あわいおねえちゃん?」
淡「あ…な、なんでもないよ!着せてくよ!」
たかみ「はーい」ニコー
淡「はい着替え終わり!汗臭くてごめんね」
たかみ「あわいおねえちゃんのにおい…いいにおい…」クンクン
淡「嗅がないでよ!///」
たかみ「えへへ」ニパー
淡「もう…」
亦野「もういいかい、お二人さん?部室の鍵を閉めたいんだけど…」ニヤニヤ
淡「今出るよ、セーコ!タカミちゃん、行こっ」
たかみ「うん」ギュッ~
亦野「それじゃアタシはこっちだから」テクテク
淡「バイバイセーコ!…ほらタカミちゃんもバイバイしなさい」
たかみ「…バイバイ」フリフリ
亦野「やっと慣れてくれたみたいだね、バイバイ尭深」バイバイ
たかみ「…」ササッ
淡「コラコラ隠れちゃダメでしょ、タカミちゃん」
亦野「ハハハ、まあいいさ。また明日ね尭深、淡」
-淡自宅-
淡「…というわけでお宅のタカミさんは今日あたしの家に泊まりますので…」
淡「はい、ありがとうございます。では失礼します」ガチャン
淡「ふー…緊張したー」
たかみ「あわいおねえちゃん、おつかれさま?」ギュ~
淡「ありがとね、タカミちゃん」ナデナデ
たかみ「えへへ~」ニパー
淡「今日はあたしのお母さんもお父さんも帰ってこないからいっぱい遊べるよ!」
たかみ「ほんとに!?わーいわーい!」キャッキャ
淡「遊ぶ前に…お腹すかない?」グゥ
たかみ「…うん///」クゥ
淡「よーし、なんでも好きなもの作ってあげちゃうよ!なに食べたい?」
たかみ「えっとね、えっとね…たかみ、オムライスたべたい!」
淡「オムライス…いいね!ちょっと待っててね、とびきり美味しいの作ってあげるから!」
たかみ「わーい」ルンルン
淡「おまたせ~、淡特製オムライスの出来上がりだよ!」
たかみ「わー!おいしそー!」
淡「どうぞめしあがれ」
たかみ「いっただきまーす」パクッ
淡「どうかな?」
たかみ「すっごくおいしー!」パァァ
淡「よかった。あたしも食べよっと。いっただきまーす」モグモグ
たかみ「…」ガツガツ
淡「そんなに急いで食べると喉につっかえるよ」
たかみ「うぐっ…」
淡「…ってタカミちゃん!大丈夫!?ほらお水だよ」トントン
たかみ「んぐんぐ…ぷはー」コクコク
淡「まったく、もー…ふふふ」
たかみ「ありがと、あわいおねえちゃん!」ニパー
淡「あ、ほっぺにご飯粒が…」ヒョイパク
たかみ「えへへ~」ニパー
淡「あはは!」ニコッ
たかみ「ごちそーさまでしたー」
淡「それじゃ洗い物するから手伝ってくれるかな?」
たかみ「たかみ、おてつだいするー」
淡「偉いぞ、タカミちゃん」ナデナデ
たかみ「えっへん!」ドン
淡「じゃあ、あたしが洗うから、タカミちゃんは拭いてね」
たかみ「りょーかい!」ビシッ
淡「洗い物も終わったし、遊ぼうか!?」
たかみ「わーい!」キャッキャ
淡「なにして遊ぼうかな…」
たかみ「たかみ…おほんよみたいなー」モジモジ
淡「おほん?…あぁ、本か!絵本なんかあったかな…ちょっと探してから待っててね」
たかみ「はーい」
淡「あ、あったあった。この前菫にもらった絵本!」
淡「聞いたことない物語だったけど、面白かったしタカミも気に入るぞー」ドタドタ
淡「おまたせっ!」
たかみ「おーそーいー」ブーブー
淡「ごめんごめん。じゃあ読むから膝に座って」
たかみ「うん」チョコン
淡「それじゃ、『シャープシューター』の始まり始まり~」ペラッ
作:パンジー弘世
絵:エイスリン・ウィッシュアート
淡「…こうしてテルーは妹のサキーと結ばれたのでした。めでたしめでたし」パタン
たかみ「わーい」ウトウト
淡「タカミちゃん、眠い?」
たかみ「うん、ちょっと…」
淡「お風呂入って寝ようか」
たかみ「うん」
淡「今日はシャワーだけにしようね」キュッキュッ
たかみ「うん」ウトウト
淡「シャンプーするから目を閉じてね~」
たかみ「うん」ウツラウツラ
淡「かゆいところはありませんか~?」シャカシャカ
たかみ「ないー」ウツラウツラ
たかみ「おー」
淡「それ~」シャワワー
たかみ「…ぷはー」プルプルプル
淡「はい、流し終わったよ。次は体洗うね」シュコシュコ
たかみ「おねがい~」
たかみ「…」ウツラウツラ
淡(にしても…タカミの身体って柔らかいなぁ…)
淡「…」プニプニ
たかみ「!くすぐったいよ~」
淡「……」ツンツン
たかみ「きゃはははは!!やめて~」ジタバタ
淡「あ…ごめんねタカミちゃん」
たかみ「もー!しっかりやってよ、あわいおねえちゃん!」
淡「はいはい」ゴシゴシ
たかみ「~~~♪」
たかみ「どしたの?」
淡「な、なんでもない!続けるよ~」
淡(無心で…無心で…)
淡「……」ゴシゴシ
たかみ「~~~♪」
たかみ「うん」
淡(なんとか平静を保てた…)シャワワー
淡「…よし、あがろうか」
たかみ「うん!」
淡「風邪引かないようにしっかり拭いてね」フキフキ
たかみ「あわいおねえちゃん、ふいて~」
淡「自分でやりなさい!」
たかみ「けちー」
淡「…仕方ないな~、今回だけだよ?」フキフキ
たかみ「あわいおねえちゃんだいすき~」
淡「調子いいんだから、まったく…」フキフキ
たかみ「あわいおねえちゃんの!?わーい!」ルンルン
淡「じゃあ寝室にゴー!」
たかみ「ごー!」キャッキャ
淡「コラコラ暴れちゃダメでしょ」
たかみ「いっしょに寝ようね!」
淡「いいよ、タカミちゃん」
たかみ「わーいわーい!」
淡「電気消すよ」
たかみ「そのまえに~…」モジモジ
淡「その前に?」
淡「ぶふぅ!?」
たかみ「…ダメ?」ウルウル
淡「い、いいけど…ホントにいいの?」
たかみ「もっちろん!」
淡「えっと…えっと…///」アワアワ
たかみ「はやく~」
淡「い、いくよ…」
たかみ「んー…」
淡(タカミの唇まで…あと30cm…あと20cm…あと10cm…)ドックン…ドックン…
淡「………」チュゥ…
淡「……ぷはっ!///」
たかみ「えへへ…あわいおねえちゃんとちゅーしちゃった~」ウキウキ
淡「ね、寝るよ!///」
たかみ「おやすみなさいっ!」
淡「……」
たかみ「あわいおねえちゃん…ねちゃった?」モゾモゾ
淡「まだ起きてるよ」
たかみ「えっとね、たかみ…あわいおねえちゃんのおよめさんになりたい!」
淡「っ!?ゲホッゲホッ…」
たかみ「だ、だいじょうぶ?」
淡「大丈夫だよ、タカミちゃん」
淡「グー、グー」
たかみ「…あわいおねえちゃん?」ツンツン
淡「グー、グー」
たかみ「ねちゃった…」
たかみ「…おやすみなさい」チュゥ
淡(なにこれかわいいいいいいいいいいい!)
淡(ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい)
淡(と、とりあえず羊を数えて落ち着こう)
淡(新道寺の中堅が一人、新道寺の中堅が二人、新道寺の中堅が三人…)
淡「Zzz…」スヤスヤ
たかみ「Zzz…」スヤスヤ
淡「タカミ…大好き…ムニャムニャ」スヤスヤ
たかみ「わたしもぉ…」スヤスヤ
~~~~~~
淡「Zzz…」
尭深「…」パチッ
尭深「…」ムクリ
尭深「…?」キョロキョロ
尭深「ここ…どこ?…隣にいるのは…淡ちゃん?」
淡「タカミちゃん、お嫁さんにしてあげるよ~…ムニャムニャ」グーグー
尭深「お、お嫁さん!?ちょ、ちょっとどういうこと?淡ちゃんってば!」ユサユサ
淡「んー?あ、おはようタカミ…」ボー…
尭深「こ、これっていったい…」
淡「おはようのちゅー」チュゥ~
尭深「ん!?…」チュゥ…
淡「えへへ、タカミとキスしちゃった~」
尭深「キュウ…」バタリ
淡「タカミと…キス…?ってタカミ、元に戻ったんだね、タカミ起きてよ!」ユサユサ
カン
淡「昨日は大変だったな…タカミの誤解を解いたりして疲れた」ハァ…
淡「…タカミと仲良くなれたから、まあいっか」
淡「ん?このお茶は…『若返りの茶』!?」
淡「……」ゴクリ
~~~~~~
あわい「おはよーございます!」
尭深「…あなた、だれ?」
あわい「おーほしあわいです!」
尭深「………え?」
カン
やめようと思ってるんだけどな…
Entry ⇒ 2012.09.25 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
淡「陽に照らされて星は輝く」 前半
あくまでパラレルワールド的に捉えてください
麻雀そのものは弱いので、その辺は結構適当です。積み棒計算はできないので省きます
プロ子「む……」
妹子「うぅ……」
爺「ほほ、これはこれは」
爺「終局じゃな。また淡のトップか。うむうむ、それでこそじゃ」
プロ子「本当に、お孫さんの実力は目を見張るものがありますね。これでまだ中学生とは、
将来が楽しみです」
爺「応とも。この子の両親は牌に触りもせず会社を大きくすることばかり考えておったから、
孫の代には期待しておらなんだが、よもやこれほどの逸材があの二人から産まれるとは。
ワシの遺伝子が受け継がれておる証拠じゃの。見てみい、ワシとて現役プロの君と比べても見劣りせん戦績じゃ」
爺「ほっほ。言うようになったのう。――それに比べ、お前はなんじゃ妹子」
妹子「うっ……」ビク
爺「半荘五回打って全てラスとは……情けない。それでもワシの孫か?」
妹子「ご、ごめんなさい……」
爺「まあ、プロになるというワシの夢は淡が遂げてくれるじゃろうし、もうそれでよいわ」
淡「……」
淡「じゃあ、私部屋に戻って少し休むね」ガタ
爺「ああ待ちなさい淡。お前、本当に今年のインターミドルには出んのか?」
爺「何故じゃ。史上初のインターミドル個人戦三連覇……お前なら容易かろうに。のう、プロ子さん」
プロ子「確かに、貴女の実力は中学生の内では頭抜けているわ。絶対とは言わないまでも、
おそらく三連覇もできると思うわ」
淡「……だから嫌なのよ」ボソ
爺「む?」
淡「なんでもない。今年受験だしね、勉強しないと」
爺「……まあ、お前がそう決めたのなら強要はせんが。なら淡、お前どこに進学するつもりじゃ?」
淡「まだ決めてない。別にどこでもいいよ」
淡「いやだよ、大阪なんて。東京から出る気はないから」
爺「そうか? じゃったら……やはり白糸台かのう。昨年は優勝しておるし、なにより昨年、強力な一年生が入ったらしいしの」
淡「強い一年?」
爺「うむ、確か名前は……宮永照、とかいったか」
淡「知らない。どうでもいいよそんなの。じゃあ私戻るから」ガチャ
爺「おい淡、進学先は白糸台でいいんじゃな?」
淡「まだ決めてないってば」バタン
淡「はあ……」ゴロン
淡(インターミドル……やっぱり出るべきだったかな。もしかしたら今年は……)
淡(ううん、どうせ同じだよ。私より強い人なんているわけない……)
物心ついた頃から祖父の趣味の麻雀に付き合わされていた私は、気がつけば祖父を超えていた。
祖父は私のために家にプロを呼んで指導させてくれた。強い人と打つのは楽しくて、もっと強くなりたいと思った。それは私が一番麻雀を好きだった時期だ。
淡(……でも、二年前)
中学に入った私は一年生で麻雀部のレギュラーを取り、インターミドルに出場した。
――そして、愕然とした。同年代の子たちの、あまりの弱さに。
一年間戸惑い続けた私は再びインターミドルに出場して……結局、期待は落胆に散った。
淡(私と互角に戦える人なんてどこにもいなかった。全国にさえ)
淡(中学の麻雀部の皆は私を怖がって誰も私と打ちたがらなくなって、三年生に上がる前に私は退部した)
その時に私はようやく気付いた。私は他人とは違うのだと。
まるで星のように、見上げてくれる人はいても、隣にいてくれる人はいないのだと。
そうと気づいたら、もう麻雀なんて楽しくもなんともなくなった。麻雀への情熱も、すっかり冷めてしまっていた。
淡「プロ、かぁ」
淡(正直、プロの道にそこまで魅力を感じないんだよね)
確かにプロには私より強い人も大勢いるだろう。彼女らと打っている間は、きっと楽しく麻雀に没頭できると思う。
断言できる。十年もすれば、私はきっと世界最強の雀士になる。数多のプロを足蹴にもかけない、最強の打ち手に。
淡「……そんなことになったら、私はどうすればいいの?」
そしてきっとその時こそ、私は真の意味での孤独を味わうことになると思う。
淡「そんなのは……やだ」
淡「そんな思いを味わうくらいなら、もういっそ麻雀なんて……」
祖父は猛反対するだろうが、別にいい。だいたい、祖父は自分が遂げられなかった『プロになる』という夢を私に押し付けているだけだ。
淡「あれだけ手加減されて、わざと指し込んでもらってるっていうのに、『現役プロに見劣りしない戦績』だなんて、馬鹿みたい」
そんな人に私の進路をとやかく言われる筋合いなんてない。
別に白糸台に入らなくたっていい。どこの麻雀部に入ったって同じだ。
ただ、その年の優勝校が変わるだけ。
もう麻雀なんて、どうでもいい――。
淡「……イライラするなぁ……」
翌年
私は高校生になった。祖父の強い希望で、結局白糸台高校に入学することになった。
友「大星さん、おはよう!」
淡「おはよ」
友「ねえねえ大星さん、もう入る部活決めた?」
淡「うーん……一応、麻雀部に入ろうかなって」
淡(てか、おじいちゃんに絶対入れって言われたしなぁ……)
友「あ、大星さんもなんだ。私もだよ!」
淡「友ちゃんも?」
友「うん。やっぱり白糸台って言ったら麻雀部だよね。インハイ二連覇だよ、二連覇。すごいよね」
淡「あー……うん、そうだね」
淡(ふーん、二連覇してたんだ。興味なかったから知らなかった)
友「それになんと言っても、白糸台には宮永先輩がいるからね!」
淡「宮永? 誰?」
友「ええ!? 宮永照知らないの!? インハイ二冠王者の、高校最強の選手だよ!」
淡「ふーん」
淡(ああ、そういえばおじいちゃんが言ってたっけ)
友「あ、さては大星さん、初心者でしょ? これから麻雀をやろうっていうなら、宮永照は知っといた方がいいよ」
淡「……友ちゃんはどうなの?」
友「えへへ、私はこれでも小学三年生の頃から麻雀をやってるし、去年は個人戦で県ベスト16まで行ったんだよ!」
淡「ふーん」
友「ねえ、体験入部はどうするの?」
淡「体験入部?」
友「正式な入部までに、三回体験入部の機会があるんだよ。そのときに部の人と打ってもらったり
できるんだって。で、四回目に入部試験をするの。
すごいよね、気合い入ってるよね白糸台。さすがって感じ」
淡「それいつやるの?」
友「今日一回目があるよ。あーでも今日は私都合悪いから、二回目から参加するつもり」
淡「ふーん。行ってみようかな」
友「お、やる気だね。でも気をつけてね。間違っても二軍の人と打っちゃだめだからね。
白糸台は二軍でも県代表クラスの実力だって言うし」
淡「うん。分かった」
放課後
淡「麻雀部……ここか」ガラ
淡「すいません、体験入部しにきたんですけど」
A子「はーい。いらっしゃーい。どうぞ入って」
淡「失礼します」
淡(うわ、人多いな)
A子「はじめまして。入部希望の人だよね?」
淡「まあ、一応。――あの、宮永照っていう人がいるって聞いたんですけど」
A子「あら、ふふ。貴女も? みんな宮永さんのことを初めに訊くよね。でもごめんね、
いま一軍のメンバーは練習試合でいないの。次の体験入部の日にはいると思うけど」
淡「そうですか」
淡(まあいっか。二軍でも全国レベルらしいし)
A子「じゃあ、さっそく打とうか。中学で部活の経験は?」
淡「二年の終わりに辞めました」
A子「あら、どうして?」
淡「つまんなかったから」
A子「あー……そっか。うん、仕方ないよね。勝てなくて辞めてく子、実はうちも結構多いんだ」
A子「じゃあちょっと待ってね、今空いてる子探すから。――ねえ誰かー。三軍で手の空いてる子いるー?」
淡「あの」
A子「ん? なあに?」
淡「ここにいる中で一番強い人と打ちたいんですけど」
A子「え、でも……」
淡「誰が二軍で一番強いの?」
A子「えーっと、一軍っていうのがつまりスタメンのことで、五人しかいないんだ。
だから二軍のトップっていうと、白糸台で六番目に強いってことなんだけど……」
淡「それでいいよ。誰ですか?」
A子「一応、私……ってことになるんだけど。一軍のいない間、部を任されてるから」
淡「じゃああなたでいいです」
A子「う、うん……じゃあ、ちょっとまってね。二軍からあと二人連れてくるから」タタタ
淡(白糸台の二軍は県代表クラス。なら、彼女らと打てば、自然とインハイのレベルも見えてくる)
淡(もし二軍でも私と渡り合えるくらいに強いなら、高校生の麻雀のレベルにも期待できる)
A子「お待たせ。連れてきたよ」
B子「その子? 二軍と打ちたいなんて言ってるの」
C子「生意気だよね。自信過剰っていうか」
A子「コラ、そんなこと言わないの。この二人は二軍の八位と九位。ごめんね、この二人、
一軍に入れそうにないから最近気が立ってて」
B子・C子「「うるさい」」
A子「じゃあ打とっか。手加減はしなくていいんだよね」
淡「はい。よろしくお願いします」
淡(――見せてよ。白糸台の実力)ゴッ
一週間後
昼休み
友「はぁ~……」
淡「どうしたの? 今朝からずっと溜息ついて」
友「うん、昨日さ、麻雀部の二回目の体験入部行ってみたんだけどさ」
淡「あ、そっか。昨日二回目あったんだっけ」
友「うん。大星さんは来てなかったけど、私一人で行って、打ってもらったんだ。
でも……予想外すぎたよ」
淡「……うん。ほんとにね」
淡(ほんとに予想外だった。インハイ二連覇を達成した白糸台の実力……見誤ってた)
淡(まさか……あんなに弱いなんて)
淡『ツモ。8000オール』
B子・C子『……』
A子『……トびです』ジャラ
淡『……』
A子『あ、あなた……何者なの?』
淡『……失礼します』ガタ
A子『ちょ、ちょっと待って! ね、ねえ! 次はいつくるの?
一週間後にまた体験入部があるから、そのときなら一軍の人が――!』
淡『来ません』
A子『え……?』
淡『もう……ここには来ません』
友「大星さんさ、麻雀部入るの?」
淡「……分かんない。入らないかも」
友「だよね……。私も昨日体験入部行ってそう思った。あんな人たちと打つなんて嫌だよね」
淡「うん。ちょっと弱すg――」
友「強すぎるよね、白糸台。手も足も出なかったよ」
淡「……………………誰と打ったの?」
友「三軍のD子先輩とE子先輩と、体験入部の子。三軍であれだけ強いなんて予想外すぎるよ」
淡「……そっか」
友「あ、私このあと用事あるんだった。ごめん、先に教室戻るね」
淡「うん」
友「じゃあね。三軍に負けた私が言うのもなんだけど、大星さんみたいな初心者は麻雀部
やめといた方がいいよ。
あそこはほんとに強い人しかいないから、きっとすぐつまんなくなって辞めちゃうよ」
淡「……うん。そうだね」
淡「……」
淡(……もういい。入部なんてやめとこう)
淡(結局私は一人ぼっちなんだ。誰も私の隣を歩いてくれない)
そうだ。星は二つ並ばない。誰もいない闇の中で、一人孤独に在るしかない。
もう麻雀なんてやめよう。これ以上孤独感を味わわされるのなんて……耐えられない。
淡「……イライラするのよ。あんたたちが弱いせいで」
淡「弱い奴なんて、皆いなくなっちゃえばいいのに」
あるいは……。
淡(私が……もっと弱くなればいいのかな。そうすれば、もっと麻雀を楽しめるのかな)
淡(教えて……誰か教えてよ。麻雀、楽しくないよ……)
二週間後
放課後
友「じゃあ大星さん、また明日」
淡「うん。また明日」
淡「ふう……HR長引いちゃったな」
あれから、私は一度も牌に触っていない。祖父に何度か誘われたが、体調が悪いと断り続けた。
もう弱い祖父の相手をするのはうんざりだった。プロ子は祖父に気を遣って本気で打ってくれないし、
妹子は話にならないくらい弱い。そもそも、私はもう麻雀なんて打ちたくなかった。
淡(何もやる気がおきない。なんか人生がつまんないよ。はぁ……)
ガラッ
菫「失礼します。大星淡さんはいますか?」
淡「? はい、大星は私だけど」
菫「君か。はじめまして。私は三年の弘世菫だ。よろしく」
淡「なにか用?」
菫「ああ、少し話がある。時間いいか?」
淡「いいけど……」
菫「よし、じゃあ歩きながら話そう。ついてきてくれ」
淡「……?」
廊下
淡「あの」
菫「ん、なんだ?」
淡「もしかして、麻雀部の一軍の人?」
菫「へえ、どうして分かった?」
淡「空気で分かるよ、そんなの」
菫「それはすごいな。A子が言ってた通り、かなりの逸材らしいな」
淡「A子?」
菫「一度目の体験入部のときに、A子と打ったんだろ?」
淡「ああ……」
淡(三人と打ったけど、誰がA子なんだろ。まあいっか)
淡「で、今私たちは麻雀部に向かってると?」
菫「そういうことになるな。今日、入部試験があるんだ。それを受けてもらわないと、
いくら強くても入部できないからな」
淡「あの。申し訳ないんですけど、私麻雀部に入る気ないんで」
菫「どうして?」
淡「そんなの……決まってるでしょ」
淡「弱いからだよ。あなたたちが」
菫「……」
淡「もううんざりなの、弱い人と打つの。体験入部の日、ここで六番目に強い人と打ちました。
――雑魚でした。あれで六位なんて、一軍の実力もお察しって感じだね」
菫「……」
淡「ここって全国で一番強い高校なんでしょ? その高校の六位があんなんじゃ、
インハイのレベルも高が知れてるよ。そりゃ私が出れば全国優勝なんて余裕だろうけど、
でも私はごめんです。迷惑なの。あなたたちなんかと打ったって、きっと……」
きっと、私の中の孤独感が増すだけだ。そして対局の後、対局者は私を怯えた目で見上げるんだ。
まるで、決して手の届かない、宇宙の果てに輝く星を見つめるような目で。
淡「だから、もう麻雀部になんて行かない。用がそれだけなら、私は帰ります」
菫「……可哀想に」
淡「……は?」
菫「君は常に上を目指すタイプの人間なんだな。負けず嫌いだけど、でも常に自分より
強い人間を求めてる。一緒に歩く仲間を欲しがってる。
でも君は今まで、そういう人間に出会えなかったんだな。本当に、不憫でならない」
淡「……そんなの、いるわけないじゃん。星を目指す人なんているわけないでしょ」
菫「いるさ。たとえ宇宙の果ての星だって。あるいは暗い海の底だって。そこに
挑もうする人間はいるんだ。何度打ちのめされても、必死に食らいついて、目標にして、
〝それを楽しいと思える人間〟は、必ずいるんだ」
淡「……」
菫「だからこそ、私は君に麻雀部に入ってほしい」
淡「……どうして?」
菫「簡単だ。――あそこには、宮永照がいるからだ」
淡「宮永、照」
菫「今日の入部試験は、あいつとの対局の結果で合否を出す。もちろん勝てとは言わない。
実力を見るだけだ」
淡「やめた方がいいよ。その人、ここのエースなんでしょ? そんな人に一年生が
勝っちゃったら、申し訳ないし」
菫「ははは」
淡「……何が可笑しいの?」イラ
菫「いや、すまない。まあ一度打ってみるといい」
淡「体験入部の日、そんな風に私のことを小馬鹿にして笑った人と打ったよ。
もう顔も覚えてないけど」
どうやらこの菫とか言う人は、私が宮永照に勝てるはずがないと思っているらしい。
淡(いいよ。面白いじゃん)ゴッ
淡(高校生チャンピオン? 一万人の頂点? 笑わせる。私はそんな頂よりももっと高い、
遥か宙の果てにいるんだ)
それに、ちょうどいい。高校生チャンピオンと打てば、それで全国の高校生のレベルは
つまびらかになる。今日宮永照を下し、彼女より上はいないんだと理解すれば、
私は今度こそ何の未練もなく麻雀なんてやめられる。
淡(――もう終わりにしてやる。何もかも)
菫「さあ、ついたぞ。入ってくれ」ガラ
淡「失礼します」
淡(――あれか。宮永照)
後ろ姿しか見えないけど、どうやら打っているらしい。
周りに人垣ができていて、誰も何も話さない。不気味なほどの静寂だった。
照「――ツモ。12000オール」
淡「……っ」ピク
新入生A「……と、トびです」
新入生B「私も……」
新入生C「わ、私もです……」
菫「ちょうど終わったみたいだな」
照「じゃあ結果を発表します」
照「A子さん」
新入生A「は、はい……」
照「三軍」
新入生A「は、はい。ありがとうございます! よかったぁ……」パァ
照「B子さん」
新入生B「はい」
照「二軍」
菫「お」
部員たち「!」ざわ・・・ざわ・・・
新入生B「あ、ありがとうございます! やったあ!」
照「二軍のF子。繰り下がりで三軍」
F子「はい……」
部員「F子ちゃん、ついに落ちちゃったか……」ヒソヒソ
部員「覚悟してたと思うよ。うちって実力主義だし」ヒソヒソ
部員「でも、あんなに頑張ってたのに……」ヒソヒソ
照「C子さん」
新入生C「は、はい……」
照「――申し訳ないけど、あなたの実力じゃうちではやっていけない。不合格」
新入生C「……っ! は……はい……」
菫「あまり気を落とさないでくれ。うちは秋にもまた入部試験をやるから、そのときにまた来てくれればいい」
新入生C「……いえ、私は、その…………もう、いいです。ごめんなさい……!」タタタ
菫「あっ……ふー」
淡(フン)
淡(そうよ。弱いやつは消えればいい。トばされるような雑魚が麻雀なんかするのが悪いのよ)ツカツカ
淡(それになに? 三人トび? アホらしい。どんだけ弱いのよ。ほんとイライラす…………え?)ピタ
淡(そんな一瞬で三人をトばすなんて……この人、まさか私と同じ高火力麻雀……?)
照「ん?」
そのとき、背後の私の気配に気づいたのか、宮永照が後ろを振り向いた。
淡「――ッ!!」ゾクッ!
淡(な、なにこのプレッシャー……)
照「入部希望者?」
淡「……違います」
照「?」
菫「彼女は大星淡さん。お前と一局打ちたいそうだ。打ってやってくれ」
照「いいけど。東風でいいの?」
菫「ああ。君も、それでいいな?」
淡「なんでもいいよ」
菫「よし、じゃああと一人……一子。入ってくれ」
一子「え、私?」
菫「ああ。この四人で打つ」
部員「!!」ざわ・・・ざわ・・・
部員「そんな、新入生一人に一軍三人なんて……」ヒソヒソ
部員「ひどい……可哀想だよ」ヒソヒソ
部員「でも待って。あの子、ひょっとしてこの前の……」ヒソヒソ
菫「それじゃあ、始めようか」
四人「よろしくお願いします」
淡(じゃあ、お手並み拝見といこうかな)ゴッ
東一局
淡「リーチ」
菫「早いな。まだ四巡目なのに」
淡「あなたたちが鈍いんだよ」
淡(四巡もあれば十分。私の星の引力が、有効牌を引き寄せる)
淡(どんなに強くても、宙に投げ出されれば所詮、人は無力。より大きな力に翻弄されるしかない)
淡(――さあ、引きずり込んでやる。宇宙の闇へ――!)ゴォォォォォ!
一子「うっ……!?」ゾクッ
菫「これは……」ゾクッ
菫(予想以上だ。まさかこれほどとは……)
淡「――ふふ」カチャ
淡「――ツモ。リーチ一発ツモ三暗刻ドラ3。4000,8000」
三人「……」ジャラ
淡「…………」イラ
淡(なんなの? あれだけ息巻いておいて、このザマ? 結局この人たちも口だけか)
淡(イライラするなぁ……)イラ
照「……」ゴッ‼
淡「……ッ!?」ピク
淡(え、後ろ――)バッ
淡「……?」
一子「……っ」ビク
菫「……来たか」ピク
淡(なに……今、なにかを見られた……?)
菫(さあ、ここからだぞ大星淡)
東三局
親:照
ドラ:2索
照「……」白
淡「……ッ」ギリ
淡(くそ、鳴けない……私が役牌を鳴けないなんて……)
淡(宮永照……あれからもう三回和了られてる。安手ばかりだったから気にならなかったけど、
こんなにあっさり三連続和了されるなんて、ここ数年なかった)
淡「チッ」カチャ
四五六244赤5⑨⑨⑨北北白 4
淡(六巡目なのに、まだこんな手。かろうじて得意の手になれる形は保ってるけど、
明らかに普段より引力の効果が弱い)
淡(いや、違う……。私の支配が弱まってるんじゃない。それを超える支配が、今この卓に
充溢してるんだ。私の星の引力すら振り払う、圧倒的な支配が)
淡(高校生チャンピオン……多少はやるみたいだけど、あんまり調子に乗らないでよね)ゴッ
照「……」カチャ
淡「……」カチャ
淡(よし。三枚目の北。これで聴牌。三暗刻に高めドラ2がつく。
ちょっと安いけど、まあいいか)カチャ
淡(いや……待てよ。ここで素直に聴牌を取れば切るのはドラの2索か赤5索)
淡(こんな牌を切らなきゃいけないって時点で、私の支配に綻びが出てる証拠だ。
いつもならドラを暗刻にして5索の単騎待ちになってたはず。なら、この場は私ではなく、
宮永照の支配下にあるってこと)
淡(だめだ。この牌は切れない……。だったら……)
淡「……」北
淡(これなら!)
照「ロン」
淡「え……?」
二二三三四四112233北 北
照「12000」
淡「そんな……!」ガタッ
淡(素直に切っていれば、私が宮永照の当たり牌を潰していた。くそ、裏目?
いや、これはそんなんじゃない。もっと別の……)
菫(彼女は自分の麻雀に絶対の自信があるようだな。だが同時に、自分の力を超える支配の
存在を受け入れるだけの賢さも持っている。変にプライドにこだわったりせず、時には
自分の麻雀を曲げることも厭わない。だから小さな違和感にもすぐ気付けるし、
臨機応変に立ちまわれる)
菫(だがその麻雀は既に照に『見抜かれている』。下手に賢しく立ち廻ろうとすると、
照の思う壺だ。さあ、どうする?)
淡(くっ……)
淡(最初に和了ってから、宮永照以外だれも和了れてない。もう五連続和了された)
淡(しかもこの人、私のこと狙い撃ちしてる。この私をトばすつもり? 図に乗って……!)
123四四五五発発白白白中 六
淡(よし、私の引力もまだ消えてない。三巡目で張った)
淡(でも、まだだ。こんな安い手で上がっても仕方ない。次の私の親――そこに強い流れを持っていきたい。
だからまだ上を狙う。索子を全部落として小三元と混一色まで絡める。やれる。私ならできる……!)
淡「……!」3索
照「……」カチャ
一子「……っ」カチャ
菫「……」カチャ
淡(一子って人は必死に食らいついていってる感じだけど、この菫って人は
勝とうとしてない。ただ私の力を測ってる)
淡(正直……宮永照一人だけに注意していればいいっていうのはありがたい。一気に叩いてやる)
1四四五五六六発発白白白中 中
淡(よし、いつもの私の手だ。そうこなくちゃ。1索を落として聴牌。ツモでも親被りで
宮永照に痛手を負わせられる)
照「……」ゴッ
淡「ッ!」ゾクッ
淡(なに…………風?)
淡(感じる……何か強い力……強い風を)
でも、有り得ない。だって私の引力が効いてるってことは、今ここは『宙の中』のはず。
宇宙に風なんて吹かない。なら、今ここは宙なんかじゃなく……。
淡(違う……ここはまだ、宮永照の支配下なんだ……!)
照「……」ゴォォォォォ!
淡(まずい、このひと和了る度に打点が高くなってる。次はきっと直撃なら私を
トばせる点でくる)
淡(このままじゃ次巡、私はきっと宮永照の当たり牌を掴まされる。
なら聴牌を崩して別の牌を切るしか……でも、まさかそれも『見抜かれてる』?)
淡(くそ、どうすれば……!)
菫「……」白
淡「――!」
淡(――これだ!)
淡「ポン!」カチャ
淡「……」白
菫(食い替え……? まあうちでは禁止していないが……なるほど、この子ももう照の力
を見破ったか。だが――)
淡(これで私が当たり牌を引くことも打つこともない。それにツモ巡も変わって、
宮永照の予定していた牌と違う牌があっちに流れる。私の聴牌も崩れないし、
次に引力を使って中か発を引けば……!)
菫(――それでも、照は止められないのさ)
照「……」カッ
照「……」ガシッ ギュルルルルル
淡(なっ……!)
淡(まずい。この感じ……やられる! そんな……ツモ巡をズラしたのに!?)
ドゴォ!
照「ツモ。8000オール」
淡「……ぁ……」
菫「トびだ」ジャラ
一子「……私も」ジャラ
淡「……私、は……」
淡(……残ってる……けど、数千点……たったこれだけ? この、私が……)
淡(星の引力をものともしない、圧倒的な場の支配)
淡(まるで牌そのものが宮永照にかしずいてるみたいな、凄い力を感じた)
淡(この人……別格だ)
部員「……」ざわ・・・ざわ・・・
部員「すごい、あの子……宮永先輩と打ってトばなかった!」ヒソヒソ
部員「一軍の二人ですらトんだのに」ヒソヒソ
菫(最後のあの食い替え……あれがなければ彼女が当たり牌を掴んでいた。
直撃は24000点。彼女はトんでいた)
菫(照の和了りこそ防げなかったが、彼女は自分のトびを回避したんだ)
菫(大星淡……私の想像以上だな)
菫「どうだ照、感想は」
照「感想はともかく、入部試験の結果を発表する」
淡「わ、私はまだ入部するとは――」
照「大星淡さん」
照「一軍」
部員「!!!」ざわ・・・!ざわ・・・!
部員「い、一軍!? 一年生が、白糸台の!?」
部員「え、ってことは、じゃあ……!」
照「一子」
一子「……はい」
照「繰り下がりで二軍」
一子「…………はぃ。今までありがとうございました」ペコリ
部員「そんな……一子さん……」
一子「いいの。実力が全てなんだから」
部員「……」
淡「……」
菫「よかったな大星さん。文句なしで合格だそうだ。よく打ったよ」
淡「文句なし……? よく打った……? こんな、首の皮一枚繋がっただけで?
……馬鹿にしないでよ」
菫「まさか。馬鹿になんてしてないさ。むしろ君の力に驚いてるくらいだ」
淡「でも――!」
菫「君だけだ」
淡「え?」
菫「今日照と打った人の中で、トばなかったのは君だけなのさ」
淡「は……」
淡「だ、だって、一人でもトんだらそこで終局でしょ?」
菫「ああ」
淡「じゃあ、じゃあなに? 今までこの人と打った人は全員、3人同時にトばされ
続けたっていうの? 私以外の全員が!?」
菫「そうだ。私と一子も含めて、君以外の全員が、同時にトばされた。照がつけた
記録によるとそうなってるな」
菫「君はそれを自分の力で回避したんだ。首の皮一枚だって十分さ」
淡「そんな……馬鹿な」
照「菫、私は少し外の空気を吸ってくる。後は任せてもいい?」ガタ
菫「ああ、お疲れ様」
照「それじゃあ。――それと、大星さん」
淡「な、なに?」
照「入部するなら、来週までに入部届けを持ってきて。それ以降は
受け付けられないから」ガラ ツカツカツカ
淡「…………ま」
淡「待って!」ガタ
屋上
淡「待って、宮永さん!」
照「何?」
淡「あなた……あなたは」
淡「どうして麻雀を続けてるの?」
照「……」
照「……どういう意味?」
淡「だって、あんなに強いなら、あなたとまともに戦える人なんているわけない!」
淡「現にインハイで二連覇してるんでしょ? だったら、もう周りは格下だらけじゃん!」
淡「そんなの……そんなの、絶対つまんないじゃん!!」
照「……」
淡「なのにどうしてあなたは麻雀を続けるの?」
照「……」
照「分からない」
淡「え?」
照「昔は、ただ強くなりたかった。私にも目標があった。でも今は……もう
なんのために麻雀を打ってるのかすら、思い出せない」
淡「だ、だったら」
照「でも多分……私には、麻雀しかないからだと思う」
淡「麻雀しか、ない?」
照「……そういうあなたはどうなの?」
淡「私?」
照「麻雀は好き?」
淡「……昔は好きだった。今は微妙」
照「私も」
淡「強い相手と戦いたいってずっと思ってた」
照「私も同じ」
淡「……全国には、あなたみたいな人が他にもいるの?」
照「私とやりあえる選手を二人知っている。長野に一人。鹿児島に一人」
淡「……私よりも、強いの?」
照「実際に打ってみればいい。そのためには部に入らないといけないけど」
淡「……ふふ」
淡「私……ずっと孤独感に苛まれてきた。強すぎて、誰とも近づくことはできないんだって」
照「……わかる。私も、たまに闇の中にいるような気分になる。誰もいない、寂しい世界に」
淡「一人じゃないよ」
照「?」
淡「私がいる。私が、あなたの傍にいます。私ならあなたと麻雀が打てる。一緒に歩いていける」
照「……そうだね」フッ
淡(そうだ。私はもう独りなんかじゃない)
やっと見つけたんだ。私と同じ所にいる人を。私と同じくらい……ううん、
それ以上に強くて、熱くて、大きくて……まるで太陽みたいに輝く人を。
近づけばその熱に焦がされて、誰も傍に寄ることすらできない。でも、私なら。
太陽の引力に引き寄せられて、どこまでも近づいていける。ずっと一緒に歩いていける。
星は二つ並ばない。でも、星は太陽の周りを廻り続ける。離れることなく、いつまでも。
淡「――これからよろしくお願いします。テル」
ようやく出会えた。
プロの世界にすら感じなかった、圧倒的な力。五年、十年。あるいはもっと先。
私が人生をかけて目指すに値する高み。私の――生涯の目標に。
照「よろしく。淡」
小さく笑った彼女の笑顔が眩しくて、まるで太陽の光みたいだと感じた。
その陽の光に照らされて、星はどこまでも輝き続ける――。
照のいう私とやりあえる選手に咲さんは入っていない?
照がまだ咲きさんの実力を把握してないからじゃね?
レベル差はありそう
二ヶ月後
あれから、私は正式に白糸台高校麻雀部の部員になった。
入部と同時に一軍入りが確定していた私は、基本的に一軍のメンバーとしか麻雀を打たなかった。
二軍以下の実力は知っているし、興味もなかった。二軍以下は名前も覚えていない生徒がほとんどだ。
私の興味はただ一つ、テルだけだった。
照「――ロン。1000点」
淡「あ!」
菫「終局か。いつも通り、と言ってはあれだが、照のトップか」
淡「くっそー……今回はいけると思ったんだけどなー」
照「内容は悪くなかった。特にミスもなかったし、よく打ててたと思う」
淡「それって、単純に素の実力で負けてるって意味じゃん」
照「事実だから」
淡「ふーんだ。でもま、そうこなくっちゃね。私の目標なんだから」
照「でも、淡も強くなってきてる」
淡「あ、やっぱりそう思う? 私も、なんか最近すごい調子いいんだよねー」
菫「……」
菫(強くなってきてる、か)
菫(……確かに、この二カ月で大星は凄まじい成長を見せている。照の影響なのか本人の
やる気が今までと違うのか、とにかく入部当初とは比べ物にならないほど強くなった)
菫(今も半荘一局打って、照と大星の差は20000点。たった20000点しかない。もう東風
どころか半荘一局ですら、大星が照にトばされることはない)
菫(それどころか、照の支配に抗って逆に場を支配し返したり、照の連続和了を個人の支配
のみで止めるようになった)
菫(まるで一昨年の照を見ているようだ。もはや大星も照と同格……全国の怪物の一人だ)
菫(並の打ち手じゃないとは思ってたが、まさかこれほどとはな……)
淡「よーし、じゃあもう一局打とうテル!」
照「ああ。――あ、ごめん。そろそろ行かないと」
淡「え、帰っちゃうの?」
照「ああ。これから取材があるんだ。インハイが近いから、三連覇に向けての意気込みとか
いろいろインタビューしたいらしい」
淡「そんなぁ……」
照「また明日たくさん打てるから」
淡「……わかった。じゃあ私も帰る」
菫「……っ!」
照「いや、それは」
菫「何言ってるんだ大星」
菫「照はちゃんとした理由で早退するんだ。お前のそれはただのサボりだろう」
淡「だってテルがいないとつまんないんだもん。どうせ私がトップだし」
菫「っ……おい」
渋谷・亦野「……」
淡「あ、そうだ! ついでに私もテルと一緒にインタビュー受けるよ!」
照「え?」
淡「白糸台のナンバー2、最強の大型新人現る! みたいな。私って何気にインターミドルも
二連覇してるし、記者も喜ぶと思うんだよね」
菫「だめだ」
淡「む。なんでよ」
菫「何故もなにもないだろ。呼ばれてもいないのに取材を受けるなんて馬鹿な真似は
認めるわけにはいかない」
淡「じゃあ私はどうすればいいのよぉ」
菫「ここで麻雀を打つに決まってるだろ。大会までもう何日もないんだぞ」
淡「だから、テルがいない白糸台なんて意味ないんだって」
尭深・誠子・菫「……」
照「淡」
淡「はい」
照「こんなとこで怠けてるようじゃいつまでもたっても私には勝てないよ。大人しく練習に参加してて」
淡「……まあ、テルがそう言うなら」
照「それでいい。それじゃあ、私は行ってくるから」
淡「行ってらっしゃーい」
菫「……気をつけてな」
菫(……悪いな、照)
照「……」コク
ガララ、ピシャ
菫(大星の加入により、一軍の力は一ランク上昇したと言っていい。間違いなく、歴代の
白糸台メンバーの中で最強のチームだ)
菫(そういう意味では、私の先見は間違ってなかった。彼女ならきっとチームのエースとして
活躍できる日が来る)
菫(だが、一つ大きな誤算があった。それは、大星が照に入れ込みすぎて、
他の部員を全く顧みなくなったことだ)
菫(初めはみんな苦笑い混じりで許してくれていた。だが、もういい加減それも限界にきている)
菫(私もタイミングを見て何度か大星を注意した。だが大星は全く聞く耳を持たなかった)
菫(いや、というよりも、あいつは照以外の部員のことをカボチャか何か程度にしか思っていない)
菫(それは私たち一軍に対しても例外ではない。大星は照以外の部員との溝を、日毎に開け続けている)
菫「……」カチャ
淡「……」カチャ
菫(七巡目。大星は一向聴といったところか。それに安い)
菫(……明らかに遅い。照と打ってるときのこいつはもっと高い手を
四巡とかで作ったりする、高速高火力麻雀だ)
菫(それに……大星の支配が弱い。宇宙に引きずり込まれるようないつもの感覚がない)
菫(……手加減……いや、単純に〝本気じゃない〟のか)
菫「くっ……」カチャ
淡「……」カチャ
菫(張ったか。場を支配しなくても牌が自然とあいつのところへ集まってくる。
照以外でここまで牌に愛された奴を見るのは初めてだ)
尭深「……」カチャ
淡「ロン」
尭深「……ッ」
淡「8000」
尭深「……はい」
菫(強い……もう尭深や誠子じゃ相手にならない)
菫(――いや、私も、もう……)
淡「終わりだね」
菫「……そうだな」
尭深・誠子「……」
菫「半荘三回で全て淡がトップか」
菫(手を抜かれて、ここまで……)
淡「あーあ。つまんな」ボソ
淡「やっぱり私帰りますね」ガタ
菫「お、おい!」
淡「テルはああ言ってたけど、やっぱり意味ないですよ、あなたたちと打っても」
菫「大星!」
淡「何回打ってもどうせ私がトップですってば」
菫「そういう問題じゃ――!」
誠子「……いいじゃないですか。本人が帰りたいって言ってるんですし」
菫「お、おい誠子」
尭深「……私もそう思います」
菫「……」
淡「じゃ、そういうことで。お先にー」バタン
菫「……どういうつもりだお前たち。大会を目前に、チームがこんな状態でどうする」
尭深「チームに不和をもたらしてるの、どう考えても大星さんだと思います」
菫「しかし……」
尭深「大星さんが強いのは認めます。でも、いくらなんでも彼女の態度は酷いです」
誠子「入部してからずっとあんな感じだもんね。私たちだけじゃなくて、他の部員の子も
みんな大星さんと距離を置いてますよ」
菫「……」
誠子「大星さんを引き込んだのって先輩ですよね。できれば先輩になんとかしてほしいです」
菫「……わかった。大星には私から言っておく」
菫「だからお前たちももう少しだけ、大星のことを大目に見てやってくれないか」
菫「あいつは今まで、自分と対等に打てる奴がいなくて、私がここに誘ったときには麻雀を
辞めようとすら思っていたそうだ。そんなときに初めて自分以上の人間を見つけて、
あいつは今照に夢中で周りが見えてないだけなんだ」
尭深・誠子「……」
菫「きっといつか大星とも楽しく打てる日が来ると思う。だから……頼む」ペコ
尭深「や、やめてください先輩。顔上げてください」
誠子「まあ大星さんのことはまだ正直微妙だけど、同じ一軍のメンバーですからね」
菫「……すまない。ありがとう、二人とも」
菫(だが、大星が素直に言うことを聞くとは思えない)
菫(……大星に勝つしかない。そうすれば、きっとあいつも私の言うことを聞いてくれるはずだ)
淡「ちわーす」ガラ
菫「挨拶はきちんとしろ大星。部のルールは守れ」
淡「はいはい。……あれ、菫だけ? 他の一軍のメンバーは?」
菫「尭深と誠子は今日は休みだ。照は進路の件で担任と話があるから、その後でくる」
菫(二人には今日は休んでもらった。照が進路相談をするこの日に合わせれば、私と大星の
一騎打ちになる。そこで私が勝てば、大星も文句はないはずだ)
菫(……照には何も言っていない。もし言えば、あいつは個人的に大星と話を付けるかもしれない。
だが、それじゃだめだ。照の言うことなら素直に聞くだろうが、それだと根本的な解決にならない)
菫(私個人の力で大星に勝たないと、意味ないんだ)
淡「えー、テルいないの? なーんだ。じゃあテルがくるまで休んでますね」
菫「何が休むだ。まだ何もしてないだろ」
淡「だってメンバーがいないんじゃ打てないじゃん」
菫「何言ってる。メンバーなら沢山いるだろ。二軍から二人呼べばいい」
部員「……!」ビクッ
菫「大星。最近お前は部というものを無視し過ぎてる。これ以上我を通すつもりなら、
いい加減黙っている訳にもいかないぞ」
淡「ふふん、偉そうに。私を退部でもさせるつもり?」
菫「最悪の場合、そうなる可能性もある」
淡「菫にそんな権限ないでしょ。あるとすれば顧問だけど、顧問は私の実力に期待してる。
学校としても白糸台の三連覇は是非とも達成してほしいところだろうし、私を退部なんてさせるわけない」
菫「だが照が口添えすれば有り得ない話じゃないぞ」
淡「あははっ。テルが私を追い出すって? それこそまさかだよ。テルだってやっと
自分と互角に戦える打ち手に出会えて喜んでるんだよ? むしろ私の退部には反対するに決まってる」
菫「なに?」
淡「だってそうでしょ? テル、あんなに強いのに今まで退屈してなかったわけないじゃん。
弱い人とばっかり打ってきて、うんざりしてたに決まってるよ」
菫「――大星」ギリッ
菫「私たちの雀力について何を言おうが我慢してやる。だがな、私たちと照が共に
過ごしてきた二年間まで侮辱するつもりなら、いくらお前でも許さない!」
淡「ふふ、共に過ごしてきた? テルの強さの後ろをとことこついて行っただけでしょ?
よかったね、テルと一緒に過ごせて。あの人と同じチームにいるだけで、インハイ
三連覇の栄光を我がもの顔で語れるんだから」
菫「なんだと……!」
淡「いいよ。そこまで言うなら、テルと過ごしたっていうその実力見せてよ。
ただし、私が勝ったら今後は私の好きにさせてもらうからね」
菫「……望むところだ。――おい、誰か二軍で手の空いてる者はいないか?」
部員「……」サッ
菫(みんな一斉に目線を逸らした……。皆大星を怖がってるんだ。このままじゃ大星は本当に……)
菫「……一子、A子。卓に入ってくれ」
一子・A子「……!」ビクッ
A子「わ、私、ですか……」
一子「……」
菫「……頼む」
菫(半端な奴を入れたんじゃすぐトばされて終わるだけだ)
菫(だがこの二人でも大星が相手では正直力不足は否めない。いや、大星が言うように、
こいつと互角に戦えるのはもう、うちの部では照しかいない)
菫「……始めるぞ」
菫(ここで大星を倒す。倒してみせる……!)
菫(この感じ……)
淡「……」ゴォォォォ
菫(照と打ってるときの大星と同じだ。本気で勝ちに来てる)
一子「……」カチャ
A子「……」カチャ
菫(二人はもう聴牌すら目指してない。大星に怯えて、安全牌を切ることしか頭にない)
菫「……」カチャ
菫(大星を止められるのは私しかいない。だが、この局が終わればもうオーラス。
大星と私の点差は19000点以上ある。このままじゃ……)
菫「……」カチャ
菫(張った。八巡目で三面待ち。リーチをかければ倍満確定。一気に逆転できる!)
菫「リーチ!」
菫(射抜いてやる……大星の支配は確かに強力だが、絶対に攻略できないようなものじゃない)
淡「――ふふ」
菫「!?」
淡「今頃リーチ? 菫、遅すぎるよ」
菫「なに……?」
淡「私の手の速さ知ってるでしょ? 私はとっくに聴牌してたんだよ。あなたたちがノロマだから
暇つぶしに打点を上げてたの。なのにリーチするなんて、打ち落としてくださいと言ってるようなものじゃん」
菫「なにを――」
淡「ポン」
菫「……!」
菫(ツモ巡が変わった?)
淡「さ、ツモってよ菫。それが当たり牌だから」
菫「……」
菫(そんな、馬鹿な……)カチャ
菫「……」カチャ 赤5
淡「……」ニヤッ
淡「ロン」
2223346北北北 南南南
淡「ダブ南混一色ドラ4。16000」
菫「な――!」ゾワッ
淡「あと二巡で南はツモれてたから三暗刻もつけれたけど、まあこのくらいにしといてあげる」
菫「……」ガクッ
菫(皆……すまない)
淡「……」
淡(まあ、菫はまだ勝とうとしてるし、絶望的に弱いわけじゃないからいいけどさ。
他の二人はなんなの? 聴牌すら目指してない。ただ逃げ回ってるだけ。恥ずかしくないの?)
淡(一緒に打ちたくないのはこっちも同じだっての。まるで鳩撃ちしてる気分だわ)
淡(……イライラするなぁ)
オーラス
菫「……」カチャ
一子「……」カチャ
A子「……」カチャ
淡(つまんない。全然楽しくない。早く終わりたいなぁ)ボー
菫「……おい、お前のツモ番だぞ、大星」
淡「え? ああ、うん」
淡(これ以上続けて何になるの? もう役満直撃じゃないとマクれないんだよ?
あーもう……イライラする)
ガラ
照「ごめん、遅れた」
部員たち「あ。お疲れ様です!」
菫「照――」
淡「テル!」パァ
淡「もう、遅いよテル!」ガタ
菫「お、おい大星! まだ対局中だぞ。席を立つな」
照「ごめん。進路相談が思ったより長引いて――ん? 尭深と誠子はどうしたの?」
菫「あ、ああ。二人は今日は休みで――」
淡「そんなことどうでもいいじゃんテル。さ、早く打とうよ!」
ガシャン、ジャラジャラ
菫「な――!?」
一子・A子「!」
菫「お前、山を崩して……何やってる! まだ対局は終わってないだろ!」
淡「え? ああ、もうこんな対局どうでもいいじゃん。どうせ私の勝ちだよ」
菫「な……」
淡「それより、早く誰か抜けてよ。テルが座れないじゃん」
菫「……大、星……お前……」
菫(どうでも、いい?)
菫(私は……お前を更生させたくて。この一局、私なりに一生懸命、全力で打ったんだ)
菫(なのに……)
A子「あ、あの。私抜けます」
一子「あ、ちょ、ちょっと待って。私が……!」
菫「……」
淡「さ。早く打とうテル。今日は半荘二回で30000点以内に収めてみせるからねー!」
照「ああ。がんばれ」
菫「照……」
菫(どうして何も言わないんだ照。お前は大星のやり方を認めるというのか?)
菫(今はいい。お前がいる内は大星も大人しくするだろう。だが来年はどうする)
菫(私とお前がいなくなったら、大星は完全に孤立するぞ。今度こそ本当に、大星は
一人ぼっちになってしまう。お前はそれでもいいって言うのか、照)
照「……」
淡「今日はとことんまで付き合ってよねテル」
照「ああ……うん。そうだね」
菫(……照!)
照「……」
淡「え、いきなり? させないよ!」
淡「ポン」発ポン
菫「……」白
淡「ポン」白ポン
一一二三四中中 白白白 発発発
淡(小三元確定で聴牌。一萬と中のシャボ待ち)
淡(けど、私は役満は和了れない。なら引けるのは一萬だけ)
照「……」カチャ
淡(テルは当然見抜いてるはず。きっとテルの手牌の頭は一萬。私の待ちは握られてる)
一一二三四中中 白白白発発発 三
淡「なら、これでどうだ!」一萬
淡(これで聴牌も崩れないし、手代わりもできる。あとは私とテルの支配力の
どちらが勝るか――!)
照「ロン」
淡「え」
234567③④⑤西西一一
照「1000点」
淡「……!」ゾクッ
淡(まただ……私が待ちを変えたらそこを狙い撃ちにされる。かといって素直に打っても、
そのときに限ってそれが狙われたりする)
淡(読まれてるんだ。私の打ち方そのものを……!)
淡(すごい……この人は本当にすごい。マグレとか運がいいとか、そんな偶然すらも蹴散らす、圧倒的な力。本物だ……)
淡(すごいよ、かっこいいよテル。私の同類……私の目標!)ドクン
淡(楽しい。麻雀が楽しい。さっきまであんなにつまらなかった麻雀が、まるで別の遊びみたいに思える)
淡(テルだけだ……テルと打ってるときだけは、私は心から麻雀が楽しいと思える)
淡(テル、あなたに出会えて本当によかった)
淡「――よっしツモ! 4000,8000!」
菫「お」
照(……和了られた。三連続和了で終わりか)
一子「……うぅ。わ、割れました」
淡「うはっ、テルの親のときに倍満和了っちゃった! ちょっと見てよこの点差。
半荘一局打ってたった12000点差だよ」
照「ああ。上出来だ」
淡「あは。もっと褒めてテル!」
菫「……」
菫(本当に凄い。照と一試合打っても25000点離されない計算だ。去年の全国大会ですら
そんな僅差で照に迫った選手はほとんどいなかった)
淡「さっ、今の感じを忘れない内にもう一局いこう!」
菫「いや、今日はここまでだ。もう練習終了時刻だ」
淡「え? ……うわ、もうこんな時間。あーあ。テルと打ってると時間が過ぎるの早いなぁ」
照「また明日打とう、淡」
一子(やっと終わった……)ホッ
菫「……照。このあと少し残れるか?」
照「? いいけど」
菫「そうか、よかった。大会の件でちょっとな」
照「……」ピク
淡「それなら私も一緒に残るよテル!」
菫「いや、大星は……」
照「淡は今日は帰って」
淡「えー、なんで」
照「淡にちょっとしたサプライズを考えてて、そのことについて話すの。
淡がいたら意味がないから」
淡「サプライズ? それってもしかして、大会では私が大将! とか?」
照「――まあ、そんなところかな」
菫「!」
部員「!?」ざわ・・・ざわ・・・
部員「い、一年生が大将……!?」
淡「ほんと!? 大将って、去年までのテルと同じポジションだよね?」
照「ああ」
淡「やった! 私、テルの後継者だ!」
照「だから白糸台の大将に相応しくなるために、帰ってどうして今日勝てなかったのか考えて」
淡「はーい。じゃあ、お先に失礼しまーす!」ルンルン
菫「……本気か?」
照「顧問にももう話してある。実力的にも、有り得ない話じゃない」
菫「……まあ、お前がそう言うなら私は構わないが」
菫(やはり照は、私たちよりも大星の力を買ってるのか……?)
部員「それじゃあ、お先に失礼します」
菫「ああ、戸締りは任せてくれ」
部員「はい。お疲れ様でした」ガラ
菫「――これで全員帰ったか」
照「それで、何の用?」
菫「大星のことだ」
照「……うん」
菫「正直なところ、大星のことどう思ってる?」
照「強いと思う」
菫「そうじゃない。あいつの日頃の態度のことだ」
照「……あまりよくはないと思う」
菫「なら、なぜ大星に何も言わない。エースのお前が放置してるのは良くないだろ」
照「……」
菫「……まさかとは思うが、慕ってくれてるから甘やかしてる、とかじゃないだろうな?」
照「そういうわけじゃない」
菫「なら何故だ。このままじゃ、大星は完全に部で孤立してしまうぞ。
いや、もう孤立してると言ってもいいぐらいに、部員との仲は険悪だ」
照「……」
菫「……本当は、お前の力を借りずにあいつを更生させたかった。だが、駄目だった。
私の力不足だ。もうあいつはお前の言葉でしか動かない。頼む、照。あいつに一言いってやってくれ」
照「……それだと」
菫「ん?」
照「それだと、淡は弱くなる」
菫「なに……?」
照「淡は孤高だから強いんだ。孤独こそが淡の力の源泉なんだ」
菫「な……」
照「淡のことを考えるなら、淡は部員と仲良くなんてなるべきじゃない」
菫「照……お前、まさか……」
菫「大星を、わざを部員と衝突させるように誘導してるっていうのか……?」
照「……」
菫「どうなんだ!!」
照「淡が部員たちにどういう態度を取るのかは、あくまであの子次第。私には関係ない」
菫「お前――!」
菫「強くなれるなら孤独になってもいいって……大星がそう望んでると本気で思ってるのか!?
照魔鏡でなんでも見抜いたつもりになってるんじゃないだろうな!?」
照「部員と仲良くしたいなら淡はあんな態度はとってない。あれがあの子の答えじゃないの?」
菫「違う!」
菫「大星は友達が欲しかったんだ! 一緒に楽しく麻雀を打てる仲間が!」
菫「初めてあいつを見た時、私は大星にお前と同じ匂いを感じた。だからこそ、私は大星をここに誘ったんだ。
お前が私たちと仲間になれたように、きっと大星も私たちとやっていけるって」
照「無理だよ」
菫「なんだと?」
照「淡は強すぎる。並の打ち手じゃ、あの子の隣に並ぶことすらできない」
菫「……隣に並べなければ仲間じゃないとでも言いたいのか?」
照「少なくとも、それは淡の求めてる仲間じゃない」
菫「……」
照「ただ一緒に麻雀を打って、一緒に帰ったり、一緒に笑い合ったり、それだけの友達
が欲しいなら、
淡にもできるかもね。でも、淡はそんな友達なんて求めてない」
照「私が淡に言い聞かせて、部員と仲良くなるように命令すればあの子はしてくれると思う。
でもそれで淡が楽しめると思う? 誰と打っても簡単に勝てる麻雀を打ち続けて、相手に
気を遣って手加減したりして、……そんなことをしても、きっと淡はこう感じるはず」
照「『ああ、やっぱり私はこの子たちとは違うんだ。分かりあったりできないんだ』って。
打てば打つほどに、淡は今以上の孤独を感じることになる」
菫「……お前も、そうなのか?」
照「?」
菫「お前も、今まで私たちと打ってきて、そう感じていたのか?」
照「私のことじゃない。――でも、そう感じていた子を知ってる」
菫「? 誰のことだ?」
照「…………その子は」
照「あまりにも強すぎて、周りに自分と同じレベルで麻雀を打てる人がいなかった」
照「普通に打てば簡単に勝ってしまう。そうすると一緒に打っていた人たちは不機嫌になって、
その子に八つ当たりしたりしていた。でもわざと負けても、手加減してるとバレて叱られた」
照「だからその子は、勝ちも負けもしないような麻雀しか打たなくなった」
全国大会の二回戦をみてみろよ
魔王は改心してないぞ
手ごわい人がいたからだから(震え声)
照「誰と打っても、何度打っても、全てプラマイゼロ。自分の勝ちを捨ててその子の
プラマイゼロを防ごうとしても、結局プラマイゼロで終局してしまう」
照「わかる、菫? 強すぎる人間が格下に合わせようとすると、そんな歪な麻雀が
生まれてしまうんだ。淡はあの子と同じ次元の打ち手だ。私はもう二度と……あんな風に
麻雀が歪んでいくところなんて見たくない」
菫「……だから、大星は孤独であるべきだと言うのか」
照「そう。淡は下を見るべきじゃない。どんなに互いが歩み寄ろうとしても、部員達と淡が
分かりあうことはない。どんなに手を伸ばしても星に手が届かないのと同じように」
菫「……」
照「だったら、淡は上を目指し続けるべきだ。そうすれば、ちゃんとした目標がある限り
あの子はどこまでも強くなれる」
菫「……照」
菫「お前の考えは分かった。だがお前には白糸台麻雀部のエースとして、先輩として、
それに見合った態度を取ってほしい」
照「分かった。これからは私からも言っておく。でも、無理に淡と部員を仲良くさせようとは思わない」
菫「……なあ照。大星がお前にとってどういう存在なのかは、私にはわからない。
本当に強い者同士でしか分からないもの、見えないものもあるんだろう。私ではその
領域に踏み込むには力不足なんだろう」
菫「だがな。私にとって、大星は可愛い後輩なんだ。強すぎるせいでお前に縋るしかない
あいつのことを不憫に思うし、大星の孤独を埋めてやれない私自身を恥ずかしく思う」
菫「お前がなんと言おうと、私は大星に部の皆と仲良くなってほしい。一緒に上を目指す
仲間になってほしい。それが麻雀部としてあるべき姿だと信じてる」
照「……」
菫「……話はそれだけだ。付き合わせてすまなかった」
照「構わない。じゃあ、私は帰る」
菫「ああ」
照「……」ガラ
菫「――照」
照「……?」ピタ
菫「最後に一つだけ訊いてもいいか?」
照「なに?」
菫「お前も大星と同じで……私たちと打っても、楽しくないのか?」
照「……」
菫「私たちはお前のことを大切な仲間だと思ってる。確かに、力の差があり過ぎて、たまに
お前が怖くなるときがある。でも、それでも私はお前と打っていて楽しいぞ。
だがお前は……私と打っても楽しくないのか? 孤独を感じるのか?」
照「……」
菫「応えてくれ、照。頼む」
照「……」
照「楽しくない」
菫「っ……」
照「でもそれは、菫のせいじゃない」
菫「?」
照「私は……」
照「私は、麻雀……好きじゃないんだ」
菫「麻雀を、好きじゃない?」
照「ああ」
菫「ならお前は、なんのために麻雀を打ってるんだ」
照「……」
照「……帰る」
菫「お、おい、照!」
ガラ、ピシャ
菫「照……」
菫「……私が間違ってるのか?」
菫「皆で楽しく麻雀を打ちたいって……そう思う私は間違ってるのか?」
菫「教えてくれ、照……大星」
二日後
昼休み
淡「あー、やっとお昼だ」
淡「友ちゃん、一緒にお昼食べよ」
友「あ、う、うん……」
友「あ、あの、ごめん大星さん……私、今日もちょっと……」
淡「……そっか」
友「う、うん。本当にごめんね。そ、それじゃ」タタタ
淡「……」
淡(私が白糸台の一軍に入ってから、あの子とも気まずくなっちゃったな)
淡(私のこと初心者とか言ってたのまだ気にしてるのかな。結局麻雀部にも入らなかったみたいだし)
淡(――ま、いっか。私にはテルがいるんだ。普通の友達なんていらないし)
淡(早く部活に行きたい……テルに会いたい)
ガラ
菫「大星、いるか」
淡「? 菫?」
菫「話がある。麻雀部に関することだ」
淡(あ、大将の話だ!)
淡「はーい、すぐ行きまーす!」ウキウキ
屋上
淡「菫、大将の件どうなったの?」
菫「ああ、さっき顧問とも話してきた。次の大会の大将はお前だ、大星」
淡「やったー! テルと同じポジション!」
菫「……それで、だ。大星」
淡「? まだなにかあるの?」
菫「お前の、日頃の態度についてだ」
菫「最近のお前の、部員に対する態度はあまりにも目に余るものがある。先輩に対しても「弱すぎる」だの「あなたと打っても仕方ない」だの、
挙句の果てには「雑魚」とまで言ったことがあるらしいな」
淡「だって本当のことじゃないですか」
菫「心の内でどう思おうとそれはお前の勝手だ。だが本人を前にしてわざわざ言う必要のないことだろ」
淡「陰口ならオッケーってこと?」
菫「そういう問題じゃない! 話を逸らすな!」
淡「こういうのって、「陰口を叩くくらいなら本人に直接言え」とか言われるものだと
思ってたけど。直接言うのもだめなんですね」
菫「当たり前だろ」
淡「だって弱いんだもん。菫、私はあなたにも期待してたんだよ?」
菫「なに……?」
淡「テルと打って、白糸台の一軍は別格なんだ、って嬉しかったのに。蓋を開けてみたら強いのはテルだけじゃん」
菫「……」
淡「白糸台で歴代最強とか、チーム虎姫とか言われてるけど、私に言わせれば白糸台なんて
テルのワンマンチームだよ。ま、今は私とテルのチームだけど」
菫「……大星。お前ももう高校生だろ。子供じゃないんだ。自分の発言が他人を不快にさせていることに気付け」
淡「私が勝ったら好きにさせてくれるって約束したくせに。先輩なら約束守ってよね」
菫「……あのな、大星」
菫「お前の気持ちは分かる。お前にとって照は初めて出会えた自分の同類なんだろう。
お前が照に入れ込んでるのもわかる。でもな、だからって他の部員のことを蔑ろに
していい理由にはならない。そうだろ」
淡「うるさいなぁ。文句があるなら私より強くなってから言ってよ」
菫「っ……大星!」
淡「それに、心配しなくても来年には私退部してるし、来年からはまた普通の白糸台に戻れるよ」
菫「――――」
菫「――――ぇ」
菫「な……ん、だと?」
淡「なにって、退部だよ。麻雀部を辞めるの」
菫「ど、どうして」
淡「だって、来年にはテル卒業しちゃうじゃん。なら麻雀部なんている意味ないし」
菫「……」
淡「ああ、でも麻雀は続けるよ。おじいちゃんに頼んで家にプロを呼んでもらって、
本格的に稽古をつけてもらうんだ。
テルは卒業したら大学にいくのかな? まああれだけ強ければ即プロ入りもあるだろうけど。
とにかく私も卒業したらテルと同じ道に進むの。クラブ活動なんかで遊んでる暇ないし」
菫「――大星」
淡「ああでも、テルと同じ大学に入ってインカレ四連覇ってのもありかなー。――ん?」
パシンッ!
淡「あぅ――ッ!」ドサ
菫「白糸台を……いや。全国の雀士を舐めるのも大概にしろ!!」
淡「……」
菫「白糸台の一軍になりたくて、でもなれなくて……三年間毎日毎日何時間も必死に
麻雀を打って、青春を捧げて、それでも一度も大会に出ることなく卒業する部員が、
いったいどれだけいると思ってる」
菫「一子だってそうだ。あいつは今年卒業で、三年になってやっと一軍入りして大会に
出られるって喜んでたんだ。だがお前が入部して、繰り下がりで二軍落ち……団体戦で
大会に出る夢はもう叶わない」
菫「だがそれでもあいつが文句一つ言わなかったのは、お前が……お前なら白糸台を優勝
に導く一人になってくれると信じたからだろ。全国優勝の夢をお前に託したからだろ!」
菫「お前はそういう……他の部員の夢や、期待や、想いを受け継いで、あるいは蹴落として。
白糸台の一軍の座を勝ち取ったんだ。そんなお前が……照がいないから部を辞めるだと?
ふざけるな……ふざけるなよ……馬鹿みたいじゃないか」
菫「お前みたいなやつがいてくれるなら、私や照が卒業しても大丈夫だって……
お前になら白糸台を任せられるって、そう思ってた私が……馬鹿みたいじゃないかぁ!」
淡「知ったことじゃないよ、そんなの」
菫「!?」
淡「あなたたちが勝手に私に期待して、勝手に失望した。それだけじゃん。
私があなたたちに勝手に期待して、勝手に失望したのと同じことだよ」
菫「……私たちの実力では、そんなに不足か。部にいることすら耐えられないほどに」
淡「はい」
淡「いつもあれだけ言ってあげてるのに、まだ気づいてなかったの?
あなたたち、本当に弱いよ。相手にならない」
菫「……」
淡「そんなあなたたちでも、全国ではそれなりに上位の選手なんでしょ? だから私は、
全国にも期待してない。だから全国優勝にも興味ない。
全国なんて、テルが行くっていうからついていってるようなものだもん」
淡「まあ、テルの強さを三連覇っていう完璧な形で歴史に残したいっていう気持ちはあるけどね。
そういう意味では、全国優勝には意味があるかも。でも、それだけだよ」
淡「だいたい、夢を受け継いだ? 笑わせないでよ。私は別に、一子の想いを
継いだから一軍にいるわけじゃない。――強いから。私は強いから一軍なの。
そして一子は弱いから二軍になった。それだけじゃん」
菫「……」
淡「そこに勝手に感情論を持ちこんで美的解釈しないで。麻雀部も、ただの部活でしょ?
つまんないから辞めるの。――話はそれだけ? なら帰るね」
菫「お前は……一緒に麻雀を楽しめる仲間が欲しくて、麻雀部に入ったんじゃないのか」
淡「違うよ」
淡「今なら、私がなんのために今まで麻雀を打ってきたのかわかる。私は
テルに出会うために、麻雀を続けてきたんだ」
淡「テルも同じだよ。私はずっと、どうしてあんなに強い人がこんなお遊びみたいな麻雀部で
腐らずに続けてこれたのか不思議だった。でも、きっとテルも私に出会うために今まで
部に残ってたんだ」
菫「違う」
淡「違わない。私たちが出会うためだけに、白糸台麻雀部はあったの。そして私たちは出会った。
まるで星と太陽が引力で引かれ合うみたいに。――ふふ、なんだかロマンチック」
菫さんが魔物クラスになっても、淡ちゃんはそれ以外の部員とは馴れ合いはしなさそうだし
菫「……」
淡「まあ、心配しなくても全国優勝はしてあげるから。テルが卒業するまでは部にもいてあげる。
でもその後は私の好きにさせてもらうから」
ガチャ、バタン
菫「……」ギリ
菫(もう、だめだ。大星はもう、何を言っても無駄だ)
菫(もう私では大星を止められない。諌めてやることすらできない。照も大星を放任してる……)
菫(誰かがあいつに勝つしか……全国で誰かが大星に勝てば、きっとあいつの考えも変わる)
菫(だが全国にすら、大星と渡り合える選手なんて何人いるか……)
菫(それに、大将の大星が負けるということは同時に、白糸台の敗北も意味する。それは……だめだ)
菫(大星が改心するためには、誰かが勝っても負けてもだめなんだ)
菫(勝ちもせず、負けもせず、それでも大星に負けを認めさせられるような選手……そんなの、いるわけない)
菫(くそっ……!)
一ヶ月後
菫「県予選突破、まずは御苦労だった。皆全国大会までの間、気を緩めることなく今の状態を
維持してくれ」
渋谷・亦野「はい」
照「……」コク
淡「……」ボー
菫「……大星、聞いてるのか?」
淡「え? ああ、聞いてるよ。それより、全国ではなるべく私に回る前に他家をトばしてくれません?」
菫「お前が予選で打ったのは決勝だけだろ」
淡「あの程度の相手に大将まで回ってくるのがまずおかしいんだよ。四人もいればどっかで
トばせるでしょ。わざわざ私の手を煩わせないでくださいよ」
菫・亦野・渋谷「……」
照「それは悪かった。私がもっと先鋒で点を取っていればよかったな」
淡「そんな! 違うよ。決勝でテルが何万点毟ったと思ってるの!
問題なのは風前の灯だった他家を三人がかりでトばせなかった後の人達だってば!」
菫「……とにかく、立ち上がりとしては悪くない。全国では大星まで回る回数も増えるだろう。
油断だけはするなよ、大星」
淡「……」シーン
菫「……」ハァ
淡「そうだ。他の県の結果も出たんだよね? どうなったんですか?」
菫「ん、ああ。だいたい予想通りといったところだな。千里山、臨海、永水、そして
うちがシード校になるだろう。他もだいたい予想通りだ」
淡(永水……テルの言ってた、テルとやりあえる二人のうちの一人、神代がいる高校か。私は大将だから先鋒にくるだろう神代とは当たらない。ちぇ)
淡(でももう一人……龍門渕の天江衣。彼女は大将、私と当たる。実はちょっとだけ
期待してるんだよね。テルのお墨付きなら、期待はずれにはならないだろうし)
淡「龍門渕は勝ったんですよね?」
菫「龍門渕は――ん? いや、来てない……? 予選で負けたようだ」
淡「は!?」ガタッ
淡「負けた? 龍門渕が? え、大将まで回らなかったの?」
菫「ちょっと待て、いま調べる」ペラペラ
菫「……いや、回ってるな。他校とさほど差はない状態で回ってきたらしい」
淡「はあああああ!? なにそれ、じゃあ単純に実力で負けたってこと!?」
菫「まあ、そういうことなんだろうな。龍門渕がどうかしたのか、大星」
淡「……」ガックリ
淡(なにそれ……いい加減にしてよ……どんだけ私の期待を裏切れば気が済むのよ)
淡「……で、どこに負けたの?」
菫「長野代表は……清澄……?」
淡「清澄? どこそれ」
菫「私も聞いたことがない。無名校だろう」
淡「無名校?」イラッ
淡(テルに認められたくせに、そんなどこの馬の骨とも分からないような高校に負けるなんて、
テルの顔に泥を塗るつもり? イライラするなぁ……)イライラ
淡「清澄の大将って誰?」
菫「えーっと……清澄、清澄……あった、これだ」ペラペラ
菫「大将――え?」
淡「? どうしたの?」
菫「……大将……宮永、咲……?」
照「――ッ!」ピクッ
淡「宮永?」チラッ
誠子・尭深「……」チラッ
菫「……照、お前の……妹さんか?」
照「……違う」
照「私に妹なんていない」
菫「……そうか」
淡(……ふーん?)
淡「菫」
菫「ん、どうした?」
淡「清澄と龍門渕の県予選決勝の映像とかってある?」
菫「ああ、あるぞ。欲しいのか?」
淡「うん。ちょっと全国に向けて相手チームを研究しとこうかな、って」
菫「! お、大星……!」パァ
菫「どうした、いつになくやる気じゃないか。ああいいぞ、すぐ持って来てやるから、
そこで待っててくれ!」タタタ
菫(大星が相手チームを研究するなんて。よかった……大星もやっと本気になってくれたか)
菫「――ほ、ほら、持ってきたぞ。長野と大阪、鹿児島に……強豪校のはあらかた――」ハァハァ
淡「長野だけでいいよ。じゃ、これ借りるね」ヒョイ
菫「え……?」ポカン
自宅
淡「……」ジー
淡「……弱いじゃん、龍門渕。っていうか全部。長野レベル低いなー」
淡「風越の先鋒と清澄の中堅はまあまあだけど、他が弱すぎる。原村和も
期待してたほどじゃないな。インターミドル優勝したらしいけど、ま、所詮は
私のいないインターミドルでだしね」
淡「さってと。退屈な副将までが終わったし、やっと大将戦だよ」ピッ
淡「……」ジー
淡「……」ジー
淡(天江衣……悪くないじゃん。確かに、この県の中では別格だわ。白糸台でも余裕で
一軍入りできる。というか、テル以外でこの子に勝てる人、うちにいないな)
淡(案外私ともいいとこまでやりあえるかも。テルが認めるだけある)
淡「……あとは……清澄」
咲『――ツモ。嶺上開花』
淡「……」
淡「まあ、悪くはないね。天江に手も足も出ない他の二校と違って、ちゃんとやりあえてるし」
淡「でも、総合力だと天江の方が面白いね。別に清澄の大将には魅力感じないや」
淡「天江衣とやりたかったな……この子個人戦にも出ないらしいし、なんなんだろホント」
解説『――数え役満! 宮永咲選手が本大会二度目の数え役満を和了りました!』
淡「……宮永、か」
淡(実力云々よりも、この名字が気になる。テルの反応から察するに、どうも何かしら
テルと関係ありそうなんだよね)
淡「……オッケー。とりあえず、期待しといてあげる」
淡「失望させないでよね、宮永咲……!」ゴッ
あとカンドラも乗せも
抽選日
ざわ・・・ざわ・・・
菫「トーナメント表の抽選日だ。まずはうちがどこと当たるのか、しっかりとチェック
しておくんだぞ」
渋谷・亦野「はい」
菫「……それにしても、意外だな。大星は今日来ないかもしれないと思ってたんだが」
淡「トーナメント表は私も興味あるからね」
菫(大星が最近やる気だ……嬉しいことだ)
淡「ふぁ~あ」
淡(退屈ぅ……どうでもいいよ、シード校にもなれなかった雑魚のことなんて。それより……)
『続きまして、清澄高校』
淡「お。やーっときた」
菫「なんだ。清澄を注目してるのか?」
淡「まあね」
『清澄高校――』
淡「……同じ側か。清澄と当たるのは準決勝か」
菫「清澄とうちが勝ち抜ければ、決勝でも当たる可能性はあるぞ」
淡「それはないよ」
菫「? なぜだ」
淡「清澄の大将は……」
淡「私が、潰すから」ゴッ
菫「……」ゾクッ
菫(本気だ……本気の大星だ)
菫(負けるわけがない。こんな怪物が……)
※ストーリーの展開上、抽選はこっちの都合にさせてください。
白糸台と臨海が入れ替わったと思ってください。
数日後
淡「さーて、準決勝か」
あれから、白糸台は当然のように勝ち進んでいった。私は準決勝まで一度も卓につくことなく、
全て副将まででどこかがトんで終わった。テルが殺し損ねた死に損ないに他の三人が
止めを刺すような形が常だったけど、私としてもまあ文句はない。
そして準決勝の日が訪れた。この日、白糸台は清澄高校と対決する。
菫「永水が敗退とはな。番狂わせもあったものだ」
淡(神代も期待はずれだった。最後にちょっといい感じの雰囲気になってたけど、アベレージは普通だったし)
照「……」
淡(それより……テルの様子が少しいつもと違う。普段よりももっと静かだ)
照「――じゃあ、行ってくる」
淡「行ってらっしゃい、テル」
菫「頼んだぞ、照」
照「……」コクン
淡「――あ、そうだ。テル!」
照「?」ピタ
淡「できれば今日は軽く流す感じでやってくれない? 私清澄の大将と打ちたいんだ。
テルが本気だしたらどっかトんじゃいそうだし」
照「……」
菫「馬鹿なこと言うな。照、いつも通り打ってこい」
照「分かってる」
淡「ほんと心配性だなぁ皆。私までに100点残してくれればそれで大丈夫だよ」
照「……」
淡「? どうしたの、テル」
照「……淡」
照「――侮ると負けるよ」
淡「――え?」
照「……」バタン
淡「……負ける? 私が……?」
菫「照の言う通りだぞ大星。どんな相手でも油断するなよ」
淡(……テルは私の強さを知ってる。その上で、私が清澄の大将に負けるかもしれないって言うの?)
菫「無論、私たちも手加減するつもりはない。最悪――いや、最悪ではないが、お前に
回さずにトばせるなら、そうするつもりだからな」
淡(テルが認めた二人、神代と天江衣。清澄はそのどちらにも勝ってる。それは偶然なんかじゃなく、実力通りの結果だったってこと?)
菫「お前はその日の気分で手を抜いたり全力でいったりムラがありすぎる。ただでさえ
お前はまだ全国で打ってないんだ。万が一ってことも……」
淡(咲……宮永咲。やっぱりなにかあるんだ、テルと)
菫「……大星、聞いてるのか?」
淡「菫、清澄の大将って宮永だよね? これ、本当にテルと無関係なの?」
菫「……さあ。私にもなんとも言えない。ただ、照に妹がいるという話は聞いた。
普段あいつは否定してるが、昔、ポロっとな」
淡「ふーん」
淡(妹……テルの妹、か)
淡(――面白そうじゃん)ゴッ
数時間後
実況『さあ、Bブロック準決勝も残すところこの副将戦の南場と、大将戦のみとなりました』
実況『先鋒で宮永選手が広げた大量リードを守る白糸台。しかし中堅戦で清澄と姫松に
大量失点を許してしまいました』
実況『続く副将戦、原村和のめざましい活躍により清澄が白糸台に猛追を仕掛けています。
両校の点差は20000点にまで縮まりました。白糸台はこのリードを守りきって
大将に繋ぐことができるのか。そして現在一人沈み状態の有珠山はここから
追い上げることができるのか』
淡「――あんなこと言われてるけど?」イライラ
尭深・菫「……」
淡「尭深……あなた中堅戦で何万点取られたか分かってる?」
渋谷「……」
菫「やめろ大星。個人のミスはチームのミスだ。それが団体戦だろ」
淡「は? で、個人の手柄もチームの手柄ってわけ? 今までそうやってテルの手柄を
自分のものみたいに語ってきたんだ」
菫「……っ」
淡「だいたい菫、あなたもマイナスだったよね。で、誠子もマイナス。……あほらし。
ていうか、なんか菫の試合でなにがあったのかよく覚えてないんだけど」
淡(そういえば、なんか次鋒戦はいつのまにか終わってたな)
菫「姫松と清澄の中堅は強敵だった。尭深には少し荷が重い相手だったんだ」
淡「誠子も苦戦してるっぽいね」
菫「確かに、清澄に追い上げられてるな。だが一位で大星に回すことはできるだろう」
淡「当たり前じゃん。テルが何万点取ったと思ってんの。これで逆転なんかされたら、
もう軽蔑だよ、軽蔑。もう絶対敬語使わないから」
渋谷「……」
照「淡」
淡「ん、なぁに、テル」
照「そろそろ淡の番。準備して」
淡「準備なんていらないよ。ふつーに打てば勝てるってば」
照「淡」
照「――言うことを聞け」
淡「――っ」
菫「……!」
菫(照が大星を嗜めた……?)
淡「……テル。本気で思ってるんだね、私が負けるかもしれないって」
照「ああ」
淡「……ふーん」
菫「……」
菫「大星、誰であれ油断は禁物だ。照が言いたいのはそういう――」
淡「黙ってて」
淡「……いいよ」
淡「じゃあテル、賭けない?」
淡「私と清澄、どっちが勝つか」
照「……」
菫「おい、馬鹿な話はよせ。これは全国大会なんだぞ。トトカルチョなんて言語道断だ」
照「構わない。その勝負乗る」
菫「お、おい照!」
淡「決まりだね。安心してよ菫。私はもちろん、私の勝ちに賭ける。私が自分から
負けにいくようなことはしない。むしろ、これで心おきなく全力で清澄を潰せるよ」
淡「で、テルは清澄の勝ちに賭けるんだね?」
照「……」
照「いや、勝つのは白糸台だ」
淡「え?」
菫「……? 照……?」
淡「……」
淡「――――ぷ」
淡「あ、あはははははっ。な、なぁんだテル、やっぱり私が勝つと思ってるんじゃん!」ケタケタ
淡「あーおっかしー……こんなに笑ったの久しぶり。なんだかんだで、テルも勝算のない勝負はできないか。
でもこれじゃあ賭けにならないよ。私もテルも、どっちも私の勝ちに賭けちゃったら、ねえ?」
菫「当たり前だ。だから賭けなんてのはもう――」
淡「はいはい、分かってるよ。この話は終わり。いいよね、テル?」
照「……」
淡「……テル?」
照「――なに言ってる。私がいつ淡の勝ちに賭けたの?」
淡・菫「え?」
照「私は『白糸台が一位通過する』と言ったんだ。『淡が勝つ』とは言っていない」
菫「ど、どういうことだ?」
照「私は――『宮永咲が勝つ』に賭ける」
渋谷・菫「……!?」
淡「……ふーん……? 一位通過するのは白糸台。でも勝つのは清澄の大将。そう言いたいんだね?」
照「そうだ」
菫「得失点差で大星が負ける、ということか?」
淡「ちがうよ菫。見て、あの誠子の無様な対局を。もう清澄と白糸台の点差はほぼ
無いに等しい。白糸台が勝つなら、最低でも私は1万点ビハインドくらいにしかならない。
まあ、別に私が清澄に得失点で100点でもマイナスになったら負け、っていう
条件でもいいけど、テルが言ってるのはそういうことじゃないよね?」
照「ああ」
照「打ってみればいい。淡の実力なら、それでどっちが勝者か判断がつく」
淡「最高に面白いよテル。あなたと打ってるときでも、こんなに武者震いはしなかった」
淡「ペナルティは後払いでいい? とびきりすごいの考えとくから、覚悟しといてね」
照「ああ」
実況『副将戦終了――! 清澄、怒涛の追い上げにより、ついに白糸台を射程圏内に
収めた――!』
淡「ちょうど終わったね。じゃあ、行ってきます」ガタ
バタン
菫「……照、どういうことなんだ? 白糸台が勝つのに、淡が負けるって……」
照「……」
照「点数で勝ったからといって、それが必ずしも勝利を意味するわけじゃない」
菫「……」
照『――強すぎる相手が格下にあわせようとすると――』
菫(照が言ってたのは……まさか……)
廊下
淡「……くそ」イライラ
イライラする。イライラする。イライラする――!
淡「私が負けるって? そんなわけない。私とテルが高校生最強なんだ。そこに
他人が割り込んでくるなんて、ありえない――!」
淡(清澄……潰してやる。もう麻雀が打てなくなるくらいにボコボコにしてやる……! 今日という日を一生のトラウマにしてやる!!)
淡「……ん?」
カツン、カツン
淡「あれは……」
淡(あの子が――宮永咲)
咲「……あ」
淡「――よろしく、清澄さん」
咲「あなた確か、白糸台の……」
淡「大星淡。あなたは宮永さんだよね?」
咲「はい」
淡「宮永はうちの部にいるから、呼びづらいから咲ちゃんって呼んでいい?」
咲「あ、はい。じゃあ私も淡ちゃんって呼んでもいいですか?」
淡「もちろん。仲良くしてね。あと、同級生なんだから敬語使わないで。なんかムズムズするから」
咲「あ、ごめんなさい」
淡(まあ、今日以降あなたと卓を囲んで会うことはないだろうけどね)ゴォォッ!
咲「あの」
淡「ん、なあに?」
咲「その……お姉ちゃん、元気かな?」
淡「――テルのこと? やっぱり姉妹なの?」
咲「え、あ、うん」
淡「ふーん」
淡(そっか……ますます面白くなってきた)
淡「テルなら元気だよ。咲ちゃんも先鋒戦見たでしょ?」
咲「うん。凄かった。お姉ちゃん、びっくりするくらい強くなってた」
淡「……」ピク
淡(強くなってた? なに、その『昔は私の方が強かったのに』みたいな上から目線。
イライラするんだけど)
淡「咲ちゃん、テルと何かあったの?」
咲「え、どうして?」
淡「だってテル、『私には妹なんていない』とか言ってたから。もしかしたら
咲ちゃんのことなんて眼中にないのかも」
咲「……!」ビク
咲「……や、やっぱりそうなのかな……」
淡「うん。きっとそうだよ」ニッコリ
咲「……」グス
咲「私ね、昔お姉ちゃんにひどいことしちゃったんだ」
淡「ひどいこと?」
咲「……お姉ちゃんは、きっとまだ私のこと許してないんだと思う」
咲「だから私、麻雀でお姉ちゃんに伝えたいことがあるの。そのためにも、この試合、
絶対負けられないよ」
淡「ふふ、そうだね。絶対勝たないとね」
咲「うん。この試合で勝って、決勝に行って、お姉ちゃんに会いに行きたい」
淡(――無理だよ、咲ちゃん)
淡(あなた、ここで終わるんだから)ゴッ
Entry ⇒ 2012.09.24 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
淡「陽に照らされて星は輝く」 後半
※ここから長い麻雀パートに移ります。あまり麻雀得意ではないので、いろいろ
ミスがあると思いますが生温かく見守ってやってください
準決勝大将戦
東一局
白糸台:125000
清澄:113000
姫松:98000
有珠山:64000
親:咲
実況『さあ、ついに準決勝大将戦のスタートです。決勝戦に上がれるのはこの中の上位
二校のみ! いったいどこが勝ち上がるのか――!』
四人「よろしくお願いします」
淡(ラス親か。咲ちゃんは起家)
末原(清澄……借りは返させてもらうで)
東一局
末原(清澄との差は15000。これをなんとか詰めるしかない。振り込まんのは当然やとして、
親の連荘……それしかあらへん)
末原(1000点でも2000点でも、とにかく少しずつ清澄との差を詰める。親が流れたら
絶対に振り込まず、大きい手を狙う。子で安い手を和了って場を進めるわけにはいかんからな)
咲「……」4萬
末原(鳴ける、けど……鳴いたら三色が消えるし手が安くなる。子でそんな手は和了られへん。清澄の親を楽に流させたりしたらあかんねや)
淡「……」カチャ
咲「――カン」
末原「!」
末原(まずい……!)
咲「――ツモ。嶺上開花。1300オール」
実況『早速宮永選手の嶺上開花が決まった――!』
末原(また嶺上開花……あかん、また差が広がってもうた)
末原(清澄の嶺上開花を止めるには、カン材になりそうなものをなるべく捨てないこと、
順子場を作ること、捨て牌とかから清澄が持ってそうな暗刻を予想して、それから……)
淡「……」
淡(一局打っただけでわかる。場を支配する力。限定的だけど、かなり強い)
淡(嶺上開花が得意技なのかな? これを止めるには、まず咲ちゃんの支配を上回る
力で場を支配し直すしかない)
淡(まずは咲ちゃんの支配が王牌だけなのか、それともツモ牌、あるいは卓全体にまで
及んでいるのか、それを確認しないと。嶺上開花そのものの対策はその後でいい)
次局
咲「ツモ、嶺上開花」
実況『宮永選手、二回連続で嶺上開花だ――!』
末原「くっ……」
次局
淡「……」カチャ
六六六八八八北北北1234 4
淡(ツモった。――けど、今はこんな手を和了ることよりも……)4索
実況『!? お、大星選手、和了りを見逃してツモ切り――!? これはいったい
どういうことでしょうか――!』
咲「――カン」
末原「ちょ――」
咲「ツモ。嶺上開花」
実況『宮永選手、三連続和了、そして三回連続の嶺上開花だ――!』
実況『大星選手、高めを狙ったか。しかしあそこで和了っておくべきだった――!』
実況『これでついに清澄が白糸台を抜いてトップに躍り出た――!』
末原(ちょ、ちょっと……前の試合より明らかにペース早いやん……。もう三回連続やで)
末原(清澄の連続和了だけはなんとしても防がな……もう安手でも和了るべきか?)
淡「……」
淡(支配域は卓全体か。王牌は特に強力。カン材が自然と咲ちゃんのところへ流れていく
のを感じる。かなり私に近い打ち筋。――でも、防げないほどじゃない)
淡(嶺上開花は、それ自体が咲ちゃんの能力ってわけじゃない、か。あくまでも
王牌の支配から発生した結果に過ぎない。なら嶺上開花だけを防ごうとするのは無意味)
淡(まずはその結果の出所……根本的な支配を断ち切ることが重要だ)
淡(――それだけ分かれば十分。あとは私の支配と咲ちゃんの支配……どちらが上をいくか)
淡(……じゃあ、始めようか)クス
淡(――引きずりこんでやる。宇宙の闇へ)ゴォォォォォッ!!
咲「――うっ!?」ゾクッ
末原「――!?」ビクッ
有珠山「……?」
末原(な、なんやこの感じ……? さ、寒い……?)カタカタ
咲(こ、これ……お姉ちゃんや、衣ちゃんと同じ……!)
淡「ふふ」ゴォォォォ
淡「怯えることないよ。私が和了ることができるのは、どれも〝成り損ない〟の安い手ばかりだから」
咲「成り損ない?」
淡「そう。私の麻雀はまだ未完成なの。だから、完成した完璧な役は作れない」
末原「ど、どういう意味ですか」
淡「――今から教えてあげる」ゴッ
東一局
末原「……」カチャ
末原(張った。四巡目で跳満の手。早くに手作りできたんはラッキーや。ここで
一気に差を詰める)
末原「リーチ」白
淡「遅いよ」
末原「え?」
淡「ロン」
123二二二発発発中中白白 白
淡「小三元、発、白。8000」
末原「しょ、小三元……?」
末原(な、なんでわざわざそこで止めるんや。白を鳴いて二萬を捨てれば、フリテンとはいえ
大三元聴牌やないか。流局間近とかやったらまだしも、まだ四巡目。手代わりも十分
ありえる。
逆転されてんねんし、ここで大きく取りたいと思わんのか?)
淡「ふふ」
末原「!?」
※有珠山に活躍の場はありません。有珠山が上がってくるのかも分からない段階で書き始めたので、
今回は数合わせ程度に思っておいてもらえると助かります
淡「言ったでしょ? 〝成り損ない〟しか和了れないって」
末原「な、成り損ない……?」
末原(つ、つまり大三元の成り損ない……ってこと?)
東二局
末原(と、とにかく……それやったら、役牌を捨てへんかったらええだけや)
末原「……」五萬
淡「――ふふ」
淡「ロン」
三三三五五①①①②②西西西
淡「三暗刻トイトイ。8000」
末原「な――!」
末原(さ、三暗刻トイトイって……四暗刻聴牌やないか!)
末原(二回連続でこんな大物手――――いや、大物手やない。たった8000点や。
どういうことや。二回とも、もう少し粘れば役満っていう手やった。やのにそれを
わざわざ崩して満貫……)
末原「――!」
末原(ま、まさか、『成り損ない』って……)
淡(そう。『役満一歩手前の役を和了る』。それが私の力)
淡(今の手、ロン和了りかツモ和了りか……たったそれだけで、13飜が4飜にまで
下がる、未完成の力)
淡(だから、完成した強さを持つテルにはまだ及ばない。
――でも、あなたたちを倒すにはそれで十分)
淡(――見せてやる。宇宙の闇を)ゴッ
末原「……」ゾクッ
咲「……」
白糸台:137200
清澄:124400
姫松:88200
有珠山:60200
東三局:一巡目
咲「……」
咲(感じる……何かとても大きな力がこの卓に働いてる。迂闊には動けない……)
咲「……」⑨筒
末原(と、とにかく白糸台に連荘はさせたらあかんねん。ここは安手で流すしかあらへん)
末原(ちょうど配牌もいい。喰いタンで和了ってしまお)一萬
淡「――ふふ」
末原「!」ビクゥ
末原(そ、その笑い方やめて! ロンされたかと思って驚いてまうやん!)
淡「間抜けた顔。まだ一巡目だから、誰かが和了るには早い……そう高を括って
安心しきってるね」
末原「…………え?」
淡「気づかないの? もうここはあなたたちがいつも呑気に麻雀を打ってる卓とは全く
別次元の場所――『宙の中』なんだよ?」
パラララララララ……
末原「……………………ぇ?」
二三四五六七八九3455赤5
淡「――人和。おまけで一通平和ドラ1。16000」
末原「――――」
実況『れ、人和炸裂――! これは珍しい役が飛び出しました。人和は本大会では4飜として
採用しています。が、こんな役はここ数年一度も出ていません!』
実況『末原選手、これで3回連続大星選手に満貫以上を振り込んでいます』
末原(人和……? なんやそれ……地和の『成り損ない』とでも言うんか……。
こんなん、ルールさえ違えば役満やんか……!)カタカタ
淡「――ふふ。震えてるね」
末原「……!」ビク
淡「でも、まだだよ。血の気が凍るには……まだ早い」
淡「――さあ、私の親番だね」ゴッ
末原「ひっ……!」カタカタ
東四局
末原(だ、大丈夫や。今は白糸台が親番。私が一巡目で振り込んでも人和はない……!)
末原(地和の成り損ないやって言うんなら、あんな速攻の手は子のときにしか……!)
淡「――ふふ」
末原「……!?」ゾクッ
淡「ダブルリーチ」2筒
末原「――!」
末原(ぁ――て、てんほ……)
末原(こ、こんなん無理や……捨て牌もないのに、危険牌なんかわかるわけない……)
末原(いやや、振り込みたくない――!)
咲「――カン」
末原・淡「!?」
咲「――ツモ。嶺上開花」
1133456777 1 2222
咲「3000,6000です」
淡「……はい」ジャラ
末原「……」ジャラ
末原(な、なんやこれ……なんやこれ……)
末原(私まだ一回もツモってないのに……こんな……まるきり蚊帳の外やないか)
末原(いや、まだや……まだまだいける。こんなことでメゲたらあかん!)
淡(配牌でその手……確実に槓材を揃えて和了る力……)
淡(私の支配は消えてない。じゃあこれは純粋に、咲ちゃんの支配力が上回ったってこと?)
淡「……」ギリ
淡(やってくれるじゃん。いいよ、面白いよ)
淡(思い知らせてやる……)
咲「……」
白糸台:148400
清澄:135200
姫松:59200
有珠山:57200
※牌の表記は索子「1」萬子「一」筒子「①」でいきます
わかりづらくてごめんなさい
南一局
有珠山「……」カチャ
末原「……」カチャ
末原(今度は六巡目までこれた。でもまだ白糸台がどんな手を張ってるかわからん。
高めは狙うけど、無茶はできん。常に警戒しとかなあかん)
末原(白糸台の捨て牌……字牌もなしに索子と筒子ばかり切ってる。萬子の染め手か
……まさか、国士ちゃうやろな)
淡「……」カチャ
咲「……」カチャ
一一二二三三七八九九九①③
淡(河だけ見れば萬子で染めてるように見えるはず。でも実際は②筒待ち)
淡(成り損ないも絡まないダサい手だけど、今はこれでいい)
有簾山「……」②筒
末原「……」②筒
淡「……」カチャ
実況『大星選手、有珠山と姫松からの和了り牌を見逃した! これはあくまでも
清澄を狙い撃ちするということか――!?』
淡(雑魚から毟ったって私の気は収まらない。咲ちゃんから直撃もらわないとね)
淡(分かってるんだよ咲ちゃん。②筒、溢れてるんでしょ? 早く切りなよ)
咲「……」カチャ
二二四五②22245678 六
実況『宮永選手、六萬をツモった! しかしこれで②筒が溢れてしまった。これは
振り込んでしまうか――!?』
咲「……」4索
淡「……!」ピク
実況『おっと、宮永選手、聴牌と三面待ちを崩して4索切り――!? 結果的に
大星選手への振り込みは回避できたものの、これはどういうことでしょうか』
淡(……聴牌に取らない……? 私の当たり牌を読まれてる? でも、これじゃあ
咲ちゃんも和了れない。それともチンタラ回し打ちするつもり?)
私なら十分引ける。それもそう遠くない、数巡後に)
淡(溢れた牌を残して回し打ちなんてしてたら、私の速度に敵うわけない。
――それでも、咲ちゃんが勝てると確信してるんなら……私には『絶対に引けない』と
思ってるってことだ。②筒は私のツモれる位置にない。……つまり)
咲「……」カチャ
二二四五六②2225678 二
咲(――四枚目の②筒は、嶺上牌にある。淡ちゃんがツモることはない)
咲(私は次に2索をツモるから、それでカン……②筒を引いて嶺上開花……!)
淡「……」
淡(……そういうこと。あくまで嶺上開花に拘るんだ)
淡「……ふふ」
末原「……!」ビク
淡(それなら――)
淡「……」タン 七萬
有珠山「……」九萬
淡「――カン」カチャ
一一二二三三八八九九九①③ 九
咲「!?」
咲(あ、そ、その②筒は、私の――!)
ゴォッ!
一一二二三三八八①③ ② 九九九九
淡「ツモ。嶺上開花。400,700」
咲「うぅ……」
淡「ふふ」
咲(私が淡ちゃんの当たり牌で和了ろうとしてたことが読まれた……?
まさか嶺上開花を横取りされるなんて……)
淡(馬鹿にしないでよね咲ちゃん。私の和了り牌を握り潰した上で、その牌で
ツモ和了ろうなんて、ちょっと調子に乗り過ぎだね)
淡(……とはいえ、私も満貫手を1飜手にまで下げられちゃったか)
淡(――そういえば、こんな安い手で和了るのなんて何年ぶりだろう。
テルにかっこ悪いとこ見せちゃったな)
淡(テル……私は咲ちゃんに勝てないって言ってた。今のところ得失点差では1000点
くらい勝ってるけど、これじゃ互角だって言われても仕方ない)
淡(テルならきっと、もう二位に五万点差つけててもおかしくない。なのに私は
たったプラス1000点……?)
淡(私は――私は世界でただ一人、テルの隣を歩ける存在じゃなきゃだめなんだ。
こんなところで咲ちゃんなんかと『いい勝負』してる場合じゃない)
――打ってみればいい。淡の実力なら、それでどっちが勝者か判断がつく――
淡「……」ギリ
淡(いいよテル。見せてあげる……!)ゴッ‼
南二局
実況『さあ前半戦も南二局に突入しました。清澄と白糸台の両校が凄まじい活躍を見せる中、
有珠山は焼き鳥状態、そして姫松の末原選手は既に39000点の失点となっています』
実況『そしてその姫松の親番。末原選手、この親はなんとしてもものにしたいところでしょう』
末原「……」
末原(こんなこと言ったら主将には叱られるやろうけど、私は白糸台を抜いて一位抜け
なんて狙ってへん。もちろん決勝戦では白糸台も倒すつもりや。でも今この場は、とにかく
二位抜けでもいいから決勝を目指すことが優先)
末原(――そう思ってたのに、二位の清澄との差はもう取り返しのつかんところまで来てる。
……なんとしてもこの親で連荘して差を詰めなあかん)
末原「……」カチャ
一二二三三四四六七八九九発 中
末原(親番でめっちゃええ配牌や……と言いたいところやねんけど、役牌が二つ……)
末原(今まで打ってきてここまで役牌を切りたくないと思う対局は初めてや。それも、
相手は平気で人和なんか和了りよるし……。有り得るで、人和小三元なんてふざけた手が、
この白糸台の大将に限っては)
末原(でも、じゃあこれ持っとくんか? 仮にどっちかを頭にできても、もう片方は
切らなあかん。どっちも抱えるつもりならチートイツしかあらへん。せっかくの親番……
それもこんなええ配牌でそんなことやっとったら、勝てるもんも勝てへん。攻めるんや!)
末原「……」中
淡「ポン」
末原「!」ビクッ
末原(も、もっとった……やっぱり配牌から中の対子……)ブルッ
咲「……」カチャ
有珠山「……」カチャ
末原「……」カチャ
一一二二三三四六七八九九発 赤五
末原(じゃあ、やっぱり持っとるんか? 発の対子……まさかこれで和了るなんてことは……)
末原(切りたくないけど……でも切らな……まだ二巡やで? 二巡で11飜以上の手が
入って聴牌しとるんや。勝負するしか……ない!)発
淡「ポン」
末原「うっ!」ビクッ
末原(ぽ、ポンか……よかった……い、いやよくない。小三元濃厚やないか)
末原(でも、もし白糸台が聴牌やったとしても、うちもこれで張った。ダマでも十分やけど、
あと1飜増えるだけで24000点が36000点にまで跳ね上がる)
末原(ツモれれば最高やけど、もしロンなら……せっかくの三倍満を倍満どまりに
してまう。リーチをかければ三倍満確定なんや)
末原(――あかん……リーチなんてもってのほかや。狙い撃ちされてお終いや。そんな
甘い相手ちゃうで)
※ドラは基本表記しませんが、役宣言でドラがあったら「ああ、これがドラなのかな」くらいに補完してください
末原(でも、もし……もし和了れるなら、リーチかけるべきちゃうんか? こんなええ流れ
もう来えへんかもしれん。今が勝負のときちゃうんか? うちは今二回振り込みの危険を
犯して役牌を切ったんちゃうんか。そこまでやったのに結局保身に走るんか? くそ、
どうすればええんや……)
淡「……チッ」
淡「あのさ」
末原「っ、な、なんですか?」
淡「ざ……っ、ふー……えっと、早く打ってもらえます?」
淡(なに悩んだって同じだよ)
末原「あ、す、申し訳ありません」アセアセ
末原(……行くしかない! 勝負や!)
末原「リーチ!」
淡「……」
淡(リーチ、か……)
淡(――ここで潰すか? いや、焦らなくてもこんなのいつでも始末できる)
淡(それより、私のこの手……テルにいいとこ見せようと思ったのに、こんな無様
な手が揃うなんて……最悪だ。まだ本調子じゃないのかな)
淡(こんな手で和了りたくないな……もういっそ姫松に和了らせようかな。とりあえず、
この巡は放置してみるか)
咲「……」カチャ
末原「……」カチャ
末原(こい……! 頼むわ、来て……!)
末原「……」
末原「……」チラッ
白
末原「…………ぁ」
末原(う……嘘やろ。こんな……な、なんでうちにばっかりこんな牌が……クソ……!)
末原「くぅ……」
淡「……」フー
淡(白をツモったのかな。まったく、事ここにきてそんな牌をツモるなんて、よっぽど
場を支配する力に乏しいんだね。そのくせ他者の支配に抗う力もないなんてね)ヤレヤレ
末原「……」
末原(行くしかない……行くしかないんや!)
末原「……」タン 白
有珠山「……!」
有珠山(白? これは、白糸台の当たり牌じゃ……)
淡「……」
咲「……」
末原「……?」
有珠山「……え、っと……」
有珠山「ツモってもいいですか?」
淡「当たり前でしょ。誰も鳴き宣言してないんだから」
有珠山「あ、はい。じゃあ……」カチャ
末原「……」
末原(は、白が通った? 杞憂やったんかな……いやでも、中と発を鳴いて、こっから
どんな役満の成り損ないになるって言うんや……?
小三元もない。三暗刻もない。……まさか三槓子? 有り得なくはないけど……)
末原(――いや、そうか。白糸台は小三元を和了るつもりやったけど、まだ聴牌できて
なかったって可能性もある。なら白糸台はまだ一向聴以下。私の方が早い――!)
末原(和了るで、親の三倍満!)
咲「……」カチャ
咲(まずいよ……間に合わない)
有珠山「……」カチャ
淡「……」カチャ
淡「っ……」ピタ
淡「……………………チッ」
末原「……?」
末原(なんや、今度は自分が長考? 私の親リーに対して危険な牌を掴んだんか?)
末原(ええで……振り込め……振り込め……!)
淡「……………………ま、いっか」
末原(――振り込め!)
淡「ツモ」
末原「え?」
西西西南南南① ① 中中中 発発発
淡「混老頭トイトイ混一色西南中発ドラ2、6000,12000」
末原「」
末原「……」クラッ
末原(ふ、ふざけなや……)
末原(なんやその手!)
末原(白糸台の最後の手だしは北。つまり字一色聴牌やった。それをわざわざ落として
の①筒待ち……? 有り得ん。そんなん有り得んやろ)
末原(混老頭も清老頭の成り損ないってこと? 役牌のポンからてっきり小三元やと
ばかり思とったけど、そんなんもあるんか……どういうことなん)
淡「……」
淡(でもこんなの、清老頭の成り損ないとは言えない。私の混老頭ってのは、1,9牌
の刻子を四組揃えて、頭だけ字牌とか、そういうのであるべき。これじゃ字一色の
成り損ないじゃない)
淡(星の引力で場を支配したはずなのに、どうしてこんな恰好悪い手が入っちゃったんだろう)
咲「……」
咲(①筒待ち……か)
白糸台選手待合室
誠子・尭深「……」
菫「……清澄。なるほど、お前が買うだけのことはあるな、照」
照「……」
咲の手牌
一一九九①⑨⑨1199白白
菫「今の局、確かに大星の支配は効いていた。だが同時に、清澄の支配も行き渡っていた。
大星は小三元の素は手に入れたが、同時に清澄も白を所持。そして清老頭に必要な
1,9牌の半分を清澄が独占する形になってしまった。
結果、大星はあんな歪な形での混老頭しか和了れなくなった、ということか」
菫(大星、そいつは今までの奴とは訳が違うぞ。お前は清澄を出し抜いて和了ったつもり
かもしれないが、実際には清澄も①筒待ち。あと一手ツモ巡が違っていれば、混老頭を
和了っていたのは清澄なんだ。侮ると、お前でも本当に……)
菫「大星ほどではないにせよ、場を支配し、相手の手配を見透かす力。
それに、槓からのブースト。そして嶺上開花。確かに強敵だな」
照「……違う」
菫「ん?」
照「あの子の本当の強さは、そこじゃない」
菫「どういうことだ照。……お前、やっぱり清澄の大将のこと知ってるのか?」
照「……」
南三局
白糸台:173700
清澄:129700
姫松:45800
有珠山:50800
末原「……」カチャ
末原(あ、あかん。まだ前半戦やのに、マイナス5万点って、こんなんあっていいはずない。
しかもまたラス転落……。前の試合で清澄警戒しとったけど、白糸台……こっちがやばすぎる)
末原(せめてもっとこの人の牌譜があれば対策もできたのに、この大星淡、今大会では
予選の決勝以外打ってない。それ以外は全部大将に回ってくる前に終わってたから)
末原(せめて和了りの特徴だけでも知っておきたかった……けど、そんなん言っても
なんも始まらへんし、まずは一回和了ることや。ここまで和了れてるのが清澄と白糸台
だけとか、こんなこと許しとったらあかん)
末原(もう安手でもなんでもいい。一回和了りたい。安手で場を進めるのはホンマは愚行やねんけど、もうこの際仕方ない)
一一二三三七七八八九東東白 三
末原(よし、安手どころか、倍満手。今回は五巡目まで来てるし、
白糸台にも速攻の気配はない。大きく負けてる身としては勝負したいところやけど
……この白。これどないしよか)
淡「……」カチャ
末原(白糸台はツモ切り。いま河には役牌が一つも出てない……まさかまた小三元?
あかん、この白は切られへん。なら……安くなるの覚悟でチートイツや)三萬
淡「……」
淡(姫松は回し打ちか。白は出ない……?)
111222白白中中中発発 9
実況『大星選手、またしても非常に高い手を張っています! 三暗刻トイトイ小三元ホンイツ役牌二つにドラの1索が三枚……
数え役満に到達します。いえ、ツモ和了りすればそもそも四暗刻――! とてつもない大物手です!』
淡(……違う……私の麻雀はまだ完成していない。だからまだ役満は和了れない)
淡(私は今までの麻雀人生の中で、役満を和了ったことは一度もない。何度も狙ったけど、一度も和了れなかった。どんなに格下が相手でも)
淡(テルに出会って、私の力はまだ未完成なんだってことに気づいた。いつかテルを超えた
とき、私の麻雀は、最高の形で完成するはず。でも、今はまだその時じゃない)
淡(……だからきっと、この手じゃ和了れない。和了るなら、飜数を下げないと……今
14飜だから、最低でも二つは下げないとね。どうやって下げるか……)
咲「……」カチャ
咲「……」2索
淡「――っ!」
淡「カン」カチャ
111白白中中中発発 2222
実況『おっと? 大星選手、宮永選手の捨てた2索をカン。この鳴きは……どういう
ことでしょうか。無意味に飜数を下げただけに思えますが』
淡(喰い下がりでホンイツが1飜下がって、三暗刻も消えて合計11飜の手になった。この手なら和了れるはず)
淡(でも……なんか、違和感。咄嗟に鳴いちゃったけど、今の2索……あのタイミングで咲ちゃんがあれを捨てたのは偶然? それとも……)
咲「……」カチャ
咲「カン」
淡・末原「!」
456④⑤⑥二四五白 発 ⑦⑦⑦⑦
咲「……」二萬
淡(……? 嶺上開花じゃない? なら、今のカンは……)
咲(淡ちゃんが嶺上牌からも有効牌を取れるんなら、王牌に発を置いておくのは危険
だよね。私も和了りづらくなっちゃうけど、大きい手を淡ちゃんに和了られるよりはいい)
淡(……まさか私にわざとカンさせて、次の嶺上牌を狙ったの? ……あじな真似してくれるじゃん)
淡(でも、どうするの? 姫松が白を一枚もってる以上、その白はもう頭にもなれない
完全な不要牌。仮に姫松が白を切っても、頭ハネの権利は私にある。咲ちゃん、もうこの
局で和了れないんだよ?)
淡(それに、私の感じだとまだ発は出切ってない。あと一枚は山にあるはず。私がそれを引いたら……
――いや、それだと三暗刻がつく。13飜になるから和了れない……!?)
淡(まさか……私が役満以上を和了れないのを見越して……?)
咲(淡ちゃん、『成り損ない』しか和了れないって言ってた。なら、役満は和了れないってことだ。この局ではそれを確かめたい。複合役ありで数え役満なら出せるのか、それも
できないのか。それがわかれば、その情報は後半戦できっと活きてくる)
咲(私の予想では……多分和了れない。じゃないと、今の2索鳴きは説明できないもん)
淡「っ……」
淡(……なんにせよ、咲ちゃんはこの局では和了れない。もう咲ちゃんを警戒する必要もない。
なら肝心なのは有珠山と姫松だけど、有珠山はまだ聴牌にも遠い。問題は姫松……)
淡(そこそこの手を張ってきてる。でもこっちも咲ちゃんと同じで余った白を持て余してるせいで
和了れない。なら、結局この局で和了るのは私ってことになる)
淡(手を上げるならともかく、手を下げるのなんて簡単――と言いたいところだけど、
生憎、そうもいかない。いま私が一瞬でも聴牌を崩せば咲ちゃんがすぐさま白を切ってくる。
当然姫松もそれに続いて白を捨ててくるだろうから、白が全滅……
私は山のどこかにある発を引くまで和了れない)
淡「……」
淡(最悪、この局は流したっていっか。あるいは唯一和了れる有珠山が和了ってもいいし、
もし有珠山が発なんか捨ててきたら、それで和了ればいい)
一一二二三三七七八八九東白 九
末原(きた! チートイツにするつもりやったけど、思いもがけずリャンペーコー
チャンタ混一色の倍満手になった。
白の単騎待ちなんがネックやけど、とにかく聴牌や。くそ、白さえ切れれば清一も絡めれる手やのに……)
淡(張ったか。でもその白は切れないし、もうツモることもできない。大きい手が出来て
喜んでるみたいだけど、その手、和了れないんだよ)
淡(有珠山もまだ一向聴ってとこか。これは流局かなぁ)
咲「……」カチャ
咲「……!」
咲(――発! ……四枚目の発がきた。淡ちゃんを避けるみたいに、一手遅れて私のところへ。
……やっぱり淡ちゃん、役満手は和了れないんだ。――よし、それだけ分かれば……)
咲「……」タン 白
淡・末原・有珠山「!?」
淡(え、白? ここで? なんで?)
末原「――ま、待ってください!」ガタッ
末原「ろ、ロンです! 16000点、頭ハネです!」
咲「はい」ジャラ
淡「……」
淡(差し込み……? なんでわざわざ。流せばいいじゃん、こんな局)
咲「……」
南四局
末原(なんとかラスからは這い上がれた。清澄から直撃取れたんも大きい。後半戦に
入る前に、もう一回くらい和了りたい。でも、今は白糸台の親番……無茶はできへん)
淡(さて、と。私の親か……)
淡(――行くよ!)ゴォッ!
咲・末原「……!」ビク
咲「……」
咲(……させないよ)ゴッ
淡(まずは役牌二つずつ)
発発中中白白東東
淡(効いてる。私の星の引力が、有効牌を引き寄せてるのを感じる)
淡(ダブルリーチで決めてやる……!)
発発中中白白東東西西13
発発中中白白東東西西13赤5八
淡(…………は?)
淡(ダブルリーチじゃない……!? 私の親番で? どうして……)
咲「……」カチャカチャ
淡(……咲ちゃん……あくまでも私に歯向かう気なんだね)
淡(でも、いくら足掻いたところで私に大きな手が来てることに違いはない。一気に
ツモって終わらせてやる)
淡「……」八萬
咲「……」②筒
淡「ん?」
末原(嶺上開花やないんか)ホッ
淡(嶺上開花じゃないなら、今の槓は多分、私のツモる牌をずらすのが目的。
東をツモるつもりだったけど、邪魔されちゃったか)
淡(東をツモったのは有珠山……こっちはもうオり気味だから生牌の東なんて切ってこないな)
淡(まあいいか。なら東を落として中を頭にすれば――)
淡「……」カチャ
淡「……」東
咲「……!」カチャ
咲「……」白
淡「ポン」
咲「……」発
淡「……? それもポン」
末原(……ちょっとどういうつもりや清澄。白糸台の親のときに役牌を二つも連続で
捨てるなんて。よっぽど大きい手が来てるんか?)
淡「……」カチャ
中中東東135 6 発発発 白白白
淡(一向聴か。次巡に東を引いて、その次に2索を引いて和了りだ)
咲「……」カチャ
咲「カン」
淡・末原・有珠山「!」
淡(まさか、もう?)
末原(は、早すぎるやろ)
末原「……」カチャ
有珠山「……」カチャ
淡「……」カチャ
淡(――――ん?)ピク
淡「――ッ!」
淡(なっ……こ、これ……!)
中中東1135 中 発発発 白白白
実況『おーっと、大星選手、ここでついに中をツモった――! これで大三元確定!
他校に止めを刺す一撃となるか――!?』
淡「…………」
淡(違う――『掴まされた』!)
淡(さっきの局で、咲ちゃんは私が役満手以上を和了れないことを見抜いたんだ。
この中をツモったことで大三元は確定――つまり、『もうこの手じゃ和了れない』!)
淡(今の槓は東をツモる順をズラす以外に、私に中をツモらせる意図もあったんだ)
淡「……」ギリ
淡(ならこの中を捨てればいい――ってわけにもいかない。私の麻雀を見抜いたんなら、
この中を捨てるのは承知の上のはず。なら、咲ちゃんの当たり牌はこの中で間違いない。
じゃないとこれを掴ませる意味がない。逆に私がこれを持ち続ける限り、咲ちゃんも和了れない)
淡(……またこの流れ? 私も和了れない。でも咲ちゃんも和了れない。このまま他家が
和了るか流局? 一体なにが目的――いや……なるほど。そういうことか)
淡(……いいよ、咲ちゃん。認めてあげる。確かに、あなたなかなか強いよ。
あなたが白糸台にいれば私も少しは退屈せずに過ごせたかも)
淡(確かに咲ちゃんは私の能力の弱点を見抜いて、その隙を突いてきたかもしれない。
面白い力も持ってるし、白糸台でもナンバー3には入れただろうけど、でも、所詮は
そこまでってことだね)
淡(咲ちゃんは全力を出しても、私に和了らせないようにするのがやっとなんだ。自分の
和了るチャンスを棒に振ってでもしないと、私を止められない。最悪、いざとなれば
さっきみたいに他家に差し込んででも私の和了りを防ぐしかない)
淡(その結果が、この点差だよ。前半戦だけで得失点48000点差。チーム毎に見れば
60000点差。それが私たちの実力の差だよ、咲ちゃん)
淡「……」東
咲「ロン」
淡「…………は?」
四五六4赤56④⑤⑥東 東 8888
咲「三色ドラ2。3900です」
淡「」
実況『宮永選手、大星選手の大三元を阻止――! 独走状態の白糸台に一矢を報いた――!』
淡「……」ジャラ
実況『前半戦終了――! 前半戦は清澄と白糸台の競い合いでしたが、終わってみれば
白糸台の完全一人浮き状態――! このまま白糸台が三連覇に繋がる勝利を掴むのか――!』
ごめんなさい。正しくは有珠山の捨て牌でカンです
白糸台:169800
清澄:117600
姫松:61800
有珠山:50800
末原「……お疲れさまでした」
有珠山「お、お疲れさまでしたぁ……」ガックリ
淡「……おつかれさまでした」
咲「お疲れさまでした」ペッコリン
廊下
淡「……」カツカツ
淡(最後の一局……待ちは中じゃなかった)
淡(……私の考えを読まれた。私が中を切らずに東の対子落としをすると見て、そこで
狙い撃ちしたんだ。――くそっ)
淡「……でも、私の勝ちだから」
そうだ。清澄は前半戦でたったプラス4600。私はプラス44800。
誰が見たって私の勝ちだ。照との賭けは、私の勝ちで文句なんてないはずだ。
咲ちゃんは私に一矢を報いたに過ぎないんだ。
ガチャ
淡「ただいま」
菫・尭深。誠子「……」
淡「……? なに? 三人とも変な顔して」
菫「いや、なんというか……」
淡「ねえテル、見てたでしょ? 私の勝ちだよ。前半戦だけで45000点のプラス。
賭けは私の勝ちってことでいい?」
照「まだ後半戦が残ってるから」
淡「ふふ。照も往生際が悪いなぁ。安心してよ。別に変な罰ゲームなんてさせないよ。
そーだなー。私の家に三日くらい泊まりこんでずーっと麻雀打とうよ。他にプロを二人くらい呼んでさ」
照「いいよ。私が負けたらね」
淡「もう、どう見たって私の勝ちじゃん。菫もそう思うでしょ?」
菫「……」
淡「……菫?」
菫「照の言った通りになった」
淡「…………は? なにが?」
菫「照がな、言ったんだ。清澄の大将は、前半戦をプラマイゼロで終わるって」
淡「プラマイゼロ?」
菫「清澄は前半戦でプラス4600。25000点持ち30000点返しで考えたら、
プラマイゼロだ」
淡「――」
淡「……偶然でしょ、ただの」
菫「いや、気になって調べてみたら、清澄は一つ前の試合でも同じことをやってる。
それに県予選の個人戦でも何度か。照が言うには、彼女はこれを意図的にやってるらしい」
淡「……狙って……プラマイゼロ……?」
菫「……」
淡「……それで? 仮にそうだとしたらなんなの? 点数調整と勝つ技術は別でしょ?
実際には私と咲ちゃんの間には得失点が40000点差もあるんだから、私の勝ちじゃん」
照「淡は毎試合プラマイゼロにできる?」
淡「そんな訳わかんないことしようとも思ったことないから分からないよ。でも出来るんじゃない?」
照「でも菫とか白糸台の一軍メンバーには出来ないんじゃないか?」
淡「まあ……毎回確実に、ってことだったらかなり格下じゃないと厳しいかもだけど」
照「そういうことだよ」
淡「なにが?」
照「つまりあの清澄の大将は、〝淡のことを相当格下だと思ってる〟ってことだよ」
淡「……」
照「確かに今のままなら白糸台は一位通過するだろう。でも、それで清澄に勝ったと言える?」
淡「……」
淡「手加減されてるっていうの? この私が?」
照「どう捉えるかは淡の自由」
淡「……」ギリッ
淡「……いいよ。わかった」
淡「後半戦、私は死んでも咲ちゃんにプラマイゼロなんてさせない。白糸台も一位で通す。
麻雀の内容でも勝つ」
淡「それができたら、文句なしで私の勝ちってことでいいよね?」
照「ああ。そこまで出来れば、私の完敗だ」
淡「じゃあそれでいいよ。一応、テルも罰ゲーム考えといてよ。まあ無駄だろうけど」
ガチャ、バタン
菫「……本当なのか、清澄が狙ってプラマイゼロをやったなんて」
照「まず間違いない」
菫「……信じられん。あの大星を相手に……。お前はどう思うんだ? 本当に大星相手に
二連続プラマイゼロが出来ると思うか?」
照「私はそう賭けた」
菫「……そうだったな」
照「でも、かなり難しいと思う」
菫「ならどうしてこんな賭けをしたんだ。いくらなんでも分が悪すぎるぞ」
照「勝ち負けはどうでもいい。私はただ、知りたいだけ」
菫「知る? 何をだ」
照「淡ならあの子の……咲のプラマイゼロを止められるのかどうか」
菫「照……」
照「もし淡に咲が止められるなら……」
照「きっと、私にも止められる」
咲「……ふう」
咲(淡ちゃん……すごく強かった。お姉ちゃんと互角くらいの力は持ってる
……お姉ちゃん……見てくれたかな。私の麻雀。私の伝えたい事……お姉ちゃんに伝わったかな)
淡「咲ちゃん」
咲「あ。淡ちゃん」ぺっこりん
淡「……」
咲「……? どうかしたの?」
淡「さっきのプラマイゼロ、狙ってやったの?」
咲「……!」ピク
淡「どうなの?」
咲「……ごめんなさい」
淡「なんで謝るの?」
咲「だって……」
淡「……」
淡「……次の後半戦で、もう一回プラマイゼロにしてみなよ」
咲「え?」
淡「それができたら、咲ちゃんのこと認めてあげる。私よりも強い雀士だってね」
咲「あ……うん。どうも」
淡「私に認められるかどうかなんて興味ないって感じだね」
咲「え、いや、そんなことないよ」アタフタ
淡「……言っとくけど」
淡「私に勝てないようじゃテルには一生勝てないよ」
咲「――ッ!」
お姉ちゃんの後輩、雑魚いよ
淡「やってみなよ、プラマイゼロ。私は全力で阻止する。絶対にプラマイゼロになんてさせない。
プラマイゼロできなきゃ、咲ちゃんって別に凄くもなんともないよね。正直、天江衣にも劣ってるよ。
当然、私にもね。前半戦どおりの実力って感じ」
咲「……」
淡「でも、私が全力を出しても……それでもプラマイゼロにできるんなら、認めてあげる。
高校生で一番テルに近い打ち手だって」
咲「……お姉ちゃんに……」
淡「それだけ。じゃあ、後半戦よろしくね」
ツカツカツカ
咲「……」
咲「よろしくね、淡ちゃん」ゴッ!
実況『さあ、ついに準決勝も後半戦に差し掛かりました。独走状態の白糸台を止める
ことはできるのか――!」
四人「よろしくお願いします」
東:有珠山
南:清澄
西:姫松
北:白糸台
咲「……」
淡「……」
淡(咲ちゃん、やる気だね、プラマイゼロ)
淡(させるもんか。私を相手にそんなふざけた真似、絶対許さないから)
東一局。親:有珠山
有珠山:50800
清澄:117600
姫松:61800
白糸台:169800
淡(この一試合、もう単純な点の取り合いじゃない。私と咲ちゃんのプライドをかけた勝負だ)
私の勝利条件は三つ。
一つ。白糸台が一位通過すること。
二つ。咲ちゃんにプラマイゼロをさせないこと。
三つ。麻雀の内容で咲ちゃんに負けないこと。
淡(私のリードは5万点以上ある。そうそうひっくり返されることはない。白糸台の
1位通過っていう条件はほぼクリアされてると言っていい)
淡(そして咲ちゃんのプラマイゼロを阻止すれば、連動して内容でも勝ったって言えるはず。
とにかく咲ちゃんをプラマイゼロにしないこと。それができれば私の勝ちだ)
咲ちゃんのプラマイゼロを潰す方法は大きく分けて三つある。
まず、咲ちゃんに和了らせない。プラマイゼロなんていう微調整は咲ちゃん自らが動かないとできるはずがない。
必ずどこかで和了って点数を調整してくる。私はそれを叩けばいい。
次に、プラマイゼロから大きく引き離す。プラマイゼロになるのはプラス4500から5400まで。その点数から
大きく咲ちゃんを引き離すだけで、プラマイゼロはぐっと難しくなる。
マイナスならベストだけど、最悪プラスに引き離してもいい。そうなると咲ちゃんは自分から
他家に振り込んで点数を調整するしかない。そこで私が咲ちゃんよりも先にどこかに差し込むか、なんなら私が先に和了ればいい。
最後は、オーラスで刺す。オーラスまでに私がトップ、かつ咲ちゃんがプラマイゼロの状態でなければ、
最後に私が和了るだけで咲ちゃんのプラマイゼロは不可能になる。和了る際に咲ちゃんが
プラマイゼロにならないように調整するだけでいい。
淡(この後半戦、私は和了りまくればいいってわけじゃない)
淡(私が和了りまくって20万点とったとしても、咲ちゃんがプラマイゼロにすることは不可能じゃない。試合では勝っても、勝負に勝ったことにはならない)
淡(私自身も適度に点数を調整していかないと。時には和了りを見逃したり、他家に
振り込んだりすることも必要だね)
淡(……ふふ。こういう趣向の麻雀は今まで打ったことないよ。なかなか面白いね。
――でも、最後に勝つのは私だよ、咲ちゃん)
淡(じゃ、まずは軽く挨拶代わりに……)
淡「ツモ」
発発22234666888 5
淡「混一色三暗刻。2000,4000」
末原「なっ……!」
四暗刻まで見える手……白糸台、しょっぱなから全開かいな)
末原(赤5索じゃなかったのだけが救いか……ドラが乗ればハネ満まで伸びとった)
淡(……そういえば菫が前に言ってたな。この手を和了るなら赤5索は狙わないのか、って)
淡(分かってないよね皆。それだと5索が全部赤くなるじゃん。五本の内一本だけ赤いからこそ
『完璧な成り損ない』なんじゃない。赤5索なんてダサイ手、ツモってもイラついて崩しちゃうよ)
実況『大星選手、肩慣らしとばかりに満貫をツモ和了り――! やはり白糸台を
止めることはできないのか――!?』
末原(あかん……どっかで流れを掴まな。ただでさえ清澄とも大差なんや。このままじゃ
二位で決勝進出も厳しい)
有珠山「うぅ……」
淡(姫松と有珠山はどうやって二位になろうか考えてるのかな? ふふ、まあせいぜい
低い次元で足掻いてればいいよ)
淡(さあ、咲ちゃん……そろそろ本気出してよ)
咲「……」
姫松(……配牌は悪くない。一巡目はまず北を切って、それから……)
咲(淡ちゃん……すごいプレッシャーだ。今まで何度かプラマイゼロを防ごうとしてきた人は
いたけど、その中でも一番手ごわい相手だ……)
咲(でも……淡ちゃんに勝てれば、お姉ちゃんに一番近い打ち手だって認めてもらえる。
私は……お姉ちゃんにもう一度会うために来たんだ。こんなところで負けられない……!)
咲(お姉ちゃん……あの日のこと、許してもらおうとは思わない。ただもう一度だけ……
お姉ちゃんと話がしたい)
咲「……」カチャ 北
淡「ロン」
咲「え――」
234456三四五①①①北 北
淡「人和。8000」
淡「聴牌気配すら読めなかった? 不注意すぎるよ咲ちゃん」
咲「……」
淡「あのさ。私に宣戦布告しといて対局中に他のこと考えてる余裕なんてあるの?」
咲「……!」ビク
淡「あんまりイライラさせないでね」
咲「……うん」
末原「……」
末原(あ、危なかった……清澄が北を切らんかったら、私が切ってた……白糸台……ほんまにバケモノやないか)
淡(私はもう十分リードを取ってる。多少振り込んででも、咲ちゃんの和了りを防げばいい)
淡(咲ちゃんが和了りそうになったら姫松か有珠山にでも差し込んで咲ちゃんの点数を変動させない。理論上はこれで勝てる)
咲「……」カチャ
淡(咲ちゃんが張った。待ちは索子が臭い。……流すか)
淡「……」カチャ
末原「ポン!」
淡「……」カチャ
末原「……!?」
末原「ろ、ロンです! 5800」
淡「はい」チャラ
咲「……っ」
淡(ふふ。悔しそうにしてる。前半戦で私に点を取られ過ぎたね。いくらでも差し込んであなたの
和了りを阻止してあげるよ)
咲「……」
咲(そう来るのか……困ったなぁ)
末原(白糸台が振り込むなんて珍しいな。これは、流れが来てる……? 今がチャンスや)
末原(親番が続行できるし、ここは軽くでも連荘目指すべきやろか)
東三局
咲(……まずは軽く和了らないと。これ以上振り込んでマイナスに傾くのはよくない)
淡(――って、思ってるんだろうけど。そうそう簡単にはいかないってこと教えてあげる)
淡「カン」 白
末原(? 白を暗槓……? なんでわざわざ)
淡「もいっこ、カン」 中
咲・末原・有珠山「!?」ビク
末原(しょ、小三元……!?)
咲(しかも槓ドラが……淡ちゃんの鳴いた中!)
淡(ふふ、どう? 和了れば倍満以上確定の手だよ。これをツモ和了りすれば咲ちゃんはマイナス6000)
淡(更にマイナスに傾く上に、有珠山がもう三万点弱しか残らない。私なら一瞬で消しトばせる。
そうすればプラマイゼロどころの話じゃないよね?)
咲「ん……」
淡(ほら、そういう事態を防ぐにはどうすればいいの、咲ちゃん?)
咲「……」カチャ
有珠山「! ろ、ロン。3900です」
咲「……はい」チャラ
末原「……」ホッ
淡「ふふ」
淡(そう。私の和了りを防ぐには自分から他家に差し込むしかないよね。私が大きいのを和了って
有珠山がトぶよりはずっと確実。それが正解だよ、咲ちゃん)
淡(でもこれから私が大きな和了りをしそうになる度に咲ちゃんはそれを繰り返さないといけない。じゃないと他家が
トんじゃうしね。その度に咲ちゃんはマイナスに傾いて、プラマイゼロから遠ざかっていく)
咲「……」
淡(まあ、そんな『他家が弱かったからプラマイゼロを防げた』みたいな勝ち方はしないけどね。
あくまで正面から咲ちゃんを叩き潰す。でも、咲ちゃんはその可能性も考慮しないといけない)
淡(相当動きが制限されるはず。さあ、これでもまだプラマイゼロ出来るって言うならやってみせてよ)
南四局
淡「……」カチャ
淡(私の親番か。さーて、どうしてあげようかな)
淡「……」ゴォォォォォ!
咲(あ、しまった……!)
淡(ふふ。もう私の星の引力を止める気力もないのかな? 遅いよ、咲ちゃん)
淡「ダブルリーチ!」
咲・末原・有珠山「!」ビクッ
実況『出ました、大星選手のダブルリーチ――! 天和の『成り損ない』。しかしその威力は
絶大です――! さあ、他の三校はこれを防ぐことができるのか――!?』
淡(できるよね、咲ちゃん。別にむずかしいことじゃないよ)
淡(ほら、姫松が配牌で一向聴だよ。一巡待ってあげるから、差し込んであげなよ)
咲「……」
咲「……」カチャ
最強のキャラを作るにはそのキャラの心理描写を一切省くことが重要らしいな
打ってる最中の咲さんってそういうところあるよね
別に咲に限らず麻雀漫画はボコられる奴の視点で進むのが基本や
咲「……」カチャ
末原「あ、ロン! 7700!」
咲「……」チャラ
淡「ふふ」ニヤ
淡(どう? 身動きが出来ずに少しずつ窒息していくような感覚。まるで宇宙に
放りだされたみたいでしょ? もっと引きずり込んであげるよ……宇宙の闇へ)ゴォォ
淡(これで咲ちゃんは後半戦マイナス21600点。今の段階では倍満を和了ってもプラマイゼロには届かない)
淡(意識すればプラマイゼロなんて簡単に止められるもんだね)
咲「……」
もう咲ちゃんは戦意喪失したような面持ちだった。
今まで格下相手に得意げにプラマイゼロをやってきたんだろうけど、今回ばかりは相手が悪かった
ということだろう。続く南一局、親の有珠山が2600オールを和了った。それはまたしても
咲ちゃんがプラマイゼロから遠ざかることを意味していたが、咲ちゃんは何もできなかった。
続く南一局二本場――
淡「……」カチャ
東東南南西西北北白白発発⑦ ⑦
淡「……ツモ。4000,8000」
咲・末原・有珠山「!」ビク
淡(何の苦もなく字一色の鳴り損ない和了っちゃったよ。これで咲ちゃんはマイナス28200。
悪あがきもここまでかな?)
淡「あーあ。なんかがっかりだな。咲ちゃん、もっと楽しませてくれると思ってたのに」
咲「……っ」
淡「まるで張り合いないよ。この程度でテルに挑もうなんて、身の程知らずにも程があるよね」
咲「……」
淡「だいたい咲ちゃん、テルの強さ分かってるの? この私ですらテル相手に一度も
トップとったことないんだよ? 麻雀でテルに何を伝えたいのか知らないけどさ、
こんなんじゃテルも「弱いなぁ」としか思わないんじゃない?」
咲「……淡ちゃん」
淡「んー?」
咲「ちょっと……うるさい、かな」
淡「そう? 負けてるときは何でも耳障りに聞こえるものじゃないかな」ニコリ
咲「まだ勝負は終わってないよ。まだ私の親番が残ってる」
淡「そう、最後の親番だね。これを逃せば、残り二局でプラマイゼロにしないとだね。
――できると思ってるの?」
咲「お姉ちゃんに挑むなら……」
咲「それくらいじゃないと、駄目なんだよね」ゴォォッ!
淡「やってみなよ」ゴォ!
南二局
淡(咲ちゃんの親……喰いタンでも和了ってやろうかな。ふふ、咲ちゃん悔しがるだろうなぁ)ニヤニヤ
咲「――カン」
淡「お?」
咲「ツモ。嶺上開花。2000オール」
淡(案外あっさり和了られちゃったか。さっきの挑発でさすがに火が点いたかな?
まあそれくらいじゃないと面白くないけどね)
南二局
咲「……」カチャ
淡(……咲ちゃんが張った。でも安い。連荘狙いできたか。いいよ、受けて立ってあげる)
末原(清澄……張ったか? せやけど、ここはうちもオりれん。私の親は次の南三局。うちと清澄の
点差はまだ三万点以上ある。ここで逃げたら、次の親でケチついてまう気がする)
淡「……」カチャ
淡(四巡目で一向聴……珍しく私の手が重い。このままなら咲ちゃんに和了られちゃうか……)
淡(咲ちゃんの待ちは多分③⑥筒。私が振り込むことはないけど……他の二校が読めてるかどうか……)
淡「……」タン 赤5筒
有珠山「――っ、チー」 ④赤⑤⑥
淡(――よし。今のはただのドラ回収じゃない。この局数と点差でそんなケチな点棒拾っても仕方ないからね。
有珠山は⑥筒が危険だと察知してる。なら筋の③筒も切らないよね。よし、こっちは大丈夫)
淡(あとは……)チラッ
末原「……」カチャ
末原(張った! 溢れたのは③筒か……切りにくいけど……)
末原(――いくしかない!)カチャ
淡「……チッ」
咲「ロン。3400」
末原「っ……はい」チャラ
淡「……」
淡(いくら私でも姫松が振り込むのを止めるのはちょっと厳しいな。小三元ちらつかせて
オりさせることもできるけど、それならもう私が和了っちゃった方が早いか)
南二局
淡「カン」発
末原(っ……小三元か……いや、さっきの緑一色……?)
末原(いや、暗槓なら発を鳴いて役満一歩手前に出来る役なんかいくらでもある。
字一色。混老頭、四槓子、四暗刻……全部を警戒するなんか無理や。くっ……わざわざ
暗槓したのは他家の動きを牽制するためか)
淡(これなら姫松も有珠山も勝手にオりてくれるでしょ。さぁてと――)
咲「――カン」 4索
淡・末原・有珠山「!?」
咲「――ツモ。2600オール」
淡「――」ヘー
淡(4索……緑一色の大本命じゃん。お構いなしか……やっと全開ってわけ?)
淡(もうこうなると下手なハッタリは逆効果だね。さっさと和了っちゃう方が確実か)
実況『清澄高校の宮永選手、ここにきて親の三連続和了です。一位の白糸台とも、三位の姫松とも
大きく差が開いての二位。この連続和了は二位抜けでの決勝進出を盤石なものとするのか、
それとも一位の白糸台にすら食らいつく決意の表れか――!』
淡(私も咲ちゃんももう点数も順位も考えてない。あるのはただ、プラマイゼロへの調整のみ。
咲ちゃんは今マイナス11000点。オーラスで最後の調整をするつもりなら、ここは
満貫12000くらいを狙ってくるはず。そうすればプラス1000点。オーラスで3900を
和了ればプラマイゼロだ)
淡(させないよ……!)ゴッ
淡「……」カチャ
一一一二二三四六七八九九⑨ 九
淡(――よし。張った)
実況『大星選手、この局面で九連宝橙聴牌だ――! 五萬なら役満となります――!』
淡(ってことは、五萬は和了れないってことだ。九連を張ったらいつも清一になるから、ツモるのは
五萬子以外。多分次か、その次くらいに来る)
有珠山「……」カチャ
淡(有珠山……この点差でもまだ戦意喪失してないな。親番もないし、役満を狙うしかない状況)
淡(姫松以上にオりれないから、危険牌でもガンガン切るしかない。――ここから取る?
これ以上咲ちゃんに点数調整させるのもよくないし)
有珠山「……」カチャ 東
咲「――カン」
淡(っ、馬鹿……! いくら突っ張るしかないったって、よくそんな牌切るね。信じられない)
咲「もいっこ、カン」カチャ
淡(くそ……これ和了られるな。あーあ、だから弱い人と打つのは嫌なのよ。
まあ、次で親を流せばまだプラマイゼロは十分防げるはず)
咲「――もいっこ、カン!」
淡・末原・有珠山「!?」
淡(三連続……!? まって、しかもこの牌……これ、安手なんかじゃない!)
咲「――ツモ」
99南南 南 ①①①① ⑨⑨⑨⑨ 東東東東
咲「三暗刻三槓子トイトイ混老頭東南嶺上開花ツモ。――36000点です」
有珠山「ひっ――!」ビクッ!
末原「」
実況『…………さ』
実況『――三倍満!! 親の三倍満が飛び出しました――!! 有珠山の捨てた牌から
三連続カンにより一気に手を進め、三倍満にまで上りつめました――!』
実況『これは姫松、有珠山にとっては致命傷の一撃となるか――!? 二位の清澄と三位の
姫松の点差は七万点以上にまで広がってしまいました!! 有珠山高校は親番がないため絶体絶命。
親を残す姫松も、もはや敗退は時間の問題か――!』
末原「……」プルプル
末原(き……清澄ぃ……!)ギリリ
有珠山「……」ボーゼン
淡「…………」
淡(これは……どういうこと?)
淡(確かに驚いたよ。ここで三倍満かましてくるなんてね。――でも、それって駄目でしょ。
今ので咲ちゃんはプラス25000点。これ、どうするの? どこかに20000点振り込まないと
プラマイゼロにできないんだよ? てっきりオーラスで指定の点数を和了ってプラマイゼロにしてくる
と思ったのに、これじゃあ『オーラスで指定の点数に振り込んで』点数調整するしかないじゃない。
そんなこと……本気でできると思ってるの?)
淡(……思ってるんだろうなぁ……自分で自由に役を作って点数調整するならまだしも、
誰かにその役を作ってもらってそこにちょうど振り込むなんて、そこまでできれば確かに
神技だよ。はっきり言って、多分私もできない)
淡(……調子に乗り過ぎだよ、咲ちゃん)
淡(分かってるの? もう有珠山が10000点ないんだよ。今私が有珠山を
トばせばそこで終わり。あなたは馬鹿丸出しで負けるんだよ)
咲「……」
咲(……そんなことさせないよ、淡ちゃん)
南二局
淡「……」カチャ
四四四七七七南南南⑨⑨⑧① ⑧
淡(はい、三暗刻、南、ドラ3でハネ満。これで有珠山トばしてあげる)
咲「……」カチャ ③筒
有珠山「っ……」ピク
有珠山「…………」
有珠山「ろ、ロン……です。3900」
咲「はい」ホッ
淡(ふん、差し込んだか。点数調整も兼ねてるんだろうけど、必死だね咲ちゃん)
咲(……危ないところだった。もし有珠山の人が和了ってくれなかったら……多分、負けてた)
末原(くそっ……なんて迷惑な和了りや。もう戦意喪失したならじっとしといて欲しいもんやけど……まあ振り込んでトばれるよりはマシか)
末原(私は諦めへんで清澄。この親番……絶対ものにしてみせる!)
淡(さて、あとたった二局。咲ちゃんは今プラス21100点。ここから二局でマイナス16000点
しないといけないわけだけど、二局に分けて考えれば決して不可能じゃない。満貫に二回振り込めばいいわけだしね)
淡(でももしオーラスでこの点数だったら? オーラスだけでマイナス16000なんて
できるわけがない。だってそんな点数で和了っても姫松も有珠山も二位になれないんだから。だからこの局、
咲ちゃんは必ず姫松に振り込もうとするはず。姫松は連荘を狙って8000点でも喜んで和了るだろうし、
それを二回繰り返したあと、誰にも振り込まず、誰にもツモ和了りさせなければようやくプラマイゼロ、か)
淡(――ふふ。相当きつそうだね咲ちゃん。焦ってるのがこっちまで伝わってくるよ)
咲「……」
咲(分かってる。ここからプラマイゼロはかなり厳しいよ……)
咲(――でも、きっと淡ちゃんは私のやろうとしてることは読めてないはず。だって淡ちゃん
には思いつくはずのない方法だもん)
咲(そこで決める――!)ゴッ!
23567中中中発発発白白
淡「――ふふ。リーチ」カチャ
咲・末原・有珠山「!」
実況『大星選手、ここでリーチ! 点差と役を考えればダマでも十分な手ですが、
これは他家を牽制するためのリーチでしょうか――!?』
淡(これでまず有珠山はオりる。あとは姫松。ここはオりない。オりれない。私のリーチに
対して責め続けるしかない。振り込めばそこで終わりだ)
末原「くっ……」
789①①①②③一二二三1 北
末原(いい手が入ってる……これは和了りたいけど……1索は白糸台に危険や。いや、もうここまで
めちゃくちゃな打ち手やと待ちなんか読まれへんけど、ここで振り込むことだけはあかん)
末原(まずは現物の北や。この1索は順子に伸ばして使うしかない)
淡(――無駄だよ。あなたは次に4索をツモる。それを切ってお終いだよ。あなたも、咲ちゃんもね)
咲「……」
咲「……」カチャ 1索
淡・末原「!」
淡(これは――私の当たり牌……!)
淡「……く」
淡(だめだ、和了れない。これを和了ったら咲ちゃんの思うつぼだ。咲ちゃんのプラマイゼロの
調整を手伝うだけで終わっちゃう)
淡「……」
末原(……ロン宣言しない。この1索は通る! 現物がなかったから、もうここはこれに与るしかない。
三色は消えるけど、振り込むよりはずっとええ)
末原「……」カチャ
789①①①②③一二二三1 4
末原「……」カチャ 1索
淡「……」ギリ
実況『あーっと。大星選手、清澄高校の当たり牌を見逃したため、これは同巡フリテン縛りで
和了ることができません――! いったいなぜ清澄から和了らなかったのか』
淡(……別にいいよ。次で今ツモった4索切ったら同じことだし)
咲「……」カチャ
咲「……」タン 4索
淡「ぐっ……!」ピク
淡(また私の当たり牌!? このっ……私が和了れないのをいいことにやりたい放題……!)
末原(この4索も通る。よし、いい感じや)
789①①①②③一二二三4 一
末原(よし、いける!)
末原「……」タン 4索
実況『――ああー! これも同巡フリテンで和了れない――! 大星選手、清澄からの出和了りを
二度見逃したせいで、もう二度もチャンスを手放しています』
淡「……」ギリィ
淡(まだだ。この巡で有珠山がもう一度4索を引く。それは山越しだから、有珠山がそれを捨ててくれば和了れる。
有珠山はオりてるだろうけど、この流れなら4索は安全と思って切ってもおかしくない)
淡「……」カチャ
咲「カン!」
淡「!? なっ――!」
淡(私の捨て牌を――!)
末原(ちょ、ちょっとまって清澄……まさか……嶺上開花!?)
淡(違う。和了ってどうするの。これは嶺上開花じゃなく、有珠山が4索を引かないように
ズラしたんだ。……でも、それだと結局4索を引くのは姫松だ。こんどはフリテンにならないから和了れる!)
咲「……」カチャ クルッ
槓ドラ 西
咲「……」カチャ 西
淡(今開けた新ドラの西を躊躇いなく切ってきた。これは……――! あ、しまった!)
有珠山「ぽ、ポン!」カチャ
淡「くっ……!」
淡(西は有珠山の風牌……!)
淡(カンで西をドラにして有珠山に鳴かせたんだ。まずい、この鳴きでまたツモ巡がズレて、
4索をツモるのは咲ちゃんになった。もう4索は出ない……!)
咲「カン!」
淡(ちょ……今度は暗槓!?)
咲「……」カチャ クルッ
末原(槓ドラ……――!!)
末原(槓ドラが私の①筒! これでドラ3……倍満手や!)
末原「……」カチャ
末原(こい! ――――!)カッ
末原「ツモ! イーペーコー純チャンドラ3、8000オール!」ッターン!
淡「なっ――」ガタッ
実況『末原選手、ここで親倍――! これで試合はまだ分からなくなりました――!』
淡「……」
淡(私が咲ちゃんから和了れないことを利用して、二度も姫松の危険牌処理を手助けして、しかもあの槓ドラ……)
淡(有珠山に当たり牌が渡ることの阻止。槓ドラで姫松の手を上げてきっちり8000点マイナス。
そしてツモ巡そのものをズラして姫松に当たり牌をツモらせる。……槓ドラを利用してここまで思惑通りに進めてくるなんて)
なん、、、だど、、、、、、、、
淡(……やってくれるね、咲ちゃん)
咲「……」
淡(次で仕留めてやる……絶対に)ゴッ
南三局
淡「ポン」北
末原(くそ……まずい牌鳴かせてもうたか?)
末原(でもこの配牌……これは……)
淡(咲ちゃんは今プラス13100点。オーラスでマイナス8000点になればプラマイゼロだ)
淡(今の点差のままオーラスになれば咲ちゃんの負けは確実。その考えは間違ってないはず。
さっきは少し余裕出してリーチなんてしちゃったから後の状況変化に対応できなかったけど、
今度は鳴いて速攻で仕留める)
咲「……」カチャ 東
淡「ポン」カチャ
咲「……」カチャ 西
淡「ポン」カチャ
中中中九 北北北 東東東 西西西
淡(星の引力を使えば十分勝算はある。これで和了っても咲ちゃんはプラマイゼロにならない)
末原「……」カチャ
末原(……こい!)
末原(こい!)カチャ
末原(こい!!)カチャ
末原「……」カチャ
末原「……! っ、き――!」ビクッ
一九①⑨19東南西北白発八 中
末原(きた!! 国士13面待ちや!!)ドックンドックン
淡「――ッ!?」ビクッ
淡(この感じ……! まさか姫松、役満張ったの? この土壇場で!?)
末原(いける……! これを和了れば、清澄と並ぶ!)ドックンドックン
淡「……」
淡(この捨て牌……国士か。しかもこの気配……尭深がオーラスで和了るときと同じ。
まさか13面待ち……?)ギリ
淡(ツモなら16000オール。咲ちゃんは逆にマイナス2900点になって、今度は
二局で8000点前後を和了ればプラマイゼロになる。……それくらいなら、十分有り得る)
淡(有珠山も聴牌には遠いから差し込めない。咲ちゃんは当然和了らないだろうし、まずいな……
私が和了るしかない。この手で和了れば6000,12000。ここで和了れば姫松はオーラスでどんな手を和了っても二位にはなれないんだから、
咲ちゃんから2000点和了ったりしないはず。それよりもここで姫松に役満和了られて
二位争いに参加されるほうがずっと面倒だ)
淡(仕方ない、次で引くしかないね)ゴォォォッ!
咲「……」カチャ
咲「――カン」
淡(また暗槓? 大丈夫、暗槓ならツモ巡は狂わない。次巡で当たり牌をツモれるはず。
悪あがきだよ、咲ちゃん)
咲「……」カチャ クルッ
淡(新ドラは……――え)ピク
淡(新ドラ、西……? 私の鳴いた牌だ。ってことは、ドラ3がプラスされて……)
淡「――ッ!!!」
中中中九 北北北 東東東 西西西
淡(九萬がドラだから……混老頭トイトイ中混一色ドラ5、14飜で数え役満――!
まずい、この手じゃ和了れない!!)
淡「……くっ!」カチャ
淡「――――!!??」
淡(なっ……九萬じゃない……!?)
中中中九 一 北北北 東東東 西西西
淡「ぐっ……そ、そんな!」
淡(確かに一巡前までは九萬を引けるはずだったのに……数え役満になったから、牌が私を避けて……!
しかも、手牌に字牌しかない……これじゃあどれを切っても……!)
実況『こ、これは――!!! 大星選手、手牌が全て末原選手の当たり牌になってしまった――!!
こ、これはもう、振り込むしか道はない――! 親の役満直撃は48000点です!!』
淡「…………」プルプル
咲(淡ちゃんの弱点は13飜以上の手を和了れないこと。だからカンを操ってドラを乗せることが
できる私なら、淡ちゃんの手を封じることができる。今までそんな止められ方をしたことは少ないはず)
淡(……この一瞬を狙ってたっていうの……? 私に役満を振り込ませることを……!)
咲「……」
淡「く……そぉ……!!」タン!
末原「!! ろ、ロン!! 国士無双、48000点です!!」
淡「……」ギリッ!
清澄:130700
姫松:130700
有珠山:5800
実況『な、なんということでしょう!! まさかここで白糸台が三位の姫松に役満を放銃!!
これにより有珠山以外の三校の点差はほぼ横並び状態です! これは姫松の二位進出……
いえ、まさかの白糸台の三位転落すらも十分考えられる点差となりました――!』
淡(こ、この私がこんな雑魚相手に役満を振り込むなんて……テルの見てる前でよくもこんな……!)ギリィ!
有珠山「……」カチャ
咲「ロン。1600」
淡(あっ……! しまった、動揺してる間に和了られた)
実況『清澄高校が有珠山から安手を和了り、姫松高校の親が流れます。ついに準決勝大将戦の
オーラスに突入です!!』
清澄:132300
姫松:130700
有珠山:4200
末原(オーラスや。清澄との差はたった1600点や。ここで2飜以上和了れば二位抜けや!)
淡(今の和了りで咲ちゃんはプラス14700。この点差なら誰かが和了った時点で即終局。
正真正銘、最後の一局だ)
淡(ここから咲ちゃんがプラマイゼロにするには9000点以上の振り込みが必要……
でも振り込んだら三位に転落。だから私が8000オールを和了って、その前に咲ちゃんが
リーチしてリー棒を1000点だせば、600点差で姫松に勝ちつつプラマイゼロ。
……無理だ。できるわけない。もうプラマイゼロは絶対に不可能だ)
淡(プラマイゼロは諦めたか。役満を振り込ませて一矢報いたってことかな。確かに、プラマイゼロに
されるのと同じくらいの屈辱だよ、咲ちゃん)
淡(こうなった以上、もうプラマイゼロの心配はない。ここで私たちの戦いの勝敗を
決める要素があるとすれば、それは私か咲ちゃんがどこかに振り込んで三位に転落っていう赤っ恥を晒すこと以外にない)
淡(最後の最後でこんな殴り合いみたいな麻雀にもつれ込むなんてね。でも、ここを押さえれば私の勝ちだ)
淡「ポン!」カチャ
999⑤⑤⑧⑧北北北 111
淡(トイトイ。ツモれば三暗刻だ。4800だからプラマイゼロにもならないし、即終局。
これでとどめを刺す……!)ゴッ!
末原「……」カチャ
二二二234赤56②②③③④ ④
末原(来た! タンヤオイーペーコー平和ドラ1で三面待ち! これを和了れば文句なしで1位通過や!)
淡(……姫松も張った。まずい。オーラスは私が親……高い手をツモられれば親被りで
三位転落も有り得る。そんなことになるくらいなら自殺したほうがマシだ)
淡(⑤筒も⑧筒もまだ二枚ずつある。絶対に先に和了ってみせる!)
有珠山「……」カチャ ⑨筒
咲「チー」カチャ ⑦⑧⑨筒
淡「……っ」
淡(私の⑧筒……くそ、でもまだ一枚ある)
咲「……」カチャ
咲「……」タン 赤⑤筒
淡「――あ」ピク
淡(⑤筒――私の当たり牌だ!)
実況『――ああーっと。ここで宮永選手、赤⑤筒を捨てた――! これは大星選手の当たり牌!
これで勝負は決着だ――!』
淡「ろ――」
淡「――」ピタ
淡「……」
淡(赤⑤筒……ドラ……これを和了ったら、私の手はトイトイドラ1で9600点になる)
淡(咲ちゃんは今プラス14700。私に9600点を振り込んだら、プラス5100点)
淡(つまり……プラマイ、ゼロ――!?)ゾクッ
咲「……」ジー
淡「……っ」ゾ
淡(これは事故じゃない。差し込んだんだ。これが私の当たり牌だって分かった上で切ってるんだ)
淡(この子、正気!? ここで私が和了ったら、清澄は三位に転落。決勝に進めないんだよ!?
咲ちゃん、そうまでしてプラマイゼロに拘るっていうの!?)
咲「……」ジー
淡「くっ……」
淡(咲ちゃんは私を試してるんだ。私が咲ちゃんとの勝負に決着をつけるのか、
それとも手近な勝利に飛びつくのか。私の器を測ってる……)
照『――打ってみればいい。淡の実力なら、それでどっちが勝者か判断がつく――
』
淡(――ッ! ……そうだ、ここでロン宣言するっていうことはつまり、姫松とのめくりあいに
勝つ自信がないって認めるようなものだ。そんな屈辱……受けられるわけない!)
淡「……」
実況『え……? えっと……? 大星選手、ロン宣言を……え、しない……? な、なぜ?』
末原「……」カチャ
実況『あ、ああーっと! 末原選手が牌をツモりました。もう大星選手はロン宣言できません!
こ、これはどういうことでしょうか!? 今ロンすれば勝利は確定していたというのに、なぜ
見逃したのか――!?』
咲「……」
咲(淡ちゃん、すごいプライドだ。確かに、この人に勝たないとお姉ちゃんに挑む資格なんてない)
淡(まだだ……まだ二枚ある。それを引ければ)
咲「……」タン 赤⑤筒
淡「――!!」ビクッ
淡「ぐっ……!」
淡(に、二巡連続……!? こ、こいつ……!)ギリギリ
実況『お、大星選手、なんと二巡連続で当たり牌を見逃した――! も、もう私には訳がわかりません!』
淡「……」プルプル
淡(……こ、ここまでコケにされたのは生まれて初めてだ……血管ブチ切れそう
……)プルプル
淡(これであとは⑧筒一枚……姫松は多分三面待ち。当たり牌の数では私が圧倒的に不利だ)
淡(それでも先に引けるかどうか。それが雀力の差なんだ。私なら引ける、引いてやる!)
末原「……」カチャ
末原(こい……!)ドックンドックン
淡(くそ、来るな……!)ドックンドックン
末原「……く」カチャ
淡「……」ホッ
淡「……」カチャ
淡(こい……!)ドックンドックン
末原(来るな……!)ドックンドックン
淡(くそ、不要牌……)カチャ
咲「……」カチャ
末原「……」カチャ
淡「……」カチャ
淡(っ……くそ!)タンッ
白糸台控室
照「……淡。押されてる」
菫「あの大星が……」
誠子「大星さん、何度も和了りを見逃してましたよね。これで逆転負けして敗退なんてことになったら……」
尭深「どうするんですか?」
菫「――どうもしないさ。言っただろ、個人のミスはチームのミスだ。それが団体戦だ。
まあ、部長としてしっかりと叱っておくがな」
尭深「……わかりました」
菫「それに、私は大星が勝つって信じてる。あいつはきっと負けない」
誠子「……弘世先輩、なんか嬉しそうですね」
菫「え?」
誠子「いえ、なんかそんな気がして」
菫「……嬉しい……」
菫「そうか、そうなのかもしれないな」
照「どうしたの?」
菫「私は、大星が追い詰められて嬉しいのかもしれない」
誠子「日頃の恨みつらみがあるからですか?」
菫「おいおい、そういう話はやめろ。そうじゃない。
見てみろ、大星の顔を。あんなに必死になってる大星を見たことあるか?」
照「私と打ってるときでも、あんなに必死になってるところは見たことない」
菫「でも、私たちは多分、いつもあんな感じで麻雀を打ってるんだと思う。聴牌になったときは
当たり牌が出ないか目をギラギラさせて、他家がツモるときは、和了るな和了るな、って念じながらさ」
菫「私はそれこそが麻雀の醍醐味だって思ってる。麻雀を打つやつは皆そのときのドキドキとか、
和了れたときの喜びとかが大好きで、だから麻雀を打つんだと思う。
でも大星は今までそんな感覚を味わえたことがないんだ。唯一照だけがそれに近いものを与えてくれるから、
あいつは照と打ちたがるんだと思う」
尭深・誠子「……」
菫「でも今、あいつはその感覚に肉薄してる。姫松がツモれば逆転負け。自分がツモれば完全勝利。
その両極端な境地で、自分の運に全てを託す感覚。……もしかしたら大星は今、生まれて
初めて麻雀を打っているのかもしれない」
照「……それが嬉しいの?」
菫「ああ、嬉しい。あいつもやっぱり私たちと同じ、麻雀を楽しめる女子高生なんだなって思うと、
なんだろうな、なんて言えばいいのか分からないが……多分、私はそれが嬉しいんだと思う」
照「……そう」
尭深「――――あ」ピク
誠子「あ!」
菫・照「――ッ!」
菫「こ、これは……!」ガタッ
菫「清澄!!」
淡「……」カチャ
淡(くそ、また引けない……どうして)
末原「……」カチャ
末原(く、なんで引かれへんのや)
咲「……」
淡(テル……)
どこまでも暗く、どこまでも孤独な宙の中で、私が初めて見つけた光。温かな輝き。
彼女に近づきたくて私は麻雀を打ってきた。テルと一緒に歩けることを誇りに思っていた。
私に負けるようじゃテルに挑む資格はないと咲ちゃんに言ったけど、それは私にも言えることだ。
こんなところで負けるようじゃ、私にテルの隣に並ぶ資格なんてない。
淡(いやだ……)ドックン ドックン
テルから遠ざかりたくない。もう二度と孤独になりたくない。もっとあの太陽の光に照らされていたい。
負けたくない……負けたくない!
淡(私は――)ドックン ドックン
こんなに負けたくないと思ったのは生まれて初めてだった。
こんなに心臓が脈動するのは初めてだった。こんなに手の平に汗が滲むのは初めてだった。
でも、不思議とこの感覚は嫌いじゃなかった。
緊張に霞む視界は眩しくて。汗ばむ身体は暖かくて。
もしかしたら……。
私の胸を震わすこの鼓動こそが。この火照る身体の熱こそが。
私がずっと欲しかった、星すらも照らす陽の光だったのかもしれない――。
淡(私は――咲ちゃんに勝ちたい!)
タン
――ツモ。
実況『――き』
実況『決まったァァァ!! ついに準決勝大将戦決着――! 勝者は――!!』
淡「……はあ……はあ……」
何も聞こえなかった。
まるで鼓膜が切れたかのように静かだった。姫松と有珠山が立ちあがり何かを言っていた気がするが、何も聞こえてこなかった。
ただ、心臓の音だけが聞こえた。ドックンドックンと脈打つその鼓動の音だけが、ずっと響いていた。
淡「……はあ……はあ……」
ぴちゃん、と頬を滑った汗が卓に落ちて、私の意識はようやく目覚めた。
開かれた私の手牌。掴みとった最後の⑧筒。トイトイ三暗刻の4000オール。
私の勝ちだった。
白糸台:144800
清澄:128300
姫松:126700
有珠山:200
淡「……私の……勝ちだね、咲ちゃん」
咲「うん」
卓には私と咲ちゃんだけが残っていた。決勝進出を果たした二人だけが。
淡「ねえ、どうして赤⑤筒切ったの? 私が和了ったらどうするつもりだったの?」
咲「淡ちゃんは和了らないと思ったから」
淡「……ふふ」
淡「まあ、あれだね。私をここまで追い詰めたことは認めてあげる。でも、やっぱりまだ
テルには及ばないよ」
咲「そう、なのかな……」
淡「でも、確かに高校生の内では段違いの強さだと思う。ま、私ほどじゃないけど」
咲「あはは……」
咲「じゃあ私帰るね」
淡「うん、じゃあ、また決勝でね」
咲「うん」ガタ
ツカツカツカ
淡「……」
淡「ねえ、咲ちゃん」
咲「ん?」
淡「――どうして、オーラスで和了りを見逃したの?」
咲「――――」
咲「……気づいてたの?」
淡「まあね。私が⑧筒をツモる前、咲ちゃん聴牌になってたよね。カンして嶺上開花すれば
和了れてたんじゃないの?」
咲「……うん」
淡「和了ればよかったのに。私が赤⑤筒和了らなかった時点でプラマイゼロは諦めたんでしょ?」
咲「うん。まあ、和了られても困ったんだけどね。もうあの時点で私はドン詰まりになってたんだ」
淡「ならせめて最後に気持ち良く和了って終わればいいのに」
咲「……」
咲「私の手は5飜で、2000,4000の手だった。それなら和了ってたと思う」
咲「でもそのためにはカンをしないといけなかったから」
淡「……槓ドラか」
咲「うん。あそこでカンしてたら、ドラが乗ってハネ満手になってたと思う。そしたら3000,6000……
淡ちゃんが親被りで三位になってた」
淡「……決勝でテルに会いたいんだったっけ?」
咲「うん。だから白糸台に敗退してほしくなくて」
淡「放銃さえしなければ誰が和了っても二位抜け確実だったもんね。なるほどね……」
淡(勝たせてもらった……って形になるのかな、これ)
淡「あーあ。なんかすっきり出来ないなぁもー。手加減されて勝ったみたいじゃん」
咲「ううん、私のプラマイゼロに付き合わなかったら私だって普通に負けてたかも」
淡「ほんとだよ! 私が何回和了りを見逃してあげたと思ってるの! ほんとストレスマッハだったんだから!」
淡「だいたい、ほんとにそのカンで嶺上開花できてたかどうかも分かんないじゃん」
咲「むっ、それは出来てたもん」
淡「いーや出来てなかったね。仮にできてても、それでドラが一つ乗ったかどうかもわかんないし」
咲「乗ってたもん」
淡「乗らなかったもんねー。ベー」
咲「乗ってたの! ああもう、山崩さなきゃよかった!」
淡「ふふー。結局私の完全勝利ってことだよね。やっぱ私サイキョーだわー」
咲「ふん、私の誘導で役満振り込んだくせに」
淡「は、はあ? あんなのわざとだし。ああすれば咲ちゃんが大きくプラスになるから、
プラマイゼロさせにくくなるなーって思って、わざと振り込んだんだし」
咲「うっそだー。『くっそー!』とか言いながら切ってたじゃん」ププ
淡「言ってないっ!」
咲「言ってたよ。涙目で」
淡「涙目だったの咲ちゃんじゃん!」
咲「私はずっと平静だったよ」
淡「どこが。『人和振り込んじゃった、あわあわ~』ってしてたじゃん」
咲「し、してないよっ」
淡「言っとくけど、決勝ではもうプラマイゼロ勝負なんてしないからね。っていうか、咲ちゃんも
出来ないでしょ。二位じゃ意味ないんだし」
咲「うん、そうだね」
淡「普通に点の取り合いしたら私が勝つに決まってるんだから。決勝ではこんなに競るとは思わないでよね。ベー」
咲「大丈夫、決勝では私も点を取りにいくから。逆に淡ちゃんトばないように気をつけてね」ニッコリ
淡「ふん、決勝戦でほえ面かかせてあげるから」
咲「こっちこそ」
淡・咲「ふんっ!」
淡・咲「……」
淡・咲「――ぷ。あはははっ」
淡「……まあ、あれだね」
咲「ん?」
淡「私の方が強いのは確かなんだけど、まあ……そこそこ強いってのは認めてあげる」
淡「だから特別に! ほんとにとっくべつに! 今日から私のライバルを名乗ることを
許してあげる。感謝してよね」
咲「えー? 別にいらないや」
淡「うっさい! ありがたく受け取れバーカ! 私のライバルなんて今のとこテルくらいしかいないんだからね!」
咲「……お姉ちゃん」
淡「……」
淡「昔テルと何があったのか知らないけどさ、あの人は理由もなく人を嫌ったりする人じゃないと
思うよ。妹なら尚更」
咲「……うん。全部、私のせいなんだ」
咲「だから私……お姉ちゃんに会って、伝えなきゃ」
淡「……ふふ」
淡「伝わるといいね。咲ちゃんの伝えたいこと、私にもなんとなく分かるよ。私も――さっき
同じものを感じてたと思うから」
咲「……うん」
咲「ありがとう、淡ちゃん」ニコ
ガチャ、バタン
淡「ただいまー。あー疲れた」
菫「御苦労さま、大星。危ないところだったな」
淡「別に危なくないよ。余裕余裕。決勝では普通に打つから勝てるよ」
菫「油断するなよ大星。お前は気づいてないだろうが、オーラスで清澄は」
淡「嶺上開花を見逃したんでしょ? そんなの分かってるってば」
菫「え、あ、ああ、気づいてたのか。なら――」
淡「分かってる。次はちゃんと打つって。――それよりテル。どう? 咲ちゃん、
プラマイゼロにできなかったよ」
照「ああ、そうだね」
淡「これって私の勝ちってことでいいんだよね?」
照「……」
照「でも淡、清澄の大将に完全に勝ったって言える?」
淡「む……か、勝ったもん。一位通過したし、プラマイゼロも防いだし、合計収支でも勝ったじゃん」
照「でも最後に清澄が見逃さなかったら淡は負けてた」
淡「嶺上開花できてたかどうかもわからないし、ドラが乗ったかも分からないじゃん」
照「もしドラが乗らなくても淡は抜かれてたよ」
淡「……」
照「……」
菫「――引き分けでいいだろ、別に」
淡「私引き分けって大嫌いなの。白黒はっきりつけたいから」
照「……じゃあどっちも勝ちってことにしない?」
淡「どっちも勝ち?」
照「勝ったら相手のいうことを一つ聞くって約束だったけど、お互いに一つずつ相手に命令できるの」
淡「うーん……まあそれでいっか」
菫「私からも一つ頼みごとがあるんだが、もう二度と麻雀で賭け事なんてしないでもらえるか」
淡・照「私に勝ったら聞いてあげる」
菫「……」
淡「じゃあ何にしよっかなー。やっぱ私の家に泊まり込んで麻雀打ちまくるとかかなー」
照「……ねえ」
淡「ん?」
照「命令できる権利、いま使いたいんだけど、いい?」
淡「え、早速? まあいいけど……なに?」
照「……」
菫「……? どうした、照」
照「……次の決勝戦――」
照「私に、大将を代わって」
つづく!
ごめんなさい、一旦ここで終わります。前後編で考えてて、ここで前編終わりです。
淡編が終了したので、次の照編で姉妹の関係や三人の今後は全部終わらせます。
後編もやろうかと思ったんですが、正直、まさか15時間以上かかるなんて夢にも
思ってなかったので、次は日にちを跨いでもいいように
週末くらいに立てることにします。このスレで淡関係が全部終わると思って辛抱強く読んでくださった方々、
本当に申し訳ないです
なんかそろそろ本編で淡が出てきて能力解禁されそうなんで、それまでになんとか投下したかったんです
こんなに夜遅くまで沢山の支援や感想、本当に嬉しかったです。ありがとうございました
照編ではもっと麻雀パート短くします。ほんとにごめんなさい。つい書きすぎちゃいました
乙乙乙
どうしてもこの順番にしないと終わらなかったので、なんとか許して下さい
ssを投下するのは二回目なのですが、皆さんの何気ない感想や支援が本当に嬉しかったです
とちゅう三回さるさんくらったので、多分皆さんの支援なしじゃここまで書けませんでした
本当にありがとうございました!
野暮だけど咲はカンドラ乗らないのとインターハイは順番変えられないんだぜwww
みたいですね。プロット練ってる段階で知って焦りましたwwww
なので最後は咲は和了らず、最後のドラは乗ったの?乗らなかったの?と濁らせる
感じで終わらせました
オーダー変更は、このパラレルワールドでは認められている、ということでお願いします
どうしても照と決勝で戦ってほしくて
さて、寝ます。こんな遅くまで付き合ってくださってありがとうございました
また今週か来週の金曜日くらいに投下できたら、そのときはよろしくお願いします
続き楽しみにしてる
あわあわフルボッコになるかと思ったらなんかいいかんじに落ち着いたな
Entry ⇒ 2012.09.24 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (5) | Trackbacks (0)
洋榎「大阪デートや!」 初美「よろしくですよー」
洋榎「…………」
洋榎「…………ん」
洋榎「くぁ……あったま痛……」
洋榎「…………」
洋榎「寝とったんか……」
洋榎「…………」
洋榎「どこやここ」 キョロキョロ
洋榎「京橋か……?」
洋榎「……えーっと、何でこんな所で寝とったんやっけ?」
洋榎「えーっと……」
洋榎「確かウチ、大阪戻ってきたんやったな」
洋榎「結局団体戦はボロ負け、個人戦でもウチがちょっと惜しいとこまで行っただけで……」
洋榎「……」
洋榎「思い出したわ」
洋榎「絹達に爽やかーにバトンタッチするためにも、沈んだ空気どないかしたかったら……」
洋榎「お疲れさんパーティしようとしたんやった」
洋榎「そんでどうなったんやっけ……」
洋榎「……アカン、思い出されへん」
洋榎「……しかしまぁ、この頭の痛さといい、予想はつくわなぁ」
洋榎「どーせまた代行に見つかって、なんだかんだで飲まされて潰れたんやろ」
洋榎「これだから体育会系ノリ全盛期のオバハンはアカンわー」
洋榎「何がとりあえず生中やねん、こちとらまだ未成年やっちゅーねん」
洋榎「……絹達ちゃんと家帰ったんやろうな」
洋榎「昔代行が無理矢理飲ませた時の感じから行くと、恭子あたりはヤバイ気がすんねんけどなー」
洋榎「まぁ由子はクッソ強かったし、アイツが送ってくれとるやろ」
洋榎「……絹はちゃんと断れる子やけど、ウチがここに放置されたことを考えるとなぁ……」
洋榎「……酔って一見まともな絹にウチが預けられて、恭子と漫は由子と代行が送っていったってとこか」
洋榎「……」
洋榎「絹、一人で酔ったまま帰宅してたらええんやけど」
洋榎「アイツ乳でかいし美人やからなー」
洋榎「変な男にホテルにでも連れ込まれてたら……」
洋榎「…………」
洋榎「あ、あかん! 急いで帰らな!」
洋榎「ええっと、ICOCA、ICOCA……」
洋榎「あれ、無い……」
洋榎「ていうか、財布もなくない……?」
洋榎「……」 サーッ
洋榎「あわわわわ、どどどどないしたらええんや!?」
洋榎「お、おまわりさーーん!?」
初美「何を騒いでるんですかー?」
洋榎「うわあ、変態さん!?」
初美「失礼な人ですねー」
洋榎「ていうか自分よく見たら永水の副将やん」
洋榎「初音やっけ」
初美「違います、初美ですよー」
洋榎「ああ、そうやったな」
洋榎「初音がネギで初美がヌギ、よっしゃ覚えた」
初美「ほとんど初対面なのにえらい喧嘩の売りようですよー」
洋榎「わかっとらんなー」
洋榎「初対面やからこそ、フレンドリーに距離を詰めたろいう親切心やないか」
初美「詰めすぎて余裕でオーバーランですよー」
洋榎「つーかお前さん何しとるん」
初美「え」
初美「えと……その……」
初美「か、観光ですよー!」
洋榎「巫女服着て大阪旅行とかケッタイやなー」
初美「ははは……」
初美(ちょっとポカをやらかして、お仕置き兼ねて大阪まで自腹で来るはめになったとは言えないですよー……)
洋榎「あ、そや」
洋榎「金貸してくれへん?」
初美「え」
洋榎「いや、いきなりで申し訳ないんやけどね」
洋榎「ちょーっとまあ、大声じゃ言えない理由で財布盗られてもーて……」
洋榎「ウチ帰ったら帰すから、貸してくれたら助かるなーって……」
洋榎「……だめ?」
初美「……」
初美「うーん……」
初美「じゃあ、お礼に大阪観光案内でもしてくれたら貸してあげるですよー」
初美(どうせ大阪まで来たんだから楽しみ尽くしてやりますよー)
洋榎「いよっしゃ、決まりやな!」
洋榎「とりあえず腹ごなしにテキトーにコンビニで飯でもこうて電車乗ろかー」
初美「財布持ってない人間の言うセリフじゃないですよー」
洋榎「あ、やっぱり?」
初美「それに折角大阪まで来たんですから、たこ焼きとかが……」
洋榎「ちゅーてもこの辺美味いたこ焼き屋あったかなぁ」
初美「じゃあもうちょっと我慢を……」
洋榎「しゃーないなー」
洋榎「まぁよう考えたら思ったより腹減っとらんし、我慢したろ!」
初美「じゃあ何で言ったんですか……」
[京橋駅構内]
洋榎「さーて、うちに帰るついでに案内できる所は案内しようと思うんやけど」
初美「よろしくですよー」
洋榎「……とりあえずこれが都会名物自動改札機や」
初美「鹿児島にだって自動改札くらいありますよー!」
洋榎「え、そーなん」
洋榎「何か変なお面みたいなん持ち歩いとるし、児童ポルノな格好で居ても犯罪起こらんみたいやし」
洋榎「てっきり発展途上国みたいなトコかと」
初美「鹿児島の人に謝ってくださいー」
洋榎「あーいトゥイマテーン」
初美「……」 イラァ
[愛宕家近隣]
洋榎「ここがかの有名な、愛宕ハウスの最寄りコンビニでございまーす」
初美「これっぽっちも有名じゃないですよー」
洋榎「これから有名になるねん」
洋榎「あの有名美人雀士姉妹と有能監督という最強ファミリー愛用のコンビニとしてな!」
初美「さっさと財布取りに行きますよー」
洋榎「え、ツッコんでもくれへんの」
初美「そこまでする義務はないですよー」
洋榎「これだから関東人は」
初美「鹿児島は関東じゃないですよー……」
洋榎「はい、愛宕家ー!」
初美「……」
洋榎「何かコメントせーや!!」
初美「え、いや、だって……」
初美「人様の家を貶めるのって最低ですよー」
洋榎「貶す前提!?」 ガビーン
洋榎「何かあるやろ褒めるとこ!」
初美「う、うーん……」
初美「鹿児島は土地が安いからかもっと大きくて雰囲気ある民家がいっぱいありますから……」
洋榎「っかー、気に入らんわー!」
洋榎「グローバルスタンダードに考えーや!」
初美「日本のスタンダードは大阪じゃなくて東京ですよー」
洋榎「ああ!?」
洋榎「ちゅーわけでただいまーなんやけど……」
初美「?」
洋榎「…………」
洋榎「鍵まで盗られとる……」
初美「ちょ……」
洋榎「とりあえず誰かおるかも分からんしチャイム鳴らしてみるわ」 ピンポーン
初美「…………」
洋榎「…………」
初美「出ないのよー」
洋榎「ああクソ、出ろや!」 ピンポーンピンポンピンポンピンポピンポピンポポポポピンポーーーン
初美「おお、高橋名人ばりの16連射ですねー」
洋榎「おっかしいな……」
洋榎「今日休日やし絹は家におるはずやけど……」
初美「お出かけとかじゃないですかー?」
洋榎「せやったらええねんけど……」
洋榎「あのまま昨日帰ってきてへんっちゅー可能性もあるからな」
洋榎「ちょっと心配やわ」
初美「……ふーむ」
初美「窓から中を覗くとか……」
洋榎「せやな」
洋榎「庭から回りこむで」
初美「え、私もですか?」
洋榎「当たり前やろ、一人で家先残る気か」
初美「仮にも部外者の私がそこに行くのは色々と問題が……」
洋榎「ええから来いて!」
初美(うう……見つかったらもうどうにでもなれですよー!)
洋榎「よっと……ここからならリビングが……」
洋榎「お、絹や!」
洋榎「よかった……無事帰っとったんか……」
初美「無事帰った……?」
洋榎「ああ、いや、ちょっと昨日どんちゃん騒ぎしとったからな」
初美「……なるほど、どんちゃん騒ぎ」
洋榎「そうそう」
洋榎「まーそれで疲れとったんやろか」
洋榎「爆睡こいとるやないか」
初美「というか、疲れて眠ってしまったって言う感じですねー」
洋榎「せやなー疲れとるんやろうなー」
洋榎「いやもうホント疲労って怖いわーまるで泥酔したかのように眠ってまうねんなー!」
初美「何でそんな疲労を強調するんですかー?」
洋榎「え、いや別に」
洋榎「しっかしまぁ……」
洋榎「向こうが頭で横になっとるせいで……」
初美「太もも丸見えですねー」
洋榎「部屋着のハーフパンツが色気を醸し出しとるわ」
初美「ダボッとした衣服の隙間から秘部が見えそうですよー」
初美「ちょっと無防備すぎますねー」
洋榎「……」 ジトー
初美「?」
初美「何ですかその目はー?」
洋榎「いや、そのちまっこい背丈でも、棚の上にもの上げることはできるんやなと」
初美「?」
洋榎「あーしかしほんま絹はエロい体しとるな」
初美「呼吸する度にお胸が上下しているのが手に取るように分かりますよー」
洋榎「……おっぱいって、あないな動きするもんなん?」
初美「……私に聞いて分かると思ってるんですかー?」 ムー
洋榎「……すまん」
洋榎「あ、寝返りうった!!」
初美「うわ」
洋榎「ん?」
初美「今、動かした足の隙間から見えちゃいましたよー」
洋榎「な、おま、何見とんねん!」 ムキー
初美「ちょ、騒がないでくださいよー!」
洋榎「絹にセクハラかましていいのはウチだけや!」
初美「シスコンですかいい歳こいてー!」
洋榎「姉妹愛と言え!」
洋榎「……とりあえず絹に毛布かけたらなアカンな」
初美「……どうやって家に入るんですかー?」
洋榎「絹を起こすのも可哀想やしな」
洋榎「通常時はここに……」 ゴトッ
初美「植木鉢……?」
初美「その下に鍵でも入れてるんですかー」
初美「典型的ですけど、防犯的にはそれ大丈夫なんですかねー」
洋榎「鍵開けっぱで家留守にする九州人には言われたないわ」
洋榎「大体勘違いしてもろたら困る」
初美「へ?」
洋榎「ここに鍵なんてないで」
初美「じゃあ一体……」
洋榎「これはこうするためのもんや」 ヨッコラセ
初美「ストップ・ザ・投球モーション」
初美「何やってるですか!」
洋榎「何って、扉が開かへん絹起こせへんときたらもうガラス破るしか道ないやろ」
初美「そりゃそーかもしれませんけどもー!」
洋榎「大丈夫やって、セコムのシールはあれ貰いもんで別に入ってるわけとちゃうから」
初美「そもそも根本的な問題はそこじゃなくてですねー!」
初美「起こしたくないならガラス破壊音響かせちゃダメですよー!」
洋榎「……なるほど一理あるな」
初美「わかってもらえてよかったですよー」 ホッ
初美「とりあえず植木鉢は元に戻しておいてくださいよー」
洋榎「へいへーい」
初美「全くもう……派手に音がした場合、立ち位置的にヤバイのは私なんですからねー」
洋榎「ははは、せやなー」
洋榎「すまんかった……って、何かガムテープ貼ってるーーーー!?」 ガビーン
初美「セコムに入ってないなら、こうやって……と」 ヒュパッ
洋榎「躊躇なく怪しい棒で殴り抜いたーーーーーー!?」 ガビーン
初美「祈祷とかに使う道具はこういうことにも使えるのですよー」
洋榎「めちゃんこ罰当たりやな……」
初美「はい、これで音もなくガラスも散らばらず鍵を開けて入れますよー」
洋榎「え、あ、うん……」
洋榎(マジでガラス割りおった……オカンに見つかったら殺されてまう……)
洋榎「あ、上がるなら靴は脱いで――」
初美「そのへん抜かりはないですよー」
初美「こんなこともあろうかと持ってきていた手袋も装備してますしー」
洋榎「どんな事態を想定した大阪旅行やねん!」
初美「万が一妹さんが目を覚まして姿を見られても不審者扱いされて逮捕されないように――」
初美「結局さっき寄らされたファミマで貰った買い物袋に穴を開けてかぶれば完璧ですよー」 フフン
洋榎「不審者度マシマシやないか!」
洋榎「文字通り頭隠して尻隠さず状態やで!」
初美「通報されても特定されて逮捕されなきゃオーケーですよー」
洋榎「いやオーケーでも何でもないから!」
初美「おじゃましますよー」
洋榎「ほんで何で真っ先に上がっとんねん!!」
初美「まぁまぁ、ここまで完璧に変装したんですから、少しでも急いだ方が総合的には正解かなと」
洋榎「ガラス叩き割った時点でどう転んでも不正解に行き着く気がするんは気のせい?」
洋榎「さて、家に上がったはいいけど……」
初美「……妹さん、よく寝てますねー」
洋榎「風邪ひきそうやし、毛布かけたらな」
初美「その前に一揉みしたらダメですかねー」
洋榎「抜かり無いほど警戒するんやなかったっけ」
初美「……冗談ですよー」
洋榎「今にも舌打ちしそうなツラしとるぞオイ」
洋榎「大体絹の可愛さは胸やのうて、このサッカーで引き締まった足――」 ナデッ
絹恵「ん……」 モゾ
洋榎「!!」 ビクッ
初美「!!」 ビクゥッ
絹恵「おねえ……ちゃん……」
初美「お、おおお起きてしまったんですかー!?」
洋榎「いや、寝言みたいや……」
初美「驚かせないでくださいよー!」
絹恵「お姉ちゃん……大……好きだよ……」
洋榎「……絹……」
絹恵「置いて……いかないで……」
洋榎「絹……」
初美「涙……怖い夢でも見てるんですかねー」
絹恵「一人に……せんとって……」
洋榎「……大丈夫や、絹」
洋榎「ウチはいつでも絹と一緒やから」
洋榎「誰より絹を愛しとるし、いつだって絹のことを考えとるわ」 ギュッ
初美「……」
初美(何か……ちょっと胸が苦しいですよー……)
初美「妹さん、ちょっと落ち着きましたねー」
洋榎「あんまり悪夢見るようやったら起こそか思ったけど……」
初美「寝かせておいてあげた方がよさそうですねー」 ファサッ
洋榎「……毛布、とってきてくれたんか」
初美「ええ、毛布かけたいとか言うてましたのでー」
洋榎(それで躊躇なく人ン家の毛布引っ張り出せる所が凄いわ)
洋榎「……あ、そや」
初美「はいー?」
洋榎「ちーっとばっかし、シャワー浴びてきてもええやろか」
初美「え」
洋榎「……いやほら、路地裏みたいなとこで目覚めたし……」
洋榎「さすがにちょっとこのままってのは恥ずいやん?」
洋榎「思ったより臭くなっとらんけど、やっぱりほら、一応は今から観光地とか行くかもしれへんわけやし」
初美「ふむ……」
洋榎「それにほら、ウチって美人やから……」
初美「BEGIN?」
洋榎「美人や! 沖縄担当は銘苅やろ!!」
初美「すみません、あまりに結びつかない単語だったもので……」
洋榎「なんでやねん!」
洋榎「これでもウチは姫松のアイドルやねんで!」 ビシッ
初美「それで、美人だからなんだっていうんですかー?」
洋榎「今のセリフガン無視か!!」
洋榎「まぁほら、ウチ財布盗られたわけやん?」
初美「アホですねー」
洋榎「やかまし!」
洋榎「まぁとにかく、そのくらい爆睡こいてたわけや」
初美「間抜けですねー」
洋榎「黙らっしゃい!!」
洋榎「とにかく――その、なんつーか、痴漢とかにあっても気付かなかったと思うわけで」
初美「無防備ですねー年頃の娘なんだから気をつけましょうよー」
洋榎「お前には言われたないわ!!!」
洋榎「とりあえずそんなわけで、寝とる間に襲われとったかもしれんから……」
洋榎「シャワー浴びておきたいねん」
初美「妹さんみたいなムチムチドーンならともかく、その体を襲う人なんて……」
洋榎「こ、これでも結構男子からえっちな目で見られとるんやで?」
初美「痴漢冤罪だけは起こさないでくださいよー」
洋榎「誰が自意識過剰やねん!!」
洋榎「あーもう!」
洋榎「とにかく風呂に行くから!」
初美「股間が痛まないのなら、犯されてる心配はないと思うんですけどねー」
洋榎「髪とか肌とかに、その、なんや……」
洋榎「こすりつけられとるのかもしれへんやん」
初美(意外とナイーブなんですねー……)
洋榎「とりあえず入ってくるから!」
洋榎「冷蔵庫の中の茶でも飲んで適当にしとってや!」
洋榎「あ、絹をいじめるのだけはアカンで!」
洋榎「ほんなら!」 タッタッタッタッタッ
初美「……」
初美(さ、さすがにこの状況で適当にくつろぐっていうのは無茶ですよー)
初美「…………」
初美「薄い毛布にくるまった薄着の妹さんの肢体を見ながらシャワーの音を聞くってなかなかニッチなエロスがありますねー……」
初美「…………」
初美「お、落ち着かないですよー」
初美「妹さん、起きなければいいんですけど」
初美「…………」
初美「ていうか起きられたら完全に積みですよー……」
初美「…………」
初美「この場に居るのは限界ですよー」
初美「とはいえお風呂に行くわけにもいかないですし……」
初美「妹さんをいじめなければ何してもいいみたいですから、お部屋に避難させてもらいますー」
[洋榎の部屋]
初美「おじゃましまーすと」
初美「……ふむ、なかなか広いですねー」
初美「中学以降放置してたと思しき勉強机が2つ……」
初美「姉妹で1部屋ですかー」
初美「ベッドも2段ベッドですし、随分仲良しさんだったんですねー」
初美「私達もなかなか仲良しこよしですけど、この姉妹には負けそうですよー」
初美「何か二人で撮った写真とか妹さんの机に飾ってありますし……」
初美「……部屋も随分整理されてますねー」
初美「予想じゃもうちょっと物が散乱しているかと思ってましたけど」
初美「……妹さんが、頑張ったんでしょうねー」
初美「……」
初美「とりあえず妹さんが整理していなさそうな所をチェックしてみましょうかー」
初美「……」
初美「机の引き出しの一番下を全部開けて……と」 ゴトッ
初美「その下のスペースを探れば、ほら……!」
初美「大事そうな手帳~~!!」 ペカー
初美「多分日記か何かですよね~」
初美「……」
初美「まぁ妹さんをいじめる以外は特に禁止されてませんしねー」 パラパラ
『今日は恭子と由子とサンマをやった』
『いっぱい勝てた。楽しかった』
初美「夏休みの宿題として無理矢理書かされた小学生の絵日記並の内容ですよー……」
『今日の夕飯はコロッケだった。うまい』
初美「うわぁ」
『絹が告白されたらしい。どこのウマの骨とも分からん奴に絹をやれるかい!!』
初美「これはシスコンですねー」
『今日は官とく代行が来た』
初美「めちゃくちゃ書き直した痕跡があるうえに誤字と平仮名ですかー……」
『おっぱいが大きくなるための本を買う所を後輩の漫に見られた』
『あいつ気付かん振りしとったけど後ろ姿がプルプル笑いを必死にこらえるソレだった』
『むかつくから今度差し入れに振りまくったコーラ渡そうと思う』
初美「この人、わりと普通の人生なのに、日記読む限り毎日楽しそうなのよー」
『今日から全国大会』
『ウチが皆とたたかえる最後の夏』
『絶対に、勝ちたい』
『勝ってまた、全国4強に入りたい』
初美「……」
初美(ちょっと胸が痛みますねー)
初美「……」
初美(大会の記録……)
初美(見てると心が痛まないわけではないのに、目が離せない……)
初美(初戦突破の時の喜びや打ち上げのこと……)
初美(私達を破ったあとの姫松の人々のこと……)
初美(……そして、敗れた時のこと)
初美(その後の個人戦の感想も含めて……)
初美(自分も体験したことだけに、胸がズキズキと痛みますよー)
初美(……特に……)
初美(友達への、面と向かって放せない本音のページはいろんな意味で読むのがきつかったですよー)
『明日は、打ち上げをしようと思う』
『皆を驚かせてやるわ!』
『色々ジョークグッズも買ったし、楽しみやわ』
『……それか、最後やし、泣かせにいくべきやろうか』
初美「……」
『あいつらには、伝えたいことばがいっぱいある』
『ありがとうじゃ足りないほどの感謝の言葉や、好きだった所』
『思い出話に、アドバイス』
『きりがないことをどう伝えたらええんやろ』
初美「……ああ見えて、結構考えてたんですねー」
初美「……私も、逃げてばっかりいないで、いい加減姫様に遺す言葉を考えないとダメですねー」
『皆のことがごっつ好きやけど、伝えるのは照れくさいわ』
『黙ったまま卒業してもええ気はするねんけどなぁ』
『それかやっぱ言うべきやろか』
『普段のキャラにのっとって、おふざけ的に言うべきか』
『それとも、真面目に想いを伝えるか』
『どないしたらええんやろか』
初美「……」 パラ
初美(結局……どうしたんでしょうかねー)
初美(ちょっと気になるんですけど)
初美「……と、そろそろお風呂から上がってきそうですねー」
初美「この日記、さすがに適当に置くことは出来ないですよー」
初美「かといって、机の奥に眠らせて陽の目を見せないというのももったいないし……」
初美「えーっと」 キョロキョロ
初美「……よし」 ヨイショット
初美「とりあえず、共用っぽい本棚の辞書の横に挿しときましたよー」
初美「これで妹さんがいつか見つけてくれるでしょー」 ニコー
初美「やっぱりこういうのは、ご家族の方に発見されてなんぼですからねっ」 ウフフン
洋榎「あがったでー」 ペタシペタシ
初美「わわわっ、服着てくださいよー///!!」
洋榎「えー……自分がそれ言うてまう?」
初美「わ、私は服着てますしっ!」
洋榎「バスタオルだけのウチより肌面積多いやんけ」
初美「……そ、それより!」
初美「早く着替えて大阪観光行きましょう!!」
洋榎(話そらしおった……)
初美「お洋服はー」
洋榎「着たでー」
初美「カバンはー?」
洋榎「持ったー」
初美「それじゃあ、お金はー?」
洋榎「……盗られたからない」
初美「……貯金はー?」
洋榎「か、関西人は宵越しの銭は持たないから……」
初美「それこそ関東人だった気がしますよー」
初美「しょうがないですねー、ちょっとくらいなら奢りますよー」
洋榎「ほんまかー!?」 オメメキラキラ
初美「そのかわり行く所とかは決めさせてもらいますよー」
洋榎「そらもうお任せしまくりよ!」
初美「それじゃ、とりあえず行きましょうかー」 ガラガラ
洋榎「あ、また窓から出てくんや……」
初美「そりゃ窓から入ったんですから、窓から出ますよー」
洋榎「普通ドアから出てかへん?」
初美「入った所と出ていく所が異なっていて許されるのは食べ物くらいですよー」
洋榎「可愛い顔してさらっとシモネタ言いおって……」
[駅]
洋榎「とりあえず駅まで来たわけやけど……」
洋榎「どーこ行くかなぁ」
洋榎「何か行きたいトコでもあるかー?」
初美「それが決まっていたら一人でさっさと回ってるですよー」
洋榎「……まぁ、せやろな」
洋榎「とりあえず電車乗ってから考えるってのもありやな」
洋榎「デートの定番言うたら海遊館やけど……」
初美「……これってデートなんですかねー?」
洋榎「デートでええんちゃう?」
洋榎「ウチはケッコーアンタのこと気に入ったしな!」
初美「……まあ、じゃあデートってことでいいですよー」
洋榎「いしょっしゃ!」
洋榎「大阪デートや!」
初美「よろしくですよー」
洋榎「そういやこっちって泊まっていくん?」
初美「デート開始後いきなりホテルのお誘いとか最低ですよー」
洋榎「違うわ!」
洋榎「泊まってくんと日帰りとじゃプランの組み立て変わってくるやろ!!」
初美「てっきり泊めてくれるのかと思いましたよー」
洋榎「……まぁ、絹さえよければ泊めてやってもええんやけど」
洋榎「オカンが何て言うかやなー」
初美「そんなマジで考えられても困りますよー」
初美「……一応夜は予定があるから一緒にはいられないんですよー」
洋榎「そっかー残念やなー」
洋榎「ウチと居れんでお前も寂しいやろー」 ケラケラ
初美「むしろ夜は静かに過ごしたい派ですから清々ですよー」
洋榎「何やとォ!」
洋榎「まぁでも日帰りやったら海遊館はやめとこか」
洋榎「どうせ定番の道頓堀あたりは外せへんのやろ」
初美「そうですねー」
初美「折角なんで、大阪の中心地に行ってみたいですよー」
洋榎「中心地ねぇ」
初美「大阪の学生がよく行く街を気ままにブラブラしてみたいですー」
洋榎「ああ、そうか、鹿児島にはジャスコくらいしかブラブラするとこないもんな」
初美「鹿児島なめたらこの神事に使う有難い棒を根本まで挿しますよー?」
洋榎「どこに!?「」
洋榎「まぁ、せやったらとりあえずは難波方面やな」
初美「おお、聞いたことありますよー」
洋榎「道頓堀でブラブラ食べ歩いてもよし、なんばパークスあたりで買い物するもよし」
洋榎「日本橋にはオタロードとかいうのもあるみたいやし、なかなか楽しめるやろ」
洋榎「その後は歩いて心斎橋通って梅田まで出たらええか」
初美「梅田……って、確か大阪駅でしたよねー」
洋榎「まぁ、とりあえず同義と思っててもええんちゃう」
洋榎「とりあえず梅田ついたら美味いもんくってバイバイでええやろ」
洋榎「別の場所で用事あっても梅田からなら行きやすいやろうし」
洋榎「ほんまやったら新世界で串かつ食ったりしたかったんやけど、昼から串かつっちゅーのもアレやしな」
初美「じゃあ時間があったらってことにしておきますよー」
洋榎「せやなー」
洋榎「通天閣とか大阪城とか見たい場所あったら先言うてくれや」
初美「そのへんは今度姫様達と見に来たいから、今回は人の多い繁華街に行きたいですよー」
洋榎「おいおい、今からデートやっちゅーのに、他のオンナとのデートの話はNGやで」
[難波]
洋榎「ちゅーわけで、なーんばー!」 イエーイ
初美「おー、人がいっぱいですねー」
洋榎「せやろーすごいやろー!」
洋榎「ちなみにあっちに行くとビックカメラがあるねんで」
洋榎「あ、ビックカメラっちゅーのは家電量販店で……」
初美「そのくらい知ってますよー!」
洋榎「ああ、てっきり家電量販店すら知らんものかと」
初美「ビックカメラはないですけど、ヤマダ電機とかベスト電器はちゃんとあるですよー」
洋榎(ベストデンキってなんやろ……)
洋榎「んでどの出口から出る?」
初美「ほえ?」
洋榎「オタロードとかいうとこ行くんならあっち」
洋榎「ほんでもって道頓堀行くならあっち」
洋榎「買い物するんやったらあっちって感じやけど」
初美「うーん……」
初美(どこ行くのがいいのかさっぱりですよー)
初美(ここはオカルトに頼ることにしますよー)
初美(姫様達みたいに上手くは出来ないけど……)
初美(大阪の観光案内人を下ろして――と)
初美(どうしたらいいか教えて下さい!)
オタロードに行くか、道頓堀に行くか、買い物エリアに行くか
>>132
洋榎「ちゅーわけでここがオタロードや」
初美「おおー」
初美「おかしな格好の人って、意外といないものですねー」
洋榎「せやな、少なくともこの中で一番奇抜な衣装着とるのはお前や」
初美「そろそろブランチにしたいですよー」
洋榎「オタロード方面やったらバッファローカレーあたりがウチは好きやけど……」
洋榎「折角オタロードまで来たんやし、メイドカフェとやらに行ってみたいなぁ」
初美「たこ焼き食べたかったですよー」
洋榎「それやったら道頓堀に出なアカンかったわ」
初美「じゃあもうちょっと我慢しますー」
初美「大阪までせっかくきたし、お店に入らないで食べ歩きたいんですよー」
洋榎(大阪のイメージ食べ歩きしかないんやろか)
洋榎「ケバブごっつ食いにくくない?」
初美「2人で1つにして正解でしたねー、結構ボリュームありますよー」
ちゃちゃのん「…………」
洋榎「あれ?」
初美「どうかしたですかー?」
洋榎「いや、あいつ……」
初美「ん?」
洋榎「家老渡の奴やん」
初美「あー……?」
洋榎「ウチ、個人戦でも戦ったからよう覚えとるわ」
洋榎「確かささのんだかって自分を呼んでた気が」
初美(よう覚えとる言うたわりにうろ覚えですねー……)
ちゃちゃのん「……ふぅ」
初美「佐々ゴニョゴニョさん」
ちゃちゃのん「わひゃぁ!?」 ビクッ
洋榎「凄い声出したな……」
初美「あ、驚かせてごめんなさいですよー」
ちゃちゃのん「あれ……アンタ……」
洋榎「久しぶりやな!」
洋榎「浪速の雀姫愛宕洋榎とはウチのことやで!」 フッフフーン
ちゃちゃのん「永水の副大将の……!」
初美「はいーお互い戦ったことはないのでこれがはじめましてですねー」
洋榎「って無視か!!」
初美「日本橋でお買い物ですかー?」
洋榎「どうせエロっちい本なんやろー」
初美「ホモ本を買った可能性も捨て切れないですよー」
ちゃちゃのん「ち、ちがっ……///!」
ちゃちゃのん「そんなん購読しとらんよ……!」
洋榎「じゃあ何しとってんこんな店で」
初美「思いっきりオタショップから出てきましたよねー」
ちゃちゃのん「え、えと、その……」
ちゃちゃのん「ちゃちゃのん、アイドル人気があったから、その……」
ちゃちゃのん「水着写真集出すことになっとって、それのイベントの一環で……」
ちゃちゃのん「その、握手会とトークショーをしに……」 テレテレ
初美「はぁ……」
洋榎「チッ……」
ちゃちゃのん「何か心底面白くなさそうなリアクションされたーーーーーーー!?」 ガビーーーン
初美「よくこの時期にできましたねーそれ……」
洋榎「ボロッカスに負けた直後やっちゅーのになぁ」
ちゃちゃのん「……あんまりしょげとっても、何にもならんけぇ」
ちゃちゃのん「あんまり引きずっとっても、あの人に笑われそうやしな」
洋榎「……ほほう」 キュピーン
洋榎「何や、オトコでもできたんか!?」 ウリウリ
初美「ほほう両想いですかー? 片想いですかー?」 ウリウリ
ちゃちゃのん「ちょ、やめてよー恥ずかしいー!」 ウワーッ
ちゃちゃのん「あ、そ、そうじゃ!」
ちゃちゃのん「このあと暇かのう?」
洋榎「話変えおったな」
初美「確実に動揺してるですよー」
ちゃちゃのん「あ、あのさ、このあとちゃちゃのん麻雀に誘われとるけぇ!」
ちゃちゃのん「よ、よかったら一緒に……」
洋榎「麻雀かーええなー」
初美「残念ですけど辞退するですよー」
洋榎「ええ!? 何でや!!」
初美「……だって、一度打ち始めたら、絶対夜まで続けるじゃないですかー」 ヒソヒソ
洋榎「うっ……」
洋榎(否定できへん……)
初美「それにちょっとやらないといけないことがあるので……」
洋榎「まーまたの機会ってことやな」
ちゃちゃのん「それは残念じゃよー」
ちゃちゃのん「……それじゃ、また」 フリフリ
初美「はい、またねーですよー」 フリフリ
洋榎「おー、次会った時もボッコボコにしたるわー!」 ブンブン
洋榎「……」
洋榎「はー、打ちたかったわ」
初美「もー、大阪デートはどうしたんですかー」
洋榎「そうやけどぉ……」
初美「さすがの私でも、そこまで目移りされるとちょっと凹みますよー」
洋榎「う……す、すまん」
洋榎「でもちょっと気にならへん?」
初美「……そりゃまぁ、あの人お胸も私より大きいし、可愛らしい顔ですけど……」
洋榎「いやそーやのうて」
洋榎「アイツの対戦相手や」
初美「ふむ?」
洋榎「大阪のイベントでこっち来とって、こっちで対戦相手捕まえたんやろ?」
初美「……確かに気になりますねえ」
洋榎「もしそれが姫松か千里のメンツ、もしくは荒川憩ちゃうかったら……」
洋榎「そいつは腕をあのオンナに見込まれた猛者っちゅーことになるからな」
洋榎「来年の大阪の台風の目になるかもわからん奴の顔は拝んでおきたいやろ」
初美「……もう卒業してしまうのに、熱心ですねー」
洋榎「後輩たちは気になるもんやろ」
初美「ですねー」
初美「しかし……結構評価してるんですねーさっきの人」
初美「あの人が選んだってだけでそれなりの評価を下すようですけど」
洋榎「まぁウチほどではないけど、なかなかに強い奴やしな」
洋榎「アイドル人気っちゅーのが気に食わんけど」
初美「まぁ、アイドル人気なさそうですもんねー」
洋榎「誰が不人気や」
初美「誰がとは言ってませんよー」
洋榎「じゃあその哀れんだ目やめ」
洋榎「さて、アイツを軽く尾行しとるわけやけど」
洋榎「アイツ道頓堀までやってきおったな」
初美「たこ焼き屋さん並んでますねー」
洋榎「この辺は分母も多いしなあ」
洋榎「かといって銀だこは変化球やからいきなり食わせるんもなー」
初美「とりあえず私買ってくるから尾行お願いしていいですかー?」
洋榎「おお、まかしとき」
初美「オカルト使えばそっちの居場所ならわかるのでー」
洋榎「なにそれこわい」
初美「あ、勝手に声かけにいったりしないでくださいよー」
洋榎「わ、わかっとるわ!」
初美「絶対麻雀誘われてホイホイ行くタイプですしー」
洋榎「大丈夫やっちゅーねん!」
初美「途中で知らない人についてっちゃダメですよー」
洋榎「小学生か!!」
初美「電信柱は姿を隠すものであって、そこでおしっこしたらダメですよー」
洋榎「人扱いですらない!?」
初美「あと、迷子になったら早く戻って――」
洋榎「もうわかったから!」
洋榎「愛宕をなめるな!」 卍
初美「?」
洋榎「……」
洋榎「み、見失ったら困るからもう行くわー///!」 ドヒューン
初美「何だったんですかねーあのポーズ」
洋榎「えーっと、おったおった……」
洋榎「おーおー声かけられとる」
洋榎「この辺りは変なスカウトやナンパも多いから気を付けなあかんでー」
洋榎「っとと、あぶな」
洋榎「油断しとるとすぐぶつかりそうになるな」
洋榎「休日の難波で立ち止まるのはほんま困難やで……」
洋榎「――――!?」
洋榎「おいおい……」
洋榎「冗談やろ」
洋榎「どういうことやねん」
初美「おまたせですよー」
初美「たこ焼きうまうまですよー」
洋榎「……」
初美「どうしたですかー?」
洋榎「アレ見てみ」
洋榎「ごっついメンツになっとるで」
久「お待たせー」
久「ごめんねー、ちょっと後輩に頼まれてた服とか見てたら遅れちゃってさー」
胡桃「待ち合わせにはゆとりを持つ!」
胡桃「佐々野さんなんて、私より早い20分前にはいたんだから!」
ちゃちゃのん「他にやることなかったけぇ」
ちゃちゃのん「鹿倉さんも早かったのう」
胡桃「まぁ私は最初からこの辺で御飯食べてたからね!」
初美「……」
洋榎「なぁ」
初美「ダメです」
洋榎「いや、あのさ」
初美「お断りしますよー」
洋榎「一局だけ」
初美「絶対終わらないじゃないですか」
洋榎「そ、そんなことは……」
初美「勝つまでやるタイプですよねー?」
洋榎「か、勝つから、いきなり」
初美「勝てるとは限らないですよー」
洋榎「だ、大丈夫やって全員に勝ったことあるし!」
初美「勝ってもリベンジ宣言されたら受けて立っちゃうタイプじゃないですかー」
洋榎「そ、そうやけど……」
初美「おとなしくメンツを確認したんだから観光の続きしますよー」
初美「大体もうメンツは決まってるんじゃないですかー?」
洋榎「そうかもしれへんけども……」
洋榎「さっきウチらを誘ってくれたし、乱入大歓迎っちゅーことやろ」
初美「……そんなに乱入したいものですかねー」
洋榎「麻雀馬鹿ならあんだけのメンツが集まりゃそらワクワクもするで!」
初美「むー」
初美「そういえばはるるも笑ってたし、あのメンバーは確かにニコニコしたくなるかもしれませんけど……」
洋榎「せ、せやろー!」
洋榎「せやから――――」
初美「あ、もう一人誰か来ましたよー」
洋榎「誰や!?」
久「そういえば主催は?」
胡桃「まだみたい!」
ちゃちゃのん「あ、あそこ!」
胡桃「全力疾走して――あ、コケた」
ちゃちゃのん「痛そう……」
久「うーん、走る度にバインバイン揺れてるわね……」
ちゃちゃのん(……ちゃちゃのんもあのくらいあれば……) むにむに
胡桃(うわあ、往来で自分の胸揉んでる……!!)
漫「あ、あの……!」 タタタタタッ
漫「お、遅くなって……すんません……!」 ゼハーゼハー
漫「……ハヒー」 ゼヒューゼヒュー
ちゃちゃのん「あはは……お疲れ様じゃよー」
胡桃「もっとゆとりを持って行動する!」
漫「す……すんません……」 ゼハーゼヒー
ちゃちゃのん「と、とりあえず呼吸落ち着けて……」
久「そうそう、膝に手をついてそうしてると胸元がセクシーよ」
漫「ど……どこ見てはるんですか……」 ゼハー
胡桃「飲む?」 スッ
漫「あ、ありが――――」
胡桃「塗る制汗剤」
漫「いりませんよ!!」
胡桃「冗談」
胡桃「制汗スプレー、はい、使っていいよ」
漫「あ、ありがざっす……」 フヒー
久「そういえば、滝見さんは?」
漫「いや、なんか迷子になったってメールが来て……」
漫「とりあえず迎えに行って、ここ来る途中の雀荘の前で待機してもろてます」
胡桃「あー、それで遅れたんだ」
ちゃちゃのん「メールくれたらよかったのに」
漫「あ、そっか……」
漫「すんません、時間ギリギリで焦っちゃってて……」
久「いつでも冷静にいないとダメよー」
久「テンパるとろくなことがないんだから」
胡桃「それ貴女が言っちゃうんだ……!」
久「経験者だからこそのセリフよ」
洋榎「何であのメンツにスズが混じっとんねん」
初美「不思議な集まりですねー」
洋榎「ていうか、滝見って確かお前ンとこの……」
初美「ですねー」
初美「はるると一緒にこっちに来たんですけど……」
初美「はるるは用事があるって言ってたので……」
洋榎「はー……その用事っちゅーんがこれか」
洋榎「……」
洋榎「って何で全国ン時の中堅メンツ集めておいてウチだけハブやねん!」
洋榎「ウチが混ざらな片手落ちやろ!」
初美「お、落ち着いて下さいよー」
久「しかしまぁ、変わったメンツよねぇ」
胡桃「何だか団体戦が懐かしい」
ちゃちゃのん「ちゃちゃのんだけ1回戦負けってのが悲しいのう……」
漫「す、すんません……」
漫「私のワガママでお忙しいとこ集まって頂いて……」
久「いえいえー」
胡桃「いいリベンジの機会だと思っとくよ!」
ちゃちゃのん「それに丁度こっちには仕事も入っとったしのう」
洋榎「いやいやリベンジするんやったらやっぱりウチが混ざらなアカンやろ!!」
初美(もういっそこの橋から突き落としたら黙ってくれますかねー)
久「しかしまぁ、まっさか引退直後にこんな豪勢なメンツで卓を囲めるなんてね」
ちゃちゃのん「そっかー、そういえば今日のメンツで引退じゃないの上重さんだけじゃったかー」
漫「す、すみませんなんか……」
胡桃「いいんじゃないかなー」
胡桃「相手の強化を防いで自分を強化するのなら、引退した人を使うのが一番だしー」
漫「べ、べべべ別にそんな腹黒いことを考えていたわけじゃ……!」 アタフタ
久「あはは、まあ別にそういう思惑でもいいんだけどねー」
ちゃちゃのん「ちゃちゃのん達もまだ麻雀は続けていきたいし、強い相手との試合は大歓迎じゃ!」
久「それに、私の後輩達ならきっと連覇してくれるでしょうし!」
胡桃「いいなー、私も後輩欲しかったなー」
漫「あ、あはは……」
洋榎「……何やアイツ、強くなりたかったんか」
初美「見事に全国じゃ足引っ張ってましたしねー」
洋榎「そないな理由やったら、ウチらに相談したらええのに」
初美「人望ってやつですねー」
洋榎「……」 グリグリグリ
初美「あああああ無言の攻撃はマジギレっぽくて怖いですよ~~~!」 ウワーン
久「しかし、頑張るわねぇ」
漫「……そら、頑張りますよ」
漫「結局また、シードから弾かれてまいましたし」
漫「……もう、負けたないんです」
漫「強くなりたい……姫松を引っ張れるくらい……」
漫「エースになりたいんです」
漫「末原先輩や、真瀬先輩……」
漫「それに――主将……愛宕先輩のためにも」
漫「来年こそ、優勝旗を持ち帰りたいんです」
久「それでわざわざ、私達を相手にねぇ」
漫「愛宕先輩が戦った人達と戦えば、何か掴めるかな思いまして……」
久「もういない、あらゆる面での主柱であった主将みたいになりたい、か――」
胡桃「あそこまでマナ悪にはならないでいいからね!」
ちゃちゃのん「泣かせる話じゃよー」 ズビー
胡桃(うわ、涙もろっ!)
洋榎「…………」
初美「…………」
洋榎「…………」 スッ
初美「あ、どこ行くですかー」
洋榎「心斎橋にでも行くでー」
初美「……麻雀はもういいんですか?」
洋榎「秘密特訓したいんやったら、させたろやないの」
洋榎「こーいうんは気付かん振りして評価だけしてやるっちゅーのがオトコってもんや」
初美「オトコではないと思いますよー」
洋榎「まぁなんにせよ……しゃーないからここはスズの矜持を尊重したるわ」
洋榎「来年には、戦い甲斐ある雀士に育つとええねんけど」 スタスタ
初美「……」
初美「憧れて、成ろうとされて、照れてるんですかー?」
洋榎「ば、誰が照れんねん!!!」
初美「わかりやすいですよー」
[心斎橋]
洋榎「ちゅーわけで心斎橋や」
初美「ここは何があるんですかー?」
洋榎「んー……パルコとかあったんやけど……」
洋榎「今はまぁ、ライブハウスとかそーいうとこか」
洋榎「ああ、ジョジョバーとかがあったりもするんやで」
初美「ジョジョ?」
洋榎「……自分ジャンプとか読まんタイプか」
初美「週刊誌のですか?」
洋榎「ああ」
初美「週刊雑誌はモーニングとチャンピオンしか読んでないですよー」
洋榎(アカンどっちも読んどらん奴や……)
洋榎「どっか寄りたいとこあったら言ってやー」
初美「了解ですよー」
洋榎「とりあえずブラブラするでー」
初美「はーい」
洋榎「……」 ブラブラ
初美「……」 ブラブラ
洋榎(アカン会話なくなった!!)
初美(無言は無言で何か気まずいですよー!)
初美「あ、あの!」
洋榎「な、なんや」
初美「私、そういえば、>>205に行ってみたかったんですよー!!」
安価下
安価下
初美「USJに行ってみたいですよー!」
洋榎「うへぇ」
初美「何ですかそのリアクション」
洋榎「いや、ちーと遠いなあと思って……」
洋榎「ていうかUSJとか厨房の時行ったっきりやから案内はあんま出来へんで?」
初美「ちょちょーっと回るだけだから大丈夫ですよー」
初美「どうせディズニーと違って乗り物サクッと乗れますしー」
洋榎「なんちゅーことを」
[電車]
洋榎「とりあえずUSJで何乗るかやなぁ」
洋榎「ウチ、バックドラフトのとかジュラシックパークのとか……あとはジョーズとバックトゥザフューチャーのくらいしか分からんで」
洋榎「しかもまだあるのかすら不明やし」
初美「大阪人のくせにダメダメですよー」
洋榎「ひらパー派やねんからしゃーないやろ」
初美「ひらパー?」
洋榎「ひらかたパークっちゅーのがあんねん」
洋榎「ブラックマヨネーズがひらパー兄さんとかいって広告塔やってるんやで!」
初美「ぶらっくまよねーず……?」
洋榎「何や自分、お笑いとか見ん人か」
初美「笑点ならたまに見ますよー」
洋榎(花月あたりに行かんでよかった……)
初美「そういえば、USJってパレードとかあるんですかねー」
洋榎「あるにはあるでー」
初美「グッキー!とかいうやつですかー?」
洋榎「それ知らんわ」
洋榎「でも確か、ワンピースのプレミアムショーだか何かをやっとったような……」
洋榎「……さすがにワンピースくらいは分かるやろ?」
洋榎「あの超有名海賊漫画や」
初美「海賊漫画と言ったらフルアヘッドココですよー」
洋榎「……すまん、それ分からんわ」
[ユニバーサル・スタジオ・ジャパン]
洋榎「ちゅーわけで、来たでUSJ!」
初美「とりあえず日が暮れるまでブラブラするですよー」
洋榎「あ、あのクッソでっかい地球の前で写真撮るかー?」
初美「やめときますよー」
洋榎「そうかー?」
初美「時間が惜しいですからさっさと建物見て回りましょう」 マガオッ
洋榎「え、あ、うん」
洋榎(あ、あれ、もしかしてこいつテーマパークガチ勢……?)
初美「次はこのエリアに行きますよー」
洋榎「ま、まって……」
洋榎「ちょ、疲れたて……!」 ハァハァ
初美「もー」
初美「そんなことではディズニーランドは戦いぬけ無いですよー」
初美「如何に無駄なく効率的にアトラクションを乗れるかが鍵なんですよー」
初美「それによって建造物に裂ける時間も決まりますし」
初美「USJは初ですから、パレードの良スポットを陣取るには何時間前に並べばいいかもわからないんですからー!」
洋榎(帰りたい……)
洋榎「も、もっとこう……なんちゅーの?」
洋榎「スヌーピーやセサミストリートにきゃー可愛いとかいうてまったりのんびりしてみたり……」
洋榎「もしくはハリウッドエリアでうひょーかっこえー言うてブラブラしてみたりやな……」
初美「仕方ないですねー」
初美「一応そっちの意見も尊重してあげますよー」
洋榎「ほんまか!」
初美「じゃあ割りとのんびり待つ奴に乗りましょうか」
初美「ハリウッドとスヌーピーとかなら……多分ハリウッドとかの方がいいですよねー?」
洋榎「おう!」
洋榎「つってもハリウッドエリアって何あったっけなー」
洋榎「ジョーズやバックトゥザフューチャーとかは別エリアやったっけ?」
洋榎「ジュラシックパークとか結構おもろかったんやでー、最後の落下クッソ怖いねんけどな!」
初美「……あー……絶叫得意じゃないんですかー」
洋榎「べ、別に苦手やないで!」 アセアセ
初美「……ならいいんですけどー」
洋榎「しかしこの乗りもん初めて乗るわー」
初美「ああ、どうりで……」
洋榎「?」
洋榎「しかしハリウッド・ドリームとか、何かイッツアスモールワールドを思い出すネーミングやなー」
洋榎「見た目通りお子様ってか!」 ガハハ
洋榎「まぁでもたまにはのんびり児童向けに乗るっちゅーのもありやな!」
初美「……」 アワレミノメー
ハリウッド・ドリーム・ザ・ライドは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンのハリウッドエリアにある新感覚ジェットコースター。
ライドは、椅子に腰掛けると足が浮くように設計されていて体を支えるのは腰元の安全バーだけであるため、宙に浮いているような感覚が味わえる。それに加え、コースターにはマイナスGが味わえるポイントがあり、次の3つが挙げられる。
・キャメルバック: 意味は「らくだの背中」。「こぶ」と速度でマイナスGをつくる。メインゲートから見える大キャメルバックは迫力満点。
・ホースシュー: ユニバーサルシティ駅から見えるこの急カーブはこれ。大きく放り出されるようなカーブ。
・ダブルヘリックス:二重の螺旋状のコース。一気に上へとかけあがる。
(wikiより)
洋榎「うきゃああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
初美「あー楽しかったー」
初美「やっぱり乗り物一発目は最強絶叫系に限りますよー!」
洋榎「……アカン……何かチカチカする……」
ゲロゲロゲロゲロゲロ
キャー、ハルチャーーーーン!!
初美「うわあ、あっちで同乗してたお姉さんが吐いてるですよー」
洋榎「ほ、報告せんといて……も、もらいゲロしそう……」
洋榎「アカン……胃液どころか鼻から臓物吹き出しそう……」 フラフラ
初美「右からですかー? 左からですかー?」
洋榎「よ、弱った人間にそういうこという……?」
初美「ホントに飛び出した事例なんてないから大丈夫ですよー」
洋榎「最初の事例になってまうかもしれへんやろ!」
洋榎「そうなったらどないすんねん!」
初美「んー……」
初美「通報したあと写メってツイートするとおもいますー」
洋榎「そういうことやなくて!」
洋榎「……そういうことだとしても最悪やんその行動!」
初美「ほら、随分元気になったじゃないですかー」
洋榎「まだフラフラやけどな……!」
洋榎「ど、どっかで休もうや……」
初美「じゃああっちで休むですよー」 タッタッタ
洋榎「もうどこでもいいから座りたいわ……」
洋榎「ん?」
初美「どうかしたですかー?」
洋榎「いや……」
洋榎「あそこに居るの……」
洋榎「由子やん」
初美「ああ、チームメイトの」
洋榎「何してんやろ……」
初美「デートじゃないですかねー」
洋榎「で!?」
初美「そりゃこの場所で、座ったテーブルに飲み物2つ置いてあったらそう考えるのが自然ですよー」
洋榎「……」
洋榎「あ、あそこで休もか」
初美「気になるですかー」
洋榎「そらな」
初美「でも、至近距離に行くとかリスキーなことしますねー」
洋榎「……」
洋榎「変装に使えそうなグッズ買ってくるのが一番ちゃうやろか」
初美「……はぁ」
初美「じゃあ買ってくるので、見つからないよう隠れていてくださいよー」
洋榎「おう、任せとけやー!」
初美「ただいまですよー」
洋榎「おーう、おかえり」
初美「はい、エルモのかぶりものですよー」
洋榎「……」
初美「あれ、気に入りませんでしたかー?」
洋榎「タグにペットヘッドって書いてあるんやけど」
初美「……」
洋榎「……」
初美「まあ、大差無いですよー」
洋榎「あるわ!」
初美「しーっ。気づかれますよー」
洋榎「う、うぐ……」
初美「それで、どんな感じですかー?」
洋榎「相手、まだ来ーへんわ」
洋榎「連れ待たすとか最低のオトコやな」
洋榎「相手次第じゃぶん殴ってでも由子を連れ戻すわ」
初美「……仲良しさんなんですねー」
洋榎「……マブダチやからな」
洋榎「ウチはアイツが好きやし、アイツが不幸になるくらいなら恨まれた方がマシや」
初美「……」
初美(ちょっと胸がいたいですよー) ズキン
洋榎「つーか由子のカッコ……」
初美「スーツ、なかなか似合ってますねー」
洋榎「浮きまくっとらへん?」
初美「まぁ、テーマパークじゃ珍しいですよねー」
洋榎「お、誰か来た!」 コソコソ
初美(結構ペットヘッド似合ってるのよー)
郁乃「おまたせ~~~」
洋榎「!?」
由子「ホントにえらい待たされたのよー」
洋榎「」 パクパク
初美「どうしたのよー?」
洋榎「……うや」
初美「へ?」
洋榎「監督代行や、あれ」 アタマカカエー
郁乃「いや~~~それにしてもその格好浮いとるわ~~~~~」
由子「着替えも許さず連れてきたのはそっちなのよー」
郁乃「だってぇ~~~~待つの嫌じゃな~~~~~い」
由子「遅刻した直後に言うセリフじゃないのよー……」
初美「……なんていうか、その……」
洋榎「すまんな、あんな恥ずかしい監督代行で」
郁乃「まあまあ、これでも気を使っとるんやから~~~」
由子「はぁ……」
郁乃「こう見えても、由子ちゃんのことは買っとるんよ~~~」
郁乃「そうじゃなかったら、元気づけるためにUSJになんて連れてこ~へんて~~~」
由子「代行……」
由子「世間一般に出会い頭に強制的人連れてくることは拉致って呼ぶと思うんですがー」
郁乃「細かいこと気にしたらアカンて~~」
郁乃「それに監督代行やのうて、監督って呼んでや~~」
由子(この人ホントめんどくさいのよー)
郁乃「それで、就職活動の方の調子はどう~?」
由子「いきなり嫌なことストレートに聞いてくるのよー……」
郁乃「まぁほら~~オブラートに包む方が傷つくことだってあるし~~~?」
郁乃「それにほら、教師としても進路状況は把握しておかなきゃいけないから~~~~」
由子「まぁ、やっぱりちょっと厳しいですよー」
由子「麻雀が強い所に行きたいってだけで、その仕事がやりたいわけじゃないですからねー」
由子「志望動機が弱いって怒られるのよー」
郁乃「あとその口調が足引っ張っとるんちゃうかな~~~」
郁乃「敬語めっためたや~~~ん」
由子「ホントにズバズバ言ってくるのよー……」
洋榎「……アイツ、進学せぇへんのかー」
初美「知らなかったんですかー?」
洋榎「アイツとはくっだらない話ばっかしとったからなー」
洋榎「まぁさすがに一緒の大学で、なんて思っとらんかったけども」
洋榎「恭子はウチとちごうて頭のいい大学一般入試やろうし、これで三人バラバラかぁ」
初美「……別れはいつか来るものですよー」
洋榎「……せやな」
洋榎「アイツに内定出たら祝ったらんとなぁ」
郁乃「もう進学したら~~~?」
由子「……」
由子「遠慮しておくのよー」
由子「恭子はやりたい仕事もあっていい大学に行くし……」
由子「主将――洋榎はこの前の全国でヒーローになったのよー」
由子「二人の友人に胸張って並べるよう、今はただ麻雀が打ちたいのよー」
郁乃「麻雀なら大学でやって打てるんに~~~」
由子「一刻も早くプロになって、洋榎に自慢したいのよー」
郁乃「意固地やな~~~~」
初美「……さっきの後輩の子といい、意外に慕われてるんですねー」
洋榎「意外って何やねん意外って」
郁乃「まぁ息抜きになったならよかったわ~~~」
郁乃「色々あったけど、引きずってもしゃ~なしやし~~~~」
由子「……」
由子「せめて奢って欲しかったのよー」
郁乃「しゃ~ないやん、安月給やも~~~ん」
洋榎「ひでえ……」
初美「でもどうやら、あの人ちゃんと進路考えてるみたいですねー」
洋榎「せやなぁ、見習わんと」
初美「あ、そろそろパレードの時間ですー」
初美「さ、行きますよ!」
洋榎「え、まだ行くん……?」
初美「あー楽しかったですよー!」
洋榎「いきいきしとんなー」
初美「そっちはグッタリしすぎですよー」
洋榎「……洋榎や」
初美「はい?」
洋榎「ウチの名前」
洋榎「まー知っとるやろうけど、一応、な」
洋榎「デートしとんのに、そっちとか言われとったら締まらへんやろ」
初美「……ですねー」
初美「でも、改めて名前を呼ぶのって照れますよー」
洋榎「……そんなん言われたら意識してまうやろ!」
洋榎「ホラ、サクッとシレッと普通に言うてまえ!」
初美「は、はい……えと……」
初美「披露宴!」
洋榎「何でそうなんねん!!」
洋榎「……ったく」
洋榎「ほら」 スッ
初美「ほえ?」
洋榎「こんだけ人がおったら、手を握りでもしとらんと、迷子になるかもしれへんやろ」
初美「……恥ずかしいからいいですよー」 プイッ
洋榎「まぁそう言わんと」
初美「……」
洋榎「……せいっ!」 ギュッ
初美「はわっ!?」
洋榎「ふふん、お子様やな!」
洋榎「大人のオンナは多少強引にでも願いを叶えるもんやでー!」 ニギニギ
初美「私達はまだ未成年ですよー!」
洋榎「……」 ニギニギ
初美「な、なんですかー」
洋榎「いや……手ェあったかいなー思て」
初美「そ、そうですかー?」 テレッ
洋榎「まー夏やと暑苦しいだけやし、手が冷たい人の方が心があったかい言うけどな!!」
初美「……乙女心の掴み切れない人ですよー」 ハァ
洋榎「……ついでにっと」 ギュッ
初美「えええ!?」
初美「ななな何を……」
洋榎「ん、ハグや」
洋榎「後ろからこうするん、絹以外にやるんはごっつ久々やなー」
初美「……」
初美「妹さんとはよくするんですねー」 ブスッ
洋榎「何ふてくされとんねん」 ウリウリ
初美「ふてくされてないですよー」 プクー
初美「ただシスコン気持ち悪いなって思っただけですー」
洋榎「はっはっは」
洋榎「なんとでもいえー! 姉妹愛最高やー!」
初美「……」 ムー
洋榎「まぁでも、絹へのハグとアンタへのハグは別モンやわ」
初美「ふぇ!?」
初美(そ、それは妹へのそれと……)
初美(す、好きな人へのそれの違い……とか///?)
洋榎「絹はこうしてハグしとったら腕にやらかい胸がぷよぷよ当たっとったしなー」
初美「……」
洋榎「……あ、もしかして胸無いん気にしとった?」
初美「……べーつにー」 ブッスー
洋榎「……」
洋榎「えい」 むにゅっ
初美「ひゃあ!?」
洋榎「うーん、ウチより胸平らで硬いな……」 ペタペタ
初美「ちょ、ま、何を――///!!」
洋榎「……いやほんま見事な直線で」
初美「ひ、人のこと言えないじゃないですかー!」
初美「背中に欠片も胸の感触ありませんよー!」
洋榎「何やとこらー!」 クニクニクニ
初美「ちょおおおおおおお!?」
初美「ば、服脱がせないでくださいよー!」
洋榎「勝手に脱げとるだけやろ!」 モミモミ
初美「さ、さすがにこれは恥ずかしいですー!」
洋榎「普段のカッコと変わらんやんけ!」 モミモミ
初美「ぜ、全然違……ひゃうっ///」
洋榎「ちょ、何変な声出し……」 モミモミ
初美「……んっ」 ピクッ
洋榎「…………」 モミモミ
初美「……ふうっ」 ユビカミッ
洋榎「…………」 ムラッ
洋榎(あ、あかん……何か冗談じゃすまんような感じが……)
洋榎「……な、何かごめん……」 スッ
初美「い、いえ……///」 ハー…ハー…
[電車]
洋榎「…………」
初美「…………」
洋榎(ごっつ気まずい……)
洋榎(ちょっと調子乗り過ぎてもうたかなぁ)
洋榎「……なぁ」
初美「……なんですかー」
洋榎「……悪かったな」
初美「……いえ」
洋榎「……ちょっと……甘えとったわ」
初美「……」
洋榎「人肌が恋しかったっちゅーのも否定出来へん理由ではあるけど」
洋榎「お前の華奢な体が心地よかったっちゅーのと、お前なら笑ってゆるしてくれるやろなんていう最低な思考が原因やな」
洋榎「……ほんま、ごめん」
初美「……」
初美「……初美ですよー」
洋榎「……?」
初美「最初に、覚えたって言ったじゃないですかー」
初美「……私は、“お前”じゃなくて“初美”ですよー」
洋榎「……すまんかったな、初耳」
初美「何でそうなるんですかー!」
洋榎「披露宴とか言うてくれた仕返しや」 クケケ
初美「むむー!」
憧「……」 ジトー
洋榎「っとと、騒ぎすぎるのはアカンな」
洋榎「人が見とるわ」
初美「そうですねー……」
初美「USJでも騒ぎすぎて痴態を見られちゃいましたし」
洋榎「わ、悪かったって」
[梅田]
洋榎「さて、梅田に帰ってきたわけやけど」
初美「……」
洋榎「……やらなアカンこと、あるんやろ?」
初美「……」
初美「……したく、ないですよー」
洋榎「……」
初美「……お別れ、したくないです」
初美「もうちょっとだけ」
初美「出来ればずっと」
初美「こうやって馬鹿やっていたいですよー」
洋榎「……」
洋榎「そないなこと言われてもなー」 ポリポリ
初美「……ですよねー」
初美「わかってますよー」
初美「私はもう18歳ですからねっ!」
初美「……ずっといっしょになんてこと、ありえないって分かってます」
初美「分かって……」
洋榎「……」
洋榎「なぁ」
初美「?」
洋榎「ほんなら、最後に――一緒に、どうや」 クイッ
初美「あれって――――」
洋榎「大阪名物、観覧車や!」
初美「お、おお~~~~!!」 キラキラ
洋榎「ユニバやランドにはないからなー王道なんに」
初美「の、乗りたいですー」
洋榎「おう、乗ろか~」
洋榎「……カップルで乗るもんなんやろうけどな、観覧車って」 ニカー
初美「……わ、私達もカップルに見えるんですかねー」 ポソ
洋榎「いやいいとこ姉妹ちゃう」
洋榎「あーでも絹みたいに妹は美人系やないと不自然かー」
洋榎「ほんなら美人教育実習生と生徒とか!?」 ガハハ
初美「……」 ドゴッ
洋榎「おおうみぞおち……」
初美「……ほら、行きますよー!」
洋榎「へーいへい」
洋榎「……」
洋榎(ほんま、げんきやなー)
洋榎(ほんで田舎もんや)
洋榎(……多分、知らんのやろうなぁ)
洋榎(大阪では有名やねんけどな、この観覧車)
洋榎「やっぱり向かい合うべきなんやろなぁ」
初美「……ですねー」
初美「……」 ゴウンゴウン
洋榎「……」 ゴウンゴウン
初美「……私、観覧車なんて初めてですよー」
洋榎「ウチも二人っきりで観覧車に乗るなんて絹と乗った以来やわ」
初美「……ほんっとシスコンですねー」
洋榎「ウチは愛する人はとことん愛す主義やねん!」 ガハハ
初美「……妬けますよ、ホント」
洋榎「……さて、名残惜しいけど」
洋榎「物事には終わりっちゅーもんがある」
初美「……」
洋榎「やること、あるんやろ」
洋榎「それが済んだら、ウチらはサヨナラや」
初美「……」
洋榎「……この観覧車な、乗ったらお別れするってことで有名なんやで」
初美「ええ?!」
洋榎「まぁそんなわけで、うちらは多分どう転んでもコイツの呪いでお別れや」
洋榎「……」
洋榎「せやから……」
洋榎「もういろんなもんかなぐり捨てて、ホントのこと、言ってまおうや」
洋榎「……」
初美「……」
洋榎「……なあ」
初美「……はいー」
洋榎「ウチもな、別にニブチンとはちゃうで」
洋榎「ニブチンやったら主将なんて務まらんしな」
初美「……そう、ですかー」
洋榎「……せやけどな」
洋榎「はっきりと、言葉にして言ってもらいたいねん」
洋榎「気になってしゃーないことの真相を知るんなら、本人の口から聞きたい」
初美「……」
洋榎「……ウチのことで、何か言いたいこと、あるんと違う?」
洋榎「なあ、窓の外ばっかみとらんと――ウチの目、ちゃんと見てや」
初美「……っ!」
初美「でも……」
洋榎「……」
洋榎「まあ確かに……言い難いことやろうなぁ」
洋榎「それを強要するんは確かにフェアやない、か」
初美「……」
洋榎「せやから、まずはウチが言うわ」
初美「えっ……」
洋榎「よーやくこっち向いてくれたな」 ニッ
洋榎「……やっぱ想いを伝えるなら、こうして面と向かわんとな」
初美「……」
洋榎「……いざとなると怖気づいてまうなあ」
洋榎「これじゃ皆に笑われてまうわ……」
洋榎「お姉ちゃんカッコ悪いーとか、意外とヘタレなんですねーとか」
洋榎「……頑張るのよーとか、常に自分の都合いいよう考えるのが持ち味でしょう、とか」
洋榎「きっと、笑いながら言われてまうわ」
洋榎「……せやから、言うわ」
洋榎「アイツらに、心配されるようじゃ終わりやしな!」
洋榎「漫も由子も、ウチに負けへんようにって、頑張っとったしなー」
初美「……」
洋榎「……」
洋榎「もうすぐ頂上や」
洋榎「……今日のこれがホンマモンのデートで……」
洋榎「カップルになれるんやったとしたら――」
洋榎「頂上行く前になっとくべきなんやろうなぁ」
洋榎「観覧車の天辺でキスとかちょっと憧れるしな!」
初美「……」
洋榎「……ツッコんではくれんのな」
洋榎「まぁええわ、もう言ったようなもんじゃないかってツッコまれてもぐだぐだやったしな」
洋榎「……ウチも結構勇気出して言うねんから、目、そらさんといてな」
洋榎「一目惚れとか、うそくさーと思うかもしれへんけど」
洋榎「それでも、一緒におったら落ち着いたっちゅーかなんちゅーか」
洋榎「楽しかったってのが大きいんかな?」
洋榎「ああでも顔も可愛らしいと思っとるけどな!」
初美「……要領を、全然得てませんよー」 グスッ
洋榎「自分こそ、目をうるませるの早いでー」 ケラケラ
洋榎「……ウチとしては、泣かんといてほしいんやけどなぁ」
洋榎「ずっと笑っとってほしい」
洋榎「……ウチ、な」
洋榎「初美。お前に惚れてもうたみたいや」
洋榎「大好きやで」
初美「う……うう……」
洋榎「ほら、泣かんといてや」
洋榎「……」
洋榎「返事、聞いてもええかな」
初美「……そんなの……わかってるはずじゃないですかぁ……」 グスッ
洋榎「それでもや」
洋榎「ワガママ、聞いてくれや」
洋榎「聞きたいんや、初美の口から」
初美「うう……」
初美「私だって、洋榎ちゃんのこと、好きですよぉ……!」
洋榎「……そっか」
洋榎「……アカンなぁ」
洋榎「こういう時は笑うもんやってウチが言うたはずなんに」
洋榎「ちょっと目元が滲んできたわ」 ゴシゴシ
初美「うう……」
初美「好きですよー……」 ヒック
初美「まともに話したばっかりなのに」 ヒック
初美「なのにどうしようもなく、好きになっちゃったんですよー……!」 エグッエグ
洋榎「はは、ホンマ嬉しいわ」
洋榎「……初美に会えて、ホンマによかったわ」
そう言った貴女の顔は、妙に穏やかで。
その表情には、達観と覚悟が滲み出ていて。
初美「酷い……人ですよー……」 ヒック
初美「こんなこと……言いたくなかったのにー……」 エグッ
大好きだって言わされて。
離れたくないと思わされて。
洋榎「……すまんな」
洋榎「ウチがもっとニブチンやったらよかったんやろうけどなぁ」 タハハ
それでもそれは叶わなくて。
全てを捨てて一緒に歩んでいきたくても、貴女はそれを許してくれないのだろう。
洋榎「……言ってくれ、初美」
だからせめて、愛しい人の最後の願いを叶えるために。
私自ら、引導を渡すために。
涙でぐちゃぐちゃになりながらも、言った。
初美「……洋榎ちゃんは……もう、亡くなってます……」
え?
初美「今の洋榎ちゃんは……幽霊、です……」
愛宕妹が置いていかないでと涙
ちゃちゃのんの全スルー
確かに伏線になってるのか…
永水は巫女だから交霊とかアリかも
洋榎「……あー、やっぱりかー」
洋榎「そら記憶もないわなぁ」
洋榎「……お疲れ会に向かうとこまでは記憶があるし、その途中で事故ったんかな」
初美「……そこまでは……分かりませんよー……」
初美「ただ……亡くなったことは、知っていましたよー……」
初美「その……私のミスで、成仏できるはずの洋榎ちゃんの魂を、降ろしてきてしまって……」
洋榎「それでウチを成仏させるため、大阪までやってきたと」
初美「……はい……」
初美「ごめんなさいですよー……」
初美「……嫌われても、文句は言えません……」
泣いていたら、いつの間にか貴女が傍に寄ってきていて。
私にだけは触れることが出来る手で、涙を拭って。
他のものは、私と洋榎ちゃんには動いて見えるだけでまるで動かないのに。
涙だけは、洋榎ちゃんにもしっかりと拭い取れて。
おかげで、洋榎ちゃんの表情がよく見えて。
洋榎「……」
初美「……!」
幽霊のはずなのに、あったかい感触が、唇に伝わってきて。
洋榎「……気にしんといてや」
洋榎「惚れたオンナの失敗くらい、許せんくって何が浪速の英雄や」 ニヒヒ
初美「洋榎ちゃん……」
洋榎「……それにな、ウチは幸せなんやで」
洋榎「観覧車の天辺でキスするなんてイベントを、最後に経験できたんやからな!」
初美「……私も……」
初美「洋榎ちゃんに会えて、幸せでしたよー」
初美「こんなカタチになっちゃったし……」
初美「別れがくるのが、辛いですけど……」
洋榎「……」
初美「それでも……」
初美「出会わなければよかったなんて言えないほど、洋榎ちゃんのこと、好きになっちゃいましたから」
洋榎「……あーあーまた鼻水垂れ流しちゃって」
洋榎「……それでもよーやく、また笑ってくれたなぁ」
初美「……だって、私は笑顔がチャームポイントですからー」
初美「最後まで……可愛いって思われたいんですよー……」 ズズッ
初美「……そういえば……」
洋榎「ん?」
初美「いつ、気付いたんですか?」
洋榎「……確信したのは、道頓堀でやな」
初美「……」
洋榎「あんとき、一回一人になったやろ?」
初美「はい」
洋榎「そんとき違和感あったねん」
洋榎「歩いてて、歩きにくさが尋常じゃない」
洋榎「まるで皆が、ウチのこと見えてへん風に歩いてきよる」
初美「……それで……」
洋榎「しまいには――あの宮守のちまっこいの、おったやろ」
洋榎「ちまっこすぎて見えとらんかったんやけどな、まぁ向こうもこっちを見えとらんわけで……」
洋榎「見えてへん同士で見事にぶつかって、そんでもって体をすり抜けられたら、誰でも気づくわ」
洋榎「漫の会話も、死んだウチの分まで頑張ろういうことやったとしたら、スジが通るしな」
洋榎「ウチが死んだと考えたら、他の皆の行動も納得いくねん」
洋榎「絹があんな寝言を言うとった意味も」
洋榎「ゆーこがプロになって自慢したいって言うた相手が、ウチ一人やったことも」
洋榎「あの監督代行が、元気づけなアカンと思ってUSJに連れていくほどゆーこが落ち込んどった理由も」
洋榎「……ああ、絹が疲れ果てて眠っとったのも、飲み過ぎやのうて、多分ウチが死んだことによる泣き疲れやな」
洋榎「それにゆーこの服装」
洋榎「初美はすかさずスーツっちゅーたけど、あれ、喪服として着とったんちゃうかな」
洋榎「多分ゆーこや、家におる絹は、今日の通夜に出るんやろ」
洋榎「仕事で来とった佐々野だけでなく、岩手や長野、鹿児島からわざわざ来てくれたのも、明日葬式があるからやろ」
洋榎「多分あんな吐きそうになったのにゲロすら吐かずにサクッと復活したんも、もう幽霊やったからやろ」
洋榎「コースターみたいに知らん人が隣に座ってきにくいもんをチョイスしたのも――」
洋榎「店員が人数分のグラスを運んでくる飲食店に入りたがらず屋台のたこ焼きにこだわったのも――」
洋榎「全部、ウチに自分が幽霊やってことを悟らせないためやったんやな」
初美「……なんでもお見通しなんですねー」
洋榎「惚れたオンナの気遣いくらい、気づかないようじゃ失格やからな」 ハハ
洋榎「あと、ウチからは普通に物が動いて見えとったけど、多分実際は何も動いてないんやろ」
初美「……はいー」
洋榎「まあ、そうやなかったら大混乱やろうしなぁ」
洋榎「でもそれで、インターホンあんな鳴らしても絹が起きなかったことにも説明がつく」
洋榎「初美がリスクを犯してまで窓を自ら叩き割ったり、毛布を引っ張りだしてきたことにもな」
洋榎「タオル一枚で風呂場から出てきた割に、すぐ水滴も廊下から消えてた時点でおかしいとは思っとったんやけどね」
洋榎「切符も実際には買ってないし、幽霊だから改札も通れてたっちゅーことか」
初美「はい……」
洋榎「あ、もしかして、改札通るときに違和感ないように、混雑した駅ばっかり選んどった?」
初美「……正解ですよー」
初美「何でもお見通しなんですねー」
洋榎「普通の幽霊やったら騙されとったんかもしれんけど、一緒にしてもろたら困る」
洋榎「格が違うわ!」 ドヤドヤ
初美「そういえば……」
初美「もう一個謝っておきますよー」
洋榎「何や?」
初美「日記、見ちゃいましたー」
洋榎「おまっ……!」
初美「……想いは、ちゃんと生きてる内に伝えないとダメですよー」
洋榎「ウチへの告白せんまま逃げようとしてた奴のセリフとちゃうな」 クスクス
初美「うう……否定出来ないですよー」
洋榎「……しゃーないやん、伝えたかってんけど、その前に事故ってもうたんやから」
洋榎「頭痛かったし、服は着てたのに財布も鍵も携帯すらも吹っ飛んでたことから見て――」
洋榎「持ち物吹き飛ぶ勢いで車にでもツッコまれたんやろうなぁ」
初美「ボケ冥利につきますかー?」
洋榎「せやなあ、初美のツッコミよりキレはよかったかもな!」
初美「むむ、そこまでいうならこの神事に使う有難い棒を突っ込んでもいいんですよー!」
洋榎「ひい、胎内から逝ってまうぅ!」
洋榎「まぁ、でも、初美のおかげで楽しい幽霊ライフやったで」
初美「……そのまま続けますかー?」
洋榎「冗談」
洋榎「それじゃヤバイから、わざわざ大阪くんだりまで来てくれたんやろ」
初美「……はい」
初美「そのままだと、地縛霊になってしまうですよー……」
洋榎「そらゴメンやな」
洋榎「佐々野の奴にされたように、会話してもらえへんことがずっと続くようになるわけやろ?」
洋榎「大阪人として、ボケ・ツッコミ出来へんとか考えられへんわー」
初美「……」
洋榎「……まもなく地上につくな」
洋榎「ジンクス通り、これで、うちらも、お別れになってまうな」
初美「……お別れ、したくないですよー」 ウルッ
洋榎「……なあ」
初美「はい……?」
洋榎「ウチの体、幽霊やけどあったかかったか?」
初美「……はい」
初美「私にだけは、生前と同じように感じることが出来るんですよー……」
洋榎「……そうか、ほんなら……」
洋榎「胸か手のひら、貸したるわ」
洋榎「胸はないけど初美のよりはぷにぷにやでー」
洋榎「手のひらは、何か雀力的なのがあって有り難そうやん?」
洋榎「……ああ、太もももありやろなー」
洋榎「ウチの太ももは気持ちええって絹が!」
初美「……そのどれも、多分妹さんのお下がりですよー」
洋榎「……ま、まあな」
初美「……それじゃ、嫌ですよー」
初美「まだ地上まで、もうちょっと時間ありますから――」
初美「妹さんですら触れたことない……洋榎ちゃんの一番大事なところをください……」
洋榎「……ええで」
洋榎「むしろこっちが、生きてる初美をキズモんにしてまうのが申し訳ないくらいや」
初美「……傷物には、なれませんよ」
初美「私に触れられても、傷つけることは出来ないんです」
初美「……傷跡を、遺すことは出来ないんですー」
初美「だからせめて……記憶に刻みつけてほしいですよー」
初美「洋榎ちゃんのこと、こんなに好きだったってことを」
初美「洋榎ちゃんが、私のことを、大好きだったってことを」
洋榎「そのかわり、約束してくれ」
初美「はい……?」
洋榎「ウチの分まで、ちゃんと生きたってくれ」
洋榎「後を追うとか、アホなこと考えんなや」
初美「……」
洋榎「確かに、うっかりウチを降ろしたとかいうのはアカンかったかもしれへんけどな」
洋榎「ウチほんまに恨んどらへんし」
洋榎「一人で寂しいとも思っとらん」
洋榎「むしろ後を追われる方がキッツいわ」
洋榎「……それに、そんなことになったら、それこそ成仏出来んで地縛霊になるで」
洋榎「……ただでさえ、絹達が心配で、成仏出来へんっちゅーに」
初美「……」
初美「それにも、気付いてたんですかー……」
洋榎「まぁな」
洋榎「アンタが死なないまでも姿をくらまそうとするくらい思いつめはじめたのは大体分かっとったわ」
洋榎「最初の頃の気楽さが、時間とともになくなってったしな」
初美「……私もまだまだですねー」
洋榎「成仏条件も、USJにゆーこがおって分かったわ」
洋榎「ウチは多分、姫松のメンバーが心残りで成仏出来へんのやろ」
初美「……はい」
初美「本当なら、そんな間もなく天界送りだったんですけど……」
初美「私のせいで、現世への未練を持ったまま降りてきてしまったので……」
洋榎「通りでやたらと絹や漫が気になっとったわけや」
洋榎「……行く先々にゆーこや漫がおったのも、狙っとったん?」
初美「……はい。それもちょっとしたオカルトですよー」
初美「漠然とした居場所しか分からなかったですけど」
洋榎「それでか」
洋榎「ウチが見えへんのバレんように麻雀参加は断固として拒否っとったのに、佐々野の後をつけることには賛同してくれたんは」
初美「……ごめんなさいですよー」
洋榎「……これで初美がちゃんと前向いてくれたら……」
洋榎「あとは恭子が前向いとるの確認したら、成仏かな」
洋榎「ホントは起きとる絹に会いたかってんけど……」
洋榎「ちゃんと見守っとるって伝えられたしな」
初美「……妹さんは、ちゃんと前を向けていますよー」
初美「二人のお部屋、日記を見た時入りましたけど……」
初美「ちゃんと、整理されてましたから」
洋榎「そっか……」
洋榎「ほんならよかったわ」
初美「……」 ギュッ
洋榎「ん?」
初美「嫉妬です。妹さんへの」
洋榎「……可愛いやつやな」
洋榎「ウチが世界で一番愛しとるのは、初美やで」
初美「……わかってても、ちょっと、嫉妬しちゃいますよー」
洋榎「……こういうことするの初めてやねんけどなー」
初美「わ、私だってそうですよー!」
洋榎「幽霊相手でも、体験したら巫女ってクビになるんかな」
初美「構いませんよー」
初美「私、大学こっちに決めましたしー」
洋榎「ほほう」
初美「大阪LOVERみたいに、大阪のおばちゃん目指しますよー」 フフ
洋榎「大阪どころか、もっと遠い遠距離恋愛になってまうけどな」
初美「いつか行くまで、浮気しないで待ってて欲しいですよー」
洋榎「浮気は甲斐性、ウチは初美が浮気してもええんやで」
初美「……浮気なんてしませんよーだ!」
洋榎「……ふふ」
洋榎「好きやで、初美」
初美「……私もですよー、洋榎ちゃん」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・ ・ ・ ・
・ ・ ・
洋榎「……地上、ついてもーたな」
初美「……はい」
洋榎「ほんなら、行こか」
初美「……行きたくないですけど……行きましょう」
初美「洋榎ちゃんに心配かけないためにも、私だって前を向けるって見せなくっちゃいけませんからね!」
[ファミリーマート愛宕家付近店]
洋榎「まっさかまたここ来るはめになるとはな」
初美「もはや観光地でも何でもないですからねー」
洋榎「調子こいて観覧車乗ったせいで、他回れへんかったなー」
初美「私は後悔してないですよー」
洋榎「……ウチもや」
初美「……あ、そろそろ来ますよー」
洋榎「よっしゃ、行こか」
初美「……」
洋榎「怖いか?」
初美「そりゃあ、そうですよ」
初美「お通夜に向かう途中で声をかけるんですし」
初美「私お通夜に呼ばれてないのに、ですよー?」
洋榎「しゃーないやん、恭子はウチの親友やし」
洋榎「それに……ウチの最初で最後のツレや」
洋榎「紹介、したいやない」
初美「まったく……変人扱いされたり、殴られるのは私なんですよー」
洋榎「はは、恭子はそんなオンナちゃうて」
初美「……だったらいいんですけどー」
洋榎「お、来た! 行くで!」
初美「は、はいい!」
恭子「ごめんな、わざわざ迎えに来てもろて」
絹恵「いえ……一人でいるよりいいですから」
絹恵「それよりすんません、早めに来てもろてしまって」
由子「何か窓が割られてたっていうし、一人にしたら心配だし気にしなくてもいいのよー」
絹恵「それに……少しでも早く、見てもらいたいものがあって」
漫「見てもらいたいもの……?」
恭子「それって……その手に持ってる日記か何かのこと……?」
初美「あのっ……!」 タッ
絹恵「わっ」
漫「あれ、確か永水の……」
由子「ああ、USJで一人騒いでた……」
初美「は、はじめましてですよー」
初美「私、その――」
初美「愛宕洋榎さんとお付き合いさせて頂いていた――」
初美「いえ、お付き合いさせて頂いている、薄墨初美というものですっ!!」
【そして】
順子「WEEKLY 麻雀 TODAYの西田です」
順子「この度は、念願の女流プロとなったわけですが――」
あれから数年が経った。
初美「……そうですねー」
初美「“降ろす”のをやめたせいで、随分遠回りをしたような気がしますー」
順子「おろ……?」
あの日、大好きな貴女と別れて。
私はオカルトを辞めた。
初美「ああ、いや――むしろ近道をやめ、ゆっくりと道を歩いたって方が正しいですかねー」
順子「はあ……」
それでも麻雀を続け、姫様達から大きく遅れること数年。
念願のプロ雀士になることができた。
順子「そ、そういえば、薄墨プロは常に日記帳のようなものを持ち歩いていますね」
順子「先にプロになった、対戦経験もある原村プロのぬいぐるみのようなものなんでしょうか」
初美「……そうかもしれないですねー」
初美「これ、宝物なんです」
貴女と過ごした最後の晩。
貴女の大事な人達と、初めてまともに言葉を交わしたあの日の晩。
……思うようにいかなくて、でも、認めて欲しくて一生懸命で。
そして、想いが通じた晩。
初美「大切な人の大切な人達に、認めて貰った大切な証」
私は、宝物を託された。
涙を浮かべ、それでも無理くり笑おうとした妹さんの手によって。
それは私に預けられた。
初美「これを持ち歩くことで、遠くにいる大切な人がそばに居てくれる」
初美「そんな気になって、つい持ち歩いちゃうんですよー」
順子「そ、それは熱愛発覚ということで……!?」
初美「……遠距離なんですけどねー」
遠い場所に居る大好きな人。
まだ当分、会いに行く事の出来ない人。
順子「こ、これ記事にしても……?」
初美「隠すことじゃないですし、ご自由にー!」
順子「こ、これはスクープだわ……!」
貴女は重いと言うかもしれない。
別の奴と幸せになりと言うかもしれない。
でも貴女より素敵な人が、出ないんだからしょうがない。
貴女のことを諦めて、幸せになれた佐々野さんが、羨ましくないわけじゃないけど。
それでもやっぱり、私の中では未だに貴女が一番だから。
だから貴女の意思を継ごう。
生きている皆にはせめて笑って欲しいと願っていた、貴女を尊重して生きよう。
常に巫山戯て皆を笑わせてくれた、貴女みたいに生きていこう。
初美「あ、すみません……そろそろ行かないといけない時間なんですよー」
順子「そ、それは噂のカレとデートで……!?」
そして、そうすることで。
私自身、心の底から笑っていよう。
あの人に、素敵だと言ってもらえた笑顔でいよう。
いつかあの世でまた会った時に、文句を言われたくないから。
初美「いえー……ちょっと違いますよー」
初美「大切な人の大切な人達と、大切な人にプロになったと報告しに」
順子「ほほう、そ、それで……そのあとは……?」
だから、笑う。
私は笑う。
貴女の分まで笑顔になって、貴女の分まで笑顔を生み出せるように。
初美「……多分、ご想像の通りですー」
初美「この宝物と一緒に――」
私は笑って、日記帳を掲げて見せた。
そしてあの日、貴女が見せたような笑顔で堂々と宣言する。
初美「大阪デートや!」
私の笑顔は、貴女の元に届いてますか――――――?
カン
すごかった
乙
面白かった
これは凄い
乙です
Entry ⇒ 2012.09.23 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
洋榎「愛宕家名物、お姫様抱っこや!」
「すんませーん、こっちまでボール蹴って貰えへんかー?」
絹恵「ええよー、ほないっくでー」
絹恵「……!!」キュピーン
ピューン!
「すげー!」
洋榎「ってそれ飛ばし過ぎちゃうかー?」
絹恵「……」
洋榎「ん? どうしたんや絹」
絹恵「足首くじいてもた……」ズキズキ
洋榎「なんやて!?」
絹恵「やっぱりブランクあるんはきついわー」
洋榎「ていうか大丈夫なんか?」
絹恵「軽い捻挫程度ちゃうかなーとは思うんやけど……」ズキン
絹恵「あはは、ちょっと歩くんはきつそうや」
洋榎「しゃあないな。じゃあ、アレを出すしかあらへんな……」
絹恵「あれって、まさかアレですか!?」
洋榎「そうや、愛宕家名物お姫様抱っこや!」
絹恵「出たー! 夢見る乙女の定番!」
洋榎「ほな、いきまっせー」
洋榎「……ぐぬぬ」ヨロヨロ
絹恵「うん、やっぱり無理やと思うわ」
洋榎「そんな事は……あらへんで……」ヨロヨロ
絹恵「その気持ちでだけで十分やわ。でも現実みいな」
絹恵「このままやったら二人とも怪我するわ。ウチはお姉ちゃんに怪我してほしないもん」
洋榎「むむむ、しゃあない。おんぶで我慢するか……」
絹恵「うん、それが妥当なトコやわ。ほなお願いな」
洋榎(それにしても、絹の太ももめっちゃムチムチやったわ……)
洋榎(サッカー部の頃は引き締まった健康的な美脚やったけど今はちょうどええ感じや)
洋榎(膝枕とかしてもろたら気持ち良さそうやなー)
絹恵(お姉ちゃん! おんぶするんはえーねんけどなんでお尻のとこ持つんよ!?)
絹恵(こういう時って普通膝から抱えるもんなんちゃうん!?)
絹恵(し、しかもなんか位置取りが上手くいってへんのかちょくちょく動くし……)ソワソワ
洋榎「……」
洋榎(やってもた……なんか流れでお尻から抱えてもたわ……)
洋榎(このタイミングで言い出すんも気まずいからこのまま行くしかないんやけど)
洋榎(……やーらかいなぁ。マシュマロみたいやわ)
絹恵「……う、うんんっ。家まで頑張ってやー」
洋榎「……」スタスタスタ
洋榎(おおう……動くたびに絹のおもちが形を変えてウチの背中をつっついてきよるで……)
洋榎(まさに侵略すること山のごとしやな!)ドヤ
洋榎(…‥うん、アホな事でも考えとかんとやっとられんわ)ドキドキ
絹恵「……」
絹恵(お姉ちゃんの背中でウチのおもちがぎゅーって押しつぶされてる……)
絹恵(なんか手で揉まれたりするんとは違う、その時々で違う角度から背中に)
絹恵「ひゃぅっ」
洋榎「ど、どないしたんや!?」
絹恵「な、なんもないよっ」
絹恵(先っぽこすれた……ムズムズする……)
洋榎「お、おう。何でも言ってみい」スタスタスタ
絹恵「この体勢ちょっとバランス悪いから、もっとこー……抱きつく感じでもええ?」
洋榎「お、おう……?」
洋榎(くっついたり離れたりするさっきまでの方が落ち着かんかったし……)
洋榎(こっちの方がまだマシかもしれへんな)
洋榎「ま、まぁええと思うで? てかなんで今までそうせーへんかったんか不思議なくらいやわ」
絹恵「う、うん。せやな」
絹恵(あんまり密着するんもどうかと思っとったからやねんけどな。この方がええわ)
洋榎(耐えろ耐えるんやでウチ。家まではもうちょいや)ドキドキ
絹恵「……」
絹恵(体押し付けたら今度はお姉ちゃんの首筋がこんなに近く……)
絹恵(お姉ちゃん、髪束ねてポニーテールにしてるからうなじが……)
絹恵(うなじを見ると興奮するって人はいっぱいおるみたいやけど)
絹恵(今日になってその人達の気持ちが初めて分かったわ。なんかこのラインが色っぽいわ)
絹恵(ってウチ何考えてんねん! そんなん、そんなんサカリの付いたワンちゃんみたいやん!)
絹恵(…でも、ちょっとくらいなら)スーハー
洋榎「おおぅ!? ちょ、絹、鼻息荒いで!?」
絹恵「ご、ごめん!」
洋榎(うああああ、首筋に息が掛かるんてめっちゃモゾモゾするわ!)
絹恵(やっぱりバレてもた……うわー超恥ずかしい)
絹恵「……」
洋榎(アカン、なんかめっちゃ気まずいで。流れを変えるための話題作りをせな……)
洋榎「そ、そういえば愛宕家名物のお姫様抱っこっていつから言い出したんやっけ」
絹恵「え? 確かウチらが小学生の頃に見とったアニメを見てあれやってみよって言い出したんが最初ちゃう?」
洋榎「そうやったっけ? 絹がオトンにやって貰ったんやなかったっけ?」
絹恵「そんな事もあった気がするわ。オトンと言えば、酔っ払ったノリでオカンにもやった時はおもろかったわ」
洋榎「ああアレな! 普段スパルタの鬼みたいなオカンが珍しく顔真っ赤にして慌てとったんが傑作やったわ!」
絹恵「そんでオトンが『あかん、無理。このオバハン重い』とか言ってもてオカンマジギレ」
洋榎「あはははは! いくら酔っ払っとった言うても自分の嫁さんにオバハンて!!」
洋榎「せやな、愛宕家はホンマに笑いに絶えんおもろい一家やで」
絹恵「うん、愛宕家は最高や」
洋榎・絹恵「せやろーさすがやろー」
絹恵「……ぷっ」
洋榎「真似すんなや! って突っ込みたいトコやけどタイミングばっちりやから許したるわ」
洋榎「ほら着いたで」
絹恵「ん、ありがとなお姉ちゃん」
洋榎「これくらいならお茶の子さいさいんこさいん……たんじぇんと!」
絹恵「あ、お姉ちゃん今一瞬迷ったやろ」
洋榎「そ、そんなわけあるかい! オチ付けようと思ってなんか無いか考えただけや!」
絹恵「うん、なんとか部屋までは行けそう」
洋榎「部屋まで手伝ったろか?」
絹恵「別にええよ。もうあんまり痛くないし」
絹恵「後で湿布でも貼っといたらすぐ治ると思うわ」
洋榎「そっかー。体は大事にせなアカンでー」
絹恵「うん、ありがと。治ったらまたジョギングでも始めようかなー」
洋榎「そ、それはアカン」
絹恵「え?」
洋榎「あ。ああいや、ええんちゃうかな!」
洋榎(あの太もものムチムチが無くなるんが勿体無いなんて言えるわけあらへんからな……)
洋榎(まあ引き締まった健康的な太ももは太ももで気持ちえーかもしれへんな)
洋榎(……今度、膝枕お願いしてみよう)
竜華「一人で何言うてんの?」
カン!
ぶっちゃけうなじくんかくんかをさせてみたかっただけだし。
つーわけで用事あるんでそろそろ出かけます。
短いSSでしたが読んでくれてありがとうございました。
咲日和の愛宕姉妹は可愛すぎるよな
Entry ⇒ 2012.09.22 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
照「渋谷のお茶を勝手に飲んだら無視されるようになった」
菫「はぁ・・・」
淡「テルー、それはやばいよ」ニコニコ
照「菫、ため息ばかりついてると幸せ逃すよ?」
照「あと、大星はトイレ掃除一週間ね」
淡「なんで!?」
照「私の不幸で飯が美味いみたいな態度が許せない」
照「ひどくない。相応の罰。嫌なら渋谷と仲直りする方法の案を出して」
淡「まずはその性格を直s」
照「あ?」
淡「・・・」
菫「まぁ、そんなことより」
淡(そんなこと・・・)ガーン
菫「照、お前、本当にお茶を飲んだだけか?」
照「…? どういうこと?」キョトン
照「…? 私は勝手にプリンを食べられたら先輩だろうが家族だろうが無視するけど」
菫「・・・バカと渋谷を一緒にするな」
照「ひどい」グスッ
淡(ぷぷぷ、テルざまぁああああ)
照「大星、トイレ掃除一週間追加ね」
淡「なんで!?」
照「なんとなくイラッときた」
菫「それで? 本当に心当たりないのか、照」
照「……分からない。 私は勝手にお茶を飲んだことが原因だと思ってるけど」
菫「はぁ・・・とりあえずは根本的原因を知ることが仲直りの一番の近道だろう」
淡「スミレママの言う通りだよ、テル」
菫「大星、トイレ掃除一ヶ月追加だ」ピキピキ
淡「え!?」
照「!?」
照「む、無理」
菫「照、渋谷と仲直りしたくないのか?」
照「・・・」
菫「だったら私の言う通りに行動しろ。それに何も今すぐに仲直りをしにいけとは言ってないぞ」
照「・・・」
菫「現状の確認をするだけだからな、いいから行ってこい」ゲシゲシ
照「い、痛い、やめて菫、蹴らないで、わ、わかったから!行ってくるから背中蹴らないで」
淡「ぷっ」
照「・・・」ズーン
照(し、渋谷に完全に嫌われてる・・・)
淡「・・・」ズーン
淡(ト、トイレ掃除がまた増えた)
菫「で? どうだったんだ、照」
照「・・・」グスッ
淡「・・・」ショボーン
菫(この様子じゃ相当嫌われてることが分かったみたいだな、ってかなんで大星まで落ち込んでるんだ?)
菫「?」
照「私の顔を見た瞬間に逃げるように去っていった。 それも顔を真っ赤にするほど怒ってた」
菫「それは・・・」
淡(・・・ん?)
菫「相当怒ってるな・・・ やっぱりお前お茶以外にも何かしただろ」
淡(え? いやいや! え?)
淡(まぁ、察するにタカミは間接キスが恥ずかしかったんだろうね。相変わらず乙女だなぁ、タカミーは)
照「どうすればいいと思う、菫」
菫「とりあえず謝意を込めて新しいお茶を何本か買っておくべきだな」
照「わ、分かった」
淡「・・・」
淡(・・・面白そうだからこのままでいっか)ニコニコ
菫「そうだな、後は」
ガチャ
尭深「お、遅くなりました・・・」ウツムキ
誠子「失礼します。すいません、宮永先輩、弘世先輩。遅くなりました」キリッ
照「・・・菫、この話はまた後で」コソコソ
菫「分かってる」コソコソ
菫「遅れてきた罰は大星と一緒にトイレ掃除だ」キリッ
淡「・・・」
淡(こいつら)
尭深「ご、ごめんなさい! 弘世先輩にみ、みゃーながせんぱっ///」
尭深(あうっ)
淡(かわいい)
照(かわいい)
菫(かわいい)
誠子「誠に申し訳ありません、御両人。 比度の失態、我が白糸台に勝利を齎すことで償いましょう」キリッ
淡「お前誰だよ」
誠子「大星よ、如何にお前が強かろうが所詮は年下、口の聞き方には気をつけろ」
尭深「せ、誠子、暴力はダメだよ!」あたふた
照「・・・」じーー
照(…私以外には普通に接するんだ)むすっ
菫「どうした、照」
照「いや、なんでもない。そろそろ練習を始める。菫、相手して」ゴゴゴゴゴゴゴ
照「・・・今日はここまでにする」ギュインギュイン
菫「そうだな、時間も時間だし今日はここまでだな」
尭深「ふぅ・・・疲れた」ゴキュゴキュ
誠子「牌が重い」
淡「・・・ズルイ」ボソッ
照「…? なにが?」
淡「勝ち逃げはズルイよ、テル!」
照「・・・」
淡「もう一回やr」
照「大星。これ以上、駄々をこねるようならトイレ掃除を増やすよ」
淡「!?」
尭深「だ、大丈夫だよ、淡ちゃん! 次はきっと勝てるよ」なでなで
照「!?」ガーン
淡「うぅ、タカミー」チラッ
照「ぐっ」ギリッ
淡(ふっ)ニヤリ
照「なっ!!」
菫「…? どうしたんだ、照」
照「・・・なんでもない」ギリッ
照(大星ェ)
尭深「う、うん! お先に失礼しま」
菫「ちょっと待った」
誠子「…弘世先輩?」
尭深「…?」
照「・・・菫?」
淡「・・・」
淡(はぁ・・・トイレ掃除めんどくさいなぁ)
誠子「あ」
尭深「・・・」
尭深(…忘れてた)
菫「まぁ、今からトイレ掃除は大変だろう。忘れたくなる気持ちも分かる。」
菫「そこで、だ。私から提案がある」
誠子「…?」
尭深「…?」
菫「今日は大星、二年生のどちらか一人、私がトイレ掃除をしよう」
誠子「え? いいんですか、弘世先輩」
菫「後輩だけに罰を押し付ける真似はしない」
照(私は早く帰りたい)
尭深「え?」
誠子「ということで悪いけど、尭深。先に帰ってて」
尭深「私がトイレ掃除をやるから誠子が先に帰ってもいいんだよ?」
誠子「いや、今日は私がやるよ」
尭深「・・・分かった」
菫「決まったな」
菫「―――ということで照、きちんと仲直りしとけよ」ボソッ
照「!?」
尭深「えっ!? そ、それは」
照「・・・」
照(やっぱり…)
誠子「尭深、ちょっと耳貸して」
尭深「な、なに?」
誠子「――――」ゴニョゴニョ
尭深「ッ!! む、無理だよ、そんなの////」カァアア
誠子「ふっ、まぁ、頑張れ」なでなで
照「……」ギリリッ
尭深「ッ!?//// そ、それじゃあ弘世先輩、お先に失礼します! 誠子と淡ちゃんもじゃーね」
照(また無視された・・・)
菫「ああ、渋谷、また明日な」
誠子「・・・」
ガチャ、バタン
菫「ん? どうしたんだ、亦野」
誠子「…弘世先輩。大星がいません」
菫「・・・」
菫(大星ェ!)
尭深「……」テクテク
照「……」テルテル
尭深「……」
照「……」チラッ
尭深「……」チラッ
照(あ、目があった、けどすぐそらされた・・・)
尭深「……////」カァアア
照(な、なにを話していいのか分からない……)ズーン
尭深「……」ウツムキ
照「…」イラッ
照「はぁ・・・また無視?」ボソッ
尭深「っ!?」はっ
照「渋谷、私の何が気に入らないの?」
尭深「ち、ちがっ」
照「違う? なら何で無視をするの? 私のことが嫌いだから無視するんだよね?」ぷるぷる
照(―――そう、か。無視されるのってこんなに辛いものだったんだね、咲)
照「昨日の放課後? お茶のことで怒ってるの」
尭深「ち、違います! 宮永先輩、あれは私の飲みかけだったんですよ?////」
照「…? 飲みかけだと何かまずいの?」キョトン
尭深「え? だ、だからあれは私が口をつけて飲んでたものなんですよ?」
照「…?…?」
尭深「あ、う、も、もういいです」
尭深「・・・別に怒ってません」ぷいっ
照「・・・」なでなで
尭深「ひゃう」ビクン
尭深「み、宮永先輩?」
照「いや、こうすると年下の女の子は落ちるって菫が」なでなで
尭深「・・・」
尭深「宮永先輩は私のことを落としたいんですか?」ジトー
照「え?」
尭深「ど、どうなんですか?」
照「わ」
尭深「わ?」
照「分からない」
尭深「・・・」ジトーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
照「い、いや、やっぱり落としたいかもしれない」
尭深「・・・」
照「え?」
尭深「わ、私が宮永先輩を落とします!////」カァアア
照「っ!?」ドキッ
照(それは年上の女の子が年下の女の子にするからこそ効果があるものだって菫が嘆いてたんだけど・・・今言うのは無粋かな)ドキドキ
照「・・・それは本気?」ドキドキ
尭深「ほ、本気です!////」カァアア
尭深「ひゃう、み、宮永先輩? これは、その、そういう意味で捉えても」
照「いいよ」ダキッ
尭深「宮永先輩…」ギュッ
照「渋谷…」なでなで
尭深「・・・尭深って呼んでください」ギュウ
照「尭深…」
ギュッ
―電柱の影―
?「・・・」カシャカシャ
?「あは、これをサキに見せたらどうなるかな? あはははは、サキの反応が楽しみだなぁ」ニコニコ
カシャカシャ
―カン―
?「もしもし、サキー生きてる?」
咲『ねェ、淡ちゃん。この写真なに?』
淡「あはははは、どう? キレーに撮れてるでしょ? テルとタカミの姿」
咲『へェ、タカミって言うんだこの女』ギリッ
―その頃―
尭深「っ!?」ゾクゾク
照「尭深、どうしたの?」なでなで
尭深「ふぁあ、な、なんでもないです」ごろごろ
―今度こそカン―
ガチャ
淡「おっはよー」
菫「・・・」ギロリ
誠子「・・・」ギロリ
淡「え? あー、い、嫌だなぁ、そんなに見つめられると照れちゃう」
菫「大星、辞世の句を読め」チャキ
誠子「貴様は我が怒りに触れた」ボキッ
淡「どうもすいませんでしたぁああああああああ」ゲザァ
菫&誠子「「天誅!!」」
ドゴォオオーー!!
照「尭深・・・」ギュッ
尭深「照先輩・・・」ギュッ
いちゃいちゃ
二人ともちょーかわいかったよー
長時間お疲れ様なのよー
Entry ⇒ 2012.09.21 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
尭深「菫お姉様…///」菫「は、離れろ!」
菫「そ、そうか?」タジタジ
尭深「…いつものように頭をなでてはくれないんですか?」ショボン
菫「そうだったな、すまない」ナデナデ
尭深「はぅ…///」ポワーン…
照「そうだね」
菫「満足したか?」ナデナデ
尭深「もう…少しだけ///」
菫「仕方のないやつだ」ナデナデ
尭深「お姉様ぁ///」ダキッ
照「あたしもよく知らないんだ…菫に聞いてみたら?」
淡「そうしてみるよ!」
菫「は、離れろ!暑苦しい」
尭深「お姉様…今日もいいにおい…///」クンクン
淡「…あれが終わったら」
照「それがいいね」
菫「はぁ…やっと離れた…」ハァ
淡「ねぇ菫~、聞きたいことがあるんだけど…いい?」
菫「なんだ?」
淡「なんで菫とタカミってそんなに仲いいの?」
菫「…私もよく覚えてないんだが、一年ほど前の話になる…」
~~~~~~~~
一年前
-校門前-
尭深(今日からこの白糸台高校に通うのか…緊張するなあ…)
尭深(私引っ込み思案だし…いじめられたりしないよね…)
菫「そこの…眼鏡の人」
尭深「えっ…わ、私?」ビクッ
尭深(こ、怖そうな人だよー…カ、カツアゲとか?)
菫「このハンカチ君のかな?そこに落ちてたよ。ほら」
尭深「え…あっ本当だ。ありがとうございます…」
菫「見慣れない顔だな…もしかして新入生か?」
尭深「は、はいそうです…」
尭深「し、渋谷尭深…です」
菫「ふむ、いい名前だな」
尭深「そ、そうですか?ありがとうございます///」ポッ
尭深「あ…///」ドキッ
菫「…これでよしっと」チョイチョイ
尭深「…………///」ドキドキ
菫「どうしたんだ?えっと…渋谷さん?」
尭深「な、なんでも…ないです///」ドキドキ
尭深(はじめはちょっと怖かったけど…いい人みたいだし…)チラッ
菫「?」
尭深(よく見れば端正な顔立ちで、髪も長くてよく手入れされてるみたい)ドキドキ
尭深(スタイルも抜群で…私みたいなちんちくりんとは雲泥の差だよ~…)
尭深「お姉様…」ポツリ
菫「ん?」
菫「なんだ、てっきりお姉様と呼ばれるかと思ってヒヤヒヤしたよ」ハハハ
尭深「呼んじゃ…いけませんか?」
菫「いや、好きなように呼んでくれてかまわない」
菫「別にいいけど…意外と恥ずかしいな、その呼び名は」ハハハ
尭深「ありがとうございます!菫お姉様、大好き~!」ダキッ
菫「へ?だ、抱きつくな!み、みんな見てるから!恥ずかしいから!///」アタフタ
~~~~~~~~~
菫「…ということだ」
淡「…よくわかんなかったから一言でまとめてください」
菫「渋谷が私に一目惚れした、とでもいえばいいか?」
淡「ありがと、菫」
菫「…一応言っておくが私はノーマルだからな」
菫「簡単に言えばな」ハァ
尭深「なかなか思いが伝わらなくて…///」ハァ
菫「うわっ!?いたのか渋谷」ドキッ
尭深「お姉様の側にいたいんです…いけませんか?」
菫「…まぁいい、話をしたらなんだか喉が乾いてきたな…渋谷、お茶いれてくれるか?」
尭深「はい、ただいまお持ちします」トトト…
尭深「急須にお湯入れて~♪」トポトポ
尭深「抽出して~♪」ジー
尭深「湯飲みに注いで~♪」トポトポ
尭深「菫お姉様の湯飲みに秘密の粉を入れて~♪」サラサラ
尭深「お待たせしました///」
菫「ちょっと待て」
尭深「さ、さあ…なんのことでしょうか」
菫「なんだ?」ギロッ
尭深「あぁ…菫お姉様の突き刺さるような視線、気持ちいいよぉ…///」
菫「逆効果か…」ハァ
尭深「本当ですか!?あの粉は惚れ薬なんです///」
菫「そんなものどこで手に入れたんだ…」ハァ
尭深「オカルト研の友達が調合してくれたんです」
淡「うちの学校オカルト研なんてあったんだ…」
照「オカルトなんてありえないのにな」
尭深「え…!?せ、せめて一口だけでも…」
菫「いいから入れ直してこい」
尭深「材料集め大変だったのに…巫女さんの母乳とか、いろいろと大変だったのに…」グスン
淡「菫、大変だね」
菫「まったくだ」
霞さんこいつです
真っ先に霞さんを連想したお前もギルティ
放課後
菫「…さて、部活も終わったし帰るか」
照「いっしょに帰ろ」
淡「テルー、あたしもいっしょに帰りたい~」
尭深「菫お姉様…」
菫「渋谷もいっしょに帰ろう」
尭深「はい!///」
~~~~~~~
淡「ねーねー、どっか寄ってこうよ~」トコトコ
照「そうしたいけど…」トコトコ
菫「…雨、降りそうだな」トコトコ
尭深「そう…ですね…」トコトコ
照「傘持ってないし…今日はどこにも寄らずに帰ろうよ、淡」トコトコ
淡「ちぇ~、つまんないのー」トコトコ
~~~~~~~~
淡「じゃあね~、菫とタカミ~」フリフリ
菫「ああ、雨が降る前に帰れよ」
尭深「お疲れ様でした///」ペコリ
~~~~~~~
尭深「……」テクテク
菫「…なあ渋谷」ピタッ
尭深「は、はいっ!!」ビクッ
菫「いつものみたいに手を繋がなくていいのか?」
尭深「あ…そ、そうでしたね。手を繋いでいいですか?」
菫「…構わない」ギュッ
尭深「え…?」トコトコ
菫「いつものお前なら薬を使うなんてことはしない」トコトコ
尭深「……」トコトコ
菫「…なにかあるなら聞かせてくれないか?」トコトコ
尭深「それは…」トコトコ
菫「ん…?雨が…」
ザー…ザー…
菫「うわっ!いきなり本降りか!?走れ渋谷、すぐ近くが私の家だ!」タタタ…
尭深「は、はい!」タタタ…
~~~~~~
バタン
菫「ふぅ、あまり濡れなくてよかった…渋谷はどうだ?」ハァ…ハァ…
尭深「だ、大丈夫…です…」ハァ…ハァ…
菫「すぐにやむとは思えないし…少し休んでいくといい」フゥ
尭深「は、はい…お邪魔します…///」
菫「こっちが私の部屋だ」トコトコ
尭深「ここが菫お姉様の部屋…」キョロキョロ
菫「そう言えば部屋に来たのは初めてだったな」
尭深「お姉様のにおいがいっぱい…///」クンカクンカ
菫「あまりじろじろ見るな、恥ずかしい」
尭深「はぅ…///」ドキドキ
尭深「はい…」
菫「なにかお前の中で心境の変化でもあったのか?」
尭深「………」ゴクリッ…
菫「黙ってたらわからない」
尭深「もう……」
菫「……」
尭深「もう……抑えられないんです…」ウルッ…
菫「どういう…」
菫「えっ…うわっ!?」ドサッ
尭深「……」ウルウル
菫「し、渋谷!!」
菫(押し倒されたっ…!?だ、だが体格差があるから簡単に返せるな…)
菫「渋谷…」
菫(渋谷のこんな真剣な目…はじめて見た)
菫「わかったよ渋谷…少しだけだぞ」
尭深「…はい///」
菫「……」
尭深「私のことを嫌いになるんじゃないかって」
尭深「もっと…お姉様を好きな気持ちを隠して…貴女に嫌われないようにしようとした」
尭深「でも!」
尭深「抑えれば抑えるほど…どんどん溢れて止まらなくなって…」
尭深「それで思い余って今日は薬を使おうとして…おかしいですよね、私」グスン
尭深「そして今は押し倒したりして…最低ですよね」ウルウル
尭深「…貴女をもうこれ以上傷つけたくないから…そして私を嫌いになってほしくないから…」ゴシゴシ
尭深「私の気持ちを…貴女への愛の告白します」ニコッ
尭深「これは私なりのケジメ…なんです」
菫「ケジメ?」
尭深「私の中の貴女への気持ちを一刀両断にしてください」ニコッ
菫「…わかった」
尭深「すぅ…はぁ……そう言えばいままで告白したことはなかったですね///」グスッ
菫「…そうだな」
菫「…すまないがその想いに応えてはあげられない」
尭深「ありがとう…ございます…」ウルウル
尭深「菫おねえ…ううん、菫先輩。少し胸を借りても…いいですか?」グスッ
菫「…ああ」ギュッ
尭深「うわぁぁぁん!!」ポロポロ
菫「渋谷…ごめん…」ギュウ…
~~~~~~
尭深「はい…菫先輩」グスン
菫「私は最低な先輩だな…」
菫「お前をこんなになるまで追い込んでしまった…」
尭深「………」
菫「…でもお前のことは嫌いになったりはしないからな」
尭深「その言葉だけで…嬉しいです///」
菫「だから…これからもよろしく頼むよ、尭深」ニッコリ
尭深「!?は…はい、菫先輩///」
~~~~~~
翌日
尭深「あ、菫先輩こんにちは」
菫「尭深、昨日はすまなかった」
尭深「いえ…なんだか気持ちが楽になりました」
菫「そうか…それはよかった」ナデナデ
尭深「……///」ニッコリ
淡「…ねぇテル。なんだかあの二人昨日より仲良くなってない?」
照「そう?呼び名が変わったみたいだけど…なにかあったのかな?」
カン
菫「離れろ、鬱陶しい」
尭深「……」イライラ
~~~~~~~~~
泉「あれ、お姉様どこいったんだろう…」
尭深「菫先輩ならこっちに…」
泉「ホンマに?ありがと」
尭深「ついてきて…」ニヤリ
尭深「ぽっと出のあなたが菫先輩をお姉様なんて呼べると思ってるの?」バシッ(鞭装備)
泉「う……うぁ……」ギロッ(口枷、手枷装備)
尭深「あら、まだ反抗的な目が出来るんだ…いつまで持つか楽しみね…」
尭深「ねぇあなた、ロウソクと麻縄、どっちがいい?」
泉「……ふがー!」モゾモゾ
尭深「そう、どっちも欲しいんだ…欲張りさんね…」ニヤニヤ
泉「」
~~~~~~~~~
菫「だ、だからお姉様と呼ぶなと…」
泉「あれ…お姉様は…尭深様はいないみたいですね…失礼しました」
菫「…へ?」
カン
渋谷さんを泣かせたことは自分でもひどいことしたなと思ってます
渋谷さんごめんなさい
Entry ⇒ 2012.09.19 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
憧「今日も未送信フォルダにシズへのラブメールが増えた」
憧「あとはポチッと送信ボタンを押すだけなのにな」
憧「そのあと一押しをする勇気がなかなか……」
憧「はくしゅん!」ポチ
憧「って、あああああああ! くしゃみの拍子に送信ボタン押しちゃった!!」
憧が穏乃に送信したメールの内容
>>4
憧「どうしようどうしよう!?」
憧「これでもし“ゴメン、私は玄さんのことが”なんてメールが返ってきたら生きる希望が……」
憧「でもでもでも!」
憧「“私も憧のことが好きだ”なんてメールがくる可能性も、ゼロではないわよね…?」
憧「や、やだもうシズってば! そんな風に返されたらあたし……」
TELLLLL TELLLLL
憧「あ。返信だ」
from:シズ
え? 何が?
憧「いきなりだいすきとだけ言われても何のこっちゃよね」
憧「……」
憧「ヤバっ。さっきまでの舞い上がりっぷりが急に恥ずかしくなってきた」
憧「さて、どう返信したものか」
>>11
憧「宮永咲さんが好きなんだけど、どう思う、と。送信!」
憧「……」
憧「うーん。冗談にしても突拍子が無さすぎたかな?」
憧「おっ。返信きたきた」
from:シズ
宮永咲って和の学校の!?
どうしてよりによって・・・
じゃあ私と宮永咲が全国決勝で当たったら憧はどっちを応援するの?
憧「……ん?」
憧「ひょっ、ひょっとしてシズ、あたしが宮永さんを好きだなんて送ったから妬いてる!?」
憧「最後の質問なんて、私と宮永どっちがいいの!? ……みたいな意味を孕んでそうじゃない!」
憧「……い、いやいや。落ち着けあたし」
憧「さっき早とちりしてぬか喜びしかけたぱかりじゃない」
憧「とりあえずメールの返信かな。どう返そう」
>>17
憧「同じチームだからってことを抜きにしても、あたしが応援したいのは……」
憧「しず、と。送信」
憧「……」
憧「……」
憧「返信きたきた!」
憧「なになに」
from:シズ
よかった! これで宮永咲なんて言われたらデコピンしてたぞー!
憧「さってっと」
憧「せっかくだしこのままメール続行するか」
憧「話題が一段落したような空気だけど、次はどんな内容のメールを送ろう?」
>>30
憧「私が本当に好きなのは和だしね、と。送信!」
憧「さーて、どんな返事がくるかな」
憧「“そんなのイヤだ! 和より私を見てよ!” なんてメールがきたらどうしよう!」
憧「えへへ……」
憧「お。返事きたきた」
from:シズ
マジで!?
応援するよ!
なるほど
憧「あれ?」
憧「いやいやいや! ちょっと!」
憧「お、応援するって……、嫉妬してる様子ゼロじゃないっ!」
憧「まずい、小細工が裏目った……」
憧「どう返事したらいいんだろう……」
>>49
憧「ここはそう、直球勝負で!」
憧「でもしずのことも愛してる、と。送信!」
憧「とととっ、とうとう送ってしまった! 愛してるって!」
憧「いったいどんな返信がくるのか……」ドキドキ
憧「……きた!」
from:シズ
ありがと!
だけど愛してるとかそうこという相手は一人の相手だけに絞るもんだぞー! なんてな!
憧「というかこの語尾のなんてな具合いからして、さっきの愛してるって言葉は冗談だと思われたかもしれないわね」
憧「うぐぐ。話をどう展開したものか!」
憧「真面目に押すか、茶化して水に流すか、はたまた話題を変えるか……」
憧「どんなメールを送ろう……?」
>>65
憧「シモ気味の冗談でさっきまでのこといろいろはぐらかそう」
憧「う~ん、ぶっちゃけおっぱいの大きい子が好きなんだよね、と。送信!」
憧「これで、“何言ってんだよお前ー!” みたいな和やかムードに持ってければいいんだけど」
憧「……」
憧「なんか勢いで軽くやっちまった感がしてきた……」
憧「っと、返信きたきた」
憧「うわー、中を見るの怖いなー。でも勇気を出して」
from:シズ
というと和とか宥さんみたいな人のこと?
憧「ああああああ! これじゃ憧=巨乳好きのイメージが確立されて、シズに気持ちを伝えるどころじゃなくなるよ!」
憧「まずいなあ……、なんとかして巨乳好きイメージを払拭するべきかしら……」
憧「それとも巨乳好きイメージを逆手にとって、それでもシズが好きだよ路線でいくか……」
憧「うーん。どんなメールにしたものかな」
>>85
憧「しずのおっぱいが和くらい大きいと理想なんだけどなー、と。送信!」
憧「この文面。裏を返せばおっぱい以外はシズが最高という意味に解釈できる」
憧「これでシズもきっとあたしの気持ちに……」
憧「……きづ、くのかしら」
憧「……」
憧「あ。返信。シズはどうくるかな」
from:シズ
なんだよそれー! 余計なお世話だっての!
そういえば憧って小学生の頃より胸大きくなったよね?
なにか特別なことしたの?
憧「でも怒ったシズもこれはこれで可愛いかも……、なんてね」
憧「……と、いうか」
憧「シズって胸大きくしたいとか考えるんだ。ちょっと意外」
憧「そういうこと気にしてる様子は今まで一度も見せなかったのになあ……」
憧「さ。どう返信しよう?」
>>110
憧「揉んでもらうといいらしい、と。送信!!」
憧「これであわよくば、あわよくば……」
憧「“憧! 私の胸を揉んでくれ!”」
憧「そんな駄目だよシズ! でもシズのためなら、あたし……」
憧「なんて展開があったりなかったり!?」
憧「わー!」ドキドキ
憧「あーっ、返事が待ち遠しいなー!」ジタバタ
憧「……おっ、きたきたっ!!」
from:シズ
ということはお前、中学時代誰かに揉んでもらったの!?
憧「」
憧「」
憧「」
憧「待ってシズ誤解なの!」
憧「あたしはシズのことを思いながら自分で触っただけで、もうこれは実質シズに育てられたようなものなのよ!」
憧「……」
憧「よし、落ち着いた。落ち着いた」
憧「変な誤解をとくために、一刻も早く返信しなくては!」
憧「どんな内容にしようかしら……」
>>130
…自分でしたの
憧「違うわよバカ! ……自分でしたの、と。送信!」
憧「これで最悪の誤解はとけるはずね」
憧「まあ修学旅行の大浴場で、初瀬に悪戯で揉まれたこととかもあったけど……」
憧「あれは友達どうしだしノーカン、ノーカン!」
憧「……」
憧「あ、返信きた。さてはて」
from:シズ
自分でって、憧もそういうことするんだな・・・
何かコツとかあるの?
憧「ちょ……、え?」
憧「まさかあたしシズに対して、自分はオナニーしてますってばらしちゃったようなことになる?」
憧「……や、やばい。超恥ずかしい」カアアアアアッ
憧「やっば、今絶対に顔赤い……」モジモジ
憧「ううう……、穴があったら入りたい」
憧「正直胸を大きくする揉み方のコツとかなんとかよく分かんないよ……」
憧「あたしだって別に大きくもないし……」
憧「どう返信しよう……?」
>>145
一糸乱れないな
憧「ここらで一世一代の勝負に出る!」
憧「あたしが揉んで教えてあげる! 、と。送信!」
憧「やっちゃったやっちゃった! とうとうやっちゃった!」
憧「さあー、どうくるシズ!」
憧「……引かれない、よね?」
憧「……」
憧「……」
憧「返信まだかな……」
憧「……! きたっ!」
from:シズ
今から憧の家に行ってもいい?
憧「……って、何を肉声で叫んでんだあたし」
憧「よーし! さっそく返信だ!」
憧「返信内容は、と」
1、大丈夫だよ!
2、こっちからシズの家にいくよ!
3、その他(希望の内容も併記)
>>170
来ても構わないけど
憧「来て何するの? 来ても構わないけど、と。送信!」
憧「はあーっ」
憧「シズのことが気になりだしてどのぐらいの月日が経ったのか……」
憧「ようやく想いが実るチャンス、なのかな?」
憧「……」
憧「きたきた」
from:シズ
何って、そりゃ胸を揉んでもらって・・・
話の流れで分かるだろ、もう! 憧のいじわる!
憧「まあどんなシズも可愛いか格好いいかのどちらかなんだけどさ」
憧「さ。あとはシズがきてくれるのを待つだけだ」
憧「うわー、緊張するなー」
憧「シズがくる前に鏡見とこ。髪乱れてないかな」
憧「えーっと、念のため手とかも洗って……」
ぴんぽーん
憧「わっ! もうきた!?」
穏乃「うっ、うん!」
憧「……」
穏乃「……」
憧「えーと……」
穏乃「なんか……、照れるな」
憧「ななな何言ってんのよ! 友達ならこのぐらい普通なんじゃない!?」
穏乃「そっ、そうかな……。そうだよな、うん!」
穏乃「それじゃあメールで言ってた通りよろしくお願いします!」
憧「まっ、任せなさい!」
憧(あたしは、シズの胸を……)
1、ジャージの上から揉んだ
2、ジャージの中に手を突っ込んで揉んだ
3、ジャージを脱がせて揉んだ
>>190
憧(ジャージの上から胸なんて揉んだら痛いだろうし、手を突っ込んで揉みましょう!)
憧(けっして下心があるから直に手で触るわけでは……)
穏乃「憧ー?」
憧「ひゃっ!? ご、ごめっ! ボーッとしてた!」
憧「よし、いくよ!」スッ
穏乃「……え? ふっ、服の下から!?」
憧「だってその……、そうじゃないと胸は大きくならないのよ!」
穏乃「ううー、それなら仕方ないか」
穏乃「うう……」
憧(胸はこのあたりかな……)サワサワ
憧「……」ムニッ
穏乃「わっ!?」
憧「あ。ご、ごめん。痛かった?」
穏乃「ううん、平気……。ちょっと驚いただけ」
憧(……かわいい)
憧(可愛い! 可愛い! シズがいつも以上に可愛い!)
穏乃「……」モジモジ
憧(わーっ! どうしよう! あたし本当にシズのおっぱいに触ってるんだ!)
憧(な、なんか、夢みたい……)ムニムニ
憧(ドキドキする……)ムニムニ
穏乃「あっ、あのさ憧!」
憧「ん……?」
穏乃「ずっと無言だとその……」
穏乃「胸に意識がいっちゃって余計に恥ずかしいっていうか……」カアアアッ
憧「ちょっ!? シズが赤くなっちゃったら、あっ、あたしまで……」
穏乃「……」
憧(やっ、やばい! 一度動きを止めちゃったから、シズの心臓の音がはっきり手に伝わってくる!)
憧(ドクン、ドクン、ドクンって……)
憧(あああっ、もう! とにかく何か話さないと!)
憧(どんな話をするべきかな……)
1、どうして胸を大きくしたいの?
2、揉み加減はどうかな?
3、その他(希望の内容も併記)
>>208
憧「揉み合いっこしない?」
穏乃「えっ!? 揉み合いっこて私が憧の胸を揉むの!?」
憧「あたしだけシズの胸を揉むのは不公平かなー、なんて……。嫌かな?」
穏乃「嫌ってことは……」
憧「それなら早く揉む。据え膳食わぬはなんとやらよ」
穏乃「……わかった。じゃあ触るよ」
憧(どうしよ、ブラの上からなのになんだか……)ドキドキ
穏乃「……憧、もしかして乳首立ってる?」
憧「そそっ、そういうこと声に出して言わないで!」
穏乃「ごっ、ごめん! 下着の上からでもわかるぐらい盛り上がってるから、気になって」
憧(しょうがないじゃん、あんたに触られたりなんてしたら……)
憧(シズの馬鹿……)
穏乃「あっ、憧ほどじゃないし!」ツネッ
憧「んっ……」
穏乃「ほらー。憧変な声出したー」
憧「ちちち違うったら! 今のはその、あの、咳が出かけて……」
穏乃「えいっ!」ツネツネッ
憧「あっ……、ん……」
穏乃「それなら今のは?」
憧「……あー、もうっ! 認めるわよ!」
憧「乳首で感じてるの! 悪い!?」
穏乃「へへん! やっぱり!」
憧「勝ち誇った顔浮かべるなー!」
憧「え? それってあの、どういう……」
穏乃「尻軽の憧には教えない!」ツネッ
憧「だからぁ……、感じちゃうから、つねるのは止めてよ……」モミモミ
憧(なっ、なんだか劣勢ね……)
憧(どうするんだあたし!? このままやられっぱなしというのも……)
憧(やられっぱなしというのも……)
憧(……それはそれでありかも)
憧(って、流されてどうする!)
穏乃「うん」サワサワ
憧「言いたいことがあって」モミモミ
穏乃「言いたいこと?」サワサワ
憧(胸揉み合いながら会話ってシュールね……)
憧(さて。なんとなくだけど、さっきからただの友達同士のじゃれあいって空気じゃなくなってきてる)
憧(それにシズの普段と違う妙に意地悪な態度)
憧(さあ、今あたしがとるべき行動は……)
1、○を○○
2、○○○を○○する
>>232
穏乃「えーと、憧?」
憧(好きだよ、とか)
憧(言いたいことはあるけれど)
憧(メールで嘘を重ねた前科のあるあたしが言葉で何を言っても、どこか軽くなっちゃいそうだ)
憧(だから……)
憧「えいっ!」チュッ
穏乃「へ?」
穏乃「あ、あれ……、えっ!?」
憧「こっ、これがあたしの言いたいこと!」カアアアアアッ
憧「シズのことが好きだから」
穏乃「でもお前、本当に好きなのは和だとか、巨乳が好きだとか……」
憧「あんなの……、てっ、照れ隠しに決まってんじゃん!」
穏乃「はああぁ!?」
憧「だから……。あたしは和のことシズほど特別に見てないし、シズの胸ならペタンコだって……」
穏乃「……その嘘でこっちがどれだけ振り回されたと」ジーッ
憧「うっ……。面目ないです」
穏乃「まったく、もうっ。あんな変な嘘止めてくれよなー」
憧「怒ってたみたいだったし……」
憧「失恋、なのかな……」
憧「……」
憧「……」
憧「あれ? メール……?」
from:シズ
だいすき
以来、私の未送信フォルダに、送れもしないシズへのラブメールが溜まることはなくなった
代わりに増えたのは送信メールフォルダの―――
憧「今日も未送信フォルダにシズへのラブメールが増えた」
おわり
乙
乙乙
Entry ⇒ 2012.09.18 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
怜「Fランク大学…やと?」
ギャーワイワイワイ デスカラ、ホーソンジッケンデハー コノヨウニケイエイカンリ
マジ?チョーウケルーwwwww
怜(インハイの後に体調崩して入院生活の日々…)
怜(退院したのは12月で、もう学校の勉強にはついていけんかった…
受験勉強はおざなりにってしもうた)
怜(担任にここしか行ける所がないと言われたときはショックやったわ。
なんとかならんの?と聞いてみたけど、どうすることも出来へんって…)
怜(合格決まってからも、入退院繰り返したお陰で、オリエンテーリングに参加できんかったし、友達もまだ出来とらへん…。
ハッ!?ひょっとして、これかなりヤバイやん!?)
怜(分かってる。うちが悪いやて…)
怜「ハア、竜華やセーラーと同じ大学行きたかったわ。元気にしとるやろか?」
クッソワロタwwwwwコレイケテナイ?wwww
教授「本日の講義はこれまで。次回までにレポートをアップロードしておくこと。いいですね?」
ハー、オワッタオワッタ ヤットヒルメシヤ
怜(講義は高校…いや、これは中学生向けか?それに、なんでこんなに騒がしいねん!
授業中は静かにしてないとあかんやろ!?)
怜(これが後四年も続くか…。やめよ、考えたらしんどくなるだけやわ)
怜(食堂に行くか…、やっぱり講義室でええわ。食堂はなんか気まずいし)
怜(お弁当~お弁当~♪。今日のおかずはおかんの唐揚げや♪)パカッ
怜「うまいな~」モグモグ
女1「見てよ女2。ちょーうけるwww。園城寺また一人でご飯食べてるよ^^」
女2「うわぁ…。所謂ボッチってやつwwww。かわいそーw」
女1「あいつ、いつも一人だし?マジで友達居ないじゃね?ほら、講義の時も最前列で
一人で受けてるしwwww」
女2「サークルにも入ってないみたいwww。根暗だよねー」
女1「wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」
怜(サークルはスポーツ以外は糞ばかり。一度見学したけど、麻雀部なんて酷いもんやった)
怜(根暗結構、ボッチ結構、病弱結構や!!お前らみたいな屑にならへん!)モグモグ
教授「君?ちょっといいかね?」
怜「どないしたんですか教授?」
教授「君はどうして一人でこんな所で弁当を食べているの?食堂は?」
怜「なんや、そないことですか?食堂で弁当を食べるの気まずいねん。
それに、弁当食べていると学食の生徒さんに迷惑やろ?」
教授「ふむ…。でも、ここ講義室だから、こんな所で弁当食べちゃ駄目だよ。ほら、片付けて?」
怜(な、なんやこの教授!頭おかしいちゃうか!?ほな、どこで飯食えばええねん)
怜(あ、あのアマ!何勝手に写真とってねん!)ワナワナ
教授「どうしたの?早く片付けて?講義室はご飯食べる所じゃないから」
怜「それは、すみませんでしたね…」 ガサゴソ
怜(はあ、どこで食べよ?2号練ロビーでええか…)
ザワザワザワザワ
怜(騒がしくて食べにくいわ…)モグモグ
怜「ご馳走様。折角の好物やのに食べた気せへん…」
怜「次の講義は4号練4階402やったな。ゼミやったか?まだ休み時間あるけど
さっさと移動しようか」 スタスタ
怜「教授も五月蠅い生徒もおらへんか…。暫くの間本でも読んで時間潰すとするわ」
怜「大学図書館で借りたわが闘争でも読むわ。大学図書館は本が揃とってホンマにええわ~」
時計「チッチッチッチッ」
怜「ん?もうこんな時間かいな?それにしても、教授遅いな?何かあったんか?生徒も来てないし…?
ハッ、そや携帯になんか連絡がある筈や」 パカッ
電話未着信 メール未着信
怜「なんの連絡もないやと…?今日は休講じゃない筈や…」
怜(どうする?もう少し待ってみよか?)
怜(……)
時計「チッチッチッチッ」
怜「おかしいねん…。なんで誰も来んのや…。まさか、教室変更やろか?」
怜「ハア…しゃーないわ…。見て回るしかないんか…」
怜「みんなどこや…。なんで連絡来てないねん」ハアハアゼェゼェ
ガヤガヤ ツマリ、プルセンリャクトハ-
バタン
怜「…(このボロ校舎、エレベータもついてない)」ゼエゼエ
女教授「園城寺さん、遅いですよ?もっと大学生として自覚を持つように」
怜「ハアハア…。みません。なんか連絡来てへんので…」
女教授「はあ?確か、男君に連絡を回した筈ですが?」
男「すみません。忘れてましたー」
女「あー、園城寺さん影薄いしー連絡し忘れたじゃないw」
男「おい、女あまり失礼なこと言うな!」(園城寺さんかわえええぇぇぇー)
女(チッ…。病弱アピールで色目使うとかマジうぜー)
女「…」ギロリ
怜(な、なんやねんコイツ…)
女教授「急な教室変更は私の責任ですが、男君はちゃんと次回から連絡を回すように。遅れてきた園城寺は誰かに教えてもらいなさい」
女教授「では、今回はこれまで。以上、解散」
男「園城寺さん?今日はもう講義ないよね?」
怜「ん?どないしたん?」
男2「これから男と俺と女さんでカラオケ行こうと思うだけど一緒に来ない?」
女「はぁ!?なんで、こんな奴と一緒に…」ギロ
男「まあまあ、女ちゃん。ゼミの仲間と親善を深めるのもいいじゃない?」
怜(ええなー、大学生って感じやわ…。でも今日は病院で検査があるしなぁ…)
怜「誘ってくれてありがとう。今日は病院で検査ねん。だから…」
男「あー…。そっかー」
怜「ホンマすまへんな…。じゃ、うちはこれで…」スタスタスタ
怜「ただいまー」
怜「この大学は講義内容は、さして難しくないけど、どうも疲れるわ…」ハア
怜「大学生は良識ある人が多いと思っとったけど、Fランは大学という感じせえへん」
怜「講義中騒ぐわ、飲み食いするわで、まるで動物園や…。やっぱり一浪して竜華と同じ大学行くべきやったろか…?」
怜「いかんいかん!ポジティブや、今マイナス思考になっとた!
竜華に心配かけられへん!うちがしっかりしないでどうする」
怜「考えるだけ馬鹿らし、明日の準備でもしよ」
竜華「はあ~、怜うまくやっとるやろうか」
竜華「ああああ、心配やぁぁぁぁぁぁぁ。
変なおじさんにホイホイついて行ってないやろな!?大学でうまくやっとるやろか?」
竜華「マルクス主義研究会とか怪しいサークルに入ってないやろか?ああああ、心配やぁぁぁぁぁぁ
怜は可愛いし病弱やし!!危ない男がよって来るかもしれへん…」 ゴロンゴロン
竜華「男は狼やぁ、優しい顔してるかもしれへんけどな。みんな下心があるんやでぇ。怜ぃ」
竜華「…。考えて見たら女も危ないわぁぁぁぁぁぁ。なんやねん?最近はレズビアンって人が多いらしいわ
テレビで言ってたわ!あかん…怜あかんで女同士でそんな…」フルフル
竜華「心配しすぎで頭がおかしくなりそうや…」
竜華「ハッ、そや!そうや!メールや怜にメールしよ」 パカッ
怜は元気でやっていますか?元気でやってくれているといいんやけど…。変な食べ物食べてませんか?最近は変人も多いさけ気をつけんといけんよ?
良かったら今度一緒に遊びに生きませんか?
怜「んんっんー。はあ、レポート書き終わったわ。」
携帯「」ピロリーン
怜(こんな時間に誰からメールや?)パカッ
怜「竜華か…。そう言えば大学に入ってから連絡してなかった」
怜「なんとか元気でやっています。そちらも元気そうでなによりっと
遊ぶ日、来週の土曜日でええか?」ピコピコ
怜「あかん寝坊してしもうた!今日1コマ目から講義あるんやった、すっかり忘れとった」
怜「明日は竜華と遊びに行くんや。楽しみやな~。よし、今日一日頑張るでー」
ガヤガヤ
バタン
怜「すみません。遅れました」
教授「さっさと空いている所に着席して」
マジウケーwwwwwwwwwwオイキノウノテレビミタカヨwwwwデサァww
怜(ドアホ共が後の席は五月蠅くてしゃーないわ。前の席座ろ…)
教授「えー、では昨日も言った様にディスカッション形式で進行したいと思います」
教授「今から資料と用紙を配付しますので、それについて二人か三人で話し合ってください」
教授「用紙にグループの意見と感想を書いて、それを提出するように。いいですね?」
教授「グループは自由で構いませんが、必ず二人以上で話し合ってくださいね。では、初めてください。」
ガヤガヤガヤガヤ イッショニヤロウゼー
怜(なん…やと…?どないしよ…。誰か…誰かグループに入れてもらわんと…)オロオロ
女A「B一緒にやろう?」
女B「ええよー」
怜「あの…う、うちも入れてくれへんやろか?」ブツブツ
怜(緊張して思うように声がでえへん…)
女A「そうだCも呼ぼうかぁ。おーいCー、一緒にやろうー」
女B「Cは頭いいからね~。ん?何かよう?」
怜「あ、あの!グループに入れてくれへんやろか?」
女A「あー…ごめんね…。もうメンバー決めているんだ」
怜「そ、そうですか…。すみません」
怜(他には…)キョロキョロ
怜(あかん、もう大分グループ出来てるわ…。どないしよ、どないしよ…)オロオロ
教授「そこの君!」
怜「え…?」オロオロ
教授「君だよ君!駄目じゃないか早くグループを作りなさい」
怜(は、恥ずかしい…。マイク入ったまま大声で言わんといてな…)
教授「君毎回一人だけど授業困らない?いつも最前列だから真面目さは買うけど、一人だと困るでしょ?」
怜「い、いえ…。一人でもなんとかやります…(最悪や…)」
教授「え?今話し合ってないけど大丈夫なの?」
怜「いや、あの…」
教授「指示したことができなくても問題ないってこと?」
怜「そ、そやないけど…。グループに入れなくて…」ボソボソ
教授「え?何?聞こえないよ?もっとハッキリ言って」
怜(なっ!この教授わざとか?わざとうちを貶めとるんか!
麻雀でハコにして一生もんのトラウマ植え付けてやりたいわ!ボケナススカポンタンがっ)ワナワナ ムカッ
怜「グループに入れてもえんのや!分かったか、このクソタコ教授!こんなもん一人でもやれるわ!!」
女1「うけるwww。園城寺^^」
女2「かわいそーだねww」
教授「何その態度?協調性ないと駄目じゃない」
教授「一人じゃ話し合えないでしょ!?2、3人でやれっていっただろ?
これ試験だったらどうするの君?落ちちゃうよ?」
怜「それなら、いいです…」
怜(もうええわ…。必修単位やったけど…。耐えられんわ)ゲホゲホ
教授「ふーん、名前なんて言うの?あと学籍番号。この講義必修でしょ?成績つける為に名前と学籍教えて」
怜「もうっ!ええんとちゃうか!教授!お前のせいで恥晒されてねん…。
この講義は今後受けへんから…」
怜「さよならや」 スタスタ バタン
教授「大学に何しに来てたんでしょうね彼女」
教授「まあ…。いいでしょ。再開してください」
女1「ボッチwwwwプゲラッwwww」
女2「ざまぁぁぁぁぁぁwwwww」
女「ネタになるわねー。最高の面だったwww。怒りと悔しいさと恥で顔面ぐしゃぐしゃの園城寺さんwwwww」
怜(アホォ…。教授も劣等人種の馬鹿共が講義室の外まで聞こえとるわ…)グスッ
怜(竜華ぁ…。会いたい…今すぐ会いたいわ…。一人でなんでも出来ると思ってたけど、
そんなことなかった。竜華が居ないと全然駄目や…。こんなに早く挫折してしもうて)ポロポロ
怜(うち…なに泣いてるやろ…?)ポロポロ
怜「りゅうぅぅぅぅかぁぁぁぁぁぁぁぁ」 グスッグスッ
怜「結局昼休みまで、ここでサボってしまった…。ホントは家に帰りたいけど
弁当食べて帰らんとおかんに心配かけてしまう…」
怜「こんなっ!Fラン辞めたいわボケェ!でも、親に学費払って貰っている以上簡単にやめるなんて出来ん…」ハア
怜「どうしろっちゅうねん…。
単位……後で教授に頭下げるか?いやいや、ありえへんやろ…」
怜「そんなん、うちが恥の上塗りするだけや…。まあ、必修一つ落としても来年次取ればええわ」
怜「それにしても…。マイク使って大音量でズケズケと…。思い出しただけで腹立つわ」ワナワナ
怜「知り合いがおったらグループワークも楽なんやけど…。
この大学に知り合いはおらへんし…。はあ…。少し早いけど食堂でお昼にしよか…」
ガヤガヤワイワイ
怜(めっさ人おるやんけ…)
怜(しかも4人掛けのテーブル埋まってるわ…。6人掛けのテーブルとか気が引けるからなぁ)
怜(ああ、どないしよ…。こういう時に竜華がおったら…)フラフラ
竜華『怜ー!席確保したで~。一緒に食べような~』
怜(こうなるんやけど…)ドサッ
学生「痛ッ。いつまでも突っ立ているなよ!」
怜「すんません!」アワアワ
怜(食堂はやめよ。やっぱり居づらいわ…。そやかて講義室は駄目みたいやし…
、ロビーも勿論嫌や。んー…)
女子トイレ
怜(アカンこれはアカンやろ…。さ、さすがのうちでも知ってるねん!!俗に言う便所飯やろっ…)ソワソワ
怜(でも、落ち着いて食べる所がないのも事実やし…。こ、これだけはやったらイカン気がする…)
怜(あ、足が勝手にトイレの方へ…。と、とまらへん…) フラフラ
怜(止まれ!止まらんかいな!あっ…)
女子トイレ前
怜(結局来てしもうた……。す、少しだけや。少しご飯食べるだけ…。キョロキョロ)
怜(よかった…。周りに誰もおらへん)
怜(ここまで来たら覚悟決めるしかないわっ。なるようになれや!)ソー
怜(中にも人はおらんな…。あそこの個室にしようか…)
バタン
怜(この狭い空間…。静けさ…。周りを気にしなくてい環境…)
怜(最高や)
怜(イカンイカン。さっさと食べて出へんと人が来るかもしれん…)
怜(頂きますや)パカッ
怜「……」ハムハムッ ムシャムシャ
怜(いけるっ!落ち着いて食べれるわ~) パクパク
怜(卵焼きとおにぎりとウィナーは弁当の定番やでぇ)
キョウ、チョウウケルコトガアッテ-www ナニガアッタノ?
怜(!?人がきおったで…。気付かれませんように…)
女1「前に先輩にも話した園城寺って人なんですけどねwww」
女1「講義中に訳の分からないこと言って、退出したんですよwwwww」
先輩「何ソレww」
女1「ありえないでしょ?wwww」
怜(クッ…。またあのクソビッチかいな…。どこまで馬鹿にする気や…)
先輩「ん?」スンスン
女1「どうしたんですか先輩?」
先輩「何か臭わない?弁当くさいような…」
怜(ハッ!マズイわ…。ピンチや…。あの劣等女に気付かれたら…)ドキドキ
怜(頼むからはよどっか行って…!)
先輩「まさか、個室でボッチが便所飯してたりしてw」
先輩「ここの個室とか怪しいよ?叩いてみようかな」
先輩「えいっ」ドンドン
怜(!?!?!?)ビクビク
女1「ちょwそれは流石に中の人に失礼ですよwww」
先輩「んーまっ、いいか。行こう?講義遅れちゃうよ?」
女1「はい」 スタスタスタ
怜(行った?みたいやな…。はあ…。もうアカンかと思ったわ)
怜(今度から旧号館のトイレで食べよ。あそこなら人来んやろ…)
怜「さて、うちも遅れるとアカンからそろそろ出よ」 バタン
怜「ふう…。ホンマ疲れたわ…病弱やからな…」
怜「図書館落ち着くわ…。さて、今日は何読もうか」キョロキョロ
怜「高校の時まであまり本読れへんかったけど、意外にいいものやな~」
怜「歴史とか正直苦手やったけど、読んでみると面白いわ。大学図書館は戦記ものも充実してはるし」
怜「暇を潰すのにもってこいや。ヒトラーやったけ?あのおっさん魅力あるな」
怜「ニコラスファレルのムッソリーニ読んだけど、感激したわ」
怜「アーリア人主義。ヒトラーさんの考えはった素晴らしい考えや」
怜「欧州戦線は最高や…。枢軸最高や…」
怜「はあ……。あの糞どもをガス室に入れてどうにかしたいわ」 ブツブツ
怜「お、あったわ。んっ…んっんっ…んっー…」セノビ
怜「ハアハア…届かへん…。あとちょっとなんやけど。司書の人呼んでこようか…」
???「なんやw私より身長低いかいなwwww。ほい、これでいいん?」
怜「なんで!?」
洋榎「こんにちはや。図書館やから静かにした方がええでー?」
洋榎「あ、良いこと思いついた。ここで会ったのも何かの縁に思えん?
折角の機会やしお話しようか?うち前からお話してみたかったねん」
怜「ええけど…(強引やな…)」
洋榎「立ち話もなんやし、どこか座ろ。あそこの長椅子でええ?」
洋榎「よっこらせっ…。しかし…。あんさん、けったいな本読むやなぁ」
怜「ほっといて。趣味や。あんさんこそ、本読みそうなイメージやないけど…」
洋榎「心外やな~人は見かけによらへんで~」ケラケラ
怜「てか、なんでこんな大学におるん??」
怜「あんさん程の実力者やったら一芸入学でどこか行けたやろ。わざわざ、こんな大学こんでも」
怜「学力もそんな低くないやろ?
第2志望校も験日当日に遅刻して落として駄目やったとか…。そもそも一芸で賄えんほど学力が低いこと隠しとったとか…)」
洋榎(見栄はって志望校を高くしたのは間違いやったな…)
洋榎(言えへんわぁ…)
怜「ん?どないしたん…?」
洋榎「ま、まあ…うちのことはええやん?それより…園城寺はどないしてここへ?」
怜「なんや、はぐらかしおった…。まあ、ええわ…教えたる」
怜「カクカクシカジカというわけや…。それと退院したらなぜか、一巡先が見えへんのや…。だから一芸も無理」
怜「うちにとって麻雀は大事やけど…この様や…。雀力も元々三軍クラスやしね…。笑ってもええで?」
洋榎「別に笑えへんよ……。苦労したやなぁ~」 ナデナデ
怜「ふぇっ?急に撫でんといてな」
洋榎「嫌やろか?」
怜「べ、別に嫌やないけど…。出来れば膝枕も…」ゴニョゴニョ
怜「聞こえとったんかい…。じゃ、お邪魔して」ゴロン
洋榎(見た目通り甘えん坊やな…。幼少期の絹恵と似とる)ナデナデ
洋榎「園城寺は大学生活慣れたん?」
怜「大学生活かぁ…正直最悪やな…。講義は騒がしいわ友達は出来んわで…。後悔しとるわ。
名前怜でええよ。園城寺って、呼びにくいやろ?うちも洋榎って呼ぶことにするわ。ええやろ?」
洋榎「名前くらい好き呼んでええよ」
洋榎「なんか避けられてる気がするねん…。露骨に何かされた訳やあらへんけど、食事に誘ってもいつも断れるねん」
洋榎「友達と言える友達も居ないし、グループ活動とか正直心配や。なるようになるやろうけどな!」
怜「なんや…。同志かいな…」
洋榎「でも、まあ…なんや…。講義が騒がしいのは同意するけど、友達出来ないのは同意できんなー」
怜「ん?避けられてるのと違うん?」
洋榎「そうやけどなー。たった今1人友達が出来たわ。いやー、声かけて良かったわ」
怜「なんや…うちかいな…。出会ってすぐ友達って…」
洋榎「縁なんてそんなものやろ?」
怜「ハア…洋榎のポジティブ精神見習いたいもんや。
うち病弱やし頼りならんよ?それでも、ええんか?」
洋榎「頼りにならなくてもええねん。むしろ頼りして欲しいわ。私はお姉ちゃんなやで?」ドヤァ
怜「ぷっwなんや、そのドヤ顔…。」クスッ
洋榎「お、やっと笑いよったか。これから宜しくな怜」
怜「よろしゅー。なんか照れるな///」
怜「ビジネス経済学部やけど?」
洋榎「うちは経営学部や…。やっぱり昼ご飯の時ぐらしか頼りなれそうにないな…」
怜「…。学部違ったら講義違うやん…。まあ、昼ご飯一緒というのは心強いわ」
アナウンス『あと30分で閉館時間ですー』
怜「大分話しこんでしもうたな…。時間が経つのか早いわ」
洋榎「せやなー」
怜「うち、今日もう駄目かと思ったけど…。洋榎と話して胸がすぅーとしたわ。
ホンマありがとうな」ニッコリ
洋榎「ええって、ええって。うちも話し相手が出来て嬉しいし、新しい妹が出来たみたいで嬉しいわー」
洋榎「待って!一緒に帰えらへん?」
怜(こ、これは…。俗に言う一緒に帰ろうイベント///。確実にリア充の道に進んでいるわ)
洋榎「駅まで帰り道同じやろ?夕方とはいえ、最近は物騒やし…。駄目…やろか…?」
怜「だ、駄目やない!一緒に帰ろ」
洋榎「じゃ、手出してくれへんやろか?」
怜「手?なんでそんな…」
洋榎「こういうことや」ギュッ
怜「あっ…」
洋榎「これならはぐれる心配ないで?怜は見るからにひ弱そうやからなぁ。これなら安心やろ?」
怜(この人は平気でこんなことを…)
洋榎「帰ろか?」
怜「う、うん…」トボトボ
怜「なんや、Fランも悪くないような気がしてきたわ…」
一応END
竜華部屋
竜華「明日は怜とお出かけ~。どんな服にするか迷うわ~」ニヤニヤ
プルルルー
竜華「ん?はい、もしもし清水谷ですけど…」
セーラー『うちやで』
竜華『セーラーかいな…。で?用件なんや?』
セーラー『残念そうにすなんや!凹むやろ!用件って程でもないんやけど…。最近、怜の様子どうや?』
竜華『怜なら渡すつもりないよ?』
セーラー『誰も略奪なんてせへんわ…。まあ…単なる興味本位なんやけれど』
竜華『ん?メールでちょくちょくやり取りしてるけど、別段変わった様子は無いと思う』
竜華『は?話しが読めないわ』
セーラー『…。どこから話ししたものかなぁ…。見てしまったねん…』
竜華『だから、話が読めんわ。何を見たん?ハッキリいいなよ』
セーラー『姫松の愛宕洋榎と怜が手を握って親密そうに歩いているのを…』
竜華『はああああああああああぁぁ!?』
セーラー『アレは尋常じゃない雰囲気やったで?』
竜華『ありえへん!ありえへんよ!怜が…』ブチ
セーラー「気のせいもかもしれんし、只の友達ってことも…。アレ?電話切れてるやん…」
怜「お、竜華やー。おーい、ここやで~」
竜華「!?」
竜華「怜ィィィィィィィィィィィィィィィ」ドタバタ
竜華「変なサークル入ってないやろな?異性は勿論、同性にも気を付けとるやろうな?」アセアセ
竜華「怜は可愛いし病弱やし、寄ってくる人には気をつけんとアカンよ!」
竜華「姫松の愛宕洋榎と知り合いになったそうやな?何かされへんかった?怜に手は出させへんからなぁ!!」
怜「会ってイキナリ、そんな凄い剣幕で捲したてんといてな…。洋榎とは普通の友達や…」
竜華「怜はうちのもんや。誰にも譲らせんから安心していな」
竜華「大学生活辛くないか?ああぁぁぁぁぁ…。うち、やっぱり怜と同じ大学入るべきやったわ」アワアワ
怜「竜華…。心配しすぎやで…。うちも少しブルーになりすぎとったわ。
でも、もう大丈夫や。大事な友達も出来たし」ニッコリ
怜「せやからな?心配要らへんで?うちには、竜華だけやない洋榎も居るさかい」
カン
oh…
洋榎ちゃんと知り合いとかうらやましすぎて殴りたくなるわ
Entry ⇒ 2012.09.17 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)