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雪美「私と……P……ずっといっしょだから」
引用元: http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1348836692/
P「以前、ちひろさんとご一緒した店のチケットです。雪美を連れて行こうかと」
ちひろ「あそこは子供向けのメニューも多いですから」
P「ええ、だいぶ遅いご褒美です」
ちひろ「…遅いというか、この日狙いましたよね」
P「…あぁやっぱり分かるんですね」
P「では後よろしくお願いします」
ちひろ「分かりました、今日は楽しんで行ってくださいね」
P「さて――」
雪美「……」ジー
P「雪美居るんだろう?」
雪美「……やっと…気付いた……ちひろばっかり……さみしい…」
P「行くか?」
雪美「………うん」ニコッ
P「親御さんには連絡入れたね?」
雪美「………うん」
P「最近どうだ?」
雪美「……ずっと……忘れられてたと……思った」
P「ぐ……い…いや、そっちじゃない。ほらアイドルの友達とかさ」
雪美「……あんまり」
P「そう、か……」
P(やぶ蛇だったか)
雪美「でも……」
雪美「……メアリーと……猫の話……楽しい」
P「そうかそうか!」
雪美「でも……今は……Pと……いっしょ……」
雪美「……だから……今は…あんまり……他の人……話……いや」
P「うんうん分かったぞ!」
雪美「ふふ……Pの…話……一番……楽しいから」
「はい、丁度二名様分お預かりしました」
「ありがとうございます、ではどうぞこちらに」
雪美「……ふふ」
P「ん?何か面白いものでもあったか?」
雪美「……私と……P……どういう……風に……見える?」
P「どうって……妹?」
雪美「……」ムッ
雪美「……」ぷいっ
P「……雪美ってば」
雪美「……」ぷいっ
「席は……こちらの二人席ですね」
雪美「……家族席」
「……」
P「ゆ……雪美?席は元々座席は指定されている…んぐ…」グッ
雪美「家族席が……いい」キュッ
「……分かりました、ではこちらにどうぞ。かわいらしいお嬢さん」にこっ
「本日中にキャンセルされた席ですのでお構い無く」
「ではご注文はこちらのボタンからどうぞ」
P「……ふぅ、雪美」
雪美「……何?」
P「なんで家族席にこだわるんだ?」
雪美「……」キュッ
雪美「……Pと…隣だから……」ギュウウ
雪美「…私も」ニコッ
P「飲み物は…ワインでも頼むか」
雪美「………私も」ムッ
P「……」ピンポン
雪美「……」
「ご注文はお決まりで?」
P「お子様ランチで」
雪美「……私も」ニコッ
P「いいよいいよ、これからまた食べ――」モグモグ
雪美「……また?」
P「いやなんでもないさ」
雪美「……P」
P「どうした?」
雪美「口……開けて」
P「あー……んっ」モグモグ
雪美「……おいしい?」
P「…美味しいよ」(同じものだけど)
P「どうした雪美?」
雪美「……」ソワソワ
P「……トイレか?」
雪美「Pは…私……嫌い?」ポロリ
P「急にどうした雪美!?」
雪美「まだ…されてない」ポロポロ
雪美「……口移し」
P「はい、雪美あーん」
雪美「……」あむっ
雪美「…一番美味しい」ニコッ
雪美「でも口――」
P「はい、雪美あーん!」
雪美「……」あむっ
雪美「……美味しい」ニッコリ
P「…」ピンポン
P「そろそろあれを」
「分かりました」
P「…雪美」
雪美「…んっんっ」モギュモギュ
P「そのままでいいよ」
P「…まずはBランクアイドルおめでとう」
雪美「Pと……約束したから……でも……最近…Pは…」ゴクン
雪美「……」
P「俺は雪美のプロデューサーだからな、忙しいを理由につけたくは無かった」
雪美「……でも……Pは……約束……守ってくれた」
P「約束?」
雪美「私の…ことを……知ってくれるって…喜んでくれるって……」
P「…そうか!」
雪美「…?」
「お待たせしました」
P「早速お願いします」
パッ
雪美「……照明が…消えた!?」
雪美「P……どこ……!」
雪美「……」ジワ
P「こっちだ雪美」パッ
雪美「……P!」キュッ
P「横を見てくれ」
雪美「……灯かり…火?」
「ハッピーバースデーディア雪美」
「ハッピーバースデートゥユー」パチパチパチ
P「誕生日おめでとう雪美」
雪美「……」ジワ
P「どうした?誕生日は間違って無――」
雪美「……ううん、違う」
雪美「…Pは…やっぱり……約束……覚えてくれた……うれしい」
雪美「…P……食べさせて」
P「今、注目の的……」
雪美「」あーん
P「……ぐ…えーい仕方ない!今日誕生日だからな、無礼講だ!」
雪美「」あむっ
雪美「……」ニッコリ
「可愛らしいお嬢さんですね」「ああいう娘が欲しいわよねぇ」「帰ったら雪美SS書くわ」
雪美「……今日は……楽しかった」
P「お、雪美から切り出したなら本当に楽しかったんだな」
雪美「……Pは……やっぱり………私の……大好きな…Pだって…分かったから」
P「俺も雪美は大好きだぞ?」
雪美「……メアリーは」
P「もちろん大好きだ」
雪美「……」ムッ
雪美「……」ぷいっ
P「……また怒ったのか?」
雪美「……」ぷいっ
P「……あー残念だなー、せっかく雪美の大好きなイチゴ乗せのショートケーキもらえたんだけどなー」
雪美「……」ぴくっ
雪美「……だめ」
P「お……雪美も欲しいか?」
雪美「ううん……みんなに……分ける」
P「……いい子だ」
P(不意打ちだぞそれ、ちょっと涙が……)
雪美「……違う……ここ、私の家」
P「合ってるじゃないか」
雪美「……?」
P「……その様子だとまさか連絡しなかったのか?」
雪美「連絡……した………」
雪美「……今日は……泊まるって」ニコッ
P「」
雪美「~♪」サッサッ
P(家に帰っていきなり掃除なんて始めめちゃって)
雪美「Pは……風呂……入って……後でいくから……」
P(そうやって、今風呂入っている訳だけど)
P「雪美は……流石に来ないんだな」プカー
P(別に期待なんてしてないけど)
P(……雪美は俺のベッドでいいかな……俺はソファーにでも寝るか)
カポーン
P「……」
P「雪美は……来ないな」
P「……いつまで掃除をしているんだ」
P「ん?……そういえば雪美はどこを掃除してるんだ?」
P「……ベッドの下なんか探さんだろ」
P「雪美ー」
P(……心配になってきた)
――
P(……よかった電気は付いてないみたいだ)ガチャ
P「…うう~タオル一抹は寒い寒い。服も取りにいかないとな」パチッ
パッ
雪美「……」
P「」
雪美「……だめ」キュッ
P「駄目と言いたいのはこっちだ」バッ
雪美「……っ」キュッ
P「かえ、せっ!」グググ
雪美「……はなしてっ」
P「……とったッ!」バッ
はらり
p「ぱお~ん」
雪美「……」ニッコリ
雪美「私と…P……魂……繋がってるのに……体…繋がってない……おかしい」
雪美「待ってて…私……妹……違うこと……見せる」ヌギヌギ
P「やっぱり根に持っていたか」
雪美「……なぜ?」はらり
P「俺は死刑になる」
雪美「それは…だめ」
P「そこで交換条件といこう、今すぐ服を着る代わりに」
雪美「……代わりに?」
P「いっしょに寝てやる」
雪美「……」
雪美「わかった……」
雪美「うん……Pの腕……好き……でも、Pから……言うなんて……不思議」
P「何だかんだで誕生日だったしな、これくらいはさ」
雪美「じゃあ……私から……Pに……感謝の気持ち……伝える………」
P「へぇ……どん――」むぐっ
雪美「……」ちゅーっ
だからあっちは関係ないんです!
P「……お、おいファーストキスだろ?後悔するぞ」
雪美「……なんで?」
P「雪美が他の人が好きになるか――」むぐっ
雪美「……」ちゅっ
P「俺が他の人を――」
雪美「……誰?」
P「雪美が好きですごめんなさい」
P「雪美がマドモワゼルなんて呼ばれ方をする理由が分かったような気がするよ」
雪美「……もう……手……離さない」きゅっ
雪美「私は……もう……これで、迷わない」ググッ
雪美「私と……P……はずっといっしょだから」
マドモアゼル欲しいけど高すぎ
よかった、すごくよかったよぉ!
Entry ⇒ 2012.09.29 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
華菜「人の心が読めるメガネ?」
華菜「これでキャプテンの心をのぞいてやるし!」
美穂子「~♪」
華菜「キャプテン引退したのにまだ雑用してるし…」
華菜「…」
華菜「はっ!しまったし!」
華菜「本来の目的を忘れてたし!」
華菜「とりあえずメガネかけるし」カチャ
華菜「装着完了!」
華菜「早速、キャプテ~ン」タタッ
美穂子「あら華菜、おはよう」
華菜「おはようございますだし!」
美穂子(なぜ、メガネをかけてるのかしら?)
美穂子(目は良かったほうだと思うけど)
華菜(なんでメガネかけてるのとか思ってるし!)
華菜(見える!見えるぞ!キャプテンの心が!)
華菜「キャプテン、これただの伊達メガネです」
華菜「ファッションってやつです!」
美穂子「そうなの。安心したわ華菜の目が悪くなったとばかり…」
華菜(キャプテン優しいな~)
華菜(でも今日はとことん心を読んで)
華菜(キャプテン好みの女を目指すし!)
華菜「キャプテン、質問何個かいいですか?」
美穂子「質問?別に構わないけど…何を聞きたいのかしら?」
華菜(まずは、ストレートに聞くし!)
華菜「キャプテンはどんなタイプの人が好きなんですか?」
華菜(さぁ、どんなタイプが好きか言うし!)
華菜(キャプテン可愛いな~)
美穂子「そ、そうね強いて言うなら…大人で、優しくて」
華菜(フムフム)
美穂子「私のすべてを受け入れてくれる人かしら?」
美穂子(そうね、上埜さんのように大人で、優しくて)
美穂子(私のこの右目をきれいといってくれる…)
華菜(…)
華菜(もしかして一発目の質問からBAD END?)
華菜(キャプテンがあの女を気にかけていたことは知ってたけど…)
華菜「つ、つまり清澄の部長みたいな人ですか?」
華菜(って、華菜ちゃん何聞いてるし!?)
美穂子「べ、別に上埜さんのこととは…//」
華菜(バレバレだし。心を読むまでもないし…)
華菜(だめだなー私。)
華菜(こうなるって分かってたのに)
美穂子「華菜、部活始まるわよ!」
華菜「え?」
華菜「は、はい!」
華菜(キャプテン、あなたは私の手の届かないところにいるんですね…)
華菜(何か、今日はもうやる気でないなぁ)
久保「…以上だ」
久保「それじゃあ各自、卓について始めてくれ」
部員「ハイ!」
華菜「…はい」
久保「池田ァ!気合が入ってないぞ!やる気あんのかてめぇ!?」
華菜「は、はい!すいません!」ペコペコ
久保(ん…こいつメガネなんてかけてたか?)
華菜「は、はい!」
華菜(まだ何か用だし?)
久保「てめぇ目でも悪くなったのか?」
久保(メガネかけた池田も悪くないな…)
久保(いや、むしろ可愛い!これはこれでアリだな!)
華菜「」
華菜(メガネかけたまんまだったし!)
華菜(て、ていうかコーチ何考えてるし!!)
久保「池田…?」
華菜「い、いやこれは伊達メガネだし!」
華菜「ファッションの一環だし!」
久保「そ、そうかファッションか…」
久保「そ、その何だ似合ってるぞ…//」ボソ
華菜(ボソっと言ってるつもりかもだけど)
華菜(心読めちゃってますからー)
久保「すまん。無駄な時間を取った」
久保「練習に戻ってくれ」
久保(今晩はメガネだなメガネ)ウンウン
華菜「」ガクガク
華菜「あ、あそこが空いてるし」
華菜(メガネはかけたままで良いか)
==30分後==
華菜「ツモだし!4000オールだし!」
華菜(よしっ、今日は調子いいし!)
部員A「す、すいません先輩。私少し頭が痛くて」
部員A(体重いな熱かな?)
華菜(本当に辛そうだなー)
華菜「早く保健室行くし」
部員A「すいません。失礼します。」
華菜(誰か空いている人は…)
華菜「」チラ
久保「」メトメガアウ
華菜(コーチと目が逢ったし、嫌な予感が…)
久保(しかし、ランキング制のこの部活でコーチが打つのはなぁ)
久保(いやでも、風越の未来のためにはコーチの私が打って教えるというのも)
久保(そ、そうだ風越のためだ!私は風越のために打つんだ!)
久保(決して池田と打ちたいわけではない!決して!)
華菜(いらんお世話だし…)
久保「私が直々に打ってやろう」
華菜「い、いやランキングに関わってくるのでコーチが打つのはちょっと…」
華菜(何が何でも阻止するし!)
久保「…」シュン
久保(断られた。そりゃそうだよな)
久保(あれだけひっぱたかれた奴と打ちたくないよな…)
華菜(…なんだか可哀相になってきたし)
部員C「私も、もっと強くなりたいです!」
部員B、C「「だからよろしくお願いします!!」」
部員B(ここで、池田とコーチに勝てば一気にランキングは上がるはず!)
部員C(コーチが池田を潰せば私のランキングがあがるのは必然)
華菜(先輩には敬語使えし…)
華菜(ていうか考えてることが黒いし…)
華菜(でも、二人ともレギュラーに入りたいのは事実)
華菜(レギュラーの私がこんなんじゃダメだし!)
華菜「コーチ先ほどはすいませんでした」
華菜「自分からもよろしくお願いしますし!」ペコ
久保「」パァア
華菜(メッチャ笑顔だし)
対局中はメガネはずしてることにしてください。
==約10分後==
久保「ロン、3900」
華菜「っはい…」
華菜(やっぱりコーチは一筋縄ではいかないし)
華菜(でも天江や宮永咲を超えなきゃ全国はないんだし!)
華菜「リーチだし!」
・・・
久保「最後のやつは部室の鍵を事務に返しておけ!」
部員「ありがとうございました!」
華菜(結局、コーチには及ばなかったし)
華菜(でも、諦めないし!来年は風越を私が全国に連れて行くんだ!)
華菜「よし、特打ちするし!」
華菜「と、暇そうなみはるん発見!」
未春「うん、いいよ」
未春「ちょうど、キャプテンと打とうと思っていたから」
華菜「キャプテン…」
華菜(コーチのことがあって完全にキャプテンに振られたこと忘れてたし!)ハッ
華菜(なんか、キャプテンと打つの気まずいな~)
華菜(別に、直接振られたわけじゃないけど…)
華菜(こんなことならあんなこと聞くんじゃなかったし)
未春「華菜ちゃんどうしたの?」
華菜(ま、今は麻雀を打つことだけ考えよう!)
華菜「そういえば、もう一人はどうするし?」
未春「そうだね…どうしようか?」
華菜「文堂はいないし?」
未春「用事があるからーって帰っちゃった」
華菜「そうなのか」
久保「ッフン」チラ
未春(今の咳コーチだよね?)
未春(あ、そうだコーチにお願いしてみよう)
未春「コー、ガシッ華菜「みはるんダメだ、それだけはダメだ」
華菜(コーチはあからさまにこちらに入りたがっている)
華菜(さっきは可愛い?後輩のために一緒に打ったが今回は…)
華菜(それに対局にはキャプテンもいるし)
美穂子「ごめんなさいね吉留さん待たせてしまって」
未春「いえ、それよりまだもう一人相手が見つからなくて」
美穂子「そうなの困ったわね」
久保「」チラチラ
華菜(キャプテンダメだ、気づいたらダメだ)
華菜(その視線に気づいたら最後だしぃ~)
美穂子「誰も余ってないようだし」
未春「そうですね」
華菜(華菜ちゃん勝ったし!コーチに勝ったし!)
久保「…」
久保(強攻策にでるか)
華菜「!?」
華菜(なぜこっちに来るし…)
華菜(なぜそんなにニコニコしながら華菜ちゃんたちの卓に向かってくるし…)
華菜(なぜ!?)
久保「一人足りないようなら、混ぜてもらって良いか?」
未春「コーチが?」
美穂子「私は全然構いません」
未春「私もコーチがいいんでしたら、よろしくお願いします」
華菜(終わったし…)ゼツボウ
華菜「あ、すいません」
華菜「コーチまたよろしくお願いします」
久保「あぁ」
久保(やっぱり池田は可愛いなぁ)
華菜「・・・」
華菜(なんで今日のコーチはこんなに積極的だし?)
華菜(よりによってこんなメガネかけているときに…)
華菜「やっと終わったし」
未春「ありがとうございました」
美穂子「いいのよ、引退した私にはこんなことくらいしか出来ないから」
華菜「そんなことないしキャプテンがいないと私たち全然ダメだし!」
美穂子「華菜…」
美穂子「ありがとう」ナデナデ
華菜「えへへ」
久保「」ムッ
久保(池田のやつ、福路にデレデレしやがって)
華菜(コーチがキャプテンに嫉妬してるし)
久保「お前らも気をつけて帰れよ」
三人「はい!」
未春「今日のコーチなんか積極的に卓についてましたね」
美穂子「そうね、たまには打ちたくなるんじゃないかしら?」
華菜(言えない、私目当てで卓についてたとは言えない)
華菜「結局このメガネも出落ちだったし」
華菜「キャプテンは清澄の部長ことしか眼中にないみたいだし」
華菜「はぁ、このメガネもういらないな捨てちゃおう」
華菜(にしてもコーチがまさか自分をそういう風にみていたとは驚きだし)
華菜「明日からどう接すればいいんだし~」
華菜「・・・コーチか」ボソ
華菜(でも、そのたびにキャプテンが抱きしめてくれて…)
華菜「きゃぷてぇん」グス
==30分後==
華菜「…よし、泣いてても仕方ないし!」ゴシゴシ
華菜「キャプテンが誰が好きでも、誰と付き合ってもキャプテンだし!」
華菜「キャプテンを応援するし!」
華菜「明日も頑張るし!」
華菜「結局メガネ捨てられなかったし…」
華菜「べ、別にまだコーチの心を読みたいわけじゃないし」
華菜「でも人間好かれることに抵抗はないわけで」
華菜「むしろ好かれるのが嫌いな人間なんていなし…」
華菜「と、とりあえず学校行くし!」
久保「それじゃあ各自始めてくれ」
部員「はい!」
未春「華菜ちゃん一緒に打とう」
華菜「喜んでだし!」
華菜「」チラ
華菜(コーチは携帯いじってるし)
久保「」クス
華菜「!?」
華菜(コーチが笑ってやがるだと…)
久保(やっぱり靖子は面白いな)
華菜(靖子?)
久保(今日当たり晩飯でも誘ってみるか)
華菜「・・・」ムッ
華菜(って何で華菜ちゃんが嫉妬してるし!)
華菜(華菜ちゃんには関係ないし!)
華菜(そういえばコーチ可愛いとは言うけど好きとは言わないんだよな…)
華菜(もう、考えるのは辞めたし!とにかく打つし!)トン
未春「ロン、12000」
華菜「」
久保「池田ァ!てめぇまた適当な牌捨てやがったな!」
華菜「す、すいません!」
華菜(あんたのことが気になって集中できなかったんだし!)
久保「てめぇまた決勝でへま踏みてぇのか!?」
華菜「すいません…」
華菜(メガネかけるし)カチャ
久保(お前の悲しい顔はもう見たくねぇぞ、こんちくしょう)
華菜「…コーチ」
華菜「来年は絶対に全国行くし!」
久保「??お、おうその意気だ頑張れ…」
久保(私何かへんなこと言ったか?)
華菜「よし、やるし!やってやるし!」
未春(まぁいいか、楽しそうだし)クス
久保「…私からは以上だそれでは解散」
部員「ありがとうございました!」
華菜(靖子って結局誰だし)
華菜(後をつけるか?)
華菜(チビたちの迎えにはまだ時間あるし!)
華菜(あっ、でも会うのは今晩だっけ…)
華菜(とりあえず後をつけるし!)
華菜(歩き携帯は危険だしコーチ!)
華菜(ほら、自転車とぶつかりそうになったし!)
華菜(ちゃんと前見て歩くし!)
華菜(ん、建物の中に入っていくし!)
華菜(ここが家なのかな?)
華菜(インターフォンを押したってことは自宅ではない)
靖子「はーい」
ガチャ
靖子「お、来たか。とりあえず上がってくれよ」
久保「ああ」
華菜「あれが、もしかして靖子?」
華菜「ていうか今の藤田プロじゃあ?」
華菜「藤田…靖子」ハッ
華菜「ピカンと来たし!」
華菜「そうか藤田プロのことだったのかあ」
華菜「って何も解決していない」
華菜「こうなったら藤田プロとの関係を暴いてやるし!」
華菜「宅配業者に化けてこのメガネで藤田プロの心を読んでやるし!」
華菜「では早速」ピンポーン
華菜「宅急便でーす!」
靖子「はーい」
靖子「なんか頼んだっけ?」
靖子「貴子荷物とってきてよ」
久保「なんで私が行かなきゃならないんだ!」
靖子「お前ののろけ話に付き合ってやるのは誰だ?」
久保「ハイ…」
久保「すいませんお待たせしました」
華菜(ってえええええーー!!)
華菜(なんでよりによってコーチが出てくるし!)
久保「あの、すいません荷物受け取りますが…」
華菜(仕方ない何とかやり過ごすし)
華菜「では、こちらにサインを…」ウラゴエ
久保「…ん?」
久保(この手、この声、この身長…)
久保「お前!池田じゃねぇか!?」
華菜(ば、ばれたしー!)
久保(バイトしないといけないくらい家が大変なのか!?)
華菜(あれぇ?勘違いが思わぬ方向に)
華菜「い、いえ別に何も…」
久保「困ってるんだったらなぜ相談しないんだ!?」
久保(私だったらいくらでもお前の助けに…)
華菜(コーチが助けてくれるだって、初めて聞いたし!)
華菜(まぁ、実際言ってないんだけど)
華菜(わざと、らしいけどこれで撒く!)
華菜「じゃあ荷物は渡しましたんで失礼しましたし!」ピューン
久保「ちょ、まて池田ァ!」ダッ
靖子(閉めていってくれよ)
久保「まてぇぇ池田ァ!!!!!」
華菜(なっ!?早い!)
華菜(何なんだしこのスピードは!?)
久保「池田ァアアアアア!!!!!!」
華菜(やばい追いつかれるし!)
久保「捕まえたぁあああああ」ガシ
華菜「つかまったしぃ」
華菜「追いかけられる覚えはないし!」
久保「それは…お前が心配だからだ」
久保(まぁ体が勝手に動いちまったってのが本音だが)
華菜「…コーチ」
華菜(なんかよくわかんないけど、今聞いてみたいことがあるし!)
久保「何だ言ってみろ」
華菜「コ、コーチは藤田プロのことが好きなんですか?」
華菜(そうじゃないし!聞きたいことはそうじゃなくて)
久保「んあ?なんだその質問?靖子は普通に好きだが…」
久保(でも恋愛対象としてお前が好きだぜ!なんて言えねぇ)
華菜「えっ?今なんていったし…?」
華菜「そっちじゃないし!」
華菜「華菜ちゃんに対して何て言ったし!」
久保「だから、靖子は普通に友達として好きだといってじゃねぇか」
華菜「あ~もう単刀直入に聞くし!」
華菜「華菜ちゃんのこと好きか?って聞いてるんだし!//」
久保「・・・」
久保「なっ//」ボッ
久保「それなりに後輩として、私なりに可愛がってるつもりだ…」
華菜「意気地なしだし…」
華菜「恋愛対象としての意味で聞いてるんだし!」
久保「ちょ、おま//」
久保「そりゃ、もちろん」
久保(なんだこいつ?誘ってやがんのか?)
久保(なら、いけ!貴子勇気を振り絞って…)グッ
久保「わ、私は…お前が好きだ!大好きだ!」
久保「池田ァ!のすべてが大好きだ!」
久保(女同士とはいえ教師が生徒に告白しちまった…)
久保(終わっちまった…)
華菜「終わってないし!」
華菜「別に教師と生徒が付き合っても、バレなきゃいいだけだし!」
久保「へっ?どういうことだ?」
華菜「コーチさえ良ければ、華菜ちゃんが付き合ってやるし!」
久保「お前を何回もぶったんだぞ?」
華菜「でも大将に任命して期待してくれたのはコーチだし!」
華菜「華菜ちゃんは愛のムチってことで大目に見てやるし!」
久保「池田ァ…ありがとう」
華菜「じゃ、じゃあはい」ス
久保「?」
華菜「手つないで帰るし//」
久保「あ、あぁ//」ギュ
華菜「と、とりあえず妹達を迎えにいくし!」
華菜「おねぇちゃんの彼女だって自慢してやるし!」
久保「い、池田ァ!//」
=====
靖子「良かったな、貴子」
カンだし!
本当は未春も交えた話にしようと思ったのですが
いかんせん文章力がへたくそで…
国語をもうちょっと勉強してきます。
最後まで読んでくださった方ありがとうございました。
池久保は流行るべきだし!!
Entry ⇒ 2012.09.29 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
P「朝起きたら律子が隣にいた……」
チュンチュン
P「……」
律子「……すぅ、すぅ……」
P「……」
P「どういうことなの……」
律子「う~ん……むにゃむにゃ」
ゴロン
P「ちょ、ちょっと、服が……!」
律子「……zzz……」
P「……」チラ
P「……だ、ダメだダメだ! なにを考えているんだ俺っ!」ブンブン
P(お、思い出せ! 俺、昨日なにをしたんだ!?)
【昨晩】
律子・P「「かんぱーい!」」
ゴクゴク……
P「……うまい! やっぱ仕事のあとはこれだよなぁ! こう、乾いた心と喉が癒されていくっていうか」
律子「ふふっ、オヤジくさいですよ~。ま、わからないでもないですけど」
P「おお、ようやく律子も酒の良さがわかるようになってきたか!」
律子「これだけ散々、小鳥さんやプロデューサーに付き合わされてきましたからねぇ」
律子「まったく、成人したらすぐこれだもの。こんなに酒好きな人達だとは知りませんでしたよ」
P「ははは……まあ、うちには酒飲める人が少ないからな、多目に見てくれよ」
P「あ、すいません店員さーん! 以前キープしてもらったボトルを……ええ、それですそれです」
律子「あれ、それ空けちゃうんですか? 結構高かった奴ですよね、それ」
P「ああ。音無さんがいたらほとんど飲まれちゃうし、せっかくだからさ、こういうときにじっくり飲んじゃおう」
律子「プロデューサー殿もワルですね~。あとで小鳥さんに怒られますよ?」
P「そういう律子だって、その顔。飲みたかったんだろ?」
律子「ふふ、まあね。それじゃあ店員さん、氷とソーダと……」
―――
――
―
【回想 おわり】
P「えっ!? おわり!?」
P(うう、まったくそのあとの記憶がない……一体どんなペースで飲んだんだ……)
P「……」
律子「……」
P(と、とにかく。今の状況を把握しとかないといけないな)
P(律子の服は……うん、多少乱れてはいるけど、ナニかあったって感じのはだけ方じゃない)
P(いやしかし、安心は出来ないぞ。律子のことだからきっと、事が済んだらすぐ寝るようなタイ……プ……じゃ)
P「……」
律子「……zzz……」
P(なっ、なにを考えているんだ! 事が済んだら、ってなんだよ!?)
P(そんな妄想、本人を目の前でするなんて、失礼すぎるだろ!! 寝てるとはいえ……)
P「……寝てる……よな?」
律子「……こら、いおりー……おでこばっかりじゃなくて……体にもオイル……むにゃむにゃ」
P「どんな夢を見ているんだろう……」
P(しかし……)
チラ
律子「……すやすや……」
P「……」ゴクリ
P(こうして改めてみると、律子ってかわいいよな……)
P(前々から軽く思ってはいたが……、今まであんまり、深く意識したことなかったな)
P(俺と同じように、毎日毎日朝から夜まで働いてて、ろくにまとまった睡眠も取ってないはずなのに)
P(こんなに綺麗な肌をして……)
P「……」
律子「う~ん」ゴロン
P「!」
律子「……ぷろりゅーさー……」
P「お、起きたのか!? あ、あの、俺その……」
律子「えへへ……みんなが見てますよぉ~……むにゃむにゃ」
P「……」
ドキドキ
P(どうしよう……普段と違うこんな無防備な律子を見たら、なんかドキドキしてきたぞ)
ムクムク
P(余計な部分まで元気になってきた……うう、律子のスタイルが良すぎるのが悪いんだ……)
P「……」
律子「……zzz……」
P「……よし!」
スック
P(トイレに行こう。ナニをするというわけではないけど、とにかく今はトイレだ)
テクテク
律子「……」
律子「…………」
律子「……ふぅ……行ったかしら」
ドキドキ
律子「……男の人だもん、そーいうの、しかたないわよね……」
律子「あんな……きいモノ見せられたら、寝たふりでしたー、なんて言えないわよ……」
―――
ジャー ガチャ
P「……ふぅ……」
P「最低だ……俺って……」
律子「……プロデューサー、おはようございます」
P「どわああ!? お、おお、起きてたのか!?」
律子「えぇまあ、さっき……、じゃなくて、ちょうど今起きたところですっ」
P「そ、そっか……」
律子「……」
P「……」
P・律子「「あのっ!」」
律子「あはは……」
P「……律子から言ってくれ。俺はまだ、実はこの状況がよくわかってないから」
律子「わ、わかりました。それじゃあまず……」
律子「とにかくまずは、状況を整理しましょう」
P「そ、そうだな。さすが律子、目の付け所がシャープだ」
律子「何言ってるんですか……えっと、ここはプロデューサーの家ですよね」
P「うん……朝目が覚めたら、ここに帰ってきてたんだよ」
律子「昨日のことは?」
P「乾杯して、ボトルを開けたところまでは覚えてるんだけど……」
ズキズキ
P「……その先を思い出そうとすると、頭が痛くなって、なかなか」
律子「プロデューサー、だいぶ飲んでましたからね~……」
P「そんなに?」
律子「すごかったですよ。給料が低いとか、社長の話が長いとか、10月は出費が多すぎるとか……」
P「……」
律子「ホント、いつものあなたじゃないみたいでした。ストレス、溜めこみすぎてるんじゃないの?」
P「面目ない……」
律子「ああいや、謝らせたいわけじゃ……私もわりと、それに乗って、色々愚痴をこぼしちゃいましたから」
P「律子が愚痴なんて、珍しいじゃないか。あはは、記憶にないのが残念なくらいだよ」
律子「だああっ、だっ、だっ、ダメです!!」
P「えっ、な、なにが……?」
律子「……思い出さないで、記憶から消しといてください。どうしようもない、くだらないことなんで……」
P「そんなに必死になるようなことか? なんか、尚更どんなこと言ったのか聞きたくなってきたな」
律子「……」
P「……」
律子「……」プイ
P(なんだかよくわからないけど、かわいいぞ今の仕草)
P「……わかったわかった。思い出さないし、聞かないから」
律子「ぁ、ありがとうございます……」
律子「え、えっと、それで! なんでここに来たかというとですね……」
P「うんうん」
律子「……あー……これも言いづらいわ……どうしよう、なんて言い訳……」ブツブツ
P「な、なんだよ? 全然聞こえないんだけど」
律子「……」
P「……律子?」
律子「……結局あのあと、ふたりとも酔いつぶれちゃったんです。でも終電も無くなっちゃってたから……」
律子「プロデューサーの家が比較的近いということで、タクシー呼んでここに来たんですよ」
P「そうだったのか……」
律子「……ふぅ……」
P「あれ? なんでそんな安心した顔……」
律子「なな、なんでもありませんっ」
律子「と、とにかく状況の確認は以上です、おしまいっ!」
P「う、うん……わかったよ」
律子「……」
P「……律子。ちょっと確認したいことがあるんだけど……」
律子「え? なんですか、確認って?」
P「いやぁ、言いづらいんだけどな……」
律子「もう、いつものあなたらしくないですよ、プロデューサー殿。もっとシャキシャキしてください」
P「……」
律子「……」
P「……俺、何もしてない?」
律子「? 何も、って?」
P「いや、だからさ……その、律子に対して、なんというか……」
律子「……?」
P「酔いにまかせてだな……えっと……」
律子「……っ!!!」
律子「んなっ、ななな……! 何を言ってるんでしゅかっ!!」
P「だから言いづらいって言ったじゃないか……」
律子「な、なにもしてませんし、されてません! もう、いきなりなんてこと……!」
P「お、おお、そうか! それなら良かった!」
律子「ホントです、ホントなのよっ!? 嘘ついてるって言うなら……!」
P「わかった、わかったから! 別に疑っちゃいないだろ」
律子「そ、そうですね……すみません、取り乱しちゃって……」
P「……」
律子「うぅ~……」カァァ
P「……ホントに俺、なにもしてない?」
律子「してませんっ!」
P「そ、そうか。すまんすまん、何度も聞いちゃって」
P(なんでこんなに必死なんだろう……)
律子「もうこの話はおしまいね! わかった!?」
P「わかったわかった……」
律子「……ご、ごほん! えっと、そんなことよりも……」
P「ん?」
律子「このシャツ、洗って返しますね。すいません、お借りしちゃって」
P「ああ、よく見ればそれ、俺のシャツか」
律子「ええ、『シワがつくから寝るときスーツはやだ』って言ったら、とりあえずこれ着とけって……」
P「そうか……」
P(律子の今の格好は、男物の大きめのシャツ一枚だった)
P(眼鏡もかけてないし、髪も降ろしている……)
P「……」
ゴクリ
P(正直とんでもなく可愛い)
P(し、下はどうなってるんだ? くそう、布団に隠れて見えない!)
P「いやでも、わざわざ洗濯しなくてもいいよ。そこの洗濯カゴに入れといてもらえれば……」
律子「……プロデューサー? ダメですよ?」
P「な、なにがだよ」
律子「ふふっ、そう言って、私が着たシャツをクンカクンカするつもりなんでしょう」
P「そそ、そんなことするわけないだろ!? 俺を変態か何かと勘違いしてるんじゃないか!?」
律子「どーかしらね~……ふふっ、ふふふ!」
P「ったく……まだ酔いが残ってるんじゃないのか?」
律子「え? なんでですか?」
P「いつもならそんな冗談、言わないだろ」
律子「でもでも、きの……う……は……」
律子「」ボッ
P「ええっ!? どうした、いきなり顔赤くして!?」
律子「い、いえ……なんでもありません、構わないでください……」
律子「……やだやだ、私ったらつい、昨日みたいなノリのまんまで……!」ブツブツ
P(なんなんだ……)
律子「と、とにかく! このシャツは断固、私が責任を持って洗って返しますからっ!」
P「そこまで言うなら、わかったよ……手間かけてすまないな」
律子「いいんですよ、こんなこと手間のうちに入りません」
律子「そもそも、私がプロデューサーの部屋に泊まったことが……げ、原因なわけだし……」
P「……そ、それじゃあ、よろしく頼む……」
律子「……わ、わかりました……」
P「……」
P(今の律子の言葉で……)
P(改めて、このとんでもない状況を認識させられてしまった)
P(朝起きたら律子が隣にいた? 無防備な格好で、すやすや寝息を立てていただって?)
P(なんだよそれ、それなんてエロゲ)
P(えっと、律子は……)
チラ
律子「……」
P(……概ね、俺と一緒みたいだな。さすがに俺みたいないやらしいことは考えていないだろうけど)
P「……」ドキドキ
P(さっきから、妙に律子のことを意識してしまう)
P(今までは、ただの同僚で、同じプロデューサー……いやまあ、それなりに仲は良かったけど)
P(それでも、プライベートでもよく遊ぶ友人のひとり、という認識でしかなかったのに……)
P「……」
律子「……あの、えっと……」
P「う、うん……」
律子「昨日は……あんな感じだったけど……そっ、そろそろ、私た――
ジリリリリリリ!
律子「!? め、目覚まし時計?」
P「も、もうこんな時間か! ははは、出勤の準備しないとな!」
律子「そそそ、そうですね! あは、あははあは……」
P「とと、ところで、なにを言おうとしたんだい?」
律子「ああいえ! なんでもないです! そろそろ支度しないと遅刻しちゃうかなーって思っただけ!」
―――
ザー
ザザー……
P「……」
P「律子がシャワーを浴びている」
P「いやいや、なんで改めて言葉にする必要があるんだ……ただの出勤前の朝シャン、それだけじゃないか」
P「……し、しかし……」
ソワソワ
P「落ち着かない……くそっ、これだから童貞は……!」
キュ、キュ……
P「……」
ガチャ
P「!」ドッキーン
トコトコ
律子「すみませんプロデューサー、シャワーまで借りちゃって」
P「フンフン……! それくらい、いいって……ことさっ! フンフンフンフン……!」
律子「……何やってるんですか?」
P「見て……わからないかっ? フンフンフン! 腹筋……だよっ!」
律子「あ、いや、わかるにはわかるんですけど……なんで腹筋?」
P「……ふぅ。毎日これをやらないと、目が覚めないからな!」
律子「そ、そうなんですか……。あのそれより、ごめんなさい。ついでにドライヤーも貸していただけると……」
P「あ、ああ。ドライヤーなら、そこの棚のカゴの中に……」
律子「ああ、あのカゴね。よっこい……しょ……」
律子「……」
プルプル
P「……何やってるんだ?」
律子「……棚が高すぎて……届かないんですよ……!」
P(意外とちっちゃい律っちゃんかわいい!)
律子「ううー……」プルプル
P「ああもう、今取ってやるから」ヒョイ
律子「あっ……」
P「……ほら、ドライヤー」
律子「……あ、ありがとうございます……」
P「……」
律子「……意外と、背、高いんですね」
P「そ、そうか? 平均だと思うけど……」
律子「こうして近くに来ると、見上げないと顔見れませんよ」
P「は、はは……律子が小柄なだけだろう」
律子「ば、ばかにしてます!?」
P「ああいやいや、決してそんなことは!」
ドキドキ
P(……思いがけず、こんなに近くまで来てしまった)
P(良い匂いがする……いつも俺が使っているはずのシャンプーなのに、全然違うぞ……)
P「……」
ドキドキ
P(この心臓の音まで、もしかしたら聞かれてしまうんじゃないかと思うくらい……近い)
P(ちょうど俺の胸の真ん中くらいに、律子の頭がある。後ろからだから表情はわからないが……)
P(つむじから生える二本のアホ毛が、ソワソワと動いている……ようにも見える)
律子「……」
P「……髪、乾かさないとな。はやく準備しないと遅刻しちゃうから」
律子「そ、そうです……ね……」
P「あ、ああごめん! 俺がいるからジャマなんだよな!」
律子「あ、い、いえ、ジャマとかそういうのじゃ……まぁ、後ろに立たれてたら、確かに落ち着かないですけど……」
P「い、今どくから……」
律子「……」カチ
ブォォー
P「……」
P(離れたところから見た、律子の横顔は……ドライヤーの熱のせいか、少し赤くなっているようにも見えた)
【765プロ事務所】
ガチャ
P「……おはようございまーす」
小鳥「おはようございます、プロデューサーさん。今日はいつもよりちょっと遅かったですね?」
P「ははは……すみません、昨日飲みすぎちゃって……」
小鳥「律子さんとでしょう? いいなあ、私も行きたかったです。あの深夜アニメさえなければ……!」
P「りっ律子はっ! まままだ、来てないんですか!」
小鳥「まだですよ~。ふふ、律子さんも珍しく遅刻、かもしれないですね」
P「そうですか~! いやあはは、確かに、今日は雪でも降るかもしれませんね!」
ガチャ
律子「おお、おはおは、おはようございまーす!」
P「や、やあ律子! ちょうど今君の噂をしていたところだよ!」
律子「な、なんですか噂って~! やめてくださいよもう~!」
P・律子「「あはははは!」」
小鳥「……?」
P(……よし。渾身の演技だ……!)
P(さすがに、朝から一緒に出勤するなんてちょっとマズイからな……事前に打ち合わせしておいてあったのだ)
小鳥「……プロデューサーさん?」
P「はっ、はい! なな、なんでもないですよ?」
小鳥「……ふふ、わかりました。それじゃあ代わりに、律子さん」
律子「うっ」
小鳥「あとで、詳しく聞かせてくださいね?」
律子「……な、なんのことですか……?」
小鳥「あっ、そういうこと言っていいの? あれ、プロデューサーさんにバラしちゃうわよ~?」
律子「や、やめっ、やめてくださいよもうっ! わかりましたから……」
P「?」
P(なんだ? ふたりのヒミツの話か?)
P(……まあ、とにかく。律子なら上手く誤魔化してくれるだろう)
P「……さて、そろそろアイドル達が来る時間かな」
ガチャ
やよい「おっはよーございまーっす!」
P「っと、噂をすれば……おはよう、やよい」
やよい「あっ、プロデューサー! えへへ、おはようございますーっ!」
P「はは、やよいはいつも元気だなぁ」
やよい「はいっ! あっ、でもでも……プロデューサーは今、元気ないですよね……」
P「え? なんでだ? 俺は別に……」
やよい「だって、喧嘩しちゃったら、元気もなくなっちゃいます……私も、弟たちとたまに喧嘩しちゃうから、そのキモチは……」
P「……喧嘩? 俺が?」
やよい「はい……」
P「……誰と?」
やよい「律子さんとですっ」
P「……」
P(どうしよう……わけがわからないけど、このままやよいと話していると良くないことが起きる予感がする……)
P「……どうして、そう思ったんだ?」
やよい「だってだって、ふたりとも、ずっとお喋りしてなかったからー……」
P「そ、そんなことないぞ? 一体いつの話だよ」
やよい「今日の朝ですーっ!」
P「……」
やよい「えへへ、私、ふたりが一緒に歩いてるところ見つけちゃったから、後ろからこっそり付いていってたんですよっ!」
P「そ、そそそ、そうだったのかかかか」
P(なんということだ……! 朝出勤するところ、やよいに見られていたなんて!)
P「そっ、それならそうと、(やよいなら素直だから誤魔化せそうだし)声をかけてくれればよかったのに!」
やよい「えっ、でもでもー……伊織ちゃんが……」
P「……伊織?」
やよい「はいっ! 伊織ちゃん、前にこんなこと言ってたんですっ!」
P「……」
伊織『いーい、やよい? もしプロデューサーと律子がふたりでいるのを見ても、あんまりジャマしちゃだめよ?』
伊織『それが事務所の外だったら、尚更話しかけちゃだめ』
伊織『なんでって? そんなの、せっかく律子が勇気だして頑張ってるのに、かわいそうだからに決まってるじゃない。にひひ♪』
伊織『あっ、ちなみに。わかってると思うけど、私がこんなこと言ったってのは律子やプロデューサーにはナイショよ?』
―――
――
―
やよい「……って言ってましたー!」
P「……やよい、それ、俺に言ってもよかったのか?」
やよい「え? ……はわわっ!!」
P「……」
やよい「こ、これはナイショだったんですーっ!! わわ、忘れてくださいーっ!!」
P「あ、ああ、うん……わかったわかった」
やよい「うぅ……伊織ちゃんにドッカーンって怒られちゃうかもー……」
P「大丈夫大丈夫、伊織には言わないでおくからさ」
やよい「ごめんなさーい……」
P「と、とにかく! 俺と律子は、喧嘩なんてしてないよ」
やよい「ホントですかーっ!?」パァァ
P「ああそうだとも! ただちょっと今朝は、お互い仕事のことで頭がいっぱいだっただけさ」
やよい「えへへっ、それなら安心ですーっ!」
P「心配かけてごめんな。よし、それじゃあ景気づけに、アレやるか!」
やよい「あっ、アレですね! アレをやると、元気がモリモリ出てくるんですーっ!」
スッ
やよい「はい、たーっち!」
P「たーっち!」
パチン
やよい「いえーい! ……えへへ。良かったです、喧嘩なんてしちゃったら、私までかなしくなっちゃうところでした」
P「……やよいは本当に、素直で優しくて、良い子だなぁ。しかもこんなにかわいい……」
やよい「ええ!? かっ、かわいいだなんて……」
P「本当のことさ……やよいかわいいよやよい」
やよい「そっ、そんなに褒めても、なにも出ないですよー! えへ、えへへ、えへ……」ニコニコ
P「……さて、やよいはレッスンに行ったか」
P(しかし、伊織が言ってたという言葉の意味、なんなんだろうな)
P(えーっと……『律子が勇気だして頑張ってるのに、かわいそう』……だっけ?)
P「……うーん……」
P(な、なんか……それだけ聞くと、あれだな)
P(俺とふたりきりになるために、勇気を出すってことは……つまり……)
P(律子がその、俺のこと……す、す……)
P「うわああぁあああ!」ガタッ
春香「!?」
P「ななな、何を考えてるんだ!! そんなわけないだろうっ!!」
春香「ぷ、プロデューサーさん?」
P「そうだ、俺は昔からこうやって勘違いしては涙を流して……うぅ、思い出したくもない」プルプル
春香「ええっ、泣いてる!? プロデューサーさんっ、どうしたんですか!?」
P「え? あ、あぁ、春香か……いつの間に……」
春香「プロデューサーさん、何か悲しいこと、あったんですか……?」
P「……」
ゴシゴシ
P「……いや、なんでもないよ。ただ昔のこと思い出しただけだから……」
春香「そ、それにしては、鬼気迫る表情だったというか……」
P「大丈夫大丈夫……春香が心配するようなことはなにもないさ」
春香「……そうですか。プロデューサーさん、何かストレス感じることがあっても、溜め込んじゃだめですよ?」
P「ははは、なんだなんだ、気遣ってくれてるのか? 春香は優しいなあ。でも――
春香「優しいのは、プロデューサーさんのほうですっ」
P「……っ」
春香「……いつだって、みんなに優しくて。私達がつらいときも、笑顔にしてくれて……」
春香「でも、プロデューサーさんが悲しい顔してるところ、私は見たことないです」
P「は、春香……?」
春香「だ、だからっ……!」
P(な、なんだ? 朝一からなんだこの雰囲気……)
春香「……だから、プロデューサーさんがつらいときは、私にも相談して欲しいんです」
P「……」
春香「わ、私なんかじゃ、力になれないかもしれないけど……」
春香「それで、ちょっとでもプロデューサーさんがラクになれるなら……」
P「……ありがとう、春香」
春香「……」
P「でも本当に、いまは何も心配事はないからさ」
春香「本当ですか……?」
P「ああ。みんなの笑顔に囲まれて、幸せじゃない理由がないだろう」
春香「……プロデューサーさんは、いま、幸せ……」
P「もちろんだよ。……でも、ちゃんと約束する。今度何かあったときには、春香にも相談するから」
春香「!」
P「だから、顔を上げてくれ。春香が笑顔じゃないと、みんな暗くなっちゃうし、俺も悲しいよ」
春香「……わ、わかりました……えへへ」
P「……」
P(なんだか、朝から少し重い空気になってしまったが……)
P(なんとか春香は、笑顔を取り戻してくれたらしいな。よかった……)
春香「プロデューサーさん、約束ですよ、約束!」
P「ああ、なんなら指きりするか?」
春香「い、いい、いいんですか!?」パァァ
P「えっ」
春香「えっ」
P「そ、そんなに喜ばれるようなことか? 指きりくらい……」
春香「あ、い、いえ、べつに喜んでるわけじゃ……」アタフタ
P(……春香に、何があったんだ? 明らかに、いつもと違う表情をしていた)
P(律子と音無さんの間にもなにやらヒミツがあるらしいし……やよいと伊織も、俺にナイショの話をしていたらしい)
P(まぁ、この年頃の女の子たちは、そういうところもあるだろうけど……なんだか気になるな)
P(ま、悩んでても仕方ないな。もう仕事の時間だ)
P(俺には、やらないといけないことがある。もっともっとアイドルたちを輝かせることだ)
P(律子との昨日のことは……とりあえず、頭の隅の隅に置いておいて……)
P(スイッチを入れ替えて頑張ろう!)
P「……」カタカタ
律子「プロデューサー、どうぞ」コトッ
P「ん? ああ、コーヒーか。ありがとな」
律子「いえいえ、これくらいお安い御用です」
ズズッ
P「……うん、美味いよ。ちゃんと俺の好みを知ってるなあ」
律子「ふふっ、何度も何度も、熱く語られたからね」
P「はは……あ、そういえば律子、あの書類どこにあるかな」
律子「あの書類? ……ああ、あれね! あれなら……」
ガサゴソ
律子「はい、どうぞ。これですよね?」
P「おお、これだよこれ。ありがとう」
小鳥「……ふたりとも、息ぴったりですねぇ」
P・律子「「そうですか?」」
小鳥「そうですよ。ふふっ……」
―――
律子「それで、この人ったらそのときなんて言ったと思います?」
P「おいおい、いつまで引っ張るんだよ……もう随分前のことじゃないか」
小鳥「ふふっ。それに律子さん、その話聞かされたの、もう三度目ですよ?」
律子「えっ、そ、そうでしたっけ? あはは……」
ガチャ
亜美「おっはよーだぴょーん! ……およ?」
真美「おはおは~! ……おやおや~?」
P「おはよう。……ふたりとも、どうしたんだ? そんな顔して……」
真美・亜美「「んっふっふ~!」」
真美「亜美亜美、あそこにいますぜ!」ビッ
亜美「いますなあ! 我らの敵がっ!」ビッ
P「な、なにがだよ……人のこと指をさすんじゃありません」
真美「なにがってそりゃ決まってるっしょ~!」
亜美「亜美たちの敵といえば! ……ん、倒すべき宿敵(とも)って言ったほうがカッコいいかな?」
P「朝から元気だな……なんの漫画の台詞だ?」
真美「うあうあ~! 漫画とかの台詞じゃないもんっ!」
亜美「亜美たちオリジン弁当の台詞だよっ!」
律子「それを言うならオリジナル、でしょ」
真美「そー、そんな感じ。んで、えっと……なんだっけ?」
亜美「……?」
P「お前ら本当自由に生きてるよな」
亜美「……ああっ! あれだよ真美! 我らの敵といえば、カップルだよっ!」
P「……は?」
真美「そうそう! ぐぬぬ……真美たちにも彼氏が出来てないというのに、朝から見せつけちゃってさ~!」
律子「ちょ、ちょっとあんたたち、何言ってんの!?」
真美「だってだって~。いおりんが言ってたもん」
亜美「そーそー。んで、言われてみれば確かにそうかなーって。うっうー!」
P「な、なんの話なんだ……? しかし似てるなおい」
P(というか、また伊織……)
律子「ちょっと、本当、やめなさい……ね、お願いだから」
真美「……どーする、亜美?」
亜美「律っちゃん困ってるっぽいね……もしかしたら、ピヨちゃんにはヒミツなのかも」
小鳥「あら、私もその話、知ってるわよ?」
律子「小鳥さんっ!?」
真美「ホント!?」
亜美「なら大丈夫っぽいね~!」
P「……いい加減、教えてくれよ。誰と誰がカップルだって言ってるんだ……?」
亜美・真美「「そんなの、兄ちゃんと律っちゃんに決まってるっしょ~!」」
P「……」
P「はぁぁあああ!!?」
P「な、なな……なにを言ってるんだ! そんなわけないだろ!? な、なあ律子!?」
律子「え、ええ! そうよ、伊織が何を言ってたか知らないけど、テキトーなこと言ってるんじゃないの!」
亜美「えっ、そーなの?」
真美「……あ゛っ! 亜美亜美、ヤバイよ~! ヤバイこと思い出しちゃった~!」
亜美「どーしたの、真美! ま、まさか、人類が滅亡したあの日のこと……!?」
真美「そんなの比べものになんないくらいヤバイんだって~!」
P「お前ら何を背負って生きているんだ……」
亜美「んで、なあに? はやく教えてよ~」
真美「律っちゃんと兄ちゃんは、付き合ってないの! いおりんも言ってたっしょ~?」
律子「そ、そうよ。何よ、ちゃんとわかってるじゃな――
真美「ただね、律っちゃんが兄ちゃんのこと好きなだフゴォ」
律子「はーい、お口をふさぎましょうね~」メキメキ
P「お、おい、真美は一体何を……?」
律子「プロデューサー殿は黙っていてください♪」
P「……はい……」
真美「ヤバイよ……あれは人殺したことある目だったよ……」ガクガク
亜美「元殺し屋の噂は本当だったんだ……」ブルブル
P「……伊織が何を言っていたかわからないが、そんな根も葉もない噂を信じちゃだめだぞ」
亜美「律っちゃんは元朝青龍じゃないってこと?」
P「たぶん、アサシンってことを言いたいんだろうけど……そうじゃなくてだな」
律子「……」
P「……俺と律子がどうの、って話だ。俺達は本当に、何もないから」
律子「……っ」
亜美「そーなんだ~」
真美「なんか、ごめんね。兄ちゃん、律っちゃん。真美たちカンチガイしちゃってたかも」
律子「……ま、まあ、いいんだけど……」
亜美「でも律っちゃんが兄ちゃんのこと」
律子「」ギロリ
亜美「なんでもないっぽいよ~」
P「……大体な、律子には俺なんかよりもっと良い男が似合うってもんさ! あっはっは……はぁ」
真美「んっふっふ~! 確かにそうっぽいね!」
P「おいおい、そこは否定してくれよ」
真美「兄ちゃんをバカにしてるわけじゃないよ? でも律っちゃんの彼氏はもっとこう、ダメダメな人っぽいよねっ」
亜美「そーそー。それで律っちゃんが、『しょーがないわねー、はいお小遣い』って言いながらお世話すんの!」
律子「……好き放題言っちゃってまぁ……そんなダメ男は、こっちから願い下げよ」
P「……じゃあ、律子はどんなタイプが好きなんだ?」
律子「え゛っ!? そ、そうね、優しくて、頼りがいがあって……ってなんてこと言わすんですかっ!」
小鳥「律子さん、そんなに恥ずかしがることでもないでしょ? もうティーンエイジャーでもないんですから」
P(年齢の話が出たので……)
P(余談ではあるが、音無さんと律子が同じ20代を過ごせた時間はほんの数ヶ月しかなかった)
P(律子の誕生日から、こないだの音無さんの誕生日までの、約二ヵ月半だけである)
P(あのときの音無さんの表情は忘れられない……)
真美「んっふっふ~! 兄ちゃんに一生彼女が出来なかったら、将来真美の彼氏さんにしてあげてもいいよ?」
P「ははは……ありがとな。でもアイドルに手を出すわけにはいかないからさ、遠慮しとくよ」
真美「マジメっぽいね~。でもそういうところもス・キ」
P「お、大人をからかうんじゃないっ!」
真美「あははっ! 兄ちゃんが怒った~!」
P「中学生なりたてホヤホヤが調子に乗りおって!」
ギャー ギャー
律子「……」
小鳥「……律子さん、元気だしてくださいね?」
律子「……っ……。べ、べつに、なんにも気にしてないですよ。本当に私達は、なんにもないし……」
小鳥「プロデューサーさんがああ言ったのは、亜美ちゃん真美ちゃんの前だからよ」
律子「……そう、ですかね……はぁ」
小鳥「ふふっ、それじゃあ……、今日は私と飲みにいきましょう! お酒の力使ってぜんぶ吐いちゃいなさい!」
律子「昨日も随分吐いたんですけど……でも、ありがとうございます。すいません、毎度毎度話聞いてもらって……」
【Pのおうち】
ガチャ
P「ただいまー、っと」
P「って言っても、誰もいないけどな。昨日と違って……」
P「……」
P(あれから……)
P(個別レッスンから帰ってきたやよいと春香を加えて、俺が担当するユニット三人は、いつも通りの営業をこなした)
P(朝は春香の様子が少しおかしいとは思ったが、仕事中はいつものような元気な笑顔を見せてくれた。さすがはリーダーといったところだ)
P(……律子とは、それ以来特に話してはいない。俺も今日はなんだかはやく帰りたくて、直帰してしまったからな)
※このPの担当アイドルは春香(リーダー)、やよい、真美の三人です
P「……さて、ちょっと横になるか……うん、疲れただけだから、他意はないから」
ポフン
P「……」
P「…………」
P「このへんに……」
サワサワ
P「……昨日、律子が寝ていたんだよな。あ、いや、どうでもいいけど」
P「……」
P「…………」
P「律子が、無防備な格好で……」
クンカクンカ
P「……ちょっと深呼吸してみよう。あ、いや、特に意味はないけど」
P「ふぅ……」
P「良い匂いが残ってる気がする。たまらん」
P「朝目覚めたら律子が隣にいるとか、今思うと本当にとんでもないな……」
P「……」
P(……正直に言って、あれから俺は、律子のことを今までとは違う目線で見るようになってしまった)
P(仕事の同僚、ただの友人……その域を超えることは決してないだろうと、思っていたのに)
P(今ではもうはっきりと、異性として、ひとりの女の子として意識してしまうようになってしまった……)
P「……はは、やっぱり俺は童貞だな。こんなことがあったくらいで、すぐその気になってしまうなんて」
P(もしも、これがアイドルの誰かだったら、ここまで素直に気持ちの変化を認めることはなかっただろう)
P(同じ同僚、同じ裏方の人間……つまり言ってしまえば、律子はアイドルじゃない。たまにステージに立つことはあるけど)
P(だからこそ、俺の気持ちを止めるものは……何もなかったんだ)
P「……律子の寝顔、かわいかったな」
ムクムク
P「おお、息子よ、お前もそう思うか」
ビンビン
P「ははは、仕方ない奴だなあ。よおし、もう一回可愛がってやるからな」
P「ええっと、律子のアイドル時代のDVDは、っと……」
ガサゴソ
P「おお、あったあった。こんなこともあろうかと今日事務所から持ち帰っておいてよかった」
P「さて……」
カチャカチャ
ジー ボロン
P「……ふふ。今日は何回でも戦えそうだ」
P「よし、それじゃあさっそ
ヴー! ヴー!
P「!?」
P「電話!? 誰だよっ、俺の大切な時間をジャマしやがって!」
パカッ
……………………
着信:秋月律子
……………………
P「!?」
ヴー! ヴー!
P「……」
P(律子から電話……な、なんの用なんだろう。仕事の話か、それとも……)
P(……プライベートな用事、だったらいいな……なんて)
P(どちらにせよ、こんなときにかかってくるなんて、なんて絶好のタイミングなんだ……)
P(……絶好のタイミング? いま、俺は何を考えた?)
P「……!」ティン
P(これで、律子の声を聞きながらデキるじゃないか! ははっ、天才か俺は!)
P(そうと決まれば……!)
ピッ
P「もっ、もしもし!」
小鳥『あ、やっと出ましたね、プロデューサーさん』
P「え……その声は……」
小鳥『私です、音無小鳥ですよ。すみません、こんな時間に……』
P「音無さん……」
シュン
P「ああ、縮んでしまった」
小鳥『縮む? なんの話ですか?』
P「あっ、い、いえいえ! こっちの話です、すいません」
小鳥『……?』
P「……えっと、それはそうと、どうしたんですか? なんで律子の携帯で……」
小鳥『あ、それがですね……』
P(ちなみに言っておくが、俺は音無さんのことをキライとかじゃ決してない)
P(むしろ好きだ。優しいし綺麗だし、とても30代とは思えない)
P(だけど、まあ、なんというか……失礼だからな、音無さんに対して。うん……)
―――
小鳥「……あ、プロデューサーさん!」
P「音無さん、お待たせしました! り、律子の様子は……!?」
小鳥「それが、この通りなんです~……」
律子「……zzz……」グッタリ
小鳥「律子さん、小柄とはいえ……うう、女の私にはちょっと重いわ~……」
P「寝てるときはそうですからね……代わります、是非そうさせてください」
小鳥「はい、それじゃあお願いしますね♪」
P(どうやら、律子と音無さんは今日、ふたりで飲み会をしていたらしい)
P(しかし律子が飲みすぎて、この通り熟睡してしまったため……)
P(俺に車で迎えに来てもらい、家まで送ってもらおうと思ったんだそうだ)
P(ちなみに、音無さんの携帯は電池が切れてしまっていたとのこと。だから律子の携帯を使ったらしいな)
P「よい、しょ……っと」
ポフン
律子「わふ……むにゃむにゃ」
P(泥酔してる律子もかわいいなあ!)
P「音無さんも乗ってください。送っていきますよ」
小鳥「い、いいんですか? なんだかアッシー君にしちゃったみたいで悪いわ……」
P「随分久しぶりに聞いたフレーズですね……」
小鳥「私も自分で使ったのは初めてです……」
P「……と、とにかく。こんなとこで酔った女性をひとりにさせるわけにはいきませんから、どうぞ」
小鳥「……ふふ。それじゃあ、遠慮なく♪」
ブロロロ……
P「……女の人を助手席に乗せたのは初めてですよ」
小鳥「え? でもいつも、アイドルの子たちを乗せてるじゃないですか」
P「ああ、すいません。プライベートで、ってことです」
小鳥「プライベート……」
P「アイドルの子たちを異性として見るわけにはいきませんからね。もちろんみんな、可愛い子たちですけど……」
小鳥「……私、女としてカウントされてる、ってこと?」
P「当たり前じゃないですか、実は男でしたー、とかじゃないでしょう?」
小鳥「……」
P「……小鳥さん?」
小鳥「……律子さんに怒られちゃうわ」
P「ええ? な、なんで……?」
小鳥「なんでもありません。プロデューサーさんが悪いんです」プイ
小鳥「……」クルン
P「律子の様子、どうですか?」
小鳥「気持ち良さそうに眠っています。体丸めちゃって、かわいいですよ」
P「そうですか、それは是非見てみたいな」
小鳥「……そーいうの、本人が起きてるときに言ってあげてください。きっと喜びますから」
P「……恥ずかしくて、そんなの言えませんよ」
小鳥「でも律子さん、言ってましたよ? 『プロデューサー殿はテキトーなこと言って相手を喜ばす天才だ』って」
P「んなっ、なんてことを……!? 今まで適当なつもりで発言したことないですよ!?」
小鳥「ふふっ、わかってます♪ ……ねえ、プロデューサーさん?」
P「なんですか?」
小鳥「……律子さんのこと、どう思います?」
P「……」
P「……」
小鳥「……」
キキッ
小鳥「いま、少し急げば赤信号になる前にいけたんじゃないですか?」
P「今日は大切なゲストを乗せてますから、安全運転でいかないと」
小鳥「それって……」
P「……」
P「好きですよ」
律子「……っ!」
小鳥「……友人として?」
P「……どうなんでしょう。まだ、はっきりとは……」
小鳥「そうですか……それじゃあ、脈アリってところですね」
P「……トップシークレットです」
小鳥「あ、私の家、このへんです。この辺りで降ろしてもらえば……」
P「わかりました」
キキッ
ガチャリ
小鳥「わざわざ送っていただいて、ありがとうございました」
P「いえいえ、いいんですよ。気にしないでください」
小鳥「ふふっ、やっぱりプロデューサーさんはお優しいですね」
P「いつも優しい人止まりで印象が終わってしまうのが、たまにきずですけどね。ははは……」
小鳥「大丈夫です、プロデューサーさんには、彼女くらいきっとすぐに出来ますよ」
P「そうでしょうか……」
小鳥「そうです、そうなんですっ。ふふふ、私が保証しますよ!」
P「音無さんだって彼氏できたことないじゃないですか」
小鳥「そ、そそ、それを言うのはズルイです~!」
P「それじゃあ、おやすみなさい」
小鳥「おやすみなさい。また、明日」
ガチャ
P「さて……次は律子か」
律子「……」
コンコン
P「ん? 音無さん?」
ウィーン
小鳥「ごめんなさい、言い忘れてました。プロデューサーさん、耳貸してください」
P「え……?」
小鳥「……送り狼になっちゃ、だめですよ?」ボソボソ
P「!? な、何を……!? そんなことあるわけ……!」
小鳥「昨日みたいに♪」
P「!?」
小鳥「それじゃあ、今度こそおやすみなさい!」タタタッ
P(送り狼、って……またへんなこと言って)
P「……」チラ
律子「……」
P「……いやいやいや、何を考えているんだ俺は……」
P「昨日のは事故、そう事故だ。二日連続でなんて、そんな……」
P「……」
P(それは、たしかに今の俺にとってはとても魅力的なアイデアだった)
P(しかし……それをしたら、大切な何かが失われてしまう気がする)
P(律子に嫌われることだけは、決してしたくないし……)
P「……やっぱり、普通に送っていこう。うん……」
律子「……く……なし……」ボソボソ
P「ん?」
律子「……z、zzz……」
P「気のせいか……」
―――
P「えっと、このへん……かな?」
P「……」
P(やばい。送っていくと言っても、音無さんからもらったアバウトな地図じゃさっぱりわからん)
P(律子を起こして聞くしかないか……)
P「おーい、律子~」ユサユサ
律子「う、う~ん……」
P「起きてくれ、もう朝だぞ~」
律子「……」
P「……寝てるなら、ちゅーしちゃうぞ~」
律子「!?」ガバッ
P「おお、起きたか。おはよう」
律子「お、おは、おはようございます……」ドキドキ
律子「……」ポー
P「律子、色々状況がわかっていないとは思うけど……」
律子「……送ってくれたんですよね? すいません……」
P「あれ、もしかして起きてたのか?」
律子「いっ、いえいえ! ただまあ、なんとなくわかりますから! それだけですっ!」
P「そうか……」
律子「……私の家、もうすぐそこです。ここからなら、歩いていけますから……」
P「玄関まで送っていくよ」
律子「……結構です」
P「いやでも、こんな夜道とはいえ、酔ったお前をひとりにするなんて……」
律子「だいじょうぶですっ、だいじょうぶですから……!」
P「……!?」
律子「ひとりに……してください……」
P(律子の目、赤くなってる……?)
律子「……」
ゴシゴシ
律子「プロデューサーには昨日からお世話になりっぱなしですから……これ以上迷惑、かけられません」
P「迷惑だなんてそんな……」
律子「本当、あとちょっとの距離ですから、心配はいりません。お礼は後日、酔いがさめたときに……」
P「お礼なんていらないよ。ただ、ちゃんと家まで入っていくのを確認させてくれ。安心したいんだ」
律子「……」
P「……律子、お前どうしたんだよ? 様子がおかしいぞ」
律子「べつに、おかしくなんて……っ!」ジワ
P「……」
律子「……失礼しますっ」
P「あ、ああ……」
律子「……」
テクテク
律子「……っ……」
律子「ほんと、バカみたい……ひとりで舞い上がっちゃって、私……」
律子「う、うぅ……」
律子「ま、まだ、泣いちゃだめよ……」
律子「泣くのは、部屋に帰ってから……!」
P「なんで泣くんだよ」
律子「!? ぷ、プロデューサー!?」
P「……やっぱり、ほっとけないよ。フラフラじゃないか」
律子「……やっぱり、優しいですね、プロデューサー殿」
P「茶化すなよ」
律子「べ、べつに茶化してなんか……」
P「律子が俺のことプロデューサー殿って言うときは、大体そういうときだろ?」
律子「……そうでしたっけ?」
P「いや、まあ……、そうじゃないときもあるけど」
律子「……」
P「……なあ、律子」
律子「なんですか……?」
P「なんで、涙を流す必要があるんだ? 何かあったなら、相談してくれよ」
律子「……あなたには、言えません」
P「……どうして?」
律子「あなたのことだから、言えないんです……」
P「俺のこと? それなら尚更……」
律子「あっ、い、いいえ! ……やだもう、まだ酔ってるのかしら……!」
律子「と、とにかく……私はさっきも言ったように、ひとりで帰れますから」
P「……」
律子「……それじゃあ、おやすみなさい」タタッ
P「ちょ、待てよ!」
ガシッ
律子「っ! は、離して……っ!」
P「……いいや、離さない」
律子「どうして!?」
P「律子が泣いているからに決まっているだろう!? ひとりにしたくないんだよ、わかってくれよ!」
律子「そ、そんなに優しくしないでくださいっ!」
P「律子のためにやってるんじゃないっ! これは、俺がしたいからしてるんだ!」
律子「な……あなたに、なんの関係が……!」
P「関係大アリだ! 律子が泣いてるなら、俺も悲しいからだよっ!」
律子「……っ!」
律子「な、なんで……そんな風に言ってくれるの……?」
P「……それは……」
律子「そんなこと言われたら……私だって、まだいけるのかな、って……思っちゃうじゃない」
P「……り、りつ――
律子「もう本当に、私に構わないでくださいっ!」
P「っ! な、なんでそんなこと……!?」
律子「なんでって、そんなの決まってるじゃない!」
律子「だ、だって、だってあなたは……!」
律子「あなたは、小鳥さんのことが好きなんでしょう!?」
P「……は?」
律子「私、知ってるんですからっ!」
律子「小鳥さんに対して、『好きですよ』って言ってるの、ちゃーんとこの耳で聞いたんですから!」
P「いや、いやいやいや。なんの話だよ……」
律子「誤魔化す気ですか!? いいですよ、それなら教えてあげますっ!」
律子「私、本当は……車の中で、寝たふりしてたんですよ!!」
P「車の中……?」
P「……」
P(! あ、あの会話か……!)
小鳥『……律子さんのこと、どう思います?』
P『好きですよ』
小鳥『……友人として?』
P『……どうなんでしょう。まだ、はっきりとは……』
小鳥『そうですか……それじゃあ、脈アリってところですね』
―――
――
―
P(なんということだ……律子の頭の中には、一番上の音無さんの台詞がすっぽり抜けてしまっているんだ)
律子「う、うぅう……」
ポロポロ
P「……」
P(こいつ……盛大な勘違いをしておられる……!)
P(いや、まあ、ちゃんと聞かれてたら聞かれてたで、ちょっと困ることになったけど……)
律子「さっきだって……! 小鳥さんの帰り際に、仲良さそうに……!」
P「そこまで見てたのか……」
律子「だっ、だから私にはっ、もう優しくしないで欲しいんです!」
P「……」
律子「うぇええん……!」
P(酒のせいか、いつもとはまるで別人だ……)
P「……」
P(どうしよう)
P(かわいい)
P(それならそうで、ちょっと余裕が出てきたな。もう少し様子を見よう……)
P「……なあ、律子」
律子「な、なんですか……」
P「たとえもし、俺が音無さんのこと好きだとしたって、それでなんで律子が泣くんだ?」
律子「そんなの、決まってるじゃないですか! プロデューサーは昨日も言ってくれたのに……」
P「え、昨日?」
律子「そうです、そーなんです! 昨日はあれだけ、私のこと……ゴニョゴニョ……って言ってくれたじゃない!」
P(昨日!? 酔って記憶を失っていたときのことか! な、何を言ったんだ……?)
P「……すまん、なんのことだかさっぱり覚えていない……」
律子「最っ低!!」
P「おっしゃるとおりだ……ごめんなさい」
律子「うぅ……だから、部屋にも行ったのに……すぐ寝ちゃうし……」
P「……」
P(なにそれこわい)
P(本当に俺、何を言ったんだよ!!?)
律子「もういいもん、律っちゃん帰る!」
P「お、おいおい、その発言はそりゃいくらなんでも壊れすぎだろ色々」
律子「昨日はこんな感じだったじゃないですかっ!」
P「本当かよ……信じたくない……」
律子「……」
P「……」
律子「……ごめんなさい、こんな迷惑、かけて……」
P「いや……」
律子「……よく考えたら、そうですよね。あなたが小鳥さんのこと好きだって、私が泣くのはおかしいわ」
P「……」
P(ここらへんが、潮時か)
P(律子の誤解を解こう……色々と、よくわからないところもあるけど)
P(とにかくそうしないと、いつまで経っても話が進まない)
P「なあ、律子……お前は、勘違いをしているぞ」
律子「な、なにが……!」
P「俺は決して、音無さんのことは好きではない」
律子「!? で、でも……」
P「毛ほども恋愛感情を抱いたことはないんだ……」
P「あ、いや、もちろん、嫌いじゃないけどな? むしろ素敵な女性だと思ってる」
P「でも――
律子「じゃあっ! 車で言った、『好きですよ』ってのは、誰のことを言っているんですか!?」
P「律子だよ」
律子「!!!?」
P「……なーんて……」
律子「そっ、そそ、そうですよね……私のわけない……そうだとしたらおかしいわ」ドキドキ
P(俺の意気地なし!)
律子「……はぁ……」
P「……」
律子「なんだか、今ので酔いもさめちゃいました」
P「いいことだ……酔っぱらったって、大抵ろくなことがないからな」
律子「でも、あなたの家に行けたわ」
P「でも、今みたいに律子を泣かせてしまった」
律子「……お酒の力って、こわいですね。私、今まで知りませんでした」
P「まだ二十歳になったばっかりだろ。これからゆっくり、身を持って知っていけばいいさ」
律子「……」
律子「もう、ダメ、ですね……」
P「え?」
律子「なんかもう、色々……私もう、疲れちゃいました」
P「疲れたって、何が……」
律子「隠すのに、疲れちゃったんです」
P「……隠す?」
律子「……私、思い返せば、色々ヤバイ発言しちゃってました。あなたは素面なのに……」
律子「それに、今日、事務所でも……亜美や真美にも言われたし、その……」
P「り、律子……?」
律子「……薄々、感づいてるとは思います。いくら鈍感なプロデューサーでも、さすがに……」
P「……」
律子「……」
律子「私、あなたのことが好きなのよ」
P「……え……」
律子「……」
P「ええぇえええ!!?」
律子「……なーんてね」
P「そ、そそ、そうだよな。そんなわけない……!」ドキドキ
律子「っていうのは、嘘です」
ぎゅっ
P「!?」
律子「仕返し、しただけよ……」
P「な、なな、なんのことだ……!?」
律子「……さっき、誤魔化したでしょ? その仕返し」
P「……」
律子「目が泳いでる、口がパクパクしてる。……大体、そんなときは、何か大切なことを誤魔化してるのよ」
P「…………」
P(いつの間にか、律子のペースだ……なんだよ、なんなんだよ、俺……!)
P「な、なあ。一体、俺が何を誤魔化してるって……?」
律子「……車で言った、『好きですよ』ってのは、私のことを言ってくれたんですよね?」
P「……そ、それは……」
律子「……もう、ダメですよ」
P「……っ」
律子「もう逃がしません」
律子「女の私に、ここまで言わせたんだから……あなたも、本心を話してください」
P「……」
ドックン ドックン……
P(このタイミングだ)
P(このタイミングで、男を見せてやらないと……本当に俺は、どうしようもないダメ人間になってしまう)
P(いくじなしで、ヘタレで、クズな……本当のダメ人間に……!)
P「……俺は」
律子「……」
P「いや、違うな……俺も、だ」
P「律子のことが、好きだよ」
律子「っ!!」
P「同僚でも、友人でも……もちろん、アイドルとしてでもなく……」
P「ひとりの女の子として、律子のことが好きだ」
律子「そっ、それじゃあ……!」
P「……でもな。本心を話す、っていうなら……これだけじゃ足りない」
律子「え……」
P「正直に言って、俺は昨日まで、律子のことはそれほど意識してなかったんだ」
P「朝起きたら、律子が隣にいた……。そんなことがあったから、急激にお前のことを意識し始めたんだよ」
律子「……そ、そうですか」
P「自分でも、気持ちの変化がはやい奴だと思う。でもな……」
P「でも、そういった、ちょっとしたことがきっかけで……人の印象っていうのは、良い方向にも悪い方向にも変わるんだ」
P「俺はそれを、この年になって初めて知ることができた」
律子「……」
P「今までの律子の印象が、俺の中でガラッと変わってしまった。今日だって、一日中律子のことを考えていたんだよ」
P「律子は、とても魅力的な女の子だ。今まで意識してなかったのが、おかしいってくらいに……」
P「だからな――
律子「だーもう!! 話が長いっ!!!」
P「えっ」
律子「いいんですっ、そんなこと!」
P「いや、でも……」
ぎゅーっ
P「……っ」
律子「……いつから好きになった、とか……そんなことは、どうでもいいんです」
律子「前までの私は、ほんの少しでも……あなたが私のことを見てくれたら、それだけで幸せだった」
律子「それに比べたら、時間なんて些細なものです」
P「……」
律子「普段は、少しだらしないけれど……アイドルのみんなだけじゃなくて、私にも平等に優しくしてくれて」
律子「いっぱいいっぱい、助けてくれて……私が弱音を吐いたときも、励ましてくれて」
律子「そんなあなたが、私と同じ気持ちなら……私は……まるで魔法をかけられたみたいに、幸せになれるんです」
P「……いいのか、こんな俺で」
律子「そんなあなただからこそ、ですよ。こんなに、へタレで、ダメ人間だからこそ……」
律子「私は、そんな不器用なあなたのことが、こんなにも好きになれたんです」
P「あはは……真美たちの言ってたとおりだな。律子の彼氏はダメ人間だって」
律子「本当ですね、ふふっ……」
グリグリ
P「……頭グリグリするのはやめてくれないか」
律子「やです」
P「みぞおちに当たって苦しいんだけど……」
律子「私が今まで味わった苦しみに比べたら、これくらい」
P「え!? く、苦しみ?」
律子「そーですよ。あなたは、みんなに優しいから……そういうの見てると、胸がモヤモヤするんです」
P「……ごめんな」
ぎゅっ
律子「! ……や、やっと……抱き返してくれたわね……」
P「……これからは、律子のことだけ見るさ。今までの時間、苦しみ、全部取り返せるくらいに……」
律子「ふふっ……それも考え物じゃないですか? みんなのやる気をなくさせちゃダメですよ、プロデューサー殿?」
P「茶化すなって……」
P「……律子……」
律子「……っ」
律子「……ぷは」
P「……」
律子「……突然すぎじゃないですか? まだ、これしか、時間経ってないのに……」
P「時間なんて、関係ないんだろ?」
律子「ま、まぁ、そうですけど……」
P「初めて、キスをしたよ。不思議なもんだな……なんか、安心する」
律子「ふふっ……私は、ファーストキスじゃないですけどね」
P「え!?」
P「ま、まあ、やっぱり、律子はモテてただろうからな……いや別に、気にしてないけど」
律子「嘘ですよね?」
P「……うん……嘘だ。少し気にする」
律子「……初めての相手は、あなたですよ、プロデューサー」
P「……」
P「え? そ、それじゃあやっぱり、今のがファーストキスなんじゃないか! ドッキリさせないでくれよ……」
律子「いいえ、それも違います。今のは確かに、私にとって二回目のキス」
律子「そして、あなたにとっても……二回目のキス」
P「どういうことなんだ……」
律子「……昨日、あなたが寝てるときに……」
律子「その……、ね?」
P「……っ!」
律子「……ふふっ……」
律子「それで、今あなたがしてくれたのが……三回目、です」
律子「……私、家に戻ります」
P「あ、ああ。なんか突然だな」
律子「でもプロデューサーは、そこから動いちゃダメですよ?」
P「えっ」
律子「いいですか? 私があなたの携帯を鳴らすまで、ここにいてください」
P「……ああ、わかったよ」
律子「それではっ!」
タタッ
P「行ってしまった……な、なんなんだ……?」
カラカラ
律子「ただいま戻りましたっ!」
P「いやいやいや、帰るんじゃなかったのか?」
律子「戻るとは言ったけど、帰るとは言っていませんよ?」
P「……それに、その荷物は……?」
律子「明日のスーツと、化粧品と……、その他もろもろ、女になるために必要なものです」
P「……」
律子「……」スッ
ピッ プルルルル……
P「……電話?」
ピッ
P「も、もしもし……」
律子『それじゃあ、行きましょうか! もう動いていいですよ』
P「……えっと、どこへ行くって?」
律子『どこへって、そりゃ、決まってるでしょう? あなたの部屋ですよ』
―――
――
―
チュンチュン
ぴよぴよ
P「……」ムクッ
律子「……すぅ、すぅ……」
P「……」
P「どういうことなの……」
P「あ、いや、今度はちゃんとわかってるけど……」
P「なんか、色んなことがありすぎて、頭が付いていかないぞ……」
P「律子は……」
チラ
律子「……むにゃむにゃ……」
P「寝てるか……」
P(いやでも、こいつのことだからな。寝たフリの可能性もある)
P「……」
P「…………」
P「……いつつ。体が痛くて仕方ない」
P「……シーツも、洗わないとな……こんなにあ
律子「せ、セクハラですよ……」
P「やっぱり起きてたか……」
律子「……」
P「……」
ぴよぴよ
律子「……あ、朝ですね……」
P「そ、そうだな……外で小鳥も鳴いている……」
律子「……まだ、ちょっと痛いわ……もう、今日はまともに歩けないかも」
P「ははは……なんてリアクションすればいいんだよ」
律子・P「「……あのっ!」」
律子「……ふふっ。今度はプロデューサー殿からどうぞ?」
P「あ、ああ……それじゃあ、まず……」
P「……愛しているよ、律子」
律子「……ふふふ。私も、同じことを言おうとしてました」
P「……こんな風に、朝起きたら誰かが隣にいるっていうのは、いいものだな」
律子「あら、誰でもいいんですか?」
P「……」
律子「なーんてね。わかってます、ちゃんと」
P「言わせんな恥ずかしい……」
律子「冗談、です。あなたの気持ちは、昨晩、いやってほど聞きましたから」
P「いやだったのか?」
律子「言わせないでよ恥ずかしい……」
P「……いつか」
律子「え?」
P「今日みたいな日だけ、じゃなくてさ……いつか……」
P「毎日毎日、こうして、朝起きたときから顔を合わせられるようになれたらいいなって思うよ」
律子「っ!」
P「ど、どうした? そんな顔して……」
律子「……ぷ、プロポーズみたいに聞こえるんですけど……」
P「え? ……っ!!!」
律子「あ、いやでも、いつかはとは私も思いますけど、まだそれは気が早いというかっ」
律子「お互い収入が安定して、十分な貯蓄をして、将来設計の見通しが立ってからでも決して遅くはわわわ」
律子「事務所設立の夢もありますししし」
P「お、おお、落ち着け! ……っていうか、事務所設立? なんの話だ?」
律子「いっ、いえっ、なんでもないですっ」
P「……」
律子「……」
P「……は、はは……」
律子「ふふ、ふふふ……」
P・律子「「あはははは!」」
P「それじゃあ……まずは、はりきって仕事をしないとな!」
律子「そうですね! 今日もアイドルたちが、私たちの指示を待ってますからっ!」
P「一緒に、頑張っていこう。もちろん、仕事だけじゃなくて……」
律子「ええ! 朝起きたときから、夜寝るまで……」
律子「いつまでも、私の隣にいてくださいね! プロデューサー!」
おわり
でも少し休憩したあと、後日談も書いていく
【後日談】
P(……さて)
P(朝起きたら律子が隣にいたあの日から、数日が経った)
P(俺と律子は……うん、仲良くやっている。詳しくは恥ずかしいからナイショだ)
P(しかし、俺にはまだ、わかっていないことがいくつもあるのだった)
P「その一つが、伊織。お前だよ」
伊織「一体なんの話よ……藪から棒に」
P(伊織は、やよいと亜美、真美になにやら色々と話をしていたらしい)
P(俺と律子が話しているのをジャマしちゃだめ、とやよいに言って……)
P(真美たちには、律子と俺が付き合ってるだの……あ、いや、違ったっけ?)
P(……律子に聞いてみてもよかったんだけど、まあ今日こうやって本人を捕まえられたからな。ちょうどいいや)
伊織「ところであんた、良かったわね! 聞いたわよ」
P「え? なんの話だ?」
伊織「律子と、無事に付き合うことになったんでしょ? あんたにしてはよくやったじゃない!」
P「あ、ああ……まぁ一応、ありがとう。律子から?」
伊織「ええ、そうよ」
P「……」
伊織「それで? この宇宙一の天才美少女キューピッドアイドル水瀬伊織ちゃんに、なんの用があったわけ?」
P「キューピッドって……まあ、報告も兼ねてだな」
伊織「あら、わざわざ報告だけしに来るなんて殊勝なことね。でも別に、間に合ってるからいらないわよ」
P「あ、いや、それだけじゃなくて……伊織、お前は一体何を知っていたんだ?」
伊織「? 何を、って?」
P「律子のことだよ」
伊織「そんなの、全部に決まってるじゃない! にひひ♪」
P「……ぜんぶ?」
伊織「もっちろん! 律子がプロデューサーのことを意識し始めたときから、今日のことまで、全部よ」
P「えっ」
伊織「律子が竜宮小町のプロデューサーになって間も無く、あんたが765プロに入社したじゃない?」
伊織「そのうち、『あら? おかしいわね』って思ってちょっとつついてみたら、ポロポロポロポロ……」
P「……」
伊織「あのときの律子ったら、イジイジしてて仕方なかったからね」
伊織「だから、この私がひと肌脱いでやろうって思ったわけよ! 感謝しなさいよね!」
P「……それで、やよいや亜美たちに?」
伊織「あら、知ってるの? ……ま、本当はやよいにだけ、ジャマしないように、って言うつもりだったんだけど……」
P「運悪く、あのふたりに捕まってしまったのか」
伊織「……そんなところよ。思い出したくもないわ、あのくすぐり地獄……」
P(亜美たちからどんな拷問を受けたんだろう……興味津々なときのアイツらは、律子でもなかなか止められないからな)
P「と、ところで、伊織」
伊織「なあに?」
P「全部ってことはだな……あの、律子が俺の家に泊まったことも……?」
伊織「ええ、知ってるわよ。付き合う前にそういうことするなんて、律子らしくないと思ったけど……」
伊織「ま、結果としてそれが良い方向に転んだんだから、私は別に責めやしないわよ」
P「……付き合う前?」
伊織「? そうでしょ? その一回きりだって、律子が言ってたけど」
P「……」
P(まあさすがに、言えない範囲のことはあるよな)
P(……よし、ここはひとつ)
P(俺の口から、あの日――俺と律子が付き合い始めたあの日の夜、何があったかを伝えてやろう)ニヤリ
P「……伊織。ちょっと耳を貸せ」
伊織「なによ……」
P「……実はな……」
伊織「は、はやく言ってちょうだい。くすぐったいじゃない」
P「律子が俺の家に泊まったのは、一回だけじゃなくて……」
伊織「え? そうなの?」
P「……本当は……」ヒソヒソ
伊織「……」
伊織「……――~~!!!」
伊織「ばっばばばばばバッカじゃないの!!?」
伊織「ももっ、もしそうだとしたって、なんでわざわざ私に言う必要があるわけ!?」
P「いや、伊織が知ってることを、ちゃんと本当の意味で全部にしてあげたいかなーって」
伊織「いらないわよこの変態っ! ド変態っ!! 変態大人っ!!!」
P(かわいい)
―――
『律子に言いつけてやるんだからっ!』
P(と言いながら、伊織は涙目でこの場を去ってしまった)
P(少し、イジワルが過ぎたかもしれない。まぁ、勝手に色んな噂を流した罰だな)
P(……あとで、律子からどんな顔で何を言われるんだろう。今から楽しみだ)
P「さて、と……」
ガチャ
春香「おっはようございまーっす!」
あずさ「あら、プロデューサーさん、おはようございますー」
P「おお、ふたりとも。ちょうどいいところに……」
P「今日は、ふたりで一緒に来たのか?」
春香「はいっ! えへへ……電車の中で転びそうになったところを、ちょうどあずささんが現れて」
P「あれ? 春香が乗る電車って、あずささんは反対方向だから使わないはずですよね?」
あずさ「そうなんですけど~……、私、気が付いたら上りと下りを間違えて乗っちゃってたみたいで」
春香「あずささんのおかげで、痛い思いをしなくて済みましたっ♪」
あずさ「ふふっ、私も、春香ちゃんに会えたおかげで遅刻しないで済んだわ~。ありがとね、春香ちゃん」
P「あはは……」
春香「ところで、プロデューサーさん。ちょうどいいところ、って言ってませんでした?」
P「ん、ああ。実はだな……ふたりにも一応、報告しとかないと、と思って」
あずさ「報告、ですか~?」
P「律子から、何か聞いていませんか?」
あずさ「んー……特には、何も聞いていませんけれど……」
春香「……律子さん……?」
P「ああ、実はな。俺達……」
―――
春香「……え……律子さん、と……プロデューサーさんが……?」
あずさ「……っ」
P「ああ、付き合うことになったんだ。ちょうど、今週の頭くらいからな」
春香「……」
P「春香は俺が担当するユニットのリーダーで……」
P「それに、あずささんは律子の担当するアイドルだから……一応、ふたりにも報告しとくよ」
春香「……」
P「……春香? どうし――
春香「おめでとうございますっ!!」
あずさ「……春香ちゃん……」
春香「えへへ、そうならそうと、はやく言ってくださいよぅ。私とプロデューサーさんの仲じゃないですか!」
P「……すまないな、ちょっと時間が作れなくてさ」
P(春香……?)
春香「詳しく聞かせてくださいよ! どっちから告白したんですか?」
P「うん、ああ……一応、律子から……」
春香「わぁっ、律子さんすごーいっ! わ、私なんかじゃ……とても……」
あずさ「……プロデューサーさん。私からも……おめでとうございます」
P「……ありがとうございます」
あずさ「ふふっ、律子さん、ようやく実ったんですね」
P「あずささんも、伊織と同じように、律子から聞いていたんですか?」
あずさ「いえ、そういうわけではないのですけれどー……見ていれば、なんとなくわかりましたから」
P「そうですか……」
春香「プロデューサーさん! それでそれで、プロデューサーさんは、いつから律子さんのことを?」
P「な、なんだ? やけに聞きたがるな」
春香「えへへ、だって、恋の話は女の子みーんな大好きなんですよ! だから――
あずさ「あらっ、いけない、もうこんな時間だわ。春香ちゃん、行きましょう?」
春香「え? で、でも……」
あずさ「いいからいいから。さっき音無さんに呼ばれていたのを、すっかり忘れてたのよ~」
―――
P「行ってしまった……」
P「なんだろう……。春香、あのときみたいに……少し、様子がおかしかったような」
P「……」
P「……俺は……、何か間違ったことは……してないよな……?」
P(こう考えること自体が大きな間違いだったのに気付いたのは、それからずっとずっとあとになってからだった)
P(春香が何を考えて、何を思っているのか。どうして、あんな乾いた笑顔を浮かべていたのか)
P(……しかし、それはまた、別の話だ)
―――
「……うん、そうね……」
「ごめんね、春香ちゃん。私……なんとなく、気付いていたのに……言えなくて」
「……私? 私は……大丈夫よ」
「本当よ……それより、つらいのは春香ちゃんでしょう? ……ずっと、プロデューサーさんとふたりで頑張ってきたものね」
「……こっちにいらっしゃい」
「いいのよ、気にしないで?」
「……ええ、大丈夫。全部、わかってるから……」
P「……」
P「……」
P「……律子に、会いたい」
P(わからないことは、まだまだたくさんある)
P(しかし、この言いようもない不安を消すには……律子に会うしかないと、そう思った)
P(いつの間にか俺は……随分と、律子に甘えるようになってしまっていたみたいだ)
―――
律子「……あ、プロデューサー!」
P「おお、律子……」
律子「すみません、お待たせしちゃって……」
P「いや、いいんだよ。仕事もあっただろうし、急に呼び出したのは俺だからな」
律子「どうかしたんですか?」
P「うん、まあ……自分でもよくわからないんだけどな。追々話していくよ」
律子「……?」
P「……」
律子「あ、あの、まさか……」
P「え?」
律子「……いやな話……?」
P「いやな話って……」
律子「……」ジワ
P「!? ああいやいや、律子が想像しているようなことじゃない!」
律子「ほ、ほんとう……?」
P「本当、本当だよ。約束しただろ……簡単に律子と離れるようなことはしないさ」
律子「……」
ゴシゴシ
律子「そ、そうですよね……やだ、私ったら、随分涙もろくなっちゃって」
P「……言い方が悪かったな。すまない」
律子「い、いえ、いいんです! 私が勝手に勘違いしちゃっただけだから……」
P「そういうの、考えちゃうのか?」
律子「……ええ、まぁ……今が幸せな分、余計にね」
律子「き、気を取り直して! プロデューサー、おなか減ってませんか?」
P「まあ、空いてるには空いてるな」
律子「それじゃあ、まずは軽くご飯を食べましょう。えっと、たるき亭でいいかな……」
P「……律子」
律子「……あ。や、やっぱり、ちゃんとデートっぽいところのほうがいいですか?」
律子「コストパフォーマンス的に考えたら、あそこが一番いいんだけど――
グイッ
律子「っ! ちょ、いきなり引っ張らないで……」
P「俺の家に行こう」
律子「……え……?」
P「俺は、はやく律子とふたりきりになりたいんだ……ダメかな?」
律子「……」
律子「い、いいですけど……」
律子「……な、なによ……いきなりそーいうの、ズルイじゃない」ドキドキ
ガチャ
律子「お邪魔しまーす……」
P「……」
律子「ふふ、ここに来るのも、もう何度目かしらね?」
律子「いちいち使い捨てを買うのももったいないし、今度来るときは歯ブラシでも持ってきて置いとこうかしら」
P「なんなら、同棲するか?」
律子「うーん、そうしたいのは山々ですけど……まだ気が早いですよ」
律子「そういうのは、色々準備が必要だし、あと覚悟も……」
P「覚悟なら、俺はもうとっくに出来てるんだけどな」
律子「……プロデューサー? なんだか、いつもと違くないですか?」
P「……」
律子「あはは、いつものプロデューサーなら、いつまで経っても悩ん――
ぎゅっ
律子「――でたり、するのに、あれ? お、おかしいな……」
P「……」
律子「……」
P「律子」
律子「は、はい……」
P「……いいか?」
律子「い、いいって、なにが……?」
ドックン ドックン……
P「……わかってるだろ?」
律子「……」
律子「うん……」
―――
――
―
―――
――
―
律子「……ふふ。本当に……、毎回そうなんですね」
P「ん? 何がだ?」
律子「こうやって、頭を撫でてくれることです」
P「……」
律子「男の人って、その……終わったあと、全部やる気無くなっちゃうんでしょう?」
律子「私のことは構わず、寝ちゃっててもいいですよ」
P「……いやだよ」
律子「いや、って……」
P「もっと、律子と話していたんだ。一秒だって惜しいくらいに」
律子「……っ」
律子「……あーあ。本当にもう……なんでかな」
P「どうしたんだ?」
律子「なんで……こんなに好きになっちゃったんだろ、って思って……」
P「……」
律子「特に取り得もない、ごく普通の人なのに……」
P「お、おいおい、失礼じゃないか?」
律子「でも、そうでしょう?」
P「……たしかに」
律子「……でも、良かったかもしれないわね。あなたが、超イケメンとかじゃなくて」
P「う、イケメンじゃなくて悪かったな……でも、なんでだ?」
律子「だって、例えばほら……ジュピターみたいな、女の子にすごい人気のある顔だったら」
律子「それで、あなたがところ構わずモテまくるような人だったら……私が独り占めできないじゃないですか」
P「……ま、そうかもな」
律子「だから嬉しいんです……」
P「……独り占め、か」
律子「……?」
P「なあ、もしも……もしもの話だぞ?」
律子「え、ええ……」
P「俺がさ、例えば……765プロにいる誰かに、好意を持たれていたら」
律子「っ!!」
P「律子は……どうする? どう思う?」
律子「なな、なんですか……? もしかして、こ、告白とかされたの……?」
P「……例えばの話だよ。そういうことは一切ない」
律子「……」
P「……」
律子「……わからないわ」
P「……そっか」
律子「でも、たぶん……今なら、はっきりと、負けないって言えると思う」
P「今なら?」
律子「……私の立場上、こういうことを言うのはまずいのかもしれないけれど」
律子「アイドルとプロデューサーの恋愛は、私はべつに、反対はしていないんです」
P「……意外だな」
律子「もちろん、公にするのはダメですよ? それでその子のモチベーションが上がるなら、それでもいいって……」
P「……」
律子「だから……、以前の私だったら、身を引いちゃうかもしれない」
律子「その子のためを思って……私が我慢することで、その子が幸せになるなら……」
P「そうか……」
律子「……でも、今は……いやです」
律子「私とあなたの仲に、誰も入ってきてほしくないから……あなただって、そうでしょう?」
P「うん……そのとおりだよ」
律子「……だから、たとえ誰かが、あなたに好意を持っていたとしても……。私はその子と、正々堂々、戦います」
どうせ貶されるんだろうなと思って選択した結果があれだよ!
ほんとこれ
最後の最後であの不意打ちは反則
急所にクリーンヒットしたわ
そのシーンが見たい聞きたいからアイマスを買ったと言っても過言ではない
P「そうだな……そうだよな。はは、それを聞いて安心したよ」
律子「こんなの、聞くまでもないですよ。当たり前じゃないですか」
P「……」
P(……律子の言葉を聞いて)
P(それまで俺の心の中で渦巻いてた、少しばかりの不安は……、見事に消え去ってしまった)
P(大したものだ……これが、誰かが隣にいる、ってことなんだな)
律子「……あの、プロデューサー?」
P「うん?」
律子「急にそういうこと言い出したってことは……何か、理由があるんですよね」
P「……」
律子「……教えてください」
―――
律子「……なるほどね。春香が……」
P「ま、まあ、俺の勘違いだとは思うんだけど」
律子「……」
P「……律子?」
律子「……あえて、ノーコメントにさせてもらうわ」
P「えっ」
律子「春香が何を考えているのか、私にもわからない。だから、何も言わない」
P「そ、そうだよな……」
律子「……」
律子「……大丈夫ですよ、プロデューサー殿」
律子「あなたが心配しているようなことは、何も起きませんから」
P「……」
律子「あなたはただ、いつも通りのプロデューサーでいてくれればいいんです」
律子「それが、あの子にとっても、そして私達にとっても……、ベストなカタチなんですから」
P「律子……」
律子「ふふっ、なーに、その顔? まるで子どもみたいね」
P「い、いいだろ! わりと不安は大きかったんだ」
律子「ぜんぶぜんぶ、そういう不安、吐き出していってくださいね?」
P「……ああ」
律子「……あなたの弱い部分を見れたら、私は嬉しい」
律子「それで、私があなたの力になれたなら……私は、もっと嬉しくなるんですから」
律子「……ふたりでいれば、悲しいことは半分に」
P「嬉しいことは、倍に……って?」
律子「ふふ、そーです、そのとおりですっ!」
律子「それが、ふたりで隣合って歩いていくということ……でしょう?」
P「……うん、そうだな!」
P(……俺たちの日々は、これからも続いていく)
P(ときにはこんな風に……うまく説明できないような不安に襲われることもあるだろう)
P(でも、そこに君がいれば……)
律子「ふふっ……きっと、ぜんぶぜんぶ、うまくいきますよ」
律子「だから、今日は安心して、眠ってください」
律子「明日の朝、目が覚めても……私は、あなたの隣にいますから」
P「ああ……」
律子「……おやすみなさい」
律子「私の、大好きな……ダーリン」
P「恥ずかしがるなら言わなきゃいいのに」
律子「う、ううっ、うるさいっ!」
おわり
りっちゃんかわいいよりっちゃん婚姻届渡したい
律子分が補給出来た
これでまた戦える
Entry ⇒ 2012.09.29 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
P「音無小鳥の休日」
小鳥(でも休みの日に片付けないといけないし)
小鳥(まずは部屋の片付けからさっさと終わらせちゃいますか)
小鳥「よっこいしょっと」シャー
小鳥「今日もいい天気!掃除機はっと」
小鳥「空になりたい じ~ゆ~なそ~らへ~♪」ガー
小鳥「始まりはどこになっるっのっ?っと雑誌吸い込んじゃった」
ハルハハナヲイッパイサカセヨ~♪
小鳥「あら誰から電話からしら プロデューサーさんだわ」
P「もしもし、おはようございます」
小鳥「おはようございます プロデューサーさん どうしたんですか事務でわからないことでも?」
P「いや、そうじゃなくてですね。今日お休みですよね?何かご予定ありますか?」
小鳥「いえ、恥ずかしながらこれといって特にないんです…タハハ」
小鳥「え?わ、私とですか?」
P「い、嫌だったら別にいいんです。たまたま半休でこのあと予定もなくて一人は少し寂しいというかなんというか他のアイドル達もそれぞれすることがあって、そんなとき音無さん今日休みだなーとたまたま思い出したと言うかなんというか…
一緒に御飯食べられたらいいなーと言うかそれはそれでご迷惑なるかもしれないけどでも音無さんの私服とか少し気になってる自分が居たりするわけで…」
小鳥「プ、プロデューサーさんちょっと落ち着いてください」
P「あ……すいません… なんでもない…です」
小鳥「あ、あの大丈夫ですよ」
P「え?」
小鳥「お昼ご一緒させてください プロデューサーさん」
P「は、はい!」
小鳥「じ、じゃぁどこに行けばいいですか?
P「1時半に駅前ロータリーでどうです?」
小鳥「わかりました 1時半にロータリーですね」
P「はい」
小鳥「それではまた後で」
P「失礼しつれいします」ピッ
小鳥(お昼ごはんかー 休日に男性の人とご飯食べるなんてどれくらい振りだろ…)
小鳥(しかもプロデューサーさんとかぁ… ふふふ あのプロデューサーさんが慌て方ちょっとかわいかったなぁ…ふふっ)
小鳥(プ、プロデューサーさんもしかして…いやいや駄目よ小鳥勝手に暴走していつも最後に玉砕するじゃない)
小鳥(お昼ごはん一緒に食べるだけじゃない 妄想は辞めておきなさい)
小鳥(1時に家を出れば間に合うからお風呂でも入っちゃいましょうかね。特に意味は無いけど)
小鳥(下着は… これよね 特に深い意味は無いけど…)
小鳥(洋服何着て行こうかしら…プロデューサーさん私服が気になるとか言ってたような気がするけど…)
小鳥「う~ん…」(プロデューサーさんが好きそうな服ってどんなのだろう?)
小鳥(あまり派手じゃなくカジュアルっぽいほうがいいのかな?)
小鳥(まず少し冷静に整理してましょう)
小鳥(プロデューサーさんは仕事終わりなのでスーツなのは間違いないわね)
小鳥(そしてその隣にいる私…)///
小鳥(ぎこちない距離は少しずつ近くなり、手の指と指が触れ合う…)
小鳥(一瞬触れ合った指に二人はドキッとして手を引っ込めるも、ゆっくりと手を差し出しギュッと…キャーキャー///)
小鳥(よし、この前雑誌の一式セットを衝動買いで揃えちゃったやつにしよう あれなら派手でもないし!多分…)
小鳥(べ、別にデートとかじゃないし ご飯食べるだけだし プ、プロデューサーさんだって特別そんな)
小鳥(で、でももしもプロデューサーさんが私のことをす、す、好きだったり(きゃー)したら…)
P『小鳥愛してるよ』
小鳥『私も愛しています』
P『なんて君は美しいんだ まるで世界の美しいをかき集めて造られた女神のようだ!』
小鳥『プロデューサーさんこそとても素敵よ まるでこの世のカッコイイを凝縮したような絶対神のようだわ!』
P『俺の女神よ結婚しよう!』
小鳥『はい』
小鳥「えへ…えへへ…」
小鳥「いけないっ早くしないと」チラッ 12:35
小鳥「もうこんな時間!?なにしてんのことりー!!」バタバタ
小鳥「お化粧もしないといけないのに!」
小鳥(下地は今日は軽めで目元だけファンデを少し厚めにする感じで…)パタパタ
小鳥(シャドウは…ちょっとだけラメ入り使っちゃおう 口紅も今日はグロスと混ぜちゃおう)ンーパッ
小鳥(よし!間に合った 急いで行かないとっ っと今日ぐらいクロエ使ってもいいよね?)シュッ
小鳥(それでは!)
小鳥「いってきます!」フンスッ
小鳥「ま、間に合った…」ハァハァ…
P「音無さん」
小鳥「あ、プロデューサーさんすいませんお待たせしました」ハァ…ハァ…
P「何言ってるんですか、時間前ですしこちらから突然お誘いしたのになんか申し訳ないぐらいです」
小鳥「大丈夫ですよ、ちょっと準備に色々と余計に時間かかってしまって…」
P「…とても似合っていて素敵ですね」
小鳥「え…」
小鳥「ぁ…」カァァァァ///
小鳥「あ、ありがとうございました じゃなくてございます…」/// (い、いきなり褒められちゃった褒められちゃったびっくりしたびっくりした)
P「それでは行きましょうか」
小鳥「は、はい!」
イメージ
小鳥「特にないですね。なんでもいいですよ」
P「じゃぁ最近のお気に入りのお店行きましょうか。ランチが美味しんですよ」
小鳥「はい」
P「なんだろ…今日この道人が多いな」
小鳥「ホントですね なにかあるんでしょうか?」
P「あーあれですね」
小鳥「◯◯プロのアイドルのゲリラライブですかー」
P「ゲリラなのに人が集まってるってことはファンだけには告知されてたのかな」
小鳥「そうかもしれませんね」
P「しかしこう人が多くちゃな…」
小鳥「はぐれちゃいそうですね」
P「よし…」ギュ
小鳥「手が…ぁ…」///
P「はぐれないように…」///
P「///」
小鳥(プロデューサーさん耳が真っ赤…恥ずかしいのかな?)
小鳥(そりゃそうよね今時の若い子じゃあるまいしはぐれないために手をつなぐなんて恥ずかしいわよね)
小鳥(私も今すごく恥ずかしい…けど嫌じゃない寧ろなんかぽわぽわする…)
P「音無さん大丈夫ですか?」
小鳥「は、はい だいじょーぶれす」
P「ふぅ やっと抜けれましたね」パッ
小鳥(ぁ…)「そうですね 予想以上に多かったですね」(手離れちゃった…)
P「お店もうすぐです いきましょう」
小鳥「はい」
マスター「いらっしゃいませ」
小鳥「へーいい雰囲気ですね」
マスター「おや、珍しいですね今日はお連れ様とご一緒ですか」
P「はい、二人です」
マスター「奥の席へどうぞ」
小鳥「こんなお店どうやって見つけたんですか?」
P「少し前に番組の打ち合わせをするときに静かな場所を探しててですね」
P「偶然見つけたんですが、とても珈琲が美味しくてそれ以来ちょくちょく来るように」
小鳥「へーシックな雰囲気で落ち着きます」ピヨピヨ
P「マスター今日のランチはなんです?」
マスター「炙り照り焼きチキンサンドとサラダセットでございます」
P「じゃぁそれ一つと…音無さんはどうします?」
小鳥「わ、私も同じので」(よし、デートで一度は言ってみたかった台詞!)
小鳥「はい。お任せします」
P「じゃぁ珈琲はブレンドでお願いします」
マスター「かしこまりました」
小鳥(なんかプロデューサーさんいつもよりとても素敵に見える…)ポワポワ
P「今日は突然お誘いして申し訳ありません」
小鳥「い、いえ。どうせ休みの日なんて家でゴロゴロしてるだけですし」
P「そうなんですか?亜美や真美が『ピヨちゃんは休みの日は絵を描いてるんだよむふふなやつ』って言ってましたが」
P「音無さんって絵を描くんですね」
小鳥「い、いい嫌べ別に絵とか描いてませんよ あの双子ちゃんも何いってんだか はは ははは…」
P「そうなんですか 描いてたのなら見てみたいなと思ってたんですが」
小鳥(あの双子めプロデューサーさんになんてことを 明日とっちめちゃる…ってかなんで知ってるのよ)
小鳥「プ、プロデューサーさんは休日はなにしてるんですか?」
P「そうですね、テレビやネットで他のアイドルの同行チェックしたり、買い物ついでに音楽やヴィジュアルの傾向を調べたり」
小鳥「真面目ですねぇ」
P「あの娘達の頑張りをなかったコトにしたくないですから」
小鳥(なんてカッコイイ意見なのからし…それに比べて…)
小鳥「でもその中でもやっぱり少しは自分の時間を大切にしたほうがいいんじゃないでしょうか?」
P「はい、ですから今日お誘いしたんです」
小鳥「なるほど… ぇ?」
マスター「おまたせしました。炙り照り焼きチキンサンドとサラダセットでございます」
P「おお、美味しそうだ」
小鳥「わ、わぁ ほんと美味しそう」(ぇ?自分の時間大切 だから誘った 誰を?私を???)
P「でしょ?一見合わないような感じのからしがアクセントなんですよ」
小鳥「ほんとですね。からしって照り焼きに合わないイメージあるんですけど」
P「マスターの手作りらしいです」
小鳥「へぇちょっとレシピ教えてもらおうかしら」
マスター「企業秘密です」
P「ははは」
小鳥「うふふ」
小鳥(何気ない会話が楽しい 何故だろういままでと同じなのになんでこんなに楽しんだろう)
P「ごちそうさま」
マスター「お粗末さまでした」
小鳥「あーほんと美味しかった」
P「それはよかったです」
マスター「食後にお食べください」コトッ
小鳥「あ、チーズケーキ いいんですか?」
マスター「これはプロデューサー様のお連れ様へのサービスです」
小鳥「ありがとうございます」
マスター「プロデューサー様が女性の方をお連れするのは初めてのことでございますので」
P「ちょ、ちょっとなに言ってんですか!」
小鳥「そうなんですか プロデューサーさんモテるのに…」
P「辞めてください。そんなことないですよ」
小鳥(事務所のアイドルのこと気がついてないのかしら…これが噂にだけ聞くやれやれ系なのかしら)
小鳥「えっと…どうしましょ?」
P「思いつきでお誘いしたので後のこと考えてなかったのですが、このあともまだお時間あるのでしたら映画でも行きませんか?」
小鳥「大丈夫です 行きましょう」
マスター「本日はご来店ありがとうございました。またいらしてくださいませ」
小鳥「はい、また是非よらせていただきますね」
マスター「お待ちしております」
P「どれにします?」
小鳥「私はどれでもいいですよ プロデューサーさんの見たいやつで」
P「音無さんこれは前のやつ見ましたか?」
小鳥「はい、今回で最終回で最後にあの台詞言うのは誰か気になってます」
P「ではこれにしましょう、ちょっと続き気になってたんですよね」
小鳥「ふふっ」
P「どうしたんですか?」
小鳥「なんというかこういうの久しぶりだなーって…」
P「映画ですか?」
小鳥「映画もそうですけど、誰かと一緒に待ち合わせして、御飯食べて、お喋りして、映画見て まるで…」
P「まるでデートしてるみたいですね まぁそのつもりで誘ったわけなんですけどね」
小鳥「!?」
ビーーー
P「始まりますよ」
小鳥(落ち着きなさい小鳥 浮かれすぎて私の妄想が幻想になって幻聴が聴こえたのかもしれない)
小鳥(もしかして今私が現実を思ってることは全て私の妄想かもしれない)
小鳥(実は私は待ち合わせのロータリーに着く前に事故にあって今も意識不明の状態でそれが見ている走馬灯だったり…)
スクリーン
男『誰か警察読んでくれ!』
人形『やぁブラッド やぁライアン ゲームをしよう』
小鳥(そうよゲームかもしれない きっとこれは誰かが仕組んだゲームなのかも…)
小鳥(二人で生き残っちゃえばいいのよ。そして友情から先の向こうへ…うふふ)
P(小鳥さん楽しそうだなぁ可愛い でもこんな場面で笑ってるのは少しどうかと思うけど…まぁ可愛いからいいか)
プルルルル
刑事1『あぁどうした?』
刑事2『58丁目の廃車置場にいる』
刑事1『なんで?』
小鳥(なんか気が付けばストーリー結構進んでてゲームが2つほど終わってた…)
小鳥(今は映画に集中しましょ)
P「…」
人形『やぁボビー ゲームをしよう』
小鳥「…」
P「」ソッ
小鳥(ピヨッ!? プ、プププロデューサーさんが手手お手々…)
P「」ギュッ
小鳥「そ、そんな迷惑だなんて…寧ろ ゴニョゴニョ…」/// ギュ
P「…」
小鳥「///」(何が起こってるの?私の身に一体何が起こってるの?)
小鳥(ついに私は妄想を具現化する念に目覚めたの?長年の妄想がクラピカの鎖のように…)
小鳥(こ、小鳥とにかく落ち着くのよ素数を数えましょう 素数がいち 素数がに 素数がさん 素数がよん…)
小鳥(状況を整理しましょう!まず朝起きて掃除してたら電話かかってきて、ボビーは被験者じゃなかったのね)
小鳥(それがプロデューサーさんでお昼ごはんに誘われて、やっぱり居場所バレてたのね警察も役立たずだわ)
小鳥(この人友近に似てる…そのあと一緒に御飯食べて…うわぁ痛そう)
刑事1『発信元は特定出来るか?』
刑事1『わかった!いくぞ』
小鳥(照り焼きチキン美味しかったなぁ マスターもすごく良い人で あ、これ罠だわ)
小鳥(これ多分私わかっちゃった そのあとプロデューサーと映画見ようってことになって)
小鳥(プロデューサーさんが『デートのつもりで誘った』って言って…)
小鳥(今はプロデューサーの手が私の手をしっかりと握って…御飯食べる前ははぐれないようにってことでそんなに意識はしなかったけど、いや実際は結構ドキドキしてたけど
今は完全に手をつなぐと行為自体に意味があって手が温かくてなんだか顔が熱くなって、でもでも別に嫌じゃなくってむしろとっても安心するというかなんというか)アワアワ
小鳥(…あかん)プシュー
小鳥さん「そうですね」(後半殆ど頭に入ってなかったけど、ラストだけ見る限り私の推理はあたってたみたい)
小鳥(何よりまだ手を繋いでいるという事実が私を現実から遠ざけている)
P「でもやはり1が一番好きです」
小鳥「ぴょぇっ!?す、好き!?」
P「一作目はやはり完成度が違いますね 4~6当たりはかなり中だるみしてましたけど」
小鳥「えぇえ そそうですね 私的にはアマンダは嫌いではないですよ」
P「そこは結構意見がわかれるところですね」
P「日没後の薄明この時間帯に出来る影が殆ど無い状態をマジックアワーマジカルアワーって言うらしいですよ」
小鳥「ロマンチックですね」
小鳥「でもとっても幻想的…」
P「…小鳥さん」
小鳥「はい?」
小鳥「…ん? はっ」カアァァァァッ///
P「構いませんか?」
小鳥「は…い」
小鳥(きゃー初めて名前で呼ばれた…きゃーなんでプロデューサーさんに呼ばれるとこうも響きがちがうんだろう…)
P「何か飲みにいきましょうか …小鳥さん」
小鳥「…はい」///
小鳥(やばいすっごく恥ずかしい!でも嫌じゃない)
「、、、となしさん」
「、となしさん!」
P「音無さん起きてください!」
屋上ピヨ
P「いい飲みっぷりですね」
小鳥「やっぱ休日はお酒ですね!」
P(さっきまで借りてきた猫のようだったけど、お酒飲んでいつも通りだ)
小鳥「すいませーん 生一つ~」
ハイヨロコンデー
P「でもこういった場所でよかったんですか?」
小鳥「いいんです。気兼ねなくいつも通り普段のように飲むのが一番なんです」
P「そうですね 少しだけ無理してたのかもしれないな」
小鳥「さ、プロデューサーさんも飲みましょう!」
P「はい、音無さん」
小鳥「な、名前で呼ばないんですね…」
P「やっぱりちょっと恥ずかしくて…慣れるまで少しずつ…」
小鳥「りょーかい」
小鳥「すいませーん 鶏軟2つお願いします」
P「そうですね」
小鳥「それに若くてやる気に満ちてて、元気いっぱいで」ゴクゴク
P「そうですね」
小鳥「あの子達見てると私も頑張んなきゃ!って気になるんですよ」ゴクゴク
P「俺もそうです。絶対にトップアイドルにして見せます」
小鳥「よくぞ言った!それでこそ未来の765プロを背負って立つアイドルマスターだ!」ゴクゴク
P「背負って立つなんてそんな…それより音無さん、少しペースを落としたほうが」
小鳥「何いってんですか、夢は大きく!野望は強く!心は広く!ですよ!」ゴクゴク
……
「、、、となしさん」
「、となしさん!」
P「音無さん起きてください!」
小鳥「んぁ…」
小鳥「はっ!」(しまった!なんや今日は色々頭使って疲れたのか緊張しっぱなしで糸が切れたように最後にはっちゃけて寝てしまった…)
小鳥(あああぁぁぁ 恥ずかしい穴掘って埋まってしまいたい、寧ろ全て私の妄想であって欲しい…)
P「音無さん大丈夫ですか?」
小鳥「はひ、らいじょうぶですよ」
P「ろれつが回ってないじゃないですか」
小鳥「らいろうぶでふよ」
小鳥(思考ははっきりしてるのに口がうまく回らない…)
小鳥「はい」
P「少しこのベンチで休みましょう」
小鳥(夜風が気持ちいい…)
P「はい、珈琲」
小鳥「すいません」
P「いえいえ」
小鳥「・・・」
P「・・・」
なんで音無さんに戻ったのだろうか
>>148を拾いたいがために>>150で恥ずかしいとして元に戻しました 反省はしてない
小鳥(どうしよう…もうほんとやり直したい飲み屋前からやり直したい、禁酒しようかしら?ウン無理です)
P「気持ち悪かったり、辛かったら言ってください」
小鳥「もう大丈夫です ご迷惑をおかけしました」
P「迷惑だなんて思ってませんよ いつもよりちょっとだけ素の音無さんを見れてよかったです」
小鳥「忘れてください…///」
P「…風が気持ちいいな」
小鳥(この風すこし泣いています…って言いそうになった 我慢よ小鳥、これ以上雰囲気を壊しちゃ駄目よ!)
小鳥「そうですね」
P「じゃぁいきましょう」ギュッ
小鳥「…はい」///
P「今日は付き合ってくださってありがとうございました」
小鳥「いえ、こちらこそとても楽しかったです」
P「それはよかったです 俺もとても楽しかたです」
小鳥「…」(星が綺麗だな…明日もいい天気だろうな)
P「…えっと」
小鳥「?」
P「…月が綺麗ですね」
小鳥「…!」
小鳥(今日はもうとことん妄想したんだから、そろそろ現実を見なさい小鳥!ここでの選択肢は──)
小鳥「そうですね 雲もないし明日もいい天気になりそうですね」
P「…そうですね」
小鳥(あれ?あれれ?もしかして私間違っちゃった?)
P「…はぁ」
小鳥(明らかに選択肢ミスってますよね?ねぇ!?)
P「音無さ いや小鳥さん!」
小鳥「はい!」
P「…その えっと… 実は…ですね」
小鳥「は、はい…」ドキドキ (やっぱりこれは…これは!?)
P「…すぅ…はぁ 実はずっと…ずっと前」
小鳥(ずっと前頭三代目とか言わないよね いや小鳥自重せよ)
P「ずっと前から小鳥さんのことがす──」
小鳥(もしかしなくても告白キターーー!!)
P「…」
小鳥(噛みよった!?)
P「…くっ」
小鳥(プロデューサーさんが千早ちゃんみたいになってる…)
小鳥「プロデューサーさん」
P「はい…」
P「…」
P「音無小鳥さんのことが大好きです。付き合ってください」
小鳥「はい。私もあなたのことが大好きです。どうぞよろしくお願いします」
P「…き、緊張した」ヘナヘナ
小鳥「ちょっとプロデューサーさん!」
P「出来るだけ今日は小鳥さんの前でカッコつけようとしたんですけど…やっぱり駄目でした」
小鳥「そんなことないですよ。とってもかっこよかったです。ううん 今でも十分かっこいいです」
P「…」///
小鳥「こほん。プロデューサーさんこれからずっと私の居場所になってください。それだけで私は燃え尽きることはありません」
P「わかりました。小鳥さんも案外ロマンチストなんですね『よだかの星』なんて」
小鳥「『月が綺麗ですね』なんていう人に言われたくないです」
P「確かに…」
小鳥・P「あはは…」
小鳥「…」
だんだんプロデューサーの顔が近づいてきて…
御酒臭くないかな? お化粧崩れてないかな?
目はつぶったほうがいいよね 吐息がくすぐったい
今私とても幸せかも
次の私の休日は今日よりももっと素敵になりますように
終わり
Entry ⇒ 2012.09.29 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
響「ぐがー ぐがー」
千早「……」
響「…イビキやーん」
千早「……」
響「……」
千早「……」
春香「あっ!響ちゃーん!」
千早「ブフォッ」
千早「あら?」
響「……」
千早「コーヒーフレッシュを落としてしまったわ」
響「……」
千早「ちっぱい、ちっぱい♪」コツン
響「……」
千早「……」
響「千早…」
千早「何も言わないで」
千早「そうね…」
春香「えっと…何やってるの?」
響「暇つぶしだぞ」
春香「へー…」
千早「次は春香の番ね」
春香「えっ!?」
響「自分、千早がやったんだ。順番としては春香だろ?」
春香「えっ、私参加してないよ!?」
千早「はやく」
響「はやく」
春香「えぇー…」
響「ワクワク」
春香「ハルカです…」
千早「……」
春香「みんなに『普通』って言われるとです…」
響「……」
千早「……」
春香「ハルカです…」
響「……」
千早「……」
響「……」
千早「……春香」
春香「…うん」
千早「帰って」
春香「ひどい!」
響「帰れ!」
千早「帰れ!」
春香「うわぁーん!!」ダダダッ
響「何?」
千早「まな板ネタは…」
響「無し」
千早「そう」
響「千早のためを思っての判断だぞ」
千早「わかってるわ…」
響「……」
千早「……」
響「……」
千早「あら?結構酷くないかしら?」
千早「どうしたの我那覇さん。ボディービルダーごっこ?」
響「仮面ライダーBLACKの変身ポーズ」
千早「反応に困るわ」
バッ バババッ
響「自分、太陽の子!」
響「仮面ライダー ブラァーッ!」
千早「困るわ…」
響「……」
千早「もしーしあわーせー」
響「……」
千早「ちかくーにーあぁーってもー」
響「……」
千早「私なら飛ばないわね」
響「……」
千早「……」
響「……」
千早「…みらいーをしんじてー」
響「えっ!?」
千早「おはよう、デコちゃん」
伊織「おはよう、ちは…」
千早「……」
伊織「は?」
響「はいさい!伊織!」
伊織「え、えぇ。おはよう、響」
千早「? どうかした?」
伊織「…聞き間違いだと思うんだけど」
千早「何の事?デコちゃん」
伊織「やっぱり言ってるわね!デコちゃん言うな!」
伊織「私はデコじゃないからよ!」
千早「そんな事ないわ、みな…デコちゃん」
伊織「言い直してまで失礼な事を言うんじゃないわよ!」
千早「失礼?そうなのかしら」
響「自分には良くわからないぞ」
伊織「アンタたちはココで何やってるのよ!」
千早「暇つぶし」
響「暇つぶし」
伊織「……」
春香「……」
千早「知らないわ」
響「知らないぞ」
伊織「…そう」
春香(あ、話済ませちゃうんだ)
伊織「レッスンしないの?」
千早「3時からレコーディングなの」
響「自分は仕事ー」
伊織「何時から?」
響「わかんない」
伊織「は?」
伊織「まだ来てないのね」
響「今日は一緒に行く予定だからね。ここで待ってれば問題は無いさー」
伊織「ふーん」
千早「み…デコちゃんは?今日はオフのはずよね」
伊織「…まだ続いてたの、それ」
響「今やめないとタイミング逃すぞー」
伊織「今日は…何となく、かしらね」
千早「暇なの?」
伊織「…まぁ、そうね」
千早「…暇つぶし、していく?」
伊織「遠慮するわ」
伊織「あら。おはよう、やよい」
千早「おはよう、高槻さん」
響「おはよう、やよい!」
やよい「千早さん、響さん、おはようございますー!」
千早「高槻さんはお仕事?」
やよい「はい!もう少ししたら出ます」
伊織「ねぇ、やよい。私も着いて行って良い?」
やよい「え?いいよ。でも何で?」
伊織「…率直に言って暇なのよ」
響「じゃあ自分達と…」
伊織「いやよ。今日のアンタたち気持ち悪いもの」
雪歩「ただいま戻りましたぁ」
やよい「あっ、プロデューサー!」
P「おぉ、来てたのか。早いな」
雪歩「おはよう、やよいちゃん」
やよい「おはようございまーっす!」
千早「おはよう、萩原さん」
響「おはよー!」
伊織「おはよう」
雪歩「おはよう、みんな」
P「ん?三人とも何してんだ?」
千早「暇つぶしです」
響「プロデューサーを待ってたんだ」
P「俺を?何で」
響「今日のスケジュールわかんなかったからさ」
P「電話で聞けばいいのに…。今日は4時から俺と一緒にTV局だな」
響「4時かぁー…長いなぁ」
P「千早も早すぎじゃないか?」
千早「どうせ家に居ても音楽を聴くぐらいですし。少しは皆とコミニケーションをはかろうかと」
みんな『えっ!?』
千早「え?」
P「い、いや!驚いただけだ!」
伊織「ホントに今日は変だったのね…」
千早「そう…」
伊織「べ、別に悪いことだなんて言ってないじゃない!」
響「どうしたんだ?珍しいよね、千早がコミニケーションだなんて」
千早「何となくね」
響「そっか」
春香「コミニケーションで『帰れ!』とか言っちゃうんだ…」
P「春香?」
P「そうか」
春香「あれっ!?」
P「え?」
春香「いやいや、おかしいですよね?今のはもう少し食いつくトコでしょう?」
P「お、もうこんな時間か。そろそろ出ないと」
春香「わかりやすく流された!」
雪歩「あのぅ。お茶を煎れたので、飲んでいかれませんか?」
P「お、悪いな。じゃあもう少しだけ」
春香「しかも時間に余裕あった!」
P「どうした?」
やよい「今日伊織ちゃんが私の仕事に一緒に行っていいかって…」
P「それは別に構わないが…」
伊織「お願い。最近やよいと一緒に居れる時間少ないし」
P「まぁ伊織ならむこうの印象も良いだろうしな。ただ、ホントに見学だけだぞ?」
伊織「今日は働く気分じゃないわ」
P「そっか。よし、じゃあそろそろ行くか。雪歩、お茶ありがとな。美味しかったぞ」
雪歩「あ、ありがとうございますぅ」
千早「いってらっしゃい」
響「また後でねー」
春香「いってらっしゃーい…」
やよい「いってきまーっす!」
千早「…我那覇さん?今度は何?」
スゥ…ッ
千早「空手、…かしら?」
響「変…」
バッ バッ
響「身ッ」
バッ ババッ
響「仮面ライダーブラァーッ」
千早「……」
バババッ
響「アァールェッ」
千早「困るわ…」
春香「暇つぶしらしいよ」
雪歩「暇つぶしなんだ…」
千早「我那覇さんは…好きなの?仮面ライダー」
響「いや、別に」
千早「え?」
響「かっこいいとは思うけど、見た事はないんだ」
千早「でも今ポーズを…」
響「BLACKもRXも見た事は無いけど、変身ポーズがすっごく気に入ってさ」
千早「確かにかっこいいわね」
響「だろー!?いっぱい練習したんだ」
千早「番組を見ずに?」
響「うん」
千早「ありがとう、萩原さん」
響「雪歩、にふぇ~で~びる」
雪歩「うふふ、どういたしまして」
春香「あ、そうだ。さっき出しそびれちゃったけど」ゴソゴソ
響「春香、これって」
春香「サーターアンダギーだよ、サーターアンダギー!」
雪歩「春香ちゃん、これもしかして作ったの?」
春香「そうなの。響ちゃんに作り方教えてもらってね」
千早「サーターアンダギー?」
響「沖縄のお菓子さー」
響「ふふん。自分はサーターアンダギーにはちょっとばかしうるさいからな!」
雪歩「ほんと?」
響「ごめん。正直そうでもない」
千早「でも、沖縄の味を知っているのは我那覇さんだけじゃないかしら」
春香「そうだねぇ。私も一度響ちゃんの食べさせてもらったけど」
春香「自分の食べてみて『これでいいのかな?』って思っちゃった」
雪歩「私も沖縄行った事無いから…」
響「な、なんかちょっと…プレッシャー感じてきたぞ…」
春香「美味しく出来たとは思うんだけど」
千早「我那覇さんがオッケーを出すかしら」
響「そ、そんな言い方やめてよー!食べにくいじゃんかー!」
雪歩「いただくね、春香ちゃん」
春香「はいはーい。どうぞー」
モグモグ…
春香「ど、どうかな?」
千早「ドーナッツみたいなのね」
雪歩「あ、確かにそうかも」
春香「美味しい?」
千早「えぇ。とても美味しいわ」
雪歩「うん。春香ちゃんはお菓子作るの上手だねー」
春香「よかったー。響ちゃんは?」
春香「えっ」
千早「そうかしら?美味しいと思うけど」
響「可哀想に。本物のサーターアンダギーを食べた事がないんだな」
雪歩「なんだとぉ!し、失礼な奴だぁ!」
春香「ゆ、雪歩まで変になった!?」
響「一週間後、またココに来てください。本物のサーターアンダギーを食べさせてあげますよ」
雪歩「よ、よぉし!言ったなぁ!嘘だったらしょうちしねぇぞぉ!」
春香(あ、何か元ネタがあるのかな)
千早「どうしたのかしら?萩原さん」
春香「え?あ、うん。使ったよ?」
響「泡だて器使って、手でやった方が、もっとふんわりするよ」
春香「へー!そうなんだ!」
響「味はすっごく美味しいよ。自分のよりアッサリしてるから食べやすいし」
貴音(モグモグ)
春香「えへへ…ありがとう、響ちゃん。ちょっと砂糖を減らしてみたんだ!」
雪歩「あ、でも私、響ちゃんのも食べてみたい」
響「じゃあ一週間後…じゃなくても良いか。今日は無理だから、明後日持ってこようか?」
千早「一週間後じゃなくて良いの?」
貴音(モグモグ)
雪歩「あ、さっきのは『美味しんぼ』って漫画のパロディ?って言っていいのかな?」
響「雪歩が知ってて助かったぞ。あのままじゃ春香に酷い事言って終わってたさー」
千早「食べ比べが出来るのね」
春香「あー…比べられちゃうのは…」
響「ふふん!完璧な自分に恐れをなしたな!」
春香「いやいや、美味しく作りすぎて響ちゃんのお株を奪ってしまわないかと」
響「なにおう!こうなったら勝負だぞ!」
春香「望むところだよ、響ちゃん!」
貴音「食べ比べ…。まこと、良き考えです」
千早「四条さんは食べたいだけですよね」
貴音「うふふ…とっぷ」
春香「シークレットには、なってないと思いますけど…」
雪歩「誰もつっこまないんだ…。四条さんがいつの間にか居る事に」
響「もう慣れたさー」
雪歩「真ちゃーん」
真「あっ。サーターアンダギーだ。響が作ったの?」
響「ううん。春香」
真「おいしそー。一個貰っていい?」
春香「どうぞー。一個といわず何個でも」
雪歩「私お茶入れてくるね」
千早「今日は仕事?」
真「いいや。オフだから、これから雪歩とショッピングに行こうって約束してたんだ」
春香「いいなー」
雪歩「あ、じゃあ春香ちゃんも一緒に行く?」
春香「私もうすぐレッスンだよー」
春香「うぅー。はーい。行ってきまーす」
貴音「では、私もそろそろ」
響「貴音は今からどうすんの?」
貴音「私はろけ現場に赴かなければなりませんので」
響「そっか。…あれ?今日何の収録?」
貴音「『らぁめん探訪』です」
真「えっ?」
貴音「どうかしましたか、真?」
真「え、だって今までサーターアンダギー沢山食べてましたよね?」
貴音「空腹でしたので…」
真「これからラーメン食べるのに?」
貴音「? そうですが」
春香「さっきから、ちょいちょい古いよね響ちゃん」
響「わかる春香も同類さー」
真「毎回驚かされるなぁ、貴音さんには…」
雪歩「すごいですぅ…」
貴音「む。そろそろ向かわなくては」
真「あ、ごめんなさい。引き止めちゃって」
貴音「ギリギリになってしまったのは私の責任です。では、ごきげんよう」
真「はーい。いってらっしゃーい」
響「また明日ー」
春香「えへへ…。教材忘れてちゃった。もう一回、いってきまーす」
真「雪歩、そろそろボクたちも行こうか」
雪歩「うん、そうだね。じゃあ千早ちゃん、響ちゃん、バイバイ」
千早「えぇ。いってらっしゃい」
響「お土産よろしくなー」
真「アハハ…。いってきまーす」
千早「……」
響「……」
千早「…急に寂しくなったわね」
響「そうだなぁ」
響「……」
千早「…おいしいわね、コレ」
響「でしょ?サーターアンダギーね」
千早「でも、我那覇さんは不満が…」
響「ふ、不満って訳じゃないけど…。せっかくだから、もっと美味しくなるコツをと…」
千早「…美味シーサー」
響「ブフォッ」ゲホッゴホッ
千早「あ、ごめんなさい」
響「不意打ちは卑怯だぞ!」
千早「あ、私が行くわ」
響「いいよ、自分が汚しちゃったんだし」
千早「その原因は私が作ったのだから」
響「そうだね。じゃあ頼むよ」
千早「えっ」
響「え?」
千早「あ、いえ。じゃあ」
響「ありがとねー」
千早「美味シーサー…プフッ…」
千早「四条さんが随分食べていたものね」
響「やっぱり貴音は大食いだなー」
千早「大食いという域にはおさまりきれてない気がするけれど…」
律子「あら?」
響「律子ー。おはよー」
千早「おや、秋月律子ではありませんか」
律子「何よソレ。貴音のマネ?」
響「今日はずっとこんな感じだぞ」
律子「熱でもあるのかしら」
千早「うふふ、トップシークレットです」
律子「私を呼ぶときは『律子嬢』の方が多いわよ」
律子「そうかもね。私も久しぶりにスーツ以外で来た気がするわ」
千早「今日はどうしたの?」
律子「あずささんと一緒に、双海姉妹のおもり」
響「遊びに行くのか?」
律子「まーぁねー」
千早「あの2人も一緒なら…遊園地あたりかしら」
律子「おっ、鋭いわね」
響「おー、すごいぞ千早。名探偵みたいだ」
千早「ふふん」
響「さすがに事務所は大丈夫だろー」
律子「そうとも限らないのよねぇ」
千早「あらあら~」
響「…千早?」
千早「何かしら~?響ちゃん~」
響「マネをしても…胸は…」
千早「やめなさい。それ以上は命に関わるわよ」
律子「何?」
響「さっき千早は、美希や貴音のマネをしてたんだ」
律子「……」
千早「自虐じゃないわ。微かな希望よ」
律子「そんな希望無いわよ…」
千早「酷いわ、律子…」
律子「あっ!いや、別に見込みが無いとかじゃなくてね!マネをしたって…」
響「喋り方で成長したわけじゃないと思うぞ」
千早「…ハッ!確かに…違うかもしれない…!」
律子「『かも』じゃないわよ」
律子「あずささん…?」
pi
律子「もしもし」
あずさ『律子さんですか~?すいません、道に迷ってしまって~』
律子「はいはい。今どこかわかりますか?」
あずさ『見た事のあるカエルさんのお人形があるので、近くだとは思うんですけど~』
律子「カエルの人形…あの薬局かしら?わかりました。すぐ行きますね」
あずさ『すいません~』
pi
律子「って訳で、ちょっと迎えに行ってくるわ。亜美と真美が来たら伝えておいてくれる?」
千早「わかったわ」
響「伝えておくぞー」
響「……」
千早「……」
響「…そういえばさ」
千早「何?」
響「さっきあずささんのマネしてる時に気付いたんだけど」
千早「あなたから蒸し返すとはね」
響「ち、違うぞ!その話じゃない!」
千早「『その』?『その』って何を指しているのかしら」
千早「…ナニを?」
千早「……7」
響「もういい加減にしてよー!話が進まない!」
響「うーん。千早ってさ、あずささんや春香の事は『あずささん』とか『春香』って呼ぶよね」
千早「えぇ、そうね」
響「でも自分や貴音の事は『我那覇さん』とか『四条さん』って呼ぶでしょ?」
千早「そうね、それがどうかしたの?」
響「…うーん。わからない?」
千早「?」
響「まぁ自分から言うのも違う気がするけどさ、自分の事呼ぶ時に」
『ならば!応えよドモン!』
千早(ピクッ)
響「えっ?」
『流派!東方不敗はァ!!』
響「えぇ?」
亜美「全新!」
千早「系列!」
真美「天破侠乱!」
響「な、何?」
亜美・真美「見よ!東方は!」
亜美・真美・千早「赤く燃えているゥウ!!!」
響「何なんだよー!」
亜美「はよ→! ひびきん、千早お姉ちゃん」
真美「はよ→」
千早「律子ならさっき、あずささんを迎えに行ったわよ」
真美「そっか→」
響「なぁ…さっきの何だ?新しい挨拶?」
真美「ん?Gガンだよ→」
響「じーがん?」
亜美「Gガンダムですよ、Gガンダム!」
響「ガンダムなのか?」
千早「ガンダムでありながら、格闘を主力とする異色のモビルスーツの作品よ」
響「格闘?殴りあうのか?」
亜美「そのと→り!」
亜美「あっれぇ!?なんか興味なさげ!?」
真美「ねぇねぇ、千早お姉ちゃん。律っちゃんどこまで迎えに行ったの?」
千早「さぁ?…あ、でも近くのカエルのある薬局とか言ってたわね」
響「だってぇー。何か熱く語られそうなんだもん」
亜美「んっふっふ→!それはGガンを熱く語って欲しいって事ですなぁ?」
真美「あそこかぁ。じゃあ片道15分ぐらいかなぁ」
あずさ「あらあら~。じゃあ後、20分ぐらいかしらね~?」
響「え?」
千早「え?」
あずさ「え~?ダメだったかしら~?」
亜美「そもそもの企画の原案としてはだね、『ガンダムでプロレスを』という」
千早「あの…あずささんは道に迷っていたのでは?」
あずさ「それがね~、気がついたらココに着いていたの~。習慣って怖いわね~」
響「どうしよう。亜美の変なスイッチ押しちゃったぞ」
千早「確かに怖いですけど…」
亜美「主人公ドモン・カッシュは、デビルガンダムを作り出した事で、母親が死ぬ原因を」
真美「あ、そうだ。律っちゃんに連絡しなきゃ」
千早「そうね。早く呼び戻した方がいいわ」
亜美「キングオブハートの称号は、師匠である『マスターアジア』の」
pi
真美「律っちゃーん」
律子『真美?どうしたの?』
真美「あずさお姉ちゃん事務所に来た→」
律子『えぇ!?』
あずさ「すいません~。何故か着いちゃってました~」
律子『そ、そうですか…。じゃあ今から事務所に戻りますね』
pi
千早「出て行ったのが5分ぐらい前だから、5分ぐらいで戻ってくるでしょうね」
真美「何コレ美味しそ→!」
響「春香が作ってくれたサーターアンダギーだぞ」
響「皆に食べて欲しいんだってさ」
真美「じゃあいただきま→す」
響「お茶煎れてくるね」
あずさ「いいわよ響ちゃん~。私がやるわ~」
響「あずささんもアンダギー食べてるといいさー」
千早「亜美は食べないの?」
亜美「え?」
千早「アンダギー?って言うらしいわ。沖縄のお菓子なんですって」
亜美「ひびきんが作ったの?」
真美「はるるんだってさ→」
あずさ「おいしいわね~。…あら?この香りは…」
響「さんぴん茶だぞ。千早もどうぞ」
千早「ありがとう。…さんぴん茶?」
あずさ「ジャスミンティーね~」
千早「ジャスミン…。いい香りね」
真美「どったの?コレ」
響「自分が時々飲みたくなるから、事務所に置いてるんだ。好きに飲んでくれて構わないぞ」
亜美「今日は沖縄尽くしだNE!」
律子「ただいまー」
真美「あ、律っちゃんおかえりー」
響「さんぴん茶だぞ。律子もどうぞ」
律子「ありがとう。あら、サーターアンダギーもあるのね」
響「春香が作ってくれたんだ。事務所の皆で食べてってさ」
あずさ「あんまり食べると太っちゃうかしら…」
千早「……」
律子「さぁて、そろそろ行きますか」
あずさ「はい~」
亜美「待ってたぜェ!」
真美「待ちかねたぜェ!」
亜美「じゃ→ね→」
真美「いってきま→す」
響「お土産よろしくなー」
千早「我那覇さん…お土産頼みすぎじゃない…?」
響「そうかな?」
千早「そうよ」
響「そうかも…」
千早「……」
響「……」
千早「…また寂しくなったわね」
響「うん…」
響「さっき?」
千早「亜美、真美が来る前よ」
響「あぁー…あれなー…」
千早「……」
響「えっとね、千早はさ…」
千早「…何かしら?」
響「自分の事、『響』って呼ばないのか?」
千早「え?」
響「なんかさ、苗字で呼ばれて距離感じちゃってたんだ」
千早「ご、ごめんなさい…」
響「あ、違うの!今日一日で自分の勘違いだってわかったから!」
響「変なこと聞いちゃってごめんね。別にそう呼んでくれって事じゃないから」
千早「いえ。確かにちょっと距離を置いた部分があったかもしれないわ」
響「そうなの?」
千早「春香と比べて…って意味だけどね」
響「二人は親友だもんね」
千早「そうなのかしら?」
響「そうだよ」
千早「そうかもしれないわ」
響「『かも』じゃないさー」
響「……」
千早「あの…」
美希「ハァーニィイー!!」
千早(ビクッ)
響「うわ!」
美希「あれ?ハニーが居ないの」
千早「プロデューサーならまだ帰ってこないわよ」
美希「なーんだ。急いで損したの」
響「食べる?」
美希「なぁに、それ?」
美希「食べもの?」
響「お菓子だぞ」
美希「いただくの」
千早「……」
美希「んー♪おいしいのー!」
千早「はい、美希。さんぴん茶よ」
美希「ありがとうなの、千早さん。…さんぴん茶?」
響「沖縄のお茶さー。サーターアンダギーも沖縄のお菓子なんだ」
美希「おきなわ?じゃあコレ、響がもってきてくれたの?」
響「さんぴん茶はそうだけど、アンダギーは春香だぞ」
美希「春香ってこんなお菓子も作れるんだー」
千早「作り方は響が教えたらしいわ」
美希「ふーん。そうなんだ。ありがとね、響」
響「あ、いあ」
美希「春香にもお礼のメールしとこっと」
千早「もうこんな時間なのね…」
千早「じゃあ私、行くわ」
美希「あれ?どこか行くの?」
千早「レコーディングよ」
美希「いいなぁー」
千早「多分直帰だから。また明日、響、美希」
美希「ばいばーい、なの」
響「う、うん。また明日…」
響「もうすぐプロデューサー帰ってくるんじゃないかな?」
美希「ハニーが帰ってきたら起こしてほしいのー」
響「まぁいいけど…」
美希「すやすや…」
響「寝つきいいなぁ」
響「……」
響「『響』…か」
響「……」
響「あ、プロデューサー」
P「おっ、美味そうだな。サーターアンダギーか」
響「春香が作ってくれたんだ」
P「へぇー」
P「……」
P「…え?俺春香に嫌われてるの?」
響「出すの忘れてただけだって」
P「そっか。もらっていいのかな?」
響「いいでしょ。さんぴん茶飲む?」
P「あぁ、ありがとう」
P「ありがとう。一人だけか?」
響「あ」
美希「はぁーにぃー!」
P「のわっ!み、美希!」
美希「ぶー!響ー!起こしてって言ったのにー」
響「ごめんごめん。でも起きたんでしょ?」
美希「愛の力に不可能は無いの!」
P「なんでそんな壮大な雰囲気出すんだ」
響「あ、うん」
美希「えー!行っちゃダメなのー!」
P「無茶言うな。響は準備出来てるのか?」
響「大丈夫だぞ」
美希「ぶーぶー!」
P「…美希も着いてくるか?」
美希「え?いいの?」
響「自分は構わないぞ」
美希「いくのー!」
P「そっか。良かったな」
響「うん!」
響「それに、とっても嬉しい事があったんだ」
美希「なーに、嬉しい事って?」
P「俺も知りたいな」
響「美希はもう知ってるぞ」
P「何なんだ?」
美希「えー?なんのこと?」
P「美希もわからないのか?」
響「でも、何となく秘密だぞ!」
響「ぐがー ぐがー」
おわり
何だよこれ
途中何も言わずに抜けたのに保守してくれてありがとね
感想も嬉しかったよ、ありがとう
よかったよ
Entry ⇒ 2012.09.28 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
咲「和ちゃんと二人でお寝んね」
和「い、いえ (こ、これは……)」
咲「せっかくお泊りに来て貰ったのに、お布団用意出来なくて、1つのベッドで一緒に寝てもらう感じになっちゃって……」
和(昨晩、どうやって一緒のベッドで寝る展開に持ち込もうかと寝ずにずっと考えたのですが……)
咲「せ、狭くて嫌だよね?」
和「そ、そんな事ないですよ! (こんなあっさりと望んだ通りになるなんて……)」
和(お、お風呂上がりの咲さん……)ゴクッ
咲「じゃあ一緒に歯磨きしに行こう」
和「はい」
咲「……」シャカシャカ
和「……」シャカシャカ
咲「楽しいね」シャカシャカ
和「……?」シャカシャカ
咲「お泊り」シャカシャカ
和「! は、はい!」シャカシャカ
和「……」ギュチュグチュ
咲「……」ペッ
和「……」ペッ
咲「ふふ」
和「うふふ」
咲「じゃあお部屋行こっか」
和「はい」
和(こ、これで後は……もう寝るだけ……!)ドキドキ
咲・和「「……」」ドキドキ
咲「じゃ、じゃあ……」ドキドキ
和「は、はい」ドキドキ
咲「寝よっか」ドキドキ
和「は、はい」ドキドキ
咲「和ちゃん、どっちが良い?」ドキドキ
和「どっち……?」ドキドキ
咲「ベッドのこっち側とこっち側で……(な、なんか……緊張しちゃって……)」ドキドキ
和「ど、どっちでも良いですよ」ドキドキ
咲「そ、そっか。そうだよね。えへへ (すごくぎこちないよ~……)」ポリポリ
和「は、はい」ドキドキ
咲「……」スッ
咲「はい、良いよ」ドキドキ
和「では、私がこっち側に」ドキドキ
咲「うん」ドキドキ
和「……」スッ
咲・和「「……」」
咲「じゃ、じゃあ、横になろっか」ドキドキ
和「は、はい」ドキドキ
咲・和「「……」」ポフッ
咲・和「「……」」ドキドキドキドキ
和「は、はい」ドキドキ
パチッ
咲「ふぅ」ドキドキ
和「……」ドキドキ
咲「あのさ」
和「は、はい?」
咲「明日の朝、冷えるらしいからさ」
和「は、はい」
咲「もう少し、こっちに寄った方が良いよ」ドキドキ
和「! は、はい」ドキドキドキドキ
咲「……」ドキドキ
和(完全に密着した状態に……)ドキドキドキドキ
咲「の、和ちゃん」
和「は、はい?」
咲「……」
和「……ど、どうしたんですか?」
咲「なんでもないよ~」
和「な、なんですか」
咲「ちょっと……」
和「ちょっと……?」
咲「ちょっと呼びたくなっちゃっただけだよ。えへへ」
和「なにを言ってるんですか……(か……可愛い過ぎる……)」
咲「ふぅ」
和(胸の鼓動が……このまま今日は寝れるんでしょうか……)ドキドキドキドキ
咲「ね、和ちゃん」
和「!」
和「は、はい?」
咲「そっちに顔向けて良い?」
和「!」ドキッ
和「こ、こっちにですか……?」
咲「うん。いつも上を向いて寝る事ってあんまりないからさ」
和「そ、そうですか。い、良いですよ」ドキドキ
咲「……」スッ
和「……」ドキドキドキドキ
咲「今日はたくさんお話したね~」
和「そ、そうですね(今、私の顔のすぐ横には、こっちを向いた咲さんの顔がある……!)」ドキドキ
咲「いくらお話しても話が尽きないよね」
和「そ、そうですね」ドキドキ
咲「和ちゃんみたいなお友達が出来て嬉しいよ」ギュッ
和「!」
和(う、腕に……!)ドキドキドキドキ
咲「……」ギュッ
和「……っ」ドキドキドキドキ
和「……」ドキドキ
咲「和ちゃん」
和「は、はい?」ドキドキ
咲「原村さん」
和「……?」
咲「のどちゃん」
和「……」
咲「のどっち」
和「……」ジトーッ
咲「えへへ」
和「……なんですか」ジトーッ
咲「なんでもないよぉ~」
和「……(か……可愛い……)」
和「……」ドキドキ
咲「な、なんかごめんね」ギューッ
和「……?」ドキドキ
咲「こ、こんなくっついちゃって……えへへ」
和「! い、いえ……」
咲「なんか、人と一緒に1つのベッドで寝るのなんて、お母さんやお姉ちゃん以来だからさ……」
和「……」ドキドキ
咲「甘えたくなっちゃってさ。えへへ」ギュッ
和「!」
和「は、はい?」ドキドキ
咲「原村さんってさ」ギューッ
和「……」
咲「のどちゃんってさ」ギューッ
和「……」ジトーッ
咲「のどっちってさ」ギューッ
和「……」ジトーッ
咲「えっへへ」
和「さっきからなんなんですか……それ」ジトーッ
咲「なんでもないよぉ~」ギューッ
和「……」
和(なんなんですかこの愛らしさは……)ドキドキドキドキ
和「……」
和(またどうせあれですね)ツンッ
咲「あ! ツンってした~!」
和「またどうせ、原村さんだののどちゃんだのって言うだけしょ」ツン
咲「違うよ~! 用事があるんだよ~」
和「なんですか?」ツンツン
咲「あ~! ツンツンってしてる~!」
和「用事があるなら早く言って下さい?」フフン
咲「む~! じゃあ言うよ」
和「なんですか?」フフン
咲「和ちゃんってさ」
和「はい?」
咲「和ちゃんってさ、可愛いよね」
和「!」
和「なっ……なんですか……! いきなり……」ドキドキドキドキ
咲「? なにって……?」
和「いきなり……そ、そんな……可愛いだなんてゴニョゴニョゴニョ」ドキドキドキドキ
咲「だって……部屋の暗さに目が慣れてきてさ」
和「……」ドキドキドキドキ
咲「和ちゃんの横顔ずっと見てたらさ」
和「……」ドキドキドキドキ
咲「本当に綺麗なお顔してるなぁって思ったんだもん」
和「……」カァッ
咲「率直な感想を言っただけだよ」ニコッ
和「……」ドキドキドキドキ
和「……」カァッ
咲「そんな人と一緒にたくさんお話して」
和「……」
咲「こうやって一緒に寝れるなんて」
和「……」
咲「私、幸せ者だよぉ」ギュッ
和「……」ドキドキドキドキ
咲「……」ギューッ
和「……」
和「……」キリッ
咲「……?」
和「そ、そろそろ交代してください」
咲「? 交代……?」
和「は、はい」
咲「交代って……?」
和「わ、私も……」
咲「和ちゃんも……?」
和「その……さ、咲さんに……あ、甘えたいです」カァッ
和「……なっ……なにいきなりあせあせしてるんですか」ジトーッ
咲「い、いざ甘えたいなんて言われると……」アセアセ
和「自分だって言ったじゃないですか……」ジトーッ
咲「そ、そうだけど……それは和ちゃんだからこそであって……」アセアセ
和「どういう事ですか」ジトーッ
咲「わ、私ってば、そんな……人を甘えさせられるような……包容力みたいなものないし……」アセアセ
和「……」
咲「ど、どうしたら良いのか……」アセアセ
和「……」スッ
ギュッ
咲「!」
和「良いですよ。勝手に甘えますから」ギューッ
咲「……!」ドキドキドキドキ
咲「……」ドキドキ
和「……」ギューッ
咲「……ね、ね?」ドキドキドキ
和「……なんですか?」
咲「その……なんていうか……甘え甲斐が無い……でしょ?」アセアセ
和「……」
咲「……」ドキドキ
和「……」ギュッ
咲「!」
和「それは甘える側が決める事です」ギューッ
咲「……!」ドキドキドキドキ
咲「……」ドキドキ
和「咲さん」
咲「な、なに?」ドキドキドキドキ
和「宮永さん」
咲「!」
和「咲ちゃん」
咲「……」
和「咲っち」
咲「……」
和「ふふ。どうしたんですか?」フフン
咲「……」
和「さっきこういう事してたんですよ?」フフン
咲「……」
咲「……」
和「? どうしたんですか?」
咲「……も、もう一回」
和「もう一回……?」
咲「もう一回、咲ちゃんって呼んでよ」
和「!」
咲「あれ? なに恥ずかしがってるの~?」
和「そ、そんな……」アセアセ
咲「たった今、自分からそう呼んだんだよ~?」ニヤニヤ
和「! そ、そうですけど……」アセアセ
咲「自分から言っておいて、もう言えないなんて事ないよね~?」ニヤニヤ
和「……」
和「……」プクッ
咲「あ! なにほっぺ膨らましてるの~?」ツンツン
和「なんていうか……卑怯ですよ」プンプン
咲「卑怯なんかじゃないよ~。和ちゃんが自分から言ってくれたんじゃん~!」
和「手の込んだ誘導尋問です」プンプン
和「そ、それは……」カァッ
咲「さっきすっごく普通に言ってくれたじゃん」
和「で、でも……」アセアセ
咲「でも?」
和「普段、人の事をちゃん付けで呼ぶ事が一切無いので……」アセアセ
咲「そう言えばそうだよね。みんな、さん付けか呼び捨てだよね」
和「は、はい」
咲「じゃあ……」
和「……じゃあ?」
咲「咲でも良いや」
和「……!」
咲「咲って呼んで」
和「そ、それならまぁ……ゴニョゴニョゴニョゴニョ」
和「っ……」ドキドキ
咲「……」
和「さ、咲……」
咲「!」
和「……………………さん」カァッ
咲「! あぁ~!」
和「……ちゃんと言いましたよ?」ツン
咲「ダメだよ~! それじゃあ結局いつもと同じだよ~」
和「同じじゃありませんよ?」
咲「咲さんって、いつもと同じだよ~!」
和「最後の「さん」は、数字の3ですから」フフン
咲「……」ジトーッ
和「良いですよ?」
咲「……」
和「咲……」
咲「!」
和「……………………さん」カァッ
咲「……」ジトーッ
和「咲……」
咲「!」
和「……………………………………………さん(やっぱりどうしても……)」カァッ
咲「……」ジトーッ
和「こ、これだけ間を空けたんですから、もう良いでしょう」アセアセ
咲「……」プクーッ
咲「……」プイッ
和「さ、咲さん!」アセアセ
咲「……」
和「さ、咲さん」ユサユサ
咲「ふーんだ」プイッ
和「全く……」
咲「……」
和「では……」
咲「……?」
和「私ももう、寝ますから……」プイッ
咲「あ! だ、ダメだよぉ!」クルッ
和「冗談ですよ」クルッ
咲・和「「!」」
咲(め、目の前に……!)ドキドキドキドキ
和(ち、近い……!)ドキドキドキドキ
咲「だ、だって、和ちゃんが言う通りに呼んでくれないんだもん(もう数センチずれてたら顔がくっついてた所だったよ……)」カァッ
和「ふぅ」ドキドキドキドキ
咲「ふぅ」ドキドキドキドキ
和(胸の鼓動が……)ドキドキドキドキ
咲(収まらないよ……)ドキドキドキドキ
カチ カチ カチ カチ
和「……も、もう結構な時間ですね」
咲「あ、本当だね」
和「そ、そろそろ寝なきゃですね(ただでさえ寝付きにくい環境だと言うのに、こんな事してたら本当に徹夜してしまいます)」
咲「そうだね」
和「はい」
咲「……」
和「……」
咲「……あのさ」
和「はい……?」
咲「お手手、つないで寝よう?」
和「!」
咲「い、嫌かな……」テレテレ
和「いや、そんな事はないですけど……」ドキドキ
咲「もちろん、寝ちゃったらすぐほどけちゃうんだろうけど……」テレテレ
和「……」ギュッ
咲「!」
和「……」手ギュッ
咲「じゃ、じゃあ」ドキドキ
和「は、はい」ドキドキ
咲「寝よっか」ドキドキ
和「はい」ドキドキ
咲「……」目ギュッ
和「……」目ギュッ
咲・和「「……」」ドキドキドキドキ
咲父「さすがにそろそろ起きた方が良いぞー」コンコン
咲・和「「……!」」パチッ
咲・和「「……」」ムクッ
咲「……」ポケーッ
和「……」ポケーッ
13:00
咲・和「「……」」
咲(結局あのままかなりの時間まで寝つけずに……)
和(お寝坊もお寝坊です……)
咲(一体何時間……)
和(無言でずっと手をつないでいたんでしょうか……)
咲・和「「……」」チラッ
咲・和「「……」」カァッ
終
やっぱり咲和だな
かわええなぁー
乙
乙乙
Entry ⇒ 2012.09.28 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
京太郎「コーエー龍門渕から咲無双が発売したらしい」
京太郎「予約してるし、コンビニに取りに行ってから部室行こうっと」
・
・
・
店員「あざーっした」
京太郎「さてさて、早速部室でプレイしてみますか」
京太郎「って誰も居ないね。まぁ、みんな来るまでゆっくりゲームでもして待つか…」ウィーン
京太郎「早速、起動っと。ストーリーモードはやっぱり清澄ベースか。あれ?咲が居ない?選べないな」
優希「おーい、犬。おはようだじぇー。咲ちゃんは、隠しキャラだじぇ。強キャラだからな」
京太郎「おおっ、優希。居たのか!」
京太郎「おおっ、はえーな。まぁ、二人居ればサクサク進むしな。よし、頼む」
優希「うむ、おまかせあれだじぇ。犬、優希は私の使用キャラだから使うな!」
京太郎「はいはい、わかりましたよー。じゃあ、和、部長、まこ先輩のどれかだな」
優希「簡単にキャラ性能説明してやるじぇ」
京太郎「へぇー、まぁそんな感じだよなぁ」
優希「アイアンクロー、ジャーマンスープレックス、ジャイアントスイングとか使うじぇ。無双ゲージが貯まれば戦慄のお仕置きタイムだじぇ」
優希「初心者にはちょっと使いにくいキャラだと私は思う。ワンチャンスに無限の可能性を秘める、使い込みがいのあるキャラクターと言えるじぇ」
京太郎「うーん、投げキャラはあんまり好きじゃないんだよなー」
優希「まこ先輩は、メガネから放つビーム攻撃が強いじぇ。接近戦はイマイチだが、中距離遠距離ではかなり使いやすいじぇ」
優希「まこ先輩のメガネから放つ、オプティックブラスト、オプティックスィープ。無双ゲージが貯まれば、スーパーオプティックブラストで敵を一掃出来るじぇ」
優希「ちなみにメガネ外した時の技もあるらしい」
京太郎「へぇー、使いやすそう。保留だな。次の和を聞いてから決める」
優希「接近戦に優れた性能だじぇ、なんでも輻射波動おもち機構を搭載だと何とか」
優希「初心者向けのキャラだと思うじぇ。とにかく暴れてれば、いいキャラだじぇ。無双ゲージが貯まれば、スーパーのどっち聖天八極式となって空も飛べるじぇ」
京太郎「ふーん、じゃあ和にしようかな。お手軽キャラっぽいし」ポチッ
和『咲さんは私が守る!!』
京太郎「ちなみにお前のキャラはどんなのだよ?」
優希「私か?灼眼の優希ちゃんだじぇ。刀振り回して戦うじぇ。タコスを食べれば、色々と技が使えるんだじぇ」
京太郎「二人とも接近戦タイプかー。まぁ、無双だから何でもいいんだけど」
・
・
・
優希「よし、雑魚キャラの池田を倒して無双ゲージを貯めるじぇ」
池田『にゃーにゃー』ワラワラ
京太郎(おぉ…、ゲームでも走った時の和のおもち揺れも再現されてる…。流石、コーエー龍門渕の無双シリーズだぜ)
優希「・・・」ジトー
優希「犬、鼻の下が伸びてるんだしぇ。池田は、反撃もあんまりして来ないけど当たったら大ダメージだじぇ」ポチポチ
優希「こっちの末原軍は私が引き受けるじぇ」ポチポチ
優希「気をつけるじぇ。防御力も高い上に三体揃うと、ジェットストリームアタック仕掛けて来たりするじぇ。突っ込まない方がいい」
京太郎「でも、突っ込んじゃうんだなーこれが」ポチポチ
和『てい、てい、てりゃー!』
京太郎「おいおい、体力半分も減っちまったぞ…」
優希「あーあー。だから言ったんだじぇ。もうボスが現れたじぇ」
~warning~、敵大将を見事討ち取れ!
優希「出たな、お猿の大将。コイツはとにかく素早いじぇ。攻撃当てるのが大変なんだじぇ」
優希「しかも逆転スキルまで持ってるから、体力が減ると野生化して攻撃力アップだじぇ」
京太郎「お、おぅ。気をつける」
優希「私がタコス食べる時間をちょっと稼いでくれ!」ポチポチ
京太郎「って俺も、体力半分だしなー。スーパーのどっち聖天八極式で逃げ回ってようっと」ポチポチ
和『咲さん!咲さん!ねだるな、勝ち取れ!さすれば与えられん!はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』ゴゴゴ
穏乃『次は絶対勝つからーーーーー!!覚えてろよー!!』
京太郎「ふー、あぶねー。死にかけだった」
優希「犬は下手っぴだじぇ。まだ一面だじぇー。この先は、もっともっと強いボスがいっぱい出てくるじぇ」
京太郎「意外に難しいなーこのゲーム」
優希「私のセーブデータだから、ハードモードだからな!」
京太郎「まじかよ!」
京太郎「あぁ、ワハハさんの暴走車に轢かれたり、透華さんが和しか狙わなかったり、天江さんが超強かったり」
京太郎「神代が起きてる間に倒せだとか、石戸さんの睾丸潰し攻撃で一撃死しかけたり」
京太郎「なんか色々あった気がするけど、最終ステージだ」
優希「うむ、最終のステージのボスはやっぱり咲ちゃんのお姉ちゃんだじぇ!まぁ、私もここまで進んだ事は無かったんだが」
照『ひゃあああああああああッ!!!一撃で叩き割ってあげるよおおおおおおおッツ!!!!!』
菫『・・・目標を狙い撃つ!』
優希「ひぇー、ボスが二体も居るじぇ。近接戦タイプと遠距離タイプだじぇー」
京太郎「先にあのシャープシューターから倒そうぜ!」
京太郎「ふぅ、何とか倒せた」
優希「タコスを使うじぇ!犬、任せた!」
京太郎「おぅよ!」
和『お義姉さん!咲さんは私が守ります!安心して死んで下さい!』ドガッ、バキッ、バシーン
照『…触るな、汚らわしい。淫乱ピンク!』ガード
照『乳袋の死体を砕いて細かくして、この地上から抹消しなくてはな!!』バシ、バシ、バキッ
優希「おぅ!犬、またせたな!天破壌砕(てんぱじょうさい)いくじぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」
照『私が負けるなんて、嘘だッ!嘘だッ!嘘だッ!うわああああああああ!!』バシュー
優希「ふぅ、正義は勝つ!危なかったじぇー」
京太郎「クリアー出来たか。まぁ一日でクリアー出来るのが無双のいい所だよなー」
優希「げぇ!?咲ちゃんのお姉ちゃん、中ボスだったんだ!」
京太郎「あれだけ、手こずったのに中ボスだと!とりあえず回復だ!」
優希「まぁ、さっきみたいに二体じゃ無ければ、倒せそうな気がするじぇ。防御固めながら戦うじぇ」
・
・
・
誠子『私は戦うことしかできない破壊者・・・だから戦う、争いを生む者を倒すために!この歪みを破壊する!』
優希、京太郎コンビが、ラスボス亦野誠子を倒すのに、一か月もかかったとさ
終わり
敵キャラが濃かったw
Entry ⇒ 2012.09.28 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
櫻子「ひままごと!」
櫻子「ふわぁ~……」ムニャムニャ
櫻子「今日は土曜日だし、向日葵と何して遊ぼっかなー」
櫻子「下僕を適度に楽しませてあげるのも主人のつとめ! 私えらい!」ムフー
【リビング】<ワイワイ
櫻子「お、花子と楓の声」
櫻子「!」ピコーン
櫻子「せっかくだし、向日葵んち行く前にちょっと可愛がってやるか!」
ガチャッ
櫻子「よーおふたりさ」
楓「花子ちゃんは浮気者なの!!」
花子「ご、誤解だし楓!!」
櫻子「!?」
楓「言い訳なんて聞きたくないの! 愛してるって言ってくれたのに!」
花子「それは嘘じゃないし! 花子は楓のことだけを……!」
撫子「」ポチポチ
櫻子「なんか花子と楓が修羅場ってる横でねーちゃんが携帯いじってる!!」ガビーン
撫子「ん? あ、起きたの」シレッ
楓「櫻子お姉ちゃんおはよう~」ケロッ
花子「お休みだからってだらけすぎだし」ケロッ
櫻子「!!?」
櫻子「え、いや、だって今、花子と楓がケンカしてなかった!?」
花子「はぁ? 花子が楓とケンカなんてするわけないし!」
楓「そうだよ櫻子お姉ちゃん、楓と花子お姉ちゃんは仲良しなの」ギュッ
花子「か、楓///」テレッ
櫻子「えぇー……」
撫子「ちなみにネタばらしすると、今のはおままごとだよ」
櫻子「おままごとぉ?」
楓「うんっ。花子お姉ちゃんと遊んでたの」
櫻子「へ~、花子ってば8歳にもなってそんなことしてるんだ~」ニヤニヤ
花子「うるさいし! 楓がやりたいって言ったらやるんだし!」フシャー
撫子「ちなみに脚本は私だよ」
櫻子「18にもなってなにやってんだねーちゃん!」
花子「そんなセリフ台本にあったっけ!?」ドキーン
撫子「いやぁ、あの二人は見てて癒されるね」ポチポチ
櫻子「見てないじゃん。ねーちゃんメールしてるじゃん」
撫子「聞いてて癒されるね」
櫻子「適当か!」
撫子「あんたにだけは言われたくない」
櫻子「なにをぅ!? 今ので腹が減ったぞ!」
撫子「腹を立てるとこでしょ……」
櫻子「早く向日葵んちでご飯たべさせてもらおーっと」トテテッ
楓「あ、向日葵お姉ちゃんは今いないの」
櫻子「えー!?」ピタッ
櫻子「聞いてない!」
花子「だから楓が遊びに来てるんだし」
櫻子「聞いてない!! 向日葵の奴、私を置いてどこ行ってんだ! 楓知ってる!?」
楓「えっ? えっと~……」アセッ
『向日葵「いい、楓? お姉ちゃんは今日、隣町のデパートまで下着を買いに行ってきますから……くれぐれも櫻子には知られないようにしてね?」』ホワンホワーン
楓「し、知らないの」アセアセッ
櫻子「ぐぬぬ……楓も知らないとは……!」
楓「おねえちゃんすぐ帰ってくるよ?」
櫻子「ダーメ! 向日葵の時間は一分一秒までぜーんぶ私のものだもん!」
撫子「(……プロポーズ?)」
花子「(プロポーズだし)」
楓「(プロポーズなの)」
花子「また携帯を携帯してないし……」
撫子「ていうかやめなよ櫻子、ひま子に迷惑でしょ」
櫻子「なに言ってんだねーちゃん、向日葵がいないと私の朝ごはんはどうなるんだよ!!」
撫子「うちで食べろ」
櫻子「ごっそさーん」キュップイ
撫子「こらっ行儀悪い。楓も見てるんだよ、シャンとしな」
櫻子「え~? いいじゃん別にさぁ……ねー楓?」
楓「うんっ。楓、櫻子お姉ちゃんを反面教師にして立派な大人になるの!」
櫻子「おーよく言った楓! たっぷり見習うがいいーっ♪」ワシャワシャ
楓「きゃーっ♪」
撫子「……」
花子「……」
花子「ちょっと櫻子ジャマだし!」
櫻子「だって急に予定がなくなっちゃったんだもーん、やる気もなくなっちゃったんだもーん」ゴロンゴロン
花子「ウザいし!!」
撫子「ていうか勝手に遊ぶつもりで予定も何もないでしょ……、……あのね櫻子」
櫻子「んぁ?」ゴロンッ
撫子「あんた、そんなにひま子にベッタリじゃ将来苦労するよ」
櫻子「将……来……?」ハテー
撫子「あんたどんだけ刹那的に生きてんの」
櫻子「じりつ」ホホウ
撫子「今日みたいに、ひま子がいない時だって当然あるんだしさ。ひとりで色々出来るようになりな」
櫻子「はぁ!? なに言ってんのねーちゃん、私ひとりだってなんでも出来るもん!」
撫子「いや出来ないでしょ。そこは認めなよ」
花子「そうだし、櫻子なんてひま姉がいなきゃ三秒で不し審死しだしし」
楓「(シが多いの)」
櫻子「あっムカッ! ムカムカッ! ほんとだもん、別に向日葵なんていなくたっていーもん!」
撫子「嘘だね」
花子「嘘だし」
櫻子「嘘じゃねー!! そんなに言うなら証明してやる!」
花子「証明?」
楓「なにするの?」
櫻子「……私が向日葵の分まで働く! そしてら向日葵なんて用済みでしょ!」
花子「……なんで花子たちまで付いてこなきゃいけないんだし」ムスー
撫子「ま、私はヒマだったからいいけどね」ポチポチ
楓「楓も楽しいのっ」
ガラッ
櫻子「おまたせですわぁーん♪」
「「!?」」
楓「あ、おねえちゃんのお洋服なの」
櫻子「まあっ! 流石楓ちゃん、ワタクシの可愛い妹ですわぁん♪」ナデリナデリ
楓「知らない人なのー!!」ゾワゾワゾワッ
撫子「……あんた、なにそれ」
櫻子「え? 向日葵のマネ」
花子「ひま姉に謝れし。土下座しろし。今すぐ」
撫子「本当に似せる気があってそれなら逆に凄いよ……」
花子「服もダボダボだし」
櫻子「それは向日葵がデカいのがいけない!」プンスコ
撫子「確かに」ジッ
花子「確かし」ジッ
楓「(お姉ちゃん達がお洋服の胸のところばかり見てるの……)」
撫子「ていうかあんた、髪型もひま子のマネ?」
櫻子「そだけど」
撫子「にしちゃ三つ編みヘタすぎ。こっち来な、直してあげる」
櫻子「んー」トテテ
花子「いきなりダメダメだし……」
楓「櫻子お姉ちゃん、三つ編みかわいいー」パチパチ
櫻子「や、どーもどーも。……あ、ですわ」
花子「もうグッダグダだし!」
撫子「それで、これから何するの?」
櫻子「あ、その前に」ゴソゴソ
楓「?」
櫻子「はいこれ!」ジャーン
花子「なんだしこれ」
櫻子「くじ引き?」
花子「は?」
櫻子「私以外の配役を決めるぞ!」
撫子「……」
撫子「は?」
櫻子 → 向日葵
楓 → 櫻子
花子 → 楓
撫子 → 花子
撫子「は?」
櫻子「よーし、みんな準備できたな!」
撫子「」←ゆるふわウィッグ
花子「」←スモック
楓「♪」←七森中の制服
櫻子「それじゃー用意スタ」
花子「なんでだし!!!!!!!!!!!!!!!!!!」クワッ
櫻子「ビックリしたー!」ビックリシター!
花子「なんでだし! なんで卒園した幼稚園の制服なんて着なきゃいけないんだし!」
櫻子「だって花子は楓役だから」
花子「別に衣装まで着替える必要ないし! おへそ寒いし!」
櫻子「子供は成長するの速いな!」
花子「子供扱いすんなし!」ムキー
花子「ん!?」クワッ
楓「怒っちゃだめなの、笑ってほしいの」バキューン
花子「かわいい死!///」ズキューン
バタッ
櫻子「おー楓、うちの制服似合うな!」
楓「ほんとっ?」パァァ
櫻子「もち! 櫻子様が保証する!」
楓「わぁ……えへへ、楓もお姉ちゃん達と同じお洋服が着られてうれしいー」
花子「(ダボダボすぎて服に着られてる楓かわいすぎるしぃ……///)」プルプル
撫子「ありえない……ありえない……」ブツブツ
櫻子「うわぁ……ねーちゃんが壁に向かってなんかつぶやいてるなう……」
楓「撫子お姉ちゃん、どうしたの?」
撫子「か、楓……見ないでっ、私を見ないで……」ササッ
櫻子「どうしたねーちゃん!」
花子「おなか痛いし?」
撫子「……かみ……」
「「「かみ?」」」
撫子「………………髪の長い自分が、なんか、女っぽすぎて恥ずかしい……」カァー
櫻子「……」
櫻子「」ニヤァァァァァァァァァァ
撫子「ちょっ、櫻子! やめっ……!」
櫻子「オラオラー! もっとセクシーなでしーポーズ取らんかい!」グイグイ
撫子「こら、脱がそうとするな! 花子も楓も止め……なにそのレフ板!?」
花子「許せ撫子お姉ちゃん……これが最後だし……」カカゲー
楓「これが最後なの……」セノビー
撫子「わけがわからな……こら櫻子どこ撮った今!?」
櫻子「ふっふーん、それはプリントしてのお・た・の・し・ヘボン!?」グハッ
撫子「ッ……調子に、乗るな……」ハーハー
楓「撫子お姉ちゃん、とっても綺麗なの!」
花子「そうだし、恥ずかしがることなんてないし」
撫子「……ん。ありがと」
櫻子「」チーン
櫻子「えーそれでは、これから第一回ひままごとを始めようと思います。わ!」
花子「ネーミングセンス最悪なのだし」
楓「きらいじゃないのーん!」
撫子「(あんたら……)」
櫻子「まずはなにしよっかなですわー?」ウーン
撫子「掃除とかは?」
櫻子「ソレデスワー!」
花子「まっ、せいぜい頑張れなのだし」ヒラヒラ
櫻子「おっと、待ちなさい楓」
楓「なぁに?」
櫻子「あ、違う違う。今の楓は私でしょ」
楓「そうだったのーん!」
撫子「ということは……?」チラッ
花子「………………」
花子「……なんなのだし」
櫻子「あっるぇええぇえ~~~? おっかしいですわねぇ、いつもの可愛い楓なら、「なぁに、向日葵お姉ちゃんっ」って言ってくれる筈なんですけどですわ~~~???」
花子「」イラァ...
撫子「……花子、悔しいだろうけど我慢しな。嫌がると調子乗るよ」ボソッ
花子「……!」グヌヌ
櫻子「」ワクワク
花子「………………な、なぁに、おねえ、ちゃん」ヒクヒク
櫻子「」ニッマァァァァァァァァァァン
花子「くぅぅぅ……この茶番が終わったら覚えているのだ!!」ビシィッ
楓「花子おね、ぁ、か、楓っ、キャラちげーのん!」
撫子「(櫻子に絡まれないように離れて立ってよう……)」
櫻子「掃除をしますわー!」
撫子「(ちょっと慣れてきてるな)」
楓「ひ、向日葵ぃー」
櫻子「ん?」
楓「かえ、私はなにしてたらいいのん?」
櫻子「ふーむ……そーですわねぇ。いつも通りの私でお利口にしてなさいな!」
楓「いつも通り……わかった!」
櫻子「さてさて、それじゃまず掃除機を……」ゴソッ
楓「ひーまーわーりー」ヒシッ
櫻子「のわっ!? ちょ、なんで足にしがみつきやがりますかね!?」
楓「ひまー遊べーひまわりー」ムギュー
櫻子「いや今から掃除するんですわって! 離れれー!」ジタバタ
花子「楓すごいし……」
撫子「流石、あの二人をいつも間近で見てるだけあるね」
楓「ごくろー!」ニコニコ
櫻子「お、おう……」グヌヌ
楓「次はなにして遊ぼっか?」
櫻子「だから掃除すーるーの! でーすーわ!」ムキー
撫子「こりゃラチが明かないな……花子、楓としてあの場を丸く収めてきて」
花子「えー……しょうがないし」
トテテ
花子「お、おねえちゃーん」
楓「おや楓」
櫻子「ちょうどいいところに来てくれましたわ! こっちの櫻子様の遊び相手をお願い!」ヒョイッ
楓「わっ。もー、しょーがないなのー……じゃあ楓、私と遊ぶの?」
花子「うんっ、櫻子お姉ちゃんと遊ぶの大好き♪ ……はっ!?///」
櫻子「」ニマニマニマニマニマニマ
花子「く、くぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……///」カァァ
花子「むぐぐぐぐぐぐ……/// へんこー!!」クワッ
櫻子「へ?」
花子「へんこー! 配役の決め直しを要求するし!!」
櫻子「え~? 折角楽しくなってきましたのに」
花子「ぜんっぜん楽しくないし! とにかく別の役がいいし!」
櫻子「ワガママですわねー……楓もねーちゃんもそれでいい?」
楓「楓も他の役やってみたいのっ」
撫子「(……このポジションから動くのはリスクが……とは妹の手前、言いづらい……)」
櫻子「……ん、じゃあもう一回くじ引きターイム!」
撫子「(頼む……また花子でいられますように……!)」
櫻子 → 向日葵
花子 → 櫻子
楓 → 花子
撫子 → 楓
撫子「」
撫子「誰が待つか!」ダダダッ
花子「おとなしく楓のスモックを着るし!」タタター
撫子「着れるか!」ダダダッ
楓「大丈夫なの、撫子お姉ちゃんならきっと似合うの!」テテテー
撫子「似あってたまるか!」ダダダッ
ダダダダダダ...
……
…………
………………
向日葵「ふぅ……」
向日葵「やっぱり一人の方がこういう買い物は気楽ですわね」
向日葵「櫻子がいたら、ひがむわぐずるわで落ち着いていられませんもの……」
向日葵「……」
向日葵「とはいえ、今日は少し静かすぎたかしら」
向日葵「……私も、櫻子のことばかり言えませんわね」クスッ
【古谷家】<ワイワイ
向日葵「あら、うちが随分にぎやかですわね」
向日葵「楓はお隣に預かってもらったはずですけど、こっちで遊んでるのかしら?」
ガラッ
櫻子「こんぶだし! いりこだし! かつおだし!」キリッ
花子「なんでだし! 花子はそんなこと言わないし!!」
櫻子「もしもし? 一度しか言わないからね……好き」チュッ
撫子「ちょッ」
櫻子「実はこれ、たくあんなの~」ペトッ
楓「櫻子お姉ちゃん、食べ物で遊んじゃいけないんだよ?」
向日葵「何事ですの!!?」
…………
………………
~その夜~
櫻子「ごっそさーん!」キュップイ
向日葵「お行儀悪いですわよ。はいお茶」
櫻子「さんきゅー」ズズズ...
向日葵「……今日はお疲れ様でしたわね」
櫻子「ん?」
向日葵「撫子さんから聞きましたけど、最初は私のマネをしてたんですって?」
櫻子「んー」
向日葵「で、それがどうしてあんなロークオリティのモノマネ大会になってたのよ」
櫻子「いやぁ、ねーちゃんに無理矢理スモック着せた辺りからもうどーでもよくなっちゃって」
向日葵「そんなことしてましたの!?」ギョッ
向日葵「………………いえ、結構ですわ」
櫻子「ぶー。なんだよつまんないの」ヘチョン
向日葵「……それで、どうでした?」
櫻子「あん?」
向日葵「私のマネ。少しでもやってみて、どう思いました?」
櫻子「あー……もー最悪。やるんじゃなかった」
向日葵「そう」クスッ
櫻子「やっぱさ、向き不向きってあるよね。私ほどの人間が向日葵の代わりなんて窮屈すぎ!」
向日葵「はいはい」
櫻子「だからさ」
向日葵「はい?」
櫻子「……だから、勝手にいなくなったりすんなよな。困る」
向日葵「……ええ。あなたもね」
櫻子「あ、ねーちゃん」
撫子「楓がまたおままごとで遊びたいって言うからさ、付き合ってくれない?」
向日葵「ええ、構いませんけど」
撫子「良かった。じゃあ先に行ってるから」スタスタ
櫻子「よーし! オスカーがんばったで賞を獲った櫻子様の名演技を向日葵にも見せてやろう!」ダッ
向日葵「あ、こら! 家の中を走るんじゃありません、櫻子ー!」タッ
~リビング~
櫻子「へいお待ち!」
撫子「来たね。じゃあ座って」
向日葵「へ? あの、私達も混ざるのでは……?」
撫子「それは後で。まずは観てて」
櫻子「えーつまんなーい」
撫子「そんなこと言わないでさ。……絶対に面白いから」ニヤリ
向日葵「(……なんか嫌な予感がしますわ……)」
「「!?」」
花子「ひ、ひまちゃん!///」
「「!!?」」
楓「あのね、今日はさーちゃんにお菓子作ってきたのっ」ニコッ
花子「ほ、ほんとー? ひまちゃん大好きだしー///」ギュー
楓「えへへ~、さーちゃん大好きなの♪」ギュー
櫻子「ちょっ、ちょおおおおおおおおおおおおおい!!!」ガタッッッ
向日葵「なんっ……これ、これはなになになんですの!?」ガタッッッ
撫子「なにって、大室・古谷家の共有財産、ひまさくホームシアターの一部を原作としたおままごとだよ」
「「!!!??」」
花子「うんっ、すっごくおいしいし!」
楓「よかったぁ……」
花子「……あ、あのねひまちゃん」
楓「なぁに?」
花子「あの……その……」
楓「花子お姉ちゃん、頑張ってっ」ボソッ
花子「ぅぅぅ……ひ、ひまちゃん! い、いつもおいしいお菓子ありがとうだし!」
楓「どういたしましてなの♪」
花子「あ、あのね、だからね……お礼に……ちゅ、ちゅーしてあげるしっ!///」
楓「ほんとっ? うれしー、さーちゃんありがとーっ♪」ダキッ
花子「わわっ/// ……か、楓、じゃあ、目、閉じて……///」
楓「はいなの」パチッ
花子「……///」
スッ...
向日葵「楓ー! ストップ、ストップーーー!!///」
櫻子「ねねねねーちゃん! ねーちゃんも止めてよ!」
撫子「なんで?」シレッ
向日葵「なんでって、恥ずかしいじゃありませんの!」
撫子「恥ずかしい? 高3にもなって無理矢理スモック着せられるのとどっちが?」
櫻子「めちゃくちゃ根に持ってた!? ねーちゃんごめん!」
撫子「謝ってももう遅いよ……色々とね」
チュー
「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」」
向日葵「ああ゛ぁ……楓の唇が……まだ嫁入り前ですのに……」ガクゥッ
櫻子「も、ももも……もう……もう……!」プルプル
櫻子「おままごと禁止ーーーーーーーーーーッ!!!」
やめよう見切り発車!
おやすみなさい
素晴らしい
Entry ⇒ 2012.09.28 | Category ⇒ ゆるゆりSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
憧「シズはあたしの嫁!」玄「違うもん!」
憧「あたしの方がシズにふさわしいし!」
玄「私の方が穏乃ちゃんのこと好きだもん!」
憧「ぐぬぬぬぬ」
玄「むむむむむ」
玄「誰も来なくなった部室にシズちゃんが駆け付けてきてくれた時からだよ!」
玄「私とっても嬉しかったんだぁー」
憧「勝った! あたしなんて小学生の頃からよ!」
玄「ええー。小学生の時から女の子が好きだなんて引いちゃいますねー」
憧「うっさい! とにかくあたしの方がシズへの愛は上のようね」
玄「愛は長さじゃなくて密度だもん!」
憧「あたしは長さも密度も兼ね備えてるわよ」
玄「この前おねーちゃんに抱きついてた癖に……」ボソッ
憧「なっ!?」
玄「ふつふっふ。声に力がないのは後ろぐらいところのある証拠なのです!」
憧「うっ……」
玄「浮気者な憧ちゃんよりシズちゃんには私の方がふさわしいよね」
憧「……で、でもっ! あたしの一番はやっぱりシズのままだから!」
玄「私の方がシズちゃん一筋だよ!」
玄「私がいつそんなことを言ったの?」
憧「直接聞いた覚えは……、ないけど」
玄「憧ちゃんは勘違いしてるよ」
憧「勘違い……?」
玄「私が好きなのは大きいおもちじゃない。手触りの良いおもちなの」
玄「だからシズちゃんみたいに手触りさえよければちっちゃいおもちでも大好きなんだよ」
憧「たっ、たしかに、手触りのよさという点ではシズの胸は抜きん出てる……」
憧「っていうか、なんで玄がシズの胸の感触知ってるのよ!」
玄「それは憧ちゃんこそだよ!」
憧(ラーメンを餌にだけど)
玄「私だって同じだもん!」
玄(あんぱんを餌にだけど)
憧「あたしに胸を触られてる時のシズは幸せそうだったなぁー」
憧(ラーメンを食べられる喜びに、だけど)
玄「私が触ってるときの方がシズちゃん幸せそうだったもん」
玄(あんぱんを食べられる嬉しさに、だったけど)
玄「憧ちゃんこそ調べた知識だけの耳年増なんでしょ!?」
憧「そそそそ、そんなことないわよ!」
玄「本当かなぁー」
憧「……なっ、なんだったら証拠を見せてあげようか?」
玄「証拠……?」
玄「まま、負けないもん!」
憧(大丈夫! いけるはず! シズニーしてつかんだ感覚そのままにいけばきっと!)
玄(おねーちゃんのおもちで鍛えてるもん! 憧ちゃんには負けないよ!)
憧「……」モミモミ
玄「……」モミモミ
憧「……」モミモミ
玄「……」モミモミ
憧「……」チラッ
玄「……」チラッ
憧(って、なな、なんで玄のやつ顔が赤くなってんのよ!?)ドキドキ
玄(憧ちゃんなんでそんなに色っぽい顔してるの!?)ドキドキ
玄「……」モミモミ
憧「玄。顔赤い」モミモミ
玄「えっ!? ……憧ちゃんだってエッチな顔してるもん!」
憧「そっ、そんなわけないでしょ! あたしがシズ以外の相手に!」
玄「私だってシズちゃん以外の子に顔赤くしたりしないもん!」
憧「……」
玄「……」
憧「引き分けにしよっか……」
玄「そうだね……」
玄「置いとくとして?」
憧「シズへの知識の深さ! これなら負けないわよ!」
玄「私だってシズちゃんのことよく知ってるよ! 血液型とか、誕生日とか……」
憧「じゃあ問題。シズの昨日のあくび回数は?」
玄「えっ?」
憧「シズの昨日の寝返り回数は?」
玄「えと、えっと」
憧「シズの生理は今から何日後にくる?」
玄「……わ、わかりません」
憧「ふふふ。勝った!」
玄「普通こんなのわからないよー!」
玄「ううーっ。なんかモヤモヤする……」
憧「ま、シズのことはあたしに任せて玄は大人しくおもちでも眺めてなさいってこと」
玄「……、だ、大事なのは本人の気持ちだよ」
憧「へっ?」
玄「そうだよ! 大事なのはシズちゃん本人の気持ちだもん!」
憧「それは……」
玄「私今からシズちゃんに確かめてくる!」
憧「ちょっ!?」
憧「いやちょっと! 待ちなさいってば玄!」ギュッ
玄「ひゃっ!?」
玄(う、後ろから抱きつかれた……)
玄「どっ、どうして止めるの?」
憧「それは……」
玄「それは?」
憧「……振られたらどうしようって考えると怖くて」
玄(涙声の憧ちゃんかわいい……)
玄(ハッ! じゃなくて!)
玄「でも穏乃ちゃん本人に聞かないとどちらがふさわしいかわからないよ?」
憧「それはそうだけど……」
玄(声が震えてる! かわいい!)
玄(ハッ! ……違う違う!)
憧「ごめん……」
玄「告白は先送りにしてあげる」
憧「ありがと」
玄「ううん」
憧「ところで玄。あんたはシズのどんなところが好きなの?」
玄「んー。可愛くていい子でおもちに張りがあるところかな」
憧「わかるわかる! あそこまで可愛くていい子なのはシズだけだよ!」
憧「あの穢れのない感じがさー」
玄「うんうん!」
憧「そういえばシズってまだオナニーすらしたことないんだよ。かわいいよねー」
玄「ん……? なんでそんなこと知ってるの?」
憧「あ。いや、なんでも……」
憧「ほっ、本人から聞いたのよ!」
玄「ふぅーむ。なるほどなるほどなるほどー」
憧(あぶなかった……)
玄「むかむかむか」
憧「……なんかイライラしてる?」
玄「そんなことないのです。むかむかむか」
憧(どう見ても露骨にイラついてるようにしか。何か気にさわること言っちゃったかな?)
玄「そうだっ! 告白の練習だよ憧ちゃん!」
憧「え? いきなり何言ってんの?」
玄「告白の練習しようよ!」
憧「どうしてまたそんなこと急に」
玄「どっち付かずな状態は落ち着かないから、練習して告白できる勇気を持とうよ!」
玄「そうすれば二人でシズちゃんの前に立ってシロ玄つけられるでしょ? 玄だけに」
憧(……たしかに。いつまでも気持ちを伝えるのを避けたままってわけにもいかない、か)
玄「新子と玄であたらシロ玄~。面白ジョーク」
憧「や。あたしまだやるだなんて一言も」
玄「今から私は穏乃ちゃんになります!」
憧「聞いちゃいないし……」
玄「なので憧ちゃん……、じゃなかった、憧は私に告白して!」
憧「玄をシズだと思い込んで仮想告白すりゃいいのね?」
玄「ざっつれふと!」
憧「分かった。まあ玄が相手なら多少は気楽に言えそうかな」
憧「うーわー。えらく具体的に設定するー」
玄「リアリティーは大切だよ」
憧「それもそっか。んじゃ、いくよ」
玄「オホン! ……憧、話って何? ラーメン食べたい!」
憧「あのさ、シズ。ラーメンもいいんだけどその前に伝えたいことがあるの」
玄「……?」
憧「あたしあんたのことが好き」
玄「!!」ドキッ
憧「よかったら付き合って……」
憧「って、玄? なんで顔赤くしてんのよ。相手はシズじゃなくてあたしよ?」
玄「べべべ別に普通だよ普通だよ!」ドキドキ
憧「??」
玄「なるなるなるよー!」
憧「いまいち実になる感じがしないんだけど」
玄「……と、ところで憧ちゃん」
憧「うん?」
玄「もう一回好きって言って?」
憧「えー、なんでよ」
玄「えと……、さ、さっきのはいんとねーしょ? がよくなかったから!」
憧「え? そんな変だった?」
憧「そういうことならもう一回……」
玄「……」ドキドキ
憧「好きよ」
玄「あわわわわ!!」ドキッ
憧「ね、玄。今度の好きは大丈夫だった?」
玄「へっ!? ……あっ」
玄(そうだった……。今の好きは、シズちゃんに向けたもの)
玄「……」ムカムカ
憧「玄ー?」
玄「0点です!」
憧「ええーっ!?」
玄(あれ……。どうして私こんなにイライラしてるのかな)
玄(憧ちゃんの告白が成功したらシズちゃんをとられちゃうから?)
玄「私が!?」
憧「うん。目指すビジョンが見えないまま練習しても非効率極まりないでしょ?」
憧「だからここはビシッと玄先生のお手本を!」
玄「うっ、うん」
憧「状況は……、そうね、部活帰りに二人で並んで歩いてるところにでもしましようか」
玄「わ、わかった!」
玄「そっ、そうですね!」
憧「早く家帰って休みたいよー」
玄「わた、私もそう思います!」
憧「そんじゃ私こっちだから」
玄「お、お気をつけて!」
憧「……」
玄(ふうっ。やりきった)
憧「いや引き留めて好きって言いなさいよそこは!」
玄「そうだった!」
玄(うううう、緊張して頭の中真っ白だったよ……)
玄(玄なのに真っ白……、面白い)
玄「えへへへ」
憧「あたしなんか相手に緊張するようで、よく本命のシズに告白しようとしてたよね」
玄「……」
玄(そういえばシズちゃんに告白しにいこうとした時は今ほど緊張しなかった)
玄(あれれ? おかしいな?)
玄「う、うん……」
玄(本当はちょっとだけ違うんだけどね)
玄(あの日。シズちゃんが部室にきた少しあと、憧ちゃんが駆け付けてきて)
「二人で和の前に立てるでしょ!」
玄(そう。憧ちゃんが無意識で私を数から外していたから……)
玄(心がざわざわして……)
玄(こんな気持ちになるのはシズちゃんを憧ちゃんにとられたくないからなのかな? それなら私シズちゃんが好きなのかな?)
玄(そんなふうに思い始めて……)
玄(……あれれ?)
玄(本当にそうなのかな)
玄(私が好きなのは本当にシズちゃんだったのかな……?)
玄「羨ましい?」
憧「うん。好きになった瞬間があるなんて、ドラマ的じゃない」
憧「あたしはなー。いつの間にかシズにまいっちゃってたから」
玄「ふむふむ」
憧「気が付けば好きになってたせいで、特にそういうエピソードとかないんだよね」
玄「そうなんだ」
玄(気がついたら好きになってた。そういうのもありなんだ……)
玄「何のコレクション?」
憧「ふっふふー。シズの秘蔵写真集!」
玄「……」ムカッ
玄「見せてくれなくてもいいよ」
憧「そう遠慮せずに!」
玄「……遠慮じゃないよ」
憧「そう? ま、それなら無理強いはしないけど」
玄(うー……。嫌な気持ち……)
玄(胸がぐつぐつして、自分が凄くわるい子になっちゃった気分……)
玄(よくわかんない……)
玄「は、はい!」
憧「大丈夫? 顔色悪いよ?」
玄「大丈夫……。たぶん」
憧「自己申告がたぶん大丈夫って、また微妙に不安になる返しなんだけど」
玄「ううー」
憧「本当大丈夫? さっき顔がほてってたことだし熱でもあるんじゃない?」
玄「そんなんじゃないよぅ……」
憧「……」
憧「えいっ」ギュッ
玄「わっ!?」
憧「あんまり無理するなよー」
玄「うっ、うん……」ドキドキ
玄(憧ちゃん果物みたいな匂い……。かわいい……、シャンプーかな?)
憧「んー?」
玄「もしシズちゃんが憧ちゃん以外の人のことを好きって言ってたらどんな気持ちになる?」
憧「なっ!? シズがそんなことを!?」
玄「た、例えばなしだよー……」
憧「よかった……」
憧「あたしなら、そうだな。相手に嫉妬するかな」
玄「嫉妬?」
憧「うん。シズに好きって思われた子に対して、嫌な感情を持っちゃう」
玄「むむむ」
玄(シズちゃんは嫉妬してもらえる……)
憧「へ?」
玄「私が憧ちゃん以外の人のこと好きだったらどんな気持ちになる?」
憧「仮定じゃなくて事実として玄はシズのこと好きなんでしょ」
玄「それは……」
憧「ま、あたしもシズを好きなわけだから素直に応援はできないよね」
玄「……」
憧「ただ。そういう事情さえなければ、玄の気持ちは叶ってほしいよ。友達だもん」
玄「嫉妬はしてくれないの?」
憧「いやいや。友達にまで嫉妬しだしたらキリないでしょうよ」
玄「むむむ……」
玄(なんか悔しい! 悔しい!)
玄(シズちゃんばっかり憧ちゃんに好きって思われてずるい!)
憧「くーろ。本当に大丈夫? 今、らしくない表情してる」
玄「えっ!? ど、どんな顔してた?」
憧「しかめっ面」
玄(憧ちゃんの前でしかめっ面……)
玄「あぅぅ……」カアアアッ
憧「まあそんなに気にしない、気にしない!」
憧「長い付き合いだし恥ずかしがることないでしょ」
玄(憧ちゃんに変な顔見られたら気にするよー……)
玄(うう。私、私……)
玄(シズちゃんじゃなくて憧ちゃんのことが好きだったのかも……)
玄「おでかけ……、デート!?」
憧「あはは、呼び方はなんでもいーよ。情緒不安定そうな玄を気分転換させたげようかなと」
玄「なるほどー」
憧「どこいく? 自然の多い場所か、電車に乗って町か」
玄「いくところ私が決めていいの?」
憧「そりゃ玄の調子を取り戻させるためのデートですから」
玄「だったら私いきたいところがあります!」
憧「いらっしゃいましー」
憧「にしても玄があたしの部屋に行きたがるだなんてね。予想外だったわ」
玄「え、えへへ」
憧「ひょっとして!」
玄「!?」ビクッ
玄(もももしかして憧ちゃんのお部屋を見たいって下心がバレた!?)
憧「やっぱりあたしのシズ写真コレクションが見たくなったとか!」
玄「……」
玄「違いますよーだ!」
玄「憧ちゃんの匂いがするねー」
憧「なんか今の発言変態っぽい」
玄「ええっ!?」
憧「さってと。飲み物持ってくるね。ベッドにでも座ってて」
玄「あ、うん!」
玄(引かれた? だ、大丈夫だよね?)
玄「……」
玄「憧ちゃんのベッド……、いつも憧ちゃんが寝てる場所……」ドキドキ
玄「あれ?」
玄「こ、これは! ベッドカバーに謎のシミがついてる!」
玄「ベッドのシミ……」
玄「もしかしてこれ……」
玄「憧ちゃんがそういうことした時のシミだったり……」カアアアッ
玄「くんくん……」
玄「甘い香り……」
憧「……何やってんの?」
玄「ひゃあっ!?」
憧「ほい。ジュース持ってきたよー。こぼさないでね」
玄「あ、ありがとう」
憧「この前シズがウチにきた時、あいつベッドの上でジュースこぼしてさー」
玄「それはなかなかのなかなかだね……」
憧「せめてこれ以上シミが増えるのはご勘弁願いたいんだよね」
玄(ジュースをこぼしたシミ……)
玄(な、なーんだー。あははは……)
玄「それ髪ごむ?」
憧「そだよ。玄って髪長いから、実は前から一度いじってみたかったのよー」
玄「憧ちゃんが私をいじりたかった!?」ドキッ
憧「誤解を招くような要約をしない!」
玄「てへへ」
憧「あとで玄の髪結んでみてもいい?」
玄「うん。いいよー」
憧「どうせだしあたしとお揃いの髪型にもしてあげよう!」
玄「おおー! 楽しそう!」
玄「これなぁに? Album……、ある……、あるぶむ?」
憧「アルバムだよー。一緒に見よ」
玄「アルバムということはシズちゃんコレクションでしょうか?」
憧「あー、これは違う違う。普通のアルバム」
憧(シズコレクションはもっと厳重に管理してるし……)
玄「ふむふむ。普通のアルバムなら私も写ってるのかな?」
憧「そりゃもちろん。子供麻雀クラブ時代の写真がいろいろと」
玄「いいね!」
玄「ええー。たまたま肩に手が置かれてるだけだよー」
憧「むむむ」
玄「あ。こっちの写真! 私と憧ちゃんツーショット!」
憧「あー、それね。シズがカメラ使ってみたいとか言った時のだから」
玄「よく覚えてるんだね」
憧「まあねー。シズのことならバッチリ」
玄「私のことは?」
憧「普通?」
玄「あうう……」
玄「憧ちゃんが紙のアルバム持ってるなんて思わなかったなあ」
憧「あー。PCとデジカメでDVDでも焼いてそうなイメージ?」
玄「うん。どちらかというと」
憧「そういうの利便性の面ではいいんだけどね」
憧「それでも手で触れられる安心感っていうのは捨てがたいメリットだから」
玄「触れられる安心感……」
憧「最近はあんまり。ただ中学上がりたての頃は寂しくて毎日見てたかな」
玄「もー。それなら憧ちゃんも阿知賀にくればよかったのに」
憧「んー……。当時の仲良し組と離れることでわかった気持ちもあるからなあ……」
憧「進学先の選択はベターだったと思ってるよ」
玄「むむ。そういうものなんだ」
憧「中学生活を経て玄に対する目もちょいと変わったしねー」
玄「ええ!? どんなふうに!?」
玄「ぽやーん……、微妙……」
憧「中学でまあ、小学生の時とは違って、陰口やらなんやらする奴らが増えてさ」
憧「ああ。本人がいない時でも相手のことを誉めてあげられる玄は優しい子だったんだな……、って改めて思ったんだ」
玄「やさし……、ふっ、普通だよ私なんて」
憧「んーん。玄は優しくていい子だよ」
玄「……えへへ。そうかな」
憧「ま。優しくていい人って人物評、巷では振られフラグとか言われてるらしいけどさ……」
玄「振られ!? ガーン!」
憧「ふふっ。でも玄はそのままでいてよね。優しい玄があたしは一番好きだよ」
玄「い、いちば、好き……」カアアアッ
玄「……」
憧「まずはシズみたいなポニテにしよっかな」
玄「……」
憧「あの……。じっとしててとは言ったけど口は動かしていいから」
玄「え!?」
憧「まったく玄は抜けてるんだからー」
玄「てへへ……」
↑ ↓
麺←穏
麺→宥でも可
と思ったけどあれか 器によく描かれてるドラゴンか
なるほど
そしたら透華も竜華も玄ちゃんに惚れるってことになるで
なにいってんだ当たり前だろ
憧「よいしょ、と」
玄「ね、憧ちゃんは穏乃ちゃんが好きなんだよね」
憧「そうよ」
玄「だよね」
憧「ま、実は正直、付き合うのは無理なんじゃないかって気はしてるんだけどねー」
玄「そんなことないよ!」
憧「うん、そうだったら嬉しい。でもたぶんあたしの一方通行だよ」
玄「憧ちゃん……」ズキ
玄(なんだかつらそう……)
憧「え?」
玄「かわいくて頭もいいし、私よりいろいろ知ってるし、憧ちゃんのこと凄いと思う!」
憧「あ、ありがと……。本当かどうかはともかく、なんか照れるな」
玄「全部本当だよ。だから憧ちゃんならきっと……」
憧「ううん。シズが求めてるのは可愛いとか勉強がどうとかそういうんじゃないと思うの」
玄「といいますと?」
憧「アイツさ。なんでも高いところが好きなのよ。山とか」
玄「高い山……。シズちゃんが好きなのは高山さん?」
憧「誰なのそれ!」
玄「ジョークだよジョーク。えへへ」
玄「はい!」
憧「あいつは高みに登ることが好き……」
憧「だから今のシズが夢中なのは、ある大きな目標……、つまりは和なんじゃないかなって感じるんだ」
玄「和ちゃん?」
憧「そ。きっと今のシズ一番の関心の的は和。あたしは二の次。なんとなくわかるんだ」
憧「あたしも中学で頑張ったんだけどね。シズに目指されるような場所へはたどり着けなかったな」
玄「ひょっとして憧ちゃんはそれで麻雀の強い中学に……? いつかシズちゃんに、自分を追いかけてほしくて……」
憧「さあねー、理由はいろいろよ。……よし! 完成!」
玄「え? わああー!? 髪の毛がちょんまげみたいに盛り上がってる!? 桜子ちゃんみたい!」
憧「あはは、びっくりした?」
玄「憧ちゃんてばー! 私の長さにこの髪型は合わないよー」
憧「ぷっ。ごめんごめん」
憧「大丈夫かー?」
玄「お任せあれ!」
憧「じゃ、よろしくね」
玄「はーい」
憧「……」
玄(憧ちゃんの髪やわらかい)
玄(それに触ってみるととっても頭がちっちゃくて可愛い)
玄(また一つ憧ちゃんのことを知れたような気分。少し楽しい)
憧「あんま変なことしないでよ?」
玄「うむー。それはお約束できかねます」
憧「うわ。めっちゃくちゃ不安になってきた」
玄「髪をほどいて、と」
玄「それからそれから……」
憧「……」
玄「……」
憧「……ん? どしたの玄?」
憧「え? まさか髪結ぶの失敗した?」
玄「そ、そうじゃなくって……」
玄「憧ちゃんはこんなにもシズちゃんのことが好きで、でも憧ちゃんの目からはシズちゃんが和ちゃんを好きなように見えて、それに私も……」
憧「んー。人生って往々にして上手くいかないもんだよね」
憧「ま、ほら。それでもあたし諦めきってるじゃないから」
憧「今はまだ無理でもいつかはシズを振り向かせるつもり」
憧「玄だってそうでしょ?」
玄「私? 私は……」
玄「……」
憧「あたしが、何?」
玄「ななな、なんでもないです!」
憧「……?」
玄(そ、そうだよ! こんなこと言うべきじゃない!)
玄(憧ちゃんが好きなのはシズちゃんで、私が好きって言っても憧ちゃんは振り向いてくれっこない)
玄(あはは。なんだか憧ちゃんと私とで少し状況が似てるな)
玄(片思いだって分かってるから言い出せない……)
玄(もしもいつか憧ちゃんの気持ちがシズちゃんから離れるようなことがあったら、その時は……)
玄(って、私何を考えてるの!?)
玄(また私はただ待つつもりなの……?)
玄(麻雀部の時みたいに、何日も黙って待ち続けるの?)
玄(今度は待っているものが来てくれるかどうかもわからないのに……)
玄(……)
玄(……もう待つのは嫌、かも)
憧「あれ? どこも結んでないただのストレートじゃない?」
玄「のーのー。ここに注目だよ」
憧「……あ。玄がいつもつけてる髪飾り」
玄「ふふん。どう? 松実玄ヘアーだよ」
憧「似合ってる……、のかしら?」
玄「リアクションが思わしくない……」
憧「でもありがと。このビーズいつもつけてるってことはお気に入りなんでしょ?」
玄「うん! 宝物だよ」
玄「あ、あのね、憧ちゃん」
憧「うん」
玄「えっとね」
憧「どしたの?」
玄「あっ、憧ちゃんは、その……」
憧「別に何を言っても怒らないって」
玄「……」
玄「憧ちゃんは、穏乃ちゃんじゃないと嫌?」
憧「シズはあたしの嫁!」
玄「違うもん!」
憧「ふふっ、宣戦布告ってわけ? いいよ、玄より先にシズのこと振り向かせてーー」
玄「そうじゃなくって」
憧「へ?」
玄「今はまだ憧ちゃんとシズちゃんはそういう関係じゃないでしょ?」
憧「そうね」
玄「つまり憧ちゃんの隣は空席で……」
玄「憧ちゃんはシズちゃんしか選べないわけじゃなくて、だから……」
玄「わっ、私じゃ、駄目……?」
玄「つまり私が好きなのは憧ちゃんなの!」
憧「ええええっ!?」
玄「ううう、どうしようおねーちゃん、とうとう言っちゃった……」
玄「わーん! こうなったら止まらないもん! 憧ちゃん大好きー!」ギュッ
憧「ちょ、ま、ま、待って!」
玄「やだ。返事くれるまで離れないもん」
憧「でも玄もシズのこと好きなはずじゃ……?」
玄「そう思ってた、けど……。本当に好きなのは憧ちゃんだってことに気付いたの」
憧「玄が、私のことを……」
憧「……」モジモジ
玄「って、顔すごく赤いよ!?」
憧「しょっ、しょうがないでしょ! こういうのはじめてで……」
玄「かわいいー!」スリスリ
憧「ちょ、こら! 頬擦り止めなさいって!」
玄「憧ちゃん好きー!」スリスリ
憧「だーからぁ……」
玄「ふふ。なんだかんだいって憧ちゃん、私のことむりやり突き放したりはしないんだね」
憧「だって……、玄、真剣なんでしょ?」
憧「そんな相手を突き飛ばせるはずなんてないよ……」
玄「そういう優しいとこも好きだよ」ギュゥ
憧「……普通よこんなの」
憧「やっと解放された……」
玄「憧ちゃんが告白されたことなかったなんて意外だったなあ」
憧「中学じゃあたしずっと周りにシズシズ言ってたから……」
玄「それはなかなかのなかなかだね……」
玄「ねえ憧ちゃん。憧ちゃんはまだシズちゃんに気持ちを伝えたわけじゃないよね」
玄「だから駄目って決めつけるには早いよ」
憧「……」
玄「もし勇気が出たら頑張ってね……、応援してるから」
玄「えっと、それでは」
憧「何ひとりでまとめて勝手に帰ろうとしてんのよ」ギュッ
玄「ぐえっ!? ふ、服のえり掴まないでぐるじい……」
玄「返事は聞かなくても分かってるもん……」
憧「抱きつき紛れに、返事聞くまでは離さないー、とか言ってたくせに」
玄「うう……。だって、振られるのはやっぱり怖いよ……」
憧「いいからあたしの方を振り返るの」
玄「……」クルッ
憧「みっ、見てよ玄……」
憧「これが相手を振ろうって女の顔?」カアアアッ
玄「……憧、ちゃん。ほっぺ真っ赤」
憧「だっ、誰のせいだと思って!」
玄「えへへ。可愛い」ナデナデ
憧「うぅぅー、玄絶対あたしのこと舐めてるでしょ! なんか悔しい!」
憧「何?」
玄「こっ、告白をオーケーされると思ってなかったから、現実味がなくて……」
憧「……たしかに、なんで玄なんだろう」
玄「わああー!? これは上げて落とされる展開!?」
憧「落ち着きなさいっての」
玄「落ち着けないよ……」
憧「もー。心配性過ぎ」
玄「だってぇ……」
憧「……」
憧「えいっ……」ギュウッ
玄「あわわ!? 憧ちゃん!?」
憧「すこしはあたしを信用しろっての……。撤回なんかしないよ」
玄「……うん。ごめんね」
玄「ごくり」
憧「玄はさ、駄目だと思いながらもあたしに告白してくれたわけじゃん」
玄「うん……」
憧「そうやって自分に必死になってくれたことが私は嬉しかった……、んだと思う」
玄「あっ、曖昧な理由だね」
憧「もちろん相手が誰でもよかったってわけじゃないよ」
憧「もともといい子だと思ってた玄だからこそって面は強い」
憧「でもたしかに、玄の言う通りあたしの好きはあやふや」
憧「だからさ……、まだ曖昧な好きを絶対の好きに変えてよ」
憧「あたし、玄のこともっと好きになりたい」
憧「だからさっき以上のことをしてくれないかな……?」
玄「!!」ドキッ
玄「お、おお、お任せあれ!」ドキドキ
憧「ふふ。ありがと」
玄「えっ、えーっと、それでは!」
憧「うん……」ドキドキ
そして唇を交わす音が響くと、玄の手がスカートの裾へと伸びていった
おわり
穏乃「宥さん! この激辛ラーメン美味しいてすね!」
宥「からだの中からあったか~くなるね」
穏乃「よーし! この調子で次のお店梯子しましょう!」
宥「うん」
穏乃「あったかラーメン同盟しゅぱーつ!」
宥「そっ、その名前は恥ずかしいかも……」
おまけおわり
玄憧とか俺得
良かったよ
阿智賀のメンバーは5人いたはずなんだよなあ
>>267
レジェゴとよろしくやってんだろ多分
おつつつ
Entry ⇒ 2012.09.28 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
リンク「マスターソードから誰か出てきた……」
リンク「誰なんだ一体」
ファイ「申し遅れました、マスターソードの精、ファイと申します」
リンク「『退魔の剣』って呼ばれたこの剣に精なんて居たのか」
ファイ「この剣の所有者、つまりマスターが存在する限り、ファイは存在します」
リンク「そうなのか……つまり、俺よりも前にも所有者が居たと」
ファイ「イエス、初代マスターから数えて貴方は、2代目です」
リンク「2代目……ちなみにその初代マスターと最後に話したのはいつなんだ」
ファイ「ファイは長い眠りについていました。様々なことがあり、大地は育ち、国が出来、やがて『退魔の剣』と呼ばれるようになったのはつい最近のことです」
リンク「どれくらい眠ったか覚えてないのか」
ファイ「その確率が95%、いずれ思い出すかもしれません」
リンク「途方も無い話しだな、まず……俺はなんで成長したんだ?」
ファイ「それは、賢者が説明してくれます、それではマスター暫くファイは、マスターソードにて眠ります、何かありましたら十字キーの下を押してください」
リンク「あ、ちょ、おい!賢者って……」
ラウル「目覚めたかリンクよ」
リンク「えっと、十字キー下だっけ、パートナー二人になったな」
ナビィ「心強いよね、マスターソードの精なんて」
ファイ「お呼びでしょうかマスター」
リンク「話しの続きをしたいんだけど」
ファイ「イエス、マスター。賢者にてマスターは使命を聞いたとファイは把握しております」
リンク「この世界の何を知っているんだ、君は」
ファイ「ハイラル国家が創られる前の時代からです」
ナビィ「凄い、それって……リンク歴史得意?」
リンク「さっぱり、昔コキリの森でデクの木様がハイラルの歴史とか話してくれたけど、あんまり覚えてないなぁ」
ナビィ「リンクって居眠りしてそうだもんね」
ファイ「マスター、今後の為にも歴史について把握しておきますか?」
リンク「7年後にもなって知識が子供ってのもなぁ、お願いするよ」
ファイ「イエス、マスター」
リンク「それはデクの木様から最近聞いたから覚えてるし、さっきも少し聞いたな」
ファイ「その女神こそが、黄金の大三角、トライフォースを作り出しました、しかし女神自身はその力を使うことは出来ません」
リンク「自分で作ったのに自分で使えないのか」
ファイ「イエス、マスター。女神は、最初『空』にトライフォースを隠しました。正しき人が使うように、女神は試練を与えて」
ファイ「その試練を乗り越えた人物こそ、初代マスターです」
リンク「本当に途方も無い話しだな、空になんて、今飛んで行けるのはゴシップストーンくらいだろ」
ファイ「そして、マスターソードとして確立したのもその時です。マスターソードは女神の剣でした、しかし初代マスターがマスターソードへと進化させたのです」
リンク「そりゃ、その時のマスターには感謝しないとな。そのおかげで、賢者復活、魔王討伐の可能性が出来上がったんだから」
ファイ「イエス、マスター。ファイはマスターが台座から剣を抜いた時に覚醒をしました、しかし覚醒をしてみて、見てみたらとても幼い少年」
ファイ「その時、ファイは一時的にマスターを封印することが出来ました」
ファイ「7年もの封印です。これは初代女神様に使ったものと同じもの……」
ナビィ「私も?」
ファイ「イエス、貴方もです」
リンク「一瞬の出来事にようにしか思えない」
ガノンとかゼルダが全作品に出てくるのは何故なんだぜ?
ガノンは同一人物
ゼルダはSSから初代まで転生し続けてるとかなんとか
リンク「ふーん……」
ファイ「まだ続きを聞きますか?」
リンク「ああ、もうちょっとだけ」
ファイ「イエス、マスター。ハイラルという地には女神の恩恵を受けている地なのです。まずマスターソード、そして賢者が居ることにより安定をしている」
ファイ「ファイが得た情報によりますと、現在ハイラル国家を手にした『ガノンドロフ』はゲルド族の住人、外部の人間こそがこの地を不安定にさせている確立が90%」
ファイ「しかし、その不安定を安定させるのが、マスターなのです」
リンク「ラウルの言ったような感じかぁ……とにかく、今は賢者を復活させないと行けないんだよな」
ファイ「イエス、マスター。先ほどの『シーク』という男が言っていたようにカカリコ村に次に進む為の道具がある確立75%」
リンク「それじゃあカカリコ村に向かうか」
ナビィ「り、リンク、ナビィも忘れないでね!」
リンク「もちろんだ、しっかりターゲットよろしくな」
ナビィ「うん!」
ファイ「マスター、マスターソードがガノンドロフの魔法を跳ね返す確立が95%」
リンク「そうか、じゃあファントムガノンと同じようにやればいいんだな」
ファイ「イエス、マスター。ご検討を」
リンク「ああ!」
そして、トドメの一撃。
ガノン城は崩れだし、ゼルダとリンクは外へと向かう。
行く手を阻む物も蹴散らしながら、外へと到着。
力のトライフォースの暴走により―――
リンク「やっぱりまだ終わりじゃないか」
ファイ「しかし、これが本当の最終決戦である可能性が85%。気を引き締めていけばマスターは必ず勝てます」
リンク「おう!」
パリーン
リンク「おわっ!?ファイ!!」
ナビィ「リンク!よそ見しちゃダメだよ!他の剣使わないと!?」
リンク「お、折れたナイフとコキリの剣しかない……」
ナビィ「だからダイゴロン刀にしよって言ったのに!」
ガノン「ぶぉぉぉおおおおお」
リンク「って今はそんな言い合いしてる場合じゃないって!!良いよハンマーで叩くから!」
ナビィ「そ、そっか!ハンマーもあったね!」
リンク「どりゃ!」
ガノン「ぶぁああああああ」
リンク「ナビィ、尻尾を狙えば良いんだな!」
ナビィ「うん!効いてるよ!!」
ガノン「ぶぎゃああああああ」
ゼルダ「リンク!マスターソードを!!」
リンク「分かった!!」
ファイ「暫しの間マスターの元に居られなかったことをお許し下さい」
リンク「いや俺が悪かったしな、盾かまえておけばよかったんだけど」
ガノン「ぶぉぉぉおおおお」
リンク「それじゃあトドメだ!!」
リンク「剣が光った!?」
ファイ「トドメを」
ナビィ「リンク!!」
リンク「うぉぉぉぉおおおおお!!!」
ザシュザシュパーン
ガノン「ぶひぃ……」
リンク「終わった、か」
――――――
―――
―
―
ファイ「マスター」
リンク「あれ、ここは……」
ファイ「マスターはこの世界においてやるべきことを果たしました、おめでとうございます」
リンク「そうか、本当に終わったんだな」
ファイ「これからゼルダ姫のオカリナで、時を超えます」
ファイ「イエス、マスター。マスターソードを時の神殿へと戻してください」
リンク「え、それって……」
ファイ「マスターの考えている通り、ファイはまた永い眠りにつきます」
リンク「それはダメだ!ガノンが死んだからと言って、また新たな悪が出てくるかもしれない!マスターソードはまだ必要なんだ!」
ファイ「……いいえ、仮に新たなる悪が現れたとしても、それは次のマスターのやるべきこと。マスターとファイがやるべきことというのは終わったのです」
リンク「そんな、ここでお別れなんて、嫌だ!」
ファイ「マスター、マスターは救われた世界で安息を過ごしてください。ファイは―――マスターと共に世界を救えたことを、以前のマスターに教わった『喜び』である確立が98%」
リンク「ファイ!」
ファイ「さようなら、マスター」
リンク「ファイイイイイィィイ」
――――――
―――
―
「……ンク……リンク……」
リンク「あ、れ……」
リンク「あ、ああ……ここは」
ゼルダ「ここは空の上。女神ハイリアが用意した、安息の地……私は女神の子孫として全てを思い出しました。この地に何があったか、魔王ガノンは生まれ変わりであることも」
リンク「……と言うことは、ここがスカイロフトがあった所?」
ゼルダ「それは分かりません、でもその剣が語ってくれたように、もう時の勇者リンクと退魔の剣マスターソードの役目は終わりました」
リンク「……さっきファイから聞いたよ」
ゼルダ「私が時のオカリナで、貴方を元の世界に戻します。そしたら……時の扉は開かずに、ガノンドロフを処刑してください。大丈夫、きっとこの出来事により元の世界の私も女神としての記憶が戻るでしょう」
リンク「分かった、必ずやってみせる」
ゼルダ「リンク……」
リンク「……」
ゼルダ「ありがとう……」
――――――
――――
――
―
ファイ「マスター、最後に……剣を台座に」
リンク「……分かった」
サクッ
ファイ「また永い眠りに……おやすみなさい、マスター」
リンク「おやすみ、ファイ……」
リンク「……」
リンク「……ナビィ?」
ナビィ「ごめんね、私も……行かないと」
リンク「ナビィ!?」
ナビィ「ばいばい、リンク。ありがとう」
リンク「な、なんでナビィまで!!??」
リンク「……そうか、これが時の勇者、か」
リンク「ゼルダに言われたことをしないと」
ゼルダ「ええ……私は全てを把握しました。リンク、またハイリアの地に戻ることはありますか?」
リンク「分からない、でも……それが時の勇者最後に使命だと思うから。ナビィをゆっくり探すよ。きっと、どこかに居るって信じてるから」
ゼルダ「分かりました、時の勇者リンク……あなたにこれを授けます。きっと、また……」
リンク「うん……エポナ、行こう」
――――――
――――
―――
――
―
ファイ「ここで少し解説をしましょう」
ファイ「ファイはこの物語上、時の勇者は勝利をし、魔族であるガノンは封印をされました」
ファイ「後にこれは封印戦争とされ、受け継がれていきます」
ファイ「しかし、封印戦争があったのは大人になったマスターが居た世界」
ファイ「封印戦争のあった世界と、封印戦争の無い世界が存在します」
ファイ「それにより……世界線は別れました、しかし」
ファイ「時間をも司るマスターソードにおいて、出来事などは全て共通化されます」
ファイ「敗北した世界を、ディンの世界」
ファイ「勝利した世界を、フロルの世界」
ファイ「封印戦争が無い世界を、ネールの世界」
ファイ「以後は、そのように語っていきましょう」
ファイ「この物語は、ファイの経験した物語……」
ファイ「最初に、時の勇者が敗北した、ディンの世界から、語りましょう」
※尚、木の実とか夢島とかはやってないから語れないし、初代とリンクの冒険はかじった程度なので、一つの物語しかファイは語ってくれません
ファイ「……承認しました、おはようございます、新たなるマスター」
リンク「うわっ!?な、なんだ……」
ファイ「マスターソードを抜くことにより、マスターソードの精であるファイは覚醒しました。ファイはマスターと共に使命を果たしていきます」
リンク「そ、そうか……とにかく今はアグニムがゼルダを闇の世界へ連れて行こうとしている!早く城へ行かないと!」
ファイ「イエス、マスター。ペガサスの靴を用いて、最速で城へと向かいましょう」
―――――
―――
――
アグニム「もう遅いんですよ、目の前で賢者が闇の世界へと連れて行かれるのを見ているがいい!!」
ゼルダ「リン……ク……」
リンク「やめろおおおおおお!!!」
プワァァァン
リンク「アグニムゥゥゥウウ!!」
アグニム「ではさようなら」
リンク「逃がすかぁ!!」
ファイ「マスター、奴の魔法弾を弾き返せる可能性が95%、これはファイの経験則です」
リンク「そ、そうか!よし、弾き返す!!」
アグニム「何っ!?」
リンク「自分の魔法にやられる気分はどうだ!?」
アグニム「ぐっ……き、貴様も闇の世界へと行ってしまえ!!!」
リンク「う、うわぁぁぁぁあああああ!!!」
「聞こえるか、リンク、サハスラーラじゃ。今リンクの居る世界は闇の世界、魔王が創りだした世界だ」
「賢者はそこの世界に封印されている、封印を解かない限り、元の世界も魔王に支配されてしまう」
「以下略」
リンク「これが闇の世界かぁ……」
ファイ「イエス、マスター。マスターは賢者の封印を解き、賢者の力で魔王討伐をしなければなりません」
リンク「賢者の中にゼルダも居る……助けないといけない」
ファイ「なるほど。少しばかり、世界は変わっているようですね」
ファイ「イエス、マスター。ファイはマスターソードの精、そしてマスターは3代目のマスターになります」
リンク「3代目……そうだったのか」
ファイ「初代マスターがマスターソードに仕上げ、2代目マスターは……この世界を終わらせてしまいました」
リンク「どういうことだ?」
ファイ「2代目がこの剣を手にした時に、ファイも同じように覚醒をしました。その時も同じように賢者は封印をされていて、封印を解いていったのです」
リンク「ふむ」
ファイ「そして、最終決戦……そこで、2代目マスターは息絶えてしまったのです」
リンク「……負けたってことか」
ファイ「イエス、マスター。同じように、その場に居たゼルダ姫も死亡。女神としての魂は転生されたようですが、魔王の支配下により転生されるのが遅れた模様」
ファイ「元盗賊であり、魔王ガノンドロフはトライフォースを手にし、この世界を手に入れました」
リンク「闇の世界を、か」
ファイ「イエス、マスター。そして、この世界も世界を支配する段階でしかありません。この世界に賢者の子孫を封印することにより、ガノンドロフの恐れているものが全て無くなります。
ファイ「つまり世界を支配しやすい環境である可能性が70%」
リンク「残りの30%は?」
リンク「ん、待てよ?2代目マスターとやらが死んだ時マスターソードはどうなったんだ?」
ファイ「魔王ガノンは退魔の剣を触れることすら出来ませんでした」
リンク「退魔の剣だもんな」
ファイ「イエス、マスター。よって魔王ガノンではこの剣を破壊することが出来なく、仕方なく魔王ガノンは深い深い森の中に封印をしました」
リンク「そうか、それで……3つの紋章を集めないとマスターソードは抜けなかったんだな」
ファイ「紋章を各地に隠したのは、魔王ガノン。それによりなんとか封印したようですが、今こうして封印は解かれ、魔王討伐をすべく体制が整っています」
ファイ「そして、マスターこそが勇者。真にトライフォースを手に入れるべき存在です」
リンク「……そっか、でもへブラ山に居た奴らも言ってたけど、その黄金の力を手に入れる時に争いが起こったみたいなんだ。みんな欲が強くてさ」
ファイ「その噂を広げた人物こそ魔王ガノン。いえ、その手下アグニムです」
リンク「そうか……ちょっとでも可能性のある人間を減らしたかったんだな」
ファイ「闇の世界へと誘い、人間を少しずつ封印していったようです」
リンク「やり方が遠まわしに見えるな……だけど、好都合か」
ファイ「イエス、マスター。それでは第一の神殿へと向かいましょう」
リンク「ああ!」
7人賢者の封印は解かれ、デスマウンテンの頂上にあるガノン城にてアグニムを撃破
ピラミッドの中に逃げ込んだガノンを追いかけ……
リンク「追い詰めたぞ魔王」
ガノン「ふはは!何を言っている、黄金の力を持つ者に勝てるわけがないだろう!」
リンク「それはどうかな、今ここには……退魔の剣と、銀の矢がある」
ガノン「なっ!?何故それを……!?大妖精は封印したはずだ!」
リンク「爆弾一つで開いたぞ、特注だけどな」
ガノン「ぐぬぬ……しかし、道具が揃ったとしても、使えなければ意味がない!」
リンク「ハートのかけら必死に集めたんだ!負けるわけないだろう!!魔法の薬だって用意した!!うおぉぉぉぉ!!!!」
討 伐 完 了
ガノン「……」バタッ
ファイ「さぁ、マスター……奥の部屋へ、トライフォースが呼んでいます」
リンク「……ああ」
「黄金の力を手に入れし者よ、願いを」
ファイ「マスター、どんな願いを?」
リンク「そうだな……平和な世界を。そして、この力は封印するのではなく王家で管理してくれ」
リンク「もう魔の手に落ちないように……」
ファイ「イエス、マスター。トライフォースが願いを叶えます……」
――――――
――――
――
―
リンク「おじさん!!」
おじさん「おお!リンク!!わ、私は一体どうなったんだ?世界は」
リンク「世界は救われたよ、平和になったんだ」
おじさん「平和に、そうか……オマエは本当に、勇者だったんだな」
リンク「おじさん?覚えてるの?」
おじさん「ああ、なんとなくだけどもな」
ファイ「マスター」
ファイ「森へと向かいましょう、ファイを……マスターソードを封印しに」
リンク「え、マスターソードも王家で管理をしないとダメじゃないか?」
ファイ「マスター、もしもの話をしましょう」
ファイ「今後トライフォースが何らかの形、王家での管理しきれない穴のようなもので暴走した時に」
ファイ「暴走をした手の中にファイ、つまりマスターソードが存在した場合」
ファイ「誰がその暴走を、止めるのでしょうか」
リンク「……そうか、そうだよな」
ファイ「イエス、マスター。この事については後ほど、ゼルダ姫にお伝えください。ゼルダ姫は今女神としての記憶が戻っています。ハイラル王もきっとそれを把握するでしょう」
リンク「分かった、それじゃあ……また封印を」
ファイ「イエス、マスター」
こうして、神々のトライフォースとしてファイの勤めは終わった。
ファイは今後の世界、リンクの冒険やゼルダの伝説(初代)に出てくることはありません。
しかし、勇者の覚醒は様々な事件を目の当たりにしています
リンクの冒険では、王家に管理されていたトライフォースが暴走し、ゼルダ姫は眠りにつき、勇気のトライフォースを求めて勇者が旅立ちます
ゼルダの伝説では、トライフォースを失ったハイラル国家は衰退し、またガノンに力のトライフォースを取られ、その世界を救うなどで描かれています
ファイ「マスター、剣の強化を行うのですね」
リンク「ああ、鍛冶屋にやってもらうよ」
ファイ「イエス、マスター。少しばかり強くなったマスターソードをお楽しみください」
リンク「うん」
ファイ「マスター、マスターソードをどうするつもりですか?」
リンク「え、泉に投げ捨てようかと」
ファイ「……」
リンク「だ、大丈夫だよ大妖精が拾って強くしてくれるから」
ファイ「ファイの情報にはそのような情報はありません。強化出来る確立30%」
リンク「攻略wikiに書いてあったから、えいっ」
ファイ「あっ」
神トラ編終わり
ファイ「都合上、ファイは『ムジュラの仮面』のマスターを知りません」
ファイ「何故ならば金剛の剣とかいうふざけた剣によって役目を奪われたからです」
ファイ「ファイにはあのような金ピカに光る剣のどこが良いのか理解し兼ねます」
ファイ「なので、ムジュラの世界は語りません」
ファイ「強いて語るならば、スタルキッド……ムジュラの仮面の力によりハイラルはタルミナに変化」
ファイ「地形そのものが変わりますが、人の姿、形などは変わらず、まったく別人になりました」
ファイ「元マスターである、リンクはムジュラの仮面に打ち勝ち、勝利」
ファイ「尚、鬼神リンクになった際に持っている剣はビームが出る模様」
ファイ「ビームはマスターソードの特権なので、マスターソードであった確立が25%」
ファイ「……」
ファイ「それでは、トワイライトプリンセスを語りましょう」
リンク「わんわん!」
ファイ(今度のマスターは犬、と思ったら違うようですね……元に戻しましょう」
リンク「あ、あれ…………」
ザシュッ
ファイ「……承認しました、おはようございます、マスター」
リンク「う、うわっ!?」
ミドナ「……剣が認めた」
ファイ「イエス、マスター。只今現状を把握しております、少々お待ち下さい」
リンク「どういうことだ、君は誰なんだ」
ファイ「申し遅れました、マスターソードの精、ファイです」
リンク「ファイ……」
ミドナ「おいおい、なんだよ、こんなの聞いてないぞ。剣が認めたとは思ったけど、具現化までされているなんて」
ファイ「ファイはあまり知られていない存在、マスターソードとしては語られますが、ファイはなかなか語られませんので」
リンク「そうか……」
リンク「あ、ああ、凄いなそんな事まで分かるのか」
ファイ「マスターの記憶を元に把握しました」
ミドナ「……そうか、分かった!お前がファイか!!」
ファイ「? 何か?」
ミドナ「聞いたことがある、単なる言い伝えだと思ったけど……ふん、まぁいいや。さっさとゲルドの砂漠から行かないと」
リンク「ミドナ、ファイのこと知ってたのか?」
ミドナ「知ってるも何も、魔族の敵だよ、敵」
ファイ「……なるほど、把握しました。では、その言い伝えは」
ミドナ「そうだよ、初代魔族長ギラヒムからさ、影の世界にも入ってきたからね」
ファイ「この時代においてその名前を聞くとは、これも何かの縁でしょうか、マスター」
リンク「さっぱりだ、設定すっ飛ばしすぎだろ」
ミドナ「だから、そんなことどうでもいいって!今はこの世界どうにかしないとダメだろう?」
リンク「そうだった」
ファイ「この世界は……魔王の復活した世界なのですね」
ファイ「この質問は何度目でしょうか、ファイは大地が栄える前の時代より知っています」
リンク「凄いな……そんな時代からあったのか」
ファイ「イエス、マスター。初代マスターはマスターソードに仕上げ、大地を救い、大地を栄えさせました」
ファイ「そして2代目マスターは、未来でハイラルの地を救い、魔王ガノンを討伐、その後元の世界に戻り、未来の知識により元の世界も救いました」
リンク「途方も無い話しだな。そんな話さっぱりだ、ゼルダ姫くらいじゃないか、知ってるのは」
ファイ「この世界のゼルダ姫はもう女神としての記憶があると?」
リンク「さぁ、どうなんだろうな。そのへんもさっぱりだ」
ファイ「……」
ミドナ「おいおい、飽きられてるぞ」
ファイ「いえ、マスター少しずつ把握しましょう」
ファイ「まずガノンドロフは一度賢者に処刑されかけましたが、ガノンドロフが最後の力を振り絞り、賢者の1人を圧倒しました」
リンク「……もしかして、それってこれから聞くんじゃ」
ファイ「ここで聞いても同じ模様、賢者達はとっさの判断で、ガノンドロフを影の世界に封印」
ミドナ「厄介なもん封印しやがって」
リンク「はしょりすぎだろ」
ファイ「記憶がいまいち安定しないので」
リンク「だ、誰のだよ!?」
ミドナ「まぁいいじゃん、もう一回プレイすれば」
リンク「メタ発言かー」
ファイ「ということで、いつも通りご検討を」
リンク「しょうがない、ミドナ復活させて、城に乗り込むか……」
―――――――
――――
――
―
城へと乗り込み、最終決戦
最後に、リンクはガノンドロフに『とどめ』を刺す
ガノンドロフ「……」
リンク「……」
ゼルダ「……」
ガノンドロフ「ふっ……」
リンク「……」
――――
――
―
リンク「ガノンドロフは最期まで倒れることはなかった」
リンク「膝をつくことすら……」
ゼルダ「……ええ」
リンク「……あれは、光の精」
リンク「……ッミドナ!?」
ミドナ「……」
ミドナ「なんだよ」
リンク「ミドナなのか?」
ミドナ「そうだよ、綺麗すぎてビビったか?」
リンク「……」
ミドナ「そこは綺麗って言っておけよ」
リンク「はは……ミドナ、だな」
ゼルダ「貴方が影の姫君……」
ミドナ「そうだよ……だけどな、私は帰らなければいけない」
リンク「……!?」
ミドナ「そんな顔をするな、光と影は交わってはいけないんだ」
ゼルダ「……」
ミドナ「処刑場へ行こう」
リンク「……」
ミドナ「私が元に戻れたのは、お前のおかげだ」
リンク「……」
ミドナ「そっちの姫さんを大事にしてやってくれ……」
ゼルダ「……影は光が無くては存在しない、同時に光も影が無ければ存在しない。どちらがかけていてもお互いは両立しないのですね」
ミドナ「そうだな……ゼルダ、あんた、良いヤツだな」
ミドナ「あんたみたいな奴がハイラルに溢れていたら」
ミドナ「……もっと良くなったかもな」
ゼルダ「……」
ファイ「……」
ミドナ「そういや、あんたも居たな」
ファイ「イエス」
ミドナ「あんたにも世話になったな、あんたが居なかったらガノンは死んでないしな」
ファイ「礼には及びません」
ファイ「性格?」
ミドナ「ああ」
ファイ「ファイには……性格などというものはありませんが、しかし……ファイも少しずつ変わっていっているのかもしれませんね」
ミドナ「無いってことはない、マスターソードにも影はある。影あるものに性格有り」
ファイ「イエス」
ミドナ「……リンク」
リンク「……」
ミドナ「ま……」
ミドナ「またな……」
リンク「ぐっ……ミドナ……」
ファイ「ファイはその後、マスターに手によって、元の森の聖域に戻されます」
ファイ「余談ですが、スマッシュブラザーズXにて、マスターがマスターソードを抜きますが」
ファイ「再度、亜空の使者終了後に、マスターソードを返還している模様」
ファイ「その後に世界については、まだ未確認」
ファイ「今後どうなるかは、分かりません」
ファイ「そして、最後に、ネールの世界へと……」
ファイ「行きましょう」
リンク「こんな海の中にあったなんて……」
ザシュッ
ファイ「……承認しました」
リンク「うわぁ!?」
ファイ「マスター、おはようございます」
リンク「び、びっくりした?!」
ファイ「驚かせて申し訳ございません。マスター、剣を掲げてください」
リンク「……ッ!」キーン
ファイ「……」
リンク「も、もういい?」
ファイ「イエス、この世界においてスカイウォードは発生しないと確認。封印がされているようです、またマスターソードの劣化も確認。真のマスターソードになるには鍛錬が必要である確立が95%」
リンク「そうなんだ……」
ファイ「イエス、マスター。この世界は、物凄い世界です」
リンク「どういうこと?」
リンク「うん、この格好もそうだし」
ファイ「イエス、マスターが着ている服は初代マスターも着ていた服です」
リンク「言い伝えは本当だったんだ」
ファイ「イエス、このハイラルの地が証拠です」
赤獅子の王「へいっ」
リンク「うわっ!な、何!?」
赤獅子の王「リンク、マスターソードは手に入れたか?手に入れたなら、地上へ行き、魔獣島へ行くぞ」
リンク「ちょ、ちょっと待って」
ファイ「マスター、先に移動を優先。王と共に話しましょう」
リンク「わ、分かった」
―――
―
赤獅子の王「マスターソードの精か、初耳だな」
ファイ「イエス、ファイの存在は言い伝えに残っていません」
赤獅子の王「今回の覚醒が最初ではないんだな」
ファイ「今回は3度目……これは時系列からすると、ですが」
赤獅子の王「ふむ」
ファイ「2代目勇者は、ハイラルを救った後に、旅に出ました。もちろん、ゼルダ姫によって『精神は』元の世界へと戻りました。しかし、残った抜け殻は7年後残ったまま」
ファイ「よって、言い伝えでは『旅に出た』とされています。これは王家の隠蔽の為です」
赤獅子の王「そこまで知っているのか」
ファイ「イエス、その当時のマスターと共にガノンドロフを討伐しました」
赤獅子の王「なるほど……生きる歴史書だな」
ファイ「その後、ガノンドロフは復活。リンクは存在しない為に、ハイラル王は封印を施しました」
赤獅子の王「海の底に沈めてな」
ファイ「イエス」
ファイ「イエス、マスター。見たところマスターは歴代マスターよりも幼い模様、少しずつ把握していきましょう」
リンク「う、うん」
ファイ「次に向かう場所は魔獣島。妹の奪還、成功を祈ります」
リンク「うん!絶対助けるぞ!!」
―――そして、無事妹を救出。
その後賢者と共に、マスターソードを鍛えなければいけないと分かったリンクは、賢者を探し出し、マスターソードを真のマスターソードへと進化させた。
そうして、ハイラルの地の先にあるガノン城へと向かい
歴代のボスを倒した
そして―――。
リンク「うん、頑張る」
ファイ「また、知恵のトライフォースを持った子も発見した模様」
リンク「え?」
テトラ「え?」
ハイラル王「……テトラ、お前こそがこの地の姫君、ゼルダ姫の子孫なんだよ」
テトラ「え、はぁ!?」
ハイラル王「お前はゴシップストーンで出来た通信出来る石を持っていた、そこから私は把握した」
ハイラル王「そして、リンク。お前もまた、勇者として、魔王討伐をしなければならない」
ファイ「イエス、マスター」
ハイラル王「……マスターソードを使ってな」
―――――
―――
――
―
リンク「いい加減諦めろ!何度封印されていると思っている!」
ガノンドロフ「ハイラルは戻す、戻して支配する。この俺がな」
リンク「絶対にさせない、今の世界は……海のある世界は、このままで良いんだ!」
ガノンドロフ「たわけ!!」
テトラ「リンク!」
リンク「光の矢で頼む!」
テトラ「分かった!リンク!リンクを狙うから、リンクは……分かるね!?」
リンク「ッ!! ああ、分かった!」
ファイ「マスター、テトラの光の矢がミラーシールドで跳ね返せる確立85%」
リンク「了解!」
―――そうして。
ガノンドロフ「あ、が……が」
リンク「……」
ガノンドロフ「……フフ…フ、風が……吹いておる」
リンク「ッ!?」
ゼルダ「石化していく……」
リンク「くはぁ……」
ゼルダ「リンク!」
ハイラル王「わが子らよ」
ゼルダ「ハイラル王……」
ハイラル王「私は、この世界に、このハイラルの地に縛られていた」
ハイラル王「前を向いてはいけない、後ろを、ハイラルの地を、見ていた」
ハイラル王「お前たちには、向いていて欲しい……前をな」
ゼルダ「一緒に、向けば良いじゃないか!一緒に、なぁ?行けば、良いじゃないか。船もある!」
ハイラル王「そこは、既にハイラルではない……」
ザーーーーーーーー
ファイ「……マスター」
リンク「ファイ!」
ファイ「そして、ハイラル王」
ハイラル王「……」
ファイ「ファイも、このハイラルと共に……」
リンク「そ、んな!?」
ファイ「この地にはもう、トライフォースも、マスターソードも必要ではありません」
リンク「……」
ファイ「いいえ、もしかしたら……」
ファイ「存在したからこそ、争いがあったのかもしれませんね」
ハイラル王「……辛い思いをさせたな」
ファイ「いえ、お気になさらず」
リンク「……」
ファイ「同じように、ファイも復活をするでしょう」
ファイ「その時にまた、マスターが存在すれば」
ファイ「ファイもまた存在するのです」
リンク「でも……」
ファイ「マスター……」
ハイラル王「そろそろだ、そろそろ崩壊する」
ファイ「さようならマスター。そして……」
ハイラル王・ファイ「新たなる国の反映を」
ザアアアアアアアアアア
ハイラル王「我、種子を放てり……」
ファイ「……ああ、永い永い役目も終わりを告げます」
ハイラル王「ご苦労だったな、よくぞこのハイラルの地を守ってくれた。安らかに眠れ」
ファイ「イエス……ハイラル王……」
―――――
―――
ファイ「ここまでがファイの知る物語です」
ファイ「ファイはマスターソードが存在する限り、存在します」
ファイ「どんな時間、次元、時系列を超えても」
ファイ「そして……この世界にも」
ファイ「ファイはマスターが呼べば出てくる存在です」
ファイ「……ああ」
ファイ「また……」
―――――――――
―――――
―――
―
ファイ「承認しました……マスターおはようございます」
「……君は」
ファイ「初めまして、マスターソードの精、ファイです。この世界では……」
おしまい
魔族の世界と影の世界と闇世界は同じ場所と考えていいのかね
そこら辺は曖昧かな
光の世界にも闇の世界にも魔物は存在するし、影の世界のほうが魔物は多いだろうからって思う
トワプリ影の世界≠神トラ闇の世界、ってのはどっかで見た気がする
ただ、ミドナがファイの存在知ってたら面白いなぁって思ったから書いたんですけどもwwww
時オカのナビィ
ムジュラのチャット
風タクの赤獅子の王(ハイラル王)
トワイライトプリンセスのミドナ(黄昏の姫君)
スカイウォードソードのファイ(マスターソードの精)
ナビィだけが謎だよな本当
ナビィ=ファイ説も考えたんだけど、このSS成り立たないからやめた
あと説明ありがとう!結構もう忘れてるw
ゼルダは思い出ですよね、本当
ファイが現世に現れるたびに説明してるって考えると、結構めんどうですよねwww
よく出来た秘書さんだ
いやあったでしょう
ただ、時の勇者が7年前に戻ったから勇者が居なくなった世界なだけで
じゃあトワプリの次元は時の勇者がかえらなかったってことか?
帰ってきたんだよ、だから封印戦争が起こらなかった
その前にガノンドロフを処刑しようってなって、処刑したところが砂漠の処刑場
・風タク世界
封印戦争に勝利した時の勇者リンクが元の時代に帰ったあとに残った世界
封印戦争が終わった瞬間に時勇リンクが行方不明になっただけで世界はそのまま
以後は風タク劇中で語られてる通り
・トワプリ世界
封印戦争を終えて時勇リンクが帰ってきた世界
先手を打ってガノンの反乱を未然に阻止←ここで歴史が変わって風タク√と分岐
その後ムジュラに続き、更にその後時勇リンクはどっかの誰かと結婚
何代か後の子孫がトワプリリンクになる
ありがとう
ゼルダの伝説って結構深いんだな
こういう話になっていたとか全然知らんかった
Entry ⇒ 2012.09.28 | Category ⇒ 版権物SS | Comments (2) | Trackbacks (0)
岡部「未来へ……か」 鈴羽「リンリーン!」
~ラジ館屋上~
あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
岡部「おれは ラジ館屋上で、2036年へと帰還する鈴羽を見送ったと
思ったら いつのまにか、鈴羽を再び目にしていた」
な… 何を言っているのか わからねーと思うが。
おれも 何をされたのか わからなかった…。
頭がどうにかなりそうだった… 催眠術だとか超スピードだとか。
そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ。
もっと恐ろしいものの片鱗を 味わったぜ…。
鈴羽「話は後にして! 未来が大変なことになってるんだって! だからリンリンの力を借りたいの!」
岡部「は?」
鈴羽「いいから早く乗って!」
岡部「ま、待て! そ、その前に教えろ!」
鈴羽「だから、待てないんだってば! ほら、行くよリンリン!」 ガシッ
岡部「だから、そのリンリンというのはなんだーーーーっ!」
鈴羽は、俺の叫びを華麗にスルー。
俺は流されるままタイムマシンの中へと連れ込まれる。
こうして俺は──不本意ながらも──飛ぶこととなった。
岡部「未来へ……か」
鈴羽「リンリーン!」
世界線変動率 3.372329%
岡部「これがタイムマシンの内部か、実に興味深い」 キョロキョロ
鈴羽「起動完了っと」 ポチッ
鈴羽「2036年へのタイムトラベルは、大体6時間くらいかかるからゆっくりしててよ」
岡部「2036年……6時間……」
岡部(意外に時間がかかるな……。
いやしかし、26年という歳月を跳躍するのだからそれを考えると短いものか)
鈴羽「リンリーン」
岡部(まさかダルと由季の仲を取り持つために走り回るだけで終わらず、2036年にまで連れて行かされるとはな)
岡部(どうやら、俺はこいつにまた振り回されねばならんようだ)
岡部「……」
岡部(しかしまあ、それも悪くはないかもしれない)
岡部「……だからその呼び方は一体何だ。俺はパンダかなんかか!」
鈴羽「パンダ? 違う違う。ほら、君さー、前におじさんって呼ぶなって言ったでしょ?」
岡部「当然だ、俺は決しておじさんではないからな」
鈴羽「2036年の君を呼び捨てするのも気後れするじゃん?」
岡部(2036年だと、俺は44か45か。
確かに18かそこらの小娘に呼び捨てにされるのも……。
いやしかし──)
岡部「だからといってリンリンはないだろリィィンリィンは!」
鈴羽「岡部”倫”太郎のリンと”鈴”羽のリンでリンリン、あはは、かわいいでしょ」
岡部「かわいくないわっ!」
岡部(というかそれだと、自分の名前も呼んでいることになるだろ)
ついさっき帰っていった鈴羽と、随分印象が違う。
二つのおさげは後ろ側でまとめられており、服装も迷彩色の──まるで軍人のような──服。
そして、少しだけ憂いを帯びた表情。
2036年から来たということは、あの”コミケ騒動”の時の鈴羽と変わらないはずだが……。
それとも世界線が変動したのか?
俺はその疑問を投げかける。
鈴羽「違う違う、世界線は変わってない……と思うよ」
鈴羽「厳密に言えば、タイムマシンに乗って時間跳躍した際にわずかに変動するんだけど、それは誤差みたいなものだから」
鈴羽「あたしは2010年8月20日から2036年8月20日に帰還して、一ヶ月経過した後」
鈴羽「つまり2036年9月20日から来た阿万音鈴羽……っと今は橋田鈴羽で問題ないのかな」
岡部「ほう……だからさっき俺がラジ館の屋上にいることも分かったわけだ」
鈴羽「そうそう、さすが察しがいいね」
岡部「オシャレ?」
鈴羽「2036年に帰還した翌日、リンリンが会いに来てくれてさ……」
岡部(早速会いに行ったのか、未来の俺)
鈴羽「それで……」
岡部「それで?」
鈴羽は頭をポリポリとかく。
これは照れている証拠だ。
鈴羽「……い、いきなりギュって」
岡部「ギュ?」
岡部(俺が鈴羽の髪をギュ?)
岡部「ダキ?」
岡部(俺が鈴羽の髪をダキ……唾棄?)
岡部「おい、さっぱり分からんぞ」
鈴羽「……ええとその……」
鈴羽「だ、抱きしめられちゃった」
岡部「は?」
鈴羽「い、いきなりリンリンにギュって! ダキって! 抱きしめられちゃったんだってばっ」
岡部「なんだとぅ!?」
鈴羽「会うなりいきなりだよ? もうびっくりしたんだからー」
鈴羽「だから、その……あたしも頑張ってみようかなーって思って、髪型変えてみたり、お化粧勉強してみたり……」 ボソボソ
岡部(なんてこった……)
しかも相手は友人の娘、なんてことをしてくれる、未来の俺)
鈴羽「あぁもう! こんなことリンリンにも話してないのに!」
頭をかく速度があがる。
おい、そんなにかくとハゲるぞ。
鈴羽「まっ、あたしとリンリンの仲が良いこと、父さんは複雑に感じてるみたいだけどさ」
岡部(そりゃそうだ、ダルにしてみれば、父親のポジションを取られたと感じてるに違いない)
岡部(そう……だよな?)
鈴羽「……」
岡部「……?」
岡部(まずい、地雷を踏んだか?
いやいやいや、でも突っ込まざるを得ないだろ)
岡部「…………」
岡部「ふ……む」
岡部「そのおさげ! 中々似合ってるではないかブァイト戦士よ!」
鈴羽「えっ?」
岡部「しかし、さながらポンデリングを二つに割って装着したかのような髪型だなこの、スイーツめっ!」
鈴羽「ポッ、ポンデェ!? な、なにおうー!」
岡部「……」
岡部「ククッ、甘い、甘いぞバイト戦士。貴様はドーナツのように甘々だ!」
鈴羽「な、なんなのさ……いきなり」
岡部「未来のことを話すのは禁則事項、そうだったな」
サイズハング
岡部「これぞ我が能力【カマかけ】! いいか、俺は全てお見通しなのだフゥーハハハ」
カラーリングジェントルマン サイズハング
岡部(【顔色窺いは大人のたしなみ】からの【カマかけ】の禁断コンボ、相手は死ぬ)
岡部「だから……遠慮などしていないで話すがいい」
岡部(もっとも、これから未来に降り立つのだから、禁則事項もクソもないのだがな)
岡部「ちなみに俺はポンデリングは嫌いではないぞ」
鈴羽「ぷっ……」
岡部「む……」
鈴羽「やっぱり君って優しいね」
岡部「や、優しさなどではない! 俺に隠し事は無意味だということだ!」
鈴羽「そうだよね、話さないわけには……いかないよね」
そう言って鈴羽はうつむく。
やはりこいつ、強がっていたか。
明るく振舞おうとしてたようだがこの鳳凰院凶真の目は欺けない。
鈴羽「この服は……戦闘服」
岡部(せんとう? せんとう……銭湯?)
鈴羽「あたしたちタイムトラベラーの任務は、ロストテクノロジーを回収するため……前にそう言ったよね?」
岡部「あぁ……覚えている」
鈴羽「装備もある程度充実した物を支給される。それがこの服とか、その他諸々」
鈴羽「見てくれはただの迷彩服だけど、結構性能いいんだ」
岡部「ふむ……」
岡部(実際過去へタイムトラベルするとなると、色々な問題が出てくるのだろうな……)
岡部(そういった問題を解消しつつミッションを遂行するには──
質のいい装備とよく訓練されたベトコン……じゃない、エージェントでなくてはならないと言うわけか)
鈴羽「で、ここからが本題」
鈴羽「2036年9月20日に……つまりあたしたちがこれから飛ぼうとしてる日に」
鈴羽「父さんと君が……誘拐された」
岡部「な……に?」
岡部(銭湯で融解!? 俺とダルが融ける!? しかも尊敬語!?)
岡部(ってアホか俺は、戦闘と誘拐に決まっているだろ)
岡部「それは……本当なのか?」
鈴羽「嘘言ってどうするのさ」
岡部「だが、大の大人を誘拐などと……」
鈴羽「……タイムマシン」
鈴羽「犯人は、二人とタイムマシンとを引き換え……そう要求してきたんだよ」
鈴羽「……許せない、父さんたちが頑張って作り上げたタイムマシンをこんな卑怯な手で……」
岡部(そうか……タイムマシンの存在)
岡部(時間を支配することは世界を支配することだって難しくないかもしれない)
岡部(それを考えれば、研究者をとっ捕まえて研究させ……いや、完成されているのであればタイムマシンを横取りの方が早い……か)
岡部「となると……犯人はかなり絞られるのでは?」
鈴羽「それが……あたしも開発に関わってた人全員と面識があった訳じゃないんだ」
鈴羽「相手がタイムマシンを要求してきてる以上、警察とかに頼ることもできないし……」
岡部「なるほど、確かにいたずらと思われても仕方ないだろうな」
岡部「……そうだ、誘拐について紅莉栖は何と言っている?」
岡部(あいつはタイムマシンに関して否定的ではある。
しかし、好奇心旺盛の実験大好きっ子。
俺たちがタイムマシンの開発をしているのであれば、あいつも俺たちの近くで開発に関わっているはず)
鈴羽「えー……えっとそれが……」
ばつが悪そうに目を泳がす鈴羽。
おい、なんだよ。
しどろもどろ。
岡部「三行にまとめると──」
岡部「由季から俺達が誘拐されたことを聞く。
頭が真っ白になる。
気づいたらタイムマシンに乗っていた」
鈴羽「あ、あはは……」
岡部「……これでいいか?」
鈴羽「う、うん……」
岡部「お前、本当に特殊な訓練を受けたのかっ!?」
鈴羽「だ、だってー、二人が誘拐されたって聞いて、拷問とかされたんじゃないかって思ったらいてもたってもいられなくって……」
岡部(うっ、拷問か……なくはないな)
岡部(タイムマシンのために誘拐までする犯人だ、情報を吐かせるためには拷問もためらわないだろう)
鈴羽「そ、それに! 困ったらいつでも俺を頼れ、って言ったのはリンリンでしょー!?」
岡部「いや、言っとらんわ!」
鈴羽「……一応ね」
岡部「一応?」
岡部(紅莉栖ならばタイムマシン開発の中心にいてもおかしくない、そう思ったのだが)
鈴羽「タイムトラベル理論に関しては、リンリンの功績が大きい。父さんはそう言ってた」
岡部「…………」
岡部(ほう……)
岡部(ほぉおぅ……」
岡部「……」
鈴羽「?」
岡部「ククク……ははは、ふはは」
鈴羽「えっ?」
岡部(さすがは鳳凰院凶真、SERNはおろか、あの天才少女・牧瀬紅莉栖すらも出しぬいたというのか!)
鈴羽「リ、リンリン?」
岡部「リンリンではなぁい! 俺は! 鳳凰院凶真だっ! フゥーハハハ!!」
岡部(紅莉栖に話を聞くのは、2036年に着いてからでも遅くはあるまい)
岡部(今は未来の情報、主にタイムマシンの情報を、少しでも聞きだしておくとしよう)
岡部(待っていろ未来の俺、この灰色の脳細胞を持つ鳳凰院凶真が貴様を華麗に救出してくれるわフゥーハハハ!!)
鈴羽「着いたよ」
岡部「ここが……」
鈴羽「そう、2036年の秋葉原」
岡部「ってラジ館の屋上に出るんじゃなかったのか? ここはどこかの研究室のようだが」
鈴羽「何言ってんのさ……って、あぁそっか」
鈴羽「ラジ館は一度建て直されてるんだよ、ここは新ラジ館9階」
岡部「な、なるほど、つまりこの場所は旧ラジ館の屋上に当たる、というわけか」
鈴羽「そういうこと、ちなみに今は10階まである」
岡部「この一室を借りてタイムマシン研究というわけか、しかし……元が屋上なだけあって広いな、ラボとは比べ物にならん」
鈴羽「違う違う、ラジ館自体君の会社のものらしいよ」
岡部「は?」
岡部(どれだけ儲かってるんだうちの会社)
鈴羽「ちょっとね」
鈴羽がタイムマシン外部に取り付けられたパネルを操作すると──
岡部「た、タイムマシンが消えたっ!?」
鈴羽「消えた訳じゃないよ、透過処理ってやつ? なんていったかな、未来ガジェットの……」
鈴羽「そうそう、攻殻機動迷彩ボール! あれの技術を応用したって言ってたかな」
鈴羽「全体を覆うように取り付けられたモニタと、そのモニタの直角且つ外側を向くように取り付けられた超小型C-MOSカメラ」
鈴羽「それによる、擬似的光学迷彩って感じ、詳しいことは分かんないけど」
岡部「空間移動のできないタイムマシン故にカモフラージュが必要、というわけか」
鈴羽「……機密性はできるだけ高くしないとね、でないと悪い奴らに利用──」
鈴羽「……っ」
岡部「…………」
岡部「……ん?」
鈴羽「い、一応さー。何かあった時のために、指紋認証からパスコード認証に変えとくねっ、パスは──」
岡部「……」
鈴羽「……メ、メモ……わ、渡しとくね……”ま、万が一の時”のために……」
岡部(泥沼……)
鈴羽「そ、それがその……」
鈴羽「母さんから誘拐の話を聞いてすぐ飛び出してきちゃったから、詳しいことは何も……」
岡部(……まじか)
岡部「……そう言えば、移動のできないこのタイムマシンで少しだけ過去に戻るとどうなるのだ?」
岡部(VGLシステムによって同じ空間座標にタイムトラベルしたら、飛んだ先には当然タイムマシンがあるはず)
俺の脳裏に、タイムマシンがめり込んだラジ館の光景が浮かんでくる。
鈴羽「当然の疑問だよね。でも大丈夫。VGLシステムで計算する空間座標処理にほんの少し手を加えればいいんだよ」
鈴羽「今のコンピューターの処理能力なら難しいことじゃないんだ」
岡部「となれば、数時間前に飛んで由季の話を──いや、誘拐を阻止すれば!」
鈴羽「だめだよ……近い過去や未来に飛ぶことは禁止されてるんだ」
岡部「……? なぜだ」
鈴羽「万が一あたしがあたしに接触してしまうと、深刻なタイムパラドックスが生じる可能性がある、父さんはそう言ってた」
鈴羽「何が起こるかは、不明……」
鈴羽「もしかしたらあたしという存在は世界に消されてしまうかもしれない……」
鈴羽「いや、あたしが存在する世界すら崩壊するかもしれない……」
鈴羽「だからあたしが生まれる2017年以降の過去に飛ぶことはできないんだ……」
岡部(2017年以降の過去……変な言葉だ)
鈴羽「あたしみたいな若年者がタイムトラベラーに選ばれるのもそういった理由もあるんだ」
岡部「だから2010年に飛んで、俺に助けを求めてきたというわけか」
鈴羽「うん……」
岡部(ってちょっと待て)
岡部(パラドックスが生まれるのでは?)
その疑問をぶつけてみる。
鈴羽「あ、あはは……」
鈴羽「もうダメダメだ……あたしは戦士失格だね……」
岡部(特殊な訓練とはいったい……うごごご!)
鈴羽「ど、どうしよう……」
鈴羽「……」 ジワッ
岡部(やれやれ……世話のやける)
岡部「…………フフフ、フハハ」
岡部「フゥーッハハハ!」
鈴羽「リ、リンリン?」
岡部「らしくないなバイト戦士ぃ! 貴様にはっ! 俺というブレェェェンがついているではないかっ!」
岡部「一流の戦士である貴様とこの俺が組めば、怖いものなどありはしないのだっ!」
岡部「パラドックス? その程度の問題など些細な事──」
岡部「いや、むしろ犯人にハンデを持たせてやらねばなっ」
岡部「卑怯な犯人の野望なぞっ! この狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真が打ち砕いてやるっ!」
岡部「フゥーハッハッハッ!!」
鈴羽「……」
岡部「……だが、当然貴様にも動いてもらわねばならん。俺は頭脳労働向きなのだからな」
鈴羽「……リンリンに励まされてばっかだなぁ。そうだね、あたしもしっかりしないと」
岡部「だから、リンリンではなぁぁい!」
鈴羽「分かったよ岡部倫太郎。必ず二人を救出しようね!」
岡部(いつもの鈴羽に戻ってくれたようだな)
岡部「あぁ……そのためにもまず由季の話を聞かねばな。どこにいるのだ?」
鈴羽「母さんなら、旧ラボにいるはず」
岡部「旧ラボ? 大檜山ビルのラボのことか?」
鈴羽「そうだよ」
岡部「まだあったのか」
鈴羽「みんなの思い出の場所だからね」
岡部(ラボか……。そういえばミスターブラウンは健在なんだろうか。
60も近いはずだが)
───
──
外に出てみると9月の終わりにしてはやや不快な熱気と、どんよりとした鈍色の空が俺たちを待ち受けていた。
今にも一雨きそうである。
岡部「街並み自体はあまり変わらないな。相変わらずの趣都といった感じだ」
もっとも、割合中年が増えた印象。
オタク連中も高齢化とは。
たたかわなくちゃ、げんじつと。
ブロロー
岡部「2036年でも変わらず、車は走っているのだな」
鈴羽「? 当たり前じゃん」
岡部(車もしばらく空を走る予定はなさそうだ)
───
──
~大檜山ビル前~
鈴羽「さ、着いたよ」
岡部(うん……ボロい。よく生き残ってこれたな大檜山ビル)
ブラウン管工房は、相変わらず健在だった。
店内には2010年以上に暇を持て余していたミスターブラウンと思わしき人物の姿がある。
年をとったせいだろうか、少し線が細くなったような気がした。
とはいえ元気そうで何よりだ。
少し安心しつつ、俺たちはラボへと急ぐ。
今は彼と話をしている場合ではない。
ガチャリ
岡部「おぉ……」
鈴羽「どう? 26年後のラボは」
岡部「家具などは変わっているようだが……配置はあまり変えていないのだな」
岡部「それに小奇麗にしていると言った印象だ」
鈴羽「今でも母さんやあたしはお邪魔させてもらってるし」
岡部「そうなのか……しかし、由季はどこにいった? いないようだが」
鈴羽「おっかしいなー、あたしがラボを飛び出してから、そんなに時間は経ってないはずなんだけど」
鈴羽「母さーん、どこー?」
開発室やシャワールームを探しに行く鈴羽をよそに、俺はラボ内を見渡していた。
ふと棚に、ラボに似つかわしくない見慣れぬ物が──
おい……これって……。
間違いない、某修羅の国でたびたび問題視される”あれ”だ。
棚の隅で怪しい光を放つ、卵ほどの大きさのそれを見て、背筋が寒くなる。
岡部「お、おいっ……鈴羽、これって……しゅ……しゅりゅ……」
鈴羽「ん? どうしたの?」
岡部「今の日本ではこんなもの所持するのが許されるのかっ? 世紀末なのかっ? ヒャッハーなのかっ!?」
鈴羽「あぁ、これのこと?」
岡部「ば、ばかやめろ! 持つな! 爆発でもしたらどうするっ!」
鈴羽「大丈夫だってば」 ポン ポン
岡部「よ、よせ! 乱暴に扱うな!」
鈴羽「それより……どうしよう……母さん見当たらない……」
岡部「それよりって……」
岡部(2036年の日本は修羅の国に実効支配された模様、ご了承ください)
岡部「お、落ち着け、まだそうと決まったわけでは……」
岡部(そんな物を持ちながら取り乱さないでほしい、というか一旦置け!)
岡部「……なぁ、俺と親しい人間にも犯人から連絡が来ている可能性は?」
鈴羽「え?」
岡部「考えてもみろ、お前や由季はダルの家族だ、家族となれば人質としての効果は十分」
岡部「となれば……その、俺の家族とかにも接触があってもおかしくは……」
岡部(未来のことについて、詳しく聞くつもりはないが、が今はそんなことを言ってる場合ではない)
岡部(少しでも事件の真相に近づかなくては)
鈴羽「その……あたしもついひと月前に再会したばっかだから、未来の君についての詳細は知らないんだよね」
岡部「そうか……」
鈴羽「こ……恋人はいたって話だけど……」
岡部「恋人っ!?」
岡部「な、なあおい……そ、それは一体誰なのだ……?」
岡部(……聞きたいような聞きたくないような)
鈴羽「そんなこと、あたしが知るわけ無いじゃん」
鈴羽「誰だか知らないけど、とある女の人とかーなり親密な関係なんだってさ!」
岡部「なぜふてくされる!」
鈴羽「この~、あたしというものがありながら~……」
岡部「ま、待て、何の話だ!」
鈴羽「忘れたとは言わせないよ! あんなことしておきながら!」
岡部「わ、忘れるも何も、俺はまだ知覚すらしていないはずだがっ!!」
鈴羽「むー……」 ジロリ
岡部「……っ」
岡部(ヤバい、一体何をしてくれたんだ、未来の俺)
岡部「え、えっと、そのっ……あ、謝る! 謝るから!」
鈴羽「……」
鈴羽「……あっはは、ごめんごめん」
岡部「へっ?」
鈴羽「冗談だよ、冗談。君があんまり動揺してたからさ」
岡部「き、貴様……この俺にサイズハングを……」
岡部(じょ、冗談か……)
岡部(どうやらふざける余裕くらいは出てきたようだな──ってどこからどこまでが冗談なんだ?)
鈴羽「ともかく、恋人に関してはさ、父さんと母さんが話してるのを聞いただけだからあたしは知らないんだ」
岡部(恋人がいたっていうのは本当だったのか。
よかった、魔法使いにクラスチェンジしていたらどうしようかと……)
岡部(しかし……とある女……一体誰なんだ……? まゆり? もしかして紅莉栖?)
岡部「そ、そうだ! 紅莉栖! 紅莉栖に連絡を取ってみるんだ」
ツー
鈴羽「…………」
鈴羽「だめ、出ないや……」
鈴羽「母さんの携帯にもかけてみたけど、だめだった……」
岡部「くっ、こんな時に何をやっているんだ」
鈴羽「──!」
鈴羽「しっ……誰か……登ってくる」
岡部「何も聞こえないが……」
鈴羽「あたしには聞こえる」
岡部「由季が戻ってきたのでは?」
鈴羽「母さんなら足音を消して登ってきたりしないよ」
鈴羽「……隠れよう」
開発室の奥で、俺たちは息を殺し、じっと身を潜める。
カチャリ、扉が静かに開けられた。
頬を流れる汗は暑さのせいだけじゃないだろう。
──「橋田鈴羽、隠れているのは分かっている。大人しく出てこい。それと白衣の男もだ」
聞きなれないドスの聞いた男の声。しかも俺たちの存在はバレている。
どうする?
出ていっても大丈夫なのか?
何者だ?
──「タイムマシンについて話をしよう」
こいつ──
鈴羽「出ていくしか……ないみたいだね」
鈴羽は開発室から出る。それに俺も続く。
男は黒のスーツに身を包み、サングラスをかけていた。
その右手には拳銃。
ピリピリと伝わってくる殺気。どう考えても堅気の男ではない。
鈴羽「何者……」
男「タイムマシンはSERNが回収する」
岡部(SERN──!?)
俺の脳裏にゼリーマンズレポートの画像が浮かんでくる。
岡部(SERN……Zプログラム……SERN……ディストピア!)
岡部(ダメだ、タイムマシンは絶対に渡してはならない)
男「言っておくが、抵抗は無駄だ。この場所以外にも我々の仲間は散らばっている」
岡部(くそっ……何十年もの間、世界中の科学者を欺いてタイムマシン研究を行なってきた機関だ。単なる脅しではないだろう)
男「その前に」
銃口がゆっくりと俺の方へと向けられる。
男「そちらの男は必要ない」
あ……。
ヤバい、死ぬ。
あれ、でもここで俺が死んだら2036年の俺はどうなるんだ?
絶望的な状況だというのに、なぜかそんな疑問が浮かんだ。
男「……」 ピク
男「……俺が何者か、というのはどうでもいいことだ」
ピン
その時、横で何かが外れる音──
男の気が逸れる。
と同時に、鈴羽が髪に挟んであった何かを掴み、男に投げる。
男「なっ! 手榴……!?」
岡部「──!?」
ボォン
男「うおおっ!?」
頭も目の前も白、白、真っ白。
ああ、おかべよ、しんでしまうとはなさけない。
と思いきや──
鈴羽「今のうち!」 ガシッ
岡部「なぁぁっ!?」
すれ違いざまに鈴羽は男に対し──
鈴羽「でやーっ!」
ゴッ
痛烈なニーキック。
男「うっ……」
───
──
タタタタタッ
岡部「あ、あの白い煙は一体……爆発は!? 手榴弾ではなかったのか!?」
鈴羽「モアッドスネーク2nd Edition Version2.51」
岡部「は?」
鈴羽「手榴弾を模して作られた小型の超瞬感加湿器だよ、レバーを外して3秒後に無数に散りばめられた穴からボン」
鈴羽「ちなみに水を入れてレバーを取り付ければ何度でも使用可能」
岡部「はっ……はっ……そ、そうだった、のか……」
鈴羽「思ったより湿度の制御が出来ないみたいで、随分前に開発中止になっちゃったんだけどね、役に立ったよ」
鈴羽「急ごう岡部倫太郎、こうなった以上はラジ館に行って奇襲を仕掛けるか……もしくは──」
──タイムトラベル。
だがそれは最後の手段として取っておきたい。
──タイムパラドックス。
想定不能の事態が起こる可能性。
さらに、飛べば全て解決かと問われればといえば、そうでもない。
とにかくここは鈴羽の言うとおり急がなくては。
SERNはすでにタイムマシンに──場所だけだが──近づいている。
───
──
タタタタッ
岡部「はぁっ……ひぃっ……」
鈴羽「もうちょっとだから、頑張って……」
岡部「はぁっ! ふぅっ!」
タタタタタッ
岡部「先に……行って……状況を……」
岡部「すぐ……追いつくっ……」
鈴羽「わ、分かった。ラジ館の入り口前にいるから──」
岡部(体力の無さが恨めしい……)
───
──
岡部「……はっ……はっ……」
岡部「はぁっ……ふぅーっ……」
岡部「ふぅっ……着いた……鈴羽はもうとっくに着いてるはず。ヤバい、足手まといにしかなってない」
岡部「鈴羽はどこだ……?」 キョロキョロ
岡部(いた──)
岡部「すず──」
声をかけようと思ったその瞬間、鈴羽の表情が強張る。
鈴羽「──!」
──「橋田鈴羽、一緒に来てもらう」
──「騒げば……分かっていると思う、二人がどうなるか」
先ほどの男と同様、堅気らしさを感じさせない冷徹な声。
鈴羽「……二人は無事なの?」
女「それはこれからのあなた次第」
非情な脅し文句。
距離はあったがかろうじて会話の内容も聞き取ることができる。
黒いフルフェイスヘルメットのような物を被っていて、女の顔を確認することはできない。
岡部(鈴羽の背後を取るとは、あいつもSERNのエージェントか!?)
岡部(どうする……迂闊に動けば俺も……)
女「ラジ館屋上、先行してもらう」
岡部(くそっ! 鈴羽っ……!)
岡部(どうする? 人質がこの付近にいる可能性はある)
岡部(しかしこのままでは鈴羽は……)
岡部(俺たちと世界の運命、どちらを取るか──そんな選択を迫られることに……)
岡部「いや──」
そんなこと──
岡部「そんなこと、させてたまるか!」
岡部「屋上……そう言ってたな」
~4階~
岡部「静かだな……全く人が居ない」
~8階~
岡部「はぁっ……はぁっ……やはり……」
岡部「階段を一気に登るのは……はぁっ……」
屋上への階段を登り切ると、そこには二人の人間が対峙していた。
一人は鈴羽。
もう一人は変な仮面をつけている髪の長い女。
あれは確か、まゆりの好きなうーぱ。
うーぱの仮面をつけた、ふざけた女。
岡部「鈴羽っ!」
鈴羽「あっ!」
仮面の女「あら? お客さんですか」
岡部「そこの貴様! 観念するのだな!」
仮面の女「……いきなり現れて一体何なんです? 名前くらい名乗ってはいかがですか?」
岡部「ふぅん! いいだろう……」
岡部「きけい! すでに人質は解放済みだ!」
鈴羽「う、うそ! ホントに!?」
仮面の女「……」
岡部「人質と引換にタイムマシンを横取りするつもりだったんだろうがそうはいかん!」
仮面の女「どうやったんですか?」
岡部「タイムマシンを使えばいくらでも可能だ! 時間を支配するとはそういうことだフゥーハハハ!!」
鈴羽「……」
仮面の女「…………」
岡部「フッ……」
岡部(サイズハング。効け……効いてくれ、騙されろ)
岡部「まさかあのような場所に監禁しているとはな、手間取ったぞ」
岡部「だぁが、時間を支配するこの狂気のマッドサイエンティスト、鳳凰院凶真に不可能はなぁい!!」
岡部(どうだ? ボロを出してくれれば、そこからなんとか──)
仮面の女「ふむん」
仮面の女「つくならもうちょっとマシな嘘をついてください」
岡部「……っ!?」
岡部(バレた!?)
仮面の女「私知っていますから、タイムマシンで近い過去や未来に飛ぶのを禁止されていること」
鈴羽「くっ……」
仮面の女「人質が解放されていないこともです、部下に確認するまでもありません」
岡部(まずい。しくじった……か?)
仮面の女「それとあなた達が、随分昔からSERNにハッキングをしかけていたことも知っています」
岡部「なっ……」
岡部(どうする……)
岡部「う、嘘だと思うのならば部下に電話して聞いてみるがいい!」
仮面の女「だから、確認するまでもないって言ったじゃないですか」
仮面の女「第一、過去に飛んだとしたらまず誘拐が起きないようにしますよね、はい論破」
岡部(くそ! やはりパラドックスが起きるのを覚悟で飛ぶべきだったか?)
岡部(こうなったら強引にでもこいつを人質にして──)
岡部(大丈夫だ、相手は細身の女……俺でもいける……!)
岡部「おぉぉっ──」
鈴羽「あっ! だめ!」
ガシッ
岡部「うぐぁっ」
岡部(なんだ? 何が起こった?)
顔を起こして後ろを見ると、俺の背後の空間が歪んでいる。
似たような映像を見たことがあった。
透明なバケモノが一人ずつ人間を殺していき、最後には自爆する映画のワンシーン。
くそ、もう一人いやがった!
鈴羽「くっ!」
仮面の女「あなたはそこでじっとしていてください」
岡部「くそっ!」
仮面の女「さて、話を戻しましょう」
鈴羽「……っ」
仮面の女「タイムマシンはどこです?」
岡部「鈴羽! やめろ──うぐっ、もがが!」
仮面の女「黙っていてください」
仮面の女「さあ早く」
仮面の女「……言わなければ……わかりますよね?」
鈴羽「答えて!」
仮面の女「一人はあなたのパパなんでしょう? ダメですよ、パパは大事にしないと」
鈴羽「……くっ」
鈴羽「本当に……タイムマシンを渡せば解放してくれるの?」
ダメだ。
仮面の女「ええ、もちろんです、約束します」
やめろ。
仮面の女「ですが──」
鈴羽「なっ……!? そんな! 話が違う!」
仮面の女「悪く思わないでください。二人とも解放してしまっては、再びタイムマシンを開発されてしまう恐れがありますので」
鈴羽「そんなことさせない! させないから……」
仮面の女「だめです」
仮面の女「あぁ……でしたら、選んでください」
鈴羽「……え?」
仮面の女「橋田至か岡部倫太郎、どちらを解放するのか。あなたに選択権を差し上げます」
鈴羽「そんな……」
仮面の女「安心してください。命までは取りません。……二度と日本の土を踏むことはないでしょうが」
仮面の女「じっくり考えてくださって結構ですよ、それこそ時間はたっぷりありますから」
鈴羽「……っ」
鈴羽は顔をうつむかせ、拳を震わせている。
くそ、なんでだよ、なんでこんなことさせるんだよ。
岡部「もがっ……!」
グググッ
岡部「うぐっ……!」
鈴羽「…………」 チラッ
岡部「むぐぐっ……!!」
鈴羽「ふー……」
仮面の女「決まりましたか?」
鈴羽「うん、決めた」
仮面の女「……どっちを……助けますか?」
鈴羽「あたしは……」
仮面の女「……わがままが通じる状況だとでも?」
鈴羽「岡部倫太郎は大切な人。あたしの存在が消失してしまいそうになった時、あたしを信じて力を貸してくれた」
鈴羽「父さんはあたしを育ててくれて、愛してくれて……父さんのおかげで大切な人と巡りあうことができた」
鈴羽「どっちも見捨てるなんて、できない」
鈴羽「どちらか一人を選択するなんて、できない
鈴羽「あたしはどっちも助けてみせる。助けだしてみせる!」
仮面の女「……どうするつもり?」
鈴羽「実のところ少しだけ迷ってたんだー、でもおかげで吹っ切れたよ」
鈴羽「二人とも助けて、世界も君たちの好きにはさせない。迷ったら攻める! 戦士だからね!」
まさか──
鈴羽「世界線を変えることができれば……」
タイムマシンで──
鈴羽「ごめんね……岡部倫太郎、君を巻き込んじゃって。……励ましてくれたことすごく嬉しかったよ」
鈴羽「きっと変えてみせるから」
鈴羽「ちゃんと迎えに来るから」
鈴羽「見てて、岡部倫太郎!」
岡部「──っ」
そう言い終えた鈴羽は弾かれたように飛び出し、下の階へと姿を消した。
あのバカ。
肝心なところで抜けてるくせに、一人で戦おうとするな。
パラドックスが怖くないのかよ、自分が消えるかもしれないんだぞ。
何が巻き込んじゃってごめんだ、お前に振り回されるのは二度目だ、そんなのちっとも苦じゃない。
仮面の女「はー……やれやれ」
仮面の女「バカですねえ」
岡部(なに──?)
仮面の女「あれじゃ今から”タイムマシンを使います”って言ってるようなものじゃないですか」
岡部(しまった、本当の狙いはそっちか! だとすると用済みになってしまえば鈴羽は──)
岡部「うおおっ!」 ググッ
──「う──っ!?」
体が勝手に動いていた。
俺を押し伏せていた奴は油断していたのだろう。拘束は意外にも簡単に解けた。
岡部(早くタイムマシンの元へ、鈴羽の元へ──!)
岡部「だめだ鈴羽……!!」
カツカツカツカツ
岡部「はっ……はっ……」
カツカツカツカツ
岡部(頼む、間に合ってくれ!!)
カツカツカツカツ
カツカツカツ
パン
──銃声。
カツカツ ダッ
岡部「鈴──!」
まず視界に飛び込んできたのは先ほどのフルフェイスヘルメットを被った女の後ろ姿。
そして鈴羽。
左胸に赤い花を咲かせながらゆっくりと力なく倒れていく鈴羽。
その奥でタイムマシンが色を取り戻していた。
女の横を素通りし鈴羽の元へ駆け寄る。
銃を持っていたがそんなもの関係ない。
ガシッ
岡部「おい、しっかりしろ!」
鈴羽「う……」
岡部「傷口は……」
岡部(ダメだ、血がどんどん溢れてきている)
岡部(これではもう……)
鈴羽「……」
岡部「おい、目を開けろよ……」
岡部「お前は戦士だろ?」
岡部「こんな所で眠っていたらだめだ……ろ」
女はヘルメットに手をかけ、ゆっくりと持ち上げる。
ヘルメットに隠されていたその顔は──
岡部「桐生……萌郁!?」
26年の歳月が現れていたものの、面影はあった。
まとめられた金髪。
何を考えているか読めない表情。
岡部(こいつ……SERNとつながってたのかよ……バカだ……俺は)
鈴羽「ごめん……」
岡部「っ! 鈴羽!」
鈴羽「ご……ごめんね、失敗した……」
岡部「もういい喋るな!」
鈴羽「ホントに……ごめん……巻き……込んじゃって」
岡部(タイムマシンを使って──!)
岡部「世界がどうなろうと……知ったこっちゃない」
岡部(パラドックス? そんなのどうだっていい──)
岡部「俺はお前を助ける……!」
そうだ、こんなことあっていいはずがない。
罰を受けるべきなのは俺の方だ。
SERNにハッキングを仕掛けなければよかった。
タイムマシンを作ろうなんて思わなければよかった。
悪いのは俺なのだからここで鈴羽が死んでいいはずがない。
萌郁「……ごめんね、岡部くん」
岡部(何がごめんだ、謝るくらいならなんでこんなこと)
顔を上げ、萌郁の顔を睨みつける。
罪悪感からか、萌郁の眉がハの字になっていた。
俺の視点は萌郁の顔一点の集中する。
鈴羽を撃ちやがったこの憎い女の顔一点のみ。
だが──
ふと視界の端に──
よく見ると萌郁がプラカードを持っている。
リ……キ……ッ……ド
は? 液体?
いや、これは──
ドッキリ──
岡部「は?」
鈴羽「あ、あはは……」
岡部「す、鈴羽!? は!? え!?」
岡部(な、何が何だか分からない)
岡部「おい、なんだよこれ」
萌郁「ドッキリ……」
「「「「大成功ーっ!!」」」」
と同時に物陰からわらわらと人が出てくる。
な。
な。
な。
岡部「なんだよこれぇ!!」
仮面の女が部屋に入ってくる。
岡部(もしかして──)
紅莉栖「まったく、壁殴り代行お願いします、2時間1万円コースで」
まゆり「ふぅーっ。ごめんねー、オカリン。痛かった?」
──仮面を外した紅莉栖、多分。それと変なスーツを着た、まゆり。
るか「ええ、ちょ、ちょっとやりすぎだったような気がしますけど、とってもドキドキしました」
──フェイリスとルカ子、さん。
岡部「鈴羽、これは一体……」
鈴羽「それが、あたしがこの部屋に入ったらさ、父さんと萌姉さんがいて……」
鈴羽「”誘拐は狂言、撃たれたフリして倒れていろ、計画の最終段階だ”って言われて……」
鈴羽「すっごくびっくりしたんだけど、ドッキリのプラカード見せられて……あの……あはははは……」
ダル「鈴羽ぁ! 僕は嬉しい、嬉しいぞぉぉ! オカリンでFAって、即答されたらどうしようかとぉ!」
由季「でもこれで二人の想いが本物だって、分かったでしょ? だからあたしは最初からそうだって言ったのにー」
ダル「うん、これはもう……認めざるを得ないかもわからんね……つか若いころのオカリン懐ー! 思い出が蘇るお」
由季「お父さん、口調口調」
ダル「ふひひ、サーセン!」
──ダルと由季、さん。
萌郁「ちなみに、屋上の様子は、タケコプカメラー3rd Edition ver1.02で生中継だった」
萌郁「外の筒と内部のカメラは、それぞれ独立した動きが可能」
萌郁「つまり一つの物体としては高速回転してるものの、中のカメラ自体は回転しておらず、空中からの撮影が可能」
萌郁「ちなみに回転と同時に電極に高電圧が掛かり、イオンエンジンの上昇力で長時間の浮遊が可能、よ」
鈴羽「ちょ……みんな見てたってことぉ!?」
岡部「いや、そんなことよりもこれは……」
鈴羽「そうだよー! て、てゆーかなんなのさ! 説明を要求するーっ!」
岡部「そうだそうだっ!!」
由季「ごめんね鈴羽、岡部くん。お父さんがあなたたちの想いを確かめたいっていうから、二人が企画して……」
ダル「企画・僕、オカリン。脚本・ルカ氏。演出・オカリン。演技指導・フェイリスたん。衣装提供・まゆ氏。キャスト・他三名」
鈴羽「み、みんなグルだったってことーっ!?」
ダル「一ヶ月くらい前だっけか。いきなり”鈴羽を嫁にもらっていくぞフゥーハハハ!”って──」
鈴羽「ちょっ!?」
岡部「はぁーん……?」
ダル「なんの冗談かと思ったら本気だったとかもうね」
由季「あはは……あの時は二人とも大げんかしちゃって大変だったよね」
ダル「いくらオカリンとはいえ──つかオカリンだからこそ許せない! 絶対にだ!」
ダル「……そう思ってた時期が僕にもありますた……」
紅莉栖「ってことは許すの? 結婚」
ダル「まぁ、あんだけラブチュッチュを見せつけられたらもうね……」
鈴羽「え、え!? ちょっ……ま、まだ早いってっ!」
由季「照れなくてもいいのよ?」
ダル「あぁ……あんなにパパとラブラブだった鈴羽が……」
紅莉栖「ちょ、橋田キモい」
ダル「どしたん?」
岡部「その……撃たれた鈴羽の左胸からは間違いなく血が飛び出してきていたが」
ダル「ちょ、胸とか言うなし!」
萌郁「それはこの、サイリウム・ガンで……」
萌郁「弾は血糊入り、着弾と同時に衣服や肌に付着」
萌郁「着弾の際に先端部分が潰れ、弾のから血糊が流れでる仕組みになっている」
萌郁「あたかも銃に撃たれて出血したかのような演出を可能にする」
ダル「どう? 結構なクオリティだったっしょ?」
これでもかというほどのドヤ顔。
このオヤジ、殴りたい……。
鈴羽「父さんも……! このっこのっ!」 ポカポカ
ダル「ふひ、ふひひ」
ワイワイ。
ワイワイ。
なんだ。
なんだなんだ。
結局、俺はまたしてもこの橋田一家に振り回されていただけというわけか。
良かった、誘拐された俺たちも銃で撃たれた鈴羽もいなかったんだ。
良かった良かった。
岡部(んなわけあるか!)
岡部「きぃさぁまぁらぁぁ!!」
ダル「うおぅ、オカリンが怒った!」
───
──
ダル「もう帰っちゃうん?」
岡部「ぅあーたり前だ」
ダル「もうちょっとゆっくりしていけばいいのに」
岡部「26年後の世界などもうこりごりだ」
由季「あはは……ごめんね、心配かけちゃって」
岡部「い、いえ……」
紅莉栖「あら、未来のママに対してはつつましいのね、こっちはパパよ?」
岡部「うぅるさい! このっ! ノリノリ天才変態熟女めっ!」
紅莉栖「なっ──熟っ!? ちょ!」
岡部「2010年に帰ったら、貴様の小ジワが増えるたびにほくそ笑んでくれるわフゥーハハハ!」
紅莉栖「それ以上言ったら2036年があんたの命日になるから……」
由季「そうそう、一番に頼る人が過去の岡部くんだなんてね」
鈴羽「や、やめてよ二人とも! あの時は本当に頭が真っ白で……」
岡部「しかしまゆりは本当に年を取ってるのか? 随分と若々しく見えるが」
まゆり「やだなぁもう、オカリンってば」
岡部「もしや波紋の使い手っ……存在したのか!」
岡部「……」 チラッ
岡部「それにひきかえ助手ときたら……」
紅莉栖「う、うっさい! 私はアンチエイジングに否定的なの! 相応に歳を重ねていきたいだけなの!」
岡部「フン、増やすのは脳のシワだけで十分だと思うがな」
紅莉栖「……やっぱり今のうちに殺して世界線を変えとくべきみたいね」
岡部「この狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真をまんまと出し抜くとはな……恐れいったぞ」
留未穂「とかいって結構楽しんでたよね♪」
るか「そ、それは、ええっと……」
岡部「時にフェイリス、お前……その口調は……」
フェイリス「ぎにゃああ、その名で呼ぶのはやめるのニャー!!」
紅莉栖「留未穂さん、口調口調」
鈴羽「だっ、だからそれはっ……」
紅莉栖「おかげで計画が変更……私の見せ場が……」
まゆり「ホントはねー、屋上でクリスちゃんがうーぱの仮面を外して、ばばーん! ってする予定だったんだよ~」
紅莉栖「でも、正直うーぱの仮面はセンスを疑うわー……」
まゆり「えー? そんなことないよぉ」
るか「でも岡部さんが”過去の俺の想いも見てくれればダルも納得する”って言って、急遽シナリオを変更したんですよね」
萌郁「あれにはびっくりした、岡部くんの言う通りに事が運ぶんだもん」
岡部「気のせいか……かなり流暢にしゃべるようになったのだな、シャイニングフィンガーよ」
萌郁「あははっ、そんな風に呼ばれたの久しぶり、懐かしい」
萌郁「岡部くんなら途中で”機関の陰謀を阻止する”とか言ってどっか行っちゃったよ」
紅莉栖「過去の自分を見て、厨二病再発ですねわかります」
岡部「貴様こそ、26年経った今でも@ちゃん用語とはな」
紅莉栖「う、うっさい!」
ダル「まっ、二人が接触しちゃうとタイムパラドックスが生じる危険性が微レ存」
紅莉栖「しっかし……こうやって若いころの岡部を見てると……2010年のラボを思い出すわね」
ダル「あ、あの時のことはもう思い出したくないのだぜ……」
まゆり「大変だったもんね~」
ダルがうなだれる。
ふむ。
ということはこいつ、知っているようだな。
自分の娘に惚れたこと──
自分の娘に罵倒され、快感を得たことも──
新しく好きな女が出来たから君とは付き合えない、キリッ、と自分の娘をフッたことも──
それを知った日、枕に顔を埋めてぐりぐりしたに違いないフゥーハハハ!
鈴羽「あたしにとっては、一ヶ月前、岡部倫太郎にとっては三日前のことなんだよね」
鈴羽「まるであたし達だけ時間が止まったみたいだよね」
紅莉栖「……はいはいマグママグマ」
───
──
鈴羽「それじゃ、2010年まで送っていくね」
岡部「あぁ、頼む」
まゆり「オーカリーン、またねー」
るか「お体を大事にしてくださいね」
留未穂「過去の私に……ニャ、ニャンニャン語を封印するよう、言ってくれると助かります……」
萌郁「騙してごめんね、岡部くん」
紅莉栖「中でイチャイチャすんなよ? ラブホじゃないんだからな」
ダル「許さない、絶対にだ」
由季「はいはい、よしよし」
岡部(こいつら……好き放題言いやがって)
鈴羽「あ、あはは……」
鈴羽「いやぁ、それにしても……なんて言ったらいいのか」
岡部「……」
鈴羽「ごめんっ! ホントにごめんね!」
鈴羽が手を合わせて、頭を下げてくる。
茶番に巻き込んだことだろうか、ドッキリに加担したことだろうか。
あるいは両方か。
急にあの場面が思い浮かんで、少し照れくさかかった。
岡部「あ、案ずるな、相手は未来の鳳凰院凶真なのだ。これも必然というやつだ」
それにしても未来の俺め、随分と手のこんだことをしてくれる。
俺や鈴羽がどう行動するか、まるで分かってたみたいじゃないか。
ああ……。
そうか、きっと未来の俺も同じ目にあったんだな。
岡部「あぁ」
鈴羽「起動完了っと」 ポチッ
鈴羽「2010年へのタイムトラベルは、行きと同じく6時間くらいかかるからゆっくりしててよ」
岡部「6時間……」
岡部(6時間か、やはり長い。でもようやく解放された気分だ)
岡部「ふー……」
岡部(ずっと緊張していたせいかどっと疲れが出てきた)
岡部(にしてもこいつはあまり疲れてないように見えるが……)
岡部(……やはりよく訓練されているのだろうな)
岡部「……」 チラッ
鈴羽「ん? どしたの?」 ニコニコ
鈴羽と目が合う──が。
思わず目をそらしてしまう。
うわっ、なんだこれ。
鈴羽「エヘヘ」
岡部「な、何を見ている! あまりジロジロ見るんじゃない!」
鈴羽「えー? だって、向かい合わせで座ってるんだからしょうがないじゃん」
岡部「ぐぬぬっ……」
岡部「おっ……俺だ! 今強烈な精神攻撃を受けている! あぁ……相手は俺の魔眼と対をなす邪眼の持ち主だ」
岡部「その邪眼に魅入られし者は、現実と夢との区別がつかなくなるのだぁぁ」
岡部「し、心配はいらない、1分後にまた連絡する、エル・プサイ・コングルゥ」
夢は見れたかよ。
鈴羽「前から気になってたんだけどさ。それってどこに電話してるの? というか今つながらないよね」
おのれ野暮なことを。
電波はつながらなくとも、心でつながっているのだ。
定時報告に水を差されたせいか、上手く思考が働かない。
話す内容が浮かんでこない。
こいつに抱いていた感情は、ダルのように父性愛、そう思っていたはずだが。
こ、これはもしや──
いや、そんなまさか。
岡部「……っ」 チラッ
だめだ! 娘(仮)の顔もまともに見れん父親がどこにいるっ!
認めよう、俺はこいつのことを──
こいつに──
鈴羽「あっはは、どうしちゃったの? 今の君、怪人百面相、って感じだよ」
苦悩する俺などどこ吹く風、鈴羽は相変わらず満面の笑み。
行きよりもずっと時間が長く感じる。
今だけはアインシュタインに文句を言いたい気分だ。
───
──
はじめは無限のように思われた時間も、一度平静を取り戻せばなんのことはない。
タイムマシン内にだけ存在した時間は、あっという今に過ぎていった。
というか、寝てた。
~ラジ館屋上~
岡部「戻ってきたか……わざわざ送ってもらってすまなかったな」
鈴羽「いや、連れてきちゃったのはあたしだし……ね」
鈴羽「…………」
鈴羽「ねえ、リンリンはなんであんなことしたのかな」
岡部「……ダルに俺たちの仲を認めさせる、だろう?」
鈴羽「……」
鈴羽「……もうちょっとだけこの時代に留まろうかな」
岡部「え? あ、あぁ……どうせ跳躍する先は同じなのだから、いいのではないか?」
俺は鈴羽が未来に帰った後のことを考えていた。
しばらくこいつに振り回されることもないと思うと、複雑な気持ちだ。
ふと視線を横にやる。
こいつは今、何を思っているんだろうか。
そんな俺の思いを察したのか──
鈴羽「……待ってるんだよ」
岡部(待ってる? 何をだ!?)
岡部(ま、まさか男を見せる時が来たのか?)
岡部(いやしかし……)
岡部(お、落ち着け俺! 素数だ、素数を数えるんだ。2,3,5,7,9……)
岡部(いや、9は違うだろっ!)
岡部(67,71,73,79……)
岡部(101,103,107,109…………)
岡部(…………151……初代ボケモンって151匹だったよな確か……)
岡部「なあ、2036年だとボケモンってどのくらいに……」
岡部(じゃなくて!)
鈴羽「?」
岡部(ええい……!)
定時報告。
決して逃げたのではない、フゥーハハハ。
とその時──
ブーブー
岡部「うわぉぁっ!?」
岡部「なんだ、メール……か。全く、空気を読めんメールだ」
鈴羽「……」
ピッピ ピッ
09/20 18:26
From:sg-spk@jtk93.x29.jp
Sub:
本文なし。
※添付ファイル二つあり。
岡部「まさか──」
鈴羽が跳躍する日時を間違えた?
いや──
岡部「Dメール……か!?」
鈴羽「……」
ピッ
恐る恐る1つ目の添付ファイルを開いてみると、ムービーが再生された。
『…………』
『初めましてだな、26年前の俺』
『俺は2036年から、このムービーメールを送っている』
岡部「未来の俺……なのか」
鈴羽「やっぱり……なんとなく来るような気がしてた」
『このメールを受け取ったということは、鈴羽と共に2036年に跳躍し、2010年に戻ってきた、そうだな』
『なぜ俺たちが、いや、俺が誘拐などという狂言を仕組んだか分かるか?』
『必要なことだったからだ』
『そう──26年前に俺が観測した2036年では”実際に誘拐は起きた”』
『タイムマシン開発の中心人物という理由で、未来の俺やダル、紅莉栖はSERNに拉致された、そして俺は鈴羽に連れられタイムトラベル』
岡部「まさか──」
『ここまで言えば分かるだろう』
『俺たちはSERNから人質を解放するために動き──』
『最終的に鈴羽は……SERNのエージェント、ラウンダーである桐生萌郁の凶弾によって倒れた』
『辛かっただろう、胸が引き裂かれそうだったろう』
『お前の気持ちはよく分かる。お前は俺だからな』
『だが、悲哀の他にもう一つの想いがお前の中で芽生えたはずだ』
岡部(そう……あの時俺は、何としてでも鈴羽を助けようと思った)
『銃弾を受けながらもタイムマシンに乗り込むことが出来た俺は、鈴羽を助けるためにあらゆる方法を試すことになる』
『誘拐の計画を邪魔した。SERNにクラッキングを仕掛けて重大なエラーを起こさせた。萌郁を殺そうとしたこともあった』
『しかしアトラクタフィールドの壁が俺に立ちはだかった』
『皮肉な話だ、銃弾を受けても致命傷とならなかったのもそのおかげだったのだろう』
『世界線の収束、確定した事実、回避不可能』
『Dメールによる過去改変も考えた、しかし不確定要素が強すぎるDメールを使おうという気になれなかったのだ』
『いつしかFG204の燃料は尽きかけていた──俺の体力や気力と同じように』
『2010年に戻った傷だらけの俺を支えてくれたのはラボのみんな──』
『その中にはラウンダー、桐生萌郁もいた。萌郁を見るたびに俺の心に怒りの炎が灯った』
『しかし──それと同時に鈴羽を助けたいと強く願う気持ちも蘇ったのだ』
『やがて俺は思いつくこととなる、今回の計画を──』
『SERNへのハッキングを続行──ラウンダーの動向を探り、桐生萌郁を懐柔』
『同時に会社を立ち上げ、ダルや紅莉栖とともにタイムマシンの開発』
『俺はお前を騙した、世界を騙したのだ』
『因果は成立した』
誘拐事件──狂言ではあるが──の果てに凶弾に倒れる鈴羽。
タイムマシンに乗る俺。
世界から……2036年から姿を消す鈴羽。
そして何より、鈴羽を救おうと強く願った俺。
『だが……世界線が変動したわけではない、俺のリーディングシュタイナーは”まだ”発動していない』
『これからお前には、俺が過ごした26年を過ごしてもらわねばならない』
『26年もの間お前を縛ることになる、確定した未来を過ごさせることになる』
『そのことついても大変申し訳なく思っている』
『しかし、それは俺やダルや由季、鈴羽のためであり、何よりお前のためでもある。それを分かってくれ』
『お前が倒れた鈴羽を抱きかかえながら感じたあの気持ち、それによって引き起こされた”鈴羽を救いたい”という執念』
『その意志を次のお前に託して欲しい』
『本来は禁則事項だが、お前の負担を少しでも軽くするためにタイムトラベルの理論についてのデータを添付する』
『俺は2036年から戻る際に乗ってきたFG204を元にタイムトラベル理論を完成させたが、お前にはそれがないからな』
『…………』
『これにてオペレーション・シェブン第二段階コンプリート……と同時に、オペレーション・シェブン第二段階の概要説明を終了とする』
『もっとも、SERNとの戦いが終わったわけではない』
『2036年でラボを襲った男は我が社の人間だ。……SERNのスパイだったようだな、恐ろしい思いをさせてすまない』
鈴羽「どこかで見覚えあると思ったら……」
『まだまだ安心はできないということだ……だが俺は、必ず奴らの野望を打ち砕いてやる』
『……それでは、そちらも健闘を祈る』
『エル──』
『プサイ──』
『コングルゥ──』
鈴羽「……」
岡部「は、はは……何をやっているんだ俺は……44にもなって……まるで厨二病──」
鈴羽「やっぱり……」
鈴羽「……やっぱり君はあたしを助けてくれたんだね……」
鈴羽「2010年の時も……2036年でも」
岡部「……そ、そのようだな」
鈴羽「……ねえ、岡部倫太郎」
岡部「ん?」
鈴羽「未来の君が言うにはさ、世界は多世界解釈で成り立ってるわけじゃないらしいんだ」
岡部「……?」
鈴羽「今こうしてあたしたちがここにいる世界は二人の主観として、確かに存在する」
鈴羽「でもさ……もしあたしが2036年に戻ってしまったらどうなるのかな」
鈴羽「君にとっての主観の世界が正しいんだとしたら、2036年に戻った時点であたしは消失することになる」
鈴羽「逆にあたしにとっての主観……いや、2036年の君にとっての主観の世界こそが正しいのだとしたら、今の君が消失しちゃうのかなぁ……」
鈴羽「それって……すごく悲しいよね……」
岡部「そんな……はずは……。消えるわけ……無いと思うが」
岡部「お、俺にはちゃんと今まで生きてきた記憶がある。そしてそれはこれからも続く──そのはずだ」
岡部「お前にだって2036年まで生きてきた軌跡があり、その記憶もあるはず……そうだろ?」
鈴羽「そうなんだよね……。2017年に産まれて今まで、あたしは橋田鈴羽として生きてきた……」
鈴羽「もちろん、全部覚えてる訳じゃないけど、今までの18年間であったことを思い出せる」
鈴羽「でも……世界線が変わることで記憶が再構築されるなんて、神がかり的な現象があるんだとしたら……」
鈴羽「あたしの今までって”世界によって作られた記憶──作られたあたし”なんじゃないかなぁって……」
鈴羽「そんなあたしは”2010年にタイムトラベルしてきたと世界に承認されたことで”ようやく自我を持つことができた!! ……とかさ」
岡部「……」
鈴羽「あーもう! なんだかこんがらがってきちゃったや!」
岡部「言わんとしてることはなんとなくわかるが……」
鈴羽「ずっと……」
岡部「え?」
鈴羽「ずっとここにいようかな……」
岡部「お、おい……だが……」
鈴羽「……」
鈴羽「2036年には戻らず……ずっとここに……君のそばに……」
……そうか。
不安なのだな。
もしかしたら自分が消えてしまうかもしれない。
その恐怖に怯えているのだな。
だとしたら俺は──
岡部「え?」
鈴羽が胸に頭を押し付けてくる。
岡部「なぜ謝る……」
鈴羽「君に悲しい思いをさせてしまった……、君をこれから26年間縛り付けてしまう」
鈴羽「それだけじゃない、未来の君をずっと……ずっと縛り付けてきたんだあたしは……」
鈴羽「バカだバカだ、何がタイムトラベラーだ……あたしが過去になんて飛ばなかったら……」
鈴羽「知らなければよかった」
鈴羽「……いや知れてよかった。君に謝ることができてよかった……」
鈴羽「君のそばにいてあげたい……」
鈴羽「あたしは……どうしたら良いのか……わかんない、わかんないよ岡部倫太郎……」
あぁ──そうか。
不安だったんじゃない。
消えるのが怖かったんじゃない。
こいつは──
2010年の俺。
2036年の俺。
どちらの俺にも孤独と戦う日々を味あわせたくなかったんだな。
岡部「泣いて……いるのか?」
鈴羽「ごめん、ごめんね……」
全く……抜けているかと思いきや勘が鋭かったり。
強い意志を持っているかと思いきや泣き虫だったり。
岡部「フッ……案ずるな、お前は何も心配しなくていい、全て”俺”が決めたこと、そうだろう?」
岡部「お前は……戻るのだ──お前の両親や、お前を助けた”俺”がいた時代へと……」
鈴羽「で、でも……」
岡部「2036年こそ、お前の生きる場所なのだから」
鈴羽「でも! ……これから君は26年間、あたしのいない世界であたしのために……」
鈴羽「そんなの……そんなのって……」
鈴羽「そんな君を残して未来へ帰るなんて……」
岡部「…………」
やれやれ。
やはり世話のやける……。
岡部「泣くなバイト戦士ぃ!」
鈴羽「……え?」
岡部「SERNとの戦いは! まだ終焉を迎えたわけではなぁい!」
岡部「フゥーハハハ、自惚れるな! 貴様のためだけに送る26年間ではないのだっ!」
鈴羽「岡部倫太郎……」
岡部「……それに、こっちにはラボのみんなだっている。それまで上手くやっていくさ」
岡部「だから……お前は向こうの俺を支えてやってくれ」
鈴羽「……」
岡部「お前は戦士なのだろう?」
ガシガシと、少しクセのある髪を撫でてやる。
鈴羽「…………」
鈴羽「そうだね……そうだよね」
鈴羽「あはは、君にはホント、元気……もらってばっかり、だよ」
目には涙──
が、先ほどの思いつめた表情とうってかわって眩しそうに笑う鈴羽。
鈴羽「ありがと、岡部倫太郎」
岡部「フッ、笑っている方がお前らし──」
突然──
柔らかい感触が電流となって走り、脳髄を麻痺させる。
小鳥がついばむようなキス。
今度は唇だった。
鈴羽「エヘヘ。あたしのこと忘れないようにっておまじない!」
鈴羽「あっはは、……リンリンにバレたらヤキモチ妬いちゃうかな」
どうなんだろうか。
今の俺は2036年で、鈴羽が2010年で、あああ、頭が働かない。
岡部「あ、あぁ……向こうの俺にも宜しく伝えてくれ」
タイムマシンに乗り込んだ鈴羽は、俺に一瞥すると──
鈴羽「ありがと」
岡部「……ああ」
鈴羽「さよなら」
数秒後、光がタイムマシンを包みこむように輝き──
そこにあったタイムマシンは、跡形もなく消えてしまっていた。
突如──
周りの景色が琥珀色に包まれ、ぐにゃぐにゃと揺れ始める。
平衡感覚は失われ、立っていられなくなり──
岡部「うっ!?」
岡部「これは……リーディングシュタイナー!?」
どういうことだ……もしや世界線が変動した?
岡部「……」
岡部「…………」
岡部「ふむ、よく考えてみればなんら不思議なことではない」
岡部「世界から殺される運命だった鈴羽が、再び無事に2036年に戻ったことにより世界線が変動した。こんなところだろう」
岡部「そしてその世界線では鈴羽はずっと笑って過ごしている」
で、いいんだよな?
そうに決まっている。
しかし──
アトラクタフィールドの収束、SERN、ラウンダーの萌郁。
俺は実際に、それらを観測した訳じゃないから実感は湧かない。
世界が収束するというのなら、一度会った後、再び鈴羽と会うのは随分先になるのだろうな。
正直に言うと少し寂しい。
とはいえ、他でもない未来の俺からの頼みでもある。
やってやるさ。
それがシュタインズゲートの選択だというのならな。
どうせならばSERNを徹底的に壊滅……いや、逆にこの鳳凰院凶真が牛耳ってくれようか。
うむ、悪くない。
世間を欺く国際研究機関の影の支配者、実にマッドだ。
だが……。
まずすべきことは──
岡部「ん……?」
今、何か──
ドーン
突然起こった、壮絶な爆音。
同時に視界が真っ白になる。
何が起こった?
これは、まさか。
いや、でもそんなはずは──
少しずつ視界が元通りになり──
目の前にはタイムマシン。
鈴羽「…………っ」
岡部「鈴羽ぁ!?」
というか様子がおかしい。
鈴羽「うぅー……」
なんだよ、なんでそんな怪訝そうな顔で俺を見るんだ。
というか、睨まれてる?
鈴羽「……」
岡部「一体どうして……」
鈴羽「どうしたもこうしたもないよっ!」
鈴羽「萌姉さんがリンリンは渡さないって言うんだよー!」
岡部「……」
岡部「は?」
岡部「な、な、なんだとぅ!?」
鈴羽「覚悟してよね、リンリン!」
岡部「と、と言うことはその格好は……」
鈴羽「まゆ姉さんから借りてきたコスプレ衣装!」
岡部「ま、待て!」
岡部「そ、そんなことせんでも俺はお前のことを──」
鈴羽「問答無用ーっ!」
鈴羽「さぁ、覚悟ーっ!」 ダキッ
岡部「お、お、おぁ……」
岡部「未来へ……か」
鈴羽「リンリーン!」
岡部「か……か……帰れーっ!」
一ヶ月後──
2010年 9月20日
あのあと一日中、俺にベッタリな鈴羽であったが……。
結局、翌日には実に満足気な顔を浮かべて未来へ帰っていった。
『君の想いはちゃんと伝わったよ。これでもう大丈夫だね!』
『だから最初からそう言っていただろう! お、俺はお前のことが……す、好き、好きだ、と……』
『あ、改めて言われると照れるってば……』
『う、うるさい! お前が言わせたようなものだろう……』
『あっはは、そうだったね』
『あぁ……元気でな』
『……』
『……』
『き……』
『……?』
『き……き……』
『き?』
『き……君に一生萌え萌えキュン!』
その瞬間、ハッチが閉じ──数秒後にはタイムマシンは光の中へと消えていった。
あの時、鈴羽がどんな顔をしていたのかよく確認できなかった、が大方の予想はつく。
しかし、二度ならず三度までも不意打ちとはな。
最後の最後まであいつはこの俺を振り回してくれた。
岡部「ふふ……」
まゆり「あれー? オカリン嬉しそうだねー、えっへへー」
紅莉栖「岡部、あんた何一人でニヤついてんの? 気持ち悪いわよ」
岡部「うるさいぞうーぱ仮面」
紅莉栖「う? は──はぁー!?」
まゆり「えー? クリスちゃんうーぱのお面持ってるのー? 見せて見せてー?」
紅莉栖「も、持ってないわよ! つーか変な呼び名増やすなこのバカ岡部っ!」
ブーブー
岡部「ん? メールか?」
ピッピッ
09/23 19:08
From:skyclad2036@egweb.ne.jp
Sub:
本文:これくらいはいいよね!
※添付ファイル一件。
これは……もしや?
ピッピッ
岡部「ぶふぉっ!?」
写っていたのは未来の俺と──
見ているこっちの顔が綻んでしまいそうになるほどの笑顔の鈴羽──
あ、あいつめ。
またしてもやってくれる。
まゆり・紅莉栖「?」
岡部「マイフェイバリットライト──、ま、マイファーザーダール!!」
ダル「はぁ? なんぞ?」
岡部「ダル! 今すぐ電話レンジ(仮)の改良にとりかかるぞ!」
ダル「どしたん急に……つかファザー? ハカーの間違い?」
岡部「細かいことはどうでもいい! とにかく改良だ!」
ダル「僕は積みゲーを消化するのに忙しいわけだが」
岡部「至急頼む! 報酬はポテチ一ヶ月分だ!」
ダル「いやどす」
岡部「今なら0カロリーのコーラもつけてやる、すぐに取り掛かってくれるな?」
ダル「いいですとも!」
ついにこの時が来たのだ。
フフフ、バイト戦士め、この狂気のマッドサイエンティスト鳳凰院凶真。
やられっぱなしで終わると思うなよ!
ピッピッピ
ピッ
Dメール──
届け──
To:skyclad2036@egweb.ne.jp
sub:
本文:鈴羽、誕生日
おめでとう
岡部倫太郎
2036年9月27日の鈴羽の元へ──
見てくれた人、ほ支援してくれたすべての人に感謝
バイト戦士おめでとう!萎えちゃんはごめんね
よかった!
鈴羽誕生日おめでとう!
Entry ⇒ 2012.09.27 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
田中「……沖田ってさ」 紗羽「ん~?」
ザーザー
ガチャリ
紗羽「雨すごいねー……あれ、田中だけ?」
田中「沖田か。他のやつら休みだってよ。メール来てたぞ」
紗羽「あれ、そうなんだ」
田中「宮本はなんかCD買いに行くって。坂井は夕飯の準備、ウィーンは……わかんね」
紗羽「今日ケータイ忘れちゃったんだよね。田中帰んないの?」
田中「カッパ持ってきてないんだよ。ラケット濡らして帰りたくねーし。お前傘持ってる?」
紗羽「持ってない……予報じゃ晴れっていってたのに」
田中「そのうち止むだろ」
紗羽「みんな大丈夫かなー」
田中「うん?」
紗羽「もう音取れた?和奏の曲」
田中「ウィーンと歌えばなんとか。あいつ歌うまいよな」
紗羽「しっかりしてよね。和奏なんかソプラノ一人だよ」
田中「坂井はレベルが違うだろ」
紗羽「まあね……。歌って弾けるスーパー和奏」
田中「なんだそりゃ」
紗羽「なんでもいいのー」
紗羽「よく声出てるよね。さすがドイツ帰り」
田中「関係あんのか? 別に音楽やってたわけじゃないだろうし」
紗羽「細かいことは気にしなーい」
田中「ニクレッドだしな」
紗羽「海外にも戦隊モノってあるのかなあ」
田中「いや……どうだろ。今度聞いてみるか」
紗羽「何、あんた来夏のこと好きなの」
田中「ちげーよ、何でそうなるんだ」
紗羽「だって田中だし」
田中「話をきけよ……」
紗羽「はいはい。で、来夏がどうかした?」
田中「なんつーか、元気だよな」
紗羽「なにそれ」
田中「いやだってさ、あいつ声楽部やめて合唱部作っただろ。俺らまで集めて」
紗羽「まあ確かに行動力はあるよね」
田中「ちっさいくせにがんばるよな」
紗羽「時々ウザいけどね」
田中「嫌いじゃないけどな」
紗羽「やっぱり好きなの?」
田中「人としてはな」
紗羽「ほんとにそれだけ~?」
田中「しつこいっての」
田中「夕飯当番だからだと」
紗羽「そっか、お父さんと二人だもんね」
田中「あいつも、大変だよな」
紗羽「うん。でも今は合唱部のためにがんばってくれてるし」
田中「そうだな。俺たちもがんばんねーと」
紗羽「ね」
田中「しかし、坂井が料理してるとこ想像できないな」
紗羽「そういえばお弁当もお父さんが作ってるみたいね」
紗羽「さすがにそれはないでしょー」
田中「でも坂井だぞ」
紗羽「それは和奏に失礼…うーん」
田中「ウィーンち行ったとき、暖炉でなんか燃やそうとしてたぞあいつ」
紗羽「……」
田中「な?」
紗羽「まぁ……和奏だし」
田中「坂井だしな」
紗羽「うん」
田中「おう」
紗羽「……退屈」
田中「筋トレでもすっか」
紗羽「しない。どんだけ筋トレ好きなの」
田中「女子だってダイエットばっかしたがるだろ」
紗羽「うるさいクズ」
田中「ハァ……だんだん慣れてきたよ」
紗羽「罵倒されて喜ぶとかキモイ」
田中「喜んでねーよ!」
紗羽「二人だけでも練習する?」
田中「伴奏は無いけどな」
紗羽「それはしょうがないでしょ。じゃあ最初から」
田中「おう」
♪ ♪ ♪
紗羽「うーん、やっぱり二人じゃ物足りないね」
田中「……」
紗羽「何、どうかした?」
田中「いや、さ。沖田って器用だよな。普通に歌うまいし」
紗羽「そりゃ田中よりはねー」
田中「どーせ俺はバドだけだよ」
紗羽「はいはい、いじけないの」
紗羽「ほめてもなんもでないよー?気持ち悪い」
田中「気持ち悪いは余計だ」
紗羽「ふっふーん」
田中「お前バク転とかできるだろ。バドやってみりゃいいセンいくんじゃねーかな」
紗羽「バドはやらなーい……ん?」
紗羽「あれ、あたしアンタの前でバク転見せたっけ?」
紗羽「おい」
田中「……前に商店街でバイトしたときに」
紗羽「ウソ。あのときそんなアクションなかったじゃん」
田中「じゃあ見間違えだ、うん」
紗羽「怪しい……。今なら来夏と和奏には内緒にしてあげよう」
田中「なんもしてねーだろ!?」
紗羽「つまり田中は合唱部に居場所がなくなってもいいんだね」
田中「お前が言うと冗談に聞こえねーよ…」
紗羽「じゃあ白状しなさい。どこで見たの」
田中「……お前が音楽室で振り付け考えてたとき」
田中「はい」
紗羽「あたしそのときスカートだったよね」
田中「いやでも、タイツだったからセーフというか、」
紗羽「田中」
田中「……はい」
紗羽「覗きとかないわー」
田中「邪魔しちゃ悪いと思ったんだよ!」
紗羽「こっそり見てたんだ。ふーん」
田中「わ、悪かったよ」
紗羽「キモい」
田中「ぐっ……」
田中「ん?」
紗羽「いっつもそんなこと考えてるの?」
田中「そんなこと?」
紗羽「だから……その、スカートとか、エロいこと」
田中「考えてねーよ!」
紗羽「まったく?」
田中「…………まぁ、たまには」
紗羽「うわー……」
田中「聞いてきたのそっちだろ!」
紗羽「正直に答えるとは思わなかった」
田中「くっ……」
田中「あのな、あいつだってお前らが考えてるほど紳士ってわけじゃないぞ」
紗羽「え?」
田中「おっと、ここまでだ。男と男の約束は破れねえ」
紗羽「ちょ、ちょっと、ウィーンがなんなの?!」
田中「……」
紗羽「きーにーなーるー!」
紗羽「くそっ。……じゃあ田中の好みは」
田中「なんでそうなるんだよ」
紗羽「べっつにいいじゃん、減るもんじゃなし。あ、もしかして来夏?」
田中「もうそれはいいっつの」
紗羽「じゃあ和奏」
田中「あのな……選択肢狭すぎるだろ」
紗羽「同じ部活に美少女が3人もいるんだよ?もしかして田中ってソッチ系なの?ウィーンと仲いいもんね」
紗羽「え、なにそれ初耳なんだけど」
田中「前にそんな話をしたことが……がんばってるところがチャーミングとか何とか」
紗羽「それ好きってことなの?」
田中「わからんけど、坂井とかお前よりは好きなんじゃね」
紗羽「ちょっと。ちゃんときいといてね、明日もっかい聞くから」
田中「はいはい」
紗羽「む、田中のくせに」
田中「はいはい」
紗羽「雨やまないなー」
田中「……雨女」
紗羽「なんか言った?」
田中「なーんにも」
紗羽「……」
田中「……」
紗羽「……雨男」
田中「聞こえてんじゃねーか!」
紗羽「ふーんだ」
田中「……沖田ってさ」
紗羽「ん~?」
田中「どうなんだよ」
紗羽「なにが?」
田中「タイプとか、好きな、やつとか」
紗羽「……なんでそんなこと聞くの?」
田中「……別になんでもねーよ」
紗羽「……」
紗羽「あたしはさ」
田中「ん」
紗羽「……」
田中「……なんだよ」
紗羽「運動とか、できる人がいいな」
田中「は?……ああ、さっきの話か」
紗羽「……あとイケメン!」
田中「なんだそりゃ」
田中「な、なんだよ」
紗羽「田中は」
田中「え?」
紗羽「田中のタイプ。まだ聞いてない」
田中「…そんなん聞いてどうすんだよ」
紗羽「べっつにー」
田中「……」
紗羽「……へえ、ふーん。そうなんだ」
田中「おう」
紗羽「ふーん」
田中「なあ」
紗羽「あのさ」
紗羽「…なんであやまんの」
田中「あのな、えーと」
紗羽「……」
田中「つまりだな、」
ピーンポーンパーンポーン
“まもなく完全下校時間です。校内に残っている生徒は帰宅してください…繰り返します…”
田中「……」
紗羽「…えっと」
田中「お、おお、雨止んだな」
紗羽「あ、うん、そうだね」
田中「……帰るか」
紗羽「そう、だね、うん」
田中「お前んちどっちだっけ」
紗羽「坂下って左だけど」
田中「送ってくわ。もう暗いし」
紗羽「でも、田中んち反対でしょ」
田中「いいって。チャリだし」
紗羽「ラケットは?」
田中「準備室置いてきた」
紗羽「そ、そんなに私と帰りたいのかーしょうがないなぁ田中は」
紗羽「え、あの、」
田中「とりあえず乗れって」
紗羽「……?」
田中「うしろ」
紗羽「あ、うん、お邪魔します」
田中「よっと」
紗羽「……重くない?」
田中「別に。ぜんぜん軽いって」
紗羽「……ばーか」
紗羽「……しっかり漕いでよねー田中!」
田中「うわ、おい揺らすなって!」
紗羽「あははっ!ねえ田中ー!」
田中「なんだー?」
紗羽「明日一緒に登校しよっか!」
田中「はぁ?!」
紗羽「いいでしょー!迎え来てよ!セクハラされたことバラすよ!」
田中「セクハラって…わーかったよ、行けばいいんだろ、行けば!」
紗羽「わかればよーし!」
田中「だから揺らすなっつーの!」
紗羽「ふふっ。 田中のばーか!」
終われ
乙
サラッと読めて内容もサラッとしててよかった(小並感)
Entry ⇒ 2012.09.27 | Category ⇒ 版権物SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
竜華「怜の胸が大きくなってる…」ワナワナ
竜華「よし!早速買ってきたでー!」
竜華「さてさて、あれから怜のお胸は成長してるのかなぁと」ペラッ
竜華「ま、そんな短期間で大きくなるわけ…」
竜華「……」
竜華「でかっ!!」
竜華「……」ムニムニ
竜華「……」パタン
竜華「いやいや、まさかそんな…」ペラッ
竜華「でかっ!!」
竜華「はっ!?」キュピーン
竜華「ま、まさか…」
竜華「ここに写ってる誰かに揉まれたんか!?」
竜華「怜ぃ…浮気なんて酷すぎるわぁ…」
竜華「「竜華のおっぱいになりたいわぁ」って言ってたのは嘘やったん…?」
船Q「なにしてはるんですか?」
竜華「あ!船Q!」
竜華「聞いてや船Q~~、怜が浮気しとったんよ~」エグエグ
船Q「は?浮気?」
船Q「ほうほう、これは皆さんなかなかのものを…」
船Q「…園城寺先輩、やたらおっきくありません?」
竜華「せやろ!絶対先鋒の子達に揉まれてでかなっとるんや~」エグエグ
船Q「はぁ…しかしこれは驚きですね…早急にデータの更新を」
竜華「きっと玄ちゃんに右、新道寺に左を揉まれてチャンピォンにコークスクリューマッサージとかされてるんよ!」
船Q「落ち着いてください、全く意味が分かりません」
船Q「でもこれは一大事ですね…泉と江口先輩も招集しましょか」
竜華「そやね!皆で怜のおっぱいが大きくなった秘密を探るで!」
泉「まあ先輩は今日は病院で休むって言ってはりましたけど」
竜華「二人とも、一大事なんや、まずはこれを」パラッ
セーラ「なんやこれ?ポスター?」
泉「わー、阿知賀の子かなり際どいですねー、新道寺も背のわりになかなか」
セーラ「よーこんな水着着れるなー、ウチやったら絶対無理やわ」
泉「アハハ、ウチもちょっと…」
竜華「二人とも、見るとこはそこじゃないで」
セーラ「わかってるって、怜やろ?怜も病弱やのによくこんな水着…」
泉「先輩?どないしたんで…」
セーラ泉「「でかっ!!」」
竜華「きっとこれは誰かに揉みしだかれたからに決まってるんや!」
竜華「くそっ、あの時にもっとしっかり見ておけば…」
泉「なんかテンパってて凄い事暴露してはりますね」
セーラ「いつもの病気や、気にしたらあかん」
船Q「まあ先輩の意見はともかく」
船Q「盛ってるにしても流石に大きすぎじゃないですか?ってことですよ」
セーラ「確かに…怜が着やせするなんて聞いたことないしなぁ」
泉「園城寺先輩が着替えてるとこをそもそも見たことないんですけど」
なにこれでかすぎだろ
竜華「この前の体育のとき怜の着替えをガン見しとったからな!」
船Q「部長、もう喋らん方がええと思いますけど」
セーラ「ならなんでこんなおっきくなったんやろなぁ…」
泉「…どうやっておっきくなったか聞いてみたいですわ」ペタペタ
竜華「怜ぃ…おっぱいおっきい怜なんて怜じゃ…」
竜華「…アリじゃない?」
船Q「いやホンマもう黙っといてください」
船Q「一つ目は本当に園城寺先輩の胸が大きくなったかを確認する事」
船Q「二つ目はもし大きくなってたらその手段を聞く事」
竜華「そして怜が浮気してるかどうかを確かめる事や!これが一番重要やで!」
船Q「はいはいそうですね、じゃあそれも追加で」
セーラ「つってもどないするん?直接問いただすんか?」
泉「素直に答えてくれますかねぇ…」
竜華「直接なんてアカン!もし怜の口から浮気してるなんて言われたら…」
竜華「…もうこの太ももに怜の頭を貼り付けるしか」
セーラ「手段が猟奇的やなオイ!」
泉「めっちゃ歩きづらそうですね…」
泉「ウチですか!?いきなり言われても困りますけど…」
泉「そうですねぇ…ありきたりですけど海に誘うとかどうですか?」
泉「合法的に水着を見れますしなにより着替えてるとこも見れるじゃないですか」
船Q「えーと、海に誘う・・・と」
セーラ「いやいや、もう流石にそんな時期じゃないやろ…二色ノ浜でも開いてないで」
泉「あ、やっぱそうですかね」
船Q「まあそこらへんは温水プールでも代用できますし、ええ案やと思いますけど」
船Q「じゃあ次は江口先輩、なんかあります?」
セーラ「うーん…直接聞くのが一番やと思うんやけど…」
竜華「」フルフル
船Q「ほうほう、それはいいですね」
セーラ「へへっ、せやろー」
船Q「じゃあ…、一応聞きますけど先輩は何か?」
竜華「怜のおもち…なかなかのなかなか…えへへ、怜ぃ…」
泉「(こわっ!!)」
船Q「はい、じゃあないということで二人の案を採用しようかと…」
ガララッ
怜「ごめんごめん、お待たせー」
セーラ「と、怜!?」
船Q「(泉ポスター隠して!)」
泉「(は、はい!)」ササッ
セーラ「い、いやぁ、ただの雑談や」
怜「ふ~ん」
船Q「(どうですか?見た目なんか変化あります?)」ヒソヒソ
セーラ「(特別おっきいようには見えへんけど…)」ヒソヒソ
泉「(やっぱり着やせするタイプなんですかねぇ)」ヒソヒソ
怜「ちょ、目の前でヒソヒソ話とか感じ悪いで」
船Q「ああすんません、ちょっとね…」
怜「なんや内緒話か?ウチの悪口でもいっとるんやろー」
泉「そ、そんなんちゃいますって!」
怜「あれ、泉それなにもってるん?」
泉「(!?!?!?!)」
船Q「(泉!耐えて!)」
セーラ「(絶対見られたらアカンで!)」
怜「なんで後ろに隠してんの?ウチにもみしてーな」
泉「これはですねぇ…そのぉ…」
泉「(無理!無理です船久保先輩!)」フルフル
船Q「(…しゃーない)」
船Q「いや実はですね、泉が自分で書いてきた漫画を持ってきたんですけど」
泉「(え?)」
怜「マジで!?ウチにもみしてー」
船Q「その内容が…」
船Q「クッソ汚いホモ漫画なんですよ!」ドドーン!
泉「(えええええええええ!?)」
船Q「ええ、まったくですよね」
泉「ちょ、いや、あの」
セーラ「いやウチらもドン引きやったんやけどな、これはちょっと怜には見せられへんなぁって話しとったんよ」
泉「(江口先輩!?)」
怜「ま、まあ趣味は人それぞれやし…別にウチは気にしてへんよ」ポン
泉「はい…もうなんでもいいです…」シクシク
船Q「で、園城寺先輩もどうですか?」キラーン
怜「い、いやぁ…ウチはちょっといいかな…」
泉「やっぱり引いてるじゃないですかぁ!」(迫真)
セーラ「(泉…後でなんかおごっちゃるからな…)」
船Q「そこでうずくまってますけど」
竜華「」ズーン
怜「うわっ、暗…おーい竜華ー?」
竜華「ウフフ…怜の声が聞こえる…私を迎えに来てくれたんやね…」
怜「いや迎えに来たというかなんというか」
竜華「怜ぃ!」ダキッ
怜「ちょっ!いきなりどうしたん」
竜華「」モミモミ
怜「んんっ・・・!」
船Q泉セーラ「「「(直接いったーーーっ!!!??)」」」
怜「やっ、りゅうかぁ、いきなりっ」
竜華「……」モミモミモミモミ
怜「んんんっ、ちょっ、アカンてっ」
竜華「…同じや」モミモミ
怜「ふぇ…何が…」
竜華「胸の大きさが前と同じや!!」
怜「当たり前やろっ!!」バシーン!
竜華「痛っ!なにするんよ怜ー」
怜「それはこっちのセリフや!セクハラはウチの専売特許やろ!!」
船Q「いや、それもどうかと思いますけど」
船Q「実はですね…」
かくかくしかじか
怜「あ、あのポスター見たん…?」
竜華「ちゃんと保存用と観賞用と使用用に3枚買ったから!!」
セーラ「(使用用ってなに?)」ヒソヒソ
泉「(…江口先輩はそのままでいてください)」カァーッ
セーラ「???」
船Q「まあ正直失礼な話なんですけど、流石に盛りすぎちゃいます?」
怜「ちゃ、ちゃうんよ!あれはなんというか…」
竜華「やっぱり浮気か!ウチ以外の子に揉ませてたんか!」
怜「竜華以外に揉ませるわけないやろ!」
竜華「怜…」
怜「竜華…」
船Q「なんですかこれ」
怜「いやぁ、ほら、ちょっと前にあれでたやん?マウスパッド」
竜華「ああ、ウチと怜のやつやったっけ?」
怜「そうそう、アレ作ってる人が「やべぇ、盛りすぎた」とかふざけたこと言い出してな…」
怜「んで今までとった写真やと正面向いてるのがなくて」
怜「この際やからこのサイズにしようってことになって…」
怜「…別にちっちゃくないやんな?」
竜華「むしろウチ的にはジャストサイズやで?」
船Q「まあ普通ですよね」
せーら「ウチより大きいやん」
泉「私よりも…」
セーラ「なーんや、竜華が一大事っていうから何事かと思ってたわ」
泉「大きくなる秘訣を教えてもらおうと思ったんですけど…」ショボーン
怜「そんなんあったらウチが教えて欲しいくらいやわ」
船Q「まあまあ、なんもなくてよかったやないですか、ねえ先輩」
竜華「ウチは最初から怜を信じとったよ!」ボイーン
セーラ「」
泉「」
船Q「」
怜「」
竜華「と、怜?いきなり何ゆってんの?」
船Q「そうですね、先輩一人ってのは不公平ですよね」ワキワキ
泉「みんなに分け与えるってのが部長と思いますよ」ワキワキ
セーラ「まあこれも部長の定めってやつやな」ワキワキ
竜華「ちょ、皆手つきがやらしい…あれ?これピンチ?」
怜「素直にそのおっぱいを明け渡すなら軽めで許したる」
竜華「それ結局やってるやん?4人の軽めっておもすぎってレベルじゃないやん?」
怜「問答無用!おっぱいよこせええええええ!」
竜華「や!ちょ!ひにゃあああああああああ!!」
カン
哩「のう花田」
煌「なんですか部長?」
哩「これ…かなり盛ってねか?」
煌「……」
哩「どっち向いとる」
煌「その質問は…すばらくないですね…」
哩「お前…」
煌「いいじゃないですか…初めてポスターになったんですから…ちょっとくらい」グスッ
哩「まぁ…気を落とさんごっに」
煌「はい…」ムニムニ
カン
照「……」
菫「おい照、このポスター…」
照「何も…言うなっ…」グスッ
菫「…すまん」
カン
つ乙ぱい
Entry ⇒ 2012.09.27 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
照「プリンに醤油でウニの味に」 菫「まさか!?」
菫「いや、確かに聞いたことあるような気もしないではないが・・・」
淡「えぇ~、食べたことないの~?おっくれってる~」
菫「ムッ・・・」
照「ちょうどここにプリンがある」
菫「いいのか?」
亦野「うわ~、いいですね~。あ、じゃあお醤油も・・・。はい、どうぞ」
菫「ありがとう・・・。だが・・・」
渋谷「私も食べたい・・・」
菫(渋谷が食べたいなんて言うってことは、まさか本当にウニの味に・・・?)
菫「醤油の量はこの位か?」
照「ダメだ」
亦野「それじゃ初心者にも程がありますよ」
淡「だっさーい」
菫「そうなのか・・・」
渋谷「最初はプリンのカラメル部分を少しスプーンですくう。そして、その窪みに醤油をたらし、そこから少しずつプリンと一緒に食べるのが通」
菫「なるほど・・・」
菫「これでいいか・・・?」
亦野「ええ。醤油とプリンのバランスがナイスです」
淡「知ってる!黄金比っていうんだよね!」
照「淡は物知りだな」ナデナデ
淡「えへへ~」
菫「そ、それじゃあ食べてみよう・・・」ドキドキ
チーズ+ハチミツ→栗
きゅうり+ハチミツ→メロン
淡「ねえ、どう?どう?」
亦野「美味しいですよね」
照「私の最後のプリンなんだ。美味しくないわけがない」
渋谷「お手軽価格で味わえる高級感。すばら・・・しいです」
菫(ま、不味い・・・!何なんだこれは・・・!?)
菫(クッ・・・不味いだなんて言えるものか・・・)
菫「ああ、美味い・・・な・・・。まさかプリンがウニの味になるとは知らなかったよ・・・」
照「ほらな。騙されたと思って食べてよかっただろ」
菫「あ、ああ・・・」
亦野「これが家庭で楽しめる高価な味です」
渋谷「お茶もどうぞ」
菫「助かる」
照「でも、まさか菫がここまで無知だったなんてな」
亦野「確かに」
淡「じゃあアレも知らないんじゃないかな」
菫「アレ・・・だと・・・?」
渋谷「牛乳とたくあんでコーンスープになる」
菫「まさか。ありえないだろそんなの」
照「嘘だと思うのか?いいだろう、実際に試せばその意固地な考えも変わる。淡、冷蔵庫からアレを」
淡「はいは~い」
亦野「弘世先輩、どうぞ」
菫「だがしかし・・・」
菫「そうなのか?」
渋谷「ええ。そこで代用食として考案されたのがたくあんと牛乳を組み合わせるという方法です」
亦野「牛乳やたくあんなら家庭にありますもんね」
淡「ミルクは普通にスープにも使われるから合理的なんだよね」
菫「なるほど・・・。だが、たくあんと牛乳か・・・」
照「まあ、騙されたと思って一口」
菫「うぅ・・・。たくあんがたくあん臭い・・・」
亦野「はい、牛乳です」
菫「んくっ・・・・」ギュウニュウゴクー
照「どうだ?」
菫「どうって・・・別に普通にたくあんと牛乳だったが・・・」
淡「ちーがーうー!そうじゃないのー!」
渋谷「ノンノン、たくあんと一緒に食べるんデス」
菫「何故カタコトに」
照「そうか、菫は間違った食べ方をしてたのか。たくあんを口の中で細かくかみ砕いた後に牛乳を口に含むんだ」
菫「そんなので味が変わるわけが・・・」ポリポリ
照「どうだ?わかったか?」
菫「あ、ああ・・・。たくあんの独特な匂いが牛乳で中和され、味も混然一体として・・・。確かにこれは悪くないな・・・」
渋谷「おわかりいただけただろうか。これが人類の知恵である」
亦野「人類の知恵様サマですね!」
淡「テルー、中途半端に食べさせてたらお腹空いちゃうんじゃない?」
照「そうだな。菫にはもう少し腹にたまるものを食べさせてあげようか」
菫「また変なものを食べさせる気だろう」
照「失敬な。さ、次はこれをいってみようか」
菫「・・・これは一体」
菫「いやいや、どう見ても豆腐とヨーグルトなんだが」
渋谷「ダイエット食品が冷蔵庫にあってよかった。これでレアチーズケーキが食べられる」
照「さ、菫。遠慮はいらない。食べてくれ」
菫「だがしかし・・・、どう考えても豆腐とヨーグルトなんだが・・・」
菫「何だ?」
照「私がお前に嘘をついているとでも・・・?お前は私が・・・私たちがお前に嘘をついているとでもいうのか・・・?」
菫「それは・・・」
淡「そうだったら悲しいな・・・」
亦野「私たちは信頼されてなかった・・・ということですか・・・」
渋谷「デンプシーロール・・・」
菫「わかった・・・。食べてみるさ。私はお前達を大切な仲間だと思ってるからな」
照「菫・・・」
亦野「先輩・・・。じゃあ、今お皿に取り分けますね」
菫「ああ、ありがとう、みんな」
照「待て」
菫「何だ?」
照「私が食べさせてやろう。はい、あーん・・・」
淡「ずるーい!」
菫「あーん・・・///」パクッ
亦野「どうですか弘世先輩?」
菫「!?」
菫(これは・・・合うな・・・。豆腐は大豆の香りがかすかにするだけであまりクセがないし、食感もなめらかでヨーグルトの甘みと酸味との相性が抜群だ・・・)
菫「おい・・・しい・・・」
照「そうか」
照「いや、そういう意味じゃない。ただ、私たちは今までの食べたことなかったから菫の味の感想が気になっただけ」
菫「何・・・だと・・・」
照「そうか・・・。美味しかったのか・・・。よし、みんな、買出し行くぞ!2000円で満漢全席を作ろう!」
渋谷「素敵です」
亦野「サイコーです!」
淡「やったー、テル大好きー」
照「菫が様々なレシピが美味いものだと実証してくれた。ならばもう躊躇うことはない!満漢全席だ!」
淡亦野渋谷「おー!」
菫「私はもうお腹一杯だから帰らせてもらうよ・・・」
照「そうか、残念だ」
そして満漢全席?ができた・・・
照淡亦野渋谷「ふぁ~ん、不味~い!菫に騙された~!」
完
おつおつ
Entry ⇒ 2012.09.27 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
少女「・・・おなか空いたわ」男「いやお前吸血鬼なんだろ?」
男「いや吸血鬼目の前にして『おなか空いた』なんていわれた日にゃ生きた心地がしないと思うんだけど・・・」
少女「ああ、血を吸われるかも、的な?」
男「まさにそれ」
少女「大丈夫よ・・・あなた不味そうだもの」
男「・・・ええと、喜ぶところ、なのだろうか」
少女「どうかしらね。価値観によると思うわ」
男(価値観・・・?)
少女「なにかしら」
男「吸血鬼、なワケなんだよね」
少女「そうだと何度言えば分かるのかしら。人間はここ数年で言葉すら理解しなくなったの?」
男「いやその、なんというか、確かに吸血鬼っぽくはある、っていうか、その片鱗は見たけどさ」
少女「信じられないのね、吸血鬼が」
男「・・・まあありていに言えば」
少女「人間というのは昔からこう・・・見たものしか信じないというか、見ても信じないというか・・・」
少女「あなたの目は何のためについているの?自分の目すら信じられないなんてどうかしているわ」
男「いやそうはいっても・・・」
少女「ならもう一度、今あなたの目の前で起きたことを説明してあげましょうか?」
男「いや、あの、それは、多分大丈夫・・・だと思います。いやそう思う」
少女「どうかしら。あなたお世辞にも頭のよさそうな人間には見えないけれど」
男「大きなお世話だけど、なんという高飛車な・・・」
少女「へえ、それが命の恩人に対する態度なのね?礼儀のれの字も知らないバカなのかしら」
男「うぐ・・・」
男「あの・・・実はペットに逃げられて・・・」
少女「ペット。よほど人望が無いのね」
男「いや相手鳥だし・・・」
少女「鳥も自由を手にしたということでしょう。無理に引き戻すなんて残酷だとは思わないのかしら」
男「・・・」
少女「さて、と。多少鬱憤も晴れたわ。たまには気まぐれを起こすのも悪くないわね」
男「ええと・・・」
少女「そろそろ、なんだったかしら。ああそう、警察が飛んでくるはずだわ。後の説明は自分で何とかするのね」
男「いや、それはちょっと無理だと思うんだけど・・・」
男「あの・・・実はペットに逃げられて・・・」
少女「ペット。よほど人望が無いのね」
男「いや相手鳥だし・・・」
少女「鳥も自由を手にしたということでしょう。無理に引き戻すなんて残酷だとは思わないのかしら」
男「・・・」
少女「さて、と。多少鬱憤も晴れたわ。たまには気まぐれを起こすのも悪くないわね」
男「ええと・・・」
少女「そろそろ、なんだったかしら。ああそう、警察が飛んでくるはずだわ。後の説明は自分で何とかするのね」
男「いや、それはちょっと無理だと思うんだけど・・・」
少女「無理?ありのまま説明したらどう?吸血鬼がやったことだ、って」
男「それで警察が納得すると思うのかよ・・・」
少女「そう、まったくどこの国の人間も同じね。融通が利かないというかなんというか。それじゃどうするのかしら」
男「そりゃ・・・逃げるしかないんじゃないかな」
少女「それは大変ね。せいぜい頑張ってお逃げなさいな」
男「そうするけど、あの、本当に吸血鬼、なんだよね」
少女「・・・しつこいわね。なんなら、あなたの喉元に噛み付いて証明しましょうか?」
男「勘弁。・・・。一つだけ聞いてもいい?」
少女「・・・」
少女「・・・誰に断って質問しているのかしら。まあいいわ。その質問に答える義務でもあると思って?」
男「・・・」
少女「・・・違うわ。私は吸血鬼だけど、そういう下賎なことはしないし、そもそもここに来たのもつい最近のことよ」
男「・・・そう、かい」
少女「信じるの?片手でトラックを投げ飛ばした、得体の知れない吸血鬼を?」
男「少なくとも、今俺を助けてくれただろ」
少女「・・・まったく、たまに余計なお世話をするとろくな事にならないわね」
・・・ファンファンファン・・・
男「あ、そうだ逃げないと・・・。お前も早く逃げ・・・、・・・消えた」
男「・・・という話、信じるか?」
友「キミを撥ねかけた、どう見積もっても一トンはあるトラックを、金髪の少女が投げ飛ばした、って話をか?」
男「・・・我ながらなんというこっけいな話」
友「そうだな、普段の私なら間違いなく笑い飛ばすだろうが。しかしどうもそういうわけにもいかないだろう」
男「今朝の話か?」
友「正確にいえばそれこそ昨晩の話だ。また血抜き遺体が見つかったそうだ」
男「今朝ニュースになってたよ。これで八人目か?」
友「驚くね。そしてここにきてキミのいう吸血鬼だ。偶然だと思うか?」
友「可能性としてはある。しかしトラックの件が本当なら、幻覚でもない限りそれはないな」
男「じゃあ本物の吸血鬼?」
友「まさか。そんなものは御伽噺だ。・・・しかしこれでもトラックの件は説明できない」
男「・・・」
友「そんな危険な奴がこの街に入り込んでいるのは不気味だ。彼女が犯人だった、という可能性もある」
男「まさか・・・なあ」
男「・・・それは同感」
女「あれれ、二人とも何の話?真面目な顔しちゃってー」
男「まあその、来るべき大学受験について、少し」
女「ダウト一億」
友「最近物騒だ、という話だ。この辺一帯の学校も集団下校だし、早く営業をやめる店も出てきているくらいだからな」
女「あー、それは思うねー。怖い話だよ、今朝ので八人目でしょ?」
男「ああ。だから気をつけないと、って話だ」
男(・・・嘘ではないよな)
男(集団下校とはいえ、最終的にはこうやって一人になるわけだろ?あんまり意味無いよな・・・)
男(・・・)
男「・・・あれ、鍵どこやったかな・・・」
少女「鍵なら鞄の中よ。さっきからチャリチャリとやかましいわ」
男「ああ、そうだったサンキュ・・・のわ!?」
少女「人を化け物みたいに見るなんていい度胸じゃない。・・・まあ当たってはいるけれど」
男「お前、昨日の・・・」
少女「昨日の吸血鬼よ。思い出したかしら?」
男「それで、今度は一体何のようだ?」
少女「随分怯えているのね。心拍数が跳ね上がったわよ。初心な女の子じゃないんだから、少しは冷静になったらどう?」
男「なんのようだよ・・・?」(回りに人影ねえ・・・、襲われでもしたら・・・)
少女「これでもあなたを見つけるのには苦労したの。別に取って食いはしないわよ」
男「え?」
少女「ちょっと聞きたいことがある・・・というか、何がどうなっているのか、説明してほしいわけ」
男「ええと・・・?」
少女「鈍いわね。この町で『吸血殺人事件』とかいう事件、起きているでしょう?」
少女「・・・」
男「ええと、起きてる、けど」
少女「それについての話よ。この新聞とかいうやつは漢字が難しくていまいちよく分からないの。だから説明なさい」
男「あの、それってどういう・・・」
少女「一体何が起きたのかを全部説明しなさい、と言ってるの」
男「・・・なんで俺が」
少女「昨日の貸し、忘れていないでしょうね」
男「ぐ・・・」
少女「なんですって?」
男「だから、お前吸血鬼なんだろ?だったら、その、八人の血を吸ったとか・・・」
少女「・・・妥当な推測だわ。無礼は特別に許すけれど、反論するとしたら、私は昨日あなたを助けるためにあなたと一緒にいたわね」
男「・・・そうだな」
少女「今朝の死体の発見場所はあそこからは随分遠いわよね。私には不可能だし、そんな下賎なこともしないわ」
男「いや、でも吸血鬼なんだからそれくらいは・・・」
少女「はぁ・・・。いいかしら、吸血鬼は招き入れられないとその家や敷地には入れないの。私も例外じゃない。そいつが見つかった場所を調べればすぐにわかるわ」
男(・・・話がまったく読めん)
男「招き入れられないとは入れない・・・?」
少女「だからもし私が犯人だとしたら、被害者本人に招き入れられる必要がある。そんな時間があったかしら」
男「でもお前は瞬間移動したじゃないか、昨日俺の目の前で」
少女「見た目のとおりバカなのね。消えたんじゃなくてすぐそばの路地に入ったのよ。あなたが勝手に見失っただけ」
男「・・・」
少女「それにもし私が犯人なら、昨日あなたを餌にしていたでしょうね、間違いなく」
男「・・・」
少女「質問は終わりかしら?なら今度は私が質問するわよ」
少女「そう。まず最初の被害者はどこでいつ見つかったのか、教えてもらうわ」
男「・・・確か一ヵ月半くらい前だ、夏休みが終わる頃に最初の事件が起きた。地元の男子中学生がその、体液をなくした状態で見つかった」
少女「中学生・・・」
男「その次は確か・・・爺さん。ちょっと待って、今スマホで検索する」
男「・・・あった。次はまた中学生、婆さん、OL、女子高生、サラリーマン、だそうだ」
少女「全員が血を抜かれた状態で?」
男「ああ。そうだ、ここに書いてある」
少女「・・・」
男「あの・・・」
少女「何かしら」
男「いや、あまりに気難しい顔してたから」
男「なあ、確認するけど、本当に吸血鬼なのか?」
少女「・・・くどいわ」
男「いや、考えてみるとさ。俺お前の怪力しか見たことないし、それだけで吸血鬼です、っていわれても・・・」
少女「・・・ハァ。人のことを怪力女扱いとは、怖いもの知らずもいい加減にするのね」
少女「まあいいわ、そこまでいうなら、少なくとも私が化け物だということを教えてあげるわ」
男「え」ゾワッ
少女「―――!!」
男「!!」
男(なん、だこれ・・・、体が動かな・・・)
男「」
少女「その気になれば肺の動きも止められるのだけれど、その必要はなさそうね」
男「」
少女「さて、と。私はもう行くけれど、何かの縁だから言っておくわ。多分この町では今とても不味いことが起きている。死にたくないなら、逃げた方がいいわ」
男「」
少女「じゃ、もう会うこともないでしょうけど。もうすぐ金縛りは解けると思うから、安心するといいわ」
男「」
男「・・・プハッ!?あ、動ける・・・!」
男(くそ、なんだってんだよ昨日から・・・。頭がどうにかなっちまったのか・・・?)
男「・・・吸血鬼、か・・・」
男(まずい事がおきている・・・。この殺人事件が?本物の吸血鬼が出てくるよりも?)
男「・・・わけわかんねー・・・」
通話 男→友
友『金縛りについては科学的に色々研究されていたが、しかしこれは面白いな。聞く限りでは催眠術の一種にも思える』
男「どっちでもいいけどよ、あいつやっぱり本物だと思うか?」
友『もしそうだとしても、今一番問題なのは、彼女が犯人なのかどうか、という点だろう。そのことについては、』
男「違うって言ってたな、招き入れられないとどうとか」
友『興味深いな。確かに吸血鬼伝説の中にはそんな逸話もあるが』
男「そうなのか?」
友『有名どころでは、流水をわたれないだとか、杭で心臓を打ち抜けば死ぬとか』
男「ああ、それは聞いた事ある」
男「どうした?」
友『いや、杭で心臓を打ちつけられたら死ぬ、というのはどうなのだろうな。そんなことされたら吸血鬼じゃなくとも死ぬと思うのだが』
男「ああ・・・なるほど確かに」
友『ああ、すまんな話が逸れた。よし、では彼女が仮に本物の吸血鬼だとしよう。なぜこの町に現れたのだろうな』
男「・・・分からん。吸血鬼の知り合いは他にいないし」
友『同感だ。推測するならば、例えばこの町が吸血鬼たちの狩場になった、とかどうだろうか。マニアが喜びそうな設定だと思うが』
男「勘弁してほしい」
友『そうだな。しかし実際、この事件は不謹慎ながら、マニアにはウケているようだ』
男「そうなのか?」
男「・・・それもそうだ」
友『今片手間にインターネットで検索してみているが、英語、フランス語、ロシア語、多くのサイトがヒットする。やはりあちらの人たちの関心は高い』
男「吸血鬼だもんな、日本で」
友『ふむ、嘘かホントかは分からないが、アルバニアからはヴァンパイアハンターが日本に向けて多数出動しているそうだ。ヴァチカンからもだ』
男「ヴァチカン?それってアンデルs、」
友『あそこはキリスト教カトリックの総本山だからな、宣教師や調査隊の一つや二つは派遣するだろうさ』
男「あ、ああ。そうだよな。あれは漫画の話だからな・・・」
男「それは言えるな。少なくとも吸血鬼、らしいやつも入り込んでることだし」
友『そういうことだ。ではまた明日な。私はもう少し吸血鬼について調べてみるよ。興味が沸いてきた』
男「・・・ほどほどにな」
(通話終了)
男「・・・ハァ。寝よう・・・なんかすごく疲れた」
女「おっはよー!」
男「おっと・・・。毎度驚かされるな、お前の元気いっぱいな声には」
女「元気が取り柄ですからねー」
男「それは間違いない」
女「ん?何だか疲れた顔してる?」
男「え?ああ、最近ちょっと、な・・・。お疲れ気味というか、お憑かれ気味というか」
女「?」
男「あ、気にするな。寝不足なだけだ」
女「あー、ここのところぶっ続けだったから、今日はお休み。放課後はあるんだけどね」
男「この物騒なときに・・・」
女「でも大会直前だからね、大丈夫、部員で出来るだけまとまって帰ってるし。先生も途中まで来てくれるしね」
男「・・・ま、大会なら仕方ないな。勝てるといいな、試合」
女「うん、頑張るよ勝利のために!」
男(薙刀ってどういう大会なんだか、俺にはよく分からないけどな・・・)
男「・・・飯食わなくていいのか?」
友「ああ・・・。少し熱が入りすぎて今日は徹夜だ・・・。少しでも寝たい」
男「ずっと調べてたのか?」
友「気がついたら朝で・・・」
男「・・・言わんこっちゃ無い」
友「・・・姉にも呆れられたよ。姉の彼氏にも」
男「ああ、隣に住んでるんだっけ?」
友「姉の幼馴染だ・・・ってそんなことはどうでもいいんだ、一つ気になることがある」
男「?」
男「吸血鬼についての?」
友「うん。吸血鬼に血を吸われた者がどうなるか書いてあるだろう?」
男「吸血鬼になるんじゃないのか?」
女「グールというのを聞いた事は無いか」
男「ああ、それは知ってる。漫画にも描いてある、確かゾンビみたいなのに変わっちまうんだよな」
友「それによると、非童貞非処女はグールになると、そんなに気恥ずかしそうにするな、真面目な話だ」
男「あ、ああすまん」
友「気になるのはそこだよ、被害者は吸血鬼はおろかグールにすらならないで見つかっているだろう?」
男「・・・そうだな」
男「・・・けど、後者は吸血鬼が存在している、て仮定の話だろ?」
友「キミのいう少女が吸血鬼ならば、現実味を帯びてくるがな・・・」
男「どうだろうな・・・。だって吸血鬼だぞ。突拍子無いだろ?」
友「まあ、な。あくまで可能性の話だ。・・・いかん限界だ・・・」
男「まったく・・・」
女「ただいまー・・・て、あれ、寝ちゃったの?」
男「たった今な。次の授業、理科室だよな」
女「うん。移動まで寝かせてあげようよ」
女「ただでさえ、次の授業は眠くなるのに。居眠りしちゃうんじゃない?」
男「あり得る・・・。今日はレーザーと水を使った光の屈折実験、だったか?」
女「ううん、それは前々回やったから、今日はええと、食塩とレーザーだね」
男「どんだけレーザー好き何だか・・・。確かにあの光は暗闇にははえるけど」
友「う・・・やはり少しでも寝ると違うな・・・」
男「なんだもう起きたのか」
友「寝つきと寝起きはいいからね・・・。次は理科室、だったか?」
男「ああ。あ、これ返すぞ」
女「?何のプリント?」
友「ああ、今度演劇部がやる演劇についての資料だ。しかしやはりこの案は没だな、他の案を提供しないと」
男「んあ・・・?なんだよ、インク切れか?」
男「参ったな、このレポート、提出日明日なのに・・・。なんでわざわざボールペンで清書しなきゃなんねえんだか・・・」
男「・・・仕方ない、コンビにまで買いに出るしかないか・・・」
男(・・・すぐそこだし、まさかな・・・)
移動中 自宅→コンビニ
男(さすがに人通りもまばらだな・・・。まあ当然のことか)
?「そこのキミ」
男「え!?」
警察官「こんな時間に何をしてるのかね?今夜中に一人で出歩くのは危ないだろう!」
男「あ、ああすいません。でもちょっとコンビニに用事があって・・・」
男「で、でも」
警察官「でもじゃない!」
?「では、私が一緒ならよろしいですかな?」
男「!?」
警察官「なんだねキミは」
老紳士「なに、そこの少年とはちょっとした知り合いでしてね。コンビニに私もちょうど行こうとしていたところですゆえ」
警察官「身分証を出しなさい、身分証を」
老紳士「これでいいですかな?」ス・・・
警察官「なんだねこの石は―――」
男「・・・え?」
警察官「」
老紳士「さ、参りましょう。今のうちです」
老紳士「そのまま自然に歩いてください。見つかったらまた面倒です。今この町で何が起きているか、知っておいででしょう」
男「だ、だからこそ信用できないんじゃないか」
老紳士「さっきのをご覧になられましたね?やろうと思えばあなた様をあの警官のごとく身動きを取れなくしてもいいのですが、そうしない理由を酌んでくだされば・・・」
男(こいつ・・・?)
老紳士「・・・さてここまで来れば撒いたでしょう」ススス・・・
男(・・・今右手の指が奇妙な動きをしたような・・・)
老紳士「さて、改めて申し上げますが、私はあなた様に手荒な真似はいたしません。しかし質問に答えていただきたい」
男「質問・・・?」
老紳士「なに、コンビニに着くまでには済みます。あなた様は―――」
老紳士「吸血鬼、という存在を信じられますか?」
男「!」
老紳士「ああいえ、もちろん私は吸血鬼ではございません。ただの質問ですので」
老紳士「ふふ、老人の勘でございます。あなたは吸血鬼ではないが、吸血鬼の臭いがかすかにする」
男(こいつ・・・何者なんだ・・・?)
老紳士「ゆえに、ひょっとしたら吸血鬼と接触したのではないかと考えました。思い違いでしたでしょうか」
男(思い違いでそんな質問するやついないだろ・・・!待てよ、まさか・・・)
友『ヴァンパイアハンターが日本に向けて・・・』
男(・・・間違いない、こいつはそうだ。そういうタイプの人間だ・・・)
老紳士「沈黙が答えですかな?」
男(くそ・・・こういう時、あいつなら・・・!)
男「―――思い違いかもしれないのに、そんな確信じみた質問をするんですか?」
男「いえ。でも、吸血鬼ですか。確かにこの町では今そんな名前の殺人が起きてます」
老紳士「ええ。いまや世界中が知っております」
男「その犯人が吸血鬼だ、と?」
老紳士「さあ・・・。その辺は分かりませぬな」
男「もしそうだとして、なら、俺の周りにその吸血鬼がいる、と?」
老紳士「最近接触した、そのような気がいたしましたので」
男「・・・思い違いです。もし犯人が吸血鬼でこの辺にいるのなら、俺がすれ違った誰かがそうだっただけでしょう」
老紳士「そうかも知れません。ですから、その確認を今しているところでございます」
男「吸血鬼なんてのは、西洋の御伽噺だ。ここは日本だ、まだ雪女や天狗の方が真実味があります」
老紳士「・・・ふ、度胸のあられる若者です。しかしその可能性も否めないわけでしたな。いかんせん、私の急ぎすぎでした」
男「え?」
老紳士「歳は取りたくありませんな。頭の回転すら遅くなる。しかしいささか時間がありませぬゆえ、失礼をいたしました」
老紳士「化け物、というのは今もどこかで生きているのでしょう。我々が多くを隅に追いやってしまいましたが、恐らくはまだまだ健在だ」
男「何の話ですか?」
老紳士「爺の独り言でございます。さて、目指すコンビにはあれですな。さすれば、私はこれで失礼をいたしますゆえ・・・」
男「失礼って、あんた結局何者―――」
男「・・・またいない。最近こんなのばっかりだ」
男「・・・あれ、何しにここに来たんだっけ。・・・ああ、そうだボールペンだボールペン・・・」
男(・・・まずい事、時間が無い。吸血鬼、ハンター。ああもう。漫画じゃないんだぞまったく・・・)
男「・・・ダメだ、まったく集中できん。これも全部あの吸血鬼とハンターのせいだ・・・」
男「あー・・・。もうこの辺適当でいいかな・・・。ん・・・?」
男 携帯(着信) 友
男「こんな時間に・・・。もしもし、ああ、ちょうど良かった。一つ聞きたいんだけど、明日提出のレポートの、」
友『バカ、レポートどころの騒ぎじゃない!!』
男「・・・?どうした、そんな切羽詰ったような声出して」
友『女が死んだ!!殺された、例の殺人事件に巻き込まれた!!』
男「見つからなかったか?」
友「そんなことどうでもいい。彼女が死んだ。殺されたんだ。自宅待機が知ったことか」
男「・・・夕べは寝れなかった」
友「私もだ!彼女が九人目だなんて・・・!!」
男「ッ・・・」
友「・・・もう泣かないぞ私は。昨日一晩泣いたんだ、それよりも絶対に犯人をとっ捕まえてみせる」
男「犯人・・・」
友「吸血鬼なら心臓をくり貫いてそこにニンニクをぶち込んで太陽光で炙ってやる。もし人間なら―――」
男「もういいやめろ。・・・あいつが殺されたのは間違いないんだな」
友「・・・ああ。警察からの電話でたたき起こされた」
友「・・・彼女と最後に連絡を取ったのは私だった。だからだそうだ。午後から事情聴取の予定だ」
男「連絡取ったのか?」
友「メールの履歴がある。見ろ、最後の送信が17:48だ。その三分前に部活が終わって、私にメールをしてきた」
男「なんだっていうメール?」
友「レポートについて。こんなくだらないやり取りが最後になるなんて私は・・・ッ」
男「・・・確かあいつは部活メンバーで集団下校してるって言ってたが」
友「あんなものはザルだ。家が近くなったら、必然的に一人になるだろう!」
男「ああ、それはわかってる。見つかった場所は、どこだか聞いたか・・・?」
友「・・・彼女の自宅から少し外れた、小さな路地だそうだ」
男(路地・・・)
友「・・・そいつに吸血鬼は狩らせない。私がやる」
男「やめろ!しっかりしろよ、女が死んだのは別にお前のせいじゃないだろ!」
友「・・・」
男「・・・吸血鬼が犯人なのだとしたら、俺たちにはどうすることも出来ないだろ」
友「・・・そうかもしれない。いや、そもそも吸血鬼が存在するのなら、という前提で、だが」
男「・・・」
友「・・・」
男(・・・他に手はない。杭はなかったけど、十字架はあった。杭の代わりにナイフも持った。あの吸血鬼を探すしかない・・・)
男(でもどこを探せばいいんだ・・・?見当もつかねえ・・・)
男(闇雲に動いて見つかるのか・・・?)
男「あ・・・」
警察官「・・・」ウロウロ
男(昨日の警官、またここにいやがる・・・。市民的にはありがたいけど、今は邪魔でしかねえっての、クソ真面目)
男(仕方ない、こっちには行けないから、他を探すしかねえか・・・)
男(・・・そうだ・・・)
男「ここが遺体発見現場、か。やっぱりまだ入れそうにないよな。警官が二人もたってるし。・・・ん?」
警官A「」
警官B「」
男(・・・なんかすげえボーっとしてないか?寝不足、ってわけじゃなさそうだけど・・・。それに、あんだけ騒いでたマスコミが一切いないのはおかしくねえか?)
男「・・・もしかして・・・」
遺体発見現場
男「ッ・・・。分かっていたけど、気分は最悪だな・・・。ここであいつが死んだなんて・・・」
男「・・・いるんだろ吸血鬼。出て来いよ!!」
少女「・・・やかましいわね。誰かと思ったらいつぞやのバカ犬じゃない」
男「・・・お前、ここで何してんだ」
少女「現場検証、といって信じるかしら。もっとも、これ以上は何も分かりそうに無いけれど。それで、こんなところにノコノコ現れて、何がしたいのかしら?」
男「・・・ここで殺されたのは、俺の親友だ」
少女「!」
男「お前がやったんじゃないのか」
少女「・・・」
男「答えろよ」
少女「・・・何を言っても、信じないのではなくて?それでもあえて答えるわ。私はやっていない」
男「・・・」
少女「・・・」
男「じゃあ、誰がやったんだ?」
少女「それは、私にも分からない。でも少なくとも。人間の仕業じゃあないわね」
男「・・・吸血鬼がやったとでも?」
少女「おそらく」
男「お前以外の吸血鬼が、この町にいるって?お前以外の吸血鬼が、あいつを殺したって?」
少女「ええ、そうよ」
少女「私としては、それで信じてもらうしかないわね。証明も証拠もないけれど。・・・いいや、違うわ。ひとつだけ、証拠がある」
男「証拠?」
少女「童貞と処女は吸血鬼になる。それ以外は生ける屍になる。これも吸血鬼のルール」
男「知ってる」
少女「ぶっきらぼうになる前に聞きなさい。これ以外にもう一つ、ルールがある」
男「なんだよ」
少女「・・・」
少女「・・・犯されながら血を吸い尽くされたものは、そのまま、死ぬ」
少女「・・・」
男「・・・おい、待てよ」
少女「・・・」
男「それじゃ、それじゃああいつは・・・」
少女「・・・女である私にはそれが出来ない。男なら出来たでしょうね。獲物が男でも、女でもね」
男「」ガクリ
少女「最初の吸血鬼はドラキュラいう男の吸血鬼だった。ゆえに、吸血鬼の中では男のほうが有利なこともある。・・・これがその一つ」
男「じゃあ、今までの被害者は全員、全員、あいつ含めて、・・・」
少女「それを信じるか否かはあなたに任せるわ。けど私は今のあなたのような人間に嘘をつくほど堕ちていない」
男「じゃあ・・・じゃあ吸血鬼は男・・・。男の吸血鬼・・・」
少女「そういうことになるわ」
男「いくら、化け物とはいえ、そんなことを、平気で―――」
少女「するわ、平気で。それが化け物なのよ。おそらくそれが鬼の本質。理性を失った吸血鬼の成れの果て」
男「・・・どうすればいい」
少女「え?」
男「どうすれば止められる?どうすればあいつの敵を討てる!?」
少女「・・・無理よ。いくら暴走しているとはいえ、相手は吸血鬼。人間の敵う相手じゃないわ」
男「関係ない。そんなのもう関係ない。俺は、絶対に、そいつを斃す。絶対に」
少女「・・・この先に、彼女が倒れていた現場がある。・・・それを直視できる?」
男「!!」
少女「できるのなら、あなたは鬼になるわ。私たちと同じ力を持つ化け物に。出来る?」
少女「・・・」
男「・・・!!!!!」
男(血まみr・・・あの線は、人型の線は・・・いや、あいつはそんなに小さかったか・・・!?)
男「ぐ・・・うぅぅぅ・・・!!」
男「うあああああああああああああああああ!!!!!」
少女「・・・見れなかったわね」
男「ぐ、ゲホゲホ・・・。うぁ・・・っ・・・」
少女「血を吸われればあの位に体はしぼむわ。あれだけの所業を、するのが鬼よ」
男「ぐぅう・・・」
少女「・・・でも、それでいいわ。人は鬼になる必要は無いわ。人は人として不可能と戦わないとならない。鬼を倒せるのは、人間の魂だけなのだから」
男「聞いていいか」
少女「何かしら」
男「もし俺が、あの光景を直視できていたとしたら、どうしてた」
少女「あなたを殺して、去っていたわ。これ以上厄介ごとを増やしたくは無いもの」
男「・・・」
少女「でもあなたは人間のままであり続けた。それだけで十分だわ」
男「・・・さ、上がってくれ。散らかっているけど」
少女「いいのかしら。私は招かれないと家には入れないけれど、一度入れるようになったらもう死ぬまで追い出せないわよ」
男「いいさ。その時は、お前を殺して去るだけだ、これ以上厄介ごとが増えるのはごめんだからな」
男「死んだ。今は、裏に住んでる叔母ちゃんが面倒見てくれてる」
少女「・・・そう」
男「それで、犯人の目星は?」
少女「まったく不明。そもそもこんな島国に突然理性を失った吸血鬼が現れるなんて妙な話だわ」
男「どこかから渡ってきたんじゃないのか」
少女「それでも妙よ。普段私たちは、ヨーロッパの城とか大きな屋敷に悠々と暮らすのに、なんでこんな島国にわざわざ行くのか」
男「何か理由がある?」
少女「それも理性を失っていることに関係あるかもしれないわね」
男「・・・」
少女「いずれにせよ、これ以上の狼藉は許さない。まったく不愉快よ」
男「ああ・・・」
少女「・・・ひどい顔だわ。ねえ、ちょっとこっち向いてくれるかしら」
少女「いいから。私の目を見なさい」
男「・・・」
少女「―――!」
男「!!」ゾクッ
男「また金縛りか!!・・・あれ、動ける。・・・それに・・・」
少女「ちょっと心の中を整理したわ。少なくともトラウマや、ええと、心的外傷何とかにはならないと思うわ。感謝しなさい」
男「・・・元はといえば、お前が見ろってけし掛けたんじゃないのかよ」
少女「仕方ないでしょう、そうするしかなかったのだし」
男「それで、今後の計画は」
男「あ!?何の計画も無いのか!?」
少女「あのね、計画なんか立てられるのなら私はとっくに不逞の輩を締め上げているわ。なまじ暴走してる分、次の計画が読めないのよ」
男「そんな、じゃあ手詰まりじゃねえか」
少女「・・・今夜一晩で考えをまとめるわ。とりあえず、あなたは腹ごしらえでもなさいな。少なくとも胃が受け付けないことはないはずよ」
男「あんな光景見た後にか・・・?」
少女「いずれにせよ考えをまとめる必要があるわ。その間暇でしょう?」
男「・・・ああ、わかったよ」
少女「ああ、少しは手伝うわよ。何か作業していたほうが雑念が消えてやりやすいし」
男「意外とマメな奴だな・・・」
少女「ふん」
男「じゃあ俺は野菜を切るから、お前はご飯炊いてくれ。・・・出来るか?」
少女「なめられたものね・・・」
少女「いい加減年下扱いはやめてくれないかしら。こうみえてあなたの何百倍も生きてるのだけれど!」
男「違うそれは予約ボタンだ、それじゃなくてその下の、」
少女「ああもう、面倒だわ!!」
男「だからここを―――イテッ!!」
少女「・・・え?」
男「いたた、指先切っちゃったよ・・・。まったく、気が散るんだよな・・・」
少女「」
男「絆創膏どこだったかな・・・。ん?おいどうかしたか?ただの切り傷だぞ?」
少女「」ドクン・・・
男「・・・?あれ、お前って目赤かったっけ・・・?」
男「え!?お、おいどうした!?何かの攻撃か!?」
少女「近、寄るな・・・!!離れて・・・!!」
男「お、おい?」
少女「うかつだった・・・。人間、少し、席を外すけど、気にしないで・・・」ヨロ・・・
男「おま、どこ行くんだそんな具合悪そうで!!」
少女「忘、れ物を取りに、ね・・・。いいから、そのまま、離れて、うぐっ!?」
男「おい!!」
少女「ッ・・・!!」ダダダッ・・・
男「あ、・・・行っちまった・・・。もう姿見えないし・・・。でも、なんだったんだいきなり・・・」
男「・・・ダメか。まだ事情聴取中かな、出ない」
男「あいつも戻ってこないし、一人でいると余計なことばっかり考えるし・・・」
男「・・・あの爺さん、やっぱりハンターだったのか・・・?だとすれば、あいつやっぱり襲われてたんじゃ・・・」
男「・・・あり得る。あの警察官をどうやったか手玉にとってたし。漫画的に言えば、精神系の技か・・・?」
ガタン
男「ッ!!」ビクッ!!
男「・・・」
男(気のせいじゃない・・・。今玄関から音がした)
男「・・・。誰だ?」
男「!お前・・・」ガチャリ・・・
少女「・・・そうやってすぐに疑わないで開けないことね・・・。私がもし敵の変装だったら、あなた死んでるわよ」
男「あ、そうか・・・じゃなくて!!お前今までどこ行ってたんだ!!襲われたのか!?」
少女「・・・違うわ。言ったでしょう、忘れ物を取りに、行っただけだと・・・」
男「大丈夫か?その割にはなんかこう、やられてないか・・・?」
少女「・・・平気よ。余、計な詮索は無用だわ・・・。それより、浴室を借りれるかしら・・・」
男「え?ああ、いいけどお前、なんか体中濡れてないか?」
少女「ああ・・・。通り、雨に打たれ、たのよ・・・。だから風呂に入りたいの。もういいかしら?」
男「着替えは?」
少女「そこにまとめて持ってきたから、平気よ・・・」
男(棺桶じゃないのコレ・・・)
男「え!?このでかい棺桶を!?」
少女「言う、とおりにしなさい下僕・・・」
男(俺いつから下僕なんだ・・・?)
少女「ああ・・・。おなか空いたわ・・・」
男「え?」
少女「・・・」テクテク・・・
男(・・・)
男(あ、やっぱりあいつの目は青だよな・・・。さっきのは見間違いだよな・・・?)
男「命がけの風呂覗きなんかするかよ、昭和じゃあるまいし・・・。棺桶、ここにおいておくからな」
少女「ええ。中見てないでしょうね」
男「命がけの下着泥も遠慮する」
少女「賢明ね」
男「さて、と・・・。あ、」
携帯電話 着信あり 友
男「やっと取り調べ終わったか。どれ・・・」
友『・・・もしもし』
男「俺だ。終わったか」
友『ひとまずは、な。おかげですこし落ち着くだけの時間があった』
男「災難だったな」
友『とはいえ、さすがに退屈だった。そっちに何か動きは』
男「ああ、例の吸血鬼少女と合流した」
友『正気か?彼女は容疑者筆頭だぞ!?』
男「ああ、・・・理由は話せないんだけど、彼女は犯人じゃない。協力し合えることになった」
友『二人の吸血鬼、か』
男「どう思う?」
友『キミが彼女を信頼するというのなら、その男の吸血鬼が暗躍しているのだろうな。しかしよく男だと断定したな』
男「ああ、まあ、色々調べて、な」(いえるわけあるか・・・。乱暴されながら殺されたなんて・・・)
友『とにかく、例のハンターのこともある。キミは用心してくれ』
男「お前はどうする?」
友『・・・すまないが、私はその吸血鬼をそこまで信用できない。会った事もないしな。私は別な手段で事件を調べなおしてみる』
男「・・・わかった。お互い連絡は取り合えるようにしよう」
友『了解だ。定期的に連絡を入れる』
男「ん、ああ。それで、考えはまとまったか?」
少女「少し。まだちゃんとした計画には至っていないわ」
男「具合、少しは良くなったか」
少女「・・・そうね。だいぶマシよ。人間に心配されるとは、私もヤキがまわったのかしら」
男「・・・ところで、その高飛車な日本語は誰に習ったんだ?」
少女「あら、独学よ。時間は死ぬほどあったもの。他にも世界中の言葉を」
男「羨ましいね。人間の寿命は短いからな」
少女「そうかしら。長生きすればいいっていうのではないでしょう。私はそう思うわ」
男「そりゃ、死ぬほど長い時間生きてたらそうも思うだろうさ」
少女「・・・死ぬほど長い時間だわ、本当に」
少女「ええ。この家の周りを少し調べてみるわ。安全性とか、犯人の痕跡とか」
男「こんな夜中に?」
少女「お忘れかもしれないけれど、私吸血鬼なのよ。知ってた?」
男「・・・」
少女「すぐ戻るわ。それまで、私以外の誰も入れないことね。私の偽者も、いるかもしれないわ」
男「どうやって見分ければいいんだ?」
少女「それくらい自分で考えなさいな。私とあなたしか知りえないことを聞けばいいじゃない」
男「そんなのあったっけ、って、行っちまったよ・・・。最近話し聞いてもらえないな俺・・・」
男「ふわぁ・・・。いかん眠い・・・。いつまで待てばいいんだ・・・?」
男「・・・しかしこの棺桶邪魔だな。まさか本当に棺桶に寝てるとは思わなかった」
男「ん?」
かんおけ の ふた が すこし ずれて なかみ が みえそうだ !
ニア開ける
開けない
男「俺が開けたんじゃない。開いてたんだ。なら見えちゃっても仕方ないよな」
男「蓋、意外と重いな・・・ブッ」
男「無造作に下着投げ入れてんじゃねえよ・・・。水入りの小瓶に、なんだこれ、洋書?読めないな」
男「同じ服が数着・・・。枕?あとは・・・」
男「古い写真だ・・・。真ん中に写ってるのは・・・ぼやけて見難いけど、多分あの吸血鬼だ」
男「横に若い男と、猫・・・。いつの写真だろう」
?「・・・帰ったぞ」
男「!!」ビクッ!!
?「私はそう思うけれど」
男「・・・俺との初めての出会いはどんなだった」
?「愚かにも前方不注意でふらふらしていた駄犬をわざわざ助けるために、他ならないこの私がトラックを片手で放り投げた」
男「運転手はどうなった」
?「トラックが空中一回転して着地したとき、ぽかんとした顔で私を見てから、糸が切れたように気絶」
男「・・・風呂に入る前に穿いていたパンツの色は」
?「ブッ!?」
男「何色だ」
?「ぐ・・・。く、黒よ」
男「遅かったじゃないか心配したぞ」ガチャリ
少女「人間、少し話があるのだけれど」
男「・・・」
少女「油断も隙もないわねこのエロ犬。調教が必要かしら・・・」
男「不、可抗力」
少女「ええ、ちょっと開いてたのはそうかもしれないけれど。開け放したのは万死に値するわ」
男「・・・」
少女「・・・他には何か見たかしら」
男「・・・いいえ、何も・・・」
少女「・・・まあいいわ。とりあえずこの辺に痕跡はなし。明日以降本格的に調べるしかないわね」
男「zzz・・・」
少女「・・・」
少女(やはり妙だわ。なぜこんな島国で、この数百年起きなかった吸血鬼の暴走が起きるのかしら・・・)
少女(それも、こんなに吸血鬼とは関係の無い場所で・・・)
少女(・・・何か、とても大事なことを間違えているような気がするのだけれど)
少女(それにしても、もう時間が無いわ・・・)
男「すると、やっぱり手がかりなしか」
友『被害者の共通点があるようでない。中学生二人は随分前に失踪したって記事があったが』
男「失踪?殺される前にか」
友『みたいだな。その後で遺体となって発見、らしい』
男「・・・」
友『分かったのはその二人くらいだ。二人は元々同じクラスだったらしいな』
男「そうか、わかった」
男「今のところ何も。昼間はあいつが動けないから、何も出来ないし」
友『下手に動くと警察に捕まるし、か』
男「とりあえずまたコンビニに行こうとは思う。妙なのに会わなきゃいいけどさ」
友『ああ、気をつけろよ』
通話終了
男「さて、じゃあコンビニ行くか・・・」
男(さてこれで食料は確保できた)
男(・・・そういえばあいつは何か食わないのか?昨日も結局何も食わなかったみたいだし)
男(あれ、そういえば卿はあの警察官いないな。運がいいのかもな)
男「・・・そういえば、あいつの葬儀ってどうなってんだろ・・・。まさか遺体を見せるわけにも行かないだろうし・・・」
男「・・・くそ、早くなんとかしないと・・・」
少女「寝不足だわ」
男「昼間中寝てただろ」
少女「吸血鬼ですからね」
男「それで、作戦は」
少女「少々危険な賭けだけれど。この辺に確か空き地があったわね、大きな奴」
男「ああ、三年前まででかい病院があったんだ。もう移転したけど、そこがどうした?」
少女「そこを中心に、私の臭いをばら撒くわ。いいえ、そういう臭いじゃなくて吸血鬼的な」
男「あ、ああ」
少女「いくら理性崩壊とはいえ、同じ吸血鬼の臭いは分かるでしょう。縄張りを主張しに来たら、そこで叩く」
男「それでうまくいくのか」
少女「神にでも聞きなさいな。私は嫌われているだろうけれど」
友『なるほどな。理にはかなっている』
男「そう思うか?」
友『その吸血鬼の臭いとやらがどんなものか、私たちには理解できないが。きっと同属ならば・・・』
男「そっちは?」
友『ああ、少し気になることがあってね。今はそれを調べている。はっきりと分かったら伝えるよ』
男「分かった。すこしでも手がかりがほしいからな・・・」
友『うむ・・・。それは私も同じだ。吸血鬼は帰ってきたか?』
男「いやまだだ。多分そろそろ帰ってくると思う」
友『分かった。幸運を祈る』
男「なあ、変な意味じゃなくて聞くんだけど、吸血鬼の臭いってどんななんだ」
少女「そうね・・・。血と、あとは人間と大差ないわ。独特な香りというかなんというか」
男「それを付着させてきたのか」
少女「犬じゃないのよ。まあ撒いてきた、の方が正しいかしらね」
男「ふうん・・・。吸血鬼の臭い、ねえ」
男(あれ?最近どこかで聞いた様な気がするな・・・)
男(臭い・・・。吸血鬼の臭い・・・?)
男「あれ、待てよ。もしそうなら・・・」
少女「?何事?」
男「やばい!!今すぐ逃げ、!!」
男「!!」
少女「お前は・・・!!」
老紳士「吸血鬼の臭いを撒くというのは賛同いたしかねます。私のようなものをも呼び寄せてしまう」
男「あんた・・・」
老紳士「いったでしょう。吸血鬼の臭いがすると。迂闊ですぞお若いの」
男「く・・・」
少女「・・・私を止めにきたようね」
老紳士「いかにも。これ以上は見ておれませぬゆえ」
男「知り合い!?」
少女「古い、ね。離れていないと死ぬわよ」
老紳士「老いたとはいえ、今のあなたには十分でしょう」
少女「どうかしら。なめられたものだわ」
少女「愚問ね。お互い分かっていることでしょう?」
老紳士「・・・なれば、私は本気であなたにかかっていくしかありませぬな」
少女「元よりそうしないと死ぬわよ」
老紳士「・・・では、本気で行くぞ」
少女「上等・・・!!」
老紳士「!!」ヒュン!!
シュパン!!
男「えっ!?な、何で今、プ、プレハブが真っ二つに!?」
少女「相変わらず非現実な糸ね・・・!!」
老紳士「外したか・・・。やはり昔のようにはいかないか。なら、こちらはどうだろう?」
少女「ぐッ!?」
老紳士「一発掠めただけとは、こちらも鈍ったようですな」
男(こ、これがヤムチャ視点・・・。今何かがものすごい速度で吸血鬼に飛んでいったのは分かるけど・・・!!)
少女「相変わらずの切れ味ね・・・。そうやって何人を切断したのかしら。そのトランプのカードで」
老紳士「覚える必要の無いことは覚えない主義でしてね。少なくとも、ポーカーでは負けたことが無いですな」
少女「相手を切り刻むポーカーなんて」
老紳士「やはり、それでもあなたの方が弱っている。そんな状態で何が出来るというのです?」
少女「それでも、私はコレを放っておくことはできないわ」
老紳士「約束だから、ですか」
少女「誓いだから、よ」
少女「こんな体だからこそ」
老紳士「・・・最早言葉では通じないか」
少女「かもしれない。それでも私は・・・」
老紳士「・・・ッ。次は外しませんよ」
少女「望むところよ」
老紳士「・・・!!」
少女「・・・」
男「・・・?」
老紳士「・・・やはり・・・やはり私にあなたを討つなど・・・」
少女「道を正すのが、役目なのではなかったのかしら」
老紳士「他ならぬあなたが選んだ道です。それを、誰が過ちだといえましょうか」
老紳士「五十年前の約束です。それをあなたは完遂しようとしている。・・・私などは到底及びますまい」
少女「かつての切り裂きジャックの二つ名が泣くのではなくて?」
老紳士「名などに意味はないと教えてくれた猫がおりましたゆえ・・・」
男「ええと・・・?」
少女「もういいわ。これ以上私たちが戦うことは無い」
男「ごめん、はなしがさっぱり」
少女「この男は、私の城の執事で、元ヴァンパイアハンター。切断が大好きだったわ」
老紳士「お恥ずかしいところを・・・。しかしいても立ってもおられませずに、こうして参陣したしだいでございます」
男「ええと、じゃあ・・・そもそも敵じゃないの?」
少女「敵というか、昔からの目付け役というのかしら・・・。全盛の頃は私と互角くらいの力があったわ」
老紳士「持ち上げすぎです、お嬢様」
男「臭いに反応しなかった、てこと?」
老紳士「お恥ずかしながら、私がとお嬢様の戦闘に感ずいたのやも知れませぬ。責任は全てこの私に・・・」
少女「バトラー、時間が無いわ。次の手を考えないと」
老紳士「は。しかし、なぜこのような島国にかような吸血鬼が現れたのでしょうか」
女「・・・それは私も考えていたわ。考えれば考えるほど辻褄が合わない」
男「吸血鬼が日本で自然発生する、て可能性は」
老紳士「ゼロでしょうな、ほとんど」
女「だからこそおかしいと思うのよ。何なのかしら、この違和感は」
老紳士「しかしながら、敵の戦力は巨大。こちらは老いた私目と弱ったお嬢様、それに人間のみとなれば、正面衝突は避けねばなりませぬ」
男「弱った・・・?」
老紳士「失礼、失言でした。とかく、早く敵を捕捉しないことには始まりませぬ」
女「同感だわ」
男「そうか、やっぱり。でも、誰に・・・?」
老紳士「失礼ながら、実は一つ気になることが。あなた様から、別の吸血鬼の臭いがいたします」
男「俺が、え?」
少女「確か?」
老紳士「確かです。かすかにですが、最近接触した何者かが犯人の可能性があります」
男「とはいえ、誰だ・・・?」
少女「昼間歩き回らない、あるいは暗い室内にいる人物が怪しいわ。心あたりは?」
男「そんなこと言ったって・・・」
老紳士「ノン。それならば私があの時気づいております。もしそうならとうに切断いたしました」
少女「他ね。電話の相手は?」
男「いや、あいつは女だ」
少女「これも却下ね。あとは?」
男「あと、暗いところとか夜とか・・・?」
老紳士「そうでございますね、あるいは直射日光の当たらないようなターバンですとか」
男「・・・」
男「・・・、まてよ?」
友「・・・やはりそうか。違和感の正体はコレだ。考えてみればこれしかない」
友「なぜ吸血鬼がこの日本に侵入して来たのか。多分みんな根本的な勘違いをしてる。そうじゃないんだ」
友「侵入したのではないとしたら。元々そこにいたのだとしたら。そこにいたモノがそれと化したのだとすれば・・・」
男「・・・分かったかもしれない。誰が吸血鬼か」
生徒A「今日全校集会だろ?」
生徒B「ああ。多分校長から説明だよな・・・」
男「・・・」テクテク・・・
男「・・・失礼します」トントン・・・
理科教師「・・・」
男「ああ、先生に用があって来ました。お訊ねしてもいいですか、理科の実験のことで」
理科教師「・・・いい、だろう」
男「ありがとうございます。・・・実験中でしたか?カーテンを開けたいのですが」
理科教師「・・・ダメだ」
男「そうですか、いい天気なのに。先生、もう一つ世間話を。薙刀について聞きたいのですが」
理科教師「なぎなた・・・」
男「ええ。どうにも分からないんですよ、薙刀の大会ってどうやって勝敗がつくのか。先生はご存知ですよね」
男「まさか知らないはず無いでしょう。女率いる薙刀部の顧問でしたものね、先生は」
理科教師「・・・」
男「完全下校の時間には空は暗くなる。だから引率のフリをして、獲物を探した。昼休みのたび、薙刀部の連中をここに集めて」
理科教師「・・・」
男「大方うまそうな子を狙ったんだろう。かつ処女で、お前のお眼鏡にかなう子だ。なあおい」
理科教師「・・・」
男「―――生きて帰れると思うなよ、腐れ外道」
バケモノ「ニヤァ・・・」
バケモノ「飲ンダ、飲ンダナア・・・。旨イ味、シタ・・・。アノ女ハシカモ、・・・イイ女ダッタ」
シュパパパッ!!
老紳士「それだけ聞ければ十分だろう。切断して太陽にさらしてくれようぞ・・・!!」
老紳士「昼間にたかがカーテンだけでこんなところにいるとは、間抜け以外の何者でもない。さあ、溶けて消えるがいい」
バケモノ「ヌアアアアアアアアア!!!!」ジュウジュウ・・・!!
男(これで・・・)
老紳士「!?違う!!」
男「!?」
???「ヨクモ・・・アノ外見ハ気ニ入ッテイタノニ・・・!!」シュウウウウウ・・・・!!
男「化け物の下から!?」
老紳士「これは・・・!?」
鬼「貴様ラハ、肉ヲ直接食ッテヤル・・・!!」
老紳士「いかん、プレイングカード、『トランプ』ッ!!」
・・・老紳士『あらかじめ説明しておきますと、五十二枚のトランプのカードを特殊に加工したものでございます。これらが一挙に襲い掛かれば、相手は必ず切断されます』
少女『さすがに私でも避けられないでしょうね、全枚飛ばす『切り札』、トランプって技は』
老紳士『光栄でございます』・・・
鬼「ナンダ、コンナモノ・・・」
男「ま、まったく効いてない・・・!!」
老紳士「いけません!!下がってください!!」
鬼「ウオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
男「こ、鼓膜が・・・!!」
老紳士「切れない・・・、なんという怨念の塊か・・・!!」
男「こいつ・・・!!」
鬼「腹ガ減ッタ・・・。オ前、食ウ・・・!!」ガシッ!!
男「うおわっ!?」
老紳士「ダメだ、物理的な攻撃がまったく効かん!!」
男「く、食われ・・・!!」
友「私の目の前で、そんなことが出来ると思うのか?」
老紳士「!!」
男「お、前・・・ぐ・・・!?」メキメキ・・・
鬼「オ前、旨ソウナ・・・」
友「やはりそうか。根本的な勘違いだ、吸血鬼がこの町に来たんじゃない。元々この国にいたものが、生き血を啜る鬼に変化したんだ・・・」
老紳士「いかん!!」
男「逃げ、ろ・・・!!」
友「いいや。ならば、こういうのは、どうだ!?」パシィ!!
鬼「・・・ウギャアアアアアアア!!!!?」
男「掴みに行った手が、溶けた・・・!?」
老紳士「これは・・・!?」
友「簡単なことだ、この国の化け物ならこの国なりのやり方で斃せばいい。・・・例えば、こういう符でな」
老紳士「神道か!!」
鬼「ウオオオオオオオオオオオオン!!」ダダダッ!!
老紳士「おのれ逃がすか・・・!!」
友「いいや、大丈夫だ。やつがどこへ逃げるか、見当は付いている」
男「本当だ・・・、枯れ果ててる」
少女「山の守り手が消えた?いや、違うわ、守り手が守るのを放棄したのかしら?」
友「半年ほど前、最初の被害者である中学生ともう一人は、実はとある問題に絡んでいた」
男「問題?」
友「いじめに関する自殺問題だ。一時期盛んになっただろう?あれだよ。殺害されたサラリーマンは、そのいじめられていた子の実の父親だった」
少女「では・・・?」
友「奴の本来の目的は恐らく彼らの殺害だ。彼がまだ、元の意思をもっていた頃の」
友「彼がまだ、山の守り手―――天狗だった頃の、な・・・」
友「・・・擁護するわけではないが、恐らく一線は越えていないのだろう」
男「え?」
少女「そうね、まず肉を食わなかった。血は飲んだけれど、そこは守り抜いた・・・」
男「そういう問題かよ!!たくさん人が殺されてんだぞ!!」
友「・・・そしてもう一つ。女は、女は辱めは受けていなかった・・・」
少女「・・・やつは吸血鬼ではないから。私の臭いにも反応しなかった」
老紳士「すべての辻褄が、合いましたな」
男「・・・」
少女「・・・あとは私の仕事だわ。鬼には鬼同士、譲れないものがある。人間のあなたたちが見せてくれた魂の強さは、私が戦うのには十分な理由ね」
老紳士「お嬢様・・・」
少女「大丈夫よ、まだ、ね」
友「・・・行こう。この上に、古い祠がある。恐らく奴はそこだ」
少女「・・・悲しい生き物ね、私もお前も」
鬼「・・・」
少女「他に道はなかったかもしれないけれど、それでも私はあなたの行き方を容認は出来ないわ」
鬼「人間ナド・・・生キル価値ハ無イ・・・。未来アル子供ガ死ンデモ、タダ空シク、何モ変ワラナイ日常ガ続ク・・・ソコニ意味ナドアルノカ?」
少女「そこから先に進めないのが化け物。先に進めるのが人間よ。だからこそ、私たちは去らねばならないの。先に進むのに、私たちは障害なのよ」
鬼「オ前ハ・・・」
少女「・・・覚悟はいいかしら?」
鬼「私ハ・・・。・・・ああ、少年、私は・・・」
シュッ ドサッ!!
男「最期は、呆気なかったな」
少女「・・・そんなものよ、化け物の最期なんて」
男「・・・これでお終い、か」
少女「いいえ。まだやることが残っているわ」
男「え?」
少女「人間。私と戦いなさい。この町を賭けて、私と、一対一で」
男「・・・」
少女「・・・」
男「・・・え」
少女「あなたが負けたら、この町は私が支配する。血も吸うわ。でもあなたが勝ったら、私は今後二度とこの国に足を踏み入れないわ」
男「ちょ、ちょっと待てよ、何で俺がお前と!?」
少女「私は化け物。あなたは人間。・・・これ以上の理由はいらないわ。明日のこの時間。空き地で待つわ。来なくてもいいけど、不戦敗とみなす」
男「そんな、勝手すぎるぞ!?」
男「お前、なんで、」
少女「私は化け物よ。この町がほしいの、・・・血がほしい!!あの子やあなたからもね!!」
男「な、」
少女「いいのよ、戦わないで逃げても。他の住人を全員差し出すのなら、見逃してあげるわ」
男「―――お前本気で・・・」
少女「見せしめに一人殺そうかしら?それで理解する?あの子なんてどうかしら?」
男「・・・」
男「分かった・・・。もう行けよ、・・・この化け物が」
男「・・・ああ」
少女「・・・じゃ」
男「・・・ああ」
男(・・・)
男(所詮は化け物・・・相容れない存在・・・)
男(でも・・・それでも・・・)
少女「・・・逃げなかったのね」
男「ああ」
少女「相手は吸血鬼。対するあなたはタダの学生。勝ち目が万に一つもあると思うのかしら」
男「・・・」
少女「武器はナイフ?それとも十字架?」
男「・・・」
少女「何でもいいわね。今じゃおたがい敵同士なのだから。・・・始めましょうか」
男「お前、死ぬ気じゃないのか?」
少女「・・・」
男「考えてみたけど、それしか思いつかない。不自然だ、あまりにも」
男「お前、なんでそんな頑ななんだ?死なないといけない理由があるのか?」
少女「答える必要があるのかしら?」
男「なんでだ?妖怪や吸血鬼だって、人間と共存できるんじゃないのかよ」
少女「・・・知ったような口を・・・!!私は化け物だ!!人間を食い物にする哀れな下衆だ!!それがなぜ人間と共存できる!!」
男「方法はいくらでもあるはずだろ!!今まで考えなかっただけで、」
少女「違う!!そんなのは楽観だ、そんなのは夢だ幻想だ!!私はもうこんな体、こんな人生・・・!!」
男「そうやって何もかも放り出せば満足するのかよ!!」
少女「違うわ、私は、こうやって死ぬしか道がないの!!これ以外に゛っ!!?」ドクン!!
男「・・・おい、どうした?」
少女「う、ぐあぁぁ・・・!!早、く私を、殺して・・・!!」
男「何だと!?」
少女「抑えられているうちに・・・!!この衝動を、抑え。られているう、ちに・・・!!」!!
男「あんた、これ、どうなってるんだ!?前にもこんなことあったけど!?」
老紳士「限界なのです最早・・・。これ以上本能を押さえつけられない・・・。本来吸血鬼は我々よりも生存本能が強いのです」
男「本能!?」
老紳士「生き残ろうとする本能が、お嬢様の意思とは関係なく、吸血行為を強要する・・・。もう時間切れなのです」
男「!?」
少女「う、ぁああああっ!!」
老紳士「お嬢様は五十年前の誓い以来、血を一滴も召していない・・・。だからこうなる前にこの決闘で・・・」
男「そんな・・・」
老紳士「これまではこうなったとき、薄めた聖水を自らにかけることで押さえ込んできましたが、もはやそうはいきますまい」
男「じゃ、じゃあどうしたら・・・」
老紳士「・・・このままでは、お嬢様はただの血に飢えた吸血鬼と化します。そうなれば、老いた私やあなた様には止めようがなくなる」
男「なんで、少しなら俺の血を、」
老紳士「少しでも吸われれば吸血鬼かグールとなります。お嬢様はそれを良しとしなかった。それゆえです!」
男「じゃあもう方法がない・・・?」
少女「ああああ!!」
老紳士「今しかありません!!私ではなく、彼女はあなた様にそれを頼んだ!為すのは今です!!」
男「!!」
少女「っ、ぐぁああう!?」
老紳士「少しの間なら、私の糸で彼女の動きを止められます!その間に、どうか!!」
男「そ、そんなこと・・・」
女「うぐ、うああ」
老紳士「押さえました、どうか、今のうちに・・・!!」
男「・・・ッ!!」
女「早、く・・・これ以上は、もうこれ以上は・・・!!」
男「・・・」
女「気が、狂いそう・・・。化、け物には、相応しい、最、期、だわ・・・」
男「お前・・・」
女「さあ、やる、の・・・!!怖気づ、いた、のかしら・・・!?」
老紳士「むぅ!!いかん、糸が断ち切られる!!これ以上は!!」
男「・・・一生」
男「一生恨むぞ」
女「構わないわ・・・私、こう見えて、化け物な、のよ・・・。知ってた?」
男「ああ・・・」
男「今、痛いほどに・・・ッ!!」
―――
男「ハァ・・・ハァ・・・」
少女「辛いことを、させたかしら?」
男「・・・ああ」
少女「そうよね・・・。ああ・・・。ごめんなさい」
男「・・・」
老紳士「お嬢様・・・」
少女「いいのよ・・・。私はもう、死ぬほど生きたのだから・・・」
男「お前、最初から死ぬ気だったのか」
少女「・・・ええ。誰かを、吸って、ガボッ・・・しまう前にね・・・」
老紳士「ついに・・・成し遂げられましたな。あの日の誓いを」
少女「死ぬまで、血を吸わない・・・。ふふ・・・。言うは易し、半世紀、か・・・」
男「・・・」
少女「ああ、やっと・・・やっと空腹が・・・みち、た・・・」
少女「・・・ありが、・・・」
男「ッ・・・!!」
老紳士「・・・感謝致します。これで、お嬢様の悪夢は終わりました」
男「・・・」
男「こんなのって、な・・・」
老紳士「・・・」
数週間後―――
友「すっかり魂が抜けていないか」
男「・・・ああ」
友「処置なしだな。・・・まあ、仕方ない部分もあるのだろうが。すみませんが、こいつ頼みます」
老紳士「あなた様は?」
友「私は、その、今回のことと似たようなことが起きないように、何とかしようと思う。漠然としてるけど・・・」
老紳士「左様ですか・・・。幸運をお祈りいたします」
友「ああ。・・・では」
男「・・・」
男「・・・」
老紳士「最初の吸血鬼、最強の男。彼は一人の人間に斃されました」
男「・・・」
老紳士「ですが、彼は死んでなお吸血鬼は死に絶えなかった。私は思うのですが、ドラキュラは死を越える何かを持っていたのではないでしょうか」
男「死を超える・・・」
老紳士「そうでなくては、吸血鬼が繁栄したことの説明がつきませぬ」
男「・・・それが?」
老紳士「何、老人の戯言でございます。しかし・・・」
老紳士「死を超える者のことを、我々は化け物と、そう呼ぶのでございましょう・・・」
男「・・・」
男「殺した、か・・・」
男「そういう意味じゃ、俺は鬼や化け物と何も変わらない・・・。助けることが殺すことだ、それで納得が出来るか?」
男「俺には、そう割り切れない・・・」
男「死を超越した者、化け物・・・。超えるって何だ?死んだら終わりじゃないのか」
男「死んで終わりになるのが人間・・・。そうじゃないのが化け物・・・。俺は、俺は・・・」
?「・・・いつまで、そうやってふ抜けているつもりなのかしら。地獄の底からでも見ちゃいられないわね」
男「―――え?」
「化け物は、死すら乗り越えるからこそ、そう呼ばれる―――」
保守には足りないくらいの感謝を
最後何が起きたのかは、解釈しだいです
良かったよ
Entry ⇒ 2012.09.27 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
白望「芋けんぴ、髪に付いてたよ」
シロのマイナーカプSSらしいぞ!
マイナーカプが苦手な人は気をつけろ!
塞「好きな人ができたァ!?」白望「うん」
http://ssweaver.com/blog-entry-1723.html
一応前作?だけどお話のつながりはないです
ーーー
洋榎『清老頭や。32000──思ったより痛いんちゃうか?』
いちご『そんなん考慮しとらんよ……』
ーーー
チュンチュンチュンチュン
いちご「…………」パチッ
いちご「……チュンチュンが、チュンチュン鳴いとる……」
いちご「……最悪の寝覚めじゃ……」
いちご「もう何日もたつのに、いまだに立ち直れん……」
『今日の占い、カウントダウーン!』
『今日もっとも良い運勢は――』
いちご「はぁ……」
『――そして今日最も悪い運勢なのは、ごめんなさい、??座のあなた――』
いちご「占いまで最下位……ちゃちゃのんはもう駄目かも……」
いちご「…………」
いちご「芋けんぴ、買いに行くかのう……」
…
アルバイト「ありゃっしたー!」
いちご「……けっこう美味いのう」カリカリ
いちご「なんかいいことな――」
いちご「――わぷっ!?」白望「わっ」ドンッ
いちご「いたたた……」
白望「ごめん……大丈夫、立てる?」
いちご「あ、こちらこそすみません……つっ!」
白望「膝、怪我してる」
いちご「あ、お、お構いなく……」
いちご「ぇっ?」
白望「ん……」ダキッ
いちご「!?!?!?!?」
いちご(お、お姫さまだっこぉ!?)
白望「近くにベンチがあったから……そこまで我慢して」
いちご「は、はいぃ……」
いちご「わ、わざわざすみません……」
白望「私のせいだから、気にしないで」
いちご「そんな……」
白望「そこの薬局で水と傷薬買ってくるから、少し待ってて」
いちご「あ、そこまでは……行っちゃった」
いちご「これはラッキーなのか、アンラッキーなのか……どっちなんじゃろ」
いちご「あ、おかえりなさい」
白望「とりあえず、応急処置」テキパキテキパキ
白望「ん、できた」
いちご「ありがとうございます」
白望「うん」
白望「…………」
いちご「…………」
白望「…………」
いちご「…………?」
いちご「あ、あの……」
白望「んー?」
いちご「ここにおっていいんですか?用事とかは……?」
白望「散歩してただけだから……。君が歩けるようになるまではいるよ」
シロの二人称よくわからんから君使いました。間違ってたらごめんね
白望「あ、迷惑ならどっか行くけど」
いちご「そ、そんな、迷惑なんて!」
白望「そう……よかった」
白望「君可愛いから、一人にするのはちょっと心配だった」
いちご ボンッ!
いちご「か、可愛いなんて……」
いちご(い、言われ慣れとるはずなんに、何じゃろこの気持ちは……)
白望「……」
いちご「……」
いちご(無言なんに居心地悪くない……不思議な人じゃのう……)
白望「……」
いちご「……」
いちご「あの、そろそろ……」
白望「動ける?」
いちご「はい。ありがとうございました」
白望「ん……、ちょいタンマ」
いちご「え?」
白望 スッ
いちご「え?え?ええええ?な、なんじゃあ!?」
白望 ヒョイ
白望「芋けんぴ、髪に付いてたよ」カリッ
いちご「う……」
いちご(わ――――///)カァァ
いちご「あ、ま、待って!」
白望「?」
いちご「お名前、教えてください!」
白望「小瀬川白望。じゃね」
いちご「小瀬川さん……」キュン
いちご「個人戦じゃ!」
鹿老渡A「ちゃちゃのん気合はいってんね?」
鹿老渡B「団体のアレから立ち直れてよかったのー」
鹿老渡C「がんばって!」
いちご「うん!」
いちご(もしかすると小瀬川さんが見とるかもしれんしな!)
いちご「ありがと、最初に当たるのは……埼玉と、京都と……」
いちご「……岩手、小瀬川白望……!?」
ーーー
いちご「うん、見間違えじゃない」
いちご「こういう珍しい名前が何人もおるとは思えんし……」
いちご「たぶん、小瀬川さんで間違いないな」
※個人戦代表シロ&ちゃちゃのんはオリ設定やで
岩手と広島の代表は判明してなかったよね?
いちご「……どうしよう……」
いちご「……どどどどどどうしよおおおおお……」
いちご「まままままさかこんな展開になるなんてそんなん考慮しとらんよおおおお」
いちご「あわわわわわわわ」
いちご「お、おちつけちゃちゃのん、平常心じゃ……」
いちご「ひっひっふー、ひっひっふー」
いちご「うん、これで小瀬川さんとも……もも、もももももももも」
いちご「い、いかん、こんなんでまともに打てるわけない……」
いちご「ど、どうすりゃええんじゃ……!?」
…
いちご「そんなこんなで個人戦当日になってしまったんよ」
白望「だる……」
いちご「!」
いちご(い、今の声は――!)
白望「ん……?あれ、こないだの」
いちご「ここここっここここ」
白望「……?」
いちご「ここここここここ」
白望「んー……?」
埼玉「ちわー」
京都「わ、ちゃちゃのんだ!本物だ!」
いちご(み、みんな揃ってしまった……)
埼玉「よろしくお願いします」
京都「お願いしまーす」
白望「よろしく……」
いちご「よ、よろしくお願いします」
埼玉と京都は日本地図開いたらたまたま目に入っただけですはい
キ ン ク リ !
…
いちご(終わった……)
いちご(結果は対局に集中できなかったちゃちゃのんの一人沈み……)
いちご(小瀬川さんは終始だるそうな顔しとった……)※素です
いちご(あきれとったんじゃろうか……?)※素です
いちご(泣きたい……)
いちご「あ……」
いちご(小瀬川さん、行っちゃう……)
いちご(そりゃそうじゃ、対局が終わったら用ないもんな……)
いちご(……お別れか……広島と岩手じゃもう会うことも……)
いちご「…………」
ガシッ
いちご「…………」
いちご(か、体が動いちゃった……)
白望「なに?」
いちご「あ、あの、あの……」
いちご(いかん、何も出てこん!)
白望「……控え室、行く?」
いちご「ひ、控え室?」
白望「あそこなら、二人になれると思う」
いちご「は、はい……」
埼玉「なんだあの空気」
京都「私のストロベリーがパニックしそう」
白望「で、なに?」
いちご(い、いかん、二人っきりになってもなんも好転しとらん……)
いちご(何て言えば正解なんじゃ……)
いちご(好きです付き合ってくださいとかか!?絶対引かれるわ!)
いちご(ぬぬぬぬ……)
白望「!?」ビクッ
いちご「女は気合じゃ!小瀬川さん!」
白望「う、うん」
いちご「ちゃちゃのんと――」
いちご「ちゃちゃのんと友達になってください!!
いちご(まずは友達からじゃな。うん。決してちゃちゃのんがヘタレなわけじゃないよ)
白望「……ちょいタンマ」
いちご「ふぇっ?」
いちご(え、え、なんでここでタンマ……!?)
いちご(ちゃ、ちゃちゃのんと友達なんてごめんとか!?)
いちご(ああ、傷つけずに断る言葉でも探してるのかもしれん……)
白望「…………」
白望「んー、ねえ、佐々野さん」
いちご「は、はい」
白望「それ、佐々野さんが一番したいことじゃないよね?」
いちご「……え?」
白望「なんとなくだけど、佐々野さんが一番したいことは別にある気がする」
いちご「え?え?」
いちご(いやでも、もしちゃちゃのんの恥ずかしい勘違いで、断られたら、友達にすら……)
いちご(……ここで断られるようなら、ずっと脈なしか)
いちご(行くしか、ないのう!)
いちご「小瀬川さん!」
白望「うん」
いちご「ちゃ、ちゃちゃのんと、付き合ってください!」
ーー
ー
―広島、鹿老渡高校―
いちご「~♪」
鹿老渡A「あー、またちゃちゃのんケータイ見つめてにやにやしとるー」
いちご「に、にやにやなんてしとらんよ!?」
鹿老渡A「えー、してたよー」
鹿老渡B「しとったのー」
支援
ペロペロして砂糖溶かしてから髪の毛にくっつけながら乾くまで握りしめる
そしてイケメンと衝突する
簡単
鹿老渡B「はい!岩手の某恋人さんなどが怪しいと思います!」
鹿老渡C「わたくしも同意見であります!……あ、逃げよった」
鹿老渡A「追うぞー!」
鹿老渡BC「おー!」
…
いちご「……ふぅ、何とか撒いたな。まさか立ち入り禁止の屋上にいるとは思わんじゃろ……」
いちご「さて、メール、メール……」
いちご「ふふっ」
いちご「シロー!大好きー!!……なーんて、」
鹿老渡A「おやおや、聞きましたか?」
いちご「え」
鹿老渡B「愛の告白ですのう」
いちご「ちょ、」
鹿老渡C「熱々ですなー」
いちご「な、なんでおるんよ!?」
鹿老渡A「ちゃちゃのんの行動パターンなどお見通しよ!」
鹿老渡B「ハイパーニヤニヤタイムの始まりじゃー!」
鹿老渡C「ニヤニヤニヤニヤ」
いちご「や、やめてー!!」
白望「うん、私も大好きだよ」
白望「……いちご」
おしまい
残:部長、クロチャー、衣、とーか、純、はっちゃん、すばら、タコス、小蒔、照、もーちゃん
はやりんはスラスラっといけたのにちゃちゃのんは難産過ぎた
ほとんどちゃちゃのんとシロの二人でセリフ回したからかしら
次はてるてるの予定だけど、なんも思い浮かばんのでシチュエーションとか募集してみる
Entry ⇒ 2012.09.26 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
シャーリー「ルルは女の子の気持ちを理解してない!」ルルーシュ「」
シャーリー「これでよし。会長の誕生日プレゼントはばっちり」
ルルーシュ「じゃあ、帰ろうか。シャーリー」
シャーリー「え……?」
ルルーシュ「どうした?」
シャーリー「いや、まだお昼前だけど?」
ルルーシュ「目的は達成できただろ。他に何かあるのか?」
シャーリー「……あ、そう」
ルルーシュ「シャーリー?」
シャーリー「ルルは女の子の気持ちをちっとも理解してない!!」タタタッ
ルルーシュ「シャーリー!!おい!!帰るなら送っていく!!」
ルルーシュ「……ただいま」
咲世子「ルルーシュ様、お帰りなさいませ。随分とお早いですね」
ルルーシュ「え?」
咲世子「今日はシャーリーさんとお買い物だと聞いていたので、帰宅は夜になるものとばかり」
ルルーシュ「会長のプレゼント買いに行っただけですよ。買うものも事前にリサーチしていましたし、時間なんてかかりません」
咲世子「では、購入してそのまま帰ってきたのですか?」
ルルーシュ「ええ。それがなにか?」
咲世子「シャーリーさん、怒ってませんでしたか?」
ルルーシュ「ああ。怒られました。よく分かりましたね」
咲世子「ルルーシュ様」
ルルーシュ「なんですか?」
咲世子「ミレイ様を選ばれるつもりなのですか?」
ルルーシュ「何の話かわかりません」
ルルーシュ「ただいま、ナナリー」
ナナリー「よかった、想像以上に帰ってくるのが早くて。私、嬉しいです」
ルルーシュ「そうか」
ナナリー「ふふ……」
咲世子「ルルーシュ様。少しよろしいでしょうか?」
ルルーシュ「はい?」
咲世子「ナナリー様と買い物に行かれた場合、買うものを買ってしまえばそのまま直帰しますか?」
ルルーシュ「時間に余裕があるなら食事をして、他のショップにも見て回って、ナナリーに似合いそうな服かアクセサリーでも探します」
ナナリー「うれしいです」
ルルーシュ「当然だろ、ナナリー」
咲世子「シャーリーさんもそれをしてほしかったのでは?」
ルルーシュ「それはありません。以前、そのように誘って断られましたからね」
咲世子「そうでしたか」
ルルーシュ「あのときもシャーリーは怒っていたな……。そういうことは先に言ってよとか心の準備がとか訳のわからないことを言いながら」
ルルーシュ「ああ、行かないよ。ナナリー」
ナナリー「では、是非聞いて欲しいことがあるのですが」
ルルーシュ「よし。いくらでも聞いてやる」
ナナリー「ありがとうございます」
咲世子「シャーリーさんもミレイ様も今一歩、ルルーシュ様には踏み込めていないのですね」
咲世子(使用人としてこれ以上の口出しは憚られますし……)
ナナリー「あのですね、お兄様、実は昨日とっても面白いことがあったんです」
ルルーシュ「それは楽しみだな。着替えてくるから少し待っていてくれ」
ナナリー「はいっ」
咲世子(ルルーシュ様がシャーリーさんかミレイ様のお気持ちに少しでも気づいてくれたのなら……きっと……)
ミレイ『ルルーシュ……』
ルルーシュ『会長……いえ、ミレイ。もう帰るのか?ネオン街が俺たちを待っているのに?』
ミレイ『ルルーシュ……今日は朝帰りしちゃうっ』ギュッ
咲世子(―――というように、ルルーシュ様の未来は安泰ですのに……)
ルルーシュ「シャーリー、この書類だけど」
シャーリー「ふん」プイッ
ルルーシュ「……」
スザク「どうしたんだい?シャーリー、機嫌が悪いみたいだけど」
リヴァル「昨日の買い物デート、ルルのやつがさっさと帰っちまったんだと」
スザク「そうなのか……」
ミレイ「あちゃー。二人の距離が縮むと思ったのになぁ」
リヴァル「現状維持っすね、あれは」
ミレイ「ま、ルルーシュだから仕方ないか」
スザク「……ルルーシュ!!」
ルルーシュ「なんだ?」
スザク「シャーリーは君の事が―――」
ミレイ「ストーップ!!!」
スザク「なんですか?」
スザク「でも、こういうことはきちんと伝えたほうが」
リヴァル「そんな単純なもんじゃないって」
スザク「そうかな。問題の所在を明らかにしたほうがいいと思うけど」
ミレイ「ルルーシュの場合は一理あるけどねぇ」
ルルーシュ「なんだ、スザク。シャーリーがどうかしたのか」
スザク「ああ。シャーリーはルルーシュのことが―――」
ミレイ「シャラーップ!!―――スザクくん、こういうのは生暖かく見守るに限るのよ」
スザク「しかし」
ミレイ「スザクくんの一言で関係に亀裂ができたら、責任とれるの?」
スザク「え……」
リヴァル「必ずしもルルーシュがシャーリーを選ぶとは限らないだろ?」
スザク「それもそうか……」
ルルーシュ「なんだ、リヴァル?言いたいことがあるなら言ってくれ」
リヴァル「ああ、なにもない。ルルーシュ君は業務を続けたまえ」
カレン「あ?」
ルルーシュ「(……ここでは猫を被ったほうがいいんじゃないのか?)」
カレン「(ああ、そうね)」
ルルーシュ「(機嫌が悪いな。何かあったのか?)」
カレン「(寝不足なだけよ)」
ルルーシュ「じゃあ、この書類。コピーしてきてくれ」
カレン「はいはい」
ルルーシュ(カレンも随分と疲労が溜まっているようだな。二重生活に慣れるまではもう少し時間が必要のようだ)
カレン「ふわぁぁ……ねむぃ……」
ミレイ「なーんか、いい方法はないかしらねぇ」
リヴァル「ルルーシュはナナリー一筋だからなぁ」
スザク「うん。ナナリー以外は眼中にないだろうし」
ミレイ「それってさぁ、問題じゃない?」
リヴァル「というか、もしかして……ルルーシュって……」
リヴァル「ナナリーのこと、好きなんじゃないのか?」
ミレイ「えー?!ありえるー」
スザク「好きに決まっているじゃないか。何を今更……」
リヴァル「スザク君。ここでいう好きっていうのは、家族愛や兄妹愛じゃなくて……」
ミレイ「恋愛のことよ」
スザク「え……」
ミレイ「でも、ナナリーとルルーシュは本当に仲いいからねー。疑われても致し方ないぐらいに」
スザク「それは流石に無いと思います」
ミレイ「どぉして?」
スザク「ルルーシュはナナリーを本当に大切に思っているからです」
リヴァル「そこから禁断の愛に発展することもあるかもしれないだろ?」
スザク「兄が実の妹に対してそんな邪な感情を抱くなんてありえないよ」
リヴァル「わかった。こっちこい」
スザク「なにをするんだい?」
ニーナ「うん。いいけど、何するの?」
リヴァル「スザクに世界を見せる」
ニーナ「世界?」
スザク「一体何を……?」
リヴァル「まぁ見てろ……」カタカタ
ニーナ「いもうと……もえ……?」
リヴァル「これだ」
スザク「これは?」
リヴァル「妹関連の商品だ。世の男たちは飢えている。可愛い妹というものにな」
スザク「ど、どういうことだ!?」
リヴァル「簡単に言えばな、実の妹と男女の関係になりたいと考える奴は多いってことだ」
スザク「そ、そんな……」
リヴァル「だから、ルルーシュも実のところはわからない。かもしれない」
スザク「……」
カレン「はい、コピー」
ルルーシュ「ありがとう」
カレン「どういたしまして」
シャーリー「……」
ルルーシュ「どうした?」
シャーリー「別に」
ルルーシュ「そうか」
カレン「……そうじゃないでしょ」
ルルーシュ「何か言ったか、カレン?」
カレン「何も」
ルルーシュ「……?」
ミレイ「ルルーシュー、あいしてるー」
ルルーシュ「はいはい。仕事してください」
ミレイ「これだもんねー」
咲世子「どうも」
ミレイ「お、きたきた」
ルルーシュ「ナナリー、気にすることはない。特に何もしていなかったからな」
カレン「そうねー」
スザク「ルルーシュ、聞きたいことがあるんだけど。いいかな」
ルルーシュ「どうした、改まって」
シャーリー「スザクくん……?」
スザク「今から一人を連れて出かけるとしたら、誰を連れて行く?」
ルルーシュ「なんだそれは?」
スザク「答えてくれ」
ルルーシュ「……ナナリーだな」
スザク「……ルルーシュ。君は妹萌えなのか」
ルルーシュ「何がいいたい?」
スザク「やはりナナリーが好きなのか?」
スザク「付き合ってもいいほどにか?」
リヴァル「お、おい。スザク……」
ルルーシュ「当然だろう」
ナナリー「お兄様……そんな……」モジモジ
ミレイ「だめだ……かちめが……」
シャーリー「……じゃあ、兄妹で結婚でもなんでもしなさいよ」
カレン「引くわね」
ルルーシュ「待て!!何だ、その反応は?!普通だろうが!!」
ナナリー「はい。お兄様は何も間違ってはいませんっ」
ニーナ「そうかな?」
咲世子「ルルーシュ様……」
ルルーシュ「スザク!!」
スザク「ルルーシュ……君はどこかズレているんだ……。僕はそれを正したい……」
ルルーシュ「妹が好きで何が悪いんだ!!言ってみろ!!」
ゼロ「……」
カレン「んー……。はぁ……つかれたぁ……」
扇「寝不足か?やはり二重生活は辛いか、カレン?」
カレン「ええまぁ、最近はそれだけじゃないんですけど……」
扇「そうなのか?」
カレン「ええ。ちょっと」
ゼロ(くそっ。結局、生徒会のみんなからは白い目で見られ続けた。優しく微笑んでくれたのはナナリーだけ)
ゼロ(妹を愛して何が罪なんだ……。さっぱりわからん)
扇「へえ……。そうなのか」
カレン「はい。もう嵌っちゃって」
扇「趣味に没頭するのはいいけど体調管理はしっかりな」
カレン「はい。気をつけます」
扇「で、どういうところが面白いんだ、それ」
カレン「えっと、女の子の横に爆弾が表示されたときとか結構スリリングで……」
カレン「大丈夫ですよ。携帯ゲームなんで」スッ
扇「これが……」
カレン「今、この子を口説いているんですけど」
扇「む……」
カレン「どうしました?」
扇「いや。知り合いの女性に似ているなと思って」
カレン「へぇ」
扇「千草……」
カレン「女の子との駆け引きがリアルでいいんですよね。押しすぎると引いちゃうところとか」
扇「最近のゲームは難しいんだな。まるで本物の恋愛じゃないか」
カレン「そうなんですよね。だからこそ攻略できたときの達成感が―――」
ゼロ「何を遊んでいる?」
カレン「ゼロ!?すいません!!すぐにセーブして片付けます!!」ピコピコ
ゼロ「なんだ、ゲームか。カレンも普通の趣味を持っているんだな」
ゼロ「すまない。口が滑ったな」
カレン「もう……ゼロ……」
ゼロ「で、どのようなゲームなんだ?」
カレン「恋愛シミュレーションです」
ゼロ「……ほう?」
カレン「今、この子を狙ってるんですけど」
ゼロ「何が面白いんだ?実際に付き合えるわけじゃないだろ」
カレン「そういうんじゃないですけど」
ゼロ「他にも少女がいるようだが?」
カレン「狙える子は全部で7人もいますからね。その中から気に入ったキャラと恋人になるのを目指すゲームなんで」
ゼロ「私はこの親友の妹が可愛いと思うがな」
カレン「その子はもう攻略しました。結構、簡単に落ちちゃって」
ゼロ「そうなのか……。カレンはオオカミだな」
扇「ゼロもそういうゲームに興味あるのか?」
神楽耶「私とデートしますものね!!」ギュッ
カレン「……」
ゼロ「神楽耶様、部屋に居てください」
神楽耶「今日こそは一緒に寝てくださいまし」
ゼロ「それはできません」
神楽耶「えー?」
カレン「ゼロは確かにこのゲームの主人公並に女の人にモテますもんね……」
ゼロ「何を言っている?実際のところ、神楽耶様以外に私を好いてくれている者など……」
神楽耶「あら?カレンさんとC.C.さんは違うんですか?」
カレン「なっ!?」
ゼロ「C.C.もカレンもそういう関係ではないですよ、神楽耶様」
カレン「ゼロ……」
神楽耶「ゼロ様……」
ゼロ「な、なんだ?!どうして哀れむような目を私に向けるんだ?!」
ゼロ「カレン、どういうことだ?」
カレン「知りません」
ゼロ「むぅ……。さっぱりわからん」
扇「さてと、仕事に戻るか」
ゼロ「扇。この状況を理解できているなら、解説してくれるとありがたい」
扇「黒の騎士団には影響ないし……。自分で考えてくれ」
ゼロ「ま、まて!」
神楽耶「これではカレンさんの爆弾もいつか、バァーンってなってしまいますわね」
カレン「そんなことは……」
ゼロ「ええい!!言葉を濁さず、はっきり言ってもらえませんか!?」
神楽耶「ゼロ様には私がいます。それで十分ですわ」
ゼロ「そういうことですか。最初からそう言って下さい」
神楽耶「もうしわけありません」
カレン「……」
C.C.「……」ピコピコ
ルルーシュ「今日は疲れたな……」
C.C.「なにかあったのかぁ?」ピコピコ
ルルーシュ「少しな。スザクたちには責められ、騎士団でも何故か落胆されてしまった」
C.C.「ふぅん」ピコピコ
ルルーシュ「何をしている?」
C.C.「ファミコンだ」
ルルーシュ「ファミ……!?」
C.C.「面白いぞ」
ルルーシュ「誰が買ったんだ、その携帯ゲーム機とソフトを」
C.C.「お前のカードで」
ルルーシュ「何をしている……」
C.C.「暇つぶしだ。お、ついに難攻不落だった女まで落ちたか。ふふ。まぁ、この恋愛魔術師のC.C.に落とせない女などいないがな」
ルルーシュ「……」
C.C.「違う、そうじゃない」
ルルーシュ「なんだと。ここでこの回答はもっとも論理的だろう」
C.C.「時と場合による。ここは素直に褒めるんじゃなくて、遠まわしに褒めるんだ」
ルルーシュ「訳がわからないな」
C.C.「このキャラはそういう恥ずかしい台詞を嫌うんだ。説明しただろ」
ルルーシュ「この女の思考回路が分からんな。こんな女いるのか?」
C.C.「いきなり誘うと動揺して断ってしまうやつとかいるだろ」
ルルーシュ「そんなバカな女、是非お目にかかりたいな」
C.C.「まぁ、そういう女は次に同じ機会があれば誘われると思って、勝手な期待を持ってしまうんだろうな。で、誘われないと怒る」
ルルーシュ「はははは、現実にいるものか」
C.C.「あ、こら。次は親友の妹に手を出すのか?」
ルルーシュ「この子が最も惹かれるんだよ」
C.C.「なら、そいつに集中していればいいだろ。どうしてこっちの赤毛ともデートをしたんだ」
ルルーシュ「俺の勝手だ」
『ごめんなさい……私……ほかに好きな人がいるの……。だから……ごめんなさい!!』
ルルーシュ「なにぃ?!」
C.C.「ふられたな」
ルルーシュ「この数時間の努力は……?」
C.C.「浮気するからだ、バカめ」
ルルーシュ「おのれぇ……!!」
C.C.「あと興味のない女を蔑ろにしすぎた罰だな。これだから童貞坊やは……」
ルルーシュ「何が……何がいけなかった……!!親友の妹に告白した以上、親友とも今後気まずくなるというのに……!!」
C.C.「お前は女の気持ちを何一つ、理解していない。ということだな」
ルルーシュ「そんなこと……そんなこと……!!!」
C.C.「無様だな。顔はよくてもこれではなぁ……。付き合ったとしても5回目ぐらいのデートでこっぴどく振られる未来がお前を待っているぞ」
ルルーシュ「この妹がナナリーなら!!ナナリーなら結婚までできていた!!」
C.C.「……」
ルルーシュ「ナナリーならぁ……!!」
ルルーシュ(くそ……くそ……。あんなゲームで恥をかくとは思ってもみなかった……!!)
ミレイ「なんか、ルルーシュのやつ、イライラしてない?」
リヴァル「またシャーリーとなんかあったんですかねぇ」
カレン「こんにちはー」
ミレイ「カレン、やっほー」
カレン「ふわぁぁ……ねむい……」
ルルーシュ(カレン……。カレンに聞いてみるか?―――いや、俺にも矜持はある!!)
ルルーシュ(妹ぐらい我が手で落としてみせる……!!)
カレン「ルルーシュ君、なんかあったの?」
シャーリー「さぁ……。朝かなんかイラついてるみたい」
カレン「ふぅん」
ルルーシュ(あの妹をナナリーと思うこと事態がダメだったんだな……。となれば……)
スザク「ルルーシュ……どうしたんだろう……」
ナナリー「お兄様……」
ゼロ「……」ピコピコ
ゼロ「む……。ここは……『君のほうが綺麗だよ』っと」ピッ
『なにそれ……。きもちわる……』
ゼロ「ふざけるなぁ!!!」
玉城「ゼロのやつ、荒れてるな」
朝比奈「もう1時間ぐらい携帯端末と喧嘩してるよね」
千葉「何か新しい戦術でも作っているのか」
仙波「流石はゼロだ」
卜部「でも時々『早く起きてよね』という可愛い声が漏れてくるぞ」
南「あれは釘―――」
藤堂「何をしている。各員の作業はまだ残っているだろう」
千葉「はっ!申し訳ありません!!持ち場に戻ります!!」
玉城「ゼロはなにしてるんだよ、全く」
藤堂「ゼロ……?」
『ごめん。噂になると恥ずかしいから……』
ゼロ「なんだこの女ぁ!!付け上がるんじゃない!!!私はお前にも優しくしてやっているだけだ!!!」
藤堂「ゼロ、どうした?」
ゼロ「む?―――藤堂か。なんだ?」
藤堂「随分と大きな声を出しているようだったから、少々気になった」
ゼロ「ああ。気にするな」
藤堂「そうか」
ゼロ「作業に戻ってくれ」
藤堂「ああ……」
『ほらほら、早く起きないと遅刻するよ!』
ゼロ「……む。そうか」ピコピコ
藤堂「……その声は……」
ゼロ「どうした?知り合いの声か?」
藤堂「奈々様だな。素晴らしい」
『ごめん。君とは付き合えない。友達でいよう。それでいいじゃん』
ルルーシュ「……!!」
C.C.「お前、何敗目だ?」
ルルーシュ「ええい!!なんだこのクソゲーは!!!」ポイッ
C.C.「おいおい。私のファミコンだぞ。ぞんざいに扱うな」パシッ
ルルーシュ「くそ……。所詮はゲームだ。現実では尻を拭くこともできないほど役には立たないなっ!!」
C.C.「負け犬の遠吠えか」
ルルーシュ「赤毛の女も他に好きな奴がいるというし……。緑の髪の女なんて大嫌いだぞ?!大きな決心をした少年の心をなんだと思っている!?ええ?!」
C.C.「お前……」
ルルーシュ「まぁ、データ上の女なんて落としても意味などないから、どうでもいいがな」
C.C.「データ上の女も落とせないようでは現実の女なんてとても無理だな」
ルルーシュ「……なんだと?」
C.C.「お前は色恋に関しては無能なんだよ」
ルルーシュ「無能だと?バレンタインでは三桁のチョコをもらう俺が?ありえない話だな」
ルルーシュ「付き合ったことが無いのではない。付き合わないだけだ」
C.C.「童貞はみんなそういう」
ルルーシュ「……」
C.C.「ふふん」
ルルーシュ「ふざけるなよ……。俺は何事においても完璧だ。知略を尽くし、全てを成し遂げるだけの能力がある!!」
ルルーシュ「そうだ!!この7人の女どもも、ギアスさえあれば!!!フフフハハハハハ!!!!!」
ルルーシュ「俺のことを愛せ!!」キュィィィン
ルルーシュ「これで攻略できる!!!できるじゃないか!!!簡単だ!!!」
C.C.「ルルーシュ……こっちにこい」
ルルーシュ「……」
C.C.「お前、辛かったのか……」ナデナデ
ルルーシュ「うぅぅ……」
C.C.「契約したろ、お前の傍にいると。私だけは」ギュッ
ルルーシュ「くそぉ……なぜだぁ……」
ルルーシュ(あのゲームは俺をどんどん駄目にし、惨めにさせるな……)
ルルーシュ(このままやめてしまうのが正解か……。だが……ここで逃げては明日を掴むことなどできない……!!)
ルルーシュ(矜持などいらない。明日を得るためならば!!)
ミレイ「ルルーシュ、なんか躁鬱状態ね」
リヴァル「情緒不安定な時期なんじゃないですか?」
ミレイ「思春期じゃあるまいし」
シャーリー「……」
ミレイ「シャーリー?ルルを慰めるチャンスじゃない?」
シャーリー「わ、私は別に!!」
スザク「自分が行きます。親友ですし」
ミレイ「だめだめ!!スザクくんが行ったら何も面白く、じゃなくて進展しないじゃない」
リヴァル「言い直す必要ないですね、それ」
カレン「どうもー」
ミレイ「あ、カレン。やっほーい」
カレン「え?」
シャーリー「え?」
ミレイ「おっとー、ルルーシュ選手動いたー」
ルルーシュ「話したいことがある。時間、あるか?」
カレン「う、うん。あるけど」
ルルーシュ「いくぞ」
カレン「あ、ちょっと」
シャーリー「……」
リヴァル「な、なんだ?」
スザク「ルルーシュはカレンのことが……?」
ミレイ「スザクくん!!」
スザク「え?」
シャーリー「わ、わたしはべつに……るるのことなんて……どど、どうでもいいし……」
ミレイ「よし。あとをつけるわよ、シャーリー。自分の目で確認しないと納得なんてできないでしょ?」
ルルーシュ「実は俺、とあるゲームに嵌っている」
カレン「ゲーム?」
スザク「いました」
ミレイ「スザクくん、二人の会話は聞こえる?」
スザク「微かにですけど」
シャーリー「なんて言ってるの?!」
スザク「―――最近好きになった」
リヴァル「え?!」
スザク「―――そうなんだ。で、私にどうしろって?」
スザク「―――教えてくれ。女の気持ちが一つも理解できなくて困っている」
ミレイ「うーん……。内容からしてカレンに告白しているわけじゃないようね」
リヴァル「恋愛の相談って感じか」
ミレイ「よかったわね、シャーリー?」
シャーリー「わわわ!!私は別に嬉しくなんてありませんし、安心もしてませんけど!!」
ルルーシュ「バ、バカ!!大声を出すな!!」
シャーリー「妹!?」
ミレイ「あぁぁ……」
リヴァル「会長!!しっかり!!」
スザク「ルルーシュ……やっぱり……」ギリッ
ミレイ「はぁ、この場にナナリーがいなくてよかった……」
シャーリー「本当ですよ」
リヴァル「ルルーシュはナナリー狙いだったのか」
スザク「……」
カレン「あのキャラを攻略できないなら、ほかのヒロインなんて無理よ」
ルルーシュ「だから、攻略方法を聞きたいんだ。風の噂でカレンがあのゲームに没頭していることは知っている」
カレン(誰がそんな噂を……)
ルルーシュ「頼む、カレン。この通りだ。俺に女の全てを教えてくれ」
カレン「じゃあ、今度各キャラの攻略ポイントを書いて持ってくるから」
ルルーシュ「助かる」
カレン「でも、人に聞いたらお終いよね」
ルルーシュ「しかし、このままでは俺の気がすまない」
カレン「はいはい」
ナナリー「お兄様、おかえりなさい」
ルルーシュ「ただいま―――どうした、みんなしてナナリーの壁になって」
リヴァル「ルルーシュ、ナナリーのこと好きなんだよな」
ルルーシュ「ああ」
ミレイ「恋人にしてもいいと思うぐらい?」
ルルーシュ「妹でなければ」
ニーナ「でも、妹でも……いいんでしょ?」
ルルーシュ「それは……」
スザク「ルルーシュ!!君は間違っている!!!兄として!!!いや、人間として!!!」
カレン「またバカなことをしてるんですね」
ミレイ「カレンはなんと思わないの?」
カレン「何がですか?」
シャーリー「い、妹を攻略とか……!!」
ルルーシュ「話を聞いていたのか?!」
スザク「答えろ!!カレン!!」
カレン「それ、ゲームの話なんですけど」
ミレイ「ゲーム?」
リヴァル「どういうことだ?」
ルルーシュ「おい、カレン」
カレン「誤解されたままだとナナリーに近づけないけど、いいの?」
ルルーシュ「それは困るが……」
ナナリー「おにいさまー」
ルルーシュ「ナナリー!!今、助ける!!」
リヴァル「それ知ってる。結構人気なんだよな」
スザク「そうなのか。すまない、ルルーシュ。僕の早とちりだった。それにしてもこのピンクの髪の女の子可愛いね」ピコピコ
シャーリー「どうしてこんなゲームをカレンとルルが?」
カレン「私は知人に薦められて始めただけ。ルルーシュくんは……」
ルルーシュ「俺も同じ理由だ」
ミレイ「分かった。このゲームで女心を学んでこーい!って言われたんでしょ?」
ルルーシュ「……証言を拒否します」
リヴァル「図星かよ」
カレン「このゲームが面白いのは本当ですよ?」
ミレイ「はいけーん」
カレン「どうぞ」
ミレイ「ふむふむ……」ピコピコ
ナナリー「あの、どのようなゲームなのですか?」オロオロ
ニーナ「主人公……女の子じゃないんだ……。残念……」
ルルーシュ「何か言ったか?」
シャーリー「べっつにぃ」
ミレイ「この子は『こっちの青が似合うな』ね」ピッ
ルルーシュ「……」
『やっぱり?私もそう思ってたの。私たち、好みが合うねっ』
ミレイ「やったぁ!!ハート鷲掴みぃ!!」
ルルーシュ「会長、どうしてわかったんですか?」
ミレイ「この子のプロフィールに青色が好きって書いてあるから」
ルルーシュ「そ、そんなことが……?!」
カレン「それすら知らなかったの……。ある意味、すごいわね」
ルルーシュ「違う。俺は新たな可能性として黄色も似合うのでないかと提案をしたんだ。なのに……!!」
リヴァル「ルルーシュ、お前、こういうゲームに向いてないんじゃねーの?」
ルルーシュ「なんだと?!」
ナナリー「あの……一体、どんな……」オロオロ
ルルーシュ「スザク……」
スザク「あ、キスした」
ルルーシュ「なんだと!?こんな短時間でか?!」
スザク「ピンクの髪の女の子、キス魔らしいから」
ルルーシュ「どういうことだ?」
スザク「積極的にスキンシップしてたら勝手にキスしたんだ」
ルルーシュ「馬鹿な?!出会って間もない男に触れられるなんて気持ち悪いだろ?!」
スザク「この子は例外みたいだ」
ルルーシュ「わからん……女の気持ちが……欠片も……!!!」
リヴァル「お、おい……ルルーシュ……」
カレン「そんなに深刻にならなくても、ゲームだし」
ルルーシュ「されどゲームだろうが!!」
ニーナ「たまにいるのよね、恋愛ゲームに感情移入しすぎちゃう人って」
ミレイ「ニーナもだもんね」
ゼロ(結局、何も進まなかったな……。この妹をなんとかしたいだけなのに……)
カレン「お……これは……おお……」
ゼロ「ん?」
カレン「やったぁ、ついにメインヒロイン攻略した」
藤堂「なに?」ダダダッ
南「すごい!!高難易度なのに!!」
カレン「ほらほら、見てください」
藤堂「紅月、すばらしいな」
南「このエンドって中々見れないんだよな」
神楽耶「へぇー」
扇「感動的じゃないか」
ラクシャータ「でも、なんかここまで難しくするほどの女にはみえないけどねぇ」
カレン「そうですか?理想的なお嫁さんだと思いますけど」
ゼロ(カレン……。女だから攻略も容易いのだろうな……)
藤堂「ゼロはどうだ?」
ゼロ「な、なにがだ?!」
藤堂「ゼロもプレイしているのだろう?」
カレン「そうなんですか?!」
神楽耶「ゼロ様ぁ!!―――見せてくださいまし」
藤堂「む……。ゼロ、期日直前なのに好感度が低いぞ」
ゼロ「……」
藤堂「バッドエンドを回収しているところか。なるほどな。ならば、鮮血の結末というエンドが一番惨たらしいからオススメする」
南「ゼロ……目の付け所がちがうなぁ……」
カレン「バッドエンドなんてどうやってみるんですか?」
藤堂「期日までに全員の好感度を最低値にし、尚且つ満遍なくデートを重ねなくてはならない」
南「メインヒロイン攻略よりも難易度が高いんだ」
カレン「そんなものが……」
神楽耶「さすがはゼロ様。ではその結末を見ましょう」
ゼロ「そうか……」
神楽耶「あ、7人の女性が出てきましたわ」
カレン「なんか険悪ですね」
ラクシャータ「一人だけナイトメアに乗ってるじゃないか」
南「主人公、にげてくれー!!」
ゼロ「……藤堂、どうなるんだ?」
藤堂「3人の女に殴られ、2人の女に刺され、1人の女に首を切られ、最後の女にはナイトメアで握りつぶされる……」
ゼロ「な……に……?!」
神楽耶「うわ……うわ……」
カレン「神楽耶様!!直視しないほうが!!」
藤堂「何度見ても……目を覆いたくなるな……」
ラクシャータ「女をわかっていない男の末路……悲惨だねぇ……」
神楽耶「ゆ、ゆめにでそうですわ……」ガタガタ
ゼロ(俺もいつかこうなってしまうのか……)ガタガタ
ゼロ「分からないな。この他にも7つは見た気がする」
藤堂「個別バッドエンドも見たのか?」
南「親友の妹なんて振られるほうが難しいぐらいなのに!!」
藤堂「何を選んでも基本的に賛同してくれるからな」
カレン「ゼロはやっぱり私たちのように一般的な目線で物事をみないのですね」
藤堂「でなければブリタニアとは戦えないだろうしな」
扇「そうだな」
神楽耶「ゼロさまぁ……今日は夜、一人で厠へ行けそうにありませんわ……」ガタガタ
ゼロ「そ、そうですか……」
神楽耶「ゼロ様?どうしたのですか?」
ゼロ「い、いえ……別に……」
藤堂「無駄に高クオリティのアニメーションだからな。気分を害するのも分かる」
ゼロ「……」
カレン「休みますか、ゼロ?」
ルルーシュ「はぁ……」
C.C.「どうした?元気がないな」
ルルーシュ「俺はいつか死ぬ」
C.C.「人間だからな」
ルルーシュ「違う。殺されるんだ……。きっと……」
C.C.「殺される?」
ルルーシュ「女が……怖い……」ガタガタ
C.C.「お、おい……」
ルルーシュ「ギアスで出会った女全員に俺を殺すなと命令しておくべきか……!!」
ルルーシュ「いや……どこから刃がくるか……」
ルルーシュ「女と関わらなければ……いいのか……?」
ルルーシュ「わからない……どうすればいいんだ……」
C.C.「重症だな……おい……」
ルルーシュ「ナナリー以外の女に……俺は……」
玉城「ゼロが人間不信になっただぁ?!」
C.C.「原因を知りたい。心当たりのある者はいないか」
藤堂「……」
C.C.「誰かいないか」
カレン「急にそんなこと言われても」
神楽耶「そうですわよね」
C.C.「では、様子がおかしくなったと感じた者はいないか」
神楽耶「それでしたら、ゲームをしている最中にゼロ様は気分を悪くされたようで」
C.C.「ゲームだと?」
カレン「うん。ゲームのバッドエンドを見たときから、様子は少し変だったけど」
C.C.「どのようなバッドエンドだ」
藤堂「7人の女に嬲り殺される終わり方だ」
C.C.「それだな」
玉城「おいおい!!ゲームぐらいで折れちまうもやしメンタルなのかよぉ、ゼロは!!」
C.C.「どちらにしてもゼロにとっては想像を絶するものだったんだろ」
藤堂「そうか……」
C.C.「しかし、あのゲームにそんなハードなものが用意されているとは、迂闊だった」
カレン「ねえ、C.C.。ゼロは大丈夫なの?」
C.C.「もうずっとふるえている。子犬のようにな」
藤堂「まずいな」
千葉「どうにかしたいが……」
扇「ゼロ……」
玉城「んだよ、じゃあ、そのゲームのハッピーエンドでも見せてやれば解決だろ!!」
C.C.「もう一度ファミコンを手に取ると思うのか?」
藤堂「そうだな……」
カレン「ゼロ……そんな……私のせい……」
神楽耶「私があのような結末を渇望してしまったばかりに……ゼロ様……」
C.C.「割と深刻な事態だな。どうするつもりだ、お前ら。このままゼロの復活を信じるか?」
千葉「藤堂さん!!そんなことは!!」
藤堂「C.C.」
C.C.「なんだ?」
藤堂「紅月」
カレン「はい」
藤堂「ラクシャータ」
ラクシャータ「はいよ」
藤堂「千葉」
千葉「は、はい」
藤堂「井上」
井上「私もですか?」
藤堂「そして……神楽耶様」
神楽耶「はい」
藤堂「力を貸して頂きたい」
ルルーシュ「怖い……女なんて……もう信じられるか……!!」ガタガタ
C.C.『はいるぞ』
ルルーシュ「……」
C.C.「……仮面をつけろ」
ルルーシュ「何故だ?」
C.C.「いいから」
ゼロ「―――これでいいのか」
C.C.「では、外に出てみろ」
ゼロ「どういうことだ?」
C.C.「ほら、いいから出ろ」トンッ
ゼロ「と、とと……。なんだ、一体―――」
千葉「きゃ、きゃー、ぶつかるー!!」ダダダダッ
ゼロ「なに?!」
ドンッ!!
ゼロ「千葉……廊下を走るなと―――なっ?!」
千葉「あ……!!」バッ
ゼロ「……」
千葉「見たな……?」
ゼロ「千葉!!年齢を考えろ!!」
千葉「なんだと?!お、乙女のパンツを見ておいてなんたる言い草だ!!!」
ゼロ「?!」
玉城「台詞ちげーぞ」
千葉「あ、ごほん……。わ、私は先を急ぐから……それじゃあね、変態!!」ダダダッ
ゼロ「な、なんだ……?」
玉城「よー、マブダチのゼロじゃねーか。一緒に登校しよーぜ」
ゼロ「登校?どういうことだ?」
玉城「いいから合わせろよ。すぐに元気になれるって」
ゼロ「……?」
カレン「い、いやです……。どいてください……」
扇「いいから、こいよ。いい夢見させてやるって」
カレン「いやぁー!!」
ゼロ「カレンか?!」
玉城「お、助けるんだな?」
ゼロ「当然だろ!!―――扇!!何をやっている!!」
扇「なんだ、お前は?この街の番長である扇様に喧嘩を売るつもりか?」
ゼロ「番長だと……?」
カレン「た、たすけてー!!」
扇「痛い目にあわせてやるー!!」
ゼロ「……」
扇「ぐわ?!こ、こいつは強すぎる……お、覚えてろよ!!」
カレン「助けてくれてありがとうございます!!」
ゼロ「……何をしている。恥ずかしくないのか」
ゼロ「あ、ああ……」
カレン「危ないところをありがとうございます。なんとお礼を言ったらいいか……」
玉城「その制服はあの有名お嬢様学校の生徒かよ!!すっげー!!かわいいな!!な?!ゼロ!!」
ゼロ「あ、ああ……そうだな……」
カレン「あの、お名前だけでも」
ゼロ「知っているだろう」
カレン「え?そんな……どこかでお会いしたことありましたか?」
ゼロ「私は知っている。紅月カレンだろ」
カレン「ど、どうして……!!」
ゼロ「どうしても何も……」
カレン「も、もしかして、昔、隣に住んでたゼロくんですか?!」
ゼロ「ゼロくん?」
カレン「こんなところで幼馴染に会えるなんて……嬉しい……」
玉城「これって運命なんじゃねーの?!」
ゼロ「お、おい」
カレン「それじゃあ!!」タタタッ
ゼロ「……」
玉城「いいなー!!ゼロ!!お嬢様と付き合えるんじゃねーの?!」
ゼロ「恋愛はそんなに単純ではない。私はそのことを痛いほど知った」
玉城「ゼロ……まだ、井上のことを忘れられないのか……」
ゼロ「は?」
玉城「もう忘れようぜ。あいつは……もう……」
ゼロ「井上はどういう役なんだ?!おい!!」
玉城「井上……去年の夏に遠くにいったんだ……」
ゼロ「そうか。故人か」
玉城「お、やべーな。チャイムなっちまった!!いそぐぞ!!」
ゼロ「鳴っていないが」
玉城「鳴ってんだよ!!俺たちの中ではな!!」
仙波「席につけ」
ゼロ「……」
玉城「ふー、ギリギリセーフだな」
仙波「今日は転校生を紹介する。入れ」
千葉「初めまして。千葉凪沙です」
ゼロ「……」
千葉「あー!!今朝の変態仮面!!」
ゼロ「誰が変態仮面だ!!!」
仙波「なんだ、お前たち知り合いか。なら、ゼロ。お前が転校生の面倒をみてやれ」
ゼロ「何故私が?!」
仙波「千葉、あのゼロの隣の席にいけ」
千葉「ふん」
ゼロ「……」
玉城「態度悪いやつだなー。俺の嫌いなタイプだぜ」
ゼロ「……」
C.C.「先生。ゼロの顔色が悪いみたいだが」
仙波「またか。保健室に行って来い」
ゼロ「……」
玉城「ほら、立てよ。行くぞ」
ゼロ「あ、ああ……」
C.C.「……」
ゼロ「あの女……」
玉城「委員長のC.C.だな。傲慢な態度を取るけど、間違ったことはしない。いい奴だ」
ゼロ「そうなのか。誰の設定だそれは」
玉城「ほら、肩につかまれ」
ゼロ「自分で歩ける!!」
玉城「そうか?」
ゼロ(全く……この茶番はいつまで続くんだ……)
ラクシャータ「また、ゼロぉ?よく来るねぇ」
ゼロ「良く来ているのか」
玉城「おう。ラクシャータ先生とは校内でも一番仲がいいんだぜ」
ゼロ「……」
ラクシャータ「じゃあ、いつも通り……上から脱いじゃおうか……」
ゼロ「なに?!」
玉城「いつ見てもラクシャータ先生はエロいよなぁ」
ラクシャータ「どうせゼロも、私の体が目当てなんだろ……?」
ゼロ「そんなわけあるか!!」
ラクシャータ「そう言ってくれると嬉しいよ」
ゼロ「なに……?」
玉城「先生は時々悲しそうな目をするんだよなぁ……。一体、過去に何があるのか」
ゼロ「どうやら、キャラ設定はしっかりしているようだな」
ラクシャータ「ちなみに私は処女だってさ」
ゼロ「屋上だと?」
玉城「ゼロは基本的にマブダチの俺以外に友達いねーしよぉ」
ゼロ「不愉快だな!!」
玉城「いいじゃねーかよ。その代わり女に囲まれてるんだから」
ゼロ「囲まれている……?」
神楽耶「ゼロ様!!ではなく、ゼロ先輩!!こんにちはですわ!!」
ゼロ「神楽耶様まで……」
玉城「おー、一年後輩の神楽耶ちゃんじゃねーか。ゼロのことを兄のように慕っているんだよな」
ゼロ「ほう……?」
神楽耶「昼食、今からですか?よろしければ私と……」
ゼロ「そういうことでしたら―――」
玉城「ゼロ、待て待て。神楽耶ちゃんの誘いを断って屋上に行くこともできるぜ?」
ゼロ「断ってどうする?神楽耶様が悲しむだけだろう」
玉城「じゃあC.C.が悲しんでもいいのかよ?」
玉城「おうよ。今日は何故か屋上にいるぜ」
ゼロ「……」
神楽耶「ゼロ先輩……?」
玉城「どうするんだよ、ゼロ?」
ゼロ「神楽耶様、屋上で食べませんか?」
神楽耶「え……」
玉城「ゼロ……お前……」
ゼロ「なんだ、駄目なのか?」
玉城「いや、最高の選択だぜ」
ゼロ「……そ、そうか」
神楽耶「よろこんでご一緒しますわ!!」
ゼロ「では行きましょうか」
神楽耶「はいっ!!」
玉城「神楽耶ちゃんの好感度がばっちり上がったな!!」
玉城「ここが屋上だな」
ゼロ「教室だけではないのか」
C.C.「あ……。珍しいな。お前とここで会うなんて」
玉城「いつも図書室にいるC.C.がどうして今日に限って屋上にいるんだよ?」
C.C.「偶にはいるさ。私は高いところが好きだからな」
玉城「そうなのか。一緒に飯でもどうだ?」
C.C.「そうだな。悪くない」
ゼロ「素直に喜んだらどうだ」
C.C.「嬉しくなんてないよ」
玉城「それでも好感度は確実に上がってるけどな」
神楽耶「いただきます」
C.C.「ピザ弁当は無いのか」
ゼロ「あるわけ―――」
玉城「あるぜ。ゼロのやつ、ピザを作りすぎたみてーだから、食ってくれ」
ゼロ「場所の選択か?」
玉城「グラウンド、教室、保健室、図書室、そのまま街へ行くこともできるな。ゼロ次第だ」
ゼロ「……」
玉城「誰に会いたいか言ってくれたら、ヒントはやるぜ?」
ゼロ「そうだな……。保健室はラクシャータ。図書室はC.C.。街ならカレンだろう。残り二つはどちらが千葉で神楽耶様なんだ?」
玉城「神楽耶様は陸上部に所属してるぜ」
ゼロ「では、グラウンドに行く」
玉城「ここがグラウンドだ」
ゼロ「食堂は万能だな」
神楽耶「あ、ゼロ先輩!!練習を見に来てくれたんですのね?!」
ゼロ「ああ……」
神楽耶「先輩が見てくれているだけで、早く走れそうな気がしますわ!!」
玉城「このまま練習が終わるまで見ているか?」
ゼロ「そうだな。そのほうが……いいのだろうな……。なんとなくだが」
ゼロ「そうか」
玉城「あとは寝るだけだな。じゃあ、今日の成果はこんな感じだ」
C.C. ■■□□□
神楽耶 ■■■■□
ラクシャータ ■□□□□
カレン ■■■■□
千葉 □□□□□
ゼロ「……」
玉城「がんばれよ」
ゼロ「何をだ?」
玉城「何をって、これで女の子の心の揺らぎをチェックして、エンディングを迎えるんだよ」
ゼロ「私は女性の気持ちなど……わからない……」
玉城「おいおい。この心の揺らぎ表を見ろって。神楽耶様とカレンのところが高いだろ。つまり、ゼロ、お前の行動は神楽耶様とカレンにとって正解だったってことじゃねえか」
ゼロ「しかし、私は何も考えてなどいない……」
玉城「この表は嘘をつかねえ。悪ければ真っ白になる。正しいなら真っ黒になる。それが全てなんだよ」
ゼロ「わかった……」
ゼロ「そうなのか」
千葉「あ、変態仮面」
ゼロ「変態仮面って言うな!!」
千葉「ふん」
ゼロ「……」
玉城「ゼロ、このまま黙っているつもりかよ?なんとかいわねーと、いつまで経っても変態仮面のままだぜ?」
ゼロ「何を言えば……」
玉城「なんか言っちまえよ」
ゼロ「……千葉」
千葉「なんだ?」
ゼロ「昨日は事故とはいえ、すまなかったな。不快な思いをさせたことを謝罪する」
千葉「……ふんっ」
ゼロ「違ったか……」
玉城「いや……わるくねえぞ……」
ゼロ「早いな。……では、教室に行くか」
玉城「千葉がいるみたいだな」
千葉「なんだ、お前か」
ゼロ「……」
玉城「なにしてんだよ、千葉」
千葉「見ての通り、掃除だ」
ゼロ「……手伝おうか」
千葉「結構だ」
ゼロ「そうか……」
千葉「変態仮面の手助けなどいらない」
玉城「ゼロ、あそこに大きなゴミ袋があるぜ」
ゼロ「捨ててこよう」
千葉「いいと言っている!!」
玉城「じゃあ、ゴミは指定の場所に捨てて、帰宅するか」
C.C. ■■□□□
神楽耶 ■■■■□
ラクシャータ ■□□□□
カレン ■■■□□
千葉 ■■■■□
ゼロ「千葉の好感度が馬鹿みたいに上がったな」
玉城「それだけゼロの行動が千葉の心をうったんだよ」
ゼロ「そう……なのか?」
玉城「おうよ」
ゼロ「俺の行動は間違っていない……ということなのか……」
玉城「ああ。間違いねえよ」
ゼロ「フフフ……そうか……」
玉城「じゃあ、次の日だな」
ゼロ「ああ」
玉城「今日もいい天気だし、屋上で昼飯にするか」
ゼロ「わかった」
C.C.「またお前か」
ゼロ「貴様も食べる相手がいないのか?」
C.C.「いや。いるぞ。目の前にな」
ゼロ「……」
玉城「ゼロの中でC.C.の評価があがったな」
ゼロ「そんなパターンもあるのか」
玉城「違うのか?」
ゼロ「……違わないが」
C.C.「今日もピザ弁当か?」
ゼロ「ああ」
C.C.「気が利くな。私は嬉しいぞ」
ゼロ「お前が腹を空かせているといけないからな」
C.C.「……」
ゼロ(台詞を間違えたか……!?)
ゼロ「図書室に向かう」
玉城「いいぜ」
C.C.「またお前か。もううんざりだな」
ゼロ「すまない……」
C.C.「何か用でもあるのか?」
ゼロ「弁当だが……作ってこないのか?」
C.C.「面倒だからな」
玉城「C.C.は独り暮らしなんだよなぁ。親は海外に出張してるんだぜ」
ゼロ「大変だろう。私が作ってきてやろうか?」
C.C.「余計なお世話だ」
ゼロ「そうか……」
C.C.「だが、作りすぎたというなら食べてやる。ピザを捨てるなんてもったないからな」
玉城「C.C.の顔が少し赤くなったな」
ゼロ「そうは見えないが……。これでいいのか……?」
神楽耶 ■■■■□
ラクシャータ ■□□□□
カレン ■■□□□
千葉 ■■■■□
ゼロ「これは……?!」
玉城「すげーな!!ゼロ!!もうC.C.はゼロにフォーリンラブじゃねえか!!」
ゼロ「なんだ……フハハハハ……やれる……やれるじゃないか……!!!」
ゼロ「やはりあれは、あのゲームに問題があっただけで……普通にやれば私はどんな女性も口説き落とせる!!!」
玉城「さっすが、ゼロだな!!」
ゼロ「よし!!次はラクシャータだ!!!」
玉城「昼休みも保健室に行くのか?」
ゼロ「当然だ!!」
玉城「わかった。いくぜ!!」
ラクシャータ「いらっしゃい。待ちくたびれたよ」
ゼロ「ラクシャータ先生。今日も相変わらずの美貌ですね」
ラクシャータ「嬉しいこといってくれるじゃないか。でも、下心が丸見えで私は好かないねぇ」
ラクシャータ「なんだい?」
ゼロ「ナイトメアフレームのプラモデルです」
ラクシャータ「物で釣れるほど、安くないつもりなんだけどねえ……」
ゼロ「なに……!?」
玉城「過去に何かある女性は手厳しいな……」
ゼロ「先生。ずっと気になっていたのですが。どうして時々悲しそうな目をするんですか?」
ラクシャータ「……聞きたいのかい?」
ゼロ「私はもっと先生のことを知りたいんです」
ラクシャータ「いいよ。聞かせてあげる。―――私はね、一度死んだ女なのさ」
ゼロ「死んだ……?」
ラクシャータ「そう。子どもの頃に父親からあらゆる虐待を受け、施設へ行き、名前を変えた」
ゼロ「……」
ラクシャータ「だから、あんたたちみたいな若くて生き生きとした姿を見ると、自分の青春はどこにあったんだろうって……いつも考えちゃうんだよ……」
ゼロ「そんな過去が……」
ゼロ「私と青春を取り戻しましょう」
ラクシャータ「何をいっているんだい?」
ゼロ「私が先生の失った時間を埋めてみせます」
ラクシャータ「無理に決まってるだろ……」
ゼロ「駄目かもしれない。それでも私にかけてくれませんか?!」
ラクシャータ「ゼロ……信じて……いいんだね?」
ゼロ「ええ」
ラクシャータ「ふふ……まさか、年下にこんなこと言われるなんて……。また、保健室にきなよ……必ず」
ゼロ「はい」
玉城「ラクシャータ先生の目に涙が浮かんでやがる……。でも、ゼロはそれを見ないように退室するんだよなぁ……」
ゼロ「放課後はグラウンドに行く!!」
玉城「神楽耶ちゃんはいるかな……?お。あそこにいるぜ!!」
神楽耶「ゼロ先輩ー!!」タタタッ
玉城「部活で汚れたのか、ユニホームが土塗れになっているな。お尻のところとこよ」
神楽耶「ありがとうございます!!」
玉城「その日は仲良く神楽耶ちゃんと帰ったとさ。よし、結果発表だ」
C.C. ■■■■■
神楽耶 ■■■■■
ラクシャータ ■■■■■
カレン ■□□□□
千葉 ■■■■□
ゼロ「フフフハハハハハ!!!!!真っ黒だな!!黒の騎士団のように!!!」
玉城「こりゃあ、すげえ。短期間に三人も落としちまったな」
ゼロ「さてと……。次は千葉だな」
玉城「じゃあ、昼休みは教室か」
ゼロ「いや、神楽耶様とC.C.を誘って教室で昼食をとる」
玉城「もう落ちてる奴も巻き込むのよ?!ゼロ……」
ゼロ「なんだ?」
玉城「最高じゃねーか!!」
ゼロ「私は完璧だからな!!!!」
井上「はい」
藤堂「……よし。今だ」
玉城「ゼロ!!あ、あれ……!!」
ゼロ「なんだ?」
井上「ゼロ……久しぶりね……」
ゼロ「井上……?!」
玉城「井上……留学から帰ってきたのよ……?!」
ゼロ「死んだんじゃないのか?!」
井上「一年前の答えを……出しにきたわ」
ゼロ「答えだと……?」
玉城「ゼロは井上に告白してふられたからなぁ……」
ゼロ「なんだと?!」
井上「ゼロ……離れて気がついたの……。私もゼロが好きってことに……」
ゼロ「なっ……?!」
井上「付き合うことになったあとが怖かったの。私だけが海外で離れて暮らすことになるのに……。辛くなるぐらいなら、断ろうって思っただけ」
玉城「なんだと……?!」
ゼロ「井上……」
井上「でも、離れてみてもっとゼロのことが好きになったわ。どんなときもゼロのことを考えているの。だから、今日、帰ってきた」
玉城「すぐに帰るのか……?」
井上「明日の便でね。だから、ゼロ。もし私のことをまだ好きでいてくれたなら、今日の放課後、公園まで来て」
ゼロ「な……に……」
井上「お願いっ」タタタッ
ゼロ「まさか……井上が……」
玉城「突然の告白に戸惑うのも分かるぜ。でもよ、これが恋愛ってもんだ。いつでもどこでも起こるんだよ」
ゼロ「……」
玉城「だから面白いんだけどな。―――で、どうする?今日の放課後の行き先で、全てが決まるぜ?」
ゼロ「こんな唐突な展開など……想定外だ……!!」
玉城「ビシっと決めろ、ゼロ。俺のマブダチなんだからよ!!」
ゼロ「カットか……」
玉城「さて。じゃあ、最後の放課後に向かう前に最終確認しておくかぁ!!」
C.C. ■■■■■
神楽耶 ■■■■■
ラクシャータ ■■■■■
カレン □□□□□
千葉 ■■■■■
井上 ■■■■■
ゼロ「……」
玉城「ほぼパーフェクトだな。ゼロ。誰のところに行っても、一人を除いて確実に結ばれるぜ」
ゼロ「そうなのか」
玉城「で、どこに行くんだ?ゆっくり考えてくれていいけどな」
ゼロ「……」
玉城「全てはこの瞬間のためにあったんだよ」
ゼロ「分かっている」
玉城「ゼロ……どうするんだよ?!」
ゼロ「―――よし!!決めたぞ!!」
ゼロ「……」
C.C.「なんだ?」
ゼロ「時間、あるか?」
C.C.「ああ……」
ゼロ「では、教室に向かうぞ」
C.C.「……」
玉城「教室には千葉の姿が……」
千葉「ゼロか」
ゼロ「千葉。時間があるなら保健室に行くぞ」
千葉「……」
玉城「保健室ではラクシャータが半裸でベッドに寝ていた」
ラクシャータ「遅かったじゃないか」
ゼロ「グラウンドに行くぞ、ラクシャータ」
玉城「ゼロは三人の女性を連れ、神楽耶ちゃんのいるグラウンドを目指す……」
ゼロ「公園に向かいます」
玉城「そして……井上の待つ公園に辿り着く……」
ゼロ「井上、待たせたな」
井上「ゼロ……」
C.C.「何の真似かな。ゼロ?」
千葉「私たちをここに集めてどうする?」
ゼロ「みんなに伝えることがある」
神楽耶「なんでしょうか……?」
ゼロ「私は気づいてしまったんだ」
C.C.「何にだ?」
ゼロ「やっと女の子の気持ちにな」
井上「気持ち……?」
ゼロ「気がつけば何ていうことはない。極々当たり前のことだったんだ……。ありがとう、みんな。感謝するぞ、藤堂」
藤堂「ゼロ……」
ゼロ「今、この瞬間に、誰が主人公であるゼロの告白を望んでいるのか」
神楽耶「……ゼロ様っ」
ゼロ「そう。私が離れれば離れるほど……そいつの想いは肥大化していくのだろう……」
ゼロ「だからこそ、私は目の前の幸福を手にするのではなく、遠くの困難に挑まなければならない……」
千葉「誰を選ぶというんだ?」
井上「まさか……」
ゼロ「大切だからこそ遠ざけておこうと意識していた。だから、常に境界を越えないようにしていた」
ゼロ「だが、それは相手にとって苦痛でしかないんだろう……」
ゼロ「分かっていたのに……気がついていたのにな……」
C.C.「誰を選ぶんだ。その口ぶりから察するに……」
カレン「……あの……出番、ありますか?」
ゼロ「藤堂!!間違っていたのは私のほうだった!!勝手に他人を恐れ、危うく閉じこもってしまうところだった!!」
藤堂「ゼロ……誰を選ぶんだ……?」
カレン「あの……ゼロ……?私、ここにいますけど……」
ルルーシュ「シャーリー……」
シャーリー「ルル……?」
ルルーシュ「随分、待たせたな」
シャーリー「な、何を言ってるのよ……」
ルルーシュ「今度、ゆっくり買い物しないか?」
シャーリー「ルルがしたいなら、別にいいけど……?」
ルルーシュ「ああ。シャーリーとしたいな。今までできなかったことを……」
シャーリー「ルル……」
ルルーシュ「シャーリーの気持ちにやっと気が付けたんだ」
シャーリー「ルル!!」
ルルーシュ「シャーリー!!」
ミレイ「このゲームのおかげ?」
リヴァル「マジか……」
スザク「よかった……本当によかった……。ルルーシュが人の道を外さなくて……本当に……」
ルルーシュ「そうだな……。ナナリー」
シャーリー「え?」
ナナリー「はい?」
ルルーシュ「ナナリーも行くだろ?買い物」
ナナリー「はいっ」
シャーリー「え……ナナちゃんも……?」
ルルーシュ「ああ」
ナナリー「なにか?」
シャーリー「ううん……別に……」
ミレイ「ちょっと、ちょっと!!ルルーシュ!!どういうこと?!」
スザク「ルルーシュ!!このゲームから何かを学び取ったんだじゃないのか?!」
ルルーシュ「ああ。学んだ。正確にはまた違う教典からだがな」
リヴァル「何を学んだんだよ?」
ルルーシュ「俺は今まで双方を守る為に、一方を遠ざけていた。しかし、それでは互いに苦しいだけと言うことにな……」
ルルーシュ「同時に知った。―――俺の場合、双方と常に行動を共にしていれば誰も不幸にはならないことに!!!」
ミレイ「どういうこと?」
ルルーシュ「ふふふ。会長も一緒にどうですか?」
ミレイ「なにが?」
ルルーシュ「俺なら……同時に5人まで幸せにできることがわかったんです」
リヴァル「何いってんだよ?!」
ルルーシュ「このゲームでは対象が7人。だから、俺では無理だった。それもそのはず。俺のキャパシティは5人分だったからだ」
スザク「……」
シャーリー「それで?」
ルルーシュ「5人までなら俺は同時に幸せにできる。一人が限界だと思っていたが、それは違っていたんだ」
ルルーシュ「これからは守りたいものを遠ざけず、ずっと懐の中に入れておくことにした。離れてしまうと苦しくなるんだろ、女の子というのは」
シャーリー「それを学んだんだ……ルル……」
ニーナ「ユーフェミア様……さいこー……」
ナナリー「お兄様、かっこいいです」パチパチパチ
スザク「ルルーシュゥゥゥゥゥ!!!!!!」
ルルーシュ「なんだ?!」
スザク「この外道がぁ!!!!」
ルルーシュ「なんだと?!」
リヴァル「女の敵!!」
ルルーシュ「何を言っている!!可能なことは検証済みだ!!」
シャーリー「……」
ミレイ「……」
ルルーシュ「信じてくれ!!シャーリー!!会長も!!」
シャーリー「会長、どうします?」
ミレイ「うーん……」
カレン「どうも……こんにちはー……」
ミレイ「カレン、ちょっと」
カレン「なんですかぁ……?」フラフラ
ミレイ「そう。生徒会の女たちは全員ね」
ルルーシュ「え?」
カレン「なんでまた……」
シャーリー「ルルが5人までなら全員幸せにできるって力説するから、なら幸せにしてもらおうと思って」
カレン「幸せ……幸せってなんだっけ……?」
ルルーシュ「カレン……やつれてないか?」
カレン「幸せにしてもらおうかな……よろしく……」
ルルーシュ「お前……?!」
ミレイ「これで四人かぁ……あと一人は……」
シャーリー「咲世子さんでいいんじゃないですか?」
ミレイ「そうね。そうしましょう。はい、決定!」
リヴァル「会長!!本気ですかぁ?!」
ミレイ「モチのロン!!―――では、ただいまより、ルルーシュ・ランペルージのハーレム祭りを始めます!!!」
シャーリー「イエーイ!!」
ミレイ「とりあえず、来月の1日からの予定を組みましょうか」
ルルーシュ「予定?」
ミレイ「5人もいるんだから、毎日1人とデートするとしても5日は埋まるでしょ?」
ナナリー「ローテーションを組むのですか?」
ミレイ「そうそう。とりあえず、ルルーシュと一緒に居たい日と時間を好き勝手に書き込んでみましょうか」
シャーリー「はぁーい」
カレン「どうしようかなぁ……」
ナナリー「私は毎日お兄様とデートしたいのですけど」
ミレイ「いいよー。書いちゃえ」
シャーリー「じゃあ、私もー」
咲世子「私は週末だけでいいですので」
カレン「私は……夜、傍に居てくれるだけでいいかな……」
ミレイ「私もとりあえず毎日デートしましょうか」
ルルーシュ「……」
スザク「羨ましいとは思えないな……」
ニーナ「大変そう……」
ミレイ「できた」
シャーリー「うわー、ルルの睡眠時間、2時間ぐらいしかないね」
ナナリー「でも、カレンさんの時間は眠ることできそうです」
ミレイ「じゃあ、週の平均睡眠時間は……4.5時間ってところか……」
ルルーシュ「……ここから削るのでしょう?」
ミレイ「自分の予定を減らしたい人ー」
カレン「……」
ナナリー「できれば理想の形のままで」
シャーリー「幸せにしてくれるなら、ねえ?」
咲世子「はい」
ルルーシュ「ま、待ってくれ!!流石にこれは……死んでしまう……!!!」
シャーリー「幸せにしてくれるんでしょ、ルル?」
ミレイ「降参?」
ナナリー「お兄様?」
咲世子「……」
ルルーシュ「ぐっ……!!」
シャーリー「ルルは女の子の気持ちを理解してない!」
ルルーシュ「馬鹿な?!」
シャーリー「できるだけ好きな人とは一緒にいたいのっ」
ルルーシュ「……」
ミレイ「そうそう。無理に手を広げても、全員を抱きしめることなんてできないでしょ?」
ルルーシュ「だが、それでは必ず誰かを切り捨てなければならないことに」
シャーリー「だから、ルルがみんなを本当に幸せにできるならそんなことしなくていいけど」
ミレイ「ルルーシュってそんなに器用だっけ?ゲームみたいに選択しなければ現状を維持できる女なんていないわよ?」
シャーリー「そっちが私を選択しなくたって、こっちから選んじゃうときもあるんだからね、ルル!!」
ルルーシュ「俺は……どうしたら……?」
スザク「最後の選択肢は屑が選ぶものだな」
リヴァル「同感」
ニーナ「ルルーシュは一人を選ぶのが無難だと思うな」
ルルーシュ「……」
ルルーシュ(こんな選択肢……なかった……!!)
ルルーシュ(何が正解なんだ……なにが……!!)
シャーリー「ルルー?」
ミレイ「早くしてね」
カレン「幸せにしてよ」
咲世子「ルルーシュ様」
ナナリー「お兄様……」
スザク「ルルーシュ、君の選択肢は3つだ。どれかを選べ」
ルルーシュ「スザク……!!」
ルルーシュ「俺は―――」
C.C.「……」ピコピコ
ルルーシュ「……」
C.C.「それで、お前は逃げたのか」
ルルーシュ「全員を幸せにすることはまだできそうになかったからな。かといって、一人を選ぶことも俺にはできない」
C.C.「ド屑だな。お前」
ルルーシュ「まだまだ俺は女性の気持ちを理解してないからな。理解さえすれば、5人でも10人でも……やれるはずだ」
ルルーシュ「好き勝手に主張する者を完膚なきまでに押さえつけるには、理解が足りないんだ!!理解が!!」
C.C.「ふぅん」ピコピコ
ルルーシュ「10人になれば、お前も幸せにしてやれるしな」
C.C.「ぜんっぜん、嬉しくないが」
ルルーシュ「藤堂が作ったこの心の揺らぎ表は今後も活用していこうと思う」
C.C.「どうするんだ。そんなもの」
ルルーシュ「俺の行動がシャーリーたちにどれだけの影響を与えているのか、知りたいんだよ。理解するためにな」
C.C.「自分を評価させるのか。度胸あるな、お前」
ミレイ「―――はい、本日は終了~」
カレン「おわったぁ」
ルルーシュ「では、今日の評価を頼む」
シャーリー「ああ、そうだった。そうだった」
ミレイ「ルルーシュってマゾね」
ニーナ「ほんとに」
ルルーシュ「理解するためですから、協力してください」
ナナリー「では……」
シャーリー「えっと……あれは減点として……」
スザク「……」
ルルーシュ「スザク、お前も俺を評価したければしてもいいぞ」
スザク「本当かい?!」
リヴァル「俺もいいか?!」
ルルーシュ「構わないが」
ミレイ ■■■■□
シャーリー ■■■■■■□
ナナリー ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
カレン ■□□□□
スザク ■□□□□
リヴァル ■■□□□
咲世子 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
ニーナ □
ルルーシュ「なるほど……」
シャーリー「さぁ、かえろー」
ミレイ「ナナリーと咲世子さんの上限ってどこかしら……」
ナナリー「咲世子さん、私が一番高いようにしてくれましたよね?」
咲世子「ええ。勿論です」
ナナリー「お兄様……♪」
スザク「それじゃあ、また明日」
リヴァル「じゃあなー」
カレン「バイバイ」
ルルーシュ「割とショックだな……これは……」
C.C.「どうだ、成果はあったのか?」
ルルーシュ「これが結果だ」
C.C.「よかったな。ナナリーと咲世子の評価が群を抜いているじゃないか」
ルルーシュ「だが、満点ではない」
C.C.「完璧主義者の辛いところだな」
ルルーシュ「だが、まだ始まったばかりだ。落ち込むことなど……ない……」
C.C.「まぁ、ゲーム感覚でやれば大怪我は免れないな」
ルルーシュ「分かっている……そんなことは……」
C.C.「なら、いいけどな。どれ……私も……」
ルルーシュ「この程度の人心掌握も出来ずしてブリタニアは壊せない……」
ルルーシュ「俺はやり遂げてみせる!!!必ず!!!」
C.C.「できた。私の評価だ」
C.C. □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
ルルーシュ「……」
ルルーシュ「ふん……」
C.C.「私も幸せにしてくれるんだろ?期待しないで待っている」
ルルーシュ「―――」
C.C.「なっ?!」
ルルーシュ「本当の名前でこれから呼んでやるから、もっと評価をあげろ。白いのは見るに耐えない」
C.C.「そんな見え透いた下心で呼ぶな!!」
ルルーシュ「悪かった」
C.C.「やはりお前は何も分かっていないな。もう一度、ゲームからやり直せ」
ルルーシュ「ゲームはもういい。今の俺では手も足もでない」
C.C.「全く……」
ルルーシュ「……いい名前であることは間違いないがな」
C.C.「……」
ルルーシュ「C.C.も可愛いがな」
C.C.「早く寝ろっ!!」
ルルーシュ「ん……?」
ルルーシュ「ふっ……。どうやら、少しだけ分かった気がするな」
ルルーシュ「案外、真正面から褒めてやるのがいいのか」
ルルーシュ「フフフ……フハハハハ……」
ルルーシュ「やれる……俺なら……!!」
ルルーシュ「……」
ルルーシュ「だが、満点までは……ほど遠いな……」
ルルーシュ「女の気持ちなんて……もしかしたら、一生理解の外なのかもな……」
ミレイ ■■■■□
シャーリー ■■■■■■□
ナナリー ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
カレン ■□□□□
スザク ■□□□□
リヴァル ■■□□□
咲世子 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
ニーナ □
C.C. ■□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
おしまい。
後日談(チラッ
さよ子さんは天然だからな
Entry ⇒ 2012.09.26 | Category ⇒ コードギアスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
メリー「今あなたの後ろにいるの」武術家(殺気ッ!?)
友人「全日本格闘大会!」
武術家「ああ、日頃からの鍛錬の成果を満天下に知らしめる絶好の機会だ」
友人「優勝候補は俺とお前、あとは……空手家と紳士ってとこか」
友人「実質この四人での大会になりそうだな」
武術家「油断していると、意外な相手に足をすくわれるかもしれんぞ」
友人「ハハ、分かってるって」
友人「俺としては、お前とは決勝で当たりたいもんだぜ」
友人「──ところで、こないだお前の家の前を小さな女の子がうろうろしてたけど」
友人「もしかして、お前のファンなんじゃないか?」
武術家「女の子が? まさか……たまたまだろう」
友人「オイ、大変だ!」
武術家「どうした?」
友人「空手家が……襲撃を受けて、病院送りにされたってよ!」
武術家「襲撃?」
友人「ああ、全治三ヶ月の重傷らしい。これじゃ大会出場は無理だ」
武術家「残念だな……大会では彼とも戦いたかったのに」
友人「まったくだ、だれがこんなことを……!」
武術家(どうやら空手家は、背後からの一撃で昏倒した後──)
武術家(全身を打ちのめされたようだ)
武術家(不意打ち、しかも気を失った相手を打ちのめすという外道ぶりは捨て置けんが)
武術家(なによりも警戒すべきは、やはりその技量)
武術家(空手家ほどの達人の背後に忍び寄り、しかも一撃で昏倒せしめるとは……)
武術家(こんなことが可能な使い手は、日本でも数えるほどしかいないだろう……)
武術家(電話か)
武術家(こんな時間に、いったいだれだ?)ガチャッ
武術家「はい、もしもし」
『私メリーさん、今××駅にいるの』
武術家「?」
ツーツー……
武術家(メリーさん……? 外国人?)
武術家(女の声だったが……切れてしまった……)
武術家(××駅といえば、この近くの駅だが──)
武術家(またか)ガチャッ
武術家「もしもし」
メリー『私メリーさん、今コンビニにいるの』
武術家「なんなんだ、あなたは──」
ツーツー……
武術家(また切れてしまったか……)
武術家「もしもし」
メリー『私メリーさん、今△△医院にいるの』
武術家「おい──」
ツーツー……
武術家(△△医院は、すぐ近くにある診療所だ……)
武術家(──まさか!)
武術家(徐々にこの家に近づいている……?)
武術家「……もしもし」
メリー『私メリーさん、今あなたの家の前にいるの』
武術家「!」
ツーツー……
武術家(家の前に……!?)
武術家(出てみるか? いや、しかし──)
武術家(来た……! 次にかけてくるとしたら、どこからだ……?)
武術家(まさか家の中に入ってくるなんてことは……)ガチャッ
武術家「もしもし!」
メリー『私メリーさん』
メリー「今あなたの後ろにいるの」
武術家(殺気ッ!?)
武術家が振り返りざまに、裏拳を放つ。
武術家(外したッ! ──殺気の主はどこだ!?)
メリー「声をかけてから反撃まで、0.2秒とかかってない」
メリー「さっすが、いい反応だね」
武術家(お、女の子……!?)
メリー「えいやっ!」
ベシィッ!
メリーのローキックが、武術家の足にぶつかる。
武術家(お、重いっ……!)ビリビリ…
武術家(この子、ただの女の子ではない……いったい何者なんだ!?)
武術家「君が、空手家を襲撃したのか?」
メリー「……だとしたら、どうするの?」
武術家「空手家がやられたのは、仕方ないことだ」
武術家「彼とて格闘家、どんな形であれ敗北したことに言い訳はできん」
武術家「だがそれと、君の行為が許せるものかどうかは別問題だ」
武術家「背後から不意打ちをしかけ、昏倒した相手を叩きのめす……」
武術家「格闘家以前に、人として到底許せる行為ではない」
武術家「もし君が犯人というのなら、君を止めるために、戦わねばなるまい!」ザッ
メリー「じゃあ始めよっか」ザッ
武術家(──俺と、同じ構え!?)
ドズゥッ!
武術家「おぶっ!」
メリーのボディブローが、武術家のミゾオチをえぐった。
武術家「ぐ……(なんて突きだ……!)」ゲホッ
武術家(空手家がやられたのは仕方ない、などといっておいてなんてザマだ)
武術家(手加減して制圧できる相手ではない!)
武術家(本気で……やらなくては!)ギンッ
メリー(うわ……すっごい気迫……)ゾクッ
メリー「そうこなくちゃね!」サッ
鋭い攻防が続く。
武術家「せやぁっ!」シュッ
リーチで有利な武術家は、蹴りを巧みに使いメリーを懐に入らせない。
メリー「うぅ~……」
武術家(思い通りに攻められず、じれてきているな……そろそろ──)ビュッ
バッ!
武術家のローキックをかわし、メリーが飛び上がった。
武術家(──読み通りッ!)
メリー「!」
武術家(スキだらけだ、あとはこの拳を、この子に──)
武術家(この子に──)
一瞬のためらい。
ガキィッ!
メリーの飛び蹴りが、武術家の顔面を直撃した。
武術家「ぐはぁっ!」ザザッ
武術家「……君こそな」
メリー「!」ギクッ
武術家「今の蹴り……全力で放ってたら、俺は今こうして立っていなかったはずだ」
武術家「攻撃をためらった俺に対し、君もまたためらってしまった」
武術家「ちがうか?」
メリー「うっ……」
武術家「そしてこれでハッキリした」
武術家「空手家を襲撃したのは、君ではない」
武術家「よくよく考えたら、本気で俺を倒すつもりなら──」
武術家「わざわざ電話などかけず、奇襲をかけてきたはずだからな」
武術家「君の目的はなんだ? なぜ俺と戦い方がソックリなんだ?」
メリー「…………」
メリー「あ~あ、もうちょっと手合わせしたかったんだけどな」
メリー「私はね」
メリー「あなたを助けに来たの」
武術家「!?」
武術家(俺を……助けに……!?)
武術家「怖そうな人?」
メリー「うん」
メリー「で、その人たち、『ここを襲うのか』とか『命令があった』とか話してたの」
武術家「なんだって……!?」
メリー「空手家って人が大怪我したニュースは知ってたから」
メリー「もしかしたら、次はあなたかも……って思ったの」
武術家「……だからここに来てくれたのか」
武術家「悪いが、俺は君を全く知らないのだが」
メリー「知らないのは当然だよ。だって私、元々は人形だったんだもん」
武術家「人形?」
メリー「うん……私、持ち主だった女の子にゴミ捨て場に捨てられちゃったの」
メリー「すっごく憎んだわ、絶対許さないって」
メリー「動けるようになって、絶対仕返ししてやるんだって」
メリー「でも、そんな時──」
──
───
武術家(もうそろそろ10kmか……)タッタッタ
武術家「ん?(人形が捨ててあるな)」
武術家(可愛げのある人形だが、ずいぶん雑に捨てられているな)
武術家(こんな風に捨てられては、人形としても無念だろう)
武術家「あいにく俺は拾ってやることはしないが──」
武術家「たとえ捨てられるにしても、せめてキレイなままでいたいだろう」パッパッ
武術家は人形の汚れを払い、ポーズを整えた。
武術家「さてと、もう10km走るか」タッタッタ
人形「…………」
メリー「とっても嬉しかった……」
メリー「私、あなたのおかげで恨みがすっかりなくなっちゃったの」
武術家「そうだったのか……」
武術家「なんにせよ、恨みが晴れたのであればなによりだ」
メリー「だから、あなたの家に近づいて、トレーニングを眺めたりしたの」
メリー「あなたのマネをしてたら、けっこう武術を覚えられたんだよ」
武術家「!?」
武術家「まさか……俺のマネをしてただけで……あれだけの実力を備えたのか!?」
メリー「うん」
武術家(どうりで構えや戦い方が俺にソックリなハズだ……)
武術家(正直いって、今の話が一番衝撃的だった)
武術家「ところで……ここに来た時、俺と戦ったのはなんでだ?」
メリー「えぇ~と、つい今の私がどれぐらい強いか、たしかめたくなっちゃって……」
武術家「ああ、たしかにその気持ちはよく分かる」
武術家(これも格闘家のサガか……)
メリー「ねえねえ、私の武術どうだった?」
武術家(どうって……)
武術家(人間ではないとはいっても、女の子がマネだけであそこまで──)
武術家「な、なかなかだった……まだ俺には及ばないがな」
メリー「ホント? 嬉しいっ!」
武術家(他人の才を素直に認められぬとは……俺もまだまだ未熟だ)
武術家「ほら、できたぞ」
メリー「わぁ~! 美味しそう!」
武術家「わざわざ人間になってまで訪ねてきてくれたんだ。歓迎しよう」
武術家「恩返しとかは考えなくていい」
武術家「しばらくゆっくりしていくといい」
メリー「うん……ありがとう!」
メリー(よかった……私の思ったとおり、強くて優しい人だった……)
武術家「全日本格闘大会、か」
メリー「どういう大会なの?」
武術家「日本中の実績ある格闘家を集めて行われる大会だ」
武術家「日本一を決める大会といっても過言ではない」
武術家「もしいい成績を残せれば、世界大会への道も開かれる」
メリー「ふぅ~ん、そんなにすごい大会なんだ」
メリー「あなたの他には、どんな人が出るの?」
武術家「日本の名だたる格闘家はだいたい参加するが……」
武術家「優勝候補だといわれていたのは、四人」
武術家「俺と友人、あとは紳士と空手家だ」
武術家「だが空手家は、襲撃を受けて出場は絶望的になってしまった……」
メリー「ラッキーだって思ってる出場者もいるかもしれないね……」
武術家「あまり健全な考えではないが、中にはいるだろうな」
武術家「…………」ハッ
武術家(まさか……大会出場者の誰かが、優勝する確率を上げるために……!?)
武術家(だとするなら、俺を狙う理由も理解できる)
武術家(いやしかし……大会出場者にこんなことをする人間がいるとは思いたくない)
武術家(だがもし犯人の狙いがそれだとするなら──)
プルルルルル……
武術家「電話……?」
メリー「こ、これは私じゃないよ!?」オドオド
武術家「分かっているよ」ガチャッ
武術家「もしもし」
友人『俺だ……』
武術家「(やけに弱々しい声だが──)友人、どうしたんだ!」
友人『俺も、やられちまった……』
武術家「!」
友人は右腕に大きなギプスをはめ、全身包帯まみれであった。
友人「よう」
武術家(なんてことだ……!)
武術家「入院しなくても大丈夫なのか?」
友人「動けるっちゃ動けるし、無理いって脱け出してきた」
友人「……ところで、そっちの嬢ちゃんは?」
武術家「えぇと──」
メリー「私メリーさん、武術家さんの親戚なの!」
友人(ファンじゃなく、親戚だったのか……ハーフか?)
友人「へえ、お前にこんな可愛い親戚がいたなんてな」
メリー「やだぁ、可愛いだなんて……やっぱりあなたの親戚になろうかな」
武術家「お、おいおい……」
友人「さっきお前と別れて、すぐだったな」
友人「家に帰る途中、後ろからガツンと……」
友人「──で、目を覚ましたらこのザマになってたってワケだ」
友人「んでもって、とりあえず金だけ払って病院を出て、お前に電話をかけたんだ」
武術家「しかし、お前ほどの男が相手を見ることもできずに……」
友人「ああ、犯人はかなりの達人のハズだ」
友人「……にしても、情けねえ。くそったれ……!」
友人「完治とはいかねえだろうが、俺は必ず戦えるようになる」
友人「だから……このことは大会関係者には伏せておいてくれ、頼む!」
友人「このことがバレたら、出場停止になっちまうかもしれねえから……」
武術家「ああ、分かっている」
武術家「お前なら、そういうだろうと思っていた」
友人「……ありがとよ」
友人「だが気をつけろよ、もし犯人が大会出場者の誰かだとしたら──」
友人「次に狙われるのは、お前か紳士のどっちかだろう」
メリー「ねえねえ」
武術家「ん?」
メリー「さっきの人も、あなたぐらい強いんでしょ?」
武術家「ああ、あいつはパンチが得意でな」
武術家「特に疲れ知らずの連打は、浴びた方がうずくまってしまうほどの威力だ」
メリー「そんな人がやられちゃったんだ……」
武術家「空手家や友人ほどの格闘家を相手に、こうまでできる人間か……」
武術家「心当たりがあるとすれば──」
武術家(いや、やめておこう。証拠もないのに、疑ってはいかん)
メリー「ねえねえ、私しばらくあなたの家にいてもいい?」
武術家「ああ、せっかく来てくれたんだ。かまわないぞ、メリー君」
メリー「君なんてつけないでよ。メリーでいいよ」
武術家「──道着も似合ってるじゃないか」
武術家(俺の子供の時のお下がりだが、とっておいてよかったな)
メリー「私、こういうの着るのはじめてなんだけど……よかった」
武術家「じゃあメリー、まずは柔軟体操からだ」
武術家「ちゃんとやっておかないと、怪我をするからな」
メリー「うん!」
武術家(わざわざ人形から姿を変えてまで、会いに来てくれたんだしな)
武術家(それにこの子の強さはホンモノだ)
武術家(この子と稽古をすれば、きっと俺自身も強くなれるはずだ)
武術家(本当に俺が狙われているとするなら、戦いに巻き込みたくはないが──)
武術家「ほう、どんな技だ?」
メリー「まずね……私が少しずつこの家に近づいていったみたいに」
メリー「こうやって、少~しずつ相手に近づくの」ソロ…
メリー「動きはゆっくりなのに、意外と手を出せないでしょ?」ソロ…
武術家「ああ、カウンターを警戒してしまうな」
メリー「こうやってステップで──」スタタンッ
武術家「!」
メリー「一気に背後に回り込むの!」バッ
メリー「そしたら“あなたの後ろにいるの”っていって、振り返った相手を──」
メリー「パンチ!」ビュッ
メリー「……どう? 名づけて、“メリー拳”!」
武術家「ハハハ、メリー拳か。なかなか面白いかもしれんな」
メリー「わぁい、ありがとう!」
武術家「ただ、一度見られてしまうと、効果が半減してしまうがな」
メリー「うぅ、たしかに……」
武術家(背後に回る時の独特なステップ……まったく動きを追えなかった)
武術家(つくづく恐ろしい才能だ)
武術家「では今日の稽古はここまでだ」
メリー「じゃあ私、お風呂たいてくる!」パタパタ…
武術家(大会まであと七日……メリーがいっていた襲撃者が来る気配はない)
武術家(だが、もし大会の優勝候補が狙いであるなら)
武術家(そろそろ──)
ガッシャアンッ!
武術家(ガラスが割られた!?)
ダダダッ! ダダダッ!
武術家(複数の足音! 侵入者かッ!)
覆面A「へっへっへ……」
覆面B「これも仕事なんでな」
武術家「お前たちは何者だ?」
覆面A「答える義務はねえなっ!」ブンッ
覆面B「オラァッ!」ブンッ
武術家「ハァッ!」
ズドォ!
武術家「どりゃあッ!」
バキィ!
覆面A「ぐげぇ……!」ドサッ
覆面B「がはっ……!」ドサッ
武術家(この二人だけじゃない、まだかなりの数がいるな……!)
武術家(一人一人は大したことないが──数が多すぎる!)ハッ
武術家(しまった、こっちにもいたのか!?)
覆面C「もらった!」ブンッ
武術家(いかん──!)
「私メリーさん、今あなたの後ろにいるの」
覆面C「え?」
ドゴッ!
覆面Cは後ろから現れたメリーに、一撃で倒された。
武術家「メリー、すまん! 助かった!」
メリー「いいのいいの、全部やっつけちゃおう!」
武術家(かなり倒したが、まだ10人以上残っていたか……)
武術家「メリー、背中合わせになって、互いに前方だけに集中するぞ!」ザッ
メリー「うんっ!」
メリー「私メリーさん、今あなたの後ろにいるの!」バッ
覆面D「ちくしょう、あんなガキがいるなんて聞いてねえぞ!」
覆面E「こいつら、強すぎるぜ……」
白覆面「ええい、ひるんでんじゃねえ! てめえら、やっちまえ!」
武術家(あの白い覆面が、リーダー格のようだな)
ドゴッ! ボスッ! バシッ! ベキッ! ドゴッ!
武術家とメリーの実力は、覆面たちを全く寄せつけない。
武術家(昔はこうやって、友人と一緒に荒くれ者相手に戦ったもんだ)
武術家(まさかまた、こうして背中を任せられる格闘家に出会えるなんてな)
武術家(しかもそれが小さな女の子だとは……不思議なこともあるものだ)
ドズッ!
覆面D「ぐへぇっ!」ドサッ
メリー「あなたの後ろにいるの」
バキィッ!
覆面E「ぎゃふっ!」ドサッ
白覆面(武器を持った30人が、あっという間に全滅だとぉ……!?)
白覆面(くそっ、せめて命令通り怪我だけでもさせねえと……)
白覆面(そうだ! やられた奴らのバットをかき集めて──)
白覆面はメリーめがけて、バットをまとめて投げつけた。
メリー「え!?」
武術家「危ない、メリー!」ダッ
ガスッ! ガンッ!
武術家の右ヒザと左脇腹に、バットが当たってしまった。
武術家「ぐっ……!」
白覆面「ヒャハハ、ざまあみやがれ!」
メリー「よくもやったなぁ!」スタタンッ
白覆面(えっ、一瞬で後ろに回り込まれ──)
メリー「私メリーさん、今あなたの後ろにいるの!」グイッ
白覆面「ちょっ、待っ──」
メリーは白覆面を後ろから持ち上げると、ジャーマンスープレックスを決めた。
──ズガァン!
武術家「なぜ、こんなマネをした?」
武術家「空手家や友人をやったのも、お前たちの仕業なのか?」
白覆面「空手家、友人……? なんのことだ?」
白覆面「俺らはただ……今日アンタを襲撃しろって雇われただけのチンピラ集団だ……」
白覆面「もっとも、ほとんどが格闘家崩れだがな……」
武術家「だれに雇われた!?」グイッ
白覆面「し、知らねえ……本当だ!」
白覆面「なにしろ、こっちからは一切連絡が取れねえんだ……!」
白覆面「勝ちは期待してねえから、せめて怪我だけでもさせろっていわれて」
白覆面「絶対ブッ潰してやるって意気込んでたんだが……やっぱアンタつええな……」
白覆面「いや……アンタらか」
メリー「なあに?」
武術家「今から……紳士の家に行ってみようと思う」
メリー「たしか、優勝候補の人だよね?」
武術家「ああ……俺の読みでは、おそらく彼が黒幕だ」
武術家(空手家と友人を倒す実力者……)
武術家(それに怪我だけは負わせろ、という指示も明らかに大会を意識したものだ)
武術家(仮にちがうとしても、疑念を晴らすために行ってみた方がいいだろう)
武術家「……ぐっ!」ズキッ
メリー「どうしたの!?」
武術家「いや、なんでもない」
ピンポーン……
ピンポーン……
武術家「反応がないな」
メリー「出かけてるか、寝てるかしてるんじゃないの?」
武術家(……失礼)ガチャッ
武術家(ドアが……開いている……)
武術家「…………」クンクン
武術家(かすかに……血の臭い!?)
メリー「入ろう!」
武術家&メリー「!」
中では、紳士が血まみれで倒れていた。
武術家「おい、しっかりしろ!」
メリー「ひどい……」
武術家「メリー、救急車を頼む!」
メリー「うん!」
紳士「き……君は……武術家君……?」
武術家「今救急車を呼んだ。安静にしていてくれ」
武術家(あちこちの骨を折られている……)
武術家「大した怪我ではないが、しゃべらない方がいい」
紳士「き、気をつけるのだ……」
紳士「時計を見る限り……私が気絶させられてから……さほど時間はたってない」
紳士「私をやった者は……(まだ、近くに……)」ガクッ
武術家(紳士は犯人ではなく、むしろ狙われる側だったとは……)
武術家(ではいったい犯人はだれなんだ!?)
パシャッ
武術家(ん、今なにか音が──)
メリー「もしもし私メリーさん、今紳士さんの家にいるの!」
メリー「紳士さんが大怪我してるの!」
メリー「救急車をお願いしたいの!」
メリー「!」ハッ
メリー(今、窓の外にかすかに気配が──)チラッ
ガサッ……
メリー(あ……!)
メリー「あの人……大丈夫かな?」
武術家「俺の見立てでは命に別状はないが、手ひどいやられ方なのはまちがいない」
武術家「大会直前で、俺と紳士を同時に襲う算段だったのだろう」
武術家「恐ろしく狡猾で、非道な犯人だ……。許せん……!」
メリー「…………」
武術家「ん、どうした?」
メリー「私……さっき見ちゃったの」
武術家「なにをだ?」
メリー「窓の外に──」
メリー「友人さんがいたのを」
武術家「メリー、下らないウソをつくんじゃない!」
メリー「で、でも──」
武術家「…………!」
武術家「メリー、先に家に戻っていろ!」
武術家「俺はすぐ友人のところに行ってくる!」
武術家「だってアイツはすでに襲われているんだぞ!」
武術家「アイツは……内気でいじめられがちだった俺に、格闘技を教えてくれた!」
武術家「今の俺があるのも、アイツのおかげなんだ!」
武術家「こんなことをするワケがないんだ!」
武術家「アイツのハズがない!」ダダダッ
メリー「…………」
武術家(なあ、そうだろう!?)ダダダッ
~
友人『君に、ケンカのやり方教えてやるよ』
友人『おぉ! なかなかいいパンチ打てるようになったじゃんか』
友人『ちっ、囲まれちまったな……お前は俺の後ろを頼む!』
友人『この団体戦のトロフィーは、俺とお前の一生の宝だな!』
友人『俺としては、お前とは決勝で当たりたいもんだぜ』
~
武術家(友人……)ダダダッ
武術家(友人、お前はこんなことしないだろう!?)ダダダッ
武術家は戻ってくる友人と鉢合わせになった。
武術家「友人……」ハァハァ
友人「!?」ギョッ
友人「……どうしたんだ、こんな時間に」
武術家「お前……包帯とギプスはどうした……」ハァハァ
友人「ん……ああ、こないだ取れたんだよ。俺、回復が早いからさ」
ビュッ! パシィッ!
武術家のパンチを、右手で受け止める友人。
武術家「今……ためらいもなく右手で拳を受けたな」
武術家「あれほどの怪我をしていた人間の反応じゃない」
武術家「──お前なのかっ!?」
武術家「証拠はない……が、だったらなんで怪我もしてないのにあんな芝居をした!」
友人「怪我をしてなきゃ包帯やギプスをしてはいけないなんて法はないだろ?」
友人「それに……仮に俺が犯人だとして、どうする?」
友人「証拠がなくともお前が騒げば、大会側も俺を出場停止にするかもしれないな」
友人「俺を出場停止に追い込めば、お前の優勝はほぼ決定的だ」
友人「やるか? やるのか? え?」
武術家「お、俺は……お前をずっと親友だと──」
友人「よせよ」
友人「いっとくが、俺はお前を友と思ったことはない」
友人「俺の行く道をジャマする……ただの石っころだ」
友人「話は終わりか? 一仕事終えたばかりで、疲れてるんだ」
友人「どいてくれ」
ドンッ
武術家「うぅっ……!」ズキッ
友人「今度は大会で会おうや」
友人「多分俺らは決勝で当たるように組まれるだろう」
友人「もっとも……その体で勝ち上がってこれたら、だけどな」ニィッ
バタンッ
武術家「…………」
メリー「ねえねえ」
メリー「友人さんが犯人だったのはショックだと思うけど……」
メリー「気を取り直さないと!」
メリー「ほら、大会であの人に勝って、目を覚まさせるとか……!」
武術家「──うるさいっ!」
メリー「!」ビクッ
武術家「子供の頃からずっと親友だと思っていた奴に裏切られたんだ!」
武術家「気を取り直すなんて……そう簡単にできるものかッ!」
メリー「だけど──」
武術家「ちょっと優しくされたぐらいで捨てられた恨みを忘れるような奴に」
武術家「俺の気持ちは分かるまい!」
武術家「……あ」ハッ
メリー「…………」
メリー「……ごめんなさい」タタタッ
武術家「メリー!」
武術家(くっ……怒りにまかせてなんてバカなことをいってしまったんだ、俺は!)
武術家(武を志しておきながら、感情の制御もできぬとは……!)
武術家(メリー……すまん……!)
この日、メリーが戻ってくることはなかった。
武術家も、選手として会場入りする。
武術家(結局、メリーは戻ってこなかった……)
武術家(当然だ、どう考えても俺に非がある)
武術家(今メリーがどうしているのか、俺には見当もつかないが……)
武術家(せめてメリーがいっていたことだけはやり遂げよう)
武術家(大会で友人に勝ち、目を覚まさせる!)
武術家(せめてそれだけは……!)
武術家「だあッ!」
ベキィッ!
友人に裏切られ、メリーを傷つけ──
武術家「はッ!」
ズドォッ!
心も体もとても本調子とはいえなかったが──
武術家「せいッ!」
バキィッ!
悪戦苦闘しつつ、武術家はどうにか決勝まで勝ち進んだ。
友人「ふん……」
友人「やはり武術家が上がってきたか」
友人(精神的にも肉体的にも最悪のコンディションだろうに)
友人(よくもまあ、勝ち上がってこれたもんだ。腐っても鯛、ってことか)
友人(だが、あんな動きで通用するのはせいぜい二流まで)
友人(この俺には通用しねえ)
友人(このままでも勝利はまちがいないが、念には念をだ)
友人(お前にはさらなる絶望を味わわせてやる!)
まもなく試合開始というところで、観客の一部が騒ぎ出す。
「空手家や紳士に出場できなくしたのは、そいつだ!」
「武術家がやりやがったんだ!」
「ふざけんな!」
武術家「──な、なんだ!?」
友人(始まったか)ニヤッ
観客席に次々と「倒れている紳士の横にいる武術家」の写真がばら撒かれる。
「なんだこりゃ!?」
「アイツが犯人だったのかよ!」
「俺は紳士のファンなのに……ふざけんな!」
友人(チンピラどもに襲われたお前が、紳士の家に来るのは読めていた)
友人(だから俺は紳士を叩きのめした後、お前の到着を待ち、写真を撮った)
友人(あとは雇ったサクラどもに写真をばら撒かせれば……四面楚歌の完成だ)
友人(もうお前を応援してくれる奴なんざ、いないんだよ)
「犯人は武術家だっ!」 「卑怯者めっ!」 「失格にしろ、失格に!」
サクラに乗せられて、ヒートアップする観客が次々出てくる。
大会委員が抑えにかかるが、一向に鎮まらない。
すると──
友人「みんな、待ってくれ!」
ピタッ
友人「武術家がやったことは、たしかに許されないことではある」
友人「だからこそ俺は、友として必ず彼の優勝を食い止めてみせる!」
友人「ここはひとつ、どうか俺と彼の試合を見守っていて欲しい!」
ワァァァァ……! ヒューヒュー……!
武術家への罵声が、友人への声援にかわる。
武術家「お前っ……!」ギリッ
友人「こういう自己演出も、プロ格闘家には必須のスキルだぜ?」
友人「引き立て役になってもらって悪いなァ、ありがとよ親友」
友人「せりゃあっ!」ブンッ
武術家「くっ」サッ
武術家は友人のパンチをかわし、蹴りを放とうとするが──
武術家「ぐう……っ!」ズキッ
ペシッ
友人「なんだぁ、そりゃ?」
バキィッ!
武術家「ぐはっ……!」
友人「試合を見てたら分かるぜ、傷んでんだろ? ……右ヒザと左脇腹」
ドズッ!
友人の拳が、武術家の脇腹をえぐる。
武術家「ぐあ……っ!」ガクッ
友人「決勝戦の試合時間は15分──」
友人「お前だけは特別にこの大舞台で、たっぷり痛めつけてやるよ」
バシィッ!
武術家「うぐぁぁっ!」
友人「どうしたどうした? 軽く蹴っただけなのに、痛がりすぎだろォ~?」ニィッ
友人「ほら、どんどん強くしてくぞ!」
バチィッ! ドガァッ!
武術家(ダ、ダメだ……)ヨロッ
武術家(俺の体は、決勝に来るまでで精一杯だった……!)
武術家(とても友人にはかなわない……!)
ワアァァァ……! ワアァァァ……!
友人「聞こえるか?」
友人「みぃ~んな、俺を称えている。お前の味方なんざ一人もいやしねえ」
友人「お前はここで出場者潰しと負け犬の汚名をかぶり、格闘技界から消えるんだ」
友人「あばよ親友……これからは俺が世界で羽ばたく姿を見ててくれ」
得意の猛ラッシュが始まる。
ズドッ! ドスッ! ドボッ! バキッ! ドガッ!
武術家(こ、ここまでか……)
武術家(俺に、もう味方は一人もいない……)
武術家(友人……お前に倒されるなら、本望だ……お前は、親友なのだから)
バシッ! ドゴッ! ベキッ! ガンッ! バゴッ!
武術家(これもお前にひどいことを、いった報いかな……)
武術家(謝れなかったのが、せめてもの心残り、か……)
ズンッ! ガゴッ! バキッ! ベシッ! ドゴッ!
武術家(もう、次の一撃で倒れ──)グラッ…
「私メリーさん」
武術家「!」
「今あなたの後ろにいるの」
武術家「うおあああっ!!!」
ドゴォッ!
友人「がはぁっ!」ドザァッ
武術家の右ストレートがカウンターで決まった。
友人「な、な、な……!?」
試合場の外──武術家の後ろにメリーが立っていた。
武術家「メリー……どうして……!?」
メリー「ごめんね、遅れちゃって」
メリー「私が後ろにいるから……最後まで諦めないで!」
武術家「──ああ!」
友人「あ、あれは……!?(たしか親戚の子供……!)」
友人「……ふん」
友人「たった一人に応援されたぐらいで、どうにかなるもんかよっ!」ダッ
メリーの応援で、戦況を盛り返す武術家。
武術家(メリーが後ろにいるのなら、恥ずかしい試合はできない!)バシッ
友人(くそったれ……! ここに来て、今日で一番いい動きになりやがった!)ガッ
友人(だったらこっちも戦法を変えるまでだ!)スッ
友人は無理に攻め込まず、防御主体のスタイルに切り替える。
武術家「せいっ!」ビュッ
友人「ふん」サッ
武術家(くそっ、蓄積してるダメージの差が大きすぎる!)
武術家(守りに入られては、逆転するのは難しい……!)
友人(お前の技は全て熟知してる。慎重に戦えば、どうとでも対処できる)
友人(お前になにか新技でもあれば別だが、んなもんあるわけねえ!)
武術家(なにか……友人を出し抜く手はなにかないか!?)
武術家「…………」ハッ
武術家(あの技なら……通用するかもしれない!)
友人(な、なんだ!? じわじわとこっちに近づいてきやがる!)
友人(俺の知らない奥の手か!? ──だとしたらうかつに手は出せねえ!)
武術家(間合いに入る──寸前!)スタタンッ
友人(消えた!? ど、どこへッ!?)
メリー「あ、あの技ってもしかして──」
一瞬で友人の背後に回り込んだ武術家。
武術家「俺は武術家、今お前の後ろにいる」
友人「──ちぃっ!」バッ
振り返ろうとする友人の顔面に──
ガゴォッ!
会心の“メリー拳”が炸裂した。
武術家(メリー、俺に技を教えてくれてありがとう!)
メリー(武術家さん、私の技を使ってくれて……ありがとう……)ウルッ
友人「ふっ、ふざけんなぁっ!」ガバッ
友人「ここまでやったんだ! 負けてたまるかよ……お前なんかに!」ギリッ
友人「俺は……いつもいつも……お前がうっとうしかったんだよォッ!」ダッ
持てる力を振り絞り、友人が猛攻に出る。
ガガガッ! パシッ! ガキッ! ドガッ! ズドドッ!
しかしそんな友人の意地を、武術家の気迫が一歩も二歩も上回る。
友人(なんでだ……!)
友人(身も心もボロボロなはずなのに……なぜ倒れない!?)
友人(後ろに……あの嬢ちゃんがいるからなのか……!?)
友人(ならば俺の後ろには……誰かいるのか?)
友人(いない……)
友人(金で雇った連中や、俺の本性を知らない観客だけ……誰もいない……)
友人(いや……)
友人(──いた)
友人(ガキの頃から、お前はずっと俺の後ろにいてくれた)
友人(なのに、俺は──……)
ズドンッ!!!
武術家、渾身の突き。
友人の体は場外まで吹っ飛び──
ドザァッ……!
──立つことはできなかった。
武術家「友人……」
友人「俺は……俺より後から格闘技を始めて……」
友人「俺と肩並べるくらい、強くなった……お前に、嫉妬してたんだ……」
友人「そんなしみったれたことを考える……自分にもずっとムカついてた……」
友人「気がついたら、俺はどうしたいのか、自分でもワケが分からなくなってた……」
友人「だから……この大会でどんな手を使っても優勝しよう、お前を潰そうと……」
友人「他人の力を認める度量もねぇ、ちっぽけな男だ……」
友人「俺は……お前に友じゃねえといったが……そのとおりだった」
友人「こんな俺に……友達を作る資格なんて……あるわけ、ねえ……もんな」
メリー(この人……私にそっくりだ)
メリー(私も捨てられた時、持ち主だった女の子を恨んだけど……)
メリー(同時に恨んでいる私自身にも、腹が立ってた)
メリー(でも──)
メリー(私が武術家さんに止めてもらったみたいに、やっと止めてもらえたんだね)
メリー「私ね、この一週間で色々とあなたのことを調べてたの」
友人「俺を……?」
メリー「うん」
メリー「で、あなたの家に忍び込んだりしちゃったの」
メリー「本当は襲撃事件の証拠を探そう、って思ってたんだけど」
メリー「そしたらあなた──武術家さんと取ったトロフィーとか賞状とか」
メリー「ちゃんととっておいたでしょ」
メリー「本当に憎んでるなら……とっくに捨ててるハズだよ」
友人「……ふっ」
友人「ふははっ……! すまねえ、俺は、俺は──」
武術家「もうなにもいうな」
武術家「俺は今でも、お前を親友だと思っている」
友人「この……お人好しが……」ツ…
メリー「友人さん……自首しちゃったね」
武術家「友人なら、ちゃんと罪を償って出てくるだろう」
武術家「そうしたらまた、これまでのようにアイツと切磋琢磨するつもりだ」
メリー「そうだよね!」
武術家「幸いなことに、空手家と紳士も順調に回復しているようだ」
武術家「今回の件が格闘技界に与えたダメージは大きいが──」
武術家「きっとまた盛り上がってくれることを祈るよ」
メリー「だったら、優勝したあなたは世界で活躍して、みんなを引っ張らないとね!」
武術家「……そうだな!」
メリー(私がここにいる理由もない……)
メリー(私は……ここから去らなきゃならない……)
メリー(だってこれ以上いると、迷惑だもんね……)
武術家「おしゃべりはこの辺にして、と」
武術家「メリー、今日も稽古を始めるか」
メリー「え!? でも私はもう──」
武術家「ん、もしかして、もう他のところに行かねばならないのか?」
武術家「だとしたら引き止めはせんが……そうか、残念だ」
武術家「メリーが編み出したメリー拳がなければ、俺は友人に敗れていただろう」
武術家「だからもっと、色々と教えてもらいたかったのだが──」
メリー「ちょ、ちょ、ちょっと待って!」
メリー「私、しばらくここにいてあげるの」
武術家「本当か? ありがとう!」
メリー「そういえば私、メリー拳をさらに速くする方法を思いついたの!」
メリー「光ぐらい速いって意味を込めて、名づけて……“メリー拳・光”!」
武術家「“メリー拳・光”!?」
武術家(なんだか小麦粉を連想させるネーミングだが……)ゴクリ…
武術家「ぜひ伝授してほしい!」
メリー「う~ん、ホントは企業秘密なんだけど、しょうがないなぁ~」
アナウンサー『いよいよ始まりました、世界格闘技選手権!』
アナウンサー『日本の若きエースが、ついに世界のトップファイターたちに挑む!』
アナウンサー『武術家の登場だぁーっ!』
ワァァァァ……! ワァァァァ……! ワァァァァ……!
武術家「ついにこの時が来た……行くか!」ザッ
その後ろには、常に一人の少女がいた。
メリー「私メリーさん、いつだってあなたの後ろにいるの!」
<完>
熱いSSだったぜ
面白かったぜ。
Entry ⇒ 2012.09.26 | Category ⇒ その他 | Comments (0) | Trackbacks (0)
響「自分はプロデューサーのペットだぞ」
響「自分のお値段はなんとタダ」
P「へぇ、お買い得だなぁ」
響「でしょう?」
P「でもやっぱりいらないかなーって」
響「こんなに可愛いのに」
P「知ってたか?それって寂しいから死ぬわけじゃないんだぜ」
響「知ってる」
P「平気で嘘をつくようなペットはいりません」
響「ペットが悪い事をしたら注意するのが飼い主の仕事なんだ」
P「そうか、ペットを飼うって大変だな。俺には無理だ」
響「自分は初心者向けだから大丈夫。誰でも簡単に飼育できるから」
P「そうかなー、超上級者向けな気がするんだ」
P「ありがたいけど流石に申し訳ない」
響「その分愛情をたっぷり注いだら良いさー」
P「そんな愛情無いから無理だわ」
響「むう、困った飼い主だな」
P「飼い主どこ?」
P「多分俺より長いな」
響「その間に少しでもプロデューサーと離れている事はとても辛いんだ」
P「ずっと一緒にいるとなると俺もとても辛いかな」
響「自分を飼う前にどうかその事を忘れないでほしい」
P「飼う気なんか更々無いです」
響「プロデューサーが自分に望んでいる事を自分が理解するまでに少しの時間をください」
P「早く今俺が望んでいる事を理解して」
響「『俺の居ないところで逝かせてあげて』なんて言わないで」
P「そういう事言っちゃいそうだから俺は飼い主失格だ」
響「プロデューサーが側にいてくれるだけで、自分はどんなことでも安らかに受け入れられる」
P「俺もこの現実が受け入れらない」
響「そして……どうか忘れないで。自分がプロデューサーを愛していることを」
P「忘れさせて、お願い」
P「ああ、やっぱり俺には無理だ。ごめんよ」
響「じゃあ早速散歩に連れってってよ」
P「話聞いてる?」
響「ちゃんと首輪とリードもあるぞー」
P「やっぱり持参してると思った」
響「えへへ、賢いでしょ」
P「うん、良い子だから帰ってくれないかな」
P「首輪つけた人と散歩に行く趣味はありません」
響「えー、だってリードが無いと自分逃げだしちゃうかもしれないよ?」
P「それの何に問題があると言うのか」
響「そのまま人を襲っちゃうかも」
P「ちょっと洒落になんないそれ」
P「可愛く言ってもダメ」
響「うぅ……こんなに楽しみにしてるのに。あんまりだ」
P「俺は最低な飼い主なんだ、分かったら諦めなさい」
響「でも、たとえどんな風に思われてもペットはご主人の事を信じてるから」
P「何、この俺が悪い事してるみたいな空気」
響「愛されなくても愛したい……」
響「でもそうやって愛すれば愛されたくなるんだ。わがままかな……?」
P「やめて、何故か罪悪感が」
P「お断りします」
響「何で?」
P「色々後戻りできないような気がする」
響「そんなのなんくるないさー」
P「いえに かえるんだな。おまえにも かぞくがいるだろう」
響「いないよ?」
P「え?」
響「え?」
響「だから大丈夫だって。もう皆自然に帰って行ったよ」
P「生態系が壊れるなぁ」
響「でも一匹じゃ繁殖できないから大きな影響は無いと思うぞ。それに誰かが通報するはずだし」
P「皆家族じゃなかったの?」
響「自分の家族はプロデューサーだけだもん」
P「どうしてそうなるんだろう」
P「俺のアパートペット禁止なんだ」
響「バレなきゃ問題ないと思うよ」
P「でもバレたら俺の人生が終わるじゃん」
響「何で?」
P「そりゃ高校生飼ってたら豚箱行きですし」
響「双方合意なら問題ないと思うぞ。世の中間違ってる」
P「よし、なら法律を変えてからまた来てくれ」
P「実は響アレルギーだからな。すまん」
響「何それ」
P「響が近くにいると咳とか涙が止まらなくなる。だから飼えない」
響「それなら自分の方が重症だぞ。Pウイルス感染してるし」
P「そうか大変だな。症状は言わなくて良いからな」
響「感染したらプロデューサーの側にいないと寂しくて死んじゃう恐ろしいウイルスだぞ」
P「ほらー、だから聞きたくなかったのに」
P「いや、響は好きだよ。大好き」
響「じゃ、じゃあ!」
P「でもアイドルとか年齢の壁とか色々事情があって無理なんだな」
響「そんなのペットと飼い主の関係ならオールオッケーさ」
P「いや、その理屈はおかしい」
P「俺の方がいじめられてる」
響「もう泣いちゃうよ?」
P「はい」
響「大声で泣くよ?」
P「近所迷惑にならないようにな」
響「この家の人に襲われたって」
P「ちょっと待て」
響「うん」
P「響は何で俺の家に入ろうとしてるんだ?」
響「ペットが自分の家に戻るのは当たり前でしょ」
P「前提がおかしいな」
響「えー、何もおかしなこと言ってないぞ」
P「じゃあ色々言いたいけど俺のアパートはペット禁止。分かった?」
響「うん、分かったから入れて」
P「もう変な動物がいるって保健所に連絡して良いかな」
響「なーに?」
P「俺の家にネズミとかヘビが大量にわいてきたんですが」
響「それは大変」
P「絶対お前の仕業だろ」
響「自分が家の中に入って説得してあげる」
P「961プロも真っ青な解決法」
P「これ一種のストーカーじゃないかと」
響「そっちこそペット虐待だぞ。外に放置するなんて」
P「もう俺が飼い主なのは確定なんですかね」
響「うん!これからは可愛がってね!」
P「響は可愛いなぁ」
響「だってこうやってずっと一緒にいないと不安だから」ギュゥ
P「だからってこんなべったりくっつかなくても」
響「さっきは追い出されて本当に悲しかったなぁ」
P「なんかごめんなさい」
響「でもこれからは側にいてくれるんだよね?ちゃんと面倒見てくれるよね?」
P「正直折れかかってる」
響「ん?」ペロペロ
P「何でさっきから俺の顔舐めてるの?」
響「これは愛情表現ってやつだぞ」ペロペロ
P「なるほど、もう十分かなーって」
響「じゃあ今度はプロデューサーから舐めて」ゴロン
P「ペットをペロペロする人はあんまりいないはず」
響「じゃあ自分がもっとするだけさー」ペロペロ
P「もうべとべとや」
響「ん?」ペロペロ
P「何で四つん這いになって舌で牛乳飲んでるの?」
響「問題あるの?」ペロペロ
P「すっごくいけない事してる気になるんだけど。首輪効果も相まって」
響「ペットをそんな目で見るなんて変態だなー」
P「お前にだけは言われたくない」
P「んって言われても」
響「自分まだ子どもだから細かくしてくれないとご飯食べられないの!」
P「どうしろと」
響「はむっ……」ムグッ ジュルル
P「!?」
響「えへへっ、こうやってプロデューサーの口から貰えば大丈夫」
P「ペット飼ってる人ってこんな事までしてるのか」
P「トイレあそこだから」
響「初めての場所だと……ペットはどうしたらいいか分かんないだぞ」
P「何故俺はアイドルと一緒にトイレに入ってるのだろう」
響「と、トイレの後処理も飼い主の仕事だから」
P「そうすか」
響「だ、だから拭いてほしいな……」
P「ほぇ?」
ガラガラ
響「わーい、お風呂!」
P「はやー、何で入ってきたの?」
響「ペットは1人でお風呂に入れないもん」
P「そうか、ペットだから仕方ないな」
響「うん」
響「気持ち良い所を洗って欲しいから……だよ?」
P「俺のpがインフェルノしちゃう」モミ
響「ぺ、ペットだから何も気にすることないんだ……んっ」
P「そんな声出されたら困ります」ワシャワシャ
響「お返しに今度は自分が身体を洗ってあげる」
P「俺もう洗ったんだけど」
響「でもご主人様のために少しは役立ちたいんだ!」
P「ご主人様て」
響「うん、自分だけのご主人様」ピトッ モニュン
P「ふわぁぁああああ、背中にスライムが二匹ぃぃ」
響「ずっと裸でも良いならそれで良いけど」
P「それはいけない」
響「あっ、首輪もつけてよ」
P「いや、いらないかと」
響「これがないと落ち着かないんだ」
P「もう病気だろ」
P「あっ、貴音との2ショット写真を破るな」
響「自分以外の女なんてプロデューサーには必要ないんだ」グシャッ
P「765プロアイドルグッズがぁぁ」
響「これもさっさと捨てないと」パキッ
P「あぁぁぁぁ、思い出のDVDが。何てことするんだぁぁぁぁ」
響「ペットがいけないことしたらちゃんとしつけないとダメだぞ」
P「しつけとかの問題なのか」
響「じ、自分をプロデューサーの好きなようにしつけて……そしたらもっと良い子になれるから」
P「何故顔を赤らめる」
P「って言われても」
響「自分また同じ事しちゃうよ?」
P「だってもうアイドル関係の全部破壊されちゃったし」
響「それでも怒らないとペットは調子に乗っちゃうぞ」ズイッ
P「わざわざお尻突きださなくても」ペチーン
響「はぅっ……!」ビクッ
P「思ったより悲痛な反応だ」
響「こ、こんなんじゃ全然反省しないから……もっと」
P「なんぞこれ」
P「はいはい」サッサッ
響「ん、くすぐったい」
響「歯も磨かなきゃ」
P「はいはい」シャカシャカ
響「あっ……ふぁ……」
響「耳掃除も……」
P「はいはい」クリクリ
響「んん……あぁっ……」
響「あと子作りも」ガバッ
P「何か変じゃね?」
P「ちょ、これはダメだ」
響「ふふっ、たまにはペットが反逆する事もあるんだからね」スルスル
P「落ち着け、洒落にならん!」
響「プロデューサー……自分ずっと……」
P「響!!」
響「ヒッ」ビクッ
P「飼い主もたまには本気で怒るんだからな」
響「だ、だって自分がプロデューサーに出来る事なんてこれぐらいで……」
P「……」ギュッ
響「あ……」
P「響は可愛い。だから側にいてくれるだけで良いんだ」
響「え……?本当に?」
P「ああ、響は違うのか?俺が一緒にいるだけじゃ不満か?」
響「……」チュッ
P「あ」
響「これは大好きのキスだから。大好きな飼い主とずっと一緒にいたいって」グスッ
P「ああ。もっと大きくなったらさっき響がしたがってたこと、出来るから」
響「うん。ぺ、ペットと子作りしたいなんてやっぱり変態だな……」
P「ああ、変態だよ俺は」チュッ
響「何だ、プロデューサー自分の夢を見てるのかな?」
響「そんなに自分を必要としてくれてるんだ、えへへ」
響「よだれ垂らしちゃって、しょうがないなぁ」フキフキ
響「これからもちゃんと面倒見てあげるからね」
響「自分がずっとずっと」
響「プロデューサーの飼い主だから」
チャオ☆
Entry ⇒ 2012.09.26 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
豊音「わ~い東京観光」池田(あ、あの人は…)
華菜「なんだっけ?」
豊音「あれ……?」キョロキョロ
華菜(どうしたんだろう、急に辺りを気にし始めたけれど)
豊音「みんないない……!?」
華菜「……迷子かァ?」
豊音「はぐれちゃったよー……」オロオロ
豊音「……」キョロキョロ
華菜「というよりタコス娘……待ち合わせ時間とっくにすぎてるっつーのに」
豊音「みんなと、東京観光のはずが……」
華菜「なにがタコス巡りしようじぇ!だし」プンプン
豊音「う、うぅ……」じわ
華菜「……待ち合わせ時間から三十分経ってる」
豊音「ここ、どこぉ……」グスッ
華菜「はー、まだかねぇ」パタパタ
豊音「ぐすっ…えぐっ……」
華菜「……」
豊音「んー?」グスグス
華菜「もしや、迷子ですか?」
豊音「ビクッ……ま、迷子じゃ、ないよー」
華菜「……そうですか」
豊音「うう、みんな探しにいかないといけないけど、ここがどこかもわからないんだー……」
華菜「そうですか」クルッ
豊音「ちょ、ちょっとま」
華菜「ダッシュ!」
豊音「ちょ、追っかけるけどー!」
豊音「ぼ、ぼっちにしないでよー!!」
華菜「ばったり、そこで、あったような人に、かまってあげる義理なんか!」
豊音「ともびき、だーよー!!」
華菜「はァ!?」
豊音「ぼっちじゃないよー!!」ガシッ
華菜「ひいっ」
豊音「捕まえたー」ニコニコ
華菜「……まて、待ち合わせしてるやつがいるんだ」
豊音「えー」
ヤクソクーノバーショーヘオーバーフューチャー
華菜「はい」
優希『ごめん、ちょっと野暮用でいけないじぇ』ブツッ
華菜「…………」
華菜(あんのタコス娘ェ……)ギリギリ
豊音「あの、手伝って欲しいんだけどー……」
華菜「わかったよ!手伝えばいいんだろ!!」フシャー
豊音「ありがとうだよー」
豊音「姉帯豊音だよー」
華菜「ふんふん、豊音っていうんだな。よろしくだし」
豊音「猫さんは?」
華菜「池田華菜ちゃんだし」フンス
豊音(いきなり偉そうな態度になったよー……)
豊音「よろしくねー、カナちゃん」
華菜「で、どうしようかまずは>>25でも行ってみようか」
豊音「おー、ちょーすごそうー」
華菜「なんたって平将門が祭られてるところだからな」
豊音「ちょーたのしみだよー……」
豊音「そうだねー……」
華菜「はぁ、なんでカナちゃんこんなことしてるんだし……」
豊音「迷惑かなー……」
華菜「……私も暇だったし、別にいいんだけど」
豊音「ごめんねー」
豊音「おー、東京にもこんな所があるんだー」
華菜(んー、あの時タコス娘の誘いじゃなくてみはるんのほう選んでおけば良かったし……みはるんは絶対バックれたりしないし……)
豊音「どうしたのー?入ろうよー」
華菜「あぁ、今いくしー」タタッ
華菜「……あんたがでかいだけじゃ」
豊音「手が届きそうだーー」ピョンコピョンコ
華菜「やめい」
豊音「はーい」シュン
豊音「いいところだねー」
華菜「一度きてみたかったんだよなー」
豊音「あや、東京住みじゃないんだー?」
華菜「私は長野だけど」
豊音「長野っていうと清澄だけど……」
華菜「うちは風越、私は個人戦に出てるキャプテン……福路美穂子の付き添いだし」
豊音「お、おぉ……」キラキラ
華菜「……ん?」
華菜「キャプテンに頼んでみるし」
豊音「わー」
華菜「さて、ここはもういいか……」
豊音「そうだねー」
胡桃「豊音みつかったー?」
白「だる……」
塞「いや、全然……」
エイ「ドウシヨウ」
白「まってりゃいいじゃん……はぁ」
塞「そういうわけにもいかないでしょ」
トシ「携帯、持たせておくべきだったね」
胡桃「はぁ……まさか一番目立つはずの豊音が迷子になるとはね……」
トシ「とりあえず、もう一回周囲を探してみようか」
塞「そうですね……」
胡桃「シロはここでまってて……あれ?」
塞「エイスリン、シロは?」
エイ「シラナイ」ふるふる
トシ「…………はぁー」
豊音「色々買っちゃったよー」
華菜「お守りなら私も一個」
豊音「カナちゃんは歴史にも詳しいんだねー」
華菜「源平の話が大好きで……」
華菜(アハハ……大河ドラマで興味持ったなんて言えないよなぁ)
豊音「私もちょー詳しくなった気分だよ」
華菜「そりゃよかった」
豊音「おー」
豊音「にゃっ!?」ピクンッ
華菜「どうなんだい?お嬢ちゃん……」
豊音「ちょー行きたいよぉーー!!」
華菜「ふっ、なら決まりだな」
まー、なんとかなるはず
華菜「とりあえず、ここから歩いてけばいいし」
豊音「道順とかわかるのー?」
華菜「カナちゃんに任せなさい!」
豊音「まかせたー」
華菜「とりあえず駅までっと……」
華菜「豊音さんは身長が高いから見失うことがないし!」
豊音「そ、そうかなー」テレテレ
華菜「にゃはは……ん?」
豊音「ん?……あ」
華菜「あいつもひとりっぽいけど」
豊音「声、かけてくるー」
豊音「しろー」
白「……」ボー
豊音「しろー」トントン
白「あ、トヨネ……」
豊音「ビックリしたよー、シロ、みんなはー?」
白「ん、あー……おいてきたんだった」
豊音「ずこー」
白「あるけど……」
白(……誰?)
華菜「それで連絡してみんなにここまできてもらえばいいし」
豊音「なるほどー」
豊音「えーっと……これから」
豊音「あ、つながった、うん、豊音だよー」
豊音「御茶ノ水?駅にいるよーうん、うん」
華菜「連絡ついたみたいだし、私はこれで失礼するし」
豊音「え?」
華菜「皇居だってみんなでいけばいいし」
豊音「んー、そうだねー……」
豊音「皇居……」
華菜「君たちの空間に私が入っても邪魔になるだけだ」
豊音「皇居ー……ねぇ、皇居……」
華菜「だから私はここで……」
豊音「皇居」
華菜「……」
豊音「……」
豊音「えー、カナちゃんと行くって言った……」
華菜「き、急用を思い出した!」ダッ
豊音「逃がさないけどー」ガシッ
華菜「……」
豊音「……」
カン
たまにはこんな組み合わせもイイネ
Entry ⇒ 2012.09.26 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
手寅「音楽をやった方が良いと思うの」
丸京「けいおん!ネタはもうやったじゃん」
木胡桃「今からやっても放課後ティータイムなんとかには勝てないよっ」
苦来「キグちゃん、ボカせてない」
手寅「でも私たちも音楽でもやって明るく盛り上げないといけないのよ」
丸京「まぁ基本この部屋で愚痴言ってるだけだしな」
苦来「盛り上げないとマズイのは確かね…(売上的にも)」
木胡桃「でも私たち楽器出来ないよっ」
丸京「その前に楽器買う金もない」
苦来「ドラムセットとか高いらしいしね…」
手寅「声だけって事?」
丸京「ちょっと前はアカペラで歌うの流行ったな」
苦来「ハモネプ全盛時は録画してたなぁ」
魔梨威「口の中でドゥクンドゥクン音出すアレカッコイイよな!」
手寅「ボイスパーカッションの事?」
丸京「ヒューマンビートボックスじゃなかったっけ?まぁ似たようなもんか」
木胡桃「でもあんな技誰も出来ないよっ」
魔梨威「なんかいやらしいなオイ///」
丸京「一日やそこらで身に着く技術じゃないだろうな」
苦来「お風呂入ると練習したくなる…」
木胡桃「じゃあハモネプ出るのも無理じゃんっ」
丸京「まぁ出なくて良いよ」
苦来「お台場だし……」
手寅・魔梨威・丸京・木胡桃「……だね」
魔梨威「演歌ぁ~?」
手寅「不服そうにしてるけどマリーさん、右手がマイクで左手がコブシきいてるよ?」
丸京「演歌も駄目だ。金がかかる」
木胡桃「お金かかるの??」
苦来「紅白見れば分かるよ」
丸京「衣装代だ」
魔梨威「小林幸子、衣装代自分持ちだったのかよ!」
苦来「それときな臭い付き合い多いし……」
丸京「芸能界の闇だな…」
丸京「駄目だな」
木胡桃「なんでー?」
丸京「童謡ってのは子供達が歌うわけだ」
苦来「有名になれば小学生の教科書に載る」
丸京「子供達にとって近しい存在になるというわけだ」
魔梨威「それの何が悪いんだい!」
丸京「小学生が歌う歌を作る奴がしょっちゅう尻を出す露出狂じゃ駄目だろ!」
手寅「あぁもう!マリーさんが下品なせいで!」
魔梨威「大半はお前が脱がせてるだろうが!」
魔梨威「流行るか!」
木胡桃「デスメタルはっ?」
丸京「もうやっただろ」
苦来「お経は?」
手寅「音楽なの!?」
丸京「ラップ音は?」
魔梨威「心霊現象だ!」
苦来「正しくは木造建築が原因」
魔梨威「だから心霊現象だって」
丸京「そっちじゃなくてHIPHOPの方だろ」
木胡桃「YO!YO!って感じ?」
丸京「間違いではないな」
苦来「最近?ていうかここ10年くらいはロックバンドとかもラップの要素取り込みだしてるね」
魔梨威「あぁ。突然曲の雰囲気変わりまくるよな」
丸京「KREVAは慶応だしね」
苦来「MC宇多丸は早稲田だしね」
木胡桃「笑点の司会のお祖父ちゃん頭良いんだね!」
魔梨威「そっちの歌丸さんじゃねーよ!」
手寅「とにかく高学歴のラッパーが多いんだよね」
魔梨威「優等生の方が言葉たくさん知ってるし、韻踏んだ歌詞を書けるんじゃねーの?」
丸京「かもね」
魔梨威「だな!韻踏みまくってやろうぜ」
丸京「東京生まれ落語育ち、地味そうな奴は大体友達ってとこみせてやろう!」
苦来「そんなもの見せつけられても……」
木胡桃「でも韻踏むってどういう意味なの??」
木胡桃「うんうん」
手寅「『合わせ技』って言葉は『あ あ え あ あ』の音じゃない?」
木胡桃「うん」
手寅「じゃ次は『流れ弾』って言葉があるじゃない?これも『あ あ え あ あ』って音だよね」
木胡桃「『合わせ技』と同じだっ!」
手寅「こういう似たような音の言葉を並べると耳に気持ち良く入って来るんだよ」
魔梨威「なるほど。似てる言葉、近い響きの言葉、言い回しを使うんだな」
丸京「似たような言葉並べて韻踏むくらいは私にも出来るんじゃないか?」
木胡桃「ゲームみたいで楽しそうっ」
手寅「一回やってみようか」
魔梨威「じゃあ最初は『落語』でスタートな!」
手寅「何その手拍子?」
魔梨威「合いの手だよっ!ほら『落語』!」パンパン
手寅「『マグロ』!」パンパン
木胡桃「おぉテトちゃん凄い!えーっと、えっと、全部の文字同じじゃなくても良いよね!?」
手寅「口ずさんで似てたらOKだよ」
木胡桃「『タラコ』!」パンパン
丸京「『タラオ』!」パンパン
苦来「『カツオ』」パンパン
手寅「ちょ、ちょっと待って、何でサザエさんのキャラが連続するの!?」
丸京「偶然だろ」
木胡桃「今、テトちゃんが止めたからテトちゃん×一個ねー」
手寅「なにそれ!?」
苦来「三回アウトで罰ゲーム」
魔梨威「絶対に負けられない戦いが始まるぞっ」
丸京「次は手寅から初めていいぞ」
魔梨威「いきなり難しくなったな!」
木胡桃「えーっと『マウスパッド』」パンパン
丸京「『アウトレット』」パンパン
苦来「『アウトプット』」パンパン
魔梨威「えーっと、えっと、ちょっと待て、3秒、3秒くれっ!」
手寅「はいアウトー」
苦来「時間切れー」
魔梨威「お前の『アウトプット』なんて丸京の『アウトレットのほぼパクリじゃん』!」
丸京「似た言葉だからアリだ。基本発音してみて最後の音が同じならありだ!」
木胡桃「マリーさんも1バツだねー」
手寅「次はマリーさんからだね!」
魔梨威「せーの!『マリー』!」パンパン
手寅「『ラリー』!」パンパン
木胡桃「『パーティ』!」パンパン
丸京「『パンティ』!」パンパン
苦来「ティ、いや、リー、えっと『リッツパーティ』!」パンパン
魔梨威「アウト!今回の苦来はアウトだろ!」
丸京「いや、今回のゲームの性質上、それを許すと何でもありになってしまう」
手寅「苦来ちゃん、諦めなよ」
木胡桃「苦来ちゃんもバツ一個目ねーっ」
魔梨威「じゃあ次は苦来るからだなっ!」
苦来「私からか……気合い入れていかないと」
魔梨威「重っ!『盲腸』!」
手寅「『早漏』!」パンパン
木胡桃「じゃ、じゃあ『遅漏』!」パンパン
丸京「さりげなく何言ってんだお前ら!『長老』」パンパン
苦来「『白鳥』」パンパン
魔梨威「『脱腸』!」パンパン
丸京「何でマリーさんは腸関係ばっかなんだよ!『ダチョウ』!」パンパン
手寅「『隊長』!」ケイレイ!
木胡桃「えと、『体調』!健康面の方の!」パンパン
苦来「有りだけどちょっとずるいっ『埋葬』」パンパン
手寅「『アイダホ』!」パンパン
丸京「ちょっと韻踏むの上手くなってる!」
木胡桃「『ユネスコ』!」パンパン
魔梨威「キグの口からそんな難しい言葉が!」
木胡桃「それどういう意味っ!?」
丸京「『パチスロ』!」パンパン
苦来「『チンチロ』!」パンパン
魔梨威「苦来丸京から影響受けすぎだろ!セーフだけども!『ちんすこう』!」パンパン
木胡桃「やんっ!マリーさんえっち!///」
魔梨威「何が!?」
木胡桃「『不登校』はぁ。タイムマシン欲しい」ズーン
丸京「自分で言ったんだろ!?なぁ!?ってあぁ!?私の番か!えっと、えっと、あぁー待て!」
苦来「はい丸ちゃんアウトー」
木胡桃「うし…っ!」
手寅「あぁキグちゃんが黒い!」
魔梨威「これで丸京も一回ミスだな!」
魔梨威「ほら早く始めろよ!」
丸京「せーっの!『暴力』!」パンパン
苦来「『韓国』!」パンパン
木胡桃「苦来ちゃんにしては声大きいっ!?」
魔梨威「『最悪』!」パンパン
手寅「『ゴミクズ』!」パンパン
木胡桃「み、皆目が怖いよっ!って私の番か!あぁ韻踏むうんぬんじゃなくて特定のどこかの国の話になってない!?」
丸京「はいキグもアウトー!」
苦来「『偽造』とか『チ○カス』とか」
丸京「『ゲロ以下』とか『ゴキブリ』とか」
木胡桃「韻踏んでない!?」
手寅「今のお題に関してはガンちゃんの答えでも勢いでスルーしてたね」
木胡桃「えぇー!?」
魔梨威「このお題に関しては韻なんか無視してDISるのも正解だろうが!」
木胡桃「『地球に必要のない生き物が住んでる国』とかでも良いの?」
丸京「長いが大丈夫だ!」
苦来「正解」
丸京「次ミスったら一気にリーチか…辛いな」
手寅「集中しないと…」
苦来「私は脱ぎキャラじゃないからまずい……」
木胡桃「私みたいなチビッ子が脱いでも誰も喜ばないよ!」
丸京「いや、キグ。世の中っていうのは意外と変態は多いぞ」
丸京「『トッポ』!」
苦来「『ポッポ』!ポケモンの!」
魔梨威「『パイポ』!」
手寅「『相棒』!」
魔梨威「『愛棒』とかいやらしいなオイ///
手寅「そっちじゃないよ!水谷さんの方だよ!」
丸京「『とぐろ』!」パンパン
苦来「『ノドグロ』」パンパン
魔梨威「『巻き糞』!」パンパン
丸京「今日一で酷いな」
手寅「『満ち潮』!」パンパン
木胡桃「『引き潮』!」パンパン
苦来「『粗塩』」パンパン
魔梨威「『押尾』!」パンパン
手寅「『学』!ってしまっ!?」
手寅「マリーさんずるいよ!今の流れだとどうしても犯罪者の名前を言いたくなるよ!」
木胡桃「テトちゃんそんなモロな言い方したら駄目だよ!」
苦来「そうよ!キメセクかましたり、いけないお薬を渡したり渡されたり、放置したり放置した人なんだから!」
魔梨威「とにかく!手寅はもうリーチだからなー」
手寅「だ、駄目だよ!マリーさんは脱いでもギャグにしかならないけど私は、そのっ」
魔梨威「な、なんだその言い草は!それじゃ私の尻には色気が無いみたいなじゃないか!規制が入ってないみたいだろ!!」
丸京「いや、マリーさんの尻規制ゆるいよ」
苦来「マリーさんのお尻ゆるゆるだよ」
魔梨威「ゆるくねーよ!」
丸京「まぁ私のボディーラインが一番悩ましいがな」
手寅「そんな風に言うならガンちゃんが脱ぎなよ!」
丸京「断る。私の裸は無料で公開するような安いものじゃない」
魔梨威「じゃあいくらなんだい?」
丸京「500円~1000円は月々もらおう」
木胡桃「ニコニコかよ!」
苦来「FC2ですか」
手寅「うぅ。今日は大変だなぁ。家帰ったらお酒飲もう。せーの『ビール』!」パンパン
木胡桃「『ヒール』!」パンパン
丸京「『ニヒル』!私のように」パンパン
魔梨威「そうか?」
苦来「『苦来』私自身」ドヤ
丸京「ドヤるな」
魔梨威「『アヒル』!」パンパン
丸京「ファイティングポーズすな」
木胡桃「『アパレル』!」パンパン
丸京「『キル・ビル』!」パンパン
魔梨威「ちょっ、刀振り回すなよ!」
苦来「『カラメル』」パンパン
魔梨威「『セフィロス』!」パンパン
苦来「マリーさんは白髪似合わなそう」
手寅「『ラクロス』!」パンパン
木胡桃「『セクロス』!」パンパン
手寅「ルール上なんの問題もないよ!もう時間切れでしょう!マリーさんもツーアウトだよ!」
苦来「『セクロス』の後に手拍子でパンパン音するとすごくいやらしい」
丸京「まぁキグもお年頃だからな」
木胡桃「ち、違うもん!ついうっかり言っちゃっただけだもんっ////」プシュー
丸京「とにかくマリーさんも崖っぷちだ」
魔梨威「くっ、キグめ。とんだスケベ十代だ」
木胡桃「スケベじゃありません!//」
丸京「根っからのBガールである私に死角はない」
木胡桃「Bー?何のB?」
苦来「暴力のB」
丸京「黙れBカップ」
苦来「酷いっ…」
手寅「ほら早く始めようよ!」
魔梨威「ぶっこんでいくんで夜露死苦ー!」
手寅・木胡桃・丸京・苦来「夜露死苦ー!!」
魔梨威「はい、せーのっ『フジテレビ』!」パンパン
手寅「『つまらない』!」パンパン
木胡桃「『マジでゴミ』」パンパン
丸京「えーっと、カス、売国、害電波、嫌なら見るな、うーん、迷うな」
苦来「はい、ガンちゃんアウトー」
丸京「はっ!?しまった!つい罵りたい気持ちが大きすぎて迷ってしまった」
手寅「無理にDISらないで適当に韻踏めば良かったのに」
丸京「だって、フジテレビだぞ?DISらない訳にはいかんだろ!」
丸京「ぐぬぬ……」
木胡桃「ガンちゃんおっぱい大きいから良いじゃん脱いでもっ」
丸京「だ、駄目だ!最近処理を怠ってるからっ」アセアセ
手寅「処理…?」
丸京「あっ、いやっ……むしろ死にたい……////」ボーン
魔梨威「わははっ。丸京は密林なのかなー??」ニマニマ
丸京「黙れ寸胴ツルぺタ。お前なんて変態にしか需要はないんだ!」
魔梨威「なんだとっ!私だって!」
手寅「私だって?」
木胡桃「えっ?マリーさん彼氏いるの???」
手寅「大丈夫だよマリーさん!私もだから」
苦来「『こういう世界観』のキャラは皆処女だから安心してっ」
丸京「あぁ。男出るだけでキレる奴いるからな」
木胡桃「キレる若者だね」
苦来「いや、結構中年もいると思う」
手寅「童貞?こじらせると色々大変らしいからねー」
苦来「『新聞』」パンパン
魔梨威「『回文』!」パンパン
手寅「『雷雨』!」パンパン
丸京「お前だけどんどん上手くなるな」
木胡桃「『台風』!」パンパン
苦来「『タイフーン』!」パンパン
手寅「またしてもちょっとズルイ!」
魔梨威「『風雨』!」パンパン
手寅「『暴風雨』!」パンパン
苦来「テトちゃんのそれはちょい足しじゃないの!?」
木胡桃「『積乱雲』!」パンパン
魔梨威「眼鏡にしては上手いっ」
苦来「『アンサンブル』」
魔梨威「『バイリンガル』!」
手寅「『ハイビスカス』!」
木胡桃「『マダガスカル』!」
丸京「『まだ助かる』!」
苦来「あぁ~!?それ私も考えてたのに~っ!あぁもうそれ以外考えてなかったから無理だよ…」
魔梨威「これで苦来も後が無くなったな」
魔梨威「泣くなよ苦来。ようは勝てばいいんだ」
苦来「全員殺すくらいで頑張る」
丸京「いや、それは頑張りすぎじゃ」
苦来「せーの『殺す』!」パンパン
魔梨威「『ライス』!」パンパン
木胡桃「マリーさんナイス!一瞬でほっこりした空気に戻した!」
手寅「『ライム』!」パンパン
魔梨威「あぁずるっ!ラッパーっぽいフレーズ!」
丸京「『トラブル』」パンパン
苦来「『猛毒』!」パンパン
魔梨威「『家族』」パンパン
丸京「またマリーさんがほっこりライミングしたっ!」
手寅「『テキサス』!」パンパン
木胡桃「『サーカス』!」パンパン
丸京「『フォーカス』!」パンパン
苦来「『ファック』!」パンパン
魔梨威「『LOVE』!は、はずい///」
丸京「苦来のダークさをマリーさんが緩和させまくってる」
木胡桃「天才ほっこりラッパーだよ!」
木胡桃「えー?英語分かんないよ!?ライム?ライス?あぁこれはもう言ったよね???あぁもう」
丸京「なぜ英語にこだわった?とにかくキグ、タイムアップだ」
魔梨威「キグもリーチ」
苦来「すなわち…」
手寅・魔梨威・丸京・木胡桃・苦来「次で決まるっ!!!!!」
丸京「『制作』!」パンパン
苦来「『奈落』!」パンパン
魔梨威「『極楽』!」パンパン
手寅「『常夏』!」パンパン
魔梨威「おっさんくさ!」
丸京「『恍惚』っ…んっ////」パンパン
魔梨威「なんでちょっとセクシーに言ったの??」
苦来「『灼熱』!で焼き殺したいなぁ…」パンパン
手寅「苦来ちゃんさっきから怖いよ!」
魔梨威「『滑舌』!芸の基本だぜっ」パンパン
手寅「『卓越』!芸を極めないとねー!」パンパン
丸京「『上越』!」パンパン
苦来「『亀裂』」パンパン
魔梨威「『モーレツ』!」アハ
丸京「うざい!」
手寅「『パイレーツ』」パンパン
魔梨威「そこまで巨乳じゃないだろ」
木胡桃「『おパンツ』!」パンパン
丸京「『オーパーツ』!」パンパン
手寅・魔梨威・木胡桃・丸京「えっ?????」
苦来「ハイ次の人!」パンパン
魔梨威「ハイ次!じゃねぇよ!」
苦来「ご、誤魔化してないよっ」アセアセ
木胡桃「ほとんど言語じゃなかったよ!」
手寅「じゃあ何て言ったの?」
苦来「それは…そのっ」
魔梨威「これは決まりかなー?」
手寅「そんな事はしないよっ!」
苦来「ほんとう?」ウルウル
丸京「本当だ」
魔梨威「しかしどんな罰ゲームにするかな」
苦来「皮膚抉ったりしない」
魔梨威「そんな事するか!」
丸京「何か大変な事、というより困っている事を苦来に解決してもらいたいなー」
魔梨威「何か思いついたのかっ?」
苦来「あんま無茶は言わないで…」
手寅「ほら?私達って全員彼氏いないじゃない??」
魔梨威「んなっ!?」
丸京「確かにいないが……それがなんだ!」
木胡桃「彼氏さんなんて私にはまだ早いかもっ///」
苦来「私もいない」
手寅「私だっていないよ?」
丸京「わ、私も…『今』はいないんだ」アハハ
苦来「『今』はねー。うん。最近出会いがなくて…」
木胡桃「私は彼氏さん出来た事ないっ!」
手寅「まぁそこの三人に当てはまるか分からないけど……処女とか童貞の人、恋愛経験無い人は『今は』って言うらしいよ?」
魔梨威・丸京・苦来「」ギクッ
木胡桃「へぇー!そうやって虚勢を張るんだね!」
丸京「彼氏いない歴=年齢で何が悪い!」
苦来「時代が悪い!」
手寅「私もそうよ!高校卒業してすぐ落語家だもん!」
木胡桃「皆美人さんなのに意外っ」
手寅「そう!我々に出会いがないのはチャンスが少ないから!運が悪いから!」
魔梨威・丸京・苦来「そうだー!!!」
苦来「ちょ、そんなの無理よ!?」
魔梨威「頑張れ!逆ナンかまして来いよ!」
丸京「わ、私は余った男で良いからな、余ってしまった優しくて私に凄く優しくしてくれて頭ナデナデしてくれる人程度でいいからな!」
木胡桃「ガンちゃん地味に欲張り!」
手寅「苦来ちゃん可愛いから大丈夫だよ!」
苦来「で…でも男の人に何て声かけたら」
手寅・魔梨威・丸京・木胡桃「だまらっしゃい!敗者め!」
苦来「うぅ。もういいっ。私が一番イケメンの人の隣座るもん」
魔梨威「とにかく行ってこい苦来!」
苦来「行ってくるね……男漁りの旅にっ」
手寅「セッティング出来たらメールしてねー!」
こうして苦来は逆ナンの旅に出たのである
今回培ったHIPHOPセンスを生かし男に声をかけるのであろう
終わり
Entry ⇒ 2012.09.26 | Category ⇒ 版権物SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
ウサミ「日向クンがらーぶらーぶし過ぎて修羅場でちゅ」
日向「希望船ウサミ号が完成したぞ」
ウサミ「おめでとうございまちゅ。学級目標を達成したご褒美におでかけチケットあげまちゅ。これで皆さんと仲良くお出かけしてくだちゃいね。らーぶらーぶ」
日向「チケットか……誰と一緒に……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
日向(な、なんだ……背後から強烈な視線を感じる……)
罪木「えへへ…ひ、日向さん。こんなところで会うなんて奇遇ですね」
罪木「ここで会ったが百年目!!」
罪木「あ、今のは違うんですぅ!うぅ……偶然を装って声かける方法を5000パターン用意してたのに……」
日向「そうだ。罪木。今暇か?丁度チケットがあるし、良かったら一緒に……」
西園寺「日向おにぃ!!」
日向「西園寺?どうしたんだ?」
西園寺「ねえ、日向おにぃはわたしとの約束忘れたの?」
日向「約束?そんなものしたっけ?」
西園寺「チケットが手に入ったらデートするって約束したの忘れたの!?」
日向「いや、そんな約束はしてないはずだ」
西園寺「うわあああああああ!!!約束忘れるなんてひどいよおお!!」
日向「お、おい……泣くなよ」
罪木「西園寺さん。日向さんが困ってますし、嘘泣きはやめましょう」
西園寺「黙ってろ!ゲロブタ女!邪魔するな!日向おにぃに嘘約束押し付けたことがバレたらどうするんだ!」
罪木「ふえぇぇ……ご、ごめんなさい。ゲロブタ女ですみません」
日向(おい。今、自分から嘘だって認めたぞ)
罪木「で、でも、日向さんとのデートは譲れません!」
西園寺「はぁ?あんた何言ってんの?」
ウサミ「はわわわわ……喧嘩はダメでちゅ。皆仲良くらーぶらーぶ」
西園寺「うっさい!耳引きちぎんぞ!」
罪木「中の綿を取り出す手術しますよー?」
ウサミ「ガーン。そ、そんな……西園寺さんはともかく罪木さんまで……」
日向(なんかまずいことになってきたな。2人がウサミに気を取られている間に逃げ出して……)
狛枝「おーい。日向クン!」
日向「ゲェ!狛枝!」
狛枝「ねえ、こんなところで何してるの?」
西園寺「日向おにぃ!罪木なんてデブスよりわたしとデートしてくれるよね?」
罪木「日向さんが最初に誘おうとしたのは私です!」
日向(ま、まずい。狛枝が声をかけてきたせいで完全に逃げるタイミングを逃した)
狛枝「日向クン。希望は修羅場という絶望を乗り越えて輝くとは思わない?」
日向「は?お前なに言ってるんだよ」
狛枝「ボクはね。キミだったらこの絶望的修羅場を乗り越えられるって信じているよ……だから、最高の舞台を用意してあげたよ!」
小泉「えっと……日向?撮影を手伝ってくれない?」
ソニア「御機嫌よう。日向さん。今日はいい天気ですし、デートをするには最適ですよね」
澪田「おっす!創ちゃん!唯吹と一緒に部活するッス」
七海「ふぁあ……ねみー……あ、日向くんいたんだ。この状況は…………うん。修羅場…だと思うよ」
狛枝「えへへ。連れて来ちゃった」
日向「狛枝ァ!!」
狛枝「ごめんね。日向クンが怒るのも無理ないよね……終里さんは弐大クンにアレされてるし、辺古山さんは九頭竜クンと一緒にいるから連れてこれなかったんだ……女子全員連れてくることが出来ないとかボクはなんて無能なんだッ!」
日向「違う!そうじゃない!!」
狛枝「いやあ、日向クンのお陰で退屈だった修学旅行が面白くなりそうだよ。ハハハ。殺人が起きない分、こういうので埋め合わせするってのも悪くないかもね」
日向(狛枝の奴……後で覚えてろよ。でも、今は狛枝に構っているヒマなんてない。この状況を打開しないと……)
狛枝「日向クン。キミの希望はこんなところで倒れたりしないよね?」
―ノンストップ議論―
罪木「最初に日向さんを発見したのは私です。だから、私とデートするべきです」
西園寺「はあ?何言ってるの?日向おにぃはわたしの奴隷だから私と一緒にいる義務があるんだよ!」
小泉「日向は頼りないんだから、アタシがちゃんと面倒見ないといけないの」
ソニア「あらあら。困りましたね。わたくしとしても、祖国の未来のために英雄の日向さんを渡すわけにはいきません」
澪田「創ちゃん。モテまくりっすね。でも、唯吹とバンドを組んでることは忘れてないっすよね?」
七海「そんな風に争わなくても」
???「破壊神暗黒四天王」
七海「皆で仲良くゲームでもすればいい…と思うよ」
日向「それに賛成だ!」
狛枝「誰だ。今の」
日向「な、なあ。一旦おでかけチケットのことは忘れて七海の言う通りゲームでもして落ち着こう」
罪木「わ、忘れられるわけないじゃないですか!」
西園寺「そうだよ!ゲームなんてホテルに帰ってからでもできるじゃん!」
小泉「あんたねえ。男らしく1人に決められないわけ?」
日向(くっ。こんな一気に反論されたら言葉を切り返す余裕なんてない……)
澪田「オロオロ。創ちゃん論破失敗っすね」
ソニア「マカンゴぶつけますわよ!」
小泉「ちょ…な、なんてこと言ってるの」
澪田「うひょー。ソニアちゃん大胆っすねー」
日向(だからマカンゴって何だよ!ぶつけられるものなのか!?)
狛枝「流石の日向クンもこんな人数に反論されたら絶望するしかないのかな?おっと…ボクの日向クンがそう簡単に絶望するわけないか。だってキミは希望の象徴だからね」
狛枝「今のこの絶望的な状態も日向クンと日向クンとデート出来る女子が最後に希望を手に入れるための踏み台にしか過ぎないんだ!ワクワクするよね?」
日向(こうなってしまった以上は、比較的冷静な七海を起点に何とかするしかない)
日向「七海!」
七海「zzz」
日向(こいつ立ったまま寝てやがる……!)
狛枝「ねえ、皆。このままだと埒が明かないからここはくじ引きで決めたらどう?」
小泉「は?」
ソニア「何でくじで決める必要があるんですか?」
日向(また狛枝が余計なこと言い始めた……)
狛枝「まあ、そう言わずに……ほら、こんなこともあろうかとくじを用意したんだ。丁度6本あるよ」
罪木「でも、くじで決めるなら公平だと思いますけど……」
小泉「仕方ないわね」
澪田「たはー!結局くじで決めるんかい!」
罪木「うぅ……当たってください。日向さん日向さん日向さん日向さん日向さん日向さん日向さん日向さん日向さん」
西園寺「ぶつぶつうるさい!ゲロブタ女!」
狛枝「よし。皆、くじを選んだね。それじゃいっせいので引くよ」
澪田「ぐぎぎぎ!外れた」
ソニア「そ、そんな……」
小泉「べ、別にくじが外れたって悲しくなんか……」
西園寺「うわああああああ外れちゃったよおおおお」
罪木「え?あれ?私も外れ……?」
狛枝「皆外れたみたいだね。じゃあ、余ったくじが当たりってことはボクが日向クンとデートすることになるんだね」
日向「それは違うぞ!(論破)」
狛枝「え?違うって何が?」
日向「そのくじは七海のものじゃないのか!」
狛枝「それは違うよ(反論)」
狛枝「冗談はやめてよ。なんでくじを手にしてない七海さんが参加してることになるのさ」
日向(正論だが……このままだと狛枝とデートすることになってしまう……まさか、狛枝の狙いは最初から俺だったのか!?)
日向「そ、それは……七海は寝ているから、くじ引けなかっただろ」
狛枝「引いてないなら彼女のものじゃないよね?」
日向「ぐぬぬ……」
狛枝「このくじは最終的にボクの手元にあった。ってことはこのくじはボクのものだね」
狛枝「ボクはなんてついているんだ!超高校級の幸運なんてゴミみたいな才能でも日向クンとデート出来るのに役立つなんて最高だよ」
七海「……おはよう。あれ?まだやってたんだ」
日向「七海からも何か言ってくれよ」
七海「何かって何が?」
狛枝「ボクが日向クンとデートすることになったよ」
七海「……うん…おめでとう」
狛枝「ありがとう」
日向(でも、考えようによってはこのまま女子とデートして下手に禍根を残すよりは、狛枝と一緒にいた方が安全と言えば安全か……)
日向(って俺は何を考えているんだ。相手はあの狛枝だぞ。何をしでかすかわからない)
罪木「…ぁれっ?」
罪木「あれあれあれあれあれー?」
罪木「私思いついちゃいましたぁ。日向さんを私の介護なしじゃ生きられない体にしちゃえばいいんだってー」
小泉「ちょっとアンタ何言ってんの?」
罪木「ぽわわ~ん。そうすれば日向さんを独占できますよね?」
日向「な、なあ罪木落ち着けよ」
日向(この状況をなんとかしないと……相手が罪木だけだったら適当に結婚申し込めば何とかなるくらいちょろいけど……周りに他の女子がいるなら余計にややこしくなるだけだ)
狛枝「なるほど。そう来たか……そういえば、今回の学級目標ってなんだっけ?」
日向「学級目標か……?希望船ウサミ号……まさか!!」
狛枝「そう気づいたみたいだね。これから起きる惨劇について」
澪田「惨劇ってなんすか?」
狛枝「わからないの?Nice bort.だよ」
七海「見立て殺人ってやつだね?」ドヤ
西園寺「だ、だめだよ!日向おにぃは私の奴隷だよ!主人の私は奴隷を守る義務があるの!罪木なんかに殺させないよ」
罪木「ふふふふふふふふふふふ。殺すなんて一言も言ってませんよ」
狛枝「なんだ。つまらない」
ウサミ「ちょっと待つでちゅ!過度な暴力は修学旅行の規則に違反するでちゅ」
罪木「えへへ…違いますぅ。ちょっとドラッグストアから拝借した怪しいお薬を日向さんの料理に混ぜるだけですよ。これなら許してくれますよね?ね?」
ウサミ「それなら許ちまちゅ。薬を盛ってみんな仲良く。らーぶらーぶ」
日向「待て!その理屈はおかしい!」
花村「ちょっと!ぼくの料理に薬混ぜるのやめてよ!味が台無しになっちゃうよ!」
花村「でも、媚薬だったらむしろオッケー」
小泉「花村…あんたいつからいたの?」
花村「なにやら修羅場の香りがしたからさ。面白そうだから来てみたんだ」
花村「もう皆ヒドイよ!ぼくだって日向君を狙ってるんだから声かけてくれたっていいじゃない!」
日向(なんでこの島にはホモが多いんだ)
西園寺「バカじゃないの?男同士が付き合えるわけないじゃん」
罪木「ふゆぅ…そうですよ。そんなの医学的におかしいです」
花村「んっふっふ。男とか女とか気にするのはナンセンスってやつだよ。それに男子同士の方がほら、アーバンな香りがするでしょ?」
狛枝「なるほどね。男子にもモテる……それが日向クンの超高校級の才能なんだろうね」
日向「そんな才能嫌すぎる…」
狛枝「もちろんボクも日向クンのことが好きだよ」
狛枝「弱ったなぁ。花村クンが参戦したってことは公平性を保つためには、さっきのくじは無効にするべきかな。花村クンにも機会を与えないといけないし」
ソニア「それに賛成です」
西園寺「花村。あんたもたまには役に立つじゃん」
狛枝「とりあえず、日向クンの希望も聞いてみた方がいいかな?今晩誰と寝たいかを……」
日向「ま、待て。話が飛躍しすぎだ!お出かけチケットのペアを選ぶって話じゃないのか?」
狛枝「あのさぁ……日向クン?ここまで来てその理屈は通用しないよ。そもそも、キミが男女問わずに手当たり次第に色目使ったのが原因じゃないか」
日向「俺は色目なんて使ってない!」
狛枝「そう?だったら、どうしてキミはこれだけの人数に好かれているのかな?キミが積極的にフラグを立てたとしか考えられないよ」
小泉「アタシは日向にこの島から出たらごにょごにょする約束したんだから!」
日向「それは違うぞ!小泉がカメラくれるって約束しただけだろ!」
罪木「わ、私だって日向さんにあんなことやこんなことされました……うふふふふ」
日向「それは違うぞ!動くこけしとボールギャグをプレゼントしただけだ!」
ソニア「わたくしもマカンゴを捕まえる約束をしました!」
日向「そうかも知れないな……」
花村「なななな、なんとマカンゴですとぉ!?王女様の口からそんなはしたない言葉が出るなんて……今夜のオカズに決定」
ソニア「あら、いやですわ。わたくしったら」
七海「………………ごちそうさま」
狛枝「ほらね。彼女たちもそう言ってるよ?キミはただのたらしだよ」
日向「その矛盾撃ち抜く!」
日向「狛枝。修学旅行の規則を覚えているか?」
狛枝「え?規則って?」
日向「この修学旅行の目的は希望のカケラを集めることだ。そのためには。皆と仲良くならなければならない」
ウサミ「そうでちゅよ。日向クンはちゃんと希望のカケラを集めて目標を達成しました。らーぶらーぶ」
日向「そう。これは希望のカケラを集めるための不可抗力だ!」
狛枝「なるほど。キミは希望のカケラのために、より強い希望を手に入れるために女子の気持ちを踏みにじったというわけだね」
日向「あ、悪意のある言い方はやめろ!」
罪木「そ、そんな……私の気持ちを裏切るんですか?日向さんも結局私を受け入れてくれないんですか?日向さんを好きになることすら許してくれないんですか?」
小泉「な、なによそれ……結局はカケラ目当てだったってこと?最低!」
日向「違うんだって!狛枝が勝手に変なことを言ってるだけだ!」
澪田「散々浮気しといて、付き合った彼女全員裏切る……うん。いい歌詞ができそうっすね。歌が完成したら創ちゃんに聞かせてあげるっすよ。唯吹のフラれた怨念をたっぷりこめて」
西園寺「わぁい!澪田おねぇの歌が聞けるんだ」
日向「俺は遠慮しとく……」
狛枝「女子を踏み台にして日向クンは最高の希望の耀きを手に入れたんだね」
狛枝「いや、女子だけじゃなくてボクの気持ちも踏みにじられた。日向クンの希望のための踏み台になれるなんて嬉しすぎて頭がフットーしそうだよ」
日向「お前はもう黙ってろ!」
狛枝「………………」
ソニア「結局日向さんは誰と寝たいんですか?」
小泉「男らしくビシッと言いなさいよ」
西園寺「そうだよ。日向おにぃが好きな人を言ってくれないとわたしだって納得できないよ」
花村「日向くんがぼくを抱いてくれないなら、ぼくから抱きにイクだけだけどね」
日向(誰と寝たいかだなんて……仲間内の前でこんなこと堂々と言いたくないけど仕方ない。やるしかないんだ)
寝たいと思う人物を指名しろ
>>27
日向「お前しかいない」
日向「西園寺」
西園寺「な、何?」
日向「お前のことが好きだ!」
西園寺「ふ、ふん。もう、おにぃのバカ!最初からそう言ってよ…そうしたらこんなに不安になることもなかったのに」
澪田「創ちゃんってロリコンだったんすね…」
ソニア「これはアグネスさんをお呼びした方がよろしいでしょうか?」
花村「日向くん。ロリは二次元だけにしといた方がいいって」
ウサミ「2.5Dだからセーフでちゅ」
澪田「ここでまさかのメタ発言っすか!」
小泉「良かったね日寄子ちゃん」
西園寺「小泉おねぇ…」
小泉「折角だから写真撮ってあげようか?」
西園寺「ありがとう……でも……」
小泉「アタシに気を使わなくてもいいからさ」
狛枝「あ、ちょっといいかな?」
西園寺「何よ?」
狛枝「いや、大したことじゃないんだけどさ。日向クンがもらったチケットって何枚あると思う?」
西園寺「何言ってんの?今はそんなこと関係ないじゃん」
狛枝「うーん。明日から日向クンが誰にチケット使うのか気になって」
日向「お、おい今は関係ないだろ!」
狛枝「ここでハッキリさせとかないと、またチケットの使い道で揉めるかもよ?」
西園寺「そんなの全部私に使うに決まってるじゃん!」
狛枝「本当にそれでいいの?」
日向「お前は何が言いたいんだ」
狛枝「キミが日向クンを独占したら、小泉さんはどうなるんだろうね」
西園寺「ぐ……」
狛枝「妹のように可愛がっていたキミに日向クンを寝取られるなんて絶望以外の何物でもないよね?」
小泉「ちょっと!やめなよ狛枝!アタシのことは関係ないでしょ!」
狛枝「違うよ。ボクはただ皆に希望を持って欲しいだけなんだ。希望の象徴であるキミたちが絶望するなんて、こんなに悲しいことはないからね」
狛枝「ただ、西園寺さんが日向クンを独占しちゃったら、ボクのこのちっぽけな願いも叶わないんだろうなって思っただけ」
小泉「それ以上言うと怒るよ!」
西園寺「おねぇ……」
小泉「気にしなくて大丈夫だから」
西園寺「わかった。じゃあ、明日は小泉おねぇがデートしていい」
小泉「え?」
日向「いいのか?西園寺」
西園寺「日向おにぃの顔って毎日見てたら飽きそうなんだよねー。これくらいで丁度いいよ」
狛枝「で、実際チケットは何枚あるの?」
日向「9枚だ」
狛枝「それじゃあ残りの7枚の配分はくじ引きで決めるってのは」
ソニア「なしに決まってます!」
七海「狛枝くんのくじはロクなことにならない…と思うよ」
狛枝「くじ引きがダメってことは……やっぱり残りの7枚の配分の決定権はさっきみたいに日向クンにあるってことでいいのかな?」
西園寺「ちょっと何勝手に決めてるの!日向おにぃはわたしを好きって言ったんだよ!だったら、チケットはわたしに使うしかないの」
狛枝「あれ?おかしいな。さっきは快く小泉さんに譲ったのに」
西園寺「小泉おねぇとその他大勢は違うの」
狛枝「うーん……ってことはやっぱり選ばれなかった相手は絶望しかないのか。悲しいな」
日向「狛枝。お前、さっきから希望とか言って引っ掻き回しているだけじゃないのか?そうやって、余計にややこしくするのが狙いだろ」
狛枝「あ、バレた?やっぱり日向クンは鋭いな」
日向「あのなあ…」
狛枝「まあ、既に手遅れだけど」
日向「は?」
罪木「まだ7枚ある……まだ7枚ある……まだ7枚ある……まだ7枚ある……」
澪田「そうすよね。諦めるのはまだ早いすよね」
ソニア「あたぼうです!付き合う相手が決まったと思ってもそこからどんでん返しがあるのが昼ドラのお約束ですから」
七海「うーん……恋愛ゲームは苦手だからここからどうやって攻略していけばいいのかわからないな」
狛枝「流石は超高校級と称される皆だね。チケットの残り枚数という希望を聞いただけで、一度敗れ去った希望がまた復活している」
日向「と、とにかく今日のところは俺は西園寺と出かけるからな」
西園寺「そうだね。いつまでも狛枝おにぃと話していても仕方ないし」
狛枝「じゃあ、楽しんでおいでよ。2日後にはもう修羅場に戻ってると思うから」
日向「お前のせいだろ!こんなやつ放っておいていくぞ西園寺」
西園寺「うん」
お出かけ先指定:>>45
ジャバウォック公園
砂浜
図書館
映画館
遊園地
軍事施設
日向(映画館に着いた)
西園寺「ねえ、今の時間帯だと何がやってるの?」
日向「そうだなホラーかアニメかラブストーリーだな」
西園寺「わたしホラーがいい」
日向「夜寝れなくなっても知らないぞ」
西園寺「ふん。何さ。子供扱いしないでよ……それにどうせ今夜は日向おにぃが寝かせてくれないんでしょ?」
日向「お、お前それ本気にしたのか?」
西園寺「えー?日向おにぃってもしかしてビビってるの?据え膳食わぬは男の恥だよ」
日向「あのなあ……」
西園寺「わたしだって、それなりの覚悟してるんだよ……そうでもしなかったら、日向おにぃ取られちゃうかも知れないから」
日向「狛枝の言うことは気にするな」
西園寺「だったら約束してよ。残りの7枚のチケットは全部わたしに使うって」
日向「おう、考えてやるよ」
日向「そろそろ上映時間だぞ」
西園寺「うん」
日向「ウオアアアア!!」
西園寺「ちょっと日向おにぃ怖がりすぎ」
日向「べ、別にビビってねーし」
西園寺「くすくす。本当かな?」
日向「本当だって」
西園寺「わ!」
日向「うお!!」
西園寺「あはははは日向おにぃ面白い!」
日向「映画に集中できないからやめろ!」
西園寺「あー面白かった。日向おにぃがあの映画に出演したら真っ先に殺されるタイプだね。だって、序盤からビビりっぱなしだったし」
日向「ほっとけ。それより日が落ちてすっかり暗くなったな」
西園寺「本当だ。そろそろ帰った方がいいかも」
日向「な、なあ。西園寺。流石に夜道を一人で歩くのは危ないから俺と一緒に帰ろうか」
西園寺「どうしよっかなー。別にこの島は全然危険じゃないし」
日向「いや、万一ってこともあるし」
西園寺「日向おにぃが一人で帰るのが怖いだけじゃないの?」
日向「それは違うぞ!」
西園寺「ま、まあ。ホテルまで抱っこしてくれるなら一緒に帰ってあげてもいいけど」
日向「わかった。抱っこしてやるから一緒に帰ろう。な?」
西園寺「落とさないでよ」
日向「はいはい」
日向「……ん……あれ?ここはどこだ?俺の部屋じゃないぞ」
西園寺「……すー……すー……」
日向(何故、西園寺が俺の隣で寝ている。しかも着物が乱れている)
日向「あれ?何で俺は服を着てないんだ?」
日向(昨日、ここで何があったか考えてみる必要があるようだな)
―ロジカルダイブ―
西園寺と映画を観た後どうした?
○西園寺と帰った
×一人で帰った
日向が泊まった部屋は?
○西園寺の部屋
×日向の部屋
西園寺の着物が乱れた理由は?
○事後
×お風呂
日向「推理は繋がった!」
日向「お、俺はなんてことをしてしまったんだ」
西園寺「んー……あ、日向おにぃ。おはよう」
日向「な、なあ西園寺。ど、どうして俺はここにいるんだ?」
西園寺「何って泊まったからに決まってるじゃん」
日向「そ、そうなんだけどさ」
西園寺「もう……昨日の日向おにぃは激しすぎだよ」
日向「」
西園寺「日向おにぃってもしかして童貞だった?」
日向「どどどど童貞ちゃうわ」
西園寺「そうだよね。仮に昨日まで童貞だったとしても今日からは童貞じゃないもんねー」
日向「」
西園寺「それよりどうしよう。わたし一人じゃ着付けできないのに日向おにぃが無理矢理脱がすから着物が乱れたままになっちゃった」
日向「お、俺のせいなのか」
西園寺「何言ってるの?あそこまでしといて責任取らないつもり?」
日向(あそこまでってどこまでだよ!全く記憶にない……記憶にない?そうか!)
日向「おい、ウサミ!いるんだろ?」
ウサミ「はーい。なんでちゅか…って、何ちてるでちゅか!修学旅行中に生徒同士で許ちませんよ!」
日向「それよりお前、俺の記憶奪っただろ?」
ウサミ「えぇえええぇえ!な、なんのことでちゅか?」
日向「記憶が不自然に抜け落ちるなんていくらなんでも不自然すぎる!」
ウサミ「い、いやでちゅね。あちしがそんなことするわけないじゃないでちゅか」
日向「やっぱり、この修学旅行には裏があったんじゃないか」
ウサミ「これは皆さんのことを思っての……」
日向「言い訳なんて聞きたくない!」
ウサミ「そんな~」
日向「なあ、お前の目的は何なんだ」
ウサミ「えーっとそれは……」
日向「何のために昨夜の俺の記憶を奪った?」
ウサミ「え?昨夜?あちしはそんなの知らないでちゅよ。あちしが奪ったのは皆さんのがくえ…あ!」
日向「え?なんだって?」
ウサミ「な、なんでもないでちゅよ」
西園寺「それよりさ。あんたいつまでここにいるつもりなの?」
ウサミ「へ?」
西園寺「折角、日向おにぃと2人きりなのにアンタみたい豚が一緒の空間にいると雰囲気ぶち壊しなんだよね」
ウサミ「ひ、ひどい。呼び出したのは日向クンなのに……うわあああああん」
日向(どうやらあの様子だと俺の推理は外れたようだ……)
日向「で、西園寺。これからどうしよう」
西園寺「どうするって?何が?」
日向「着付けだよ。小泉に頼むにしても不自然すぎるだろ」
西園寺「わたしが日向おにぃと寝たのバレちゃうかな?」
日向「少なくても着物を脱いだ理由は問い詰められるだろうな」
西園寺「うーん。着付けのこともあるし、いっそのこと次からは小泉おねぇと一緒に3Pするなんてのは」
日向「それに賛成だ!」
西園寺「ちょっと何賛成してるの!」
日向「すまん。つい」
日向(とりあえず、着付けは西園寺が小泉を誤魔化してやってくれたみたいだけど……)
狛枝「やあ、日向クンおはよう。新しい朝だね。希望の朝だね」
日向「狛枝。今日は調子いいみたいだな」
狛枝「そんなことないよ。昨夜はお楽しみだった日向クンに比べたら全然だよ」
日向「ど、どうしてそれを!」
狛枝「え?当たった?冗談のつもりで言ったのに」
日向(しまった)
狛枝「ああ。ついに日向クンが一線を超えてしまったんだ」
日向「狛枝。このことは皆には」
狛枝「分かってるよ。黙っていればいいんでしょ?」
日向「本当に黙ってるんだろうな」
狛枝「ボクがキミを困らせるようなことをしたことがあるかい?」
日向「あるから言ってるんだろ!」
日向(狛枝はこっち見てニヤニヤしてくるし、女子の視線が怖い。特に心なしか七海の視線が冷たい気がする)
ウサミ「はーい。それじゃあ、今日の作業は終了でちゅよ」
日向「終わったか。小泉。今日は何処にいく?」
小泉「ねぇ。本当にアタシでいいの?」
日向「西園寺がいいって言ってるんだ」
小泉「そうじゃなくて、アンタの意思はどうなの?アタシとのデートは嫌じゃない?」
日向「ああ構わないさ。俺と小泉は固い絆で結ばれているんだからな」
小泉「そっか……うん。折角、日寄子ちゃんがくれたチャンスだし今日は思いっきり楽しもうかな」
お出かけ先指定:>>76
ジャバウォック公園
砂浜
図書館
映画館
遊園地
軍事施設
日向(砂浜に着いた)
日向「とりあえず脱ごうか」
小泉「…………」
日向「無言でカメラを構えるのやめろ」
小泉「あはは。アンタのヌード写真って案外需要がありそうだからさ。シャッターチャンスを逃すわけにはいかないよ」
日向「需要って誰にだよ」
小泉「日寄子ちゃんなんて喜ぶんじゃない?アンタの裸なんて見たことないだろうし」
日向「お、おおう。そ、そうだな」
小泉「という訳で早速脱いでみよっか」
日向「お前は脱がないのか?」
小泉「残念だけど水着持ってきてないんだよね」
日向「そうなのか?残念だな」
小泉「べ、別にアンタのヌード写真を撮るのに専念したいからって訳じゃないからね」
日向「そもそもヌードになるなんて言ってない」
小泉「えー」
日向「大体にしてなんで俺だけ脱ぐんだよ」
小泉「じゃあ、アタシも脱げばアンタも脱いでくれるの?」
日向「脱げばな」
小泉「わかった。じゃあ、そこの岩陰に移動しよう」
日向「マ、マジかよ」
小泉「ほら、誰かに見つかったら困るし、人気が少ない内に早く行くよ」
日向(本当に脱ぐのかよ)
小泉「恥ずかしいからあっち向いてて」
日向「なあ、どうせ後で見せるなら恥ずかしがる必要もないと思うけど」
小泉「それでもダメなものはダメだよ」
日向(やばい。布の擦れる音がする。小泉が脱いでいるのかと思うと興奮する)
小泉「……こっち向いていいよ」
日向(ほ、本当に裸になっている……しかし、西園寺よりはあるとはいえ小泉って貧…)
小泉「ちょっと、アタシが脱いだんだからアンタも脱ぎなさいよね」
日向「わ、わかったよ」
日向「あ、あれ?何か硬いものに引っ掛かってズボンがうまく脱げない」
小泉「もう。しょうがないわね。アタシが脱がしてあげるから」
日向「あ…」
パオーン
小泉「これが日向の…………」
日向「そ、そんな近くで見るなよ」
日向(その後、立ち会いは強く当たって後は流れで小泉とヤッてしまった)
日向「その……すまん。なんというか魔が差した」
小泉「アタシ初めてだったのに……こんな外で……もう、変な性癖ついちゃったら日向に責任とってもらうからね」
日向「えぇ!?」
小泉「当然でしょ?いくら砂浜で開放的な気分になったからっていきなり襲うのってないよ」
日向「反省します」
小泉「……まあ、日向だったから嫌じゃなかったけど」
日向(西園寺に続いて小泉とも……あれ?よく考えたらこれまずくないか?)
日向(そうか!これはきっと狛枝の罠だ。俺が二股をかけるように仕組んだに違いない。全部狛枝が悪い)
日向「そして次の日が来てしまった……」
日向「残りのチケットどうしよう……」
澪田「うぃーす創ちゃん!」
日向「あ、あれ?澪田?どうして俺の部屋にいるんだ?鍵をかけたはずなのに」
澪田「鍵ならぶっ壊したっす」
日向「壊すなよ!」
澪田「それより、今日の創ちゃんは誰と過ごすのか気になったりして。チラッチラー」
日向「お前には関係ないだろ」
澪田「創ちゃんがデートしてくれないなら、この場で歌うしかないすね」
日向「は?」
澪田「唯吹の歌に酔いしれて考え直すってやつすかね」
日向「お、おい。歌ってまさか……あの滅びの歌か」
澪田「では聞いてください」
日向「や、やめろ!朝っぱらからお前の歌はきつい」
澪田「創ちゃんがッ!デートしてくれるまでッ!唯吹は歌うのをやめないっす!」
日向「わかった。どこでも好きなところに連れてってやるから落ち着け」
澪田「マジすか?流石創ちゃん」
日向(つい、勢いで約束してしまったけど大丈夫だろうか……)
…ん?
西園寺「日向おにぃ!今日はどこ連れてってくれるの?」
日向(罪悪感で死にそう……)
西園寺「ん?さっきから黙ってどうしたの?」
日向「な、なあ西園寺」
西園寺「えへへ。昨日は日向おにぃとデート出来なかったから、今日は凄く楽しみ」
日向(早く言い出さないと……余計に言い出し辛くなるぞ)
西園寺「そういえば、昨日は小泉おねぇと何して遊んだのかな?」
日向「あ…えーっと……」
西園寺「小泉おねぇは教えてくれなかったけど何かあったの?」
日向(胃が痛い……)
澪田「創ちゃん!今日のデートは何処にいくか決まったっすか?」
日向「あ、バカ…」
西園寺「はぁ?なんで澪田おねぇが出てくるわけ?日向おにぃはわたしのものだよ!」
澪田「あれ?おかしいな。今日は唯吹と約束してたはずっすけど」
西園寺「日向おにぃ!どういうこと!?」
日向「西園寺…すまない」
西園寺「え……うわああああああああん!日向おにぃが裏切ったあああああ!!日向おにぃの浮気者!!!」
小泉「」ビク
日向「本当に悪かった。でも、この埋め合わせは今度するから」
西園寺「やだよおおおおお!!今日がいいよおおおお!!」
小泉「日寄子ちゃん。今日はアタシと遊ぼう。ホラ、昨日は相手できなかったし」
西園寺「ぐす……わぁい。小泉おねぇ大好き」
小泉「日向!余り日寄子ちゃんを泣かせるようなことしないでよ」
日向「ああ……」
西園寺「日向おにぃのバーカ!」
日向(言い返せない)
澪田「なんか大変なことになっちゃったすね」
日向「人事みたいに言うなよ!」
日向(このチケットを西園寺以外に使うのは今回限りにしよう。ついでにらーぶらーぶなことも出来る限り控えよう)
お出かけ先指定:>>105
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駄目ならkskst扱いで
日向「やっぱりやめよう」
澪田「なぬ!」
日向「西園寺に悪い気がして」
澪田「そうっすね。唯吹も日寄子ちゃんを見てたら罪悪感が沸いてきたっすから」
日向「西園寺はどこだろう……」
澪田「見つからないっすね」
日向「探し疲れたから一旦部屋に戻ろう」
澪田「唯吹もお供するっす」
日向「なんでお前まで俺の部屋に来るんだよ!」
澪田「創ちゃんの部屋の鍵壊したし修理しようと思って」
日向「直せるのか?」
澪田「やってみないとわからないっす」
澪田「ぐぎぎ!!直れー!」ガチャガチャ
日向「お、おい。無理そうなら左右田に頼んで直してもらうから……」
バキィ
澪田「あ……」
日向「どうした?」
澪田「今度は逆に開かなくなったっす」
日向「お前何してんだよ!」
澪田「あちゃー。これ完全に密室っすね」
日向「どうすんだよこれ……」
澪田「っつーかこれからっしょ!」
日向「なあ。もう夜になったな」
澪田「そうっすね」
日向「自分の部屋に戻らなくていいのか?」
澪田「戻りたくても戻れないっす」
日向「じゃあ、泊まっていくか?」
澪田「むしろ、それしか選択肢がないっつーか!」
日向「それじゃあ、先にシャワー使っていいぞ」
澪田「お言葉に甘えさせてもらうっす」
日向(あれ?嫌な予感しかしない)
日向「ふぅ……」
澪田「いやあ、創ちゃん。いい演奏だったっすよ」
日向「そ、そうか?」
澪田「唯吹も超高校級の軽音部なんて呼ばれてるけど、楽器の気持ちになったのは初めてっす。これも創ちゃんのお陰っすかね」
日向(またヤってしまった……)
澪田「それじゃ、今度は唯吹が創ちゃんを演奏する番っすね。いい音色出すっすよ」
日向「うわっ……やめ、まだ出したばっかなのに……」
ウサミ「はわわ……もう、鍵が壊れたんなら先生に言ってくだちゃいよ。すぐに直せまちたのに」
日向「壊れたっつーか、壊されたっつーか……」
日向「はぁー……それにしても疲れた。なんだろう。連日ヤリすぎた反動かな……今日は休息が必要な気分だ」
罪木「日向さぁん!大丈夫ですか?」
日向「罪木?どうしたんだ?」
罪木「えへへ……日向さんの看護をしようと思いまして」
日向「そうか。ありがとう」
罪木「いえ、私が役に立てるのはこれくらいですから。そ、その何かあったら何でも言ってくださいね!死ぬ以外のことなら何でもできますから」
日向「ん?今何でもするって言ったよね?」
罪木「ふゆぅ…あのぅ…本当に私のおっぱいで疲れが取れるんですか?」
日向「ああ。最高だよ。三回連続貧乳だったし」
罪木「三回連続って何がですか?」
日向「あ、なんでもない。こっちの話」
罪木「日向さん?なんかえっちな気分になってきませんか?」
日向「そ、そういえば体が熱いような……」
罪木「実は日向さんにこっそり媚薬を盛ったんですよ」
日向「な、なんだって!」
罪木(このまま既成事実を作れば……ふふふふふふふ)
日向(これ以上既成事実が増えるのか……)
日向(西園寺・小泉・澪田・罪木。既に女子の半数とヤってしまったのか……)
日向(昨日も西園寺と会わなかったし、あいつ怒ってるだろうな)
西園寺「…………」
日向「西園寺」
西園寺「あれれー?約束破った嘘つきがいるよー」
日向「今日こそはちゃんと約束守るからさ」
西園寺「ふん。どうだか。どうせ昨日だってあのゲロブタに鼻の下伸ばしてたんじゃないの?」
日向(それは違うぞ!伸ばしてたのは鼻の下だけじゃない!)
西園寺「まあいいよ。一緒にいた相手が罪木だったからデコピン百発で許してあげる」
日向「百発って…わかった。それで西園寺の気が済むんだったらいいよ」
西園寺「相手が、小泉おねぇや澪田おねぇや罪木だったらまだ許してあげてもいいけど」
西園寺「もし、ソニアと一緒にいたら本気で怒るからね」
日向「ハハハ……気をつけるよ」
日向(何だろう。何かのフラグが立った気がする)
ソニア「日向さ…ど、どうしたんですか!?西園寺さんが抱っこちゃん人形みたいに日向さんにくっついてます」
西園寺「ふん。わたしが常に日向おにぃにくっついていれば、浮気されることなんてないし」
ソニア「それは大変ですわね。日向さん重くないですか?」
日向「おm…」
西園寺「…………」
日向「重くない!全然重くない!」
西園寺「こんな可愛いわたしが重いわけないじゃん!」
ソニア「それは失礼いたしました」
ソニア(弱りましたね。このままでは、日向さんを奪うことはできません)
西園寺(クスクス。いくらあんたが図に乗って日向おにぃに近づこうとも、わたしがいる限りは絶対に日向おにぃは渡さないんだから)
西園寺「わぁい!蟻たん潰すの楽しい!日向おにぃも一緒に潰そうよ」
日向「え…いいよ俺は」
西園寺「蟻たん潰す楽しさ知らないなんてカワイソー」
日向(西園寺が楽しそうで良かったな)
西園寺「うーん……おにぃ……」
日向「あーあ。遊び疲れて寝ちゃったか。ったくしょうがないな。ホテルまで運んでやるか」
ソニア「また会いましたね日向さん。」
日向「ソニア?どうしたんだ」
ソニア「あのですね…実はわたくしの部屋に……ゴキブリが出てしまいました……だから、怖くて部屋に戻れません」
日向「そうか。それは大変だな」
ソニア「日向さん!わたくしの部屋に来て、あの黒い悪魔を退治して下さい」
日向「しょうがないな」
日向「ゴキブリなんてどこにもいないぞ」
ソニア「きっと物陰に隠れてしまったんですわ。ああ、恐ろしいですわ」
日向「どこかに逃げたんじゃないか?」
ソニア「で、でも。あの黒い悪魔が部屋にいる可能性があるって考えただけで、わたくし怖くて眠れません」
ソニア「だから、日向さん。お願いです。今夜はわたくしの部屋に泊まってください。日向さんが一緒にいるだけで安心して眠ることができます」
日向「ゴキブリが出たんじゃしょうがないな」
日向「ソニアのマカンゴ凄かったよ…」
ソニア「いやですわ。日向さんったら」
日向「……ふぅ」
日向(ヤってしまったものはしょうがない。西園寺にバレなければ全て丸く収まる)
日向(今回の反省を活かして、次から気をつければいい。希望を持って前に進めばそれでいい。そうすれば必ず未来は創れる)
七海「………………」
日向「おーい。七海?どうしたんだ?」
七海「あ、ごめん。寝てた」
七海「ちょっとゲームの攻略法を徹夜で考えていてロクに寝てないんだよ」
日向「何のゲームだ?」
七海「日向くんには教えない」
日向「なんだよ。教えてくれたっていいだろ」
七海「あんまり私と話していると西園寺さんが嫉妬しちゃうよ……」
日向「それもそうだな」
七海「ねえ、日向くん。ちょっとだけ質問いい?」
日向「なんだ?」
七海「もし、日向くんが自分とは住む世界が違う人間を好きになったらどうする?」
日向「住む世界が違う?」
七海「うん。もう二度と会えなくなる日が来るってわかってる相手を好きになったら、日向くんはその人に想いを伝える?」
日向「うーん……俺だったら、ちゃんと自分の想いは伝えるかな。後悔したくないし」
七海「日向くんはむしろ伝えすぎて後悔する方が多いんじゃない?」
日向「そ、それはそうだけど。伝えなくて後悔するよりは全然マシだ」
七海「うん。ありがとう。参考になったよ」
ウサミ「コラー!日向クン。キミは性が乱れすぎてちゅ!」
日向「ウサミ!?」
ウサミ「七海さんには手を出させませんよ!」
日向「いや、俺はまだそんなつもりは」
七海「いいよ。ウサミちゃん」
ウサミ「ほえ?」
七海「日向クンならいい」
七海「子供を作る方法はお父さんに教わったけど、どんな時に作りたくなるのかまではわからなかった」
ウサミ「な、何を言ってるでちゅか!」
七海「でも、日向クンに会ってやっとわかった気がする。私のこの気持ちは日向くんと子供を作りたがってる…と思う」
七海「……私に子供が作れるかわからないけど」
日向「だったら試してみればいいんじゃないか?」
七海「うん。そうだね。私もそう思ってた」
ウサミ「がーん。最近の高校生は性が乱れすぎでちゅ…」
日向(…………次から気をつけようと思った矢先の出来事だったけど……あれは七海に子供ができるかどうかの実験だから、ノーカンだな)
辺古山「日向?久しぶりだな」
日向「ああ。確かに辺古山とは最近会ってなかった気がする」
辺古山「ぼっちゃ…九頭龍を見かけなかったか?」
日向「見かけなかったな」
辺古山「そうか。邪魔したな」
日向(そういえば、花村が前に辺古山みたいなタイプは意外にガードが甘くて落とせるとか言ってたような気がするな……)
日向(うん。これは実験だからノーカンだな)
日向「なあ、辺古山。お前って好きな人いるのか?」
辺古山「な、何をバカなことを言ってる!そ、そんな人いるわけなかろう!」
日向「本当にそうなのか?」
辺古山「…………私は道具に過ぎない。道具に感情を持つことは許されないんだ」
日向「それは違うぞ!」
辺古山「何!」
日向「辺古山は道具なんかじゃない!」
辺古山「何を根拠にそんなことを……」
日向「これで証明できる」
辺古山「ちょ…うわ、なにをする!やめろ!私はあの人の道具だ!」
日向「そうだ。道具だったら、普通は持ち主は選ばない」パンパン
辺古山「な、なんだと…」
日向「お前は好きな人がいるんだろ?その人に尽くしたいって感情があるんだろ?」パンパン
日向「だったら道具じゃない!」ドピュ
辺古山「そうか……そうだったのか……私はあの人と同じ立場でいていいんだな……」
辺古山「そうか……そうだったのか……私はあの人と同じ立場でいていいんだな……」
辺古山「礼を言うぞ日向。お陰で大事なものを見失わずに済んだ」
日向「なあに。礼を言われるようなことはしてないさ」
日向(結局、辺古山を落とすことには失敗したか……だけどこれでいいんだ)
日向「なんだかんだでチケット余ったな……これをどうやって処理しようか」
終里「チケットって何だ?食えるのか?」
日向「食い物じゃないぞ」
終里「なんだ。つまんねえの」
日向「でも、このチケット持って映画館いけばホットドッグ食えるぞ」
終里「マジで!?じゃあくれ」
日向「おう、いいぞ」
終里「あれ?よく考えたら男の尻尾とホットドッグって似てるよな?」
日向「下ネタかよ」
終里「よし、日向。お前のホットドッグを食わせろ!」
日向「ま、待て……ヒギイイイイイ」
おわり
このまま話進めるとホモルート直行しかない
面白かった
せめて西園寺を放置したままにしないでおくれよ
え?西園寺ルート?
ヤっちゃうよ?いいんすか?ヤっちゃっても
日向「いてて……酷い目にあった」
西園寺「ふん。浮気ばっかしているからバチが当たったんだよ」
日向「……そうかも知れない」
西園寺「これに懲りたら、二度とわたし以外の女に手を出さないこと。特にソニアとかソニアとかソニアとか」
日向「違うんだ。これには訳があるんだ。例えば、俺の中に絶望を抱えた人格があるとするだろ?そいつが14人もいたとしたら、それぞれ好みのタイプが違うはずだ」
日向「つまり、これはそれぞれの人格がそれぞれの女子を愛してしまったことによる不可抗力なんだよ」
西園寺「あははは。日向おにぃって言い訳が下手だね」
日向「なあ、西園寺。俺はいつまでお前を抱っこしていればいいんだ?」
西園寺「日向おにぃの腕が痺れて使い物にならなくなるまでかなー」
日向「マジかよ」
西園寺「簡単に許したら、また日向おにぃは浮気するじゃん」
日向「もうしない!」
西園寺「その根拠は何?」
日向「西園寺。結婚しよう」
西園寺「……えぇ!!け、結婚って」
日向「今すぐじゃないけどな」
西園寺「それ本気で言ってるの?」
日向「ああ。俺は本気だ」
西園寺「ふん。今の言葉忘れないからね」
西園寺「そうだ!日向おにぃがプロポーズしてくれたって皆に言いふらそう」
日向「やめろ!恥ずかしいだろ!」
西園寺「何?皆にバレて都合が悪いことでもあるの?」
日向「ないけどさ……」
西園寺「だったら別にいいじゃん」
日向「ああ。もうわかった。お前の好きなようにしろ」
西園寺「わぁい!」
西園寺「わたしと結婚するってことになると日向おにぃは婿入りしなくちゃいけないよ」
西園寺「だったら苗字が変わって日向おにぃじゃなくなるね…ってことはこれからは創おにぃって呼ばないといけないかな」
日向「西園寺に名前で呼ばれるとなんか変な感じがするな」
西園寺「……西園寺じゃなくて、日寄子って呼んでよ」
日向「え?」
西園寺「だから、結婚するんだから苗字で呼ぶのはおかしいでしょ?創おにぃもわたしのこと日寄子って呼んでよ」
日向「ああ。わかったよ……日寄子」
西園寺「……うぅ。確かに変な感じがする」
日向(日寄子と結婚の約束をしたってことが皆に広まってしまった)
狛枝「素晴らしいよ。超高校級の希望同士が結婚するなんて。正に希望と希望のぶつかり合いが毎晩行われるってことだよね?」
花村「その希望同士のぶつかり合いには興味がありますな」
小泉「二人ともおめでとう……結婚式の時はアタシが写真撮ってあげるね」
澪田「出し物は唯吹のライブするしかないっすね」
西園寺「ありがとう。小泉おねぇ。澪田おねぇ」
罪木「えっぐ……おめでとうございますぅ」
終里「結婚ってなんだ?食えるのか?」
ソニア「残念ながら、日向さんは英雄ではなかったのですね……予言が外れてしまいました」
田中「ソニアよ。過去に作られた予言よりも、今を生きている我々の方が強い力を持つ。特に俺様の圧倒的な力の前では予言など何の意味も持たんわ。フハハハハハハ!!!!」
ソニア「田中さん…」
ウサミ「皆さん。ついに今日でこの島とお別れの日がやってきまちた」
日向「修学旅行もこれで終わりか。色々あったな」
西園寺「ねえ、この島を出たら創おにぃはどうするの?」
日向「まだ何をするか決めてないけど……日寄子、お前と一緒ならどんな未来だって創れると思う」
西園寺「もう……未来とかそんなことより、結婚はいつするつもり?」
日向「日寄子が大きくなったら……かな」
西園寺「なにそれ!ひどーい!ふん。すぐ大きくなってみせるから」
日向「ハハハ。気長に待ってるよ」
七海(気長に待つ必要はない……と思うよ)
―希望更生プログラム終了―
日向「あ、あれ?ここはどこだ?」
西園寺「創おにぃ?」
日向「えーっと。どちら様ですか?」
西園寺「酷い!わたしのこと忘れたの?うわあああああん」
日向「え?まさか、お前日寄子か!?」
西園寺「そうだよ……」
日向「だって、お前のその体……」
西園寺「あれ?創おにぃって背縮んだ?」
日向「お前が伸びたんだよ!」
苗木「そのことについてはボクから説明するよ」
日向「その声は狛枝か!?なんてことだ。今度は狛枝の背が縮んだ!」
苗木「それは違うよ!ボクは狛枝クンじゃなくて、苗木誠だ」
日向「なるほど。俺たちは入学当時の状態で希望更生プログラムを受けていたのか」
苗木「そういうことだね。だから、あの島での西園寺さんは現実の西園寺さんより小さかったんだ」
西園寺「創おにぃ。島での約束覚えているよね?大きくなったら結婚するって」
日向「まさかこんなに早く大きくなるとは思わなかった……けど、約束だ。日寄子今すぐ結婚するか」
西園寺「わぁい!」
日向(沈静化したとはいえ、世の中にはまだ絶望の残党がいる。そんな状況でも日寄子との絆があれば、未来を創ることはできるんだ)
おわり
乙
乙
Entry ⇒ 2012.09.25 | Category ⇒ 版権物SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
塞「好きな人ができたァ!?」白望「うん」
胡桃「シロ、それロン!」
白望「あ……うん」
豊音「ロン」
白望「ん……」
胡桃「シロ、飛びだよ」
白望「うん……」
塞「…………」
キンコンカンコン
豊音「あ、時間だよー」
塞「今日はお開きだね」
白望「じゃあまた明日……」
エイ「シロ!ワタシモ!」トテトテ
白望「ん……」
塞「シロの様子がおかしい……」
胡桃「あ、やっぱり塞も気づいてたんだ」
塞「そりゃあ気づくよ。なんか上の空だし、いつもはやらないミス連発するし」
塞「なんか病気だったりするのかも」
豊音「えー!?大変だよ!救急車呼ばないと!」
胡桃「もう帰ったからね。呼んでも意味ないからね」
豊音「なんか悩み事があるのかもー」
胡桃「あのシロに悩み事?」
塞「んー……悩み事かぁ……」
豊音「違うかなー?」
塞「んー、まぁ、明日にでも私が聞いとくよ」
豊音「うん。任せたよー!」
塞「んで、何があったの?」
白望「何がって……」
塞「ちょっと前から変じゃない。何もないとは言わせないよ」
白望「いや特に何も」
塞「正直に言わないと塞ぐよ」
白望「だる……」
塞「ほら、早く言った!」
白望「ん……。あー、実は……」
白望「うん」
塞「シロが!?まさか!?冗談でしょ!?」
白望「そこまで言われるとかさすがに心外なんだけど……」
胡桃「朴念仁オブ朴念仁のシロに好きな人ができた!?ありえない!」
白望「朴念仁って……。って、胡桃、いつからいたの?」
胡桃「あ、思わず出てきちゃった……」
豊音「もー、駄目だよ胡桃!」ヒョコッ
白望「トヨネまで……ということは……」
エイ「エヘヘ……」ヒョコッ
白望「やっぱりか……」
白望「え、言わなきゃ駄目なの?」
塞「うん」(実は私だったりして……)
胡桃「当然!」(いつも充電させてくれるし、私だったり!)
エイ「キニナル!」(ワタシトイウカノウセイ……)
豊音「隠し事は駄目だよー」
白望「えー……」
胡桃「早く!」
エイ「ハリーアップ!」
豊音「早くー!」
白望「あー……だる……」
白望「…………はやりん」ボソッ
胡桃「」
エイ「」
豊音「えっ……」
塞・胡桃・エイ・豊音「ええええええええええええええええええ!!?」
白望「うん」
エイ「? ? ? ?」
塞「あのロリ巨乳!?」
白望「はやりんのことを悪く言わないで」
豊音「はやりんかわいいよねー!」
白望「うん、すっごくかわいい。なでなでしたい」
胡桃「うわぁガチだぁ……」
白望「数日前。テレビ付けたらはやりんが出てて……」
白望「一目惚れしちゃった///」
塞「なん……だと……」
塞(これは本当に私の知ってるシロと同一人物……?)
胡桃(きもちわるい!)
エイ「アウアウアウアウ」
豊音「は、はやりんは可愛いからねー。シロの気持ちもわかるなー!」
白望「でしょ?さすが豊音はわかってるね」
塞「……つ、つまりなに?ここ数日シロがおかしかったのは……」
胡桃「牌のおねえさんの番組が待ち遠しくてソワソワしてただけってこと!?」
白望「う……まぁ、そうなるのかな」
塞「…………」
胡桃「…………」
エイ「…………」
豊音「は、はやりんはかわいいからね!仕方ないよ!」
エイ「ウン……」
胡桃「おー……」
塞「なんだこれ」
エイ「ナンダコレ」
胡桃「まじでなんだこれ」
塞・エイ・胡桃「はぁぁぁぁぁぁぁ……」
エイ「シロ!ブカツイク!」
白望「あー、ごめん、今日は夕方の便で東京に行くから」
エイ「ト、トウキョウ!?」
白望「うん、これ」
『はやりーん☆握手会』
エイ「」
白望「じゃあ行くね。塞たちに伝えておいて」
塞「大会前の大事な時期だというのに……」
胡桃「まぁ……やる気なくされてもあれだし……」
塞「シロはいつもやる気ないようなもんでしょ……」
胡桃「まあね……」
豊音「と、とりあえず打とうよー!」
塞「ああ、そうだね……」
胡桃「なんかダルくなってきた……」
エイ「シロノガウツッタカモ……」
ダンゴダンゴダンゴダンゴ ダンゴサンキョウダイダンゴ
塞「……ん、電話?胡桃から?」
塞「もしもし……」
胡桃『塞!?今朝の新聞見た!?やばいよ!』
塞「うん……?見てないけど、どうしたの?」
胡桃『とにかく早く見て!』
塞「うん……」
『女子高生、握手会ではやりんに熱烈告白!!』
塞「……ごばぁっ!!?」
塞「い、いや、落ち着け、まだシロと決まったわけじゃない……」
『×日午後、人気アイドル雀士瑞原はやりプロ(28)の握手会で、岩手在住の女子高生Kさんが……』
塞「…………」ピクピク
塞「なにやってんだあいつはああああああああああああ!!?」
はやり『いやー、あれには驚きましたね☆』
塞「……ん?」
アナウンサー『最近の若者は非常識といいますが……』
はやり『でも、あれほどのファンがいてくれると思うとうれしいですねっ☆』
塞「……○ざましテレビ?」
塞「全国ネットオオオオオオオオオオオ!!?」
塞「みんな、今朝の新聞とテレビ見た!?」
胡桃「見たよ!本当に何やってんのシロ!」
エイ「? ? ?」
豊音「エイスリンさんは見てないんだねー……実はかくかくしかじかでー……」
エイ「oh...」
塞「ほんとどうすんのこれ!?」
胡桃「どうしようもないよ!」
ガチャッ
白望「ただいま……何騒いでるの?」
塞「てめえは何してくれてんだああああああああ!!?」ガシッ
白望「ちょ、タンマ、首絞まる……」
塞「あんたの告白全国ニュースになってるよ!」
白望「……そこまでのことをした覚えは……」
塞「なにやったんだよ!」
白望「本当に大したことは……」
塞「えっ、えっ、」
白望「はやりんの目を見ながら」
塞「わ、私で実演すんなっ」
白望「『あなた好きです。私と付き合ってください』」
塞「……!」ボッ
塞「」フニャ~
白望「……って言っただけだよ。……塞?何ふにゃふにゃしてんの?」
塞「あ、あんた馬鹿なの!?衆人環視のなかそんなことするとか!」
白望「だってはやりんと二人きりになれる機会なんてないし……」
エイ「アグレッシヴ!」
胡桃「これって尊敬するべきなのかなぁ……」
豊音「シロ、ちょーすごいよ!」
塞「あーすごい。すごいのは認める。でもそれ以上に馬鹿だよ」
塞「だって、そんなことしたら牌のお姉さんのイベントなんてもう行けないでしょ」
白望「イベントのほうはね。ファンのみんなに殺されるかも」
胡桃「そりゃそーだ……」
豊音「はやりんは人気アイドルだからねー……」
塞「……イベントの『ほう』?」
ーーー
ーー
ー
白望「わが人生に一片の悔いなし……」
はやり「何言ってるの?」
白望「え、はやりん!?なんでここに!?」
はやりんの口調わからないんで適当ですー
はやり「だから文句のひとつでも言おうかなーって☆」
白望「ご、ごめんなさい」
はやり「……思ってたんだけど」
白望「?」
はやり「あなたのことが気になってね☆」
白望「……まじすか?」
白望(え?もしかして脈あり!?)
はやり「あ、もちろんOKはしないよ?」
白望「…………………………そうすか」
はやり「でも、これで終わりにするには惜しいな、とは思ったから」
スタッフ「そろそろスタンバイお願いしまーす!」
はやり「あ、はーい☆」
白望(スタッフ空気読めええええええ!!)
白望「はい……」
はやり「……名前は?」
白望「? 小瀬川白望です」
はやり「じゃあ、白望ちゃん……これ」スッ
白望「え?紙……?」
はやり「ばいばい☆」
白望「あ、はい……さよなら」
白望「……メールアドレス? ひょっとしてはやりんの!?」
白望「とりあえず一通送ってみよう」
白望「文面は……」
ー
ーー
ーーー
白望「ということがあって」
豊音「そのアドレス本物だったの!?本物だったらちょーすごいよ!」
白望「うん。返信も来た」
胡桃「いいのかアイドル……それでいいのか」
エイ「アイドルモ、ニンゲンッテコトサ……」ドヤァ
塞「何いいこと言った風な顔してんのさ……」
塞「!?」
胡桃「は!?」
エイ「マジデ!?」
豊音「すごーい!」
白望「全国までは絶対負けられない。練習始めよう!」
胡桃「まぁ、シロがやる気になったってことで……」
エイ「イイノカナァ……」
豊音「な、なんだかんだでシロがやる気になってくれてちょーうれしいよ!」
白望「待ってて、はやりん!」
おしまい
残:部長、クロチャー、衣、ちゃちゃのん、とーか、純、はっちゃん、すばら、タコス、小蒔、照、もーちゃん
最難関っぽいはやりんを最初に書いてみたけど意外とすらすら行けた不思議!
ひとりひとりこの長さだと終わる気がしないね!
頑張れ 期待してるで
壮大な構想だな
期待してる
Entry ⇒ 2012.09.25 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
P「真」雪歩「真ちゃん」
-移動中-
P「しかし、今日も暑いな…」
P「1つ目と2つ目の現場が近いから歩きにしたが、タクシーを呼べばよかったな」
P「二人とも大丈夫か?」
真「はい、ボクは大丈夫ですよ」
雪歩「はいですぅ……ふぅ、ふぅ…」
P「あっ、雪歩。なんだったらその荷物…」
真「雪歩、その荷物貸して」ヒョイ
雪歩「わっ、悪いよ、真ちゃん」
真「いいからいいから。トレーニングにもなるし」
雪歩「えへへ、ありがと。真ちゃん///」
P「……ぐぬぬ」
-事務所-
雪歩「プロデューサー、真ちゃん。お茶をどうぞ」コトッ
P「おぉ、雪歩。ありがとう」
真「いつもごめんね、雪歩」
雪歩「ううん。私が好きで淹れてるだけから気にしてないで」
P「ズズッ…いやー、今日も美味いよ」
真「うーん…ズズッ…やっぱり雪歩のお茶は格別だね」
雪歩「あっ、真ちゃん!」
真「どうかした?」
雪歩「その湯のみ、私の…」
真「ああっ、ごめん雪歩! ボク全く気付かなくって!」
雪歩「ううん、いいの。むしろ真ちゃんなら…///」
真「雪歩…///」
P「……ぐぬぬ」
-楽屋にて-
P「じゃあ、外にいるから、衣装合わせ終わったら呼んでくれ」
真「今回の衣装はめちゃくちゃ可愛いですね!」
P「たまには真のお願いも聞かないとな」
ガチャ
P「~♪」
真『…ちょ、ちょっと、雪歩やめてよ!』
P「……」ピタッ
雪歩『で、でもっ、真ちゃんがちゃんとブラを着けれてないから…』
真『はあっ…/// ゆっ、雪歩!そんなところ、急に…やんっ///』
雪歩『ご、ごめんね、真ちゃん。でも、この衣装ならもっと胸を上げたほうがっ…』
雪歩『……はい、できたよ真ちゃん!』
真『はぁ…はぁっ…』
真『いくら雪歩でも、次は急にやったら怒るからね…///』
P「……ぐぬぬ」
-再び事務所-
P「忙しいところに来てもらって悪いな」
P「雪歩」
雪歩「プロデューサー、どうしたんですか?」
P「単刀直入に聞く」
P「雪歩は俺の真をどう思ってるんだ?」
雪歩「ま、真ちゃんですか…? …私の大切な友達…ですけど…」
雪歩「プロデューサーこそ『俺の真』って、どういうことですか?」
P「意味も何も、そのままだが」
雪歩「でも、真ちゃんはプロデューサーとは付き合ってません」
P「そんなの、俺が一番知ってる」
雪歩「じゃあ、なんで…」
P「付き合ってなくても、それでも俺の真であることには代わりない」
雪歩「そっ、それは、おかしいです!真ちゃんは、皆の真ちゃんですぅ!」
P「なっ、何を言ってるんだ!真は俺の真だ!」
雪歩「っ…プロデューサーの真ちゃんじゃなくて、皆の…。ううん…、私の真ちゃんです!」
P「おい、皆のじゃなかったのか!」
雪歩「違います!私の真ちゃんです!」
P「俺の!」
雪歩「私のですぅ!」
P「はぁ…はぁ…」
雪歩「ふぅ…ふぅ…」
P「ちょっと、落ち着こう…」
雪歩「そ、そうですね…」
P「冷静に考えてくれ。雪歩は女。真も女だ」
P「ここに友情以外の感情が芽生えるのはおかしい!」
雪歩「…っ!」
雪歩「…そっ、それを言うなら、プロデューサーだって、アイドルとプロデューサーの関係ですぅ!」
雪歩「ファンや事務所の皆を裏切るんですかっ?」
P「…っ!」
P「くそっ、俺はもう帰る」
雪歩「…好きにしてください」
P「今度、真を連れてきて、直接本人に選んでもらうからな」
P「それで決着つけるから、それまで持ち越しだ」
雪歩「……っ」プイッ
・・・
・・
・
ガチャ
P「……ただいまー」
雪歩「……」
P「…おかえりの一つもないのか?」
雪歩「……」
雪歩「…寄り道して、遅い時間に帰る人にはありません」プイッ
P「さっきの件で、真の家に行って、時間が取れそうな日程を確認してただけだよ。とりあえず、次の日曜日は確保したから」
雪歩「また、真ちゃんに浮気ですか?」
P「くっ…、真が可愛いんだからしょうがないだろ…」
P「それで、晩ご飯は?」
雪歩「もう、全部食べちゃいました。自分で冷蔵庫の残りでも探してくださいっ」
雪歩「私は先に寝ますぅ!」
バタンッ
P「なんだよ、雪歩のやつ…」
ガチャ
P「……」
P「こんなにいっぱい食えるかよ…」
P(一言で言うと、俺と雪歩は付き合って同棲している)
P(いつからか…どうしてなのか…。語るほどでもない、ほんの些細なきっかけから)
P(しかし、一つ、普通のカップルと違うと言えば…)
P(……俺と雪歩は真が好きなだけ…)
・・・
・・
・
-日曜日-
真「こんにちはー」
P「おぉ、よく来たな真」
雪歩「いらっしゃい、真ちゃん」
真「……」
真「………あっ、あはは…」
真「本当に二人が同棲してたんですね…」
P「あぁ、言ってただろ?」
真「いや、何か舞台裏でも言い争ってたりしてるから、てっきり仲が悪いのかと…」
雪歩「そんなことないよ!」
真「……」
真「…………あの」
P「?」
雪歩「?」
真「……あの、ポスターは…?」
P「あぁ、あれか?見ての通り、真が写った等身大ポスターだよ」
P「しかも、壁一面に全パターンだ。どうだ、可愛いだろ?」
真「……。……あそこに飾ってるのは?」
雪歩「あれは、真ちゃんがこの間のライブで着てた衣装だよ」
雪歩「実は、プロデューサーに頼んで回収してもらったんだけど、洗ってないから真ちゃんの良い匂いがするんだ、えへへっ///」
真「……」
P「ちなみに、その隣にあるのは、真に内緒で作った等身大の抱き枕な」
P「交互に抱いて寝るって雪歩と約束してるのに、昨日も一昨日も雪歩が抱いて寝たんだぞ、ズルいと思わないか?」
雪歩「むっ、その前にプロデューサーが3日間手放さなかったからですぅ!」
P「あれ、そうだっけ?」
真「……」
雪歩「あと、抱き枕には、真ちゃんがレッスンで使ったトレーニングウェアを着せてるんだよ?かわいいよね?」
P「もちろん、雪歩に頼んで更衣室から拝借したから、洗ってないけどな」
真「………」
真「……………」
真「うわああああああああああ!!!!」
P&雪歩「どっ、どうした!(どうしたの?)真!(真ちゃん?)」
真「なっ、なんなんですか、これはっ!!」
P&雪歩「?」
真「天井にまでボクのポスターやブロマイドを貼ってるし!」
P「どこにいても、真の視線を感じられるんだ、最高だろ?」ニヤニヤ
真「部屋にBGM流れてると思ったらボクの歌だし!」
雪歩「部屋のどこにいても、真ちゃんの声が聞こえるんだよ?」ニコニコ
真「なんなのこれはあああああーーーー!!!」
真「正直、玄関開けた時からボクの視線ばっかりで怖かったけど!!」
P「俺と雪歩が1日かけて部屋を飾ったんだぜ」
雪歩「そういえば…、あれが二人でした初めての共同作業ですぅ…///」
真(何処で照れたの?!)
真「……二人は」
P「?」
雪歩「?」
真「二人は本当に愛し合ってるんですか…?」
P「……」
雪歩「……」
P「そんなの当たり前だけど…」
雪歩「いくら真ちゃんでも、言っていいことと悪いことがあるよ…」
シーン
真(えっ、ボクが悪いの?)
P「そもそも、好きじゃなきゃ同棲しないし」
雪歩「私も、男の人で触れ合えるのは、プロデューサーだけだよぉ…」
真(……じゃあ、なんでボクはこんな空間に閉じ込められてるんですか…)
P「最近の雪歩は真にかまってばっかりで…」
雪歩「プロデューサーこそ、真ちゃんのことしかみてないですぅ…」
P「……雪歩」チラッ
雪歩「……プロデューサー」チラッ
真(………)
P「なんかごめんな、雪歩…つい真の事になると…」
雪歩「いえ…いいんです、プロデューサー…私も真ちゃんが…」
P「雪歩は悪くないよ、俺が…」 イチャイチャ
雪歩「私が悪いんですぅ…」 イチャイチャ
真(………)
真(は?)
P「今日ぐらい、たまには一緒に寝ようか…?」 イチャイチャ
雪歩「ええっ!もうプロデューサー。真ちゃんの前で恥ずかしいですぅ…。でも…、今日ぐらい…」 イチャイチャ
真「……」
真「ボクもう帰ります…」
P「どうしよう、俺、一緒寝るだけじゃ…」 イチャイチャ
雪歩「……私は…いいですよ…」 イチャイチャ
ガチャ
真「…じゃあ、また明日、事務所で」
P「じゃあ、今日は二人の寝てる真ん中に、真の抱き枕な?」
雪歩「はいですぅ」
真「っ?! それだけはやめてえええぇぇぇぇっっ!!!!」
P&雪歩「?」
-おしまい
まこりん、ごめんよ
まこりん可愛い
Entry ⇒ 2012.09.25 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
カレン「あなたにとって、私は何?」ゼロ「……!」
ルルーシュ(どうする!? KMFが邪魔だが扇達は無防備だ……バレないようにギアスを使えば、しかし……!!)
南「みんなお前を信じていたのに!!」
杉山「井上も吉田も、お前の為に死んだんだ!!」
カレン「待ってッ!! 一方的過ぎるわ、こんなの!!」
カレン「ゼロのおかげで私達、ここまで来られたんじゃない!! 彼の言い分も!!」
玉城「どけっ! カレン!!」
杉山「ゼロと一緒に死にたいのか!?」
南「まさかギアスにかかってるんじゃないよな!?」
カレン「……ッ……」
カレン「……答えて、ルルーシュ……あなたにとって、私は何……?」
ゼロ「……!」
ルルーシュ(…………な……何だろう……?)タラリ
ルルーシュ(まずいぞ……何だと訊かれても具体的に何かなど考えた事がない!)※聞いてない
ルルーシュ(だがナナリーとシャーリーを喪い、C.C.も記憶喪失の今、俺にとって唯一残った大事な存在なのは間違いない)
ルルーシュ(だが『大事な存在』とは何だ? 具体性に欠ける……)
ルルーシュ(落ち着け、冷静に考えろ……間に合わせの答えではカレンの信頼を損ねる、それは避けねばならない)
ルルーシュ(この状況からして考える時間はあまりない……急ぎ検証せねばならない!)
ルルーシュ(鍵となるのはやはり先ほどのカレンの発言だ)※聞こえてない
ルルーシュ(『何?』と訊かれた以上は、抽象的なものではなく固有名詞としての答えだな……)
ルルーシュ(対人関係に置いて使われる固有名詞ともなれば膨大な数となる)
ルルーシュ(だがさっきカレンはゼロではなくルルーシュとしての俺に聞いてきたな)
ルルーシュ(加えてカレンは女性だ、これらを考慮すると150パターンほどに絞り込める! それならいける!!)
※現在ルルーシュはシュナイゼルの姿が目に入ってない
ルルーシュ(なんとかするには、なんとか……!!)
扇「何とか言ったらどうだ、ゼロ!!」
玉城「ゼロォ~ッ!! 間違いだって言ってくれよぉ~っ!!」
千葉「いい加減離れろ紅月!! お前まで巻き込むぞ!!」
カレン「……ねぇお願い、答えて!!」
ゼロ「……タイム!!」
カレン「え? あ、あの……タイムって、何?」
ゼロ「タイムはタイムだ、ちょっと待て!!」
藤堂「タイムなどといえる状況と思うのか!!」
ゼロ「ちぃ、頭でっかちどもめ……カレン、ちょっと耳貸せ!!」
カレン「えぇ? あ、はい……」
カレン「で、ホントに何?」
ゼロ「カレン、君はさっき俺に訊いたな? 『あなたにとって、私は何?』と。今それを考えてる」
カレン「はぁ!? ……じゃ、じゃあ……」
ゼロ「だから考える時間が欲しいんだ、そのためのタイムだ!!」
カレン「……そう、今になって考えるって事は……」
ゼロ「ん? ……なんだ?」
カレン「……私はあなたにとって、何でもなかったのね……」ウルッ
ゼロ「ほぁ!? 違う、間違っているぞカレン!!」ヒヤアセ
ゼロ「えぇい聞け!! いいか、大事か嫌いかどうでもいいかの3択なら、間違いなく大事だ!! これはホントだ、本心だ!!」
カレン「……!!!!」
ゼロ「だがここで疑問なのが、大事な物といっても何だという事だ」
カレン「えぇ?」
ゼロ「例えば幼馴染という間柄があるだろう」
ゼロ「アレはあまりに距離が近すぎるために、いるのが当たり前になってしまう。だからどんな存在かという事を意識することも少ない」
ゼロ「俺が君に感じている想いはそんな感じだ、いるのが当たり前だけに何かと訊かれるとわからない!!」
カレン「いや、大事なものってだけで充分嬉しいんだけど」
ゼロ「ダメだ、君が納得しても俺は納得しない!! 俺にとって君は何か、自分でもその解が欲しい!!」
ゼロ「ダメだダメだ!! 納得は全てにおいて優先する!!」
カレン「うわぁめんどくさ……」
ゼロ「というわけだからカレン、考えるだけの時間が欲しい。少し待ってくれないか」
カレン「この状況で待てってのも……」
ゼロ「仕方ないだろう、色々あって思考もまとまらないんだ!!」
カレン「あ……そうか、そうだよね……C.C.とナナリーの事、それにシャーリーも亡くなったって聞いたし……」
ゼロ「……!! そうか、知っていたか……」
カレン「……わかった、待つわ……でも、少しだけだよ?」
ゼロ「ありがとう、カレン!!」
ゼロ「そうだな……5分、いや3分くらいでなんとか」
カレン「そう、それじゃ一旦気を落ち着けましょう! はい、深呼吸!! 吸って~」
ゼロ「(スウゥ~~~~~~ッ)」
カレン「吐いて~」
ゼロ「(ハアァ~~~~~~ッ)」
カレン「どう? 少しは落ち着いた?」
ゼロ「ああ、思考がクリアになった気がする!!」
カレン「あと、あまり難しく考えなくていいからね? イメージ的な答えでも十分だから」
ゼロ「何!? それではせっかく150程度に減ってたパターンがまた5000以上に増えてしまう!!」
カレン「(そうだ、こーいうやつだった)……好きに考えなさい!! んじゃそろそろOK!?」
カレン「落ち着いて考えれば大丈夫だから、あなたは出来る子だから!!」
ゼロ「わかった、では俺は検証に入る!!」
千葉「何をやってるんだあの二人は? この状況でヒソヒソ話こんだりして」
藤堂「突然深呼吸など、意味が……」
カレン「みんな!!!!」
一同「「「!?」」」
カレン「チャージドタイムアウト、ゼロ!!」シュピッ
一同「「「」」」
カレン「だから正式にタイムの申し入れをしたんです!!」
千葉「言ってられる状況か!! 囲まれてるの判るだろう!?」
カレン「だって彼にも考える時間ぐらいあったっていいでしょ!? 言う事ないのか~とかいいながら銃突きつけて、言わせる気すらないじゃない!!」
玉城「いやそうだけどさぁ、少しは読もうぜ空気?」
カレン「あんたに言われるのだけは心外ねぇ!!」
藤堂「落ち着け紅月君。君がそこを離れれば済む話だぞ?」
カレン「ダ~メ~で~す!! 彼は今すっっっごく大事な事考えてるんだからぁ!!」
ゼロ「……」ブツブツ(うつむきながら思案中)
カレン「違います~!! その……プライベートな事だから、ここで言うわけには……」モジモジ
藤堂「ますます判らん。それがハッキリしないなら我々だって納得せんぞ?」
千葉「そうだ、また私達を騙す事考えてるとしか思えない!!」
カレン「違いますってば!! あ~もう……ホントに言わなきゃダメェ?」
南「いくらカレンの言う事でも、ダメなもんはダメ!!」
カレン「南さん……!! ロリコンだって言いふらすわよ!?」
南「なっ、皆の前だろ!! 言うなぁ~っ!!」
一同「「「いや、もう知ってるし」」」
南「」
ゼロ「……」ブツブツ
カレン「藤堂さん……!!」
藤堂「だが納得が欲しいのも事実だ。紅月君、今ゼロは何を考えている?」
カレン「うぇ!? や、やっぱり言うのぉ!?」
千葉「どくか話すか、二つに一つだ!!」
扇「どくんだカレン!! その方がいいんだぞ!!」
カレン「う、うぅ……」モジモジ
ゼロ「……」ブツブツ
シュナイゼル「(ルルーシュが長考とは珍しいねぇ)」ヒソヒソ
カノン「(いやここ長考する場面じゃないと思いますわ、失礼ですが弟君って意外とバカですか?)」ヒソヒソ
シュナイゼル「(まぁ見ていようじゃないか。私の弟だ、驚くべき逆転の一手を繰り出すかもね)」ヒソヒソ
千葉「ほら紅月、はっきりしろ!!」
カレン「か、彼にとって、その……私は何かって……///」モジモジ
一同「「「「「「」」」」」」
藤堂「……ほぅ?」
ディートハルト「これはこれは……当初の予定より番組内容が変わるかもしれませんねぇ」
千葉「紅月……そういうのは二人だけの時に訊くべきだと思うぞ」
カレン「しょ、しょうがないじゃないですかぁ!! 命張るつもりで、後押しほしくて訊いたんだからぁ!!///」
ゼロ「……」ブツブツ
ルルーシュ(さて改めて考えるとだ。役職という考え方は消え去るな)
ルルーシュ(なぜなら出すべき解は『ゼロ』としてではなく『ルルーシュ』としての答えだ、よって部下とか同僚はもってのほかだ)
ルルーシュ(ではクラスメイト……だめだ、これはその他大勢と同義だ。第一今現在カレンは学生の立場ではない)
ルルーシュ(では友達……大事だが軽いな。それにただの友達ではない気がする)
ルルーシュ(それなら親友……は違う。俺はスザクが最初で最後の親友だと認識しているからな)
ルルーシュ(……くっ、予想以上に困難な問題だ!!)
ルルーシュ(他に俺達の関係に近い言葉……となるとまさか男女関係になるのか!?)
ルルーシュ(すると恋仲!?……ち、違うな……異性として意識した事もあるかもしれなくもないかもしれないが付き合ってるわけじゃない、告白した・されたもないだろうが!!)ドキドキ
ルルーシュ(ならば愛人……ってバカか俺は!! 俺達はそんなふしだらな関係では断じてない!!)ドキドキ
ルルーシュ(えぇい、何かヒント、ヒントはないか!?)
ルルーシュ(だが今は『ルルーシュ』としての答えだ!! あ~何かヒントヒント……)
ルルーシュ(!! そうだ、俺に対しカレンがかけた言葉!!)
ルルーシュ(それに対し俺自身が抱いた感情、これを検証すればヒントにはなる!!)
ルルーシュ(よぉ~し思い出せ!! カレンがかけた言葉の一言一句!! それに対し抱いた感情!! その全てを!!)
ルルーシュ(大丈夫だ、俺はやれば出来る子だ!! さっきカレンもそう言ったじゃないかぁぁぁっ!!)
(カレン『ふざけないで!!……一度失敗したくらいで何よ!』)
(カレン『しっかりしろルルーシュ!!』)
(カレン『何やってたのよあんた達は!?私が捕まってる間に!!』)
(カレン『待って!! 一方的すぎるわ、こんなの!!……彼の言い分も!!』)
(カレン『……共に進みます。私は、あなたと共に』)
ルルーシュ(!!!!)ピキーン!
ゼロ「フ、フフフハハハハハハハ……!!」
藤堂「!?」
カレン「!? 素顔を……!?」
千葉「本当に……ブリタニア人の子供……!?」
ルルーシュ「自分自身の気持ちに……カレンが俺にとってどんな存在であったかと言うことに!!」
扇「くっ! 早くどくんだカレン!! ギアスをかけられてしまうぞ!!」
ルルーシュ「ギアス? そんなものを使いはしない!!……カレン!!」
カレン「は……はいっ!!」
ルルーシュ「日本ではこんな時、こう言うんだろう? 『ととのいました』ッ!!」
ルルーシュ「ああ。ずいぶんと時間がかかってしまって、すまなかったな」
ルルーシュ「判ってしまえば簡単な事だった。なぜ判らなかったんだろうな、俺は」
カレン「じゃあ、その……聞かせて……」ドキドキ
藤堂「待て。ディートハルトよ!! ちゃんとカメラは回っているか!?」
ディートハルト「当然です。メモリー、バッテリー残量ともバッチリです」
千葉「いや藤堂さん、ここは自重された方が……」
藤堂「千葉ァ!! 一世一代の告白シーンだ、最期かも知れないし撮っておくのが筋だろう!!」
千葉「す、すみません!!」
ルルーシュ「あの、もう言ってもいいのか?」
藤堂「ああ、存分に言うがいい!!」
カレン「はい……」
ルルーシュ「俺は今まで何度も君を騙し、傷つけてきた。しかし、それでも君は俺を信じてついて来てくれた」
カレン「う、うん……」ドキドキ
ルルーシュ「君の言葉に、行動に、何度救われたかなど……もう数え切れない」
ルルーシュ「ゼロの仮面を被り続ける騎士団生活の中でも、君の近くでだけは素の俺でいられたんだ」
カレン「も、もったいつけないでよ……早くその、言って……」モジモジ
ルルーシュ「……そうだな。では、今ここに宣言する!!」バッ!!
藤堂「よし、全員注目!!」バッ!!
ディートハルト「よし、ここは二人をアップで!!」ガシャッ!!
カレン「……!」ドキドキ
ルルーシュ「言葉で表すなら!!」
カレン「…………っ!!!!」ドキドキドキ!!
一同「「「表すなら!?」」」キキミミッ
ルルーシュ「俺のッ!!」
カレン「………………ッ!!!!!!」ドキドキドキドキ!!
ルルーシュ「お母さんですッ!!!」
一同「「「「「「「」」」」」」」
カレン「……はい?」
ルルーシュ「カレン。C.C.から聞いていると思うが、俺は幼少の頃に母上を喪っている」
ルルーシュ「それからはナナリーをただ一人の家族として生きてきた」
ルルーシュ「だが9歳ともなればまだまだ母親が恋しい頃だ」
ルルーシュ「そんな時期に母上を喪った俺は無意識に母性愛を求めていたのだと思う」
ルルーシュ「そこへ現れたのが君だよ、カレン!!」ズバッ!!
カレン「全く意味がわからないんだけど!?」
千葉「……誰かわかるか?」
杉山「全然」
玉城「わかる方がすげーよ」
藤堂「……ふむ」
ルルーシュ「そしてその時抱いた感情を繋ぎ合わせたとき、パズルは解けた!」
ルルーシュ「落ち込んだ時に思いやりある言葉をかけ励ましてくれる優しさ!」
ルルーシュ「へたれて自暴自棄になった時に本気で叱ってくれる厳しさ!」
ルルーシュ「窮地に陥った時は我が身を省みず助けようとする度胸!」
ルルーシュ「性的トラブルを予感させる状況を逸早く察知する洞察力!」
ルルーシュ「信じた相手にはどこまでも尽くそうとしてくれる深き情!」
ルルーシュ「それらを象徴する、母性愛が詰まったかのような大きな胸!!」
ルルーシュ「どこをとっても!まさに!日本の良きお母さんそのものじゃないか!!」
カレン「」
ルルーシュ「そばにいてくれると安らぐのも当然だ……俺が求めていた母性は、こんなすぐそばにあったのだから!!」ダキシメッ
カレン「ちょ! るる、ルルーシュ!?///」ドキドキ
ルルーシュ「そうさ、母上もこんな暖かさを持っていた……!! あぁ、暖かいよカレン!!」
カレン「あの、人の話を聞いt
ルルーシュ「思い返せば母上もKMF操縦の達人だった!! そんなところも共通するなんて、まさに完璧だ!!」
カレン「」
千葉「まぁ確かに紅月なら意外といいお母さんになるかもしれないが、それとこれとは」
藤堂「むぅ……」
カノン「(殿下、アレはさすがに冗談ですよね?)」ヒソヒソ
シュナイゼル「(いや、本気かもしれないね。彼はマリアンヌ様の事大好きだったから)」ヒソヒソ
ルルーシュ「大丈夫だ、もう心配要らない!! 君の事は、この俺が必ず守るから!! また母の絆を失ってたまるものか!!」
カレン(い、いい台詞かもしれないけど……話の流れがこんなんじゃ喜べないじゃないのぉ!!)
ディートハルト「えーっと、今のは編集ミスとか聞き間違いじゃありませんよね?」
ルルーシュ「いつも言っているだろう!! 俺はいつでも大真面目だ!!」
一同「「「「「」」」」」
カノン「(本気、みたいですね……」)ヒソヒソ
シュナイゼル「(ルルーシュ……まさか、新たな扉を開けてしまうとは……」)ヒソヒソ
ルルーシュ「なんだ?」
藤堂「今の言を聞く限り、少なくとも紅月君の事は駒と思ってはいないようだな?」
ルルーシュ「当たり前だ!! この人は俺にとって第二の母さんだ!!」キッ!
扇「カレン! こんなバカに付き合う必要はないぞ!?」
ルルーシュ「俺はいたって真剣だ!! 彼女はこの俺が、命に代えても守る!!」
千葉「いやカッコいい台詞かもしれんが、この流れじゃ台無しだぞお前!」
藤堂「ならば問う!! 君にとって我々は……黒の騎士団とは何だ!!」
ルルーシュ(やはり、そうくるか!!)
ルルーシュ(この答えとてその場しのぎの物は許されない……チャンスは一度のみ!)
ルルーシュ(だがカレンの問いに解を導き出したとき、ここで出すべき答えも見えた! あとはやるだけ……!!)
藤堂「応えてもらおう、ゼロ!! 我らは君にとって、駒か、否か!!」
ルルーシュ「もちろん、答えは出ているさ!! だがその前に一つ、質問に答えてもらいたい!!」
千葉「何だと!?」
扇「お前に質問する権利なんt
藤堂「待て!! ……答えよう。何だ?」
ルルーシュ(感謝するぞ藤堂!! これならいける!!)
ルルーシュ「だが元々はブリタニアに対抗する一レジスタンス組織、謂わば無頼の輩だ!! わかるか!?」
藤堂「……重々承知している。だがそれが今何の関係がある?」
ルルーシュ「そう、元々は社会に疎まれ、弾き出された存在……いわばギャングや、日本の……ヤクザ、といったか? それと同じ!!」
ルルーシュ「そんな彼らの様な組織に共通する呼称は知っているか!?」
藤堂「待て……ッ!! まさか!?」
ルルーシュ「一家、ファミリー……言語による表現の差異こそあるが、その意味は同じ!!」
ルルーシュ「そう……『家族』だよ!!」
ルルーシュ「だが黒の騎士団を立ち上げて以来、皆が俺を頼ってくれる、必要としてくれる!」
ルルーシュ「そうしているうちにここは俺が存在していられるもうひとつの場所になっていたんだ」
ルルーシュ「そう、自分が存在していい、そしているのが当たり前の集団……運命共同体!!」
ルルーシュ「例え血の繋がりがなくとも、それはつまり家族といえないだろうか!?」
玉城「ゼ、ゼロォ~ッ!」ウルッ
藤堂「待て」
ルルーシュ(く……さすがに、苦しいか!?)
藤堂「我々を家族というのなら……」
ルルーシュ「……素顔をさらさなかった理由、か?」
千葉「そ、そうだ!!」
ルルーシュ「いわば俺は日本人の敵。素性をさらして、受け入れてもらえるとは思えなかった」
ルルーシュ「だから俺は仮面で素顔を隠すしかなかった。皆が必要としてくれたのは『ゼロ』であって―――俺じゃ、ないから」
千葉「そんな、それじゃ……」
ルルーシュ「怖かったんだよ、手にした家族を失うのが。そして結果は見ての通りだ」
ルルーシュ「そういう事だ、藤堂。納得してもらえただろうか?」
藤堂「いや……折角説明してもらって悪いが、そうじゃない」
ルルーシュ「何……?」
藤堂「……お父さんポジは、誰だ?」
藤堂「だからお父さんといえるポジションの人間だ。紅月君がお母さんポジなら、対となる存在が必要だろう」
ルルーシュ(そんな……!! 予想外だ!! 父親にブリタニア皇帝であるシャルルを持つ俺にとって、父親など最も忌むべき存在!!)
ルルーシュ(そんな父親のポジションに収まる人物だと!? そんなもの考えすらしないぞ!!)
ルルーシュ「……っ」
扇「藤堂将軍、出るわけないですよ答えなんて!! さっきのだって所詮でまかせだろうし!!」
ルルーシュ「違う、俺は本当に!!」
玉城「どうなんだよゼロォ!!」
ルルーシュ(くっ、どうする!? 答えが見出せない、このままでは……カレン!!!!)
ルルーシュ(そう、全てを受け止めるような大きな背中……俺の持っていない力強さを感じさせる背中!!)
ルルーシュ(そして言動の端々から感じさせる男らしさ……それを持ち得るのは!?)
玉城「な、なぁゼロ……俺今まで親友と思ってたけど、お前もしかして俺を親父代わりに……」
ルルーシュ「いや、それはない」
玉城「」
藤堂「ン、ンンッ!!」
千葉「……藤堂さん?」
藤堂「そ、そういえば……私ももし若い頃ヤンチゃをしていれば、君くらいの年の子供がいてもおかしくないんだがな……」チラッ
ルルーシュ「!?」
ルルーシュ「藤堂……あなたは……」
藤堂「わ、私も家庭を持つのも吝かではないというか、だな……その」チラッ
ルルーシュ「い、いいのか……? 俺が、あなたを父と呼んでも……!!」フルフル
藤堂「わ、私は別にその……構わん、ぞ?」ドキドキ
ルルーシュ「と、藤堂……! いや違う!!」
ルルーシュ「お藤さんッ!!!!」ブワッ
藤堂「ゼロ……いや、ルル坊!!」ニッ
千葉「藤堂さぁん!! 正気に戻ってぇ!!」
千葉「嘘ぉっ!! だって、だってぇっ!!」
扇「藤堂将軍がこんな事をいうなんて、まさか! これがギアスか!?」
ルルーシュ「違う!! 言っただろう、この場でギアスは使わないとさっき言っただろう!!」
ルルーシュ「言っておく!! 皆が今いるその場所は、俺のギアスの有効射程外だ!! だから大丈夫だ、問題ない!!」
ルルーシュ「お藤さん! そして皆! あなた達の心は、あなた達自身のものだ!!」
藤堂「ルル坊……!!」
千葉「私が言ってるのはそこじゃない!!」
千葉「藤堂さんがお前の父親になったら、その奥さんは紅月ということになるのかぁっ!?」ナミダメ
藤堂・ルル「!!!!」
千葉「だってそうだろう!? お前が紅月を母親と思ってるって事は!!」
藤堂「そうだな、母の対は父だ!! 父と母の組み合わせは夫婦だ!! すなわち!!」
ルルーシュ「カレンと……お藤さんが、夫婦……!?」
玉城「けどよぉ? シングルマザーって言葉だってあるだろぉ?」
ルルーシュ(確かにその言葉なら解決する……だが俺はカレンにもっと幸せでいて欲しい!! 認めるべきか、どうなんだ!?)
藤堂「落ち着け、千葉よ」
千葉「ムリですぅ! ダメなんですか!? 私みたいな三十路の行き遅れはぁ!!」グスグスッ
藤堂「弱ったな……正直言うと私も男である以上、幼妻という言葉にはロマンを感じる」
南「お、俺も若い方がいいです!!」
千葉「」
ルルーシュ(まずいぞ……これではそのうち千葉がヒステリーを起こして全てが終わってしまう!! どうする!? どうすればいい!?)
カレン「あのぉーーーーーっ!!!!」
一同((((ビクッ!!))))
ディートハルト「っと、そういえばさっきから彼女、何も喋ってませんでしたね」
ルルーシュ「カレン……いや、カーさん?」
カレン「誰がカーさんよ!? さっきから聞いてりゃぁ皆好き放題いってくれちゃってぇ!!」プンスカ
カレン「皆一旦銃下げて!! 静かにして、そんで私の話を聞くっ!!!!」
一同「「「「は、はいっ!!!!」」」」
カレン「ルルーシュ。折角告白してもらってなんだけど、私……あなたのお母さんになんてなれない!!」
ルルーシュ「のぁっ!!??」ガビーン
カレン「そして藤堂さん!! あなたの奥さんにだってなれません!!」ズバッ!!
藤堂「な……に……!?」
千葉(ちょ、ちょっと安心……)
ルルーシュ「そんなカレン、どうして!?」
カレン「どうしても何も! そんなもん考えなくてもわかるでしょ!?」
カレン「ったりまえでしょ!! いい、あんたと私は同い年なのよ!?」
カレン「同い年で母子なんて成立するわけ!?」
ルルーシュ「はぅっ……!?」
藤堂「待て紅月君、ルル坊が私の連れ子で君が再婚相手と言うなら成り立つぞ!!」
カレン「藤堂さん、あなたは立派な戦士だし、日本人の誇りも忘れない素晴らしい方です」
カレン「でも、あなたは私のタイプじゃありません!! だから妻になんてなれません!!」
藤堂「そっ……ん、な……」
カレン「大体千葉さんがいるでしょーに!! 千葉さんの好意なんて皆知ってんですから!!」プンスカ
千葉「こ、紅月ぃ……///」ブワッ
カレン「だったら千葉さんが藤堂さんの奥さんになれば万事解決でしょ!?」
カレン「千葉さん料理上手いし、ちょっとぶっきらぼうだけど思いやりあるし、その……む、胸だっておっきいし」
千葉「紅月……お前……」ウルウル
ルルーシュ「だけど、俺は君こそが!!」
カレン「ストップ!! いいから話聞く!!」
ルルーシュ「!?」
カレン「『全てが終わったら、一緒にアッシュフォード学園に帰ろう』って。……あのときは言えなかったけど、私すっごく嬉しかった」
ルルーシュ「カレン……」
カレン「あの言葉に、捕縛されたときに叫んでくれた事がホントに嬉しくて―――その言葉があったから、捕虜になってるときも、腐らずにいられたの」
ルルーシュ「あ、ああ……」
カレン「戻ってきて、大事な人を3人も失って、そんなあなたを心から支えたいと思った。一緒に歩んでいきたいと思った」
ルルーシュ「俺だって、俺だってそうだ、だから―――」
カレン「そう思ってたのに……いきなりお母さんって何よぉ!!」
ルルーシュ「」
ルルーシュ「えぇ!? 普通に言えばいいんじゃないのか!?」
カレン「いえるかぁっ!! 想像してみなさいよ!!」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
リヴァル『なぁ、最近ルルーシュとカレンの関係って変わった? 付き合ってるってワケでもなさそうだけど」
ルルーシュ『あぁ、伝えてなかったな。実は……母です』
カレン『息子です』
ルルーシュ『母さん、今日は確か卵が安くなってるはずだ』
カレン『じゃあ帰りに買い忘れないようにしないといけないわね~』
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ルルーシュ「リヴァルならきっとわかっt
カレン「くれるかぁっ!! 変な事やってるとしか映らないわよ!!」
カレン「絶対イヤ!! ムリ!! 受け入れられるわけないでしょう!!」
藤堂「しかし紅月君、この黒の騎士団という大家族の中で君のポジショニングは極めて重要だ!!」
藤堂「ルル坊が君を極めて近い位置に求めているなら、母親以外に何がある!?」
ルルーシュ「そうだカレン、何ならいいんだ!? 頼む、教えてくれ!!」
カレン「……っ」
カレン「……め……さん……」ポソッ
ルルーシュ「ん? 何だ? よく聴こえないぞ?」
カレン「およめさんが、いいです///」
カレン「……うん///」コクリ
ルルーシュ「なら別に問題ないじゃないか、お藤さんのお嫁さんで、俺の母さんで」
カレン「話聞いてた? ……あなたのお嫁さんになりたいって、そう……言ってるんだけど」
ルルーシュ「……へ?」
ディートハルト「これは……想像以上の画が撮れそうな気がしますねぇ!!」
扇「カレン、何を言っt(ガスッ!!)
千葉「紅月……!! がんばれ、紅月!!」
カレン「悪かったわね不器用で!! けど、あなただって鈍感が過ぎるわよ!!」
カレン「そうよ、私はあなたが好きよ! 愛してるわよ!! ナナリーにだって、シャーリーにだって負けないくらい!!」
カレン「あのバベルタワーでまた逢えた時―――うぅん、きっと初めて学園であった日から気になってたわよ!!」
カレン「全くバッカじゃないの!? よりによってこんな、皆の見てる前で言わせるなんて!! ばかぁ!!!!////」
ルルーシュ「お……俺は……」
ルルーシュ「君が愛してくれても、俺はパートナーとして守る事なんて……」
藤堂「―――喝ッ!!」
ルルーシュ「!! お藤さん!?」
藤堂「ルル坊……紅月は皆の面前で、勇気を振り絞ってお前に告白したのだ」
藤堂「お前はその想いを無下にする気か? それでもお前は私の息子、日本人か!?」
ルルーシュ「だが俺は、ブリタニア人で……」
藤堂「心さえあれば、それは日本人。……お前が自分で言った言葉だ。忘れたか?」
ルルーシュ「!!」
藤堂「守る自信がない? フ、甘ったれるなよ。さっき紅月を守りたいと言ったのはお前自身だ」
藤堂「その意思に偽りなくば、全てを賭して護り抜く覚悟を決めろ。女子にああまで言わせたのだ、腹を括れ!!」
ルルーシュ「俺は……俺は……!!」
藤堂「(? アナタ?)なんだ千葉よ、この期に及んで!!」
千葉「すみません、ですが一つ問題が残っています!!」
藤堂「……言え」
千葉「はい……その、例え本人同志がいいと言っても、渡された資料によれば彼はまだ17歳!!」
千葉「紅月を娶るには法律上年齢がわずか、ほんのわずか足りません!!」
ルルーシュ「っ……そうだ……俺にはまだ、カレンをお嫁さんにするなんて……!!」
藤堂「フ、そんな事か。下らんな」
千葉「えぇ!?」
藤堂「覆す手が……私にはある!!」キュピーン!
藤堂「ルル坊、お前は『元服』というものを知っているか?」
ルルーシュ「ゲン、プク? ……いや」
藤堂「さすがに知らんか。かつて日本がまだ戦国の世だった頃に存在した制度でな」ニヤリ
藤堂「その制度の元では、男子は齢十五にして大人である事を認められる」
ルルーシュ「……!!」
藤堂「ルル坊、お前は以前我らに言ったな? 我々の合衆国日本は、かつて敗れた日本とは違う、新しい日本だと」
藤堂「ならば婚姻に関する法律に、新たにそれを取り入れればいい。さすれば―――」
ルルーシュ「まさに全ての条件はクリアされる!!……お藤さんッ!!」
藤堂「フフ……若人よ、幸せになるがいい」キラーン!
千葉「ああ、藤堂さん……なんて奇跡の人!!」シンスイ
千葉「は、はい!! アナタ!!」
藤堂「こんな私だが、ついてくる覚悟はあるか? 常に奇跡を求められる我が道に……そして、黒の騎士団という大家族の長の妻として、ルル坊の母親としての道に」
千葉「あぁ……あなたが望んでくれるのなら、どんな道でも!!」
藤堂「フ……ではついて来い!!」
千葉「喜んで!! ……おい、ゼロ!! いや、ルルーシュ!!」
ルルーシュ「!! はい!!」
千葉「(コホン)仕方ないから私もお前を認めてやる。だから早く、紅月に応えてやれ!!」
ルルーシュ「……はい!! 俺の心にもう、迷いはない!!―――カレン!!」
カレン「……はいっ!!」
カレン「うぅん……いいの」
ルルーシュ「ご覧の通り、俺は頭しか取り柄がないような……心も体も弱い男だ」
ルルーシュ「今まで支えとした者達も失って、正直何で今立てているのか不思議なくらいだ」
ルルーシュ「だから隣で支えてくれる人が欲しいんだ、俺は、だから―――」
カレン「うん……///」
ルルーシュ「その……これからも俺を、支え続けていてくれないか? 俺の、一番近くで……」
カレン「―――っ」
カレン「共に進みます……私は、あなたと共に……いつまでも……!!」ウルッ
ルルーシュ「ありがとう、カレン……!!」ギュッ
南「藤堂さんも、ようやく前に進めたようで!」
藤堂「フ……よせ。息子の前で恥はさらせん」
千葉「あの、あなた……子作りはいつ始めます?///」
玉城「あのカレンがなぁ……うおぉ~ん!! 見てるかナオトォ~~~ッ!!」ゴウキュウ
ディートハルト「もうこれ完全に別の番組として編集しなおした方がよさそうですねぇ……ちょっと、若いお二人」
ルル・カレン「「は、はい!?」」
ディートハルト「折角ですし、番組の締めとして皆の前でキスして頂けますか?」ジィーッ
ルル・カレン「「うぇっ!?」」
扇「ちょ、ちょっと待ってくれ!!」
一同「「「……あ゛?」」」
杉山「そうだそうだー!!」
扇「あ、ああ……すまない―――じゃなくって!!」
扇「みんな、忘れたのか!? ゼロを、ルルーシュを引き渡せば、俺達の日本は還ってくるんだぞ!?」
ルルーシュ「何っ!?」
カレン「何それ……どういう事!?」
扇「カレン、黙っていてすまないな。俺達は約束したんだ、彼を引き渡す事と引き換えに日本を還してもらうと! そう、そこにいる―――シュナイゼル特使と!!」
シュナイゼル「そういう事だよルルーシュ。幸せそうなところ申し訳ないが、ね」
ルルーシュ「いたのですか兄上」
シュナイゼル「……まさか本気で気付いてなかったのかい?」
ルルーシュ「えぇ」
シュナイゼル・カノン「」
シュナイゼル「まぁ、そういう事になるね。だが正直君が放った手は予想外だったよ。ここは兄として誇るべきかな?」
扇「彼は俺の要求に―――君の身柄と日本の交換にイエスと答えてくれた!!」
扇「ゼロ!! カレンの、俺達の幸せを想うなら!! 俺達のために人柱となれ!!」
ルルーシュ「俺は……俺はまた、政治の道具に……!? そん、な……」
カレン「ルルーシュ……!! 扇さん、あなたはっ!!」
扇「この約束は会談の場にいたものなら皆知っている!! そうでしょう、藤堂将軍!!」
藤堂「……知らんな」シレッ
扇「えっ……!?」
藤堂「確かにいた。そしてルル坊が我々を駒として扱っていたという言葉に酷くショックを受けたのも事実だ」
扇「だったら!!」
藤堂「だが実際はどうだ? 彼は我々を家族として見ていてくれた。お前とて今、彼の心からの告白も聴いただろう」
藤堂「これまでの作戦に犠牲が出たのも否定は出来ん。しかしそれで我々がここまで来られたのも事実だ」
藤堂「今冷静になって思えば、敵国の宰相に言に誑かされ、子供一人に全ての罪を着せようとしたのもおかしな話だ」
扇「でも、それはギアスが……!!」
藤堂「喝ッ!!」
扇「!!!!」ビクッ
藤堂「扇……いや、要ッ!! そこに座れ!!」
藤堂「す・わ・れ・と言った。ほれ、正座ァ!!」
扇「は、はいっ!!」
ルルーシュ「お藤さん!?」
藤堂「ルル坊、ここはこの父に任せておけ。……要よ」
扇「は、はい……」ビクビク
藤堂「今一度確認するが、お前がシュナイゼルに持ちかけた取引。あの言葉に、我々は首を縦に振った憶えはないのだが?」
扇「」
藤堂「いきなり現れたお前がいきなり捲し立て、いきなりシュナイゼルに取引を持ちかけた。我らの了解も取らず独断でだ。誤りはあるか?」
扇「い、いえ、でも……」
藤堂「どうなんだ、あ゛?」ギロリ
扇(ビクゥッ!!)い、いえ……その……ありま、せん……」
藤堂「話を終えた憶えはない!! フ、だが……ルル坊、何か言ってやる事はあるか?」
ルルーシュ「あぁ、戦場にいる以上はそこにいる兵士は駒と割り切って指揮したのは確かだ」
扇「ほらやっぱり―――」
ルルーシュ「だがそれは俺自身とて変わらない。でなければ、KMFで前線になんて出ないし」
扇「」
藤堂「わかったか? ルル坊は公私を使い分けてただけだ。に、対して……要よ」ヌゥッ
扇「と、藤堂将軍……近いです……」
藤堂「あの時聞けなかったが、お前と一緒に現れた褐色肌に銀髪の女子……アレは誰だ? 日本人ではなさそうだが」
藤堂「ひとっことも紹介なかったよなぁ? 彼女は何だ、お前のコレか?」(※小指立てて)
扇「えっ、あの、その何ていうか……彼女はその、千草といっt
ルルーシュ「違うな!! 間違っているぞ」
藤堂「ほぅ、知ってるのかルル坊?」
ルルーシュ「もちろんだよお藤さん。褐色肌に銀髪など、俺には一人しか思い当たらない」
ルルーシュ「彼女の名はヴィレッタ・ヌゥ。アッシュフォード学園の体育教師にして、その真の姿はブリタニア軍機密情報局の一員、同時にブリタニアの男爵」
ルルーシュ「学園での俺の監視役にして、さらにいうと扇の想い人ですよ」
藤堂「ほぅ? 自分の連れにブリタニア人を選ぶくせにルル坊はダメなのか、おまけに紹介も無しか!! いいご身分だなぁ要よ!!」
扇「」
藤堂「喝ッ!!」
扇「」
藤堂「彼女が出来ても紹介無し、それでいて人様の幸せはぶち壊す。お前は王にでもなったつもりか?」ゴゴゴゴゴ
扇「いやだって、ゼロは皇族d
藤堂「黙らんかっ!! もう一つ訊くが、お前は彼女に手は出したのか!?」
扇「えっ!?」
藤堂「キズモノにしたのか、と訊いている!!」
玉城「そういや扇よぉ、黒の騎士団旗揚げしてちょ~っとした辺りから付き合い悪くなった事あるよなぁ?」
扇「玉城!? だ、黙っててくれ!!」
藤堂「ほぉ~う?」ピキピキ
ルルーシュ「それについても知っていますよお藤さん。彼女はかつて俺の素顔を知ったのですが、その後撃たれて記憶喪失になった」
ルルーシュ「扇はそんな彼女を匿っている内に情が移ったようです。そして深い仲になったと―――」
扇「うわぁぁ!! うわぁぁぁぁぁっ!!」アセアセ
カレン「記憶を失ってるのいいことに? 扇さん……サイッテー」
藤堂「要よ、事実か?」
扇「え、あ、その……間違いではないですけど……」
南「あぁ、アレで俺ゼロに不信感抱いたんだ」
ルルーシュ「あのときは俺もトラブルで対応できず、犯人も判らなかった」
ルルーシュ「だが調査の結果、扇を撃ったのはヴィレッタだとわかっている……やはり記憶喪失中に好き放題されたのがイヤだったのかな」
南「じゃあお前自業自得じゃないか!!」
扇「南ぃ!!」ナミダメ
藤堂「ほほぉーう……我々はずいぶんお前に信用されてなかったのかなぁ? えぇ要よ」
扇「だって好きなんだ、しょうがないだろぉ!?」
千葉「さすがにフォローできん!! まるっきり獅子身中の虫じゃないか!!」
扇「」
ルルーシュ「いや、俺にだって責任はあるから……」
扇「そ、そうだ!! お前が責任を取r
藤堂「その前にお前が果たすべき責任があるだろうが!!」ゴツン!!
扇「ひっ!?」
藤堂「あのお嬢さんをキズモノにしたのなら、責任を取るのが男というものだ!! 時に、彼女の家にご挨拶には行ったのか!?」
扇「いやだって、敵国同士ですs
藤堂「誤魔化しなど聴く気はない!! 先のルル坊と紅月の精一杯の告白を忘れたか!!」
藤堂「きちんと正装して、ご挨拶の品を用意して!! ヴィレッタ嬢のご両親に詫びを入れて来い!! 貴様とて責任の取れる歳だろう!!」
藤堂「それを成し遂げてくるまで、この斑鳩の敷居を跨ぐ事はこの父・藤堂鏡志朗が許さん!! 勘当だ!!」
扇「そ、そんなぁ……」
カノン「いやアナタ家長って、ママゴトみたいなものでしょ?」
藤堂「我らは運命共同体だ。それに気付かせてくれた愛息子を差し出すつもりはない」
ルル・カレン「お藤さん……!!」
シュナイゼル「ですが彼は我々にとっても弟です。それも血の繋がった実の、ね」
コーネリア「そうだ、今更反故にするなど許されない!!」
ルルーシュ「姉上、いつの間にか独房から出ていたのですね。気付きませんでしたよ」
コーネリア「酷いなお前!! さぁルルーシュ、母国で裁きが待っているぞ!!」
ルルーシュ「俺を棄てた国が今更!! 今一度いう、俺の家族はこの黒の騎士団だ!!」
藤堂「ルル坊もこう言っている。……代わりといっては何だが、この放蕩息子……扇要をくれてやる。責任を取らせてやってくれ」
シュナイゼル「いえ、いりません」
扇「」
ルルーシュ「おかげで俺は血ではなく絆で繋がった家族を手にし、そして愛する者をこの手に得た。感謝すべきなのかな、シュナイゼル?」
シュナイゼル「その必要はないよ。なかなか楽しめたしね……しかしだ」
シュナイゼル「家長殿、私が乗ってきた艦に先のフレイヤが搭載されているのは知っているね?」
藤堂「何!? 貴様、まさか!!」
シュナイゼル「戻って来ないなら消すもやむなしです。……残念だよルルーシュ。君は私を超える事はできない」
ルルーシュ「フレイヤだと!? ……おのれ……おのれシュナイゼル!!」
カレン「でも、そんな事したらあんた達だって!!」
シュナイゼル「そうかもしれないね。だが黒の騎士団と超合集国はゼロと柱を失い、今度こそ瓦解する」
カノン「尤も、そうなる前に私達は脱出させてもらうけど。 ここで私達を殺して心中するか、見逃して消えるか、二つに一つよ」
コーネリア「兄上、まさかそんな……」
コツン、コツン、コツン
ラクシャータ「な~んかさっきから騒がしいけどぉ、一体全体何の騒ぎなわけぇ?」
カレン「ラクシャータさん!?」
ラクシャータ「紅蓮のチェックとか色々終わって暇だったから来てみたんだけどぉ、誰か説明してくれるぅ?」
ラクシャータ「ちょ~っとストップ! そのボーヤはだぁれ? 服はゼロっぽいけどぉ」
ルルーシュ「ああ、俺がゼロ……本当の名はルルーシュだ」
ラクシャータ「ふぅ~ん、結構かぁわいいじゃな~い? イタズラしたくなっちゃうわぁ♪」
ルルーシュ「!!」ゾクッ!!
カレン「ダメです!! ……実は―――」
・ ・ ・ ・ ・ ・
ラクシャータ「フレイヤねぇ……おっかしいわねぇ?」
ルルーシュ「? どうした?」
ラクシャータ「いやね、暇だからうろついてたら特使用の船があったからぁ、それも散策しちゃったのぉ」
ラクシャータ「んでも爆発物らしきものもな~んもなかったわよぉ? 武装は機銃とリニア砲だけ、格納庫ももぬけの空だしぃ」
一同「「「」」」
シュナイゼル「おやおや、ブラフだとバレてしまったようだねぇ?」
ルルーシュ「シュナイゼルゥゥゥゥゥゥッ!!!」
カノン「殿下、さすがに旗色悪いですわよ! どうします!?」
シュナイゼル「ここは退いた方がいいだろうねぇ。だが負けたつもりはないよ? いわば痛み分けだよこれは」
コーネリア(こんなカッコ悪い兄上見た事ない!!)
シュナイゼル「ではルルーシュ、カレン嬢、それに黒の騎士団諸君。またいつかお逢いしましょう」
藤堂「待て。おまけを忘れるな」ポイッ
扇「」
シュナイゼル「まぁ、ペナルティと見れば仕方がないね。営倉にでも放り込んでおいて……そうそう、ヴィレッタ君も忘れずにね」
カノン「了解ですわ殿下~」
コーネリア「ルルーシュ!! 私は絶対諦めないからなぁ!! 待ってるがいい愚弟よ!!」スタコラサッサー
騎士団一同「「「「」」」」
千葉「そうですね、やつらの駒と化してしまうところでした」
南「扇のヤツ、俺達にまで隠し事して……」
玉城「もういいじゃねぇかよ、んなこたぁ!! それよりさぁ」
杉山「そうだな、一度に2つも夫婦が成立したんだ! 宴会の準備でもしないとな!」
藤堂「昇悟が誤解を抱いたまま逝ってしまったのは心残りだが……あいつなら、きっと我らを向こうから祝福してくれるだろう」
千葉「……そうですね」
カレン「これで、よかったのかな……?」
ルルーシュ「わからない。だが俺達は、再び歩き出す事ができる。……それで充分じゃないか?」
カレン「……うん」
ルルーシュ「? どうした?」
カレン「C.C.の事、どうしよう……それに、神楽耶様も」
ルルーシュ「C.C.なら問題ない。今の無垢な人格なら、妹や娘として収まる事が出来る」
ルルーシュ「もし記憶が戻ったなら、そのときは―――」
カレン「そのときは?」
ルルーシュ「お姑さんなり、お婆ちゃんなり。どっちでもイケるだろう?」
カレン「ずいぶんマルチなポジションね」
ルルーシュ「あいつは元々常識が通じないからな」
ルルーシュ「カレンが俺の奥さんになってくれた以上、どうするべきか……」
藤堂「フ、甘いなルル坊」
ルル・カレン「「お藤さん!?」」
藤堂「お前は言ったな、ゼロは記号にすぎないと。ならば状況に応じて、ゼロを演じるものが替わればいい」
ルルーシュ「!! それは!?」
藤堂「作戦指揮を取る、治世をするなどの時はお前が演じる。部隊を鼓舞するときは私。プライベートの時は……」
南「俺やりたいです!!」シュバッ!!
藤堂「だそうだが……どうする?」
藤堂「我々は家族だろう? 今までお前に何もかも頼り過ぎた。今度は大人が子供のために体を張るばんだ」
玉城「そうだぜ親友、いやブラザー!! 頼ってくれていいからよぉ!!」
ルルーシュ(いや、お前は頼れない)
南「神楽耶様は俺が幸せにする!!」
千葉「わ、私も、いい母親になれるよう努力する……」
ルル・カレン「「みんな……!!」」
ディートハルト「あーっと皆さん、ちょっとよろしいですか?」
ディートハルト「お忘れですか? 私はお二人のキスシーンが撮りたいと言ったのですよ」
ルル・カレン「「!!///」」
ディートハルト「番組は打ち切りと先に言いましたが、とんでもない。これからもこの黒の騎士団という大家族のホームドラマ、バッチリ撮らせてもらいますよ」
ディートハルト「その団欒の象徴たるシーンとして、さぁ! さぁ!!」ワクワク
カレン「……ルルーシュ……」
ルルーシュ「カレン……」
カレン「……いいよ?///」
ルルーシュ「……ああ、それじゃ、いくぞ?///」
カレン(お母さん、私初めてキスします……誰よりも大切な人と……)
ルルーシュ「カレン……」
カレン「ルルーシュ……!」
ルル・カレン「……」アトスコシ
一同「「「「あとちょい、あとちょい!!」」」」
ガシャアアアアァァァン!!!
ルルーシュ「なんだ!?」
藤堂「蜃気楼!? 誰だ!!」
ロロ「兄さんの家族は、僕だけでいいっ!!!」キュイィィィン!!
千葉「消えた!? 一体何が起こった!?」
藤堂「くぅっ……KMFは出せるか!!」
ラクシャータ「全機整備完了済み、いつでもオッケーよぉ♪」
藤堂「よし!! 出られるものは全員出るぞ!! 全力で我らが息子を取り戻せぇ!!」
カレン「これってバベルタワーの時の……!? ルルーシュ……!!」
シュナイゼル「ん? あのKMFは……これは運が巡ったかもしれないねぇ」
シュナイゼル「アーニャ、ずっと待たせて悪かったね。あのKMFを捕らえられるかい?」
アーニャ「破壊、なら……」グッ
ズギュウゥゥゥゥン!!
アーニャ「!! えっ!?」
ブゥン! ブゥン! ブゥン!
アーニャ「……何? あの、動き……」
シュナイゼル「どうにも捉えられないか……まぁ、これ以上はこちらが危ない。アーニャ、帰っておいで」
アーニャ「了解……残念」
シュナイゼル「アーニャを収容次第全速で本国に帰還しよう。次の手を考えなきゃね」
カノン「営倉に入れたアレはどうします? 結構あそこ揺れますけど、ましてや全速出すと」
シュナイゼル「はて、アレ? なんのことだったかなぁ?」
ルルーシュ「何をしているロロぉ!! 俺は帰るんだ、操縦席からどけぇ!!」ゲシゲシッ
ロロ「血の繫がりがなくても絆で結ばれた家族……!! 兄さん、僕キュンときたよ!!」
ロロ「安心してね兄さん! 僕一人でお父さんでもお母さんでもお嫁さんでも、何でもこなしてあげるから!!」
ルルーシュ「ふざけるな!! 俺の話w―――
キュイィィィン!!
ロロ「そうさ……今までだってそうだった! 僕は兄さんの、たった一人の弟で!!」
ロロ「ずっと僕を……! 僕だけを家族として見てくれたんだ!」ググッ
ロロ「あんなとってつけたような、紛い…物の、付け焼刃の家族、なん…か!!」ハァハァ
ロロ「僕の想いに!! 敵うものかぁーーーーっ!!」
ルルーシュ「―――を聴け!! お前、何しているのかわかt―――
キュイィィィン!!
ロロ「兄さんの、たった一人の……家族で!!」ハァハァ
ロロ「僕が兄さんの!! 支えになるんだっ!! ロロ・ランペルージと、してっ!!」
ルルーシュ「―――っているのか!! いい加減怒るぞ!!」
ロロ「兄さんが僕のために怒ってくれる!? ぼ、僕はちゃんと、人間として……!!」
ピピピッ(通信)
藤堂『ルル坊!! 無事かぁーっ!!』
カレン『ルルーシューーー!!!』
藤堂『待ってろ息子ぉ!! 今助けてやる!!』
カレン『言ったでしょ、あなたと一緒にいるって!!』
ルルーシュ「だめだ、来ちゃいけない!!」
ロロ「兄さんが父と、お嫁さんと認めた人!! 僕はそんな人要らない!!」
キュイィィィン!!
ルルーシュ「やめろロロ!! 俺の大事な―――
藤堂『喝ッ!!!』
パキィィィン!!
ロロ「嘘!? 何で!!?」
藤堂『どこのどいつか知らんが、一家の大黒柱を甘く見るな!!』
ルルーシュ「二人とも聴いてくれ!! コイツの事は俺が自分で決着をつける!!」
藤堂『何!?』
カレン『でも、私……!!』
ルルーシュ「心配するな、必ず戻る! 戻ったら全て話す、だから俺を信じて待っていてくれ! 俺達の家、斑鳩で!!」
藤堂『ルル坊……!!』
カレン『……約束だからね! 嘘ついたら許さないんだから!!』テッシュウー
ルルーシュ(よし……これで、あとはこのバカを!!)
ロロ「退いた!? ……よし、あとは出来る限り遠くへ……!!」
キュイィィィン!!
――――――――――――――――――――――――
―――――――――――
ルルーシュ「ロロ……どうして俺を連れ出した?」
ロロ「兄さんは……嘘つき、だから……」ムシノイキ
ルルーシュ「え?」
ロロ「嘘、だよね? 僕の事、嫌いになったなんて……」ゼェゼェ
ルルーシュ「フッ、そうか、見抜かれていたか。―――ああ、お前の兄は、嘘つきなんだ」
ロロ「もち、ろんだよ……僕は、兄さんの事なら…なん、でも」スゥ
ルルーシュ「だがちゃんと本当の事だって言うぞ?」
ロロ「……え゛」
ロロ「兄、さん……? だって、僕h
ルルーシュ「確かに血の繫がりがなくとも絆があれば家族となる。それは立証された」
ロロ「そうだ、よ兄さん……それは僕、が最初n
ルルーシュ「だがお前には絆を一片たりとて感じない」
ロロ「う、そだ……!」プルプル
ルルーシュ「残念ながら現実だ。シャーリーを殺め、ナナリーまで亡き者にしようとしたお前に、弟たる資格があると想うのか?」
ルルーシュ「自分の世界だけで完結して、新たに家族ができる事すら否定するお前に、我が弟たる資格はない!!」
ロロ「!!!!」ガァーン!
ルルーシュ「お前はやりすぎたんだよロロ。もっと視野を拡げていれば、こうもならなかったものを」
ロロ「あ、あアァ……」プルプル
ルルーシュ「せめてもの手向けだ。お前に最もふさわしいギアスをかけてやる」スッ
ロロ「に、イ、さn
ルルーシュ「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア……いや、ルルーシュ藤堂が命じる―――」
ルルーシュ「ボロ雑巾のように地面を這い蹲っていろ!!」
キュイィィィィン!
ロロ「!!!!」キィィィィン……パァン!!
ロロ「イエス、マイ…ブラザ……」シュタッ
ガッサガッサ(地面でうつ伏せになって金魚運動してるとお考え下さい)
ルルーシュ「さらばだ偽りの弟ロロ、我が人生最大の汚点よ……」
ルルーシュ「貴様が大事にしていたストラップは、もうあげたかった相手もいない……冥土の土産にくれてやる」ポイッ
藤堂「むぅ……息子の危機に手を拱いているしかできんとは!!」
千葉「あなた、落ち着いて下さい……帰ってくると言ったんでしょう?」
カレン「ルルーシュ……お願い、無事でいて……」
ピピピッ
オペ子ズ「! レーダーに反応、蜃気楼です!!」
キィィィィィィン!!
藤堂「おぉ……帰ってきたか!!」
千葉「本当に……心配ばかりかけて!!」
ルルーシュ「――ただいま、みんな。ケリはつけてきたよ」
カレン「―――ルルーシュッ!!」
ルルーシュ「格納庫に下りたら、全員を集めてくれないか。伏せていた事も、ギアスの事も、何もかも全て話すよ……」
ギアスの力の事、ゼロとして立ち上がった理由、虐殺皇女の真実。
足掻き続けた果てに、妹ナナリーを始め、様々な物を失い続けた事。そして―――
―――斑鳩 ゼロ改め、ルルーシュの私室―――
カレン「みんなが理解してくれてよかったわね~。あのロロとかいう子の事は、私も驚いたわ」
ルルーシュ「だからって、あの仕打ちはないんじゃないか? みんなから一発ずつ殴られるなんて……イッテテテ!!」
カレン「それで済めば安いものでしょ? もしみんなが家族と認めてくれなかったら、こうして生きてさえいないんだから。はい、おしまい!」ペシッ
ルルーシュ「カレンのビンタが一番痛かったんだが?」
カレン「うっさいわねぇ、愛の鞭よ!! 愛の鞭!!」
ルルーシュ「そんなトコ隠れてないで出て来いよ。誰も虐めたりしないから。それと、ご主人様じゃないっていっただろ?」
C.C.「じゃあその、なんとおよびすれば……」
ルルーシュ「そうだな、お兄ちゃんでいいぞ?」
カレン「それじゃ私がお姉ちゃん、か……なぁんかフクザツ」
ルルーシュ「じゃあいっそ、パパとママのがいいか?」
カレン「ちょ! 何バカいってんのよ!!」
ルルーシュ「フッ……フフハハハハハハハッ!!」
カレン「……ったく、もぅ」
C.C.(ぱぱ、まま……なんだろう、なんだかあったかい……)
カレン「ラクシャータさん! どうしたんです?」
ラクシャータ「いや若いお二人にねぇ? 今後の子作りの予定とか訊いとこうなんて思ったり♪」
ルルーシュ「!?」
カレン「そっ……そういうのは、せめて学校出るまでお預けってお藤さん達も!!」
ラクシャータ「へぇえ~? だったらぁ……若旦那はアタシが毒見しておこうかしらぁ?」ペロォリ
ルルーシュ「!!」ゾクリッ!!
カレン「だめぇ!! 絶対だめですってばぁ!!」
ラクシャータ「あっはは~♪ 冗談冗談♪ まぁ精々ガンバッてねぇ~♪」スタコラサー
神楽耶「ねぇゼロ様?」
ゼロ「なんでしょうか神楽耶様?」
神楽耶「何だか最近のゼロ様、見るたびに体格や背の高さなど変わってるような気がするのですが、私の見間違いじゃございませんよねぇ? 今日もずいぶんパツンパツンな……」
ゼロ「め、滅相もない! 私はゼロ、世界を壊し創造する男! その根底たる思想さえあれば、多少の見た目など!」
神楽耶「まぁもともと何でもありの方というのは存じてますが……」
ゼロ「そうです、私は自分の体にさえ奇跡を起こすのです!!」
神楽耶(何だか加齢臭? とかいうのを感じますわ……これやっぱりニセモノですよねぇ?)
ゼロ(バレてないよな、バレてないよな!? 男・南! 折角得た幸せの時を手放してたまるものかぁーっ!!)
神楽耶「う~~……ホントのゼロ様にはいつお逢いできるのでしょうか……」ハフゥ
星刻「最近ずいぶんと斑鳩部隊の結束が固くなったようだな」
香凛「以前と関係が変わったようです。なんでも、血ではなく絆で結ばれた家族、とか―――」
星刻「絆、家族……か。ならば私も、天子様と……ぐっ、ガハァ!!」
香凛「星刻様!! 大丈夫ですか!?」
星刻「だ、大丈夫だ……私に甘え摺り寄って くる幼妻な天子様を想像し悶えただけだ……!!」
香凛(……この人総司令でほんとに大丈夫なのかしら?)
シャルル「……」
シャルル「……C.C.がぁ、来ぉないなぁ……」
シャルル「これでぇは、ラグナレクの接続が行えぇんではぬぁいかぁ……」
シャルル「……だぁが、ルルゥーシュは息災なよぉうだなぁ……」
シャルル「今のあやつなぁら、このシステム無ぁしでも世界を変えられるやもしれんなぁ……」
シャルル「なぁらばワシは見届けようぞ我ぁが愚息よぉ……なぁに、時間はいくらでぇもあぁる!!」
シャルル「フフフフフ、フフフフハハハハハハハ……」
シャルル「フブフハァッハァッハァッハッハァッ!! オォールハィルブリタァァァ~ニアァ~ッ!!」
シャルル「……んだぁができるなら……孫は見たい、な……」
藤堂「あれが天空要塞ダモクレスか……これまでのようにはいかなさそうだな」
ルルーシュ「あそこにナナリーが……俺は……」
千葉「案ずるなルルーシュ。お前は一人ではないのだ、そうだろ?」
藤堂「そうだ、今や支配に抗う全ての人々がお前の味方だ。そしてお前の側には我々がいる」
玉城「そうそう! それにお前の妹ってんなら、俺達にとってもそうだろ!?」
ジェレミア「ならば助け出すのみです! そう、我ら全員の全力を挙げて!」
ルルーシュ「みんな……!!」
カレン「だから、ナナリーも取り返して、帰りましょう! あの日常へ!」
ルルーシュ「カレン……そうだな、いつでも頼らせてもらう」
ディートハルト「さぁ、いよいよ番組も大詰めといった所でしょうか!!」
藤堂「ルル坊!! 最後の戦いだ、皆に喝を入れてやれ!!」
カレン「ルルーシュ! 行こう!!」
ルルーシュ「ああ、行こう! 俺達の望む明日のために!! ―――黒の騎士団、出撃!!」
こうして一人の少年を中心とし、世界を二分する壮大な最後の家族喧嘩が始まった。
血で繋がれた家族と、絆で繋がれた家族。
どちらの家族が勝ったのかは、また別のお話。
だが、黒髪の少年と赤髪の少女は、いかなる時も常に共に在ったそうな――――――
おしまい。
なんという王道臭い最終決戦エンド
Entry ⇒ 2012.09.25 | Category ⇒ コードギアスSS | Comments (2) | Trackbacks (0)
菫「お茶を飲んだら尭深がちっちゃくなった?」淡「うん!」
ガチャ
尭深「おはようございます…」
尭深「…誰もいない。今日は一番のりか…」
尭深「あれ、なんだろこのお茶の缶?『若返りの茶』…?」
尭深「そういえば今日、誠子が珍しいお茶を見せるとか言ってたっけ…」
尭深「……」ソワソワ
尭深「飲んでも…いいよね?」
尭深「…いただきます」ゴクリ
~~~~~~~
バタン
淡「みんなおっはよー」
淡「やったーいちばんのりだー」
淡「みんな来るまでソファーで寝てようかな~」トコトコ
たかみ「Zzz…」スヤスヤ
淡「…だれ、この子」
淡「ちょ、ちょっと起きなさいあなた!」ユサユサ
たかみ「ふにゃ…?」ムニャムニャ…
淡「起きた?」
たかみ「…おねえちゃんだれ?」
淡「あたしは淡、大星淡よ。あなた、自分の名前言える?」
淡「そうなんだ、タカミちゃんって言うんだ~……へ?」
たかみ「どうしたの、おねえちゃん?」キョトン
淡「タカミって…え、なに?…同姓同名?」ブツブツ
たかみ「お、おねえちゃん?」
たかみ「おねえちゃん?」ウルウル
淡「こんな小学1年生くらいの子供がいるわけないじゃん」ブツブツ
たかみ「うぅ……」ウルウル
淡「…ってなんで泣きそうになってるの!?」
たかみ「おねえちゃん…たかみをむししないでよぉ…」ウルウル
たかみ「…うん」ニコッ
淡「ふぅ…なんとかなった、かな?」
たかみ「あわいおねえちゃん!」
淡「なにかな、タカミちゃん?」
たかみ「だいすきー」ダキッ
淡「はいはい、タカミちゃんはあまえんぼうだね」ヨシヨシ
淡「はいはい…にしても…この子はいったい…」
ガチャ
亦野「おはようございマス」
淡「セーコ!」
たかみ「!?」
亦野「その子は…」
淡「なにか知ってるの!?」
亦野「まあね。ほら尭深~、怖くないよ~」
たかみ「おねえちゃん…だれ?」ビクビク
亦野「お姉ちゃんはね、誠子、って言うんだ。よろしくね」
たかみ「…はじめまして」ビクビク
淡「セーコ…その子のことなにか知ってるの?」
亦野「知ってるも何も…淡もよく知ってる、渋谷尭深本人だよ」
淡「……………は?」
淡「お茶?」
亦野「通販で買ってみたんだけどね…若返りの茶…まさか本物とは…」
淡「なんでそんなもの買ったの?」
亦野「興味本意…かな?胡散臭い商品ってつい買ってみたくなるんだよね」ハハハ…
淡「それで…タカミはずっとこのままなの?」
亦野「効果は半日くらいだとかいってたかな?それまで淡が面倒みてあげなよ」
亦野「いや…なんだか今の尭深はアタシのこと怖がってるし、それに…」チラッ
たかみ「……」ヒシッ
亦野「さっきからずっと淡にしがみついてるしさ」
ガラッ
菫「すまない、遅くなった」
照「おはよう、みんな」
淡「あ、テル、菫…」
たかみ「……」ギュッ~
菫「ん?なんだその子供は…それに尭深は遅刻か?」
亦野「アタシが説明します。実は……」
~~~~~~~~~
菫「…にわかには信じられない話だが…」チラッ
たかみ「?」チョコン
照「たしかに渋谷さんに似てる…かな?」
亦野「それで…お茶の効果が切れるまで誰かが面倒見ないと…」
淡「よしよしタカミちゃんはいい子だね~」ナデナデ
たかみ「えへへ~!」ニパー
渋谷さんが淡ちゃんに充電スタイルで座ってます
照「え?菫って子供好きだったっけ?」
菫「部の面倒ごとを解決するのは部長の仕事だろ?」
菫(尭深に私の秘蔵の衣装を着せて遊びたい!…とは言えないな)
菫「ほら、尭深。菫お姉ちゃんのところにおいで」
たかみ「すみれおねえちゃん…なんだかこわい…」フルフル
菫「」ズーン
照「す、菫!大丈夫だよ、こわくなんかないよ!」アワアワ
亦野「ねぇ淡…尭深は淡になついてるみたいだし淡が面倒みてやってくれない?」
淡「え…でも…」
たかみ「あわいおねえちゃん…たかみのこときらいなの?」ジッ…
淡「うぐっ……」
たかみ「おねえちゃん…」ウルウル
淡「あ~…もう!わかった!あたしがタカミちゃんの面倒みてあげるよ!」
たかみ「あわいおねえちゃ~ん!」ギュッ~
照「菫!あなたまで幼児退行しないでよ!」
亦野「これは今日の部活は中止かな?」ハハハ…
淡「…だね」
たかみ「あわいおねえちゃん」クイクイ
淡「どうしたの、タカミちゃん?」
たかみ「…おしっこいきたい」
あ?
亦野「子供なんだからついていってあげなよ、淡」
淡「あ…そうだね。タカミちゃん、トイレまでいっしょにいこうね~」
たかみ「うん…」モジモジ
亦野「いってらっしゃ~い」フリフリ
淡「………」テクテク
たかみ「………」トコトコ
淡「……大丈夫?我慢できる?」テクテク
たかみ「…うん」トコトコ
淡(うわ…ヤバいかも…急ごう!)
淡「ちょっと急ごうか、タカミちゃん?」テクテク
たかみ「………」ピタッ
淡「タカミちゃん?」
たかみ「あわい…おねえちゃん…」プルプル
淡「ほら!あとちょっとだから…ね?」
たかみ「……」ウルウル
淡「よしよし、いい子いい子」ナデナデ
淡「あ…」
たかみ「ごめんなさい…」チョロチョロ…
たかみ「ごめんなさい…ごめん…なさい…ごめん…なさい…」チョロ…
たかみ「…」ペタン
たかみ「ふぇぇぇええええん!!!!」ポロポロ
たかみ「ふぇえぇぇええん!!!!」グスッ
淡「泣かないでタカミ!」
たかみ「」ビクッ
淡「よかった…泣き止んだ…」ホッ…
たかみ「うわあぁぁあぁあん!!!!あわいおねえちゃんにおこられたぁ~!!」ボロボロ
淡「」
~~~~~~
淡「…落ち着いた?」
たかみ「…うん」グスン
淡「大丈夫だから…安心しなさい!」
たかみ「たかみのこと…エグッ…きらいに…エグッ…ならない?」グスン
淡「なるわけないでしょ!」
たかみ「あわいおねえちゃん…ごめんなさい…」グスン
淡「次からはもっとはやくいうこと!いいね?」ナデナデ
たかみ「…うん!」ニッコリ
淡「おもらしの後始末も終わったし…部室に帰ろっか?」
たかみ「うん!」
淡「服も汚れちゃったし着替えないとね…あたしの体操着でなんとかなるかな?」
たかみ「あわいおねえちゃんのたいそうぎ!?いいの?たかみがきてもいいの?」キラキラ
淡「着られればね」
たかみ「わーい」
淡「もどりました~」
たかみ「ました~」
亦野「おかえり。戻ってきてなんだけど今日の部活は中止だってさ」
淡「菫ェ…」
亦野「淡、今日ははやく帰って尭深と遊んであげて」
淡「そうする…でもその前に着替えさせないと…タカミちゃ~ん、こっちおいで」ゴソゴソ
たかみ「はーい」トコトコ
淡「タ、タカミちゃん、バンザイしてちょうだい」
たかみ「ばんざーい」
淡「脱がせるよ」ヌギヌギ
淡(うわっ…まだ毛が生えてないよ…小学生くらいなら当たり前か…)ジィ
たかみ「あわいおねえちゃん?」
淡「あ…な、なんでもないよ!着せてくよ!」
たかみ「はーい」ニコー
淡「はい着替え終わり!汗臭くてごめんね」
たかみ「あわいおねえちゃんのにおい…いいにおい…」クンクン
淡「嗅がないでよ!///」
たかみ「えへへ」ニパー
淡「もう…」
亦野「もういいかい、お二人さん?部室の鍵を閉めたいんだけど…」ニヤニヤ
淡「今出るよ、セーコ!タカミちゃん、行こっ」
たかみ「うん」ギュッ~
亦野「それじゃアタシはこっちだから」テクテク
淡「バイバイセーコ!…ほらタカミちゃんもバイバイしなさい」
たかみ「…バイバイ」フリフリ
亦野「やっと慣れてくれたみたいだね、バイバイ尭深」バイバイ
たかみ「…」ササッ
淡「コラコラ隠れちゃダメでしょ、タカミちゃん」
亦野「ハハハ、まあいいさ。また明日ね尭深、淡」
-淡自宅-
淡「…というわけでお宅のタカミさんは今日あたしの家に泊まりますので…」
淡「はい、ありがとうございます。では失礼します」ガチャン
淡「ふー…緊張したー」
たかみ「あわいおねえちゃん、おつかれさま?」ギュ~
淡「ありがとね、タカミちゃん」ナデナデ
たかみ「えへへ~」ニパー
淡「今日はあたしのお母さんもお父さんも帰ってこないからいっぱい遊べるよ!」
たかみ「ほんとに!?わーいわーい!」キャッキャ
淡「遊ぶ前に…お腹すかない?」グゥ
たかみ「…うん///」クゥ
淡「よーし、なんでも好きなもの作ってあげちゃうよ!なに食べたい?」
たかみ「えっとね、えっとね…たかみ、オムライスたべたい!」
淡「オムライス…いいね!ちょっと待っててね、とびきり美味しいの作ってあげるから!」
たかみ「わーい」ルンルン
淡「おまたせ~、淡特製オムライスの出来上がりだよ!」
たかみ「わー!おいしそー!」
淡「どうぞめしあがれ」
たかみ「いっただきまーす」パクッ
淡「どうかな?」
たかみ「すっごくおいしー!」パァァ
淡「よかった。あたしも食べよっと。いっただきまーす」モグモグ
たかみ「…」ガツガツ
淡「そんなに急いで食べると喉につっかえるよ」
たかみ「うぐっ…」
淡「…ってタカミちゃん!大丈夫!?ほらお水だよ」トントン
たかみ「んぐんぐ…ぷはー」コクコク
淡「まったく、もー…ふふふ」
たかみ「ありがと、あわいおねえちゃん!」ニパー
淡「あ、ほっぺにご飯粒が…」ヒョイパク
たかみ「えへへ~」ニパー
淡「あはは!」ニコッ
たかみ「ごちそーさまでしたー」
淡「それじゃ洗い物するから手伝ってくれるかな?」
たかみ「たかみ、おてつだいするー」
淡「偉いぞ、タカミちゃん」ナデナデ
たかみ「えっへん!」ドン
淡「じゃあ、あたしが洗うから、タカミちゃんは拭いてね」
たかみ「りょーかい!」ビシッ
淡「洗い物も終わったし、遊ぼうか!?」
たかみ「わーい!」キャッキャ
淡「なにして遊ぼうかな…」
たかみ「たかみ…おほんよみたいなー」モジモジ
淡「おほん?…あぁ、本か!絵本なんかあったかな…ちょっと探してから待っててね」
たかみ「はーい」
淡「あ、あったあった。この前菫にもらった絵本!」
淡「聞いたことない物語だったけど、面白かったしタカミも気に入るぞー」ドタドタ
淡「おまたせっ!」
たかみ「おーそーいー」ブーブー
淡「ごめんごめん。じゃあ読むから膝に座って」
たかみ「うん」チョコン
淡「それじゃ、『シャープシューター』の始まり始まり~」ペラッ
作:パンジー弘世
絵:エイスリン・ウィッシュアート
淡「…こうしてテルーは妹のサキーと結ばれたのでした。めでたしめでたし」パタン
たかみ「わーい」ウトウト
淡「タカミちゃん、眠い?」
たかみ「うん、ちょっと…」
淡「お風呂入って寝ようか」
たかみ「うん」
淡「今日はシャワーだけにしようね」キュッキュッ
たかみ「うん」ウトウト
淡「シャンプーするから目を閉じてね~」
たかみ「うん」ウツラウツラ
淡「かゆいところはありませんか~?」シャカシャカ
たかみ「ないー」ウツラウツラ
たかみ「おー」
淡「それ~」シャワワー
たかみ「…ぷはー」プルプルプル
淡「はい、流し終わったよ。次は体洗うね」シュコシュコ
たかみ「おねがい~」
たかみ「…」ウツラウツラ
淡(にしても…タカミの身体って柔らかいなぁ…)
淡「…」プニプニ
たかみ「!くすぐったいよ~」
淡「……」ツンツン
たかみ「きゃはははは!!やめて~」ジタバタ
淡「あ…ごめんねタカミちゃん」
たかみ「もー!しっかりやってよ、あわいおねえちゃん!」
淡「はいはい」ゴシゴシ
たかみ「~~~♪」
たかみ「どしたの?」
淡「な、なんでもない!続けるよ~」
淡(無心で…無心で…)
淡「……」ゴシゴシ
たかみ「~~~♪」
たかみ「うん」
淡(なんとか平静を保てた…)シャワワー
淡「…よし、あがろうか」
たかみ「うん!」
淡「風邪引かないようにしっかり拭いてね」フキフキ
たかみ「あわいおねえちゃん、ふいて~」
淡「自分でやりなさい!」
たかみ「けちー」
淡「…仕方ないな~、今回だけだよ?」フキフキ
たかみ「あわいおねえちゃんだいすき~」
淡「調子いいんだから、まったく…」フキフキ
たかみ「あわいおねえちゃんの!?わーい!」ルンルン
淡「じゃあ寝室にゴー!」
たかみ「ごー!」キャッキャ
淡「コラコラ暴れちゃダメでしょ」
たかみ「いっしょに寝ようね!」
淡「いいよ、タカミちゃん」
たかみ「わーいわーい!」
淡「電気消すよ」
たかみ「そのまえに~…」モジモジ
淡「その前に?」
淡「ぶふぅ!?」
たかみ「…ダメ?」ウルウル
淡「い、いいけど…ホントにいいの?」
たかみ「もっちろん!」
淡「えっと…えっと…///」アワアワ
たかみ「はやく~」
淡「い、いくよ…」
たかみ「んー…」
淡(タカミの唇まで…あと30cm…あと20cm…あと10cm…)ドックン…ドックン…
淡「………」チュゥ…
淡「……ぷはっ!///」
たかみ「えへへ…あわいおねえちゃんとちゅーしちゃった~」ウキウキ
淡「ね、寝るよ!///」
たかみ「おやすみなさいっ!」
淡「……」
たかみ「あわいおねえちゃん…ねちゃった?」モゾモゾ
淡「まだ起きてるよ」
たかみ「えっとね、たかみ…あわいおねえちゃんのおよめさんになりたい!」
淡「っ!?ゲホッゲホッ…」
たかみ「だ、だいじょうぶ?」
淡「大丈夫だよ、タカミちゃん」
淡「グー、グー」
たかみ「…あわいおねえちゃん?」ツンツン
淡「グー、グー」
たかみ「ねちゃった…」
たかみ「…おやすみなさい」チュゥ
淡(なにこれかわいいいいいいいいいいい!)
淡(ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい)
淡(と、とりあえず羊を数えて落ち着こう)
淡(新道寺の中堅が一人、新道寺の中堅が二人、新道寺の中堅が三人…)
淡「Zzz…」スヤスヤ
たかみ「Zzz…」スヤスヤ
淡「タカミ…大好き…ムニャムニャ」スヤスヤ
たかみ「わたしもぉ…」スヤスヤ
~~~~~~
淡「Zzz…」
尭深「…」パチッ
尭深「…」ムクリ
尭深「…?」キョロキョロ
尭深「ここ…どこ?…隣にいるのは…淡ちゃん?」
淡「タカミちゃん、お嫁さんにしてあげるよ~…ムニャムニャ」グーグー
尭深「お、お嫁さん!?ちょ、ちょっとどういうこと?淡ちゃんってば!」ユサユサ
淡「んー?あ、おはようタカミ…」ボー…
尭深「こ、これっていったい…」
淡「おはようのちゅー」チュゥ~
尭深「ん!?…」チュゥ…
淡「えへへ、タカミとキスしちゃった~」
尭深「キュウ…」バタリ
淡「タカミと…キス…?ってタカミ、元に戻ったんだね、タカミ起きてよ!」ユサユサ
カン
淡「昨日は大変だったな…タカミの誤解を解いたりして疲れた」ハァ…
淡「…タカミと仲良くなれたから、まあいっか」
淡「ん?このお茶は…『若返りの茶』!?」
淡「……」ゴクリ
~~~~~~
あわい「おはよーございます!」
尭深「…あなた、だれ?」
あわい「おーほしあわいです!」
尭深「………え?」
カン
やめようと思ってるんだけどな…
Entry ⇒ 2012.09.25 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
やよい「だーれだ?」P「おっ?」
P「……」
P「(この声はやよい…)」
P「(後ろから目隠し…)」
P「(こんな茶目っ気のある遊びをしかけてくるとは…)」
P「(しかも…)」
やよい「ふふー♪」ペト~…
P「(身長足りないから背伸びして俺にもたれかかってる感じだし…)」
P「(まぁ、なんだ…)」
P「(かわいい)」
小鳥「(なにあれ、かわいい♪)」
P「……」
P「(やよいが、だーれだ…)」
P「(何か意図があるのだろうか?)」
P「(やよいと答えるのは簡単だ)」
P「(しかし、やよいが俺にかまってもらいたいとかそういうかわいいことを考えてたら)」
P「(間違えてあげる方が良いのだろうか?)」
やよい「……」
やよい「…プロデューサー?」
P「(いや、やよいの場合は本気で自分の名前を当てて欲しいという期待も…)」
小鳥「(かわいいなぁ♪)」
P「あ、あぁ、すまん…ちょっと待ってくれ…」
やよい「あっ、はいっ!」ペト~…
P「(もうやよいが踏ん張り疲れて、軽くおんぶ状態だ…)」
P「(多分、傍目から見たら…)」
P「(凄いかわいい姿なんだろうなぁ…)」
小鳥(それはもう♪)」
やよい「……」ペト~…
P「(そろそろ答えてあげないと、やよいが待ちくたびれちゃうな)」
P「……」
P「(…一回、間違えてみようかな)」
P「…よし!」
やよい「う?」
P「お前の声がわかったぞ!」
やよい「あっ♪ホントですかぁ?」
P「(かわいい)」
小鳥「(良い笑顔♪)」
やよい「え?」
やよい「じゃあじゃあ間違えちゃってたら、どうすれば?」
P「そうだな…そんなことは無いと思うが…」
P「ちゃんと自分の耳で、お前の声を理解したいからな」
P「悪いけど、そのまま目隠ししたままの状態でいてくれ」
やよい「う~…間違えられちゃったらショックかもぉ…」
やよい「あっ、でもでも!間違えてるなんてことはないんですよね!?」ペト~…
P「……」
P「(すまん…今から1回間違える…)」
小鳥「(間違えましょう♪)」
やよい「あっ!はいっ!」
やよい「……」ワクワク…
P「お前は…」
やよい「……」ワクワク…!
P「亜美だ!」
やよい「…!」ムスッ…!
やよい「ぶー!ぶっぶーです!」ペト~…
P「(かわいい)」
小鳥「(膨れた顔で寄りかかってる、やよいちゃんかわいい♪)」
P「なっ…!?あ、亜美じゃなかったのか…?」
やよい「違いますよぉ!」
やよい「うぅ~…」
やよい「間違えないって言ったのに~…」ペト~…
P「……」
P「(俺はこの反応を期待してた)」
小鳥「(期待通りの反応です♪)」
やよい「…う?」
P「冷静に考えたら、お前の声は亜美じゃなかったな」
やよい「あっ…」
やよい「こ、今度こそ、わかってもらえましたか!?」ペト~…
小鳥「(背伸びを維持しようとするたびに、もたれかかっちゃうやよいちゃんかわいい♪)」
P「ごめんな…お前の声を間違えちゃうなんて…」
P「俺、どうかしてたよ…」
やよい「そ、そんな…」
やよい「わ、わかってもらえたのならそれで大丈夫ですっ!」ペト~…
やよい「私の方こそ…」
やよい「さっき、ちょっと…あっ!?…むーってしちゃって、ごめんなさい…」ズッ…スッ!
P「(かわいい…)」
小鳥「(ずれた目隠しをとっさに修正する、やよいちゃんかわいい♪)」
やよい「呼んでもらっても大丈夫ですか…?」
やよい「私の名前…」ペト~…
P「……」
P「(答えてじゃなくて…)」
P「(呼んで…)」
P「(やよいは本当に俺にかまってほしかったのか…)」
P「(ちょっとかわいすぎないか?)」
小鳥「(ええ、とっても♪)」
満面の笑み浮かべながら鼻血垂れ流しているとしてもか?
……あれ、可愛いな
P「じゃあ…呼ぼうか?」
やよい「あ…は、はいっ!」ペトッ!
P「……」
やよい「……」ドキドキ…
P「お前の名前は…」
やよい「……」ドキドキ…!
P「…やよい、手を離してもらっていいか?」
やよい「あっ…♪」
やよい「はぁい♪」バッ…!
P「……」クルッ…
やよい「うっうー♪正解ですっ♪」ニコッ!
P「うわっ、かわいい」
小鳥「かわいいですねぇ♪」
P「やよい、いきなりどうしたんだ?」
やよい「う?」
P「あぁ、いや」
P「ちょっとびっくりしちゃってさ」
やよい「びっくり?」
P「うん」
P「いきなりやよいが、だーれだ?なんて、茶目っ気のある遊びをしてくるなんて思わなかったからさ」
やよい「あっ…も、もしかしてご迷惑でしたかぁ…?」シュン…
P「いやいや、そんなことはないぞ!」
小鳥「むしろ喜んでたわよ♪」
P「あぁ」
やよい「そ、それなら安心ですっ!」
やよい「え、えーっとぉ…」モジモジ…
P「…?」
やよい「…えへへ♪」
やよい「プロ…お兄ちゃんに私の声、当てて欲しいなぁって思ったの…」
やよい「それだけ…♪」
P「……」
P「うわやよいかわいい」
小鳥「本当にかわいいです♪」
P「あぁ、間違えるものか」
やよい「…えへへー♪」
P「(しかし本当にかまってほしいだけだったとは…)」
P「(ここまで懐かれていると…なんだ…)」
P「本当に兄になっても…良いな…」
やよい「えっ?そ、それはダメっ!」
P「えっ?」
やよい「あっ…!」
やよい「あ、う、うぅ…」
小鳥「がんばれやよいちゃん♪」
やよい「ほ、ホントのお兄ちゃんじゃダメで…そのっ…」
P「……」
やよい「う、うぅ…」
やよい「お…」
やよい「お、おっきくなったらお兄ちゃんと結婚したいからお兄ちゃんはお兄ちゃんじゃダメー!」
P「うわあああああああああああ」
小鳥「きゃあああああああああ♪」
やよい「は、はいっ!?」ビクッ!
P「おいでっ!」バッ…!
やよい「えっ?」
やよい「……」
やよい「…お、おじゃまします…?」ポスッ…
P「やよいっ!」ムギュッ…!
やよい「はわっ!?」
P「お前の気持ちが大人になっても変わらなかった、その時は…」
P「結婚しよう!俺、ずっと待ってるから!」
やよい「あ…」
やよい「…うんっ♪」
やよい「私をお兄ちゃんのお嫁さんにしてくださいっ…♪」ペト~…
小鳥「あれが大人の「だーれだ?」よ」
亜美「亜美、まだまだ大人になれそうにないや…」 おわり
Entry ⇒ 2012.09.25 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (2) | Trackbacks (0)
ゼロ「新たなKMFを造ってくれ」ラクシャータ「はぁ?」
ラクシャータ「いつもながらいきなりね~、虎の子の蜃気楼まで出したのにまだご不満?」
ゼロ「確かに蜃気楼の力を見せつける事は出来た。だがカレンが捕われた今、戦力の大幅低下は否めない」
ゼロ「対してブリタニア側はと言えば、まだラウンズもギルフォードらも健在だ。こちらも更なる戦力が求められる」
ラクシャータ「まぁ星刻は中華から離れられないようなもんだしぃ、神虎に期待ともいかないわねぇ」
ラクシャータ「んじゃどんなコが入用か教えてくれなぁい?」
ゼロ「ズバリ!! 変形合体するKMFだ!!」
ラクシャータ「……ごっめぇん、よく聴こえなかったわぁ」
ゼロ「冗談はやめにしてくれ。私はいつでも本気の事しか言わん」
ラクシャータ「確かに今までもそうだったわよねぇ、んじゃもう一回言ってくれるぅ?」
ゼロ「フッ、理解してくれるまで何度でも言ってやるさ」
ゼロ「私が望むのは、変形・合体を可能とするKMFだ!!」
ラクシャータ「……ゼロさぁ、ちょっと疲れてるんじゃなぁい? ちったぁ寝た方がいいよぉ?」
ラクシャータ「ホンットに脳味噌まともなんなら、少ぉ~し考えればわかるでしょぉ?」
ラクシャータ「第一、アンタ専用の蜃気楼はウチ唯一の可変機でしょうに」
ゼロ「わからんやつだな。変形するだけならブリタニアにもナイトオブスリーのトリスタンがある」
ゼロ「今更変形するだけの機体なんて二番煎じにしかならん、だから合体する機体がいるのだよ!!」
ラクシャータ「……なぁ~んでそこまで合体にこだわるかねぇ」
ゼロ「違うな、間違っているぞ。アレは装備を変えただけだ、合体ではない」
ゼロ「合体というからには、2機以上の組み合わせで新たな1機となる必要がある。私が言っているのはそれだ」
ラクシャータ「そんなんムリだってばさぁ。は~い、この話は終わり~」
ゼロ「バカをいうな! やりもしないうちから全否定するんじゃない!!」
ラクシャータ「あんたさぁ、KMFがどんな機体かぐらいわかるわよねぇ?」
ゼロ「今更だな。全長4~5m前後、ランドスピナーとスラッシュハーケンを基本武装とし、腹部から背中にかけて脱出機構をかねたコクピットブロックが存在する。大まかにこんなところだろう」
ラクシャータ「今自分で気づかなかったぁ? コクピットブロックの占有領域ってかなりでかいのよぉ」
ラクシャータ「合体なんて言ったら、そのときコクピットブロックどうなっちゃうわけぇ?」
ゼロ「それを考えるのがお前達の仕事だろう!」
ラクシャータ「うっふふ~、アタシ珍しくゼロの事殴りた~くなっちゃたわぁ♪」
ゼロ「それは当然だな。既存の機体とはフレーム構造からして異なるのだから」
ラクシャータ「なぁんだ、ちゃんとわかってんじゃないさ。その通り、規格外れだから開発も整備も面倒なのよぉ」
ラクシャータ「そこに合体なんてま~た面倒な事入れちゃったらぁ、はいどうなるでしょう?」
ゼロ「面倒かどうかは問題じゃない。やれるのかやれないのか訊いている」
ラクシャータ「」
ゼロ「当然だ。カレンがいない以上、戦力増強のためなら面倒などという言い訳を聞く気はない」
ラクシャータ「そりゃアタシだってカレンちゃんがいないってのは淋しいし、ツラいけどさぁ」
ゼロ「なら答えは簡単だ。カレン抜きでもブリタニアを叩くなら更なる力が要る、そのためには合体だ!!」
ラクシャータ「そこでなんで合体に行きつくのか、アタシにはわかんないのよねぇ」
ゼロ「1+1はなんだ。答えは2だ。そういう事だ、さぁ造れ!!」
ラクシャータ「や~よ。技術屋の手間も考えな。んじゃアタシそろそろ寝るから、んじゃねぇ~」
ゼロ「クッ……これ以上は水掛け論にしかならないか!!」
カッケーじゃねぇかちくしょう
ゼロ「というわけで、今回はラクシャータと検討中の新たなKMFについて議論する」
ラクシャータ「だぁから造るつもりないってば」
藤堂「新型機か。確かに我らの機体を見返せば、星刻の神虎を除けば3タイプしかないな」
朝比奈「一般団員や僕らの暁。藤堂さんの斬月。それとゼロの蜃気楼だね」
千葉「たまに見かける金色のもいるだろう? 確か、ヴィンセントとかいう」
ゼロ「その通りだ。対してブリタニアはラウンズ専用機をはじめ、さらにバリエーション豊富な品揃えだ」
扇「あ、ああ、確かにそうだ。これではこちらのとれる戦略も限られてしまうよな」
ゼロ「その通りだ、扇。それ故に私は新たな機体案を提示したのだが、ラクシャータには受け入れられないようでな」
玉城「んだよラクシャータもケチだなぁ!」
藤堂「してゼロよ、その案とはどんなものだ?」
ゼロ「もうラクシャータに飽きるほど言ったがまぁいい。ズバリ! 変形・合体するKMFだ!!」
ディートハルト「ふむ……その他のオーダーは?」
ゼロ「それだけだ」
一同「「「「「「」」」」」」
ゼロ「2機以上のKMFが合体して新たな一つとなる。これ以上にどんなオーダーが要るというのだ!」
玉城「だよなぁ! 合体変形は男のロマンだもんなぁ!」
ゼロ「ほぅ、玉城は賛成か」
玉城「ったりめぇよ親友!! そんなん造るんなら俺も乗せて欲しいぜぇ!!」
ラクシャータ「造んないっつってしょぉ? それに玉城乗っても壊すだけ~」
千葉「だがラクシャータの言う事も尤もだ。第一、整備の方が大変になる」
ラクシャータ「やっぱ千葉ちゃん常識人で助かるわぁ。ほ~ら皆ももっと言ってやってぇ」
朝比奈「確かにねぇ、僕と千葉だって藤堂さんほどじゃないけど戦果は挙げてるよ?」
ディートハルト「規格外の機体となれば破損した際の修復なども大変ですしね」
南「暁は量産性高いし、パーツの換装だってすぐだ。コイツを元に斬月みたいなの造った方が……」
C.C.「おやおや、さすがに無茶振りが過ぎたようだなぁ、ゼロ?」
ゼロ「くっ……お前達、なぜこの必要性がわからん!!」
C.C.「カレンが捕われた事で気が気でないのはわかるが、頭に血が昇り過ぎだ。少し休んで頭冷やせ」
ラクシャータ「どーやら結論出たみたいねぇ? んじゃこの話はお流れってことで~」
藤堂「……」
千葉「私達だって紅月の事は心配だ。だがだからって合体など……」
朝比奈「いくら何でも話がおかしいとこ行きすぎだって」
ディートハルト「ゼロ、申し訳ありませんが私はこの件はノータッチとさせていただきます」
扇「せめてパーツのバージョンアップとかでいいじゃないか。手は回しておくさ」
ゼロ「くっ……なぜだ、なぜこんな結果に……!」
C.C.「ほら、わかったら休め。いつまでも合体なんて夢見てんじゃない」
藤堂「……待て」
一同「「「!?」」」
藤堂「合体が夢みたいだと? さすがに聞き捨てならんな」
玉城「旦那ぁ! 旦那はわかってくれるのかぁ!?」
ラクシャータ「ちょ~っと藤堂? ま~た話ややこしくしないでくれるぅ?」
藤堂「諸君らは合体というものがどういうものか、判っているのか?」
玉城「そりゃアレよぉ、でっけぇスーパーロボットになってバッタバッタとなぎ倒すんだよなぁ?」
藤堂「玉城は少し黙ってくれ。否定派の意見を聞きたい」
玉城「」
ラクシャータ「技術屋の意見だとぉ、開発も整備も維持もメンド~」
ディートハルト「ノーコメントとさせていただきたいですが……手間しか掛からないと思います」
扇「もし誰か一人でも欠けてしまったら、その瞬間成り立たなくなってしまうし……」
藤堂「……甘いな。誰も合体の素晴らしさを何一つ判っていない」
ラクシャータ「アタシインド人だけど」
ディートハルト「私ブリタニア人ですが」
藤堂「心さえあれば我らは日本人。ゼロがそう言っただろう」
ゼロ「藤堂……!!」
藤堂「……話を戻そう。諸君は合体ロボットをテレビで見たとき、どんな印象を抱いた?」
玉城「そりゃでっかくて超強くt
藤堂「玉城は黙っていてくれ」
玉城「」
扇「あ……すごく、強そうだなぁと」
南「ピンチをひっくり返すヒーローだよな」
杉山「チームワークのなせる業、っていうか」
朝比奈「出てきた瞬間みんな歓喜ですよ、まるで藤堂さんのようだ」
藤堂「フ……なんだ、諸君もちゃんとわかってるんじゃないか」
藤堂「民衆のピンチに颯爽と現れ、悪を討つ為に戦い抜く。そして一人一人の力は小さくとも、チームの絆を一つに束ねる事で圧倒的な力を発揮する」
藤堂「逆境にあろうともそれすらひっくり返し、敵を倒し、民衆の心に勇気と希望を齎す」
藤堂「どうだ、我々黒の騎士団にも通じる物があると思わないか?」
男達(((((ゴクリ・・・!!))))
千葉「そ、そう言われれば確かに……!」
ラクシャータ「千葉ちゃんさぁ、藤堂が言ったからそう感じてるだけでしょぉ?」
千葉「なっ!!??」
藤堂「何……?」
ラクシャータ「現実考えて欲しいんだけどさぁ、色々問題ありまくりなわけぇ」
ラクシャータ「まず合体するために余計な変形機構つけなきゃいけないしぃ」
ラクシャータ「それに連結する部分の強度だって確保しなきゃいけないでしょぉ?」
ラクシャータ「それにこれゼロにもいったんだけどぉ、KMF合体させたらコクピットブロックどーするわけよぉ?」
扇「じゃ、じゃあ、合体する前にコクピット先に脱出させて、機体だけ合体するってどうかな?」
ゼロ「バカモノ! そんなもの合体ではない!!」
藤堂「そうだ、チーム全員が一つの機体に乗り込んでこそ合体だ!! 全く、わかってないな」
扇「」
ラクシャータ「ほ~ら全然条件クリアされてないじゃない? それに合体してる最中隙だらけでしょぉ?」
藤堂「フ……甘いな、ラクシャータ」
ラクシャータ「はぁ?」
藤堂「合体の瞬間というのはな、敵も待ってくれるものなのだ」
藤堂「ロボットの合体シーンやヒーローの変身シーンは敵は待ってくれる。常識だ」
ラクシャータ「テレビの中の常識でしょぉ? 現実にそれやって、ブリタニアが待ってくれるわけぇ?」
藤堂「確かに全てのブリタニア兵がそうではないかもしれん。だが我々は、待つであろう将官を知っている」
ゼロ「フフハハハハ、そうだ、ヤツなら必ず待つ!!」
玉城「って、誰よ?」
藤堂「フ、知らないとは言わせないぞ」
ゼロ「ああそうだ。我々も幾度となく刃を交えたあの男!」
藤堂「そう、ヤツの名は!」
ゼロ・藤堂「「柩木スザクッ!!!」」
――――――――――――――――――――――
スザク「へっくしっ!!」
スザク「う~ん、風邪ひいたかなぁ?」
ゼロ「そう、あの特区日本の式典での発言からその事実は明白だ」
藤堂「そして彼は帝国最強のラウンズの一人」
ゼロ「その特権地位にいるヤツなら、我々の合体中に攻撃しようとする兵士を制止するのも容易い!!」
藤堂「ゼロ……!!」
ゼロ「藤堂……!!」
ガシィッ!!(握手)
藤堂「……そういう事だ、ラクシャータ」
ゼロ「わかってもらえたかな、合体の素晴らしさを」
ゼロ・藤堂「なら答えは自ずと出るはずッ!!!」
ラクシャータ「」
南「こうまで熱く語られては、俺達の魂も燃え滾るってもんだ!!」
杉山「そうだ! 黒の騎士団全員の絆を一つにすれば!」
ゼロ「そう! 倒せぬ敵など!!」
男衆一同「「「「「何もないッッッ!!!」」」」」
千葉「藤堂さん……かっこいいです……!!!」
ラクシャータ「」
男衆一同「「「「「頼む!! ラクシャータ!!!」」」」」
ラクシャータ「あ~はいはい、暑苦しいからやめやめぇ!!」
ラクシャータ「わ~かったわよぉ、やりゃいーんでしょぉ? やりゃ~さぁ(溜息)」
男衆一同「「「「「……ヒャッホォ~~~~~~イッ!!!」」」」」
藤堂「当然だ! 協力は惜しまん!」
ゼロ「システム周りはまかせてもらおう。蜃気楼のドルイドシステムもサポートに回せばかなり楽になるだろう」
ラクシャータ「正直アタシ合体なんて夜以外サッパリだからさぁ、資料の調達よろしく~」
玉城「よっしゃ! 杉山ぁ! レンタル屋でかたっぱし合体ロボアニメ借りまくるぜぇ!!」
杉山「任せとけ! よぉ~っし、久々の特務隊の出番だ!!」
ディートハルト「なんだか凄い盛り上がりようですね……こないだの中華開放以上じゃないでしょうか」
ゼロ「フ……当然だ」
藤堂「ああ、合体変形は男のロマンだからな」
藤堂「ディートハルト、玉城達が資料を調達したらお前も一緒に観るといい。……観れば判るさ」
ディートハルト「はぁ……」
C.C.「やれやれ……やっぱり男達ってバカだな」
ゼロ(待っていろ、ナナリー! カレン!!)
ゼロ(俺達はこの合体KMFプロジェクトを成功させ、必ずお前達を取り戻す!!)
ゼロ(そのときはあまりのカッコよさに失神させてやるぞ!! フフフフハハハハハ……ッ!!)
何でトリスタンだけあんなダサいんだよ…
変形すれば結構いけるけど
一番かっこいいのはモルドレッド異論は認める
ナナリー「――で、そのときお兄様ったら……」
カレン「ふふ、そうなんだ。意外とかわいいトコもあるのね……」
カレン(やっぱりナナリーは私の知らないルルーシュをたくさん知ってるのね)
カレン(いつか、私にもそんな姿見せてくれたらいいな……)
スザク「ナナリー総督。少々席を外していただいてよろしいですか?」
ナナリー「あ、はい―――ではカレンさん、また後で……」
カレン「うん、またね……(フゥ)で? 何の用かしら」
スザク「カレン。エリア11の多くのレンタル屋に黒の騎士団員と思われる者が出入りした事が確認された」
カレン「は?」
スザク「そして特定ジャンルの映像作品が片っ端借りられたそうだ。レンタル先は蓬莱島……合衆国日本だ」
スザク「僕はこれをゼロの……ルルーシュの企みと考えている。知ってる事を話して欲しい」
カレン「……あんたの頭がどうかしたって事ぐらいしか言えないわね」
カレン「わかるわけないでしょ。ってかアンタ何でもかんでもルルーシュに結び付けすぎ」
スザク「だが僕にはそうとしか思えない! さぁ言うんだ、ゼロはルルーシュなんだろ!? ヤツは何故ロボットアニメを借り占めさせたんだ!!」
カレン「ゼロの正体は知らな……って何? ロボットアニメぇ!?」
スザク「そうだ! エリア11の多くのレンタル屋からロボットアニメが姿を消したんだ!!」
カレン「それを陰謀だと思えるアンタ、やっぱ頭どうかしてるわ……」
ラクシャータ「や~っぱジョイントんとこ負荷かかりすぎるわねぇ~」
ゼロ「やはりそこか。だが資料を観てある程度は合体プロセスは理解出来ただろう?」
ラクシャータ「作品ごとにまちまちだからなんともね~、物理法則無視したのもあるし。さすがにアレはムリ」
ゼロ「できる範囲でいい。最低でも2機、理想は5機合体だ」
ラクシャータ「ふぅん……ちなみに誰にメイン張らせる気ぃ?」
ゼロ「私と言いたいところだが、私は火器管制などのほうがいいだろう」
ゼロ「メインは藤堂、またはカレンだ……取り戻したら、だがな」
ゼロ「安全性を求めるなら一箇所まとめか……できそうか?」
ラクシャータ「2機だったらなんとかねぇ~」
ゼロ「そうか……」
C.C.「なぁラクシャータ、なんなら紅蓮と蜃気楼の合体機構でも考えてやったらどうだ? もちろんコクピットはまとめでな♪」
ゼロ「おいC.C.! ドサクサに何を言っている!!」
ラクシャータ「あっはは~♪ 考えとくわぁ~」
ゼロ「おいそこ! 変なトコだけ乗るんじゃない!!」
ゼロ「おい!!」
ラクシャータ「あ~らやだ、ちょっと大変な事になりそうね~」
C.C.「ほぅ? どこがどう大変なんだ?」ニヤニヤ
ラクシャータ「そうねぇ~、ゼロのコクピットの前部分にカレンちゃんがいる形なんだけどぉ」
ラクシャータ「今考えてる案だとぉ、ゼロの腰か胸の前にカレンちゃんのお尻がきちゃうのよねぇ」
C.C.「だ、そうだぞ?」
ゼロ「……」
ゼロ(ま、まずい……想像してしまった……)
ゼロ(その想像通りなら、いくら俺でも理性を保てる自信がない……!!)
ラクシャータ「あっはは~、りょうか~い♪」
C.C.「ふふっ、からかい甲斐があるヤツだな全く」
ゼロ「いいからさっさとだ!! あと1週間で試作機を仕上げるぞ!!」
―――その頃、談話室―――
『ファイナルフュージョン! 承認!!』
『ファイナルッ!! フュゥゥゥゥジョォォォォォンッッッ!!!』
ディートハルト「おぉ、これが……これが日本の、愛と勇気と魂の結晶……!!」
藤堂「どうだ、ブリタニア人のお前にもわかるか? これがそう!」
ディート&藤堂「「合体だ!!!」」
マニュアルモードなら4人でファイナルフュージョンしたぜ!
ラクシャータ「一応形にはなったわよぉ」
ゼロ「おぉ、ついに!!」
藤堂「完成したのか、我らの新たなる希望が!!」
ラクシャータ「ゼロのオーダー通り、5機合体にしてみたわよぉ。メインは藤堂、ア・ン・タ」
朝比奈「さすが藤堂さん! 僕も全力でサポートします!!」
ラクシャータ「あぁごっめ~ん、朝比奈君の席はないんだわぁ」
朝比奈「」
千葉「案ずるな朝比奈、お前の分まで私が!!」
ラクシャータ「千葉ちゃんもざんね~ん」
千葉「」
ラクシャータ「そりゃアンタ達、これには藤堂とゼロも乗るのよぉ?」
ラクシャータ「エース級がみぃ~んな乗っちゃったら他どうすんのさぁ」
千葉・朝比奈「」
藤堂「して、残る3人は?」
ゼロ「焦るな。ちゃんと決めてある」
C.C.「やっぱりか。まぁ、こうなるとは思ってたよ」
ゼロ「紅一点は必要だからな。そして次、杉山!!」
杉山「俺!? やった~!! 出番が来たぁ~っ!!」
ゼロ「そして残る一人……それは!」
一同(ゴクリ……)
ゼロ「玉城真一郎! お前だッ!!!」
一同「「「「「「」」」」」」
玉城「ぃよっしゃあぁ~~~っ!! 遂に俺の時代がキターーーーーッ!!!」
ゼロ「私はいつでも大真面目だ」
扇「でも玉城じゃ!!」
ゼロ「違うな、間違っているぞ。お前達、思い出してみろ」
ゼロ「この手のチームには大抵一人トラブルメーカー的な者がいる。そしてそういう者の存在が逆にチームの連携を生み、時には運を呼び込む」
ゼロ「私が玉城に期待しているのはそこだ。わかるな?」
玉城「ゼ、ゼロォ~ッ!! やっぱりお前は親友だぜぇ!!」
ゼロ「玉城、お前は私がこの計画を立ち上げた時真っ先に賛同してくれた」
ゼロ「お前の掛け値なしの忠義に感謝する!」
玉城「よっしゃあ! 俺はやる! やぁってやるぜぇ!!」
C.C.「(ちなみに、玉城の合体後の配置はどこなんだ?)」ヒソヒソ
ゼロ「(背中の目立たない小さな部分だ、実はなくても構わんがカッコだけついてればいい)」ヒソヒソ
藤堂「遂に……遂に夢を実現するときが……!!」
C.C.「やれやれ、面倒だがつきあってやるか」
杉山「あっちから見ててくれ、吉田、井上! 俺達は本当のヒーローになる!」
玉城「よっしゃ行こうぜ!! ……あ、そういやよぉ」
ゼロ「なんだ?」
玉城「合体した時の名前ってどんなんよ?」
ゼロ「フフフハハハ、まさか何も考えてないと思ったか? 教えてやろう、その名はッ!!」
一同「「「「「その名は!?」」」」」
ゼロ「黒の騎士団最強の守護神! 名づけて黒乃王(クロノオー)!!!」ババン!
一同「「「「「」」」」」
C.C.「……ダッサ」
ゼロ「」
ジノ「なぁスザクぅ。日本ってアニメとか特撮とかすっげー盛んだったらしいけどさ」
スザク「あぁ、僕も好きだよ。再放送とかもよく見てたし。ルルーシュが必死に変身ポーズの真似とかしてたっけ……」
ジノ「へぇ~、あの学園の貴公子がねぇ。あ、それでちょっと観てみたんだけどさ」
ジノ「あのロボットの合体とか、ヒーローの変身とかってモロ無防備じゃん? なんで敵さん放置してんのかな~って」
スザク「よくは判らないけど、一種の『お約束』みたいなものらしいよ。そこで攻撃するのは邪道なんだって」
ジノ「ふ~ん、日本のサブカルってのも面白いもんだな~」
ビーッ、ビーッ、ビーッ
アーニャ「スザク、ジノ、敵襲」
ジノ「みたいだな! んじゃ行っかぁ♪」
スザク「黒の騎士団か!! 彼らの好きにはさせない!!」
スザク「やはり現れたか、ゼロ!!」
ゼロ「御機嫌ようブリタニアの諸君。今回もいつものラウンズ3人組でのお出ましか、仲がいい事だ」
ジノ「いんや~それほどでも」
アーニャ「褒めてない」
ゼロ「今日の我々を中華の時と同じと思ってもらっては困る。我々の新たな力を御見せしよう」
スザク「何をしようと同じだ! お前達は自分が止めてみせる!!」
ゼロ「では行くぞ! 精鋭部隊、前へ!!」
藤堂・C.C.・杉山・玉城「「「「応!!!!」」」」
スザク「ゼロの機体も以前と違う部分が……?」
アーニャ「でも一機だけ、なんか小さい」
玉城「誰がちっさいだってぇコラァーッ!!」
ゼロ「藤堂! アレはすぐには行わない。敵兵力を減らしてからやるぞ!!」
藤堂「任せておけ。玉城のサポートは私とC.C.がやる」
C.C.「あのバカの子守とは癪だがな。杉山は地味だがそこそこやるし、大丈夫だろう」
ゼロ「結構だ。朝比奈、千葉、援護は頼むぞ!!」
千葉・朝比奈「「承知!!」」
ゼロ「では戦闘開始!!」
ゼロ「相転移砲、発射!!」ドッコォーン
千葉「藤堂さんの邪魔はさせない!!」ズガァッ
ジノ「やるねぇ、でもおイタはいけないよっと!!」ザンッ
朝比奈「くっ!! すみません、藤堂さん!!」ダッシュツー
アーニャ「以前より、強い……」
ゼロ「そろそろか……藤堂! アレをやるぞ!!」
藤堂「フ、待ちかねたぞ……! 号令を頼む!!」
ゼロ「よしきたぁっ!! 総員!! 合体フォーメーション、発令ェーッ!!!」
ジノ「は? 合…」
アーニャ「体…?」
スザク「だと!!? 何を言っている!?」
扇「あ、ああ!!」ポチッ (※適当に合体BGM脳内再生してくれ)
藤堂「よし、往くぞ皆ぁ!!」
ゼロ「我らの力、今こそ一つに!!!」
C.C.「ふふっ、やってやろうじゃないか!」
杉山「よぉ~し、見ていろブリタニアぁ!!」
玉城「おぉ~っし、いくぜぇーっ!!!」
スザク「やらせるものか!! ブラスター、いけぇ!!!」ズギュゥゥゥゥン
ドゴォォォォォン……
玉城「畜生ォーッ!! 何で俺はいつもぉ!!」
一同「「「「「「」」」」」」
ゼロ「なん……だと……」
藤堂「スザク君……バカな……!!」
スザク「今は戦闘中だ! 隙を見せるほうが悪い!」
ジノ「おいおいスザクぅ、お約束破っちゃっていいのかぁ?」
藤堂「スザク君、君は日本人の誇りを忘れてしまったのか!!?」
スザク「藤堂さん、現実はアニメじゃありません!!」
ゼロ・藤堂「スザアアアァァァァァクッッッ!!!」
アーニャ「……何? 今の」
C.C.「残念なお知らせだ。エナジーがそろそろレッドゾーンになる」
杉山「こっちもだ!」
藤堂「いかんゼロ! 玉城がやられた影響で誘導信号に狂いが生じたようだ!!」
ゼロ「なんだと!? えぇいおのれぇぇぇっ!」
C.C.「さすがにまずいな。どうするんだ坊や?」
ゼロ「くっそぉっ! だが敵戦力はだいぶ削った! まことに遺憾ながら撤退する!!!」
―――黒の騎士団、撤退―――
ジノ「帰ったか~……にしてもスザク、やっぱり合体妨害はひどいと思うぜぇ?」
スザク「戦場だし仕方ないよ。でも、ちょっと見てみたかったかな」
アーニャ「記録、失敗……残念」
ゼロ「えぇい、くそ!! スザクのヤツめ!!」
ラクシャータ「だぁから言ったでしょぉ? KMFで合体なんて現実的じゃなかったのよぉ」
ゼロ「うるさい! 何が、何が原因だ!!」
C.C.「何がもくそも全てだろう。致命的なのは人選ミスだな」
藤堂「ゼロ、すまんが同感だ。玉城には荷が重かったんだろう」
玉城「んなことねぇって! なぁゼロォ?」
ゼロ「シャラァップ! くそ、もう一度プランの練り直しだ!!」
C.C.「おい、まさかまだ合体にこだわるつもりか?」
ゼロ「当然だ!!」
藤堂「次は失敗しないよう、慎重にいこう! ゼロ!」
ゼロ「というわけでラクシャータ! お前も機体プランから練り直しておけ!!」プンスカ スタスタ
ラクシャータ「はぁ~あぁ、まぁたお仕事増えちゃったぁ」ポリポリ
ラクシャータ「ロマンがどーとかイマイチわかんないんだっけどぉ~……どうしよっかねぇ」
ラクシャータ「…」
ラクシャータ「……」プスプスプス
ラクシャータ「あーっ! も~やだストレス溜まるぅ!!」
ラクシャータ「そんなに合体好きなんなら夜の合体でもしてろってのよぉ!」
ラクシャータ「アタシだってず~っとご無沙汰だしぃ!」
C.C.「おやおや、さすがに荒れてるようだな? ラクシャータ」
ラクシャータ「ん~? 何よぉCちゃ~ん?」
C.C.「なに、だったら変にこだわるバカにお灸を据えてやろうと思ってな?」
ゴニョゴニョゴニョ
ラクシャータ「……へぇ?」ペロリ
ゼロ「全く……玉城のヤツさえ落とされなければこんな事には!」カポッ
C.C.「そもそも計画が根本的におかしいだろう。KMFは一人一騎が基本の兵器だぞ?」
ルルーシュ「わかっているさ、そんな事は!!」
C.C.「そんなに悔しかったか? カレンを奪われた事が」
C.C.「もっと近くに、手の届く場所においていれば奪われないと思ったか?」
ルルーシュ「黙れ!!」
C.C.「だったらとっとと取り戻してやれ。それでいつか言ったように、紅蓮と蜃気楼に合体機構でもつけてもらやいい」
C.C.「あぁ、理性保つのが大変だったか?」
ルルーシュ「黙れと言っているだろうが!!」
C.C.「はいはい……ところで明日はエリア11に戻らなきゃいけないんだろ? だったらさっさと着替えて寝ろ」
ルルーシュ「言われなくても……」
クローゼットガチャっと
ラクシャータ「ばぁ☆」
ルルーシュ「ほわぁっ!?」ガタタッ
ラクシャータ「んっふふ~♪ ナイショ☆」
ラクシャータ「それにしてもぉ……ゼロの素顔がこんなボーヤだったとはちょっと驚きねぇ?」
ルルーシュ「!! しまった、仮面が!!?」
ルルーシュ「くっ、今見た事を忘r
C.C.「せぃっ」ドゴッ
ルルーシュ「ぐふぅっ!?」
C.C.「焦るなよ。ラクシャータはお前の正体などバラさないさ。その方が面白いらしくてな?」
ラクシャータ「ふふふ~、だぁから安心してオッケ~よぉ♪」
ルルーシュ「くっ……な、何が目的だ!?」
ラクシャータ「んでも今回のはちょっと理不尽すぎるのよねぇ、我侭言いすぎ」
ルルーシュ「わ、悪かったとは思ってる……で、今は何がしたいんだ!?」
ラクシャータ「おかげでアタシもかんなりストレス溜まっちゃってさぁ……アイデア煮詰まっちゃったのよぉ」
ラクシャータ「アンタが何でそんなに合体に拘るのか、ちゃ~んと理解するために……」
ルルーシュ「し、C.C.!! たすk
ガチャッ(ドアLOCK)
C.C.「ふふっ」ビデオジィーッ
ラクシャータ「アタシに合体の素晴らしさ、体感させてもらうわよぉっ!!」ガバッ
ルルーシュ「」
ルルーシュ「ほぅゎあぁああッー――――――――」
―――しばらくお待ちください―――
ラクシャータ「んっふふ~♪」ツヤッツヤ
ルルーシュ「うぅっ……」グスッ
ラクシャータ「いや~久しぶりに堪能したわぁ♪」
ラクシャータ「初めて奪っちゃってごめんねぇ、まさかまだ納品前だったなんて知らなくってさぁ♪」
ルルーシュ「うぅっ……こんなにも簡単に……本当に大事な時のために守ってきた純潔がぁ……」グスッグスッ
C.C.「はっ、以前カレンに迫った事あるくせによく言う」
ラクシャータ「あ~ら、んじゃ本命ってカレンちゃん?」
C.C.「どうだかな、妹かもよ? こいつシスコンだから」
ルルーシュ「黙れぇっ! もういいだろうそんなことぉっ!!」
ラクシャータ「早速これは形にしたいわねぇ、んじゃアタシラボに戻るから~♪」
ラクシャータ「あぁそうそう、煮詰まっちゃったらまた来るから、覚悟してねぇ~ん♪」テッテッテッ
C.C.「だ、そうだ。よかったな?」
ルルーシュ「ちっとも、よくない……!」グスグス
C.C.「まぁかける言葉も見当たらないが……」ポムッ
C.C.「ようこそ、大人の世界へ」
ルルーシュ「」
ロイド「はぃ? 合体KMF?」
スザク「ええ、こないだの戦闘で、黒の騎士団がそんなものを実現したとか」
ロイド「ま~たラクシャータが無茶やらかしたのかなぁ……でもなんか悔しいぃ~っ!」
スザク「それで、モノは相談なんですけど、僕らの方でもそれ出来ないかな~って」
ロイド「……へぇ?」
セシル「スザクくん、今の話って」
スザク「事実です。まぁ、色々あって見れませんでしたけど」
ロイド「セシル君」
セシル「えぇ」
ラクシャータ「お待たせしちゃったわねぇゼロォ♪ 新しい合体機構、できちゃったわよぉ☆」
ゼロ「そ、そうか……」アトズサリッ
ラクシャータ「なぁによぉ、とって食おうってんじゃないから安心しなさいってぇ」
ゼロ「あぁ……で、今度はどんなだ?」
ラクシャータ「こんなんだ♪」ペラリッ
ゼロ「!! これは……まさかこんな答えがあったとは!!」
ラクシャータ「ど~ぉ?」
ゼロ「よぉし……今度こそやるぞ!!」
ラクシャータ「おっけ~、んじゃ景気づけにアッチの方もやりましょっかぁ♪」
ゼロ「」
ゼロ「御機嫌ようブリタニアの諸君。挑戦を受けてくれた事、感謝する」
スザク「お前を相手に退く気はない!」
ジノ「なぁなぁ、今度は例の合体ちゃんと見せてくれるのか?」
藤堂「邪魔したのはそちらだろうが! 折角の見せ場を!」
アーニャ「知らない。悪いのはスザク」
スザク「安心しろゼロ。君達がまた合体するというなら、今度は止めない」
ゼロ「ほぅ?」
スザク「なぜなら……自分達も同じ力を身につけたからだ!!」
ゼロ・藤堂「何!?」
ナナリー「カレンさん、一体何が始まるんですか? モニターも用意されてるようですが……」
カレン「スザクが置いてったのよ。何か、私がいない間に黒の騎士団が合体ロボ作ったとかで」
ナナリー「合体……ですか?」
カレン「それでなんか自分達も合体できるようにとか何とかで、頂上決戦を見届けろ~とか言っててさ」
ナナリー「お兄様がいたら喜ぶのに……」
カレン「アイツ、こういうの好きなの?」
ナナリー「ハイ♪」
カレン(ルルーシュ……まさか、本気でそんなバカなもの造ってないわよね……?)
ゼロ「柩木スザク! 我々の合体を邪魔しながらパクリと来るか! 著作権というものを知らんのか!!」
スザク「我々は合法、君達は非合法の組織だ! KMF法にも抵触してないから問題ない!」
藤堂「柩木スザク……そこまで堕ちたか!!」
ゼロ「おのれ……おのれぇ、スザァァァァァクッ!!」
ジノ「まぁそういうわけだからさ、早いとこそっちの合体見せてよぉ~」
アーニャ「記録、早く」
ゼロ「いいや、ここは諸君らに先手を譲ろう。どうぞ我らに稚拙なパクリ合体を見せてみるがいい」
スザク「……そうか。よし、アーニャ! ジノ! 合体だ!!」ポチッ
ジノ・アーニャ「OK!!」ポチッ
ゼロ「フフフハハハハ!! 相転移砲、スタンバイ!!」ピピッ ガシュゥーッ
藤堂「! ゼロ、まさか!?」
ゼロ「目には目を、歯には歯をだ!! 合体を妨害される悔しさを思い知るがいいっ!!」
ゼロ「相転移砲、発射ぁっ!!」ポチッ
ズギュゥーーーン!!
ラウンズ3人「(つ特大ブレイズ・ルミナス)」
キキキキキンッ
スザク「そんな卑劣な真似、対策済みだ!!」
ゼロ「」
ガシィーン、ガシィーン
藤堂「何と……変形どころか分離も伴った合体とは!!」
C.C.「あんだけパーツ分割してしかもそれが個別に変形とは、やるなぁ」
千葉「あの状態で攻撃できれば一撃なのに、障壁が邪魔だ!!」
ゼロ「これではまるっきりヒーローロボの合体ではないか! おのれぇぇぇぇっ!!」
ガシン! ガシン!! キュピーン!!
スザク「円卓合体!」
ラウンズ3人「キィィィィング!! アーサァァァァァァァッ!!!」シュキィーン
朝比奈「モルドレッドのボディをベースに、残り2機が分割・変形して合体なんて!」
千葉「肩のハドロン砲はそのままに、トリスタンとランスロットの得物まで合体して巨大な剣に!」
C.C.「コクピットブロックまでキチンと統合された位置に……おや?」
ゼロ「む? トリスタンのボディが……」
玉城「なぁ、左手のあの楯って、トリスタンとかいう可変機のボディだよなぁ?」
ジノ「いや~驚いた? 他にうまく配置できる場所がなくってさぁ~ハハハッ!」
アーニャ「防御したらジノ、ヤバい」
騎士団一同「「「「「「」」」」」」
スザク「どうだ! これが王道の力だ!!」
カレン「!! すごい……ほんとに3機のKMFが合体して!!」
ナナリー「そんなに凄いんですか?」オロオロ
カレン「そっか、ナナリー視えないもんね……じゃあ、私が今起きてる事教えてあげるね?」
ナナリー「すみませんカレンさん、ありがとうございます」
カレン「今はこっちに来てるラウンズ3人の機体が合体して、まるでおっきな騎士に……」
カレン(負けないでよルルーシュ……私、最後まで見届ける! 今自分にできる事をする!)
カレン(そう、ナナリーへの……実況を!!)
スザク「さぁゼロ、こちらは合体した。今度はそちらの番だ!!」ジャキッ
藤堂「フ、敵ながら天晴れな完成度だ」
朝比奈「でも今回はこっちだって!」
千葉「ああ、以前とは違うんだ!!」
C.C.『そうだな坊や、大人になったしな? くくっ』(※プライベート通信)
ゼロ「う、五月蠅い! ……では見せてやろう、こちらの新たな合体を!!」
ゼロ「ラクシャータ! 扇! 準備はいいか!?」
ラクシャータ「いつでもオッケ~よぉ~ん♪」
扇「BGMの準備もバッチリだ!」
ゼロ「ぃよぉし!! では真・合体フォーメーション、始動!!」ポチッ
ゼロ「いくぞ! 来い、藤堂!! C.C.!!」
藤堂「承知!!」
C.C.「ふふっ!!」
ゼロ「斑鳩! 艦首ユニット射出!!」
ラクシャータ「すっ飛んできなぁ、艦首飛燕衝角ぅ♪」ポチッ
バシュッ! ズヒュゥーン
スザク「アレは!?」
ジノ「あの艦の先端のアレ(紋章ついた黒い部分)が外れたぁ!?」
アーニャ「すごく、おっきい……記録」パシャ
ルルーシュ(そう、騎士団全員の想いがこもったこの斑鳩! これとて十分、合体の対象だ!!)
ルルーシュ(KMFよりも遥に大きいこのユニットなら、変形するよう改造する事も容易! ならば!!)
ゼロ「いくぞ! 合体ッッッ!!」ポチッ
藤堂・C.C.「「合体ッッ!!」」ポチッ
ガシィィン!!
ジノ「おぉう!? 何だぁ!? 3機のKMFがあのユニットにつっこんでったぞ!?」
スザク「まさか……戦艦(の一部)と合体なんて……!!」
アーニャ「変形、してる……あのユニット」パシャ
ガキン! ガキン!!
ゼロ「とくと見よ!! これぞ我らの切り札!」
藤堂「力あるものへの反抗の象徴!」
C.C.「(言わなきゃならんのか?)じ…自由を求め、抗う翼!」
ゼロ「その名も! 反逆合体!!」
3人「真! 黒乃王ォォォォォッ!!」ズドォォォォン!!
スザク「いや、あの……」
ジノ「なんかこう、木人?ってやつみたいで、正直……」
アーニャ「手足短か……ダッサ」
―――ブリタニア政庁 特別虜囚室―――
カレン(る、ルルーシュ……これはないわぁ……)ガックシ
ナナリー「どうかされましたか、カレンさん?」
カレン「う、うぅん……なんでも、ないから……」
藤堂「聞き捨てならんな。この一見シンプルな姿に秘められた力強さが判らんとは」
C.C.(いや、フツーにダサいだろ)
南「いやぁ、ないわぁ」
杉山「ないない」
千葉「藤堂さぁぁん……うぅっ」ナミダメ
朝比奈「どうして、こうなっちゃったんだろうね……」
ゼロ「」
スザク「ゼロ、正直その黒い木人には全くセンスを感じない」
ジノ「う~ん、その腹の騎士団マークもダサさを加速してるってか……」
アーニャ「……記録に値しない」
ゼロ「」ブチッ
ゼロ「大体アレだ! 見た目が強さに直結するのか!? そうじゃないだろ!!」
スザク「だがロボットというものはカッコよさだって必要だ!!」
藤堂「この悪魔の羽に見立てた艦首飛燕爪牙の美しさが判らんか柩木!」
スザク「でも肝心の本体が黒木人じゃどうしようもない!!」
C.C.(もうやだこいつら)
ゼロ「木人木人言うな! そんな台詞は戦って勝ってから言えぇ!!」ガシィン
スザク「望むところだ黒木人!!」ジャキッ
男4人「「「「いくぞぉぉぉぉっ!!!」」」」
C.C.・アーニャ(早く帰りたい)
ゼロ「クッ、回避だ! C.C.!!」
C.C.「やってるよ」グイィッ!
ギュン!(回避成功)
ゼロ「こちらのターンだ、藤堂!!」
藤堂「任せておけ。翼状飛燕爪牙、発射!!」ズキュッ!!
アーニャ「どうする?」
スザク「決まってる、回避だ!!」ギュン!!
ジノ「おぉ~、防御じゃなくてよかったぜ~」
―――ブリタニア政庁(ry)―――
カレン「すごい、こんな特大サイズの戦い見た事無い……」
ナナリー「どんな感じなんですか?」
カレン「例えるなら、そうね……荒ぶる騎士と、え~……か、怪獣の戦いってとこかしら」
カレン(言えない、言えないよぉ、木人だなんて……私なんて説明したらいいのルルーシュ!?)ナミダメ
ゼロ「こちらに残された手もわずか……!」
アーニャ「スザク、そろそろエナジーヤバい」
C.C.「残り時間わずかといったところか……どうするんだ?」
ジノ「どうもこうも! 次の一撃が」
藤堂「お互い最後の一撃となるか……!!」
スザク「ならば!!」
ゼロ「とるべき手はひとつ!!」
ゼロ・スザク「「突撃あるのみ!!!」」ズゴゴゴゴォォーッ!!!
ゼロ「(ニヤリ)バカめ、予想通り突っ込んできたな……! 藤堂! C.C.!!」
藤堂「む!」
C.C.「ほぅ? 例のアレか!」
ゼロ「ククク……貴様らがダサいと蔑んだこの腹の紋章の力を見るがいい! 極大相転移砲展開!!」ポチッ
ガシャン!
ゼロ「蜃気楼を内包したからこそ使えるこの武装の威力! その身で味わえぇ!!」ズギュゥゥゥゥン!!
スザク「!! この距離、このスピードではかわせない……!!」
キュィィィィン!
スザク「生きるためにも、ここはシールドだッ!!!」ガシャッ!!
ジノ「え」
ズガガガッ! ドゴォォォン!!
騎士団一同+カレン「「「「「」」」」」
ジノ「あれぇ~~~~ッ!!」ダッシュツー
スザク「ジノォォォォォッ!! おのれっ、ゼロォッ!!」
ゼロ「待て、今のはお前g
スザク「黙れこの人殺しがァァァァァッ!」
ジノ「いや生きてるって」
ゼロ「お前! 自分のやった事すらわからんのかぁ!!」
ピピィィィィッ!!
C.C.「残念なお知らせだ……」
アーニャ「もう、エナジーがない」
スザク「くっ! こんなところで!!」
ゼロ「ここまでか……藤堂、C.C.! 引き揚げるぞ!!」テッシュゥーッ
スザク「くそっ……くそぉ! ジノの仇は必ず! 黒の騎士団の黒木人めぇ!!」
ジノ「お~い、聞いてる? そろそろ回収してくんねぇ?」
ラクシャータ「おやぁ、ゼロ達が帰ってきたようだねぇ?」
ディートハルト「計算ではユニットがドッキングするとき丁度エナジー残量がゼロになる頃でしょう」
扇「ともあれ、ラウンズ専用機を1機落としたんだ! これはいけるぞ!!」
玉城「やっぱ合体ロボってすげぇなぁ! 俺興奮しちまったぜぇ!!」
南「みんな! 木人が帰ってくるぞ! 迎えに行こう!!」
騎士団一同「うおぉぉぉっ! 木人! 木人! 木人! 木人! 木人!……」
ゼロ「だから……木人じゃないのに……」ワナワナワナ
ジノ「うぅ~っ痛っててて……ったくひでぇよスザクぅ~っ」
スザク「すまないジノ、僕が不甲斐ないばっかりに……」
アーニャ「スザクが悪い、全部」
ジノ「あ~あ、トリスタンも修理にしばらくかかるっつーし……しばらく動けないかァ~ッ」
アーニャ「あんな合体機構、邪魔。いらない」
セシル「ごめんなさいね。今度はもっとマシな改造にしておくから」
ロイド「いや~それでもアールストレイム卿とヴァインベルグ卿の機体まで弄れてゾックゾクしたよぉ♪」
ジノ「いや~でも面白かったっすよ? 日本人が好むのもわかる気がするなぁ!」
スザク(ゼロがルルーシュなら……あの趣味の悪さは治させないといけない)
スザク(見ていろルルーシュ! 僕が正しいロボットのあり方を教えてやる!!)グッ
ナナリー「先日の戦い、誰も犠牲が出なくてよかったですね」
カレン「ふふ……ナナリーは優しいね」
ナナリー「でもあのときのカレンさんの実況、お見事でした! お兄様達が観てたアニメのナレーションみたいで!」
カレン「よ、喜んでもらえたなら……解説冥利に尽きる?のかなぁ」
ナナリー「昔お兄様にいろんなお話聞かせていただいたのを思い出しました……また、聞けたらいいなぁ」
カレン「ナナリー……っ、大丈夫、きっとまたルルーシュと一緒に暮らせるわよ! そしたら、いくらでも……」
ナナリー「はいっ! その日を楽しみにしてます! そのときはまた、カレンさんも一緒ですよ?」
カレン「え?……ふえぇっ!?」
千葉・朝比奈「「藤堂さん!!」」
藤堂「戻ったぞ。今回は痛み分けに近い形だったが……」
ディートハルト「お見事です。合体というものの素晴らしさ、骨の髄まで味わいました」
杉山「まぁ、見た目はアレだけど」
藤堂「ああ、今後の研究課題だな」
扇「って、やっぱり今後も合体路線でいくのか?」
ラクシャータ「もっと研究すればぁ、機構の見直しとか色々できそうだしねぇ? ねぇ~ゼロォ?」
ゼロ「」ビクッ!!
C.C.「ふふっ、まぁ頑張れよ、元坊や?」
ゼロ「念願叶って合体KMFは実現した。想像以上に大変だったがな」カポッ
C.C.「おまけに襲われる形だが夜の合体も実現した。万々歳じゃないか」ニヤニヤ
C.C.「お次は誰と合体だ? カレンか? シャーリーか? それともやはりナナリーか? くくっ」
ルルーシュ「下劣な事を言うな! 今考えるようなものでは……」
クローゼットガチャッと
ラクシャータ「やほぉ~☆」
ルルーシュ「ほゎあぁっ!?」
ラクシャータ「お疲れだったわね~ゼロ? いぃえルルーシュ君と呼んだ方がいいかしらぁ?」
ルルーシュ「ラクシャータ!! 何故またクローゼットにいるぅ!?」
ルルーシュ「ちょ、ちょっと待て……その妙に艶かしく俺の顎に当てた手は何だ!?」
ラクシャータ「言ったでしょぉ? 労いと今後のためってぇ。つまりさ? カレンちゃんが戻ってきたときのためとかぁ、新しいアイデア出したりのためにぃ……」ペロリ
ルルーシュ「!!」ゾクッ!!
ラクシャータ「色々教え込んだげるわよぉ! それじゃ! いっただっきまぁ~すぅ♪」ガバッ!!
ルルーシュ「ひぃゃあああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ルルーシュ(ナナリー、カレン……お前達を助け出すまで、俺は生きてないかもしれない……)
C.C.「やれやれ。どこまでいってもハートは童貞坊やってか?」
おしまい。
予定より遥かに長くなってしまったがどうにか書ききれた……
支援してくれた方々サンクス、それじゃ俺は寝ま~す(ガクリ)
Entry ⇒ 2012.09.24 | Category ⇒ コードギアスSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
淡「陽に照らされて星は輝く」 前半
あくまでパラレルワールド的に捉えてください
麻雀そのものは弱いので、その辺は結構適当です。積み棒計算はできないので省きます
プロ子「む……」
妹子「うぅ……」
爺「ほほ、これはこれは」
爺「終局じゃな。また淡のトップか。うむうむ、それでこそじゃ」
プロ子「本当に、お孫さんの実力は目を見張るものがありますね。これでまだ中学生とは、
将来が楽しみです」
爺「応とも。この子の両親は牌に触りもせず会社を大きくすることばかり考えておったから、
孫の代には期待しておらなんだが、よもやこれほどの逸材があの二人から産まれるとは。
ワシの遺伝子が受け継がれておる証拠じゃの。見てみい、ワシとて現役プロの君と比べても見劣りせん戦績じゃ」
爺「ほっほ。言うようになったのう。――それに比べ、お前はなんじゃ妹子」
妹子「うっ……」ビク
爺「半荘五回打って全てラスとは……情けない。それでもワシの孫か?」
妹子「ご、ごめんなさい……」
爺「まあ、プロになるというワシの夢は淡が遂げてくれるじゃろうし、もうそれでよいわ」
淡「……」
淡「じゃあ、私部屋に戻って少し休むね」ガタ
爺「ああ待ちなさい淡。お前、本当に今年のインターミドルには出んのか?」
爺「何故じゃ。史上初のインターミドル個人戦三連覇……お前なら容易かろうに。のう、プロ子さん」
プロ子「確かに、貴女の実力は中学生の内では頭抜けているわ。絶対とは言わないまでも、
おそらく三連覇もできると思うわ」
淡「……だから嫌なのよ」ボソ
爺「む?」
淡「なんでもない。今年受験だしね、勉強しないと」
爺「……まあ、お前がそう決めたのなら強要はせんが。なら淡、お前どこに進学するつもりじゃ?」
淡「まだ決めてない。別にどこでもいいよ」
淡「いやだよ、大阪なんて。東京から出る気はないから」
爺「そうか? じゃったら……やはり白糸台かのう。昨年は優勝しておるし、なにより昨年、強力な一年生が入ったらしいしの」
淡「強い一年?」
爺「うむ、確か名前は……宮永照、とかいったか」
淡「知らない。どうでもいいよそんなの。じゃあ私戻るから」ガチャ
爺「おい淡、進学先は白糸台でいいんじゃな?」
淡「まだ決めてないってば」バタン
淡「はあ……」ゴロン
淡(インターミドル……やっぱり出るべきだったかな。もしかしたら今年は……)
淡(ううん、どうせ同じだよ。私より強い人なんているわけない……)
物心ついた頃から祖父の趣味の麻雀に付き合わされていた私は、気がつけば祖父を超えていた。
祖父は私のために家にプロを呼んで指導させてくれた。強い人と打つのは楽しくて、もっと強くなりたいと思った。それは私が一番麻雀を好きだった時期だ。
淡(……でも、二年前)
中学に入った私は一年生で麻雀部のレギュラーを取り、インターミドルに出場した。
――そして、愕然とした。同年代の子たちの、あまりの弱さに。
一年間戸惑い続けた私は再びインターミドルに出場して……結局、期待は落胆に散った。
淡(私と互角に戦える人なんてどこにもいなかった。全国にさえ)
淡(中学の麻雀部の皆は私を怖がって誰も私と打ちたがらなくなって、三年生に上がる前に私は退部した)
その時に私はようやく気付いた。私は他人とは違うのだと。
まるで星のように、見上げてくれる人はいても、隣にいてくれる人はいないのだと。
そうと気づいたら、もう麻雀なんて楽しくもなんともなくなった。麻雀への情熱も、すっかり冷めてしまっていた。
淡「プロ、かぁ」
淡(正直、プロの道にそこまで魅力を感じないんだよね)
確かにプロには私より強い人も大勢いるだろう。彼女らと打っている間は、きっと楽しく麻雀に没頭できると思う。
断言できる。十年もすれば、私はきっと世界最強の雀士になる。数多のプロを足蹴にもかけない、最強の打ち手に。
淡「……そんなことになったら、私はどうすればいいの?」
そしてきっとその時こそ、私は真の意味での孤独を味わうことになると思う。
淡「そんなのは……やだ」
淡「そんな思いを味わうくらいなら、もういっそ麻雀なんて……」
祖父は猛反対するだろうが、別にいい。だいたい、祖父は自分が遂げられなかった『プロになる』という夢を私に押し付けているだけだ。
淡「あれだけ手加減されて、わざと指し込んでもらってるっていうのに、『現役プロに見劣りしない戦績』だなんて、馬鹿みたい」
そんな人に私の進路をとやかく言われる筋合いなんてない。
別に白糸台に入らなくたっていい。どこの麻雀部に入ったって同じだ。
ただ、その年の優勝校が変わるだけ。
もう麻雀なんて、どうでもいい――。
淡「……イライラするなぁ……」
翌年
私は高校生になった。祖父の強い希望で、結局白糸台高校に入学することになった。
友「大星さん、おはよう!」
淡「おはよ」
友「ねえねえ大星さん、もう入る部活決めた?」
淡「うーん……一応、麻雀部に入ろうかなって」
淡(てか、おじいちゃんに絶対入れって言われたしなぁ……)
友「あ、大星さんもなんだ。私もだよ!」
淡「友ちゃんも?」
友「うん。やっぱり白糸台って言ったら麻雀部だよね。インハイ二連覇だよ、二連覇。すごいよね」
淡「あー……うん、そうだね」
淡(ふーん、二連覇してたんだ。興味なかったから知らなかった)
友「それになんと言っても、白糸台には宮永先輩がいるからね!」
淡「宮永? 誰?」
友「ええ!? 宮永照知らないの!? インハイ二冠王者の、高校最強の選手だよ!」
淡「ふーん」
淡(ああ、そういえばおじいちゃんが言ってたっけ)
友「あ、さては大星さん、初心者でしょ? これから麻雀をやろうっていうなら、宮永照は知っといた方がいいよ」
淡「……友ちゃんはどうなの?」
友「えへへ、私はこれでも小学三年生の頃から麻雀をやってるし、去年は個人戦で県ベスト16まで行ったんだよ!」
淡「ふーん」
友「ねえ、体験入部はどうするの?」
淡「体験入部?」
友「正式な入部までに、三回体験入部の機会があるんだよ。そのときに部の人と打ってもらったり
できるんだって。で、四回目に入部試験をするの。
すごいよね、気合い入ってるよね白糸台。さすがって感じ」
淡「それいつやるの?」
友「今日一回目があるよ。あーでも今日は私都合悪いから、二回目から参加するつもり」
淡「ふーん。行ってみようかな」
友「お、やる気だね。でも気をつけてね。間違っても二軍の人と打っちゃだめだからね。
白糸台は二軍でも県代表クラスの実力だって言うし」
淡「うん。分かった」
放課後
淡「麻雀部……ここか」ガラ
淡「すいません、体験入部しにきたんですけど」
A子「はーい。いらっしゃーい。どうぞ入って」
淡「失礼します」
淡(うわ、人多いな)
A子「はじめまして。入部希望の人だよね?」
淡「まあ、一応。――あの、宮永照っていう人がいるって聞いたんですけど」
A子「あら、ふふ。貴女も? みんな宮永さんのことを初めに訊くよね。でもごめんね、
いま一軍のメンバーは練習試合でいないの。次の体験入部の日にはいると思うけど」
淡「そうですか」
淡(まあいっか。二軍でも全国レベルらしいし)
A子「じゃあ、さっそく打とうか。中学で部活の経験は?」
淡「二年の終わりに辞めました」
A子「あら、どうして?」
淡「つまんなかったから」
A子「あー……そっか。うん、仕方ないよね。勝てなくて辞めてく子、実はうちも結構多いんだ」
A子「じゃあちょっと待ってね、今空いてる子探すから。――ねえ誰かー。三軍で手の空いてる子いるー?」
淡「あの」
A子「ん? なあに?」
淡「ここにいる中で一番強い人と打ちたいんですけど」
A子「え、でも……」
淡「誰が二軍で一番強いの?」
A子「えーっと、一軍っていうのがつまりスタメンのことで、五人しかいないんだ。
だから二軍のトップっていうと、白糸台で六番目に強いってことなんだけど……」
淡「それでいいよ。誰ですか?」
A子「一応、私……ってことになるんだけど。一軍のいない間、部を任されてるから」
淡「じゃああなたでいいです」
A子「う、うん……じゃあ、ちょっとまってね。二軍からあと二人連れてくるから」タタタ
淡(白糸台の二軍は県代表クラス。なら、彼女らと打てば、自然とインハイのレベルも見えてくる)
淡(もし二軍でも私と渡り合えるくらいに強いなら、高校生の麻雀のレベルにも期待できる)
A子「お待たせ。連れてきたよ」
B子「その子? 二軍と打ちたいなんて言ってるの」
C子「生意気だよね。自信過剰っていうか」
A子「コラ、そんなこと言わないの。この二人は二軍の八位と九位。ごめんね、この二人、
一軍に入れそうにないから最近気が立ってて」
B子・C子「「うるさい」」
A子「じゃあ打とっか。手加減はしなくていいんだよね」
淡「はい。よろしくお願いします」
淡(――見せてよ。白糸台の実力)ゴッ
一週間後
昼休み
友「はぁ~……」
淡「どうしたの? 今朝からずっと溜息ついて」
友「うん、昨日さ、麻雀部の二回目の体験入部行ってみたんだけどさ」
淡「あ、そっか。昨日二回目あったんだっけ」
友「うん。大星さんは来てなかったけど、私一人で行って、打ってもらったんだ。
でも……予想外すぎたよ」
淡「……うん。ほんとにね」
淡(ほんとに予想外だった。インハイ二連覇を達成した白糸台の実力……見誤ってた)
淡(まさか……あんなに弱いなんて)
淡『ツモ。8000オール』
B子・C子『……』
A子『……トびです』ジャラ
淡『……』
A子『あ、あなた……何者なの?』
淡『……失礼します』ガタ
A子『ちょ、ちょっと待って! ね、ねえ! 次はいつくるの?
一週間後にまた体験入部があるから、そのときなら一軍の人が――!』
淡『来ません』
A子『え……?』
淡『もう……ここには来ません』
友「大星さんさ、麻雀部入るの?」
淡「……分かんない。入らないかも」
友「だよね……。私も昨日体験入部行ってそう思った。あんな人たちと打つなんて嫌だよね」
淡「うん。ちょっと弱すg――」
友「強すぎるよね、白糸台。手も足も出なかったよ」
淡「……………………誰と打ったの?」
友「三軍のD子先輩とE子先輩と、体験入部の子。三軍であれだけ強いなんて予想外すぎるよ」
淡「……そっか」
友「あ、私このあと用事あるんだった。ごめん、先に教室戻るね」
淡「うん」
友「じゃあね。三軍に負けた私が言うのもなんだけど、大星さんみたいな初心者は麻雀部
やめといた方がいいよ。
あそこはほんとに強い人しかいないから、きっとすぐつまんなくなって辞めちゃうよ」
淡「……うん。そうだね」
淡「……」
淡(……もういい。入部なんてやめとこう)
淡(結局私は一人ぼっちなんだ。誰も私の隣を歩いてくれない)
そうだ。星は二つ並ばない。誰もいない闇の中で、一人孤独に在るしかない。
もう麻雀なんてやめよう。これ以上孤独感を味わわされるのなんて……耐えられない。
淡「……イライラするのよ。あんたたちが弱いせいで」
淡「弱い奴なんて、皆いなくなっちゃえばいいのに」
あるいは……。
淡(私が……もっと弱くなればいいのかな。そうすれば、もっと麻雀を楽しめるのかな)
淡(教えて……誰か教えてよ。麻雀、楽しくないよ……)
二週間後
放課後
友「じゃあ大星さん、また明日」
淡「うん。また明日」
淡「ふう……HR長引いちゃったな」
あれから、私は一度も牌に触っていない。祖父に何度か誘われたが、体調が悪いと断り続けた。
もう弱い祖父の相手をするのはうんざりだった。プロ子は祖父に気を遣って本気で打ってくれないし、
妹子は話にならないくらい弱い。そもそも、私はもう麻雀なんて打ちたくなかった。
淡(何もやる気がおきない。なんか人生がつまんないよ。はぁ……)
ガラッ
菫「失礼します。大星淡さんはいますか?」
淡「? はい、大星は私だけど」
菫「君か。はじめまして。私は三年の弘世菫だ。よろしく」
淡「なにか用?」
菫「ああ、少し話がある。時間いいか?」
淡「いいけど……」
菫「よし、じゃあ歩きながら話そう。ついてきてくれ」
淡「……?」
廊下
淡「あの」
菫「ん、なんだ?」
淡「もしかして、麻雀部の一軍の人?」
菫「へえ、どうして分かった?」
淡「空気で分かるよ、そんなの」
菫「それはすごいな。A子が言ってた通り、かなりの逸材らしいな」
淡「A子?」
菫「一度目の体験入部のときに、A子と打ったんだろ?」
淡「ああ……」
淡(三人と打ったけど、誰がA子なんだろ。まあいっか)
淡「で、今私たちは麻雀部に向かってると?」
菫「そういうことになるな。今日、入部試験があるんだ。それを受けてもらわないと、
いくら強くても入部できないからな」
淡「あの。申し訳ないんですけど、私麻雀部に入る気ないんで」
菫「どうして?」
淡「そんなの……決まってるでしょ」
淡「弱いからだよ。あなたたちが」
菫「……」
淡「もううんざりなの、弱い人と打つの。体験入部の日、ここで六番目に強い人と打ちました。
――雑魚でした。あれで六位なんて、一軍の実力もお察しって感じだね」
菫「……」
淡「ここって全国で一番強い高校なんでしょ? その高校の六位があんなんじゃ、
インハイのレベルも高が知れてるよ。そりゃ私が出れば全国優勝なんて余裕だろうけど、
でも私はごめんです。迷惑なの。あなたたちなんかと打ったって、きっと……」
きっと、私の中の孤独感が増すだけだ。そして対局の後、対局者は私を怯えた目で見上げるんだ。
まるで、決して手の届かない、宇宙の果てに輝く星を見つめるような目で。
淡「だから、もう麻雀部になんて行かない。用がそれだけなら、私は帰ります」
菫「……可哀想に」
淡「……は?」
菫「君は常に上を目指すタイプの人間なんだな。負けず嫌いだけど、でも常に自分より
強い人間を求めてる。一緒に歩く仲間を欲しがってる。
でも君は今まで、そういう人間に出会えなかったんだな。本当に、不憫でならない」
淡「……そんなの、いるわけないじゃん。星を目指す人なんているわけないでしょ」
菫「いるさ。たとえ宇宙の果ての星だって。あるいは暗い海の底だって。そこに
挑もうする人間はいるんだ。何度打ちのめされても、必死に食らいついて、目標にして、
〝それを楽しいと思える人間〟は、必ずいるんだ」
淡「……」
菫「だからこそ、私は君に麻雀部に入ってほしい」
淡「……どうして?」
菫「簡単だ。――あそこには、宮永照がいるからだ」
淡「宮永、照」
菫「今日の入部試験は、あいつとの対局の結果で合否を出す。もちろん勝てとは言わない。
実力を見るだけだ」
淡「やめた方がいいよ。その人、ここのエースなんでしょ? そんな人に一年生が
勝っちゃったら、申し訳ないし」
菫「ははは」
淡「……何が可笑しいの?」イラ
菫「いや、すまない。まあ一度打ってみるといい」
淡「体験入部の日、そんな風に私のことを小馬鹿にして笑った人と打ったよ。
もう顔も覚えてないけど」
どうやらこの菫とか言う人は、私が宮永照に勝てるはずがないと思っているらしい。
淡(いいよ。面白いじゃん)ゴッ
淡(高校生チャンピオン? 一万人の頂点? 笑わせる。私はそんな頂よりももっと高い、
遥か宙の果てにいるんだ)
それに、ちょうどいい。高校生チャンピオンと打てば、それで全国の高校生のレベルは
つまびらかになる。今日宮永照を下し、彼女より上はいないんだと理解すれば、
私は今度こそ何の未練もなく麻雀なんてやめられる。
淡(――もう終わりにしてやる。何もかも)
菫「さあ、ついたぞ。入ってくれ」ガラ
淡「失礼します」
淡(――あれか。宮永照)
後ろ姿しか見えないけど、どうやら打っているらしい。
周りに人垣ができていて、誰も何も話さない。不気味なほどの静寂だった。
照「――ツモ。12000オール」
淡「……っ」ピク
新入生A「……と、トびです」
新入生B「私も……」
新入生C「わ、私もです……」
菫「ちょうど終わったみたいだな」
照「じゃあ結果を発表します」
照「A子さん」
新入生A「は、はい……」
照「三軍」
新入生A「は、はい。ありがとうございます! よかったぁ……」パァ
照「B子さん」
新入生B「はい」
照「二軍」
菫「お」
部員たち「!」ざわ・・・ざわ・・・
新入生B「あ、ありがとうございます! やったあ!」
照「二軍のF子。繰り下がりで三軍」
F子「はい……」
部員「F子ちゃん、ついに落ちちゃったか……」ヒソヒソ
部員「覚悟してたと思うよ。うちって実力主義だし」ヒソヒソ
部員「でも、あんなに頑張ってたのに……」ヒソヒソ
照「C子さん」
新入生C「は、はい……」
照「――申し訳ないけど、あなたの実力じゃうちではやっていけない。不合格」
新入生C「……っ! は……はい……」
菫「あまり気を落とさないでくれ。うちは秋にもまた入部試験をやるから、そのときにまた来てくれればいい」
新入生C「……いえ、私は、その…………もう、いいです。ごめんなさい……!」タタタ
菫「あっ……ふー」
淡(フン)
淡(そうよ。弱いやつは消えればいい。トばされるような雑魚が麻雀なんかするのが悪いのよ)ツカツカ
淡(それになに? 三人トび? アホらしい。どんだけ弱いのよ。ほんとイライラす…………え?)ピタ
淡(そんな一瞬で三人をトばすなんて……この人、まさか私と同じ高火力麻雀……?)
照「ん?」
そのとき、背後の私の気配に気づいたのか、宮永照が後ろを振り向いた。
淡「――ッ!!」ゾクッ!
淡(な、なにこのプレッシャー……)
照「入部希望者?」
淡「……違います」
照「?」
菫「彼女は大星淡さん。お前と一局打ちたいそうだ。打ってやってくれ」
照「いいけど。東風でいいの?」
菫「ああ。君も、それでいいな?」
淡「なんでもいいよ」
菫「よし、じゃああと一人……一子。入ってくれ」
一子「え、私?」
菫「ああ。この四人で打つ」
部員「!!」ざわ・・・ざわ・・・
部員「そんな、新入生一人に一軍三人なんて……」ヒソヒソ
部員「ひどい……可哀想だよ」ヒソヒソ
部員「でも待って。あの子、ひょっとしてこの前の……」ヒソヒソ
菫「それじゃあ、始めようか」
四人「よろしくお願いします」
淡(じゃあ、お手並み拝見といこうかな)ゴッ
東一局
淡「リーチ」
菫「早いな。まだ四巡目なのに」
淡「あなたたちが鈍いんだよ」
淡(四巡もあれば十分。私の星の引力が、有効牌を引き寄せる)
淡(どんなに強くても、宙に投げ出されれば所詮、人は無力。より大きな力に翻弄されるしかない)
淡(――さあ、引きずり込んでやる。宇宙の闇へ――!)ゴォォォォォ!
一子「うっ……!?」ゾクッ
菫「これは……」ゾクッ
菫(予想以上だ。まさかこれほどとは……)
淡「――ふふ」カチャ
淡「――ツモ。リーチ一発ツモ三暗刻ドラ3。4000,8000」
三人「……」ジャラ
淡「…………」イラ
淡(なんなの? あれだけ息巻いておいて、このザマ? 結局この人たちも口だけか)
淡(イライラするなぁ……)イラ
照「……」ゴッ‼
淡「……ッ!?」ピク
淡(え、後ろ――)バッ
淡「……?」
一子「……っ」ビク
菫「……来たか」ピク
淡(なに……今、なにかを見られた……?)
菫(さあ、ここからだぞ大星淡)
東三局
親:照
ドラ:2索
照「……」白
淡「……ッ」ギリ
淡(くそ、鳴けない……私が役牌を鳴けないなんて……)
淡(宮永照……あれからもう三回和了られてる。安手ばかりだったから気にならなかったけど、
こんなにあっさり三連続和了されるなんて、ここ数年なかった)
淡「チッ」カチャ
四五六244赤5⑨⑨⑨北北白 4
淡(六巡目なのに、まだこんな手。かろうじて得意の手になれる形は保ってるけど、
明らかに普段より引力の効果が弱い)
淡(いや、違う……。私の支配が弱まってるんじゃない。それを超える支配が、今この卓に
充溢してるんだ。私の星の引力すら振り払う、圧倒的な支配が)
淡(高校生チャンピオン……多少はやるみたいだけど、あんまり調子に乗らないでよね)ゴッ
照「……」カチャ
淡「……」カチャ
淡(よし。三枚目の北。これで聴牌。三暗刻に高めドラ2がつく。
ちょっと安いけど、まあいいか)カチャ
淡(いや……待てよ。ここで素直に聴牌を取れば切るのはドラの2索か赤5索)
淡(こんな牌を切らなきゃいけないって時点で、私の支配に綻びが出てる証拠だ。
いつもならドラを暗刻にして5索の単騎待ちになってたはず。なら、この場は私ではなく、
宮永照の支配下にあるってこと)
淡(だめだ。この牌は切れない……。だったら……)
淡「……」北
淡(これなら!)
照「ロン」
淡「え……?」
二二三三四四112233北 北
照「12000」
淡「そんな……!」ガタッ
淡(素直に切っていれば、私が宮永照の当たり牌を潰していた。くそ、裏目?
いや、これはそんなんじゃない。もっと別の……)
菫(彼女は自分の麻雀に絶対の自信があるようだな。だが同時に、自分の力を超える支配の
存在を受け入れるだけの賢さも持っている。変にプライドにこだわったりせず、時には
自分の麻雀を曲げることも厭わない。だから小さな違和感にもすぐ気付けるし、
臨機応変に立ちまわれる)
菫(だがその麻雀は既に照に『見抜かれている』。下手に賢しく立ち廻ろうとすると、
照の思う壺だ。さあ、どうする?)
淡(くっ……)
淡(最初に和了ってから、宮永照以外だれも和了れてない。もう五連続和了された)
淡(しかもこの人、私のこと狙い撃ちしてる。この私をトばすつもり? 図に乗って……!)
123四四五五発発白白白中 六
淡(よし、私の引力もまだ消えてない。三巡目で張った)
淡(でも、まだだ。こんな安い手で上がっても仕方ない。次の私の親――そこに強い流れを持っていきたい。
だからまだ上を狙う。索子を全部落として小三元と混一色まで絡める。やれる。私ならできる……!)
淡「……!」3索
照「……」カチャ
一子「……っ」カチャ
菫「……」カチャ
淡(一子って人は必死に食らいついていってる感じだけど、この菫って人は
勝とうとしてない。ただ私の力を測ってる)
淡(正直……宮永照一人だけに注意していればいいっていうのはありがたい。一気に叩いてやる)
1四四五五六六発発白白白中 中
淡(よし、いつもの私の手だ。そうこなくちゃ。1索を落として聴牌。ツモでも親被りで
宮永照に痛手を負わせられる)
照「……」ゴッ
淡「ッ!」ゾクッ
淡(なに…………風?)
淡(感じる……何か強い力……強い風を)
でも、有り得ない。だって私の引力が効いてるってことは、今ここは『宙の中』のはず。
宇宙に風なんて吹かない。なら、今ここは宙なんかじゃなく……。
淡(違う……ここはまだ、宮永照の支配下なんだ……!)
照「……」ゴォォォォォ!
淡(まずい、このひと和了る度に打点が高くなってる。次はきっと直撃なら私を
トばせる点でくる)
淡(このままじゃ次巡、私はきっと宮永照の当たり牌を掴まされる。
なら聴牌を崩して別の牌を切るしか……でも、まさかそれも『見抜かれてる』?)
淡(くそ、どうすれば……!)
菫「……」白
淡「――!」
淡(――これだ!)
淡「ポン!」カチャ
淡「……」白
菫(食い替え……? まあうちでは禁止していないが……なるほど、この子ももう照の力
を見破ったか。だが――)
淡(これで私が当たり牌を引くことも打つこともない。それにツモ巡も変わって、
宮永照の予定していた牌と違う牌があっちに流れる。私の聴牌も崩れないし、
次に引力を使って中か発を引けば……!)
菫(――それでも、照は止められないのさ)
照「……」カッ
照「……」ガシッ ギュルルルルル
淡(なっ……!)
淡(まずい。この感じ……やられる! そんな……ツモ巡をズラしたのに!?)
ドゴォ!
照「ツモ。8000オール」
淡「……ぁ……」
菫「トびだ」ジャラ
一子「……私も」ジャラ
淡「……私、は……」
淡(……残ってる……けど、数千点……たったこれだけ? この、私が……)
淡(星の引力をものともしない、圧倒的な場の支配)
淡(まるで牌そのものが宮永照にかしずいてるみたいな、凄い力を感じた)
淡(この人……別格だ)
部員「……」ざわ・・・ざわ・・・
部員「すごい、あの子……宮永先輩と打ってトばなかった!」ヒソヒソ
部員「一軍の二人ですらトんだのに」ヒソヒソ
菫(最後のあの食い替え……あれがなければ彼女が当たり牌を掴んでいた。
直撃は24000点。彼女はトんでいた)
菫(照の和了りこそ防げなかったが、彼女は自分のトびを回避したんだ)
菫(大星淡……私の想像以上だな)
菫「どうだ照、感想は」
照「感想はともかく、入部試験の結果を発表する」
淡「わ、私はまだ入部するとは――」
照「大星淡さん」
照「一軍」
部員「!!!」ざわ・・・!ざわ・・・!
部員「い、一軍!? 一年生が、白糸台の!?」
部員「え、ってことは、じゃあ……!」
照「一子」
一子「……はい」
照「繰り下がりで二軍」
一子「…………はぃ。今までありがとうございました」ペコリ
部員「そんな……一子さん……」
一子「いいの。実力が全てなんだから」
部員「……」
淡「……」
菫「よかったな大星さん。文句なしで合格だそうだ。よく打ったよ」
淡「文句なし……? よく打った……? こんな、首の皮一枚繋がっただけで?
……馬鹿にしないでよ」
菫「まさか。馬鹿になんてしてないさ。むしろ君の力に驚いてるくらいだ」
淡「でも――!」
菫「君だけだ」
淡「え?」
菫「今日照と打った人の中で、トばなかったのは君だけなのさ」
淡「は……」
淡「だ、だって、一人でもトんだらそこで終局でしょ?」
菫「ああ」
淡「じゃあ、じゃあなに? 今までこの人と打った人は全員、3人同時にトばされ
続けたっていうの? 私以外の全員が!?」
菫「そうだ。私と一子も含めて、君以外の全員が、同時にトばされた。照がつけた
記録によるとそうなってるな」
菫「君はそれを自分の力で回避したんだ。首の皮一枚だって十分さ」
淡「そんな……馬鹿な」
照「菫、私は少し外の空気を吸ってくる。後は任せてもいい?」ガタ
菫「ああ、お疲れ様」
照「それじゃあ。――それと、大星さん」
淡「な、なに?」
照「入部するなら、来週までに入部届けを持ってきて。それ以降は
受け付けられないから」ガラ ツカツカツカ
淡「…………ま」
淡「待って!」ガタ
屋上
淡「待って、宮永さん!」
照「何?」
淡「あなた……あなたは」
淡「どうして麻雀を続けてるの?」
照「……」
照「……どういう意味?」
淡「だって、あんなに強いなら、あなたとまともに戦える人なんているわけない!」
淡「現にインハイで二連覇してるんでしょ? だったら、もう周りは格下だらけじゃん!」
淡「そんなの……そんなの、絶対つまんないじゃん!!」
照「……」
淡「なのにどうしてあなたは麻雀を続けるの?」
照「……」
照「分からない」
淡「え?」
照「昔は、ただ強くなりたかった。私にも目標があった。でも今は……もう
なんのために麻雀を打ってるのかすら、思い出せない」
淡「だ、だったら」
照「でも多分……私には、麻雀しかないからだと思う」
淡「麻雀しか、ない?」
照「……そういうあなたはどうなの?」
淡「私?」
照「麻雀は好き?」
淡「……昔は好きだった。今は微妙」
照「私も」
淡「強い相手と戦いたいってずっと思ってた」
照「私も同じ」
淡「……全国には、あなたみたいな人が他にもいるの?」
照「私とやりあえる選手を二人知っている。長野に一人。鹿児島に一人」
淡「……私よりも、強いの?」
照「実際に打ってみればいい。そのためには部に入らないといけないけど」
淡「……ふふ」
淡「私……ずっと孤独感に苛まれてきた。強すぎて、誰とも近づくことはできないんだって」
照「……わかる。私も、たまに闇の中にいるような気分になる。誰もいない、寂しい世界に」
淡「一人じゃないよ」
照「?」
淡「私がいる。私が、あなたの傍にいます。私ならあなたと麻雀が打てる。一緒に歩いていける」
照「……そうだね」フッ
淡(そうだ。私はもう独りなんかじゃない)
やっと見つけたんだ。私と同じ所にいる人を。私と同じくらい……ううん、
それ以上に強くて、熱くて、大きくて……まるで太陽みたいに輝く人を。
近づけばその熱に焦がされて、誰も傍に寄ることすらできない。でも、私なら。
太陽の引力に引き寄せられて、どこまでも近づいていける。ずっと一緒に歩いていける。
星は二つ並ばない。でも、星は太陽の周りを廻り続ける。離れることなく、いつまでも。
淡「――これからよろしくお願いします。テル」
ようやく出会えた。
プロの世界にすら感じなかった、圧倒的な力。五年、十年。あるいはもっと先。
私が人生をかけて目指すに値する高み。私の――生涯の目標に。
照「よろしく。淡」
小さく笑った彼女の笑顔が眩しくて、まるで太陽の光みたいだと感じた。
その陽の光に照らされて、星はどこまでも輝き続ける――。
照のいう私とやりあえる選手に咲さんは入っていない?
照がまだ咲きさんの実力を把握してないからじゃね?
レベル差はありそう
二ヶ月後
あれから、私は正式に白糸台高校麻雀部の部員になった。
入部と同時に一軍入りが確定していた私は、基本的に一軍のメンバーとしか麻雀を打たなかった。
二軍以下の実力は知っているし、興味もなかった。二軍以下は名前も覚えていない生徒がほとんどだ。
私の興味はただ一つ、テルだけだった。
照「――ロン。1000点」
淡「あ!」
菫「終局か。いつも通り、と言ってはあれだが、照のトップか」
淡「くっそー……今回はいけると思ったんだけどなー」
照「内容は悪くなかった。特にミスもなかったし、よく打ててたと思う」
淡「それって、単純に素の実力で負けてるって意味じゃん」
照「事実だから」
淡「ふーんだ。でもま、そうこなくっちゃね。私の目標なんだから」
照「でも、淡も強くなってきてる」
淡「あ、やっぱりそう思う? 私も、なんか最近すごい調子いいんだよねー」
菫「……」
菫(強くなってきてる、か)
菫(……確かに、この二カ月で大星は凄まじい成長を見せている。照の影響なのか本人の
やる気が今までと違うのか、とにかく入部当初とは比べ物にならないほど強くなった)
菫(今も半荘一局打って、照と大星の差は20000点。たった20000点しかない。もう東風
どころか半荘一局ですら、大星が照にトばされることはない)
菫(それどころか、照の支配に抗って逆に場を支配し返したり、照の連続和了を個人の支配
のみで止めるようになった)
菫(まるで一昨年の照を見ているようだ。もはや大星も照と同格……全国の怪物の一人だ)
菫(並の打ち手じゃないとは思ってたが、まさかこれほどとはな……)
淡「よーし、じゃあもう一局打とうテル!」
照「ああ。――あ、ごめん。そろそろ行かないと」
淡「え、帰っちゃうの?」
照「ああ。これから取材があるんだ。インハイが近いから、三連覇に向けての意気込みとか
いろいろインタビューしたいらしい」
淡「そんなぁ……」
照「また明日たくさん打てるから」
淡「……わかった。じゃあ私も帰る」
菫「……っ!」
照「いや、それは」
菫「何言ってるんだ大星」
菫「照はちゃんとした理由で早退するんだ。お前のそれはただのサボりだろう」
淡「だってテルがいないとつまんないんだもん。どうせ私がトップだし」
菫「っ……おい」
渋谷・亦野「……」
淡「あ、そうだ! ついでに私もテルと一緒にインタビュー受けるよ!」
照「え?」
淡「白糸台のナンバー2、最強の大型新人現る! みたいな。私って何気にインターミドルも
二連覇してるし、記者も喜ぶと思うんだよね」
菫「だめだ」
淡「む。なんでよ」
菫「何故もなにもないだろ。呼ばれてもいないのに取材を受けるなんて馬鹿な真似は
認めるわけにはいかない」
淡「じゃあ私はどうすればいいのよぉ」
菫「ここで麻雀を打つに決まってるだろ。大会までもう何日もないんだぞ」
淡「だから、テルがいない白糸台なんて意味ないんだって」
尭深・誠子・菫「……」
照「淡」
淡「はい」
照「こんなとこで怠けてるようじゃいつまでもたっても私には勝てないよ。大人しく練習に参加してて」
淡「……まあ、テルがそう言うなら」
照「それでいい。それじゃあ、私は行ってくるから」
淡「行ってらっしゃーい」
菫「……気をつけてな」
菫(……悪いな、照)
照「……」コク
ガララ、ピシャ
菫(大星の加入により、一軍の力は一ランク上昇したと言っていい。間違いなく、歴代の
白糸台メンバーの中で最強のチームだ)
菫(そういう意味では、私の先見は間違ってなかった。彼女ならきっとチームのエースとして
活躍できる日が来る)
菫(だが、一つ大きな誤算があった。それは、大星が照に入れ込みすぎて、
他の部員を全く顧みなくなったことだ)
菫(初めはみんな苦笑い混じりで許してくれていた。だが、もういい加減それも限界にきている)
菫(私もタイミングを見て何度か大星を注意した。だが大星は全く聞く耳を持たなかった)
菫(いや、というよりも、あいつは照以外の部員のことをカボチャか何か程度にしか思っていない)
菫(それは私たち一軍に対しても例外ではない。大星は照以外の部員との溝を、日毎に開け続けている)
菫「……」カチャ
淡「……」カチャ
菫(七巡目。大星は一向聴といったところか。それに安い)
菫(……明らかに遅い。照と打ってるときのこいつはもっと高い手を
四巡とかで作ったりする、高速高火力麻雀だ)
菫(それに……大星の支配が弱い。宇宙に引きずり込まれるようないつもの感覚がない)
菫(……手加減……いや、単純に〝本気じゃない〟のか)
菫「くっ……」カチャ
淡「……」カチャ
菫(張ったか。場を支配しなくても牌が自然とあいつのところへ集まってくる。
照以外でここまで牌に愛された奴を見るのは初めてだ)
尭深「……」カチャ
淡「ロン」
尭深「……ッ」
淡「8000」
尭深「……はい」
菫(強い……もう尭深や誠子じゃ相手にならない)
菫(――いや、私も、もう……)
淡「終わりだね」
菫「……そうだな」
尭深・誠子「……」
菫「半荘三回で全て淡がトップか」
菫(手を抜かれて、ここまで……)
淡「あーあ。つまんな」ボソ
淡「やっぱり私帰りますね」ガタ
菫「お、おい!」
淡「テルはああ言ってたけど、やっぱり意味ないですよ、あなたたちと打っても」
菫「大星!」
淡「何回打ってもどうせ私がトップですってば」
菫「そういう問題じゃ――!」
誠子「……いいじゃないですか。本人が帰りたいって言ってるんですし」
菫「お、おい誠子」
尭深「……私もそう思います」
菫「……」
淡「じゃ、そういうことで。お先にー」バタン
菫「……どういうつもりだお前たち。大会を目前に、チームがこんな状態でどうする」
尭深「チームに不和をもたらしてるの、どう考えても大星さんだと思います」
菫「しかし……」
尭深「大星さんが強いのは認めます。でも、いくらなんでも彼女の態度は酷いです」
誠子「入部してからずっとあんな感じだもんね。私たちだけじゃなくて、他の部員の子も
みんな大星さんと距離を置いてますよ」
菫「……」
誠子「大星さんを引き込んだのって先輩ですよね。できれば先輩になんとかしてほしいです」
菫「……わかった。大星には私から言っておく」
菫「だからお前たちももう少しだけ、大星のことを大目に見てやってくれないか」
菫「あいつは今まで、自分と対等に打てる奴がいなくて、私がここに誘ったときには麻雀を
辞めようとすら思っていたそうだ。そんなときに初めて自分以上の人間を見つけて、
あいつは今照に夢中で周りが見えてないだけなんだ」
尭深・誠子「……」
菫「きっといつか大星とも楽しく打てる日が来ると思う。だから……頼む」ペコ
尭深「や、やめてください先輩。顔上げてください」
誠子「まあ大星さんのことはまだ正直微妙だけど、同じ一軍のメンバーですからね」
菫「……すまない。ありがとう、二人とも」
菫(だが、大星が素直に言うことを聞くとは思えない)
菫(……大星に勝つしかない。そうすれば、きっとあいつも私の言うことを聞いてくれるはずだ)
淡「ちわーす」ガラ
菫「挨拶はきちんとしろ大星。部のルールは守れ」
淡「はいはい。……あれ、菫だけ? 他の一軍のメンバーは?」
菫「尭深と誠子は今日は休みだ。照は進路の件で担任と話があるから、その後でくる」
菫(二人には今日は休んでもらった。照が進路相談をするこの日に合わせれば、私と大星の
一騎打ちになる。そこで私が勝てば、大星も文句はないはずだ)
菫(……照には何も言っていない。もし言えば、あいつは個人的に大星と話を付けるかもしれない。
だが、それじゃだめだ。照の言うことなら素直に聞くだろうが、それだと根本的な解決にならない)
菫(私個人の力で大星に勝たないと、意味ないんだ)
淡「えー、テルいないの? なーんだ。じゃあテルがくるまで休んでますね」
菫「何が休むだ。まだ何もしてないだろ」
淡「だってメンバーがいないんじゃ打てないじゃん」
菫「何言ってる。メンバーなら沢山いるだろ。二軍から二人呼べばいい」
部員「……!」ビクッ
菫「大星。最近お前は部というものを無視し過ぎてる。これ以上我を通すつもりなら、
いい加減黙っている訳にもいかないぞ」
淡「ふふん、偉そうに。私を退部でもさせるつもり?」
菫「最悪の場合、そうなる可能性もある」
淡「菫にそんな権限ないでしょ。あるとすれば顧問だけど、顧問は私の実力に期待してる。
学校としても白糸台の三連覇は是非とも達成してほしいところだろうし、私を退部なんてさせるわけない」
菫「だが照が口添えすれば有り得ない話じゃないぞ」
淡「あははっ。テルが私を追い出すって? それこそまさかだよ。テルだってやっと
自分と互角に戦える打ち手に出会えて喜んでるんだよ? むしろ私の退部には反対するに決まってる」
菫「なに?」
淡「だってそうでしょ? テル、あんなに強いのに今まで退屈してなかったわけないじゃん。
弱い人とばっかり打ってきて、うんざりしてたに決まってるよ」
菫「――大星」ギリッ
菫「私たちの雀力について何を言おうが我慢してやる。だがな、私たちと照が共に
過ごしてきた二年間まで侮辱するつもりなら、いくらお前でも許さない!」
淡「ふふ、共に過ごしてきた? テルの強さの後ろをとことこついて行っただけでしょ?
よかったね、テルと一緒に過ごせて。あの人と同じチームにいるだけで、インハイ
三連覇の栄光を我がもの顔で語れるんだから」
菫「なんだと……!」
淡「いいよ。そこまで言うなら、テルと過ごしたっていうその実力見せてよ。
ただし、私が勝ったら今後は私の好きにさせてもらうからね」
菫「……望むところだ。――おい、誰か二軍で手の空いてる者はいないか?」
部員「……」サッ
菫(みんな一斉に目線を逸らした……。皆大星を怖がってるんだ。このままじゃ大星は本当に……)
菫「……一子、A子。卓に入ってくれ」
一子・A子「……!」ビクッ
A子「わ、私、ですか……」
一子「……」
菫「……頼む」
菫(半端な奴を入れたんじゃすぐトばされて終わるだけだ)
菫(だがこの二人でも大星が相手では正直力不足は否めない。いや、大星が言うように、
こいつと互角に戦えるのはもう、うちの部では照しかいない)
菫「……始めるぞ」
菫(ここで大星を倒す。倒してみせる……!)
菫(この感じ……)
淡「……」ゴォォォォ
菫(照と打ってるときの大星と同じだ。本気で勝ちに来てる)
一子「……」カチャ
A子「……」カチャ
菫(二人はもう聴牌すら目指してない。大星に怯えて、安全牌を切ることしか頭にない)
菫「……」カチャ
菫(大星を止められるのは私しかいない。だが、この局が終わればもうオーラス。
大星と私の点差は19000点以上ある。このままじゃ……)
菫「……」カチャ
菫(張った。八巡目で三面待ち。リーチをかければ倍満確定。一気に逆転できる!)
菫「リーチ!」
菫(射抜いてやる……大星の支配は確かに強力だが、絶対に攻略できないようなものじゃない)
淡「――ふふ」
菫「!?」
淡「今頃リーチ? 菫、遅すぎるよ」
菫「なに……?」
淡「私の手の速さ知ってるでしょ? 私はとっくに聴牌してたんだよ。あなたたちがノロマだから
暇つぶしに打点を上げてたの。なのにリーチするなんて、打ち落としてくださいと言ってるようなものじゃん」
菫「なにを――」
淡「ポン」
菫「……!」
菫(ツモ巡が変わった?)
淡「さ、ツモってよ菫。それが当たり牌だから」
菫「……」
菫(そんな、馬鹿な……)カチャ
菫「……」カチャ 赤5
淡「……」ニヤッ
淡「ロン」
2223346北北北 南南南
淡「ダブ南混一色ドラ4。16000」
菫「な――!」ゾワッ
淡「あと二巡で南はツモれてたから三暗刻もつけれたけど、まあこのくらいにしといてあげる」
菫「……」ガクッ
菫(皆……すまない)
淡「……」
淡(まあ、菫はまだ勝とうとしてるし、絶望的に弱いわけじゃないからいいけどさ。
他の二人はなんなの? 聴牌すら目指してない。ただ逃げ回ってるだけ。恥ずかしくないの?)
淡(一緒に打ちたくないのはこっちも同じだっての。まるで鳩撃ちしてる気分だわ)
淡(……イライラするなぁ)
オーラス
菫「……」カチャ
一子「……」カチャ
A子「……」カチャ
淡(つまんない。全然楽しくない。早く終わりたいなぁ)ボー
菫「……おい、お前のツモ番だぞ、大星」
淡「え? ああ、うん」
淡(これ以上続けて何になるの? もう役満直撃じゃないとマクれないんだよ?
あーもう……イライラする)
ガラ
照「ごめん、遅れた」
部員たち「あ。お疲れ様です!」
菫「照――」
淡「テル!」パァ
淡「もう、遅いよテル!」ガタ
菫「お、おい大星! まだ対局中だぞ。席を立つな」
照「ごめん。進路相談が思ったより長引いて――ん? 尭深と誠子はどうしたの?」
菫「あ、ああ。二人は今日は休みで――」
淡「そんなことどうでもいいじゃんテル。さ、早く打とうよ!」
ガシャン、ジャラジャラ
菫「な――!?」
一子・A子「!」
菫「お前、山を崩して……何やってる! まだ対局は終わってないだろ!」
淡「え? ああ、もうこんな対局どうでもいいじゃん。どうせ私の勝ちだよ」
菫「な……」
淡「それより、早く誰か抜けてよ。テルが座れないじゃん」
菫「……大、星……お前……」
菫(どうでも、いい?)
菫(私は……お前を更生させたくて。この一局、私なりに一生懸命、全力で打ったんだ)
菫(なのに……)
A子「あ、あの。私抜けます」
一子「あ、ちょ、ちょっと待って。私が……!」
菫「……」
淡「さ。早く打とうテル。今日は半荘二回で30000点以内に収めてみせるからねー!」
照「ああ。がんばれ」
菫「照……」
菫(どうして何も言わないんだ照。お前は大星のやり方を認めるというのか?)
菫(今はいい。お前がいる内は大星も大人しくするだろう。だが来年はどうする)
菫(私とお前がいなくなったら、大星は完全に孤立するぞ。今度こそ本当に、大星は
一人ぼっちになってしまう。お前はそれでもいいって言うのか、照)
照「……」
淡「今日はとことんまで付き合ってよねテル」
照「ああ……うん。そうだね」
菫(……照!)
照「……」
淡「え、いきなり? させないよ!」
淡「ポン」発ポン
菫「……」白
淡「ポン」白ポン
一一二三四中中 白白白 発発発
淡(小三元確定で聴牌。一萬と中のシャボ待ち)
淡(けど、私は役満は和了れない。なら引けるのは一萬だけ)
照「……」カチャ
淡(テルは当然見抜いてるはず。きっとテルの手牌の頭は一萬。私の待ちは握られてる)
一一二三四中中 白白白発発発 三
淡「なら、これでどうだ!」一萬
淡(これで聴牌も崩れないし、手代わりもできる。あとは私とテルの支配力の
どちらが勝るか――!)
照「ロン」
淡「え」
234567③④⑤西西一一
照「1000点」
淡「……!」ゾクッ
淡(まただ……私が待ちを変えたらそこを狙い撃ちにされる。かといって素直に打っても、
そのときに限ってそれが狙われたりする)
淡(読まれてるんだ。私の打ち方そのものを……!)
淡(すごい……この人は本当にすごい。マグレとか運がいいとか、そんな偶然すらも蹴散らす、圧倒的な力。本物だ……)
淡(すごいよ、かっこいいよテル。私の同類……私の目標!)ドクン
淡(楽しい。麻雀が楽しい。さっきまであんなにつまらなかった麻雀が、まるで別の遊びみたいに思える)
淡(テルだけだ……テルと打ってるときだけは、私は心から麻雀が楽しいと思える)
淡(テル、あなたに出会えて本当によかった)
淡「――よっしツモ! 4000,8000!」
菫「お」
照(……和了られた。三連続和了で終わりか)
一子「……うぅ。わ、割れました」
淡「うはっ、テルの親のときに倍満和了っちゃった! ちょっと見てよこの点差。
半荘一局打ってたった12000点差だよ」
照「ああ。上出来だ」
淡「あは。もっと褒めてテル!」
菫「……」
菫(本当に凄い。照と一試合打っても25000点離されない計算だ。去年の全国大会ですら
そんな僅差で照に迫った選手はほとんどいなかった)
淡「さっ、今の感じを忘れない内にもう一局いこう!」
菫「いや、今日はここまでだ。もう練習終了時刻だ」
淡「え? ……うわ、もうこんな時間。あーあ。テルと打ってると時間が過ぎるの早いなぁ」
照「また明日打とう、淡」
一子(やっと終わった……)ホッ
菫「……照。このあと少し残れるか?」
照「? いいけど」
菫「そうか、よかった。大会の件でちょっとな」
照「……」ピク
淡「それなら私も一緒に残るよテル!」
菫「いや、大星は……」
照「淡は今日は帰って」
淡「えー、なんで」
照「淡にちょっとしたサプライズを考えてて、そのことについて話すの。
淡がいたら意味がないから」
淡「サプライズ? それってもしかして、大会では私が大将! とか?」
照「――まあ、そんなところかな」
菫「!」
部員「!?」ざわ・・・ざわ・・・
部員「い、一年生が大将……!?」
淡「ほんと!? 大将って、去年までのテルと同じポジションだよね?」
照「ああ」
淡「やった! 私、テルの後継者だ!」
照「だから白糸台の大将に相応しくなるために、帰ってどうして今日勝てなかったのか考えて」
淡「はーい。じゃあ、お先に失礼しまーす!」ルンルン
菫「……本気か?」
照「顧問にももう話してある。実力的にも、有り得ない話じゃない」
菫「……まあ、お前がそう言うなら私は構わないが」
菫(やはり照は、私たちよりも大星の力を買ってるのか……?)
部員「それじゃあ、お先に失礼します」
菫「ああ、戸締りは任せてくれ」
部員「はい。お疲れ様でした」ガラ
菫「――これで全員帰ったか」
照「それで、何の用?」
菫「大星のことだ」
照「……うん」
菫「正直なところ、大星のことどう思ってる?」
照「強いと思う」
菫「そうじゃない。あいつの日頃の態度のことだ」
照「……あまりよくはないと思う」
菫「なら、なぜ大星に何も言わない。エースのお前が放置してるのは良くないだろ」
照「……」
菫「……まさかとは思うが、慕ってくれてるから甘やかしてる、とかじゃないだろうな?」
照「そういうわけじゃない」
菫「なら何故だ。このままじゃ、大星は完全に部で孤立してしまうぞ。
いや、もう孤立してると言ってもいいぐらいに、部員との仲は険悪だ」
照「……」
菫「……本当は、お前の力を借りずにあいつを更生させたかった。だが、駄目だった。
私の力不足だ。もうあいつはお前の言葉でしか動かない。頼む、照。あいつに一言いってやってくれ」
照「……それだと」
菫「ん?」
照「それだと、淡は弱くなる」
菫「なに……?」
照「淡は孤高だから強いんだ。孤独こそが淡の力の源泉なんだ」
菫「な……」
照「淡のことを考えるなら、淡は部員と仲良くなんてなるべきじゃない」
菫「照……お前、まさか……」
菫「大星を、わざを部員と衝突させるように誘導してるっていうのか……?」
照「……」
菫「どうなんだ!!」
照「淡が部員たちにどういう態度を取るのかは、あくまであの子次第。私には関係ない」
菫「お前――!」
菫「強くなれるなら孤独になってもいいって……大星がそう望んでると本気で思ってるのか!?
照魔鏡でなんでも見抜いたつもりになってるんじゃないだろうな!?」
照「部員と仲良くしたいなら淡はあんな態度はとってない。あれがあの子の答えじゃないの?」
菫「違う!」
菫「大星は友達が欲しかったんだ! 一緒に楽しく麻雀を打てる仲間が!」
菫「初めてあいつを見た時、私は大星にお前と同じ匂いを感じた。だからこそ、私は大星をここに誘ったんだ。
お前が私たちと仲間になれたように、きっと大星も私たちとやっていけるって」
照「無理だよ」
菫「なんだと?」
照「淡は強すぎる。並の打ち手じゃ、あの子の隣に並ぶことすらできない」
菫「……隣に並べなければ仲間じゃないとでも言いたいのか?」
照「少なくとも、それは淡の求めてる仲間じゃない」
菫「……」
照「ただ一緒に麻雀を打って、一緒に帰ったり、一緒に笑い合ったり、それだけの友達
が欲しいなら、
淡にもできるかもね。でも、淡はそんな友達なんて求めてない」
照「私が淡に言い聞かせて、部員と仲良くなるように命令すればあの子はしてくれると思う。
でもそれで淡が楽しめると思う? 誰と打っても簡単に勝てる麻雀を打ち続けて、相手に
気を遣って手加減したりして、……そんなことをしても、きっと淡はこう感じるはず」
照「『ああ、やっぱり私はこの子たちとは違うんだ。分かりあったりできないんだ』って。
打てば打つほどに、淡は今以上の孤独を感じることになる」
菫「……お前も、そうなのか?」
照「?」
菫「お前も、今まで私たちと打ってきて、そう感じていたのか?」
照「私のことじゃない。――でも、そう感じていた子を知ってる」
菫「? 誰のことだ?」
照「…………その子は」
照「あまりにも強すぎて、周りに自分と同じレベルで麻雀を打てる人がいなかった」
照「普通に打てば簡単に勝ってしまう。そうすると一緒に打っていた人たちは不機嫌になって、
その子に八つ当たりしたりしていた。でもわざと負けても、手加減してるとバレて叱られた」
照「だからその子は、勝ちも負けもしないような麻雀しか打たなくなった」
全国大会の二回戦をみてみろよ
魔王は改心してないぞ
手ごわい人がいたからだから(震え声)
照「誰と打っても、何度打っても、全てプラマイゼロ。自分の勝ちを捨ててその子の
プラマイゼロを防ごうとしても、結局プラマイゼロで終局してしまう」
照「わかる、菫? 強すぎる人間が格下に合わせようとすると、そんな歪な麻雀が
生まれてしまうんだ。淡はあの子と同じ次元の打ち手だ。私はもう二度と……あんな風に
麻雀が歪んでいくところなんて見たくない」
菫「……だから、大星は孤独であるべきだと言うのか」
照「そう。淡は下を見るべきじゃない。どんなに互いが歩み寄ろうとしても、部員達と淡が
分かりあうことはない。どんなに手を伸ばしても星に手が届かないのと同じように」
菫「……」
照「だったら、淡は上を目指し続けるべきだ。そうすれば、ちゃんとした目標がある限り
あの子はどこまでも強くなれる」
菫「……照」
菫「お前の考えは分かった。だがお前には白糸台麻雀部のエースとして、先輩として、
それに見合った態度を取ってほしい」
照「分かった。これからは私からも言っておく。でも、無理に淡と部員を仲良くさせようとは思わない」
菫「……なあ照。大星がお前にとってどういう存在なのかは、私にはわからない。
本当に強い者同士でしか分からないもの、見えないものもあるんだろう。私ではその
領域に踏み込むには力不足なんだろう」
菫「だがな。私にとって、大星は可愛い後輩なんだ。強すぎるせいでお前に縋るしかない
あいつのことを不憫に思うし、大星の孤独を埋めてやれない私自身を恥ずかしく思う」
菫「お前がなんと言おうと、私は大星に部の皆と仲良くなってほしい。一緒に上を目指す
仲間になってほしい。それが麻雀部としてあるべき姿だと信じてる」
照「……」
菫「……話はそれだけだ。付き合わせてすまなかった」
照「構わない。じゃあ、私は帰る」
菫「ああ」
照「……」ガラ
菫「――照」
照「……?」ピタ
菫「最後に一つだけ訊いてもいいか?」
照「なに?」
菫「お前も大星と同じで……私たちと打っても、楽しくないのか?」
照「……」
菫「私たちはお前のことを大切な仲間だと思ってる。確かに、力の差があり過ぎて、たまに
お前が怖くなるときがある。でも、それでも私はお前と打っていて楽しいぞ。
だがお前は……私と打っても楽しくないのか? 孤独を感じるのか?」
照「……」
菫「応えてくれ、照。頼む」
照「……」
照「楽しくない」
菫「っ……」
照「でもそれは、菫のせいじゃない」
菫「?」
照「私は……」
照「私は、麻雀……好きじゃないんだ」
菫「麻雀を、好きじゃない?」
照「ああ」
菫「ならお前は、なんのために麻雀を打ってるんだ」
照「……」
照「……帰る」
菫「お、おい、照!」
ガラ、ピシャ
菫「照……」
菫「……私が間違ってるのか?」
菫「皆で楽しく麻雀を打ちたいって……そう思う私は間違ってるのか?」
菫「教えてくれ、照……大星」
二日後
昼休み
淡「あー、やっとお昼だ」
淡「友ちゃん、一緒にお昼食べよ」
友「あ、う、うん……」
友「あ、あの、ごめん大星さん……私、今日もちょっと……」
淡「……そっか」
友「う、うん。本当にごめんね。そ、それじゃ」タタタ
淡「……」
淡(私が白糸台の一軍に入ってから、あの子とも気まずくなっちゃったな)
淡(私のこと初心者とか言ってたのまだ気にしてるのかな。結局麻雀部にも入らなかったみたいだし)
淡(――ま、いっか。私にはテルがいるんだ。普通の友達なんていらないし)
淡(早く部活に行きたい……テルに会いたい)
ガラ
菫「大星、いるか」
淡「? 菫?」
菫「話がある。麻雀部に関することだ」
淡(あ、大将の話だ!)
淡「はーい、すぐ行きまーす!」ウキウキ
屋上
淡「菫、大将の件どうなったの?」
菫「ああ、さっき顧問とも話してきた。次の大会の大将はお前だ、大星」
淡「やったー! テルと同じポジション!」
菫「……それで、だ。大星」
淡「? まだなにかあるの?」
菫「お前の、日頃の態度についてだ」
菫「最近のお前の、部員に対する態度はあまりにも目に余るものがある。先輩に対しても「弱すぎる」だの「あなたと打っても仕方ない」だの、
挙句の果てには「雑魚」とまで言ったことがあるらしいな」
淡「だって本当のことじゃないですか」
菫「心の内でどう思おうとそれはお前の勝手だ。だが本人を前にしてわざわざ言う必要のないことだろ」
淡「陰口ならオッケーってこと?」
菫「そういう問題じゃない! 話を逸らすな!」
淡「こういうのって、「陰口を叩くくらいなら本人に直接言え」とか言われるものだと
思ってたけど。直接言うのもだめなんですね」
菫「当たり前だろ」
淡「だって弱いんだもん。菫、私はあなたにも期待してたんだよ?」
菫「なに……?」
淡「テルと打って、白糸台の一軍は別格なんだ、って嬉しかったのに。蓋を開けてみたら強いのはテルだけじゃん」
菫「……」
淡「白糸台で歴代最強とか、チーム虎姫とか言われてるけど、私に言わせれば白糸台なんて
テルのワンマンチームだよ。ま、今は私とテルのチームだけど」
菫「……大星。お前ももう高校生だろ。子供じゃないんだ。自分の発言が他人を不快にさせていることに気付け」
淡「私が勝ったら好きにさせてくれるって約束したくせに。先輩なら約束守ってよね」
菫「……あのな、大星」
菫「お前の気持ちは分かる。お前にとって照は初めて出会えた自分の同類なんだろう。
お前が照に入れ込んでるのもわかる。でもな、だからって他の部員のことを蔑ろに
していい理由にはならない。そうだろ」
淡「うるさいなぁ。文句があるなら私より強くなってから言ってよ」
菫「っ……大星!」
淡「それに、心配しなくても来年には私退部してるし、来年からはまた普通の白糸台に戻れるよ」
菫「――――」
菫「――――ぇ」
菫「な……ん、だと?」
淡「なにって、退部だよ。麻雀部を辞めるの」
菫「ど、どうして」
淡「だって、来年にはテル卒業しちゃうじゃん。なら麻雀部なんている意味ないし」
菫「……」
淡「ああ、でも麻雀は続けるよ。おじいちゃんに頼んで家にプロを呼んでもらって、
本格的に稽古をつけてもらうんだ。
テルは卒業したら大学にいくのかな? まああれだけ強ければ即プロ入りもあるだろうけど。
とにかく私も卒業したらテルと同じ道に進むの。クラブ活動なんかで遊んでる暇ないし」
菫「――大星」
淡「ああでも、テルと同じ大学に入ってインカレ四連覇ってのもありかなー。――ん?」
パシンッ!
淡「あぅ――ッ!」ドサ
菫「白糸台を……いや。全国の雀士を舐めるのも大概にしろ!!」
淡「……」
菫「白糸台の一軍になりたくて、でもなれなくて……三年間毎日毎日何時間も必死に
麻雀を打って、青春を捧げて、それでも一度も大会に出ることなく卒業する部員が、
いったいどれだけいると思ってる」
菫「一子だってそうだ。あいつは今年卒業で、三年になってやっと一軍入りして大会に
出られるって喜んでたんだ。だがお前が入部して、繰り下がりで二軍落ち……団体戦で
大会に出る夢はもう叶わない」
菫「だがそれでもあいつが文句一つ言わなかったのは、お前が……お前なら白糸台を優勝
に導く一人になってくれると信じたからだろ。全国優勝の夢をお前に託したからだろ!」
菫「お前はそういう……他の部員の夢や、期待や、想いを受け継いで、あるいは蹴落として。
白糸台の一軍の座を勝ち取ったんだ。そんなお前が……照がいないから部を辞めるだと?
ふざけるな……ふざけるなよ……馬鹿みたいじゃないか」
菫「お前みたいなやつがいてくれるなら、私や照が卒業しても大丈夫だって……
お前になら白糸台を任せられるって、そう思ってた私が……馬鹿みたいじゃないかぁ!」
淡「知ったことじゃないよ、そんなの」
菫「!?」
淡「あなたたちが勝手に私に期待して、勝手に失望した。それだけじゃん。
私があなたたちに勝手に期待して、勝手に失望したのと同じことだよ」
菫「……私たちの実力では、そんなに不足か。部にいることすら耐えられないほどに」
淡「はい」
淡「いつもあれだけ言ってあげてるのに、まだ気づいてなかったの?
あなたたち、本当に弱いよ。相手にならない」
菫「……」
淡「そんなあなたたちでも、全国ではそれなりに上位の選手なんでしょ? だから私は、
全国にも期待してない。だから全国優勝にも興味ない。
全国なんて、テルが行くっていうからついていってるようなものだもん」
淡「まあ、テルの強さを三連覇っていう完璧な形で歴史に残したいっていう気持ちはあるけどね。
そういう意味では、全国優勝には意味があるかも。でも、それだけだよ」
淡「だいたい、夢を受け継いだ? 笑わせないでよ。私は別に、一子の想いを
継いだから一軍にいるわけじゃない。――強いから。私は強いから一軍なの。
そして一子は弱いから二軍になった。それだけじゃん」
菫「……」
淡「そこに勝手に感情論を持ちこんで美的解釈しないで。麻雀部も、ただの部活でしょ?
つまんないから辞めるの。――話はそれだけ? なら帰るね」
菫「お前は……一緒に麻雀を楽しめる仲間が欲しくて、麻雀部に入ったんじゃないのか」
淡「違うよ」
淡「今なら、私がなんのために今まで麻雀を打ってきたのかわかる。私は
テルに出会うために、麻雀を続けてきたんだ」
淡「テルも同じだよ。私はずっと、どうしてあんなに強い人がこんなお遊びみたいな麻雀部で
腐らずに続けてこれたのか不思議だった。でも、きっとテルも私に出会うために今まで
部に残ってたんだ」
菫「違う」
淡「違わない。私たちが出会うためだけに、白糸台麻雀部はあったの。そして私たちは出会った。
まるで星と太陽が引力で引かれ合うみたいに。――ふふ、なんだかロマンチック」
菫さんが魔物クラスになっても、淡ちゃんはそれ以外の部員とは馴れ合いはしなさそうだし
菫「……」
淡「まあ、心配しなくても全国優勝はしてあげるから。テルが卒業するまでは部にもいてあげる。
でもその後は私の好きにさせてもらうから」
ガチャ、バタン
菫「……」ギリ
菫(もう、だめだ。大星はもう、何を言っても無駄だ)
菫(もう私では大星を止められない。諌めてやることすらできない。照も大星を放任してる……)
菫(誰かがあいつに勝つしか……全国で誰かが大星に勝てば、きっとあいつの考えも変わる)
菫(だが全国にすら、大星と渡り合える選手なんて何人いるか……)
菫(それに、大将の大星が負けるということは同時に、白糸台の敗北も意味する。それは……だめだ)
菫(大星が改心するためには、誰かが勝っても負けてもだめなんだ)
菫(勝ちもせず、負けもせず、それでも大星に負けを認めさせられるような選手……そんなの、いるわけない)
菫(くそっ……!)
一ヶ月後
菫「県予選突破、まずは御苦労だった。皆全国大会までの間、気を緩めることなく今の状態を
維持してくれ」
渋谷・亦野「はい」
照「……」コク
淡「……」ボー
菫「……大星、聞いてるのか?」
淡「え? ああ、聞いてるよ。それより、全国ではなるべく私に回る前に他家をトばしてくれません?」
菫「お前が予選で打ったのは決勝だけだろ」
淡「あの程度の相手に大将まで回ってくるのがまずおかしいんだよ。四人もいればどっかで
トばせるでしょ。わざわざ私の手を煩わせないでくださいよ」
菫・亦野・渋谷「……」
照「それは悪かった。私がもっと先鋒で点を取っていればよかったな」
淡「そんな! 違うよ。決勝でテルが何万点毟ったと思ってるの!
問題なのは風前の灯だった他家を三人がかりでトばせなかった後の人達だってば!」
菫「……とにかく、立ち上がりとしては悪くない。全国では大星まで回る回数も増えるだろう。
油断だけはするなよ、大星」
淡「……」シーン
菫「……」ハァ
淡「そうだ。他の県の結果も出たんだよね? どうなったんですか?」
菫「ん、ああ。だいたい予想通りといったところだな。千里山、臨海、永水、そして
うちがシード校になるだろう。他もだいたい予想通りだ」
淡(永水……テルの言ってた、テルとやりあえる二人のうちの一人、神代がいる高校か。私は大将だから先鋒にくるだろう神代とは当たらない。ちぇ)
淡(でももう一人……龍門渕の天江衣。彼女は大将、私と当たる。実はちょっとだけ
期待してるんだよね。テルのお墨付きなら、期待はずれにはならないだろうし)
淡「龍門渕は勝ったんですよね?」
菫「龍門渕は――ん? いや、来てない……? 予選で負けたようだ」
淡「は!?」ガタッ
淡「負けた? 龍門渕が? え、大将まで回らなかったの?」
菫「ちょっと待て、いま調べる」ペラペラ
菫「……いや、回ってるな。他校とさほど差はない状態で回ってきたらしい」
淡「はあああああ!? なにそれ、じゃあ単純に実力で負けたってこと!?」
菫「まあ、そういうことなんだろうな。龍門渕がどうかしたのか、大星」
淡「……」ガックリ
淡(なにそれ……いい加減にしてよ……どんだけ私の期待を裏切れば気が済むのよ)
淡「……で、どこに負けたの?」
菫「長野代表は……清澄……?」
淡「清澄? どこそれ」
菫「私も聞いたことがない。無名校だろう」
淡「無名校?」イラッ
淡(テルに認められたくせに、そんなどこの馬の骨とも分からないような高校に負けるなんて、
テルの顔に泥を塗るつもり? イライラするなぁ……)イライラ
淡「清澄の大将って誰?」
菫「えーっと……清澄、清澄……あった、これだ」ペラペラ
菫「大将――え?」
淡「? どうしたの?」
菫「……大将……宮永、咲……?」
照「――ッ!」ピクッ
淡「宮永?」チラッ
誠子・尭深「……」チラッ
菫「……照、お前の……妹さんか?」
照「……違う」
照「私に妹なんていない」
菫「……そうか」
淡(……ふーん?)
淡「菫」
菫「ん、どうした?」
淡「清澄と龍門渕の県予選決勝の映像とかってある?」
菫「ああ、あるぞ。欲しいのか?」
淡「うん。ちょっと全国に向けて相手チームを研究しとこうかな、って」
菫「! お、大星……!」パァ
菫「どうした、いつになくやる気じゃないか。ああいいぞ、すぐ持って来てやるから、
そこで待っててくれ!」タタタ
菫(大星が相手チームを研究するなんて。よかった……大星もやっと本気になってくれたか)
菫「――ほ、ほら、持ってきたぞ。長野と大阪、鹿児島に……強豪校のはあらかた――」ハァハァ
淡「長野だけでいいよ。じゃ、これ借りるね」ヒョイ
菫「え……?」ポカン
自宅
淡「……」ジー
淡「……弱いじゃん、龍門渕。っていうか全部。長野レベル低いなー」
淡「風越の先鋒と清澄の中堅はまあまあだけど、他が弱すぎる。原村和も
期待してたほどじゃないな。インターミドル優勝したらしいけど、ま、所詮は
私のいないインターミドルでだしね」
淡「さってと。退屈な副将までが終わったし、やっと大将戦だよ」ピッ
淡「……」ジー
淡「……」ジー
淡(天江衣……悪くないじゃん。確かに、この県の中では別格だわ。白糸台でも余裕で
一軍入りできる。というか、テル以外でこの子に勝てる人、うちにいないな)
淡(案外私ともいいとこまでやりあえるかも。テルが認めるだけある)
淡「……あとは……清澄」
咲『――ツモ。嶺上開花』
淡「……」
淡「まあ、悪くはないね。天江に手も足も出ない他の二校と違って、ちゃんとやりあえてるし」
淡「でも、総合力だと天江の方が面白いね。別に清澄の大将には魅力感じないや」
淡「天江衣とやりたかったな……この子個人戦にも出ないらしいし、なんなんだろホント」
解説『――数え役満! 宮永咲選手が本大会二度目の数え役満を和了りました!』
淡「……宮永、か」
淡(実力云々よりも、この名字が気になる。テルの反応から察するに、どうも何かしら
テルと関係ありそうなんだよね)
淡「……オッケー。とりあえず、期待しといてあげる」
淡「失望させないでよね、宮永咲……!」ゴッ
あとカンドラも乗せも
抽選日
ざわ・・・ざわ・・・
菫「トーナメント表の抽選日だ。まずはうちがどこと当たるのか、しっかりとチェック
しておくんだぞ」
渋谷・亦野「はい」
菫「……それにしても、意外だな。大星は今日来ないかもしれないと思ってたんだが」
淡「トーナメント表は私も興味あるからね」
菫(大星が最近やる気だ……嬉しいことだ)
淡「ふぁ~あ」
淡(退屈ぅ……どうでもいいよ、シード校にもなれなかった雑魚のことなんて。それより……)
『続きまして、清澄高校』
淡「お。やーっときた」
菫「なんだ。清澄を注目してるのか?」
淡「まあね」
『清澄高校――』
淡「……同じ側か。清澄と当たるのは準決勝か」
菫「清澄とうちが勝ち抜ければ、決勝でも当たる可能性はあるぞ」
淡「それはないよ」
菫「? なぜだ」
淡「清澄の大将は……」
淡「私が、潰すから」ゴッ
菫「……」ゾクッ
菫(本気だ……本気の大星だ)
菫(負けるわけがない。こんな怪物が……)
※ストーリーの展開上、抽選はこっちの都合にさせてください。
白糸台と臨海が入れ替わったと思ってください。
数日後
淡「さーて、準決勝か」
あれから、白糸台は当然のように勝ち進んでいった。私は準決勝まで一度も卓につくことなく、
全て副将まででどこかがトんで終わった。テルが殺し損ねた死に損ないに他の三人が
止めを刺すような形が常だったけど、私としてもまあ文句はない。
そして準決勝の日が訪れた。この日、白糸台は清澄高校と対決する。
菫「永水が敗退とはな。番狂わせもあったものだ」
淡(神代も期待はずれだった。最後にちょっといい感じの雰囲気になってたけど、アベレージは普通だったし)
照「……」
淡(それより……テルの様子が少しいつもと違う。普段よりももっと静かだ)
照「――じゃあ、行ってくる」
淡「行ってらっしゃい、テル」
菫「頼んだぞ、照」
照「……」コクン
淡「――あ、そうだ。テル!」
照「?」ピタ
淡「できれば今日は軽く流す感じでやってくれない? 私清澄の大将と打ちたいんだ。
テルが本気だしたらどっかトんじゃいそうだし」
照「……」
菫「馬鹿なこと言うな。照、いつも通り打ってこい」
照「分かってる」
淡「ほんと心配性だなぁ皆。私までに100点残してくれればそれで大丈夫だよ」
照「……」
淡「? どうしたの、テル」
照「……淡」
照「――侮ると負けるよ」
淡「――え?」
照「……」バタン
淡「……負ける? 私が……?」
菫「照の言う通りだぞ大星。どんな相手でも油断するなよ」
淡(……テルは私の強さを知ってる。その上で、私が清澄の大将に負けるかもしれないって言うの?)
菫「無論、私たちも手加減するつもりはない。最悪――いや、最悪ではないが、お前に
回さずにトばせるなら、そうするつもりだからな」
淡(テルが認めた二人、神代と天江衣。清澄はそのどちらにも勝ってる。それは偶然なんかじゃなく、実力通りの結果だったってこと?)
菫「お前はその日の気分で手を抜いたり全力でいったりムラがありすぎる。ただでさえ
お前はまだ全国で打ってないんだ。万が一ってことも……」
淡(咲……宮永咲。やっぱりなにかあるんだ、テルと)
菫「……大星、聞いてるのか?」
淡「菫、清澄の大将って宮永だよね? これ、本当にテルと無関係なの?」
菫「……さあ。私にもなんとも言えない。ただ、照に妹がいるという話は聞いた。
普段あいつは否定してるが、昔、ポロっとな」
淡「ふーん」
淡(妹……テルの妹、か)
淡(――面白そうじゃん)ゴッ
数時間後
実況『さあ、Bブロック準決勝も残すところこの副将戦の南場と、大将戦のみとなりました』
実況『先鋒で宮永選手が広げた大量リードを守る白糸台。しかし中堅戦で清澄と姫松に
大量失点を許してしまいました』
実況『続く副将戦、原村和のめざましい活躍により清澄が白糸台に猛追を仕掛けています。
両校の点差は20000点にまで縮まりました。白糸台はこのリードを守りきって
大将に繋ぐことができるのか。そして現在一人沈み状態の有珠山はここから
追い上げることができるのか』
淡「――あんなこと言われてるけど?」イライラ
尭深・菫「……」
淡「尭深……あなた中堅戦で何万点取られたか分かってる?」
渋谷「……」
菫「やめろ大星。個人のミスはチームのミスだ。それが団体戦だろ」
淡「は? で、個人の手柄もチームの手柄ってわけ? 今までそうやってテルの手柄を
自分のものみたいに語ってきたんだ」
菫「……っ」
淡「だいたい菫、あなたもマイナスだったよね。で、誠子もマイナス。……あほらし。
ていうか、なんか菫の試合でなにがあったのかよく覚えてないんだけど」
淡(そういえば、なんか次鋒戦はいつのまにか終わってたな)
菫「姫松と清澄の中堅は強敵だった。尭深には少し荷が重い相手だったんだ」
淡「誠子も苦戦してるっぽいね」
菫「確かに、清澄に追い上げられてるな。だが一位で大星に回すことはできるだろう」
淡「当たり前じゃん。テルが何万点取ったと思ってんの。これで逆転なんかされたら、
もう軽蔑だよ、軽蔑。もう絶対敬語使わないから」
渋谷「……」
照「淡」
淡「ん、なぁに、テル」
照「そろそろ淡の番。準備して」
淡「準備なんていらないよ。ふつーに打てば勝てるってば」
照「淡」
照「――言うことを聞け」
淡「――っ」
菫「……!」
菫(照が大星を嗜めた……?)
淡「……テル。本気で思ってるんだね、私が負けるかもしれないって」
照「ああ」
淡「……ふーん」
菫「……」
菫「大星、誰であれ油断は禁物だ。照が言いたいのはそういう――」
淡「黙ってて」
淡「……いいよ」
淡「じゃあテル、賭けない?」
淡「私と清澄、どっちが勝つか」
照「……」
菫「おい、馬鹿な話はよせ。これは全国大会なんだぞ。トトカルチョなんて言語道断だ」
照「構わない。その勝負乗る」
菫「お、おい照!」
淡「決まりだね。安心してよ菫。私はもちろん、私の勝ちに賭ける。私が自分から
負けにいくようなことはしない。むしろ、これで心おきなく全力で清澄を潰せるよ」
淡「で、テルは清澄の勝ちに賭けるんだね?」
照「……」
照「いや、勝つのは白糸台だ」
淡「え?」
菫「……? 照……?」
淡「……」
淡「――――ぷ」
淡「あ、あはははははっ。な、なぁんだテル、やっぱり私が勝つと思ってるんじゃん!」ケタケタ
淡「あーおっかしー……こんなに笑ったの久しぶり。なんだかんだで、テルも勝算のない勝負はできないか。
でもこれじゃあ賭けにならないよ。私もテルも、どっちも私の勝ちに賭けちゃったら、ねえ?」
菫「当たり前だ。だから賭けなんてのはもう――」
淡「はいはい、分かってるよ。この話は終わり。いいよね、テル?」
照「……」
淡「……テル?」
照「――なに言ってる。私がいつ淡の勝ちに賭けたの?」
淡・菫「え?」
照「私は『白糸台が一位通過する』と言ったんだ。『淡が勝つ』とは言っていない」
菫「ど、どういうことだ?」
照「私は――『宮永咲が勝つ』に賭ける」
渋谷・菫「……!?」
淡「……ふーん……? 一位通過するのは白糸台。でも勝つのは清澄の大将。そう言いたいんだね?」
照「そうだ」
菫「得失点差で大星が負ける、ということか?」
淡「ちがうよ菫。見て、あの誠子の無様な対局を。もう清澄と白糸台の点差はほぼ
無いに等しい。白糸台が勝つなら、最低でも私は1万点ビハインドくらいにしかならない。
まあ、別に私が清澄に得失点で100点でもマイナスになったら負け、っていう
条件でもいいけど、テルが言ってるのはそういうことじゃないよね?」
照「ああ」
照「打ってみればいい。淡の実力なら、それでどっちが勝者か判断がつく」
淡「最高に面白いよテル。あなたと打ってるときでも、こんなに武者震いはしなかった」
淡「ペナルティは後払いでいい? とびきりすごいの考えとくから、覚悟しといてね」
照「ああ」
実況『副将戦終了――! 清澄、怒涛の追い上げにより、ついに白糸台を射程圏内に
収めた――!』
淡「ちょうど終わったね。じゃあ、行ってきます」ガタ
バタン
菫「……照、どういうことなんだ? 白糸台が勝つのに、淡が負けるって……」
照「……」
照「点数で勝ったからといって、それが必ずしも勝利を意味するわけじゃない」
菫「……」
照『――強すぎる相手が格下にあわせようとすると――』
菫(照が言ってたのは……まさか……)
廊下
淡「……くそ」イライラ
イライラする。イライラする。イライラする――!
淡「私が負けるって? そんなわけない。私とテルが高校生最強なんだ。そこに
他人が割り込んでくるなんて、ありえない――!」
淡(清澄……潰してやる。もう麻雀が打てなくなるくらいにボコボコにしてやる……! 今日という日を一生のトラウマにしてやる!!)
淡「……ん?」
カツン、カツン
淡「あれは……」
淡(あの子が――宮永咲)
咲「……あ」
淡「――よろしく、清澄さん」
咲「あなた確か、白糸台の……」
淡「大星淡。あなたは宮永さんだよね?」
咲「はい」
淡「宮永はうちの部にいるから、呼びづらいから咲ちゃんって呼んでいい?」
咲「あ、はい。じゃあ私も淡ちゃんって呼んでもいいですか?」
淡「もちろん。仲良くしてね。あと、同級生なんだから敬語使わないで。なんかムズムズするから」
咲「あ、ごめんなさい」
淡(まあ、今日以降あなたと卓を囲んで会うことはないだろうけどね)ゴォォッ!
咲「あの」
淡「ん、なあに?」
咲「その……お姉ちゃん、元気かな?」
淡「――テルのこと? やっぱり姉妹なの?」
咲「え、あ、うん」
淡「ふーん」
淡(そっか……ますます面白くなってきた)
淡「テルなら元気だよ。咲ちゃんも先鋒戦見たでしょ?」
咲「うん。凄かった。お姉ちゃん、びっくりするくらい強くなってた」
淡「……」ピク
淡(強くなってた? なに、その『昔は私の方が強かったのに』みたいな上から目線。
イライラするんだけど)
淡「咲ちゃん、テルと何かあったの?」
咲「え、どうして?」
淡「だってテル、『私には妹なんていない』とか言ってたから。もしかしたら
咲ちゃんのことなんて眼中にないのかも」
咲「……!」ビク
咲「……や、やっぱりそうなのかな……」
淡「うん。きっとそうだよ」ニッコリ
咲「……」グス
咲「私ね、昔お姉ちゃんにひどいことしちゃったんだ」
淡「ひどいこと?」
咲「……お姉ちゃんは、きっとまだ私のこと許してないんだと思う」
咲「だから私、麻雀でお姉ちゃんに伝えたいことがあるの。そのためにも、この試合、
絶対負けられないよ」
淡「ふふ、そうだね。絶対勝たないとね」
咲「うん。この試合で勝って、決勝に行って、お姉ちゃんに会いに行きたい」
淡(――無理だよ、咲ちゃん)
淡(あなた、ここで終わるんだから)ゴッ
Entry ⇒ 2012.09.24 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
淡「陽に照らされて星は輝く」 後半
※ここから長い麻雀パートに移ります。あまり麻雀得意ではないので、いろいろ
ミスがあると思いますが生温かく見守ってやってください
準決勝大将戦
東一局
白糸台:125000
清澄:113000
姫松:98000
有珠山:64000
親:咲
実況『さあ、ついに準決勝大将戦のスタートです。決勝戦に上がれるのはこの中の上位
二校のみ! いったいどこが勝ち上がるのか――!』
四人「よろしくお願いします」
淡(ラス親か。咲ちゃんは起家)
末原(清澄……借りは返させてもらうで)
東一局
末原(清澄との差は15000。これをなんとか詰めるしかない。振り込まんのは当然やとして、
親の連荘……それしかあらへん)
末原(1000点でも2000点でも、とにかく少しずつ清澄との差を詰める。親が流れたら
絶対に振り込まず、大きい手を狙う。子で安い手を和了って場を進めるわけにはいかんからな)
咲「……」4萬
末原(鳴ける、けど……鳴いたら三色が消えるし手が安くなる。子でそんな手は和了られへん。清澄の親を楽に流させたりしたらあかんねや)
淡「……」カチャ
咲「――カン」
末原「!」
末原(まずい……!)
咲「――ツモ。嶺上開花。1300オール」
実況『早速宮永選手の嶺上開花が決まった――!』
末原(また嶺上開花……あかん、また差が広がってもうた)
末原(清澄の嶺上開花を止めるには、カン材になりそうなものをなるべく捨てないこと、
順子場を作ること、捨て牌とかから清澄が持ってそうな暗刻を予想して、それから……)
淡「……」
淡(一局打っただけでわかる。場を支配する力。限定的だけど、かなり強い)
淡(嶺上開花が得意技なのかな? これを止めるには、まず咲ちゃんの支配を上回る
力で場を支配し直すしかない)
淡(まずは咲ちゃんの支配が王牌だけなのか、それともツモ牌、あるいは卓全体にまで
及んでいるのか、それを確認しないと。嶺上開花そのものの対策はその後でいい)
次局
咲「ツモ、嶺上開花」
実況『宮永選手、二回連続で嶺上開花だ――!』
末原「くっ……」
次局
淡「……」カチャ
六六六八八八北北北1234 4
淡(ツモった。――けど、今はこんな手を和了ることよりも……)4索
実況『!? お、大星選手、和了りを見逃してツモ切り――!? これはいったい
どういうことでしょうか――!』
咲「――カン」
末原「ちょ――」
咲「ツモ。嶺上開花」
実況『宮永選手、三連続和了、そして三回連続の嶺上開花だ――!』
実況『大星選手、高めを狙ったか。しかしあそこで和了っておくべきだった――!』
実況『これでついに清澄が白糸台を抜いてトップに躍り出た――!』
末原(ちょ、ちょっと……前の試合より明らかにペース早いやん……。もう三回連続やで)
末原(清澄の連続和了だけはなんとしても防がな……もう安手でも和了るべきか?)
淡「……」
淡(支配域は卓全体か。王牌は特に強力。カン材が自然と咲ちゃんのところへ流れていく
のを感じる。かなり私に近い打ち筋。――でも、防げないほどじゃない)
淡(嶺上開花は、それ自体が咲ちゃんの能力ってわけじゃない、か。あくまでも
王牌の支配から発生した結果に過ぎない。なら嶺上開花だけを防ごうとするのは無意味)
淡(まずはその結果の出所……根本的な支配を断ち切ることが重要だ)
淡(――それだけ分かれば十分。あとは私の支配と咲ちゃんの支配……どちらが上をいくか)
淡(……じゃあ、始めようか)クス
淡(――引きずりこんでやる。宇宙の闇へ)ゴォォォォォッ!!
咲「――うっ!?」ゾクッ
末原「――!?」ビクッ
有珠山「……?」
末原(な、なんやこの感じ……? さ、寒い……?)カタカタ
咲(こ、これ……お姉ちゃんや、衣ちゃんと同じ……!)
淡「ふふ」ゴォォォォ
淡「怯えることないよ。私が和了ることができるのは、どれも〝成り損ない〟の安い手ばかりだから」
咲「成り損ない?」
淡「そう。私の麻雀はまだ未完成なの。だから、完成した完璧な役は作れない」
末原「ど、どういう意味ですか」
淡「――今から教えてあげる」ゴッ
東一局
末原「……」カチャ
末原(張った。四巡目で跳満の手。早くに手作りできたんはラッキーや。ここで
一気に差を詰める)
末原「リーチ」白
淡「遅いよ」
末原「え?」
淡「ロン」
123二二二発発発中中白白 白
淡「小三元、発、白。8000」
末原「しょ、小三元……?」
末原(な、なんでわざわざそこで止めるんや。白を鳴いて二萬を捨てれば、フリテンとはいえ
大三元聴牌やないか。流局間近とかやったらまだしも、まだ四巡目。手代わりも十分
ありえる。
逆転されてんねんし、ここで大きく取りたいと思わんのか?)
淡「ふふ」
末原「!?」
※有珠山に活躍の場はありません。有珠山が上がってくるのかも分からない段階で書き始めたので、
今回は数合わせ程度に思っておいてもらえると助かります
淡「言ったでしょ? 〝成り損ない〟しか和了れないって」
末原「な、成り損ない……?」
末原(つ、つまり大三元の成り損ない……ってこと?)
東二局
末原(と、とにかく……それやったら、役牌を捨てへんかったらええだけや)
末原「……」五萬
淡「――ふふ」
淡「ロン」
三三三五五①①①②②西西西
淡「三暗刻トイトイ。8000」
末原「な――!」
末原(さ、三暗刻トイトイって……四暗刻聴牌やないか!)
末原(二回連続でこんな大物手――――いや、大物手やない。たった8000点や。
どういうことや。二回とも、もう少し粘れば役満っていう手やった。やのにそれを
わざわざ崩して満貫……)
末原「――!」
末原(ま、まさか、『成り損ない』って……)
淡(そう。『役満一歩手前の役を和了る』。それが私の力)
淡(今の手、ロン和了りかツモ和了りか……たったそれだけで、13飜が4飜にまで
下がる、未完成の力)
淡(だから、完成した強さを持つテルにはまだ及ばない。
――でも、あなたたちを倒すにはそれで十分)
淡(――見せてやる。宇宙の闇を)ゴッ
末原「……」ゾクッ
咲「……」
白糸台:137200
清澄:124400
姫松:88200
有珠山:60200
東三局:一巡目
咲「……」
咲(感じる……何かとても大きな力がこの卓に働いてる。迂闊には動けない……)
咲「……」⑨筒
末原(と、とにかく白糸台に連荘はさせたらあかんねん。ここは安手で流すしかあらへん)
末原(ちょうど配牌もいい。喰いタンで和了ってしまお)一萬
淡「――ふふ」
末原「!」ビクゥ
末原(そ、その笑い方やめて! ロンされたかと思って驚いてまうやん!)
淡「間抜けた顔。まだ一巡目だから、誰かが和了るには早い……そう高を括って
安心しきってるね」
末原「…………え?」
淡「気づかないの? もうここはあなたたちがいつも呑気に麻雀を打ってる卓とは全く
別次元の場所――『宙の中』なんだよ?」
パラララララララ……
末原「……………………ぇ?」
二三四五六七八九3455赤5
淡「――人和。おまけで一通平和ドラ1。16000」
末原「――――」
実況『れ、人和炸裂――! これは珍しい役が飛び出しました。人和は本大会では4飜として
採用しています。が、こんな役はここ数年一度も出ていません!』
実況『末原選手、これで3回連続大星選手に満貫以上を振り込んでいます』
末原(人和……? なんやそれ……地和の『成り損ない』とでも言うんか……。
こんなん、ルールさえ違えば役満やんか……!)カタカタ
淡「――ふふ。震えてるね」
末原「……!」ビク
淡「でも、まだだよ。血の気が凍るには……まだ早い」
淡「――さあ、私の親番だね」ゴッ
末原「ひっ……!」カタカタ
東四局
末原(だ、大丈夫や。今は白糸台が親番。私が一巡目で振り込んでも人和はない……!)
末原(地和の成り損ないやって言うんなら、あんな速攻の手は子のときにしか……!)
淡「――ふふ」
末原「……!?」ゾクッ
淡「ダブルリーチ」2筒
末原「――!」
末原(ぁ――て、てんほ……)
末原(こ、こんなん無理や……捨て牌もないのに、危険牌なんかわかるわけない……)
末原(いやや、振り込みたくない――!)
咲「――カン」
末原・淡「!?」
咲「――ツモ。嶺上開花」
1133456777 1 2222
咲「3000,6000です」
淡「……はい」ジャラ
末原「……」ジャラ
末原(な、なんやこれ……なんやこれ……)
末原(私まだ一回もツモってないのに……こんな……まるきり蚊帳の外やないか)
末原(いや、まだや……まだまだいける。こんなことでメゲたらあかん!)
淡(配牌でその手……確実に槓材を揃えて和了る力……)
淡(私の支配は消えてない。じゃあこれは純粋に、咲ちゃんの支配力が上回ったってこと?)
淡「……」ギリ
淡(やってくれるじゃん。いいよ、面白いよ)
淡(思い知らせてやる……)
咲「……」
白糸台:148400
清澄:135200
姫松:59200
有珠山:57200
※牌の表記は索子「1」萬子「一」筒子「①」でいきます
わかりづらくてごめんなさい
南一局
有珠山「……」カチャ
末原「……」カチャ
末原(今度は六巡目までこれた。でもまだ白糸台がどんな手を張ってるかわからん。
高めは狙うけど、無茶はできん。常に警戒しとかなあかん)
末原(白糸台の捨て牌……字牌もなしに索子と筒子ばかり切ってる。萬子の染め手か
……まさか、国士ちゃうやろな)
淡「……」カチャ
咲「……」カチャ
一一二二三三七八九九九①③
淡(河だけ見れば萬子で染めてるように見えるはず。でも実際は②筒待ち)
淡(成り損ないも絡まないダサい手だけど、今はこれでいい)
有簾山「……」②筒
末原「……」②筒
淡「……」カチャ
実況『大星選手、有珠山と姫松からの和了り牌を見逃した! これはあくまでも
清澄を狙い撃ちするということか――!?』
淡(雑魚から毟ったって私の気は収まらない。咲ちゃんから直撃もらわないとね)
淡(分かってるんだよ咲ちゃん。②筒、溢れてるんでしょ? 早く切りなよ)
咲「……」カチャ
二二四五②22245678 六
実況『宮永選手、六萬をツモった! しかしこれで②筒が溢れてしまった。これは
振り込んでしまうか――!?』
咲「……」4索
淡「……!」ピク
実況『おっと、宮永選手、聴牌と三面待ちを崩して4索切り――!? 結果的に
大星選手への振り込みは回避できたものの、これはどういうことでしょうか』
淡(……聴牌に取らない……? 私の当たり牌を読まれてる? でも、これじゃあ
咲ちゃんも和了れない。それともチンタラ回し打ちするつもり?)
私なら十分引ける。それもそう遠くない、数巡後に)
淡(溢れた牌を残して回し打ちなんてしてたら、私の速度に敵うわけない。
――それでも、咲ちゃんが勝てると確信してるんなら……私には『絶対に引けない』と
思ってるってことだ。②筒は私のツモれる位置にない。……つまり)
咲「……」カチャ
二二四五六②2225678 二
咲(――四枚目の②筒は、嶺上牌にある。淡ちゃんがツモることはない)
咲(私は次に2索をツモるから、それでカン……②筒を引いて嶺上開花……!)
淡「……」
淡(……そういうこと。あくまで嶺上開花に拘るんだ)
淡「……ふふ」
末原「……!」ビク
淡(それなら――)
淡「……」タン 七萬
有珠山「……」九萬
淡「――カン」カチャ
一一二二三三八八九九九①③ 九
咲「!?」
咲(あ、そ、その②筒は、私の――!)
ゴォッ!
一一二二三三八八①③ ② 九九九九
淡「ツモ。嶺上開花。400,700」
咲「うぅ……」
淡「ふふ」
咲(私が淡ちゃんの当たり牌で和了ろうとしてたことが読まれた……?
まさか嶺上開花を横取りされるなんて……)
淡(馬鹿にしないでよね咲ちゃん。私の和了り牌を握り潰した上で、その牌で
ツモ和了ろうなんて、ちょっと調子に乗り過ぎだね)
淡(……とはいえ、私も満貫手を1飜手にまで下げられちゃったか)
淡(――そういえば、こんな安い手で和了るのなんて何年ぶりだろう。
テルにかっこ悪いとこ見せちゃったな)
淡(テル……私は咲ちゃんに勝てないって言ってた。今のところ得失点差では1000点
くらい勝ってるけど、これじゃ互角だって言われても仕方ない)
淡(テルならきっと、もう二位に五万点差つけててもおかしくない。なのに私は
たったプラス1000点……?)
淡(私は――私は世界でただ一人、テルの隣を歩ける存在じゃなきゃだめなんだ。
こんなところで咲ちゃんなんかと『いい勝負』してる場合じゃない)
――打ってみればいい。淡の実力なら、それでどっちが勝者か判断がつく――
淡「……」ギリ
淡(いいよテル。見せてあげる……!)ゴッ‼
南二局
実況『さあ前半戦も南二局に突入しました。清澄と白糸台の両校が凄まじい活躍を見せる中、
有珠山は焼き鳥状態、そして姫松の末原選手は既に39000点の失点となっています』
実況『そしてその姫松の親番。末原選手、この親はなんとしてもものにしたいところでしょう』
末原「……」
末原(こんなこと言ったら主将には叱られるやろうけど、私は白糸台を抜いて一位抜け
なんて狙ってへん。もちろん決勝戦では白糸台も倒すつもりや。でも今この場は、とにかく
二位抜けでもいいから決勝を目指すことが優先)
末原(――そう思ってたのに、二位の清澄との差はもう取り返しのつかんところまで来てる。
……なんとしてもこの親で連荘して差を詰めなあかん)
末原「……」カチャ
一二二三三四四六七八九九発 中
末原(親番でめっちゃええ配牌や……と言いたいところやねんけど、役牌が二つ……)
末原(今まで打ってきてここまで役牌を切りたくないと思う対局は初めてや。それも、
相手は平気で人和なんか和了りよるし……。有り得るで、人和小三元なんてふざけた手が、
この白糸台の大将に限っては)
末原(でも、じゃあこれ持っとくんか? 仮にどっちかを頭にできても、もう片方は
切らなあかん。どっちも抱えるつもりならチートイツしかあらへん。せっかくの親番……
それもこんなええ配牌でそんなことやっとったら、勝てるもんも勝てへん。攻めるんや!)
末原「……」中
淡「ポン」
末原「!」ビクッ
末原(も、もっとった……やっぱり配牌から中の対子……)ブルッ
咲「……」カチャ
有珠山「……」カチャ
末原「……」カチャ
一一二二三三四六七八九九発 赤五
末原(じゃあ、やっぱり持っとるんか? 発の対子……まさかこれで和了るなんてことは……)
末原(切りたくないけど……でも切らな……まだ二巡やで? 二巡で11飜以上の手が
入って聴牌しとるんや。勝負するしか……ない!)発
淡「ポン」
末原「うっ!」ビクッ
末原(ぽ、ポンか……よかった……い、いやよくない。小三元濃厚やないか)
末原(でも、もし白糸台が聴牌やったとしても、うちもこれで張った。ダマでも十分やけど、
あと1飜増えるだけで24000点が36000点にまで跳ね上がる)
末原(ツモれれば最高やけど、もしロンなら……せっかくの三倍満を倍満どまりに
してまう。リーチをかければ三倍満確定なんや)
末原(――あかん……リーチなんてもってのほかや。狙い撃ちされてお終いや。そんな
甘い相手ちゃうで)
※ドラは基本表記しませんが、役宣言でドラがあったら「ああ、これがドラなのかな」くらいに補完してください
末原(でも、もし……もし和了れるなら、リーチかけるべきちゃうんか? こんなええ流れ
もう来えへんかもしれん。今が勝負のときちゃうんか? うちは今二回振り込みの危険を
犯して役牌を切ったんちゃうんか。そこまでやったのに結局保身に走るんか? くそ、
どうすればええんや……)
淡「……チッ」
淡「あのさ」
末原「っ、な、なんですか?」
淡「ざ……っ、ふー……えっと、早く打ってもらえます?」
淡(なに悩んだって同じだよ)
末原「あ、す、申し訳ありません」アセアセ
末原(……行くしかない! 勝負や!)
末原「リーチ!」
淡「……」
淡(リーチ、か……)
淡(――ここで潰すか? いや、焦らなくてもこんなのいつでも始末できる)
淡(それより、私のこの手……テルにいいとこ見せようと思ったのに、こんな無様
な手が揃うなんて……最悪だ。まだ本調子じゃないのかな)
淡(こんな手で和了りたくないな……もういっそ姫松に和了らせようかな。とりあえず、
この巡は放置してみるか)
咲「……」カチャ
末原「……」カチャ
末原(こい……! 頼むわ、来て……!)
末原「……」
末原「……」チラッ
白
末原「…………ぁ」
末原(う……嘘やろ。こんな……な、なんでうちにばっかりこんな牌が……クソ……!)
末原「くぅ……」
淡「……」フー
淡(白をツモったのかな。まったく、事ここにきてそんな牌をツモるなんて、よっぽど
場を支配する力に乏しいんだね。そのくせ他者の支配に抗う力もないなんてね)ヤレヤレ
末原「……」
末原(行くしかない……行くしかないんや!)
末原「……」タン 白
有珠山「……!」
有珠山(白? これは、白糸台の当たり牌じゃ……)
淡「……」
咲「……」
末原「……?」
有珠山「……え、っと……」
有珠山「ツモってもいいですか?」
淡「当たり前でしょ。誰も鳴き宣言してないんだから」
有珠山「あ、はい。じゃあ……」カチャ
末原「……」
末原(は、白が通った? 杞憂やったんかな……いやでも、中と発を鳴いて、こっから
どんな役満の成り損ないになるって言うんや……?
小三元もない。三暗刻もない。……まさか三槓子? 有り得なくはないけど……)
末原(――いや、そうか。白糸台は小三元を和了るつもりやったけど、まだ聴牌できて
なかったって可能性もある。なら白糸台はまだ一向聴以下。私の方が早い――!)
末原(和了るで、親の三倍満!)
咲「……」カチャ
咲(まずいよ……間に合わない)
有珠山「……」カチャ
淡「……」カチャ
淡「っ……」ピタ
淡「……………………チッ」
末原「……?」
末原(なんや、今度は自分が長考? 私の親リーに対して危険な牌を掴んだんか?)
末原(ええで……振り込め……振り込め……!)
淡「……………………ま、いっか」
末原(――振り込め!)
淡「ツモ」
末原「え?」
西西西南南南① ① 中中中 発発発
淡「混老頭トイトイ混一色西南中発ドラ2、6000,12000」
末原「」
末原「……」クラッ
末原(ふ、ふざけなや……)
末原(なんやその手!)
末原(白糸台の最後の手だしは北。つまり字一色聴牌やった。それをわざわざ落として
の①筒待ち……? 有り得ん。そんなん有り得んやろ)
末原(混老頭も清老頭の成り損ないってこと? 役牌のポンからてっきり小三元やと
ばかり思とったけど、そんなんもあるんか……どういうことなん)
淡「……」
淡(でもこんなの、清老頭の成り損ないとは言えない。私の混老頭ってのは、1,9牌
の刻子を四組揃えて、頭だけ字牌とか、そういうのであるべき。これじゃ字一色の
成り損ないじゃない)
淡(星の引力で場を支配したはずなのに、どうしてこんな恰好悪い手が入っちゃったんだろう)
咲「……」
咲(①筒待ち……か)
白糸台選手待合室
誠子・尭深「……」
菫「……清澄。なるほど、お前が買うだけのことはあるな、照」
照「……」
咲の手牌
一一九九①⑨⑨1199白白
菫「今の局、確かに大星の支配は効いていた。だが同時に、清澄の支配も行き渡っていた。
大星は小三元の素は手に入れたが、同時に清澄も白を所持。そして清老頭に必要な
1,9牌の半分を清澄が独占する形になってしまった。
結果、大星はあんな歪な形での混老頭しか和了れなくなった、ということか」
菫(大星、そいつは今までの奴とは訳が違うぞ。お前は清澄を出し抜いて和了ったつもり
かもしれないが、実際には清澄も①筒待ち。あと一手ツモ巡が違っていれば、混老頭を
和了っていたのは清澄なんだ。侮ると、お前でも本当に……)
菫「大星ほどではないにせよ、場を支配し、相手の手配を見透かす力。
それに、槓からのブースト。そして嶺上開花。確かに強敵だな」
照「……違う」
菫「ん?」
照「あの子の本当の強さは、そこじゃない」
菫「どういうことだ照。……お前、やっぱり清澄の大将のこと知ってるのか?」
照「……」
南三局
白糸台:173700
清澄:129700
姫松:45800
有珠山:50800
末原「……」カチャ
末原(あ、あかん。まだ前半戦やのに、マイナス5万点って、こんなんあっていいはずない。
しかもまたラス転落……。前の試合で清澄警戒しとったけど、白糸台……こっちがやばすぎる)
末原(せめてもっとこの人の牌譜があれば対策もできたのに、この大星淡、今大会では
予選の決勝以外打ってない。それ以外は全部大将に回ってくる前に終わってたから)
末原(せめて和了りの特徴だけでも知っておきたかった……けど、そんなん言っても
なんも始まらへんし、まずは一回和了ることや。ここまで和了れてるのが清澄と白糸台
だけとか、こんなこと許しとったらあかん)
末原(もう安手でもなんでもいい。一回和了りたい。安手で場を進めるのはホンマは愚行やねんけど、もうこの際仕方ない)
一一二三三七七八八九東東白 三
末原(よし、安手どころか、倍満手。今回は五巡目まで来てるし、
白糸台にも速攻の気配はない。大きく負けてる身としては勝負したいところやけど
……この白。これどないしよか)
淡「……」カチャ
末原(白糸台はツモ切り。いま河には役牌が一つも出てない……まさかまた小三元?
あかん、この白は切られへん。なら……安くなるの覚悟でチートイツや)三萬
淡「……」
淡(姫松は回し打ちか。白は出ない……?)
111222白白中中中発発 9
実況『大星選手、またしても非常に高い手を張っています! 三暗刻トイトイ小三元ホンイツ役牌二つにドラの1索が三枚……
数え役満に到達します。いえ、ツモ和了りすればそもそも四暗刻――! とてつもない大物手です!』
淡(……違う……私の麻雀はまだ完成していない。だからまだ役満は和了れない)
淡(私は今までの麻雀人生の中で、役満を和了ったことは一度もない。何度も狙ったけど、一度も和了れなかった。どんなに格下が相手でも)
淡(テルに出会って、私の力はまだ未完成なんだってことに気づいた。いつかテルを超えた
とき、私の麻雀は、最高の形で完成するはず。でも、今はまだその時じゃない)
淡(……だからきっと、この手じゃ和了れない。和了るなら、飜数を下げないと……今
14飜だから、最低でも二つは下げないとね。どうやって下げるか……)
咲「……」カチャ
咲「……」2索
淡「――っ!」
淡「カン」カチャ
111白白中中中発発 2222
実況『おっと? 大星選手、宮永選手の捨てた2索をカン。この鳴きは……どういう
ことでしょうか。無意味に飜数を下げただけに思えますが』
淡(喰い下がりでホンイツが1飜下がって、三暗刻も消えて合計11飜の手になった。この手なら和了れるはず)
淡(でも……なんか、違和感。咄嗟に鳴いちゃったけど、今の2索……あのタイミングで咲ちゃんがあれを捨てたのは偶然? それとも……)
咲「……」カチャ
咲「カン」
淡・末原「!」
456④⑤⑥二四五白 発 ⑦⑦⑦⑦
咲「……」二萬
淡(……? 嶺上開花じゃない? なら、今のカンは……)
咲(淡ちゃんが嶺上牌からも有効牌を取れるんなら、王牌に発を置いておくのは危険
だよね。私も和了りづらくなっちゃうけど、大きい手を淡ちゃんに和了られるよりはいい)
淡(……まさか私にわざとカンさせて、次の嶺上牌を狙ったの? ……あじな真似してくれるじゃん)
淡(でも、どうするの? 姫松が白を一枚もってる以上、その白はもう頭にもなれない
完全な不要牌。仮に姫松が白を切っても、頭ハネの権利は私にある。咲ちゃん、もうこの
局で和了れないんだよ?)
淡(それに、私の感じだとまだ発は出切ってない。あと一枚は山にあるはず。私がそれを引いたら……
――いや、それだと三暗刻がつく。13飜になるから和了れない……!?)
淡(まさか……私が役満以上を和了れないのを見越して……?)
咲(淡ちゃん、『成り損ない』しか和了れないって言ってた。なら、役満は和了れないってことだ。この局ではそれを確かめたい。複合役ありで数え役満なら出せるのか、それも
できないのか。それがわかれば、その情報は後半戦できっと活きてくる)
咲(私の予想では……多分和了れない。じゃないと、今の2索鳴きは説明できないもん)
淡「っ……」
淡(……なんにせよ、咲ちゃんはこの局では和了れない。もう咲ちゃんを警戒する必要もない。
なら肝心なのは有珠山と姫松だけど、有珠山はまだ聴牌にも遠い。問題は姫松……)
淡(そこそこの手を張ってきてる。でもこっちも咲ちゃんと同じで余った白を持て余してるせいで
和了れない。なら、結局この局で和了るのは私ってことになる)
淡(手を上げるならともかく、手を下げるのなんて簡単――と言いたいところだけど、
生憎、そうもいかない。いま私が一瞬でも聴牌を崩せば咲ちゃんがすぐさま白を切ってくる。
当然姫松もそれに続いて白を捨ててくるだろうから、白が全滅……
私は山のどこかにある発を引くまで和了れない)
淡「……」
淡(最悪、この局は流したっていっか。あるいは唯一和了れる有珠山が和了ってもいいし、
もし有珠山が発なんか捨ててきたら、それで和了ればいい)
一一二二三三七七八八九東白 九
末原(きた! チートイツにするつもりやったけど、思いもがけずリャンペーコー
チャンタ混一色の倍満手になった。
白の単騎待ちなんがネックやけど、とにかく聴牌や。くそ、白さえ切れれば清一も絡めれる手やのに……)
淡(張ったか。でもその白は切れないし、もうツモることもできない。大きい手が出来て
喜んでるみたいだけど、その手、和了れないんだよ)
淡(有珠山もまだ一向聴ってとこか。これは流局かなぁ)
咲「……」カチャ
咲「……!」
咲(――発! ……四枚目の発がきた。淡ちゃんを避けるみたいに、一手遅れて私のところへ。
……やっぱり淡ちゃん、役満手は和了れないんだ。――よし、それだけ分かれば……)
咲「……」タン 白
淡・末原・有珠山「!?」
淡(え、白? ここで? なんで?)
末原「――ま、待ってください!」ガタッ
末原「ろ、ロンです! 16000点、頭ハネです!」
咲「はい」ジャラ
淡「……」
淡(差し込み……? なんでわざわざ。流せばいいじゃん、こんな局)
咲「……」
南四局
末原(なんとかラスからは這い上がれた。清澄から直撃取れたんも大きい。後半戦に
入る前に、もう一回くらい和了りたい。でも、今は白糸台の親番……無茶はできへん)
淡(さて、と。私の親か……)
淡(――行くよ!)ゴォッ!
咲・末原「……!」ビク
咲「……」
咲(……させないよ)ゴッ
淡(まずは役牌二つずつ)
発発中中白白東東
淡(効いてる。私の星の引力が、有効牌を引き寄せてるのを感じる)
淡(ダブルリーチで決めてやる……!)
発発中中白白東東西西13
発発中中白白東東西西13赤5八
淡(…………は?)
淡(ダブルリーチじゃない……!? 私の親番で? どうして……)
咲「……」カチャカチャ
淡(……咲ちゃん……あくまでも私に歯向かう気なんだね)
淡(でも、いくら足掻いたところで私に大きな手が来てることに違いはない。一気に
ツモって終わらせてやる)
淡「……」八萬
咲「……」②筒
淡「ん?」
末原(嶺上開花やないんか)ホッ
淡(嶺上開花じゃないなら、今の槓は多分、私のツモる牌をずらすのが目的。
東をツモるつもりだったけど、邪魔されちゃったか)
淡(東をツモったのは有珠山……こっちはもうオり気味だから生牌の東なんて切ってこないな)
淡(まあいいか。なら東を落として中を頭にすれば――)
淡「……」カチャ
淡「……」東
咲「……!」カチャ
咲「……」白
淡「ポン」
咲「……」発
淡「……? それもポン」
末原(……ちょっとどういうつもりや清澄。白糸台の親のときに役牌を二つも連続で
捨てるなんて。よっぽど大きい手が来てるんか?)
淡「……」カチャ
中中東東135 6 発発発 白白白
淡(一向聴か。次巡に東を引いて、その次に2索を引いて和了りだ)
咲「……」カチャ
咲「カン」
淡・末原・有珠山「!」
淡(まさか、もう?)
末原(は、早すぎるやろ)
末原「……」カチャ
有珠山「……」カチャ
淡「……」カチャ
淡(――――ん?)ピク
淡「――ッ!」
淡(なっ……こ、これ……!)
中中東1135 中 発発発 白白白
実況『おーっと、大星選手、ここでついに中をツモった――! これで大三元確定!
他校に止めを刺す一撃となるか――!?』
淡「…………」
淡(違う――『掴まされた』!)
淡(さっきの局で、咲ちゃんは私が役満手以上を和了れないことを見抜いたんだ。
この中をツモったことで大三元は確定――つまり、『もうこの手じゃ和了れない』!)
淡(今の槓は東をツモる順をズラす以外に、私に中をツモらせる意図もあったんだ)
淡「……」ギリ
淡(ならこの中を捨てればいい――ってわけにもいかない。私の麻雀を見抜いたんなら、
この中を捨てるのは承知の上のはず。なら、咲ちゃんの当たり牌はこの中で間違いない。
じゃないとこれを掴ませる意味がない。逆に私がこれを持ち続ける限り、咲ちゃんも和了れない)
淡(……またこの流れ? 私も和了れない。でも咲ちゃんも和了れない。このまま他家が
和了るか流局? 一体なにが目的――いや……なるほど。そういうことか)
淡(……いいよ、咲ちゃん。認めてあげる。確かに、あなたなかなか強いよ。
あなたが白糸台にいれば私も少しは退屈せずに過ごせたかも)
淡(確かに咲ちゃんは私の能力の弱点を見抜いて、その隙を突いてきたかもしれない。
面白い力も持ってるし、白糸台でもナンバー3には入れただろうけど、でも、所詮は
そこまでってことだね)
淡(咲ちゃんは全力を出しても、私に和了らせないようにするのがやっとなんだ。自分の
和了るチャンスを棒に振ってでもしないと、私を止められない。最悪、いざとなれば
さっきみたいに他家に差し込んででも私の和了りを防ぐしかない)
淡(その結果が、この点差だよ。前半戦だけで得失点48000点差。チーム毎に見れば
60000点差。それが私たちの実力の差だよ、咲ちゃん)
淡「……」東
咲「ロン」
淡「…………は?」
四五六4赤56④⑤⑥東 東 8888
咲「三色ドラ2。3900です」
淡「」
実況『宮永選手、大星選手の大三元を阻止――! 独走状態の白糸台に一矢を報いた――!』
淡「……」ジャラ
実況『前半戦終了――! 前半戦は清澄と白糸台の競い合いでしたが、終わってみれば
白糸台の完全一人浮き状態――! このまま白糸台が三連覇に繋がる勝利を掴むのか――!』
ごめんなさい。正しくは有珠山の捨て牌でカンです
白糸台:169800
清澄:117600
姫松:61800
有珠山:50800
末原「……お疲れさまでした」
有珠山「お、お疲れさまでしたぁ……」ガックリ
淡「……おつかれさまでした」
咲「お疲れさまでした」ペッコリン
廊下
淡「……」カツカツ
淡(最後の一局……待ちは中じゃなかった)
淡(……私の考えを読まれた。私が中を切らずに東の対子落としをすると見て、そこで
狙い撃ちしたんだ。――くそっ)
淡「……でも、私の勝ちだから」
そうだ。清澄は前半戦でたったプラス4600。私はプラス44800。
誰が見たって私の勝ちだ。照との賭けは、私の勝ちで文句なんてないはずだ。
咲ちゃんは私に一矢を報いたに過ぎないんだ。
ガチャ
淡「ただいま」
菫・尭深。誠子「……」
淡「……? なに? 三人とも変な顔して」
菫「いや、なんというか……」
淡「ねえテル、見てたでしょ? 私の勝ちだよ。前半戦だけで45000点のプラス。
賭けは私の勝ちってことでいい?」
照「まだ後半戦が残ってるから」
淡「ふふ。照も往生際が悪いなぁ。安心してよ。別に変な罰ゲームなんてさせないよ。
そーだなー。私の家に三日くらい泊まりこんでずーっと麻雀打とうよ。他にプロを二人くらい呼んでさ」
照「いいよ。私が負けたらね」
淡「もう、どう見たって私の勝ちじゃん。菫もそう思うでしょ?」
菫「……」
淡「……菫?」
菫「照の言った通りになった」
淡「…………は? なにが?」
菫「照がな、言ったんだ。清澄の大将は、前半戦をプラマイゼロで終わるって」
淡「プラマイゼロ?」
菫「清澄は前半戦でプラス4600。25000点持ち30000点返しで考えたら、
プラマイゼロだ」
淡「――」
淡「……偶然でしょ、ただの」
菫「いや、気になって調べてみたら、清澄は一つ前の試合でも同じことをやってる。
それに県予選の個人戦でも何度か。照が言うには、彼女はこれを意図的にやってるらしい」
淡「……狙って……プラマイゼロ……?」
菫「……」
淡「……それで? 仮にそうだとしたらなんなの? 点数調整と勝つ技術は別でしょ?
実際には私と咲ちゃんの間には得失点が40000点差もあるんだから、私の勝ちじゃん」
照「淡は毎試合プラマイゼロにできる?」
淡「そんな訳わかんないことしようとも思ったことないから分からないよ。でも出来るんじゃない?」
照「でも菫とか白糸台の一軍メンバーには出来ないんじゃないか?」
淡「まあ……毎回確実に、ってことだったらかなり格下じゃないと厳しいかもだけど」
照「そういうことだよ」
淡「なにが?」
照「つまりあの清澄の大将は、〝淡のことを相当格下だと思ってる〟ってことだよ」
淡「……」
照「確かに今のままなら白糸台は一位通過するだろう。でも、それで清澄に勝ったと言える?」
淡「……」
淡「手加減されてるっていうの? この私が?」
照「どう捉えるかは淡の自由」
淡「……」ギリッ
淡「……いいよ。わかった」
淡「後半戦、私は死んでも咲ちゃんにプラマイゼロなんてさせない。白糸台も一位で通す。
麻雀の内容でも勝つ」
淡「それができたら、文句なしで私の勝ちってことでいいよね?」
照「ああ。そこまで出来れば、私の完敗だ」
淡「じゃあそれでいいよ。一応、テルも罰ゲーム考えといてよ。まあ無駄だろうけど」
ガチャ、バタン
菫「……本当なのか、清澄が狙ってプラマイゼロをやったなんて」
照「まず間違いない」
菫「……信じられん。あの大星を相手に……。お前はどう思うんだ? 本当に大星相手に
二連続プラマイゼロが出来ると思うか?」
照「私はそう賭けた」
菫「……そうだったな」
照「でも、かなり難しいと思う」
菫「ならどうしてこんな賭けをしたんだ。いくらなんでも分が悪すぎるぞ」
照「勝ち負けはどうでもいい。私はただ、知りたいだけ」
菫「知る? 何をだ」
照「淡ならあの子の……咲のプラマイゼロを止められるのかどうか」
菫「照……」
照「もし淡に咲が止められるなら……」
照「きっと、私にも止められる」
咲「……ふう」
咲(淡ちゃん……すごく強かった。お姉ちゃんと互角くらいの力は持ってる
……お姉ちゃん……見てくれたかな。私の麻雀。私の伝えたい事……お姉ちゃんに伝わったかな)
淡「咲ちゃん」
咲「あ。淡ちゃん」ぺっこりん
淡「……」
咲「……? どうかしたの?」
淡「さっきのプラマイゼロ、狙ってやったの?」
咲「……!」ピク
淡「どうなの?」
咲「……ごめんなさい」
淡「なんで謝るの?」
咲「だって……」
淡「……」
淡「……次の後半戦で、もう一回プラマイゼロにしてみなよ」
咲「え?」
淡「それができたら、咲ちゃんのこと認めてあげる。私よりも強い雀士だってね」
咲「あ……うん。どうも」
淡「私に認められるかどうかなんて興味ないって感じだね」
咲「え、いや、そんなことないよ」アタフタ
淡「……言っとくけど」
淡「私に勝てないようじゃテルには一生勝てないよ」
咲「――ッ!」
お姉ちゃんの後輩、雑魚いよ
淡「やってみなよ、プラマイゼロ。私は全力で阻止する。絶対にプラマイゼロになんてさせない。
プラマイゼロできなきゃ、咲ちゃんって別に凄くもなんともないよね。正直、天江衣にも劣ってるよ。
当然、私にもね。前半戦どおりの実力って感じ」
咲「……」
淡「でも、私が全力を出しても……それでもプラマイゼロにできるんなら、認めてあげる。
高校生で一番テルに近い打ち手だって」
咲「……お姉ちゃんに……」
淡「それだけ。じゃあ、後半戦よろしくね」
ツカツカツカ
咲「……」
咲「よろしくね、淡ちゃん」ゴッ!
実況『さあ、ついに準決勝も後半戦に差し掛かりました。独走状態の白糸台を止める
ことはできるのか――!」
四人「よろしくお願いします」
東:有珠山
南:清澄
西:姫松
北:白糸台
咲「……」
淡「……」
淡(咲ちゃん、やる気だね、プラマイゼロ)
淡(させるもんか。私を相手にそんなふざけた真似、絶対許さないから)
東一局。親:有珠山
有珠山:50800
清澄:117600
姫松:61800
白糸台:169800
淡(この一試合、もう単純な点の取り合いじゃない。私と咲ちゃんのプライドをかけた勝負だ)
私の勝利条件は三つ。
一つ。白糸台が一位通過すること。
二つ。咲ちゃんにプラマイゼロをさせないこと。
三つ。麻雀の内容で咲ちゃんに負けないこと。
淡(私のリードは5万点以上ある。そうそうひっくり返されることはない。白糸台の
1位通過っていう条件はほぼクリアされてると言っていい)
淡(そして咲ちゃんのプラマイゼロを阻止すれば、連動して内容でも勝ったって言えるはず。
とにかく咲ちゃんをプラマイゼロにしないこと。それができれば私の勝ちだ)
咲ちゃんのプラマイゼロを潰す方法は大きく分けて三つある。
まず、咲ちゃんに和了らせない。プラマイゼロなんていう微調整は咲ちゃん自らが動かないとできるはずがない。
必ずどこかで和了って点数を調整してくる。私はそれを叩けばいい。
次に、プラマイゼロから大きく引き離す。プラマイゼロになるのはプラス4500から5400まで。その点数から
大きく咲ちゃんを引き離すだけで、プラマイゼロはぐっと難しくなる。
マイナスならベストだけど、最悪プラスに引き離してもいい。そうなると咲ちゃんは自分から
他家に振り込んで点数を調整するしかない。そこで私が咲ちゃんよりも先にどこかに差し込むか、なんなら私が先に和了ればいい。
最後は、オーラスで刺す。オーラスまでに私がトップ、かつ咲ちゃんがプラマイゼロの状態でなければ、
最後に私が和了るだけで咲ちゃんのプラマイゼロは不可能になる。和了る際に咲ちゃんが
プラマイゼロにならないように調整するだけでいい。
淡(この後半戦、私は和了りまくればいいってわけじゃない)
淡(私が和了りまくって20万点とったとしても、咲ちゃんがプラマイゼロにすることは不可能じゃない。試合では勝っても、勝負に勝ったことにはならない)
淡(私自身も適度に点数を調整していかないと。時には和了りを見逃したり、他家に
振り込んだりすることも必要だね)
淡(……ふふ。こういう趣向の麻雀は今まで打ったことないよ。なかなか面白いね。
――でも、最後に勝つのは私だよ、咲ちゃん)
淡(じゃ、まずは軽く挨拶代わりに……)
淡「ツモ」
発発22234666888 5
淡「混一色三暗刻。2000,4000」
末原「なっ……!」
四暗刻まで見える手……白糸台、しょっぱなから全開かいな)
末原(赤5索じゃなかったのだけが救いか……ドラが乗ればハネ満まで伸びとった)
淡(……そういえば菫が前に言ってたな。この手を和了るなら赤5索は狙わないのか、って)
淡(分かってないよね皆。それだと5索が全部赤くなるじゃん。五本の内一本だけ赤いからこそ
『完璧な成り損ない』なんじゃない。赤5索なんてダサイ手、ツモってもイラついて崩しちゃうよ)
実況『大星選手、肩慣らしとばかりに満貫をツモ和了り――! やはり白糸台を
止めることはできないのか――!?』
末原(あかん……どっかで流れを掴まな。ただでさえ清澄とも大差なんや。このままじゃ
二位で決勝進出も厳しい)
有珠山「うぅ……」
淡(姫松と有珠山はどうやって二位になろうか考えてるのかな? ふふ、まあせいぜい
低い次元で足掻いてればいいよ)
淡(さあ、咲ちゃん……そろそろ本気出してよ)
咲「……」
姫松(……配牌は悪くない。一巡目はまず北を切って、それから……)
咲(淡ちゃん……すごいプレッシャーだ。今まで何度かプラマイゼロを防ごうとしてきた人は
いたけど、その中でも一番手ごわい相手だ……)
咲(でも……淡ちゃんに勝てれば、お姉ちゃんに一番近い打ち手だって認めてもらえる。
私は……お姉ちゃんにもう一度会うために来たんだ。こんなところで負けられない……!)
咲(お姉ちゃん……あの日のこと、許してもらおうとは思わない。ただもう一度だけ……
お姉ちゃんと話がしたい)
咲「……」カチャ 北
淡「ロン」
咲「え――」
234456三四五①①①北 北
淡「人和。8000」
淡「聴牌気配すら読めなかった? 不注意すぎるよ咲ちゃん」
咲「……」
淡「あのさ。私に宣戦布告しといて対局中に他のこと考えてる余裕なんてあるの?」
咲「……!」ビク
淡「あんまりイライラさせないでね」
咲「……うん」
末原「……」
末原(あ、危なかった……清澄が北を切らんかったら、私が切ってた……白糸台……ほんまにバケモノやないか)
淡(私はもう十分リードを取ってる。多少振り込んででも、咲ちゃんの和了りを防げばいい)
淡(咲ちゃんが和了りそうになったら姫松か有珠山にでも差し込んで咲ちゃんの点数を変動させない。理論上はこれで勝てる)
咲「……」カチャ
淡(咲ちゃんが張った。待ちは索子が臭い。……流すか)
淡「……」カチャ
末原「ポン!」
淡「……」カチャ
末原「……!?」
末原「ろ、ロンです! 5800」
淡「はい」チャラ
咲「……っ」
淡(ふふ。悔しそうにしてる。前半戦で私に点を取られ過ぎたね。いくらでも差し込んであなたの
和了りを阻止してあげるよ)
咲「……」
咲(そう来るのか……困ったなぁ)
末原(白糸台が振り込むなんて珍しいな。これは、流れが来てる……? 今がチャンスや)
末原(親番が続行できるし、ここは軽くでも連荘目指すべきやろか)
東三局
咲(……まずは軽く和了らないと。これ以上振り込んでマイナスに傾くのはよくない)
淡(――って、思ってるんだろうけど。そうそう簡単にはいかないってこと教えてあげる)
淡「カン」 白
末原(? 白を暗槓……? なんでわざわざ)
淡「もいっこ、カン」 中
咲・末原・有珠山「!?」ビク
末原(しょ、小三元……!?)
咲(しかも槓ドラが……淡ちゃんの鳴いた中!)
淡(ふふ、どう? 和了れば倍満以上確定の手だよ。これをツモ和了りすれば咲ちゃんはマイナス6000)
淡(更にマイナスに傾く上に、有珠山がもう三万点弱しか残らない。私なら一瞬で消しトばせる。
そうすればプラマイゼロどころの話じゃないよね?)
咲「ん……」
淡(ほら、そういう事態を防ぐにはどうすればいいの、咲ちゃん?)
咲「……」カチャ
有珠山「! ろ、ロン。3900です」
咲「……はい」チャラ
末原「……」ホッ
淡「ふふ」
淡(そう。私の和了りを防ぐには自分から他家に差し込むしかないよね。私が大きいのを和了って
有珠山がトぶよりはずっと確実。それが正解だよ、咲ちゃん)
淡(でもこれから私が大きな和了りをしそうになる度に咲ちゃんはそれを繰り返さないといけない。じゃないと他家が
トんじゃうしね。その度に咲ちゃんはマイナスに傾いて、プラマイゼロから遠ざかっていく)
咲「……」
淡(まあ、そんな『他家が弱かったからプラマイゼロを防げた』みたいな勝ち方はしないけどね。
あくまで正面から咲ちゃんを叩き潰す。でも、咲ちゃんはその可能性も考慮しないといけない)
淡(相当動きが制限されるはず。さあ、これでもまだプラマイゼロ出来るって言うならやってみせてよ)
南四局
淡「……」カチャ
淡(私の親番か。さーて、どうしてあげようかな)
淡「……」ゴォォォォォ!
咲(あ、しまった……!)
淡(ふふ。もう私の星の引力を止める気力もないのかな? 遅いよ、咲ちゃん)
淡「ダブルリーチ!」
咲・末原・有珠山「!」ビクッ
実況『出ました、大星選手のダブルリーチ――! 天和の『成り損ない』。しかしその威力は
絶大です――! さあ、他の三校はこれを防ぐことができるのか――!?』
淡(できるよね、咲ちゃん。別にむずかしいことじゃないよ)
淡(ほら、姫松が配牌で一向聴だよ。一巡待ってあげるから、差し込んであげなよ)
咲「……」
咲「……」カチャ
最強のキャラを作るにはそのキャラの心理描写を一切省くことが重要らしいな
打ってる最中の咲さんってそういうところあるよね
別に咲に限らず麻雀漫画はボコられる奴の視点で進むのが基本や
咲「……」カチャ
末原「あ、ロン! 7700!」
咲「……」チャラ
淡「ふふ」ニヤ
淡(どう? 身動きが出来ずに少しずつ窒息していくような感覚。まるで宇宙に
放りだされたみたいでしょ? もっと引きずり込んであげるよ……宇宙の闇へ)ゴォォ
淡(これで咲ちゃんは後半戦マイナス21600点。今の段階では倍満を和了ってもプラマイゼロには届かない)
淡(意識すればプラマイゼロなんて簡単に止められるもんだね)
咲「……」
もう咲ちゃんは戦意喪失したような面持ちだった。
今まで格下相手に得意げにプラマイゼロをやってきたんだろうけど、今回ばかりは相手が悪かった
ということだろう。続く南一局、親の有珠山が2600オールを和了った。それはまたしても
咲ちゃんがプラマイゼロから遠ざかることを意味していたが、咲ちゃんは何もできなかった。
続く南一局二本場――
淡「……」カチャ
東東南南西西北北白白発発⑦ ⑦
淡「……ツモ。4000,8000」
咲・末原・有珠山「!」ビク
淡(何の苦もなく字一色の鳴り損ない和了っちゃったよ。これで咲ちゃんはマイナス28200。
悪あがきもここまでかな?)
淡「あーあ。なんかがっかりだな。咲ちゃん、もっと楽しませてくれると思ってたのに」
咲「……っ」
淡「まるで張り合いないよ。この程度でテルに挑もうなんて、身の程知らずにも程があるよね」
咲「……」
淡「だいたい咲ちゃん、テルの強さ分かってるの? この私ですらテル相手に一度も
トップとったことないんだよ? 麻雀でテルに何を伝えたいのか知らないけどさ、
こんなんじゃテルも「弱いなぁ」としか思わないんじゃない?」
咲「……淡ちゃん」
淡「んー?」
咲「ちょっと……うるさい、かな」
淡「そう? 負けてるときは何でも耳障りに聞こえるものじゃないかな」ニコリ
咲「まだ勝負は終わってないよ。まだ私の親番が残ってる」
淡「そう、最後の親番だね。これを逃せば、残り二局でプラマイゼロにしないとだね。
――できると思ってるの?」
咲「お姉ちゃんに挑むなら……」
咲「それくらいじゃないと、駄目なんだよね」ゴォォッ!
淡「やってみなよ」ゴォ!
南二局
淡(咲ちゃんの親……喰いタンでも和了ってやろうかな。ふふ、咲ちゃん悔しがるだろうなぁ)ニヤニヤ
咲「――カン」
淡「お?」
咲「ツモ。嶺上開花。2000オール」
淡(案外あっさり和了られちゃったか。さっきの挑発でさすがに火が点いたかな?
まあそれくらいじゃないと面白くないけどね)
南二局
咲「……」カチャ
淡(……咲ちゃんが張った。でも安い。連荘狙いできたか。いいよ、受けて立ってあげる)
末原(清澄……張ったか? せやけど、ここはうちもオりれん。私の親は次の南三局。うちと清澄の
点差はまだ三万点以上ある。ここで逃げたら、次の親でケチついてまう気がする)
淡「……」カチャ
淡(四巡目で一向聴……珍しく私の手が重い。このままなら咲ちゃんに和了られちゃうか……)
淡(咲ちゃんの待ちは多分③⑥筒。私が振り込むことはないけど……他の二校が読めてるかどうか……)
淡「……」タン 赤5筒
有珠山「――っ、チー」 ④赤⑤⑥
淡(――よし。今のはただのドラ回収じゃない。この局数と点差でそんなケチな点棒拾っても仕方ないからね。
有珠山は⑥筒が危険だと察知してる。なら筋の③筒も切らないよね。よし、こっちは大丈夫)
淡(あとは……)チラッ
末原「……」カチャ
末原(張った! 溢れたのは③筒か……切りにくいけど……)
末原(――いくしかない!)カチャ
淡「……チッ」
咲「ロン。3400」
末原「っ……はい」チャラ
淡「……」
淡(いくら私でも姫松が振り込むのを止めるのはちょっと厳しいな。小三元ちらつかせて
オりさせることもできるけど、それならもう私が和了っちゃった方が早いか)
南二局
淡「カン」発
末原(っ……小三元か……いや、さっきの緑一色……?)
末原(いや、暗槓なら発を鳴いて役満一歩手前に出来る役なんかいくらでもある。
字一色。混老頭、四槓子、四暗刻……全部を警戒するなんか無理や。くっ……わざわざ
暗槓したのは他家の動きを牽制するためか)
淡(これなら姫松も有珠山も勝手にオりてくれるでしょ。さぁてと――)
咲「――カン」 4索
淡・末原・有珠山「!?」
咲「――ツモ。2600オール」
淡「――」ヘー
淡(4索……緑一色の大本命じゃん。お構いなしか……やっと全開ってわけ?)
淡(もうこうなると下手なハッタリは逆効果だね。さっさと和了っちゃう方が確実か)
実況『清澄高校の宮永選手、ここにきて親の三連続和了です。一位の白糸台とも、三位の姫松とも
大きく差が開いての二位。この連続和了は二位抜けでの決勝進出を盤石なものとするのか、
それとも一位の白糸台にすら食らいつく決意の表れか――!』
淡(私も咲ちゃんももう点数も順位も考えてない。あるのはただ、プラマイゼロへの調整のみ。
咲ちゃんは今マイナス11000点。オーラスで最後の調整をするつもりなら、ここは
満貫12000くらいを狙ってくるはず。そうすればプラス1000点。オーラスで3900を
和了ればプラマイゼロだ)
淡(させないよ……!)ゴッ
淡「……」カチャ
一一一二二三四六七八九九⑨ 九
淡(――よし。張った)
実況『大星選手、この局面で九連宝橙聴牌だ――! 五萬なら役満となります――!』
淡(ってことは、五萬は和了れないってことだ。九連を張ったらいつも清一になるから、ツモるのは
五萬子以外。多分次か、その次くらいに来る)
有珠山「……」カチャ
淡(有珠山……この点差でもまだ戦意喪失してないな。親番もないし、役満を狙うしかない状況)
淡(姫松以上にオりれないから、危険牌でもガンガン切るしかない。――ここから取る?
これ以上咲ちゃんに点数調整させるのもよくないし)
有珠山「……」カチャ 東
咲「――カン」
淡(っ、馬鹿……! いくら突っ張るしかないったって、よくそんな牌切るね。信じられない)
咲「もいっこ、カン」カチャ
淡(くそ……これ和了られるな。あーあ、だから弱い人と打つのは嫌なのよ。
まあ、次で親を流せばまだプラマイゼロは十分防げるはず)
咲「――もいっこ、カン!」
淡・末原・有珠山「!?」
淡(三連続……!? まって、しかもこの牌……これ、安手なんかじゃない!)
咲「――ツモ」
99南南 南 ①①①① ⑨⑨⑨⑨ 東東東東
咲「三暗刻三槓子トイトイ混老頭東南嶺上開花ツモ。――36000点です」
有珠山「ひっ――!」ビクッ!
末原「」
実況『…………さ』
実況『――三倍満!! 親の三倍満が飛び出しました――!! 有珠山の捨てた牌から
三連続カンにより一気に手を進め、三倍満にまで上りつめました――!』
実況『これは姫松、有珠山にとっては致命傷の一撃となるか――!? 二位の清澄と三位の
姫松の点差は七万点以上にまで広がってしまいました!! 有珠山高校は親番がないため絶体絶命。
親を残す姫松も、もはや敗退は時間の問題か――!』
末原「……」プルプル
末原(き……清澄ぃ……!)ギリリ
有珠山「……」ボーゼン
淡「…………」
淡(これは……どういうこと?)
淡(確かに驚いたよ。ここで三倍満かましてくるなんてね。――でも、それって駄目でしょ。
今ので咲ちゃんはプラス25000点。これ、どうするの? どこかに20000点振り込まないと
プラマイゼロにできないんだよ? てっきりオーラスで指定の点数を和了ってプラマイゼロにしてくる
と思ったのに、これじゃあ『オーラスで指定の点数に振り込んで』点数調整するしかないじゃない。
そんなこと……本気でできると思ってるの?)
淡(……思ってるんだろうなぁ……自分で自由に役を作って点数調整するならまだしも、
誰かにその役を作ってもらってそこにちょうど振り込むなんて、そこまでできれば確かに
神技だよ。はっきり言って、多分私もできない)
淡(……調子に乗り過ぎだよ、咲ちゃん)
淡(分かってるの? もう有珠山が10000点ないんだよ。今私が有珠山を
トばせばそこで終わり。あなたは馬鹿丸出しで負けるんだよ)
咲「……」
咲(……そんなことさせないよ、淡ちゃん)
南二局
淡「……」カチャ
四四四七七七南南南⑨⑨⑧① ⑧
淡(はい、三暗刻、南、ドラ3でハネ満。これで有珠山トばしてあげる)
咲「……」カチャ ③筒
有珠山「っ……」ピク
有珠山「…………」
有珠山「ろ、ロン……です。3900」
咲「はい」ホッ
淡(ふん、差し込んだか。点数調整も兼ねてるんだろうけど、必死だね咲ちゃん)
咲(……危ないところだった。もし有珠山の人が和了ってくれなかったら……多分、負けてた)
末原(くそっ……なんて迷惑な和了りや。もう戦意喪失したならじっとしといて欲しいもんやけど……まあ振り込んでトばれるよりはマシか)
末原(私は諦めへんで清澄。この親番……絶対ものにしてみせる!)
淡(さて、あとたった二局。咲ちゃんは今プラス21100点。ここから二局でマイナス16000点
しないといけないわけだけど、二局に分けて考えれば決して不可能じゃない。満貫に二回振り込めばいいわけだしね)
淡(でももしオーラスでこの点数だったら? オーラスだけでマイナス16000なんて
できるわけがない。だってそんな点数で和了っても姫松も有珠山も二位になれないんだから。だからこの局、
咲ちゃんは必ず姫松に振り込もうとするはず。姫松は連荘を狙って8000点でも喜んで和了るだろうし、
それを二回繰り返したあと、誰にも振り込まず、誰にもツモ和了りさせなければようやくプラマイゼロ、か)
淡(――ふふ。相当きつそうだね咲ちゃん。焦ってるのがこっちまで伝わってくるよ)
咲「……」
咲(分かってる。ここからプラマイゼロはかなり厳しいよ……)
咲(――でも、きっと淡ちゃんは私のやろうとしてることは読めてないはず。だって淡ちゃん
には思いつくはずのない方法だもん)
咲(そこで決める――!)ゴッ!
23567中中中発発発白白
淡「――ふふ。リーチ」カチャ
咲・末原・有珠山「!」
実況『大星選手、ここでリーチ! 点差と役を考えればダマでも十分な手ですが、
これは他家を牽制するためのリーチでしょうか――!?』
淡(これでまず有珠山はオりる。あとは姫松。ここはオりない。オりれない。私のリーチに
対して責め続けるしかない。振り込めばそこで終わりだ)
末原「くっ……」
789①①①②③一二二三1 北
末原(いい手が入ってる……これは和了りたいけど……1索は白糸台に危険や。いや、もうここまで
めちゃくちゃな打ち手やと待ちなんか読まれへんけど、ここで振り込むことだけはあかん)
末原(まずは現物の北や。この1索は順子に伸ばして使うしかない)
淡(――無駄だよ。あなたは次に4索をツモる。それを切ってお終いだよ。あなたも、咲ちゃんもね)
咲「……」
咲「……」カチャ 1索
淡・末原「!」
淡(これは――私の当たり牌……!)
淡「……く」
淡(だめだ、和了れない。これを和了ったら咲ちゃんの思うつぼだ。咲ちゃんのプラマイゼロの
調整を手伝うだけで終わっちゃう)
淡「……」
末原(……ロン宣言しない。この1索は通る! 現物がなかったから、もうここはこれに与るしかない。
三色は消えるけど、振り込むよりはずっとええ)
末原「……」カチャ
789①①①②③一二二三1 4
末原「……」カチャ 1索
淡「……」ギリ
実況『あーっと。大星選手、清澄高校の当たり牌を見逃したため、これは同巡フリテン縛りで
和了ることができません――! いったいなぜ清澄から和了らなかったのか』
淡(……別にいいよ。次で今ツモった4索切ったら同じことだし)
咲「……」カチャ
咲「……」タン 4索
淡「ぐっ……!」ピク
淡(また私の当たり牌!? このっ……私が和了れないのをいいことにやりたい放題……!)
末原(この4索も通る。よし、いい感じや)
789①①①②③一二二三4 一
末原(よし、いける!)
末原「……」タン 4索
実況『――ああー! これも同巡フリテンで和了れない――! 大星選手、清澄からの出和了りを
二度見逃したせいで、もう二度もチャンスを手放しています』
淡「……」ギリィ
淡(まだだ。この巡で有珠山がもう一度4索を引く。それは山越しだから、有珠山がそれを捨ててくれば和了れる。
有珠山はオりてるだろうけど、この流れなら4索は安全と思って切ってもおかしくない)
淡「……」カチャ
咲「カン!」
淡「!? なっ――!」
淡(私の捨て牌を――!)
末原(ちょ、ちょっとまって清澄……まさか……嶺上開花!?)
淡(違う。和了ってどうするの。これは嶺上開花じゃなく、有珠山が4索を引かないように
ズラしたんだ。……でも、それだと結局4索を引くのは姫松だ。こんどはフリテンにならないから和了れる!)
咲「……」カチャ クルッ
槓ドラ 西
咲「……」カチャ 西
淡(今開けた新ドラの西を躊躇いなく切ってきた。これは……――! あ、しまった!)
有珠山「ぽ、ポン!」カチャ
淡「くっ……!」
淡(西は有珠山の風牌……!)
淡(カンで西をドラにして有珠山に鳴かせたんだ。まずい、この鳴きでまたツモ巡がズレて、
4索をツモるのは咲ちゃんになった。もう4索は出ない……!)
咲「カン!」
淡(ちょ……今度は暗槓!?)
咲「……」カチャ クルッ
末原(槓ドラ……――!!)
末原(槓ドラが私の①筒! これでドラ3……倍満手や!)
末原「……」カチャ
末原(こい! ――――!)カッ
末原「ツモ! イーペーコー純チャンドラ3、8000オール!」ッターン!
淡「なっ――」ガタッ
実況『末原選手、ここで親倍――! これで試合はまだ分からなくなりました――!』
淡「……」
淡(私が咲ちゃんから和了れないことを利用して、二度も姫松の危険牌処理を手助けして、しかもあの槓ドラ……)
淡(有珠山に当たり牌が渡ることの阻止。槓ドラで姫松の手を上げてきっちり8000点マイナス。
そしてツモ巡そのものをズラして姫松に当たり牌をツモらせる。……槓ドラを利用してここまで思惑通りに進めてくるなんて)
なん、、、だど、、、、、、、、
淡(……やってくれるね、咲ちゃん)
咲「……」
淡(次で仕留めてやる……絶対に)ゴッ
南三局
淡「ポン」北
末原(くそ……まずい牌鳴かせてもうたか?)
末原(でもこの配牌……これは……)
淡(咲ちゃんは今プラス13100点。オーラスでマイナス8000点になればプラマイゼロだ)
淡(今の点差のままオーラスになれば咲ちゃんの負けは確実。その考えは間違ってないはず。
さっきは少し余裕出してリーチなんてしちゃったから後の状況変化に対応できなかったけど、
今度は鳴いて速攻で仕留める)
咲「……」カチャ 東
淡「ポン」カチャ
咲「……」カチャ 西
淡「ポン」カチャ
中中中九 北北北 東東東 西西西
淡(星の引力を使えば十分勝算はある。これで和了っても咲ちゃんはプラマイゼロにならない)
末原「……」カチャ
末原(……こい!)
末原(こい!)カチャ
末原(こい!!)カチャ
末原「……」カチャ
末原「……! っ、き――!」ビクッ
一九①⑨19東南西北白発八 中
末原(きた!! 国士13面待ちや!!)ドックンドックン
淡「――ッ!?」ビクッ
淡(この感じ……! まさか姫松、役満張ったの? この土壇場で!?)
末原(いける……! これを和了れば、清澄と並ぶ!)ドックンドックン
淡「……」
淡(この捨て牌……国士か。しかもこの気配……尭深がオーラスで和了るときと同じ。
まさか13面待ち……?)ギリ
淡(ツモなら16000オール。咲ちゃんは逆にマイナス2900点になって、今度は
二局で8000点前後を和了ればプラマイゼロになる。……それくらいなら、十分有り得る)
淡(有珠山も聴牌には遠いから差し込めない。咲ちゃんは当然和了らないだろうし、まずいな……
私が和了るしかない。この手で和了れば6000,12000。ここで和了れば姫松はオーラスでどんな手を和了っても二位にはなれないんだから、
咲ちゃんから2000点和了ったりしないはず。それよりもここで姫松に役満和了られて
二位争いに参加されるほうがずっと面倒だ)
淡(仕方ない、次で引くしかないね)ゴォォォッ!
咲「……」カチャ
咲「――カン」
淡(また暗槓? 大丈夫、暗槓ならツモ巡は狂わない。次巡で当たり牌をツモれるはず。
悪あがきだよ、咲ちゃん)
咲「……」カチャ クルッ
淡(新ドラは……――え)ピク
淡(新ドラ、西……? 私の鳴いた牌だ。ってことは、ドラ3がプラスされて……)
淡「――ッ!!!」
中中中九 北北北 東東東 西西西
淡(九萬がドラだから……混老頭トイトイ中混一色ドラ5、14飜で数え役満――!
まずい、この手じゃ和了れない!!)
淡「……くっ!」カチャ
淡「――――!!??」
淡(なっ……九萬じゃない……!?)
中中中九 一 北北北 東東東 西西西
淡「ぐっ……そ、そんな!」
淡(確かに一巡前までは九萬を引けるはずだったのに……数え役満になったから、牌が私を避けて……!
しかも、手牌に字牌しかない……これじゃあどれを切っても……!)
実況『こ、これは――!!! 大星選手、手牌が全て末原選手の当たり牌になってしまった――!!
こ、これはもう、振り込むしか道はない――! 親の役満直撃は48000点です!!』
淡「…………」プルプル
咲(淡ちゃんの弱点は13飜以上の手を和了れないこと。だからカンを操ってドラを乗せることが
できる私なら、淡ちゃんの手を封じることができる。今までそんな止められ方をしたことは少ないはず)
淡(……この一瞬を狙ってたっていうの……? 私に役満を振り込ませることを……!)
咲「……」
淡「く……そぉ……!!」タン!
末原「!! ろ、ロン!! 国士無双、48000点です!!」
淡「……」ギリッ!
清澄:130700
姫松:130700
有珠山:5800
実況『な、なんということでしょう!! まさかここで白糸台が三位の姫松に役満を放銃!!
これにより有珠山以外の三校の点差はほぼ横並び状態です! これは姫松の二位進出……
いえ、まさかの白糸台の三位転落すらも十分考えられる点差となりました――!』
淡(こ、この私がこんな雑魚相手に役満を振り込むなんて……テルの見てる前でよくもこんな……!)ギリィ!
有珠山「……」カチャ
咲「ロン。1600」
淡(あっ……! しまった、動揺してる間に和了られた)
実況『清澄高校が有珠山から安手を和了り、姫松高校の親が流れます。ついに準決勝大将戦の
オーラスに突入です!!』
清澄:132300
姫松:130700
有珠山:4200
末原(オーラスや。清澄との差はたった1600点や。ここで2飜以上和了れば二位抜けや!)
淡(今の和了りで咲ちゃんはプラス14700。この点差なら誰かが和了った時点で即終局。
正真正銘、最後の一局だ)
淡(ここから咲ちゃんがプラマイゼロにするには9000点以上の振り込みが必要……
でも振り込んだら三位に転落。だから私が8000オールを和了って、その前に咲ちゃんが
リーチしてリー棒を1000点だせば、600点差で姫松に勝ちつつプラマイゼロ。
……無理だ。できるわけない。もうプラマイゼロは絶対に不可能だ)
淡(プラマイゼロは諦めたか。役満を振り込ませて一矢報いたってことかな。確かに、プラマイゼロに
されるのと同じくらいの屈辱だよ、咲ちゃん)
淡(こうなった以上、もうプラマイゼロの心配はない。ここで私たちの戦いの勝敗を
決める要素があるとすれば、それは私か咲ちゃんがどこかに振り込んで三位に転落っていう赤っ恥を晒すこと以外にない)
淡(最後の最後でこんな殴り合いみたいな麻雀にもつれ込むなんてね。でも、ここを押さえれば私の勝ちだ)
淡「ポン!」カチャ
999⑤⑤⑧⑧北北北 111
淡(トイトイ。ツモれば三暗刻だ。4800だからプラマイゼロにもならないし、即終局。
これでとどめを刺す……!)ゴッ!
末原「……」カチャ
二二二234赤56②②③③④ ④
末原(来た! タンヤオイーペーコー平和ドラ1で三面待ち! これを和了れば文句なしで1位通過や!)
淡(……姫松も張った。まずい。オーラスは私が親……高い手をツモられれば親被りで
三位転落も有り得る。そんなことになるくらいなら自殺したほうがマシだ)
淡(⑤筒も⑧筒もまだ二枚ずつある。絶対に先に和了ってみせる!)
有珠山「……」カチャ ⑨筒
咲「チー」カチャ ⑦⑧⑨筒
淡「……っ」
淡(私の⑧筒……くそ、でもまだ一枚ある)
咲「……」カチャ
咲「……」タン 赤⑤筒
淡「――あ」ピク
淡(⑤筒――私の当たり牌だ!)
実況『――ああーっと。ここで宮永選手、赤⑤筒を捨てた――! これは大星選手の当たり牌!
これで勝負は決着だ――!』
淡「ろ――」
淡「――」ピタ
淡「……」
淡(赤⑤筒……ドラ……これを和了ったら、私の手はトイトイドラ1で9600点になる)
淡(咲ちゃんは今プラス14700。私に9600点を振り込んだら、プラス5100点)
淡(つまり……プラマイ、ゼロ――!?)ゾクッ
咲「……」ジー
淡「……っ」ゾ
淡(これは事故じゃない。差し込んだんだ。これが私の当たり牌だって分かった上で切ってるんだ)
淡(この子、正気!? ここで私が和了ったら、清澄は三位に転落。決勝に進めないんだよ!?
咲ちゃん、そうまでしてプラマイゼロに拘るっていうの!?)
咲「……」ジー
淡「くっ……」
淡(咲ちゃんは私を試してるんだ。私が咲ちゃんとの勝負に決着をつけるのか、
それとも手近な勝利に飛びつくのか。私の器を測ってる……)
照『――打ってみればいい。淡の実力なら、それでどっちが勝者か判断がつく――
』
淡(――ッ! ……そうだ、ここでロン宣言するっていうことはつまり、姫松とのめくりあいに
勝つ自信がないって認めるようなものだ。そんな屈辱……受けられるわけない!)
淡「……」
実況『え……? えっと……? 大星選手、ロン宣言を……え、しない……? な、なぜ?』
末原「……」カチャ
実況『あ、ああーっと! 末原選手が牌をツモりました。もう大星選手はロン宣言できません!
こ、これはどういうことでしょうか!? 今ロンすれば勝利は確定していたというのに、なぜ
見逃したのか――!?』
咲「……」
咲(淡ちゃん、すごいプライドだ。確かに、この人に勝たないとお姉ちゃんに挑む資格なんてない)
淡(まだだ……まだ二枚ある。それを引ければ)
咲「……」タン 赤⑤筒
淡「――!!」ビクッ
淡「ぐっ……!」
淡(に、二巡連続……!? こ、こいつ……!)ギリギリ
実況『お、大星選手、なんと二巡連続で当たり牌を見逃した――! も、もう私には訳がわかりません!』
淡「……」プルプル
淡(……こ、ここまでコケにされたのは生まれて初めてだ……血管ブチ切れそう
……)プルプル
淡(これであとは⑧筒一枚……姫松は多分三面待ち。当たり牌の数では私が圧倒的に不利だ)
淡(それでも先に引けるかどうか。それが雀力の差なんだ。私なら引ける、引いてやる!)
末原「……」カチャ
末原(こい……!)ドックンドックン
淡(くそ、来るな……!)ドックンドックン
末原「……く」カチャ
淡「……」ホッ
淡「……」カチャ
淡(こい……!)ドックンドックン
末原(来るな……!)ドックンドックン
淡(くそ、不要牌……)カチャ
咲「……」カチャ
末原「……」カチャ
淡「……」カチャ
淡(っ……くそ!)タンッ
白糸台控室
照「……淡。押されてる」
菫「あの大星が……」
誠子「大星さん、何度も和了りを見逃してましたよね。これで逆転負けして敗退なんてことになったら……」
尭深「どうするんですか?」
菫「――どうもしないさ。言っただろ、個人のミスはチームのミスだ。それが団体戦だ。
まあ、部長としてしっかりと叱っておくがな」
尭深「……わかりました」
菫「それに、私は大星が勝つって信じてる。あいつはきっと負けない」
誠子「……弘世先輩、なんか嬉しそうですね」
菫「え?」
誠子「いえ、なんかそんな気がして」
菫「……嬉しい……」
菫「そうか、そうなのかもしれないな」
照「どうしたの?」
菫「私は、大星が追い詰められて嬉しいのかもしれない」
誠子「日頃の恨みつらみがあるからですか?」
菫「おいおい、そういう話はやめろ。そうじゃない。
見てみろ、大星の顔を。あんなに必死になってる大星を見たことあるか?」
照「私と打ってるときでも、あんなに必死になってるところは見たことない」
菫「でも、私たちは多分、いつもあんな感じで麻雀を打ってるんだと思う。聴牌になったときは
当たり牌が出ないか目をギラギラさせて、他家がツモるときは、和了るな和了るな、って念じながらさ」
菫「私はそれこそが麻雀の醍醐味だって思ってる。麻雀を打つやつは皆そのときのドキドキとか、
和了れたときの喜びとかが大好きで、だから麻雀を打つんだと思う。
でも大星は今までそんな感覚を味わえたことがないんだ。唯一照だけがそれに近いものを与えてくれるから、
あいつは照と打ちたがるんだと思う」
尭深・誠子「……」
菫「でも今、あいつはその感覚に肉薄してる。姫松がツモれば逆転負け。自分がツモれば完全勝利。
その両極端な境地で、自分の運に全てを託す感覚。……もしかしたら大星は今、生まれて
初めて麻雀を打っているのかもしれない」
照「……それが嬉しいの?」
菫「ああ、嬉しい。あいつもやっぱり私たちと同じ、麻雀を楽しめる女子高生なんだなって思うと、
なんだろうな、なんて言えばいいのか分からないが……多分、私はそれが嬉しいんだと思う」
照「……そう」
尭深「――――あ」ピク
誠子「あ!」
菫・照「――ッ!」
菫「こ、これは……!」ガタッ
菫「清澄!!」
淡「……」カチャ
淡(くそ、また引けない……どうして)
末原「……」カチャ
末原(く、なんで引かれへんのや)
咲「……」
淡(テル……)
どこまでも暗く、どこまでも孤独な宙の中で、私が初めて見つけた光。温かな輝き。
彼女に近づきたくて私は麻雀を打ってきた。テルと一緒に歩けることを誇りに思っていた。
私に負けるようじゃテルに挑む資格はないと咲ちゃんに言ったけど、それは私にも言えることだ。
こんなところで負けるようじゃ、私にテルの隣に並ぶ資格なんてない。
淡(いやだ……)ドックン ドックン
テルから遠ざかりたくない。もう二度と孤独になりたくない。もっとあの太陽の光に照らされていたい。
負けたくない……負けたくない!
淡(私は――)ドックン ドックン
こんなに負けたくないと思ったのは生まれて初めてだった。
こんなに心臓が脈動するのは初めてだった。こんなに手の平に汗が滲むのは初めてだった。
でも、不思議とこの感覚は嫌いじゃなかった。
緊張に霞む視界は眩しくて。汗ばむ身体は暖かくて。
もしかしたら……。
私の胸を震わすこの鼓動こそが。この火照る身体の熱こそが。
私がずっと欲しかった、星すらも照らす陽の光だったのかもしれない――。
淡(私は――咲ちゃんに勝ちたい!)
タン
――ツモ。
実況『――き』
実況『決まったァァァ!! ついに準決勝大将戦決着――! 勝者は――!!』
淡「……はあ……はあ……」
何も聞こえなかった。
まるで鼓膜が切れたかのように静かだった。姫松と有珠山が立ちあがり何かを言っていた気がするが、何も聞こえてこなかった。
ただ、心臓の音だけが聞こえた。ドックンドックンと脈打つその鼓動の音だけが、ずっと響いていた。
淡「……はあ……はあ……」
ぴちゃん、と頬を滑った汗が卓に落ちて、私の意識はようやく目覚めた。
開かれた私の手牌。掴みとった最後の⑧筒。トイトイ三暗刻の4000オール。
私の勝ちだった。
白糸台:144800
清澄:128300
姫松:126700
有珠山:200
淡「……私の……勝ちだね、咲ちゃん」
咲「うん」
卓には私と咲ちゃんだけが残っていた。決勝進出を果たした二人だけが。
淡「ねえ、どうして赤⑤筒切ったの? 私が和了ったらどうするつもりだったの?」
咲「淡ちゃんは和了らないと思ったから」
淡「……ふふ」
淡「まあ、あれだね。私をここまで追い詰めたことは認めてあげる。でも、やっぱりまだ
テルには及ばないよ」
咲「そう、なのかな……」
淡「でも、確かに高校生の内では段違いの強さだと思う。ま、私ほどじゃないけど」
咲「あはは……」
咲「じゃあ私帰るね」
淡「うん、じゃあ、また決勝でね」
咲「うん」ガタ
ツカツカツカ
淡「……」
淡「ねえ、咲ちゃん」
咲「ん?」
淡「――どうして、オーラスで和了りを見逃したの?」
咲「――――」
咲「……気づいてたの?」
淡「まあね。私が⑧筒をツモる前、咲ちゃん聴牌になってたよね。カンして嶺上開花すれば
和了れてたんじゃないの?」
咲「……うん」
淡「和了ればよかったのに。私が赤⑤筒和了らなかった時点でプラマイゼロは諦めたんでしょ?」
咲「うん。まあ、和了られても困ったんだけどね。もうあの時点で私はドン詰まりになってたんだ」
淡「ならせめて最後に気持ち良く和了って終わればいいのに」
咲「……」
咲「私の手は5飜で、2000,4000の手だった。それなら和了ってたと思う」
咲「でもそのためにはカンをしないといけなかったから」
淡「……槓ドラか」
咲「うん。あそこでカンしてたら、ドラが乗ってハネ満手になってたと思う。そしたら3000,6000……
淡ちゃんが親被りで三位になってた」
淡「……決勝でテルに会いたいんだったっけ?」
咲「うん。だから白糸台に敗退してほしくなくて」
淡「放銃さえしなければ誰が和了っても二位抜け確実だったもんね。なるほどね……」
淡(勝たせてもらった……って形になるのかな、これ)
淡「あーあ。なんかすっきり出来ないなぁもー。手加減されて勝ったみたいじゃん」
咲「ううん、私のプラマイゼロに付き合わなかったら私だって普通に負けてたかも」
淡「ほんとだよ! 私が何回和了りを見逃してあげたと思ってるの! ほんとストレスマッハだったんだから!」
淡「だいたい、ほんとにそのカンで嶺上開花できてたかどうかも分かんないじゃん」
咲「むっ、それは出来てたもん」
淡「いーや出来てなかったね。仮にできてても、それでドラが一つ乗ったかどうかもわかんないし」
咲「乗ってたもん」
淡「乗らなかったもんねー。ベー」
咲「乗ってたの! ああもう、山崩さなきゃよかった!」
淡「ふふー。結局私の完全勝利ってことだよね。やっぱ私サイキョーだわー」
咲「ふん、私の誘導で役満振り込んだくせに」
淡「は、はあ? あんなのわざとだし。ああすれば咲ちゃんが大きくプラスになるから、
プラマイゼロさせにくくなるなーって思って、わざと振り込んだんだし」
咲「うっそだー。『くっそー!』とか言いながら切ってたじゃん」ププ
淡「言ってないっ!」
咲「言ってたよ。涙目で」
淡「涙目だったの咲ちゃんじゃん!」
咲「私はずっと平静だったよ」
淡「どこが。『人和振り込んじゃった、あわあわ~』ってしてたじゃん」
咲「し、してないよっ」
淡「言っとくけど、決勝ではもうプラマイゼロ勝負なんてしないからね。っていうか、咲ちゃんも
出来ないでしょ。二位じゃ意味ないんだし」
咲「うん、そうだね」
淡「普通に点の取り合いしたら私が勝つに決まってるんだから。決勝ではこんなに競るとは思わないでよね。ベー」
咲「大丈夫、決勝では私も点を取りにいくから。逆に淡ちゃんトばないように気をつけてね」ニッコリ
淡「ふん、決勝戦でほえ面かかせてあげるから」
咲「こっちこそ」
淡・咲「ふんっ!」
淡・咲「……」
淡・咲「――ぷ。あはははっ」
淡「……まあ、あれだね」
咲「ん?」
淡「私の方が強いのは確かなんだけど、まあ……そこそこ強いってのは認めてあげる」
淡「だから特別に! ほんとにとっくべつに! 今日から私のライバルを名乗ることを
許してあげる。感謝してよね」
咲「えー? 別にいらないや」
淡「うっさい! ありがたく受け取れバーカ! 私のライバルなんて今のとこテルくらいしかいないんだからね!」
咲「……お姉ちゃん」
淡「……」
淡「昔テルと何があったのか知らないけどさ、あの人は理由もなく人を嫌ったりする人じゃないと
思うよ。妹なら尚更」
咲「……うん。全部、私のせいなんだ」
咲「だから私……お姉ちゃんに会って、伝えなきゃ」
淡「……ふふ」
淡「伝わるといいね。咲ちゃんの伝えたいこと、私にもなんとなく分かるよ。私も――さっき
同じものを感じてたと思うから」
咲「……うん」
咲「ありがとう、淡ちゃん」ニコ
ガチャ、バタン
淡「ただいまー。あー疲れた」
菫「御苦労さま、大星。危ないところだったな」
淡「別に危なくないよ。余裕余裕。決勝では普通に打つから勝てるよ」
菫「油断するなよ大星。お前は気づいてないだろうが、オーラスで清澄は」
淡「嶺上開花を見逃したんでしょ? そんなの分かってるってば」
菫「え、あ、ああ、気づいてたのか。なら――」
淡「分かってる。次はちゃんと打つって。――それよりテル。どう? 咲ちゃん、
プラマイゼロにできなかったよ」
照「ああ、そうだね」
淡「これって私の勝ちってことでいいんだよね?」
照「……」
照「でも淡、清澄の大将に完全に勝ったって言える?」
淡「む……か、勝ったもん。一位通過したし、プラマイゼロも防いだし、合計収支でも勝ったじゃん」
照「でも最後に清澄が見逃さなかったら淡は負けてた」
淡「嶺上開花できてたかどうかもわからないし、ドラが乗ったかも分からないじゃん」
照「もしドラが乗らなくても淡は抜かれてたよ」
淡「……」
照「……」
菫「――引き分けでいいだろ、別に」
淡「私引き分けって大嫌いなの。白黒はっきりつけたいから」
照「……じゃあどっちも勝ちってことにしない?」
淡「どっちも勝ち?」
照「勝ったら相手のいうことを一つ聞くって約束だったけど、お互いに一つずつ相手に命令できるの」
淡「うーん……まあそれでいっか」
菫「私からも一つ頼みごとがあるんだが、もう二度と麻雀で賭け事なんてしないでもらえるか」
淡・照「私に勝ったら聞いてあげる」
菫「……」
淡「じゃあ何にしよっかなー。やっぱ私の家に泊まり込んで麻雀打ちまくるとかかなー」
照「……ねえ」
淡「ん?」
照「命令できる権利、いま使いたいんだけど、いい?」
淡「え、早速? まあいいけど……なに?」
照「……」
菫「……? どうした、照」
照「……次の決勝戦――」
照「私に、大将を代わって」
つづく!
ごめんなさい、一旦ここで終わります。前後編で考えてて、ここで前編終わりです。
淡編が終了したので、次の照編で姉妹の関係や三人の今後は全部終わらせます。
後編もやろうかと思ったんですが、正直、まさか15時間以上かかるなんて夢にも
思ってなかったので、次は日にちを跨いでもいいように
週末くらいに立てることにします。このスレで淡関係が全部終わると思って辛抱強く読んでくださった方々、
本当に申し訳ないです
なんかそろそろ本編で淡が出てきて能力解禁されそうなんで、それまでになんとか投下したかったんです
こんなに夜遅くまで沢山の支援や感想、本当に嬉しかったです。ありがとうございました
照編ではもっと麻雀パート短くします。ほんとにごめんなさい。つい書きすぎちゃいました
乙乙乙
どうしてもこの順番にしないと終わらなかったので、なんとか許して下さい
ssを投下するのは二回目なのですが、皆さんの何気ない感想や支援が本当に嬉しかったです
とちゅう三回さるさんくらったので、多分皆さんの支援なしじゃここまで書けませんでした
本当にありがとうございました!
野暮だけど咲はカンドラ乗らないのとインターハイは順番変えられないんだぜwww
みたいですね。プロット練ってる段階で知って焦りましたwwww
なので最後は咲は和了らず、最後のドラは乗ったの?乗らなかったの?と濁らせる
感じで終わらせました
オーダー変更は、このパラレルワールドでは認められている、ということでお願いします
どうしても照と決勝で戦ってほしくて
さて、寝ます。こんな遅くまで付き合ってくださってありがとうございました
また今週か来週の金曜日くらいに投下できたら、そのときはよろしくお願いします
続き楽しみにしてる
あわあわフルボッコになるかと思ったらなんかいいかんじに落ち着いたな
Entry ⇒ 2012.09.24 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (5) | Trackbacks (0)