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蒲原「モモのにおいがするぞー」
蒲原「やっぱりいたか。ワハハ」
モモ「相変わらずすごいっすね蒲原先輩」
蒲原「そうだろー」
モモ「ちょっと引くっす」
蒲原「え」
モモ「あはは、ウソっすよ」
蒲原「なんだウソか」
モモ「はい、なんか用があるみたいでまだ学校らしいっす」
蒲原「学校で待たなくていいのか?」
モモ「む、いつもそんなにべったりじゃないっすよ」
蒲原「いやベッタリだろー」ワハハ
モモ「私は別に、待つのは全然いいんすけど……それで加治木先輩が私に気をつかうなら、そんなことはしたくないんっす」
蒲原「そういうもんかー」
モモ「そういうもんっす」
蒲原「?」
モモ「今日はどうしたんすか、こんなところで」
蒲原「帰り道だぞ」
モモ「……先輩の家、こっちの方角じゃなくないっすか」
蒲原「ワハハ。まあそうなんだけどな」
モモ「?」
蒲原「ふらふら散歩するのが好きでな。ちょっと足伸ばしてみた」
モモ「なんか先輩らしいっすねえ……」
モモ「山ばっかりっすよ」
蒲原「それがいいんじゃないか」
モモ「そうっすかねえ」
蒲原「そうそう。ワハハ」
モモ「はあっす」
蒲原「モモは?何してたんだ、こんなところでー」
モモ「え?いや、えーと」
蒲原「?」ワハハ
蒲原「ん?」
モモ「……帰り道だから、っす。加治木、先輩の」
蒲原「」ワハハ
モモ「……」
蒲原「やっぱり待ってるんじゃないか」
モモ「!」
蒲原「いや、この場合”待ち伏せてた”かー?」
モモ「蒲原先輩!」
蒲原「ワハハ」
モモ「……分かってるなら言わないでくださいっす……」
蒲原「わるいわるい」ワハハ
モモ「はあ……蒲原先輩にバレるなら、加治木先輩にもバレてるっすかね、これ……」
蒲原「ん?ああ、それは大丈夫」
モモ「え」
蒲原「ユミちんは特別鈍感さんだからなー」
モモ「ああ、それは確かに……」
蒲原「な?」ワハハ
モモ「ふふ。だから苦労するんすよねえ」
蒲原「ん?」
モモ「私のにおいって……どんなんすか?」
蒲原「んー、そうだなー」
蒲原「ちょっとすっぱい」
モモ「?!」
モモ(私汗くさい?!)
蒲原「でも甘い」
モモ「??」
蒲原「梅だなー。うん。梅のにおいだ」
モモ「う、梅っすか……」
モモ(汗くさいはないってことすか……)
モモ「へえ……私そんなにおいなんすか。別にシャンプーもせっけんも、梅っぽいの使ってるわけじゃないんすけどね」
蒲原「まあコレは私の感覚だから。他の人には分かんないかもなー」
モモ「あれ、ってことはっすよ?」
蒲原「?」
モモ「例えば私が梅の木の下に立って黙ってたら、蒲原先輩も私のこと気付かないってことっすか」
蒲原「ワハハ。そうかもなー」
モモ「へえ……」
モモ「それは私に言われてもっす」
蒲原「確かになー」
モモ「他のみんなはどんなにおいするっすか?」
蒲原「そうだなあ」
モモ「特に加治木先輩とか加治木先輩とか」
蒲原「じゃあ佳織から」
モモ「?!」
モモ「……においの話っすよね?」
蒲原「ワハハ。まあさっきも言ったけど感覚の話だから」
モモ「はあっす」
蒲原「冷たい空気を吸うと鼻の奥がツンとするだろ?佳織はその逆なんだ」
モモ「ああ、そういう言い方だとなんか分かるかもっす」
蒲原「だろー」
蒲原「むっきーはなー。そうだな、色で言うと」
モモ「……だからにおいの話っすよね?」
蒲原「だから感覚だよモモ」
モモ「うーん……」
蒲原「それでな、色で言うと……灰色、かな」
モモ「イメージカラーがそれなのは分かるっすけど」
蒲原「灰色を連想するにおいを嗅ぎ取れるっていうのかな」ワハハ
モモ「……よく分かんないっす」
蒲原「ん?清澄のとかはいいのかー?」
モモ「もういいっすよ、おなかいっぱいっす」
蒲原「そうかー」
モモ「はやくはやくっす」
蒲原「そう言われると焦らしたくなるなあ」
モモ「シャー」
蒲原「分かった分かった」ワハハ
モモ「もう」
モモ「ごくりっす」
蒲原(口に出して”ごくり”って言ったなー)ワハハ
蒲原「えーと」
モモ「?」
蒲原「わかんないんだな、それが」
モモ「?!」
蒲原「いや味はさすがに」
モモ「それじゃああれっすか、蒲原先輩は近くに加治木先輩がいても分から――」
モモ「――分からない、なんてことはないっすよね……」
蒲原「うん。そもそもにおいなんて、モモがいなきゃ意識もしなかったことだからなー」
モモ「……でも、なんで加治木先輩のにおいは分かんないんすか?」
蒲原「どうしてだろなー。もしかしたら、ユミちんのほうが嗅ぎ取らせまいとしてるのかもなー」
蒲原「?”じゃあ”?」
モモ「私が嗅ぐっす!加治木先輩のにおい!」
蒲原「そうかー」ワハハ
モモ「抱きついたときにこう、襟足のあたりをくんくんするっすよー」
蒲原「……そう詳しく言わなくてもいいんじゃないかー」
モモ「嗅ぐっすよー」メラメラ
蒲原「いつになく燃えてるなー」
モモ「?なんすか?」
蒲原「たまーにユミちんのにおい、分かることがあるんだ」
モモ「え、まじっすか?先言ってくださいよそういうのは」
蒲原「ワハハ。いやなー、残り香があるんだよ」
モモ「残り香っすか?」
蒲原「そう。梅のにおいがなー、たまにユミちんに残ってるんだ」ワハハ
モモ「……」
蒲原「ワハハ」
モモ「……」ボッ
蒲原「真っ赤だなー、モモ」ワハハ
蒲原「お、もうこんな時間かー」
モモ「こ、この時期はすぐ暗くなるっすからね……そろそろ帰るっすか」
蒲原「そうするかー」
モモ「なんかすいませんっす、付きあわせてしまって」
蒲原「いや、全然いいぞー。そもそも私のほうから来たんだからな。それに」
モモ「それに……?」
蒲原「一人でふらふら散歩するのも楽しいけど、誰かといるのも好きだからな。話せて楽しかったぞ、モモ」
モモ「それは……私もっす、蒲原先輩」
蒲原「そうかー」ワハハ
モモ「そうっすねえ」
蒲原「……」
モモ「どうかしたっすか、先輩」
蒲原「いやなー」
モモ「?」
蒲原「終わっちゃったなー、って」
モモ「そ、そうっすね」
蒲原「ごめん、白状するとな。ちょっと足りない。いや、ちょっとどころじゃなく足りないんだ」
モモ「……?」
モモ「はいっす、私が昔の加治木先輩のこと知りたいって言ったときっすよね」
蒲原「うん。それで夏は私の車で色んなところ行ったけど。正直まだまだ遊び足らないんだよなー」
モモ「私は遊び尽くしたなって思いましたけど……」
蒲原「私も分かってるよ、本当に遊び尽くしたっていうのは、あれくらいのことを言うんだって。でも子供みたいなんだけどなー、まだ未練みたいなこと思うんだよなー」
モモ「蒲原先輩……」
モモ「……先輩」ギュ
蒲原「お?」
モモ「私も、なんとなく……分かるっすよ。みんなと麻雀部として一緒にいられる夏は今年のたった一度きり……それならどれだけでも遊んでいたいって思うのも」
蒲原「……大人にならなきゃ、とは思ってるんだけどなー」
モモ「しょうがないっすよ……私だってそうっす、先輩たちと一緒にいられなくなるのは寂しいっす」
蒲原「ユミちんとだけ、じゃなくてか」
モモ「そうっすよ。来年、蒲原先輩がいなくなっちゃうのだって寂しいっす」
蒲原「優しいなー。モモは」
モモ「いいんす……蒲原先輩が、そういう風に思ってくれたのは嬉しいっすから」
蒲原「……こういう雰囲気だからさ、言うけどなー」
モモ「?」
蒲原「大好きなんだよなー、みんなのこと。そりゃ、たぶんモモがユミちんに思ってる好きとは違うものだろうけど」
モモ「先輩……」ギュ
蒲原「モモー」
モモ「……帰りたくないっすねえ」
蒲原「そうだなー」ワハハ
モモ「そうっすね……」
蒲原「帰ろう、今日はさ」
モモ「……はいっす」
蒲原「ライトライトっと」ゴソゴソ
モモ「持ち歩いてるんすか……」
蒲原「何事も備えが大事だぞー?」ワハハ
モモ「あははっす……」
蒲原「?どしたー」ワハハ
モモ「合同合宿のときにっすね、ちょっと加治木先輩と話したんすけど」
蒲原「うん」
モモ「夏も秋もその後も、みんなで一緒にいようって……先輩に、そう言ったんすよ、私」
蒲原「……そっか」
モモ「加治木先輩が”そうだな”って、言ってくれたら……できそうな気がするっすよねえ」
蒲原「……ああ」
蒲原「ヘタレのユミちんにそれを言わせるのはモモの役目だなー?」
モモ「えへへ。頑張るっすよー」
モモ「はいっす。こっちの道は街灯も比較的多くて明るいっすから大丈夫っす」
蒲原「そっか。それじゃまた、明日なー」
モモ「?明日は土曜っすけど……」
蒲原「ワハハ」
おしまい
ともあれ読んで下さった方はありがとうございます。
咲全国編アニメ化おめでとう!
またネタ思い浮かんだら咲SSかきますそのときまたお暇があればお相手したってください
それではまた
乙
乙
Entry ⇒ 2012.10.29 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (3) | Trackbacks (0)
憩「恋愛相談?」
憩「スクールカウンセラーとして尽力はさせてもらうけども……あの二人じゃあかんの?」
初美「衣と胡桃ですか? あんなちんまいのに何を相談するんですかー」
初美「二人とも恋愛経験とか無さそうだし」
憩「あはは……えらいボロクソ言うんやね……」
初美「本当のこと言ってるだけですよー」
憩(仲良いほど遠慮せえへん、ってことなんやろうなぁ)
憩「まあええわ。それで、恋愛相談って言ったけど……誰か好きになったの?」
憩「青春やなぁ。お相手は訊いてもいい感じ?」
初美「はい。先生になら言っちゃいますよー。3年生の臼沢さん、って知ってますか?」
憩「臼沢さんって……バスケ部で部長やってる臼沢塞さん?」
憩「確かこの前はっちゃんと一緒に保健室来たよな?」
初美「一ヶ月以上前のことなのに覚えてるとは……流石先生ですねー」
憩「まあ、結構印象深い出来事やったしなー。二人の組み合わせも珍しかったし」
憩「あ、もしかして……そのときに惚れてもうた感じ?」
初美「あ、あれはきっかけです……その日からちょっと気になりだして、バスケ部覗いたりしているうちに……って感じです」
憩「なるほどなぁ」
初美「そうなんですよー。あの時もすごく優しくしてくれたし、バスケしてるとことか特にカッコいいです……」ポケー
憩(初恋、って感じやなぁ……恋に恋してるような感もあるけど……)アハハ
憩「えっと、それではっちゃんは臼沢さんと具体的にどうなりたいの?」
初美「うーん……とりあえず、気兼ねなく話せるくらいには仲良くなりたいですね」
憩「そっかそっか。……付き合いたいとか思っちゃってる感じ?」
初美「そ、それは……まだ分からないです……」
初美「この気持ちが恋愛感情なのかも分からないので……」
憩「ただの憧れかもしれんしな」アハハ
憩「お近づきになりたい、ってことやんな?」
初美「それ! その通りですよー!」
憩「ふむふむ……しかし、話は分かったけど具体的にどう協力するかが迷うわ……」
初美「先生のコネとか使っちゃって、こう、ぐぐーっとばばーっとなりませんか?」
憩「ぐぐーっとばばーっと……」アハハ
初美「何か用事とか無いと、話しかけにくいし……」
憩「学年も違うしなぁ」
初美「はい……」
初美「おお!」
憩「だから臼沢さんと仲ええ子に事情を話して、ちょっと手伝ってもらおか」
初美「塞さんって誰と仲が良いんですか?」
憩「えっと……3年の小瀬川さんに、2年の鹿倉さんに」
初美「えっ……胡桃と仲良いんですか!?」
憩「臼沢さんと同じ部活入っとるやん。名前忘れたけど、学内ボランティア部みたいなん」
初美「そ、そうなんですか……初耳です。胡桃の部活、お遊びサークルだと思ってたんで……」
憩「まあ、暇な時はずっと遊んどるらしいけど」アハハ
このSSでは違うの?
はい。はっちゃんと胡桃が2年生設定です
初美「塞さんってそんな部活に入ってるんですか!? 初耳ですよー……」
憩「1年の時からバスケ部と兼任してるで? その部自体は小瀬川さんが部長やけど」
初美「そうだったんですかー……」
憩「まあ臼沢さんはバスケ部の方がイメージ強いからなぁ。部長でエースで有名やし」
初美「胡桃と仲が良いのは分かりましたけど、小瀬川ってのは誰ですか?」
憩「中学の時からの友達、とかそんなんやった気がするけど……詳しくは知らんわ」
初美「そうですか……」
憩「でも臼沢さんと一緒のクラスやで? 部活外ではほとんど一緒におるし」
初美「仲の良い友達ってことですかー……」
初美「東横さん……うーん、知らないですー……」
憩「バスケ部唯一の1年生レギュラーやから、名前だけやったら結構有名やと思うで?」
初美「ほ、本当ですか? 見学してたときそんな人見かけませんでしたよー」
憩「あの子クラスでも部内でもめっちゃ影薄いらしいからなぁ……」
憩「名前は知れてても実際に姿見た事ある人はほとんどおらんらしいわ」
初美「なんか都市伝説みたいですね……影薄いにも限度がありますよー……」
憩「まあとりあえず、ウチが把握してる限りやったらその三人かなぁ」
初美「なるほどなるほど……」
憩「どうする? とりあえず、身近なところで胡桃ちゃんあたりに頼んでみる?」
憩「普段一緒におるから逆に頼みにくいか」アハハ
初美「どうしても、ってなった場合はアレですけど……」
憩「ほんなら小瀬川さんか東横さんいってみる?」
初美「小瀬川って人は3年生ですよね?」
憩「うん、そやでー」
初美「学年が上の人に頼むのはちょっと気が引けるから……とりあえずバスケ部の1年生にお願いしましょう!」
憩「了解です。んじゃ早速来てもらおか」
初美「えっ? こっちから出向かないんですか?」
憩「東横さんには悪いけどな」
憩「ウチは保健室離れるわけにもいかんし、そもそもあの子見つけられる自信ないから……」アハハ
初美(み、見つけられる自信無いってどういうことですかー……)
キーンコーンカーンコーン
憩『バスケットボール部1年の東横桃子さん。校内にいましたら、至急保健室まで来てください』
憩『繰り返します。バスケットボール部1年の……』
―――――――――――
憩「ま、ゆっくり待ちましょ」ニコ
初美「流石先生ですよー! 頼りになる!」
憩「褒めても何も出えへんでー」
憩「まあこの時間やったらバスケ部もまだ練習中やと思うし、来てくれると思うわ」
初美「今日はお休み頂いてます。気になって部活にも身が入らなくて」
憩「そんなに思い詰めてるんや……」
初美「一つのことしか集中出来ないだけですよー」アハハ
憩「ふふ、そっか」
憩(もし上手くいかんくても、この子の性格やったら大丈夫そうやな……)
初美「このチャンス、絶対に活かしてみせますよー……!」ゴゴゴ
憩「燃えとるなぁ」アハハ
―――――――――――
初美「……来ませんね」
憩「まだ5分も経ってないでー」
初美「うぅー、そわそわしますよー……」
憩「せっかちさんなんやね 。でもまあ、もう言うてる間に来ると思うけど……」
モモ「あのー……」ユラ
初美「きゃあああ!?」
モモ「さっきノックして入ったっすよ? 返事なかったんで勝手に入っちゃいましたけど……」
憩「ごめんな東横さん。毎回気付けんくて。ウチは初めてやないのに……」
モモ「別にいいっすよ。馴れてるんで」アハハ
初美「ってことは……あなたが噂の……」
モモ「う、噂されてるんっすか私?」
憩「ふふ、さっき絶賛噂してたでー。東横さんの力が必要やってな」
モモ「私の力が? えっと……どういうことっすか先生?」
モモ「ここに呼びだれたのになんか関係してたり……」
憩「ちょっと東横さんに手伝って欲しいことがあってなー」
初美「東横さん! 塞さんのこと教えて欲しいですよー!」
モモ「塞さん? 塞先輩のことっすか?」
初美「ずばりその通りですよー!」
憩「意味分からんやろうから事情説明するわ」アハハ
モモ「は、はいっす……」
――――――――――――
モモ「なるほど……そんな甘く切ない事情が……」フムフム
憩(そこまで切なくはないと思うけど……)
モモ「塞先輩、相変わらずモテモテっすね」アハハ
初美「も、モテモテ!? ってことは、私以外にも……」
モモ「はい。クラスではどうか知りませんけど、部内では大人気っすよ?」
憩「まあ、部長でエースやしね」
モモ「はいっす。それでいて面倒見も良いし優しいし、絵に描いたような理想の先輩っすよ」
モモ「我がバスケ部の誇りっすね」キリッ
初美「それじゃあ塞さん、もう付き合ってる人とか……」
モモ「うーん……そういう話は聞いた事ないっすね」
初美「!」パァァ
モモ「誰々が告白したとか何々が好きらしい、ってのはよく聞くんすけど」
初美「これはもう勝利宣言出来るレベルですよー!」
モモ「あはは、落とせる気マンマンなんっすね。でも正直かなり難しいと思うっすよー?」
初美「な、なにゆえですかー……?」
モモ「塞先輩、高校入ってから今まで誰ともお付き合いしたことないらしいんで」
憩「今までの告白全部断ってきてるってこと?」
モモ「聞いた話では」
初美「そ、それは今までの女が雑魚だっただけですよー」
モモ「薄墨先輩なかなか言うっすねー。確かにそれはあるかもですけど……」
モモ「塞先輩、誰か好きな人がいるんじゃないか、ってのがバスケ部の推測なんすよ」
初美「す、好きな人!?」
憩「なるほどなぁ……そうなってくると難しなってくるね……」タハハ
モモ「本当に自分が好きだと確信できる人じゃないとお付き合い出来ない、とからしくて」
初美「うむむ……!」
憩「これは一筋縄じゃいかなさそうやね……」
モモ「塞先輩って見た目通り乙女っすから、かなり貞操観念が強いんすよ」
モモ「ちょっとエッチな話するとすぐ顔赤くするし、そのクセ恋バナには興味津々で」アハハ
初美「塞さんって初心なんですねー」
憩「めっちゃ普通に女子高生しとるんやね。この学校の子おかしい子ばっかりやからなんか安心するわ」
モモ「ましてや出会って間もない人と付き合う姿とか想像できないっすね」タハハ
初美「マジですかー……」シュン
憩「高嶺の花ほど手に入れるのは大変ってことやね」
モモ「本当に高嶺の花っすね。突撃しては玉砕していく人いっぱい知ってますし」
憩「そういえば、好きな人に振られたとかでたまにカウンセリング受けに来る人おるけど……」
モモ「そのうちの3割くらい塞さんじゃないんすか?」アハハ
初美「ほ、他の女の手垢が付いてないことは良い事ですよー」
憩「あはは。はっちゃんはポジティブやねー」
モモ「でもそれでいいっすよ薄墨先輩! 恋愛なんて諦めずに押しまくるのが一番っす!」
モモ「私の経験談では!」
憩(お相手誰ですかー)
モモ「ふふ、私なんかでよければ任せるっす」
モモ「塞先輩はそろそろ恋愛の一つでもするべきだと思うっすからね」
初美「おお……!」
憩「やったなはっちゃん。これで協力者一人目やで」
憩「バスケ部とのパイプも出来て数歩前進や」
初美「それじゃあ早速……どうすればいいんでしょう?」
モモ「体験入部でもしてみるっすか? あ、でも流石に塞先輩が構ったりは出来ないっすね……」
憩「まずはきっかけやなぁ……いやでも、顔見知り程度にはなっとるんやから、あとは親密になるためになんかして……」
初美「な、何をすればいいですか……?」
モモ「うーん、そうっすね……」
初美「えっ」
モモ「それは良い案っすね」
モモ「お互いに保健室に用事があって、それでいてたまたま一緒になったって言うのなら自然っす」
憩「そこから会話が始まって、親密になれるかどうかははっちゃん次第やな」
初美「な、なるほど……」
モモ「なんなら一日中保健室に閉じ込めるとかどうっすか! これで一気に距離を縮めて……!」
初美「それは素晴らしい案ですよー!」
憩「流石に先生としてそこは認められんかなぁ……」アハハ
初美「えー。ちょっとくらいダメですかー……?」
憩「ちょっとくらいダメですねー。1時間くらいは空けても大丈夫やから、その間に次のイベントに繋がるよう頑張ってや」
モモ「吊り橋効果を利用して距離をぐっと……」
憩「と、東横さん? あんましそういう穏便じゃないことはやめような」
初美「保健室に二人きりだけでも十分ですよー。何から何までお世話になるつもりはないです!」
モモ「それは心強いっすね」アハハ
憩「んじゃ、とりあえず早速今から始めよか」
憩「東横さん、臼沢さんここに呼び出したりって出来る?」
モモ「任せるっす!」
初美「よろしくお願いしますよー!」
憩「んで、はっちゃんはここで待機やけど……臼沢さん来るまでにちょっと細工しとこか」
初美「細工?」
憩「まあ、任せてや♪」
モモ「それじゃあ、とりあえず私は呼んで来るっすね」
初美「よろしくですよー」
―――――――――――
初美「うぅ……いざ保健室に一人にされると緊張するですよー……」
初美(でも、これは私自身のこと……協力してくれた二人のためにも、足がかりを……!)
コンコンコン
初美(き、来た!)
初美「は、入って大丈夫ですよー」
塞「失礼します……ってあれ? 先生は……?」ガラ
初美(塞さん……ユニフォーム姿……)
初美「なんか用事があるらしくて出て行っちゃいました。すぐに戻って来るそうですよ?」
塞「そっか。って……薄墨さん」
初美「お久しぶりですー。あの時はお世話になりました」ニコッ
初美「あはは、また怪我しちゃいました」
塞「だ、大丈夫? この前よりも酷く見えるけど……」
初美「体育の授業中にちょっと捻っちゃいました……」アハハ
塞「そっか……何かあったら私に言ってよ。先生帰って来るまでは手助けするから」
初美「ありがとですよー……塞さんはやっぱり優しいですね」ニッコリ
塞「そ、そうかな? 当たり前のことだと思うけど……」
初美「そんなことないですよー。塞さんは凄く優しいです」
初美「あの時だって、怪我した私のところに真っ先に向かって来て、保健室まで運んでくれて……」
塞「あ、あの時は私が一番近くにいたから……それに、怪我した人を放っておけるわけないし」アハハ
初美(ふふ、本当に素敵な人ですよー……)
塞「なんか健康診査? に不備があったとかで、荒川先生が呼んでるらしくて」
初美(また適当なことでっち上げたんですねー……)
塞「先生がいないから、少しの間ここで待つ事になりそうだけど……」
初美「そうなんですかー。それなら、その間は二人きりですね」ニコッ
塞「ふふ、そうだね」
初美(とりあえず、メルアドくらいは持って帰りたいですねー……)
塞「薄墨さんはどんな用事? って言っても、その足だよね……」
初美「いえ、この足もそうなんですが……実は今、ちょっと熱っぽくて」
塞「えっ?」
初美「体調もあんまり良く無いんですよー……」
塞「だ、大丈夫? 私先生探して来ようか?」
初美「いえ、そこまでしてもらわなくて大丈夫ですよ……」
塞「本当に……?」
初美「はい。一人のときは少し辛かったですけど……」
初美「今は塞さんがいるから大丈夫です」ニコッ
塞「っ……そ、そっか。あはは……なんかそう言われると恥ずかしい……」
初美(塞さん可愛いですよー)
初美「そういえば。聞いた話なんですが、塞さんって胡桃と仲良いんですか?」
塞「うん、昔からの馴染みだけど……薄墨さんは胡桃の知り合い?」
初美「私、胡桃とは同じクラスなんですよー。いつも一緒にご飯食べたりしてます」
塞「そうなんだ! そっか、胡桃、同学年の友達出来たのかー……」
初美「私と胡桃は1年の時から友達ですよ? まあ、腐れ縁ですけど」
塞「二人ともちっちゃいから気が合ったりするのかな」アハハ
初美「身長のことはいじらないでください」ジトー
塞「高校生で胡桃と同じくらいの身長の子なんて、この世にいないと思ってたから」アハハ
初美「私も初めて胡桃を見た時はビックリしたですよー」
初美「高等部の1年と中等部の1年間違えてるんじゃないかって思いました」
塞「ふふっ……薄墨さんがそれ言うとめちゃくちゃ面白いね……」
初美「バカにしないで欲しいですよー……」ジトー
初美「それでまあ、案の定胡桃に話しかけられたんですが……アイツ私になんて言ったと思います?」
塞「胡桃のことだから……ふふ、ここは高等部だよ、って注意されたとか?」
初美「その通りです。そっから互いに初対面なのに大喧嘩ですよー」
塞「薄墨さんと胡桃にそんな馴れ初めがあったなんて……面白いなぁ」
塞「高等部に上がった初日にそれってすごいね」アハハ
初美「まあ最初の印象が最悪だったせいか、今ではそれなりに仲良くさせてもらってますけどね」
塞「そっか。胡桃にそんなことがあったなんて……全然知らなかったなぁ」
塞「あの子、私たちといる時はクラスのこととか全然話さないから」
初美「そうなんですか?」
塞「うん。まあそれを言うなら、私とかもそうなんだけどね」
初美「塞さんはバスケ部とは別に胡桃と同じ部活に入ってるそうですが……何の部活なんですか?」
塞「ただのお遊びサークルだよ。名称は立派に校内ボランティア部ってなってるんだけど……」
初美「こ、校内ボランティア部?」
塞「そいつがただ自分の欲求を満たすためだけに作られたのが校内ボランティア部なの」
初美「めちゃくちゃふざけた成り立ちですねー……」
塞「最初は昼寝部っていうもっとふざけた名前にしようとかって言ってたんだけど、流石にやめさせて」
初美「あはは……」
塞「部として承認してもらうために名前だけでも偽ってるって感じだね」
初美「具体的にはどんな活動をしてるですか?」
初美「流石に遊んでるだけだと、先生たちが気付いて消滅させようとするんじゃ……」
塞「先生から雑用回されてそれやったり、一般生徒の依頼とか相談事を解決したり」
初美「要するになんでも屋みたいなものですかー?」
塞「うん、その例えが一番しっくりくるね」
初美「そんな部がこの学校にあったなんて……」
塞「案外有名だって聞いてるんだけどね」
塞「荒川先生に頼めないようなことはボランティア部に頼むとかって」
塞「まあ、部長は年中めんどいめんどい言ってるんだけど」アハハ
初美「ふふ、面白そうな部活ですねー……また何かあったときは利用させてもらうですよー」
塞「ぜひ。まあ、バスケ部もあるからそんときに私がいるかどうかは分からないけど」
初美「はい。毎日元気にすいすいしてますよー」
塞「すごく健康的な見た目してるもんね。綺麗に焼けてて……」
初美「塞さんの真っ白な肌も綺麗ですよー」
塞「そ、そうかな……」
初美「はい。一度でいいから触ってみたいです」ニッコリ
塞「あ、あはは。また機会があったらね」
初美(ガードが固い……)
塞「にしても、先生帰って来ないね……結構話し込んだと思うんだけど……」
初美「そ、そうですねー……きっと色々と立て込んでるんですよー」
塞「保健室の先生って忙しいって聞くしね……」
初美(今の感じだと、ここからキャッキャウフフなんて到底無理そうですねー……)
初美「あ、あの、塞さん!」
塞「ん、なに薄墨さん?」
初美「め、メールアドレス交換しちぇもらっていいですか?」
初美(か、噛んだ……)
塞「ふふ、喜んで」ニコッ
初美(やりましたよー!)
塞「あっ……携帯部室だ……」
初美「」
塞「ご、ごめんね薄墨さん……えっと、どうしよっか? 紙に書いて渡す?」
初美「そうしてもらえると嬉しいですよー……」
塞「あはは。ごめんね、出鼻くじくようなことしちゃって」
塞「えっと、紙と書くもの……」
塞「ありがと」ニコッ
初美(あぁ、塞さんすごく素敵ですよー……大人のお姉さんって感じで……)ポーッ
塞「はい、これ。連絡待ってるね」スッ
初美「ありがとうございます!」
塞「な、なんかそんなにも喜ばれると気恥ずかしい……」
初美「塞さんはシャイなんですねー」
塞「どっちかというとそうだとは思うかな」アハハ
初美(ああ、ずっとこのままいたいですよー)
塞(流石にそろそろ戻らないと……)
塞「薄墨さん、ごめん。私そろそろバスケ部戻るね」
初美「えっ……」
塞「練習の途中だし、あんまり長い時間放っておくわけにもいかないから……」
塞「荒川先生には後日訪ねるから、って伝えておいてくれる?」
初美「了解です……」シュン
初美(もう少し一緒にいれると思ったのに……)
塞(す、すごい落ち込んでる……)
塞「ご、ごめんね薄墨さん。一人にしちゃうけど、先生もすぐ来ると……」
初美「塞さん……行かないでください……」ウルウル
塞「へっ……?」
塞「え、ええっ……? そ、そんなこと言われても……」
初美「塞さん先生が戻って来るまでは一緒にいてくれるって言ったじゃないですかー……」
塞「き、記憶にないんだけど……」タハハ
初美「うぅっ……頭が痛くなってきましたー……体もぶるぶるですー……」
塞(し、白々しい……でも……)
塞「……分かった。先生が戻って来るまでは一緒にいるよ……」
初美「塞さん大好きですよー」ニッコリ
塞「あはは、取り繕う気はゼロなんだね……」
初美「約束させればこっちのもんですよー」
塞(この子、結構イイ性格してるなぁ……)
―――――――――――――
初美(話題がなくなっちゃいました……)
塞「……」ソワソワ
初美(なんかさっきからそわそわしだしてるし、このままじゃまずいですよー……)
塞(いくらなんでも遅すぎるような……早く戻りたいけど薄墨さんにはああ言っちゃたし……)
初美(な、なにかグッドなアイデアは……)
初美(……そうだ。この足を利用して……)
初美「塞さん」
塞「なに?」
初美「ちょっとトイレ行きたいんで、そこの松葉杖を……」
塞「あ、ああ。えっと、一人で行ける……よね?」
初美「そこまではお世話にはならないですよー」
塞「だよね。はい、これ」
初美「ありがとですよー」
初美「きゃっ!」ガクッ
塞「薄墨さん!」ガシッ
初美(ふふ、やっぱり。運動神経の良い塞さんなら抱きとめてくれて……)
塞「だ、大丈夫薄墨さん?」
初美「ごめんなさい……ちょっとバランス崩しちゃいました……」エヘヘ
塞「気を付けないとダメだよ? 怪我してるんだから、悪化させたら……」
初美「ふふ、やっぱり塞さんは優しいですよー……」
塞「もう、そんな調子の良いこと……」
初美「すみません……ちょっと、軽く怪我したところ捻っちゃったみたいで……」
塞「えっ!? だ、大丈夫なの!?」
初美「ちょっと足痛いですー……あそこにあるベッドまで運んでもらえれば……」
塞「分かった。えっと……肩とかは組めないし、どうやって運べば……」
初美「あの時みたいにおんぶすれば……」
塞「あ、そっか。……はい、身体預けて?」
初美「了解ですよー」ギュッ
初美(ふふ、計画通りなのですよー)
塞「少しの距離だから頑張ってね」
初美「はいですよー♪」
初美(こうやってぴっとりくっつくのはもっと……)ギュウ
塞(う、薄墨さんの吐息が……体も熱いし……)ドキドキ
塞「お、下ろすね、薄墨さん」
初美「えっ……」
初美(もう終わり……)
初美「は、はい……大丈夫ですよー……」
塞「よっと……足、楽にして」
初美「はい……」
初美(何の異常もないのにここまで心配されると、少し悪い気が……)
塞「……私、やっぱり先生のこと探して来るよ」
初美「えっ……」
塞「早く処置しないとどんどん悪くなるから……ちょっと待ってて」
初美「あっ……ま、待って……!」
塞「ごめん。すぐに戻って来るから」タタッ
初美(行っちゃいました……)
初美(塞さんの優しさがここに来て裏目に出ちゃいましたかー……)
初美「はぁ……もっとおんぶされたかったなぁ……」
―――――――――――
塞「それじゃあ先生、薄墨さんのことよろしくお願いします」
憩「了解しました。ウチがおらんかったせいで、色々とごめんな」
塞「いえ、いいんです。先生がお忙しい事は知ってますから……」
憩(うぅ……はっちゃんのためとは言え、臼沢さんの誠実さが胸に刺さるわ……)
塞「それでは、失礼しました」ガラ
憩「ふぅ……成果はどんなもん、はっちゃん」
初美「……本音を言えばちょっと物足りないかもですよー」
モモ「あれだけすれば十分だと思うっすよ?」ユラ
初美「きゃあ!? ってまたですかー……」
モモ「ふふ、ずっと中で見てたっすよ?」
初美「ほ、ほんとですかー……全然気付かなかったですよー」
憩「ウチは職員室おったけどなー」
モモ「バッチリっすよ薄墨先輩」
初美「もっとおんぶされてたかったですよー……私、アレかなり好きかもです」
憩「ふふ、はっちゃんは自分の気持ちハッキリ言うから好感持てるわー」
モモ「同感っす。ここまで好きって感情押し出す人も珍しいっすよね」
初美「隠す理由がないですよー」
初美「塞さんがオッケーしてくれるなら今すぐにでも告白したいです」
憩「はは、そっか」
モモ「塞先輩思われてるっすね……でも、今告白してもまだまだ厳しいと思うっす」
初美「やっぱりそうですかー……」
初美「今日いっぱい話して思ったんですけど、なんか恋愛対象に見られてない気がするんですよねー……」
憩「むしろ学年も違う部活も違うこの状態で、ここまで話せるようになっとるんやから十分すごいわ」
モモ「先生の言う通りっす。心配しなくても、もっと時間を重ねればいつか落とせるっすよ!」
初美「そ、そう言われるとなんか元気出てくるですよー!」
憩「ま、ゆっくり頑張って行こはっちゃん。時間はいっぱいあるんやから」
憩「とりあえず帰ってメールしてみたら」
初美「あ、そういえばアドレス……」
モモ「塞先輩メールするの大好きっすから、ウザいほどメール送っちゃってください!」
初美「了解ですよー!」
憩「いえいえ。まだ相談解決とまではいってないし、お礼言うのは早いで」
モモ「そうっすよ。本当の勝負はこれからっす」
初美「塞先輩と二人きりで話せただけでも幸せですよー」ニコニコ
憩「はは、まあはっちゃんが幸せそうにしとるんやったら、ウチはそれでいいんやけども……]
初美「では、また何かあったら相談しにきます。東横さんもその時はお願いするでよー」
モモ「任せるっす!」
憩(この子はなんでこんなにも協力的なんやろか……)アハハ
初美「それじゃあ、今日はこれで。水泳部の方に軽く顔出してくるですよー」
憩「お疲れ様。またなんかあったら遠慮なく来てや」
モモ「私も呼ぶっすよ!」
初美「よろしくですよー!」ニッコリ
憩(とりあえず一件落着……かな?)
――――――――――――
憩「あれからはっちゃんどんな感じなんやろなぁ」
憩「上手いことやってたらええけども……」
コンコン
憩「はーい、どうぞー」
初美「こんばんわです先生……」ガチャ
憩「噂をすれば……こんばんわはっちゃん。今日はどないしたん?」
憩「身長測りに? それとも……この前の続きとか?」
初美「続きなんですよー……先生、私どうしたらいいですかぁー……」ウワーン
憩(い、一体何が……?)
憩「とりあえず事情訊かせてや。何があったの?」
初美「実は……」
――――――――――――
憩(簡潔にまとめると。臼沢さんが3年生と思われる誰かとキスしてたとか)
初美「うぅ……」
憩「う、うーん……それって本当なん? 見間違いとかじゃ……」
初美「遠かったんでよくは見えなかったですけど」
初美「終始良い雰囲気で、空気が甘酸っぱかったというか……」
憩「なるほどなぁ……」
初美「あんな塞さん見たことないですよー……ジェラシーめらめらですー……」
憩(元気ないなぁ……そないショックやったんか……)
初美「先生、私、あれが塞さんの好きな人だと思うですよー……」
初美「あの雰囲気からして、ひぐっ、付き合っててもおかしく……」ウルウル
憩「は、はっちゃん……」
憩「う、うーん……具体的にどうしろと言われると……」
モモ「そんなヤツ刺しちゃえばいいんすよ!」ユラ
憩「うわぁ!? って東横さん!?」
モモ「元気無さそうなはっちゃん先輩の姿を見かけたんで付いて来たっす」
初美「ぜ、全然気付かなかったですよー……」
モモ「まあ私のことは置いといて……ダメっすよはっちゃん先輩! そんなことで落ち込んでちゃ!」
初美「モモちゃん……」
憩(い、いつの間に名前で呼び合うような仲に……)
モモ「恋に障害が多いのはあたりまえっす! 塞先輩のような人を狙うなら尚更っす!」
初美「で、でもキスしてたですよー……あれは絶対いかがわしい関係ですよー……これはもう、諦めるしか……」
初美「ね、寝取る……!」
憩(この子も例を漏れずにええ性格しとるなぁ……)
憩「って待ち待ち。刺すとか寝取るとか物騒なこと言わないの」チョップ
モモ「あうっ」
憩「話を聞いてる限りじゃ、諦めるんはまだ早いと思うで?」
初美「どういうことですかー……?」
憩「キスしてたんも確定やないし、本当に付き合ってるんかも分からんやから、まずはそこを調べんと」
憩「ただの誤解で刺されてたら命いくつあってもたまらんで」アハハ
モモ「確かにそれはそうっすね……ライバルがどんなヤツなのかを知るためにも、偵察は大事っす」
憩(過激な方向に持って行きたがるなぁ……恋愛事でなんか嫌なことでもあったんかな……)
モモ「塞先輩に直接訊いても答えてくれるわけないし……」
憩「そのキスしてたっていう相手の子に事情訊くのが一番早そうやね」
憩「名前とかって分かる? 分からんかったらその子の特徴とか」
初美「名前は分かんないですけど……たぶん、3年生だと思いますよー」
初美「特徴は……背が高くて、白髪で」
憩(背が高くて白髪って……)
初美「それでいて死んだ魚みたいな目してて、眉毛がにょろにょろーってなってて」
モモ「と、特徴的な方なんっすねー……」
憩(間違いなく小瀬川さんやん……)
初美「心覚えはあるですかー? 先生」
憩「うん、背が高くて白髪の時点で分かったわ……」
モモ「おお! 流石っす先生!」
憩(はっちゃんと対峙したらどうなるやら……)
初美「先生! この前みたいにお願いするですよー!」
モモ「ここに来たところを闇討ちっす!」
憩「闇討ちはやめたってな」アハハ
キーンコーンカーンコーン
憩『校内ボランティア部3年の小瀬川白望さん。校内にいましたら、至急保健室まで来てください』
憩『繰り返します。校内ボランティア部3年の……』
――――――――――――
憩「さて。あとは待つだけやね」
初美「き、緊張するですよー……」
モモ「はっちゃん先輩! 今のうちに戦闘態勢を整えるっすよ!」
憩「戦争するんやないんやから……」
憩(それが一番問題なんよなぁ……)
憩(あの小瀬川さんが恋愛ってホンマに想像付かんけど、臼沢さん相手やったらもしかすると……)
モモ「諦めたらそこで試合終了っすよはっちゃん先輩!」
モモ「もしそうだとしても、奪い取るくらいの気持ちで塞先輩にアタックするっす!」
初美「そうしたいのは山々ですがー……塞さんの幸せの邪魔するようなことは気が引けるですよー……」
モモ「なに言ってるすか! 自分がもっと幸せにすればいいんすよ!」
憩「逞しすぎるわ東横さん……」タハハ
――――――――――
モモ「来ないっすね」
初美「来ないですよー」
憩(あれから結構経ってるけども……校内におらんのかな?)
憩(いや、ちゃうな……たぶんあの小瀬川さんのことやから……)
初美「先生、もう一回呼び出してみて……」
憩「十中八九意味ないと思うわ。あの子の性格忘れてた」アハハ
モモ「どういうことっすか?」
憩「直接出向くしかないってことやね。小瀬川さん間違いなく部室におると思うから」
初美「それってつまり……呼びだれてるのに無視してるですかー?」
憩「まあ、そうやろね」アハハ
モモ「これは何か疾しいことがある証拠っす!」
憩「いや、あの子の場合はただ単に面倒くさいだけ……」
初美「りょ、了解ですよー!」
モモ「はっちゃん先輩、もしものために何か武器を……」
憩(ホンマは保健室離れたらアカンやけども、この二人だけに行かせるのは危ないやろなぁ……小瀬川さんの身が)
憩「二人とも先外で待っといてー。戸締まりしとくから」
憩「あとそのモップはちゃんと直しといてやー」ニッコリ
――――――――――――――
初美「ここが校内ボランティア部……」
モモ「部室棟にあったんすね。名前は何度か聞いた事あるっすけど、場所までは……」
憩「ウチは何度かお邪魔することあったわ」
憩「そんじゃま、行きましょか」
初美「ご、ごくり」
コンコンコン
シロ「どうぞー……」
憩「お邪魔しまーす」
やえ「って……荒川先生? それに……」
初美「お邪魔するですよー……!」ギラギラ
モモ「敵は一人じゃなかったすか……!」ギラギラ
やえ(な、なんだコイツら……)
憩「こらこら二人とも。そんな殺気立たんと」
やえ「えっと……ウチに何の御用でしょうか?」
憩「今日はちょっと小瀬川さんに話があって……」
シロ「私に?」
やえ「シロ、お前またなんか厄介事を……」ジトー
シロ「うーん……なんかしたっけなぁ……」
シロ「保健室遠いから……この学校無駄に広いし……」
やえ「あのなぁ……」
憩「まあそこまでにしといて」アハハ
憩「実はちょっと小瀬川さんに訊きたい事があってな。時間もらっても大丈夫?」
シロ「んー……まあ、はい。大丈夫です。暇なんで」
憩「それはよかったわー」
モモ(この人が、塞先輩の……?)
初美(小瀬川白望って言うんですねー……! 覚えましたよー……!)ゴゴゴ
シロ(なんか……ちっちゃい子から暑苦しい視線が……)
初美「小瀬川白望! あなたは塞先輩のなんなんですかー!」
憩「ちょっ……」
シロ「塞? 塞とは友達だけど……」
初美「ほ、本当にそれだけですかー!?」
シロ(なんかダルそうな雰囲気……)ハァ
憩「は、はっちゃんちょっと落ち着き。小瀬川さん意味分からんって顔してるから」アハハ
モモ「ここは私が出るっす。敵はなかなか手強そうっすからね」
シロ(もう一人出て来た……)
やえ(この子いつの間に……)
憩「と、東横さん?」
モモ「ずばりきくっす! 小瀬川先輩は塞先輩と付き合ってるっすか!?」
シロ「……は?」
やえ「お、お前ら……」
シロ「いや、してないから」
モモ「嘘付くっす! ネタはもうあがってるっすよ!」
初美「塞先輩に手を出すなんて許せないですよー!」
憩「二人とも人の話を聞きなさい」チョップ
「「あふっ」」
憩「ごめんな。いきなり来て意味わからんこと言って」アハハ
シロ「よくあることだから大丈夫です」
やえ(本当によくあるから困る……)
憩「えっと、つまりまあ何が訊きたいかと言うとな、……小瀬川さんと臼沢さんって付き合ったりしてるの?」
シロ「してないです」
モモ(そ、即答っすか……いやでもまだ……)
初美「!?」
憩「えっと、小瀬川さんの言葉は信じてもいい感じなん?」
シロ「信じるも何も、私なんかと勝手にくっつけられたら塞が可哀想だと思いますけど……」
モモ「むむむ……」
憩(これは白っぽいなぁ……)
初美「ほ、本当に塞先輩となんともないんですかー……?」
シロ「中学からの友達ではあるけど、そういうダルい関係じゃ無い」
憩「はは、ダルいときたかー」
やえ「3年間コイツらと一緒にいる私も断言するけど、この唐変木に恋愛なんてありえませんよ」
シロ「唐変木……木になったらどんな気分なんだろ……」
憩(なーんかうっすらと事情が見えて来たような……)
やえ(本当に何しに来たんだコイツら……)
初美「こ、これはどうしたらいいですかー……」
憩「どうするも何も、訊くこと訊いたんやから解決ちゃう?」
モモ「確かにあの人たちが嘘付いてるようには思えないっすけど……」
憩「疑う余地ないと思うで?」
憩「キスしてたんはたぶんゴミかなんか取ってたのがそう見えただけで、いい雰囲気なんは小瀬川さんと臼沢さんの付き合いが長いからで……」
初美「そ、それなら……」
モモ「終戦、っすか……」
憩(臼沢さんが小瀬川さんのこと好きなんは確定っぽいけど)アハハ
シロ「もういい感じ?」
初美「は、はいですよー!」
憩「ごめんな小瀬川さん。いきなりやって来てこんなこと訊いてもうて」
初美「同じくですよー」ペコ
シロ「何を謝られたのかよく分かんないんだけど……」
やえ「日頃の行いが悪いからこういうことが起こったりするのよ」ハァ
シロ「学校のみんなのためにダルいの我慢して頑張ってるよ?」
やえ「シロの場合は業が深すぎるの」
シロ「はぁ……意味わかんないダルい……」
憩「さて。相談解決ちゃう? 臼沢さんは晴れて独り身ってこと分かったし」
モモ「良かったっすね! はっちゃん先輩!」
初美「えへへ……」
やえ「えっと、その中等部? の子が塞のこと好きだったりするの?」
憩「まあ、そういうことです」アハハ
初美「失礼ですねー……私は高2ですよー……」ジトー
初美「まず制服が高等部のヤツなんですけどー……」
やえ「信じられない……高校生で胡桃以外にもこんななりした子がいるなんて……」
憩「はっちゃんはその胡桃ちゃんのクラスメイトで友達なんやでー」
シロ「そうなんだ……胡桃のクラスでの友達……」ジー
初美(は、初めて興味持たれた気が……)
モモ「私は塞先輩の後輩っすよー。バスケ部っす」
やえ「バスケ部? 何年生なの?」
モモ「華の1年っす」
シロ(1年……塞がよく話してるあの子かな……分かんないけど)
憩「ちゃんと気持ち受け取って返事しとるらしいし、誠実やと思うで?」
憩(あの子らに比べれば)
モモ「せっかくなんすから、この二人にも協力してもらうとかどうっすか?」
初美「それは名案ですよー! 塞先輩と仲が良い二人が手を貸してくれたら……!」
シロ「協力?」
やえ「ってことは、校内ボランティア部に対する依頼……」
憩(うーん、それってどうなんやろ……)
憩(臼沢さんは小瀬川さんのこと好きやのに、そんな小瀬川さんを協力させるって……)
シロ「……ごめん、私パス」
「「えっ?」」
シロ「いや、私は協力したくないってだけだから……」
シロ「やえと他の子で頑張ってよ。たまには顧問の戒能先生とか付き合わせてさ」
やえ「協力したくないって……今までそんなこと一度も言わなかったのに……」
シロ「うん、だから本当にごめん。こればっかりは私の我がままだから」
初美「そ、そんなぁ……」
モモ「部長の協力が得られないなんて想定外っす……」
憩(……ふふ、どういう考えかは分からんけど、小瀬川さんはやっぱしっかりしてるわ)
憩(この人の気持ちを汲み取るというか、気遣いが出来る子がもっと増えれば平和やのになぁ……)
やえ「シロ抜きでやるなんて今まで例がない……」
シロ「基本私とやえは固定で、その日部に来てる人を入れて依頼解決するのがスタイルだからね」
シロ「ん、なに?」
初美「今まで依頼を断ったこと……ないんですよね?」
シロ「私に関しては部が出来てから一度もなかったかなぁ……たぶん」
初美「……理由、聞かせてもらってもいいですか?」
シロ「んー……理由、か……」
シロ「……ちょいタンマ」
憩(これは正直、めちゃくちゃ気になるわぁ……)
憩(ま、ここにおる全員そうやろうけども)アハハ
やえ(もしかしてシロのヤツ、塞のこと……いや、ありえないとは思うけど……)
初美(まだまだ怪しくなってきたですよー……さっき言ったことも本当は嘘かも……!)
モモ(塞先輩の気になる人って……)
初美「お、面白くない……?」
シロ「いや、依頼に対して面白いとかつまんないとかでやったりしてないんだけど……」
シロ「こう、塞が誰かと付き合うための手助けをするのが……嫌、なのかなぁ」
やえ(シロ……)
モモ「な、なんかハッキリしない言葉尻っすね」
シロ「うん、自分でもそう思う……私自身よく分かってないから」
初美「つまり、私と塞さんの恋路は応援出来ない、ってことですかー……?」
シロ「申し訳ないけど」
初美「……」
憩(なんか、近い将来小瀬川さんの相談受けそうな気が……)
初美「え。そ、そうなんですかー……?」
シロ「塞と薄墨さんのことだから、私は関係ないよ」
モモ(小瀬川先輩が何を考えてるのかますます分からなくなってきたっす……)
憩(本人でも分からん言うてるくらいやし、かなり複雑な気持ち持ってそうやなぁ……)
やえ「……はぁ。ほんっと、昔から面倒くさいだから」
シロ「ごめん……」
やえ「謝らない! ……部長がこんなだし、申し訳ないけど断るわ」
シロ「やえ……?」
憩「うん、ウチもそれがええと思うわ」
憩「臼沢さんのためにも、ウチらと小瀬川さんたちは手を取り合うべきではないね」
初美「先生……」
シロ「うん。私もなんとなくだけど、そう思う」
モモ「……了解っす」
初美「分かりましたですよー……」
初美「それでは、お邪魔しました」ペッコリン
シロ「またなんかあったら来て。たぶん、手伝えるから」
初美「っ……」
初美「はいですよー!」ニッコリ
やえ「やれやれ……」フフ
憩(臼沢さんが誰とも付き合ってないってことは分かったし……一応は一件落着、なんかな)
モモ「なんかもやもやするっすー……」
―――――――――――
やえ「はぁ。なんか今日は珍しい日だったな……」
シロ「こういう日もあるよ」ハァ
シロ「……そろそろ出て来たら? 塞」
やえ「もう隠れなくてもいいよ」
塞「げっ……い、いつから気付いてたの?」
シロ「割と始めから」
やえ「あんなあからさまに部屋の中覗いてたら、そりゃね」アハハ
シロ「先生たちはこっち向いてたから気付けなかっただろうけど、ここからは丸見え」
塞「な、なるほど……」
シロ「軽く話しただけでも分かったけど、あの子本気で塞のこと好きだと思うよ?」
塞「そんなの言われなくても分かってるから……」
やえ「あはは、本気で困ってるし」
シロ「どうするの?」
塞「……ど、どうするって?」
シロ「告白されたら」
やえ「そう遠くはない未来だと思うよ?」
塞「……元気で明るくて、話してるとすごく楽しいんだけど……」
塞「今はまだ妹とかにしか思えないというか……」
やえ(あっちゃー)
シロ「……可哀想」
塞「ええぇっ!?」
やえ「塞の気持ちも変わるかもだしね」ニヤニヤ
塞「そ、そんなことっ……」
シロ「……」
やえ「さて、そろそろ下校時間だし帰るか。巽向かいに行ってくるよ」テクテク
シロ「いつもの場所で待ってるね」
塞(ちょっ、この状態でシロと二人きりにする気なの!?)
やえ(お前らもいい加減ハッキリさせろって)ハァ
塞(や、やえのヤツ……!)
シロ「……」ボケー
塞「……練習メニュー変わってね。3年は早く終わったから顔出しに来ただけ」
シロ「そっか……」
塞「あ、あのさ」
シロ「?」
塞「薄墨さんたちの依頼、断ってたけど……アレってつまり、その……」
塞「私が誰かとそういう関係になるのが嫌ってことだよね……?」
シロ「……うん」
塞「そ、そっか……あははー……そうなんだー……」
塞(ヤバい、めっちゃ嬉しいかも……)
シロ「自分の娘を嫁にやりたくないとか、そんな感じの気持ちだと思う」
塞「……は?」
シロ「飼ってる犬が他人に懐いてるの見たくないとか、そんな感じの」
塞「……」
塞「シロのバカ!!」ドゴォ
シロ「ぐふっ!?」
―――――――――――――――
初美「うふふー、今日はウキウキなんですよー」ルンルン
モモ「協力は得られませんでしたが、疑惑が晴れただけでも大収穫っすね」
憩「幸せそうで何よりやわ」
初美「塞さんと一緒に帰りたいですよー。あ、そうだ。メールしてみよう」
モモ「部活も終わってる頃ですし、きっとすぐに返信くるっす!」
憩(臼沢さんの気持ちを動かせるか……小瀬川さんがあの様子やから、まだまだ時間はあると思うけども……)
憩「ま、なにはともあれ。これからも頑張りやはっちゃん。押せ押せあるのみやで♪」
初美「はいですよー!」
モモ「私にも相談するっす! 偵察と闇討ちなら任せるっす!」
初美「二人とも本当にありがとなんですよー!」
初美「協力してくれた先生とモモちゃんのためにも、絶対に落としてみせます!」
モモ「その調子っす!」
憩(果たしてどうなるやら……)アハハ
終わり
お疲れ様でした
憩ちゃんええな~この学校の良心やな
続き期待してますで!
Entry ⇒ 2012.10.29 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (4) | Trackbacks (0)
ほむら「普通の時間軸に来てしまったわ」
まどか「でも… この子、ケガしてるんだよ」
ほむら「どうしても放さないというのなら…」
さやか「お~い、まどか! こんなとこにいたんだ」
さやか「ん、なに持ってんの? ねこ?」
まどか「そうみたい、なんだけど…」
ほむら「いいから早く放しなさい!」
さやか「そうだよ!」
ほむら「えっ」
まどか「え… でも、輪っか付けてるし…」
QB「確かに飼い猫ではないけど」
さやか「うおお喋った!? しかもやっぱ野良じゃん!」
ほむら「いや、そもそもねこじゃなくて…」
まどか「ごめんね」スッ
まどか「手、洗わなくちゃ。その前に動物病院へ…」
マミ「あら、その子を助けてくれたの?」
まどか「いえ… どういたしまして」
さやか(お友達!?)
ほむら(痛めつけたのは私なのだけど… 黙ってた方がいいかしら)
まどか「ケガしてたんです。すぐ病院へ」
マミ「平気よ。私の魔法で治してあげられるの」
まどか(ど、どうしよう、変なねこの次は変な子が来ちゃった……)
ほむら(何故か私も来てしまったわ…)
マミ「QBに才能を見込まれたあなたたちには、他人事じゃないものね。説明しておくわ」
・
・
・
さやか「願い事が何でも、ねぇ」
まどか「いざとなると、決まらないよね」
マミ「大事な事だから、ゆっくり考えた方がいいわ」
ほむら「だめよ」
マミ「あら、どうして?」
さやか「お、さては自分より強いライバル登場が怖いんだな~?」
マミ「そんな理由なわけないでしょう」
ほむら(……あなたに言われたくないわ)
ほむら(前みたいにマミが錯乱してもいいように、準備して…)
まどか「…ほむらちゃんのコスチューム、あんまり魔法少女らしくないね」
ほむら「そ… そうかしら」
まどか「今度新しいの考えてあげるね!」
ほむら「ありがとう」
さやか「ほむら、迂闊に誘いに乗らない方がいいよ」
まどか「さやかちゃん、それどういう意味!?」
ほむら(その言葉、あなたに言ってあげたいわ……)
マミ「戦わなければいけない、というのはもう話したでしょう」
ほむら「それ以外にもあるの。まず、私たち魔法少女は死んだも同然の身」
マミ「…それは初耳だわ」
ほむら「この体からは魂を抜き取られ、ソウルジェムに収まっているの」
まどか「そうなのQB?」
QB「その通りだよ。暁美ほむら、君はどこでそれを知ったんだい?」
さやか「どうしてそんなことするのさ?」
マミ「そうね」
ほむら「!?」
ほむら「で、でも… それじゃゾンビにされたようなものだって」
QB「脆弱な肉体で戦うより、よっぽどいいだろ?」
マミ「戦いでケガしても治りが早いと思ったら、そういう仕組みだったのね」
まどか「QB、気が利いてる~!」
ほむら「待って!」
まどか「ほむらちゃん、そういうの信じてたの?」
ほむら「え、信じてるって…?」
さやか「ああ~ スピリチュアルとか、パワーナントカ系の」
マミ「信じるもなにも、魔法少女は本当にいるわ。二人ともその目で見たでしょう」
さやか「うん、まぁ、確かに……」
ほむら「納得してくれたようね」
マミ「でも魂が体に入ってないとかは、正直それほど困らないような……」
ほむら「みんなQBに騙されていたのよ!」
QB「騙すという行為自体、ぼくたちには理解できないなぁ」
さやか「あんたねこにムキになってどうすんのさ」
マミ「でもどうして教えてくれなかったの?」
QB「聞かれなかったからさ。知っておかなきゃいけない情報だなんて、思わなかったんだよ」
ほむら「ほら見なさい! コイツはそういう…」
まどか「訊けばいいじゃない」
ほむら「はい」
ほむら(まずい……)
ほむら(しかしこっちの切り札はまだあるのよ!)
ほむら「ならこれは知ってる? ソウルジェムの濁りきった魔法少女がどうなるか」
マミ「魔法が使えなくなるわね」
ほむら「それだけじゃないわ。ソウルジェムはグリーフシードに変わり、私たちは魔女になるの」
QB「そうだよ。魔法少女が希望を与えた分、絶望をまくようになっているのさ」
まどか「何のために、そんなことを……」
QB「希望と絶望の帳尻を合わせるのさ」
ほむら「そうやって魔女になった魔法少女を、私はもう何度も…」
さやか「奇跡も魔法も、代金後払いってわけね」
ほむら「」
さやか「願いが叶うとかさぁ、正直ちょっとうさん臭いって思ってたんだ」
さやか「タダより高い物はないっていうし、そうなってた方がむしろ納得いくわ~」
まどか「なかなか甘い話ってないもんだよね」
ほむら(今まで話が通じなくて手を焼いてたけど、普通に通じても問題なのね)
マミ「どうにかして止める方法はないの?」
ほむら(それでもマミなら!)
ほむら「一つだけあるわ」
ほむら「魔女を生み出す前に、ソウルジェムを砕いてしまうの」
ほむら「食い止めるには死ぬしかないってことよ」
ほむら(これで……)
ほむら(いい加減にして!)ビキビキビキ
マミ「魔法が使えなくなったら、どの道魔女にやられてしまうもの」
ほむら「でも、死ぬまで戦い続けることに…」
QB「それはもう説明したじゃないか」
さやか「でもずっと続けるってのはキツいなぁ」
マミ「私はそのつもりでいるからいいけど」
マミ「決心が固まらないなら、二人とも私たちの魔女退治を見学してみるといいわ」
まどか「『たち』…?」チラッ
ほむら「……もういいわ。私も手伝うわよ」
まあ後払いなら仕方ないね
マミ「何かしら?」
QB「郵便受けに手紙が来てるよ」
マミ「どれどれ… 『え、こいつら元魔法少女を糧にしてることはスルーすんの?』」
ほむら(ありがとう! ありがとうナイスフォロー!)
マミ「……暁美さん」
ほむら「ええ、あなたにとっても辛いでしょうけど、それが」
マミ「もし私がソウルジェムを砕けなくて、魔女になったら、真っ先にたおしてくれないかしら」
マミ「やっぱり人を呪うより、グリーフシードになって使ってもらう方が役に立てるもの」
ほむら「…覚えておくわ」
ほむら(やっぱりそうなるのね…)
QB「この国では、成長途中の女性の事を『少女』というだろう」
QB「穢れを溜め込んで、魔女になりつつある君たちは、『魔法少女』というわけさ」
まどか「穢れ……」
マミ「穢れを溜めると少女は女になる、ね……」
一同「……」ゴクリ
まどか「マミさん今えっちなこと考えたでしょ///!」
マミ「か、考えてないわよ!」
QB「しかし、実際に成長途中の少女と大人の女性では…」
マミ「こらQB! 女の子の前でそんな話しちゃいけません!」
マミ「ふぅ… 暁美さん、平気だった?」
ほむら「勿論よ。あれくらいでやられるわけないもの」
まどか「マミさんかっこいい~!」
マミ「もぅ、見せ物じゃないのよ」
まどか「願い事も考えてるんですけど、なかなか決まらなくって」
ほむら「私としては、決めないでほしいのだけど」
さやか「その願い事なんだけどさ、自分のことじゃないとダメなの?」
マミ「確かにそういう前例もあるけど… やめておいた方がいいわ」
さやか「あるの?」
マミ「本当にその人のためになるかどうかなんて、わからないものよ」
さやか「それもそうだけど……」
ほむら「マミもこう言ってることだし、やめておきなさい」
さやか「明日、本人と相談してみます」
マミ「ちゃんと聞いておかないとね」
ほむら「止めなさいよ!」
恭介「さっきさやかが来たんだ」
仁美「今日もでしたの?」
恭介「なんだかワケのわからないことを言ってたよ… 魔法でケガが治るとか」
恭介「あたしは死んじゃうけど、奇跡って本当にあるの! とか……」
仁美「……さやかさん、学校では普段通り振る舞っていますのに」
恭介「うん… 実は僕もこの間、けっこうハデに八つ当たりしちゃって…」
仁美「お二人とも、あまり思い詰めてはいけませんわ」
恭介「このままだと面倒見る方が先に参っちゃうからね」
恭介「早いとこ新しい生き甲斐探さないと」
仁美「美樹さんに教えられてしまいましたね」
マミ「結局、その上条くんはなんて?」
さやか「夜電話があったんですけど、う~ん…… よくわからないなぁ」
さやか「バイオリンのことではもう悩んでないからいいよ、って」
まどか「上条くん、どうしちゃったの?」
さやか「不思議だよね。ともかく、これであたしはもう契約しないことにしとくわ」
ほむら「よかった……」
さやか「安心した?」
ほむら「あなたが契約すると、毎回ロクなことにならないから」
さやか「……『毎回』?」
・
・
マミ「ワルプルギスの夜ね。噂には聞いた事あるけど」
さやか「そのデッカい魔女って、そんなに強いの?」
ほむら「何度戦っても、倒せた事はないわ。よくて進路を少し逸らしただけよ」
まどか「ほむらちゃん、今までずっと私を助けるために……」
ほむら「これであたなに契約してほしくないというのが、わかってもらえたかしら」
まどか「わかったよ。QB! ちょっと来て!」
QB「なんだい?」
まどか「わたし、契約する! ほむらちゃんと一緒にワルプルギスの夜と戦うよ!」
ほむら「待ちなさい!」
ほむら「そうよ。でも契約してはいけないって、わかってくれたのではないの!?」
まどか「大丈夫。ほむらちゃんが頑張ってきたのを、無駄にはしないから」
QB「願い事は決まったのかい?」
まどか「『一ヶ月したら、魔法少女になる前の、元の体に戻る』それが私の願い!」
QB「いいよ」
ほむら「……は!?」
QB「何を言っているんだい?」
QB「普段は無理だけど、契約するときの願い事なら、そのくらい簡単さ!」
ほむら「そんな……」
まどか「へぇ~ これがわたしのコスチューム?」
QB「君がノートに描いてた通りにしておいたよ」
まどか「ありがとう! これから一ヶ月だけよろしくね、ほむらちゃんとマミさん!」
マミ「一緒に戦う仲間ができて嬉しいわ」
ほむら「じゃあ、私が今までしてきたことって……」
ほむら(ワルプルギスの夜をあっさり倒せたのはよかった)
ほむら(時間停止は使えなくなったけど、まどかが契約してた頃に使ってた弓矢を貸してもらっているし)
ほむら(残る問題は…)
まどか「ほむらちゃん、おっはよ~!」スリスリ
ほむら「おはようまどか、でも少し離れなさい」
まどか「えぇ~ 昨夜からずっと、ほむらちゃんに会いたかったんだよ!」
ほむら「たった一日でしょう」
ほむら(今までのことをわかってくれたうえに、一緒に戦ってから妙な連帯感がうまれてきたからか)
まどか「ほむらちゃんがいない時間は長く感じるものなの!」
ほむら「はいはい」
ほむら(まどかがずっとこの調子だわ……)
まどか「ほ~むらちゃ~ん」スリスリホムホム
ほむら(これはこれで違うような……)
仁美「お二人とも、朝からお熱いようで」
ほむら「まどかが放してくれないのよ」
さやか「そういうあんたも、最初の頃ほど抵抗しなくなってきたのね」
ほむら「あきらめただけよ……」
ほむら(教室でイチャイチャするなんて、端から見れば恋人同士じゃない!)
ほむら(女の子同士でそういうのは……)
まどか「あれ、ほむらちゃんどうしたの?」
さやか「急におとなしくなって」
ほむら(え、いや、でもだからといって)
ほむら(男の子とならしてみたいとか、そういうことでもなくて///)カアァッ
仁美「効いてるようですわ」
さやか「まどか、もう一押し!」
まどか「任せて!」ギュゥ
ほむら(この時間軸のまどかたちは、いつになく聞き分けがよかった)
ほむら(もしかすると、こういうのがけっこうマトモなのかもしれないわね)
キーンコーン……
ほむら「ほらチャイム鳴ったわよ! 早く席に戻りなさい!」
まどか「は~い…」
ほむら(あ… もしこういうのがおかしくないのだとしたら、今のは言いすぎだったかしら……)
ほむら(そうね。大体、私もよくわからないし…)
ほむら(詳しそうな人に相談してみましょう)
仁美「珍しいですわね。暁美さんが二人きりでお話したいなんて」
ほむら「他に相談できる人がいなくて…」
仁美「フフッ まどかさんに妬かれてしまいますね」
ほむら「そのまどかのことなのだけど…… このところ、おかしいと思わないかしら?」
仁美「あら、どこもおかしくなんてありませんわ」
ほむら「朝から抱きついて来るなんていつものこと」
仁美「大好物です」
ほむら「?」
仁美「続けて、どうぞ」
ほむら「その… 恋b、いや、少々行き過ぎではないかと……」
仁美「そうだとして、何が問題ですの?」
ほむら「私も線引きというか、加減がわからなくて」
仁美「どこまでなら一般的な範囲なのか、と」
ほむら「そうなるわね」
仁美「なら問題ありませんわ! 大事なのは暁美さんの気持ちではなくて?」
ほむら「……正直、鬱陶しいのだけど」
仁美「人からどう見えるか、などと意識する必要はないということですわ」
ほむら「なるほど…」
ほむら「そうね… ありがとう。参考にさせてもらうわ」
ほむら(あまり話したこともないけど、あの中では一番常識人らしい志築仁美が言うんですもの)
ほむら(まどかが間違ってるわけではないのね)
ほむら(なら私もまどかの気持ちに応えられるようにならないと)
ほむら(あの戦いに比べたらラクなものよ…… きっとね……)
まどか「ほむらちゃ~ん! 14時間ぶりのほむらちゃ~ん!!」ダキッ
ほむら「おはよう、まどか」スッ
さやか(手が!)
仁美(テガ!)
さやか「…ついに陥落ですかコレは」
仁美「大いなる一歩ですわね」
上条「……僕が入院してる間に何があったのよ?」
中沢「鹿目ちゃんに嫁が来た」
上条「だから何があったんだって」
ほむら「あら、何かしら?」
まどか「ティヒヒヒ、学校終わったら持って行くね」
——ほむ部屋——
マミ「鹿目さん、完成したんですって?」
ほむら「知ってたの?」
マミ「ええ、作り方を教えたのは私よ」
バサッ
まどか「これだよ! わたしとお揃いのコスチューム!」
ほむら「……」
まどか「そんなことないよ! ほむらちゃんは何着てても可愛いんだから!」
ほむら「それに、サイズが合うかしら」
まどか「ほむらちゃんのからだのサイズを間違えるわけないじゃない」
マミ「せっかく作ってもらったんだし、着てみたら?」
ほむら「でも、ほら… 変身したらいつもの服になるんだから」
QB「変身した時その衣装が出てくるように、ソウルジェムを改造しておくよ」
ほむら(どう考えても似合うわけないけど、このまどかが勧めて、しかもわざわざ作ってくれたんだもの)
さやか(マミさんがコスチュームの作り方を教えた辺りに突っ込んでいいんだろうか……)
ほむら「わかったわ。QB、お願いできる?」
まどか「やったぁ!」
ほむら「着るだけでそんなに喜んでもらえるなんて、私も嬉しいわ」
ほむら(やけに大げさに喜んでるようだけど)
ほむら(手作りだから、思い入れが違うのかしら……?)
ほむら「では早速着てみるわよ」
ホムン
さやか(うっわ……)
マミ(これは…… 背中押しといてあれだけど)
ほむら(この二人、絶対よからぬテレパシーを飛ばしあってるわね…)
さやか(マミさんこらえて!)
マミ(美樹さんこそ耳赤いわよ!)
さやか(だって、ほむらがアレ……)
ほむら(///)プルプルホムホム
さやか「えっ」
マミ「シーッ!」
ほむら「ほらほらまどか、そんなに強くしがみついてはいけないわ」
ほむら「せっかくの衣装にシワがついてしまうでしょう」
まどか「いいの! 今日だけいいの!」ムギュウゥゥ クニクニ
ほむら「もぅ… 甘えん坊さんなんだから」ナデナデ
さやか(ほむらが乗ってる……!!)
ガタッ
マミ「ご、ごめんなさい。私ちょっとお手洗いへ…」
さやか(マミさんずるい!)
まどか「いいんです! ほむらちゃんがわたしの作ったコスチュームで戦うところ、見てみたいから」
ほむら「あらたまって言われると照れるじゃない///」
さやか「あたしもまどかと同じ気持ちだよ!」
ほむら「いやあなたは帰りなさいよ」
さやか(マミさん、マミさん!)
さやか(戦ってる最中に笑わないでくださいね!)
マミ(わかってるわよ!)
まどか「そりゃあもう!」
さやか「ほむらのあの衣装、作るの大変そうだもんね」
まどか「そうでもないよ。サイズ変えただけだから」
さやか「最初から作ったんじゃないの?」
まどか「あれは私が契約してた頃のコスチューム」
まどか「QBに頼んで、とっておいてもらってたんだ」
さやか「ああ、弓矢と一緒に」
さやか「…正直言って、ほむらにはあんまり似合わないんじゃ……」
まどか「そういうことじゃないの」
まどか「ほむらちゃんが、わたしの着た服を着て、あんなに激しく動き回ってるなんて」
まどか「想像しただけでもう……」ウェヒヒフヘヘ
さやか「お、おう…」
マミ「そっちへ行ったわ! 暁美さん!」
ほむら「トドメをさすわ! 必殺必中、トゥインクル・アロー!!」
まどか「ほらほらほらほら見てよ見てよ!!」
さやか「うん…… 見てるよ」
さやか「もうちょっとほむらに合うヤツがいいんじゃない?」
まどか「えぇ~」
さやか「何が不満なのよ?」
まどか「ほむらちゃんが恥ずかしがってくれなきゃ」
さやか「そこまで狙ってんのかよ!」
魔女「ピギャアアァーーーーーッ!」
ほむら「やったね、マミさん!」
マミ「え? ええ……」
ほむら「どうしたの? 嬉しくないの?」
マミ(この子までおかしいわ…… そろそろやめさせた方がいいのかしら)
ほむら「佐倉杏子とも協力できないかしら」
マミ「できればそうしたいけど、あなたも彼女の事は知っている」
ほむら「ええ。何度となく一緒に戦ったわ」
まどか「誰なの?」
マミ「私が鹿目さんたちと出会う前に、一緒に戦っていた魔法少女よ」
マミ「ただ、いろいろあって、別れちゃったけど…」
ほむら「普段は隣町にいるけど、いざという時協力できるよう、連携をとっていてもいいと思うの」
さやか「マミさんも、何があったか知らないけど、ちゃんと仲直りした方がいいよ」
杏子「何の話だよ、いきなり?」
ほむら「戦力は不足していないものの、ワルプルギスの夜のようなことがまた起こるかもしれない」
杏子「非常事態のために、か… 他に何か狙いがあるんじゃないだろうな?」
ほむら「単刀直入に言うわ。巴マミと仲直りしてほしい」
杏子「ならお断りだね。誰があんなヤツと」
ほむら「私は本音で話したのよ。あなたのも聞かせてもらいたいわね」
杏子「……言ったろ。お断りだって」
杏子「ほぅ、わかるってのかい?」
ほむら「お見通しよ。あなたが本当はマミと別れたままでいたくないことも」
杏子「やめろよ」
ほむら「今でも心の一部でマミのことをひきずっていて、叶うなら昔のように甘えに行きたいことも」
杏子「いや… それはどうかなぁ…」
ほむら「マミの部屋で食卓を囲んだことを懐かしく思い出し」
杏子「そりゃあ、タダ飯はありがちけどさ」
杏子「なんだその具体的なのは」
ほむら「洗っているうちにふと首から下へ目が行ってしまい」
ほむら「あ、マミの背中って白いんだな、と……」
杏子「ちょっと待て」
ほむら「生まれかけた邪な思いを力ずくでねじ伏せるも、お風呂あがりに不意打ちでクラッときて」
杏子「おい、いい加減にしろよ!」
ほむら「もう早く寝てしまおうと言いたいところだけど、そのタイミングで寝ようというのも抵抗あって」
ほむら「余計な事考えないよう、いそいそとベッドに入るものの」
ほむら「もう頭の中では大変なことになってて、『マミ、起きてる?』とかやってしまうのもお見通しよ!」
杏子「いくら何でもそこまで行ってなかったぞ!」
ほむら(あれ?)
ほむら「もしかして、違うのかしら……?」
杏子「当たり前だろ!」
ほむら「そう… ごめんなさい。私とまどか… 見滝原の元魔法少女は、いつも大体そんな感じだから」
ほむら「あなたたちも同じようなものかと」
杏子「気味が悪いわ」
ほむら「見滝原では珍しくもないことよ」
杏子「それお前らの間だけで、だろ」
マミ「佐倉さん…」
杏子「ぬか喜びすんなよ。気に入らなかったらすぐ解消だからな」
マミ「それでもいいの。あなたとまた一緒に戦えるんだもの」
さやか(マミさんもけっこう意地っ張りなとこあるんだね)
まどか(素直が一番だよ。本当の意味で)
ほむら「杏子。私もマミも格闘戦は専門外だから、アテにしてるわよ!」
杏子「わかってるって。おいマミ、腕は衰えてないだろうな?」
マミ「誰に言ってるのかしら? さぁ、変身するわよ!」マミン
ほむら「するなら今のうちね」ホムン
杏子「ブフッ!!!」
マミ(しまった!)
杏子「ちょっ… ちょっと待って… なにその恰好……」ガクッ
マミ(立てないほど!?)
杏子「いやオマエのせいだろ! しかも変な呼び方すんなよ!」
ほむら「わ、わたし何もしてないよ!」
杏子「ご、ごめんマミ…… やっぱ二人で行って……」
マミ「それしかなさそうね……」
さやか「おかえり、早かったね」
まどか「杏子ちゃん一人だけ? ほむらちゃんとマミさんは?」
杏子「まだ中にいるよ。あいつら、いつもああなの?」
まどか「? そうだけど、どうかしたの?」
杏子「いやさ…… こりゃ尋常じゃない街に来ちゃったわ……」
まどか「そんなことないよ。普通だよ」
杏子「……普通って、難しいよね」
おわり
無性にバカみたいな百合スレを書きたかったんだ
普通ではなかったな
Entry ⇒ 2012.10.29 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
モバマスP「そろそろレッスンも終わる頃か。」
引用元: http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1349871686/
がちゃり
イヴ「お疲れ様でしたぁ☆」
裕美「お疲れ様ですっ!」
あい「お疲れ様……いやはや、アイドルというのも楽ではないね」
P「おうお疲れ。レッスンどうだった?」
イヴ「ダンスレッスンだったんですけど、今日はハードでしたぁ」
あい「足が棒だよ……ほぐしてくれない?」
P「ご遠慮願う」
P「あいが飄々としすぎなんだ」
裕美「セクハラになっちゃうものね」
あい「それは私が訴えたらの話だろう?」
P「男には肩身の狭い世の中だな」
イヴ「えっと……Pさんの今年のプレゼントは肩幅でいいですかぁ?」
P「だめ」
イヴ「……あれぇ?」
裕美「いくらなんでもそういうことじゃないと思うけど」
あい「日本語のニュアンスは難しいからね、覚えていくといいさ」
イヴ「はぁい……」
P「まぁそうしょげるなよ」
あい「うむ。P君が手取り足取り教えてくれるさ」
P「俺か」
あい「君はイヴの保護者だろう?」
P「まぁね」
イヴ「手取り足取り……!? セクハラですぅ~きゃぁ~☆」
裕美「イヴさんイヴさん!そういう意味じゃないよ?」
裕美「えっとね、マンツーマンで付きっ切りってこと」
イヴ「マンツーマンですか?それなら早くお家に帰りましょう!」
P「だめ」
イヴ「えぇー、どうしてですかぁ?」
P「今日はあの店でミーティングです」
あい「あの店では不服かな?それとも早くPくんと2人きりになりたいかい?」
裕美「イヴさんが怒った……」
P「珍しいこともあるもんだな」
あい「どうどう……」
裕美「あいさんが慌ててる……」
P「珍しいこともあるもんだな」
らうんじばー
からんからん ころんころん
マスター「いらっしゃい」
P「また来ちゃいましたよ」
裕美「お邪魔しますっ」
イヴ「お邪魔しますぅ☆」
あい「やあ、マスター」
マスター「じゃあボックス席でいいかい?飲み物は?」
P「ピーチアップル4つで」
P「1杯目くらい別にいいだろ」
あい「ぬう……」
マスター「了解」
P「お前も同じものを飲むの!」
あい「私は大人だからこう、格好いいものをだな」
P「はいはい。今は大人でもアイドルなんだから、少しは可愛らしく振舞いなさい」
あい「それは私には無理じゃないか?」
あい「Pくんがそう言ってくれるのは嬉しいんだが……」
イヴ「あいさんはすごく素敵な女性です!」
裕美「私もそう思いますよ?」
あい「ありがとう」
P「だからずっと前から言ってるじゃないか。可愛いって」
あい「むず痒いな……」
裕美「私も興味あるわ」
あい「はてさて、何を話そうかな?」
P「おいちょっと待て」
あい「なんだい?」
P「お前のことだから絶対誇張するだろ。悪いほうに」
あい「ばれたか」
P「………」
P「………」
あい「……ぷふ……」
P「ふんっ」
ぎりぎりぎり
あい「痛たたたたた……! Pくん、ギブだ、ギブ」
P「反省したかー?」
あい「した、したよ」
ぱっ
P「全く……」
裕美「……あのー?」
P「どうした?」
裕美「なんであいさんにアイアンクローを?」
P「昔の癖でな、あいが調子に乗ったらこんな感じで罰を」
あい「大人になったらしないと思ったんだ」
P「俺もあいが大人になって調子に乗らないと思ってたよ」
あい「人ってのはそう変わらないものだよ」
P「かもな。さて、話をしようか」
イヴ「わくわく」
裕美「てかてか」
マスター「期待age↑」
あい「流石に出会いの頃までは覚えてないかな。気付いたら一緒に登下校してたよ」
イヴ「あれ?それじゃあきっかけとか覚えてないんですかぁ」
あい「残念だけどね」
P「今回の出会いの方の衝撃のでかさが尋常じゃなかったからなぁ」
裕美「そういえば……」
あい「話が脱線したね。それで一緒の学校に通ってたわけだ」
P「俺とあいは同じクラスでね、大体一緒に行動してたかな」
あい「そうだね。班も一緒になることが多かったし」
あい「その頃かな」
裕美「前回話してた事ですか?」
あい「うん。昔から髪が短くて、パンツルックだったからね」
P「おまけにその頃のこいつの一人称は[ボク]だ」
あい「今は流石に直ってるし、昔の癖としても出てこないけどね」
P「そんなんだから、「おとこんなー」とか言われたり、無理やり男子の遊びに誘われたりが多かったんだよ」
イヴ「かわいそうですぅ……」
あい「私は別にそこまで気にしてなかったんだよ。でも私以上にそれが気に入らない人がいてね」
あい「うん。Pくんが「あいだって女の子なんだぞ!」ってからかわれる度に」
P「いや、限度ってものがあるだろう? 見過ごせなくて、ついな」
イヴ「やっぱりPさんは、優しいですね」
あい「うん」
P「照れるって」
あい「で、学校でそういうことがあって、下校する時によくバカをやったものだよ」
P「公園で対策会議したり、スカートを履いてきたらどうかと言ってみたり」
P「それで、あまりにもあいが調子に乗るから、お仕置きをね」
あい「あれは痛いんだよ……」
P「調子に乗るあいが悪い」
あい「そういうつきあいのおかげで、女らしさってのを学んだりね」
P「学んでたのか?あれで?」
あい「うん。バレンタインにチョコをあげたりしたじゃないか」
裕美「バレンタイン!」
あい「「かわいい女の人と言えばお料理だ!!」って力説するものだからね」
P「そりゃそうだろ?」
イヴ「耳に痛いですぅ……」
P「イヴはもうちょっと練習しようか」
イヴ「はいぃ……」
裕美「プロデューサー、私も一緒に習っていいのかな?」
P「構わないぞ。今度来るか?」
イヴ「ほうちょう……こわいですぅ」
あい「……ふむ。Pくん」
P「んー?」
あい「その日は私も行こう」
P「何でだ」
あい「作るのを一緒に教えるよ」
P「それは助かる。……てことは、料理上達したか」
あい「おかげさまでね」
P「それは良かった。女の子らしさに磨きがかかる日々だな」
P「でも10歳の時に家の都合で引っ越すことになっちゃってね」
あい「それで離ればなれ、そしてめでたく再会というわけさ」
P「親同士は電話も年賀状も送ってたみたいで連絡は取ってたらしい」
あい「私らは親がしてるからいいかって感じで連絡はしてなかったんだよ」
P「だから写真とかも見てなくてびっくりしたよ」
あい「こっちもだよ」
P「こんなところかな」
あい「こんなところだね」
あい「正直、もう会えないかもしれないと思ってたんだ」
P「それが何の縁がそうさせたのか、一緒の会社で頑張れるとはね」
あい「Pくんに全て任せるよ。私たちを好きにしてくれ」
裕美「あいさん!? 何か言い方がエッチですよ!」
イヴ「いまのってエッチなんですか……きゃぁ☆」
P「収集つかなくなるからそういうこと言わない」
あい「ふふ……」
P「やっぱりあいは微笑むと可愛いな」
裕美「本当にそう思う」
P「照れてるだけじゃないか」
イヴ「そうですPさんのせいですよぉ!」
あい「それじゃあ一曲頼むよ」
P「まぁマスターとの約束でもあるしな。じゃあお前ら、行くぞ」
あい「待った」
P「何がしたいんだよ……」
あい「今回はPくん一人で頼む」
P「えー……」
裕美「同上!」
P「仕方ないか。適当な曲をやってくるよ」
イヴ「やった☆」
裕美「がんばって!」
~~~~~~♪
~~~♪
裕美「プロデューサー……格好いい……」
イヴ「……で、あいさんはPさんの事好きなんですよね?」
あい「んー……」
裕美「あれ?考え込んじゃうんですか?」
あい「正直恋愛感情ってものをよく分かってないんだ」
イヴ「私もよくわかりませぇん」
裕美「私も……」
あい「ありゃ、議論にならないな」
イヴ「まぁ、今はPくんの音色に酔いしれようか」
裕美「ですねっ!」
~~~♪
ぱちぱちぱち
P「ありがとうございました」
あい「相変わらずすごいな……」
P「あいほどじゃないさ」
裕美「あいさんと同じくらいすごいよ!」
イヴ「透き通る感じが素敵ですぅ。Pさんがかっこよく見えますよ♪」
P「どうもどうも」
P「それなら仕方ないな。裕美、送って行くよ」
裕美「いつもありがとう」
P「いいって。ほれ、イヴも」
イヴ「はぁい。あいさん、それじゃまた明日ですぅ」
あい「うん、お疲れ様」
P「マスター、また来ます」
マスター「是非とも来ておくれ」
P「はい。あいはどうするんだ?」
あい「ここから直で移動するから問題ないよ」
P「そうか」
あい「ああ」
P・あい「「また、明日」」
ころんころん
end
Entry ⇒ 2012.10.29 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
える「古典部の日常」 3
俺はつい一週間程前に知ったのだが、どうやら二年生も参加しなければいけないらしい。
なんでも、次期最高学年として、とか。 三年生を一番知っているであろう君達に見送られ、とか。
そんな大層ご立派な理由があったからである。
勿論、それは今年から始まった事では無かった。
もっと言えば、つい一週間程前に決まった事でも無い。
ただ、俺が知らなかっただけだ。
そういう理由で、俺達二年生は学校へと来ている。
奉太郎「三年になったからと言って、何かある訳でも無いだろ」
里志「……もっとこうさ、何か思う事とかないのかい?」
奉太郎「無いな」
里志「はは、随分ときっぱり言う物だね」
……里志にはそう言ったが、俺にも少しくらい思う所はある。
しかしそれは三年生になるからでは無い。
……今日の事だ。
準備は全部終わっている、後はどう入須と話す機会を得るか、だ。
そこら辺を千反田は全く考えていなかった様で、仕方なく俺が入須に話しかける作戦を考える事になった。
える「おはようございます、今日はお二人とも早いですね」
噂をすればなんとやら、か。
奉太郎「俺はいつも早いつもりだが」
里志「そんな、僕だってそのつもりだよ」
俺と里志が千反田の言葉に待ったを掛けた所で、伊原が顔を見せた。
摩耶花「よく言えたわね、二人共」
摩耶花「それにふくちゃん、昨日も時間ギリギリだったよね」
里志「あ、あれは不可抗力だよ」
摩耶花「ふうん……」
える「あ、あの!」
そんな里志と伊原の口論を千反田が止めた。
える「お話、してもいいでしょうか?」
摩耶花「あ、ごめんね」
里志「そう言えば、今日一度集まろうって言ったのは千反田さんだったね」
える「ええ、少し大事なお話があるんです」
俺は内容を知っていたが、もう一度整理する意味も含めて耳を傾ける事にした。
える「実はですね」
える「入須さんに、プレゼントを用意しているんです」
里志「卒業祝いって奴かな?」
える「勿論、その意味もあります」
える「他にも、入須さんには色々とお世話になったので……」
摩耶花「いいんじゃない? 入須先輩も喜ぶと思うよ」
える「……はい」
える「それでですね、なんとか入須さんとお話する機会を得たいのですが……」
奉太郎「ああ、大体は考えている」
俺がそう言うと、里志と伊原はこちらに顔を向けた。
摩耶花「あれ、折木は知ってたの?」
奉太郎「……まあな」
里志「知っていて黙っているなんて、何か言ってくれれば良かったのに」
奉太郎「ただ言いそびれただけだ」
える「あのですね、プレゼントはこれです」
千反田はそう言うと、持ってきていた小さな袋から手袋とマフラーを取り出した。
摩耶花「うわっ! すごい」
摩耶花「これ、手作りでしょ?」
える「ええ、まあ……」
里志「へえ、さすが千反田さんって言った所だね」
里志「見事な出来栄えだよ」
える「……季節外れかもしれませんが」
摩耶花「そんな事ないでしょ、また寒くなったら使えるんだし」
える「……実は、折木さんと一緒に作ったんですよ」
言うとは思ったが、やっぱり言って欲しくなかった。
摩耶花「え、折木も作ったって事?」
える「今、そう言いましたが……」
里志「横で文句言ってただけとかじゃなくて?」
える「しっかり作っていましたよ……」
こうなるからだ。
摩耶花「……意外と、やれば出来るんだね」
里志「……そうだね、なんでもやってみる物だ」
奉太郎「俺をやれば出来る子みたいに言うな」
奉太郎「それよりも、入須と話す機会の話だったろ」
当の本人が忘れているとは、全く。
奉太郎「卒業式が始まる前は、流石に駄目だろうな」
里志「まあ、そうだろうね」
奉太郎「なら、終わった後だ」
摩耶花「でもさ、終わった後もクラスの人と話したり、どこかに遊びに行ったりあるんじゃない?」
奉太郎「……入須がわいわい皆とやると思うか?」
里志「……それは少し、想像し辛いね」
奉太郎「ならどうせ、終わったらさっさと帰るだろ、その時に声を掛ければいい」
える「入須さんはそこまで寂しい人じゃないと思いますが……」
だが、あくまでその前に声を掛ければ済む話だ。
それに俺達の用事と言う物はさほど時間を取らないだろうし、入須には少し悪いがクラスの用件を後回しにしてもらえばいい。
奉太郎「ま、とにかく終わった後に声を掛けよう」
奉太郎「誰も行かないなら俺が行くが、どうする?」
える「あ、私が呼びに行ってもいいでしょうか?」
恐らく千反田もどこか、入須と話す機会が欲しかったのかもしれない。
なら俺に、それを却下する理由は無かった。
奉太郎「じゃあそれは任せる、俺は部室で待っているよ」
里志「そりゃそうだ、ホータローが自ら動くのは似合わないよ」
里志「僕と摩耶花は、居てもいいのかな?」
える「ええ、お二人にも是非来て頂きたいです」
摩耶花「うん、分かった」
摩耶花「一緒にお祝いしよう、入須先輩を」
里志「あ、僕は委員会の関係でちょっと遅れちゃうから、もしかしたら居合わせられないかもしれない」
える「そうですか……」
里志「もし間に合いそうなら、すぐに行くよ」
える「はい! お待ちしていますね」
俺は卒業式が終わったら真っ直ぐ部室に行き、千反田が入須を連れて来るのを待っていればいい。
簡単な仕事である。
伊原もすぐに部室には来るだろうし、退屈はしないかもしれないな。
奉太郎「……そろそろ時間か」
里志「そうみたいだね、まずは卒業式」
里志「しっかりと、見送ろうか」
体育館にはかなりの人数が集まっていた。
二年生全員、三年生全員、三年の保護者達、それに教師、来賓の人ら。
数えたら切りが無いだろう。
一番前は三年、次に二年、そして保護者達、と言った並び方になっていた。
右から順番に、クラス毎に用意された椅子に着く。
こんなにも人が居なかったら本でも読みたい気分だが……さすがにここまで人が居るとそんな気にもなれない。
俺は仕方なく、行儀良く式が始まるのを待っていた。
思わずあくびが出てしまう、ばれないだろうし……いいか。
あくびが数回出た所で、校長と思われる人物が入ってきた。
辺りが静まり返る、ようやく始まるのか。
なんとも長ったらしい挨拶が終わると、中学生でもやっていた様な一連の流れが始まる。
まずは卒業生達が入場してきた。
うむ、ほとんど面識が無い。
入須は見当たらなかったが、多分群れの中にいるのだろう。
三年全員が席に着くと、早速卒業証書の授与が始まった。
その後は何やら、色々な代表達の挨拶が始まり、俺は特に誰かも分からなかったので聞き流す。
そして、在校生代表の挨拶がやってきた。
俺はこの時、多分誰とも知らない奴が挨拶するのかと思っていたが……代表として立ったのは、俺が見知った人物だった。
あいつ、在校生代表だったとは……全く知らなかったな。
まあでも、総務委員会に勤めているだけあって適任なのかもしれない。
そう、福部里志である。
少し遠かったが、いつもより幾分か緊張している様子だった。
里志『まずは、卒業生の皆様、おめでとうございます』
それが少しだけ面白く、俺は今日始めてその挨拶に耳を傾けていた。
里志はそのまま思い出等を語っていて、喋りだしてからは大分落ち着いている様に見えた。
あれは俺には出来ない、里志の持っている物だろう。
そして5分ほどで、里志の挨拶は終わった。
次いで、卒業生の挨拶が始まる。
呼ばれた名前は、入須。
……確かに入須なら、似合っているかもしれないな。
周りが一段と静まり返り、挨拶が始まった。
入須『そして、この様な盛大な卒業式を開いて頂き、ありがとうございます』
……さすがは女帝と言った所か。
緊張している様子も無く、しっかりと言葉を発していた。
まあ、いつもの口調とは違い、大分堅い感じがしていたが。
入須『思えば、私達が神山高校で過ごした三年間は、色々な方に支えられていました』
入須『文化祭、星ヶ谷杯、体育祭、球技大会』
入須『私達がこれらの行事に励めたのも、ここに居る皆様のお陰です』
入須『私達は今日、この学校で学んだことを胸に、それぞれの進路へと旅立ちます』
入須『卒業生を代表し、答辞とさせて頂きます』
入須『本当にありがとうございました』
中学の時なんかは、卒業生代表は最後まで言葉を言うのも辛そうな程、泣きそうだったが。
入須は違った、しっかりと最後まで、言葉を述べていた。
……しかし、何やら様子がおかしい。
答辞は終わった筈なのに、入須がそこを動こうとしなかったのだ。
それに先生や生徒も気付き始め、僅かに場がざわつく。
少しだけ、口が動いているのが見えた。
多分だが、私は。 と言ったのかもしれない。
入須『私には、謝らなければならない人が居る』
さっきまでの堅い感じは消えており、いつもの入須の口調へとなっていた。
それより、なんて事だ。
あの入須が、こんな形で俺と千反田に言葉を向けるとは。
入須『この場を借りる形になってすまない』
入須『ここで名前を呼ぶ訳にもいかない、だから』
入須『私の独り言だと思って、聞いてくれ』
しかし、ここに居る人全員が入須の意思を汲んだのか、やがて場が静かになった。
入須『私は間違いを犯した』
入須『あの時は、それしか無いと思っていたんだ』
入須『だがそれは違うと教えてくれたのは、二年生の子であった』
言わずもがな、俺の事か。
入須『……そして私のした事は、一人の人間を酷く傷付けた』
入須『本当に、申し訳ない事をした』
そう言うと、入須は深々と頭を下げた。
こんな大勢の中で、まさか謝られるとは……全く予想外であった。
俺はつい、そのまま入須は壇上から降りて、式は予定通り進む物かと思ったが……
どっからともなく、聞きなれた声が聞こえてきた。
あの馬鹿、そんなの後で言えばいいだろう!
「入須さんも、あなたも傷付いたではないですか!」
「顔を……顔を上げてください」
最後の言葉は消え入りそうな物だったが、辺りは静まり返っていた為か、入須までしっかりと届いていた。
入須『君も、彼と同じ事を言うのだな』
入須『……ありがとう』
そして、周囲の視線にやっと気付いたのか、千反田が慌てて席に着いているのがこちらからでも見えた。
入須『二年生諸君、時間を取らせてすまなかった』
入須『先生方、予定外の行動を取り、申し訳ありませんでした』
そう言い、二度頭を下げると、入須は壇上から降りた。
次に巻き起こったのは、盛大な拍手であった。
事情を知っているのは恐らく、俺と千反田に里志と伊原だけだろう。
しかしそれでも、入須の挨拶には人を惹きつける物があったのかもしれない。
……あいつは、最後の最後まで女帝だった。
奉太郎「あれには驚いたな」
える「入須さんの挨拶ですか?」
奉太郎「なんとなく、いつかしっかりと話してくるだろうとは思っていたが」
奉太郎「まさかあの場面でするとはな」
える「私も驚きましたよ」
える「つい、返してしまいました」
奉太郎「俺はそれにも驚いたぞ」
奉太郎「確かあの時、後で言えば良いだろって思った」
える「気付いたときには、言葉が出ていて」
える「そして、次に気付いたときには、周りの方が私の方を見ていて……」
える「……どういう意味ですか?」
奉太郎「千反田らしくて、いいんじゃないか」
える「あ、え、えっと。 ありがとうございます」
奉太郎「いや、別に褒めてはいないが」
える「……そうでしたか」
奉太郎「悪い事とも言ってないがな」
える「もう、はっきり言って欲しいです」
奉太郎「どっちかと言えば、良い方なんじゃないか」
奉太郎「俺からの視点だがな」
える「それだけ聞ければ、十分です」
それにしても、日が大分落ちてきている。
温度が少しだけ下がっているように感じた。
念のため何枚もシャツを重ねて、厚手の上着を着て来たのは正解か。
しかし千反田は簡単な物しか着ておらず、幾分か寒そうに見えた。
俺は本当にまだ寒いとは思っていない訳だし、上着を貸してやるのが普通だ。
奉太郎「……ほら」
える「え、悪いですよ」
奉太郎「去年は俺が風邪を引いて、今年はお前とかになったら笑い話にもならんだろ」
奉太郎「俺は大分暖かい格好をして来ているから、大丈夫だよ」
える「そうですか、ではお言葉に甘えて」
卒業式が終わった後の事。
終わり良ければ全て良しとは、いい言葉だと思う。
過程が悪くても、最後に笑っていられればいいのだから。
しかしそれも、今だから言える事か。
あの後、確か千反田はそのまま入須の教室へと向かったんだったな。
俺は古典部で、入須と千反田を待っていたんだ。
……少しだけ、悪い事をしてしまった。
第7話
おわり
思わず大声をあげてしまい、恥ずかしい限りです。
でも……とても、嬉しかったです。
入須さんも最後は笑っていましたし、これにて一件落着……
ではありません!
私にはまだ、役目があるのでした。
危うくそのまま帰ってしまう所でした……
える「入須さんは教室でしょうか」
卒業式が終わって、三年生の方達が退場した後に、私達は教室へと戻ったのですが。
時間的にはそこまで経っていない筈です。
それならばまだ、入須さんは教室に居るでしょう。
私はそう思い、三年生の教室へと少しだけ急ぎながら向かいました。
ええっと、入須さんは……
その時、後ろから声を掛けられます。
沢木口「あれ、君は確か……古典部の子だっけ?」
える「あ、ご無沙汰しています」
沢木口「それで、何か用事でもあったの?」
える「ええ、実は……」
私の用事をお話すると、沢木口さんは早速入須さんを呼び出してくれました。
……一年生の終わりに、迷惑を掛けてしまったというのに。
沢木口さんはそんな事は無かったかの様に、私に笑顔を向けています。
沢木口「いいって、気にしないで」
そう言うと、沢木口さんは友達の所へと向かっていきました。
その後、数分待った後、入須さんがやって来ます。
入須「千反田か、さっきはすまなかったな」
える「びっくりしましたよ」
入須「……そうだな」
入須「あの場面で、あの様に呼び掛けるのが一番効果的だと思ったから」
入須「と言うのはどうだろうか」
える「え、そうだったんですか」
入須「あれは私の言葉だ」
える「……そうですか、良かったです」
入須「にしても、千反田はもう少し人を疑った方がいいと思うぞ」
える「入須さんの言っている意味は、分かります」
える「でも、それでも」
える「私は、人を信じる方が好きですから」
入須「……そうだったな」
そこで一度会話が途切れ、示し合わせた訳でも無く、私と入須さんは教室内の喧騒を眺めていました。
入須「それで、用事とは何だ?」
顔をそのまま動かさないで、入須さんは言いました。
える「お時間は取らせませんので、付いて来て欲しい場所があるんです」
私がそう言うと入須さんは少しだけ困った顔をします。
入須「……実は、クラスの奴等と予定があってな」
える「……わ、分かりました」
だ、駄目です。
このままでは古典部の皆さんに合わせる顔がありません……
入須「申し訳ないが、別の日でもいいか」
える「え、えっと……」
それは、入須さんに向かって発せられていた声でした。
内容は、こっちを後回しにすればいい、との物で……
私はやはり、人に助けられていてばかりの様な気がします。
入須「……との事だ」
入須「なら断る理由が無くなったな、行こうか」
える「は、はい! ありがとうございます」
私は入須さんに頭を下げ、教室内に居る方達にも頭を下げました。
……良かったです、これで入須さんを驚かせる事が出来ます!
私の足取りは軽く、入須さんとお話をしながら古典部へと向かいました。
える「着きました、入須さん」
入須「ここは、古典部か」
える「はい、とりあえず中に入りましょうか」
入須「ふむ、そうだな」
古典部の前でそう話をし、私は扉を開けます。
中には既に、折木さんと摩耶花さんが居ました。
福部さんはまだ、来ていない様です。
……でも、何か変です。
……福部さんが来ていないからでしょうか?
いいえ、それは違う筈です。
摩耶花さんは分かりませんが、折木さんは例え福部さんが居ないとしても、ここまで分かりやすく暗い顔はしない筈です。
あくまでも、私の経験上……ですが。
える「あ、あの」
奉太郎「千反田か」
私が声を掛けた事でようやく、折木さんはこちらに顔を向けました。
……やはり、いつもと少し違う様な。
入須さんも異変には気付いた様で、扉の近くで待っていてくれました。
奉太郎「……ちょっとな」
摩耶花「ち、ちーちゃん」
摩耶花「そ、その……ごめん」
何故、摩耶花さんは私に謝るのでしょうか?
える「ええっと……」
私がそう言い、考えていると、折木さんが口を開きます。
摩耶花さんはまだ何か言いたい様な顔をしていましたが、それを遮るように折木さんは言ったのです。
奉太郎「手袋に穴が開いた」
える「……どういう意味ですか?」
奉太郎「聞くより、見たほうが早いだろ」
そう言い、折木さんは私に手袋を差し出します。
……それは確かに、少しだけですが、穴が開いています。
摩耶花「……それ、その」
奉太郎「部室の鍵が開いていたんだ」
奉太郎「それで、俺と伊原が来た時には既にこうなっていた」
奉太郎「そうだろ?」
折木さんはそう言い、摩耶花さんの方に顔を向けます。
摩耶花さんはその言葉に答えませんでしたが、折木さんが言うからにはそうなんでしょう。
なるほど、摩耶花さんが先程、私に謝ったのは恐らく……しっかりと見張っていられなかったからでしょう。
でも、一体誰が……
える「……酷いです、こんなのって」
える「あんまりです」
そこで、後ろで待っていた入須さんが声を掛けてきます。
入須「大体の事情は分かった」
える「……はい」
入須「だが、何者かによって手袋には穴が開けられた」
入須「そうだな?」
奉太郎「……ええ」
入須「それが何だ、縫えばすぐに治るだろ」
える「で、ですが!」
入須「もしかして」
入須「私に裁縫は無理だと言いたいのか?」
える「そ、そういうつもりではないです」
入須「ならいいじゃないか、是非渡してくれ」
その言葉を聞き、私は一度、折木さんの方へと顔を向けます。
える「……分かりました」
こんな形になってしまいましたが……入須さんは、喜んでくれるのでしょうか。
それだけが少し、心配です。
私はそんな事を思いながら、手袋とマフラーを入須さんに渡しました。
入須さんはそれを受け取ると、とても優しそうな笑顔で、こう言いました。
入須「最高のプレゼントだよ、ありがとう」
える「は、はい!」
える「あの、それは折木さんも作ったので……」
入須「そうなのか、ありがとうな」
入須さんはそう言うと、折木さんに頭を下げました。
口ではそう言っていましたが、照れているのはすぐに分かります。
そしてその後、入須さんはクラスの方達との用事もあり、教室へと戻っていきました。
なんだか、今日別れても、また入須さんとは会えるような……私にはその様に感じられました。
……それより!
える「折木さん」
える「私、気になります!」
奉太郎「……何がだ」
折木さんも、私が何に対して気になるのかは分かっていた様で、暗い顔をしながら答えました。
奉太郎「駄目だ」
える「何故ですか、私……どうしても」
そこまで言った時、古典部にまた一人、やってくる人物が居ました。
このタイミングで来るのは恐らく、福部さんでしょう。
里志「ごめんね、遅れちゃった」
える「お疲れ様です、福部さん」
里志「うん、疲れたよ……って」
里志「何かあったのかい? 皆」
やはり福部さんも、部室の空気に気付いたのでしょう。
……説明するのには、あまり慣れていないせいもあって、随分と回りくどい説明になっていまいましたが。
里志「なるほど、そういう事か」
里志「それで、ホータローは何か分かったのかい?」
奉太郎「……何も」
里志「本当かい? 僕が見た限り、何か分かっている顔だけど」
える「そうなんですか? 折木さん!」
やはり、折木さんは分かっていたのでしょう。
それならば、聞かない以外の選択はありません。
ですが……
奉太郎「……帰る」
そう言い、折木さんは鞄を手に取ると、部室を後にしようとします。
える「ま、待ってください」
私はそれを見て、付いて行きます。
一度、福部さんと摩耶花さんの方に振り返り、顔を見ました。
福部さんは困ったような顔をしていて、摩耶花さんは未だに暗い顔をしています。
福部さんと摩耶花さんを残して帰るのは気が引けますが……
折木さんがここまで答えない理由が、少し気になってしまうのです。
そして私は、折木さんの後に続きました。
学校から出て、前を歩いている折木さんを見つけます。
私は駆け足で近寄り、横に並んで歩き始めました。
奉太郎「悪いな、さっきは」
える「……いえ、気にしないでください」
奉太郎「いつも自分は気になると言うのに、気にしないでと来たか」
える「……あの」
奉太郎「気になるか、さっきの事」
える「気にならないと言えば、嘘になってしまいます」
える「……やはり、気になります」
える「折木さんには、嘘を付きたく無いんです」
える「どんなに小さくても嫌なんです」
奉太郎「……」
その後、私と折木さんの間を少しの沈黙が包みます。
奉太郎「……はあ」
奉太郎「……お前には、話しておくべきか」
える「えっと……」
奉太郎「さっきの事だよ、他言無用で頼むぞ」
える「それを決めるのは、聞いた後がいいです」
奉太郎「……ああ、分かった」
奉太郎「まず、俺と伊原が部室に行った時、鍵は閉まっていた」
える「でも、さっきは開いていたと……」
奉太郎「あれは嘘だ、すまんな」
える「では、一体何故?」
奉太郎「つまり……」
奉太郎「今日、古典部の部室を訪れたのは……卒業式が終わった後は俺と伊原だけになる」
える「……そうなりますね」
奉太郎「そして、俺と伊原は部室でお前が来るのを待っていたんだ」
奉太郎「いつもみたいに席に着いて、な」
奉太郎「その時、入須へのプレゼントは部室に置いていただろう?」
える「ええ、あれを持ち歩くのは少し、大変そうだったので」
奉太郎「それを断る理由なんて無い、俺は見ていいぞと言った」
える「……はい」
なんとなく、私にも分かってきました。
奉太郎「机は木で出来ているからな」
奉太郎「しかも結構古い、ささくれている部分がいくつかあった」
奉太郎「それにあいつは、伊原は手袋を引っ掛けてしまった」
える「……」
奉太郎「気付いた時には、あの状態になっていた」
奉太郎「……そういう事だ」
える「……そうでしたか」
奉太郎「結果的にお前には話してしまったが、まあ」
奉太郎「一番悪いのは、俺だろうな」
える「何故、そう思うんですか」
奉太郎「さっきも言っただろ、話すという選択もあったんだ」
える「違います、そんな選択はありませんでした」
奉太郎「……どういう意味だ」
える「私は、少なからず、折木さんについては知っているつもりです」
える「他の人なら分かりません、ですが」
える「折木さんにとっては、摩耶花さんを庇う以外に選択は無かった筈です」
奉太郎「……どうだかな」
える「ですが、今……この場なら、選択は他にもあります」
奉太郎「何が言いたい」
える「戻って、福部さんにも話すんです」
奉太郎「……それをしたら意味が無いだろ、元々千反田にも言うつもりは無かったんだ」
奉太郎「結果的に話してしまったが、お前が黙っていればそれで終わる」
える「……折木さんは、摩耶花さんの顔を見ましたか?」
奉太郎「……顔?」
える「何故、あんな顔をしていたのか……さっきまで分かりませんでした」
える「ですが、折木さんの話を聞いて、全て分かりました」
える「……皆で、話し合うべきです」
奉太郎「……そうだったのか」
奉太郎「余計な事をしてしまったのかもな、俺は」
える「だから、今ならまだ間に合うんです」
奉太郎「……まだ学校に居るとも限らないだろ」
える「いいから、行きますよ!」
私はそう言い、折木さんの手を掴みます。
そのまま後ろに向き直り、走りました。
奉太郎「お、おい!」
後ろで折木さんの声が聞こえましたが、気にしないで私は走ります。
……なんだかちょっとだけ、折木さんの前を行っている自分が嬉しかったのを覚えています。
似たような事が前に、あの時は逆でしたが。
いえ、状況も違いました……ですが。
それでも嬉しかったんです、折木さんの手を引いて走れたのが。
廊下を駆けて、古典部の前へとやってきました。
そのままの勢いで扉を開けます。
摩耶花「ちーちゃん?」
摩耶花「それに、折木も」
良かった……摩耶花さん達はまだ部室に居てくれました。
える「あ、あの!」
える「摩耶花さんは悪くないです!」
摩耶花「え、えっと?」
奉太郎「千反田、落ち着け」
奉太郎「俺が説明する」
しかし、摩耶花さんは先程の私の言葉をゆっくりと理解し、折木さんの言葉を遮りました。
摩耶花「……今日の事ね」
摩耶花「実は、それなんだけど」
里志「全部聞いたよ、摩耶花から」
摩耶花「……ごめんね、ちーちゃん」
摩耶花「折木も、ごめん」
奉太郎「なんだ……千反田の言う通りだったって訳か」
える「ふふ、だから言ったでは無いですか」
える「摩耶花さんは悪く無いですよ」
える「入須さんにも今度、お話しましょう」
そこで折木さんが、扉の傍に立ったままで言いました。
奉太郎「あー、それなんだが」
奉太郎「多分、入須は全部分かっていたんだろうな」
里志「入須先輩が? どうしてさ」
奉太郎「……あいつは場を収めようとしていた」
奉太郎「自分がそのままプレゼントを貰う事によって、これ以上話を掘り下げられない様にしたんだ」
奉太郎「だからあいつには、言う必要は無いだろう」
える「そうだったんですか、私は全然気付きませんでした……」
つまり入須さんは、全て気付いていて……
最後の最後まで、ご迷惑を掛けてしまった様ですね。
奉太郎「お前の考えている事が、俺には分からなかった」
摩耶花「別に、折木が謝る事は無いでしょ」
奉太郎「……少し、外の空気を浴びてくる」
折木さんはそう言うと、部屋の外に出て、どこか風に当たれる場所へと行ってしまいます。
える「……そう言えば」
える「私、まだ少しだけ気になる事があるんです」
里志「はは、ホータローが居ないとどうにもならないかもね」
摩耶花「私達で良ければ聞くけど……」
える「あのですね」
える「摩耶花さんは何故、そのお話を福部さんにしたのでしょうか?」
摩耶花「それはさっきも言ったよ、元から私は……話すつもりだった」
える「ええ、それは分かります」
える「ですが、皆さんが揃っていた場面でも言えた筈なんです」
摩耶花「……やっぱり、ちーちゃんには分かっちゃうのかな」
える「すいません、失礼な事を言っているのは分かっています……」
摩耶花「思い出したんだ」
摩耶花「ちーちゃんと入須先輩が来る少し前に、折木が言った事を」
える「……折木さんは何と言ったんですか?」
摩耶花「折木はね」
摩耶花さんはそう言うと、私の耳に口を近づけ、福部さんに聞こえないように教えてくれました。
その言葉を聞いた私は、やはり折木さんは折木さんだと感じる事になります。
折木さんの言葉を借りるなら、あくまでも私からの視線、ですが。
でもやはり、折木さんという方は……そういう方なのでしょう。
里志「千反田さんの気持ちが良く分かるよ、とても気になる」
摩耶花「……だめ、私とちーちゃんの秘密だから」
える「ふふ、そうですね。 秘密です」
そうでしょうか?
私にはとても似合っている台詞の様に思えますが……
える「私は、折木さんらしいと思いますよ」
摩耶花「ふうん、なるほどねぇ」
摩耶花さんは何故かニヤニヤとしていましたが……それよりも私には、行きたい場所がありました。
える「私……折木さんの所に行ってきますね」
私はそう告げ、部室を後にします。
える「見つけました」
奉太郎「千反田か、何でここに居ると思った?」
える「なんとなくです」
奉太郎「……そうか」
折木さんは屋上から景色を眺めていて、私も横に並び、一緒に景色を眺めました。
える「もう、日が暮れてきていますね」
奉太郎「結局、卒業生達より長く居残ってしまったな」
える「そうみたいです」
奉太郎「それで、どうして急に来た」
える「……折木さんの顔を、見たかったので」
える「あの、折木さん」
奉太郎「ん?」
える「……いえ、何でも無いです」
奉太郎「変な奴だな」
える「ふふ、帰りましょうか」
奉太郎「……ああ、そうだな」
私は先程、摩耶花さんから聞いた折木さんの言葉について、何か言おうと思っていましたが……
この事は、私の胸の内に、閉まっておく事にしました。
その言葉はとても優しい物で、きっと折木さんは……あまり人に知られたく無いと思っているでしょう。
奉太郎「あの時は……お前に助けられたな」
える「そうでしょうか?」
奉太郎「ああ」
える「お礼をまだ聞いていない様な気がするんですが……」
千反田はそう言い、自分の口元に指を当てた。
奉太郎「お前はそんな奴だったか」
える「いつも通りですよ?」
奉太郎「……ありがとうな」
える「ふふ」
なんだ、様子がおかしいぞ。
……まさか、コーヒーのせいなのだろうか。
千反田はただ、眠れなくなるだけと言っていたが……とんでもない。
恐らく自分では分かっていないのだろう、今度教えねば。
える「どうしたんですか? 折木さん」
とりあえず、今は千反田の言う通りにしておくのが無難か。
奉太郎「ありがとう、千反田」
える「そんな、見つめないでください」
……面倒だ。
奉太郎「そろそろ帰るか」
える「もっと一緒に居たいです」
奉太郎「い、いいから……帰るぞ」
える「……そうですか、残念です」
今後一切、コーヒーは飲ませない様にしようと強く誓った。
誰に誓った訳でもないが。
える「ふふ」
横を歩いている千反田が急に笑い出すのが少し怖い。
奉太郎「何がそんなに楽しいんだ」
える「折木さんの横を歩ける事です」
奉太郎「それはありがたいお言葉で」
える「では、お礼を言ってください」
奉太郎「……」
える「私たちも、もう三年生ですね」
える「皆さんと一緒に居られるのも、後一年ですか」
える「……寂しいです」
なんだ、さっきまでニコニコしていたと思ったら……今度は泣きそうになっている。
だがまあ……その千反田の気持ちも、分からなくは無かった。
奉太郎「なあ、千反田」
える「はい? どうしました?」
俺はそんな千反田を見ていると、こいつがどこかに行ってしまいそうな気持ちになって、それを振り払うために、言った。
奉太郎「手、繋ぐか」
える「……はい!」
多分いつも通りの千反田なら、俺はこんな事は言えなかったかもしれない。
それはまあ……コーヒーに少しだけ感謝と言う事で。
千反田の家までの時間、短い時間ではあったが……千反田と手を繋ぎ、歩いて行った。
第8話
おわり
Entry ⇒ 2012.10.28 | Category ⇒ 氷菓SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
P「貴音が裸族だった…」
今俺の前に担当アイドル、四条貴音が全裸仁王立ちで存在している。
貴音「あなた様、何かおかしいことでも?」
落ち着け。おかしいのはどっちなんだ。
そもそもなぜこんな状況になったのか頭を整理しよう。
うん、そうしよう。
ただ、音無さんから連絡が入って、
貴音が事務所に忘れたお財布を家まで届けるように言われたのだ。
貴音はセキュリティが徹底された家に一人で暮らしている。
あらかじめ電話で連絡を取り、玄関を開けるとそこには…。
貴音「お待ちしておりました。あなた様」
P「?!」
貴音「何を驚かれておいでなのですか」
P「いや、入っちゃまずかったかなと」
貴音「何をおっしゃっているのか分かりませんが…入って構いません」
貴音には羞恥心というものがないのだろうか。
銀色の髪をゆさゆさ揺らしながら彼女はドアを開け、俺を中に案内した。
立ったまま貴音が腕をこちらに伸ばす。
少しだけ太く白い腕、そして無駄な毛一本ない脇の下のチラリズム。
あらゆる身体の部位が目の毒だ。
貴音「あ、あの……」
P「あ、ああ。そうだな」
ごそごそとカエル型のお財布を引っ張り出し、貴音に渡す。
こんななりのお財布だが中にはクレジットカードがぎっしり入っている。
P「以後気をつけろよ」
貴音「申し訳ございません。いくら感謝してもし足りないくらいです」
P「まあ、大事なくてよかった」
貴音「あなた様には何かしらのお礼をしたいと思うのですが、いかがいたしましょう?」
P「?!」
いや待て待て。ここで「貴音が欲しい」とでも言って見ろ。
たちまち訴えられて人生あぼーんじゃないか。
裸族だからと言って油断はできない。
ここは様子を見よう。
P「ああ、いや別にいいよ。そういうのは」
貴音「そうですか。あ、少し失礼します」
そういって貴音は大きく伸びをした。
影になっていた大事なところが一気に丸見えになる。
大きな胸も揺れて、お腹や腰が少し動いて。
正直鼻血が出そうだ。
貴音「失礼いたしました。お見苦しいところを」
P「ああ、別に」
むしろ大満足だ。
P「ところでせっかく来たんだし、リビングに入ってもいいかな?」
貴音「もちろん問題はありません。さあどうぞお入りください」
貴音はドアを開けて俺が入るのを丁寧に待っている。
行動自体は普通なのだが、いかんせん格好が格好なので
すぐにはドアに入らず貴音の方を見てしまう。
貴音「あなた様?」
P「ああ、悪い悪い」
服を着てくれるのかと思いきやあろうことか、そのまま脚を組んで椅子に座ったのである。
貴音「ふぅ……」
大きな机に頬杖をついている貴音。
瞼が徐々に閉じられていく。
P「貴音」
貴音「あ、申し訳ありません。何分眠いもので」
P「まあいいけど……そもそも貴音はなんで裸なんだ?」
貴音「いけませんか」
P「いや悪いとは言わないけど」
貴音「なら問題ないでしょう」
なんだこの「裸になって何が悪い」的理論は。
P「でもさ、ほら、宅配便とかで人が来たとき裸見られるよ?」
貴音「いけませんか」
P(なん……だと……)
P「そんなもんかね」
貴音「なかなか開放感があって良いですよ。あなた様もどうですか?」
P「いや、やめておくよ。なんか色々怖い」
貴音「そうですか」
ふと、彼女の顔から目を離すと貴音の胸が机の上に乗っている。
P「すまん、貴音。どこかにティッシュはないかな」
貴音「てぃっしゅですか。少々お待ちを」
席を立ちあがり、近くの引き出しへ向かう貴音。
すると彼女は…四つん這いになって一番下の棚を開け始めたのだ。
つまり俺から見たら彼女のお尻どころか穴とか大事なとこまで丸見えなわけで……
貴音「はい、あなた様。どうぞ……いかがなされました?!」
P「いや……なんともない。ただ鼻血が……へんた……大変なことになっただけだ」
貴音「はぁ……大事ないならばよいのですが」
P「問題ない」
貴音「時間も時間ですので少し料理の支度をいたしますが……あなた様もお食べになりますか?」
P「お、いいのか?それじゃいただくよ」
貴音「分かりました。今日のお礼ということで腕を振るわせていただきますね」
パックから取り出してお湯をかけて何分かすれば完成。
ぶっちゃけ腕によりをかける必要が全くないのは内緒だ。
……が。
股も、いやまたも彼女、食器棚の前にかがんで色んなものを取り出し始めたのである。
胸が彼女の腕でギュッと潰されて形を変えている。
爪先立ちをした彼女の腰は少しくびれている。
P「見ちゃダメだ、見ちゃダメだ、見ちゃダメだ……」
目を背けるがタイミング悪く貴音が話しかけてきた。
貴音「お飲み物はいかがいたしましょう?」
P「何でもいいよ」
貴音「そうですか」
彼女は再び屈んで冷蔵庫の一番下から飲み物を取り出す。
だからなんでそう都合よくものが一番下にあるんだよ!
目を背けつついちいち「ありがとう」と言ってやる。
すると貴音は俺の肩を叩き……
貴音「お飲み物はこれでよろしかったでしょうか」
P「!!」
貴音の白い肌に触れている白い1リットルの牛乳パック。
巨乳に牛乳とかベタすぎるぞ!どういうことだオイ!
とりあえず脳内で素数を数えろ……落ち着け俺。
P「ああ、牛乳飲むのなんて久しぶりだな。ありがとう」
ここまで10秒。
俺の鉄壁の理性に、感謝を。
いかんな、口調が移ってきたぞ。
貴音「あなた様とらぁめんが家庭で食べられるとは……光栄です」
なんかすっごい家庭的な風景だけどこの人裸だからね。
P「いや、貴音はホントにおいしそうに食べるな」
貴音「そうですか?ふふふ、おだてても何も出ませんよ」
もう何もかも出てるけどな。
P「ところで貴音はその量で満足なのか?」
そう。この娘は765でも右に並ぶものはない大食らいなのだ。
こんなラーメンで満足するはずがない。
貴音「そ、それは!実は……」
P「ん?」
貴音「お恥ずかしながら、これで本日10食目なのです」
P「そいつはすごいな」
貴音「思ったより驚かれないのですね」
P「ああ、いやまあな」
今のあなたの服装の方がよっぽど恥ずかしいし驚きだよ。
貴音「あなた様、わたくしそろそろお風呂に入りたいのですが」
P「あ、そうか。それじゃ俺は帰ろうかね」
これ以上この家にいるのはマズい。
貴音「そうですか。それでは」
P「あ、そうだ」
貴音「なんでしょう?」
P「変な男には気をつけろよ」
貴音「問題ありません。護身術の類は一通り身につけておりますので」
ジャブのようなパンチモーションをとる貴音。
護身術よりも先に衣服を身に着けてほしいものだが。
事務所に着くと、貴音が待っていた。
流石にちゃんと服を着ている。
貴音「あなた様、昨日はどうも」
P「いやいや、大したことはしてないよ」
小鳥「もしかして、一夜を共にしたとか?」
貴音「小鳥嬢、そのような破廉恥な真似は断じていたしておりません」
いやしてただろ、と突っ込みたくなったがここはぐっと我慢。
P「そうですよ音無さん、勝手な妄想を押し付けないでください」
小鳥「す、すいません」
貴音「そういえばあなた様、少し頼みがあるのですが」
P「ん?なんだ?」
貴音「響にわたくしの本を貸しているのですが……
一向に帰ってこないので、仕事の後にお時間があれば催促していただけませんか。
わたくしが行っても響はどうしても先延ばしにしてしまうので、
ぷろでゅうさあの方から、がつんと言って下さいませ」
P「はぁ……なんだかよく分からんが、分かったよ」
貴音「恩に着ます」
確か、彼女も一人暮らしだったか。
貴音に負けないくらいの大きな玄関の呼び鈴を鳴らす。
響「お、貴音のプロデューサーか!入っていいぞー」
ドアを開けると、浅黒い肌、細い手足、大きなポニーテール。
響「貴音のプロデューサー、どうしたんだ?」
そしてまろびでた胸、開いた股倉……
P「響ぃ!お前もかぁぁぁ!」
おわり
短い間でしたがありがとうございました。
アイドル全員が裸族な続きを書くべきだな
Entry ⇒ 2012.10.28 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (2) | Trackbacks (0)
玄「彼女募集中」
宥「えっ……」
玄「えっ!?」
憧「だってこの前、駅前を手を繋いで歩いてたじゃん」
宥「いつのこと?」
憧「この前の日曜日だよ」
玄(日曜日……そういえばお姉ちゃん朝から居なかった……)ムムム
憧「確か白糸台で宥姉と戦った人とさ。見間違いじゃなかったらだけどね」
憧「てっきり付き合い始めたのかと思ったんだけど」
玄「ま、まっさかー。ね、お姉ちゃん」ハハハ
宥「……」
玄「……お姉ちゃん?」
憧「おお」
玄「え!?」
玄「わ、私初耳だよお姉ちゃん!」
宥「言うの恥ずかしくて……」
憧「とうとう宥姉に春が来たかー」
玄「そ、そんな……」ガクッ
憧「玄ショック受けすぎじゃない?」
玄「そんな……お姉ちゃんに……」
宥「そんなに意外かな?」
穏乃「?どうしたの玄さん」
憧「しずにはまだちょっと早い話」
穏乃「何?」
玄「だって……だって……」
灼「何?」
憧「宥姉に恋人が出来たって聞いて落ち込んでるの」
灼「宥さんに?ああ、だから」
穏乃「玄さん、宥さんのこと大好きだからね」
憧「少しはお姉ちゃん離れとかすれば?」
玄「……べ、別にいつもお姉ちゃんにベッタリなわけじゃないもん」プイッ
灼「姉妹仲が良いにこしたことは無いけど」
穏乃「うん」
憧「このままベッタリじゃ玄の為にもならないんじゃない?」
玄「うううう……ベッタリなんかしてないもん……」
憧「忘れがちだけど私たち花の女子高生だしね」
憧「玄も恋人作れば……」
憧「……」
灼「……」
穏乃「……」
憧「玄には早いか」
灼「想像できない」
玄「わ、私にだってコイビトの1人や2人……」
穏乃「え?玄さん居たの?」
玄「……う、うん」ボソボソ
憧「嘘!?いつのまに!?」
灼「意外」
玄(え?あれ?)
玄「今のはそのー……、」
憧「どんな人?この学校の人?」
穏乃「ここ生徒数少ないし」
憧「あ、そっか。じゃあ他校の人!?」
玄「え、いや、その」
玄「……そうだよ、うん」
憧「同い年?あ、もしかして年上?」
玄(何か嘘でしたって言えない雰囲気……)
玄「そうだよ」
灼「他校で年上ってことは宥さんと同い年か」
憧「何だー。宥姉より玄のほうが水臭いじゃん」
宥「私も初めて聞いちゃった……」
玄(うん、だって居ないんだもん!)
玄「あはははは……」
玄(嘘ついちゃったよー……)ガックリ
玄(で、でも皆本気にしてないよね?)
宥「玄ちゃんの恋人ってどんな子?」
玄「え!?えーっとさっき言ったとおりだよ?」
宥「そうなの……」
宥「なんだかホッとしちゃった」
宥「私が頼りないから玄ちゃんは私に付きっきりなのかな、って思ってたから……」
玄「そんなことないよ!」
宥「玄ちゃん良い子だから絶対に玄ちゃんの事好きになる子居ると思ったの」
玄(そんな人居るわけないよー……)
宥「大会が終わった後、会場で偶然会ったの」
宥「そこから仲良くなって、付き合い始めたのは本当に最近なんだよ」
玄「そうなんだ」
宥「菫ちゃんも玄ちゃんに会いたいって言ってたから紹介するね」
玄「うん」
玄「え″」
玄「で、でもちょっと距離のあるところに住んでる人だし……」アセアセ
宥「ダメかな?」
玄「だ、だめじゃないようん」
宥「お願いね?」
玄「うん……」
玄(どうしよー……)
玄「……」タメイキ
玄「約束までしちゃったよ」
玄「正直に言えない感じになっちゃった……」
玄「こ、こうなったら今から作るしかない!」バッ!
玄「……」
玄「どうやって作るの……」ガックリ
玄「他校で年上なんて制約自分で付けちゃったし」
玄「自分で自分の首を絞めてるよ私……」
玄「ドラが恋人で良いかなもう……」
玄「テレビで現実逃避をしよう」ピッ
「女子高生へのアンケートによると恋人の居る人の割合は」
玄「何てタイムリーな話題なんだろう……」
玄「そうそう、みんなどこで会ってるの?」
「クラスメイト」
「部活の先輩とかぁ」
「何か友達の友達?と付き合い始めた子も居るー」
玄「普通そうだよねえ」
「しかしこれは五割。残りの五割は交遊関係の外からという人が多いのです」
玄「ふんふん」
「ネットで知り合った人と外で会うとか最近多いっていうかー」
玄「見知らぬ人って怖いと思うんだけど……」
玄「でもそれくらいしないと無理って事かな」
玄「私には無理だよー……」ガクッ
玄「あー、どうしよう……」
玄「そんなこんなしている内に一週間……」
玄「皆忘れてくれるかなーとか思ったらそんなこと全然無いし」
玄「特に憧ちゃんなんて誰か聞き出そうとするし」
玄「居ないんだから答えられないよ……」
玄「今日もお姉ちゃん朝から居ないし……デートかな」
玄「秋なんて絶対炬燵から出てこなかったのになぁ……」ハァ
玄「……」
玄(街中のカップルがやたら目に入ってくるよ)
玄(これがクラスで流行っているリア充死ねってことなのかな)トボトボ
玄「あーあ」
玄「朝起きたらドラが人間になってないかなー」
「ねえどっちが良いかな?」
「どっちも似合うよ」
「もうちゃんと答えてよ」
玄「……」
玄「試着して早く決めちゃおう」トトトッ
ドンッ
??「わっ」
玄「あ、ごめんなさいっ」
竜華「あんた阿知賀の……松実玄ちゃん?」
玄「千里山の……清水谷さん?」
玄(だよね?)
竜華「こんなとこで会うなんて偶然やなあ」
竜華「玄ちゃんも服買いに来たん?」
竜華「そっかー」
竜華「秋服って地味に悩まへん?日によって寒かったりするし」
玄「いっそ早く冬になってくれれば良いんですけどねえ」
竜華「そうそう。あ、玄ちゃん試着するん?」
玄「あ、はい。どっちにするか迷ってて」
竜華「ほんなら選ぶの手伝うわ」
玄「良いんですか?じゃあお願いします!」
……
玄「どうですか?」
竜華「……」
玄「清水谷さん?」
竜華「玄ちゃんは白い服がよう似合うなぁ」シミジミ
玄「そうですか?ありがとうございます」テレテレ
竜華「めっちゃかわええわ。うちやったらそれ着てくれたら嬉しい」
竜華「適当にこん中見てまわろっかー」
バッタリ
宥「あ」
玄「ふぇ?」
宥「玄ちゃん?」
玄「お姉ちゃん?なんでここに……」
玄(あ、この人とデート中なんだ)
竜華(今日は他校の子とよく会う日やなあ)
菫「そっちは確か千里山の……」
竜華「どもー」
宥「玄ちゃんもしかして清水谷さんなの?」
竜華「?」
玄「?」
玄「!」
玄(わ、わ、わ、忘れてたよ!)
玄(どどどどうしよう)ワタワタ
菫「?」
竜華「?」
玄(よ、よし。ここは適当に話を合わせて貰おう)
宥「そうなんだ……」
宥「清水谷さん」
宥「玄ちゃんのことよろしくお願いします」フカブカ
竜華「へ?」
菫「ん?」
玄(ごめんなさい、今だけ話合わせて下さい)チラッチラッ
竜華(よう分からんけど話合わせろってことやんな?)
竜華「よろしく言われても私のほうこそお世話になっとるで」
玄「ほ、ほらお姉ちゃん顔上げてっ」
宥「でもせっかく玄ちゃんの、」
玄「良いから良いから!弘世さん!」
菫「うん?うん」
宥「く、玄ちゃん顔上げてよ」
竜華「似たもの姉妹やなあ」
菫「姉妹仲は良いに越したことは無いが」
菫「宥、上映まであと10分だ」
宥「え?た、大変……」アセアセ
宥「じゃあ、あの玄ちゃんのことお願いします」
玄(何とか切り抜けた……危なかったよー……)
竜華「さて玄ちゃん」
竜華「どういう事なんか教えてくれへん?」
玄「はい……」
竜華「半ば冗談で言ったら本気にされてもうて、雰囲気的にも嘘と言えなかったと」
玄「お恥ずかしながら……」
竜華「それで何とか皆に会わせんで済むように条件付けてってたらお姉ちゃんに頼まれて困り切ってた」
玄「はい……」
竜華「で、運悪く鉢合わせしたけど運良く条件ピッタリな私がたまたま一緒におった……」
竜華「まあ玄ちゃんの助けになったんならええけど」
竜華「これからどうするん?」
玄「これからとは?」
竜華「お姉ちゃん、私と玄ちゃんが付き合ってるって信じとるやん」
竜華「玄ちゃんのことよろしくされてもうたし」
玄「うーむ……」
玄(ダメダメ!余計心配かけるし、お姉ちゃんの中の清水谷さんへの心証も悪くなっちゃう)
玄(このまま押し通すしか……よし、協力してもらおう!)
玄「清水谷さん!お願いがあります!」
竜華「大体予想ついとるけど、どうぞ」
玄「名目上で良いので恋人になって下さい!」ガバッ
竜華「うん、ええよ」
玄「そ、そんなアッサリ……良いんですか?」
竜華「特に断る理由もあらへんし」
玄「でもでも、もし好きな人が居るとかなら……」
竜華「おらんなあ」
竜華「思い返すと青春の殆どを麻雀に捧げてきたようなもんやからな」
竜華「強いて言うなら麻雀に恋してた」ドヤッ
竜華「玄ちゃんがええなら」
玄「……じゃあ、その、よろしくお願いします」
竜華「うん、よろしくなー」
玄(ずっと思ってたけど軽いノリの人だなー……)
竜華「あ、でも付き合うにあたっていくつか」
玄「何ですか?」
玄「あ、それもそうですね」ワタワタ
竜華「あと清水谷さんって無しな?」
竜華「名字呼びはちょっと寂しいわ」
玄「じゃあえっと……竜華さん?」
竜華「呼び捨てでもええよ?」
玄「さすがにハードルが高いです……」
竜華「そう?残念」
玄「それじゃ……しばらくお世話になります竜華さん」
憧「ねえ玄ー、聞きたいんだけどさ」
玄「なに?」
憧「玄の付き合ってる相手って千里山の清水谷竜華?」
玄「え」
玄「ど、どうして?」アセアセ
憧「昨日しずと○○駅のところ歩いてたらさ、玄たちっぽいの見かけたんだよね」
憧「ね、どうなの?」
玄(一応名目上とはいえ恋人だから言っても平気だよね?)
玄「そうだよ」
穏乃「やっぱりあれ玄さんだったんだ……」
憧「それにしても姉妹揃って相手が名門校の部長とは……なかなかのなかなかだよね」
玄「あはは……」
玄「普段って……フレンドリーな人だよ?」
憧「ほらそういうのじゃなくてさ」
憧「2人っきり特有のってあるじゃん」
玄「……え″」
玄(そんなの分からないよ……)
玄(どうしよー竜華さーん……)
続
最近竜華があまりにも可哀想な扱いだから違う方面で対抗する
楽しみにしてるぜー
Entry ⇒ 2012.10.28 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
綾乃「……迷子?」 まり「うに~」
綾乃「今日は忙しくなると思って、折角プリンを奮発したのに」
綾乃「大室さんに、プリンを食べられちゃった……」グスン
綾乃「でも、いつまでもそんなことに悩んでいたら、副会長失格よ」
綾乃「ファイトファイトファイファイビーチよ!」
綾乃「あら……あの子、一人で何をしているのかしら?」
まり「」キョロキョロ
綾乃(もしかしたら、迷子なのかしら? だとしたら、ちゃんとお母さんを探してあげないとね)
まり「?」
綾乃(あら? この子、誰かに似ているような……)
まり「おねえちゃん、だ~れ?」
綾乃「私?」
まり「うん」
綾乃「それで、あなたのお名前は?」
まり「おねーちゃんが知らない人に、お名前言っちゃダメって言ってった」
綾乃「あはは、確かにそのとおりね」
綾乃「でも、私は怪しい人じゃないわよ」ニコ
まり「……」ジリッ
まり「自分で『怪しくない』という人ほど、怪しいって、おねーちゃん言ってったー」ジリッ
綾乃「うっ、それはそうなのだけど……」
綾乃(実際にやられると、ちょっと凹むわ)
まり「……」ジリッ
綾乃(やはり、警察に連絡するべきなのかしら?)
綾乃(でも、ここで待ち合わせをしているだけかもしれないわ)
綾乃(でもでも、もしかして逆に私が変質者として通報されたりしたら)ズーーーン
綾乃「え、ええ……し、心配ないナイナイアガラよっ!!」
まり「……」
綾乃「……」
まり「……」
まり「おねえちゃんは、おねーちゃんを知ってるのー?」
綾乃「へ?」
綾乃(ど、どういうことなのかしら?)
まり「そういえば、おねーちゃんとおそろいの服着てる」
綾乃「……おそろい?」
まり「……」ジー
綾乃(そういえば、この子……)
まり「?」キョトン
綾乃(なんとなくだけど、この子、船見さんに似ているわ)
まり「まり、おねーちゃんのこと、すきー」ニコッ
綾乃「そうなんだ」
まり「うん」
綾乃(ならば、船見さんに聞けば、安心アンコールワットね)
綾乃「えーと、船見さんの番号は……」
京子『あれー、綾乃?』
綾乃「とっとととととし歳納京子が何で船見さんの携帯に出ているのよっ!!」
京子『ああ、結衣はちょっと手を離せないからなー。だから、私が代わりに出ただけだぞ』
綾乃「そ、そうなの?」ホッ
京子『綾乃は結衣に用があるのか?』
綾乃「ええ、ちょっとね。だから、船見さんに代わってもらえないかしら?」
京子『ほ~~い。ちょっち待ってくれー』
綾乃「ううん……こちらこそ突然ごめんなさい」
結衣『いや、それにしても、綾乃が私に電話をくれるなんて珍しいね』クス
綾乃「そうかしら? ……うん、そうかもね」クス
結衣『それで、綾乃は私に何か用があるの?』
綾乃「ええ、実は――」
結衣『うん。綾乃と一緒にいるのは、多分まりちゃんかな』
綾乃「ほっ、よかったわ」
結衣『でも、どうしてそんなところにいるんだろう』
綾乃「そういえば、そうね」
結衣『後で、まりちゃんに電話代わってもらってもいいかな?』
綾乃「ええ、こちらこそお願いするわ! これで心配はノンノンノートルダムね」
結衣『ぶっ、くくく』
綾乃「何かしら、船見さん?」
結衣『疲れている所悪いけど、まりちゃんを私の家まで連れてきてもらっていい?』
綾乃「ええ、それは構わないけど……」
結衣『ありがとう。助かるよ、綾乃』
綾乃「でも、まりちゃんが納得してくれるかどうか心配だわ」
結衣『その点は心配しないで、綾乃。まりちゃんには、私から話をするから』
まり「うん」
結衣『それじゃー、綾乃お姉ちゃんに電話を代わってくれるかな』
まり「はーい」
まり「綾乃おねえちゃん、結衣おねーちゃんが代わってってー」
綾乃「ありがとう、まりちゃん」ニコ
まり「えへへ」ニコ
結衣『ごめんな、綾乃』
綾乃「別に、これくらい何でもないわよ」
結衣『だけど、綾乃は今日登校していたんだろ……』
綾乃「ええ、そうよ。でもね、そういう遠慮はしないで、船見さん」
綾乃「だって、私たち……友達でしょ」ニコッ
綾乃「だから、そんなこと言われると逆に困るわ」
結衣『ははは、そうだ。私たちは友達だよ』
結衣『それじゃー、私の家で待っているから、まりちゃんのことお願いします』
まり「お~」グゥゥゥ
綾乃「あらあら、かわいい音ね」
まり「まり……おなか、すいたもん」グゥゥゥ
綾乃「……そうね、お姉ちゃんも少しだけお腹空いたわ」ニコ
まり「おお~」キラキラ
綾乃「まりちゃんが好きな食べ物ってなぁに?」
まり「うにぃー♪」
まり「うにぃー♪」
綾乃「……」タラァー
まり「う~に~♪ う~に~♪ う~に~♪」
綾乃「まりちゃんは、うにが好きなの?」
まり「うに、大好き~。大きくなったら、うにになる!」
綾乃「え、えーと、た、食べられちゃうわよ」
綾乃「え///」カァー
綾乃(わ、私に食べられたいって……さ、最近の子はませているのね)アタフタ
まり「?」キョトン
綾乃「あ、あそこにコンビニがあるわよ」
まり「おお、コンビニ~」
イラッシャイマセー
まり「う~に~♪ う~に~♪」
綾乃「あのー、まりちゃん……」
まり「うにー?」
綾乃「まりちゃん、言いにくいけど……コンビニにうには売っていないわ」
まり「う、うに~~~ぃ!!」ガーン
綾乃(は、激しく落ち込んでいるわ)アセアセ
綾乃(そ、そういえば――)
生徒会室
櫻子「うにが食べたい!!」
向日葵「はぁ?」
綾乃「お、大室さん?」
千歳「いきなりやわな~」
りせ「…………?」
櫻子「食べたい、食べたい、食べたい」ジタバタ
櫻子「ぶ~、このおっぱい魔人めっ!!」
向日葵「お、おっぱいは関係ないですわ!」ポヨーンポヨーン
りせ「…………」ズーン
綾乃「……はぁ」ズーン
千歳「綾乃ちゃんは、まだまだ成長途中やから大丈夫やで~」
綾乃「……ありがとう、千歳」
櫻子「……なんでだろう?」
向日葵「相変わらず思いつきで行動しますわね」ハァ
千歳「そや、プリンに醤油をかけると、うにみたいな味になるらしいやで~」
綾乃「へぇー、そうなの?」
りせ「……」コクコク
千歳「そうやで~、安物のうにの味にしかならないやけどな~」
綾乃「ふ~ん」
櫻子「あ、そういえば、冷蔵庫の中にプリンがあったような……」キラーン
綾乃「!?」ビクッ
~~~~回想終了~~~~
まり「お、おねえちゃん、大丈夫?」
綾乃「ええ、大丈夫よ。ちょっと残念なことを思い出しただけよ」
綾乃(まりちゃんを元気付けようと思ったのに慰められるなんて、本末転倒よ!)
綾乃(私がお姉さんなんだから、しっかりしないとね)
まり「……」
綾乃「……」
まり「……」
綾乃(す、凄く考え込んでいるわ!?)
まり「……」
綾乃(そんなに、うにが好きなのかしら)
綾乃(やっぱり、アレを試してみるしかないのかしら? でも、その前に)
まり「かわいた~」
綾乃「うん。まずはお姉ちゃんと一緒にジュースを買いましょう」ニコ
まり「お~~」
綾乃「まりちゃんはどのジュースがいいの?」
まり「うーんとね……ぴっちょんグレープがいい~」
綾乃「ぴっちょんグレープね」
まり「うん。おねえちゃんは何飲むのー?」
綾乃「私? 私はねぇ……レモンティーかしら」
まり「おお」
まり「いいの?」キラキラ
綾乃「ええ、いいわよ」
まり「わ~~い」
綾乃「ふふふ、やっぱりこういう所は年相応よね。さてと、その隙に」コソコソ
綾乃「えーと、プリンは普通のでいいのよね?」
綾乃「醤油は確か……こっちに有ったような……。あ、有ったわ」
綾乃「それじゃー、レジに行きましょうか」ニコ
まり「うん」
アリガトゴザイマシタ
綾乃「流石に歩きながら食べるのはお行儀が悪いわ」
綾乃「何処か座れる場所はないかしら」
まり「さっきの公園でたべる~」
綾乃「そうね。あそこなら、ベンチもあるし……それじゃー、行きましょうか」
まり「お~~」
綾乃「はい、これがまりちゃんの分ね」
まり「わ~い」
綾乃(これは……出すべきなのかしら?)
まり「おねえちゃんはプリン好きなの?」
綾乃「ええ♪」ニッコリ
まり「……」ジー
綾乃「まりちゃん?」
綾乃「え!?」
まり「プリンが二つもあるー」ブー
綾乃「あ、あの、これはね……」アセアセ
綾乃(か、顔を膨らませているわ。ど、どうしよう東照宮!!)
綾乃(こ、これは、本当のことを言うべきなのかしら? で、でも……)
まり「……」ジー
綾乃「う、うぅ……」
綾乃(こ、これは、もう覚悟を決めるしかないのかしら……)
綾乃「え、えーと、このプリンはね……こうするのよっ!!」
まり「!?」
綾乃「はぁ、はぁ、はぁ」ゼェゼェ
まり「お、おねえちゃん?」
綾乃「……はい」
まり「……まり、に?」
綾乃「ええ、私はまりちゃんに食べてもらいたい」コクン
まり「うう……」
綾乃「わ、私を、信じて……」
まり「……」コクン
まり「……」オソルオソル
綾乃「……」ドキドキ
まり「………………う、ウニィ?」
綾乃「い、一応……ね」
まり「……」
綾乃「お、おいしく……ないわよね」ドヨーン
まり「………うん」コクン
まり(……人生って、しょっぱいことばかりだね)
綾乃(ちょっと前に戻ることができたのなら、私を殴ってでも止めたいわ)ズーン
まり(あ、おねえちゃんが落ち込んじゃった!?)
まり(おねえちゃんはきっとまりのためにしてくれた)
まり(だったら、ちゃんとお礼しないといけないもん)
綾乃「!?」
綾乃(こんな小さい子にまた励まされるなんて……私は何をやっているのよ!)
綾乃「いいえ、こちらこそ……ありがとう」ニコッ
まり「う、うんっ///」
まり「うんっ」
まり「あ、でも、これはどうするの?」
綾乃「……お、お姉ちゃんが責任を以って食べるわ」
まり「ま、まりもいっしょに食べるもん」
綾乃「まりちゃん……」ジーン
綾乃「それじゃー、半分っこにしましょう」ニコ
まり「うに~!」
結衣の家
結衣「ありがとう、綾乃。色々と助かったよ」
綾乃「どういたしまして」
京子「まりちゃん、綾乃に何かされなかった~」
綾乃「な、何もしてないわよっ!」
京子「あれ? あれあれ」ニヤニヤ
綾乃「な、ななな何よ、歳納京子!!」
京子「別に~」ニヤニヤ
結衣「おい、こら!」ペシッ
京子「ぶ~、何するんだよ~」
京子「へ~い」
結衣「悪いな、綾乃」
綾乃「別に歳納京子のことだから、気にしていないわよ!」
結衣「まぁ、確かにな」クスクス
綾乃「時間が時間だし、そろそろ帰るわ」
結衣「そっか、今日は助かったよ」
京子「綾乃~、また明日学校でな~」
綾乃「歳納京子、ちゃんとプリントを提出しなさいよ!」
京子「ほ~い」
まり「うんっ」トテトテ
まり「おねえちゃん、今日はありがと~」ニコ
綾乃「ううん。こちらこそ、ありがとう」ニコ
まり「えへへ///」
綾乃「ふふふ///」
京子(うん、綾乃って面倒見がいいからな)ヒソヒソ
結衣(だからか……まりちゃんが綾乃にあそこまで懐いたのは)ヒソヒソ
京子(うーん、それだけじゃないような気がするけど……)ヒソヒソ
まり「綾乃おねえちゃん、またね~」バイバイ
綾乃「まりちゃん、また今度ね」バイバイ
おしまい
まりちゃんの言葉遣いが難しかったけど、後悔はしていない。
もっと、綾まりが流行りますように。
というか、もっと綾乃と年少組のSSが増えるといいなー。
微笑ましくて口元が緩みっぱなし
ほのぼのしてて良かった
Entry ⇒ 2012.10.28 | Category ⇒ ゆるゆりSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
響「自分がプロデューサー? 完璧にこなしてみせるさー!」
美希「ふぅーん、頑張ってね」
響「美希も一緒に頑張るさー!」
美希「ミキ、疲れるの、や」
響「でも頑張らないとアイドルやっていけないさー……」
美希「あ、じゃあミキの代わりに頑張って?」
響「よし、自分に任せろってなんでさー!」
美希「むぅ、さっきから声大きいの。
事務所ではもうちょっと静かにした方がいいって思うな」
響「ご、ごめん……とにかく、一緒に頑張るさー」
美希「はいはい、頑張る頑張る」
美希「ねえ、まだ自己紹介してもらってないよ?」
響「あ、すっかり忘れてたぞ。じゃあ改めて、自分、我那覇響! うちなーからアイドルになる為に上京してきたぞ!」
美希「アイドルなの?」
響「アイドルのはずだったんだけど、なんでかプロデューサーやってるさー……」
美希「ね、この子は?」
響「慰めの言葉も何もなかったぞ。ええと、こっちはハム蔵! 自分の大切な家族だ!他にも、家にはイヌ美やネコ吉、沢山いるぞ」
美希「ふぅん、よろしくね、ハム蔵」
ハム蔵「ぢゅい!」
響「自分にはよろしく言わないのか?」
美希「あーうん、よろしくなの……あふぅ」
響「ついで扱いされてる気がするぞ……」
ハム蔵「ぢゅい!」
響「そうだな、電話! もしもし、美希かー!?」
美希「ん、ん~……声大きいの、普通に喋れば聞こえるよ」
響「美希、今どこにいるんだ!? 今日はレッスンだって言ったはずだぞ!」
美希「……何言ってるの? ミキ、今日の予定何も伝えられてないの。だからゆっくりお昼寝してたのに」
響「うぇえ!? だって一昨日、ちゃんとメールで……!」
美希「ちょっと待ってね……うん、やっぱりメールも電話も来てないの。そっちのミスだって思うな」
響「うぎゃー! ご、ごめんね美希! とにかく今日はレッスンだから、今から急いで行ってほしいんだ!」
美希「もう、だから声大きいってば。分かったの、じゃあ一応行くけど、間に合わなくても怒らないでね?」
響「うん、出来るだけ急いで!」
美希「ふんふふ~ん♪ あ、やば」
響「あ、美希! 今日はごめんな……自分のせいで美希のレッスン、一回無駄になっちゃったぞ」
美希「そ、そんなにしょんぼりしなくてもいいって思うな。誰にでもミスはあるってガッコの先生も言ってたの」
響「うう、美希は優しいなあ」
美希「元気出して、ね? ほら、イチゴババロア一口食べていいよ」
響「あむ……美味しいぞ」
美希「元気、出た?」
響「うん! もう今日みたいな失敗はしないぞ! 自分、もっともっと頑張るからね!」
美希「ミキ的には、あんまり頑張らなくてもいいよ?」
響「頑張るの! 一緒に!」
美希「あふぅ」
響「うが~~!!」
響「他人事みたいに言わないでよ、美希のオーディションだったんだぞ……」
美希「知ってるよ?」
響「うう、ごめん……自分の指示がまずかったのかなぁ」
美希「へこみすぎなの」
響「美希の初陣だぞ? 合格させてあげたかったんだ」
美希「ダメな時はダメだよ」
響「美希、もっとレッスン頑張ろうな。自分も、もっと色んなオーディション探して来るから。仕事も取ってくるから」
美希「……うん」
響「もっと腕は遠くに伸ばすんだ、こう、こう!」
美希「こうだね」
響「いい感じだぞ! で、ここでくるっとターンさー」
美希「ここはミキ、得意だよ。ほらっ」
響「うんうん、そこでジャンプ!」
美希「よっ」
響「上手いぞ! この調子なら通しもすぐ出来そうさー!」
美希「案外ダンス、上手いんだね。小っちゃいから苦手かなって思ったけど」
響「自分、小っちゃくないぞー! それにダンスは得意分野さー、一応今もアイドルは目指してるんだし」
美希「そう言えばそんなこと言ってたね。なんでアイドルやらないの?」
響「……なんでだろうなー、気づいたら社長に乗せられてたさー」
美希「な、なんかごめんなさいなの」
響「いいさー……気にしてないさー……今は美希のプロデューサーさー……」
美希「ほら、ダンスレッスンの続きしよ?
」
響「美希、ダンスだけじゃなくて歌も上手いね」
美希「そう? 簡単だよ?」
響「ま、まあ自分もそれぐらい出来るけどね! なんたって自分、完璧だからな!」
美希「あはっ、じゃあ一緒に歌おうよ」
響「今、今か!? 自分、完璧だけど準備は必要で」
美希「いいからいいから、ちょっと合わせてみるの! せーの、~♪」
響「……~♪」
美希「音、外れてるの」
響「今のはわざとさー! もう一回いくよ! ~♪」
美希「……ふふっ」
響「美希も歌うさー! ~♪」
美希「~♪」
響「可愛いぞ、次は悲しそう!」
美希「どう?」
響「バッチリだぞ、嬉しそうは?」
美希「あはっ」
響「美希はすごいなー、感情表現も自分と同じ位完璧だぞ」
美希「ね、そろそろご飯だよね? レッスン切り上げてお外行こ!」
響「駄目だよ、ちゃんと時間いっぱいはレッスン! ほら、困り顔」
美希「むぅ」
響「それは怒った顔だぞ」
美希「ミキ、怒ってるの!」
響(行ける、良い感じだぞ美希! そう、そこで……よし、きれいなジャンプ!)
美希「~♪」
響(ダンスに集中し過ぎて歌が、うがー! 頑張れ美希ー!)
美希「~♪ っ」
響「あ!?」
美希「ったぁ……ぁ、~♪」
響(……転んじゃった)
美希「~♪」
響(頑張れ、頑張れ……!)
美希「~♪……」
響「……だから、他人事みたいに言うの、やめてよ」
美希「他人事じゃないよ、ミキ、結構気合入れたつもりなの」
響「でも、転んじゃったな」
美希「うん……」
響「……ごめんね」
美希「? どうして謝るの?」
響「自分がもっと上手く教えられてれば、きっと」
美希「前にも言ったの。ダメな時はダメだよ」
響「ダメな時がないようにするのがプロデューサーの仕事さー、自分、もっと頑張るからね」
美希「……ミキも、頑張るね」
響「!? み、美希! 今、なんて? 頑張るって言った!?」
美希「うわ、びっくりした……うん、ミキ、頑張ってみる」
響「そっか……そっかあ! よーし、二人一緒に頑張れば、なんくるないさー!」
美希「何それ? ふふ、変なの」
響「……こう?」
美希「下手っぴだね、こうなの」
響「うぎゃー! 美希に下手っぴって言われたさー!」
美希「響、早く覚えないとミキ、置いてっちゃうよ?」
響「すぐに追いつくさー! ……ん? 今名前で呼んだ?」
美希「呼んだの」
響「初めて名前で呼んでくれたさー! 自分、いつまで経っても名前呼ばれないから嫌われてるのかもって、ずっと……!」
美希「はいはい、響響。で、ミキのダンスどう? カンペキ?」
響「完璧だぞ! ……じぶんには負けるけど!」
美希「響の方が下手っぴだよ?」
響「もー! 意地ぐらい張らせてよね!!」
美希「響って、時々めんどくさいの」
響「くさくないさー!」
響「すごかったぞ! 審査員の人もびっくりしてたさー!」
美希「ラクショーってやつだね」
響「勝手にレッスン切り上げて昼寝ばっかりしてたから心配だったけど、合格して良かったさー」
美希「ミキ、スプリンクラーだもん。瞬発力には自信あるの」
響「? スプリンターのことか?」
美希「スプリンクラーだよ? 100m走する人のことなの」
響「それ、スプリンターだぞ。あと距離は100mじゃなくても短かったらスプリンターさー」
美希「ふぅん。どっちでもいいや、ミキ、頑張ったから眠いの……あふぅ」
響「帰りの電車でゆっくり寝るさー、駅に着いたら起こすから」
美希「うん、おねがいー……」
響「あはは、もう電池切れかけさー」
響「そう! これでお仕事いっぱいさー!」
美希「へー、おめでと響」
響「美希のランクアップさー、美希が喜ばないで誰が喜ぶの!」
美希「ミキ、あんまりそういうの分かんないから響Pに任せるね、あふぅ……おやすみ」
響「起きろー! もうお仕事の依頼来てるんだぞー!」
美希「ん、響Pはカンペキなのー……それぐらい捌けるはずなの……」
響「まあ自分は完璧だからこれくらい余裕だけど、ってそうじゃないだろー!さっさとミーティングするさー!」
美希「響。響はランクアップしたの?」
響「じ、自分はプロデューサー業が忙しいから、その、うう、まだFランク」
美希「やっと静かになったの、おやすみ~」
響「起きるさー!」
美希「んー……もしもし、響。ミキ、ダンスカンペキだから、大丈夫なの」
響「ちょ、大丈夫じゃないさー! 美希のダンスは確かにすごいけど、それを維持するのも同じくらい大事なんだよ!?」
美希「あふぅ。でも、今から行っても間に合わないよ?」
響「それはそうだけど……うう、もう絶対こんなのダメだからね? 何があっても連絡はするさー」
美希「うんうん、分かった分かったなの。後のことはよろしくね、敏腕プロデューサー」
響「え、えへへ、褒めても何も出ないぞー?」
美希「じゃあおやすみなさいなのー」
響「あ……切れちゃったぞ」
春香「美希? 何の電話だったの?」
美希「何でもないの、響からギョームレンラク」
春香「ふぅん、やっぱりランク高くなるとお休みでも頻繁に連絡来るんだね。響Pも大変だ」
美希「今はミキのお腹の方が大変なの、早くケーキご馳走して?」
春香「あはは、はいはい。もうちょっとで焼き上がるからねー」
社長「おお、我那覇君! どうかね、調子は?」
響「あ、あはは……自分はプロデューサー兼任だからFランクも仕方ないって思ってるけど、美希の方がちょっと」
社長「ふむ? 少し詳しく聞かせてもらおうか」
響「実はかくかくしかじかさー……」
社長「ううむ、それは非常にまずいな。私の経験上、その内大きな失敗に繫がりそうだ」
響「うぎゃー! それは駄目だぞー! 美希は、美希はこんなとこでつまづいてる暇はないさー!」
社長「そこで私に考えがある。ごにょごにょというのはどうだろう」
響「おー、社長冴えてるさー! 自分も、美希の仕事に穴空ける前になんとかしたいと思ってたところだぞ!」
社長「うむ、力になれたようで何よりだよ。では頑張ってくれたまえ」
響「うん! 社長、にふぇーでーびるー!」
社長「うむ、元気良く飛び出して行ったな。自信に溢れ自分は完璧と言っていた我那覇君が、星井君はこんなところで、か。よきかな、よきかな」
美希「あ、え? でも、それってまだ先の……」
響「ちゃんとメールも打ったし電話でも話してたぞ!? 一体何を聞いてたんだ!!」
美希「ちょ、ちょっと、待ってね、ミキ、確認」
響「確認しながら走るさー! 下手するとCD中止もあり得るんだぞ!?」
美希「あ、ご、ごめんなさ」
響「自分に謝っても仕方ないさー!! 地図とかまとめて今メールしたから、早く来てスタッフさんに謝るさー!!」
美希「う、うん……ぁ、切れた。どう、どうしよう、急がなきゃ!」
響「遅いさー!! レッスンサボるだけじゃなくレコーディングまでサボる気だったのか!? 早くこっち来るさー!!」
美希「ごめ、ごめんなさい、ミキ、あの、あのね、ミキ……ぇ?」
社長「うむ」
美希「社長、え? ひび、き?」
社長「喝!!」
美希「きゃあ!?」
響「美希、姿勢を正して社長の有難いお言葉をしっかり聞くさー」
美希「う、うん……」
社長「星井君、最近仕事も増えて順風満帆だそうじゃないか」
美希「は、はいなの!」
社長「うむ、大変結構。これからも、頑張ってくれたまえ。私からは以上だ」
美希「……え、え? 終わりなの?」
社長「私からは以上だ。我那覇君、何かあるかね?」
響「じゃ、自分からも少しだけ」
美希「ごめんなさいなの、もうしませんなの……」
響「よし、もういいよ……ん? 3時間も正座して疲れたんだね。自分がマッサージしてあげるさー」
美希「ご、ごめんなさいなのー!反省してるのー!!」
響「遠慮しなくても体にじっくり教え込むさー!」
美希「ひゃうん!? だめ、足触っちゃダメなのー!?」
響「逃がさないさー!」
社長「うむ、仲良きことは、美しきかな」
美希「社長助けてなのー!」
響「観念するさー!!」
美希「やったの! これでミキ、もっとキラキラ出来るよね」
響「ランクアップしたのは美希じゃなくて自分さー! 横取りはダメさー!」
美希「ふぅん、おめでと響」
響「祝い方が雑!」
美希「ね、響。ミキね、早く次のランクに
上がって、もっとキラキラしたいの。出来る?」
響「美希……うん、自分に任せれば万事完璧さー!」
美希「ありがと、響! あ、でも……」
響「? 騒いだり静かになったり忙しいね」
美希「響が言うななの。響もまだまだ下の方だけど、ランクアップしたってことは響も仕事が増えるの? ミキ、邪魔になってる?」
響「し、下の方って……まあいいや。確かに自分の仕事も増えるけど、プロデュースなんて一人も二人も同じさー」
美希「? 響、ミキの他にもプロデュースしてるの?」
響「自分はセルフプロデュースさー。とにかく美希は何も心配しなくていいよ、なんたって自分は」
美希「カンペキだからな! なの!」
響「だから横取りはダメさー!」
響(安心して見られるさー)
美希「~♪」
響(歌、一緒に頑張ったもんね)
美希「~♪」
響(元々上手かったダンスもふらつきが更に減ったし、もう自分より上って認めなきゃかもね)
美希「~♪」
響(合間合間の表情や仕草、女の自分から見ても凄く魅力的さー……)
美希「~♪」
響(……)
美希「~♪」
響(……自分、何してるんだろう)
美希「~♪」
響「すごかったさー、生放送なのにいつも以上の力を出せてたぞ!」
美希「あはっ、ミキはまだまだこんなところじゃ止まらないの!」
響「そう、だね。あはは」
美希「そろそろBランクも見えてきたよね、ね? 響!」
響「あ、うん! なんたって自分がプロデュースしてるからな!」
美希「我那覇響プロデューサー様々なの!」
響「あは、ははは」
響「いてて、もう一回!」
響「はっ、はっ、ここ、っ!」
響「うう、美希みたいにはいかないぞ……」
響「当たり前だよね、美希は自分より練習してたもん。そんなにすぐには追いつけないぞ」
響「……美希はもう、Bランク。自分はまだ、EランクとFランクの間ぐらい」
響「……」
響「っ、俯いてる暇なんかないさー! すぐに追いついて、いや追い越してやるさー!」
響「美希ー! トップアイドル目指してるのは美希だけじゃないさー!」
響「うがーー!!」
響「美希、おめでとう! Bランクって言ったらもうトップアイドルの端くれさー!」
美希「これも響Pのおかげなの。あの時ちゃんとミキのこと叱ってくれたの、ミキ、とっても嬉しかったよ?」
響「っ、美希は大事なアイドルだもん、プロデューサーとして当然さー。それにしても美希の失敗で怒られるのも勘弁してほしかったさー!」
美希「あはっ、ごめんね響。でも、本当にありがとうなの。ミキ、響がいなかったらきっと今のミキになれなかったの」
響「……美希の、実力、だよ」
美希「ううん、響のおかげなの! 響がいっぱいいっぱい頑張ってくれたからミキ、こんなに……響?」
響「ん、ん? 何?」
美希「嬉しくて泣きそう、じゃないよね? 辛そうなの。ごめんね? ミキ、何かしちゃった?」
響「……ごめん、自分、嫌な奴だ」
美希「あ、響!? どこ行、ちょっと待ってなのー!」
響「……違う、自分、い、嫌な、奴だ。美希のこと、プロ、プロデュースなんか、しなきゃ、良かっ、うぐ、ひっ、ぐす、良かったって」
美希「……響」
響「美希、美希が頑張ってたの、知ってるのに、美希、ばっかりって、ズルいって、こんなの、自分、なんで、こんなぁ!」
美希「響、風邪引くよ? ミキのコートだけど、貸したげる」
響「んぐ、うあぁ……ひっぐ、けほっけほ、うぅ」
美希「ね、響。もっと聞かせて? ミキのこと、どんな風に見えてた?」
響「……最初は、全然大したことない奴だって、思ってて、全然頑張らない奴だから、自分の方が上だって」
美希「うん」
響「でも、美希、ちょっと練習しただけで、どんどん上手になって、失敗する度に伸びて、その内失敗なしで、上手くなって」
美希「うん、そうだね」
響「ランクもどんどん上がって、その辺のアイドルの中じゃ、一番星で、美希、美希が、どんどん遠くに、自分、自分ももっと」
美希「そっか」
美希「いいんだよ、響。ミキ、響がそんな風に思ってたなんて知らなかったの。でもね、嬉しいの」
響「え……?」
美希「今のミキ、響が認めてくれるくらいキラキラしてるんだよね。ねえ知ってた?
ミキ、響のこと、お日様って思ってるんだよ」
響「……?」
美希「小っちゃい体で沖縄から飛び出して、いっぱいの家族を養って、プロデューサーもアイドルもやって、ミキのことをいっぱいいーっぱい照らしてくれて」
響「そんなの……」
美希「大したことあるよ。響に出来ないこと、ミキは出来るかもしれないよ? でもミキに出来ないこと、響も沢山出来てるの」
響「……う、ぐす」
美希「響、響の周りにいる人ってみんな笑ってるんだよ。ううん、人だけじゃない、みんな。それって、ミキには出来ないの」
響「う、あぁ、ひっく、すん」
美希「でも、しんどいなら、いいんだよ。ミキのプロデューサーお休みしても、誰かに手伝ってって言っても、一人で背追い込まなくても。最初に響が言ったんだよ?」
響「っ、うん……ひぐ、うん……!
美希「一緒に、頑張るさー」
美希「ミキ、デビルじゃなくてエンジェルだよ?」
響「あはは! 自分でそんなこと言えるのはデビルさー!」
美希「あはっ、そうかも。じゃあそろそろ事務所、戻ろっか」
響「そうだな、すっかり体も冷えたさー……ねえ、美希」
美希「あふぅ……んー?」
響「自分、続けるよ。美希のプロデューサーも、アイドルも」
美希「ん、そっか」
響「しんどくなった時には美希にも手伝ってもらうから、覚悟してよね!」
美希「むぅ、もしかしたら失言だったかも知れないの……」
響「言質はばっちり取ったさー! とりあえず事務仕事から覚えてもらうさー」
美希「ミキ的には、お茶汲み方面で頑張りたいって思うな」
響「? お茶汲みも事務仕事も両方やるに決まってるさー」
美希「もしかしなくても失言だったの……」
響「ほっ!」
美希「ばっちりなの。やっぱり響、スジ良いね。練習した分目に見えて上手くなってるよ」
響「Bランクアイドル様のお墨付きなら安心さー」
美希「響は歌とダンスでいっぱいいっぱいになってることが多いから、いつもカメラがあるって意識した方がいいの」
響「……Bランクアイドル様の的確な指導、痛み入るさー」
美希「あとダンスも上半身の動きが大き過ぎるの。メリハリつけるためにももっと」
響「ぐぬぬ、絶対追い越してやるさー……!」
美希「最近調子良いね、あっという間にCランクまで登り詰めるなんて。おめでとう響」
響「これまでは練習量がネックだったけど、美希の手伝いで時間が空くようになったからね。ちょっと自主練習すればらこんなもんさー」
美希「ミキのお手伝いが役に立ってるようで何よりなの。次はBランクだけど、すぐに来る?」
響「勿論この勢いのまま一気に! ……って言いたいけど、一回この辺で基礎から確認しようと思ってるんだ」
美希「へえ、響ならそのまま行くって言いそうなのにね」
響「プロデューサー経験も伊達じゃないってことさー。目の前のことばっかりになって、トップアイドルが遠のかないようにしなきゃね」
美希「ふぅん、でもあんまりのんびりしてると、響がBに上がってもミキいないかもよ?」
響「うう、そういえば美希ももうAランク目前……ふ、ふん! すぐに追いつくさー、自分の完璧なプランに狂いはないさー!」
社長「お、やってるね。我那覇君、ランクアップおめでとう!」
響「社長! 自分、プロデューサーもアイドルもきっちりこなしてるぞ! このまま美希と765の二本柱になるかもね!」
社長「うむ、頼もしい限りだ。それはそうと星井君、そろそろラジオ収録の時間じゃないかね?」
美希「あ、ほんとなの。行って来まーすなのー」
社長「……さて、我那覇君。今日は少し話をしに来たんだ」
社長「うむ、本当はもう少し前からこの話はしようと思っていたんだが機会がなくてね。結局きょうまで伸ばしてしまっていた」
響「絶対、どっちか選ばなきゃなの?」
社長「両方きっちりこなせるのはこの辺が限界、いや、もう容量をオーバーしているんじゃないかと思うんだ」
響「……まぁ、正直ちょっと一人じゃ捌き切れない量にはなってるぞ。でも、その分美希やピヨ子に手伝ってもらってる」
社長「実は今度、正式なプロデューサーを雇おうと考えていてね。音無君にはその教育等に回ってもらう予定だ」
響「ってことは、もう自分はプロデューサーしなくていいのか!?」
社長「ん? 予想していたより随分嬉しそうな反応だね」
響「そりゃそうさー、そもそもセルフプロデュースなんてのは売れてて余裕のある人の……はっ、自分結構売れてるぞ!」
社長「そうだね。そして、星井君のプロデューサーを降りればその分余裕は出来るだろう。なので選択肢は実質三つ」
響「……」
社長「一つ、今後の業務をアイドル一本に絞る。二つ、星井君を新人君に任せ、セルフプロデュースする。三つ、星井君のプロデュースを君が、君自身のプロデュースを新人君に任せる」
響「……うん」
社長「星井君を新人君に任せてセルフプロデュースするならば、全てを自分のペースで行える利点がある。多くの仕事を受けるも良し、少ない仕事で質を上げるも良し」
響「……うん」
社長「そして、三つ目。これは私の経験上からなのだが……一度始めたプロデュースは最後までやり遂げたくなる、違うかね?」
響「その通りだと思う。自分、頑張ってプロデュースしてきたのに、簡単にぽっと出の他人に任せたくない」
社長「うむ。しかし君には、君と星井君の両方をプロデュースする余裕はない。どちらかを選ぶなら……」
響「……美希だぞ。これまで自分の下手なプロデュースについてきてくれたんだから、最後はちゃんと責任を持って一花を咲かさせてあげたい」
社長「私が同じ立場なら、同じ意見を述べるだろう……ふぅ、少し長くなってしまったね。答えは一週間以内ならいつでもいい、ゆっくり考えてくれたまえ」
響「う、ん……」
美希「響も春香のクッキーほしいの?」
響「う、うん、ありがと。ところで」
美希「うん」
響「自分がプロデューサー業辞めるって言ったら、どうする? あ、いや! 変な意味じゃなくて! 例えばの話だけど!」
美希「んー、ミキ、きっとびっくりするって思うな」
響「うん、そうだよなって違うさー! そういうことじゃないさー!」
美希「そんなの言われてみないと分からないの。例えばの話なんでしょ?」
響「ま、まあそうなんだけど……あ、レッスンの時間!? 行ってきまーす!」
美希「行ってらっしゃい、なんだか今日の響は慌ただしかったの……なんてね、嘘が下手っぴだよ、響」
美希(そりゃ、ミキは響のプロデュースで二人並んでトップに立ちたいっていうのが本音だけど)
美希(響は優しすぎるの。そんなことミキが言ったら、きっとボロボロになるまで頑張っちゃうの。それじゃ二人でキラキラ出来ないの)
美希(響が自分で考えてそうしたいって言ってくれたなら嬉しいし、二人で、なんて言えないけど)
美希(ミキの勝手な一言で響の大事な気持ちとかをどうこうするのは、ヤ。ミキはまだ響のアイドルだもん、響がP辞めるまでは、決断は響の仕事なの)
美希「……クッキー、あんまり味しないの」
P「はい、よろしくおねがいします」
響「自分、我那覇響さー。アイドルの副業にプロデュースやってるだけだから、そんなに畏まらなくてもいいぞ」
P「そう、ですか? でも、いきなりタメ口は」
響「先輩命令さー、年下にはきちんと相応の態度で接しなさい!」
P「あ、はい! 分かりまし、分か、った! よろしくお願、よろしく、響!」
響「ん、まだ固いけどそんなとこだね。よろしくさー。じゃ、ピヨ子のとこ行って色々習うといいさー」
P「うん、分かった」
響(順応性そこそこ、ルックスPヘッド、手際は……結構良いみたいだな、中々優秀そうだぞ)
響(きっとあの新人君も自分みたいな連絡ミスをして、アイドルとすれ違って、そうやって成長していくんだろうな)
響(オーディションに負けて、反省して、レッスンして、アイドルとミーティングを重ねて……)
響(アイドルとプロデューサー、二人で並んでトップアイドルを目指して……)
響「……ま、最初から答えは決まってたようなもんさー。社長ー!」
響「アイドルの我那覇響はトップアイドル一直線にしろーって言うんだけどね。自分はアイドルよりもプロデューサー歴の方が長いから」
社長「我那覇君、しっかりと考えて選んだ道に反省はあっても後悔はないのだよ」
響「まくとぅそーけーなんくるないさー。そんなの、うちなーじゃ赤ん坊だって知ってるよ」
社長「はっはっは、これは釈迦に説法だったね。では、アイドルの女の子に伝えてきたまえ」
響「美希、すごく怒るかも知れないからその時は社長も美希を止めてよね」
社長「星井君は君が思っているよりも、しっかりと考えているよ。心配はいらない」
響「分かってても保険は欲しいさー」
社長「はっはっは、ごもっともだ。うむ、もしもの時は私と音無君でなんとかしよう」
響「うん、分かってくれたみたいで良かったさー……美希?」
美希「全っ然分かんないの!! ミキだってセルフプロデュース出来るもん! なのに社長と響の二人だけで内緒話して!」
響「み、美希ー? 文句はないんじゃな」
美希「文句じゃないの! ただの独り言の愚痴なの! 響は黙ってて!!」
響「は、はい……」
美希「ミキのプロデュース続けてくれるのはとっても嬉しいの。でも響が犠牲になることないの! こんなのってないの!」
P「犠牲って……まぁそうだけど」
美希「なの! トップアイドル目前で新人プロデュースなんてまたFランク転落コースなの!」
響「いや、そこは自分がフォローするし」
美希「新人なんて失敗する時は失敗するの! 響も初めは連絡ミスしたでしょ!? 大きなオーディションでそんなのやらかしたら目も当てられないの!!」
響「うぎゃー! せっかく先輩風吹かせてるのに威厳がー!」
プロデュースすればいいの!」
響「いや、そこはPの教育も兼ねて自分が」
美希「そんなのミキたちがトップアイドルになるまで後回しで良いの! 響はさっきからPの肩持ちすぎなの! なんなのなの! なんなのなの!」
社長「あー、星井君。少し落ち着いて」
美希「ミキは落ち着いてるの! 社長も響にだけ内緒話するなんておかしいの! アイドルとプロデューサーは二人三脚なの! なんで話にミキも混ぜなかったの!!」
社長「いや、あの時はラジオの収録が」
美希「ならあの時に無理に話す必要なかったはずなの! 見苦しい言い訳はやめるの! それともまだシラを切るつもりなの!?」
社長「ごめんなさい」
響「しゃ、社長……」
美希「もういいの! 響なんて放っておいて勝手にミキはトップアイドルになるから! Aランクも飛び越えたSランクアイドルになって、響が追いつけないのを笑ってやるの!!」
響「ピ、ピヨ子……いない! 誰か美希を止めるさー!」
美希「誰のせいでこうなったと思ってるの! 響はそこに三時間正座! ついでにあの時のクツジョクも晴らすの!!」
響「うぎゃー!」
響「あの、美希さん、足には」
美希「触るに決まってるの!」
響「うぎゃー! P、先輩を助けるさー!」
P「音無さーん、書類のフォルダ分けのことなんですけどー」
響「危うきに近寄らない優秀さが恨めしいさー!」
美希「ほらほら響、ミキを仲間はずれにした罰を受けるの!」
響「今触るのはー! うぎゃー!」
社長「仲良きことは、美しきかな」
響「ボケるには早いさー!!」
響「ん? 美希、もしかして緊張してるの?」
美希「ねえ、響。ミキ、こんなにドキドキするオーディション、初めてだよ」
響「なんくるないさー。ただの武者震いだよ」
美希「で、でもこんなの初めてで」
響「自分とミキ、これまで色んなことを一緒に乗り越えてきたよね。全部が美希を支えてくれるさー」
美希「……あはっ、響の声聞いてたら緊張感がなくなっちゃいそうなの」
響「ただでさえないのに、それは困るぞ。全部なくならない内に行ってくるさー。美希なら絶対、勝てるよ」
美希「……うん、行ってくるね!」
響「……美希、いつのまにか頼もしい背中になってたんだな」
美希「1番、星井美希なの! 絶対、合格してみせるからね!」
美希「ま、このぐらい当然なの!」
響「ま、自分は完璧なプロデューサーだからな!」
美希「たかが二人分のプロデュースでヒィヒィ言ってたのに完璧はないって思うな」
響「それはそれ、これはこれさー! 自分は、美希をプロデュースすることにかけては世界一完璧さー!」
美希「本当にそう思う?」
響「当たり前さー! 自分と張り合えるような天才、そこらにはいないさー!」
美希「ここいるよ?」
響「え」
美希「ここにいるの」
響「え」
美希「ただプロデュースされてるだけだったと思う? 一緒に頑張るって決めた日から、本格的なプロデュースの勉強してたんだよ」
響「……」
美希「ミキ的には、響と同じくらいのクオリティでミキをプロデュース出来るって思うな」
美希「響はお役ごめんなさいなの、レッスンに力入れるなりテレビにいっぱい出るなりすればいいの」
響「美希」
美希「響、早くここまで登っておいで。一番星に笑われるお日様なんてかっこ悪いよ?」
響「ぐす……えへへ、美希! 自分、すぐにトップアイドルになるからね! Pもそろそろ一人で大丈夫そうだし、もう何も遠慮しないさー」
美希「うん」
響「手加減なしの本気の本気、完璧なアイドルがどういうものか教えたげる! 今日これから始まる、我那覇響の伝説さー!!」
「ごめんごめん、色々あってちょっとだけ遅れたさー」
「初めて失敗した時とは逆だね」
「あの時のことは忘れて欲しいぞ……」
「いいよ、今日ここで全力を見せてくれたら許してあげる」
「いいのか? 自分、完璧だから勝ち目ないぞ?」
「こっちも全力で行くの、全力以外じゃ相手にならないって思うな」
「ふふん、絶対に渡さないぞ!」
「あはっ、絶対に渡すわけないの!」
「「トップアイドルの頂点、Sランク!!」」
おわり
大体>>4のせい
おわり
ひびみきもいいね
Entry ⇒ 2012.10.28 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
菫「照が挟まっ照」
照「」ガチャ
照「……」キョロキョロ
照「誰もいない」
照「……」
壁壁 ↓
壁 照←
壁壁 ササッ
壁壁
壁照=3 ギュム
壁壁
照「……」
照「いい……」
菫「ん、誰もいないか」
菫「よっこらせと」
?「………………すみれー……」
菫「ひいっ!? おばけぇ!?」
?「こっち……」
菫「て、照の声? おどかすな……って」
照「助けて」ハサマッテル
菫「……」
照「……」
菫「は?」
照「助けて」
照「……」
菫「また?」
照「はい」
菫「はいじゃないが」
照「うん」
菫「そんなに好きなの?」
照「うん」
菫「挟まるのが?」
照「菫もやる?」
菫「やらん!!」
照「いいのに」
照「はい」
菫「お前何度目だよ、何でそこ入るんだよ、出られないの分かってて何で挟まるんだよ」
照「ごめん」
菫「はあ……全く、私が来たから良かったものの」
照「ところで話は変わるけど」
菫「話変えちゃっていいのその状態で!?」
照「『よっこらせ』はオバサンくさいと思う」
菫「……」
照「……」
菫「写メ」パシャパシャ
照「ごめんなさい消して」
照「お願い」
菫「ぬっ!」グイ
照「……」
菫「ぬぬぬ」グイグイ
照「……」
菫「抜けないな」
照「痛かっただけ」
菫「……」
照「すいません」
菫「前はどうやって抜いたんだったか……」
照「確か」
照「スポッ」
照「ってやった」
菫「お前はときどき物凄くヘタクソな説明をするな」
照「ギュルギュルの風圧でスポッっていけた」
菫「じゃあそれ試してみたらどうだ」
照「それは無理」
菫「何で」
壁壁
壁↓ ※矢印は照の向き
壁壁
照「こんな感じに挟まってたから、右腕ギュルギュルで抜けられた」
菫「ふむ」
照「今回は」
壁壁
壁↑
壁壁
照「こうなってるから、右腕ギュルギュルしたらもっと挟まる」
菫「確かに」
照「分かりやすかった?」
菫「まあ……うん……」
照「よかった」
照「……」
菫「自力じゃどうしても無理か?」
照「ガッチリホールドされてる。パーフェクト」
菫「何で挟まるんだよホントに……」
照「こんなに素晴らしい隙間はそうそうない」
菫「じゃあ一生挟まってようか」
照「それは困る。具体例を挙げるとお風呂が気持ち良くても一生お風呂に浸かってたらホヤホヤになっちゃうのと同じ」
菫「はあ……分かったよ……」
照「ありがとう」
照「ぜんぶ」
菫「真面目に答えろ」
照「真面目」
菫「もういい私が確かめる。この辺か?」サワッ
照「……」
菫「それともこっちか」サワサワ
照「……ンッ」
菫「ならばここか」サワサワサワ
照「…ア…ン……」ハァハァ
菫「……照」
照「なに」ハァハァ
菫「くすぐったいならくすぐったいって言いなさい、悪いことしてるみたいだから」
照「分かった」
照「んっ……ぅ……」
10分後
菫「……分かったぞ、照」
照「な、なに、が……」ハァハァ
菫「これは無理だ」
照「えっ」
菫「他の人に助けてもらおう」
照「や……やだ」
菫「やだってお前なぁ」
菫「照……」
照「知られたら『照が挟まっ照w』とか言われていじめられる」
菫「いや、それはないと思うぞ……」
照「くすぐったいのも、菫の手だから我慢できる」
菫「……」
照「こんな姿……他のみんなに見せたくない」
菫「……全く、しょうがないな」
照「菫……」
菫「誰か来る前に何とかするぞ」
照「うん」
小学生からお年寄りまで多くの人に親しまれている物理法則
少ない力でポッキーを折るなど実生活でも様々な場面で活躍している
照「釘を抜くのもてこの原理」
菫「なるほど。で、そのてこの原理でどうやって抜け出すんだ?」
照「……」
菫「考えてから発言しような」
照「はい」
動いている物体に掛かる摩擦力で、一般に静止摩擦力より小さい
静止しているニートよりも運動しているリア充の方が周囲との摩擦は少ないのである
菫「つまり、動いている状態を保てば抜けられる可能性はある」
照「動き続ける……」
菫「こっち側に力入れながら、こう、ブルブル細かく震えるとか」
照「ブルブル?」
菫「そう」
照「ブルブル……」
照「ブルブル……ブルブル……ブ、ブル、ブル」
照「ブルブルブルブr」
菫「照ストップだそれ以上はなんかやばい気がする!!」
なにが逆転の発想だ
コロンブスの卵って、とどのつまり力尽くだろ!?
菫「ふんぬッ!」グググ
照「ううう」
菫「ぬぬぬ」
照「ううう」
菫「ハァハァ……駄目か」
照「ダメ」
菫「くっ……今度は腰から引っ張るぞ! 照、お腹引っ込めろ!」
照「」ペコッ
照「大丈夫?」
菫「何とかいけそ……」
あっわい
あっわい
照「!」
菫「これは……淡の足音だ!」
照「あ、淡に見つかっちゃう」
菫「早く抜け出さないと! 照、お前も踏ん張れ!」グググ
照「んあっ……! す、すみ、れっ……!」
淡「いまさいこーのーきーせきに……ん?」
ハヤクシロ テル! アワイガ……
ダメッ スミレッ ン、ァ……
淡「……」
淡「のりこめーーーーー!!」ガチャ
菫「どわあ!」
照「わー」
ドンガラガッシャーン
淡「!?」
菫「いてて……」
照「抜けた」
淡「!! て、テルとスミレが……!!」
菫「え?」
淡「ハァハァいいながら乱れた制服でタイメンザイしてる!!」
菫「ちょっ」
照「リンシャンパイ?」
淡「タイメンザイだよね!? これタイメンザイだよね!? 二人でタイメンザイして何してたの!?」
淡「勢いでタイメンザイしてたの!?」
菫「だああ、対面座位はもう分かったから!」
照「……菫、ありがと」
菫「これに懲りたらもう二度と挟まるなよ」
照「うん」
淡「なになにー? 教えてよー!」
後日
菫「……で」
照「……」
菫「何をしているんだ、照?」
照「雀卓の下も、結構いい」
菫「自分の家でやれえええええ!!」
カン!
↓
狭いとことか好きそう
↓
隙間に挟まってそう
↓
いまここ
でした
乙乙
Entry ⇒ 2012.10.28 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
アムロ「ガンダム女子会……?」
シャア「噂によると、ガンダムの女子達が集まって色々やっているらしい」
ブライト「まんまじゃないか」
アムロ「……女子って呼べる人種がどれだけいるんだか」
シャア「だからだアムロ、こっそり見に行かないか?その貴重な女子会とやらを!」
アムロ・ブライト「………」
シャア「……なにか、言いたい事がありそうな目をしているな」
アムロ・ブライト「……別に」
シャア「ここが女子会の会場だという」
アムロ「……スイーツバイキングだと」
ブライト「いかにもそれらしいな」
シャア「入るぞ」
アムロ「な、なに!?」
ブライト「こ、こんな場所に入るのか!恥ずかしい!!」
シャア「その点に置いては心配ない。もうすぐ届く頃か」
アムロ・ブライト「届く?」
「お待たせしましたー!クワトロたいいー!!」
シャア「来たか」
アムロ「なぁ…………!?」
カミーユ「頼まれていたものです。ご一緒しても?」
シャア「ああ。準備万端だな」
アムロ「か、か、カミーユ!」
ブライト「ど……どうしたんだ、お前のその格好は………!」
カミーユ「え、女装ですけど」
アムロ・ブライト「 」
カミーユ「三人の分もありますよ」
アムロ「え、え、え」
ブライト「な、なに、私も着るのか?」
シャア「ハハハこれなら目立つまい」
アムロ・ブライト(……逆に目立ちまくりだよ)
カミーユ「お似合いですよ三人とも」
クワ子「あら、そうかしら」
アム美「………」
ブラ江「………」
アムロ(………若干セイラさんに似ているのがムカつく)
クワ子「ウフフ、さすがブライト艦長、ご婦人にそっくりだな」
ブラ江「……貴様はミライを貶しているのかしら」
アムロ(何気にノリノリなんだなブライト……)
アム美「そうだ、そう言えばカミーユは名前を変えないんだな」
カミーユ「元々女の名前ですから」
アムロ・ブライト・シャア(強くなったな……カミーユ………)
クワ子「大丈夫だ上手くやる……私が下手に立ち回ったことなどないだろう」
アム美「下手に立ち回ったことしかないだろう」
カランカラン
店員「いらっしゃいま」
アム美・ブラ江「………」
カミーユ「キャハッ☆高校生1人大人3人でーす☆」
クワ子「ウフフ!窓側の広い席にしてねん☆」
店員「………ハイ」
ヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソヒソ
アムロ・ブライト(死にたい)
アム美「………」
クワ子「おいアムロ美!なんだそのデザートのセレクトは!葬式か!」
カミーユ「これだから素人はw」
アム美「……お前たち、さては初犯じゃないな」
クワ子「そんなことよりおかしいな。情報によればもう……」ムシャムシャ
ブラ江「……」
カミーユ「……あっ、来ましたよ」ムシャムシャ
カランカラン
店員「いらっしゃいませ」
ハマーン「予約していたカーンだが」
クワ子「帰る」
クワ子「話が違う!あれのどこが女子なんだ!ふざけるな!!」バンッ!
アム美「い、いや、それにしてもお前……」
ざわざわざわざわざわざわざわざわ
クワ子「げっ……」
カミーユ「…目立ってますよ」
ハマーン「………見た顔だな」
アム美「ほーらな」
クワ子「…………」
ハマーン「……」ジーッ
ハマーン「そうだ!お前は!」
クワ子(終わった)
クワ子「えっ」
ハマーン「そちらはお友達で?」
クワ子「え……まあ……」
アム美「……アム美」
ブラ江「ブラ江……よ」
カミーユ「カミーユです」
ハマーン「……カミーユ?」
クワ子「あの……カミーユの同名の妹だ」
ハマーン「ほぅ……」
カミーユ「はい。兄の母の旦那の子供の父親の妻の夫の長男のパパのママの孫の妹が私です」
ハマーン「………」
ハマーン「……確かにカミーユの妹だな」
カミーユ「はい」
クワ子「えっ」
カミーユ「それはいいですね!クワトロ大尉……のお姉さん!」
クワ子「えっ、ちょ……」
ハマーン「決まりだな、どうぞこちらへ。おい店員さん!席を用意しろ!」
クワ子「か、カミーユ!」
カミーユ「だって面白そうじゃないですか」
アム美「それもそうだな」
ブラ江「私も超面白そうだと思うわよ」
クワ子「貴様ら………!ここぞとばかりに!」
クワ子「しかしだな……ハマーンがこんなにまで厚かましい女だとは想像も………」
カミーユ「何もくるのがハマーンだけなわけじゃないですよ。もしかしたら大尉の好みの女子とお近づきに」
クワ子「いくわよ!!みんな!!!!!!」スタッ
アムロ(そんな姿でお近づきになってどうするんだよ、シャア……)
ハマーン「……妹君」モグモグ
クワ子「なんd……なにかしら」
ハマーン「あー……そのだな………」
クワ子「だからなんだ」
ハマーン「……シャアは最近どうしているか」
クワ子「なんでそんな事を気にする必要があるのd……かしら」
ハマーン「それは……」モグモグ
ハマーン「………すまん聞かなかったことにしてくれ」モグモグモグモグ
シャア(……なら初めから聞くなハマーン)
アムロ・ブライト・カミーユ(あー……………)
店員「いらっしゃいませー」
「フフフ……なんだか安っぽい店だねぇ……」パシッパシッ
店員「あの……ご予約のお客様で?」
「案内しとくれ」
クワ子「女子が来た!!!!」ガタッ!!
アムロ(シャア……)
ハマーン「……来たか」
クワ子「………」ソワソワ
「久しぶりだねぇ。ハマーン・カーン」
「いいや……」
シーマ「ヤッホーさね!ハマーンちゃーん!!」
ハマーン「シーマちゃーん!!私も超会いたかったぞー☆」
キャッキャッキャッキャッキャッ
アム美「 」
ブラ江「 」
クワ子「 」
カミーユ「 」
シーマ「そうさね。あたしゃ、まだまだ心は清純だからね」
クワ子「アワワワワワワ」
シーマ「フフフ、まさかこの宇宙の蜻蛉シーマ・ガラハウが成虫となって宇宙各地のスイーツバイキングを飛び回っているとは誰も思いもよらないだろうよ……」
ハマーン「やだシーマちゃんカーワーイーイー」
シーマ「アーリーガートー」
シーマ・ハマーン「アハハハハハハ!!!!!!」
クワ子「女子ジャナイ……女子ジャナイ………女子ジャナイ………」
カミーユ「大尉が白目になっちゃってますよ……」
アム美「俺も脳波レベルが落ちそうだ……」
ブラ江「なんてこった……コレに比べりゃ我々の女装なんてかわいいもんだ………」
アム美「そう言えばデラーズ紛争で死んだんだったな」
ブラ江「で、ではコイツは亡霊……」
シーマ「フフフ、そうさね。アタシは亡霊……」
「オイコラそこの白目なし!シーマ様が幽霊なわけないじゃないの!!!!!!」
一同「!?」
子ッセル「シーマ様はね神経も根性も図太いのよ!!!!伊達に40年も生きてないのよ!!なめんじゃないわよ!!!!」
シーマ「女子会についてくんなっていったろ!このウスラトンカチ!!!!!!「」」パシィッ!
子ッセル「いやーん……///」
アムロ・カミーユ・ブライト(うわあ………)
子ッセル「ごめんなさい、あたしシーマ様が心配で……」
シーマ「気持ち悪いんだよ!お節介な男はキライさね!!」
子ッセル「はああ…叱られちゃった……///」
クワ子「はぁ………はぁ………」
カミーユ「大尉!しっかりしてください!大尉!」
ハマーン「気にしないぞシーマちゃん。実はね私の部下もロクなものでは……」
マシュ美「やーね、ゴト江。シーマ艦隊ったら下品ねー」クスクス
ゴト江「流石は育ちがわるいですよねマシュ美さま。いやだわー」クスクス
ハマーン「ぞ…俗物……………」フルフル
シーマ・ハマーン「貴様ら出ていけーーーー!!!!!!」
コッセル(そうだな……)
マシュマー「ハマーン様………ハマーン様………」ペロペロ
コッセル「シーマ様………シーマ様…………」ペロペロ
ちなみに両方ともクワ子が使用したフォークである
カランカラン
クワ子「女子が来た!!!!!!」ガタッ
アム美「……お前さ、いい加減さ」
クワ子「次こそは……次こそは……」フルフル
「待たせたな」
クワ子「!」ガタッ!
「フフフ……」
カミーユ「え、誰ですアレ」
シャア「 」
アム美「カツラがズレたぞ!シャア!」
ハマーン「キシリア様……」
シーマ「……ご機嫌麗しく」
キシリア「ああ。久々だな、ハマーンにシーマ」
ハマーン・シーマ「はっ……」
キシリア「いつも通りで構わん」
ハマーン・シーマ・キシリア「キャー!おひさーーー!」
えらく後ろ向きな女子会メンバーが勢揃いした瞬間である
カミーユ「完全に白くなってますね……」
シーマ「またふけたー?キシリアちゃんw」
キシリア「シーマちゃんほどではないぞーw」
ハマーン「シーマちゃんもう40だもんねw」
シーマ「まだ30代だもんw」
ハマーン・キシリア「キャー!」
キャハハハハハハハ!!!!
アム美「………なんだろう、コレ」
カミーユ「………完全に見ちゃいけないものをみちゃいましたね僕ら」
アム美「ちょ!お前!落ち着け!」
カミーユ「バレたら多分僕たち弱味握られるどころか皆殺しですよ!」
キシリア「……ん?こいつらは」
ハマーン「シャアの妹と愉快な仲間達です」
キシリア「ふぅん……アルテイシアお嬢ちゃんね」
クワ子「………ドウモ」
キシリア「………」ジーッ
クワ子「…………」
アム美「ああ………」
キシリア「でさ、シーマちゃんって彼氏出来たのーw?」
シーマ「やだ、今じゃスイーツが恋人さねw」
ハマーン「シーマちゃんカーワーイーイーw」
クワ子「……えっ」
キシリア「やだwwくっさい毒ガスまきまくりwwwww」
シーマ「ちょ!やーめーてーwwwwwwwwwwwサイド3にコロニーぶつけちゃうぞwwwwwww」
キシリア「ジーク・ジオンwwwwwwwwww」
シーマ「やーだwwキシリアちゃん意地悪wwwwww」
キャハハハハハハハ!!キャハハハハハハハ!!
クワ子「………」
カミーユ「なんだか大尉のこと、眼中にもなさそうですね。バレなくて良かったじゃないですか」
クワ子「………ソウダナ」
アム美「……なんでちょっと泣きそうなんだよお前」
アム美「ブライト、お前は素に戻ってるぞ」
ブラ江「ウフフ、いけない、いけない。家じゃふりかけご飯だものね」
カミーユ「……大佐なのに貧乏なんですか」
ブラ江「………子供の塾にスイミング、ピアノ、そろばんに習字、バレエにサッカー、スケートにヒップホップ」
ブラ江「ミライのヨガ教室にジム通い、手芸教室にお茶にお花。これらの月謝にいくらかかるとおもう?」
カミーユ「……ご愁傷様です」
アム美「……居辛いというかな、なんだろうな……この気持ちは」
カミーユ「わかります。僕にも…なんだか胸が……チクチクする」
アム美「なんだこの感情の正体は………」
ハマーン「キシリアちゃんこそホントはお兄ちゃん大好きで行き遅れたくせにーw」
キシリア「ち、ちがうし!」
シーマ「キャーwwwwwwwwww」
キシリア「ハマーンちゃんこそ、好きな人いないのか?」
ハマーン「えっ」
シーマ「あいつかwwwwwwあいつなんだよねwwwwwww」
ハマーン「や、やめてよ!マジやーめーてー!」
アム美「………そうか」
アムロ(こいつら………ひどく無理をしているんだ)
アムロ(まるで普通の……普通の女の子を………こいつらは無理をして…………)
キャハハハハハハハ!!キャハハハハハハハ!!キャハハハハハハハ!!
アムロ(彼女達の部下が『心配』だと言っていた意味が今なら理解できる)
キシリア「あいつってだーれwwwwwwww」
シーマ「シャ………」
ハマーン「やだwwwwwwwwマジやーめーてーwwwwwwww」
アムロ(………普通の女の子に自分は決してなりきれないことに、いつかは気がついてしまうからな)
クワ子「なんか期待ハズレも甚だしい………もう帰る」
アム美「そうだな。俺もそうしよう」
カミーユ「………僕もそうします」
アム美「ブライト……いくぞ………」
カミーユ「というわけで僕達はおいとまします」
ハマーン「もう帰ってしまうのか」
ブラ江「そうよもうちょっといましょうよー」ムシャムシャ
シーマ「ブラ江ちゃんたべっぷり最高wwwwwwwwww」
キシリア「キャーwwwwwwww」
ブラ江「ウフフwwwwwww」
アム美「馴染むなよ………」
なかなか帰ることが出来ぬまま2時間が経った
ハマーン「ぞくぶつー!」プギャー
シーマ「キャー!そのポーズカーワーイーイー」
ブラ江「シーマちゃんのえくぼもカーワーイーイー」
シーマ「ヤダwwwwwwwこれシワさねwwwwwwww」
ハマーン・キシリア・ブラ江「キャー!!」
アム美「………」
カミーユ「………」
クワ子「………」
アム美「19の時から働きっぱなしだからな……」
クワ子「カエリタイ……カエリタイ……カエリタイ……カエリタイ……カエリタイ……」
カミーユ「こっちも相当なストレスかかってますけどね」
「プルプルプルプルー!」
クワ子「!!」ピキーン!!
アム美「なに、どうした……シャア………」
シーマ「……なにさね、急にあっちのテーブルが騒がしくなったねぇ」
ハマーン「本当だな。騒がしい」チッ
キシリア「文句を言ってやろうか!!」バンッ!
プル「えっと、それじゃあガンダム女子会をはじめるよ!プルプルー!」
ルー・エル「いえーい!」
ファ「アタシなんかが来てよかったのかしら……」
プルツー「遠慮するなよ。なあトゥエルブ」
「………」
プルツー「あれ、トゥエルブは」
キッカ「マリーダさんなら一目散にオードリーさんと一緒に『バイキングは数!』とか良いながら取りに行きましたよ」
プルツー「はぁ……」
リィナ「リラックスしてね。みんな良い人ばっかりだから」
オードリー「おいひいわへ!まひーら」もぐもぐ
マリーダ「ほうれふ。おいひいれすお」もぐもぐ
プルツー「……お前はリラックスしすぎだトゥエルブ」
プル「リィナ!一緒にとりにいこう!」
リィナ「よーし競争よ!」
キャッキャッキャッキャッキャッキャッキャッキャッ
クワ子「これだ!これなんだ!これなのだよ!」
アム美「シャア………」
ハマーン「………」
シーマ「………」
キシリア「………」
ハマーン「………っ」
キシリア「どうしたハマーン……」
ハマーン「うぐっ……ぅぅっ……うっ……」
シーマ「ちょっと情けないね。一国の摂政が…あれ、なんかアタシも……ぅっうっうぅっ……」
キシリア「や、やめい……二人とも………ウグッ………うっ………」
ハマーン「ぅぅっ……ぅぅっ…ふぇっ………」ポロポロ
シーマ「ぅぅっ……ぅぅっ…ふゎっ…」ポロポロポロポロ
キシリア「ぅぅっ……ぉぅっ……ぉぅっ……」ポロポロ
ハマーン・シーマ・キシリア「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!!」
アムロ「ああ………」
ハマーン「………」ごしっ
ハマーン「興醒めだ!帰る!」
シーマ「ふんっ!不愉快な会だった!」ごしっ
キシリア「もう二度と催すものか!」ごしっ
ハマーン「仕方ないから、少しばかり下々の気持ちを理解してやろうと努力してみたが」
ハマーン「我々が愚民同様に振る舞うなどハリボテにしか過ぎぬということだ!」
シーマ「女子会なんてアホらしい!アタシ達は老け役の汚れ役がお似合いってこったね!」
キシリア「もうピンクのマスクなんてするものか!」バシッ
シャア(本当だな……気がつかなかった……)
アムロ(一番張り切ってたのかコイツ………)
一同「!?」
アム美「急にどうした……お前」
ハマーン「慰めはいい!ブラ江ちゃん!」
シーマ「そうさねブラ江ちゃん!」
キシリア「ブラ江ちゃん!」
チェーミン(隣のあの人ブラ江ですって。なんて下品な名前……)
ブラ江「私は…私の正体は……本当は………」バッ
ブライト「ブライト・ノアだ!」
ハマーン・キシリア・シーマ「!?」
チェーミン「………えっ」
ハマーン「き……貴様!破廉恥な!!」
ブライト「私は男だ!お前たち同様女子ではない!しかし!」
ブライト「……貴様達とガールズトークを繰り広げるうちに……なんか、こう……自分がだんだん女の子になっていく事を感じた」
アム美「ぶ、ブライト……?」
ブライト「………形からと言うが……今は我々は偽物の女子かもしれない!しかし!」
ブライト「重要なのは、普通の女の子になりたい、その気持ちではないか?」
ハマーン・シーマ・キシリア「…………」
アム美「え、なんだコレは」
カミーユ「感動しました艦長!!!!!!!!!!!」ガタッ
アム美「………カミーユ?」
カミーユ「僕はカミーユ!!!!男です!!!!!!」
ファ「えっ」
カミーユ「僕も……本当は女の子になりたかったのかもしれない。その裏返しで……女っていわれてイライラしていたのかもしれない」
カミーユ「……でも!なんていうかあなた達の会話にウキウキしていた僕がいるんです」
ハマーン「カミーユ・ビダン……やはり……」
カミーユ「ハマーン、今なら僕はあなたと分かりあえるかもしれない!」
ハマーン「………嬉しいよ、少年」
ファ「えっ」
セイラ「いいのよ。わたしもひとりじゃこんなところ来られないから……」
セイラ「それにしても騒がしいわねぇ……隣が」
シャア「私はかつてシャア・アズナブルと呼ばれた男である!!!!!」ガタッ
アムロ「まさかシャア!お前も!!!!」
オードリー・セイラ「えっ」
シャア「さっき……悲しみを覚えた事も……キシリア様達に混ざりたかった……その思いなのだ……アムロ………」
アムロ「えっ」
シャア「ハマーン!女子としてなら私は君と分かり合えるかもしれない!」ヒシッ
ハマーン「…………シャア大佐!」ヒシッ
シャア「キシリア様とも……」ヒシッ
キシリア「キャスバル坊や!!」ヒシッ
アムロ「………何だコレ」
アムロ「い……いたのかよ……」
ハヤ江「ごめんなさい実はあたしも……」ガタッ
キッカ「お父さん………」
ジェリ子「あたしも!」ガタッ
デラ美「あたしも!」ガタッ
ガト江「デラ美閣下がそうなら私も!」ガタッ
デラ美・ガト江「あの時はごめんねシーマちゃん!!!!」
シーマ「気にしてないよ!!!!!あたしは嬉しいさね!!!!!!」
キシリア「キャーお兄ちゃん!!!!!!!!」
ジュド子「あたしもアレから病みつきになっちゃって……///」ガタッ
イー乃「ぼくも………///」
私も私も私も私も私も私も私も俺も僕も
アムロ「……」
アムロ「あたしも?」
シャア「これが…人類の……革新の光………!!」
カミーユ「ニュータイプって…こういうことだったんですね………」
アムロ「ああ………人は分かり合える!」
俺が………俺たちが
女子《ニュータイプ》だ!!!!!!!!!!
本物の女子一同「ふぇぇ………」ガクガク
色んな意味でおしまい
ハマーン様ばんざああああああああい!!!!!!!!
シーマ様ばんざあああああああああい!!!!!!!!!!!!
でもハマーン様は普通に女子だと思うの!
v
Entry ⇒ 2012.10.27 | Category ⇒ ガンダムSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
モバP「綺麗になった猫を家で飼うことになった」
ガチャッ
P「今日も一日がんばりまっしょい……て」
P「誰もおらんのかな、ちひろさーん?」
P「んー、おらん……お? 書置きが」カサカサ
『おはようございますプロデューサーさん
私はこれから巴ちゃんのご両親に近況報告をしに
広島へ行ってきますね。それとATMにも寄ってから帰ります。
プロデューサーさんには今日みくちゃんのご両親に近況報告をしに
行って頂いていいでしょうか? 先方へはご連絡済みなので
みくちゃんを連れて行ってください ちひろ』
P「ふむ、みくのご両親に挨拶か……ってか何でわざわざ広島でATMなんだろうか」
P「まぁとりあえずみくに連絡入れてみっか、今の時間なら寮に居るだろう」
―――――その頃のちひろポン―――――――
ちひろ「うふふ……人間って凄いですよねぇ、中身がお金なんですもの……お値段つきますねぇこれは」
―――――――――――――――――――――
みく『はいにゃーん、Pチャンどうかしたにゃん?』
P「おーみく、今日はみくOFFだったよな? ちょっと今日開いてるか?」
みく『にゃにゃっ? デートのお誘いかにゃ?』
P「んな訳あるか。みくのご両親に近況報告へ行こうと思っててな、そっちも連れていきたいんだ」
みく『にゃるほどー。今日は大丈夫にゃん、まずは事務所へ行けばいいのかにゃん?』
P「いや、俺が車出して出がけに拾っていくから、寮でそのまま待っててくれ」
みく『了解にゃー。お支度だけしておくにゃん』
P「あいよー、んじゃXX時ぐらいに門の前でな」ピッ
P「んじゃこっちも支度して行くかいね」
―――――――――――――
―――――――――――
――――――――
P「到着ー。あっこにおるな……おーい」パッパー
!……テテテッ…ガチャッ、バタン
P「あいよ、お待たせさん」
みく「大丈夫にゃん、時間よりちょっと早いくらいだったし待ってないにゃん」
みく「それじゃあ、れっつにゃー!」
P「しゅっぱつしんこーっと」
ブロロロロロロ……――――――
P「みくのご両親に挨拶すんのもちょっと久しぶりってとこだな」
みく「いつもはちひろにゃんが連れていってくれてたからにゃー。今日は違うの?」
P「ちひろさんは今日は巴んとこのご両親に近況報告へ広島。だそうだ」
P「んで一日おらんぽいので俺が頼まれたってことだ」
みく「にゃるほど、でも今日だと多分……えーっとお父さんはお仕事で居ないかもにゃ」
P「ん、そうなると母上殿に挨拶になるか。それでいいんかな、話通してるってちひろさん言ってたけど」
P「そか…まぁとりあえず向かうとするか」
――――――――――
―――――――――
――――――――
~みく宅前~
ピンポーン
P「どうもー。モバプロのPと申しますが」
インターホン「あら! 今日はお越し頂いてお手数お掛け致しますー。ささ、上がってください~」
P「はい、それではお邪魔致します」
ガチャッ
P「どうもどうもご丁寧に。いつもお世話になっております」
母「いえいえこちらこそ、家の娘がお世話になっておりますー、どうぞどうぞ上がって居間の方へ」
みく「たっだいまにゃーん、お母さん元気してたー?」
母「あら、おかえりなさいみくちゃん、お母さんは大丈夫よ。そっちも元気そうでよかったわ」
みく「うんっ」
P「ええと、それで今日伺ったのはみくさんの近況についてですが―――――」
アレヤコレヤト……モンダイアリマセン……トテモヨイジョウタイデス……
P「――と、まあここ最近も頑張っている所であります」
母「そうですか。こうやってたまに顔も見せてくれますし、こちらとしては安心してこのままお願いしたいと思っております」
母「ところで……話は変わるのですが」
P「? 何かおありでしょうか」
母「仕事と周囲の人間関係は良好とのお話でしたが……その、Pさんとの間はどうなのでしょうか?」
P「ええと……自分との間、ですか?」
P「どう仰ればよろしいでしょうか……うーん……信頼関係は十分に築けていると自分では思っておりますが」
母「うーん……そういう事ではなくてですね……ちょっとPさんこのままお待ちになってくださいね。ちょっとみくちゃんー」
みく「はいにゃー、何かにゃ?」
母「ちょーっとこっちいらっしゃい?」
みく「?」
母「ね、みくちゃん。Pさんとはどこまでいったの?」
みく「にゃっ!? ど、どこまでって……」
母「おかあさんを甘くみちゃ駄目よー? 何でもお見通しなんだから。Pさんの事気になってるでしょ?」
みく「う”っ……にゃ、にゃんのことかにゃー?」
母「とぼけても無駄よ? みくちゃんがPさんの事じーっと見続けてたの分かるんだから」
みく「…………」
みく「え、えっと……な、なんにもないよ?」
母「ふーん、そっか。まだ何もないのね?」
みく「う、うん……」
母「……わかったわ。お母さんが一肌脱いじゃう、みくちゃんは安心して任せて!」エヘン
みく「に”ゃっ!? 何をするつもりなのかにゃ!?」
母「いいからいいから。じゃあPさんの所に戻りましょう?」
・・・……―――――――――
母「ごめんなさいねぇお待たせしちゃって……さ、みくちゃんそっちにお座りなさい」
P「あ、いえいえお気になさらずに」
母「あぁそれならもう大丈夫ですよ。それよりも少しご相談したい事があるのですけど、よろしいかしら?」
P「……? どういった内容でしょうか」
母「ええ、その……」
P「?」
母「家の娘をPさんの家で預かって頂けないでしょうか?」
みく・P「「ぶっ!?」」
みく「お、おかーさん!?」
母「みくちゃんはちょっと黙ってましょうねー?」ニコッ
みく「に”ゃっ…………」
P「と、突然何を仰るかと思えば……今はちゃんと寮に入って生活していますが……」
母「娘のアイドル生活を支えるにもお金がちょっと足りなくて」
母「寮の月賦も嵩んで大変なんですよ~」
P「ええと……それならばご実家から通わせるようにすれば良いのでは……?」
母「それも勿論考えたんですが、寮に入ってそのあと」
母「娘の生活できるスペースを削ってしまっちゃって、今更戻せなくて困ってしまってるんです……」
母「ですから! いっそのこと安心してお任せできるPさんのお家にご厄介できればと」
P「は、はぁ……ですが仮にも男一人の家に住まわせるというのはさすがに……」
母「それは勿論! 大切な娘を預けるなんてこんな事、信頼してお任せできるのは」
母「Pさんが今まで娘の面倒をとても良く見て頂いたからなんですよ?」
母「是非お願い致しますね~」ニコッ
デスガ……アーデモナイコーデモナイ……――――――
みく(にゃ……Pチャンすごく必死に食い下がってるにゃ……)
みく(Pチャンはみくと一緒に住みたくないのかにゃ……)シュン
母「前向きに、が抜けてますよ~。よい返事しか耳に入りませんので~」ニコニコ
~~~~~~~
バタンッ
P「はぁ……何故こうなった」
みく「にゃー……」
P「みくは何も聞いとらんのか」
みく「一緒にびっくりしてたにゃ、初ネコ耳にゃ……」
P「とにかく……ちょっと寮の皆にも話してみよう、いい案があるかもしれん」
みく「…………」
――――――――――
―――――――――
――――――――
女子寮・正門前
P「よし、着いたっと」バタン
みく「…………」パタン
サッサッサ……サッサッサ……
P「お。玄関前の掃除か、ご苦労様だな。藍子」
藍子「あ、おはようございますプロデューサーさん。今日はどうかしました?」サッサッサ……
P「あぁ、ちょっとな。ちょっと中に入って何人かと話をしたくてな」
藍子「え”っ……」ピタッ
P「どうした? 俺なんかまずい事言ったか?」
藍子「あっ、いえ。ちょ、ちょーっとだけ。プロデューサーさんは」
藍子「ここで待っててもらっていいですか?」
P「ん? まぁ構わんけども……何かあったか?」
藍子「い、いえそういうんじゃないですけど……と、とにかく待っててください!」タタタタッ!
バタンッ!
タイヘンヨー! プロデューサーサンガハイッテクルッテ!! エー!!! イソイデカタヅケナイト!!! バタバタバタッ!
P「…………何があった」
――教訓:女の園を期待してはいけない――
P「なんか息上がってっけど……大丈夫か?」
藍子「は、はい私は大丈夫ですっ」
P「ん……まあ談話室を使わさせてもらうぞ、それとちょっと木場さん呼んできてくれるかな」
P「あと何人か来れそうな奴もおったら頼む」
――談話室――
P「うっし、みくもちょっとそこに座りな。あとホレ、クッション」
みく「にゃ……」ポスン
藍子「はい、プロデューサーさんお茶をどうぞ」コトッ
P「おおすまん、どれぐらい人が来てくれそうかな」
藍子「えっと……私はこれから用があるので難しいですけど……」
藍子「木場さんと、桐野さんと、中野さんと、十時さんと、智絵里ちゃんですね」
P「ふむ……まぁ一気に皆に話してもアレだし丁度いいかもな」
藍子「それじゃあ私はこれで失礼しますね」ペコリ
P「あいあい、また仕事んときよろしくな~」
桐野アヤ(19):格闘技(観戦)アイドル
中野有香(18):空手アイドル
十時愛梨(18):イフクハナゲステルモノ
緒方智絵里(16):チョップチョッパーチョッペスト
P「急にすまんな集まってもらって、ちと相談したい事があってな」
愛梨「一体どうしたんですか? ……因みにここ暑くないですか?」ヌg
P「はえーよ脱ぐな」
木場「ふむ、用件があって呼んだんだろう。恐らく呼ばれていないがここに居る」
木場「前川君の事に関係するのかな」
みく「…………」
P「ええ、何人かに相談したいって事と」
P「木場さんが寮でまとめ役してもらってるんで集まってもらった、と」
木場「寮に関係する事だな、言ってみるといい」
P「智絵里はみくと仲良く遊んだりしてたよな、ちょっとみくの事だから」
P「聞いてもらった方がいいかもしらん」
桐野「まぁ知恵欲しいってんならアタイもできる事ならするけど」
有香「押忍! 他ならぬプロデューサーの為なら何だってやります!」
P「おう、助かる……んで率直に言うと」
P「みくを俺の家で預かって欲しいと親御さんから頼まれた」
ビシッ……
桐野・有香・愛梨・智絵里「「「「ええええっっっ!!??」」」」
P「あぁ、うん……やっぱ驚くわな」
P「あちらさんの都合で寮に預ける事が厳しくなってきた」
P「且つ実家から通わせる事も難しい」
P「んじゃ俺の家ならいいんじゃね? って思ったらしくお願いされた」
愛梨「ど、同棲するときってどこで脱いだらいいんだろう……」
有香「いつでも稽古をつけてもらえる……!」
桐野「別に住むとこ無くなんならテント張ればいいんじゃ……」
P「相談相手として間違えた気がする」
木場「ふむ、それで君の家に住まわせる以外の手段はあるか模索したいと」
木場「そういう事だな?」
P「うぃ、仮に寮を出る事になるなら寮のまとめ役をやってもらってる木場さんにも」
P「話をしないとならんので、このまま相談に乗ってもらったと」
木場「しかし難しいね、寮の部屋は一人用だけだから相部屋なんて無理だし」
木場「他のアイドル達の実家組に頼るとなると親御さんが反対されそうだな」
P「えぇ……ひたすら『Pさんのご自宅で面倒を見て下さい』って言われて」
木場「…………」チラッ
みく「…………」
木場「……ふむ、前川君はどう思ってるのかな?」
木場「思うままに応えていいんだぞ、何よりこれは君自身の事なんだからね」
みく「……みくは……Pチャンと一緒に住むの、嫌じゃないにゃ……」ギュッ
木場「……で、これは相談をする必要あったのか?」
P「え?」
木場「今前川君が了承したことで、家族共々了承されたという事になるワケだが」
P「しかしこれは親御さんにも言ったんですが男の家に住まわせるなんて……」
木場「君とて立場を弁えているだろう。責任を持って面倒を見ると思えるから不安は感じないが」
P「…………」
木場「それを共に寮生活していたとは言え、外部の人間がとやかく言える事は無いな」
木場「寮も空き部屋ができればそこに実家通いが大変な子を改めて迎えてあげれる」
木場「安部君辺りなら喜んで入ってくれるんじゃないかな」
みく「Pチャン……」
P「………あー分かった。相談なんてする必要なかったわ」
みく「……!」
P「まぁちっといきなりの事でびっくりしちまって」
P「どうすんべ、と皆に聞いてもらおうとしてたけど」
P「別に決まりきってた事か、いい案あるかなーってちと期待もしたが」
木場「君が責任感ある人間だという事はこの場に居る全員がよく分かっている事だ」
一同「うんうん」
P「んじゃあ決まりか」
木場「そういう事になるな」
P「まぁよくよく考えりゃこないだ泊めた事もあるしなぁ」
一同「…………………えっ」
P「ん?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ………
木場「ほう。その話は初めて聞いたな?」
木場「前川君が寮に戻ってこない日があってね。寮が大騒ぎになったんだが」
木場「因みに泊めた時、連絡入れたか?」
P「あっ………」
一同「………………………」
木場「まあその後戻ってきたからよかったものの」
木場「連絡ぐらい、入れてもよかったんじゃ……ないのかね?」スッ
P「ええと、はい、すんませんっす……因みにその人差し指は……?」
木場「少し君にお仕置きが必要だと思うんだ、今後の事を肝に銘じる事も踏まえてな」
ドスッ ピキーン!
P「ぐはっ!? か、体がうごかな……!!??」
木場「そして」グリッ!
P「ちょっ!? なんで俺勝手に立ち上がんの!?」シュタッ
みく「は、はいにゃ…」
木場「じゃあ、まずはスーツの上着が邪魔だな。愛梨君」
愛梨「はいっ。ジョインジョインと……終わりました」スッ
P「!?」
P「今何をした!? 気づいたらジャケットが脱げてて愛梨の手元に!?」
木場「うむ、相談相手としては実にいい選択だったなこれは」
木場「次はそうだな……中野君、好きな技をかけたまえ」
有香「押忍! 真さんから教わった………『正中線五段突き』ッ!!!」
ズドンッ! ズドドドンッ!! ズドンッ!!!
P「ご……ふっ……!」ドシャッ
木場「まだダウンするには早いぞ」スッ グリッ!
シュタッ!
P「ぐはっ……また体が勝手に…!」
桐野「おう! アタイも打撃だけど一味ちがうぜー? 『幻突』!!」
バスンッ!
P「がっ……見えん何かが……」
木場「決めは緒方君だな、手加減は無用だぞ」
智絵里「は、はいっ」
智絵里「か、かか、か………『カラミティエンド』です。えい」
シュパッ!
P「ぐわああああーーーッ!!」
――――――――――――――――
P「すんません……マジすんません……」ボロッ
木場「まぁ今後はきちんと面倒を見るように」
木場「それと、たまには二人の様子を見に行く事にするよ」
P「ぁい………」
木場「前川君、部屋へ入れてもらっていいかな」
みく「……はいにゃ」
――――――――
―――――――
――――――
P「とりあえず上がって一息ついたら片付けとか生活スペース作ったりするか」ガチャッ ススス…
みく「にゃ……えと、おじゃまします」
P「んー……はいやり直しー。玄関の前から!」チャリ、ポイッ
バタンガチャッ!
みく「に”ゃっ!? にゃ、にゃんでー!? 鍵まで閉められたー!?」
みく「開けてにゃーー!!」
ピンポンピンポンピンポーン
インターホン「はーいどちらさまですかーって違うわ! 連打すなやかましい
お前は家に帰るときに『開けてもらう』のか?
そのポケットの中身は何だろうなぁ? んん?」
みく「にゃ……? あれっ、この鍵……」チャリッ
インターホン「さぁそれを持って鍵穴に通し捻るがいい! そしてオープンセサミと!!」
カチッ、カシャン
ギィッ……
みく「えと……た、『ただいま』にゃ……」
P「おう、『おかえりなさい』だ。ようこそ我が家へ、歓迎するぞ」
P「それと鍵は予備で持ってたもんだからみくにやる。好きに使っていいぞ」
みく「…………グスッ」
P「お、おい?」
みく「……ふぇぇぇん!!」ダキッ!
P「急に泣き出したりして……どうした」
みく「みく……Pチャンが一緒に住みたくないって思ってて」
みく「嫌われちゃったのかなって……グスッ」
P「…………」ナデナデ
P「……んな訳あるか。家族と暮らせないってのがよくねーって、そう思っただけだ」
みく「……にゃ?」
P「我が家、ってありゃもう違うな」
P「これからは俺とみくの家って所だな」
みく「……うんっ!!」ギュー
みく「えへへ……Pチャンー……えへへへ…ぎゅー♪」スリスリスリ
P「とりあえず、一旦抱きつくのやめようか? 色々当たってる……」
みく「駄目……もう離さないんだからにゃん♪」
みくメインの筈が出番少なくてすんません……
また書き溜めできたら投下致します故
みくにゃんマジみくにゃん
にゃんにゃんにゃん!
にゃんにゃんにゃんにゃん!
乙
Entry ⇒ 2012.10.27 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
P「伊織恐怖症になった」
伊織「お疲れ」
P「!!」
P「ぎ……ぎぁあああああ水瀬伊織だぁあああああ!」
春香「え、え!?」
P「ひいいいいぃ……!!」
伊織「はぁ……まったくホント情けないわねこのヘンタイは」
春香「い、伊織、プロデューサーさんに何かしたの!?」
伊織「別に大したことじゃないわよ」
伊織「ただ三日間監禁してキス漬けにしただけ」
春香「……なんだと?」
伊織「ええ、言ったわ」
春香「監禁、キス!? 何がどうなればそんなことになるの!?」
P「イオリコワイイオリコワイイオリコワイ」
伊織「落ち着きなさい春香。私が悪いわけじゃないわ。全部この男が悪いのよ」
P「コワイオリ……コワイオリ……」
春香「ちゃんと説明して!」
伊織「じゃあもったいぶっててもしょうがないから言ってあげるけど」
伊織「私、先週この男に告白したの」
春香「!」
伊織「俺は年下は守備範囲外だから無理だ、だって」
伊織「あとプロデューサーとアイドルの関係だから普通に無理だ、だって」
春香「あ、ちょっと……」
伊織「ムカつくでしょ?」
春香「うん……」
伊織「そうしたら監禁するのが世のため人のためってもんでしょ?」
春香「うん……いや! そんなの間違ってるよ! それ全部伊織のためだよ!」
春香「フラれた腹いせに監禁だなんて、非道義的!!」
P「コワイ……コワスギイオリ……」
伊織「まあちょっと落ち着きなさいよ春香」
伊織「ちゃんと有給扱いだから大丈夫よ」
春香「そういうことじゃない! 監禁だなんて……それにキス漬け!? どういうこと!?」
伊織「ハァ……ならいい? よく考えてもみなさいよ」
伊織「目の前には私をフったことで監禁されたプロデューサー」
伊織「この男を何とかして自分に振り向かせたい」
伊織「壁は社会通念と嗜好。言葉で押したって何の意味もない。ならこの場合の最善手は?」
春香「キス」
伊織「だったら純真さを活かして唇に頼むのが常道、でしょう?」
春香「うん……いや違う! そこはフられちゃったんだから潔く退くべきだよ!」
春香「監禁してる前提もおかしいし!」
伊織「潔さが常に美徳とは限らないわ。いい春香、世の中を常に疑ってかかりなさい」
伊織「『潔く退け』、『決して諦めるな』――世の中はこの二律背反を平気で強いてくるの」
春香「ううぅ、何が正しいの……!?」
伊織「今の春香は正解よ。人は真理に直面すれば思い惑うものなの」
春香「うん……違う絶対違う! そうだとしてもやりすぎだよ!」
春香「だってプロデューサーさんこんなに怖がってる!」
P「コワイ……」
春香「キス漬けって、何をしたの!?」
春香「ぐっ……」
伊織「冷静にならなければ見えるものも見えなくなるわ」
伊織「紅茶でも淹れましょうか」
春香「要らない! 早く答えて!」
伊織「そうカッカしないでよね。私は春香と敵になんてなりたくないの」
春香「いいから答えて。キス漬けって具体的に何なの!?」
伊織「あまり大きな声を出さないでほしいわ。人に聞かれて気持ちのいい話じゃないんだし」
伊織「小娘でもあるまいし」
春香「そっちだって小娘のくせにっ……」
伊織「キス漬けが何かって? そのままの意味よ」
伊織「今のあなたはお腹を空かせた小動物。目の前にはずっとずっと追い求めてきた甘美な果実」
伊織「歯を立てれば、舌をくるみこむほどたっぷりの甘い汁」
春香「……ごく」
伊織「口にすれば本能をふやかし、脳髄をとろめかすような刺激の洪水」
伊織「麻薬そこのけの勢いで、あなたはみずみずしく蹂躙されるの」
春香「やだ……やだぁ……」
伊織「ならその果実がもし、プロデューサーだったら?」
伊織「甘く狂おしく焦がれる初恋。その目当てが拘束され無防備にさらされていて」
伊織「それが今あなただけのものだとしたら?」
春香「めっちゃキスする」
春香「え? あ……あああ……っ!!」
伊織「くす、春香、あんたってもしかして」
春香「やめて! 言わないで!」
伊織「くすくす」
春香「………っ!」
伊織「良いわねその『眼』。そんな闘気がみなぎった視線を向けられたら」
伊織「――たかぶっちゃうわ」
春香「卑怯者……奸佞の徒!」
伊織「春香……あんたまだ『理性』なんて人間の負の遺産にとらわれてるの?」
伊織「ヒトの歴史なんて生命の歴史に比べれば刹那にも満たない寸陰の出来事」
伊織「そして、かつて広がっていたのは『理性』なき『ケダモノ』たちの世界」
伊織「そこにはルールも秩序もない。ただ『喰らう』か『喰らわれるか』だけ」
春香「伊織……あなたまさか」
伊織「ええ、そうよ。私が望むのはその『ケダモノ』たちのための世界」
伊織「世界をかつての姿に戻す」
伊織「私はそのためにアイドルになったの」
春香「なんてこと……!」
伊織「何ですって?」
春香「そんなの、絶対にさせない!」
伊織「……できるのかしら、あんたに?」
春香「伊織の考えは間違ってる! 私たちは立ち止まって、考えるから進めるんだよ!」
春香「思いやりや反省が私たちを成長させるの!」
伊織「前時代的で化石のような考え方だわ。何の面白みもない」
春香「たとえプロデューサーさんにキスしちゃっても! もし『立ち止まる』ことができれば」
伊織「ところが」
春香「え……?」
伊織「でもそれは『理性的であれ』という意味ではない」
伊織「『本能の声を聞け』という意味よ」
伊織「『内なる無我を啓発しろ』『耳を澄ませて主体を明け渡せ』」
春香「そんなこと……!」
伊織「私はアイツにキスをしたわ」
伊織「でもアイツは残された『理性』で抵抗するの。『やめろ、やめてくれ』」
春香「っ……」
伊織「私の唇に必死に身をよじらせて抵抗する、あまりに脆弱な成人の男」
伊織「さっきまで小動物だった私は、この瞬間、自分が捕食者にすり替わっていることを自覚する」
伊織「美しい弦楽器を奏でているような錯覚。陵辱の愉悦。享楽の底なし沼」
春香「いや……いやぁっ……」
伊織「普段、辣腕をふるってアイドルたちを指揮する面影はどこにもない」
伊織「口元からは私の唾液が泡立ちながら滴って、両目はとろんと据わっていて」
伊織「身体は刺激を悦ぶようにぴくぴくと震えているの」
春香「ううぅ……」
伊織「私はその姿を見て、今が絶頂にあるような多幸感に包まれると同時に」
伊織「崖から転がり落ちるような背徳の螺旋に身をゆだねた」
春香「私も」
春香「あああぁっ……いやぁあああ……!!」
伊織「春香、あんたそろそろ自分でも気がついてるんじゃないの」
春香「もうやめてぇっ!!」
伊織「――あんたも『こちら側』の人間だということに」
春香「ウソ……嘘っ……!」
伊織「人間は理性的な生き物なんかじゃないわ……」
伊織「大多数の人間は『脳が身体を従えている』と考えがちだけれど」
伊織「本当に究極的な局面では、『身体が脳を支配する』のよ」
伊織「何故ならそれこそが、『種』の偽らざる姿なのだから」
春香「違うっそんなの……!」
伊織「だから絶望することなんてないわ。春香がそう考えてしまうのも詮無いことなんだから」
伊織「目を背けるんじゃないわよ!!!」
春香「―――」
伊織「……本当にそう?」
春香「……え?」
伊織「自分は違うって、自分の心に誓って言えるのかしら?」
春香「そ、そんなの決まって……」
伊織「愛するプロデューサーに恋心に押されるまま告白して、断られて」
伊織「本当に愛していたからショックも計り知れなくて」
伊織「同じ経緯をたどって、同じ状況に立って、同じことをしなかったと言えるの?」
春香「正直五分五分」
春香「あああぁっ……いやぁあああ……!!」
伊織「理性なんて無意味なのよ、春香」
伊織「大いなる大義のもとに並べば、理性なんてまず始めに消し飛ぶもの」
伊織「文明は研鑽を重ねた理性の産物とか考えてるなら、唾棄しなさい」
伊織「平和も、戦争も、略奪も――すべて『本能』のみが成し得るものよ」
春香「あああぁっ……いやぁあああ……!!」
伊織「ねえ春香、何が悪いの?」
伊織「よく考えて。内なる声に耳を澄ませて」
伊織「アイツを監禁することの何がいけないっていうのかしら」
伊織「何かしらその屁みたいなトートロジーは」
春香「いけないからっ……そう、法律でっ、犯罪だから……!」
伊織「まだそんな『くびき』に縛られているの? 法律? 犯罪?」
伊織「ヒトが均整に見せかけて作ったものなんて、圧倒的な力の前では無力よ」
伊織「水瀬財閥が警察に圧力をかける……そんなちょっとした力学で崩れる」
春香「だとしても、プロデューサーさんが傷ついてる!」
伊織「傷ついて? ええそう……そうでしょうね」
伊織「あんたにはそう見えるんでしょうね」
春香「――!?」
伊織「でも、幸福って多角的に検証されるべきだと思うわ」
伊織「しかし彼自身は幸福であることを自覚できないように」
伊織「真の幸福は、一つの視点で、一つの瞬間で、一つの極では決まらない」
伊織「もしかしたら破滅の先にあるかもしれないじゃない?」
春香「いやぁあああ……!!」
伊織「じゃあ春香、私とプロデューサーの間を遮るものって何?」
伊織「プロデューサーが私の元に堕ちるのが真の幸福だとすれば」
伊織「誰がそれを止める権利を持ってるっていうのかしら?」
春香「おそらく誰も持っていないのではぁあああ……?」
春香「え……?」
伊織「これはあんたにとっても悪い話じゃないわ。むしろ幸せにしてあげられる」
伊織「だって私たちは同胞でしょう?」
春香「わたし……私、はっ……」
伊織「私があんたに望むことはたった一つ。簡単なことよ」
伊織「この部屋からしばらく出て行ってちょうだい」
春香「!?」
伊織「私とプロデューサーを少しのあいだ二人きりにしてほしいのよ」
伊織「その代わりあんたには望むものを与えるわ。私にはアイツ以外に価値なんてないし」
伊織「いくら積めば出て行ってくれる?」
春香「っ! バカにしないで!」
伊織「五千万? 一億?」
春香「そんな大きいお金のこと言わないで!」
伊織「ふふ、じゃあどうすれば出て行ってくれるの? 頭の悪い私に教えて?」
春香「私はそんな伊織になんて屈しない! プロデューサーさんを守るんだから!」
伊織「そう……そうなの」
伊織「じゃあやっぱり……『ケダモノ』らしく、本能に訴えかけるべきかしら?」
伊織「そう警戒しないで。こっちに近づきなさいよ。話ができないでしょ?」
春香「何する気――」
伊織「嫌ね。これよこれ」
春香「そ、れって」
伊織「メモリーカードよ。ある一部始終をおさめた記録」
春香「―――」
伊織「今春香が思い浮かべた内容で正解よ」
春香「ちがっ、わたっ」
伊織「これにはプロデューサーを監禁していた時の映像が入っているわ」
伊織「ほしくない? 欲しいはずよね? だってさっきまでありありと思い浮かべていた情景が」
伊織「この中に再現されているんだもの」
伊織「快楽のるつぼに堕ちたプロデューサーの姿が、ほとばしる煩悶が」
春香「ほしいわけない……!」
伊織「本当は私が愉しむために撮っておいたんだけどね」
伊織「特別に同志の春香にはプレゼントするわ。きっと最高の映像でしょうね」
春香「やめて……同志なんてっ」
伊織「常識だの理性だのいうベールを剥がされて喜悦にまみれた男を観る、極上の視覚体験」
伊織「そんな映像をおさめたメモリーカードがあんたは欲し……?」
春香「い……くない!」
春香「欲しくない!」
春香「当たり前!」
伊織「認めてしまえば楽になるのに。自分の内なる『ケダモノ』を」
春香「そんなものいない! 惑わされない!」
伊織「そう……残念ね……」
伊織「少し挑発しすぎたかしら。ここまで強情になられると困ったわ。どうしようかしら」
伊織「打つ手無しね。じゃあ、最後に一個だけ」
春香「………」
伊織「これに一億円もつけるって言ったらどうする?」
春香「そんな大きいお金のこと言わな――んむっ!!??」
伊織「ん、ちゅ……」
春香(何これ、私っ、キス? ……キスされてるの!?)
春香(しまった、距離をとることを忘れて、許してしまった――)
伊織「ちゅるっ、ちゅむ……」
春香(伊織、伊織っ! キスで私を手篭めにしようっていうの!?)
伊織「あむん……ちゅるる」
春香(こんな下劣な手段をとるなんて、相手も困窮している証拠!)
春香(無理やり引きはがしたっていいけど、私はアイドル、そんなことしない)
春香(正々堂々受けて立つんだから!)
伊織「ちゅりゅるっ」
春香(絶対にキスになんて屈したりしない!)
春香「んほおおおおおおキス気持ちいいのぉおおおおおおおお」
春香「………」
春香「……結局、部屋から追い出されちゃった」
春香「ごめんなさいプロデューサーさん……私、何て弱い……」
春香「『プロデューサーさんを守る』だなんて言っておいて」
春香「ううっ……ぅっ……」
春香「でも伊織の尋常ならざるテクニックが私の想定を超えていたから致し方ない部分もある」
春香「!?」
春香「いまの、プロデューサーさんの声!?」
春香「中でっ、いったい何が!」
ガチャンガチャン!
春香「くっ、開かない……当然ながら鍵が……!」
春香「今度こそ助けなきゃ、でもどうすれば」
春香「……思い返せ、私はアイドル」
春香「ヒトの感情を知らない『ケダモノ』なんかに負けちゃいけないんだ……!」
春香「冷静になれ、『理性的』に……」
春香「私はアイドル、こんな小さな壁につまずいてる場合じゃない!」
ガチャンガチャン!
春香「ひらけっ、開けぇっ!」
ガチャンガチャン!
春香「自分のやってきたことを今ぶつけるんだ!」
ガチャンガチャン!
春香「プロデューサーさんを助けるんだ!」
春香「ひらけっ」
春香「開けぇっ!!!」
春香「開いた――!!」
伊織「プロデューサーぁあ/// すきっ、だいすきぃ///」
伊織「ちゅっちゅ/// ちゅっちゅ/// いおりんのちゅっちゅ///」
春香「………」
伊織「いおりんはね、プロデューサーのことがだいだいだいだい……」
伊織「だぁあーーーいすきなのよぅっ、にひひっ/// ちゅっちゅ/// ちゅっちゅ///」
伊織「にひ……ひ……」
春香「………」
伊織「くっ……何故!? 施錠は完璧だったはずなのに」
春香「確かに施錠は完璧だった。でも伊織、最も単純にして重大な事実を見逃してない?」
春香「閉まった扉を開けるのは――鍵だよ」
伊織「それは……合鍵……!」
春香「ここ最近、私は早めに事務所に来て歌の覚えこみをしていたの」
春香「だから小鳥さんが融通して私に合鍵を渡してくれていたんだよ」
伊織「なんてこと……すごいガチャガチャ言わせて『開け』って連呼してたのに」
伊織「実際は鍵を回していただけなんて……!」
春香「積み重ねてきたものの証。自分自身を律してきた努力がくれた突破口」
伊織「理性が……」
伊織「あんたの『理性』が……私の『ケダモノ』を出し抜いたとでも言うの!?」
春香「伊織が思うならそうなんだよ」
春香「あなたは一時の感情に流されてアイドルを捨てた。私は捨てなかった、それだけ」
伊織「認めるわけないじゃないそんなの!!」
春香「伊織ィっ!!」
伊織「はるかぁッ!!」
伊織「まだ――まだやれる!」
伊織「まだ私は終わったわけじゃ――」
「いいや、終わりだよ」
春香「!!」
P「もう終わりだ」
P「伊織……お前の負けだよ」
伊織「なに、を……」
ガチャッ!!
ドタドタドタドタ!!!
伊織「ッ!?」
「警察だ! 水瀬伊織は手を上げろ!!」
伊織「いつの、間にっ……!」
伊織「やってくれるじゃないプロデューサぁあ……」
「動くな! それ以上動くと水瀬財閥の令嬢といえど血を見るぞ!」
伊織「何ですって?」
「水瀬伊織……監禁罪および淫猥接吻罪、瑕疵ツンデレ取締法違反により逮捕する!」
伊織「自分の言っていることを自分で認識できてるのかしらこの猿は」
伊織「その水瀬財閥が動けばアンタたちなんて……」
P「無駄だ、伊織」
伊織「何を言って……」
P「何故なら、お前を通報したのは」
P「他ならぬ君のお父様だからだ」
伊織「―――」
伊織「あのクソジジィッ……!!」
P「伊織、お前ほど才覚のある人物なら、焦らず落ち着いて事を進めれば何だってできたはずだ」
P「トップアイドルになることだって、一人の男を手に入れることだって」
P「ただお前に欠けていたのは、今この世界と向き合う姿勢」
P「夢や幻ばかりじゃなく、周りの小さな現実を見ることを教え忘れた、俺のせいでもあるがな」
P「………」
伊織「私がこうなったのは全部――!!」
「連行しろ」
伊織「うぁああああっ! 終わりじゃないっ、終わらせなんかしないわ!」
伊織「私を捕まえても何の意味もない! もう賽は投げられた! 『種』は蒔かれた!」
伊織「『ケダモノたちの世界』はすぐそこまで――」
伊織「プロデューサー! 春香! 見てなさいッ」
伊織「私は必ず――」
バタン……
P「………」
春香「プロデューサー、さん……」
P「あとで事情聴取があるぞ、これからも忙しくなる」
春香「あの、私っ」
P「そのメモリーカードはダミーだ。俺がすり替えておいた」
P「本物は……伊織の父親のもとへ」
春香「あ……」
P「伊織の言っていた通り、水瀬財閥にはもみ消されてしまう恐れがあった」
P「ならば逆に、そちらから押さえておく必要があると思ったんだ」
P「騒ぎにならないような根回しも済ませてあるんだろう」
P「俺にできることはそれまでの時間稼ぎだったんだが」
P「春香にほとんどその役目を負わせちゃって、俺は見守るだけだったな……すまん」
春香「いえっ、私こそ、ほんと情けなくて……」
春香「じゃあ、あの怖がりぶりは」
P「ああ、演技だよ」
P「アイツは俺が激しく反抗しない限り、強硬な押さえつけはしてこなかったからな」
P「やっぱり、根は優しいんだ」
春香「………」
P「なあ春香……俺は正しかったのかな」
春香「プロデューサーさん……」
P「もっとじっくり『対話』してやっていれば、違う救いもあったんじゃないのか?」
P「なあ、春香……」
春香「プロデューサーさん」
春香「二人で、手紙を書きましょう?」
春香「伊織が安心して帰ってこれるように、伊織がいない765プロでも元気にやっていますって……」
春香「だからあなたが、また事務所の扉を開けて来られる日を、楽しみに待っていますって」
P「ぅっ……うぅううっ……!!」
春香「いいんですよ……」
P「俺、はっ……ぐぅ、ぅううっ……!!」
春香「いいんです、プロデューサーさん……」
P「ぅうううあああっ!!」
春香「プロデューサーさん……」
春香「大丈夫……大丈夫ですからね……」
春香「今は、このまま……」
『認めてしまえば楽になるのに。自分の内なる「ケダモノ」を』
『春香、あなたそろそろ自分でも気がついているんじゃないの』
P「ぅうっ、ううぅっ……」
『本能の声を聞け』
春香「………」
『内なる無我を啓発しろ』『耳を澄ませて主体を明け渡せ』
P「……」
『ねえ春香、何が悪いの?』
P「春香……?」
『内なる声に』『本能を』
――『種』は蒔かれた
P「おい春香! 春香!? 大丈夫か――」
P「なんだ、何が……いつっ」
P「いたいぞ……腕……そんな、強く……」
P「―――」
P「やめっ、おい……や、やめてくれ、春香! 春香ぁあ!!」
P「うぁ……ああああ……」
「ぎぁああああああああああああああああああああ!!!」
「な、何をしているんだ、君っ、君!!!」
天海春香の身体からは微量の薬物が検出されたらしい
媚薬や興奮剤の一種――
おそらくは、水瀬伊織と唇を交わした際に摂取されたものだろう
しかしそれはほんのきっかけにすぎない
水瀬伊織が蒔いた『種』は、それ自体は大きな作用を持つものではないのだ
何故ならあらかじめ『土壌』がなければ、『種』は芽を出さないのだから
あなたの心の中にも、『ケダモノ』は潜んでいるのかもしれない……
END
極上のサスペンスだったと自分でも思います
せ、せやな…
深いようで原因はキスってところとかな…
乙
お、おう…
乙
Entry ⇒ 2012.10.27 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
怜「演技の練習……?」
怜「昨日の様子見た感じで言わせてもらうと、出来れば辞退したいんやけども……」
久「クラスのためだから」ニコ
菫「昨日は私と竹井だったから……今日は照と園城寺か」
照「あの、私は照明がしたいって何度も……」
怜「どうせそんなこと言うても聞いてくれんやろ。諦めた方がいいで」
久「ふふ、聞き分けが良い人って好きよ♪」
菫「まあ、園城寺には役者でもやらせないとサボりそうだし」
怜「うっ」
菫「照の照明なんて不安すぎるからな」
照「そんなぁ……」
怜(めんどいなぁ……)
照「演技なんて出来ないのに……」
菫「だから練習するんだろ」アキレ
久「委員長命令ってことで、二人とも頑張りましょう」アハハ
久「今回は園城寺さんから行ってみましょうか」
怜「はいよー」
久「宮永さんは長くなりそうな気がするからね」
菫「練習相手はどうするんだ? 私たちの誰かか?」
久「それでもいいけど……昨日みたいに通りがかった人でもいいかもね」
練習相手>>10
菫「人を待つにしてもなかなか人が来ないし、そもそもやってくれるかどうか分からないだろ」
怜「照か久あたりでええんとちゃうん? それか演劇部の誰か引っ張って来るとか」
久「うーん、そうねぇ……宮永さんか演劇部の誰かでもいいんだけど……」
照「……誰か来る」
「「えっ?」」
久「あ、そこのあなた!!」
竜華「は、はい!?」
久「素敵だわ! あなたみたいな綺麗な人が演劇を……って」
怜「竜華……」
竜華「ど、どないしたん竹井さん……? それに、怜……」
久「文化祭に向けて演劇の練習をちょっとね」
照「ちなみに清水谷さんは何の用でここに?」
竜華「ウチはゴミ捨ての帰りやで」
怜「どんだけ人気あるねん、このゴミ捨てルート……」
菫「私もよく使っているぞ? 三年棟からなら一番近いからな」
久「清水谷さん、そういえばあなたのとこのクラスも確か演劇だったわよね?」
竜華「よう知ってんなぁ竹井さん。って言ってもまだ内容も何も決まってないんやけども」アハハ
久「そうは言っても大体みんな何やるかくらいは考えてるんでしょ?」
久「清水谷さんは何するの?」
竜華「ウチは役者したいかなぁ。どうせ演劇やるんやったら、小道具とかよりかは面白そうやし」
久「ほうほう……」ニヤリ
竜華「演技の練習?」キラーン
怜(アカン、竜華興味津々や……)
久「実はねー……」
―――――――――――
竜華「なるほど……面白そう!」
久「でしょ?」フフン
菫(ここまで乗り気な人間も初めてだな……)
久「ってことだから園城寺さんの練習に付き合ってもらえない?」
久「二人とも幼馴染みで仲も良いし、互いに良い練習になると思うんだけど」
竜華「うん、別にええよー。断る理由がないわ」ニッコリ
照(断る理由がない!?)
怜(まあ、照とかとは別の人種……でもないか)
竜華「1年生の時はほぼ病院で、2年生の時はやさぐれてて……学校の行事なんか参加する素振りすら見せてなかったから……」ウルウル
怜「な、なんでそこで竜華が泣きそうになってんねん……」
竜華「ウチめっちゃ心配やったんやで?」
竜華「暇があれば年中保健室行って、クラスではウチくらいとしかロクに話さんくて……」
照「怜っと不良だったんだね……」
怜「不良言うな。ってか昔の話すんのやめてくれへんかな……?」
怜「そない嫌な思い出ってわけでもないけども、掘り返されるのはちょっと……」
竜華「三年なってウチとクラス離れて、だんだん学校に馴染んで来てた怜がまたやさぐれてまうと思うと、夜も眠れんかったから……」
怜「りゅ、竜華。ホンマに恥ずかしいからやめて……」
久「園城寺さんの保護者なのは相変わらずね」アハハ
菫「こんなにも思ってくれてる人がいるのに、どうしてお前は……」
竜華「どういうこと弘世さん? もしかして、怜がまた迷惑を……」
菫「掃除はサボるしゴミ捨ていかないし、授業中はたまに消えるし体育に関してはまったく参加する素振りがないし……」
竜華「怜……?」ゴゴゴ
怜「ホンマにやめて委員長……」
照「あと、この前女たらし序列2位になった」
竜華「女たらし? それはどういう……」
怜「ひ、久。そろそろ始めよや。みんなも本来の目的思い出して」
菫「くく、まるで三者面談だな……」
照「怜は相変わらず清水谷さんには弱いんだね」
久「そんじゃまあ、園城寺さんの要望通り始めましょうか」
久「時間も勿体ないしね」アハハ
竜華「……怜。あとで話訊かせてや」
怜「うぅ……」
―――――――――――
怜『ただいまー』
竜華『……』
怜『いやぁ、今日も疲れたわ……竜華、今日のご飯なにー』
竜華『……』
怜『竜華……?』
竜華『……』
怜『どないしたん竜華? 無視せんといてや。もしかして体調悪かったり』
竜華『……怜。これなに』
怜『えっ?』
竜華『この髪の毛、ウチのちゃうよな……?』
竜華『怜の髪の毛でもないよな……? だってこんな赤い髪の毛、あり得へんもん……』
怜『りゅ、竜華。待って。落ち着いてや。それは友達をここに呼んだときのヤツで……』
竜華『ウチに内緒で誰かここに呼んだってこと……?』
竜華『ここ数ヶ月でそんなこと知らされてないんやけど……』
怜『ご、ごめんな。竜華がおらんかったときに、この家で遊ぼうってことになって、たぶんそんときに……』
竜華『誰か呼ぶ時は互いにちゃんと知らせような、ってゆったやん……』
竜華『この前も早く帰って来るって行ったのに結局帰ってこんくて、また朝帰りやったし……』
竜華『なんで約束守ってくれへんの……? 付き合う前はしっかり守るって言ったてのに……』
怜『それに朝帰りは大学での付き合いとかで友達の家に泊まる事も多いから、しょうがないねん……この前も言ったやろ?』
竜華『そやけど……』
怜『心配させてホンマにごめん。でも、竜華が思ってるようなことは絶対にないから』
怜『ウチを信じてや。疑われるんは……ちょっと辛いわ』
竜華『と、怜……』
怜『ウチが好きなんは竜華だけやのに、信頼されてないなんて……』
竜華『そ、それは怜が最近怪しいことばっかしてるから……!』
怜『付き合いで友達の家泊まったり、知り合いをここに呼ぶことが怪しいことなん……?』
竜華『そ、それは……』
怜『ちょっと疑心暗鬼すぎると思うで……?』
竜華『そんなことないよ……だって怜、帰って来たらすぐお風呂入ったり、ウチと一緒におるのに携帯で誰かとメールしてたり……』
怜『……』
竜華『そういうことが日常的にあるんやから、ウチやなくても疑うよ……』
竜華『その友達のこと教えてって言っても、言葉濁すだけで教えてくれへんし……』
怜『竜華……』
竜華『ウチやって辛いよ……怜が浮気してるなんて考えただけで耐えられへんもん……』
竜華『大学で他の女の子と一緒におるの見るだけでも辛いのに、そんなん……』
竜華『と、怜……?』
怜『最近あんまし一緒にいてなかったもんな……ごめんな、寂しい思いさせて』
竜華(え、演技でも怜に抱きしめられてるって……なんかドキドキする……)
怜『これからは竜華のために早く帰ってくるし、一緒におる時間もいっぱい増やすようにするから……』
竜華『怜……』
怜『ウチが好きなんは竜華だけやで』
竜華『う、ウチも……ウチも怜のこと好き……世界で一番好き……』
菫(なんだこの脚本)
久「ふふ、ここからが面白くなるところよー」
菫「お前が一筋縄でいくような台本を用意するなんて思ってはいないが……」
怜『そうや竜華、久しぶりに膝枕してや。ちょっとしんどい話して疲れてもうた……』
竜華『あっ……大丈夫? ごめんな、ウチのせいで……はい、頭貸して』
怜『ありがとー……やっぱり竜華の膝枕は気持ちええな……』
竜華『またそんなこと言って……でも、こうするのホンマに久しぶりやね……』
怜『最近は大学でも家でも一緒におる時間少なかったからな……』
竜華『でも、これからは高校の時みたいにこうやって過ごせるんやんな?』
怜『うん。みんなには悪いけど、竜華の方が大事やから……』
竜華『ふふふ、もう、そんなこと言って……』
竜華『別に寝てくれていいでー。ウチもこうやって怜の頭撫でるの好きやし』ナデナデ
怜『そんじゃお言葉に甘えさせてもらうわ……良い時間になったら教えて……』
竜華『はいはい。おやすみ』
怜『……』
竜華『……』
竜華『……怜? 寝てもうた?』
怜『すぅ……すぅ……』
竜華『ふふ、ホンマ、怜は可愛いなぁ……』
竜華『ウチのこと大好きって言ってくれたし、高校から付き合ってるんやし……浮気なんてあり得へんよな』
竜華『……あっ、怜の携帯……』
竜華『と、怜? 起きてる?』
怜『すぅ……むにゃむにゃ……』
竜華『ね、寝てる、よな……』
竜華『……う、ウチら恋人同士や……携帯見るくらい、ええよな……?』
照「し、清水谷さん……」
久「宮永さん、これ演技だからそんなにも緊迫しないで」アハハ
菫(リアリティがありすぎるんだよ……)
怜『うーん……りゅうか……』
竜華『……ご、ごめん怜、ちょっとだけやから……』
竜華『……』スッ
竜華『いっぱいあるけど誰が誰か分からへん……』
竜華『着信履歴は……』
竜華『ウチ、○○さん、ウチ、ウチ、××さん、ウチ……』
竜華『ん……? この宮永照って……誰やろ……?』
照「!?」
久「くくく……」
菫「竹井……」
竜華『なんで、怜からこんなにもいっぱい電話かけてるんやろ……?』
竜華『ウチ、こんなにもいっぱい怜に電話かけられたことなんて……』
竜華『そ、そうや……メールボックス見れば……』ピッピッピ
竜華『!』
竜華『ロック、かかってる……』
怜『んぅ……すぅ、すぅ……』
竜華『怜……どういうこと……? 宮永照って……誰……?』
照「こ、怖い……」ブルブル
菫「演技上手いな……本当にそれっぽく見えるぞ
久「感情移入しちゃってるのかもね」アハハ
菫「?」
ブーブーブー
竜華「きゃあ!?」
竜華(こ、こんなところまで台本通りにするんや……)
竜華『ちゃ、着信……しかもこれって……』
怜『ん、んぅ……竜華……?』
竜華『!』
怜『ウチの携帯鳴ってない……?』
竜華『だ、誰かから着信きてるで? はい』
怜『ありがとう……誰やろ……』
怜『……』
怜『ごめん、ちょっと』スッ
竜華『えっ? あ、うん……』
怜『どないしたん? ……うん……いや、大丈夫やけど……うん……』バタン
竜華『……さっきの着信、宮永照ってなってた……』
竜華『怜……?』
照「な、なんで私の名前なの?」
久「いや、リアリティ出るかなって……ふふっ」
菫「照……お前、まさかとは思うが……」
照「ふ、二人とも何言ってるの……? な、なんか清水谷さんこっち見てる……」
久「くくく……」
竜華『怜、なんの話してるんやろ……電話、ちょっと長いし……』
竜華『……盗み聞きしてみよ』スッ
怜『……うん、え? そんなことないよ……』フフッ
竜華『怜、あんなにも楽しそうに……』
怜『うん……ふふ、なんやそれ……急にどうしたん? なんか変やで』
竜華『……』
怜『もう……いつも言っとるやん……好きやで、照』
竜華『!!』
怜『今、彼女と一緒におるから……うん、ごめんな。えっ? もう一回? ふふ、今日はホンマにどないしたん……?』
竜華『と、き……』
竜華『……』
怜『うん……分かってる……もう、だから今彼女と一緒に……』
竜華『怜……?』
怜『!!』
竜華『どういうことなん……?』
怜『りゅ、りゅうか……!?』
竜華『さっきのなに……? ホンマに好きなんは照だけって……』
怜『ち、違うんや竜華……こ、これは……』
竜華『照って誰……?』ギロ
怜『ひっ』
怜(え、演技迫真すぎるんやけど……)
久「すごく良いわね、ぞくぞくするわ……玄さんもそうだけど、ここまでの逸材が……」
菫「相手が園城寺だからあそこまでなってるんだと思うぞ……止めなくて大丈夫なのか……?」
怜(ってここからアドリブ!?)
怜「て、照は、その、竜華が知らんウチの友達で……」
竜華「トモダチ……? ってことは、あの赤い髪……」
怜「あっ」
竜華「そっか……そいつがここに来たんやな……」
怜「お、落ち着いて竜華……違うんや、これは、誤解で……」
竜華「何が誤解なん……怜、さっきハッキリと言ってたよな……そいつに好きやって」ユラユラ
怜「りゅ、竜華ぁ……」
怜(ホンマに怖い)
怜「えっ……?」
竜華「ウチと怜の大切な場所で……何したん……?」
怜「べ、別に何もして……」
竜華「嘘つかんとって!!」
怜「ひっ」
竜華「寝たんやろ……?」
怜「……」ガクガクガク
竜華「えっちなことしたんやろ……!? そいつと二人で……ウチらのベッドで……!!」ギリリ
怜「りゅ、竜華……これ、演技のれんしゅ……」
竜華「……怜が汚れてもうた」
怜「は……?」
竜華「ウチが、綺麗にせな……汚された怜のこと、綺麗に……」
怜「ひゃっ……!?」
竜華「怜……怜……」サワサワ
怜「や、やめてや竜華! これ、演技っ……」
竜華「綺麗にせな……体も、唇も……全部……」チュッ
怜「きゃあ!? 」
怜(竜華、今、本気でキスしようと……!?)
竜華「なんで避けるん……? いつもしてることやのに……やっぱりその女に……」
怜(め、目にハイライトが……)
怜「だ、誰でもいいから助けて!! 今の竜華ホンマにやばい!!」
久「よし、行って来なさい宮永さん!」
照「えええぇ!?」
菫「園城寺を救えるのはお前だけだ」ボウヨミ
照「菫までなんでそんなこと!?」
久「だいじょーぶだって。所詮お遊びの演技なんだから。ほら、これも練習だと思って!」ドンッ
照「きゃあ!?」
照「と、怜……」
怜「きゃっ……ちょ、竜華どこ触って……!」
竜華「怜……好き……怜……」サワサワ
怜「あっ……た、助けて照!!」
竜華「照……?」
照「ひぃ!?」
竜華「アンタが、怜を唆した女か……」
久「宮永さん! 盛り上がってるんだから空気読んで!」
照「ええぇ!? え、えっと……と、怜を離して!」
照「ひぃぃ……!」ガクガク
怜「て、照! 頑張って! あの畜生二人助ける気なしや!」
菫「お前に言われたく無い」
久「今最高に面白いからね♪」
竜華「なんなん……? 怜はウチの恋人なんやで……? 付き合ってるんやで……?」
竜華「それをぽっと出のアンタが何をする気なん……?」
照「わ、悪いのは全部私! 怜は何も悪く無い! だから離してあげて!」
怜「照……」
竜華「悪いと思ってるんやったら今すぐウチらの前から消えろ……!」
照「」
怜(アカン)
菫(清水谷が演技なのかネジが飛んだのかが分からない……)
照「そ、そういうわけにはいかない! 私がいなくなったら清水谷さんは怜に酷いことする!」
竜華「酷いこと……? ウチらが愛を確かめ合うのが酷いことや言うん……?」
照「む、無理やりはよくない」
竜華「ウチと怜は恋人なんやで……? 恋人同士がこういうことして何が悪いん……?」
照「と、怜は嫌がってる! 私としたときはそんなんじゃなかった!」
竜華「は……?」
怜「ノリに任せて適当なこと言うな!」
竜華「やっぱり、二人で寝たんやないか……ウチの怜に……ウチの怜にそんなこと……!!」
照「あわわわ……」
照「ひぃぃぃ!?」
怜「や、やめて竜華! これは演技であって、フィクションで……」
竜華「なんで怜……? なんでその女庇うん……?」
怜「庇ってないから!? ただ目覚ませと言ってるだけで……」
竜華「ウチよりその女が大事なん……? ウチら、中学の時からずっと一緒やったのに、なんで……!!」
照「と、怜は愛が重い清水谷さんのこと面倒臭いって言ってた!」
怜「おいコラ!!」
竜華「面倒臭い……? う、嘘やんな怜……? そんな、そんなこと……」
久「くくく……清水谷さんも宮永さんも最高……」
菫(アイツは本当に……)
照「わ、私は怜に清水谷さんみたいな人がいるなんて聞いていなかった!」
照「怜に言われるがまま誘われるがまま、その、そういうことしちゃって……」
怜「照……頼むから黙って……」
照「怜、私と会うたびに清水谷さんの悪口ばっか言って……ご飯がまずいとか早く別れたいとか……」
菫(こいつが一番酷いな……)
竜華「嘘や、そんなん、嘘や……お前の言うことなんか、そんなん……!!」
照「とりあえず私は謝ります! 本当にごめんなさい! だから、あとは怜とゆっくりしていって……」
怜「お前なにしにきたねん!!」
竜華「怜……嘘やんな……? ウチのこと重いとか、別れたいとか……」
竜華「好きって言ってくれたやん……竜華だけやって……言ってくれたやん……!」
怜「お、落ち着いて竜華……これはフィクションで、ウチはそもそも竜華と付き合ってないし……」
竜華「付き合って、ない……?」
竜華「ウチと怜が、付き合ってない……」
竜華「全部ウチの勘違いで、怜が好きって言ってくれたんも一緒に住もう言ってくれたんも全部嘘で……」
怜「いや、ウチそんなこと一言も言ってないんやけど……」
竜華「……怜」
竜華「一緒に死のう?」ニッコリ
怜「ひぃぃぃ!?」
久「清水谷さん! パス!」ポイッ
カランカラーン
竜華「……そうやん……怜がウチのこと好きやないんやったら……全部嘘なんやったら……」スッ
竜華「死ぬしかないやん」ギラリ
怜「」
久「小道具に決まってるでしょ。本物なんてこんな場所にある訳ないじゃない」アハハ
照「本当に怖かった……」グスン
菫(こいつもちゃっかり帰って来て……)
怜「りゅ、竜華……ホンマに、目覚まして……」ガクガクガク
竜華「怜……これで一生一緒におれるな……」ユラユラ
竜華「二人一緒に……幸せに……」
怜「いやや……やめて……竜華、お願いやから……」ナミダメ
竜華「大好きやで怜。ウチもすぐに行くから」ドスッ
怜「りゅう、か……」
怜「……」バタッ
菫「んなわけないだろ」
久「いやー、迫真の演技だったわ。これにて終了ね」
竜華「……ふふ、くふふ……」
怜「……え。りゅ、竜華? ってウチ、別になんとも……」
竜華「怜、演技やのにあんな本気で怖がって……くふふ……めっちゃおもろいお腹いたい……!」
怜「……」ポカーン
竜華「はいこれウチの台本。ここ読んで」
怜「浮気をした恋人を刺して終了って……」
竜華「ウチの演技そんなに上手かった?」
竜華「本気で狼狽える宮永さんと怜が面白くて、途中で何回か笑ってたしまいそうになってたんやけど」クスクス
怜「はぁ……」
竜華「ふふ、おおきに♪」
久「いや、改めて。素晴らしい演技だったわ清水谷さん。演劇部入らない?」
菫「竹井と遜色ないレベルだったな……私も演技なのか本気でおかしくなったのか分からなかったよ」
竜華「もう、そんな褒めても何も出えへんで?」ニコニコ
照「あ、あれが、演技……」
竜華「でも、怜のことやから感情移入出来ただけやと思うで?」
怜「それはそれで怖いんやけども……」
菫「電話で浮気相手と話すシーンは、本当に誰かと話しているようだったしな」
竜華「良かったやん怜。二人とも褒めてくれてるで?」
怜「喜ぶ体力も残ってないわ……」
久「さて。練習付き合ってくれてありがとうね、清水谷さん」
竜華「いえいえ。ウチもめっちゃ楽しかったし、こっちがお礼言う方やで」
照「清水谷さんのクラスの劇、すごく楽しみです」キラキラ
菫「こんな天才がいるんだ。私たちもしっかり練習しないとな」
竜華「もう、ホンマお上手なんやからー」ニコニコ
怜「はぁ……ウチはちょっと休ませてもらうわ……」
竜華「膝枕する?」
怜「……お願い」
怜「」
―――――――――――
久「さて、ラスト宮永さんね」
照「わ、私はさっき練習参加したし、もう今日はこれくらいで……」
菫「いいわけないだろ」
照「あうぅぅ……」
怜「みーんな辛い思いしてるんやから、照もやってもらうに決まっとるわ」
竜華(さっきの宮永さんのアレ根に持っとるんかな……)アハハ
久「さーてお相手は……ふふ、誰になるやら。楽しみだわー」ワクワク
>>149
―――――――――――
菫「まあ、分かってはいたが……」
怜「誰もけえへんな」
照「こんなにも時間が経ったのに誰も来ない。これはもう今日は終わろうって神様が……」
菫「んなわけあるか。それに時間が経ったとは言ってもまだ10分くらいしか経ってないぞ」
久「でもこのまま待ちぼうけってのもアレだし……来ないならこっちから呼びましょう」キュピーン
照「よ、呼ぶって……」
竜華「どういうことなん竹井さん?」
久「まあ見てて♪ ……あ、もしもし? 今大丈夫? えっとね……」
菫(一体誰に電話を……)
怜(うーん。なんか嫌な予感が……)
久「これでよし」
竜華「誰に電話してたん?」
久「優しい後輩♪」
菫(一声かけただけですぐに人を動かせるなんて……本当に恐ろしい……)
照「だ、誰が来るの?」
久「私たちみんなが知ってる人」フフン
竜華「ウチらが知ってる人……同級生の誰か?」
久「ふふ、違うわ」
菫「3年以外で私たち全員が知ってる人なんて、教師くらいしか……」
怜(教師? ま、まさか……)
憩「大怪我した人はどこにおるの!?」ガラッ
久「きたー」
菫「荒川先生……」
憩「へ? 宮永さんに弘世さん……それに……」
久「うふふ……」
怜(よりによって……)
竜華「はは、どうも……」
憩(こ、この面子はなに……? 見事なまでに問題児だらけなんやけど……)
久「こんばんは、荒川先生。演劇しましょう」
憩「……な、なに言うとるの竹井さん?」
憩「ウチは大怪我したって人がおるって聞いたからここまで飛んで来たんやけども……」
照「本当に早かった。久が電話し終えて30秒後くらいにきた」
竜華「保健室の先生の鏡やね」アハハ
菫「先生、本当にすみません……実は……」
―――――――――――
憩「帰らせてもらいます」ツーン
菫(そりゃそうだ)
久「ま、待ってください先生」
久「確かに嘘をついたのは謝りますが、これにはさっき説明したとおり事情があって……」
憩「クラス演技の練習に付き合わすために養護教師呼び出すなんて言語道断です。ほとんどイタズラやないの」ジトー
久「あはは……」
憩「本当やったらちょっと説教するところやで?」
菫「まあ、確かに非常識的だな」アキレ
怜「そうやな。荒川先生も忙しいはずやし、ここは帰ってもらお。あかんあかん」
照「先生にやらせるなんてダメ」
久「みんながそんな常識的な反応するなんて……」
憩「し、清水谷さん……?」
久「そうよね清水谷さん! 学校一の人気教師荒川先生が演技するところなんて、このチャンスを逃せば一生見れないものね!」
菫「そう言われれば確かに……」
照「気になる……!」
怜「な、何言うてんのみんな。保健室の先生ってこう見えて忙しいんやで?」
怜「こんなくだらんことに付き合わせたらアカンに決まってるやろ」
照「不良の怜がまともなこと言ってる……」
菫「明日は槍でも降るのか……?」
憩「ウチも驚きやわ……」
怜「どういうキャラやねんウチは……」
憩「確かに……将来保健室で働きたいとか言い出すほどウチのとこに入り浸ってた頃のこと考えるとだいぶマシにはなったけども……」
照「怜……」
怜「おのれらぁ……!」
久「園城寺さんの素行不良の話題は置いといて」アハハ
久「お願い出来ませんか荒川先生? これも生徒のためだと思って」
憩「せ、生徒のためとかずるいこと言われても出来んものは出来ません」
竜華「先生忙しいんですか?」
憩「いや、忙しいってわけではないけども……」
照「暇じゃないと30秒でここまで来れませんよね」
憩「いつもは宮永さんらのおかげで忙しいんですけどねー。今日は大人しいから暇ですわー」ジトー
久「あはは……」
久「まあ、交渉してる感じだとねー……」
菫「ここはもう諦める方が早いと思うんだが……」
久「うーん……穏便に済ませたかったんだけど、しょうがないか……」
菫「た、竹井……?」
久「荒川先生、ちょっちナイショの話が」チョイチョイ
憩(内緒の話て……)ハァ
憩「……なんですか、竹井さん」
久「荒川先生って……園城寺さんとすごく仲良いですよね」ボソッ
憩「!?」
久「ただならぬ関係だという情報をつかんでいるんですが……」ニヤ
憩(こ、この子はホンマに……!)
久「本当にそれだけですか? 聞くところによると、およそ教師と生徒がするようなこととは思えないことをしているらしいですが……」
久「ここにこんな写真が……」ピラ
憩「!!」
竜華「二人とも、さっきから何の話してはるの……?」
菫(まさか竹井のヤツ……)
憩「な、なんでもあらへんよ? すぐに終わるから」アハハ
憩「……その写真渡しなさい」ギロ
久「もちろん等価交換、ですよね?」ニコ
憩「はぁ……ホンマ、あんたには一回痛い目遭わせなあかんらしいな……」
久「もう、そんなこと言って。痛い目なら常に遭ってますよ♪」
久「ふふ、ありがとうございます……みんな、荒川先生やってくれるって!」
照「えっ?」
竜華「すごいすごい!」
菫「本当ですか……」
怜(憩……ネタは分からんけど脅されたか……)
憩「で、演技の練習って言っても具体的になにしたらええの」ハァ
久「簡単に説明すると、宮永さんと一緒に寸劇をしてもらいます」
憩「宮永さんと?」
照「よろしくお願いします」キリッ
怜(なんでやる気になってんねん……)
久「途中から台詞がなくなるんで、そっからはアドリブで」
憩「エチュードみたいな練習しとるんやね……」
久「流石先生、博識ですね」
憩「まあウチもテレビで軽く見たくらいやけど……」
竜華「ウチ、先生の演技とかめっちゃ楽しみわ!」
菫「確かに興味深いな……」
久「私は宮永さんがこの脚本でどんな演技するのかが気になるわ」
憩「当事者置いてけぼりでえらい盛り上がって……」
照「緊張するけど……頑張る」
菫(照が意外と演技上手そうだな……)
怜「憩が演技なぁ……」ボソッ
憩「ちょ、ちょっと!」
久「ふふ、それじゃあ、早速スタートで」
――――――――――――
コンコンコン
照『どうぞ』
憩『失礼します、宮永先生』
照『……荒川さん』
憩『まだ働いてはるんですか? もう勤務時間も過ぎてるんですから、お帰りになった方が……』
照『……まだ書類仕事が残ってるから。それを終わらせたら、帰ろうと思う』
憩『終わらせてからって……昨日もそんなこと言って結局病院に泊まってましたやん……』
憩『あんまり無理せんとってください。宮永先生が倒れたりしたら、患者さんにしわ寄せが来るんですから』
照『……私は倒れたりしない』
憩『5日も家に帰ってないんですよ……? 顔色も悪いし……ホンマに無理せんとってください』
憩『3時間って……』
照『それに、夜は急患が多い。人が足りなくて夜勤の人たちだけじゃ手が回らなくなってるときもよくある』
照『緊急のときに対応出来る人間がいないと……人命に関わることだってある』
照『そんな命を救うためにも、私がこうやって待機しておかないと……』
憩『それは確かに、そうですけど……』
照『それに、叩き起こされるよりかは起きている方がマシ。だから心配しないで』
憩『宮永先生……』
照『ナースをこんな遅くまで働かせるわけにはいかない。早く帰って休んで』
照『荒川さんは今日は休みのはず。ここにいることはまずおかしい』
憩『宮永先生がこんなにも遅くまで働いてるのに、ウチが休める訳わけありません……!』
照『……私と荒川さんじゃ立場が違う。これは上の人間の務め』
憩『そんなこと……』
照『帰ってください。上司命令です』
憩『……!』
照『お願いします。荒川さん』
憩「ウチは……先生のお力にはなれないんですか……?』
照『……あなたが辛そうにしている姿は、見たくないです』
照『自分では気付いていないかもしれませんが、荒川さんも相当に顔色が悪いです』
照『まだまだ経験の浅いあなたには……夜勤の仕事は負担が大きすぎる』
照『私としては、あなたに倒れられる方がよっぽど困ります』
憩『先生……』
照『だから、無理をしないでください』
照『休める日にはしっかり休んで、遊ぶときにはたくさん遊んで息を抜いて……』
照『そして、働くときには一生懸命働いてください』
照『患者さんのためにも……私のためにも』
憩『……』ウルウル
憩『駄々をこねて、勝手な事をして……申し訳ないです』
憩『ただ……ここに、宮永先生と一緒におるだけでもダメですか……?』
憩『……!』
照『本当なら、今すぐにでも帰って欲しいですけど……』
照『……言う事、聞いてくれそうにないから』ハァ
憩『宮永先生……ありがとうございます……』
照『こんなところで寝ても、疲れなんて取れないのに……あなたも物好きですね』
憩『……宮永先生が、好きなんです』ボソッ
照『えっ?』
憩『な、なんでもありません! それじゃあ、何か用があったら声かけてください!』
照「了解です。それじゃあ、ゆっくり休んで』フフ
憩『は、はい……おやすみなさい……』
照『おやすみなさい』ニコッ
憩『宮永先生のベッド……ふふ……』
久「緊急病棟で働く外科医とナースよ」フフン
菫「照に白衣まで着せて……」
菫(似合ってるのがまたなんとも……)
竜華「荒川先生も本物のナースみたいやし、話に引き込まれるわ……」
照『荒川さん……荒川さん……』ユサユサ
憩『んぅ……ふぁ……?』
照『起きてください。そろそろ勤務時間ですよ』
憩『ふぇっ……う、うそ、もうそんな時間……!?』
照『はい。あっという間に朝です』
憩『ってことは……宮永先生は……!』
照『まあ、一日くらい寝ないってのは、よくあることですから』
憩『そ、そんな……ウチのせいで……!』
照『深夜に来た急患の対応とかもしてましたし……今日は元から眠れない日した』
憩『宮永先生、ダメです……こんな生活繰り返してたら本当に……』
照『仕事ですから。生き甲斐でもあります』
照『この生活が命を縮めていたとしても……それで死ぬなら本望です』
憩『そんなっ……死ぬなんて、言わんとってください……』
照『お、大げさに言っただけですから。だから、その、そんな顔しないで……』
照『それに、今日の昼頃には仮眠も取れますから……』
照『ほら、呼ばれてますよ荒川さん。早く行ってください』
憩『宮永先生……』
照『命に関わる仕事です、気を引き締めて。それじゃあ』テクテクテク
憩『このままじゃ……いつかホンマに……』
久「フィクションなんだから、あんまりツッコミ入れ過ぎるのは無粋よ?」アハハ
竜華「そろそろ一波乱ありそうやね……!」
菫(清水谷もこういう点は照に似ているな……)
憩『失礼します……宮永先生、いますか?』
照『……』
憩『宮永先生?』
照『すぅ……すぅ……』
憩『寝てる……昼頃に仮眠取る言うてたけど、やっぱり……』
照『……』
憩『全然眠ってないんやろうな……死んだみたいに寝てる……』
憩『仕事には熱心で、院内での信頼も厚くて……患者さんからは好かれてて……』
憩『すごく、綺麗で……』
怜(な、なんやねんこの雰囲気……ま、まさか……)
竜華「……」ドキドキドキ
憩『宮永先生……』ギュ
憩『好きです……宮永先生……』ギュウゥ
照『ん……』
怜「……なんやねんこの脚本」イライラ
久「ふふ……」
竜華「うわぁ……職場恋愛や……甘酸っぱぁ……」
照『すぅ……ん、んぅ……』
憩『ずっと、このまま……』
憩(……宮永さん良い匂いするなぁ)スンスン
照(む、胸があたって……)ドキドキ
憩(っとアカンアカン。話進めな……)
憩『……宮永先生、起きてますか?』
照『すやすや……』
憩『寝てます、よね……』
憩『……』
照(な、なにされるんだろ……)
照(……? 間が長いような……)
憩『……宮永先生。き、キス、してもええですか……?』
照「っ……」
照(き、キス……)
憩『ウチ、ずるいですよね……寝てる宮永先生に、好き放題して……』
憩『でも、ごめんなさい……我慢、できないんです……』
憩『宮永先生……』スッ
照(目、閉じてるから分からないけど……け、気配が……!)
憩(……この子、黙ってたらめちゃくちゃ美人やよな……)
憩(カッコいい系というか、凛としているというか……)
憩(な、何考えとるんやウチは! 生徒に対してこんなっ……でも、本当はこの人年上で……)ドキキドキ
久「くくくっ……」
竜華「き、キス、してまうんかな……」
菫(荒川先生……?)
照「あ、あの……先生……」ボソッ
憩「ご、ごめん……話進めるな」
憩『……んっ』チュッ
照「……!」
照(ほ、ほっぺた……)
憩『う、ウチ、一体なにを……』
照『うぅん……荒川、さん……?』
憩『わわっ……』
憩『ま、まだまだ大丈夫です! お、起こしてしまってごめんなさい……』
照『そう、ですか……それならまだ眠れる……』
照『目覚ましが指定した時間より早く作動したような気分です……』アハハ
憩『ごめんなさい……宮永先生、疲れてはるのに……』
照『気にしないでください……ところで、何か用でも……?』
憩『……!』
憩『ほ、ホンマにごめんなさい! 失礼します!』タタッ
照『あっ……』
照『荒川さん……』
怜「延々とイチャついてるの見せられるってあんましいい気分やないんやけど……」
久「うーん、今で半分くらいかなー……アドリブ次第ではもっと長くなるかもだし」
竜華「荒川先生の片思いが実るんか気になるわ……!」
菫「しかし、照のヤツ普通に役をこなせてるな……」
怜「普段とあんまし変わらん感じやからやろ……てか医者はいつの間に敬語キャラなっとんねん……」
竜華(怜イラついとるなぁ)アハハ
照『まさかあなたの問診をすることになるとは……』
憩『すみません……お手間かけさせてもうて……』
照『別に大丈夫です。こういうことがまったくない、という訳でもないので』
照『足、見せてください』
憩『はい……』
憩『考え事してて、ぼーっとしてた時に……階段、踏み外して……』
照『しっかり者の荒川さんらしくないです……何か悩み事でも?』
憩『えっ……そ、それは……』
照『私には言えないこと?』
憩『っ……』
照『そうですか。……なら、言わなくていいです』
憩『……』
照『軽く固定しときますね。大事を取って、3日は松葉杖を使ってください。もちろん、仕事も休んで』
憩『宮永先生は……気にならないんですか?』
憩『……ウチの悩み事』
憩『……!』
照『でも、無理に聞き出そうとは思いません』
憩『……宮永先生。少しだけ、質問してもええですか?』
照『質問……なんでしょうか?』
憩『……恋人とか、いますか?』
照『……えっ?』
憩『それか、好きな人、とか……』
照『すみません……何の話でしょうか……?』
憩『……ウチの悩みごとに関係ある話です』
憩『それで……どうなんですか? おるんですか? そういう人……』
憩『!』
照『学生時代から勉強ばかり。医師になってからも恋愛をする暇なんて無くて……すみません』
憩『な、なんで宮永先生が謝るんですか!?』
照『その……私は恋愛相談を受けられるような人間じゃないから……』
憩『そ、そんなこと……』
照『そういう話なら、私なんかよりもっと適任な方がいると思いますよ……』アハハ
照『少なくとも、今まで恋愛経験のない私よりかは確実に……』
憩『こんなにも素敵な人やのに、恋愛経験ないなんて……』ボソッ
照『あ、荒川さん?』
憩『もっと、好きになってしまいました……』
照『……えっ?』
照『こ、こんな年にもなって、恥ずかしいですが……』
憩『ってことは、そういう経験も……』
照『さ、察して欲しいです……』
憩『すみません!』
憩『でも、嬉しいです……』ボソッ
照『あの、私の恋愛経験と荒川さんの悩み事になんの関係性が……?』
憩『……ま、また今度お話させていただきますね! ありがとうございました!』
照『あっ……』
照『一体なにを……?』
怜「医者なるってことは大学は確実に出とるから、22以上で……」イライライラ
久「お、園城寺さん。これフィクションだから落ち着いて」
竜華「でも、ホンマにあんなお医者さんおったら素敵やわ……」
菫「アイツに人命なんて間違っても任せられないがな……」
憩『み、宮永先生』
照『どうしました荒川さん? なにか御用ですか?』
憩『明日は、その……お休みですよね?』
照『そうですね……久しぶりに家でゆっくりしようと思います』
憩『もしよければ……今日の夜、一緒にお食事でもどないですか……?』
照『私と……?』
憩『ほ、他に予定があるんやったら大丈夫です! もしよろしければの話で……!』
憩『そ、そんなことありあません! 宮永先生ほど素敵な人なんて他には……あっ。う、ウチは何を……!』
照『ふふ、荒川さんは相変わらず面白い方ですね……』
憩『あぅぅ……』
照『それじゃあ、今日の夜、よろしくお願いします』
憩『は、はい!』
怜「……なんやねんこれ。少女漫画か」
怜「どうせこのあとどっちか酔っぱらって家送るついでにそこに泊まる事になってー、とかっていうべったべた展開やろ……」
竜華「と、怜落ち着いて……」アハハ
久「園城寺さんが暗黒面に堕ちかかってる……ふふっ……」
菫(とっくの昔にお前と一緒に堕ちてるだろ……)
憩『だ、大丈夫ですか宮永先生……?』
照『大丈夫じゃ、ないかもです……』
憩『ご、ごめんなさい……ウチ、宮永先生がこんなにもお酒弱いなんて知らんくて……』
照『言わなかった私が悪いんです……荒川さんは、関係ない……うぅ……』
憩『もうすぐ部屋ですから、頑張ってください……!』
照『はぃ……』
憩『にしても、すごい綺麗なマンション……』
憩『宮永先生、こんな場所で住んでるのにほとんど帰らずに……』
照『うぅ……』
憩『えっと、部屋何階ですか?』
照『3階です……301号室……』
憩『か、鍵もらっときますね』
照『はい……』
照『すぅ……すぅ……』
憩『ね、寝とるの……? この状態で……?』
憩『と、とりあえずベッドまで……電気どこ……?』
照『んぅ……すぅ……』
憩『……やっぱり、日頃の疲れが溜まってるんやろうな……』
憩『台所も洗い物溜まってて……ウチが支えてあげたいわ……』
怜「……チッ」
久「くくく……」
竜華(と、怜不機嫌すぎるわ……もしかして、ホンマに宮永さんのこと……)
菫(園城寺がここまで感情を出してる姿は初めて見るな……)
照『すぅ……すぅ……』
憩『寝かせますね……よっと』
照『ん……』
憩『ふぅ……これで一安心やな』
憩『あとは、帰るだけやけど……』
照『すぅ……すぅ……』
憩『ちょっとくらい、ご褒美もらってええよな……?』
憩(よりによってこの台詞のあとにアドリブ開始って……)
憩(……憧れの宮永先生と一つになって終了)
憩(ホンマにあの子はなんちゅう脚本を……)
久(さーて、どうなるやら)
憩「……宮永先生」ギュゥ
照「ゃっ……」
憩(そ、そんな声出さんとってや……)
憩「ウチ、頑張って家まで送ったんやから……添い寝くらいはいいですよね……」
照(これ、話の流れ的に寝たフリしか出来ない気が……)
憩「だ、大好きです……宮永先生……」ギュー
憩(ウチは一体生徒に何をして……)
久「なんて書いたかなぁ……確かナース役が憧れの先生と一つになって終了で」
怜「」
久「医者役がナースと既成事実を作って終了だったかな」
竜華「そそ、それってつまり……!」アワワ
菫「言い方が違うだけで同じ意味じゃないか……」
久「せっかく先生に参加してもらうんだから、一番難しいの渡したわ」ニコ
憩(てかここからどないしよ……)
憩(ほ、本当に一つになるわけにはいかんし……)
憩(でもこのままじゃ終わられへんし……)
照(既成事実ってなんだろう……)
照(一人で作れるもの? それとも二人で作るもの?)
照(わからない……ここは先生に任せよう……)
憩(一つになる……あかん、どう曲解してもキスくらいしか納得させられそうなんがない……)
憩(……演技なんやし、キスしたフリでええか)
憩「……宮永先生。起きてますか?」
照「!」
照(せ、先生が動いた……)
照「……すやすや」
憩「寝てます、よね……」
憩「寝てる先生にしか何も出来へん臆病なウチを、許してください……」
憩「……」スッ
照「!!」
照(け、気配が……たぶん、今、顔が近づいてきてるような……)
憩「……ん」
怜「っ……!!」
竜華「あわわっ……」
久(キスしてるフリだと思うけど……)
菫(ここから見れば正直わからないな……)
憩(フリとは言え、こんなにも顔近づけてこんなこと……!)
照(め、目を開けられない……)
憩「これからも、ちゃんと支えていきますから……よろしくお願いしますね」ギュッ
照「ん、んぅ……すぅ……」
憩(これ以上は教師として何も出来んのやけど……)
久(うーん、正直、ここからがクライマックスなんだけど……)
久(荒川先生と宮永さんじゃ、ここまでが限界そうね)
久(てかこれ以上やらせると園城寺さんが絶対に止めに入りそうだし)アハハ
怜「……」ゴゴゴゴゴ
竜華「と、怜……」アワワ
久「うん、二人ともお疲れ様です。これにて終了ね」
憩「はぁ……」
照「お、終わり……」
照「ほ、本当に……?」
菫「園城寺の言う通り、普段とそこまで変わりがなかったおかげかもしれないがな」
菫「まあそれを言うなら、竹井以外の私たち三人にも言える事だが」
竜華「いや、でも宮永さんの先生役めっちゃはまってたで。不器用で優しい先生みたいな感じがよく出てたというか」
照「うへへ……」
久「荒川先生もお上手でしたしね」クスクス
憩「褒めても何もでえへんで」ハァ
怜「ホンマお上手でしたね。まるでプライベートでの先生見てるような気分になりましたわ」ジト
照「プライベート?」
竜華「それってどういう……」
憩「な。何を言っとるの園城寺さん?」
憩(もしかして妬いてる……?)
菫「しかし、もうこんな時間か……」
久「今日はここまでね。いやー、昨日と今日、すごく楽しかったわ」
久「ついでに良い練習にもなったでしょ」
((今ついでって言った……))
久「宮永さんなんてあんなにも嫌がってたのに」フフ
照「自分の隠された才能を見つけた」ドヤ
菫「調子に乗るな」
怜「隠された才能見つけた言うんやったら竜華やろ……」
竜華「ふふ、照れるわ♪」
久「ってことで今日はこれにて解散ね。また集まってもらうかもだけど……ま、そんときはよろしくね♪」
照「今から咲たちのところ行かなくちゃ……それじゃあみんな、また明日」
菫「私も待ち合わせがあるから……これで失礼するよ」
久「私は生徒会にでも行ってみようかしら」
怜「ウチは保健室にでも行こうかなー」
憩「帰りなさい」
怜「……ケチ」
竜華「ふふ、先生も付き合わせたせいで忙しいんやって。ほら、帰るで」
怜「ちょ、竜華……」
竜華「で、女たらし序列2位ってなに? ウチそんな話知らんやけど」
憩「ウチが教えたるわ清水谷さん。この子、くじ引きで引いた女の子にキスするっていうふざけた遊びを……」
怜「ちょっ……」
終わり
乙ー
面白かった
>
>憩「……何度も言っとるけど、年齢について他の子に話したら怒るからな」
>
>怜「ウチと憩だけの秘密やな」
>
>憩「先生方は知っとるけどな」
>竜華「誰に電話してたん?」
>
>久「優しい後輩♪」
部長って物知りなんですね
普通に感心した
>>215に関しては部長が知り合いの後輩に指示して先生呼んでもらった、って感じの意図でしたが
後輩=荒川先生の発想はすごく感心しました。思いついてたらそう書いたと思います
では、お疲れ様でした
Entry ⇒ 2012.10.27 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (2) | Trackbacks (0)
あかり「ドッペルゲンガー?」
あかり「うう、すごい雨だよぉ」
ドカーン
あかり「うわっ! 凄く近くに落ちた!」
あかり「おへそ隠して早く帰ろう」コソコソ
――――――――――
――――――――
――――――
――――
――
???「ふふっ…………あっかりーん……」
ちなつ「近くに落ちた跡が残ってたんだって」
あかり「そうなんだ、でも今日は晴れて良かったよぉ」
櫻子「あ、あれ? あかりちゃん?」
あかり「どうしたの? 櫻子ちゃん」
櫻子「おっかしいなー、さっきあかりちゃん教室の前にいたと思ったんだけど……」
あかり「あかりはちょっと前からここにいたよ」
ちなつ「私も一緒だったよ」
櫻子「うーん、見間違いかな?」
櫻子「確かにお団子も二つあったし......」
あかり「あかりの識別そこだけなの!?」
櫻子「あっ、私生徒会の頼まれ事の途中だった!」
あかり「じゃあまた明日」
ちなつ「バイバーイ」
――――――――
あかり「あかりと見間違いなんて珍しいよぉ」
ちなつ(流行ってるのかなこの髪型? いや、そんなバカな……)
結衣「あ、……あかり?」
京子「…………」
あかり「どうしたの? 二人共?」
京子「どうしたの? ……だって?」ガバッ
あかり「キャッ!」
京子「私のラムレーズンを返せ~!」ガクガク
あかり「ちょっ、京子ちゃん!?」
京子「楽しみにとっておいたのをよくも~!」
結衣「京子、落ち着け」ペシ
結衣「それが……」
京子「あかりが私のラムレーズンを食べちゃったんだよ!」
あかり「ええっ! あかりそんなことしてないよ!」アッカリーン
京子「嘘つけ! この~」ムニムニ
結衣「やめろって」ペシ
あかり「そ、そうだよぉ、ずっとちなつちゃんといたんだからそんな時間なかったよ!」
京子「でも見たもん! あの髪型はあかりだった」
ちなつ「クマでも見間違えたんじゃないですか?」
あかり「そっちのほうが大問題だよね!?」
結衣「多分生徒会の誰かが来て食べたんだろ」
京子「そうかなあ……」
結衣「何の『じゃあ』だよ」
ちなつ「櫻子ちゃんもあかりちゃんに似た人を見たらしいですよ」
京子「流行ってるのかなあかりの髪型」
あかり「え、そうなのかなあ……」テレテレ
結衣「なぜ照れる」
あかり「ただいまー」
あかね「あら……あかり?」
あかり「ん? どうかした? お姉ちゃん」
あかね「あかり……さっき帰って来たわよね?」
あかり「今帰ったばっかりだよぉ」
あかね「変ね……確かに……」
あかり「もー、変なお姉ちゃん」トテトテトテ
あかね「私があかりの声を聞き間違えるなんて……」ブツブツ
あかり「さーて宿題を……」
あかり「あ、あれ? あかりこの本出しっぱなしだったけ?」
あかり「それになんか……」
あかり(部屋に違和感が)
あかり(机とか……ベッドの感じとか……なんか……)
あかり(それにこの部屋の空気……)
あかり(さっきまで……誰か……いた?)
ゾクッ
あかり「そ、そんなわけないよね! 気のせい、気のせい」ガラガラ
あかり「よ、よーし、宿題がんばるぞー」
櫻子「まったく、こんなに早くいかなくてもいいじゃん」ブーブー
向日葵「ダメですわ! 私達は今日は日直ですのよ」
櫻子「あ、あかりちゃんだ」
向日葵「聞きなさい!」
あかり「…………」タタタタタ
櫻子「朝早くから何してたんだろ?」
向日葵「さあ? 教室から出て行ったみたいですけど」
櫻子「何か用事かなー?」ガラガラ
ポスッ!!
向日葵「これは……黒板消しトラップ?」
櫻子「うがー! 誰だー、こんなことしたのはー!!」
向日葵「誰って、私たちより早く来た人なんて……」ハッ
向日葵「まさか、赤座さんが?」
櫻子「はー? あんたまだ寝ぼけてんの? あかりちゃんがこんなことするわけないじゃん!」
向日葵「わ、私だってそんなこと思っていませんわ! 日ごろの行いが悪い天罰ですわ、きっと」
櫻子「なんだとー!」
あかり「あ、おはよう二人とも、今日は早いね」アッカリアッカリ
あかり「櫻子ちゃん髪が真っ白だよ! どうしたの?」パタパタ
向日葵「ほっといて良いですわ、それより今日は何かありましたの? 随分早く登校されてたようですけど」
あかり「え? あかり今来たところだよ」
櫻子「え?」
あかり「?」
結衣「あれ? あかりじゃん」
あかり「……」バサバサ
結衣(お菓子をぶちまけてる、……一体何を?)
向日葵「赤座さん?」
あかり「……」ガシャーン
向日葵「い、いつも水をあげてる花瓶を……!!」
京子「あかり! 私の隠してたお菓子取っただろ!」
櫻子「あかりちゃん! 私の漫画どこに持っていったの!」
ちなつ「あかりちゃんが私の手紙隠したんでしょ(ゴゴゴゴゴ)」
あかり「あ、あかりそんなことしてないよ!」
櫻子「絶対あかりちゃんだったよ! 見間違いなわけないもん!」
京子「往生際が悪いぞ! あかり」
あかり「ふぇ、えーん、結衣ちゃ~ん」
結衣「え、えーっと……」
あかり「まさか、結衣ちゃんまで」
結衣「何か悩みがあるなら聞くよ……」
あかり「う、うわーん! みんなのバカー!!」タタタタタ
結衣「悪いことしたかなこれは……」
京子「でも間違いなく、数々の悪行はあかりだったよね」
向日葵「しかしこの目で見たとはいえ、赤座さんがあんなことするなんて考えられませんわ」
櫻子「わかった! あかりちゃんは双子だったんだ!」
向日葵「バカはほっといて……」
櫻子「なんだとー!!」
京子「あかりもストレス溜まってんのー?」
結衣「そういう感じじゃなかったけど」
櫻子「そういえば昨日もあかりちゃんに似た人がいたよね?」
ちなつ「でもそれはあかりちゃんじゃないよ、同じ時間に私といたもの」
京子「同じ時間にそっくりの人間がいた?」
向日葵「それってなんだか……」
結衣「ドッペルゲンガーみたいな話だね」
京子「結衣~、お前ゲームのやりすぎだぞ」
結衣「私だって本気で言ってるわけじゃない」
櫻子「ドッペルゲンガー?」
向日葵「自分とそっくりの人間のことですわね」
ちなつ「自分がみると死んでしまうんでしたっけ?」
櫻子「大変じゃん!」
京子「本当にドッペルゲンガーなんていると思う?」
結衣「そうじゃなくてもやっぱりおかしいよ、あかりも心配だし」
ちなつ「そうですね、じゃあ探しに行きましょうか」
綾乃「まったく歳納京子は、まーたプリントを……」
綾乃「あら?」
あかり「うう、ぐすっ……」トボトボ
綾乃「あなた……赤座さん? どうしたの? 何かあったみたいだけど」
あかり「あ、杉浦先輩……」グスッ
綾乃「あ、赤座さん?」
あかり「うわーん」ダキッ
綾乃「ちょ、ちょおおおお!」
あかり「はい……」
綾乃「それは不思議な伏見稲荷ね、赤座さんには身に覚えはないんでしょう?」
あかり「そうなんです、あかりもう何が何だか……」
綾乃「大丈夫よ、私からみんなに言って分かってもらうから」
あかり「私のこと信じてくれるんですか?」
あかり「杉浦先輩……」ジワッ
綾乃「ま、まあこれくらい生徒会としてはとーぜんのことよ」
あかり「ふふっ、杉浦先輩は優しいんですね」
綾乃(それにしても赤座さんそっくりな人がいるとは……これはなんだか不穏な空気ね)
あかり「杉浦先輩……」ピトッ
あかり「こんなに優しくしてくれたの、杉浦先輩がはじめて……」
あかり「『あかり』は杉浦先輩ともっと仲良くしたいなー」スリスリ
綾乃「な、ななななな」
あかり「真っ赤になる杉浦先輩、可愛い」
綾乃「そ、そんなふしだらなことはいけません!」
あかり「でも杉浦先輩だって京子ちゃんと……」
あかり「あかりは分かってますよ、それに『あかり』だってみんなと仲良くしたいんです」
綾乃「仲良くって、みんな仲が良いじゃない」
あかり「うーん、もっと言うと……」
あかり「『あかり』のモノにしたいんです」
綾乃「!?」
ガラガラ
京子「綾乃ー、あかり見なかった……って」
綾乃「と、歳納京子ぉー!! ちょっと待って、これはちがっ……」
あかり「ふぅ……京子ちゃんは本当にお邪魔虫だよぉ」ギュー
綾乃「赤座さん! ふざけないで!」
あかり「ふざけてなんていません」
あかり「『あかり』は、もっと杉浦先輩と仲良くしたいんですよ」
あかり「だから……」
綾乃「な、な、な]
チュッ
結衣「探すにしたって手掛かりなしだな……」
ガサガサ
あかり「……あ、結衣ちゃん」
結衣「あかり、ごめん、みんな心配してるし戻ろ」
あかり「うん、あかりも大人げなかったよぉ」
結衣「みんなもあかりを探しに行ったから、とりあえず部室に……」
櫻子「あ、船見先輩! 歳納先輩があかりちゃんみつけ……た……」
結衣「え? あかりはもうここに」
ウワー アヤノ ノ クチビル ガー!! コレハ チガウ ノ トシノウキョウコー
櫻子「まじでドッペルゲンガーだったってこと?」
あかり「うわー、本当にそんなことあるんだね~」
結衣「いや、軽いな」
あかり「う~ん、でも何でイタズラなんか……」
結衣「心当たりはある?」
あかり「さっぱりだよぉ~」
櫻子「実はあかりちゃんがしたかったことなんじゃないの~?」
あかり「もー、あかりそんなことしないよぉ~」プンスコ
結衣(なんか嫌な予感がする……)
ちなつ「あかりちゃんどこに行っちゃたの?」
ちなつ「存在感が無いとこういう時に困るわねー」
あかり「ちなつちゃん」
ちなつ「あ、あかりちゃん、良かった、急に出ていくから……」
あかり「……『あかり』はちなつちゃんのことが好きだよ」
ちなつ「は? 急に何言ってるの、あかりちゃん」
ちなつ「え、え?」
あかり「でも、もっと仲良くなればそんなこと気にならないよね、あかりもそう思うよぉ」
あかり「さあ、もっと『あかり』と仲良くしようよ、ちなつちゃん」
ちなつ「ちょっと、やめてよ!」ドンッ
あかり「キスまでした仲なのに……ひどい、ちなつちゃんひどい」
ちなつ(あかりちゃんじゃない……!)
ちなつ「あ、あなた……誰?」ゾクゾク
あかり「あかりは……『あかり』だよ、何言ってるの?」
ちなつ「ちがう、あかりちゃんはそんなこと……」
あかり「本当にそうなの? ちなつちゃんは『あかり』のこと本当に分かってる?」
ちなつ「え……?」
京子「ちなつちゃん! そのあかり捕まえて!」
あかり「チッ……」タタタタタ
ちなつ「京子先輩、あのあかりちゃん」
京子「どうやら本当にドッペルゲンガーみたいだよ」
ちなつ「そ、そうですよね!」
ちなつ(あれがあかりちゃんなもんですか)
綾乃「…………」ポケー
京子「ちょ、ちょっとね……」
結衣「今京子たちが追っかけてるって」ピッ
あかり「ドキドキするねー」
櫻子「わくわくするねー」
結衣「ははは、でもあかりが戻ってきてよかった、これで二人のあかりがいるってちゃんとわかったし」
櫻子「でも一体どうしてこんなことになったんでしょーか?」
結衣「分からないな、あかり、心当たりある?」
あかり「うーん……」
ドタドタドタ
あかり「え? 何」
あかり「あっ!」
あかり?「…………」ニヤッ
京子「追い詰めたぞ! ドッペルあっかりん!」
あかり×2『なにその名前!!』ドッペリーン
京子「うお……どっちだ?」
結衣「こっちに座っていたのが……」
あかり?「必殺……チョーク煙幕!!」ボフッ
モクモクモクモク
ちなつ「う、げほっごほっ」
向日葵「何も見えませんわ!」
結衣「しまった、これじゃあ……」
あかり2「み、みんな~大丈夫……?」
櫻子「混ざった」
京子「これじゃ、どっちがあかりか判断できないぞ!」
あかり1「うわ、本当にあかりそっくりだぁー」
あかり2「うわ~なんだか不思議な気分」
あかり1「はじめまして、赤座あかりです」
あかり2「こちらこそはじめまして、同じく赤座あかりです」
結衣「本当に見分けがつかないぞ……」
あかり1「ちょっと櫻子ちゃ~ん、やめてよぉ」
櫻子「う~ん」サワサワ
あかり2「くすぐったいよぉ、櫻子ちゃん///」
櫻子「全然わかんないや」
向日葵「意味ありましたの? それ」
あかり1「もう……あ、あかりお茶淹れてくるね」トテトテ
あかり2「あかりもお菓子出してくるよぉ」トテトテ
結衣「でもどちらかがイタズラをするドッペルあっかりんだ」
京子「そう! 綾乃の唇を奪ったあかりがこの中にいる」
京子「待ってろ綾乃! お前の仇は私が取る!」
結衣「死んでねーだろ」
ちなつ(でも、たしかにどちらかが『あの』あかりちゃん……)ゾクッ
みんな「ズズー」
櫻子「けどどうしたらいいんだろ?」
京子「本物のあかりしか知らないことを質問したらいいんじゃない?」
結衣「本物のあかりしか知らないこと?」
向日葵「例えば……前のテストの点数とか」
あかり1・2『78点だよぉ』
櫻子「うっわ、私より全然高い」
向日葵「当たり前ですわ」
ちなつ「あってるなー」ガサガサ
あかり2「ちょ、勝手に見ないでよぉ~」
あかり1「ちなつちゃんひどーい」
結衣「それ私たちも知らないだろ」
あかり1・2『えーっと、今日はクラゲパンツだよぉ///』
櫻子「確かめよう!」
京子「おりゃー!!」
あかり1・2「いやああああ!!」アッカリーン
向日葵「やめなさい!」
結衣「二人が同じこと言った時点で意味ねーだろ」
あかり1「うう、ひどい……」
あかり2「あんまりだよぉ……」
結衣「しかしまいったな、この感じだとあかりと同じ記憶を持っているみたいだし」
ちなつ(そういえばキスのことも知ってたな……)
あかり1「どうしよー京子ちゃん」
あかり2「どっちが本物か分かるのかなぁ……」
京子「そもそも、もとから特徴が無いあかりを見分けるのは難しいんだよ!」
結衣「おまえなぁ……」
京子「てゆーかこのままでいいんじゃね? なんか問題ある?」
向日葵「イタズラばかりされたら困りますわ」
京子「二人一緒にいれば大丈夫だろ? イタズラした方がドッペルあっかりんって分かるし」
結衣「綾乃の仇は?」
京子「綾乃はもう犬にかまれたとでも思ってさー……」
あかり2「もう! 京子ちゃ~んひっど~い」プンスコ
あかり1「ひどいよ……京子ちゃん……」
あかり1「ひどいよ、京子ちゃんひどい」
あかり1「『あかり』のこと何にも考えてない」
あかり1「みんなだってそう」
あかり1「だれも『あかり』のことなんて分かってないんだ!!」バンッ
結衣「あかり……?」
あかり1「結局いつもないがしろにされて……」
あかり1「これじゃ『あかり』が可哀想だって、あかりは思ってるよぉ」
あかり1「だからあかりは『あかり』がしたいことをするの」
あかり1「『あかり』が本当にしたいことをね」
結衣(なんだ急に眠気が……)
櫻子「ぐー」zzz
向日葵「うーん」zzz
ちなつ・京子「zzz」
結衣「まさか……お前、お茶に……」
あかり1「さすがは結衣ちゃんだね、西垣先生のところから色々持ってきてよかったよぉ」ニッコリ
あかり1「『あかり』がしたいことだよ」
結衣「く……」ガクッ
あかり(ド)「やっぱり結衣ちゃんは凄いな、『あかり』もずっと頼りにしてたし……あかりも大好きだよ」
あかり「み、みんな……」
あかり(ド)「改めてはじめましてかな?」
あかり「あなたは……誰?」
あかり(ド)「あかりは『あかり』だよ」
あかり(ド)「ちがわないよ、『あかり』とあかりは同じだよ」
あかり「そんなわけないよ! 『あかり』はずっと……あかりだけだよ」
あかり(ド)「うーん、ちょっと考えてみてよぉ、あかりとあかりちゃんで何が違うのかな?」
あかり「性格が違うよ! あかりはイタズラなんてしてないし」
あかり(ド)「性格なんて変わるものだよ、それにあかりちゃんは今まで一度もイタズラしたことないの?」
あかり「それは……」
あかり(ド)「性格の違いだけなら子供の頃の『あかり』は今のあかりちゃんとは別人だよねぇ」
あかり(ド)「けどあかりは、あかりちゃんとそっくりそのまま同じ姿で、同じ記憶も持ってるよ」
あかり(ド)「私が今までの『赤座あかり』は、あかりだったって言えば、それを違うなんて言える人はいるのかな?」
あかり「あかりが証人だよ!」
あかり(ド)「あかりだって同じように言うよ、『あかり』は私、私だけが『赤座あかり』であるってね」
あかり「そんな!」
あかり(ド)「それにあかりちゃんは自分が『本物』って信じてるみたいだけど……」
あかり(ド)「本当にそうなの?」ニヤッ
あかり(ド)「例えばあかりちゃんは私のように同じ姿、同じ記憶で昨日突然生まれたとして……」
あかり(ド)「自分がニセモノだという記憶を忘れちゃったとしたら?」
あかり「!?」
あかり(ド)「それで例えば『本物』はどこかで行方不明になっていたとしたら?」
あかり(ド)「きっとニセモノだっていう自覚のないあかりちゃんはいつもと同じように学校に行って、部活をして、家に帰って」
あかり(ド)「普通に生活してると思うよ」
あかり?「そんな……そんなこと……」
あかり(ド)「あかりがあかりちゃんの真似をしたら誰も分かんなかったもんね~、断言するけど他人は絶対気付かないよ」
あかり(ド)「ねぇ、もし今扉が開いて、もう一人赤座あかりが現れたとしたら? それで『昨日の雨で崖から落ちちゃったよ~』って言ったとしたら」
あかり(ド)?「あかりちゃんは自信をもって『私が赤座あかりだ』と言える?」
あかり?「ねぇ、例えば私が今あかりちゃんを殺して……」グイッ
あかり?「んんっ」
あかり?「ドッペルゲンガーは消えちゃったって言えば……」スッ ボクトウー
あかり?「い、いやっ……」
あかり?「どうなると思うっ!!」ブンッ
あかり?「いやあああああああああああああああ!!」
あかり「え…………?」
あかり(ド)「ふふっごめんね、冗談だよ」ギュッ
あかり「なっ、何を?」
あかり(ド)「あかりは別に本物になりたいわけじゃないよ、もちろんあかりちゃんが本物」
あかり(ド)「あかりはあかりちゃんとも仲良くしたいんだよぉ」スリスリ
あかり「そ、そうなんだ……」ホッ
あかり(ド)「あかり、あかりちゃんにもっと幸せになってほしいんだ」
あかり「じゃあ、どうしてイタズラなんかしたの?」
あかり(ド)「あかりちゃんがしたいことをしたんだよ」
あかり(ド)「京子ちゃんや櫻子ちゃんにイタズラしたのは、いっつも無茶を言うお返し」
あかり(ド)「お菓子はアリさんにもっと美味しいものをあげようと思ったから」
あかり(ド)「花瓶はもっときれいなモノの方がお花さんもいいかなと思ったし」
あかり(ド)「ちなつちゃんともっと仲良くしたいから、結衣ちゃんと恋人さんにならないように手紙は隠しちゃった」
あかり(ド)「もちろん結衣ちゃんとも仲良くしたいし、他の人とも、もっともっと仲良くなりたいな」
あかり「でも、他の人に迷惑かけちゃダメだよぉ……」
あかり(ド)「あかりちゃんも望んでいることでしょ?」
あかり「あかりはそんなこと望んでないよ!」
あかり(ド)「本当に? 心の底ではそうしたかったんじゃない?」
あかり「そ、そんなこと……」
あかり(ド)「もっと素直になろうよ、あかりちゃん……」スルスル
あかり(ド)「あかりちゃんも本当はもっといろんなことをしたいと思ってる、だから私が代わりにしてあげる」チュッ
あかり「んんっ///」
あかり(ド)「ひとつになろうよ……あかりちゃん」レロ
あかり「やだ……怖い……」フルフル
あかり(ド)「気持ちよくしてあげるよぉ、大丈夫、あかりに任せて……」
あかり「助けて……みんな」
あかり(ド)「どうしてあかりを拒否するの? あかり悲しいよぉ」
あかり「こんなの間違ってるよ……、あかりたち、女の子同士……」
あかり(ド)「そんなこと気にしなくていいよぉ……」
あかり(ド)「京子ちゃんも結衣ちゃんもちなつちゃんも櫻子ちゃんも向日葵ちゃんも杉浦先輩も池田先輩もお姉ちゃんも」
あかり(ド)「みんなで仲良くなって、気持よくなって」チュパチュパ
あかり(ド)「とっても幸せだよね」ニコッ
あかり「あ、んんっ……はぁ、はぁ……」
あかり(そうかな……そうなのかな? ダメ、あかりもう、何も考えられない)
あかり(ド)「あかりに任せてひとつになろうよ、あかりちゃん」
あかり(きもちいい……幸せ……)
ザー ザー ゴロゴロ
ドカーン
結衣「……うっ」
結衣「何? 雷……あかり、そうだ、あかりは!?」
みんな「う、うーん……」
結衣「あかり! しっかりしろ」ペシペシ
あかり「う、ううん、あ……結衣ちゃん」ムニャムニャ
櫻子「ああれ? もう一人のあかりちゃんは?」
向日葵「大丈夫ですの? 赤座さん、服がはだけてますわよ」
結衣「あかり、あいつは……」
京子「消えちゃったのかな?」
ちなつ「うーん……それより、あかりちゃんは本物のあかりちゃんだよね?」
あかり「え?」
(あかりちゃんは自信をもって『私が赤座あかりだ』と言える?)
あかり「……うん、あかりはあかりだよぉ」ニッコリ
ちなつ「そう、良かった……」
あかり「もう大丈夫だと思うよ……なんとなくそんな気がするの」
京子「まあ、あかりが言うなら……」
向日葵「けど結局なんでしたの?」
櫻子「ドッペルゲンガーか……」
あかり「それよりみんな、この雨だと帰れないよぉ」
向日葵「しばらく雨宿りするしかありませんわね……」
あかり「じゃああかりお茶を入れてくるよ」
ちなつ「動いて大丈夫なの?」
あかり「動いてた方が楽なんだ~」ガラガラ
京子「けど本当になんだったんだ?」
結衣「みんなあかりに迷惑かけ過ぎなんだよ、本物がああなっても私は驚かないよ……」
櫻子「そうかなぁー?」
向日葵「あなたに関して間違いありませんわ!」
あかり「ふふっ……」
あかり「待っててね『あかり』ちゃん、すぐみんなと仲良くなるよぉ」
あかり「心配しないで、みんな気持ちよくって、幸せになれるからね」
あかり「ふふふふふふふふふふふふふふ……」
おわり
我ながらわけのわからんものが出てきたなと思う
見てたと人とか支援してくれた人はありがとう
良い電波でした
Entry ⇒ 2012.10.27 | Category ⇒ ゆるゆりSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
美希「ただいま戻りましたなのー!」
765プロダクション――
ガチャリ
美希「……あれ?だれもいないの?」
P「すぅ……すぅ……」
美希「あっ、ハニー!」
美希「小鳥も律子、さんもいないし……」
美希「起こすのも悪いよね。とにかくソファーでゆっくりしようっと。あふぅ」
美希「……ん?ハニーの目の下……クマができてる……」
美希「そういえば顔色もあんまりよくないの……疲れてるのかな……?」
美希「ということでまずはお掃除なの☆ ハニーを起こさないように気をつけなくちゃ」
美希「ふんふんふーん」サッサッ
美希「ソファーの下も埃だらけなの」
美希「んんーっ!このソファー思ったより重いの……」
ガタッ!
美希「あっ!」クルッ
P「すぅ……すぅ……」
美希「よかった~。起きてないの」
美希「……これでよしっと」
美希「ライブの企画書を書いてる途中なの」
美希「パソコンつけたまんまだから、居眠りだよね……どうしよう。ハニー……」
美希「美希たちのために、こんなに疲れ果ててまで……」
美希「……よーし!決めたの!事務所のザツムを手伝うの!」
美希「意外と整理されてるの。雪歩がお掃除でもしてるのかな」
美希「……うわあ、と思ったら生ゴミがすごいの……」パカッ
美希「どうしよう。これは小鳥に任せた方が……」
美希「……ううん、ダメなの。もしハニーが先に見つけたら捨てに行くに決まってるの」
美希「この袋ごと捨てていいんだよね?」ドサッ
美希「端っこを結んで」ムスビメギュッ
美希「たるき亭の小川さんに捨てる場所を聞いてみよっと」
■数分後
美希「なるほど。ここがゴミ捨て場所なの」
美希「生ゴミはここかな?」ドサッ
美希「ふうっ。一件落着なの」
再び事務所へ――
トテトテ、ガチャリ
美希「ふふっ。まだハニーはお休み中なの」
美希「みんなが帰ってくる前にいろいろ準備しようっと」
美希「そういえば、ハニーは起きたらいつもコーヒーを飲んでたよね」
美希「目が覚めた時のために今度はコーヒーを作るの!」
美希「……ミキコーヒーメーカー使ったことないの。でもなんとかなるよね」
美希「……コーヒーの粉ってどこにあるのかな」
美希「あ、小鳥?」
小鳥『美希ちゃん?どうかしたの?』
美希「コーヒーの粉って、どこに置いてあるか教えてほしいの」
小鳥『コーヒー?美希ちゃんコーヒー飲むの?』
美希「んーまあそういうことにしてほしいの」
小鳥『わ、わかったわ。でも、ちょうど今切れちゃってるのよ。帰りに買って行こうって思ってたところで』
小鳥『あら、じゃあお願いしてもいいかしら。ちなみにコーヒーメーカーを使うときは、豆から買ってきてね』
美希「粉じゃダメなの?」
小鳥「粉だと酸化が早いから保存がきかなくてね。それに、味も美味しいし」
美希「わかったの!」
小鳥『ありがとう。帰りにおにぎり買っていくわねー』
美希「うん、待ってるね。バイバーイ」ピッ
美希「いざ、しゅっぱーつ、なの」
美希「ハニー、もう少し待っててね」
P「すぅ……すぅ……」
美希「行ってきますなの!」
近所のスーパー――
美希「うわあ、主婦でイッパイなの……」
美希「もやし、特売セールかあ。やよいが喜びそうなの」
やよい「あれ?もしかして美希さんですか?」
美希「あ、やよい!」
やよい「こんにちは!美希さんもお買い物ですか?」
美希「うん。コーヒーの豆を買いに来たの!」
やよい「コーヒーですか?それでしたら、あっちにありますよー!ついてきて下さい!」
美希「おおー、やよい頼りになるの!」
美希「やよいはよくここのスーパーに来るの?」
やよい「はい!いつも晩ご飯のおかずはここで買うんですよー!」
やよい「今日はもやし祭りですー!」
美希「美味しそうだね。今度美希も招待してほしいな」
やよい「うっうー!美希さんならいつでも大歓迎ですよ!」
美希「じゃあ楽しみにしてるね?」
やよい「はい!」
やよい「……と、それより、美希さんはどうしてコーヒーを買いに来たんですか?」
美希「ちょっとお使いなの。コーヒーの粉がなくなってて、ハニーのコーヒーが作れなかったから買いに来たの」
やよい「なるほどー。美希さんはプロデューサー思いなんですね!」
やよい「うっうー!私も負けてないですよー?」
美希「ふふっ。それじゃミキと勝負だね。ハニーは渡さないの」
やよい「私も頑張りますー!」
美希「のぞむところなの!……あ、あったの!……豆はコレしかないみたいだね」
やよい「あ、それプロデューサーが飲んでたコーヒーと一緒ですー」
美希「やよい、知ってるの?」
やよい「はい!プロデューサーが豆を挽いてた時に見た袋なんです」
美希「ホント?じゃあちょうどいいの。これにしようっと。一つでいいかな?」
やよい「予備もあった方がいいと思いますよー!」
美希「分かったの!」
やよい「えへへー、どういたしまして!それじゃ、また明日ですー!」トテトテ……
美希「さてと。急がないとハニーが起きちゃうの」
■PM:4:54
三度事務所へ――
ガチャリ
美希「ハニー?」
P「すぅ……すぅ……」
美希「よかった。まだ起きてないの。よほど疲れてたんだね……」
美希「よーし、早速コーヒーを作るの!」トテテ
小鳥『もしもし?美希ちゃん?』
美希「豆を買ってきたんだけど、どうやって粉にすればいいの?」
小鳥『それなら、棚に豆を挽くコーヒーミルっていう機械があるから、それを使って挽くのよ』
小鳥『豆をセットして、上についてるハンドルを回して使うの』
美希「……あ、コレかな。ありがとうなの」
小鳥『どういたしまして。でも、急にコーヒーなんて珍しいわね』
美希「ハニーのためなの!」
小鳥『あ、そういうことだったのね』
美希「うん。それじゃ、小鳥も早く帰ってきてね」
美希「早速やってみるの」
美希「豆をセットして、っと」
美希「わあ、結構面白いの!」ガリガリ
美希「あ、でも、あんまり音を立てるとハニーが起きちゃうかも……」ソロソロ
~数分後~
美希「できたの!」
美希「えーと、ここにお水をいれて、フィルターはここかな?」
美希「粉をいれて……」
美希「このボタンでいいのかな?」ピッ
美希「おおー、動き出したの。コーヒーメーカー、いい仕事するの」
美希「コーヒーの匂いがする……。いい匂いなの」
美希「こっちは律子、さんの書類で、こっちがハニーので。これは全部小鳥の書類かな」
美希「わあ、すごいの。ライブの記録が全部残ってる」ペラッ、ペラッ
美希「これはオールスターライブの時で、あ、これはミキの初めてのライブ!」
美希「全部、ハニーのおかげで成功できたんだ……ありがとう、ハニー」
美希「……はっ!感傷に浸ってる場合じゃないの。片づけないと……」
ドン、ドサッ、バラバラ
美希「わあっ!」ドンガラガッシャーン
P「うん?……うぇ、なんじゃこりゃ!」バッ
P「美希!大丈夫か?」
美希「いたた……段ボール箱乗せたらバランスが崩れて本棚が倒れてきたの……あ、ハニー!」
P「怪我はないか?」
美希「うん、ミキは大丈夫だよ。でも、ハニーが……」
P「え?俺は何ともないぞ」
P「あ、ああ。なんだそんなことか。ていうか、寝ちまってたのか俺」
美希「そんなことじゃないの。ハニー、クマが出来てるの……」
P「え、マジで?」
美希「それに、顔色も悪いの。ハニー、正直に答えて。寝てないんでしょ?」
P「……い、いや、寝てるぞ?」
美希「ウソなの。ハニー、とっても疲れた顔してるの」
P「……まあ、ここ4日ほどは仮眠を1時間とるくらいしか寝てないな」
美希「やっぱりなの。ミキたちのために、こんなに……」
美希「よくないの。ミキは……ミキはそんな疲れてる顔、ハニーにしてほしくないの……」
P「美希……」
美希「ミキ、少しでもハニーに楽してもらおうと思って、事務所のザツムをやってみたの。でも、本棚の整理が大変で……。逆にハニーに迷惑かけちゃったの……ごめんなさい」
P「……いいや、迷惑じゃないさ。他にはどんなことをしてくれたんだ?」
美希「お掃除したり、ゴミを出したり、ハニーのコーヒーを作ったりしたよ」
P「そっか。十分だよ、ありがとな。俺も体調管理は気をつけるから」
美希「ハニー……!」
P「さて、みんなが帰ってくる前にコイツを片づけるぞ」
美希「うん。でもハニーは休んでて。これは美希が片づけるの」
美希「でもハニーは寝てなきゃダメなの」
P「……そうだなあ。じゃあ二人で片付け終わったら、美希に膝枕でもしてもらおうか。その方がゆっくり休めそうなんだけど、ダメ?」
美希「……! もちろんいいの!」
PM6:31
765プロダクション
小鳥「ただいま戻りましたー」
律子「おかえりなさい。そういえばどこ行ってたんですか」
小鳥「あ、社長と一緒に、新しく業務提携を結ぶレコード会社に挨拶に行ってたんです。最近はみんな人気が出て、あちこちからお仕事が舞いこんできますから」
律子「なるほど。てっきり仕事をさぼって飲んでたものとばかり」
小鳥「ピヨ!私どんなイメージなんですか!」
律子「冗談ですよ。それより、あんまり大きい声出さないでくださいね」
小鳥「え?何かあったんですか?」
律子「アレですよ、アレ」ユビサシ
P「すぅ……すぅ……」
美希「すぅ……すぅ……んぅ、はにぃ……」ムニャムニャ
小鳥「あら、すてき」
律子「美希がソファに寝てるのはいつもの事ですけど、その膝でプロデューサーが寝てるのは珍しいですね」
小鳥「やっぱり、疲れてらしたんですね」
小鳥「あ、そういえば……。律子さん、コーヒーあります?」
律子「ポットに沸いてますよ。帰ってきたらコーヒーの匂いがしたんですけど、プロデューサーが淹れたんですかね?」
小鳥「ちゃんと作れたのね……ふふっ」
律子「? どうかしたんですか?」
小鳥「いえ、それより、美味しかったですか?」
律子「ええまあ、いつも通りのコーヒーですよ」
小鳥「それじゃ、後で美希ちゃんにお礼、言ってあげてくださいね?」
律子「え?美希にですか?」
小鳥「じつはですね――」カクカクシカジカ――
スヤスヤ……
美希「はにぃ……大好き……なの」ムニャムニャ
Fin
おまけ
PM10:27
P宅
P「ふー、さっぱりした~」ゴシゴシ
P「ん、もう10時半か。ちょっと長風呂しすぎたか」
P「さて、今日は美希のおかげで体力バッチリだ。もう少し残った書類を――」
グッバイ、メモリーズコノオーモーイデーハルカゼマウヒーダマリノー♪
P「ん?美希から着信?こんな時間にどうしたんだ?」
P「もしもし?」
美希『あ、ハニー!こんばんはなの』
P「どうかしたのか、こんな時間に」
美希『ハニー今何してる?』
P「え?風呂上がったところだけど……」
美希『そっか。今日はもう寝なきゃダメだよ?』
美希『もしかしてまたお仕事の続きやろうとしてたでしょ?』
P「はあ……美希には適わないな、まったく」
美希『やっぱりなの。最近ハニーは頑張り過ぎだって思うな。体調管理は大事だよ?』
P「あはは、まさか美希から説教を食らう日が来ようとはな。わかった。今日からゆっくり休むよ。心配してくれてありがとう」
美希『ううん、ハニーが倒れちゃったらヤだから。ハニーにはいつも元気でいてほしいの!』
P「そうだな。ちょっとばかり働きづめてたよ。これから気をつける」
美希『うん。ならいいの』
P「ありがとう。さ、もうこんな時間だ。明日も仕事なんだから、早く休めよ?」
美希『それはお互いさまなの』
P「あはは、だな。じゃ、切るぞ」
P「おう、おやすみ」ピッ
P「……仕方ない。こいつは明日にするか」
P「つけたばっかだけど、シャットダウンだな」
ピロリーン、ユーガッタメールナノー
P「ん?今度はメール?」
From:美希
subject:無題
一つ言い忘れてたの。もしハニーがまた眠くなったら、いつでもミキの膝、使っていいからね?ここはハニー専用なの!あはっ☆ (^_-)v
それじゃ、おやすみ!
P「……かわいいやつめ」
P「わかったよ、っと」ソウシン
P「さてと、今日はいい夢が見れそうだ」
一度でもここを開いてくださった方、支援して下さった方、ありがとうございました!
美希はかわいいなぁ
でもせっかくミキが作ったハニーの為のコーヒーを律子、さんが飲むなんて酷いって思うな
Entry ⇒ 2012.10.27 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
星空みゆき「獅子咆哮弾?」響良牙「ハッピーシャワー?」
キャンディ「楽しみクルー!」
あかね「ええ天気や!絶好のアウトドア日和やで!」
なお「早く山頂を目指そうよ!みんなでお弁当を食べよう!」
やよい「待って、なおちゃんゼーゼーわたしそんなに速く、歩けない......」
れいか「焦らずゆっくり行きましょう。お昼までもう少しありますから」
あかね「それにしても、ウチら以外にもピクニックに来てる人結構おるんやなぁ」
みゆき「ほんとだね。あ、見て。すごく大きなリュックサックを背負ってる人が居るよ。あの人もピクニックかな?」
良牙「風林館高校はどこだー!?」
やよい「あの人は多分ピクニックじゃないんじゃないかな......」
れいか「なにやら道を探しているようですが」
みゆき「迷子なのかな。でもこの登山道一本道だよ?」
あかね「なんにしても困ってるんやったら助けてやらんとな。おーい兄さーん!そんなに焦ってどないしたんやー!?」
良牙「ん?あんたたち地元の人間か?」
良牙「いや、ちょっと道に迷ってしまってな」
れいか「どちらに行かれるおつもりなのですか?」
良牙「風林館高校を目指してるんだが、お前たち知らないか?」
なお「風林館高校?聞いたことないなぁ」
やよい「わたしも分かんないや」
良牙「簡単な地図ならここに」
あかね「これ東京と違うか?」
みゆき「ここ栃木だからもっと南だよ」
良牙「そうか南か。ありがとう、助かる」
なお「というかお兄さんの荷物大きすぎない?旅でもしてるの?」
れいか「どこか遠方から来られたんですか?」
良牙「いや、風林館高校の隣町から出発したはずなんだが気づいたらこんなところに」
一同(極度の方向音痴なんだ......)
良牙「とりあえず目指す方向が決まって助かった。それじゃ」スタスタ
やよい「なんだか怖そうな人だったね」
れいか「そうでしょうか?真面目な好青年といった印象でしたが」
なお「でも威圧感はあったよね。体格が良かったし」
あかね「せやな。荷物も軽々かついどったしな」
みゆき(なんだか、どこか寂しい感じのする人だったなぁ......)
子ども「パパ!ママ!早くー!」
男「最初に張り切りすぎると後でバテちゃうぞ~」
女「ママ腕によりをかけてお弁当作ってきたから山頂で食べましょうね」
アカオーニ「ただ山に登るだけなのにみんな幸せそうオニ!ムカつくオニ!」
アカオーニ「バッドエンドに染めてやるオニ!」
良牙「ん?なんだあの変な格好をした大男は?」
アカオーニ「世界よ!最悪の結末、バッドエンドに染まるオニ!白紙の未来を黒く塗りつぶすオニ!」
良牙「な、何だこれは!?ち、力が…」
アカオーニ「人間どもの発したバッドエナジーが悪の皇帝ピエーロ様をよみがえらせていくオニ!」
キャンディ「あそこクルー!」
子ども「ピクニックなんていいから部屋に引きこもりたい…」
男「家族サービスめんどくせぇ…」
女「海外旅行とか行きたい、今時ピクニックって…」
れいか「アカオーニ!これはあなたの仕業ですね!」
やよい「見て、さっきのお兄さんもいるよ」
良牙「どうせまた道に迷ってしまうに決まってる…」
アカオーニ「いっつもいっつもしつこいオニ!この青っ鼻で片づけてやるオニ!出よ、アカンベー!」
リュックアカンベー「アッカンベ~!」
あかね「あ、兄さんのリュックが!」
良牙「あ、かね…」ピク
一同「プリキュア!スマイルチャージ!!」
中略
一同「輝け!スマイルプリキュア!」
アカオーニ「アカンベー!プリキュアどもをやっつけるオニ!」
良牙「あかね、さん…」
サニー「うわ!頭からリュックサックの中身を取り出して手当たり次第投げつけて来おる!」
マーチ「く、この攻撃のせいで迂闊に近寄れない」
ビューティ「わたしが何とかします。プリキュア!ビューティブリザード!」
パキィン
ハッピー「うまい!足下を凍らせて動きを封じた!」
ピース「いや、待って!」
アカンベー「アッカンベ~」シュボ メラメラ
サニー「ライターを取り出して氷を溶かしおった…」
アカンベー「アッカンベ~」 ビュンビュン
ピース「今度はバンダナを取り出して振り回し始めたよ!?」
良牙「あかねさんは、乱馬と結婚を…」ズズズ
サニー「兄さん何でバンダナなんか持ち歩いとるんや?」
アカンベー「アッカンベ~」ビュン
マーチ「うわああああああ!」
ハッピー「マーチ!」
アカオーニ「いいオニ!もっとやるオニ!」
良牙「俺は、あかねさんとは、結ばれない…」ぐももももも
良牙「気が重い…」
サニー「でもどうやってや?青っ鼻には技も効かへんで!?」
良牙「俺は…」
ハッピー「みんなあきらめないで!何か手があるはずだよ!」
良牙「不幸だ…!」シュウウウウウウウウウ
良牙「喰らえ!獅子咆哮弾!」
ドオオオオン
一同「!?」
アカンベー「ア、アッカンベ~!」 スザアアア
アカオーニ「な、なんだオニ!?アカンベーが吹き飛ばされたオニ!」
ハッピー「な、なに今の?」
ビューティ「今、ハッピーシャワーのような技が…」
マーチ「アカンベーを吹き飛ばした?」
ピース「でも、青い鼻のアカンベーに技は効かないんじゃ…?」
サニー「今の、兄さんがやったんか?」
ハッピー「う…ごめーんお兄さん。わたしたちがさっきの五人組かどうかは秘密なの~」アセアセ
サニー「って、それをいったらバラしとるんと同じやないか!」
アカオーニ「どうなってるオニ!あの男は何者オニ?青っ鼻に技は効かないんじゃないオニ?」
ビューティ「説明は後です。アカンベーを倒すのに協力していただけないでしょうか」
良牙「あの化け物のことか」
ビューティ「そうです。さっきの技をもう一度撃っていただくことはできますか?」
良牙「ああ、いけるぜ」
ビューティ「その技を、もう一度アカンベーにたたき込んでほしいのです」
サニー「それならレインボーヒーリングを奴にたたき込めるな!」
ピース「お願いしますお兄さん!平和を守るためなんです!」
良牙「いまいち飲み込めないが、あの化け物は放置するのはマズそうだ。いいぜ、もう一度獅子咆哮弾をお見舞いしてやる」
キャンディ「わーい!ありがとうクルー!」
キャンディ「キャンディは人形じゃないクル!」
良牙「人形じゃない、ってことは…可哀想に、おまえはどの呪泉郷で溺れたんだ?」
キャンディ「じゅせんきょうって何クル?」
アカオーニ「何をごちゃごちゃ言ってるオニ!アカンベー、今の内にやっちゃうオニ!」
アカンベー「アッカンベ~」シュッ
キャンディ「キャンディは人形じゃないクル!」
良牙「人形じゃない、ってことは…可哀想に、おまえはどの呪泉郷で溺れたんだ?」
キャンディ「じゅせんきょうって何クル?」
アカオーニ「何をごちゃごちゃ言ってるオニ!アカンベー、今の内にやっちゃうオニ!」
アカンベー「アッカンベ~」シュッ
サニー「あれはウチらでくい止めるんや!兄さん、頼んだで」
サニー「プリキュア!サニーファイヤー!」チュドーン
ピース「プリキュア!ピースサンダー!」チュドーン
マーチ「プリキュア!マーチシュート!」チュドーン
良牙「うお!おまえらこんな技まで使えるのか!?」
ハッピー「プリキュア!ハッピーシャワー!」チュドーン
良牙「なにぃ!?俺の獅子咆哮弾そっくりだ!」
キャンディ「今クルー!」
良牙「お、おう!ん゛~~~(あかねさん…)」
良牙「獅子咆哮弾!」 ドゴオオン
ビューティ「今ですみなさん!」
中略
一同「レインボーヒーリング!」
アカオーニ「悔しいオニ!次はこうはいかないオニ!」
やよい「やったぁ!アカンベーを倒せた!」
良牙「おまえら、いつもあんな化け物と戦ってるのか?大変だな」
なお「そうだよ、アカンベーを吹き飛ばすなんて」
あかね「凄かったなぁ!ハッピーシャワーみたいやったで 。なぁみゆき」
みゆき「そ、そうだね…」
みゆき(確かに、構えや技そのものはそっくりだったけど、)
みゆき(なんだか、いやな感じのする技だった…)
やよい「それだったら一緒にピクニックしませんか?」
なお「それいいね!山頂でお弁当でも食べながら話そうよ」
良牙「いいのか?」
あかね「遠慮はいらんで!ウチのお好み焼き分けたるわ」
あかね「そうや。ウチのお好み焼きは美味いで!」
良牙(右京みたいな奴だな)
良牙「じゃあ山頂を目指そう。俺は響良牙、よろしくな」
キャンディ「キャンディはキャンディクル!」
やよい「黄瀬やよいです」
なお「緑川なおです」
れいか「青木れいかと申します」
あかね「日野あかねや」
良牙「あかね!?」
あかね「どうしたんや、びっくりして?」
あかね「兄さんは良牙さんやな。ウチらの名前は覚えてくれたか?」
良牙「ああ。そっちからキャンディ。みゆき。やよい。なお。れいか。あかね、さん…」
あかね「って、なんでウチだけさん付けなんや!?」
良牙「す、すまん。だがこればかりはちょっと…」
良牙(だああ!他人とは言えなんか呼び捨てできないぜ!)
良牙「へぇ。変身して戦う伝説の戦士プリキュアねぇ」
キャンディ「そうクル!世界がバッドエンドに染まるのを阻止するクル!」
れいか「それで響さんにお伺いしたいのですが、先ほどの技は一体?」
良牙「獅子咆哮弾のことか」
みゆき「獅子咆哮弾?」
良牙「あぁ。不幸な気分を溜めてそれを撃ち出す技だ」
良牙「嫌なこと考えて重くなった気分を闘気に変えて撃つだけの簡単な技だ」
れいか「なるほど。バッドエンド空間での不幸な気持ちを撃ち出したというのですね」
良牙「あぁ。凄く嫌なことを思い出してしまったからな。気づいたら撃ってた」
なお「てことは浄化の力じゃないんだ」
あかね「凄い技やな。やるやん良牙さん!」
みゆき「あれはね、スマイルパクトっていう道具に力を込めるとでてくるの」
良牙「スマイルパクト?」
れいか「変身したり技を使ったりするためのアイテムです」
良牙「なるほど。さっきの技はこのアイテムがないとでてこないわけか」
やよい「そう。だからなくしちゃうと大変なの」
良牙「特定の感情に依存しない点は便利そうだが対価もあるんだな」
あかね「その獅子咆哮弾っちゅう技には対価はないんか?」
良牙「特にないぜ。極端に疲れることもないし道具もいらねぇしな。ローリスクハイリターンってやつだ」
みゆき(本当にそうかな...?)
みゆき(そんなの絶対ハッピーじゃない)
みゆき(なにをリスクに感じるかなんて人それぞれ)
みゆき(でも、わたしならそんな技はいやだ)
みゆき(できれば、良牙さんにあの技は使ってほしくないな…)
良牙「ちなみにおまえ等の技はどんな技なんだ?」
なお「わたしの技は『マーチシュート』、風の球をだしてそれを蹴って相手にぶつけるんだ」
やよい「わたしの技は『ピースサンダー』、両手をピースの形にしてそこから雷を発射するの」
あかね「ウチの技は『サニーファイヤー』、炎の球をだしてそれをアタックして敵にぶつけるんや」
良牙「ハッピーシャワー?おい、みゆきのだけなんか路線が違わないか?」
みゆき「う、それは言わないで...」
良牙「ま、いいや。最初は獅子咆哮弾に似てるから興味があったがどうでもよくなった」
みゆき「え?」
良牙「もし俺にもできる技なら教えてもらおうと思ったが無理なようだな」
みゆき「良牙さんハッピーシャワー使いたいの?」
良牙「俺も武闘家の端くれだからな。強くなれる可能性があるなら使いたかったんだ」
良牙「それじゃ俺はそろそろ旅を再開する。お好み焼き美味かったぜあかねさん」
あかね「店にきてくれたらいつでもご馳走するで!」
やよい「今度はまよわないようにね」
なお「無事着けるといいね」
みゆき「無理しないでね」
キャンディ「また遊ぼうクル~!」
良牙「あぁ、また会えたらな」
テレビ「北海道に生息していたエゾオオカミは人間による駆除や気候、病気などが原因で絶滅したと考えられており…」
ウルフルン「く~なんて可哀想なんだエゾオオカミ!」
テレビ「本日は絶滅したエゾオオカミの特集でした。また来週お会いしましょう」
ウルフルン「くそー人間どもめ!自分たちの都合でエゾオオカミにひどいことを!」
ウルフルン「よーし!北海道に行ってエゾオオカミたちの弔いをしてくるぜ!」
ウルフルン「エゾオオカミの敵は討ってやるぞー!」
-北海道某公園-
キャンディ「涼しいクル~」
やよい「ホント、北海道は涼しいね~」
あかね「厳しい残暑なんか忘れてまうな」
みゆき「ふしぎ図書館があれば暑いの我慢しなくてすむね」
なお「あれ?あそこにいるのって?」
良牙「風林館高校はどこだー!」
良牙「む、おまえたちはこの間の。何でこんなところに?」
あかね「それはこっちの台詞やで」
良牙「俺はただ東京目指して南に向かって旅をしていただけだ!」
れいか「南…?ここは日本の最北端、北海道ですけど…」
良牙「なんだって!?そんなバカな!」
一同(想像以上の方向音痴なんだなぁ…)
あかね「ちょっと涼みにな」
キャンディ「ふしぎ図書館のワープを使って来たクル」
良牙「ワープ?」
れいか「わたしたちはある方法を使って瞬間移動することができるんです」
なお「今年は残暑が厳しいから涼しいところでのんびりしたかったんだ」
良牙「そいつは便利だな。心底うらやましいぜ」
れいか「どうしたのですか?」
良牙「なんでもない、行こう」
なお「良牙さん私のお弁当も少し分けてあげるよ」
やよい「わたしの卵焼きもあげる」
れいか「わたしの焼き魚も分けてあげます」
みゆき「わたしのタコさんウインナーも」
あかね「今日もお好み焼き弁当持ってきてるから分けたるで」
良牙「本当か!?最近ろくなもん食ってないから助かるぜ」
なお「じゃあどこかでお弁当広げて食事にしようか!」
やよい「じゃああそこのため池の近くなんてどう?」
みゆき「いいね、あそこで食べよう!」
良牙「うっめー!久しぶりだぜこんな美味い飯!」
キャンディ「みんなお料理上手クル~」
あかね「よろこんでもらえてなによりやで」
やよい「っていうかなんで傘さしてるの?」
良牙「ね、念のため…」
一同「?」
みゆき「あれ、水筒のふたが硬くて開かないや」
あかね「どれ貸してみ。おりゃー!」ギリギリ
あかね「ぜーぜー、ホンマや。ビクともせんで…」
なお「大丈夫?わたしがやろうか?」
あかね「なんの!どりゃあーーー!!」
ギュル スポーン
みゆき「良牙さんあぶなーい!」
良牙「なんの!」サッ
ビシャアー
なお「おお!傘で受け止めた!」
やよい「すごーい!早速傘が役に立ったね!」
良牙「ふっ。危ないところだったぜ…」
子ども「食らえー!水鉄砲攻撃ー!」キャッキャ
子ども2「そんなの当たらないぜー!」キャッキャ
良牙「ん?」
ビシャアー
一同「あ」
子どもたち「ごめんなさーい」
あかね「あーあ良牙さん、せっかくお茶は受け止めたのになぁ、ってあれ?良牙さんは?」
やよい「え?ほんとだ、いない」
なお「急にいなくなっちゃったね」
れいか「でも衣服や所持品はここにありますよ。もぬけの殻ですが」
キャンディ「服の中が動いてるクル。何かいるクル」
みゆき「本当だ。これは…」
Pちゃん「…」
みゆき「豚さんだー!?」
Pちゃん「ぴー!ぷぎー!」
みゆき「どういうことー!?」
やよい「かーわいー!」
なお「おーいしそー!」
れいか「みなさん落ち着いてください!敵の攻撃という可能性も…」
キャンディ「良牙クル~!」
一同「え?」
キャンディ「この豚さん、自分が良牙だって言ってるクル」
一同「えー!?」
キャンディ「わかるクル!」
Pちゃん「ぷぎぷぎ!ぴーぷぎー?(そいつは助かる!ちょっと通訳をたのめないか?)」
キャンディ「おやすいご用クル!」
みゆき「キャンディ、ほんとにこの豚さんが良牙さんなの?」
キャンディ「ほんとクル。今から通訳してあげるクル」
キャンディ「良牙はとある事情で、水をかぶると豚さんに変身しちゃうらしいクル」
やよい「それでさっき傘さして水を警戒してたんだ」
あかね「なんや可哀想な体質やなぁ」
Pちゃん「ぴーぴー。ぴーぷぎゅ」
キャンディ「お湯をかぶると元の姿に戻れるらしいクル」
みゆき「よーしわかった!」
なお「そういうことなら助けてあげないと!」
キャンディ「リュックの中にカセットコンロと鍋があるらしいクル」
れいか「ではそれを使ってお湯を沸かしましょう」
あかね「水はため池の水でええな」
やよい「今の姿の方がかわいいのにな~」
子ども「まてー!」
子ども2「つかまらないぞー!」
ウルフルン「どいつもこいつも浮かれ騒ぎやがって」
ウルフルン「エゾオオカミはこの地で人間どもにひどい仕打ちを受けたというのに!」
ウルフルン「決めた!この公園の人間どもをバッドエンドに染めてやるぜ!」
ウルフルン「白紙の未来を黒く塗りつぶすのだ!」
子ども「水鉄砲なんておもしろくない…」
子ども2「おいかけっこも疲れるだけだ…」
ウルフルン「人間どもの発したバッドエナジーが、悪の皇帝ピエーロ様をよみがえらせていくのだ!」
みゆき「これは、バッドエンド空間!?」
キャンディ「良牙もバッドエンドに染まっちゃってるクル!」
れいか「あそこです!」
ウルフルン「プリキュア!?チィ、また邪魔しに来やがったのか!」
あかね「公園にいる人をむやみにバッドエンドに染めるなんてゆるさへんで!」
やよい「そうだよ!良牙さんもこんなに元気をなくしちゃったじゃない!」
ウルフルン「あぁん?そんな小汚ぇ豚なんざどうだっていいんだよ!」
ウルフルン「しゃらくせぇ。今日はこの赤っ鼻で相手してやるぜ。出よ!アカンベー!」
ガスコンロアカンベー「アカンベー!」
みゆき「行こうみんな!」
一同「プリキュア!スマイルチャージ!!」
一同「輝け!スマイルプリキュア!」
ウルフルン「しゃらくせえ!やっちまえアカンベー!」
アカンベー「アカンベー!」
カチッ ボワッ
サニー「うわ!こいつ火をおこしおったで!」
アカンベー「アカンベー!」
ボォォォォ
ビューティ「熱くて迂闊に近寄れませんね」
マーチ「いや、近寄れないどころか…」
メラメラメラ
ハッピー「飛び火してる!」
ピース「まずいよ!公園が焼けちゃう!」
マーチ「ここは私のマーチシュートで」
ビューティ「待って!風は火の勢いを強めてしまいます!ここはわたしが!」
ビューティ「プリキュア!ビューティブリザード!」
マーチ「うまい!吹雪で炎を消した!」
ピース「でもどんどん飛び火してて消火が追いついてないよ!ピースサンダーも火を起こしちゃうから消火はできない」
アカンベー「アカンベー!」メラメラ パチパチ
サニー「アカンベーを食い止めるんはウチに任しとき!」
ハッピー「ならわたしは消火を!プリキュア!ハッピーシャワー!」
ビューティ「なるほど、爆発で炎を消したのですね」
ハッピー「でもまだ消火しきれてない!」
サニー「とりゃー!」ドカ ドゴ
アカンベー「アカンベー!アカンベーー!」パチパチ
サニー「あかん、飛び火までは防ぎきれん!」
ハッピー「このままじゃ勝てないよ!」
ビューティー「今回も良牙さんの力さえ借りられれば…」
マーチ「私たちは!」
ピース「池の水でバケツリレーくらいしかできない!」
ビューティ「池…そうだわ!サニー、あのため池にサニーファイヤーを!」
ビューティー「考えがあるのです!お願いします!」
サニー「何やようわからんけどわかった!プリキュア!サニーファイヤー!」
ジュワ ゴポゴポ
ビューティ「今です!マーチ、あのため池にマーチシュートを!」
マーチ「わ、わたし?うん、わかった!プリキュア!マーチシュート!」
バシャア ビュオオォ
ビューティ「そうです。これはお湯の雨です!」
シュワァァァァァァ
ウルフルン「なに!?チクショー、炎が消えていきやがる!しかしなんでわざわざお湯に?」
ビューティ「それは」
良牙「獅子咆哮弾!」
ドゴオオォォ
ウルフルン「なに!何なんだ今のは!?」
良牙「俺を不幸にしたのは貴様か…」
ビューティ「そう、わざわざお湯にしたのは彼を元の姿に戻すためです!」
サニー「良牙さn、って何で裸なんちょっと///」
ハッピー「うわぁ!服!服を着てー!」
マーチ「キャンディ、ドレスデコルをはやく///」
キャンディ「了解クル!」レッツゴー ド レ ス
ピース(うは、いい体だった///)
ビューティ「不覚、これは想定外でした///」
ウルフルン「てめぇさっきの小汚ぇ豚か!?何で人間に?あの技も一体なんだ!」
良牙「全て貴様のせいだな、許さん!」
ウルフルン「く、アカンベー!やっちまえ!」
アカンベー「アカンベー!」
良牙「獅子咆哮弾!」
ピース「今だ!プリキュア!ピースサンダー!」チュドーン
アカンベー「アカン…ベ~」
キャンディ「やかんデコルゲットクル~!」
ウルフルン「くそ!覚えてやがれ!」
なお「ありがとう良牙さん!」
やよい「眼福、じゃなくて、ありがとうございました」
あかね「相変わらず凄いなぁ獅子咆哮弾、ほんまおおきに!」
良牙「あぁ、そいつはよかった…」
みゆき(なんだろう、良牙さん元気がなくなってる気がする)
キャンディ「豚さんの格好もかわいかったクル!」
良牙「そのことは忘れてくれ、頼む…」
なお「でも何でそんな不思議な体質に?」
良牙「中国に呪泉郷という呪の泉があってな。そこで溺れたらこうなっちまったんだ」
みゆき「そうなんだ。可愛そう…」
やよい「気にすることないですよ!本当に可愛かったですから!」
良牙「お前それ慰めになってないぞ…」
良牙「男になる呪泉郷に入れば元に戻れる」
あかね「一応手はあるんや。戻れるとええなぁ」
良牙「そうだな。お前らも中国に行くときは気をつけろよ」
なお「そうだね。何かと不便になりそうだし気をつけるよ」
良牙「それじゃ俺はまた旅に出るぜ」
良牙「あぁ。なんだか疲れた。早めに目的地を目指すことにする」
あかね「そっか。今度は迷いなや」
良牙「あぁ。またな」スタスタ
やよい「行っちゃった」
れいか「少し落ち込んでらっしゃるようでしたね」
なお「でも不思議な泉もあるもんだね。溺れるとあんな体質になるなんて」
やよい「呪いかぁ。おっかないね」
みゆき(元気がなかったのは体質のせいだったのかな?)
みゆき(わたしは、)
みゆき(あの獅子咆哮弾っていう技のせいに思うんだけど…)
長らくvipにきてなかったからこんなに文字制限と秒数規制に手間取るとは思わなかったorz
諸事情で再開が数日先になるかもしれん
まとめられ(ることはないと思うけどもしまとめられ)たら後日続きを投下させていただきます
これほど続きが気になるSSは久々だ
Entry ⇒ 2012.10.26 | Category ⇒ プリキュアSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
える「古典部の日常」 2
俺達が逃げ込んだのは、一番奥の物置小屋だった。
薄暗く、あまり広いとは言えない。
しかし幸いにも、引き戸であった。
少しだけ扉を開き、外の様子を伺う。
奉太郎「……何か、話し合っているな」
摩耶花「多分、二手に分かれようとかそんな感じでしょうね」
奉太郎「だろうな」
さて、どうするか。
このままではいずれ、俺と伊原は見つかってそのまま負けてしまう。
……今のこの状況を、どうにか打破しなければいけないのだ。
奉太郎「俺達も、二手に分かれよう」
摩耶花「でもそれは、最初に駄目って言ってなかった?」
奉太郎「状況が変わった、そうしなければ負けるぞ」
摩耶花「って言っても、どうやって分かれるの?」
伊原の疑問はもっともだった。
確かにこの物置部屋の中だけで、分かれるとはいかないだろうから。
奉太郎「恐らく片方……里志が部屋の捜索に刈り出るだろう」
奉太郎「この物置から一番近い部屋に入った瞬間、俺が外に出る」
摩耶花「……なるほど」
摩耶花「それで、ふくちゃんを挟み撃ちって事ね」
奉太郎「それは俺が千反田を倒せた時、だな」
奉太郎「しかし俺が考えているのは少し違う」
摩耶花「……つまり?」
奉太郎「そうした方が、勝算はあるだろ」
奉太郎「豆のぶつけ合いになってしまっては、俺達の体力は少し心許ない」
摩耶花「確かにそれはそうだけど……うまくいくの?」
奉太郎「さあな、やってみなければ分からん」
成功率は五分と言った所か。
奉太郎「ああ、それと」
俺は伊原に少しばかりの作戦を提案した。
摩耶花「……おっけー」
それに伊原は乗る、奥の手もあるが……まだ使う時では無いか。
外の様子を見ると、里志は丁度一番近い部屋に入る所だった。
……よし、行くか。
千反田は一瞬驚いた顔をしていたが、すぐに俺に向かって豆を1つ投げてきた。
それを避けつつ、千反田に迫る。
近づく前に、千反田に向かって豆を5個同時に投げる。
える「きゃ!」
千反田の短い悲鳴は、俺の豆のいくつかが命中した事を告げていた。
1……2……2個か。
さっきの対峙で、俺は1つぶつけている……つまり。
千反田の体力は、残り2か。
俺はすぐに千反田を倒すべく、投げる構えをした。
ここで千反田を倒せれば、里志を挟み撃ちにできる……それは多分、最善の成功例だろう。
しかし、その直後……俺の動きを止める出来事が起きてしまった。
千反田が……しゃがみ込んでしまったのだ。
える「わ、私……折木さんと敵は、嫌なんです」
える「もう、やめてください……」
奉太郎「……わ、悪い」
える「……いえ、大丈夫ですよ」
奉太郎「……すまなかったな」
える「あ、あの」
える「ちょっと、いいですか」
そう言い、千反田は俺の顔を見てくる。
……少しだけ違和感を感じたが、特に気にする事も無くそのまま千反田へと近づいて行った。
える「ごめんなさい!」
千反田はそう言い、俺に豆を3つ放ってきた。
……くそ、やられた。
まさか千反田がこんな行動をするとは、全く予想していなかった。
近づきすぎていた俺に、その豆を避ける暇は無く、全てが命中する。
奉太郎「……」
える「こ、これは福部さんに教えてもらった事なので……」
若干の冷や汗を流しながら、千反田は必死に言い訳をしていた。
そんな千反田に向かって、俺は片手に持っていた約10個の豆を全て千反田に投げつける。
投げつけると言っても、さすがに本気でぶつけたりはしないが。
無音で豆達が千反田にぶつかり、床へと落ちて行った。
奉太郎「……そうでもないな」
なんにせよ、これで千反田の体力は0となった筈。
奉太郎「さて、手持ちの豆を渡してもらおうか」
える「えっと、それなんですが」
その時、俺の後ろから声が掛かる。
里志「どうやら、同じ事を考えていたみたいだね」
奉太郎「……そういう事か」
里志「千反田さんはもう、豆を持っていないよ」
里志「4つを残して、僕に全て渡していたからね」
里志「丁度ホータローを倒せる数、渡していたんだけどね」
里志「そこまでうまくはいかなかったみたいだ」
奉太郎「……なるほど」
奉太郎「それに同じ事、と言うと」
その俺の言葉を聞いていたのか、伊原が里志の後ろから顔を出した。
奉太郎「気にするな、こうなるかもしれないとは思っていた」
里志「……さすがだね」
里志「でもまさか、摩耶花の手持ちを全部ホータローが持っていたのは予想できなかったなぁ」
そう、俺は伊原の豆全てを渡してもらっていたのだ。
奉太郎「このまま一騎打ちと行きたい所だが……」
奉太郎「一旦退かせて貰おう」
俺はそう告げると、その場を走り去る。
……少し、面倒な事になってしまったな。
残り体力/所持豆数
奉太郎:残り体力1/豆の数4
摩耶花:残り体力0/豆の数0
里志:残り体力5/豆の数8
える:残り体力0/豆の数0
折木さんにまたしても、やられてしまいました。
それに結局、逃げられてしまいます。
える「ふ、福部さん! 早く追いかけないと!」
私がそう言うと、福部さんはいつもの笑顔からもう少しだけ笑い、答えました。
里志「まあまあ、慌てないで」
里志「……落ちてる豆を、数えよう」
える「そんな事してどうするんですか?」
里志「ホータローの手持ちの豆の数が分かる」
里志「場合によっちゃ、わざわざ見つけ出さなくても僕達の勝ちさ」
そう言うと、福部さんは廊下に散らばった豆を数え始めました。
5分ほど豆を数え、私の方に向き直り、口を開きます。
里志「僕達の勝ちだ」
える「……どういう意味ですか?」
里志「千反田さんの周りに落ちている豆は15個」
里志「今まで投げられた豆を計算すると……」
里志「ホータローの手持ちは4個なんだよ」
える「ええっと……あ!」
える「福部さんの体力は5、ですよね」
里志「そういう事さ」
里志「全ての豆をぶつけられても、負けはありえない」
なるほど……確かに、豆の数を数えたのは正解でした。
やはり、福部さんも中々に手強い方です。
味方となれたのは、良かったかもしれません。
里志「それと、一つお願いがあるんだけど……いいかな」
里志「最後は一対一で、話がしたいんだ」
里志「だから、千反田さんはそのまま豆を持たなくてもいいかな」
える「……ええ、勿論いいですよ」
える「ここまで追い詰められたのも、福部さんのおかげですから」
里志「はは、千反田さんも中々の名演技だったよ」
える「え、ええと」
える「……実は少し、本心でした」
里志「……やっぱり、千反田さんは千反田さんだ」
里志「さて、と」
里志「そろそろ決着を、付けにいこうか」
える「ええ、そうですね」
そういえば、先ほどから摩耶花さんの姿が見えません。
……ですが、合流されても問題は無いでしょう。
折木さん達が持っている豆を全て、福部さんに当てたとしても……福部さんが全て外さない限り、私達の勝ちです。
……折木さんに勝負事で勝てると言うのは、少し気分がいいかもしれません。
さて、向こうも気付いた頃か。
だが全ての豆を避けるのは中々難しい、それに加えうまくやったとしても引き分けがいい所だろう。
……まあそれも、俺は分かっていた事なのだが。
奉太郎「どうするか」
摩耶花「どうするかじゃないでしょ、あんたがあんなに豆を使わなければこんな事にはならなかったのに」
奉太郎「ま、そうだな」
摩耶花「それで、どうするのよ」
奉太郎「……伊原」
奉太郎「お前はこの勝負、どうなると思う?」
摩耶花「どうって言われても」
摩耶花「負けか、あるいは引き分け」
摩耶花「……それと」
そこで伊原は一旦言葉を区切り、いかにも悪そうな笑顔をする。
摩耶花「私達の勝ち、かな」
奉太郎「そうだな、それしかない」
奉太郎「……準備は、出来てるか」
摩耶花「勿論、その為にわざわざここまで来たのよ」
奉太郎「なら、そろそろ行くか」
摩耶花「……そうね」
タイミング良く、居間の外から里志の声が聞こえてきた。
それはどうやら、俺に諦めろと説くような内容であった。
……あいつらしいと言えば、そうかもしれない。
里志「ホータロー、そろそろ諦めたらどうだいー?」
声が近くなる。
恐らくもう、目と鼻の先に里志と千反田は居るだろう。
俺はゆっくりと立ち上がり、廊下へと続く扉を開く。
そのまま廊下に出て、声の方を見据える。
里志「自分で気付いていなかったのかい?」
里志「……少し気になるけど、まあいっか」
里志「僕はまだ、体力が5あるんだよ」
里志「豆の数は8個、言ってる意味は分かるよね」
奉太郎「……はあ」
奉太郎「それに気付かない事を祈っていたんだがな」
奉太郎「……くそ」
俺は右の拳を握り締める。
里志「何年友達をやっていると思っているんだい」
里志「そのくらい、すぐに気付くよ」
奉太郎「そうか、どうやらこの勝負」
奉太郎「俺達の負けみたいだな」
里志「……うん、そうみたいだ」
里志にはそのまま俺に、豆をぶつけると言う手段も取れただろう。
しかし、里志は手に持っていた豆を一つ……廊下に落とす。
里志「無理にホータローに豆をぶつける趣味は無いんだ」
奉太郎「……なるほど」
奉太郎「つまりお互い豆を落として、終わりにしようと言う事か」
里志「察しが良くて助かるよ、その通りだ」
……悪い案では無い、俺も別に豆をぶつけられたい訳じゃないしな。
俺は言葉を返す変わりに、一つ豆を捨てる。
それを見た里志は、いつもより更に口角を引き上げて、もう一つ豆を落とす。
一回、二回、三回。
里志「それでホータローは手持ちの豆が無くなった訳だ」
里志「僕も、全部落とすよ」
そう言い、里志は全ての豆を廊下に落とす動作を取った。
……これで、終わりだな。
私は後ろから、その光景を眺めていました。
お二人が一つずつ、豆を廊下に落として行きます。
……少し勿体無い気もしますが、捨てる訳では無いので我慢です。
そして折木さんが豆を4つ落とした後、続いて福部さんも豆を落とし……
ちょっと待ってください。
私が知っている折木さんは、こう言っては何ですが、たかが遊びであそこまで悔しがるでしょうか?
……拳を握り締める程、悔しそうにしている折木さんはなんだが不自然なんです。
何故かは分かりませんが、嫌な予感がします。
える「ふ、福部さん!」
私は福部さんに声を掛けますが、時既に遅し……全ての豆は廊下へと落ちました。
折木さんは……小さく、笑っていたのです。
……もっと考えるべきでした。
える「何故、笑っているんですか」
奉太郎「分かるだろ、俺達の勝ちだからだ」
える「もう豆は無い筈です、それはしっかりと確認しているんですよ」
奉太郎「なら確認が甘かったって所だな」
そう言い、折木さんは握ったままの拳を私達の方に差し出します。
そのまま手の平を上に向けて、開きました。
……そこには、大量の豆が……あったのです。
里志「……どういう事だい」
何故あんなに豆を……もしかして、拾ったのでしょうか?
える「豆を拾ったのですか?」
私はそのままの疑問をぶつけます。
しかし。
奉太郎「拾ってはいない」
える「……なら、何故豆を持っているんですか」
奉太郎「分けたんだよ、皿に乗っていた豆を」
分けた……とは、どういう意味でしょうか。
それを聞く前に、折木さんは再び口を開きます。
奉太郎「俺達はな、豆を持ち込んでいたんだ」
奉太郎「そして始まってからその豆を皿に乗せ、半分にした」
奉太郎「しっかりお前らの分もまだ皿に乗っているぞ」
……卑怯じゃないですか!
奉太郎「……なんだか言いたそうな顔だな」
奉太郎「だがルール違反ではない」
奉太郎「皿に乗せた後で分けたなら、そうだろ?」
なら、なら今の内にお皿の所まで行き、私たちも豆を補充すれば……!
そう思い、振り返ると……
摩耶花「ごめんね、ちーちゃん」
摩耶花さんが、立ち塞がっていました。
奉太郎「だから言っただろ、俺達の勝ちだって」
里志「はは」
里志「参ったよ、僕達の負けみたいだ」
里志「でも一つだけ、教えて欲しい事がある」
奉太郎「なんだ」
里志「どうして僕が、自らの豆を捨てると思ったんだい?」
確かに、福部さんがこの案を出さなければ……折木さん達にはいくら豆があっても確実に勝てはしなかったでしょう。
奉太郎「俺はお前がどの様に行動するかくらい、分かるさ」
奉太郎「さっき自分で言ってただろ」
奉太郎「何年友達をやっていると思っているんだ、とな」
里志「……そうだった、すっかり忘れてたよ」
福部さんはそう言い、両手を挙げます。
私もそれに習い、両手を挙げ、降参の意を示しました。
里志「一思いにやってくれると、助かるね」
奉太郎「……ああ、そのつもりだ」
この豆まきで、私が最後に見た光景は……私達に降りかかる、大量の豆でした。
える「それにしても、なんで私も巻き込まれなくてはいけなかったんですか」
奉太郎「仕方ないだろ、位置が悪かったと思え」
える「それでも納得できません」
まあ確かに、投げすぎた感はあったが。
里志「いやあ、見事にやられちゃったね」
里志「やっぱりホータロー相手だと、分が悪すぎる」
摩耶花「ちょっと、私は居ても居なくても変わらないって言いたいの?」
里志「そ、そういう訳じゃないよ」
あれだけ動き回ったのに、こいつらは良くこんな元気がある物だ。
……ああ、そういえば。
奉太郎「豆がまだ残っているんだが、食べるか」
どうやら意見は同じだった様で、全員の手が袋に伸びる。
俺も豆を数粒取り出し、口の中に放る。
ポリポリとそれを咀嚼し、飲み込む。
……うまいな。
奉太郎「今日はちょっと、動きすぎた」
摩耶花「いつも動かない分、動いたって考えればいいんじゃない?」
える「たまにはいい物ですよ、体を動かすのも」
里志「そうだね」
……俺はそこまで動かない奴だっただろうか。
奉太郎「帰ってゆっくり風呂にでも入りたい気分だ」
里志「お、それには同意するよ」
摩耶花「……私も」
奉太郎「一致したな、帰るか」
その俺の言葉を聞き、千反田を除く三人は立ち上がる。
帰って風呂に入り、コーヒーでも飲んで残りの時間はゴロゴロしてよう。
本来休みとは、そういう物だから。
今日、色々と作戦を練ったが……これだけは予想外だった。
と言うのも……
える「駄目ですよ、まだ帰っては駄目です」
奉太郎「なんだ、また豆まきでもするのか」
える「いえ、そういう訳では無いです」
奉太郎「なら」
える「私の家を、汚したままにするつもりですか」
ええっと……何個投げたっけか。
最初に配られたのは全員合わせて40個か。
それは全員使った筈。
だがその後に俺と伊原は豆を補充している。
あれは何個だったっけか。
確か……
いや、考えるのはやめよう。
俺と伊原が持ち込んだ袋には豆が100個入っている。
それを半分に分けて俺達が使ったのは50個。
25個ずつ伊原と分け、俺はその25個全てを千反田と里志に投げつけた。
そして、何故か終わった後に伊原が喜びのあまり豆を上に向かって投げたのだ。
つまり拾わなければいけない豆の数は……90個。
あ、しまった……結局考えてしまったではないか。
……もういい、無駄な事は考えずに豆を拾おう。
える「皆さん、全部しっかりと拾ってくださいね」
そうしなければ、俺達はいつまで経っても家に帰れないからである。
結局家に着いた頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。
そんな俺を待っていたのは、鳴り響く電話だったが……
誰も居ない様で、仕方なくそのまま俺は電話を取る。
奉太郎「折木です」
える「あ、折木さんですか?」
奉太郎「今、そう言った筈だが」
える「あ、いえ……私が言いたかったのはですね」
える「私が知っている折木さんか、そうではない折木さんか、という事でですね」
える「それはつまり、折木さんのご家族の方の可能性もあったので……」
奉太郎「やめてくれ、用件はなんだ」
放っておいたらいつまでも続きそうで、俺は手短に用件だけを聞くことにした。
える「実はですね、少し……やってみたい事があるんです」
奉太郎「やってみたい事? 気になる事では無くてか」
える「今回は少し、違います」
える「私がやってみたい事と言うのは……」
その内容を聞いた俺は、とても驚いたのを覚えている。
千反田からそんな提案があるとは、露ほども思わなかったからである。
それが面白くて、俺は珍しくその提案に乗ることにした。
奉太郎「……分かった、乗ろう」
える「ほんとですか、ありがとうございます」
……明らかに俺向きでは無いが、それもまた意外性があってこの提案にはいいかも知れない。
ゆっくり、進めていけばいいだろう。
とりあえず今日は風呂に入ろう。
奉太郎「じゃあ、またな」
える「ええ、また明日」
……さて、今日は豆の夢を見そうになりそうだ。
来年は普通の豆まきがしたい、切実に。
そんな事を思いながら、俺は風呂場へと向かった。
第4話
おわり
>>199
古典部の日常が終わったら、書いてみましょうか。
アイデア頂く感じで申し訳ないですが。
どの道、このお話が終わっても何かしら氷菓のSSは書くつもりでしたので。
次回投下ですが、本日の夜に投下致します。
える「難しいですね」
える「こっちのは、どうでしょう?」
摩耶花「それもちょっと、私には出来なさそうかな」
える「そうですか……」
似たような光景は去年も見ていた。
場所も同じ、古典部で。
奉太郎「今年もやるのか」
摩耶花「当たり前でしょ」
奉太郎「……ご苦労様」
去年は結局、里志はちゃんとチョコを受け取らなかった。
しかし今年なら……しっかり受け取るであろう。
それなのに何故、こんなにも悩んでいるのだろうか。
……俺には到底理解できない事だな。
える「折木さんはどう思いますか?」
不意に声を掛けられ、千反田の方に顔を向ける。
千反田の顔の距離には……未だに慣れない。
奉太郎「お、俺に聞いてもどうしようもないだろ」
わずかに身じろぎしながら俺は答えた。
摩耶花「……そうだ」
伊原は何やら思いついた様で、それに対して興味も無い俺は読んでいた小説に視線を戻す。
摩耶花「折木」
奉太郎「なんだ」
視線はそのままで、声だけを返す。
摩耶花「あんた、チョコ食べたくない?」
奉太郎「俺にくれるのか」
摩耶花「そんな訳無いでしょ」
摩耶花「毒見してみる気は無いかって聞いてるのよ」
つまり、里志に喜んで貰える様なチョコを俺が食べて、それを評価しろという事か。
……しかし自ら毒見と言うとは、ちと怖い。
いや、全く良くは無いだろう。
える「折木さん! 是非お願いします!」
奉太郎「いや……俺は」
える「折木さん!」
こうなってしまっては、もう俺に逃げ場は無い。
まだ日曜日にやった豆まきの疲れが残っていると言うのに、更に働けと言うのか。
でもまあ……他にする事も無いし、いいか。
奉太郎「……分かったよ、やろう」
摩耶花「じゃー日曜日に集まろうか」
える「ええ、私の家でやりましょう」
こうして俺は里志にあげるのに相応しいチョコを選ぶ為、日曜日の予定を埋められた。
摩耶花「……ありがとね」
しかし、まあ……悪い気は、しないか。
甘い。
まだチョコを食べている訳では無いが……匂いが甘すぎる。
俺は甘い物が好きと言う訳でも無い、どちらかと言うと逆だろう。
しかし当の千反田と伊原はとても楽しそうにチョコを作っている。
俺はそれからしばらく、その匂いと戦いながらチョコを待つ。
える「出来ました!」
そう言いながら、一つ目のチョコが運ばれてきた。
奉太郎「ほう」
とは言ったが、正直何の種類なのか見当も付かなかった。
える「本来は、トリュフ等に付けられるのですが」
える「これのみでも十分においしいので、どうぞ」
そうなのか。
まあ、食べない事には分からない。
そう思い、俺はチョコを一つ口に放る。
奉太郎「……甘いな」
える「ええっと……」
いや、旨いと言えば旨かった。
だがちょっと、くどい様な感じの……そんな甘さだった。
台所で未だに作業をしている千反田と伊原に、風を浴びてくるとの事を伝え、廊下に出る。
……しかし、本当に俺がこの役目で良かったのだろうか。
里志とは食べ物の好き嫌いも違うだろうし、それに対して感じる事も違うと思う。
なら、そうか。
あくまでも一般的な意見を出せばいいのかもしれない。
主観的な意見では無く、客観的な意見か。
……ううむ、難しいな。
やはり俺には、この役目は少し向いていないだろう。
そんな俺の考えを遮る様に、後ろから声が掛かった。
奉太郎「ああ、そうか」
その言葉を聞き、俺は再び部屋に戻る。
える「どうぞ、これはおいしいですよ」
そう言い、差し出されたのは……
奉太郎「これ、チョコなのか?」
える「マカロンです」
俺はチョコなのかどうなのか聞いたのだが、千反田の答えは俺の疑問を解決してくれなかった。
もしかすると、単純にマカロンという言葉を俺が知らないだけで、何かの種類なのかもしれない。
しかし……見た目的にはどうみてもチョコでは無い。
だとすると、やはり。
える「ええ、そうです」
奉太郎「……そういう種類のチョコなのか」
俺がそう言うと、千反田は首を傾げながら答える。
える「ええと、マカロンをご存知無いんですか?」
奉太郎「と言う事は、これはチョコでは無いのか」
える「チョコレートマカロンなので、チョコは入っていますよ」
なんとなく分かった。
つまり、マカロンにはいくつか種類があり、今俺の目の前にあるのはチョコが入っているマカロン……と言う事だろう。
奉太郎「そうか」
考え込むより、食べた方が早いだろう。
そう思い、俺はマカロンを口に入れる。
える「あ、えっと……」
さっきと同じ感想だったのがあれだったのかもしれない。
千反田は言葉に詰まってしまっていた。
奉太郎「まあ……さっきのよりは、好きかな」
える「そうですか、では次のチョコを準備しますね」
まだやるのか。
俺は去る千反田の後ろ姿に心の中で呟き、天井を眺めた。
……
何か、おかしくないだろうか。
つまり……俺が好きなチョコを作っても、里志は喜ばないかもしれない。
今、千反田と伊原がやっているのは、俺の感想を参考にチョコを作る……という作業である。
と言う事は、だ。
完成したチョコは多分、俺好みのチョコであって決して里志好みのチョコでは無いだろう。
似たような事をさっきも考えたな……結論は何だったか。
ああ、客観的な意見か。
さっきはすっかりと忘れていた、次は気をつけよう。
俺が再び結論を出した所で、丁度よく千反田がやってくる。
える「チョコレートタルトです」
何だかさっきから、千反田がウェイトレスに見えて仕方ない。
口には出さないが。
奉太郎「そういえば伊原は何をしているんだ」
える「摩耶花さんですか、先ほどからずっと頑張っていますよ」
奉太郎「……そうか」
奉太郎「って事は、これも伊原が作ったのか」
える「ええ、勿論です」
える「今までのも全部、摩耶花さんが作ったんですよ」
……あいつは見た目や性格に反して料理が出来るのか。
奉太郎「主に千反田が作ってる物だと思っていたよ」
える「ふふ、私は横で少しお手伝いしていただけですよ」
どうやら俺が考えていた事とは逆だったらしい。
そのお手伝いがどの程度なのかは分からないが、伊原も伊原なりに努力していると言う事だろう。
そう考えると、さっきまで適当な感想しか出さなかった自分に後悔してしまう。
奉太郎「ま、頂くか」
える「はい、どうぞ」
千反田の言葉を聞き、口に入れる。
さっきまでと同じ味だとしても、違う事を言おうとは思っていたが……今回のは素直に美味しかった。
える「本当ですか!」
奉太郎「あ、いや……あくもでも、俺からしたらだぞ」
奉太郎「俺は里志じゃないから、あいつの好みは分からん」
摩耶花「やっぱり、そうよね」
俺の言葉を聞いていたのか、台所から伊原がやって来た。
摩耶花「折木には折木の好みがあるし、それはふくちゃんも一緒だよね」
奉太郎「まあ、そうだろうな」
ううむ、やはりもう少しちゃんとした感想を言えば良かったか。
奉太郎「でも、その……おいしかったぞ」
摩耶花「……そっか、ありがとね」
奉太郎「それに」
える「気持ちが大事、ですからね」
える「折木さんが前に仰っていたので」
摩耶花「折木が? へえ、折木がねぇ……」
そんな事、俺は以前言っただろうか?
える「前に、部室でお弁当を一緒に食べた時、言っていましたよ」
そんな疑問にすぐに千反田が答える、今の疑問は口に出していなかった筈だが……顔に出ていたのかもしれない。
奉太郎「あったっけか、そんな事」
える「ええ」
こいつがここまで言うからには、あったのだろう。
奉太郎「ま、そういう事だ」
摩耶花「分かった」
摩耶花「やっぱり私が作れる様な奴じゃないと、難しいしね」
摩耶花「違うわよ、今日のはちゃんと私が作ったのよ」
摩耶花「本当よ?」
奉太郎「……分かったよ」
摩耶花「簡単に、って意味だからね」
摩耶花「ちゃんと分かってる?」
奉太郎「ああ、よく分かりました」
摩耶花「ならいいけど」
奉太郎「それで、もう今日はお開きでいいか」
摩耶花「うーん、そうね」
摩耶花「色々聞けて、いい物が作れそうだし……今日はお開きにしようか」
える「分かりました」
える「では私達は片付けがあるので、折木さんは先に帰りますか?」
奉太郎「あー、いや」
奉太郎「俺も手伝う」
える「そうですか、ではお願いします」
食べるだけ食べて、先に帰るのは流石にちょっと気が引ける。
二週連続で日曜日が使われてしまったのはいただけないが、仕方ないか。
食器の場所は千反田が把握しているだろうし、俺は皿洗いへと興じる事になった。
奉太郎「今年は多分、里志もちゃんと受け取ってくれるだろうな」
摩耶花「そうだといいんだけどねぇ」
える「大丈夫ですよ!」
縁側に腰を掛ける、ふと後ろを見ると俺たちの影が部屋の奥へと伸びていた。
摩耶花「あ、そういえばさ」
奉太郎「ん?」
摩耶花「ちょっとチョコ余っちゃったから、折木も持って帰ってよ」
奉太郎「別にいいが、そんなに作ったのか?」
摩耶花「うん、まあね」
そう言い、伊原から渡されたチョコはしっかりとラッピングがしてあった。
摩耶花「まあまあ、そう言わずに」
何故か千反田がもじもじしているのが気になったが……
ま、いいか。
奉太郎「分かったよ、ありがとうな」
摩耶花「折木って、最近ちょっと素直になったよね」
奉太郎「最近は余計だ」
摩耶花「それと、ちーちゃんにもしっかりお礼言っておきなさいよ」
奉太郎「千反田に?」
摩耶花「いいから早く」
さっきまで普通の伊原だったが、凄むと怖い。
奉太郎「ありがとうな、千反田」
える「あ、い、いえ」
える「あの、それは余っただけですので、贈り物の内には入らないですよね」
奉太郎「ん? 何を言っているんだ」
える「な、なんでもないです!」
……よく分からんが。
気付けば影は消え、辺りは暗くなっていた。
奉太郎「……さて、帰るか」
摩耶花「そだね」
える「はい、お疲れ様でした」
俺と伊原は千反田の家を後にする。
さすがに2月と言った所か、日が短い。
夏ならば多分、まだ薄暗い程度だろうが……既に周囲は真っ暗となっていた。
帰ってる途中、伊原と少し話をした。
摩耶花「それで、付き合ってるの?」
奉太郎「何が」
摩耶花「あんたとちーちゃん」
奉太郎「……そんな訳無いだろ」
摩耶花「いやいや、逆にびっくりなんだけど」
摩耶花「だって、ちーちゃんが戻って来た時、その」
摩耶花「……抱きついてたし」
奉太郎「……ああ、まあ」
摩耶花「もうてっきり、折木が告白したのかと思ったよ」
奉太郎「……したさ」
摩耶花「え? ならもしかして」
摩耶花「振られたとか?」
奉太郎「どうだろうな」
摩耶花「何よそれ」
奉太郎「……いや、そうだな」
奉太郎「振られたというのが、一番近いかもな」
本当の所は、色々あって有耶無耶になっているだけであったが……
あれから千反田も特にその事については言わなかったし、俺も別段言う気は無かった。
摩耶花「有耶無耶になったとか?」
奉太郎「……千反田に聞いたのか」
摩耶花「違うわよ」
奉太郎「じゃあ、なんで」
摩耶花「勘」
さいで。
摩耶花「なるほどねぇ」
奉太郎「……何か言いたそうだな」
摩耶花「そりゃね」
摩耶花「でもまあ、ゆっくり考えればいいと思うよ」
摩耶花「まだ1年あるんだし、ね」
奉太郎「ああ、そうだな」
確かに伊原の考えている通り、このままでは駄目だろう。
千反田との今の距離感は好きだったが……
このままで卒業したら、どうなるのだろうか。
俺には少し、難しい話か。
そういえば、先週の日曜日も千反田の家から帰った時は暗くなっていたな。
あそこに行くと、どうやら暗くなるまで帰れないのかもしれない……気を付けねば。
そんな事を考えながら、俺はベッドに横たわる。
去年は確か、姉貴に貰った一つを同じように部屋で食べたな。
今年はちょっと早く、一つだけチョコを貰えた。
貰えたと言っても、余り物だが。
ま、それでも貰えたには違いないだろう。
ラッピングを解くと、何の変哲も無い、普通のチョコがそこにあった。
俺はそのチョコをひとかじりする。
何故かそれは、とても俺好みの味だった。
第5話
おわり
奉太郎「ん、どうした」
える「……綺麗ですね」
奉太郎「そうだな」
俺はあの公園で、千反田と一緒に花火を見ていた。
遠くであがる花火を見る場所としては、この公園は意外と侮れない。
える「もう、夏ですね」
奉太郎「ああ」
える「早い物です」
える「ふふ、そうでしょうね」
える「……ここに来ると」
える「どうしても、去年の冬を思い出してしまいます」
奉太郎「……俺もだ」
える「私、初めてでした」
そう言い、千反田は俺の手をゆっくりと握った。
奉太郎「……何が」
える「それを聞くのは、少し意地悪ですよ」
奉太郎「……すまんな」
千反田が言っているのは、恐らく。
える「初めての、キスでした」
奉太郎「……俺もだよ」
える「……そうでしたか」
える「それはとても、嬉しいです」
奉太郎「……そうか」
夜になり、セミは昼間よりも大人しい。
辺りには、遠くであがる花火の音だけが響いている。
える「はい、なんでしょうか」
奉太郎「このままで、いいと思うか」
える「……」
奉太郎「俺は」
一際大きな花火があがった。
そして丁度、音が届く頃に……俺は次の言葉を心から紡ぎだす。
奉太郎「……夢か」
伊原と前に……確かバレンタイのチョコ作りの帰り道だったか。
あの時、千反田の事を話してからと言うもの、俺は今回の様な夢を何回か見ていた。
オチは必ず同じ。
俺が最後の言葉を言う前に、目が覚めてしまう。
全てが同じオチとは、大分つまらない夢である。
ああ、それよりもこんな朝っぱらからなんの電話だろうか。
そんな事を思いながら、時計に目を移した。
春休みに入ってからと言う物、なんだか起きるのが遅くなって仕方ない。
今日はたまたま電話によって目が覚めたが……もし電話が来ていなかったらもう少し寝ていただろう。
まあそれも、この前の卒業式で大分疲れたからかもしれない。
卒業式と言っても、俺たちが卒業するのはまだ先だ。 およそ一年後か。
……これは今考える事では無いか、それよりもまずは電話に出よう。
俺はようやく部屋から出ると、リビングにある電話機へと向かった。
姉貴はどうやらまたしても居ない様で、他に電話に出てくれる人は居ない。
まだ完全に目が覚めていない中、受話器を取った。
える「あ、千反田です」
奉太郎「……なんだ、千反田か」
える「あの、もしかして寝ていました?」
奉太郎「ああ……まあ」
える「駄目ですよ、休みだからと言って」
奉太郎「……気をつける」
奉太郎「それで、用事はなんだ」
える「あのですね」
える「去年と同じ頼みなんです」
俺はそう言い、カレンダーに目を移す。
今は四月……去年のこの時期は。
奉太郎「もしかして、雛祭りか」
える「はい、正解です」
……朝からクイズか。
奉太郎「……ああ、行くよ」
奉太郎「今年は見ているだけでもいいんだろ?」
える「あ、それは不正解です」
さいで。
える「いえ、そういう訳では無いんです」
つまり、どういう事だ。
える「私が、お願いしちゃったんです」
奉太郎「何を」
える「傘を持ってくれる人を、です」
奉太郎「……ええっと」
奉太郎「また俺に傘を持てって事か」
える「はい!」
奉太郎「……いいのか、毎年持っている人が居るんだろ」
える「それで私も、折木さんに傘を持って欲しかったので……」
える「少し、無理を頼んじゃったんです」
そういう事か……
それで、俺が断ったら千反田はどうしたのだろうか。
奉太郎「俺が嫌だって言ったら、どうするんだ」
える「え? 駄目ですか?」
奉太郎「……いや、駄目ではないが」
える「ふふ、なら良かったです」
まあ、確かにそこまでやられてしまっては断れない。
俺も外から一度、見ては見たかったが……貴重な体験としては雛に傘を差す方が当てはまるだろう。
奉太郎「時間と場所は、去年と同じでいいのか?」
える「はい、宜しくお願いしますね」
奉太郎「ああ」
千反田はそれ以上言う事は無かった様で、簡単な挨拶をすると電話を切る。
……前の雛祭りの後、確か風邪を引いたな。
今年も同じ様にならなければいいが、大丈夫だろう。
例年よりも暖かい地球に感謝し、俺はカレンダーに予定を入れた。
四月×日
生き雛祭り
去年と似たような慌しさの中、準備が行われている。
俺はやはり、一人ストーブで温まりながらその時を待っていた。
今年は橋の工事も無く、行列は例年と同じルートを通るだろう。
……その事は少しだけ、俺を安心させた。
狂い咲きの下を通る千反田は、多分とても美しいだろうから。
それを見れないのは、ちょっと辛い物がある。
だがそれを見てしまえば、俺はまた……
なので今年は、少しだけ安心していた。
どうやら時間が来た様だ、段取りは一緒の筈なので、俺はそのまま外に出る。
俺も傘を持ち、行列の中へと加わった。
やがて、人々が集まり、行列の形が彩られる。
そして……
ゆっくりと、去年と同じ様に。
最初に入須が出てくる、そしてその後に千反田。
俺が感じた事は、去年とほぼ同じだったと思う。
十二単を着た千反田はとても綺麗で、いつもの雰囲気は微塵も感じさせなかった。
なんだか、何時間も見ていたい気がしたが……そんな俺の思いを無視し、行列は歩き出す。
いかんいかん、しっかりと役目をこなさねば。
ルートこそ去年とは違うが、要領は同じだろう。
沢山の見物人が居て、その間をゆっくりと進む。
やはり今年は去年よりも暖かく、風邪を引くことは無さそうだ。
いや、俺も別にある程度の気温まで下がったら風邪を引く……なんて分かりやすい体をしている訳では無いが。
とにかく、その後の心配はしないで済むだろう。
そこまで考え、ふと気付く。
……あれ、去年よりも大分落ち着いているな。
里志や伊原にも声を掛けられるまで気付かなかった。
しかし今年は、俺の方が多分、先に気付いたくらいの感じがした。
終わった後も、しばらく俺はぼーっとしていたし、色々と思う事もあった。
だが、まあ。
それに比べれば、今年は幾分かしっかりと歩けている。
そして、少しだけ……少しだけだが。
千反田と同じ場所を、歩けている気がした。
える「お疲れ様でした」
奉太郎「そこまでの事じゃないさ」
俺と千反田は去年同様、縁側に座っていた。
今年は特に、千反田の気になる事が起きなかったので、こいつも大分楽に取り組めたのかもしれない。
える「どうでしたか、今年は」
奉太郎「どう、と言われてもな」
奉太郎「去年よりはしっかり出来たと思うが……」
俺がそう言うと、千反田は口に手を当てながら答えた。
奉太郎「なんだ、去年はそこまで駄目だったのか」
える「あ、いえ。 そういう事では無いですよ」
える「えっとですね、今年は少し」
える「折木さんと一緒に、歩けている気がしたので」
春を感じさせる陽光が、千反田の顔を照らしていた。
奉太郎「……そうか」
奉太郎「俺も、少しだけそう思ったな」
える「そうでしたか……一緒ですね」
何がそんなに嬉しいのか、千反田はやたらとにこにこしている。
今日初めて見せた千反田の笑顔に、なんだか照れて、俺は話題を逸らす事にした。
奉太郎「この後も、用事はあるのか?」
える「あ、大丈夫ですよ」
える「今年は父が、ほとんど引き受けてくれています」
奉太郎「……病み上がりだろ、大丈夫なのか」
える「私もそう思ったんですが」
える「迷惑を掛けてしまったから、その分やらせてくれ、と」
奉太郎「なるほど、お前の父親らしいな」
える「立派ですよ、私なんか全然です」
える「そうでしたっけ? それなら是非、今度会いませんか?」
千反田の父親か……いきなり男を紹介されて、例えそれが友達なだけでも大丈夫なのだろうか。
俺にはよく分からないが、あまりいい予感は出来ない。
奉太郎「千反田の父親って、どんな人なんだ?」
える「ええっと」
える「良く言われるのが、似ていると」
奉太郎「似ているのか」
える「らしいです」
える「私はそうは思わないんですけどね」
……想像するだけでも、恐ろしい。
奉太郎「さっきの話だが、遠慮させてもらう」
える「そうですか、ではまた次の機会と言う事で」
奉太郎「ああ、そうだな」
そこで千反田が首を傾げながら口を開いた。
える「ええと、それで折木さんは用事があるんですか?」
奉太郎「特には無いな」
える「そうですか、なら」
奉太郎「少し、散歩するか」
える「……はい!」
奉太郎「結局ここか」
える「私の家から、結構近いですからね」
そう言うと、千反田はいつものベンチに腰を掛けた。
奉太郎「何か飲むか」
える「……いつもいつも、悪いですよ」
奉太郎「今度何か奢ってもらえればいいさ」
える「なら、そうですね」
える「コーヒーを貰いましょうか」
奉太郎「お前、駄目じゃなかったか」
える「そうなんですが、そういう気分なんです」
える「大丈夫ですよ」
俺は渋々、コーヒーを二つ買う。
そして一つを千反田に差し伸べると、声を掛けた。
奉太郎「渡す前に一つ聞きたいんだが」
奉太郎「……酔った時と一緒には、ならないよな?」
える「ええ、ただちょっと寝れなくなってしまうだけなので」
奉太郎「それもあれだがな……」
まあ、酔った時みたいにならないのなら……いいか。
あれは本当に、なんというか、面倒だから。
そう言い、千反田はコーヒーを受け取った。
俺はそのまま千反田の横に腰を下ろす。
奉太郎「傘持ちも、慣れてきたのかもな」
える「ええっと、何故そう思ったんですか?」
奉太郎「去年より疲れてないから」
える「ふふ、それは良い事ですね」
える「なので来年も、お願いするかもしれません」
奉太郎「……いや」
奉太郎「1回くらい、外から見てみたい」
奉太郎「行列を……」
奉太郎「雛を、外から見てみたい」
える「……そ、そうですか」
奉太郎「ま、どうしても傘を持ってくれって言うのなら、別にいいけどな」
える「……考えておきます」
そう言うや否や、千反田は早速考え込んでいた。
何やら難しい問題だとか、どっちにすればいいのかだとか言っていた様だが、俺の耳にはあまり聞こえてこない。
奉太郎「ああ、そう言えば」
奉太郎「入須は、何か言っていたか?」
える「ありがとう、と言っていましたよ」
奉太郎「それは俺になのか」
える「ええ、そうです」
奉太郎「俺が思うに」
奉太郎「お前自身に言ったのが、一番大きいと思うけどな」
える「え? 何故ですか?」
奉太郎「決まってる、卒業式の事だ」
える「……ふふ、あれですか」
える「正解でしたね、あれは」
える「そんな事、ないですよ」
奉太郎「いや、正直驚いたぞ」
奉太郎「去年の秋以来、距離感みたいなのがあったからな」
える「え? 私と入須さんにですか?」
奉太郎「ああ」
える「でも、私が戻って来た時……入須さんは一緒に来てくれましたし」
奉太郎「……それは、千反田から見たらって事だろ」
奉太郎「俺には少し、入須から距離を取っている様に感じた」
奉太郎「それを気付いていて提案したんだと思っていたが……まあ、いいか」
える「……えっと、今はどうなんですか?」
奉太郎「今は、そうだな」
あれは確か……卒業式の少し前。
提案されたのは豆まきが終わった後だったか。
内容は確か、その時はとても単純な物だった。
千反田は
える「入須さんを驚かせませんか?」
と言ったのだ。
しかし卒業式の日、俺たちも多少驚かされる事があったな……
あの日はとても寒かったのを覚えている。
三月の卒業式。
入須がこの神山高校を、去る日の出来事だ。
第6話
おわり
Entry ⇒ 2012.10.26 | Category ⇒ 氷菓SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
真美「お鍋の美味しい季節になってきたよ→!」
小鳥「…え、えぇ…そうね。良い頃合いよね」
小鳥「…え~っと。それはともかくとして…」
小鳥「…どうして、私の部屋に?」
真美「………」
小鳥「………」
小鳥「ぜ、全然答えになってないんだけど…」
真美「亜美も今日は遅くなるらしいし…そしたら、たまたまピヨちゃんが事務所から帰るとこ見つけて」
小鳥「えぇ」
真美「つけてきたの」
小鳥「………」
真美「真美、探偵みたいだよね!すごいっしょ!」
小鳥「うぅ、頭が痛くなってきた…」
真美「鍋!」
小鳥「え?」
真美「鍋しよーよ!鍋!鍋!」
小鳥「…え、えーと…ごめんなさい。さっきから立て続けに色々と起こり過ぎてお姉さんもう、何が何だか…」
真美「そ→だよ~…さっきも言ってたっしょ?」
小鳥「た、確かに言ってたけど…」
真美「真美、そろそろ鍋がやりたい気分なんだよね」
小鳥「やりたい気分なんだよね、と言われても…」
真美「うちの家だと、何鍋にするかで揉めて、結局鍋自体が出来なくなっちゃうんだ」
小鳥「あぁ…あるわよね、そういうの。私の実家も……っていやそうじゃなくって!」
小鳥「何?じゃないわよ…ほら、私が送っていってあげるから、今日はもう帰りましょう?」
真美「……やだ」
小鳥「真美ちゃん…」
真美「………」
真美「……真美ね、実は昨日、亜美とちょっと喧嘩しちゃったんだ」
小鳥「え?」
真美「だから……今日はあんまり会いたくないの」
真美「………」
真美「……うん、そうだよね。ごめんなさい」
真美「今日はもう…帰るね」
真美「………」しょぼん
小鳥「………」
小鳥「……あぁもう…!わかったわ。降参、私の負けです」
真美「え?」
小鳥「……明日はちゃんと会って仲直りするのよ?」
真美「!」ぱぁぁ
真美「うん!」
小鳥「……え?あ、はいっ。わかりました」くすっ
小鳥「それでは失礼致します」
がちゃり
真美「……お母さん、何か言ってた?」
小鳥「えぇ。娘をよろしくお願いします…って」
真美「えー、何それー」
真美「……そっか」
小鳥「……帰らなくていいの?真美ちゃんもホントは寂しいんでしょ?」
真美「なっ…!//さ、寂しくなんかないもん!」
真美「あ、亜美もたまには寂しがらせてやらないとね!」
小鳥「へぇ~…?そう?」
小鳥「真美ちゃんのお母さんがね、こうも言ってたわよ」
小鳥「『あの娘、寂しがり屋だから、夜はすっごく甘えてくるかもしれませんけど…』って」
真美「ーーッ!////な、なっ…!////」
真美「そっ、そんなことないもん…!//そんなのデマだよ、デマ!」
小鳥「くすくす…それじゃ、そういうことにしておきましょうか」
真美「すき焼き!」
小鳥「我が家にそんな財力はありません」
真美「え→…じゃあ、カレー!」
小鳥「………」
真美「…?」
小鳥「えっと…鍋…よね?」
真美「?うん、そうだよ?」
小鳥「…カ、カレー鍋とは邪道な…」ぼそり
真美「え?」
小鳥「い、いや、何でもないのよ。わかったわ。それじゃあ買い出しに行きましょうか」
真美「うん、全然へいきー」
小鳥「…暖かそうな服だものね」
真美「うんっ、この服、真美のオキニなんだ→」
小鳥「へぇ…」
真美「亜美とオソロでねー…」
小鳥「………」
真美「…はっ!//」
真美「…うぅっ、にっ、ニヤニヤすんなー!!//」
小鳥「ふふ…ごめんなさい♪」
小鳥「そうだ、真美ちゃん、何か食べられない物とかある?」
真美「野菜は大体嫌いかな!」
小鳥「それじゃあ鍋にならないじゃない…」
真美「まぁでも鍋なら大体何でも食べられるけどね!」
小鳥「そ、そう?なら良かったけど」
小鳥「…それと真美ちゃん、あんまり私の側から離れないようにしてね?」
小鳥「あなたは仮にもアイドルなわけであって…」
真美「あっ、焼き芋売ってるー!!」ぴゅーっ
小鳥「………」
小鳥「鍋特集かぁ…少し気が早いような気もするけど」トマトは無しね
小鳥「…でもまぁ、実際私みたいに鍋してる人もいるわけだし…」
小鳥「カレーだったら…ウィンナーとかもいれてあげようかな」
小鳥「えっ、今日ポイント3倍だったの?!」
小鳥「うぅ…こんなことならポイントカード持ってくるんだった…」
小鳥「えーっと…もやし、もやしはっと…」
「………」
小鳥「……いや、待った。確か、まだ家にあった気がするわ」くるっ
「……!」
小鳥「えっと次は…」
「………」
「うっうー…」
真美「………」
小鳥「…真美ちゃん、その手に持っているのは何?」
真美「食玩」
小鳥「返してきなさい」
真美「お願いっ!これ、真美ん家の近所には人気でもうないんだ…すっごくレアなんだよ?!」
真美「うぅ…お願い、可憐で清楚な美人事務員のピヨちゃん…」
小鳥「………」ぴくっ
真美「(もう一押し…)よっ!出来る事務員!あんたあっての765プロ!日本一!」
小鳥「……はぁ、も、もぅ、しょうがないわねぇ」
真美「…チョロいね」ぼそっ
小鳥「何か言った?」
真美「いえ、何も」
真美「こっ、これくらいへっちゃらだもん!」
小鳥「そう…?私がそっちの袋持ってもいいけど…」
真美「へーきだよ!」
小鳥「うふふ、ありがと」
真美「………」
小鳥「………」
小鳥「ん?」
真美「…………手、繋いでもいい?//」
小鳥「……//」きゅん
小鳥「……はい、どうぞ」そっ
真美「う、うん…//」ぎゅ
小鳥「!そう、そうなのよね~…やっぱり、仕事も増えてきたからか顔つきもしっかりしてきたっていうか…」
真美「うあうあ→ピヨちゃんが熱いよ→」
小鳥「えぇっ?話をフってきたのは真美ちゃんじゃない…!」
真美「えっへへー」
…ソウソウ、ソレデリッチャンガネー
ヘェー、ソウナノー
ソシタラハルルンガ…
ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーーーー
ーー
ー
小鳥「こらこら、靴ぐらい揃えなさーい!」
小鳥「もぅ、まったく…」
小鳥「………」
小鳥(……でも、こんな形ではあるけれど)
小鳥(家に帰った時に一人じゃないっていうのは…)
真美「?はーやくぅ」
小鳥「はいはい」
小鳥(…うん、良いものね)
真美「了解!」
小鳥「………」とんとんとん
小鳥「……あ、厚揚げってまだあったかしら……」がちゃ
小鳥「うっ、危ない危ない…明日までだ…」
小鳥「…カレーに厚揚げって合うかしら…」とんとん
小鳥「…あーゆれでぃー♪あいむれいでぃー♪」とんとん
小鳥「ふんふふーん…」とんとん
小鳥「……あっちは上手くやってるかしら?」ちらっ
真美「あれ?これってこっちから開け…うあうあー!こちら側のどこからでも切れないよ→!わわっ、汁が飛びちったぁ→!」
小鳥「……;」
真美「真美のおかげだね!」
小鳥「えぇ…?」
真美「何さー、文句あんのー?」
小鳥「いいえぇ別に?」
真美「むー」
小鳥「えっ?ど、どうして?」
真美「鍋が出来るまでやろーよ!…この辺かな?」
小鳥「あっ…!ちょ、ちょっと待ってその棚は…!」
ガチャガチャガチャー
真美「………」
小鳥「………」
真美「…いっぱいあるね」
小鳥「……//」
小鳥「ふぅ…美味しかった」
真美「ひっさしぶりに鍋したなぁー。美味しかったー」
真美「……この鍋は…星みっちゅ!」
小鳥「あはは…微妙に似てる」
真美「でしょ?家族にも真美のモノマネは似てるって定評があるんだー」
真美「次のあみまみちゃんでやろうかな」
小鳥「…そ、それはプロデューサーさんにも聞いてみないと」
真美「んー…まぁまぁくらいかなー」
小鳥「まぁまぁかー…」
小鳥「…カレーなら…きっとチーズが良いわよね」
小鳥「よし」ことっ
つパルミジャーノチーズ
真美「………」
真美「………」
小鳥「ほっ」チーズふぁさ~
真美「………」
真美「……ピヨちゃん、じっぷ見てるでしょ」
小鳥「えっ?!どっ、どどどどうしてそんなことを…?!」
真美「いや…」
真美「うん」
真美「…でもオリーブオイルは無しだったね」
小鳥「そ、そうね…」
真美「思ってるほど万能じゃないよ、アレ。お母さんも言ってた」
小鳥「き、気をつけます…」
小鳥「はぁ、楽しかったけど疲れた…」じゃああ
小鳥「……子供ができたら、毎日こんな感じなのかしら……」がちゃがちゃ
小鳥「主婦って大変…」ごしごし
小鳥「………」ぴたっ
小鳥「はぁ…」きゅっ
真美「ピヨちゃーん、バスタオルどこー?」
小鳥「?!ちょっ…!だからって何も裸で出てくることないでしょう!」バタバタ
真美「だって~」
小鳥「…うわ、このバラエティ、ちょっと酷いわね…大体MCが」ぶつぶつ
真美「ピヨちゃん」
小鳥「…今度はどうしたの?」
真美「…いや、その」
小鳥「?」
真美「一緒に…入らない?」
小鳥「え、入るって…え?お風呂に?」
真美「……うん」
小鳥「………」
真美「………」
小鳥「…う、うちのお風呂狭いから…」
真美「…嫌なの?」
小鳥「はぁぁ…良い気持ち♪これは確かに心の洗濯だわぁ…」
小鳥「……なんとか、真美ちゃんを説得出来て良かった」
小鳥「あんまり…今の体型見られたくないし」つんつん
小鳥「…それを他の娘達に言いふらされたりして、それがプロデューサーさんの耳にまではいったりしようものならもう…」
小鳥「……//」ぶくぶく
小鳥「…ぷはっ、そういえば真美ちゃん、明日の昼からお仕事あったわよね」
小鳥「午前中にはお家に帰してあげなきゃ…」
ガラッ
真美「頼もう!」
小鳥「?!きゃあぁぁぁぁ??!!」
真美「ざま→みろ!」
小鳥「どうしてそんな誇らしげなのよ…」
真美「でねでね?真美、これがやりたい!」すっ
小鳥「!これ…格ゲーね。…ふふん、後で後悔しても知らないわよぅ…?」
真美「その間抜けなクチバシへし折ってやるぜ!」
小鳥「んなっ…!」
真美「…ぐあーっ!また負けたーっ!」
小鳥「まだまだ甘いわね」
真美「ピヨちゃん無駄に強いよ!何で?!」
小鳥「そっ、それは…」
小鳥(一日ほぼ丸々使ってやってたこともあるから、なんて言えない…)
真美「ピヨちゃんもうそのキャラ使うの禁止ね!」
小鳥「ふふっ、いいわよ」
小鳥「………」ぴっぴっ
真美「………」かちゃっ
小鳥「………」ぴぴっ
真美「ぐあーっ!また負けた!もーっ!もーっ!」
小鳥「!こっ、こら!コントローラー投げちゃ駄目ぇーっ!」
小鳥「………」ぴぴっ
真美「……真美ね」かちゃ…
小鳥「?えぇ」ぴっ?
真美「……時々…不安になるんだ。亜美に…置いてかれちゃうんじゃないかって」
小鳥「…!」
小鳥「…そっか」
真美「亜美、竜宮小町としてでびゅーしてから、お仕事すっごく増えてるでしょ?それなのに、真美は今日みたいに何にも無い日だってあるし…」
小鳥「それは亜美ちゃんだって同じよ…今日はたまたま」
真美「わかってる…!それはわかってるんだけど…」
真美「…でも、やっぱり不安になっちゃうんだ」
小鳥「それは、真美ちゃんが亜美ちゃんと離れたくないからよ。ずっと、一緒にいたいから」
小鳥「本当は、亜美ちゃんを応援してあげたい気持ちでいっぱいなの。違う?」
真美「……ピヨちゃんは何でもお見通しなんだね」
小鳥「くすっ…これでもみんなの事、よく見てるつもりなのよ?」
真美「……真美、亜美のことは本当に応援してるんだよ?でも、それ以上に…二人で、一緒に頑張りたいんだ」
真美「え?」
小鳥「プロデューサーさんを…みんなを信じて、自分のペースで頑張っていけばいいの」
小鳥「あの娘に負けたくない、ずっと一緒にいたい!っていうのはみんなが思ってることだと思うから…」
真美「………」
小鳥「…だから、焦る必要なんて無いの。私から見れば、真美ちゃんと亜美ちゃんの差なんて全然無いわよ?」
小鳥「ホントよ。仮にも事務してる私が言うんだもの、間違いないわ」
真美「……そっか…」
小鳥「…明日…ちゃんと亜美ちゃんと仲直りするのよ?」
真美「うん!ちょっと…元気になれたよ。ありがとうピヨちゃん」
小鳥「どういたしまして♪」
真美「よーしそれじゃ→景気付けにもう一戦だ→!」
小鳥「えっ!そ、そろそろ他のゲームにしない…?」
小鳥「ふぁ…あ、もうこんな時間…」かちゃ…
小鳥「…ねえ、真美ちゃんそろそろ寝…」
こてん
小鳥「へっ?」
真美「…zzZ」すぴー
小鳥「………」くすっ
真美「…zzZ」すやー
小鳥「…そうよ、まだ中学生なんだもの。色んなこと思って、当然よね」よしよし
真美「…ん、んぅ…」
真美「……お母さ…」すや
小鳥「………」
小鳥「…ふふ、可愛いなぁ」
小鳥「………」
小鳥(…写メっちゃお)ぱしゃ
ガチャ
小鳥「ただいまー。ふーっ…今日も疲れたーっ」
しーん…
小鳥「………」
小鳥(……やっぱり、昨日あれだけ騒がしかった分、いつも以上に部屋が静かに感じちゃうわね)
小鳥「…私もそろそろ潮時かなぁ…」
ぴんぽーん
小鳥「…前に注文してた本が届いたのかな。それにしては少し早いような…」
小鳥「はーい今開けまーす」
ガチャ
亜美「やっほー」
小鳥「………」
パタム
ガチャ
亜美「もー!何で閉めんのー!」
小鳥「え、えーっと…?」
小鳥「…亜美ちゃん?どうしてここに…」
亜美「どうしてってもー、ピヨちゃんはにぶちんさんだな→」
小鳥「にっ、にぶちんって…」
小鳥「ま、真美ちゃん?!こ、これは一体…」
真美「だって…亜美に昨日のこと話したら、亜美も来たい→って言うから…連れてきちゃった」
小鳥「つ、連れてきちゃったって…」
真美「まぁまぁ、いーじゃんいーじゃん減るもんでもなしー」
小鳥「私の精神は今確実にすり減っているけど…」
亜美「そゆわけでピヨ©、YO・RO・SI・KU〜♪」
小鳥「……え、えぇ〜…?」
亜美「ホントー?!」
真美「うんっ、ほら、こないだやりたいって言ってた…」
キャーキャー
小鳥「あはは…」
小鳥「………」
小鳥(……でも、ちゃんと仲直り…出来たみたいね。良かった)
亜美真美「「よーし、そうと決まれば…とっつげきぃ→→!!」」
小鳥「あっ…?ちょっ、こらっ…!待ちなさーーいっ!!!」
おわり
お姉さんピヨちゃん最強。
無駄に時間を空けてしまい申し訳ない。今からシャイニーフェスタ買ってくる。
ではノシ
Entry ⇒ 2012.10.26 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
P「真美に甘え癖がついた」
真美「めろめろにしてやるっしょー!」
P「あ、そうだ。ちょっと俺やることがあるから行きは律子に頼んである」」
真美「え?」
P「ま、帰りは迎えに行くから」
ギュッ
P「……真美?」
真美「……やだ」
P「お、おいおいそんなこと言われてもな……」
真美「兄ちゃんに送ってもらわなきゃ、真美やる気でないもん」
P「そんな子供みたいなこと……」
真美「まだ子供だもん!」
P「はぁこういうときばかり……わかった、最低限終わらせるからちょっと待ってろ」
真美「え、ホント!? う、うん! 待ってる!」
P「順番なんだから仕方ないだろ? まあそんなに長くならないし適当にくつろいでていいぞ」
真美「いいの? それじゃ、これっしょ!」
P「なっ! お前いつの間にゲームを……」
真美「甘いよ兄ちゃん、真美はいつでもゲームを持ちある……くしゅん!」
P「どうした? 風邪か?」
真美「ち、違うよちょっとくしゃみが……くしゅん!! う¨ー……」
P「あーあー、ほらティッシュだ」
真美「……んー」
P「……え?」
真美「んーんー」
P「……ほら、ちーん」
真美「ちーん!……ふぅ」
P「全くそれくらい自分で……」
真美「いいじゃん別に~!」
真美「え? なんで?」
P「くしゃみしてたし、どうせ夜更かししてたんだろ?」
真美「むっ、なぜわかった……」
P「というか、よく見たら顔色悪いし……熱は……ないよな」
真美「んっ……」
P「ちょ、へ、変な声だすなよ!」
真美「だって兄ちゃんの手、冷たくて気持ちいんだもん」
P「……真美としてはどうなんだ? 本当に大丈夫なのか?」
真美「……ちょっとだけ寒いかも」
P「困ったな……引き始めか肝心だろうに上着も持ってきてないぞ……」
真美「それじゃ、さ。兄ちゃんがあっためてよ」
P「……は?」
真美「……ダメ?」
P「……」
P「……これ、本当に大丈夫なのか?」
真美「なんで? いいじゃん兄ちゃんセーター!」
P「いや、その……誰か来たら、とか」
真美「むー……兄ちゃんは何か悪いことでもしてるの?」
P「そ、そんなことはないぞ! うん、これは大切なアイドルの体調管理だ! うん!」
P「……だからといって、プロデューサーの膝に座るアイドルもどうなんだ」
真美「普通っしょー」
P「まあ、それならいいんだが……」
真美「もー兄ちゃん! もっとちゃんとギュッとして!」
P「あ、あぁ」
真美「……兄ちゃんのにおいだ」
P「ば、ばか! 嗅ぐな! ……臭くないか?」
真美「ぜんぜーん、むしろ癖になっちゃうかも」
P「お前なぁ……そういうことをよくもまあポンポンと……」
真美「……」
P「どうした?」
真美「もっかいギュッてしてくれたら、降りるよ」
P「……お前なぁ。まあいい、これで」
クルッ
真美「……前から」
P「っ!」
真美「いいでしょ、兄ちゃん?」
P「……こ、今回だけだからな」
真美「うん」
ギュッ
真美「えへへ……さっきより兄ちゃんの匂いすごいや」
P「だ、だからそういう……」
ストッ
真美「よいしょっと……そんじゃ、行ってくるねー!」
小鳥「あら? 何かあったんですか?」
P「あ、音無さん。いえ実は……」
小鳥「なんと……でも嬉しいじゃないですか。懐かれるって」
P「そうなんですけど、なんていうか……甘えられてると言いますか」
小鳥「ふむふむ」
P「いつもみたいに激しく絡んでくるわけではないんです。妙にしおらしくて、子供っぽくて……」
小鳥「そういうことですか~。でもそれって真美ちゃんはそういう風に扱って欲しいんじゃないですか?」
P「……と言いますと?」
小鳥「亜美ちゃんは忙しいですし、それでもアイドルとして毎日頑張って本来なら中学生なりたてだっていうのに」
P「確かに小学生の頃からやってますからね」
小鳥「きっと、童心に戻りたい。っていうと変かもしれないですが、きっと。それもプロデューサーさんだからだとは思いますよ?」
P「なるほど、だから今になって甘えだして……まあそういうことなら少しは大目に見てあげようと思います」
小鳥「それがいいですよ! でも、甘えられすぎて手、出さないでくださいよ~?」
P「なっ! ま、まさか! ……それじゃ、迎えに行ってきます」
P「おぉ、お疲れ様」
真美「今日もばっちし、って感じ!」
P「それはよかった」
真美「……兄ちゃん、どうかした?」
P「え? 別に何もないぞ? それじゃ、帰るか!」
真美「それじゃ、手繋いで帰ろうよ」
P「て、手? 車すぐそこだぞ?」
真美「ダメ?」
P「ダメじゃないんだが……」
真美「……じゃいいや」
P「……真美?」
P「……」
真美「……」
P「……なぁ、真美」
真美「ん?」
P「その、さ。もう体調は大丈夫か?」
真美「あ、うん。もう平気~」
P「そうか、それはよかった」
真美「兄ちゃんにあっためてもらったおかげかな……」
P「なっ……やっぱり大丈夫か? その、いつもの真美らしくないって言うか」
真美「……兄ちゃんはいつもの真美の方が好き?」
P「い、いやそういうわけじゃないぞ」
真美「そっか、そうだよね……」
P「……真美」
P(いつもならば、真美のこと好きなんでしょー? ほらほらー! だとか)
P(おちゃらけた感じなのに、今はそれを感じない)
P(嫌味でもなくただ俺に甘えてくれてる。それならまだ嬉しいけれど)
P「……真美、いいか」
真美「うん?」
P「俺はお前のことが大切だから。これから変なことを聞くぞ」
真美「……うん」
P「何かあったのか?」
真美「それ、変でもなんでもないじゃん」
P「え? あ、いやそのだな……真美がいろいろ悩んでるものと思って一応……」
真美「……どうなのかな。わかんない」
P「真美?」
真美「もう、事務所着いた?」
P「え? あ、本当だ」
P「あぁ、今日はもう何もないし報告したら帰っていいぞ」
真美「ねぇ、兄ちゃん」
P「なんだ?」
スッ
真美「手」
P「……」
真美「兄ちゃん」
P「……誰かに見られでもしたら大変だろ?」
真美「……」
P「だから……事務所の前までな」
真美「う、うん!!」
P「って真美、手離してないじゃないか……」
真美「誰もいないんだし、別にいいじゃん」
P「ま、まあそうだけど……なんでそんな」
真美「えへへ……兄ちゃんの手、こんなにおっきかったんだ」
P「……一回、腕相撲した時同じことを言われた気がするな」
真美「あ、あの時とは違っ……」
P「え?」
真美「……なんでもない」
パッ
P「ん……そうか」
P「……よくわからないが、困ったときは言ってくれ。俺でよかったら相談に乗るから」
真美「……ホント?」
P「俺が約束を守らなかったことあるか?」
P「え、い、いつだ!」
真美「んー……真美も忘れちゃった!」
P「なんだよ……」
真美「……それじゃ、真美帰るね」
P「あ、あぁ」
真美「……じゃ」
P「あぁ、気を付けてな」
真美「……」
バタン
P「……年頃、ってやつなのかねぇ」
P(嫌と言うわけにもいかず、でも俺と二人の時だけ)
P(だがそうはうまくもいかず)
真美「それでね、亜美が~」
ガチャッ
亜美「おはー! 真美と兄ちゃんか……ってあれ?」
真美「……亜美」
P「い、いや亜美これはその……」
亜美「……」
亜美「もー、手なんて握っちゃって。流石は真美、兄ちゃんにメロメロですなぁ~」
真美「なっ! ち、違うもん! 亜美のバカ!!」
亜美「ば、馬鹿って何さ! いいもん、それじゃ言いふらしてやる!」
バタン
真美「……勝手にすればいいじゃん」
P「お、おい……」
P「なんだ?」
真美「真美が困ってたら、助けてくれるっていったよね」
P「あぁ、言ったな」
真美「……じゃ、ギュってして」
P「え? でも事務所で、また誰が来るか……」
真美「もう、いいの。亜美がどうせ……だから」
P「……でもさ」
真美「……にぃちゃぁん」
P「……ほら」
コクン
ポスッ
真美「……この匂い、久しぶり」
P「……」
真美「……ぐすっ、うっ、うわぁあん」
P「……落ち着いたか?」
真美「う、うん……ごめん、兄ちゃん……服グショグショで」
P「いいんだ、これくらい洗えばなんてことない」
真美「……バカ」
P「亜美か? 亜美だって、つい言い返したくなっただけだろう、気にするな」
真美「……違う」
P「ん?」
真美「……兄ちゃんだよ」
P「……俺? な、なんで?」
真美「なんで、なんでそんなに優しいの……?」
P「……真美が大切だから、だろうな」
真美「……うん。そうだよね……それじゃ、真美帰るね?」
P「……あぁ、亜美と仲良くするんだぞ」
バタン
真美「おはよ、兄ちゃん」
P「……亜美とは、仲直りしたか?」
真美「……うん。でも、まだ言ってないこともある」
P「言ってないこと?」
真美「あの約束、もっかい使う」
真美「全部、全部聞いてくれる……?」
P「あぁ、聞くよ」
真美「真美、兄ちゃんとお仕事して、みんなと遊んだりしてめっちゃ楽しいけど」
真美「亜美とどんどん離れて言っちゃう気がしてさ」
真美「アイドルになって、みんな周りは年上のお姉ちゃんばっかりだから話もついてくの難しいし」
真美「亜美と比べて、真美はまだまだだったから。……子供じゃないのに、子供のままだって思って」
P「……なるほど」
真美「でも、兄ちゃんは真美の方が近くにいるから」
真美「兄ちゃんといるときは、違う”真美”で……いつもより、甘えてみようって思ったの」
真美「それに兄ちゃんにも無理させてる気がして……」
P「……」
真美「手を握ってもらうと、不思議な気持ちになったんだ」
真美「本当にあったかくて、なんか胸のもやもやが消えるっていうか……」
真美「でも、亜美に言われたみたいな好きとは違うの」
真美「兄ちゃんのこと、好き。大好きって言えるけど」
真美「……ちゃんと言うのは、無理、かも」
真美「真美、自分でもなんの好きかわかんなくて……」
真美「兄ちゃんは兄ちゃんだから。兄ちゃんが、真美の兄ちゃんじゃなくなったら……絶対やだから」
真美「……好きじゃないって、ずっと思ってたし」
真美「わざわざ言いたくもなかった……でも」
真美「昨日亜美から言われたんだ」
P「亜美が?」
真美「……ただいま」
亜美「……おかえり」
真美「……」
亜美「その、真美……?」
真美「ごめんね、亜美」
亜美「え?」
真美「……やっぱり、真美だけずるいよね……皆の兄ちゃんなのに」
亜美「ちょ、ちょっと待ってよ! 急に何の話?」
真美「あ、ご、ごめん……」
亜美「……亜美も、ごめんね。ただふざけただけだったんだよ?」
真美「うん、わかってる。でも、真美子供みたいに言い返したりして……」
亜美「兄ちゃんと何かあったの?」
真美「……」
真美「……だから、さっきも」
亜美「……でも、多分それあれだよ」
真美「あれって?」
亜美「恋、みたいな」
真美「……」
亜美「あ、あれ?」
真美「やっぱりそうなのかなぁ……」
亜美「亜美は兄ちゃんのこと、兄貴~!みたいな感じだけど、手とかわざわざ握って欲しいとか思わないっていうかさ」
亜美「何かわかんなくても、きっと亜美の好きとは違うと思うんだよねー」
真美「そっかー……」
亜美「……なんか全部しゃべっちゃえば? 兄ちゃんに」
真美「え、えぇ!? む、無理だよそんなの!」
亜美「言ってもなんでもなかったらたださみしかったってことだし、恥ずかしくなったら恋しちゃってるってことで!」
真美「も、もう……他人事だと思って……でも」
――
P「なるほどな……よく言ってくれた」
真美「真美、怖かった……もう、兄ちゃんとふざけたりできなくなっちゃうのかと思ったら……」
真美「でも、言えてよかったって思うから」
P「……俺が思ってた以上に真美は子供で、大人だったんだな」
真美「え?」
P「正直、そこまで思い詰めてるとは思ってなかった。だから、俺のせいでもある」
真美「そ、そんな! 兄ちゃんのせいじゃ!」
P「いいや。どうあれ泣かせてしまうまで気付いてやれなかったのは本当だ」
真美「兄ちゃん……」
P「……最初、真美が甘えてきたとき何かとおもった。まあ正直また変なイタズラでも考えたのかと」
真美「……むー」
P「ま、まあでも真剣なのがすぐにわかって、でもそれが逆に不思議でな」
P「何か悩みがあるのか、って思ってただけで何もしなかった」
真美「……」
P「そんなふうに思ってた自分が情けない……」
真美「兄ちゃん……でも、真美は兄ちゃんのおかげで……」
P「あぁ、そういってもらえると俺も嬉しい。でも、やっぱり俺からお詫びがしたい」
真美「……何?」
P「……その、なんだ」
真美「?」
P「……また、いつでも頼ってくれ。甘えてくれてもいい」
P「だから、許してくれるか?」
真美「……あったりまえじゃん! バカぁ!! う、ぐすっ……」
P「あ、お、おい泣かないでくれよ……」
真美「し、知らないもん……ひっく……兄ちゃんが泣かせたんだかんね……」
真美「……真美、わかっちゃったから。自分の気持ち」
真美「責任、とってもらうっしょ……!」
P「ゆ、許すのか許さないのか……ま、まあいい。何が望みだ?」
P「……え?」
真美「……今の、ぜええええったいに忘れちゃダメだから! わかった!」
P「真美……? あ、あぁ……」
真美「……よし! もういつもの真美に元通りだから! 覚悟しててよね、兄ちゃん!」
P「……あはは、やっぱりそっちの方が真美らしいな」
真美「えへへ、そうでしょ?」
真美「そんじゃ今日も、張り切っていってみよー!!」
真美「次甘えるときは覚悟しててよね、兄ちゃん? んっふっふ~!」
完
良かった
Entry ⇒ 2012.10.26 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
咲「エロゲーって楽しいよね!」
シロ「今年もあと2週間かぁ……」
エイスリン「イチネン、スギルノハヤイ!」
豊音「今年はちょー楽しかったよー!」
エイスリン「ウン!」
塞「全国大会では準々決勝敗退だったけど、いい思い出になったよね」カチッ
胡桃「さっきから気になったんだけど、塞はさっきからノートパソコンで何してるの?」
塞「ちょっとね」カチカチッ
胡桃「別にいいけど」
http://ssweaver.com/blog-entry-1836.html
洋榎「エロゲしてる所を絹に見られてしもた……」
http://ssweaver.com/blog-entry-1845.html
菫「エロゲしてる所を宥に見られた……」
http://ssweaver.com/blog-entry-1848.html
竜華「怜、今日もエロゲをするで!!」 怜「ファンディスクや!」
http://ssweaver.com/blog-entry-1852.html
照「エロゲしてる所を咲に見られた……」
http://ssweaver.com/blog-entry-1875.html
今作がシリーズ最終回となります。
※余談ですが、今作は今までの2倍近いテキスト量となってしまいそうです。
今現在も書き留めが半分近くまでしか出来ていないため、
一旦保守して貰って後半は明日投下、という事もご配慮をして頂けますようお願い致します。
エイスリン「オオミソカ……?」
豊音「1年の終わりの日、12月31日の事だよー」
胡桃「私は何の予定もないよ」
エイスリン「ナイヨー!」
シロ「じゃあさ、初詣に行かない?」
豊音「初詣!?ちょー面白そうだよー!行く行くー!」
胡桃「去年も行ったけど、去年は3人だったからね」
シロ「うん、今年は5人で行こうよ」
エイスリン「サンセー!!」
塞「あ……私は……」
塞「うん……ごめん、家族でおじいちゃん家に行く事になってて……」
豊音「えー!じゃあ塞ちゃん行けないのー?」
塞「うん……だから皆で楽しんでおいでよ」
エイスリン「デモ……」
シロ「んー……どうでも行けないの?」
塞「うん……ごめんね、私に構わず4人で楽しんできて?」
塞(私も本当は皆と初詣に行きたかったけど……)
………
……
…
塞「え?千葉に?」
塞母「ええ、今年は千葉のおじいちゃん家で年越しをする事になってね」※当SSでの設定です
塞「年越しって……大晦日だよね?いつから?」
塞母「そうねぇ……31日は移動の疲れをゆっくりと癒したいから……」
塞母「――30日の昼かしら」
……
…
塞(もしかしたら31日にコミマへ行く事が出来るかもしれない……)
塞(岩手から東京に行くのは交通費がかかりすぎるから、行く機会は無いと思ってたけど……)
塞(お母さん達と千葉に行ったら、かかる交通費は片道千円と少し……)
塞(二度とこんなチャンスはやってこない)
塞(皆には本当に申し訳ないと思うけど)
塞(私はコミマに行くんだ……!)
シロ「……塞?」
塞「ふぎゅっ!?な、なに?驚かさないでよ!」
シロ(ふぎゅって……)
シロ「もう部室閉めるよ、帰ろう」
塞「あ、う、うん、すぐ行くよ」バタム
恭子「主将、もうすぐコミマやけど、何日目に行くんです?」
洋榎「うちは初日で考えとるけど」
由子「企業の物販目当てなのー?」
洋榎「せやな、同人の方はあんまり興味あらへんし」
洋榎「恭子と由子はいつ行くんや」
恭子「私は最終日に」
由子「私もよー」
洋榎「最終日とか創作とエロしかあらへんやろ……エロ同人でも買うんか?」
由子「あ、あはは……」
恭子「……でも主将、見てないんですか?」
洋榎「なんのことや」
恭子「これですよ」」
洋榎「なんやこれ……第1次スーパーヤエシュリー大戦……?」
恭子「主将が大好きな”ヤエシュリー”シリーズのキャラクターが戦う同人ゲームが最終日に出るんですよ」
洋榎「な……なんやと……!」
洋榎「こ……こんな同人ゲーム全然チェックしておらへんかった……」
由子「それが今回のコミマ限定らしいのよー」
洋榎「な、なんやて……!」
恭子「ええ、せやからどうしても手に入れるとなると、この最終日に行くしか無い訳です」
洋榎「……せ、せやけど、初日から3日目まで滞在する程の余裕は無いで……」
由子「最終日のみに行けばいいのよー」
恭子「そうなりますね」
洋榎「し、しかし、それやと企業行ってから西回ったんやと間に合わないんとちゃうか?」
由子「そうなのよー、しかも今回はかなり数を絞ってるらしいよー」
恭子「そこで、ひとつ相談があるんですよ、主将」
洋榎「……?」
……
…
洋榎「なるほど……な」
洋榎「確かにそれなら行けない事もないかもしれへんが……」
恭子「問題は、3人だと厳しいところですね……」
由子「あと一人いればいいのよー」
洋榎「……」
洋榎「……絹に頼んでみよか」
恭子「えっ、絹ちゃんですか?」
由子「で、でも絹ちゃんは確か……」
洋榎「心配ないで、絹ならきっとやってくれるで」
洋榎「今じゃあ絹も、うちとアニメ談義をするくらい……」
洋榎「一騎当千の戦士やからな――」フフッ
竜華「今年もあと2週間やなぁ」
セーラ「せやなー、なんだかんだ言って充実した1年やったわー」
怜「せやけども、まだ最後の戦争が残っておるわ」
竜華「戦争?」
怜「冬コミや」
セーラ「ふゆこみ?なんやそれ」
怜「なんや知らんのか」
怜「コミックマート、世界最大の同人誌即売会にして世界が誇る最大のオタクイベントや」
竜華「なんやそれ!そんなんあるんか!」
怜「東京ビッグサイトで12月29日から31日までの3日間、最大56万人もの来場者が一箇所に集まるんや」
セーラ「56万人!?」
セーラ(ってどれだけ凄いかわからへん……)
怜「勿論や」
竜華「ならうちも行きたい!」
怜「え、で、でも1日だけでも18万人近く集まるっちゅーし、むっちゃ人ごみやで……?」
竜華「だからこそや!そんな所に怜を一人で行かせるなんて、心配やで!」
セーラ「とか言うても、ホントは竜華がただ行きたいだけやないんのー?」
竜華「ちょ、セーラ!!」
怜「ははは、でも竜華が居てくれると正直助かるわ」
怜「一緒に行こか」
竜華「怜……うん、行こ!!」
セーラ「おいおーい、俺も忘れたらアカンでー!」ハハハ
怜「基本的には、同人誌即売会……オリジナルの漫画や小説を公開して販売するのが主なんやけど」
怜「今のコミマっちゅーんは、アニメやゲームを題材をした二次創作の漫画を販売したり」
怜「私らみたいな素人クリエイターが集って作ったゲームを販売したりするイベントやな」
セーラ「うおー!俺らみたいなんが、ゲームを作って販売しとるっちゅー訳やな!」
セーラ「むっちゃ面白そうやん!」
怜「それだけやない、企業ブースではエロゲブランドのグッズ販売も行なっとるんや」
怜「参加者の半分以上は企業目当て……まぁ私も”アコス”のグッズ目当てなんやけど」
セーラ「”アコス”のグッズとか、そんなんもあるんかー」
怜「せや、しかもコミマ限定販売やから、この機会を逃すと二度と手に入らへん」
竜華「も、もしかして……”きらめそふと”のグッズとかもあったりするん?」
怜「あるやろな、確か……」ガサガサ
竜華「”きらめそふと”……っと、何々……クロチャー抱き枕カバーにイケニャー人形……!?」
竜華「他にも、”麻雀で私に恋しなさい!”のコークスクリューセットとシャープシューターセットやて!!?」
竜華「なんやこれ!!めっちゃ欲しい!!」
怜「ただ、企業は早めに並ばんとすぐ売り切れてまう」
怜「本気で狙うなら始発で並ばんときついで」
セーラ「始発て……朝の5時とかやろ?」
怜「せや、それでもマナーの悪い徹夜組が大勢並んどるんや」
怜「人気のあるブースなんかは、下手すりゃ始発でも間に合わへん」
怜「それでも行くんか?」
竜華「……それでも!」
竜華「それでも、うちは行くで……!」
怜「……そか!」
怜「えっ」
セーラ「あー、俺は29日に予定があるなー30日なら行けそうやけど」
怜「え、ちょっ」
竜華「30日の午後からなら空いてるんやけど……」
怜「……」
怜「じゃあ行くのは最終日にしよか……」
竜華「ええの?」
怜「30日の午後に大阪を出発し、東京のホテルに泊まる事にしよ」
怜「セーラもそれでええ?」
セーラ「おう、それなら行けそうや」
竜華「了解や!」」
セーラ「どうせならそのまま東京で年越しするのもええな」
竜華「せやな!そーしよや!」
怜「はは、それも悪くないかもな」
――ス○イプのとあるグループチャット――
――とあるネット掲示板で知り合った数人の猛者達が――
――互いに集い語り合う 淑女達のグループチャットである――
ひろぽん:おるかーー?
塞:えっ?
ひろぽん:よーし、おるな!
トキ:ここやで (トントンッ
ピカリン: 西 濃 は 神
牛乳:なんなのこれもー
かじゅ:気にしたら負けだ
巫女みこカスミン:あら?珍しくフルメンバーですね
舞Hime:そういえばそうやね
トキ:珍しいなぁ
ひろぽん:いやー実はコミマに行くのが最終日になってもうてな
トキ:なんやひろぽんもなんか、私も急遽3日日に行く事になったんよ
塞:あ、私も最終日のコミマに行く事になりました
ピカリン:おお
かじゅ:塞さんは確か行かないはずだったんじゃないのか?
塞:実は岩手に住んでるんだけど、30日に千葉のおじいちゃん家に行く事になってね
塞:ついでにコミマも行こうかなって
かじゅ:……これはまさかのオフ会が実現できそうだな
牛乳:オフ会?
巫女みこカスミン:なんだから面白そうな話になってるわねー
舞Hime:私もオフ会に参加してみたいとよ
巫女みこカスミン:そうねぇ コミマに行く予定はないけどオフ会があるなら行こうかしら
牛乳:私もオフ会があるなら行ってみたいですね
舞Hime:私もよ
かじゅ:他の皆はどうだ?
ひろぽん:せやな、オフ会っちゅーんも悪くないな
トキ:うちもや、他の皆と会うてみたいしな
ピカリン:私も望むところ
かじゅ:決まりだな
かじゅ:詳しい日時と場所は、私の方で決めても構わないか?
巫女みこカスミン:任せるわ
トキ:かじゅなら心配あらへんやろ
ひろぽん:やな 楽しみや
………
……
…
恭子「お、来ましたね新幹線」
洋榎「N700系のぞみ、東京行きやな」
絹恵「降りるのは品川駅やったっけ?」
恭子「ええ、品川で降りてJR山手線に乗り換えて五反田駅で降ります」
恭子「五反田駅から徒歩数分、大崎駅から徒歩10分の所にホテルを2人2部屋予約しております」
恭子「東京ビッグサイトへの行き方は、大崎駅からりんかい線に乗れば国際展示場駅まで1本です」
由子「さすが恭子なのよー」
洋榎「ホンマ、こういう時は助かるで」
恭子「いえいえ、では乗りましょう」
セーラ「東京行きの新幹線がキタデー」
竜華「いよいよやね」
怜「こうして東京に新幹線で行くのは初めてやな」
竜華「せやねー、大会とかは全部バスやったし」
セーラ「確か、品川ってトコで降りるんやろー?」
怜「せや、品川で降りてJR東海道本線に乗り換え、1駅行った所の大井町駅で降りや」
怜「大井町駅から徒歩数分の所にホテルを3人1部屋予約してある」
怜「国際展示場までりんかい線で1本行ける絶好のポジションや」
竜華「さすが怜やな!」
セーラ「ほな、早速新幹線に乗るデー」
ゆみ(予算は高くついたが……場所的にもいいホテルを確保できた)
ゆみ(国際展示場まで1本、ここからなら始発ですぐに着く)
ゆみ(出来れば、明日行く前に一度会場を見て回りたいところだが……)チラッ
ゆみ(時間は……13時か、今から行けば2時間は見て回れるな)
ゆみ(とすれば、やる事はただひとつ)
ゆみ(会場の構造を直に確認し、最適なルートを考える事だ)
ゆみ(早速、出発するとしよう)
塞爺「おお、よくきたのぉ」
塞母「しばらくお世話になるわね」
塞爺「よかよか、塞も大きくなったのぉ」
塞「お久しぶりです、おじいちゃん」
塞爺「疲れただろう、今日はゆっくりしていきんしゃい」
塞「はい」
塞(とりあえず今日はゆっくりしよう)
塞(電車の時刻表も大丈夫、オフ会の開催地もチェック済み)
塞(あとは明日を待つだけだ……!)
小蒔「あら、霞ちゃん。これからお出かけですか?」
霞「ええ、少しばかり……東京に行ってくるわね」
初美「東京ですかー!私も行きたいですー!」
霞「ふふ、ごめんね。今回は私用なの」
春「ざんねん……」
小蒔「そういえば……巴ちゃんも東京に行くって言って、今朝出かけていきましたけど」
小蒔「一体何の用があるんでしょう」
初美「二人してずるいですー!」
霞「巴ちゃんも?」
霞(まさか……そんな事は無いわよね)
哩「……」
哩(もうすぐ搭乗開始時間)
哩(そろそろ準備しとかんと)ブルルッ
哩(なん……?メールが来とる……姫子か)
哩(「明日の大晦日一緒に過ごしませんか」)
哩(すまんな姫子、今日明日は用事があるんね)
哩(近いうちに埋め合わせするから、堪忍な)
哩「……」ピッピッピ
美幸「さ、さすがに早く着き過ぎちゃったかなー」
美幸(まだ前日の13時だし……オフ会は明日の20時……)
美幸(今からホテルに向かってもチェックインにはまだ早いし……)
美幸(かと言ってこれからコミマ会場に行くって言うのも……あーもー!)
美幸(どうやって時間を潰せばいいのよもー!)
美幸(……)
美幸(そういえばここから秋葉原って近いんだっけ)
美幸(秋葉原の方に行ってみようかな)
照「ただいま」
咲「おかえりお姉ちゃん」
照「ただいま咲、寂しくなかった?」
咲「う、うん、大丈夫だけど……お姉ちゃん、凄い荷物だね」
照「ちょっとね」
咲「昨日も今日もどこ行ってたの?」
照「少し友達の所にね、今日の夜も出かけるから母さんに言っておいて」
咲「う、うん……」
咲(友達の所に行ってあんな沢山の荷物……本当に何してるんだろう)
『見てください!ここにいるのは全部人間です!』
『その数、およそ20万人!これが世界最大のオタクイベントと言われるコミックマートです!』
菫「……」
菫「そういえばコミマの時期だったか」
菫(宥との幸せを選ばずに、オタクとして生きる事を選んでいたのなら)
菫(おそらくは、私もあの中にいたのだろうか……)
菫(まぁ、今の私にとっては全く関係のない事だが……)カチッ
菫(私も少し前まではエロゲオタクだ、コミマのレポートは少しばかり楽しみにしている)カチカチッ
菫(……ほう、今年も大荒れのようだな)カチッ
菫(……ん?なんだこれは)
「”ソフトハウスダヴァン”コミマ限定フィギュアを急遽増量!」
菫(珍しいな、このブランドは普段企業には出展しないはずなんだが……)カチカチッ
菫(しかもフィギュアだって?あのブランドがそんな事をするとは到底思えないが……)カチカチッ
菫「……なッ!!?」ガタンッ
菫「マツミー姉妹の戦闘服フィギュアじゃないか!!」
菫(ソフトハウスダヴァン史上、最も可愛いキャラであるマツミー姉妹)
菫(しかもあの可愛いデザインの戦闘服だと?)
菫(これは……正直欲しい!!)
菫(……だが――)
菫(……今の私に、これを手にする資格などない)
菫(私はエロゲを捨て、恋人を選んだ人間だ)
菫(そんな私に、エロゲはおろかコミマに参加する資格など……)
菫(……しかし)チラッ
「コミマ限定フィギュア マツミー姉妹戦闘服バージョン お一人様1体のみ」
菫(……それでも私は)
菫(……私は――)
菫(……)
菫(すまない、宥……!)
菫「……っ!」ガタンッ
ドタドタドタ
ガチャ バタンッ カチャ
………
……
…
「まもなく、国際展示場、国際展示場です」
洋榎「いよいよやな……」
絹恵「きたんやね……」
恭子「動画とか見た限りですと、ドアが開いた瞬間にダッシュが始まるようです」
由子「始発ダッシュなのよー」
洋榎「ダッシュするんは正直マナー違反やけど、ここは何としてでも早く並ぶで」
恭子「ええ、わかってます」
由子「電車が停まるのよー!」キィイ
洋榎「なっ……!エスカレーターの前は隣の車両やんけ!!」
ピロンピロンピロン ガララッ
恭子「言ってる場合じゃないです!行きますよ!」ダッ
『走らないでくださーい!』
ゆみ(後ろの混雑に巻き込まれずに済んだ)
ゆみ(そしてエスカレーターから直線的に一番近い改札を抜ける)
ゆみ(今回の為だけにSuicaも作った)
ゆみ(これで改札を抜ける時のほんの僅かなタイムラグも解消する)
ゆみ(改札から駅の出口を直線的に抜け、西の待機列を目指す)
ゆみ(駅から西待機列までの距離はおよそ300m)
ゆみ(全ては計画通りだ)
ゆみ(あとは徹夜組がどれだけ並んでいるか……だが)
洋榎「……ああ、頼むで恭子」
恭子「わかってます」
洋榎「恭子は東で同人誌の確保!」
恭子「はい」
洋榎「絹は西で同人ゲームの確保!」
絹恵「任せてやお姉ちゃん!」
洋榎「由子はうちと企業や!」
由子「はいなのよー!」
洋榎「我等『姫松-アルカディオス-』、皆生きてまた逢おうや!」
怜「始発ダッシュやなぁ」
セーラ「俺らは普通に歩いて行こーな」
怜「せやな」
竜華「無理をせず、マナー良く行こうで」
セーラ「ところで怜、さっきスタッフさんが東だが西だかってボード立ててたけど、なんなんあれ」
怜「東ホールと西ホールは並ぶ所が別々やねん」
怜「私らは西4の企業ブースに行くから西の待機列に並ぶんやけど」
怜「最初に東館に行きたい人は、あっちの東待機列に並ぶねん」
竜華「そうなんか、お、列が見えてきたで」
セーラ「うわ、すっごい並んどるなー!これ全部人なん?」
怜「これでもまだ少ない方や、後からもっと増えるで」
セーラ「開場は確か10時やったっけ?」
怜「せやな、このぐらいの多さやと……入るのに10分ちょいはかかりそやな」
竜華「あれだけ早よ来とんのに、それでも入るのに10分もかかるんか」
セーラ「まーこれだけ人が多いとしゃあないやろなー」
怜「せやね、とりあえずあと4時間、適当に時間でも潰そか」
竜華「怜は暇つぶしに何か物持ってきたん?」
怜「一応”ヒサプラス”を持ってきとるけど」
セーラ「それ自分で遊ぶ用のものやん……」
『まもなく、コミックマートxxを開催致します!』
ワーワー パチパチパチッ
竜華「おーようやくや!」
セーラ「なんか俺、ワクワクしてきたでー」
怜「はは、まぁ入るのにあと数分かかるし、入ってからも企業列でまた並ばなアカンけどな」
竜華「また並ぶんかいなー」
怜「まぁ並ぶっちゅーても、最終日やしそこまで人気のブースやないから大丈夫やと思うで」
怜「初日はどこも凄かったらしいけどな」
怜「問題なのは、初日と2日目で在庫分を売り切ってしまう所や」
セーラ「んー?どゆことやねんそれ」
怜「各日均等に在庫を用意してるブースもあれば、初日でひたすら数を捌いてしまうブースもあるちゅーことや」
怜「せやな」
竜華「なんやそれ!そんなん酷いで!」
怜「最近はそういうブースも少ないけど、稀にあるんや」
怜「まぁ”アコス”も”きらめ”も大丈夫やから、心配せんでもええと思うよ」
竜華「そ、そか……」
セーラ「お、列が動き出したで!」
竜華「いよいよやな!」
怜「私とセーラは”アコス”へ、竜華は”きらめそふと”やな」
怜「買い終わった後の待ち合わせ場所は覚えとるよね?」
セーラ「バッチリや」
竜華「うん、問題ないで」
怜「よし、それじゃあ各自健闘を祈るでや!行くでセーラ!」
セーラ「おう!」
照「少し出遅れたか……」
照(ま、いいか。最終日に残したのは確実に売れ残っているであろう企業の物販と……)
照(……妹系のエロ同人だけだからね)
照(まずは西の企業を先に回って……あれ?)
照(あの後ろ姿……どこかで見かけたような……)
照(あれは……菫?)
照(……)
照(でも菫がこんな所に居るはずないし……)
照(きっと気のせい……)
塞(来る前にネットで昨日や一昨日の様子をチェックしたけど……)
塞(まさかこんなに人が居るとは思ってなかった……)
塞(もう10時は過ぎてるから開場は始まってるはずなのに、全然前に進む気配がないし……)
塞(コミマって……本当に凄いんだなぁ)
塞(目当ての物もついでに買えればいいかなって思ってたけど)
塞(この様子じゃ買えるかどうか分からないな……)
塞(塞いでおくか……財布を)
「TOMOさん!こっち向いてください!」
「こっち目線いいっすかー!」
巴「はーい」ポーズ
「うぉおおおおおおお!」
「すみません!こっちおねがいするでござるよ!!」
巴「こうですかー?」ポーズ
「おおー!なかなかのおもちだよぉ!!」カシャ
「TOMOちゃん最高っす!」カシャカシャ
巴「あははーありがとー!」
巴(九州じゃあんまりコスプレを披露する機会がなかったけど)
巴(遠い所、コミマに来てよかったです)
巴(沢山の人達が私の事を見てくれている)
巴(もう不人気だなんて言わせない!)
ワーワー パチパチッ
………
……
…
竜華「終わってしもたなぁ……」
セーラ「ほんまあっという間やなぁ」
怜「せやね」
竜華「怜達はちゃんとお目当ての物を買えたん?」
怜「バッチリやで」
セーラ「俺もや」
竜華「そか、うちも欲しい物全部買えたから満足やわぁ」
竜華「せやねー、食事にはまだ早いし……一応明日の分までホテルは取ってあるんよね?」
怜「あ、え……えと……」
竜華「……?怜?」
怜「実は私……これから用事があってな……」
竜華「用事?なんかあるん?」
怜「せ、せや、詳しい事は言えへんけど……」
セーラ「それは俺らにも言えへん事なんか?」
怜「い、いや、そゆわけでも無いんやけど……」
竜華「……怜?」
怜「……あー……実はな、私これからオフ会があんねん」
竜華「オフ会って……あのオフ会!?ネットで知り合った人とリアルで会うっちゅー」
怜「せや、18時から都内の定食屋で会う事になってんやけど」
竜華「アカンで怜!オフ会って、知らん人と会うんやろ!」
竜華「そんなん危険すぎるで!」
セーラ「そもそも、何の集まりなん?」
怜「エロゲーが好きな同志の集まりなんやけど……」
竜華「エロゲーマーの集まりやて!?」
竜華「それ余計にアカンやろ!汚いオッサンとかきっと来るで!」
怜「せ、せやけど、皆同世代の女子やって言うてたし……」
竜華「そんなん嘘に決まってるやろ!きっとうちの可愛い怜を誑かすための嘘や!」
セーラ(誑かすて……)
怜「これでバックれてしもーたら、私二度とあのチャットに顔出せへんわ……」
竜華「ぐぬぬ……」
セーラ「竜華も落ち着きや、そもそも今回のコミマも(建前は)怜が心配で俺らついて来たんやろ」
セーラ「怜のオフ会にも俺らがついて行けばええやん」
怜「えっ」
竜華「せや……それや!怜、うちらも怜のオフ会についてくで!」
怜「で、でも、竜華達は他の皆の事知らへんやろし……」
セーラ「まー他の奴らが大丈夫そうな奴やったら、俺らは影でこっそりしとるしな」
竜華「せやせや、それでええやろ?」
怜「……」
怜「はぁ、わかった……そこまで言うならついてきてもええよ」
洋榎「皆ようやってくれたで!」
恭子「ええ、私の方もなんとか最後の1冊を手に入れる事が出来ましたし」
洋榎「絹もよくやってくれたで!」
絹恵「はは……こっちの方も人は多かったんやけど」
絹恵「東や企業に比べてそこまで多くはなかったみたいで、なんとかなったわ」
由子「結果オーライなのよー!」
恭子「そうですね、では早速ホテルに帰って戦利品を置いてどこか食事にでも……」
洋榎「あー……うち、ちょっと食事は一緒に取れへんわ」
恭子「……?どういうことです?」
俺の地元の友達はたまに飲むと俺の知らんツレを連れてくるわ…
サシで飲みたいのに
それはツライな…
オフ会参加者めっちゃ増えそうだなw
絹恵「お、オフ会!?お姉ちゃんが!?」
恭子「え、聞いてないですよ?」
洋榎「今まで言わんかったからな」
由子「洋榎がオフ会に参加するとは珍しいのよー」
絹恵「なんのオフ会なん?」
洋榎「え、えっと……エロゲーマーの同志が集まるオフ会やねんけど……」
恭子「エロゲーマーのオフ会ですか!?」
由子「何その面白そうなのー」
洋榎「うち、結構前からチャットで同世代のエロゲーマーと仲良うなってな」
洋榎「今回、たまたま参加者が最終日のコミケに行く事になったからってんで、オフ会が開催される事になったんや」
絹恵「じゃ、じゃあ……お姉ちゃんはうちらと一緒のご飯は食べられへんのね……」
洋榎「すまんな、食事は3人で取ってや」
恭子「いえ、私達もそのオフ会にお邪魔しましょう」
洋榎「ファッ!?」
洋榎「うちはともかく、恭子達は全く知らん人達やで?来ても面白くないで?」
由子「でも皆エロゲーマーなのよー」
恭子「私も主将が普段からチャットで話している人達ならすぐに仲良くなれそうです」
洋榎「そ、そうは言うけどな……絹はどうなん?絹はエロゲーマーやないやろ」
絹恵「そ、そやけど……うちはお姉ちゃんが普段どんな人達と会話してるか興味はあるで」
絹恵「先輩たちが行くなら、うちも一緒について行きたいです」
恭子「決まりですね、主将」
由子「のよー!」
洋榎「あ、あのなあ……」
洋榎「……あああーもう!好きにせえや!ぼっちになっても知らへんからな!」
3日目なんてボドボドになった身体と戦利品と最高の気分を持ち帰ってで帰ってお風呂入ってご飯食べて
コミケスレ覗いて寝るに限る
除夜の鐘?知らんがな
照(今日も沢山の戦利品を手に入れられた……)
照(一旦家に帰りたい所だけど……一旦戻って荷物を置きに行くとオフ会の18時に間に合いそうにない)
照(どこか適当に荷物をしまえれば…………ん?)
照(あれは菫……?間違いない、あの後ろ姿は菫だ)
照(並んでいた時に見たのは見間違いではなかった?)
照(でも何故こんな所に……)
照(……いや、そんなもの声をかけて確認すればいいだけ)タッタッタッ
照「おい」
菫「はい?……なッ!!て、照!?何故ここに!?」
照「それは私の台詞だと思う」
菫「わ、私は……その」
菫「た、たまたまニュースでコミマのことを知って……見に来ただけだ」
照「そう……」
照「じゃあその”ソフトハウスダヴァン”の紙袋はなんなの?」
菫「なッ!!」
照「それ、18禁ゲームのグッズだよね」
菫「こ、これは……その、違うんだ」
照「なにが?」
菫「し、知り合いに頼まれて」
照「なにを?」
菫「え、えっと……フィギュアを……」
照「そうなんだ」
照「え、だって……私もそれ買ったし」
菫「……は?」
照「私もそれを買った、初日に」
菫「いや、私が言いたいのはそうじゃない」
菫「お前、これが18禁のゲームだと知って買ったのか?」
照「うん」
菫「……そ、それはつまり」
菫「お前は……エロゲーをやった事があるのか?」
照「……」
照「そうよ、私はエロゲーマーだから」
王者の風格よ
菫(照がエロゲーマー……だって?)
菫(何かの冗談だろ……?今まで麻雀部でずっと一緒にいた私が知らないはずがない)
菫(確かにこいつはシスコンで、妹に対しては病的なまでにおかしくなる奴だが……)
菫(……妹に対して病的……?まてよ、どこかで似たような奴を見かけた気がする)
菫(あれは確か……チャットだ……ピカリン……)
菫(ピカリン……?まさか、照がピカリンだと言うのか?)
照「……菫?」
菫「あ、ああ……いや、すまない」
菫(いや、照があのチャットにいる筈はない……が)
菫(……照がピカリンだと言うのであれば、確かに納得は行く)
菫(……)
照「……なに?」
菫「……お前、ス○イプとかやってないか?」
照「ス○イプ?あのインターネットで通話が出来る奴?」
菫「ああ、そうだ」
菫「それでその……エロゲーの話をしたりとかする、チャットをやっていないか?」
照「……?なんで菫が知ってるの?」
菫「ッ―――!?」
菫(こいつ……本当にピカリンだったのか……)
菫(しかし……何故?何故照が……)
菫「あ、いや、その……なんだ、たまたま知り合いがあそこのチャットの住人でな」
照「そうなの?」
菫「あ、ああ……」
照「それはすごい楽しみ、これからそのグルチャのオフ会があるから」
菫「オフ会……だと?」
菫(グルチャの皆とオフ会……)
菫(すごく……気になる)
菫(私も元とはいえ、あそこの住人だ……)
菫(あそこの空間は私に取って、もうひとつの安らげる場所でもあった)
菫(一体どんな奴らなのか、会ってみたい……すごく興味がある……が)
菫(……今はあそこの住人では無い以上、呼ばれてすらもいない私が行っていいものでもない)
菫(本当にそれでいいのだろうか)
菫(あそこの連中は、私に宥と生きる道の決心を付けさせてくれた)
菫(普段はくだらないエロゲの話をしている連中ではあったが)
菫(私にとって、また大切な友人達に違いない)
菫(……)
菫(私は――)
照「あ、ごめん菫、これ以上いると遅れるから……じゃあ」
菫「待った」
照「……菫?」
菫「……私も」
菫「私も……行っていいか? ――オフ会」
ゆみ「18時に予約した加治木だが……もう入れるか?」
「加治木様ですね、こちらへどうぞ」
ゆみ「ありがとう」
「……こちらの広間になります、お食事等は如何なさいますか?」
ゆみ「あとでまとめて注文するから、今は結構だ」
ゆみ「それと、”かじゅ”という人物を訪ねてきた人がいたら、ここの部屋に通して欲しい」
「承りました、何か御用があればこちらのボタンでお呼び出しください」カタッ
ゆみ(ふぅ……)
ゆみ(予定の人数は8人だが、まさか数十人は余裕で入れそうな広間を使わせて頂けるとはな)
ゆみ(実にありがたい)
ゆみ(時刻は……17時45分、もうそろそろ皆集まる頃だろう……)
ゆみ(同世代のエロゲーマーだ、それも同姓ときた)
ゆみ(果たしてどんな奴なのか……)
塞「時間は18時少し前、”かじゅ”さんが先に入ってるって聞いたけど」
塞(な、なんか急に緊張してきた……)
塞(もしも変な人達だったらどうしよう……)
塞(……)
塞(でもせっかく来たんだし……)
塞(私だけ行かないって訳にもいかないよね……)「あ、あのー」
塞「は、はいっ!?」
美幸「すみません、中に入りたいんですけどもー」
塞「は、はい、すみません」ササッ
塞(まさか出入り口を塞いでしまうとは)
塞(……もうここまで来たんだ。覚悟を決めて中に入ろう)ガララッ
美幸「あの……えっと、”かじゅ”って人が来てる筈なんですけどもー」
塞「えっ、”かじゅ”?」
美幸「……え?」
塞「私も”かじゅ”って人に呼ばれてるんですけど……」
「はい、かじゅさんですね、承っております。こちらへどうぞ」
美幸「えっ、そうなのー!?」
塞「う、うん」
美幸「えーっだれだれー!私、牛乳だよー!」
塞「え、牛乳さん?私は塞っていう名前で……」
美幸「塞ちゃん?やだもー、本当に塞ちゃんなのー!?」
塞「うん、まさかこんなふうに牛乳さんと会うとは思わなかったよ」
美幸「びっくりしたよもー!」
「こちらのお部屋になります、どうぞ」
哩(ここか?)
ガララッ イラッシャッセー
哩「”かじゅ”という人がおるはずなんけど」 ガララッ
『あのーすみません、”かじゅ”という方は既に来ておられますでしょうか?』
哩「……なんと?」クルッ
霞「……?何か?」
「はい、かじゅさんですね、承っております。こちらへどうぞ」
哩「そうやけど」
霞「まぁそれはそれは、私は”巫女みこカスミン”です」
哩「カスミンなんか!?そいは”舞Hime”ゆーて」
霞「あら、舞さんでしたか!名前もそうですけど、容姿も可愛らしいのね」
哩「なっ、何言うとん!」///
「こちらのお部屋になります、どうぞ」
竜華「な、なんかキンチョーするわぁ」
セーラ「竜華がキンチョーしてどないすんねん」
怜「はは、でも竜華達がいてくれて正直助かったわ、思ったよりキンチョーせんでいれるわ」
セーラ「で、どないすん?もう中に入るんか?」
怜「せやな、確か幹事の人が先に待っとるゆーとったし……入ろか」
『ちょ、なんでセーラ達がここにおるん!?』
セーラ「……ん?なっ、洋榎!?」
竜華「なんやて!?」
恭子「こんな所で会うとは珍しいですね、ここは東京ですよ。なんでこんな所におるんです?」
セーラ「それはこっちの台詞や、なんであんたらがここにおるん!?」
怜「……オフ会やと?」
竜華「え、オフ会って……まさか、この店でなん?」
洋榎「せや、18時からや」
怜「え、それって」
竜華「まさか、愛宕さんもオフ会のメンバーなんか!?」
恭子「もってことは……あなた方もオフ会の参加者なんですか?」
洋榎「ん?どういうことや……?」
セーラ「いや、参加者は怜だけで俺と竜華は付き添いやけど……」
洋榎「……怜?まさか、お前があの”トキ”なんか!?」
怜「せ、せやけど」
洋榎「ホンマかいな!うちやで!”ひろぽん”やで!」
怜「”ひろぽん”?ホンマに?なんや、めっちゃ身近な人物やなぁ」
洋榎「ホンマやな!世間は狭いでまったく」
由子「洋榎と園城寺さんがオフ会参加者だったのよー」
竜華「ちゅー事は……二人はネットでも知人同士やったって事なん?」
恭子「うーん、そういう事になるんやろか……」
セーラ「よーわからんわー」
洋榎「っとと、もう時間やで、ほな入ろか」
怜「しかしええんかな、私ら部外者多すぎやろ」
洋榎「なんとかなるんとちゃう、事情を話せば分かってくれるやろ」
怜「せやろか……」
ガララッ イラッシャッセー
「はい、承っております。お連れ様の方もご一緒ですか?」
怜「あ、はい、そですー」
「承知いたしました、ではこちらにどうぞ」
恭子「今更なんやけど、ホントにうちら来ても良かったんやろか」
セーラ「ええんちゃうの?店員さんもフツーに通してくれたしな」
竜華「怜も心配やし、うちは何が何でもついてくで!」
由子「でも洋榎が普段どんな人と話してるのか気になるよー」
絹恵「そうやね、うちもお姉ちゃんがチャットでどんな人と話をしてるのか気になるわ」
「こちらのお部屋になります、どうぞ」
菫「……」
菫「おい、照。まだ着かないのか?」
照「……もう少し」
菫「本当だろうな?」
照「……多分」
菫「詳細な場所とか調べて来なかったのか?」
照「場所はこれ」サッ
菫「ん?……ああ、なんだ、割と近くじゃないか」
菫「さっき行ったT字路を逆方向に行ってたんだな、戻るぞ」
照「わかった」
菫「ここだな、18時を少し過ぎてしまったが何とか着いたな」
照「菫には感謝してる」
「いらっしゃいませ、2名様で宜しいでしょうか?」
菫「え、えっと……」チラッ
照「”かじゅ”さんという方が、来ていらっしゃると思うのですが」キラキラッ
菫「無駄に営業スマイルを使うな……」
菫(妥当だな、あいつぐらいしかあのメンツを纏められる気がしない)
「承っております、こちらへどうぞ」
菫「いよいよご対面だな」
照「そうだね」
菫「……緊張はしていないのか?」
照「別に、いつも通りにするだけだから」
菫(それは照としてのいつも通りなのか、ピカリンしてのいつも通りなのか……どっちなんだ)
「こちらになります」ガララッ
美幸「ち、ちゃちゃ……!」
怜「チャンピオンやないか……!!」
洋榎「な……ホンマや、なんでこんな所におるん!」
菫「あ……あれは千里山の……!」
菫(それだけじゃない、姫松の愛宕洋榎……!あっちには永水の石戸霞……!)
菫(準決勝で対戦した新道寺の部長まで……)
菫(本当にここなのか?何かの間違いじゃないのか?)
照「ここがオフ会の会場?」
ゆみ「オフ会の会場……と言えばそうだが」
ゆみ「まずは確認ついでに名乗りでて欲しい所だな、出来ればス○イプネームで」
照「そう……私は宮永照、スカ○プではピカリンという名前でやってる」
怜「な……!」
洋榎「ピカリン……やと……?」
霞「あらあら」
塞「まさかチャンピオンがピカリンだなんて……」
絹恵(ね、ねえ、なんでチャンピオンがこんな所におるんやろか)ヒソヒソ
恭子(そりゃ、チャンピオンもオフ会の参加者やったんとちゃいますかね)ヒソヒソ
由子(それって、チャンピオンもエロゲーマーって事なのよー)ヒソヒソ
竜華(ホンマかいな、チャンピオンもエロゲーとかやるんかいな)ヒソヒソ
セーラ(人は見かけによらんなー)ヒソヒソ
ゆみ「……」コホン
ゆみ「つまり、今回のオフ会の参加者という訳だな、わかった」
ゆみ「して、そちらのお連れさんは?”トキ”や”ひろぽん”と同じ付き添いか?」
照「ああ、彼女は――」
菫「いや、私から言おう」
照「……菫?」
菫「今回はたまたま、コミマ会場で照と会う事があったから付いてきただけだが」
菫「実は、私も皆とは無関係の人物ではないんだ」
ゆみ「……?どういうことだ?」
菫「私の名前は、弘世菫……そして――」
――魔法少女すみれ
数ヶ月前までこのチャットにいた、張本人だ――
霞「……嘘、まさかスミレちゃんなの?」
照「菫……それ本当?」
菫「……ああ、事実だ」
菫「くる日もくる日もエロゲをプレイし続けた私が、遥か遠い場所に居る恋人との幸せを選び」
菫「財宝のようなエロゲを全て捨て、オタクとの関わりも断ち切り、ネットから姿を消した……」
菫「それが魔法少女すみれ……私だ……」
照「菫……」
洋榎「ホンマに……あのスミレなんか?」
ゆみ「ああ……だとしたら、ある意味奇跡に近い何かだな」
霞「スミレちゃん……」
塞「し、しかし何故スミレさんまで……?」
菫「……たまたま照と会った時に、このチャットのオフ会をすると聞いてな」
菫「照がピカリンと知って、ここのオフ会だと確信してね。ご一緒させてもらった」
菫「尤も、既にチャットを抜けた私には参加資格など無いかもしれないが……」
哩「……」
美幸「……」
ゆみ「……いや、正直な所、君が来てくれてとても嬉しいよ、スミレ」
ゆみ「もう一度会いたいと思っていた。私だけじゃない……皆もだ」
怜「カスミンは一番スミレと仲よかったからなー」
霞「ちょっと、トキさん!」
菫「カスミン……?君があのカスミンか!?」
霞「……ええ、私がカスミン。”巫女みこカスミン”よ」
怜「私はトキ、園城寺怜やで、インハイでは世話んなったな」
菫「千里山の園城寺怜、まさか君があの”トキ”だったとはね……」
ゆみ「丁度いい、ちゃんとした自己紹介がまだなんだ」
ゆみ「全員揃ったみたいだし、まずは自己紹介と行こうか」
塞「そうですね」
洋榎「賛成や」
ゆみ「本名は加治木ゆみだ」
塞「本名も言うの?」
ゆみ「いや、どちらでも構わないが……」
洋榎「殆どが顔見知りみたいやからええんちゃうの」」
怜「せやな」
怜「私は園城寺怜、”トキ”っちゅー名前でやってます」
美幸「ト、トキさん……」
怜「……?あんたは確かインハイ2回戦の時に戦った……」
怜「その節はどうも」ペコリン
美幸「は、はいどうも……」
塞「愛宕洋榎……って確か……」
哩「姫松高校のエースやと……」
霞「洋榎でひろぽん……なんだか可愛いわね~」
霞「私は先程申し上げました通り、”巫女みこカスミン”です、名は石戸霞と申します」
霞「みなさん、宜しくお願いします」ボヨヨン
塞(む、胸が大きい……)
怜(ええ乳しとるなぁ)
洋榎(絹のよりも大きいんとちゃうか?)
絹恵(あの人、うちと2回戦で戦った人や)
塞「あんまりログインしない私がオフ会に参加しちゃっていいのかわかりませんけど……」
塞「よろしくお願いします」ペコリ
ゆみ「イン率の問題ではないさ、あそこのメンバーで参加したいという気持ちがあればそれで十分さ」
哩「次は私、”舞Hime”というネームでチャットをやっとる」
哩「白水 哩と言う、宜しくと」
塞(この人リアルでもこんな喋り方なんだ)
洋榎(時々日本語なんか分からん時もあるからな)
怜(牛乳って言うほど乳はそこまで大きくないと思うけどな)チラッ
霞「……?どうかしましたか?」
怜「ええ乳しとるなと思って(いや、なんでもないで)」
竜華(言ってる事と思ってる事が逆やで……怜……)
ゆみ「……あとは」チラッ
照「……私?」
ゆみ「ああ、改めて自己紹介をお願いできないか?」
照「わかった」
照「好きなエロゲは”私の妹のエロさが嶺上開花でとどまる事を知らない”」
照「妹が姉に恋焦がれて誘惑するなんて実に素晴らしい作品だ、思わず全店舗で特典を揃えてしまった」
照「やはり妹は素晴らしいな、全世界に”IMOUTO”という単語が出来てもいいくらいに素晴らしい、すばらっ」
照「最近”リアル妹がいる宮永さんのばあい”もプレイしたが、義妹も悪くない」
照「実妹と違って義妹は結婚が出来るからね、実妹に出来ない事を義妹は出来るから最高」
照「しかし実妹というのは血が繋がっているという点だけで興奮できる。こう、いつも繋がっているというか」
照「私にとって、妹と言うのはかけがえの無い存在なんだと思う、自分の一部というか」
照「とにかく、私は妹が大好きだ。よろしく」
菫「……」
ゆみ「……」
怜「……」
洋榎「……」
霞「……」
ゆみ(こいつは本物だ……)
怜(分かっとったけど、マジでアカンやろこいつ……)
洋榎(アカン、ホンマにこいつとは関わらん方がええかもしれへん……)
霞(面白い子ね~)
セーラ(な、なあ……チャンピオンからなんかとんでもない事が聞こえたんやけど……)ヒソヒソ
竜華(しっ!静かにせんと聞かれてまうで!!)ヒソヒソ
絹恵(きゅ、急に寒気がしたような気がしてんねんけど……)ヒソヒソ
恭子(絹ちゃん……チャンピオンとは目を合わせん方がええで……)ヒソヒソ
由子(チャンピオン恐るべしなのよー……)ヒソヒソ
菫「……」
菫「一ついいか」
ゆみ「なんだ」
菫「確かに私は、ここのメンバーだった。しかしそれは元だ」
菫「しかも自分の身勝手でチャットを抜けてしまった……」
ゆみ「……そんな私がここにいる資格があるのか、と?」
菫「……ああ」
ゆみ「……」
ゆみ「スミレ、言ったはずだ」
ゆみ「私は……いや、私達は、もう一度君に会いたいと思っていた」
ゆみ「それは何故か」
ゆみ「私達にとってスミレは、他人ではなく”仲間”だからだ」
ゆみ「私達のグループに、すみれという人物が居ない事などない」
菫「かじゅ……」
菫「……私は……弘世菫」
菫「先程も言った通り、魔法少女すみれというハンドルネームでチャットに参加していた者だ」
菫「私も、心のどこかで望んでいたのかもしれない」
菫「こうしてみんなとまた会える事を……」
ゆみ「……」
ゆみ「……ああ」
霞「スミレちゃん……」
照「菫……」
怜「スミレがおらんと、ツッコミがかじゅだけやからなー」
洋榎「ははっ、それは言えてるわ」
ゆみ「全く……大体お前達がふざけすぎてるんだ!」
照「ふざけてない、全部本気」
ゆみ「だからこそタチが悪いんだ!特にお前だ、ピカリン!」
霞「あらあら、楽しいからいいじゃないですか」
ゆみ「カスミン……キミも煽るような事は言わないでくれ」
塞「はははっ、なんだかいつものチャットみたいになりましたね」
哩「全くや」
美幸「なんだか、ようやくオフ会って感じがしますよねー」
怜「え?自己紹介って……もう終わりとちゃうん?」
ゆみ「そっちの5人の事だ」
竜華「えっ、うちら?」
絹恵(すっかり忘れられてるよーな気してたんやけど……)
恭子(本当今更やけど、私らここにいてええんやろか……)
由子(全く話に付いていけないのよー……)
セーラ(お腹減ったナー)
ゆみ「そうだ、君たちは……トキ……園城寺さんと愛宕さんの付き添いだろう?」
ゆみ「どうせなら一緒に楽しんで行って欲しい」
竜華「ま、まあ……そういうことなら」
恭子「そうですね、せっかくですしご相伴に預かりましょう」
恭子「あ、それなら一応主将から聞いてますけど」
竜華「うちも怜から聞いとるけど……」
ゆみ「知っていながらついて来るという事は、君たちはエロゲーに理解ある人達なのか?」
セーラ「理解ある人達っちゅーか……」
竜華「まぁうちらもエロゲーマーやから……」
恭子「ええっ!?そうだったんですか!?」
由子「びっくりなのよー」
竜華「え、末原さん達はちゃうん?」
恭子「い、いやまぁ……私らもエロゲーマーなんやけどね……」ハハハ
由子「のよー」
絹恵「うちはギャルゲーの方やけどね」
ゆみ「それなら尚更大歓迎だ、ぜひ一緒に楽しもう」
照「どうせならチャットにもご招待したらいい」
霞「あらあら、それも面白そうねー」
怜「い、いくらなんでもそれはアカンやろ……」
洋榎「せ、せや、恭子達に迷惑かけるっちゅーか」
恭子「いえ、私も興味ありますから、こちらこそご迷惑でなかったら是非」
竜華「せやせや、うちらからお願いしたいところや」
セーラ「それよりお腹減ったデー!はよメシくおー!」
ゆみ「ははは、そうだな。そろそろ注文をしようか」
………
……
…
照「何?」
菫「家に妹さん置いてきて大丈夫か?今夜は遅くなるんだろう」
照「それが……さっき家に電話したんだけど、今日は友達の家に泊まるって言ってたみたい」
菫「言ってた?」
照「私が電話した時には、もう出かけてた」
菫「そうなのか」
照「咲に会えなくて寂しいけど……今は今を存分に楽しむ」
菫「……そうだな!」
『ぶ、部長……っ!私は……!』
『いいんよ……姫子の全て……私にくれる?』
『部長……ああっ!』
咲「……」ドキドキ
モモ「……」ドキドキ
一「……」ドキドキ
巴「……」ドキドキ
憧「……」ドキドキ
誠子「……」ドキドキ
淡「……」ドキドキ
咲(まさか百合スキー集会のオフ会で百合アニメの鑑賞会をするとは……)
咲(やっぱ”哩”さんと”姫子”さんが裸で抱き合うこのシーンはいつ見てもいいなぁっ)
咲(百合って最高だよぉ)
すばらです
ゆみ「……少し盛り上がりすぎてしまったな、もうこんな時間だったか」
洋榎「ホンマや、あと30分で新年やないか!」
怜「ちゅーか、少しどころやないやろ、5時間近くここにいたんかい……駄弁りすぎやろ」
ゆみ「なんだかんだ言って、みんな話が弾んで仲良くなったみたいだしな」チラッ
竜華『やっぱそうやよねぇ~!うちも一ちゃんと透華ちゃんルートが一番泣けたわぁ」
美幸『あの二人はガチですよねー!私、思わず何十周もやりましたもーん!』
絹恵『”kei”はやっぱええですよね、うちも今じゃ”Kei”が一番やと思ってるぐらいやし』
塞『”Kei”と”Sela”は鉄板ですね、作品的にも商業的にもトップクラスだと思ってます』
霞『あらあら、このお団子可愛いのね~』
由子『お団子じゃないよー!』
怜「これを仲良くなったって言ってええんやろか……」
ゆみ「このまま解散するのもなんだし、神社にでも行って初詣に行かないか?」
照「初詣……」
竜華「おー、ええやん!行こ行こ!」
哩「ええね、楽しみばい」
塞「うん、皆で行きたい」
ゆみ「よし、そうと決まれば早速出発するとしよう」
菫「みんなで初詣か……」
霞「スミレちゃん?」
菫「ん、ああいや……なんだか、楽しいなって」
霞「……そうね、とっても楽しいわ」
ゆみ「あ、もちろんここの料金は割り勘だからな、忘れるなよ」
ざわ ざわ
セーラ「結構人多いんやなー」
菫「ここはそれほど大きな神社では無いが、地元民がよく利用するようでな」
ゴーン ゴーン
霞「除夜の鐘ね……」
ゆみ「時刻は23時55分……あと5分だな」
竜華「最初はどうなるかと思っとったけど、なんやかんやで一緒に新年を迎えられそーやなー!」
怜「せやね、竜華達と来て良かったわ」
恭子「まさか東京にまで来て新年を迎えることになるとは思ってもなかったですね」
洋榎「せやなぁ……コミマに行くだけならまだしも、恭子達とオフ会にまで参加するとは思ってへんかったわ」
絹恵「でも楽しかったで、今日1日」
洋榎「ああ……ホンマに楽しい1日やったな」
怜「3……2……1……」
「「あけましておめでとうございまーす!」」
菫「はっは……まさか本当にこうして新年を迎えるとはな」
霞「そうね……まるで夢の中にいるみたい」
洋榎「ところがどっこいっ……!これは現実や……っ!」
ゆみ「ああ、今こうして皆と一緒にいる……紛れもない現実だ」
ゆみ「っと、みんな、あけましておめでとう」
由子「おめでとうなのよー!」
塞「あけましておめでとう」
哩「おめでとう」
竜華「怜、あけましておめでとうなぁ、今年も宜しくな」
怜「おめでとうや、今年も宜しくされるで」
洋榎「せやせや!沢山願い事したるでー!」
恭子「沢山願い事をするって……ええんですかねそれ」
洋榎「有り有りやろ!願い事はいくつあっても願い事なんやで!」
塞「そういう問題でも無いような……」
照「私は咲と結婚できるようにお願いしよう」
菫「まて、それは願い事以前の問題だ」
照「……何故?」
菫「いやいや、どう考えてもおかしいだろ!」
照「神様ならきっとなんとかしてくれる」
菫「だめだこいつ、早くなんとかしないと……」
怜「竜華、そうやなぁ……願い事したい事は正直沢山あるんやけど」
怜「……たった一つだけ、選ぶとしたらあれやな」
セーラ「あれ?あれってなんなんー?」
怜「……私らがこれから進む、未来への成功―――かな」
竜華「……」
セーラ「……」
セーラ「ああ、せやな」
竜華「……うん」
怜(せや……これは私の願い毎だけやない)
怜(私ら3人の願い……3人の想い)
怜(私らの願い事―――)
怜(どうか――)
………
……
…
ゆみ『く……今作もギリギリだな』
蒲原『ワハハ、ここで延期したら今後に相当響くかもなー』
ゆみ『ああ、ようやく中堅レベルまで持ってこれたんだ』
ゆみ『ここで信用を失うわけにはいかない』
ゆみ『睦月!マスターアップはいつ頃だ!?』
睦月『明日中にはなんとか!』
ゆみ『頼む、今月は他に競合ソフトがない。ここで売上を伸ばすぞ!』
ゆみ『蒲原は妹尾と一緒に睦月のフォローを、私はモモと一緒に店舗を回ってくる』
ゆみ『鶴賀ソフトウェアの一生がここで決まると言っていい、頼むぞ!』
蒲原『ワハハ、任せれたぞー』
恭子『だから言ったんですよ、無理をしないで発売日は来月にしましょうって』
由子『いくらなんでも無茶すぎるよー』
洋榎『せやけど、”トキハウス”が今月に来るんやで!ここは直接勝負するしかないやろ!』
絹恵『お姉ちゃん、そう言って前作も負けたやないの……無茶しすぎやって』
洋榎『絹までそないな事言うんかいな、誰かうちに賛同してくれる奴おらへんのかー!』
漫『あ、あのー、先ほど店舗の人から、数を減らしたいと電話を頂いたんやけど……』
洋榎『あぁっ!?なんやてぇー!そんなんうちが許さへんで!』ポカポカ
漫『痛いっ痛いですよぉ!私に八つ当たりせんといてください!』
竜華『怜……』
怜『竜華か……どしたん?』
竜華『いや……なんかぼーっとしとるみたいで、どしたんかなーと』
怜『……や、なんでもないで』
怜『マスターアップも無事に終わって、ちょっと気ィ抜けたんかな』ハハ
竜華『怜……』
怜『……』
怜『その……な』
竜華『サークルを立ち上げた時……?そらまた随分と懐かしいわぁ』
怜『……あの時は色んな事があったけど、あの時皆に出会えたおかげで』
怜『今の私らおるんやなと思うと……少しな』
竜華『怜……』
怜『……他の皆は、元気にしとるんやろかね』
「トーキー!リューカー!ちょっとこっち手伝ってやー!」
竜華『んもう、セーラはホンマしゃあないんやから……行こ、怜』
怜『……はは、ホンマやなぁ』
菫『……っ』
菫『この時期は休む暇も無いな……ったく』
「弘世さん、それ運んだら竹の間のお布団片付けてきて頂戴」
菫『はい!わかりました!』
宥『ふふ、菫ちゃんは頑張り屋さんだね』
菫『宥!そっちはこれからかい?』
宥『うん、沢山休憩取ったから頑張るよっ』
菫『はは、程々にな』
「弘世さん!いつまでそこにいるの!早く運んで!」
菫『は、はいっ!すみません!……じゃ、またあとでな、宥』
宥『うん、がんばってね』
咲『お姉ちゃん?』
照『準備は出来た?』
咲『うん、いつでも大丈夫だよ』
照『そっか……じゃあ行こう』
咲『うん』
………
……
…
照『……』
咲『お姉ちゃん?』
照『ん?どうしたの?』
咲『ううん、なんか遠くの方を見てたから……』
照『……』
咲『昔の事?』
照『”仲間たち”と出会った時のことだよ』
咲『ああ……一緒にエロゲーを語り合った仲間たちだっけ?』
照『うん』
照『あの人達に出会わなかったら、今の私もいなかったと思う』
咲『お姉ちゃん……』
照『……』
照『……咲、エロゲーは好き?』
咲『……うん、好きだよ』
咲『私も元々百合が好きだったから、すんなり馴染んだし』
咲『結果的に、こっちの道は私に合ってたみたい』
咲『エロゲーって楽しいよね!』
照『……うん、そうだね』
照『そう、咲がこれから働く……”KIYOSUMI”だよ』
咲『私、やっていけるかな……』
照『咲なら大丈夫だよ、天才的なライターになれる』
咲『お姉ちゃん……』
照『さあ、行こう』
咲『……うん』
――エロゲーは終わらない
私達のような人が エロゲーを心から愛する限り
私達の物語は終わらない
そして これから始まる
私と私達の新しい物語は
新たな歴史の1ページとして
人々に語り継がれていくだろう――
Fin
咲「……ふぅ、いい話だったなぁ……」
咲「やっぱエロゲーは最高だよぉ!」
咲「まさに人生だよね!」
咲「さて、おまけモードでも見ようかな……て」
咲「あぁっ!もうこんな時間!」
咲「早く学校に行かなくっちゃ!!」
咲「これ以上遅刻すると、また和ちゃんに怒られるよー!!」
咲「むぅ、徹夜でやってたから眠いけど……授業中に寝ればいいかっ」
咲「それじゃ、行ってきまーす!」
咲「エロゲーって楽しいよね!」 カン
当初は予定していなかったシリーズ物になってしまいましたが、
皆様のご協力と支援により無事完結する事が出来ました。
近々違うネタでここにSSを投下しようと思うので
また次のSSでお会いしましょう、ありがとうございましたっ(ぺっこりん)
乙としか言いようが無いですわ
面白かったぜ!
コークスクリュー乙
えっ最終回…?
Entry ⇒ 2012.10.25 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (3) | Trackbacks (0)
える「古典部の日常」
奉太郎「古典部の日常」 1
奉太郎「古典部の日常」 2
奉太郎「古典部の日常」 3
奉太郎「古典部の日常」 4
奉太郎「古典部の日常」 5
奉太郎「古典部の日常」 6
本スレは
奉太郎「古典部の日常」
の続編となります。
前作から読む事をおすすめします。
今の所、話数は未定となっております。
前作にあまり無かっただらだらとした日常を書ければ良いと思っているので、宜しくお願いします。
そして、ゆっくりと扉は開かれ……
俺は多分、いや……俺だけではない。
里志や伊原も、千反田が現れる事を望んでいたのかもしれない。
……そうであって欲しかった。
何しろ、古典部を訪れる変わり者など……今ここに居る三人を除けば千反田以外あり得ないからだ。
これが新入生が入ってくる時期、4月頃なら俺達はここまで期待はしなかったと思う。
だが今は1月、冬休みが明けてすぐの事だ。
それなら……もしかすると。
早く、早く開けないか、何をもったいぶっているんだ。
驚くほど、扉が開くのは遅かった。
……いや、俺が時間を長く感じているだけか。
だって俺がここまでの考えをするのに、多分まだ3秒程しか経っていないからだ。
里志や伊原の動きも、扉同様遅かったのでそういう事なのだろう。
しかし、時間は確実に刻まれている。
ようやく、そいつの体が隙間から見える。
制服は……女子の物だった。
つまり、それは……!
なんという事だ、ここまで必死に考えていたのに……この野郎。
奉太郎「……なんだ入須か」
入須「おい、今何て言った」
……つい言葉が漏れてしまったのだ、それを聞いていたとは嫌な奴だ。
里志「入須先輩、こんにちは」
里志「にしても……ホータロー、今のは流石にどうかと思うよ」
摩耶花「今の折木の顔、少し面白かった」
摩耶花「しかも、先輩の事呼び捨てにするなんて考えられないわ」
……いや、俺一人を犠牲にすればそれでこの二人は助かるんだ。
なるほど、これが生存本能と言う奴だろうか。
……少し違うか。
奉太郎「いや、あの」
奉太郎「……すいませんでした」
俺が取ったのは最善の選択だった。
とりあえず謝っておけば、入須もそこまで気にしないと思う。
入須「全く、君は普段からそんな風に思っていたのか」
奉太郎「……そんな訳、無いじゃないですか」
俺はこれでもかと言うほどの爽やかな笑顔を入須に向ける。
当の入須はそれを爽やかな笑顔だな、とは思わなかったが。
入須「……まあいい」
入須「君達、全員が残念そうな顔をしたのには見当が付く」
里志や伊原も顔に出していたらしい、それなのに俺だけに物を言うとは……やはり、嫌な奴だな。
入須「……千反田が来たと、思ったんだろう」
その入須の予想は、素晴らしくも当たっていた。
里志「……はい、入須先輩の言う通りです」
里志「間違いなく、僕達はそれに期待していました」
摩耶花「……」
里志は大体いつもの調子で、伊原は黙って首を縦に振り、それぞれ入須の質問に答えた。
奉太郎「あなたが古典部に来るとは、珍しい」
里志や伊原に反し、俺は悪態を付き入須に返答を促す。
入須「君は変わらないな」
入須「古典部へ来た理由か……」
入須「……そうだな、折木君が」
入須『入須先輩、わざわざ足を運んでくれるなんて光栄です』
入須「とでも言ったら教えようかな」
……絶対に言ってやるもんか。
入須「いや、思わんよ」
奉太郎「……」
こいつは、何を考えているんだ。
俺には見当が全く付かない。
入須「でもな、私がある一言を言えば」
入須「君は間違いなく、さっきの台詞を言うだろうな」
ある一言……?
奉太郎「言わせてみてくださいよ、俺に」
そう入須を挑発すると、入須は若干もったいぶりながら口を開く。
入須「……千反田の事だ」
俺は少し考える。
確かにその入須の言葉が本当なら、俺は間違い無くさっきの台詞を言うだろう。
しかし……しかしだ。
入須は本当に、千反田の話で来たのだろうか?
……俺には分からないが、多分。
入須はそんな冗談を言う奴では無いと言う事くらいは、俺にも分かった。
奉太郎「……分かりました」
奉太郎「入須先輩、わざわざ足を運んでくれるなんて光栄です」
今こいつ、笑ったよな。
俺はバツが悪そうに、視線を入須から逸らす。
里志「……」
摩耶花「……」
里志と伊原は、何か笑いを必死に堪えている様な表情をしていた。
……揃いも揃って、こいつら。
入須「……まさか本当に言うとは思わなかったよ」
入須「言わなくても、話はする予定だったんだがな」
……やはり苦手だ。
奉太郎「それで、その千反田の話、してもらいますよ」
入須「ああ、そうだな」
入須「……私から聞くよりも」
何を言っているんだ、こいつは。
しかし俺の思考は止まっても、入須の動きは止まらない。
入り口の扉から少し離れ、何やら顔だけを廊下に出して合図をしている様に見えた。
そして、次にその扉から現れたのは……
える「……あの、こんにちは」
俺が、俺が一番会いたかった人だった。
……あの日、千反田は確かに言った。
さようなら、と。
そして俺は結局、最後まで言葉を掛けられなかった。
足があんだけ動かなかったのは初めての経験だった。
しかし今も、足が勝手にこんだけ動くと言うのも、初めての経験だった。
俺はそのまま、千反田の近くまで行き、千反田を抱きしめる。
奉太郎「本当に、千反田なんだな」
奉太郎「いつもの、お前なんだな」
える「え、あ、は、はい」
その返答は、確かにいつもの千反田だった。
える「あ、あの!」
そして千反田は声を強くして、俺に申したい事がある様子だった。
える「……えっと、少し、恥ずかしいんですが……」
俺はその言葉で我に帰る。
入須は眉をひそめ、首を横に振っている。
これに台詞を加えるなら、やれやれとか、全く君はとか、そんな所だろう。
伊原はと言うと、顔を手で覆ってしまっている。
俺はそんな周りの奴らの反応を見て、初めて自分が千反田を抱きしめている事を恥ずかしく思った。
奉太郎「……す、すまん」
える「ふふ、いいですよ」
千反田は本当に、千反田だった。
いつもの笑顔が、それを俺に教えてくれる。
そしてゆっくりと千反田は部室の中に入っていく。
える「……ありがとうございます」
俺の横を通り過ぎるときに、確かに千反田はそう言っていた。
そのまま自分の席、いつもの席に千反田は座る。
える「ええ、ありがとうございました」
……結局、入須は何をしに来たのだろうか?
いや、そんな事はどうでもいい、今は……!
奉太郎「聞いても、いいか」
える「……ええ」
奉太郎「何故、学校に居る?」
える「……ふふ、私でも予想できました」
える「折木さんの言う事を予想できたのは、少し嬉しいです」
奉太郎「……そりゃ、どうも」
里志「……うん、僕も気になるな」
里志「なんで千反田さんが今日、学校に来たのか」
摩耶花「私も、今思っている事が当たって欲しい」
摩耶花「……会いたかったよ、ちーちゃん」
こういう時、里志は結構凄いと思う。
全くもって、動揺している様子には見えなかったからだ。
伊原はそれとは逆で、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
伊原が言いたかった事は恐らく、千反田が本当に戻ってきたのか、という事だろう。
……俺は、どんな顔をしていたのかは分からない。
自分の事は難しいからな、仕方ない。
える「入須さんと一緒に来た理由から、お話した方がいいかもしれません」
意味があったのか、入須が同行していたのには。
える「実はですね……少し、一人で来るのが気まずくて」
奉太郎「……」
える「え、ええっと」
奉太郎「なんだ、気まずくて……の後は?」
える「い、いえ。 それだけです」
奉太郎「……はあ」
こいつは本当に変わらないな。
奉太郎「……それよりも、なんで今日来たんだ」
える「……やはり、言い辛いですね」
そう言い、千反田は顔を伏せる。
千反田を除く三人は、黙って千反田の言葉を待っていた。
やがて、顔を上げると……千反田は再び口を開く。
える「実は……」
える「その、父の容態が戻りまして」
里志「ええっと……」
摩耶花「……つまり、どういう事?」
える「あの、私も驚いたんですよ」
える「……結論から言いますと」
える「えっと……高校を辞める必要が、無くなりました」
摩耶花「……えっと」
える「あの、ですから」
える「皆さんとまた一緒に、居られます」
摩耶花「つまり……」
里志「ううん……」
える「あ、あの!」
駄目だ、こいつらに任せていては多分……日が暮れてしまう。
かくいう俺も、状況をうまく飲み込めては居なかったが……まとめるくらいの事はできるだろう。
奉太郎「千反田の父親は無事に千反田家を収める役目に戻り」
奉太郎「そしてそのおかげで、千反田も学校を辞める必要が無くなった」
奉太郎「また一緒に、古典部で活動できる」
奉太郎「……って事か?」
なんだ、俺も結局最後は本人に答えを促しているではないか。
……それより俺がまとめた事、合っているのだろうか。
える「ええ、そうです!」
える「……折木さんが居て、助かりました」
える「私本当に、父親の体調が直ったときですが」
える「あまりこう思ってはいけないのは分かりますが」
える「どうしようかと、思っちゃいまして」
える「折木さんにあれだけ言っておきながら、どうしようかと……」
奉太郎「そう、か」
くそ、千反田に俺の冬休みを無駄にされてしまったではないか。
里志「……僕は、なんとなくこうなるかと思っていたよ」
それに加え、新年の気分も最悪だったではないか。
摩耶花「本当に! 本当に良かったよ、ちーちゃん」
そしてついさっきまでも、最悪の気分だったではないか。
だが。
今は、とても良い、心地良い気持ちだった。
える「ええ、私一人では、とてもここまで来れなかったですよ」
える「……皆さんに、どんな顔をしていいか分からず……」
奉太郎「そんな事、どうだっていいさ」
える「そう、ですよね」
なんだか俺が随分悩まされていた時間が全て無駄になってしまったが、まあいいか。
とにかく、これでまた……古典部四人が揃った。
今年は絶対に、いい年になるだろう。
春は出会いと別れがあり、夏にはまた多分……どこかに出かけるだろう。
秋は文化祭、去年楽しめなかった分、今年は楽しみたい。
そして冬には……今年の冬は、暖かく過ごせるかもしれない。
俺はこの一年に、今までに無い期待を寄せながら、ゆっくりと千反田に向け言った。
奉太郎「……さようならでは、無かったな」
える「……ええ、私の間違いでした」
える「また、お会いできましたね」
える「折木さん」
第1話
おわり
1月のとある日、俺は早朝から家を出ていた。
それも昨日、千反田から電話があり……内容は朝早くに会えないか、と言ったものだった。
俺は別にそれ自体が嫌では無かったし、二人きりで話す事もあったので気が進まないなんて事は全然なかった。
なかった……のだが。
まだ起きて1時間も経っておらず、完全に目が覚めている訳では無い。
それに加え外のこの寒さ……足が鈍るのは仕方ない事だ。
夜に少し雨が降っていた様で、道端にある水溜りには氷が張っていた。
それらをバリバリと割りながら、俺はあの公園へと向かっている。
そんな馬鹿みたいな事を考えながら、途中にある自販機でコーヒーを買う。
奉太郎「……ふう」
冷え切った体に染み渡る、自販機に感謝しておこう。
しかし最後まで飲みきる前に、具体的には半分程飲んだ所でどんどんと冷めていってしまう。
この理不尽な現実に、俺は特になんとも思わず最後の一口を体に取り入れた。
そのまま自販機の横に設置されていたゴミ箱に空き缶を放り込み、再び俺は歩き出した。
体がぶるぶると震える。
……確かこの現象には名前があったはずだ、ええっと。
なんとかリングとか、そんな感じだったと思う。
体温調整をする為らしいが……これで暖かくなるとは到底思えない。
……まだ走ったほうがマシだと思う。
だが俺は走る気もせず、再び体をぶるぶると震わせながら公園へと向かった。
俺が公園に着くと、千反田は既にベンチに座っていた。
奉太郎「おはよう」
そう声を掛けると、千反田はすぐに振り返り俺に挨拶をしてきた。
える「おはようございます、今日も冷えますね」
える「これ、どうぞ」
そう言いながら千反田が渡してきたのは缶コーヒーだった。
俺はそれを受け取り、違和感に気付く。
確かに今日は寒いが……冷めすぎではないだろうか?
俺はほんの少しだけ考えると、一つの質問を千反田に向けた。
える「ええっと……間違えてしまいまして」
この馬鹿みたいな寒さの中、冷たい缶コーヒーを飲むことになるとは。
える「大丈夫ですよ、私のも冷たいので」
千反田はそう言うと、俺の手に自分の持っていた紅茶を当てる。
……確かに冷たいが、大丈夫という意味が分からない。
奉太郎「……ありがたく受け取っておく」
える「はい、どうぞ」
える「いつも奢ってもらってばかりな気がしたので……私の奢りです」
奉太郎「今度飯か何か奢ってもらわないと、割りに合わないな」
俺がそう言うと、千反田はムッとした顔をして、俺に向け口を開いた。
える「酷いですよ」
える「折角、折木さんが寒い思いをしていると思って……」
える「買って待っていたんですよ」
奉太郎「……」
奉太郎「……このコーヒー、冷たいけどな」
える「……そうでした」
これは冗談だろうと思って、反応を返すと本気で言っていたり……
かと思えば……本気で言っていると思って返すと、冗談で言っていたり、といった事が多々ある。
そして今回は本気で言っていた方か。
奉太郎「それで、朝から漫才をやる為に呼んだのか」
える「それもいいかも知れませんが……違います」
える「えっと……」
える「色々と、ご迷惑をお掛けしてしまってすいませんでした」
……やっぱりか。
える「……そんな事って、私はそうは思いません」
奉太郎「……もう終わった事だろ」
奉太郎「俺は別に気にしてないさ」
その俺の言葉は、今の俺の本心でもあった。
しかしそれは今だから言えるのだろう、冬休みは本当に最悪の気分だったし、前に千反田とこの公園で話した後の数日間はろくに飯も食えなかった。
……だけどそれも、終わった事だ。
える「で、ですが!」
多分、俺がいくら言ってもこいつは心のどこかでそれを思い続けるのかもしれない。
なら、口で言っても駄目なら。
パチン、と小気味いい音が乾いた空気に響いた。
える「……い、痛いですよ」
える「……折木さんのデコピンは、ちょっと痛すぎると思うんです」
奉太郎「なら丁度いい」
奉太郎「それで全部チャラだ、それでいいだろ」
俺がそう言うと、千反田は自分の頬を両手で叩く。
える「……分かりました」
える「もう、気にしない事にします」
奉太郎「ああ」
ふと、千反田が指を口に当てながら、思い出したかの様に言った。
える「新年のご挨拶がまだでしたね」
える「あけましておめでとうございます」
少し遅い新年の挨拶を、丁寧にお辞儀をしながら千反田は告げた。
そういえば……確かに、まだしていなかった気がする。
もしかしたらしたのかもしれないが、千反田がまだと言うからにはやっぱりしていないのだろう。
奉太郎「すっかり忘れてたな」
奉太郎「あけましておめでとう」
今日は朝が早かったせいもあり、若干眠い。
その眠気から来る機嫌の悪さを俺は里志に向けていた。
奉太郎「それで、用事は何だ」
里志「まあまあ、皆集まってからにしよう」
里志の呼び出しで集められる時はあまり良い予感がしない。
それは俺がここ2年近く、古典部で活動する事で学んだ事の一つだ。
える「すいません、遅れてしまいまして」
里志「お、来たね」
摩耶花「これで揃ったけど……どうして急に皆を集めたの?」
里志「そうだね……」
里志「もうすぐで2月になるよね」
待てよ……どこか辺境の地に住む人らは、日付の概念が無い可能性もある。
なら俺の言葉は訂正しなければならないな。
正しくは、カレンダーを見れば……日付の概念が無い人以外は誰にだって分かるだろう、か。
なんだか長くなってしまったので、やはり訂正しなくてもいいか。
える「あの、折木さん?」
奉太郎「……ん」
摩耶花「またくだらない事でも考えていたんでしょ、そんな顔してた」
どんな顔だろうか。
……私、気になります。 と言おうかと思ったが、部室に変な空気は流したく無いのでやめておいた。
里志「もうすぐで2月になるよね」
いや、そんな事……カレンダーを見れば誰にだって分かるだろう。
摩耶花「……ちょっと、聞いてるの?」
奉太郎「あ、ああ」
奉太郎「勿論」
釘を刺されてしまっては仕方ない、里志の話に耳を傾けよう。
里志「2月と言えばなんだと思う?」
奉太郎「……2月か」
奉太郎「寒いな」
里志「いや、そういう感想的な物じゃなくてもっとイベント的な奴だよ」
里志「……ホータローも少し意地悪になったね」
里志「確かにそれもそうだけど、その少し前の事さ」
少し前……何か、あっただろうか。
……ああ、あれか。
奉太郎「節分か?」
里志「そう! それだよ!」
里志がいきなり大声を出したせいで、俺と千反田が一瞬怯む。
伊原は……慣れているのかもしれない、いつも通りだった。
里志「節分と言ったら、何を想像する?」
える「ええっと、2月の節分ですよね?」
奉太郎「2月の? 他に節分など無いだろ」
里志「いいや、節分は元々季節の分け目の事を言うんだよ」
える「ええ」
える「立春、立夏、立秋、立冬の前日を節分と指すんです」
奉太郎「……ほお」
える「ですが、一般的には立春の前日の事を言うので、福部さんが仰っているのも2月のですよね?」
える「なら……」
摩耶花「豆まき、って事?」
里志「そう、それだよ摩耶花」
何がどう、それなのか分からないが……
やはり、良い予感はしない。
里志「……古典部で豆まきをしないかい?」
える「良い考えです!」
その里志の提案に、即座に反応したのは千反田だった。
摩耶花「楽しそうね、私もやりたい」
そしてやはり、伊原もそれに続く。
奉太郎「ここでするのか?」
俺も別に、絶対にやりたくないと言う訳でも無かったし、このくらいならいいだろう。
嫌な予感と言うのも、外れてくれると有難い物だ。
奉太郎「……いつも通り、本を読んでいたら駄目か」
今の言葉は試しに言ってみたのだが、里志はそれを冗談だとは思わなかったらしい。
里志「別にいいけど、豆を当てられながら本を読むのは……僕だったら嫌かな」
奉太郎「……ならやめておく」
部室で静かに本を読む俺、そこに現れる里志、千反田、伊原。
そして本を読みながら豆を顔にぺちぺちと当てられる。
……何か、おかしいだろ。
里志「ちょっと提案なんだけどさ、豆まき自体は皆賛成なんだよね?」
える「ええ、そうです」
俺は別に賛成とは一言も言った気はしないが……反対と言う訳でもなかったので、特に何も言わず続きを聞く。
奉太郎「……何故、俺の家なんだ」
里志「僕の家でもいいんだけどさ、妹がちょっとね」
そういえば、里志には妹が居るんだった。
……随分と、変わり者の。
奉太郎「……ああ、そうだった」
奉太郎「なら、伊原の家は駄目なのか」
摩耶花「私の家も、ちょっと」
摩耶花「その……都合が悪いかな」
何か隠しているような顔をしていたが、そこには突っ込まない。
……俺だって、部屋はしっかりと片付けてからで無いと人を上げるのは少し気が引けてしまう。
俺でさえそう思うのだから、他の奴は更にそう思っている事だろう。
える「私の家ですか……大丈夫ですよ」
里志「本当かい? 実はそっちが本命だったんだよ」
里志「千反田さんの家は広いからね、豆まきのやりがいがあるよ」
……悪かったな、俺の家は狭くて。
それにそっちが本命とは、俺は随分と失礼な奴を友達に持ってしまった。
結果的には俺の家でやる事は無くなり、良かったのかもしれないが……なんか納得がいかない。
しかし、それよりさっきから気になる事がある。
千反田ではないから、気になりますとまでは行かないが……少しだけ引っ掛かる事だ。
里志「ん? なんだい」
奉太郎「お前がやろうとしているのは、普通の豆まきか」
摩耶花「折木何言ってるの? 普通じゃない豆まきってどんなよ」
える「今の言葉、何か意味があるんですよね」
える「……私、気になります!」
ここで来たか、いや……少しだけ予想は付いていたが。
里志「……まあ、普通ではないかな」
……嫌な予感が当たってしまっただろう。
なんという事だ、今年初めの失敗はこれになりそうだな。
奉太郎「……予想と言う程の事でもないが」
奉太郎「まず最初、古典部で豆まきをするのか、と俺が聞いたときだ」
奉太郎「その後、俺は本を読んでいて良いかと聞いたな」
里志「うん、それに僕は」
里志「顔に豆を当てられながら読むのは嫌だな、みたいに答えたね」
奉太郎「……普通、豆は人にぶつけないだろ」
摩耶花「ええっと、つまり?」
奉太郎「それに里志は広い場所を探していた」
奉太郎「千反田の家が本命だったと、言った様にな」
える「……と言う事は」
奉太郎「お前がやろうとしているのは」
奉太郎「……豆の、ぶつけ合いか」
……反対しておけばよかった。
節分で豆をぶつけ合う馬鹿が、どこにいるのだろうか。
摩耶花「わ、私は別にいいけど……」
摩耶花「そんな野蛮な事、ちーちゃんは」
える「私、やりたいです!」
里志「……決定だね、ホータロー」
奉太郎「……はあ」
ここに居た。
日本の、神山市の、神山高校に四人ほど。
俺は是非ともその馬鹿達の顔を見てみたい。
……帰ったら、一度鏡でも見てみる事にしよう。
里志が言うにはチーム分けをするらしく、なんだかこういう遊びがあった気がする。
ええっと、サバイバルゲームか。
決戦は確か、2月3日。
節分の日と覚えておけばいいだろう。
曜日は日曜日か、昼に集合と言うのも問題は無い。
ただ一つ、問題があるとするならそれは。
摩耶花「また、一緒になったわね」
伊原と同じチームになってしまった事だった。
第2話
おわり
……とても面倒くさかったが、始まってしまった物は仕方ないか。
まあ、それはそうと里志のルール説明を理解しなければ。
里志「じゃあチーム毎に分かれて、10分後に始めよう」
奉太郎「ああ」
摩耶花「そうね、分かった」
える「ええ……! 負けませんよ!」
千反田はやけに張り切っている様だったが、今は敵だ……倒さねばなるまい。
というか、こいつは前に食べ物を粗末にするなという様な事を言っていた気がする。
える「へ? は、はい」
気合を入れていた所に、唐突に俺が話しかけたせいで変な声が出ていた。
奉太郎「この豆まきは、食べ物を粗末の内に入らないのか」
える「まさか、捨てる筈ありません」
奉太郎「……食べるのか」
える「いえ、それはちょっと、衛生上あれなので」
える「私の家には鳩がよく来るので、あげようかと思っています」
奉太郎「なるほど、それなら問題無いか」
える「心置きなく、投げてくださいね」
そして俺達は二つに分かれる。
俺は伊原と共に、台所へと向かった。
千反田と里志は恐らく、あの氷菓の時に使った部屋に行っただろう。
奉太郎「お前と一緒のチームになったのは不服だが」
奉太郎「やるからには負けたくないな」
摩耶花「ちょっと、もうちょっとやる気が出そうな台詞とか無いの?」
やる気が出そうな台詞……
奉太郎「……頑張ろう」
摩耶花「……はぁ」
それよりルールを確認しよう。
確か、里志の説明によると……
里志『一人に割り与えられる体力は5』
里志『そして、一人の弾の数……ここだと豆の数だね』
里志『それはこの皿に乗っているのを半分にしよう』
里志『一度使った豆を拾って再利用は認めない』
里志『場所は千反田邸、全て』
里志『体力が無くなったら自己申告で頼むよ』
里志『それと、自分を倒した相手に手持ちの豆は全て渡す事』
里志『そうしないと、全部使い切ってしまう場合もあるからね』
里志『どちらか片方のチームが全滅したら残った片方のチームが勝ち』
里志『景品とかは無いけど……楽しんでやろうか』
との事らしい。
そして俺達に割り当てられた豆の数は20。
一人当たり10個と言った所だ。
奉太郎「伊原、準備はいいか」
摩耶花「抜かり無いわ」
摩耶花「……それにしても、ありなのかなぁ」
奉太郎「ルール違反ではないさ、そうだろ?」
摩耶花「まあ……そうだけど」
奉太郎「なら問題無い」
奉太郎「里志は俺達を甘く見過ぎていただけって事だ」
里志「と、ホータロー達は考えている頃だろうね」
える「ええと……つまり、どういう事ですか?」
里志「このルールにはね、穴があるんだよ」
える「……折木さん達は、それに気付いていると言う事ですか」
里志「その通り、摩耶花だけならまだしも……ホータローが居るとなるとね」
里志「まず、間違いなく気付いていると思う」
福部さんが発表したルールの抜け穴……なんでしょうか?
える「す、すいません」
える「その抜け道を、教えて欲しいです」
える「私、さっきから気になってしまって」
える「ええ、その通りです」
私がそう伝えると、福部さんは特に焦らす事も無く、教えてくれました。
里志「……体力が0になった人の扱いさ」
える「え? それはつまり……どういう事でしょうか」
里志「このルールだとね」
里志「体力が0になった人はどうなるか……と言うのを決めていないんだよ」
里志「つまり……体力が無くなっても、離脱はしなくてもいいんだ」
里志「体力は無くなっても、攻撃が出来る」
里志「勿論それは、相方から豆を分けて貰ってからだけどね」
里志「はは、そう思うのも仕方ない」
里志「でもね」
里志「ルールで縛られていない以上、可能なのさ」
……納得、できませんが。
それでも確かに、ルールを決めた福部さんが言うのなら……そうなのかもしれません。
でも。
える「……ずるいですよ、福部さん」
える「そんなルールでやるなんて、ずるいです」
里志「でもさ、ホータロー達もこれには気付いているんだよ?」
里志「なら別に、フェアじゃないって事は無いと思うけどな」
……それもまた、言えているかもしれません。
える「……分かりました、ですが」
える「折木さん達も気づいているのなら、私達が有利という事も無いですよね」
里志「果たしてそうかな」
何やら、考えがあるのでしょうか。
里志「例え体力が0になっても動けると言っても……二人同時に倒されてしまっては意味がないんだよ」
あ、それには気付きませんでした。
える「なるほど……」
そう言い、私が腕を組んでいると……福部さんが再び口を開きました。
える「え? どういう意味でしょうか」
里志「その腕を組んだりする癖、そっくりだ」
わ、私はそんなつもりは無かったのですが……
少し、恥ずかしくなり腕を組むのをやめました。
える「そ、そんな事は無いですよ」
える「それより、作戦を考えましょう!」
里志「はは、分かった」
里志「あまり時間も無いし、簡単に伝えるよ」
里志「実はもう、大体考えてあるんだ」
福部さんはそう言うと、少し声を小さくして作戦を私に教えてくれました。
なるほど、確かに理に適っています。
~奉太郎/摩耶花~
奉太郎「さて、どう出るか」
摩耶花「ふくちゃんの性格だと……様子見、かな」
奉太郎「……俺もそう思う」
開始までは後5分も無い、俺達が取るべき行動は……
奉太郎「なるべく二人で一緒に行動は避けたいが……そうもいかないな」
摩耶花「どうして?」
奉太郎「俺達はこの家の構造を把握していないからだ」
奉太郎「向こうには千反田が居るんだぞ」
摩耶花「あ、そっか」
摩耶花「ばらばらに行動したら、ちーちゃんの攻撃を避けられないって事ね」
奉太郎「そう言う事だ」
しかし、全ての構造が分かっていない場所では話が少し変わる。
更には敵側には一人、構造を完璧に把握している人物がいるのだ。
なら行動を共にして、視野を広く持った方が安全だろう。
奉太郎「まずは様子を見よう、あいつらは多分……ばらばらで来るからな」
摩耶花「分かったわ」
奉太郎「危険なのは里志だ、あいつの考えている事は時々わからん」
摩耶花「でも、ちーちゃんも結構危険よね」
奉太郎「……ああ」
摩耶花「……勝てる見込みが、無いんだけど」
摩耶花「あんた、珍しくやる気ね」
……確かに、言われてみればこの豆合戦を楽しんでいる俺がいた。
まあ、やらなくても良かった事なのは事実だが……やるからには、やはり負けたくは無い。
奉太郎「かもな、だが」
奉太郎「勝算は、あるだろ」
摩耶花「……そうね」
作戦は大体さっき話してある。
うまく行けば、負ける事は無いだろう。
さてと、そろそろスタートか。
まずは、廊下の様子を見る事にしよう。
える「先手必勝、ですか」
福部さんが考えた作戦は、意外な物でした。
里志「そう、別に始まるまでここに居なきゃいけない理由は無いからね」
里志「ホータロー達が行ったのは台所だから、そのすぐ傍で待ち構える」
里志「僕が最初に突っ込むから、千反田さんは裏に回ってくれないかな?」
える「分かりました、挟み撃ちですね」
里志「うん、その通りだ」
里志「と言っても、中々相手も手強いからね」
里志「いきなり倒されたら豆が一気に10個も減ってしまう」
里志「それだけは気をつけてね」
単純に考えれば、私達の手持ちの豆が半分になってしまうと言う事です。
それに加えて、折木さん達の豆が増えるという事にも繋がります。
……気をつけましょう。
える「分かりました、任せてください」
える「この家は、私の家なので」
里志「頼もしい言葉だね」
里志「さて、そろそろ始まるから移動しようか」
里志「先手必勝、ホータロー達には悪いけど」
える「勝たせてもらう、という奴ですね」
里志「はは、本当に頼もしい」
私は反対側に行き、台所の裏手へと回りこみました。
こちら側の廊下からは、少し中が覗ける様になっています。
折木さんと摩耶花さんは何やら話している様子でしたが……しっかりとは聞こえませんでした。
そして時計に目を移すと、間もなく始まる時間を指す所です。
時計が……12を指し、豆まきがスタートしました。
……折木さん達はどうやら、最初は慎重に行く様ですね。
あ、折木さんが廊下に繋がる扉に手を掛けました。
駄目です!
そちらには、福部さんが!
……い、いえ。
今は敵なのでした、折木さんは倒さなければいけないんです。
私は、私のすべき事をするのです!
廊下に顔だけを出した俺に、最初に目に映ったのは里志の姿だった。
直後、飛んでくる豆。
その豆は見事に俺の額へと命中した。
奉太郎「いてっ!」
あいつ、全力で投げやがった。
豆もここまで本気で投げられると随分と痛い。
しかし、それに怯んでいては第二、第三の攻撃が来るのは想像に難くないだろう。
奉太郎「伊原! 逃げろ!」
台所の中に居た伊原に向け、声を発する。
その直後に、再び飛んでくる豆をなんとか避ける。
それと同時に俺も台所の中に避難し、伊原と一緒に裏手の扉から廊下に飛び出た。
……だが。
それすらも読まれていた。
前には千反田、後ろは行き止まり。
そして俺達が来た方向からは里志が追っかけてきているだろう。
千反田はそのまま投げる格好をし、豆を投げてきた……と言うよりは、放ってきた。
俺はそれをなんなく避ける、避けたはいいが……
放られた豆は、一つではなかった。
千反田は豆を3つ、投げていたのだ。
1個は床に落ち、2個は伊原へと命中する。
そう謝っているこいつは、とても申し訳無さそうな顔をしていた。
隙だらけではあるが……片方だけ倒してしまっても仕方ない。
いや、むしろ片方だけ倒してしまったらそれこそ不利になってしまう。
……そのルールの穴に、里志と千反田も気付いていての別行動だろう。
だが削っておく分には問題無いだろう……とりあえず一つ、千反田の頭へ向かって投げた。
俺が投げた豆は、千反田の頭に当たり跳ね返る。
える「い、痛いです……」
しまった、俺もつい謝ってしまった。
なんだこれは、謝りながら相手に豆をぶつけるゲームだったか。
摩耶花「何謝ってるのよ! 行くわよ!」
伊原はそう言うと、頭を抑えている千反田の横を通り抜ける。
俺は少しの後ろめたさを感じながら、それに付いて行った。
や、やられてしまいました。
つい謝ってしまったせいで、お二人とも逃がしてしまいました。
福部さんに何と言えばいいのか……分かりません。
で、ですが! まだ勝負は始まったばかりです!
里志「はは、やっぱり逃がしちゃったか」
福部さんはそう言いながら、台所から出てきました。
える「……ごめんなさい、摩耶花さんに二つ当てたのですが、つい謝ってしまいまして」
里志「いいさ、千反田さんらしいじゃないか」
里志「それに、計算外って訳でもないしね」
える「では、次の作戦があるんですね?」
里志「勿論」
里志「千反田さん、ホータロー達が逃げて行った先には何があるんだい?」
える「ええっと」
える「まず最初にあるのがお風呂ですね」
える「次にそのまま真っ直ぐ進めば客室が左右にあります」
える「突き当たりには物置部屋もありますね」
里志「ず、随分と部屋が多いんだね」
そうでしょうか? 確かに少し多いのかもしれませんが……そこまで驚く事でも無いと思います。
里志「好都合だよ」
える「……どういう意味ですか?」
里志「つまりホータロー達はその部屋の内のどれかに居るって事でしょ?」
里志「なら、ここより前の部屋に行くにはここを通るしかない」
里志「……分かるかな」
える「なるほど、と言う事は」
える「袋の鼠、と言う訳ですね」
里志「そう、ホータロー達はもう逃げ場が無い」
里志「片方はここで待機して、もう片方はしらみ潰しに部屋を探す」
里志「それで僕達の勝ちさ」
里志「部屋を探すのは僕がやるよ」
里志「千反田さんは今度こそ、宜しくね」
える「はい、任せてください」
今度は絶対に、逃がしません!
里志「はは、張り切ってるね」
里志「じゃあそんな千反田さんに取って置きの技を教えておくよ」
取って置きの技……なんでしょうか?
福部さんは少し声のトーンを落とし、私にその技を教えてくれました。
……やっぱり福部さんは少し、ずるいです。
でも、これを使えば確かになんとかなるかもです。
……私、頑張ります!
奉太郎:残り体力4/豆の数9
摩耶花:残り体力3/豆の数10
里志:残り体力5/豆の数8
える:残り体力4/豆の数7
第3話
おわり
乙ありがとうございました。
書きながらになるので少し、投下遅いですが……良ければお付き合いください。
*古典部の日常とは無関係となります。
タイトル
える「お久しぶりです」
える「一年ぶりですからね」
奉太郎「大人になったしな、仕事がどうにも忙しい」
える「ふふ、高校の時からは考えられない台詞ですね」
奉太郎「……だな」
える「この縁側でお話をしていると、丁度10年前を思い出します」
奉太郎「……10年前となると、高校三年の時か」
奉太郎「秋で縁側……あれか」
える「思い出しましたか?」
奉太郎「……いい思い出では無い、かな」
える「……そうですか」
える「あの日は確か、私に用があると言って家まで来てくれたんでしたよね」
奉太郎「そうだったかな」
奉太郎「……お前がそう言うなら、そうなんだろうな」
える「ふふ」
える「用事は確か、告白でしたね」
奉太郎「……そうだな」
える「この縁側で、私は好きだと言われました」
奉太郎「……ああ」
奉太郎「なあ、もうやめないか」
える「いいえ、思い出に浸りたい気分なんですよ」
奉太郎「……」
奉太郎「お前の返事は……」
奉太郎「許婚が居る、って返事だったな」
奉太郎「……そうだな」
右後ろから、赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。
奉太郎「呼ばれているぞ」
える「……その様ですね」
える「では少し、席を外しますね」
奉太郎「……ああ」
奉太郎「早いな……って」
奉太郎「連れてきたのか、その子」
える「ええ、月を少しみせたくて」
奉太郎「……そうか」
える「……私には」
奉太郎「……そうだろうな」
える「……一人で子育ては、中々大変ですよ」
奉太郎「……そう、だろうな」
える「辛い時も、ありますよ」
奉太郎「……そうか」
奉太郎「……悪かったな」
える「今日の月は、今までの中で一番綺麗かもですね」
奉太郎「ああ」
奉太郎「っと、もうこんな時間か」
える「また、お仕事ですか」
奉太郎「まあ、忙しいからな」
奉太郎「多分また、一年後だろう」
える「そうですか、ではまた一年後に会いましょうか」
奉太郎「……俺は」
奉太郎「俺は、いいのかな」
える「何がですか?」
奉太郎「お前に顔を合わせる権利が、俺にあるのか」
奉太郎「悪い事をしているようで、気が気じゃないんだよ」
える「そんな事……無いです」
奉太郎「……そうか」
奉太郎「……すまんな、そろそろ行くよ」
える「ええ、お仕事頑張ってくださいね」
奉太郎「ぼちぼちな」
次に会うのは一年後か。
そういえば今年は、里志と伊原……今は二人とも福部か。
あいつらに挨拶をできなかったな。
……まあ、来年でいいか。
まあそれも、全て俺への罰なのかもしれないが。
怠惰が過ぎると、随分と痛い目を見る事になると今更ながら理解する。
とにかく、これで神山市にはしばらく帰って来れない。
また昔みたいに、四人で遊びたいが……そうもいかないな。
俺は少々の名残惜しさを残し、神山市を後にする。
今まで怠けていた分、体を動かさないとどうにかなってしまいそうだ。
車で何日か掛けて、遠い地へと向かう。
今日は本当に、月が綺麗だ。
あいつと、その子供の為にも……頑張るか。
大好きな嫁と、俺の子供の為にも。
おわり
ありがとうございます。
Entry ⇒ 2012.10.25 | Category ⇒ 氷菓SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
箒「一夏ー」
箒「うむ」ジト
一夏「そんなに時間かからないから先に待っててよ」
箒「……」
一夏「じゃあもうちょっと待ってて」
箒「あぁ」
箒「お前のタオルなら置きっぱなしだったから洗っておいたぞ」
一夏「ん、ありがと」
箒「タオルの一つや二つ変わらないさ」
一夏「でも悪かったなって」
箒「いいさ、いつものことだ」
一夏「それもそうか」
一夏「箒」
箒「ん、醤油」ホラ
一夏「ん、ありがと」
箒「一夏」
一夏「からあげ」
箒「ピーマンの肉詰め」
一夏・箒「ん」コウカン
シャル(ボクもああいうふうにすれば一夏わかってくれるのかも!)
シャル「一夏ー!」
一夏「お、どうかしたかシャル」
シャル「えっとね、あれが欲しいなって」エヘヘ
一夏「おいおい、アレじゃわかんないって」
シャル「え、でも……」
箒「一夏」
一夏「ノート?教室に忘れたんじゃないのか?」
箒「むぅ……」
一夏「まぁ無ければ俺も一緒に探すからさ」
箒「ん」
シャル「……」
箒「?」
一夏(今日のリボンも俺があげたやつとは違う……)
一夏「いや、なんでもない」
箒「…………?」
一夏(週二回くらいは付けてくれてるなって思ってたけど、最近はあんまりしてくれないな……)チクッ
箒「どうした?」
一夏「なんでもないって。呼び止めてごめんな」
箒(気付かれたか……?)
箒(あいつ、普段は鈍感なくせに妙に目敏いところがあるからきっと……)
箒(…………)
一夏(気に入ってくれてると思ってたのに……付けてるところ見るだけでじんわりと嬉しい気持ちになってたのに……)
一夏(何かの意思表示かな? もうおまえの世話にはならないぞーって言いたいのかな?)
一夏(俺、何かしたか……? 箒……)
箒「……今日は中庭に探しに行こう」
箒(洗濯して外に干していたら風に飛ばされてしまったとは言えない……)
箒「どうしよう……もしどれだけ探しても見つからなかったら……」チクリ
箒(嫌だ。せっかく一夏がプレゼントしてくれたのに……!)
箒「だ、大丈夫さ。きっと見つかるはず」
箒「んっ……風が強いな」
箒「…………」キョロキョロ
箒「ん? あれは!」ダッ
箒「あった! 木の枝に引っかかっている!」
箒「あれ……でも……泥だらけだ……すこし破けてもいる……」
箒(あそこに飛ばされる前に土の汚れが付いたんだ……)
箒(一夏……ごめん……)キュウゥゥ
箒(待っていろ。今木に上るからな!)
~木の上~
箒「はあ……はあ……も、もう少し」グイ~…
ビュウウゥゥゥ!!
バサッ!!
箒「ああ!」
ビュウゥゥゥゥゥゥ!!
箒「きゃっ!」グラッ
ドサァッ!!
箒「いた……いたた……」
箒「リボン……確か向こうに」ムクッ
ズキッ…!!
箒「う、あ、足を挫いてしまったか」
箒(一夏がくれたリボンなんだ……これくらい……)
箒「方向はあっちだな……くっ……うっ!……」ヒョコヒョコ
箒(足が痛くて移動に時間が掛ってしまった。また飛ばされてなければ良いのだが……)
箒「……あっ」
鈴「ねえ、これ……あんたが箒にあげたリボンでしょ?」
シャル「泥だらけでゴミ捨て場の近くに転がってたけど……」
ラウラ「……ひどいな」
セシリア「何故このような事になったのかは分かりませんが、一夏さん、気を落とさずに」
一夏「………………………」
箒「あ、あああ………」
ラウラ「いたのか!?」
シャル「……箒」
セシリア「まさかとは思いますが、箒さん……あなたが捨てたという訳では」
箒「ち、違う!」
一夏「………………」
箒「一夏、私は―――うっ」ズキッ
一夏「……!」
ビュウゥゥゥゥゥゥ!
箒「ううぅ……つぅ……」グラッ
一夏「!!」バッ!
ギュゥ
箒「あっ……」
一夏「…………」
箒「い、一夏、私は―――」
一夏(箒……何でそんな目をしてるんだ……)
一夏「―――――――――!」
箒「う、うう、私は、捨ててなんか、決して―――」
一夏「分かってる」
箒「!?」
一夏「全部言わなくていい。箒がそんなことしないってことは、誰より俺が知ってるから」
箒「―――――――――――――!!!!」
一夏「みんな分かるから。何が言いたいか、どういうことがあったのかくらい、箒の顔を見れば」
箒「…………うぅ」ジワッ
一夏「昔っから顔に出るんだよおまえは。嘘つくの苦手で分かり易い奴だったし」
箒「私……大切に、してた……これから何年も身に付けようと、決めてた……」
箒「そ、それなのに、こ、こんなことになってしまって……ごめん、ごめん一夏……プレゼントを……」ポロポロ
一夏「いいっていいって。そこまで大切にしてくれたのが凄く嬉しいよ」
シャル「……」
ラウラ「良かったな。箒」
鈴(今回はまあ、いっか)
一夏「おまえ、足挫いてるだろ?」
箒「あ、ああ」
一夏「大方、木に引っ掛かったリボン取ろうとして地面に落ちちゃって、そのときに痛めたんじゃないのか~?」
箒「ふぇっ!?」
一夏「何だ~? まさか図星か? しょうがねえなっと」ヒョイ
箒「きゃっ!」
箒(お、お姫様抱っこ……)ドキドキドキドキ
箒「?」
ラウラ「二度と無くすなよ」スッ
箒「あ、ああ……」
鈴「汚れも洗えば落ちるでしょ」
セシリア「私も子供の頃お洋服に染みを作ってしまったことはありますけれど、翌週にはまた元の美しさを取り戻せましたし」
シャル「ところどころほつれてるけど、修繕できる範囲だよ」
箒「ありがとう、ありがとうおまえたち……」
一夏「よーし。じゃあ食堂に行くか。腹減ったよな!」
全員「おー!」
箒(…………どうなることかと思ったが……よ、良かった……)
一夏「~~♪」
箒(こんなお気楽そうな顔して、私のことを心配してくれていたのかも知れない)
一夏「箒、医療室に寄るぞ」
箒「……うん」
箒「……何でもない」
一夏「ふーん……ま、良いか!」
箒(……一夏は私のことを考えてくれていたに違いない。こいつはずっと私に目を掛けてくれていた)
箒(今、こんなに上機嫌なのも、私へのプレゼントが大切にされていると知ったからだ)
箒(私にだって分かる……本当にありがとう……)
一夏(多分、俺が箒のリボンをずっと気にしてたって事は、多分こいつに気付かれてるだろうなあ……)
一夏(ちょっと気恥ずかしいぜ。プレゼントの現在を一々気にしてる軟弱者だって思われるかも)
一夏「……」チラッ
箒「……」チラッ
一夏「!」カアァァァ
箒「あ……」カァァァァ
箒(一夏はすぐに私の事情に気付いてくれた)
箒(リボンはボロボロになってしまった。皆はああ言ってくれたが、傷の痕跡を完全に消すことはできず、所々まだダメージが残っている)
箒(しかし、私はそれでも構わないと思っている)
箒(小さなほつれを見つめるたびに、抜けきらなかった染みあとを数えるたびに―――)
―――全部言わなくていい。箒がそんなことしないってことは、誰より俺が知ってるから
箒(あの日の一夏の優しさが、温かな気持ちと共に思い起こされるからだ)
箒「……」
ポタッ
おしまい
乙
Entry ⇒ 2012.10.25 | Category ⇒ インフィニット・ストラトスSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
結衣「あかりも大きくなったんだなあ」あかり「降ろしてよぉ」
あかり「きたよー」
結衣「いらっしゃい。あれ、あかり一人なの?」
あかり「うん、ちなつちゃん用事があるから早く帰るってさ」
結衣「……ということは今日はあかりと二人きりか」
あかり「あ、京子ちゃんも休みなの?」
結衣「そうだよ」
結衣「……というわけなんだけど、どうしよう?」
結衣「二人だとさすがにやることもないしなぁ」
あかり「そうだねぇ、とりあえずお茶でも飲んでゆっくりしよ」
結衣「じゃあ、わたしがいれるよ。今日ちなつちゃんいないし」
あかり「え、あかりがやるって」
結衣「いいって、たまにはあかりはゆっくりしてて」
結衣「まかせて。ちなつちゃんほどじゃないけど、よく家で飲んでるから」
あかり「期待してるよぉ」
数分後
結衣「はい、どうぞ」
あかり「ありがとうね」
あかり「……ズズー」
結衣「ふふ、どう?」
あかり「うん、おいしよぉ」
結衣「ちなつちゃんと比べたら?」
あかり「うーん、技術だけならちなつちゃんのほうが優れてると思う」
あかり「……でも、やっぱり結衣ちゃんには結衣ちゃんのよさがあるよ」
あかり「このお茶には結衣ちゃんの真心が詰まってるから、それでいいんだよ」
結衣「あかりらしいや、でも嬉しい」
あかり「あかりは、このまま結衣ちゃんと一緒にゆっくりしたいなぁ」
結衣「いいの? わたしは京子みたいにおもしろいことなんて考えだせないし」
結衣「あかりを退屈させちゃうよ」
あかり「それでいいよ。さっきも言ったでしょ、結衣ちゃんには結衣ちゃんのよさがあるって」
あかり「あかりは、結衣ちゃんといれればそれでいいの」
あかり「だから、今日はこのままダラダラしよ」
結衣「……あかり」
結衣「そうだね、ダラダラしよう」
あかり「あ、あくびしてる」
結衣「いいんだよ、ダラダラするんだから」
結衣「なんかいつも以上にきがぬけるな、京子もちなつちゃんもいないと」
あかり「たしかに、いつもなら娯楽部でももっとしっかりしてるもんねぇ」
あかり「え、そうなの?」
結衣「きっと、あかりと二人きりだからだと思うんだ」
あかり「……あかりと二人きりだから?」
結衣「うん、あの二人の前だとどうしてもしっかりしてなきゃ」
結衣「クールでいなきゃって身構えちゃうんだ」
結衣「でも、あかり相手ならその必要もない」
あかり「そういうものなのかなぁ」
結衣「……ほら、ちなつちゃんの前だと尊敬される先輩を演じなきゃって、
京子の前だと突飛なこと言いだして私が止めないといけない」
結衣「なんか、いつのまにかそんな風に思ってるんだよね」
結衣「その点、あかりは幼なじみで気ごころ知れてるし、しっかりしてるから心配ない」
結衣「だからさ、……あかりとは自然体で接することができるんだ」
あかり「えへへ、そっか」
あかり「結衣ちゃん、あかりのことそんな風に思ってくれてたんだね」
結衣「うん、これが理由だよ」
あかり「結衣ちゃんの気持ちが聞けた」
結衣「そういえば、あかりと二人きりなんていつ以来だろ?」
あかり「覚えてないなぁ」
結衣「こんなことでもなきゃ、ゆっくりあかりと話すこともなかっただろうし」
あかり「そうだねぇ」
あかり「あ、そうだお菓子あまってるから食べよ」
結衣「……うん、そうし、ようかな……」
あかり「って、結衣ちゃん?」
結衣「ごめん、眠くなってきた」
結衣「ううん……スゥ」
あかり「結衣ちゃん……?」
あかり「寝ちゃったよぉ」
あかり「……ふふ、疲れてたみたいだね」
あかり(そうだよね、一人暮らしだから家事も一人でしなきゃいけない)
あかり(掃除、洗濯、料理……あと勉強に……ちょっと違うけどゲームも)
あかり(ちなつちゃんじゃないけど、尊敬しちゃうな)
あかり(……寝顔、随分リラックスしてるな)
あかり(さっきのあかりとは自然体っていうのは本当だったんだね)
あかり(なら、ゆっくり休んでね)
あかり「あ、そうだ!」
あかり「結衣ちゃん驚くかなぁ」
結衣「……ふわぁ、寝ちゃってたのか」
あかり「おはよう、結衣ちゃん」
結衣「あぁ、あかり」
結衣「ごめん、ほったらかしにしちゃって……って、あれ?」
結衣(あかりの顔が目の前に……)
結衣(それに、この後頭部の感触は)
結衣「ひざ、まくら……?」
あかり「そうだよぉ」
結衣「な、なんでこんなこと」
あかり「結衣ちゃん、そのまま床に寝ちゃったから頭痛いかなと思って」
結衣「そ、それなら座布団でも使ってくれたら……」
結衣「だめじゃないけど……」
あかり「なら、よかったよぉ」
結衣「……って、よくないよ!」バッ
あかり「あぁ! どうして起きあがっちゃうの!?」
結衣「だって、膝枕なんて恥ずかしいよ……」
結衣「実際やられてみてそう思った」
あかり「あかりは大丈夫なのに」
結衣「あかりはよくても、私はダメなの」
あかり「むー」
結衣「むくれても、ダメ!」
あかり「……あかりも結衣ちゃんと同じだから」
結衣「え?」
あかり「結衣ちゃんの前でならあかりも自然体でいられるんだよ」
あかり「この膝枕だってさ、京子ちゃんにしたらからかわれるかもしれないし
ちなつちゃんだと拒否されちゃうかもって」
あかり「二人相手だとこんなふうに嫌がられたりするかもって思っちゃう」
あかり「それに、あかりも恥ずかしいいんだ」
あかり「もちろん、そんなのあかりの思い込みかもしれないけど」
あかり「でも、結衣ちゃんなら恥ずかしがっても内心では喜んでくれるかなって素直に想像できたから」
あかり「あかりも恥ずかしくない」
あかり「現に、その通りになったし」
結衣「……う!」
あかり「ちがうよぉ、結衣ちゃんはそのままでいいよ」
あかり「そんな結衣ちゃんだからこそ、あかりは安心してられるんだから」
結衣「……あかりには敵わないや」
結衣「わかった、そうさせてもらうよ」
あかり「それがいいよぉ」
結衣「……あかり、ちょっと来て?」
あかり「え、なに?」
結衣「いいから」
あかり「……うん」トコトコ
結衣「目、つぶって」
あかり「なに、なんなのぉ?」ギュウ
結衣「…………よし」
グイ
あかり「って、うわぁ!」
あかり(わ、脇の下に手を入れて持ち上げられてる!?)
あかり「あわわ……!」
結衣「ふーん、なるほど」
結衣「あかりも大きくなったんだなあ」あかり「降ろしてよぉ」
結衣「もう少しだけ、ね」
あかり「……こんなの赤ちゃんみたいで恥ずかしいよぉ」
結衣「あはは、これは恥ずかしいんだね」
あかり「それとこれとは別だってばぁ!」
結衣「うぅ、もう腕が疲れてきたな」
あかり「ほらほら、もういいでしょお」
結衣「いーや、まだまだ」
あかり「もぉ……」
結衣「ごめんごめん、もう降ろすよ」スゥ
あかり「ふぅ、やっと終わったよ」
結衣「ふふ、恥ずかしがってるあかりかわいかったよ」
あかり「うう……からかってるの?」
結衣「ちがうよ、本当だって」
あかり「おだててもだめ、ビックリして心臓止まりそうだったんだから」
結衣「ほら、謝るから機嫌なおして。ごめん」
あかり「いいけどさ、あかりも大げさにしすぎたよ」
結衣「ははは……ってもう日が暮れてきてる」
結衣「結局、私は寝てばっかりだったな……こりゃ夜寝られないかも」
あかり「……ふふ」
あかり「結衣ちゃんの寝顔かわいかったよぉ」
結衣「あ、あかりが仕返し!?」
あかり「ずーと見てたんだよぉ、何時間もずーと」
結衣(うう、これが自然体のあかりか……けっこう手ごわいぞ)
あかり「あかりの勝ちだね」
結衣「な、なんで勝負になってるのさ」
あかり「仕返しだよぉ、結衣ちゃんもそう言ってたよ」
あかり「あかり、結衣ちゃんには遠慮しないからね」
結衣「はぁ……私の負けでいいよ」
あかり「ふふふ、これで仕返し終了だよ」
結衣「そろそろ出ないとホントに遅くなるよ」
あかり「うわぁ、そうだった。結衣ちゃんと話してて忘れてたよ」
あかり「急がなきゃ」
結衣「ほら、協力して片づけよう」
帰り道
あかり「ふぅー、なんとかバスに間に合ったねぇ」
結衣「ギリギリだったね」
あかり「最初はなんにもすることないって思ってたのに」
結衣「うん。あかりのいろんなことが知れてよかったよ」
結衣「あんまりいい言い方じゃないけど、京子とちなつちゃんが休んでくれてよかったかな」
あかり「皆でいるのも楽しいけど、それだと今日はなかったんだね」
あかり「あかりも……今日のことはずっと覚えてると思う」
あかり「いつもとは違う、特別な日として」
結衣「でも……明日は」
あかり「うん、明日はまた娯楽部のみんなでいたい」
あかり「やっぱり、あかりたちは4人で一緒じゃないと」
結衣「うん、この4人が一番しっくりくるや」
あかり「結衣ちゃんもあかりと同じ気持ちなんだ」
あかり「……いいな、こういうの」
結衣「……いいね、こういうの」
結衣「ねぇ、あかり」
あかり「なに?」
結衣「さっきも言ったけどさ、今日一日であかりの色んなことを知れたんだ」
結衣「そして感じたんだ、あかりも成長してるんだって」
結衣「……なんだか不思議だった。幼なじみなのに、私たちの間にはまだ知らないことがたくさんあったんだって」
結衣「恥ずかしがるあかりに、意外と負けず嫌いなあかり」
結衣「ちっちゃいって思ってたのに、持ち上げてみると重かったり」
結衣「私が知っていたいい子で子供のころのままのあかりじゃない、そんな素のあかりを知ることができた」
あかり「あかりも、いろんな結衣ちゃんを見れたよ」
結衣「できるなら、今日みたいに二人のいろんなことが知れたらいいと思うんだ」
あかり「いいと思うよ。あかりもそうしたい」
結衣「だからさ、あかりにも手伝ってほしいんだ」
あかり「手伝う……?」
結衣「うん。わたしもあかりも、あの二人には遠慮というかつい力んじゃうところがある」
結衣「でも、今日みたいにあかりがそばにいてくれたら心強いんだ」
結衣「最近はさ、娯楽部でのそれぞれの立ち位置が固定されちゃってるんじゃないかな」
結衣「もちろん、それが悪いことだとはいわない。仲良くなって心地のいい空気をつくれたってことだから」
結衣「私も、今日まではそれでいいと思ってた」
結衣「けど、あかりのいろんな面を知れて、それじゃ物足りないって思った」
結衣「だからさ、もっとあの二人のこと知りたくなったんだ」
結衣「あかり、一緒に頑張ってくれる」
あかり「うん、いいよ」
あかり「ふふ、やっぱり結衣ちゃんは凄いね」
あかり「あかり、そんなこと考えようともしてなかった。結衣ちゃんと仲良くなれて満足しちゃってた」
あかり「でも、結衣ちゃんに言われてそうしたいって思えたんだ」
結衣「……なんだか、照れるや」
あかり「三回目」
結衣「ははは、いまのは恥ずかしがるのとは違うよ。それにもう仕返しは終わりでしょ」
あかり「言ってみただけだよ」
結衣「そうだね、今のあかりはそんな冗談も言えるんだ」
結衣「また、一つ知れた」
あかり「……でも、まだまだあかりは謎が多いからね」
あかり「この程度じゃまだあかりを知りつくしたことにはならないよ」
結衣「そっか、それは楽しみだね」
あかり「……結衣ちゃん、明日からもよろしくね」
結衣「うん、よろしく」
Entry ⇒ 2012.10.25 | Category ⇒ ゆるゆりSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
P「星井美希、5歳……と、届出はこれでいいか」
P「ただいまー。お出迎えとは感心感心」
P「俺がいなくてそんなに寂しかったかー?」
美希「ちがうの。ミキね、おなかすいたの」
P「……そうかい」
美希「ミキね、ばんごはんはおにぎりがいいとおもうな!」
P「お前……朝飯も作り置いといた昼飯もおにぎりじゃねーか」
美希「ふっ……はにーはわかってないの」
P「作ってんの俺なのになんでそんな偉そうなの?」
P「……つまり?」
美希「ここまでいってもわからないの? はにーはばかなの? しぬの?」
P「このクソガキ……」
美希「つまりおにぎりはさいきょうなの! だからおにぎりにするの」
P「はいはい、わかったよ」
美希「はにーほめてつかわすの! ぐはなーに?」
P「梅干しと味玉だ」
美希「ミキうめぼしキライなの。はにーにあげるの」
P「えー、何でだよ。おにぎりっつったら梅干しがセオリーだろ」
美希「うめぼしはすっぱいからイヤなの」
美希「ミキこどもじゃないの! たべられるけどたべないだけなの!」
P「じゃあ食べてみろよー、大人なんだろ?」
美希「れでぃーにいやがらせするなんて、はにーもてないよ?」
P「うるせーな、どーせ俺は年齢イコールですよーだ」
美希「だいじょうぶなの、いきおくれになるまえにミキがおムコさんにしてあげるね」モキュモキュ
P「へいへい、そりゃどーも」
美希「ミキね、ミキね、しょうらいははにーのおヨメさんになるの!」
P「はっはっは、そうかそうかー。楽しみにしてるぞー」
美希「もう! ミキはほんきなの!」
P「残念ながら俺はばいんばいんな女の子が好きなんだ」
美希「ばいんばいん……」
P「隣のあずささんとか最高だよなー……こう、胸もお尻もぼいーんと」
美希「ぼいんぼいん……」ペッタン
P「美希はまだぺったんこだからムリだなー」
美希「みきはせいちょうきなの! これからおおきくなるの!」
P「はっはっは、がんばれー」
美希「むー! はにーのいじわる!」
美希「あずさ、あずさ」ペタペタ
あずさ「あらあら、何かしら美希ちゃん」
美希「ミキね、ばいんばいんになりたいの」
あずさ「ばいんばいん……? 何かしら~?」
美希「あのね、はにーがあずさみたいなばいんばいんがだいすき、っていってたの」
あずさ「あらあら~……そうなの、うふふ」
美希「だからミキもばいんばいんになりたいの。どうやったらなれるの?」
あずさ「ごめんなさいね~、私も知らないうちに大きくなってたからよくわからないのよ~」
あずさ「ええ、きっとなれるわよ。美希ちゃん美人だし、Pさんもメロメロに出来るわよ」
美希「めろめろ……ミキがんばるの! どうしたらいいの?」
あずさ「ごはんをいっぱい食べて、いっぱい遊んで、いっぱい寝ることが大事よ」
美希「わかったの! ありがとうなの!」
あずさ「いえいえ~、うふふ。でもPさんは渡さないわよ~?」
美希「あずさとミキはらいばるなの! せいせいどうどうたたかうの!」
真「あずさ姉ちゃん、春香がプリンを……あれ、美希じゃん。どうしたの?」
真「二人で何の話してたの? ボクも混ぜてよ」
美希「はにーをめろめろにするためのさくせんかいぎなの」
真「え、何それ! ぼ、ボクにも教えてよ!」
美希「まことくんはぺったんこだからむりなの」
真「えっ!?」
あずさ「あら~……」
P「ん……んぅ……あ……?」
美希「はにー……おきて、なの」ユサユサ
P「んがっ……んあ、なんだ……? まだ夜の二時じゃねえか……」
美希「あのね、ミキね、おトイレいきたいの……」
P「あぁ……トイレ、トイレね……一人で行ってくれ……」
美希「やなの! れでぃーをよなかにひとりにするなんて、はにーはおとことしてしっかくなの!」
P「家の中じゃねーか……わかったよ……」
P「だからなんでそんなに偉そうなんだ……お前、一人で行くのが怖いだけだろ」
美希「そ、そんなわけないの! ミキはりっぱなおとなのおんなだもん!」
P「じゃあ一人で行けるだろー?」
美希「あの……その……ひとりにしたら、はにーがさみしがるかな、って」
P「へいへい……ふわぁ」
美希「! おにぎり! こうきゅうってなんなの?」
P「ものすごーくおいしい、ってことだ」
美希「はにーすごいの! さすがはにーなの!」キラキラ
P「はっはっは、もっと褒め称えろ」
P「一個五百円もしたからなー、四個で二千円だ。おにぎりの値段じゃねえよな」
美希「じゃあぜんぶミキのだね?」
P「何でだよ、半分ずつだろ常識的に考えて」
美希「しょうがないの、はにーにもわけてあげるの」フンス
P「お前な……まぁいい」
P「ダメだ。これは今日の晩御飯に楽しみに取っておく」
美希「えー! ミキいまからたべたいの!」
P「別にいいけど……夜、食べたくなっても俺のはあげないぞ」
美希「いいの! はやく! はやく!」ピョンピョン
P「知らないからな……ほら」
美希「わーいなの!」
P「んじゃ俺は仕事に行くけど……俺の分食うなよ。食ったらおしりペンペンの刑だぞ」
美希「わかったの!」
P「本当かよ……行ってきます」バタン
美希「いってらっしゃいなの」モキュモキュ
美希「すごく、すごくおいしいの……! しんじられないの!」モキュモキュ
美希「ふう……おいしかったの……」キラキラ
美希「……」チラッ
美希「みるだけ、みるだけなの……」ゴソゴソ
美希「……」ウズウズ
美希「……くさっちゃったらもったいないし、ちょっとだけあじみするの」
美希「……」モキュモキュ
美希「……! これもおいしいの!」キラキラ
美希「おにぎりはうちゅうなの……すばらしいの」モキュモキュ
美希「……ふう、おいしかったの」
P『なにい!? 俺のおにぎりを食べただと!?』
P『許せん……これはおしりペンペンの刑だな』
パシンパシン
ナーノー!
美希「……うう、なんとかしないとミキのおしりが……」ガタガタ
美希「!」ピコーン
美希「あ、そうだ。はるかならおりょうりできるはず!」
美希「はるか、はるかー」
春香「はいはーい……あら、美希ちゃん。どうしたの?」
美希「あのね、はるかにおねがいがあるの」
春香「なーに?」
美希「あのね、ミキ、はにーのおにぎりたべちゃったの」
春香「?」
美希「たべるな、っていわれたけどたべちゃったの……」
春香「おにぎりを?」
美希「うん、はにーはちょうこうきゅう、っていってたの」
春香「なるほど……大体わかったわ。でも全部食べちゃうなんて食いしんぼさんだね、美希ちゃん」
美希「だって……おいしかったから……」
春香「あらま。それもちょっと見てみたいけど……うん! 春香さんに任せなさい!」
美希「ほんとなの!? さすがはるかなの!」
春香「だーいじょーうぶ! まーかせて!」
春香「うーん……そうだねー、美希ちゃんも一緒に作ろうか」
美希「えっ、はるかがつくるんじゃないの?」
春香「大丈夫だよ! 美希ちゃんならおいしいおにぎり作れるよ!」
美希「うん! ミキおにぎりだいすきだからきっとつくれるの!」
春香「その意気その意気! じゃあ台所いこうか!」
P「ただいまー」
美希「お、おかえりなさいなの」
P「美希、俺のおにぎり食べなかったかー?」
美希「た、たべてませんなの」
P「……」ジロッ
美希「……」ビクビク
P「……そうか、じゃあ俺は食ってくるから」
美希「ど、どうぞなの」
P「……なんだ、このぐしゃぐしゃのおにぎりは……美希?」
美希「……」ビクビク
P「はぁ……じゃ、食うかな」
美希「……」
P「……」モグモグ
美希「はにー……お、おいしい?」
P「……ああ、うまいよ。さすが超高級おにぎりだ」モグモグ
美希「……」ホッ
美希「そして、いちごばばろあもさいきょう……」
美希「このふたつがいっしょになったら」
美希「きっと、ものすごくおいしいの……!」
美希「さっそくやってみるの!」
………
……
…
\ ナーノー! /
P「な、なんだ!? 何事だ!?」
美希「このふくは……いえにあるあれとくみあわせて……」ブツブツ
P「みーきー」
美希「ううん、やっぱりこのたんくとっぷでのうさつ……」ブツブツ
P「みーーーーきーーーー」
美希「はにーうるさいの! ようふくやさんはおんなのせんじょうなの!」
P「服なんてなんでもいいだろ……」
美希「だめなの! もっとキラキラするためにもようふくえらびはだいじなの!」
P「買うの俺じゃねーか」
美希「はあ……おとめごころがわからないはにーはだめなの」
真「本当、ダメダメですよ」
春香「ダメダメですねー」
P「……なんで真と春香がいるの」
春香「いえーい、こんにちはPさん!」
美希「まことくんとはるかはどっちがいいとおもう?」
春香「あら美希ちゃんったらおませさん、これならPさんも一発で悩殺! だね」
真「でも美希ならこれくらい派手でも可愛いよ」
美希「うーん……でもはにーのおさいふもかんがえてあげないとだめなの」
P「……」
美希「とうぜんなの」フンス
真「あ、こんなゴスロリフリフリとかどう? お人形さんみたいで可愛いよきっと」
P「それはない」
春香「それはないよ」
美希「それはないの」
真「えっ!?」
真「? いけませんか?」
春香「私達、元々夕飯の材料買いに来たんです」
美希「はにー! おかしかっていい!?」
P「あー、一個だけな」
真「あ、ボクも!」
春香「私もー♪」
P「何でだよ……まぁいっか、美希が世話になってるし」
真「やーりぃ♪ よし、出撃だ美希隊員!」
美希「れっつごーなの!」
春香「わっほい!」
春香「そういえばPさん今日の献立は何なんですか?」
P「あぁ、美希の影響でいっつもおにぎりだからたまには洋食でも作ろうかなー、なんて思ってるけど」
春香「洋食……オムライスとかですか?」
P「お、いいなオムライス。でも俺うまく巻けないんだよね」
P「だからいっつもチキンライスの卵和えになる」
春香「あ、じゃあよかったら作りに行きましょうか?」
P「へ?」
春香「い、いえ、たまにはいいかなー……なんて」///
P「オムライスなんて滅多に食べられないから来てくれると助かるけど……いいの?」
春香「は、はいっ! 是非!」///
真「ボクはこれで!」
P「予想通り二人とも単価が高いな」
真「あれ? 姉ちゃんなんかあったの?」
美希「はるか、かおがあかいの」
春香「へっ!? いいいいやななななにもないよ!?」
P「ああ、春香がうちに晩飯作りに来てくれるらしくてな」
真「むっ……姉ちゃん……?」ゴゴゴゴ
春香「い、いやそんな」
真「へ?」
P「ついでにあずささんも呼んでうちで食えよ。普段から美希が世話になってるし、それくらいするよ」
真「そ……そうですね! や、やーりぃ!」
春香「う、うぅ……」シクシク
美希「はにー! きょうのごはんはなんなの?」
P「なんとな! 春香お姉ちゃんがオムライス作ってくれるってよ!」
美希「おむらいす……! はるかすごい!」
春香「うん……ありがと美希ちゃん」
P「ん~? なんだ美希」
美希「あかちゃんはどうやったらできるの?」
P「ブッ!?」
美希「ミキね、このあいだテレビであかちゃんみたの」
美希「とってもかわいかったの!」
美希「それでね、ミキもはにーのあかちゃんほしいの!」
P「あばばばばっばば」
美希「あずさもはるかもまことくんもおしえてくれなかったの」
P「あー……うん、そうだな」
美希「?」
P「好き同士の男と女が一緒にいると、コウノトリさんが運んでくるんだ」
美希「……? でもミキとはにーのあかちゃんこないよ?」
P「残念ながら大人同士じゃないと来ないんだ」
美希「ミキおとなだもん! それともはにー、ミキのこときらい!?」ジワッ
P「うおっ、泣くな! 頼むから!」
P「はぁ……俺が美希のこと嫌いな訳ないだろう?」
美希「ほんと……?」
P「ああほんとだ。好きだよ」
美希「えへへ……ならあかちゃんくるね!」
P「あー、うん……そのうち来るかもな……」
美希「いつくるかなー。あした? らいしゅう?」
P(……早く忘れてくれることを祈ろう)
P「美希、雨になると頭すごいな」
美希「あめがふるともしゃもしゃになるの」
P「この際だ、切っちまうか」
美希「それはだめなの」
P「即答かい」
美希「かみはおんなのいのちなの」
P「まぁ、美希は短いより長い方が可愛いだろうしな」
美希「えへへ……そうなの! だからきっちゃだめなの」
P「なんだー?」
美希「おともだちをごしょうたいしたいの」
P「友達……? 別にいいぞ」
美希「ほんと!? じゃあつれてくるの!」タッタッタ
P「え、今から?」
美希「しょうかいするの! おともだちのひびきとたかねなの!」
P「は、はいさーい」
P「えーと、沖縄の子?」
響「そうだぞ! じぶんこのあいだおきなわからきたんだ!」
美希「ひびきはとってもげんきなの」
響「じぶんげんきいっぱいだぞ!」
貴音「はじめまして、しじょうたかねともうします」
P「これはこれはご丁寧に、美希がいつもお世話になってます」
貴音「いえ、わたくしもおせわになっておりますゆえ」
P「礼儀正しい子だね。じゃあ、ジュースでも持ってくるよ」
美希「ミキはぎゅうにゅうがいいな」
P「わかった、ジュースな」
貴音「……」
美希「はにーはつれないの」
響「みきのたーりーはかっこいいんだな……」///
貴音「このきもち……まこと、めんような……」///
美希「? たーりーってなんなの?」
貴音「おとうさんのことですよ」
美希「はにーはおとうさんじゃないよ?」
響「え? じゃあにぃに?」
美希「はにーははにーだよ?」
響「?」
貴音「?」
美希「?」
美希「……はにーはミキのだからあげないよ?」
P「んー……? な、なんだいきなり水着で」
美希「あのね、ミキね、みずぎもらったの!」
P「え、誰から」
美希「はるかなの」
美希「どう? ミキのみりょくにめろめろ?」ミキッ
P「うーん……お腹がぽっこりしてるな」
美希「!?」
P「うむ、見事なずんどうだ。以後精進するように」
美希「は、は、は……はにーのばかぁっ!」
春香「確かにねー、鈍感にも程があるよねPさんは」
真「隣にこんな美人三姉妹が住んでるのに全く反応しないもんね」
あずさ「生まれ付いてのフラグブレイカーよね~」
美希「はにーはあずさがいいっていってたの」
春香「えっ」
真「えっ」
あずさ「あら~♪」
美希「あずさみたいなばいんばいんがすきなんだって」
美希「だからミキもばいんばいんになるの」
春香「ああ、なるほど……そういうことね」ホッ
春香(ならまだ勝機はある……たぶん!)
あずさ「でも真も羨ましいくらいスタイルいいわよ~」
真「それでももうちょっと胸は欲しいよ……あずさ姉ちゃんほどとは言わないけどさ」
美希「ミキね! はにーをのうさつするの!」
あずさ「あらあら、おませさんね」
美希「あずさたちもミキにきょうりょくするの!」
春香「んー? 何すればいいの?」
美希「えっとね、えっとね……ミキをかわいくするの!」
あずさ「美希ちゃんはそのままでも充分可愛いわよ~」
美希「そういうのはいいの」
あずさ「あらあら」
春香「うーん、じゃあ軽くお化粧して髪型でも変えようか!」
………
……
…
P「……で、なにそれ。ツインテール?」
美希「こあくまけいもてかわめいくなの! ね、はにーはミキにめろめろ?」
P「あー、はいはい。メロメロだよ」
美希「えへへ……はるかたちにかったの!」フンス
美希「なの!」
P「ナノ?」
美希「なーのー!」
P「ナノ!」
美希「なの!」
春香「……何やってるんですか?」
P「美希語のレッスンだ」
春香「美希語って」
P「中々習得が難しくてな」
美希「はにーはまだまだなの」
P「なの!」
美希「いまのぐっどなの!」
春香「……」
P「お、どうした貴音ちゃん。美希は?」
貴音「みきとひびきはおひるねちゅうでございます」
P「そうかそうか。貴音ちゃんはお昼寝しなくていいの?」
貴音「わたくしはねむくないゆえ……」
貴音「ところであなたさま、ききたいことがあるのですが」
P「ん?」
貴音「あなたさまにおもいびとはいらっしゃいますか?」
P「はっはっは、貴音ちゃんはおませさんだなー」
貴音「わたくし、あなたさまのはんりょになりとうございます」///
P「はん……? あぁ、伴侶ね。それは嬉しいなぁ」
貴音「それまでにあなたさまにふさわしいじょせいに……」
\ ウギャー! /
\ ナーノー! /
貴音「な、なにごと!?」
美希「ははははははに゛いいいぃぃぃぃ!」ダダダダダ
響「うわああああああぁぁぁぁぁぁ!」ドドドドド
美希「うわああああん! はに゛いいいいいい!」ガッシリ
P「おーよしよし、どうした? 落ち着いて話せ」
響「ごっごっごごご、『ご』がでたさー!」
P「『ご』……?」
美希「くろくてはやくてちっちゃいやつ!」
貴音「……ゆるすまじ」
P「貴音ちゃん?」
貴音「しょうしょうおまちを」
………
……
…
\ぎるてぃ!/
パシーン!
P「そ、そう……たくましいね、貴音ちゃん……」
美希「うっぐ、えぐっ、たかねえええええ」
響「うう、ぐす……こわかったさー……」
貴音「よしよし」ナデナデ
貴音「むしけらのぶんざいでわたくしをじゃまするのがいけないのです」
P(……怖っ)
響「ふんふーん♪」カキカキ
貴音「ふむ……」サラサラ
P「おっ、お絵かきか?」
響「そうだぞ! にぃににぷれぜんと!」
P「にぃに……俺?」
響「そうだぞ!」
P「ははは、ありがとう。これは……俺の似顔絵、かな?」
響「うん!」
響「えへへ……」///
P「美希と貴音ちゃんは何を描いてるんだ?」
美希「おにぎりなの!」
貴音「らぁめんにございます」
P「……そうか」
真「いえーい」パチパチ
あずさ「きゃー」パチパチ
美希「わーい!」パチパチ
春香「え~、抜け駆け厳禁・恨みっこなしをモットーとして結成された我々三姉妹の会」
春香「今日は! なんと!」
春香「美希ちゃんにPさん秘蔵のえっちな本を持ってきてもらいましたー!」
あずさ「あら~」
美希「なんかね、べっどのしたにかくしてあったの」
美希「ミキにはよくわかんないほんだったから、はるかにあげたの」
春香「勝手に人のものをあげちゃいけないよ!」
春香「……と言いたいところですが、今日だけは感謝しましょう」
真「その本を見て、対策を練ろう、ってことだよね……?」
春香「そう……ちょ、ちょっと恥ずかしいけど……」///
真「ぼ、ボクも……」///
あずさ「とりあえず見てみましょうか~」ペラ
真「そう言いながらガン見しないでよ……うわ、すご……」///
春香「やだ、こんなことしてる……」///
真「ほんとだ……しかもこの子、ボクたちとあんまり歳変わらないんじゃ……」///
あずさ「……そんなに若いのがいいのかしら」ボソ
春香「!?」ゾクッ
あずさ「若さ……そうね、二十代は……そうよね」ボソボソ
真「ッ!?」ビクッ
美希「……? なんでこのひとたちはだかんぼなの? おふろ?」
あずさ「うふふ、美希ちゃんはまだ知らなくていいのよ~」ナデナデ
春香「……お姉ちゃん?」
真「……目が怖いよ?」
あずさ「何かしら?」ゴゴゴゴゴ
春香「ひぃ!? い、いえ何も」
あずさ「……おとなりに行って来るわね」
真「い、行ってらっしゃい……」
バタン
春香&真「……」ガタガタ
美希「あふぅ……ねむいの」
美希「―――」
P「……?」
美希「……」コックリ コックリ
P「……おい美希、寝るならベッドで寝ろ」
美希「う……? ね、ねてないの」フルフル
P「船漕いでるじゃねーか、もう寝ろよ」
美希「ねないの……はにーと……あばんちゅーるなの……」ウトウト
P「どこでそんな言葉覚えてくるんだ……」
美希「はるかと……まことくんに」ウトウト
P「あいつら……」
美希「うー……」
P「わかった、じゃあ俺はもう眠いから寝るけど」
美希「う……?」
P「美希も一緒に寝てくれると寂しくないんだけどなー」
美希「えへへ……しょうがないの」ウトウト
美希「さみしんぼのはにーのために……ミキも、いっしょ……に」コテン
美希「ねて、あげ……zzz」
P「変なところで強情な奴だな……よいしょっと」
美希「zzz……はにぃ……」
P「寝顔は一人前に可愛いんだけどな……」
美希「えへへ……zzz……」
P「うん? かしこまってどうした」
美希「あのね……ミキ、なりたいものがあるの」
P「なりたいもの? なんだ?」
美希「ミキ、あいどるになりたい……」
美希「このあいだね、てれびでみたの」
美希「きれいなおねえさんが、きれいなおようふくをきて」
美希「いっぱいのひとのまえで、いっぱいうたったりおどったり……」
美希「すっごく、いっぱいキラキラしてたの」
美希「ミキ、あんなふうにキラキラしたい……」
P「……そうか」
P「今のお前が思っているよりも、何十倍も辛い」
P「泣きたくなるような辛いこと、苦しいことも、たくさんある」
美希「……」
P「美希はまだ小さい」
P「あと少し大きくなって、色んなことを知って……」
P「それでもアイドルになりたいって言うなら」
P「何があっても俺が、全力で応援してやる」
P「ああ、その代わり俺は美希のファン第一号だからな」
美希「うん!」
美希「ミキ、いっぱいキラキラできるようにがんばる!」
記者「星井さんがアイドルになろうと思ったきっかけとは何ですか?」
美希「ミキはね、ずっと小さい頃から、アイドルになりたかったの」
美希「いっぱいキラキラしたい、ってずっと思ってた」
美希「だから、ミキはいっぱいキラキラできるようにがんばったの!」
美希「はいなの! でもね、ミキひとりじゃ絶対できなかった」
美希「ここまで来れたのは、周りの人たちのお陰なの!」
美希「それにミキはまだまだもっといっぱいキラキラするの!」
美希「だから、ずっと見ててね、ハニー!」
完!
よつばと、はなまる共に大好きです。
よかったよ
Entry ⇒ 2012.10.25 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
照「エロゲしてる所を咲に見られた……」
照「さ、咲っ!こ、これはそのっ……!」
照(なんてことだ……!よりによってエロシーンを見られたら言い訳できない!)
照(し、しかもまずい!今やっているゲームは!!)
咲「お、お姉ちゃっ」
照「さ、咲っ!冷蔵庫にプリンがあるんだ、一緒に食べ」ガタンッ ブツッ
『ふぁぁっ!!き、絹ぅ!アカン……アカンッうちもうっ!』
『お姉ちゃんっ……!お姉ちゃんっ!はぁっ……はぁっ!!』
照「」
咲「」
怜「うちがエロゲしてる所を竜華に見られてしもた……」
http://ssweaver.com/blog-entry-1836.html
洋榎「エロゲしてる所を絹に見られてしもた……」
http://ssweaver.com/blog-entry-1845.html
菫「エロゲしてる所を宥に見られた……」
http://ssweaver.com/blog-entry-1848.html
竜華「怜、今日もエロゲをするで!!」 怜「ファンディスクや!」
http://ssweaver.com/blog-entry-1852.html
照「さ、咲……これは……違うんだ……」
咲「……」
咲「……お姉ちゃん……そういう人なんだ……」
ガチャ バタム
照「さ……き……?」
照「……」
照(……え?)
照(どういうこと?)
照(咲に……エロゲしてる所を見られた……?)
咲「……」モグモグ
照「……」モグモグ
父「……なんだお前達、今日は随分と静かだな」
母「もう一緒に暮らし始めて、結構経つのにどうしたのかしらね?」
照「……」
照「さ……咲っ」
咲「ごちそうさま」ガタン
父「ん?もういいのか?」
咲「うん、この後やることがあるから」
母「あんまり夜更かしはするんじゃないわよ」
咲「うん」
照「……」
咲「……ふぅ」
咲(まさか……お姉ちゃんがえっちなゲームをする人だったなんて思わなかったよっ……)
咲(夕食の時、話しかけられそうになったけど……思わず逃げてきちゃったし)
咲(……)
咲(で、でもっ、お姉ちゃんがやってたゲームって……)
咲(多分……姉妹の奴だったよね……)
咲(お姉ちゃんも好きなのかな……)
咲(女の子同士の百合モノが……)
咲(……)
咲(あ、そういえば明日、コミック百合娘の発売日だ)
咲(早く寝ようっと)パチン
照「……」
照「はぁ……」
照(まさか咲に見られるとは思わなかった……)
照(それだけならまだしも……)
照(完全に無視されている……)
照(どうしよう……)
照「……」
照「そういえばトキとひろぽんが、エロゲバレしたとか言っていた気がする……」
照「あいつらの実体験から、何か得られるかもしれない」
照「私も相談してみよう」
――とあるネット掲示板で知り合った数人の猛者達が――
――互いに集い語り合う 淑女達のグループチャットである――
ピカリン:誰かいるか!
舞Hime:なん?
牛乳:もー、いきなりピコンて鳴るからびっくりしちゃったよもー
蓋:どうしたの?
ピカリン:誰だお前ら
牛乳:もー、ひどいなもー!
蓋:あまり私達はインしないから、忘れられてるのも仕方ないけどね
蓋:いつもログは見せてもらっとるけど
ピカリン:ああ……普段見かけないからすっかり忘れていた
舞Hime:仕方ないとよ
岩手の体エロい人
ピカリン:トキやひろぽんの奴はいないのか?
牛乳:今日はまだ来てないみたいですねー
蓋:珍しいね、あの人達はいつもいると思ってたけど
蓋:まぁ私達がこの時間にいるのも珍しいか
舞Hime:トキとひろぽの奴に何か用かと?
ピカリン:居ないなら仕方ない、この際お前達でもいい
牛乳:?
ピカリン:実は……
……
…
牛乳:えー!!妹さんにエロゲしてる所を見られたー!?
蓋:そ、それはまたなんというか……
舞Hime:どんまいだとよ
ピカリン:でだ、単刀直入に聞こう
ピカリン:私はどうすればいい
牛乳:どうすればいいって……
蓋:どうしたいの?
ピカリン:誤解を解きたい
舞Hime:正直に話した方がええとよ
牛乳:やっぱりそーだよねー
蓋:うん、正直に話すのがなんだかんだで一番だと思うよ
ピカリン:し、しかしだな
ピカリン:夕食の時も無視されたぐらいだ
蓋:無視は辛いね……
ピカリン:どう見ても嫌われているような気がする……
ピカリン:ああ……さきぃ……さきぃ……
牛乳:もー!くよくよしてても問題は解決しないよもー!
舞Hime:とにかく頑張るしかなかよ
蓋:話しかけなきゃ話も聞いて貰えないからね
照「……」
照「やっぱり正直に話すしかないか……」
照(でも今日はもう遅いし……)
照(明日にしよう……)
照(……)
店員「シャセェッス!!」
咲「これください」
店員「620イェンデァス!! チョゥドオァズカリシェス!! アリガトゥゴザィァシタ!!」
咲「……」
咲(きゅふふふっ)
咲(コミック百合娘、今週号は楽しみにしてるのがあったんだよね!)
咲(早く家に帰って読もうっと!)
「よよよ!?た、隊長~~!!あそこにサキちゃん似の子がいるでござるよ~~!!」
「なんだと~~!!我々の女神、サキちゃんがいたと言うのか!!」
「早速サキちゃんを保護するのだ隊員~!!!」
うらやま
咲「は、はい?」
「うひょ~~!!隊長~~!!まんまサキちゃんでござるよ~!!」
「こ、これはまんま”私の妹のエロさが嶺上開花でとどまる事を知らない”に登場するサキちゃんにそっくりなのです!!」
咲(え、な、なにこの人達……なんか怖い)カタカタ
「我々はついに2次元へと到達したのでござるな~~!!」
「ささ、サキちゃん!!我々とこっちに来るのです!!おねえちゃん達が保護するのだ!!」
咲「えっ、あ、あのっ、やめてくださいっ!」
「心配はいらないでござるよ~~!!隊長は超紳士でござるからね!!」
「さ、さあ、一緒に行くのだ!!」
咲「あ……や、やめ……」カタカタ
咲(や、やだ……!この人達気持ち悪い……!!に、逃げないとっ……!)
咲(誰か助けて……!!……――お姉ちゃん!)
照「……はぁ」
照(結局家に居てもやる事が無いから出てきてしまった……)
照(咲も家には居なかったみたいだし……)
照(適当に本屋で本でも買って帰ろう)
「えっ、あ、あのっ、やめてくださいっ!!」
照(……っ!咲の声!?)ピクッ
照(今の声……少し尋常では無い感じがする……!)
照(急ごう)
「さ、さあ、一緒に行くのだ!!」スゥーハァー
咲「あ……や、やめ……」カタカタ
『私の妹に何をしている!!』
咲「えっ……?」クルッ
「よよよ!!これはテルーでござるよ!!隊長!!」
「きたこれなのです!!姉妹キター!!」
照「私の妹に何をしていると聞いているんだ」ゴォッ
「お、おおふ……なんだこの人、テルーにそっくりなのになんかやばいよ玄さん」カタカタ
照「何をブツブツと言っている、さっさと私の前から消えろクズ」ゴォォオッ
「う、うぐぅ!!」
「う……お、覚えてやがれなのですーー!!うわあああああん、おねええちゃーーーん!!!」ドヒューン
咲「……」
咲「あ、あの……」
照「咲、大丈夫か?何かされなかったか?」
咲「えっ、あ、うん……だ、大丈夫だよ」
照「そうか……」ホッ
咲「……」
照「……」
照「……帰ろうか」
咲「……」
咲「うん……」コクッ
照「ただいま」
咲「……ただいま」
咲「……?お父さんとお母さんは?」
照「靴がなかった、どうやら出かけてるみたい」
咲「そ、そうなんだ……」
照「……」
照「じゃ、じゃあ、私は部屋に戻るから」
咲「あっ」
ギュッ
照「……咲?」
咲「……」
咲「もう少し……一緒にいて」
咲「……お願い、お姉ちゃん」
照「……」
照「わかった、咲の部屋に行こう?」
咲「……うん」
-咲の部屋-
咲「……」
照「……」
照「咲、大丈夫?」
咲「え、な、なに?」
照「……手、震えてる」
咲「あっ……」
照「ごめんね」
咲「え、お姉ちゃん……?」
照「私がもっと早く助けられてあげられたら……」
咲「お、お姉ちゃんが謝る事じゃないよっ!」
咲「わ、悪いのは……あの人達で……」フルフル
照「咲」
照「本当にごめん」
咲「……」
咲「……怖かったよ……お姉ちゃん」
照「うん……」
咲「私……あの人達に何かされると思うと……」フルフル
照「咲」
ぎゅっ
照「大丈夫」
照「咲はお姉ちゃんが守ってあげるから」
照「だから泣かないで?」
咲「おねえちゃん……っ……」
照「……」
照「咲」
照「私はね、咲に黙っていた事があるんだ」
咲「……?」
照「私は、ああいう連中の好きなゲームが大好きなんだ……」
咲「え……と……?」
照「その……えっちなゲームというか……ほ、ほら、咲も見ただろう、昨日」
咲「あっ……」///
照「もちろん私も違う、安心してほしい」
咲「……」
咲「お姉ちゃんは……」
照「……?」
咲「お姉ちゃんは……好きなの?その……女の子同士が恋愛してる……ものとか……」///
照(女の子同士の恋愛……?というと、百合……とかか?)
照(私が好きなのは妹モノだけど……一応女の子同士だし……)
照「まぁ……好きだけど」
咲「そうなんだ……」フフッ
照「咲?」
咲「……」
咲「あのね、お姉ちゃん。私もお姉ちゃんには言ってない事があるの」ガサガサ
咲「”コミック百合娘”……私、好きなの」
照「コミック百合娘……確か、女の子同士の恋愛をメインする漫画雑誌だったな」
咲「うん……私ね、こういうの憧れるんだ」
照「そ、そうなんだ」
咲「特ね、この”百鬼 藍子”さんが書いてる、”眼帯娘でも恋がしたい”が面白いんだよ」
咲「感情を顔に出すのが苦手な眼帯の女の子が、一つ上の先輩になんとか振り向いてもらおうと苦労するんだけど」
咲「麻雀をキッカケに、二人は通じ合うようになるの」
咲「これって、すごいロマンチックだよね」
照「う、うん、そうだね」
咲「あ、ごめん……私……百合の事になっちゃうとつい」
照「……いや、いいんだ」
照「咲はそうやって笑ってる方が可愛い」
咲「お姉ちゃん……」///
咲「……うん、お姉ちゃんと一緒にいたら安心したよ」
照「そっか……」
咲「あ、お姉ちゃん!」
照「……?」
咲「え、えっと……」
咲「さっきは……助けてくれてありがとう」
咲「あの時、お姉ちゃんが駆けつけてくれて……すごい嬉しかった」///
照「……ふふ」
照「私は咲のお姉ちゃんだからね」
照「咲の事は何があっても守るよ」
咲「お姉ちゃん……」
咲「うん、ありがとうお姉ちゃん」
照(ニコッ)
ガチャ バタム
照「……」
照「……ふふ」
照「ふふふ……ふふふふ」
照(咲と仲直りできたぞ……!)
照(エロゲ趣味を話しても引かれなかった)
照(咲がまさか百合趣味だったのは驚いたけど)
照(それはつまり、女の子同士の恋愛に興味があるという訳であって……)
照(姉との恋愛もオーケーという訳で……)
照「ふふふふ……」
ピカリン:諸君、私は最高に気分がいい
トキ:何言ってるんこいつ
ひろぽん:キモいわこいつ
ピカリン:今の私は何を言われても平気
かじゅ:妹さんと仲直りでもしたのか?
ピカリン:何故それを
蓋:過去ログ見れば分かると思うけど
ピカリン:誰だお前は
蓋:昨日相談に乗ってあげたのにそれは酷くない?
ピカリン:冗談だ
ひろぽん:しかしピカリンまで妹にバレるとはな
トキ:むしろこいつの場合、今までバレへんかったのがおかしいぐらいやろ
ピカリン:いや、普通に話したら受け入れてくれた
ひろぽん:ホンマかいな
蓋:言ったでしょう、こういうのは正直に話すのが一番なんですよ
ピカリン:しかも妹は百合が好きらしい
トキ:あー最近の高校生とか好きそうやもんな、ああいうの
ひろぽん:ピカリンの妹やから、てっきりエロいの読んでそうやと思ったけど案外普通なんやな
ピカリン:妹はいいぞ、最高だ
ピカリン:お前たちも妹ゲーをやってみたらどうだ
蓋:もしかしてその「妹」とはあなたの想像上の人物ではありませんか
ピカリン:ふざけんな!!私の咲はちゃんと実在すいくぁwせdrftgyふじこlp;
かじゅ:落ち着け
ピカリン:さすがだなひろぽん、妹の良さが分かるとは
トキ:ピカリンがシスコンなのは知っとったけど、ひろぽんお前もか
かじゅ:ひろぽんも確か妹がいるんだっけか
ひろぽん:いるでー!うちの絹はなぁ、そらもうおっぱいが大きいねんで!!
ピカリン:巨乳の妹などに興味はない、妹はやはり控えめなのが萌える
蓋:実の妹に萌えるとか、この人大丈夫?
トキ:知ってたけど相当やばい
かじゅ:私に妹はいないが、可愛い後輩がいてね
かじゅ:とても慕ってくれて可愛い子なんだ、なんとなく気持ちは分かるよ
ピカリン:妹と後輩と一緒にするとか……
ひろぽん:ないわー後輩は他人、妹は身内。しかもお姉ちゃんて呼んでくれる可愛い妹なんやで!
トキ:うちの後輩可愛くないしなぁ
かじゅ:こいつら……
トキ:さり気なくとんでもない事言いよったで
蓋:しかも今日はって言いましたよね、毎日やってるの?
ひろぽん:”妹に!メイド服を着せたら脱がすっ!”……雀荘で働く事になった妹がメイド服でお姉ちゃんを誘惑する奴やな
ひろぽん:うちも持っとるわ
ピカリン:さすがだな
ひろぽん:個人的にオススメなのは”メガネ妹は役満希望の大三元!?~責任とって中を捨ててよね!役満あねぇ!~”やで
ピカリン:メガネ妹が役満ばかり出す姉に、手取り足取り麻雀を教えるという……
ピカリン:さすがひろぽん、わかってるな
ひろぽん:せやろー
トキ:なんだこれは(驚愕)
かじゅ:こいつら本当に大丈夫か
蓋:この人たちの妹じゃなくてよかった……
蓋:コミマ?確か、東京で行われる大きなイベントですよね
かじゅ:そうだ
トキ:もうそんな時期なんやなぁ
かじゅ:みんなは行くのか?私は最終日に行く予定だが
ひろぽん:うちは初日に行く予定や
トキ:うちは2日目
蓋:私は行く予定が無いですね、興味はあるんですが……
ピカリン:私は全日だ
ひろぽん:ホンマやで、なんで大阪でやらへんのや!
かじゅ:しかし見事に全員バラバラだな、オフでも出来そうだったのに
ピカリン:私は全日だから誰とでも出来る
蓋:仮に行ったとしても、ピカリンさんとは会いたくないですね
トキ:せやな
ピカリン:なんでだ!!
かじゅ:お前は数行前の発言も読めないのか
ひろぽん:さすがのうちもちょっとピカリンとは会いたくないわぁ
ピカリン:こんなにも妹に愛される姉だというのに
トキ:だからやろ……
……
…
照「……」カタカタッーン
照「……ふぅ」
照(さて、エロゲをする前に……)ゴソゴソ
照(咲の写真でも見よう)
照(ふふ……やはり小さい頃の咲は可愛い)
照(もちろん、今の咲も可愛いけど)
照「……」ゴクリ
照(まずい、咲があまりにも可愛いものだから我慢できなくなってしまった……)
照(今日はエロゲまで我慢できない)
照(咲ニーで済ませてしまおう)
照「さ、咲っ……」ッチュ
照(ま、まずい、さっき咲の手を握った時の感触を思い出して……!!)
照(咲ニーが捗ってしまう……!!)
照「さ、咲ぃ……――――っ!!」ビビクンッ
ガチャ
咲「どうしたのお姉ちゃん?呼んだ?」
照「―――っ……!?さ、咲……?」
咲「」
照「」
つづカン
エロゲシリーズはネタ不足も相まってか、次回で最終回となります。
次も期待してる
Entry ⇒ 2012.10.25 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
照「演技の練習?」
いつもどおり行き当たりばったりでいきます
前スレのようなもの
菫「体育倉庫に閉じ込められるおまじない……?」
照「怜と久ってどっちがモテるの?」
照「怜と久どっちがモテるかに決着をつける」
照「保健室の荒川先生」
照(なんか……)
怜(久がまともなこと言い出した……)
久「私は演劇部の部長だし、こういうところでクラスに貢献しようかなー、って」ニコ
菫「おお……! 私は嬉しいぞ竹井! お前がそんなにもクラスのことを考えてくれてるなんて……!」
怜(委員長大喜びしとる……まあそらそうか。生徒会に演劇部に忙しいはずの久が、クラスに貢献、なんて言い出せば……)
久「そこまで珍しいこと言ってるつもりはないんだけど」アハハ
菫「しかし、とても良い事だとは思うが……あまりに気が早くないか? まだ劇の内容も配役も決まって無いぞ」
怜「ウチはとりあえず小道具あたりやろうと思ってたんやけども」
照「私も。目立ちたく無いから、出来れば裏方がいいんだけど……」
久「劇の内容もちゃんと考えて、配役もベストな人を選べば……ふふ、最優秀賞間違い無し♪」
久「きっとこの高校の歴史に名を刻むような物が生まれるわよ?」
菫「おお……!」
怜「なんかすごい話やなぁ」
照「あの、私は照明とかで……」
久「ってことでまあ、クラス劇を良くするためにも、今の段階から演技の練習をしておきましょう、ってことね」
菫「多いに賛成だ。準備は早いに超した事はない。早速今日から始めよう」
怜「まあウチは別になんでもええから、みんなに任せるけども」
照「えっと、私は人前で演技なんて絶対に出来ないから、裏方に……」
菫「演劇部? 大丈夫なのか?」
久「うん、小さい方の部室でやるから。それに何かあったとき部員の子たち呼べたりして便利だし♪」
怜「部長って立場は便利やなぁ」
照「あの、みんな。私の話を……」
久「面白い練習方法考えてるから、みんなきっと楽しいわよ♪」
―――――――――
久「さて、演劇の練習っぽくジャージにも着替えたし、早速演技の練習に移りましょう」
怜「具体的になにすんの?」
久「みんなにはこれからエチュードをしてもらうわ」
久「簡単に言うと即興劇ね。エチュードにも色々あるけど」
久「今回は何かシチュエーションを決めて、それに応じた役をアドリブで演じる。それだけ」
菫「それだけって……素人には難しく無いか? 」
怜「確かに。台本とかあった方が逆にやり易いと思うわ。いきなりアドリブで劇しろ言われても……」
久「普通はそうよね。だから、今回は台本半分アドリブ半分でエチュードをしてもらうわ」
久「シチュエーションや自分の役は最初から決められていて、台詞もある程度までは用意されている」
久「それで少し話が進行したあたりで台本に書いてある台詞が無くなるから、そこからアドリブ開始ってことで」
菫「なるほど……」
怜「それやったらまあ、ある程度はなんとかなるかもな」
照「あ、あの……」
菫「終わるタイミングはどうするんだ? 何か目的みたいなものがなかったら、寸劇がいつまで経っても終わらないぞ」
怜「途中で話が思いつかんなってアドリブが利かんくなるかもやしな」
久「それは大丈夫。こっちで寸劇における目標も指定しとくから、それを達成するために演技してもらえば」
怜「指定された目標を達成するために……」
久「ちょっと分かりにくいかもしれないけど、やってみればすぐに感じは掴めると思うわ」
久「最初は私がお手本を見せようかしら。相手は……あ、そこのあなた!」
>>22
菫さんの寿命がまた減ってしまう
宥「って、竹井さん? それに菫ちゃんたちも……」
久「ちょうど良いところに通りがかってくれたわ。松実さん今時間ある? 楽しいことしましょう」ニヤァ
怜(うわぁ……)
宥「た、楽しいこと……?」ゾクッ
菫「お、おい待て! 宥に何をする気だ竹井!?」
久「ちょっと練習に付き合ってもらうだけよ。取って食ったりしないから安心して」タハハ
菫「当たり前だ!! それより、付き合うって何に……」
宥「えっと、何の話、でしょうか……?」
久「松実さん、劇の練習しましょう! あなたの才能を腐らせるのはあまりに惜しいわ!!」
宥「ええっ!?」
久「そうそう。松実さんは主役級を演じるんだから、しっかりと練習しとかないと!」
宥「しゅ、主役!? そそ、そんなの無理です! クラス劇は私、小道具をするつもりで……!」アワワ
久「そんなこと私が許さないわ。松実さんみたいな素敵な人が小道具だなんて、断固拒否します」
宥「そ、そんなぁ……」
菫「何の権限があって物を言っているんだお前は……」
怜「でも松実さんが小道具は確かに勿体ない気がするなぁ」
照「小道具は私がするしね。松実さんはお姫様とか似合いそう」
宥「お、お姫様だなんてっ、わ、私には無理です!」
久「無理なのを出来るようにするために練習するのよ!」
久「やろうともしないで最初から諦めちゃうような子は……弘世さん嫌いって言ってたわよ?」
宥「え……」
菫「ま、待て待て。私はそんなこと一言も言っていない」
怜「似たようなこと照にいつも言っとるやん」
照『何故お前はやろうともせずに諦めるんだー。逆上がりくらい出来るようになれー』コエマネ
菫「何年前の話をしてるんだ!?」
久「それに弘世さんも松実さんのお姫様姿みたいわよね?」
菫「なっ……」
怜(お姫様やるのはもう決定なんや)
菫「……み、見たいか見たくないかなら、見たい、が……」シドロモドロ
照「素直に『見たいですだから頑張ってください』って言えばいいのに」
怜「そんな回りくどい言い方して。ホンマへたれやな」ハァ
菫「うるさい!!」
久「だ、そうよ?」タハハ
宥「で、でも……」モジモジ
久「松実さん、ちょっと頑張ってみない? 無理そうなら強要はしないから」
久「それに私が演劇部部長として手取り足取り優しく教えるから、ね?」
宥「竹井さん……」
菫(手取り足取り……)
照「卑猥な響きですわね。これはもう数時間後仲良く手を繋ぎながら下校する松実さんと久の姿が」
菫「……」ギロ
照怜「「ご、ごめんなさい……」」
久「よし、とりあえずやってみよう! はいこれ台本。これに書いてある通りに喋ればいいだけだから!」
宥「で、でもやっぱり……!」アワワ
久「だいじょーぶだいじょーぶ。初めての子はみーんなそう言うけどやってるウチにノリノリになるから」
久「はい、それじゃあ早速スタートねー」
宥「えええっ!? ま、待って……!」
怜(ゴリ押したなぁ……)
――――――――――
久『もうやめて宥……こんなことおかしいわ……』
宥「え、えっと……『ど、どうしたのお姉ちゃん、そんな顔して。何がおかしいの?』
久『早くこの鎖を解いて。もう一週間もこのままで……』
宥『く、鎖を解いたらお姉ちゃん逃げちゃうでしょ? そんなのダメだよ』
宥『お姉ちゃんは私と一緒にずっとここで幸せに暮らすんだから、絶対に逃げないって分かるまで鎖は解いてあげない……』
久『そ、そんなっ……』
宥『ふふ、ダメだよお姉ちゃん。そんなカオされると、私、変な気分に』
菫「おい、ちょっと待て」
久「どうしたの弘世さん。練習中だから邪魔しちゃダメよ?」
菫「どうしたのじゃない!! なんなんだその台本は!?」
久「いや、心を病んだ妹と気弱な姉だけど」
怜「なんていうか、薄々分かってたけども……」
照「面白そう……!」
久「まあまあ落ち着いて」
久「台本もそう数があるわけじゃないんだし、取っ替え引っ替えしてるとみんなの分なくなっちゃうから」
菫「こんなものが私たちの人数分あるのか……!」ワナワナワナ
怜(つまり、クラス劇の練習っていうのは表向きで)
怜(結局は遊びたいだけか……久らしいな……)
久「ふふふ♪」
宥「す、菫ちゃん落ちついて」アワアワ
照「二人とも、早く続きを。心を病んだ妹がどうなるか気になる」
宥「えっと、『そんなカオされると、私、変な気分に……』
菫「ゆ、宥!?」
照「菫うるさいっ」
―――――――――――
菫「んむっーーー!!」モガモガ
怜(割愛)
宥「す、菫ちゃん……」
久「練習の邪魔だからしょうがないわよね。クラスのためにも続きをしましょう」ニッコリ
照「松実さん、早く早く」
宥「は、はい……『そんなカオされると、私、変な気分になっちゃうよ……』
宥「あ、あ、あっ、あそっ……」カァァァ
怜「?」
宥『アソコもっ……! び、びしょびしょに……!』カァァァァ
菫「」
怜(エロい……)ドキドキ
久「松実さん、そこはもっとスラスラと言えるようにした方がいいわね」
宥「ふぇっ……!?」
久「変な気分になっちゃうよ、から少しやり直してみましょう。はい、どうぞ」
宥「え、えっ、えと……『へ、変な気分になっちゃうよ……あ、あ……アソコも、び、びしょびしょになって……!』
久「うん、さっきよりも良くなってるわ。あそこ、で噛んじゃったからもう一度言ってみましょう」ニッコリ
宥「は、はいぃ……」
宥『私、変な気分になっちゃうよ……あ、アソコも……び、びしょびしょに……』ナミダメ
久「うーん、可愛いんだけど、もうちょっとこう、感情を込め」
照「しゅ、修正はそのくらいにして、そろそろ次に……」
怜(アカン)
菫「……」ゴゴゴゴゴ
照(さ、殺気が……)
久「くふふ……弘世さん、顔赤く……くく……」
怜(ホンマええ性格しとるなぁ)
宥「あ、あの、竹井さん……こ、ここは帰って練習しときますから、次に……」プルプル
久「そ、そうね。くふふ……じゃあ、もう一度流れで通して進みましょう」
宥『私、変な気分になっちゃうよ……あ、アソコも……びしょびしょになって……お姉ちゃんのことが欲しいって……きゅ、きゅんきゅんするのぉ……』カァァァァ
久『な、なに言ってるの宥……? いや、やめて、来ないで……やだ……!』
宥「え、えっと」
宥(ゆっくりとにじり寄りながら……)
宥『うふふ、お姉ちゃん……宥と気持ちいいこと、しよ……?』
怜(なんやこの寸劇)
照「……」ドキドキドキ
宥(えっ!? こ、こんなこと……)ドキドキ
久「松実さん、続き続き」ボソ
宥「は、はい! 『……か、可愛いよお姉ちゃん、宥の大好きな、お姉ちゃん……』」ギュッ
菫「!?」
久『ひっ……! やだぁ、離してぇ……!!』
宥『お姉ちゃんが悪いんだよ? 私以外の女の人と仲良くするから……』
宥(く、首元に……キス……)
宥「……んっ」チュッ
久『あっ……』
宥(わ、私、竹井さんに……)
久「演技だから、ね?」ボソ
宥「は、はい……」
菫「……」
照「菫、可哀想……ちょっと泣いてる……」
怜「ロープ解いてもええんやけど、ごめんな委員長。これちょっとおもろいわ……くく……」
照「私も続きが気になるから……」
菫(コイツらを友人だと思っていた自分が恥ずかしい……!)
宥「え、えっと、続きいきますね」
久「うん♪」
宥『……お姉ちゃん、良い匂い。そのカオも可愛い……』
久『やめて宥……私たち、姉妹なんだよ……? こんなこと、もう……!』
宥『関係ないよ、そんなこと?』
宥『お、お姉ちゃんが私の事を好きになってくれないなら、好きになってくれるまで……え、えっちなこと、し続けるだけだから』
宥(う、内太ももをさする……)
久「っ……」
久(こ、こそばゆいっ……!)
久『ふぁっ……だめ、宥、それだけは……!』
宥『お姉ちゃん、宥と一つになろ? わ、私たち二人なら、いい、いっぱいいっぱい気持ちよくなれるから……』スリスリ
久『あっ……ふぁ……』
宥『ふふ、可愛いカオ。き、キス、するね…』
菫「……!!」
久『おねえ、ちゃん……』
久「ふふ、分かってるわよ。とりあえずフリだけで」ボソ
宥「は、はい……」
宥『ちゅ……』
久『んっ……』
怜(フリでもこういうの間近で見るんはキツいやろなぁ……)
照(このあとどうなるんだろう……)
菫(竹井……!!)
宥(えっと、次は)ペラ
宥「……あ、れ? 竹井さん、台本に台詞が書いてな……」
久「宥……」ギュッ
宥「!?」
久「やっとあなたの気持ちを理解できた気がする……」
宥「え、えとっ、たた、竹井さ」
久「ごめんね、宥……今まで寂しかったのよね、だから、こんなことっ……!」ギュウ
宥「ひゃあっ……!?」
照「きゅ、急展開……!」
怜「いや、明らかにアドリブ入っとるやろ」
菫「んんっーーーー!!」ジタンバタン
怜(まあ、久がどこまでやるかは知らんけども……流石に委員長が不憫やな)
宥「た、竹井さん! だ、だめ、ダメですっ! 私の台本、何も書いてなくてっ……!」
久「松実さん、アドリブアドリブ」ボソッ
宥「ふぇっ?」
久「そういう練習だから、頑張って」ニコ
宥「そそ、そんなこと言われても……!」アワワワ
久「これ、台本のここ読んで」
宥「ふぇ?」
宥「お姉ちゃんと幸せなキスをすると終了……」カァァァ
久「んで私が、妹を正常な状態に戻して終了」アハハ
宥(そ、そんなぁ……)
宥(え、えっと……)
宥「お姉ちゃん。やっと私の気持ちが通じたんだね……嬉しいよ……」
久「宥、今までの私を許して……あなたに怯え、あなたを理解しようとしなかった私を……」
宥「もういいよお姉ちゃん。そんな昔のことはもう……」
宥「で、でも、まだ許してあげない。お、お姉ちゃんの気持ちが本物だって証明してくれるまで、私は……」
久「証明って……」
宥「お姉ちゃんからキス、してくれたら……お姉ちゃんのこと信じてあげても、いいよ?」
久「そ、そんなぁっ……」
照(松実さんのアドリブすごい……!)
怜(早く終わらせたくてしゃあないんやろうなぁ……委員長がどう見るかは知らんけど)
菫「……」
久「違う! 嘘なんてついてない!」
久「私は本当に宥のことを……!」
宥「そ、それじゃあ、キス、出来るよね?」
久「それは……」
宥「ね、ねえ、キス、してよ……お姉ちゃんから、私に……」
久「宥……」
久(うーん、どうしよう……ぱっとやって終わらせてもいいんだけど……)チラ
菫「」チーン
久(……流石にこれ以上は可哀想ね)アハハ
久「……分かった。証明してあげる」キリッ
宥「ふぇっ!?」
宥「ひゃっ……た、竹井さん、まま、待って……!」
久「大好き、宥……」
宥(竹井さんの顔、近づいて……!)
宥「ごっ……」
宥「ごめんなさいこれ以上は無理です!!」バキィ!!
久「あぐぅっっ!?」
久(しょ、掌底……)
久「ばたんきゅう」
宥「あっ……」サーッ
怜(うわぁ……)
菫(宥……)ウルウル
宥「だ、大丈夫ですか竹井さん!? ごごご、ごめんなさい私反射的に……!」アワアワ
久「へ、平気平気……病弱娘とは鍛え方が違うから……」
宥「で、でもそんなにも辛そうに……! あ、荒川先生呼ばないと……!!」
久「それだけは勘弁して……」
怜「自業自得やな。でも結構おもろかったわ」
照「うん、面白かった。衝撃の結末だった。松実さんもお疲れ様。良い演技だった」
宥「へっ? あ、ありがとう……」
宥「だだ、大丈夫ですか竹井さん!?」
久「ノープロブレム。馴れてるから」ニッコリ
怜「なんで馴れてんねん」
照「流石女たらし序列1位だね」
久「その不名誉な呼び方はやめて欲しいわ」アハハ
久「……ひ、弘世さん? これはあくまで演技の練習だからね? 松実さんの合意の上だからね?」
菫「……」ジットー
宥「す、菫ちゃん……」
怜「まあ、あとで一発くらいは殴らせたり」
―――――――――――
久「」チーン
照(一発だけじゃすみませんでした)
宥「あわわわわ……」ガクガクガク
怜「委員長、ちょっとやり過ぎちゃう? 干物みたいになっとるで」
菫「……十分手は抜いたつもりだが」ギロ
怜「せ、せやろか」
照「でもちょっと可哀想。久は演技の練習でしただけなのに。松実さんも結構ノリノリだったし」
宥「ご、ごめんなさい菫ちゃん……でも、本気でやらないと練習にならないから……」アワワワ
菫「……バカ」
宥「す、菫ちゃん……」ウルウル
菫「どの口で言ってるんだお前は!!」
照「生き返った」
怜「殴られ馴れとるんやろ……」
久「とりあえず、やり方は教えたからもう大丈夫でしょう」
久「次行きたい人ー?」
菫「まさか続ける気なのか……?」
久「当たり前。このままだと殴られ損だわ」
怜「久はタフやなぁ」
照「さすが……!」キラキラ
久「もう適当に決めるわ。次>>108さんね」
照、菫、怜の誰かで
菫「わ、私?」
怜「頑張ってー。委員長なんか宝塚っぽいから案外イケると思うわ」
照「菫が演技するなんて信じられない。すごく楽しみ」
菫「あ、あのなぁ……」
久「松実さんもちょうどいるんだし、カッコいいとこ見せるチャンスよ?」ボソ
菫「うるさい。顔を近づけるな」グググ
久「ひどーい。そうだ。相手役松実さんにやってもらう?」
菫「もう黙れお前!!」
怜「でも実際のとこ相手どうすんの?」
照「今ここにいる私たちの誰かか……」
久「通りすがりの誰かでいいでしょ」
お相手 >>122
菫「誰も通らないな」
久「まあ、演劇部の部室って基本部員以外は来ないしね」アハハ
照「松実さんはどうしてここに?」
宥「えっと、教室のゴミ捨ての帰りに……」
怜「ウチゴミ捨てのときこんな場所通った事無いわ」
菫「そもそもお前は何かと理由を付けてゴミ捨てにいかないだろ……」
照「!」
照「誰か来る」
「「えっ?」」
久「そこのあなた!」
玄「は、はい!」
怜(犠牲者が決まってもうたか……)
菫(出来るだけ穏便に済ませたい物だが……ん?)
久「可愛い!」
玄「ええぇっ!?」
久「あなたみたいな可愛い子が演劇をしないなんて勿体ないわ! ぜひ演劇部に入ってちょうだい!」
玄「そそ、そんなっ……! いきなりそんなこと言われても困り」
玄「えっ、お、お姉ちゃん?」
玄「そ、それに……!」
照「?」
玄「み、宮永さん……」
照「この前はお世話になりました」ペッコリン
玄「いえ、そんな……」
宥「?」
菫「そうか、宥は知らないんだったな……」
怜「まあ、あの一部始終見てたのウチらだけやしな」
久「ふふ、これは面白くなりそうね♪」
玄「えっと……あ、お姉ちゃん。クラスの用事か何かで集まってるの?」
宥「うん、演劇の練習で……クロちゃんは?」
玄「私はゴミ捨ての帰りで……」
菫(宥の妹……そういえばあのとき、照や福与先生と一緒にいたな……)
菫(あの事件の被害者の一人でもあるし……一体何の縁なのか……)
久「松実玄さん、単刀直入に言うわ。演劇の練習に付き合ってくれない?」
玄「え、演劇の練習?」
玄(ってこの人、生徒会長だ……)
久「そうそう。実はね……」
照(なんか)
怜(蚊帳の外になりそうな予感……)
―――――――――――
玄「そうなんですか……でも、どうして私に……?」
久「弘世さんの練習相手は松実さんの妹である玄さんにしか努められないの」キリ
怜(嘘付け)
玄「わ、私だけだなんて、そんな……」アワワ
玄「クラス劇なら、私みたいな下級生で部外者の人間が関わるよりも、それこそ宮永さんやお姉ちゃんの方が……」
久「宮永さんさっきからずっと嫌がってるのよ。照明がやりたいとかで」
照「目立ちたく無い」
久「それで、松実さんはさっき私と一緒に練習しちゃって」
宥「う、うん」
久「んで、もう一人は病弱だから動きたくないんだって」
怜「なんでもええよー」
玄(り、理由が……)
玄「用事は無いです、けど……」
菫「……嫌がっているんだ。無理にやらせることもないだろう」
菫「練習ならいつでも出来るし、それこそ照や園城寺に付き合わせればいい」
照怜「「え」」
菫「引き止めて悪かった、松実玄さん。もう帰ってもいいよ」ニコ
玄「弘世さん……」
宥「年上で知らない人ばかりだし、無理しなくていいよクロちゃん?」
菫「そうだな。わざわざ宥の妹さんを巻き込むことでもない」
玄(お姉ちゃんのこと、下の名前で呼んでる……)
宥「菫ちゃんの相手は、その、別に私でも……」ゴニョゴニョ
玄(お姉ちゃんも、弘世さんのこと……)
久「ふむふむ……」
玄「は、はい……?」
久「この機会を利用すれば、弘世さんのことを詳しく知れるかもしれないわよ?」ボソ
玄「!」
久「気になるんでしょ? 弘世さんのこともお姉さんとの関係も」
玄「そ、それは……」
久「ここは私に任せてみない? きっと玄さんの胸の中をスッキリさせることが出来るから。ね?」
玄「……分かりました。私、やってみます」
久「ふふ、決まりね♪」
菫(一体何の話を……?)
菫「えっ……? あ、ああ……」
宥「く、クロちゃん……?」
久「お姉ちゃんのクラスに貢献できるなら、って。快く承諾してくれたわ♪」
怜(口説き文句が気になるなぁ。ま、松実さん関連やろうけど……)
照「菫と松実玄さん……不思議な組み合わせ……」
菫「お前と玄さんのがよっぽど不思議だ」
宥(菫ちゃんと、クロちゃんが……)
久「それじゃあ、はいこれ台本。二人とも頑張って頂戴」
照「楽しみ」
菫「はぁ……」
玄(弘世さん……お姉ちゃんの……)
――――――――――――
菫『こんばんは、玄』
玄『菫さん……こんばんは。今日も、来てくれたんですね」
菫『ああ。二日に一度は来ると彼女に約束したからな』
玄『本当にありがとうございます……どうぞ、あがっていってください』
菫『ああ、お邪魔するよ』
照「これはどういう設定なの? なんだかシリアスな雰囲気」
久「それはまあ、お話が進んでからのお楽しみで」
怜「てかあの二人普通に上手いな。全然噛まんし、自然やわ」
照「二人がどういう関係なのか気になる……!」
宥「……」
菫『……ああ、そうだな。だからと言って、することは特に変わらないが』
玄『お姉ちゃん、きっと喜んでいます。こうやって、今でも菫さんが会いに来てくれて』
菫『……こうやってここで目を閉じると、彼女がすぐ側にいるような……そんな温かい気持ちになるんだ』
菫『ただその温もりを少しでも感じたくて、風化させたくなくて……私はここに来続けてるのかもしれない』
玄『菫さん……』
菫『自分でも未練がましいと思う。いつまで前を向かないつもりだと周囲に諭されることもある』
菫『ただ、それでも……私にとって最愛の人は彼女ただ一人だけなんだ』
菫『いなくなっても、会えなくても。この気持ちが変わることは絶対にない』
菫『だから安心してくれ、玄さん。私は死ぬまで彼女を思い続ける』
玄『……菫さん。お昼、食べましたか?』
菫『いや、そういえば何も……』
玄『何か作ってきますね、少し待っていてください』ニコ
菫『ありがとう。助かるよ』
照「……」ウルウル
怜「なあ久、この脚本流石に酷すぎると思うんやけど……」
久「あ、あくまでフィクションだから。それに、この二人が演じるから無粋なことを妄想してしまうだけで」タハハ
宥「……」
―――――――――――
玄『お待たせしました。昨日余った食材で作った簡単なものですけど……』
菫『とんでもない。ありがたく頂くよ』
菫『……うん、おいしい』
玄『ふふ、ありがとうございます』
菫『やっぱり、玄さんの料理は彼女が作る料理の味にとても似ているな』
玄『ここでご飯食べるたびに言いますよね、それ』フフ
菫『実は泣きそうになっていたりするんだぞ? あまりに似ていて……懐かしくてな』アハハ
玄『菫さんさえよければ、私はいつでも待ってますから』ニコ
菫『ふふ、ありがとう。その気持ちだけでもすごく嬉しいよ』
菫『玄さんは本当に優しくて綺麗で、よく出来た女性だ。どうして今でも独り身なのか不思議でならないよ』
玄『また、そんな冗談を……』
菫『本心からそう思ってる。まだまだ若いし、魅力的なのに……どうして身を固めようとしないんだ?』
菫『君ほどの女性なら、相手には困らないだろうに』
玄『そ、それは……』
玄『……』
菫『玄さん?』
玄『わ、私にも、色々と事情があるんです。それに、今はお姉ちゃんのことも……』
玄『そんな……』
菫『心配しなくとも、私は再婚なんて絶対にしない。死ぬまで彼女一人を愛し続けると誓う』
菫『彼女が住んでいたこの家だって、玄さんがいなくなっても私が守り続ける』
菫『だから、玄さんはもっと自分の幸せを考えて……』
玄『それなら、菫さんの幸せはどうなるんですか……?』
菫『えっ……?』
玄『さっき年齢のことを言いましたけど、菫さんだってまだ28歳です……』
玄『こんなにも若い時期から最愛の人を亡くして、それでいて残りの人生、全てを捧げるなんて……そんなの……!』
菫『私は彼女を裏切るような真似は絶対にしない』
菫『彼女を失ったその時に決めたんだ。彼女と彼女が残した全てのものを、この残りの人生の全てで守り通すと』
玄『菫さん……』
菫『玄さん。私にとって君もそうだ。かつて彼女が愛した、たった一人の妹』
菫『私はそんな君を幸せにする義務と責任もあるんだ』
玄『やめてください……義務や責任なんて言葉、聞きたく無いです』
菫『玄さん……』
玄『それはつまり私がお姉ちゃんの妹だから、色々と良くしてくれたり気遣ってくれているってことでしょう……?』
玄『そんなもの……!』
菫『っ……』
玄『……菫さんにとって、私ってなんですか……?』
菫『玄、さん……?』
玄『お姉ちゃんの妹じゃなかったら、菫さんにとって私はただの他人なんですか……?』
菫『そ、そんなことは……』
玄『菫さんは、私に死んだお姉ちゃんを重ねています……』
菫『……!』
玄『この家に来て、私に会うことで……今でも死んだお姉ちゃんの名残を探して、しがみついているんです』
菫『ち、違う……私は……そんな……!』
玄『お姉ちゃんの気持ちを勝手に想像して、自分の体に巻き付けて』
玄『私にお姉ちゃんを重ねて……覚めない夢を見続けて』
玄『でも……私はどうなるんですか……?』
玄『お姉ちゃんが愛した菫さんを……好きになってしまった私はどうすればいいんですか……?』ポロポロ
菫『玄……さん……』
玄『それでも菫さんと一緒にいたいから、菫さんを少しでも感じていたいから、お姉ちゃんの真似をして……』
玄『私という要素を少しずつ削って、そこにお姉ちゃんの面影をあてはめて……』
菫『……』
玄『菫さん……好きです、愛しています……』
玄『お姉ちゃんばかり見続けないでください……私のことも見てください……』
玄『松実玄を、愛してください……』ギュウ
菫「……玄、さん……』
照「ひぐっ……」ポロポロ
怜(なんでガチ泣きやねん……)
久「それにしても、迫真の演技ね……」
宥「あぅ……」
怜(松実さん、顔めっちゃ赤い……)
怜(まあそりゃ、あんだけ自分と思われる人物のことで盛り上がってればなぁ……)
菫(……ここから台詞が無くなっている)
菫(台本には、告白を受けてもなお、最愛の人を思い続けて終了、とだけ書いていて……)
菫(つまりはアドリブ開始……はぁ。竹井のヤツ、こんな台本をよりによって私に……)
菫(最愛の人を、思い続けて……)
玄(台本には、死んだ姉の最愛の人と結ばれて終了、って書いてあるけど……)
玄(ど、どうすれば結ばれて……)
菫「……ごめんなさい」
玄「えっ?」
菫「私には……松実宥さん以外の女性を愛することは出来ません……」
宥「……!!」
玄「そ、そんな……」
菫「私が玄さんに彼女のことを重ねてしまっていたのは……事実です」
菫「彼女の言葉を自分の中で作り上げ、それを糧にあの日から生きてきたのも……事実です」
玄「……」
菫「私は自分自身のエゴで、玄さんを深く傷つけてしまっていた……」
菫「玄さんを私という存在に縛り付けてしまっていた……」
菫「どれだけ謝罪の言葉を重ねても、今の私に償う事はできません……」
玄「謝罪の言葉なんて、いらないです……」
玄「私が本当に欲しいのはただ一言、菫さんの……」
菫「……その言葉を紡ぐ事も、できません」
玄「どうして……どうして……!?」
菫「彼女以外の人に愛の言葉を手向ける事は……私の彼女に対する想いの全てを」
菫「私と彼女が過ごして来た在りし日の全てを否定する事になります」
菫「それだけは……私には出来ません……」
玄「……なら、嘘でもいいです……」
玄「嘘でもいいから……心はいらないから……」
玄「今日だけ私を、好きになってください……」ギュゥッ
菫「玄さん……」
玄「私のこと、お姉ちゃんと思ってくれてもいいです……菫さんが望むなら、私の全てをお姉ちゃんにします……」
玄「だから……だからっ……」
玄「そんな顔、しないで……」
菫「……ごめんなさい」
玄「……!!」
玄「そん、な……」
菫(……もういいだろ。終了条件はとっくに満たしているはず……)チラチラ
久「?」
久「……」ウーン
久(続行!)
菫「!?」
菫「い、一体どういうつもりだたけ……」ガシ
菫「く、くろ、さん……?」
玄「……」
菫「へっ……?」
玄『嫌です……そんなの、絶対に……!』グイッ
菫「きゃっ……!」
宥「!?」
菫(お、押し倒されて……)
玄『菫さん……好きです……』
菫「なっ……」
玄『菫さんが愛してくれなくても、私は愛してます……誰よりも、菫さんのことを……』
菫(ま、まだ続行する気なのか……!?)
照「な、なんか盛り上がって来た……」
怜「松実玄さんの様子おかしない?」
久「もしかしたら役になりきっちゃってるかもしれないわね」
宥「……!」
菫(くっ……!)
菫「や、やめてください玄さん! こんなこと……!!」
玄『菫さんがいけないんですよ……?』
玄『私の気持ちも知らずに、お姉ちゃんお姉ちゃんって……』
玄『お姉ちゃんのことなんて、私が忘れさせてあげます……』ウフフ
菫「!?」
菫「や、やめっ……」
玄「ごふぅぅっ!?」ドガッシャーン
菫「ゆ、宥!?」
怜(ものすごいタックル……)
久(また綺麗に机と椅子の山に突っ込んだわねー……)
宥「あっ……クロちゃ……」サーッ
玄「だ、大丈夫だよお姉ちゃん……おかげで、目が、覚めた……」チーン
宥「クロちゃぁぁん!?」
照「またしても衝撃の結末……死んだはずのお姉ちゃんが生き返って、菫を守った……」
怜「なんでやねん」
菫(今……本気でキスされそうに……)ドキドキドキ
―――――――――――
照(玄さんは菫と松実さんの手で保健室へと運ばれました)
久「弘世さん行っちゃったし、今日はこれ以上練習出来そうにないわね」
怜「結局このオチ……既視感すごいわ……」
照「松実さんは口より先に手が出るタイプらしい。今日で確信した」
久「それにしても、弘世さんも松実さんも今日でかなり演技上達したと思うわ」
久「いやー、また優秀な人材を育ててしまった」エヘヘ
怜「委員長は元から上手やったし、松実さんは台本朗読やったと思うけど……」
怜「てか演技練習してる人、ロクな目に遭ってない……」
久「次は宮永さんと園城寺さんの番ね。これまた面白くなりそうで楽しみだわ♪」
照怜「「勘弁して……」」
終わり
遅くまで支援ありがとうございました
お疲れ様でした
Entry ⇒ 2012.10.24 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (2) | Trackbacks (0)
岡部「俺が女だと!?」
岡部「催眠術だとか超スピードだとか、そんなチャチなものじゃあ断じてない」
岡部「もっと恐ろしいものの片鱗を…ではない!」
岡部「ポルっている場合ではないぞ鳳凰院凶真よ!」
岡部「俺の体に何が起きたというのだ。こんな…」サワサワ
岡部「無い…」フルフル
岡部「……」ペタペタ
岡部「…こっちも無い」ショボン
岡部「……」
紅莉栖「あら、ハロー岡部」
岡部「おお、助手か!!助手に聞きたいことがある。どうして俺は女になっているのだ!?」
紅莉栖「はぁ!?あんた何言ってるの?またいつもの中二病ですか?」
岡部「俺はさっきまで男だったろう助手よ!それがどうして女になっているのだ!?これは冗談で言っているのではない!」ドンッ
紅莉栖「ビクッ…何よもう、そんなに大声で話しちゃって……冗談にしては悪質よ、岡部」
岡部「これが落ち着いていられるかッ!!はっまさか…」
岡部「なあ、紅莉栖、俺のフルネームを教えてくれ」
紅莉栖「今紅莉栖って言った!?…あなたの名前は岡部倫子よ。学生証にもそう書いてあると思うけど」
岡部「まさか」ガサゴソ
岡部「ウソだろ、おい…」
岡部「俺の本名が…岡部倫子だと…!?」
岡部「この場合いつDメールを送ったのかは重要でないな。今重要なのは誰がどんな文面で誰に送ったかだ」
紅莉栖「ちょっと、さっきから何を一人でぶつぶつ言ってるのよ」
岡部「助手よ。俺が寝ている間にDメールを送ったか?」
紅莉栖「送ってないわ、それと助手ゆーな」
岡部「そりゃそうだよな…俺が女になってるって事はDメールを送った事実が無かったことになっているということだろうし」
バタン
ダル「うひーあちー。脂肪が溶けてゲルになるレベル」
ダル「いきなり倫子ちゃんの嫉妬イベントキター!!度重なるフラグクラッシュによく耐えてここまで来たかいがあったお」
岡部「何を訳わからんことを言っているのだ!!未来からメールが来てるか確かめるだけだ。助手もそういったのは届いているか?」
ダル「なんだ。また、実験かお。どんなメール送ったん?」
岡部「それが俺にも分からないんだ」
紅莉栖「分からない()とか、ラボ創設者()のくせに管理がなってないwww」
岡部「煽るなネラーが!!そんなことよりメールは届いていないのか!?」
ダル「僕も届いてたとしたら真っ先に倫子ちゃんに報告しますし、はい」
岡部「そうか…、じゃあ一体誰に届いているんだ?」
紅莉栖「どんなメールを送ったか分からないって言ってたけど、送る前と送った後でどんな変化が起きてるの?もしかしたらその変化からメールの内容と人物を特定できるかもしれない」
岡部「気がついたら女になってた」
紅ダ「は?」
岡部「だから、ラボで寝てて気がついたら倫太郎が倫子になってたんだ」
紅莉栖「つ、つまり、俺があいつであいつが俺で、アポトキシンを服用したと」
岡部「落ち着け、クリスティーナ」
ダル「厨二病の男とか誰得。そんな世界線僕は認めないお」
岡部「お前の意見なんかしるか!!」
紅莉栖「すぅーはぁー、よし落ち着いた。そうね、もし岡部が男の世界線から女の子になってる世界線に移動したんだとしたら因果となるメールは岡部が生まれてくる前に送られてないと辻褄は合わないんじゃないかしら?」
岡部「作戦名:お父様に聞きましょう(オペレーションリーディングオイディプス)を発動させる。各自両親のポケベルに未来からの連絡は入ったかを聞いてくること」
ダル「そんな…もったいないこと僕には出来ない!!そんなことしたらせっかくの比翼連理のダールン、ハーレムルートが台無しだお」
紅莉栖「語呂悪いし、橋田は比翼連理ってよりも肥沃連理って感じね」
ダル「ちょっ、牧瀬氏酷いお」
岡部「ええい、話を聞け!!全く、俺の一生がかかってるんだぞ!!」
紅莉栖「冗談よ。とりあえず聞いてはみるけど、あんたはDメールを打ち消す内容を考えなさいよ」
岡部「うむ、わかっている。それとダルは聞き出した暁にはフェイリスとるか子の手料理を振る舞ってもらうよう取り計ろうではないか」
ダル「その中に倫子ちゃんとまゆ氏もキボンヌ」
岡部「俺はともかくまゆりはやめといた方がいいと思うが」
紅莉栖「あれは、科学者的な知的探求心を満たしていったらああなっただけで、まともなのも作ろうと思えば作れるはず…」
岡部「お湯入れて三分待つのは料理に入らないからなインスタント処女」
紅莉栖「あんたも処女でしょ、ブーメランよブーメラン」
ダル「女の子達が目の前で処女発言。二次元にいかなくても桃源郷はここにあったんだお」
岡部「俺は男だ!いや、そうじゃなくてまゆりも相当酷かったような気がするが…」
バタン
まゆり「トゥットゥルー、おはよーみんな」
ダル「まゆ氏、まゆ氏、倫子ちゃんがまゆ氏の料理食べない方がいいとかって」
まゆり「えー、ひどいよオカリン。オカリンがまゆしぃに料理を教えてくれたのに」
岡部「なん…だと…俺がまゆりに料理?」
まゆり「家事を教えるのは姉の役目だーって言って教えてくれたの忘れちゃったの?」
紅莉栖「それがね、まゆり…」
まゆり「ええーオカリンは実は男の子だったの?じゃあお姉ちゃんじゃなくてお兄ちゃんだねー、えっへへ」
まゆしいを抱きしめたん? って想像したらなんか高まってきたわ
有りだな。全然ありだわ
まゆり「そっかぁ、オカリンはリーディングシュナイゼルさんが出てるから分からないんだっけ?」
岡部「シュタイナーだ!!」
まゆり「オカリンはまゆしぃがお婆ちゃんにしごかれて大変だったときに、女の子は筋肉を鍛えるものじゃない。私がお姉ちゃんになって、家事とかを教えるから鍛えるのは止めろって抱きしめて言ってくれたんだよー」
岡部「そうか…お婆ちゃんにしごかれてるときに…えっ!?」
まゆり「だからオカリンはまゆしぃのお姉ちゃんなのです」
まゆり「紅莉栖ちゃんだって可愛くて頭も良いからまゆしぃうらやましいって思うなー」
ダル「牧瀬氏とまゆ氏と倫子ちゃんの百合展開はぁはぁ」
岡部「ああ、そうだ。機関の工作により今までで一番酷い敵地に送り込まれてしまった。今回ばかりは生きて帰れそうに無い。そうだな、俺に何かあったら彼等に伝えてくれ…最期まで強く戦ったと…エル・プサイ・コングルゥ」
岡部「ゴホン、話が逸れてしまったが、まゆりにももう一度説明する。両親にポケベルに未来からの連絡があったかどうか確認してくれ」
岡部「今日のところは以上で解散とする」
岡部「精神的に疲れた。こんな世界線は早くなかったことにしたいのだがな」
翌日
岡部「昨日は何が何だか分からなく取り乱してしまったが、紅莉栖の前で父親の話は良くなかったな」
岡部「それにしても、両親に聞いてもそんな連絡は無かったと言うことらしく八方塞がりになってしまった」
バタン
ダル「グーテンモルゲン、あれ?倫子ちゃん一人なん?」
岡部「ああ、二人はまだ来ていない。それと倫子ちゃんと言うのはやめろ。寒気がする」
岡部「昨日の説明を聞いてなかったのか?今の俺は男だぞ」
ダル「そんなものは関係ないんだお。可愛いは正義」キリッ
岡部「なにがキリッっだ。それより聞いてきてくれたか?」
ダル「聞いたけどその前にやることがあるよね。倫子ちゃん」
岡部「ああ、料理のことか?それならばまゆりが来てからにしようと思うのだが」
ダル「違うお。人に頼んだときはそれ相応の対価を支払うものだってばっちゃが言ってたお」ハアハア
岡部「息を荒げてこっちに来るな!!いや、マジでやめてくださいお願いします」
ダル「もう遅いお」
岡部「いやー」
まゆり「トゥットゥルー、あれダル君。オカリンに何やろうとしてるのかな?」
岡部「た、助けてくれまゆり!ダルが俺のことを襲おうとして」グスッヒッグッ
ダル「ち、違うお。毎回やってるミニコントみたいなものだお。ちょっとしたジョークだお」ブルブル
まゆり「ダル君。冗談でも女の子を泣かせるのはいけないのです」
まゆり「だから覚悟してね」
ダル「…ああ、オワタ。分子レベルでズタズタにされる未来しか見れない」ガタガタ
アッ―――!!!
岡部「ああ、ありがとな。まゆり」グスッ
まゆり「いいんだよ。ダル君も一回懲らしめないとダメなのです」
岡部「しかし今になって思えば、いやーって女子か!俺は」
まゆり「今オカリンは女の子なんだから良いんだよ。それにオカリンに何かあったらまゆしぃが守ってあげるのです」
岡部「まゆり…」
バタン
紅莉栖「ハロー、あれ?あそこに転がってるのは新作ガジェットの部品?」
まゆり「大丈夫。壊さないようにお仕置きしたから、まだダル君だよ」
紅莉栖「相変わらず、えげつないわね…」
岡部「皆揃ったところで昨日の作戦の報告を聞こうではないか」
紅莉栖「…岡部、…その事なんだけど」
岡部「そうだったな、すまなかった紅莉栖」
紅莉栖「なんで謝ってるのよ?」
岡部「だって、紅莉栖はあまり父親との仲は良くなかったんだろう?」
紅莉栖「いえ、普通に仲良いですけど?」
岡部「バタフライエフェクトか…」
紅莉栖「それが、岡部の女体化がバタフライエフェクトの可能性があるの」
紅莉栖「それが、パパのポケベルに不思議な連絡が来てたらしいのよ」
岡部「なら紅莉栖がDメールを送ったのは確定したのか」
紅莉栖「そうらしいわ、内容は直接言いたいって、今こっち向かってるわよ」
岡部「な、なに!?助手の父さんがこっちにくるだと!!」
紅莉栖「そう。ここの場所を教えたからもうちょっとしたらつくと思うわ」
コンコン
紅莉栖「パパかも」
岡部「取りあえず、そこにあるダルらしき物体をシャワー室に押し込め。警察を呼ばれては適わん」
まゆり「どうぞー」
中鉢「お邪魔します。おおー、ここが紅莉栖が言っていた未来ガジェット研究所か」
紅莉栖「パパ!!ずいぶん早かったのね」
岡部「なっ、中鉢だと!!」
中鉢「そこにいる人達はラボの皆さんか?紅莉栖がいつもお世話になってるね」
岡部「いや、こちらこそ。…じゃなくて紅莉栖の父さんがドクター中鉢…」
中鉢「私を知っているのかい?お嬢さん」
岡部「お嬢さんではない!!我が名は鳳凰院凶真だ!!ラジ館でタイムマシンの発表会を開こうとしていたろ、それを見に行こうとしてたんだ」
まゆり「紅莉栖ちゃんのお父さんかぁ。トゥットゥルー、まゆしぃです」
岡部「分かるのか?この良さが」
中鉢「もちろんだよ、私の中鉢という名前も8という数字を中に入れる事によって永遠や無限をあらわしているのだからね」
岡部「なるほど、貴様もなかなかいい名前をしているな」
中鉢「紅莉栖はいい友人をもったな」
紅莉栖「そこで共感しあうってどうよ…それに鳳凰院じゃなくて岡部倫子だから」
岡部「しかし、なぜあなたほどの男がジョンタイターの理論をパクったのだ?」
中鉢「酷い言いぐさだな、あれは私と鈴さんや皆で作った理論だからあんな奴とは一緒にして欲しくは無いのだがね」
岡部「鈴さんって橋田鈴のことか!?」
中鉢「そうだよ、鳳凰院さんは鈴さんを知っているのかい?」
中鉢「そうか…思っていたよりも世界は狭いんだな」
岡部「そうだ、せっかく来たんだ。我がラボの発明品を見てゆくかドクター」
中鉢「いいのかい?なら少し拝見していこうかね」
紅莉栖「今はその話じゃなくてポケベルに入った内容でしょパパ」
中鉢「そうだった。あの時のことはよく覚えてるよ」
――
中鉢「なんだ?差出人不明?むすめうまれたらなかよくしろ?」
中鉢「間違いか?いや、それではつまらんな。きっとこれは宇宙人が送ってきた信号に違いない、もしくは未来人とか。鈴さんに意見でもきいてみるか」
ヤスイヨーヤスイヨー
中鉢「八百屋か…何時もお世話になっているし、たまにはメロンでも買っていくのもいいな」
中鉢「すいませんメロン一つください」
八百屋「はいよ毎度あり。嬉しそうな顔してるけど良いことでもあったのかい?」
中鉢「もしかしたら未来か宇宙と交信出来る発明ができるかもしれないんだ」
中鉢「子供ですか、それは良いことですね」
八百屋「まあな、これからもっと忙しくならなくちゃ食わせるのに苦労しそうだけどな」
中鉢「でも、生まれて来る子供はきっと健康に育ちますよ。野菜食べると元気な子産めるって言いますし」
八百屋「なら嫁にも野菜をたんまり食べてもらわないとな。はいよお釣り。また来てくれよ」
中鉢「ええ、また来させて貰いますよ」
中鉢「申し訳ない、大丈夫か?」
不良1「いったいのー。ああ、これ骨折してるわ」
中鉢「いや、それはない」
不良1「なんだとこら、この炎の絶対零度、0℃になにいちゃもんつけてくれてんだ」
中鉢「炎の癖に絶対零度は可笑しいだろ。絶対零度は0℃じゃなくて0Kだし」
不良2「てめぇ痛い目見ねぇと分からないらしいな」
中鉢(つい反応してしまったが、逃げた方が良さそうだな)
ダッ
不良3「まてやわれぇ」
「なんか楽しそうなことをしてるねぇ。私も混ぜてくれよ」
不良2「うっせぇな。誰だよ」
「あんまり大勢で男を追いかけてるのは見ててみっともないよ」
不良3「ああ!?怪我したくなけりゃ引っ込んでろババア」
お婆さん「全く酷い言い草だ。これは少しお仕置きが必要かねぇ」ヒュン
不良2「ガハッ」バタッ
不良3「なんだこの婆さん。動きが人間じゃねぇぞ、ヘブッ」バタッ
お婆さん「全く、この程度で粋がるなんて百年早いよ坊やたち」
不良1「この婆さんやべぇよ。逃げんぞ、お前ら」
不良2、3「ま、まってくれよー」
お婆さん「お前さんもお前さんだよ。自分の身は自分で守れないんじゃ男として失格だよ」
中鉢「すいません」
お婆さん「たまたま私が見かけたから良かったけど、こういうこともあるんだから気をつけなさいよ」
中鉢「は、はい。本当にありがとうございました」
お婆さん「…最近の若い者はこれだから、うちの息子も貧弱で困ったものだわ。やっぱり孫が生まれたら私が鍛えてあげなきゃダメなのかもしれないねぇ」
――
中鉢「と、その日はこんな風に色々あったから記憶に有ったんだろうね。紅莉栖にポケベルに連絡が来たかどうか聞かれたとき、すぐ思い出したよ」
岡部「き、貴様の仕業だったのかぁぁ!!」
中鉢「いきなりどうしたんだね。大声なんか出して」
岡部「あなたが会った八百屋は俺の父だろう。そして助けてくれたお婆さんはまゆりのお婆ちゃんに間違いないだろうな!!」
まゆり「まゆしぃのお婆ちゃんはやっぱりすごいのです」
岡部「あなたが野菜を食べろといったから俺は女になって、あなたが不良に絡まれたからまゆりは人間離れした筋力を手にしてしまったんだ」
中鉢「話はよくわからんが、やはり世界は狭いと言うことがよくわかったよ」
ダル「やっと直ったお。僕の凄まじい生命力に感謝。あれ、そこにいるおじさんはどちらさん?」
紅莉栖「あ、橋田が居るの忘れてた。私のパパよ」
ダル「お義父さん。娘さんと健全な交際をさせて頂いてます。橋田至ともうします。」キリッ
中鉢「それは本当か紅莉栖?」
紅莉栖「んなわけなかろーが。誰が好き好んで橋田と付き合わなきゃいけないのよ」
中鉢「良かった。こんな奴と付き合ってるなんて言われたら、父さん3日は寝込むからな」
ダル「なんで、僕の周りにはおにゃのこが多いのに1人も落とせないの?教えてエロい人ー」
ダル「それは、倫子ちゃんが彼女になってくれるって事でFA?」
岡部「何度も言っているが今は男だ!」
まゆり「ダル君はまだお仕置きが足りなかったのかな?」
ダル「すいません。調子に乗りすぎました」ドケザ
中鉢「意外と長居してしまったから、私はそろそろ帰るよ」
紅莉栖「えっ、パパもう帰っちゃうの?」
中鉢「紅莉栖がどんな所でどんな友人と過ごしているかが気になっただけだからな。紅莉栖が楽しそうな所にいることがわかって良かったよ」
中鉢「なんだね?」
岡部「もし、あなたが紅莉栖の才能に嫉妬して、紅莉栖につらく当たってしまう世界があったらどうする?」
中鉢「そんな自分がいたら、そんな事はくだらないと説教をしてしまいたいね」
岡部「そうか…」
中鉢「じゃあ私はもう行くよ。これからも紅莉栖の事をよろしく頼むよ」
岡部「任せてください」
中鉢「ただしピザ、てめーはダメだ」
ダル「牧瀬氏の父さん、最後とんでも無いこと言ってなかった?」
岡部「全面的にお前が悪いだろ。それにしても助手は純血のネラーだったとはな」
岡部「そして、お前がDメールを送った犯人だったとはな助手よ」
紅莉栖「そうみたいね。岡部、前の世界線での私とパパの仲ってそんなに悪かったの?」
岡部「ああ、お前から聞いた話だと相当悪かったっぽいな」
紅莉栖「そう…」
岡部「どうする?Dメールを送るか?」
紅莉栖「だって、そうしないと岡部は女の子のまんまになっちゃうでしょ」
岡部「そうなんだが…いいのか?過去を変えることに反対していたお前がDメールを送るほど悩んでいたんだぞ」
岡部「考えればいい、俺はお前の気持ちを尊重するぞ」
岡部「それに、この世界線ではまゆりは死にそうにないしな」ボソッ
紅莉栖「わ、私は――――」
紅莉栖「パパと仲の悪かった世界に戻るだけなのに、それが恐いの…」
岡部「…それが紅莉栖の選択なら俺は否定しない」
岡部(俺の性別一つでまゆりが助かり、紅莉栖も苦しむことの無い世界に来れたのだから安いものだ)
紅莉栖「なんで…なんで岡部はそんなことが言えるの?性別が変わっちゃったのよ」
岡部「俺はルカ子に、そんなものは関係ないと言ってきている。実際に我が身に降りかかったらそんなことは言えないというのが本音だが…」
岡部「いいんだ、好きな人の気持ちを変えてまで俺は戻りたいとは思わん」
紅莉栖「えっ!?」
岡部「気付いたんだよ。普通ならば迷うことなんか無くDメールを送るはずなのに、俺は迷って、結局紅莉栖に決断してもらった」
岡部「それ程、紅莉栖の気持ちが大切だったんだろうな」
紅莉栖「おかべ…」
岡部「お前はどうなんだ?」
紅莉栖「と、言いますと?」
岡部「お前は俺が好きかと聞いているんだ」
紅莉栖「で、でも岡部は女の子だし…」
岡部「体は女だが心は男だ。それに今更野郎なぞ好きになれる訳ないだろう」
岡部「責任感などは無くてもいい。紅莉栖が俺の事を好きかどうかが知りたいんだ」
紅莉栖「私も岡部のことが…好き…だよ」
ダル「キター!!!本物の百合展開!!!これで勝つる!!!」
まゆり「もー、ダル君!二人を邪魔しちゃうのはまゆしぃあんまり好きじゃないなー」
ダル「ご、ごめん、まゆ氏。だから引っ張ってかないで」ズルズル
まゆり「じゃあ、まゆしぃはダル君とメイクイーンに言ってくるのです」
紅莉栖「…邪魔があったけど伝わったよ…ね?」
岡部「まだ伝わらないな」
紅莉栖「そっか…なら」チュッ
紅莉栖「これなら伝わった?」
岡部「ああ、伝わったよ。紅莉栖」
岡部「これが二人の選択だってことがな」
おわり
昨日この名前でスレ立てしてくれた人
ありがとニャンニャン
Entry ⇒ 2012.10.24 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (5) | Trackbacks (0)
やよい「今日はおうちに帰りたくないです……」
あずさ「今日は何と一度も迷わず事務所にたどり着けました。ただいまですー」
やよい「……おかえりなさい」
真美「……おかえりー」
あずさ「あら二人ともまだ居たの? もう結構遅い時間なのに。特にやよいちゃん。あなた家族の夕食はどうしたのかしら? いつもそのために早く帰ってるし訳でしょう」
やよい「今日は家に誰も居ないんです。だから──なんとなく帰りたくないんです」
真美「私も同じ。亜美はいおりんと地方遠征。両親も用事で留守だしさ……」
あずさ「へえー、そうなんだ。でも、やよいちゃんちの家族が全員居ないなんて珍しいわね」
やよい「私のアイドル活動で少し家計に余裕ができたんです。それでお父さんが少しづつ貯めてみんなで温泉旅行に行こうと。でも……」
あずさ「そういえばやよいちゃん、今日は生の収録があったわね」
やよい「はい……だから、私はひとりでお留守番です」
真美「あー、なんか誰も居ない家なんて帰りたくないよ。寂しいんだもん」
あずさ「まあ、そうよね……特に二人の年頃だと」
あずさ「そうだわ! 二人とも今日は私の家に泊まるというのはどうかしら」
真美「賛成賛成! 泊まる泊まるー!!」
やよい「えっ、いいんですか? 迷惑じゃないです?」
あずさ「全然! さあ行きましょう。今日はご馳走よ。うふふ」
真美「あずさお姉ちゃん、出口そっちじゃないよ」
──大型スーパー。
真美「あ゛ー、づがれだー。あずさお姉ちゃん、少しでも目を離すと全然別な方へ行こうとするんだもん」
やよい「──大きいスーパーですね」
あずさ「うふふ、なんでも揃ってるのよ。さて、今日は何にしようかしらね~」
あずさ「うふふ、なんでも揃ってるのよ。さて、今日は何にしようかしらね~」
あずさ「そうねー。ちょっと奮発してステーキなんてどうかしら」
真美「おおっ、久しく肉をガブリついてないかに良いですな→」
やよい「ええっ、ステーキ!! そっ、そんなお大臣な食べ物、もったいなくてバチが当たります!!」
あずさ「あら、やよいちゃんの家族は温泉旅館でご馳走を食べてるのよ。これでも足りないくらいよ」
やよい「でもー」
あずさ「いいからいいから。遠慮しないでちょうだい」
あずさ「マリネする時間は無いから和牛のほうが良いわよね。この百グラム五百円ので良いかしら」
やよい「高すぎますー! えーと、えーと。あっ、こちらのお肉は安いです!!」
真美「……やよいっち、それ、挽肉だよ」
やよい「こっ、これなら!」
真美「薄切りだし」
やよい「なら、これ!」
真美「だからそれは豚コマー!!」
あずさ「はいはい、おねえちゃんに任せて。肉を役なら牛脂は必須よね」
真美「うんうんサラダ油で焼くなんて肉に対する冒涜だよ→」
やよい「ええっ、ダメなんですかー!」
あずさ「絶対にダメというわけでないのよ。ただ、サラダ油を鉄板にひいて熱すると独特の匂いが出るからね」
やよい「へえー、そうなんですか」
あずさ「さて、後は──スープストックはまだあるから良いとして、サラダと……やよいちゃんはパンとご飯、どっちがいいかしら?」
やよい「んー、ご飯かな。パンだとなんか力が出ない気がします」
真美「真美はどっちでもいいよ」
あずさ「ならガーリックライスでも作ろうかしら。あと、ワインワインと」
やよい「……何か見たこともないご馳走が出てきそうです」
真美「やよいっちは大げさだなー」
やよい「だって、どう見ても一人分でうちの家族全員の一度に使う食費を超えているんですよ」
真美「……うわー」
──あずさの家
あずさ「ふうー、着きました」
真美「……よかった、あずさ姉ちゃんの家をこんなこともあろうかと知っていて」
やよい「──誘導大変でした」
あずさ「うふふ、ありがとうね。さっ、ご飯作るわよ」
やよい「あっ、手伝います」
真美「真美、テレビ見てるねー」
あずさ「はいはい。さて、肉はほぼ常温だからいいとして、軽く筋を切って塩コショウをパッパ」
あずさ「適度に脂を取って──これもあとから使うのよ」
あずさ「やよいちゃんは冷凍庫のご飯とスープの解凍お願いね」
やよい「はい、分かりました。スープとかはこっちで作りますね」
あずさ「フライパンを熱したら牛脂を入れてと。やよいちゃん、玉ねぎともやしの準備をお願い」
やよい「あっ、はい」
あずさ「牛脂が溶けたら肉の投入」ジュー
真美「おおっ、この肉を焼く音。いつ聞いても食欲揺さぶりますなー」
あずさ「うふふ。前にある洋食屋さんでランチを食べたの。すごく美味しくて満足したけど、帰ろうとしたら隣の人が注文したステーキが来たのよ」
あずさ「大きくジューという焼く音が響いて、お腹いっぱいなのに生唾が出てきて仕方なかったわ」
真美「ああっ、分かる! 分かるなー!」
あずさ「その店で次にランチを取ったときは迷わずステーキにしたわ」
真美「そして後で体重計に乗って後悔すると」
あずさ「──真美ちゃんのお肉は小さくカットしようかしら」
真美「ああっ、それだけは、それだけは勘弁してくだせ→」
あずさ「うふふ、冗談よ。さて肉はすぐにひっくり返さない。肉汁が浮いたらひっくり返してと」
あずさ「少し火を弱めてじっくり焼いたら香り付けにワインを軽く。はい出来ました」
あずさ「やよいちゃん、玉ねぎともやしの準備はいい?」
やよい「はい、ここにあります。スープもいい感じに出来ますよ」
あずさ「うふふ、ありがとう──さて、フライパンに残った肉の脂。これで玉ねぎともやしを炒めます。さっき取り除いた肉の脂も入れますよ」
やよい「おっ、美味しそうです!」
あずさ「まだまだよ。炒め終わったら、次はご飯入れてガーリックライスを作るわよ」
真美「うーん、あずさお姉ちゃん、料理が上手いよね→」
あずさ「ふふ、いつ運命の人を出迎えても良いようにしないとね」
あずさ「それからサラダと。というわけで出来ましたー」
やよい「出来ましたー」
真美「できまちたー」
真美「ステーキにサラダにスープ。そしてガーリックライス。ご馳走ですな」
やよい「スープには刻んだキャベツとかベーコンを入れてみました。サラダはレタスとトマトを中心にしてます」
あずさ「では、いただきます」
やよい「いただきます」
真美「いっただきまーす」
やよい「にっ、肉が柔らかくてとろけて美味しすぎます」
真美「すっごいジューシーだよ→」
あずさ「霜降り和牛は脂の旨味を生かして塩コショウでシンプルに仕上げるのが一番だからね」
あずさ「でも、たっぷり噛み締めないといけないステーキも肉本来の味が味わえて美味しいのよ」
あずさ「たまには歯ごたえたっぷりの肉も良いものね」
真美「スープも具だくさんでサラダも最高!」
やよい「おおっ、肉の下に引いてあるもやしもいつも食べるもやしと全然違います」
あずさ「肉の脂の旨味をたっぷり吸ったもやしだから。ほうれん草とか炒めてもおいしく仕上がるわね」
やよい「ううっ、こんなに幸せでいいのかな。みんなに悪いよ……」
真美「も→、やよいっちはこじまめ過ぎるよ。家族のみんなは今頃美味しい料理を堪能してるんでしょう」
やよい「そっ、それはそうだけど……あと、こじまめじゃなくて生真面目じゃないのかな」
真美「まあ、そんな細かい事はどうでもいいの! せっかくのお泊りなんだからリラックスしようよ」
あずさ「そうね。これはいつも頑張っているやよいちゃんのご褒美と思えばいいのよ」
やよい「ご褒美──か」
あずさ(なんか急に暗くなったわね。どうかしたのかしら?)
──お風呂。
やよい「お風呂が大きいです!」
真美「大きいです!!」
あずさ「やっぱり足を伸ばしてゆったりしたいから……結構こだわりました」
真美「でも、流石に三人は入れないね」
あずさ「もう一人もこうやって私が抱えるようにしないと難しいようね」
やよい「あずささんに抱かれて幸せです! すっごく柔らかいんだもの」
真美「おおっ、見て見てやよいっち! あずささんの胸が、胸が浮いてるよ→」
やよい「ああ、本当です! 千早さんは胸が大きい人は沈んで大変だと言ってたのに」
あずさ「うふふ、沈んだりしないわよ」
真美「しかし、いいな→ あずささんは胸が大きくて凄いせくちーだもの」
やよい「うん、私なんてまだまだ小さいし……」フニフニ。
真美「うん、全然だよ」フニフニ。
あずさ「二人ともまだまだこれからよ。焦らなくていいわ」
やよい「大人になったら私の胸も大きくなるの」
あずさ「ええっ、やよいちゃんは美人になるでしょうね」
真美「真美も大きくなる?」
あずさ「もちろん大きくなるわ」
真美「じゃあ千早お姉ちゃんは?」
あずさ「えっ?」
真美「このごろ豊胸うんど→ に熱心なんだよ。千早お姉ちゃん。牛乳毎日飲んだり腹筋したり。他にも色々やってるみたい」
真美「そのけんめーな努力は実るかな→」
あずさ「ええと、ええと」
あずさ「どっ、努力は結果が全てでないの。行ったという過程が尊いのよ」
あずさ「夢は叶うものと言うけどやっぱりどうしても仕方ないときはあるわ。でっ、でもね奇跡は絶対にないという訳は無い……はずよ」
真美「千早お姉ちゃんがあずさお姉ちゃん並みになるのはどれくらいの確率だと思う?」
あずさ「……たぶん「ハヤテのごとく!」の原作者がヒナギクさんの胸を大きく成長させるぐらいかしら?」
真美「それ、ゼロと言ってるのと同じだよ→」
あずさ「あっ、あははは……」
あずさ「でも、千早ちゃんはこの頃女らしい魅力が本当に出てきたわよ。何て言うか柔らかくなった?」
やよい「前に比べて優しくなりました。レッスンで私が汗をかいたらタオルとかすぐに貸してくれます。洗って返しますと言っても「いいのよ」とニコニコしてるんです」
真美「あ→、いおりんもやよいに同じことしてるね。でも、それ本当に親切心だけなのかな→」
あずさ「多分、彼女……恋をしてるわね」
真美「千早お姉ちゃんが?!」
やよい「ふえー、相手は誰なんでしょう」
あずさ「何となく予想は付くのだけどね。……私も同じだから」
真美「恋──まだ全然分かんないな。歌で愛を歌ったりするけどちょっと実感が無いんだよね」
やよい「私も同じです。みんなが好きだけど、恋の好きと今思っている好きは全然違うのかな」
あずさ「違うわよ。恋の好きはたった一人に捧げたい特別な想いなの。家族や友情の好きとやっぱりね……」
真美「んー、どういうものなんだろう」
あずさ「そうね、心の奥で家族以外に今誰に一番会いたいか。誰ともう会えなくなったら一番悲しいか。思い浮かべて真っ先に出てきたら恋をしている証よ」
やよい「────」
真美「…………」
やよい「──プロデューサー」
真美「……兄ちゃん」
あずさ「うふふ、この子たちも同じなのね。本当、罪作りな人」
やよい「あずささん、ギュッと抱きしめてもらっていいですか。なんか切なくなっちゃいました」
あずさ「……いいわよ。思いっきり甘えなさい」
やよい「──はい」
あずさ(なんだか赤ちゃんみたいね。でも何か別なのを思い出したのかしら)
やよい「────」モミモミ、チューチュー。
あずさ「えっ、あっ?」
真美「おおっ、やよいっちがあずさお姉ちゃんの胸を揉んで吸ってる→」
やよい「………」
あずさ「あっ、あんっ、あの、やよいちゅん、ちょっと強い……くぅ、えっ、そこはダメ。いや、噛まないで」
真美「すっ、すごいエロエロです。正直たまらんですタイ」
あずさ「どっ、どこの薩摩の人よ。んぅ~、やめて、それ以上だとこっちが切なくなっちゃう──」
真美「うーん、ここは真美も参戦していっきにいちはちきんモードに移行すべきかな?」
あずさ「そっ、それはらめぇぇぇ!!」
──寝室
やよい「くぅーくぅー」
あずさ「ふうー、やっと落ち着いたわね」
真美「いやー、あれから原稿用紙四百枚ほどのエロエロ行為が──乱れに乱れたあずさお姉ちゃんが若い真美たちを食い漁り」
あずさ「もうー、そんなのはありませんよ!」
真美「ははっ、冗談っす」
あずさ「それにしても……」
あずさ「何となく今日のやよいちゃんはおかしい感じがするわね」
真美「というと?」
あずさ「妙に甘えてくるというか情緒不安定というか……いつもしっかりしてるのに。やっぱりまだ子供なのね」
真美「……ちょっち違うと思うよ」
あずさ「?」
真美「真美と亜美は双子だけど、一応真美の方がお姉さんじゃん。だからギリギリの所で我慢というか譲らないといけないの」
真美「真美、お姉さんでしょう。そう言われる訳」
真美「亜美と喧嘩したり物の取り合いになると最後にそう言われて諌められたりする。真美としては理不尽極まりないよ」
真美「でも、そう言われたら引き下がるしかないの。お姉さんだからさ……」
真美「やよいっちは一番上だよね。たぶん……真美より大変だと思う。心情的にさ」
あずさ「私は一人っ子だから実感ないけど……そういうものなの?」
真美「うん、どうしてもね。まず下の子を優先したり考えてりすると思う」
真美「やよいっちの家は小さい子もいるし両親は仕事で忙しいしほとんどお母さんと同じ立場だよ」
あずさ「それは大変よね……」
真美「真美とかは自由に遊べるけど、やよいっちはそうでもない。真美たちが携帯ゲームをしてると少し羨ましそうに見てたりするの」
真美「でも『やってみる? 貸してあげるよ』といっても首を横に振って断るの。一度遊んだら歯止めが効かなくなると分かってるからだと思う」
あずさ「全部抑えて大人にお姉さんにならないといけないか──」
真美「もちろん、それはやよいっちの両親も分かっていたと思うよ。もともと温泉旅行はやよいっちのために考えたものらしいし。でっ、サプライズのため黙っていたら」
あずさ「やよいちゃんのお仕事と被ってしまったわけね」
真美「だから、本当は中止にしようとしたらしいけど喜ぶ弟たちに悪いとやっぱり引いて譲ったみたい」
真美「本当は温泉に行きたかったらしいよ。けど、空けられない仕事だったしさ」
あずさ「────」
やよい「うーん」ギュ、
あずさ「あらあら、私はどこにもいかないわよ」
あずさ「そうね。流石に家族で旅行という訳には行かないけど……ちょっとぐらい癒されても良いわよね」
真美「うん? あずさお姉ちゃん、携帯取り出して何する気?」
あずさ「あっ、プロデューサーさん夜分遅く済みません。先日の企画の話なんですが少し変更を。ええっ、企画書はこちらで作成します。はい、詳しいことはまたあとでお送りします」
真美「えっと、何するの?」
あずさ「うふふ、頑張っているお姉ちゃん達にご褒美です」
──某温泉街
やよい「○×温泉に来てまーす」
真美「効用は肩こり、よういた?」
あずさ「腰痛よ、真美ちゃん」
真美「分かってたよ→ わざとボケたに決まってるじゃん」
やよい「でも、顔が真っ赤ですよ」
真美「おっ、温泉に入っているから顔が火照っただけ。それだけなんだから!」
あずさ「あらあらまあまあ」
──事務所
P「あず散歩の温泉バージョン。おかげで大人気だな」
小鳥「大人っぽい色気あるあずささんに無邪気な二人。初めは大丈夫かなと心配しましたけど杞憂でしたわね」
P「子供の視点から温泉宿を見るという新鮮な発想だよな」
小鳥「的確なボケとツッコミの真美ちゃん。天真爛漫なやよいちゃん。人気が出るのも頷けるわ」
P「特にやよいは食事の時のリアクションが本当に美味しそうと評判でね……真美は食べ物で遊ぶけどな」
小鳥「でも、それをまとめるあずささんは凄いわ。最後はきっちり締めてくれるし」
亜美「それはいいけどさ→ 何で真美なの? 亜美でもいいじゃん」
伊織「そうよ、元竜宮小町で組んでいたのに水臭いとしか言い様がないわ」
P「んー、伊織はあずさと組みたかったのか」
伊織「べっ、別にそういう訳じゃないわ。ただ、日本の温泉はあまり行ったことないから興味が湧いただけ。それだけ、それだけなんだから! あと、どちらかというとやよいと一緒に温泉に……」
亜美「亜美も温泉に入って美味しいもの食べたーい」
小鳥「そういえばあずささんが言っていたわね」
小鳥「これはお姉さんキャラへのご褒美ですって」
亜美・伊織「「? どういうこと→(意味なの)」」
終わり。
いずれ、あず散歩温泉編とかも書いてみたいかな。いろんなキャラを組み合わせたりしてね。
まあ、そんな感じで。ではまた、
Entry ⇒ 2012.10.24 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
モバP「汚れた猫を見つけたのでいじめることにした」
ザァァァァァァ・・……――――――――
スタスタ…
P「ったくあの馬鹿どこいったんだか……」
スタスタ……
P「……っと、やっと見つけた」
タタッ
P「おい何してんだ、この猫娘が。こんなずぶ濡れになりやがって」
みく「…………Pチャン…」
P「ったく突然いなくなったと思ったらこんなとこほっつきよって、ほら帰るぞ」グイッ
みく「あっ……」
――――――――
―――――――
――――――
P「ほれ、ついたぞ」
みく「にゃ……ここって事務所じゃなくて……Pチャンのおうち?」
P「とりあえず入れ」
みく「うん……おじゃまします……」
P「んでそのままこっちゃこい」
スタスタ
みく「うにゃ……お風呂場?」
P「いいかー……じっとしてろよ?」スッ
みく「目を閉じてどうしたのかにゃ?」
P「秘技!十時直伝!!『一発脱がせ』ッ!!!」バッ!
みく「に”ゃっっ!!??」スポーン
P「かーらーのー? 桐野直伝!『フェザースロー』! そぉい!!」
フワッ
みく「に”ゃぁぁぁぁ!?」ステーン
みく「ちょ、ちょっとぉぉ!? 何するにゃあああPチャーーン!?」
P「ふはは驚いただろう! だがこれだけではないぞっ」
P「続いてはお風呂場のハイテクリモコン攻撃!」ピッピッピ
シャワワワー
みく「うにゃぁぁ!? いきなりシャワーからお湯が出てきたぁぁ!?」
P「この風呂場は外からリモコンでお湯を出せるのだフハハハ! さあ食らえ食らえぃ!」
みく「ちょっと本当に何なのこれぇぇ!!」
――――――――
―――――――
――――――
みく「その上脱いだ服は勝手に洗濯機に入れられていつのまにか用意された着替えまで渡されて」
みく「一体何が何やら……」
P「お、上がったな」
みく「うん……お風呂ありがとうにゃ」
P「勘違いするなよ? 悪い子へのお仕置きファーストステップをこなしただけだ」
P「次はここへ正座しろ」
みく「うにゃ~……お次は何なのにゃ」
P「ライブにボロ負けしたからといって突然飛び出したお馬鹿の子にお説教だ」
みく「うぅ……ごめんなさいなのにゃ」
カチッ ブォォォ
みく「わぷっ」
P「但し、普通にお説教するだけでは効かんだろうからな、熱風攻撃をしながらお説教だ!」
P「俺が良いと言うまで正座して動くんじゃないぞ? そもそも一回ライブに負けたぐらいで逃げ出すんじゃない――――」
みく「にゃぁぁぁ――」
P「よーしまだまだお仕置きは続くぞぉ」コトッ
みく「にゃ? ごはん……?」
P「お仕置きその3! 『昨日の余り物+俺の嫌いな食べ物押し付け攻撃』!!」
みく「えっと……食べなさいって?」
P「その通りっ! 余り物という粗末な食べ物に加え俺が食うのを躊躇われるものを押し付けてやるっ」
P「冷凍庫から鮮度の落ちた昨日作ったご飯を解凍し温め、加えて俺が苦手な味噌汁と野菜の炒め物だ」
P「味をごまかして食べれないように野菜炒めは薄味! 塩コショウと醤油少し」
P「さあ食らえっ」
みく「にゃ、にゃ……でもPチャンの分は無いのかにゃ?」
P「俺はお前を見つける前に食っておいた」グゥ
みく「…………」
P「……そ、それと俺にはこの小腹がすいたときの『にぼし』がある!」
みく「えっと……p、Pチャンも一緒にたb」
P「ならぁぁん!それは俺がお前にお仕置きで用意したスペッシャルメニューなのだ!」
みく「に”ゃっ! い、いただきますにゃ!!」パッ モグモグ
P「ふはは食べたくないという意思を押さえつけられて食うご飯は十分にお仕置きになるだろう!」ポリポリ
みく「……ごちそうさまにゃ」カチャッ
P「うむ、腹が膨れて苦しかろう。どうだ参ったか」
みく(何だかんだでとってもお世話してくれてるにゃ……なんかヘンな言い方されるけど…)
P「お次はその膨れた腹に更にこれを追加だっ」コトッ
みく「にゃ……ミルク?」
P「一度温めた後にわざと冷やして少しぬるくなった飲み物だ。因みにこれも俺の苦手な物の一つだ」
P「さあ飲めっ」
みく「にゃ……あったかいにゃ、猫舌だから飲みやすいにゃ」ズズ…
P「冷たいと腹を壊してしまう上に、あっためると少々においがきつくなる。その両方を兼ね備えた恐怖の液体!!」
P「ふはは! じっくりと味わうがいい!」
みく「あったかいにゃ……ミルクも、Pチャンも……」ズズッ…
P「ふむ……少々失敗したようだ、逆効果になってしまった」
P「ならばここで挽回のお仕置きは……これだ!」サッ
みく「!!」
P「ふはははは! どうやらこれは効果ありそうだなぁ、んん?」フリフリ
みく(ねこじゃらし……)ウズウズ
P「ほぅれどうしたぁ? お前の目の前をチラチラして邪魔だろう? イライラするだろう?」フリフリ
みく「う”~……に”ゃっ!」ヒュン!
P「おっと甘い!」サッ
P「ほれほれまだこいつは健在だぞ~?」フリフリフリフリ
みく「にゃっ! にゃぁぁっ!」ヒュッ ヒュン!
P「まだまだまだぁっ! そしてもう一本追加ぁっ!!」フリフリフリフリフリフリフリフリフリ
みく「にゃぁぁぁぁっっ!!!!」シュバーッ
―――――――
――――――
―――――
P「ふ、ふ、はは……どぉだ……ゼハァ……これには参っただろ……う…………ゼーハー」
みく「Pチャン……疲れすぎだにゃ……」
P「お仕置き……だからな……フーッ……お前をお仕置きする為ならば全力も厭わん」
みく「もうお腹一杯の上に疲れて一歩もうごけないにゃ……」
P「お仕置きの甲斐あったなこれは、ふはは。動けるようになるまでそこで放置プレイだ」
みく「にゃ~……いいもん疲れたからここで寝ちゃうにゃ……」クター
P「おー寝ろ寝ろ。お仕置きの最後は『普段自分が寝ている場所とは違う所で寝かされる』だ」
P「ここは俺の家であってお前の家ではないからな。安眠できないという事が最大のお仕置きだっ」
みく「知らないにゃーん。みくを励ましてくれてご飯までご馳走してくれた人とそのお家が居心地悪いと思うかにゃ?」
P「ぬっ。反抗的なやつめ、いいからそのまま熟睡できん眠りに落ちるがいい」
みく「そうさせてもらうにゃん♪ おやすみなさいにゃ……Zzzzz」
P(しかぁし! お仕置きにはあともう一つ裏メニューがあるのだ!!)
P(裏メニューは……『普段俺が使っている汗臭い筈のベッドへ放り込む』だ!!)
ソッ……グッ……
P(このお仕置きは途中で起こしてしまったら失敗だからな、慎重に運んでやらねば……)ススッ
ポスン
P(よし、作戦は成功。あとは掛け布団もかけて圧迫してやる)
P「………んじゃあな、おやすみさん。みく、今日のライブは悔しいかったろう。次は勝とうな」ナデナデ
P(俺はっ…と……んま、とりあえず床でごろ寝でもすっか、もう疲れてだりぃし)ゴロン
P「んじゃ俺もおやすみっと……Zzzz」
――――――――
―――――――
――――――
翌日
みく「んぅ……あれ、ここ……Pチャンのベッド?」
みく「いつのまにかベッドに運んでくれたのかにゃ……Pチャンにあったかく包まれる夢はこのせいだったかにゃ…」
みく「んぅ~~っ……ふぅ、Pチャンはどこかにゃー?」
みく「Pチャーン? どこにいるにゃー?」
みく「に”ゃっ!? 床で寝てるにゃ!?」
みく「しかも咳き込んでるにゃ!」
ソッ…ピト
みく「Pチャン!……熱もあるにゃ!」
モゾモゾ
P「んぁ”~……お”はよう……ゴホッゴホッ!」
みく「にゃんでこんな所で寝てるにゃ! Pチャン風邪ひいちゃってるにゃ!!」
P「あ”~……昨日のお前へのお仕置きの後に俺も寝たからな……ゲホッ」
みく「みくばっかりお布団で寝させて自分は床にゃんて……だから冷えて風邪ひいちゃうんだにゃ!」
みく「Pチャン自分の事をおろそかにしすぎにゃ!! もー怒ったんだから!」
みく「……今日はたっぷりPチャンにつきっきりで『お仕置き』してあげるんだから覚悟してにゃん♪」
みく「名づけて『動けない体を無理やりおこして引きずるアタック』にゃ!!」
P「う”~……体がいてぇ」
みく「ほらー! 床でなんて寝てるからにゃ!! もうこのまま担いで連れてくにゃ」
グググ………
みく「に”ゃ、ぁ、ぁ……お、重たいにゃ」
P「あんま無理、すんな…ゲホッ……なんとか立てるから」ググッ
みく「にゃぁ~……それなら少しでも支えるにゃ」
P「ゲホッ!……こりゃ完全にアウトだわ……今日はオフだったから良かったものの、ゲホッ!」
みく「大丈夫かにゃ……?辛そうだにゃ……」ジワッ
P「あ”ー心配しすぎだ、風邪ぐらい寝てれば治る」ナデナデ
みく「にゃっ!? お仕置きするつもりが逆にし返されたにゃ!」
みく「こうしてはいられないにゃ!次のお仕置きにゃ!」
みく「にゃにゃにゃーん! 『口に棒状の機械を無理やり押し込むアタック』!!」
P「あだっ……歯に当たったぞ」ムグ
みく「あにゃ、ごめんにゃ……って! お仕置きだからそれぐらい我慢するにゃ!」
P「へいへい……ゴホッ」
みく「えーと……熱は38度!? ちょっとこれ高すぎじゃないかにゃ!?」
P「……あー頭痛もひどいワケだ……脳天にお仕置きされっぱなしだぞ…ゲホ」
みく「それみくのせい!? ちょっとはみくのせいかもしれにゃいけど……」
みく「とりあえず! このおうちに風邪薬とかは無いのかにゃ?」
P「えーっと……そこの棚、上から3段目の引き出しんとこ」
みく「にゃ、あったにゃ。ではー続いて続いて『お口ににっがーいお薬とお水を入れるアタック』!!」
みく「お薬は苦いにゃ! これに耐えられるかにゃ~?」
みく「それだけじゃないにゃ! これはみくのスペシャル攻撃にゃ!」
サラサラ……クピクピ
P「っておい…そっちが薬飲んでどうすんよ……ゲホッ」
みく「にゅふふ~、ふぃーひゃんひょっひょひゃはんひへへひゃん」(Pチャンちょっと我慢しててにゃん)
ガシッ
チュゥゥゥゥゥ
P「!?」ゴクッ……ゴクッ……
P(口移しで流し込まれ……!)
みく「にゃっふふ~……Pチャンには昨日いーっぱいお仕置きされたからにゃん。こっちもその分のお返しにゃん♪」
P「色々突っ込みどころがありすぎるわ……アイドルだってのにキスなんぞ……それに移ったらどーする…」
みく「Pチャンとならちゅーしても問題ないにゃん、ここはPチャンのおうちだし♪ Pチャンの事だーいすきだしにゃん♪」
みく「それに風邪が移ったらPチャン治るでしょ? それでよくなるならばっちこいにゃ!」エヘン
P「自慢する事か……風邪ひいてなかったら頭にチョップだぞ……」
みく「なら今は風邪ひいてるから何もしないにゃ? お仕置きし放題にゃー」
P「……勝手にしろ、やり過ぎは許さん」
みく「うー……治った後が怖そうにゃ……程ほどにお仕置きするにゃ」
みく「にゃにゃ!? さっきよりも顔赤いにゃ!……ははーん、照れてるにゃ?」
P「このバカ猫……んなわけあるか……」
みく「ひっどーい! こんな可愛い子からキスされて照れにゃいなんてー!」
みく「おまけにバカって言ったにゃぁぁぁ!! アホならまだしもーっ」
P「……ゼーハーー」
みく「って……さっきより辛そうにゃ!? お薬効かなかったかにゃ!?」
P「そりゃ騒がせるからだ……それに薬は飲んで暫くしてからだろ……」
みく「うにゃ……じゃあ後はこのままゆっくりするしかないのかにゃ?」
P「ああ……あとは静かにさせてくれ………」
P「それと……タンスの上から2段目の引き出し、ちょっと着替えを取ってくれ……」
みく「にゃっ。それならおやすい御用にゃーん」
みく「にゃっ? あわわわPチャンのぱんつ……」ピローン
P「広げんなっ!ゲホッ!!……う”~喉まできてるわ」
みく「にゃっ、ごめんにゃ、お着替えはこれだけかにゃ?」
P「いや……あとパジャマも換えがある筈だ、タオルも頼む」
みく「はいにゃ!」
ゴソゴソ……トテテッ
みく「お着替えとタオルって事はー……汗かいてるのかにゃ?」
P「ああ……嫌な汗ずっとかいてて気持ち悪い……」
みく「それなら背中ふいたげるにゃん。『白い布で背中をゴシゴシさすりアタック』にゃー」
P「……自分でやる、あっち行っとけ」
みく「駄目にゃ!!」クワッ
みく「Pチャン、寝る前に最後頭撫でてくれたにゃ? みくちょっと覚えてるにゃ」
みく「昨日励ましてくれて……元気づけてもらえたのに……そしたら今度はみくが原因で風邪までひかせちゃって……」ジワッ
P「…………」
みく「だから、何も、できないにゃんて嫌にゃ……」
P「わかった……頼む」プチプチッ
みく「うん……」
みく「背中……広いにゃ……」ゴシゴシ
P「そうか……ん…力加減も悪くない……」
みく「ん……前も拭いてあげるにゃ」ソソソッ
ダキッ
P「…おいっ…ゲホッ…なんで後ろから抱きつく」
みく「こうしないと前を拭いてあげられないにゃん♪」ゴシゴシ
P「今のさっきで態度を変えおって……」
みく「聞こえないにゃーん。じっとしててにゃんー」フキフキ
P「まぁ…ありがとな……ケホッ」
P「さすがに着替えるのは一人でやるから、さ」
みく「うー……お手伝いしたいけどこれはさすがに……」
P「やったら怒るぞ?」
みく「だよねー……向こういっとくにゃ」
トテテテッ
―――――――
――――――
―――――
P「ああ……さっぱりした事もあってか、少し楽になったわ」
みく「おぉー! みくのお仕置き効果あったにゃ!」
P「薬飲ませて背中拭いただけだけどな……」
P「まぁ……ありがとな」ナデナデ
みく「えへへ……どういたしましてにゃん♪」
P「布団で寝れなかったのもあってまだ眠いわ……ケホッ……ちと寝る」
みく「うんっ。おやすみなさいなのにゃ」
P「明日っからまた……頑張るぞ…………ZZZzzzz」
みく「はいにゃっ」
みく「もう一回くらい……いいよね?」
ソソソッ
チュッ
みく「みくの大好きなPチャン……一緒に頑張ろうね?」
―――――――
――――――
よくじつ
P「う”~……」
みく「に”ゃぁ~……」
P「おかしい……なんで治らないどころか、二人とも風邪なんだ」
みく「Pヂャ~ン……ケホッケホッ!……頭い”た”いにゃ……」
P「駄目だ……今日は休むか……ゲホッ」
みく「うん……ごめんにゃん…ケホッ」
P「とりあえず……布団一つしかねぇから、入れ……」
みく「に”ゃ」モゾモゾ
P「ボイトレの予定が……咳のハーモニーレッスンになるとは……ゲホッ」
みく「う”-に”ゃー…う”-……ゲホッに”ゃぁぁ……」
支援もらった割に短くてすんません
Entry ⇒ 2012.10.24 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)