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恭介「…さやか」
パチパチ
恭介「…」
恭介「さやか…いつも僕の側に居てくれたのに」
恭介「なんで…」
恭介「こんなことになるくらいなら早く渡しておけばよかったな…」
恭介「お見舞いのお礼…なんだか恥ずかしくて、話しかけることもできなかった」
恭介「くそっ…こんなもの!」バンッ
恭介(さやか…僕は…)
恭介(さやか、君が居ないのにバイオリンを弾いても意味がないんだ)
恭介(生きていても意味がないんだ)
恭介(最近、緑のストーカーみたいな子もなんか怖いし)
恭介(ここから落ちて死ねばさやかに会えるかな…)
恭介「…」
恭介「…さやか、今会いに行くよ」
杏子「おい!」ガシッ
恭介「…君は?」
杏子「なにしてんだっていってんだよ!」
恭介「…ただ、死のうとしてただけだよ」
杏子「…っ」
杏子「さやかの願いを見に来てみたらこんな奴だったとはな」
恭介「!君はさやかの友達なのかい?」
杏子「ああ、友達…だ」
杏子(少なくともあたしはそう思ってる…)
恭介「そうなんだ…さやかの願いっていうのは?」
杏子「教えねー、今のお前に教える価値もねー」
恭介「…」
杏子「それより…なんで自殺なんてしようとしてた」
恭介「ああ、たださやかが居ない…」
恭介「笑っていない、喜んでいない」
恭介「そんな世界で生きてる意味なんてないから…」
恭介「ぐっ」
恭介「…痛いなぁ、なにするんだよ」
杏子「ふざけんな!」
杏子「そんなにさやかを思ってんなら生きろ!」
杏子「バイオリンを弾き続けろ!」
恭介「…」
杏子「頼むよ、お前が死んだらさやかが報われない…」
杏子「さやかが悲しむだろ…」
恭介「…!」
幼さやか『きょうすけのバイオリンをみんなにきいてきいてもらうこと!』
幼恭介『ありがとう、なんだかてれるな…』///
幼さやか『あと…きょうすけのおよめさんになれたって』ゴニョゴニョ
幼恭介『?』
恭介「…わかった」
恭介「さやかの為にも僕は生き続ける」
恭介「バイオリンを弾き続ける」
恭介「それに今さやかに会いに行ってもさやかは口も聞いてくれないだろうしね」ニコ
杏子「…ふっ」
杏子「そっか」ニカッ
杏子「佐倉杏子だ」
恭介「佐倉さんか…僕は上条恭介」
杏子「知ってるよ、もう自殺なんてするなよ」
恭介「うん、本当にありがとう」
恭介「大事なことを思い出したよ、じゃあ」
杏子「あ!ちょっと待ちな!」
恭介「ん…なにかな?」
杏子「これ、やるよ」ヒョイ
恭介「?」パシッ
恭介「…!これは」
杏子「ああ、さやかの髪留めだ」
杏子「あたしが持ってるよりあんたが持ってたほうがさやかも喜ぶだろ」
恭介「…」
杏子「じゃあな、頑張れよバイオリン」スタスタ
恭介「うん、じゃあね佐倉さん」
恭介「…さやか」ギュ
ゆま「キョウコー」
ゆま「キョウコが音楽番組見るなんて珍しいね」
杏子「まあな」
ゆま「わ、この人かっこいいねー」
杏子「そうかぁ?」
ゆま「そうだよぉ、でも男の人なのになんで髪留めしてるんだろ」
杏子「なんでだろうな」
杏子「そうだな」クスッ
ゆま「でもこの人のエンソーゆま好き!」
ゆま「なんか心があったかくなるんだぁ」
杏子「そっか」ニコ
杏子(…さやか)
杏子(お前の願いみんなに届いてるぞ)
杏子(お前にも届いてるだろ…お前の願い)
恭介(なんでだろ…)
恭介(わかった気がする)
さやか『奇跡も、魔法も、あるんだよ』
恭介(僕の腕が治ったのも、演奏できるのも)
恭介(さやか、きみのおかげなんだね)
恭介(さやか…)
恭介(ずっと僕の側にいてくれてるんだろ?)
恭介(今も…)
恭介(ここに…)
恭介(…さやか)
さやか(…恭介)
おわり
Entry ⇒ 2012.11.10 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
咲「宮守の控え室でかわいがられた……」
胡桃「豊音!私にも充電させて」
塞「確かにかわいいわね」
シロ「だる可愛い……」
エイ「!」カキカキバッ
シロ「咲ちゃんハーレム…」
エイ「」コクン
咲「ふえぇ」
塞「迷子になってここまで来たのにひとりで帰れるの?」
エイ「」カキカキ
シロ「また迷う…だってさ」
咲「どうしよう…。皆さんは清澄の控え室の場所わかりませんか?」
塞「わからないことはないけど」チラ
豊音「咲ちゃんかわいいー」ギュー
胡桃「充電充電!」
シロ「咲ちゃんを清澄に返すのだるい」
塞「もうちょっとここでゆっくりしていかない?」
咲「あ、ありがとうございます」
塞「胡桃いつもより長く充電してるね」
胡桃「宮永さんだからね。シロのも悪くないけど格別」
シロ「胡桃、私と交代」
エイ「シロ!ウゴイタ!」
塞「珍しい…」
豊音「宮永さんちっちゃくてかわいいよー」
胡桃「豊音と比べたら小さいでしょ」
エイ「」カキカキ
シロ「苦笑い」
エイ「アリガトウ」
エイ「サキモカワイイヨ」
咲「なんだか恥ずかしいです」テレテレ
豊音「宮永さんとエイスリンさんいい雰囲気だよー」
胡桃「独り占め禁止そこ!」ビシ
塞「私も。もっと怖い人かと思ってたのに本当は…」
エイ「サキポンコツ!」
咲「エイスリンさんそれはひどいですよ」ムー
豊音「でも本当に対局中はとっても怖かったよ」
シロ「だるいけどいつか私とも打ってくれない?」
咲「もちろんかまいませんよ!皆さんとっても強かったので楽しみです」ニコ
エイ「エガオカワイイ」
シロ「咲ちゃんうちにもらえないかな。インハイ終わったら会えないのだるい」
胡桃「シロナイスアイデア!」
咲「困りますよ」テレテレ
エイ「ダレカキタ」
塞「清澄の人かな」
咲「もしかしたら和ちゃんかも」
豊音「宮永さん帰っちゃうのいやだよー…」ウルウル
シロ「咲ちゃん取られるのはだるい」
胡桃「無視するわけにもいかないでしょ。出るよ」
胡桃「はい」
和「すみません。ここにうちの咲さん来てませんか?」
胡桃「ちょっとエイちゃんその言い方はダメだよ」
和「来てないならいいです。では失礼します」
バタン
塞「追い返しちゃったよ…」
シロ「エイスリンすごい」
豊音「かっこよかったー」キラキラ
咲「えー…」
エイ「サキモットアソブ!」
咲「まあいっか。じゃあお絵描きしましょうよ、エイスリンさん」
塞「私たちも混ぜてよ」
シロ「私はだるいから咲ちゃん見てる」
シロ「どうりでお腹がすく」
咲「皆さんこれから予定とかありますか?ないなら一緒にご飯とか…」
エイ「イク!」
豊音「宮永さんとご飯だー」
胡桃「食いつきはやっ」
塞「胡桃は行かないの?」
胡桃「行くけど」
シロ「じゃあ決まり」
塞「シロも今日は活発だね」
エイ「サキノオカゲ」
宮守は無理です
咲「ここどこだろう」キョロキョロ
?「あんた!」
咲「ふぇ!?」
洋榎「清澄の大将やんか。こないなところでどないしたん」
末原「」カタカタ
せやな
洋榎「はぐれたってあんた小学生やあるまいし」
由子「それより恭子がすごいことになってるのよー」
恭子「」カタカタカタカタ
咲「私のせいですね…」シュン
絹恵「そや。先輩のためにも宮永さん、うちらと一緒にご飯行かへん?」
絹恵「せやろ?お姉ちゃんはどう思う」
洋榎「それええな。うちも宮永さんとは話してみたかったんよ」
咲「あ、はい大丈夫です」
絹恵「咲ちゃんもうちのこと名前で呼んでな。お姉ちゃんとごっちゃになるで」
咲「じゃあ…絹恵さん」ニコ
漫「ほら末原先輩も咲ちゃん怖くないですから」
咲「末原さん…。そんなに私のこと嫌いですか…?」ウルウル
恭子(確かにこの子のこと怖がるなんておかしいやないか)カタカタ
恭子「いや、怖くあらへんよ」プルプルニコ
咲「よかったー!改めてよろしくお願いしますね末原さん」ニコ
由子「じゃあ食事に行くのよー」
咲「?……あ、エイスリンさん!」
由子「宮守のキーウィなのよー」
漫「そういえばさっき咲ちゃんが宮守とはぐれた言うてましたね」
恭子「咲ちゃんは渡したないな。追い返してまえ漫ちゃん!」
洋榎「ちゃんと追い返せたら次の落書きは水性で書いたるで」
漫「ちょっ。何言うてるんですか先輩方!」
咲「すみません。いつの間にかはぐれていて」
シロ「捜すのだるかったけど見つかったからいいや」
胡桃「シロなりに必死に捜してたよね」
豊音「結局見つけたのはエイスリンさんだけどね」
塞「あれ?一緒にいるのってもしかして姫松?」
洋榎「まあ咲ちゃんが気になるのは…」
胡桃「うるさいそこ!」
洋榎「」
豊音「じゃあお食事行こっかー」
エイ「モンジャタベタイ!」
洋榎「ちょっちょっちょい待ち。何咲ちゃん連れてこうとしてんねん」
咲「洋榎さん、もんじゃもおいしいですよ」
洋榎「それは聞き捨てならんな。こりゃ咲ちゃんに本場のお好み焼き食わせんといかんなぁ」
絹恵「大阪のお好み焼きはごっつうまいから咲ちゃんもびっくりするで」
漫「もんじゃなんて食べる気なくなります」
胡桃「うるさいそこ!そう言う先入観を持ったやからに宮永さんは渡せないね」
エイ「ソウダソウダ!」
塞「それに私、広島風お好み焼きのほうが好きだし」
洋榎「なんやて!」
由子「ますます咲ちゃんを渡すわけには行かないのよー」
絹恵「せやせや」
シロ「関西人のテンションについて行くのだるい…」
シロ「けど咲ちゃんは渡さない」キリ
シロ「そもそも最初に約束したのはこっち」
シロ「そっちには引いてもらう」
エイ「シロカッコイイ!」
洋榎「ぐぬぬ。おい恭子!」
恭子「でもはぐれてしもた咲ちゃんを保護したのはうちらです。うちらが見つけなかったらまだ迷子になっていたかもしれませんよ」
胡桃「そんなこと!」
恭子「ないと言い切れるんか?」
胡桃「うー…」
洋榎「そう言うわけにはいかへんで」
胡桃「そうだそうだ」
咲「どうしても……ですか?」ウルウル
エイ「クルミ、サキナカセタ」
シロ「咲ちゃん泣かせたらだるい。泣くのやめて」
胡桃「……もう私はいいわよ」
洋榎「うちも咲ちゃん泣かせたないな。しかないから宮守がいても我慢したる」
シロ「上から目線だるい…」
漫「この人さっきからだるいだるい大丈夫ですか?」
塞「いつも通りすぎて問題ないですよ」アハハ
洋榎「焼き肉や」
エイ「モンジャ!」
恭子「うちも焼き肉やなくてももんじゃは嫌や」
豊音「私はみんなでもんじゃ食べたいなー」
シロ「どっちも焼くのだるい…」
咲「じゃあ私が食べさせてあげますね」クスクス
塞「自分たちで焼くお好み焼きなら食べますよね」
洋榎「でもなー」
恭子(主将。あんまりごねると咲ちゃん取られますよ)コソコソ
絹恵(うちらはそれでええからお姉ちゃん決めてや)コソコソ
咲「私、お好み焼きももんじゃも好きなので嬉しいです」ニコニコ
洋榎「……咲ちゃんにそないなこと言われたらもうなんも言えんな」
洋榎「もんじゃでも何でもこいやー!」
エイ「モンジャウレシイ」
豊音「わーい!みんなで一緒に食事だよー」
エイ「サキテツナグ!」
絹恵「うちも咲ちゃんと手つなぐで」
洋榎「絹がつないだらうちがつなぐ手がなくなるやないか」
シロ「だるい。咲ちゃんおぶって」
豊音「咲ちゃんつぶれちゃうよー」
咲(なんでこうなったんだろう)
咲(ま、いっか)
塞「この人数ですぐ座れたら奇跡だけどね」
絹恵「待ち時間はおしゃべりしてればあっという間やろ」
豊音「咲ちゃんともっと仲良くなりたいからそれはいいねー」
咲「そうですね。私も皆さんのこともっと知りたいです」
ガラッ
洋榎「11人……あれ?あんたら」
優希「咲ちゃんもいるじょ」
和「」ガタッ
久「さっき和が控え室を訪ねた時はいなかったのよね?どうして一緒にいるのかしら」クスクス
和「心配したんですよ咲さん!あなたは目を離したらすぐに迷子になって」
和「それより宮守の方にはどういうことか説明してもらいましょうか」ギロ
エイ「ウー」メソラシ
和「つまり咲さんは私が宮守の控え室に行ったときに中にいたってことですか!?」
塞「そう言うことになるね」
和「帰れピンクと言われた私はなんだったんですか」ワナワナワナ
エイ「ワタシサキスキ。ピンクニハワタサナイ」
胡桃「またエイちゃんはそんなこと言って」
和「我慢なりません。咲さんは返してもらいます」
咲「まあまあ落ち着いてよ和ちゃん」
和「咲さんはあっちの肩を持つんですか!!」
咲「そういうわけじゃないけど」ハァ
久「2人ともまだ咲を捜してるんじゃないかしら」
咲「それは悪いことをしました…」
霞「5人入れるかしら」
咲「あ、永水のお姉さんだ」
洋榎「なんやあの巫女、咲ちゃんにお姉さんって呼ばれてるんか」
絹恵「うらやましいな」
豊音「私も呼ばれたいよー」
和「確かにちょっとだけうらやましいです。ちょっとだけですが」
霞「あら、本当だわ」
咲「さっきぶりですね。皆さんもお食事ですか?」
小蒔「はい。もんじゃを食べに来ました」フンス
胡桃「まあここもんじゃの店ですから」
咲「永水も来て二回戦のメンバーが揃ったことですし一緒に食べません?」
小蒔「いいんですか!!」キラキラ
咲「もちろん」
洋榎「咲ちゃんが言うなら」
久「私たちもいいわよ」
エイ「ミンナデタベル。タノシイ」
小蒔「なんででしょう」ウーン
霞「何でかしらね」ニコニコ
初美(また何かしましたねー)
シロ「待たなくていいからだるくない」
久「せっかくだから学校事に固まらずに食べたいと思うのだけど」
エイ「サキトナリ」
シロ「私も咲ちゃんに食べさせてもらうから隣」
洋榎「それはあかんで」
絹恵「うちらも咲ちゃんと一緒に食べたいねん」
巴「なんででしょうね。可愛いのはわかるんですが」
霞「どうせなら争奪戦にまじってみましょうか」ニコニコ
小蒔「宮永さん!私と食べましょう!」
和「また増えましたね」
優希「しかもまたおっぱいでかいじぇ」
恭子「咲ちゃんはパイに愛された子やな」
シーン
恭子「正直すまんかった」
久「そうしたいんだけど…」
和「咲さんは私と一緒に食べるんです」
洋榎「いーや咲ちゃんはうちと絹と食べるんや」
シロ「私たちと食べる」
エイ「ヤクソクシタノハヤイ!」
久「いやーあなたってモテるのね」ケラケラ
久「あら、意外と私もモテるのね」クス
咲「まあまあケンカしないで仲良く食べましょうよ」
霞「咲ちゃん、こっちで一緒におしゃべりしない?」
巴「ケンカしてる人はほうっておいて」
小蒔「せっかくここで会ったんですから仲良くなりたいです」
なんか着地点が見えないんだけどどうしたらいいかな
塞「普段なら絶対だるいとか言うのに」
豊音「宮永さん可愛いから仕方がないよ」
豊音「これがきっとギャップ萌えってやつだねー」
胡桃「豊音どこでそんな言葉覚えたのよ」
豊音「いんたーねっとだよ?」
塞「さて私も争奪戦にまじってこようかな」スク
サキサンハワタシノモノデス
ワタサヘンデ
サキスキ イッショニタベル!
咲「永水の皆さんっていつも巫女服きてるんですか?」
巴「そんなことはないですよ。私は割と制服も着ていますし」
巴「はっちゃんは服着てるって言えるのか疑問ですしね」ボソ
初美「巴ちゃん。聞こえてますよー」
小蒔「興味あるならお貸ししますよ」
咲「実を言うとちょっとだけ興味あります」エヘヘ
春「久は何食べたい?」
久「春が選んでいいわよ」
春「わかった」
アー!
ウチラガケンカシテルアイダニー
ヌケガケダルイ
洋榎「しゃーないからそれで我慢したる」
シロ「待つのだるいけど咲ちゃんが来るなら…」
エイ「ズルイ!チチオバケヌケガケ」
霞「ケンカしてるのが悪いのよ」
洋榎「お好み焼きやー!」
由子「本場の焼き方を見せてあげるのよー」
エイ「モンジャタベル」
シロ「咲ちゃんに食べさせてもらいたい」
豊音「宮永さん早く来ないかなー」ワクワク
和「」ムス
優希「のどちゃん機嫌治すじぇ」
霞「咲ちゃんは今のままで可愛いわよ。それに大きくてもいいことはないわよ」
小蒔「肩が凝ります」
初美「ケンカ売られてますよー。巴ちゃん」
巴「そうですね、はっちゃん」
優希「のどパイも負けじと大きいじぇ」
和「そういうこと言わないでください」
シロ「食べさせて」
胡桃「宮永さんに食べさせてもらうんじゃなかったの?」
シロ「わかった。自分で食べる」
豊音「ちょーおいしいよー」
エイ「ヒメマツモモンジャタベル」グイグイ
洋榎「うちらはいいから押しつけるな!」
洋榎「あーもううっとうしいわ!」
洋榎「一口だけやからな!」パク
絹恵「どうやお姉ちゃん」
洋榎「……うまい」
漫「本当ですか主将」
由子「とりあえず食べてみるのよー」
絹恵「ほんまやな」
洋榎「まあ本場大阪のお好み焼きにはかなわないんやけどな」ドヤァ
エイ「オイシイオコノミヤキタベタイ」キラキラ
由子「焼くから待っててなのよー」
恭子「焼き方にもコツがあるねんで。しっかり見とき」
霞「残念だわ。咲ちゃん可愛いんだもの、もっとめでたかったのに」
小蒔「大会が終わったら麻雀打つ約束しました」
初美「私も楽しみですよー」
霞「あら、そのときは私も混ぜてもらえるかしら」
咲「はい!もちろん!」
咲「まあ隣に移動するだけなんですけどね」アハハ
胡桃「シロ。宮永さんきたよ」
洋榎「おっ、タイミングええで咲ちゃん。今お好み焼きが焼きあがったところや」
咲「おいしそうですね」
絹恵「むっちゃうまいでー」
咲「じゃあいただきます」ハム
洋榎「せやろーそうやろー」
咲「私こんな風に焼けないです」
洋榎「腕が違うからな」ヘヘー
咲「いつか教えてください」
洋榎「大阪遊びにきたら一緒にうちで作ろうな」
絹恵「大阪の街、案内したるし麻雀しよな。いつでも大歓迎やで」
咲「じゃあ洋榎さんと絹恵さんたちも長野に来てくださいね」
咲「って言っても何にもないですから家にお泊まりにでも」
絹恵「楽しみやなー」
咲「私もです」
エイ「ワタシモイキタイ」
シロ「長野遠くてだるいけど咲ちゃんに会えないのはもっとだるい」
咲「エイスリンさんもシロさんも歓迎します」
和「」バンバンバンバン
優希「今日は一段とのどちゃんがあらぶってるじぇ」
咲「もう。シロさんって意外と甘えん坊さんなんですね」クス
咲「はい。シロさん」フーフー
咲「あーん」
シロ「ん」パク
咲「おいしいですか?」
シロ「おいしい。もっと」
咲「はい」ニッコリ
洋榎「うちかて咲ちゃんにあーんしてもらいたいわ」
和「咲さんがあーんなんてそんなオカルトありえません」プルプル
絹恵「うちは咲ちゃんにあーんしたいわ」
洋榎「それや!」
エイ「サキアーンスル!」
咲「エイスリンさんどうしたんですか?」
エイ「アーン!」
咲「あ、あーん」パクッ
エイ「オイシイ?」キラキラ
咲「はい、おいしいです」エヘヘ
洋榎「咲ちゃんあーん」
咲「あーん」パク
絹恵「うちもあーんや」
咲「あ、あーん」パク
咲「これちょっと恥ずかしいですね」カァ
シロ「そろそろ咲ちゃん返して」グイ
咲「シロさんは本当に甘えん坊だったんですね」アハハ
エイ「ヒトリジメイケナイ」
絹恵「せやせや」
和「」バンバンバンバンバン
優希「さすがにのどちゃんが不憫になってきたじぇ…」
シロ「いや、あんまり」
シロ(本当はだいぶ満足してるんだけど咲ちゃん取られるのいやだから黙っておこう)
咲「もう仕方ないですね。はい、あーん」
エイ「シロニサキトラレタ」
エイ「ネトラレ?」
洋榎「いや違うと思うで」
絹恵「咲ちゃん、小瀬川さんのこと好きなんかなー…」モンモン
シロ「しょうがないから咲ちゃん貸してあげる。返してよ」
胡桃「宮永さんはものじゃないよ」
咲(でも好かれてるってわかってちょっと嬉しいかも)エヘヘ
恭子「主将だけじゃなくうちらが焼いたお好み焼きも食べてや」
漫「うちにも食べさせてくださいよ」
恭子「咲ちゃんが食べたらな」
和「」グスン
優希「まだこっちにはこないみたいだじぇ。親父!タコスお好み焼きとタコスもんじゃはないかー?」
咲「やっぱり家族麻雀ですかね。小さい頃は毎日やってましたから」
漫「宮永さんって宮永照と姉妹だったりするん?」
恭子「アホ!漫ちゃん!」
漫「あっしまった…」
咲「気にしないでください。確かにお姉ちゃんとは姉妹ですよ」
咲「嫌われてますけど…」
豊音「こんなにいい子の宮永さんを嫌うなんて何かの間違いだよきっと」
由子「きっとチャンピオンにも事情とかがあるのよー」
塞「早く仲直りできるといいね」
咲「はい!」
胡桃「宮永さんの家にお泊まりに行くとか」
豊音「まぜてほしいな」
咲「はい!家はお父さんと2人なんでお客さん大歓迎です」
咲「賑やかなのは楽しいですしね」
咲「末原さんたちもどうぞ」
恭子「……恭子」ボソリ
咲「?」
恭子「末原じゃなくて恭子って呼んでほしいな」
咲「はい、恭子さん」ニコリ
久「咲ってジゴロだったのね。知らなかったわ」
春「久も大概」
久「私はそんなじゃないわよ」フフ
小蒔「友達の家にお泊まり…」キラキラ
霞「小蒔ちゃんはこういうことしたことないものね」
巴「姫様だけじゃなく私たちもないですけど」
咲「もしかして永水の皆さんも来てくれるんですか!」パァ
小蒔「行きたいです!」
和「私は咲さんの家にお泊まりしたことありません…」グス
優希「まあ家が近いからな」
咲「えへへ。友達もいっぱいできてやっぱり麻雀って楽しいな!」
カン!
このまま>>1000までゆるゆると咲さんハーレムが続けば幸せだ
最高やな
無茶いうたるなww
咲ちゃんちお泊まり編
多分永水、姫松、宮守で別れちゃうけどいい?
パラレルワールドにして全校ガッツリやってええんやで?(ニッコリ
咲「広くなくてごめんなさい」
霞「私は広い家は苦手だからちょうどいいわ」
初美「さっそく麻雀するんですよー」
?「咲に近づくやつは排除する」ギュルギュル
?「おい待て落ち着け」
?「サキモテモテだなー」
嘘予告(多分)投下してもう眠いんで寝ますわ
おやすみ
続編は少なくとも土日すぎないと無理かな
Entry ⇒ 2012.11.09 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
魔法少女まどかフロンティア 3
「またシップか。今回は連続だな」
「おら、荷物をここに並べろ」
レッド「何だ、お前たちは」
「ゴチャゴチャ言ってねえで言われた通りにしろ!」
さやか「何よこいつら……」
マミ「うふふ、臓物の中から骸骨がでてきたわ~」
さやか「マミさん、これモンスターです。正気に戻ってください!」
「こいつらなめやがって……」
「やっちまえ!」
さやか「!」
さやか「杏子!?」
杏子「あ? なんだ……って」
杏子「さやか!?」
杏子「……と、マミはどうしたんだよ?」
マミ「あら、佐倉さん? こんなところで奇遇ね~」
レッド「マミはタンザーの中身にショックを受けたんだ……」
杏子「ああ……、ってアンタは?」
レッド「俺はレッド。マミとさやかには、色々助けてもらってる」
さやか「レッドさんは正義の……」
レッド「!?」
さやか「っじゃない! あの、なんかみんなを守る系の仕事を……」
「おいおい、あたしらを無視するんじゃないよ」
マミ「……どちら様ですか?」
杏子「お、立ち直ったか」
マミ「悪人の気配がするわ……」
さやか「さすがマミさん……」
「こいつらが手荒なまねをして済まなかったね。どうも気の短い連中でね、許しとくれよ」
さやか「え、何?」
杏子「こいつ、強盗団の頭なんだよ」
杏子「なんだっけ、ノーマッド?」
マミ「強盗!?」
レッド「強盗だと……」
ノーマッド「そうよ。あたしはノーマッドさ。確かに外じゃ悪さもしたさ」
ノーマッド「まあ、言い訳するつもりもないさ。けど……」
杏子「ここにいたら、タンザーに吐き出されてお陀仏だぜ」
さやか「そ、それを先に言いなさいよ!」
マミ「どこか、場所があるの?」
杏子「ああ、まあな。あたしも連れがいるんだ」
さやか「へえ、杏子が」
杏子「いいだろ、別に」
「お頭、どうします。連中行っちまいましたよ」
ノーマッド「チッ、仕方ないね」
ノーマッド「帰るよ!」
タンザー 居住地
マミ「場所って、ここ?」
杏子「ああ、一応安全だし、食いもんもあるぜ」
マミ「ふふふ、やっぱり臓物なのね……」
さやか「マ、マミさん、ほらこの辺りあんまりヌメってないですよ!」
マミ「そうね~なんだか動いてるわ~」
「びょ、病気ではない! これは修行のために……」
メイレン「私をほっといて、その挙げ句に弁髪? 信じられない!」
さやか「えーと、あれは?」
杏子「ああ、あたしの連れだ」
さやか「……弁髪も?」
杏子「あれはタンザーで会った。この場所もアイツが使わせてくれてるんだ」
マミ「いい人なのね……」
杏子「フェイオンってんだよ。ガチガチの善人だな」
さやか「で、杏子は今まで何してたの?」
杏子「そこのクーンとメイレン、あいつらと指輪を探してる」
マミ「指輪?」
杏子「全部集めねーとあいつの故郷が滅びるんだとさ」
マミ「滅び……」
さやか「それでほっとけなかったんだねえ」
杏子「ニヤニヤすんな!」
クーン「そうだ、指輪だよ!」
クーン「フェイオン、指輪のことなんか知らない? すごい力の魔法の指輪!」
フェイオン「指輪か……。私は聞いたことがないな」
メイレン「指輪の持ち主が乗ったシップがタンザーに呑まれたっていう話があるわ」
メイレン「心当たりはない?」
フェイオン「……ノーマッドなら何か知ってるかもしれないが」
杏子「お前らは何をしてたんだ?」
マミ「……戦っていたわ」
マミ「正義のために!」
杏子「なんだよコイツ」
さやか「私も、正義のために……」
杏子「さやかまで?」
さやか「……いや、まあ、事情があってね」
さやか「私は魔法少女を探してたところに、マミさんと会ったんだ」
杏子「ふーん」
さやか「おお、ほむらに! どんなだった?」
杏子「まあ、相変わらずだな。なんか魔法が戻ってた。あとはまあ、なんか人形みたいのと一緒だったな」
さやか「人形って何よ。機械じゃなくて?」
杏子「人形みたいな服と顔した女二人だよ。ほむらも合わせて三人が人形だな」
さやか「綺麗どころがそろったのかぁ……」
マミ「鹿目さんは一緒じゃなかったの?」
杏子「あいつだけだったよ。ほむらも心配してたな」
さやか「ああ、目に浮かぶなあ……」
マミ「鹿目さん、大丈夫かしら……」
さやか「……そうだね」
マミ「無事に決まってるわ。当たり前でしょ?」
杏子「だな」
マミ「それで暁美さんとは別れちゃったの?」
杏子「合流するつもりだったんだよ。でもそこでタンザーだからさぁ……」
さやか「ああ、不運だね……」
クーン「キョーコ!」
杏子「んー、なんか分かったのか?」
クーン「ノーマッドが指輪のこと知ってるかもって!」
杏子「あいつがぁ? 本当かよ……」
クーン「早く早く!」
…………
杏子「……」
杏子「お前らもくるのか」
さやか「当たり前じゃん!」
マミ「遠慮しないの」
レッド「フェイオンさんから事情は聞いた! 俺も協力する!」
杏子「暑苦しいな、おい」
クーン「仲間が増えた!」
フェイオン「ノーマッドに取り次いでもらおう!」
「ああ!? お頭はお前なんかに会わねえよ!」
フェイオン「会うのは私ではない」
クーン「僕たちだ!」
ノーマッド「ふん、いい度胸だね。まあ、来るとは思ってたけどね」
クーン「知ってるの?」
ノーマッド「知ってるさ。あたしが持ち主だからね」
メイレン「あなたがね……、奪い取ったものかしら?」
ノーマッド「そういうわけさ」
レッド「なんという悪党……!」
杏子「あ? 何言ってんだよ」
ノーマッド「とぼけるんじゃないよ。アンタが指輪を持ってることは、アタシの指輪が教えてくれた」
フェイオン「そんな話が通じるとでも?」
ノーマッド「あんたらには通じないだろうよ。でも、あんたと一緒にいるガキやらジジイやらはどうだい?」
フェイオン「貴様、まさか……!」
ノーマッド「そうさ、だからさっさと……」
「ノーマッド、貴様の悪事の数々、許せん!」
「アルカイザー、見参!」
「ティロカイザー、イグニッション!」
「サヤカイザー、行くよ!」
杏子「……何してんだお前ら」
マミ「今は合わせて!」
さやか「空気読んで!」
ノーマッド「お前達やっちまいな!」
アルカイザー「雑魚に用はない! 行くぞ!」
マミ「はい!」
『シャイニング天地・フィナーレ』
杏子「うわ、だせえ」
「ギャアァァ」
「ぐはあぁっ」
ノーマッド「チッ、役に立たない奴らだね……!」
杏子「あいつ、逃げるぞ!」
アルカイザー「逃がすものか!」
フェイオン「待ってくれ、アルカイザー! あちらは危険すぎる。戻れなくなるぞ!」
メイレン「だからって、見逃すわけにはいかないわ」
クーン「指輪も持っていっちゃったよ! 追いかけないと!」
フェイオン「……仕方がない。だが本当に気をつけてくれ」
さやか「うわ、本当にやばい感じ……」
マミ「うふふふふ、内臓だらけだわ~」
杏子「マ、ティロなんとか、正気に戻れ」
メイレン「いよいよ引き返せない感じになってきたわね……」
クーン「!」
クーン「あそこ!」
さやか「何あれ」
クーン「食べられてる?」
ノーマッド「ヒー、助けてー!!」
フェイオン「あれはタンザーの心臓部だ……」
杏子「心臓に食われるってどういうことだよ!?」
メイレン「どうする、助けるの?」
フェイオン「あんな奴でも見捨てる訳にはいかん!」
アルカイザー「もちろんだ!」
さやか「……」
マミ「……」
クーン「どうすればいいんだろ?」
メイレン「……攻撃?」
フェイオン「だが、下手に刺激するのも……」
『ブライトナックルゥ!』
さやか「ええ!? 殴っちゃうの!?」
アルカイザー「悩んでいてもしかたがない! 殴れ!」
杏子「よ、よし!」
杏子『チャージ』
さやか『デッドエンド』
さやか「いくよ、杏子!」
杏子「遅れんなよ!」
『チャーエンド』
フェイオン「ええい、私たちも行くぞ!」
フェイオン『爆砕鉄拳』
メイレン『曲射』
クーン『牙』
さやか「だ、大丈夫ですよ。ほらなんかビクビクして……」
アルカイザー「吐くんだタンザー!」
ノーマッド「ぐ、ぐぼっ」
杏子「……」
クーン「呑まれちゃった」
アルカイザー「待て、無茶をするな!」
マミ「あの口みたいなところに……!」
マミ「まだ助けられる!」
さやか「マ、ティロさん、危ない!」
マミ「え……?」
マミ「ぐ、ぐぼっ」
クーン「呑まれちゃった」
杏子「どどどどうすんだ、おい!」
さやか「! ま、まだ足は出てる!」
アルカイザー「ひ、引きずり出んだ!」
ズズズズ……
杏子「で、出てきた……!」
さやか「いける! 今助けますからね!」
クーン「僕たちも手伝わないと!」
フェイオン「お、おお、そうだった!」
メイレン「衝撃的過ぎたわ……」
さやか「か、顔の所で引っかかってる……」
杏子「こんなもん、魔法少女にあっていい絵面じゃねえよ!」
さやか「わああああ!」
杏子「引けえええ!」
グボッ
マミ「……」
ノーマッド「……」
アルカイザー「ノーマッドを離さなかったのか……」
杏子「ったく、どこまでお人好しなんだよ」
マミ「……」
さやか「え、えーと、大丈夫ですか……?」
杏子「か、カッコよかったぜ、さ、さすがはヒーローだな!」
マミ「……」
マミ「なんか、前にもこんなこと、合った気がする……」
杏子「え?」
さやか「ほ、ほら前世の記憶ってやつですよ。マミさんは前世でもヒーローだったんですよ!」
ノーマッド「……持ってきな」
クーン「指輪だ!」
ノーマッド「あたしを助けたこと、後悔するよ……」
フェイオン「ふん、まあこれで少しはおとなしくなるだろう」
レッド「なんだこの揺れは……」
フェイオン「さっきの戦いの刺激で、タンザーが暴れているんだ!」
フェイオン「シップに戻るぞ。タンザーが吐き出してくれるかもしれない!」
シップ内
マミ「……」
杏子「なあ、マミ元気だせよ。お前は立派だったよ」
さやか「そうですよ。マミさんがいなかったらノーマッドはきっと……」
マミ「うう……」
メイレン「シップが動くわ!」
レッド「外にでるぞ!」
ゴン
杏子「お、おい、なんかぶつからなかったか?」
さやか「き、気のせいじゃないかな」
「シップ、脱出に成功しました!」
マミ「いぃぃやったぁぁぁ!」
マンハッタン行き シップ内
「航路上にタンザーが出現!」
「緊急回避します!」
まどか「な、何!? 何が起きてるの!?」
ほむら「タンザー!?」
レオナルド「リージョン間を移動する巨大生物だ。飲み込まれたら大変だね」
ドゴン!
T260「シップ底部に衝突を確認」
まどか「何が!?」
T260「タンザーに取り込まれていたシップと推測されます」
「推進部に異常発生!」
レオナルド「まずいね。付近のリージョンに不時着できないかな」
「現在確認中! 最寄りのリージョンは……」
トリニティ・ラムダ基地
トリニティの軍事施設。執政官が統治する。
ほむら「不時着には成功したけれど……」
ほむら「ここは、軍事基地じゃないの?」
レオナルド「ここはトリニティ・ラムダ基地だね」
まどか「入っていいところなんですか?」
レオナルド「もちろんだめだ。だが今は緊急事態だから保護を求めれば……」
ほむら「どういうこと?」
レオナルド「ここならタルタロスと同様の情報が得られるかもしれない。なんと言ってもトリニティの軍事基地だからね」
T260「鹿目様、ご指示を願います」
まどか「ど、どうしようほむらちゃん」
ほむら「……警備状況によるわね」
ほむら「侵入しましょう。大丈夫、慣れたものよ」
まどか「ほむらちゃんはそうかもだけど……」
ほむら「まどかは軍事基地初めて?」
まどか「は、初めてだよ!? それが普通だよ!?」
T260「基地内に多数の警備モンスターならびに警備用メカが確認されます」
レオナルド「僕たちのシップは救難信号を出していたはずだ。モンスターまで放つのは異常だ」
ほむら「混乱してる、ってことかしら?」
レオナルド「そういうことになるのかな」
まどか「えっと、そうなると……?」
ほむら「出撃、しましょう」
まどか「ほむらちゃん、生き生きしてるなあ」
まどか「モンスターだらけだ……」
ほむら「博士、情報端末の位置は分かる?」
レオナルド「かなり深部だね」
レオナルド「君たちで少し時間を稼いでくれないかな。その間に僕とT260君が情報を取ってくる」
T260「多人数での潜入は危険です」
まどか「わ、分かった」
ほむら「時間稼ぎ、ね」
まどか「ほ、ほむらちゃん、あそこ!」
ほむら「敵!?」
まどか「ち、違うと思う……。ほら、女の人が」
ほむら「……本当」
まどか「えーと、あの人の服、なんていうか……」
ほむら「扇情的ね」
まどか「せんじょう……?」
エミリア「こんなとこに送られたと思ったら」
エミリア「いやらしい服まで着せられて!」
エミリア「最低!」
エミリア「……あそこにいるのは、子ども?」
エミリア「どうして……」
まどか「え、えーと、あの、シップが壊れて……」
ほむら「迷い込んだというか……」
まどか(基地の人じゃないのかな)
ほむら(ちょっと様子がおかしいわね)
エミリア「とにかく、ここにいたら危険よ! どこかに……」
まどか「!?」
ほむら「……まどか?」
ほむら「……?」
ほむら「仮面? いえ、仮面をつけた男?」
エミリア「!」
エミリア「あなたたち、ここを動かないで!」
まどか「行っちゃった……」
ほむら「確かに不気味なデザインだったけど……」
まどか「!」
まどか「こっちに来るよ!」
ほむら「……!」
ほむら「止まりなさい」
ジョーカー「……子どもに用はない」
『タイムリープ』
ほむら「逃がさないわ」
ほむら「仮面、外してみる?」
まどか「うん。この仮面、よくないと思うの……」
ほむら「取れるかしら」
まどか「……普通の人だね」
ほむら「知らない人。当然だけど」
エミリア「嘘……」
ほむら「……?」
エミリア「嘘でしょ……」
まどか「どうかしました……?」
ジョーカー「チッ」
ほむら「また仮面を着けた……」
まどか「逃げていくよ」
ほむら「どうする、追いかける?」
まどか「うーん、でもおかしいところはなかったし……」
ほむら「怪しい人ではあったけど」
まどか「えーと、大丈夫ですか?」
ほむら「ここは危険よ?」
ほむら「って私たちが言うのも、おかしな話ね」
レオナルド「お待たせ」
ほむら「!」
T260「HQの位置情報を収得しました」
まどか「大丈夫だった?」
T260「基地内部に私たちとは異なる侵入者があった模様」
レオナルド「おかげで侵入は簡単だったよ。比較的ね」
まどか「さっきの女の人?」
まどか「……あれ、いない?」
ほむら「スパイだったのかしら。でもそれにしては随分……」
レオナルド「行こう。長居はできないよ」
巨大なショッピングモールを有する、商業に秀でたリージョン
トリニティの管轄下にある
シップ発着所
ほむら「無事、帰ってこられたわね」
レオナルド「取り調べくらいは覚悟していたけれど、何もなかった」
まどか「カメラとかに、私たち映ってたりしない?」
ほむら「大丈夫。常に死角にいたし、無理なものは破壊したから」
まどか「さ、さすが」
T260「準備が完了次第、出向予定です」
ほむら「その前に、杏子と合流してもいいかしら」
まどか「あ、そうだったね。もうシップがあるかな?」
レオナルド「そうするといい。HQへのシップの調達は少し骨だからね」
ほむら「クーロン、行けます?」
係員「タンザーは去ったようですね。問題ありません」
ほむら「よし、行きましょう」
まどか「うん!」
杏子「ひどい目にあったな……」
さやか「久しぶりの乾いた地面だぁ」
マミ「もう何も怖くない」
クーン「でも指輪は見つかったよ!」
メイレン「それじゃあ、あと二つね」
さやか「あれ、もうそんなに?」
杏子「あたしが手伝う前から、何個か持ってたもんな」
メイレン「残ったのは策士の指輪と神秘の指輪」
メイレン「策士の方はオウミの領主が、神秘の方は指輪の君ヴァジュイールが持っているわ」
さやか「ヴァジュ……?」
メイレン「一筋縄では行かない相手でしょうね」
杏子「あー、それがお前のいる組織か?」
マミ「魔法少女を探しているのよね……」
杏子「何か胡散臭いんだよなぁ」
さやか「……イタリア料理、おごるよ?」
杏子「いくぞ、マミ。イタリアだ」
マミ「イタリア……。ティロカイザーの故郷ね……」
クーン「僕もイタリア食べたい!」
メイレン「はいはい、もう」
さやか「それじゃあ、みんなで……」
「やっとクーロンに着いたわ。杏子が待ちくたびれているでしょうね」
「杏子ちゃんに会うのも久しぶりだなあ……」
マミ「あれって……」
さやか「まどかと!」
杏子「ほむらじゃねーか!」
ほむら「あら、杏子。出迎えてくれたの? それとも待たせすぎた……って」
まどか「さやかちゃんとマミさん!?」
ほむら「あ、あなたたち……」
さやか「ふふん、さすがのほむらも突然の再会には弱いかね!」
さやか「二人とも、元気だった?」
まどか「よかった、みんな無事だったんだ!」
まどか「すみません、でもほむらちゃんが見つけてくれました!」
まどか「私をロボットの輪廻から解放してくれたんです!」
杏子「ロボット?」
まどか「多段切りの悪夢からも!」
さやか「あー、なんかあったねこれは」
ほむら「まだ引きずってたのね……」
杏子「マミが食われたりな」
マミ「やめて」
ほむら「マミ、あなたはまた……」
マミ「また!? またって何!?」
クーロン イタリア料理店
まどか「さやかちゃんがグラディウスで」
ほむら「マミがヒーロー……ってこれは秘密なのね」
まどか「それで、みんなタンザーの中にいたんだ」
杏子「ああ、恐ろしいところだったぜ。マミ的な意味で」
マミ「……」
ほむら「マミ的……」
レッド「よろしくな!」
ほむら「アルカぐむむ」
マミ「秘密だってば!」
まどか「あの犬っぽい子がクーン君で、チャイナ服の人がメイレンさん」
クーン「ほおろひく!」
メイレン「食べながらしゃべらない!」
ほむら「フェイオンさんというのは……」
メイレン「あいつは京に行ったわ。修行バカなの」
クーン「メイレンがいびるからでしょ」
杏子「髪型いじったからじゃね」
厨房
ルーファス「おい、どれが暁美ほむらだ」
アニー「エミリアに謝るまで、教えない」
ルーファス「何故だ! 俺は常にグラディウスのために行動している!」
ライザ「それがだめなのよ。女にとってはね」
エミリア「……」
ルーファス「もういい! 直接聞く!」
マミ「あら、そんなの頼んだかしら」
ルーファス「あちらのお客様から、暁美ほむらさんに……」
杏子「あちらって誰だよ。あたしらしかいないじゃん」
ほむら「……」
さやか「グラさん、引っ込んで」
ルーファス「さやか、何故だ」
さやか「エロい服着せて軍事基地に送り込んだそうじゃないですか」
杏子「うわ、最低だな」
マミ「グ、グラディウスってそういう組織なの!?」
ほむら「さやか、抜けなさい」
まどか「そうだよ、よくないよ!」
ルーファス「どういうことだ、少女たちの私への評価が急落しているぞ」
アニー「そうなるよね」
ライザ「自業自得だわ」
杏子「なんつーか、意外だな」
まどか「私も意外だったよ……」
さやか「私、ほむらのストーリーが全然わかんないんだけど」
ほむら「だから、基地落として、時の君襲名して、半妖の逃避行に巻き込まれたの」
さやか「もうちょい分かりやすく」
ほむら「基地の武器を奪って、時の魔法を取り戻して、半妖と妖魔の駆け落ちに付き合ってた」
さやか「すごいというか、奇妙というか」
まどか「私はリージョンを守ってほしいとか……」
杏子「あー、あたしもそんな感じだな。あんま覚えてねーけど」
さやか「そう言われて、監獄に送られたんだけど」
マミ「私もそんな風だったわ。目覚めたのはキグナスね」
まどか「私はスクラップの酒場でした……」
ほむら「目覚めたら、秘密基地の最深部でした」
ほむら「キュゥべえの贔屓かしら」
マミ「そ、そんなことより、私たちの使命について話しましょ!」
まどか「やっぱり、リージョンを守るんじゃないでしょうか」
さやか「でも守るって言っても、リージョンってそんなピンチなの?」
杏子「クーンのリージョンは滅びかけらしいが」
マミ「そこは多分、特別よね」
ほむら「私はクーデターを阻止したけど」
さやか「でもパトロールに追われてるんでしょ」
ほむら「……難しいものね」
さやか「となると、指輪探しとブラッククロスとロボットとジョーカーだね」
マミ「みんなで協力すれば、どれも大丈夫だと思うわ」
レッド「折角の所悪いが、俺は君たちの予定に付き合う訳にはいかない」
レッド「ブラッククロスは一日だって放っておくことはできないんだ」
マミ「悪の組織だもの、当然だわ」
クーン「僕も早くしないとマーグメルが滅んじゃうよ!」
メイレン「後回しにされるのはご免だわ」
ルーファス「我々の作戦も重要な段階に入った。君たちに合わせることはできない」
さやか「うーん、じゃあまた個別行動?」
まどか「やっとみんなに合えたのに……」
マミ「困ったわね……」
杏子「別にしょうもないことにまで、全員で付き合うことはねーだろ」
ルーファス「私から提案がある」
さやか「……なんですか」
ほむら「……」
さやか「まあ、そうかもですけど」
ほむら「それで、提案って?」
ルーファス「この店を君たち魔法少女の拠点にするというのはどうだ?」
ルーファス「普段は個別行動を取っていても、仲間の協力が必要な時はここに来る」
マミ「決まった場所があるというのは、いいことだと思うけど……」
ルーファス「もちろん普段は君たちが自由に使っていい」
ルーファス「ベッドも食料も、射撃練習場もあるぞ」
ほむら「へえ……」
杏子「食いもんはタダか?」
ルーファス「タダだ」
ほむら「全員で行動すると、必ず後回しになる人がでるわ」
マミ「それはできないものね……」
…………
さやか「それじゃあ、一旦解散! 一区切り着いたらここにまた集合ね!」
杏子「そういやほむらはどうすんだ? 一人だけフリーだろ?」
ほむら「もちろん、まどかのサポートに……」
「その話、待ってくれないかな」
「はじめまして。僕はゾズマだ」
さやか「胸に星形ニップレス……」
杏子「変態か」
マミ「く、口に出しちゃダメ!」
まどか「……ほむらちゃんに何か用ですか?」
ゾズマ「用があるのは僕じゃない。アセルスだ」
ほむら「アセルス? 彼女、何かあったの?」
ほむら「!」
まどか「!?」
ほむら「……どういうことかしら」
ゾズマ「オルロワージュの仕業だよ。彼女にはどうすることもできないことだった」
ほむら「……それで」
ゾズマ「アセルスはオルロワージュと決着をつけるつもりだ。ただ一人でね」
ゾズマ「彼女を助けてやってくれないか?」
ほむら「……ええ、もちろんよ。でも一つ聞かせて」
ほむら「あなたは何者?」
ゾズマ「ただのはぐれものの妖魔だよ。だからアセルスにはオルロワージュみたいになってほしくない」
ほむら「……」
ゾズマ「君なら分かるんじゃないかい? 大切な人のために、自分を捨ててしまう意味を」
ほむら「……ええ」
ほむら「……アセルスは今どこに?」
ゾズマ「……まあ、いいかな」
ほむら「ごめんなさい、まどか。T260の方が後回しになってしまって……」
まどか「……それは、うん。でも今いかないとアセルスさんは……」
ゾズマ「戻れなくなるだろうね」
ほむら「ちゃんと謝らないと……。武器を提供して埋め合わせしましょう」
杏子「あー、ほら言っただろ。ほむらの仲間の人形みたいな女」
マミ「それがアセルスさん? 待って駆け落ちって……」
杏子「そういうことなんだろうな」
さやか「おお……」
マミ「それじゃあ、みんな気をつけてね。絶対に無理だけはしないで」
杏子「どっちかっていうと、マミが心配だな」
さやか「あー、私も」
レッド「いいのか? 別に無理に俺に付き合うことないんだぞ」
マミ「今更部外者扱いなんて、ひどいですよ」
レッド「……そうだな。ありがとう」
クーン「僕はみんな一緒がいいなあ」
メイレン「わがまま言わないの」
杏子「指輪ぐらい、あたし一人で十分だよ」
さやか「もらう、っていうか私が頼んだんですよね」
ルーファス「基地から戻って以来、エミリアの様子がおかしいからな。女たちでフォローしてくれ」
アニー「あんな事言ってるよ」
ライザ「誰のせいだと……」
さやか「……全部終わったら、ルーファスさんボコボコにしましょうね」
ゾズマ「シップは用意したから、あとは君たちに任せるよ」
ほむら「え?」
ゾズマ「それじゃあ、僕は失礼させてもらうよ」
ほむら「……」
まどか「……消えた? っていうか……」
ほむら「あなたは行かないの!?」
ファシナトゥール
妖魔の君オルロワージュが統治するリージョン
針の城とその城下からなる
城門前
アセルス「私はアセルス! 道を開けよ!」
アセルス(白薔薇、私がすべて終わらせるから)
アセルス「……?」
ほむら「……」
まどか「アセルスさん……」
アセルス「来てくれたんだね……」
ほむら「……白薔薇姫は」
アセルス「闇の迷宮にいる。オルロワージュを倒さないと永遠にそのままだ」
アセルス「私の妖魔の血もね」
ほむら「あなたは、人間として?」
アセルス「分からないよ。でも、せめて君たちの前では人間でいたい」
まどか「アセルスさんは人間です!」
ほむら「私たちが言うのも変だけど」
アセルス「ふふっ、そうかな」
アセルス「二人の気持ちはうれしいけど……」
ほむら「そうね。私たちはあなたの露払いをさせてもらうわ」
アセルス「針の城はただの城じゃない。危険だよ」
まどか「それでも、私たちは行きます!」
アセルス「だけど……」
ほむら「……ついに、出番のようね」
ほむら「グレートマギカ、出撃!」
アセルス「え?」
まどか「ええ!?」
その日、ファシナトゥールにアセルス様がお帰りになりました。
巨大な機械と一緒に……
ほむら「まどか、コックピットは狭くない?」
まどか「そ、それは大丈夫なんだけど、あの世界観的に……」
ほむら「出力全開、針の城を攻撃する」
ほむら「準備はいい、まどか?」
まどか「じゅ、準備って私は何をするの?」
ほむら「まどかには、ミサイルとロケットを任せるわ」
まどか「えええ!? 私が撃つの!?」
ほむら「操縦は私に任せて」
アセルス「こんな城があるから、みんな捉われるんだ」
アセルス「ほむら、遠慮はいらない!! 城ごと全部終わらせよう!!」
…………
「バスターランチャー、充填開始!」
「まどか、衝撃に備えて!」
「う、うん!」
アセルス「目標は城門だ! 撃ち抜け!」
アセルス「宝物庫か……」
アセルス「ふん、こんなもの……」
アセルス「ほむら、まどか!」
「発射!」
「わわわ、これミサイルだったの!?」
「まどか、上手よ」
…………
「前方に巨人型モンスターを確認!」
「ほむらちゃん、鳥みたいなモンスターも!?」
「第一装甲をパージ! からのハイパーバズーカ!」
アセルス「ふふ、すごいな」
アセルス「……針なんて、もう折れてしまいそうだよ」
…………
アセルス「ジーナ! 君だったのか。大丈夫かい?」
ジーナ「アセルス様? 本当にアセルス様だ!!」
この時、私は奇蹟というものの存在を実感しました
ほむら「誰?」
まどか「誰だろう」
アセルス「……ここまでだな」
アセルス「二人ともありがとう。ここからは私一人で行く」
ほむら「……もういいの?」
アセルス「十分だよ。もう針の城は原型も残ってない」
アセルス「セアトも消し飛んだ」
まどか「あああ、なんだか罪悪感……」
アセルス「私はやっぱり人間でいたいと思う。そう思える」
アセルス「きっと君たちのおかげだ。私一人なら妖魔の力で進んでしまっただろう」
まどか「アセルスさん、絶対帰ってきてくださいね。白薔薇さんも一緒に!」
ほむら「……頑張ってね、アセルス」
アセルス「……ありがとう、本当に」
アセルス「さて……」
アセルス「ここからは私の戦い。そうでしょ、獅子姫」
アセルス「どうしても、戦わなくてはいけないの? 私が目指すのは、あなたの所ではないわ」
金獅子姫「言葉をかわす時は過ぎました。今は戦いで決着をつけるときです」
金獅子姫「今度は全力であなたを倒す!!」
アセルス「獅子姫……」
ほむら「ここは無事でよかった……。危うく破壊するところだった……」
まどか「これは、棺っていうのかな。中に人が……」
ほむら「眠っているみたいだけど……」
まどか「アセルスさんが、解放してくれるのかな」
ほむら「そうだと思うわ」
「また派手にやったものじゃな」
「わらわは零、オルロワージュの最初の寵姫じゃ。いや元寵姫というべきかの」
まどか「アセルスさんの味方ですか?」
零姫「ふむ、まあ味方というところじゃろう。案ずるな」
零姫「針の城もこの様では、格好がつかんな」
まどか「あの、やっぱりまずかったですか……?」
零姫「いや、この方がいい。これでいいのじゃ」
ほむら「……」
零姫「じゃがの、ここからは妖魔の君とアセルスの一騎打ち」
零姫「お主らは、引くべきじゃ」
ほむら「そのつもり、ですけど」
零姫「ふむ、物わかりがいい」
零姫「よし。いい子には褒美をやろう。受け取るが良い」
まどか「え、え、何?」
ほむら「こ、これは空間移動!?」
零姫「これで、舞台は整った。そうじゃな、オルロワージュ?」
オルロワージュの王座
オルロワージュ「我にひれ伏すために舞い戻ったか、娘よ」
アセルス「私の中の妖魔の血。これを浄化するにはあなたを倒すしかない」
オルロワージュ「やはり人間は人間か。つまらぬな」
アセルス「あなたにとっては人間も妖魔もつまらない存在でしょう。でもみんな生きてる。赤くても青くても血が流れてる」
オルロワージュ「ありふれた物言いだな。もう飽いたぞ」
アセルス「オルロワージュ、覚悟はいい?」
アセルス「私は、あなたを倒すよ」
オルロワージュ「ふん、思い上がりだ」
ジーナ「アセルス様、どうかご無事で……
ゾズマ「君がジーナかな」
ジーナ「ひっ」
ゾズマ「怯えなくて良い。僕はアセルスの味方だからね」
ジーナ「ア、アセルス様は……」
ゾズマ「ジーナ、君はアセルスを人間だと思うかい?」
ジーナ「……アセルス様は、高貴な血の流れるお方です」
ゾズマ「それだけかい?」
ジーナ「……ですが、暖かい心をお持ちの方。そう、きっと」
ジーナ「人間なのだと、私は思います」
ゾズマ「なるほど」
ゾズマ「それじゃあ、僕も行かないとね」
ジーナ「あ、どちらに……」
零姫「……」
零姫「イルドゥンか」
イルドゥン「……はい」
零姫「お主はいいのか。アセルスとオルロワージュの戦い、もう始まっておるぞ」
イルドゥン「……私にはもう分かりません」
零姫「ふむ?」
イルドゥン「ラスタバンはアセルスの血を狙って暗躍していた」
イルドゥン「彼は私にそう打ち明けました」
零姫「ほう、あの男が」
イルドゥン「私は、どうすればよかったのか……」
零姫「奴を殺したのはオルロワージュのためか? それともアセルスのためか?」
イルドゥン「……」
零姫「お主、アセルスのために色々立ち回っておったのだろう?」
零姫「……友を手にかけたのだ。もう心は決まっておろう」
イルドゥン「……アセルスに戦いを教えたのは私です」
イルドゥン「見届けるのは、私の務めでしょう」
零姫「往くか。わらわも心を決めたところじゃ」
アセルス「はぁ……はぁ……」
アセルス「ぐぁっ」
オルロワージュ「ふん、脆いものだ」
オルロワージュ「だが、それが人であるということだ」
アセルス「……私は負けない」
オルロワージュ「我の血に身を委ねれば、あるいは我に届くかもしれぬぞ」
アセルス「ふざけるな!」
オルロワージュ「死ぬがいい」
『三人の寵姫』
アセルス「!」
アセルス「……? 何も起こらない?」
オルロワージュ「……」
オルロワージュ「どういうことだ」
ゾズマ「さすがは妖魔の君だね。邪魔をするのが精一杯だ」
イルドゥン「……」
オルロワージュ「……我に楯突くか」
零姫「も少し良い男だと思っておったのじゃがの」
ゾズマ「息苦しい王様は、もうたくさんなのさ」
イルドゥン「……どうしたアセルス。前を向け」
アセルス「イルドゥン……」
アセルス「零姫様も、ゾズマも……」
アセルス「どうして……?」
ゾズマ「みんな君のことが好きなのさ。今の君がね」
オルロワージュ「四人まとめて消し去ってくれよう」
ゾズマ「四人?」
零姫「まったく、困ったものじゃな」
オルロワージュ「……何を言っている」
アセルス「ふふ……」
オルロワージュ「貴様、何がおかしい!」
アセルス「あなたの負けだ、オルロワージュ」
アセルス「……そうだよね、白薔薇?」
オルロワージュ「何ができるはずもない」
ゾズマ「二人の絆が、あんなチャチなもので切れるとでも?」
ゾズマ「魅了の君が、愛の力もしらないなんてね」
零姫「お主、言ってて恥ずかしくないのか」
ゾズマ「全然」
アセルス「行くぞ、オルロワージュ!」
アセルス「これが最後だ!」
オルロワージュ「よかろう」
オルロワージュ「見事その剣、我を貫いてみせよ!」
アセルス「…………」
オルロワージュ「……何故だ」
アセルス「……私は人間だから、ちゃんと誰かを好きなれた」
オルロワージュ「……ふん」
オルロワージュ「……零よ」
オルロワージュ「……我が恐ろしいか?」
零姫「いいや。愛おしい男のままじゃ」
オルロワージュ「……そうか、これが」
愛
か
puella magi madoka ☆ frontier "The one loves her rose "
Story of Asellus END
…………
アセルス編をたたみたかったんです
……bleach? 知らないなー
Entry ⇒ 2012.11.09 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
結衣「千歳って好きな人いるの?」キリッ
千歳「お邪魔します~」
結衣「いらっしゃい」
千歳「あれ?船見さん一人?珍しいな~」
結衣「千歳こそ一人で来るなんて珍しいじゃないか」
千歳「綾乃ちゃん探しとるんよ~」
結衣「綾乃?今日は来てないみたいだけど……」
千歳「ほんま?じゃあ他探してみるわ~」
結衣「あっ……ち千歳ちょっと待って……」
結衣「あ……えっとー」
千歳「?」
結衣「せっかく来たんだしお茶でも飲んでいかないか?」
千歳「ええなぁ~」
結衣「!」
千歳「でも綾乃ちゃん探さなあかんしな~」
結衣「そ、そうだよな……」シュン
千歳「あ、でもそんな急ぎやないしせっかくやから貰おかな」
結衣「そ、そうか!じゃあ準備するから座ってて」
―――京子『結衣って寂しがり屋なんだよー意外で可愛いだろ』―――
千歳(って歳納さん言っとったなぁ)クスッ
あるとおもいます!
千歳「ありがと~な」
結衣「いっつもはちなつちゃんが入れてくれててね……」
千歳「このお茶美味しいわ~」
結衣「そ、そうか!よかった」ホッ
結衣「そうなんだよ私より先に教室でたんだけどな」
千歳「そういや綾乃ちゃんも今日はいそいっどたな……はっ!」
千歳(二人とも先に出たのにどちらもいないということは……)
千歳「あかーーん」ブハッ
結衣「!?」
結衣「はは……いいよ」
千歳「船見さんはよくティッシュくれたりほんま頼りになるわ~」
結衣「そんなティッシュくらいで大げさだよ」
結衣「……それに私よりこういうこと気が利くのはあかりだしね」
千歳「赤座さんもよく気づいてくれるわ」
結衣「私は特になんにもないよ」
結衣「ちなつちゃんみたいに可愛くないし京子みたいに周りを楽しませることもできないし……」
結衣「あ……ごめん」
千歳「なんか悩みでもあるん?うちでよければ相談のるで~」
結衣「ありがとう千歳は優しいな」
結衣「……周りを見たり一人になったときすごく不安になることがあるんだ」
結衣「みんなに比べて私ってなんにもないなーって……ははくだらないことでしょ?」
千歳「そんなことあらへんよ」
千歳「それに船見さん十分凄いやないの」
結衣「頼りにされてるかな……」
千歳「船見さんがおらんとごらく部大変なことになっとるで」フフフ
結衣「京子が暴走しそうだ」
千歳「なんもあらへん人を誰も頼りにせーへんよみんな船見さんの良さを知っとるから頼りにするんよ」
結衣「うぅ照れるな……」
千歳「さっきみたいにここにおらへん人のことを褒めるのも信頼できるわ~」
結衣「千歳も私のこと褒めてくれるだろ」
千歳「船見さんの前でかっこつけとるだけかもしれへんで~」フフフ
結衣「千歳……」クスッ
千歳「あははええよ~」
結衣「……」
結衣「あのさ、千歳は悩みとかないの?」
千歳「んー今は特にないかなぁ」
結衣「本当にない?私の悩みも答えてくれたんだし私でよければ力になるよ」
結衣「って私が勝手に言い出しただけなんだけどね……」ハハハ
千歳「せやな~……あっ鼻血が出すぎることとか!なんて」フフフ
結衣「ふふどんな悩みでも力になるよ」
千歳「もちろん!」グッ
結衣「はは……」
千歳「こればっかりはどうしようもないわ~」
結衣「その、例えば千歳がさ……二人の事を気にしない様にしたらっていうか……えっと」
千歳「?」
結衣「だから……ち千歳が誰か好きになれば京子たちの事も目がいかなくなるんじゃないかなー」
結衣「ってなに言ってるんだろ私は……」
千歳「あははビックリしたで」
結衣「……」
結衣「……そそそれでち千歳は、その……す好きな人っていない……の?」カァァァァァ
千歳「えっ」
結衣「……」
結衣(聞くんじゃなかたぁぁっぁあぁ)ズーン
千歳「……おらへんよ」フフフ
結衣「えっほ本当?」
千歳「ほんまやで~うちは……うん」
結衣「……」
結衣「綾乃のことはどう思ってるの……?」
千歳「綾乃ちゃんは純粋に可愛いって思っとるだけやで~」
結衣「……千歳がさっき私に対して『よく周り見ていろんなこと気づく』って言ってくれただろ?」
結衣「自分じゃ無意識だったけど今ちょっとわかった気がするよ……千歳の表情変わったことに気付いたから」
千歳「……勘違いじゃあらへんよ」
結衣「え?」
千歳「表情に出してないつもりやったのにな~さすが船見さんや!」
結衣「それじゃやっぱり綾乃のこと……?」
千歳「う~んせやな~」
結衣「そうなんだ……」
千歳「あっでも好きというか好きだったかな~」
結衣「好きだった……?」
千歳「んーその~」
結衣「千歳……聞くよ」
千歳「人見知りでなー変わったギャグ言うし」クスッ
結衣「面白いよな」クスッ
千歳「そん時は凄い好きやったわー」
千歳「でもある時な綾乃ちゃん誰が好きかわかったんや」
結衣「京子か……」
千歳「せや、でも不思議と悲しい気持ちとかにならへんかった」
千歳「歳納さんのこと妬んだりもせーへんかって」
千歳「そんな綾乃ちゃん見っとたらな、うちもなんだか幸せな気持ちになってん」
結衣「千歳……」
千歳「綾乃ちゃんの幸せはうちの幸せや」フフフ
千歳「それにうちなんかより綾乃ちゃんは歳納さんとがお似合いや!強がりとかじゃあらへんよ?本心で思っとるんや」
千歳「その証拠に二人のこと考えると鼻血が」
結衣「千歳は強いね……私は好きな人が別の人好きだったら応援なんてできないよ」
千歳「綾乃ちゃんの幸せがうちの幸せって言っときがら結局うちも自分の気持ちがわからんかもなぁ」フフフ
結衣「自分の気持ちって自分でも分からない時あるよね」
千歳「ほんまやね~でもうちはこれからも綾乃ちゃんと歳納さんを応援するで!そして妄想も!」
結衣「はは千歳らしいや」
千歳「あははほんま~?」
結衣「うん!って結局千歳の鼻血解決してないな」
千歳「ええんようちはこれで」
千歳「?」
結衣「千歳が綾乃に対する気持ちもわかったんだ」
結衣「それを聞いた上でこんなこと言うのも……うん駄目かもしれないけど……」
千歳「どうしたん?」
結衣「その……だな、えっとごめん!私は千歳のことが好きなんだ!」カァァァ
千歳「え」
千歳「ええええ~」
結衣「いつか伝えなきゃって思ってたんだ……ん?千歳?千歳!?」
千歳「はっ」
千歳「うち大変や!今だいぶ照れてしまっとる……」カァァァァ
結衣「ご、ごめんな急に私が言うなんて驚くよな……」
千歳「うん正直船見さんがうちのこと、す好きなんて」テレテレ
結衣「私はずっと千歳のこと見てたんだけど……」
結衣「そりゃ話すときは大体綾乃か京子がいるからさ……」
千歳「そいやよくティッシュくれたり保健室連れっててくれるもんな~改めてありがとな~」
結衣「最初は心配して見てたんだけどいつしかこれで千歳と繋がりができるなーって」
千歳「てっきりツッコミ役やからかと思ったわ~」
結衣「ツッコミ役!?」ガーン
千歳「……船見さん、たしかに今すぐは答えられへんわごめんな」
結衣「ううんいいんだ!私が勝手に言い出したことだし」
千歳「でもなうち今まで以上に船見さんと仲良うしたいと思っとるわ~」
結衣「!」
千歳「船見さん見とるとドキドキするわ~」
結衣「えっそれって……」カァァァ
千歳「照れ顔も可愛いな~」クスッ
結衣「か、からかうなよ!」テレテレ
千歳「なに~?」
結衣「な名前で呼んでくれないかなーって」
千歳「せやねいつまでも船見さんなんて呼べんくなるかもしれへんしね結衣ちゃん」
結衣「!」
結衣「あ、あははは(照れてしまう)」アカカカカ
千歳「あーせやった」
結衣「私も手伝うよ」
千歳「えーよすぐ見つかるとおも…」
結衣「」シュン
千歳「と思ったけど一人じゃ寂しいから結衣ちゃんに手伝ってもらおうかな~」
結衣「!」パァァァァ
ガラッ
結衣「じゃじゃあ行こうか千歳!」
千歳「せやね!」ニコッ
タッタッタッタ
オッワリー……
ガラッ
京子「おい綾乃も出てこいよ」
綾乃「……」
京子「?」
京子「綾乃?泣いてるの?」
綾乃「うぅぅだって千歳がぁぁぁわあぁぁん」グスグス
京子「いい友達じゃないか千歳!」
京子「いやーそれにしても驚いたな」
ガラッ
京子「いっちばんのりーー」キョロキョロ
京子「ふっふっふ結衣よりも先に部室に来た!すなわち!イタズラの準備ー」ピピーン
京子「なににしようかな~」ガサゴソ
ガラッ
綾乃「歳納京子ーーー!あなたまたプリント未提出よ!」
京子「なんだ綾乃か」
綾乃「なななんだとは何よーーー」プンプン
京子「プリントならあるよ~ってか今日一人なんだね珍しい」
綾乃「べべ別に千歳がいなくても来れるんだから!」
綾乃(今日は勇気出すため千歳に頼らず一人で来たけどなんで歳納京子も一人なのよーー)カァァァァ
綾乃「ななななんで私が歳納京子に協力なんか――」
京子「あっ誰か来る足音!綾乃のせいでなんも準備出来てないよ!」
綾乃「知らないわよ!」
京子「あぁぁぁとにかく隠れよう!」
綾乃「何でよ!ってなんで私も!?」
京子「ええぃ入れ入れ!」グイグイ
綾乃「ちょちょっと――――」
ガラッ
結衣「あれ?京子先に来てたと思ったのに……まっいいか」
綾乃「だって千歳の気持ち全然知らなくて……」グスグス
京子「もーーいい友達じゃん千歳!綾乃もこれ聞いたからって千歳と関係悪くなるわけないでしょ!」
綾乃「そう……だけど」グスグス
京子「千歳の気持ちもこれから先どうなるかわからないし」
京子「千歳がまた本気で綾乃のこと好きになってその時告白してきたらちちゃんと答えればいいんだよ!」
綾乃「……そうね」グス
京子「……あのそれより綾乃さん?」
綾乃「?」
京子「千歳が言ってた、綾乃がわわわ私のことすすす好きみたいななな」カァァァァァ
綾乃「!」カァァァァァ
綾乃「ばばばばばばば馬鹿言わないでよおおおお」カアアアアアアア
京子「」シュン
綾乃「ももももももう!すすすす好きよ」カァァァァァ
京子「え!」パァァァァ
綾乃「かかか勘違いしないでよあんたのことなんて全然好きじゃないんだから!」
京子「えーどっち!?」ガーン
ガラッ
綾乃「そそそれより千歳が探してるから行くわね!」
京子「まってー私も行くよーーー」
タッタッタッタ
オッワリー……
ガラッ
あかり「ちなつちゃん?」
ちなつ「」
あかり「ちなつちゃーん!?」
ちなつ「」
ガラッ
ちなつ「やっぱり先輩達いないね」
あかり「あかりたちの授業早く終わったからねー」
ちなつ「じゃああかりちゃんとふたっりきりかー」
あかり「えへへなにしよっか?」
ちなつ「うーん、あっ」ピピーン
ちなつ「まだ私たちってこの部屋になにがあるか把握してないからちょっと探ってみない?」
あかり「探るって……でもたしかに押入れの方とかなにあるのかなぁ~」
あかり「ほんとだねぇ」ガサゴソ
ちなつ「あっコレ……」
あかり「これは京子ちゃんの同人誌だねー」
ちなつ「こここれってピーーーーーーーでピーーーーじゃない!」
あかり「えっえっ」
ちなつ「こんなのあかりちゃんい見せらんないよ!」
ちなつ「!」
ちなつ「誰か来る!あかりちゃん隠れてこんなの見てるなんて結衣先輩にばれたら!」
あかり「わっわっ――」
ガラッ
京子「いっちばんのりーー」
あかり「ちなつちゃんが気を失って」
あかり「うーんでも結ちとなんて意外だよぉ」
あかり「ってきり京結かと思ったのにー」
あかり「うぅそれにしてもちなつちゃん運ばないとね!」ウンショウンショ
ガラッ
あかり「うーんあかちな?なんーってえへへ」
ズルズル
オッワリー……
ガラッ
向日葵「櫻子も出てきなさいな」
向日葵「櫻子?」
櫻子「――おっぱお禁止ーー窒息させる気か!」バイーン
向日葵「仕方ないでしょ狭かったんだから!」バシッ
櫻子「ぐふぅ」
ガラッ
櫻子「あっかりちゃーん」
櫻子「って誰もいない」
向日葵「先輩方は普通に授業でしょうね」
櫻子「なんだよー向日葵と二人じゃつまらんからせっかく来たのに」ブツブツ
向日葵「まだ吉川さんたちも来られてないから生徒会室に戻しますわよ」
櫻子「へいへ……あっお菓子!もーらい」ピーン
向日葵「コラ人のを勝手に……!」
櫻子「でもこれ美味しいよ?」
向日葵「でもの意味がわかりませんわ」
向日葵「けっこーですわ!」
櫻子「どーせまたダイエットだろーあーこんなに美味しいのにー」パクパク
向日葵「……」ゴクリ
櫻子「そいや!」グィ
向日葵「ごふっ……ななにしますの!?」ゴホゴホ
櫻子「美味しいでしょ?」
向日葵「……う、たしかに」モグモグ
櫻子「おいしかったー」
向日葵「!」
向日葵「誰か来ますわ!」
櫻子「わーあかりちゃん達かなー?」
向日葵「なに悠長なこと言ってますの!?」
櫻子「は?郵貯?」
向日葵「ただでさえ勝手に入って更にお菓子食べてしまって……隠れますわよ」グィ
櫻子「おっぱいがぁぁぁぁぁ」
ガラッ
ちなつ「やっぱり先輩達いないね」
あかり「あかりたちの授業早く終わったからねー」
櫻子「やーいやーい」
向日葵「」バシッ
櫻子「」
向日葵「はぁーそれにしても今日はいろいろなものが見れまして頭が追いつきませんわ」
櫻子「私も見れたよ………」
櫻子「向日葵のおっぱ」
向日葵「」パシィーン
ズルズル ガラッ
オッワリー……
ガラッ
千鶴(姉さん……)
千鶴(よかったのかな……)
先生「じゃ今日はもう帰りなさいね」
千鶴「はいありがとうございました」
千鶴(あんまり熱もなかったけどどうせ今の授業終わったら放課後だし帰ってもいいでしょ)
千鶴「ん?プリント落ちてる……」ヒョイ
千鶴「あ……歳納のプリントか……」
千鶴「なんで名前だけ書いて他の所記入してないんだよ」
千鶴「捨てるか……いやこれがないと姉さんや杉浦さんの仕事が増えるんだよな……っち」
ガラッ
千鶴「……鍵開いてたな」
千鶴(あいつまだ授業中だし……ここに置いときゃ気づくだろ)
千鶴(くそなんで私があいつのために!……いや姉さんや杉浦さんのためだ)
~妄想中~
千鶴「……帰るか」ダバー
千鶴「!」
千鶴「……誰か来る?」
千鶴「やばい私がここにいるなんて不自然だし歳納のためなんて死んでもいいたくない!」
千鶴「くそっ」
ガラッ
櫻子「あっかりちゃーん」
櫻子「って誰もいない」
向日葵「先輩方は普通に授業でしょうね」
千鶴「姉さん……船見…さん」
千鶴「……」
千鶴「……」ダバァー
千鶴「はっ……」
ガラッ
千鶴「……今度泊りに来ないかな……」
タッタッタッタ
オッワリー……
ガラッ
りせ「……」
西垣「ん?そうだな」
りせ「……」
西垣「たしかになー」
りせ「……」
西垣「大丈夫だろ!」グッ
西垣「いやーようやく出れてよかったよ」
西垣「また理科室つかえなくなったよ松本」
りせ「……」
西垣「生徒会室は杉浦に怒られるからなー」
りせ「……」
西垣「ふふ心配するな松本これを見ろ」スチャ
りせ「……」
西垣「茶道部……今はごらく部か」
西垣「その鍵だ!」バーン
りせ「……」
西垣「はっはは職権乱用さ」
りせ「……」
西垣「ん?違うか」
りせ「……」
西垣「ん?本当だな」
りせ「……」
西垣「まだ授業中のはずだが……?」
西垣「まさか校長が見回りに!?」
西垣「さすがにまたばれたらマズイ松本隠れるぞ」
りせ「……」
ガラッ
千鶴「……鍵開いてたな」
りせ「……」
西垣「そうだな大丈夫だろ」
西垣「さて」
りせ「……」
西垣「ん?これか?」
りせ「……」
西垣「爆弾だ」
ドォォォォォォォォォォォン!
オッワリーン
結ちと好きなんでその後を書けたら書きます
支援あざっした
乙
おつし!
Entry ⇒ 2012.11.09 | Category ⇒ ゆるゆりSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
久「愛と知っていたのに、春はやってくるのに」
咲・和「部長、卒業おめでとうございます!」
優希「おめでとうだじぇー」
久「ありがとう、最高の高校生活になったわ。貴方達が居てくれたおかげよ」
まこ「おーい、わしは?」
久「ふふふ、もちろんまこもよ。麻雀部の部長、頑張ってね」
まこ「おぅ。今年もまた全国大会に出たいからのぉ」
和「咲さん」チョンチョン
咲「あっ、言っちゃダメだっけ?」
久「ありがとう。他の学校の子達も来てくれるのよね?楽しみだわー」
久「あっ、その前に美穂子に呼び出されたんだ!ごめんね、先に行ってて」
まこ「おぅ、また後でな」
久「そして咲の入部。待ちに待った全国大会の団体戦に参加。そして…優勝」
久「もし団体戦にエントリーしなかったら、きっと美穂子と再開する事も無かった…」
久「咲は恋のキューピットでもあるのね」クスッ
久「おーい、美穂子。お待たせ!最後の制服姿ね、もちろんカワイイわよ」
美穂子「ありがとうございます」ニコッ
美穂子「いいですよ。私も上埜さんの写真撮りたいです」
久「携帯電話のカメラの使い方わからないでしょー?」イヒヒ
美穂子「うっ、確かにわかりませんが…///ですから、コレを」スッ
久「使い捨てカメラ!?あぁ、こんなのあったわね…」
美穂子「せっかくだから、二人で撮りましょうよ」ニコッ
久「そうね。使い捨てだから、全部撮らないと損だしね」
美穂子「・・・いい思い出が出来ました」
久「???」
美穂子「それでお話と言うのがですね…。少し、歩きませんか?」
久「いいわよ。ここの桜並木、キレイでしょ!」
美穂子「ふふっ・・・」
久「今日はどうしたの?元気ないわね?卒業式したから?」
美穂子「そうですね…。春は出会いの季節、そして別れの季節でもありますから…」
久「美穂子は、大学でしょ?新しい出会いがたくさん、待ってるわよ。私は就職だから」
美穂子「就職は、街の工場ですよね?」
久「うん。みんなには意外って言われたけど、麻雀の自動卓を作ってる工場なの。工場見学した時に、ビビッと来ちゃってね」
久「ううん。私の麻雀は、もう高校生の大会で出し尽くしたわ。満足しちゃったし、限界も見えた」
久「プロは…私じゃ力不足ね。もっと牌に愛された子。咲や和。あの子達くらいのレベルじゃないと」
美穂子「そうですかね…」
久「もちろん美穂子がプロになるのに力不足だなんて、言って無いわよ?なんたって、長野の個人戦一位だものね」
美穂子「えぇ、私もまだまだ上に登れると思ってます」
久「もちろん応援してるわよ。大学生になっても麻雀、続けるんでしょ?」
美穂子「・・・」
ピタッ
久「美穂子?」
久「う、うん」ゴクリ
美穂子「私達、別れませんか?」
久「~~ッッ!?」
久「や、やぁね…。笑えない冗談は、あまり好きじゃないわよ」
久「だったら、別にいいじゃない!これまで通りの関係でいいじゃない!確かに会える回数は減るけど…」
美穂子「上埜さん、私が宮永照さんに勝とうと思ったら、普通に大学行って普通に麻雀して勝てるようになると思いますか?」
久「うーん、なかなか難しいわね。あの人、私達の世代で最強だし…」
美穂子「そうですね。卒業後はプロ入りですし、きっと日本代表にも選ばれるでしょうね」
美穂子「何度か対戦した事ありますけど、一度も勝てませんでした」
久「仕方ないんじゃない?私も、妹の咲に何度も負けたわよ。私と咲の部活の通算成績じゃ、咲の方が余裕で勝ち越してるわね」
美穂子「そして、私の麻雀の限界点ってどこ?」
美穂子「ずっとずっと、ひっかかってまして…」
久「そう…、色々悩んでたのね」
美穂子「そんな時です。中国の小さなメジャーリーグの雀団から、お誘いがありました」
久「中国!?麻雀の本場ね。確か遊戯人口も日本とは比べ物にならないくらい」
美穂子「えぇ…、プロ麻雀も日本と中国では驚くほどの差があります」
美穂子「中国のメジャーリーガーです。今もなお、現役です」
久「麻雀の本場ってすごいのね…。想像もつかないわ」
美穂子「それでマイナー契約ですけど、契約のお話を頂きまして…」
久「美穂子、まさか!?」
美穂子「ごめんなさい。私、強くなりたいんです!どこまで自分が強くなれるか試してみたかったんです!」ペコリ
美穂子「はい。行って来ます。上埜さんをいつまでも待たせるわけにもいきません。…私の事は忘れて下さい」
久「今なら、パソコンでスカイプとかもあるじゃない!?遠距離恋愛だって!」
美穂子「ごめんなさい…。こんぴゅーたーの事はあまり詳しくなくて…。それに麻雀に集中したいんです」
久「そんな…、こんな終わり方って…」ポロポロ
美穂子「ごめんなさい。私も上埜さんの事、大好きなんですよ?だから、待たせたくないんです」
美穂子「幸せになって下さい。そして、いつの日か新聞かテレビで私が取り上げられたら…、良かったらちょっとだけ応援して下さい」
咲「部長、遅いなぁ…」
池田「そーいや、キャップは今日は来ないし」
まこ「主役の一人なのにか?なにしとるん?」
池田「お前達は知らなかったな。いいかー聞いて驚け!キャップは、中国のメジャーに旅立ったんだし!」
未春「メジャーじゃないよ。まだマイナーリーグだよ」
優希「おぉー、それはすごいじぇ!」
和「そうですね。テレビ番組では日本の雀士は中国では通用しないって言われてますけど、すごい決断だと思いますよ」
~竹井久、19歳の春~
久「みんなー、久しぶり!」
優希「おおっ、部長だじぇ」
まこ「なんじゃ?呼んだかいな?」
和「優希、竹井さんって呼ばないとややこしいですよ」
優希「部長、私は2cmも背が伸びたんだじぇ!」
和「そうですよ。私は胸が2cm大きくなりました」ボイン
咲(いいなー)
久「あら、咲はセミロングにしたのね。ふふふ、似合ってわよ」
咲「ありがとうごさいます///」
まこ「おい、わしの晴れ着を褒めんか」
久「あぁ、忘れてた。卒業、おめでとう。一年間よく頑張ったわね」ニコッ
まこ「ははは、部長の責任とかプレッシャーで、3キロも痩せたぞわしは」
久「全国優勝二連覇だもんね。そりゃー、プレッシャーだって尋常じゃないわね。私の時は初出場で、誰にも注目すらされてなかったから楽だったわ」
まこ「そうじゃな。来年は、三連覇もかかっとるけ。物凄い重圧じゃ」
和「大丈夫です。私が清澄高校麻雀部の三連覇の夢、叶えてみせます!」
優希「ちなみに咲ちゃんは副部長だじぇ」
久「優希、貴方は?」
優希「私か?もちろん、タコス係だじぇ!」
咲「最近は後輩の子の分のタコスも作ってあげて、偉いんですよ」
京太郎「つか、タコスの作り方教えたの俺なんだけどな」
久「あら、須賀君。久しぶりね。居たの?」
京太郎「とほほ、久しぶりに会ったのにひどいっすよー」
京太郎「はいはい、わかりましたよー」
咲「まこ先輩、竹井さんって恋人は…」ヒソヒソ
まこ「出来たなんて話は聞いとらんな。まだ引きずってるんじゃろ」ヒソヒソ
和「音沙汰無しですか…。中国の山奥にあるチームらしくて、手紙も届かないみたいですね…」ヒソヒソ
久「さぁ、あんた達!龍門渕さん所でサプライズパーティー用意したわよ!みんな、行くわよー」
久「みんなー、おひさー」
優希「おおっ、竹井さんだじぇ!」
咲「お久しぶりです」
和「大人っぽい服装ですね」
久「もう私は、10代じゃないからね。大人よ大人。まこは後で来るって」
久「今年は居酒屋を貸し切ったの。ゆみや蒲原さんも仕事が終われば、来てくれるそうよ」
久「咲と和のプロ入りと…」
久「えーっと、優希の婚約?を祝いまして…」
久「かんぱーーーーい!」ガシャン
ゆみ「かんぱい」カチン
蒲原「わはは、乾杯だぞー」カチン
久「あら?こっちは、アダルティーな魅力たっぷりの20代のテーブルよ。優希には刺激が強すぎるんじゃない?」
優希「私は竹井さんと違って、もう処女じゃないじぇ。大人だじぇ」プッ
久「グサッ!?」
ゆみ「ふっ、久。一本取られたな」
蒲原(わはは、私も恋人居ない歴=年齢で処女なんだよなぁ)
優希「ニートだじぇ」
久「就職するか大学行きなさいよ…」
優希「冗談だじぇ。犬と結婚するために花嫁修業だじぇ。バイトくらいはするけどな」
久「へぇー、もう結婚しちゃうんだ。流石に、知り合いでは初めてね」
優希「まぁ、親にはいっぱい怒られたじぇ。でも好きだから、早く一緒になりたいんだじぇ」
久「・・・妬けるわね。ねぇ、タバコ吸っていい?」
ゆみ「ほれ、灰皿」コトン
久「ありがと…」シュボ
久「ゆみはどうするの?東横さんとの付き合いは順調?」
ゆみ「あぁ、うん。モモは春から大学生だからな。結婚とかは、まだまだ先だよ」
久「付き合って、もう二年になるんだっけ?」
ゆみ「うむ。嫉妬深くて困るよ、全く。家に帰ったら、モモが居たりするんだ」
久「それって半同棲って事?」
ゆみ「通い妻かな?どっちが妻かよくわからないが」
蒲原(わはは、実家の手伝いとか出会いが全くないんだぞ)
咲「・・・でねでね」ギュッ
和「ふふふ、はいはい」ギュッ
久「あの二人って、イチャイチャしてるけど、春からは別チームで対戦し合うのよね?」
ゆみ「あぁ。宮永は関東の姉のチーム。原村は関西の赤土さんのチーム。遠距離恋愛だそうだ」
久「・・・遠距離ね。新幹線で、三時間くらいなら遠距離じゃないわよ」
久「ってか…、私来て良かったのかしら?」ヒソヒソ
和「竹井さん。なにオドオドしてるんですか!早く入って下さいよ!」
久「は、原村プロ!?」
和「その呼び方、辞めて下さい。和でいいですよ」
久「いやー、マホちゃんの卒業式って言うから、来てみたけど…。私、あんまり面識ないし…」
咲「いいじゃないですか。マホちゃんは竹井さんの悪待ちも使ってましたよ」
咲「私と和ちゃんは毎日ですね。まぁ仕事ですからね」
和「宮永プロ。来週の三連戦、負けませんから!」ゴゴゴ
咲「こっちの台詞だよ。原村プロ」ゴゴゴ
久「あの二人、仕事では敵同士で、普段は恋人同士なのよね?上手くいってるのかしら?」
優希「心配ないじぇ」オナカ、ポッコリ
京太郎「どうもっす」
優希「もう五ヵ月だじぇ」サスサス
久「へぇー、須賀君。孕ませたのね?」ニヤリ
京太郎「そうゆう言い方、よして下さいよー。後、すいません。禁煙して貰っていいですか?」
久「それくらいわかってるわよ。妊婦の前で、吸うわけない」ケラケラ
・
・
・
居酒屋
ワイワイ、ガヤガヤ
久「ごめん、私、外で一服してくるわね」
咲「はーい。どうぞー」
和「咲しゃん、三連戦終わるまで、エッチ禁止ってひどいでしゅよー」ヒック
久「( ´ー`)y-~~」
久「プカー」テクテク
久「プカー」テクテク
久「あれ…、ここは思い出の呪われた桜並木ね…。ここを通るのは久しぶりだわ…」
久「もう四年も経ったか…。早いようで長いような…。新入社員で入った工場は、いつの間にか主任になったわね…」
久「告白されたのは…三回だったかな?ったく、いつまでこんないい女待たせりゃ、済むのよ」
久「…待つのは得意だったはずなんだけどな」
久「寂しいな」ボソッ
久「えー、宮永プロの妊娠祝いとまこの結婚祝い、おめでとうございますー。かんぱーい」
まこ「おおぅ、ありがとう」
咲「今日から、産休に入るんで、しばらく長野で生活します」
久「お帰り。和は?」
咲「今、関西ですね。優勝決定戦が近いので…」
照「ったく。大事な妹を孕ませといて、仕事だと…。あんなピンクになぜ妹をやらねばならんのか」モグモグ
照「しばらくオフだから。後、咲ちゃんが妊娠したって聞いてすっ飛んで帰って来た」
咲「私のチーム、主力のお姉ちゃんと私が抜けてしまって、ガタガタだよー。来年、やばいなー」
優希「ふっ、私の出番のようだな!私が咲ちゃんのチームに入るしかあるまい!」
京太郎「辞めとけ。東場だけの代打起用くらいだろ」
久「ったく。この年になると、毎年誰かが結婚したり、妊娠したりするわね。まぁ、めでたい事なんだけど」
ワイワイ、ガヤガヤ
久「でさー、蒲原さんが助手席に男を乗せて、ドライブしてたわけよー」
優希「おぉう、ワハハお姉さんにもとうとう春がやってきたじぇ」
照「・・・」ギュルルル
照「タバコは外、咲ちゃんが妊娠してるから」ギュルルル
久「わわわわ、悪かったわよ。つい、忘れてただけよ!」
久「じゃあ、私、外に出て来るね」
咲「はーい」
優希「竹井さんはもうアラサーだから、襲われる心配ないじぇ」
久「まーだ、25歳のピチピチですよーだ」ベー
照「あぁ、すごかった。世界最高峰だと思った。私でも、チームでは三番手くらいだよ」
咲「すごいね。でも日本人で初めて、通用してるんでしょ?私もいつか行ってみたいなぁ…」
照「咲なら大丈夫…って言いたい所だけど、あそこは魔界だ。マイナーで淡や衣と同格の選手ばっかり」
咲「すごいね。マイナーでも大変そう」
照「それと私以外にも一人日本人の選手が居るよ。しかも、先鋒を任されてる」
咲「先鋒ってエース?」
照「うん、とんでもない強さだよ、アイツ。昔から知ってるけど」
久「まーた、ここに来ちゃった…」
久「なんか毎年来てる気がするわね。恨みしかないのに…」
久「えぇーい!お前か!お前が、私の運命を狂わせたのか!」ゲシゲシ
久「桜の木、あんたはいつ見てもキレイでいいわね。私は、だんだんキレイじゃなくなってるのよ」
「そんな事ないですよ。上埜さんはいつだってキレイです」
久「・・・そうかしら?最近、新入社員が言う事聞いてくれなくて、白髪も生えてるのよ」
久「えぇ…全くね。この間まで、自分が新人だったのにね。でも白髪の一番の原因はソレじゃないわよ」
「あー…、えー…、私のせいだったりしますかね?」
久「そうね。いくら待つのは得意だって言っても、7年はないわよ。7年は。小学生が中学生になっちゃうじゃない」
「色々、大変だったんですよ。おかげさまで、宮永照さんに勝つ事が出来ました。今年はね」
久「見たわよ。何回も何回も、テレビのニュースを見ました。新聞も切り抜いて保存してるわよ」
久「あのさ…、昔から言おうと思ってたんだけど、私はもう上埜じゃないのよ。竹井なのよ」
久「まぁ…、上埜って呼ぶのは日本で貴方くらいしか居ないわね。悪い気分じゃないわよ」
久「上埜から竹井。そして竹井から福路かな?責任取ってくれるんでしょ?」
美穂子「勿論ですよ。IPS細胞もありますから♪」
久「って…、貴方を妊娠させるわけには行かないわね。バリバリ稼いでよ?私が妊娠するからね」
久「さぁ、今夜は寝かさないわよ!」
美穂子「喜んで」
終わり
部長は可愛い
Entry ⇒ 2012.11.09 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
真美「フリ→ト→ク!」
真美「そだね」
真美「ねえはるるん」
春香「なあに?」
真美「暇だね」
春香「うん」
真美「やたっ!」
モグモグ
真美「ん~、いつ食べても最高ですなぁ」
春香「えへへ」
真美「ズバリ! お菓子作りのヒケツは?」
真美「じゃあ、このクッキーにははるるんの愛が詰まってるんだね~」
春香「もっちろん!」
真美「本当は誰にあげるつもりだったの?」
春香「ぷ……」
真美「ぷ?」
春香「もうっ!」
真美「んっふっふ~、モテモテですなぁ」
亜美「ん?」
真美「はるるんのクッキーには愛が詰まってるんだって」
亜美「味?」
真美「まあそれでいいや」
亜美「よくわかんないけど、そだね」
真美「暇だね」
亜美「うん」
真美「いいね!」
亜美「はるるんに本物の味ってヤツをわからせてやるっしょ!」
真美「お→!」
真美「……って事だから、はい」
春香「え!?」
春香「え、じゃあ……」
モキュモキュ
春香「……カレー味?」
春香(クッキーなのにふやふや……)
真美「どう?」
亜美「亜美達の味は?」
春香「お……美味しいよ?」
真美「はるるんのお墨付きをもらった!」
亜美・真美「「兄ちゃんにも食べさせてあげよう!」」
春香「行っちゃった……南無三」
亜美「兄ちゃん泡吹いてるYO」
真美「はるるんに騙された!」
あまみ編おわり
天海さんはおいしいとは思わないが食べれた、なんともなかった
兄ちゃんは死んだ
天海さんの胃袋は鋼鉄ですな
響「ん?」
真美「なんでハム蔵たちの言葉がわかるの?」
響「大切な家族だからな!」
真美「そっか」
響「そうだぞ」
響「……ん?」
真美「伝わらないね」
響「え?」
真美「大切な仲間なのに」
響「ち、ちょっと!」
響「それとこれとは話が違うぞ!」
真美「え、そうなの?」
響「そうだぞ!」
真美「そっか!」
真美「ひびきんが沖縄の言葉を喋ってる時と同じだ!」
響「なんか引っかかるけど…だいたいそんな感じだぞ」
真美「なるほど~」
亜美「……ん?」
真美「……」
亜美「ほうほう?」
真美「……」
亜美「ひびきんが?」
真美「ひびきんが」
亜美「でも亜美達は通じるね」
真美「そだね」
亜美「バッチリだったね」
響「ええっ!?」
響「……」
真美「エスパ→じゃないって」
響「な……!?」
真美「真美はひびきんのことはわかるのにぃ~」
亜美「ひびきんはわかってくれないんだね~」
響「納得いかないぞー!!」
響編・おわり
千早「どうしたの?」
真美「……」(←変顔)
千早「……」
千早「どうしたの? 真美」
真美「ちぇっ、笑わなかったYO」
千早「……」
千早「ふふっ………さっきの顔」
千早「だ……だめ…ふふっ」
亜美「……」
亜美「千早お姉ちゃんが思い出し笑いしてた」
真美「ほほう?」
亜美「千早お姉ちゃんってむっちり?」
千早「……?」
千早「そ、そんなに肉つきは良くないと思うわ」
真美「あ、違った……むっつり?」
千早「むっつりでもないつもりだけれど…」
亜美「ほほう?」
真美「ほほう?」
千早「っ……どうしたの?」
真美「あり?」
千早「お手洗いに行ってくるわ」
千早「……ふふふっ」
千早「あ、あの変顔は反則だわ……ふふ」
亜美「やっぱりだ!」
千早「!?」
真美「千早お姉ちゃんのむっちり~!」
千早「誤解を生むからやめて!」
ちーちゃん編・おわり
伊織「なに?」
真美「ツンデレのヒケツってなに?」
伊織「……どうしたの、いきなり」
真美「だっていおりんツンデレじゃん?」
伊織「誰がツンデレよ!」
真美『いつも素直になれなくてごめんね?』
真美『ありがとう、大好き…』
真美「って言ってるクセに~」
伊織「な、なななな……」
伊織「何で知ってるのよぉぉ!!」
亜美「いおりんはホントにツンデレだね」
真美「……そうだ!」
亜美「やっちゃう?」
真美「やっちゃお!」
亜美「お→!!」
伊織「はあ?」
真美「このままだと誰かに取られちゃうかも~」
伊織「なっ……アイツのことは別に」
亜美「おやおや?」
真美「アイツとは誰ですかなぁ?」
伊織「ぐっ……」
伊織「……」ニコッ
真美「振り返りながら」
亜美「いつもありがとうって」
クルッ
伊織「いつもありがとう」
伊織「…………あ」
真美「あ、兄ちゃん」
亜美「ぐうぜんってこわ→い」
いおりん編・おわり
やよい「??」
真美「トップアイドルになって、お給料沢山貰えるよね」
やよい「うん」
真美「どんな贅沢した?」
やよい「ほとんど貯金してるよ!」
やよい「あ、家のみんなに買ってあげてるよ」
真美「やよいっちは?」
やよい「私はみんなが喜ぶ顔を見るだけで幸せだから」
真美「……」
やよい「ま、真美!?」
やよい「どうしたの……泣かないで?」
亜美「……」
真美「ほい、ティッシュ」
亜美「あびがど…」チーン
真美「やよいっちに贅沢させ隊を結成する!」
亜美「参加者を集めないと!」
亜美「うーん……」
真美「うーん」
亜美「うーん」
やよい「二人とも、どうしたの?」
真美「しっ、静かにしてて」
亜美「何をすればやよいっちが喜ぶのか考えてるんだから」
やよい「え、うん」
亜美「ダメだぁ……思いつかない」
やよい「えーっと」
真美「やよいっちも考えてYO!」
やよい「うん」
亜美・真美・やよい「「「うーん」」」
実に微笑ましい
亜美「いいところに」
やよい「どうやれば私が喜ぶのか考えてるんです!」
真美「あれ?」
亜美「なにかがおかしい…」
やよい「……?」
やよいは何してても幸せだと思う編・おわり
あずさ「なあに?」
真美「おムネはどうすれば大きくなるの?」
あずさ「自然にこうなったから…ちょっとわからないわ」
真美「むむむ……真美も将来せくち→になれるかなぁ」
あずさ「うん、なれると思うわ」
ぽよぽよ
真美「おお~、ぽよぽよしてる!」
あずさ「もう……めっ!」
真美「ごめんなさい」
真美「でもやめられない!」
亜美「あずさお姉ちゃんにやられた?」
真美「うん」
亜美「グリグリされると痛いよね」
真美「うん……亜美も?」
亜美「うん……ぽよぽよしたくなって」
真美「ちかたないね」
亜美「ね」
あずさ「ええ」
真美「あずさお姉ちゃんのおムネがせくち→すぎるからいけないんだって」
あずさ「ええっ!?」
真美「だからぽよぽよされるのは仕方ないことなんだ!」
あずさ「そ、そうかしらねぇ……」
亜美「だから諦めてぽよぽよさせて!」
真美「やっちまえ→!」
あずさ編・おわり
規制辛かったしトークしてないしすいませんでした
Entry ⇒ 2012.11.08 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
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淡「スミレは、テルが好きなんでしょ?」
白糸台の部室にある、一つの個室、一つの棚。
専ら虎姫が使用しているこの個室、その棚には、大量のお菓子が備え付けてある。
甘いお菓子、特に和菓子なんかは、タカミが持ってきてくれるお茶によく似合う。
私はたまに、この棚に細工をする。
開けたら崩れる配置にわざとしたり、そのお菓子を勝手に食べてしまったり。
それをする度に、スミレに怒られる。
私達のリラックスのためだと、部費で購入してくれているこれらの物だ。
部長であるスミレにとっては、悪戯されてはたまらないものなのだろう。
だから、私は悪戯をする。
今日の悪戯は、自分でもなかなかいい出来だと思えた。
下準備に和菓子の包み紙を丁寧に剥がして、紙箱を開封して、中のお菓子を全部食べてやって。
そうして、箱の底に文字を書いて、その文字を覆うように紙を貼って。
適量の重りを入れて、先述の包み紙の、折れた跡に従いつつ包装する。
最後に紙をテープで貼って終了。
なんだか、職人にでもなった気分だった。
中にあった饅頭は、確かに美味しかったけれど。
その具体的な味は、ついに思い出すことができなかった。
「淡、またお前か!」
スミレは強く、しかし元々の冷静さを損なわない態度で、私を叱ってきた。
ううん――叱ってきて、くれた。
だから私も、スミレを真似て、力強く発言する。
「ごめんね、でも美味しかったから許して!」
言い終わる直前に、紙の蓋で頭を叩かれた。
軽いその感触は、撫でられているようにも感じられてしまう。
こんな柔らかい態度が一転したのは、私の、二番目に仕込んだ細工がバレた時。
無理もないよね、底に貼った紙には、こんな言葉を書いたおいたんだもの。
『また騙された、スミレのばか』
スミレがそんな紙箱の底を覗いて、少しだけ硬直する。
叱りの程度が一段階上がると察しても、私は動かなかった。
だってさ。
「お返しだ」
スミレの叱りはいつも、全面的に悪い、私をどこか気遣っているから。
額に走った痛みだって、軽いデコピンによるもの。
こんなの、マッサージの痛みみたいに、ただ気持ちいいだけでしかない。
それっきり、スミレは空になった紙箱をゴミ箱へ捨てて、棚から新しいお菓子を持ってきた。
これでちゃんとした、お茶会の開幕ってわけ。
過去のことはもうおさらば。
あの空箱の底に書いて、隠した、本当の、本心のメッセージ。
私以外は気付かない。
『スミレが好きです』
想いは、それを刻んだ紙箱ごと、捨てられてしまった。
もちろん、こうなることはわかっている。
あの紙箱が捨てられることも、この恋慕が流されることも。
スミレはきっと、テルが好き。
その瞳はきっと、テルの方を捕らえて離さない。
外部の視線は、一目見て受け流すだけだよね、あの紙箱みたいにさ。
私がスミレに見てもらうためには、こういう悪戯を繰り返す他にないと思うから。
だから、私はスミレに悪戯をする。
最近、淡が悪戯をすることが多くなってきた。
今までもそういった傾向はあったのだが、以前は部員に対する、やや強めのスキンシップに留まっていた。
しかし最近は、ある程度実害の生じる悪戯を繰り返してくる。
「また淡か……」
私が呟いたのは、自動卓上を埋め尽くすほどの、麻雀牌で作られた巨大なピラミッドを見てのこと。
こんな無為な行為をする人間なんか、虎姫の中では淡以外はいない。
第一消去法でなくとも、淡がそういった性格であることは、私は重々承知している。
恐らく、他の卓内にある麻雀牌を根こそぎ持ってきて作ったと思われるピラミッド。
まず崩すことも大変で、そして元あった卓に帰すための仕分け行為も大変なことだろう。
「おっはよー」
「お前、さっきも来てただろ」
さも今来た体で入室してきた淡に、第一声から詰め寄るための言葉を送った。
「げ……なんで?」
お前は僅かな変化がすぐ表に出るから、わかりやすいんだよ。
そんなものがなくとも、私はお前が悪戯をしたんだな、と一見で理解できるのだが。
それに、最近の私の行動も変わってきているから、淡が悪戯をしていることなどよくわかる。
「私が最近、いつもより早めの時間に来ていることを知らないのか?」
「え!? い、言ってよ!」
「ああ、今言った」
「屁理屈!」
「だから、お前が悪戯をしているところなんて筒抜けなんだよ」
言った通り、私はこの頃、部室へ向かう時間帯が早くなっている。
部室内外の影にでも潜んでいれば、簡単に淡の尻尾を掴んでやることができるから。
私は部長として、悪戯ばかりする淡を放置するわけにはいかない。
淡の方ばかりを注視して、集中力がかけているこの頃の事情も、これに起因するものだ。
他の三人には、こんな機会もそうないということで、二軍の調整相手を頼んでおいた。
「スミレー……」
懲りたような表情で、なで声を使い助けを求めてくる。
反省をしているかは、怪しいところだが――まあ、いいか。
「……わかったよ」
「やった!」
あんまりに可哀想になったので、それからは、私も一緒になって手伝っておいた。
人に助けを頼んだ癖に、淡は私にちょっかいを出してばかり。
元通りするのに部活動時間の全てを消費してしまってから、淡一人に任せておくべきだったと反省した。
といっても、毎日悪戯をするわけにもいかない。
内容が全く思いつかない日もあれば、部内の活動で芯の方から疲れてしまい、そんな心持ちにならない日も多いもの。
最初はただ構ってもらうためだけに初めた、この悪戯。
最終的には構ってもらえるのに、今ではちょっと凝ったこともしてみたくなるのだから、人間って不思議。
手に入れられないスミレを好きになってしまったことよりも、不思議なことはそうそうないけどね。
ちょっと話がそれちゃったけれど、今日はその、悪戯をする日ではなかった。
かといって、お茶会がある限り、お菓子の出番がなくなることはない。
私達は活動前に、タカミの入れてくれたお茶と、甘いお菓子を堪能していた。
この前は、少しばかりお高そうな饅頭だったけど。
今日はなんてことない、スーパーに行けば普通に手に入る、袋分けのチョコクッキーだ。
スミレはそれを、姿勢を大して崩すこともなく口に放り込んでいる。
私もその様子を、口に広がる甘みを置き去りにしてでも、しかし直視はせずに堪能していた。
いつもこうして、目立ち過ぎないように、表情だけを見つめている。
スミレの隣には、いつもテルがいる。
テルの隣には、いつもスミレがいる。
今、スミレの隣にはテルが座っている。
そんなにくっついたって、二人の表情に淀みは見られない。
当たり前だよね、二人は常に一緒、それが普通なんだもの。
スミレは、私にとっての太陽みたいな人で、必要不可欠な人。
けれどその輝きは、テルと一緒にいる時こそ増しているんだもの。
眩しい太陽を直視するな、なんて、小学生の頃から教わってきた。
それでもやっぱり、私はスミレに夢中で、したくないのに直視してしまって。
すぐに目を逸らしても、やっぱり光は強く、少し焼けた目を潤そうと、涙も出てきそうになる。
その時気付いた一つのことは、私の心中を、どうしようもなく孤独にしてくれた。
このお茶会で心中に影を潜めているのなんて、私だけなんだ、って。
「なにっ?」
そんな気持ちに構いもせず、スミレは私に話しかけてくる。
咄嗟の返答、平常時のようにできていたかは、ちょっと怪しいところだった。
「こぼれてるぞ」
「あ……」
言われてから、握ったクッキーの亀裂が入っているところに気が付いた。
周りを見てみると、私のテーブルの上にのみ、集中して破片が転がっている。
スミレはそれを、指摘したと同時に、何か言うまでもなくティッシュで拭きとってくれた。
その優しさと意識が、私だけに向いてくれればいいのに。
スミレがそうしてくれるのは、決まって私が悪戯をした時。
スミレの意識の中心部には、いつもテルがいる。
なら。
そこに割り込んじゃえば、スミレは私のことを見てくれるのかな?
だから私は悪戯をして、積極的にマイナス面を見せなきゃいけない。
私は菫と帰り道が同じだから、一緒に登下校することが多い。
もともと私は、お喋りな性格でもない。
必然的に部室以外では、菫とばかり喋ることになる。
だからこそ、最近になって気が付いたことがあった。
本人すら気が付かない、細微な変化。
「昨日、自動卓が故障しただろ」
「うん」
「あれは結局、淡の仕業だったぞ。 問い詰めたら吐いてくれた」
「やっぱり?」
「すぐに直してくれたから良かったが、もし見つけられなかったら、私の首が危うかったな」
菫は、喋る量がとても多くなっていた。
菫だって冷静な性格をしているけれど、その事情を除外しても、よく喋るようになった。
それも専ら、淡がした悪戯に関すること。
悪戯の内容を話す菫は、別段嬉しそうにも、悲しそうにもしていない。
それでも私には、菫が多少の嬉しさを内包しつつ話しているのだと、簡単に理解することができた。
私はずっと、菫を見続けてきたから。
最近の菫は、よく淡の方を見つめている。
淡が悪戯ばかりするから、なんていうのは、きっと建前。
本人すら、気が付いていない建前。
菫はきっと、淡のことが好き。
「そういえば、この前二人だけの時は――」
それはきっと、まだ液体のようで、確かな形にはなっていないけれど。
いずれ固まってしまうのは、よくわかることだった。
私は続く菫の話を遮って、衝動的に、間接的な発言をする。
どうして、そんなことをしたのかわからない。
今まで、こんな感情的になったことなどなかったのに。
「最近、淡のことばかり話してるね」
その言葉で、心中に眠る気持ちに気付いたのは、菫よりも、私の方が先だった。
思いついてから実行するまでには、数日の心の準備を必要とした。
でも、いざテルの前に割り込もうと決めた時には、躊躇なんてものはあんまりなかった。
私はいっつも、スミレを困らせるとわかりながらも、悪戯を続けてきたから。
これだって、その延長線上になるものに過ぎない。
その役割が、大きく違うだけで。
「テル、そのお菓子ちょうだい!」
「いいよ」
「やった! あ、じゃあこれあげる」
「なにこれ?」
「この間発売したやつでねえ、すっごく美味しいの」
テルは表情に乏しい人だけど、それでもやっぱり、色々な感情は見え隠れする。
よくお菓子を食べているのも、その表れ。
だから備え付けのお菓子以外に、二人で勝手にお菓子を持ってきて、私達がそれを食べ合うことは、よくあることだった。
テルの表に出す感情は、小動物のように小さい。
スミレがそこに見蕩れてしまうのも、確かに納得できることなのは、よく接している私も理解していること。
だから私は、半ば諦めて、半ば執着して、こんなことをしている。
そして肝心のスミレは、私達を見て、わかりやすく落ち着いていなかった。
私は常にスミレを見てきたから、細微な変化には、長い付き合いであるテルよりも速く気が付く自信がある。
今この時だけは、私は間違いなく、スミレの視界に入ることができていた。
それがテルを経由した"嫉妬"なんて感情であろうとも、私は構わなかった。
「淡、もうやめろ。 そろそろ活動するぞ」
ほーら、わかりやすい。
まだ、いつもの時間より十五分も早いというのに。
お菓子を食べている余裕がないなんて、そんなことあるわけないじゃん。
それをそのまま口にして。
スミレの注意も気にせず、私達は先の行為を続行した。
最も、私がスミレにわざとらしく反抗するなんて、いつものことだけど。
「テル、あーん」
「…………」
でも今日は、ちょっとだけ様子が違っていたみたい。
そういった小さな変化でもなく、大きな変化も発生してしまったから。
「……淡!」
耳に残る反響が頭を揺らして、手には温かい重みがかかって。
スミレの大声と、腕を掴むその手は、私を停止させるのに十全たるものだった。
「え……」
「あ……」
つい漏れた私とスミレの声は、波紋状に広がって、個室全体の時間を止めてしまう。
それでも私の身体だけは、激しく焦燥していた。
血が伝わって熱いはずなのに、不思議と身体の一部が寒くなりもした。
身体の温度が、どの箇所も一致していない。
「菫?」
「……いや、悪かった」
呼びかけたテルへ視線を合わせずに、スミレは正体のよく知れない謝罪をした。
私も、おんなじ。
「悪かった」の一言もないあたり、私のほうが悪質だ。
心中の知れぬまま謝っても、いたずらに疑念を増やすだけなのに。
そうとわかっていても、何も口にすることができない。
それはきっと、スミレも同じことだった。
スミレは、弁明の言葉を何も口にしてくれない。
口にすることをしてくれないから、できないから。
”スミレはテルのことが好き”で"私に嫌悪感を抱いたから叱った"んだって、そう、決まってしまった。
カルチャーショックにも似た、何かを体験した。
少なくともその体験が、今まで私の中に存在していた常識を、尽く破壊していったことには違いない。
そのショックというのは、私ではなく、淡から引き起こされたもの。
しかしショックの対象は、淡に対してではなく、むしろ自分自身に対するもの。
私はいつものように、放課後となってから、何かするまでもなくすぐに部活へ足を運んだ。
淡のために作り出したこのリズムも、もう慣れたものだった。
淡が来ていないらしいことを確認した後、部室へと入室し、多少散らかった箇所を整理する。
「おはよう、スミレ」
不意の声に、肩の力を乱される。
それが淡の声であると気が付いてから、その乱れは簡単に静まってくれた。
収まってからは、逆に安堵すらしたものだ。
私が先に部室へいたのならば、さすがの淡も悪戯など仕掛けようと思わないはずだから。
そう思うと同時に、今までなぜ自分がこそこそと影に隠れて尻尾を掴む、などといった遠回りをしてきたのか。
そのところが不思議に思えてしまったのだが、私は結局、その答えを見つけられていない。
淡はそのまま、大人しく室内のソファーに座った。
その落ち着いた様が、とても不相応に目に映った。
もう少し、言ってしまえば、子供のように振る舞うのが淡の普段の姿だというのに。
私も簡単な整理整頓だったため、すぐに終わらせてからは、しばらく淡と過ごすこととした。
「うん」
棚から持ちだした多少の菓子を手に持って、それをソファー前のテーブルに置いて。
私はそのまま、ゆっくりと淡の隣に座った。
ただ、それが一番不自然でないから、そうしているだけで。
このソファーと向かい側にもう一つ同じソファーがあったのなら、私はきっとそちらに座ったことだろう。
そんなの、ただの例え話でしかないか。
淡の様子がいつもと違うと感じたのは、一時の勘違いではなかったらしい。
いつもなら、私に対してよく喋り、軽い悪戯くらいなら、私の目の前だろうと容赦なく実行するのに。
今は静かな横顔だけを、私に見せつけている。
何の考えなしにした発言。
その発言は、思わぬ自体を引き起こすこととなった。
「……ねぇ」
「なんだ」
「スミレは、テルが好きなんでしょ?」
唐突で衝撃的な内容を、しかし淡は顔色一つ変えずに呟いた。
不意に声をかけられた時のように、身体に少量の電流が走る。
僅かな痛みを感じるところだけが、その時と違っていた。
「なに、言ってるんだ……」
自分でも、どうしてこう錯乱しているのかわからない。
混乱の末、私はついに、場を繋げる役割を淡に丸投げしてしまった。
「ううん、なんでもないよ……ねえ、スミレ?」
「……なんだよ」
さっきから、こればかり言っている気する。
体験したことのない鼓動の音は、それだけ私の思考を奪っていたのだろう。
「は……?」
また、思考が奪われる。
私の脳内は、とっくに処理能力を失って、ただただ淡の挙動に左右されていた。
それに、どういうわけだろうか。
淡の、その言葉。
身体から温度を離脱させるような、とても冷たい言葉にも聞こえてしまったのは。
「だから、これが最後の悪戯」
淡の表情が、少しだけ変化したけれど、どういう変化かは確認できなかった。
そうする前に、淡は私の唇に、口付けをしてきたのだから。
制服の内側に熱が篭る。
過剰な鼓動を止めようとしても、頭を動かそうとしても、極端な緊張に遮られてしまう。
今の私みたいなことをされてしまえば、こんな熱は誰でも出しうるもの。
そう、思いたかった。
私を見つめた淡も、私と同じくひどく赤面していて、指は震えていたようにも思う。
それでも、淡のほうがいくらか、いいや、ずっと冷静な状態だった。
変化ばかりが起きたこの時間、錯乱していたのは、私だけ。
淡が出ていってから、頬に手を当てて、顔の熱くなっていることを再確認する。
そうして、下唇を人差し指で軽く触れてもみた。
また、顔が赤くなる。
瞬きすることすら忘れて、キスをされたその時のように、長い時間呆けていた。
私の意識が戻るのは、次に照が入室してきた時だった。
あんなに淡のことを喋っていた菫が。
あんなに淡の方ばかりを見ていた菫が。
今日はいやに大人しくて、期待のような、不安のような、混濁した感情が湧いてきてる。
表面上の理由は、淡が欠席したことだと思う。
見つめる先がいなければ、視界に入るも何もないから。
でもそれは、恐らく上辺だけの理由。
でなければたった一日で、ここまで劇的な変化が起こるわけがない。
この様子は、部活が終わっても変わることはなかった。
私もよく喋る性格はしていないから、私達はただ黙って、やや冷えた部室で部活動の余韻に浸っている。
「今日は、淡のこと喋らないね」
空気を温めるための発言には、無意識に"淡のこと"だなんて、余計な一文が付け加えられていた。
そんなつもりは、本当はなかったのに。
「どうして、そんなこと言うんだ」
菫の声は、いかにも辛辣そうだった。
私の方を見ずに、床の方ばかりを向いて、意識が半分、どこかに飛んでいる。
私のことは、身体でも精神でも見つめてくれていないことをアピールするように、ただ下を向いている。
「……かも、しれないな」
「何かあったの?」
数秒置いてから、菫は喋ってくれた。
その内容の裏には確かに、菫の本心が隠されていた。
本人も気付かないほど、巧妙に。
「なあ、照は……淡のこと、どう思ってるんだ?」
そう――淡が好き、という本心。
菫と淡との間にどんなやりとりがあったか、すぐに理解することができた。
でもその光は、私のための光ではなくて、菫と、淡のための光なんだろう。
「逆に菫は、淡のことをどう思ってるの?」
「……私は、お前に聞いてるんだ」
実に苦しそうな返答だった。
それを見て確信してしまった自分が、憎い。
憎くて、でも、嬉しくもある。
そっか。
私のやるべきことは、もう決まっていたんだ。
完全に二分されていた、私の感情――最後に選択したのは、緑色の嬉しさ。
私が、やらないといけない。
菫に、"自分は淡のことが好きである"と、気付かせてあげないといけない。
「私は、菫が好き」
それが私の、弘世菫の友達としての役割。
「え……」
菫はわかりやすく動揺していて。
同時に、冷静さだけは、その身体から手放してはいなかった。
「好きだよ、菫」
私は菫が苦しんでいるだけで、こうも冷静さを放棄できるのに。
後の言葉を待ち構えているだけで、気が狂いそうになるのに。
菫は私に感情的になれない。
それの意味するところなんて、ずっと前からわかっていたこと。
わかっていなかったのは、菫だけ。
でも今はもう、わかったでしょ?
「返事は?」
自分の声が震えている、これだって、きっと私しかわかっていない。
「わからない、たぶん、私は……」
ううん、わかっている。
たぶん、でもない。
言葉にしていない、してくれないだけで、菫はもう、自分の心に気が付いているから。
「私は?」
「……照のことを、恋愛の意味では好きじゃない」
今の私にできることは、できる限り平静を装うことだけ。
菫が知っている、宮永照を装うこと――それは全部、菫のため。
「そっか」
「……悪い」
「別に、わかってたから」
外から聞こえた強い足音が、私の心を一瞬だけ誤魔化してくれたけど。
その先にあるものを想像してみると、覚悟していのに、ちょっとだけ胃が苦しくなった。
「行かなくて、いいの?」
そんな、状態――言われてすぐに、泣いていることに気が付いた。
最初は、堪えるだけでやり通そうとしたけれど、次第にそれもできなくなる。
普段の自分を脱ぎ捨てて、制服の袖を使ってでもいい、静かに泣きじゃくりたい。
菫はすぐにハンカチを貸してくれた。
なんとか泣いていないと言い張れるようになった頃には、薄いハンカチは、液体と相違ないほどに濡れてしまっていた。
私は、その優しさも好き。
けど、今は私に向けられるべきものじゃない。
ここにいるのは、弘世菫の友達の、宮永照しかいない。
「じゃあ、言い方を変える……どっか、行って」
だから菫には、友達として行動してほしい。
私の気持ちを、無駄にはしないでほしい。
「……すまない」
最後に吐いてしまった、ちょっとだけ乱暴な言葉も、菫は許してくれた。
そうして、すぐに飛び出していく。
後悔が無いといえば、嘘になるかもしれない。
少なくとも、片思いをしていた宮永照としての後悔は、ある。
けど私は、弘世菫の友達として、行動したつもりだから、それで構わない。
きっと、大丈夫。
残った私を、菫はちゃんと友達として扱ってくれるから。
それは付き合いの長い私が、誰よりも知っていることでしょ?
なんでだろう。
私がこうして、一目散に逃げているのは。
何かが怖くて逃げているのは、わかる。
何が怖いのだろう?
私に振り向いてくれないスミレ?
それとも、スミレの親友である、テル?
私は、私が怖くて逃げているんだ。
スミレとテルの仲を直視できなくて、スミレを怒らせてしまった、私自身が怖い。
振られてしまったら崩れてしまいそうな私と、そんな覚悟を決めて告白もできない私の、両方が怖い。
テルが告白して、スミレが受けてしまう現実を見たら、錯乱してしまいそうな自分が怖い。
その事実は、私の足音を一層強くするものだった。
階段を降り続けて、どこかの踊り場に出ようとした時。
足の早さが段差とがずれて、転げ落ちてしまった。
その様が惨めで、痛みも一緒になって、私を惨めだと責め立てていた。
私はどうして、こんなにダメなんだろう。
だからスミレに見つめられなくて、だから遠回りなことをして。
告白もせず、逃げて逃げて逃げて。
結果、こんなことになる。
喉から、何らかの意志が出ていこうとするけれど、支えて出すことができない。
吐けば、楽になるのに。
苦しみが何分続いたかわからない、もしかしたら、秒で数えられるほどかもしれない。
時間の経過も忘れた頃。
不意に肩へ、他の誰とも違う温もりが流れた。
「……こんなところにいたのか」
――スミレ、どうして、いるの?
追って、こないでよ。
触れた手に気が付いて、すぐに姿勢を直立に戻す。
こんなことをしても、何の足しにもならない。
それでも私は、スミレの前で、みっともなく床に臥している気にはなれなかった。
「何、スミレ……っ」
私がただ一言発するのにも、大変な苦労があったのに。
スミレは急に私の肩を抱いて、その苦労を全て砕いてしまった。
残留していた強がりで、少しだけ抵抗もしてみたけれど。
それも虚しく、再び意識した頃には、私はもうすっかりスミレに身を任せていた。
もう無駄だと理解したのか、この時間がずっと続けばよかったのか。
どう思ったのかは、自分でもわからない。
「泣いて、ないよ……」
空元気を振り絞って、口だけ、精一杯の抵抗をする。
こんな涙混じりのものも、スミレには通じなかった。
「お前は嘘をつく時は、いっつもそういうことを言うな」
「……言わないよ」
「私が何回、お前の悪戯に付き合ったと思ってる」
私とスミレの身長差。
胸の方から伝わってくる鼓動音は、私を安静にさせる音。
無理矢理に留めていた涙が、栓を失って、私の頬を濡らしてきた。
頭に伝わる温もりが、少し強くなった。
どうしてこんな、独りで勘違いをしていたんだろう。
スミレはこうしてずっと、私のことを見てくれていたのに。
本当にスミレのことを見ていなくて、盲目の恋をしていたのは、私の方だったんだ。
スミレのそれが、私だけに向けられていないことくらい、わかってる。
わかりたくない、わかりたくないけど、わからないといけない。
全身を包む暖かさは、歯を食いしばって抑えることにした。
これに溺れたら、私はまた、スミレに迷惑をかけてしまうかもしれないから。
スミレがどこを見るかなんて、スミレの自由だよね。
告白の言葉を投げかけて、自分の悪戯からけじめをつける儀式をする。
でも。
「淡、好きだ」
それすらも、スミレに包まれてしまった。
一瞬、心臓がひどく跳ねて、全身の細胞が入れ替わったのかと錯覚もした。
動こうとしても、信号が身体に出せない。
私はスミレの鼓動音を聞き入れながら、激しいその音に気が付いて、顔をひどく赤くしていた。
「すまない、少しこうさせてくれ……」
また一つ、強く抱きしめられる。
反射的にスミレの顔を見上げてみると、その顔は真っ直ぐで、どこか遠くを見ていて。
けれど不思議と、その視線の先では、私の姿を見つめてくれている気がした。
「……嘘つき」
「嘘じゃない」
歓喜に緊張に焦燥に、後は、不安。
湧いて出たそれらの感情を押さえ込めるために、振り絞ってした発言。
私達は互いに顔を真っ赤にして、別の方を向いて、鼓動の音のみを向かい合わせていた。
「スミレは、テルのことが好きなんでしょ?」
自傷と何ら変わりない発言でも、言わずにはいられなかった。
"宮永照でなく、大星淡が好き"
その言葉を聞かなければ、どうしても安心することができなかった。
私は、すぐ逃げるような臆病者だから。
その痛みを和らげてくれたのも、スミレだった。
私はいつだって、スミレの行動に、言葉に、頼り切りらしい。
「違う、お前が好きだ、淡」
私の体温は、一度冷えた時よりも、ずっと上昇している。
首や脳にも心臓ができたかのようで、ひどい赤面具合だったと思う。
靄すら見えてきた視界に、筋肉のなくなった身体。
抱擁された状態から逃げられなくなって、逃げたくもなくなっていた。
こんな私を唯一支えているのは、スミレの前で常に見せていた、悪戯好きで生意気な、大星淡という一つの自我。
スミレが「好き」と明言してくれた自分だけは、どうしても気絶させたくない。
だから私は、倒れかかった自我を再起動させて、スミレにまた、悪戯らしいことをする。
実際私だって、そんな度胸はなく、スミレの身体のパーツ一部すら見つめられていない。
その発言をしてから、スミレの、私に負けないほどに赤面した表情を見つめた。
私達が互いの顔を直視したのは、ほぼ同時の出来事だった。
「好きだ、淡」
「……もう一回」
「淡、私は、お前が好きだ」
「もう、い、いっかい……」
多幸感に包まれて、気がつけば、スミレを見つめたままに涙を流していた。
視界がぼやけていたのに、目の前にいるスミレだけは、しっかりと見つめることができていた。
「……キス、するから」
私は何も言わずに、黙って、顎に手を添えられて。
最初から最後まで、余すところなくスミレに抱擁されながら、だったけど。
私達の外れた瞳は、お互いの全てを見つめることに、やっと成功することができた。
要望もらった淡菫。
固い文章とぐだぐだでごめんなさい。
すばらです
すばらです
Entry ⇒ 2012.11.08 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
ルルーシュ「765プロだと?」
ルルーシュ「ふん、くだらん」
CC「そうはいってもな、ほれこのいおりんなんかなかなかだぞ」
ルルーシュ「興味ない」
CC「ふん、童貞坊やめ」
ルルーシュ「魔女めが・・・うん?これは・・・?」
うっうーみなさんこんにちわー高槻やよいでーす!!
ルルーシュ「・・・・・」
キラメキラリー♪
ルルーシュ「ふはははははは!!そうか!そうだったのか!!」
CC「どうした?とうとう童貞をこじらせて壊れたか」
ルルーシュ「CC、すぐに黒の騎士団を集めろ!今すぐにだ!」
CC「はいはい、私は共犯者だからなすぐ扇にでも連絡とるよ」
ルルーシュ「(俺はナナリーの事しか頭にしかなかったがいるじゃないか!アイドルというものが!)ふははははは!」
CC「・・・・」
ゼロ「諸君、今日は集まってありがとう、それでは会議を開始する」
扇「ゼロ、いきなり呼び出したからには重要な話なんだろうな?」
ゼロ「もちろん 今日集まってもらったのはこれだ映像を見てくれ」
ピッ!
はーじめよーう♪やればできるーきっとー絶対ー♪
王城「なんだこれ?」
カレン「ゼロなんですかこれ?」
南「なるほど・・・」
扇「なにっ?!ブリタニアと戦うのになぜこれが必要なんだ!」
ゼロ「扇・・・貴様甘いぞ、古来よりアイドルというものは人の心を掴むもの そして我々の行動も人々の協力がないと成功しない ならなおさら人の心を掴むために765プロを利用させてもらう!
」
カレン「で、でもゼロの行動によって人の心を掴んでると思いますが・・・」
ゼロ「ああ掴んでいるがまだ足りない 私の作戦にはもっと人々の協力が必要なのだ」
藤堂「ふむ・・・」
藤堂「うっうー!!!」
みんな「!?」
千葉「藤堂さん・・・?」
藤堂「ゼロよ、一つ聞きたいことがある?」
ゼロ「なんだ藤堂(藤堂・・・お前はまさか・・・)」
藤堂「お前の好きなアイドルはなんだ?」
ゼロ「私か、私は高槻やよい、双海亜美・真美姉妹だが?」
藤堂「ふっそうか・・・いいだろう私はこの作戦に賛成だ」
ゼロ「さすが藤堂・・・他に意見あるものはいるか!」
シーン・・・
ゼロ「いないか・・・ではこの作戦は実行させてもらう!藤堂・・・お前の奇跡期待させてもらうぞ?」
藤堂「任せておけ、そうと決まれば私はいかせてもらう」
朝比奈「藤堂さん!いったいどこへ!?」
藤堂「生すっか!?を見直さなくては・・・」
プシュー
でもこういう組織の象徴やシンボルとしてアイドルを立てるのはアリだよな
ルルーシュ「ふう・・・みんなの説得はうまく行ったが765プロを掌握するにはどうするか・・・」
CC「なんだ、考えてなかったのか童貞」
ルルーシュ「うるさい!仮にも一つの会社だ 無理やりすると反感を買う・・・」
CC「確かにな まぁ私はいおりんに会えるならなんでもいいぞ」
ゼロ「藤堂にも考えがあるようだが奴は果たしてどうするのか・・・」
CC「今回は藤堂に任せてみてはどうだ?」
ゼロ「まぁそれもアリだが俺にも考えがないわけじゃない・・・」
ピッ
ゼロ「ディートハルトか?お前に頼みが・・・」
P「え?テレビで765プロの特集を組みたいって?」
ディートハルト「ええ、いま人気絶頂の765プロの皆さんでドキュメンタリー方式で撮らせてもらいます もちろんゴールデンで放送させてもらいますよ
」
P「そりゃぁすごい!おーいみんな聞いたかー?」
響「はいさーい自分がんばるぞー!」
美希「ハニー!美希キラキラするから見ててねっ!」
春香「ゴールデンですよ ゴールデン!!」
藤堂「うむ」
貴音「まこと よき考えですね」
ディートハルト「え?」
P「あぁ先日から来てもらってる警備員の藤堂さん・・・ってなんでいるんですか!?」
藤堂「なに、楽しそうな声が聞こえてな ついこちらまできてしまったわけだ」
律子「ちょっと!藤堂さん困りますよ!」
藤堂「失礼した、それでは・・・」
千早「なんかあの人怖いわ・・・」
真「そうかなぁ?日本男児って感じがしてかっこいいよ!」
P「なんかすいませんね・・・」
ディートハルト「いえいえ・・・(ゼロ、これもあなたの作戦ですか?)」
ディートハルト「はい、警備員として765プロにいました ゼロ指示ではないのですか?」
ルルーシュ「(さすが藤堂だ・・・もう動きだしたか・・・)」
ディートハルト「ゼロ?」
ルルーシュ「いや、それは私の指示だ ディートハルトは引き続き作戦を遂行してくれ」
ディートハルト「わかりました では」
ピッ!
CC「どうした?」
ルルーシュ「いや藤堂がもう765プロに侵入したらしい」
CC「OPでダモクレスに単騎特攻しただけあるな」
ルルーシュ「? 何の話だ?」
CC「なんでもない」
ディーハルト「いやぁ いい画がとれました!」
P「いやいやこちらこそ!うちのアイドル達は大喜びですよ!楽しみだなぁ放送・・・」
ディートハルト「・・・つきましてはこちらのほうのスポンサー達とアイドル達とのささやかなパーティー、まぁ前祝いみたいなものをやりたいのですが・・・
」
P「ええ!もちろん出席させてもらいますよ!」
亜美「ねぇねぇー兄ちゃんー!豪華なご馳走とかあるのかなー?」
真美「もちろんあるしょー!」
P「こらっ!お前ら! すみませんね・・・」
ディートハルト「いえいえ では改めてまた」
P「ありがとうございましたー」
藤堂「最初は竜宮小町で七色ボタン、次に春香で乙女よ大志をその後はダンスが激しいマリオネットの心そして・・・」
P「うんうん・・・って!藤堂さんなんでいるんですか!?」
藤堂「ミニライブの曲を考えるのではなかったのか?」
P「いやいや!別に藤堂さんも一緒に考えなくてもいいですよ!!」
藤堂「そうか・・・失礼した・・・」
スタスタ
P「なんで社長もあんな人雇ったのかな・・・まぁいいや仕事仕事」
ディートハルト「いやいやよく来ていただきました」
美希「ハニー!!おにぎりいっぱいなのー」
貴音「らぁめんの匂いが・・・」
伊織「ふんっ!この伊織ちゃんの舌を満足させるものなんてあるのかしら?」
やよい「うっうーもやしもたくさんありますー!」
あずさ「あらあらーなに食べるか迷っちゃうわー」
藤堂「みな今日はミニライブもあるんだ 気をぬくなよ?」
P「(また藤堂さんいるし・・・まぁいいか・・・)」
ディートハルト「こちらのスポンサーの挨拶までどうぞくつろぎください それでは・・・」
スタスタ
ゼロ「よし 今からそちらに向かうお前は時間までやつらをもてなせ」
ディートハルト「わかりました」
ピッ!
ゼロ「さて、向かうか」
CC「私もいくぞ 追いてくな!生のいおりんが見れるのに行かない手はない」
ゼロ「勝手にしろ」
CC「ところでパーティ会場にピザはあるのか?」
ゼロ「知らん」
千早「これホントにおいしわ」
春香「うん!すごいおいしいね千早ちゃん!」
雪歩「真ちゃん私達頑張ったからこんなにおいしいもの食べれるんだね!」
真「そうだね雪歩 あれ?やよいどうしたの?」
やよい「うーこんな豪華な料理私一人で食べていいのかなーって」
伊織「あっ・・・」
藤堂 スッつタッパ
やよい「えっ?」
藤堂「使え これに長介やかすみ達の分も詰めておけ」
やよい「うっうー! 藤堂さんありがとですー!」
藤堂「礼には及ばん」
P「(なんで長介やかすみの事知ってんだ)」
P「あっ!もうそんな時間か!ほらーみんな席につけー」
ガヤガヤ
カレン「それでは今日はスポンサーのゼロ様から挨拶があります ご清聴ください」
P「ゼロ!?ディートハルトさん一体これは!?」
千早「ねぇ春香ゼロって・・・」
春香「あの黒の騎士団のゼロだよね・・・」
貴音「ゼロ・・・」
ゼロ「ふはははは! 諸君楽しい会食いかがかな?」
雪歩「真ちゃん あ、あの人ってブリタニアの人いっぱい殺してんだよね・・・」
響「日本を開放しようとしてる救世主だって自分きいたぞー」
P「ゼロ!お前何しにきた!まさか!!この子達を戦争に使おうと・・・!」
ゼロ「ふふふ、虐げられた人びとの救世主ゼロがそんなことするとでも?」
P「じゃあ、目的はなんだ!」
P「えっ?」
ゼロ「言語か、土地か、血の繋がりか」
P「違う・・・それは…心だと思う」
ゼロ「私もそう思う」
ゼロ「自覚・規範・矜持、つまり文化の根底たる心さえあれば、住む場所が異なろうとそれは日本人なのだ」
ゼロ「では聞く! お前達にとってトップアイドルとはなんだ?」
P「!?」
春香「私たちにとって・・・」
美希「トップアイドル・・・」
亜美・真美「って・・・・」
ゼロ「わたしも思う・・・それを私達と目指すというのはどうかな?」
みんな「!?」
ゼロ「私はブリタニアに支配された日本を解放したあとはブリタニアという国ごと潰そうと思う その活動を君たちとしていけば・・・君たちの知名度は日本だけではなく世界に知れ渡る。そして世界の頂点に立った時がトップアイドルと言えるのではないか?」
律子「確かに一理あります」
伊織「この世界じゃ私達じゃ限界があるかもしれない・・・・」
雪歩「でも!ブリタニアだからって人殺しの人達となんて・・・・」
やよい「プロデューサー・・・・」
ゼロ「(ふふふ・・・抵抗してるがやはり迷っている日本人は強大なブリタニアの力を知ってるからこそ贖えるわけがない・・・もうひと押しだ・・・)」
ゼロ「諸君 私は・・・」
藤堂「喝っ!!!!!」
みんな「!?」
春香「藤堂さん・・・?」
藤堂「お前達は765プロの力だけでトップアイドルを目指すのではなかったのか?」
ゼロ「・・・・」
藤堂「黒の騎士団の力を借りてトップアイドルなろうとは言語道断!お前たちと対立した961プロとなんら変わらん!」
765プロ「!!」
藤堂「仲間達と目指すトップアイドルこそお前達が目指したものではないのか!?」
響「で、でも!自分達だけじゃできないこともあるぞ!」
藤堂「ひとりでは出来ないことー仲間となら出来ること♪」
みんな「!?」
春香「そうだよ!みんな!私達誓ったじゃないみんなで目指すって!」
伊織「全く この伊織ちゃんが危うく忘れるとこだったわ 礼を言うわ藤堂」
藤堂「礼には及ばん この藤堂鏡志朗するべきことはしたまでだ」
ゼロ「(何をしているんだ藤堂!!)」
P「俺なんでここにいるんだろう・・・・」
律子「でも、急に言われても衣装とかが・・・」
藤堂「問題ない 用意してある 最初は双海姉妹と高槻のキラメキラリからだ!」
亜美「うわーやよいっちと歌うなんて久しぶりだよー!」
やよい「うん! 頑張ろうねー!」
ゼロ「(はっ!藤堂まさかこのために俺の好みのアイドルを・・・・)」
藤堂「(ゼロ・・・分かってくれるか・・・)」
ゼロ「(ふっ・・・負けたよお前の奇跡に・・・力でアイドルを押さえつけようとした俺の負けだ・・・)」
キラメキラリー♪ ずっとチュッと♪ 地球で輝く光ー
CC「で、765プロを手に入れることはできなかったと・・・・」
ルルーシュ「あぁ 奴は奴なりのやり方で765プロを押さえるつもりらしい・・・」
CC「そうか・・・で当の藤堂はどこにいったんだ?」
ルルーシュ「なんでも警備員から藤堂Pになったときいてるが・・・・」
CC「!?」
P「黒の騎士団の面接ってどこで受けれるんだろうな・・・あはは」
おわり
天子「しんくー見てみてー!」フリフリ
星刻「天子様それは・・・ぐはっ!・・・」
天子「765プロのアイドルの服着てみたんだけど似合うかなー?」
星刻「(天子様・・・最高だ・・・)」
天子「スタ→トスタ→♪」
ちなみに俺はお姫ちんが一番好きです
ちょうど眠かったからいい長さだったよ
次回はがっつり、ルルとアイドル絡ませておくれ
面白かったです、ありがとうございました!
Entry ⇒ 2012.11.08 | Category ⇒ コードギアスSS | Comments (2) | Trackbacks (0)
P「冬馬が大人の階段を昇った?」
北斗「それが冗談じゃないんですよ」
P「いやいや、ありえん。美希がおにぎり叩き潰すよりありえない」
P「そんな事よりツッコミたいのは何で当然のように事務所にいるのかって」
翔太「信用できないなら実際に観察してもらったほうが早いかもね」
P「無視かよ」
北斗「冬馬の目の前にスカート姿の可愛らしい女の子が歩いてます」
P「うん」
翔太「風を送ります」ピッ
ブオオオオオオ
P「無駄にハイテクだな」
「キャアアア!!」ピラッ
P「見えたっ!!」
冬馬「……」スタスタ
P「完全スルー……だと……?」
北斗「あの神秘のベールに包まれた宝玉が露わになってるのに」
翔太「顔色1つ、眉ひとつ動かさないなんておかしいよね」
P「むむ……たまたま考え事をしてたとかお腹が痛かったか」
北斗「じゃあ次いきましょうか」
P「満員電車で可愛い女の子達に囲まれてるとか死ねばいいのに」
北斗「そんなことより見て下さい」
P「ん?」
冬馬「……」ハァ
翔太「冬馬君、心底嫌そうな顔してるよ」
P「おいおい、どう考えてもご褒美だろうが。ぶん殴ってやろうか」
北斗「童貞なら緊張とドキドキでワクワクなはずですが、冬馬からはそんなの感じられない」
P「どうしちまったんだ」
P「何でこう良い女があいつの周りに現れるんだよ」
ポトッ
翔太「ハンカチを落とします」
P「何でこうタイミング良いんだ」
冬馬「……」スッ
P「拾った、どうする!?」
冬馬「ちょっとあんたこれ落としたぜ」
「え?本当……ありがとうございます」
冬馬「気を付けろよ、じゃあな」
「……」キュンッ
P「おいおい、そこはハンカチどうするか悩んで悩んで悩み抜くところだろ」
北斗「ためらい無く本人に渡してますね」
翔太「それに話しかける動作もめちゃめちゃスマート、別れ際も良い感じに決まってたし」
P「あんなの童貞じゃねえ。もっとフヒフヒ言いながら渡すはずだ」
P「ほう」
冬馬「台本でも確認するか……ん?」ゴソゴソ
翔太「エロ本の存在に気付きます」
冬馬「……」
P「どうするどうする?見ちゃうか?見ちゃうだろ!」
冬馬「……」スッ
P「本を持って立ち上がった?……そうか!便所で楽しむ気か!」
ポイッ
翔太「ゴミ箱に捨てちゃった」
冬馬「ったく……えっとどこからだっけな」ペラペラ
北斗「何事も無かったかのように台本を……」
P「この野郎」
北斗「というと?」
P「まあ見ておけ、すぐに化けの皮を剥いでやるから」
翔太「何でそんなに必死なの?もう良いじゃん」
P「このままだと冬馬にホモ疑惑が立ってしまう。可哀想だ」
北斗「なるほど」
翔太「分かったような分からないような」
冬馬「あんたか……何の用だ」
P「いや、何。うちのアイドルのグラビアでもあげようかなと」
冬馬「そんなもんいらねえよ。何で敵事務所のグッズもらわきゃなんねーんだ」
P「ほら!あずささんのセクシーショット!貴音のお尻アップ!美希の」ペラペラ
冬馬「だからどうでも良いって言ってんだろ」
P「ぅ……いや、ほら。他事務所の研究の参考資料に」
冬馬「歌や踊りならともかくそんなの見ても参考にならねえよ。じゃあな」
P「……」ポツーン
P「怒りながらなんだかんだで理由付けて貰うと思ってたのに!」
翔太「やっぱり冬馬君は大人になったのかなぁ」
北斗「プロデューサーさん、その本必要ないなら頂きますよ?」
冬馬「ああ」
亜美「あまとうじゃーん」
真美「おひさー、元気だった→?」
冬馬「相変わらずだな、お前らは」
P「童貞は挨拶されるだけで勘違いするはずだ。なのに何だ、この普段通りというか紳士的な態度は」
北斗「挨拶されるだけで勘違いってマジですか……そこまでは知らなかった」
翔太「というより中学生好きになるってヤバイでしょ」
冬馬「あ?」
春香「今日も良い天気だね」ニコニコ
P「春香の殺人スマイルでいちころよ」
冬馬「何ニヤニヤしてんだよ、何がおかしいんだ」
春香「え゛、そ、そういうわけじゃ……」
P「童貞は笑顔見せられただけでキュウウウンってなる生き物なのに」
北斗「そんな生態が……」
翔太「奥が深いなぁ」
響「どうしたんだー?」
冬馬「……携帯がどっかいった」
響「じゃあ自分も一緒に探してあげる!」
冬馬「あ、見つかった。もういいわ」
響「あ……そう」
P「おい、そこは携帯見つけても見つからないふりするだろ。響の尻とか眺め放題だぞ」
P「そしてちょっと優しくされたから勘違いの王道パターンだろ」
北斗「童貞って人生楽しそうですね」
翔太「確かに、毎日がバラ色って感じ」
冬馬「はぁ?」
雪歩「だ、だからおかえりんこなんです!!」
冬馬「……ただい」
雪歩「……」
冬馬「マントヒヒ。それにしても萩原って変態だったのか」
雪歩「ち、違うんですぅぅ!!プロデューサーに……穴掘って埋まってますぅ!!」ザックザック
冬馬「楽屋の床は修理しとけよ」
P「違うだろ、そうじゃないだろ。お前は気付いて「何言わせるんだ!」と真っ赤になるべきなんだ」
北斗「何故雪歩ちゃんにあの役を」
P「俺の趣味」
翔太「良い趣味してるよ」
P「まあまあ」
あずさ「今度は……こうですか?」ドタプーン
P(ふっ……あずささんの巨乳を前にして反応しないやつは)
冬馬「……」ピッピッ
P(け、携帯いじってる!?おい!こんなチャンス二度とないぞ!)
P「う、うわぁ!あずささんそんなポーズまで!うわー!」
冬馬「……」ピッピッ
翔太「ずっと退屈そうだったね」
P「あいつ男じゃないのかもしれん」
北斗「そんなことより俺も撮影に招待して下さいよ」
冬馬「何で俺に?」
P「渡してくれって頼まれたんだ、それじゃ」
冬馬「……」ガサゴソ
P「ふふっ、俺の手作りお菓子を大事に大事に宝物のように眺めるんだろうな。間抜けめ」
冬馬「……」モグモグ
P「な、何のためらいも無く食った……しかも大して味わってないように見える」
冬馬「全然うまくねえな」
P「ひでえ、手作り補正かかってるんだからもっと反応してくれよ。メッセージカードもスルーしやがるし」
翔太「手作りもダメかぁ」
北斗「深刻だな」
美希「今日のハニーは何だか積極的なの……嬉しいけど!」
P「ちゃんと手も握らないとな」ギュッ
美希「あ……これ恋人繋ぎ……」
P「おんやー、冬馬君じゃないか?こんなところで奇遇だなー」
冬馬「……」
P「あれあれ?どうしたのー?俺達は今ラブラブしてるんだけどー」
美希「何だかハニーのキャラがおかしい……」
冬馬「……お前らトップ目指す自覚あんの?もう少し考えろよ、バカが」
P「あ、はい」
冬馬「こんなんじゃ勝負するまでもねえな。呆れたぜ」スタスタ
北斗「イチャイチャしてた事よりもアイドルとしての姿勢に怒ってたみたいですね」
P「童貞があんなの見せつけられたら血涙流すかと思ったんだが」
翔太「冬馬君変なところで真面目だからね」
冬馬「……んだよ」
千早「……」ジー
冬馬「……」
P「童貞は女の目どころか顔もまともに見れない!間違いなく途中で顔を逸らす!」
千早「……」ジー
冬馬「……」ジー
翔太「ただの睨めっこになっちゃった」
P「童貞なんだったら赤面の一つぐらいしろよ!ボケっ!!」
北斗「何に対して怒ってるんですか」
冬馬「別に」
貴音「それでは失礼します」スッ
冬馬「……」ペラペラ
貴音「……」ペラペラ
P「隣に超絶美人が座ってるのにのんきに台本読んでる場合かよ。ソワソワしろよ」
P「良い匂いするだろ。冷や汗かけよ。挙動不審になれよ」
北斗「目的が何かおかしくなりつつあるような気がするんですが」
翔太「目的なんて元々あってないようなもんだったけど」
翔太「まあまあ、せっかく誘われたんだし」
北斗「おっ、始まるみたいだね」
冬馬「この時期に屋外で水着……頭大丈夫か?」
北斗「そういう趣味の人がプロデュースしてるから仕方ないよ」
翔太「本人達からしたらかなり苦痛だと思うよ、アレ」
冬馬「……思ったよりやるな、だがダンスは俺達の敵じゃねえ。評価出来るのは菊地と我那覇ぐらいだ」
冬馬「歌も複数で歌ってる所はマシに聞こえるがソロパートは全然パワーが足りてねえ」
P「何真面目に解説してんだよ。乳揺れとか生足とかお腹とかお尻とかに注目するだろ普通」
冬馬「そうっすか」
小鳥「冬馬君は彼女いるの?」
冬馬「いない」
小鳥「じゃ、じゃあ好きな人は!?」
冬馬「いない」
小鳥「ふ、ふ~ん!!それならいっそ私と付き合ってみる!!?」
冬馬「いや、冗談でも面白くないし笑えない」
小鳥「」
P「おうおう、これだけ誘われてんのに何言ってんだこいつは」
翔太「それより小鳥さんが演技の割にかなり必死に見えるんだけど気のせいかな」
北斗「それ以上は言うな」
冬馬「いや、全く。帰って良いか?」
小鳥「えっ!?ほら!まだお菓子残ってるでしょ」サワサワ
冬馬「……」
小鳥(腕……背中……胸……腰……お腹……そして次は……ぐふふ)サワサワ
冬馬「……」ポパピプペ
小鳥「あら?どうしたの?」ハァハァ
冬馬「いや、変態がいるから警察呼ぶだけだぜ」
北斗「指示では軽いボディタッチだったのにかなり飛躍してましたね」
P「痴女とか男のロマンだろうが、あいつ頭おかしいんじゃねえのか」
翔太「本当に今更だけどお兄さんとんでもない変態だね」
北斗「最終兵器?」
翔太「てか、もう良いんじゃない?冬馬君が大人でも。あそこまでいくとホモっぽいけど」
P「認めん、冬馬の女に対する意識を通常程度に引き上げなければならん」
P「おーい」
涼「どうも……」
北斗「876プロの涼ちゃんじゃないか。知り合いだったんですか?」
P「まあな」
翔太「お兄さん事務所の壁とか全く気にしないよね」
P「お前らに言われたくない」
冬馬「……?」
涼「こんなにカッコイイ人初めて見ました!わぁー」
冬馬「あ、そう。お前、誰?」
涼「私、秋月涼って言うんです」
冬馬「へぇ、秋月って誰相手でもこういう事言ってそうだな」
涼「い、言いませんよー」
P「可愛い可愛い女の子……ましてや涼ちんにかっこいいって言われたら惚れるしかないのに。生意気な」
北斗「てか彼女何で協力してくれるんですか?」
P「協力しないと、とある秘密をバラすって脅した」
翔太「ひどっ」
P「ついでにうちのアイドルに万が一の事があったらたまらん」
北斗「うわぁ……」
涼「はい。その良かったらメールアドレス交換しませんか?」
冬馬「何で?」
涼「そ、その……えっと、色々教えてもらいたいなぁ!なんて」
冬馬「何を」
涼「その、歌い方とか踊り方とか……ですかね」
冬馬「敵事務所のやつにそんな事してやる義理無いんだけど」
北斗「エンジェルちゃんのお願いを……なんてやつだ」
P「冷たすぎる、可愛い子にアドレス教えてとか言われたら無条件にわっほいすべき」
翔太「仕事考えると冬馬君の方がまだまともだと思うのは僕だけなのかな」
P「よっしゃ!ハートの絵文字たっぷりで「涼です、よろしくお願いします♥」的なの送ってくれ」
涼「えぇ……」
P「やるんだ」
涼「……分かりました」
冬馬「……メールか」スッ
北斗「さあ、どう出る?」
冬馬「……」
翔太「無表情だなぁ」
冬馬「……」スッ
P「無視しやがった、これもうあれだろ。コミュ障だろ」
涼「はい……」
冬馬「……」ピッピッ
北斗「お、今度は返事するみたいだ」
翔太「何かあの顔怒ってない?」
涼「あ、返事来ました」
P「さて、内容は……」
涼「「絵文字使いすぎ。それが先輩に対する態度か?よっぽどぬるい環境なんだろうな」」
P「涼ちんが傷ついたらどうすんだ!」
涼「いや、私は全然。正直自分でもどうかと思いましたし」
北斗「冬馬には俺が後で厳しく言っておくから、許してあげてね」
P「メルアド聞かれたうえに♥いっぱいのメールとか悶絶する、常識的に考えて」
翔太「そうでもないけど」
涼「……えっと、冬馬さん。どうも」
冬馬『何だよ。何か用か?』
涼「いえ、ただちょっとお喋りしたいなって思いまして」
P「女の子と電話、今まで体験した事もないだろう……期待とドキドキで」
冬馬『は?そんな事でかけてくんな。こっちは忙しいんだよ!!』
涼「……きれちゃいました」ツーツー
北斗「許されないな」
P「あいつマジで階段登ったどころか別の世界を切り開いたんじゃないだろうな」
翔太「だったら僕達もお兄さんも危ないね」
涼「まだやるんですかぁ……?」
P「当たり前だ。すまんが付き合ってもらうぞ涼ちん」
北斗「この日は冬馬オフですよ」
P「OK、メールを送るんだ」
涼「はい」
北斗「どう出るか」
涼「……「悪いけどパス」」
翔太「あれー、その日は何も予定無いって言ってたけど」
P「しかも返事もそっけなさすぎる。童貞がデートに誘われるって火山が大噴火するぐらいの衝撃のはずなのに」
涼「すいません!待ちましたか?」
冬馬「……誘ったならせめて時間通りに来いよ」
涼「あ、ごめんなさい……ちょっと準備に……」
冬馬「遊びだからって約束守らねえのはどうかと思うぜ」
翔太「いきなりお説教だよ」
北斗「デートだぞ、待ちに待ったデート。何考えてんだ」
P「せっかくわざと遅刻させて「俺も今来たところだぜ☆」って台詞言うチャンスをあげたのに」
冬馬「良いけど」
涼「はむっ……」ペロペロ
冬馬「……」
P「よしっ!もっといやらしく食べるんだ!」
涼「むぐっ」
冬馬「普通に食え、行儀が悪い」
涼「あっ、ごめんなさい……」
北斗「ほほう……」
P「あれ?前屈みになる事必至なレベルだったよな?」
翔太「というかあんなことさせてるのにドンビキだよ」
SSだとアホでいいやつな事が多いけど
冬馬「何してんだ?」
涼「そ、そのこうすればはぐれないかなって」
P「手を握ればこんなアホ毛すぐに陥落する」
冬馬「ただでさえバレたらヤバイんだ。こういうのはやめてくれ」
涼「そ、そうですよね!」アタフタ
冬馬「!おい、あぶねえ!」ガシッ
ブゥゥン
冬馬「急にフラフラすんじゃねえ!もう少しで轢かれる所だったぞ!」
涼「ごめんなさい……」
冬馬「ったく怪我ねーだろうな。お前車道側歩くなよ、ヒヤヒヤする」
北斗「おぉ……ファインプレイ」
P「くそっ!手繋ぐけど緊張で手汗べったべたになる展開かと思えば……」
翔太「今のは結構かっこよかったね」
冬馬「ああ、俺もだ。出来るだけ金は使いたくねえからな」
P「手作り弁当の食べさせ合い、童貞の理想のシチュだ」
冬馬「お前、料理うまいな。やるじゃん」
涼「冬馬さんの方こそ、料理よくするんですか?」
冬馬「ああ、1人暮らしだしな。その前から親父に飯作ってたけど」
涼「そうなんですか、お父さんお母さんとは別居してるんですね」
冬馬「ああ、と言ってもおふくろはもういないけど」
涼「あ、ぼ、わ、私そんなつもりじゃ、ごめんなさいっ!」
冬馬「別に気にすんな。いつまでもひきずってられねえ、それよりこれどうやって作ったんだ?」
涼「あ、えっと……それはですね」
北斗「地雷だ……」
P「そうだったのか……」
翔太「あーあ……」
涼「そ、そのお家行って良いですか?」
P「1人暮らし、親の心配も必要無いぞ」
冬馬「それだけは絶対無理だ。何と言われてもな」
冬馬「万が一バレたら俺もお前も終わりだ。分かって言ってるのか?」
涼「で、ですよねー」
冬馬「……」ハァ
P「マジかよ」
北斗「今日のデート、最初はともかく中盤以降良い感じでしたね」
翔太「うん、普通にカッコよかったよ」
P「ちくしょおおおおおおお!まだだ!!」
冬馬「まだ何かあんのか?」
涼「その好きです!付き合ってください!!」
冬馬「……」
P(ドッキリでした~!!の看板準備OK)
冬馬「……ファン以外の女の子興味無いから、ごめん」
涼「あ、はい。分かりました。すいません」
冬馬「悪いな。あと忠告しとくがアイドルが誰かと付き合うのは相応の覚悟が必要だ」
冬馬「その事肝に刻んどけよ」
涼「冬馬さんに申し訳ない事たくさんしちゃった……もう、良いですか?」
P「……ああ、お疲れ」
北斗「今度は俺とデートしようね」
涼「あ、はは……失礼します」
翔太「ここまで付き合ってくれるなんてどんな秘密を握られてるんだろ」
冬馬「何だよ急に、天ヶ瀬冬馬に決まってんだろ」
P「うそだっ!!天ヶ崎竜馬だろ!」
冬馬「はぁ?意味分かんねえ」
P「なら鬼ヶ島羅刹か!?」
冬馬「ヶしかあってねぇじゃねえか!」
P「分かった!!ピピン板橋だろ!」
冬馬「誰だよ!!」
翔太「ふ、2人とも落ち着きなよ!会話が噛み合ってないよ」
北斗「はいはい、クールダウン」
P「人聞きの悪い、俺はお前が正常かどうかを確かめただけだ」
冬馬「俺は今トップアイドルになる事以外どうでもいいんだよ」
冬馬「女とチャラチャラ遊んでる暇は無え」
P「納得いかん」
冬馬「別にあんたに納得されなくてもいいけど」
北斗「よしっ、もうやめよう!!」
翔太「うん、冬馬君はトップアイドル一筋だから女の子と付き合ってる場合じゃないって事で終了」
P「ホモが!!」
冬馬「それはあんただろ!!人を散々つけ回しやがって」
北斗「チャオ☆チャオ☆やめやめ」
冬馬「二度と妙な真似すんじゃねえぞ、特にあんただよあんた」
P「くそっ、絶対諦めないからな」
冬馬「聞いてんのかよ」
P「マジでホモなのか……それとも……」
冬馬「ったくあのプロデューサーの事だ、絶対何か仕掛けてくるな」
冬馬「まあどうでもいい、俺は俺の道を突き進むだけだ」
冬馬「YESロリータNOタッチ」
終
乙
Entry ⇒ 2012.11.08 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
久「見つめ合うと素直にお喋りできない…」
久「うーん」
久「うむむ」
久「うがー」
ゴロゴロ
久「あーもう!電話かけるだけで、何でこんなに緊張するのよ!」
久「ってか初期アドレスか…。迷惑メールとか多そうね」
久「ぐぬぬ…」
久「えぇい!通らばリーチの精神よ!」
プルルル、プルルルー
久「なかなか出てくれないわね…。やっぱり私からの電話とか、迷惑なのかしら?」
久「後、20秒待って出なかった、また今度にしよう…」
ドキドキ…、ドキドキ…
ガチャ
久「出、出た!?」
池田『知ってるし、竹井さんだろ?名前くらい液晶に出てるし』
久「池田さん!?なんで貴方が、美穂子の電話に出て来るのよ!」
池田『色々あるんだし。キャップー、清澄の部長からですー』
池田『この電話マークついてるボタンは押さないで下さいし。電話が切れますから』
美穂子「わ、わかったわ!」
久「あっ…私、清澄高校麻雀部の竹井久です。この前の合宿ありがとうね」
美穂子『いえいえ、こちらこそありがとうございました。風越も有意義な時間を過ごせました』
久「それでね…。ぜひ…、合同合宿を引き受けてくれたお礼に個人的なお礼がしたいのだけど」
美穂子『お、お礼ですか!そんなに気を使って貰わなくて、結構ですよ!私達も勉強になりましたし』
久「そ、そうよね!お礼とか堅苦しくてごめんなさいね!」
美穂子『・・・』
池田「キャップ、駄目ですし。そこは遠慮する所じゃありませんよ」
未春「そうですよ。勇気を出して電話して来てくれたのに、遠回しに断るなんて」
久「じゃあ…、またいつか練習試合でも…」
美穂子『ま、待って下さい!』
久「えっ?」
美穂子『わ、私がお礼したいんです!』
美穂子『はい…、今度の日曜日にもしお暇なら…』
久「うん!暇!すごく暇!部活だって中止にしちゃう!」
美穂子「それはちょっと…」
・
・
・
久「じゃあ、私の見たい映画に付き合ってくれるって事?」
美穂子「はい、上埜さんが見たい映画でいいですよ」
久「もう上埜じゃないのだけどね」クス
美穂子『はい、楽しみにしてますね』
ガチャ、ツーツー
久「・・・」
久「・・・むふ」
久「やったーーーーーーー!!きたーーーーーーー!!電話して良かったーーーーーー!!」
ゴロゴロ
久「うひひー、これよーこれよー。これこそが高校生の青春よー」
久「こうゆう時に頼りになりそうなのが…」
久「咲。駄目ね。本屋なら詳しそうだけど…」
久「優希。食べ物の事なら詳しいだろうけど…」
久「まこ。むしろ雀荘以外で、見かけた事ないわね…」
久「和。うん、あの子しか居ないわね!この時間ならネトマにログインしてるはず!」
和『部長…じゃなくて、ひさっちじゃないですか、珍しいですね。ネトマに現れるなんて』
久『実はね、相談があるのだけど』
・
・
・
久「とゆーわけで、恥ずかしながら、人生で初めてのデートなのよ///」
和「へぇー、それはおめでとうございます」
久「で、後輩に聞くのは忍びないんだけど、こんな時に頼りになりそうなのが和くらいしか居なくて」
和「私も恋愛経験が豊富なわけではありませんよ」
久「でも博識じゃない」
かなりいいな
久「ホントに!流石ね!」
和(咲さんとの妄想デートルートが、私には108式ありますからね。一つくらい部長に譲りますよ)
和「デートの前に、部長の洋服からですね」
久「ユニクロとシマムラでしか買った事ないわよ」
和「あの…、お化粧品とかどこで買われてますか…」
久「100円ショップの使ってるけど?」
久「ひどい!?」
和「土曜日に、私が服とお化粧品をアドバイスしますね。予算はどの程度ですか?」
久「ちょっと、待ってて」
ガチャーン!パリン!
久「ひーふーみー…、二万円くらいあるかな?」
和「二万…。デートで一万円使うとして、一万円くらいですかね」
久「デートって一万円も使うの?」
和「今回は部長の奢りですよ。まさか福路さんに出させるつもりですか?友達と遊びに行くんですか?」
久「むむむ、確かに友達同士だとワリカン。デートだと奢りってイメージがあるわね」
和「これは必要投資です。麻雀でも、聴牌目指してドラを捨てたりする事もありますよね」
久「そうね。ドラも要らない時は捨てないとね」
久「おっけー。この借りはいつか返すわ」
和「はい、いつか楽しみにしてますね」
・
・
・
土曜日の夜
久「あぁ…、重いわね…。よくこんなにも買えたものね」ドッサリ
久「でも、和には感謝しなくちゃね。ふふふ、明日がいよいよ本番だわー」
久「さて、買った化粧品を一度試してみましょう」ペタペタ
久「うぅ…、あんまり寝れなかった…」パチパチ
久「こんな事、今まであったかしら?麻雀の大会前日とかは、グッスリ寝れたような気がするのだけど」
久「目にクマが…。でも化粧で隠せるみたいね。良かった」ヌリヌリ
久「うん、ばっちし。流石、和ね。こんな事態も想定してたのかしら?」
久「さて、次は服っと…。和が選ぶのはフリフリの服ばっかりなのよね…。流石にこの年になってそれは恥ずかしいから、普通のジーパンと高かったシャツ」
久「うーむ、ちょっと男の子っぽいけど…。まぁ、いいか。しかしこのシャツ高かったわね。一枚で5000円って…」
久「そして…、大事のがこれ!ブレスケア!」
久「和が、万が一にキスする事になって、息が臭かったらそれだけでチョンボですよって言うから///」
久「でも、まだ告白もしてないのにキスとか、早過ぎるわよね。まぁ和のお守りみたいな物だと思いましょう」フフフ
久「さて二時間前ね。一度、今日のデートコースを下見しときましょう」
久「あっ、香水つけるの忘れてた。普段、つける事無いから危なかったわ」プシュープシュー
久「我ながら完璧だわ。麻雀で言うと五面待ちくらいあるわね」
久「和が、待ち合わせ時間まであのミスドで過ごすといいですよって」
久「なるほど。ここなら、待ち合わせ場所が見えるから、美穂子が現れたら、すぐにわかるわね」
和『ちなみに福路さんが着いたら、必ず今来た所って言うように!』
久「ふふふ、それくらい私にもわかってるわよ。さて、待ち合わせ時間まで後一時間。音楽でも聴いてましょう」
美穂子「上埜さんは…、まだ着いてないみたいですね…。良かった」ホッ
久「おっ、流石優等生。しっかり15分前行動かぁー。後、可愛いオーラがすごいわね。遠目で見ても、この辺で一番カワイイ」
久「へんな男にナンパされないか心配だわ。急ぎましょう」ガタッ
久「ごめんなさい!待たせてしまったかしら?」
美穂子「いえいえ、私も今着いた所ですから」
久(あっ!?しまった!私の台詞を言われてしまった)
和『まず福路さんがどんなカッコでこようとも、服装と髪型を褒めましょう』
久「えっと…えっと…その…、今日は天気が良くてとても映画日和で…」
美穂子「ふふふ、上埜さん。今日はオシャレな服ですね。麻雀だけじゃなくて、私服もカッコいいですよ」
久「は、はぅ///あ、ありがと…」
久「・・・」ボー
久(しまった…。頭が真っ白になってしまった…)
美穂子「さぁ、行きましょうか」テクテク
久「・・・」テクテク
久(美穂子との距離が、10cmくらい。これが今の私達の距離なのね)
久(はぁ…、手を繋いだりとか出来るといいけど)
モモ「せーんぱい。手、握っていいっすか?」
ゆみ「あぁ、いいぞ。でないとモモと見失うからな」ギュッ
久(あれぇー、あんな所にゆみとモモちゃんが居る)
キャップの肩をちょっとだけ、ツンツンしただけです
美穂子「はい?あっ加治木さんと…」
久「よく見えないけど、一年の子ね。あの二人、手を繋いでるけど付き合ってるのかしら?」
美穂子「さぁ?それはわかりませんけど、手を繋ぐくらい私も後輩とよくしますよ」ニコッ
久「ええっ!?池田ァ!?」
久「あっ・・・あのっ!」
美穂子「はい?」ニコッ
久「///」カァー
久(駄目!美穂子が、開眼してるから正面向いて、お喋りが出来ない!)
美穂子「なにか?」
久「えーと、そのアレよ。アレ。先日の、赤土プロのデビュー戦の話よ」
美穂子「はい、見ましたよ。すごかったですねー。負けはしましたけど、いい麻雀でしたね」ニコニコ
和『沈黙はNGですよ。とにかく喋って、喋って、喋りまくって下さい』
久「うーん、難しい。優希やまこ相手なら、そんな事感じた事ないのに」
美穂子「ところで、どんな映画見るんですか?」
美穂子(上埜さんだと、アクションとかファンタジー映画でしょうか)
久「あっ…この恋愛映画を…」
美穂子「へぇー、イメージと違いますね」
久「えっ!?この映画、駄目だった?」
美穂子「いえいえ、未春が感動したって言ってましたから、私も見たいと思ってましたよ」
美穂子(ホントは北野監督の映画見たかったけど、言えませんね)
美穂子「すいません、大人二枚下さい」
睦月(店員)「うむ」
久「あれぇ…ないわね。おかしいな。何度も確認したのに」ガサゴソ
美穂子「上埜さん、はい。チケットです」
久「へっ?ありがとう、お金、今払うわね」ガサゴソ
美穂子「いいですよ。私のお礼ですから、私の奢りです」ニコニコ
久(こうなったら、和に緊急電話よ!)
久「ごめん、私。ちょっと電話してくるわね」
美穂子「はい、どうぞ。私はここで待ってますね」
久「とゆーわけなのよ。和」
和「なにしてるんですか…。とりあえず、この後、ポップコーンとジュースくらい持って帰えるくらいの気を利かせて下さい」
久「聞いた方が気が利いてるわね」テクテク
久「ただいま。ごめんね、長電話で」
美穂子「いえ、いいですよ。上埜さんはよくコーラ飲んでましたよね?コーラとポップコーンを買って来たのですけど、ご迷惑だったでしょうか?」ニコッ
久「へぇー、気が利くわね…ってえっ?」
美穂子「なにか?」ニコニコ
久「い、いや。ありがとう///」
ここからもキャプの妄想
美穂子「うふふ」ニコニコ
和『泣けると評判の映画ですから、映画が終わったら必ずハンカチを差し出してあげて下さいね』
・
・
・
映画終わり
久「えぐっ…、えぐっ…」ポロポロ
久「なんで主人公は浮気ばっかりして、ヒロインの子は精神病院に隔離されなきゃいけないのよ」ポロポロ
久「こんなのおかしいよ、間違ってるわよ」ポロポロ
久「ふぇ?」
美穂子「安物のハンカチですけど、顔を拭いて下さい。せっかくの美人が台無しですよ」
久「ありがとう」チーーーーーン
久「あっ、鼻をかんでしまったわ!?」
美穂子「安物ですから、気にしないで下さい」ニコニコ
久「ごめんなさいね。弁償するから…」
美穂子「いいえ、弁償なんてとんでもない」
美穂子「どうしたんですか?元気ないですね?」
久「いやぁ、麻雀って思い通りに手が進まないと、疲れちゃうわねって思ってさ」
美穂子「そうですね。でも上埜さんは例え待ちが悪くても、諦めないじゃないですか」ニコッ
久「麻雀はね…。そっちの方が得意だから…」
ポタポタ、ポタポタポタ
久「やだ…、雨!?」
美穂子「あっ、私、折りたたみ傘持ってますよ。でも、結構降りそうだから、雨宿りしませんか?」
久「そうね!」
美穂子「ここから遠くない所に、無人のバス停があります。屋根もついてますし」
久「わかった、走るわよ!」
美穂子「はい」
ザーーーーーザーーーーー
美穂子「山の天気は変わりやすいですからね、仕方ないですよ」
久「でも美穂子が折りたたみ傘持ってたおかけで、ほとんど濡れずに済ん…はっ!」
美穂子「ちょっと…、濡れちゃいましたね。服を絞った方がいいかしら」ビチャビチャ
久(最低だ…私。美穂子の事なんか全く気にしないで、ただガムシャラに走ってた…)
和『へぇー、ロマンチックですね。いいですねー、女の子はそうゆうシチュエーションに弱いですし』
久『でしょー。もうそうなったら押せ押せよ!』
和『はいはい、まだレストランの予約もしてないですよね。結構、人気ありますよ?あそこって』
久(無理!無理無理無理無理!今さら、どの面下げて、ご飯なんかに誘えるの!?)
久(告白?玉砕もいい所だわ…。)
久(もうヤダ…、今すぐ帰りたい)
久「はぁ・・・」ションボリ
久(それに比べて美穂子はすごいわね…。風越の麻雀部って部員何十人居るんだろう?)
久(それをまとめあげる美穂子。池田さんの話では、洗濯とかも三年生で唯一するらしいし…)
久(清澄は…)
京太郎「もー、洗濯くらいしましょうよ!」
久「えっ、ヤダ。手が荒れるじゃない」
優希「私、洗濯なんかした事ないじぇ」
久(女子力ゼロ!)
久(私が普通に恋愛なんて出来るわけないじゃん!)
久「しかも…相手は極上の高嶺の花ね…」チラッ
美穂子「ちょっと、服を絞りますから、こっち見ないで下さいね///」ヌギヌギ
久「あっ、ピンクのブラ」
美穂子「み、見ちゃダメですよ!」
美穂子「・・・まぁ、同性ですしね。見られても、私が恥ずかしいって事くらいですが///」
久「おもち…、大きくて羨ましいわ」
美穂子「上埜さん!?」
久「ごめん!つい、本音が」ペコペコ
ドクン!
久(しかも欲情してしまった…。なんて最低なの…。私)
美穂子「えっ…はい」
久「美穂子は蒲原さんの携帯番号わかるかしら?」
美穂子「携帯電話には華菜に登録して貰いました。しかし、私は携帯電話を持ち歩かないので…」
久「あぁ…、そうだったわね。電話以外の機能を使うと壊れるんだっけ?」
美穂子「はい…。昔から電化製品は苦手で。携帯もよく壊してしまいます」
美穂子「えっ…、蒲原さんに悪いですよ」
久「えぇ、確かに。無理だったら仕方ないけど…」
美穂子「まだデートも終わってませんよ?私、おいしいパスタ屋さんを知ってます。良かったら、この後晩御飯も食べに行きましょう」
久「ごめんなさい。無理。もう、私歩いて帰るから…」ポロポロ
久「別に濡れてもいいわよ…」
美穂子「風邪を引いてしまいます!」
久「大丈夫よ。もう三年生で引退もしたし、風邪引いても誰にも迷惑かけないわよ」
美穂子「私が迷惑です!」
久「そうよね。ごめんね。今日は、付き合わせちゃって。見たくもない映画でつまんなかったでしょ?」
久「…嘘は辞めてよ。私なんかと居るより後輩とかと居る方が楽しいと思うわよ」
美穂子「そんな事、私が一度でも言いましたか?」
久「…顔を見ればわかるわよ」
美穂子「わかってない!全然、わかってくれてませんよ!上埜さんは!」
久「美穂子は私と居ても、つまんない!退屈!そう思ってるんでしょ!?」
パチン!
久「ッッ!?」
久(えっ…、私、今叩かれた?)
美穂子「…」ポロポロ
美穂子「この服は、後輩のオシャレな子にアドバイスして貰って、買いました!」
美穂子「映画に行くのがわかってから、映画館周辺も調べました!おいしいパスタ屋さんも教えて貰いました!」
美穂子「ま、待ち合わせ時間も早く来すぎてしまって…、三時間も前に着きました…。時間潰すの大変でしたよ」
久(そっか…、美穂子も私と同じだったんだ…)
美穂子「夜も寝付けなくて…」ポロポロ
ゴシゴシ
美穂子「ふぇ!?」
久「あら、キレイな瞳なのにでっかいクマが出来てるわよ」
美穂子「お化粧で、誤魔化せると思ってたんですが…」
久「見て、私も」
美穂子「あらー、上埜さんにもクマさんが。寝てないんですか?」
久「おかげ様でね。私も緊張しちゃって…」
美穂子「私にですか?」
久「…うん。好きな人と初デートだからね」ボソッ
久(聞えてなかったか…。よーし、こうなったら言っちゃえ!)
久(私の地獄単騎待ち!きっと、上がり牌は、一つしかない!他の誰かが持ってるかもしれない、王牌に埋もれてるかもしれない…)
久(でもこっちの方が、上がれるような気がするのよね!)
部長が予約してたレストラン
和「部長、遅いですね。もう予約時間過ぎますよ」モグモグ
咲「ホントだねー。けど、告白シーンを盗み聞きなんて良くないよー」モグモグ
和「とか言いつつ、咲さんも来てるじゃないですか」モグモグ
咲「いやー、私も気になってね」モグモグ
咲「ふーん。京ちゃんが私に麻雀で勝つ確率くらいじゃない?」
和「ですね。須賀君が宮永照さんから役満をロン上がりするくらい」
咲「私、お姉ちゃんから役満直撃を貰った事はあるけど、やった事はないなー」ハハハ
和「部長本人は、四暗刻地獄単騎待ち上がるくらい難しいって言ったんですよ」
咲「ないね。せいぜい国士無双13面待ちくらいかな」
和「ですね。まぁ、どこで告白しても成功しますよ」
和「ところで、咲さん。私、ずっと咲さんが好きなんですけども?」
美穂子「///」カァー
久「返事無しね…。ごめんね。告白なんかしちゃって」ペコリ
久「いやー、いい夏の思い出が出来た!青春ってこうよね!」
久「美穂子は、美人で頭も良くて気も利くし、どんな人でも選びたい放題よね…」
久「さぁて、負け犬は、雨の中走って帰るか…」グスングスン
和「忘れて下さ…いえ、やっぱり大好きです。友達としてではなく一人の女として、雀士として」
咲「うん、ありがとー。私もずっと好きだったの///付き合およ」
和「ファッ!?」
・
・
・
ガシッ
キャップ、部長の右腕を掴む
久「・・・なに?離してよ」
美穂子「・・・」フルフル
久「じゃあ、何?ずっと友達で居て下さい?それとも他に好きな人が居ますとか?」
久「同性に告白されたのがそんなに気持ち悪かったわけ?」
久「ごめんって言ったじゃない!私だって、頭おかしいと思うわよ!共学だけど、毎日美穂子の事考えちゃうんだもん!」
久「美穂子と同じ学校だったら…、美穂子が男だったら…」
久「色んな妄想したわね。気持ち悪いでしょ?」
美穂子「・・・」フルフル
美穂子「私の目を見て下さい」
久「嫌よ。美穂子の目、キレイ過ぎて、正面から見つめると照れちゃうの。私が一番美穂子のパーツの中で好きな部分なのよ」
美穂子「・・・」カイガン
美穂子「見て、久」
久「ったく、しょうがないわね」クルッ
ハムっ!
久「ッッ~~~~~~~!」
むちゅーーーー
美穂子「もう一回しませんか?///」
久「だだだだだ、だって、キス?えっ?私の口と美穂子の口が触れ合ったわけ!?」
美穂子「これから何度だって、しましょう。まずは、もう一度」ズイ
久「息が臭いかもしれないから、ブレスケアさして!」
美穂子「却下です」
・
・
・
和「咲さん、我慢出来ないので、そこの障害者用トイレで、イチャイチャして帰りましょうよ」
咲「えっ…ヤダよ」ドンビキ
久「明日は、美穂子とデートだっけ?あー、オシャレ?ないない、必要ない」
久「いけない。化粧するの忘れてた。まぁいっか。ふぁあー」
久「パチンコのイベント日なのよねー。美穂子は一円パチンコでも座らせときましょう」テクテク
久「待ったー?」
久「いいじゃない。それくらい。あら、髪型変えたの?」
美穂子「久とのデートですからね。美容院で気合入れて来ました!」
久「ご苦労さん。流石、私の嫁」
美穂子「久もちゃんとすれば、美人なのに…」
久「んー、そのうちねー」
美穂子「手、繋ぎたいです。いいですか?」ギュッ
久「嫌だって、言っても繋ぐんでしょ?」ギュッ
美穂子「もちろんですよ!」
終わり
一理ある
乙乙
部長はダメ人間な方がいい
Entry ⇒ 2012.11.07 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
P「音無さんが風邪で寝込んでいる?」
P「大丈夫なんですか?」
高木「体を起こすのも辛いそうだ」
P「それは心配ですね」
高木「そこで君に折り入って頼みがある」
P「はい」
高木「家に行って看病してやって欲しい」
高木「私はこれから大事な用事がある」
高木「アイドル達に任せて風邪でも移ったら大変だ」
高木「律子君は竜宮小町の営業で地方へ行っている」
P「……」
高木「君だけが頼りなんだよ」
P「……わかりました」
…
小鳥「……けほっ」
小鳥「んん…」
ピピッ
小鳥「38.5……」
小鳥(さっきより熱がある……)
小鳥(私、このまま死ぬのかなぁ…)
ピンポーン
小鳥(こんな時……誰かがいてくれたら)
ピンポーン
ピンポーン
ガチャ
P「鍵開いてる……不用心だなぁ」
P「お邪魔します」
小鳥(頭がぼーっとする……目が霞んできた)
P「いたいた……音無さん?」
小鳥(独り身のまま死ぬのかぁ……)
P「思ったより辛そうだ…」
小鳥(事務所のみんな……ごめんなさい)
小鳥(そして…)
小鳥「プロデューサー……さん」
P「はい」
小鳥(お迎えが来たのかしら……プロデューサーさんに似てる人がぼんやりと見える)
P(意識が朦朧としてるな……呼吸も荒い)
…
小鳥「……ん」
小鳥(ひんやりして気持ちいい……)
小鳥「生きてる……」
P「風邪で死ぬ訳ないでしょう」
小鳥「そう、ですよね」
P「おはようございます」
小鳥「……!?」
P「今更ですね……」
P「ずっとうわ言のように『プロデューサーさん』って言い続けてたのに」
小鳥「え」
小鳥「そ、そんな事言ってましたか……?」
ピトッ
小鳥「ひぁう……っ!?」
P「かなり熱いですね……顔も赤い」
小鳥(プロデューサーさんのおでこが顔がちかちかちち近い)
P「薬を飲んでもう一度寝た方が良さそうですね」
P「先ほど台所をお借りしてたまご粥を作りました」
小鳥「あ、ありがとうございます」
P「はい、あーん」
小鳥「!?」
P「……食欲が無くても食べなきゃ駄目ですよ」
P「あーん」
小鳥(え? ええ!?)
小鳥(ないない! それはない!)
小鳥「……つっ!」
小鳥「熱い…」
P「そんなに急いで食べなくてもいいですよ」
小鳥(この熱さ……夢じゃない)
P「ふー、ふー………はい」
小鳥(やっぱり夢かもしれない)
P「お粗末さまでした」
P「さ、風邪薬です」
小鳥「んっ、んっ……ふう」
P「あとは安静にして一眠りすれば回復してると思います」
小鳥「ごめんなさい……何から何まで」
P「いえいえ」
小鳥「あ……」
P「お大事にどうぞ」
キュッ
P「……」
小鳥「……」
P(袖を掴まれた)
P(帰りにくい……)
P「しばらくは側にいますよ」
小鳥「……!」パアァ
P(一喜一憂する姿がいちいち可愛いなぁ)
P「側にいると言ったものの……後は寝るだけですよね」
小鳥「……あ」
小鳥「その…汗を拭かないと」
P「」
小鳥「はい」
シュル パサッ
小鳥「んっ………」
P(エロい)
小鳥「あの、プロデューサーさん」
小鳥「背中……拭いて下さい」
小鳥「お願いします……」
P「綺麗な背中……じゃなくて!」
小鳥「……」
P「……」
P(覚悟を決めろ……背中を拭くだけだ)
P(やましい気持ちはいっぱいあるけど)
ピト
小鳥「ひぁ……」
P「……」
小鳥「……んっ」
P「…………終わりました」
小鳥「ありがとうございます」
P(よくぞ耐えた俺)
P(エロさが半端じゃなかった……)
小鳥「はい」
小鳥「…………」
P「心配しなくても、眠るまで側にいますから」
小鳥「……えへへ」
P(可愛いなぁ)
小鳥「おやすみなさい」
P「はい、おやすみなさい」
小鳥「……すぅ」
P「手を繋いだままだ……帰れない」
小鳥「んん…」
P「まあいいか」
小鳥「えへへ……プロデューサーさん…」
P「はやく良くなって下さいね、音無さん」
小鳥「……んう?」
小鳥「あ、体が軽い」
小鳥「だいぶ良くなったかな?」
P「……zzz」
小鳥「プロデューサーさん…ずっと居てくれてたんですね」
小鳥「……」
小鳥「プロデューサーさんのそういうところ、大好きですよ」
P「……」
小鳥「起きてる時に言えたらなぁ」
P(今俺は寝ている……今俺は寝ている)
P(なにも聞いてはいない)
小鳥「おはようございます」
P「だいぶ回復したみたいですね」
小鳥「はい」
P「今日一日は様子見で、大丈夫なようであれば明日から復帰して欲しいそうです」
P「では今度こそ帰りますね」
小鳥「本当にありがとうございました」
P「いえいえ」
P「え?」
チュッ
P「………えっ?」
小鳥「私の精一杯の気持ちです」
小鳥「風邪を移すといけないから、頬で我慢して下さいね」
P「あ、はい」
P(案の定、後日風邪を引いた)
P(付きっきりで小鳥…さんが看病してくれた)
おわり
小鳥さん可愛いよ小鳥さん
Entry ⇒ 2012.11.07 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
魔法少女まどかフロンティア 2
引用元:
まどか「行く所といったら、こういう工場とか、遺跡みたいなシップとかばっかりで」
まどか「レオナルド博士は人間だと思ったら、やっぱりロボットだったし」
レオナルド「いやあ、照れるね」
ほむら「え、元人間なの」
レオナルド「よろしくね」
まどか「それにみんな、途中からなんだか滅多切りにするみたいなプログラムを覚えちゃって」
T260「プログラム名『多段切り』です」
まどか「黙って切り続けるマシーンの後をついていく私……」
ほむら「つ、辛かったでしょうね」
まどか「私もうキャベツの千切りとかできないかも……」
ほむら「もう、大丈夫よ。千切りも私がするわ」
まどか「うん……。ふつつか者ですが、よろしくお願いします」
ほむら「えっと、これがT260で……」
ナカジマ零式「よろしくで~す」
ほむら「戦闘機型? 癖の強い感じね」
特殊工作車「お役に立ちます」
ほむら「こっちは戦車が近いのかしら」
レオナルド「僕はレオナルド。人格データをこの体に移したんだ」
ほむら「人型のボディタイプね」
ほむら「え? い、いえ普通よ?」
まどか「……この中なら、どれが一番いい?」
ほむら「そうね、やっぱり戦車型には親しみを感じるわ」
ほむら「でも、零式に込められたロマンは看過できない……」
中島社長「おお! 分かってくれるか!」
ほむら「ま、まあ……」
社員「そうだよ、ロマンなんだよ!」
ほむら「実用性も大事よ」
白薔薇姫「私はまったく理解できません……」
まどか「や、やっぱりほむらちゃんは頼りになるなあ」
ほむら「別に特別兵器が好きなわけじゃないわ。触れる機会が多いってだけ」
アセルス「どうだか。ところでほむらはここに何のようがあったんだ?」
ほむら「そうだったわ。まどかと再会できた喜びですっかり忘れていたわ」
ほむら「これを組み立ててほしいのよ」
アセルス「なんて大きさだ……」
T260「ほむら様の格納能力は特筆に値します」
レオナルド「同感だね」
中島社長「こ、これは、我が社が夢にまでみながらモンド司令に妨害された……」
社員「乗り込み型巨大メカ!」
中島社長「き、君はどこでこれを!」
ほむら「でも、さすがに大きすぎたわね。パーツをパージできる仕様でよかったわ」
ほむら「組み立ててもらえるかしら」
中島社長「もちろんだとも!」
まどか「あの~ほむらちゃん?」
ほむら「何かしら、まどか?」
まどか「その、兵器のことなんだけど……」
ほむら「?」
まどか「パトロールの人が探してたよ……?」
まどか「それはよかったんだって。でも持ってっちゃだめだって……」
ほむら「ああ、警察の側からすればそうでしょうね……」
ほむら「仕方ないわ。ある程度は返しましょう」
ほむら「でもまあ、少しくらい報酬としてもらってもいいわよね……」
まどか「ほむらちゃんは、武器がいるもんね」
ほむら(20%くらい返しましょう……)
白薔薇姫「はい……」
アセルス「行こう。ここでは戦えない」
まどか「ほむらちゃんは、すごい人たちと一緒だったんだね」
まどか「二人ともお芝居に出てくる人みたい」
ほむら「妖魔と半妖だそうよ」
まどか「な、なんだか怖そうだね……」
まどか「か、駆け落ち!? 思ったよりすごい感じ……」
ほむら「それで、追っ手が襲ってくるのだけど……」
ほむら「まあ、本人から聞いた方が……」
ほむら「あれ、いない……?」
まどか「……?」
アセルス「今度はお前か……」
白薔薇姫「セアト、退いてはもらえませんか?」
セアト「……私に適うつもりでいるのか?」
セアト「ラスタバンの力を取り込んだ、この私に!」
白薔薇姫「ラスタバン!? 彼に何をしたのです!」
セアト「ふん、死んではいない。やつにはお似合いの醜態だな」
アセルス「貴様……!」
ほむら「! また追っ手のようね……」
まどか「た、助けないとだめだよね!?」
ほむら「まどか、あなたは……」
まどか「ううん、私も……」
ほむら「……気をつけてね」
ほむら「よし。ロボット軍団出撃よ」
まどか「え!?」
T260「了解しました」
ほむら「戦闘システム起動!」
まどか「やっぱりロボット好きだよね!?」
セアト「あるいはあの方にも……」
アセルス「……構えろ、セアト」
アセルス「私はお前を許さない……!」
セアト「こい、小娘! 貴様も……」
『多段多段多段多段切り』
白薔薇姫「!?」
『幻魔』
アセルス「食らえぇぇ!」
セアト「お、おのれ、機械などが……!」
セアト「消え去るが……」
ほむら『タイムリープ』
ほむら「……これひどいわね」
セアト「」
まどか『イド・ブレイク』
まどか「当たれ!」
アセルス「お前なんかぁぁ!」
『神速三段突き』
ほむら「一斉攻撃!」
T260「了解しました」
『多段多段多段多段切り』
まどか「うぅ、やっぱり怖い……」
アセルス「また、助けられてしまったな……」
白薔薇姫「……」
ほむら「なんだかすごく悪いことをした気がするわ……」
まどか「だよね……」
アセルス「気にしなくていい。セアトが消滅したのは、私の力のためだ。上級妖魔はそうでなくては殺せない」
アセルス「君たちはその手助けをしてくれただけ」
ほむら「いや、それもあるけれど……」
アセルス「……」
白薔薇姫「ほむらさん、あなた方とはここでお別れです」
アセルス「そうだね。思えば私たちは君たちを巻き込みすぎた」
アセルス「ごめん、それとありがとう」
ほむら「……あなたたち、大丈夫なの?」
アセルス「……大丈夫だよ」
白薔薇姫「みなさんのことはわすれません……」
まどか「……」
まどか「あの二人、本当に大丈夫なのかな……?」
ほむら「仕方がないわ……」
ほむら「口出しできることじゃない……」
まどか「でも、もっと危ないことになるんだよ……?」
ほむら「妖魔の君に挑むのでしょうね」
ほむら「……無事を祈りましょう」
まどか「これからどうしよっか」
ほむら「クーロンで杏子が待ってるの。彼女と合流しましょう」
まどか「あ、杏子ちゃんとも会えたんだ!」
ほむら「ええ、今はモンスターの子と指輪を集めてる……」
まどか「指輪?」
ほむら「なんでも、指輪の力を集めれば故郷が滅びずに済むそうよ」
まどか「ほ、滅び……?」
ほむら「リージョンって大変よね」
まどか「レオナルドさん、次はどこに行くんですか?」
レオナルド「T260君の任務に関して、これ以上の情報はトリニティの中枢に行かないと手に入らないだろうね」
レオナルド「つまりタルタロスに潜入することになる」
まどか「タルタロス?」
T260「トリニティの工業施設です。極秘情報の端末が存在します」
レオナルド「さすがにすぐに突入とは行かない」
レオナルド「君たちは友達と会ってくるといい」
T260「私たちは潜入の準備を行います」
まどか「そっか、そうする……」
まどか「でも、行くときは言ってね。協力するから……」
ほむら「……まどかはやさしいわね」
ほむら「クーロン行きは、欠航……?」
まどか「何かあったんですか?」
係員「詳しいことは分からないのですが、クーロン周辺でシップが消失したとのことで……」
係員「タンザーが現れた可能性もありますので、安全のためクーロン行きは一時休航となっております」
ほむら「タンザー?」
係員「リージョン間に現れてる怪物です。飲み込まれたシップは二度と出ることはできないとか……」
まどか「ふわぁ、怖いね……」
まどか「……タルタロス、行く?」
ほむら「……今は待つしかないわね。引き返しましょう」
ほむら「中島製作所へ」
まどか「えー……、街の方に行こうよ!」
ほむら「そ、そうよね!」
京
和風情緒あふれるリージョン
心術の修行所がある
さやか「うわー、本当に京都って感じだあ……」
さやか「リージョンって何でもありなんだね」
さやか「あ、お土産物売ってる! なんか買ってこうかな」
「キー!」
「キー!」
「キー!」
さやか「なにあれ……。ここの名物?」
さやか「全身タイツで、あのかけ声」
さやか「あー、ヒーローショー的な?」
さやか「みんな小屋に入っていく……」
さやか「何、あれ楽屋なの?」
さやか「お? さらに男の人が……」
さやか「ヒーロー役かな……?」
さやか「あ、女の人も一緒だ」
さやか「金髪で、グラマー。ヒロイン役?」
さやか「見たことある髪型……」
さやか「ん!?」
レッド「マミ、間違いない。ここはブラッククロスの工場だ」
マミ「ええ。後をつけて正解だったわ……」
レッド「この植物、麻薬の原料だぞ……!」
レッド「くそ、許せねえ!」
マミ「許す訳にはいかない!」
『『変身!』』
マミ「ねえ、ティロカイザーは止めにしない?」
アルカイザー「いいやだめだ、ヒーロー枠ということでギリギリ正体を明かしていいことになってるんだから!」
アルカイザー「ヒーローの掟なんだ!」
マミ「私は魔法少女なんだけど……」
アルカイザー「コラボなんだ!」
アルカイザー「そういうことにしないと、俺の記憶が消される!」
アルカイザー「だから、君はティロカイザーだ!」
アルカイザー「!」
マミ「!?」
マミ「み、美樹さん!?」
さやか「マミさん! お久しぶりです!」
マミ「ああ、やっと会えた……!」
マミ「心配したんだから……」
さやか「感動の再会!」
さやか「ヒーローショー? いや、でもこの工場……」
アルカイザー「か、彼女は?」
マミ「私と同じ魔法少女で、美樹さやかさんと……」
アルカイザー「き、君は私の変身するところを」
さやか「あ、見ました」
アルカイザー「ああああ」
さやか「あ、はい。しますけど」
さやか(なにこの人)
アルカイザー「……よし、君は今この瞬間からサヤカイザーだ」
アルカイザー「正義を守るんだ!」
さやか「おー! ってなにそれ! マミさん説明してください!」
さやか「ブラッククロスっていう悪の組織があって」
さやか「レッ、いやアルカイザーさんはそれと戦う正義のヒーロー……」
さやか「……マジですか?」
マミ「ええ、既に私たちはブラッククロス四天王のうち二人までを倒したわ」
さやか「おおお、やっぱリージョンってなんでもありなんだ……」
マミ「そして、ヒーローは正体を知られてはいけないの」
さやか「それじゃ、私もマミさんもだめじゃないですか?」
さやか「はあ……」
アルカール「セーフ」
さやか「ん!?」
マミ「どうしたの?」
さやか「い、いや今なんか……」
マミ「?」
さやか「あー、や、やっぱり気のせいです!」
さやか「……まあ、いいですけど」
マミ「美樹さんはどうしていたの?」
さやか「……裏の組織で戦っているんです」
マミ「! 美樹さん……?」
さやか「といっても魔法少女を探してるだけですけど! しかも初めたばっかりですけど」
マミ「……危ないこと、してないでしょうね」
さやか「マミさんこそ、こんな危なそうな……」
マミ「そうだったわ。ここは敵の基地!」
さやか「浮かれちゃいましたね」
アルカイザー「中枢部を破壊するんだ!」
さやか「……マミさんがレッドさんに出会ったきっかけって何だったんですか?」
マミ「私が気付いたら、キグナスっていう豪華なシップにいて」
マミ「ちょうどその時レッドさんが目の前で変身していたの」
さやか「えー、なんかずるいなあ。私なんて監獄ですよ」
マミ「か、監獄!?」
マミ「と、とにかくそこで私も変身して……」
アルカイザー「話は後だといっただろ!」
アルカイザー「これだけの原料を精製するには、それなりの設備が必要なはずだ」
アルカイザー「それを破壊する!」
さやか「おお、本格的ですね……」
マミ「でもきっと警備も厳しいはず」
マミ「美樹さん、いつでも戦えるようにしておいて」
さやか「お、押忍!」
「キー!」
「キー!」
アルカイザー「ずいぶん厳重な警備だな……」
アルカイザー「どうやらあそこが、この基地の核らしい」
さやか「どうします? 見つからずに行くのは無理じゃないですか?」
アルカイザー「ああ、ここからは強行突破だ」
マミ「……!」
「キー!?」
「キー!?」
アルカイザー「ブライトナックルゥ!」
さやか「サヤカイザーソード!」
マミ「道ができたわ!」
アルカイザー「任せろ!」
アルカイザー「ディフレクトランス!」
さやか「これは……」
アルカイザー「麻薬製造釜だな。これを爆破するぞ」
マミ「……どうやって?」
アルカイザー「……」
さやか「……」
アルカイザー「シャイニングキィック!」
マミ「ティロ・フェニックス!」
さやか「な、なんですかその技!」
さやか「こ、これ基地もやばいんじゃないですか!」
マミ「そうみたいね……。この基地は三分後に爆発するわ!」
アルカイザー「三分もない!」
マミ「ええ!?」
「……」
さやか「……」
さやか「危機一髪でしたね……」
マミ「まさかあんな大爆発なんて」
マミ「こういうのは暁美さんの仕事よ……」
さやか「ああ、ほむらに任せたかったですね……」
アルカイザー「……二人とも立つんだ。敵が来るぞ!」
さやか「!」
アルカイザー「誰だ!」
???「ブラッククロス四天王が一、メタルブラック!」
メタルブラック「お手合わせ願おうか!」
さやか「な、なんですかアレ!? サイボーグサムライ!?」
マミ「気をつけて! 四天王は他とは格が違うわ!」
メタルブラック「参る!」
アルカイザー「来い!」
メタルブラック『タイガーランページ!』
アルカイザー『フラッシュスクリュー!』
マミ「互角!?」
さやか「! いえ、アルさんが押されてます!」
メタルブラック「この程度か、アルカイザー!」
マミ「させないわ!」
『跳弾』
メタルブラック「当たるものか!」
さやか「まだだ!」
メタルブラック「!?」
さやか「油断したな!」
『逆風の太刀』
メタルブラック「ならば、これでどうだ!』
『ムーンスクレイバー』
メタルブラック「切り刻んでくれる!」
マミ「きゃあっ!」
さやか「うわっ!」
アルカイザー「くそっ、ティロカイザー、サヤカイザー!」
アルカイザー(バレる!)
アルカイザー「させるものか!」
『アル・ブラスター!』
メタルブラック「まだ動くのか!」
マミ「魔法少女をなめないで!」
さやか「このくらい、なんてことない!」
メタルブラック「傷が癒えていく……」
メタルブラック「なるほど我が敵にふさわしい」
マミ「ええ!」
さやか「はい!」
『アル・フェニックス』
『ティロ・フィナーレ』
『スクワルタトーレ』
メタルブラック「無駄だ!」
メタルブラック『ムーンスクレイバー』
メタルブラック「連携……!」
アルカイザー「俺たちの力を見せてやるぜ!」
アルカイザー「アル!」
さやか「スクワルタ!」
マミ「フィナーレェェ!!」
メタルブラック「なるほど、これがアルカイザー……」
メタルブラック「見事……!」
アルカイザー「メタルブラック、強敵だった……」
マミ「これで終わりなのかしら……?」
さやか「いや、爆発してましたし……」
アルカイザー(やつとはまた戦う気がする……)
アルカイザー「とにかく、これで残る四天王はあと一人!」
アルカイザー「シュウザー……!」
さやか「アルさん……?」
マミ「シュウザーは、レッドさんのご家族の仇なの……」
さやか「!」
マミ「ヒーローになったきっかけも、シュウザーに襲われたことから……」
レッド「さて、さやかはこれからどうするんだ?」
マミ「裏の組織がどうとか言ってわね……」
さやか「裏の正義の組織です!」
さやか「私の任務は魔法少女を集めることなんですけど……」
マミ「それはどうして?」
さやか「ジョーカーに対抗するためです」
レッド「リージョンを暗躍する、怪しいやつらしいが」
さやか「ジョーカーはキューブとかいうのを狙ってるらしくて」
さやか「それを止めるのが、私たちの目標なんですけど……」
マミ「そうだったの……」
さやか「レッドさんはブラッククロスの情報を集めてるんでしょ?」
さやか「グラディウスなら何か知ってるかも」
レッド「本当か!」
さやか「いや根拠はないですけど、協力できたらいいかなって……」
マミ「シュウザーの手がかりがつかめるかしら」
レッド「少しでも情報の当てがあるなら、俺は行くぜ」
さやか「ふふん、任務完了」
マミ「そのグラディウスには、どんな人がいるの?」
さやか「えっと、グラサンのおっさんがリーダーで」
さやか「あと露出多めのアニーさんと、レディな感じのライザさんが」
レッド(露出多め?)
さやか「それじゃあ、クーロンまで」
マミ「ほかのみんなにも会えるかしら……」
シップ内
さやか「そうですか、みんながどこにいるかは……」
マミ「ええ……。でも美樹さんと再会できてよかったわ」
レッド「そのうち会えるさ、心配ない」
ガコンッ
マミ「!?」
さやか「な、何ですか?」
レッド「これは……」
レッド「タンザーだ!」
シュライク 武王の古墳
ほむら「へえ、観光地みたいになってるのね」
まどか「奥の方は危ないから入れないみたいだけど」
まどか「あ、そうだ! ほむらちゃん、写真撮ろ!」
ほむら「そうね、わたしがまどかを撮ってあげるわ」
ほむら「ほら、まどか、ポーズポーズ」
まどか「私が撮ってあげるのに~」
ほむら「はい、チーズ」
まどか「待って待って!」
ほむら「!」
ほむら「時の君!」
まどか「えっと、どちら様?」
時の君「君に時術を託してしばらくたったが」
時の君「ついに、時術を求めるものが現れたぞ」
ほむら「……それはあなたが相手をするのでは?」
時の君「何のために君を二代目に任命したと思っている」
ほむら「はあ……、妙に親切だとは思ったわ」
時の君「君の思うままにするがいい」
ほむら「待って! 一体何を……」
まどか「消えちゃった……」
まどか「あの人は何を……」
ほむら「思うままって、どういうことなのよ……」
「あなたが時の君、ですか」
???「ルージュと申します」
まどか「!」
まどか「カードマニアの人……?」
ルージュ「カード? ああ、それは私の双子の片割れでしょう」
まどか「双子……」
ルージュ「そうか、やはり奴は秘術を……」
ルージュ「いや、それはもういい」
ルージュ「ここで勝利のルーンを得た私は、ついに印術の資質を手に入れた」
ルージュ「そして、今ここで時術をも手にする!」
ルージュ「たった今、初代時の君なる方から……」
ほむら「な、何がついに現れたよ……」
まどか「マ、マッチポンプ……」
ルージュ「君には悪いが、私は時術の資質が必要なんだ」
ほむら「……それで」
ルージュ「私と戦ってください」
まどか「!?」
ほむら「ちょっと初代、出てきなさい!」
ほむら「戦えとか言ってるんだけど」
時の君「そうだな、時術の資質を持つのただ一人。資質を望むなら相手を倒す以外ない」
ほむら「はあ!? 聞いてないわよ!」
時の君「だが君の存在でそのルールも崩れた」
時の君「……彼に資質を与えるか?」
ほむら「私が選ぶの?」
時の君「君が許すなら、私が彼に資質を授けよう」
ルージュ「はい」
ほむら「あなたが時の魔法を求める理由はなんでしょうか?」
まどか「面接みたいだね」
ルージュ「はい。私は双子の片割れ、ブルーを倒し術を極めるために時術を求めています」
ほむら「なるほど」
まどか「自分の双子を……」
ルージュ「今は、それだけが私の生きる意味です。その先のことは……」
ほむら「……」
ほむら「あげたらいいんじゃない、資質?」
まどか「そ、そんな感じでいいのかな……?」
ほむら「なんだか事情があるみたいだし、断ったら戦いになるのでしょう?」
ほむら「……」
ほむら「あ、そうだ。お昼御飯をごちそうしてください」
ルージュ「!?」
まどか「そういえば、お昼まだだったね」
ルージュ「それがあなたの試練ですか」
ルージュ「……わかりました」
ルージュ「昼食、ご用意させていただきます」
時の君「ほむら、それが君の選択か」
ほむら「いやだって、いきなり戦えって、意味がわからないわ」
時の君「なるほど。術を巡る争いを君は否定するのだな」
ほむら「そんな大層なものでもないけど」
時の君「よかろう。これも定めだ。私の術を開こう」
シュライク 定食屋
ほむら「術を巡る双子の戦い、ね」
まどか「そんな悲しいことをどうして……」
ルージュ「私たちの運命とでもいうのでしょうね」
時の君「すまない、お茶をもらえるか」
ほむら「あなたはもう、自分のリージョンにかえりなさい」
ほむら「いけなかったかしら」
ルージュ「いえ。おかしなことですが、何か救われたような思いです」
時の君「ふん。甘いものだな」
まどか「でも戦わずに済むのなら、それが一番ですよ!」
時の君「おい、その卵焼き、食わないのら私によこせ」
まどか「こ、これは取ってあるんです!」
時の君「……これで、君は時術の資質を得た」
ルージュ「ついに、私は……」
時の君「必要な術は購入してくれ」
ほむら「お金取るのね」
まどか「お昼おごってもらったのに……」
ルージュ「ありがとう。君たちのおかげで私は進める」
ルージュ「本当にありがとう」
ほむら「ごちそうさまでした」
まどか「ごちそうさまでした」
時の君「……」
ほむら「あの人、これからどうするのかしら」
時の君「宿命の双子と雌雄を決するのだろう」
まどか「つらいよね……」
時の君「私もそろそろ行くとしよう」
ほむら「ええ、もうさっさと行きなさい」
時の君「私は時のリージョンへと戻る。用があれば、いつでも訪ねてくるがいい」
時の君「ああ、それとこれは餞別だ」
まどか「? 私にですか?」
時の君「砂の器だ。これでほむらの時間においていかれることもないだろう」
まどか「!」
まどか「あ、ありがとうございます!」
ほむら「……ありがとう、時の君」
時の君「ふん。さらばだ」
中島製作所
まどか「時の君さん、不思議な人だったね……」
ほむら「まったくだわ……」
T260「鹿目様、ほむら様、タルタロス突入の準備が整いました」
レオナルド「君たちがよければ、いつでもいけるよ」
ほむら「社長、例のメカはもう完成した?」
中島社長「ああ、もちろんだとも!」
ほむら「名前?」
中島社長「一応、グレートモンドという名称があるようだが……」
ほむら「モンドって」
まどか「ちょっとね……」
ほむら「グレートマドカで」
まどか「!?」
ほむら「え!?」
まどか「グレートホムラでいいんじゃないかな」
ほむら「!?」
まどか「うん。グレートマギカ」
T260「グレートマギカは収納可能ですか」
ほむら「まあ、なんとかなるでしょう」
レオナルド「すごいなあ、その盾調べさせてくれないかな」
ほむら「砂が入ってるわ」
T260「発言の意味が不明です」
シュライク シップ発着所
レオナルド「タルタロスへは、マンハッタンからコンテナに紛れて潜入する」
レオナルド「みんな準備はいいかな」
ほむら「なんだかすごいことになってきたわね……」
まどか「私緊張してきたよ……」
T260「マンハッタン行き、出発時刻です」
シップ内
ほむら「司令部? その場所を探しているのね」
まどか「なんだっけ、たしかHQっていうんだった?」
ガコンッ
ほむら「!?」
まどか「何!?」
タンザー
リージョン間を徘徊する巨大生物
呑み込まれたシップの脱出は困難
レッド「まさか、タンザーに呑まれるとは……」
さやか「うわ、気持ち悪!」
さやか「どこもかしこもベタベタだよ……」
マミ「これは夢よ、夢」
さやか「マミさん、夢じゃないです。私たち呑まれてます」
マミ「止めて! 私を現実に戻さないで!」
次回、マミさん丸呑み
Entry ⇒ 2012.11.07 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
衣「りゅーか!」竜華「ほんまこどもみたいやな」クスクス
竜華「はいはい、、今日は何して遊ぶん?」
衣「麻雀!」
竜華「…またかいな」
竜華「衣はほんまに麻雀がすきやなぁ」フフッ
衣「…嫌か?」
竜華「…たまにはトランプとかどうやろ?」
衣「!?」
竜華「ババ抜きとか、大富豪とか、ぽー…」
衣「ダメだりゅーか!!」
竜華「?」
衣「トランプは今日はもういい!!」
竜華「…どうしたんや衣?」
竜華「キャッチボールか…、たまにはええなぁ…」ふむ
衣「よしっ!りゅーか、キャッチボールしに行くぞ!」
竜華「ほんじゃあそうしよか、お弁当も持っていっとこか…」
衣「わーい♪りゅーかとキャッチボールだー♪」ぴょんぴょん
竜華(ほんまこどもみたいやな)フフッ
衣「いくぞーりゅーかー!」手ブンブン
竜華「ばっちこいやでー衣ー」手ブンブン
衣「いっくぞー…え~い!」
ころころ~
ぱしっ
竜華「ナイスボールや衣!」
竜華「ほんじゃあいくで~衣~」ぽーい
ぽーんぽーんぽーん
衣「うわっ!バウンドしてるぞりゅーか!?」うわわ
ぽーんぽーんぽーん
衣「うわっ!」(目つぶり)
ぱしっ
衣「ううっ…、あれっ?」ぱちっ
竜華「ナイスキャッチや衣!」パチパチ
衣「りゅーか、りゅーか!取れたぞ!」おぉ~
衣「見てたかりゅーか?」うわ~
竜華「ちゃんと見てたで衣、すごい上手やな衣は」フフッ
衣「えへへ~っ」てれてれ
竜華「ばっちこーい!衣ー!」
衣「…それーっ!」ぽーい
ころころ~
ぱしっ
竜華「ナイスボール!衣!」
竜華「ほんじゃあうちも…それっ!」ぽーい
ぽーんぽーんぽーん
衣 竜華「!?」
竜華「衣!あぶない!」
コツン
竜華(ボールが頭に…)
衣「…だっ、大丈夫だりゅーか…」うるうる
竜華「ごめんな…衣…」よしよし
衣「りゅっ、りゅーかのせいじゃない…衣がヘタクソなだけだ…」うるうる
衣「…ぐすっ」うるうる
竜華「…」なでなで
竜華「いたいのいたいのとんでけ~♪」くるくる~
衣「!?」
竜華「どや?痛いのとんでったか?」
衣「…こっ、ころもはそんなこどもじゃない!!」プンプン
衣「本当に分かっているのかりゅーか?」もう!
竜華「わかってるよ衣、…じゃあそろそろお弁当にしよか」ニコッ
衣「ほんとか!?衣はさっきから空腹だったんだ!」
衣「きっとさっきのは、それのせいだな!」うんうん
衣「わーい!衣は、りゅーかのお弁当大好きだぞー♪」ぴょんぴょん
竜華(やっぱり、こどもやね)フフッ
衣「うわー、エビフライが入ってるぞりゅーか!」わーい♪
竜華「衣エビフライ好きやろ?タルタルもたっぷりやで」ニコッ
衣「こっちにはタコさんウインナー!こっちはりんごのうさぎだ!」
竜華「へへーん、衣みたいでかわいいやろ?」
衣「衣はりゅーかも、りゅーかの作ったお弁当も大好きだぞ!」るんるん
竜華「お弁当と同列かいな」クスクス
竜華「…ほな、食べよか」
衣「うん!」
衣「ごちそーさまでした!」パン!
竜華「おそまつさまです」フフッ
衣「りゅーか!すっごくおいしかった!♪」
竜華「ありがとう、衣」ニコッ
竜華「食べたばっかりやし、少し休憩しよか」
衣「そうだな、…」ふわっ…
竜華「衣、眠たいんか?」
衣「…少し」ごしごし
衣「ん?」
竜華「膝枕、ここで寝え」
衣「……・うん」コクッ
ピヨピヨピヨ(小鳥のさえずる鳴き声)
竜華「…」頭なでなで
衣「…」膝すりすり
竜華「今日はええ天気やな~」
竜華「とっても、気持ちのいい日和やな~」ぽわ~ん
衣「…りゅーか」すりすり
衣「…りゅーかって、…おっぱい大きいな」ジーッ
竜華「えっ?…どっ、どうしたん急に?」ドキドキ
衣「…衣もいつか、りゅーかみたいになれるかな?」
竜華「…えっ?」
衣「衣もいつか、りゅーかみたいな素敵な女性になれるかな?」
衣「衣ちっちゃいから…」
竜華「…衣」
衣「…衣はいつか、りゅーかみたいになりたいだ…」
竜華「衣…」
衣「…あとそれから、おっぱい大きくて」
竜華「…それはいんのね」くすっ
衣「衣じゃ、りゅーかみたいにはなれないのかな…」
竜華「…大丈夫、きっとなれるよ衣」
衣「えっ?」
竜華「衣はもう立派に、素敵な女性やで」ニコッ
衣「…りゅーか」
竜華「衣が素敵って言うてる、うちが言うんや」
竜華「衣も素敵な女性や、間違いない…!」ニコッ
衣「…ありがとう、りゅーか」フフッ
竜華「うん♪」
衣「衣はりゅーかのこと大好きだ…」うつろうつろ
竜華「衣…うちもやで」ニコッ
衣「……りゅーか」すぅっ…
衣「Zzz…」
竜華「…寝てしまいよった」
竜華「…そっか、衣はうちの事そんな風に思っててくれたんか」
竜華「…」
竜華(これからも、しっかり衣の素敵なお手本になってあげんとな)クスクス
竜華「…これは、大変そうや…」フフッ
竜華(それに衣はもう充分、大人やで…)
竜華(衣の中身は、しっかりした子やもん)
竜華(うちの知らん事も、いっぱい知っとるしな)
竜華(…でもやっぱり、寝顔だけは…)ちらっ
衣「んー…りゅーか…」むにゃむにゃ
竜華「ほんまこどもみたいやな」クスクス
おしまい
なごむわー
ほのぼの最高や…
Entry ⇒ 2012.11.07 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
P「事務所にヤツが出た」
小鳥「プロデューサーさん、お茶入れましょうか?」
P「お、ありがとうございます。ちょうどのどが渇いてたんですよ」
その漆黒の躯体に人は太古から苦しめられてきたという……
小鳥「千早ちゃんも飲む?」
千早「あ、はい、いただきます」
それは まぎれもなく――
カササッ
千早「?」
G「Good morning」
千早「っっっっ」
「いやあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」ドガシャーーン
P「!!?な、なななんだどうした千早!?」キンキン
千早「いいいやいやいやいやいやいや!ぷ、ぷろ、ごっ、あれっ」
小鳥「ど、どうしたの千早ちゃ……」
カサカサカサ
G「Hey」
小鳥「」
小鳥「きゃあああああああああああああ!!!!!」
P「ちょ、千早抱きつくな!何が出たんだ!?」
小鳥「ごごごごごゴキブリ!ゴキブリですよぉ!!」
P「ゴキブリぃ?」
G「Hello」
P「うお、ほんとにいる!」
千早「プロデューサー助けて!」ギュウウウ
P「お、おちつけ千早」
ガチャ
高木「な、何の騒ぎかねキミィ!?」
P「あ、社長!足元にゴキブリが」
高木「え」
G「Yes sir」
高木「」フラッ……ドサッ!
P「しゃ、社長!?」
P「と、とりあえず新聞紙か何か……あの千早、ちょっと離れて……」
千早「いいいやです!無理です!」
P「あ、あのなぁ……あれ?」
小鳥「は、はやくどうにかしてくださいよぉ!」
P「ど、どこいったんだ?ゴキブリがいないんだが」
千早「」
小鳥「」
高木「」キュウ
P「み、見失った……」
小鳥「どうしよう、う、うごけない……」
千早「……」ガタガタガタ
P「あの、千早さんそろそろレッスンの時間なんですが」
千早「そ、そんな……いやです!いつ襲われるかわからない空間を歩けっていうんですか!?」
P「んなこといわれても……」
千早「いやです無理ですいきたくありません!」
P「じゃ、じゃあ事務所の外までおんぶしていってやるから!それなら大丈夫だろ?」
千早「う……で、でもそんなの、恥ずかしっ……」
P「このままレッスンに遅れるわけにもいかないだろ。ほらおぶされ」
小鳥「わ、わかりました……ってあれ?私はどうなるんです?」
P「すぐ戻りますから、ちょっと待っててください」
小鳥「そんな!いたいけな乙女を戦場に残していくんですか!」
P「別に食われるわけじゃないでしょう……よっと」オンブ
千早「うう……」ギュウ
小鳥「(ああダメだわ、せっかくの貴重な甘えんぼちーちゃんなのに今は録画する余裕もないッ……!)
」
P「……千早、ちゃんとご飯食べてるか?」
千早「た、食べてます!なんですかいきなり!」
P「いやずいぶん軽いと思って……いたたた頭を叩くな!」
千早「早くしてください!恥ずかしいんですから!」
P「はいはい……じゃあ小鳥さん、社長の処理お願いしますね」
小鳥「え?」
スタスタ バタン……
ソローリソローリ……
ダダダッ ガバッ!
小鳥「社長テメェ起きろこらああああぁぁ!!」
高木「はっ!?お、音無くん、私は一体……」
小鳥「ゴキブリが出たんですよ!男の人なんですから何とかしてくださいよ!」
高木「おおおお音無くん首を揺らすのはやめたまえ!……しかし、ゴキブリか」
小鳥「そうですよ悪魔ですよ!やっつけてくださいよ!」
高木「実は、幼少のころ顔面に飛びつかれて以来トラウマになっていてね……見ただけでもご覧のありさまなのだよ」
小鳥「が、顔面に……」ゾゾゾゾゾ
高木「す、すまんが私ではどうにもできん!退散させてもらうよ!」ダッシュ!
小鳥「ああ!社長テメェこの置物!」
小鳥「……音が無いのが怖いわ」
小鳥「……音無だけに」
しーん……
小鳥「なんて言ってる場合じゃないわよ!どうしたらいいのよぉ……」ビクビク
ガチャ
響「はいさーい!今日も元気n」
小鳥「響ちゃあああああああん!!」ガバッ
響「うわっなにさぴよ子!発情期か?」
小鳥「違うわよ!さっき事務所にゴキブリが出たのよ!」
響「ゴ、ゴキブリ?」
小鳥「プロデューサーさんは私を置いて出て行っちゃうし、社長はクソの役にも立たないの!助けて!」
響「うーん……まぁ沖縄ではしょっちゅうゴキブリ出てたから慣れてはいるけど、自分だって苦手なものは苦手だぞ」
小鳥「そんなこといわないで!どこにいるかわからないのよ!」
伊織「おはよう……なにしてんのアンタたち」
響「あ、伊織」
伊織「朝っぱらから元気ねぇ。また小鳥がなんかやらかしたの?」スタスタ
小鳥「ああ伊織ちゃんそっちはダメ!」
伊織「?コーヒーでもこぼしたの?別に気にしないわよ」
響「いやそうじゃなくてさ」
伊織「なによ、何さっきからじっとしてるの」
カサカサ
響「あ、壁に」
伊織「え?」
G「Hai sai」
バッ ピト
響「い、伊織のオデコに」
G「Good place」
小鳥「とまった……」
伊織「」キュウ ドサッ
響「うぎゃーー!!伊織が死んじゃったぞ!」
小鳥「ぎゃあああ!!ていうかこっちきたこっちきた!!」
カサカサカサ
響「そ、そうだ!ハム蔵、あいつをやっつけろ!」
ハム蔵「ジュイ!」ピョン
シュタタタタタ カサカサカサ
響「うぎゃー違う違うこっち来てどうするんさー!」
小鳥「ひ、ひとまず外に逃げるのよ!」
ダダダダ バタン!!
小鳥「な、なんてことなの……」
P「――やれやれ、千早があんなに弱るの初めて見たな……」
響「あっ、プロデューサー!」
P「ん、響もきてたのか。ていうかなんで小鳥さんまで外にいるんです?」
小鳥「じ、実は伊織ちゃんが……」
P「……で、ハム蔵と一緒に置いてきたと」
小鳥「仕方ないじゃないですか!」
P「まぁもう大丈夫です。さっき殺虫剤買ってきましたから」
小鳥「遅いですよ!早く抹殺してください!」
P「はいはい」ガチャ
響「うーん殺虫剤かぁ」
G「Escaping」
P「ハム蔵、危険だから離れてろ」
ハム蔵「ジュイ!」サッ
カサカサ
P「おのれ壁際に逃げたか……だがこれで終わりだ」カチャ!
響「あの、殺虫剤はあんまりオススメしないぞ」
小鳥「え、どうして?」
響「当たれば確かに一撃で倒せるんだけど、ゴキブリはものすごく素早いから……」
P「それっ!」
プシューッ!!
G「Nonsense」バッ
P「え」
ピト
P「」
G「Not good」
P「がががががががが」キュウ ドサッ
小鳥「プロデューサーさぁーーーん!!!」
響「い、言わんこっちゃないぞ!」
G「I'm a god」
カサカサ
響「うぎゃー!ぴよ子なんか武器ないのかー!」ドタバタ
小鳥「し、新聞紙くらいしかないわよ!」
響「早く渡して!おらぁーなんくるないさー!たっくるすぞぉー!」バシバシ
G「Too late」
小鳥「ひええええこっちきたぴよおおおおお!」
ガチャ
やよい「おっはようございまーす!」
響「あっ!やよい危ない!」
小鳥「ゴキブリがそっちにいいい!」
やよい「え?」
G「Too young」
カサカサカサ
やよい「えいっ!」 グシャ!
響「……え」
小鳥「」
北海道にもちらほら移動し始めてるらしいぞ
やめろ
やめろ
やよい「うー、やっぱりお掃除してなかったからかなぁ……小鳥さん、ビニール袋ありますかぁ?」
小鳥「へ?えええあるわよたっぷりと!」
ガサガサ ギュッ
やよい「最近忙しかったからなぁ……すみませんお掃除サボっちゃって」
小鳥「そ、そんなのいいのよ!それよりやよいちゃん……」
響「へ、平気なのか?ゴキブリ……」
やよい「あ、おうちに出たときは素手でつかんで逃げしてあげるんですけど……たまに噛みつかれたりするから、靴でやっつけた方がいいかなーって」
小鳥「な、なんておそろしい子……!」
やよい「でもあんまりむやみに殺したらゴキブリもかわいそうだから……できるだけお掃除はしっかりやってたんですけど……うー」
やよい「ゴキブリは一匹でたら何百匹もそこに住みついちゃうんです。だから事務所はみんなできれいに使いましょーね!」
響「やよいはすごいなー。まるであんまーみたいだぞ!」
やよい「えへへ、そうですかぁ?……あれ?なんでプロデューサーさんと伊織ちゃんが床で寝てるんですか?」
小鳥「あはは……ちょっといろいろあったのよ~」
――その後、765プロには『事務所は清潔に使うこと』という張り紙があちこちに貼られた。
被害にあったアイドル(と一名)は事件再発を防ぐために全力で衛生活動を行ったという。
黒い悪魔の襲来はそれ以降止んだ、かのように見えたが……
真美「おお、この新発売のうめぇ棒二郎ラーメン風はなかなかですな!」
亜美「こっちのポテチトップ豚骨味もチョーイケるよ→!」
美希「Zzz……」
貴音「バリボリバリボリ」
真美「お姫ちんは食べすぎっしょー……」
律子「ちょっとあんたたち、食べかすはきちんと掃除してる?」
亜美「してるしてる→」
貴音「バリボリ」
律子「ほんとでしょうね……ちゃんと綺麗にしないと千早に怒られるわよ?」
真美「あー千早お姉ちゃんめっちゃゴキブリ怖がってたんだよねー」
亜美「ちょっと見てみたかったかも!」
律子「馬鹿なこと言わないの。ほら、アンタたちみんなもうすぐ仕事じゃないの?」
亜美「がってん真美隊員!」
亜美真美「「いってきまーす!」」
律子「ああっ!ちゃんと掃除していきなさいって言ったでしょー!!」
真美「後でやるからモウマンターイ!!」
貴音「バリボリ!バリボリ!」
律子「ちょ、ちょっと貴音まで!まちなさーい!」バタバタ……
美希「あふぅ……なんだかうるさいの。目がさめちゃったの……」
カサカサ……
美希「ほぇ?机に何か……」
G「I'm back baby」
美希「」
「いやああああああなのおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
終
ふと、キッチンに立ったとき。
ゴキブリはいつもあなたのそばに……
最近G見てないな 久しぶりにあのスリルを味わいたい
ほら後r
Entry ⇒ 2012.11.07 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
白望「妊娠した」塞「!!?」ガタッ
白望「塞との」
塞「私生えてないよ!?」
白望「ほら、お腹撫でてみて」
塞「話聞いてよ!って、マジで膨らんでる!?」
白望「5ヶ月目のお腹」
塞「どういうことなの…」
塞(でも妊娠するようなことをした覚えはない…そりゃあえっちなことは何度かしたけど)
塞(というか、そもそも女同士で妊娠なんて…)
塞(想像妊娠…?)
塞「シロ、それって…」
塞(…いや待て、これが万が一本当だったら…?)
塞(あんなオカルトが蔓延する世界なんだ。女同士で妊娠しても不思議じゃない)
塞(シロは初めての妊娠で不安になってるかもしれない。そこに「想像妊娠だよ」なんて言われてみろ、ショックを受けるに違いない)
塞「…シロ、吐き気はない?体がだるかったりしない?食欲はある?ちゃんと朝は食べてきた?」
白望「…」
白望(まずい、まさか常識人の塞がこんなこと本気にするなんて)
白望(胡桃の口車になんて乗らなきゃよかったなぁ…)
~回想~
胡桃「シロ、ちょっと来て!」
白望「んー?」
白望「…まぁ」
胡桃「やっぱね。最近様子変だったから、気になってたんだ」
白望「そう。…ごめん、心配かけて」
胡桃「で、何があったの?」
白望「…実は、最近セックスレス気味で…」
胡桃「…………帰るわ」
白望「そっちから声かけてきたのに…!?」
白望「性欲は三大欲求のうちのひとつ…」
胡桃「うるさいそこ!」
白望「ごめんなさい」
胡桃「…というかそんな悩みなら塞に一言言えば解決じゃん。付き合ってるんでしょ?」
白望「…セックスしたいなんて言うのは…その…恥ずかしい」
胡桃「えー…」
胡桃「じゃあこういうのはどう?」
―――
白望「塞、妊娠しちゃった」
→塞「またまた~、女同士で妊娠なんてするわけないでしょー」
→白望「それもそうだねあはは」
→塞「そういえば私たち、最近エッチしてなかったね。久しぶりにする?」
→白望「うん、そうだね」
→以下セクロス
―――
白望「いやさすがに無理がありすぎ」
白望「え、本当にやるの?」
胡桃「塞は補習終わったら来るから。私は帰るよ!」
白望「ちょ…」
胡桃「じゃあねばいばい!」バタン
白望「……どうしよう」
~回想終了~
白望「あー、塞…」
塞「今日は胡桃いないみたいだし、部活は中止して帰ろう?」
塞「あ、そういえばシロがこたつ持ってくるのに使ったリヤカーあったね。あれで家まで送ったげる」
白望「…じゃあお願いする」
~~~
塞「シロ、家着いたよ」
白望「…ありがとう」
白望「うん」
塞「ばいばい」
白望「ばいばい…」
白望「……いやいや、何やってるんだ」
白望「完全にカミングアウトする機会を逃してしまった」
白望「楽なほうに向かおうとする自分が恨めしい…」
塞「シロー、迎えに来たよー!」
白望「んー…?」
白望(塞が迎えにくるなんて珍しいな。…って、なんでリヤカーが…ああ、そういえば妊娠してるって設定か…)
白望(さすがに今ばらすと怒られるだろうなぁ。…登校で楽できそうだしあとでばらそう)
白望(湯たんぽ、湯たんぽ…)
塞「シロー、お昼ごはん作ってきたよー。インターネットで妊婦さんにいい食べ物調べたんだ」
白望「ありがと」
白望(うーん、ここでばらすのは自殺行為だろうなぁ…)
塞「シロ、さっき体育出てたよね!?もうシロひとりの体じゃないんだから、運動なんてだめだよ!」
白望「ごめん…」
白望(機嫌悪くなってるなぁ…今ばらすのは良くなさそう)
塞「シロ、今日もリヤカーで送ってあげる」
白望「お願い」
白望(ここでばらすと楽できなくなるなぁ…やめておこう)
胡桃「で、そうこうしてるうちに1ヶ月がたってしまったと」
白望「困った…」
胡桃「ばか!」
白望「面目ない…」
胡桃「どうするつもり!?いつまでもごまかしきれないよ!」
白望「大丈夫。一回り大きい湯たんぽはもう買ってある」
胡桃「そういう問題じゃないよ!」
―――
塞「シロ、どうして泣いてるの…?」
→白望「…胡桃にレイプされて…お腹の子供が…」
→塞「シロ…そんな…」
→白望「ごめんね塞…私たちの子供、守れなかった…」
→塞「…泣かないでシロ。子供はまた作れるよ」
→白望「塞…」
→塞「シロ…」
→以下セクロス
―――
胡桃「ふざけんな」
白望「イッツジョーク、イッツジョーク。怒らないで。顔がマジで怖い」
白望「ああ、そうすればよかったのか」
胡桃「こいつ…」
胡桃「まぁ、どっちにしてもこの案は無理だよ。塞のこと考えると罪悪感が半端ない」
胡桃(今の時点ですでにすごい罪悪感だけど)
白望「それもそうか。…はぁ、また振り出しか…」
胡桃「主にシロのせいでね」
白望「すみません」
校内放送『2年×組小瀬川さん、2年×組小瀬川さん、今すぐ職員室に来てください』
胡桃「…なんかしたの?」
白望「身に覚えがない…とりあえず行ってくる」
~~~
白望「失礼します…」ガラッ
塞「あ、シロ、遅いよ」
白望「塞…?」
先生「あー、小瀬川、臼沢がお前のことで相談にきてな」
白望「?」
先生「その、臼沢が、お前が臼沢の子を妊娠してるって言ってな」
先生「それで、体育は危ないだろうから、見学にさせろと…」
塞「お腹の子に何かあってからじゃ遅いんです!」
白望「…………」
白望(や、やばい…これはダルいなんてもんじゃない…!)ヒヤアセダラダラ
先生「先生にはそうは見えないんだが…というか女同士で妊娠なんてありえんだろ」
塞「何言ってるんですか先生!こんなにお腹が膨らんで…」
塞「ふく…らんで…?」
白望(…そういえば、湯たんぽ入れてなかった…)
白望(職員室に塞がいるなんて思わなかったからなぁ…)
塞「………………………………」
先生「………………………………」
白望「………………………………」ダラダラ
塞「…………なに」
白望「妊娠したっていうの嘘だったんだ」テヘッ
塞「…………シロ」
白望「な、なんでしょう」
塞「……歯ァ食いしばれ!!」バチーン!!
白望「ぐはぁ…っ!」バターン
胡桃「…っていうのが『シロ妊娠事件』の顛末でね」
豊音「あはは、ちょーうけるよー」ゲラゲラ
白望「あのあと1ヶ月口聞いてもらえなかった…」
エイスリン「ジゴウジトク!」
白望「自覚してる…」
豊音「りょーかいだよー」
エイスリン「ワカリマシタ!」
塞「ごめーん、掃除長引いて遅れちゃった」
エイスリン「ア、サエ!シツモン!」
塞「なに、どうしたの?」
エイスリン「ニンプニイイショクジッテドンナノ?」
胡桃「エイちゃんちょっと!」
白望「エイスリン!」
エイスリン「? ……ア」
白望「…私は話してないよ」
胡桃「ちょ、私だけに罪をなすりつけんな!シロも止めなかったでしょ!」
塞「…二人ともちょっと来なさい」
胡桃「慈悲!お慈悲を!」
白望「ちょ、ちょいタンマ…!」
塞「あ、トヨネとエイスリンは少し待っててね。すぐ終わるから」ニッコリ
豊音・エイスリン「ハ、ハイ」ガクブル
胡桃「うぐぐ…」グッタリ
塞「じゃあ部活はじめよっか」
塞「シロと胡桃はちょっと無理そうだからサンマかな?」
豊音「う、うん、そうだねー…」
エイスリン「オ、オー…」
~帰路~
塞「ったく、こうなるってわかってんのになんで話したんだか…」
白望「胡桃を止めるのがだるかった…」
塞「あんたのほうはそうでしょうね、胡桃のほうはわからないけど」
白望「トヨネとエイスリンはまだ付き合いが浅いから…一緒に馬鹿なことしたかったんじゃないかな」
塞「…そうかもね」
塞「なに?」
白望「久しぶりにエッチする?」
塞「んなっ……なにいってんの!?//」
白望「そういう流れかと…」
塞「わけわかんないよ!?」
白望「人は日々進歩するもの…」
塞「これは進歩なのか…?」
白望「さあ…。 で、しないの?」
塞「シ、シロがしたいなら…//」
白望「じゃあ塞の家行こう」
塞「…ん」
塞「どう頑張ってもできないからね!?」
白望「案外できちゃうかも」
塞「できない、できないから」
白望「……塞」
塞「んー?」
白望「科学が進歩して、もし女の子同士でも赤ちゃんできるようになったらさ」
白望「一緒に子作りする?」
塞「…」
塞「シロ、そういうの愚問っていうんだよ」
塞「するにきまってるでしょ?」
白望「……うん」
白望「塞、塞、起きて、朝ごはんできてる」
塞「んん…おはよ、シロ」
白望「おはよ」
塞「あの子は?」
白望「もう起きてる。今ご飯食べてる」
塞「あはは、しっかりしてるなぁ」
白望「塞に似たんだろうなぁ…」
塞「そうかもね」
塞「んー?」
白望「二人目出来たみたい」
塞「!!?」ガタッ
カン!
乙乙
白塞最高や!
Entry ⇒ 2012.11.06 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
魔法少女まどかフロンティア 1
まどか「ここは……?」
まどか「何もない……。なんだかふわふわしてて……」
サガフロンティアのシステムデータはどこですか?
ソウルジェムにある
ソウルジェムに新規作成する
システムデータなど必要ない!
まどか「え? システム? 何のこと?」
まどか「……」
まどか「っていうか、あなた、キュゥべえだよね」
!?
シ、システムデータはどこですか?
まどか「答えて」
……ワルプルギスの夜を倒した君達は、まさに魔法少女としての可能性だ。
まどか「……」
……その可能性に、僕達も賭けることにしたんだ。
まどか「……答えになってないよ」
リージョン界の未来を、君達五人に託す……
まどか「リ、リージョン?」
……頼んだよ、鹿目まどか。
まどか「ま、待って!」
まどか「……」
スクラップ
鉄工業の発達したリージョン
至る所にガラクタが積み上げられている。
酒場
まどか「うう……」
まどか「一体何が……?」
まどか「ここは……」
「おい、ゲンさん、誰だいその子は?」
「ああ!?だれのことだよ?」
「ゲン様の後方に反応を確認」
まどか「あ、あの……」
「ゲンさんが飲み過ぎなんだよ」
「ああん!?、俺がこんなもんでオウェ」
「ほら見ろ。なあロボ、俺ゲンさん連れてくから」
「了解しました、リュート様」
「待て、おい。俺はまだ……」
「ゲン様の排除を確認しました」
まどか「……」
まどか(とにかく、ここは見滝原じゃないよね、多分)
???「私はT260」
まどか(ロ、ロボットがしゃべってるんだしね……)
まどか「え、ええと、わ、私は鹿目まどかです……」
T260「了解しました。鹿目様」
まどか「……」
T260「こちらはリージョン『スクラップ』内の酒場……」
まどか「リージョン!?」
T260「リージョンについてお尋ねですか?」
まどか「あ、はい。教えてもらえるとうれしいです……」
T260「リージョンは空間内に点在する都市、または施設の名称です」
T260「リージョン間の移動はリージョンシップによって行います」
まどか「ええっと……」
???「にしても、リージョンも知らないなんて、箱入り娘にもほどがあるぜ?」
まどか「で、ですよね」
まどか(キュゥべえが言ってたリージョンって、色んな街のこと?)
まどか(というか、私は別の世界に来ちゃったんだね……)
まどか(キュゥべえめ……)
???「ああ、そうだ。俺はリュート。よろしくな」
まどか「あ、鹿目まどかです……」
リュート「まどかちゃんね。それじゃあ、自己紹介がわりに一曲」
リュート「か~な~め~♪ それは謎の少女~」
まどか「」
リュート「魔法少女? いや、知らないな。ロボ、お前は?」
T260「データを検索中……」
まどか「あ、あの、そんな無理しなくても……」
T260「二件の該当データがあります」
まどか「ほ、本当に!? 教えてください!」
T260「了解しました」
データ1 ヒューズ様による情報です
リージョン「シュライク」における盗掘事件に関する情報です。
チャイナ服の女性、モンスターの少年、魔法少女を称する少女が関与しているとのこと。
データ2 ヒューズ様による情報です
とある重要事案に関して、黒髪の魔法少女を探しているとのこと。
T260「私の所有する情報は以上です」
リュート「そのヒューズってのは、何ものだい?」
T260「ヒューズ様はIRPOに所属されています」
まどか「アイアール……?」
リュート「要は警察だよ」
まどか(黒髪の魔法少女って、きっとほむらちゃんだ!)
まどか(でもどうして警察の人が……?)
まどか(っていうか、みんな動くの早いよ!)
まどか(盗掘って何!?)
T260「ヒューズ様は泥酔しているご様子でした」
T260「音声データを再生します」
『もう何で俺なんだよ、知るかよ魔法少女なんかよ~。チクショウこの野郎お前……』
まどか「止めてください!」
まどか「私、そのIRPOってところに行ってみようと思います」
リュート「友達を探すのかい?」
まどか「はい。他に手がかりもないですし……」
リュート「俺も付き合ってやるよ、って言いたいとこだが、警察は苦手でね」
リュート「ロボ、お前一緒に行ってやれよ。任務のこととか分かるかもしれねえよ?」
まどか「任務?」
T260「私は自分の任務に関する、失われた情報を収集しています」
まどか「そ、そうなんだ。こんなレトロなのに……」
まどか「ありがとうございます……」
リュート「よっしがんばれよ、お二人さん」
リュート「謎の少女と~♪謎のロボが~♪」
まどか「い、行きましょうロボットさん!」
T260「鹿目様に著しいストレス反応が見られます」
時間妖魔のリージョン
時術の使い手、時の君が住む特殊なリージョン
中央にある巨大な砂時計が時間を司る
ほむら「ええと、あの……」
時の君「これは珍しい客人だ」
時の君「静止した時間をものともしないとは……」
ほむら「あの、シップの操作とかよくわからなくて」
ほむら「砂時計を壊してしまって、本当にごめんなさい」
時の君「……亜空間から、一人乗りのシップで突っ込んで来たのには、さすがの私も驚いたぞ」
ほむら「秘密基地からの脱出で……」
時の君「君は時術の資質を有しているな?」
ほむら「時術?」
時の君「時間を操作する術だ」
ほむら「ええ、確かに以前は時間干渉が可能だったけれど……」
時の君「今は失われたか」
ほむら「……」
時の君「その盾に、時の砂を流し込むといい」
時の君「それで君の術は蘇るだろう」
ほむら「砂……」
時の君「君が壊したおかげで、容易に取り出すことができる」
ほむら「ホントごめんなさい」
時の君「君の術は時間停止と時間遡行、だな?」
ほむら「……分かるんですか」
時の君「私を誰だと思っている」
ほむら「……?」
時の君「人は私を時の君と呼ぶ」
ほむら「時の君……?」
時の君「そう。そして君が二代目時の君だ」
ほむら「二代目……」
ほむら「え?」
時の君「君もまた時の君と名乗るが良い」
ほむら「いや、待ってください」
時の君「では後のことは任せたぞ、二代目。私はしばし下界に降りる」
ほむら「ちょ、ちょっと……」
時の君「ああ、君の習得していない時術は私が提供しよう」
時の君「料金はそこに書いてあるから、好きに持って行ってくれたまえ」
ほむら「お、お金ですか」
時の君「では、さらばだ!」
ほむら「……」
ほむら「押し付けられた……」
ほむら「……時間の魔法があるのかしら」
ほむら「ええと時間触、タイムリープ……」
ほむら「代金は……武器で。モンドの武器で」
シュライク
平穏な市街地と古墳が隣り合うリージョン
生命科学研究所には強力なモンスターが潜む
済王の古墳
アッコちゃん「ウェーン……」
怪人「泣いてばかりで、話にならん。なんとかせんか!」
戦闘員A「キー」
戦闘員B「キー」
戦闘員C「キー」
戦闘員D「キー」
アッコちゃん「何言ってるのか分かんないよーウェーン」
怪人「ほれ、お菓子をあげるから」
レッド「小さな子供を寄ってたかっていじめやがって、許せん!! アルカイザー、変身!!」
???「あんなに小さな子を、許せないわ! 変身!!」
怪人「……と誰?」
アルカイザー「ええっと、ティロカイザーで……」
マミ「!?」
アルカイザー「そう!我が友ティロカイザーだ!」
マミ「違う!私は魔弾の……」
怪人「よかろう、ティロカイザーもろとも踏みつぶしてくれる!」
マミ「聞いてよぉ!」
ディスペア
凶悪犯罪者が収監される刑務所のリージョン
中心部には、解放のルーンが刻まれた巨石がある
牢屋
さやか「何だよこれ!」
さやか「目が覚めたら、いきなり牢屋の中なんて!」
さやか「うぅ……あんまりだぁ」
さやか「キュゥべえは、私たち五人って言ってた……」
さやか「みんなも、こんなふうに……?」
ジリリリリ……
さやか「ひっ!」
さやか「な、何?ベルの音……?」
???「ん、あれ?こんな子いたっけ?」
???「おかしいわね。ここは空いていたはずだけど」
???「……」
???「ねえ、ライザ。この子も連れていっちゃだめかな?」
ライザ「……アニー、本気で言ってるの?」
アニー「大丈夫だって!素人が一人増えるだけよ」
さやか「!」
アニー「こっから出たい?」
さやか「だ、誰ですか?」
アニー「私はアニー。こっちはライザ。で、どうなの?出たいの、出たくないの?」
さやか「で、出たいです……」
アニー「決まりだね」
アニー「待たせたね」
アニー「この人はライザ。こっちはさやか。一緒に脱走することになったの」
ライザ「話は聞いたわ。よろしくね、エミリア」
さやか「えーと、あの、よろしくお願いします……」
さやか(グラマラス!)
エミリア「は、はい(こんな子どもまで……)」
エミリア「行きましょうって……」
ライザ「ここに抜け穴があるのよ」
さやか「本当だ……」
エミリア「で、でも私……」
アニー「パトロール殺しじゃ一生出られないわよ」
さやか「!」
アニー「ここでババアになるつもり?」
さやか「脱走って、すごいですねー」
まどか「通風孔とか、ゴミ捨て場とか、すごいルート……」
エミリア「……」
さやか(パトロール殺しって)
さやか(……エミリアさん、そんな風には見えないけど)
さやか(……)
アニー「ライザ、まだ?なんかイヤな感じがするのよ」
ライザ「ずいぶんきつく締め直してあるわ。あと二つ」
アニー「何か来るわ!これ持って!」
エミリア「これピストルよ!撃ったことないわ」
アニー「操作は簡単、引き金を引くだけ。早くライザ!」
さやか「そうそう!意外と中学生でも使ってるやつもいるんで!」
エミリア「!?」
エミリア「何よ、あれ!」
アニー「こんなのいるって聞いてないぞ、ルーファスめ!」
さやか「な、何!?こういう世界観なの!?」
アニー「やるしかないわ!みんな準備いい!」
アニー『切り返し』
ライザ『空気投げ』
エミリア『防御』
さやか『変身』
アニー「いくよ、ライザ!」
ライザ「ええ!」
連携名 『空気返し』
アニー「よし、この調子で……」
さやか「変身!」
ライザ「え……」
エミリア「嘘……」
アニー「あんた一体……」
さやか『稲妻突き』
ニドヘッグ「ギャアア……」
アニー「突っ込んだよ、この子……」
ライザ「やるわね」
エミリア「あ、逃げていく……」
ライザ「驚いたわ。ただの子どもだと思ったら、そんな力を隠していたなんて」
さやか「いやー、照れるなあ」
アニー「いや、たいしたものよ。楽勝だったのはあんたのおかげ」
さやか(あんまり驚かれなかったな……)
さやか(どういう世界なんだろう)
さやか「タッチダウン!」
所長「おめでとう。女性としては初の脱走者だ」
所長「準備の抜かり無さといい、先ほどの戦いぶりといい、私の予想を裏切って楽しませてくれたよ」
所長「では約束どおり、君達を解放しよう」
所長(何で子供が混じってるんだ……?)
さやか「脱走できたのはよかったけど」
さやか「アニーさんもライザさんもどこかに行っちゃうし」
さやか「エミリアさんは、恋人の家に……?」
???「そこの君」
さやか「はいっ!」
???「俺はルーファス」
ルーファス「アニー達から話は聞いている。どうだ、イタリア料理に興味はないか」
さやか「ナ、ナンパだ!これがナンパ!」
ルーファス「いや、そうではなく……」
さやか「でもお断りだ!私には恭介という恋人が……」
ルーファス「……アニー、ライザ、後は頼む」
さやか「?」
ヨークランド
酒造が盛んな、のどかなリージョン
沼地には杯のカードがあるが……
杏子「こんなところに指輪があるかねえ」
メイレン「眠ったまま目を覚まさない女の子がいるんですって」
メイレン「そういう不思議なところに、指輪があるものよ」
クーン「そうだよ! それになんだか面白そうでしょ!」
杏子「へいへい、分かったよ」
済王「幾年ぶりの酒か!美酒であるぞお!」
杏子「骸骨が酒飲んでんじゃねーよ」
済王「ぬうん!そなた、我が姫に生き写しではないか!」
クーン「王様はもうダメだね」
杏子「ったく……」
杏子「あいつらはどうしてんのかねえ」
杏子「まあ、そのうち会えるか……」
クーン「キョーコ、行くよ!」
済王「行くぞお、杏子!」
杏子「うるせえよ」
リージョン相互警邏機構の本部
盾のカードを保有している
???「お願いします!私には盾のカードが必要なんです!」
ヒューズ「だから、今日は出直せって。俺今忙しいんだよ」
???「くっ! こんなことではあの男に先を越されてしまう……」
???「越されてしまうんだ!」
ヒューズ「ああ、もう分かったから、持ってけ。ほら、カードだ。あんた必死すぎて怖えよ」
???「おお、ありがとうございます!」
ヒューズ「じゃ、今日は閉店な」
まどか「あの……」
ヒューズ「ほら、カードマニアは帰った帰った !」
???「この恩は忘れません……」
ヒューズ「ああ、頑張れよ。で、アンタは何の用だよ?見ての通り俺は今忙しいんでね」
T260「ヒューズ様からは労働反応が検出できません」
ヒューズ「……いつかのボロメカじゃねえか。何だ?今度は子守りか?」
まどか(子守り……)
T260「魔法少女に関する情報の提供を願います」
ヒューズ「!」
ヒューズ「……お前連中の知り合いか?」
まどか「と、友達です!」
ヒューズ「あーそうかい。なるほどな」
ヒューズ「悪いがこっちに情報はないぜ。むしろ情報提供してほしいぐらいだ」
まどか「……どうしてほむらちゃんを探してるんですか?」
ヒューズ「ほむら?」
まどか「黒髪で、盾から武器を取り出す……」
ヒューズ「あいつ、ほむらってのか……」
ヒューズ「……モンドのクーデター未遂は知ってるな?」
まどか「な、なんですか?」
ヒューズ「……」
T260「先日、第二情報部司令のモンドがクーデターを計画していたことが発覚し、逮捕されました」
まどか「……?」
T260「詳細は不明ですが、秘密基地を建設していた模様」
T260「以上は報道機関からの情報です」
ヒューズ「根こそぎ何者かによって持ち去られていた」
まどか「あー……」
ヒューズ「モンドの野郎は切り札の大型メカを用意していたらしいが、それも持って行かれた」
ヒューズ「モンドのションボリ感ったらなかったね」
T260「ですが、それはクーデターの阻止に大きく寄与したのではありませんか?」
ヒューズ「兵器持ってどっか行かなかったらな!」
まどか「ど、どうしてほむらちゃんだと分かったんですか?」
ヒューズ「基地に映像が残っててな。喜々としてミサイルをしまう姿が記録されている」
ヒューズ「そのほむらってのは、今クーデター級の武装を一人で保有していることになる」
ヒューズ「ウチの面子は丸つぶれだぜコンチクショー」
まどか「ほむらちゃんはクーデターなんて起こしません!」
ヒューズ「じゃあ兵器あげます、とはいかんだろうが!」
まどか「あの、ほむらちゃんには武器が必要なんです。魔法的に……」
ヒューズ「何が魔法だこの野郎」
まどか「それじゃあ、ほむらちゃんがどこにいるかは……」
ヒューズ「こっちがお教え願いたいね」
まどか「そうですか……」
まどか「あ、そうだ、盗掘の方は……」
ヒューズ「そっちは変身するガキが目撃されただけだ。情報はない」
T260「私は任務に関する失われた情報を探しています」
ヒューズ「いきなり何だお前」
T260「探しています」
ヒューズ「しらねーよ。クーロンの情報端末でも当たってみろ」
T260「情報の提供に感謝します」
ヒューズ「ああ、さっさと帰れ」
まどか「ほむらちゃんの展開、ものすごく早いなあ……」
T260「ほむら様の格納能力は驚くべきものですね」
まどか「あ、それはね、魔法の盾の中に……」
T260「魔法?」
まどか「でも攻撃は全部銃とかミサイルとかだね」
T260「……ほむら様に関するデータを更新しました」
ネオン街である表通りと、危険な裏通りが隣接するリージョン
イタ飯屋
さやか「えーと、つまりアニーさんとライザさんはその……」
エミリア「グラディウス」
さやか「そう! それのメンバーでリーダーがルーファスさん、と」
ルーファス「そうだ。裏の組織だな」
エミリア「みんな犯罪者なのね……」
さやか「それ分かります! 街の平和を人知れず守る力!」
ルーファス「……まともな手段でジョーカーを追うことはできない」
ルーファス「俺たちなら奴を追える」
エミリア「私だってあの仮面の男は許せないわ。でもどうして私につきまとうの?」
エミリア「キューブとかいうもののため?」
ルーファス「詳しい事は分からないが、大きなエネルギーを生むものらしい」
ルーファス「俺たちはそれがジョーカーの手に渡るのを阻止したい」
エミリア「それで私に接近したのね……」
ルーファス「俺たちと奴を追うか?」
エミリア「ちょっと考えさせて……」
ルーファス「さて、君のことだが」
さやか「私もジョーカーを追います! 人の恋人殺して、罪をなすり付けるなんて!」
ルーファス「いや、グラディウスとして君に頼みたいのは別のことだ」
さやか「へ? 何ですか?」
ルーファス「君と同じく、変身して戦う少女が各地で確認されている」
さやか「あ、やっぱりみんないるんだ!」
ルーファス「といっても、どこにいるのかは分からんが」
さやか「大丈夫ですよ! みんな目立つからすぐ会える……」
さやか「……そのつもりですけど、何でグラディウスが?」
ルーファス「ジョーカーは強敵だ。君達の力を借りたい」
さやか「なんか怪しいなあ……」
ルーファス「裏の組織だからな」
さやか「……」
さやか「まあ、いいですよ。私もみんなと会いたいし」
ルーファス「そうか。助かる」
アニー「何であんなこと頼んだのよ」
ルーファス「……モンドの基地から兵器を持ち出したのは、魔法少女だ」
ライザ「ああ、つまりその兵器を手に入れるために……」
ルーファス「そうだ。さやかなら、その魔法少女をこちらに引き入れることができる」
アニー「要するに、さやかを使ってグラディウスを強化したいってわけね」
ライザ「嫌な作戦ね」
ルーファス「何とでも言え」
…………
クーロン シップ発着所
さやか「しかし引き受けたはいいけど、どこに行けばいいんだろうなあ」
さやか「手がかりも全然ないし」
さやか「ま、とりあえず行ってみますか!」
さやか「情報は足で稼ぐ! ってなんかのドラマで見たし」
さやか「ふむ。よし、決めたぞ!」
さやか「この『京』ってとこにしよう!」
さやか「なんか修学旅行って感じだしね」
時間妖魔のリージョン
ほむら「武器は十分、魔法も戻った」
ほむら「いきなり軍事基地だったのには驚いたけど」
ほむら「案外幸運だったのかもしれないわ」
ほむら「……」
モンド『すべてのリージョンは私の力にひれ伏す事になるのだ!』
ほむら「……多分悪人よね。武器はもらっても構わないでしょう……」
ほむら「……とにかくここを出ましょう」
水の都と称されるリージョン
シーフードが名物
ほむら「……」
ほむら「いきなり、街に飛ばされた……」
ほむら「何なのよ、あの空間は」
???「アセルス様、私なんだか胸騒ぎが……」
???「大丈夫だよ、白薔薇。どんな追っ手も私が……」
ほむら「全身を白い薔薇でコーディネート……」
ほむら「魔法少女から見ても、上級者なファッションね……」
ほむら(しまった、見つめすぎた……)
アセルス「まさか、追っ手……!」
ほむら「追っ手?」
白薔薇姫「いえ、この方は妖魔ではありません」
アセルス「だけど、なんだか妙な気配だ……。普通の人間とは違う」
ほむら(鋭い……)
白薔薇姫「あら、褒めてくださるのね」
ほむら「ええ、まあ……」
アセルス「こら、白薔薇を変な目でみるな!」
ほむら(何よこれ)
アセルス「!」
アセルス「何か来る!」
アセルス「誰だ!」
白薔薇姫「金獅子姫様ですね、白薔薇ともうします」
白薔薇姫「姉姫様のお噂は耳にしておりました。最も勇敢な寵姫であったと」
金獅子姫「白薔薇姫、あなたは最も優しい姫であったと評判ですよ」
金獅子姫「その優しさで、私の剣が止められますかしら」
ほむら「何が起こっているの……」
金獅子姫「ふっ、どちらでも。この剣に屈しなかったのはオルロワージュ様ただ一人」
金獅子姫「参る!!」
VS金獅子姫 最も武に秀でた寵姫
ほむら「え、私も数に入っているの?」
アセルス「気をつけて、白薔薇!」
白薔薇姫「アセルス様……」
ほむら「私関係ないのだけど……」
金獅子姫「何人たりとも逃がしはせぬ!」
ほむら「えー……」
白薔薇姫『幻夢の一撃』
ほむら(もう仕方ないわ……)
ほむら『破壊光線銃』
ほむら(使ってみよう……)
金獅子姫「行くぞ!」
金獅子姫「こんなものですか、アセルス殿の力は!」
白薔薇姫「アセルス様っ!」
ほむら「……」ガチッ
『破壊光線』
金獅子姫「!」
金獅子姫「くっ、貴様邪魔立てするか!」
白薔薇姫「あなたは関わりないはず……」
アセルス「なのに、力を貸してくれるのか……?」
ほむら「いや巻き込まれたのよ?」
白薔薇姫「どうか、お名前をお聞かせください……」
ほむら「暁美ほむらです……」
アセルス「ほむら、か……」
金獅子姫「よそ見をするなっ!」
アセルス「!?」
白薔薇姫「アセルス様!」
アセルス「くぅっ! でもまだだ!」
『幻魔相破』
金獅子姫「なんと!」
ほむら『十字砲火(2丁拳銃)』
金獅子姫「!」
金獅子姫「この程度で……!」
アセルス「ほむら! 後は私がやる!」
ほむら「そう……。じゃあ私はこれで……」
白薔薇姫「お待ちください。私たちには見届ける義務があります」
白薔薇姫「美しき二人の戦いの行方を……」
ほむら「いや、私にはやることが……」
金獅子姫「白薔薇姫、あなたの気持ちはよくわかりました。私もかつて、その気持ちを胸に抱いていた日々がありました」
白薔薇姫「金獅子姉さま……」
金獅子姫「アセルス殿、妹姫を頼みますよ」
白薔薇姫「お待ちください。それでは、金獅子姉さまが罰を受けます」
ほむら「もう行っていいかしら」
金獅子姫「構いません。あの方に罰していただけるのなら喜んで罰を受けます」
金獅子姫「さらば!」
白薔薇姫「ええ、アセルス様、ありがとうございます」
アセルス「え、何が? 白薔薇、どういうこと?」
ほむら「本当にどういうこと?」
こうして金獅子姫様は去りました
次は、思わぬ人物がアセルス様のもとを訪れたのでした。
ほむら「……」
アセルス「そうか、君は友達を探して旅をしているのか……」
白薔薇姫「染み付いた煙硝の匂い……、旅の過酷を見るようです……」
ほむら「いやそれは、……まあいいわ」
ほむら「それより、さっきのは何? あなたたちを追って来たみたいだけど」
アセルス「……そう、私たちは追われているんだ」
白薔薇姫「妖魔の君、オルロワージュ様に……」
白薔薇姫「妖魔の頂点に立つお方です……」
ほむら「その頂点にあなたたちは何をしたのよ?」
アセルス「白薔薇を奪ったんだよ」
ほむら「ああ、そういう……」
アセルス「すまない、白薔薇。私のせいで……」
白薔薇姫「謝らないでください、アセルス様……」
白薔薇姫「私は……」
アセルス「ありがとう、白薔薇……」
白薔薇姫「アセルス様……」
ほむら「私を放っておくの、やめてくれる?」
ほむら「……とりあえず、色んなリージョンを巡ってみるつもりだけど」
白薔薇姫「あてどのない旅、私たちと同じですね……」
ほむら「同じなのかしら」
アセルス「どうだろう、あてのない同士、一緒に行かないか?」
白薔薇姫「ああ、それはよろしいかもしれません」
ほむら「まあ、案内してくれるのなら、ありがたいけれど……」
アセルス「そうだ白薔薇、ヨークランドに行こう。のどかな、良いところなんだって」
白薔薇姫「それに、お酒が有名なところでもありますね……」
アセルス「白薔薇を酔わせてみたいな……」
白薔薇姫「もう、アセルス様!」
ほむら「止めようかしら」
富豪の家
杏子「で、こいつが目覚めない娘ってか」
富豪「あなた方も娘を助けに来てくださったのですか?」
クーン「うん!!」
富豪「もう、どんな方でも構いません。今も一人来ているのですが……」
男「オレの手には負えねえ!」
富豪「と、まあこんな具合で」
クーン「何が起きるんだろう? なんか楽しそうだな!!」
クーン「! 指輪だ!!」
この人間の命は私のもの……
邪魔はさせぬぞ……
クーン「今のなんだろう?」
メイレン「何かに取り付かれているみたいね」
済王「指輪を頂くのではないのか?」
メイレン「待って! 指輪の力が、この子を生きながらえさせているのかもしれない」
クーン「マーグメルみたいに?」
メイレン「ええ」
メイレン「そうね。でも、どうしたら……」
杏子「おい、骸骨の王様、なんか当てはねーのかよ」
済王「ない!!」
杏子「あー、そうかよ!」
杏子「しゃーねえよ。一旦出直そうぜ」
クーン「うん……」
ヨークランド 酒蔵の街
杏子「しっかしなあ。憑き物落としなんてねえ……」
済王「急がねば、あの娘もう長くはないぞ」
杏子「ああ、わかってるよ……」
「ほむら、君は飲まないの?」
「いや、私未成年だし」
「アセルス様、私少し酔っぱらって……」
「ああ、白薔薇、こっちにおいで」
杏子「……ほむら?」
クーン「?」
ほむら「? 何よ、お酒は……」
ほむら「き、杏子!?」
杏子「おおお……、マジでほむらだ!」
クーン「知り合いかな?」
メイレン「ほら行ってたでしょ。仲間がいるって」
済王「うむ、美しい……。我が姫に生き写しじゃ……」
クーン「王様はもう……」
ほむら「……つまり、そっちのクーン君の故郷を守るために」
ほむら「指輪を集めて回っていると……」
杏子「ああ。なんか放っとけなくてな」
ほむら「相変わらず面倒見がいいのね」
杏子「うるせーよ」
杏子「で、お前はなにしてたんだ?」
ほむら「基地を一つ陥れて、時の君を襲名して」
ほむら「今はあの二人の逃避行に巻き込まれたわ」
「アセルス様……」
「白薔薇……」
杏子「な、何かしらんが、すげえなお前……」
ほむら「ええ……」
済王「白薔薇、しかしながら百合……」
クーン「王様は何を言ってるんだろう」
メイレン「知らなくて良いのよ」
ほむら「行きたいわよ!! 私だって!!」
ほむら「そうだ! あなたまどかがどこにいるか……」
杏子「悪いな。こっちで会った魔法少女はお前が最初だよ」
ほむら「そう……」
杏子「まあ落ち込むなよ。みんな上手くやってるさ」
ほむら「だといいけど……」
杏子「ああ、そうだ。 ……お前憑き物落としに心当たりはないか?」
ほむら「何よ急に」
クーン「あのね、指輪を持ってる子が変なのに取り憑かれてるんだ!」
クーン「指輪のおかげで、今は大丈夫だけど……」
ほむら「なるほどね……」
杏子「うお! な、何だ?」
白薔薇姫「少女の命に執着する、妖魔の風上にも置けぬやつ……」
クーン「知ってるの?」
白薔薇姫「ええ。病魔モール……」
白薔薇姫「……下賎な輩です」
白薔薇姫「……アセルス様なら、あるいは」
アセルス「? 私に?」
白薔薇姫「アセルス様の、妖魔の君の血……」
白薔薇姫「モール程度が逆らえるはずもありません……」
ほむら「これがその……?」
杏子「ああ、眠ったままなんだ」
アセルス「ふん、なるほど……」
アセルス「不愉快な気配がする……」
クーン「!」
メイレン「出てくるわ……!」
邪魔はさせぬぞ、邪魔はさせぬぞ!
ほむら「させないわ!」
『タイムリープ』
クーン「あれ、止まっちゃった」
杏子「ほむら、お前魔法が……」
ほむら「二代目時の君になったの」
杏子「あ? 何言ってんだ?」
ほむら「私にもわからないわ」
済王「今だ、ものども!」
メイレン『精密射撃』
杏子『活殺獣閃衝』
済王『草薙の剣』
富豪「い、家が……」
モール「ぐぅ……、邪魔はさせぬぞ……!」
杏子「しつこい奴だな……」
クーン「そこでサミング!!」
モール「ギャアァァ……」
アセルス「ふん」
娘「ん……」
杏子「起きるぞ!」
クーン「やったー!!」
富豪「よかった、よかった……」
杏子(本当によかった……)
富豪「みなさん、本当にありがとうございました。できる限りのお礼を……」
杏子「食いもん」
富豪「はい、いくらでも……」
済王「酒」
富豪「どうぞ……」
ほむら「なんか、機械に詳しい人を」
富豪「シュライクに優秀な会社があるとか……」
メイレン「あんたたち、自重しなさい」
富豪「その指輪は! それを渡してはお前が……」
白薔薇姫「いえ、もう大丈夫でしょう……」
娘「うん、もう大丈夫! それにこの指輪の兄弟を、クーンが持ってるのよね?」
ほむら「そうなの?」
クーン「ウン!」
娘「がんばってね!」
富豪「ありがとうございました」
杏子「さて、これで一件落着だな」
杏子「お前らのおかげで助かったよ」
ほむら「あなたたちは、これからどうするの?」
杏子「そうだな、乗りかかった船ってやつだ」
杏子「こいつらと指輪探しだな」
ほむら「そう、あなたらしいわ」
ほむら「そうしたいけど、その前にシュライクに行くつもり」
杏子「ああ、お前また兵器を……」
ほむら「すごいのがあるの」
クーン「アセルスたちは?」
アセルス「そうだな、私たちはどこに行っても同じだから」
アセルス「とりあえず、ほむらに付き合おうか」
白薔薇姫「機械ですか……。私の苦手分野ですね……」
メイレン「私たちは待ってるから」
クーン「強い人たちが三人も増えた! きっとすぐ指輪も見つかるね!」
杏子「そうだな」
済王「美しい娘がさらに三人……」
メイレン「別にあてもないんだし、私たちはここでちょっと飲んで行くわ」
杏子「ああ!? マジかよ……」
済王「おお!」
アセルス「私たちは先に行こう」
ほむら「それじゃあ、また後で……」
杏子「ああ、無茶すんなよ」
ほむら「しないわよ」
ヨークランド 発着所
杏子「あーあ、遅くなっちまった」
クーン「クーロン行き、来たよ!」
シップ内
メイレン「あー、飲み過ぎたわ……」
済王「ふはは、まだまだ若いな!」
ガコンッ
杏子「な、なんだ!?」
クーン「うわあ!」
メイレン「う、嘘でしょ……」
メイレン「タンザー……」
ほむら「富豪さんが言ってた会社っていうのは、ここかしら」
白薔薇姫「中島製作所……」
アセルス「こんなちっちゃいとこに?」
「ボディの換装が完了しました」
「次はどこに行くんです~」
「お役に立ちます」
「うん、これ以上の情報はトリニティの中枢に行かないとね」
「どうして、ロボットさんばっかりなんだろう……」
ほむら「!!!」
アセルス「ど、どうしたの、ほむら」
白薔薇姫「ほむらさん……?」
まどか「ほむらちゃん!?」
ほむら「よかった、無事だったのね!」
まどか「ほ、本当にほむらちゃんだ……!」
まどか「会いたかったよぅ……」
白薔薇姫「これは……」
アセルス「ふふ、ほむらにも姫がいたみたいだね」
アセルス「おお、ほむらを抱きしめた」
ほむら「ま、まどか?」
まどか「ほむらちゃんだ……」
まどか「人肌あったかい……」
ほむら「!?」
まどか「よかったぁ……」
ほむら「……何かあった?」
まどか「……結構いろんなところにいったけど」
まどか「ロボットばっかり増えて行くの……」
ほむら「た、大変だったわね……」
今更サガフロにはまった私。
エミリアにマミって名前つけると、すごい複雑な気持ち
サクサク進んでいいわw
Entry ⇒ 2012.11.06 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
P「昼飯一緒に食わないか?」 真「はい! もちろんいいですよ!」
律子「――はい。その件につきましては……」
P「……」カタカタ
小鳥「……」カタカタ
律子「――はい。失礼します」ピッ
小鳥「そろそろ、お昼ですねー」チラッ
小鳥「プロデューサーさん、律子さん。お昼行きましょうか?」
P「!」
P「い、いや。なんでもない……」
小鳥「あずささんも一緒にどうですか?」
あずさ「あらあら。よろしいんですか? では私も」ウフフ
P(……この事務所に入社して二週間)
P(食事の時間がこんなに苦痛になってしまうとは……)
P(ただ……)
小鳥「おいしいイタリアンのお店見つけたんです」
小鳥「ランチタイムはすっごくお得ですから、お財布にも優しいんです」フフフッ
あずさ「それは楽しみですねー」
律子「はい。小鳥さんの探してくるお店はいつも美味しいですから」
P「……楽しみですね」
律子(小鳥さん、プロデューサー殿が来てから定食屋に入らなくなりましたね)ヒソヒソ
小鳥(……ピヨ!!)
あずさ(あらあ? 確かにそうですね)ヒソヒソ
小鳥(そ、それは……)ヒソヒソ
小鳥(私ももう2X歳ですし、少しは女らしくしようかと……)ヒソヒソ
小鳥(こういうアピールが効くって、雑誌に書いてあって……)ヒソヒソ
律子(なるほど。そういうわけだったんですか)ヒソヒソ
律子「わあ! とっても美味しそうですね!」
小鳥「そうなんですよ。香りもいいですし」
あずさ「はい。お店の雰囲気もいいですねー」
小鳥「それじゃあ、食べましょうか?」
一同「いただきまーす!」
P「……いただきます」
P(ただ……)
P(量が少ない!!)
P(大盛りを頼めば良いんだろうが)チラッ
一同「――――」キャッキャウフフ
P(なんとなくそうはできない雰囲気……)
P(俺は新米だし、しかも周りは女性ばかりの職場)
P(ある程度覚悟はしていたが、まさかこんなにやりづらいとは!)
P(牛丼屋でがつがつと食いたいときもあるんだ)
P(音無さんを初め、事務所の皆はマナーも良いし……)
P(こっちも気にしてしまうんだよな……)ハアッ
小鳥「プロデューサーさん?」
P「……は、はい!」ビクッ
俺でも作れるなこれ
あずさ「なにか……、悩み事でしょうか?」
P「い、いえ……、そういうわけでは」
小鳥「お口にあいませんでしたか?」ショボン
P「……!」
P「いえ、違います! あんまりに美味しかったものですから!」
P「少し浸ってしまいました……」アハハ
あずさ「ええ、とっても」
小鳥「そうだったんですか。心配しちゃいました」ニッコリ
P「え、ええ。すみません」アハハ…
P(うう……。なんで素直に言えないんだろうか)
P(仕事上ではそれなりに意見も言えるんだが……)
小鳥「また良いお店、探しますからね?」
P「……はい! 楽しみにしてます!」
あずさ「おいしかったですねー」ウフフ
律子「ええ! とっても!」
小鳥「明日はどうしますか?」
あずさ「この間のお店はどうでしょうか? サラダがとっても美味しかったわあ」
律子「いいかもれません! あそこの野菜は無農薬で――」
P「……」
ワイワイガヤガヤ
P(……ん? どうしたんだ? 事務所がやけに騒がしいが)
ガチャリ
P「なんの騒ぎだ?」
美希「あ! プロデューサー!」
P「ああ、ただいま」
P(誰かに皆が群がってるな。よく見えないが)
???「みんな、少し落ち着いてよ……!」
亜美「んっふっふ~。まこちん、久しぶりなんだからよいではないか→」
真美「真美たちもみんな心配してたんだよ→?」
雪歩「うぅー。真ちゃん……」ジワッ
美希「どうしたの?」
P「見慣れない子が居るんだが、あの子は……」
美希「……そっか。プロデューサーは真くんと会うのは初めてだったね」
P「真くん?」
春香「はい! 765プロのアイドル、菊地真です!」
春香「ダンスレッスン中に怪我をしちゃって、いままで休養してたんです」
春香「愛称は『真王子』なんですよ」クスッ
P「へえ」
美希「む~。春香! プロデューサーは美希とお話してたの!」
春香「そうだったね。ごめん美希」ニッコリ
美希「む~」プンスカ
???「す、すみません!」
P「あ、ああ。君は……」
真「菊地真です! あなたはこの事務所のプロデューサー、ですよね?」
P「ああ……」
真「くう……。やっぱりそうかあ……」ガックリ
P(なんだか落ち込んでるみたいだが……、どうしたっていうんだ?)
P「ああ、その話なら今、春香に聞いたよ」
真「くう。出遅れちゃったなあ……」
真「みんなは二週間も先にプロデュース活動を始めてもらってるってことですよね?」
P「ああ、そうなるが。でも、気にすることも無いさ」
P「最初の一週間は挨拶や事務的な手続きばかりだったし」
P「本格的なプロデュースはほとんどこれからなんだ」
真「これからよろしくお願いしますね! プロデューサー!」ニコッ
P「!」
P「ああ! こちらこそよろしく頼む!」グッ
真「それじゃあ、失礼します!」ペコッ
『美希「……そっか。プロデューサーは【真くん】と会うのは初めてだったね」』
『春香「愛称は【真王子】なんですよ」』
『真「あの、実は【ボク】、今まで怪我をしてて休んでいたんです」』
P(まさか、うちの事務所にも男のアイドルがいるとは知らなかったな……!)
P(これからは少し居心地がよくなるかな?)
社長「あー、キミぃ」
P「はい?」
社長「今日から菊地真君が復帰したんだが……」
P「はい! そうみたいですね。話は春香たちに聞きました」
社長「おお! そうだったのかね。さすが我が社のホープ! 仕事が早いね!」
P「いえ、それほどでも……」
社長「それなら私から改めて話をする必要もないかな。引き続き頑張ってくれたまえ!」
P「はい! ありがとうございます!」
――事務所――
P「真。体の調子はどうだ?」
真「はい! 全く問題ありません!」
真「空手の型だってこの通り!」ババッ
P「おお! すごいな! 真は空手をやってるのか?」
真「はい! 最初は父さんに無理やりやらされたんですけど……」
真「いまはとっても楽しいです!」
P「そうか」ニッコリ
真「?」
P「真は昼飯はどうするんだ?」
真「お昼ですか? お昼は、みんなとコンビニに行こうって話してるんですけど……」
P「そ、そうなのか」
P「その……、真が良かったらで構わないんだが」
春香「……」ガタッ!
美希「……」ガタタッ!
雪歩「……!」
真「ええ! 構いませんよ! ならみんなも一緒に」
P「……いや」
P「出来れば二人だけの方がいいんだが……」ヒソッ
真「……え?」////
P「ああ。ダメか?」
真「いえ、ダメってことはないですけど」チラッ
春香・美希・雪歩「……」
貴音「良いではありませんか」
真「貴音?」
貴音「真は私たちに比べて、プロデューサーとの時間が少ないのは確かなのです」
貴音「一緒に食事をとって、仲を深めることも大事かと」
美希「……そうかも知れないの」
雪歩「……」
P(本当はみんなも誘ってあげるべきなんだろうが)
P(たまには、気がねなく食事をとりたい)
P(男同士で!)クワッ
P「!」
真「確かにこういう時間をとって話をするのも大事ですよね!」
真「ご一緒しますよ! プロデューサー!」
P「ああ、ありがとう」
真(……そうだよね。変に意識することなんて無い)
真(単に二人で食事に行くだけなんだし……)
真(……二人で)////
小鳥「プロデューサーさんは今日は真ちゃんとお昼なんですよね?」
P「ええ。ですから、申し訳ないですけど……」
小鳥「いえ! そんな申し訳ないだなんて……」
P「すみません。それじゃあ」ソソクサ
オーイ! マコトー!
ハイ! イキマショウカ! プロデューサー!
律子「……小鳥さん?」
小鳥「律子さん!」クワッ
律子「……は、はい!」ビクッ
小鳥「今日のお昼はたるき亭にしましょう!」
律子「え、ええ。構いませんよ?」タラッ
あずさ「あらあら」
真「今日はどこへ連れて行ってくれるんですか? プロデューサー」ワクワク
P「え? まあ、そんなに楽しみにされると恐縮なんだが……」
P「……牛丼を食いに行きたくてな」
真「……へ?」キョトン
P「……! 嫌だったか?」
真「え! いや! そんなことないです! 食べたいです、牛丼!」
P「そ、そうか」ホッ
真(プロデューサーと二人でご飯なんだよね)////
真(男の人と二人で食事に行くなんて……)////
真(いま僕たち、他の人たちから見たらどう見えてるんだろう?)
真(やっぱり、こ、恋人同士かな)////
P「真?」
真「……え? ああ! どうかしましたか? プロデューサー」
P「いや、店に着いたぞ?」
真「す、すみません! 入りましょう!」
ガヤガヤ
P「結構混んでるな……」
真「そうですね……」
P「とりあえず、座ろうか」
真「はい!」
P「俺は牛丼特盛、卵と豚汁と御新香かな。真は?」
真「えっと……ボクは」
真(プロデューサー凄い食べるんだな……)
真(ボクも結構食べられるんだけど……)
真(あんまりいっぱい食べたらプロデューサーに、はしたないって思われるかな?)ウーン
真「……!」
真(そんな平然と! い、いいのかな?)
真「じゃ、じゃあ牛丼だけは大盛りにしてもらえますか?」
P「ああ! わかった!」
P「今日は俺のおごりだからな! 遠慮なく食ってくれ!」
真「はい! ご馳走になります!」
P「うまい! 久しぶりだから尚いっそううまいな!」ガツガツッハフハフッ
真(男らしいなあ……)
真(なんかちょっと……いいかも)////
P「どうした? 真もどんどん食べてくれ!」
真「……はい!」
おかわりもいいぞ!
真「ごちそう様でした! プロデューサー!」
P「いやいや。これくらいなんともないぞ!」
真「あ、あの……」
P「?」
真「プロデューサーは事務所のみんなともこうして食事したことあるんですか?」
P「ん? ああ、実は……」
P「ああ。このことは音無さん達には内緒だぞ?」
P「正直、洒落た店でご飯を食べても、食った気しないんだよな」
真「はははっ! なんかそれ、分かる気がします」クスッ
P「音無さん達との食事はそういうのだし、一回、とある噂を聞いて貴音と行ったこともあるんだが……」
真「……貴音、ですか」
P「……ああ」トオイメ
真(詳しく聞くのはやめておこう……)
P「ん? どうした?」
真「信号変わりそうです! 行きましょう!」ギュッ
P「あ、ああ! って、急に走るな!」
真「これくらい何言ってるんですか!」タタタッ
真「まったく! プロデューサー! だらしないですよ!」
P「食べたばっかりなんだから、仕方ないだろ……?」ハアハア
P「真はなんとも無いのか?」
真「ええ! ちっとも!」
P「さすが普段から鍛えてる奴は違うな」
真「へへっ!」
P「ああ……」
P(それにしても……)
P(……真の手、柔らかかったな)
P(それに、良い匂いもした……)
P(……!)ハッ
P(な、何を考えてるんだ俺は!)
P(真は男なんだぞ!)
小鳥「お帰りなさい! プロデューサーさん!」ニコニコ
P「ただいま戻りました」
P「音無さん、なにかあったんですか?」
小鳥「……え?」
P「いえ、なんだか嬉しそうなので……」
小鳥「……そうですか? 気のせいですよ」フフフッ
小鳥(……言えないわ。久しぶりに食べた、たるき亭の定食が美味しくて気分が上がってるだなんて……)
P「……?」
P「……どうかしたのか?」
律子「ええ。実はお願いしたいことがありまして」
P「……?」
律子「ええ。細かいところなんですけど、いくつか変わった部分がありまして……」
P「それで?」
律子「その変更があったのが、真の休養の直後だったんです」
P「あー。なるほど……」
律子「はい。真だけ、変更後のダンスの練習をしていないんです」
律子「ダンス部分は早いうちに詰めに入っていたんで、失念していました」
律子「……私のミスです。すみません」ペコッ
律子「はい。トレーナーさんにも連絡してみたんですが、予定が詰まってるみたいで」
P「大丈夫だ。俺に任せてくれ」
律子「すみませんが、お願いします。これ、これまでの練習中のビデオです。参考にしてください」
P「ああ。ありがとう」
律子「スタジオは押さえてあります。私は午後から春香たちに着くので、なにかあったら……」
P「そんなに心配するな! 任せろっていったろ?」
――――
P「と、いうわけでだ」
P「真は午後から俺とダンスレッスンだ」
P「他の皆は歌のレッスンに行くから、別々になってしまうが……」
真「はい! わかりました!」
美希「真くんだけ別なのは少し寂しいの」
春香「プロデューサーさんはこっちには来てくれないのかな?」ボソッ
P「ん? 春香、何か言ったか?」
春香「い、いえ! なんでもありません」アセアセッ
――レッスンスタジオ――
P「それじゃあ、レッスンを始めようか!」
真「はい! よろしくお願いします!」
P「ああ! 真ならすぐに皆に追いつけるぞ!」
P「それじゃあ、変更した箇所なんだが……」
P「ビデオ、再生するぞ?」
真「はい!」
真「うーん。流れは分かったんですけど……」
真「正面からの映像だけなんで細かい部分がなかなか……」
P「うーん、確かにそうだな……」
P「じゃあ、実際にやってみるか!」
真「そうですね。でも……」
P「これでもレッスンはちゃんとサポートしてきたんだ」
P「細かい部分もちゃんと指導できるはずだ!」
真「そう、ですよね! はい! お願いします! プロデューサー!」
ジャーン・・・・・・
真「……ふう」
真「どうでしたか? プロデューサー?」
P「うん、流石だな。大体は良さそうだ」
P「だけど、確かに細かいところで気になるところはある」
真「はい」
P「そこのところを調整していこう!」
真「お願いします!」
真「はい」
P「もっと腰を左に突き出す感じかな?」スッ…
真「うひゃあ!!」ビクッ
P「うわあ!!」
P「ど、どうしたんだ? 急に?」
真「い、いえ……」
真(で、でも……)チラッ
P「?」
真(プロデューサーは全然気にしてみたい……)
真(そ、そりゃそうだよ。これはレッスンなんだから)
真(こんなことで一々動揺してたらプロ失格だよね)
真「何でもありません! 続けましょう!」
P「ああ。それでここのところは――」
P「……ふう。大体良さそうだな」
真「は、はい!」ハアッハアッ
P(う……)
P(汗で髪が顔に張り付いて、なんだか色っぽいな)////
P(息も切らせて……)
P(それになんだかいい匂いが……)
P(……! だ、だから何を考えているんだ俺は!)
P(俺にその気はないんだ! ……ないはずだ)
P「さ、さあ真。そろそろ時間だ。着替えて事務所に戻ろう」
真「はい! そうですね!」
P「……」
真「……」
P「……どうした?」
真「……え?」
真(着替えたいから出て行ってほしいんだけど……)
P「……?」
真(……! そ、そういうことか!)
真(いまの二人はアイドルとプロデューサー。男も女も無いんだ!)
真(仕事とプライベートはしっかり分けて考えなくちゃ!)
P「ああ」
真「……」ヌギッ
P「……」
P「…………」
P「……………………」
P「うわあああああああああああ!!!!」
真「」ビクッ!!
P「お、お、お、おおお……」
真「……お?」
P「……お、おんな?」
真「……は?」
P「真、お前女だったのか?」
真「」
真「……」ツーン
P「そろそろ、機嫌直してくれないか?」
真「ひどいですよ。男と間違えるなんて……」
P「……すまない」
真「……」
P「……真?」
P「……!」
真「女の子らしくって、憧れてアイドル事務所に入ったのに……」
真「プロデューサーに男と間違えられるなんて……」
P「いや、そんなことは……」
真「だって!」
P「……」ビクッ
真「プロデューサー、気づいてくれなかったじゃないですか……」グスッ
真「……」グスッ
P「そんなことない」
真「……慰めなんてやめてくださいよ」
P「いや、慰めなんかじゃない」
P「真はかわいい女の子だよ」
真「……」
P「その時、俺、胸がドキッとしたんだ」
P「昼に食事しに行った帰り道に手を引かれたとき」
P「やっぱり、胸が高鳴った」
P「とっても良い匂いがした」
P「今のレッスン中だってそうだ。俺、ドキドキしっぱなしだった」
P「それに……」
真「うわああああああ!!」////
真「そ、それは言わなくてもいいです!」
P「ん? そ、そうか? ……そうだよな」////
P「ま、まあ……」コホン
P「とにかく! 真は魅力的な女の子だよ!」
真「……」////
真「……あ、ありがとうございます」////
P「むしろ、真が女の子で安心したんだ」
P「俺、その気があるんじゃないかって不安だったんだ」アハハ・・・
真「……ふふっ! 良かったですね! ボクが女の子で!」
P「ああ! 真はとってもかわいい女の子だ!」
真「……へへへっ!」////
――事務所――
P「ここの店は雰囲気も良くてな? ランチタイムはセットが安くて――」
真「へえ! いいですね! 行きましょうよ! プロデューサー!」
P「もちろん大盛でな! ……あ! 春香たちも一緒にどうだ?」
春香「……いえ、結構です」
美希「胸焼けしそうなの」ボソッ
雪歩「お二人の邪魔しちゃ悪いですぅ」
真「そうだよ! 皆で行こうよ!」
雪歩「う、うん……」オドオド
春香(見せ付けられるってわけね……、でも)
美希(でもまあ……、二人の関係は日も浅いし)
春香・美希(隙あらば……)キラーンッ
春香「じゃあ、ご一緒しまーす!」
美希「美希もなの~!」
律子「小鳥さん、いい加減元気出してください……」
あずさ「あらあら」
小鳥「たったの二日。たったの二日ですよ? 律子さーん」ピヨヨ・・・
小鳥「しかも、さっき言ってたお店、私が教えてあげたお店で……」
律子「はいはい。わかりましたから」ナデナデ
小鳥「ううう。短い夢でした」ウルウル
P「ああ! あの店か! 少し並ぶけど、美味いよな!」
真「……なにより!」ニコッ
P「……ああ!」ニッ
P・真「ご飯大盛が無料!!」
おわり
>>177
雪歩はまだ入社二週間のPに馴染んでいません。
仲のいい真をとられるんじゃないかと心配しています。
真マジ天使だな
乙
Entry ⇒ 2012.11.06 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
のび太「スターフォックス……?」
ギュゥゥゥゥン……! キイィィィィン……!
各々自慢の戦闘機を駆り、激戦を繰り広げる戦士たち。
ファルコ「フォックス、危ないっ!」
ウルフ「落ちろ、キツネ!」バシュッ
フォックス「しまった!」
ズガァンッ!
フォックス「うわぁぁぁぁぁっ!」ヒュルルルル…
すると──
バシュンッ!
ウルフ「ヤツのアーウィンが……消えやがった!?」
ウルフ「ライラット系にはまれに空間の歪みが生じ、
ワープホールができるというが……それに飲み込まれたようだな」
ウルフ「あのジェームズの息子ともあろう者が……無様な最期だ」
ウルフ「よし青二才のキツネは片付けたし、
コーネリア軍の基地に仕掛けられた爆弾も爆発する頃だ。全機、引き上げだ!」
レオン「この私の敵ではなかったな」
ピグマ「また会おうや、ペッピー!」
アンドリュー「ふははは、ざまあみろ!」
ギュウゥゥゥン……
ファルコ「くそったれっ!」
ペッピー「こうなっては仕方ない……我々も撤退するしかない……!」
スリッピー「フォックス……!」
………
……
…
のび太たちは、火星と木星の間にある小惑星の中から適当なサイズの星を選び、
遊び場にするために改造を行っていた。
ドラえもん「よし、これで海もできたし空気もできた」
のび太「ぼくたちの遊び場の完成だ!」
ジャイアン「よっしゃあ、この星の名前は“ジャイアン星”に決まりだぜ!」
スネ夫「センスないなぁ、“スネ夫星”の方がいいに決まってるよ」
ジャイアン「なんだと!?」
しずか「喧嘩はよしなさいよ。せっかく遊び場を作ったんだから、
みんなでドッジボールでもやりましょうよ」
ドラえもん「いいね、やろうやろう! ──ん、のび太君、どうしたの?」
のび太「ドラえもん、あそこっ!」
のび太が指差す方向には、煙を上げてふらふらと飛ぶ戦闘機があった。
しずか「そんなこといってる場合じゃないわ!
あのままじゃ、どこかにぶつかっちゃうわよ!」
ドラえもん「そうだね! ──えぇと」
ドラえもん「なんでも空港~!」
【なんでも空港】
飛行しているものを、強制的に着陸させる道具。
効力は昆虫やオバケ、果てはジェット機にまで及ぶ。
戦闘機はなんでも空港に吸い寄せられ──
ドラえもん「こっちに来たぞ、みんな離れろっ!」ダッ
無事、着陸に成功した。
スネ夫「うわぁ~かっこいい……」
ドラえもん「ようし、みんな中にいる人を助け出そう!」
ジャイアン「俺様に任せろ!」ダッ
ドラえもん「これは……」
のび太「えぇと……」
しずか「どう見ても……」
ジャイアン「キツネ……」
スネ夫「だよね……」
のび太「もしかして……チッポ君たちの仲間かな?」
ドラえもん「仲間ってことはないだろうけど、
彼らと同じようなタイプの宇宙人ってところだろうね」
しずか「気絶してるみたいだけど、大丈夫かしら……」
ドラえもん「お医者さんカバンによると、頭を強く打ってるみたいだから、
しばらくこのまま安静にしておこう」
ドラえもん「あと、この人が起きたら話を聞かなきゃいけないから、
今のうちにみんなでほんやくコンニャクを食べておこう」
ジャイアン「やれやれ、せっかく遊び場ができたってのに、
とんでもないことになっちまったぜ」
スネ夫(あの戦闘機、かっこいいなぁ……)
フォックス「うぅっ……ここは!?」ガバッ
フォックス「うっ!」ズキッ…
しずか「まだ寝てないとダメですよ!」
フォックス「……君たちは?」
ドラえもん「ぼく、ドラえもんです」
ドラえもん「ぼくたちがこの星で遊んでいたら、あなたの飛行機が飛んできたので、
救助したんです」
フォックス「ドラエモン……。そうだったのか、ありがとう」
フォックス(全く知らない種族だ……)
フォックス(ウルフに撃墜された瞬間、空間に飲まれるような感覚があったが、
どうやらワープをしてしまったようだな)
フォックス(早く仲間と合流しないと……。しかし、もうアーウィンは──)
フォックス(どうやらこの子たちは悪人ではなさそうだ。
俺の事情を話したところでどうしようもないが……
助けられた恩もあるし、ここは正直に話すべきだろうな)
フォックス「俺の名はフォックス・マクラウド。
やとわれ遊撃隊“スターフォックス”のリーダーをやっている」
のび太「スターフォックス……?」
のび太「あとドラえもん、遊撃隊って?」
ドラえもん「戦争とかで、本隊とは別行動を取る部隊のことだよ」
フォックス「俺たちを雇った惑星コーネリアは、ライラット系の中でも
もっとも豊かで平和な星だった」
のび太「ライラット系って?」
ドラえもん「多分こっちでいう太陽系みたいなものだよ。
話が進まないから、とりあえず今は黙って聞いておきな」
フォックス「しかし、ある男が宣戦布告をしてきたことで、
この星の平和は終わりを告げた」
スネ夫「せ、宣戦布告……」ゴクッ
かつて惑星コーネリアを追放された科学者だった」
フォックス「ヤツは惑星ベノムを本拠地にし、強大な軍隊を作り上げ、
ライラット系の惑星を次々に征服していった」
ジャイアン「なんてヤツだ、許せねえ!」
フォックス「そして、アンドルフの魔の手はついにコーネリアにまで及んだ。
ヤツらによって、コーネリアの都市は徹底的に破壊された」
しずか「ひどい……」
フォックス「しかし、コーネリア軍に雇われた俺たちスターフォックスが、
どうにかコーネリアからベノム軍を撃退することに成功した」
フォックス「その後、一気にベノムまで進撃しようとしたんだが──」
フォックス「その途中にある惑星フィチナで俺はライバルの“スターウルフ”に敗れ、
こうして君たちに助けられる結果となってしまった……」
ドラえもん「つまりだね、フォックスさんは悪者をとりあえずは食い止めたけど、
その後やられちゃったってことだよ」
しずか「フォックスさんが負けて、コーネリアは大丈夫なんですか……?」
フォックス「分からない……」
フォックス「かなり長い間、ワープ空間にとらわれていたようだし、
できれば今すぐにでもコーネリアに戻りたいが──」
フォックス「アーウィンがあれでは……」
スネ夫「これアーウィンっていうんだ!
すっごいなぁ~……今まで見たどんなラジコンよりかっこいいや!」
ドラえもん「ラジコンだなんて失礼な……」
フォックス「ハハハ、アーウィンは“超高性能全領域戦闘機”といわれていてね」
フォックス「反重力制御によって超高速戦闘が可能で、
機体そのものも頑丈で高熱や汚染領域などあらゆる悪条件下での
飛行にも耐えることができる」
ドラえもん(すごいなぁ、22世紀の戦闘機にも匹敵するかもしれない)
フォックス「だから、超一流のエンジニアでなければ
こいつを修理することはとてもできないんだ……」
フォックス「え!?」
のび太「ここにすんごいロボットがいるんだから! ね、ドラえもん?」
ドラえもん「この復元光線を使えば、たとえアーウィンだって直すことができます」
【復元光線】
壊れた物体を直すことができるライト。
フォックス「本当かい!? とても信じられないが──」
ドラえもん「えいっ!」ピカーッ
復元光線の光を浴びたアーウィンの機体が、みるみる修復されていく。
フォックス「す、すごい……!」
ドラえもん「念のため、試運転をしてみて下さい」
フォックス「ありがとう!」
キィィィィ……ン
フォックスはアーウィンに乗り込み、星の周りを鮮やかに飛び回った。
のび太たちはフォックスの操縦技術とアーウィンの美しさにしばし魅了された。
スネ夫(うわ、イヤな予感……)
ジャイアン「このままフォックスさんを帰しちまっていいのかよ!?」
ジャイアン「俺たちだって今まで宇宙を何度も救ってきたんだ!
なにか手伝えることがあるはずだぜ!」
のび太「うん、たしかに!」
スネ夫「なにいってんだい! あんなすごい戦闘機がバチバチやってるような
宇宙戦争に乗り込もうっての!?
いくらドラえもんの道具があったって、無謀だよ!」
しずか「たしかにね……例えばパピさんの時は敵が小さかったからよかったけど……。
相手が同じ大きさだったら、かなり危なかったわ」
ドラえもん「う~ん、いくらぼくの道具でも、あのアーウィンという戦闘機には
勝てないかもしれない……」
ジャイアン「怖気づいたのかよ!」
スネ夫「そりゃそうさ!」
ドラえもん「でも──」
ドラえもん「あのアーウィンをコピーすることは可能だよ!」
戦闘機の操縦なんか、小学生のぼくらにできるわけないじゃん!」
ドラえもん「うむむ、たしかに……」
しずか「いいえ、大丈夫よ!」
しずか「パピさんたちとPCIAと戦った時、空飛ぶ戦車を作ったじゃない!
あの時みたいにアーウィンを私たちでも扱えるように改造すればいいのよ!」
ドラえもん「そうか!」
スネ夫「ふん……問題はまだあるよ」
ジャイアン「まだあるのかよ!」
スネ夫「ぼくたち全員分の改造アーウィンを作ったとしても、
うまく連係できなきゃ、敵に各個撃破されるのがオチさ」
のび太「だったらさ、ぼくたち全員で一機のアーウィンを操縦すればいいじゃない。
ぼくってかしこ~い!」
スネ夫「お前、バカか!? どう見てもアーウィンは一人しか入れないだろ!」
のび太「むぐ……」
ドラえもん「──いや、なかなかいい発想かもしれない!」
入ることもできる!」
ドラえもん「それにぼくたち一人一人じゃとてもフォックスさんのようには
いかないだろうけど──」
ドラえもん「ぼくら五人で一人のパイロットになれば、
フォックスさんの足を引っ張らずに済むかもしれない!」
ドラえもん「タイムマシンを使えば、いくら五人で家を留守にしたって問題ないしね」
スネ夫「だ、だけどさぁ……」
ジャイアン「ふん、スネ夫。さっきからずいぶん弱気だけどよ」
スネ夫「な、なんだよ、ジャイアン」
ジャイアン「お前だって、あのアーウィンとかいう飛行機を動かしてみたいんだろ?」
スネ夫「…………」
スネ夫「もう、分かったよ! しょうがないなぁ! 好きにすればいいさ!」
ジャイアン「へっへっへ」
ドラえもん「決まったね。じゃあフォックスさんの試運転が終わったら話してみよう!」
フォックス「ありがとう、アーウィンの調子は完璧だったよ!
あとはライラット系目指してなんとか飛んでいくことにする」
ドラえもん「フォックスさん」
ドラえもん「ぼくの道具があれば、フォックスさんをライラット系まで
一瞬で連れていくことが可能です」
フォックス「なんだって!? 驚いたな、そんなこともできるのか……」
ドラえもん「だけど、条件があります。
ぼくたちにフォックスさんのアーウィンをコピーさせて下さい!」
のび太「そして、ぼくたちにもフォックスさんの手伝いをさせて下さい!」
フォックス「なっ……!」
フォックス「子供である君たちを戦いに巻き込むわけには──」
ジャイアン「頼むよ、フォックスさん!
俺たちこう見えても、何度も地球や宇宙を救ってきたんだぜ!」
フォックス(この正義感の強そうな子供に、
アンドルフとの戦いの話をしたのは失敗だったか……)
フォックス(しかし、アーウィンはたしかに直っていた。
この子たちがすごい力を持っているというのも事実ではある……!)
フォックス「だが俺としても、子供を巻き込みたくないってのは本音なんだ。
戦況次第では、すぐに帰ってもらうことになる──いいね?」
ドラえもん「はいっ!」
のび太「はいっ!」
しずか「はい!」
ジャイアン「おうよ!」
スネ夫「……帰りたい」ボソッ
まずドラえもんはスモールライトでアーウィンを小型化し、
フエルミラーにてアーウィンを一機増やし、元の大きさに戻した。
そして──
ドラえもん「天才ヘルメット~! 技術手袋~!」
【天才ヘルメット】
機械をどう改造するのが最適か、考えてくれるヘルメット。
【技術手袋】
指先がさまざまな工具に変化し、これをつけるだけであらゆる工作が可能。
ドラえもん「よぉ~し、五人で協力して改造しよう!」
フォックス「え、もう!?」
さっそく“改造版アーウィン”のお披露目が始まった。
ドラえもん「まず内部の広さ、アーウィンの大きさはそのままに
四次元技術を駆使して、ぼくたち五人が入れるようになった!」
スネ夫「コクピットも改造して、ゲームやラジコン感覚で操作できるようにしたよ!」
のび太「ビーム発射口は、パイロットが操縦だけに専念できるよう、
別の人間が担当できるようにしたしね!」
ジャイアン「さらにボム発射は、投球フォームと連動して動く、
“ジャイアンアーム”で行えるようにしたぜ!」ウイーン
しずか「できればお風呂をつけたかったけど……私は参謀として頑張るわ!」
フォックス(すごい……こんな短時間でアーウィンをここまで改造するなんて……。
スリッピーが聞いたら嫉妬するかな……いや、喜ぶだろうな)
“ジャーウィン”なんてのはどうだ!?」
スネ夫「ぼくが操縦するんだし、“スネーウィン”の方がいいよ!」
のび太「いやいや、“ノビターウィン”だよ!」
ドラえもん「ぼくの道具で改造したんだから“ドラーウィン”にすべきだ!」
ギャーギャー……! ワイワイ……!
しずか「んもう……しょうがない人たちね。
だったらフォックスさんに決めてもらいましょうよ」
フォックス「う~ん……俺が一番しっくりきたのは“ドラーウィン”かな」
(子供たちの中から選ぶと、あの三人が喧嘩しそうだしな……)
ドラえもん「やったぁ!」
のび太「うう……」
ジャイアン「ちぇっ、フォックスさんがそういうなら……」
スネ夫「しょうがないか」
こうして、ドラえもん式超高性能全領域戦闘機“ドラーウィン”が完成した。
メインパイロット 骨川スネ夫
レーザー砲撃手 野比のび太
ボム砲撃手 剛田武
参謀 源静香
機長 ドラえもん
ドラえもん「ぼくたち五人が力を合わせれば、どんな敵だって倒せるはずさ!」
ジャイアン「おうっ! ──って、なんでドラえもんが機長なんだよぉ!」
のび太「ずるいよ!」
しずか「もう……喧嘩はやめましょうよ!」
スネ夫「やれやれ……」
フォックス(早いところ、俺をライラット系に連れていってもらいたいんだが……)
ペパー「フィチナ周辺を軍に捜索させておるが、
まだフォックスが見つかったという報告は入っておらん……」
ペッピー「そうですか……」
ファルコ「ケッ、くたばったに決まってる!」
スリッピー「ファルコ、なんてこというんだよ!」
ファルコ「ふん、俺は元々アイツをリーダーだと認めた覚えはねえんだ。
あの時もあっさりと背後を取られやがって……情けねえ!」
ファルコ「こうなったら、俺が一人でベノムに攻め込んでやらぁ!」
ペッピー「ファルコ、ムチャをいうな!
とにかく今は……フォックスの安否確認が最優先じゃ」
ファルコ「……ちっ」
スリッピー「フォックス……どこ行っちゃったんだよぉ……」
バタンッ!
兵士「ペパー将軍!」
ペパー「なんだ、騒がしいぞ!」
兵士「フォックス殿が……ご帰還されました!」
フォックス「ご心配をおかけしました、将軍」
ペッピー「無事だったか! よかった……!」
スリッピー「フォックス、無事だったんだね~!」
フォックス「ありがとう、二人とも」
ファルコ「ケッ、てめえがあのウルフのヤロウにやられたせいで
フィチナの情報基地はめでたく破壊され──」
ファルコ「せっかくコーネリア、メテオ、フィチナと押し戻した戦線も、
すっかり後退させられちまった。
セクターYから、コーネリアに大艦隊が進軍してるって情報もある」
フォックス「すまない……」
ペッピー「済んだことじゃ、もうよさんか!」
ファルコ「いいたいことはまだあるぜ、フォックス」
ファルコ「お前の後ろにいるガキども……ありゃいったいなんだ?」
俺が帰ってこれたのも、彼らのおかげだ」
ファルコ「ほぉう。ベノムのサルどもに少し似てるが、敵じゃあねえようだ。
だがなぜ、そのガキどもをこんなところまで連れてきた?」
フォックス「彼らは優れた技術を持っている。助けになるなら、と思い……連れてきた」
バキィッ!
フォックス「ぐはっ……!」
ファルコ「ガキに助けられた上に、挙げ句ガキの助けを借りて戦闘だぁ?
そこまで落ちぶれちまったのかよ、フォックスよぉ!」
ドラえもん「ちがいます! ぼくらが無理をいってついてきたんです!」
ファルコ「黙ってろタヌキ!」ギロッ
ドラえもん「ぼ、ぼくはタヌキじゃ……」
(こ、怖くて言い返せない……)
スネ夫(おっかない……やっぱり来るんじゃなかった……)
ファルコ「どっちだって同じだ! ──ったく今までこんなヤツをリーダーに
してたなんて情けねえ……スターウルフ如きにやられるわけだぜ!」
ファルコ「もうお前には愛想が尽きた。俺はこのチームを──」
兵士「ペパー将軍! セクターYのコーネリア艦隊が大打撃を受けたとの報告が!
今すぐ援軍の出動をお願いします!」
ペパー「なんだと!?」
ペパー「くっ、セクターYを突破されれば、コーネリアは滅亡する……!」
ペッピー「フォックス、ファルコ、今は一刻を争う時じゃ。
ひとまず喧嘩はやめ、出撃準備に入るんじゃ!」
ファルコ「ちっ……」
フォックス「分かった、ペッピー」
ペッピー「……こちらには全く戦力が足らん、今は猫の手も借りたい時じゃ!
君たちも協力してくれるというなら、ぜひ協力してくれ!」
ドラえもん「はいっ!」
ファルコ「……いいか、フォックス」
ファルコ「もし、この戦いでもふぬけたところを晒すようなら、
俺はチームから抜ける……分かったな!」
フォックス「ああ、分かっている」
ムシャクシャしてきやがる!」
のび太「ホントだよ! フォックスさんを殴ったり、ぼくらをバカにしたり……」
しずか「でもファルコって人、フォックスさんを奮起させるために
わざとあんないいかたをしてたようにも見えたわ」
のび太「そうかなぁ」
ドラえもん「あのペッピーっていう人のいうとおり、今は時間がない!」
ドラえもん「バカにされた分は、ぼくたちのドラーウィンで返してやろう!」
ジャイアン「そうだな!」
のび太「そうだね!」
しずか「スネ夫さん、操縦よろしくね!」
スネ夫「……んもう、やるしかないんでしょ!」
セクターY宙域では、コーネリア軍とベノム軍の激しい戦闘が続いていた。
ズガァンッ!
ドゴォンッ!
バゴォンッ!
※これらの音は宇宙空間に響いたわけでなく、各戦闘機等の内部に響いている音である。
ファルコ「派手にやりやがって……サルどもが」
フォックス「味方の艦隊を援護する! 各機、ベノム軍戦闘機をもらさず撃墜せよ!」
ペッパー「了解じゃ」
スリッピー「了解っ!」
フォックス「ドラーウィンは俺たちが撃ちもらした敵を狙ってくれ!
ただし絶対に無理はしないように!」
ドラえもん「はいっ!」
フォックス「ファルコ、ムチャをするな!」
ファルコ「うるせぇっ!」
ペッピー「一匹も後ろに通すんじゃないぞ!」バシュッ
スリッピー「このオイラがそんなヘマをするわけが……って、しまった!
一機、抜けられちゃったよ~!」
フォックス「ドラーウィン! そっちに敵機が一機向かった!」
ベノム兵「ふへへへ、スターフォックスは四匹って聞いたが、ありゃ新入りか?
撃ち落としてやるぜ!」バシュッ
ズガァンッ! ガクガク……!
スネ夫「ぎゃあぁぁっ!」
しずか「きゃあっ!」
のび太「ひぃ~っ!」
ジャイアン「うおおっ!?」
ドラえもん「うわぁ~っ!」
ファルコ「一発喰らっただけであのザマか、いわんこっちゃねえ!」
フォックス「ドラーウィン逃げろ! 逃げるんだ!」
新入りとはいえ、スターフォックスをやれば俺の名も上がるってもんよ!」
スネ夫「やっぱり無理だったんだよぉ~!」
ジャイアン「すげぇ揺れだっ!」
ドラえもん「あれでもない、これでもない~!」ポイポイッ
のび太(ぼくらがもしこのまま逃げたら、フォックスさんは──)
のび太「スネ夫! なんとかあの敵を、ドラーウィンの前に持ってきてくれ!
あとはぼくが絶対に撃ち落とす!」
スネ夫「の、のび太……!」
しずか(のび太さん……!)
しずか「今、敵は真後ろにいるわ! スネ夫さん、宙返りできる!?」
スネ夫「や……やってみるっ!」
ギュルンッ!
ベノム兵「な!?」
のび太「今だっ!」バシュシュッ
──ズガァンッ!
のび太「や、やった……!」
スリッピー「おお、アイツらけっこうやるじゃん!」
ペッピー「こらスリッピー! 元々はお前のせいだろうが!」
ファルコ「ふん、あのガキどもがザコ一匹にてんてこまいしている間に、
こちとら10匹は落としてるぜ」
フォックス(ノビタ君たち……よくやった!)
フォックス「全機、全速前進! 敵艦隊の中央を突破するぞ!」
~
ベノム兵「遊撃隊スターフォックス、勢いが止まりません!」
将軍「スターフォックスか……。
くっくっく、面白い……新型の性能を試すにはちょうどよいわ!」
将軍「“サルデス2”の出撃準備だ! この俺が直々に片付けてやる!」
ベノム兵「はっ!」
ペッピー「どうした?」
スリッピー「前方に敵確認! 今までのとはちがうよ!」
~ ベノム軍戦闘ロボット サルデス ~
人型戦闘ロボ“サルデス”二体が、フォックスたちを待ち受けていた。
スリッピー「うわっ、なんだこいつら! アーウィンよりすばやく動きまわるよ!」
ファルコ「ふん、だが装甲はそこまででもねえようだ──な!」ズガガガッ
ズガァンッ!
まずファルコが、サルデスを一機撃墜。
フォックス「こっちだ!」ズガガガッ
さらにフォックスも、二機目のサルデスを撃墜した。
ファルコ「あっけねえ……これでセクターYのベノム軍はおおかた片付いたようだな」
のび太「す、すごい……」
ドラえもん「あっという間だったね……」
しかし──
「キサマら、調子に乗るなよ!」
サルデス2「先の二体はキサマらのデータを取るための捨て駒よ!
この新型“サルデス2”で、キサマらを宇宙のチリにしてくれるわ!」
スネ夫「うわぁっ! またバンダムみたいなのが出てきた!」
スリッピー「気をつけて! さっきのヤツらより性能ははるかに上だよ!」
フォックス「あなどれないな……みんな、うかつに攻めるな!」
ファルコ「お前の命令なんざ聞くかよ、この俺がすぐに片付けてやるっ!」ギュゥゥゥン
ズガガガッ!
サルデス2「無駄だ! キサマらのレーザーなど、この盾には通用せん!」キィンッ
ファルコ「んだとォ!?」
サルデス2「しかも機動性もこの通りよ!」ギュルッ
一瞬でファルコの後ろに回り込むサルデス2。
ファルコ(しまった! さっきのと同じくらいの速さだと、油断した!)
サルデス2「まずは一匹!」
サルデス2「ぬっ、レーザー!? どこから──」
ファルコの危機を救ったのは、ドラーウィンだった。
サルデス2(あんな遠くから、この俺を狙い撃ちしただと!?)
ファルコ(マジかよ!?)
ファルコ(ちっ……この俺があんなガキどもに助けられるとはな……!)
ファルコ「……すまなかったな、フォックス!
こいつは強敵だ! 一度態勢を立て直す!」
フォックス「ファルコ……!」
サルデス2「無駄だ! スターフォックス、キサマら五匹はここで死ぬのだ!」
サルデス2の機動性に、フォックスたちは苦戦を強いられる。
ファルコ(チマチマレーザーを当てても、ちっともこたえねえな!)
フォックス(どうにかヤツに集中砲火するチャンスができれば──)
のび太「ムチャいわないでよ、さっきので警戒されて全然当たらなくなっちゃった。
アイツ、すごく動きが速いんだもん」
ドラえもん「あの目まぐるしい戦いにはとても割り込めそうもないし、
今は離れたところから見守るしかないか……」
ジャイアン「ちくしょう、俺様のピッチングもここじゃ役に立たねえのか……」
しずか「…………」ハッ
しずか「そうだわ武さん、ボムよ!」
ジャイアン「ボム!? そりゃムチャだぜ、しずちゃん。
のび太でも当てられねーのに、とても当てられねえって」
しずか「ううん、当てなくていいのよ!」
ジャイアン「へ!?」
しずか「スネ夫さん、スターフォックスのみんなに通信をつないで!」
スネ夫「う、うん!」カチッ
──
───
ジャイアン「よっしゃ、俺様の記念すべき第一球、行くぜぇぇぇっ!」
ブウンッ!
ジャイアンの投球フォームと連動するジャイアンアームから投げられたボムが、
サルデス2めがけて飛んでいく。
サルデス2「バカめ、そんなものが当たるか!」ギュンッ
サルデス2「──む!?」
ドォォォォ……ン
サルデス2「遥か手前で、爆発!? しまった、爆風と光で視界を──!」
フォックス「──今だ! 全機、ヤツを集中砲火!」
ズガガガガガガガガッ!
サルデス2「お、おのれぇ……この程度で……この程度で!」バチバチ…
サルデス2「ぐわああぁぁぁぁぁっ!」
ズガァァァンッ!!!
フォックス「作戦……完了!」
<グレートフォックス>
ナウス「ドリンクデス」
しずか「ありがとう、ナウスさん!」
フォックス「ヤツを倒せたのは、君たちのおかげだ……ありがとう!」
のび太「いやぁ~そんなぁ」
ジャイアン「照れるぜぇ」
スネ夫「あれくらい大したことないよ」
スリッピー「それにしてもアーウィンを複製して、
しかも五人乗りに改造するなんて……すっごいなぁ~」
ドラえもん「えへへ、どうも」
スリッピー「頼もしい仲間ができたね、ファルコ!」
ファルコ「ふん、俺はまだそのガキどもを認めたわけじゃねえ」
ペッピー「ファルコ……たしかにあの子らはまだ危ういところが多すぎる。
だが、あの子らが単なる猫の手ではなかったということも事実じゃ」
ファルコ「ケッ、んなこたあ分かってる……」
フォックス「すでに基地を破壊されたフィチナを通るルートは、得策ではない」
フォックス「他には水の惑星アクアスか、コーネリア軍の前線基地があるカタリナに
向かうルートがあるが……」
フォックス「アクアスやゾネスにはペパー将軍がコーネリア海軍を派遣するとのこと」
フォックス「だからスターフォックスは、カタリナの救援に向かおうと思う。
あそこには……ビルもいるからな」
のび太「ビルって?」
ナウス「フォックスノ友人デス。前線基地ノ指揮官ヲ務メテイマス」
ジャイアン「へぇ~すげえ人じゃん」
ペッピー「じゃが、カタリナのコーネリア軍はベノムの大軍に苦戦していると聞く。
気を引き締めねばなるまい!」
スターフォックスは、いざ惑星カタリナへと向かう。
前線基地上空では、無数のコーネリア軍とベノム軍が入り乱れ、
激しい空中戦を繰り広げていた。
ズガァンッ! ババババッ! チュドン! バシュッ! ドォンッ!
ビル「ペパー将軍から、まもなく援軍が到着するという連絡が入った!
各隊、なんとしてもこの猛攻をしのぎきるんだ!」
「はいっ!」 「了解です!」 「はっ!」
ベノム兵「あがけ、あがけ! こちらの方が数は上なんだ!」
ファルコ「いくら数がいようと、質が伴ってなきゃなんの意味もねえぜ!」ズガガガッ
ベノム兵「うぎゃっ!?」ズガァンッ
フォックス「ビル、無事だったか!」
ビル「フォックス!? フィチナで行方不明になったと聞いていたが、
生きていたのか!」
フォックス「どうにかな」
フォックス「全機散開して、コーネリア軍を援護せよ!」
これじゃ、ぶつからないように飛ぶだけで精一杯だ!」
ドラえもん「のび太君、味方にレーザー当てちゃダメだよ!」
のび太「わ、分かってるよ!」
ジャイアン「これじゃボムは使えねーな。俺様の出番はなしか」
しずか「あ、スネ夫さん、後ろに敵が!」
ベノム兵「オラオラ、落ちやがれっ!」ピシュンピシュン
ズガガガガッ!
スネ夫「うわわわわっ!」
ベノム兵「オラオラ──うぐわぁっ!?」ズガァンッ
ファルコ「まったく、手間の焼けるガキどもだぜ」
しずか「あ、ありがとうございます……ファルコさん」
ファルコ「……礼をいうヒマがあったら、敵を落とすことを考えるんだな」
スリッピー「ファルコ、オイラも後ろにつかれたよ~!
」
ファルコ「知るか! 自分で何とかしろ!」
スネ夫「は、はいっ!」
ペッピー「たしかにこの戦場は先のセクターYとは比べ物にならんほど、
敵味方が密集しておる」
ペッピー「だが、周囲の戦闘機にいちいち気を取られていては、
戦闘どころか満足に飛行することもできんだろう」
ペッピー「君たちはこれまでにもこうした戦いを経験していると聞く。
戦場の“流れ”を読みとるのだ!
そうすれば、もっと自由にドラーウィンを操れるはずじゃ!」
スネ夫「戦場の……流れを……」
ジャイアン「やってやれ、スネ夫! ラジコンで鍛えた腕を見せてやれ!」
スネ夫「分かったよ、ジャイアン……やってやる!」グッ
ペッピーのアドバイスが効いたのか、ドラーウィンの動きが少しずつ向上する。
コーネリア軍とスターフォックスの猛反撃の前に、数を減らしていくベノム軍。
ビル(勝てる! この戦い、勝てるぞ!)
しかし──
しずか「……なにかしら、あの大きな円盤。味方かしら……?」
ビル「いや、コーネリア軍にあんなものは存在しない!」
ファルコ「ちっ、まだあんなのがいたってのかよ!」
~ ベノム軍超巨大要塞 グレートディッシュ ~
巨大円盤グレートディッシュは、基地の上空に停止すると──
ブワァァァ……
四つのハッチから、無数のベノム軍戦闘機を吐き出し始めた。
ビル「そんな……バカな……!」
ファルコ「ちぃっ……団体さんのお出ましだぜ!」
スネ夫「こんなのどうしろっていうのさ……!」
フォックス「──みんな、諦めるな!」
フォックス「敵が増えたなら、その分手柄を多く立てられるってことだ!
存分に暴れてやろう!」
ファルコ「ふっ」
スリッピー「よぉ~し、オイラだって!」
ペッピー(あのフィチナでの敗戦で成長したようじゃな、フォックス)
スネ夫「ママァ~!」
のび太「もう50機はやっつけたのに、全然敵が減らないよぉ~!」
ドラえもん「あの円盤から、敵がどんどん出てきてるからね……」
ジャイアン「こんちきしょう! どうすりゃいいんだ!」
しずか(敵が補充されてるのなら、供給元を絶つしか──)
しずか「やっぱりあの円盤をどうにかするしかなさそうね」
のび太「でもしずちゃん……あの円盤、レーザーもボムも通じないんだよ」
しずか「たしかに……でも敵を補充する瞬間──
つまりハッチが開いた瞬間なら、もしかして攻撃が効くんじゃない?」
のび太「!」
ドラえもん「な、なるほど……」
ジャイアン「さすがしずちゃんだぜ!」
スネ夫「よ、よし、今のをみんなに伝えよう!」カチッ
ファルコ「たしかにこのまんまじゃ、ラチがあかねえな」
ビル「……よし、フォックス!
今から俺たちでお前たちがハッチに向かう道を作る!」
ビル「次にハッチが開いた時、お前たち四人がハッチを破壊してくれ!」
フォックス「分かった!」
グオォォ……ン
ビル「全機に告ぐ、円盤のハッチが開いたぞ!
ドーベル隊、バーナード隊、プードル隊はスターフォックスに道を作れ!」
「了解!」 「任せて下さい!」 「やってやりますよ!」
コーネリア軍の奮戦で、開いた四つのハッチがスキだらけになる。
フォックス「今だ、ハッチを攻撃!」ズガガガッ
ファルコ「空飛ぶ皿なんざ悪趣味なんだよ!」ズガガガッ
ペッピー「ベノム軍め、覚悟!」ズガガガッ
スリッピー「オイラだって!」ズガガガッ
ズガァンッ! ドガァンッ! バゴォンッ! ズガァンッ!
のび太「やったぁ! ハッチが全部壊れたよ!」
艦長「こしゃくなマネを……!」
艦長「やむをえん、こうなれば少々危険だが円盤のコアのエネルギーを使って、
一気にコーネリア軍基地を消滅させる!」
艦長「全ての機体に、エネルギー充填までコアを死守せよ、と伝えるのだ!」
ベノム兵「はいっ!」
~
グレートディッシュの中央から、地上に向かってコアが生える。
ビル「ものすごいエネルギーを感じる……!
さてはあのコアから砲撃を放って、基地を爆破するつもりだな!」
ビル「敵円盤のコア出現! なんとしても破壊するんだ!」
だが──
「させるかよ!」 「コアに近づけるな!」 「死守だっ!」
守勢に回ったベノムの大軍によって、コアへの道は完全に閉ざされてしまった。
スリッピー「レーザーくらいじゃ、あのコアは到底破壊できないし……。
ボムなら可能かもしれないけど、それでも直撃させないととても──」
ペッピー「直撃する前に、ベノム軍にボムを撃ち落とされるのがオチじゃな」
フォックス「…………」
フォックス(ボムを直撃させれば、あのコアを破壊できるが、
その前にベノムの大軍に阻まれてしまう、か……)
フォックス(たしかにレーザーとちがい、ボムの速度はかなりゆるやかだからな……。
──だが!)
スネ夫「ジャイアン、フォックスさんから通信が入ってるよ!」
ジャイアン「え、俺にか!? ──よ、よしっ!」
フォックス「ジャイアン君、君の力を借りたい!」
ジャイアン「俺の力……!?」
ビル「もう残り一分程度で、敵円盤のコアはエネルギーの充填を完了するだろう!」
ビル「あの円盤を撃沈するには、コアにドラーウィンのボムを直撃させるしかない!
ゆえにこれより全機をもって、ドラーウィンを援護する!」
フォックス「ファルコ、ペッピー、スリッピー!
絶対にドラーウィンに敵を近づけるな!」
ファルコ「やってやるよ!」
ペッピー「了解じゃ!」
スリッピー「オッケー!」
ズガガガガッ! バゴォンッ! ビシュンッ! ギュィィィンッ!
コーネリア軍とスターフォックスは力を合わせ、ドラーウィンをフリーにする。
スネ夫「ジャイアン! 敵軍の隊形が乱れて、円盤のコアが見えた!」
のび太「頼むよ、名投手!」
ジャイアン「任せとけ……!」ドクンドクン
ジャイアン「この一投、絶対ストライクを取ってやるぜ!」
ジャイアン「うおおおおっ!」
ブウンッ!
「なんだあれは!?」 「コアに向かってる、止めろ!」 「メチャクチャ速い!」
ズガァァァァァンッ!!!
みごとコアを直撃した。
巨大円盤はあちこちから煙と炎を噴き出し──大地に沈んだ。
ドズゥ……ンンン……
~
ビル「本当にありがとう! お前たちがいなければ、
この前線基地は今頃この星からなくなっていたことだろう」
ビル「俺は隊を率いて、ベノム軍の基地があるセクターXに攻め込むが──
お前たちはどうするつもりだ?」
フォックス「ソーラに向かうつもりだ。
あの星のエネルギーをアンドルフが悪用しようとしてるらしい」
ビル「あの灼熱の星に行くのか……燃え尽きるなよ、フォックス!」
フォックス「頭を冷やして行くさ!」
フォックス「ジャイアン君、ドラーウィンのみんな、よくやってくれた!」
スリッピー「ジャイアンのパワー、スネオのテクニック、ノビタのシューティング、
シズカのブレイン、が合わさった勝利ってとこかな」
のび太「ドラえもんだけ、なにもしてないね」チラッ
ドラえもん「ぼくは機長だからいいの!」
ファルコ「ふん……だが、俺たちの死ぬ気の援護があったからできた話だろうが」
スリッピー「ファルコ!」
ファルコ「つまりお前たちには、俺たちが命を賭ける価値があるってことだ。
今までサルだのガキだのと、バカにしてすまなかったな……認めてやるよ」
シ~ン……
ドラえもん「こちらこそ!」
ジャイアン「頼りにしてるぜ!」
スネ夫「もう今日みたいな戦いは懲り懲りだけどね」
しずか「ファルコさん……ステキ」
のび太「しずちゃん!?」
ペッピー(フフフ、ようやくワシらもまとまってきたようじゃな)
グツグツ…… ゴアアアア……
星の表面はマグマで覆われ、絶えず炎が噴き出している。
フォックス「アンドルフがこの星のエネルギーを利用して、
バイオウエポンを開発しているという情報がある!」
フォックス「なんとしても見つけ出し、破壊するんだ!」
ファルコ「とんでもねえ星だな、アーウィンでも持たねえかもな」
スリッピー「アーウィンの表面温度は9千まで保証するよ!
──にしても、暑い……」
ペッピー「もっと上空を飛ぶんだ! アーウィンが焼かれてしまうぞ!」
ドラえもん「まるで太陽だよ……こんな惑星があるなんて信じられない!」
のび太「暑いよぉ~……」
ジャイアン「う~ん……」
スネ夫「頭がボーっとして、操縦に集中できない……」
しずか「もう、みんなしっかりしなさいよ!」
(でもたしかにすごく暑いわ……。汗かいちゃったしお風呂に入りたい……)
ドラえもん「世話が焼けるなぁ……エスキモー・エキス~!」
【エスキモー・エキス】
飲むと「あつい」と一回いうたびに、体感温度が3度下がる道具。
のび太「ようし、暑い、暑い、暑い、暑い、暑い……」
ジャイアン「のび太ばっかりずりぃや、俺たちにもなんか出してくれよ!」
スネ夫「ぼくがパイロットなんだからね!」
ドラえもん「あべこべクリーム~!」
【あべこべクリーム】
体に塗ると、体で感じる暑さと寒さが逆転する道具。
ヌリヌリ……
ジャイアン「ひええっ! 今度はすげぇ寒いぜ!」
スネ夫「ハーックション!」
しずか「大変よ、みんな! ……のび太さんが!」
のび太「…………」カキーン
のび太は凍っていた。
~ ベノム軍バイオウエポン サンガー ~
真っ赤な巨人が、溶岩の中で荒れ狂う。
フォックス「これが敵のバイオウエポンか……!」
ファルコ「アンドルフのヤロウ、狂ってやがる!」
スリッピー「敵シールド分析完了! モニターに表示するよ!」ピポッ
ペッピー「う~む……まずは腕を破壊して、攻撃できないようにした後、
頭部を破壊すべきじゃろうな」
フォックス「では俺とスリッピーは、右腕を破壊する!
ファルコとペッピーは左腕を破壊してくれ!」
~
のび太「あ~……死ぬかと思った……」
ドラえもん「暑いっていいすぎなんだよ、君は!」
しずか「ねえドラちゃん……テキオー灯をかければそれで済むんじゃない?」
ドラえもん「それだ!」
ドラえもん(そういえば小惑星で遊び場を作る時にかけたテキオー灯の効果は
とっくに切れてたんだっけ……すっかり忘れてた)
フォックスさんたちの援護をしよう!」
暑さを克服したドラーウィンが援護に向かおうとするが──
ズガァァァ……ン
フォックス「全機、報告せよ!」
スリッピー「やったぁ~! 絶好調だよ、フォックス!」
ペッピー「やはり頭部が弱点じゃったな」
ファルコ「まったくドラーウィンのヤツら……少し褒めてやったらすぐこれだ」
ドラえもん「…………」
ドラえもん「どうやら今回はまったく出る幕がなかったみたいだね」
のび太「ぼくなんか暑い暑いいって、凍ってただけだよ」
ジャイアン「俺も寒がってただけだぜ」
スネ夫「ぼくもさ……」
しずか「まあ、こういうことも……あるわよ」
ペッピー「さて、今後の進路はどうする? フォックス」
フォックス「さっきペパー将軍から入った情報によると、
アクアス、ゾネスと攻略したコーネリア本軍は、
セクターZでもベノム軍を敗走させたらしい」
フォックス「ビルの別働隊も、セクターXで優勢のようだ」
ファルコ「順調だな」
フォックス「そして、俺たちはマクベスのベノム軍補給基地に向かおうと思う」
ペッピー「なるほど、あそこを潰せばベノムにとっても大打撃となる」
フォックス「補給基地を破壊したら、コーネリア本軍と合流して
一気にベノムに攻め込む!」
のび太「いよいよ最終決戦が近づいてきたね、ドラえもん」
ドラえもん「そうだね」
ダダダッ!
スリッピー「みんな、大変だぁ~!」
スリッピー「今緊急報告が入って、セクターZから撤退したベノムの残党が、
オイラたちを狙ってるらしいんだ!」
ナウス「左後方ヨリ、敵軍ガ迫ッテイマス!」
フォックス「ようし! この喧嘩、買った!」
ドラえもん「ぼくたちは──」
フォックス「君たちは疲れてるだろう。
なぁに、残党くらい俺たちだけで片付けてみせるさ!」
フォックス、ファルコ、スリッピー、ペッピーがアーウィンにて出撃する。
ジャイアン「ちぇっ、今回は出番なしかよ」
スネ夫「最終決戦になったらイヤでも出番が回ってくるさ」
ジャイアン「それもそうだな」
スターフォックスは、ベノムの残党をあっという間に壊滅させた。
ペッピー「グレートフォックスに戻るとするか」
ファルコ「ケッ、この程度で俺たちに挑むたぁ100年早いぜ」
すると──
キャット「まだよ!」
ファルコ「キャット!? なんでお前、こんなところに!?」
キャット「感動の再会をやってる時じゃないわ、ファルコ。
あなたたちが倒した敵軍は、本当の狙いを隠すためのオトリなのよ!」
ファルコ「オトリだと!?」
ナウス「本当ノヨウデス、ファルコ。敵軍ニ紛レテ──
大型ミサイルガ6機、グレートフォックスニ迫ッテイマス!」
~ ベノム軍惑星間巡航ミサイル マン・ドリル ~
戦艦をも撃沈可能な巨大ミサイルが、グレートフォックスの間近まで迫っていた。
フォックス「くそっ、このままでは待機させてるドラーウィンのみんなが……!
いや、グレートフォックスを破壊されれば、俺たちは終わりだ!」
フォックス「全機、なんとしてもミサイルを破壊せよ!」
ファルコ「よっしゃ、1機ぶっ壊したぜ!」
ドゴォンッ!
フォックス「ミサイル撃破!」
チュドンッ!
キャット「フフ、ミサイルを落としてあげたわ」
ドカァンッ!
ペッピー「よし、ワシもミサイルを破壊できたわい」
バゴォンッ!
スリッピー「ふぅ……なんとかオイラも落としたよ!」
だが最後のミサイルが、グレートフォックスと衝突寸前になっていた。
ナウス「敵ミサイル接近! 距離10、回避デキマセン!」
フォックス「くそっ! 間に合わないっ!」ズガガガッ
ペッピー「なんじゃあれは!?」
ドラえもん「ビッグライトで大きくした、ひらりマントだ!
えぇ~い、どこかに飛んでけ!」
ヒラリッ
ナウス「敵ミサイル、軌道ガズレマシタ!」
ファルコ「へっ……どうやったか知らねえが、やるじゃねえか」
キャット「あんな布でミサイルの軌道をずらすなんて、ステキね」ウフッ
フォックス「今だ! 全機、ミサイルを集中砲火!」ズガガガガッ
ズガァァンッ!
マン・ドリルは全て破壊され、グレートフォックスはかろうじて難を逃れた。
ファルコ「……ん、キャットめ、消えやがった! あの気まぐれ猫め!」
スリッピー「まあまあファルコ、あの人がいなかったら本当に危なかったよ」
フォックス「どうやらミサイルが最後の攻撃のようだ。予定通り、マクベスへ向かう!」
マクベスは鉱物資源が豊富な惑星であり、
アンドルフに占領された後は、ベノム軍の重要な輸送・補給拠点となっていた。
フォックス「俺は戦車“ランドマスター”で地上から輸送列車を破壊する。
アーウィン及びドラーウィンは、空中の護衛部隊を相手してくれ!」
ファルコ「了解!」
スリッピー「オッケー!」
ペッピー「了解じゃ!」
ドラえもん「ぼくたちもフォックスさんたちに負けないよう、頑張ろう!」
のび太「うんっ!」
しずか「ええっ!」
ジャイアン「おうよっ!」
スネ夫「ま、程々にね」
死闘が始まる。
スターフォックスはもちろん、
のび太たちもいくつかの戦闘を経験したことによって成長しており、
マクベスのベノム軍を快調に撃破していった。
~ ベノム軍最新鋭凧型実験兵器 ベンジャミン ~
ベンジャミン「最新兵器の恐ろしさを味わえることになるたぁ……
お前たち、ついてるな」ニィッ
気流に乗り、上空からフォックスめがけ砲弾や槍を降らせるベンジャミン。
ヒュルルルル…… ズガァンッ! ドゴォンッ!
フォックス「くっ……!」
ペッピー(あれでは輸送列車を破壊するのは厳しいかもしれん)
ペッピー(それにワシらの武装では、補給基地を完全に破壊するのは難しい……。
やはりこの列車を補給基地に突撃させるのが理想じゃな)
ペッピー(そのためには線路のポイントを切り替えなければならん)
ペッピー(ポイントを切り替えるには、8本の安全装置を撃って、
ポイント切り替えのロックを解除する必要があるが──)
ペッピー(我々の中でもっともレーザーの命中率が高いのは、
ドラーウィン……ノビタじゃろうな)
のび太「は、はいっ!?」
ペッピー「ベノム軍の補給基地を完全に破壊するためには、
あの列車が走る線路を切り替えねばならん!」
ペッピー「かといって、ベノム軍を無視することもできん!
この先にある8本の安全装置、君が撃ち抜いてくれ!」
しずか「これは大役だわ……」
ジャイアン「のび太、大丈夫か?」
のび太「…………」
のび太「任せて下さい!」
ジャイアン「よくいったぜ!」
スネ夫「よぉし、なるべく安全装置の近くを飛ぶようにするから、絶対当てろよな!」
のび太「うん!」
ドラえもん(頑張れ、のび太君……!)
のび太(今までドラえもんやみんなと、くぐり抜けてきた戦いの数々を──
特にあの──)
『お前の……勝ちだ』
のび太(ギラーミンとの戦いを!)
バシュッ! ドシュッ! バシュッ! ガシュンッ!
ビシュンッ! ドシュンッ! バシュッ!
凄まじい集中力で、安全装置にレーザーを次々命中させるのび太。
スリッピー「すっげぇ~百発百中だよ!」
ファルコ「あのノビタって小僧、まさかあそこまでやるとはな」
ドラえもん「──ラスト一本だ、行けっ!」
のび太「えいっ!」バシュッ
ガシュッ!
しずか「やったわ!」
ジャイアン「さすが射撃の腕前だけは一流だぜ!」
ペッピー「よしロック解除! フォックス、ポイントを切り替えろ!」
ガシャンッ……!
フォックスの一撃で、線路のポイントが切り替えられ──
ベンジャミン「ま、まずいっ! このままじゃこの列車が補給基地に突っ込んじまう!
ブレーキだっ!」
キキィィィ~……!
ベンジャミン「うわぁぁぁっ! と、止まらねぇぇぇっ!」
輸送列車+ベンジャミンは、補給基地に超高速で突撃し──
ドッグワァァァァンッ!!!
大爆発を起こした。
スリッピー「やったぁ~っ!」
ペッピー「これで、ヤツらも痛手を負ったはずだ!」
フォックス「全機、グレートフォックスに帰還せよ! 次が最終決戦だ!」
ドラえもん「ファルコさん、あとはもうベノムだけなんですか?」
ファルコ「ああ、ただしベノムといっても広いからな。
コーネリアの将軍は、二つのルートからの侵入を計画している」
ドラえもん「二つのルート?」
ファルコ「ベノムに攻め込むには敵の防衛衛星ボルスを突破するルートと
エリア6っていう敵の防衛網を突破するルートがあるんだが──」
ファルコ「ボルスは今、フォックスのダチのビルってのが隊を率いて攻め込んでる」
ファルコ「んで、俺たちはエリア6に攻め込むってわけだ。
セクターZを突破したコーネリア本軍と合流してな」
スネ夫「つまりここからはコーネリアの本軍が味方ってわけか!」
ジャイアン「へへっ、もう楽勝だな!」
ペッピー「もうすぐベノムの防空圏に入る。出撃準備を──」
ビービー……! ビービー……!
ナウス「フォックス、ペパー将軍カラ緊急通信ガ入ッテイマス」
フォックス「緊急通信!?」
グレートフォックス乗組員全員が集められる。
フォックス「一体どうしたんですか、将軍!?」
ペパー『君たちより先にエリア6で戦闘を開始していた我が軍主力部隊が──
ベノム軍によって壊滅した……!』
フォックス「な、なんですって!?」
ペパー『そして──』
ペパー『ボルスに攻め込んでいたビルの隊が、あのスターウルフの急襲を受け──』
ペパー『敗北したとの報告が入った……』
フォックス「!」
フォックス「将軍! ビルは……ビルは無事なんですか!?」
ペパー『分からん……なんとか生き延びた隊員もいたのだが、
ビルの生存はまだ確認できていないようだ……』
フォックス(ビル……!)
ペパー『ワシが至らぬばかりに、すまん……!
とにかくこうなった以上、君たちだけでエリア6に攻め込むのは無謀すぎる。
すぐに引き返してくれ!』
フォックス「いくらベノムの大軍やスターウルフといえど、
コーネリア本軍やビルの部隊と戦ったならば疲弊しているはず」
フォックス「しかも、勝利して油断しきっているというオマケつきです」
フォックス「今こそが、スターフォックスでエリア6を突破し──
アンドルフの首を獲る最大のチャンスなんです!」
ペパー『本当に……大丈夫なのか。
ジェームズに続き、君にまで死なれてしまったら私は……』
フォックス「心配無用、俺にはアーウィンとグレートフォックス……。
そして頼もしい仲間たちがついていますから!」
ペパー『分かった……。君たちには本当に感謝している。
必ず生きて帰ってきてくれ……!』
フォックス「……任せて下さい!」
ファルコ「ふん、当然だ」
ペッピー「よくいった、フォックス」
スリッピー「さすがフォックス!」
フォックス(ビル、父さん……必ずアンドルフを倒してみせるからな!)
ドラえもん「うんっ!」
のび太「もちろんっ!」
しずか「……あれ、スネ夫さんがいないわ?」
ドラえもん「あ、ホントだ!」
ジャイアン「あんにゃろ、トイレにでも行きやがったのか!?」
のび太「スネ夫がいないとドラーウィンは動かせないってのに……。
なにやってんだろ、まったく」
スネ夫「なんだよ……味方はぼくらが着く前にやられちゃったとかさ……」ブツブツ…
スネ夫「無理に決まってるんだ、無理に……」ブツブツ…
のび太「スネ夫、こんなところにいたのか!
もうすぐエリア6に入るから、ぼくらも準備しないと!」
スネ夫「絶対イヤだ!」
のび太「!」
スネ夫「コーネリア軍も、ビルさんもやられちゃったようなヤツらに、
ぼくらみたいな子供が敵うわけがないだろ!?」
のび太「だけど、ぼくらがやらないとライラット系は──」
スネ夫「ライラット系なんてどうなったっていいっ!」
スネ夫「ベノムのヤツらも、次は太陽系に攻めてくるってわけじゃないんだろ?
だったら、ぼくたちにはなにも関係ないじゃんか!」
スネ夫「関係ない人のために、命をかけられるわけないだろ!」
のび太「分かったよ、スネ夫。
だったらドラーウィンの操縦はぼくが引き受ける!」
スネ夫「!」
のび太「なあに、ラジコンならぼくだってやったことあるし、へっちゃらさ!
スネ夫はナウスさんとグレートフォックスから支援を頼むね!」
スネ夫「……あ」
タッタッタ……
スネ夫(待てよ、のび太!)
スネ夫(毎日のようにラジコンにさわってるぼくでさえ、
最初のセクターY宙域ってところではひどい操縦だったんだ!)
スネ夫(ましてや、今度の敵はあの時よりずっとヤバイんだぞ!)
スネ夫(いえよ!)
スネ夫(“お前なんかに任せられるか、ぼくがやる”っていえよ!)
スネ夫「う、うぅ、う……」
ザッ……
「スネオ君」
フォックス「スネオ君、俺は今のやり取りを少し聞いていた」
フォックス「全く関係ない君たちを、こんな戦いに巻き込んでしまって──
本当に申し訳ないと思っている」
フォックス「だが……これまでの戦いで、君たちは成長し、
君たちがいなければ切り抜けられなかった場面が幾度もあった」
フォックス「俺は誓う」
フォックス「“スターフォックス”リーダーの名にかけて、
君たちのドラーウィンを絶対に落とさせはしない!」
フォックス「だからこの最後の戦い……俺たちに力を貸してもらえないだろうか」ザッ
頭を下げるフォックス。
スネ夫「ぼくなんかに頭を──……」
スネ夫(そうだ……ぼくはちょっと、肩を押して欲しかったんだ……)
スネ夫「もちろん! のび太なんかに任せておけませんからね!」
フォックス「ありがとう、スネオ君……!」
しずか「そうよ、やっぱりスネ夫さんじゃないと……」
ドラえもん「コーネリア軍も突破できない難所なんだし……」
のび太「でも死ぬかもしれない戦いを、無理強いなんてできないよ……!」
スネ夫「待ってくれ!」ザッ
のび太「スネ夫!?」
スネ夫「いやぁ~ちょっと緊張してて、決心がつくのが遅くなっちゃったよ。
ドラーウィンのパイロットは、ぼくに決まってるだろ?」
ジャイアン「心の友よ~!」ガシッ
のび太「スネ夫ぉ~!」ガシッ
しずか「ふふふ……」
ドラえもん「よし、ドラーウィン発進準備を始めよう!」
~
ペッピー「てっきりお前なら“あんな子供に頭なんか下げるな”と怒ると思ったがな」
ファルコ「あの五人がただのガキなら怒ってただろうさ。
だが、アイツらはただのガキじゃなく……仲間だからな」
ファルコ「リーダーが仲間に頭を下げるくらいは、大目に見てやるよ」
ペッピー「ふっ、お前らしい答えじゃわい」
エリア6のベノム軍はコーネリア本軍に快勝したばかりということもあり、
雰囲気が緩んでいた。
上官「様子はどうだ?」
カイマン「こちらカイマン、異常ないっスよ!」
上官「ま、当然だろ。なんたって主力部隊にあれだけの打撃を与えたんだ。
これでまたすぐ攻めてくるとしたら、よほどの大バカだ」
ズガァンッ!
カイマン「ゲ、やっぱり異常ありました!」
上官「なんだと!?」
カイマン「どうやら大バカがいたみたいっスね」
上官「バカヤロウ! なにのんきなこといってやがる!」
カイマン「え~い、緊急配備につけ!」
スターフォックス、ベノム最大最強の防衛ラインに挑む!
フォックス「うおおおおっ!」ズガガガガッ
ズガァンッ! ドゴォンッ! バゴォンッ!
ファルコ「おいおいフォックス、少し飛ばし過ぎじゃねえか?」
フォックス「らしくないな、ファルコ。
ちょっとぐらい飛ばさなきゃ、ここはとても突破できないぞ?」
ファルコ「ふっ、いってくれるぜ!」ギュウゥゥゥン
スリッピー「あの二人、ちょっとムチャしすぎじゃないかなぁ~」
ペッピー「だが、いつもよりずっといい動きをしておる」
(フォックスのリーダーとしての成長が、
フォックス自身のみならずファルコの実力も引き上げておるんじゃな)
スネ夫(フォックスさん……ぼくらの負担を少しでも軽くしようと……)
スネ夫「のび太、ジャイアン、ガンガン攻撃してくれよ!
しずちゃんは作戦を考えてくれ! ドラえもんはどら焼きでも食べてな!」
のび太&ジャイアン「おうっ!」
しずか「ええ、分かったわ!」
ドラえもん「うん」モグモグ
しずか「武さん、ボムを中に放り込んで機雷をまとめて爆破して!」
ジャイアン「まっかせとけぇ~!」ブウンッ
ズドゴォォォォ……ンンン
のび太「ジャイアンのおかげで、敵の隊形が乱れたぞ! 狙い撃ちだ!」ズガガガッ
ズガァンッ! バゴォンッ! ドゴォンッ!
ベノム兵「なめるんじゃねぇっ!」
スネ夫「宙返りするっ!」ギュルッ
のび太「今だっ!」
ベノム兵「ぐわあああっ!」ズガァンッ
カイマン「やばいっスね! メッチャ攻め込まれてます!」
上官「敵は少数だ、大型ミサイルでまとめてふっ飛ばしちまえ!」
カイマン「了解で~す!」
スリッピー「ミサイルだっ!」
ペッピー「破壊するんだ、狙われているぞっ!」
ズガァン! ドガァン! ドゴォン! バゴォン! ズドォン!
上官「やったか!?」
カイマン「いや、まだです! ミサイルは全て迎撃されちゃいました!」
上官「おのれぇ!」
~
ファルコ「ちっ、さすがにここまで深く入り込むと、
奇襲のアドバンテージもなくなってきやがるな」
フォックス「ああ、だが俺たちにできることは前進あるのみ!」
ピリリリ……!
フォックス「なんだ、ナウスからの通信か?」
フォックス「いや違う! これは……この通信は──!」
フォックス「アンドルフか!?」
ペッピー「妨害通信だ! ワシらの集中力を削ぐための罠じゃ、聞く耳持つな!」
アンドルフ『フハハハハ……! フォックスといったな。
かつてお前の父、ジェームズ・マクラウドはベノムにて命を落とした』
アンドルフ『そして、お前の親友ビルもまた、スターウルフの手でくたばりおった』
アンドルフ『次はお前の番だ』
アンドルフ『お前は私にたどり着くことなく、そこで宇宙のチリになるのだ!』
ジャイアン「やい、アンドルフ!」
アンドルフ『む?』
ジャイアン「お前なんか、俺様がギッタンギッタンしてやっからな!」
のび太&スネ夫「そうだそうだ!」
アンドルフ『お前たちがドラーウィンとやらか。
まあハエが一匹増えたところで、お前たちの運命は変わらぬ』
アンドルフ『フハハハハハ……!』プツッ…
フォックス(首を洗って待ってろよ、アンドルフ!)
上官「たかが五匹に、なんてザマだ! 撃って撃って撃ちまくれ! 敵を通すな!」
ズガガガガガッ! ピシュンピシュンピシュン! バシュゥゥゥゥッ!
さらに苛烈となる敵の砲撃。
スネ夫「当たるもんか!」ギュウン
のび太「前方の敵は、全部ぼくがやっつけてやる!」ズガガガッ
ジャイアン「俺様のボムを喰らいやがれぇっ!」ブウンッ
しずか「スネ夫さん、ここでブースト!」
ドラえもん「ムード盛り上げ楽団で、みんなを応援するよ!」
【ムード盛り上げ楽団】
その場の雰囲気に合った音楽を鳴らし、聞く人の気分を盛り上げてくれる道具。
カイマン「第二防衛ラインも、突破されました!
ダメです! ヤツらの勢いが全く衰えません!」
上官「くそぉっ!」
スリッピー「ベノムは目の前なのに、ちくしょう! あっち行けよ!」
ズガァンッ!
スリッピー「助かったぁ……サンキュー、ドラーウィン!」
のび太「どんなもんだい!」
ファルコ「おっと、お前らも後ろがお留守になってるぜ!」バシュッ
ドゴォンッ!
スネ夫「ありがとう、ファルコさん!」
フォックス「──いいってことよ、それより気を引き締めとけよ。
もうベノムは目と鼻の先だ!」
カイマン「最終防衛ラインも、突破されましたぁ!」
上官「くそっ! こうなったらヤツを投入するしかねえ!
まさかあのバケモノに、こんな少数チームの相手をさせることになるとはな!」
~ ベノム軍最終宇宙兵器 デス・ボール ~
ペッピー「なんじゃ!? なにもない空間から、いきなり敵が現れおった!」
デス・ボールは触手を繰り出し、フォックスたちを強襲する。
シュバァッ! シュバァッ!
フォックス「みんな、かわせっ!」
ファルコ「ちいっ!」
スリッピー「ダメだ! アイツ、いくらレーザー撃ってもこたえないよ!」
ペッピー「おそらくどこかにコアがあるはずじゃが……
とにかく攻撃を何度も加えて、敵の構造を探るしかあるまい」
上官「スターフォックスめ、さすがにデス・ボールには手こずっているようだな」
カイマン「そうみたいっスね」
上官「チマチマと攻撃してるのはコアを開かせようって魂胆だろうが──
コアを開かせた時こそが、ヤツらの最期だ!」
フォックス「触手が再生する前に……全機、集中砲火だ!」
ズガガガガガッ!
スリッピー「ん、ちょっと待って! コアからものすごいエネルギー反応だ!」
デス・ボールのコア部分に、エネルギーが集中する。
そして──
ズオアッ!!!
ペッピー「まずいっ!」
フォックス「かわせっ!」
スリッピー「うひゃあああっ!」
ファルコ「ちいっ!」
スネ夫「ママァ~ッ!」
上官「うわぁぁぁっ!? ヤツのエネルギー砲がこっちに──……」ボシュッ
フォックス「くそっ、またコアを閉じてしまったか……!
だが、今度コアが出てきたらあのエネルギー砲を放つ前に破壊してやる!」
デス・ボール「…………」グニャアア…
ペッピー「消えよった!」
ファルコ「光学迷彩か!?」
スリッピー「いや、ちがう! 本当に跡形もなく消えてるよ!
アイツやられそうになったから、別次元に避難したんだよ!」
ファルコ「次元って……マジかよ!」
グニャアアア……
再び現れたデス・ボールの触手に、苦しめられるフォックスたち。
すぐさま反撃に出ようとするが──
デス・ボール「…………」グニャアア…
ファルコ「また消えやがった!」
スリッピー「ちくしょう、これじゃどうしようもないよ!」
フォックス「いや……コイツを放置してベノムに乗り込むのは、
あまりにもリスクが高すぎる!」
のび太「いくらぼくでも、消えた敵にレーザーを当てられっこないしなぁ」
ジャイアン「次元だか事件だか知らねーが、きたねぇヤツだ!」
しずか(次元……)
しずか「そうだわ、ドラちゃん!
もしかして、あの敵は一時的に四次元に移動しているのかも!」
ドラえもん「!」
ドラえもん「──だとすると!」
ドラえもんは急いで四次元ポケットの中をのぞいた。
すると──
ドラえもん「いた!」
四次元ポケット内に広がる空間の中に、デス・ボールが漂っていた。
ドラえもん「のび太君に昼寝で勝負を挑むようなもんさ!」
のび太「どうせなら射撃とかあやとりにしてよ」
四次元のことなら、22世紀生まれのドラえもんの方が圧倒的に知り尽くしている。
デス・ボールはポケットの中で、スモールライトで小さくされ、
タイム風呂敷で元の部品に戻されてしまった。
ドラえもん「よし、敵をやっつけたよ!」
スリッピー「ウソ!?」
フォックス「どうやったかは分からないが……ヤツが出てくる気配がない。
やっつけたってのは本当のようだ」
フォックス「なら、もうエリア6にとどまっている理由はない!」
フォックス「ベノムの大気圏へ突入するぞ!」
カイマン「…………」
カイマン「上官もデス・ボールもやられちまった……」
カイマン「元々ムリヤリ徴兵させられてたし、田舎に帰るか……」
ついにベノムへと乗り込んだ、フォックスたち。
しずか「なんというか、暗くて淀んだ星ね……」
スネ夫「敵の本拠地だってのに、なんで敵がまったくいないわけ?」
ドラえもん「ホントだ、どうしてだろう?」
ジャイアン「なぁに、俺たちが怖くてみんな逃げちまったんだよ!」
のび太「きっとそうだよ!」
フォックス「いや、あちこちにベノム軍戦闘機の残骸が散らばっている。
……これはまさか!?」
「その通りだ、スターフォックス!」
キィィィィ……ン
ウルフ「俺たちがやったのさ……待ちくたびれてヒマだったからな」
レオン「この新しいオモチャで遊んであげよう」
ピグマ「ペッピー、そろそろジェームズのところに行きたいやろ?」
アンドリュー「アンドルフ様に逆らう下等生物は、全て撃ち落としてやる!」
フォックス「やはりスターウルフか!」
こいつらとは正々堂々ケリをつける!」
フォックス「勝負だ、スターウルフ!」
ウルフ「フィチナん時よりは少しはマシになったんだろうな?
今度こそ地獄に落としてやる! お前の親友……ビルのようになァ!」
レオン「さて、お前の相手はこの私がしてやろう。光栄に思うがいい」
ファルコ「ケッ、気色悪いカメレオン野郎が!」
ピグマ「ならわては、死にぞこないウサギの相手をさせてもらうでぇ」
ペッピー「ピグマ……! いいだろう、かかってこい!」
アンドリュー「ならばこのカエルは、アンドルフ様の名にかけて私が落とす!」
スリッピー「ふん、オイラをなめるなよ!」
のび太「こいつらが、前にフォックスさんをやっつけたっていうスターウルフか……!」
スネ夫「一騎打ちみたいになったけど、勝てるかなぁ……」
ジャイアン「なぁに、フォックスさんたちなら、楽勝に決まってるぜ!」
フォックス「もらったぁ!」バシュッ
ウルフ「甘いぜ!」グルンッ
フォックス(速いっ! あっという間に後ろに回られた!)
他のメンバーも、スターウルフが以前とは違うことに気付く。
スリッピー「前はアーウィンと互角ぐらいのスピードだったのに……
敵機の性能が格段に上がってるよ!」
ファルコ「いや、機体の性能だけじゃねえ……。
こいつら自身の反応速度も前とはレベルが違うぜ!」
ペッピー「まさか……改造手術か!?」
ピグマ「さすがはペッピー、鋭いのう!!」
ピグマ「脳をちょいといじくってのう、反応速度を極限まで高めたんや!
加えてこの、改良したウルフェン……お前らの勝機はゼロや!」
ズガガガッ! ドシュウッ! ズバァッ! バシュッ!
因縁の対決は、瞬く間にスターフォックスが劣勢となる。
スネ夫「ま、まずいよ! 明らかに敵の戦闘機の方が性能いいよ!」
ドラえもん「こっちは戦闘の連続で、機体を改良する余裕なんかなかったしね……」
しずか「どうしましょう……このままじゃフォックスさんたちが……」
ジャイアン「ちくしょう! せっかくここまで来たってのによう!」
のび太「みんな、あの四人を信じよう!」
ドラえもん&しずか&ジャイアン&スネ夫「!」
のび太「あの四人は……スターフォックスは絶対勝つ!」
ドラえもん「そうだね、こんなハイレベルな戦い、下手に手は出せないし……」
しずか「分かったわ、のび太さん!」
ジャイアン「へっ、たまにはいいこというじゃねえか! のび太!」
スネ夫「ママ……どうかスターフォックスを勝たせて下さい……」ブツブツ…
ハイパーレーザーのまま突入したときの余裕
フォックス(考えろ……こいつらに勝つ方法を!)
フォックス(悔しいが個々の力では、完全に上を行かれている。
かといってスターウルフはチームプレイも一流といえるレベルだ)
フォックス(打つ手はないのか……!?)
フォックスの頭を、ふと“ドラーウィン”がよぎった。
フォックス(──そうか!)
フォックス「ペッピー! ヤツらも改造手術や改造機に完全に慣れたわけじゃないはず!
なんとかヤツらのクセを見つけ出してくれ!」
ペッピー「うむ、やってみよう!」
フォックス「スリッピー! お前はヤツらの機体をよく観察して、
なにか弱点がないか探ってみてくれ!」
スリッピー「オッケー!」
フォックス「ファルコ! 俺とお前でヤツらをかき乱して
二人が敵を観察できるくらいのスキを作るんだ!」
ファルコ「ドラーウィンのような役割分担ってやつか。お前にしちゃ、上出来だ!」
だが、いくら全力で飛ばしても、機体の傷は少しずつ増えていく。
ズガァン! ドゴォン! バゴォン!
ファルコ「やべぇな……シールドがとうとう半分を切っちまった」
フォックス(まだか……ペッピー、スリッピー!)
そして──
ペッピー「分かったぞ!」
ペッピー「ヤツらはたしかに大幅に反応速度を上げたが──
それゆえにお前たちのちょっとした挙動にも過剰反応するようになっておる!
つまりフェイントの類には、前よりも弱いはずじゃ!」
スリッピー「オイラも分かったよ!」
スリッピー「あいつらの機体は速度も火力もすごいけど、
短期間でムリヤリ性能アップをしたから、安定性が犠牲になってる!」
スリッピー「さっきベノム軍を準備運動代わりに撃墜したっていってたけど、
それは決して待ちくたびれたからじゃない」
スリッピー「そのぐらい大がかりなウォームアップをしないと、
ヤツらの機体は安定して機能しないってことなんだ!」
フォックス「──でかした、二人とも!」
ブレーキとフェイントを多用した戦術を取れ!」
ファルコ「分かったぜ!」
スリッピー「オッケー!」
ペッピー「了解じゃ!」
従来の高速での撃ち合いを避け、あえて低速戦闘を挑むスターフォックス。
ピグマ「なんや!? いきなり戦法を変えおったで!」
アンドリュー「ふん、何をしようと無駄なあがきだ! 下等動物どもが!」
レオン「フッ、ヤケになったか」
ウルフ「くだらねぇことを……一気にケリをつけるぞ!」
速度を落とすということは、被弾しやすくなるということでもある。
ズガガガッ! バババッ! ズガァンッ!
スネ夫「こりゃまずいんじゃないの!?」
ジャイアン「みんな、敵のレーザーをどんどん喰らってるぜ!」
しずか「ド、ドラちゃん……!」
ドラえもん「でも、下手に道具で乱入すると、かえってジャマになりかねないし……」
のび太(フォックスさん、ぼく信じてます!)
ウルフ「おい、なんか機体の様子がおかしいぞ!」
レオン「うむ」
アンドリュー「お、俺もだ! 計器にもバラつきが出てる!」
ピグマ(くっ……! ヤツらの緩急をつけた戦法で、
ムリヤリ改良した機体に、ガタが出てきよったか!)
ウルフ(ちいっ……! だから俺は反対だったんだ!
改造手術や機体改良などせずとも、スターフォックスは倒せた!)
ウルフ(だが!)
ウルフ(少々調子がおかしくなったとはいえ、まだ十分に戦える!
ヤツらのアーウィンも、もうボロボロなんだ!)
ウルフ(このまま四人で力を合わせれば──)
アンドリュー「い、いやだぁぁぁっ!」
錯乱したアンドリューが、メチャクチャにウルウェンを操縦し始めた。
ウルフ「あ、あのバカ……!」
レオン「役立たずめ……落ちろ」
ズガガガガガッ!
アンドリュー「う、うわぁぁぁぁぁぁっ! アンドルフおじ──」
ズガァンッ!
煙を上げ、墜落するアンドリュー機。
スリッピー「こいつら、仲間割れしてるよ!」
ピグマ「くっ、いくらアンドルフ様の甥やからって
あんなグズをチームに入れるんやなかった! 計算が狂うたわ!」
ピグマ「潮時や! 悪いが、わては撤退させてもらうで!」
しかし──
ペッピー「今さら逃げられると思うか、ピグマッ!」ズガガガッ
ピグマ「なっ!?」
ペッピー執念の追撃により、ピグマ機も火を噴き始める。
ピグマ「なんやとォ!? こ、このわてが──!」
ドォォォンッ!
レオン「どいつもこいつも私の足を引っぱるだけのデクだったか。
こうなれば私一人で敵を片付けてやろう」
ウルフ「待て! 俺とお前で向かえば──」
レオン「うるさい、黙って見ていろ」
ファルコとレオンの一騎打ちが再開される。
レオン「こざかしいトリめ、私にひざまずけ!」
ファルコ「悪いな、てめえの動きはもう見切ったぜ!」ギュルンッ
レオン「なにっ!?」
ファルコ「これでもチームのエースってことになってるんでな……
もう逃がさねえっ!」ズガガガガッ
レオン「こ、この私が……この私がぁぁぁっ!」ヒュルルルル…
背後からレーザーを山ほど浴び、レオンのウルフェンも墜落する。
ウルフ「…………」
ウルフ(勝てる戦いだった──)
ウルフ(だが、こうなっちまったのは、俺がヤツよりもパイロットとして……
いや、リーダーとして劣っていたからということか……!)
ウルフ「アンドルフ!? 俺はまだ負けてねえぞ!」
アンドルフ『もうよい。あと数十秒でその一帯は、地中に仕込んだ大型爆弾で爆破する』
ウルフ「てめぇ! まさか俺たちは最初から捨て駒──」
アンドルフ『スターフォックスとともに散るがよい』プツッ…
ウルフ「…………」
ウルフ「おいキツネども! もうじきここら辺りは爆弾で吹っ飛ぶ!」
ウルフ「まだ戦えるヤツがいるなら、俺についてこい!」
ファルコ「なんだと!?」
フォックス(ファルコたちはスターウルフとの戦いで、傷つきすぎている!)
フォックス「ファルコ、ペッピー、スリッピーは全速力でグレートフォックスに帰還!
ドラーウィンは俺についてきてくれ!」
ジャイアン「ようやく俺たちの出番かよ!」
スネ夫「行くよ!」グオオオオッ
アンドルフの爆弾によって、まもなく戦場は大爆発を起こした。
キィィィィ……ン
ウルフ「ここをまっすぐ行けば、アンドルフにたどり着く」
のび太「ついにアンドルフとの決戦か……」ゴクッ
フォックス「だが、なぜだ。なぜ俺たちを助けるようなマネをした?」
ウルフ「あんなサルにいいように利用されるのは気にくわねえ……ただそれだけだ」
アンドルフ『なるほど……だから裏切ったというわけか』
ウルフ「な!?」
アンドルフ『敗北しただけでなく、敵を私のもとに呼び込むマネをするとは……。
飼い犬に手を噛まれるとはまさにこのことだな』
アンドルフ『だが、お前たちが裏切った時の保険はちゃんとかけてある』
アンドルフ『お前たちの機体……ウルフェンには私だけが起動できる
爆弾が仕掛けてあるのだ』
ウルフ「ふん……そんなことだろうと思ったぜ……」
フォックス「やめろ、アンドルフ!」
しずか「やめてぇっ!」
ウルフ「てめえとはもっとちゃんとした決着(ケリ)を……つけたかった」
フォックス「ウルフッ!」
アンドルフ『散れ』
ドグワァァァンッ!
無情にも、爆破されるウルフェン。
アンドルフ『さて、スターフォックスよ。
正直いって、ヤツらを倒すのは想定外だったが……』
アンドルフ『私を倒すことはできん!』
アンドルフ『さあ私の元に来るがよい。親父同様、このベノムにて砕け散れ!』
フォックス「アンドルフ……お前は必ず倒す! ──行くぞっ!」
ドラえもん「許せないっ!」
スネ夫「やってやる!」
ジャイアン「ギタギタにしてやらぁ!」
しずか「負けないわ!」
のび太「絶対に勝つ!」
フハハハハハハハ……!
アンドルフ「よく来たな……歓迎するぞ!」
ドラえもん「巨大な顔に、巨大な手が二つ……!?」
しずか「とても科学者には見えないわ!」
フォックス「おそらく自分自身を改造したんだろう……行くぞ、アンドルフ!」
スネ夫「ぼくらも行くよっ!」
のび太「うんっ!」
ジャイアン「ボムはあと三発……絶対に無駄にはできねえっ!」
アンドルフの巨大な手が、アーウィンとドラーウィンを襲う。
アンドルフの巨大な口が、アーウィンとドラーウィンを吸い込もうとする。
だが、フォックスとスネ夫は巧みに攻撃をかわす。
スネ夫「エリア6に比べれば、この程度!」
フォックス「いいぞ、スネ夫君!」
ズオオオオ……!
しずか「今だわ! 武さん、あの口の中にボムを!」
ジャイアン「おう! そんなに腹が減ってんなら、これでも食いやがれっ!」
ブウンッ!
吸い込まれたボムは──アンドルフの内部で大爆発を起こした。
ボウゥゥゥゥ……ン
アンドルフ「ぐげえぇあああああああっ!!?」
断末魔の叫びと共に、アンドルフの顔面が崩れていく。
ジャイアン「どんなもんだ!」
のび太「やったぁ!」
スネ夫「よっ、さすがジャイアン! 日本一!」
しずか「やったわ!」
ドラえもん「やっと終わったんだね……」
フォックス「父さん、ビル……やっとアンドルフを倒したよ。
ドラーウィンという頼もしい味方のおかげで……!」
フォックス「みんな気をつけろ! アンドルフはまだ生きているっ!」
のび太「えぇっ!?」
「なるほど……」
「オモチャと侮っていたが、なかなかできるようだな……」
「しかし、この宇宙を支配するのは、偉大な頭脳を持つこの私……」
煙が晴れ、アンドルフが姿を現す。
のび太「ゲゲッ!?」
スネ夫「ひぃっ!? なにあれ!」
ジャイアン「ウソだろ!?」
しずか「信じられないわ……」
ドラえもん「むき出しの巨大な脳に、目玉が二つ……浮いてる。
た、たしかに偉大な頭脳といえば偉大な頭脳だけど……」
フォックス「それが貴様の正体か! アンドルフ!」
スネ夫「ひぃぃっ、こっちに来た!」
フォックス「気をつけろ! あの目玉、アーウィン級の機動力だ!」
あっという間に両機の後ろを取り、レーザーを放つ目玉。
ガガガガガッ!
しずか「きゃあああっ!」
フォックス「くっ……!」
フォックス「だがこの目玉さえ破壊してしまえば、ヤツの視覚を奪えるはず!」
フォックス「スネオ君、十分に後ろに引きつけてから──」
フォックス「宙返りだっ!」
スネ夫「はいっ!」
ギュルンッ!
目玉の後ろを取ったアーウィンとドラーウィンが、レーザー連射で両目を破壊する。
ドラえもん「やったぁ! これであの脳みそは、もうなにも見えないはずだ!」
スネ夫「アイツはもうスキだらけだ! のび太、連射で決めろっ!」
のび太「よぉ~し」
アンドルフ「フフフ……」
フォックス「──いや、待てっ!」
グオオオオッ!
アンドルフから、無数の触手が伸びる。
アンドルフ「バカめ、あの眼球は飾りに過ぎん。
偉大なる私は目などなくても、全方位を認識できるのだ!」
しずか「ま、まずいわっ!」
ジャイアン「やべえっ!」
すると──
フォックス「リーダーとして、君たちを落とさせはしない!」ギュゥゥゥゥン
間に割って入ったフォックスが、ドラーウィンの身代わりに触手につかまった。
メキメキ…… バキィッ! ベキィッ!
触手に絡まれ、ウイングを破壊されるアーウィン。
スネ夫「げぇっ!」
ドラえもん「ああっ……!」
しずか「いやあぁぁっ!」
のび太「フォックスさん!」
ジャイアン「こんにゃろう!」ブウンッ
ズドォォォンッ!
ジャイアンのボムでどうにか脱出させるが、アーウィンはボロボロになっていた。
フォックス(くっ……なんとか飛べるが、レーザーもボムももう撃てない……!)
フォックス「ドラーウィン、逃げてくれ!」
フォックス「コイツは……命にかえても俺が倒す!」
フォックス(こうなったらアーウィンで特攻して、ヤツを倒すしかない!)
のび太「ぼくたちだって、ずっとここまで戦ってきたんです!
最後まで戦わせて下さい!」
ジャイアン「水臭いぜ、フォックスさん!」
しずか「お願いします!」
スネ夫「それに……ラジコンマニアのぼくには分かるんですけど、
もうアーウィンは飛ぶのが精一杯でしょう?」
スネ夫「ぼくたちに任せてくれた方が、合理的じゃないかと……」
ドラえもん(みんな、成長したなぁ……)ホロリ…
フォックス「フッ……そうだな」
フォックス「分かった! アンドルフの撃破、君たちに託す!」
アンドルフ(バカめ……もっとも警戒したのはアーウィンによる特攻だったが、
よりによってあのガキどもに託すだと?)
アンドルフ(すぐに触手で捕え、人質にした後、二機とも粉砕してくれるわ!)
スネ夫「このぐらい距離を取れば、安全なはずだ」
ジャイアン「こっからボムを投げつけてやるか?」
ドラえもん「いや、さっきフォックスさんをボムで助けた時、
アイツはほとんどこたえてなかったよ」
のび太「ボムが通用しないんじゃ、レーザーなんて絶対効かないよねぇ」
しずか「……ねぇ」
のび太「どうしたの、しずちゃん?」
しずか「さっきから、アンドルフはこちらの動きに合わせて回転してるのよ」
ドラえもん「それがどうかしたの?」
しずか「だってさっき、アンドルフは“全方位を認識できる”っていってたわ。
なら、回転する必要なんてないはずでしょう?」
のび太「きっと回りたい気分なのさ!」
ドラえもん「……そうか! きっとアンドルフには、
なにか回転しなきゃいけない理由があるってことか!」
しずか「えぇ! もしかしたらアンドルフは自分の弱点を隠すために
回転してるんじゃないかしら……」
ジャイアン「さっすが、しずちゃん!」
スネ夫「でもアイツ、見た目のわりに素早いから、回り込むなんてとても……」
ドラえもん「ようし」ゴソゴソ…
ドラえもん「相手ストッパ~!」
【相手ストッパー】
特定の相手を停止させる道具。
ドラえもん「アンドルフを止めろ! えいっ!」
アンドルフ「む!?」ビクッ
アンドルフ「なんだこれは……ふざけたマネをしおって!」グググ…
ドラえもん「……ダ、ダメだ!
あんなに大きいと、さすがに完全には止められない!」
スネ夫「いや……だけど回り込むには十分だ!」
ギュイイィィィ……ン!
スネ夫が駆るドラーウィンが最高速度で、アンドルフの裏側へと回り込む。
のび太「よぉ~し、一斉攻撃だ!」
ジャイアン「おうよ!」
アンドルフ「おのれぇぇぇっ!」バラバラ…
アンドルフが次々と機雷に似た塊をばら撒く。
ズガァンッ! ドガァンッ! ドウンッ! ドゴンッ! バゴォンッ!
ウイングを損傷するドラーウィン。
だが──
のび太「レーザー発射!」
ジャイアン「これでトドメだぁっ!」
フォックス(ノビタ君たち……本当にありがとう)
フォックス「決めろっ!」
もうドラーウィンは止めることはできない!
アンドルフ「バカなぁぁぁぁぁっ!!!」
ドワァァァンッ!!!
のび太「今度こそやったんだよね? また変身とかしないよね?」
アンドルフ「ぐぐ……おのれぇぇ……!」ボロボロ…
アンドルフ「だが……」ボロボロ…
アンドルフ「逃がしはせん……お前たちも私と共に滅びるノダァァァッ!!!」
ズガァァァンッ!!!
最後の力を振り絞り、大爆発を起こすアンドルフ。
スネ夫「うわぁぁぁぁっ!?」
しずか「きゃあああああっ!」
フォックス(俺たちを道連れに!? ──ここまでなのか……!)
「どんな時でも、決して諦めるな、フォックス」
フォックス「──父さん!?」
フォックスの父ジェームズが駆るアーウィンが、脱出経路を導く。
フォックス(夢なのか? 幻なのか? いや、なんでもかまわない!)
「よし……スネオ君、俺についてきてくれ!」
スネ夫「あ、あわわ……ダ、ダメだ……体がすくんで……操縦が……」ガタガタ
スネ夫「手に力が、入らない……」ガタガタ
フォックス「…………」
フォックス「決して諦めるな、自分の感覚を信じろ!」
スネ夫(自分の……感覚……!)
ギュッ!
操縦桿を強く握り締めるスネ夫。
ドラえもん&のび太&ジャイアン「スネ夫!」
しずか「スネ夫さん!」
スネ夫「フォックスさん、もう大丈夫です!」
フォックス「よし! 脱出するぞ、急げ!」
ジェームズ(フッ……私の口癖を取られてしまったか……。
強くなったな……フォックス)
ペッピー「すごい爆発じゃ……! アンドルフは倒せたのか……!?」
ファルコ「ちいっ! 大人しく待ってなんかいられるか、俺も中に入る!」
スリッピー「──待って、ファルコ! あそこから何か出てきたよ!」
ナウス「……データ照合シマシタ。アレハフォックス機とドラーウィンデス」
脱出を果たしたフォックスとのび太たちが合流する。
ペッピー「無事だったか、フォックス、ドラーウィン!」
スリッピー「すごいよ! さすがフォックスたちだ!」
ファルコ「ったく、大したヤツらだぜ。
ノビタ、スネオ、ジャイアン、シズカ、ドラエモン……そしてリーダー!」
のび太「いやぁ~でもホント危なかったね」
ドラえもん「道案内をしてくれたフォックスさんのおかげだね」
しずか「スネ夫さんの操縦もすごかったわよ」
スネ夫「これぐらいは朝飯前さ」
ジャイアン「こいつぅ!」
フォックス(ありがとう……父さん)
フォックス「これでベノム軍は滅びた……これより惑星コーネリアへ帰還する!」
スターフォックスの四人が、ペパー将軍のもとを訪れる。
ペパー「本当によくやってくれた、フォックス」
ペパー「君たちさえよければ、我が軍に入って一緒に──」
フォックス「いえ、我々にはこういう生き方が性に合っていますから」
ペパー「ならばせめて、君たちの凱旋式を開きたいのだが……」
フォックス「そちらも遠慮させていただきます」
フォックス「俺たちには次の仕事がすでに待っていますし、それに──
もう行かねばならない戦友を、見送らねばなりませんから」
ペパー「!」
ペパー「そうかあの少年たちか……彼らにも、ありがとう、と伝えてくれんか」
フォックス「任せて下さい」
四人はペパー将軍のもとを後にした。
フォックス「ビル!? 無事だったのか!?」
ビル「当たり前だ、幽霊じゃないぜ!」
ビル「といっても本当に危ないところだったんだけどな」
ビル「ボルスであのウルフってのにやられそうになり……
あと一撃で俺の機体が爆破されるってところで、ヤツら突如撤退したんだ」
ビル「あとになって分かったが、エリア6から攻め込んだお前たちの進撃が
予想以上に早かったから、ベノムを守らせるため
アンドルフがスターウルフに撤退命令を出していたんだ」
ビル「おかげで俺はどうにか不時着し、命を拾うことができた」
ビル「……俺はお前が友達だということを誇りに思うよ」
フォックス「俺もさ」
ビル「じゃあな……。今度会う時は戦場じゃなく、酒でも酌み交わしたいもんだな」
フォックス「ああ、そうだな」
どこでもドアの前に立つのび太たち。
ペッピー「名残惜しいが……達者でな」
スリッピー「元気でね! 絶対また遊びに来てよ!」
ファルコ「ま、お前らとのチームもなかなか悪くなかったぜ」
フォックス「じゃあな、みんな」
ドラえもん「ありがとうございました!」
ジャイアン「俺、絶対また来るよ!」グスッ
しずか「皆さん、お元気で……」
スネ夫「次は本物のアーウィンを操縦してみたいなぁ」
のび太「ぼく、スターフォックスのみんなのこと、本当に尊敬してます!
……さようなら!」
ガチャッ…… バタン
聞くの忘れちゃったよ!」
スリッピー「ちぇっ、しまったなぁ……」
ペッピー「まあまあ、また会う時もあるだろうし、今度会った時に聞けばいいじゃろう」
スリッピー「へへへ、そうだね」
ファルコ「さあて、出会いあれば別れあり、別れあれば仕事ありってな。
とっとと次の仕事先に向かおうぜ、フォックス」
フォックス「ああ、気持ちを切り替えないとな!」
フォックス「よし、さっそくアーウィンとドラーウィンの整備を開始する!」
スリッピー「フォックス~、ドラーウィンはもうないってば」
ペッピー「一番気持ちの切り替えができてないのは、お前さんのようじゃな」
ファルコ「ったく、リーダーだと認めてやったとたんにこれだ」
ハッハッハッハッハ……!
フォックス「まだまだ父さんの背中は遠いなぁ……」
そして物陰から、彼らを見つめる男が一人。
ウルフ「俺たちはしぶといぜ……また会う日まで、命は預けておいてやるよ。
あばよ、スターフォックス!」
<空き地>
スネ夫「ジャーン! スネ吉兄さんにアーウィンのラジコンを作ってもらったんだ!
ドラーウィンはこんな町中じゃ操縦できないけど、これならバッチリさ!」
ジャイアン「おお~すげえ! よし俺にやらせろ!」
のび太「ぼくにもやらせてよぉ~!」
スネ夫「ダメだよ、ぼくが一番だ!」
ギャーギャー……! ワーワー……!
ドラえもん「みんな、アーウィンが原因で喧嘩したら、フォックスさんが悲しむよ?」
ジャイアン「ちぇっ、そりゃそうだな」
のび太「じゃあまず、スネ夫のテクニックを見せてもらおうか」
スネ夫「よぉ~し、ドラーウィンメインパイロットの実力見せてやる!」
ドラえもん「やれやれ、これは今度の日曜にライラット系に行く話になりそうだ」
しずか「ふふ……あのラジコンを持っていけば、きっとみんな喜んでくれるわよ」
~おわり~
SSの途中でさるさん食らうは初めてってわけじゃないが
こんなに意味不明なタイミングで何度も引っかかるのは初めてだった
ちなみに
コーネリア→セクターY→カタリナ→ソーラ→マクベス→エリア6→ベノム2
は自分が最もプレイしたコース
おやすみなさい
クオリティ高くて面白かった
アサルト編もいつかやったりするのかな
Entry ⇒ 2012.11.06 | Category ⇒ 版権物SS | Comments (3) | Trackbacks (0)
優希「麻雀上手くなったな、京太郎!」京太郎「そうか?」
引用元: http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1352007108/
京太郎「おいおい……まだ5巡目だぞ……」
優希「アタシにゃタコスがついてるからなっ!」
京太郎「それ作ったの俺なんだけどな」
優希「うま~♪」モグモグ
京太郎「あ~……でもやっぱ東場はお前に勝てないなぁ」
優希「ん~……でも、お前も随分上手くなったと思うぞい?」
京太郎「おお、そう思うか?」
優希「んまっ! お前がアタシに勝つなんて1万光年早いけどな!」
京太郎「………」
優希「………」
京太郎「光年は距離だぞアホ」
優希「う、うるさいじぇ! 今気づいたわ!」
京太郎「おお、自分で気づけたとは。偉いぞ優希」ナデナデ
優希「ぬが~! 腹立つじぇ~!!」
京太郎「お前相手に持ち点20000の東風戦は卑怯だろ……。 ……今何時だ?」
優希「9時前……だじぇ。 咲ちゃん達遅いじょ~」
京太郎「お前も入ってくりゃよかったじゃねえか」
優希「お恥ずかしながら、自由行動に入ってすぐ風呂に直行しちゃって……」
京太郎「あぁ、そうだった……。 ……合宿所の風呂ってなんかワクワクするよなぁ」
優希「そうそう! なんか特別な感じしちゃうよなっ!」
京太郎「だからと言って夕飯前に風呂入るってどうなんだ」
京太郎「……3度も」
優希「へへっ。 面目ないっ」
優希「……んぁ? ココアが無い……」
優希「きょーたろー、ココア買ってきて~」
京太郎「ああ? なんで俺が」
優希「負けたんだから文句なしだじぇ! さっさと行ってこーい!」
京太郎「お前……覚えてろよ……」
京太郎「広いんだよなここ……。 咲じゃなくても迷う自信あるわ……」
京太郎「……っと、あったあった……って」
京太郎「誰かいる……」
「んー……! んー……!!」ピョンッピョンッ
京太郎「あれは……」
「あう……届かない……」
京太郎「龍門渕の……」
「こんぽた……」
京太郎「天江さん?」
衣「んぅ?」クルッ
京太郎「どうも。 覚えててくれたんですね」
衣「四校女子合宿だというのに男子が一人混淆してるんだ。 忘れるほうが難しい」
京太郎「あー、まーそうですね」
衣「御陰で、うちのとーかが『わたくしよりも目立ってる!』って哮り立ってたぞ」
京太郎「ははは……」
京太郎「天江さんはどうしてここに?」
衣「あ、う……その……」
京太郎「?」
衣「自販機でな? ……飲み物を1つと思ってたんだけど……」
京太郎「ほう」
衣「その……」
衣「とどかなくて……」
京太郎「……あぁ……」
京太郎「コンポタ? ……あぁ」
京太郎(調度良く一番上の段だな。 これじゃ届かないか)
衣「一度召してみたかったのに……」
京太郎「………」
衣「うぅ……こんぽた……」
京太郎「………」
ヒョイ
衣「ひゃぁっ!?」
京太郎「っと。 これでどうですか?」
衣「な、お、お前、清澄っ! これは……!」
京太郎「おお。 天江さん、軽いっすね。 子供みたいだ」
衣「こ、子供じゃない! 『ころも』だ!」
京太郎「でもほら、目の前目の前」
衣「んぅ? ……おおっ!」
衣「こんぽたぁ!」パァァ
京太郎「ねっ?」
衣「こ、こうしてはいられん!」
衣「貨幣貨幣! き、清澄の! これを貨幣入れに!」スッ
京太郎「あ、はいはい。 どうぞどうぞ」チャリンチャリン
衣「おおおっ! こんぽたが光ったぞ!」
京太郎「さぁ、天江さん。 一思いに!」
衣「う、うむ……」
衣「え……えいっ!」ピッ
ガコンッ
京太郎「良かったですねっ」
衣「うん! 良かった!」
衣「ありがとう! 清澄の!」
京太郎「ふふっ……」
ナデナデ
衣「ふぁっ」
京太郎「……あ。 すいません、つい」
衣「こ、子供扱いするなぁ!」
京太郎「ご、ごめんなさいっ」
衣「全く……全く……」プクー
京太郎「……」
京太郎(ああ……頬突きてえ……)
京太郎「……名前は覚えてくれなかったんですね……」
衣「す、すまない……」
京太郎(……可愛いなぁ)
京太郎「……ふふっ。 なら改めて」
京太郎「清澄高校麻雀部男子部員、須賀京太郎です」
衣「むっ。 なら衣もっ」
衣「龍門渕高校麻雀部女子大将!」
衣「天江衣だ!」
衣「よろしくな! きょーたろー!」スッ
京太郎「はい。 ……これから一週間」スッ
ギュッ
京太郎「よろしくお願いしますっ。 天江さんっ」
久『えー。 この度は合同合宿にご賛同いただき……』
久『そして、ばっちりお集まりいただきまして……』
久『まことにありがとうございます!』
衣『わーい』
久『移動の疲れもあることと思いますので、今日は自由行動ということで……』
久『……の前に。 須賀くーんっ』
京太郎『えっ。 あ、はいっ』
久『自己紹介なさい』
京太郎『は、はいっ』
ダンシー? セータカーイ アンナノイタッケ? キョウチャン...
京太郎(き、緊張する……)
京太郎『この清澄高校の麻雀部員の一名です』
京太郎『今回の合宿、部長の意向ということで自分も参加させていただきました』
エー オ、オトコノヒト... オレトオナジクライカ ? ニャー?
ザワザワ
京太郎『……女子しか居ないこの合宿所に男一人というのはどうかと思われるかもしれません』
京太郎『でも、それでも自分は……ここに来たいと思いました!』
京太郎『純粋に……麻雀がうまくなりたいから!』
シーン...
京太郎『俺は決してみなさんの邪魔はしません! 誓います!』
京太郎『むしろ俺を使ってくれてもいいです! どんな雑用だってやります!』
京太郎『だから! みなさんの腕を勉強させてください!』
京太郎『お願いします……!!』
京太郎『どうか俺を……俺を仲間に入れてください!!!』
ほう?
『………』
京太郎『……』
......パチッ
パチパチパチッ
京太郎『!!』
パチパチパチパチパチ !!
京太郎『あ……ありがとうございます! ありがとうございます!!』
イイゾー! イイヒトダ... ホウ? キョウチャン...カッコイイ...
久『……はい。 というわけで異例のメンバー追加に関しても許可を貰ったわけだしっ』
久『今から自由行動ということで!』
『『異議なーし!!』』
京太郎「……ふぅ」
京太郎(緊張したなぁ……。 昼の事だってのに、まだ手が震えてる……)
京太郎「……情けねえなぁ……」
優希「んぅ……」
京太郎「あ、悪い。 起こしちまったか?」
優希「ふぁあ……。 ん……きょうたろー……」
京太郎「疲れたろ。 ゆっくり寝とけ……」ナデナデ
優希「……うん……」
京太郎「………」ナデナデ
優希「……すぅ……すぅ……」
京太郎「……寝顔は可愛いんだよな、コイツ」ボソッ
優希「、っ!」ビクッ
京太郎「ん?」
優希「ぐ、ぐぅ~……」ドキドキ
まこ「ええ湯じゃったのぅ」
久「ホントねぇ。 どうして宿泊先のお風呂ってこんなに気持ちよく感じるのかしら」
まこ「優希が3度も入った気持ちがわかるのぅ」
久「それはないわ」
咲「お風呂上り? 私はコーヒー牛乳かなー」
和「私もコーヒー牛乳は嫌いじゃないんですけど、やっぱ普通の牛乳ですね」
咲「あっ、コーヒー牛乳と言えば。 京ちゃんコーヒー牛乳が大好きなんだった」
和「あら。 でしたら今から買ってきますか?」
咲「んー……。 いや、湯冷めしたらなんだし止めとこうよ。 明日買えばいいって」
和「そうですか? ……それもそうですね」
和(須賀くんはコーヒー牛乳派……っと……)
久「そうそう、咲。 実はここの合宿所、11時の消灯以降はお風呂の使用が禁止されてるのよ」
咲「え? 知ってますけど……」
久「だから夜中はだーれも寄り付かないってことね」
咲「は、はぁ……それがどうかしたんですか?」
久「……わからない?」
久「11時以降なら須賀くんと混浴できるかも、ってことよ」
咲「 」
和「なっ!?」
まこ「ちょっ!?」
咲(京ちゃんと……混浴……? 混浴……こん……よく……)
咲「……えっ……えっ、えっ、えっ」
咲「えええええええええええええ!!!!!???」
久「でも消灯とは言え敷地内なら出歩きは許可されてるのよね~」
久「つまり……わかるでしょう?」
和「ちょ、ちょっと!! 何言ってんですか部長!?」
まこ「流石にソレはまずいじゃろ!?」
久「あら、そうかしら? 夏休みを麻雀打ってるだけで過ごすなんて勿体無いじゃない」
久「真夏の夜の青春を過ごしてみるのも一興だと思うけど?」
和「そそ、それでも混浴はちょっと……」
まこ「そ、そうじゃよなぁ……?」
久「ふむ……二人はあまりノリ気じゃないわね……」
久「咲はどう?」クルッ
咲「あわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ」
まこ「なんかトリップしちょる!?」
咲(それってつまり……京ちゃんの二の腕太もも腹筋胸板うなじが見放題ってことぉっ!!?)
咲(い、いや……それだけじゃなくて……それ以上の………!!)
咲(そんな……そんな…………そんなところおおおおおお!!!)
咲「……………らめぇ…」
バタッ...
和「咲さぁああああん!!?」
久「あら、倒れちゃった。 ……湯あたりしちゃったのかしら」
まこ「……十中八九アンタの所為じゃろ」
和「咲さん!? 大丈夫ですかっ!!? 目が虚ろです!!!」ユサユサ
咲「えへ……えへへへ……」
久「……どうでもいいけど、ご近所さんに迷惑だからあまりうるさくしないでね?」
まこ「アンタ鬼じゃな……」
ガララッ
京太郎「……おお……」
京太郎「……ここが女子達がブラだのパンティーだの脱いだり履いたりしてる所か……」
京太郎「………よしっ」
京太郎「スゥ~~~~~~~~~~~~~~~ッ 」
京太郎「…………」
京太郎「……残り香が全くない……。 ……あっ」
京太郎「そりゃ脱衣所だもん、換気扇ぐらいあるか! ハハハッ!」
京太郎「はー……」
京太郎「……」
京太郎「入ろ……」
ヌギヌギ
ガラッ
カポーンッ...
京太郎「おぉぉ……意外と広い……」
京太郎「ここでたくさんの女の子が洗ったり洗われたりされてるのか……」
京太郎「あるいはすったもんだされたり」
京太郎「…………」
京太郎「……何言ってんだ俺」
チャポンッ
京太郎「ふぅ~……」
京太郎「……はぁ~……」
京太郎「…………」
カポーンッ...
京太郎「…………」
京太郎「大浴場貸切って寂しいだけだわ」
京太郎「ただいま帰りましたぁ……」
まこ「おーう、おかえりんさい」グビッ
久「んっ……ぷふぅ……。 おかえり、須賀くん」ゴクッ
京太郎「……先輩方何飲んでんスか」
久「ああ、これ? 心配しなくてもノンアルコールよ?」
京太郎「いや、そこじゃなくて……それもだけど……」
まこ「なんなら京太郎も飲むかぁ? ホレ」スッ
京太郎「いえ、遠慮します。 断固として」
久「それにしても、随分と早かったわねぇ。 カラスの行水?」
京太郎「いやぁ……一人の大浴場って寂しいだけなんで……」
まこ「意外じゃのぅ。 お前のことだからイカガワシイことで時間を使うと思ったんじゃが
京太郎「…………」
京太郎「いや、してませんよそんなこと」
久「あら……和もいつの間にか眠っちゃってたのね」
京太郎「優希……腹出しっぱで寝るなよな……」スッ
京太郎「咲は足出しっぱ……半分俺の布団にきてるし……」ススッ
まこ「……まるでオカンじゃな」
京太郎「こいつらがガキ過ぎるだけですよ……」
まこ「ハハッ。 言うわい言うわい」
京太郎「ふわぁ…。 ……そろそろ俺も寝ますね」
まこ「おう。 しっかり休みぃや」
久「本番は明日からよ。 頑張ってね」
京太郎「はい……それじゃあ……」
京太郎「先輩方……おやすみなさい……」
まこ「おう、おやすみ。 京太郎」
久「おやすみなさい。 須賀くん」
まこ「……」チラッ
京太郎「……zzz」
まこ「……なぁ部長。 なんで京太郎も連れてきたん?」
久「ん~? 来る途中も言ってなかったっけ?」
久「……ひとりぼっちは可哀想だって思っただけよ」
まこ「……あ、そう……」
久「……何よ」
まこ「いーや、なんでも。 わしももう寝るわ」
久「はいはい。 ……私はもうちょっとだけ起きてよっかな」
まこ「それじゃ、缶の片付けよろしく~っ」
久「……あっ。 やられたっ」
まこ「へへっ。 おやすみ、部長」バッ
久「……ったくもう……」
久「……ふぅ」
久「…………」チラッ
京太郎「………zzz」
久「…………」
『あなたの待ち、当ててみてますよ』
『1pと7pのバッタ待ちでしょう?』
『俺もそうですから』
トクンッ
久「………」
久「…………ふふっ」
咲「京ちゃん! 早く早く!」
京太郎「わかったから急ぐなって。 また迷うぞ」
咲「さ、流石に合宿所じゃ迷わないよっ! ほら! ここっ!」
ガチャッ
「おっとそれロンですッ!」 「ツモッ! 裏入れて4000,2000です!」
「うっしゃー! リーチだしっ!」 「あ、ロン」 「ニャー!!?」
ガヤガヤ
京太郎「おーやってるやってる」
咲「うわぁ……! うわわぁ……! 早く打ちたいなぁ……!」
京太郎「……楽しそうだな、お前」
咲「えへへっ。 今日は夢見が良かったからねっ!」
京太郎「ふーん……?」
咲(京ちゃんと混浴なんて最高の夢……!)
モブ子「うええぇ……そんな手ありー……?」
咲「さぁ! 次行きますよぉお……!」
優希「咲ちゃん、調子良さそうだじぇ」
京太郎「ああ。 なんでも、夢見が良かったんだとかなんとか」
優希「ほーう? それならアタシも負けてられんじぇ!」
京太郎「というと? お前の夢は?」
優希「聞いて驚け……! タコスに食われる夢だ!!」
京太郎「……。 食うんじゃなくて?」
優希「食われた!! こりゃいいこと有ること間違いなし!」
京太郎「……お前がいいならそれでいいんだろうよ……」
優希「んじゃ、行ってくるじぇー!」タタタッ
京太郎「俺はどうすっかなぁ……っと」
「あっ……! きょーたろー!」
京太郎「天江さん。 そうですね、昨日ぶりですね」
京太郎「憧れのコンポタの味はどうでしたか?」
衣「ああ、とても甘露で美味であった!! つぶつぶが最後まで食べれなかったが……」
京太郎「そういうときはクルクル回しながら飲むといいらしいですよ」
衣「? そんなことしたら目が回らないか?」
京太郎「ん?」
衣「?」
京太郎「??」
衣「??」
「『缶を』でしょ。 そこは言わなきゃ」
京太郎「あっ」
衣「ハジメー!」
一「おはよう、衣。 京太郎くん」
一「ハハッ。 よしてよ敬語なんて。 同年代なんだからさっ」
京太郎「……そうだな。 おはよう」
一「おはよう。 ボクのことは『はじめ』でいいよ」
京太郎「了解。 よろしく、一」スッ
一「うんっ。 よろしくっ」ギュッ
衣「なーハジメー。 トーカはどうしたんだー?」
一「透華はお休み中。 昨日はしゃぎ過ぎちゃったからね」
京太郎「……昨日なにかやったのか?」
一「枕投げ」
京太郎「………」
京太郎(子供か……っ!)
衣「アレはとても愉快だったな!」
一「またやろうねー」
京太郎(……子供だった……)
衣「うんっ!」
京太郎「ああ。 あっちで咲が打ってますよ」
一「ありがとっ。 んじゃ、そっち行こうか衣」
ギュッ
衣「……」
京太郎「……? な、なんスか?」
一「……衣?」
衣「……衣は……」
衣「きょーたろーと打つ!!」
京太郎「えっ」
一「おおっ?」
衣「何だ? きょーたろーが打つのが法度なわけでもあるまい?」
京太郎「いやでもほら! 最初に言ったじゃないですか! 『皆さんの邪魔はしない』って」
衣「京太郎自らが乱入するならまだし、衣から誘ってるんだ。 邪魔な訳がない」
京太郎「そりゃ……そうかもしれないけど……」
一「別にいいんじゃないかな?」
京太郎「は、一まで……」
一「いいじゃないかっ。 衣と打てる機械なんて滅多にないもんだよ?」
衣「うんうんっ!」
京太郎「う、うーん……」
衣「……きょーたろーは……」
衣「衣と……打ちたくないか……?」ウルウル
京太郎「うっ……」
京太郎「……そりゃ殺し文句だ……」
咲「よろしくお願いしまーすっ」
優希「よろしゅうっ!」
京太郎「よろしく」
京太郎「……って、なんでお前らが……」
優希「ふふーんっ。 犬にはリードを持つのはアタシだからなっ!」
京太郎「いみわからん」
咲「もう……衣ちゃんったら水くさいんだから……」
衣「ん?」
咲「私と打ちたいなら打ちたいって言ってくれればいつでも行ったのに」
衣「なにが?」
咲「ふふっ。 京ちゃんと打つ建前で私と打ちたかったんでしょ? 解ってるって~」
咲(衣ちゃんは子供っぽいからねっ)
衣「そんなこと毛頭無かったけど……」
衣「衣は純粋にきょーたろーと手合わせしたかっただけだ」
衣「ひょっこり二人が参画してくれたのはありがたいが……それだけだぞ?」
咲「………」
咲(どどどどどどどどういうこと!? 京ちゃんと衣ちゃんって面識あったっけ!?)
京太郎「お手柔らかにおねがいしますよ?」
衣「ふふーん。 それは高望みが過ぎるんじゃないか?」
京太郎「うへぇ……」
衣「えへへっ」
咲(す、すっごく仲良さそう……!)
優希「こ、こらそこぉ! イチャイチャするのもいい加減にするじぇ!!」
咲「……!」ウンウン
京太郎「あ、ああ、悪い。 準備はいいぜ」
衣「ふふっ……では始めようっ!!」
京太郎「やっちまった……。 昨日アレだけ打ったのに……」
優希「お前程度に見破られるほどヤワな麻雀打ってないじぇ~」
京太郎「こんにゃろ……タコス作るの止めんぞ……」
優希「ギャー! それは止めてくれー!!」
衣「……むっ」チクリ
咲「優希ちゃんばっかにいい顔させないよっ。 その9pカンッ!」
京太郎「げっ!」
咲「ツモッ! 6400の一本場で6700! 責任払いだよ、京ちゃんっ」
京太郎「残り持ち点300点……殺生な……」
咲「えへへっ。 油断大敵、だよっ!」
京太郎「いつもよりやる気だなぁ……」
衣「……むむむっ……!」チクチク
衣(きょーたろーと周りの者が触れ合う度……)
衣(胸が揺らぐ……苛立つ……)
衣 「 不愉快だ 」
ゴッ !
咲「ヒッ!?」ビクッ
優希「な、なんだじぇこの雰囲気!!」
京太郎「……あ、天江さん?」
衣「不愉快なんだ…………とても……」
咲「えっ?」
衣「そこはかとなく……胸が騒ぐ……」
優希「ふ……雰囲気が……」
衣「……まずはお前から……」
衣「行くぞ小娘」
衣「 御戸開きだ 」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
優希(東2局だってのに……配牌が悪い……!)
京太郎(いや……配牌どころかツモも悪い……)
京太郎(全くシャンテン数が進まない……!)
咲(これは……衣ちゃんが本気の時の……)
優希「うぐ……! 次でラスヅモなのにぃ……!」
衣「……どうした小娘。 それで最後のツモだぞ……?」
優希「う、うっさいじぇ! 来いっ!」
優希「……ぐぬぅ……! テンパイ出来ず……かっ!」
タンッ
「ロン」
優希「うぇっ!?」
衣「……河底撈魚だ」パタッ
優希「あああっ! アタシの必要牌が全部……!」
衣「子の倍満で16000。疾く寄越せ。 次は衣が親だ」
優希「うぎぎ……」
京太郎(す、すげぇ! ホウテイ無しじゃ和了れない手なのに……)
衣「フハハ! ロン! 河底撈魚!」
優希「うきゃぁっ!」
衣「どうした小娘! 速攻が得意なのだろう!?」
優希「うぅ……うううぅ……」
衣「これで2本場……」
衣「さぁ……」ゴッ!
優希「ひぃっ!」
衣「足掻けよ小童!!」
衣「……はぁ……」
衣「ロン……河底撈魚」
優希「うあ……あああぁ……」
京太郎(さ、さっきから優希ばかり……!)
咲(鳴いてズラしても修正される……必ず優希が振り込む形に……!)
衣「鯔背な小娘よ。 煢然たる活きの良さは何処へ行った?」
優希「うあ……ああ……」
衣「これで貴様の持ち点は100。 十八番のリーチも出来ん」
優希「ああああ………ああああああ」
衣「今、どんな心地だ?」
優希「 」
京太郎「…………」
一(これじゃぁこの子も……壊れてしまう……!)
一「ころ……」
ガシャンッ!
衣「!」
咲「!」
優希「!」
一「!」
京太郎「いい加減にしてくださいよ。 天江さん」
衣「きょ……京太郎?」
京太郎「一見すりゃ立派な戦法なのかもしれないけど……」
京太郎「もう我慢ならねぇ……」
咲「きょ、京ちゃん……?」
京太郎「天江衣ォ!」
衣「、っ!」
京太郎「お前は……俺だけを狙え……」ゴッ!
京太郎「俺も……お前だけを狙う……!」ゴッ!
衣「なっ!?」
衣(今は東3局5本場。 京太郎と衣の点差は7万以上……)
衣(この試合は半荘戦の取り決めだが……この点差は容易には覆らない!)
衣(衣だけを狙い続けるだと……? 烏滸言を!!)
衣(できるものなら……!)
衣「やってみせよ! 須賀京太郎!!」
ダンッ!
「ロンッ」
衣「は?」
京太郎「……聞こえなかったか……?」
京太郎「なら、もう一度言おう」
京太郎「ロン、だ」
パタ.....
衣「!?」
咲「れ、人和!!?」
一「そ、そんな馬鹿な!」
優希「きょ、京太郎……」
衣「ば……馬鹿な! 人和だと!?」
衣(可能性が0.038%の紙一枚にも見たぬ薄い役満……! それをコイツ…!)
京太郎「天江衣……そういえばお前の得意技は海底摸月だったな」
衣「……?」
京太郎「即ち、最後の一牌で和了ることが得意……」
衣「……! ま、まさか……!」
京太郎「学ばせてもらったよ」
京太郎「そうだよ。 ツモが悪いならツモらなきゃ良い」
京太郎「最初の一牌で和了りゃいいんだ」
衣「な、なんだと…………」
京太郎「……これで持ち点は五分五分」
衣「……!」
衣(次もしもまた人和を和了られたら……衣はトバされる……)
衣(だが、衣の前には13+1牌! この中から自由に選べるんだ……!)
衣(振り込むわけがない……!)
京太郎「……」タンッ
優希「え、えと……これっ」タンッ
咲「……」タンッ
衣「ば、馬鹿な……!」
衣(河の牌と手牌……。どれも被りがない……!)
衣(安牌が……無い……)
京太郎「早くしろよ」
衣「ぐっ……! 急かすな!」
京太郎「……急かすさ」
京太郎「お前が優希にやったことなんだから」
衣「っ、!」
衣(どれだ……! どれが安牌……!)
衣(さっきは字牌であたった……だが、次は安全という確証もない!)
衣(どれが……どれが……)
咲「まだ? 衣ちゃん」
衣「!!」
咲「……京ちゃんが待ってるよ」
衣「くっ……クソぉ!!」 ダンッ
京太郎「……んっ……」
京太郎「……部屋? なんでここに……」
京太郎「まさか……夢ぇ?」
「夢じゃないじぇ」
京太郎「あ…………」
京太郎「優希」
優希「へへっ。 随分とグッスリ寝てたなっ」
優希「こっちもビックリしたじぇ。 衣ちゃんが打ったと同時に卓に突っ伏すんだもん」
京太郎「あー……悪い」
優希「卓にちょっと唾ついてたじぇ」
京太郎「……ホント悪い……」
優希「しっかし恐ろしいことしたなぁお前は……」
京太郎「……ああ……俺も驚いてる」
優希「バラバラの手牌で和了る気満々に振舞ってたから」
京太郎「……えっ?」
優希「『えっ』て……気付いてなかったのか? 役どころかメンツ1つもできてなかったじぇ?」
京太郎「ま、マジ?」
優希「いやー皆騙されてたじぇ。 どんな手牌だったのか気になって開いてみたらさぁ大変」
優希「京太郎はホラ吹きの達人だじぇ!」
京太郎「………」
優希「当たり前だじょっ。 そうポンポン和了られちゃ商売上がったりだじぇ」
京太郎「……そりゃそうか……」
優希「……ま、まあ。 アタシとしちゃ、借りを返してくれた京太郎に感謝してなくもないけどなっ!」
京太郎「………」
優希「……な、なんか言えよぉ!」
京太郎「そんな顔真っ赤で言われても……」
京太郎「……そういえば……天江さんはどうなったんだ?」
優希「衣ちゃん? 衣ちゃんなら……」
優希「お前の隣にいるじぇ」
京太郎「えっ」
衣「すぅ……すぅ……」
京太郎「な、なんで!?」
そういえばそうだな
優希「アタシは和ちゃんや咲ちゃんと交代交代で一緒に看病してた」
優希「衣ちゃんだけは、ずっとお前の側にいたじぇ」
京太郎「そんな……どうして……」
優希「……さぁね~?」
優希「そいじゃ、そろそろ時間だからアタシは行くじぇ」
京太郎「ああ。 ありがとう」
優希「……むふふっ」
京太郎「?」
優希「ごゆっくり~♪」
京太郎「……」
京太郎「何言ってんだアイツ……」
衣「すぅ……すぅ……」
京太郎「……天江さん……」
ナデナデ
衣「んぅ……。 きょーたろー……?」
衣「……きょうたろー!?」
京太郎「はい」
衣「ぐ、具合はもう良いのかっ? 吐き気はあるか? 痛い所とか無いかっ!?」
京太郎「だ、大丈夫ですよ。 おかげ様で元気です」
衣「よ……良かったぁ……」
京太郎「どうして看病を?」
衣「うっ……それはその……」
衣「つ、罪滅ぼしとして……」
衣「……衣は……お前の大切な友人を……幾度と無く攻撃してしまった……」
衣「アイツは私を許してくれたが……お前があの時衣に見せた敵意に満ちた目……」
衣「あれが……ずっと胸の中で衣を責め立てるんだ……」
京太郎「………」
衣「……すまなかった……きょーたろー……」
京太郎「……気にしないでくださいよ。 喧嘩なんてよくあることでしょう?」
京太郎「友達なんだから」
衣「えっ……」
衣「とも……だち……?」
京太郎「あれ……もしかして、俺の勘違いでしたか?」
衣「い、いや! そんなことない!」
衣「……とも……だち……!」
衣「きょーたろーと……ともだち……!」
京太郎「そもそも俺が大口張ったのも悪かったし……」
京太郎「おあいこ、ってことで」
衣「………」
京太郎「……天江さん?」
衣「『ころも』」
京太郎「えっ?」
衣「『ころも』だ。 と、友達なのに苗字呼びは違和感があるっ」
京太郎「あ、ああ。 そうですね」
衣「敬語も要らない! 『さん』もつけるな!」
京太郎「そ、それは……」
衣「……ともだち、だろぅ?」ウルウル
京太郎「うっ………」
咲「京ちゃんが目を覚ましたのに迷うなんて私の馬鹿馬鹿!」タッタッ
咲「今度こそ迷わない! こっちで合ってる!」タッタッ
咲「……見えた! 『清澄』の文字! 間違いない!」タッタッ
ガチャッ
咲「京ちゃん!!!」
京太郎「こ、衣! 口移しは友達の間ですることじゃない!!」
衣「? しかし、鶴賀の大将は後輩に口移しを迫られてたぞ?」
京太郎「それはもう友達を超えた『何か』なんだよ! だからそのコーヒー牛乳を置いて……」
衣「ならば単純だ! 衣達もその『何か』になればいいんだ!」
京太郎「そんなわけないだろ!? ちょ、どこにこんな力が……」
咲「…………」
落ち着いて
衣には見えてたという
咲(そうだ、これは夢なんだ。私は夢を見ているんだ)
咲(目が覚めた時私はまだ高校1年生)
咲(起きたら京ちゃんの家に行って枕元で京ちゃんにこっそり『好き』って言って)
咲(ドキドキしながら京ちゃんの香りを堪能した後京ちゃんを起こして)
咲(京ちゃん一緒に手を繋ぎながら登校して)
咲(それを偶然クラスメイトに見られてしまって)
咲(教室に入った途端京ちゃんと私の相合い傘の書かれた黒板を見て)
咲(京ちゃんと一緒に赤面しながらも笑いあうんだ……)
咲「は、ははは……はははははは…………」
咲「………あふぅ……」
バタンッ
ここ数日間他校の生徒に病弱キャラとして見られる日が続いたんだとか。
京太郎「咲? 咲~?」
咲「アハハハ……京ちゃん…駄目だよそんなことぉ……」
京太郎「………咲……」
まこ「こりゃぁ……重症や……」
和「ま、前より酷い………」
久「叩けば直るんじゃない?」
優希「よっしゃ! 任せるじぇ!」
京太郎「止めて!」
――――――続く。
そして保守してくれてありがとう
本当だったら透華も書こうと思ってたんだけど
何故か京ちゃん無双になってしまった
今度からなるべく少なくする
それじゃ改めてありがとう
また会ったらよろしく
続き楽しみにしてる
次も楽しみに待ってる、乙
Entry ⇒ 2012.11.06 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
える「古典部の日常」 6
大きなあくびをしながら起きる。
昨日はここに戻ってきたから、随分とぐっすりと眠れた。
昼間散々寝ていたせいで、少々心配だったが……
恐らく、頭をいつもより働かせたせいだろう。
部屋の時計によると、まだ朝の6時、俺にしては随分早起き出来た物だ……と自分を褒めたい。
奉太郎「とりあえず、寝癖直すか」
毎度毎度、この寝癖は俺を悩ませる。
里志や伊原に相談すれば、短く切ればいい等と言うだろうが、それもまた面倒なのだ。
しかし、結果的に見れば……そうするのが効率良くなるのかもしれない。
そう思う物の、髪を切ろうと思わない辺り、俺はやはりこの髪型が気に入ってるのだろう。
そんな独り言をしながら、洗面所で寝癖を直していた。
摩耶花「……おはよ」
後ろから声が掛かる。
奉太郎「ああ……おはよう」
伊原の元気の無さから、こいつも多分朝は苦手な方だと予測できる。
丁度寝癖は直し終わったし、伊原にその場所は譲る事にした。
……本当の所は、既に機嫌が悪そうな伊原の機嫌を更に損ねたく無かったからだが。
俺はそのままの足で、一度ベランダへと出た。
外に出ると、朝が早いだけあり、風が涼しい。
そしてそこにはどうやら、先客が居た様だ。
奉太郎「……早起きだな」
える「折木さんこそ」
奉太郎「俺は昨日、昼間少し寝ていたしな」
える「そうだったんですか」
奉太郎「ああ」
そこで一度、会話が途切れる。
心なしか、千反田が何か聞きたそうにこちらを見ていた。
奉太郎「……気になる事でもあったか」
える「良く分かりましたね」
……いや、そこまでそわそわしていたら誰でも分かるだろうに。
これは……朝から、失言だったか。
それに答えるのは、面倒と言うよりは……言いたく無い。
奉太郎「……里志にでも、聞いておけ」
える「福部さんですか……今はまだ、寝ているので」
奉太郎「なら、伊原でもいい」
える「摩耶花さんは、一人の方が楽そうだったので」
奉太郎「じゃあ、入須でもいいだろ」
える「そうですね、そうします」
とりあえずこれで、今の所は回避出来た。
後は入須が俺の気持ちを考えてくれるかどうかだが、どうだろう。
今、入須に聞くと言ったばかりなのに、何を言っているんだこいつは。
俺が千反田のその質問に口を開こうとした時、後ろから声がした。
入須「うーん、言ってもいいか?」
いつから居たのか、入須の声が後ろからする。
奉太郎「……おはようございます」
入須「ああ、おはよう」
奉太郎「居るなら居ると、言ってくださいよ」
入須「すまんな、千反田は気づいていた様だったが」
える「ええ、すぐに気付きました」
える「入須さんの足音がしたので」
さいで。
える「入須さん、何故ですか?」
千反田がそう聞くと、入須は一度俺の方に視線を移す。
奉太郎「そこまで言ったなら、話してもいいんじゃないですか」
入須「君がそう言うなら、いいか」
奉太郎「俺は一足先に中に戻っています」
そう言い残し、俺は部屋の中へと戻る。
……今の最善手は、何だっただろうか。
むしろ、俺が昼間寝ていた原因を隠す必要が……無いな。
そうして俺は一度、自分の部屋へと戻る。
ベッドの上で一時間ほど本を読み、やがて入須に呼び出され、朝飯を食べる事となる。
俺と千反田と伊原と入須。
里志はまあ……まだ寝ているのだろう。
朝はどうやら、千反田達で飯を作った様で、かなり美味しかった。
唯一不満があるとすれば、俺が昼間寝ていた理由を聞いたであろう千反田が、にこにことしながら俺を見ている事だったが。
奉太郎「そう言えば、伊原は昨日どうだったんだ」
摩耶花「えっと、花火大会?」
奉太郎「それ以外に何かあったか」
摩耶花「一応の確認でしょ、別にいいじゃない」
奉太郎「大会は遅れただろ、花火は見れたか?」
摩耶花「まあ、うん」
摩耶花「見れたよ」
える「どうでした、花火は」
摩耶花「すごく、良かった」
そう言う事に大して感情を抱かない俺が、綺麗な花火だと思ったのだ。
伊原が感じた事は……とても俺には想像できないな。
入須はそう言いながら、人数分のコーヒーを持ってくる。
奉太郎「ありがとうございます」
俺はそれを受け取り、一口飲んだ。
……実に良い、甘すぎないし、丁度良い。
あれ、待てよ。
奉太郎「千反田、それコーヒーだぞ」
える「あ、そうですね」
入須「なんだ、嫌いだったか」
える「嫌い、と言う訳では無いのですが……」
奉太郎「飲ませない方が良いと、言っておきます」
える「あの、そのですね」
奉太郎「……性格が変わる」
摩耶花「ちーちゃんの?」
千反田がコーヒーを飲む、そして俺の性格が変わったらどうするんだ、こいつは。
奉太郎「ああ、そうだ」
摩耶花「それ……ちょっと気になるかも」
える「や、やめてください」
入須「ふふ、まあそうならやめておこう」
入須「お茶を淹れて来るよ」
える「すいません、ありがとうございます」
千反田が頭を下げると、入須は軽く手をあげ返事をし、台所へと戻って行った。
奉太郎「聞きたいか?」
摩耶花「……うん」
える「ふ、二人とも駄目ですよ!」
奉太郎「との事だが」
摩耶花「残念……気になるなぁ」
える「もうこの話は終わりです、違うお話をしましょう」
あからさまに慌てている千反田を眺めるのも、中々面白い物だ。
奉太郎「ま、いつか機会があったらと言う事で」
摩耶花「りょーかい、楽しみにしておくわね」
える「そんな機会、来ませんよ!」
奉太郎「聞きたいか?」
摩耶花「……うん」
える「ふ、二人とも駄目ですよ!」
奉太郎「との事だが」
摩耶花「残念……気になるなぁ」
える「もうこの話は終わりです、違うお話をしましょう」
あからさまに慌てている千反田を眺めるのも、中々面白い物だ。
奉太郎「ま、いつか機会があったらと言う事で」
摩耶花「りょーかい、楽しみにしておくわね」
える「そんな機会、来ませんよ!」
珍しく俺も、その輪の中に入れていた。
そして、里志も起きて来て何十分か過ごした後、俺がこの旅行でもっとも回避したかった出来事が訪れる。
里志「じゃあ、そろそろ海に行こうか」
入須「そうだな、今日は天気も良い」
える「楽しみです!」
摩耶花「折木も来るのよ? もう具合も良くなってるでしょ」
……来てしまった物は仕方ない。
潔く、諦めよう。
里志「うわ、すごく綺麗な所だね」
摩耶花「そうね……でも人が全然居ないのは何で?」
入須「ああ、プライベートビーチみたいな物だからな」
……何て人だ。
える「海は久しぶりですね、去年の夏は入れなかったので」
千反田はいつかのプールの時と同じ水着を着ていた。
やはり、目のやり場に困ってしまう。
里志「それじゃ、入ろうか」
里志の言葉を受け、俺と入須を除く三人は海へと入って行った。
俺は、まあ……海でわいわい遊ぶと言う性格でも無いので、砂浜に腰を掛ける。
そう言い、入須は俺の横へと腰を掛けた。
奉太郎「入須先輩こそ、入らないんですか」
入須「私は、まあ」
奉太郎「そうですか」
にしても、本当に綺麗な所だな。
空には雲一つ無く、日本の海とは思えない程に透き通った色をしている。
奉太郎「入須先輩は、昨日の事……最初から分かっていたんですか?」
入須「……さあ、どうだろうな」
奉太郎「ま、別にいいですけど」
そんな会話をしながら、海で遊ぶ里志達を眺めていた。
どこから持ってきたのか、ビーチボールで遊んでいる。
入須「大学か」
入須「楽しい所だよ」
入須「だがやはり、高校の方が楽しかったかもな」
奉太郎「これから、大学へ行くであろう本人に言う台詞がそれですか」
入須「なんだ、嘘でも高校より楽しいと言えばいいのか?」
奉太郎「……」
奉太郎「先輩は」
奉太郎「後悔していますか、去年の事」
俺が言っているのは、去年俺と入須が……千反田を、傷付けた事だ。
入須「そうだな……どうだろう」
入須「でも結局は、君と千反田の距離は縮まったのでは無いか」
入須「千反田を傷付けてしまった事は、後悔しているよ」
奉太郎「……でしょうね」
入須「ここだけの話だがな」
入須「先輩は、珍しく落ち込んでいたよ」
入須が指す人物とは、俺の姉貴の事だろう。
奉太郎「そうですか」
入須「君が言った通りだった……先輩も、後悔していたんだ」
奉太郎「なら結局、あの計画では……誰が、救われたんでしょうね」
入須「決まっている、誰も救われていない」
……だろうな。
奉太郎「当時の? どういう意味ですか」
入須「……もしかすると、次に繋がっていたのかもしれない」
奉太郎「すいません、少し意味が分かりかねます」
入須「……はっきり言うか」
そう言うと、入須は俺の方に顔を向ける。
入須「あそこで、君と千反田が近づいていなかったらどうなっていたと思う?」
入須「私が計画を拒否し、何も起こらなかったとしたら」
奉太郎「……それは」
恐らく、何も変わらない日々が過ぎていた。
あれだけの事が無ければ、俺から千反田に歩み寄る事も無かったし、千反田もそうだろう。
そして多分、千反田の父親の話を聞いた日。
俺が千反田の気持ちを理解しようとしなければ、あの日に公園に行くことも無かったのかもしれない。
それは本当に、何も無い、今まで通りの折木奉太郎だろう。
良く言えば、自分のモットーを貫き通していると言える。
しかし悪く言えば、変わろうとしていないと言う事か。
ああ、なるほど。
……やはり入須は、昨日の事は分かっていたのだ。
入須「君の言葉を借りると、本人の前で言う事では無い、と言った所だな」
奉太郎「それはすいませんでした、失言ですね」
入須「ふふ、そうだな」
まあ、苦手ではあるが……嫌いでは、無いか。
そんな事を考えながら、顔を再び里志達の方に向けた。
目の前に、誰かが居る。
入須と話し込んでいて全く気付かなかった。
空気で分かる、それは千反田だ。
俺はそいつに目を移す。
……手には、ビーチボール?
える「ご、ごめんなさい!」
そう言いながら、逃げていく千反田が見えた。
プールの時も確か、同じ様な事をされた気がする。
あの時は何も考えていなかったせいで受け流してしまったが……今は違う。
奉太郎「……千反田」
俺は逃げる千反田に向かって、聞こえるくらいの声を出した。
える「え、はい!」
千反田は振り返り、俺の話に耳を傾ける。
奉太郎「俺が今、やるべき事は何か分かるか」
える「えっと、それは……どういう事でしょうか」
奉太郎「手短に、終わらせよう」
見事に命中し、倒れる千反田。
摩耶花「うわ、折木ひどーい!」
伊原がそれを見て、声を荒げる。
奉太郎「やり返しただけだ、別に酷くもなんとも無い」
我ながら、その通りである。
里志「まあまあ、手をあげるのは良くないよ、ホータロー」
……そう言いつつも、何故俺を羽交い絞めにする?
摩耶花「ちーちゃん、チャンスチャンス!」
待て待て! 卑怯では無いだろうか。
そう言い、俺に向かってボールを投げてきた。
しかしそれは俺の顔の横を通り過ぎ、後ろに居た里志へと当たる。
奉太郎「どうやら良い腕をしている様だ、千反田は」
倒れた里志に向かって、俺はそう言った。
里志「千反田さん」
える「え、ええっと……」
里志「自分がした事は、自分の下へと帰ってくるんだよ」
矛先はどうやら、俺から千反田へと向かった様だ。
これでようやく、俺もゆっくりできると言う物である。
しかし、それを考えられたのも一瞬であった。
里志が投げたボールは、手から滑り、入須へと当たる。
入須「……自分が言った言葉は、忘れていないだろうな」
おお、入須の顔が恐ろしい。
もしかすると、伊原のそれよりも怖いかもしれない。
俺は無関係を装い、その場から少し距離を取った。
省エネ省エネ、眺めている方が安全だ。
そして何より、楽だ。
それからボールを投げ合う四人を眺めつつ、俺は夏の日差しを浴びていた。
実に……俺らしい選択である。
第16話
おわり
俺は溜息を吐きながら、未だに元気良く遊びまわる奴等に声を掛ける。
と言うか、だ。
……入須までもが一緒にはしゃぐとは、思いも寄らなかった。
える「あ、本当ですね」
そんな俺の声に最初に気付いたのは、やはり千反田であった。
そして千反田の発言を聞き、残った者達も駆け寄ってくる。
里志「ごめんごめん、ついつい」
摩耶花「久しぶりに思いっきり遊べたかも」
里志と伊原はそんな事を呟いていた。
はて、良い時間とはどういう意味だろうか。
奉太郎「良い時間ですか?」
入須「ああ、一つ計画してある事があるんだよ」
計画していたにしては、随分と夢中で遊んでいた様だが……別にいいか。
える「なんでしょう……私、気になります」
入須「夏と言えば、だ」
里志「最初に思い浮かぶのは、やっぱり海ですね」
里志の言葉に、入須は頷く。
入須「次に何を想像する?」
摩耶花「えっと、花火かな?」
入須「そうだ」
俺の言葉を聞き、入須はまたしても頷く。
入須「他にもあるだろう?」
他に……?
里志「ああ、そうか!」
里志は気付いたのか、一人満足そうな顔をした。
入須「勿体振る必要も無いな」
入須「バーベキューだ」
確かに、夏と言えばそうか。
奉太郎「でも、材料とかは?」
入須「最初に計画していたと言っただろう、用意してあるよ」
える「さすがです、入須さん」
顔を思いっきり寄せる千反田に、入須は若干身じろぎしていた。
そんな入須の反応が新鮮で、俺はついつい口を開く。
先ほど遊んでいた場所から少し離れた所で、バーベキューはする事となった。
今はようやく準備が終わり、休憩している所だ。
入須「すまんな、全部任せるつもりでは無かったのだが」
奉太郎「別に良いですよ、自分で言った事ですし」
入須「そうか」
入須はそれだけ言うと、設置されたグリルの方へと歩いて行った。
その姿を見送ると、俺は空を見上げる。
日は既に大分傾いており、かすかに星が光っているのが見えていた。
そんな空に気を取られて居た所で、ふいに俺に声が掛かった。
奉太郎「里志か」
里志「なんだい、僕じゃ不満かい?」
奉太郎「いいや、そういう訳じゃない」
この時……俺には少しだけ、気になる事があった。
それを里志にぶつける。
奉太郎「昨日は、どうだった?」
里志「昨日と言うと……花火大会かな?」
奉太郎「ああ、伊原と二人で見たんだろう?」
幸い、砂浜から少し離れた場所で話している俺と里志の声は、料理を作っている千反田、伊原、入須には聞こえないだろう。
里志はそう前置きをすると、話し始める。
里志「摩耶花がどうしても二人で見たいって言うからさ」
里志「ホータローには悪いと思っているよ、入須先輩の事は苦手だろう?」
気付いていたのか、まあそれもそうか。
奉太郎「確かに苦手ではあるが……」
奉太郎「それは嫌いという事に繋がる物でもないさ」
里志「それならいいんだけど」
里志「僕は、花火が遅れた事に少しだけ感謝しているんだよ」
里志「色々、摩耶花と話せたからね」
里志「花火が始まってたら、そっちに気を取られてそれ所じゃないよ」
奉太郎「なるほど……そうか」
里志と伊原にも、色々とあるのだろう。
その話の内容まで聞くのは、俺の趣味では無い。
里志「それより、驚いたよ」
奉太郎「驚いた?」
何か驚く様な事でもあっただろうか……?
大会が遅れた理由をしれば、恐らく……驚いた、と言うだろうが。
生憎、里志はその理由を知らない。
そんな俺の考えに答えを出すより、先に里志が口を開く。
……何か、おかしな事でも聞いたのか。
奉太郎「別に、変な事は聞いていないと思うんだが」
里志「うん、その通りだよ」
何だ、からかっているのか。
奉太郎「からかうのはやめてくれ、疲れているんだ」
里志「そういうつもりでは、無いよ」
奉太郎「……なら、どういうつもりで?」
里志「それを聞いてきたのが、ホータローだったからだよ」
里志「普通の、例えば千反田さんとかが聞いてくるのなら、分かるよ」
里志「でも、それを聞いてきたのがホータローだったってのが、僕にとって意外だったのさ」
奉太郎「少し、気になっただけだ」
奉太郎「深い意味なんて無い」
里志「それだよ、何で深い意味は無いのに聞いたんだい?」
何だ、そんなおかしな事だろうか?
奉太郎「お前は意味の無い質問に、そこまで言うのか」
俺がそう言うと、里志は首を横に振る。
里志「ごめん、言い方が悪かったかもしれない」
里志「手短に言うよ、その方が好みだろう?」
里志「何で君は、しなくてもいい質問をしたんだい?」
確かにそうだ、俺がした質問は、完全に意味の無い質問である。
昨日、里志と伊原がどうして居ただなんて、知っても何も起きないじゃないか。
なら、どうして俺はそんな質問を?
奉太郎「……そういう事か」
里志の言っている意味が分かり、口からそう漏れた。
豆鉄砲でも食らったかの様に目を開いている俺に向かって、里志は言う。
里志「ま、ホータローも随分と変わったよ」
里志「それじゃあそろそろ、焼けてきたみたいだし、行くね」
最後にそう言うと、里志は入須達の下へと小走りで向かって行った。
奉太郎「変わったのか、俺が」
今改めて聞いて、俺は思った。
変わった、と。
……元を辿れば、最初からだ。
入須の誘いを断固拒否する事だって出来た。
俺は最初、千反田が絡んでくると省エネが出来ないと思っていた。
しかしそれは、多分違う。
別荘に行こうと入須が言った時、あの時は千反田が居た。
だが、花火大会へ行こうと、入須が別荘で寝る俺に言った時、断る事は出来た筈だ。
何故、断らなかったのだろうか。
それがもしかすると、俺が変わったと言う事なのかもしれない。
……なら、そのきっかけは?
あいつに振り回され、俺は変わったのか。
だがそれでも、そこまで急激な変化がある物だろうか?
……ああ、あれか。
俺の頭に思い出されたのは、去年の暮れの事である。
……あの時程、自分のモットーを呪った事等無かった。
そんな体験が恐らく、俺の中の省エネと言う物を、消そうとしているのかもしれない。
しかしまだ、それに答えは出せそうに無かった。
える「折木さん、食べないんですか?」
急に声が聞こえ、我に帰る。
える「横、座ってもいいですか?」
奉太郎「ああ」
そう俺が答えると、千反田は嬉しそうに笑い、俺の横に腰を掛けた。
える「はい、どうぞ」
そう言いながら千反田が差し出したのは、肉や野菜が乗っている皿だった。
奉太郎「……ありがとう」
俺はそう言い、その皿を受け取る。
える「どうでした、今回の旅行は」
奉太郎「……」
奉太郎「まあ、楽しかった」
える「私も楽しかったです」
える「花火を最初から見れなかったのは、残念ですが……」
奉太郎「別に、また違う場所で花火はあるだろ」
える「そうですよね、今度もし見る時は、最初から見たいです」
奉太郎「ああ」
える「それで、ですね」
千反田は少し恥ずかしそうに、口を開く。
える「あの、今度見る時は、一緒に見てくれませんか?」
奉太郎「……驚いた」
える「え、驚いたとは?」
える「そ、そうでしたか! それなら今度、見ましょうね」
奉太郎「……二人でか?」
える「え、ええ。 そのつもり……ですが」
奉太郎「なら、それも俺と同じ考えだ」
える「ふふ、今日の折木さんは、何だか素直ですね」
それではまるで、いつもの俺が素直では無いみたいじゃないか。
奉太郎「冗談だと、言ったらどうする」
える「え、そうだったんですか……?」
本当に心配そうな顔をする千反田を見ていると、これは悪い事をしてしまったと思う。
露ほどにも、冗談だとか等、思っていないのだ。
俺はそんな千反田の視線を避ける為、顔を前に向け、口を開く。
奉太郎「今度、見に行こう」
える「……ふふ、喜んで」
横にちらりと視線を移すと、千反田の笑顔があった。
俺はこの瞬間……千反田の顔を見た瞬間、はっとなる。
気付いたのだ、何故さっき、俺の省エネ主義に答えを出せなかったのかを。
もっと早く、そんな事より優先的に答えを出さなければいけない問題があるからだ。
それはつまり……
える「どこかいい場所とか、ありますか?」
こいつとの、関係である。
はっきりさせなければ、駄目だろう。
俺は呑気に、今年中にと考えていたが……これは俺だけの問題では無いのだ。
千反田も多分、考えている問題だろう。
ならばそんなゆっくりと、考えている暇は無さそうだ。
俺はもしかすると、気付かなければ駄目な……一番気付かなければ駄目な事に、気付けたのかもしれない。
それはこの旅行で、一番大きな収穫だった。
奉太郎「……夏か」
える「今日の折木さんは、なんだかおかしいですね」
える「今は夏ですよ」
夏が終わる前に、答えを出そう。
それが今考えられる、最短の時間であった。
える「あ、入須さん達が呼んでいますよ」
える「行きましょう、折木さん」
そう言いながら、千反田は立ち上がり、俺に手を差し出す。
奉太郎「……いや、俺は」
もう少し物思いに耽りたかったが、それを許してくれる千反田ではなかった。
える「行きますよ! 折木さん!」
奉太郎「……ああ」
俺はそう言い、差し出される千反田の手を掴んだ。
第17話
おわり
理由はそう、まだ分からない。
分からないと言うのも変な話だが、千反田から家に来て欲しいと言われ、特にする事も無かったので来ただけの俺に分かる訳も無い。
奉太郎「それで、この暑い中わざわざ来たんだが」
奉太郎「何の用事だったんだ」
える「……ええっと、何でしたっけ」
おいおい、まさか忘れたとでも言うのか。
奉太郎「来て早速だが、帰っていいか」
える「だ、だめです!」
える「あの、ちょっと待っていてください」
そう言うと、千反田はどこかへと小走りで行ってしまった。
……何だ、しっかりと覚えているじゃないか。
両手には何やら大きなケースの様な物を抱えていた。
える「お待たせしました!」
奉太郎「随分大きな物だな」
える「ええ、中身が気になりますか?」
奉太郎「……いや、別に」
える「気になりますか?」
奉太郎「いや、だから」
そこまで言うと、千反田は俺の肩を掴み、顔をぐいっと近づける。
える「気になりますよね!」
奉太郎「……そ、そうだな」
ほぼ強制的に気になる事にされ、千反田はとても満足そうだった。
そしてそんな顔をしたまま、ケースを開く。
える「これです!」
そう言い、千反田が取り出したのは……浴衣?
奉太郎「それは、浴衣か?」
える「はい、そうです」
奉太郎「……えーっと」
俺が呼び出された理由と、今千反田が持っている浴衣、何か繋がりがあるのだろうか?
もしかしたら、突然呼ばれ、浴衣を出されると言う事に、俺が知らない理由があるのかもしれない。
とりあえず、良く分からないが頭を下げてみた。
える「あの、どうしたんですか?」
あれ、違うか。
奉太郎「……俺が馬鹿なのか分からないが、それと俺が呼び出された理由、どういう意味があるんだ」
える「お祭りに行きましょう!」
……つまりは、この浴衣は特に出した目的は無かったと言う事だろうか。
奉太郎「電話で言えば良かったんじゃないか」
える「まあ、そうなんですが……」
える「……折木さんに、浴衣を見て欲しかったんです」
奉太郎「その……それは祭りの時に見るんだから、今見せる物でも無いだろ」
俺は千反田の事をまともに見る事が出来ず、視線を逸らしながら答えた。
奉太郎「え、何が」
える「お祭りに行くと言う事がです」
あれ、俺は祭りに行くなんて言ったっけ。
……ああ、祭りの時に見ると言ったのが、そう解釈されたか。
奉太郎「まあ……構わんが」
しかし、俺には特に断る理由は思い当たらなかった。
える「ふふ、良かったです」
里志や伊原、千反田に何か言われなければ、特にやる事の無い夏休みだ。
別に祭りくらい、行っても大して変わらないだろう。
える「明日です」
奉太郎「急だな」
える「私も、知ったのが今日だったので」
奉太郎「千反田が? 珍しいな」
奉太郎「てっきり神山市の行事は、全部知っている物だと思っていた」
える「ええ、知っていますよ」
奉太郎「……えっと」
前にも確か、こんな感じの事があったな。
話が噛み合っていない……俺の言葉から、何か分かる筈だ。
奉太郎「ああ、そうか」
奉太郎「神山市の祭りでは、無いのか」
つまりはまた、ここから離れて遠出すると言う事になる。
ま、別にいいか。
奉太郎「遠いのか?」
える「歩いて行ける距離ですよ、安心してください」
……千反田の歩いて行ける距離と言うのが、少し怖いが……いいだろう。
奉太郎「じゃあ、明日は夕方くらいに来ればいいか?」
える「ええ、案内しますので、私の家に一度来てください」
奉太郎「了解、それじゃ今日はこれで」
そう言い、立ち上がる俺の腕を千反田が掴む。
える「折角来たんです、お話でもしましょう」
奉太郎「いや、今日は用事がだな……」
える「あるんですか?」
奉太郎「……無い」
える「なら、大丈夫ですね」
やはり無理矢理にでも電話で済ませるべきだっただろうか。
える「お昼は私が作るので、心配しなくても良いですよ」
……そうでも無いか。
奉太郎「ああ、分かったよ……」
俺はそう言いながら、再び座る。
える「ええ、少し」
何だろうか、千反田としなければいけない話は……
あるにはある、だが多分、その話では無いか。
える「私が、家の仕事を後回しにした理由です」
奉太郎「……そうか」
なるほど……それは俺も気になっており、何度も聞こうとした。
聞こうとしただけで、実際には一度も聞いていなかったのだ。
える「私は、大学に進む事を選びました」
える「何故か、分かりますか?」
奉太郎「……すまんな、分からん」
える「私がその道を選んだのは……停滞したかったからです」
停滞……?
える「停滞と言うよりは、回り道と言った方が正しいかもしれません」
える「すぐにでも、家の仕事に就くことは出来ました」
える「父の事も考えると、それが一般的には良い選択なのかもしれません」
える「ですがそれでも、もう少しだけ……外を見たいと思ったんです」
奉太郎「外……か」
える「ええ」
える「今は一度、足を止めたかったんです」
える「そして、思ったんです」
奉太郎「……」
俺は静かに、千反田の話に耳を傾けていた。
奉太郎「……俺から学ぶ物なんて、無いだろうに」
える「そんな事ありませんよ」
える「折木さんは、私に無い物を……沢山持っていますから」
そんなのは、俺にとっても同じだ。
千反田は……俺に無い物を、沢山持っている。
奉太郎「それで選んだのが、停滞か」
える「はい、そうです」
える「足を止めたら、折木さんとは少し……距離が開いてしまうかもしれません」
える「ですがそれでも、一度見直したかったんです」
……そう言う事だったか。
だがそれを考えるのはあれだ、今じゃない。
今するべき事は、千反田の話に耳を傾ける事だろう。
える「間違いだと、思いますか」
奉太郎「……俺からは、何とも言えないって言うのが正直な感想だ」
奉太郎「それが正解だったか、間違いだったか、なんて物は後にならなきゃ分からないからな」
える「……そうですよね」
奉太郎「だがな」
奉太郎「俺は、お前の選択を信じたい」
奉太郎「正解であると、信じたいんだ」
奉太郎「そのくらいなら、別に良いとは思わないか」
える「やはり、折木さんには何でも話してみるべきですね」
そこまで過大評価されてしまっては、困る。
える「それで、折木さんはどの様な選択をするんですか?」
える「あ、答えたく無ければ、大丈夫です」
奉太郎「……俺か」
俺は、どうしたいのだろうか。
千反田はやはり、俺とは住む世界が全然違う。
まずそもそも、俺にそんな選択をする機会などあるのだろうか。
奉太郎「まだちょっと、分からないな」
奉太郎「……自分の事は難しい」
千反田はそう言いながら笑っていたが、ならばお前はどうなんだ。
自分の事を理解して、自分の信じる選択をしたお前は。
……こいつは、凄い奴だな。
それが、俺の感じた正直な感想であった。
奉太郎「……そろそろ昼だな」
える「お腹が減りましたね」
える「ご飯、作ってきますね」
千反田は笑顔で俺にそう言うと、台所へと向かって行った。
さっきの言葉……勿論、千反田の。
奉太郎「俺がどんな選択をするか、か」
俺には別に、先ほども考えた様に、千反田の様な選択が訪れる事は無いだろう。
なら、さっきの言葉は恐らく……
俺と千反田の、関係の事だろうか。
……それしか、思い付かない。
奉太郎「……悪いな」
聞こえている筈も無く、一人俺は呟いた。
奉太郎「もう少しなんだ」
奉太郎「……待たせてばかりだな、俺は」
気分が暗くなってきてしまっている。
……家に帰ったら、もう一度ゆっくり考えよう。
千反田の前で、あまり暗い顔はしていたくない。
あいつは多分、それに気付くだろうからな。
里志風に言うと、今を楽しむべき。
……よし、もう大丈夫だ。
俺はそう思い、立ち上がる。
そして、そのまま台所へと向かった。
奉太郎「悪いな、飯まで作ってもらって」
俺は料理を作る千反田の背中に声を掛けた。
える「いえ、いいんですよ」
える「私が最初にお呼びしたので、このくらいやらなければ罰が当たってしまいます」
千反田は俺の方には顔を向けず、料理を作りながら話していた。
奉太郎「……何か手伝う事はあるか」
える「お料理に興味があるんですか?」
奉太郎「……そういう訳では無いが」
える「そうですか、折木さんが作るご飯に、私は少し興味があります」
奉太郎「……機会があればだな」
ま、そんな機会は来ないだろう。
える「ええ、楽しみにしておきます」
俺は千反田の言葉に軽く返事を返すと、適当な席に着いた。
……明日は祭りか。
俺は別に……適当な服でも着ていけばいいか。
あれ、そういえば。
奉太郎「なあ」
える「はい、なんでしょう?」
奉太郎「明日、祭りが終わった後に用事とかあるか?」
奉太郎「それなら、公園に行かないか」
俺がそう言うと、今までずっと俺に背中を向けたままだった千反田が振り返った。
急に千反田の顔が見えた事で、俺はつい視線を外す。
える「折木さんからお誘いがあるのは、随分久しぶりな気がします」
奉太郎「……そうだったかな」
える「いいですよ、行きましょう」
える「ですが、何故急に?」
奉太郎「ああ……」
奉太郎「明日、あそこから花火が見れるのを思い出したんだ」
奉太郎「行きたいと言ってただろ、二人で」
俺は結局、千反田に顔を向けられないまま、そう言う。
しかし千反田から返事が無かったので、数秒の後そちらに視線を移した。
える「……そ、そうでしたか」
俺の視線を受けた千反田は、再び俺に背を向けると、料理を始めた様だ。
いくらか恥ずかしそうにしている千反田を見て、俺もなんだか恥ずかしくなる。
……調子が狂うな、全く。
それよりも、明日。
俺も少し、頑張らないとな。
……果てして、少しで済むかどうかは分からないが。
第18話
おわり
今日は夕方の6時に千反田の家に行かなければならない。
それもそう、千反田と祭りに行く予定となっているからだ。
先ほど見た時計によると、今は5時。
約束の時間までは、もう少しありそうだ。
昨日、寝る前にこれまでの事を振り返り、俺の中で結論は出ていた。
後はそれを千反田に言うだけなのだが……それが随分と、難しそうである。
まあ、なるようになるか。
時間まではまだ少しあるが、行くか。
早く着いて困る事等……無いだろう。
インターホンを鳴らすと、応答する前に玄関から千反田が出てきた。
える「お早いですね」
千反田は俺に昨日見せた浴衣を、しっかりと着こなしている。
前にも何回か、この様な装いは見ているが……
それらよりも幾分か軽い感じの印象を受けた。
そんな姿に、俺は少し見惚れてしまう。
える「あの、折木さん?」
奉太郎「あ、ああ」
奉太郎「……似合ってるな、浴衣」
恐らく……相当、無愛想な感じになってしまっただろう。
しかし当の本人はそんな事、全く気にしていない様子だった。
える「では、行きましょうか」
奉太郎「そうだな」
そう言い、千反田の少し後ろを歩く。
後ろと言っても、ほとんど横に並んでいる様な感じではあるが。
奉太郎「そこは遠いのか?」
える「いいえ、そうでも無いですよ」
える「ええっと、確か歩いて20分程です」
20分か、確かにそうでも無いかも知れない。
今日、俺が危惧していた事の一つ……
歩いて1時間だとか、2時間だとか、そんな距離では無い様だ。
まあこれで、一つ心配事が消えた訳か。
奉太郎「その祭りは人とか結構来るのか?」
える「……どうでしょう、私も始めて行く場所ですので」
そうだったのか。
つまり千反田は、そこまでの道のりを調べていると言う事か。
なんだか悪い事をしてしまった気分になる。
言ってくれれば、少しは手伝えただろうに……多分。
える「神社で開かれているお祭りらしいので、人はそこそこには居ると思います」
奉太郎「なるほど」
まあそうだろう。
神社で折角開かれて閑古鳥が鳴いている様だったら、悲しい物である。
ふいに、千反田が前を向きながら呟いた。
える「折木さんと二人でお出かけするのも、随分久しぶりですね」
……そうだな、確かに言われてみればそうだ。
奉太郎「今年は、始めてかもしれないな」
える「ええ、確かその筈です」
奉太郎「最後に二人で遊んだのはいつだっけか」
える「ええっと……」
千反田は少しの間、考える素振りをすると、口を開いた。
える「映画を見た時では無いでしょうか?」
そうだっただろうか……?
二人で遊んだ、と言える事は他にもあったと思うが……
奉太郎「ほら、お前が学校ズル休みした時の」
える「……あの時は、具合が悪かったと言う事にしておいてくださいよ」
奉太郎「そんな奴が、水族館に行きたいとか言うのか」
える「……折木さんは意地悪です」
奉太郎「すまんすまん、まあ……今となれば良い思い出かもな」
える「あそこの水族館も、また行きたいですね」
奉太郎「そうだな……皆で行った動物園でも、俺はいいがな」
える「あ、それもいいですね」
なんだか、話が脱線しているが……今思い出した。
最後に千反田と二人で遊んだのは、映画を見に行った時だ。
そんな事を考え歩いていると、前に沢山の提灯が見えて来る。
奉太郎「あそこか?」
える「ええ、ここですね」
ほお、意外とでかい祭りなのか。
人も結構な量だ。
える「わ、わ、すごいですね!」
千反田もそれに驚いたのか、はしゃいでいる。
正直な所、人混みはあまり好きでは無いのだが……
しかし、そんな事を言っていては祭りなんて楽しめないだろう。
俺がそう言うと、千反田は頬を膨らませながら答える。
える「折木さんの方こそ、迷子にならないでくださいね」
奉太郎「……へいへい」
える「納得出来ない返事ですが、行きましょうか」
奉太郎「ん、そうだな」
何か言い返そうかと思ったが、いつまでもここで漫才をしている訳にもいかないだろう。
千反田もそれが分かったのか、二人で一緒に神社の中へと入って行った。
える「色々な出店がある様ですね」
奉太郎「みたいだな」
奉太郎「あれか、例の気になりますか?」
える「そうなんですが……色々とありすぎて、どこから気になればいいのか……」
大丈夫か、目が泳いでいるぞ。
奉太郎「時間が無いって訳でも無いだろ、ゆっくり回ればいいさ」
える「は、はい。 そうですね」
える「あ、でも花火は見ますよね?」
奉太郎「ああ、今はまだ18時30分くらいだろう」
奉太郎「21時からの筈だから、時間はあるさ」
える「分かりました、今回は花火が遅れる事も無さそうですしね」
奉太郎「そうだな」
そう話し終わると、早速千反田は出店を回り始める。
俺は特に千反田みたいに気になる物等は無かったので、それに黙って付いて行った。
ええっと、何々。
奉太郎「射的か」
える「ええ、どうですか?」
奉太郎「お先にどうぞ」
える「私ですか、分かりました」
そう言い、千反田は店の人に金を渡すと、銃を構えた。
える「……」
狙いはなんだろうか?
奉太郎「何を狙っているんだ?」
える「あのぬいぐるみです……折木さん、お静かに」
……うるさいと言われてしまう、すんません。
となんとも頼り無い掛け声と共に、パコンと言う音がした。
弾はぬいぐるみには当たった物の、落ちはしない。
奉太郎「惜しかったな」
える「残念です……次は折木さん、どうぞ」
ううむ、なら俺もあのぬいぐるみでも狙うか。
そう思い、店の人に俺も金を渡す。
銃を構え、狙いを定める。
奉太郎「……」
える「折木さんはどれを狙うんですか?」
える「あ、ほんとですか」
える「頑張ってくださいね」
奉太郎「……ああ」
俺に静かにしろと言った割には、随分と話し掛けてくる奴だな……
奉太郎「……よっ」
結局、俺も随分と頼り無い掛け声であったのだが。
える「あ」
千反田が思わず声を出したのも無理は無い。
弾は的外れの所へと飛んで行ってしまったのだから。
える「そうかもしれません」
何かフォローして欲しかったが、仕方ないか。
奉太郎「……次、行くか」
える「は、はい」
千反田はとても名残惜しそうに、ぬいぐるみを見つめていた。
そんな千反田の視線に気付いたのか、店の人が声を掛けてくる。
「なんだ、お嬢ちゃんこのぬいぐるみが欲しいのか?」
「いいよ、二人してやってくれたから」
そう言うと、店の人は俺にぬいぐるみを手渡す。
千反田と俺は最初の方こそ断った物の、結局はそれを受け取った。
なんともいい人である……最後の言葉。
と言う言葉は蛇足だったが。
奉太郎「……それで、次は何か見たい物あるか?」
える「ええっと、そうですね」
える「……お腹が、減りました」
何もそんな恥ずかしそうに言わなくてもいいのに。
俺だって、腹は減っている。
奉太郎「そうか、じゃあ何か食べるか」
える「はい、そうしましょう!」
える「お祭りで食べる物って、普段買う物よりおいしく感じませんか?」
奉太郎「あ、それはあるな」
える「何故でしょうね」
奉太郎「……さあ」
える「難しい問題です、これは」
える「でも今はそれより、食べましょうか」
助かった。
流石に、俺とて人間がその時々で違う感じ方をする理由など、分かる訳も無い。
気になりますが出たら、どうしようかと思っていた所だった。
える「ええ、いくつか」
奉太郎「楽しそうで何よりだ」
える「折木さんは、楽しくないんですか?」
奉太郎「いや、楽しんでいると思うが……何で?」
える「いえ、前の折木さんなら楽しいと思わなかったかもしれないので」
奉太郎「……そうか」
奉太郎「なあ、千反田」
える「はい、何でしょうか」
える「私の中では、折木さんは折木さんですが……」
突然そんな質問をされ、きょとんとした顔をしながら千反田は答えた。
える「前よりも行動的になったと言うか、活発になったと言うか、それを変わったと言うならば、変わったと思います」
奉太郎「だろうな」
える「折木さん自身も、気付いているんですか?」
奉太郎「里志に良く言われるからな、嫌でも気付くさ」
える「ふふ、そうですか」
奉太郎「……それで」
奉太郎「それは、悪い事なのだろうか」
える「何故、そう思うんです?」
奉太郎「……なんとなく」
える「私は……良い事だと思います」
奉太郎「何故? 千反田の気になる事を解決できるからか?」
俺がそう言うと、千反田はまたしても頬を膨らませながら答えた。
える「そうではありませんよ、今日の折木さんはやはり、意地悪です」
奉太郎「……さいで」
える「私が良い事だと思うのはですね」
える「それは、折木さん自身だからです」
……どういう事だろうか。
そんな考えが顔に出ていたのか、千反田は補足を始める。
える「折木さんが、急に非行の道に走ったとしても、それは折木さん自身が選んだ事ですよね」
また随分と、飛んだな。
える「その行為自体は、良い事とは言えないですが」
える「でも、自分で決めた事ならば、それは良い事だと思うんです」
奉太郎「ふむ……つまり」
奉太郎「俺が今から酒や煙草をやっても、良い事なんだな」
える「……止めますよ?」
奉太郎「止めるのか」
える「ええ、止めます」
奉太郎「良い事なのに?」
える「……もしかして、ふざけていますか?」
える「もう、やはり意地悪です」
奉太郎「すまんすまん」
奉太郎「まあ、でも言いたい事は分かったよ」
える「……そうですか、それならば良かったです」
奉太郎「ああ、なんだ……その」
奉太郎「ありがとうな、千反田」
える「ふふ、どういたしまして」
金魚すくい、輪投げ等々。
食べ物をやっている店もいくつか回り、時を過ごした。
そして。
奉太郎「そろそろ、時間だな」
える「あ、もうそんな時間ですか」
奉太郎「ああ、行くか?」
える「ええ、そうですね」
える「少し、食べ過ぎてしまった気がします……」
そうは言っていた物の、千反田の様な、生活が真面目な奴ならば大して気にする事でも無いだろうに。
える「この格好では、無理ですよ」
える「それに折木さんは、絶対に走らないじゃないですか」
奉太郎「……良く分かったな」
える「誰にでも分かる事ですよ、折木さん」
そう言い、笑顔で千反田は俺の顔を覗き込んできた。
なんだ、俺の事を散々意地悪と言っておきながら、こいつも随分意地悪だな。
える「では、行きましょうか」
奉太郎「ああ、そうしよう」
俺はこの時、強く確信する。
……決着を付けるべきは、今日。
俺から何も話さなければ、千反田から何か言ってくる事も無いだろう。
それこそが省エネか。
なんて事を考え、一人苦笑いをする。
それだけは絶対にあり得ない。
俺は学んだのだ、あの日、あの公園で。
それならば同じ過ちを踏む必要なんて、無いだろう。
去年出来なかった事をする為に。
千反田との距離は既に正確に測れている筈だ。
なら……後は、俺の口から話すだけ。
なんだ、難しい難しいと思っていたが、簡単な事では無いか。
しかし何故か、俺は今日一番緊張しており、鼓動が早くなっているのを感じていた。
第19話
おわり
公園に着くとすぐ、千反田はいつもの様にベンチに腰を掛けた。
える「そろそろですかね?」
奉太郎「ああ、もうすぐ始まる筈だ」
俺はそう言い、千反田の横に腰を掛ける。
える「それにしても、ここから花火が見えるなんて」
える「随分といい場所を知っているんですね。 折木さんは」
奉太郎「教えてもらったからな」
える「……あ、福部さんですか」
奉太郎「そうだ」
それもその筈。
里志に教えて貰わなければ、俺がここから花火を見れる事等……知っている訳が無い。
える「勿論です、楽しくない訳がありませんよ」
奉太郎「なら良かったが」
える「折木さんも楽しめたんですよね」
える「お誘いして、良かったと思っていますよ」
そう言い、千反田は俺の方に笑顔を向けてきた。
いつもなら、多分俺は視線を逸らしていたかもしれない。
だが、今日は……そんな千反田の顔を、正面から見た。
顔をずっと見ている俺が不思議だったのか、千反田の顔には困惑の色が浮かんでいる。
奉太郎「……なあ、千反田」
そう声を出した時だった。
空が、光る。
える「あ、始まりましたよ!」
奉太郎「……らしいな」
まあ……いいか。
今は花火を見る事にしよう。
それから何度か上がる花火を、俺は千反田と共にしばらく見ていた。
奉太郎「ん、どうした」
える「……綺麗ですね」
……何だか、聞き覚えがある台詞だな。
奉太郎「……そうだな」
これはそうか、何回か見た夢……あれと、一緒だ。
だとすると、これもまた夢なのだろうか?
奉太郎「……」
俺は千反田に気付かれない様に、腕を抓って見た。
……痛い。
つまり、夢ではない。
奉太郎「……この公園での事か」
える「ええ、そうです」
奉太郎「色々あったな……本当に色々」
える「ふふ、私もそう思っていました」
える「……ここで、大泣きしたのも覚えていますよ」
奉太郎「伊原の事を、言った時か」
える「はい、そうです」
あれは、俺が心の底から怒った事でもあった。
……懐かしい。
奉太郎「お前は随分と泣いていたな」
える「ふふ、迷惑でしたよね」
迷惑、か。
奉太郎「……俺は、お前の事を本当に迷惑だと思った事なんて」
奉太郎「一度も無い」
える「そう言って頂けると、嬉しいです」
千反田は花火を見ながら、そう言った。
える「後は、そうですね」
える「……最初にプレゼントを貰ったのも、あそこでしたね」
える「今でも大事にしていますよ、あのぬいぐるみは」
奉太郎「知っているさ」
奉太郎「……里志や伊原の前では、絶対に出して欲しくないがな」
える「す、すいません。 よく覚えておきます」
奉太郎「……ああ、そう言えば」
える「はい?」
奉太郎「お前、俺がぬいぐるみを貸して欲しいと言ったとかなんとか、言っていたっけか」
える「あ、あの……それは、あれです」
える「そう言うしか、無かったというか……」
える「す、すいません。 今度はぬいぐるみを欲しいと言っていた、と言う事にしておきます」
奉太郎「……本気か?」
える「ふふ、冗談ですよ」
奉太郎「……千反田も、変わったな」
える「私がですか?」
奉太郎「前はそこまで、冗談を言う奴では無かった気がする」
える「……そうでしょうか、私は昔からこの様な感じですが」
奉太郎「そうなのか」
える「ええ、恐らくですが……」
える「仲良くなったのも、あるでしょうね」
える「最初の時より、今は仲が良いと思っていますので」
奉太郎「……そうか」
える「あれ、もしかしてそう思っていたのは、私だけですか?」
奉太郎「……いや」
奉太郎「俺も、そう思っている」
える「その言葉を聞けて、良かったです」
俺と千反田は一度も視線を交えないまま、会話を続けた。
奉太郎「後、そうだな」
奉太郎「やはり……去年の暮れか」
える「……そうですね、あの時が一番、心に残っています」
奉太郎「全く同意見だな」
える「……」
える「私、初めてでした」
奉太郎「……何が」
そこまで言って気付く、これもまた、夢と一緒だ。
次に千反田が言う言葉……恐らく。
える「それを聞くのは、少し意地悪ですよ」
える「何がおかしいんですか、もう」
千反田はそう言うと、俺の方に顔を向けた。
奉太郎「すまんすまん」
俺もまた、千反田に顔を向け、答える。
える「初めての、キスでした」
奉太郎「ああ、俺もだな」
える「……そうでしたか」
奉太郎「嬉しい事が聞けた」
える「え? は、はい……」
千反田が言おうとした事を、俺が先に言ったのだろう。
少しだけ、驚いた顔をしている千反田が面白い。
奉太郎「なあ」
える「はい、なんでしょうか」
奉太郎「このままで、いいと思うか」
える「……」
千反田は押し黙る。
奉太郎「俺は」
次に、一際大きな花火があがる。
しかしそれもまた、学んでいた事であった。
俺はいつもより声を大きく、言う。
その言葉はしっかりと、千反田の耳に届いた様だ。
える「……ふふ、私も一緒ですよ」
える「折木さんと、同じ考えです」
奉太郎「そうか」
奉太郎「……ある意味では、そうだろうな」
える「ある意味、ですか?」
奉太郎「……ああ、そうだ」
奉太郎「俺の話を、聞いてくれるか」
える「はい、勿論です」
える「折木さんの言葉の意味、気になります」
千反田はそう言うと、静かに笑いながら、俺の顔を覗き込む。
える「え、そ、それは……」
奉太郎「ああ、いや。 すまん」
奉太郎「言い方が悪かったな」
奉太郎「俺と言う人間を、どう思う?」
える「……それはまた、難しい質問ですね」
奉太郎「分からないなら、分からないでもいいさ」
える「……いえ、答えます」
える「私は、折木さんと言う人を」
える「とても身近な存在ですが、同時にとても遠い存在でもあると思っています」
える「私では思い付かない色々な事を、解決してくれたのも」
える「そして、何度も何度も私の事を助けてくれたのも」
える「それらが全部、私では出来ない事なんですよ」
……やはり、俺が思っていた通りだった。
奉太郎「詰まる所、自分で言うのもあれだが」
奉太郎「追いかけていたんだな、千反田は……俺の事を」
える「ええ、その通りです」
奉太郎「だから昨日、立ち止まれば俺の生き方を学べると言ったのか」
える「よく、覚えていますね」
奉太郎「……それだけじゃない」
える「と、言いますと?」
奉太郎「いや、それは後で話そう」
奉太郎「とにかく、千反田は俺の事を追いかけていたって事だ」
える「ふふ、さっきもそう言いましたよ」
奉太郎「俺も、思っていた事なんだよ」
える「折木さんも、ですか?」
える「つまり、折木さんは後ろに私が居るのを、分かっていたんですか?」
奉太郎「違う」
奉太郎「俺は……千反田の事を追いかけていたんだ」
える「……私の事を?」
奉太郎「ああ、そうだ」
奉太郎「俺とは住んでいる世界が違う、お前の事を」
奉太郎「千反田の言葉を借りると、俺に持っていない物を、千反田は沢山持っていたんだ」
奉太郎「だから……ずっと追いかけていた」
奉太郎「可笑しな話だろ。 二人して追いかけていたら、追いつける筈が無いからな」
える「ふふ、それもそうですね」
える「ですが、折木さんは気付いてくれました」
える「私が、追いかけて居た事を」
える「普通でしたら、絶対に気付かない事に……気付いてくれたんです」
奉太郎「……いくつかヒントもあったからな、偶然だ」
える「あ、それは少し気になりますね」
える「折木さんが気付くきっかけとなったヒント、教えてください」
奉太郎「ま、最初から教えるつもりだったがな」
俺はそう言い、一度ベンチから立ち上がる。
える「では、そうですね」
える「コーヒーはどうでしょうか?」
その言葉を無視すると、俺は自分のコーヒーと千反田の紅茶を買った。
そのまま紅茶を千反田に差し出し、俺は言う。
奉太郎「冗談はもう簡便してくれ」
える「ふふ、ありがとうございます」
千反田は嬉しそうに、紅茶を受け取った。
俺は再びベンチに腰を掛け、買ったばかりのコーヒーを一口、飲み込む。
奉太郎「……ふう」
える「折木さんが気付いた理由、ですよ」
奉太郎「ああ……」
奉太郎「まずはそうだな、今年の生き雛祭りの時だった」
える「生き雛祭りですか」
奉太郎「まあ、あの時は気付かなかったけどな」
奉太郎「昨日の言葉が、全部を繋げてくれたんだ」
える「それで、その時のヒントとは?」
奉太郎「千反田の言葉、歩き終わった後のだったな」
奉太郎「俺と一緒に、歩けている気がした。 と言っただろ」
奉太郎「覚えているか?」
奉太郎「最初は、俺が千反田に追いつけているのかもと思った」
奉太郎「だが、あの言葉の本当の意味は、違う」
える「そうです、その逆……ですね」
える「私が、折木さんと少しの間でしたが、追いつけたと感じたので……そう言いました」
奉太郎「……そうだ」
奉太郎「昨日の夜に考えて、思い出して……気付いたんだ」
える「そうでしたか……他には、何かあるんですか?」
奉太郎「そうだな……」
奉太郎「何だったっけか、古典部で勉強をしていた時の話だ」
える「ええっと、ペン回しですか?」
奉太郎「結局、お前はあの時ペンを回せなかったな」
える「それもしっかりと、覚えていますよ」
奉太郎「あの時も多分、思っていたんだろ?」
える「……さすがにそれは、気付かれないと思っていたのですが」
奉太郎「普段と、違う顔だったからな」
奉太郎「……すぐに分かるさ、そのくらい」
える「あの時、私が思っていた事は」
える「どんなに些細な事でも、折木さんと同じ目線に居たかった、と言えば正しいですね」
奉太郎「それで、あんな悲しい顔をしていたのか」
える「……そんなに普段と違いました?」
える「折木さんを騙すのには、苦労しそうですね……」
奉太郎「……逆を言えば、千反田に騙されるのは苦労しそうだ」
える「えっと、馬鹿にしてます?」
奉太郎「いいや、褒めてる」
える「……本当にそうなら、いいのですが」
参ったな、本当にそうなのだが。
奉太郎「まあそれで、分かっただろう」
奉太郎「俺が気付けた理由を」
える「ええ、そうですね」
奉太郎「それは俺も、千反田に感じている事だ」
その時、また一段と派手に花火があがった。
俺と千反田はしばし、そんな花火に目を奪われる。
える「今日は本当にありがとうございました、折木さん」
奉太郎「別に、俺の方こそありがとうな」
そんな会話を聞いていたかの様に、花火は静かに終わりを迎える。
辺りに響いていたのは、虫達の鳴き声だけだった。
俺と千反田はまだ、ベンチに座っている。
える「はい、どうぞ」
奉太郎「追いかけあっていた二人が、気付くにはどうすればいいと思う?」
える「気付くには、ですか?」
奉太郎「……分からないか」
える「もう少しだけ、ヒントを頂ければ、分かると思います」
奉太郎「そうか、なら……」
俺はそう言い、一度息を整える。
奉太郎「今回、千反田は足を止めた」
奉太郎「大学に行くという、選択を選ぶ事によって……」
奉太郎「だが」
奉太郎「……俺は、足を止めなかった」
える「横を見れば、良いのでは無いでしょうか」
奉太郎「……一緒だ、それも俺と同じ考えだ」
える「それは、嬉しいです」
千反田の顔が月明かりで薄っすらと見える。
そんな光景が、俺にはとても美しい物に見えていた。
奉太郎「じゃあ最後にもう一つ」
奉太郎「これは質問と言うより、俺の想いだな」
奉太郎「なんだか長くなってしまったが、俺が言いたいのは一つだ」
える「ちょ、ちょっと待ってください、折木さん」
奉太郎「な、なんだ」
ああくそ、変に止められたせいで恥ずかしくなってきてしまったでは無いか。
える「ええっとですね、折木さんが今から言おうとしているのは」
える「あの、去年の暮れにここで、私に言ってくれた事と同じ事ですよね」
奉太郎「ま、まあ……そうなる」
える「そ、それで……私が、断った事ですよね」
奉太郎「ああ……そうだな」
そんな事をせずとも、分かるだろうに。
……もしかすると、千反田も意外と用心深いのかもしれない。
える「では……ですね、今回は私から言わせて貰えませんか」
奉太郎「ち、千反田からか」
える「え、ええ」
奉太郎「まあ……別に、構わんが」
そう言いながらも、千反田の方を向けなかった。
……かなり、恥ずかしい。
そう言い、千反田は短く咳払いをする。
その瞬間、空気が変わるのを俺は感じた。
そんな空気に圧倒され、千反田の方に顔を向ける。
俺は不思議と、その時……落ち着いた気分となっていた。
える「私は、千反田えるは」
える「折木さんの事が、好きです」
える「もし、良ければ私と……お付き合いしてください」
千反田の告白は、とても単純な物であった。
しかしそれは、どんな告白よりも……嬉しかった。
そして顔を近づけ。
千反田に、返事代わりのキスをした。
千反田は一瞬だけ体を強張らせていたが、それもすぐに無くなる。
キス自体は多分、そんな長くは無かったと思う。
それから何分か、もしかすると何時間か。
一緒に、ベンチで夜景を眺めていた。
少しだけ夜風が涼しい、祭りの終わり。
俺は、薔薇色への道を選んだ。
そういえば、一つ気になる事があったな……
千反田は、どこの大学に行くのだろうか?
……いや、そんな事、今はどうでもいいな。
今は千反田と、ゆっくり話して居たい。
第20話
おわり
第2章
おわり
素晴らしい
Entry ⇒ 2012.11.05 | Category ⇒ 氷菓SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
モバP「家猫の飼育日記をつけてみた」
引用元:
チチチチ……チュンチュン
P「ZZzzz…………ん」パチッ
P「……んーっ……ふぅ」
P「もう朝か、なんか早いなぁ。ちょっと前に横になったような感じなのに……って」
P「何でここにみくが寝てるんだ……」
みく「……クー……クー……Pちゃん……」
P「確か昨日みくはちゃんと部屋いって寝たよな……」
P「んでそれを見て、俺も自分の部屋入って寝た筈だ」
P「だが起きたら今隣で寝ている」
P「……寝ぼけたフリしてこっちに入ってきたか……?」
P「ったく……いい顔して寝やがって、この」ツン
みく「んにゃ……クー……スー……」
P「はは、まぁ起きるまでこのまま寝かせておいてやるか」
P(悪い子にはお仕置きだっ! まずはみくを掛け布団でぐるぐる巻きにして……)
ススス……クルクルクル
P(そして簀巻き状態のまま持ち上げ運ぶ!!)
グググッ……
P(居間で下ろし……これでカーペットの上で簀巻き状態となる!!)
P(布団から出ている頭は……よし、こうしてっと……出来上がりだ!)
P(ふはは! 布団で寝ていたと思ったら床の上で起きたポルナレフ状態になるであろう!!)ナデナデ
P(さあ起きたら光景が変わっていた驚きを味わうがいい!!)ナデナデナデナデ
みく「…クー……ん……にゃ……?」
みく「にゃ……ふゎぁぁ~……Pチャン?」
P「ふはは! どぉ~だいい目覚めだろう?」
みく「にゃ……ってここ床の上にゃ!? というかPチャンなんで膝枕してるにゃ!?」
P「どうしたぁ、何故驚いている? んん?」ナデナデ
P「自分の布団だと? なぁにを言っているっ。みくは俺の布団に潜り込んだではないかっ!」
みく「そんな筈ないにゃ……あれ、でもこれPチャンのお布団?」
P「……ふむ、どうやら寝ぼけて俺の布団に入ってきたようだな」
みく「にゃっ!? みくそんな事してたの!?」
P「……ホントに覚えておらんのか」
みく「さっぱり覚えてないにゃ……一度お手洗いに起きたとこは覚えてるけど……」
P「ならその時か……てっきりわざとかと思ったわ」
みく「むー……じゃあ次は最初からPチャンのお布団で一緒に寝れば間違えないにゃ!」
P「駄目だ」ぺしっ
みく「うにゃっ。チョップひどいにゃ!」
P「一緒に寝ていい訳ないだろうが」
P「というかそろそろ起きろ、いつまで俺の膝枕で横になってんだ」
みく「いやにゃっ! みくをこんな床の上に転がすなんてひどいにゃ!」
みく「みくの気が済むまで膝枕されてろにゃー!」
みく「むー……ならもうちょっとだけっ」
P「……ぁー…ちょっとだけだからな?」
みく「うにゃっ♪ えへへ~……Pチャンの膝気持ちいいにゃ」スリスリ
P「…まったく手のかかる奴だ」ナデナデ
みく「ごろごろごろ……♪」スリスリ
P「ほらちょっと経ったぞ」
みく「はやっ!? まだ全然経ってないにゃ!!」
P「ちょっと、と言っただけで時間までは言ってないだろう」
みく「だーめーにゃー!」ガシッ
P「うおっ膝を掴むでないっ」
みく「気の済むまで離さないにゃー!」スリスリスリスリスリ
P「ええいっ離せ離せっ!」
ワーワーギャーギャー……――――――――
P「ったく、結局30分以上膝枕しっぱなしになるとは……」
P「へいへい、あんまり時間かけないようにな」
みく「はーい、じゃあお風呂いってくるにゃー」
P「あいよー、いってらっしゃいと」
P「……とりあえずこっちは足が痺れて動けんなぁ………」
P「まぁみくが上がるまでゆっくりしとくか、こっちの支度は大した事ないし」
―――――――――
――――――――
―――――――
みく「たっだいまにゃーん、さっぱりー♪」
P「おうおかえ……ぶっ!?」
P「お、おい何て格好してるっ!?」
みく「にゃっふふー……何って、バスタオル巻いてるけど?」
みく「にゃ~……この下見てみる?」ニパニパ
P「見んわっ!」
みく「え~……このみくのにゃいすばでぃーを見られるチャンスかもだよ?」
P「湯冷めするから早く来てきなさいっ」
みく「むーっ……にゃんかそこまで言われると、みくに魅力ないみたいな言い方にゃ!」
みく「それにゃら……みくの魅力をとくと味わうにゃ!」バッ!
P「うおっ!? ……って、シャツと短パン着てるじゃないかっ!」
みく「着てないとは一言もいってないにゃーん、一番上にバスタオル一枚、にゃ!」
みく「えっへへ~……びっくりしたかにゃ?」
P「このっ……」
みく「あ、でもでもぉPチャンが見たいっていうなら……見せてあげてもいいにゃ?」チラッ
P「調子乗るんじゃありません」ぺしっ
みく「に”ゃっ! またチョップしたー!!」
P「悪い子にはお仕置きと決まっておるっ」
P「遊ぶならもうちょっと健全な内容にしなさい……まったく」
P「みくがどれだけ発育良くってもまだ子供なんだからな、そういう事は駄目だ」
みく「子供扱いするにゃー! もう立派なれでぃーにゃ!」
P「ホントの淑女はそんなはしたない真似しないがな?」
P「15なんて十分子供だろうに」
みく「ふーんっだ。みくが大人になったら覚えてろにゃ」
P「ああ、もう忘れたから」
みく「ひどっ!?」
P「とにかくお馬鹿やってないで支度しろ。事務所いくぞ事務所」
みく「はーい……いつか見返してあげるんだからにゃー!」
P「ま、最低でも5年先かね。その時どうなってるか知らんが」
みく「5年も待てないにゃー、せめて3年!」
P「18か……どうなってるやら」
みく「3年後にはみくがPチャンのお嫁さんになってるにゃ!」
みく「これからもずっと一緒に暮らしていればみくがお嫁さんにゃ!」
P「どうだかねー、さて支度支度っと」
みく「にゃ、お洋服に着替えてくるにゃ!」
テテテテッ……パタン
P「……いやまぁ、この生活も悪くないけどな」ボソッ
P「ま、こっちもスーツに着替えるとすっか」
P「シャツとズボンはOKっと……ネクタイ……あったあった」
P「髭よし」
P「髪型よし、寝癖もついてないな」
P「スーツもオッケーと……おし完了っと」
P「おーいみくー! こっちは支度終わったぞー」
<にゃー! れでぃの支度には時間がかかるにゃー!!
P「……まぁ、まだ間に合うからいいか」
P「んむ、それじゃあ行くか。途中昼ごはんにファミレスいくぞ」
みく「はいにゃー」
―――――――――
――――――――
―――――――
ウェイトレス「お待たせ致しました。焼き魚定食とオムライスでございます」
ウェイトレス「それではごゆっくりどうぞ」
P「んじゃ、いただきます」パンッ
みく「いただきますにゃ」ニャンッ
P「モグ……ふむ、この魚中々おいしいな」
みく「むぐむぐ……お魚なんてどれもおいしくないにゃ」
みく「それよりこっちのオムライスのほうが絶対おいしいにゃ!」
みく「Pチャン食べてみる?」
P「ふむ……一口貰おうかな」スッ
みく「ここはみくが……はい、あーん」スッ
P「お、おい……」
みく「あーん!」
P「……こんな人前で何する気だっ」
みく「あーーーん!」
P「…………」
P「……ん」パクッ モグモグ
P「ん……まぁ確かにまずくは、ない」
みく「でしょでしょー! みくがあーんしてあげたのもあるにゃ!」エヘン
P「……それならばこっちもお返しだ!」チャッチャッ スッ
P「はい、あーんだ」
みく「に”ゃっ! お魚は駄目にゃ! もっと別のものがいいにゃ!」
みく「みくはお魚苦手なままでいいにゃ!」
P「ずっと大人になっても嫌いなままでいいと?」
みく「にゃっ!」
P「……フゥー……きっとみくが大人になってお嫁さんになったら」
P「みくの料理ではお魚が出ないんだろうなぁー?」
P「みくはよくても相手が悲しむだろうなぁー?」チラッ
P「それが特に俺みたいな魚が好きな奴だったりしたら尚更だろうなぁ? んん?」チラッチラッチラッ
P「一緒においしいお魚を食べて喜び合うことができないなんて悲しいだろうなぁぁぁ??」
みく「むーっ……」
P「ほれ、ほんの一欠片だけだ」
みく「…………」パクッ
みく「んーっ!」ジタジタ
P「水で飲み込んでいいぞ、食べただけでもよしとしよう」
みく「んくんく……ぷはぁ。ぅー……やっぱりおいしくないにゃ」
P「よく頑張った、えらい」ナデナデ
みく「うにゃ……」
P「それじゃ口直しに米食わせてやろう。ほれ、あーんだ」スッ
みく「にゃ」パク
P「日本人ならやっぱ米だな、うむ」
みく「もくもく……ん、もう一口ちょうだいにゃ!」
P「へいへい、さっきのご褒美に特別だからな? ほれ、もう一回あーんだ」スッ
みく「うにゃっ♪ もくもく……Pチャンがあーんしてくれたからおいしいにゃ!」
P「ったく……米がうまいからに決まってるだろうに」
P「ごちそうさまっと」
みく「ごちそうさまにゃー♪」
P「それじゃ時間もいいとこだし、事務所にいくぞ」
みく「おー!」
P「おはよーございまー……また誰も居ない」
みく「おっはにゃーん!」
P「ちひろさんまで居ないという事は多分書き置きが……やっぱり」カサカサ
『おはようございますプロデューサーさん
少しお届けものに出かけてきます
今日はみくちゃんのライブバトルの予定でしたね?
準備は整えて衣装も楽屋へ運んでもらってますので
そのまま会場へ向かってくださいね ちひろ』
P「届け物? 何のだろう……まぁ気にしなくていいか、関係あるなら内容書くだろうし」
みく「何のことかさっぱりだにゃー」
P「事務所きたばっかだけどこのまま会場いくとするか」
みく「はーいにゃ」
バタン
――――――――今日のちひろポン――――――――
ちひろ「ご契約頂いたSリボカードはこちらになります♪
それと、こちらは特典でついてくるドナーカードになります、どうぞご利用ください♪」
――――――――――――――――――――――――
みく「……うん」
P「……なんだ、緊張してるのか?」
みく「そ、そんな事ないにゃ」
P「まぁ前にボロ負けしたからな……無理もない」
みく「…………」
P「いいか、みく」
P「俺の顔をじーっと見ろ」
みく「にゃ……」
P「負けてからあの後何日もレッスンして、沢山頑張って」
P「二人でここまで来たじゃないか」
P「今のみくは前に負けたときのみくとは違う」
P「俺の指示に沿ってちゃんとやれれば間違いなく勝てる」
P「自信を持って。みく自身と、支えてきた俺に、な?」
みく「頑張って、みるにゃ」
P「おう、そういうときは元気よく返事するもんだぞ」
P「返事はっ!?」
みく「はいにゃ!!」
P「よし!! 行って来い!!!」
<スタンザム!
<!?
ワアアアアァァァァァ・・・……―――――――
『勝者! モバプロの前川みくちゃん!!』
みく「!! やったにゃー!!!」ピョンピョン!
相手「クッ……俺は……アイドルマイスターになれないのか………」ガクッ
P(何か相手がアレだったけど……勝ちは勝ちだ!)
みく「にゃああ!! やったにゃああ!!!」ダキッ
P「こらっ、こんなとこで抱き着いて人目についたらどうするっ」
P「嬉しいのは分かるから一旦離れろっ」
みく「あ、つい抱き着いちゃったにゃ、てへ」パッ
P「んむ、よくやったな。今回はちゃんと指示通りできたし、レッスンして実力もついたし」
P「今日はもう一つ素直に褒めてやる事ができたな」ナデナデ
みく「うにゃ……えへへ……♪」
P「相手もライブなのにスタドリ飲み始めるちょっとアレな感じではあったが……」
P「ま、みくはみくでちゃんと頑張れたからな。よくできましたっと」ナデナデ
みく「えっへへ~Pチャンもっと褒めて褒めて! あとご褒美もちょうだい!!」
P「褒めたらすぐこれだ……あんまり調子乗るなって。『勝って兜の緒を締めよ』だ」
みく「ぶー。いいじゃん今ぐらいー」
P「ほら、片付け後始末して楽屋いくぞ」
みく「はぁい、プレゼントとかちょーっと期待したのににゃあー……」
――――――――
―――――――
―楽屋―
ガチャッ、バタン
P「ふぅ、とりあえずお疲れっと」
みく「おつかれにゃ!」
P「……ここならいいか」
みく「? どうしたにゃPチャン?」
P「みく」ジッ
みく「にゃ……?」
P「目、つむれ」ガシッ
みく「えっ……」
みく(Pチャン、みくの事をじっと見て肩を抱き寄せて……こ、これは……)
P「……ご褒美をやる」
みく「え、えっと…………うん」スッ
スッ、パチン
P「はい、オーケー」パッ
みく「……にゃ? Pチャン……? ちゅー、じゃないのかにゃ……?」
P「ふん……首元を見てみるがいい」
みく「にゃ……鈴のネックレス……?」
P「……ふはは! 鈴をモチーフにしたシルバーネックレスをくれてやるっ」
P「本来ならば猫には首輪がつきものだが……しかぁし!」
P「そんなお約束事ではつまらん! よって、今回は特別にそれを進呈してやるという事だ!!」
P「どぉした、予想外すぎて言葉も出ないかぁ?」
みく「…………えへへ。Pチャンありがとにゃ! とっても嬉しいにゃ!!」
みく「えー……次も勝ったらもっとご褒美h」
バッ
ちゅっ
みく「んっ………!?」(Pチャンが、いきなり……!?)
みく「………………………」
P「…………………………」
P「……ぷはっ」
みく「………あ」
P「……っ、こんなん俺の柄じゃないが、今回だけのご褒美だ」
みく「…………Pチャンのほうから、してくれた」
みく「…………」ギュッ
P「ん……」ナデナデ
P「いいか、一度しか言わないからよく聞くように」
みく「にゃ……」
P「まだここでは気持ちの半分ぐらいしか伝えん」
P「全部伝えるのはみくが成人してから、だ」
P「一緒に住むようになって、これはこれで割と楽しんでる」
P「手のかかる所もあるがな」
P「だが、みくの事もそういう所も嫌いではない」
P「でなけれなさっきみたいな事はしないし、な」
P「今はこれ以上は言えん」
みく「……………………グスッ」
P「……何を泣いている」
みく「ひぐっ……にゃ、泣いてないっ……グスッ」
P「……まぁそういう事にしてやろう」
みく「にゃいて……にゃいん、だか、らぁ……ぅぇぇぇ……」ポロポロ
P「………………………」ナデナデ
――――――――
―――――――
――――――
みく「……………」コクッ
P「もう泣いてないな?」
みく「元から泣いてないにゃ……」
P「まだ言うかこの猫は……だが、落ち着いたなら今はもうおしまいだっ」パッ
みく「あっ………」
P「もう耐えられんっ……さっきみたいな事は本当に柄じゃないんだ」
P「恥ずかしくてたまらん……『羞恥心猫をもなんとやら』だ」
みく「……ふふっ…それは好奇心にゃ」
みく「Pチャンは気持ちの半分言ったけど、みくは……もう全部言っちゃうにゃ」
みく「Pチャン、いっぱい……いーーっぱい、大好き。とっても大好きにゃん♪」
途中遅くなり大変申し訳ない……
みく猫はこれでおしまい。また機会があったら別の形で
ご支援ありがとうございました
みくにゃんがいいです
みくにゃんかわいい
Entry ⇒ 2012.11.05 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (3) | Trackbacks (0)
澪「起きろボケナス」律「うるせーなウスラトンカチ」
律「だからうるせーな……昨日散々(自主規制)したくせになんでそんな元気なんだ」
澪「は? あれくらいでヘタレてたらお前の嫁なんて勤まらないだろカス」
澪「これ着替えとタオルな。さっさと顔洗って溺れ死ね」
律「テメェが死ね。でもマジで死んだら辛いからその後私も死ぬ」
澪「そう簡単にくたばるか。二人一緒に寿命使い倒すぞコノヤロー」
律「たりめーだバカヤロー」
晶「……」
澪「……いつからそこにいた」
晶「さ、最初の所から……。部屋から怒鳴り声が聞こえたから何事かと思ってさ……」
律「……」
晶「……なんか邪魔して悪い」
律 澪「かんちがいするなよこのやろー(棒)」
律「なんだようるさいな」
澪「どうかしたのか?」
菖「二人はいつから付き合ってんのー?」
澪「いつからドツき合ってるかって? 出会ったその日から」
菖「ち、違う違う! ドツくじゃなくて付き合う!」
幸「というか、出会ったその日からこんな感じなのも凄いね……」
澪「ああ、付き合うか。勘違いしたじゃないか」
律「私らは別に付き合ってなんざねーよ。血痕してる」
菖「血痕!? ……ああ結婚ね! って結婚!?」
律「おう。高校卒業した後に籍入れた」
幸「女の子同士で結婚って日本で出来るの?」
紬「呼ばれて飛び出てむぎゅぎゅぎゅ~ん♪」
菖「あ、理解した」
澪「バカ旦那を持つと苦労するよ。大好き」律「アホ嫁を持つと大変だよ。私も」
澪「……ふぃ~。今日は走らなかったな凸カチューシャ」
律「……」
澪「聞いてんのかタコ」
律「悪ぃ、ちょっと用事あるから抜けるわ。あと誰がタコじゃクズ」
律「じゃーな死ね」
澪「待てや死ね。……早っ」
唯「どうしたんだろりっちゃん?」
澪「どうせ腹でも下したんだろ」
晶「案外、浮気とかだったりし……」
澪「」
菖「とおーーーっ!」
晶「ぐふっ!」
菖「き、気にしなくていいよ澪ちゃん! こいつテキトーに言っただけだから!」
澪「(う、浮気……? あわわわわ……)」
澪「……」
律「電気も点けないで何やってんだアホ」
澪「……練習終わったあとどこ行ってたんだ?」
律「あ-……」
澪「言えないのか? やっぱり晶の言うとおり、う、浮気して……るのか……? ぐすっ」
律「泣くなよバカ。って晶何言ってくれてんだ死ね」
澪「あ、相手は誰だ!」
律「浮気ちげーから。……これ買いに行ってた」
澪「ケーキ?」
律「そうだよ。駅前にあるスイーツショップの特定の時間でしか買えない限定ケーキ」
澪「……なんで?」
律「今日は私らが出会った記念日だろ。覚えてないのかコラ」
澪「あっ」
律「あっ、じゃねぇ死ね」
律「み、みんなが居る前で恋人と一緒に食べるケーキ買ってきますなんて言えるかドアホ! 恥ずいわ!」
澪「私だったら言えるわデコ助野郎! だってお前のこと大好きだしぃ!」
律「テメェと一緒にすんなメルヘンお花畑野郎! 大好きなのはこっちも同じだ! 次からは堂々と宣言してやるわボケ!」
澪「あーそうかよ!」
律「あーそうだよ!」
コンコン
律 澪「……」
紬「私も一緒に居ていい? あ、続けて」
菖「続けて」
幸「あれ? 澪ちゃんご飯残すの?」
律「こいつ大学生になってから急に太り始めてさ。体重計見たら(むぎゅん!)kg増えてやがんの。ざまぁ」
澪「喋るな口閉じろ殴るぞ」
唯「高校の頃は少し太ることはあってもこんなに一気には増えなかったよね」
澪「なんでだろ……クソッタレ」
幸「……澪ちゃんは高校を卒業してからりっちゃんと結婚したんだよね」
澪「? うん」
幸「原因分かっちゃった」
澪「なんだよ」
幸「きっと多分それは『幸せ太り』って奴じゃないかな」
幸「憧れのりっちゃんと結婚出来たのが嬉し過ぎて太ったんだよ」
澪「は? 別に幸せじゃねーし憧れてねーし!」
澪「幸。言って良い冗談と悪い冗談の区別くらいつけろよな//」
唯「うわぁ……言葉の説得力ゼロだよ」
幸「幸せ太りならダイエットしなくても良いんじゃない? だってその脂肪は幸せのバロメータなんだから」
唯「いやいや、その提案はどうなんでしょ……」
澪「私ダイエットやめるわ。醜く太っても愛せよ凸」
律「どんなお前だろーと愛さない理由がねーよバカ」
唯「ごちそうさま。もう行きまーす」
幸「(ぶっちゃけ私の見る限り澪ちゃんの太った所ってどう見ても胸だよね……)」
幸「(毎晩揉んで貰ってるんだろうなぁ)」
律「なに? プッキーならあげないぞ」
菖「いらないよ。本当はちょっと欲しいけど。……じゃなくて」
菖「澪ちゃんのどこが好きなの?」
律「好きじゃ……」菖「そういうのいいから。真面目に」
律「……」
律「背が高くてカッコいい所と私なんかとは釣り合わないくらい美人な所と普段は恥ずかしがり屋だけどやる時はやる所と私が傷付いた時は黙って寄り添ってくれる所とおっぱいとベースを弾いてる時の後ろ姿と……」
菖「ごめん。私が悪かった」
澪「なになに? 服のサイズの話?」
幸「種類が少なくて困るよね……じゃなくて」
幸「りっちゃんのどこが好きなの?」
澪「好きなんかじゃ……」幸「そうじゃなくてちゃんと答えて」
澪「……」
澪「小柄で女の子らしい所と私なんかとは似合わないくらい可愛い所と実は料理上手で家庭的な所と私が悲しんでいる時は体を張って笑わせてくれたりする所とちっぱいとドラムを叩いてる時の真剣は表情と……」
幸「ごめんなさい。もう分かりました」
唯「ほえ?」紬「むぎゅ?」
晶「律と澪って高校の時からあんな感じなのか?」
唯「そうだねぇ……ことあるごとに殴り合ったり蹴り合ったり叩き合ったり馬鹿にし合ったり罵り合ったりしてるよ」
紬「うんとね……ことあるごとに殴り合ったり(痛くないように)蹴り合ったり(ソフトに)叩き合ったり(それはもう優しく)馬鹿にし合ったり(という名の愛の囁き)罵り合ったり(という名の求愛行動)してるわ♪」
晶「なんで同じ言葉繰り返したんだ」
紬「大事なことだから♪」
幸「……」
晶「……」
菖「……そっちはどうだった?」
幸「性格から髪の毛一本に至るまで魅力を語り尽くされた」
菖「こっちも……途中から図解イラストまで入れてきたよ」
晶「私は良く分かんなかった」
菖「あの二人は凄い。絆が深いってレベルじゃない」
幸「なんだか羨ましいよね」
晶「どこがだよ。口が悪くて喧嘩っぱやいってだけじゃねーか」
菖「晶がそれを言うかー!」
菖「このー!」
ガチャッ
澪「おい、夜中なんだから静かにしろよ……眠れないだろ……あふ……」
律「そうだそうだ。睡眠不足はお肌の大敵だぞ」
幸「あ、ごめんね。起こしちゃった?」
律「まぁ、私は元々起きてたけどさ。なんせこいつが私を抱き枕にして離れないから眠れなくて。ガキかよ」
澪「ちげーよ好きあらば絞め殺そうとしただけだカス」
律「やってみろやコノヤロー。お前に殺されるなら本望だボケ」
澪「冗談だよバカヤロー。本当は夢の中でもお前に会いたかったんだよクズ」
律「いつでも行ってやるよバカ。24時間体制でな」
澪「マジでかありがとう凸カチューシャ」
律「今日は定休日です」
澪「死ね」
律「嘘だトンチンカン。さっさと来い」
澪「わーい」
菖「……」
幸「……」
晶「……」
紬「私の夢にも誰か来てくれないかなぁ……」
唯「今何時~……? ふにゅ……」
澪「あ? 気持ち悪い声出してんじゃねぇよコラ」
律「いつも素直になれなくてごめんね……私のこと嫌になったでしょ?」
澪「は、はぁ? 急になんだよ。て、てか別にそんなこと思ってない……よ//」
律「本当? 優しいね澪は。……好き//」
澪「あ……う……私もす、好き……だボケ」
律「ぎゅってしていい?」
澪「う、うん……//」
律「……じゃあチューもしていい?」
澪「ごくっ……//」
律「澪……」
澪「あ……」
――――
――
澪「はっ! ゆ、夢……?」
律「くー……くー……」
澪「ですよね……」
澪「……でも今なら眠ってる律にこっそりチューが出来る」
澪「はぁはぁ……」
律「う、ううん……澪……秋山……」
澪「……寝言か? 律も私の夢を見てくれてたんだ//」
澪「……」
澪「起きろボケナス!」
律「あ~……? うるせーなウスラトンカチ……むにゃ……」
澪「今すぐその口縫って閉じてやろうかコラ」
律「朝から訳分からんことほざくな死ね……どうせ閉じるならチューして閉じろカス……」
澪「おーおー望み通りにしてやるよ。その整った面上げろ」
律「ん」
澪「(え、本気でやる流れ? ……こ、心の準備が……!)」
律「……早くしろバーカ」
澪「わ、分かってるわバーカ!」
律「……うん//」
律 澪「んっ…………」
ガチャッ
紬「えんだああああああああああ~♪」
澪「んむー!?」
律「むー!?」
晶「わ、す、すげーもん見ちゃった……//」
菖「朝までドアの前で粘った甲斐があったね!」
幸「唯ちゃんは途中でダウンしちゃったけど」
唯「うい~……あずにゃん~……選べないよぉ……すやすや」
律「お、お前ら……! //」
菖「あ、やばい流れ?」
幸「みたい」
紬「幸せよ私……とっても……」
唯「え? 晶ちゃん? ないない……ぐぅ……」
晶「おい」
澪「勘違いするなよ!? い、今のは頭突きでこいつを永遠に眠らせてやろうかと……! //」
律「そして私はそれをやり返そうとしてだな! //」
菖「その言い訳は苦しいよね」幸「ねっ」
澪「……見られたからには生かしておけない」
律「……全員ぶっ殺す」
晶「ちょっ……来るな! 私達が悪かったからー!」
澪「琴吹ィ! 吉田ァ! 林ィ! 和田ァ!」
律「逃げられると思うなよコノヤロー!」
紬「きゃー♪」
唯「うん……? うるさいな……」
唯「そのまま一生やってろや死……って、やってるか。やってるよね」
唯「お幸せに……すぴー……zzz」
おわり
じゃねーよ!
面白いもん書いてんじゃねーぞ!
Entry ⇒ 2012.11.05 | Category ⇒ けいおん!SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
咲「麻雀上手くなったね、京ちゃん」 京太郎「そうか?」
優希「あいたたー…、また降っちまったじぇー」
京太郎「よーっし、連チャン連チャン」
和「あら……いい待ちですね」
まこ「うむ、いい引っ掛けになっとるな」
京太郎「たまたまっすよ。優希だからこそ引っ掛かったんでしょうし」
優希「な、なにー!」
京太郎「ははっ」
久「最近の須賀くん……調子良さそうね」
咲「そうですねー」
久「良い練習相手でも見つかったのかしら……?」
咲「さあー? どうでしょうねー」
久「ま、私には遠く及ばないけどね」
咲「そうですねー」
久「……咲?」
京太郎「そうだな。 久々に連チャンした気がするわ」
咲「引っ掛けも上手く決まったし、良い感じだよ。 部長も褒めてたし」
京太郎「部長がそんなことを? そりゃ嬉しいな」
咲「……私も…嬉しいよ?」
京太郎「ああ、そうだな。 ありがとう、咲」
京太郎「お前に褒められるのが一番嬉しいよ」
咲「……えへへ」
咲「勿論。 予習復習は大事だからね」
京太郎「んじゃ、また5時頃な」
咲「うん! 待ってるからね!」
咲(今日の京ちゃん。カッコ良かったなぁ……)
咲(京ちゃんに麻雀教えるのがこんなに楽しいなんて思わなかった……)
咲「もっともっと京ちゃんに麻雀を教えなきゃね」
咲(……ダメダメな京ちゃんが一番だけどっ)
咲「うん、いいね。 牌効率もわかってきたんじゃない?」
京太郎「ボチボチだけどなー。 基本的なことしか出来ないし」
咲「それでいいんだよ、京ちゃん。 基本無しの応用なんて出来ないんだから」
京太郎「さすが元文学少女。 言うことは真面目だな」
咲「もう……今でも本は読むよ…」
京太郎「へぇ、最近は麻雀ばっかりだと思ってたけど。 どんなの読むんだ?」
咲「え? それは……その……」
京太郎「?」
咲「べ、別に関係無いでしょ! 今は麻雀! ハイ、集中!」
京太郎「な、なんだよいきなり」
咲「い・い・か・ら!」
京太郎「お、おう……」
咲(幼馴染とのラブコメばっかなんて言えるわけないよ……)
咲「ツモっ! ツモ嶺上開花三暗刻ドラ4……倍満ですっ」
京太郎「っ、かー! 一気に逆転された―!」
咲「ふふっ、私に勝つのはまだまだ早いよ? 京ちゃん」
京太郎「今日は行けると思ったんだけどなー……」
咲「それじゃあ罰ゲームだよ、京ちゃん」
京太郎「これも恒例化してきたな……」
咲「はい、どーぞ」スッ
京太郎「せめて楽なのでありますように……」ゴソゴソ
京太郎「っと……。 どれどれ?」スッ
京太郎「……うっ」
咲「何だった?」
京太郎「お、幼馴染に……膝枕」
京太郎「いや……これはちょっと」
咲「なんでー? 楽なのがいいって言ってたじゃんー。 膝枕は楽なほうだと思うけどなー」
京太郎「そうだとしてもこれは……」
咲「京ちゃんー? これは罰ゲームなんだよー?」
京太郎「鼻息荒いよお前。 落ち着け、どうした」
咲「京ちゃん、これを見て?」
京太郎「あん?」
咲「ひーざーまーくーら」
京太郎「おう」
咲「しなきゃ!!」
京太郎「……はい」
そんなオカルトありえません!
京太郎「………」
咲「うー」
京太郎「………」
咲「あうあー」
京太郎「………」
咲「んふー」
京太郎「………」
咲「んふふー」
京太郎「………」
咲「ふぅ……。 お疲れ様、京ちゃん」ツヤツヤ
京太郎「……罰ゲームの途中いつもお前があげてるあの奇声はなんなんだ」
咲「え? ……ああ」
咲「ああでもしないと正気が保てなくて」
京太郎「……は?」
京太郎「おう、ありがとうございました」
咲「……こちらこそ」ボソッ
京太郎「ん?」
咲「な、なんでもないよー」
京太郎「また明日な」
咲「うん! 今日やったこと、明日に活かせるようにしとくんだよー」
京太郎「……膝枕をか」
咲「そ、そっちじゃないよお!」
京太郎「ははっ」
咲「……もうっ、京ちゃんはー!」
京太郎「……おやすみ、咲」
咲「うん。 おやすみなさい、京ちゃん」
京太郎「リーチっと」
久「あら、早いわね」
和(牌効率がわかってきてる……? もう初心者とは思えなくなってきましたね)
優希「う……うーん……。 こっち!」
京太郎「ところがどっこい、ロンだ」
優希「うげー!」
まこ「なんじゃ京太郎のやつ。 最近強うなってきたのう」
咲「えへへー。そうですよねー。 京ちゃん、強くなってきてますよねー!」
まこ「な、なんじゃ急に……」
咲(京ちゃんがまたほめられた! 嬉しいなぁ!)
咲「……えへへー」
まこ「……?」
久「お疲れ様。 流石は和ね」
和「どうも」
京太郎「あー……逆転されちゃったか……」
和「……あれ……」
和「須賀くん……テンパイしてたじゃないですか」
京太郎「ん……いや、そうなんだけどさ。 この点差じゃリーチかけても届かねーなと思って。 変化待ってたんだけど……」
和「ああ、でしたらこっちでリーチをかけるといいですよ。 単騎待ちとは言え出やすいですし」
京太郎「ん?でも出和了りでも届かないぜ?」
和「いえ、多分……。 ほら、裏ドラが乗ってます」
京太郎「……おお、なるほど! 裏ドラの牌効率も考えるのか!」
京太郎「やっぱ和は凄いなぁ! ありがとう和!」
和「あら……」
和「……ふふっ」
和「須賀くん須賀くん」チョンチョン
京太郎「ん?」
和「……よかったら明日の放課後、一緒に打ちませんか?」
京太郎「えっ」
和「主に麻雀の勉強の為、ですけどね」
京太郎「そんなっ、願ってもない! いいのか!?」
和「ええ。 私なんかが参考になるといいですけど……」
京太郎「参考にならないわけない!」ガシッ
和「あっ……」
京太郎「ありがとう、和!」
和「……ふふっ」
和「どういたしましてっ♪」
京太郎「ああ。 どういう風の吹き回しだか知らんけど」
咲「ふーん……」
咲「あ、それカンッ」
京太郎「へ?」
咲「っと、ツモ。 嶺上開花ドラ12」
京太郎「は?」
咲「責任払いでトビだよ、京ちゃん」
京太郎「……」
咲「はい、罰ゲーム」
京太郎「おかしい……。 やり始めて10分も経たない内に罰ゲームとは……」
咲「ブツブツ言わない! トんだから3つ引いてね!」
京太郎「お、おう……。 ……何怒ってんだ?」
咲「お、怒ってないもん!」
・幼馴染と手を絡ませる
・幼馴染と腕を組む
・幼馴染にハグ
京太郎「……」
咲「やたっ」ボソッ
京太郎「あん?」
咲「な、なんでもないー」
ギュッ
京太郎「……」
咲「あうっ……あうっ……」
京太郎「……」
咲「きょ、京ちゃん」
京太郎「な、なんだよ」
咲「そ、その……」
咲「もっと強くしてもいい……よ?」
京太郎「……」
ギュウッ
咲「ふわっ……」
咲「うわぁ! わーわーわー!」
京太郎「……」
京太郎( ……隣がうるさくて全然ドキドキしない )
咲「それじゃあその……失礼します……」
京太郎「お、おう」
キュッ
咲「あうぁ……」
京太郎「おぅ……」
咲「あう……うあ……」
京太郎「………」
咲「……きょきょ、京ちゃんが…京ちゃんが近い」
京太郎「お、落ち着け。 大丈夫だ傷は浅い」
咲「そそそそっか、京ちゃん……京ちゃんがこんなに……」
京太郎「いや、だから落ち着け」
咲「えへ、えへへへへへ」
京太郎(なにこいつこわい)
京太郎「……心の準備は良いか? 咲」
咲「え? 準備って?たかがハグに準備なんて必要なの?」
京太郎「えっ……」
咲「この歳にもなってハグの一回や二回も出来なきゃ高校生としてどうなの?」
京太郎「……」
咲「意外と京ちゃんっておくびょ……」
ダキッ
咲「 ふぁっ 」
京太郎「……きょ、虚勢張ってるのバレバレだっつの……」
咲「 」
京太郎「おい、なんとか言ったらどうなんだ……? ……咲?」
咲「 」
京太郎「き……気を失ってる……」
――――
―――
――
咲「ハッ!!?」
京太郎「あ、起きた」
咲「今……天国でお姉ちゃんと追いかけっこをしてたような……」
京太郎「実のお姉さんを勝手に殺すな」
咲「ああでもなんか……胸がすごくポカポカする……」
京太郎「そ、そうか」
咲「それじゃあ京ちゃん。 今日やったことを明日も活かせるようにするんだよ?」
京太郎「罰ゲームやった記憶しかないんだが」
咲「き、気のせい気のせい」
咲「それじゃあ京ちゃん。おやすみ」
京太郎「おう、おやすみ」
咲「いい、京ちゃん? 和ちゃんの迷惑になるようなことは絶対しちゃ駄目だからね?」
京太郎「わかってるって」
咲「ホントに解ってる? ……帰ったら講義の成果、見せてもらうからねっ」
京太郎「はいはい」
咲「むぅ……」
和「須賀くーん」
京太郎「あ、はいはーい。 今いくよ-」
京太郎「それじゃ行ってくる」
咲「……京ちゃん!」
京太郎「あん?」
咲「……待ってるから……ね?」
京太郎「……」
京太郎「おうっ」
京太郎「うん。 何からやるんだ?」
和「これといって特別なことはしませんよ」
和「須賀くんはネット麻雀をしてください。 私は横から見てます」
京太郎「ネトマかー」
和「あ、私のID使っていいですよ」
京太郎「おうサンクス」
京太郎「て……天使なんて段位があるのか……」
和「天使は10段になった後に免許皆伝試験を受けるとなることができますよ」
京太郎「へぇ……なんか難しそうな試験だな」
和「結構単純ですよ。 同じ10段の人と半日打って、ポイント総数で一位になればいいだけです」
京太郎「……半日?」
和「はい。 半日」
京太郎「……」
京太郎「いや、やっぱ和はすごいんだなって……」
和「わ、私のことはいいですからっ。 早く打ってください!」
京太郎「あ、はい」
京太郎「……」カチッ
和「……ふむ」
京太郎「……」カチッ
和「……うん」
京太郎「……」カチッ
リーチッ
和「……いいですね」
京太郎「……うん」カチッ
京太郎(なんか、気不味いな)カチッ
ロンッ
和「……うん」
京太郎「んっ、……」
和「あ、ここはこっちを打つといいですよ」カチッ
ムニュッ
京太郎「おおうっ!?」
和「?」
京太郎「あ、いやいや。 ……なんでもない」カチッ
和「そうですか? …あ、和了れますよ」
京太郎「あ、はい」カチッ
ツモッ
京太郎(今、背中におもちが……)
京太郎「うぅ……」
和「?」
和「うんうん」
京太郎「……」カチッ
和「いいですね」
京太郎(もっかいおもち来ねえかなぁ……)
京太郎「っと……」
和「あ、そこは……」
京太郎「こっちだな」カチッ
リーチッ
和「えっ?」
京太郎「っと来た、カンッ」 カンッ
和「ええっ?」
京太郎「んでもって……」
ツモッ
和「あれぇ!?」
和(狙って打った……? いや、でも須賀くんなら打ち間違えって可能性も……)
京太郎「ツイてたよ、和」
和「そ、そうですね。 今のはツイてましたね」
和(や、やっぱりツキですよね……。 良かったぁ……)
和「す、須賀くん。 今のはツイてたから良かったですけど、こっちを切ればより多面待ちになりますよ」
京太郎「え……? ……お、ホントだ。 俺、こういうの慣れないんだよなー」
和「大抵のネトマだと待ちを教えてくれますよね。 私はあまり好きじゃないからその機能切ってますけど……、戻しますか?」
京太郎「いや、いいよ。 自分で考える方が覚えられると思うし」
和「あら……」
和(意外ですね……。 てっきり戻すと思ったんですが……)
和「ふふっ」
京太郎「?」
京太郎「ありがとうございました!」
和「お、お疲れ様でした……」
京太郎「だ、大丈夫か? お疲れな様子だけど……」
和「お、お構いなく……」
和(まさか一試合で嶺上開花を4回も見るなんて……)
和(まるで咲さんのような打ち方……)
和(っ、……まさか……?)ジッ
京太郎「? 水、飲む?」
和「……」
和「はい。 ……頂きます」
和(……そんなわけないか)クスッ
咲「へ、へぇー。 それはよかったねー」
京太郎「? なにニヤニヤしてんだ?」
咲「べ、別にニヤニヤなんてしてないよっ!」
京太郎「あ、そう……」
咲(うわっ、わわっ。 どうしよどうしよっ)
咲(京ちゃんが私と同じような打ち方してたなんて……)
咲「嬉しい!」
京太郎「っ、! な、なんだよ突然……」
咲(一試合で嶺上開花4回とかもう偶然じゃないよね!)
咲(むしろここまで来たら運命だよねっ! すごいすごい!)
咲「えへ……えへへへ」
京太郎「いつにも増して不気味だ……」
咲「うわぁー満貫手に振っちゃったー。 でも5面待ちなんだし振ってもしょうが無いよねーえへへー」
京太郎「うーわ、ワザとっぽい口調。 つーかわざとだろ」
咲「すごいな京ちゃんいつの間にか多面待ちなんてできるようになってたんだねー」
京太郎「和と勉強したってさっき言ったろうが」
咲「すごいなぁ京ちゃんはー。 えらいえらーい」ナデナデ
京太郎「……」
咲「えへへー。えらーいえらーい」ナデナデ
京太郎「……まいっか」
京太郎「おら、連チャンだ連チャン! 次行くぞー!」
咲「はーい♪」
カンッ ! モイッコカンッ ! サラニカンッ ! ツモッ !
ギャー !
京太郎「げっ、倍満かよ」
優希「一本場のサービス付きだじぇー♪ おらー! 点棒よこせー!」
京太郎「ぐぬぬ」
咲「京ちゃん、別に無理に大きい手を狙う必要は無いんだよ?」
和「そうですよ。 さっきのだって、ピンフで流せる手でしたのに……」
京太郎「わかっちゃいるんだけどなぁ……。 中々大きい手で和了ったことがないもんだから……」
優希「それは流れが読めない証拠だじぇ!」
京太郎「優希……。 流れか……まだ俺にはわからねえな……」
優希「ふぅ……、やれやれ。 ダメ犬を持つと苦労させられるじぇ……」
京太郎「腹立つわぁ……」
優希「ふふふっ、ペットの責任は主人の責任……」
京太郎「?」
優希「喜べ京太郎! いっちょこのアタシがしごいてやるじぇ!」
京太郎「ああ、流れを掴む練習だとさ。 ……朝練なんて中学以来だな」ナデナデ
咲「ふぅん? 何時頃に行くの?」
京太郎「あっちが決める。 多分そろそろメールが来るはず」ナデナデ
♪~♪~
京太郎「と、噂をすれば。 どれ」
from:優希 『明日午前6時! 麻雀部にて! お前を待つ!』
京太郎「なんで決闘風なんだよ」カチカチ
咲「……」
京太郎「……ふふっ。 アホかっ」カチカチ
咲「むぅ……」
咲「京ちゃん! 手が止まってるよ! 続けなさい!」
京太郎「あ、ああ。 悪い悪い」ナデナデ
咲「んっ……。 ~♪」
―罰ゲーム:幼馴染の頭を撫でる。
京太郎「おはようございまーす」ガララッ
京太郎「……あれ? いねえな、アイツ」
「お、おお……主人より先に来るとは……。 殊勝な犬だじぇ……」
京太郎「おわっ! び、ビックリした……。 いきなり後ろから話しかけんなよ……」
優希「おおう……。 きょーたろー……大きい声出すなぁ……」
京太郎「わ、悪い……。 ……随分と眠そうだな」
優希「そりゃあ……一睡もしなけりゃこうなる……」
京太郎「は? 寝てないのかお前」
優希「ベッド入ると……ドキドキして眠気が来なかったんだもん……」
京太郎「翌日が遠足の幼稚園児みてえなこと言うなよ……」
優希「だって……」
優希「京太郎と打てるの……楽しみだったから……」
京太郎「……」
優希「そうだ……全部きょうたろーが悪い……」
京太郎「んで?どうするよ?」
優希「あー……きょーたろー……」
京太郎「はいはい。 ここにいるよ。 どうした?」
優希「ベッドまでおぶってぇ……」
京太郎「寝る気満々っすね」
京太郎「よっと……、お前軽いなぁ」
優希「あう……ちっこい言うな……」
京太郎「言ってない言ってない。 ほら、ベッドだぞ」
優希「あー……きょーたろー」
京太郎「なんだー?」
優希「あり……がと……」
京太郎「……おう。 しっかり寝ろよ」
優希「……タコスの匂い……」
優希「タコス!?」バッ
京太郎「タコスの匂いで起きるなんてお前らしいな」
優希「きょ、京太郎! 今何時だ!?」
京太郎「7時40分くらいか。 まだ寝足りないだろうけど、とりあえずこれ食っとけ」スッ
優希「タコス……。 わざわざ買ってきたのか!?」
京太郎「まさか。 俺特性の朝食用タコスだ。 俺なりに研究して作ってみたんだ」
優希「お、おおお……京太郎特性……!」
京太郎「ほら、冷めねえうちに食っちまえ」
優希「う、うん! 頂きますじぇ!」パクッ
京太郎「……味はどうだ?」
優希「うん! 美味いじぇ!!」
優希「毎日食べたいくらい!!」
京太郎「様子が様子だったからなぁ。 食った後は暴眠してたし」
京太郎「だからまた今度の日にすることになった」
咲「なんかふんだり蹴ったりだね、京ちゃん」
京太郎「まぁ優希だからな。 そこら辺は諦めてる」
咲「あははー」
咲(なにこの『アイツのことは俺が一番解ってる感』……)
京太郎「ああ、それと。 試食してもらってた朝食用タコスだけどさ」
咲「ああ、あれ? タコスなのに軽く食べられるから好きなんだよねー」
京太郎「明日から毎朝優希に作ってやることになった」
咲「へぇ~」
咲「………へぇ!!?」
京太郎「あいつが毎日食べたいくらい美味いって言うからさ」
咲「ええっ!?」
咲(そ、それって……)
京太郎「……っと、優希からだ」
from優希:『タコスが楽しみで眠気が来ない! どうしてくれる!!』
京太郎「んな理不尽な……」カチカチ
咲「……」
京太郎「……ったく……。 しょうがねえな……」
咲「……むぅ」
京太郎「……ははっ。 アホらしっ」
咲「~~!!」
咲「京ちゃん! メールしてる場合じゃないよ! まだ東風一回しかしてないんだから!」
京太郎「え? 今日はもう終わりってさっき……」
咲「知らないもん! ほら、卓に着いて! 早く罰ゲームするんだから!!」
京太郎「趣旨が違くなってねえか!?」
咲「うー!!」
京太郎「わ、わかったよ。 そんな睨むなって……」
京太郎「 」
咲「四槓子四連刻四暗刻単騎!」
京太郎「 」
咲「ロン!」
咲「大四喜字一色八連荘!」
京太郎「 」
咲「ロン!!」
咲「純正九蓮宝燈!!!」
京太郎「 」
咲「まだまだいくよ……!」
京太郎「ちょ」
咲(京ちゃんは絶対に……渡さないんだから!!)
カンッ! ギャー!
―――――――――― おしまい。
許してくれよ……
読んでくれてありがとう
暇つぶしでここまで書いたのは久々かもしれん
また会ったらよろしく
和「麻雀上手になりましたね、須賀くん」 京太郎「そうか?」
引用元: http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1350714110/
京太郎「ここはこっちかな」
和「うん……牌効率がしっかりしてますね。 ちゃんと裏ドラも見てますし」
京太郎「あれ以来裏ドラが何か当てるのが楽しくなっちゃってさ。 ……っと」
リーチッ
京太郎「うげっ……安牌無い……」
和「捨て牌見るにそこまで心配するほどじゃないと思いますけど……」
京太郎「そ、そうなの?」
和「ええ。 多分……123か234での三色。 待ちは1-4mか2-5じゃないかと」
京太郎「ぜ……全然わかんねぇ……。 ……あっ」
ツモッ. サンショクドージュンッ
京太郎「ほ、ホントに下の三色だ……!」
和「えっへん」
京太郎「やっぱ和はすごいなぁ……」
和「ふふっ。 それほどでもっ♪」
和「どういたしまして。 お疲れ様です」
京太郎「後半、和に頼りっぱなしだった気がする……」
和「須賀くんは基礎と牌効率はわかってきても、捨て牌読みはまだまだなんですね」
京太郎「うぐっ……。 で、でも嶺上開花を4回も決めたぜ!」
和「そ、それはたまたまです! 今日はたまたま運が良かっただけです!」
京太郎「そうなのかなぁ……。 咲の打ち方を真似してだけなのに……」
和「そんなオカルト……ありえませんよ……」
京太郎「じゃあ、俺こっちだから」
和「はい。 気をつけて帰ってくださいねっ」
京太郎「そりゃこっちのセリフだよ」
京太郎「おやすみ、和」
和「ええ。 おやすみなさい、須賀くん」
京太郎「うーん………。 ま、マンズの3-6?」
咲「ぶー。 正解はソウズの1-4でしたー」
京太郎「ま、まるで違う……。 ……次」
咲「……これは?」
京太郎「何だこの捨牌……。 ……ヤオチュウ牌……だと思うけど……」
咲「よく見てよ京ちゃん……ピンズが1つもないんだよ?」
京太郎「あっ……」
咲「ダメダメだね!」
京太郎「ぐぬぬ……」
咲「ふふ……」
咲(悔しがってる京ちゃん……可愛いなぁ……)
咲「つ、次行こ! 次!」ハァハァ
京太郎「息荒いなお前」
咲「結局一回も当たらなかったね。京ちゃん」
京太郎「んなこと言ったって……捨て牌だけで待ちを正確に当てることなんて出来るわけねえよ……」
咲「京ちゃんの場合、おおよそすら当たらないじゃん?」
京太郎「……うっせ」
咲「えへへっ」
咲「さーて罰ゲーム、罰ゲーム」スッ
京太郎「あれ……。 箱おっきくなってねえか?」
咲「え? そ、そうかな~?」
京太郎「前の箱……それの半分位だった気がするんだけど……」
咲「き、気のせいだよ。 うん、気のせい気のせい!」
京太郎「そうだったっけ……」
咲「ぶ、ぶつくさ言わずにさっさと引く!」グッ
京太郎「痛い痛い! わ、わかったから押し付けんなって!」
咲「ううー!」
咲「んー? 待ち牌読みのことー?」ゴロゴロ
京太郎「ああ……。 数こなすのが一番ってのはわかるんだけどさ……」
咲「今日だって和ちゃんと一緒にお勉強したんでしょ?」
京太郎「和には牌効率について重点的に教わってるからな。 捨て牌読みはそんなに……」
咲「んー……。 じゃあさ、牌譜読んでみればいいんじゃない?」ゴロゴロ
京太郎「牌譜? 牌譜か……。……でもウチにそんなのねえし……」
咲「そこの本棚にいくつかあるよ。 好きにとってっていいよ~」ゴロゴロ
京太郎「おお、助かる」
咲「それじゃ、牌譜貸す代わりに後10分追加ね~」ゴロン
京太郎「えぇ……。 いい加減膝疲れてきたんだけど……」
咲「~♪」ゴロゴロ
京太郎「聞いちゃいねえわ」
――罰ゲーム:幼馴染に膝枕
京太郎「……? 何でここで5s打つんだ……?」ペラッ
京太郎「あ、通るのか……。 うーん……」ペラッ
京太郎「あー………」ゴロン
京太郎「……駄目だ……さっぱりわかんねぇ……」
「なんじゃ京太郎。ダレとるのぅ?」
京太郎「あっ」
京太郎「まこ先輩」
まこ「ようっ」
京太郎「んっ……。 そうなんすけど……」
まこ「ん?」
まこ「ふむ……なるほど」
まこ「待ち牌読みの為に牌譜を読み始めたはいいもののさっぱり身につかない、と」
京太郎「はい……」
まこ「この牌譜……プロの牌譜じゃな。 京太郎にはまだ難しいじゃろうに」
京太郎「全ッ然考えがわかりません……。プロは何見て打ってるんんだ……」
まこ「あー……」
まこ「京太郎。 ちょっくら待っとれ」
京太郎「?」
京太郎「……」
まこ「とは言っても今日は客じゃがのうっ」
京太郎「あの……確かにリアルの方が良いとはいいましたけど……」
京太郎「なんでまたメイド雀荘なんすか」
―――
――
―
まこ『多分お前は文字面で見たところでイメージが湧かんじゃろ』
京太郎『んまぁ……できればリアルの牌のほうがわかりやすいっすね』
まこ『じゃろ? んなら話は早い。 行くぞ京太郎』
京太郎『へ? 行くって……どこへ?』
まこ『決まっちょろう?』
まこ『リアルで打てる所じゃ』
咲「お、おかえりなさいませ……」
和「おかえりなさいませっ、須賀くん」
京太郎「さ、咲に和! どうしてここに……」
まこ「わしが呼んだ。 ……つーか呼ぼうとしたらあっちから来たんじゃ」
京太郎「へぇぇ……。 流石、和。 メイド服もよく似合う」
和「そ、そうですか? ふふっ、ありがとうございますっ」
咲「……。 ……きょ、京ちゃん!」
京太郎「おう?」
咲「お、おかえりなさいませ……ご、ご主人様っ」
京太郎「……」
咲「……」
京太郎「……」
ナデナデ
咲「! ……えへ、えへへ……」
和「はい。 じゃあ私はあそこの雀にでも……」
咲「い、イチャイチャなんて……してないもん……」
スタスタ...
京太郎「……それで? 俺も一緒に打ってこいって事すか?」
まこ「んーにゃっ、ちと待っとれ。 あと一人、待ち人がおる」
京太郎「……?」
まこ「この雀荘はノーレートなんじゃがな。 それでも好んでここに来るプロ雀士がおる」
京太郎「……そ、それって」
まこ「そう。 ……人は彼女を」
まこ「『まくりの女王』と呼ぶ」
ガチャッ
藤田「ふいー。 まこー、カツ丼おねがいねー」
藤田「ん……。 例の子がその子?」
まこ「そうです。 一年の須賀京太郎です」
京太郎「あ、どうもっ」
藤田「ふぅん……。 走りだしの新米って感じね……」
京太郎「むっ……」
まこ「京太郎。 今日はお前、打たなくていい」
京太郎「えっ?」
まこ「藤田さんの打ち筋を見せてもらえ。 そんで考えろ」
京太郎「は、はぁ……」
まこ「……いいか? 京太郎。 これはちゃんと覚えとけ」
まこ「藤田さんは、プロじゃ」
京太郎「………」
京太郎「おっ……」
京太郎(東一局、6巡目でチートイ一向聴……)
京太郎(このままリーチ……か?)
藤田「……」
藤田「気に入らないわねっ」チャッ
京太郎「えっ!」
京太郎(りゃ、二向聴に戻すか? 6巡目だからって余裕持ってんのか……?)
藤田「……」チラッ
京太郎「……?」
藤田「……ふふっ」
藤田(わっかんないだろうねぇ……。 トーシロちゃんにはっ……)
京太郎「……な、なんだと……」
京太郎(結局6巡目チートイから……わずか4巡でメンタンピンイーペーコードラドラの跳満手……)
京太郎(あのままチートイで引っ張ってったら……テンパイが出来なかった……)
京太郎(それどころか……!)チラッ
モブ「あっちゃぁ……。 和了りは純カラだったかぁ……」
京太郎(当たり牌を阻止しての和了り……!)
京太郎(チートイだったら振ってたかもしれない……)
藤田「ふふっ……」ニヤニヤ
藤田「どうよ? 少しは勉強になりそうかね?」クルッ
京太郎「……っ、」
京太郎(場の流れを読む力と相手の当たり牌を事前に読む能力……)
京太郎「これが……プロかっ……!」
まこ「ありやとーしたー」
バタンッ
まこ「……どうじゃった? 少しは勉強になれそうじゃったか?」
京太郎「……」ブツブツ
まこ「……ん?」
京太郎「降りる様に攻め、攻めるように降りる。 テンパイ気配は悟られないようにする。 流れは掴んだら離さない……」ブツブツ
まこ「……お、おう……」
京太郎「んっ……、ああ、まこ先輩」
まこ「わりゃぁ大丈夫か? 顔が赤うなっとるが……」
京太郎「ああ……。 ちょっと興奮気味でして…・…。 やっぱプロはすごいっすね……」
まこ「……得たものは合ったか?」
京太郎「はい! 間違いなく!」
まこ「……ふっ。 そうかそうか」
ナデナデ
京太郎「……うっ」
まこ「じゃが、素人らしい吸収力がある。 お前の持ち味はそこじゃ」
京太郎「……」
まこ「見たモノをしっかりと刻み、そして活かす力が……お前にはある」
京太郎「……」
まこ「焦るな京太郎。 大丈夫、お前は日々強くなっとる」ナデナデ
京太郎「……」
京太郎「……どうも」
まこ「ふふっ」
まこ「……若さにまかせて突っ走るのもええじゃろが、無茶だけはするなよ?」
まこ「お前を待っとる子がおるんじゃから」スッ
京太郎「?」
咲「京ちゃーん!!」
まこ「ふふっ……咲に心配かけたらゲンコツ食らわしたるわ!」
京太郎「そ、それは嫌ですね……ハハッ」
まこ「……そら、行ってこい」
京太郎「……はいっ!」
京太郎「ありがとうございましたっ!!」
ダッ...
まこ「ふぅ……」
まこ「………わしにも子供ができたらあんな感じなのかねぇ……」
まこ「………」
まこ「……京太郎が子供……か」
まこ「ふむ……」
まこ「悪くないな」ニヤリ
咲「こ、これはっ?」
京太郎「……1-4-7s。 役は多分……一気通貫……かな?」
咲「す、スゴイスゴイ! 大正解だよ京ちゃん!」
京太郎「おー当たったか」
咲「一日でこんなになるなんて……。 ……雀荘行った甲斐があったね!京ちゃん!」
京太郎「おうっ」
京太郎「つーわけで今日は罰ゲームしなくていいよな?」
咲「えっ……」
京太郎「そ、そんな泣きそうな顔しなくても……」
咲「そ、そうだよね……京ちゃんは上手くなったんだし……」
京太郎(めっちゃ涙ぐんでる!!!)
咲「……罰ゲームの必要は……もう……」
京太郎「……・あー」
咲「っ、」ピクッ
京太郎「今日はどんな罰ゲームやる予定だったのかなー。 気になるなー」
咲「き、気になる!!?」
京太郎「うおっ」
咲「そ、そんなに興味があるならやってあげようかなー」
京太郎「お、おうおう! 興味津津!」
咲「えへへ……しょ、しょうがないなぁ~京ちゃんはぁ……。そんなに言うんだもん、仕方がないなぁ~……」ゴソゴソ
京太郎「ははは……う、嬉しいなぁ~……」
京太郎(傍から見たら俺、ドMみたいだ)
ナ,ナンデ メイドフク モッテキテンダヨッ !!
ニアウカラッ! ゼッタイニアウカラッ!!
イ,イヤダ-!! ソレダケハイヤダー!!!
和「私は持ってないですよ」
咲「あ、9pなら一枚……」
京太郎「ああ、やっぱ6-9pだったか」
優希「じぇ?」
京太郎「ホラよ」パタッ
優希「じぇじぇー!? 6pカンツ持ちに9p頭ー!?」
京太郎「あと多分……槓ドラ裏ドラに9p一枚……かな」
和「お見事っ。 次の槓ドラが9pですね」
咲「京ちゃんすごーい……」
優希「ぐぬぬ……。た、たまたまだじぇ! 偶然だじょ!」
京太郎「ハハハッ。 はいはい、偶然偶然」
優希「その余裕腹立つじぇー!!」
久「……ふぅん?」
まこ「朝は優希と。 放課後は和。 帰ったら咲とお勉強じゃからのぅ。 そりゃ強うなるわ」
久「ず、随分タイトなスケジュールね……。……なんでアンタ知ってんの」
まこ「京太郎から聞いた」
久「あ、そう……」
咲「カンッ! ……っと、ツモッ! ツモ嶺上開花トイトイ……かなっ?」
京太郎「それ四暗刻じゃねえか! トばされたー!!」
優希「お、親っかぶり……」
和「さ、咲さんも絶好調ですね……」
咲「そ、そうかな? ……えへへ」
久「……咲も順調ね」
まこ「ああ……前より強うなっとる気がするわ」
久「……」
久(須賀くんのおかげ……かしら……)
和「私も、負けてられませんね……!」
咲「負けないよぉ……!」
京太郎「おお……めっちゃやる気だ……」
久「ほぉ……」
久(みんなのモチベーションが上がってる……須賀くんを中心に……)
久(須賀くんが上手くなるほど……部のまとまりがより強くなる……)
久「……ふむっ」
久「咲。 交代してくれない?」
咲「部長」
京太郎「あ、なら俺が代わりますよ」
久「いや、須賀くん。 あなたはかわらなくていいわ」
京太郎「そっすか?」
久「ええ……」ニヤ
咲(……? な、なんか……怖い……)
京太郎「おっと……」
京太郎(今出したのは3s。その直前に8s切りだから……)
京太郎(典型的間四軒……。 4-7s待ちで2sは通るな……)
京太郎「俺もリーチです」チャッ
久「あら、強気ね。 ……でも忘れてない? 須賀くん」
京太郎「?」
久「私の打ち方がどんなものか……ってこと……!」
京太郎「……あっ!」
久「ふふっ。 ロン、よ」パタッ
和「三枚切れの2s待ち!? こっちを切るほうが待ちは多いのに……」
久「裏が2つのってリーチ一発ドラ4。 12000よ、須賀くん」
京太郎「ぐっ……」
久「さぁ……」
久「次、行きましょ?」
久「ま、こんなもんね」
和「三連続ハコテンとは……」
優希「アハハハ!! ざまあないじぇー!」
京太郎「うるせえこのやろ!」グリグリ
優希「ギャー!!」
久「さってと。それじゃ、生徒会の仕事残しちゃってたから行ってくるわ」
まこ「おーう」
久「咲、咲」
咲「あ、はい」
久「須賀くん、基礎はもう大丈夫だけど応用が全く出来てないわ」
咲「あー……。 やっぱり……」
久「そろそろステップアップしてもいい頃だと思うわ」
咲「……うーん……」
京太郎「んー……。 応用なぁ……よくわかんねえなぁ」
京太郎「牌効率がわかって、相手の待ちが読める様になって、流れがつかめればいいんじゃねえのか?」
咲「確かに基礎がしっかりできるのは良いことだよ」
咲「でも逆に、基礎しか出来てないんじゃそこを狙い撃ちされちゃう」
京太郎「今日の部長みたいに、かぁ……」
咲「京ちゃんはどんな打ち方がしてみたい?」
京太郎「んー……あんま考えたことないな……」
咲「じゃあ個人のフォームを持ってみる、とかどう?」
京太郎「?……どういうことだ?」
咲「例えば私は嶺上開花の流れを読んでそれを応用にしてる。 和ちゃんは基礎を超えたデジタル麻雀だし、優希ちゃんは速攻の達人」
咲「自分にしか無いフォームを作るのっ」
京太郎「はぁ……なるほど……」
咲「あ、それだよ京ちゃん。 ロン」
京太郎「げっ」
咲「ちょっと考えがブレちゃったかな。ごめんね、京ちゃん」
京太郎「いや、別にいいよ。 確かに俺なりのフォームってのが欲しいと思ってた頃だし」
咲「いい心がけだねっ。 ……あ、ドラが6つ乗った」
京太郎「……はっ?」
咲「面前混一色三槓子ドラ6赤2……。 役満だねっ」
京太郎「……これで今日5回目のトビ……」
咲「えへへ……ごめんねっ。 はいっ、罰ゲームっ!」スッ
京太郎「……またメイドフクを着る……とか無いよな……?」
咲「な、無いよナイナイ! 大丈夫だから、安心して罰を受けてねっ!」
京太郎「変な日本語だ……」ゴソゴソ
咲「トんだから三枚引くんだよー」
京太郎「わかってらい」ゴソゴソ
咲「一枚目ー」
『幼馴染についてどう思うか』
京太郎「……なんだこれ」
咲「どう思います?」
京太郎「いや、そんな他人事の様に聞かれても……十中八九お前のことだろ」
京太郎「言うの?」
咲「言うの!」
京太郎「あー……なんていうかそのー……」
咲「うんうんっ」ドキドキ
京太郎「恥ずかしいけれど……」
京太郎「無くちゃならない存在、かな」
咲「 」
京太郎「麻雀がこんなに楽しいなんて知らなかったし……」
京太郎「言っていいのかわかんねえけど、まぁ……強くなってきてるみたいだし?」
京太郎「元をたどれば全部お前のおかげなんだよなっ」
咲「あ……あう……////」
京太郎「毎日俺の面倒見てくれて、ありがたいったらない」
京太郎「それに、お前と一緒だと麻雀がすごく楽しいんだ」
咲「そ、そんな……////」
京太郎「俺の人生……もう半分はお前のもんだよ……」
咲「京ちゃん……」
京太郎「咲……」
―――
――
―
咲「なんてことになったりして! キャー!」
京太郎「な、なにトリップおこしてんだ……?」
京太郎「いや……幼馴染は幼馴染だろ」
咲「そーいうのじゃなくてぇ……もっとこう……」
京太郎「なんだよ? 超えるべきライバル、とでも言えばよかったのか?」
咲「な、なんか嫌だ……」
京太郎「だろ?」
咲「うー……」
京太郎「………」
京太郎「咲」
咲「?」
京太郎「確かにお前は俺の幼馴染でそれ以下でも以上でもない。 ……だけどな?」
咲「う、うん」
京太郎「少なくとも、今の俺があるのはお前のおかげだよ」
咲「ふぁ」
咲「……////」
咲「そ、そんなこと無いよ……」
咲「……すごく嬉しい……」
京太郎「それじゃ、また明日な」
咲「う、うん……またね……」
咲「きょ、今日やったことを明日にも活かせるようにするんだよ?」
京太郎「おーう。 じゃーなー」
咲「……」
咲「今の京ちゃんは私のおかげ……」
咲「……えへへっ……」
咲「……あっ!!」
咲「あと二枚! 引いて無いよ京ちゃん!」
京太郎「っ、」ギクッ
京太郎「じゃ、じゃあな~!!」ダッ
咲「こ、こら~!!」
京太郎「そりゃそうか。優希だもんな」
優希「……今の馬鹿にされた?」
京太郎「いや、褒めたつもり」
優希「そうかそうか!」
優希「アタシはただ流れに乗せて打ってるだけだじぇ」
優希「東発でとにかく決める!速攻ってかっこええべ?」
京太郎「南場は逃げるってかっこ悪いな」
優希「うるじぇー! 南場は流れが来ないだけだじょ……」
京太郎「ふむ……。 でもなんだかんだで優希の打ち方はわかりやすいよな」
優希「だろ? ほら、アタシ凄い!」
京太郎「ああ、ホント単純だよなお前は」
優希「……今の馬鹿にされた?」
京太郎「いや、褒めたつもり」
優希「そうかそうか!!」
京太郎「和もか……」カチッ
和「打ち方なんてものは自然と出来てるものだと思います。 私の場合はデジタル麻雀だったんですよ」
京太郎「やっぱそんなもんなのかなぁ……」カチッ
和「……あ、そこは」
京太郎「こっちだろ? 牌効率考えたらこっちのほうが良いよな」カチッ
和「あ……はい……」
京太郎「フォームなぁ……。 んっ」
リーチッ
和(さ、三巡目リーチ……)
京太郎「わっかんねぇなぁ……・。っと」
カンッ
和(ど、ドラ4……)
京太郎「どうすりゃいいんだろ……。 あ、ツモった」
和(SOA……)
京太郎「ん? いや、ツイてたよ」
和「で、ですよねぇ……」
京太郎「ただ、なんとなく……」
京太郎「咲と和と優希のマネして打ってみようと思っただけだよ」
和「………」
和(もしかして……須賀くんのフォームって……)
京太郎「部長ー」
久「あら、須賀くん。 今、生徒会の仕事中だから……」
京太郎「あの、部活ん時俺とまた打ってくれませんか?」
久「? 構わないわよ?」
京太郎「よっしゃ! 楽しみだ!」
久「……」
久(昨日あれだけやったのに、随分と元気ね……)
久「それじゃあ、始めましょ」
京太郎「よろしくお願いします」
優希「まーす」
まこ「よろしゅう」
久「さて……と……」
久(また沈んてもらいましょうか……!)
久「リーチよっ」チャッ
京太郎「むっ」
和(部長の先制リーチ! ……須賀くんは?)
京太郎「………」
京太郎(最初の赤5p打。 その後も中張牌をまんべんなく切ってる……)
京太郎(普通ならチャンタ型の端っこ待ち……。 ……だけど)
久「ふふっ……」クスッ
京太郎(部長……だもんなっ!)
打1m
久「あら」
京太郎「……通し、ですか?」
久「ええ……通しよ」
優希「危なっかしいとこ切るじぇ……。 ベタオリベタオリっと……」打4p
久「ごめんなさい、それよ。 ロン」
優希「じぇー!? 第一打赤5pなのに間4p待ちー!?」
京太郎(……よっし。 やっぱり最初の一打はフェイク)
京太郎(『部長なら』……きっとそう打つはず……!)
久(これぐらいの待ちは読めてるってことかしら……)
久(ふふっ……面白い子……)
京太郎「んっ……!」チャッ
京太郎(いきますよ……部長!)
京太郎「ダブルリーチ!」ダッ
久「!」
京太郎「きましたっ、ツモッ! 4000オール!」
まこ「は、はえぇ……」
優希「そ、そういうのウチのお株なんですけど!」
京太郎「おう。 だからマネしてみたぜっ」
優希「んだとー!?」
久(本当に……優希のような打ち筋……)
久(……まさか……!)
久「むむっ……」
和(凄い! ムダヅモ無しの満貫和了り……! 卒のない打ち方……!)
咲(まるで……和ちゃんのような……)
まこ「い、勢い付いてきおったな……」
久「リーチッ!」チャッ 打:4p
久(1p7pのバッタち……これなら?)
和(上手い! ピンズの処理を早めにしてからの4pで引っ掛け……!)
和(いくら須賀くんでもこれは……)
京太郎「………」
京太郎(……咲なら……どう打つ?)チラッ
咲「あっ……」
咲「……」グッ
京太郎「………」グッ
京太郎(そりゃ……そうだよな……!)
京太郎「その4pカンッ!」
久「なっ!」
京太郎「まだいきますよ!」
京太郎「んもいっこカンッ!」 5pカン
優希「おおおっ!?」
京太郎「まだまだっ!」
京太郎「さらに、カンッ!」 6pカン
まこ「なんじゃと!?」
和(こ、これで……)
和(これで……部長と同じ待ち……!)
和(1pと7pのシャボ待ち!!)
京太郎(和了れはしないけど振込もしない……)
京太郎「これで……どうです……!」
優希「ノーテンだじぇ……」
京太郎「……部長……あなたの待ち、当ててみますよ」
久「、っ……」
京太郎「1pと7pのバッタ待ち……。 そうでしょう?」
京太郎「俺もそうですから」パタッ
久「……」
まこ「え、えーっと……親は優希のオーラス。 京太郎と部長に1500ずつだから……」
和「ど、同点……! 須賀くんと部長が、同点!」
優希「親に近い方優先だから……」
京太郎「あー……ははっ。 一歩及ばなかったなぁ……」
久「私の……勝ち……か……」
久「………」
まこ「? ……部長?」
久「あ、あー! そういえば生徒会の仕事、まだ残ってたわ!」
咲「へ? それ、昨日終わったはずじゃ」
久「ちょっとだけ残しちゃったの! だから行かなきゃー!」
久「みんなお疲れ様! 気をつけて帰ってねぇー!!」ダッ
バタンッ....
優希「……あっという間に行っちゃったじぇ……」
まこ「……なんじゃありゃ……」
まこ(部長が……顔真っ赤じゃった……)
久「はぁ……はぁ……」
京太郎『部長……あなた待ち、当ててみますよ』
京太郎『1pと7pのバッタ待ちでしょう?』
京太郎『俺もそうですから』
久「~!!」ブンブンブン
久(なによなによなによ! 何があなたの待ち当ててみせるよ!)
久(私と同じ待ちってなによ! そんなんでドヤ顔してんじゃないわよ!)
久(すっごくすっごくすっごく……!!)
久「ドキドキしちゃう……」
久「うわぁ……うわぁああああわわわわわ……!」
―
久「ふうぅ……。 なんとか収まったぁ……」
久「………」
久「あの打ち方……まるで咲のようだった……」
久「狙って? ……それにしては出来過ぎてる……」
久「……私が言えることじゃないかっ……」
久(あ、やっぱりまだドキドキしてる……)
久「……麻雀打ってこんなに胸打つの、久々だわ……」
久「………」
久「ふふっ……」
久「……あーあっ」
久「これだから麻雀って面白い!!」
京太郎「あ、ああ。 ありがとう」
咲「惜しくも部長に一歩届かなかったけど、それでもよくやったよ!」ナデナデ
京太郎「そ、そうか」
咲「えへへへ……。 京ちゃんの先生としては、お鼻が高いですよぅぉぅぉぅ」ナデナデ
京太郎「久々に怖いよお前」
咲「今日の試合で京ちゃんが一回りも二回りも大きく見えるよ」
京太郎「そりゃどうも。 まぁ確かに、得たものは大きかったな」
咲「でもこれで京ちゃんのフォームができたねー」
京太郎「えっ?」
咲「えっ?」
京太郎「俺……なんかフォーム出来てたか?」
咲「……」
咲「えっ?」
咲「きょ、京ちゃん。 打ってる時なにか意識してなかった?」
京太郎「ん? いや、特には」
咲「……」
京太郎「…・…ただ」
咲「?」
京太郎「『もし咲だったらどう打つかな』ってことだけ考えてた」
咲「………」
ナデリ
京太郎「んっ」
咲「もぉ~京ちゃんは~!」ナデリナデリ
京太郎「な、なんだよ」
咲「ほんとにもぉ~。 京ちゃんはぁ~!」ナデリナデリ
京太郎「な、なんか、いつもと撫で方が……」
咲「もぉ~。 しょうがないんだからぁ~」ナデリナデリ
京太郎「合宿ですか?」
久「そうよ。 長野4校合同合宿」
優希「龍門渕と~風越と~鶴賀と~」
まこ「そんでウチら清澄の4校での合宿じゃ」
和「県の団体決勝4校での合宿……ですか」
京太郎「そりゃ凄いな」
咲「衣ちゃんとまた打てるのかぁ……」
久「まぁそんなわけで、夏休み中に一週間の合宿をします」
久「周りは因縁付けた高校ではあるけれど、合宿中は共に戦う友達」
久「変な争いごとは避けるように」
咲「はい!」 優希「じぇー」 和「はい」 まこ「あいあい」
京太郎「それじゃあ俺はお土産を期待して待ってますよ」
久「えっ? 何言ってるのよ」
久「あなたも来るのよ? 須賀くん」
まこ「えっ」
優希「えっ」
和「えっ」
咲「えっ」
京太郎「 」
京太郎「 えっ? 」
―――続く?
6時間近くもありがとう
合宿編は龍門渕、風越、鶴賀とばらばらで書いてみたいとは思う
改めて読んでくれてありがとう
また会ったらよろしく
Entry ⇒ 2012.11.05 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
翔太「社会のゴミどもが……」P「え?」
冬馬「急にどうしたんだよ」
P「ゲームにでも影響されたか?」
翔太「ほんと何でもないから」
北斗「それにお前腕怪我したのか? 昨日まで包帯なんてしてなかっただろ」
黒井「う、腕に包帯だと……」
翔太「気にしないで。あと僕にあまり近づかないほうがいいよ」
冬馬「は?」
翔太「僕といると不幸になるから……」
冬馬「まさか翔太……お前……」
翔太「ぐぁああああ!!」
北斗「翔太!? どうしたんだ!」
翔太「っは……! ぐぅ……!」
北斗「大丈夫か!? やっぱり腕を怪我してたのか!?」
翔太「だ、大丈夫……少し邪気にあてられたかな」
北斗「ジャキ? お前ほんとにどうし……皆までうずくまって何やってるんです?」
黒井「これは不味いな……」
P「翔太! 俺達買出しに行ってくるけど何か欲しいのあるか?」
翔太「コーヒー。ブラックで」
北斗「俺もコーヒー頼もうかな」
冬馬「北斗は一緒に来るんだよ! 行くぞ!」
北斗「あっおい!」
翔太「ちっこんな時に奴らが……」
黒井「翔太め……とうとう発症してしまったか」
北斗「どうしたんです一体。買出しより俺は翔太が心配なんですが」
冬馬「心配だから抜け出したんだよ……」
P「北斗は今の翔太に心当たりはないのか?」
北斗「全く。どこかで怪我でもしたんでしょうか」
冬馬「翔太はな、病気になっちまったんだ」
北斗「え……?」
P「思春期の少年少女、とくに夢見がちな少年に発症しやすい病気なんだ」
北斗「なんという病気なんですか? 本当なら病院に連れて行かないと」
黒井「病名は……中二病だ」
黒井「早期治療が非常に困難な難病だ。10代前半から半ばにかけて最も発症しやすい」
P「北斗は子供のころヒーローに憧れたりしなかったか?」
北斗「まぁそれなりには。特撮モノとかも見てましたし」
黒井「大人になったら正義の味方やマグマ大使になりたいと思ったことはあるだろう」
北斗「マグマ大使は知りませんが……そんな時もありましたね」
冬馬「翔太は今まさにその状態なんだよ」
北斗「えっ」
P「突然事務所に突入してきたテロリストを一人で片付けるダークヒーローみたいな」
P「そういったキャラクターになりきってるんだ……」
北斗 「ははっそんなおかしな人いるわけないじゃないですか」
冬馬「いるんだなこれが」
黒井「まぁ経験者でなければわからんか……」
北斗「じゃあどうすればいいんですか?」
黒井「時間が経てば収まる。個人によるがな」
P「俺は冬馬もあっちの気があると思ってたんだが」
冬馬「何も言わないでくれ……」
P「わ、悪い」
黒井「とにかく今は翔太に刺激を与えるなよ」
P「包帯とか眼帯つけててもスルーしてやるんだ」
冬馬「触れれば触れるほど後のダメージがでかいからな……」
北斗「まぁ体に異常が無いのならそれでいいですけどね」
P「いいんだそれで」
P「た、ただいまー。コーヒー買ってきたぞ」
翔太「ふんふん」シャカシャカ
翔太「あ、おかえりー」
北斗「珍しいな音楽聴いてるなんて」
翔太「うん! すっごい名曲だよ!」
冬馬「そ、そうか! よかったな! よしじゃあストⅡでもやろうぜ!」
北斗「誰の曲なんだ?」
翔太「Nightwish」
P「ぐわぁああああああ!!」
冬馬「ひぃいいい!」
黒井「う、うろたえるんじゃあない!王者はうろたえない!」
北斗「聞いたこと無いな」
翔太「うん。最近洋楽にハマってさ」
北斗「へぇー」
えらく古いのを
ランシドとかミスフィッツだろ
冬馬「ば、馬鹿!」
翔太「ん……まぁ程ほどにね」
P「こんな事務所にいられるか! 俺は765に帰らせてもらう!」
冬馬「おい! 見捨てる気かよ!」
翔太「所詮僕とプロデューサーさんは敵組織……相対する存在なんだね」
P「そ、そんなこと言うもんじゃないぞ……とにかく仕事の後処理もあるしこの辺で」
北斗「チャオ☆」
P(少しでも早期治療できるようにこちらでも調べて起きますよ)
黒井(頼んだぞ)
冬馬「なんてこった……」
翔太「これでまた一人守ることができた……」
北斗「なんだって?」
翔太「いや、なんでもないよ」
ガチャ
P「ただいま戻りましたー」
千早「お疲れ様です」
あずさ「お帰りなさい~プロデューサーさん」
P「ふむ」
あずさ「どうしました?」
P「例えばの話なんですけどね」
P「中間考査や期末考査が制限時間より早く終わってしまった場合、どうしてました?」
千早「また妙な話ですね」
P「ちょっとな」
あずさ「うーん私は毎回時間ギリギリまで問題を解いていたので……」
P「千早は?」
千早「見直しをして、それでも時間が余れば歌の事を考えています」
P「模範的だな……」
P「お、俺か……」
あずさ「あ、私も気になります! こういう話って楽しいですよね~」
P「俺は……そうだな」
千早「はい」
P「文化祭ジャックをしてライブする妄想とか……」
律子「」ピクッ
P「強盗が学校に入ってきて突然目覚めた特殊な能力で撃退する妄想とか」
小鳥「……」ガタガタ
伊織「そんなのするわけないじゃない」
P「あぁ、だがホシは見つかったようだな」
千早「プロデューサーの意図がまったくつかめません」
P「律子、音無さん、少しお話があるので別室に来てもらえますか」
小鳥「私は自分の設定をノートに書き溜めたりなんかしてませんでしたよ!!」
P「いや、そんなこと言ってないんで……ちょっと経験者達の知恵を借りたいんですよ」
律子「はぁ」
P「知り合いが発症してしまって、治療法を模索してるんです」
小鳥「治療法ですか……」
律子「そんなの一喝して現実を突き付ければいいじゃないですか」
小鳥「それでショックを受けて引き篭もりとかになったりしたら大変ですよ」
P「やっぱり自然治癒に期待するしかないのかな……」
小鳥「ある日ふと気づくんですよ。あーあのころの私ってヤバかったなぁって」
P「俺もそんな感じでしたね」
律子「私は……」
P「律子は?」
律子「いとこにキモいって言われて……」
律子「それで……」
P「もういい、いいんだ律子。ごめんな」
小鳥「済まぬ……」
律子「いえ……」
小鳥「どんな感じなんですか? その人は」
P「急にコーヒーを飲み始めたり、上司らしき誰かとお話してたり」
律子「重症ですね……」
P「あと洋楽にはまったらしい」
小鳥「もう役満じゃないですか」
P「そいつはアイドルなんだよ。それも結構売れてるんだ」
P「仕事に支障をきたしそうで、別の知り合いから助けを求められたんだ」
律子「申し訳ないですけど、私がアドバイスできそうなことはありませんね」
律子「仕事が残ってますので、お先に失礼します……」
小鳥「古傷が開いたのか心なしか落ち込んでますね」
P「悪いことしちゃいましたね……」
冬馬「なぁなんで翔太だけ残して出てきたんだよ」
北斗「ここ警備室じゃないですか」
黒井「黙ってついて来い……入るぞ」
冬馬「すげぇ! 監視カメラが大量じゃねーか!」
黒井「ここで翔太の様子をチェックする」
北斗「そんな盗撮みたいなことしていいんですか?」
黒井「判断材料は少しでも増やしておきたいからな」
黒井「あとは一人のほうが発病しやすいのもある」
北斗「色々あるんですね」
黒井「ウィ……映像を出すぞ」
北斗「膝ドラムしてますね」
黒井「いや、イヤホンを外して立ち上がった。マイク音量を上げろ!」
冬馬「了解、だぜ!」
翔太『……見てるんでしょ?』
翔太『僕なら気づかれないとでも思った?』
北斗「!?」
冬馬「!?」
黒井「!?」
警備のおっちゃん「!?」
翔太『それに今僕達が行動を起こ
プチッ
北斗「あれっ音切るんですか? それに翔太どこかに行っちゃいましたよ」
黒井「見ておれん……」
冬馬「行こう……あいつはもうダメだ」
北斗「なんか恥ずかしかったな」
黒井「邪魔したな……」
警備「あ、いえ」
冬馬「明日の現場どうすんだよ。あんなの世に送り出したら961は終わりだぜ」
黒井「どうしたものか……」
北斗「翔太先に帰るってさ。一人になりたいらしい」
冬馬「ほっとけ……」
貴音「……」
翔太「あ、貴音さん」
貴音「御手洗翔太ですか。あなたも月光浴を?」
翔太「月がざわついているので様子見を、ね……」
貴音「ほう……やはり感じますか」
翔太「え?」
貴音「妹はよく頑張っています。私は任を降ろされた身なので案じることしかできませんが」
翔太「は、はぁ」
貴音「全ては世界に散らばる同胞達のために」
翔太「そ、そうだね。それが、えっと……ムーンレイスの……古代から伝わるいにしえの……」
貴音「……風がでてきました。それではまた」
翔太「セイクリッドな輪廻が……え、なんて? あれ、貴音さん?」
翔太「いない……夢でも見たのかな」
翔太「僕も皆からあんな風に見えてたのかな……」
貴音「という出来事が昨夜ありました。彼はこちらの人間だというのに不思議なものですね」
P「それだ! よくやってくれた貴音……!」ガシッ
貴音「あっ、あの、こ、このような時間からそんな……困ってしまいません……」
伊織「困れよ」
P「解決策が見出せた! あとはこれを皆に……!」
高木「あ、君。BBSの方から電話だよ」
P「はい! まぁあっちは後回しでいいか……あ、お電話かわりました私765プロの……」
真 「なんで律子は寝てるの?」
小鳥「寝かせてあげましょう……」
雪歩「き、気絶してるんじゃ……」
美希「律子が寝てるなら一緒に寝よっと! お隣失礼して……あふぅ」
真美「のび太もびっくりの早寝だね」
亜美「この一発芸で食っていけそうだYO」
………
P「あぁくそっ仕事仕事で電話する時間もなかった! あっちはどうなってるんだ……!」
trrrrr
北斗「プロデューサーさん! 何度もそっちに電話したんですよ!」
P「悪い! 手が離せなかった! 状況は!?」
北斗「俺達これから生でBBSの歌番組に出るんですけど、翔太がゴネて出てくれないんですよ!」
P「なんだって!?」
北斗「もうどうしたらいいか……」
P「俺も今BBSにいるんだ! 今どこだ!?」
北斗「楽屋ですけど翔太はどこかに行ってしまって……」
P「とにかく皆に伝えたいことがある! 今すぐ行くから待っててくれ!」ピッ
P「間に合ってくれよ……!」ダッ
P「皆!」
北斗「プロデューサーさん!」
冬馬「くっそあいつ電源切ってやがる……」
黒井「貴様か……面倒なことになってしまったよ」
P「大丈夫です! 今朝ヒントを貰って解決策が閃きました!」
冬馬「でも電話もでねぇし、どこにいるかもわかんねーんだ」
P「こういう時主人行やライバルキャラならどこにいると思う? そこから考えればわかるはずだ」
黒井「……屋上か」
冬馬「そうか……! 一人で孤高を気取ってんだな!」
北斗「もう本番まで時間がありませんよ! 早く説得にいかないと!」
P「待ってくれ。その前に解決策を伝えておく。これは全員の協力が必要なんだ」
黒井「背に腹は変えられん。今は指示に従おう」
P「ありがとうございます。作戦はこうです……」
翔太「はぁ……僕ってもしかしてとんでもなく恥ずかしいことしてたのかも……」
翔太「冬馬君やクロちゃんの態度もおかしかったし」
翔太「もう恥ずかしくてテレビになんて出られないよ……」
P「やっぱりここにいたか」
翔太「プロデューサーさん……」
P「プロデューサーか……フッその肩書きもそろそろ鬱陶しくなってきたな」
翔太「え?」
冬馬「お前の波動を受けてな。俺達も本当の人格を取り戻しちまったのさ」
翔太「な、何言ってるの……?」
北斗「ここは俺達しかいない。人間界のペルソナを被る必要なんてないんだぞ翔太」
黒井「いや、ここではゲーツ・オブ・ハデスと呼んだほうがいいのかな? そうだろう?」
P(いいから耐えろ! 俺達の精神と翔太の心の壁どちらが先に崩れるかだ!)
P(作戦は単純だが難解だ! 俺達も中二病になりきって翔太を説得する!)
P(成功すれば仲間を見つけた翔太は必ず俺達に心を開くはず!)
翔太「もしかして怒ってるの? ご、ごめんね僕ちゃんと仕事するから……」
北斗「あぁそうか。監視の目を気にしてるんだな。結界を張ってあるから安心してくれ」
黒井(こいつはただ演技力があるだけなのか……)
P「まったくこの世界の俺は大人しくてやってられんな。煉獄界にいる本体が鈍ってしょうがない」
冬馬「コキュートスにでも引っ越したらどうだ? 意外と飽きないぜ」
黒井「フッ貴様も言うようになったな……因子が満ちてきたか?」
翔太「やめて……やめてよ……」
北斗「しかし魔界のプリンスともあろう方が地上界で踊り子をしているとはね……」
P「仕方あるまい。こちらの側では我らの身分は無いも同然」
冬馬「月(ルナ)のティカーネは俺達の存在に気づいてるみたいだがな」
黒井「所詮奴は月の民の中でも最弱……波動を感じるのがせいぜいの下級戦士よ」
翔太「と、冬馬君!?」
P「……何者かがこちらに近づいているな」
黒井「早かったな……我らの存在を感じ取ったか」
翔太「ねぇ、もういいでしょ!? 僕ちゃんと謝ったんだから許してよ!」
冬馬「へっ……無理してこっちのパレスに来ちまったからな……」
北斗「今回俺達がわざわざ臨界したのは他でもない。君のためなんだ」
翔太「な、なんなの……?」
P「目覚めたばかりのお前が地上のクズどもに存在をバラしそうだったんでな」
黒井「その忠告に来たというわけだ」
翔太「忠告って……もうやめてよ……ぐすっ」
北斗「ちっ……結界が破られたみたいだね……刻印(スティグマ)を持つ者がいるのかな」
P「現世の干渉がきつくなってきたな。またこっちの忌々しい人格に戻りそうだ」
黒井「とにかくハデスの末裔よ。貴様はまだ覚醒したばかりで本来の力はまだ出せぬ状態なのだ」
翔太「ごめんなさい……ごめんなざい……ぐしゅっ……」
冬馬「お前の勝手な行動で精霊ともめるのがゴメンだからな。頼ん、だ……ぜ……がくっ!」
P「ぐふっ」
北斗「時間だな……それじゃあプリンス。また会おう……」
黒井「アデュー……」
スタッフ「こんなとこに! 皆さんもうスタンバってるんですよ! 何やってんです!」
P「はっ! ここは一体どこなんだー!」
冬馬「なんだか悪い夢を見ていた気がするぜ!」
黒井「なんともうこんな時間か! やや! 翔太いつの間に!」
翔太「ごめんなさい……もう変なことしません……許してください……」
冬馬「大丈夫か? 翔太」
翔太「はい……」
黒井「よし、では着替えてすぐに入れ」
スタッフ「お願いしますよ! それじゃあ私は戻りますんで!」
ゾロゾロ
P「勝った……勝ちましたよ音無さん、律子……」
P「だが失ったモノも大きかった……」ポロポロ
冬馬「」ポロポロ
黒井「」ポロポロ
その日以来、説得が成功したのか翔太は妙な行動をするのを止めた。
心に大きな傷を負った俺と961プロは、一週間のカウンセリングを受け無事通常の職務に戻ることができた。
なぜか翔太もカウンセリングに同行したが、特に気にする必要もないだろう。
BAD END
一応救ったのにバッドエンドなのかw
乙
Entry ⇒ 2012.11.05 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
P「たとえば千早にミニスカート穿かせてさ」
千早『こんなに短い衣装だなんて……聞いてません……!』
P「って感じで、グイグイって必死にスカートの丈を伸ばそうとしてたらどう思う?」
春香「かわいい」
P「だよなぁ……」
千早「……」
春香「それじゃあ、こういうのはどうですか?」
P「聞かせてくれ」
春香「たとえば千早ちゃんに、フリフリのドレスを着させるんです。真が憧れているような」
P「続けて」
春香「それで……」
千早『……こ、こんなの……全然私に似合ってないわ……』
春香「って感じで、真っ赤になった顔をヘッドドレスのかげに隠しちゃうんです」
P「かわいい」
春香「ですよね……」
千早「……」
P「正直に、ありのままに言っていいかな」
春香「はい」
P「千早とデートとかしてみたいな」
春香「あー、わかります」
P「でも春香は、たまに千早と出かけたりするだろ?」
春香「それとこれとは違うんですよぅ。デートというより、お出かけ、ですから」
P「あー……なんとなくわかる。千早が緊張してるのがポイントなんだよな」
春香「そうなんです! あ~あ……私が男の子だったら良かったのに」
千早「……」
ガタッ
P・春香「……」
春香「千早ちゃん、立ち上がりましたね」
P「……もしかして、聞かれてたかな」
春香「そんなことないと思いますよ。ほら、今もヘッドホンしてるし」
P「そっか……そうだよな」
千早「……」テクテク
ガチャ
春香「……」
P「……」
千早「……」
ストン
春香「飲み物だけ冷蔵庫から取って、またソファに座りましたね」
P「喉がかわいたんだな」
春香「……コクコクって、喉が動いてます」
P「かわいい」
春香「喉がですか?」
P「いや……全身が」
春香「あー……わかります。右手でペットボトルを持ってるんですけど、左手でちょこんとキャップを持ってるんですよね」
P「持ち方がgoodだよな」
春香「ですよね……」
P「この願いが叶うならば、俺は千早の飲み物になりたい」
千早「ブッフーーーーー」
春香「あ、吹き出しちゃいましたよ」
P「へんなところに入っちゃったのかな」
春香「慌てて拭いてる……」
P「手伝ってあげたほうがいいかな」
春香「いや……ちょっと待ってください」
P「何か考えが?」
春香「……」
P「……」
春香「……よし、やっぱり手伝いましょう。ただし、ひとつだけ条件が」
P「教えてくれ」
春香「えへへ、簡単なことですよ。私は手伝わずに、プロデューサーさんだけが手伝うんです」
P「……」
春香「……ね?」
P「天才か」
タタッ
P「ど、どうした千早! 何があった!?」
千早「……あ……プロデューサー」
P「ううん、しかし、ヘッドホンをしてるから俺の声は聞こえないかな」
千早「……」
スチャッ
千早「……すみません、プロデューサー。ちょっとへんなところに入ってしまって」
P「そうか……よし、今綺麗にしてやるからな!」
千早「い、いいです! 私一人で掃除できますから!」
P「そういうな。さて……」
スッ
千早「!? な、なんで、顔を水溜りに近づけるんですか……?」
P「なんでって……綺麗にしようかと」
千早「そ、それでどうやって綺麗にするんですか?」
P「飲むんだよ」
千早「な……!?」
P「こう、ピチャピチャってさ」
千早「やや、やめてください! 一度私の口の中に入ったものですし、そんなの汚いですから!」
春香(行為そのものにはツッコまないんだね千早ちゃん!)
P「そんなことあるか。むしろ価値が上がるってもんさ」
千早「……」カァァ
P「よおし」
P「ひっぱたかれた」ヒリヒリ
春香「でもプロデューサーさん……グッジョブです!」
P「そうだな……」
千早「もう……」フキフキ
春香「涙目ですよ、涙目」
P「顔も赤いな」
春香「かわいい」
P「違いない」
春香「いいなぁ……私もひっぱたかれたいです」
P「おいおい、アイドルの顔に傷つけるようなことは俺が許さないぞ」
春香「えへへ……言ってみただけですよぅ」
P「こうなることは、春香には全てお見通しだったってわけだ」
春香「えへへ」
P「末恐ろしい奴だよ、まったく」
春香「……私、思うんです」
P「聞かせてくれ」
春香「千早ちゃんは、恥じらいだと」
P「続けて」
春香「笑顔の千早ちゃんもとってもかわいいです。でも、本当に千早ちゃんが光り輝くのは……」
P「うん」
春香「恥ずかしがって、モジモジしてるときだって」
P「満点だ」
春香「ありがとうございます!」
千早「……」
P「……」
春香「……」
P「ちーちゃんかわいい!」
千早「」ピクッ
春香「急にどうしたんですか、プロデューサーさん」
P「いや、ついな……」
春香「でも、わかります。たまに、つい叫びたくなるときありますよね」
P「抑えられないんだよ」
春香「わかります」
P「ちーちゃんかわいい!」
千早「」ピクピクッ
春香「あれ? 千早ちゃんの様子が……」
P「体育座りをして、丸くなってしまったな」
春香「……」
P「……」
千早「……」チラ
春香「こっちを見ましたよ!」
P「俺と目が逢った!」
春香「いえいえ、私ですよ!」
千早「……」プイ
春香・P「「あー」」
P「――目と目が 逢う」
春香「しゅーんかーん」
春香・P「「すーきだと 気付ーいたー♪」」
春香「はい、たーっち!」
パチン
P「いぇい!」
春香・P「……」クルン
千早「……っ!」ソッ
春香「いま絶対、こっち見てましたよね」
P「間違いない。俺と目が逢ったもん」
春香「いえいえ、私ですよ!」
P「いやいや……」
千早「……」ソワソワ
P「そういえばさ」
春香「はい」
P「さっき春香は、私が男の子だったら良かったのに、って言ったじゃないか」
春香「はい、確かにそう言いました。男の子になって、千早ちゃんをドキドキさせたいんです」
P「でも俺はさ……逆に、自分が女だったら良かったのにって思うときがあるんだ」
春香「……どういったときですか?」
P「風呂」
千早「!?」
春香「あー……なるほど」
P「いいなぁ……女の子になりたい」
春香「……聞きます? お風呂の様子」
P「え……い、いいのかな」
春香「えへへ、どうしっかなぁ……う~ん……」
P「イチゴババロア」
春香「私は美希じゃないですよう!」
P「キャラメルマキアート」
春香「だから……」
P「千早が昔着ていた衣装」
春香「……手を打ちましょう」
P「ただし、見合うだけの情報がなければ昔つけてたアクセサリーに変更だぞ」
春香「おまかせください!」
【露天風呂的な場所】
バシャバシャ
春香『ち~は~や~ちゃんっ♪』
千早『きゃっ! は、春香……』
春香『千早ちゃん、湯船の中なのに、なんでバスタオル巻いてるの?』
千早『……別にいいでしょう』
春香『でも、マナー違反だよ?』
千早『……』プイ
春香『……えへへ。千早ちゃんって、お風呂のときは髪をアップにするんだね!』
千早『ええ、まぁ……長いし、邪魔になるから』
春香『うん! でもそれ、すっごくかわいいと思う!』
千早『え? か、かわいい? そうかしら……』
春香『そうだよ! えへへ……でへへ……』
春香『ね、千早ちゃん。手、ピーンって伸ばしてみて』
千早『え? ……こう?』
春香『うわぁ! やっぱり思った通りだよ!』
千早『……何が?』
春香『千早ちゃんの腕、すっごく綺麗! えへへ……憧れちゃうなぁ』
ツツー
千早『っ! は、春香……』
春香『……こう、二の腕から肩までのラインが……』
フワッ
千早『きゃあっ!』
春香『あっ、ごめんね! バスタオル取れちゃった』
千早『か、返して……!』
春香『えー、でも……やっぱりマナー違反だし』
千早『……くっ』
春香『……ねぇ、千早ちゃん』
千早『何よ……』
春香『ここからじゃ、うっすらとしか見えないけど……』
千早『……』
春香『千早ちゃんって、脚も綺麗だよね』
千早『え……?』
春香『ね、ねぇ……ちょっと、さわっても――
千早「ゴッホン!!!」
春香「」ビクッ
千早「ゴホン、ゴホン!!! あーあーあー」
春香「とても良い声……」
春香「あ、プロデューサーさん。はい、ティッシュ」
P「悪いな」
春香「ワイシャツが真っ赤ですよ?」
P「まあ、しかたないさ。その話を聞けた代償として考えたら、クリーニング代くらい安いもんさ」
春香「えへへ……えっと、それじゃあ続きを」
千早「ゴホンゴホン!」
春香「……続きは、また今度ですね」
P「そうだな」
春香「次は、千早ちゃんが昔使ってたレッスンウェアを用意しておいてください」
P「おいおい、また俺のコレクションを奪い取る気か? まったく抜け目のない奴だよ」
春香「えへへ」
P「……千早ってさ」
春香「はい」
P「髪、綺麗だよな……」
春香「本当そうですね……ついさわりたくなっちゃいます」
千早「……」サワサワ
春香「あ。ちょうどいま、髪を手ぐしでさわさわしてますね」
P「この願いが叶うならば、俺は千早の手になりたい」
春香「わかります。全身で千早ちゃんの髪を感じながら駆け抜けたいです」
千早「……」サワサワ
P「春香はさ、千早のどんな髪型が好きだ?」
春香「ツインテール!」
P「わかる」
春香「えへへ……かわいいんですよ、なんといっても」
P「表情……だろ?」
春香「いえす!」
P「でもさ……あれもいいよな」
春香「あれ、ですか?」
P「ポニーテール」
春香「わかります!」
P「……」
春香「……」
千早「……」ソワソワ
P「でもまぁ……あれだな」
春香「やっぱり……あれですね」
春香・P「「そのままの髪が、一番かわいい!」」
千早「……」カァァ
春香「また体育座りしてちっちゃくなっちゃいましたよ」
P「どうしたんだろうな……お腹でも痛いんだろうか」
P「おなか痛い……か」
春香「プロデューサーさん」
P「……すまん」
春香「わかってくれればいいんです」
P「千早のビフィズス菌になって腸内環境を健康に整えてあげたい、なんて思った俺がバカだった」
春香「プロデューサーさん」
P「……すまん」
春香「もう……お下品なのは禁止ですよ、禁止」
千早「……」
P「……そういえば、千早さ。さっきからどんな曲を聴いているんだろうな」
春香「気になりますね」
P「春香、確かめてきてくれよ」
春香「でも、知ってどうするんですか?」
P「当然、同じ曲が入ったCDを買って今日の夜にエンドレスリピートする」
春香「あー」
千早「……」
春香「いいですね」
P「だろ? その瞬間だけでも千早とひとつになれそうだ」
春香「よーし、行きます!」
春香「そろーり、そろーり」
千早「……!」
カチカチ
千早「……」シャカシャカ
春香「ち~は~や~ちゃんっ♪」
ガバッ
千早「きゃ、きゃー。は、春香、どうしたの」
春香「いま、ボリューム上げなかった?」
千早「そんなことはしていないけれど。最初からボリュームマックスよ、うん」
春香「ふーん……」
千早「……」
春香「ふーん……」
千早「……」プイ
春香「えへへ」
春香「どんな曲を聴いてたの?」
千早「え、えっと……」
春香「ヘッドホン、貸してくれる?」
千早「……いいけど……はい」
春香「えへへ♪」
スチャ
春香「千早ちゃんの耳の温もりが残ってる」
千早「な、何を言っているのよ……もう」
春香「えへへ……えーっと、この曲は……」
千早「……」
春香「……」
ピッ ピッピッ
千早「……もう、いい?」
春香「……うん。……ありがと、千早ちゃん」
P「おかえり。どうだった?」
春香「……」
P「……春香?」
春香「グスッ……グズッグズ……」
P「……そっか」
春香「曲をですね、何個か移動させたんですけどね」
P「うんうん」
春香「全部ですね」
P「……良かったな」
春香「はい……私の、昔の歌が流れてですね……」
P「そうかそうか」
春香「CDなんて50枚も売れなかったあの頃の、もうとっくに絶版しちゃってるCDの、あの頃の歌をですね」
P「うんうん」
春香「わ、私……嬉しくてですね」
P「わかる」
春香「千早ちゃん……」
P「……」
春香「だいすき……」
P「俺に向かって言うんじゃない」
春香「でも……面と向かってなんて、言えません」
P「……そうか」
春香「千早ちゃんは、優しいんです」
P「春香が一番よく知ってるもんな」
春香「そうです……プロデューサーさんにだって、負けません」
P「そうだな。さすがに、それは負けるよ」
春香「そうなんです……」
千早「……」
春香「……私、もう帰りますね」
P「そうか」
春香「お仕事のお邪魔しちゃって、ごめんなさい」
P「そんなことはないよ。俺も楽しい時間が過ごせた」
春香「……トレーニングウェア」
P「用意しとく」
春香「えへへ……」
千早「……」スック
春香「あれ? 千早ちゃん……?」
千早「帰るんでしょう?」
春香「……」
千早「私も、ちょうど一段落ついたところだから。一緒に帰りましょう」
春香「……うん!」
千早「それでは、プロデューサー。お疲れ様でした」
P「おう、気を付けて帰れよ」
春香「えへへ……おつかれさまでーす!」
春香「……ねぇ、千早ちゃん」
千早「どうしたの?」
春香「今日、千早ちゃんの家にお泊りしちゃ、だめかな?」
千早「だめよ。まだ電車、動いてるでしょ?」
春香「でも……」
千早「明日はオフだから、久しぶりにちゃんと学校に行けるんだ、って喜んでたじゃない」
春香「は、早起きすれば学校も遅刻しないもん!」
千早「それでもだめよ」
春香「ぶー……」
千早「……泊まるなら、今度。ふたりとも一日休みが取れた前日に、ね」
春香「! ……うん!」
春香「ねぇ、千早ちゃん」
千早「今度はどうしたの?」
春香「あの、さ」
千早「……」
春香「……ふたりとも一日休みが取れたら、デートしようね」
千早「いいけど……ふふ、デート? 女同士なのに?」
春香「片方がドキドキしてたら、それはデートだよ」
千早「……そ、そう」
春香「えへへ……そのときはさ」
千早「……?」
春香「ミニスカート、穿いてくれる?」
千早「……前向きに検討するわ」
おわり
ちーちゃんは脚が綺麗 譲れない
良かった乙
Entry ⇒ 2012.11.04 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
カレン「私の事どう思ってるの?」ルルーシュ「こう思ってる」
カレン「……ブラックリベリオンの時、扇さんはあなたを護れと言った。私の、お兄ちゃんの夢を継ぐ者だって……」
カレン「――ルルーシュ。あなたは私の事どう思ってるの……? どうして斑鳩で私に……『君は生きろ』と言ったのよ!?」
ルルーシュ「……」
カレン「っ……」
ルルーシュ「!」
(ちゅぅっ)
カレン(ああ……そうか、私……ずっとルルーシュに恋してたんだ……)
カレン(ねえ、お願い……一緒に来いって、そう言って! 私、あなたとなら―――)
(れろっ)
カレン(……んんっ?)
(れろれろっ)
カレン「ん……んぅっ!?」
カレン(ちちょっ、ちょちょちょっとぉっ!? 何これ、何これぇっ!?)
(れろれろれろっ れりゅっ)
カレン(こ、これって! ルルーシュの舌ぁ!?)
ルルーシュ「……」
(れるれるっ れりょりょっ)
カレン「んっ……んぅふぅっ!!?」
カレン(えっ、ええっ!? やだ、舌入れられるなんて予想してない!! ちょっとぉっ!!)
(るりゅるりゅっ ねりゅっ)
カレン「ん……んぁ、んぅ~っ!!」
カレン(やだやだ、これじゃまるっきりディープキスってやつじゃないのぉ!)
カレン(確かディープキスって、恋人とか夫婦がするようなちょっと……え、えっちなキスでしょぉ!?)
カレン(どーすんのよ、私これ初キッスなのに! いきなりこんな、階段十段ぐらいすっ飛ばしてるわよぉ!)
ルルーシュ「……」
(れるるるっ ぬりゅっ くちゅっ)
カレン「ん、んふぁっ……はっ、ふぁあ……」
カレン(い、いやぁ……やばい、なんか変な気分になってきちゃうぅぅ……)
(れろっれるるりゅっ ぬりょっ ぴちゃっ)
カレン「はぁっ……ん、んあぁふ……」
カレン(こ、これ以上はホントにまずい! 息できないし、いけない気分になってきたし!)
カレン(さすがにそろそろ、離れて―――)グッ
ルルーシュ「……」ガシッ
カレン「んっ! んぅ~っ!? んむーっ!!」
カレン(ちょっとぉぉぉっ!! 後ろ頭抑えないでよぉぉぉぉっ!!)
ルルーシュ「……」ギュッ
カレン(お、おまけに抱き締められてる! だ、だめ……どうにか解かなきゃ―――)
(れろれろりっ ぬるるるっ くちゅちゅっ ちゅ~……)
カレン(ああ、ダメだぁ……全っ然力入らない……)
カレン(いいやもう、どうにでもなっちゃえ……)
カレン(ああ……ルルーシュぅぅ……///)
カレン「はぁっ……はぁっ、ふうっ、んぅ……」
ルルーシュ(いやさすがに驚いたぞ……カレンからキスされるなんて)
ルルーシュ(そこまで俺を想ってくれたとは嬉しい限りだ。おかげでつい全力でお返ししてしまった)
ルルーシュ(これだけ長時間キスすればおそらく一生分キスしたといえるだろう。これで悔いは一つ消えた)
ルルーシュ(さすがにこんな猥褻なキスをしたらカレンに嫌われただろうな……だが、それでいい)
ルルーシュ(人生最後のキスだろうが、相手が君でよかったよ。ありがとう、カレン)
ルルーシュ「……では行こうか。あまり合集国首脳陣を待たせるわけにもいかないし」
カレン「え……続き、しないの……?」トローン…
ルルーシュ「え?」
カレン「え……?」
カレン「でも……さっきのキス……」モジモジ
ルルーシュ「キスが、何だ?」
カレン「あ、あんなに激しくしたって事は……その」
ルルーシュ「?」
カレン「あ、あなたも私の事……好きだって、そう……考えて、いいの……?」モジモジ
ルルーシュ「ほぁっ!?」
カレン「わ、私……その、いい……よ?」
ルルーシュ「待て、いいって何が!?」
カレン「え? そ、その……」モジモジ
ルルーシュ(まずい……カレンのこの反応、俺は何かいらぬスイッチを押してしまったのか!?)
ルルーシュ「……」
(れるれりゅっ ぬりゅっ れろぴちゅっ……)
カレン「んぁぁふぅ……んっ……うぅ、はぁん……」
カレン(ああ、いつまでキスしてるんだろう……でも、もうずっとしてたいかも……)
カレン(……やっぱりこのあと、えっちな事されちゃうのかな……)
カレン(お母さん、お兄ちゃん、ごめんなさい……カレンは悪い子です……)
ルルーシュ「っ……」スッ
カレン「んぁっ……は、あぁっ……」ペタンッ
カレン(え? もう……じゃなくて、やっと終わり……? ……このあと、何されちゃうんだろう……)
カレン(すっごくやらしい気分になっちゃったけど……いいよね……だって、好きな人相手だもん……)ドキドキ
カレン「私っ! あなたになら、その……ぜ、全部、あげても……いいよ?」モジモジ
ルルーシュ(……聞いちゃいない! 完全にスイッチが入っている!?)
カレン「あの……は、はじめてだから、その……優しく、して下さい……///」
ルルーシュ「……ストォーップ! ストップだカレン!!」
カレン「えぇ?……あの、今更……何?」
ルルーシュ「な、何って……その」
ルルーシュ(どうする!? 会議場に行く前にこうなるとは予想外だ!! まさかこんなところでカレンが障害になろうとは……)
ルルーシュ「カレン。違う、間違っているぞ」
カレン「え?」
ルルーシュ「いいか、まずここは学校だ。君が想像してるような行為をする場所じゃあない」
カレン「それは……そうだけど」
ルルーシュ「そして俺は今日、会議に参加するためにここに来たんだ。君とそういう関係になるつもりで来たんじゃ――」
カレン「えっ……じゃあ、あの……さっきのキスは……」
ルルーシュ「……してきたのは君だろう」
カレン「でもっ! あんな激しいので返してくれたじゃない!」
ルルーシュ「うっ……ま、まぁ、そうだが」
カレン「あれはその……返事と受け取って、いいんでしょ?///」
ルルーシュ「」
ルルーシュ(これではカレンがついて来ると言いかねない! それはダメだ、彼女にまで汚名を着せるわけにはいかない!)
カレン「私、ね……あなたが求めてくれるなら、例え地獄の果てだって……」
ルルーシュ「カレン、それはダメだ」
カレン「どうして!!」
ルルーシュ「今の俺は、君の大嫌いなブリタニアの皇帝だ。君はその……ブリタニアなんて嫌いだろう?」
カレン「うん……」
ルルーシュ「だから、俺は君と一緒にはいられない。わかるな?」
カレン「でも! あなたがそのブリタニアを変えてくれてるんじゃない!」
ルルーシュ「う!? いや、確かにそうだが……」
カレン「だから、私も側にいたい! あなたと一緒に世界を変えるの!」
ルルーシュ(まずい……カレンの意思を余計固くしてしまった! どうする、どうするべきなんだ!?)
ルルーシュ「カレン……」
カレン「あなた本当は悪い人じゃないもの。じゃなきゃ、あのとき『君は生きろ』なんて言うはずない」
ルルーシュ「だが、俺は……」
カレン「きっと皇帝になったのだって、何か私にはわからないような考えがあるんでしょ?」
カレン「何も言ってくれないからわからないけど……きっと、みんなのためを想ってなんでしょ!?」
ルルーシュ「それは……」
カレン「だったら! 私、あなたと一緒に夢をみていたい!」
ルルーシュ「だからそれはダメだと」
カレン「どうしてよぉ!!」
ルルーシュ「う……」
ルルーシュ(どうする……どう返せばいい!? カレンに嘘は言いたくない、だが何か言わなきゃ食い下がる!! 一体どうすればカレンを引き離せる!?)
ルルーシュ(カレンの心を傷つける事になるが、こうなってはそれしかない! それを打ち砕く言葉は――)
ルルーシュ「……カレン。君は確かにゼロとしての俺の側近だった」
カレン「え? ……うん」
ルルーシュ「だが俺はもはやゼロではない。ゼロではいられないんだ。わかるな?」
カレン「……うん……」
ルルーシュ「そして君が憧れたのは『ゼロ』だ、『俺』じゃない。かつて君自身そう言っただろう?」
カレン「……」
ルルーシュ「だから君が俺に抱いた想いはまやかしだ。未だゼロと重ねているだけで、何とも想って――」
カレン「でも、キスしてはっきりわかったの。……私はあなたが好き。ゼロじゃなくて、ルルーシュが」
ルルーシュ「え」
ルルーシュ(なんだこれは……嬉しいけど、いや嬉しいけどまずい展開だ!)
ルルーシュ(例えカレンが俺を愛してくれても、ついて来させては地獄しかない! カレンのためにも、俺は!)
ルルーシュ(かくなる上は……強行突破か!)
ルルーシュ「カレン。君との話は後回しだ。俺は会議n
はしっ
ルルーシュ「……カレン?」
カレン「行かせない」
ルルーシュ「はい?」
カレン「ついてっていいって言うまで、行かせない!!」
ルルーシュ「」
カレン「やだ!」
ルルーシュ「我侭言うな!」
カレン「いやだぁ!」
ルルーシュ「ダメなものはダメだ!」
カレン「なんでよぉ!」
ルルーシュ「それは……言えない」
カレン「いかせてよぉっ!」
ルルーシュ「こっちの台詞だ!」
カレン「じゃあ……さっきのキスはなんだったのよぉ……」グスッ
ルルーシュ「お、おい! 泣くな!」
カレン「やだぁ! もう……私の純情、返してよぉ……」グスグスッ
ルルーシュ(なおさら面倒な事になった……どうしよう……)
カレン「うぅっ……」グスッ
ルルーシュ「その、キスの事はすまなかった……忘れてくれ」
カレン「あんな激しいの、忘れられるわけないじゃない……初めてだったのに……」クスンッ
ルルーシュ「だが忘れろ、それが君のためだ」
カレン「無理!……どうしても忘れろっていうなら、ギアスでもなんでもかければいいじゃない」
ルルーシュ「それもダメだ!」
カレン「どうしてよぉ!」
ルルーシュ「それは……だから言えないと」
カレン「……なんか隠してるでしょ」
ルルーシュ(勘付かれた……って、そりゃそうか。くそ、ここからどうする!? さっきからこればっかりだ!!)
カレン「そんなんじゃ納得できない!」
ルルーシュ「しなくていい! 俺はもう行く!」
カレン「行かせないって言ってるでしょっ!!」ガバッ!
ルルーシュ「どぁっ! か、カレン!?」
カレン「隠してる事、全部聞き出してやるんだから……あなたの本音、引き出してやるんだから!!」
ルルーシュ「お、おい……目が据わってるぞ……」タジッ
カレン「さっきのお返し……あなたにも味わわせてあげるっ!!」
(ちゅぅっ!)
ルルーシュ「んんっ!」
カレン「んっ……んぅっ……(れりゅりゅっ)」
ルルーシュ(ふ、ふぉぅわあああああぁぁぁぁぁ……!!)
千葉(クラブハウスに入ってからもう30分近くも経つ……出てくる様子が一向にない)
千葉(さすがに不安だな……ライフルの望遠レンズを使って確認するか)
千葉(ギアスにかけられているようなら、紅月……)
千葉(……まずは確認だ、倍率最大っと)
千葉(よしこれで……あとはあの窓から)
ジィーーーッ
千葉(!?)
ルル・カレン『……』
(ちゅっ ちゅうぅっ ぐぐぅ~っ)
千葉(な、ななな、なぁっ!?)
千葉(あれがギアスか、ギアスなのか!?)
千葉(だったら紅月を撃つしか……でも!!)
千葉(いや待てよ……確かギアスって命令を強制するって話だったな)
ルルーシュ『~~~!』ジタバタ
カレン『……!(むちゅっ ちぅ~っ)』
千葉(ルルーシュの奴は抵抗してるっぽい……まるで紅月が襲ってるかのようだ)
千葉(じゃああれはギアスじゃない……のか?)
千葉(…………)
千葉(見なかった。私は、何も見なかったぞ)
千葉(……ともかく、今夜はお赤飯炊かなきゃ)
カレン「ん、ふぅっ……はふっ……んぅ……」
(れるれるっ ぬりゅりゅっ)
ルルーシュ(こ、これはまずい……頭がおかしくなる! 不意打ちだとなおさらだ!)
カレン(ああ、ダメぇ……ホント変な気分になるぅ……)
カレン「んはっ……ぅ……ぷはぁっ……」
ルルーシュ「はぁっ……カレン、もういい、もう……」
カレン「はぁっ……はぁっ……ほら、話してよ……///」
ルルーシュ「だ、ダメだ……くそっ、さっきのが最後のキスのはずだったのに……」ボソッ
カレン「え、最後?……最後って、何よそれ……」
ルルーシュ「」
ルルーシュ(しまったあああぁぁぁぁぁっ!!)
カレン「私耳のよさは自信あるの。間違いなくはっきり聴こえたわ」
カレン「ねぇルルーシュ、最後ってどういう事!?」
ルルーシュ「ぐ……」
カレン「話してよ」グイッ
ルルーシュ「ダメだって……」
カレン「話せぇっ!!」
ルルーシュ(どうする!? 適当にはぐらかすか、いやダメだ!! 適当な事を言った瞬間カレンに殺されかねん!!)
ルルーシュ(ゼロ・レクイエムの実行まで死ぬ事は許されない!! ならば、俺の選ぶべき道は―――!!??)
ルルーシュ(うっかり漏らした言葉で計画を崩すわけには……ならば!)
カレン「さぁ早く! なんならもっかいキスして――」
ルルーシュ「カレン、何を勘違いしてるのか知らないが」
カレン「え?」
ルルーシュ「以前も言っただろう。俺にとって君は優秀な駒だったに過ぎないと」
カレン「っ!!」
ルルーシュ「駒に対し特別な感情は抱かない。……わかったら早く退きたまえ」
カレン「……」
ルルーシュ(これでいい、これで……ここまで傷つければ、追って来るはずも……)
カレン「……そう、わかったわ」
ルルーシュ「いい子だ。さぁ」
カレン「あなた、最後に死ぬ気でしょ!!」
ルルーシュ「!?」
ルルーシュ(落ち度はなかったはずだ、ならば何故! 一体何がまずかった!?)
カレン「何驚いてんのよ。わかんだからね」
ルルーシュ「な、何が……」
カレン「気付かない? あなたの今の言葉、斑鳩の時とまるっきり同じなのよ」
カレン「あのときだってそんな事言って、私遠ざけて死ぬつもりだったんでしょ」
ルルーシュ「バカな、あれは救助があったから――」
カレン「いいえ驚いてたわ! 完全に予想外って感じだった!」
カレン「あなたそうやって、いっつも自分だけ犠牲にするもの! もうばれたわよ!」
ルルーシュ「」
ルルーシュ(これは……完全に詰み、だろうか……)
カレン「ホントに、あなたいつもずるいわよ……」
ルルーシュ「カレン……」
カレン「遺された人はどうすればいいってのよ……」
ルルーシュ「……もうナナリーはいない。シャーリーも、ロロも喪った。他に誰が俺の命など惜しむ?」
カレン「私はどうなるのよ! 会長や、リヴァルだって!」
ルルーシュ「それは……」
カレン「あなた頭いいんだし、いくらでも方法浮かぶはずでしょ!?」
ルルーシュ「う……だが……」
カレン「なんで!」
ルルーシュ「それが俺の責任で、贖罪だからだ!」
カレン「逃げるな!」
ルルーシュ「なっ……」
カレン「命より大事なものってあるけど、投げ捨てるのとは違うでしょっ!」
ルルーシュ「しかし!」
カレン「罪だと思うなら、生きて償え!」
ルルーシュ「だが、俺は……」
カレン「あのときの言葉、そのまま返すわ」
カレン「ルルーシュ、あなたも生きろ!!」
ルルーシュ「っ!!」
ルルーシュ「ん?……スザクか」
pi
ルルーシュ「俺だ」
スザク『ルルーシュ。ずいぶん経ったようだけど、僕の出番はまだかい?』
ルルーシュ「あー……それがな」
スザク『早く合図くれないかな。いつになったら襲撃かけれるんだい?』
カレン「襲撃!? あんたら……そんな事考えてたわけ?」
スザク『!? なんでカレンの声が!!』
ルルーシュ「……スザク。計画は変更になりそうだ」
スザク『どういう事だルルーシュ!?』
ルルーシュ「それがな……カレンが俺達の計画に勘付いてしまった」
スザク『』
ルルーシュ「言ったつもりはないが……その、色々あってな」
カレン「どんな計画かまで知らないけど、ルルーシュ死なせるような計画反対だからね」
ルルーシュ「……とまぁ、こんな具合に最後の解にたどり着いてしまったらしい」
スザク『バカな……じゃあ、ゼロ・レクイエムは!?』
ルルーシュ「ばれてしまった以上、実行できないだろう……」
スザク『待てルルーシュ、だったら僕らは何のためにここまで!』
ルルーシュ「俺だって困っている!……くそ、ホントにどうするか……」
スザク『っ、ああ……』
pi
ルルーシュ「C.C.、話がある」
C.C.『一体どうしたんだ?』
ルルーシュ「イレギュラーだ。……カレンに俺達の計画がばれた」
C.C.『ほう? 女の勘か』
ルルーシュ「知らん! それで、計画を実行すべきか迷い始めてる」
C.C.『私は別に構わんぞ、生きたくなったなら生きればいい』
スザク『C.C.!?』
カレン「これで3対1、多数決により決定ね。はい、計画中止~!」
スザク『待て待て! 僕は納得してない!!』
スザク『しかし!』
C.C.『坊や、一つ訊く。お前は生きたいか、それとも逝きたいか?』
ルルーシュ「全て背負って死ぬつもりだったが」
カレン「だったが?」
ルルーシュ「……カレンに諭された今、ちょっと死ぬのも怖くなってきた」
スザク『ルルゥーシュゥゥゥゥゥッ!!』
C.C.『まぁ、死ぬ事が幸せといえるのは私ぐらいなものだしな』
スザク『二人ともわかってない! ルルーシュ、お前ユフィへの責任はどうするつもりだ!』
ルルーシュ「それは……そうだが」
スザク『ユフィやシャーリーへの責任として! 自分の命を捧げると決めたのは君だろう!?』
カレン「その二人だって、ルルーシュの命と引き換えで世界変えるなんて望んでないと思うけど」
スザク『カレンは黙っててくれ! これは僕とルルーシュの問題だ!』
カレン「何よ、あんたルルーシュ死なせればそれでいいわけ?」
スザク『いや、そういうわけじゃ……ないけど』
カレン「だったらいいじゃないのよ。ねぇ、ルルーシュ?」
ルルーシュ「うーん……」
C.C.『そうだな、ルルーシュが悪事の限りを尽くして悪の象徴となった後、スザク扮する新たなゼロに殺される事で世の憎しみを一掃するって内容だ』
スザク『C.C.!?』
C.C.『もう中止確定もいいとこだし、構わんだろう?』
カレン「……どんだけ酷い計画なのよ……」
ルルーシュ「他の連中には絶対言うなよ?」
スザク『ホントに止める気なのかルルーシュ!? だったら僕の憤りはどうすればいい!!』
カレン「やかましいっての! やらせないからね、そんな計画!」
ルルーシュ「二人ともやめろ。しかし、ホントどうしよう……」
カレン「その『みんな』の中にあんたらがいないってどうなのよ!」
C.C.『確かにあのとき、坊や自身が明日が欲しいと、そう言ったな』
ルルーシュ「まぁ……そう、だな」
カレン「だったら言葉どおり、ルルーシュもスザクも揃ってみんなで明日を向かえればいいじゃない」
スザク『僕らは罪人だ、そんな資格など……』
カレン「私達に罪人だなんだ言っといて、今更自分達だけ偽悪者気取りなんて虫唾が走るのよ」
ルルーシュ「……なぁスザク、俺達ももしかして、生きてていいのかな?」
スザク『ルルーシュ!?』
ルルーシュ「いやまぁそうなんだが、このまま計画続けてもカレンは不幸になりそうだし……」
スザク『諦めるのか、一人と世界を秤にかけて!!』
C.C.『おい坊や達、年長者からひとつ言わせろ』
ルルーシュ「なんだ?」
スザク『今はそんな場合じゃ!』
C.C.『いいから聞け。お前達は自分と引き換えに世界を変えようとしたがな』
C.C.『惚れた女一人幸せに出来ないヤツが、他全てを幸せに出来ると思うなよ?』
スザク『う……』
ルルーシュ「……」
カレン「ルルーシュ……」
スザク『……何だ?』
ルルーシュ「ユフィの最期は、やはり辛そうだったか……?」
スザク『いや……すごく安らかで、笑顔で逝ったよ』
ルルーシュ「そうか……」
スザク『シャーリーは、どうだった?』
ルルーシュ「生まれ変わっても俺を好きになるって……最期まで、笑顔だった」
スザク『そう……』
ルルーシュ「ロロのヤツも満足な顔をして逝った……カレンだけ悲しい顔なんて、させたくないな」
C.C.『なら、どうする?』
ルルーシュ「そうだな……ならば……」
スザク『どうするんだ?』
ルルーシュ「カレン。一緒に会議場まで来てくれ」
カレン「っ……うんっ!!」
スザク『襲撃はやはり、するのか?』
ルルーシュ「いや、襲撃はなしだ。替わりといってはなんだが、用意してほしいモノがある」
スザク『それは?』
ルルーシュ「……」ゴニョゴニョ
スザク『正気か!?』
ルルーシュ「俺はいつでも大真面目だ。できるか?」
スザク『イエス、ユア・マジェスティ』
C.C.『腹は決まったんだな』
ルルーシュ「ああ。急拵えだが、新たな計画を立ち上げる」
ルルーシュ「皆さん、お待たせしてしまって申し訳ない」
神楽耶「随分ごゆっくりな到着でしたわね。さながら観光気分ですか?」
ルルーシュ「懐かしくてつい、ね」
カレン「……」
神楽耶「? カレンさん、エスコート役のあなたがどうして会議場にいるのです?」
カレン「皇帝陛下が一緒にいてほしいと希望されたので」
ルルーシュ「神楽耶様、あなたが考えてるような事はありませんよ。彼女の意思でイエスと言ってくれたのだから」
神楽耶「そうですか……」
ルルーシュ「では始めましょうか。カレン、君もこちらへ」
カレン「……はい」
ガシャン!!
ルルーシュ「ギアス対策か。用意周到な事だ」
星刻『万全には万全を期させてもらう』
扇『首脳陣を操らせるわけにはいかない……って、なんでカレンがいる!?』
カレン「彼の要望です。そして私の意思で一緒にいます」
扇『ギアスなのか!?』
ルルーシュ「違うと言っているだろう。頭の固い事だ」
神楽耶『まぁいいでしょう。それでは問わせてもらいます』
ルルーシュ「いつでもどうぞ」
ルルーシュ「合集国憲章にのっとった上での申請です。何も問題はないと思いますが?」
藤堂『だがブリタニアの国力と人口、それを鑑みればこれは乗っ取りに等しい』
星刻『参政権は人口に比例する。ブリタニアが加盟したとなれば、最大の人口を誇る貴国が最大の発言力を得る』
星刻『そしてブリタニアは専制君主制だ。すなわち皇帝たるお前のいうがままだろう』
ルルーシュ「そこまで読まれていましたか」
扇『そんな目論見があっては、とても容認できるものではない!』
星刻『どうしてもというならブリタニアという国を割るか、参政権を人口の20%程度に抑えるか、二つに一つだ』
ルルーシュ「首脳陣ならともかく軍事組織たる黒の騎士団がそのような選択を迫るとは……越権行為では?」
神楽耶『貴国の力を考えればの措置です。さぁ皇帝陛下、ご決断を』
ルルーシュ「いいですよ」
一同「「「!!??」」」
ルルーシュ「当初はその推測どおり、超合集国を掌握するつもりだったのだが……計画は変更になったのでね」
藤堂『計画だと? ゼロ、何を考えている!』
ルルーシュ「私はゼロではなくルルーシュ・ヴィ・ブリタニアです。世間からは正義の皇帝と持て囃される、ね」
扇『詭弁を!』
ルルーシュ「ブリタニアを、世界を変えたいと思っているのは事実。そのためならば、罪の全てを背負い、自分すら壊す覚悟だった」
ルルーシュ「だが……気付いてしまったのでね。もっと大事な事に」
星刻『一体何のつもりだ!』
ルルーシュ「それはこれから宣言させてもらう。……ギアスも使うつもりはない、バリケードを外してもらえるかな?」
神楽耶『残念ですが、それは出来ません。言いたい事はその場でどうぞ』
ルルーシュ「いいでしょう……では!」
がしっ
カレン「え?」
ルルーシュ「私ことルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは、黒の騎士団所属・紅月カレンとの婚約を発表する!!」
騎士団一同「「「 」」」
カレン「え? ええぇ~っ!!??」
神楽耶『ぜぜぜ、ゼロ様ぁ!?』
ルルーシュ「この婚約をもって、ブリタニアと日本の友好の証としたいと考える!!」
カレン「ちちょ、ちょっと、ルルーシュ!?」
ルルーシュ「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる……世界よっ!!」
ルルーシュ「祝福しろ!! 結婚にはそれが必要だっ!!」
ルルーシュ「いやですね神楽耶様。あなたはゼロの妻と聞いています」
ルルーシュ「そして私はゼロではなく、ルルーシュです。見ればわかりますね?」
神楽耶『』
扇『カレン!! お前ホントにそれでいいのかぁ!?』
カレン「わ、私はその……は、はい」コクリ
藤堂『貴様は紅月を幸せにするためだけに、国の地位すら厭わんと言うのか!』
ルルーシュ「違うな、間違っているぞ。惚れた女すら幸せに出来ない男に、世界を幸せになど出来ないと俺は知った」
ルルーシュ「世界の前に目の前の一人の女性を幸せにしたい。こう考えるのは男なら当然でしょう、ねぇ黎星刻?」
星刻『ぐ……そ、それは……』
ルルーシュ「そういう事だ、さぁわかったら祝福してもらおうか! さぁ!!」
ルルーシュ「そこまでゼロにこだわるのでしたら、あなたにうってつけの相手を紹介しますよ」
神楽耶『え?』
ルルーシュ「そう、我が騎士……ナイトオブゼロこと枢木スザクをね」
神楽耶『あ、あなたは……』
星刻『貴様自分の幸せのために、腹心すらも出汁に使うか!』
ルルーシュ「違うな、これはあくまで提案だ。なぜならゼロは東京で死んだのだろう?」
扇『お前は! だがカレン、相手はブリタニア人だぞ!?』
ルルーシュ「それが何か? 愛があれば国境など関係ない」
カレン「そういえば扇さんの彼女、ブリタニアの軍人でしたよね」
扇『』
藤堂『……返す言葉もない』
ミレイ「……たった今情報が入りました、会議場にてルルーシュ皇帝が紅月カレン隊長との婚約を発表されたと!」
ミレイ(やるわねルルーシュ、このために日本へ……って、まさかねぇ?)
カメラマン「ミレイちゃん、ちょっと! アレ!」
ミレイ「ん? あれは……上空にKMFが現れました!」
ミレイ「あの機体はナイトオブゼロ、枢木卿の専用機・ランスロットです!」
ギューン!
スザク『この中継を視聴する全ての諸君!』
ジャキッ
ミレイ「っ、スザクくん!?」
スザク『……皇帝陛下を、祝福しろぉっ!!』カチッ
ポォ~ン!
ミレイ「何あれ……銃口からテープって、クラッカーかなんか?」
スザク(くぅ……なんでヴァリスからこんなもん撃たなきゃならないんだ、ルルーシュゥゥゥッ!!)
ルルーシュ「とまぁ、こういうわけですよ皆さん。祝福していただけますね?」
藤堂『……男に二言はないのだな?』
ルルーシュ「当然だ」
藤堂『……ならば』パチパチパチパチ
扇『藤堂将軍!?』
藤堂『皇帝ルルーシュよ。紅月を頼んだぞ』
ルルーシュ「その願い、確かに受け取った」
星刻『……私にも天子様がいる。だから貴様の想いはよくわかった』
星刻『ルルーシュよ。紅月カレンと、世界を必ず幸せに導け』
ルルーシュ「わかりきった事をいうのだな。例え不可能でも、俺は可能にする」
星刻『ふ……』
扇『お、俺は認めない!』
藤堂『扇。諦めろ』
ルルーシュ「はい」
神楽耶『私もあなたを愛していた事、忘れないで下さいね……』
ルルーシュ「その愛はきっと、ゼロにも届いてますよ」
神楽耶『ゼロ゛様゛ぁぁぁぁ……』
pipi
ルルーシュ「失礼。……スザク、どうした?」
スザク『陛下……帝都ペンドラゴンが、消失しました……』
ルルーシュ「何ッ!?」
カレン「消失って、まさか!」
スザク『ああ、フレイヤだ……!!』
ルルーシュ「もちろんです。……カレン、いくぞ! 紅蓮にのって、アヴァロンまで!!」
カレン「うんっ!!」
扇『お、俺達はどうすれば……』
藤堂『聞かれるまでもない。奴が世界に尽力すると言った以上、フレイヤこそが世界の脅威だろう。我らも動くぞ』
星刻『フレイヤという事はシュナイゼルか……やってくれる!!』
ルルーシュ「スザク! 待機中のアヴァロンを至急学園まで呼び出せ! 何があったか調べるぞ!」
スザク『イエス、ユア・マジェスティ!』
ルルーシュ「C.C.!!」
C.C.「おかえり、幸せ者。……皇室専用チャンネルにシグナルありだ」
カレン「C.C.……その、久しぶり」
C.C.「そうだな、妹ちゃん。いや嫁といった方がいいか?」
ルルーシュ「後にしろ。……繋ぐぞ」
ポチッ
シュナイゼル『久しぶりだねルルーシュ。どうだい、支配者の気分は?』
ルルーシュ「やはり貴様かシュナイゼル!」
シュナイゼル『だが真に皇帝にふさわしいのは君じゃない。彼女だよ』
ナナリー『……お久しぶりです、お兄様。ご婚約おめでとうございます』
ルルーシュ「ナナリー!!」
C.C.「さっき咲世子からも通信があった。命辛々脱出して来たそうだ」
ルルーシュ「ナナ……リー……生き、て……」
ナナリー『トウキョウの時はシュナイゼルお兄様が秘密裏に脱出させて下さったのです。だから、ここにいる私は本物です』
ルルーシュ「ほん、とに……」
スザク『陛下……これは、一体……』
ナナリー『スザクさん。あなたもお兄様も、私に嘘をついていたのですね』
スザク『そ、それは……』
ナナリー『お兄様はゼロだという事を隠し、いくつもの非道な作戦を実行し……皆を苦しめたのでしょう?』
ルルーシュ「……必要があった! 日本人のためにも、お前のためにも!」
ナナリー『いつ私が頼みましたか? 私はあのまま平和に暮らせればよかったのに』
ルルーシュ「くっ……」
ナナリー『でも私が今一番お話したいのはお兄様でもスザクさんでもありません』
ナナリー『ね、わかっているでしょう?……カレンさん(にっこり)』
カレン「え?」
カレン「いや、無理でしょ……みんなナナリーの事、死んじゃったと思ってたし」
ナナリー『いやですね、お約束ってあるものなんですよ?』
カレン「」
ルルーシュ「ナナリーがそんな言葉を使うなどありえない……これは、まさか!」
カレン「シュナイゼルね」
C.C.「シュナイゼルだろ」
スザク『シュナイゼル殿下だと思う』
ルルーシュ「やはりか、おのれシュナイゼル!!」
シュナイゼル『……私が何を言ったというんだい?』
ルルーシュ「……なんだ?」
ナナリー『カレンさんを娶るという事は、愛してるという事ですよね?』
ルルーシュ「ああ、そうだな」
ナナリー『私よりもですか?』
ルルーシュ「っ……そ、それは……」
カレン「ってちょっと! 悩むなぁ!」
ナナリー『正直におっしゃって下さい』
ルルーシュ「いやだな、お前が一番に決まってるじゃないかナナリー」
カレン「」
カレン「る……ルルー、シュ……?」
C.C.「おい坊や、これはあんまりじゃないか?」
ルルーシュ「事実だから仕方ない……だが安心しろ」
カレン「え?」
ルルーシュ「ナナリー、カレン。お前達に向ける愛はそれぞれ別のベクトルのものだ」
ルルーシュ「ナナリーはたった一人の家族だし、カレンは俺にとって女性として大切な人だ。そもそもどっちがどう、というのもおかしい」
ナナリー『ではどちらも愛してるという事ですか?』
ルルーシュ「ナナリーは家族として、カレンはパートナーとして愛してる。不満か?」
カレン「……!!」
ルルーシュ「お前は愛云々より共犯者という事が第一だ。わかってるだろう?」
C.C.「ふん……まぁ、そういう事にしといてやるよ」
C.C.「そういう事らしいからカレン、いい加減泣き止め。私ほどじゃないが美人が台無しだ」
カレン「う、うっさい!」
ナナリー『言いたい事はわかりました。ですが私は、これ以上お兄様を進ませるわけにはいきません』
ナナリー『お兄様の独裁は、私がこの手で止めます!』
ルルーシュ「いや……もう独裁もしない気なんだが」
ナナリー『』
ルルーシュ「当初は独裁から計画を始める気だったが、それではカレンやリヴァル達が悲しむだろうとわかったからな」
ルルーシュ「だがナナリー、それでも向かってくるというなら俺も全力でお前を止めるぞ?」
ナナリー『……』
シュナイゼル『ルルーシュ。ここまで来たら君の思惑も関係ないんだよ』
ルルーシュ「何?」
シュナイゼル『先のフレイヤ。引き金を引いたのは私じゃない……彼女なんだからね』
ルルーシュ「なっ!?」
シュナイゼル『そうだろう? ナナリー』
ナナリー『いいえ、こいつです』
シュナイゼル『』
おのれシュナイゼル
ナナリー『助けて下さいお兄様! 私、シュナイゼルお兄様に脅されてるんです!』
シュナイゼル『ダメだなナナリー。君はさっき間違いなく押しただろう? ダモクレスの鍵、その引き金を』
ナナリー『私、シュナイゼルお兄様に無理やりやらされただけなんです! あんなものなんて知らなかった!』
スザク『殿下、あなたという人は!!』
C.C.「やはり大元はこいつか」
カレン「やっぱりシュナイゼルね!」
ルルーシュ「ナナリーにまで罪を着せようというのか……おのれシュナイゼル! どこまでも卑怯な男め!!」
シュナイゼル『いけないねナナリー、そんな悪い子はお仕置きしなくてはいけないよ?』
ルルーシュ「黙れ……」
シュナイゼル『……ルルーシュ?』
ルルーシュ「シュナイゼル……もしナナリーの命を、いや指一本触れてみろ……」
ルルーシュ「そのときは俺の全てをなげうってでも、貴様の存在をこの世から消してやる!!」
シュナイゼル『……本気の目だね』
ルルーシュ「当然だ!」
カレン「ルルーシュは死なせない。そんな事になったら、私があんたを潰す!」
スザク『これ以上、世界をあなたの思う通りにさせるものか!』
シュナイゼル『……どうも旗色が悪いねぇ……』
ルルーシュ「望むところだ。ラストゲームとさせてもらおう!」
シュナイゼル『そんな強気でいいのかな? 私にはまだ黒の騎士団との休戦協定が生きている』
シュナイゼル『彼らの力は君自身よくわかってるはずだね。傀儡の兵達で勝てるのかい?』
ルルーシュ「……ということらしいが、どうなんだ? 星刻総司令」
pi
星刻『冗談ではない。フレイヤなどという力、到底許されていいものではない!』
藤堂『皇帝ルルーシュが超合集国との融和を示した以上、我らとて剣を交えるつもりはない』
シュナイゼル『』
ルルーシュ「フッ、密かに斑鳩に回線を中継させて正解だったようだな」
シュナイゼル『困ったねぇ……これではこちらのカードは2枚しかないじゃないか』
ルルーシュ「投了なされますか?」
シュナイゼル『まさか。だが、せめてこちらも駒を揃える時間ぐらいは許してもらうよ』
ルルーシュ「いいでしょう。ならば、決戦は1週間後。それまでにフレイヤを使うような事があったら――」
シュナイゼル『怖いねぇ……大丈夫、約束は守るよ。安心して』
ルルーシュ「ナナリー、1週間だけ待ってくれ。必ずお前を助けに行くから」
ナナリー『はいお兄様、私待ってます!!』
シュナイゼル『……では1週間後、フジ上空で待つよ。また逢おう、ルルーシュ。枢木卿、カレン嬢も』
プツッ
C.C.「決戦の準備か。黒の騎士団との事もあるしな」
カレン「そっちは私がなんとかする。きっと、みんなもわかってくれると思う」
ルルーシュ「すまない、頼む。……扇には気をつけてな」
カレン「わかってる」
スザク『ルルーシュ、ロイドさんから通信が入った。ニーナを発見、保護したそうだ』
ルルーシュ「ならばどうにか説得しないとな……フレイヤ開発者であるあいつが切り札になるだろう」
スザク『彼女も悔いていたから、きっと協力してくれると思う』
ルルーシュ「だといいがな」
C.C.「ぼやくよりさっさと行動しろ。結果が大事なんだろ?」
ルルーシュ「わかっている。言われずともな」
C.C.「で、どうだったんだ?」
ルルーシュ「ニーナも俺がゼロと知った上で協力を誓ってくれた。現在アンチシステムを開発中だ」
スザク「さすがにすごい顔してたけどね……ユフィの事もあるから」
ルルーシュ「贖罪は必ずするさ。ただし、命でではなく生きて世界を変える事でだがな」
スザク「……ルルーシュ。僕は今も君を許せない」
C.C.「相変わらずだな。頑固な男だ」
スザク「でもシャーリーも言ってた。許せない事はない。それはきっと、許したくないだけだって」
ルルーシュ「……そうか」
スザク「だからルルーシュ。いずれ君を許してもいいと思えるようになってくれ」
ルルーシュ「わかっている。それまで死ぬつもりはないさ……その先も」
ルルーシュ「愚弄は許さんぞ」
スザク「でもルルーシュ、今日また許せない事が一つ増えたよ」
ルルーシュ「は?」
スザク「ヴァリスでクラッカーなんて、あんな恥ずかしい真似はもうこりごりだ!」
C.C.「滑稽だったぞ、実にな」
ルルーシュ「安心しろ、お前の時も盛大にやってやる」
スザク「」
スザク「ジェレミア卿!? いつの間に……」
ルルーシュ「別働任務ご苦労だったな、ジェレミア」
ジェレミア「お心遣いありがとうございます、陛下」
ルルーシュ「お前にももっと働いてもらう事になる。苦労をかけるが、いいか?」
ジェレミア「イエス、ユア・クリスティ!」
C.C.「なんだそれは」
ジェレミア「陛下がご婚約されたとの事で、その喜びを全力で言葉にしてみました」
ルルーシュ「頼む、やめてくれ」
ルルーシュ「……お手柔らかに頼む」
ジェレミア「もったいないお言葉! スザク君、君の時もこの私に全て任せよ!」
スザク「え、えーと……ルルーシュ、僕はロイドさん達の所に行くよ」
ルルーシュ「そうか。丁度いい、ジェレミア。お前もスザクに同行してやってくれ」
スザク「」
ジェレミア「イエス、ユア・クリスティ!」
ルルーシュ「それはもういい」
C.C.「スザクの奴逃げられないな。酷いやつだ」
ルルーシュ「今更だな」
C.C.「ケチつける気はない。だが、罪を背負って生きるのは死以上に苦難の道だぞ?」
ルルーシュ「こんな俺でも、必要としてくれる人がいる。ならば、恐れる事はない」
C.C.「茨の道を行くか」
ルルーシュ「往く道が覇道から王道になっただけだ。もう誰も泣かせる気はない……絶対にだ」
C.C.「よかったな、あいつと話すことが出来て」
ルルーシュ「ふん……黙れ、魔女」
C.C.「はいはい……どこまでも素直じゃない坊やだ」
カレン「そっちも、順調みたいね」
ルルーシュ「カレン。KMFの整備があるんじゃ……」
カレン「あなたの側に居たかったの」
C.C.「残念ながら、二人きりではないけどな」
カレン「む……」
C.C.「冗談だよ。お邪魔虫は出てってやるさ」
ルルーシュ「すまんな」
C.C.「ピザ10枚。それで手を打ってやる」
カレン「……ホント変わらないわね、あんた」
C.C.「当然だろ? 私は――」
カレン「C.C.だからな。……でしょ?」
C.C.「……ふん」
カレン「やれって、何を……」
C.C.「ふふっ、さあな? ……それじゃな」
プシューッ
ルルーシュ「……」
カレン「……えっと……その」
ルルーシュ「……なんだ?」
カレン「あのね……訊きたい事が、あるんだけど」
ルルーシュ「……言ってみろ」
ルルーシュ「あれか。それが何だ?」
カレン「あれってその……本気かなーって」
ルルーシュ「疑うのか?」
カレン「そういうんじゃないけど……あの場を繋ぐ作戦なのかなーとも思って」
ルルーシュ「想像に任せるよ……だが」
ルルーシュ「サプライズって、あった方がいいだろ?」
カレン「……誰かさんみたいね」
カレン「もういいわ。だけど、もう一つだけ……もう一度だけ、訊かせて」
ルルーシュ「ん?」
カレン「あのね……」
カレン「あなたは、私の事どう思ってるの……?」
ルルーシュ「そうだな……」スッ
ルルーシュ「こう、思ってる」
(ちゅっ)
おしまい。
Entry ⇒ 2012.11.04 | Category ⇒ コードギアスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
澪「おい田井中コラ」律「なんだ秋山コラ」
律「うるせーな、これが私のやり方じゃドアホ」
澪「やり方ちげーだろコラ。どうせ余所見しながらやってただけだろカス」
律「余所見ちげーし。ちゃんと前見てたわマヌケ」
澪「前見てたって……前は私の背中だろうがクズ。背中じゃなくてドラムと楽譜見んかい」
律「うるせぇな。綺麗なお前の黒髪の後ろ姿に思わず見とれたんだから仕方ねぇだろトンチンカン」
澪「ふざけろよテメェ。それ言ったらドラム叩いてる時のお前はエネルギッシュで元気に溢れてて凄く格好いいぞコノヤロー」
律「ありがとよメルヘンお花畑野郎」
澪「どういたしましてデコ助野郎」
唯「素直じゃないねあの二人も」
梓「それ以前に何か言うべきことがあると思います」
紬「わかるそれめっちゃわかる。でも何のことかムギちゃんわかりません」
紬「はーい」
澪「また茶かコラ。少しはまともに練習する気無いのかタコ」
律「うるせー腹が減ってはなんとやらだコノヤロー」
澪「付き合ってられんわ死ね」
律「澪はケーキいらねーとさ。ガトーショコラもーらい」
律「美味いまじ美味い。やばいなにこれ」
澪「……ごくり」
律「あー……? ……チッ」
律「やっぱケーキいいわ。私ダイエットしてたんだった」
律「残すの勿体無いから誰か食ってくんねーかなー?」
唯「私が……」紬「ちょっと黙って」
澪「の、残すとかふざけんなよバカ。仕方無いから私が食べるわ。仕方無いから」
律「どーぞボケ。美味いかボケ」
澪「それはもう美味いぞありがとう凸カチューシャ」
澪「いくらなんでも遅ーよ。もう学校始まるぞふざけんな」
澪「あ? 律からメール……」
律『風邪引いた。学校休む。死ね』
澪「死ね。氏ねじゃなくて死ね」
澪「」カチカチ
澪「送信っと」
『お見舞いはゲンコツと桃缶のどっちがいいですかゴミカス』
律の部屋
律「げほげほ……澪からメール返ってきた」
律「前者選ぶ訳ねぇだろアホか。欲を言えばポカリも下さい」
律「んなの迷信に決まってんじゃんマヌケ」
律「お前あれか、勉強出来るけど頭は弱いとかそういう奴か?」
澪「帰るわ」
律「帰れ」
澪「取りにくいようにお前の対角線上にお見舞い置いておくからなノロマ」
律「勝手にしろ」
澪「桃缶とポカリと良く聞く風邪薬と蒸しタオルと自作のポエム置いてくからな」
律「最後だけいらねぇ、持って帰れバカ」
律「って、もういねぇや。サンキュー澪」
律「あーあ言っちゃった。唯さん言っちゃった。テスト開始日まで忘れようとしてたのに」
梓「ダメでしょ……」
澪「普段から真面目に勉強しないからそうなるんだよアホ」
律「黙ってろクズ。やれば出来るっつーのやれば」
澪「ほお? なら結果を楽しみにさせてもらうわド低脳」
律「吠え面かくなよド畜生?」
紬「私が勉強教えてあげようかりっちゃん?」
律「マジ心強いわムギ。百点余裕だなこりゃ」
律「今度の休みに私の家に遊びにきなよ、二人だけで勉強会しようぜ」
紬「ええ♪」
澪「」イラッ
澪「私も行く。特に意味は無いけど」
律「は? 意味わかんね」
澪「行くったら行く。空気読め死ね」
律「ふむふむ分かりやすい。どっかのパンモロベーシストとは大違いだな」
律「っていうか、なんでお前までマジで来てんの? 実はお前もテスト不安なの?」
澪「テメェと一緒にすんなタコ。見張りだ見張り」
律「見張りだぁ? なんのだよコラ」
澪「……うるさい黙れシャラップ」
律「……」
律「あっそ。勝手にしろやカス」
律「んなことしなくても私にはお前しか居ないなんて分かりきってんのによ」
澪「!」
澪「……」
澪「用事思い出した帰る死ね」
律「気をつけて帰れ死ね」
紬「尽きる。何か分からないけど尽きるわこれ」
梓「はぁ……」
澪「どうした梓?」
梓「実は憂とくだらないことで喧嘩しちゃいまして……」
梓「悪いのは私だから早く謝らなきゃとは思うんですけど気が重くて」
澪「うーん……辛いよなそれは」
梓「……澪センパイはいつも律センパイと仲良いですよね。喧嘩らしい喧嘩ってしたこと無いんですか?」
澪「冗談だろ、あの凸とは喧嘩しかしたことねーよ」
梓「え? それこそ冗談言うなですよ。あんなに仲良さげにしてるじゃないですか」
澪「は? ねーわ、ナイナイ。あんなカスと仲良くするくらいなら死ぬわ」
梓「いやだって……」
律「帰るぞ秋山コラ。外は寒いから私のマフラーにくるまってけコノヤロー」
澪「いま準備中だコラ。ここに手袋がたまたま2セットあるから一つやるよバカヤロー」
梓「それだよそれ」
唯「あずにゃん一緒に帰ろー」
梓「ちょっと待っててください。もう少しお二人を眺めてから行きます」
澪「嘘、私カサ持ってきてないぞ」チラッ
律「こっちみんなトンチンカン。実を言うと私も持ってきてないんだよ天気予報のクソッタレ」
澪「はーぁ……使えねー女。おっぱいのカップ数は盛ってるくせにカサは持ってないとか」
律「盛ってねーし! 調子のんなよバーカ!!」
澪「可哀想だな。『無い』って」
梓「その発言は私も敵に回しますよ」
律「へへーんだ! そのぶんスレンダー体系だもんね私!」
律「お前みたいなムチムチデブとは違うんだよ」
紬「」ガタッ
澪「デブじゃねーし! ちょっと……なだけだし!」
律「ざまぁ」
律「チッ……ちょっとおっぱいデカくて水着が映える体型してて釣り上がった瞳がそこはかとなくクールでポニテにすると覗いて見えるうなじが色っぽいからって!」
律 澪「お前なんか大嫌いじゃボケ!!!」
唯「この場合私はどちらにつくべきなのか」
紬「あ、小降りになったわ」
梓「これなら歩いて帰れますね。あの二人はほっといて行きましょうか」
律「大体お前はなぁ……」澪「それ言ったらお前も……」
澪「……駄目だぁ。なんにも歌詞思いつかない」
澪「スランプに陥ったかもしれないな……考えても考えても動物ネタしか出てこないや」
澪「気分転換にどっか出かけてみるか」PPP
澪「……っとお! そう思った矢先に凸から電話だよ。くだらない用だったら殺す」
澪「もしも死ね」
律『もしも死ね。今暇か? というか暇だろこの暇人』
澪「これから忙しくなるんだよバカ。何の用だコラ」
律『殴り込み行くぞ』
澪「何言ってんだコイツ」
律『殴り込みったら殴り込みだよ。ビビってんの澪ちゅわん?』
澪「ビビるかよアホ今行ってやる調子のんな」ピッ
澪「……」
澪「な、殴り込み??」
律「うっし! 見ろよ澪、パンチングマシーンで新記録出したぞ」
律「お前にこの記録を越せるかな?」
澪「……『殴り込み』、ね」
澪「もう帰っていいか? 色々やることあるんだわ私」
律「ん? 逃げんのか秋山。だよなぁ、この記録見ちゃったら自信無くすよな」
澪「いーま、なんつったぁ田井中コラ」
澪「こんなもん利き手じゃない右手でも余裕だわ」
澪「ほうらよっと!」バシーン!
澪「はい、新記録~」
律「……マジか」
澪「ごめんねぇ強くてさぁ?」
律「じ、じゃあ今度は音ゲーで勝負だ! これなら……!」
澪「上等だコラ。格の違いを教えてやる」
澪「ぜぇ……ぜぇ……なんて無駄な時間を過ごしてしまったんだ」
律「やめたやめた。帰る」
澪「誘っといてそれか死ね」
律「じゃあこれやるよ」
澪「……なんだこれ。不細工なぬいぐるみだな」
律「お前が来る前に暇だから取ったんだ。秋山にはお似合いだろ」
澪「別にいらないし、私の趣味じゃないし、そんな風に言われて渡されても嬉しくないし」
律「いらなきゃその辺に捨てといてくれ」
澪「でもこんな所にこんなゴミ捨てたら怒られるから持って帰る」
律「じゃーなバカ」澪「またねバカ」
澪「……」
澪「(なんか今日は良い詩が書けるかもしれない)」
律「(そりゃ良かった)」
澪「!?」
澪「なんだ田井中コ……」
律「……ぐすっ」
澪「……なんで泣いてんだよアホ」
律「……」
澪「何か嫌なことあったのか」
律「……おう」
澪「……言ってみろよ」
律「やだ」
澪「はぁ? ふざけ…………いや、いいか」
澪「隣に来い」
律「……命令すんな」すっ
澪「いいから。……辛いならせめて一緒に居てやるってんだよ」
律「……嬉しいよバカ」
澪「だって好きだからな……バカ」
澪「遅い。また風邪でも引いたのかと心配したろうがクズ」
律「ごはんが美味しくて止まらなかったんだよボケ」
澪「ふざけんなコラ。くだらない理由で待たせんな寂しいだろーが」
律「うっせーなデカチチ。これからは気をつけるよコノヤロー」
唯「あ、澪ちゃんとりっちゃんだ! おはよー」
梓「今日もお二人で登校ですか? 仲の良いことで」
紬「ふふ、素晴らしいわ」
律「なんだなんだゾロゾロと」
澪「おはよう」
梓「ご都合……」紬「それ以上はいけません。めっ!」
澪「な、なんか良く分からないけどみんなで一緒に登校するか」
律「めんどくせーけどな畜生」
唯「うん! ……あれ?」
梓「どうかしました? 唯センパイ」
唯「澪ちゃんとりっちゃんが手を繋いでる!!!」
紬「えっえっ? ホントだぁ! //」
唯「ねぇねぇなんで手を繋いでるの? しかもそれ恋人握りってやつだよね?」
律「あ、いやこれは……!」
唯「逃げ出さないように……なるほど、つまり澪ちゃんはりっちゃんを離したくないほど好きなんだね!」
澪「ち、違う! そういう意味じゃなーい!」
梓「束縛する女は嫌われるというお話がありますけど、そこんとこ律センパイはどうですか?」
律「……//」
澪「あ、赤くなってんじゃねぇ!? バカかコラ!?」
紬「挙式はいつですか?」
澪「しねーよ!」
律「あーもーうるせーうるせー! 澪なんて大嫌いだっつーの!」
澪「私だって大嫌いだこんなデコ助野郎!」
律 澪「お前なんか私と付き合ってその内結婚して子宝に恵まれて暖かい家庭を築いて幸せな日々を送って老後は沢山の孫に囲まれて笑顔で私と一緒に死ねばいいんだよ!!!」
唯「一字一句間違わずに淀みなかったね」
梓「私もう知ーらない」
澪「田井中コラァ!」
律「なんだ秋山コラァ!」
澪「あと死ね」
律「ずっと一緒さ澪おおおおお!!!」
律「テメェが死ねボケ」
紬「ねえ二人のこれからを記録してもいい? 大丈夫悪用はしないから。私的利用するだけ!」
律 澪「ふざけんな死ね。こいつの全ては私のものだ」
唯「もう一生やってろや死ね」
おわり
グダグダなったのは反省するからねかせて
は?ふざけんな死ね!
温かい布団でぐっすり死ね!!
朝まで幸せな夢見ながら死ね
Entry ⇒ 2012.11.04 | Category ⇒ けいおん!SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
咲「陽に照らされて花は咲く」
の後編になります。
原作設定を無視してオリジナル展開、オリジナル設定、独自解釈があります。
あくまでパラレルワールド的に捉えてください。
あと、前編以上にノリノリで麻雀パート書いてしまいました。すみません。
麻雀そのものは弱いです。積み棒計算は省きます。
決勝戦前日
菫「みんなお疲れ様。今年も決勝戦までこれたな。残すところあと一試合だ。油断せず、全力でいこう」
部員一同「はい!」
菫「では解散」
部員一同「ありがとうございました!」
菫「ふう……」
菫「誠子、照と大星がどこにいるか知ってるか? 見えないんだが」
誠子「え、ああ、なんか部屋にいるらしいです。宮永先輩はちょっと疲れたからって」
菫(で、大星はその付き添いか)
菫「わかった。ありがとう」
菫(照……準決勝からずっと様子がおかしかった。普段は真面目なのに、急に大星と
勝敗を賭けたりして……あいつらしくない)
菫(……少し様子を見てくるか)
廊下
菫「あいつの部屋は私の隣だったな」
菫(本当は私と相部屋する予定だったんだが、大星が「テルと同じ部屋じゃないと
泊まらない」ってうるさかったからな)
菫「照、入るぞ」コンコン ガチャ
菫「照、大丈夫か?」
照「大丈夫」
淡「くぅー」スピー
菫「こいつは……集合かけても来ないと思えば、まさか寝てるとは……
本当に集団行動のできんやつだな。部活動だっていう意識がないのか?」
菫(ないんだろうなぁ……)ハァ
菫「それで、体調が悪いって聞いたが?」
照「それは嘘」
菫「……お前も大星に毒されてきたんじゃないだろうな?」
照「少し考え事がしたくて」
菫「そうか。――まあ、その、なんだ」
照「?」
菫「準決勝……お疲れ様。いつも通り大活躍だったな」
照「……どうしたの急に」
菫「労ってるんだ、素直に受け取れ。というか、他の部員にはさっき集合かけて
伝えたんだ。お前がこないから個人的に伝えにきたんだよ」
照「そう」
菫「……それで、どうしたんだ? お前準決勝からおかしいぞ」
照「……別におかしくなんてない」
菫「見くびるなよ。何年一緒に麻雀打ってきたと思ってる」
照「……」
菫「急に大星をけしかけるようなこと言ったり、終いには大将戦を代わってくれだなんて」
照「変更はできそうなの?」
菫「帰りに申請してきたよ。ちゃんと受理された。明日の大将はお前だ、照」
照「……そう」
菫「やっぱりなにかあるのか? あの清澄の大将と。……お前の……妹さんじゃないのか?」
照「くどい。違うと言っている」
菫「ならなんで大将を代われなんて言ったんだ。そもそもお前が大星を大将に据えたようなものだろう」
照「……」
照「別に。少し淡を買いかぶりすぎてただけ。この子になら大将が務まると思ったけど、
準決勝を見て、淡だと清澄に勝てないかもしれないと改めたの」
菫「そうか? 身内贔屓を差し引いても、十分清澄と互角以上に戦えてたと思うけどな。
まあ、大星の納得できる勝ち方ではなかっただろうがな」
照「でも、嬉しそうだったね、淡」
菫「確かにな。まあ、こいつは全国にも期待してなかったみたいだし、思わぬところで
自分と……それも同学年で互角に戦えるやつに出会えて嬉しいだろうな。連れてきてよかったよ、本当に」
照「……」
菫「? どうした」
照「菫は、どうしてそこまで淡を気遣うの?」
菫「どうしてって……後輩だからな。当然だ」
照「それだけ?」
菫「……どうなんだろうな。こいつはどこか放っておけないんだ」
照「菫はおせっかい焼き過ぎだと思う」
菫「おいおい、誰のせいだと思ってる」
照「……私のせいなの?」
菫「当たり前だ、まったく。一年の頃のお前は全く部に馴染めずにいつも一人で、
そのくせいつも寂しそうで、しょっちゅう迷子になるし、本当に世話のかかる奴だったよ」
照「……そんなことない」
菫「どの口が言う。お前は一年の頃から他の部員を圧倒してて、なんか一軍の人らも
どう接していいのか困ってたから、とにかく部で浮いてたぞ。私もそんなお前が
気になって仕方なくて、何度も話しかけたりして気を遣ってたらいつの間にか
お前の世話役を押しつけられたようなもんだ」
照「……ごめん」
菫「別に責めてるわけじゃないさ。ただ……そんなお前と大星は、驚くほど重なるんだ」
照「私と淡が?」
こいつのことが気がかりで仕方ないんだよ私は」ツンツン
淡「ん……」スピー
照「……菫はさ」
菫「ん?」
照「淡が怖いって感じるときないの?」
菫「怖い? どうして」
照「実力が違いすぎる。この子と打って、次元の違いを感じたりしない?」
菫「この、ハッキリ言ってくれるじゃないか」
菫「……正直言って、次元の違いは感じる。こいつは実力までお前にそっくりだ。その差に愕然と
することはある。もしかしたらそれが怖いってことなのかもな」
菫「だが、大星から逃げ出したいなんて思ったことはない。大星と打つのはちゃんと
楽しいし、もっとこいつと打ちたいって思う。先輩が言う台詞じゃないかもしれんが、
いつかこいつに追いつきたいって思う」
照「そう……」
菫「お前もだぞ、照」
照「え?」
菫「前にお前と打つのは楽しいと言ったが、あれは嘘なんかじゃない。
……まあ、一年の頃は確かに、お前と私じゃあまりにも差がありすぎて腰が引けてたのは
事実だ。だが私はその頃から、お前から逃げ出したいなんて思ったことはない」
菫「でも……他の部員はそうもいかないだろう。なあ照、大星から聞いたか?
お前が部を引退して白糸台を卒業したら、大星も麻雀部を辞めるんだとさ」
照「……聞いてない。けど、そんな気はしてた」
菫「他の部員が引きとめるとも思えん。その様子だとお前も引きとめないみたいだし、
もう大星はいなくなるってことだぞ、照。いいのか?」
照「それはこの子の自由」
菫「……」フゥ
照「――私は」
菫「ん?」
照「私は……この子が怖い」
菫「は? 大星のことか?」
照「うん」
菫「怖い……? 怖いもなにも、お前大星に一度も負けてないじゃないか」
照「実力は関係ない。私は……この子の才能が怖い」
菫「? ますますわからんな。私もかれこれ永いこと麻雀を打ってきたが、お前以上の
才能の持ち主には出会ったことがないぞ。『高校生最強』『一万人の頂点』『牌に愛された子』。
どれもお前に相応しい呼び名じゃないか」
照「牌に、愛された……」
照「……」
照「淡は本当に牌に愛されてる。こんなに牌に愛されてる子を見たのは、この子で二人目」
照「何もしなくても牌たちが自然と淡のところへ集まってくる。この子の星の引力は、
その力を淡がコントロールしているってことだから」
菫「だったらお前だってそうだろう。あれだけ有効牌をツモりまくれるんだ。まさに
牌に愛された子の証だろう」
照「……」
照「私は……」
菫「……どうしたんだ照。お前、やっぱりおかしいぞ」
照「……」
淡「ん」
淡「んんー……!」フワーァ
菫「ああ、大星。起きたか」
淡「あれ、菫? なんでここにいるの?」
菫「こっちの台詞だ。集合かけたのに居眠りとはどういうことだ」
淡「だってテルが体調よくないって言ってたんだもん。誰かが傍にいてあげないと」
菫「じゃあ寝るなよ」
淡「いいじゃん別に。私昔から校長の話とか聞くの嫌で朝礼とかサボってたし」
菫「まったく……。ああそれと、オーダーの変更してきたから。大星は明日先鋒だ」
淡「はーい。ちぇ、ほんとは咲ちゃんと決勝で決着つけたかったのにな。まあ
テルの頼みなら仕方ないけどさ」
照「ごめん」
淡「謝ることないよ。咲ちゃんとは個人戦で白黒はっきりつけるから」
淡「それに……」
照「ん?」
淡(咲ちゃんが言ってたテルに伝えたいこと……それはきっと、一緒に卓を囲まないと見えてこないものだ)
淡(なら、テルが大将になりたいって言ってくれて、逆によかったのかもしれない)
照「それに、なに?」
淡「ううん。やっぱ白糸台三連覇はテルが自分の手で決めないとね」
菫「そうだな……三連覇、もう目の前なんだもんな」
照「……頑張るよ」
夜
照「そろそろ寝る?」
淡「そだね。……ねえ、一緒のベッドで寝よっか」キラキラ
照「寝ない。おやすみ」カチカチ
淡「えー」
照「えーじゃない」
淡「私のベッドの位置って風水的にあんまりよくないから、そっちのベッドで一緒に寝てもいい?」
照「いいよ。私がそっちのベッド使うから」
淡「……よーし、ちょっと飲み物でも飲もっかなー」
淡「おっと手が滑った」バシャ
照「……」
淡「あちゃー、こりゃいかん。私のベッドがべちょべちょだわー」
照「……」
淡「もうこのベッドじゃ寝れないね。仕方ないからテルのベッドに入ってあげる」
照「……明日きちんとホテルの人に謝ってね」
淡「最高級のベッド弁償しとくよ。じゃ、おじゃましまーす」モゾモゾ
照「……」
淡「狭いからもっと近く寄ってよテル」
照「床で寝るといいよ」
淡「テル最初、和式部屋取ってたでしょ。信じられない」
照「淡が大反対しなかったら私はあそこでもよかった」
淡「布団とか有り得ないから。床で寝るなんて、文明人としてどうなのよ」
照「淡は布団で寝たことないの?」
淡「ないよ。うちではダブルベッドを一人で使ってるし」
照「尭深は逆にベッド嫌だって言ってたね」
淡「尭深は純日本人って感じだしね。私日本茶よりも紅茶派だから、尭深とはとことん
合わないや。テルは日本茶と紅茶どっちが好き?」
照「水」
淡「……水かー。うーん……」
淡「テルは家では布団で寝てるの?」
照「うん。うち狭いからベッド置けなくて」
淡「あ、母子家庭なんだっけ?」
照「まあ、ね。まだ離婚はしてないけど」
淡「別居中なんだ」
照「そう」
淡「前の家でも布団で寝てたの?」
照「いや、前の家ではベッドで寝てたよ。今は安いアパートに住んでるからベッド置けないだけ」
淡「へー。なんかイメージと違うなー」
淡「ベッドは二段ベッドだったの?」
照「? 違うけど」
淡「そっか。じゃあ咲ちゃんとは違う部屋だったんだね」
照「うん」
淡「ふーん?」
照「……っ」
淡「……」
照「……」
淡「……」
照「……誘導尋問とかする子だったんだね、淡って」
淡「油断したね、テル。やっぱり咲ちゃんと一緒に住んでたんじゃん」
照「……見損なった。ベッドから出てって」
淡「どうして妹はいないなんて嘘吐いたの? そんなに咲ちゃんのこと嫌い?
いい子じゃん、あの子」
照「咲は私の妹じゃない」
淡「でも一緒に住んでたんでしょ?」
照「一緒に住んでただけ。妹じゃない」
淡「苦しすぎるって。昔何があったか知らないけどさ、姉妹から嫌われるのって結構つらいよ?」
照「淡には分からない」
淡「分かるよ。私も妹いるし。麻雀がからきしだからちょっと避けられてるけどね」
照「……」
淡「……やっぱり麻雀に関することなの?」
照「人の家庭事情を詮索しないで」
淡「ふー……これは重症だね」
照「……」
淡「ねえテル。私さ、今までずっとテルは私と同じ打ち手なんだって思ってたんだ」
照「……」
淡「でも、いつも微妙に違和感があって、何かが違うってずっと引っかかってたの。
それが何なのか分からなかったんだけど」
淡「準決勝で咲ちゃんと打って、やっと分かったんだ。テルの麻雀の正体に」
照「……」
淡「まあ、ちょっと逆説的な理解なんだけどね。私の麻雀と本当に似てるのは
咲ちゃんだった。……でも、咲ちゃんとテルの麻雀は、まるで真逆。対極の麻雀だった。
だから、私とテルも違うんだって気づいたの」
照「……」
淡「……テルはさ」
照「淡。もう寝たいから喋らないで。嫌なら床で寝て」
淡「……」
淡「じゃあ、最後に一つだけ教えてよ」
照「……一つだけね」
淡「私はさ、昔すごく麻雀が好きだったんだ。毎日麻雀が打ちたくて仕方なかった。
でもどんどん孤独感を感じるようになって、麻雀が嫌いになっていったの」
淡「何度もやめようと思った。テルに出会えてなかったら実際にやめてたと思う。
それはもちろん、対等に戦える子がいなくてつまんないっていうのもあるけど、なにより、
今まで大好きだった麻雀を嫌いになっていくことに耐えられなかったの」
照「……」
淡「今まで大好きだったものをどんどん嫌いになっていくのって、すごく辛い。
そんなことに耐えられる人なんて想像もできない」
淡「だから……分からないんだ。テルのことが」
照「……」
淡「ねえ、テル。……あなたは、どうして麻雀を続けてるの?」
照「……」
淡「テル」
照「……」
淡「ねえ、テルってば」
照「……すー」
淡「うわ、ウソ寝ヘタだなー」
照「うるさい。もう寝たから」
淡「起きてるじゃん」
照「もうあと一秒で寝るから。はい寝た」
淡「もー」
淡「ねーテルー」ユサユサ
照「……」すー
淡「……寝テル」ボソ
照「……」
淡「ホントは今のちょっと面白いと思ったくせに!」ユサユサ
照「うるさいなぁ」
淡「おきテル」
照「……もう黙って。本当に寝るから」
淡「宮永……大星……あわい……あわ……うーん」
淡「あわ……あわテル。お。慌てる」
淡「……あわテル」ボソ
照「……」
淡「ちょっと面白いと思ったくせにぃ!」ユサユサ
照「うるさい」
淡「おきテル」
二時間後
淡「……」すぴー
照「……」
照「淡、起きてる?」
淡「……ん……テル……」
淡「……あぁ……やっぱテル……強いなぁ……」ムニャムニャ
照「……」
淡「んん……あぁ、テル……今、手加減……でしょ」ムニャムニャ
照「どんな夢見てるんだ。――ん?」
照「淡……泣いて、る……?」
淡「テル……ゃだよ……負けないで……私より、弱……ならないで……独り……しない、で……」グスッ
照「…………」
照「ごめんね、淡」ナデナデ
淡「……ん……」ムニャ
照「何故麻雀を打つのか……菫にも同じことを訊かれた。……でも、やっぱり答えられなかった」
照「分からないんだ、私にも。私もお前と同じだ、淡。もうとっくに麻雀に絶望してて、
何の喜びも感じられなくなっていた」
でも、私は麻雀を打ち続けた。一日も休むことなく、三年間打ち続けてきた。
何度も投げ出したくなったけど、それでも私は麻雀を続けた。その理由すら定まらないままに。
照「……明日だ」
明日……私は咲と戦う。そのときにきっと、全ての答えが得られる。そしてきっと
そのときに……何かが終わる。そんな予感がする。
照「――絶対勝つ」ゴッ
決勝戦当日
白糸台控室
恒子『――さあ今年のインターハイの決勝戦も、もう副将戦に突入しています。
白糸台は準決勝のあと突然オーダーを変更し、先鋒と大将を入れ替えてきました』
恒子『先鋒で他家を相手に大暴れした一年生、大星淡選手の活躍により大きくリード
する白糸台。この副将戦で他校はどこまで追いつけるのか――!?』
菫「……いい感じだな。このままいけば2万点くらい残して照に繋げられそうだ」
淡「そうだね。私の55000点差が2万点差になっちゃったのは残念だけど、仕方ないよね」
菫「お前はまたそういうこと言って……」
淡「別にいいよ。私も思ったより稼げなかったし。それより、そのテルはどこにいるの?」
菫「さっき外の空気を吸ってくるって行ったきり戻ってきてないな」
淡「また迷子になったんじゃない?」
菫「いや、まさか……」
菫(……有り得ないと言えないのがなんともなぁ)ハァ
菫「携帯で呼び戻すか」ピッポッパ
プルルルル、プルルルル
菫「……」
淡「……」
照の携帯「プルルルル、プルルルル」
菫・淡・尭深「……」ハァ
菫「何度言えばわかるんだろうな照は。常に携帯を持っておけとあれほど言ったのに」
淡「テルってほんと携帯持ち歩かないよね」
菫「仕方ない、探してくる」
淡「私も行くよ」
尭深「じゃあ私は残ってます」
菫「ああ、頼んだぞ」
会場の屋上
照「……」
決戦の時が迫っているのを感じる。その割にひどく心は静かだった。
咲を恐れる気持ちは全くない。もう何もかもがあの日から変わってしまったんだと痛感させられる。
あとはただ戦うだけだ。私と咲が……自身の麻雀を全てを賭けて。
照「……今日……」
何かが終わる予感がする。それがなんなのかは分からないけど、ここが一つの分岐点に
なる気がしてならない。
照「……」
あの子と打つときはいつもそうだった。あの子が麻雀を打つと、いつも何かが変わっていった。
両親の関係も、家族の仲も。……私と咲の関係も、私の麻雀も。
全てを咲の責任にするつもりはない。でも、多分あの子はそういう天命を帯びて
産まれてきたんだと思う。良くも悪くも、周囲に影響を及ぼさずにはいられない。
そう思わせるほど、あの子の力は凄まじい。淡にも退けを取らないほどの天運の持ち主だ。
照「……」
淡と咲の戦いを見届け、私は確信していた。
私の麻雀は、間違いなく咲を上回っている。
全てを計らったわけじゃない。多くの偶然の累積が、準決勝での淡と咲の激突を生んだ。
その全てを見届けた私には、もう何も恐れるものなどない。
淡は咲のプラマイゼロを止めてみせた。ならきっと……私にもできるはずだ。それは咲の麻雀の
否定。
その超絶な支配への抵抗だ。今の私にはそれができる。――もう、昔の私ではない。
私はもう、きっと咲の麻雀を超えたはずなんだ――
咲「――お姉、ちゃん」
照「!」バッ
照「……咲」
咲「あ、あの……」
照「……」
咲「私、ちょっと決勝前に気分転換しようと思って、そしたら道に迷っちゃって、ここに……」
照「……」
ツカツカツカ
咲「あ、ま、待ってお姉ちゃん!」
照「……邪魔」
咲「あの、あのね。私ね」
照「邪魔」
咲「お姉ちゃんに伝えたいことがあるの! お姉ちゃんともう一度、ちゃんと話がしたくて!」
照「――邪魔!」
咲「……!」ビクッ
照「……」
照「お前と話すことなんか何もない。未だにプラマイゼロなんて続けてるお前となんか」
咲「……」
咲「私のプラマイゼロを見てくれたら、お姉ちゃんに伝わるんじゃないかなって……思って……」
照「何が? どこまでも相手を舐めてるなとしか思えない。最低の麻雀だ」
咲「……」
照「……邪魔」
ツカツカツカ
咲「……」
咲「あの日のこと」
照「……っ」ピタ
咲「あの日のこと……まだ怒ってる……よね?」
照「……」
咲「私、怖くて……。勝つのも、負けるのも怖くて……だから……」
咲「でも、今は違うんだ。麻雀が楽しくて、勝ちたいって思えるようになったの」
照「……」
咲「お姉ちゃんの麻雀が変わったように、私の麻雀も変わったの。それを……知ってほしくて」
照「変わってないよ」
咲「え?」
照「お前の麻雀は変わってない。昔のまま、ただ相手に絶望を与えるだけの麻雀だ」
咲「……」
照「私は絶対にお前の麻雀を認めない。お前のことも、未だに赦そうと思えない」
咲「……うん」
照「……まさかとは思うけど、決勝でもプラマイゼロなんてやるつもりじゃないよね」
咲「……」
照「……本気?」
咲「私は……」
照「白糸台は間違いなく一位で大将に回ってくる。そこでプラマイゼロなんてしたら、
どう足掻いても一位にはなれない。――戦う前から勝つ気がないの?」
咲「……」
照「……呆れて言葉も出ない。何が私の麻雀は変わった、だ。何も変わってないじゃないか。
やっぱりお前の麻雀は最低だよ、咲」
咲「……」
ツカツカツカ
咲「……お姉、ちゃん……」
ガチャ バタン
階段
照「……」カツカツカツ
照「……盗み聞きはいい趣味じゃないよ」
淡「たまたま聞こえちゃっただけだよ」
照「ここで何してるの」
淡「こっちのセリフだよ。もうすぐ大将戦始まるのに控室にいないから菫と探しに来たんだよ」
淡「携帯電話は携帯する電話なので携帯電話っていう名前だと思います」
照「……」ガサゴソ
照「……忘れてた。気付かなかった」
淡「だろうね」
照「じゃあ戻ろうか。まだ時間に余裕はあるよね?」
淡「うん。早くに見つけられてよかったよ。三日前みたいに、二階下の売店にいくつもりが
野外プールに迷い込んでた、なんてことになってたら探すの骨だし」
照「その話いつまでするの? もう五回くらい茶化された」
淡「『――まったく、どう間違えれば屋内にある売店にいくつもりが野外プールに迷いこむなんて
話になるんだ? なぜホテルのドアをくぐる段階で気付けないんだ照。……おい照、聞いてるのか?』」(声真似)
照「……ちょっと似てる」クス
淡「でしょ?」アハハ
淡「――それで? 咲ちゃん、大将戦でもプラマイゼロやるって?」
照「……らしいね。理解できないけど」
淡「優勝しません、って言ってるようなものだもんね。大物なのか馬鹿なのか」
照「――舐めてるんだよ」
淡「照を?」
照「違う。麻雀と、それに携わる全ての人を」
淡「……」
照「あの子はいつもそう。自分のことしか考えてないんだ」
淡「……」
菫『――白糸台を……いや。全国の雀士を舐めるのも大概にしろ!!――』
淡「……咲ちゃんには、何か考えがあるんじゃないかな」
照「ないよ。あの子はプラマイゼロに取り憑かれてるだけ」
淡「勝たない麻雀、か。やってることはすごいけど、結果が伴わないんじゃね」
照「そのうえ負けもしないくせに、実力では自分の方が上なんだと誇示してくる。……反吐が出る」
淡「テルは、咲ちゃんに勝ちたい?」
照「関係ない。誰にも負けるつもりはない」
淡「そうこなくちゃね。それでこそ私の目標だよ。……でもね、テル」
淡「咲ちゃん言ってなかった? テルに伝えたいことがあるんだって。プラマイゼロを通じて、
テルに思い出してほしいことがあるんじゃないかな」
照「……何? 淡、随分あの子の肩をもつね。準決勝で慣れ合うことを覚えたの?」
淡「そう聞こえる?」
照「淡の強さは孤高の強さだと思ってた。下に合わせず、いつも上だけを見つめて、常に高く
ありつづけるから淡は強いんだと思ってた。……見込み違いだったみたいだね」
淡「……私はあなたと出会って、麻雀の楽しさを思い出したの」
淡「あなたの陽の光に照らされて、私はまた輝くことができた。……生きてるって感じられた」
淡「ねえ、テル。私はあなたの麻雀、好きだよ。歪だけど……強くて、かっこいい。大好き」
淡「でもね……麻雀を打ってるときのあなたは、辛そうで……見ていて苦しくなる」
照「……」
淡「私に麻雀の楽しさを教えてくれたあなたが、辛そうに麻雀を打っている姿は……やっぱり
あんまり見ていて気持ちよくないな」
照「……私にどうしてほしいの?」
淡「別に何も。多分私は、この決勝戦がどんな結果に終わっても構わないんだと思う」
淡「私はテルのこと……好きだよ。あなたの麻雀も、あなた自身も。何があってもそれはずっと変わらない」
淡「咲ちゃんは今のテルが好きじゃないみたいだけど、私は今のテルも好きだから」
照「……結局、何が言いたいの?」
淡「私と咲ちゃんの言いたいことは、きっと一つだけだよ」
淡「――麻雀、楽しみなよ、テル」
照「……」
照「淡」
淡「ん?」
照「咲も。プラマイゼロも。全部関係ない。眼中にない」
照「――私は勝つ。それだけだよ」
恒子『――さあ、ついに、ついにこのときがやってきました! インターハイ決勝大将戦!
いま卓に全ての選手が揃いました!』バッ
恒子『Aブロック一位通過を果たした千里山からは、清水谷竜華選手! 冷静沈着な打ち筋で
堅実に勝利を手にした彼女は、この大将戦でもその力を発揮できるのか!』
恒子『同じくAブロックから二位通過を果たした阿知賀女子からは、高鴨穏乃選手! オーラスで
二位の臨海女子からの熾烈な猛攻を紙一重でかわし、逆転満貫を和了ったその力はマグレではなく
本物なのか!? ダークホースとして期待が集まっています!』
恒子『続いてBブロックからは、二位進出を果たした清澄高校、宮永咲選手! 予測できない変則的な打ち筋は
変幻自在! 準決勝での大星淡選手との激闘では惜しくも敗れましたが、その雪辱戦となるか!』
恒子『――そして、その三校の前に立ちはだかるのは、やはり彼女――宮永照!!』クワッ
恒子『決勝戦前に急遽オーダーを変更してきた白糸台のエースにして、高校生最強の名を欲しい
ままにする彼女。その宮永選手が、二万点リードの状態で大将戦に臨みます! これは他校にとっては
かつてない絶望として襲いかかっていることでしょう!』
恒子『前人未踏のインターハイ三連覇……彼女はその偉大な歴史を創造することができるのか。
それとも他校がそれを阻むのか! 一瞬たりとも目が離せない大将戦、まもなく開始です――!!』
恒子『……』ドウダッター?
健夜『……』オツカレサマ
白糸台:122500
千里山:102300
清澄:97900
阿知賀:77300
穏乃「よろしくお願いします!」
穏乃(この決勝が、和と遊べる最後のチャンス……赤土先生がこれなかった舞台!)
竜華「よろしくお願いします」
竜華(怜や皆がここまでがんばってくれたんや。私が最後に決めてみせる)
咲「……よろしくお願いします」
咲(お姉ちゃん……)
照「……」
照「よろしくお願いします」
東:照
南:竜華
西:咲
北:穏乃
東一局
恒子『さあ始まりました大将戦前半戦! まずはどの高校が先制するのか――!?』ビシッ
健夜『宮永選手が起家ですね。彼女が東一局を和了らないことを考えると、すこしもったいないですね』
恒子『ああ、そういえばそんなのもありましたね。なんでしたっけ、照魔鏡的な何かがあって、
最初は和了らないんでしたよね?』
健夜『そう。この一局を先制できるかどうか……他の三校にとってとても大きいと思います』
恒子『――おっと、そうこう言ってるうちに清水谷選手が動き始めたか――!?』
竜華「……」カチャ
竜華(この東一局。チャンピオンが見に徹する今だけは、大きな手を時間をかけて作れる絶好のチャンスや)
竜華(ここでまずは先制して、流れを掴む!)
竜華「……」カチャ
竜華(五巡目で聴牌……リーチかけるか? ……いや、もう二巡待とう。この手ならまだ高めが
狙える。チャンピオンの親番でそんなことホンマはできへんけど、この東一局だけは別や)
恒子『清水谷選手、ダマを選択。放銃を期待してはいないということでしょうか』
健夜『高めを狙ったんでしょうね。冷静だと思います』
恒子『おっと、しかしここで宮永照も聴牌――! 呑み手ですが、これは和了らないんでしょうか?』
健夜『おそらく』
竜華「……」カチャ
竜華(きた! 高め三面待ち。これで勝負や!)
竜華「リーチ!」チャラ
恒子『おーっとここで高めを引いての即リー! まずは千里山先制かー!?』
照「――ツモ」
竜華・穏乃・恒子・健夜『え……?』
咲「……」
照「――発のみ。1500」
竜華「……なんやて?」
恒子『――こ』
恒子『これはどういうことでしょう――! 宮永選手、東一局で1飜ツモ和了り――!?』
恒子『こ、小鍛冶プロ! 照魔鏡なんたらで東一局は和了らないんじゃなかったんですか!?』
健夜『そのはずだったんですけど……どうしたんでしょう』
白糸台控室
ざわ・・・!
菫「な……照が東一局で和了った!?」ガタッ
淡「……照魔鏡を使わなかったね」
菫「どうして……」
淡「……」
咲「……」
咲(お姉ちゃん……)
照「……」
――照魔鏡なんて、今更使うまでもない。
この子の麻雀は、私が誰よりも知っている。改めて見抜く必要なんてない。
照(――咲。様子見はなしだ。……最初から全力でいく)ゴォォッ!
淡「……あくまで咲ちゃん以外は眼中になし、か。ふふ、何が『咲は関係ない』なのよ。
めちゃくちゃ意識してるじゃん」
恒子『――さあ、これでチャンピオンの連荘です! まさかいきなり始まってしまうのか、
チャンピオンの連続和了!!』ズビシッ
東一局
竜華「……」カチャ
竜華(三巡目で聴牌……でも)チラッ
照「……」カチャ
照「ツモ。700オール」パララ
竜華(くそ……速すぎる!)
健夜『宮永選手は連続和了にばかり注目されがちですが、彼女を最強たらしめている要因は、
スピード……聴牌速度ですね。彼女の速さに追いつかない限りは、もう実力云々以前の問題です』
恒子『準決勝まででチャンピオンの聴牌速度に渡りあえていたのは、準決勝の片岡選手だけでしたね。東場限定ですけど』
健夜『ある意味では彼女が一番宮永選手と相性のいい選手だったのかもしれません』
恒子『さあ、この決勝卓ではチャンピオンのスピードについていける選手はいるのか――!?』
東一局
竜華(四巡目一向聴……遅くはない。遅くはないはずやけど……)
照「……」カチャ
竜華(張ったか。なんとか追いつかんことには、何もできへん)
竜華(私にも一巡先が見えれば、追いつけるんやろか……)
咲「――ポン」③筒
竜華・穏乃「!?」
咲「チー!」
恒子『清澄高校、連続鳴きで強引に手を進めていく――! チャンピオンのスピードに追いつくためでしょうか!』
咲「――カン!」③筒
竜華(加カン? まさか……!)
咲「りんしゃ――」
照「――ロン」
咲・竜華・穏乃「!?」ビクッ
パララララ……
一二三⑨⑨789北北北①②
照「槍槓チャンタ、7700」
咲「……!」ゾクッ
恒子『ちゃ、槍槓だ――! チャンピオン、まさか狙っていたというのか――!?』クワッ
健夜『……見抜いてる』
恒子『え、なんですか小鍛冶プロ』
健夜『宮永選手は、宮永選手――ええっと……清澄の宮永咲選手の麻雀を完全に見抜いています』
恒子『? でも、照魔鏡は使わなかったんですよね?』
健夜『そのはずです……が、そうとしか思えません』
恒子『いったいどういうことなのか。チャンピオン、照魔鏡を使わずに相手の麻雀を見抜いてきた!!
ここにきて更に進化を遂げたというのでしょうか!?』
咲(……お姉ちゃん、本気だ。あの頃とはもう比べ物にならない……!)
照「……」
恒子『宮永照選手、開幕早々に三連続和了! 決勝戦だというのに圧倒的です!』
恒子『まさに最強! 無敵! かつてこれほど牌に愛された高校生がいたでしょうか! どうでしょう小鍛冶プロ!』
健夜『……』
恒子『おや、どうしました小鍛冶プロ?』
健夜『いえ……確かに、宮永選手は驚くほど的確に有効牌を引いてきますが、それは本当に
牌に愛されているからなんでしょうか……』
恒子『なるほど。私以上に牌に愛された人間などいるはずがない、と小鍛冶プロは言いたいようです!』ガッ
健夜『そ、そんなこと言ってないよ!?』
恒子『なんであれ、あまりにも強すぎる! 紛れもなく牌に愛された少女。天上の才能!
その力は今なお進化中です!』
照「……」
――牌に愛された子。
皆が私をそう呼ぶ。菫ですらもそれを疑っていない。
私がインターハイを制したその年から、それは誰もが納得する呼び名だったのだろう。
――多くの人間が誤解しているが。
私は、牌に愛されてなどいない。むしろ逆。私はこの世で誰よりも牌に憎まれた人間だ。
それを知っているのは私と……咲だけだ。
そして私は知っている。本当に牌に愛された子は誰なのかを。
……皮肉なものだ。私は牌に愛されたくて麻雀を続けてきたはずなのに。皆が私をそう呼ぶ頃に
なって、私は……今、こんな場所にいる。
私の両親は夫婦揃っての麻雀バカだった。
特に母はプロ一歩手前のところまで行ったらしく、今でもその力は衰えていない。
三度の飯より麻雀を打つのが好き、なんていう両親のいる家庭で育った私と咲は、
自然と幼少期から牌に触れる生活を送っていた。
ただ、その頃の私は今で言われるような『牌に愛された子』などという片鱗は少しも
ない、ただの少女だった。
ツモる牌はムダヅモばかり。相手がリーチをかければすぐさまその当たり牌を引き当てる
という、むしろ『牌に嫌われた子』という呼び名こそ相応しいような、そんな打ち手だった。
家族の中では私が一番下手で、お年玉やお小遣いも結構な額むしり取られたものだ。
でも妹の咲は、私とはまるで真逆の才能を持って産まれてきた。
母「ツモ。6000オール!」
父「あちゃー、また負けたよ」
照「あーあ。つまんないの」
母「ふふ、私に勝とうなんて百年早いわよあなたたち」
咲「……」ジャラジャラ
母「……」
母「咲は……またプラマイゼロ、か」
照・父「……」
咲の強さはヘボの私から見てもはっきりと分かるくらいに異常だった。最初の頃こそ
両親は自分の才能を色濃く受け継いだ子が産まれたと喜んでいたが、その考えが甘かった
ことをすぐ思い知らされた。
今でこそ現役を退いたとはいえ、母は下手なプロとなら互角に戦えるほどの雀士だ。
その母をして、咲を倒すことは至難の技だった。
これはもう強いとか弱いとかそういう次元の話ではなかった。
――咲は牌に愛された子だった。私などとは違い、正真正銘、牌たちから惜しみない
寵愛を受けて産まれ落ちた子だった。
あまりにも強すぎて、私は昔いちど咲に八つ当たりしたことがあった。若気の至り
だったのだと思いたい。
理不尽な叱責に咲は目頭を滲ませ、一言「ごめんなさい」と謝った。
そして咲のプラマイゼロ麻雀が誕生した。
勝ちもせず、負けもせず、ただその試合を消化するためだけの麻雀。咲にとっては
それだけのことだったのだろう。
だがそれをやられた方はたまったものではない。咲の支配に気づいてから、きっと
家族の誰もが、麻雀を打っているという実感など抱けなかっただろう。
一度だけ、深夜に目が覚めたときに両親が話している声を聞いたことがある。
父「ふざけるな! その歳になって麻雀教室に通うだと? なに考えてんだお前は」
母「今からでもプロを目指すのよ! 別に子持ちのプロ雀士だっていないわけじゃ
ないんだから、構わないでしょう?」
父「いいわけないだろ! 家庭はどうするつもりだ。お前、もうプロになる夢は諦めたんだろ?
なんで今更そんなこと」
母「今からでもプロにならないと、あの子には……咲には到底勝てないの!」
父「咲……? 咲がどうしたって言うんだ」
母「あの子はまだ小学生なのよ? なのにもう私よりもずっと強い……悔しくないの!?」
父「あいつが強いのは認めるさ。だからって小学生に、それも自分の子供に嫉妬するなんて
どうかしてるぞお前」
母「あなたなんかには分からないわよ! インハイの個人戦で全国にすら行けなかったあなた
なんかにはね!」
父「なんだと!?」ガタッ
母「私は悔しい……あんな子供に圧倒される自分が情けない。もっと強くなりたいの!」
照「……」
両親が麻雀に関する話題で家族の話をするときは、決まって咲の話題になった。
私のことが話題に上がったことなど一度もない。それくらい私は凡俗な打ち手だったし、
それくらい……咲はあまりにも圧倒的すぎた。
母は咲の成長を喜ぶ以上に、咲に対して敵対心を剥き出しにしていった。父はそんな母に
徐々に嫌気が指してきたようで、家庭内は次第に険悪になっていった。
それでも習慣的に一日一回は家族で麻雀を打った。でも、それはもう家族麻雀とは言い難い
ものになっていた。まるで怨敵をねじ伏せるために打っているかのように、両親は子供を
相手にするには大人気なさすぎるほどに本気で勝負を挑んできた。
私は勝ったり負けたりしていたが、咲はそんな両親の猛攻にはびくともしなかった。
飄々といつものようにプラマイゼロを繰り返し、誰かが「今日はこのくらいにしよう」と
言い出すのを待っていた。
もうプラマイゼロはやめろ、と母は何度も咲に向かって怒鳴った。
でも咲はプラマイゼロをやめなかった。いや、やめられなかったのだろう。
勝っても怒られ、負けても怒られ、プラマイゼロでも怒られる。そんな状況で正解などない。
咲は半ば意地になってプラマイゼロを続けているように見えた。
そんな咲が麻雀を嫌うのは、無理からぬ話だと思った。
照「え、麻雀を打ちたくない?」
咲「うん……」
照「どうして。あんなに強いのに」
咲「……だって、怒られるし」グス
照「あれは……お母さんもムキになってるだけだよ。いつか分かってくれるよ」
咲「……」
咲「お姉ちゃんは、私と麻雀打って、楽しい?」
照「もちろん。いつか咲に追いつくんだから、それまで麻雀やめたりするんじゃないよ咲」
咲「……」
咲どころか、私は家族で一番麻雀が下手だった。
家族以外の人と打つことも何度かあったけど、それも大していい成績を残せた試しはない。
ほとほと自分の才能のなさに呆れるばかりだった。
でも、麻雀を打つのは本当に楽しかった。牌のひんやりとした感触。牌同士がカチャリと
鳴る音は心地いいし、聴牌時のワクワク感は病みつきになる。
私は麻雀が大好きだった。どれだけ牌に嫌われていたって、私は牌が大好きだった。
負けたって楽しかった。毎回プラマイゼロにされたって、それでも何度でも咲と麻雀を
打ちたいって思った。
照「あーあ。私も咲みたいに牌に愛されたいなー。そうすればもっといいツモがきたり、
いい手が入ったりするんでしょ? いいなぁ」
咲「……なれるよ」
照「ん?」
咲「いつかきっと、お姉ちゃんはすごい雀士になれると思う」
照「ほんと? でも、私まだまだヘボだし」
咲「ううん、お姉ちゃんは強いよ。家族麻雀をするとき、私はお父さんやお母さんじゃなくて、
お姉ちゃんをずっと警戒してるもん」
照「え、どうして? 私の麻雀なんて全然パッとしないじゃない。何か特別な力があるわけでも
ないし、牌にも嫌われてるし」
咲「お姉ちゃんの強さはそういうことじゃないんだと思う。もっと別の……うーん、上手く
言えないけど、凄い強い力みたいなのを感じるの」
照「へー」
照「まあ咲が言うんなら、話半分でも効力あるかもね。うん、私ももっと強くなれるようにがんばるよ」
照「ねえ咲。私はね、信じてるんだ。たとえどれだけ牌に嫌われてたって、私が牌のことを
好きでいつづけてれば、いつかきっと牌も私のことを好きになってくれるって。
そうすればいい牌がどんどん入ってきたり、相手のツモとかを支配したりできるように
なるんだって。
実際、プロにはそういうことできる人がいるらしいんだ。憧れるよね」
咲「……うん……」
照「……あ……もしかして、咲はもう、できるの……?」
咲「……」
照「……あ、あはは」
照「ま、まあとにかくさ。私はこれからもずっと麻雀を好きでいつづける。そうすれば
きっと麻雀も私を好きになってくれるはずだから」
咲「……そっか」
照「だから咲も、麻雀やめるなんて言わないで、もっと麻雀を楽しもうよ」
咲「……うん。そうだね」
でも、私がどれだけ咲に負けても麻雀を楽しめるように、両親も楽しめるとは限らない。
むしろ母は、咲と麻雀を打つたびにプライドをズタズタに引き裂かれていた。
そして、それは起こった。
照「うーん……」カチャ
咲「……」カチャ
父「……」カチャ
母「……」カチャ
母「……!」ピタ
母「……はぁー」
父「どうした、お前の番だぞ」
母「……いい加減にして、咲」
咲「……」ビクッ
母「あなた……いつまでこんなこと続ける気なの? そんなに私のこと馬鹿にして楽しい?」
咲「……」
父「なんだ、どうした急に」
母「……ツモ。3000,6000」パララ
父「3000,6000……ああ……プラマイゼロか」フゥ
照(……しかも赤ドラでツモ。これ以外の牌をツモってたら咲はプラマイゼロにならない。咲……
本当にすごい)
母「咲、私言ったわよね? もうプラマイゼロはやめなさいって。何度言わせる気なの?」
照「ちょ、ちょっとお母さん……」
父「だが勝っても怒るんだろ?」
母「こんな屈辱を受けるくらいなら負けたほうが何倍もマシよ! いい加減にして!」
咲「……っ!」ビクッ
父「咲は悪くないだろ。それがお前の実力ってことだ」
母「――ッ!」カチン
母「……なんですって?」
父「負けたからって怒鳴るなんて大人気ないと思わないのか?」
母「あなたみたいに負けて当然って姿勢でいるのが大人だって言いたいの?」
父「そうさ。強い奴には勝てない。当然だ。力及ばない自分に怒るならまだしも、我が子に
怒鳴るなんて、みっともない」
母「そんな考え方だから、あなたはインハイでもあんな見え見えの倍満に振り込んで
チームを敗退させたのよ」
父「――ッ! んだとぉ!?」ガタ
照「ちょ、ちょっとやめてよ二人とも! 落ち着いてよ!」
母「黙りなさい照! あなたもあなたよ。お姉ちゃんなのに妹にこんなにいいようにされて、
悔しくないの?」
照「悔しいよ。でもそれ以上に楽しいよ。皆で楽しく麻雀打とうよ」
母「毎試合プラマイゼロなんてされて楽しめるわけないでしょう? もううんざりなの。
私はね、麻雀に青春の全てを捧げたの……本気でプロを目指して、でもなれなくて……
なのにどうして、こんな、なんの努力もしてない子供に、こんな才能が……不公平じゃない!」
父「はん! 今度は嫉妬か。見苦しい女だなお前は」
母「なんですって!?」
照「やめてってば!!」
それから一時間以上も両親は怒鳴り合っていた。私はそれを止めようと必死で、そのとき
何があったのかよく覚えてない。気づいたときには咲はどこにもいなくて、疲れ果てる
ような形で両親の喧嘩は沈静化した。
その日から、目に見えて両親の仲は険悪になっていった。顔を合わせれば嫌味ばかり言い合い、
食事すら一緒に採ろうとはしなくなった。
私は何度も二人の仲を元に戻そうと頑張ったが、結局駄目だった。
なによりその日以降、家族麻雀を打つことはなくなった。とてもそんな空気にはならなかった。
照「――咲、入ってもいい?」コンコン
咲「お姉ちゃん? どうぞー」
照「……」ガチャ
咲「どうしたの?」
照「うん。お母さんたちのことなんだけど」
咲「……うん」
照「最近、二人ともずっと仲悪いし、麻雀も打たないし……このままじゃ駄目だと思うの」
咲「……そう、だね」
照「ねえ、一緒にさ、もう一回麻雀打とうよって誘ってみない? 咲も今度はプラマイゼロ
なんかせずに、本気で打てばいいし」
咲「……でも、勝つと怒られるもん」
照「……咲は麻雀、嫌い?」
咲「うん」
照「……そっか」
照「私は、麻雀が大好き。麻雀より面白いことなんてない。今は弱いけど、強くなれば
もっと楽しくなれると思う」
照「なのにあんなに強い咲が麻雀を嫌いなんて、もったいないよ。私は咲に、もっと麻雀を
楽しんでほしい。一緒に麻雀を楽しみたいの」
咲「でも……」
照「咲だって昔は麻雀が好きだったでしょ?」
咲「……うん」
照「なら、それを思い出せるように頑張ろうよ。自分の子供が楽しそうに麻雀を打ってたら、
いくらお母さんだって負けても悔しくないと思うからさ」
咲「……そうかなぁ」
照「うん。きっとそうだよ。だから、ね?」
咲「……うん」
照「よし、じゃあ決まりね。さっそく今日二人に言ってみよう」
咲「……」
もう一度皆で麻雀を打てば、きっと家族は元通りになれる。私はそう信じていた。
咲がプラマイゼロなんてプレイをしなければ、母だってあそこまで露骨に咲を敵視することは
ないはずだ。――『そうに違いない』と、私は盲信した。
今にして思えば、なんて希望的な観測だったのだろう。私は、咲が意図的にプラマイゼロを
行っていると勘違いしていた。だから意図的にそれをやめることもできると思っていた。
でも咲のプラマイゼロはそういう次元の話ではなかった。いわば……呪い。自身の麻雀を否定された
咲が辿りついた、一つの到達点だった。
それに、家族の仲は私が思っているよりもずっと深刻で、もうどうにかなるものではなかった。
……いや、いずれにしても結末は一つだったのだろう。
でも同時に、そこが大きな分岐点だった。
咲と同様に尋常ならざる才能を持って産まれた私の麻雀……。
それがまっすぐに伸びて枯れるか……それとも歪に開花するか。その分岐点だった。
照「お父さん、お母さん、話があるの!」
父「……ああ、照か」
母「……」
照「ねえ二人とも、お願いがあるの。あのね、もう一度家族で麻雀を――」
父「あー、それよりもな、照。俺達もお前と咲に話があるんだ」
照「?」
父「……父さんと母さん、どっちについていきたい?」
照「……え?」
照「ど、どういう、意味?」
父「……まあ、なんだ……つまり……」
母「離婚することになったの、私たち。親権を争うつもりはないから、あなたたちの意見で
どちらが子供を引き取るか決めることにしたの」
照「な、何言ってるの? 離婚って……なんで!?」
父「……」
母「子供には分からないわ」
照「ふざけないで! そんな大事なこと勝手に決めて、説明すらしないつもり!?」
母「……」
照「嫌だよ、絶対認めない! 離婚なんてしないで!」
母「もうこの家にいるのは耐えられないの! もう私を解放してよ!」
照「解放? ふざけないでよ! 子供に麻雀で負けたから離婚するとかどうかしてる!」
母「黙りなさい! 親に向かって!」
照「お父さんはどうなの? 本当にこれでいいの?」
父「……好きにすればいいさ」
照「っ! ……最低」
父「……」
母「もういいでしょ。あなたと咲は、私とこの人のどっちについていくのか決めなさい」
照「……」
照「……だったら、私からも一つだけお願いがある」
父「? なんだ」
照「……もう一度、家族みんなで麻雀を打って」
母「は? 麻雀? どうして今更麻雀なんて……」
照「打ってよ! それで、私か咲が勝ったら離婚の話はなしにして!」
母「なっ……咲に、勝つ……?」
父「……」
照「私たちの意見も聞かずに勝手に決めたんだから、それくらいの条件は呑んでよ」
母「そ、そんなこと……」
父「いいじゃないか、それで」
母「! あ、あなた正気? 咲に勝つだなんて」
父「照の言ってることの方が正論だ。俺達の我がままを押し付けるんだ、それくらいの
条件は親として呑むべきだ」
母「……」
父「それとも最後まで咲から逃げるのか? それでよくプロだなんだと騒げるな」
母「っ! ……いいわ。私かこの人が勝てば離婚に同意するのね?」
照「……」コクン
母「……いいわ。咲を呼んできなさい」
照「咲、咲!」バタン
咲「……」
照「咲、あのね、今お父さんとお母さんがね!」
咲「知ってる。聞こえてたから」
照「そ、そっか。なら話は早いんだけど、二人を離婚させないためには私か咲が二人に勝たないといけないの」
咲「……うん」
照「咲なら二人に勝てるよね? もちろん私も頑張るけど、私の力じゃ勝てるとは
限らないし……ねえ咲、二人に勝って。お願い!」
咲「……うん」
照「そっか、よかった」パァ
照「じゃあ、今すぐ行こう! さっさと二人をやっつけて、離婚なんてやめさせないと」
咲「……」
父「――じゃあ、ルールはいつものでいいな。半荘一回でトップが俺かこいつだったら離婚。
咲か照がトップなら離婚はなし、いいな?」
照「うん」コクン
父「じゃあ始めるぞ」
照「……」カチャ
照(くそ、引けない……いつにも増して牌が私のことを嫌ってる)
照「……」カチャ
母「ロン、7700」
照「うっ……」
照(やっぱり私じゃだめだ……いつもラスだし、お母さんも強い)
照(咲……やっぱりお前が勝つしか……)
咲「……」カチャ
父「! ロン。3900」
照「え、さ、咲……?」
咲「ご、ごめんなさいお姉ちゃん」
照「う、ううん……いいん、だけど……」
照(どうして? もう東場が終わるのに、咲が一度しか和了ってない……どういうこと?)
照(調子が悪いだけ? でも、この感じ……いや、そんなわけない)
照(咲は約束してくれたんだ。咲ならきっと勝てる。家族が離れ離れにならずにすむ。
……そうだよね、咲……)
母「ツモ。1300,2600」
照「……」ジャラ
照(咲……どうしたの。なんとかしてよ……)
でも、それからも咲からは勝とうという意識は感じられなかった。
両親が高い手を和了っても悔しそうにもせず、ただ淡々と場を進めていった。
照「……」ギリ
そして場はもう南三局。私はダントツのラスで、咲は三位。しかも母が大きく差をつけて一位に
なっており、このままでは母が勝つ可能性が濃厚という段になった。
私も何度も和了ろうとした。でも、何度ツモってもまるで牌たちは私をあざ笑うかのように
避け、私は不要牌ばかりをツモった。たまに他家がリーチをかければ、狙い澄ましたかのように
当たり牌が私の許へと滑りこんできて、私はたちまち振り込むことになった。
照「……どうして……」ポロ
以前からこんなことばかりだった。私は牌に嫌われていて、高い手なんて滅多に和了れない。
今まではそれでもよかった。それでも楽しかった。どれだけ牌に嫌われていても、私は牌のこと
が好きでありつづける。そうすればいつかきっと牌も私のことを好きになってくれると信じていた。
でも、今日だけはそういうわけにはいかない。今日負けたら、家族がバラバラになってしまう。
照(だからどうか今日だけは……私のことを好きになって……有効牌をツモらせて)ポロポロ
そう希う想いも空しく、私は今日一日、聴牌すらままならない局が続いた。
そうして両親が次々と和了っていく中、ついに咲がツモ宣言を放った。
咲「ツモ。2000,4000」
照「さ、咲!」パァ
照(咲が和了った。これでまだ可能性はある――!)
咲「……」パララララ
照「――――え?」
八⑧⑧⑧⑨⑨⑨北北北 八 333
照(……ちょっと待って。3索……)
一見するとおかしなところはない手。でも私はそれが有り得ない手であることに気づいた。
咲は父が捨てた3索をポンし、その二巡後に自ら3索を切っていた。だがその3索は
ツモ牌ではなく、手出しの3索だった。つまり……咲はわざわざ鳴かずとも3索の暗刻を
持っていた。
無駄な鳴きさえしなければ、咲の手は四暗刻単騎待ち。役満が確定していた。この勝負は
勝ったも同然だったのだ。
照「咲……お前、どうして四暗刻を……」
咲「……」
照「な、何か見えてたの? あそこで3索を鳴かないと誰かが和了ってたとか? そ、そういうこと?」
咲「……」
母「そんなの決まってるじゃない照。点数を見なさい」
照「え?」
母「今の和了りで咲は28700点で二位。次のオーラスで1000点和了ればプラマイゼロ。
……いつものことじゃない」
照「そ、そんな……!」
照「咲、違うよね? そんなことしないよね? だって……だって……」カタカタ
咲「……」
照「だってこの勝負に負けたら、お母さんたち離婚しちゃうんだよ? 家族がバラバラに
なっちゃうんだよ? そんな勝負でプラマイゼロなんてしないよね? ね?」ポロポロ
咲「……」
照「咲……なんとか言ってよ、咲ぃ!」
咲「……ごめんなさい」グス
照「!?」
咲「私が打つと……いつもこうなっちゃうの」
照「…………」ボーゼン
母「……分かったでしょ? この子はそういう子なのよ! 常識の通用しない打ち手なの!」
父「……」
照「咲……」
咲「……」グス
照「そんなに勝ちたくないの? そんなに負けたくないの?
勝ったり負けたりするくらいなら……家族がバラバラになったっていいって……本気で
そう思ってるの? 家族って……咲にとってはその程度のものだったの?」
咲「……」
どうして。
どうしてなんですか、神様。私はこんなに麻雀が大好きで……こんなに牌を愛しているのに。
どうして麻雀は私を愛してくれないんですか? 私はこんなにも勝ちたいのに。勝たなきゃいけないのに。
どうして麻雀が嫌いな咲があんなに麻雀に愛されて……勝とうともしない人間のところに牌が集まってくるんですか?
――つまるところ。
この勝負は勝負でもなんでもなかった。私は誰と勝敗を競っていたわけでもなかった。
家族が離れ離れになるかどうか……それは全て咲の胸三寸だった。全ての決定権は咲が握っていた。
咲が離婚を望めば両親が勝ち。離婚を望まなければ私たちが勝つ。そういう儀式だった。
照「……お母さんの……言う通りだ」
こんなの、もう麻雀でもなんでもない。
両親を離婚させたのは、ある意味では両親ではない。咲――咲の麻雀が、両親を離婚に追いやったんだ。
――いや、咲のせいだけじゃない。
私の弱さ。それが両親の離婚を……家族の乖離をもたらした。
私がもっと強ければ。咲にも負けないくらい強ければ。
私に靡かない牌にこびへつらい、無様に希ったから。だから全てが崩壊してしまったんだ。
照「――――――――そうか」
そのとき、私は全てを理解した。
牌に愛してもらおうなんて考えるのがそもそもの間違いだった。咲のように産まれながらに牌に
愛された特別な存在でもない限り、そんな奇跡は起こらない。
私が有効牌を引く方法はただ一つしかなかったんだ。
――すなわち、力づくで、問答無用で、牌を無理矢理にねじ伏せる。抗う牌を蹴散らし、
組み伏せ、有無を言わさず、竜巻のように、太陽の引力のように……私の許へ引きずり込む。
それが私に残された、唯一の道だ。
でもそのためには、麻雀を愛する気持ちなんてあってはいけない。そんなものがあっては、牌を
かしずかせることなんてできない。
牌を憎み、麻雀を憎む。その憎しみだけが……私に力を与えてくれる。
照「……そういう、ことなんだね、咲」
咲「お姉ちゃん……」
照「続けよう。まだオーラス……私の親番が残ってる」
父「……」カチャ
母「……」カチャ
咲「……」カチャ
咲(この感じ……)ゾクッ
照「……」ゴォォォォ
照(もういい。もうお前たちに愛してもらおうなんて思わない。有効牌を神に祈ったりもしない。
その代わり、もう私もお前たちを愛さない。有効牌は――自分で引いてみせる)
タン
照「――ツモ。1500」
咲「……」ピク
咲(すごい……私よりもずっと早い……)
照(まだだ……もっと……もっとかしずけ。跪け……!)ゴッ!
照「ツモ。1300オール」
照(もっとだ……もっと強く。深く麻雀を憎むんだ)
照「ロン。7700」
和了る度に。牌をツモる度に、私の脳裏に楽しかった麻雀の日々が蘇ってくる。
家族みんなで笑い合った。成績に一喜一憂し、時間を忘れて没頭した。
照(憎むんだ……牌を……麻雀を憎むんだ!)
ひんやりとした牌の感触。牌がぶつかりあう音。聴牌時の高揚感。
どれも大切な――大切な宝物だった。私の生き甲斐だった。
照(忘れるんだ、全部。楽しい思い出も……何もかも、全部!)
照「……ツモ……4000オール」
牌をツモる度に心が軋む。思い出が霞んでいく。その代わりに、打点がどんどんと高くなっていく。
何かが焼け焦げる匂いが鼻をついた。それは灰の匂い……思い出が憎しみという熱に焦がされ
焼けただれていく匂いだった。
全ての幸福を、喜びを、それに類する思い出を。私の中の黒い太陽が焼き払っていく。その熱
が荒れ狂う気流を生み、その暴風が、私の腕に密集していく。
照「――あぁ……ぁ」
――その全てを解き放ち、私は……その牌をツモった。
視界が滲んで牌が見えなくなった。それでも、何をツモったのかは分かった。
私が無理矢理にその牌をツモったからだ。捻じ伏せ、力任せにもぎ取った有効牌。それが勝敗を
決する最後の一枚だった。
照「……ツモ。8000オール」
父「……トびだ。俺達の負けだ」
気がつけば私は勝っていた。圧倒的な点差で二位を突き離し、ついには父をトばして。
嵐のように過ぎ去った数分間。そのあとには、ただ静寂だけが卓を支配していた。
私は茫然としながら、知らない内に泣いていた。心の中にあった大切なものを全て
失った喪失感を抱きながら、ただ涙の温度を感じていた。
母「……ふう」
母「プロ、か。……戯言だったわね。そう……照……そっかぁ……」
咲「お姉ちゃん……」
照「……」
照「家族なら、ずっと一緒にいたいって思うのが普通でしょ、咲」
照「たとえどんなに大切なものを失ったって……それで家族が離れずにいられるなら、
それでもいいって……そう思えるのが家族でしょ?」
咲「……」
たとえ大好きな麻雀を失うことになったとしても。
大切な思い出を全て汚すことになったとしても。……それでもいいと思った。
それで家族が繋がり続けられるのなら、それが何よりも一番だと。
そのためならどんな破滅だって怖くないと。なにを擲っても構わないと、そう思った。
照「咲は……そうは思わないんだね」
咲「……」
照「なら――お前なんか私の家族じゃない」
咲「!? お、お姉ちゃん――!」
照「うるさい! お姉ちゃんなんて呼ぶな!」
咲「!」ビクッ
照「いつでも勝てるお前が勝とうとしないから、代わりに私が勝ってやったんだ!
私の大切なものを……全部投げ出して!」
今日この勝利を掴むために、私は今まで愛した麻雀を憎み抜き、思い出を引き裂いた。
その憎しみは私の中に強く根を張り、決して拭えない泥となってこびりついた。
もう二度と、私が純粋に麻雀を楽しめる日は訪れないだろう。もう私の麻雀は、黒い太陽の
光に照らされて咲いてしまったのだから。
憎しみが卓を回す歪な麻雀。それが私の強さの正体だった。……牌が私を愛さないのも、
今考えれば当然だ。牌を憎むことでしか強くなれない私を、どうして牌が愛してくれるのか。
照「……私も家を出る」
三人「!?」
父「ど、どういうことだ照」
照「もう二度とこの子の顔なんて見たくない。お母さんが家を出るなら、私もそれについていくから」
母「……照……」
咲「お、お姉ちゃん……」
照「勝負は私の勝ちなんだから、私の命令に従って」
三人「……」
――そうして、私はあの家を出て母と共に東京に渡った。
照「――ツモ。3200オール」
実況『――またしても宮永照! 連続和了が止まらない――! このまま一気に三連覇を決めてしまうのか――!』
照「……」
淡『あなたは……どうして麻雀を続けてるの?』
菫『ならどうして、お前は麻雀を続けてるんだ』
照「……」
彼女たちの問いに、私は答えられなかった。
私自身、答えを知らなかったからだ。麻雀を憎み、牌を触る度に心が砕け散るような想いを
味わうことになると分かっているのに、それでもなぜ麻雀を続けたのか。
麻雀を止めようと思えばいつでも止められたはずだ。なのにどうして。
私はその答えが知りたかった。もう一度咲と卓を囲めば、その答が見えるんじゃないかと
思った。だから無理を言ってまでオーダーを変えてもらって、私は今再び、咲と対峙している。
――そして、私はついに答を手に入れた。
照(……咲)
照(覚えているか、咲。あの頃……私はお前を追う立場だった。お前を目標にしていた)
家族で麻雀を楽しんでいた頃、私は毎日思っていた。いつか咲に追いつきたい。いつか咲に勝ちたいと。
そして私は強くなった。大好きだった麻雀を憎み、心を閉ざし、大切だった全てを擲ち、
破壊し、踏みにじって……私はようやく咲に追いついた。
咲の麻雀と私の麻雀。それが今はじめて激突する。正真正銘、互いの全力の麻雀が。
今までの苦しみも。支払った代償も。全ては今日このとき、咲をこの手で超えるために
あったんだと、私は今なら疑いなく断言できる。
そのために費やした全ては無駄ではなかったんだと。あの日の私の想いは間違いではなかったんだと。
――それを今、証明してみせる。
照(――行くぞ、咲)
私は今こそ……私の麻雀の全てを以て、お前を超える――!
東一局
照「……」カチャ
二三三四五六七八9東東44 東
恒子『――キター! チャンピオン、三巡目にして親ッパネの手を聴牌! 速い! 速すぎる!』
咲「……」カチャ
33九九九八七①②③③⑦西 ⑧
咲「……」カチャ 西
恒子『しかし清澄高校も一向聴! チャンピオンの速度にくらいついていく!』
咲(嶺上牌は六萬。⑥⑨筒をツモったあと、九萬でカン……嶺上開花!)
咲(次で聴牌になる。あと二巡……それまで持ちこたえれば私の勝ちだ)
照「……」カチャ
照(――確かに、流れはお前にある。牌の流れ……お前はそれを常に味方につけている。その流れ
を支配し、自分のものにする程の相手が現れない限り、お前は有効牌を引き続けられるんだろう。
……淡のように)
照(何もしなくても、牌の方からお前に引き寄せられていく。まるで牌が自分をツモってくれと
言っているみたいに。牌たちから寄せられる、惜しみない愛情……)
照(――いらない。そんなもの私には必要ない。たとえどれだけ牌がお前を愛していても、決して
お前のところになんか行かせない。今この場を支配しているのは私の力なんだと、牌自身に
思い知らせてやる)
照(――さあかしずけ。跪け――ッ!)ゴォォォッ!!!
咲「――うっ!?」ゾクッ
竜華「な――!?」ゾクッ
穏乃「え――!?」ゾクッ
ワカメ「ん?」
カタカタカタ……パリンッ!
咲(い、今のは……)
咲「……」カチャ
咲「――ッ!?」ビクッ
33九九九八七①②③③⑦⑧ 四
咲(え、四萬――!? そ、そんな……なんで!)ゾッ
恒子『あー! 清澄高校、チャンピオンの当たり牌である四萬をツモってしまった――!
これはオりるしかないでしょうね。もったいない!』
健夜『……⑨筒……ツモれそうな感じだったんですけどね。ついさっきまで』
恒子『え、そうですか?』
健夜『……牌が、変わった……?』
恒子『え、い、いやいや、さすがにそれはないでしょ小鍛冶プロ。⑨筒が勝手に四萬に化けた
っていうんですか?』
健夜『……というよりは、四萬が宮永照選手に屈服したような感じでした』
恒子『……? 小鍛冶プロの言っていることはたまによくわかんないですね』
咲「……」
咲(オりれない。これは事故なんかじゃない、お姉ちゃんの力でこうなったんだ。ここで逃げたら、
ここから先ずっとお姉ちゃんに力負けすることになる……!)
咲「……」カチャ ⑧筒
穏乃「……」カチャ 3索
咲「ポン!」
恒子『清澄高校、鳴きで仕掛けてきましたね』
健夜『時間をかけて手代わりしている余裕なんてありませんからね。速攻で手を変える必要があります』
照「……」カチャ
二三三四五六七八東東東44 二
照「……」カチャ 三萬
恒子『おっとぉ? チャンピオン、ここで待ちを変えた?』
健夜『いえ……』
照「……」カチャ
二二三四五六七八東東東44 赤5
照「……」カチャ 4索
恒子『あ』
咲「……」カチャ
四五七八九九九①②③ 3 333
恒子『あ! ま、まさか――!?』
咲「カン」3索
咲(よし、間に合った。嶺上開花――!)
照「ロン」
咲「え?」ビクッ
二二三四五六七八東東東4赤5 3
照「ダブ東槍槓ドラ2、12000」ゴッ
咲「――っ!」ゾクッ
恒子『ちゃ、槍槓だ――! チャンピオン、まさかの二連続槍槓――! こ、これはもう
宮永咲選手の打ち筋を見抜いているとしか考えられません!』
竜華(……なんでや。なんで照魔鏡も使わずにここまで正確に狙い撃ちできるんや)ギリ
穏乃(す、すごい……)ブルッ
咲「……」
恒子『こ、小鍛冶プロ。この槍槓は狙ってやったということでいいんでしょうか!?』
健夜『まず間違いありませんね。宮永咲選手が四萬を含めた手を作ろうとしていると読んだ段階で、
3索でのカンでブーストをかけると予想していたはずです』
恒子『な、なんということでしょう! 宮永照、全く隙がありません!! これは他の
三校、大ピンチです!』ズビシッ
健夜『……ですが』
竜華(――せやけど、気づいとるか、清澄?)
竜華(それこそが、〝チャンピオンの隙〟になるんや)ゴッ!
咲「……」
東一局
咲「……」カチャ
竜華「……」カチャ 二萬
咲「ポン」
③④⑤⑥⑦⑧2345 二二二
恒子『清澄高校、ここで二萬をポンして聴牌――! チャンピオンよりも早く誰かが聴牌になるのは
この試合で初めてです!』
照「……」カチャ
一三七八九⑦⑧⑨78999
恒子『こ、これは――! チャンピオンもここで聴牌。しかも二萬のカンチャン待ち――!?
ま、まさか三連続槍槓を狙っているというのでしょうか――!!』
咲「……」カチャ
③④⑤⑥⑦⑧2345 二 二二二
恒子『き、清澄高校、ここで二萬ツモ!! これは加カンできません! あと一歩のところだった
んですが、チャンピオンが一歩早かったか――!』
恒子『清澄高校、なぜカンに拘るんでしょう。それもポンからのカンに。チャンピオンが槍槓を
狙っているとわからないんですかね?』
健夜『二回の槍槓は、おそらく宮永咲選手もチャンピオンを抑えて和了れる自信があったんでしょう。
しかし今回は……』
咲「……」カチャ 2索
恒子『清澄高校、オりましたね。まあ仕方ないですが』
健夜『……オり、とは少し違いますねこれは』
恒子『え? というと?』
照「……」カチャ
咲「……」カチャ
健夜『宮永照選手は前の巡で、二五萬待ちをわざわざ二萬のカンチャン待ちに変えています』
恒子『純チャンを含めるためじゃないんですか?』
健夜『そう。彼女が次に和了るのは跳満以上。そのためには純チャンが必要だったんです。
結果的に宮永照選手の待ちは二萬のみ。そしてそれは全て宮永咲選手が握っている。つまり……』
恒子『――あ』
照「……」カチャ
咲「……」カチャ
健夜『――そう。清澄が二萬を持ち続ける限り、宮永照選手は和了れないんです』
健夜『同時に宮永咲選手も、二萬を切ることもカンすることもできないわけですから、和了れません』
健夜『四校の内二校が互いに睨みあって和了れない状態にある』
健夜『なら……』
竜華(――なら、もう何も怖いもんはない。どんだけ時間をかけて手作りしたって構わんっちゅうことや!)
竜華「――ツモ! 3000,6000!」タンッ
照・穏乃「――!」
恒子『せ、千里山女子、ここで跳満ツモ――!! チャンピオンの連続和了を止めたああ!!』
照「……」
竜華(確かにチャンピオンは強い。私だけやったら太刀打ちできるかわからん)
竜華(けど、清澄がチャンピオンの速度に追いついて、互いに睨みあって動けん状態になれば、
私にもチャンスはある!)
穏乃(そっか、そこが勝負を仕掛けるときなんだ)
恒子『なるほど。清澄がポンすればチャンピオンはそこに合わせて槍槓を狙ってくる……そして
清澄がカンしなければ、チャンピオンは和了れない!』
健夜『槍槓を狙わなければ清澄がカンして嶺上開花ですね』
恒子『千里山以外の高校もチャンピオンの隙に気付いたようです! これはまさに宮永照包囲網!』
恒子『小鍛冶プロ、この展開どう見ますか?』
健夜『そうですね、悪くないと思いますが……』
竜華(――さすがに決勝戦の面子が敷いた包囲網ともなれば厳しいんとちゃうか、チャンピオン? 仕留めたるで!)
健夜『――この包囲網にはいくつか穴がありますね』
恒子『穴?』
健夜『はい。――きっともう、彼女は気付いています』
照「……」ゴォォォ
東二局
照「……」カチャ
照「――ツモ。500,800」
恒子『三巡目でチャンピオン再びツモ! 清澄高校は一向聴、わずかに追いつけなかったか!』
健夜『これが一つ目の穴ですね。高めを狙わなくていい序盤は、槍槓を狙いつつもツモ和了りを
狙える待ちが多い。つまり、序盤の連続和了は止められない』
竜華(……かまへん。安い手の内は揃えるのも簡単やし、早いのは仕方ない。その辺は仕方ない)
竜華(せやけど、三連続和了程度やと10000点程度にしかならへん。そっから先を潰せれば
十分チャンピオン攻略は可能や)
健夜『――逆に、四連続和了以上をされるとかなり厳しいですね。先鋒ならまだしも、大将では
合計収支で宮永選手を超えなくてはならないので』
恒子『なるほど。では勝負どころは三連続和了の後、つまりチャンピオンの親が再び
回ってきたときですね!?』
健夜『おそらく』
南一局
白糸台:157900
千里山:107400
清澄:68000
阿知賀:66700
恒子『さあ、やはりチャンピオンの連続和了が始まってしまった――! 三連続和了が終わり、
再び宮永照の親番です!!』
竜華(ここや……ここで親の連荘をさせへんかったら、まだ私にも勝ち目はある)
竜華(清澄がチャンピオンの速度に追いついてくれるかどうかが鍵や……まだ後半戦を残してる
とはいえ、さすがに5万点差はまずい)
穏乃(清澄が白糸台を止めてくれれば、そこで私も勝負に出れる!)
咲「……」
咲「ポン」
三四五678⑦⑧⑨西北 七七七
恒子『清澄七萬ポンで一向聴を強引に聴牌にまで押し進めていく! し、しかし――!』
照「……」カチャ
一二三八九678②②⑥⑦⑧ 六
照「……」カチャ 九萬
恒子『チャンピオン、七萬待ち! 今度こそ清澄の七萬カンを槍槓で打ちとるつもりか――!?』
竜華(いや、そのまま清澄がチャンピオンを食い止めててくれれば、私らが連続和了を止めれる)
穏乃(手作りするなら今だ!)
恒子『またしても両宮永選手の睨みあいとなりました。これはまた他校が和了ってしまうんでしょうか?』
健夜『……いえ』
照「……」カチャ
一二三六八678②②⑥⑦⑧ 五
照「……」カチャ 八萬
恒子『あ!』
健夜『彼女は二度も同じ轍を踏む選手ではありません。手代わりで多面待ちしつつ、カンも牽制。
一方宮永咲選手はカンを前提とした待ちですので和了りづらい』
照「……」ゴッ!
健夜『――だから、チャンピオンが一歩先を行く』
ドゴォ!
一二三五六678②②⑥⑦⑧ 四
照『――ツモ。2600オール』ゴォッ!
咲・竜華・穏乃「!?」
恒子『チャ、チャンピオン、怒涛の四連続和了――! 親での連荘が始まってしまった!!
他校は一刻も早く止めなくては、取り返しのつかないことになってしまいます!!』
健夜『こういう手代わりを許さないためには、チャンピオンにドラを乗せてはいけませんね。
今の手もドラが乗っていなければ打点は上昇しませんでした。ドラを集めてくれる松実玄選手の
ような人がいてくれれば、千里山の包囲網も一段階強くなれるんですけどね』
竜華「くっ……!」
竜華(清澄の嶺上開花を封じつつ誰よりも早く和了るやて……? 信じられんほど正確に有効牌
を引いてくる……)
竜華(支配……いや、まるで牌そのものを屈服させてるようや。ほんまに人間なんかこの人……)
健夜『しかもこれは大将戦ですから、清澄もただチャンピオンを食い止めているわけにはいきません。
自身も和了りを目指さないと』
恒子『あ、そっか。そこを狙われちゃうとまずいですね』
健夜『先鋒戦なら足止めだけという作戦もありなんですが、今はできません』
恒子『そうなると、千里山の敷いた包囲網も確かに穴だらけですね。私も一瞬いけるんじゃないかと
思ったんですが、やはりチャンピオンには通用しないということでしょうか』
健夜『そうですね。純粋な力の差です』
南一局
恒子『さあまだチャンピオンの連荘は続く! 他校はこれを凌ぐことができるのか!?』
竜華(次は12000点以上……あかん、なんとしてもここで止めな)
竜華(清澄に差し込むか……安手を作ってくれれば……)
咲「……」カチャ
334455678南南南西 北
咲(だめだ……追いつけない!)
竜華(染め手? ……くそ、高そうや。さすがにこれに差し込むのは……)
12一二三①①①②③789
恒子『チャンピオン、またしても早い段階で高い手を聴牌――! しかもいざとなれば清澄
から索子を槍槓できそうな待ちですね。対する他校はまだ一向聴以下! この局も決まってしまうのか!』
竜華(あかん、和了られてまう……!)
竜華「ポン!」カチャ 発
竜華(発ドラ1。これなら差し込んでも大丈夫やろ。清澄か阿知賀が察してくれれば……)
咲「……」カチャ
穏乃「……」カチャ
竜華(くっ……だめか)ギリ
健夜『阿知賀、清澄ともに対宮永照意識で頭の中がいっぱいで、差し込みにまで気を回す
余裕はなさそうですね。唯一冷静なのは清水谷選手だけですが……止められませんね、彼女では』
照(3索は出ないか……でも、同じこと)
照「……」カッ
照「……」ガッ ギュルルルルルルル
竜華(…………だめか…………)
ドゴォッ!
照「――ツモ」
1一二三①①①①②③789 1
照「4000オール」ゴォッ!
咲「……っ」ビクッ
恒子『ご、五連続和了――! もう誰もチャンピオンを止められないのか――!』
竜華「く……」ギリ
竜華(止められへんのか……まるで竜巻や。大きさも速度も分かってるのに、止められへん……!)
咲「……」
南一局
咲「……」
咲(淡ちゃんの言った通りだ。私はお姉ちゃんに及んでない……)
咲(でも……負けるわけにはいかないんだ!)ゴッ
咲「ポン!」⑧筒
恒子『清澄高校、一巡目にさっそく⑧筒をポン! しかしまたチャンピオンに狙い撃ちされてしまうぞ!?』
健夜『面前で手を揃えてたらスピードで負けます。チャンピオンにツモらせず、かつ自分のツモを
増やすために鳴きが必要になってきます』
照(……無駄だ)ゴッ
照「……」カチャ
.①①①②②②③③③④④⑥⑦
恒子『しかしチャンピオンも三巡目で凄まじい手を張っています! しかもまたしても槍槓狙いか――!?』
照(でも……なに、この違和感は)
竜華「……」カチャ
二三四五⑤⑤⑤⑨⑨346白 ⑤
竜華(――よし、全部取ったで!)
恒子『これは――! 千里山の清水谷選手、チャンピオンの当たり牌である⑤筒を全て手中に収めた!
これでチャンピオンはもう⑧筒でしか和了れません!』
咲「……」カチャ
咲(⑧筒……四枚目だ)
恒子『清澄高校、ここで四枚目の⑧筒をツモ! 聴牌です!』
竜華(これでもうチャンピオンも清澄もこの局で和了られへん)
照(……かといってここで待ちを変えれば、咲が⑧筒カンで嶺上開花、か……)
健夜『包囲網の完成ですね』
竜華(さあ、あとは和了るだけや。少しでも高い手を)
穏乃「――リーチ!」
咲・照・竜華「――!」
竜華(な、阿知賀……!? しまった、先を越された!)
健夜『阿知賀の高鴨選手、あらかじめ手作りしていましたね。清澄のフォローに回っていた
清水谷選手はまだ手が遅い。油断しましたね』
穏乃「ツモ! 4000,8000!」
恒子『阿知賀女子、ここでチャンピオンの連荘を阻止――! これで阿知賀も浮上、清澄の
一人沈み状態です!』
咲「……っ」
南二局
照(……咲との点差は約10万点。残りはこの南場と半荘一回……)
照(たった二回の親で、8万点以上の点差が開いたんだ。私に勝つ? プラマイゼロ?
この結果を見ろ咲……お前の負けだ)
照(勝てる……私はもう、咲に勝てる!)
咲「……」カチャ
竜華「ポン」
咲「……」カチャ
竜華「ポン!」
恒子『千里山、連続ポン! チャンピオンにツモらせない作戦か!』
竜華(チャンピオンの下家になってしもたからな。私が鳴けば、それだけチャンピオンのツモが
飛ばされることになる。それがチャンピオンのスピードに対抗する唯一の手段や)
穏乃(……私もツモれないんだけどなぁ……)
穏乃(……でも、諦めるわけがない! チャンピオンに勝つためには、私も……!)
穏乃「……」カチャ
咲「ポン」
咲「……」カチャ
竜華「それもポンや!」
恒子『こ、これは――! チャンピオンを差し置いて他家がどんどんと鳴いて手を進めていく――!
たった一巡で、めまぐるしく手牌が変化していきます――! これはチャンピオンつらい!』
照「……」
恒子『これも新たな宮永照包囲網でしょうか。どう見ます小鍛冶プロ? なんかもう平然とコンビ打ち……というか
三対一で打っているように見えますが』
健夜『実際にサインを飛ばしているわけではありませんし、相手の手牌を予想できる高度な読みが
あってこそですから、まあ……』
健夜『それより、この作戦の問題点は……〝誰が和了るのか〟ということですね』
穏乃(鳴かせるのはいい。でも……)
咲(最後に和了れないんじゃ同じだ。協調するフリをしつつも、皆いつ動くべきか見計らってる)
竜華(大将戦じゃなかったら完全に結託してもよかったんやけど……悪いな、清澄、阿知賀)
竜華(――この局はうちがもらうで!)
竜華「ツモ! 1300オールや!」
恒子『おーっと、先制したのは千里山! 親の連荘です!』
竜華(鳴きまくると手が伸びへんのがつらいけど……ゆっくり詰めていくしかあらへんな)
南二局
照「……」カチャ
恒子『チャンピオン、二巡目で一向聴! さすがに早い!』
咲「……」カチャ
竜華「ポン!」
咲「……」カチャ
竜華「それもポン!」
恒子『しかし千里山も連続ポンで、二向聴を一巡で聴牌にまで押し上げた――!』
竜華「――ツモ! 2000オール!」
竜華(清澄……一番点取られてラスやっていうのに、私をフォローしてくれてる……。
……おおきにな。次はあんたの親番や。今度はうちがフォローするで)
健夜『一つの作戦として、チャンピオン以外の三校がそれぞれの親でツモ和了りを繰り返せば、
結果的にチャンピオンだけがどんどんと点を失っていく、という展開が考えられます』
恒子『あ、なるほど。あの三校はそれを狙っていると?』
健夜『ゲームメイクを行ったのは千里山ですが、どうやら他校もそれに同調するようですね』
恒子『でも、そう上手くいきますかね?』
健夜『チャンピオンに追いすがれるほどの聴牌速度。他家の欲しい牌を察知し、それを手中に収める力。
――つまり、場の支配力を競う戦いになります。そして宮永照選手は、支配力という一点において
紛れもなく最強……三対一でも、どこまでやれるかは分かりません』
照「……」
南二局
竜華「……」カチャ
竜華(……手が重い……。四巡目で二向聴か……)
竜華「……」チラ
照「……」
竜華(チャンピオンはもう聴牌……最低でも一向聴のはずや。六巡目までに絶対和了ってくる)
竜華(ホンマはもう少し取りたいところやけど……ここは譲るべきかな。
――そうなると、誰に和了ってもらうのが一番ええか、って話になるんやけど……)
竜華(チャンピオンの連続和了は途切れてる。ならこの局は一番安い手から始まるはずや)
竜華(……ごめんな清澄。親被りもらうよりかは、チャンピオンの安手に差し込んだ方がええんや。
多少の打算は堪忍やで)
照「ポン」カチャ 南
恒子『宮永照、ポン! これで三面待ち聴牌です!』
竜華(さて、チャンピオンの当たり牌は、多分これ……)
咲「カン」
竜華・照「――!?」
恒子『清澄高校、チャンピオンの捨て牌をカン! しかし聴牌ではありませんので、嶺上開花では
ないようです』
竜華(ここでカン……?)
クルッ 東
竜華「なっ――!」
竜華(槓ドラが……チャンピオンの鳴いた南!?)
竜華(これに差し込んだら、最低でも満貫もってかれる……!)
咲「……」ジー
竜華(清澄、あんた……私が差し込もうとしてるのを読んで……)ゾッ
咲「……」ジー
竜華「…………」
竜華(……わかった。ちょっとケチに考えすぎとったようや。……ええよ、あんたが和了り)
穏乃「……」カチャ
竜華「ポン」
照「……っ」
恒子『清水谷選手、チャンピオンのツモを飛ばした!?』
竜華(……なるべく優しく頼むで、清澄)
咲「カン」
恒子『清澄高校、カン。これで聴牌!』
咲(……ごめんね。千里山さん)
咲(この試合――私、手加減なんてできないんだ)ゴォッ!
咲「もいっこ、カン!」
照「……」
竜華(……)フッ
咲「――ツモ! 3000,6000!」
恒子『嶺上開花炸裂――! 清澄高校、なんとか息を吹き返したか!』
恒子『それにしても、ここまで連続でチャンピオンが和了れないなんて初めてではないでしょうか!?
ついに三校がチャンピオンの連続和了を攻略したか――!!』
照「……」ギリ
南三局
照(一回和了ったくらいで……いい気になってるんじゃないだろうな、咲)
照「……」ゴォォッ!
竜華「……」カチャ
竜華(このツモ……あかん、チャンピオンの支配が強まった)
穏乃(鳴けない。鳴かせることもできない……!)
咲「……」カチャ
照(悪あがきもここまでだ、咲。もう牌はお前たちに従わない。鳴いて手を進めさせたりしない)
咲「……」
照「……」カチャ
恒子『チャンピオン聴牌――! 安手ですが二巡目の聴牌。清澄の親は流れてしまうか――!?』
咲「――カン」
照「な――」
竜華(カン!? このチャンピオンの支配の中でもできるんか清澄!?)
照(王牌……私の支配もそこまでは届かない……!?)
――森林限界を超えた高い山の上――
――そこに花が咲くこともある――
照(――咲……)
――お前もその花のように――強く――
咲「――ツモ! 6000オール!」
恒子『だ、打点が高い――!!』
健夜『……いえ、それより』
穏乃(早い――!)
照「く……」ギリ
恒子『清澄高校、ここで親ッパネ――! チャンピオンの速度を上回った――!!』
竜華(誰と協力することもなく、個人の力だけでチャンピオンの支配を超えた……)ゾクッ
照(……咲……お前は)
照(お前はそれだけの力がありながら……どうして)ギリ
咲「……」
南三局
竜華(清澄の連荘か……ほんま信じられへんわ。スピードを重視すればどうしたって打点は下がる
もんや。やのに清澄は立て続けにあんな高い手を……)
咲「――カン!」
竜華・照「――!」
咲「ツモ。嶺上開花! 3200オール!」
恒子『清澄高校、三連続和了――! ちゃ、チャンピオンがここまで連荘を許すなど何年ぶり
か――!? 完全に流れをものにしたか清澄!』
竜華(清澄……! こ、ここまで……)
穏乃(す、すごい……)ゾクッ
照「……」
咲(いける……お姉ちゃんに追いつける!)
――ギ
照「…………」
――ギギ
――――調子に乗るなよ、咲
――ゴォォォォォォオッ!!!
健夜『――っ!?』ゾクッ!
ガタッ
恒子『え、ど、どうしました小鍛冶プロ』
健夜『こ、これは……』
淡「――きた!」ガタッ
菫「これは……!」
菫(以前一度だけ……大星が照に勝ちそうになったときの、〝あれ〟か……!?)
カタ
カタカタ……カタ
竜華「……ん?」
カタカタカタカタ……
穏乃「え、なに、地震……?」
竜華「……いや、建物とか照明は全然揺れてへん。でも、卓が……」
咲「…………卓じゃない」
竜華・穏乃「え?」
咲「……牌が。牌だけが震えてる……」
カタカタカタカタ……
竜華「……ほんまや」
竜華(なんやこれ。まるで……)
竜華(――まるで、牌が何かに怯えてるみたいやないか)
南三局
竜華「……」カチャ
竜華(な、なんや?)
咲「……」カチャ
咲(カン材が……全然こない)
穏乃「……」カチャ
穏乃(手が進まない……)
照「……」カチャ
恒子『おっと――! チャンピオン、ここで聴牌! 30符1飜の安手ですが、清澄の親を
流せそうです!』
照「……」カチャ
恒子『あら? チャンピオン、待ちを変えました。少し高めを狙うようです』
健夜『……』
照「……」カチャ
恒子『チャンピオン、再び聴牌――! 今度は30符2飜です!』
照「……」カチャ
恒子『あ、あれ? ち、チャンピオン、また待ちを変えました。小鍛冶プロ、トップなんですし、
今の待ちでもいいように思うんですけど……』
健夜『……打点を上げるつもりでしょう』
恒子『まあ……そうなんでしょうけど。チャンピオンは連続和了でちょっとずつ打点を上げていく
んじゃなかったんですか?』
健夜『同じことですよ』
健夜『彼女は――連続和了での打点上昇を、〝一局のうちに〟行うつもりです』
恒子『え……そ、それはどういう……』
照「……」カチャ
恒子『――!? ちゃ、チャンピオン、再び待ちを変えた――! 今度はえーっと……
20符3飜です! た、確かに連続和了の時のように打点が少しずつ上昇しています――!』
恒子『し、しかしこれではチャンピオンの強さの秘訣であるスピードが失われてしまうんじゃ!?』
健夜『今、あの卓にスピードが存在しているように見えますか?』
恒子『え?』
竜華(……つ、ツモられへん……さっきから、何も身動きがとられへん!)ギギ
咲(これは衣ちゃんの一向聴地獄……ううん、それ以上だ!)ギギギ
穏乃(うぅ……)ギギ
恒子『ほ、本当だ……さっきまであんなに鳴いたりツモったりしてたのに、今じゃ誰も……〝一つ
も手が進んでない〟。三校が配牌時の向聴数から一つも進んでいません!』
健夜『全てが静止した世界……その中を、ただ彼女だけが歩いている』
照「……」カチャ
恒子『ま、また待ちを変えました! 今度は40符3飜――!』
竜華(ぐっ……)ギギ、ギ
咲(動けない……何も、できない……!)ギギギ
照「――ツモ。1300,2600」ゴォッ!
恒子『つ……』
恒子『ツモです! チャンピオン、12巡たっぷり使って打点を上げ、しょっぱなから5200点を
ツモ和了り――! こんな打点から始まるチャンピオンの連続和了を見るのは初めてです――!』
竜華(こ、この人……)
竜華(ほんまもんの化け物や……)ゾクッ
咲「……お、お姉ちゃん……」
照「……」
南四局
恒子『さあ前半戦オーラスです! 最後に和了るのは誰なのか――!』
照「……」カチャ
恒子『チャンピオン、前局で和了った40符3飜の手を聴牌! しかしこれは――?』
照「……」カチャ
恒子『やはり待ちを変えました! またしても一局で打点を上昇させるつもりか――!』
竜華(そんなことがほんまにできるんやったら……今のうちはまだええ。でも、満貫以上になったらどないするの)
竜華(満貫以上は符の概念がなくなって、8000,12000,16000と急激に打点が上がる。
〝それも一局のうちに〟! そんなことされたら勝てるわけないやん!)
竜華(あかん、止めるんや! もういくら差しこんだってかまへん。チャンピオンの和了りを
防がな、ここで息の根止められてまう……!)
竜華「……」カチャ
竜華(くっ……あかん、全然手が進まん。配牌時から一つも)
咲「……っ」カチャ
穏乃「くぅ……」カチャ
竜華(清澄も阿知賀も聴牌には遠い……せやのに)
照「……」カチャ
恒子『再び聴牌! 30符4飜――!』
竜華(チャンピオンだけが、この止まった卓の中を動いてる……!)
照「……」カチャ
恒子『5飜に突入――! ここからは加速度的に打点が上昇していきます――! 前半戦オーラス
でこの和了りは大きすぎる!!』
竜華(くっ……!)
咲「――カン!」
竜華・穏乃「!?」バッ
恒子『き、清澄高校、カン! チャンピオンの支配をなんとか振り払ったか――!?』
咲「……」ギギ、ギ……
恒子『清澄高校、一向聴――! まだ諦めていない。執念のツモです!』
咲(カンさえできれば……王牌はまだ私の支配の方が上だ――!)
咲「か、カン!」ギギ……
恒子『清澄高校、二回の無駄ヅモの後にようやくカン! 再び手を進め、これで聴牌!』
咲(ぜ、全力を出しても……三巡に一回カンするのがやっとだ……)ハァ……ハァ……
照「……」カチャ
恒子『しかし清澄間に合わないか。チャンピオンの手は7飜を突破! 打点は12000点に到達
しています!』
咲「カンッ!」
恒子『きた! 嶺上開花なるか――! これを和了れば12000点、清澄高校はプラス5200点で
前半戦を終わります!』
照「――」
照(5200……プラマイゼロ……か)
照(……言ったはずだよ咲。私はお前の麻雀を認めないって)
照(――――跪け)ゴォォッ
咲「……」カチャ
咲「――ッ!」
恒子『あーっと、嶺上開花ならず――!』
咲(そ、そんな、もう……嶺上牌すら……)ギ、ギギ
照「……」カッ
照「……」ガシ ギュルルルルルルルルルッ
咲・竜華・穏乃「――!」ゾクッ
照「――終わりだ、咲」
ドゴォッ!!
え?お前麻雀するとき効果音出さねーの?
照「――ツモ。3000,6000」
ゴォォォォォォ!
竜華「……ぁ……」
竜華(た、たった二局で……跳満にまで伸びるなんて……ほんなら、あと一局打ったら……)ゾッ
咲「……」
穏乃「」
恒子『き、決まった――! 前半戦終了! やはりチャンピオンが圧倒的な点差で他校を突き放した――!』
白糸台:171400
千里山:88200
清澄:88100
阿知賀:52300
竜華「……」
穏乃「……」
咲「……」
照「……」ガタッ
カツカツカツ
咲「……お姉、ちゃん」
照「……」カツカツカツ
咲「……」
咲(プラマイゼロを止められた……こんなにあっさり……)
竜華(……残りが二局で助かった……もし前半戦がもうあと一局でも残ってたら……多分、やられとった)
咲「……」
白糸台控室
菫「……勝ったな」
淡「……ふ、ふふ……」
淡(最高だ……テル、やっぱりあなたが最高だよ)ゾクッ
菫「それにしてもテルの奴、遅いな。まだ帰ってこないのか?」
淡「……」
淡(あれだけの力を使ったんだ。テル本人にも相当な消耗があるはず)
淡「私、ちょっと様子みてくるね」
菫「ああ、頼む」
女子トイレ
ジャーー
照「はぁ……はぁ……」
照「――うっ、うぇぇ……がっ……はぁ……はぁ」
照(頭痛が酷い……吐き気も。眩暈でろくに前も見えない)
照「……でも、超えた……」
照(私は――咲を超えた)
ガチャ
淡「――テル、ここにいたの」
照「淡……」
淡「……どうしたの。酷い顔」
照「……少し、無茶をしちゃった」
淡「最後のあれだよね。私も前にされたときは何事かと思ったけど、あれなんなの?」
照「……」
照「……私の強さの正体は、もう見抜いたんだっけ?」
淡「……麻雀を憎む力、でしょ?」
照「……すごいね、本当にお見通しだったんだ」
照「そう。私の雀力は憎しみの強さ。私にはもともと、牌をかしずかせて支配する能力が
あったみたい。でも麻雀が好きなままだと、その力を使えない。――心が、私の邪魔をする」
照「だから、麻雀を憎めば憎むほど、私は枷から解き放たれて強くなる。それが私の麻雀」
淡「それを突き詰めたのが、さっきのあれってわけ?」
照「普段の私は、自分のツモる牌を支配するのがやっと。力を使えばほぼ100%有効牌をツモれるけど、
場の支配、相手の支配までは覆せない。だから照魔鏡で相手を見抜いて、隙を突いてきた」
照「でもこの力を使えば……極限まで麻雀を憎めば、卓上の全ての牌を支配できる。相手に無駄ヅモをツモらせ、
自分だけが有効牌をツモっていける」
淡「すごいね。そんな力があるならいつも使えばいいのに。――ってわけにもいかないみたいだね、その様子だと」
照「……」
照「……痛むんだ」
淡「? どこが?」
照「胸のあたり。心臓の、その奥の部分が、締め付けられるみたいに痛む」
照「長く使いすぎると頭痛がして、吐き気がして、何か……お腹の奥の、よくわからない部分から
ざわざわした気持ちが沸いてきて……涙が出てくる」
淡「……」
照「……きっと、私みたいに牌に憎まれた子が、お前や咲のような領域に踏み入ろうとした代償
なんだろうね。理由はわからないけど、きっとそうなんだと思う」
淡「……本気で言ってるの?」
照「?」
淡「その力を使うと体調が悪くなる理由が……本当にそんなことだと思ってるの?」
照「違うの? 淡には分かるの?」
淡「とぼけてるの? 分からないふりをしてるの? わからないよ、テル……」
照「……何が言いたいの?」
淡「……」
淡「〝麻雀を憎むと心が痛む〟……その理由が、本当に分からないの?」
照「? わからない。教えて、淡」
淡「テル……あなた……」
アナウンス『――間もなく決勝戦大将戦の後半戦を開始します。選手の方はお集まりください』
照「もういかないと」
淡「……」
照「それじゃあ行ってくる」
淡「……」
淡「……行ってらっしゃい、テル」
恒子『さあついに、ついにインターハイ決勝戦、最後の半荘が開始されようとしています!』
恒子『白糸台は二位と8万点もの差を開けての半荘開始。実況がこんなこと言うのは良くないん
でしょうけど、もうチャンピオンの勝利は目前ではないでしょうか!?』
恒子『白糸台高校、前人未到のインハイ三連覇!! その歴史的瞬間が間近に迫っているような
そんな予感があります! どうでしょう小鍛冶プロ!』
健夜『普通に考えて、8万点ですもんね。かなり厳しいと思います』
恒子『しかも最後のあれ! あんなの使われたらもう終わりじゃないですか!』
健夜『あれは乱発できるような力じゃありませんよ。二局使っただけで相当な消耗を見せましたし』
咲「……」
咲(ううん、やってくる。またあれを、どこかでやってくるはずだ)
咲(……〝どこか〟? 違う、お姉ちゃんがあの力を使うタイミングなんて一つしかない)
咲(――私の、親番だ……!)
照「……」
東:千里山
南:白糸台
西:阿知賀
北:清澄
東一局
竜華(起家か……前半戦のチャンピオンのアレがまだ残ってないことを祈るしかないけど……)
竜華「……」カチャ
竜華(手が進んだ。一向聴。よし、あれは使われてない。また初めからや)
竜華(さすがにこの親で大きく取らんことには、逆転は無理や。なんとかものにしたいけど……)
竜華「……」カチャ
竜華(少し手が遅い……あかん、チャンピオンにスピード負けしてまう……!)
照「……」カチャ
竜華(ん? 手代わり? なんや、五巡目やっていうのに、まだ聴牌しとらんかったんか)
照「……」カチャ
竜華(――っ、また手代わり。なんや、チャンピオンから前半戦ほどの気迫が感じられん)
竜華(……まさか)
恒子『どうしたチャンピオン、六巡目を過ぎてまだ一向聴。チャンピオンにしては遅いですね』
健夜『さっきの能力を使用した反動なのかもしれません』
照「……」
照(さすがにあそこまで強烈に牌を憎むと、牌からの反発も強くなる。あの能力の使用後は
私の支配が弱まってしまう。この局は……まだだめだ)
竜華(チャンピオンの支配が弱い……? これは、いけるか……?)
竜華「……」カチャ
竜華「…………よし。リーチや!」チャラ
恒子『千里山先制――!』
恒子『ツモ和了りです! これは例の『チャンピオン以外が親で連荘する』という作戦でしょうか』
健夜『ここまで点差が開いてしまうともうその作戦でもかなり厳しいですが、彼女たちは
前半戦でチャンピオンの連続和了をある程度攻略していますし、支配力の落ちた今のチャンピオン
になら通用するかもしれません』
恒子『となるとやはり問題は……』
健夜『はい。〝アレ〟をどう攻略するか、ということになりますね』
東一局
竜華「……」カチャ
竜華(いける……! まだチャンピオンの支配が弱い!)
竜華「ツモ! 2700オール!」
恒子『千里山の連続和了! チャンピオンの支配力はいつ復活するのか!?』
健夜『……いえ。もうかなり回復していますね、おそらく』
照「……」
東一局
照「……」カチャ
恒子『チャンピオン、三巡目で一向聴!』
竜華(速い……もうチャンスタイムは終わりかいな。――せやったら)
竜華「……」カチャ
穏乃「ポン!」
穏乃「……」カチャ
咲「チー」
咲「……」カチャ
竜華「ポン!」
恒子『出たー! 三校の連続副露! チャンピオンのスピードが復活してもお構いなし!
連続和了は完全に攻略したか――!?』
照「……」
照(和了ればいい。でも、千里山はそういつまでも容易く和了れる?)
竜華(……それはポンできへん。まずい。チャンピオンがツモる……)
照「……」カチャ
恒子『チャンピオン聴牌――! 巡ってきた一巡を逃すことなく、しっかりと有効牌をツモってきました!
ほんと恐ろしいほどムダヅモがないですね』
健夜『ということは、あと一巡……彼女がツモれば即和了り、と考えて間違いないでしょう』
竜華「……」カチャ
竜華(……結局、一向聴どまりか……。ポンもでけへんノベタン待ち……ここまでか。もう
この局で私の和了りはない……)
竜華「……………………」
竜華「……」カチャ
穏乃「!?」
穏乃(私の和了り牌!)バッ
竜華「……」コクン
竜華(和了り)
穏乃「……」
穏乃「ロン。6400」
恒子『千里山が阿知賀に振り込んだ――! 貴重な残り局数が一つ減ると同時に、千里山の
親番も残り一回! 千里山と白糸台はまだ7万点ほどの点差があります! これはつらい!』
竜華「……」
東二局
咲「――ツモ。1600,3200」
恒子『今度は清澄高校! またしても連続副露でチャンピオンの親を流した――!
もうチャンピオンは連続和了では勝てないんでしょうか、小鍛冶プロ!』
健夜『というよりは、力を温存している様子ですね』
恒子『アレを使うためにですか?』
健夜『はい。結局、あの支配を超えない限りはチャンピオンには勝てません』
東四局
恒子『――さあ、東三局で親の阿知賀が二連続和了! しかし三連続はならず、最後に清澄が
和了って局が進みました! そしてその清澄の親番! 後半戦最後の東場です!』
白糸台:156500
千里山:90600
清澄:87900
阿知賀:65000
咲「……」
咲(私の親番……)
竜華(……信じられへん。後半戦になってからチャンピオンが一度も和了ってない……)
竜華(嵐の前の静けさ…………洒落にならへん喩えやわ)
穏乃(……ってことは……)
健夜『――来る』
照「――ッ」カッ!
――ギ
カタカタ……
竜華「――ッ! 牌が……!」
穏乃「!」
カタ、カタカタ……
――ギギ、ギ
ゴォォォォォォオッ!!
照(――もう支配も完全に回復した。お前の親は終わりだ)
照(止められるなら止めてみるといい)ゴォォッ!
咲「っ……」ゾクッ
照「……」カチャ
恒子『チャンピオン、二巡目で40符1飜を聴牌――! しかし、これは――!?』
照「……」カチャ
恒子『やはり待ちを変えてきました! あの凄まじい支配がついに始まってしまった――!』
竜華(清澄を狙い撃ち……私らなんて眼中にないってことか)
竜華(私はここでどう動くべきなんや? 清澄に和了らせてチャンピオンの点棒を減らす?
……いや、結局はこのチャンピオンの支配を超えられるかどうかなんや。それがでけへん限りは、
結局次の私の親番が潰されて、もうそこで私は終わる)
竜華(なんとかして探すしかない。チャンピオンの支配を超える方法を)
照「……」カチャ
照(――どう動くとか、そういう話じゃない。――この支配の中では、〝一歩も動けない〟んだよ)
照「……」カチャ
恒子『チャンピオン、40符2飜聴牌――!』
竜華「くっ……」
竜華(あかん……なんも進めへん!)
照「……」バチィ!
恒子『40符3飜――!』
咲「……」タン
竜華「――!」
竜華(清澄の打牌……!)
竜華「ぽ、ポン!」
照「な――」ピク
恒子『こ、これは――! 千里山がポンで手を進めました! 清澄、まさか狙ったのか――!』
照(そんな……できるはずない! 私の支配が効いているのに!)
健夜『……宮永咲選手、向聴数を下げましたね』
恒子『確かに。順子の③④⑤筒から④筒を切っていきましたね。なぜでしょう、小鍛冶プロ』
健夜『まあ……それが千里山の鳴ける牌だと読んだからでしょう』
恒子『え、でも……自分の親番ですよね? 向聴数を下げてまで千里山を鳴かせるっていうのは
どういう……?』
健夜『……もしかすると、チャンピオンが支配できるのは『ツモ牌』だけで、『配牌』は支配できないのかも知れません』
恒子『あ、確かに。それができるんならチャンピオンは天和なり決めちゃえばいいわけですもんね』
健夜『チャンピオン以外の三校の配牌を全て合わせれば、鳴ける牌の一つや二つは出てくるでしょう。
――そこを読めるのなら』
恒子『――チャンピオンの支配の中でも手が進む……!?』
健夜『……しかし、それだけでは攻略法とはとても呼べませんね』
照(……手が進むからなに? 結局お前は向聴数を下げてこの局を逃す。貴重な親番を)
照「……」バチィ!
恒子『チャンピオン更に打点を上げた――! 僅か一局で満貫手にまで伸びています!』
照(咲。お前は私の支配に抗うこともできず負ける。今の打牌がいい証拠だ)
竜華「……」
竜華(――違う。清澄は証明したんや。チャンピオンの支配が完全ではないこと。
硬いコンクリートにも花が咲くように、このがんじがらめみたいなチャンピオンの支配の中でも、
自らの意思で前に進めることを――!)
照「……」カッ ギュルルルルルル!
ドゴォ!!
照「――ツモ。2000,4000」
恒子『決まった――! チャンピオンの満貫ツモ! これは勝負あったか――!』
咲「……」
南一局
竜華(私の最後の親番……)
竜華(配牌から三向聴……でも、ここを逃せばもう親がない。チャンピオンとの差は7万点。到底
逆転でけへん)
竜華(なんとしてもこの親で稼ぐしかない!)
穏乃「……」カチャ
穏乃「……!」
1122356678北西⑨
穏乃(きた! 大きい手!)
恒子『おっと! 阿知賀女子、配牌から大物手の予感! これは是が非でも和了りたいですね』
照「……」カチャ
恒子『しかしチャンピオン、2巡で既に満貫聴牌!! 早すぎる!!』
照「……」カチャ
恒子『やはり手代わりを選択! 次は跳満、12000点だ――!』
竜華(阿知賀……三巡連続で⑤筒、四萬、③筒をツモ切り……索子の染め手か。高そうや。
でも手は進んでないみたいやな)
咲「……」カチャ
穏乃「! チー!」
竜華・照「――!」
竜華(また清澄が鳴かせた。阿知賀、もう聴牌間近みたいや)
穏乃(和了りたい……これさえ和了れば……!)
竜華「……」
竜華(……私の手牌にも索子はいくつかある。清一手なら大概鳴けるやろうし、手も進むはずや)
竜華(もしそれをチャンピオンから直撃とれるなら、私にとっても大きい和了りや)
竜華(でも索子を切ればうちの手はボロボロ……もうどう足掻いても和了られへん。
うちの最後の親が終わる……)
照「――リーチ」
竜華・穏乃・咲「!?」
恒子『チャンピオン、とどめとばかりにリーチ――! これで跳満確定! この局面での
12000点は痛すぎる――!』
竜華「……」カタカタ
竜華(チャンピオンの下家は阿知賀。私が阿知賀に索子を送れば、チャンピオンのツモを飛ばせる。
阿知賀も大物手が進んで、リーチで手代わりでけへんチャンピオンから直撃取れるかもしれへん)
竜華(でも、それをしたらうちの親が終わる……。まだチャンピオンの親が残ってるのに、
7万点差ある状態で終わってまう……!)
竜華(でもうちの手牌は三向聴……無理や……とても和了られへん……でも……!)
咲「……」
竜華「……」カチャ
竜華「……」タン ②筒
穏乃(っ……筒子……)
竜華(――ごめん、阿知賀。この索子は切れん。あんたがチャンピオンから直撃とれるとも限ら――)
照「ロン」
竜華「―-――-―――ぇ」
照「12000点」パララララ……
竜華「…………あ……ぁ……」
竜華「そ、そんな……」ヨロ
恒子『せ……』
恒子『千里山、ここでチャンピオンに痛恨の放銃――!!! これはやってしまった――!』
恒子『これでもう千里山には親番がありません。そしてチャンピオンとの点差は9万点にも
なってしまった――!!』
竜華「」ガックリ
健夜『……千里山は終わりましたね。もう心が折れています』
恒子『清水谷選手、うなだれた顔を上げられない! これはつらいですね小鍛冶プロ』
健夜『彼女だけじゃなく、高鴨選手にとっても厳しい和了りです。大物手を張っていただけに』
穏乃「…………」ギュッ
竜華「……くっ……うぅ……」プルプル
竜華(わかっとったことやないか……チャンピオンの支配は超えられへん。それを超えるためには、
他家に鳴かせて、チャンピオンから点棒を取るしかないって……清澄が自分の親番を潰してまで
皆に証明したはずやったやんか……!!)
竜華(自分が和了る以外にも、他家がチャンピオンからの直撃を狙うことで相対的に点差を縮める
作戦かってあったはずや)
竜華(怜なら――きっと怜ならそうしたはずや。一巡先を読んで、誰か大きな手を張った人に
チャンピオンが振り込むように場を誘導する……あの子ならきっとそういう麻雀を選んだはずや)
竜華(せやのに私は……私は、自分だけが和了りたいって……自分の親番を潰したくないって……
そんなことばっかり考えて、チャンピオンのリーチに、勝てるはずのない三向聴で挑んで……このザマや!!)
竜華(くそ……くそぉ……!)ギリギリ
照「……」
照(――あと、二人)ゴッ!
照(千里山はもう終わった。阿知賀も相手じゃない。……あとは咲、お前を潰せば……)
照「―-――!」ズキン!
照「ぐっ――!?」ガタッ
恒子『おっとチャンピオン、なにやら額を押さえています。怪我でもしたんでしょうか』
健夜『……能力の反動でしょう。強くなればなるほどに心を引き裂く……悲しい麻雀ですね』
恒子『? 小鍛冶プロがまたわけのわからないことを言っています』
照「ぅ……ぐ……!」ギリ
照(支配は止めない……止められない。ここで止めれば、またしばらく私の支配が弱まってしまう。
咲の親番を残しているのに、そんなことできるわけない)
照(これくらいなんともない。どれだけ心を引き裂かれようと、想いが砕け散ろうと、それで
強くなれるなら……私は喜んで引き受ける)
照(さあ、もっと焦がせ……心を炙れ。――全て燃やして、嵐を生め)ギュルルルルル
照(勝つのは――私だ!)
南二局
照「……」バチィ!
恒子『チャンピオン、なんと三巡目で跳満手聴牌――! やはり支配は続行中のようです!』
恒子『しかも今はチャンピオンの親番! これで倍満なんか和了ってしまったら、24000点!
もう決まりです! そんなことになったら、もう決まりです! 決まり!! 白糸台の勝利です!』
竜華「……」カチャ
穏乃「……」カチャ
恒子『千里山も阿知賀も手が重い! 清澄も二向聴のまま動けません!』
照「……」カチャ
恒子『きた――!! 7飜聴牌! 打点が上昇していないのでこれは和了れないんでしょうが、
もう勝利は目前だ――!』
竜華「……」
竜華「……」タン
咲「――!」
咲「ぽ、ポン!」
照「――!」
恒子『おっと! ここで清澄がポン! 一向聴だ! それにしても千里山は順子を崩しましたね。
これは諦めたんでしょうか』
健夜『違います。―――託したんです。清澄に』
咲(千里山さん……)
竜華「……」
竜華(清澄。前半戦、あんたは自分の力だけでチャンピオンの支配を超えた。この支配の中でも、
3巡に一回くらいカンをして強引に手を進めることができてた)
竜華(多分、私にも阿知賀にもできん。チャンピオンに対抗できるのはあんただけや)
竜華(せやから、あんたがチャンピオンを倒し、清澄! うちらの想いを……皆の想いを、あんたに託す!)
咲「……」ギュッ!
照「……」ドッ!
恒子『チャンピオン、ついに10飜聴牌――!! おそらく次でチャンピオンは和了り牌を
ツモります! これが止めの一撃となるか――!』
照「――リーチ」
竜華・穏乃「!?」
恒子『チャンピオンリーチ!! これで11飜――三倍満確定だ――! 親の三倍満は36000点です!
チャンピオン大暴れだ――! 一切の容赦なし!!』
咲「――カン!」
照「――!」ピクッ
恒子『清澄カン――! これで聴牌だ――!』
咲「もいっこ、カン!」
恒子『連続カン――!』
照(無駄だ……!)
照(――跪け!)ゴォォッ!
咲「くっ……!」ギギギ
咲「……」ギギ、ギ……
――ピシッ
照「――!」
咲「……」カチャ
恒子『あー! 嶺上開花ならず! 清澄の最後の抵抗も虚しく、やはりチャンピオンの支配は超えられないのか――!』
健夜『……今……』
照(――私の支配に罅が……?)
咲「……」トン
竜華「――! ち、チー!」
照「な……」ピク
恒子『おっと、千里山チー! しかし千里山はまだ三向聴。一度鳴いた程度では聴牌には程遠いぞ――!?』
健夜『……違う。今、千里山は〝清澄のツモ切りを鳴いた〟。つまり……』
竜華(清澄……引いたんか!? チャンピオンの支配が効いてるこの支配の中で、私の鳴ける牌を……!)
照「……」
照(ツモ巡が変わったくらいで、私の支配は超えられない)
照「……」バチィ
恒子『さあチャンピオンのツモです! 出るか、親の三倍満――!』
照「……」カチャ
照「―-――な」
恒子『――あ』
健夜『……』
竜華「……」
咲「……」
恒子『こ、これは……チャンピオンの和了り牌じゃない。いえ、むしろ……』
恒子『――清澄への当たり牌です!! チャンピオン、清澄の当たり牌を引いてしまった――!』
照「……そ、そんなはず」
照「ぐっ――!」ズキン!
照「ぁ――ぐぅ……!」ズキンズキン
照(力を使いすぎた……? 知らない内に……私の支配が弱まっていた?)
照「くっ……」タン
咲「――ロン! 16000!」
恒子『清澄、ここでチャンピオンから直取り――! まだ希望は残されているか――!?』
恒子『チャンピオンの連荘を阻止。二位の清澄とチャンピオンの点差はおよそ63000点!
清澄、親番に全てを託します!』
南三局
穏乃「……」カチャ
恒子『親の阿知賀。チャンピオンとの点差は三校の中で最も開いています。この親番をものに
できなければ、チャンピオンから役満を直撃しても逆転できません』
穏乃「……っ」カチャ
恒子『しかし、やはりチャンピオンの支配は健在なのか。配牌時から一つも手が進まず三向聴。
対するチャンピオンは既に聴牌です!』
穏乃(動けない……身動き一つできない……)ギギギ
穏乃(このまま何もできずに負けるの……? さっきの千里山の人みたいに……)グッ
咲「――カン!」
穏乃「――!」
恒子『清澄高校、またしてもカン! 手を一つ進めます!』
穏乃(暗槓……清澄、やっぱりこのチャンピオンの支配の中でも動けるんだ)
穏乃(なら……やっぱり、チャンピオンに勝てるのは清澄しかいない)
穏乃(ここで私が自分の和了りを目指しても、さっきの千里山の二の舞だ)
穏乃(……………………なら)
穏乃「……」タン
咲「ッ! チー!」
恒子『清澄チー! 阿知賀女子、向聴数を下げました。これはまさか、阿知賀も勝利を放棄
したということか――!?』
竜華(阿知賀……)
穏乃「……」
竜華(わかってる。ここで自分の勝ちを諦めて清澄を援護するっていうのは、同じチームの
皆にしてみれば申し訳ないことなんかもしらん。でも……)
穏乃(それでも――私はこの道を選ぶ。皆の想いを、清澄に託す!)
竜華・穏乃(――行け、清澄!)
照(調子に――乗るな!)ゴォォォォッ!
健夜『っ……このプレッシャー……すごい……』
咲「く……」ギギギ……
竜華(まだや……まだいけるやろ清澄!)
竜華「……」タン
咲「ポン!」
照「くっ……!」
恒子『清澄聴牌! チャンピオンに追いついた――!』
照「ぐっ――! うっ……」ズキン
照(あ、頭が……割れる……!)ギリィ
照(胸が締め付けられるみたいに痛い……苦しい……)ハァ……ハァ……
照(でも……止める! 咲を止めてやる……!)
――ギギ、ギィ……
咲「……」ギギギ……ギ、
――パキンッ
照「な――!」
咲「――ツモ! 3000,6000」
恒子『清澄高校、連続和了だ――!』
健夜『チャンピオンの支配を打ち破った……!』
竜華(清澄……!)
穏乃(すごい……!)
淡「咲ちゃん……!」
菫「馬鹿なッ!」
照「……そんな……」
照(止められないの……? ここまで支配を強めても)ズキンズキン
照(咲の力が、私の支配を上回った……?)
恒子『勝負はとうとうオーラス! インターハイの優勝校を決する、最後の一局に突入です!』
白糸台:156500
千里山:76500
清澄:109200
阿知賀:57800
南四局
照(最後の一局……咲の親番……!)ゴッ
照(加減はなしだ。全力で牌をかしずかせる!)ゴォォォォオ!
竜華(――ぐっ!)ギギ
穏乃(こ、これ……!)ギギギィ
恒子『す、すごい――! 千里山と阿知賀、もはや字牌しかツモれてません! チャンピオン、
ここでついに全力全開か――!!』
健夜『これほどの力を何局も連続して使い続けるなんて……』
健夜(こんなことしたら、彼女の心は……)
照「ぐっ――!」ズキィ!
照(い、痛い……! 視界が滲んで前が見えない……)ガクッ
咲「……」カチャ
恒子『だめだ――! 清澄も配牌時の手から動けません!』
竜華(だめなんか、清澄……)
穏乃(清澄……!)
咲「……っ」ギリ
咲(だめだ……もう私の力だけじゃ、お姉ちゃんを超えられない――!)
照(これが私の全力だ。和了れるものなら和了ってみろ、咲)
照「……」バチィ!
123①②④⑨⑨六七南南北 南
恒子『チャンピオン一向聴――! ドラの⑨筒を頭にして、南ドラ2です! ですがもはや点数は
問題ではありません。この手を和了った時点で、白糸台の優勝が決定します――!』
照(これで終わりだ咲。あと二巡……それで決める!)
咲「……」カチャ
咲(私だけじゃ、お姉ちゃんには勝てない……)
咲(だから皆、今だけ……私に力を貸して!)
咲「――カン!」
恒子『清澄カン――! ツモった四枚目の白で暗槓です! 新ドラは五萬。さあ嶺上牌は――!?』
346③西西東発発中 中 白白白白
恒子『――――お? ……え、これ……?』
健夜『……!』
竜華(白のカン……? ――!? まさか!)
竜華(清澄……これか!?)タン 発
清澄「ポン!」
竜華・穏乃・照「――!!」バッ
照(白と発……まさか)ゾクッ
穏乃(大三元……!?)
照「……」カチャ
123①②④⑨⑨六七南南南 ③
恒子『チャンピオン聴牌――! おそらく次でチャンピオンはツモります! この一巡で
清澄が和了らなければ、その時点でチャンピオンの勝利と考えていいでしょう!』
穏乃「……」カチャ
穏乃(清澄……)
穏乃「……」タン 中
照・竜華「――!」
竜華(まさか――)
咲「――ポン!」
穏乃・竜華・照「――!!!」ゾクッ
恒子『こ、これは――!!!』
34西西 中中中 発発発 白白白白
恒子『だ、大三元確定だ――!! え、ちょ、ちょっと待ってください、今清澄と白糸台の
点差は――』
白糸台:156500
清澄:109200
恒子『あ――――!』
健夜『――47300点差。清澄が親で役満を和了れば、48000点』
恒子『え、と、ということは……』
健夜『……逆転です。ツモ和了りなら最後に中を鳴かせた阿知賀の責任払いになりますが、もう
関係ありません。清澄があの手を和了った時点で……』
恒子『――清澄高校、逆転優勝――!!??』
菫「照――!」
淡「テルが……負ける?」
淡(咲ちゃん……あなた……!)ゾクッ
照「…………」
照(咲……やっぱり、お前なのか)
照(最後に私に立ちはだかるのは、お前なのか……!)ギリ
咲「……」
恒子『こ、これはとんでもないことになりました――! 三校が互いに役牌を一つずつ持ち寄り
築き上げた、これはまさに友情大三元――!
今、全ての想いを乗せた清澄の大三元が、この三年間誰も超えられなかった最強の頂、宮永照に
挑みます! 宮永咲選手と宮永照選手の最後の一騎打ちだ――!!』
竜華「……」カチャ
竜華(あかん、誰も鳴かせられそうにない。チャンピオンにツモらせてまう……!)
竜華「……」タン
恒子『しかしここでチャンピオンのツモ番です! ここで勝負を決めることができるかチャンピオン!』
照(これで終わりだ)
咲「っ……」ギュッ
照(――跪k――ッ!)ズキン
照「ぐっ……!」ガタッ
照「……」カチャ
照「――――!!」ビクッ
恒子『――あーーっと!!! チャンピオン、和了り牌をツモれなかった!!』
照(くっ……!)ギリ
健夜『場を支配するほどに、彼女は自分の身を削っていく』
健夜『やはりもう彼女の支配はとっくに限界を超えていたんですね……無理もありません』
健夜『あの一瞬、チャンピオンの支配が弱まってしまった』
咲(よし……!)
照(まずい……!)
恒子『今度は一転して清澄のツモ番――! ツモれるか、逆転大三元――!!』
穏乃「……」カチャ
照(こんな……この程度で、私の支配が……)
照(――負けるわけない!)
ドゴォォォォ!!
咲「――!」ビクッ
健夜『な――支配が蘇った……! し、信じられない……なんて精神力なの』ゾクッ
照「がっ……あ、ぁぁあ……!」ズギンズギン!
照(勝つんだ……咲に勝つんだ……!)ズギンズギン
咲「……」カチャ
咲「!」
恒子『ああーー! 清澄も不要牌――!! 今度はチャンピオンのツモ番だ――!』
咲(お姉ちゃん……!)
竜華(チャンピオン……あんた……)
菫「ツモれ、照!」
淡「いっけええテルうう!!」
照「さ……きぃ……!」ズギンズギン
――ガッ
――ギュルルルルルルル!!!
咲・竜華・穏乃「!!」ビクッ
照(これで――)
照(――終わりだ!!)ゴッ
ドゴォォオ!!
咲「」
竜華「」
穏乃「」
菫「」
淡「」
健夜『』
恒子『……』
恒子『……ちゃ、チャンピオン……』
123①②③⑨⑨六七南南南 赤五
恒子『――――つ』
恒子『ツモ――!! チャンピオン、和了り牌をツモりました――!!!!』
恒子『清澄との一騎打ちを制したのはチャンピオンです!! 今この瞬間、白糸台高校の優勝、
そして史上初の三連覇が達成されました――!!』
竜華「……」フゥ
穏乃「……」パタン
淡「……勝った。テルが勝った!」
尭深・誠子「や、やった!!」
菫「照……」
菫「お前……やっぱり凄いよ、照……」
照「……………………」
恒子『チャンピオン、勝利の余韻に震えているのか、微動だにしません! 無理もないでしょう。
この歴史的な勝利に酔いしれているのかもしれません!』
健夜『……』
恒子『? どうかしましたか、小鍛冶プロ』
健夜『チャンピオン……しませんね』
恒子『え? 何を?』
健夜『……和了り宣言。手牌も見せません』
恒子『え? いや、でも……』
123①②③⑨⑨六七南南南 赤五
恒子『え、和了ってますよね、これ?』
健夜『はい。問題なく和了れます。南ドラ4ツモですね』
恒子『じゃあ……和了りでしょう。和了れば勝ちなんですから』
健夜『……でも、してない』
恒子『それはあれじゃないですか? やっぱり、喜びに胸を打ち震わせて……』
健夜『それにしても長すぎませんか?』
恒子『まあ……』
菫「照……?」
誠子「どうしたんでしょうね、和了り宣言しませんけど」
菫「なんだ、どうしたんだ照……」
淡「…………プラマイゼロだ」
菫「なに?」
淡「あの手、和了れば3000,6000。この試合、清澄の開始時の点数は97900点。
今は109200点。ここで咲ちゃんがマイナス6000点になったら……」
淡「103200点。試合開始時から考えたら、プラス5300点」
淡「――プラマイゼロ」
菫「いや……しかし……」
菫「も、もういいだろそれは。関係ないだろ! 清澄だって狙ってやったわけじゃない! 偶然だ!
あの照を相手に、あれだけ追い詰められて点数調整なんてできるわけがない!」
淡「……偶然だと思う?」
淡「じゃあ……なんで咲ちゃんは白を暗槓したの? もう白の暗刻はもってたのに」
菫「それは……手を進めたり、千里山と阿知賀に大三元の気配を知らせるために」
淡「あのカンがなければ、新ドラの五萬が開かれることはなかった。それがなければ
テルの手はツモ南ドラ2で満貫。プラマイゼロにはならない」
淡「でも五萬がドラになって、かつ照に赤五萬が入ったからこそ、プラマイゼロになったんだよ。
……偶然?」
菫「偶然だ! だいたい、それが故意だったからなんだっていうんだ! 照の勝ちに変わりはない。
誰だって和了るに決まってるだろ! 清澄は逆転手の大三元を聴牌なんだぞ!」
淡「…………私なら、和了らないかも」
菫「おい!」
淡「テルは……テルは今何を考えてるんだろう」
照「…………」プルプル
照(プラマイゼロ……だと?)ギリ
照(……偶然じゃない。偶然のはずがない。これは……このプラマイゼロの感覚は……昔、
家族麻雀で感じた、あの気配だ)
照(咲……なんなんだ。なんなんだ、お前は)プルプル
照(お前は、私に勝とうとしてたんじゃなかったの? 私に勝ちたかったんじゃないの?)
照(だからこそ千里山も、阿知賀も、お前の勝利に全てを託したんじゃないのか。お前だけが私に
勝てるから、彼女たちは自分や、チームの想いを……お前に託したんじゃないのか)
照(お前のチームには今年卒業の三年生はいないのか? この大会に全てを賭け、優勝を目指して
お前を大将に据えたんじゃないのか。お前と一緒に麻雀を打ってきた仲間は……お前を応援
してくれた人たちは、お前が勝つことを夢見て……信じて、お前の対局を見守ってくれてたんじゃないのか)
照(なのに……なのにお前はプラマイゼロを目指すのか? 彼女たちの想いを、願いを、全て
踏みにじって……侮辱して! それでもお前はプラマイゼロを続けるっていうのか……!)
照(最低だ……お前は最低だ、咲。私は絶対にお前を認めない……お前にだけは、絶対負けない!!)
照「……」カチャ
恒子・健夜『え……?』
竜華「は?」
穏乃「え?」
咲「……」
恒子『ちゃ、チャンピオン、ツモった赤五萬を手に取り……え、ま、まさか……』
照「……」カッ
恒子『あー! チャンピオン、ま、まさかツモ切――え、な、なんで!!』
尭深「……!」
誠子「うそ――!?」
菫「おい、よせ照!!」
淡「テル――!」
照(――切ってやる。こんなツモ、捨ててやる)
照(ドラさえ乗らなければ跳満にはならない。手を変えて、もう一度ツモり直してやる――!)
照(咲をプラマイゼロになんてさせない……そんなことになるくらいなら、負けたほうがマシだ――!)
照(私は、私は咲に勝つためだけに今まで麻雀を打ってきたんだ――!!)
――頑張ってください、宮永先輩!
照「――――え」
そのとき、五萬を卓に叩きつけるまでの刹那の間に、聞いたことのある声が私の脳裏に蘇った。
それは白糸台の三軍の子の声だった。二年生であまり強くなくて、いつも負けてばかりで悔しそうにしていた。
でもその子は麻雀が大好きで、私のことを尊敬してくれていた。きっと今も会場のモニターで、
私のことを応援してくれているはずだ。
――宮永さん、絶対勝って下さい!
――先輩ならきっと勝てます!
――宮永さん、頑張ってね!
彼女だけじゃない。今まで白糸台で一緒に麻雀を打ってきた多くの子たちの声が、次々に蘇ってきた。
みんなこの大会に出たくて、白糸台の一軍になりたくて、でもなれなかった子たちだった。
みんなが私のことを元気づけて送り出してくれた。私が勝つことを信じてくれた。今も声を枯らして
私を応援してくれている。
照(――止めるんだ、咲の……プラマイゼロを……)
――宮永さん、インターハイ頑張ってね!
――史上初の三連覇なんだって? 私応援するからね!
――絶対勝ってね宮永さん、私も頑張るから!
麻雀部ではないただのクラスメイトの子や、教師や、今まで話したこともないような子たちまで
私を応援してくれた。皆、私が勝って白糸台に帰ることを待ってくれている人たちだ。
私は彼女たちの想いを、願いを背負ってここにきた。必ず勝って帰ると、みんなに約束した。
……その想いを裏切るのか。
……私に寄せられた期待を無為にして、せっかく掴み取った勝利を捨てるのか。
――そんなことをすれば……それは咲とまったく同じなんじゃないのか……。
照(私は……咲に、勝つため、に……)
――勝ったのは白糸台じゃなく、宮永照。……そんな声をな、たまに聞くんだ。
照(――――ぁ)
――お前がいたから勝っただけだ、ってな。悔しかった。私は、皆で優勝したんだって言い返してやりたかった。
照(――すみ、れ……)
――でも……私は何も反論できなかった。それくらい去年や一昨年は、お前の力が大きかった。
――なあ照。私、もっと強くなりたい。お前にただ優勝杯を取ってきてもらうだけなんて、
そんなのは嫌だ。
照(――――)
――それで、三連覇を成し遂げたときにはさ、お前の横に堂々と並んで、「私たち皆で優勝しました」
って、胸を張って言いたいんだ。
照(菫――)
――やろうな、照。
――三連覇、絶対やろうな、照!
タン
照「…………………………………………ツモ」
竜華・穏乃「――」
菫・淡「――」
咲「……」
照「……ツモ南ドラ4。……3000,6000」
恒子『――き』
恒子『――決まった――!!! チャンピオン、和了りを宣言!! この瞬間、全ての試合が
終了! 今年のインターハイ優勝校は、白糸台高校――!!』
白糸台:168500
千里山:73500
清澄:103200
阿知賀:54800
照「……」
恒子『圧倒的点差で他校を突き放し、白糸台高校が史上初の三連覇を成し遂げました――!』
恒子『中でもやはり、白糸台のエース宮永照の活躍が凄まじかったと言えるでしょう!
まさに最強! この勝利により、高校生最強が誰なのかは誰の目からも明らかでしょう!』
恒子『勝者は――宮永照――!!!』
――私は……負けた。
――咲に勝てなかった。
照「……」
……淡なら。
準決勝で咲からの差し込みを二度も連続で見逃した淡なら、きっとこの手は和了らなかった。
プラマイゼロの屈辱を受けることを良しとせず、手を崩し、点数を変えて和了りなおしたはずだ。
たとえ咲が逆転手を聴牌していたとしても、それでも自分は勝てると信じ、咲の大三元を
相手に一歩も退くことなく、果敢に立ち向かうことを選んだはずだ。
……私にはそれができなかった。私はあの瞬間、思ってしまった。
ここで手を崩せば、私は負けると。先に和了り牌をツモるのは咲の方だと。そしてきっと、私を
応援してくれた全ての人を裏切ってしまうと。
たったそれだけで、私は咲に立ち向かうことができなくなった。
最後の最後、私は自分の麻雀を信じることも、咲を超えたいと思うこともできず、ただ眼前の
勝利に飛びついた。……咲から逃げることしかできなかった。
だというのに、私はこの勝利に納得することも、咲のプラマイゼロを止めることも、咲との決着
をつけることもできず……ただ項垂れることしかできずにいる。
点数で勝ったからといって、それが必ずしも勝利を意味するわけじゃない。
……私は、負けた。
――咲に……勝てなかった……
恒子『前人未到の三連覇を成し遂げた宮永照! 彼女は今何を思うのか――!』
照「…………そ」プルプル
恒子『宮永照、震えています。喜びを噛みしめているのでしょうか!』
照「く…………そ」ポロ
照「く、そぉ……!」ポロポロ
竜華「……チャンピオン?」
穏乃「……?」
照「くそぉ……くそぉッ……!」ポロ
咲「お姉ちゃん……」
菫「……」
淡「……テル……」
歓声が鳴り響く会場の中に、私の悲鳴にも似た嗚咽が長く混じり続けていた――。
白糸台控室
菫「……照の勝ちだ」
誠子「え?」
菫「誰がなんと言おうと、照の勝ちだ。白糸台の優勝だ。たとえ照本人がそれを
受け入れられなくても、私たちだけはそれを認めてやろう。よくやったって褒めてやろう」
誠子「と、当然ですよ! 文句なしで宮永先輩の勝ちですよこんなの!」
淡「……」
淡(私なら、きっとあの手は和了らなかった。でも、テルは和了った。もし結果だけで見れば、
私は試合に負けて、テルは勝ったってことになる。……この差はなに?)
淡(私はテルを目指してここまできたのに……やっぱり、私たちの麻雀は違うの?)
淡「……私、テルを迎えに行ってくる」
菫「ん、ああ、そうだな。頼む」
淡(もし……私がテルだったら、あの試合……)
淡(――勝っていたのは、咲ちゃんだった……?)
廊下
照「……」ツカツカツカ
咲「待って、お姉ちゃん待って!」タッタッタ!
ガシッ!
咲「お姉ちゃん!」
照「……」
咲「私……私ね」
照「……満足した?」
咲「え?」
照「お望み通りプラマイゼロにできて、満足できた?」
咲「私は……」
照「咲が言ってた、私に伝えたいこと……よくわかったよ。私なんかがどれだけ強くなったって
意味ないって言いたいんでしょ? 私の方が強いんだって言いたいんでしょ?」
咲「そ、そんなこと!」
照「……もう二度と私の前に現れないで」バッ
咲「……お姉ちゃん……」
照「……」ツカツカツカ
咲「お姉ちゃん……私と……」
咲「――私と、もう一度麻雀を打って!」
照「……」ピタ
照「……何言ってるの?」
咲「下の階に、来場者なら誰でも麻雀が打てる雀荘があるの。そこで、私と麻雀を打って。
今度は二人きりで」
照「……ふざけないで。誰がそんなこと」
淡「打ってあげて、テル」
咲・照「!」バッ
照「淡……」
淡「もう一度、咲ちゃんと打ってあげて」
照「……どうして私が淡の言うことを聞かないと――」
淡「準決勝の、相手に一回だけ命令できる権利、あれまだ残ってたよね」
照「……っ」
淡「あれ使うよ。だから咲ちゃんともう一度だけ麻雀を打ってあげて。テルはその権利を使って
大将になったんだから、まさか嫌とは言わないよね?」
照「……どうして、そこまで」
淡「……咲ちゃんの伝えたいことが、まだテルに伝わってないからだよ」
咲「淡ちゃん……」
照「…………」
照「……四局だけだ」ツカツカツカ
咲「あ、待ってお姉ちゃ――!」
淡「――咲ちゃん」
咲「え?」ピタ
淡「…………」
淡「テルを……テルを解放してあげて」
咲「……」
咲「――うん」コクン
タッタッタ……
淡「……」
雀荘
照「……ここでいいの?」
咲「うん」スチャ
二人麻雀。私も咲も初めての麻雀だったので、事前にルールを決めることになった。
東家、南家の二つのみの半荘戦。つまり全四局の短期戦ということになった。チーなし。
性質上、ツモもロンも支払う点数に変わりはない。あとは大会ルール準拠。
ジャラジャラジャラ ガシャン
咲「私が起家だね」
照「……」カチャ
照(私は何をやってるんだろう。白糸台の控室に戻ることもせずに、こんなところで咲と
二人麻雀なんか打って)
照(菫、私のこと探してるかな。……ああ、淡が事情を説明してくれてるかな)
咲「……」カチャ
咲「……お姉ちゃん」
照「なに」
咲「――私、この勝負、勝ちにいくから」ゴッ
照「……さっきは勝ちにいってなかったって言いたいんでしょ?」
咲「……」タン
照「……」カチャ
照「……」タン
咲「ロン。3900」
照「……」チャラ
咲「……お姉ちゃん」
咲(……まるで本気を出してない。何の力も使ってない……)
咲「……」
照「何? 本気で打ってとでも言いたそうな顔だけど」
咲「……」
照「勘違いしないでね。咲が本気で打たなかったからって、その当てつけをしてるわけじゃない」
照「……もう、疲れたんだ。さっきの試合で力を使いすぎた。……麻雀を憎み過ぎた。
もう牌を触っているだけで、心が軋むように痛む」
照「あれだけ長く力を使ったんだ。その反動も大きい。私の支配もさっきよりずっと弱まってる。
――好きなだけ和了りなよ、咲。終わったら帰るから」
咲「……お姉ちゃん」
照「……当てつけてるわけじゃないって言ったけど、咲がやってる麻雀はこういうことだよ。
真面目に勝敗を競おうとしてる人を侮辱する行為なんだ」
咲「私は……」
照「私はお前の麻雀を認めない。お前のことも嫌いだ。二度と会いたくない」
咲「……」ギュッ
照「だから私はお前に勝ちたかった。お前にだけは負けたくなかった。そのために私は麻雀を打ってきたんだって
思えるほどに、私はお前に勝ちたかった……なのに、結局負けた。今度こそ……もう麻雀を打つ理由すらなくなっちゃった」
咲「……麻雀をやめるの?」
照「さあね。言ったでしょ。もう、疲れたんだ」
咲「……」
咲「……」カチャ
照「……」カチャ
咲「……」カチャ
咲「――ツモ。4800」
照「……」チャラ
咲「……私ね。お姉ちゃんが家を出てってから、清澄に入るまでずっと麻雀を打たなかったんだ」
照「いいから、早く続きを打とう。私はお前と話すためにここにいるわけじゃない」
咲「……」ポチ ジャラジャラジャラ
咲「……あれから私、ずっと自分の麻雀が嫌いで、麻雀そのものが嫌いで……」カチャ
咲「でも、清澄の皆と出会って、麻雀の楽しさを思い出したの」
照「お前はそんなチームメイトの夢を台無しにしたんだ。あのプラマイゼロのせいでね」カチャ
咲「……あの試合、私は勝つつもりだった」
照「……なに言ってるの? プラマイゼロに調整したくせに」タン
咲「ロン。8000」
照「っ……」
咲「お姉ちゃん、私言ったよね? この勝負、勝ちにいくって」
咲「私は本気だよ。いくらお姉ちゃんでも、本気を出さなかったらすぐトばしちゃうんだから」ゴォッ
照「……」
咲「屋上でお姉ちゃんと話した直後は、私もプラマイゼロにしようって思ってた。そうすれば、
私の伝えたいことがもしかしたらお姉ちゃんに伝わるかもしれないって思ったから」ジャラジャラジャラ
咲「……でも対局中に、清澄の皆のことを思い出したんだ。皆が私を応援してくれたこと……長野
で闘った皆も全国に行きたくて、私はその人たちを倒してここにいるんだってことを思い出したの」カチャ
咲「だから、プラマイゼロなんかしちゃいけないって……なんとしても勝たなきゃいけないって思ったの」タン
照「だったら――」ギリ
照「――だったら、どうしてプラマイゼロなんかやったんだ!!」ゴォッ!
咲「……!」
照「私はお前に勝ちたかった! 本気のお前にだ! 本気のお前と戦えたら……たとえ
負けたとしても、それで納得できたかもしれないんだ」タン
照「なのにお前は……」バチィ
照「――ツモ! 1300!」
咲「……」
照「だいたい、プラマイゼロで何を伝えたかったの? 全然理解できない」ジャラジャラジャラ
咲「……お姉ちゃんに思い出してほしかったの」
照「何を?」カチャ
咲「お姉ちゃんが、本当は麻雀が大好きなんだってことを」
照「……私は、麻雀なんか好きじゃない」
咲「じゃあ、どうして今まで麻雀を続けてきたの?」カチャ
照「……皆して、同じことばかり訊いてくる。もううんざりだ」カチャ
照「お前に勝つためだよ。私も今日まで分からなかったけど、きっとそうなんだってお前と打って気付いた」タン
咲「……違うよ」カチャ
照「……?」
咲「お姉ちゃんが麻雀を打つ理由は、そんなことじゃない」
照「お前に私のなにが分かるって言うの?」カチャ
照「――ツモ。3900」
咲「……たまにお姉ちゃんの記事を雑誌とかで見るたびに、私はいつも悲しかった。
ああ、お姉ちゃんは今もずっと麻雀を憎みながら闘い続けてるんだなって思うと……」
咲「でも、仕方ないのかなって。私がプラマイゼロでしか自分の麻雀を表現できないように……
私自身、プラマイゼロのせいで麻雀を楽しめないように、お姉ちゃんもそうなのかなって」カチャ
咲「でも……原村さんと出会って、初めてプラマイゼロ以外で対局を終わらせて、私すごく
うれしかった。すごく楽しかったの。私でも麻雀を楽しめるんだって。好きになれるんだって気づけて、嬉しかった」タン
照「……それで?」カチャ
咲「だからきっと、お姉ちゃんも麻雀を楽しめるって思ったの。私の麻雀が変われたように、
お姉ちゃんの麻雀もきっと変われるって思ったの」タ
照「……ロン。5800」パラララ
咲「だから私、お姉ちゃんに伝えたかったの。私は、私自身の麻雀を好きになることが
できたよって。お姉ちゃんもきっと自分の麻雀を好きになれるよって」
照「余計なお世話」ジャラジャラジャラ
照「私はお前みたいに牌に愛されてない。牌を憎むことでしか強くなれないんだ。お前みたいに
簡単に自分の麻雀を曲げられない」カチャ
照「それに、私はもう麻雀そのものが嫌いなの。お前とは違う」タン
咲「そんなことないよ。お姉ちゃんは今でも麻雀が好きなはずだよ」カチャ
照「うるさい! 勝手に決めるな!」カチャ
咲「……ツモ。7700」パララ
照「……」チャラ
照「……見ろ。少しでも支配が弱いと、お前は簡単に和了ってしまう。私は……お前や淡とは違う」
照「お前の言う通り、私も昔は麻雀が好きだった。負けたって楽しかった。お前にプラマイゼロに
されても、それでも楽しかった。……お前がプラマイゼロで私に思い出してほしかったのは
そのことでしょ? 私が一番麻雀を好きだった時期のことを……思い出してほしかったんでしょ?」
咲「……」コクン
照「でも、違うんだ。もうなにもかも変わってしまったんだ」カチャ
咲「……」カチャ
照「私は強くなりたかった。大好きだった麻雀をどれだけ憎んでも、強くならなきゃいけないって
思ってた。……なのに結局咲に負けちゃって、ほんと、どうしようもないよ」カチャ
咲「……お姉ちゃんの勝ちだよ」
照「え?」
咲「私はさっきの試合、ちゃんと勝とうとしてたんだよ。嘘じゃない。だから、お姉ちゃんの勝ち
なんだよ」
照「……ならどうして白をカンしたの? あれは私にドラを乗せてプラマイゼロにするためでしょ?」
咲「……うん」
照「……ほらやっぱり」カチャ
咲「でもそれは、勝つためにだよ」
照「意味がわからない」
咲「あそこでプラマイゼロにすれば、きっとお姉ちゃんはあの手を和了らないと思ったんだ」
照「……ッ」
咲「それがあのときお姉ちゃんに勝つただ一つの方法だった。お姉ちゃんは私のプラマイゼロを
防ぐためにきっと手を変えてくる。そのときに私が和了るチャンスが生まれるって思ったの」
咲「でもお姉ちゃんはあの手を和了った。……私の誤算だった。もしお姉ちゃんが昔のままなら。
もし家族で麻雀を打ってたときのままのお姉ちゃんだったら、きっとあの手は和了らなかった。
〝和了れなかった〟。もしそうなっていたら、きっと私が勝ってたはず」
咲「でもお姉ちゃんは白糸台で、私との決着なんかよりもずっと大切なものを手に入れてたんだね。
それがあったからこそ、お姉ちゃんはあの手を和了れたんだよ。私に和了らされたんじゃない。
お姉ちゃんは自分の力で、あの和了りを勝ちとったんだよ」
照「……プラマイゼロは目的じゃなくて、手段だったって言うの?」
咲「……」コクン
照「そんな話……」
咲「お姉ちゃん、私の力を感じて。今、私が手加減してるように見える?」ゴォォ!
照「……」
照(この気配は……確かに大将戦で咲が見せていた力と同じ)
照(でも、いま咲はプラマイゼロなんか目指してない。そもそも、二人麻雀にプラマイゼロなんかない。
つまりいま咲は確かに私に勝とうとしてる)
照(ならあの大将戦も……咲は本気だった……? プラマイゼロは目的だったんじゃなく、
勝利のための手段だった……?)
照(私は……咲に勝っていたの?)
照「……」
――ギ
――ギギィ……
咲「……!」
咲(このプレッシャーは……!)ゾクッ
照「……」バチィ
照(――30符1飜、聴牌)
照「なら……私はここでお前を倒す。開始時の点差も、他家の援護も、プラマイゼロもないこの二人麻雀で、今度こそ」
咲「……うん。打とう、お姉ちゃん。あの頃みたいに」
照「……」カチャ
照(これで30符2飜)タン
咲「……」ギギ、ギ
咲「――カン!」ゴッ
照「……」カチャ
照(――40符4飜)タン
咲「……」カチャ
照(――5飜)
咲「くっ……」ギギギ
照「――ツモ。12000」
咲「……」チャラ
咲:26400
照:23600
照「これでオーラスだ、咲。私の最後の親。和了った方の勝ちだ」
咲「うん」
照「……」カチャ
咲「……」カチャ
照(私の全力の麻雀だ。支配力ももう戻った。この状態なら咲は私に勝てない。それは大将戦で証明済みだ)
咲「……」カチャ
照「……ねえ咲。一つだけ教えて」
咲「なに?」
照「咲は……清澄に入って初めて、麻雀を好きになったの?」
咲「……ううん、違う」
咲「私は家族麻雀の頃から麻雀が好きだった。でもあの頃は何をしても怒られたから、私は
麻雀が嫌いなんだって思いこもうとしてたの」
照「……」カチャ
咲「でも、清澄に入って、私はやっぱり麻雀が好きなんだなって思い出したの。勝つことが楽しいって……
ううん、負けたって、ただ牌を触っているだけで楽しいって、思い出したの」
照「……うん、そうなのかもしれないね」
照(私もきっとそうだ。昔は麻雀が好きで好きで仕方なかった。でも私は麻雀を憎むことでしか
強くなれないから……だから、私は麻雀が嫌いなんだって思いこもうとしたんだ)
咲「……」ゴッ
111234四五六七九北北
照(咲……張ったか。でも、私も聴牌)
778899⑦⑦⑧⑧⑨⑨西
照(これであとはただのめくり合い。先に引いた方の勝ちだ)
咲「あの頃みたいだね、お姉ちゃん。こうしてお姉ちゃんと打つの」
照「……そうだね。本当に、あの頃みたいだ」
あの頃、私は麻雀が大好きだった。
咲と麻雀を打つのが大好きだった。楽しくて仕方なかった。
ひんやりとした牌の感触。牌がカチャリとなる音。聴牌時の高揚感……全部大切な……大切な宝物だった。
咲と打つと、そのときの感覚を思い出してしまう。私が麻雀を大好きだった頃の感覚を。
でもそれを思い出してしまうと、私の麻雀は崩壊してしまう。麻雀を憎めなくなってしまう。
だから私は、無理矢理に麻雀を憎もうとしたんだ。
――〝麻雀を憎むと心が痛む〟……その理由が、本当に分からないの?――
照(……ああ。今なら分かるよ、淡)
いや、きっと私はもうとっくに分かっていた。気付かないふりをしていたんだ。
だからこそ、あんなにも心が痛んだ。胸が張り裂けそうになった。涙が零れそうになったんだ。
照「……」カチャ
――私のツモ牌。その牌を手にとったとき、私は全てを理解した。
――私は、負けたんだと。
照「…………」
778899⑦⑦⑧⑧⑨⑨西 1索
照「……」
1索。それは誰の和了り牌でもない。……でも、事実上の当たり牌だった。
この1索は咲のカン材。これを切れば、咲はカンして嶺上開花で和了るだろう。
だがこの牌を手牌に入れたまま和了るなんて不可能だ。間違いなく、咲の方が早く和了る。
照「……」
私の支配が完全に行き渡っている状態なら、こんな牌を引くはずがない。私が完全に牌を
跪かせていたら、間違いなくこの巡で、私は私の和了り牌をツモれたはずだ。
つまり今……私の支配は消えてしまったということ。その理由は一つしかない。
――私はあの瞬間、麻雀を憎むことができなかった。
咲と麻雀を打って、気付いてしまった。思い出してしまった。
私はやっぱり、心の底から麻雀を憎むことなんてできないんだと。
……『なぜ麻雀を打つのか』
私がずっと分からなかった答え。ずっと知りたかった答え。それは実はとても簡単で……とても
当たり前のことで。
――私はやっぱり、麻雀が大好きだったんだ。
どれだけ心が痛んでも、それでも私は麻雀が好きだから。やめたくなかったから。
……突き詰めれば、ただそれだけのことだった。
でもそれに気付いてしまったから、私は麻雀を憎むことができなくなった。だから私の支配は
消えてしまった。だから……この牌が来た。この1索が、何よりの証明だった。
照「……お前の勝ちだ、咲」
タン、と1索を河に捨て、私は自らの敗北を受け入れた。
咲「……お姉ちゃん、覚えてる?」
照「……なにを?」
咲「嶺上開花は、お姉ちゃんが教えてくれた役なんだよ」
照「……そう、だったね」
咲「森林限界を超えた山の上にも花が咲く。――でも、どんなに強い種も、一人きりじゃ咲けない。
みんながいたから、私はもう一度麻雀を楽しむことができた」
咲「それに、お姉ちゃんがいたから。お姉ちゃんに会いたいから、私はここまで来ることができた。
その中でたくさんのものをもらった。いろんなことに気づけた。――もっと麻雀が好きになれた。
お姉ちゃんの光が、私をここまで導いてくれたんだ」
照「私の……光」
照「…………」フッ
照「陽に照らされて花は咲く……か」
咲「――カン」
私の1索を鳴き、咲は嶺上牌に手を伸ばす。
全ての支配から解き放たれた、限りなく自由な場所で、咲は大きく花開いた。
咲「……ツモ。嶺上開花」
照「……」
照「ああ……」
照「――やっぱり、咲は強いなぁ」
知らない内に、私の頬を一筋の涙が流れていった。
――その涙はいつか感じたものとは違う、温かな温度だった
咲「……お姉ちゃん」
照「……行って、咲」
照「お前の言いたいことは……もう、全部伝わったから」
咲「……うん」
咲「……お姉ちゃん」
咲「いつかまた、一緒に麻雀を打とう。皆と一緒に」
照「……」
照「――うん」
咲「……」パァ
スタスタスタ……
照「……あーあ……」
照「負けちゃった」
廊下
咲「……」スタスタスタ
咲「……あ」ピタ
淡「……」
咲「淡ちゃん。待ってたの?」
淡「うん……」
淡「……」
淡「……テルに、勝ったの?」
咲「……うん」
淡「そう……そっかぁ……」
淡「テルを最初に倒すのは私だと思ってたんだけどなー」
淡「テルに勝った責任、重いんだからね?」
咲「うん。私はもうプラマイゼロをしない。勝つことから逃げたりしない。それが、お姉ちゃんに勝った
私の責任だと思うから」
淡「分かってればいいんだ。……じゃあ、またね」
咲「うん。――ありがとう、淡ちゃん」
淡「……」ヒラヒラ
照「……」
淡「テル」
照「……淡」
淡「負けたんだって?」
照「……ああ、負けたよ。私は麻雀を憎み切れなかった」
淡「……そう」
照「でも、思い出した。私が麻雀を好きなんだってこと」
淡「そっか」
照「うん」
照「――だから、私の麻雀は……もう終わりだ」
淡「……」
照「憎しみの強さが私の強さ。でも、私はもう麻雀を憎めない。きっと、憎もうとしても憎みきれない。
だから、もう私は強くなれない。以前の私と同じ、平凡で、なんの力もない、牌に嫌われた
ヘボ雀士に戻っちゃった」
淡「テル……」
照「……ごめんね、淡。私はもう、お前の隣を歩けない」
そう……それだけが心残りだった。この子は私が自分よりも弱くなってしまうことを……
宇宙の闇の中で孤独になることを何よりも恐れていた。それこそ、悪夢として夢にみるほどに。
淡「……私はテルにずっと強くいてほしかった。ずっと私の目標でいてほしかった」
淡「咲ちゃんがテルに麻雀の楽しさを思い出させようとしてるのは分かってた。でもそれは
テルが弱くなっちゃうことだって分かってたから、私は……咲ちゃんが失敗しても構わないって思ってたの」
淡「でも大将戦で……テルのあんな顔見ちゃったら、もうだめだった。テルが弱くなることよりも、
テルがあんなに悲しそうに麻雀を打つことのほうがずっと耐えられなかった」
淡「だから……これでよかったんだよ」
照「……ごめん、淡。お前のことをまた独りにしてしまう」
淡「――独りじゃないよ」
照「え?」
淡「言ったでしょ、テル。私はずっとあなたの傍にいるって。何があってもそれは変わらないって。
私は忘れない。テルの強さを。テルが私の憧れだったことを。いつかテルがまた私に追いついて
きてくれるまで、ずっと待ってる」
淡「今までずっとテルに引っ張ってきてもらってたんだもん。今度は私の星の引力が、テルを導く番だよ」
淡「それに、私にはもうライバルがいる。テルと同じくらい強くて、私の隣にいてくれる、私のライバルが」
照「淡……」
淡「だからテル、頑張りなよ。私たちに追いつけるように」
照「……無理だよ。私は牌から嫌われてる。淡たちみたいには、もう強くなれない」
淡「――本当に?」
照「え?」
淡「本当に、牌はテルのことを嫌ってるの?」
照「……そうだよ。ずっと昔からそうだったんだ。どんなに私が麻雀を好きでも、麻雀は
私のことを好きになってくれない」
淡「でも、それでもテルは麻雀を打ち続けたんでしょ? どんなに麻雀を嫌っても、また
好きになったんでしょ? その想いが、いつか牌たちにも届くかもしれない」
照「そんなこと……」
淡「どんなに暗い闇の中でも、自分を導いてくれる人はいる。自分を大切に思ってくれる人はいる。
それを教えてくれたのはテルなんだよ」
淡はそう言って、指を山に這わせた。
そうして、もし咲との試合が続いていれば私が次にツモるはずだった牌を、クルリと回した。
照「―-――ぁ」
――それは西だった。私の和了り牌。もしあと一巡長く試合が続いていれば……勝っていたのは私だった。
もし私の支配が消えていたのなら、全ての牌は咲の味方をする。
こんな牌が私のツモる場所にあるなんて有り得ないことだった。
照「……あ……ぁ」ポロ
なのに、そこにあった。全ての牌が咲に味方する中で、一人ポツンと、私を待ってくれていた。
私を勝たせようとしてくれた牌が。私を愛してくれた牌が……そこにあった。
照「……淡……私は……」ポロポロ
照「わたしも……愛してもらえるのかな……いつか、お前や咲みたいに……牌に……」
淡「うん。きっとそうだよ」ギュッ
淡「もうテルは麻雀を憎まなくていい。心から麻雀を楽しんでいいんだよ。もうテルは……一人じゃない」
照「あ……あぁぁ……」ポロポロ
部員「宮永先輩!」
いつの間にか、大勢の白糸台の麻雀部員たちが雀荘に駆けつけていた。
照「みんな……」
部員A「宮永先輩、優勝おめでとうございます!」
部員B「こんなとこにいたんですか。皆探してましたよ」
部員C「宮永さん、私、私ぃ……!」グスッ
菫「照。ここにいたのか」
照「菫……」
菫「まったく、いつまでたっても戻ってこないから探したんだぞ。こんなところで何やってるんだ」
菫「大星。照を見つけたんなら早く……ん? なんだこれ。おい、まさかここで大星と麻雀を
打ってたんじゃないだろうな。まったくお前たちは……」
照「――菫」
菫「なんだ?」
照「優勝、できたね」
菫「…………ああ、そうだな。だが、やはり私たちはお前の強さの後についていってただけ
なのかもしれない。大星の言う通り」
照「そんなことない」
照「皆がいたから、あの手を和了れたんだ。さっき、それに気づけた。皆がいなかったら私は
咲に負けていた」
菫「照……」
照「だから胸を張って菫。堂々と言おう。私たち皆で優勝しました、って」
菫「……ああ、そうだな」
そうして、皆が私を抱きしめてくれた。菫はうっすらと涙を浮かべて。私は、心から笑って。
――ああ。私は一人じゃない。
こんなにも大切な仲間がいるんだ――
照と部員たち「……」ワイワイガヤガヤ
淡「……」
菫「どうした大星。優勝したっていうのに浮かない顔して。やっぱり、お前には優勝なんて
どうでもいいことか?」
淡「……大将戦を見てから、ずっと分からないことがあったの」
淡「もし私が大将戦に出てたら……きっとあの手は和了れなかった。咲ちゃんが勝ってた。
もしかしたらそれが私とテルの一番大きな力の差なんじゃないかって」
淡「前からずっと疑問だった。どうしてテルは独りじゃないんだろうって。私よりもずっと
強くて、誰も近寄れないくらい高い人なのに、どうしてテルの周りにはいつも人が集まってくるんだろうって」
菫「日頃の態度が違うからだ」
淡「でも、それが私たちの強さなんだと思ってた。テルもそう言ってた。私の強さは孤高の強さなんだって。
だから私は……テルさえいればいいやって。テルもきっと私だけを必要としてくれてるって」
淡「でも……孤高のままだと咲ちゃんには勝てなかった。テルは孤独じゃなかったから咲ちゃんに勝てた。
……この違いは、いったいなんなの?」
菫「……」
菫「誰も太陽には近づけない。お前の星にも手は届かない。……でも、皆が太陽の光を求めてる。
太陽の光が星を輝かせ、花を咲かせ、皆を導いてくれる。だから照は孤独じゃないんだ。自分を
必要としてくれる人がいる限り、あいつの光は消えない」
淡「……」
菫「お前はそこに気付けなかった。……お前は、照に近すぎたんだ。お前は確かに照の強さを……
太陽の熱や大きさを間近に感じ、それに憧れたのかもしれない。でもお前の間違いは、それだけが
照の全てだと思い込んだことだ。近すぎて、照の本当の姿が見えてなかったんだ」
淡「……うん」
淡(そうだ……私はテルの強さにだけ憧れたんじゃない。その光の眩しさや、温かな温もりに
引き寄せられたはずだったのに……私は舞い上がって……私を必要としてくれる人たちを
遠ざけてきた……それが、私とテルの違い……)
淡「……今からでも」
菫「ん?」
淡「今からでも……まだ間に合うかな。私もテルみたいに……皆に必要としてもらえるかな」
淡「今までのこと全部謝って……尭深や誠子にごめんなさいってして……そしたら、皆は許して
くれるかな……私を必要としてくれるかな」
菫「知るか」
淡「っ……」ビクッ
菫「なんだ? 『大丈夫、皆きっと許してくれるさ』とでも言ってもらえると思ってたか?
甘えるな。尭深や誠子がお前を許すかどうかなんてのはあの二人に訊け。私は知らん」
淡「……」
菫「お前は許してもらえなければ謝らないのか? 今までのことを申し訳ないと思うから謝るんじゃないのか?
そんなことも定まってないような中途半端な気持ちで謝るくらいなら止めておけ。迷惑だ」
淡「……私は、皆に謝りたい。今までのこと、全部謝りたい……!」
淡「でも……謝り方、わかんない。今まで誰かに謝ったこと、ないから……」
菫「……にわかには想像できん人生だな。謝り方が分からないなら、誰か適当な人間で練習してみろ」
淡「練習って、どうやって?」
菫「とりあえずお前の目の前に一人、今まで散々失礼なことを言ってきた先輩がいるとは思わないか?
まずはその人に謝ってみるってのはどうだ?」
淡「……」
菫「嫌なら帰るが?」
淡「嫌じゃない! ま、まって! 心の準備が……!」
淡「……」スー
菫「……」
淡「……」ペコリ
淡「今まで……あの、色々……生意気でした。……ごめんなさい」
菫「……」
淡「……」
菫「謝罪の言葉としてはまだまだだな」
淡「うぅ……」
菫「……」フッ
菫「だが、一番必要なものがちゃんとあった。……だから合格だ。許すよ、淡」
淡「ほ、ほんと!」バッ
菫「ああ」
淡「……」パァァ
淡「私、控室に行ってくる! 尭深や誠子に会ってくる!」
菫「ああ、行ってこい」
タッタッタッタ……
菫「やれやれ」
菫「――今度はお前が皆を引っ張る番だ。がんばれよ、淡」
エピローグ
恒子『――さあ、ついにこの時がやってきました!! インターハイ個人戦決勝戦! 真の高校生
最強はいったい誰なのか――!?』
白糸台控室
淡「――よっし。準備万端!」
尭深「頑張ってね淡ちゃん」
誠子「きっと勝てるよ」
淡「うん。タカミやセイコの分まで頑張るからね!」
廊下
淡「よーし、今日は勝つぞー!」ゴッ
菫「はあ……はあ……」
淡「あれ、スミレ、どうしたの?」
菫「ん、ああ、淡か。いや、照を探してるんだが……」
淡「また迷子? 治らないねほんと」
菫「困ったやつだよ」
淡「あ、じゃあ私対局室に行かないといけないから」
菫「ああ。行ってこい」
淡「……」スタスタスタ
菫「……淡」
淡「ん?」ピタ
菫「――相手が誰でも、負けるなよ」
淡「……ふふ。もっちろん!」グッ
淡「――お」
咲「あ、久しぶり、淡ちゃん」
淡「ふふ。準決勝以来だね。今日は負けないよ?」
咲「私だって」
恒子『さあ、決勝戦の選手が揃い始めています! 団体戦を制した白糸台の大型新人、大星淡!
そして清澄高校の同じく一年生、宮永咲! この二人は団体戦準決勝でも一度矛を交えています。
今日はその決着をつけることができるのか――!』
咲「あとは……」
――ツカツカツカ
淡「――来たね」
照「……」ツカツカツカ
恒子『そして個人戦最後の一人はやはりこの人、宮永照――! 高校生最強の打ち手が、やはり
決勝戦に駒を進めてきました――!』
恒子『しかし個人戦が始まってからはかなり苦戦続きというか、ギリギリというか……
以前ほどの迫力は感じられなくなったような気がするんですが、どうでしょう小鍛冶プロ』
健夜『そうですね。確かに団体戦のときよりも力はかなり弱まっていると思います』
恒子『ですよね。結構ムダヅモとかも多くなりましたし、あのギギギーってやつも全然使わなく
なりましたもんね』
健夜『でも、私は今の彼女の麻雀の方が好きですね。とても温かく、優しい麻雀になりました』
恒子『そうですか? 私にはよくわかりませんが』
健夜『彼女の中で、麻雀という概念そのものが変わったのかもしれません。とても……幸せそうに
麻雀を打つようになりました』
恒子『さあついに全ての選手が卓に揃いました! これより個人戦決勝戦を開始いたします!』
淡「ちゃんと決勝まで来れたね、テル」
照「なんとかね。前みたいな力が使えなくなったから、随分苦労したけど」
咲「でも、ちゃんと有効牌をツモれてる。牌がお姉ちゃんのことを好きになってくれてる証拠だよ」
照「……うん、そうだね」
照「……咲。淡」
咲「ん?」
淡「なあに?」
照「……麻雀って、楽しいね」
咲「―-」
咲「――うん!」ニコ
淡「……ふふ」
照「今日は私が挑戦者だ。お手柔らかに頼むよ」ゴォォォオッ!
淡「よく言うよ」ゴォォォオ!
咲「手加減して勝てるなら苦労しないよ」ゴォォォ!!
末原「……」
末原(な、なんか思いもがけず決勝まで来てしまったけど……と、とんでもない所に迷い込んで
しまったんやないやろか)カタカタ
淡「よーーっし! 今日は負けないよ! 皆で一緒に宇宙の闇へGO!」ゴォォォオ!!
咲「させないよ! 嶺上開花でみんなまとめてトばしてあげる!」グオォォォ!!
照「今日ばかりは全力でいく。手加減できないから覚悟してね」ドゴゴォォォオ!!
末原「」
末原(か、勝つんや……優勝するんや……)カタカタ
四人「よろしくお願いします!」
恒子『さあ、個人戦決勝戦、ついに開幕です――!!』
カン!
面白かった!
乙乙!
長丁場ほんとお疲れ
楽しかったよ!
乙
Entry ⇒ 2012.11.04 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (16) | Trackbacks (0)
小鳥「プロデューサーさん!ゴシップですよ、ゴシップ!」
バサッ
P「『独占スクープ!今こそ暴かれる765プロ・真実の姿』……!?」
律子「な、何ですかこれ!?」
小鳥「いつの間にか、ウチが取材を受けた事になっていたみたいで……」
律子「みたいって……プロデューサーは?」
P「い、いや、俺も知らないぞ……」
小鳥「一体、どんな内容が記されているのでしょう……!」ゴクリ
P「あ、あいつら……!」
小鳥「『本誌は、アイドル活動を行う彼女達の裏側とも言える姿のスクープに成功した!』」
小鳥「『まず初めに紹介するのは、765プロの天使と名高い高槻やよいちゃん』」
P「………」
小鳥「『次のページから意外な彼女の一面を、本邦初公開!』」
P「……やよいを呼んでくれ」
律子「わ、分かりました」
やよい「うっうー!何ですかー、プロデューサー?」
P「やよい……これは一体、どういう事なんだ?」
やよい「えっ……?」
P「やよい……取材を受けるなら、俺に一言断ってくれれば」
やよい「ち、違います!私、何にも知りません!」
律子「本当に?」
やよい「し、信じてくださいー!取材とか受けた覚えなんて、全然……」
小鳥「先が気になるんで、見ちゃってもいいですか?」ペラッ
やよい「あっ……!」
律子「こ、これは……」
律子「横でクッキーを頬張ってる春香、と……自販機の前で、うつ伏せになったやよい?」
P「……何やってんだ、これ?」
やよい「う、うぅー……」
小鳥「『どうやら、その下にある硬貨を何とか拾おうとしていたようだ』」
小鳥「『苦戦する事小一時間。ようやくそれを手に取ることができた彼女』」
小鳥「『最後は本誌のカメラに向かい、満面の笑みを浮かべている』……」
P「……やよい……」
やよい「え、えっとー……あの……これは、ですね……」
小鳥「『たった一枚の五十円硬貨の為に、自販機の下に潜り込んだ高槻やよいちゃん』」
小鳥「『彼女の笑顔の裏には、その小さな身に計り知れない苦労を――』」
律子「……ごく最近、プロデューサーに対してやよいのファンからクレームが付いてた理由が分かりました」
P「すまん、やよい……お、俺……!」プルプル
やよい「あ、謝らないでください、プロデューサー!」
小鳥「『繁華街での事件が記憶に新しい、武闘派アイドルの菊地真ちゃん』」
律子「……本人が聞いたら怒るでしょうね」
小鳥「『本誌は、そんな彼女のあられもない姿をスクープする事に成功した』……!?」
P「何……!?」ピクッ
小鳥「あられもない、姿……!」ペラッ
律子「後ろでクッキーを食べてる春香と、首から掛けたタオルで汗を拭いて……」
小鳥「プロデューサーさん!トップレスですよ、トップレス!!」
P「真ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」バンッ
律子「撮られちゃってたんだ、じゃないでしょ!?い、いくら腕で隠れてるとは言え……!」
P「お、おまっ……なんちゅう姿で……」
真「午前中にランニングから帰った後なんですよね、これ。いやー、あの後は暑くって……えへへ」
小鳥「事務所にいるからか、完全に油断しちゃってたみたいですね……」
真「確かに自分の家にいるみたいな感覚は、少し持っちゃってるかも」
律子「気が緩み過ぎでしょう!まったく……」
小鳥「『このようなセクシーショットが撮れた事には、筆者としても僥倖と言い表さざるを得ない』」
真「あ、セクシーショットだって!ボクの写真がセクスィーショットですよ、プロデューサー!」
P「……あ、あぁ」ティン
律子「おい」
P「ち、千早まで……」
小鳥「『クールで孤高、一匹狼な彼女にもまた、別の一面が――』」
千早「わぁーーーーーー!わぁーーーーーーっ!」ババッ
律子「な、何を……!?」
千早「見ちゃダメです!ぜ、絶対に見ちゃダメですから!!」
千早「これは没収!没収です!!」
P「お前……一体、何を撮られたんだ?」
小鳥「千早ちゃん……」
小鳥「実は、もう一冊あったりして」ヒョイ
千早「あっ……!」
小鳥「絶対に見ちゃダメ……と言われると、絶対に見たくなっちゃうのよね~」ペラッ
P「………」
小鳥「鏡の前で、嘲笑している千早ちゃん……」
小鳥「と、横でクッキーをかじりながら千早ちゃんに指示?を出してる春香ちゃん……」
P「……何してたんだ?」
千早「……練習……」プルプル
律子「えっ?」
千早「……笑顔の……練習、です……」プルプル
律子「(え、笑顔……)」
P「(完全にドS丸出しの顔だが……笑顔……)」
小鳥「『友人である天海春香ちゃんの指示を受け、鏡の前で笑顔の練習中なのである』」
小鳥「『クール。それは悪い言い方をしてしまえば、表情に乏しい……』」
小鳥「『彼女はその克服をしようと、まさに努力の真っ最中な姿なのだ』」
律子「千早……あなた……」
千早「ご、ゴシップ記事を真に受けないでくださいっ!」
小鳥「でもさっき、自分で笑顔の練習って……」
千早「あっ……」
P「……千早、一緒に頑張ろう。な?」ポン
千早「………」プルプル
P「は?不思議生物……?」
小鳥「『それは765プロのアイドル、我那覇響ちゃん……だったモノ、である』」
小鳥「『彼女は完全に自我を「ソレ」に奪われており、カメラマンの再三の説得にも応じることは無かった』」
小鳥「『一体、彼女の身に何が起きたのか……問題の写真は、こちら』」ペラッ
律子「写真の前方でウィンクしながらクッキーを咥えてる春香……」
律子「と、掛け布団に丸まって、芋虫みたいに移動してる響……」
小鳥「こ、これって……」
P「……響ー、ちょっとこっち来ーい」
P「………」
P「その布団、今すぐ脱げ」
響「えっ……な、何で……?」モソモソ
P「いいから脱げ!いくら何でも寒がりすぎだ!!」グイ
響「な、何するんさー!……ちょっ!あっ、や、やめて!……うぎゃー!!」グイグイ
P「ゼェ、ゼェ……!」
響「ハァ、ハァ……ぷ、プロデューサーは、自分を殺す気か!?」
律子「死ぬ訳ないでしょーが」
響「だって事務所前の道、ビル風が凄いんだぞ!凍え死ぬかと思ったんだから!!」
P「今度からソレはナシだ!絶対に禁止っ!分かったな!!」
響「えー……じゃあ、今度からいぬ美の世話になるさー」
律子「世話になるって、どういう意味?」
響「いぬ美ってさ、お腹すっごく暖かいからなー」
P「いぬ美に抱きついて通勤もダメだ」
響「……そ、それじゃ、プロデューサーが迎えに来」
P「自分の足で来い」
響「う、うがー……」ガクッ
小鳥「『二人の関係について、筆者も考えを改めざるを得ない、のかもしれない……』」
P「『その衝撃的な一枚が、こちら』……これか」
律子「雪歩の前にいるヘビを見て、貴音が腰を抜かして涙目に……」
小鳥「横で春香ちゃんがそれを神妙な顔で見守りつつ、クッキーにかじりついてますね」
P「……二人を呼んでくれ、律子」
貴音「わたくしと雪歩が、何か……?」
P「あぁ、あのな……」
小鳥「雪歩ちゃんって、スカタチなの?」
雪歩「えっ?」
小鳥「ただ、やるならやるで一言位私に相談して欲しかったなぁって思うのよ、うん」
小鳥「男であるプロデューサーさんには相談しにくくても、私ならそれも一応守備範囲内だから、勿論」
小鳥「と言うか、もし私に相談してくれればこんな事、絶対に公になんてさせなかったわ。知ってたらシチュのセッティングだってしてあげたのに」
小鳥「禁断の嬌宴は誰にも蹴散らされてはいけないものね、他の誰にも。今度からはこの小鳥お姉さんに全部任せてほし……」ブツブツ
貴音「一体小鳥嬢は、何を……?」
P「無視していい。とりあえずこれを見てくれ」パサッ
貴音「こ、これは……」
律子「いつ撮られた写真か、分かる?」
雪歩「えっと……確か、響ちゃんのペットを捕まえた時ですね、これ」
雪歩「はい。目を離した隙に逃げ出したとかで、ちょっとした騒ぎになったんです」
貴音「わたくしの足元に、にょろにょろと……あのおぞましい生き物が、地を這って……!」
貴音「とっさに避けようとしたのですが、足をもつらせ転んでしまい……まさに、絶体絶命でした」
律子「そ、そう……」
P「撮った奴は、見てないのか?」
貴音「あなた様は正気なのですか!?アレにいつ襲われるともしれないのに、他所見など……!」
雪歩「シャッター音は聞こえたんですけど、捕まえるのに必死で、後ろを見る暇はちょっと……」
P「……つーか雪歩、お前ヘビは平気だったのか?」
雪歩「え?平気も何も……可愛いじゃないですか、ヘビ」
律子「えっ」
小鳥「えっ」
貴音「……面妖な」
小鳥「『765プロ随一のお姉さんアイドル、三浦あずささん』」
小鳥「『その絶望に打ちひしがれた彼女の姿を、本誌のカメラマンは見逃さなかった』」
P「……あずささんは?」
律子「えっと……最近、あまり元気が無いみたいで……」
小鳥「絶望って、また大げさな……」ペラッ
P「両手で顔を覆い隠して、うずくまってる……?」
律子「後ろで春香が袋に手を突っ込んでクッキーを取り出そうとしてますね」
小鳥「……あれ?あずささんが乗ってる台って、これ……」
あずさ「……3kg、増えてたんです」フラッ
あずさ「……出来心だったんですよ、最初は」
あずさ「あのプリンが……プリンが、おいしすぎて……」
小鳥「プリン?」
あずさ「あんな……あんなにっ……!」
あずさ「……カロリーが、高かった……なんて……!」プルプル
P「……さ、3kg増えた位じゃ、誰も気にしませんって。あずささんなら大丈夫ですよ」
律子「プロデューサー殿、黙って」
P「えっ」
小鳥「デリカシーってものが無いんですね、プロデューサーさんは」
P「(お、俺、何かマズい事言っちまったか……?)」
小鳥「『水瀬伊織ちゃんも、ここ連日のライブで疲れ果ててしまったようだ』」
小鳥「『そんな彼女の、事務所内での寝姿を激写した』……」
伊織「私が、何ですって?」
P「おう、伊織。お前の寝姿、撮られたらしいぞ」
伊織「はぁ!?……ち、ちょっと何よそれ!見せなさいよ!」バッ
小鳥「あっ、ちょ……」
伊織「一体誰に許可をもらって、そんな事……!」パラッ
伊織「」
P「右手の親指を、咥えてるな」
小鳥「か、可愛い……」プルプル
伊織「~~~~~~~ッッッ!!!」
ポパピプペ
伊織「し、しし、し、し新堂ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
『はい、お嬢様』
伊織「こ、こ、こここの雑誌っ!!写真……っ!!!」
『えぇ、ご安心を。お嬢様の写ったネガは全て、お父上様が押収なさいました』
伊織「お、遅っ……遅過ぎるわよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
律子「そ、そうよ。これは無意識なんだから……」
小鳥「こ、この雑誌だってホラ!伊織ちゃんのこと、メチャクチャ褒め殺してるじゃない」
伊織「………」グスッ
P「……だがな、子どもの頃からの癖は、そろそろ直した方が」
伊織「…」ゲシゲシ
P「い、いってぇ!いだだだだだだ!……こ、こらっ!やめろ伊織!」
小鳥「ホント、デリカシーが微塵も無いんですね、プロデューサーさん」
小鳥「『身内でも甘えは許されない……そんな日常の一コマを切り抜いてみた』」
小鳥「『筆者が思うに、この秋月律子氏こそ、まさに765プロのオカンではなかろうか』」
P「お、オカン……」プルプル
律子「………」イラッ
小鳥「どんな写真なんでしょうかねー」パラッ
P「あー……美希を叱責してる最中か、これは」
小鳥「美希ちゃんの横で春香ちゃんが、律子さんをなだめようとしてますね」
P「クッキーのカスが口元に付いてるな……」
律子「お、鬼じゃありません!」
律子「……あの子、まただらしなくソファーで寝てたもんですから。ちょっと注意しただけです」
P「美希、真相は?」
美希「ミキが勝手に律子、さんの分のクッキーまで食べちゃったから。それで怒ったの」
律子「み、美希、あなたいつの間に……!」
小鳥「なるほど~」
律子「ち、違っ……」
美希「皆がおいしーおいしーって言ってるのに、まだ仕事中だからって断ったから……」
律子「た、食べないとは言ってないじゃないっ!まだ一口も食べてなかったのよ!?」
P「ハハハハハ、律子は食い意地張ってるかr」
律子「………」ギロッ
P「………」
小鳥「全くです」
P「事務所だからって、自分の家みたいにくつろいで良い訳じゃありませんよね」キリッ
小鳥「そうですよ。これからは、気を引き締めていかないといけません」キリッ
律子「(じ、自分達には焦点が当たらないと思って……!)」
美希「ところで三人とも、何読んでたの?」
律子「今週発売のゴシップ誌。いつの間にかすっぱ抜かれてたのよ」
美希「ふーん……ミキも見ていい?」パラパラ
小鳥「あっ……!」
美希「『日々仕事に追われる彼らは、いかにしてストレスを発散しているのか……』」
美希「『その発散法の一部とも言える光景を、本誌のカメラマンは見事激写した』」
律子「……へぇ?」
小鳥「わ、私は、真面目にお仕事してますから!やましい事なんて、何も……」
P「俺も心当たりはまったく……」
美希「じゃ、めくってみるね」パラッ
P「………」
小鳥「………」
律子「会議室のプロジェクターを繋いで、大画面で二人仲良く格ゲーですか?」
美希「小鳥、ガッツポーズしてる~」
小鳥「そ、それを言い出したのはプロデューサーさんの方でしょう!?」
律子「ごく最近、意味不明なクレームがよく来てたんですよね~」
美希「どんな?」
律子「リア充爆発しろだの、事務員さんのゲーマータグを教えてくれだの」
小鳥「………」
律子「……全部、コレの事だったんですね」
P「………」
P「そ、それが、どうしたって言うんだ?」
美希「あ、開き直っちゃうんだ」
律子「………」イラッ
美希「『この使用キャラは落書きを使った攻撃を行う5歳の幼稚園児で、右の男性は恐らくロリコン……』」
P「ち、違うっ!それは断じて違うぞ!!」バンッ
P「俺の使用キャラは『カズ兄ちゃん』だ!!えこちゃんではないっ!!!」
律子「えこちゃんて……」
美希「『左の事務員の使用キャラは、このゲームでは屈指の弱キャラで……』」
小鳥「じゃ、弱キャラじゃないもん!目押しとか、ちょっと操作が複雑なだけです!!」バンッ
小鳥「そもそも私が使えばプロデューサーさん相手でもボコボコに出来ますから!でしょう!?」
P「実際圧勝でしたよね」
小鳥「ほらぁー!弱体化された?やる事が少なくなった?」
小鳥「その程度で中国拳法ロボ舐めんなやぁー!!」
律子「そういう問題じゃありませんっ!!!」バンッ
小鳥「ひっ」ビクッ
P「……ハイ」
小鳥「……ですね」
律子「………」
P「それにしても一体誰が、こんな写真を……」
小鳥「……美希ちゃん、特集はそれで終わり?」
美希「うん。あとは、最後に……」
美希「『――本誌の取材に協力してくれたアイドルの双海姉妹には、心より感謝を』って書いてあるね」
小鳥「………」
律子「………」
亜美「律っちゃーん、それって今週発売の奴?」
真美「んっふっふ~、真美達カッチョ良く載ってたっしょ~?」
律子「……あんた達が撮影して回ったわけ?」
亜美「使い捨てカメラでいいからって、記者のおっちゃんに頼まれちゃってね~」
真美「で、真美達ちゃんと載ってた?」
律子「……特集の最後に、肩を並べて仲良さげに写ってたわね」
亜美「え?……あの一枚だけ?」
真美「ま、まさかそんな~」パラパラ
真美「だ、騙されたぁー!!」
小鳥「……一体、どんなのを載せるつもりだったの?」
亜美「そりゃ、真美がアイドル活動しながら真面目に勉強してるフリをしてるトコとか~」
真美「亜美が必死にダンスのレッスンを受けるフリをしてるトコとかね」
律子「………」
真美「カメラアングルとか、あんなに苦労していっぱい撮ったのにね……」
亜美「亜美達のが載ったのはたったの一枚だよ、一枚!この仕打ちは無いよね~」
真美「もうマジありえないよね~これは」ウンウン
P「あり得んのはお前達の方じゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」バンッ
真美「だ、だって、できるだけ日常の自然な姿を撮ってほしいって言われたし……」
小鳥「一体誰に許可を得てそんな事を……」
亜美「お、おっちゃんは、社長に取材の許可もらってるからって言ってたもん!」
律子「ウソおっしゃい!」
真美「ほ、ホントだよ~!ウソじゃないよ~!」
P「あのなぁ……それがウソでなくてもだな、お前達はまんまとその記者に騙され」
高木「いいや、それは違う」
P「……は?」
律子「え?」
高木「亜美君達の言う通り、私が事前に許可を出した」
小鳥「えぇっ!?」
高木「TVの前に立たない時の彼女達の、自然な姿を見たいという要望は、以前からあったものでね」
高木「君達には悪いが、抜き打ちで取材させていただいたよ」
小鳥「社長が知ってるって事は……」
P「提供する写真も、把握済みだったって訳ですか!?」
高木「そういう事だ。もっとも、君達の思惑に反して、評判はなかなか良いようだがね」
高木「……あぁ、そうだ。君と音無君は、後で社長室まで来なさい」
小鳥「えっ?」
高木「会議室の件で、少し話がある」ニコッ
律子「……お疲れ様でした」
小鳥「コッテリ、絞られちゃいましたね……」グッタリ
P「俺達はネタとして面白いから載せたって……そりゃ無いでしょ、社長……」グッタリ
春香「プロデューサーさんに、小鳥さん?……元気、ないみたいですね」
P「……あぁ、春香か」
春香「そんな時は、これ!私のクッキーを食べて、元気になりましょう!」スッ
P「ん?あぁ、すまないな……」モグモグ
P「………」
春香「?……どうしました?」
春香「!?」
グニュッ
春香「はぅあっ!」
P「おい、春香。何だ、この脇腹は」プニュプニュ
春香「い、いきなり何するんで……ひゃぁっ!!」
P「……太ったな?」
春香「……のヮの」
P「不二家のマスコットみたいな顔してもダメだ!」
春香「わ、私ペコちゃんじゃありません!」
律子「食べてましたね。どの写真でも」
P「お前、最近自前のクッキーを食ってばっかりだったろ」
春香「な、何で知ってるんですか!?」
P「………」
春香「え、えぇっと……」
春香「ほ、ほら!食欲の秋って言うじゃないですか~」
P「グルメリポーターにでもなるつもりか!?」
P「あずささんはなぁ、3kg増でショック受けてるんだぞ!3kg増でだ!」
あずさ「」グサッ
P「まったく、春香がそんな事でどうす……」
小鳥「ち、ちょっと!声が大きいですよ、プロデューサーさん!」
春香「えっ?……が、ガリ子ちゃん?」
小鳥「あぁ、あのガリガリ君の……」
春香「そ、そこまで酷くないですよっ!私だって、ちゃんとペースを考えて……」
P「ペース考えるまでもなく間食禁止。もう太ももグニョグニョじゃねぇか」プニプニ
春香「うひゃぁ!?ど、どこ触ってるんですか、もー!!」
P「……という訳で、明日から真と一緒に、午前中からランニングな。響もだ」
春香「うぅ……」
響「な、何で自分も!?」
亜美「ちょっ!?な、何勝手に決めてんのさー!」
P「じゃあついでに真美も入れとくか」
真美「つ、ついでにって、そりゃないぜ兄ちゃん!ってゆーかこれ絶対八つ当たりっしょ!?」
P「お前達は写真を捏造未遂したろうが!……監督役で俺も付いてくから、それで我慢しろ」
あずさ「頑張ります」
P「あっ、あずささんは、別に強制ではないので……」
あずさ「頑張ります」
P「………」
あずさ「………」グッ
「あっしの拙い記事が励みになるなんて、とても思えませんけどねぇ」
高木『今回はご苦労様でした。今度は、またいつ頼むか分かりませんが……』
「ただのヨイショ記事ならともかく……あんな内容で良ければ、いつでも構いやせんよ?」
「何たって、765プロさんはウチのお得意様、ですからねぇ……へっへっへ」
「えぇ……えぇ。では、今後ともごひいきに……」ピッ
「さぁて、と……お次のネタは……」
悪徳「……秋葉のフィギュアショップに、あの天ヶ瀬冬馬がねぇ」
悪徳「こいつぁ、面白ぇ事になりそうだ……へへっ」
おわり
おもしろかった。
乙
Entry ⇒ 2012.11.03 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (6) | Trackbacks (0)