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憧「お見合いしなきゃいけないんだ…」穏乃「え…?」
憧「う、うん…」
穏乃「だ、だって私たちまだ16歳だぞ!?」
憧「でも、結婚できる年齢でしょ?」
穏乃「そうだけど…でも」ブツブツ
憧「うちも一応神社だしねーいろいろあるんだよ」
穏乃「でもやっぱり憧には早いって!」
穏乃「う、うるさい!びっくりしただけだって!」アセッ
憧「ふふ、じゃあそういうことにしといてあげる」
穏乃「くぅ…なんか悔しいなぁ」
憧「でね、その相手なんだけど」
穏乃「そ、そうだよ!誰なの!?地元の人?」
憧「ううん、違うのえっと…確か2つ年上だから高3の>>18さん」
憧「えっとね、鹿児島にある神社の巫女さんなの」
穏乃「か、鹿児島!?なんでそんな遠くの人とお見合いなの!?」
憧「もうシズ声がでかいって」
穏乃「うぅ、ごめん」シュン
憧「なんかお父さんの知り合いがどうのって詳しいことは知らないけどさ」
穏乃「そ、そうなんだ…どんな人?」
憧「あ、インハイ出てたよ?」
穏乃「うそ!?そんな名前の人いたっけ…?」
穏乃「永水…?そんなのいたっけ?」
憧「もう、シズは清澄しか見てないんだからー」
穏乃「ご、ごめん」
憧「清澄で、和の友達の宮永咲さんと戦ったんだ、霞ちゃんは大将だから」
穏乃「え、え!?か、霞ちゃんって呼んでるのか!?」
憧「ん、インハイの会場で一度だけ会ったしねー」
穏乃「ぜ、全然知らなかった…」
憧「ごめん、シズ…ちょっと言いづらくてさ」
穏乃「じゃあ、永水ってとこが勝ってたら私と戦ってたかもしれないんだ?」
憧「そだねー」
憧「小さいときに1回会ってるって霞ちゃんは言ってたけど
あたしは全然覚えてないんだよねー、で、この間が2回目なのかな?」
穏乃「そうなんだ…ひょっとしてお見合いというより許婚なのか?」
憧「それに近いんだろうけど、一応体裁はお見合いなんだってさー」
穏乃「てかどんな人なんだ?」
憧「んー、おっぱい」
穏乃「はぁ?」
憧「だから、おっぱいだよ」
穏乃「憧、全然わからない」
憧「おっぱいさんなの、めっちゃ大きいよ~」
穏乃「な、なんだよそれ!そういうことじゃなくてさ!」
結婚したらあれを独り占めできると思うと…ぐふふ」
穏乃「憧、顔が気持ち悪いよ」
憧「ごめーん」
穏乃「(お、おっぱいの大きいお姉さんか…くそ、それは絶対勝てない!
何か勝てることはないかな?あ、麻雀!)」
穏乃「(私たちは決勝まで行ったんだし、永水は二回戦敗退!
なら、私にも勝てることが…!!)」
憧「でねでね、おっぱい大きいでしょ、それからすっごい優しくてね」
穏乃「う、うん…あ、あのさ憧…その人って麻雀強いの?」
憧「え?当たり前じゃん、シズはもう全然知らないんだね」
穏乃「ん?」
憧「永水は去年の決勝進出校だし、霞ちゃんはそこの大将だよ?
今回はたまたま相手が悪かったんだって!」
穏乃「(で、でも!今年は阿知賀の方が強かったんだ!)」
憧「あたし、永水と阿知賀が試合したら負ける気がするなぁ」
穏乃「な、なに言ってんだよ!」
憧「霞ちゃんほんとやばいもん、シズもやられちゃうかも」クスクス
穏乃「」
憧「あ、でもさ…」
穏乃「な、なんだよ?」
憧「…霞ちゃんはいい人だし、嫌いじゃないけどさ」
穏乃「ん?」
憧「お見合いなんか、したいはずないよ」
憧「いや、まあ…シズが面白い反応だから遊んだだけだよ~」
穏乃「な、なんだよもう」ブツブツ
憧「てか冷静に考えてよ。なんでこの年でお見合い?」
穏乃「お前が16歳は結婚できるって言ったんじゃないかー」
憧「そうだけどさ、普通は嫌でしょ?」
穏乃「ま、そうだね」
憧「なんて、あの頑固なお父さんには言えないからね~」
穏乃「なんだ、憧やっぱり嫌なんじゃん…」
穏乃「(なんだかホっとしてる…この感情はなんだろ?)」
穏乃「じゃあ、素直にそう言った方がいいんじゃないか?」
憧「無駄無駄、お姉ちゃんやお母さんも乗り気だしね」
穏乃「け、けど」
憧「シズありがと。嬉しいよ、でも仕方ないんだ。」
憧「それに霞ちゃんはさっきも言ったけど超いい人で優しいしんだ。
断ったりしたら可哀想でしょ?」
穏乃「そういう問題かなぁ…」
憧「ま、別にお見合い=結婚じゃないしね~」
穏乃「それはそうかもしれないけど…」
憧「シズどしたの?あたしがお見合いしちゃいけない?」
穏乃「……」
憧「シズ?」
憧「な、なに!?」
穏乃「憧!そんな、可哀想とかそんな理由で会うほうが可哀想だよ!」
憧「でも…」ブツブツ
穏乃「お見合いの前に1回会ってるのに、なのに憧は
お見合いしたくないって言ってるじゃん!」
穏乃「ってことはやっぱ嫌なんだよ!嫌なことを無理にすることないじゃん!」
憧「あのねシズ、嫌なことを避けてばかりもいられないんだよ?」
穏乃「そ、そうかも、…しれないけど!でも!」
憧「それにこれは私だけの問題じゃないんだよ?
うちの神社にも関わることだし…お見合いしたくない、嫌だ」
憧「なんて言って破談に出来ることじゃないんだ。
さすがにシズもそのことはわかってくれるよね?」
憧「じゃあなに?」
穏乃「大人の都合とかそんなの全然わかんないけど!
でもお見合いするのは誰だよ!?憧だろ!?」
憧「…そうだよ」
穏乃「その憧がしたくないってことはしたくないでいいじゃん!
嫌なら嫌って言えよ!そんなとこで大人ぶるなって!」
憧「…シズ」
穏乃「…って言ってるけどさ、」
憧「ん?」
穏乃「違うんだ、憧ばっか責めるようなこといってごめん…」
憧「なにが違うの?」
憧「なによぉ、シズ?」
穏乃「わ、私が…その」
憧「ん?」
穏乃「私が憧にお見合いなんかして欲しくないんだよ!」
憧「し、シズっ//」
穏乃「…って思った、ごめん」
憧「そ、それはなんでか教えてくれる…?」
穏乃「…いや、それはわかんないけど…でも、嫌なんだよ!」
憧「もう、…そんな子どもみたいな理屈で…」ハァ
穏乃「じゃ、じゃあお見合いしない?」
憧「ん~…まあ、会うだけ会おうかな」
穏乃「そ、そか…」
憧「そんな顔しないでよシズ…」
穏乃「…ま、まあ優しい人なんだろ?ならいいじゃん!」
憧「そうやって無理にテンション上げなくていいのにぃ」ツンツン
穏乃「う、うるさいなぁもう//」
憧「シズ、ねぇ」
穏乃「ん?」
憧「シズもお見合いに同席する?」
憧「いいじゃん、親戚~とか言って隣にいれば?」
穏乃「そ、そんなことできるわけないだろ?」
憧「いけるいける、たぶん」
穏乃「そ、そうかな…無理だと思うんだけど…」
憧「シズなら多分大丈夫だよ?」
穏乃「…憧のその自信はなんだよもう」
憧「あ、じゃあ決まりね!」
穏乃「ほ、ほんとにいいのか?」
憧「いいのいいの!」
どっかのホテルの料亭
穏乃「ほ、ほんとによかったんですか?」
望「いいのよ、穏乃ちゃんなら全然」
憧母「憧もそのほうが緊張ほぐれていいわよね?」
憧父「穏乃ちゃん、憧をフォローしてやってくれ」
憧「ね?シズ、平気でしょ?」
穏乃「あ、うん…(なんか釈然としないけどまあいいや)」
霞「あ、憧ちゃん久しぶりね、ふふ」
憧「霞ちゃん!ってあれ?その方は…?」
霞「あぁ、この子は>>102ちゃんよ」
(永水じゃなくても、誰でもいいです。ただできればある程度キャラのハッキリする人)
初美「薄墨初美ですよー」
憧「え、でもどうして?」
霞「私が奈良にお見合いに行くって聞いて
どうしても一緒に来たいって言うものだから…」
霞「ごめんなさいね、こんな場面に…」
憧「い、いえ!私にも付き添いというか…」
穏乃「ど、ども…憧の親戚です」
穏乃「(ってかほんとにすんごいおっぱい!…くぅ、完敗だぁ…)」
穏乃「(え、てか…高校3年生?ほんとかな?)」
憧「あ、あはは//」
穏乃「(憧のヤツ照れてる…)」
初美「むむ、なんだか同じ匂いがするのですよー」
穏乃「お、同じ匂いですか?え、な、なんのことだろ?」クンクン
初美「内緒ですよー」
霞側の大人「さて、一応お見合いという体を成すために挨拶からはじめたいと思います。」
憧父「あぁ、そうだな。はじめよう」
憧「(くぅ…霞ちゃんとはすでに打ち解けているものの
大人がたくさんいて妙に緊張してきた…)」
穏乃「(憧…大丈夫だよ、私がついてる)」テーブルの下で手をつなぐ
憧「(シズ…)」
よろしくお願いします」
穏乃「(ほ、ほんとに高3なんだ…)」
初美「(この人なんか失礼なこと考えてる気がするですよー)」クスクス
初美「(しっかし、この相手の子はなんか派手ですねー)」
初美「(…霞さんには似合わないですよー)」
憧「あ、えっと、新子憧、16歳、阿知賀女子1年です
よ、よろしくお願いします…」
穏乃「(憧がキョドってる…よっぽど緊張してるな)」
ちょっと時間が経って・・・
霞側の大人「はっははーそうですなぁ」
憧父「ははは、ええ、そうですそうです」
憧母「ふふ、お二人とも、主役はこの二人でしてよ?」
霞側の大人「じゃあ、そろそろ若いものに任せますか」
憧母「憧、上手くやるのよ…あ、穏乃ちゃんも一緒に来て?」
穏乃「え!?あ、はい…」
憧「シズ、あの、あとでね」
穏乃「う、うん…憧、頑張って」
霞側の大人「初美、君も一緒に出なさい」
初美「うぅ…」
霞「はっちゃん、行って?」
初美「あ、あとでまた来ますねー」
霞「うふふ、はいはい。あとでね」
憧「か、霞ちゃんあのっ」
霞「あのね、憧ちゃん…ほんとは来たくなかったんでしょ?」
憧「そ、そんなことないよ?」
霞「見てればわかるもの、あの、親戚の子?あれはチームメイトでしょ?」
憧「あぁ…ごめんなさい」
霞「もう、私もチームメイトを連れてきているんだからそれはいいのよ」
憧「そうだったね、そういえば…」
霞「憧ちゃんは大人でいい子だから断れなかったのよね?」
憧「う、ううん。違う、霞ちゃんに会いたかっただけ」
霞「もう、強がらないの」
憧「で、でも!…家こととか考えたら…」
霞「ふふ、そうねぇ。まあ大変なことになるかもしれないわねぇ」
憧「霞ちゃんはこれでいいの?」
霞「まあ、憧ちゃんは可愛いしお嫁さんにはぴったりだし
悪くはないわね…でも、」
憧「でも?」
霞「でも、憧ちゃんには好きな人がいるものね」
憧「えっ、いや、いないから!」
霞「そうかしら?…あのね、憧ちゃん断りなさい。このお見合い」
憧「えっ?」
憧「でもっ、いいのかな…てか断れるかな?」
霞「こっちはなんとかするから、憧ちゃんは家族を説得すればいいのよ」
憧「どうかな…家族はすごく乗り気なんだ」
霞「そう、困ったわねぇ…でも、それは憧ちゃんの頑張り次第ね」
憧「そうだけど、難しいよ」
霞「ならもう好きな人がいるって言ってしまえばいいのよ」
憧「だ、だから!好きな人とかいないし!」
霞「うふふ、あくまで突っ張るのねぇ」
霞「まあ、とりあえず大人の顔を立てるという意味でお見合い開催はしたのだから
私たちに進展がなくても問題ないと思うわ…そうでしょ?」
霞「ええ、そうしたほうがいいわ」
憧「てか、お見合いしてるのに二人で破談の相談なんてあれだね」
霞「そうねぇ、でもいいのよ。お互い納得しているんだから」
憧「そっか、そうだよね」
憧「ねぇ、そういえばなんとなくなんだけど」
霞「なぁに?」
憧「…霞ちゃんって結婚相手っていうよりは」
霞「なにかしら?」
憧「いや、やっぱ言わない」
霞「なによぉ、気になるでしょ?」
憧「…お、お母さんっぽい」ボソッ
穏乃「やっぱり二人きりになりますよね」
初美「ですねー」
穏乃「(憧大丈夫かな?心配だなぁ)」ウズウズ
初美「(霞さん大丈夫ですかねー?あの派手な子に
いいようにやられたりしてないですかねー?心配ですよー)」ウズウズ
穏乃「はぁ」
初美「はぁ」
初美「なんですかー?」
穏乃「石戸さんってどんな人なんですかね?」
初美「霞さんは大人ですよー落ち着いてるのですよー」
穏乃「ふむふむ」
初美「ちょっとお母さ「はっちゃん!」
霞「二人とも、入りなさい」
初美「き、聞かれてたですかー!?」
憧「で、…まあ、そうなったわけよ」
穏乃「じゃ、じゃあこのお見合いは破談ってこと?」
憧「お父さんが納得したらね」
穏乃「ほら、やっぱりお父さんにちゃんと言うべきだったんだよ!」
憧「それは今日霞ちゃんに会ったから言えることでしょ!」
穏乃「そ、それはそうだけど!でも!」
憧「はいはい、シズありがとう」
穏乃「う、うん…あの、説得は手伝うからさ」ボソッ
憧「助かる…」
霞「(うふふ、仲良しさんは見ていて癒されるわねぇ)」
霞「(しかし意外と大変そうね、私側の大人を説得するのは…)」
霞「(まあでも、憧ちゃんはもうお嫁さん候補から外したし
次を考えようかしらねぇ)」
霞「そうかしら?とってもマジメそうないい子よ?」
初美「うぅ」
霞「はっちゃん、言いたいことがあるならはっきり言わないと」」
初美「い、今は言わないですよー」
霞「じゃあ、またあとで聞かせてね?」
初美「か、霞さん次第かもです」
霞「私?そう、何をしたらいいのかしらねぇ」ニコニコ
初美「さ、さぁ…自分で考えてくださーい」
霞「うふふ、もう、素直じゃない子ねぇ」ナデナデ
初美「う、うぅ//」
憧「ふぅ、お父さんもほんと頑固だわー」
穏乃「でも、ちょっと前進だって」
憧「私の幸せを本気で考えてよってやつ?」
穏乃「そうそう、それ言われてお父さんが一瞬黙ったじゃん」
憧「まあ、前進だったらいいけどさー」
穏乃「あのさ、憧…」
憧「んー?」
穏乃「私さ、憧が見合いするっていう話を聞いてから
実際お見合いしてさ、そこに同席させてもらってさ、」
穏乃「それで…ここ何日かは憧のお父さんを説得したりしてるでしょ?」
憧「うん…」
穏乃「でね、だから、いや、それで、」
憧「シズ、ちょっと落ち着いて」
憧「いいよ、言って」
穏乃「…うん、でね、思ったことがあって」
穏乃「いや、多分ずっと思ってたんだよ」
穏乃「でも、それが自分の中でよくわかってなかったんだ」
憧「うぅ…ちょっと待って」
穏乃「な、なんだよ?いいとこじゃん」
憧「それ、あたしが言いたいんだけど」
穏乃「だ、だめだよ。私が言うから憧は聞いてて」
憧「はいはい、わかったよ(霞ちゃん、私、素直になるよ…)」
穏乃「憧…私は、憧が好きだよ!」
穏乃「今思えば憧のお見合いとか超嫌だった!
なんで嫌なんだろ?って考えたら…」
穏乃「た、確かに石戸さんって人いい人だったけど!」
穏乃「憧があの人と付き合うとか結婚とかそんなの!
そんなの絶対嫌だよ!ダメなんだよ!」
穏乃「…憧、…憧が大好き」
憧「う、うぅっ」グス」
憧「う、嬉しいよぉシズぅ」抱きつく
穏乃「わ、わぁっ」抱きしめる
憧「あたしもシズが好き…ずっとそう言って欲しかった
好きだから、お見合いなんかするなって言って欲しかったのっ!」
穏乃「ご、ごめん…私が鈍くて…」
霞ちゃんがそう言えばいいのにって言ってたんだ」
憧「そんなの…シズはそんな気がないのにそんなことできないって
そう思って…お父さんにはほんとのことは何も言えてなかった」
穏乃「…じゃあ、そのことを憧のお父さんに話そうよ」
憧「うん、シズ…そばにいてくれるよね?」
穏乃「当たり前じゃん!憧のためならなんでもする!」
憧「じゃあ、もう一度お父さんに言いに行こう?」
穏乃「うん!」手をつなぐ
憧「し、シズ//恥ずかしいよ//」
穏乃「そだね…今までもつないでたのにね…//」
穏乃「一緒に怒られるから大丈夫だよ、憧」
憧「シズ…あんたどこまでも優しいのね」
穏乃「憧にだけだよ、ほんと」
憧「ば、ばかシズ//」
穏乃「照れて言っても可愛いだけだよ?」
憧「う、うるさいなぁもう//」
穏乃「…ねぇ、憧?」
憧「ん?」
穏乃「お父さんに怒られに行く前にさ…」
憧「もったいぶらないでよー」
穏乃「うー…んー…」
チュッ
憧「あ、あわわ…へ?え?///」
穏乃「ご、ごめん…つい」
憧「…はじめてのキスだったのに」
穏乃「私もだよ?」
憧「もう!もっとこう、…ロマンチックなのがよかったの!」
穏乃「私たちにそんなん似合わないってー」
憧「そ、それはその…そうかもしれないけど…」
憧「う、うん…絶対しない」
穏乃「てか、必要ないよ」
憧「ん?」
穏乃「…だ、だってその、憧は…ずっと私と一緒なんだからさ//」
憧「シズ…だ、だからそういうのはもっとロマンチックに!」
穏乃「ご、ごめ~ん!!
カン
初美「大人の都合はどうなったですかー?」
霞「うふふ、もう万事解決よ」
初美「さすがですねー」
霞「憧ちゃんは可愛くていい子だったから惜しいと言えば惜しいけどね」
初美「うぅ、派手っぽくて私は苦手ですよー」
霞「もうまたそんなこと言って」
初美「そもそもなんでお見合いなんかになったですかー?」
霞「憧ちゃんのお父様がどうとか聞いたけれど
詳しいことはわからないわ」
初美「そうですかー」
霞「小さい頃に会った憧ちゃんはそれはそれは可愛い子だったわ
将来お見合いする相手なんて思ってもみなかったけどねぇ」
初美「(…さっきから可愛い可愛いって…ちょっと面白くないですよー)」
霞「可愛いわよ、だって年下だもの」
初美「お、同い年だったら可愛くないですか?」
霞「あら、そんなことないわ。はっちゃんは可愛いもの」ナデナデ
初美「か、可愛いの意味が違う気がするですよー//」
霞「ところではっちゃん、お見合いのときに言っていたことは
いったいどうなったかしら?」
初美「へっ?なにかあったですかー?」
霞「もう忘れないで、何か私に言いたいことあったでしょう?」
初美「さ、さぁ?」
霞「今はいえないって言っていたからそろそろ言ってくれるかなって待ってるのに」
霞「…ほら、言いなさい」
初美「うぅ」
霞「怒らないから、ね?」
初美「…やっぱりお母さ
霞「はっちゃん、早く言いなさい…で、誰がお母さんですって?」
初美「な、何も言ってないですよー」
霞「…もう、素直にならない子ねぇ」
初美「霞さん、あの、…」
霞「なぁに?」
初美「…お見合いとかもうしないでくださいって言おうと思ってたですよー…」
霞「それはどうしてかしら?」
霞「私がお見合いするって聞いてそう感じたの?」
初美「うぅ、そうですよー…//」
霞「うふふ、なんて嬉しいことを言ってくれるのかしらねぇ」ナデナデ
初美「こ、子ども扱いは止めて欲しい…かな、なんて//」
霞「そうね、ごめんなさい…それで、ざわざわっとした理由はわかった?」
初美「うーん…たぶん」
霞「じゃあ、それを教えてくれる?」
初美「…面白くなかったんですよー…霞さんのお見合いなんて。
だから絶対付いて行ってやろうって思ったです」
霞「うん」
初美「…で、そ、その…(うぅ、覚悟決めなきゃいけないですね…)」
霞「そうね、そういう漠然とした気持ちを言い表すのも
受け入れるのもなかなか難しいものよね」
霞「でもね、一度口に出してみると『あぁ、そういうだったんだ』なんて
自分の気持ちを確かめることも出来るのよ。さあ、言ってみて」
初美「あー…ほんとに怒らないですかー?」
霞「あのねはっちゃん、しつこいわよ?」
初美「う、うぅ」
霞「ほら」
初美「え、っと…その、お母さんが再婚して寂しいみたいな気持ちになったですよー」
霞「」
おしまい
いや、なんていうか、ごめんw
てか鬼畜代行された割にはちゃんと書いただろ?だから許してください
支援や感想ありがとです、シズアコは初めて書いたけど楽しかったです
じゃあまたどこかの鬼畜代行スレでお会いしましょう、おやすみー
乙乙
おい
はっちゃんは自分から地雷を踏みに行くのか・・・
Entry ⇒ 2012.10.07 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
クッパ「ガッハッハ、珍しいカメだな」宇水「何が可笑しい!!!」
宇水(……どこだ、ここは?)
宇水(いよいよ国盗りが始まるというから)
宇水(私は琉球から京都に向かっていたはずなのだが……)
宇水(どういうわけか、いつの間にやら)
宇水(周囲から聞こえてくる音という音が、聞き慣れぬものばかりになってしまった)
宇水(私はちゃんと京都に向かえているのか?)
宇水(いや、そもそもここは日本なのか……?)
宇水(む、足音が聞こえる)
宇水(二足歩行……身長はかなり低い……人間ではない?)
宇水(背中にティンベー、じゃない甲羅を背負っている?)
宇水(亀か? いや亀は二足歩行はしないはずだが……)
ノコノコ「なんだ、お前は」
宇水(しゃべれるのか!?)
宇水(これまでに私が得た情報をまとめると、目の前にいるのは──)
宇水(二足歩行の、人の言葉をしゃべる、亀!?)
宇水(わけが分からん!)
ノコノコ「はっはーん、もしかしてお前、クッパ様の軍団に入れてもらいに来たんだろ」
ノコノコ「いいぜ、俺がクッパ城まで連れてってやるよ」
宇水(心拍数や挙動からは、緊張や敵意は感じられんな)
宇水(これが亀だとして、私のティンベーを見て、仲間だと勘違いしたか?)
宇水(こいつからは全く強さを感じられん、殺そうと思えば簡単に殺れるだろうが)
宇水(自分がどこにいるかも分からん以上、今は情報を集めるべきだろう)
宇水(いざとなれば、クッパとかいう首領格を殺してしまえばいい)
宇水(心眼を会得した私にとって、その程度はたやすいことだ……)
宇水「よかろう、連れていってもらおうか」ニィッ
ノコノコ「カメック様」
カメック「どうした?」
ノコノコ「クッパ軍団に入りたいというカメがいるので、連れてきました」
ノコノコ「なんでも名前をウスイ、というそうです」
カメック「ほう?」
カメック(ウスイ? 聞いたことがない名前だな……)
宇水「音の反響具合からして石造りか、なかなか立派な城だな」ズイッ
カメック(な、なんだコイツは!?)ゾクッ
カメック(全身にいっぱい目があるカメなど、初めて見た!)
宇水(この新手の亀は、私の恐ろしさに気付いたようだな)
宇水「クックック、お前のような三下に用はない」
宇水「我が心眼の前では、隠しごとは不可能」
宇水「私には貴様が“怯えている”ということが、手に取るように分かるのだよ」
カメック「!」ビクッ
カメック(なんで私が怯えていると分かったんだ!? まさか、魔法使いか!?)
カメック(うむむ……私の手には負えんかもしれん)
カメック「ま、待っていろ……今クッパ様をお呼びする!」
宇水(ふん、この分ならクッパとかいうのも大したことはなかろう……)
宇水(な、なんだ!?)
ズシン、ズシン……
宇水(この足音、十本刀“破軍”の不二のような重量感……!)
ズシィン、ズシィン……
宇水(これが──クッパ!? とんでもない怪物ではないか!)
宇水(く……心眼を会得した私が心を乱してどうする!)
クッパ「ほぉう、ワガハイの軍に入りたいというのはオマエか!?」
宇水(この心拍数、完全に私を見下している……!)ピクッ
宇水(まだ両目を失っていない頃、私と対峙した志々雄のように……!)ピクピクッ
クッパ「マリオのようなヒゲを持ち、全身に目がついたカメか」
クッパ「ガッハッハ、珍しいカメだな」
宇水「何が可笑しい!!!」
宇水「もういい、気が変わった」ザッ
宇水「帰る手段など、適当に亀を殺しまくって吐かせればいいことだ」
宇水「クッパとかいったな、貴様はこの場でブチ殺してくれよう!」バッ
クッパ「突然怒り出すとは、よく分からんヤツだな」
クッパ「まぁよい、かかってくるがいい! ガッハッハッ!」
宇水「すぐに笑えなくしてやるわ!」シュザッ
宇水「宝剣宝玉百花繚乱!」
ズババババッ!
宇水(バ、バカな……全ての突きをまともに喰らったはず……!)
クッパ「ではこっちからいくぞ!」
宇水(ふん……おそらくこの巨体を生かした技を繰り出す気だろう)
宇水(どんな技だろうと、ティンベーでさばいて──)サッ
ゴオオアァァァッ!
宇水(口から……高熱……炎!? しかもなんだこの量は!?)
ボワァァァッ!
宇水(ティンベーがあっという間に焼け焦げて──)
宇水「ぐっ、ぐわぁぁぁぁ──……」
ギャラクシーとか普通に宇宙規模で戦争ふっかけてきてない?
残念ながら俺の知ってるクッパは
スーパーマリオブラザーズとマリオRPGのだけだ
宇水(生涯二度目の敗北……)
宇水(いや……三度目か)
宇水(志々雄に光を奪われ、復讐を誓い心眼を会得したのも束の間──)
宇水(私以上の生き地獄をくぐり抜けていた志々雄に、私は戦わずして敗北した)
宇水(挙げ句、こんなどことも知れぬ場所で、怪物に殺されることになるとは……)
宇水(私の人生とは、いったいなんだったのだ……)
宇水「私は……生きている!?」ガバッ
クッパ「目が覚めたか」
宇水「貴様……クッパ!?」
クッパ「オマエのような根性あるカメは久しぶりだったぞ」
クッパ「合格だ!」
クッパ「キサマの我が軍団への入団を認めよう!」
クッパ「ガッハッハッハッハ……!」
宇水「利用されてやろうではないか」
宇水「だが、私は貴様に焼かれた屈辱を忘れてはおらん」
宇水「スキあらば、私は貴様を殺す! それを忘れるなよ!」
クッパ「ガッハッハ! よかろう!」
宇水(く……私はまた同じことを繰り返すのか……)
クッパ「あ、あとオマエの甲羅を焼いてしまったから代わりのを用意しておいたぞ」
宇水(トゲゾーとかいう亀の甲羅らしいが、本当にトゲが生えておる)
宇水(触れてみるか)チクッ
宇水「痛ッ!」
宇水(丸みはあるが、こんなトゲがあって、うまく敵の攻撃をさばけるだろうか)
宇水(まあ、そもそも敗北したのに贅沢はいってられまい)
宇水(これからはこのトゲのついた甲羅が私のティンベーだ)
宇水(とりあえず……名前は“新ティンベー”とでもしておくか)
宇水「目的……?」
クッパ「ワガハイの目的は色々あるが、やっぱり一番はピーチ姫と結婚することだ!」
宇水「なんだ、ピーチ姫というのは」
クッパ「キノコ王国の姫君でな、ぜひともワガハイのお嫁さんにしたいのだ」
宇水「理解できんな、貴様なら女一人さらうぐらいわけないであろうが」
クッパ「うむ……だがいつもいつもあと少しというところで、ジャマをされるのだ」
クッパ「あの……マリオとルイージに!」
宇水(なんだと!? このクッパよりも強い奴がいるというのか!?)
宇水「クッパよ」
クッパ「む?」
宇水「そのマリオとかいう奴らの居場所を教えろ」
クッパ「どうするつもりなのだ?」
宇水「決まっている」
宇水「この私が、二人まとめて始末してやろう」
宇水(クッパが手こずる敵を、私の手で殺す)
宇水(てっとり早く自信を回復するには、これしかあるまい!)
宇水(ここがキノコ王国か……)
宇水(至るところに頭の大きなコビトの気配がするが……これがキノコ族というやつか)
宇水(まったくおかしなところに来てしまったものだ)
宇水(しかし今はそんなことを気にしている場合ではない)
宇水(マリオとルイージとやらを血祭りに上げ、クッパに死体でもくれてやる)
宇水(そうすれば、クッパに敗れたことに対する面子も立つ)
宇水(日本に帰る方法を教えてもらうのは、それからだ)
キノコ住民「はいはい?」
宇水「マリオとルイージとやらは、どこにいる?」
宇水「答えねば──」ギラッ
キノコ住民「ああ、マリオさんたちならお城にいるはずですよ」
キノコ住民「今日はキノコ王国のキノコ料理パーティーでしてね」
キノコ住民「ピーチ姫が料理をいっぱい作っているんですよ」
キノコ住民「行けばだれでも入れると思いますよ」
宇水(ふん、こうもあっさり見つかるとはな)
宇水(さっさとマリオたちを殺って、日本に戻らねばならん)
ピーチ「マリオ、ルイージ。お料理はたくさん用意したから、いっぱい食べてね!」
マリオ「ありがとう、ピーチ姫」モグモグ
ルイージ「おいしいね、兄さん!」ムシャムシャ
ヨッシー「どれもこれも、みんなおいしいよ!」ペロン
キノピオ「ヨッシーさん、皿ごと食べないで下さい!」
すると──
「マリオとやらはいるか!?」
「うわぁ、目がいっぱいあるぞ……」
「なんだ、あの不気味なカメは!?」
「きっとクッパの手下だ!」
宇水「……ふざけるな、私はクッパの手下などではない」
宇水「目的のため、奴にあえて利用されてやってるだけのこと」
宇水「マリオとルイージとやら、いるのならば名乗り出ろ!」
宇水「さもなくば、この国の住民を皆殺しにしてもかまわんぞ?」ヒュッ
ズシャアッ!
ピーチ「ああっ!」
キノピオ「姫が作った料理が!」
ルイージ「ぼくたちがマリオとルイージだ!」ザッ
宇水「ほう……お前たちか」
宇水(ふむ……気持ちの昂ぶりはあるが、かなり落ち着いている)
宇水(なるほど、それなりの使い手ではあるようだ)
宇水(だが、骨格も筋肉も平凡、クッパのような威圧感はまるでない)
宇水(まともな戦闘では、私の敵ではなかろう)
宇水(おそらくクッパは実力ではなく、策略で敗北しているのであろう)
宇水(しかし、初めて出会う私に対し、策を持ち合わせてはいないはず)
宇水(つまり……私の勝利は間違いないということだ!)
宇水「マリオとルイージ、相手にとって不足無し」ズゥゥン
宇水「ここで死んでもらう」
ルイージ「うん!」ピョイン
宇水「!?」
宇水(た、高いッ! なんという跳躍力だ!)
宇水(だが──)
ルイージ「よくもパーティーを台無しにしたな、許さないぞ!」
宇水「微温(ぬる)いわ!」サッ
グサッ!
ルイージ「ぐぅっ……!」
ルイージ(踏みつけを、トゲ甲羅でガードされた……!)ドサッ
マリオ「このカメ、トゲゾーの一種だったのか……!」スタッ
ルイージ「う、うん……なんとかね」
宇水「クックック、この新ティンベーに敵などないわ!」
マリオ「よぉし、こうなったら……!」
ボッ!
宇水「え?」
ボッ! ボッ! ボッ!
宇水(な、なんだ!? 私の耳がたしかなら、手から……火の玉が出ている!?)
宇水(志々雄の秘剣のようなものなのか!?)
ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ!
宇水(大きさはクッパの炎ほどではないが、数が多い!)
宇水(いったいどういう原理で!? こいつ妖術使いか!?)
宇水(──だが! 新ティンベーに火の玉が当たる瞬間!)
宇水(素早くさばけば、火の玉をかき消すことは可能!)バシュッ
宇水(……可能ではあるのだが)
ボッ! ボッ! ボッ! ボッ! ボッ!
宇水(火の玉が止まらん!)バシュッ
宇水(こいつは何発火の玉を撃てるんだ!? まさか……無限!?)バシュッ
ヨッシー「えぇ~い!」ビュッ
キノピオ「今だっ!」ブンッ
宇水(しまった! 横から──でかい卵と、野菜!?)
グワッシャッ!
宇水「ま、またしても心眼が……敗れる……とは……」
宇水「悪夢だ……」ドサッ
キノピオ「お城のベッドです」
キノピオ「あなたの分もキノコ料理を用意しましたから」スッ
キノピオ「これに懲りたら、二度とこういうことはしないで下さいね」
宇水「…………」
宇水(志々雄と瀬田宗次郎を除けば敵などいない私が、二度も敗北するとは……)
宇水(……悪くない匂いだ)クンクン
宇水(もう、どうにでもなれ)モグモグ
宇水(ほう、なかなかの味だ。体から馬力が湧き出てくるようだ)モグモグ
宇水(しかし、失われた自信が戻ることはなさそうだ……)モグモグ
宇水「戻ったぞ」
クッパ「ガッハッハ、どうだった? マリオはやっつけられたか?」
宇水「いや……」
クッパ「だからいっただろう! ワガハイですら奴らには何度もやられているのだ!」
クッパ「これからはワガハイの命令に従ってもらうぞ」
宇水「ああ、分かった……」
宇水(これほどの醜態をさらしておいて、とても志々雄たちの顔など見られん)
宇水(元々私は国盗りなどに興味はないし、しばらくここで過ごすとするか……)
クッパ「ウスイよ、今度マリオたちと戦うことになった」
クッパ「オマエにも参加してもらう」
宇水「ほう、いよいよ戦闘か」
宇水(ここにいる間も腕は磨いたが、まだクッパやマリオに勝てる気はせん)
宇水(しかしやるとなれば、なんとしてもこいつらに一矢を報いねば……)
クッパ「いや、レースだ」
宇水「!?」
クッパ「レースとは、カートで誰が一番早くゴールにつくかを競い合うことだ」
宇水(カート? なにをいっているんだ、こいつは)
宇水「なんだ、カートというのは」
クッパ「ウスイ、オマエ……カートも知らんのか!?」
クッパ「ガッハッハッハッハッ!」
宇水「何が可笑しい!!!」
たくさん目があるって言ってたから模様を本物と勘違いしてるかと
宇水「う、うむ」
宇水(蒸気も出さず、馬に引かせもせず、車が走るとは信じがたいが……)
宇水(この世界に来てからは信じがたいことしか起こっておらんしな)
宇水「えぇと……右を踏むと進み、左を踏むと止まるんだったな?」
クッパ「そうだ」
宇水「どれ、踏んでみるか」グッ…
ドギュゥゥゥゥンッ!
宇水「!?」
ドガッシャーンッ!
クッパ「おお、いきなりロケットスタートとは! オマエは才能があるぞ、ウスイ!」
宇水「が、がは……っ!」
<マリオサーキット>
ジュゲム「本日はこの1レースのみ、行います!」
ジュゲム「正式なカップ戦ではありませんが、上位入賞者には賞品が出ますので」
ジュゲム「優勝めざして頑張って下さい!」
パチパチパチパチ……
宇水(猛特訓の末、どうにかカートとやらの運転と)
宇水(聴覚だけで、競争に使用する道路の内と外の区別ができるようになった)
宇水(だが……なぜ敵同士でこんなのんきな遊戯をやるのだ?)
宇水(この間会ったマリオやルイージ、ピーチとかいう女の声も聞こえる)
宇水(あと……巨大な猿らしき生物もいるな)
宇水(まったくわけが分からん……)
マリオ、ルイージ、ピーチ、ヨッシー
クッパ、ドンキーコング、キノピオ、魚沼宇水
ブロロロロ……
宇水(全員が開始地点に着いた途端、気配が変わった!)
宇水(な、なんだこの張りつめた空気は!?)
宇水(あの頃を……幕末を思い出す!)
宇水(そうか、こいつらにとっては遊戯といえど死闘ということか!)
宇水(面白い! ならば、この“盲剣”の宇水も全力をもって挑んでくれるわ!)
マリオ「…………」
ピッ
ルイージ「…………」
ポォーン!
ブォォォォンッ!
ジュゲム『各車、一斉に飛び出したぁっ!』
ジュゲム『先頭におどり出たのは……なんとレース初参戦のウスイだぁーっ!』
宇水(ロケットスタート……成功!)
宇水(この妙な塊に触れれば、道具を一つ入手できるんだったな)
宇水(これはなんだ!?)ニュルッ
宇水(私の道具は──バナナとかいう果物の皮か!)
宇水(……私の真後ろに、巨大猿の車がついておるな)
宇水(喰らえッ!)ポイッ
ドンキー「ウホッ!?」ズルッ
ドンキー「ウホォォォ!」ギュルルルッ
ジュゲム『ウスイ、後ろを見ることもせず、背後のドンキーをバナナの皮で滑らせた!』
宇水「フハハハハ! 我が心眼の前に敵はない!」
ルイージ(あのウスイってカメ、すごいや!)
ルイージ(ドリフトといいアイテムの使い方といい、とても初レースとは思えないぞ!)
ルイージ(ただの悪者ガメというわけじゃなかったのか!)
ルイージ(でも、ぼくの緑甲羅は避けられまい!)
ルイージ「いけっ!」ビュッ
宇水「無駄だ!」ヒョイッ
ルイージ「そんな、ミラーの死角から投げたのに!?」
宇水「バカめ、こんな鏡など最初から見ておらんわ!」
宇水「心眼でお前の筋肉の動きを読み取っただけのこと! 我が心眼に死角なし!」
クッパ「ウスイよ、なかなかやるではないか」
宇水「む」
クッパ「だが、初レースで優勝させてやるほど、ワガハイも甘くないぞ」グンッ
ガシッ! ガシッ!
宇水「おのれぇっ!」
ジュゲム『クッパのタックルで、ウスイはコースアウト寸前だ!』
ジュゲム『これでは重量で劣るウスイが、不利か!』
宇水「……ふん、クッパよ」
宇水「私に体当たりをしかけるなど、愚策にも程がある!」
クッパ「なんだと!?」
宇水「私のもう一つの武器を忘れたか!?」
宇水「ティンベーと対をなすこの手槍、ローチンで突く!」ブスッ
クッパ「ぬわぁ~っ!?」ギュルルルッ
ジュゲム『ウスイ、ローチンでクッパのタイヤをパンクさせたぁっ!』
ジュゲム『ラスト一周!』
ジュゲム『トップはウスイ! ほとんど独走状態です!』
ジュゲム『2位にマリオ、3位はルイージ!』
ジュゲム『4位はピーチ、さらにキノピオ、ヨッシーと続きます!』
ジュゲム『ウスイにやられたクッパとドンキーはかなり遅れているっ!』
マリオ(なんてドライビングテクニックだ!)
マリオ(彼はおそらく目ではなく、他の感覚で風や他のカートの動きを読んでいる!)
マリオ(だから速い!)
マリオ(これほど差がついては意味はないが、温存していたアイテムを使うか……)
マリオ「サンダー!」
バリバリバリバリッ!
宇水(突然の轟音で、どこを走ってるのか分からなくなってしまった!)
ドカァンッ!
宇水「ぐわぁっ!」
ジュゲム『ウスイ、土管に激突してしまったぁっ!』
ジュゲム『急に運転がおかしくなりましたが、いったいどうしたんだ!?』
ジュゲム『あ~っとウスイ、どんどん後続に抜かれていく!』
宇水(くそっ、あらかじめ心の準備をしておけば、あの音にも耐えられたものを……)
宇水(バナナの皮や甲羅だけでなく、あんな道具があったとは……!)
1位 マリオ
2位 ルイージ
3位 ピーチ
4位 ヨッシー
5位 魚沼宇水
6位 キノピオ
7位 ドンキーコング
8位 クッパ
宇水(全速力で追い上げたが、入賞は逃してしまった……)
宇水(クッパに実力を見込まれ参加しておきながら、情けない……!)
マリオ「いいレースだったよ! 君はすばらしいレーサーだ!」
宇水「え?」
マリオ「まさかあそこから5位まで追い上げるなんて……」
ルイージ「いやぁ、すごかった……調子を崩さなきゃ絶対優勝してたよ」
ピーチ「また一緒にレースをしましょうね!」
キノピオ「なかなかやりますね、次は負けませんよ!」
ヨッシー「楽しかったよ、ウスイ!」
ドンキー「ウッホォ~!」
宇水「…………」
クッパ「ガッハッハッハッハ!」
クッパ「さすがだウスイ、ワガハイが見込んだだけのことはある!」
宇水「ふん、こんな遊戯などなんの意味もないわ」
ブロロロロ……
宇水「もっと曲がる時の技術に磨きをかけねばな……」ギャルルッ
宇水「道具の性質も覚えて、効果的に使用せねば勝利は掴めん……」
クッパ「ガッハッハ! ウスイよ、なんだかんだいってカートにハマったようだな」
宇水「何が可笑しい!!!」
クッパ「今度はテニスなのだ、ウスイ!」
宇水「ボレーとスマッシュの基本的戦法を味わわせてくれる!」
~
ルイージ「君のコインはいただきだ!」
宇水「なんだと!? 私の小判が根こそぎ奪われてしまった……!」
~
宇水「フハハハハ! ローチンを扱うより容易いわ!」パシュッ
マリオ「まさか、このコースでバーディーを取るとは……」
クッパ「おい、ウスイ!」
宇水「どうした、クッパ?」
クッパ「オマエのスマッシュブラザーズへの参戦が決定した!」
宇水「なんだと!? この私が!?」
クッパ「オマエのティンベーとローチンを、他の世界の奴らに見せつけてやるのだ!」
宇水「面白い」ニヤッ
マルス「盾を防御だけでなく、受け流すことに使うなんて……」
ガノンドロフ「おのれぇぇ……!」ビキビキッ
宇水「いくらでもかかってこい!」
宇水「この新ティンベーで、相手の武器をさばき、視界を封じ!」
宇水「さらに対となる手槍、ローチンで突く!」
宇水「これが我が故郷、琉球に伝わる王家秘伝武術のひとつ」
宇水「ティンベーとローチンの基本的戦法!」
………
……
…
宇水(カートにテニス、ゴルフにパーティーに野球……色んなものを知った)
宇水(さらにはスマッシュブラザーズという、戦闘を楽しむこともできた)
宇水(飯はほとんどキノコだが、味は悪くない……それどころか上等といってよかろう)
宇水(私としたことが、すっかり居心地がよくなってしまった)
宇水(だが……本当にこのままでいいのだろうか)
宇水(私が……)
宇水(私が本当にやりたかったのは──)
宇水「クッパ」
宇水「お前はあのマリオ兄弟に負け続けているな」
クッパ「ま、負け続けているわけではないぞ! いつか必ず──」
宇水「なぜ、立ち向かえるのだ?」
クッパ「え?」
宇水「自分を負かした相手に、再び立ち向かう」
宇水「簡単なようで……なんと難しいことよ」
宇水「なのになぜ貴様は、立ち向かうことができるのだ?」
クッパ「マリオをギャフンといわせたいから……」
クッパ「ピーチ姫をワガハイのものにしたいから……理由は色々あるが」
クッパ「なぜ立ち向かえるのかと聞かれたら──」
クッパ「ワガハイには大勢の部下や仲間、がいるからだろうな!」
宇水「!」
クッパ「なんとしてもみんなに、マリオに勝利するワガハイの姿を見せたい……」
クッパ「だから、ワガハイは何度でもマリオに立ち向かうことができるのだ!」
宇水「私の知り合いに、こんな男がいた」
宇水「その男はある敵に惨敗し、必ず強くなって復讐してやると誓った」
宇水「だが……再び出会った時、敵との差はさらに開いていた」
宇水「怖気づいた男は戦いを挑むことすらせず、敵の軍門に下った」
宇水「する気もない復讐をいつか必ず行う、と虚勢をはりながら……」
宇水「そんな小さな男であったが、生まれて初めて仲間というものを持った」
宇水「男は……少し勇気をもらえたような気がした」
宇水「さて質問だ」
宇水「この男は……再び敵に立ち向かえると思うか?」
クッパ「もちろんだ!」
クッパ「その男はずいぶん回り道をしたようだが」
クッパ「今からでも遅くはない!」
クッパ「立ち向かえるはずだ!」
宇水「フ……回り道、たしかにな……」
宇水「ありがとうよ、クッパ」
宇水「これで決意が固まった」
宇水「私は……元の世界に戻ろうと思う」
クッパ「だってオマエはカメだろう!? この世界の住人だろうが!」
宇水「いや、私は亀ではない」
宇水「貴様に焼かれたあの甲羅は、私の自前などではないのだ」
宇水「私は……人間だ」
宇水「それもこことはまったく違う世界のな」
クッパ「!」
クッパ「そ、そうだったのか……」
宇水「黙っていてすまなかったな」
クッパ「いやかまわんぞ! ちょっとビックリしただけなのだ!」
クッパ「だが、それならなぜ、この世界にやってきたのだ?」
宇水「うむ、話せば長くなるのだが──」
クッパ「多分、オマエは土管に入ってしまったのだろう」
宇水「土管?」
クッパ「この世界の土管には、生き物のように伸びたり動くものがあってな」
クッパ「ごくまれに、この世界とどこか別の世界を繋ぐ土管が生まれたりもするのだ」
クッパ「いわゆるワープ土管というやつだ」
宇水「ふむ……そういうことだったか」
宇水(たしかに京都に向かう途中、雨宿りのため大きな土管に入ったような気がする)
宇水(あれがおそらく……ワープ土管、とやらだったのだな)
クッパ「今からマリオのところに行き」
クッパ「オマエの世界に繋がる土管のありかを教えてもらうことにしよう」
宇水「ありがとう」
クッパ「……しかし、オマエがいなくなるとさびしくなるな」
宇水「フ……よせ。私は初対面で、お前を殺しにかかった男だぞ」
マリオ「──お安い御用だ、ウスイ」
ルイージ「ぼくたちは国中の土管を熟知しているからね」
ルイージ「ちょっと調べれば、君をこの世界へと導いた土管も分かるはずだよ」
マリオ「さっそくだけど、君が元いた世界は、いつのどこだ?」
宇水「明治時代の日本だ」
マリオ「明治時代の日本……」パラパラ…
マリオ「おぉ! それならクッパ城の近くにあるはずだ!」
マリオ「……しかし、こんな急に帰るのかい?」
マリオ「もう一晩くらいゆっくりしていっても──」
宇水「いや、決意を鈍らせたくないのでな」
マリオ「……そうか、なら仕方ない。今すぐワープ土管に向かおう!」
やっぱり生死観が違うのか
一回死んでもすぐ生き返る人たちですから
宇水「……これが、明治時代の日本に繋がる土管か」
宇水「マリオ、ルイージ、感謝する」
マリオ「こちらこそ」
ルイージ「楽しかったよ、ウスイ」
宇水「クッパ、世話になったな」
クッパ「ガッハッハッハッハッ! またいつでも来い!」
クッパ「城のオマエの部屋は、空けておくからな!」
すると──
ピーチ「急に帰るなんてつれないじゃない、お土産にキノコを持っていって!」
キノピオ「また一緒にレースをしましょう!」
ヨッシー「今度来る時は、そっちの料理も持ってきてね~!」
ドンキー「ウホッ、ウホッ、ウホッ!」
ノコノコ「あばよ、新入り!」
カメック「君は怖かったけど、いなくなると寂しくなるなぁ」
ワリオ「俺だよ、ワリオだよ!」
ワアァァァァァッ!
マリオ「クッパ、君が呼んだのか?」
クッパ「まさか! マリオ、オマエが呼んだんだろう?」
ルイージ「きっとどこかからウスイが帰るって情報がもれて、こんなに……」
宇水「…………」
宇水「さらばだ!」ザッ
──
───
宇水(……間違いない)
宇水(ここは……日本だ)
宇水(私はようやく戻ってきたのだな……)
宇水(クッパのいうとおり、ずいぶん長い間回り道をしてしまった)
宇水(だが決して悪くはない“回り道”だった)
宇水(すっかり遅くなってしまったが……京都に向かうとするか)
宇水「久しいな」
方治「宇水! 貴様、いったいどこでなにをやっていた!」
方治「貴様のせいで、一週間も予定をずらすことになったんだぞ!」
宇水「!」
宇水(たった一週間の遅れで済んでいるのか)
宇水(向こうとは時間の流れがちがうのか、あるいは土管のせいなのか……)
方治「いくら腕が立つといっても、こんな勝手は──」
志々雄「いいじゃねぇか、方治。遅れはしたが、こうして到着したわけだしな」
方治「志々雄様……!」
宇水「そういうことだ」
方治「ぐっ……!」ギリッ
志々雄「どこでなにをやってたか、ってのは教えてもらいてぇな」
志々雄「甲羅の盾……ティンベーだったか。形状がえらく変わっている」
宗次郎「あ、ホントだ! 鋭いトゲがついてますね!」
志々雄「問題は盾だけじゃなく、お前自身のまとう空気もずいぶん変わったってコトだ」
志々雄「一週間の到着遅れとも、おそらく無関係じゃねえだろう」
志々雄「宇水……どこでなにをやっていた?」
宇水「…………」
宇水「……少しの間、妙な世界に行ってきたのだ」
志々雄「ほう、なんのために?」
方治「は?」
宇水「これがその妙な世界でもらったキノコだ」ドサッ
宇水「よかったら食ってみるか?」
宗次郎「あ、じゃあボクいただきます」
由美「ちょっとやめなさいよ、ボウヤ! 相手はあの宇水なのよ!?」
由美「あんな派手な色のキノコ、毒に決まってるでしょ、毒に!」
宇水(派手な色なのか、このキノコ……)
宇水「──ま、冗談はこれくらいにしておくか」
志々雄「もう一度問うぜ。宇水、なんのために妙な世界とやらに行っていた?」
宇水「無論」
宇水「志々雄、貴様を倒すためだ」
宇水「否、貴様の命をつけ狙うふりは、もう終わりだ」
宇水「志々雄、今すぐ貴様と立ち合いたい」
宗次郎「おお~」
由美(違う! 今までの宇水とはまるで違うわ!)ゾクッ
方治「──ふっ、ふざけるな、宇水!」
方治「ただでさえ計画が遅延しているのだ、これ以上余計なことに時間を──!」
志々雄「ハハハハハハハハハハッ!!!」
方治「!?」
志々雄「礼をいうぜ、宇水」
志々雄「抜刀斎、国盗りの前に、面白い余興がさらにひとつ増えた」
志々雄「嬉しい誤算というやつだ」
宇水「ここで私に殺られてしまうようでは、国盗りなど夢のまた夢……」
宇水「そうだろう?」
志々雄「そのとおりだ」
志々雄「所詮この世は弱肉強食、強ければ生き、弱ければ死ぬ」
志々雄「ここで俺がコイツに殺られたなら、それまでの男だったというだけのハナシだ」
方治「ですが……!」
志々雄「どうせやるなら、観客は多い方がいいだろ」
志々雄「宗次郎、アジトにいる十本刀、全員呼んでこい」
宗次郎「はい」
方治「くぅ、この大事な時に……宇水の奴め……!」ギリッ
安慈「…………」
鎌足「志々雄様……大丈夫かしら」
蝙也「ふむ……」
夷腕坊「ぐふっ、ぐふふふふっ!」
才槌「ひょひょひょ、これは興味深い対決じゃわい」
由美「ねぇボウヤ! 志々雄様が勝つわよね!?」
宗次郎「う~ん、今までの宇水さんが相手なら、志々雄さんが勝つでしょうけど」
宗次郎「宇水さんもなんか雰囲気変わりましたし、危ないかもしれないですね」ニコッ
由美「危ないかもしれないですね、じゃないわよ!」
宇水「来い、志々雄」
志々雄「立場をわきまえろよ。挑戦者は──お前だろ?」
宇水「フ……そうだな」
志々雄「ッシャアアアッ!」シュバッ
ギュルッ!
安慈(志々雄殿の鋭い斬撃を盾でさばいた!)
宇水「はぁっ!」
ズギャアッ!
由美「ああっ!」
方治「盾での殴打だと……!」
志々雄「腕を上げたな……」ニッ
宇水「新ティンベーで攻撃をさばき、そのまま新ティンベーのトゲで殴る!」
宇水「これぞティンベーの新戦法!」ザンッ
志々雄「わめくな、方治」
志々雄「元々このナリなんだ、今さら傷がひとつふたつ増えようと大して変わらねぇよ」
宇水(ふむ、いささかの動揺も感じ取れん)
宇水(さすがは──志々雄真実!)
志々雄「壱の秘剣、焔霊!」
ボワァッ!
宇水(ついに出たか! だが、炎に惑わされてはならん)
宇水(クッパから授かった新ティンベーを信じろ!)
ギュルッ!
志々雄(焔霊さえもさばくとは!)
宇水「ローチンと新ティンベーを組み合わせた新技、見せてくれる!」
宇水(左右同時に宝剣宝玉百花繚乱を繰り出す!)
宇水「宝剣宝玉二百花繚乱!」
ズガガガガガッ!
ドザァッ!
志々雄「ちっ……」バッ
宇水「はああああっ!」ダッ
キィンッ! ギュルッ! ザクッ! ギュルッ!
鎌足「志々雄様っ!」
由美(これほどまで苦戦する志々雄様なんて、初めて見たわ!)
方治(いかん!)
方治(宇水のあの新しい盾、前のものとはちがい非常に頑丈だ)
方治(だから志々雄様の速い斬撃に多少反応が遅れても、破壊されることなく──)
方治(攻撃をさばくことができる!)
方治(このままでは──)
英雄マリオですら踏んだら死ぬレベルだし
方治「な!?」
方治「お前には分からぬのか、あの宇水の強さの秘密が──」
宗次郎「たしかに宇水さんはすごいです」
宗次郎「だけど、志々雄さんもあんなものじゃありませんから」
ギュルッ! ザシュッ! ギュルッ! ドズッ!
宇水(これほど攻撃を加えても、志々雄の動きは全く衰えを見せん!)
宇水(むしろ勢いを増している!)
志々雄「シャアアアアッ!」シュバッ
宇水(無駄だ! 斬撃は通用せん!)サッ
ガシッ!
宇水(新ティンベーのトゲを……左手で掴んだ!?)
志々雄「やっと捕えたぜ」
志々雄「焔霊の炎をあれだけ浴びたんだ、ずいぶん脆くなっているはず」
志々雄「つまり今のコイツなら──弐の秘剣で破壊できる」
ボッ
志々雄「弐の秘剣、紅蓮腕!」
ドグァァンッ!
宇水(し、しまった……! 新ティンベーを爆破された……!)
志々雄「新ティンベーはお前の攻撃と防御の要──」
志々雄「つまり新ティンベーを失ったお前の戦力低下は、半減どころじゃねえはずだ」
宇水「ぐっ……!」
宇水「まだ終わってはおらん!」
志々雄「終わってんだよッ!」
ザシュッ! ズシャアッ!
宇水「が……は……っ!」
宇水「ま、まだだ……!」ヨロッ
志々雄「こんなに楽しめたのは、明治に入ってからは初めてかもしれねぇ」
志々雄「褒美をやろう」
志々雄「終の秘剣……わずかだが冥土の土産にくれてやる」
ギャリッ……!
ブオアアアァァッ!
志々雄「終の秘剣、火産霊神(カグヅチ)」
志々雄「俺の無限刃の発火能力を……半分ほど開放させた」
宇水(半分でこれほど巨大な炎なのか……!)
宇水(これが志々雄真実……!)
志々雄「地獄への送り火にしちゃあ、少々派手かもしれねぇが」
志々雄「華々しく散りな」
宇水「……やれ」
グオオアアアアッ!
宇水(私の体が燃え尽きてゆく……)
宇水(志々雄……)
宇水(奥の手を一端でも見せてくれたこと、心から感謝するぞ)
宇水(クッパ……再会は……できそうも、ない……な……)
宇水(さら、ば……)
宇水(…………)
方治「こ、これが……志々雄様の終の秘剣……!」ゴクッ
安慈(まるで地獄の炎を現世に召喚したかのようだ……)
鎌足「志々雄様……すごい……」
蝙也「なんという強さ……まさに弱肉強食の体現者……!」
夷腕坊「ぐふっ、ぐふふふふっ!」
才槌「こりゃたまげたわい……」
由美「よ、よかった……さすがは志々雄様ね!」
由美「宇水は……残念だったけどね……」
宗次郎「う~ん、おかしいなぁ……」
由美「ん、どうしたのボウヤ?」
宗次郎「いえ、宇水さんは今間違いなく死んじゃったはずなんですけど」
宗次郎「なぜか、あそこに宇水さんがいるんですよ」
由美「え!?」
方治「な、な、なんで宇水が生きているんだ!? しかも無傷で!?」
安慈(輪廻転生……? いや、いくらなんでも早すぎる)
鎌足「ちょっとアンタ、どうなってんのよこれ!?」グイッ
蝙也「俺に聞かれても分かるか!」
夷腕坊「し、死人が蘇るなどありえん! ──あ、ぐふふふふっ!」
才槌「うむむ、いくら論理的考察を重ねても、納得のゆく答えが出てこんわい……!」
宗次郎「生き返るなんて、宇水さんすごいなぁ。ちょっとずるい気もしますけど」
由美「なに呑気なこといってんの! どーなってんのよコレ!?」
志々雄「殺し損ねたか、生き返ったかは知らねぇが……たしかなことは」
志々雄「まだ勝負はついてねぇってことだな!」ニヤッ
宇水「どうやら、そのようだな」ニイッ
ザシュッ!
宇水「はぁっ!」
ギュルッ!
志々雄「ッシャアアアアアッ!」
ボワァッ!
宇水「ぬんっ!」
ザシュッ!
………
……
…
志々雄「う……ぐっ」
志々雄(ち、戦っているうちに少しずつ傷をもらい、十五分もとうに過ぎた……)
志々雄(体が……ピクリとも動きやしねぇ)
志々雄「幕末から……明治にかけて、数えきれねぇほど人を斬ったが──」
志々雄「斬っても斬っても死なない……いや生き返る奴と戦ったのは初めてだ」
志々雄「宇水……お前の体はいったいどうなってんだ?」
志々雄「なんか変なもんでも食ったのか……?」
宇水「ハァ、ハァ、ハァ……」
宇水(そんなことはこちらが知りたい)
宇水(向こうの世界では、毎日キノコを食べていたが──)
宇水(多分関係あるまい)
志々雄「所詮この世は……弱肉強食……」
志々雄「俺はてめぇに敗れた……それが自然の摂理だ」
宇水「…………」
由美「ダメです、志々雄様っ!」
鎌足「志々雄様っ!」
宇水「…………」
宇水「断る」
志々雄「!」
宇水「狂おしいほど欲した、貴様への復讐、貴様からの勝利……」
宇水「今こうしてその好機を手中に収めたというのに、全く実感がないのだ」
宇水「私はかつて、貴様に両目を切り裂かれ、生き地獄を味わった」
宇水「ならば私も報復として、貴様にも生き地獄を味わわせてやりたくなった」
宇水「虚栄まみれだった男に地に伏せられ、見逃される、という生き地獄をな」
宇水「私はいずれまた、貴様のもとに現れるだろう」
宇水「次こそは一度も死せることなく、貴様を殺す実力を身につけて、な」
志々雄「ちっ……」
志々雄「次に会う時は、俺はこの国の覇権を握っていることだろうぜ」
宇水「ククク、その方が殺しがいがあるわ」
志々雄「フフフ……ハッハッハ……」
宇水「クックック……ハッハッハ……」
志々雄&宇水「ハーッハッハッハッハッハッハ!!!」
宇水「何が可笑しい!!!」
志々雄「なんでてめぇがキレるんだよ」
方治「ま、待て、宇水!」
方治「貴様のような危険人物を、むざむざ野に放てるものか!」
宇水「ほう、では力ずくで止めてみるか?」ニィッ
方治「う、ぐっ……!」
宗次郎「やめときましょうよ、方治さん」
宗次郎「なんたって殺しても生き返るんですし、多分ボクでも止められませんよ」
宇水「そういうことだ、ボウズ」
宇水「次に会う時は志々雄の下で、高級官僚くらいにはなっていろよ」
方治「と、当然だ!」
方治「西洋列強にも劣らぬ強力な軍隊を作り上げ──」
方治「貴様如きでは、志々雄様に指一本触れられぬようにしてくれる!」
宇水「フッ……期待しているぞ」
宇水(どれ、一つキノコを食うとするか)モグ… ピロリロリン♪
安慈「宇水殿」
宇水「……安慈か」
安慈「変わられたな、宇水殿」
宇水「変わったというなら、お前とてずいぶん変わったのだろう」
宇水「廃仏毀釈で寺を焼かれた怒りから、“明王”になったと聞いているぞ」
安慈「……どこに行かれる」
宇水「さあな。なにも考えてはおらん──が」
宇水「ひとまずはこの見えぬ目で、世界中を見て回ろうと思っている」
安慈「そうか」
安慈「達者でな」
宇水「フフ……お前にいわれるまでもない」
この後、日本はおろか世界各地で目玉模様の服を着て、
眼帯をつけた男が目撃されるようになるが──
これが宇水本人かどうかは定かではない。
そして──
宇水「クッパよ、久しぶりだな」ザッ
クッパ「おお、ウスイではないか! 向こうの世界での用事は済んだのか!?」
宇水「まぁな」
宇水「今は修業を兼ねて、世界各地を旅して回っているところだ」
クッパ「そうか、ならばせっかくだからレースに参加するといい!」
クッパ「ちょうど今日は、スペシャルカップの開催日なのだ!」
クッパ「オマエならば、飛び入り参加も認められるだろう!」
クッパ「なんとしても、ワガハイたちでワンツーフィニッシュを飾るのだ!」
宇水「クックック……よかろう」
宇水「ロケットスタートとドリフトの基本的走法を見せてくれるわ!」
~おわり~
乙でした
ネタかと思って開いたらまさかこんなことになるとは思ってもなかったぜ
Entry ⇒ 2012.10.06 | Category ⇒ 版権物SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
鍛冶師「人里離れた所でひっそりと暮らしてる」
ここ最近天候が悪かったが、これでようやく畑仕事ができる。
最近は依頼が少なく、収入が心許無いがのんびりとやれるのはいい事だ。
だが、空に陰りがあるし今日のうちにある程度収穫しておかないと、また雨の中で収穫しなくてはならなくなる。
すっかり忘れていたが、そろそろ鉱山に住み着いているコボルト達が鉱石を持ってくる時期だった。
つるはしだのなんだのと物々交換しているが在庫が少ない。
今日明日は徹夜になるやもしれん。
三日間、作るに作り続けた。
逆に作り過ぎた。あって困るもんでもないが、正直幅を取るから困る。
久々に罠に動物がかかった。
今日は兎肉のスープだ。
今日の取引はまずまずだった。
新しい採掘場が見つかったらしく、更に大量のつるはし等の注文が入った。
かなりの材料が蓄えられるかと思うといてもたってもいられない。嬉々として金槌を振るう。
珍しい金属もあったし何を作るか……それとも大事に取っておこうか。いかん、興奮してきた。
追加の注文も作り終え、コボルト達との物々交換も無事終わった。
にしても雨の所為で冷える。奥に仕舞った冬服を引っ張り出し、少し着込んでおく。
大量の材料を仕入れた事だし、今日は倉庫の整理をした。
しっかりと整理したら元々あると推定していた材料が、1.2倍に膨れ上がった。
在庫管理が杜撰過ぎたようだ。今後は帳簿でもつけようものか。
あいも変わらず天候不順が続く。依頼も無く畑仕事も無く、雨音をBGMに読書に耽る。
そんな雨の中、わざわざ貴族様が依頼を持ってきた。
金ならいくらでも払うから最高の刀を作って欲しいと言い出した。金持ちの道楽か。
仕方が無いので追い返した。良質の砂鉄なんぞこの大陸で探すとなったらどれだけ時間がかかるか。
それでも食い下がらないから塩の塊を投げつけジパングに行けと言ってやった。
にしてもあんな塊になっているとは。ちゃんと対策をしておくべきだったか。
そろそろ食料の買い足しが必要になってきた。
この調子なら明日は晴れるだろう。
明日は山を降りるとするか。
現地販売の準備、それと刃物研ぎの準備をして早めに就寝する事とする。
下山するにはもってこいの天気となった。
のはいいが、麓あたりで山賊と鉢合わせした。
そこらへんを魔物が闊歩している時代だというのに逞しいものだ。
有無を言わず襲い掛かってきたので返り討ちにしてやった。
臨時収入だ。肉でも買うか。
町で卸す商品の売れ行きも刃物研ぎの仕事もあまりだった。
臨時収入と合わせても通常の収入程度にしかならない……なんてこった。
食料品を買い込み、家に戻る途中で旅人が山で迷っていた。
何でも自分に依頼をしに来たらしいが場所が分からなくなったそうだ。
仕方が無いのでその場で内容を聞く事にした。ふざけた依頼だったら町に送り返そう。
と思ったら材料を持ち込んでの製造依頼だった。久しぶりにまともな依頼だったからその場で材料を受け取った。
報酬もいいし明日はまた町まで届けに行く事にした。
気合を入れただけあって、依頼のクレイモアは中々良い出来となった。
早朝、町に下りようと下山している途中、旅人が先日と同じあたりで迷っていた。
何をやっているのやらと思ったら、自分が依頼を受けてくれると思っていなかったらしく、
町まで運ぶと言われても、いてもたってもいられなかったのだと言う。
アホな依頼が多いから断っているだけで、まともな依頼は全て引き受けているのだがなあ。
大方、馬鹿貴族どもが勝手な事を流布しているのだろう。が、食っていくには問題無い程度に依頼はくるからどうでもいいが。
今日は朝から雨が降り続く。
これは長雨になるかもしれない。
しばらくは暇になりそうだし、武具図鑑でも読み漁るとするか。
雨脚が半端ない。
一度、この家も流された経緯からしっかり対策しているが、それでも今回はどうなるか分からん。
というよりも今回もダメかも分からんね。
流された時の為に必要な道具はまとめて、見つけ易いように細工を施した。
明け方とんでもない音がした。どっかで土砂崩れが起こったようだ。
思いの他早くに晴れてくれたものの、やはりというべきか被害は甚大だった。
材料類に関する被害ほ無かったものの畑は全滅だ。
ここしばらく順調だったゆえに惜しい。
最もまた一からとは言え、だいぶ知識も経験も積んできているし、復興もそう難しくは無いだろう。
今日は一日畑仕事。水気たっぷりの野菜が食べたい。
鍛治関連で唯一の被害。薪が全滅。
という訳で今日は周囲の散策にでかけた。が、当然ながら薪に使えそうな木々は得られなかった。
薪を貯蔵している倉庫の改良が必要そうだ。
途中、山の主様を見かけた。ここに住み始めた当初、主様は巨大な猪だったが今は角が立派な牡鹿のようだ。
何時見てもこの威圧感というか神々しいというか、そんなオーラの前ではただただひれ伏すばかり。
そこへ魔物の集団が現れた。主様を狙っているのかと剣を抜く。よりも早く主様の角が魔物を薙ぎ払った。
主様ぱねぇ。流石、山の安定を司る存在だ。
真面目な依頼だが、恐ろしくキチガイな依頼が入ってしまった。そしてそれを受けた自分もキチガイだ。
大量の石を持って兵士や傭兵、そして神官らしき男がやってきた。
その石を使ってできるだけ大きな剣を作って欲しいと言われた。見たことの無い石だしどうしたものかと悩む。
石の出所を聞けばなんと隕鉄だという。よくもこれだけの量を集めた物だ。頭がおかしい。
だが壮大な話だ。隕鉄は天からの恵みとして信仰があったりする事を考えると、この量で作った大剣はさぞ偶像崇拝にもってこいだろう。
ああ、だから神官っぽいのもいたのか。
だが問題はこれが全部材料になりえないだろうという点だ。
今日は朝から資料探し。
こいつでクリスでも作れって事だったら簡単だったろうに。
一通り手持ちの資料の中から隕鉄に関する情報かき集めて読み耽る。
期間を長めにもらって正解だ。というかこれを一人で造るのか。こういう時、国の鍛治ギルドや町の工房を羨ましく思う。
リンが多く含有している隕鉄は、鍛造そのものが出来ないようなものだとされる。
まずはこれを調べないとだ。
莫大な報酬だったとは言え、あんな仕事二度と引き受けるものか。
一週間以上の時間を費やしなんとか作れたのは長めのブロードソード。いやバスタードソードといったところか。
遥か古代から隕鉄が使われている事もあってか、クリスは邪を払うものとしてタリスマンとしての役割も持っている。
こいつならどんな邪も払えるだろう。というか切り払えるだろう。
もっとも教会かどっかに奉納されるのだろうから、振るわれる事は無いのだろうが。
ふと思い出したかのように畑を見ると荒れ放題だった。
しばらくは農作業だ。
絶好の土弄り日和。いやちょっと暑かったか。
クワを振るっているとコボルト達がやってきた。
どうしたのかと聞くと、新しい採掘場に鉱石の精霊が現れて奮闘中だという。
精霊と言っても全身が特定の鉱石で出来ているゴーレムの様なもの。何より恐ろしく硬く力強い厄介な奴だ。
自分の出番か、とハルバートを担ごうとしたらミスリル銀のゴーレムだと言うから、茶を淹れてやりながら頑張れと伝えた。
銅と鉄まで戦えるが、それ以上の相手となる一撃で圧死するから絶対に戦いたくない。
というかミスリル銀のゴーレムとか随分と大物だな。
畑の整地、水引完了。意外と早く終わったからまた山の中に入っていった。
あれから雨も降ってないお陰で乾いた薪が拾えた。いやはや助かるものだ。
土砂崩れで荒れたとは言え、多くの新芽が芽吹いている。
今日も主様は忙しそうだ。
町に下りて野菜の苗や種を買い漁る。
ついでに刃物研ぎをしてみたら、今回は盛況だった。タイミングがずれていたのか。
帰り道に高価そうな鎧を着た男と出会った。勇者様だという。
魔王討伐の為にも剣を作って欲しいとの事だ。
材料も持ち込みでミスリル銀だった。しかし要望はフルサイズの両手剣だと言う。
流石にこれでは足らない。ふと、コボルト達の事を思い出し、紹介状がてら一筆手紙を書いて渡す。
討伐に成功したら精霊から取れるミスリル銀を分けてもらう、という内容だ。
初めは危険だし冗談がてら倒して貰ってきたら造る、と言ったら極々普通に了解された。
勇者をやるだけあって強いのかもしれない。
一晩泊まった勇者様は早朝、コボルト達の所へ向かっていった。
送ろうかとも思ったが、地図を見てルートを把握していたので余計な心配のようだ。
だが夜になっても帰ってこない。
大丈夫なのだろうか? まさか精霊に? それとも行く途中か戻る途中に道を外れて遭難?
不安ばかり募るが既に日は沈み、細い弓なりの月明かりでは心許無い。
明日、早朝に勇者様を探しに行こう。
早朝、一先ずコボルトの群れに向かった。
もしかしたら援軍が来た事で、一度体勢を建て直し総攻撃の準備をしているのかもしれない。という淡い期待があった。
コボルト達の集落に辿り着き見た物とは!
しっちゃかめっちゃかな宴会後と酔い潰れて寝ているコボルト達と勇者様だった。
心配して損をした。仕方が無いので起こすのも悪いし、全員に毛布をかけて帰った。
勇者様は日暮れになって戻ってきた。しかも結構大量のミスリル銀を抱えて。
コボルト達はかなり苦戦していたようだ。
今日、明日を使って剣を造る事にした。
勇者様は暇だから山の中へと入っていく。聞けば元々山育ちらしい。
色々と心配するだけ無駄だったようだ。
最高の剣にするべく、一心不乱に金槌を振るう。気付けば日が暮れつつある。
勇者様はというと日が沈むか沈まないかという頃に、現地で作った魚篭に魚を入れて帰ってきた。
ここから沢まで結構距離があったはずだしどうやって道をと聞けば、立派な角を持つ鹿の後をついていったと言う。
思わず狩られなくて良かった、と呟いたら山の主殿かどうかぐらい分かる、と言われてしまった。そりゃそうだ。
他に討伐するものも無く、今晩は勇者様とゆっくりと談笑しながら食事についた。
あまり多くの土地を回った事の無い自分にとっては、滅多に無い良い機会であった。
とりわけ金属製品を特産とする工業都市の話は非常に興味深かった。暇を見て技術を学びに行くのもいいかもしれない。
日暮れあたりになって、ようやく剣が完成した。
ミスリル銀を打つと心臓が打ち震えるような高揚感を覚える。が、加工が大変で一振り造るだけでも時間がかかる。
自分が持ちうる力を全て出し切った、そんな満足感と気だるさが体中から溢れ出る。これと同じ出来をと言われても、当分はできないだろう。
勇者様は勇者様で鞘から引き抜いて刀身を見つめ……次に行動するまで数分の間動く事が無かった。
そして涙目でこれは最早芸術品だ。この世に二本とない名剣だ。本当に、ありがとう、と深々と頭を下げられてしまった。
本音を言えば多少は争い事があった方が金にはなる。が、自分達人類の命運を背負う勇者様のお力になれた事、満足していただけた事はとても誇りに思う。
と言ったら、君は裏がないな、と人懐っこそうな笑顔を向けた。
何とも人望が厚そうな人だ。自分とは真逆のタイプなのだろう。しかし自分自身、彼と話すと気持ちが良い。これが出来た人間の為せる事か。
勇者様は重ね重ね礼を言いつつ、日の出と共に旅立っていった。
願わくば彼の旅路に無事に終わらん事を。
しばらくは依頼が無い限り金槌を振るうのはよそう。休息は必要だ。
という訳で倉庫の改良の為、材料を集めに山に入っていく。最近気付いたが、ここも山中だ。
とは言っても、文字通り家の周りは自分の庭になっている所為で、この先の山を山の中だと思ってしまう。山の主様に罰を与えられそうな考えだ。
土砂崩れのお陰で近場で良い石がごろごろと採れる。
なんか幸先いいな。わくわくしてきた。新しい小屋でも造るか。今のところ使い道ないけど。
なんかコボルト達が土産を持ってやってきた。よっぽど勇者様の援軍が嬉しかったようだ。
丁度来たのが生産職を担う奴らで、倉庫の改装を手伝い始めた。
なんで技術持ってる奴はどうしてこうも物作りが大好きなのか。自分もだが。
以外に早く倉庫の大改造が終わってしまった。倉庫のLvが5ぐらいあがった感じだろうか。
しばらくは鍛治以外の物作りしていると話したら、目聡く積まれた木材について聞かれた。
意味も無く小屋を造るつもりだと答えたら、他の連中も呼んでとっとと作っちまおうぜ、とか言い出した。
こいつら自分達の仕事はいいのか、と思ったら、更に新しい採掘場が見つかり、今は内部調査の為、非戦闘員の立ち入りを禁止しているらしい。
小屋……というか小さい家ができた。本当に小さい家。
何だろう、一人用の小さい安い宿みたいな。作っている時は特に考えていなかったが、これ本当にどうしよう。
物作り会は夜に自分と六匹のコボルトで鍋をつついてお開きになった。
倉庫改造と小屋の案を一週間くらいかけてやろうと思っていたがどうしようか……。
明日は山を歩くか。
軽く土いじりをして山に散歩。
土砂崩れの爪痕は今尚残るが、だいぶ青々として活気を取り戻しつつある。いい事だ。
上へ上へと進み、崩れた地点よりも上へと登ると良い山菜が群生している箇所に出る。
必要な分だけ採り上流の湖へ。二時間ほど粘ったが釣れたのは一匹だった。
戻ってくる頃には日が暮れていた。たまにはこんなスローライフもいいものだ。
今日は小屋の活用について考えるとする。
ぶっちゃけ要らない。
よく依頼主が泊まったりする事もあるが、一人ならこっちの家で十分。向こうのが狭いし。
利点といったら綺麗な事と、共同のスペースで生活したくない人ぐらいか。そんな奴、わざわざ山まで来て依頼はしないだろう。
とは言え物置に使うには勿体無いし、今後はちょっとした家具を作って寝泊りできるようにするか。
いっその事、あっちはのんびり暮らすをテーマに娯楽とか置いてみるか? いや要らないな。
晴れた事だしちょっと町まで下山する。
顔馴染みに小屋の活用について、参考まで考えを聞いてみる事にした。
が、基本的に客用にすればという意見が占めた。それはそれでいいのだが何か面白みに欠ける。
そしてやっぱり出てきた案がだらだらする場所だった。本棚でも作って本を揃えようものか?
などと思っていたら、特殊構造の鎧をのんびり作りつつ、置き場にしてしまえばいい、とも言われた。
理由を聞いたら初めは剥き出しの内部構造に、少しずつ出来上がっていくのって楽しくないか、との事だ。
それは認めるが、流石に山の中で鎧を求める者もいないだろう。
だが特殊構造か……ちょっとしたからくりでも作って置いておこうか? いややっぱり使い道無いって。
今日はベッドを作ってみた。一先ず小屋でも泊まれるようにした。ベッドしかないけど。
よくよく考えたら風呂は一つだし、寝る場所を別にしただけにしかならないな。
何の意味があるんだろう。女性客? いやでも風呂は共同だし。
というかこんな山奥まで依頼しに来る女性はいないだろう。
むしろ今まで女性客がいない。あれ? この小屋本当にどうしよう?
早朝、鉱夫コボルト達がやってきた。
魔王軍のゴーレム種が暴走しているという。魔王軍は基本、統率がとれているというのに。
それも魔法生物のゴーレムだ。命令には忠実のはず。と思ったら、鉱山に迷い込んだゴーレムが山に滞留する魔力に当てられたようだ。
最深部なんてどれほどの力が流れているから分かりはしない。山に住む人は勿論、コボルト達だって近づきはしない。
原因はいいとして。どうやら彼らは自分に援軍を求めてきたようだ。ゴーレムぐらいなら何とかなるか。
とハルバードを担いでコボルト陣営に赴く。中型のゴーレムだ。その数20。20?! 多っ! 到着時は本当にこんな感じだった。
薙ぎ払っては崩し薙ぎ払っては崩しの繰り返し。朝にコボルト軍と合流し戦闘開始、ゴーレム軍が鎮圧されたのは夕方であった。
雨の所為で冷える。風邪をひきそうだ。
援軍の報酬としてゴーレムより得た石材を大量にくれた。当分石材には困らなさそうだ。
案の定風邪をひいた。くそっ。
喉が痛い。熱が酷い。まともに動けん。
保存食をちまちま食べつつ、薬を飲んで暖かくしてひたすら寝る。
だいぶ楽になったが微熱と痛みと鼻水は続く。
少し本に手が伸びかけたが、読み耽って悪化するのが目に見えたので我慢。
多少動けるようになったので軽く食事を作る。
薬草スープぐいっと飲み干す。黒胡椒を入れすぎた。辛い。旨い。黒胡椒最強説。
体が軽い。ひゃっほう。
思わずテンションが上がり、ハルバートで素振りを始める。うん、やはり体を動かすのは気持ちが良い。
色々あったがそろそろ金槌を振りたくなってきた。しかし依頼が無いし、無駄に造るのもあれだ。
と思ったら、町で卸す商品の補填をしていない事に気付く。しばらくはのんびり造るかな。
というかゴーレム討伐で得た石材の山をどうしよう。というか何に使おう。倉庫を更に改良するか?
暑い。ていうか熱い。でも厚くはない。
そんな天気だったが嫌いじゃない暑さだ。
しかし工房に篭るには死ねる。という訳で近場の池にダイブしてきた。
気持ち良い。そろそろ夏本番か。虫対策をしなくてはならないな。
今年は美味い西瓜が出来るといいな。
途中、河原ではしゃぐコボルト達を見た。山の内部はまだ調査中で外で涼むしかないようだ。
今日も町で卸す用の商品作り。昼飯中に来客あり。
黒い鎧を纏い、ピリピリと肌に刺さるような魔力を放つ者だ。どう見ても魔王陣営です本当にありがとうございました。
勇者様に強力な剣を作ったとして殺しに来たのかと判断し、矢継ぎ早にロングソードを四本投げつける。
第一印象違わず、四本全てをひらりひらりとかわす。これはもうダメかも分からんね、と思いつつも全力で迎撃にあたる。
立て掛けてあったハルバードを引き寄せる力のままにフルスイング。が相手は一歩踏み込みピック部を回避して盾で受け止める。
詰んだ、と思っていたら相手は敵意は無い事を告げながら兜を脱いだ。長髪ブロンドの美人だった。
大変腕の良い鍛冶師だとは聞いていたが、まさかここまで戦える者だとは、と感嘆していた。魔王陣営なのにそれでいいのか。
しかし敵意が無いのに襲い掛かってしまったのはこちらの非。相手が人類の敵とは言え、頭を垂れて謝罪をすると向こうも改まって誤解を与えた事を謝罪してきた。
そこら辺の人間よりよっぽど礼節のある者だ。すげえ。
そこで美少女がはっとしてまた一礼をして名乗った。魔王軍最上位の魔王であると。
美少女が魔王そんなバナナ、と信じられなかった。顔に出ていたのか本当なのだよ、と苦笑いをされてしまった。
何でも魔王城には常に最強クラスの剣を備えて勇者達の指揮を高めるものなのだが、先代の時に戦闘中に砕け散ってしまったそうだ。
その為今回、この美少女魔王は人間の中に非常に腕が立つ、という噂のある自分の所に製造依頼をしに来たという。
疑問に思う事がある。わざわざ敵に塩を送る意味は? 史上では幾度と無く魔王は現れ、勇者に討たれている。それでもそんなものを備えるなんて。
というと、魔王側には魔王側の事情があるらしい。というより根本的に人間の認識を遥かに超えたものがあった。
魔王とは適度に人間を襲い、勇者に討たれるのが役目。そして勇者達を盛り上げるのも役目の一つなのだ、とこれでも魔王業は大変なのだぞ、と溜息混じりに言われた。
死ぬ事が役目なのか? と問えばその過程も大事であるがその通りだ、と言う。理解できない。
これによって魔界で動く経済があるのだと言う。本題はそこじゃない、殺される為の人生ではないか。辛くは無いのだろうか。
彼女は寂しそうに笑ってみせた。幼少より魔王になるべくそう教わってきた。ラストバトルという儚く、それでいて何よりも輝かしい一瞬に打ち震える幸せを得るのだ、と。
私にはそれ以外の幸せは何たるか、むしろそれ以外でどう幸せを感じられるか。それが分からないんだと語った。
なんとも不憫な人生だと思うが、本人がそれで良しとする以上、こちらからこれ以上何かする事もできる事も無い。
どうも後味が悪いというか……目の前にいる者はこれから死にに逝くようなものだというのは気分が悪い。
だが、仕方が無いことなのだろう、と引き下がり本題の依頼について聞くと、オリハルコンで剣を作って欲しいという事だ。
差し出されたオリハルコンを見て固まる。伝説級の金属だ。生きている内に見る事になろうとは思いもしない。
それをまさか自分が打つだなんて。汗が吹き出た。こんな大仕事、というか一世一代級がまだまだ未熟な自分にくるなんて。
その様子を見て魔王は、無理なら断ってくれていいのだぞ、と気にかけてくれる。
失敗は許されない。正直断りたい。だが、オリハルコンを打つ機会などこの先にあるだろうか?
鍛冶師としての興奮に負けて依頼を引き受ける事になった。また資料集め……今回は今ある資料だけでは難しいだろうから余計に時間がかかる。
三週間ほどの時間が欲しいと伝えたら、魔王はこちらの引き受ける意思に喜んでくれた。
今日一日は仕事を休むとしているらしく、今日はここに泊まらせてほしいとまで言ってきた。まさか小屋が役立つ時が来るとは。
昨晩は魔王と談笑しながら夕食に着いた。世界広しと言えど、魔王と夕食を楽しく共にした人間はいるまい。
依頼についても少し詰めた話をすると、資料集めなら魔王の方でやりくりしてやろうとの事だ。太っ腹な依頼主だ。
確かに一人で集めるには時間も質も量もかなり限られる。魔界の資料や単純に広域で探してもらえるなら越した事は無い。
早朝、魔王は城に戻ると発っていった。朝食を取るには早すぎるので、せめてと弁当を渡したら顔を綻ばした。
こうした食事も弁当などというものも私は初めてだ。思えば、こうして軽く話し合える者もいなかったな。
お前がいてくれて、そして噂の鍛冶師がお前であってくれてありがとう。
魔王はそう言って、黒い翼を生やして飛び立った。嬉しい事を言われたが、それと同時に複雑にも思う。
だからこそ、彼女の為にも頼られた役割だけはきっちりと果たそう。
一週間後に資料を届けられるまでに、出来る限りの準備を行う事にした。
片っ端から薪を掻き集める。ついでにコボルト達に会い、オリハルコンに関する情報も聞き出す。
が、流石に彼らの中でもオリハルコンに関する知識は乏しいらしく、鍛造技術も明確でないらしい。
依頼主が頼りという依頼というのも珍しい。
柄の案を練る。最高級の金属の剣だ。見劣りするような柄は許されない。
何よりこれがこれから先、後世にまで引き継がれるのか。
そういえば、常々歴代勇者の剣が消えてなくなるのは魔王達の所業だったという事か。
朝、コボルト達が集まってきた。明日より新採掘場での作業が始まるらしく、暇なのは今日が最後とオリハルコンを見に来たらしい。
流石に付き合いのあるお前達とは言え、依頼の材料を見世物にする訳にはいかない、と告げると大量の薪や石炭を見せた。
材料等を貢献する変わりにという事の様だ。確かに有り難いし必要な物である。
こういうあたり、道理を理解しているというかきっちりしているというか、しっかり考えて行動するから困る。
午後からは資料を漁るに漁った。勿論オリハルコンについては多少は記載されているが、いざ扱う時に役立つ知識は塵ほども無い。
仕方が無いと伝説の武具の図鑑も引っ張り出す。
伝説の武器はどういった種があるか。どういった物が無難か。
まさか雲を掴むような存在の武器を真剣に学ぶ時が来るとは。
いくつかの案を出す。
高貴さを引き立たせつつ、スタンダードな両刃の剣。熟練者仕様として棟側が特殊な形状の剣。
限界のラインまで細く長くした神速の剣。ぶ厚く片刃だけの耐久性と威圧感の高い剣。
魔王が来たらどれがいいかを聞いてみよう。それまでにどれでもいいように柄を揃えておこう。
と思ったが、わざわざ資料を届けるだけの為に魔王が来るだろうか? しまった、大誤算だ。
柄を丹念に作っていく。剣の種類に合わせて柄の装飾の度合いも変えていく。
思えば装飾の多い剣と言うのもあまり経験が無い。儀礼的な武具の図鑑を片っ端から読み漁り、知識だけは集めていく。
午後には柄も一通り出来上がる。
こちらの準備は出来た。後は資料を待つばかり。
なのだが、工房の中をうろうろしたり、無闇に炉に火を入れてしまう。
間もなくオリハルコンを打つという興奮と緊張と不安で、挙動不審になってしまっている。
今もベッドの上でこれを書いているが、この後眠れる自信が無い。
明日だ。明日やってくる。
そう思うと事の重大さに不安になり涙したり、緊張のあまり一人おろおろとしたり。
果てには一瞬だけ吹っ切れて笑い飛ばしたり、責任の重さに静かに病んでいたりする。最早情緒不安定である。
そんな時に兵士のコボルトが顔を出して、自分の奇行に青ざめる。
しどろもどろに事情を話すと、気持ちを落ち着かせようとミスリル銀で何か簡単な物を作ってくれと言われる。
ミスリル銀で簡単な物ってなんだよと思いつつも、震える手でインゴットを受け取る。
何を思ったのか、出来上がったのはミスリル銀のつるはしだった。うん、見事なまでにミスリル銀の無駄使い。
コボルトも馬鹿だ馬鹿がいる、と輝かしいつるはしを見つめながら呟いた。だがお陰で、気持ちが落ち着いた。
精神力を高める為、夜中に滝に打たれにいく。少し満月を過ぎた頃で明るい。
何時来るのかとそわそわする。思わず木材で椅子を作り、外で座って待ってしまうぐらいそわそわしている。
すると空からふわりと魔王が降り立った。今回は兜を付けてこなかったようだ。
やはり黒鎧に金髪は栄える。何より顔も整っており美しい。
今回マイナス点があるとしたら、大量の本を背負っている事ぐらいか。凄い違和感だ。
魔王は開口一番、先日の弁当が美味しかった事とその礼を述べてきた。
本当に良い子だが、どういった環境で生活し、それを窮屈と思っていないのかが窺え、複雑な気持ちになる。
どうやらまた一日、休みを得て来たらしい。
それらしい資料を集めたから、精査をかけねばなるまい、とその手伝いをすると言い出した。本当に魔王なのだろうか?
とは言え、彼女と過ごせるのだから嬉しい。絶世の美人と言っても過言でない女性だ。
時には談笑しつつ作業を進める。最近羽振りが良くて助かる。多少見栄を張った食事が提供できるのだから。
ある程度、資料も集め終ったところで今日は読み耽って理解を深める。
魔王は再び早朝に発っていった。また弁当を作って渡したら軽く断られたが、折角作ったのにと言えば簡単に受け取ってくれた。
断ると言っても顔は綻んでいたし、形だけであって内心は喜んでいたのだろう。きっとそうだ。そう思う事にしよう。
剣についてはぶ厚い威圧感のあるものがいいと言われた。ある意味聖剣なのに物々しいタイプを選択した。なんて魔王ださすが魔王。
この物好きめ、と言ってやると魔王は不敵に笑いつつ、幼少の頃より変わり者と呼ばれた者の感性を舐めるでない、と言い返された。
不敵に笑う魔王可愛い。今気付いたが何気に幸せ者の部類に入るのではないだろうか。
最もそれも依頼の間だけだし、彼女は彼女で死に逝く身である事を思うと、やはり複雑な気持ちにならざるを得ない。
何度も読み返し頭に叩き込む。一分のミスも許さない為にも、幾度と無くシュミレーションをする。
オリハルコンを手にする。いよいよ明日から手にかける。
魔王からは何時でもいいから、剣を造る時は呼んでほしい、と魔石を渡されている。
これを割ると魔王が持っている対の魔石が割れるとかなんとか。
鍛冶師の仕事というのを見てみたいのだという。だがいきなり呼んでもアレだし、ある程度形になりはじめてから呼ぶ事にしよう。
明日からは当分、日記を書く事も出来ないだろう。
日記を前にして何日かかったかを計算する。
冥の日を次の日、地の日から次週の風の日だから11日かかったのか。
凄い時間がかかった。しばらくは寝て過ごしたいが、最近畑仕事がなおざりになっている。休めないな。
依頼品完成の連絡用に魔石を砕いた。明日、魔王がやってくるだろう。
なんだかんだで魔王と共に過ごす時間は楽しかった。それもこれで終わりだと思うと何ともいえない気持ちになる。
日記を前にして何日かかったかを計算する。
冥の日を次の日、地の日から次週の風の日だから11日かかったのか。
凄い時間がかかった。しばらくは寝て過ごしたいが、最近畑仕事がなおざりになっている。休めないな。
依頼品完成の連絡用に魔石を砕いた。明日、魔王がやってくるだろう。
なんだかんだで魔王と共に過ごす時間は楽しかった。それもこれで終わりだと思うと何ともいえない気持ちになる。
昼頃になって魔王はやってきた。出来た大物の刀剣を見るや否やおお、と感嘆の声を漏らした。
どうやらお気に召したようだ。
魔王はそれを丁寧に丁寧に包んで抱えた。今日は休みがとれなかったのだよ、と寂しそうに笑った。
かなり色をつけられた報酬を渡してくると、魔王は飛び立っていった。
しばらくは日々を寂しく思うのだろう。
畑は雑草が生い茂っていたが、野菜もすくすくと育っていた。今日は草むしりの日。
畑の整理も一息ついた感じだ。
新鮮な野菜が食べたくなったので山を降りて買出しに。
念の為にと刃物研ぎの道具は持ってきたがいまいち精が出ない。
何なのだろうこの気持ちは。もしかしたらこれは失恋の思いなのかだろうか。
今まで武道と金属を打つ事だけに生きてきた事もあって、これがそうなのかは定かではないが。
だが、彼女に恋慕を寄せていた事を理解していたとして、自分如きにどうにかできたとは到底思わないが。
夏本番を向かえ、畑の周りを整備した。
ら、待ってましたとばかりに今年一発目の夕立が襲い掛かってきた。
間に合って良かったと胸を撫で下ろす。
夕立のお陰で今日の夜は涼しい。
小屋の方の布団を干した。持ち上げた時に良い香りがした。
これが魔王の香りかと少し興奮した。興味が無いと言えば嘘だが、それ以上に鍛治に関する事の方が頭の中で優先される。
だがこうして反応できる辺り、まだ自分は人間で男なのだろ認識できる。良いのか悪いのか。
人間である事男である事を捨てたとして、それで鍛冶師としての腕前が上がる訳でもないし、あって下がる訳でもないから良い事か。一応だが。
木陰で昼寝をしていると黒い姿の来客があった。魔王だ。
思わず息を飲んだ。幻覚だろうかと思ったが本物だった。
どうやら粗方仕事も片付いたらしく、勇者様が辿り着くまでは暇もできるらしい。そして行くあてと言ったらここぐらいしかないのだと。
流石に泊まるほどの時間は無いらしいが、一日いたりはできるらしい。
素直に嬉しい話で今日はただただ談笑し、夕食を共にした後帰って行った。
身に渇をいれて引き締める為にも、この山の奥であり隣接する霊峰に向かう。
遥か昔はそこにも人はいたらしいが今は里の跡しか残っておらず、大きな祠も点在している場所だ。
何時来ても身が清められる思いである。言うほど何度も来れる場所でもないが。
僅かな山菜を摘んで煮込み、それを夕食にした。
一日で往復できない距離である為、今日はこの里の跡で野宿する。
目覚めると主様が近くで草を食んでいた。何とも幻想的な。
邪魔するのも申し訳ないので、そっとその場を後にする。
途中にある沢で川魚を一匹頂いて朝食とした。塩焼き旨い。
家に着く頃には日がだいぶ傾いていた。
庭の椅子が木陰にあり、魔王が座ってうとうとと転寝をしていた。何これ可愛い。
聞けば来てみたはいいもののメモ書きで今日帰ってくるとの事だったから待っていたらしい。悪い事をした。
日暮れまでしか居られないとの事だったので、早めに夕食を作り共にした。
久々に旅人の客だ。製造、というよりも売って欲しいとの事だった。
在庫置き場に案内すると、しばらくあれこれ物色した後、二振りの刀剣を手にした。
試し切りはいいのだろうかと確認すると、貴方が作った物の切れ味をわざわざ確かめるほど無粋でない、と言われた。
評判が一人歩きしている気がする。恐ろしい話だ、と思っていたら知り合いに自分が作った剣を使っている者がいて、実際に振るった事があるそうだ。
しかし、常に最高の水準で仕上がるわけでもないのだが、と言うと、旅人はからからと笑ってみせた。
職人からすれば杜撰な扱いをされていたあの刀剣で、あれだけの切れ味が維持されている。
それだけでわざわざ試す必要は無いものだ、と軽快に言われた。嬉しい事だがそれはそれでハードルが上げられている気がする。
昨日の旅人の話だと麓の町をちょっとした軍隊が通るらしい。
武器卸すにはもってこいだ。いや買ってもらえないかもしれないが。
久々に金槌を握りひたすら槍を造る。
明日晴れるといいな。下山の準備をし、早めに寝る事にした。
今日は不貞寝。
麓に行く全ルートがぬかるんでいる。流石に大量の槍を担いで行ったら容易く滑落するだろう。
何の為に軍隊が来たかは知らないが、多分そろそろいなくなるだろう。
というか目的次第だが、晴れたのだから出発するだろう。
取らぬ狸の皮算用とは正にこの事、と溜息をついていると魔王がやってきた。
何時も食わせてばかりでは、と土産を持ってきた。
魔界のとある国の銘菓で入手困難なバームクーヘンだと言う。
たかがバームクーヘンで入手困難、と思って一切れ食べてみた。
うめぇ! 思わず声を上げて驚いた。魔王はにやにやしながら見ている。
なるほど、ここまで定番の流れなのか。
ふと思い出して近くの洞に。果実酒を漬けていたのを忘れていた。
酒の味はよく分からないがとりあえずまあ旨いのだろうと思う。
少し容器に汲んで持ち帰る。
軽く酒を飲んだし、今日はもう読書をして過ごそう。と、武具の図解を読み出す。
昼頃だった筈が気付けば夜になっていた。やはりアルコールには弱い。
珍しく早朝より魔王が訪れた。また手土産を持ってきたようだ。
どうやら酒らしい。何と言うかタイミングがまた……。
今日も鍛治は止める事にし、昼食を豪勢にして二人で飲む事にした。
昼間っから酒とはいい身分だ、と言ったら何たって王だからな、と言い返された。
忘れていたが本当にそういう立場の者なんだよなぁ。と言っても聞く限りじゃ、人間側の王位とは違うようだが。
それにしても彼女は酒に強い。結構なペースで飲んでいく。そして昨日の果実酒を目聡く見つけ、それも半分ほどさらりと飲む。魚かお前は。
気付けばとっぷりと暮れていた。やはり眠ってしまったようだ。魔王の姿は勿論無く、自分には毛布が掛けられていた。
次の機会では穴埋めをしないと申し訳がないな。
久々に町に商品卸しと刃物研ぎに行く。
食料を買い込み家に帰ろうとしたら行商人の一団と出会った。この辺りを通るなんて珍しいな。
と思ったら自分が造る武器が目当てだという。なんなら在庫を全部売ろうかと言うと、商品達は大はしゃぎをした。
今ある在庫を箇条書きにし、それをあの山から運べるかと問うと、今手持ちのだけ全部買います、と改まった。
大商人にはなれなさそう一団だな。
全部売り切れるというのも滅多にない事。
という事で今日は在庫の補填をすべく、金槌振るって剣だの何だのと造る。
しかし今日はやたらと旅人の来客が多い。それも依頼ではなく購入で。
何かあったのかと事情を聞くと、すぐ近くで行商人達が高額で剣を出しているそうだ。まじぼったくり。
この地方より遠くにいる人の多くが、名前こそ知れどこの場所まで知らないらしく、行商人が売る剣を見て近くに本人がいるのでは、とこぞって探していたらしい。
で、麓の町でここまでの道を知り押しかけてきたと。
確かに金にはなるがあまり売れすぎても補填が間に合わないし、材料の供給にも限界がある。
何より無理にこの山を登ろうとして遭難する者も多い。その為、旅人達にはあまり言い回らないよう頼むと快く了承してくれた。
自分が住む場所で死者が出るというのも気持ちが良い話ではないからなぁ。
また早朝から魔王が来た。なにやらどこか暗い。
正直聞くべきか悩んだが、恐らく魔王としてのしがらみに関する事なのだろう。
今日はよくお前とのような気楽な付き合いが、お前が私の部下であってくれればというような事ばかり言う。
こういう時何と言ってやればいいか分からないが、彼女は今の俺とのこの付き合いは良しとしているわけだし、
自分はここにいるし、何時でも魔王を歓迎すると伝えた。
今思えば失言だった。これから死ぬ彼女に何時でも、なんて酷な話ではないだろうか。
魔王は寂しげな笑みを見せた後、にっこりと笑ってありがとうと言った。
昼には魔王は帰っていった。そして夕方、遠くで爆破魔法を連続で打ち上げる音が聞こえる。
その意は祝砲。膝を突きうつ伏せに倒れ、日が昇るまで動く気にはなれなかった。
朝日が輝かしい。嫌味の様だ。
ゆっくりと起き上がり、近くの椅子に腰を掛けるが全身が軋むように痛い。
何も考えられないというのはこういう事なのだろうか。
そのまま動けずにいるとコボルト達が鉱石を持ってやってきた。交換する日だったか。すっかり忘れていた。
コボルトは自分の有様を見て真っ青になり自分の介抱をし始めた。正直、もう放っておいて欲しい。
付きっ切りで自分を看るコボルト達が早朝、大騒ぎを始めた。
気に留める事もなく、何を見る事も無く、そのまま真っ直ぐ天井に顔を向けていたら青ざめた魔王の顔が目の前に現れた。
一瞬何が起きているか分からず、別の意味で何も考えられなくなった。
その間、魔王はあたふたと何があった、大丈夫なのかとしきりにこちらに安否を問いかけてきた。
何かを言わなくては、と思うものの喉が渇いて声が出せなかった。
せめて何かを伝えたいと必死になって取れた行動と言えば、魔王の手を取り引き寄せ抱きしめる事だった。
コボルト達から口々に死ね、という言葉が聞こえた。後で詫びに行かなくては。
それからしばらく落ち着いた所で、お互いに状況を話し合う。
まずは自分の事から話すと魔王は照れながら、それほど大事に思われていたのか、ありがとうと言ってくれた。
コボルト達はあの旦那がか、やはり旦那もちゃんと性別があったのか、と口々に言い最後には死ねと言った。うん、詫びに行こう。
魔王はと言うと、二日前に城に帰った時には魔王城が陥落していたという事らしい。
どうやら勇者様達が早馬を用いて、一気に魔王城に攻め込んだのだ。
今まで勇者様達は徒歩だからと試算していた日数を大幅に短縮してきた。もしかしたら作戦として考えていたのかもしれない。
兎にも角にも魔王は命を落とす事も無く、魔王城陥落という形で人間側は勝利を宣言したのだという。
で、肝心の魔王の立場だがかなり困った事になったらしい。何せ前代未聞である為、魔界では長い時間審議を行ったらしい。
とりあえず、魔界としては魔王は倒されたって形で進むとして、死ななかった現魔王をどうしよう? という状態らしい。
何やら好きにしていいよ、な流れになってしまったので、とりあえずここに来たのだと言う。
魔王城を失い、寝る場所もないらしいのでしばらくは一緒に暮らす事になった。
昼と夜では魔王は休んでいてくれ、と言いテキパキと料理を作っていった。
不器用ながらも一生懸命さが伝わる料理だったがとても美味しく、涙が零れてしまった。恥ずかしい限りである。
ここ数日とは心機一転。ひたすら金槌を振るい鉄を打つ。
コボルト達への詫びも含め、既に受け取ってしまった材料分の交換物資を大急ぎで造る。
魔王は小気味の良い音だと言ってくれたが、それを気にする余裕はありはしない。
一本、二本とつるはし等の道具が凄まじい勢いで増えていくのを見て、流石の魔王もその異常性に顔を引き攣らせた。
早朝から夜遅くまでかかって、交換分と侘び分が出来上がる。
明日はこれをコボルト達の所に……どうやって運ぶんだこの量。
と呆然としていると、魔王が付き添い魔法を使って手助けしようと言ってくれた。
一人では何往復する事になったのやら。
ある者は心配して損をしたと罵倒した。ある者はちゃんと男だったかと安心した。
ある者は死ねっと悪態を付いた。ある者はあまりにも早すぎる祝福を祝った。
そしてコボルト達は盛大な祝いをしていた。流石に自分の復活祝いという事のようだったが。
事ある事に自分と魔王との事で祝いの言葉が投げかけられる。
それを魔王は困った顔をしつつも、嬉しそうに笑ってくれた。
自分は初めて全うな人としての幸せに触れた気がする。
一晩明けて一旦落ち着き。今後をどうするかを考える。
大きい依頼が続けば問題無いが、現実はそうも行かないだろう。
つまり二人で安定して食っていくには、更に何かをしないといけなくなる。
いっそ山を降りて何処かの工房かギルドに所属すべきかと考える。すると魔王は何故、一人でこんな所で暮らしているのかを聞いてきた。
昔は工房で働いていたが、大した努力も技術も無い奴が偉そうな事をほざいたから殴り倒して、一人で腕を磨くようになったと過去を話した。
魔王にお前は指導者には向かないな。集団に混じるべきではないと諭された。そんな気は元からあったさ。
昨日の話の所為か魔王は何か仕事は無いか、と催促してくるようになった。
そもそも戦う以外に何が出来るのだろうかと言ったら、色んな事ができるぞと胸を張った。
政治とか何とかとか、言い出して数十秒で知らない単語がぼろぼろ出てくる。
聞き方を変えてこの辺りでなら何が出来そうかと問うと、水脈を地図に起こすだの水路を作るだのなんだのかんだのと言い出した。
何やら幼少頃から多くの事を学ばされてきたらしい。土木は得意だぞ、と満面の笑みで言ってきた。
人間側にとってはとんでもない逸材かもしれない。
人間界においてどれだけ有効か、を見る為にもしばらく旅に出る事に決めた。
ついでに工業都市で学ぼう。
長旅になる為、早めにコボルト達と麓に伝えないといけないな。
おまけにある程度、物は揃えておかないといけない。
しばらくは忙しそうだ。
ひたすら製造する。なんか数日前も同じだった気がする。
魔王は魔王で家事などを手伝ってくれている。助かる事だが家事を手伝う魔王というのも不思議な話だ。
明日も延々と造る事になるので日記もそこそこに就寝。
疲れた。
が、目標としていた数は造り終えた。後は明日にでもコボルト達と麓に行けばいいだろう。
そうしたらいよいよ旅支度を整えられる。
今晩は残っている食料で旅に持っていけない物をしこたま使った、結構、いや滅茶苦茶豪勢なものとなった。
挨拶も済ませたし、コボルト達には倉庫のつるはしは適当に持ち出してくれ、と伝えたし大丈夫だろう。
この長旅で魔王には告白、いやプロポーズをしよう。
彼女も共に付いてきてくれる、というより共に生活をするつもりで仕事などを考えている。
うぬぼれとかで無く、彼女もまた自分に思いを寄せてくれているのだろう。
だからこそ、自分は彼女に明確にこの思いを伝えるべきだ。もう彼女が居ない世界など味わいたくは無い。
そしてこの日記帳は仕舞ってしまおう。見られたら恥ずかしすぎる。
これからは新調して、彼女が傍に居る事を考えた上で書き綴ろう。
一つの節目としては良いだろう。彼女ももう、討たれる事に幸せを見ていないのだろうし。
だからこそ、自分も一歩踏み出していかなければならないのか。
これからは自分が彼女を幸せにしていくのだから。
最後の最後でこの見開きのページを魔王に見られた。
恥ずかし過ぎて死にそうだが、顔を真っ赤にしつつも魔王が喜んでくれたから良し、いやプロポーズは格好良く決まらなくなった。死にたい。
鍛冶師「人里離れたところでひっそりと暮らしてる」 完
雰囲気が好きだわ
良い終わり方だったよ
Entry ⇒ 2012.10.06 | Category ⇒ その他 | Comments (1) | Trackbacks (0)
ウルフルン「見狼記…!?」
プリキュア達に敗北を喫し、バッドエンド王国の
居城へと戻ってきていた。
「ちょっ…ノックもせずにいきなり入ってくるんじゃないだわさ!」
苛立ちの収まらない彼は、マジョリーナの部屋へと乱入し、
ウサ晴らしに彼女のテレビを占拠しようとする。
「ぅるせぇ!! 俺ぁ、今、最ッ高に虫の居所が悪いンだッ!
張っ倒されたくなけりゃ、おとなしく そいつを寄越しやがれッ!」
テレビのチャンネルをザッピングをしていたが、
その時、彼の目は、とある番組に釘付けになった。
『今の時代のニッポンに、狼信仰が生きているというと―――信じるかね?』
画面には、そぼ降る雨に包まれた社殿の中で、
祝詞を奏上する老人の口元が映し出されていた。
ナレーションは尚も続ける。
『百年以上前に絶滅したというニホンオオカミ。
この獣が、今もどこかに生きていて不思議な力を放っている―――。』
(なん…だと…!?)
思いもよらぬ内容に衝撃を受けるウルフルン。
(…童話の世界の中じゃ、俺ら狼は人間や家畜を襲う悪役…昔っから、ずっとそうだった…。
…けどよ、何だ?この国じゃ、神の使いとして崇められてるなんて…こりゃ本当なのか!?
ンなの初耳だぜ?…ヘッ、だとしたら随分と皮肉な話じゃねぇか…。
いや…神そのものじゃ無くって「使い」ってのは、ちっとばかり癪だがな…)
(…まぁ、なんだ。プリキュアどもに負けて、ムシャクシャが納まらねぇから
気分転換に…ってのも少々アレだが、折角だから実際のところはどうなのか…
ここはひとつ、この俺様が直々に確かめてやろうじゃねぇか。)
「…行って来ンぞ。」
「ちょっ…プリキュアに負けたばっかりだって言うのに、今度はどこへ行くんだわさ!?」
「…埼玉だ。」
バッドエンド王国の居城から、埼玉のある山中へと転移してきた
ウルフルンだったが、その目の前に広がる一面の藪に閉口していた。
「テレビじゃ あんなに大きく出てたから、すぐ見つかるかと思ったのによ…。ケッ」
人間の背丈ほどもある薄暗い藪の中を、ひたすら かき分けて進む、
文句たらたらのウルフルンだったが、その内に、草木が切り払われた
ごくごく狭い平坦地へと行き当たった。
その平坦地には、半ば朽ちかけた木の鳥居が立ち、
そして、そこから奥まった場所に石造りの祠が置かれていた。
祠の大きさは地面から腰の辺りまではあるだろうか。
それが角石を積み重ねた基壇の上に載せられている。
また、風化しかけてはいるが、各部分に彫刻が施されていた
名残がうっすらと見える。
「んー、見た限りはアレに映ってたヤツとは、どうも形が違うな…
…ぁあ!?ひょっとして別の所に来ちまったみてぇだな…。くそッ…」
憮然とした表情で祠の周囲をジロジロと見回すウルフルン。
すると、彼はすぐに鳥居の前方に置かれていた一対の狼の石像に目を留めた。
日の光の差し込まない木々の中にあって、その体のところどころは苔に覆われ、
片方は固く口を閉じ、もう片方は反対にカッと口を開き、そのいずれもが猛々しい表情をしている。
―――まるで、この神域に侵入してきた魔性の者を―――そう、「彼」を威嚇するかのように。
狼像をしげしげと見つめるウルフルンだったが、
それも束の間、彼の表情は見る間に険しくなる。
「…オイ待てコラ。つーか、なんでコイツはこんなにアバラが浮いてんだよ。
ガリッガリじゃねぇか!俺ら狼は、もっと逞しい体付きしてるだろうがッ!
それに何だ!この不ッ細工な面(ツラ)はよォ!
どうせ彫るんなら、この俺様みたいに凛々しい顔に彫れってんだ!」
そして、ウルフルンが怒りに任せて
狼の像を蹴り倒そうとしたその時、
祠の下に続いていた細い道の方から、
彼の居る場所に向かって、何かが
登ってくる音が、かすかに聞こえてきた。
獣か?―――いや違う、足音からすると、どうも人のようだ。
「…うおっと、誰か来やがった!?」
ウルフルンは、急いで祠の後ろの藪の中に身を潜める。
歳は如何ばかりであろうか、彼の顔に刻まれた皺の深さは
彼が重ねてきたであろう長い年月(としつき)を感じさせ、
また、小柄ながら がっしりとした体付きや節くれ立った手は、
彼が長年携わってきたであろう生業を想起させるものであった。
老人は、着古した作業着に草履履きといった格好で、
杖も突かず、矍鑠(かくしゃく)たる様子で
少々急な坂道を、確実に、一歩ずつ登ってくる。
そして、彼は祠の前まで歩を進めると腰を落とし、
拍手を打つと頭を垂れて目を閉じ、無言のまま祈り続けた。
不意に頭上から声が響き渡った。
ハッと我に返った老人は何事かと顔を上げる。
―――そこには、祠の後ろから身を乗り出し、
獰猛な顔付きで彼を見下ろす黒い獣の姿があった。
「お…っ…ぉお…お…」
予想だにしなかった事態に、思わずその場に へたり込んだ老人は
大きく眼を見開き、しわがれた、しかし、はっきりとした口調で
こう叫んだ―――。
「お犬様ァ!!」
「…ぁあッ!? 誰が犬だ!誰がッ!!俺様は―――」
―――その時、ウルフルンの脳裏に ある考えが閃いた。
(…ん!?いや、待てよ…確か、あの番組じゃ、狼の事を確か…「オイヌサマ」と
敬った言い方をするって言ってやがったな…。ウルッフフフ…よォし、それなら…)
「…あー、ゴホンっ!…確かにテメェの言うとおり、俺様は『オイヌサマ』だ。
テメェが長年、俺様の事を拝んでやがったのは、よぉーっく知ってるぜぇ?
…で、だ。今日はそれに応えてテメェの前に姿を現してやった…ってワケだ。」
彼は目をしばたかせながら、
畏怖とも歓喜ともつかない面持ちで
両手を合わせウルフルンを伏し拝む。
「…なッ!?」
「ぉお…何とまぁ…有難い事で…。いや、有難い…有難やァ…
え、ハァ…そ、それでしたらば、わ…ワシの家で是非とも
おもてなしを…ええ、ハイ…ぁあ、有難ぇ、有難やァ…」
あまりに唐突な老人の挙動に少々戸惑いつつも、
ウルフルンは、スマイルならぬ悪巧みフェイスで
尊大な態度をとりつつ老人に語りかける。
「…ほっ…ほォ、そうか。それはイイ心掛けだなァ、ジジイ。
それじゃあ、その言葉に甘えさせてもらうとするか(ニヤリ)」
「へ…、へぇ…っ!」
どうにか平静さを取り戻そうと必死になろうとする様が見て取れた。
(…さぁーて、この後のコイツの反応が見ものだぜ…ウルッフフフ…)
老人が狼狽する様を見て、内心ほくそえみつつ、
彼に気付かれないように舌なめずりをしながら
ウルフルンは、踵を返した老人の後ろを付いて行った。
瑞々しい新緑に覆われた向かいの山の急斜面が迫っていた。
そこから目を転じ、谷間の奥も、そして その反対側の
遥か遠くに見えるのも、ただ、山、山、山ばかりだった。
「…おい、ジジイ。まだ着かねぇのか?
一体どんだけ俺様を歩かせるつもりだァ!?」
周囲に見えるものといっても、視界に入るのは
木と山ばかりの山道をひたすら歩かされて
苛立つウルフルンは、語気を荒くする。
「へっ…は、はァ…、いま少しでございますので…へェ…」
祠のあった場所を出て小半時も歩いただろうか。
二人が道を下って来た先に、ようやく集落が現れた。
足がすくみそうな程の深い谷を目の前に望み、僅かに開けた
山腹の急斜面に沿って、へばり付くように数軒の民家が点在していた。
しかし、そのいずれもが固く雨戸を閉じ、
昼下がりとは言え、人の気配は一向に感じられなかった。
「…おい、テメェの所の村は、この俺様がせっかく来てやったってぇのに
歓迎もしねぇのか?誰一人出てきやしねぇじゃねぇか。」
「あ、ハァ、いえ…決して左様な訳では、ヘェ、ございません。
…いや、村の者達は、もう何年も前に ここから出て行きまして、
今では、ここに住んでおりますのはワシ一人でございます、ヘェ…」
雑草が伸び放題となった畑の脇の細い道を通り抜け、
高台にある老人の家へと辿り着く。
昔ながらの木造の民家にトタン屋根といった風情の
老人の家の前には、猫の額ほどの畑。
そして畑の脇から坂を上がると、よく手入れされた庭に
季節の花々が目に鮮やかであった。
鴨居(かもい)に貼られた一枚の札に目を留めた。
札には長方形の和紙の上下に、
版木で摺ったであろうと思しき字と
岩の上に座った獣の絵が摺られている。
長い間風雨に晒されたからであろうか、
文字は、既に擦れて消えかかっていたが、
その下の、真っ黒い姿をした獣の絵は
未だにしっかりと残っており、それが為に、
その存在感を いよいよ増しているかのようにさえ感じられた。
「おい、ジジィこりゃ何だ?」
「…ああ、それは『お犬様』の姿を刷った
御神札(ごしんさつ)でございます。へぇ。」
犬だか何だか分かんねぇのが、俺様の姿だって言いやがるのか?」
「…えっ、ハぁ…左様でございますねぇ…
いや、何分 お札の『お姿』の絵の方にしましても、
お犬様の『お姿』を確かに見たという者が
本当におりましたかどうかも、今となりましては
定かじゃあ ございませんし…
ただ、この御神札を貼って以来、今の今まで、
火事を出す事も無く、泥棒にも入られたことはございません。
これも、お犬様のお力のお陰でございます。へェ…」
「しかも、こんなにボロッボロになったのを、
いつまでも後生大事に貼っておくってェのか?
…ハッ、随分と みみっちぃヤツだなテメェは。」
年毎に貼り替えねばならぬのは
重々承知してはございますので、
お叱りは ごもっともでございます、えェ…」
老人は、何とも申し訳ないといった面持ちで続けて答える。
「…とは申しましても、なんせ今まで
その札を摺っておりました、お犬様の『講』の者たちは、
ワシを除いては、皆がとうに亡くなりましてのぉ…。
…左様なモンで、このように、最後に残った1枚を
貼り続けておるのでございます。」
「いいや、わざわざ靴を脱ぐのも面倒だ。
俺は そこに座ってるから、後はテメェの好きにしろ」
ウルフルンは そう言い放つと玄関から外へと出て庭に回り込むと、
開け放たれていた縁側へ、腕を組んで ドカッと腰を下ろした。
「…チッ、シケた場所だぜ…」
手持ち無沙汰なウルフルンは、周囲を見回すが
彼の興味を惹くようなものは目に入らなかった。
しばらくの後、縁側に隣り合う座敷の奥から、
茶の用意を終えた老人が、ゆらりと姿を現した。
「おゥ、ご苦労だぜ。それじゃあ、頂くとするか。」
ウルフルンは盆の上に置かれた湯飲みに手を伸ばし、
淹れ立ての茶を一気に飲み干そうとする。
「ぅ熱ちィっ!! …ってか、渋いじゃねーか!! ナニ飲ませやがるッ!!」
ウルフルンは顔をしかめて
湯呑を口から放すと、力任せに地面に叩き付けた。
湯呑は、硬く踏みしめられた地面に激突するやいなや、
鋭い音を立てて砕け散った。
穏やかな微笑をたたえつつ、地面に散らばった
湯飲みの欠片を片付けはじめた。
「…オイ、どうしたジジイ。嫌そうどころか、
何だ、その まんざらでもねぇツラはよォ。」
「…いや、何と申しましても お犬様は お山の神様のお使い。
ワシらの畑を荒らす猪や鹿…害獣どもを喰ろうて下さる。
ゆえに お気性が荒うございますのは当然の事でございやしょう…。
なれば、例え茶の味がお気に召さぬとあらば、このようになされますのも、
また当たり前の事ですからのぅ。はっは…」
「…ったく、マゾかテメェは…」
片付けを終えた老人は、そう言うと、盆の上の皿に盛った
「十万石」という焼印の捺された白い饅頭を差し出した。
ウルフルンは、その饅頭を鷲掴みにして自慢の大きな口に放り込む。
「おう、こっちはイケるな。うん、うめぇうめぇ。(もぐもぐもぐ)」
(…っつーか、何だ?この饅頭は!? …うまい、うますぎる…!)
老人は、無我夢中に饅頭を頬張るウルフルンの横顔を、
満足げな表情で見つめていた。
聞こえるものと言えば、虫の声に野鳥の囀り、そして谷川の流れの音だけだった。
(…しかし、まぁ、なんだ。こうやってマッタリしてるのは、どうも俺の性には合わねぇ…
つーか、せっかくこんなクソな山の中まで来たんだ、手ぶらで帰れるかってんだよ。
なら、テメェのバッドエナジー、手土産代わりに たっぷりと戴いてやるぜ、ウルッフフフ…)
「…ジジィ、テメェには世話になったな。
…なら、俺の方からも礼をさせてもらおうか…」
「…っは!?ぇえ?いえ、わざわざそんな、
畏れ多うございます…いや、勿体無い事は…」
「ぅるせぇ!! つべこべ言わずに、受け取りやがれってんだよ!!」
掌に載せた黒い絵具を握りつぶし、真っ更なページへと塗りたくる。
「世界よッ、最悪の結末ゥ、バッドエンドに染まれぇーッ!!
白紙の未来を黒く塗り潰すのだァーッ!!」
と、周囲の風景が一変し、白昼の山里は
満月が天高く煌々と光る月夜へと変貌した。
素(もと)になるんだよォーッ!!! …って…。…ん?…んんんっ!?」
そう言い放ったのも束の間、ウルフルンは目の前の状況に驚愕する。
「…ぉお…、こりゃ…ぁ…」
唖然とした表情で周囲を見渡す老人。
しかし、その身体からバッドエナジーが
立ち昇る気配は一向に無かった。
ハァー…いや…こりゃ、たまげましたわい…」
(ちょっ、待てッ!この展開…この前の、
プリキュアどもと一緒にいたババァと同じじゃねぇか!!)
「…おいジジイっ!!」
「…!?…へっ…へぇ、何でございやしょう?」
「ジジイ、テメェは こんな所にたった一人で暮らしてて
何の不満も無ぇってのか!? んなハズは無ぇだろうッ!?」
「はァー…はい、左様でごぜぇます。」
こんな山ン中、遊び場は無ぇ、盛り場も無ぇ、
なァーんも無ぇじゃねぇか!」
「…は…えぇ…まぁ…はァー…。
…とは申しましても、何日かに一度は、
下の集落(ムラ)から『よろず屋』の
旦那さんが用を聞きに参ります、えェ。
それに半年に一度は、町まで出た息子が、
孫らと一緒に尋ねてきてくれますからのぅ。
…いや、先程、お犬様が召し上がられた饅頭も、
つい先日、孫らが土産に持ってきて
くれたモンでございまして…」
「ンな事ぁ聞いてねェ!!」
「…ひェっ…あっ…、いや、はァ…これはとんだ ご無礼を…」
えぇ…何かとございます。
…ですがねぇ、その事に対して若ェ頃はともかく、
この歳になりましたら、何にだって感謝して
生きていけるモンでございます。えぇ。」
「感謝…だと…!?」
ウルフルンは半笑いで老人に問い掛ける。
「…ほ~ぉ、『感謝』ねぇ…。
あんだァ?随分と面白い事を抜かしやがるじゃねぇか。
じゃあ何だ?テメェは一体、何に感謝して生きてるって言いやがンだ?」
「…『お山』…でございます。」
てっきり「親切」やら「情け」といった
陳腐極まりない単語が飛び出してくると思っていた
ウルフルンにとって、老人の発した言葉は意外なものだった。
この家の前の畑と、山からの水があればこそ…。
それも、全ては貴方様や、そして色々な神様が
おいでなさる『お山』の お陰でございます。
…ワシは、この『お山』に生まれ『お山』で働き、
そして、この『お山』に生かされまして、
この歳まで 大きな病気もせず過ごしてこられました。
えぇ…本当に有難いことでございます。」
老人はそう言うと、向かいに聳え立つ山へと向き直り、
両手を合わせて静かに目を閉じた。
…それとも…本気で言って…やがるのか?)
どうにも納得のいかない、釈然としない表情で、
老人を見下ろすウルフルン。
「…何に致しやしても、長い間
お会いしたいと思い続けてまいりました
お犬様にお目に掛かれただけでなく、
こうやって お接待までさせて頂きまして…
お陰様で、冥土への良い土産話が出来ましたわい。
あぁ………本当に有難ぇ事で…。ワシは果報者でございます…」
本来ならば、絶対的な悪の存在であるはずの自分に対して、
いくら認識のズレがあるといっても、何故こうもここまで
盲目的に絶対の崇敬を敢行するのか―――。
老人に対する忌々しさと、憐憫の情とが
半ば入り混じった感情に、ウルフルンは
戸惑いを隠せなくなっていた。
(…くそっ…なんかシラけちまったぜ…。)
「お犬様」の声の聞こえなくなった事に気付いた老人が目を開いた時、
辺りは再び先程と同じ、何時もと変わらない山里の風景へと戻っていた。
あたかも その場から掻き消えたかのように―――。
「…ぁあ…。また、お山にお戻りに
なられましたんですな、お犬様…
ハぁぁ…有難ぇ…有難ぇ…」
そう呟くと、老人は また合掌し、
その頭(こうべ)を深く垂れたのであった―――。
【了】
何分、文章を書くのは、どちらかというと苦手な方なので
未熟なところばっかりでお見苦しい限り…(;´Д`)
なお、文中に登場するアイテムは、イメージ的には↓のような感じです。
【狼の石像】
ttp://www9.plala.or.jp/sinsi/07sinsi/fukuda/ohkami/ohkami-01-2.html
【お犬様のお札】
ttp://www9.plala.or.jp/sinsi/07sinsi/fukuda/ohkami/ohkami-07.html
検索を掛ければ動画サイトで視聴できますので、ご興味の
ある方は是非ともご覧になってみて下さいね。
それでは、当方の駄文をお読み下さいました皆様に
御礼申し上げつつ、以上にて失礼致しますです。m(_ _)m
Entry ⇒ 2012.10.06 | Category ⇒ プリキュアSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
律子「彼氏のフリをしてください!」
P「……は?」
律子「どうか、このとーり! お願いしますっ!」
P「い、いやいや……、とにかく頭を上げてくれよ!」
律子「はい……」
P「……で、なんだって?」
律子「一日だけでいいので、私の彼氏のフリをして欲しいんです」
P「……」
P「一体なんでそんなことを?」
律子「実は……父と母が、いい加減に良い人見つけなさいとかなんとか言ってきて」
P「ふむ……」
律子「私として、今が一番大切な時期ですから、そういうことにうつつを抜かしたくないんです」
律子「で、ついつい……」
『彼氏ならちゃんといるから心配しないで』
律子「って、その場を誤魔化すために嘘ついちゃったんです」
P「それで?」
律子「そしたら、母が……」
『それならそうとはやく言いなさいよ! それじゃあ今度の日曜日に、家に連れて来て紹介しなさい』
律子「ということに……」
P「なるほど……」
律子「こんなこと頼める身近な男性って、あなたしかいないんです。だから、お願いしますっ!」
P「でもな……俺だってそんな、演技とかうまいほうでもないし、見抜かれてしまうかもしれないぞ?」
律子「……」
P「そしたら、もっと面倒なことになるんじゃないか? それより今からでも正直に言ったほうが……」
律子「……そう、よね……」
P「う」
律子「……ごめんなさい、無理言って」
P「いや、いいんだけど……律子ならすぐに、嘘じゃなく本当に、彼氏だって出来るだろうしさ」
P(例えば俺とか……なんて)
律子「……彼氏、か……お見合いで、なんてなぁ……」
P「……お見合い?」
律子「あっ、いえ……その、実はですね」
『もし彼氏とかいないなら、お見合いをセッティングしてあげるから』
律子「っていう話もあって……。それで、さっきみたいな嘘をつくことになっちゃったんですよ」
P「……」
P「引き受けよう」
律子「え!? ほ、本当!?」
P「ああ。そういうことなら話は別だ。精一杯、彼氏役を演じてみせるよ」
律子「ありがとうございます! そう言ってくれると信じていたわ~!」
P「あはは、まあ大船に乗ったつもりでいてくいれよ!」
P(……正直、将来の義理の両親に嘘をつくことなんてしたくはない)
P(でも、律子にお見合いなんて、ふざけんな! 律子と結婚するのは、この俺なんだ!)
P(まだこの思いすら伝えてないけどな!)
【日曜日】
P「……」
律子「それじゃあ、入ってください」ガチャ
P「……あ、ああ」
律子「なーに緊張した顔してるんですか? いつものプロデューサーらしくもない」
P「いや、でもさ……」
律子「大丈夫、格好もばしっと決まってるじゃないですか。取引先の営業に比べたら、こんなのマシでしょう?」
P「律子は随分余裕だな……」
律子「そりゃあ、私はあなたを信じていますから」
P「……」
律子「さ、行きましょう」
P(営業の方がまだずっとずっとマシだぞ……)
P(ご両親への挨拶……嘘とはいえ、ちゃんと出来るだろうか。下手な印象は与えたくないな……)
律子「えっと、彼が……そう、彼氏。ほらプロ……じゃなくて、――さん」
P「あ、ああ! 初めまして、お義父様、お義母様」
律子「!?」
P「俺……じゃなくて、私は、律子……いや、律子さんとお付き合いさせております、――と申します」
律子「……」
P「律子さん同じく、765プロでプロデューサーをさせて頂いていて……あっ、すみません、まず名刺を……」スッ
律子「……」
P「ええ、ええ……はい、そうなんです」
P「律子さんには初めて会ったときからティンと来るものがありまして」
P「目と目が逢う瞬間好きだと気付いたというか……それで……」
律子「……!」
P「……律子?」ボソボソ
律子「は、はい?」
P「どうしたんだ、顔が赤いぞ」
律子「い、いえ、なんでもないです」
―――
――
―
律子「……どうなることかと思ったけど」
P「ああ……無事に済んだ……みたいかな?」
律子「……」
P「……律子、さっきからちょくちょく調子が変わるけど、どうしたんだ?」
律子「い、いえ……その」
P「……?」
律子「……本当に口がうまいんですね、プロデューサー殿」
P「な、なんでだよ」
律子「最初にいきなり、『お義父様、お義母様』って言ったのもそうですけど……」
律子「付き合ったきっかけとか、どういう付き合い方をしてるとか、打ち合わせもしてなかったのによくスラスラ出てくるなって」
P「……まあ、俺なりにちゃんと準備してきたってことさ」
律子「さすが、敏腕プロデューサー」
P「あはは、そう褒めるなよ」
P(まあ、そういうことは普段から妄想しまくっているから、それが功を奏したんだろうな)
P(変態だと思われるだろうから、律子には言えないけど……)
律子「なんだか、聞いてるこっちが恥ずかしくなってきちゃいましたよ……もう」
P「……本当に、俺と付き合ってるって気になったか? なーんて」
律子「……まあ、多少は、かな? ふふっ」
P「……っ」
律子「プロデューサーと付き合える女の子は、きっと幸せですね。話を聞いていてそう思いました」
P「……そ、そう言ってもらえると、頑張ったかいがあったかな!」
律子「ありがとうございます。これでもう、大丈夫ですから」
P「あ、ああ……」
P(予想外の言葉が出てきてビックリしてしまった)
P(律子は本当にかわいいなあ!)
秋月一族はみんな結婚が早いんだよ(適当)
律子「……って、あら?」
??「……!」ササッ
P「どうした?」
律子「……いえ。プロデューサー、ちょっと耳貸してもらっていいですか?」
P「え?」
律子「あのですね……」ヒソヒソ
P「……!」ゾクゾク
P(り、りり、律っちゃんの耳打ち! 近い近い! お、おおお)
律子「あそこの陰、見てください。二本のアホ毛がちょこちょこ見えるでしょう?」ボソボソ
P「……アホ毛? ああ、たしかに」
律子「たぶんあれ……私の、従兄弟です」
涼「うう……な、なんで僕がこんなことを……」コソコソ
涼「見るからに仲良さそうだし、疑うことなんてないじゃないかぁ……」
P「従兄弟? なんでまた……」
律子「……たぶん、うちの両親の差し金でしょう。今日一日、私達を見張ってるつもりなんだわ」
P「ええ!? う、疑ってるってことか?」
律子「しっ、声が大きい!」
P「す、すまん……」
律子「……どうしましょう」
P「でも、別にどうするってこともないんじゃないか? このまま解散しちゃえば……」
律子「忘れたんですか? さっきご飯食べてるときに、自分で言ったこと」
P「さっき? ……あ」
『あはは! 今日は俺達、これからデートなんですよ! いやあ楽しみだなあ!』
律子「って、デレデレした顔で言ってたじゃない」
P「そ、そうだった……」
P(俺としたことが、ついついノリに乗ってしまって……)
律子「……こうなったら、無理矢理にでも涼をとっちめて口止めを……」
P「待て待て待て! そんな物騒なことはよくないって!」
律子「で、でも……」
P「もしそうしたとしたって、いつ口が割れるかわからないだろ? ムシャクシャしてバラすかもしれない」
律子「……まあ、そうね。あの子、ストレス溜めてそうだから」
P「……それならさ、律子。さっき言ってしまったことを本当にしてしまえばいいんだよ」
律子「本当に、って?」
P「デートするってこと」
律子「……本気で言ってるんですか?」
P「ああ! それに約束では、今日一日、彼氏役をするってことだっただろ?」
律子「随分良い笑顔ですね……」
P(とは言ったものの、実は内心バクバクである)
律子「うーん……」
P「……」ドキドキ
律子「……」チラ
P(かわいい!)
律子「……まあ、それがベストかもしれないわね」
P「!」
律子「でもプロデューサーは、本当に良いんですか?」
P「ほ、本当に、って?」
律子「私なんかと、デートして……」
P「良いに決まってるだろ!? 何言ってんだ、光栄だ! むしろお願いしますって思ってるよ!」
P「いいか、俺はな、どれだけ律子とこうしてふたりで――」
律子「わ、わかった、わかりましたから!」
P「……」
律子「も、もう……なんでそういう冗談、サラっと言えちゃうのかなぁ……」
P(冗談じゃないんだけど……でもとにかく、ラッキーだ! やったぞ!!)
P「じゃ、じゃあ……行こうか」
律子「え、ええ」
P「……よろしくお願いしましゅ」
律子「……ふふ。こちらこそ、よろしくお願いします!」
涼「……行っちゃった」
涼「ずっとひそひそ話してたみたいだけど、何を話してたんだろう?」
涼「それにしても、どう見ても本当に付き合ってるよね。仲良さそうだったし」
涼「これって意味あるのかな……まあ、一応僕も追いかけないと……」
涼「律子姉ちゃんのお父さんお母さんから、やらないとバラすぞって言われちゃってるし……」
タッタッタ
???「それじゃあ、私達も~……」
??「……あ、あずささん! そっちは違いますっ」
???「あら、私ったら……ごめんなさいね、千早ちゃん」
P「……な、なあ律子」
律子「どうしたんですか?」
P「張り切って出発したはいいけど……どこに行けばいいんだ?」
律子「えっ」
P「いや正直言って俺さ、今まで女の子とデートとかしたことなくて……」
P「だから、どういう感じにしたらいいか、よくわからないんだよ」
律子「そ、それを女の私に聞いちゃうんですか!? わ、私だってそんなの……」
P「……もしかして、律子もデートとかしたことない?」
律子「……」
P「……」
律子「ぷ、プロデューサーは、アイドルの子達とたまにふたりでどっか行ってるじゃないですか」
律子「きき、聞いたことありますよ、こないだも……」
P(話が強引に変えられた気がする)
P「まあ、それはなあ……あの子達に無理矢理というか」
律子「……無理矢理?」
P「……いや、そういう言い方はよくないな。俺だって楽しんでいたのは事実だし」
律子「……」
P「とにかく、俺自身が自分の頭で考えて、相手を喜ばせようとするデートなんてのは……、したことないんだよ」
律子「……そうですか」
P「だからさ……」
律子「……プロデューサーは」
P「ん?」
律子「アイドルの子達に、その……恋愛感情とか、抱いてないんですか?」
P「……まあ、そうだな。そもそも、アイドルにスキャンダルはご法度、だろ?」
P「だから、基本的には少し距離を持って接してる……つもりだ」
律子「……ふうん。その割には、あなたのことを悪く思ってない子は、何人かいるみたいですけど」
P「あはは、それは律子の勘違いだって!」
P「みんなとても可愛くて素直で、良い子ばかりだ。だから俺みたいな普通な男になんて、興味ないって」
P(そもそも俺には、律子という、片思いの相手がいるわけだしな)
律子「……ちょっとかわいそう、かな」
P「え? な、なんでだ?」
律子「なんでもありませんっ。まあ、これからは気を付けてくださいね?」
P「気をつけるって何をだよ……」
律子「それこそ、あなたが自分の頭で考えてください。そのうち刺されても知りませんよ?」
P「ええ!?」
律子「ふふっ、まあそれは冗談ですけど……でも、そっか……」
P「……」
律子「……そうなのね……私、てっきり……」
P「……?」
律子「とにかく……、今はそんなに、私のためにっていうのは考えなくてもいいですから」
P「いやあ、でも……」
律子「いま私達は、嘘の恋人。要するに演技でしょう? だから、そんなに気遣わなくてもいいのよ」
P「……」
律子「……なーに、その顔?」
P「いや……」
律子「……」
P「……そうだな、それじゃあ……もっと気を抜いて、適当にどこか遊びに行くとしようか!」
律子「ええ! それでいいんですよ!」
P(……まあ、俺としては……少しでも律子との距離を縮められれば、大満足だからな)
涼「あ、やっと動き出した……僕も……」←Pと律子を監視中
千早「……どうしましょう……一応、私だけでも続けた方がいいかしら……?」←Pと律子と涼を監視中
あずさ「千早ちゃ~ん? どこに行っちゃったの~?」←迷い中
―――
――
―
P「そんなこんなで俺達は、デートの定番(だと思う)、映画館へとやってきたのである」
律子「誰に言ってるんですか?」
P「あ、いや……ところで、何を観る?」
律子「うーん、そうね~……」
P「せっかくだし、何か面白い映画の方がいいよな。律子って普段……」
律子「……あ」
P「ん? 何か気になるのでもあったか?」
律子「い、いえいえ! あ、そ、それよりっ、あんなのはどうですかっ!?」ビッ
P「どれどれ……って、あれは……!」
『猿の木星 ~迫り来る北斗の群れ、そのとき冬馬は~』
律子「」
P「……」
P「えーっと……大ヒット映画、『猿の木星』の続編……」
P「翔太の死を乗り越えた冬馬は、平穏な日々を送っていた……しかしあるとき、再び北斗の様子が……」
P「ふたりの濃厚な……って、なんだこれ……」
律子「」
P「……律子、ああいうのが好きなのか?」
律子「ちちち、違いますっ!! な、なんであんなのが堂々と……!」
P「いや、別に隠さなくてもいいんだぞ? う、うん、大丈夫だから」
律子「本当に違うんですってばぁ!!」
P「じゃあ、さっき気になったのってなんなんだ?」
律子「う……そ、それは……」
P「……」
律子「……あれ、です……」
P「……アニメ映画?」
律子「い、いや、別にね! すっごく好きってわけじゃないけど、昔観てたから、だからちょっと気になっただけなんです!」
P(あれって結構最近のアニメじゃ……)
律子「もう、ほんと……それだけなんだから……」
P「……じゃあ、あれを観ようか」
律子「え? ほ、本気ですか?」
P「ああ。あれさ、ちょうど俺も観てたんだよ。円盤も買ったぞ」
律子「え、円盤って……よくそういう言い方、知ってますね。……意外と、そういうのに理解ある人?」
P「うん、まあ……そういう律子こそ」
律子「た、たまたまですっ」
P「そうか、たまたまか……ならしかたないな」
律子「そ、そうです、しかたない……で、それで!」
律子「……本当に観るんですか? いいの? あんなのデートっぽくないんじゃ」
P「デートだデートだって気を遣わなくていいって言ったのは、律子だろ?」
律子「まあ……そうですけど」
律子「……」クルン
律子「……ふふ……」
P(背を向けてひそかに喜んでる律っちゃんかわいい!)
P「じゃあ、俺チケット買ってくるから。律子は適当に時間潰しててくれよ」
律子「私も行きますよ。ひとりで並ばせるわけには……」
P「いやでも、結構長いぞ?」
律子「それでも、です。あなただけに負担かけさせるなんて、そんなの私が嫌なんです」
P「……そっか。それじゃあ、よろしく頼む」
律子「……ふふっ、へんなの。そんなことでよろしく、なんて言っちゃって」
P「い、いいだろべつに!」
涼「映画館に来たけど……うわ、すごい人だ。ふたりは、何を観るのかな?」
涼「というか映画なら別に、僕も一緒に観る必要はないよね。外で待ってれば……ってあれ?」
涼「……猿の木星? なにこれ……」
ざわざわ……
P「それでさ……そのとき千早が……」
律子「へー、そんなことが……ふふっ。そうなのよね、意外とあの子、笑いの沸点低いんだわ」
P(律子とふたりで行列に並んでいるが……こんなときでも、話題になるのは、やっぱりアイドルのことだった)
P(仕事の話、と言ってしまえば色気もないけど……)
P(それでもやっぱり、俺達はこういう話をしているときが一番自然でいられるし、楽しい気持ちでいられるのであった)
P「それにしても……」チラ
律子「なんですか?」
P「……律子の私服。かわいいな」
律子「ええ!? な、何を突然……!?」
P(今日のりつこ)
P(俺は、将来のご両親に失礼にならない程度にはしっかりとした格好をしているが、それに対して律子は……)
P(ふわふわしたスカートを持つワンピース、その上から薄手の白いカーディガンを羽織るといった格好だった)
P(髪型もいつものようなパイナップルではなく、長い髪を軽く結んで、胸の上に垂らしている)
P(律っちゃんかわいい!)
律子「そ、そんなにジロジロ見ないでくださいよ……」
P「いやあ、こういうのも新鮮だな! ふだんのスーツももちろんカッコかわいいけどさ!」
律子「……ほーんと、そういうことをペラペラ言えちゃうんですよね。お世辞は結構ですっ」
P「いやいや、冗談じゃないし、お世辞でもないぞ。写真に撮って部屋に飾っておきたいよ」
律子「な、何を言ってるんですか!? 一歩間違えたら、せ、セクハラよ!?」
P「あ、いやいや! まあそういう気持ちもあるけど、そうするつもりは決してないから!」
律子「も、もう……!」
律子「実際にやるとかやらないとかの問題じゃないでしょっ」
P「そんなに怒らないでくれよ」
律子「べ、べつに怒ってるわけじゃ……!」
P「あはは、じゃあそれは照れ隠しか? なーんて……」
律子「……」プイ
P「……」
P(なんだよ今の表情と仕草! かわいい!)
律子「……セクハラです」
P「あ、う、うん……もう言わないよ」
律子「そーです、言っちゃダメです」
律子「私以外の、例えばアイドルの子たちに言ったら、女の子によっては大変なことになりますからね」
P「……ということは、律子になら言ってもいいのか?」
律子「なっなな、なんでそういう解釈になるんですか!? そ、それだって……その……」
P「……」
律子「……あ、あんまり言っちゃダメです……。恥ずかしいなぁ、もう……」
P「……」
P(キュンキュンする)
律子「……なんとか、言ってくださいよ。これじゃあ私、恥ずかしいまんまじゃない……」
P「……言わない、律子以外には。そう心に決めた、いま」
律子「なんで倒置法……? そ、そういうことじゃなくてですね……!」
「お次のお客様ー。大変おまたせしました、こちらのカウンターへどうぞー」
P「は、はいっ! それじゃあ……行こうか」
律子「……ええ」
P(なんだか、へんな空気になってしまった。ちょうど順番が来て助かった……のかもしれない)
P(……やっぱり、律子はかわいいな)
P「はあ……結婚したい」
律子「!?」
P「あ、いやいや! なんでもない! なんでもないぞ!」
律子「そ、そうですか……」
服装これ?
かわぇぇ
すばせかは確かにやったことあります
>>66
その二枚目をイメージした。でもワンピースじゃなかったね、まあいいか
緑っぽい髪色をした女性OL「猿の木星をお願いしますっ! 大人一枚で!」
女の子に間違われそうな男の子「え、えっと……その、猿の木星を……はい」
P(随分人気があるみたいだな、猿の木星)
「お客様?」
P「あ、すみません。えっと、『劇場版アイドルマスター』を……はい、大人二枚……え、席?」
律子「……」ニコニコ
P「なあ律子、席どのあたりが――
律子「!」
P「……どのあたりがいい? 真ん中は埋まってて、前と後ろがあるんだけど」
律子「ど、どど、どこでも結構です」
P「そっか。それじゃあ……ここの……はい、後ろあたりで」
律子「べつに、喜んでませんけど!?」
P「何も言ってないじゃないか……」
「ありがとうございました。では、ごゆっくりとお楽しみください」
P「はい、ゆっくりします」
律子「何言ってるんですか……」
P「……さて、と」
律子「あ、待ってください。お金を……」
P「え? いいって、そんなの」
律子「よくないです。チャチャっと払っちゃうもんだから、さっきは出せなかったけど……はい」
スッ
P「……なあ、律子」
律子「なんですか?」
P「デートのときって、男が払うもんなんだろ? だから、いいって」
律子「……それは、きっと偏見です。それにこれは……本当のデートじゃないでしょう?」
律子「だから、受け取ってください」
P「でもなあ……」
律子「そうしないと、私の気が済まないんです。男性に奢ってもらって、それが当たり前なんて」
P「……わかった。それじゃあ、そのお金でドリンクでも買ってくれよ」
律子「ドリンク?」
P「ああ。さすがに二時間以上だから、何か飲み物も必要だろ?」
律子「……」
P「それならイーブンだ。だからさ」
律子「……あんなの、ふたつ買っても、チケット代に比べたらまだまだ足りないじゃない」
P「じゃあ、ポップコーンも付けてくれ。塩味な」
律子「そういう問題じゃ……!」
P「いいからいいから……ほら、開演までもう時間もないぞ。並ぼう」
律子「……」
ざわざわ……
律子「……あなたって」
P「ん?」
律子「……意外と、頑固なんですね」
P「こういうときくらい、カッコつけさせてくれよ」
ざわざわ……
律子「私相手にカッコつけて、どうするんですか」
P「……律子の前だからだよ」
律子「……それ、私以外に言ったら、勘違いされてしまいますよ」
P「……律子はどう思ったんだ?」
律子「……」
律子「もう、順番ね」
P「……そうだな」
P「……」
律子「……」
P(……なんだか、またへんな空気になってしまった)
P(俺が言ったこと……さすがに、律子も引いてしまったか? くそう、なんであんなこと……)
P(失敗、したかな――
ざわざわ……!
P「っ! ……それにしても、さっきからなんだ、この騒がしさ」
律子「そ、そうですね。尋常じゃないざわめき……」
きゃー! き、如月千早ちゃんですよね!?
うわっ、ホントだ! さ、サインを!
「通してください! きょ、今日はプライベートだから……ああ、見失っちゃう……!」
P「」
律子「」
P「……どうしよう」
律子「どうしよう、って?」
P「あそこにうちの看板アイドルがいる気がする」
律子「……そうですね。変装してるつもりなんだろうけど、雰囲気丸出しだわ、あの子……」
P「もみくちゃにされてるぞ……助けに行かないと」
律子「……」
律子「――待って」
グイ
P「え? でも、千早も困ってるだろうし……」
律子「行かないでください」
P「……律子?」
律子「……千早なら、大丈夫。こういうことは、何度もありましたから」
P「でも……」
律子「私達が行ったら、さらに大げさなことになるでしょう? だから……」
P「……」
P「千早……」
律子「……今日は……今日だけは、あなたは、プロデューサーじゃなくて」
律子「私の彼氏でしょう……?」
P「……っ」
律子「……どうしてもというなら、止めないけど」
P「……」
P「千早なら、きっと大丈夫だな」
律子「!」
P「うん、絶対そうだ……あぁほら、もう映画館を出て行っちゃったし」
律子「……」
P「見なかったことにしよう! 俺達が見たのは、千早の幻だ」
律子「……ぷぷ、な、なんですかそれ?」
P「あはは、なんだろうな、本当に」
律子「もう、わけわかんない……ふふっ。あなたも、私も……」
P「律子、トイレ済ませておけよ?」
律子「それもなんというか、ギリギリな発言ですけど……まあ、一応行ってきます」
P「ああ。さて、俺も行ってくるか……待ち合わせは、ここでいいか?」
律子「ええ。それでは!」
【女子トイレ】
律子「……」
律子「うわ……私ったら、すごい顔してるわね……」
律子「……ほんと、わけわかんないわ」
律子「いつもなら、あんなこと言わないのに……」
律子「……」
律子「ごめんね、千早……。私は……」
P「……」ソワソワ
P(こう、ひとりになってみると……なんか、落ち着かないな)
律子「……お待たせしました」
P「! お、おお、律子」
律子「すみません、遅くなって……」
P「いや、いいさいいさ」
P(……こういう俺達の姿は……まわりからは、カップルに見えているのだろうか)
P「でも、たしかに時間かかったな……もしかして大」
律子「フンッ!」
ドガッ
P「あ痛っ!? ま、まだなんにも言ってないだろ!?」
律子「言わんとしてることは顔見ればわかります! まったく……」
律子「女性は男性と違って、色々とあるんですよ。そういうところ無神経なんだから」
P「……ご、ごめんなさい」
【映画館】
P「……」
律子「……」
ヴ――……
フッ……
律子「あ、暗く……」
『お待たせしました。間も無く、劇場版アイドルマスターを上映します――』
P「……――って、好きなんだよ」
律子「……え? な、なに?」
P「こういうさ、映画が始まる前の暗くなる瞬間。ワクワクしないか?」
律子「そ、そうですね! たしかに……」
『チャオ☆ ジュピターの伊集院北斗です。エンジェルちゃん達も紳士達も、猿の木星をヨロシクね』
―――
『……ああっそんなっ……そこは汚ねぇ穴だろうが……!』
『冬馬の体に、汚いところなんてないさ……もう君の黒ちゃんも、立派な大猿に――』
―――
P(ひどいCMだ……しかし映画館のCMって、なんでこう大音量なんだろうな)
律子「……あの……プロデューサー」クイクイ
P「ん? どうした?」
律子「……他の人の迷惑になっちゃうから……耳、貸してください」
P「あ、ああ……」
律子「あのですね……」ヒソヒソ
P(本日二回目の耳打ちきた! ひゃっほうゾクゾクするぜ!)
律子「……さっきは、ごめんなさい」
P「ごめん、って何が?」
律子「……私のわがまま……わがままって言うのか、わからないけど」
律子「私の言うとおりに、千早じゃなくて、私を……」
P「……律子の言うとおりだと思ったから、そうしただけだよ。気にすることない」
律子「……そうです、か。そうですよね……」
P「……」
P(律子の性格的に考えて、今みたいに言っておくのが正解なんだろう……たぶん)
律子「あ、あと、あのことも……」
P「あのことって?」
律子「……蹴っちゃったこと。痛かったでしょう?」
P「……あんなの、それこそいつものことじゃないか。大丈夫、なんともないさ」
律子「……それでも、ごめんなさい。私、いつもいつも……」
P「……」
P「随分、素直なんだな。いつもの律子らしくない」
律子「……暗いから。普段言えないことでも……言えちゃうんですよ」
P「そっか……」
律子「そ、それだけ! ……あぁほら、もう始まりますよ!」
P「……ああ」
P(すでに照明を落とされて、会場は真っ暗だった)
P(スクリーンから溢れる光と、大音量で流れる騒がしい音だけが、この場所におけるすべてだった)
P(やがてCMも終わり、ホールはつかの間の静けさに包まれる。映画が始まろうとしているんだ)
P(誰もかれもが、画面だけに注目していく。俺と律子も例外じゃない)
P(でも……)
P(上映が開始されるその瞬間に、ふと眺めた、隣に座っている彼女の横顔は)
P(心なしか、赤く染まっているような気がした)
P(……暗闇だったから、きっと、気のせいだろうけど)
―――
――
―
律子「……」
P「……うぅ、グスッ……」
律子「な、なんですかもう……、男なのに情けないなぁ……」グスグス
P「律子こそ……ほら、クライマックスシーンの、雪歩の表情がさ」
律子「……たしかに、あれは凄かったわ……穴を掘りながら」
『私は生きています! 生きて、歌っていますぅ!』
『だから春香ちゃんも……一緒に掘りましょう!』
律子「って……」
P「思い出すだけで涙が……!」ブワッ
P(登場人物の名前が、どこかで聞いたことあるような気もするが……それはたまたまだ)
P(なんといっても今の映画はアニメ映画。俺達とは、全く関係のないものなのである)
P「……さて、このあとどうする?」
律子「そうね~……ちょっと早いけど、ご飯でも食べにいきますか」
P「そうだな。それじゃあ、この辺なら……」
テクテク
涼「……」トボトボ
涼「……知らなかった方がいい世界を、知っちゃった気がする」
涼「……でも……」
涼「いつか、僕に対して告白してきた男の子がいたけど……」
涼「あれは決して、おかしい感情じゃなかったんだ」
涼「愛という気持ちに、性別は関係ないんだね……!」
涼「ふふっ……それを知れただけでも、収穫はあったかな」
涼「……って、あれ!?」
キョロキョロ
涼「……ぎゃおおん!!」
通行人「」ビクッ
涼「律子姉ちゃんたち、どこ!? 見失っちゃったよぉ!」
涼「僕ってば、夢中になっちゃって……!」
涼「……」
涼「……ま、いっか」
涼「どうせ付き合ってるんだろうし、適当に報告しよう……」
涼「それよりはやくレンタルショップに行って、猿の木星の前作を借りないと……!」タッタッタ
P「あ! す、すまん……少し待っててくれるか?」
律子「どうしたんですか?」
P「いや、社長に伝言があったのをすっかり忘れてて。ちょっと電話してくる」
律子「……ふふ、わかりました」
P「悪いな。すぐ戻るから」
律子「急がなくてもいいですよ。行ってらっしゃい」
P「ええ、はい……そうです、以前……ああ、本当ですか! よかった……」
律子「……」
律子「やっぱり、あなたはプロデューサーなんですね……」
律子「こういうときも仕事、仕事」
律子「……まあ、なんでもいいけどね……私は、今日だけの彼女だし」
律子「……うん、そうよ……べつに、気にしてなんか……」
P「お待たせ」
律子「なんの話だったんですか?」
P「ん、ああ……その、な。今度の千早たちの――」
律子「ああ、そういうことなら言わなくても結構ですっ」
P「えっ」
律子「……あなたがプロデュースするユニットの話でしょう? 秘密にしたいこともあるでしょうから」
P「……。うん、そうだな」
律子「こんなこと、簡単にライバルユニットのプロデューサーに言っちゃダメですよ」
P「ライバルって……まあ、そうだけどさ」
P「でもそれを聞いたって、律子は竜宮小町のプロデュースに利用したりしないだろ?」
律子「ふっふっふ……わかりませんよ~? 私は、使えるものはなんでも使う女ですから」
P「……」
律子「なーんて……ま、自分で聞いておいてあれですけど、本当に言わないでください」
律子「そんなことで、あなた達との勝負において有利になんて、なりたくありませんから!」
P「……わかった」
律子「さ、そんなことより……ご飯、行きましょう?」
P「……そうだな。でもやっぱりちょっとさ、どこかで時間潰してから行かないか?」
律子「え? どうして急に……」
P「いやぁ実は、ポップコーンがまだ腹に残ってるんだよ。ははは」
律子「……」
P「美味しいご飯を食べるのは、空腹になってるときが一番だ。あ、でも、律子はそうでもないか?」
律子「うーん……そうでも、あるかも……割とおなかに溜まるのよね、ポップコーン」
P「だろ? このへんはショッピング街だし、いくらでも暇もつぶせるだろうから」
律子「……いいんですか?」
P「なにが?」
律子「……デート、長引いちゃいますよ? 家に帰るのが遅くなるわ」
P「だから言っただろ、律子とのデートは望むところだってさ!」
律子「ま、またそういう……もう、わかりました。どこへなりと連れてってください!」
P「よしきた! それじゃあまずは……」
P(……よかった。なんとか納得してくれたみたいだ)
【オシャレで高級な洋服屋さん】
律子「ず、随分オシャレで高級な洋服屋さんですね」
P「たしかに……」
律子「たしかに、って……あなたが入ろうって言ったんじゃないですか」
P「いや、入りやすそうな雰囲気だったじゃないか……」
律子「……うわ。私の知ってる洋服の値段より、0がひとつ多いわ……」
P「なるほど、律子の服はそれくらいなのか」
律子「そーいうこと、計算しないでください」
P「……」
律子「……うわあ。やよいが見たら卒倒するんじゃないかしら」
律子「これで何回……これ買うくらいなら……」ブツブツ
P(……選択をミスしてしまった感がある)
P「ま、まあ見るだけならタダだし、さ!」
律子「そうですけど……」
P「律子は、こういうの憧れないのか?」
律子「……そりゃあ、私も女ですから」
律子「こういうハイブランドで身を固めてみたいって気持ちも、まあ、なくはない……かな」
P「でも買わない、と?」
律子「何か特別な日でもない限りね」
P「そうか……」
律子「……」チラ
P「……試着、してみたらどうだ?」
律子「ええ!? ほ、本気で言ってるんですか?」
P「さっきから見てるそのジャケット。きっと似合うって」
律子「で、でも……」
P「あ、店員さん、これいいですか? ええ、この子に試着を……」
律子「あーもう、勝手に話を進めないでくださいっ!!」
シャッ
律子「うう……」
P「……綺麗だ」
律子「い、いきなり何を言ってるんですか!? それにこの場合、綺麗って表現はふさわしくないです!」
P「じゃあなんて言えばいいんだよ?」
律子「……そうね、似合ってる、とか?」
P「似合ってるよ、律子」
律子「ほーんと、口が軽いんですねっ!」
P「本音だって……ああもう、律子はかわいいなあ!」
律子「!?」
P「あ、いや……」
律子「……」
律子「……こんなの、全然かわいくなんてないわ」
P「えっ、実際着てみたら気に入らなかったか?」
律子「そういうわけじゃないですけど……確かに、生地も良いし、デザインも私好み」
律子「でも……」
P「……」
律子「……今日の私の格好に、合ってないです。恥ずかしいわ……」
P「そんなことないだろ」
律子「いーえ、そんなことあります。ワンピースの上にこういうジャケットって、普通はナシなんですっ」
P「そういうもんなのか……全然、不自然じゃなく見えるけどな」
律子「そういうのは疎いんですね……ステージ衣装のことは随分詳しいのに」
P「あはは……」
律子「……まあ、あなたが褒めてくれたのは、その……ちょ、ちょっとは嬉しかったですけど」
律子「でも、出来ればもっと……、ちゃんとしたくて……だから……」
P「あ、店員さん。このシャツとスカートも……ええ、この子に。いいですか?」
律子「本当にあなたって人は、私の話をへんな風に解釈するんですねっ!!」
シャッ
律子「うう……」
P「……綺麗だ」
律子「い、いきなり何を……って、もういいですこのやり取り!」
P「今度はどうだ? 気に入ったかな」
律子「……」
律子「ま、まあ、それなり……、かな。やれば出来るんですね、あなたも」
P「そうか、それはよかった! 服も喜んでるよ!」
律子「ったく、まーた軽々しくそんなこと言っちゃって……」
P「今度はこれはどうだ? 試着してる間に見つけたんだけど」
律子「私は着せ替え人形じゃないですっ! ……それに、それはダメ」
P「えっ」
律子「それなら、こっちの方が……あ、でも、こういうのも合うかもしれないわね!」
P「……」
P(なんだかんだで楽しんでる律っちゃんかわいい!)
ありがとうございましたー
律子「……あれだけ色々着て、結局何も買わなかったですね」
P「でも結構、楽しんでたじゃないか」
律子「……まあね」
P「やっぱりなんだかんだ言って、律子も女の子なんだな。ショッピングが好きなんだ」
律子「当たり前ですっ。もう……なんだと思ってたんですか?」
P「あ、いや、深い意味はないんだけど……気を悪くしたならすまん」
律子「べつに、怒ってるわけじゃないですけど……自分でも、珍しいとこ見せちゃったと思うし」
P「……」
律子「プロデューサー?」
P「……悪い、ちょっと催した。トイレ行ってくるよ」
律子「……ふふっ。ほーんと、突然ですね。ごゆっくりどうぞー」
P「お待たせ」
律子「いーえ。でも随分、時間かかりましたね」
P「ま、まあな! 大きい方だったか――」
律子「ていっ」
ピコッ
P「あ痛っ!? な、なんで……!?」
律子「そーいうことは、女の子の前じゃ言わないの。まったくもう……無神経にも程があるわ」
P「でも本当のことだったから……」
律子「また蹴りを食らいたいんですか?」
P「……なんでもないです」
律子「さっきの反省を踏まえて、デコピンにしてあげたんですからね。ふふっ」
P「うん、ありがとう……?」
律子「何言ってるんですか、ありがとうって……ふふふっ♪」
律子「それじゃあ次は、どこに行きます? プロデューサー殿っ」
P「そうだなぁ……じゃあ――」
あずさ「あら?」
律子「……」
P「……」
あずさ「まぁ、千早ちゃんを探していたら、律子さんたちに会えるなんて~! ふふ、こんにちは」
律子「お、おはようございます……あずささん」
あずさ「もう、律子さん? 今はお仕事じゃないんだから、おはようございますじゃないでしょう?」
律子「……そうですね……あはは……」
P「……き、奇遇ですね」
あずさ「そうですね~。プロデューサーさんたちは、どうしてここに?」
P「そ、それは……」
P「……おい、どうする……?」ヒソヒソ
律子「どう、って言っても……」ヒソヒソ
あずさ「?」
P「ここは、正直に事情を話したほうがいいんじゃないか?」ヒソヒソ
律子「……そうですね。あずささんのことだから、ポワポワしてへんな風に誤解しちゃうかもしれないし」ヒソヒソ
P「だな。よし……」
P「あずささん! 実は俺たち――」
あずさ「……あ、そうだったわ!」パンッ
P「え」
あずさ「私、元々あなたたちを追いかけていたんですー。千早ちゃんを探すのに夢中で、すっかり忘れていました」
律子「私達を……?」
あずさ「ええ。ふふっ、律子さんたちが秘密でデートするって聞いていましたから、確かめようと思って~」
P・律子「「!?」」
あずさ「……あ」
あずさ「わ、私ったら何を言って……いけないわ、秘密だったのに」
律子「あ、あずささん……それ、どこの情報ですか……?」
あずさ「え? 音無さんが教えてくれたんですよ」
P「音無さん?」
あずさ「ええ。たしか~……」
『詳細は確かではないが、プロデューサーさんと律子さんが秘密でデートする情報を掴んだ』
『彼らは、我々に内緒でお付き合いをしている可能性がある。絶対に許されることではない』
『……我々に必要なことはなにか? はい千早ちゃん!』
『イエスマム。真偽を確認することですっ!』
『そのとおり! そのとおりなのよ~! というわけで……ごにょごにょごにょ』
あずさ「ということがあって~……」
P「……」
律子「……」
律子「……小鳥さん……昼寝してると思ったら、聞いていたのね……」
あずさ「私としては、そんなのお二人に悪いわーって思ったのですけれど」
あずさ「音無さんと千早ちゃんが、どうしてもって言うから……」
P「……」
あずさ「あ、でも、こういう言い方はダメね……私ひとりだけ、責任逃れをしているみたいです」
あずさ「ごめんなさい、プロデューサーさん、律子さん。こんな真似をしてしまって……」
ペコリ
P「あ、いえいえ、べつに邪魔されたってわけでもないですし……」
律子「……えーっと……ということは、小鳥さんと千早も?」
あずさ「ええ。音無さんは独自に、千早ちゃんは私と一緒に、とのことだったんですけれど……」
キョロキョロ
あずさ「……ふたりとも、いないみたいですね。どこにいるのかしら?」
P「……」
P(あのとき千早が映画館にいたのは、そういう事情があったのか……)
P(音無さんはなんだかわからないけど、どこかですれ違ったりでもしたっけかな?)
あずさ「……私ったら、ついつい、全部話してしまいましたね」
P「いえ、助かりました。……ん? 助かったってのもおかしいかな」
あずさ「うふふっ、ところで~……律子さん?」
律子「は、はい! なんですかっ?」
あずさ「どうやら、音無さんが言っていたことは本当だったみたいね?」
律子「! あ、いや、それは……!」
あずさ「もう、それならそうと言ってくれればよかったのに。私と律子さんの仲じゃない」
P「あはは、あずささん、実はそれ――」
グイ
律子「……」
P「……律子?」
あずさ「他の人には、内緒にしておいてあげますね」
あずさ「へんに噂されるのも嫌でしょうし、私がばしっと、噂は嘘でしたって言っておきますから」
律子「……じゃあ、お願いしますね!」
あずさ「はい、まかせておいてください!」
あずさ「それじゃあ私、今度こそ、迷子の千早ちゃんを探しにいきますね」
律子「あ、はい」
あずさ「それじゃあ、ごゆっくり~♪」パタパタ
P「お気をつけて……本当に……」
P「……なあ、律子」
律子「……なんですか?」
P「あずささんに、ちゃんと言っておかなくてよかったのか?」
律子「……」
P「あずささんにまかせたら、なんか余計にえらいことになりそうな気がするんだけど……」
律子「……なんとなく、ですけど」
P「……?」
律子「なんとなく、その……言いたくなかったんです。今日のこと」
P「なんでまた……」
律子「あーもう、わかりませんっ! 私に聞かないでくださいっ!」
律子「そ、それより! もうそろそろ、いいんじゃないですか?」
P「そろそろって?」
律子「ご飯です。ちょうどいい時間でしょう?」
P「っ!」
律子「……?」
P「ああ、そうだった! えっと……うわ、ギリギリだ」
律子「え? ギリギリって何が……べつに、そこまで急がせてるわけじゃないですよ?」
P「律子、ちょっと急ごう」
ギュッ
律子「……!? て、っててて、手!?」
P「わるい、今だけ我慢してくれ」
律子「そ、そんなこと言われても……何がなんだか……!」
P「走るぞ」
律子「ええ!? ちょ、いきなり……わ、わかっ、わかりましたからっ!」
―――
――
―
律子「ぜぇ、ぜぇ……こ、ここ?」
P「あ、ああ……う、オエエ……」
律子「……お互い、体力ないですね」
P「そうだな……」
律子「あはは……アイドルの子たちなら、これくらいなんともないんでしょうけど……」
P「あの子たちは、頑張ってるからなぁ……」
律子「……ほんと、そうですよね……」
P「……プロデューサーって、体力勝負なところもあるけどさ」
律子「あの子たちには、やっぱりかないませんね……ふぅ」
P「……」
律子「……で、なんでここなんですか? 説明してください、説明」
P「……ま、追々な。食べながら話そう」
【オシャレな高級レストラン】
律子「……」
P「……はい、ええ。予約してた……はい、すいません、ちょっと遅れて」
律子「……」
P「どうした?」
律子「あのっ!!」
P「きゅ、急に大きい声を出すなよ……この店、そういう感じじゃないだろ?」
律子「あ、す、すみません……じゃなくて、なんで私が悪いみたいになってるのよっ」
P「ほら、案内されるから、行こう?」
律子「……色々聞きたいことありますけど……本当にちゃんと説明、してもらいますからね」
P「わかったわかった……」
――♪
律子「……外から見たときは、わからなかったけど……」
P「……」
律子「この店、相当……アレですよね」
P「ああ……高級だ」
律子「……普通、予約とか必要な感じなアレですよね」
P「ああ……なんといっても高級だから」
律子「予約、してたんですか? っていうかまあ、してたみたいなアレですけど……」
P「ああ……高級だから、そういうことも必要だろう」
律子「いつ?」
P「……今日だよ」
律子「……でも今日は私達、ずっと一緒にいましたけど、そんな素振りは」
P「さっき俺はさ、社長に伝言があると言ったよな」
律子「ええ、それで一回、電話をしに……」
P「あれは嘘だ」
律子「……」
P「本当は、ここの予約をするための電話だったんだよ」
律子「……」
P「以前一度、撮影で使わせてもらったことがあってさ」
P「そのことをオーナーが覚えていてくれて……、急な予約だったんだけど、便宜を計ってくれたんだよ」
律子「バカじゃないの……」
P「……うん」
律子「それならそうって、普通に言ってくれればよかったのに……」
P「……そうだな」
律子「そんなことのために、私はあのとき……」
P「……」
律子「……今日の私の格好だって、そう。あまりに普通すぎて、かなり場違いじゃないですか」
P「そんなことないって……」
律子「あなたがしっかりした格好してる分、こういう場所じゃ、余計に浮くんですよ……」
P「……すまん」
律子「……もっと普通のところで良かったんですよ。居酒屋だってなんだって」
P「……背伸び、しすぎたかな」
律子「わかってるじゃないですか……」
律子「本当に、そう。そのとおりすぎて、涙が出てくるわ」
律子「べつに、どこだって、なんだってよかったんですよ」
律子「私は……あなたが、いれば……」
P「……」
律子「……プロデューサー」
P「なんだ?」
律子「……あなたは今日……恋人のフリをしてくれてるだけですよね」
律子「それで、私達は……嘘の恋人ですよね」
P「……そうだな」
律子「……だったら……」
律子「なんでそういうこと……私なんかのために、してくれるんですか?」
P「そんなの、決まってるだろ」
律子「……」
P「律子のことが、好きだからだよ」
律子「……――っ!」
P「律子のことが好きだから……、喜んで欲しかったんだ」
律子「……」
P「律子の嬉しそうな顔が見たかった。だから、俺なりに頭をひねったんだよ」
律子「……」
P「自分でも、慣れないことをしたと思う」
P「……いや、よく考えたら……、今日一日、全部が全部、慣れないことばかりだった」
律子「……」
律子「バカじゃないの……」
P「……うん」
律子「こんなことされたって、嬉しそうな顔、なんてできません」
P「そうみたいだな……」
律子「……こ、こんなことされたって……涙しか出ないわ……もう」
律子「バカ……!」
――♪
律子「……」
カチャ カチャ
P「……」
モグモグ……
P(そのあと間も無くやってきた高級なお食事を口に運んでいる間……)
P(俺達は、ずっと無言だった。乾杯の言葉すらない)
P(耳触りの良い高級なピアノ・クラシック)
P(時折フォークやらナイフやらが高級な食器にぶつかって鳴る高級な音。耳に入るものは、それだけだ)
P(言葉は交わさない。いや……、正確には、交わす言葉が見つからなかった)
P(……律子は、俺の発言を、どう思っているんだろう?)
P(そのときの俺の頭には、ただそのことしかなかった)
P(味なんてわかるか)
―――
――
―
律子「……ごちそうさまでした。美味しかったです、とても」
P「あ、ああ。そうだな、確かにうまかった」
律子「……あの、お金を……」
P「……」
律子「……もう」
P「俺の言いたいこと、わかってくれたみたいで嬉しいよ」
律子「今度は何を買っても、イーブンになりませんよ。こんなの……」
P「いらないって。ドリンクも、ポップコーンも」
律子「でもそれじゃあ、私の気が済まないんです。さっきも言ったでしょう?」
P「……それじゃあさ。代わりに一個だけ、して欲しいことがあるんだ」
律子「なんですか?」
P「さっきの返事、聞かせてくれないか?」
律子「……」
律子「さ、さっきのって?」
P「律子のことが好きだって言っただろ?」
律子「……」
P「……まあ、確かに、言葉は足りなかったと思う」
律子「え……?」
P「俺は律子のことが、好きだ。だから――」
律子「なな、何度も言わないでください! ひ、開き直ってるわね……?」
P「だからさ、付き合って欲しいんだよ」
律子「……っ」
ざわざわ……
P「……場所、移そうか。店の前だもんな」
律子「え、ええ……そうですね」
【公園】
P「ここなら、いいかな……誰もいないし」
律子「……」
P「律子」
律子「は、はい!」
P「改めて、言うよ。冗談でもなんでもない、本音を……」
律子「……」ゴクリ
P「……律子」
P「俺と結婚してくれ」
律子「」
P「頼む、頼むよ! 俺もう、律子のことが頭から離れないんだ!」
律子「」
P「生涯を捧げるのはお前しかないって思ってる! だから」
律子「」
P「ほら、婚姻届持ってきたからさ……な、な?」
律子「はぁあああ!? こ、こ、こん……!?」
P「実はさ、こんなこともあろうかと役所行って貰ってきたんだ」
律子「何を想定していたんですかっ!?」
P「土下座か? それくらいのこと、いくらでもするぞ!」
律子「ち、ちがっ……そういうことじゃなくてですねっ!」
P「このとおり……!」ズサッ
律子「フンッ!!!」
ドガッ
P「おうふっ あ、ありがとうございますっ」
律子「とにかく落ち着きなさいっ!」
P「あ、ああ……ごめん」
律子「……あの……本気で言ってます?」
P「本気も本気だ。律子と結婚したい」
律子「……さ、さっきと言ってること、違うじゃないですか。レストランじゃ、その……」
P「……まあ、確かに……」
律子「いい、いきなり結婚なんて言われても……その、私……!」
律子「無理です!」
P「っ!」ガーン
律子「む、無理無理無理……! ああもう、なんなのよもう……!」ワシャワシャ
律子「こんなこと言われるなんて……想定の範囲外だわ……!」
P「……そ、そんな……一体なんで……?」
律子「本当にわかってないんですか!?」
律子「……ごほん! いいですか、よく聞いてください」
P「はい」
律子「まず第一に、私がプロデューサーに彼氏役を頼んだその理由です」
P「理由……」
律子「私は、両親にお見合いをセッティングされそうになったから、嘘をついたんです」
律子「彼氏ならいるから心配しないで、って」
P「そ、そうだったな」
律子「……お見合いが嫌だった理由は?」
P「……今が一番大切な時期だから、そういうことにうつつを抜かしたくない、と」
律子「そうです、そのとおりです」
律子「だからまず、時期的に考えて、今は結婚とかはするべきじゃないんです」
P「じゃ、じゃあ……!」
律子「いいから、余計なことは言わずに私の話を聞きなさい」
P「わかりました……」
律子「次に、お金です」
P「えっ」
律子「自慢じゃないですけど、私はそれなりに貯金はあります」
P「あの」
律子「でも、急にそういう話になるとは思ってなかったから……」
律子「今の貯蓄じゃ、もろもろの費用のことを考えると、まだまだ全然足らないんです」
律子「お金の見通しも立たずに、将来設計を立てることはできません。そうですよね?」
P「そのとおりです……」
律子「プロデューサー。あなたは、貯金してますか?」
P「ま、まあ、多少は」
律子「いくら?」
P「えーっと……これくらい」
律子「甘いわ! 甘すぎです!」
P「ご、ごめんなさい!」
律子「まったく……よくこんなことで結婚なんて言えたものね……」
律子「最後に、その……」
P「……?」
律子「これは、まぁ……どうでもいいっちゃ、どうでもいいことなんですけど」
P「な、なんだ? 急に歯切れが悪くなったな」
律子「……あの日、あなたは……」
『律子ならすぐに、嘘じゃなく本当に、彼氏だって出来るだろうしさ』
律子「って言ったんです。覚えてますか?」
P「うん? ああ、たしかそのようなことを言ったような」
律子「それで、私は……」
『彼氏、か……お見合いで、なんてなぁ……』
律子「って言ったんですよ」
P「そ、そうだったな」
律子「……つまりですね、その……」
律子「……私は、結婚とかするなら……」
律子「もっとちゃんと段階を踏んで、からのほうがいいんです」
P「……まあ、そりゃそうだろうな。大抵の人はそうだ」
律子「わ、わかってるなら、いきなり結婚とか言わないでください!」
P「すいません……少し、先走りすぎた……」
律子「だからね! その……つまりですね!」
P「な、なんでしょうか……?」
律子「……そんなに、急がないで……まず、お付き合いから、したいんですよ……」
P「!」
律子「それで、ちゃんと結婚してもいいかってのを見極めて、それからですね」
P「……うん」
律子「だから……そう判断するまでの時間を、私にください」
律子「彼氏のフリとか彼女のフリ、なんかじゃなくて……」
律子「本当に……私の、恋人になって……」
P「……律子」
律子「な、なんですか!? もうキャンセル効かないわよ!」
P「キャンセルなんてするわけないだろ」
律子「……こ、後悔しない?」
P「……なあ、抱きしめていいかな」
律子「人の話を聞いてくださいよ!」
P「ダメか?」
律子「……」
律子「す、好きにしたら……?」
ぎゅっ
律子「……うぅ……死にそう……」
P「俺は今まさに生きてるって感じがするよ」
律子「そーよね、こんなに体熱いものねっ!」
P「律子もな」
お前にはオレが居るだろ
P「律子」
律子「……今度はなんですか」
P「結婚を前提に、俺とお付き合いしてください」
律子「……っ」
律子「はい……」
ぎゅー
律子「く、苦しいですよ」
P「……」
律子「もう……、本当に、なんでそういうこと、サラっと言えちゃうわけ……?」
P「律子のことが、こんなにも好きだからだよ」
律子「ま、またそーやって……! 恥ずかしいなぁ、もう……」
P「律子は今、どう思ってる?」
律子「……正直、わけわかんないです。恥ずかしいのと、嬉しいのと……、他にも、いっぱい」
P「律子だけに、いっぱいいっぱいってか!」
律子「寒いです」
P「ごめんなさい」
律子「……バカ」
律子「……でも……」
律子「私も……、あなたのことが、好きです」
―――
――
―
テクテク
律子「……♪」
P「……あ、それはそうと」
律子「どうしたんですか?」
P「婚約指輪は用意できなかったけどさ……」ガサゴソ
律子「婚約指輪!? い、いりませんよそんなの……今はまだ」
P「ほら、これ」
律子「……これ……って……」
P「あの高級な洋服屋さんで見てた、ジャケット。律子にプレゼントするよ」
律子「……はぁ~……」
P「た、ため息!? 喜ぶところじゃないか!?」
律子「……いつ買ってたんですか?」
P「いや、あの、トイレに行くって言ったときに」
律子「今になって思うと、確かに不自然でしたね」
P「あはは……」
律子「プロデューサー殿」
P「なんでしょうか……」
律子「ベタですね」
P「うぐっ……い、いいだろべつに! 俺だって、こういうの慣れてないんだ」
律子「……でも……」
P「大体、こういうのはベタなほう……が……――ッ!?」
律子「……ありがと」
P「」
P「あの……い、今、なにを……?」
律子「……その、私なりの……感謝の気持ち、というか……」
P「……」サスサス
律子「唇の感蝕を確かめないでくださいっ!」
P「……柔らかかった」
律子「感想もいりませんっ! こ、こっちまで余計に恥ずかしくなるわ……」
P「律子さん」
律子「なあに、急にそんな呼び方して……」
P「あの、もう一回」
律子「調子に乗らない」
P「……」
律子「……ま、そのうち、ね」
律子「今度からは、こういう高~い買い物をするときは、ちゃんと私を通すこと」
P「ええ!?」
律子「だってあなた、お金の管理できないでしょう?」
律子「大体、普段から思っていたんです。浪費ばっかりしてあれもこれも……」
P「……まるで、鬼嫁だな」
律子「あーら、その鬼嫁と結婚したいって言ったのはどこのどなた?」
P「……俺だった」
律子「そうね♪ よく出来ました」
P(結婚という言葉を使うのは……やっぱり早かったかな?)
律子「無駄にお金を使うなら、結婚を見据えた将来のために、貯金をしましょう」
P「結婚……うん、そうだな!」
律子「……あ、でも勘違いしないでね? い、今のプレゼントは、無駄と思ってるわけじゃ決してなくて」
律子「私だって、もちろん、その……嬉しい気持ちはたしかにあったんですから」
P「わかってるよ……証明、してもらったしさ」
P(……いや、早かったなんてことはない。俺の目に、間違いはなかった!)
P「なあ、律子」
律子「なんですか?」
P「……今度、改めてご両親に挨拶にいかないとな」
律子「……そうですね」
P「こないだのは彼氏のフリでした、嘘ついてすみませんって言いにいかないと」
律子「ふふっ、そういうとこ、へんに真面目なんだから」
P「そして、お義父さんの前でこう言ってやるんだ……」
律子「え? お、お義父さん?」
P「律子を……いや……」
P「娘さんを、僕にくださいってな!」
律子「気が早いって言ってんでしょうがっ!!」
おわり
でも少し休憩したあと、ちょっとだけ後日談を書く
【翌日 765プロ事務所】
P(さて……律子との色々があってから、一晩が経った)
P(俺達は無事、結婚を! 前提に! お付き合いをすることになったわけだけど……)
P(アイドルの子達には、なんて説明したらいいかな)
P(秘密にしておくのも、なんだか気が引けるんだけど……)
『時期が来るまでは、黙っていましょう。へんなこと言ってわざわざ動揺させることはありませんから』
P(……って、律子は言っていたが……)
P(時期っていつだ? 結婚する時?)
P(というか、動揺って……それくらいのことでビックリする子、みんなの中にいるのか?)
P(……まぁ、考えててもしかたないな! 俺は俺で、やることをやるだけだ)
P(そう……みんなをトップアイドルへと導き、もっともっと輝かせてやるという、大仕事だ……!)
ガチャ
P「おはよう、みんな!」
千早「」
P「oh……」
P(さっそくアイドルにふさわしくない表情をした女の子を発見してしまった)
P「ど、どうしたんだよ千早。もっと輝いてくれよ」
千早「」ギギギ
P「ひっ」
千早「……プロデューサー……オハヨウゴザイマス」
P「メカ千早になってる……」
千早「……――いうことですか」
P「えっと……なんだって?」
千早「どういうことですかと聞いているんですっ!!」
P「!? な、なにがだよ? とにかく、落ち着いて説明してくれ」
千早「説明? わかりました、なら言いますっ!」
千早「プロデューサーと律子がつきあっ――」
春香「ちーはーやーちゃんっ!」ゲシッ
千早「ああっ! な、何するの、春香っ」
春香「えへへ……亜美、真美!」
亜美「ラジャーだよはるるん!」
真美「真美たちにまっかせといて~!」
千早「待って、話はまだ……!」ズルズル
P「……」
P(何がなんだか、わからない……)
春香「そんなことよりっ、プロデューサーさんっ!」
P「あ、ああ。おはよう春香」
春香「おはようございますっ! えへへ、聞きましたよ、律子さんとのこと!」
P「ええ!?」
春香「おめでとうございますっ!」
春香「私、ふたりがそうだって知らなかったから、ちょっとビックリしちゃいましたけど……」
春香「でもでも! すっごく! お似合いのカップルだと思いますっ!」
P「そ、そうか! あはは、ありがとうな!」
P(なんだ……律子の奴、あんなこと言っておきながら、ちゃんとみんなに話してたんじゃないか!)
春香「いつから付き合ってたんですか? 詳しく聞かせてくださいよぅ!」
P「それがさ、つい昨日なんだよ」
春香「えっ」
P「えっ」
春香「き、昨日? そ、それはまた、随分と気が早いですね……」
P「そ、そうかな……あはは」
春香「あっ、でもでも、そういうのってきっと、時間かければいいってわけでもないですし!」
P「そ、そうだよな!」
春香「はい! だから私としては、全然オッケーだと思います! 善は急げって言いますからね」
P「はは……」
P(あれ? なんか話が噛み合ってない気がする)
P「……ところで、春香」
春香「どうしたんですか?」
P「その噂の律子はどこにいるんだ?」
春香「律子さん? 今日はまだ、見てないですけど……」
P「……」
春香「どうしたんです、そんな顔して……」
P「えっと……さ。それ、誰から聞いたんだ?」
春香「あずささんです!」
あずさ「ごめんなさい、プロデューサーさん……うふふ、ついつい話しちゃいました~」
P「」
P「あの……」
春香「あっ、でも、あずささんを怒らないでください!」
春香「小鳥さんと話してるところを、私が無理矢理、聞き出しちゃったんですから……」
P「いや、怒るつもりはないんだけどさ……」
春香「それにしても、ホント、ビックリしちゃいましたよ」
P「うん、まあ……付き合うなんて、昨日までは思ってもなかったからな」
春香「それで、もう妊娠だなんて!」
P「あずささあああん!!!?」
あずさ「私も、ビックリしちゃいました~……まさかそれで、結婚、だなんて」
P「こっちがビックリですよ!!! そんなこと、話してなかったでしょう!?」
あずさ「ええ、そうですね。でも、音無さんが……」
P「……音無さん……?」
小鳥「……」ブツブツ
P「……」
小鳥「……そうね……そうなったら、そうに決まってるわ……」ブツブツ
P「……」
あずさ「ごめんなさい、プロデューサーさん」
P「……なにがですか?」
あずさ「私、ばしっと、噂は嘘だって伝えようとしたのですけれど」
あずさ「音無さんがあまりにも……その、この件に関して、執着していらしたから……」
P「……しつこかったんですね」
あずさ「言い方を選ばなければ、そうですね~……」
千早「……」ブツブツ
P「……千早はなんで……?」
春香「……」
あずさ「……今はそっとしておいてあげましょう?」
春香「千早ちゃん、プロデューサーさんのユニットのリーダーだったから……」
あずさ「そうね……色々と、ショックだったんでしょうね……」
P「……」
P「と、とにかく。ふたりは、少し誤解をしているんだと思う」
春香「ええ!? ほ、本当は付き合ってなかった、とか……?」
P「いや、付き合っているのは本当だけど……妊娠なんて、してないんだよ」
P(そもそも、まだそこまでの関係には……)
春香「」
P「……春香?」
春香「どっ、どど、どうしよう……!」
P「どうしたんだよ……」
春香「ごめんなさいプロデューサーさんっ!!」
P「えっと……なにが? 誤解してたくらいじゃ、別に謝ることなんて」
春香「わ、私……みんなに……!」
P「え……」
春香「みんなにこのこと、メールで一斉送信しちゃいました!」
P「」
春香「よく考えたら、律子さんにも!」
P「おお……ここまで来るとむしろ気持ちいいなおい……」
バッターン
律子「ちょっとぉおお!! どういうことですかっプロデューサー!!」
P「ほらきた」
律子「なんでこういうことをペラペラと……というか、妊娠ってなに!?」
律子「私とあなたはそもそもまだ――!」
P「ち、違うんだって! これは、その……誤解なんだ!」
律子「誤解で子どもができますかっ!」
P「いやだから……」
亜美「兄ちゃん兄ちゃんっ! ほーんと、兄ちゃんもスミにおけないよね~」
真美「んっふっふ~! いっつの間に、律っちゃんとムフフなカンケーになったの~?」
P「だから……話をね……」
春香「ごめんなさい、私、なんてこと……」オロオロ
あずさ「ど、どうしましょう~……とにかく、みんなに……」
小鳥「……」ブツブツ
千早「……」ブツブツ
P「……」
P(なんかもう、色々、面倒くさくなってきちゃった)
P「……春香。誤解を解くようなメールは送らなくていい」
春香「えっ、で、でも……」ピコピコ
P「たぶんまた、尾ひれがついて回るだろうから……お願いします、もう何もしないで……」
春香「そこまで言うなら……」
P「……俺と律子が付き合ってることは、紛れもない事実だ。そうだよな?」
律子「……っ……。そ、そう、ですね」
P「そして、結婚の話。それも本当だ」
律子「!?」
あずさ「まぁ……おめでたいですね~」
P「残念ながら、妊娠はまだだけど……近い将来、必ず」
律子「なっなな、何を言ってるんですか!?」
亜美・真美「「いや~ん」」
律子「はやし立てるなっ!」
律子「うぅ~……な、なんなのようもう……」
亜美「律っちゃん律っちゃん」
律子「なによ……」
亜美「ママになるんだね……赤ちゃんには、亜美って名前をつけてね……」
真美「うあうあ~! 真美のほうがいいって!」
律子「それであんた達は嬉しいの……? というか、本気にしちゃダメよ。これはね、あの人の妄言なんだから」
亜美「モーゲン?」
真美「ホーゲン?」
P「方言じゃなくて妄言。勝手に想像して勝手に喋ってるってことだよ。そんなことないのにな……」
亜美「律っちゃん! 兄ちゃんがかわいそうっしょ!」
真美「そーだよ! 方言もどげんとせんといかんっしょ!」
律子「い、意味わかんない……それになんで、私が悪いみたいになってるわけ……?」
だれうま
律子「……あーもう、わかったわよ!」
P「!」
律子「否定もしないわ、この人とはたしかに結婚するつもり!」
P「り、律子……!」
律子「子どもは、まあ……まだ出来てないけど、そのうちね! 本当に結婚したらねっ!」
亜美・真美「「キャー!」」
律子「これでいいんでしょ!? もうっ、なんでこんなことに……」
P「律子……」
律子「なんですか……」
P「頑張ろうな」ニコッ
律子「フンッ!!!」
ドガッ
P「おぅふ あ、ありがとうございますっ」
律子「誰のせいでこんな恥ずかしい思いをしてると思ってるんですかっ!」
亜美「……ねぇねぇ真美」
真美「どったの~、亜美」
律子「大体ね、あなたはいつもいつも……行き当たりばったりで適当なこと……」
P「はい……はい……ええ、ごもっともです……」
ガミガミ……
亜美「なーんか、兄ちゃんと律っちゃん、ずっとあんなカンジっぽいよね」
真美「んっふっふー! たしかにそうっぽいね!」
ガミガミ……
亜美「でもあれだと、今までとあんまり変わんないね」
真美「そだね。もしホントに結婚しても、きっとそうだよね」
亜美「ママになっても」 真美「パパになっても」
亜美・真美「「ずーっと、おんなじだよね!」」
春香「……でも、ううん、だからこそ」
あずさ「……ふふっ、そうね。あれがきっと、みんなにとって一番の形なのかもしれないわね」
春香「そうです! 765プロのプロデューサーさん達は……」
あずさ「いつまでも、あんな感じで……、今までと変わらずに、私達のことを見守ってくれているのよ」
律子「それであのときも、あなたときたら……」
P「はは……」
律子「……ちょっと? ちゃんと私の話、聞いているんですか?」
P「は、はい、聞いてます!」
律子「じゃあその笑顔をやめてくださいっ」
P「あはは……律子こそ」
律子「わ、私は、べつに……そういうんじゃ、ないですからっ」
P「……なあ、律子」
律子「……なんですか?」
P「これからも、よろしく頼むな。ずっと、こんな感じでさ……」
律子「……」
律子「なーに言ってるんですか、いまさら」
律子「そんなの当たり前でしょ、旦那様!」
おわり
後日談は蛇足だった気もする でもりっちゃんかわいいよりっちゃん
面白かった
>>1も長い時間本当に乙
やっぱりっちゃんはいいなぁ
Entry ⇒ 2012.10.06 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
蒲原「久しぶりー」ワハハ 睦月「あ、先輩……」
睦月「え、ええ……まあ」
蒲原「お土産だぞー」ドサッ
睦月「どら焼き……ですか」
蒲原「おいしそうだろー」ワハハ
睦月「どこか有名なお店のものですか?」
蒲原「いや、そこのスーパーで買ってきたー」ワハハ
睦月「なんですかそれ……」
蒲原「ワハハー、うまいかー?」
睦月「……んぐ……え、ええ」
蒲原「ところでむっきー、佳織やモモはどうしたー?」
睦月「えっと……」
蒲原「??」
睦月「先輩、実はですね……そのことでひとつ、先輩に相談がありまして……」
睦月「はい……」
蒲原「どうしてまた……」
睦月「……」
睦月「おそらくですが、私なんかが部長を務めるこの部に、嫌気がさしたんだと思います……」
蒲原「そ、そんな……来なくなったのはいつ頃からなんだ……?」
睦月「……先輩方は引退後もちょくちょく顔を出しに来てくれましたよね?」
睦月「そのおかげか、3月まではまったく問題もなく活動していたのですが……」
睦月「先輩方が卒業し、新学期になったとたん、二人とも部室にくる回数が極端に減っていって……」
睦月「その頃はまだ、妹尾さんも桃子もしぶしぶながら活動には参加してくれていたので……」
睦月「ですが、興味を持ってくれるような子は誰一人いなくて……」
睦月「……」
蒲原「……」
睦月「そして今では、二人とも月に何回か足を運んでくる程度になってしまいました……」
睦月「今月に至ってはまだ顔も見ていません……」
睦月「……っ」
蒲原「むっきー……」
睦月「ご、ごめんなさい……! いきなりこんな暗い話をしてしまって」
睦月「今日はせっかく先輩が遊びに来てくれたというのに……私ったらダメですね、ほんとすみません……」
蒲原「いや、いいんだむっきー……」
睦月「た、楽しい話をしましょう! あ、そうだお茶入れてきますね?」タタタッ
蒲原「……」
蒲原(私が卒業してから、こんなことになっているなんて……)
蒲原(……)
蒲原(わたしはどうしたらいいんだ……ゆみちん……)
蒲原「え、えっと……うん、まあそれなりだぞー」
蒲原「大学は、残念ながらゆみちんとは違うとこになっちゃったけど、まあ充実してるかなー」
睦月「充実……ですか。それはよかったです」
蒲原「……む、むっきー」
睦月「せ、先輩はたしか一人暮らしですよね。大変じゃないですか?」
蒲原「うん、大変だぞー。なにしろ掃除に洗濯、料理までぜーんぶ自分でこなさなきゃならないんだからなー」ワハハ
睦月「でも、たしか門仲におばあさまの家があるとか言ってませんでした?」
睦月「同じ東京といっても乗り換えとかあるとけっこう大変そうですしね」
蒲原「うんうん、それに母ちゃんが『もう18なんだから一人暮らしくらいしてみなさい!』って言って無理やり……」
睦月「厳しいお母さまですね」
蒲原「まあ、早起きするのはつらいけど、それなりに頑張ってるよー」ワハハ
睦月「ふふ、それはなりよりです」
蒲原「……むっきー」
睦月「ん、なんですか?」
蒲原「私のことなんかより、お前の方は……」
睦月「……っ」
蒲原「で、でも……!」
睦月「……せめて」
蒲原「……?」
睦月「せめてこんな時くらい……楽しい気持ちでいさせてください……」フルフルッ
蒲原「……」
蒲原(むっきー……すごくつらそうだ……)
蒲原(私はむっきーのこんな姿、見たくない……でも)
蒲原(私に何ができるっていうんだ……っ)
蒲原「……」
睦月「……先輩」
蒲原「……な、なんだ? むっきー」
睦月「……」
睦月「……麻雀、打ちませんか?」ニコッ
蒲原「……」
蒲原「……うん」
―――それは、今にも涙がこぼれてきそうなほど、脆く儚い笑顔だった……
蒲原「……」カチッ
蒲原(……)
蒲原(こんなことをしていて……いいのか?)
蒲原(今はいいのかもしれない……だけど、私が東京へ帰ったあと、むっきーはどうなる……?)
蒲原(……)
蒲原(これは、逃げでしかない……むっきーにとっても、私にとっても……)
蒲原(……)
蒲原(こんなとき、ゆみちんならどうするんだろうな……)
蒲原(またゆみちんゆみちんって……私はいつもそればっかりだな……)
蒲原(自分では成長した気になっていても、何も変わっちゃいない……)
蒲原(後輩ひとり救えないようじゃ……部長失格だ)
蒲原(いやそもそも、私はもう部長じゃないんだったな……)
蒲原「ワハ、ハ……」カチャ
睦月「先輩……どうかしましたか?」
蒲原「……」
睦月「先輩……?」
蒲原「……むっきー」
睦月「は、はい……」
蒲原「……」
蒲原「ちょっとドライブにでも行かないか?」ワハハ
睦月「え」
―――――――――――――――――――
車内
睦月「あれ……普通だ」
蒲原「どうしたー? むっきー」ワハハ
睦月「先輩……運転うまくなってません?」
蒲原「そうかー? 東京の道路に慣れすぎたのかもなー」ワハハ
蒲原「いやぁ、なんだ。室内で麻雀ばかり打ってても退屈だろうと思ってなー」
睦月「……まさか先輩、さっき私に負けてたから中断したわけじゃないですよね……?」ジトッ
蒲原「ま、それもちょっとはあるけどなー」
睦月「あるんですか!」
蒲原「ワハハー」
睦月「もう……」
蒲原「……むっきー」
睦月「なんですか?」
蒲原「もういいんだぞ」
睦月「えっ……」
睦月「……」
蒲原「たぶんお前のことだから、『先輩たちが残してくれた麻雀部を守りきらなければ!』なーんて思ってたんだろー」
睦月「そ、そんなこと……」
蒲原「……むっきー、あのなー」
睦月「……」
蒲原「鶴賀の麻雀部での思い出は、私の中では宝物だ。それは死ぬまで……いいや死んでからも変わらないさー」
蒲原「それはおまえも同じだろー?」
睦月「……」
蒲原「でもなー」
蒲原「そのことがお前を縛り付けて、苦しめてるんなら、私はそんなもの捨ててしまってもかまわないと思ってる」
睦月「……」
蒲原「だって本末転倒だろー? 楽しむために部活やってるのに、それを守るために苦しまなきゃならないなんて」
睦月「……で、でも」
蒲原「ん?」
睦月「でも……楽しいことばっかりじゃないはずです。苦しいことだってあります……」
睦月「それが部長という立場ならなおさらです。だから私は……!」
蒲原「……」
蒲原「そうだなー。苦しくても頑張った思い出があるからこそ、楽しかったときの思い出が映えることだってあるなー」
蒲原「でもそれは、みんなで、だろ?」
睦月「……」
蒲原「それは、ちゃんとこういうことをお前に教えてこなかった私の責任でもある」
睦月「そんな……先輩のせいなんかじゃないです……」
蒲原「……」
睦月「先輩は……私にとっては憧れの先輩でした」
睦月「部員を縛りつけることなく、それでいてチームの心を引きつけ、まとめあげてしまう……」
睦月「たしかに加治木先輩に比べたら少し頼りないですし、いつも飄々としていてふざけてるように見えます……けど」
睦月「そんな先輩が……私は誇らしかった」
睦月「そして……私もこんな部長になりたいと、そう思ってました」
蒲原「でも……ありがとう」
睦月「……はい」
蒲原「……」
蒲原「……むっきー」
睦月「……はい」
蒲原「あとは考えるだけだ。むっきー自身が」
蒲原「一人で部を守っていくもよし、佳織やモモに向き合うもよし」
蒲原「少し活動を休めていろいろ考えるもよし、全部投げ出して新たな一歩を踏み出すもよし、さ」
蒲原「むっきーが考えて考えて、考え抜いた末に出した結論なら、私は応援するよ」
蒲原「だってそれは、『ただがむしゃらに部活を守っていかなくちゃ』っていう責任感に囚われていた今までのものとは違うんだから」
睦月「……」
蒲原「……うん」
睦月「考えて、考え抜いて、そして自分で決めます……自分のやりたいことを」
蒲原「うん、がんばれよ」
睦月「……」
睦月「……っ」ポロッ
睦月「……ぅ……っく……」
蒲原「ど、どうしたんだ?」
睦月「!」ゴシゴシ
睦月「な、なんでも……ありません……っ」
睦月「それより先輩、前見てください……」
蒲原「え……ああああっ!!」
衣「ふぇ……」
衣「ふぇえええええええええええええええん!!」
透華「衣、大丈夫ですの!?」
―――――――――――――――――――
蒲原「ふぅ……危なかったなー」ワハハ
睦月「よそ見するからですよ、まったく」
蒲原「だってむっきーが泣いたりするから……」
睦月「泣いてませんっ!」
蒲原「んー? ほんとかー?」
睦月「ほんとですよ!」
蒲原「それならいいがなー」ワハハ
蒲原「んー? 海」
睦月「……え? 今なんて?」
蒲原「だから海だって」ワハハ
睦月「えええええっ!? わたし明日学校ですよ!」
蒲原「まあいいじゃないかー、一日くらい」
睦月「よくないです! 私たちは大学生とは違うんですから!」
蒲原「ワハハ、ちょっとスピード早めるぞー」ブィーン
睦月「ちょ、ま、待ってくださいっ!!」
蒲原「長野の道路は広いなー」ワハハ
睦月「だ、誰かとめてぇえええええええ!!」
睦月「……」
蒲原「大丈夫かー? むっきー」
睦月「うっ……!」ダダッ
ゲェエエエエ
蒲原「おいおい……あんまり無理するなよー」
睦月「だ、誰のせいだと思ってるんですか……それにもう夜ですよ! 帰れないじゃないですか!」
蒲原「飛ばせばまだ間に合うぞー」ワハハ
睦月「もう乗りたくありませんっ!」
蒲原「まあまあ、ウチに泊まってけばいいじゃないかー」
睦月「はあ……もういいです」
蒲原「ごめんごめん、謝るよむっきー」
睦月「もう知りませんよ!」プイッ
蒲原「……」
睦月「……なーんて」
蒲原「え」
睦月「少しからかってみただけですよ」フフッ
蒲原「び、びっくりさせるなよー……」ハァ
睦月「先輩……ありがとうございました」
蒲原「ん、なにがだ?」
睦月「先輩のおかげで、なんかいろいろと吹っ切れました、わたし」ニコッ
蒲原「そのことはもういいってー」ワハハ
睦月「……」
睦月「……これからも」
蒲原「えっ?」
睦月「これからも、また遊びに来てくれますか?」
睦月「そう……ですよね」
蒲原「なに落ち込んでるんだよむっきー。誰も来ないとは言ってないだろー」
睦月「先輩……」
蒲原「暇になれば行くさー。むっきーの楽しそうな姿を見になー」ワハハ
睦月「……ふふ」
睦月「それじゃ、私も楽しくしていられるよう、がんばらなくちゃいけませんね」
蒲原「ああ、素敵な笑顔を見せてくれよー」
睦月「はい!」
カン
まあワハハのウチに泊まった二人のその後は、各自で補完もとい妄想しといてください
支援ありでした
おつです
乙
GJ
おつ
Entry ⇒ 2012.10.06 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
ハリー「宿題で潰れる休日」ロン「全く、ホグワーツってステキだよな」
ロン「優しい先生に楽しい授業、それに、やり応えのある山のような宿題」
ハリー「いたせりつくせりだよ、あぁ」
ロン「アンブリッジなんて、君に熱心な指導をするあまり、『僕は嘘をついてはいけない』って拳に直接刻ませちゃうんだもんな」
ハリー「教師の鑑だね」
ロン「おまけに奴さんの授業の方も、マーチン・ミグズがおったまげるようなハラハラドキドキの教科丸写しときた」
ハリー「心臓がいくつあっても足りないよ、我慢の限界って意味でね」
ハーマイオニー「……ねぇ二人とも。アンブリッジに不満があるのも分かるけれど、口より羽ペンを動かしていただけないかしら」
ハリー「不満なんてもんじゃないよ、ハーマイオニー。マーリンの、あれさ」
ロン「髭だね、もちのロンで」
ハーマイオニー「やる気がないのなら、帰らせていただくわよ?」
ハリー「勘弁してよ、ハーマイオニー」
ロン「君がいないと僕らは、この宿題を終わらせるまでの間に七年生になっちまうぞ」
ハーマイオニー「だったら真面目にやって頂戴!もう!」
ハーマイオニー「一週間も前に出された宿題なのよ?やる気があれば、その日に終わったはずなのに」
ハリー「1メートル20センチなんてレポートを早々に書き上げられるのは、ハーマイオニー。君くらいだよ、きっと」
ロン「あぁ、ビンズじいさんもここにきて面倒なもんを出してくれたよな」
ハーマイオニー「私達は『ふくろう(普通魔法試験レベル)テスト』を控えた学年なのよ?これくらい、当然じゃないの」
ハリー「そうは言っても、君がいなかったら僕らはこのレポートを前に『姿くらまし』していたかもしれないよ」
ロン「僕もハリーもクィディッチ選手になっちまったせいで、宿題なんてしている時間はないものな。クィディッチの選手!になったからさ、僕」
ハーマイオニー「去年までのお暇だったはずの終業後も、あなたは全く手をつけていなかったように思うわ、ロン」
ハリー「例えば?」
ロン「ハニー・デュークスの新作お菓子をチェックしたりだとか、さ」
ハーマイオニー「あら、お口が正に無駄な動きをしているようだけれど、私は帰っていいのかしら」
ロン「悪かったよ……お詫びに、ほら。新作のチョコをあげるから勘弁してくれよ」
ハリー「クィディッチ選手になっても、新作チェックはかかさないんだね」
ロン「他になにをしろっていうのさ」
ハーマイオニー「素敵な素敵な宿題なんてどうかしら」
ロン「そうなのかい?僕にはマグルの基準は、よく分からないけど」
ハーマイオニー「原稿用紙の枚数で指定されたりは、あるわね。でも……こんな風に、自由に書くような宿題はそう無いと思うわ」
ロン「ありがたいことじゃないか」
ハリー「これでもかってほど、大きく書いて稼いでるものね、僕ら」
ハーマイオニー「言っておくけれど、あまりにも内容が少ないと減点されるわよ?」
ロン「僕らなんてまだ、いいほうさ。この間、ゴイルのレポートをチラッと見たんだ」
ハリー「どうだった?」
ロン「文字の大きさも、汚さも。まさにゴイルだったね」
ハリー「トロール並み?」
ロン「評価もTに違いない」
ハリー・ロン「「HAHAHA!!」」
ハーマイオニー「あなたたちも同じ穴の狢よ、このままでいくのなら」
ロン「ビンズじいさんめ、アンブリッジのご機嫌伺いでもしてるのかな」
ハーマイオニー「アンブリッジが制定した法案だものね……でも先生に限って、それはないと思うわ」
ハリー「そういうことを気にしそうな人じゃないものね。そもそも人じゃないけど」
ロン「あぁ、マイペースの塊みたいなものだもんな。死んだことにも気づかなかったんだっけ?」
ハーマイオニー「ゴーストって、そんなに簡単になれるものなのかしら。いつか、城にいるゴーストたちに聞いて回って調べたいわ」
ロン「そりゃいいや。きっと連中、快く答えてくれるだろうさ。場合によっちゃ君にも是非って言うかもな」
ハリー「笑えないよ、ロン」
ハーマイオニー「今に始まったことじゃないわ」
ロン「あぁ、真面目に考えるとしようか……『反・人狼法の制定により、魔法界は……』どうなったのさ?」
ハーマイオニー「書ききるまで教えるはずないじゃない」
ロン「そんな!それじゃぁ君はなんのためにここにいるのさ、だ!」
ハーマイオニー「あなたたちがきちんと宿題をこなすように、よ!」
ロン「ハリー、君までハーマイオニー側に行かないでくれ」
ハーマイオニー「それってどういう意味かしら」
ハリー「君は知的で最高ってことさ」
ハーマイオニー「あら、ありがとう」
ロン「ハリー、ハリー!僕はどうだい!?」
ハリー「チェスが強いね」
ロン「……まあね!」
ハーマイオニー「それでそこまで得意げな顔ができるあなたが、ここまで来ると微笑ましいわ」
ハリー「ともかく、ロン。僕らにとって身近な人のことで、考えてみようよ」
ハリー「今のところ、他に僕らの知り合いで月に一度けむくじゃらになる人はいないね」
ハーマイオニー「早々いてもらっても困るわ、ハリー」
ロン「ハグリットはいっつも毛むくじゃらだけどね」
ハリー「そういえばハグリットって、昔、自分のベッドの下で狼人間を育てようとしてた、って言ってたっけ」
ハーマイオニー「……三つ子の魂百まで、ってことかしら」
ロン「狼人間と人狼って、どう違うのかな」
ハリー「水中人と人魚みたいなものじゃないかな。ともあれ、リーマスのことさ」
ロン「リーマスは仕事につくことが難しくなった、って言ってたっけ」
ハーマイオニー「スナッフルがそう言っていたわね。アンブリッジいついて、私達に聞かせられないくらい罵ってる、って」
ハリー「結論、僕のおじさんの主食がドッグフードになる」
ロン「ペットショップは大繁盛ってわけか」
ハーマイオニー「ハリー、それは結論じゃなくて極論だわ」
ハリー「……この前、手紙で嘆いていたんだ」
ロン「まぁ僕が思うに、スナッフルもその仕打ちをされるくらい我がまま放題なんじゃないかな」
ハリー「基本シリウスは悪食だからなんでも食べるらしいけれど」
ロン「逃亡生活で必要に迫られたんだろ」
ハーマイオニー「ネズミを食べてた、って。去年言っていたわね」
ハリー「昔はトースト一枚にもフォークとナイフを使うお坊ちゃんだったのに、ってリーマスが嘆いてたよ」
ロン「今じゃもう鷲掴みだろうな」
ハーマイオニー「ハリー、スナッフルの話もいいけど宿題の話題に戻ってくれるかしら」
ロン「そういえばあの二人と揃って話すのは、三年生の時以来だったんだものな」
ハーマイオニー「それは素晴らしいことだけれど、きっと今後たくさんあるじゃない。それより今は目先の宿題よ」
ハリー「うん、そうだね。スナッフルともよく、スナッフルの無実が証明されたらどんな生活をしようか話し合うよ」
ロン「微笑ましいなぁ」
ハーマイオニー「分かった、分かったわ。あなたたち、とことん宿題をしない気ね?私、ようやく分かったわ」
ハリー「君にしては時間がかかったね。ロンの羽ペンなんて、最初から綿飴羽ペンさ」
ハーマイオニー「ペンだけじゃなくって、私のことも舐めきっていた、ってわけ?」
ハリー・ロン「「HAHAHA!!」」
ハーマイオニー「二つの意味で冗談じゃないわ」
ハリー「まぁまぁ。ほら、最近三人でゆっくりできなかっただろう?」
ロン「僕はクィディッチのメンバーになっちまったしね。クィディッチの、キーパーに」
ハーマイオニー「過ぎるくらい存じてるわよ」
ハリー「いい天気だったし、部屋に篭りきりな君を連れ出そうと思って」
ハーマイオニー「……ふぅ。そうね、息抜きも……たまーには、いいかもしれないわ」
ロン「そうこなくっちゃ」
ロン「ハリー、今のは君の作り話の中でも五本の指に入ると思う」ヒソヒソ
ハリー「あとでチョコを頼むよ」
ハリー「うん、そういう約束だから」
ハーマイオニー「ハリーの後見人だものね、スナッフルは」
ハリー「ゴドリックの谷の、父さん達の家を立て直すんだ」
ロン「そりゃいいや」
ハーマイオニー「素敵ね」
ハリー「それで、スナッフルには大きな屋根のついた、立派な犬小y」
ロン「ハリー、ストップ」
ハーマイオニー「リーマスが茶々をいれたのね、おそらく」
ハーマイオニー「あなたとスナッフルが楽しそうに話す光景と一緒に、リーマスが静かにスナッフルを睨んでいる姿が見えたわ」
ロン「凄いじゃないか。君、トレローニーにとって代われるんじゃない?」
ハーマイオニー「冗談。私が『占い学』の教授になったら、まずは水晶玉を叩き割ることから始めるわ」
ハリー「今よりよっぽど楽しいだろうね」
ロン「ふやけた茶色いものをいっぱい眺めてるよりはマシだよな、あぁ」
ロン「そうなるだろうね」
ハーマイオニー「私とハリーが二人で話している時のあなたのようだわ」
ロン「どういう意味さ!」
ハーマイオニー「心が狭いということよ。リーマスは偶に、のようだけれど」
ハリー「喧嘩はやめれくれよ」
ロン「僕はハリーとフォーメーションについてだったり、色々話すことがあるんだよ!」
ハーマイオニー「私だって、D・Aについて山ほど話し合うことがあるんだもの!」
ハリー「……なんだか不思議と疎外感がないのはなんでだろう」
ハーマイオニー「収入が心配ね」
ロン「……ハーマイオニー、夢の話にそういうのを持ち込まないでくれよ。僕にまで飛び火しちまう」
ハリー「その辺は大丈夫、僕が成人するまでは父さんの遺産とスナッフルの財産があるから」
ハーマイオニー「ダメな大人なんだか計画性があるんだか分からなくなってきたわ、スナッフルのこと」
ロン「いざとなったらネズミを食べて凌げるしね」
ハリー「家計が助かるね」
ハーマイオニー「スナッフルをどうしてもペット枠にしたいの、ハリー?」
ロン「へぇ?」
ハーマイオニー「意外ね。どうして?」
ハリー「僕が、そっちの方が慣れているんじゃないか、って」
ロン「ハリー基準だなぁ」
ハーマイオニー「そうね、あの二人ならそんな気がするわ」
ハリー「でも僕は魔法界にいたいし、マグルといったらダーズリーんとこしか思い出がないから、どうだっていいんだ」
ロン「寧ろ自由になって一番最初にスナッフルは乗り込みそうだよな、君のおじさんのとこ」
ハーマイオニー「犬の姿でそうしたんじゃなかったかしら?」
ハリー「うん、あの時その事情を聞いていたら、十数年ぶりにお腹一杯になれただろう、って言ってたよ」
ハリー「ほら、スナッフルはあそこ、嫌いだから」
ハーマイオニー「私達があんなに頑張って掃除したけれど、陰湿な雰囲気は抜けきらなかったものね」
ロン「クリスマスあたりには明るくなってるといいよな」
ハリー「僕が冬に帰るって言ったら、スナッフルもやる気を出すかな」
ロン「そりゃもう、クリーチャーがダンスローブに身を包むほどだろうさ」
ハリー・ロン「「HAHAHA!!」」
ハーマイオニー「クビという意味なのか、それほどまでに綺麗にされるだろうということなのか、分かりかねるわ」
ロン「どっちもさ。あ、君の『反吐』としては、前者の方がいいのかな?」
ハーマイオニー「S・P・E・W!反吐じゃないったら!」
ロン「まぁ安定だよな」
ハーマイオニー「お父様やお母様も喜ばれると思うわ」
ハリー「うん、それにシリウスもグリモールドプレイスよりよっぽど地元のようなもの、って言ってたし」
ロン「いりびたってたんだろうなぁ、ハリーの両親のところに」
ハーマイオニー「戦争中だったみたいだもの、それはどうかしら」
ハリー「僕が生まれた後、何度父さんにたたき出されたか数え切れなかった、って言ってたよ」
ハーマイオニー「戦争ってなんだったかしら」
ロン「ハリーの前じゃふわふわの小さな問題だったんだろうさ」
ロン「君なら余裕すぎてお釣りに『マグル製品不正使用取締局局長』って役職まで着いてくるだろうさ」
ハーマイオニー「ロン、あなたのお父様のお仕事をそんな風に言うものじゃないわ」
ハリー「そうだよ、おじさんは立派だ……それで、二人にもたまに手伝ってもらいながら、僕も仕事になれていくのさ」
ロン「『例のあの人』の時代に騎士団だった二人だもんな、あぁ」
ハーマイオニー「並大抵の魔法使いにあ遅れをとらないでしょうね」
ハリー「それで、僕も大人になって……で」
ロン「うん」
ハーマイオニー「えぇ」
ハリー「僕が……あー、誰かと結婚することになったら……ってとこで、スナッフルは急に犬になって戻れなくなるし、リーマスも『急に発作が!!!』って、どこかに行っちゃうんだ……」
ロン「……まぁ」
ハーマイオニー「……予想通りだわね」
ハリー「えーっと、僕は親とか、兄みたいに思っているけど」
ハーマイオニー「ハリー、多分それは二人に言わないほうがいいわ」
ハリー「どうしてだい?」
ロン「二人をカラッカラのミイラにしちまいたいんなら止めないよ」
ハーマイオニー「あぁ、スナッフルがちぎれんばかりに尻尾を振る姿が容易に想像できるわ……」
ハリー「? なんだか今日の君は詩的だね」
ハーマイオニー「あなたのお父様がいたころはもっと騒がしかったんでしょうね、ハリー?」
ハリー「あぁ、うん。マクゴナガルの眉間の皺の9割は私達のせいだ、って言ってたね」
ロン「スネイプのトラウマは?」
ハリー「手の指ってどうして10までしか数えられないんだろうね」
ハリー・ロン「「HAHAHA!!」
ハーマイオニー「そういう扱いが今のスネイプ先生のあなたへの態度に現れてるんだと思うわ、ハリー」
ハーマイオニー「……どうかしら。さっきも言ったけれど、『例のあの人』全盛期の時代でしょう?」
ロン「さっきも聞いたけど、あまり気にしてなさそうだよ、スナッフル達は」
ハリー「同感」
ハーマイオニー「……なんだかそんな気もするわ」
ハリー「現に僕らも、気楽なものじゃないか。普通に学校で、優しい優しい先生のもと楽しい授業に励んでいるよ」
ロン「あぁ、特にあのカエルババァなんて最高さ、正に『S・P・E・W』が出るね」
ハーマイオニー「『反吐』!『S・P・E・W』じゃないったら……あ」
ロン「……へぇ?」
ハリー「……」
ハーマイオニー「……」
ロン「へーぇ?」ニヤニヤ
ハリー「ロン、それ以上は、僕はやめた方がいいと思う」
ハーマイオニー「いいえ、ハリー。もう遅いわ。さぁロン、小鳥と蝙蝠の鼻くそ、どちらがいいかしら」
ハリー「あーぁ、ロンの顔がソバカスだらけから糞だらけに」
ハーマイオニー「自業自得だわ。さっ、スナッフルたちの興味深いお話もひと段落したところで、本格的に楽しい宿題の時間といきましょう?」
ロン「あー、ハーマイオニー。僕らはほら、君の息抜きのために、さぁ」
ハーマイオニー「えぇ、とっても粋な計らいをありがとう。お礼にしっかり指導してさしあげるわ」
ハリー「……ロン、諦めよう。ほら、羽ペンだ。スナッフルとリーマスにこの課題について意見を聞く手紙を送るからさ」
ロン「そうしてくれよ……もちの僕でね」
ハーマイオニー「言いたいだけね、今の。早く始めるの!」
ハリー「『スナッフルへ スナッフルが今ホグワーツにいたら、もっと楽しかったでしょうにね』っと」カキカキ
ハーマイオニー「ハリー、私の苦労が二乗どころで済まなくなるからやめて頂戴」
ハリー「糞まみれに、ね」
ハーマイオニー「それに関しては自業自得です、ってば。いいじゃない、ジニーにかけらそうになったときの心構えが分かったでしょう?」
ロン「……ジニーにこの呪いを教え込んだのって、まさかとは思うけど」
ハーマイオニー「さぁ、もちのあなたと言わせてもらうわ」
ハリー「諦めよう、ロン。スナッフルも言ってたよ、母さんの思い出を語るときに」
ロン「なんだって?」
ハリー「魔法使いは、どこまでいっても魔女に敵いっこないのさ」
ロン「違いない」
完
シリウス「リーマス、どうだ!私も……ワフンッ、僕もまだまだ学生でいけるんじゃないか?」
リーマス「……シリウス、三十路過ぎのおっさんがクローゼット引っ掻き回して何をしているのさ。あ、でもそのタイは残しておいてくれるかい?君の今度からの散歩用リードはそれにしてあげようじゃないか」
今度こそ、完
次はもっと長くやるからここらで
ラドクリフお大事に
じゃあの!
ハリー・ポッター シリーズ
一巻~七巻まで
世界的大ヒット発売中!
2014年後半 USJにて
ハリポタアトラクション建設決定!!
おもろかった
Entry ⇒ 2012.10.06 | Category ⇒ 版権物SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
P「さすが小鳥さん!Photoshopの達人ですね!!」
P「何の話しって、Adobe製品の話しですよ」
小鳥「だ、だからなんで私がその達人、になってるんですか?」
P「え、だってこの小鳥さんの加工したのって……」
小鳥「」
P「うわ!小鳥さんがまるで、目に白塗り入れられたかのように白目むいてる!!」
真「ベルばらですね!」
P「真、どこから出てきた!?」
小鳥「……ハッ」
P「気が付きましたか、小鳥さん」
小鳥「私は一体……」
P「都合のいいように、記憶の削除まで……」
小鳥「プロデューサーさん、何もありませんでしたよね?」
P「は、はい」
小鳥「なら良いんですよ」
小鳥「~♪あ、やよいちゃんお菓子届いてたわよ~」
P(それに音無さんのパソコンに何故か使うはずのにPhotoshopCS6がインストールされていた……聞いた話しによると、春香の学生証を使ってAcademicの安いやつを購入した、と)
小鳥「ふふ、やよいちゃん大丈夫よ、私はさっき食べたから」
P(凄く気になる……これは、やるしかない、小鳥さんのパソコンを―――調べる)
小鳥「……?さっきからどうしたんですか?プロデューサーさん、考え事して」
P「ああ、いえ。今後の予定について考えてたんですよ」
小鳥「そうですか、午後から春香ちゃんのレッスンでしたよね」
P「はい、今日のレッスンは気合入れようかと。その後事務所帰ってきて少し夜まで仕事しようかと。ライブも近いので、スケジュールしっかりしたいと思って」
小鳥「そうなんですか……えっと、徹夜しますか?」
P「場合によっては……鍵貸してもらってもいいですか?」
小鳥「はい、無理しないでくださいね」
P「すみません……」
P(よし、これでOKだな)
春香「あ、プロデューサーさんお弁当自分で作ったんですか」
P「……」もぐもぐ
春香「プロデューサーさん?」
P「あ、ああ、春香か。すまんすまん」
春香「考え事ですか?」
P「ちょっとな……そうだ、春香にも聞いてみよう。これなんだけどな」
春香「? はい」
小鳥「お昼食べてきますね」
P「はーい、行ってらっしゃい。ちょうどいいな」
春香「いってらっしゃーい!ちょうどいい?って?」
P「ええっと、待ってな」カチッカチッ
春香「小鳥さんの画像?」
P「ああ、ちょっと見てみてくれ」
春香「可愛いですよね、この小鳥さん。写真写り良い感じで」
春香「え?」
P「次にこの写真を見てくれ」
春香「これって……昨日の小鳥さんですよね」
P「よく分かるな」
春香「分かりますよ、クマ隠してるメイクが一目瞭然で」
P「なるほど、流石アイドルだな」
春香「えへへ、メイクさんとよくそういう話しもするんですよ」
P「ふむ……だとしたら、だ。さっきの画像は少しおかしくないか?」
春香「そういえば……確かに違和感があるといえば、ある、というか」
P「そうだろう?」
春香「はい、そうですね……よーく見比べると、ここらへんのシワとかが不自然な感じで。どうしてもメイクでも隠し切れないシワってあるんですよ。それに最近のカメラは凄い高解像度みたいで」
P「そうだな、地デジの写りと、アナログの写りが違うみたいな感じだよな」
春香「そうなんです……それで、プロデューサーさんはこれがどうしたんですか?」
P「……春香、Photoshopって知ってるか?」
P「そうだな、そういう場合では明るさを変えたり、コントラストを変えたりして、写真写りを良くするために使うんだよ」
春香「なるほど……」
P「で、この前春香の学生証使って、買ったんだよ。うちの事務所でも」
春香「ふむふむ」
P「ちょっと起動してみるな」
春香「はい」
P「春香、自分の写メあるか?」
春香「あ、この前お花見の時に撮ったのなら」
P「そうか、ちょっと見せてくれないか」
春香「はい、ちょっと待ってくださいね……」
P「暗いな」
春香「そうなんですよ……カメラがボロボロで……しかも表情も微妙で」」
P「ちょっと俺のメールアドレスに送ってもらっていいか」
P「来た来た、これをダウンロードして……よし、この状態になる」
春香「わぁ、なんかそれっぽい……」
P「それっぽいっていうか、その仕事で使ったものと同じなんだけどな……ただ使い方が難しいんだよ、これ」
春香「そうですよね、なんだかごちゃごちゃしてる感じが」
P「小鳥さんはそれの達人なんだ」
春香「え、ええ!?小鳥さんが!?」
P「ああ……前にモデルでやったのは、えっと……」
春香「なんだか面白いですね、自分の写真が変化するのって」
P「ここで明るさ変えて、ここでコントラスト変える、自動でやってくれるんだな、これ」
春香「わ、凄い!全然違いますね!」
P「最後にトーンも自動変更したら、見違えるように違うだろ?」
P「そこなんだよ、どんなものでも綺麗に見えるように出来てしまう魔法アイテムなんだ」
春香「じゃあ雑誌で凄い綺麗だな~って思った人も……」
P「中身はともかく、表紙は割りと加工されてるな。たまに加工しすぎて奇形になってたりする」
春香「ええー……なんだか夢が崩れますね」
P「あとは、例えばこの春香のリボン消せたりする」
春香「わ、私じゃなくなりますよ!?」
P「え、そうなのか」
春香「……と、トレードマークが無くなるのは……」
P「と言ってる間に、スポイト修正ブラシツールと、テキトウにシャープかけたり上からなぞったりして完成」
春香「誰ですか、このビショウジョは!?」
P「オマエだよ、春香」
春香「凄いですね……」
P「まぁ違和感はあるけどな、俺は初心者レベルだから」
P「ん?どうした」
春香「もしかして、ここで見たのと、Webページで見たのって、違いますか?」
P「おお、よく知ってるな」
春香「いやちょっと今ピーンと来たんですよ。ここのPhotoshop上では違和感無いように見えても、アップロードしたら違和感が丸出しになっちゃうんじゃないかな、とか」
P「まさに今体験した通りだな、これをアップロードすると……こうなるんだな」
春香「やっぱりそうですよね!髪の毛の部分流石にバレちゃいます」
P「ああ……まぁ、小鳥さんはそれさえも凌駕するからな」
春香「なるほど……」
千早「話は聞かせてもらいました」
P「!?」
春香「!?」
千早「食べていたんですけど、お二人の話しを聞いてたら居ても立ってもいられなくて」
春香「ち、千早ちゃんとりあえずお箸置こうよ」
千早「あ、あ……///」
P「あはは……」
春香「千早ちゃんはどうしたいの?」
千早「……春香だから言うし、プロデューサーだから恥は覚悟で言います」
P(なんだ普段感じられないような、この千早から感じる重圧)
春香「ち、千早ちゃん……」
千早「この写真の胸を……少し大きくしてください」
春香「こ、これって……」
P「いつだったかの宣材写真じゃないか……しかも失敗した」
千早「はい、でも手元にはこれしかなくて……」
春香「宣材写真って加工するの有りなんですか?」
春香「それに、千早ちゃんプロフィールに3サイズ載ってるから……」
千早「良いんです、大丈夫です……これは私用ですから」
P「し、私用?」
春香「私用……」
P「なにに使うんだ……」
千早「そ、それは……い、言わせないでください!」
P「ああ、すまん、千早……でもな、千早。俺はまだ初心者なんだよ。この前こういう使い方が出来るって、カメラの人に聞いたんだ。それで、この事務所では小鳥さんが達人って話をしていた」
千早「!? それでは、音無さんに……」
P「まままま、待て!千早!早まるな、小鳥さんはまだお昼から帰ってきてないし、それに小鳥さんにはさっき聞いたんだよ」
千早「……答えの方は?」
P「……すっとぼけられてしまった。さっき春香に説明した通りに説明すると、カクカクシカジカで……」
千早「なるほど、凄いですね。でも私には無理そうです……メカ音痴?というものらしいので」
春香「でも、この前Walkmanの使い方教えたら出来たよ?千早ちゃん」
千早「あれはCD入れるだけだったから……」
千早「とにかく、どうすればいいですか?」
P「どうするもなにも……うーん、ちょっと俺がやってみるよ」
千早「本当ですか!?」
P「き、期待するなよ!?」
千早「は、はい」
春香(初めてみた……)
P(こんな笑顔の千早を……これを宣材にしたかったものだな……)
ちょっと待っててね
P「……こんな感じか?」
春香「お、おお……」
千早「これ、は……」
P「ちょっと粗があるけど、こんなもんだろ。ぼかしかけても良かったんだけど、あんまり加工すると顔とのバランスがおかしくなると思うしな」
千早「ありがとうございます、プロデューサー、尊敬してます」
P「お、おい……」
千早「印刷してもらっていいですか?帰りに写真立て買わないと……見て、春香中のシャツの影。ふふ……」
春香「千早ちゃん……」
P「俺が悪かった……」
小鳥「何してるんですか?」
P「!?」
春香「ッ!?」
千早「あ、今実は……」
千早「え?そんな予定は……」
P「い、い、今たったんだ!!な?な?」
千早「は、はい……分かりました」
P「あとで車で送るから、待っててくれ、な?」
千早「ふふ、あ……ご飯食べてても良いですか?車で」
P「大丈夫だ!」
千早「分かりました、待ってますね」
P「……ふぅ」
小鳥「プロデューサーさん?そんな予定入ったんですか?」
P「は、入ったんですよ、なぁ、春香?」
春香「は、はい」
小鳥「そうなんですか、気をつけてくださいね天気も悪くなりそうですから」
P「あ、ありがとうございます……」
春香(危なかったですね、プロデューサーさん)ボソボソ
春香(えへへ、私も気になりますから)
小鳥「あれ?でも今日って春香ちゃんレッスンのはずじゃ……」
春香「あ、あわわ!きょ、今日はコーチの先生が風邪ひいちゃったみたいで!お休みになったんです!」
小鳥「あら……そうなのね。季節の変わり目に体調崩し人多いわねぇ~……」
春香「そ、そうですねー私も気をつけないと」
小鳥「ふふ、そうね。765プロのホープなんだから」
春香「えへへ……」
P(春香、グッジョブだ)
春香(きょ、今日レッスンいいんですか?)
P(ああ、こうなったからには仕方ない……春香も今日の夜残って、小鳥さんのパソコンを見るしかない)
春香(な、なんだかワクワクしますね!)
小鳥「?」
小鳥「はーい、って春香ちゃんも?」
春香「はい、予定無くなってしまったので今日はあがりますね!」
小鳥「はーい、春香ちゃんもお疲れ様。やよいちゃん達は律子さんが送るんですか?」
P「そうなってます」
小鳥「了解です、私も、もう少ししたら今日の分終わるんで、今日は早く帰っちゃおうかな」
P「良いんじゃないですか?社長にも俺が言っておきますよ、今日は残るつもりなので」
小鳥「あ、そうでしたよね。プロデューサーさん残るなら、ゆっくりでも……」
P「いえ!たまには小鳥さん羽を伸ばしてください!」
小鳥「え、ええ!?」
P「お願いします!」
春香「お願いします!」
小鳥「は、春香ちゃんまでー!?」
P「小鳥さん……クマできてますから」
小鳥「ギクッ……」
小鳥「もー!分かりました!今日は早上がりします!二人共千早ちゃん待たせてるんですよ!?早く行ってください!」
P「は、はい!」
春香「行ってきます!」
小鳥「……変な二人だったなぁ」
千早「えへ……ふ、ふふ……」
春香(ずっと写真眺めてる……)
P(運転しながらだと気になってしょうがないんだが……)
千早「これが、私……」
春香「……」
ブーン
P「さて、千早も無事(?)家に届けたことだし、春香はどうする?別行動にして、後で事務所で合流するか?」
春香「いえ!今日はプロデューサーさんとデートします!」
P「」
春香「冗談です!でもさっきの画像加工が気になるかなって感じです」
P「ああ、そうか。えっと、それじゃあカフェ入ってパソコン眺めるか」
春香「あ、良いですね!この前マカロンの美味しいカフェがあって!あ、でも車止められるかな……た、確かタイムズが近くにあったと思うんで、そこ行きませんか?」
P「分かった分かった……」
春香「……っと」バタンッ
P「なんだ、助手席乗るのか」
春香「話しながらのほうが楽しいじゃないですか?」
P「まぁーそうだけどもな」
P「春香ナビか、大丈夫だろうか」
春香「あずささんよりは正確です!」
P「比較対象がなぁ……」
春香「良いじゃないですかー!あ、そこ右です」
P「ほいほい」
春香「そしたら、しばらく直進。右手にマクドナルドが見えたら、また右折です。したら、左手にタイムズが見えてくると思います」
P「あれ、滅茶苦茶ナビ上手いじゃないか」
春香「そ、そうなんですか?ここに書いてあることを言っただけなんですけど」
P「便利だな携帯電話!ちょっと春香凄いと思ってしまったぞ、俺」
春香「こういう機能を使いこなせるんですから、凄いんですよ!えへへ」
P「まぁそういうことにしておくか……あ、あれだな」
春香「はい!」
P「2名です」
店員「喫煙禁煙は」
P「禁煙で」
店員「……って、あれ?もしかして、アイドルの天海春香さんですか?」
春香「ふぇ?」
店員「ほ、本物ですか!?キャー!!」
春香「は、はい!で、でも今日はプライベートなので」
店員「そ、そうですよね、ごめんなさい。それじゃあお席ご案内しますね」
春香「でも嬉しいですよ、ありがとうございます!」
店員「い、いえいえ」
P「春香も人気になってきたな」
春香「えへへ……『今日はプライベートなので』なんて偉いこと言っちゃいましたよ」
P「でも事実だろ?」
P「あ、店員さん。珈琲二つと、このマカロンセット?ってやつを一つ」
店員「かしこまりました、少々お待ち下さい」
P「よし、それじゃあ始めるか」
春香「はい!」
P「えーと、何からやろうか」
春香「そうですねー……例えば、画像とかにテロップつけたりとか出来るんですか?」
P「ああ、テレビ番組みたいにってことか」
春香「はい!スクープ!天海春香、見知らぬ男性とカフェでデート!とか」
P「それ洒落にならないぞ……それに俺はスーツだし、明らか仕事だって分かるだろ」
春香「むー……」
P「まぁそれはともかく、テロップとかスクープ記事みたいには出来るぞ。よーし、待ってろよ……」
待ってろYO
春香「マカロン美味しいー……ってできたんですか?」
P「こんな感じでどうだ?」
春香「凄いんですけど、なんで私こんな微妙なコメントしてるんですか!?」
P「だって実際してなかったか?」
春香「してましたけど、テレビでは流石に言いませんよ!!」
P「うーん、そうか……春香なら、そのまま答えそうだと思ったんだけどな」
春香「もー……でも、本当テレビみたいですね」
P「そうだな、あと『天海春香:』よりも『春香:』のほうがよかったな」
春香「名前紹介が被ってますもんね……あと色使いでしょうか」
P「そうだなぁ、そこらへんのセンスは皆無だ」
春香「小鳥さんはそこらへんのセンスっていうのも…・・」
P「揃えている」
春香「流石達人ですね!」
春香「じゃあ、これを壁紙みたいに仕立てて貰っていいですか?」
P「これ生っすかのやつか」
春香「はい!崇め奉りなさい!ってとこです」
P「なんでこんな写真持ってるんだ?」
春香「それは良いじゃないですか!それじゃあ私またマカロン食べてますね」
P「ほいほい……」
春香「……」パシャッ
P「」カタカタ……
春香「マカロンなう、っと……」
P「よし……って春香?」
春香「ハッ!?ど、どうしました!?」
P「出来たぞ、ほら」
春香「おおお!これ友達に送っても良いですか!?」
P「ああ、そりゃ春香なんだし、大丈夫だぞ」
春香「凄い、なんかグッズ化されそうですね、こういうの」
P「そうだな。赤統一も良いんだけども、色変えてもよかったかもな。春香のリボンが黄色だから黄色にしてもよかったけども」
春香「ふむふむ……このソフトがどれだけ凄いかは分かりました!」
P「そうか、ってもうこんな時間か!?」
春香「うとうとしてたから、すっかり……もう小鳥さん帰ったんでしょうか」
P「んー早上がりって言ってたしな、そうかもな」
春香「それじゃあ行ってみます?」
P「よし、行くか!」
P「鍵はかかってるな……」ガチャンッ
春香(そういえばずっとプロデューサーさんと二人きり……)
P「よし、起動っと……」
春香「大丈夫なんですか?」
P「何がだ?」
春香「勝手に起動して。例えば小鳥さん以外だとどーんって爆発するとか」
P「デスノートじゃあるまいし……」
パスワード:[ ]
P「えーと、確か……piyopiyo99……あれ?入れない」
春香「え、分からないんですか?」
P「そ、そんなはずは……piyopiyo99……ど、どうしてだ!?」
春香「うーん……パスワード変えたとか」
P「まさか、今日の昼入力している所を見たのに」
春香「しっかりと、ですか?」
春香「……プロデューサーさんは、そういうとこ抜けてます!もー……よいしょ」
P「? どうした、机の下に何かあるのか?」
春香「引き出しの裏側……あった」
P「!?」
春香「これがパスワードです」
P「……kotori.99765か。なんで春香知ってたんだ?」
春香「実はロッカーに隠れてた時に」
P「入りだしからおかしい、なんでロッカーに隠れてたんだよ」
春香「えへ、狭い所って落ち着いて」
P「……深く聞かないことにしよう」
春香「したら、小鳥さんが『誰も居ないし、パスワード書いた紙を、って言ってやってる所を見たんです」
P「なるほどな……助かった、よし、いよいよ起動だ……」
春香「……」ゴクリ
春香「……」
カチカチッ
P「こ、これは……ッ!?」
春香「そ、んな、ま……さか……」
ヒューーーーーッポ
P「ッ!?しまった!!!Skypeだ!!」
春香「!?」
ぷーぴぽー、ぷーぺぽー、ぷーぴぽー
P「つ、通話!?誰からだ……」
春香「piyo2……?」
P「……まずいな、完璧にバレたぞ、これは」
春香「……えー」
piyo2:プロデューサーさん、まさかマイピクチャのアイコンをクリックしたらSkype起動するなんて驚きましたね?
P「やられた……」
春香「初めからお見通しってことでしょうか」
piyo2:怒らないんで、通話取ってください
P「はい……」
小鳥『もしもし』
P「こ、小鳥さん……」
小鳥『……プロデューサーさん?なんで私のパソコンつけたんですか?」
P「これには海よりも深いわけが」
小鳥『もー……そこまで知りたいんですか?私のヒミツ」
P「端的に言えばそうですね」
春香「わ、私もです」
小鳥『はぁ、ちょっと待っててください、今事務所行きますね』
P「い、今からですか!?」
P(こ、怖い……)
春香(怖い)
小鳥『返事は無いんですか?』
P「はい!」
小鳥『それじゃあ、お茶でも飲んでリラックスしててくださいね』
ヒュンポンッ
P「……出来ないよな」
春香「……一応淹れますね」
数分後。
ガチャッ
小鳥「……プロデューサーさんも、春香ちゃんも、そういうところはダメですよ?」
春香「ごめんなさい、好奇心が……」
P「右に同じく……」
P「はい!」
春香「気になります!」
小鳥「はぁ……よりにもよってバラす人が春香ちゃんだなんて」
春香「え?」
小鳥「まず、ここに一枚の『春香ちゃん』の写真があります」
春香「こ、これっていつのやつだろ……」
小鳥「最初にリボンを取ります」
ササッ
P「い、一瞬で消えた……」
小鳥「次にちょっと明るさを調節します」
ササッ
春香「さっきより綺麗ですね……」
春香「わ、私の髪の毛が緑色に……」
小鳥「この時緑色で塗ったレイヤーは別にして、レイヤーのモードを『色相』にします、するとこうなります」
春香「ま、まるで別人みたいです……」
小鳥「次は眼の色を変えます、私の写真から眼の色を抽出して、春香ちゃんの眼に塗ります」
ヌリヌリ
P「ここらへんまで来ると小鳥さんっぽいな……」
小鳥「衣装は変えなくても良いので、そのままで。足りないものなんだか分かります?」
P「あー……ほくろですか?」
小鳥「ぴんぽーん♪最後にほくろをつけて……カチューシャをつければ……」
P「こ、小鳥さんだ!!」
春香「私が小鳥さんになった!!!??」
P「なるほど、実物を知らなければ分かりませんよね……」
春香「私今物凄く感動してます……」
小鳥「うふふ、たまにこうやって自分にアイドルの衣装着せてるんです……なんて」
春香「それなら本人が着ましょうよ!!」
P「そうですよ!小鳥さんならまだまだいけますよ!」
小鳥「いけません!もー二人共見たことは、まだ許してないんです!」
P「う……」
春香「ごめんなさい……」
小鳥「まったく、とにかくこれですっきりしました?私の恥を晒しただけなんですけど……」
P「それはもう今は清々しい気分です。明日の仕事も頑張れそうだ!」
春香「はい!私も頑張れます!」
小鳥「それならよかったの、かな……うん、そうしておかないとダメよね……それじゃあ、今日はもう帰宅してください!」
Pと春香「「はーい」」
春香「プロデューサーさん誰に喋ってるんですか?」
P「ああ、いや、あっはっはっは」
小鳥「はぁ……それにしても、パソコンの中に入ってるXXXXXXXとかXXXXXXXXがバレなくてよかった……」
おしまい
Photoshop手元にあったので、途中から>>30をゴールに書いてました
多分雪歩も小鳥さんにしようと思えば出来ると思います。真は無理かな?
ということで、読んでくれたかたありがとうございました
まとめ画像置いていきますね
http://blog-imgs-55.2nt.com/s/s/h/ssh123/F9xOy.jpg
小鳥さん恐ろしい(スキル的な意味で)
Entry ⇒ 2012.10.05 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
春香「サイドストーリー」
春香「でも、もしあそこであぁならなかったらこうはならなかっただろうし……」
春香「もしかしたらもっと早く……まあ今更だよね」
春香「みんなもそれぞれ今があるけど」
春香「もし、もしそうなってたらって想像したくなっちゃう」
春香「例えば……」
>>5
安価はアイマスSSのスレタイ形式で
例)P「春香が錬金術師に?」、やよい「ドン引きです……」など何でもOK
基本765プロ 961、876はSSで少々 ぷちはSSでほんの少し、モバは専門外
10~20レス程度でまとめて行く予定 書く側をやりたい人歓迎
一応スレタイにあるので最初の話にはもちろんできるだけ春香を絡めていく予定
P「おぉ春香、おはよう」
春香「あ、プロデューサーさ……わぁ!!」
P「お、おい春香!大丈夫か?」
春香「い、いてて……えへへ、すみません朝から」
P「それはいいんだが……気をつけろよ?」
春香「すみません……」
春香「はぁ……朝からドジだなぁ私」
春香「あ、ファンレター?」
春香「やっぱり嬉しいなぁ、まだ私もあんまり名前が知られてないからこういうの」
春香「……え?」
小鳥「お、おはようございます!遅れてすみませ……春香ちゃん?」
春香「……」
小鳥「あっ!!ご、ごめん!私、昨日チェックし忘れてたやつで……変な事書かれてなかった?」
春香「……あ、は、はい。大丈夫ですよ、あはは……」
春香「は、はい!……あ、ちょっと私トイレに」
小鳥「あ、えぇ……春香ちゃん、大丈夫かしら……」
『そんなんでアイドルになれるなら私でもなれる。下手くそはやめちまえ!』
春香「……」
春香「どうしてこんな……」
春香「わかってる……私だって、うまいとは思ってないし、みんながみんなこんなふうに思ってるわけじゃない……」
春香「でも、やっぱり辛いな……」
春香「ドジだし、歌も上手くなくて……アイドル、向いてないのかなぁ……」
春香「……もう、私なんて」
春香「痛っ!!?」
春香「……」
春香「い、いたたたた……急に頭が……なんだったんだろ……」
春香「……とりあえず、プロデューサーさんと話しなきゃ」
P「ん?どうした春香?」
春香「あの……」
春香(……ちょっと、お休みしたいなんて、卑怯かな……でも)
春香「私……」
「もっと大きな仕事がしたいんです」
春香「……え?」
P「ん?大きな仕事かぁ、確かにコツコツ行き過ぎてたかもな。よし、ちょっと話してくるよ。仕事、とれなかったらごめんな」
春香「あ、いや、その……」
P「春香がやる気を出してくれて、俺も嬉しいよ。だから俺も頑張るから、待っててくれ」
春香「あっと……はい……」
春香「……なんであんなこと言っちゃったんだろ」
春香「それに、おっきいお仕事なんて、また下手なところみせちゃうだけだし……」
春香「私なんて……もう」
「諦めちゃうの?」
「私って、そんなに弱い人だったの?」
春香「だ、誰!?」
「頭」
春香「え?」
「頭に、ついてるでしょ?」
春香「頭って……リボン?」
春香「ちょ、ちょっと……聞いてるの?」
小鳥「春香ちゃん……?」
春香「あっ、い、いえ!そ、そのまたトイレに!」
春香「……はぁ、びっくりした。……まさかこのリボン?いや、そんなこと……」
春香「……気のせいだよね。よいしょっと……」
「もう、急にはずさないでよ。しゃべれなくなるでしょ?」
春香「ひゃああ!び、びっくりした!!」
「これでわかってくれた?私は貴方よ?ちょっと形が違うだけ。あ、他の人には聞こえないから安心して?」
「うん、さっきの声、私」
春香「あっ……だから」
「ねぇ、私ってそんなに自信ない?」
春香「……えっ?」
「私は、私が一番よくわかってる。別になんて思われたっていいでしょ?だって歌が好きだからアイドルをやってるんだもの」
春香「歌が……そっか……そんなこともあったよね」
「だから、次のライブで頑張って歌ってみない?ね?」
春香「う、うん……でも……」
P「春香!取れたぞ!結構大きいところでライブだ!これは気合いれていかないとな!」
春香「え、あ、あの……あ、ありがとうございます」
P「うんうん!春香なら大丈夫!頑張ってくれ!」
春香「は、はい……」
春香「……うわぁ、人がこんなに……」
「大丈夫、深呼吸して」
春香「……それじゃ、行ってくる」
「頑張ってね」
春香「え、えっと、天海春香です!そ、その……よろしくおねがっ!ったぁ……」
アハハー
春香「う、うぅ……そ、それじゃ聞いてください!私はアイドル!」
春香(き、緊張して声が……)
ナンカアンマリウマクナイヨネ ウーン
春香(い、いまうまくないって……も、もうだめだよ、私なんて……)
「きっと私が一番!」
春香(えっ?)
アレ?キュウニウマクナッタ?
春香(自分でもわかる……すごい、綺麗……それに、すっごく楽しそう)
イイゾー!
春香(すごい……これがアイドルとして、歌うっていう……よし!)
春香「は、はい!ありがとうございます!」
P「これを機にどんどん仕事が入ってくる!頼むぞ!」
春香「もちろんです!」
「お疲れ様」
春香「……ありがとね」
「え?」
春香「貴方が、助けてくれたんだもんね。私、あのままじゃ絶対失敗してた」
「……」
春香「でも、もう大丈夫!私、ちゃんとやってみせ……たたた」
「あはは、まだその様子じゃ完璧は遠いね~」
春香「も、もう!!これはそのうち治るもん!」
「次のお仕事は何かな?」
春香「えっと、これからのためにオーディション、って言ってたかなぁ。すごく大きなところだから、緊張しちゃう……」
「きっと大丈夫!私なんだから!」
「もう、しっかりし……大丈夫?」
春香「う、うん、大丈……痛っいい……!」
「ちょ、ちょっと動かさない方がいいよ。多分、捻挫してる……」
春香「う、嘘……オーディションまであと2日なのに」
「……間に合わないかもね」
春香「……嫌、せっかくここまで来たのに」
「……ちょっとごめんね?」
春香「えっ?わ、わぁ!だ、だめ!今足が!……痛く、ない?」
「貴方のやる気が上がったから、こんなことまでできるようになったんだ。どう、私に任せてみない?」
春香「……でも」
「自分の力で、成し遂げたい?」
春香「……」
「それなら、捻挫の痛みが治まる程度に手助けするけど」
春香「……ごめん、一回私の力でやらせて?そのための手助けをお願い」
春香「大丈夫、わかってる」
春香「……それじゃ、行ってきます」
P「頑張れ、どこの事務所もある程度有名なアイドルばかりだ。気を抜くな」
春香「はい!……よし」
春香「わんつーさん……うぁっ!」
だ、大丈夫?ちょ、ちょっとこれ捻挫してるんじゃ……
春香「だ、大丈夫、です……ごめんなさい……」
春香(……やっぱり、ダメなのかな。私、こんな大事な時に、捻挫なんてして……)
「諦めちゃうの?」
春香(……リボン?)
「……私に任せて?」
春香(……ごめん、お願い)
春香「……それじゃ、行きます」
春香「はぁ、はぁ……」
「はぁ、はぁ……ど、どうかな?」
春香(流石、ありがと。でも、ごめんね?任せちゃって)
「ううん、いいの。私のことは私のためでもあるんだから」
春香(……そうだよね)
春香(そうやって、できない自分をごまかしたりして……)
春香(……でも、私は私のためなんだから。ちゃんと、できるときにやれば大丈夫、同じこと)
P「合格おめでとう!ここまでくると、ホント、すごいよ春香!今年度のアイドル大賞にも手が届くかもな……」
春香「そ、そんな……」
P「……今まで、気が付かなかったんだもんな。ごめん」
春香「い、いえ!プロデューサーさんにはずっと迷惑かけて、お仕事とってきてもらったから今の私があるんです」
P「……」
春香「だから、プロデューサーさんにはとっても感謝して……」
春香「プロデューサーさん?……え?」
春香「あ、いや、その……」
P「……好きになってた。ダメだってわかってるんだけど……それに、今頃になって言うのは卑怯かななんて思ったけど」
春香「そ、そんなこと……」
P「……すまん、急に。……でも、俺は本気なんだ。アイドル活動が落ち着いたら、付き合って欲しい」
春香「プロデューサーさん……」
P「……それじゃ、お疲れ」
春香「……はぁ」
「どうしたの?プロデューサーさんのこと?」
春香「うん……そんなこと、考えたこともなかった……」
「それは、嘘でしょ」
春香「えっ?」
「だって、プロデューサーさんと話すとき、いっつもどぎまぎしてるもん」
春香「そ!そんなことないよ!……でも、あんなこと言われたらそりゃ意識しちゃうし」
「……じゃあさ、次のフェス成功したら付き合うっていうのは?」
「どっちにしても踏ん切りがつかないなら、これくらいしておいた方がいいって!」
春香「そ、そうだけど……うぅ……」
「私もいるんだし、大丈夫!」
春香「……わかった」
P「……わかった。それじゃ、次のフェスに向かって全力で行こう!」
春香「は、はい!」
春香(それでも、やっぱり不安だった)
春香(練習を重ねてるうちに、どんどんプロデューサーさんが気になって)
春香(今までも好きだったんじゃないかって思うくらい……)
春香(だから、成功させたい。でも逆に失敗したら……?)
春香(プロデューサーさんは気を使って私のこと、諦めるって言うかもしれない……そんなの嫌)
春香(今までも、なんとかなってきたんだもん。大丈夫……このフェスは絶対に成功させる!)
P「……ついに、この日が来たな」
P「……あのことは一旦忘れて思いっきり楽しんで来い!」
春香「はい!」
P「……でも、一つ言わせてくれ。プレッシャーになるかもしれないけど」
春香「……はい」
P「俺は、お前のこと信じてる」
春香「はい……私も、プロデューサーさんのこと……い、行ってきますね!」
春香「みんな!盛り上がってるー!?」
キャー!ワー!
春香「それじゃ一曲目!いっくよー!」
春香(楽しい。何より楽しい、それにこのまま頑張れば……)
「……」
春香「それじゃ次は……あ、あれ?」
春香(足が……!こ、このままじゃ観客席に……!)
「呼んだ?」
春香(た、助けて!このままじゃ!)
「……いいの?」
春香(早くしないと!ここで倒れちゃったら……)
「……わかった」
春香「……っとっと……えへへ、危ない危ない。ドジっちゃうとこでした!」
アハハー!
春香(よかった……それじゃ、あっ、でもこのままやってもらった方が……絶対にうまくいくよね)
「……」
春香(……これで)
春香「そ、それじゃ次の曲は――」
春香(終わった……ライブは大成功)
春香(ちょっと前まで、すぐ諦めて……自分のこと恨んで……でも、頑張ればできるんだ)
春香「プロデューサーさん……」
春香(あっ、ぷ、プロデューサーさん……ど、どうしよ……)
P「……お疲れ、春香」
春香「……はい」
春香(……)
P「……春香の口から、返事を聞いてもいいか?」
春香「もちろんです」
春香(……私は、プロデューサーさんのことが……)
春香(あれ?)
春香(私、しゃべれてない?)
春香「私も、プロデューサーさんのことが好きです。こちらこそ、よろしくお願いします」
P「……よかった」
春香「プロデューサーさん、私……」
P「おいおい、泣かないでくれよ……俺だって、今泣きたいくらい嬉しい。フェスも成功して、こうやって春香とも通じ合えて」
春香「はい……」
春香(嘘、嘘だよ……プロデューサーさん、私も抱きしめてよ……)
P「……春香」
春香「……はい」
P「……キスしても、いいか?」
春香「……はい」
春香(なんで、なんで……私が頑張ったんだよ?ねぇ、プロデューサーさん……)
春香(唇、何も感じない……そっか、今私)
「リボンなんだ」
春香「どうしてって、貴方が勝手にしたことじゃない」
「私は何もしてない……ただ、できない自分を恨んでただけ……」
春香「私は、貴方の理想だったの。だから、あなたが自分の理想に近づく度に干渉する力が強くなった」
春香「でも、貴方は最後私を頼った。あなたの理想は、私。これが貴方、いえ天海春香が望んだ結末でしょ?」
「そんなの望んでるわけないでしょ!ねぇ、返してよ……私のこと……」
春香「今までのこと、わかるでしょ?今度は今までの逆。私が理想の私と離れればあなたは元に戻れる」
「……そんな」
春香「私は、プロデューサーさんと今すごく幸せ。アイドルとしてもトップでしょ?あなたが戻れるのは、いつになるかな」
「……ひどいよ」
春香「ひどいことなんてないよ?だって、貴方だって私なんだもん」
「……」
春香「……後悔するくらいなら、自分でやってみればこんなことにはならなかったの」
「……」
春香「それじゃ、多分二度と会うことがないよね。バイバイ、理想から離れた私」
春香「……あれ?嘘、夢……なの?」
春香「……リボン」
春香「こんなの……でも」
春香「……よし」
P「あぁ、春香おはよう」
春香「プロデューサーさん、いいですか?」
P「ん?あぁ、なんだ?」
春香「もっと大きい仕事がしたいんです」
P「ん?大きな仕事かぁ、確かにコツコツ行き過ぎてたかもな。よし、ちょっと話してくるよ。仕事、とれなかったらごめんな」
春香「はい!お願いします!」
P「……なんか、今日の春香輝いてるな」
春香「そ、そうですか?えへへ……って、うわぁつ!」
P「あはは、元気なのもいいが気をつけろよ?」
P「それじゃ、行ってくる」
春香「はい!……やっぱり、夢か」
「ねぇ」
春香「っ!」
「諦めちゃうの?」
春香「……もう、あきらめないよ。転んでも、もっかいやってみるんだから」
「……そう」
春香「それで、プロデューサーさんと結ばれなくても……トップアイドルになれなくても、それが私だから」
「……そうだね」
春香「……ごめんね、でも多分もう会うことはないよね、昔理想だった私」
春香「リボン、新しいのにしてみようかな~」
春香「もう、どんな私が来ても負けないから。……見ててね?」
完
次>>65
もちろん春香さんでもいいしある程度違うキャラでもOK
美希「ハニー!」
P「み、美希……」
美希「もう遅いの!」
P「今日は早いんだな、美希」
美希「うん!今日のお仕事は大変そうだって思ったから早めに来たの!褒めて褒めて!」
P「あぁ、それはいいことだ」
美希「むーそれだけ?できればナデナデして欲しいな」
P「あぁ、これでいいか?」
美希「あふぅ……これで頑張れるの!」
P「それじゃ、行くか」
美希「はいなのー!」
P「美希、今日の収録落ち着きなかったが、どうかしたのか?」
美希「だって、ハニーが見てくれてるから頑張らなきゃって思って!」
P「それは嬉しいが……仕事にはしっかり取り組んでくれよ?」
P「まあそれならいいんだけどさ」
美希「ハニーの方がわかってないの!ミキはハニーのために頑張ったんだよ?ちゃんと見ててくれたんだよね?」
P「あ、あぁ、そりゃな?」
美希「それならいいの。それじゃ早く帰ろ?」
P「……はぁ」
小鳥「どうかしたんですか?」
P「なんだか最近美希の様子が……」
小鳥「うーん、あんまり感じないですけど。どんなところですか?」
P「なんというか、依存、とは違うんですけど……」
小鳥「あ~でも、美希ちゃんプロデューサーさんのこと大好きですし、気にしすぎじゃないですか?」
P「美希の好きって言うのがどうもイマイチ……」
小鳥「だからって手は出さないでくださいよ?」
P「そ、それは流石にわかってますよ!まあ、今のところは大丈夫そうなのでこのまま行こうかと思います」
P「はい、わざわざありがとうございます」
小鳥「いえいえ、美希ちゃんも事務所の大事な一人ですからね!」
P「さてと、今日はレッスンだったか?」
美希「うん!」
P「ちょっと仕事が詰まってるから、多分迎えに行けない。あまり遅くならないだろうし、悪いが自分で帰ってくれるか?」
美希「えっと、お仕事の場所って前に行った場所だよね?」
P「え?あぁ、そうだが……やっぱり不安か?それなら多少待っててくれるなら迎えに行くが……」
美希「ううん、ミキそこまで子供じゃないの!」
P「お、おう。それならそれで頼む」
P「こう言ってはなんだが、美希のことだ、迎えに来てくれないのー!とごねるかと思ったが」
P「やはり俺の勘違い、というか気のせいだったみたいだな」
P「まあ、一応早めに終わらせて迎えに行ってやりたいが」
P「っと、そんなこと言ってたら電話か。はい」
P「ん、まあ俺ももう少しってところだ」
美希『わかったの!それじゃ、そっちに行ってるから!』
P「あ、えっと、わかった」
P「ん?そっち?家に帰るんじゃないのか……?まあ、大丈夫だろう」
P「よしっと、思ったよりも手間取ったが……美希が一人で帰ってくれて助かった」
P「……ん?あれは……まさか」
美希「……」
P「美希!?」
美希「……ハニー?」
P「ど、どうしてお前……」
美希「……どうしては、ミキのセリフなの……ハニー、遅いの」
P「そりゃ、帰ってると思ったからある程度マイペースで……じゃなくてだな!どうしてうちの前にいるんだ」
美希「だって、ハニーを驚かせたくて……」
美希「ハニーが、ミキに一人で行ってくれって言ってくれて嬉しかったの」
P「……」
美希「前にここがハニーの家って聞いてたから、ついでにと思って」
P「一人で、か」
美希「でも、ハニーが来てくれなかった……最初はお仕事遅くなってるのかなって思ったけど」
美希「ミキがここに来たことが嫌で来てくれないのかな、とか」
美希「すっごく不安で……」
P「なんでそんな……来るなら電話の時に言ってくれれば……」
美希「だから驚かそうと思ったの!ミキはハニーがいなきゃ何もできないって思われたくなかったの……」
P「……なるほどな」
美希「……だからハニー、ミキを嫌いにならないで?」
P「当たり前だろ?お前は俺の大事なアイドルだ。そんなことで嫌いにならない」
美希「ホント……?よかった……」
P「でも、もうこんなことしちゃダメだ。仮にもそれなりに名前が売れてきてるんだ、こんなところにいたら怪しまれる」
P「美希……?」
美希「ハニー!」
P「うわっ!ちょ、急に抱き着くな!」
美希「いいの!ハニーはやっぱりハニーなの!!」
――
―
P(今思えばあれが引き金か)
美希「ハニー……いなくなっちゃやなの……」
P「……もう、ダメだ」
美希「いや、ダメなんて言わないで……いや、いや……」
P「美希……」
美希「ハニーじゃないと、ダメ……ねぇ、ハニー?触って、ミキに……」
P「……これでいいか?」
美希「……うん、でも足りないの……ねぇハニー、しよっ?」
――
P「美希?」
美希「告白なの!ちゃんと、ハニーとお付き合いしたいって思ったから」
P「いやしかし……」
美希「アイドル、だからでしょ?大丈夫なの」
P「何が大丈夫なんだ……お前が大丈夫でも、俺が危険だ……」
美希「ハニーは、ミキのこと大切だって言ってくれたの」
P「それはまあ……」
美希「それに……ミキのこと認めてくれたから」
P「……」
美希「ミキ、ハニーのためならアイドル辞めてもいい」
P「美希!」
美希「わかってるの!ミキは、やめないよ?でも、それくらいのカクゴがあるってことわかって欲しいな」
P「……美希」
美希「ハニーの迷惑にならないように頑張るから……ね?」
美希「……あはっ、嬉しいの」
P「……でも、まだちゃんとした答え、として出せない。それはお互いのためでもある、わかってくれるか?」
美希「うん、それでいいの。これからも、よろしくね、ハニー?」
P「あぁ、そうだな」
――
美希「それで、ここは?」
P「あぁ、この時は最初に……」
小鳥「プロデューサーさん、ごめんなさい。お電話です」
P「あっ、すみません。ちょっと行ってくるな」
美希「うん」
P「はい、それでは。……ふぅ」
小鳥「あの、プロデューサーさん?」
P「あ、音無さんどうも」
小鳥「あの、美希ちゃんその後どうですか?」
小鳥「えぇ!?ど、どうしてそんな……」
P「まあ、もちろん言いませんし、お互いにそういう話になっただけですけど。なんだか、俺も美希がほっとけないみたいで」
小鳥「……」
P「すみません、わざわざ心配してもらったのに」
小鳥「いえ、それはいいんですけど……くれぐれも気を付けてくださいね?」
P「はい、もちろん。美希だけじゃなく他の子にまで影響与えちゃいますから。それじゃ」
小鳥「……プロデューサーさん、自分を見失わないでくださいね」
―
P「お待たせ……って美希?」
美希「……ねぇハニー」
P「ん?」
美希「その……あんまり、他の女の子と話さないで欲しいな……」
P「……何を言ってるんだ?」
美希「小鳥は……その、仕方ないけど……ハニーがとられちゃうんじゃないかって」
美希「……」
P「それくらい、わかってくれるだろ?な?」
美希「嫌なの!ハニーはミキ以外の女の子とお話したいの?」
P「だからそういうわけじゃないって……」
美希「ダメ!ハニーはわかってない!絶対狙われてるの!」
P「そんなはず、それに話しかけられたって相手にしないさ。話すのができないっていうのはまた別だろ?」
美希「……ミキに、飽きちゃったの?」
P「……美希?」
美希「そうなんだね……もう、ミキなんて……」
P「おい、美希、おかしいぞ?どうしたんだ急に!」
美希「もういいの、どうせミキなんて、ハニーの迷惑にしか……」
P「……落ち着いたか?」
美希「……ごめんなさい。ハニー……」
美希「他の人と話してるって思ったら、急に怖くなって……ミキ、自分でも何言ってるかわからなかったの」
P「……」
美希「ミキ、病気なのかな……ハニー……」
P「そんなことない……美希は俺のことを想ってくれてるんだよな」
美希「うん……そうだよ、ミキはハニーのことだけ、想ってるから」
P「……それなら大丈夫だ。ただ、仕事中は気を付けて欲しい」
美希「分かってるの。ハニーに迷惑はかけないから」
――
P「……美希か」
美希『ハニー?』
P「どうした?」
美希『ごめん、声が聴きたくなったの』
P「そうか。大丈夫、終わったら会えるから」
P「あぁ……ほら、あんまり電話してると怪しまれるぞ」
美希『わかったの……ハニー、大好き』
P「……うん」
美希『終わったの。今、どこ?』
P「今向かってる、もう少し待っててくれ」
美希『早く会いたい、会いたいよハニー……』
P「声が聞こえてるだろ?もうすぐだから」
美希『ハニー……ハニー……!』
美希「ハニー!!!」
P「美希……」
――
P(こんなことがしばらく続いた)
P(だがバレないはずもなく、お互いの連絡にある程度の規制をされてしまった)
P「……そろそろか」
P「連絡は迎えの時間になったら……今までのに慣れてしまってせいか、結構きついな」
P「……いや、そもそも俺が悪いんだ」
P「プロデュースだって、もともと美希メインとは言っても今じゃ他の子に手を触れてない」
P「あのままじゃお互いにダメになってしまう、これでよかったんだ……でも」
P「……こんな時でも、美希を考えてしまう俺は、もう……」
P「……もしもし?美希か?」
美希『……』
P「もしもし?終わったか?美希?」
美希『……ごめんなさい』
P「おい、美希?美希!……なんで」
P「どうする……いや、間に合うはず……なんだってんだ……」
――
P「電話……ここ、まさか」
P「……美希」
美希「……ハニー?」
P「どうして、ここに?電話も……」
美希「……もう、美希アイドル辞める」
P「どうしたんだ急に!」
美希「だって……だってぇえ……はにぃいい……」
P「美希……」
美希「……」
P「落ち着いたら、話してくれればいい」
美希「……もう、耐えられないの」
P「……」
美希「みんな、ミキを見るとハニーとのことについて話してる。みんなミキ達のことを邪魔しようとして……」
P「それはいいんだ……お前が玄関の前に座ってたのは、一回目じゃないしな」
美希「……あそこにいたくなかった……あのレッスン場にいるとハニーが見えなくなりそうで」
P「……」
美希「無理に連絡しようとしても、迷惑かかっちゃう、ってもう迷惑かかってるんだよね……」
P「……」
美希「だから、もうアイドルは、無理かな……」
P「……美希、あのな」
美希「違うのハニー!アイドルをやめるっていうのは、ハニーのためで、でも……」
P「落ち着いてくれ、美希……だから」
美希「お願いハニー!嫌いにならないで!ねぇ、ハニー!!ミキ、ミキはハニーのことが好きだから!」
P「わかってる、わかってるから頼む……」
美希「やだ!やだよぉ……ハニー!嫌いにならないで、ミキを見捨てないでぇええ……」
P「美希……」
――
P「改めて挨拶したときは”プロデューサー”」
P「いつからだろう”ハニー”と言われるようになったのは」
P「錯乱した美希を落ち着かせるにはひたすら肌を寄せるしかなかった。キス、ハグ、そして」
P「何度体を重ねたかわからないが、その落ち着いた美希から聞いたこと」
P「『ハニーは美希が初めて認めた人。だから、分からなかったし怖かった。それ以上の関係を目指すのが』」
P「『好きだけど、それを形にしていいかわからなかった。でも、考えてるうちにどうしようもないくらい好きになってた』」
P「それが美希の話。ある程度懐いていたところまではいい。が、彼女を認めてしまったのがいけなかった」
P「美希は自分と葛藤していた。俺に依存する自分と、依存しないよう努力する自分」
P「美希は後者を自分で選ぼうとした、苦労の末。だがそれを俺は真っ向からぶち壊した」
P「結果、反動でより強い依存を生んでしまったようだ。が、気づいた時には俺も全く同じで」
P「美希なしじゃ、生きていけない。俺だってそうだ」
P「俺と美希は事務所を辞めた。ギリギリだったと今でも思う」
P「そして今……」
――
P「どうした、美希」
美希「ハニーは今、幸せ?」
P「……あぁ、とっても」
美希「ミキのせいでお仕事なくなっちゃったのに?」
P「ミキのせいじゃないさ」
美希「でも、お金ないと大変だし、ミキ頑張るよ?エッチすればたくさんもらえるって聞いたから」
P「……美希、それ本気で言ってる?」
美希「大丈夫か、わかんないけど普通のお仕事じゃハニーの顔がみたくなっちゃうの。それなら、すぐ終わるしハニーのこと想えば」
P「……冗談でも、やめてくれ」
美希「……ごめんなさい」
P「謝らなくていい、大丈夫。金は俺がなんとかする。美希は心配しなくていい」
美希「……うん。……ね、キスして?」
P「……あぁ」
美希「ハニー……大好きなの」 完
さっき書きたいって言ってる人いなかったっけ
いないならもう一つくらいとは思ったが
期待通りだった
ありがと
>>120
亜美「そんなこと言ってー!」
真美「実はワクワクしてるんでしょー!」
P「……」
――
P「面倒なことになった……」
小鳥「どうしたんですか?」
P「あ、いや、なんか家に両親が遊びに来まして。ついでに近くの友達を呼ぶ、とか勝手に言い出しまして」
小鳥「あら、元気な両親ですね」
P「それが困るんですけどね……そのままなんかもう籠城する勢いで。気にするな、と言われても年齢が全員2倍近くありますし」
小鳥「なるほど」
P「そりゃ寝るところ他にないですし、仕方ないんですけど気が重くて……」
亜美「ナニナニ?」
真美「面白そうな話をしてるじゃない!」
P「どっから出てきたんだお前ら」
P「ちょ!音無さん!?」
亜美「ふーん、じゃうちくる?」
真美「いくいくー!」
P「お前らで解決してどうする……でも、流石にそれは……」
亜美「えーいいじゃん!たまには!」
P「たまにはって行ったことないわ!」
真美「だって、兄ちゃん寝るとこないんでしょ?家燃えちゃったの?」
P「いや……流石にそこまでは」
亜美「ビショージョ二人に囲まれて寝られるんですよー?こんな機会ないですよー?」
真美「えっ?い、一緒に寝るの?」
P「ないない。だっていやだろ?」
真美「べ、別に!真美はいいけど!」
亜美「亜美もへーきだよー。ちょうど今日うち親いないし、雑用してよ!」
P「本音が出たなこいつめ……って、親御さんがいないのに伺うってのもまた問題だ……」
P「ちょっと!何言っちゃってるんですかもう……そんなわけないでしょう」
亜美「だったら来ちゃいなよー!」
真美「そーだそーだ!」
P「……それじゃお言葉に甘えるか。確かに親がいないってのは不安だろうしせっかくの機会だ」
亜美「やったー!」
真美「えへへー楽しみだね!」
P「なんか嫌な予感しかしない……」
小鳥「ふふっ」
――
P「しかし、流石に部屋は綺麗だな。広いし」
亜美「でしょー?あ、こっちが亜美の部屋ね」
P「ほー、真美の部屋と違うんだないろいろ」
亜美「そりゃそうでしょ!双子なめんなよ!」
P「舐めてないです。……あとはトイレとかの場所か」
P「え?いいのか?」
亜美「もち!なんてったってお客さまですからねー!」
P「ほう、亜美にしては気が利くな」
亜美「にしてはってなんだよー!」
P「悪い悪い、それじゃお言葉に甘えて……ってまさか真美がいるってオチじゃないだろうな?」
真美「んー?呼んだー?」
P「あ、悪いなんでもない。流石に警戒しすぎだわな」
亜美「真美何やってんのー?」
真美「ちょ!入ってこないでよ!」
亜美「さっき兄ちゃん入ったのに?ま、いっか。それじゃ一名様ご案内~」
P「ふぅー……あったまるなぁ……しかし」
P「……うちの浴槽の2倍はあるか。流石は双海家」
ガラッ
P「え?」
P「……」
真美「ちょ!兄ちゃん!?何やってんの!」
P「い、いや、こっちが聞きたいんだが……」
真美「ってうわぁあ!ば、バカ!」
バタン
P「……亜美のやつ」
亜美「あっはっは!たのしー!」
真美「もー!亜美!!」
亜美「ごみんごみん!……さてと、次は」
P「真美もあのままだと寒いだろうしな……そろそろ上がるか」
P「スタイルよかったな……、って違う!違う!」
P「……あいつら中学生の癖にスタイルよすぎるんだよな。ま、だからどうということもないが」
P「おーい、上がったぞー」
P「さてと……って、あれ?着替え、ここらへんに置いておいたはずが……」
P「……くそっ、また亜美か。タオルもないとなっては……」
ガチャッ
P「おーい、亜美!またお前だ、ろ……」
真美「……兄ちゃんなにして、ひゃあ!!」
P「ま、真美!ちょ、違う!これは!そのだな!」
真美「もー!さっきからなんなのさ!こ、この変態!!」
P「違うんだってばー……くっ……」
亜美「どしたの兄ちゃん~?」
P「……そんな満面の笑みで来るか普通」
亜美「だって面白いんだもーん!はい、着替え!」
P「……どうみても俺のじゃないんだが」
亜美「真美のだけど?」
P「流石に真美がかわいそうだろ!って違う、そもそも入らないから!」
P「亜美、それわかって言ってるの?どっちにしてもやめなさい。それと服返してください」
亜美「あはは、流石にかわいそうだし、はいどーぞ」
P「全く……ん?どうした」
亜美「……やっぱグロいね」
P「見るなぁ!!」
P「はぁ……全く風呂に入ってここまで疲れるとは……」
真美「あっ」
P「あー……その、悪気はないんだ。亜美のせいでだな」
真美「知ってる……けど、その、みたことなかったし」
P「真美にまで見られてしまった……」
真美「ま、真美だって見られたんだよ!」
P「まあそれはすまないと思ってるが……」
真美「別にいいけど……それよりご飯だよーもうおなかぺこぺこー」
真美「おー!兄ちゃん、作れんの?」
P「一人暮らしをなめるんじゃないぞ?まあ楽しみにしておくんだな」
真美「ほー期待しておきますかー!」
亜美「ふーさっぱりー、おぉ!いい匂い!」
P「お、亜美か。もう少しでできるから待ってろ」
亜美「カレーですなー?んっふっふー亜美様の口に合うものが果たして作れますかね……」
P「嫌なら食べなくてもいいぞー」
亜美「あーもう冗談っしょー!食べるからー!」
P「はいお待たせ。どうぞ召し上がれ」
亜美真美「いただきまーす!」
P「……どうよ」
亜美「うん、うまい!」
真美「普通においしいじゃん!やるね兄ちゃん!」
P「そうだろ?そりゃそうなんだよ!はっはっは!」
P(一応いつもカップめんとは言えないしな、うん)
P(さて一口……あれ?味が……なんかおかしい)
P(あ、野菜いためないでそのまま……あいつら……)
亜美「そんじゃ、食後の運動ということで!」
P「え?いや、もう夜遅いだろ」
真美「外に行くわけじゃないよ?これこれー!」
P「ん?あぁ、って格ゲー?」
亜美「ふっふー兄ちゃんやるかい?」
P「おーいいね。容赦はしないぞ?」
亜美「こっちのセリフだぜ!」
P「何故だ……」
亜美「ケイケンの差、とでも言っておこうか!」
真美「次真美と勝負だ兄ちゃん!」
P「いいだろう、今度こそ!」
亜美「あっはっは!兄ちゃんよわー!」
真美「ごめんあそばせー!」
P「くっ……」
P(カレーはお世辞を言ってくれたのだろうが、これはまた別ってわけか……わからんなこの双子は)
P「時間も時間だし、そろそろ寝ないのか?」
亜美「えー負けたからってそれはないっしょー」
P「やかましい。それは関係ないから、11時になるぞもう」
亜美「むー……わかったよー」
P「で、ホントに三人で寝るのね」
真美「いつもは二人ベッドだし?」
亜美「こーゆーときくらいはいいかなーって」
P「まあいいけどさ……」
亜美「急にこーふんすんなよー?」
亜美「そりゃだって、ねぇ?」
真美「一応、兄ちゃん半分ずつってことで」
P「なんじゃそりゃ……俺は抱き枕か」
真美「別に抱き着かないけどね」
亜美「残念でしたー!」
P「……なんでもいいわ。寝るぞ」
亜美真美「はーい」
P「……ん、トイレに……ってそうかここあれか」
P「確かこっちの方……ここだ」
P「……あれ?誰かいる?」
亜美「わぁ!」
P「わぁ!ってびっくりした……亜美か」
亜美「そ、それはこっちのセリフっしょ!急にどうしたの兄ちゃん」
亜美「変な事しないでねー」
P「トイレだって言ってるでしょうが。って、亜美もか?」
亜美「もー乙女にそれ聞いちゃう?」
P「あんだけ破廉恥な行為をしといてよく乙女だのと」
亜美「あれはあれっしょー。急にそういうことされたら、流石に亜美もハズいよ?」
P「そうですかそうですか。って、だからどうして起きてるんだ。寝ないと明日辛いぞ?」
亜美「んー……なんていうか」
P「ん?」
亜美「……眠れない、っていうか」
P「なんでだ?」
亜美「キンチョーして……っていうかテンションあがっちゃったせいかな?」
P「……ぶふっ」
亜美「ちょ!なんで笑うのさ!そ、そりゃ兄ちゃんが隣にいたらちょっとビビるっしょ!寝れないよ!」
P「いや、やっと亜美がまともに子供らしいなーと思って」
P「あんまり騒ぐと真美が起きるだろ。いいから早く寝とけ。目つぶってれば自然と眠くなる」
亜美「……」
P「ん?」
亜美「……なんでもない。兄ちゃんもさっさと済ませなよ!」
P「あ、え、うん」
P「んー……眠いな。流石に人の家だと熟睡はできないか」
P「……ほらいわんこっちゃない。まだ爆睡してるな、こいつめ」
亜美「んー、むぅー……」
P「……まぁ、まだ時間あるし寝かせておくか」
真美「あー兄ちゃんおはー」
P「おぉ、真美早いな」
真美「んーなんか目、覚めちゃって」
P「そうかそうか。まあ朝はいくらでも早い方がいいしな」
P「ん?あぁ、快適だったぞ。段違いにうちより広いし」
真美「そっかー……また来たい?」
P「え?まあ、そうだな。機会があったら遊びに来てもいいかもな」
真美「うん!そだね!……えへへ」
P「あっとそうだ……どうせまた亜美が起きたらイタズラされるんだろうし、復讐しとくか」
真美「何するの?」
P「まあ、寝てるときって言ったらこれだろ」
亜美「ふぁー……おはよー……」
P「おぉ、亜美おはよう!」
亜美「元気だね兄ちゃん……眠いよぉ……」
P「だから言ったんだ。ほら、顔洗ってこい……ふふっ」
真美「おはよう亜美……あはは」
亜美「んー……?」
ウワー!
P「まあ日頃の行いだな」
亜美「……ねぇねぇ兄ちゃん」
P「ん?なんだ?」
亜美「顔、洗った?」
P「あ、亜美にイタズラしてたから忘れてた……って思わず」
亜美「ちょっとー!まあわかってたけどさぁ……ま、いいっしょ!ねー真美?」
真美「ねー!」
P「え?何だ?……いや、嘘だろ?」
ウオワー!!
P「……やられた」
真美「ふっふっふ、いつから亜美だけが敵だと錯覚していた……」
亜美「我らは二人で一つ!」
P「完敗です……」
亜美「また来てねー!」
真美「今度はもっとおいしいカレーが食べたいなー!」
P「あれはホントすみませんでした」
亜美「そんじゃ……」
真美「んー……」
チュッ
P「……ん?」
亜美「チョー特別大サービスだかんね!」
真美「真美達の初めてのお泊りだったんだから!」
亜美「これから、責任とってくれるよね?兄ちゃん?」
P「……遠慮しときます!じゃ、また仕事でなっ!」
亜美「あー逃げた―!」
真美「待てー!!」
完
Entry ⇒ 2012.10.05 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
妹「クラムボン警報だ。お姉ちゃん早く逃げよ」 姉「いやだ」
姉「うるさいなぁ。ドア閉めてよ」
妹「だからクラムボン警報だって。お姉ちゃんクラムボンになってもいいの」
姉「いいよ別に。もう面倒くさい」
妹「お姉ちゃん」
姉「どうせ逃げ場なんてないよ。私はウチに残る」
妹「じゃ私も残る」
姉「それがいいよ。あちょっとそこのお菓子取って」
妹「学校が休みになって、毎日休日だね」
姉「ね。どこもかしこもクランボンクランボンで馬鹿じゃんね」
妹「クラムボンね。お父さんとお母さんは大丈夫かな」
姉「さぁね。とっくにクランボンになっちゃってるかもね」
妹「お姉ちゃん」
姉「まーそれも人生としてアリなんじゃない。別に哀しくもなんともないし」
妹「お姉ちゃんは、私がクラムボンになったら哀しい?」
姉「さあ。アンタは? 私がクランボンになったら」
妹「わかんない」
姉「でしょ? 考えるだけムダだって」
妹「いつぐらいにココもダメになるのかなあ」
姉「さあね。結構すごいスピードなんでしょアレ」
妹「冷蔵庫の食べ物もつかな」
姉「まぁ全部無くなる前にはクランボンも来てるでしょ。まだだったら」
妹「まだだったら?」
姉「適当にそのへんのセブンやローソンから買ってくればいいし」
妹「たぶん店員さんいないよ」
姉「無人販売とおんなじでしょ。あー、だったらうまくいけば盗り放題かも」
妹「私万引きなんてやったことない」
姉「私だってないけど、まあ非常時だし」
妹「うまくやれるかな」
姉「不安ならお金だけ置いとけばいいよ。小遣いがなくなってから考えな」
妹「じゃあそうする」
姉「あ。また死んだ。きー」
姉「いーよん」
ピッ
『――クラムボンは勢力を増して北上しております。
やむを得ず外出する際は、必ず支給されたコートを忘れずに着用して――』
ピッ
『――ですから、一概に政府が悪いともいえない訳ですよ。
人為的に放出されたといっても、自然発生した形となんら変わりない経緯で――』
ピッ
『ザーーー』
姉「うるさい」
ピッ
『んなで なかよく ランランラン♪ ランランラン♪』
姉「あっまだコレあってたんだ観よ観よ」
妹「この非常時なのによく続いてるね」
姉「ね。日本に生まれて良かったねぇ」
妹「こういうときだからじゃないの」
姉「ケータイは圏外だし、ネットは配線ちゃんと繋がってるのに接続できない表示。どうして?」
妹「わかんない。ひまになる?」
姉「いんや。暇つぶしなら家に山ほどあるし」
妹「またゲームする?」
姉「お。やるかー? やるきかー?」
妹「勝負」
姉「じゃあ~目ぇ瞑って~……今日はコレ! で勝負! げっ、これかー」
妹「これ二人プレイできたっけ」
姉「できるできる。私あんまやったことないけど。まいーややろ。あコレ片付けてね」
妹「思ったより散らかってるね」
姉「うーんクランボンが来るまで当分散らかしモードだな。こりゃ」
姉「このゲーム意外と面白かった。あ。もうこれ空っぽ」
妹「ご飯つくろっか」
姉「あんまお腹空いてないな。間食しまくっちゃって」
妹「じゃあいいかな」
姉「アンタお腹空いたの?」
妹「すこし」
姉「お菓子食べると太るから? まだダイエット中?」
妹「うん」
姉「どーせクランボンになっちゃうのに?」
妹「ならなかったとき、損しちゃう」
姉「どーせもうダメだって。この国はクランボンで果てる運命なんだって」
妹「ふうん」
姉「卵まだあったっけ。いつもの作るね」
妹「はーい」
妹「いただきます」
姉「たっきますと」
妹「おいしい」
姉「ね。私の腕もまだ落ちちゃいないっぽい。しょう油とって」
妹「もうあと少ししかないよ」
姉「あー。しょう油のでかい奴ってどこにあったっけ」
妹「分かんない」
姉「詰め替えるのめんどくさいからいっか」
妹「あとで私やっとく」
姉「いーよ別に。しょうゆ使うの最後かもしれんし」
妹「やっとく」
姉「そ。で? もうごちそうさま?」
妹「ごちそうさまでした」
姉「ごちそーさまでした。一緒にお皿洗うの手伝ったげる」
妹「いい」
姉「おっぱいどんだけおっきくなったか見してよ」
妹「やだ。お姉ちゃんより小っちゃいに決まってるし」
姉「お姉ちゃん、クランボンになっちゃう前に一目見たいんだけども」
妹「だめ。お姉ちゃんはもうゼッタイ私の胸を見ることはないの」
姉「このー恥ずかしがり屋さんめ。かわいいやつめ」
妹「だめ」
姉「けち。ケチになるとおっぱい大きくならないんだぞ」
妹「お姉ちゃんケチなのにおっぱい大きいじゃん」
姉「そこがお姉ちゃんのすごいところ。一揉みしとく?」
妹「いいです」
姉「思い出作りの下手なコだねー。……スキあり!」
妹「きゃあ」
姉「うえ真っ暗。あそっか外の明かり点いてないからか」
妹「夜のうちにクラムボンが来たらどうするの」
姉「そんときゃそんとき。むしろ寝ている間な分、ありがたいかもよ」
妹「そうかな」
姉「それよりさ、恋バナしようぜ恋バナ」
妹「なにそれ」
姉「ありゃー死語になっちゃってるのかね。『夜の甘ったるい恋のおはなし』の略だよ」
妹「長い」
姉「アンタさ、気になるオトコノコとか、いるの?」
妹「わかんない」
姉「ほー。いる訳ね。ほー。誰?」
妹「お姉ちゃんはいるの?」
姉「いたけど、どうも一足先にクランボンになっちまったらしい」
妹「えええ」
妹「クラムボンになったって」
姉「別に私らも近いうちに仲間入りするんだから、別に悲しくもなんとも」
妹「そうなんだ」
姉「まあヒトでいられるうちに、しといた方がいいこともあるかもだけど」
妹「私、まだオトコノコとキスもしたことない」
姉「あらーピュアーな純潔を守ってるのネ」
妹「お姉ちゃんはあるの」
姉「ないけど」
妹「えっないの」
姉「うん。男の子を選り好みしてたらいつの間にか間に合わなくなってた」
妹「かわいそう」
姉「そう? クランボンになったらキスぐらいできるんじゃないの?」
妹「そうなの?」
姉「さあ。適当言ってみた」
妹「おやすみ」
姉「ヤすみ」
妹「」
姉「Zzz」
妹「」
姉「Zzz」
妹「Zz」
姉「はよ」
妹「あ。寝坊しちゃった」
姉「ぎゃーもうこんな時間」
妹「学校やってないよ」
姉「えっなんで? 今日休みだっけ? げげっ何でこんなリビング散らかってんの」
妹「クラムボン」
姉「あっ、あーね。なるほど。そういうのもあったか」
妹「いい天気」
姉「来てる? クランボン」
妹「来てないかも」
姉「そ。でもあと一時間後にくるかも。五分後かも。そっから見えてないだけかもねぇ」
妹「別に怖くないよ」
姉「あそうつまんないの」
妹「また遊ぶの」
姉「んーそうしたいのは山々なんだけどね。ちょっと出かけよっか」
妹「避難所に行くの」
姉「いやーあんな遠いとこまで歩いていけないっしょ」
妹「どこいくの」
姉「お菓子補充。ちょっとそこのコンビニまで。一緒に来る?」
妹「うん」
姉「外に出ると危ないかもよ」
妹「平気」
姉「そ。じゃ行こっか。サイフどこに置いてたっけ」
妹「お財布もっていくの?」
姉「えっ当たり前じゃん」
妹「そうだったね」
姉「あったあった。じゃそっち裏の戸締りよろしくねー」
姉「車も通らない昼下がりの道路」
妹「みんなクラムボンになりたくなかったんだね」
姉「変だなー。私らみたいなのはもっといそうなもんだけどなー」
妹「みんな家に閉じこもってるのかも。あ。コンビニ電気ついてる」
姉「開くかな。おー開いた」
妹「やっぱり誰もいないね」
姉「あ、でもほら。あっこカウンター」
妹「あ。引き出し飛び出してる。レジの」
姉「ところがお金が荒らされた様子はないですねぇ」
妹「電卓も用意されてる。ちゃんと準備されてるんだ」
姉「日本人の良心だね。あとほら、商品もぽつぽつなくなってる」
妹「やっぱり私達みたいに残った人がいるんだ。いるのかな」
姉「さーて何買おっかなー。今日は多めに持ってきたから奮発しちゃうぜ」
妹「カゴ持ってくるね」
妹「お会計は完全手動だね」
姉「もう。どれがいくらかいちいち覚えてないし」
妹「確かこれは200円。これは298円」
姉「これは?」
妹「これは、分かりません」
姉「しゃーないかー。えーっと待って。えーっ。148円!」
妹「いち……よん……はち」
姉「あとは。これとこれね。えーっと、えーっと。もー面倒くさい」
妹「おいくら」
姉「たぶん200円と300円ぐらい。いーのいーの、お金払わないよか罪は軽いし」
妹「じゃあ1146円」
姉「じゃ1200円ここに突っ込んどこ」
妹「お釣りは?」
姉「とっておけぇい」
姉「なーんか入るときも出るときも静かなコンビニって変なの」
妹「悪いことしてるみたい」
姉「してもいいのよ。どうせ誰も見てないし」
妹「誰か見てるかも」
姉「うん、ほら、あっこの警察の人とか」
妹「えっ。あっ」
姉「やっぱりそうだ。ほら、こっち自転車でくる!」
妹「クラムボンだったらどうしよう」
姉「うーん。もしそうならちょっと早いね。買ったお菓子まだ食べてないし」
妹「まだ心の準備できてない」
姉「大丈夫、そんときゃそんとき」
妹「大丈夫かな」
姉「てか、クランボンって自転車乗るの?」
妹「わかんない」
姉「乗らないんじゃね??」
姉「こんちわー」
妹「こんにちは」
巡査「こんにちは。お嬢さん方は、避難所に行かれないのですか」
姉「まぁ気が向いたら行きますんでお構いなく」
妹「おじいさんは、一人だけですか?」
巡査「はい。こうやって周囲に避難勧告を出しながら――」
姉「出しながら?」
巡査「クランボンのところに向かっているんですよ」
妹「どうして」
巡査「いやあ、待ちきれなくて、とでも言っておきましょうか」
姉「クランボンになりたいの? それって職務放棄じゃないの?」
巡査「ええ、私の独断です。まぁ今となっちゃ、警察なんて、なんの権限もありゃあしません」
妹「ふうん」
姉「これは? おもちゃ?」
巡査「本物ですよ。一応まだ弾も入ってます」
妹「ひえ」
姉「どうしてまた」
巡査「これを手放すことで、私はただのヒトになれるのです。もしよければ」
姉「要らないなら捨てればいいじゃないですか。なぜ?」
巡査「それは、頑なにクランボになるのを拒むヒトが、いるかもしれない、と思ったからです」
妹「ヒトのまま死ぬってこと? これを使って?」
姉「物騒なこと勧めるおじいちゃんだね」
巡査「これは失礼、そういう、まともな考えのヒトに会うのは久しぶりでして」
妹「怖いな」
姉「私たちなら大丈夫なんで、コレはそういうコトが必要な人に譲ったげてください」
巡査「そうですか。いやはや、気を悪くさせて申し訳ありませんでした。では、どうかお気をつけて」
姉「バイバイ、またね」
姉「外には怖い人がいるかもだって。帰ろっか」
妹「うん」
姉「ウチ、すぐそこだけど」
妹「着いた」
姉「カギカギ。開いた」
妹「ただいま」
姉「ただいまー」
妹「おトイレ」
姉「行っトイレ。あ、もう石鹸こんなすり減ってる。まいっか」
姉「がらがらがら。ぺっ」
姉「ふいー。お菓子何から食べよっかな」
姉「何じゃらほい」
妹「さっきのおじいさん、何でクラムボンになりたかったのかな」
姉「さぁね。嫌気がさしてたんじゃない?」
妹「嫌気?」
姉「多分、すごい詰め寄られたと思うよ。警察は市民を守るもんじゃないのかーとか」
妹「なるほど」
姉「だからこう、言い方は悪いけど、逃避的な? 厭世的な?」
妹「ふうん。でも、アレを使ってヒトのまま死ぬより、クラムボンになるのを選んだんだね」
姉「そりゃまー死ぬのは痛いだろうし、残された人はハッピーになれないだろうしねぇ」
妹「クラムボンはそうじゃないの?」
姉「そりゃ分かんないけど、だからこそ、より良い結果を未知なものに賭ける、みたいな?」
妹「ごめん分かんない」
姉「お姉ちゃんもよく分かんない。まーじきに分かることでしょうよ」
姉「いーよん」
ピッ
『ザーーー』
姉「うるさい」
ピッ
『ザーーー ……の……危険……』
ピッ
『ザーーー ……が……放棄……』
姉「うるさーい」
妹「どこもダメみたい」
ピッ
妹「昨日はちゃんとついたのに」
姉「ふーん。いよいよかもねぇ」
妹「うん」
妹「充電器は」
姉「どっかいっちゃった」
妹「探す」
姉「いーよ。どうせクリアできないし。ぽいっ」
妹「クリアしないの」
姉「したところでねー。うん、なんかもう締めに入っちゃってる感じだし」
妹「締めって?」
姉「なんか精神的に整理がついてるっていうかー。そう、心の準備! ね」
妹「そうなんだ」
姉「アンタはまだ不安なの?」
妹「少し」
姉「そう。そういうときは~あったかいもの! ミルクココアでも作っかー」
妹「ありがと」
姉「アレ、一番でかいカップあったでしょ記念品の。あれ今つかお、出しといてー」
妹「ふう」
姉「リラックスしたわー最高」
妹「落ち着いた」
姉「大丈夫? 落ち着いた?」
妹「もう平気だよ」
姉「そ。じゃあ~」
妹「じゃあ?」
姉「ゲームしよっか。アンタの一番得意な~こいつで!」
妹「いいよ。いつも通り適当に選ぼう」
姉「そう? せっかくのチャンスを棒に振っちゃっていいのかしらー?」
妹「望むところ」
姉「よしよし、なら正々堂々、適当に選んだゲームで白黒つけますかねぇ」
姉「きー何で勝てんのじゃあ」
妹「お姉ちゃんは見切るのが早過ぎるから。もっと粘らないと」
姉「そんなの私の性分に合わんのじゃー!」
妹「そろそろ終わ」
姉「待って! コレ最後! ほんと最後だから!」
妹「いいよ、最後なら」
姉「あっ、アンタまたわざと手抜くつもりでしょ! それダメだから!」
妹「だってお姉ちゃん、自分が勝つまでずっと『これが最後』って」
姉「じゃ、じゃあこの一戦で負けた方が今日の夕飯作るってのは!」
妹「ごはん? ほんと?」
姉「ほんとほんと絶対」
妹「やる」
姉「よしきた。じゃあこれスタート画面に戻すかんねー」
姉「いたっきまーす」
妹「おしょうゆ取って」
姉「はいよ。お。中身入ってんじゃん」
妹「任されよ」
姉「いいねぇ、調味料大臣の称号を与えよう」
妹「いらない」
姉「コレおいしい?」
妹「おいしい」
姉「ふふん。知ってる」
妹「おしょうゆ返して」
姉「お代わりしよ。あー今日2合しか炊いてなかった」
妹「もうちょっと炊く?」
姉「炊きましょうかねえ!」
妹「ごちそうさまでした」
姉「ごっそさまー」
妹「おなかいっぱい」
姉「おや、ダイエット姫が腹十分とは」
妹「お姉ちゃんは平気なの?」
姉「デザートまで入るよ」
妹「あるの?」
姉「今こそ打ち明けましょう……冷蔵庫の奥に秘蔵のプリンが!」
妹「あやっぱりアレお姉ちゃんのだったんだ」
姉「バレてる! まいいやアレ二人で食べよ」
妹「いいの」
姉「いーよ。食べれるうちに食べとこっ」
姉「ふいー、久々の姉妹水入らずのシャワーだったねぇ。水入らずってのは変か」
妹「お姉ちゃんが勝手に入ってくるから」
姉「いいじゃん。お姉ちゃんのおっぱいおっきかったっしょ?」
妹「もうサイテー」
姉「そんなに怒んなさんなて。結局アンタだっておっぱい見してくんなかったじゃん」
妹「でも後ろからいきなり揉んだでしょ」
姉「だって。見してくんなかったから」
妹「ひどい。お姉ちゃんのばか」
姉「でも発育途上ながら十分実ってたじゃない。お姉ちゃんは嬉しいよ」
妹「私は嬉しくない」
姉「今日はいい夢見れそうだー」
妹「もう。お姉ちゃんのばか」
姉「消灯」
妹「ん」
姉「どら。一緒の布団で寝るか」
妹「お断りします」
姉「今日も一日。有意義に過ごしたね」
妹「結局ぐうたらデイだったけど」
姉「でもお姉ちゃん疲れちったよ。寝よ寝よ」
妹「潜ってこないでよ」
姉「おあすみー」
妹「もう。おやすみ」
姉「Zzz」
妹「ふう」
姉「Zzz」
妹「Zz」
姉「Zzz」
妹「Zz」
ガタ
ガタ
妹「……!」
姉「Zzz」
妹「お姉ちゃん」
妹「お姉ちゃん」
妹「きた」
妹「ウチ、入ってきてる」
姉「んー?」
妹「クラムボンきた」
姉「えっまじで?」
妹「だって。まだ心の準備」
姉「ええー。じゃー飲む? あったかいの」
妹「もうリビングにいる。今からじゃ無理」
姉「アンタ震えてんの?」
妹「別に」
ガタガタ ガタ
妹「!」
姉「あー。近いね」
妹「逃げよ。ね。裏口から」
姉「夜中だよ?」
妹「懐中デント準備してる」
姉「なんだ。アンタ、ハナから逃げる気まんまんだったんじゃん」
ガタガタ ガタガタ
姉「よしいまっ!」
妹「うん!」
バタン!
姉「へへ、間抜けめー」
妹「ライトライト!」
ポチッ
妹「!!」
姉「うわっ。もう外にいるじゃん、こんなたくさん!」
妹「逃げよ、ね」
姉「逃げるったってどこに」
妹「クラムボンに捕まらないところ!」
姉「しょーがないなー。じゃ、とりあえず公園のあたり行こ。手、放さないでね」
妹「うん!」
姉「はっ……はっ……」
妹「はっ……はっ……」
姉「あー。外灯の一つくらい点いてりゃ楽なのになぁ」
妹「お姉ちゃん、そっち右にいる!」
姉「げっやば!」
「」
「」
姉「なんかどんどん増えてる気がする」
妹「追っかけてきてる!」
姉「ライトのせいじゃないの?」
妹「でもこれないと何にも見えない」
姉「しゃーないか。とりあえず足掻くだけ足掻いてみよ。ほら、もうひとっ走り!」
妹「う、うん!」
姉「あー。こりゃダメだわ」
妹「はぁ……はぁ……」
姉「ゲームで鍛えた私にゃ分かる。これ全方位囲まれてるわ。万事休す。」
妹「はぁ……はぁ……」
姉「どうする?」
妹「はぁ……はぁ……ふうう」
姉「とりあえずそこベンチ座ろ」
妹「お姉ちゃん」
姉「ん?」
妹「逃げよう」
姉「だからもう無理だって。ほら、先頭がもうあっこまで来てる」
妹「私、あんなのになりたくない。クラムボンはいや」
姉「も、腹を括るしかないよ。こうなったらさ」
妹「やだよぉ。逃げようよう」
妹「だって。だって」
姉「ま、最初のクランボンが出てきたときから、みんな覚悟しなきゃいけなかったんだよ」
妹「お姉ちゃん」
姉「だーいじょうぶだって。多分痛くないから」
妹「お姉ちゃん!」
姉「おーよしよし。よく頑張った。うん。今日までアンタ、よく頑張ったよ」
妹「うええん」
姉「よしよし。さて」
姉「妹を泣かせたクソンボンどもさん」
姉「やるならとっとと、手短にお願いしますね」
「」 「」 「」 「」「」
「」「」 「」 「」 「」「」
姉「これで終わりかぁ。 ま こんな もん でっしょ」
「」 「」 「」 「」「」
「」 「」 「」
姉「あれ?」
姉「あれあれ? どうしたのあんた等」
妹「……?」
姉「なに、私らがどこにいるか分かんないの?」
姉「こんなに声出してるのに?」
姉「あそう。多分そういうこと?」
姉「よくあるゾンビものの逆? うん、きっとそうっぽい」
妹「お姉ちゃん?」
姉「うん、あのね、追われてるときおかしいと思ってたんだけど」
姉「こいつらどういう理屈か分かんないけど多分」
姉「私達がしゃべってる間、私達の姿が見つけられないみたい」
妹「えっ?」
姉「こりゃーチャンスかもね」
妹「うん」
姉「あっこから切り抜けよっか」
妹「だ、大丈夫かな」
姉「ダメ元じゃなきゃ切り抜けられないって。行くよ」
妹「うん」
姉「その代わりがんがん会話しなきゃ。ほら何かしゃべって」
妹「え? えーっと雨にも負けず風にも負けず雪にも夏の暑さにも負けぬ丈夫な身体が欲しいです」
姉「そっかー。そういうことだったんだねー」
妹「なにが?」
姉「今思えばさー。私ら起きてる間、ほとんど喋りっぱなしだったよね」
妹「うん」
姉「だから家に残ってた私ら、すごく見つかりにくかったんじゃないかな」
妹「なるほど」
姉「ほらー。こんな声出して喋ってるのにやっこさん、必死になってウロウロ探してて受ける!」
姉「かもねぇ。大体ヒトが追い詰められたときって、こんなペラペラ喋ったりしないだろうしね」
妹「これがきっかけで、もしかしてクラムボン騒動解決の糸口が掴めるんじゃないの?」
姉「かもねぇ」
妹「じゃあ誰かに伝えよ。はやく」
姉「あはは。なんかすっかり巻き返した感じ」
妹「やっぱり諦めちゃいけなかったんだよ。ね」
姉「うーん」
妹「?」
姉「正直、私ね。すっかりクランボンになる気だったんだよね」
妹「どうして?」
姉「この事件が起こる前も、ろくなことなかったし……全部元に戻ってもしょーもなかったし」
妹「そんなこと言わないでよ。またゲームしようよ」
妹「またお料理つくってよ。卵の。ちゃんと、おしょう油入れ替えるから」
姉「ん……。……。おっといけない、喋んないと喋んないと たはは」
妹「どこにいくの?」
姉「このままパジャマ姿でフラフラとー。夜道を徘徊する姉妹が向かう先はー」
妹「語呂わるい」
姉「避難所」
妹「避難所?」
姉「とりあえず誰かに、このピーチクパーチクでクランボンが凌げることを伝えるんだよ」
姉「お父さんとお母さんもいるかもしれないしね」
妹「行こっ、行こっ、避難所!」
姉「遠いぞー。イサドより遠いぞー」
妹「いいの! 早く行こっ!」
姉「こらこら引っ張りなさんな。おっ、ようクランボン!」
妹「クラムボン!!」
END
お付き合いいただきありがとうござおやすみなさい
希望ある終りで良かったよ
乙
Entry ⇒ 2012.10.05 | Category ⇒ 兄弟姉妹「」SS | Comments (3) | Trackbacks (0)
菫「いいだろう。なってやるよ、魔法少女!!」
白糸台駅
照「ごめん。遅れた」トテトテ
淡「テルーおっそーい!」
尭深「おはようございます」ペコリ
誠子「おはようございまっす!」
菫「おはよう、照。別にまだ集合時間は過ぎていないぞ。まあ、お前が一番最後っては珍しいな。たいていは淡だし」
照「楽しみにしてたから早く出てきたのに…」
淡「嘘だー。どーせ寝坊したんでしょー」
誠子「淡じゃないんだから、宮永先輩が寝坊なんてするわけないだろ!」
淡「ぶー!」
照「ふう…」
菫「なんだ?お疲れ気味だな」
尭深「そんなに気にするほどのことでも無いと思います…けど」
淡「やっぱり寝坊だ!それで走ってきたから…」
淡「痛い痛いすみません」
照「誠子。許してあげて」
誠子「むぅ…宮永先輩が言うなら…」スッ
淡「ありがとテルー!セイコ意地悪!」ササッ
尭深「あ。宮永先輩の後ろに隠れた」
誠子「ぐぬぬぬ…」ワナワナ
菫「相変わらずお前は淡に甘いな」
照「そんな事無い…と、思うけど」ナデナデ
淡「むっふー」スリスリ
尭深「頭撫でながら言っても説得力無い…です…」
照「ん?」
菫「まあいいさ。で、どうしたんだ?」
照「ここに来るまでに迷っちゃって」
菫「ぶっ!?」
尭深「ナイスジョーク…?」
淡「それはいくらなんでもないよ。テルー…」
照「それが、嘘じゃないんだ。今日に限っていつも歩いてる道が知らない道に見えて」
菫「お前…そんな電磁波で方向感覚狂った鳩みたいな」
照「困ったから途中でコンビニ寄って道聞こうと思ったら、ただ聞くのも悪いしと思ってお菓子買ってるうちに目的忘れちゃって」
菫「ダメダメだなぁ!」
淡「テルーポンコツ!」
誠子「宮永先輩って、部活中はしっかり者でも、アレですかな。プライベートは結構うっかりさん的な」ヒソヒソ
尭深「あざと可愛い」
照「…」グスッ
淡「あー!泣~かした!泣かした!」
誠子「あわわわ」
尭深「ご、ごめんな…さい…」
菫「こんな程度で泣くなよ…」
淡(かわいい…)
誠子(かわいい…)
尭深(かわいい…)
照「そ、それじゃあ、早く行こうか」
菫「おお、そうだったな」
誠子「おっと、そうでした!」
尭深「はい。早くしないと、時間、間に合わないかも…」
淡「大変だ!」
菫「各自Suicaのチャージは足りてるな?早速街まで行こうか」
誠子「はい!宮永先輩、荷物持ちましょうか!」
照「いや、いいよ。ありがとう誠子」
菫「誠子、私の時も言ったが、今日はプライベートだから」
誠子「いっけね。そうでした!わかりましたー」
淡「みんな早く早くー!」
照「そういえばさ、菫」
菫「なんだ?」
照「今日って、何しに行くんだっけ」
誠子「」ズルッ
尭深「宮永先輩…」
菫「お前…」
照「いや…その…ごめん」
誠子「先輩~」
尭深「本当に…大丈夫、ですか…?」
照「うん。…多分」
菫「頼むぞ?まったく…」
照「い、今は、そう。朝。朝だし。まだちょっと寝ぼけてるのかも…」
菫「まあいいけど…」
淡「早くー!」
誠子「あー!わかったわかった!今行くから待ってろ!」
尭深「先行ってます」ペコリ
菫「ああ。淡がふらふらどこか行かないよう監視頼む」
照「菫。菫。で、目的って…」
菫「本当に忘れたのか?」
照「…」
菫「今日は部活休みで、『元』レギュラー陣で街の方へ遊びに行く約束だっただろ」
菫「私達も引退したことだし、な」
菫(夏は終わった)
菫(私達3年生は引退し、今は誠子が部長)
菫(本格的な受験勉強…と言っても私も照も推薦はほぼ決まったようなものだが…受験勉強前の息抜きに、と誠子達が企画してくれたのが今日)
菫(元レギュラー陣だけでの、初めてのプライベートの遊び)
菫(淡が照と離れたくないとワガママ言ってたのがきっかけ…らしいが、まあ、今日は新部長達の心遣いに甘えさせて貰って気を緩めて目一杯遊ぼうと思う)
菫(もしかしたら、今日の照のポンコツも、今までの全国3連覇という目標への重圧から解放されたが故の、本来の気性…なのかもしれんな)
ガヤガヤ
淡「おおー。やっぱこっちはちゃんと東京してるねぇ~」
誠子「ちゃんとって…白糸台だって一応立派な東京都なんだけど」
淡「あっちはなんか東京っぽくないんだもん!」
菫「まあ、言いたいことも気持ちもわからんでもないが…」
照「24区はやっぱり特別だよね」
尭深「ん?」
誠子「へ?」
淡「テルー?」
菫「…」
照「あれ…?わ、私、今なんか変な事言った?」オドオド
誠子「今、24区って…」
菫「どこ増やした」
照「えっ」
誠子「…」ゴチン
淡「ごめんなさい!」
誠子「あんまり失礼なこと言わないの!」
尭深「調子悪いならまた今度の機会でも…」
照「い、いやいや!大丈夫だよ!ちょっとボケてみただけだから!」
菫「お前のボケは分かりづらい」
誠子「空気を切り裂く感じで発言するんで、なんかマジな雰囲気が怖いです」
尭深「こう、冗談にしても、手心をですね…」
照「ご、ごめんごめん。そんなみんなで集中砲火しないで」アワアワ
淡「テルーギャグの才能ないよ」
照「あう」ショボン
菫(なーんか変だな今日のコイツ。いくらなんでもポンコツ具合が半端じゃない。みんなと遊びに出るってんでハシャぎ過ぎてんのか?)
誠子「おう!まっかせとけ!」
淡「隣の家にへいが出来たってね~」
誠子「かっこい~!」
尭深「古典的かつつまらない。3点」
誠子淡「「手厳しい!!」」
菫「…まあ、いいか。最初はどこに行きたいって話だった?淡」
淡「映画館!」
菫「映画館…ねぇ」
菫(映画館…か。そういえば、今年はまだプリキュア見てなかったな。今、見そびれた春の映画の再上映やってるんだよな)
菫(っていうか、そろそろ一人でコソコソ見に行くのも辛くなってきた。年齢的に)
菫(まわりお子様連れか大きいお友達ばかりだし)ガックリ
菫「…」チラッ
淡「どしたのスミレー?」キョトン
菫「いや…」
菫「…何見たいんだ」
淡「ふっふっふ~」
菫(…趣向がお子様っぽいし、結構期待してるんだが)
淡「ホラー」キリッ
菫「え゙」
映画館
菫「…」ボーーー
誠子「んー!肩凝ったー!」ノビー
淡「きゃー♪怖かったねーテルー」ダキッ
照「…」カタカタ
誠子「マジビビリしてますね。宮永先輩ホラー弱いんだ。でも、へー。貞子ってこんな話だったんだー。なんか思ってたよりショボ…ゲフンゲフン」
尭深「…」ブルブルッ
誠子「大丈夫?尭深。アンタもホラー苦手か」
尭深「せ、誠子ちゃん。ちょっとお手洗い付き合って…」
誠子「はいはい。じゃあ、弘世先輩。私らちょっと行ってきますんで、待ってて下さーい」
菫「ん」ボーー
淡「あ、私もー!」
照「わ、私も…!置いてかないで誠子!」モジモジ
誠子「私は今度映画見るならアクションがいいなー。ランボーとかエクスペンタブルズみたいなの」スタスタ
淡「えー?今度はコメディがいいー」トテテテ
照「ジブリかディズニーか動物…」フラフラ
菫「ああ…行ってこい…」ボー
菫「…」
菫「行ってこい…」ボー
菫「…ハッ」
菫「っ!」バッ
菫「~~~っ!!」キョロキョロ
菫「あ、あれ!?みんなは…」
菫「…」
菫「…ああ。トイレか」ホッ
菫「…」ヘナヘナ
菫「あう」ペタン
菫「こ、怖かった…」
菫「特にあの貞子が井戸から這い出てくる場面とかモニターから手伸ばして来る場面とか…なんだよあれ…絶対劇場で心臓麻痺起こして死んだ人いるぞ」ブツブツ
菫「あ、あわわわ…」カタカタ
菫「だ、駄目だ。体の震えが止まらない。みんなが帰ってくるまでに平静になっておかないと私のイメージが…」
菫「何か元気になれる要素…元気になれる要素…」キョロキョロ
菫「…あ」
菫「…プリキュアの劇場グッズ…」
【女の子は誰でもプリキュアになれる!!プリキュアオールスターズ、新たなるステージへ――】
菫「…見たかったな」ボソッ
菫(今日を逃したらもう劇場には来れないよな…)
菫「…」
菫(昔っから、憧れてたんだ。プリキュアとか、魔法少女とか、そんな子供染みたヒロインに)
菫(可愛い格好して、魔法でみんなの夢を叶えて、悪い敵をやっつけて…恋をして)
菫(そんな、どうしようもない子供染みた、妄想を。未だ、捨てきれずにいる)
菫(馬鹿馬鹿しい。私はもう受験生だぞ)プイッ
菫「…」
菫「…」チラッ
菫(グッズ。デコレーションステッカーくらいなら…有り…か?)
菫「…」コソコソ
「いらっしゃいませー」
菫「す、すみませーん…」
「はい!何をお求めでしょう!」
菫(…うん。デコステくらいならありだ)
菫「そ、その…」
「はい!」
菫「そ、その…プリキュアの、デコステッカーを」
「…(哀れみ)」
菫(ぐああああ!!一気にアレな人を見る目になったぁああああ!!?)
菫「その。つ、包んで戴けますか?……め、姪が、どうしても欲しいと言っていたものですので」
「包装ですか?生憎プレゼント用の包装はありませんが…」
菫「そ、それでいいです!」
菫(よし通ったーーー!!)
(この人、姪とか嘘なんだろうなー)
菫「あ、すみません。それと」
「…はい。なんでしょうか」
菫「パ…パンフレットも…一緒に…あの、紙で見えないように包装してか…」
淡「スミレー何買ってるのー」ヒョコッ
菫「あksdljそいふぃあうhふじこ!!?」
(あーあー)
淡「…って、あー。これプリキュアだ~」
菫「あ、淡!?いつの間に…」
淡「これもうお会計済ませたー?」
「え、ええ…」
「へ?」
菫「あ、ちょっと…」
淡「テルー!見てみてー!」ダッ
菫「淡ーーーーーーーーーーーーー!!!!」ダッ
(哀れな…)
照「どうしたの淡」
誠子「なに子供っぽいの買ってんの淡」
尭深「子供っぽいとは思ってたけど、そこまで子供っぽいとちょっと引くよ。淡ちゃん…」
淡「菫がこんなの買ってたーーー」
誠子「は?」
尭深「う」
照「ん?」
菫「わ、私のイメージがあああああああああ!!」
「…」
「…あいつか」
菫「…」ブッスー
照「菫。ごめんね。許して」
誠子「すみません弘世先輩。いや、あまりにも意外で…」
尭深「ごめんなさい」ペコリ
淡「まったくだよ!みんな、あのあと爆笑するだなんて…」
菫「誰が諸悪の根源だ!」ポカッ
淡「申し訳ありません!!」
菫「この!この!アンポンタン!礼儀知らず!天然畜生!」ブンブン
淡「ごーめんーねースーミーレー」ガクガク
照「す、菫。その辺で許してあげて。淡が首振り人形みたいに揺れてるよ…」オドオド
誠子「これ以上脳みそ揺すってこれ以上馬鹿になったら面倒見切れないので」
尭深「先輩。びーくーる。びーくーる」
菫「むぅ…」ピタッ
淡「おーほーぅー揺れるー」カクンカクン
淡「かしこまり!」ビシッ
菫「…みんな、無様を晒してすまなかったな。つい取り乱してしまった」
照「ううん。私達の方こそごめんね」
誠子「人間、隠したい趣味の一つや二つありますって!私はむしろ弘世先輩のその趣味、知れて好感度上がりましたけどね!」
菫「は?」
誠子「だって、ねぇ?」チラッ
尭深「うん。完璧人間の弘世部ちょ…元部長の可愛いとこ、見つけた」ニコッ
菫「完璧って…止してくれ。私はまだまだ未熟者で…」
誠子「何事も卒なくこなし、曲者ぞろいの白糸台麻雀を部長として1年間見事に統率してきた人間の言う台詞じゃないですよ。それ」
菫「あのなぁ誠子。お前だってこれから1年同じ役割を…」
照「菫。今はお小言はいいから」
尭深「ギャップ萌え」
菫「萌えって…」ガックリ
菫「…わかったよ。取り敢えず私の恥ずかしい少女趣味を受け入れてくれてありがとうな。あんまり公言するんじゃないぞ。特に淡」
菫「なんだかなーって感じだが、まあ結果的には…って、照!?お前いつの間に!」
淡「ああー!テルーのデラックスジャンボプリンパフェもう来たの!?」
誠子「でかっ!来るの早っ!そして食べるのも早っ!」
照「おいしいよ」パクパク
淡「うー。いいなー」
菫「みんなの分待てよ。協調性のな…」
誠子「ん?」クルッ
菫「…ん?どうした誠子」
誠子「…あ。いえ…なんか、視線を感じたんですが…」
菫「視線?その方向には誰も居ないが」
誠子「あれー?」
淡「もしかしてオバケ!」
尭深「やめてください」
菫「私も尭深に賛成だ。ひ、非科学的な」キョロキョロ
淡「やっぱりオバ」
菫「殴るぞ」
淡「何卒御容赦下さい」ペッコリン
尭深「あ、私の緑茶と宇治金時も来た」
淡「宇治金時美味しそう!」
菫「いつも緑茶だな尭深」
尭深「アイデンティティですので」
菫「はあ」
淡「わーい!私のプリンケーキも来たー!!」
照「それも美味しそう。ねえ淡。ちょっと食べっこしようよ」
淡「うん!」
菫「あとは、私のだけか…それ、渋いな。いつもはこういう場面だとがっつり食べるのに」
誠子「なんとなくです。先輩のまだですかね?今度店員近くに来たら聞いてみましょうか」
菫「ああ、誠子。ありがとう、助かるよ。後、みんなは遠慮せずに先に食べていてくれ。待たせるのは心苦しいから」
淡「わかった!」
誠子「それでは失礼して…」
尭深「先に頂きます」
菫「ああ」
菫「…」
菫(早く来ないかな。楽しみだな。クレーム・ブリュレ。ここのカフェのスイーツはどれもネットで評価高いしな…)
菫「…」ソワソワ
照「パクパク」
菫「…」ソワソワ
尭深「ズズ…」
菫「…」ソワソワ
照「うん」モグモグ
誠子「ああ、淡。口にクリーム付いてる…」フキフキ
淡「モガモガ」
尭深「ふふ…」クスッ
菫「…」ソワソワ
菫(…まだか)イラッ
「…あの、すみませんお客様」
菫(来たっ!!)
菫「はい。なんでしょうか」クルッ
「その…大変申し上げにくいのですが…」
菫「は?」ピクッ
「あ、あの…お客様のご注文なされたアイスコーヒーとクリーム・ブリュレなのですが…」
菫「はい」ヒクッ
菫(…なんで何も持ってきてない?)ヒクヒク
菫「…」ピクッ
「…いえ。その…確かにさっきまでは確かに有ったんですが…」
菫「な…ななな…」ワナワナ
「い、今、急いで新しいのを作っておりますので…」
菫「なんじゃそりゃああああああああああ!!!」
「…ゲッフ」
「…チュー」
菫の部屋
菫「…ふう」ボフッ
菫「…」ガサガサ
菫「…えへへ」
菫(プリキュアのステッカー。かわいいな)
菫(パンフレットは…明日読もう)ウキウキ
菫(枕元においておこうか。いい夢が見られるように)ゴソゴソ
菫「…」
菫「…楽しかったな、今日。ありがとう。誠子。尭深。それに、淡」
菫「私と照に、想い出を作ってくれたんだろう?まったく…私たちは良い後輩に恵まれたよ」
菫「映画も怖かったが楽しかったし、あの後結局出てきたクリーム・ブリュレとアイスコーヒーも、多少のトラブルはあったがとても美味しかった」
菫「その後はみんなで買い物もしたし…」
菫「…」
菫「…私としたことが、大人げないことで怒ってしまったな。情けない」
菫「どうも、最近短気で困る。ケアレスミスも多いし…調子が良くないというか…」
菫(…だとしたら、少々気を引き締め直さねばいかんな。引退したとはいえ、私は白糸台の弘世菫なのだ。情けない姿を衆目に晒すのも憚られる)
菫(推薦があるとはいえ、学業を疎かにする訳にもいかないし…)ウト…
菫(兎に角、明日は日曜だし、早起きして…授業の…予習…で…も…)ウツラ…ウツラ…
菫「…」
菫「…」スヤスヤ
「…ふむ」
「…」ゴソゴソ
菫「すー…すー…」
「なんやこれ」
「…プリキュア?」
「ふん」ポイッ
「…」
「こいつが」
「やっぱ『そう』なんか?」
「そげな感じしなかったばってんなー」
「…ま、しゃーないか。それでもこいつだってんだから」
「えーっと…名前名前」ゴソゴソ
「弘世菫…って、げっ!今思い出した!こいつ、あいじゃなかか!白糸台の!」
「うげ~…マジですか」
「…ま、よか」
「初仕事。やったるけん」
「おい。おい、おまえ。起きろ」
菫「すー…」
「おい。おまえ。起きろ」
菫「ん…」
「寝ぼけとう場合じゃなかぞ」ユサユサ
菫「ううー…」ギュッ
菫(誰…?ママ?うるさい…今日は休日だよ…)
「こんガキ…布団掴みやのっち。意地でも起きなか気か」
菫「プリキュアまでには起きるから…」ムニャムニャ…
「こいつ。いい歳こいてからに…いい加減に…!」ギュッ
菫(うるさいなぁ…)
菫「うみゅ…」モゾモゾ
「起きんかい!!」バサッ!!
菫「おわあああああ!?」
菫「いたたた…ぐお…腰打った…」サスサス
「ようやっとお目覚めか眠り姫」
菫「っ!?なっ!?なんだなんだ!?ってか。誰だ!?」キョロキョロ
菫(くっ!部屋が暗くて姿がよく見えない!)
「くくくくく…」
菫(携帯…駄目だ、枕元だ。布団ごと引き摺り落とされたせいで私が離れてしまった!)
菫「なんでこの部屋に人が居るんだ!?窓は鍵かけたし、第一此処は2階だぞ!」
菫(なんとか会話して注意を引きつつ明かりを付けて…)
「ふん。そんな事か。容易か事よ」
菫(眩しさに怯んだところを取り押さえる!この声は女だし…シルエットからも武器の類は持っていなさそうだ。いけるか?)ジリッ
「うちは魔法んマスコットやけんな」
菫「は!?」
「ふひひひ…やはり驚いたか」
菫(こ、こいつ!気狂いか!?)
「そしておまえはうちのパートナーとしての才能の保持者…らしい」
菫「!!?」
「お?動揺したばいな。そうやろう!そうやろう!」
菫「よ、世迷言を…」ジリッ
菫(こ、こいつ…本格的にヤバイぞ!)
「ふん。そう言われるんは分かっとったわ」
菫「あ、当たり前だ!」ジリッ
菫(放っておいたら何をするかわかったもんじゃない!先手必勝だ。やはり暴れ出す前に急いで取り押さえ、然る後に大声を上げて人を呼ぶ!)
「そして、そう言われた時の対策も」
菫「…言ってみろ」コツン
菫(…よし、リモコンが足に当たった。この部屋のライトは点灯するまでのログタイムが1~2秒ほどある。スイッチを押してすぐに仕掛けるぞ。それにこいつ、少し喋ってから大きく息を吸う癖があるな)
「よか。ならば聞くが良い」
菫(その時が何か語りたそうにしてるし、気持ち良さそうに存分語るが良い。隙を見て直ぐ様襲いかかってやる…!)ググッ
菫(今だ!足で明かりを…)カチッ
チカッ
「おまえには…」
チカッ
菫(そして…!その足に力を貯めて、直ぐ様奴の足元にタックルを…!)ググッ
「魔法少女の才能がある」
菫(今だ…って、え!?)
菫「…え」
菫「…魔法少女!?」ビクッ
「そう。魔法少女」
パッ
菫「…何言ってんだお前」
菫(…明かりが…点いた。最悪だ。攻めのタイミングを逃した)
菫(…くっ。奴の方が一枚上手だったか?癪に障るな。いや。だが、もう今更嘆いても仕方ない。別の手を考えるか)
菫(冷静になれ。相手は異常者だ。隙を見せずに相手を観察しろ。なに、麻雀でいつもやっている事だ。私には出来る。そうだな、まずは…)
菫「…すまないが、その前にまず、君が何者なのかを教えてくれないか?」
菫(『未知』は人を不安にさせ、相手をより大きく見せる。少しでも意味の分かる情報を得なければ)
「魔法少女とは、この世の法則より解放されしモノ。魔を操り、超常の力を行使する」
菫「聞けよ」
「…せからしかぁ」
菫「…ってか、君は、あれだな。その方言、博多の人だな?同い年くらいか?こんな真似をして…ご両親が泣くぞ」
「なんや。うちん事忘れとうん?かー!せからしか!せからしか!」
菫「忘れて…って、君は私の事を知ってるのか。いや、そもそも君のような…子…は…あー」
「思い出したばいか!!そーだ!直接やないけど、おまえんとこの高校っちは何度も戦っちいる!」
菫「…確か、新道寺の中堅の…」
仁美「江崎仁美たい!!」メェー
菫(なんだその鳴き声(?))
菫「…で。なんだってんだ一体。…ほれ、コーヒー淹れてきたぞ」スッ
仁美「どうも。ズズ…うん。良い豆使っちるね」
菫「これインスタント……って!だから!何だったんださっきのは!」ズイッ
仁美「まあそう焦んなさんな」
菫「人の家に不法侵入しておいて、よくもそんな言い草を…!」ワナワナ
仁美「うん。わかった。わかったから国語辞典振りかぶらんといて」ドードー
菫「…」コトン
仁美「言うても、大体主題は全部伝えたえましたしなぁ~」ズズー
菫「魔法少女がなんちゃらってのか」
仁美「うむ」コックリ
菫「今度は警察呼ぶぞ」ギロッ
仁美「タンマタンマ」アセアセ
菫「…はぁ。わかったよ。取り敢えず最後まで聞いてやるから。気が済んだら帰れ。ってか、なんで東京まで出てきてるんだお前は」
菫(いきなり凄いとこから話し始めやがったこいつ)
仁美「そしておまえはうちの相方の魔法少女足り得る素質を持っちる」
菫「はあ。それで」
仁美「うちと契約して、魔法少女になってよ!」メェー
菫「却下だ」
仁美「即答!?」メェー!?
菫「友人3人の内一人だけ魔法少女になれないような名前しやがって、何が『魔法少女になって』だ馬鹿馬鹿しい。生憎カルトや酔狂のごっこ遊びに付き合ってやれる暇は私には無い。お帰り願おうか」
仁美「まあそうつんけんなさんな」メェー
菫「五月蝿い。これ以上の会話は必要ないと判断させて貰った。君の与太話にいつまでも付き合ってやれるほど私の人間の器は大きくない。痛い目を見たくなければ早急にこの部屋を…」
仁美「あー…そーは言われてもうちだっておまえに契約してもらわんっち都合の悪かし」メッヘッヘッヘ
菫「くどい。そしてうざい」
仁美「それにね」
菫「…うん?」
仁美「契約せんと…後悔するよ?」ジーッ
菫(あれ…急に…眠気…が…?)
仁美「メーッヘッヘッヘ。秘技、羊催眠。うちやって魔法少女のマスコットとしてこんくらいはかけられるようになっちるんばい」
菫「ぐ…!」フラッ
菫(まさか…!ほ、本当に…魔法が…!?)
仁美「おまえ、魔法少女に憧れよったんやろー?んー?」グルグル
菫「何故…それ…を…」
菫(目だ…あの…目が…)クラクラ
仁美「プリキュア」
菫「…」
仁美「好いとっちゃんちゃなぁ?」
菫「け、けど…ま、魔法なんて、現実には存在しない…し…」
仁美「好いとっちゃんちゃなぁ?」
菫「…ああ…うん…」
仁美「ならなんば迷う必要のある事か。受け入れるのよか。契約せんね…契約せんね…」ゴゴゴゴゴ
仁美「ほれ…ほれ…契約しろ…契約しろ…『うん』と言え…『うん』と。それだけでええ…ええよ…そしたらおまえはその瞬間から人の枠を超越した魔人と化す…」グルグル
菫「ぐ…うう…こいつどう見ても暗黒寄り…」
仁美「ほれ!言え!!言って楽になれ!!メーッヘッヘッヘ!!」グルグル
菫「だ、誰か…助け…ぐあああ…!!」
仁美「さあ!『うん』と言え!!」グルグル
菫「こ…かっ…!」
菫(く、口が…勝手に…!)
菫「う、うう…う…」
仁美「うん!うん!うん!」
菫「ううー!」ポロポロ
仁美「言え!!さあ!!言え!!『うん』と!!」
菫「こ…」
仁美「…うん?」
菫「この…!」ガシッ
仁美(あれ…なんでうち首の後ろ掴まれと…)
菫「このうんこ野郎ーーーーーー!!」ゴスッ
仁美「ゴフッ!!?」
仁美(こ、腰の入った膝蹴り…!?)
菫「はぁ…!はぁっ!はぁっ!このっ!このっ!このっ!」ゴスッ ゴスッ ゴスッ ゴスッ
仁美「ラメ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙エ゙!!?」
仁美(すかさず首相撲からの連続ティー・カウ(膝蹴り)だとぉおおお!!?)
菫「ふっ!はっ!死ねっ!」ゴスッ ゴスッ ゴスッ
仁美「がはぁっ…!」
菫「はぁっ!はぁっ!くっ!」
仁美「」フラフラ
菫「これでどうだっ!!」ドゴォッ!!
仁美「かっ!?」
仁美(な、ナイス…)
仁美(ミドルキック…)
仁美「…メェー」バタリ
菫「…はぁ…はぁ…」
仁美「」シーーーン
菫「…や、やってしまった…いや、助かったのか?」
仁美「…」ピクピク
菫「…やり過ぎた。仕方ない。一応…うん。一応。このまま捨てるのも寝覚めが悪いし…起きるまで待ってよう…か……うん。一応…」
菫「…」
菫「…一応…な」
仁美「ボーダーデール!?」ガバッ
菫「起きたか」
仁美「こ、ここは!?」キョロキョロ
菫「私の部屋だ。不法侵入者」
仁美「ぬ。弘世菫!よくもやっちくれたな!」キシャー!
菫「まあ…悪かったよ。お前の方が絶対悪いと思うけど」
仁美「そいに、いつん間にか縄で縛られとう!?ぐお…しかも荒縄やけん。動くっち痛か!」
菫「悪いが、拘束させて貰ったよ。目が合うと怖いことになりそうだから、君の顔の向きも私の居る場所の逆だ。荒縄なのは…たまたま部屋にあったからだな」
仁美「なしけん荒縄なんかがたまたま部屋に…」
菫「黙秘権を行使する」
仁美「…焼いて食う気か」
菫「するか!!」
仁美「いやあああああ!!ジンギスカンはいやぁああああああ!!」
菫「ええい叫ぶなうっとおしい!お前の話、聞いてやるからもうちょっと詳しく聞かせろ!!」
菫「…」
仁美「…メヘヘヘ」ニヤニヤ
菫「…べ、別に…その…興味があるとか、そういうのでは無いんだが…」
仁美「ほうほう。純情乙女すみれちゃんは、受験生にもなって魔法少女に憧れちゃうんでちゅかー?魔法処女が」ニヤニヤ
菫「ギギギ…!!」
仁美「…で?何言わんっちしとった?『だが…?』『だが』、なんなん?うん?だが、魔法少女に…?」
菫「ふ、ふんっ!魔法少女?馬鹿馬鹿しい。そんなものが本当に存在するとでも言いたいのか?」
仁美「…」ニヤニヤ
菫「…くだらない」
仁美「…」
菫「…」
仁美「…」
菫「…ま、まあ、だが、もし」ソワソワ
仁美「…」
仁美「…」
菫「…仮に、そんなものが実在するというのなら」モジモジ
仁美「…」
菫「…なってやっても…良いけど…」ゴニョゴニョ
仁美「…」
菫「ば、場合によっては…だからな!!」
仁美「メェー…」
菫「あ、哀れみの声を出すな!!」
菫「…」
仁美「まあ、説明してからやっちもよかばってん『プリーズ』って言葉が欲しかなぁ」
菫「…」イラッ
仁美「契約前に魔法のマスコットボコって荒縄で縛ってベッドに放置とか…そんな魔法少女聞いたこともなか」
菫「…」
仁美「これは謝罪の言葉と『お願いします』って言葉が聞きたかなぁ~…」
菫「…」
仁美(くくく…勘違いすんなや。うちが上。おまえは下だ。その辺のとこきっちり条件付けたるけん)
菫「…」スッ
仁美「」ゾクッ
菫「…」
仁美「ひっ!?」
菫「…カリッ」
仁美(み、耳甘噛されとう!?)
菫「『プリーズ(お願いします)』」
菫「『耳噛み千切られたくなかったら言うべき事を全部話せ』」ゴゴゴゴ
仁美(こ、こいつ怖か~~~~!?)
仁美「わ、わかった。今は、話すから…」
菫「…ぷは」スッ
仁美(この胸の鼓動は…恋!?…では絶対に無い)ドキドキ
菫「…で?魔法少女がなんだって?」ドカッ
仁美(胡座かいて地べた座んなさんなや。いい年の女子が)
仁美「…魔法少女とは」
菫「…ああ」
仁美「この世の法則より解放されしモノ。魔を操り、超常の力を行使する」
菫「…それはさっきも聞いた。もっと具体的に」
仁美「…つまり、魔法を使って常人よりいろんな事が出来るって事」
菫「…」
菫「…何故そんなものが」
仁美「わからん。うちも『選ばれて』マスコットになっただけやし」
菫「選ばれて?」
仁美「ある日、突然な。目覚めたんやけん。使命に。パートナーになるべき魔法少女の才能ば持った少女ば探せっち」
菫「突然?」
仁美「うん。それ以外はわからん。で、そうは言われてもどうすれば良いのか途方に暮れていたところを…」
菫「…ああ」
仁美「『ある人』に、助けられた」
菫「ある人?」
仁美「そう。その人は、色々なことを知っていた。魔法少女の使命、マスコットの役割、そして、どうすればパートナーになるべき少女に出会えるのかも」
菫「…待って欲しい」
仁美「おう」
菫「…色々整理させてくれ」
仁美「…」
菫「そうだな。まずは、そう。突然目覚めた。そこだ」
仁美「…」
菫「どういう事だ?その…マスコットって、あれか?魔法少女に付き物の可愛い謎の生物ポジションって事だろう?」
仁美「然り」
菫「…どう見ても君、人間じゃないか…いや、若干羊っぽい見た目ではあるが」
仁美「なんで目覚めたんかはうちもわからなかった。ある日、部活帰りに帰り道を歩いていると突然頭に指令が来て、それに居ても立っても居られず衝動的にその足で東京行きの新幹線に飛び乗った」
菫「凄い行動力だな」
仁美「金が無かったんで駅員に催眠を…」ゴゴゴゴ
菫「あー!それはいいから!」
仁美「…だが、別に何をする為に東京に来たって訳も無かった。半日歩いて疲れて、もう帰ろうかと思った」
菫「なんて行き当たりばったりかつ無意味な…」
仁美「駅に向かう途中、折角だからスタバでも寄ってから帰ろうと思って、適当なスタバに寄ったところで…」
菫「…」
仁美「…『あの人』に出会ったんだ」
仁美「『あの人』はいろんな事ば知っちいた」
菫「…」
仁美「魔法少女の事、パートナーの事、そして、うちらがやるべき、いや、成さねばならぬ事についても…」
菫「…それは、誰だ」
仁美「…お前も知っているはずだ。有名人やけんな」
菫「有名人…だと…」
仁美「そう。その人は、魔法少女」
菫「!!」
仁美「…現存する、最強の魔法少女…!数々の異名を持つ…!!」
菫「…っ!」ゴクリ
仁美「『星の魔法少女』、『英雄』、『爆乳』、『もうそろそろちょっと年齢的にきつい』、『喰らう者』、『守護者』、『天使の屑(エンジェルダスト)』、そして『牌のお姉さん』!!」
菫「っ!それは、まさか!!」
仁美「瑞原はやり(28)たい!!」メェー!!
菫「はやりんだとぉおおおおおおおおお!!?」
菫「な…あ、あの人も魔法少女だと言うのか!」
仁美「この道10年の大ベテランだと!」
菫「凄いな!18で魔法少女デビューか!別の意味でも凄いな!」
仁美「まあ…兎に角。同じ魔法少女の波長を持つはやりんに声をかけられ、ついでになんか長ったらしい名前の甘ったるい飲みもん奢って貰いつつ話を聞いたのだ」
菫「で…!で…!はやりんはなんと!」
仁美(なんやこいついきなりテンション上がった)
菫「おい!早く!」ウキウキ
仁美「…で、だ。まず、魔法少女のなんたるかってのを教わったんやけど」
菫「うん!うん!」
仁美「その目的は」
菫「目的は!?」ワクワク
仁美「風潮被害を防ぐ事」
菫「…は?」
仁美「『風潮』被害」メェー
仁美「ん」コクリ
菫「…なんだそれ」
仁美「…この世には、様々な噂が流れている。正しい話も、全くを持って見に覚えもないような話も。それはわかるか?」
菫「…まあ」
仁美「風潮被害。それは、人々の悪意無き悪意が産んだ、恐るべき悲劇なのじゃ」
菫「口調変わってるぞ」
仁美「その被害に晒されたものは、無意識の内にその風潮に従った行動に向かってしまう。そう、あたかも…ほら、電柱…じゃなかった、あの、鉄の、高い明かり光ってるやつへ向かう昆虫のように」
菫「走光性を例に出してるのか?ってか、語彙力…」
仁美「おまえのように被害の軽い奴は良い」
菫「私も!?」
仁美「どころか、お前はもうかなり侵食されている。かなり進行が早い部類だ」
菫「な…!」
仁美「どんな影響があるのか、それは詳しくはわからない。もしかしたら。…あるいは。お前のその魔法少女好きすらも…」
菫「…」
菫「それ…は…」
仁美「恐るべきは、風評被害と違って、風潮被害には実際に本人がその行動を取ってしまうという点」
菫「…」
仁美「特に悪質な風潮は、大変なことになる。場合によっては、その尊厳の本質や命までも奪われかねない」
菫「…どうすればいい」
仁美「そのために魔法少女が居る」
菫「…」
仁美「魔法少女には、風潮被害を浄化する力がある。その力を使って、被害ば未然に防ぐのだ」
菫「…」
仁美「勿論危険はある。すでに風潮被害によって凶暴化し、悪辣の限りを尽くして暴れまわる者も居る。そいつらとは、戦う事になる。傷付く事もあるだろう」
菫「そのための、力…か」
仁美「…力ば貸せ、弘世菫。うちは力が欲しい。そのためには、お前の協力が居る」
菫「何故、そこまでして?」
仁美「…目的がある。とても、大切な。守りたいものも、ある。この国に住む、全ての人達の為に…成さねばならぬ事が…あるたい」
仁美「…」ギリッ
菫(決意の瞳。固く握られた拳。真剣な表情。…覚悟を持った人間の表情)
仁美「頼む!」ペコッ
菫(本気の声。彼女の態度に、嘘は無い。これは…信頼に値する人間のそれだ)
菫(江崎仁美。君は…いったいそこまでして、なんの為に戦う事を選んだ…?)
菫「…1つ、聞きたいことがある」
仁美「…答えられるなら」
菫「その魔法の力で、君は一体何を成そうというのか」
仁美「決まってる。風潮被害に苦しむ人の為。それが全て…!今、うちは誰からかもわからぬ『声』よりも、自分の意志で戦うことを望んでいる!」
菫「…そのために、傷付くことも、傷付けることも受け入れると?」
仁美「覚悟の上!!」
菫「…ふう」
仁美「…」
菫「…ま、どうせ、私もそんな事知って、放っておくわけにはいかんしな」
菫「ああ。試すような質問して悪かった」
仁美「なって…くれるか…!!」
菫「ああ。構わんさ。どうせ兼ねてより年甲斐もなく魔法少女に憧れていた身だ。こんなのも、やってみると案外面白いかもな」
菫「…例えそれが、風潮被害とやらに毒された結果だとしても、だ」
仁美「じゃ…じゃあ!!」
菫「ああ」
菫「いいだろう。なってやるよ、魔法少女!!」
菫「いいさ。それより、どうやって契約するんだ?こう、魔法のグッズとかあるのか?杖とか」
仁美「…」
菫「…何故そこで黙る」
仁美「…」ジリッ
菫「…なんだよ」タジッ
仁美「…魔法少女になるには、いくつかの条件がある」ジリッ
菫「お、おう…」タジッ
仁美「一つは、契約者に魔法少女としての才能がある事」ジリッ
菫「ああ…それは…さっきも、きい…た…」タジッ
仁美「ニつ目に、契約者と、そのパートナーの相性。うちにはお前。おまえには、うち」ジリッ
菫「そ、それも…把握してる」タジッ
仁美「三つ目。契約者とパートナーの間で、契約に関して合意の言葉が交わされる事。一方的な契約出来ない」ジリッ
菫「だからさっきあんなに『うん』と言わせようとしたのか…」タジッ
仁美「そして、四つ目。契約に関する合意が互いに為されたら、最後に…」ゴゴゴゴゴ
仁美「両者がキスする事じゃああああああああああああああ!!!」ガバッ
菫「『じゃ』は広島弁だ!!!!」
仁美「ムッチュー」メェーーー
菫「ムグッ!?」
菫(羊臭っ!!?)
仁美(さっきジンギスカン食ったからな)
菫(こいつ、直接頭の中に…!)
仁美(念話は基本)
菫(こんなタイミングで知りたくなかった!それに羊もどきのくせに羊食うな!そもそも人んち来る上にキス前提でんなもん食うか!?)
仁美「チューーー」
菫(…ってか)
菫「いい加減に離れろぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!」ゲシッ
仁美「メヘェエエエエエエエエ!!?」
菫「はぁ…っ!はぁ…っ!ぜぇ…っ!はぁ…っ!」
菫「う…ううう…ひ、酷い…は、初めてだったのに…うううう…」ポロポロ
菫(ファーストキスがジンギスカン味とか…)シクシク
仁美(ラムにレモンかけたからレモン味で可ばい)
菫「黙れ!死ね!!」ゲシゲシ
仁美(ぎゃああ!!)
菫「こ、この…変態羊!詐欺羊!強姦羊!その巻き毛全部刈り取って枕に詰めてやる…!!」ゲシゲシ
仁美(や、やめ…!痛か!あと、なんかに目覚める!!)
菫「こ、この…!!第一、何も変わってないじゃないか!!全部嘘か!!」プルプル
仁美「よーっこらせーっくす」ムクリ
菫「…」イラッ
仁美「いや。既に契約は成立しとる」
菫「…じゃあ、なんで変わんないんだよ!」
仁美「衣装は自前だ」
菫「…」ポカーーーーーン
菫「…そ、そうなのか?」
仁美「おまえまだレベル1やけん。別段他の魔法少女に比べて才能ある訳でも無いし」
菫「」ガーーーン
仁美「…ついでに言えば、武器とかもまだ無理っぽいな」
菫「ま、魔法は!」
仁美「ふむ…」
菫「」ドキドキ
仁美「おお。これは凄い」
菫「!!」パアアア
仁美「消しゴムのカスを狙ったところに飛ばせるとは。レベル1でここまで出来るやつは中々居ないかも。いや、他の例知らんが」
菫「役に立つかぁああああああああああ!!!」
菫「なんだそれ!なんだそれ!衣装も無い、武器も無い、おまけに魔法は消しゴムのカスをシャープシュート!?ふざけるな!!」
仁美「うちに言われても」
菫「そんなんでどうやって戦えってんだよ!!」
菫「…」ジトー
仁美「そこのベッドを持ち上げてみろ」
菫「…持ち上げ…って、無理だろそんな…」ヒョイ
菫「…軽」ポカーーン
仁美「どやぁ」ドヤァ
菫「…」
仁美「お前は、魔法少女が何故強いと思う」
菫「…魔法が使えるからだろ」
仁美 「それは決定的ではない」
菫「…強力な魔法の武器」
仁美 「少々役不足だ」
菫 「仲間との絆で奇跡を起こす?」
仁美 「それは確かに恐るべきことだ。だが無敵か、とは少し違う。もっともっともっともっと単純なことだ」ゴゴゴゴゴ
菫「…お前の言わせたいことは分かった」
菫(こいつたまに口調変わるなぁ)
仁美「反射神経、集中力、第六感、身体能力、特殊能力、耐久力、魔法、変身能力 etc etc」
菫「…」
仁美「しかし最も恐るべきはその純粋な暴力・・・『力』だ。人間達を軽々とぼろ雑巾の様に引き千切る」
菫「いや。人間引き千切っちゃ駄目だろ」
仁美「そして魔法少女はその力を自覚する事が出来る。単一能としてでなく 彼女の理知を持って力を行使する『暴君』だ」
菫「いや、正義…」
仁美「魔法少女との近接戦闘は死を意味する。いいかね弘世菫。魔法少女とは、知性ある幼い『魔女』なのだ。これを最悪といわず何をいうのか…」
菫(はやりんは既に幼くは…いや、これは口が裂けても言うまい)
仁美「そいでな?弘世菫。おまえは1つ勘違いばしとる」
菫「…なんだよ」
仁美「人間ば敵に回さない、思っちおるかもしれんけんの、そいな、間違いだ」
菫「何!?」
仁美「いや。確かに、人間では無か…っち言うても良かかもしれん。そん意味では、善良なる人類ば滅ぼす必要は存在せんのか…」
仁美「この国の為たい」
菫「…」
仁美「風潮被害も大事だが、手始めにまずは…そん力でマスゴミ在日中韓全部ぶっ潰すぞ!!」
菫「はあ!?」
仁美「決まっとる!こん国に巣食う蛆虫ども全部叩き潰す暴力が手に入ったんだ!そん力を行使せずにどげん使う!!」
菫「ば…お前、何言って」
仁美「手始めに朝日新聞に行っち一人残らず八つ裂きに行くぞ!さあ!HARRY!HARRY!HARRY!」
菫「ネトウヨだこいつ!?」
仁美「メーッヘッヘッヘ!!KYは空気読め無かやなくっち、自作自演でサンゴに刻んだイニシャルの事たーーーい!!」
菫「待て待て待て!!」
仁美「む?毎日変態新聞先んのがよかか?まい、そんならそんでからもよかの…」
菫「お前!さっき全ては風潮被害に苦しむ人の為が全てって…」
仁美「詭弁に過ぎん!!契約のためのなぁ!!」
菫「お前ってやつはぁあああああああ!!」
新しい風潮が誕生した
菫「あああああああこいつはもおおおおおおおおおおおおお!!!」
仁美「メェエエエエエエエーヘッヘッヘ!!!」
仁美「メエエエエエエエエエエエエエエエエッヘッヘッヘーーーーーーーーーーーーー!!!」
第一話
「サディスト菫とネトウヨ羊」 終わり
仁美「むっ!?」ピクッ
菫「なんだ。今度はどうした」
仁美「感じるばい…新たな風潮被害が誕生するのを…!」
菫(感じるって…)
仁美「仕方ない。国賊滅ぼすのは後ばい。まずは風潮被害の拡大し、取り返しん付かん事になるんば防がねば」
菫「お、そこは真面目にやるのか」
仁美「仕事サボっとったら、後ではやりんに叱られるからな」
菫「ふっ…」ニヤリ
仁美「…記念すべき初仕事だ。どうよ?気分は。…怖いか?」
菫「…そうだな」
菫(魔法少女の初仕事…か。ふふ…笑えてくるな。いや、本当はそんな状況では無いのかもしれんが…)
菫「…いや」
菫「楽しみだよ」
菫(私もまだまだ子供だな)
仁美「ちょっと待て…」
菫「…」
仁美「大阪だ!!」
菫「え…」
菫(ま、間に合うのか!?空飛ぶ魔法とか…)
仁美「明日ん朝だな。始発で行けば間に合うわ。ついでに朝食食べる時間もあっけん」ゴロン
菫「へ?」
仁美「今日はここ泊めてくれ。宿探すのダルい。金無かし」
菫「…そ、そんな…ユルいもんなのか」
仁美「ん」
菫「…だったら、私の風潮被害も誰か解決出来たんじゃ…」
仁美「軽度ん奴はよっぽど余裕なか限りほっちくけんね。実害なかし」
菫「そ、そういうもんなの…か?」
仁美「ん。それに、むしろその風潮被害を喜んで受け入れ、其れとともに生きていく選択ばした者も居る。風潮ってのはそんなもんだ」
仁美「ま、影響の深刻化したら大概助けるさ。ほとんどはそーやけん。最後に一気に風潮の暴走する、そんタイミングでしか感知も風潮退治も難しい」
仁美「やけん、うちもおまえの傍に来て、ようやくお前の中に風潮被害に影響されとうんわかったくらいやし」
菫「そういうものか」
仁美「ん。風潮ってのは、既にある部分ではそいつの一部なんだ。だから、普段は唯のそうしたいという欲求としてほぼ本人っち一体化しとる。やけん、最後の最後にそん欲望の暴走してから本人ば取り込む」
菫「取り込む…」
仁美「そん取り込もうっちした時ん意志ば、うちらマスコットは感知するとよ。ただ、そうと決めた意志も、動き出し表に出るんにパワーが居る。やけん出てくるまでにタイムラグのあるって事」
菫「…」
仁美「そん時ば叩く。そのタイミングで、しかも魔法少女にしか出来ん事たい。他でやったら、最悪本人は死ぬ」
菫「…」
仁美「わかった?」
菫「…済まない。博多弁で、少々噛み砕き切れなかった事がある。つまり…まとめるとどういう事なんだ?」
仁美「風潮被害が暴走したら本人が暴れるんで、そしたら魔法少女がぶん殴って沈める。風潮被害が収まる」
菫「…よくわかった」
仁美「メッヘッヘ…んじゃ、寝るわ」
仁美「おやすみ…」
菫「…って、待て!」グイッ
仁美「メッ!?」
菫「来客用の歯ブラシやるから歯磨け!風呂入れ!ジンギスカン臭いんだよ!!」
仁美「メェー…」
菫「風呂場はそっち!脱衣所の下の棚に歯ブラシもあるから!綺麗にして寝ろ!じゃあな!私は先に寝る!」
仁美「おま…んな適当な…」
菫「…すー…すー…」
仁美「うお…マジ信じらんねー。2秒で寝やのった」
仁美「…」
仁美「…やーい。キチガイ暴力女~」
菫「…」
仁美「…ちっ」
仁美「…ま、ただで使わせてくれんなら使ってやるメェー」トテトテ
大阪
仁美「やって参りました。食い倒れの街、大阪!」
菫「しまった…早く起きたからプリキュア録画するの忘れてた…」サアー
仁美「ん?どうしたん?同志菫。顔面キュアビューティだぞ」
菫「青い顔って言いたいのか…」
仁美「まあまあ。どうせアニメなんざ後でネットでゴニョゴニョして…」
菫「堂々犯罪宣言かこの羊悪魔!!」ギュッ
仁美「や、やめりぃ!首締めるな!」
菫「この…!ぷ、プリキュアを穢すな!それに、アニメはリアルタイムで見てこそその価値が…」ギシギシ
仁美「ま、待て!落ち着け!同志菫!今はそんな事をしている場合じゃない!!」
菫「ああん!?」メシッ
仁美「あ、あいつらを見ろ!!」ビシッ
菫「…あいつらって」チラッ
「あかん!これ以上はもう止めて!怜!!」
「喧しい!!今日こそは出るんや!!うちが勝つんや!!」
怜「硬っ苦しいなぁ竜華は!せやから、うちが愛する部の為に部費を何倍にも増やしてやろうって」
竜華「そんなんでお金増えても嬉しくない!!それに、怜アンタ、勝って帰ってきた試しないやろ!!」
怜「途中までは勝ってん!せやけど、あと一回勝ったら止めようって時に限って当たらんのよ!」
竜華「負けるまで打つからそうなんねん!!」
怜「えーーーい!五月蝿い五月蝿い!竜華うざい!うざい!!どっか行け!!」
竜華「そんな!」ガーーン
菫「…」ボーゼン
仁美「…風潮被害、末期に近い被害者だ」ヒソヒソ
菫「お、園城寺怜…」ヒクヒク
仁美「どうやら、この風潮被害はギャンブル中毒…っちいったところかね」
菫「あ、あの園城寺怜がここまで変わるのか…」
怜「…ん?お姉さん…どっかで見たことあるなぁ」
菫「あ…ああ。やあ。インターハイで会っただろう?弘世菫だよ。園城寺さん」
竜華「ああっ!これは白糸台の!すんません、エライ見苦しいとこお見せしてしもうて!ほら、怜!行くで!」
怜「んー…」
竜華「怜!」
怜「…ねえ、お姉ちゃん」
菫「なんだい?」
怜「ええ太ももしとるなぁ。ちょっとうちの事膝枕してくれへん?」
菫「は?」
竜華「怜!?」
怜「ね?ね?ちょっとだけ。ちょっとだけでええから~」クイクイ
菫「えーっと…」
竜華「怜!?急にどうしたん!?怜の膝枕はうちだけとちごたん!?」
怜「もう竜華なんかポイーや」ツーン
竜華「ポイー!?」ガーーン
菫(…どうしよう)
菫(羊!?なんだ、念話か…)
仁美『羊っち…まあよかや。これな、複合型かもしれん』
菫『複合型だと?』
仁美『そう。たまにな。居るんよ。風潮被害ばやたらに受けやすいやつ』
菫『と、言うことは…?』
仁美『参ったなぁ…話には聞いよったばってん、あんま居なかっち話やったし、初回でいきなり当たるっちは…』
菫『おい!風潮被害が複合したらどうなるんだ!答えろ!』
仁美『うん。風潮被害が重複したらな』
菫『ああ』
仁美『単純に強くなる』
菫「な…」
怜「…」ピクッ
竜華「…怜?」
怜「…」
仁美『おい。ルーキー。これはマズイかもしれんぞ』
菫「どうしました?」
竜華「あ、弘世さん。なんか、怜が急に動かなく…」
怜「…」
仁美『おい。聞いっちんんかアバズレ』
菫『黙ってろ。なんだか彼女の顔色が悪い。病弱な子だった筈だしもし何か有ったら事だ』
竜華「怜?怜?どうしたん?」ユサユサ
怜「…」ガクガク
菫「落ち着いて。あまり動かすのは良くない。今救急車を呼びますので、その後でゆっくり日陰に運びましょう」
竜華「あわわわ…怜?怜?いやや…こんなの初めてやん…ねえ…怜?怜?」ポロポロ
怜「…」
菫「ええと、すみません。彼女の行きつけの病院の電話番号などは…」
竜華「あ…そ、それは…待って下さい。今携帯を…」ゴソゴソ
仁美『おい!』
仁美『来るぞ!!』
菫「へ?」
怜「オールジークハイル!!」ブンッ
菫「うおっ!!?」サッ
竜華「怜!!?」
怜「ふははははははーー!!」
菫「な…」
菫(今…園城寺さんが殴りかかってきた…!!?)
怜「ふはははー!全てはヒトラー総裁の為にーーーー!!」
菫「…」
竜華「怜!!?」
怜「黙れ黄色人種!!うちは偉大なるゲルマンの魂なるぞ!!」
菫「…」
怜「ジーークッ!ハイルッ!!ジーークッ!ハイルッ!!ジーークッ!ハイルッ!!」ビシッ ビシッ ビシッ
仁美『トリプルだと!!?』
菫「トリプルって…ってか、お前念話使う必要なくないか」
仁美「…いかん。彼女はギャンブル中毒、セクハラおっさん、ネオナチ被れの3つの風評被害を受けていた…!」
菫「いきなり大盤振る舞いだな」
仁美「これは…新人には危険過ぎる…!!」
菫「はあ」
菫(なんでか危機感を感じられないのは)
怜「ジーークッ!ハイルッ!!ジーークッ!ハイルッ!!ジーークッ!ハイルッ!!」ビシッ ビシッ ビシッ
竜華「怜ーーーーー!!」
菫(この間抜けな絵面のせいなんだろうなぁ…)ゲッソリ
竜華「あかん止めて怜ーーーーー!!」
菫「えーっと…殴ればいいんだったか?」
仁美「だからー!危ないって…」
菫「大丈夫だって。たぶ…」
菫「な…どこに…」
仁美「後ろたい!!」
菫「え」
怜「ふふ…アカンなぁ。敵を前にしてアホみたく油断するなんて…」ボソッ
菫(耳元…!声!?馬鹿な、いつの間に…)
怜「アンタ、魔法少女やろ?きちっとわかっとるんよ…うち、今、体の奥から声が聞こえるん」
仁美「くっ…!暴走風潮被害たい!」
怜「アンタをここでやっつけんと…ウチ…消されてまうんやろ?それは嫌やから…」ガシッ
菫「がっ!」
菫(しまった…!羽交い締めにされ…!ぐっ!凄い力だ!)
怜「アンタをここでやっつける」ニヤッ
菫「こ、この…!」
菫(どう来る!?打撃…極め技…投げ技…な、なんとか反撃を…)
怜「覚悟しいや」モニュッ
菫(え…む、胸?)
怜「ふむ…太もももなかなかの物をおもちだと踏んでたが、おもちの方もなかなかのなかなか…」モニュモニュ
菫「ふぁ…」
菫(え…ちょ…なんで、胸…揉んで…)
怜「白いうなじもたまらんなぁ…」ペロッ
菫「ひゃんっ!」
怜「レローー…じゅるっ!」
菫「くんっ!」
仁美「おおお!?園城寺怜の細く長い指が同志菫の制服越しのバストを生き物のように柔らかく揉みしだき、同時に真っ赤な舌がゆっくりとねちっこく、絡めとるような蛇の動きで白い首筋を伝ってゆく!?」
菫(なんで官能的な実況してんだお前は!!)
怜「ふふ…感じとる…?可愛い声…飴玉転がしたようなちっさくて、可愛い悲鳴…」
菫(コイツもコイツでなんかアレだし!!)
怜「…はーむっ」パクッ
菫「うふっ!?」
菫「ちょ…」
菫(なんで清水谷さんまで実況してるんだ!)
怜「じゅぷ…じゅぶぶ…くちゅ…」
菫(耳がくすぐった…あふうう!?)
菫「ま、待って!」
怜「…ぷは。…な~に?」クスクス
菫「な、なんで、やっつけるでこんな、セクハラ紛いな…」ハァハァ
怜「ふふ…知らんの?あんた、新人さんやね」
菫「…」
怜「ええよ。教えたる」
菫「何を…」
怜「魔法少女は、処女しか成れんのよ」モニュッ
菫「ふあああああ!?」
怜「せやから、犯されたらあんたらはゲームオーバー…」モニュモニュ
菫(ちょ…!これ…まず…!)
怜「ふふ…可愛い。ええ子やね。強気な眼差しが涙で潤んで…唆るわ…」
菫(ま、待って待って待って…!)
怜「ロングスカートたくし上げて…ほら。もうひざ上まで来とるよ?ん?どうする?ん?」
菫「ちょ…や、やだ…」
菫『ひ、仁美!助け…』
仁美「最近んスマホはデジカメっちなんら変わらんけんなぁ。病弱系女子高生に後ろから羽交い締めにされて犯されるクールビューティーの図。これ、幾らで売れるかいな」パシャパシャ
菫『助かったらお前を真っ先に殺す!!助からなくても殺す!!』
怜「ここまでスカートたくしあげたら…うちの手、あんたの大事なとこ、弄れるよ?ん?どうする?ん?」ツツッ…
菫「ひ…」
菫(し、清水谷…さん…っ!い、一般人だけど、親友がこんな状態だったらせめて注意を引く援護射撃を…)チラッ
竜華「はぁ…はぁ…あかん…はぁ…怜…そんな、うち…はぁ…あんたのことは…はぁ…うちが一番愛してるのに…はぁ…そんな、寝取りだなんて…はふぅ」ビクンビクン
菫(寝取られて感じてるぅうううう!!?)
仁美「おや。こっちも風潮被害者やったか」パシャパシャ
怜「ふひひ…さあ、行くよ…今、うちの指があんたのあそこに入るよ?ほら、カウントダウン…」
菫「ひっ!い、いや…」
怜「3…」
菫「だっ!嘘だろ!?」
怜「2…」
菫「うううーっ!」ジタバタ
怜「暴れても無駄よ。さあ、1…」
菫(も、もうダメだ…!)
怜「ふひひひひ、ぜ…」
「はいそこまでーーー!!」
怜「!?」
菫「え…」
「マジカル☆ラリアーーット(はあと)」ドゴオ
怜「ちょ…ごふっ!?」ドカーーン
怜「が…こ、この威力…は…!」ガクガク
菫(園城寺さん生まれたての子鹿みたいになってる!)
「ふふふー。大丈夫?君。怪我…なかった?」
菫(いや…違う。今注目すべきはそこじゃなくて…)クルッ
「うん、大丈夫そうだね。けど、新人さんだからってはりきって危ない事、あんまりしちゃダメだぞっ☆」
菫「あ…貴女は…」
「でも、よくやったね。一人で、頑張った。あとは、もう、大丈夫だから。この私…」
菫「き、来て…くれたんですね…!」ウルッ
「ここは危ないよ。早く逃げて、みんな!はやりが来たからには後はもう大丈夫だから☆」
菫「瑞原プロ!!」
はやり「いえーっす☆はやりんだよー☆」キャルーン☆
菫「や、やったぁ!!」
はやり「はやりんはやりんマジカルきゅーん♪魔法少女☆プリティープリティーマジカル(はーと)はやり!推参っ!とうっ!」
仁美(このプロきつい…)
竜華「と、怜!大丈夫!?」
怜「許せん…!こ、この…!黄色人種の癖に…!日独伊三国同盟も忘れてうちの事360度回転する勢いでラリアットなんざ…許せへん!竜華もそう思わへん!?」
竜華「と、怜…!やっぱ、アンタは結局うちのとこ帰ってきてくれるんやね?」ジーーン
怜「一緒にアイツらやっつけよう」
竜華「うん!!」
怜(邪魔な元嫁は使い捨てたる)ニシシシ
竜華「覚悟しいやー!魔法少女どもーー!」ガオー
菫(風潮被害って怖いなぁ…)
仁美「ふっ。無事やったか」ヒョコヒョコ
菫「お前は後で解体して殺す」ギロッ
仁美「待て待て待て!こっそり命の恩人にそん仕打ちはいかんぞ!」
菫「ああ!?」
仁美「実は、携帯カメラでお前を撮影しとるごと見せかけて、はやりんに救助ば求めとったんだ」メェー
菫「お。お前…!?」ジーン
仁美「ふっ。よすたい。照れる」
仁美(まあ、写真は撮ったけど)
菫「はっ!そうだ!はやりん!か、加勢しなければ!流石に2対1では…」
仁美「そん必要はなか」
菫「え…」
仁美「あの人は、最強の魔法少女(28)やけんね」
菫「何?」
仁美「もうすぐ決着着くちゃ」チラッ
菫「な…」
仁美「よく見ておけ。あいの最強戦士ん戦い方だ」
菫(す、凄い…!やっぱり、はやりんくらいになると私みたいに不恰好な戦い方じゃなくって、こう、必殺技的な光線出したり出来るのか!?)
菫「べ、勉強させていただきます!」
菫(そして…ゆくゆくは、貴女に肩を並べられるような魔法少女に…!)
怜「がぶっ!?」
菫「予想外の超パワー型!!?」
はやり「か・ら・のー☆」ギシッ
竜華「怜ーーーーー!!」
はやり「マジカル☆餅つき式☆パワーボムー☆」ドゴォ!! ドゴォ!! ドゴォ!!
怜「」ゴッ ゴッ ゴッ
竜華「怜ーーーーーーーーーー!!!」
はやり「まず一人っ☆」ポイッ
怜「…」グチャッ
竜華「怜ーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
怜「」クタァ
菫「おい。あれ、死んでないか」
仁美「下、コンクリ…まあ、あれたい。今の園城寺怜は風潮被害の暴走で身体能力も大幅に向上してる設定だから…」
菫「設定言うな」
竜華「あわわわ…」オロオロ
はやり「逃げられない」ジリッ
竜華「ぐううう…!と、怜の仇ーーーーー!!」タタタタ
はやり「たあーっ!マジカル☆ベアハッグ(はーと)」メギョッ!
竜華「」ボギゴギッ
菫「なんか砕ける音…」
仁美「なんもかも政治が悪い…」
菫「…」
はやり「えいえいえい!追撃!追撃☆」メシッ ボキッ メコッ
竜華「」ガクガク
仁美「痙攣やばい」
菫「そろそろ止めた方が」
はやり「これでとどめだー!はやりん☆ブレーンバスター!」ゴキッ
竜華「」ゴッ
竜華「」チーン
はやり「ぶいっ☆」
菫「…」
仁美「惜しい人材を亡くした…」ナムナム
菫「おい!まだ死んで…ない…よな?」ヒソヒソ
はやり「大丈夫だよ!はやりの魔法で死んだ人はいないから☆」
菫「そ、そうですかー!」
仁美「もはやそれこそが奇跡」
はやり「これで二人が気付いたら、元通りになってるはずだよ☆」
菫「乱暴だ。やり方もそうだけど、アフターケアが何より乱暴だ」
仁美「流石近距離パワー型魔法少女(28)」
菫「そんな区分あるのか!?」
はやり「まあ、こんなところで立ち話もなんだから、二人共、一緒においで☆はやりが頑張った二人にご飯を奢ってあげる!」
菫「こんなパチンコ屋の前なんかに二人を放置したら、浮浪者に何されるかわかりません。連れてきますからね」
はやり「それじゃあここにしよー!」
菫「え」
はやり「…嫌?」
菫「いや…い、嫌って…訳じゃ…た、ただ瑞原プロとちょっとイメージが合わなかっただけで」
菫(ま、松屋…!?)
はやり「そう?じゃあ食券買ってねー。好きなの頼んで良いからね☆」
仁美「ココ壱の良かなぁ。安倍さん応援するつもりでカツカレー食えたんに…」ブツブツ
菫(こいつはこいつで微妙に図々しい事言ってるし!)
怜「あ、あれ…うち…」パチッ
竜華「うう~ん…あれ…?ここどこ…」ムクリ
菫(普通に起き上がった!)ビクッ
仁美(むしろ生きてた!)ビクッ
はやり「おっ!起きたね?少女達折角だし君たちにもご飯奢ってあげる☆」
怜「え…あれ?なんではやりんがこんなとこにおるん?え?あれ?あれれれ?」アワワワ
竜華「そんな…俄には信じられへんよ…」
怜「魔法少女…?風潮被害…けど、うち、確かにそんな事やったような…うう…」
菫「いいのか?こんあ簡単に何があったか話しても」ヒソヒソ
仁美「暴走状態から意識の戻るっち、風潮被害に合っとった時ん記憶は霞のかったごと虚ろげなんやけん。ばってん、やったこつは残るけん、アフターケアきちんっちやるなら、そこ説明してからやらんっち混乱するたいね」
菫(博多弁むずっ!)
怜「そ、そうだ!部費!部費はどうなったん!?」
竜華「あっ!確か、怜が持ってたカバンの中に部費入った茶封筒が…」
怜「…これや」スッ
竜華「…中身検めるで」
怜「…」コクン
竜華「…」ゴソゴソ
怜「…」
竜華「…中身、一銭も減ってへん…」ホッ
怜「」よ、良かったぁ…」ヘナヘナ
竜華「本当に、ありがとうございます」ペコリン
怜「もしうちがこのみんなの大切なお金使ってしもうとったなんて事になってたら…自分で自分許せなくなるところでした。本当に、感謝してもし切れないです」ペコリン
菫(なんか、こういうのいいなぁ…)
仁美「ん?あれ?けど、さっきの会話聞いてると初犯じゃないような…」
はやり「あー!きたきた!」
菫「へ?」
はやり「みんなのメニュー、来たよ!ほらほら、みんな!ご飯食べた食べた!」ズイズイ
仁美「おおう?」
怜「わっ」フラッ
竜華「おっと、大丈夫?怜」サッ
怜「うん…ありがと」
竜華「ええって」
はやり「」ニコニコ
菫(…ん?)
仁美「いただきまーす!」
はやり「ああん!おいしいとこ取られた!?」ガーン
怜「あはは…いただきます。瑞原プロ」ペコリ
竜華「いただきます。…ごちそうになります」ペコリ
菫(もしかして…)
はやり「とほほ…はーい。どうぞー」ショボーン
菫『瑞原プロ。瑞原プロ』
はやり「じゃあ私もいただきまー…って」
はやり『どうしたの?菫ちゃん…だっけ?』
菫『ええ。弘世菫です。今後共宜しく御指導御鞭撻お願い致します』
はやり『ふふ。真面目な子だなぁ。なーに?ご飯食べないの?』
菫『その前に1つ、伺いたいことが』
はやり『はいはーい☆答えれることならなんでも答えちゃいますよー☆』
菫「…」
はやり『んー?』
菫『…誰かがギャンブルで浪費したお金を把握して、その分だけお金を茶封筒の中に補充する魔法、とか使えます?』
はやり「…」
菫『…例えば、自腹ででも』
はやり「…」
菫『…その…結構な高給取りでも松屋でご飯食べざるを得なくなる…よう…な…』
はやり「…ふふ☆」ニコッ
菫「…」
はやり『はやり、わっかんなーい☆』
菫「…ふっ」
菫『ですよね』
仁美「カレギュウ大盛りおかわり!!」メェー!
第二話
「爆乳ロリ(28)と今月の給料」 終わり
「ふふ…面白い子、見ぃつけたぁ♪」
「…」
「私の遊び相手になってくれるかも♪」
「…」
「ね、そう思わない?」
「…」
「美子ちゃんも」
・まこがスタンド使いだという風潮
・ハギヨシ&京太郎はただのタコス師弟なのにそれ以上のガチホモだという風潮
・福路美穂子がヤンデレだという風潮
・蒲原と衣が仲がいいという風潮
・睦月が投牌戦士だという風潮
・照が方向音痴かつシスコンだという風潮
・菫が可愛いもの好きな乙女だという風潮
・亦野が歴戦を経た軍関係者だという風潮
・Megan Davinがおっさんだという風潮
・セーラがガスを出すという風潮
・泉がワキガだという風潮
・憧が売春しているという風潮
・宥が油ものの暖かい空気を浴びていた空調
・小走がなんでも解決してくれるという風潮
・ギバードがマジキチだという風潮
・霞の実年齢が社会人クラスだという風潮
・滝見春がデブだという風潮
・哩と姫子が花田ラブな風潮
・小鍛治がアラフォーだという風潮
・三尋木がヤクザの愛人だという風潮
いくつかつっこみたいがいろいろあるんだな・・・。
小走先輩はそのままでも何ら問題無いというか魔法少女より役に立つような気が
菫の部屋
菫「…」カリカリカリ…
菫(結局あの後、私達3人は園城寺さんと清水谷さんを家まで送って、新幹線で帰宅した)
菫(どこかの違法羊と違って瑞原プロはきっちりと乗車料金も支払っていたし、どころか私達の分の運賃すら支払ってくれた)
菫(曰く『これも社会人の務めだから☆』との事だったが、心苦しい所はあった。学生という立場ではあるものの、自分の幼さを思い知らされる気分でもあったからだ)
菫(東京に帰ってから、彼女はすぐに番組の収録があるらしく、直ぐにテレビ局へ向かってしまった)
菫(だが、電車の中で今後風潮被害退治の際に一緒に行動する約束を交わしたし、定期的な念話でのやり取りや魔法少女としての修行の方法の指導等もして戴ける事になり、実質的な師弟関係と言えよう)
菫(…助けて戴いた上に世話になりっぱなしで、情けないものだ。早く一人前…そう、魔法少女としても、人間としても一人前になって、恩返しをしたいものだな…っと)
菫「…」カリカリカリッ…トンッ
菫「…本日の日記終了、っと」パタン
菫「…ふう」
菫「…」
菫「…ところで」
仁美「…チュー」
菫「なんでお前うちに居るんだ」
菫「しかも何飲んで…って!おい!それ私が買って冷蔵庫に入れてた抹茶オレじゃないか!」ガタッ
仁美「この渋味と甘さの絶妙なハーモニーがなんとも…」チュー
菫「なーんで勝手に飲んでるかこの卑し羊は!」ギリギリギリ
仁美「ぐおおおおお!?頭が!頭が割れる…っ!?わ、分かった!分かったから離せ!!」
菫「ふんっ!」ポイーッ
仁美「メヘッ!」ドサッ
菫「お前は、ほんっとうに、なんて言うか、酷いな!」
仁美「おまえだって変わらんわ。このサディスティック魔法少女め。…いたたた。どういう握力してんだ」サスサス
菫「っていうか、どうやったら元に戻るんだ」
仁美「うん?」キョトン
菫「いや…魔法少女になったはいいけど、姿変わらないからこう、メリハリも付かんし、どうやって変身前に戻れば良いのか…」
仁美「ああ」ポンッ
菫「『ああ』って…私も今言うまで随分悠長だったが、お前は大概…」
仁美「変身解除ん方法はな」
仁美「…」
菫「?」
仁美「…ちょっとそこにまっすぐ立ってみろ」
菫「…こうか?」スッ
仁美「両拳を握って」
菫「…」ギュッ
仁美「脇を締めて、握り拳を鼻先まで持ってくる」
菫「…」スッ
仁美「身体を左右に揺するように動かし」
菫「…」ユラユラ
仁美「両足を交互に、膝から下だけ後ろに投げ出すように跳ね上げる」
菫「…」ブンッ ブンッ
仁美「リズミカルに、全て同時に」
菫「…なんか恥ずかしいなこれ」クネクネ
菫「…ま、まだか…」クネクネ
仁美「まだたい」
菫「うううう…」カアアア
仁美「まだ…」
菫「は、恥ずかし…」クネクネ
仁美「まだ」
菫「うううう…」ユラユラ
仁美「…」
菫「…」クネクネ
仁美「…」
菫「…」クネクネ
仁美「…まあ」
仁美「…別に念じれば戻るんばってんね」
菫「嫌がらせかこの野郎ぉおおおおおおおお!!!」
菫「ぐううう…!この羊頭のバフォメットめ…!!」プルプル
仁美「…まあまあ。ところで、念じてみな?元に戻るー元に戻るーっち」
菫「…」
菫(元に戻るー元に戻るー)
菫「…」ガクン
菫「…あ」
菫(今…何か、私の身体から出た…感じが…)
仁美「ん。元に戻ったな」ニコニコ
菫「…」
仁美「ん?どうした?」
菫「…なんだか、喪失感が…」
仁美「…ふ~~ん」
菫「…変身解除すると…なんだか、寂しい…ん、だな…」
仁美「…まあ、またいつでも変身すれば良かよ」
仁美「うん?」
菫「変身だよ!じゃあ今度はどうやって変身すれば良いんだ!?」
仁美「そーやねぇ」
菫「…嘘教えんなよ」
仁美「変身は条件付けよ」
菫「条件付け?」
仁美「ん。条件付け。訓練されれば解除の時みたく簡単にオンオフ出来るが、緊急に変身しなけりゃいかんタイミングもあっけんちゃろうしな」
菫「…それで?」
仁美「だから、初心者はまず、変身に儀式を織り込むたい」
菫「儀式って…」
仁美「まあ、一般的な魔法少女の『あれ』たいね」
菫「『あれ』…ってまさか…」
仁美「そう」
仁美「変身ポーズと名乗り口上。あと、変身後の名前も付けておこうか。切り替えって大事よ」
菫(あ、憧れてはいたが、実際にやるとなるときつい…)
仁美(おまえの考えとうこつが手に取るようにわかる)
菫「…け、けど…まあ、仕方ない…のか。うん。わ、私の体裁とか気にしてる場合でも無い…し…な…」ニヤニヤ
仁美(そいでやってみたい衝動に一瞬で負けやのった)
菫「え、えーっと…まずは、こうポーズ取って…こうして…ああ、こっちの方が見栄えいいかなぁ…」ワキワキ
仁美「…あんま複雑なん止しとけよ」
菫「あ、あと…前口上は…どうしようか。えーっと…『罪の無いみんなを苦しめる悪い風潮被害は、スミレにお任せ☆』…キャラじゃないな。クール系魔法少女の方針で攻めるべきか…」ブツブツ
菫「『優しい月光の光を浴びて闇を切り裂く…』いや、日中だったら格好が付かんな。えーっと…『あなたのハートを狙い撃ちっ!』…うん。この路線は良いかも。もうちょっと突き詰めて…」ブツブツブツ
菫「取り敢えず名乗り口上は保留として、後で辞書で良さそうな単語を拾っておこう。それより、魔法少女名。魔法少女名は非常に大事だぞ。これに大半がかかっていると言っても過言ではない」ウーーーン
仁美(凄い勢いで考えとっとうと…)
菫「そういえば、はやりんはなんて名乗ってるんだ?」
仁美「ん…ああ。あの人は魔法少女マジカル☆はやりん名乗っちるちゃ」
菫「なるほど…あの人らしい、実にシンプルかつ機能美溢れる美しい名前だ」ホウ…
仁美(わかんねー。さっぱりわかんねー…)
菫(そしていつかあの人と肩を並べられるように…)
菫「うーん…どうする?えーっと…やはり何某☆スミレで行くべきか。うん、そうだな。その系列で、私のイメージに合いそうな単語を…」
仁美「バイオレンス☆スミレ…サディスティック☆スミレ…シリアルキラー☆スミレ…」ボソボソ
菫「うーん…迷うなぁ…」ギリギリギリ
仁美「おおおお!?いつの間に足四の字の体勢に!?」
菫「ラブリー…ビューティー…いや、流石に烏滸がましいか…」ギリギリ…
仁美「がぁあああ!?あ、足が…!!」
菫「なあ、どうする?仁美。お前も良い名前有ったら考えてくれないか」ギシギシッ
仁美「や、やっぱりバイオレンス☆スミレじゃなかか!」
菫「まだ言うか!」メキッ!
仁美「ラメエエエエエエエ!!?」
仁美「…」ピクピク
菫「…おっといかん。もうこんな時間か」
仁美「なんや?どげんした?」ムクリ
菫「もう寝る時間だ。明日は学校だからな」イソイソ
仁美「受験生なんに自由登校まだなんか?」
菫「ああ…それでお前はあっちこっちふらふら出来るのか。受験勉強はいいのか?」
仁美「…まあ、うちはなんげななるけん」
菫「なんとかなるって?意外と頭いいのかお前」
仁美「ふふん」
菫「…まさか受験でも催眠を…」ジトー
仁美「せんわ!!」
菫「どうだか…まあいい。お前もさっさと歯磨いて寝ろ」
仁美「ういうい」
菫「…来客用の布団は、クローゼットに入ってるから」
菫「…なんで布団貸してやるだけでデレ扱いされねばならないんだ。私はそこまで鬼じゃないぞ」
仁美「そっか。おまえ、修羅ん類やもんな」
菫「ベランダで寝るか?」
仁美「それは勘弁」
菫「ったく…まあいい、おやすみ。明日帰ってきたら、また色々考えるぞ。お前も良いアイディア考えておいてくれよ」
仁美「メェー」
菫「なんだそれ…あふ…」
仁美「…」
菫「…本当、お前の顔見てたら…羊過ぎて…眠…く…な…る…」
仁美「…」
菫「…すー…すー…」
仁美「…おやすみ。菫」
仁美「…どーっこいしょーと」コロン
仁美「メッヘッヘ。ラテ飲んだくらいで歯なんざ磨いてられっか面倒臭か。こんまま寝かせて貰うに決まっちる」ゴロゴロ
仁美「…っ!」ビクッ
菫「うーん…」モゾッ
仁美「…」ドキドキ
菫「…仁美…」ムニャムニャ
仁美「お、起きんしゃいた?」ビクビク
菫「…歯…ちゃんと…みが…」
仁美「…」
菫「虫歯…歯医者…怖い…から…」
仁美「…」
菫「…くぅ」
仁美「…」
仁美「…仕方ない」ムクリ
仁美「やっぱ、歯ぁ磨いてくるか」テクテク
菫「んー…むにゃ…」
菫「それじゃあ、行ってくるよ」
仁美「ん」
菫「くれぐれも問題起こすなよ」
仁美「ん」
菫「…親御さんには連絡したか?」
仁美「ん」
菫「…本当にしたんだな?突然娘が消えたら、絶対に心配するぞ」
仁美「東京の友達んとこ泊めて貰って一緒に勉強しとる事になっとるばい」
菫「…」
仁美「ほれ、さっさち行かんか」シッシッ
菫「あ、ああ…わかった。それじゃあ行ってくるけど…」
仁美「なんかあったらすぐ念話せんねちゃ」
菫「ああ。わかってる」
菫(なんだか不安だなぁ…)
菫「着いた」
菫(…土日挟んだだけなのに、なんだか物凄く久しぶりに来たような気分だ…)
菫「…」
菫「…行くか」
照「あ、菫だ。おはよう」
菫「ん?ああ…照。おはよ…!」
菫「て、照!!?なんだそれは!!」
照「え?」ギュルンギュルン
菫「なんなんだその右腕はああああああああああ!!?」
照「え?右腕?」ゴウウウウウウウウン
菫「うおおおおお!!?」サッ
菫(な、なんかトルネード状の低気圧が掠めてったぞ!?)
照「あれ…なにこれ…」ギュルンギュルン
菫「しかも今気付いた風!!?」
ギュゴゴゴゴ
菫「うわあああああ!!?」ササッ
照「あっ!ごめ…大丈夫…」スッ
ギュリリリリリリ
菫「ぎゃあああああああ!!照!落ち着け!お前の右腕に纏ってる台風みたいなのが、お前が手伸ばしたら私襲ってくるんだよ!」サッ
照「わわわわ!ど、どどどどうしよう!菫!」
菫「そんなの私が聞きたいわ!」
照「ど、どうしよう!こんな腕じゃ授業受けれない!今日は学食のプリン安いのに!」
菫「ズレ過ぎだ!!このポンコツ!!」
照「ぽ、ポンコツって…」ウルッ
菫(なんだ!?誰だこいつ!こいつ本当に『この程度じゃ調整にもならない』とか言ってた宮永照か!?)
照「うえええ…」シクシク
ゴゴゴゴゴゴゴ
菫(低気圧が暴れまわって…はっ!まさか、これも風潮被害の一種か!?)
菫「くっ!」サッ
菫『おい!おい!羊!聞こえてるか!!』
仁美『うるっさいメェー。今おまえの部屋でハチクロ全巻読破にチャレンジしてるんだから邪魔すん…』
菫『うるさい!それどころじゃない!おい!感じるか!風潮被害だ!』
仁美『メェ?』
菫『タイムラグあるんじゃなかったのか!』
仁美『…おおう』
菫『なんだその反応!』
仁美『思ったより成長早いなぁ。さっきまだ大した反応やなかったから、放課後でも間に合うっち思っとったんやけど』
菫『お前の悠長さが原因かこの役立たず!!』
仁美『まあ、仕方なか。今から行くから、おまえそいつばなんとかしとけ』
菫「くっそ…!」サッ
仁美『幸い、まだ完全に暴走しとらんばい。今ならまだそんな手強くなか。ってか、多分風潮事態が…』
菫『なんだ!?』
菫「ショボイって…」
照「あ、淡だ。おはよう淡」フリフリ
ギュルルルルル
菫「おわあああ!?」ササッ
菫(どこがショボイんだ!!)
淡「うわ…テルーどうしたの?その手の凄いやつ。一昨日買った?」
照「うーん…いつ付いたのか…」
菫『羊ぃいぃいいいい!!』
仁美『せからしかぁ…能力の凄いんなら、多分本体のポンコツなんやちゃ』
菫「ほ、本体…だと…」チラッ
淡「それじゃあまた後でねー。テルー」フリフリ
照「うん。またね」フリフリ
ギュウウウウウウウン
菫「…い、いける…か…?」ゴクリ
菫「プリンの優先順位高いなおい!」
照「むっ!何言ってるの!私の優先順位の一番はいつだって妹の咲だよ!ペロペロしたい」
菫(こいつも複数の風潮被害を受けてるのか!?だが、羊の予想通りポンコツって風潮被害がその中に含まれてるなら…!)
照「菫?」
菫(能力はとんでもなくても、本体の強さは大した事が無いはず…!)ギロッ
照「あ、あの…どうしたの菫…怖い顔…」
菫(怖いのはあの右腕だけ…ならば…!)
照「すーみーれー」ピョンピョン
菫(後ろを取って…!)バッ
照「あれ?菫が消え…」
菫「足を掴んでうつ伏せに引きずり倒す!!」グイッ
照「ひゃっ!?」ズテッ
照「いたたた…」グスッ
菫(そしてすかさず腰に乗って…キャメルクラッチだ!)グギギギギ
菫「すまん照…だが、お前を救うにはこれしか…」メキメキ
照「腰!腰が死んじゃう!壊れる壊れる!」
菫「」ゾクッ
照「い、痛い…すみ…助け…」シクシク
菫「こ、これ…は…」
菫(照の泣き顔…)
照「うえええ…」グスグス
菫「…」ゾクゾクッ
菫(…いい)メキメキメキ
照「うあああああ!!?」
菫「ふ…ふふふ…いいな…この表情…」ニイー
照「あ…はぁ…はぁ…や、やめ…て…すみれ…私…これ以上…死んじゃう…」ポロポロ
菫「大丈夫。まだいけるさ」メキメキ
照「ふああああああ!!?」ジタバタ
菫(ま、まだ…大丈夫だよな?その…風潮被害のお陰で頑丈になってるはずだし…)ドキドキ
照「うああああ!!」
菫「もっと…もっと泣いてくれ…いい声で…」ゾクゾクッ
照「はっ…はっ…ご、ごめんなさい…菫…わ、私、なにか菫怒らせることした…なら…あ、謝るから…」
菫「いや、別にお前は悪くないさ…」ユッサユッサ
照「あああああああ!!」
菫「ところで、いつになったら消えるんだ?風潮被害」メシメシ
照「うぐ…うううう…」
照「」ガクン
菫「あ、落ちた」
照「」
菫「…ふう」
菫「風潮被害、退治完了…!」
仁美「なんばしよっとおまえは」
菫「ああ、仁美。見ろ。私一人の力で風潮被害を退治したぞ。意外とあっけなかった」
菫「ふふ…結構簡単なもんだな。まあ、油断は出来ないが、やっとこれで私も魔法少女として第一歩を歩んだ事に…」
仁美「…菫。おまえ…」
菫「ん?」
仁美「…おまえ、よくもまあ変身せず風潮被害を…」ドンビキ
菫「…」
仁美「…」チラッ
照「」ピクピク
仁美「…気絶してるだけたい。今のうちに変身して殴っとけ。前口上とか無くても、集中しまくれば出来るたい」
菫「…あ、ああ…」
菫「…」
菫「…」シャランラ
菫「…出来た…のか?この、何か温かいものに包まれるかのような多幸感というか、万能感というか…」
仁美「ほれ、ポカッと」
菫「…てい」ポカッ
菫「…なんか煙みたいのが出たぞ」
仁美「風潮被害の残滓たい」
菫「これが…」
仁美「…おめでとう。バイオレンス☆スミレ」
スミレ「その名前を定着させようとするな!!」
照「う・・・うーん・・・」
仁美「おっ。起きた起きた」
菫「あ、そうだ!照!だ、大丈夫か!?すまない!調子に乗ってやり過ぎた…」
照「あ、あれ・・・私…」フラフラ
菫(良かった…無事だった…)
菫「照…」
照「菫…?」
菫「…」
照「…」ボーー
照「…なんだかよくわからない…けど…」
菫「…」
仁美『こん子は特になんもおかしな事しとらんし、余計な説明して巻き込む必要も無かね。黙っちおこうか』
菫『…わかった』
照「あのね?菫」
菫「…なんだ」
照「私、菫に、お礼を言わないといけない気がするんだ」
菫「…照」
照「ありがとう。菫」ニコッ
菫「…」
菫「…ううん。こっちこそ…ごめんな…」ギュッ
菫「…」ギューーーッ
照「…?」キョトン
仁美「…風潮被害退治完了、やね」
照「…菫。あったかいけど、ちょっと痛い…」
菫「…あ、ああ。すまんすまん」パッ
仁美「…ところで、お取り込みのとこ申し訳なかんばってん」
菫「…ん?」
仁美「授業」
菫「あっ!」
照「ああっ!」
菫「い、急げ照!遅刻する!」
照「う、うんっ!」
菫「走るぞーーー!!」タタタタ
照「わかった!」タタタタ
仁美「いってらっしゃーい」
仁美「…」
仁美「…」チラッ
仁美「…」
シュルルル…
仁美「あー…」
シュルシュルシュ…バクッ
…
仁美「…モニュモニュモニュモニュ」
仁美「…」
仁美「…コクン」
仁美「…」
仁美「帰りにスタバ寄ってこ」クルッ
仁美「…」テクテクテク
仁美「…ケプッ」
第三話
「ポンコツ照と低気圧」 終わり
春「ポリポリ」
仁美「いたぞ!暴走風潮被害だ!」
菫「こいつが…!」
春「ポリポリ」
菫「…なんか食ってるな。黒糖か?さっき覗いた土産物屋にもあったし。で、これはなんの風潮被害だ?羊」
仁美「うーむ…」
菫「彼女は永水女子の選手だったな。見た感じどこも変わらないが…」
仁美「…デブだという風潮」
菫「何?」
仁美「…間違いない。この感じ、デブだっちゆう風潮たい」
菫「デブって…別に見た感じそんなんでもないが…」
仁美「それは暴走が始まったばっかだからやね。今黒糖食ってるから、多分放おっておいたらどんどんデブる…!」
菫「それはかわいそうだ…さっさと助けてやろう。手荒になるが許してくれよ」
仁美「変身せーよ」
仁美「お?前口上や決めポーズは諦めたか?」ニヤニヤ
菫「…まだ良いアイディアが無いんだ」
仁美「…まあ、頑張れ」
菫「さあ、行くぞ…!」ジリッ
春「ポリポリポリ」
菫「まずは様子見…」シュッ
春「ポリポリ」ポヨン
菫「何!?」
仁美「菫ん左ジャブがおっぱいに吸収された!?」
菫「な…拳が…抜けない…!拳法殺しか!」ジタバタ
春「ふふ…」ニコッ
菫「くっ!?」
仁美「菫!」
春「ばん」ゴスッ
仁美「腹に膝がめり込んだ!」
菫「こ、この…!」フラッ
菫(くっ!手、手が…胸から抜けない…なんだこれ!?藻掻けば藻掻くほど脂肪の奥に吸い込まれる…!)
春「ばん。ばん。ばん」ゴッ ゴッ ゴッ
菫「がふっ…!くっ!あぐぅ…」
仁美「菫!何おっぱい手に突っ込んだままヤラレっぱなしになっちるんだ!一回距離取れ!」
菫「そ、れが出来たら苦労しな…」
春「もう一回」ゴスッ
菫「かっ!」」ズルッ
菫「…」ペタン
春「膝から崩れ落ちた。無様。汚い。惨め。…ふふふ」
菫「こ、いつ…!調子に乗るなよ…!」
春「調子に乗ってるから、貴女の膝、踏んであげる」グリッ
菫「ああああっ!?」ビクビクッ
菫「あ…ぐぅ…!」
春「けど、苦痛に歪んだ顔だけは可愛いかも。ね、もっと泣いて。叫んで。その後で、ゆっくり犯してあげる」ギュッ
菫「うわあああああ!」
菫(くっ!手さえ自由になればこんな奴…!)
春「年下に踏まれて…だらしない悲鳴あげて…情けないね…」
菫(こ、この…!)
菫「くっそデブがぁあああああああああああ!!」ギリッ
春「っ!?」
菫「どうだこの豚野郎!ガキの癖にいっちょ前にでっかい脂肪の塊ぶら下げやがって!うっとおしいんだよこの!!」ギリギリギリ
仁美(僻みたい…自分だってそこそこええ乳しとる癖に)
春「い、いたたたたた…」
仁美「なんだ?菫おまえ何を…ああ。飲み込まれた手ば使っておっぱいに握撃かましとんのか」
菫「潰れろ。豚」ギチッ
春「い、痛い…や、やめ…あううう…」ペタン
春「や、やだ…もう…やめ…ちぎれる…」ハァハァ
菫「ふん。だがこんなんじゃ気絶はさせられないよなぁ…?」パッ
春「はぁ…はぁ…い、痛かった…」ギュッ
菫「おや、いいのか?便利な両手を大事な胸を隠すのなんかに使っていて」
春「え…」
菫「もっと大事な首が空いてるぞ」ニヤリ
春「ちょ…」
菫「ほっ!」スルッ
春「かっ!?」
仁美「出たーーー!バイオレンス☆スミレのフロントチョークばーーーい!!」
菫「その呼称止めろ!!」ギリギリ
春「…くふっ…!」ジタバタ
菫「残念。もう逃げられない」ギリギリ
仁美「おっとっせっ!おっとっせっ!おっとっせっ!」
菫「…」ギチギチ
春「あ…ふっ…!」ジタバタ
菫「…」ギチギチ
春「くっ…」ジタバタ
菫「…」ギチギチ
春「…」ジタ…
菫「…」ギチギチ
春「…」バタ…
菫「…」ギチギチ
春「…」パクパク
菫「…」ギチギチ
春「…おえっ」
菫「…」メキッ
春「ブクブク」
春「」ドサリ
仁美「流石ばい。暴力の権化」
菫「黙れ悪徳の権化」
仁美「さあって。そんじゃあ目的も達成した事やし、その子ん目覚めたらとっとと東京帰るかね」
菫「いいのか?お前の実家九州だろう?折角こっちにきたんなら顔くらい出していけば…」
仁美「そげな日も経っちなかし、気にするこつ無かっち」
菫「まあ、確かにお前に出会ってからまだ4日だが…」
仁美「宮永照の風潮被害倒してから順調たい。今が波の乗り時ぞ」
菫「そうだなぁ。あれから2件ほど解決してるが…っていうか、意外と多いな。風潮被害」
仁美「ん」
春「あ…あれ…私…」ヨロヨロ
菫「気が付いたか」
春「えっと…」キョロキョロ
菫「黒糖ばかり食べていては栄養が偏ってしまうよ?ちゃんとバランスの良い食生活を心がけるように」
菫『わかったようるさいなぁ…』
春「あの。貴女は…?」キョトン
菫「…」
菫「…通りすがりのおせっかいさ」
春「はい?」キョトン
仁美「ぶふっ!」
菫「…」カアアア
仁美「くっ…くくく…通りすがり…通りすがりのおせっかいって…」プクククク
菫「う、うるさい!行くぞ羊!」
仁美「わかったわかった。通りすがりの羊はクールに去るメェー」スタスタ
菫「こ、このやろう…!スタスタ
春「…なんだったんだろう。あの人達…」
春「…」
春「…まあいいや。神社のお掃除の仕事の最中だったし。お掃除の続きしよ」
春「…」サッ…サッ…
春「…あ」
春「おはようございます」ペコリ
春「…え?体調…ですか?ええ、別にこれといって悪くはありませんけど…」
春「…体重?やだ。私太ってないですよ?」
春「ほら、身体もこんなに軽い」ピョンピョン
春「…胸が揺れるのは仕方ないじゃないですか」ササッ
春「…というか、それは貴女にだけは言われたくないです…」
春「…お出かけですか?ええ、いってらっしゃい。いつも大変ですね」
春「霞さん」
「くすくすくす…」
仁美「まさか無人駅っちは…電車も1時間に1本とかクラスっちは…」ボーー
菫「お前のとこはもうちょっと発展してるのか」
仁美「大都会たい」
菫「そうかー」ボーー
仁美「そうよー」ボーー
菫「…さっき電車通ったばかりだから、次は…げ。50分後!?」
仁美「携帯ゲームでも持ってくれば持っちくれば良かかねー」
菫「勉強道具は持ってきたけど…この風景の中だとさすがになー」
仁美「糞マジメ」
菫「お前がふざけ過ぎなんだよ」
仁美「…はー。スタバも有るわけで無し。コンビニすら無し…」
菫「確かに喉乾いたな…構内の自販機で何か買うか。何飲む?」
仁美「ん。カフェオレ」
菫「はいはい。待ってろ。今買ってきてやるから」
仁美「んー?なんだってー!?」
菫「はやりんと来れなくて残念だってー!」
仁美「まあ、しょんないー!あん人社会人やし、大事な収録の重なっちしもたからなー!」
菫「だよなー!いや、わかってはいるけどさー!」
仁美「交通費だして貰っただけ感謝せなつまらんーー!」
菫「わかってるってーーー!」
菫「…まあ、それでも、あの人と一緒に戦ってみたいって思いは、中々誤魔化せないんだよな」ボソッ
菫(…だから、せめてまたあの人と一緒に戦えるその日までに、少しでも強く…強くなっておかなくては…)
菫「…っと。自販機の前に着いたか。えーっと、小銭小銭…」ゴソゴソ
菫「…」ピタッ
菫「…」
「…」
菫「…何か、御用ですか?」
「うふふ♪」
「貴女に…お礼を言いたくて」
菫「お礼?」
菫(…なんだこの感じ。なんだか…物凄く嫌な感じがする。まるで背中に凍りついた鉄柱でも突っ込まれたかのような…)
「ええ。お礼です」
菫「…身に覚えがありません」
菫(この声…どこかで聞いたことがあるような…?)
「いいえ。身に覚えがあるはず。とぼけても、むぅ~だ♪」
菫「とぼけてなんて…」
菫(くっ…!振り向かなければいけないのに、身体が云う事を聞かない…?)
「いいえ。私の大事な分家の子を…風潮被害から救ってくれたお礼、言わなきゃね」クスッ
菫「ふ…」
菫(何!?)
仁美『変身して前に翔べ!菫!!』
菫「っ!?」シャランラ
「あら」スカッ
菫「なっ!?何を…」
「ふふ…バレちゃった。結構勘の鋭い子ねぇ。それとも…ふふ。誰かが声をかけてくれたのかしら?」ニギニギ
菫「お、お前は…永水女子の…!」
霞「うふふ♪こんにちわ、弘世菫さん。石戸霞です。さっきは春ちゃんを助けてくれてありがとう」ペコリン
菫「な…今、何を…」
霞「何を…って。ちょっと肩を掴もうとしただけよ?そんなに怯えられても…傷ついちゃうわ」クスクス
菫(なんだ?こいつ…なんか…やばい…!)ゾクッ
仁美『菫!逃げるぞ!』
菫『は!?』
仁美『こいつはヤバイ!』
菫「ヤバイって…」
仁美『こいつは…こいつだけは…!この…この…!』
仁美『この『魔法少女プリティー☆かすみん』だけは危険過ぎるばい!!』
霞「」ニコニコ
菫「ま、魔法少女だとぉおおおお!!?」
霞「あら、もう気付いたの?」
菫「ば、馬鹿な!だって…お前、私も…魔法少女で…!」
霞「ええ知ってるわ。だって、貴女、この間大阪に居たでしょ?見てたもの」
菫「!!」
菫(園城寺怜の時か!)
霞「あれが初めての実戦で…無様な初戦ではあったけど、私の目は誤魔化せない。貴女…『持ってる』わ」
菫「な…」
霞「貴女から感じる才能の塊…強者たるべくして生まれた人間の匂い…闘争の匂い…血に飢えた野獣の匂い…」
菫「何言ってるんだお前…」
霞「貴女なら私の渇きを癒してくれる…一目見てそう感じた…そう。これは一目惚れ…」ジリッ
菫「何を…訳のわからないことを!!」
霞「貴女は知らないの?まだ気付いてないの?分からないの?いいわ。なら教えてあげる。貴女は同じ…私と同じ…そう…」
霞「それは貴女が私と同じ、生粋のドSの才能の持ち主だから!!」
菫「!!?」
霞「くすくすくす!気付いてないの?本当に!?本当に気付いてない!?嘘でしょ!?だって、貴女暴力を楽しんでる!!魔法少女になって良かったって思ってるでしょう!!」
菫「おい羊!魔法少女にも風潮被害はかかるもんなのか!!」
仁美「かからない…が、魔法少女になった時点までにかかっていた風潮被害は、消えない」
菫「!!」
仁美「魔法少女プリティー☆かすみん。九州最強の魔法少女にして、最新の魔法少女。その雷名は全国の魔法少女に響き渡っているという」
菫「九州最強…だと…」
仁美「風潮被害者として暴走5歩手前くらいで既に史上最大級の強大さを誇る風潮被害者だったのを、マジカル☆はやりんが三日三晩かけて取り押さえた化物中の化物」
菫「何!?」
仁美「だが風潮被害を浄化している途中で脱走し、数週間姿を消した後、魔法少女になって世に再び現れた」
菫「…」
仁美「大分浄化されて風潮の力は相当落ちてはいるものの、魔法少女としての才能も高く、新人ながらそこらのベテラン魔法少女数人を軽く凌駕する」
仁美「惜しむらくは、その風潮の凶悪さ故に、血の気が非常に多い事。強い者、気に入った者を見つけると、誰でも嬲ろうとする習性がある…らしい」
菫「なんだってそんな奴が…」
霞「だから、言ったでしょう?貴女…良いわ…その気の強い眼差し、威風堂々とした態度、知的な風貌、クールな佇まい、スラっとした抜群のスタイル…どれを取っても立派な王者然としていて…それでいてその本質は、ドS」
霞「隠し切れない血に飢えた獣の本性が見え隠れして…だからこそ…屈服させてしまいたい…叩き潰して…這いつくばらせて…泥まみれの顔を踏んで、命乞いをさせたいの…ねえ…わかるでしょ…」
菫「わかるか変態サド女!!」
霞「…良い」ゾクッ
菫「ひっ!」
霞「良いわ…その可憐な花弁のような唇から漏れる、鋭くハスキーな口汚い罵り声…ああ、でもだからこそその声で泣かせたい…鳴かせたい…啼かせたい…哭かせたい!!」
菫「…」ジリッ
霞「逃げられないわよ?ここは私のホーム。どこに逃げようと逃がさない。ふふふ…うふふふ…ふふふふふ…」
菫「…仕方ない…こうなったらもう、覚悟決めるぞ。羊」
菫「…」
菫「…羊?」クルッ
シーーーーーン
菫「あの野郎逃げやがったああああああああああああああああああああああ!!!」
菫「あの…あの羊…羊め…羊…くそう…!絶対後で刈る…刈り殺してやる…くそ…畜生…畜生…!」プルプル
霞「えーっと…いい?」
菫「…」
霞「…そんなにテンション下げられるとなんだかちょっと調子が狂うのですけど…」
菫「…いいよ。もうなんだっていいよ。かかってこいよ」クイクイ
霞「えーっと…じゃ、じゃあ、行きます」
霞(なんだか想像してたのと違う…もっとこう…お互い憎悪し合うような…そんなの期待してたのに…)シュン
菫「ん。来ないんならこっちから行くぞ奇乳」
霞「き…っ!?」
菫「先手必勝っ!」バッ
霞「しまっ…」
菫(こいつ、背が私より低い分リーチも短いし、胸がアホみたいにでかいから動きがトロそうだ。なら、まずヒットアンドアウェイで攻めて、冷静さを奪ってみるか)
菫(って訳で、ビンタ!)パーーーンッ
霞「痛っ!?」
霞「痛たた…」ヒリヒリ
菫(結構あっけなく入ったな…)
霞「よくもっ!」ブンッ
菫(掴みかかってきた!)サッ
霞「っ!?」スカッ
菫(…思った以上にトロいぞ?)
霞「くっ!」ブンッ
菫「ふっ!」ヒョイッ
霞「またっ!?」スカッ
菫(…念のため、試してみるか)
菫(もう一発ビンタ!)パーーーンッ
霞「あうっ!?」
菫「…あれ?」
霞「う…ううう…」ヒリヒリ
霞「あうっ!?」ヨロッ
菫「…」パーーーンッ
霞「あぐ…!」
菫「…」パパパパパパーーーーン
霞「あ、あふ…」ペタン
菫「…え」
菫(蹲った…)
霞「…」
菫(…罠か?)
霞「…」
菫(…ちょっと腹に蹴りいれてみようか?)
霞「」ウルウル
菫「…気が引けるなぁ」ゴスッ
霞「うぶっ!?…がふ…!」
霞「かふっ…!えほっ!えほっ!」
菫「…嘘だろ…」
菫(私が強くなったとか…な、訳…無い…よな…?幾らなんでも九州最強がこんな手応えない訳…)
霞「ふ…ふふふ…ど、どうしたの…お、おいでなさい…こ、この程度じゃ私は倒せ…」ガクガク
菫「膝震えてるぞ」
菫(…結局、噂なんてこんなもん…なのか…?それとも、名を騙った紛い物か…何にせよ、期待はずれで面白くも無い…)
菫(…って、私は何を考えてるんだ)ブンブン
霞「ぐっ…!はぁ…はぁ…!く…だ、駄目…もう立てない…」ペタン
菫「…もう止めにしようか」
霞「はぁ…はぁ…」
菫「…なんか、弱いものいじめな感じでその…気分悪いし…」
霞「ペッ」
菫「…」ビチャッ
菫「…」ビキッ
霞「ああああああああ!!」
菫「…」
霞「はぁ…はぁ…はぁ…」
菫「…流石にもう駄目だな。これ以上は…」
菫『…はぁ。羊。おい。終わったぞ。なんかやたら弱かった。逃げたの許してやるから戻ってきて…』
仁美『いいから今のうちに逃げろ!!』
菫『はあ?だから、かすみんはお前が言ってたより全然弱…』
仁美『馬鹿!!かすみんはまだ…』
菫「っ!」ゾワッ
菫「っ!?」クルッ
菫「…」
菫(だから…!)
美子「…」
菫(…だからいつの間にお前らは湧いて出てくるんだよ!!)
美子「…」クイクイ
霞「美子…ちゃん…」
美子「…」ナデナデ
霞「…ふふ。ありがとう。痛いの、撫でてくれてるのね?」
美子「…」コクコク
霞「うふふふ…痛いのが飛んでいきます…」ナデナデ
美子「…」キュー
菫「なんだあいつは…」
仁美『菫!おい!?どげんした!?菫!』
菫『仁美…お前の友人が居るぞ』
仁美『は?』
菫『インハイで私と対戦もした…ええと、なんだったかな。安河内美子さん。彼女が石戸霞のパートナーか』
仁美「なんやっち!?」ガサッ
菫(なんで駅の対面の植え込みに居るんだよ)
仁美「美子…」
美子「…」ジーッ
仁美「…ひ、久しぶり…」
美子「」プイッ
仁美「…っ!」
菫(なんだ?)
美子「…」クイクイ
霞「ん…そうね。ちょっと、遊び過ぎたかもね。結構ギリギリだったわ…ちょっとだけ手加減してくれてたから怪我しないで済んだけど…」
菫「ん?」ピクッ
美子「…」
霞「ふふ…わかったわ。これが終わったら、二人で一緒にチキン南蛮食べに行きましょうね?」ナデナデ
美子「」コクコク
菫(だから、何故お前たちマスコットは共食い(?)をしたがる)
仁美「…菫。気を付けろ」
菫「無理するなよ。一発小突いたら崩れ落ちそうだぞ」
霞「ふふ…気にしなくていいのよ」
菫「…」
霞「終わるのは貴女だから」シャランラ
菫「な…」
菫(馬鹿な!?ま、まさか…まだ変身していなかったと言うのか!!?)
霞「変身!」ピカーーーッ
菫「発光っ!?」
菫(いいなーーーーーー!!)
霞「フレッシュ・プリティー・キャルルルーーン♪」クルクルー
菫「前口上と変身ポーズまで!?」
霞「ちょっとヤンチャでドジっ子だけど♪」キュピーン
霞「正義の心で悪い子には♪」
霞「お仕置き」クスッ
霞「くすくすくすくす…」ニヤニヤ
菫(非常に悪い顔してる!!)
霞「愛と正義と希望と憎しみの魔法少女、プリティー☆かすみん、ここに推参♪」ビシーッ
菫「…」
霞「…」
美子「…」
仁美「…」
霞(決まった…!)
菫(くっ…!悔しいが格好良い…!!)
美子「…」
仁美(この業界きつい…)
菫「くっ…!さっきまで変身もせずに戦ってた…だと?馬鹿な。何のためにそんな事を」
霞「ふふ…ハンデよ」
菫「ハンデ…だと?」
霞「ええ。正直結構ダメージ大きいのだけど…けど、それくらいでもしないと、今の貴女じゃ余りにつまらなすぎるから」
菫「つまらない?」ピクッ
霞「ええ。退屈と置き換えてもいい。サメとメダカくらいの戦力の差があるから…」
菫「…!」ギリッ
仁美(あ、いかん。挑発にがっつり乗っちる)
仁美「お、おい菫。ちょっと冷静にだな…」
菫「…」ゴツン
霞「…くすっ」
菫「…」
霞「…」
仁美(…デコぶつけてメンチ斬り合っちる)
霞「あらあら。尻に付いた殻も取れない稚魚の間違いだったかしら?世の中を知らない小物はどちら?」
菫「世界で初めて稚魚に負けた鮫を演じてみるか?自信過剰」
霞「トラウマになるくらい世の中の仕組みを叩きこんであげる。世間知らず」
菫「…殺す」
霞「潰す」
菫「くくくくくく…」
霞「うふふふふ…」
菫「来いよ。小娘。可愛がってやる」ニヤニヤ
霞「おいで。お嬢ちゃん。相手してあげる」ニヤニヤ
菫「…ふふふふふ…」
霞「・・あはははは…」
菫霞「「あーっはっはっはは!!」」
仁美「メ、メェー…」
第四話
「クスクス霞と無言のインコ」 終わり
哩さんも人妻風潮があるんですがその辺は……
仁美「…」
美子「…」
仁美「…あの」
美子「」プイッ
仁美「…」
仁美「…わかった。話しかけんばい」
美子「…」
仁美「…はぁ」
仁美(いやぁー…参った…)
仁美「…」
仁美(参った参った…)
霞「うふふ…ねえ…もう終わり?ねえ…ねえ…?私まだ30%も出してないわよ?ねえ?」グリグリ
菫「ぐ…うう…この…!顔を…踏むな…!」ボロッ
仁美(まさか、ここまで実力ん差のあっけんっちはねー。やっぱ逃げとくべきやったか)
菫「ぶっ!黙れ…奇乳…気持ち悪いんだよ豚」
霞「顔地べたに擦りつけて言う台詞がそれ?良いわ…身の程をわかってない感じが実に良い…ねえ?ゴミクズさん」グリッ
菫「がっ!」
霞「ふふ…でも…綺麗な顔を踏み躙るのは興奮するけど、あんまり汚したら駄目よね。後でクシャクシャに歪んだ泣き顔を拝むんですもの」スッ
菫(顔から足を退けた…?)
霞「ほら、立ちなさい?仕切りなおしましょうよ」
菫「くっ…」ヨロッ
霞「先手も取らせてあげる」
菫「…後悔させてやる!」
菫(さっきは打撃を全部裁かれた。こいつ、打撃防御が半端じゃない。それなら今度は組み技で仕掛ける!)
菫(おあつらえ向けに向こうは巫女服、柔道着とつくりは大体同じだ。投げ飛ばしてやる!)
菫「獲った!」ガシッ
霞「うふふふ…」
菫(よし!このまま背負投げで…)ググッ
霞「うふふ…うふふふふ…」
菫(動かない…)
霞「馬鹿ねぇ…こんな子供騙しの技で…」グイッ
菫「なっ…!」
霞「私に…勝てるとでも…」グググ
菫「ぐあ…」ヨロッ
菫(や、やばい…後ろを向いたまま押し潰される…)
霞「襟が開いてしまったわ。でも、それだけ。うふふふ…寝技に持ち込んで欲しい?…嫌だって言っても押し倒してあげる」ググッ
菫(だ、駄目だ…耐えられ…ない…)
霞「えいっ!」ギュッ
菫「」グシャッ
霞「よいっしょ」ギュッ
菫(胴を脚で挟まれた!)
霞「送り襟絞め」ギュッ
菫(喉…!締められ…っ!)
霞「えいっ♪」コロン
菫「ぐえっ!」
菫(仰向け…!まず…い…)
霞「…」ギュー
菫「かっ…」
菫「が…ぁ…」バタバタ
菫「…」
菫「」カクン
霞「はい、また私の勝ちですね」スッ
菫「ひゅっ!?こふっ!けほっ!えふっ!」
霞「くすくすくす」
菫「はぁ…!はぁ…!はぁ…!」
仁美(一方的過ぎる…ああやっち落としたりダウンする度に技ば解いて仕切り直させるとよ。これは心の折れる…)
霞「ふふ…良いわぁ…まだ心が折れないのね…殺意が消えないのね…良い…良いわ…貴女」
菫「ふ、ふらへんら…」ヨロヨロ
霞「今回は味見だけのつもりだったのに…食べ過ぎちゃうかも…」クスクス
菫「ら、らめんら…」
仁美(駄目やん。もう呂律も回っちなか…今すぐにでも奴から逃げなかっち、壊さるる)
霞「さあ、次はどうする?また殴りかかってくる?それとも、組み合う?寝技はお勧めしないわ。私の得意分野だから」クスクス
菫「あ…う…」ガクッ
霞「あら。それとも…ここで終わってしまうの?」
菫「~~~っ!」ガリッ
霞「っ!」
菫「…いて」ツーッ
霞「…くふ…くふふふ…くふふふふ…!舌を噛んで気付け…!!やっぱり最高…!!」
菫「…ふん」ゴシッ
菫(さて、どうしたものか…)
菫(ちょっと…今の私じゃ手に負えないなぁ…こいつ)
菫「五月蝿い小娘が。ちょっと待ってろ、今直ぐにお前に屈辱を味あわせてやるから」
霞「まあ!怖い!」クスクスクス
菫(むかつく…!!)
霞「…いいわ。なら5分だけ待ってあげる。けど、もしその間に何も思いつかなかったら…そうね。もう貴女、いらないわ。魔法少女を引退させてあげる」
菫「…っていうのは」
霞「犯して…壊して…捨てるの」
菫「…ふん。いつまでも余裕の上に胡座かいてると、足元を掬われるぞ。天狗」
霞「ふふふ…じゃあ、今から5分…」
菫(ふぅ…)
菫(…もしこれで相手が羊みたいな奴だったら…)チラッ
仁美「…」ソワソワ
菫(1分くらいしたら問答無用で襲いかかって来そうだが。まあ、この糞生意気な餓鬼ならそんな事はしまい。性格的に)
菫(その間に、何か奴に一泡吹かせる策を練らなくては…)
菫「…」
菫(殴りに行ったら捌かれる。投げに行ったら潰される。組んだら寝技に持ち込まれてアウト。極め技…?どうやってそこまで持ち込むかもわからないな)
菫(…魔法は、消しゴムのカスを好きな場所に飛ばせる、だっけか。使えん)
菫(…割かし詰んでないか?これ)
菫「…」
霞「2分経過ー」
菫(ここは…やはり、癪だがなんとか逃げて後日リベンジだ。絶対に地べたに這い蹲らせて土の味を叩きこんでやる)
菫(…逃げる策…かぁ)
霞「3分ー」クスクスクス
菫(逃げる策…どうやって逃げる?走って逃げる…?いや駄目だ。あいつの機動力がわからんし、第一ここはアウェーだ。土地勘が無い場所で逃げ果たせる相手では無い)
霞「ふふふ…4分…」
菫(だったら、ここはやはり…)
霞「4分30秒」クスッ
菫(…電車か)
菫(次の電車は…カウント終了の3分後か。中々良いタイミングだ)
霞「25-」
菫(結構経ったんだな。遊ばれていたとはいえ、奴相手によくここまで無事で入れたものだ)
霞「20-」
菫(だが、カウントが終わったら本気で来るかもしれん。いや、あの口ぶりと性格からして、絶対に来る)
霞「15-」
菫(3分…保たせて、隙を作って電車に乗り込む。いけるか?)
霞「10」
菫(…いや。それだけでは駄目だ)
霞「9」
菫(電車に一緒に乗られたら詰む)
霞「8」
菫(電車に飛び乗り、同時に奴が乗り込めないように仕向ける必要がある)
霞「7」
霞「6」
菫(ここは無様でも距離を取って応戦するしかない…か)
霞「5」
菫(…よし。来いよ。糞アマ)
霞「4」
菫(そっちが全力で来るなら)
霞「3」
菫(こっちだって全力で相手してやる)
霞「2」
菫(精々気を付けるこった)
霞「1」
菫(うっかり喉元食い千切られんようにな)
霞「ぜ…」
仁美「メェッヘッヘッヘーーーーーーーー!!!」
霞「…へ?」
仁美「動くなきさんらー!」
菫「きさんらって…私も?」
霞「もう…何よ羊ちゃ…ああっ!!?」
菫「…」
菫「…おお…もう…こいつは…」ガックリ
仁美「こんおなごしん命は預かったーーーー!!」グイッ
美子「…」
霞「美子ちゃん!!」
菫「お前…」
仁美「おおーっとぉ!動くんじゃねぇ!一歩でも動いたらこん女の大事な冠羽がバッサリよ!!」シャキーン シャキーン
菫(どっからハサミ出した)
霞「やめて!威嚇でもやめて!!お願いだから!!」
仁美「動くんじゃなかぁあああああああ!!」シャキシャキシャキシャキシャキシャキ シャキーン
菫「お前…その子、チームメイト…」
仁美「メェエエエエエッヘッヘッヘーーーー!!」
霞「やめて!お願いだから!ねえ!!」
仁美「なら交換条件…分かっとるよなぁ?ええ?」
霞「くっ…!わ、分かったわ…あなた達にはこれ以上手を出さないから…」
菫(こっちが完全に悪役だ!?)
仁美「おおん?手を出さないから?随分と強気に出たもんたいなぁ?あん?」
霞「こ、この…!」プルプル
菫(やめろ!無駄に挑発するな!)
仁美「手を出さないで下さいお願いします…やろ?」メェー
霞「て、手を…出さないで…下さい…!おっ!ねっ!がい…っ!しますっ!!」プルプル
菫(くっ!悔しいが超気持ちいい!!今回ばっかりはちょっとだけ褒めてやる羊!!)
仁美「メェハァッハァアアアア!!」
ガタンゴトンガタン…
霞「」ギリギリ
菫「…電車、来た」
仁美「ふん…ならば行くぞ菫。王のように。勝者のように」
菫「…なんか、すまん」ペコリ
霞「次は…殺すわ…」
菫「…」
霞「…はっきりと分かった。やはり貴女…くだらない。あんな羊如きに助けられて…そんなゴミ…要らない…」
菫「…お前はその羊に一杯食わされたけどな」
霞「っ!!」
菫「…ふん」
霞「…覚えてなさい。弘世菫」
菫「覚えておいてやるよ。プリティー(笑)かすみん」
霞「っ!!」ギシッ!!
仁美「おい!早く乗れ!」
霞「…雑魚が調子に乗るな」
菫「…」クルッ
ドアガシマリマース
仁美「…」ドン
美子「…」ヨタヨタ
霞「…大丈夫?」ギュッ
美子「…」ピトッ
プッシュー
菫「…」
ガタン…ゴトン…ガタン…
菫(…次は殺す…か)
菫(悔しいが、今回は完敗だ。力も、技も、経験も…)
菫(…だが、覚えてろよ。糞女。今度会った時こそは…)
菫「…私が勝つ」ボソッ
菫「…ふう」
仁美「…ふう」
菫「…仁美。すまない、今回は助かったよ。とっさの機転だったな。必死に策を考えたが、結局逃げるまでの時間稼ぎにすらならないような手段しか思い浮かばなかった」
仁美「だろうっち思っとったんたい」
菫「…そうか」
仁美「ばってん今回はお互い様ちゃ。うちも他に色々やっちみたの、結局時間内までには不発やったし」
菫「ん?」
仁美「いやぁ、まあ、でも結果オーライか?多分今頃…くくくくく」
菫「…どうした?何か他に策が有ったのか?凄いな。私には全然思いつかなかった。参考までに教えてくれないか」
仁美「メッヘッヘ…よかよか。今頃きっと面白かこつになっちるし、特別に教えてやる」
菫(面白い事?)
仁美「ちょい耳を拝借」
菫「う、うん…」
仁美「ヒソヒソ」
仁美「メヘヘヘ。どうよ。最高だろう?…って、ん?どげんした菫。頭抱えて」
菫「今回は完敗だ…!」
仁美「ん?あー…まあ仕方なか。奴は特別たい。やけん今度は喧嘩売るにしてからも、もうちょっと与し易い奴だけ選んで因縁付ける事に…」
菫(完敗だ!力も、技も、経験も…!)
菫(そしてなにより…)チラッ
仁美「まあ、このうちの叡智さえあらば、大抵ん奴はなんげななるっち思うのなー!」
菫(パートナーの性根において!!)ガックリ
仁美「メーーーーヘッヘッヘーー!!」
霞「ごめんね?美子ちゃん。私がついあんな女に夢中になっちゃったせいで、貴女を危険な目に遭わせてしまって…」
美子「…」フルフル
霞「…ありがとう、優しいのね…」ギュッ
霞「…」
美子「…」ナデナデ
霞「…ふふ。私、駄目ね。美子ちゃんにはお世話になってばかり」ギューッ
美子「…」
霞「…おねえさんキャラ…たまに、しんどいな」
美子「…」
霞「…」
美子「…………あ」
霞「!」
美子「…あの…ね」
霞「…」
霞「…」
美子「おないどし…だから…」
霞「…」
美子「あまえても…いい…よ…」ポンポン
霞「…」
霞「…ありがとう」ギュッ
美子「…」ナデナデ
霞「…」ギュー
霞「へっ!?」ガバッ
「あらー。どげんかっかで見た格好のべっぴんさん居るって思っよーねぇ、石戸さんとこん霞ちゃんこつせんかー」
「隣の子は都会の子かねー?ぎやまん付けとるねー」
霞「え?えっ!ちょ…ご、ご近所のご老人会のみなさん!?」
「霞ちゃんおっぱい見えちょるじーー」
霞「え…あ…きゃあ!?」ババッ
「立派に育ったなぁー。こっさめ来た頃まだこーんなちっちゃかったちー」
「霞ちゃん小さい頃から田吾作さんとこの牛っこの乳好きだったからー」
「じさま方、そりゃ『せくはら』言じゃっとよー」
「おお、横文字ー」
「ハイカラやのー」
霞「な、なんで皆さんがここに…」
「んー?なんかなー。羊のカッコしたつ変な子がこっさめに外人さん来ちょるじーーって言うもんじゃからよ~」
「サイン貰おうかと」
霞(やられた!!)
「まあ、霞ちゃんが元気そうで良かったわー」
「そうだねー」
「霞ちゃん煮豆食べるかい?」
「うち寄ってイモ食ってけ」
「おはぎあるよ」
霞(なんで田舎の御老人は人に物食べさせるの好きなわけ!?)
「焼酎」
「こら!まだ霞ちゃん娘っ子じゃろが!」
「あれ~?じゃっどっけかー?」
「まあええ、ええ。20も18もワシらの歳なっよーねぇ一緒たい」
「それもそだなー。村の集会所空いちょるじゃろか?宴会しごつ」
「じーーし!そんじゃ今日は霞ちゃんのおっぱいのますますの発展と健康を願って!」
「飲むどー!」
「ほれ、そこな都会っ子も」
美子「」オロオロ
霞「ま、待って下さ…」
「今年はええ酒出来たんだどー」
「あら、ゴンベさんとこん焼酎今年いいんかい!そら楽しみだなー」
「じゃっどなー」
「神代さんとこん神主さんも呼ぶかー」
「だーなー。神様んとこん子のおっぱい見よーねぇ神主さんも呼ばんとな」グイグイ
霞(ひいいいいい!?)ズルズル
「ん~だもこ~ら~い~けなもんな~♪」
「あっそーれ♪」
「集会所カラオケあったよなー」
霞(お、覚えてなさいよーーー!!弘世菫!!それと、羊ーーーーーー!!!)ズルズル
第五話
「誓いの霞と決意の菫」 終わり
ネイティブの人、怒らないでね
もう今日終わりかなー?けど、ちょっと目休めてから判断する
そういえば、霧島神宮駅は有人駅(深夜早朝のみ無人)なのに
あたかも終日無人駅であるかのような風潮被害が…
鹿児島はなんか秘境みたいなイメージあったわ
次はどんな子が出てくるのか楽しみだ
Entry ⇒ 2012.10.05 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
貴音「おなべの美味しい季節となってまいりました」
千早「…えぇ…そうね。少し気が早い気もするけど…」
千早「……というか、それよりも」
貴音「はて、何でしょう」
千早「……どうして、私の部屋にいるのかしら」
貴音「……」
千早「……」
貴音「ふふ…それは我が国の開錠技術をもってすればこの程度…」
千早「開錠?!しっ、四条さん、あなた…いえ、あなたの国って一体…!」
千早「な、何故私が諭されているのかわからないけれど…」
千早「…はぁ。もういいわ。それで?一体ここに何の用」
貴音「おなべです」
千早「………」
千早「は?」
千早「いや、それはそうだけれど…」
貴音「そこで、ここまでこうして、わざわざおなべを食べにきたという運びです」
千早「…そんなの、自分の家でやれば…」
貴音「私の家には、おなべをする為の環境が整っておりませんので…」
貴音「それに、おなべは人が多ければ多いほど美味しいと聞きます」
千早「……それは…そうかもしれないわね。……私には…あまりその経験が無いけれど」
貴音「であればなおのこと!さぁさぁ、おなべを始めると致しましょう…!」
千早「わ、わかったからちょっと落ち着いてください…!」
貴音「?」
千早「…?」
貴音「!」ピーン
貴音「…では、楽しいおなべにいたしましょう…!」
千早「い、いや、そういうことじゃなくて…」
千早「だから、鍋と一口に言っても色々あるでしょう?モツとか、水炊とか、豆乳とか…」
貴音「? ? ?」
千早「……本当に何も知らないのね……」
貴音「お任せします」
千早「そうと決まればとりあえず鍋とホットプレートを…あっ、そうだわ、材料を買いに行かないと」
貴音「それならば私にお任せください…!」
千早「えっ?お任せください、って一体どうする…」
貴音「そんなこともあろうかと、私、材料を持ってきております…!」
千早(そんなこともあろうかって…そもそも自分で言い出したことなんじゃ)
千早「…でも、それなら話は早いですね。何を持ってきたんですか?」
貴音「これですっ…!」
しじょーん!
貴音「……」どやぁ
千早「…ラーメン、ですか」
貴音「えぇ…まごうことなく」
千早「それじゃ、買い出しに行きましょうか」
貴音「っ!?」ガーン
貴音「そうですね…アイドルとして、体調管理にも気を遣わなければ」
千早「えぇ、本当に」
貴音「……千早は、よく料理をするのですか?」
貴音「そうでしたか」
千早「そういう四条さんは?」
貴音「私は食べる方専門ですので…」
千早「くすっ、何ですか、それ」
貴音「ここがすぅぱぁ…」
千早「えぇ」
千早(スーパーもあまり来たことが無いのかしら…?)
千早「…さて、それじゃあまず、鍋の素を…」
貴音「…ほう…これを入れて、おなべにするのですね」
千早「えぇ…ちゃんと出汁を一から作る場合もあるけれど…ちょっと手間ですから」
貴音「なるほど…おや?」
貴音「あそこのご婦人が何やら店の商品を頂いているようですが…」
千早「店の…?あぁ、試食ですか。ウィンナーね」
貴音「ししょく…」
千早「さてそれじゃあまずは…」
貴音「……」じーっ
千早「…?」
貴音「……」チラッ
千早「……」くすっ
貴音「…!私も、もらって良いのですか…?」
千早「えぇ。試食ですから」
貴音「では、お言葉に甘えて行って参ります…!」しじょっ!
千早「行ってらっしゃい」
千早(…本当に、何も知らないのね…。子供みたい)
千早(ちょっと可愛い…かも)
貴音「ほぉまはへぇひまひた」
千早「…貰いすぎです」
貴音「ちはや!ちはや!」
千早「はぁい?」
貴音「これ…これは是非入れましょう…!」
千早「?どれどれ…って、これ、餃子?」
貴音「らぁめんにとてもよく合うのです」ふんす!
貴音「是非!是非…!」
千早「……でも、やっぱり、鍋に餃子だなんて……」
貴音「……」うるうる
千早「……//」
千早「ま、まぁ、挑戦してみるのも…悪くないかもしれないわね」
貴音「…!ちはや…」パァァ
千早「えーっともやしもやし……あ、あったわ」
がしっ
千早「あっ、ごめんなさ」
やよい「……」
千早「……」
やよい「はい!ちょっと量が足りてなかったかなーって!」
千早「そう。こんな時間にお使いなんて偉いわね」よしよし
やよい「えへへ…今日はちょっと奮発して、お鍋をやるつもりなんですよ!」
やよい「そうなんですかー!楽しそう!良いなぁ~…」
千早「それなら、高槻さんも一緒にどうかしら?私は全然構わないけれど」
千早「そう…こちらこそごめんなさい。変に誘ったりして」
やよい「いいんです!それじゃあ私、そろそろ帰りますね!」
千早「えぇ。また今度、みんなでやりましょうね」
千早「…ちなみに、高槻さんのところは何鍋をするの?」
やよい「もやし鍋ですよー!」
千早「?」
やよい「?」
貴音「それにしても、ここには真、色々な物があるのですね……おや?何やら嬉しそうですね、千早」
千早「へっ?あ、あぁ…さっきまで、高槻さんと一緒にいて…」
貴音「なんと。そうでしたか」
千早「えぇ。凄い偶然ですよね」
貴音「……」ぷぅ
千早「…?どうかしました?」
貴音「……千早、私と一緒にいると、嬉しくないですか?」
貴音「……」ぷぅぅ
千早(……もしかして、やきもちを……?)
千早「……」くすっ
千早「…そうね、それはこの後の四条さん次第かしら」
貴音「…!なんと!一体私に何をさせるおつもりですか…?」
千早「うふふ。さぁ…何なんでしょう…?」
貴音「め、面妖な…」
千早「さて、会計会け」
貴音「……」じゅるり
千早「…涎を垂らすにはまだ早いです」
貴音「申し訳ありません…想像しただけでもう、我慢ならず…。…今日は、良い一日になりそうです」
千早「ふふっ、そうね」
千早「と、いうと?」
貴音「アレを」
千早「?アレって…あ!」
貴音「えぇ。本日は全品、四十ぱぁせんとおふのようです」
千早「あぁ…それで」
貴音「?」
貴音「そっちも持ちましょうか?」
千早「いいえ。これぐらい、大丈夫。ありがとう」
貴音「いえ…」
貴音「……」
千早「…えぇ、そうね」
貴音「…こうして、星を見ていると」
千早「見ていると?」
貴音「……。いえ、やはり何でもありません」
貴音「秘密も女の嗜みですよ」
貴音「…千早は、この星を見て…何を思いますか?」
千早「……」
貴音「……千早?」
貴音「…!」こくり
《星の星座を探しに行こう~♪》
《夢はもう、銀河に浮かんでる…》
…………………………
…………………
…………
……
…
千早「ただいまー」
貴音「……」
千早「…はっ?!//」
貴音「……いつも、その様なことを?」
千早「なっ…!//ち、違うわよ?!//今日は四条さんも一緒にいるから…!//」
貴音「相手の有無に関わらず、挨拶をすることは大事なことです」
千早「だから…!//」
貴音「くすくす」
貴音「私も手伝いましょう」
千早「えぇとこれはこっちに…」がさがさ
貴音「……」
貴音「…む?これは…新曲ですね?」
千早「?あぁ、えぇ…そうなの。今、どう歌おうか少し悩んでいて…」
千早「……」
貴音「……」
貴音「……すみません。いくらなんでも、このように低俗な駄洒落では」
千早「…ぷぷっ」
貴音「?」
千早「くすくす… 鍋だけに煮詰まる、ですって…くくっ、あははっ」
貴音「……」ほっ
貴音「承知致しました」
千早「……」ザクザク
貴音「……」トスットスッ
千早「……」ザクザク
貴音「……」トスットスッ
貴音「しゅんかん好きだと気付いた~」トスットスッ
千早「貴方は今~」ザクザク
貴音「どんな気持ちで」トスットスッ
千早貴音「「い~る~の~」」ザクトスッザクトスッ
貴音「ふ~たりだと~…!」
千早貴音「「わかっている~けどぉ~!!」」
千早「す~こしだけぇえ~!!」
貴音「このまま瞳~…!!」
千早貴音「「そぉおらさなひぃい~でぇえ~!!!」」
千早「…そ、そろそろ作業に戻りましょうか」はぁはぁ
貴音「そうですね…」ふぅふぅ
↑結局そのまま盛り上がってアルバム一枚分歌った
貴音「そうですね」カチカチ
千早「後は煮えるのを待つのみです」
貴音「楽しみです」わくわく
貴音「……」カチカチ
貴音「いえ…少し、皆との予定を合わせておるのです」
千早「…?それにしても、今日急に家へ押しかけて来た時はどうしようかと思いました」
貴音「押しかけた、というよりは待ち伏せていた、という方が正しいですが」
千早「自分でそれを言いますか…?」
千早(……何だかんだ言って、ちょっと楽しみかも)
千早「うふふっ」
貴音「?どうかしましたか?」
千早「…いいえ?何でも」
貴音「!もしや、千早も早くおなべが食べたくて待ち切れないのですね?」ぐぅぅ
千早「えぇ、そうね」くすくす
貴音「ばっちこい、です…!」
千早「よいしょ」パッ
貴音「……」
千早「わっ、熱っ」ガッ
貴音「……」
千早「手に出汁が」ちゅっ
貴音「はぁ~んっ…!」
千早「え?」
貴音「いえ」
貴音「ぱくぱく」
千早「餅を買ってみたのは正解だったわね。よく合うわ」
貴音「もぐもぐ」
千早「…さっきから一心不乱に食べ続けてるわね…」
千早「…ホント、美味しそうに食べるわよね」
千早「少し多く買い過ぎた気もしたけど、これなら大丈夫そうね」
貴音「おなへがほぉんなぁにすばらひぃものとは…!」
千早「もう、食べるのか話すのかどっちかにしなさい」
千早「……。それじゃあ、言い出しっぺの四条さんから」
貴音「言われずとも」ぱくり
千早「あっ…」
貴音「……」んぐんぐ
千早「…ど、どう?」
貴音「!これはこれは…!実に美味、ですよ…!」
えっ
何だこれは
何だこれは…
おでんに餃子と聞いて、正直「あー、うまそうかも」と思ったけど
まさかの練り物…
貴音「私、嘘は申し上げません…!」
千早「ま、まぁ、味覚は人それぞれだけれど…」
千早(…でも、いっても餃子だし、そんな変なことにはならないか)
貴音「なんなら私が食べさせて…」
千早「結構です!//」
貴音「」ガーン
貴音「…どうですか?」
千早「あっ…美味しい」
貴音「!でしょう…!どこまでまでも私の言った通りでしょう…!」
千早「そんな無理矢理歌に繋げなくても…」
千早「…でも、ホントに美味しい…今度からやってみようかしら」
貴音「ちはや、おかわり!」
千早「自分で取りなさい」
貴音「えぇ…大変美味しゅうございました」
千早「…さて、それじゃあ最後に…」
貴音「?まだ何か…?」
千早「…はい。これを」
千早「えぇ。キムチ鍋になら、きっと合うと思って。よくシメには使うようだし」
貴音「こ、こんなことが…!」ぷるぷる
千早「せっかくだし、卵も溶いちゃいましょうか」カチャカチャ
貴音「きゅーんっ…!」
貴音「……ち、ちはや…貴方は、め、女神です……」キラキラ
千早「そんなオーバーな…」
貴音「おーばーなどではありません!」くわっ!
千早「きゃっ?」
貴音「麺に、野菜の旨み、肉のコク、千早の唾液、出汁の味が見事に絡みついてそれはもう…!おーばーでますたーでかまげーん!なのです!」
千早(……途中、何かがひっかかった気がしたんだけど気のせいかしら……)
貴音「ですが」
千早「?」
貴音「これはらぁめんではないですね」きっぱり
千早「そ、そうね」
千早(へ、変なところでシビアね…)
千早「お粗末様です」
貴音「……また…」
千早「?」
貴音「また…ここへ食べに来てもよろしいですか?」
貴音「それは良かったです」
貴音「…では、また明日に」
千早「えぇ。また明日…」
バタン
千早「……」
千早「…明日?」
千早「……さて、仕事も終わったことだし、今日はゆっくり一人鍋でもしましょうか」
千早「豆乳は胸が大きくなると聞いたことが」
ガチャリ
千早「えっ?」
亜美真美「「突撃っ!千早おね→ちゃんの晩ご飯っしょ→!!」」
千早「?!」
美希「ここが千早さんのお家なの…」
雪歩「お、お邪魔しますぅ…」
真「うわぁ…これ、みんな入れるかな」
伊織「ウチでやった方が良かったんじゃない?」
やよい「私はこのくらいぎゅうぎゅうの方が楽しいですぅー!」
律子「あずささーん!こっちですよ、こっち!」
あずさ「あらあらまぁまぁ…」
春香「みんな!この家のことなら何度か来たことがある私に任せて!何度か来たことがある私に!」
貴音「…今晩は、千早」
千早「しっ、四条さん?!こ、こ、こ、これは一体…!」
貴音「ふふ、ですから、申し上げたでしょう」
千早「?!」
貴音「おなべは、人が多ければ多いほど、美味しいというものです」にこり
真「貴音が皆にメールして予定を合わせてくれたからね」
千早「メール…?…あっ」
貴音「……」にこり
貴音「皆との都合がつく日は今日以外に無かったものですから」
千早「なるほどそれで…ってあっ、ちょっと亜美!真美!勝手に部屋の物を…!」
わー!ぎゃー!
貴音「……」
貴音「……本当は」
貴音「また、二人っきりでやっても良かったのですが…ね」
おわり
このスレもここいらで締めたいと思います。
またなんか思いついたら書きたい。鍋食いたい。
付き合ってくれてどうもでしたノシ
乙
Entry ⇒ 2012.10.05 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
蒲原「ワハハー、須賀神社かー」
アリガトウゴザイマシター
蒲原「ふー。やれやれ、もう10月だってのに暑いなー」シャリシャリ
蒲原「ん? この看板…『須賀神社、東に100m』」
蒲原「ワハハ、何だかあいつを思い出すなー」
蒲原「元気にしてるかなー」
久「はい皆ちゅうもーく!」
優希「お、なんだじぇ?」
まこ「なんじゃなんじゃ」
久「ふふ、今日は特別ゲストに来てもらったわよ。さ、入って」
ギィ…
蒲原「ワハハー、お邪魔するぞー」ジャーン
咲「あ、あの人は…」
咲(…あの人誰だっけ、和ちゃん)ヒソヒソ
和(もう、咲さんったら…。鶴賀の中堅、三年生の蒲原さんだよ)ヒソヒソ
咲(あー、あの人ね。ありがと)ヒソヒソ
咲(こんな人いたっけ…覚えてないよ)
優希「おー!で、ぶちょー、この人は誰なんだ?」ワクワク
全員「おいおい」
まこ(部長じゃったんか…)
和(部長だったんですね…)
久「今日はこの人を入れて打ってもらうわ」
久「特に優希、これはあなたの特訓でもあるのよ」
優希「じぇ? 私?」
久「そう。蒲原さんは降りることに関しては一級品」
久「優希、あなたは東場においてあがることに関しては一級品だけど、誰かを狙い打ちしたり
テクニカルなことに関してはさっぱりよね」
優希「うー…ツモるから関係ないじぇ!」
久「これから学年も上がっていくのに、そうも言ってられないでしょ?」
久「そこで、優希に一つ課題をあげます。今日の部活で蒲原さんから直撃をとること」
久「それが出来たら、私が直々にタコスをおごってあげるわ」
優希「おー!俄然やる気でてきたじぇー!」
優希「覚悟するじぇ!鶴賀のぶちょーさん!」
蒲原「ワハハー、おてやわらかに頼むぞー」ワハハ
蒲原「ワハハー、須賀君は気が利くなー」
須賀「いえ、俺に出来ることはこれくらいですから」ハハハ
優希「もう張ってから何巡も経つのに全然あがれないじょー」
和「これが海底…流局ですね」
優希「くそー、このままじゃタコスが…」
蒲原「ワハハー、そう簡単にはあがらせないぞー」
久「そうね、さっきの優希の手牌がこう、蒲原さんの捨て牌がこうだから…」
白板 キュキュキュ…カサ
久「あら、マジックのインキが切れちゃったわ」
須賀「えー、またですか? まあいいですけど…」
須賀「こっから店まで遠いんだよなぁ…もう購買閉まってるし…」ブツブツ
蒲原「ワハハー、私が車出そうか?」ワハハ
須賀「え、いいんですか!?」
久「あら、気を遣わなくてもいいのよ」
優希(部長はもっときょーたろーに気を遣うべきだと思うじぇ…)
蒲原「ワハハー、だいじょぶだいじょぶ。お安い御用さ」
久「そうねえ、さっきの局について優希と検討もしたいし、ちょっとお願いしようかしら」
須賀「やった!蒲原さん、ありがとうございます!」
蒲原「ワハハー、礼には及ばないさー」
須賀「本当ありがとうございます、蒲原さん」
蒲原「ワハハー、いいって言ってるだろー」
須賀「いやー、いつも部長にはパシらされて…本当に有り難いです」
須賀「蒲原さんがこっちに来てくれたらいいのに」ハハハ
蒲原「ワハハー、それはさすがにないなー」
蒲原「こっちじゃゆみちんに勉強教えてもらえないしなー」
須賀「そういえば蒲原さんは受験ですか…う…受験…」ハァ
蒲原「そうだぞー、受験は怖いぞー。勉強すること沢山だぞー」
須賀「ヒィッ!嫌だあ…」
蒲原「ワハハー、そんなに嫌かー」ワハハ
蒲原「まあ私も人のこと言えないしなー。というか、よく分かるよその気持ち」
蒲原「勉強はいやだよなー。私こないだの模試でE判定だったよ」ワハハ
須賀「うわ…俺と一緒じゃないですか」ハハハ
蒲原「同じ穴のムジナかー」ワハハ
須賀「でも意外だなぁ。蒲原さんって勉強出来そうなのに」
蒲原「そうかぁ?」ワハハ
蒲原「数学の教科書を見ると虫酸が走るよ」
須賀「俺もそうです!物理なんかになるともう眠気がひゅんひゅん来て!」
蒲原「英語もダメだよなー。なんで日本人なのに英語の勉強しなきゃいけないんだか」
ワイワイ(しばし勉強の愚痴で盛り上がる)
蒲原「そーそー、それで先公がさー…」
蒲原(ん、信号変わりそうだけどいけるかな)
キキキキキ ゴオオオ
須賀「わっ!?」ガタン
蒲原「ワハハー、こんなもんだろ」
蒲原「もっと飛ばすぞー」
キキキキ ガタンゴトン
須賀「わあっ、ちょ、ちょっと蒲原さん!」
蒲原「ワハハー、無事帰って来れたなー」
久「おかえりー。ありがと、お二人さん」
優希「きょーたろーに鶴賀の部長さんお帰りだじぇ!早速続き打とうじぇ!」
―――夕刻
蒲原「んー、こんなもんかなー」
優希「結局蒲原さんから一回も上がれなかったじぇ…タコスが…」
咲「まあまあ、また学食で食べればいいじゃない」
優希「咲ちゃん分かってないじぇ!他人の金で食べるタコスは格別なんだじぇ!」
蒲原「ワハハー、じゃあ私はお暇するとするかー」
須賀(蒲原さん帰るのか…)
須賀「ちょ、ちょっと待ってください、蒲原さん」
蒲原「んー、どうした?」
須賀「蒲原さんと車の中で話してて楽しかったですし…」
須賀「俺、周りが勉強出来る人ばっかりなんで…また勉強の愚痴とか聞いてもらいたいんですよ」ハハハ
蒲原「ワハハー、いいぞー」
蒲原「私も周りがそんな感じだからなー。またドライブでもしながら話そうやー」
須賀「あ、いや。それはちょっとご遠慮願いたいかな…」
蒲原「むぅ、どういう意味だー」ワハハ
優希「むー…蒲原さん、用が済んだらさっさと帰るじぇ!」ガルル
まこ「失礼なこと言うんじゃない」ポカッ
優希「あたっ」
蒲原「思えばあれっきり電話もメールもしてなかったしなー」
蒲原「ちょっと呼び出してみるかー」
蒲原『もしもしー、須賀くんかー?』
須賀『蒲原さん!どうしたんですか?』
蒲原『いやー、ちょっと来てほしくてなー。今からローソンS店の前まで来れるかー?』
須賀『いいっすよ、丁度暇してましたし!今から行くんで10分くらいで着きますね』
蒲原『ワハハー、そんな急がなくていいぞー』
須賀「いえいえ。お久しぶりです。元気でしたか?…って聞くまでもなさそうですね」
蒲原「おー、須賀くんも元気そうで何より」
蒲原「じゃあ今からこの神社に行くぞー」
須賀「神社? …ってこれ、『須賀神社東100m』…」
須賀「蒲原さん、まさか…」
蒲原「ワハハー、そのまさかさー」
須賀「偶然この看板を見つけて俺のこと思い出して、それで呼び出したとか言うんじゃないでしょうね」
蒲原「偶然この看板を見つけて須賀くんのこと思い出して、それで呼び出したのさー」
須賀「ぷっ、あはは!蒲原さんどんだけ行き当たりばったりなんですか!」
蒲原「ワハハー、私は基本行き当たりばったりだからなー」ワハハ
蒲原「ほら、行くぞー」
須賀(蒲原さん、面白いひとだなー)
須賀(でも俺に会いたくて呼び出したんじゃないのか…ちょっと残念だな…)
蒲原「そうだなー。こんないいとこがあったんだなー」
蒲原「お、和菓子屋さんが二つもあるぞ」
須賀「ほんとだ。喧嘩になったりしないんですかね」
蒲原「和菓子のいい匂いがするなー。須賀ー、一つ買ってやろうか?」
須賀「太っ腹ですね」ハハハ
蒲原「遠慮することないぞー」
須賀「気持ちだけ頂いておきます」
蒲原「ワハハー、和菓子は嫌いかー?」
須賀「いえ、好きですけど。買ってもらうなんて悪いですよ」
須賀「逆に俺が今度ご馳走しますって」
蒲原「そうかー? じゃあその時は遠慮なく頂くぞー」
須賀「ちょっとくらい遠慮してくださいっ」ハハハ
須賀「んー、なんか書いてある名前が違いますよ。ここじゃないみたいです」
蒲原「じゃあもうちょっと先かー」
須賀「みたいですね」
次は白組による組体操です! ワーワー
蒲原「ワハハ、運動会でもやってるっぽいなー」
須賀「近くに小学校でもあるんですかね。そういえばもうすぐ体育祭か」
蒲原「ワハハー、私は全種目エントリーしたぞー」
須賀「すごっ。まじっすか」
蒲原「運動は得意だからなー。っと、須賀神社。ここかー」
蒲原「なんかちっぽけな所だなー。須賀くんの存在くらいちっぽけだ」
須賀「ちょ、それ神社の人に失礼ですよ!」
蒲原「ワハハ、冗談冗談」ワハハ
須賀「経営って」ビシッ
須賀「でも、本当にそんな感じですね。目の前におっきな神社があるから尚更」
蒲原「私はこういうところの方が好きだぞー」
須賀「俺もです」ハハハ
蒲原「大理石に夕陽が反射して綺麗だなー…」
須賀「蒲原さんの方が綺麗ですよー」
蒲原「ワハハー、気持ちが込もってないぞ、気持ちがー」ワハハ
須賀「はは。ていうかそういうセンチメンタルな感情あったんですね」
蒲原「ワハハー、どういう意味だ須賀ー」ガシッ グリグリ
須賀「ちょ、いたたた痛い痛い!さっきの仕返しですよ!」
蒲原「一年の癖に生意気だぞー」パッ
須賀「ほっ…。横暴ですよー」
須賀(蒲原さん、そんな密着するなんて…思わず体の一部が熱くなっちまったぜ)ドキドキ
須賀(にしても、柔らかいし良い匂いだったな…やっぱり女の子なんだなー…)ドキドキ
須賀(美福!? 福…美しい…)もんもん
蒲原「ワハハー、須賀くんが今考えてること、当ててやろうか?」
須賀 ビクッ
須賀「い、いや!決して美しい福路さんのことなど考えてな…はっ」
蒲原「ワハハー、予想的中だー。まあ私も考えたし、許してやろう」
須賀「いやー、ですよねー。この字の並び見るとしょうがないですよ」
蒲原「むっ…。しかし私という者がありながら他の女のことを考えるなんて、やっぱり許せないかもなー」キラン
須賀「いやいや、何を言い出すんですか」ハハハ
蒲原「浮気はいかんぞ浮気はー」
須賀「浮気って…」ハハハ
須賀(やべー、冗談だと分かっててもドキドキしちまう…)ドキドキ
須賀(蒲原さんって、改めてみるとすっごい可愛いな…笑顔も似合ってるし…)ドキドキ
須賀「蒲原さん、お守りでも買った方がいいんじゃないですか?」ニヤリ
蒲原「ワハハー」
蒲原「マジでそうかも…」ズーン
須賀「ちょ、ちょっと!何マジに落ち込んでるですか!」
須賀「お、俺はいいと思いますよ、蒲原さんの運転!何と言うかこう、スリルがあって!」
蒲原「ワハハ、フォローになってないぞ須賀ァ…」
須賀(なんだ、ヘッドロックは来ないのか…って何期待してるんだ俺は!)カァッ
須賀「ま、まぁ、いつか上手くなりますって!ほら元気出して!」
蒲原「そうだなー!」シャキーン
須賀「立ち直るのはやっ! …で、えーっとなになに…」
須賀「S地区一体の産土神とされ、また縁結び、厄除け、交通安全の神として …」
蒲原「ワハハー、産土神って音読みするとポケモンみたいだなー」
須賀「可愛いですよね、サンドパン」
蒲原「にしても、縁結びかー」
蒲原「どうなんだ、須賀は好きな人とかいるのか?」ニヤリ
須賀「えっ…」ズキン
須賀「い、いやぁ、俺はそういうのはないかなー…」
須賀「強いて言うなら、蒲原さんとなら笑顔の絶えない明るい家庭が築けそうかなー、とか思ったり…」ゴニョゴニョ
蒲原「そうかー、私もそういうのとは全く無縁だなー」ワハハ
須賀(…って後半聞いてない!? ってその方が良かったか…寧ろセーフ!)
須賀(でもちょっと、どういう反応するか見てみたかったり…)ドキドキ
蒲原「どれどれー向こうにも看板があるぞー」トタタ
蒲原「須賀神社懸想文は縁談・商売繁盛など人々の欲望をかなえる符札…」
蒲原「ワハハー、なんだか俗っぽいなー」ワハハ
須賀「ですね。神社ってそういうもんなですね」クスクス
須賀「本当にこじんまりした境内ですね。部室にすっぽり収まっちゃいそう」
蒲原「ワハハー、そんくらいがいいんだよ、何事も」
蒲原「大きくなりすぎると収拾がつかなくてロクなことがないからなー」
須賀「なんか具体的ですね」
蒲原「これでも一応文化祭仕切ったりしてたからなー」
須賀「へぇ、そうなんですか」
須賀「いやドラって。それを言うならドラゴンでしょ」
蒲原「ワハハー、知らないのかー? ドラの由来ってドラゴンなんだぞー」
須賀「あ、そうなんだ。知らなかったですよ」
蒲原「ワハハー、うたちゃんが言ってただろー」
須賀「あれぇ、おかしいな。聞いてたはずなんだけど」
蒲原「ワハハー、須賀くんはバカだなー」
須賀「人のこと言えないでしょ」ハハハ
蒲原「生意気だぞ須賀ー」ポス
須賀「おうふ」
蒲原「お、なんか変わった形の植物があるぞー」タタタ
須賀「っと、ちょっと待ってくださいよー!」タタッ
須賀「なんですかその説明口調は。これ、ささげって奴じゃないですか?」
蒲原「お? 知ってるのか須賀?」
須賀「ええ、まあ。これは豆の一種なんですよ」
須賀「このさや豆のように沢山の氏子が繁栄を祝うって意味なんですかね」
蒲原「お、おおー…なんか須賀が賢そうだぞ…」パチパチ
須賀「なーんつって、ほんとはさっきの看板に書いてあったのを見たんですけどね」テヘペロ
蒲原「私の感心を返せ!」デュクシ
須賀「おうふ」
須賀「そうですね」
パンパン
須賀(…願いかぁ…)
須賀(本当は麻雀が上手くなりますようにとか、そういうことをお祈りするべきなんだろうけど…)
須賀(…でも…今ここにいる俺は…この蒲原さんとの時間がもっと続きますように、とか)
須賀(そんなことをお祈りしたいなんて考えている…)
須賀「…はい」
蒲原「ふむ。ちゃんと麻雀が上手くなるようにお祈りしたかー?」
須賀「うっ!いやそれは…」ドキン
蒲原「ちゃーんとお祈りしとかないと、いつまで経ってもお茶出しだぞー」
須賀「うぐっ!耳が痛い…」
蒲原「ははは。まーまー、いざとなったら私が特訓でもつけてやるよ」
蒲原「まー、私より清澄の奴らにつけてもらった方が強くなれそうだがな」ワハハ
須賀「! いや、お、俺、その…蒲原さんがいいです!蒲原さんに特訓つけてもらいたいです!」
須賀(って何言ってんだ俺はぁぁぁぁぁ!恥ずかし!)
蒲原「ワハハー、清澄の奴らは強すぎるから私が丁度いいって意味かー?」
須賀(あ…)
須賀「そ、そうですね。そう意味です」アハハ
蒲原「生意気だぞー」ポカッ
須賀「あだっ」
須賀「は、はい!是非お願いします!」
蒲原「何せ暇だからなー」
蒲原「さて、神社も堪能したし、そろそろ帰るとするかー」ノビー
蒲原「楽しかったぞー。付き合ってくれてありがとうな、須賀ー」ニコッ
須賀(! 蒲原さんの笑顔…!)
須賀(なぜだろう、蒲原さんは終始笑っていたはずなのに、今日初めてこの人の笑顔を見たような気がする)
須賀(出来ることなら、ずっとこの人の笑顔を見ていたい…もっと近くで、もっと沢山の笑顔を…)ドキドキ
蒲原「んー? どした須賀ー?」ニコニコ
須賀「蒲原さん…俺っ…!」
京太郎「すごく楽しくて、すごく居心地がよくて…」
京太郎「なんか蒲原さんといると元気になれるんです。いつもより何倍も」
京太郎「さっき言ってた麻雀のことも、蒲原さんと一緒なら頑張れる気がするんです」
京太郎「蒲原さんとずっと一緒にいたいんです…蒲原さんと笑顔の絶えない時間を過ごしたいんです!」
京太郎「だから、蒲原さん…俺と…!」
智美「ストップ。それ以上言わなくていいぞー」
京太郎「…はい」
智美「それ以上言われると…」
なんでこんなので笑ったんだろうな・・・
なんでだろうな……
京太郎「! そんな…じゃあ…」
智美「そっかー…そんな風に思ってくれるなんて、思ってもみなかったよ」
智美「私のことをそういう風に見てくれる人もいるんだな…」
智美「ちょっと恥ずかしくて、でも嬉しいよ」ニコッ
京太郎(蒲原さん…)キュン
智美「須賀くん。…いや、京太郎。私も今日京太郎と一緒に遊んで、すごく楽しかった」
智美「私も須賀くんと一緒にいたいと思うよ」
智美「でもなー。その気持ちはまだ、私がゆみちんやかおりん、モモにむっきーに対して思うのと同じくらいの気持ちなんだ」
京太郎「…そうですか」
智美「この際ズバっと言ってしまうと、京太郎は男としての魅力に欠けるんだよー」ワハハ
京太郎「そんなっ!」ガーン
智美「でも、これからもちょくちょく遊ぼうなー」
智美「それで、京太郎のことが好きで好きで仕方がなくなるくらい、私を落としてくれー」
智美「私のこと、好きになってくれてありがとうなー」
智美「そして、これからもよろしくな、京太郎!」ニコッ
京太郎(蒲原さんの笑顔…なんて素敵なんだろう)
京太郎(この笑顔の為ならなんだって出来る、そんな気がする!麻雀だって強くなれる気がする!)
京太郎「分かりました!俺、フラれちゃったけど…」
京太郎「また、蒲原さんと遊べるなら、落ち込んだりしません!」
智美「ふふ、そう言われると照れるなー」
智美「じゃあ、今度こそ帰ろうか」
京太郎「はい!」
智美「あ、私車で来たんだけど送ろうかー?」
京太郎「…俺、今度自動車免許取りますね」
蒲原「京太郎の年齢じゃまだ取れないぞー」
カン!
乙!
二人の笑顔の絶えない家庭生活編はまだですか?
Entry ⇒ 2012.10.04 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
ナナリー「お兄様、私を叱ってください!!ルルーシュ「ナナリー…」
ナナリー「はい。丁度、喉が渇いたなぁって思っていました」
ルルーシュ「それはよかった。用意しよう」
ナナリー「そんな。お兄様」
ルルーシュ「いいから、俺にやらせてくれ」
ナナリー「はい」
シャーリー「ルルってナナちゃんにだけは優しいよね」
ミレイ「妹に嫉妬は恥ずかしいわよ?」
シャーリー「そんなんじゃありません!」
リヴァル「仲のいい兄妹じゃないか」
カレン「そうね……羨ましい……お兄ちゃん……」
スザク「……」
シャーリー「えー?サボりー?」
ルルーシュ「違う。急用だ」
ミレイ「何の用だぁ?」
ルルーシュ「秘密です」
リヴァル「まーただよ」
ルルーシュ「あとは任せる。それじゃあな、ナナリー?」
ナナリー「いってらっしゃい、お兄様」
カレン「どこに行ってるんだろう」
シャーリー「さぁ?どーせ、いけない場所でしょ」
ミレイ「もしかしてエッチなところ?」
ニーナ「エッチ……」
スザク「僕は違うと思う」
リヴァル「何が?」
スザク「ルルーシュは優しさを履き違えている」
スザク「ルルーシュはナナリーに優しい……。本当にそう思えますか?」
ミレイ「どう見ても優しいわよね?」
シャーリー「ナナちゃんのために炊事洗濯掃除までこなしてるんでしょ?」
リヴァル「主夫だよなぁ、ルルーシュって」
カレン「嫁に欲しいわね」
ニーナ「嫁って……」
スザク「でも、考えてみて欲しい。ナナリーがもし何不自由のない生活ができていれば……ルルーシュは今と同じように接するだろうか」
ミレイ「それは無いんじゃないかな?ナナリーだってそこまで付き纏われるのは嫌でしょ?」
ナナリー「え?いえ、別に……」
スザク「今のルルーシュは腫れ物を扱うようにナナリーに接しているだけじゃないか」
ナナリー「……」
シャーリー「カレン……」
カレン「なに?」
シャーリー「スザクくん、どれだけ失礼なこと言っているか分かってないみたいだし……。注意してあげて」
スザク「ナナリー?」
ナナリー「何でしょうか?」
スザク「ルルーシュに怒られたことってあるかい?」
ナナリー「怒られたことですか?何度もあります」
スザク「何時頃の話?」
ナナリー「えっと……」
スザク「僕と出会う前かな?」
ナナリー「そ、そうです。よく走り回ってお兄様にご迷惑をかけていたので」
スザク「今の状態になってからは?」
ナナリー「……ありません」
スザク「やっぱりか」
カレン「どういうこと?」
スザク「本当に相手のことを想っているなら、叱るはずなんだ。どんなに愛していても、大切に想っていても」
ナナリー「叱る……」
ミレイ「私も。叱られるとヘコんじゃうし」
ニーナ「ミレイちゃんが?」
ミレイ「誰だって落ち込むでしょ?」
ニーナ「ミレイちゃんが?」
ミレイ「……」
カレン「でも、まぁ、スザクくんの言っていることは間違っていないと思うわ」
リヴァル「カレンも叱られたいって思うのか?」
カレン「ええ。好きな相手や尊敬している人からは叱責を受けたいわね」
シャーリー「どうして?マゾ?」
カレン「違うって。貶されることと怒られることは違うってこと」
スザク「そう。本当に大事な人だからこそ怒るんだ。関心の無い人に怒る人なんていないからね」
シャーリー「でもでも、いきなり怒鳴る人っているじゃない?電車とかで」
スザク「それは怒鳴った人が短気なだけだよ。そこに愛情なんてないから」
カレン「怒鳴られても大切にされているかどうかって不思議と分かるのよね……」
スザク「違うんだよ、ナナリー」
ナナリー「どうしてですか?スザクさん、お兄様の言葉が嘘だと言う事ですか?」
スザク「確かにそうした言葉を並べるのも良い事だと思う。だけど、全てを優しい台詞だけで収めてしまうのはいけないと思う」
ナナリー「それは……」
ミレイ「そうよねぇ……。叱って欲しいときってあるかも……」
シャーリー「よくわかりません」
カレン「例えば帰宅が夜遅くなったとするでしょ?」
シャーリー「え?うん」
カレン「それで何も言われないのと怒られるの、どっちがいいって話よ」
シャーリー「怒られるのも嫌だけど、何も言われないのは……寂しいかなぁ……」
カレン「でしょ?」
シャーリー「カレンもそういう経験あるの?」
カレン「うん。あるよ」
シャーリー「どんなの?」
カレン『え?な、なにかまずかったですか?!』
ゼロ『状況がわかりにくい!!もっと完結に書けないのか!?』
カレン『す、すいません……』
ゼロ『全く……』
カレン『ゼロ……あの……』オロオロ
ゼロ『お前には期待しているのだからしっかりやってもらわないと困る……』
カレン『ゼロぉ……!!』
カレン「……えへへ……」
シャーリー「カレン?」
ナナリー「では、怒られない私は……お兄様に愛情を貰っていないということですか?」
スザク「本当の愛情ではないかな。残念だけど」
ナナリー「そんな……そんなこと……」
スザク「ルルーシュのは……ただの同情でしかないはずだ……」
ナナリー「……!!」
ミレイ「スザクくん、流石にそれは……」
スザク「ないと言い切れますか?」
ミレイ「……」
スザク「ナナリーが元気なときは叱っていたのに、今ではそういうことを一切しない。それはやはりナナリーに対して間違った優しさで接しているが故なんだ」
ナナリー「お兄様が……!!」
シャーリー「でも、怒れないよね?」
リヴァル「普通はなぁ……」
スザク「僕はナナリーを怒ることができるよ。大切な存在だから」
カレン「そうなの?」
ニーナ「私もユーフェミア様に叱られたい……鞭とかで……」
ミレイ「ナナリーが良い子だから怒る機会がないだけかもしれないじゃない?」
スザク「それなら問題はないですけど……」
カレン「今日もあたしを叱ってくれないかなぁ……」
ナナリー「お兄様……」
シャーリー「電話?」
カレン「うん。―――もしもし、カレンです」
ミレイ「ナナリーが悪いことするわけないし、ルルーシュだって叱りたいって思ってるぐらいかもね」
シャーリー「あ、それはありそうですね」
ナナリー「お兄様が私を叱りたいと?」
ミレイ「本当はお尻ペンペンしたいんじゃない?」
ナナリー「お、お尻……?!」
シャーリー「もう!会長!!ナナちゃんに変なこと言わないでくださいよ!!」
ミレイ「えー?でもー、あり得ない話でもないし」
ナナリー「……」
ルルーシュ『ナナリー……悪い子だな……。お仕置きだ!!!ほら!!お尻を向けろ!!!反省するまで叩いてやる!!!』ペシッペシッ!!!
ナナリー『あんっあんっ!お兄様!!ごめんなさいっ!!あんっ!!』
ナナリー「……私、叱られてみたいです」
スザク「ナナリー?」
ナナリー「怒られることが愛情を確かめる術となるなら、私は是非とも叱られてみたいです」
ミレイ「でも、無理に叱られることは……」
ナナリー「いけないことですか?」
シャーリー「難しいんじゃないかなぁ……。ルルがナナちゃんを叱るなんて想像できないし……」
リヴァル「だよなぁ」
カレン「ごめんなさい。あたし、そろそろ……」
ミレイ「あ、そうなの?うん、それじゃあ、また明日ね」
カレン「はい」
シャーリー「カレン、なんだか嬉しそう……」
リヴァル「男か?」
シャーリー「まさか」
ナナリー「あの……どうしたらお兄様は私のことを叱ってくれるでしょうか?」
スザク「そうだな……」
ナナリー「……」
咲世子「ナナリー様、そろそろご就寝のお時間ですが」
ナナリー「寝ません」
咲世子「しかし、お体に障りますし」
ナナリー「今日はお兄様が帰ってくるまで寝ないって決めたんです。ごめんなさい」
咲世子「どうして……」
ナナリー「……」
咲世子「わかりました。では、私もお付き合いいたします」
ナナリー「咲世子さんは部屋に戻っていただいても……」
咲世子「いえ。ナナリー様を独り残して自室には戻れませんから」
ナナリー「咲世子さん……ありがとうございます……」
咲世子「ですが、これっきりにしてくださいね」
ナナリー「私を叱っているんですか?」
咲世子「い、いえ!!滅相もありません!!」
咲世子「ナナリー様?」
ナナリー「とにかく、お兄様を待ちます」
咲世子「では、コーヒーでも淹れましょうか?」
ナナリー「咲世子さん……」
咲世子「ルルーシュ様がお帰りになるまでに寝てしまっては事ですから」
ナナリー「はいっ!お願いします!」
咲世子「それでは今しばらくお待ちください」
ナナリー「ありがとうございます」
咲世子「……」スタスタ
ナナリー「……」
ナナリー「…………」
ナナリー「………………はっ!?」
ナナリー「いけない……意識が……」
ナナリー「がんばらないと……がんばって夜更かししてお兄様に叱られなければ……」
ナナリー(スザクさんの言うことにきっと間違いはありません。夜更かしをすればお兄様は私に……)
ルルーシュ『ナナリー……こんな時間まで起きていていいとでも思っていたのか!!!』
ナナリー『お、お兄様……ご、ごめ……』
ルルーシュ『言い訳するな!!お尻を向けろ!!!』
ナナリー『いやぁぁ!!』
ルルーシュ『このっ!!悪魔の子め!!!』ペシッペシッ!!!
ナナリー『いたい!!いたいですっ!!おにいさまぁ!!!』
ナナリー「ふふ……」
ナナリー「お兄様……いけない妹を……是非とも……」
ナナリー「ふふ……」
咲世子「―――ナナリー様、コーヒーをお持ちしました」
ナナリー「……」
咲世子「ナナリー様?」
ナナリー「すぅ……すぅ……」
咲世子「お帰りなさいませ」
ルルーシュ「咲世子さん、どうしてこんな時間まで?」
咲世子「ナナリー様が寝付けなかったようでしたので」
ルルーシュ「そうですか。ありがとうございます」
咲世子「いえ。それではおやすみなさい」
ルルーシュ「はい」
C.C.「……おかえり。待っていたぞ」
ルルーシュ「適当なことをいうな」
C.C.「恋しかったのは本当だが?」
ルルーシュ「黙れ魔女」
C.C.「つれないなぁ……。こんなに可愛い天使が起きて主の帰りを甲斐甲斐しく待っていたというのに」
ルルーシュ「じゃあその大量のピザの空き箱はなんだ!!!」
C.C.「なんだ、一緒に食べたかったのか?なら、そういえばいいのに」
ルルーシュ「そんなわけあるか!!!こっちは疲れているんだ!!余計な体力を使わせるな!!!」
C.C.「やっぱり一緒に食べたかったんだな、お前」
ルルーシュ「うるさい!!」
C.C.「何をカリカリしている?いつものことだが」
ルルーシュ「……向こうで色々あったんだよ」
C.C.「玉城が何かやらかしたか?」
ルルーシュ「カレンだ」
C.C.「珍しいな。お前の前では優等生のあいつが?」
ルルーシュ「最近、細かなミスが目立つ。戦場では申し分ないのだが……」
C.C.「わざとじゃないのか?」
ルルーシュ「わざと?メリットがない」
C.C.「お前に怒られたんだろ」
ルルーシュ「どこの世界にそんな馬鹿がいる。顔を拝んでみたいものだな」
C.C.「お前は本当にそういうことには鈍いな」
ルルーシュ「さて、ナナリーの寝顔でも見て癒されくるか」
ミレイ「ナナリー、やっほー」
ナナリー「どうも」
シャーリー「どうだった、怒られた?」
ナナリー「駄目でした……」
リヴァル「やっぱ、ルルーシュがナナリーを怒るわけなかったか」
スザク「夜更かしじゃ効果はなかったか」
シャーリー「一回夜更かししただけじゃあねえ」
ニーナ「じゃあ、今晩もやってみたらどうかな?」
ナナリー「は、はい……」
スザク「二日連続ならきっとルルーシュも怒り狂うと思う」
ミレイ「二日連続は不良だものね」
ナナリー「不良ですか……」
カレン「昨日はすごく怒られた……今日も……」
シャーリー「そういえばさっきからカレンがずっとにやにやしてる。何か良い事でもあったのかな?」
ナナリー「……」
咲世子「ナナリー様……今日もですか?」
ナナリー「昨日はできませんでしたので」
咲世子「ですが……」
ナナリー「お願いします!どうしても夜更かししてお兄様に……!!」
咲世子「余程、ルルーシュ様とお話がしたいのですね」
ナナリー「はい」
咲世子「分かりました。では、不肖篠崎咲世子。微力ながらナナリー様に片肌脱ぎます!!」
ナナリー「咲世子さん!!ありがとうございます!!」
咲世子「では、眠らないようにしないといけませんね」
ナナリー「どうしたらいいでしょうか?」
咲世子「まずはコーヒーを飲みましょうか」
ナナリー「わかりました」
咲世子「ご用意いたします」
咲世子「どうですか?」
ナナリー「にがいです……」
咲世子「ブラックですからね」
ナナリー「でも、これで寝ないで済みますね」
咲世子「ええ。では、ルルーシュ様がおかえりになるまで私と―――」
ナナリー「……」
咲世子「ナナリー様?」
ナナリー「おにいさまぁ……だめです……あ……」
咲世子「ナナリー様!!」
ナナリー「え?!」
咲世子「大丈夫ですか?」
ナナリー「ごめんなさい……少し意識が……」
咲世子「やはりナナリー様に夜更かしは無理なのではないでしょうか?」
ナナリー「そんな……!!がんばりますから!!咲世子さん!!私は必ず夜更かししてお兄様に!!」
咲世子「ええ……」
ルルーシュ「ナナリー……」
咲世子「ですが、もうお休みになられましたので」
ルルーシュ「そうですか」
咲世子「あの……」
ルルーシュ「はい?」
咲世子「ナナリー様はどうしてもルルーシュ様にお話したいことがあるようです」
ルルーシュ「俺に?」
咲世子「実は昨日と今日、ルルーシュ様にお会いすために夜更かしをすると意気込んで……」
ルルーシュ「そうだったのか……」
咲世子「ルルーシュ様。ご無理を承知で申し上げます……」
ルルーシュ「分かっていますよ。明日は早く帰ってきます」
咲世子「ありがとうございます」
ルルーシュ「ナナリー……一体、俺に何を……?」
スザク「駄目だったのか?」
ナナリー「は、はい……」
ミレイ「二日連続でも駄目なんて……」
リヴァル「じゃあ、これはもう三日目突入だな」
ミレイ「流石に三日連続なんて……」
ニーナ「ミレイちゃん?」
ミレイ「私がルルーシュならビンタよ、ビンタ」
シャーリー「そこまでですか?!」
スザク「これはやりかたを変えるしかないかもしれないね」
ナナリー「やりかた……ですか?」
スザク「夜更かしが駄目なら……」
ナナリー「……」
シャーリー「どうするの?」
スザク「あまり望ましいことじゃないけど、ナナリーがルルーシュの愛を感じたいっていうなら仕方ない」
ゼロ「何度言えばわかるんだ!!!」
カレン「ご、ごめんなさい」
ゼロ「この報告書は……!!」
カレン「ひっ」ビクッ
藤堂「ゼロ、その辺でいいではないか」
ゼロ「藤堂!!しかし!!」
藤堂「紅月は戦場で評価してやるべきではないか?」
ゼロ「そんなもの評価しているに決まっているだろう!!だからこそ怒っている!!!」
カレン「ゼロぉ……」
ゼロ「何をにやけている!!私は怒っているのだぞ!!!カレン!!!」
カレン「……ごめんなさい……」
ゼロ「全く……。ん?もうこんな時間か。私は失礼する」
藤堂「どこに行く?」
ゼロ「私用だ」
ナナリー「……」
咲世子「そろそろお帰りになるとご連絡がありました」
ナナリー「そうですか」
咲世子「ナナリー様?」
ナナリー「咲世子さん。マグカップを持ってきてもらえますか?」
咲世子「何をされるのですか?」
ナナリー「お願いします」
咲世子「……わかりました」
ナナリー「ふぅー……」
咲世子「お持ちしました」
ナナリー「えっと……」
咲世子「ここに」
ナナリー「ありがとうございます」ギュッ
咲世子「ナナリー様……何を……?」
咲世子「ルルーシュ様」
ナナリー「お兄様」
ルルーシュ「ナナリー……」
ナナリー「……てい」ポロッ
ガシャン!!
咲世子「ナナリー様!!」
ルルーシュ「ナナリー!!大丈夫か!!!」
ナナリー「……」
ルルーシュ「破片が足に刺さっていたりしないか?!」
咲世子「すぐに掃除を!!」
ルルーシュ「ナナリー。怪我はないか?」
ナナリー「わ、私はマグカップを落とし、割ってしまいました……」
ルルーシュ「そうだな」
ナナリー「……」
お漏らし?
それじゃあルルにとってご褒美だろうが…
ナナリーがルルーシュを殴ればいいんですね
それもご褒美じゃねえか
ルルーシュ「ここはお願いしてもいいですか?」
咲世子「はい。お任せください」
ナナリー「お兄様……」
ルルーシュ「怪我がないようで良かった。……ナナリー、俺に話があるそうだな」
ナナリー「え……」
ルルーシュ「部屋で聞くよ。行こうか」
ナナリー「お兄様」
ルルーシュ「どうした?」
ナナリー「わ、私はマグカップを割ってしまったのですよ?」
ルルーシュ「ああ」
ナナリー「お、怒らないのですか……?」
ルルーシュ「俺もティーカップをいくつも割った経験がある。ナナリーを怒る資格はない」
ナナリー「そんな……」
咲世子「ナナリー様……」
ナナリー「……」
ルルーシュ「ナナリー?」
ナナリー「お兄様は私のことを愛していますよね?」
ルルーシュ「当然だろ?何を言っているんだ?」
ナナリー「……ですが、私は不安です。お兄様」
ルルーシュ「俺の言葉が信じられないというのか?」
ナナリー「そ、そんなことは……」
ルルーシュ「俺はナナリーのことを世界で一番愛している」
ナナリー「お兄様……」
ルルーシュ「たとえ世界を敵に回しても俺はナナリーを愛し続ける」
ナナリー「では……あの……」
ルルーシュ「ん?」
ナナリー「私が悪いことをしたら……きちんと怒ってくれますか?」
ルルーシュ「勿論だ。ナナリーが道を誤りそうになれば、叩いてでも正す」
ルルーシュ「ああ。覚悟しておけ。ナナリーだからってそのときは容赦しないからな」
ナナリー「……っ」
ルルーシュ『フハハハハハ!!!!ナナリィィ!!!!貴様はもう人間ではない!!!家畜だ!!!』
ナナリー『お、お兄様……いや……やめてください……』
ルルーシュ『知っているか?馬はな……鞭でお尻を叩くと言う事を聞くんだよ!!!!ナナリィィ!!!!』パシン!!!
ナナリー『あんっ!!』
ルルーシュ『言うことを聞かない妹はこうだ!!!こうだ!!!』パシンッパシン!!!!
ナナリー『おにいさまぁ!!あんっ!!ひゃんっ!!』
ナナリー「……」
ルルーシュ「ナナリー?紅潮しているようだが、熱でもあるのか?」
ナナリー「い、いえ……。大丈夫です」
ルルーシュ「ナナリー。最近、俺の帰りが遅いから不安になったんだな。安心しろ。俺は変わらない」
ナナリー「お兄様ぁ……」
スザク「マグカップも駄目だったのかい?」
ナナリー「はい。お兄様は破片で怪我をしていないか心配してくれたほどで」
ミレイ「うそ……。私だったら割ったマグカップに代わるモノを探すために一日中街を引きずりまわすけどなぁ……」
シャーリー「会長と買い物って拷問ですね」
ミレイ「なんですって?」
リヴァル「でも、ここまでだと難しいなぁ。マジでルルーシュってナナリーのこと怒らないんじゃないか?」
ミレイ「うーん……そうねえ……」
シャーリー「無理かも」
ナナリー「そんな!!私は叱られたい!!お兄様に叱られたいです!!」
ニーナ「ナナリー……そこまで……」
ミレイ「これは仲良し兄妹の危機よね。なんとかしないと」
リヴァル「でも、どうするんです?夜更かしも駄目。カップを割っても駄目。あとは……」
スザク「そうだ。なら、ルルーシュが怒るツボを抑えればいいんじゃないかな?」
ミレイ「それいいかもね」
ナナリー「そういえば……」
シャーリー「どうしたの?」
ナナリー「最近のお兄様、機嫌が悪いときがあるんです。私の前ではそれを隠していますけど」
ミレイ「外でなにやってるのやら」
シャーリー「どうせ下らない事ですよ」
ミレイ「ルルーシュって自分の思い通りにならないと機嫌悪くなるときあるわよね?」
シャーリー「ああ。ありますね。文化祭のときとは予定がすこーし狂っただけでなんかムスってしてますもん」
リヴァル「狂わせてるのは会長だけどな」
ニーナ「うん」
ミレイ「聞こえてるけど」
ナナリー「お兄様の思惑とは違うことをすればいいのですか……」
シャーリー「予定があって初めて成り立つ作戦だけど、結構効果的かも」
ナナリー「なるほど……」
スザク「もしもし、ルルーシュ?」
スザク「今、いいかな?」
ルルーシュ『あとにしてくれると助かるな』
スザク「そうなのか?でも、少しぐらいいいじゃないか」
ルルーシュ『悪いが……あとで頼む……』
スザク「ルルーシュ?」
ルルーシュ『今は取り込んでいるんだ』
スザク「何かあったのかい?」
ルルーシュ『いや……』
スザク「でも、凄く機嫌が悪そうだけど……」
ルルーシュ『なんでもないと言っている!!!』
『ひっ』
スザク「……ご、ごめん」
ルルーシュ『また、掛け直す』
スザク「わ、わかったよ。待ってる」
カレン「あの……今のは……?」
ゼロ「何でもない。それよりもだ……」
カレン「……」
ゼロ「何故、また同じミスをしている?!えぇ?!」
カレン「うっかり……していました……」
ゼロ「君の操縦センスは買っている!!しかし!!組織にいる以上は事務作業もかなしてもらわなければ困る!!」
カレン「はぃ」
ゼロ「君のように兵器を上手く扱える者は貴重だ!!!しかし、こういう書類処理で失敗を重ねられると……!!」
カレン「……すいません」
ゼロ「もういい……」
カレン「え?」
ゼロ「出て行ってくれ!!」バサァッ!
カレン「ひっ……」
ゼロ「……」
玉城「それは新人歓迎会で……」
ゼロ「無断で使うな!!これは立派な横領だ!!!馬鹿者!!!」
玉城「わ、わりぃ……」
ゼロ「全く……!!」
扇「ゼロ。どうしたんだ?最近、気が立っているみたいだけど」
ゼロ「……」
扇「ゼロ……?」
ゼロ「黙れ……!!」
扇「……あ、ああ」
藤堂「ゼロよ。何を苛立っている?」
ゼロ「……」
藤堂「千葉の全身マッサージを受けてみるか?癒されるぞ?」
千葉「あれは藤堂さんにだけですけど!!」
ゼロ「……すまない。色々あって気が尖っているようだ。少しだけ休む」
ゼロ「……」
C.C.「最近、イライラしているな」
ルルーシュ「スザクの件にコーネリアの件……。問題が山積している」
C.C.「それでか」
ルルーシュ「それに……」
C.C.「ナナリーか」
ルルーシュ「俺の思っている以上にナナリーは寂しがっているようだからな」
C.C.「鉄仮面で隠しても妹への情だけは溢れ出るな」
ルルーシュ「早くこの感情もコントロールできるようにならないとな……」
C.C.「できるのかな。童貞坊やに」
ルルーシュ「お前の発言が最も俺を苛立たせる」
C.C.「それは悪かったよ。自重する」
ルルーシュ「ふんっ」
C.C.「……」
ミレイ「そうよね……」
スザク「うーん……」
ナナリー「私はこのままお兄様に優しく頭を撫でられるだけの人生なのでしょうか……」
ニーナ「だめなの?」
ナナリー「そんな何もない毎日……楽しくありません……」
シャーリー「え……?」
ナナリー「はぁ……でも、お兄様にご迷惑をかけてまで自分の欲を満たそうとするのはとても……いけないこと……ですよね……」
リヴァル「そうだなぁ。それは駄目だ」
ナナリー「この想いは胸に秘めておいたほうがいいのでしょうか……。お兄様もそんなこと私には望んでいないでしょうし……」
ミレイ「あ!」
シャーリー「会長?」
ミレイ「そうよ。ルルーシュにとってナナリーには絶対にしてほしくないことをしたらいいんじゃない?」
スザク「例えば?」
ミレイ「男の子と付き合うとか」
ミレイ「でしょ?ルルーシュならきっと怒号と唾を撒き散らしながらナナリーを叱りつけるはず」
シャーリー「そうですか?」
ミレイ「どこの馬の骨とも分からない奴と付き合うとはどういうことだぁぁぁ!!!!!って感じで」
ナナリー「まぁ……♪」
スザク「確かに。ルルーシュならそうなるかもしない」
リヴァル「試してみる価値はあるかもな」
シャーリー「相手役はどうするんですか?」
ミレイ「んー……。最初は彼氏が出来たってことにしておいて、相手を隠す。それで突っ込んできたら……」
シャーリー「間違いなく突っ込んできますよ」
ミレイ「やっぱ、スザクくんが相手役でいいんじゃない?」
スザク「僕ですか?!」
ナナリー「スザクさんと……私が……?」
ミレイ「信憑性あるじゃない?」
ナナリー「……でも、それでお兄様に叱られるなら……なんでもします」
ルルーシュ(今日も疲れたな……。ナナリーの顔を見て癒してもらおう……)
ルルーシュ「―――ただいま」
ナナリー「お兄様……」
ルルーシュ「ナナリー。なんだ、まだ起きていたのか」
ナナリー「お兄様。今日はお話しておきたいことが」
ルルーシュ「なんだ、改まって。怖いな」
ナナリー「私……今日から男性と付き合うことになりました」
ルルーシュ「……え?お腹が空いたって?はは、わかったよ。すぐに用意するから」
ナナリー「私、今日、ボーイフレンドが出来たんです」
ルルーシュ「魚がいいって?はいはい」
ナナリー「……本当です。告白されて……承諾しました」
ルルーシュ「分かってる。ああ、デザートもつけるよ」
ナナリー「お兄様。聞いてください」
ルルーシュ「さてと、料理を始めるか」
ルルーシュ「どうした?」
ナナリー「あの……ですから……」
ルルーシュ「ナナリー」
ナナリー「はい」
ルルーシュ「俺はナナリーのことを世界で最も愛している」
ナナリー「は、はい……」
ルルーシュ「ああ、そうなんだよ。ナナリー」
ナナリー「……彼氏ができました」
ルルーシュ「今日は少し暑かったもんな。ナナリー、風邪でも引いたか?季節の変わり目は体調を崩しやすい」
ナナリー「今度の日曜日にデートの約束もしました!!」
ルルーシュ「……はは……」
ナナリー「お兄様……?」
ルルーシュ「フフフ……はははは……フフフハハハハハハ!!!!!!!」
ナナリー「……!」ビクッ
ガシャーン!!!!
ナナリー「お、お兄様……?」
ルルーシュ「そんなこと……あるわけがない……!!あってたまるかぁ……!!!!」
ナナリー「あ、あの……?」
ルルーシュ「俺の計画は完璧だ!!!条件は全て満たしている!!!」
ナナリー「あの……あの……」オロオロ
ルルーシュ「橋を落としてルートを断て!!!!」
ガシャーン!!!!
ナナリー「きゃっ」
ルルーシュ「ふぅー……ふぅー……!!」
ナナリー「お兄様……あの……」
ルルーシュ「悪い……取り乱した……。最近、少し嫌なことが続いてな……」
ナナリー「い、いえ……」
ルルーシュ「ナナリーが決めた男なら間違いはないだろう……幸せにな……。ああ、結婚式には呼ばなくて結構だ。何をするか分からないからな。俺が」
ルルーシュ「言うな。絶対にな」
ナナリー「どうしてですか?!」
ルルーシュ「……名前を聞けばきっと俺は……道を踏み外す。人間でいられなくなる……」
ナナリー「それはどういうことですか?」
ルルーシュ「頼む、ナナリー。言わないでくれ……。お前の恋人を殺したくない……」
ナナリー「そ、それは……!?」
ルルーシュ「もう休む……おやすみ……ナナリー……」
ナナリー「……」
ルルーシュ「はははは……」フラフラ
ナナリー「スザクさんです」
ルルーシュ「……」
ナナリー「私の相手はスザクさんです。お兄様」
ルルーシュ「スザク……?どこの誰だ?名前だけじゃ……わからないな……」
ナナリー「枢木スザクさんです。お兄様もよく知っている。スザクさんです」
ギアスで嬲り殺す事はできないな
カレン「はぁ……昨日の怒りかたは愛がなかった……。ゼロ……なにかあったの……?」
シャーリー「今日もルルったらサボりですよ」
ミレイ「いつものことじゃない」
シャーリー「だから駄目なんですってば」
スザク「ナナリーはまだ来てないんだ」
リヴァル「昨日の作戦上手くいったんだろうな」
ミレイ「それは大丈夫でしょ」
スザク「そうか。ルルーシュはきっと昨日の夜、怒ることにエネルギーを使いすぎて―――」
ルルーシュ「……」
シャーリー「あ。ルルだ」
リヴァル「よう!お前、そろそろ単位がヤバいんじゃねーの?」
ルルーシュ「スザクは?」
スザク「ルルーシュ?」
ルルーシュ「話がある」
ルルーシュ「……スザク」
スザク「なんだい?」
シャーリー「ちょっと、雰囲気違う気がするんだけど……」
リヴァル「なんかこえぇ……」
ニーナ「ルルーシュ……」
カレン「……」
ルルーシュ「お前のことだ。生半可な覚悟ではないのだろう」
スザク「え?」
ルルーシュ「一晩……寝ずに考えた……。お前になら……ナナリーを……ナナリーを……」
スザク「ルルーシュ?」
ルルーシュ「ナナリーを……任せても……いいと……思って……おもって……って……」
スザク「ルルーシュ、鼻息が荒いけど、大丈夫か?」
ルルーシュ「ま、かせても……はぁ……はぁ……はぁ……いいと……思って……いる……はぁ……はぁ……!!!」
ミレイ「ルルーシュ……大丈夫?保健室、いく?」
ルルーシュ「ナナリー……」
ナナリー「これは……あの……」
ルルーシュ「兄として……たった一人の肉親として……俺は役目を果たした……。もういいな?」
スザク「ルルーシュ!!待ってくれ!!」
ルルーシュ「なんだ……?」
ナナリー「あの……ですから……」
スザク「……」
ルルーシュ「今日は……体調があまり……よくなくてな……。悪いが……早退させて……もら、う……」
スザク「僕はナナリーとは付き合わないよ」
ルルーシュ「……」
ナナリー「スザクさん!」
スザク「まさか、ここまでルルーシュが追い詰められるなんて思ってもみなかった。だから―――」
ルルーシュ「つ……付き合わない……だと……スザァク……」
スザク「ああ。僕はナナリーとは付き合わない。いや、付き合えないんだ。ユーフェミア様の騎士だからね」
スザク「全部、嘘だったんだよ。ルルーシュ」
ルルーシュ「……」
ミレイ「ちょっと……」
シャーリー「こわぃ……」
ニーナ「データのバックアップとっておかないと」カタカタ
リヴァル「ルルーシュくん?あのー……」
カレン「やばそう……」
ナナリー「あぁぁ……お兄様ぁ……」オロオロ
ルルーシュ「嘘……だと……?」
スザク「だから、安心して―――」
ルルーシュ「ふざけるなよぉ!!!!スザァァァク!!!!!!」
スザク「うわ?!」
リヴァル「ルルーシュをとめろ!!」
シャーリー「ルルー!!!」
スザク「ルルーシュ……」
シャーリー「ルル、落ち着いて!!」ギュゥゥ
カレン「ルルーシュくん!」ギュゥゥ
ルルーシュ「ナナリーの想いを!!お前はなんだと思っているんだぁぁ!!!」
スザク「だから、嘘なんだ!」
ルルーシュ「ナナリーに嘘の告白をしたのか!!!貴様ぁぁ!!!!」
ミレイ「どうどう、ルルーシュ」ギュゥゥ
ニーナ「ルルーシュ、暴れないでぇ……」ギュゥゥ
リヴァル「ルルーシュ……こんなときになんだけど……羨ましい奴……」
ナナリー「お兄様……これは全て演技で……」
ルルーシュ「スザァァァァク!!!!頭を地に着けてナナリーに謝れぇぇ!!!!」
スザク「……」
ルルーシュ「ナナリーを……ナナリーを……かえしてくれ……うぅぅ……」
スザク「ルルーシュ……すまない……」
ナナリー「お兄様は?」
咲世子「今、お休みになられました」
ナナリー「そうですか……」
咲世子「相当、疲れていたのでしょう。ベッドに入るとすぐ眠りに」
ナナリー「私が……私がお兄様を追い詰めてしまったんですね……」
咲世子「ナナリー様……それは……」
ナナリー「私はなんてことを……!!こんなはずじゃ……ただ……お兄様に叱られて愛を確かめたかっただけなのに……!!」
咲世子「ナナリー様、気に病むことは……」
ナナリー「私は酷い妹です……うぅ……ぅぅぅ……」
咲世子「……」
C.C.「お邪魔するぞ」
咲世子「C.C.さん」
ナナリー「……」
C.C.「何かあったのか?」
ナナリー「はい……」
C.C.「ナナリーも最近、構ってもらえずに寂しかったのかな?」
ナナリー「そうですね。それもあるかもしれません……」
C.C.「まぁ、今回はナナリーが全て悪いな」
咲世子「そんな!!」
C.C.「諸悪の根源といってもいい」
ナナリー「……」
C.C.「それでもルルーシュはお前のことを叱りはしないだろうな」
ナナリー「……もう、いいです。お兄様をこれ以上、苦しめることはできませんから」
C.C.「そうか」
ナナリー「私にできるのは……。お兄様に心労をできるだけかけないようにすることだったのに。私はそのことを忘れていました」
C.C.「それでこれからどうするつもりだ?」
ナナリー「……お兄様の傍に行きます」
C.C.「それしかないな」
ナナリー「お兄様……」ギュッ
C.C.「……」
ナナリー「ごめんなさい……お兄様……お兄様……」ウルウル
ルルーシュ「ナ……ナナリー……?」
ナナリー「お兄様?」
ルルーシュ「どうした……?」
ナナリー「ごめんなさい……ごめんなさい……」
ルルーシュ「おいおい……どうした?まさか、俺の顔に落書きでもしたのか?」
ナナリー「おにいさまぁ……うぅ……おにいさま……ごめんなさい……」
ルルーシュ「ナナリー……」
ナナリー「ぐすっ……」
C.C.「叱ってやったらどうだ?それでナナリーの気持ちも随分軽くなると思うがな」
ルルーシュ「ナナリー……お前……」
ナナリー「お兄様……ごめんなさい……ごめん、なさい……私が全て……悪いんです……」
ナナリー「お兄様、私を叱ってください!!」
ルルーシュ「ナナリー……」
ナナリー「お願いします……お兄様ぁ……」
ルルーシュ「ならば……お仕置きが必要だな……」
ナナリー「鞭なら私の部屋に」
ルルーシュ「必要ない。ナナリー、反省しているんだな?」
ナナリー「はい」
ルルーシュ「……なら、叱ることはしなくてもいい」
ナナリー「え?」
ルルーシュ「叱るっていうのは相手が間違いに気づいていないときにすることだ。ナナリーのように理解しているものを叱っても何の意味もない。エネルギーの無駄だ」
ナナリー「そうだったのですか……」
ルルーシュ「ナナリーはいつも自分の反省点を理解している。だから、俺は叱れないんだよ」ナデナデ
ナナリー「お兄様……」
C.C.「私にはすぐ怒るくせに」
C.C.「はいはい」
ナナリー「お兄様、この度のことは本当に……」
ルルーシュ「いや。大丈夫だ。様々なことが重なりすぎただけだよ」
ナナリー「はい」
ルルーシュ「でも、もうこういうことはないようにな」
ナナリー「分かりました」
C.C.「童貞坊やも偶には人間らしいことをいうんだな。感心したよ」
ルルーシュ「黙れ!!魔女!!」
C.C.「女に余裕が無いと怒りっぽくなるんだから、少しは大人しくしておいたほうがいいな」
ルルーシュ「きさまぁぁぁ!!!!ふざけるなぁ!!!」
C.C.「ぶつのか?いいぞ、ほら、私のお尻でもぶってみろ。その細く弱りきった腕じゃ痛くもない―――」
ルルーシュ「定規の撓りを利用すれば……どうなるのか……思い知らせてやろうか……?」ヒュンヒュン
C.C.「それは……やめろぉ……!!」
ナナリー「……」
C.C.「痛いじゃないか」
ナナリー「C.C.さん、大丈夫ですか?」
C.C.「割と平気だが……痛い……」
ナナリー「定規という手があったなんて……灯台下暗し……!」
C.C.「何も定規が折れるほどフルスイングしなくてもいいだろ」
ルルーシュ「どうせ同じ事を繰りかえすつもりだろ、貴様」
C.C.「よく分かったな。エスパーも発現したのかな?」
ルルーシュ「貴様の軽口は耳障りだ!!」
C.C.「それは嬉しいなぁ。なら、もっと耳元で囁いてやろう」
ルルーシュ「やめろ!!離れろ!!」
C.C.「ルルーシュぅ?ピザはまだかぁ?」ギュゥゥ
ルルーシュ「魔女がぁ!!!いい加減にしろ!!!」
C.C.「ふふ、何を怒る?それとももう一度、ぶつか?私に体罰なんて意味はないけどな」
ナナリー(お兄様はC.C.さんと話しているとき、いつも怒っていますね……。もしかして……)
ルルーシュ「昨日は散々だったな……」
ミレイ「ルルーシュ。大丈夫?」
ルルーシュ「え?」
シャーリー「ごめん。ルル……。私たちが悪いの。ナナちゃんは全然悪くないの……だから……」
ルルーシュ「分かっている」
カレン「ごめんね、ルルーシュくん」
リヴァル「悪かったな。まさか、あそこまで取り乱すなんて思ってなくてさ」
ルルーシュ「もういいって」
スザク「ルルーシュ……」
ルルーシュ「……」
スザク「すまなかった!!」
ルルーシュ「スザク、昨日のは悪い夢だったんだよ……。それでいいだろ?」
スザク「ルルーシュ……!!」
ニーナ「ルルーシュ、優しいんだ」
ルルーシュ「初めから仲違いなんてしていませんがね」
シャーリー「もうっ、ルルったらぁ」
ルルーシュ「はははは」
ナナリー「……」ウィィィン
ルルーシュ「ナナリー」
シャーリー「あ、ナナちゃん」
ナナリー「……」
ルルーシュ「どうした?」
ナナリー「……ど……」
リヴァル「ど?」
ミレイ「なに?」
ルルーシュ「ナナリー?」
ナナリー「童貞兄様、昨日は申し訳ありませんでした」
ルルーシュ「……」
スザク「ルルーシュ……」
ルルーシュ「ははははは……ナナリー、何を……」
ナナリー「お詫びに私のためにピザを注文することを許します。童貞兄様、早くしてください」
リヴァル「……」
ミレイ「ま、まだ……喧嘩中?」
シャーリー「そ、そっか……そっか……」
ルルーシュ「待て!!」
ニーナ「ふふ……かわいい……」
ルルーシュ「ニーナァァ!!!」
ニーナ「あ、ごめん」
スザク「ルルーシュ……すまない……これもきっと……僕のせいだ……」
ルルーシュ「下らん罪の意識は余計に腹が立つからやめろぉ!!!」
ナナリー「それとも私のお尻を定規でぶちますか?」
ルルーシュ「なんだこれはぁぁぁぁぁ!!!!!」
お仕置きするしかないな
天才か…
カレン「……」スタスタ
カレン(また同じミスしてみたけど。そろそろゼロに愛想尽かされるかもしれない……)
カレン「今回でやめないと」
スパーン!!!スパーン!!!!
カレン「え?」
スパーン!!!スパーン!!!
カレン「な、何、この音……。格納庫から……?」
カレン「今は整備も終わっているから……誰も……いないはず……」ソーッ
カレン「……!?」
ゼロ「お前だろ!!お前しかいない!!!!」スパーン!!!
C.C.「かはっ!?!定規は……鉄の定規は……だめぇ……!!!お尻が割れる……!!」
ゼロ「黙れ!!!」スパーン!!!
C.C.「ぁはっ?!」
カレン「あぁぁ……」ガクガク
C.C.「気をつけ……る……」
ゼロ「全く……。ナナリーを誑かせるなど、言語道断だ。お前は踏み越えてはいけない一線を軽々と越えた。それがこの結果だ。わかったな?!」
C.C.「……」コクッ
ゼロ「はぁ……はぁ……疲れた……。私は休む」
C.C.「ゆっくりやすめよ……」モジモジ
ゼロ「ふんっ!!」
C.C.「……」
カレン「ゼ、ゼロ!!」
ゼロ「カレンか。どうした?」
カレン「……また、間違えました」
ゼロ「そうか。これからは藤堂に指導を頼もう。どうやら私の教え方が悪いらしい」
カレン「え……」
ゼロ「……疲れた。怒るのはもうやめだ……」
カレン「ゼロ!!あの!!私にも定規を!!」
咲世子「そうですか」
ナナリー「C.C.さんの口調ならお兄様も気持ちよく怒ることができると思ったのですが」
咲世子「気持ちよく怒るのは難しいですね」
ナナリー「やはりお兄様に叱ってもらうのは無理なのですね」
咲世子「もう拷問具を傍に置いておいて、四つん這いになっているというのはどうですか?」
ナナリー「それは……」
咲世子「ルルーシュ様もナナリー様の意図するところが分かるはずです」
ナナリー「そうですね。やってみます」
咲世子「定規と鞭、どちらもおいておきましょうか?」
ナナリー「お願いします」
咲世子「畏まりました」
ナナリー「四つん這いになるので、手伝ってもらえますか?」
咲世子「はい」
ナナリー(これでお兄様は……)
ルルーシュ「ただい―――」
ナナリー「……」ドキドキ
ルルーシュ「……」
咲世子「どうぞ。ルルーシュ様。気の向くままに強鞭をふるってください」
ルルーシュ「咲世子さん、少しお話が」
咲世子「はい」
ルルーシュ「あとそこの定規も持ってきてください」
咲世子「畏まりました」
ルルーシュ「……ナナリー、あとでご飯にしような」
ナナリー「はいっ。お兄様」
ナナリー(早く……お兄様……私を叱ってください……力の限り……時間の許す限り……)
ナナリー「……」ドキドキ
スパーン!!!!
おしまい。
変態しかいなかったw
Entry ⇒ 2012.10.04 | Category ⇒ コードギアスSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
さやか「まどか記念日」
さやか「一年で一度の現世での休日だー」
さやか「と言う事で現在地はほむらの家だね」
ほむら「ハッピバースデー トゥー ユー…」
さやか「…」
ほむら「ハッピバースデー ディア まどかー…」
ほむら「ハッピバースデー トゥ ユー」
さやか「…暗い」
ほむら「……」
さやか「……」
ほむら「………」
さやか「他の人の様子でも見に行くかぁ…」
ほむら「…」
さやか「駄目だ恭介も杏子もマミさんも寝てた…」
ほむら「…」
さやか「…ほむらまだやってたんだ」
ほむら「…」ジー
さやか「…死んでないよね?」
ほむら「…」
さやか「ずっとロウソク見つめて…変なトリップでもしてるのか!」
ほむら「……」ジー
さやか「…ちょっと様子を見ようかな…?」
さやか「ロウソクが消えるまで微動だにせずか…」
ほむら「まどか…」
ほむら「…はぁ…寝ましょう」スッ
さやか「これは重症だね…」
ほむら「…」スタスタスタ ゴソゴソ
さやか「…」
さやか「しまった!!やる事がなくなった…」
さやか「…まあいいや適当な所で休んでようっと…」
さやか「ふぇ…?もう朝かぁ」
ほむら「…」パチン
さやか「…このほむらはちょっと心配だな」
ほむら「…」スタスタ
さやか「まぁ時間の余裕はまだあるし少し後を追ってみますか」ウシシ
さやか「もくもくと作業しますな、ほむらさんは…」
ほむら「…行ってきます」
さやか「こっちは休みなのに学校とは恐れ入りますなー」
――
―
さやか「…んーほむらは接触が少ないから見ててもつまらないなぁ」
さやか「っと前方にマミさん発見!」
ほむら「…マミ!」
ほむら「少し頼み事があるのだけど、いいかしら?」
マミ「ええ、なに?」
ほむら「今日は学校を休むわ、それと魔獣退治も今日は休ませて欲しいの」
マミ「?それは構わないけど…なにか用事?」
ほむら「ええ」
マミ「…そう、それなら佐倉さんにも私から伝えておくわ」
ほむら「恩に着るわ、マミ」
さやか「ほぅ?」
ほむら「……」スタスタ
さやか「行かないって言ったのに学校の方向に行くのか…」
――
―
ほむら「…」ジー
さやか「…学校なんか眺めて…」
さやか「……私も普通に過ごしてれば今頃この中で勉強してたのかな…」
ほむら「…」スタスタ
さやか「はぁ…人の感傷を無視するとは…酷いぞほむら!」
さやか「まぁ言っても意味ないんだけどね…」
さやか「裏通りなんて歩いて何がしたいんだろう?」
ほむら「…まどか」ボソッ
杏子「おー、ほむらじゃねぇか!!」
ほむら「……おはよう杏子」
さやか「不良少女達め…」
杏子「なにしてんだ?こんな所で」
ほむら「少しね…」
杏子「ふーん」
ほむら「そうそう、マミにも言ったのだけれど今日私は魔獣退治休むわ」
杏子「はぇ!?おいおい暇そうなのになんだよそれ?」
ほむら「用事があるの」
杏子「はぁ?……まぁいいや…いつも世話になってるしそれ位は許してやるよ」
杏子「いや、私も特に用事はないんだが…」
杏子「まぁパトロールってところだ」
ほむら「…そう」
さやか「……あの杏子がねぇ…」
さやか「…この世界の杏子も頑張ってるんだね」
杏子「じゃあ私はこれで行くけど」
ほむら「私はもう少しこの辺りをうろつきたいから」
杏子「…昼飯おごってくれ」
ほむら「もうそんな時間?ってもう過ぎてるのね」
杏子「実は今ちょっとピンチなんだよ」
ほむら「…あなたって…」
ほむら「コンビニ弁当でよければね」
杏子「おぉ、すまねぇ助かった」
ほむら「……」チラッ
杏子「…ん?どうした?」
ほむら「いえ、行きましょう」
―――
――
―
ピロンピロン
杏子「さーてどこで食おうか?」
ほむら「土手が近いからそこに行きましょう」
杏子「わかった」
ほむら「…」ボー
杏子「…」ガツガツガツ
ほむら「…」ボー
さやか「ほむらは上の空だね…」
杏子「ガツガ…おいほむら、食べないのか?」
ほむら「…いえ食べるわよ」パクパク
杏子「大丈夫か?調子悪いとかなら言えよ?」ガツガツ
ほむら「問題ないわ、ちょっと考え事をしてただけだから」
杏子「…そっか」
杏子「!…馬鹿言え!せっかく人が心配してやってんのに…」
ほむら「フフッ、冗談よ」
杏子「…ったく!」ガツガツ
さやか「…」
さやか「ほむらの笑顔か…始めて見た」
さやか(まどかのおかげで世界は変わった)
さやか(でも祈りと呪いは今も続いている…)
さやか(まどかの手伝いをしてて時々疑問に思ったりもするけど)
さやか(あのほむらがこんな風に笑えるって事は、やっぱり良かったんだよね…これで!)
ほむら「本当に自由人ね、あなた」
杏子「まぁな」
ほむら「…」
杏子「風が気持ち良いな」
ほむら「えぇ…」
ほむら「…さてと」スッ
杏子「もう行くのか?」
ほむら「えぇ、今日中に色々とね」
杏子「そっか、まぁ後のことは任せとけ」
ほむら「えぇ、ありがとう」
さやか「よろしくね…頑張ってね、杏子…」
さやか「さっきからうろついてるけど…これ本当に用事があるのかな?」
ほむら「……マミさん」
ほむら「…」ジー
さやか「今度は公園か」
タツヤ「ほむネーチャ!!」タタタッ
知久「?やあ、ほむらちゃん、こんにちわ」
ほむら「こんにちわ」
タツヤ「ネーチャ!あそぼー」
知久「ごめんね、ほむらちゃん…」
知久「ほむらちゃん、学校は?」
ほむら「……今日は用事がありまして」
知久「…そっか…でもほむらちゃん、もしズル休みなんてしたらダメだよ?」
ほむら「はい、それは…!…」
知久「どうかしたのかい?」
ほむら「…いえ」
ほむら「……まどかはお父さん似ね」ボソッ
知久「?…じゃあ僕たちは行くよ」
ほむら「さようなら…」
タツヤ「ほむネーチャ!またねー!」テテテテ
知久「うん、じゃあまた今度ね」スタスタ
ほむら「はい」
ほむら「…」
さやか「…」
ほむら「……」ギリッ
さやか(怖い顔しちゃって…)
ほむら「馬鹿……」
ほむら「…」スッ
さやか「ぬ!ここは早いね」
――
―
さやか「ビル?」
ほむら「……」ジッ
QB「探したよ、ほむら」
ほむら「…何か用かしら?」
QB「今日は魔獣を狩ってないみたいだからね、様子を見に来たんだ」
ほむら「特に問題はないわ」
QB「…その割には険しい目をしているよ?」
ほむら「…今はあなたを見たくないの」
さやか「そうだぞ、ほむら!」
ほむら「…今は、今日だけはそっとしておいて…」
QB「やれやれ…」
ほむら「良いから早く行きなさい!」シュルン ギィ
QB「弓を構えるなんて!分かったよそれだけ元気があれば大丈夫そうだ」スッ
ほむら「……」
ほむら「…ごめんなさいQB…」
ほむら「今の私はあなたを許せないの…」
さやか「ほむら…?」
ほむら「…」
スタスタスタ
ほむら「…変わってしまうものね」
ほむら「……」
ほむら「フフッ…この時も手を焼かされたわ…」
ほむら「…さやか…」
さやか「?あたし?」
さやか「……!そっか…」
ほむら「…」ジー
ほむら「…」
ほむら「…本当に色々あったわね…」
ほむら「病院なのにね……」
さやか「…ほむら…」
ほむら「…」スッ
さやか(確かそこだったね…マミさん…)
ほむら「……不甲斐無いくせに」
ほむら「…」
さやか(この道は…)
ほむら「…」チラッ
キャイキャイ
さやか(まどかの家か…)
ほむら「…」ニコッ
スタスタスタ
さやか(ほむら…)
ほむら「…大丈夫…これで大丈夫」
ほむら「…ただいまー」ガチャ
ほむら「…さて」
さやか(ん?まだ何かするの?)
―――
――
―
ほむら「…これで並べ終わったわね」
さやか「昨日のケーキだけじゃなくて、こんなに料理用意してたのか…」
ほむら「…」
ほむら「…もう一度」
ほむら「!!」
杏子「うわっ!すげー!なんだこの料理!!」
ほむら「あなた達どうしたの!?」
マミ「なんだか暁美さん元気がなかったからね?」
杏子「ああ、今日は瘴気も薄かったから来てやったんだよ!」
ほむら「来てやったって…」
マミ「でも凄い料理ね?何かのお祝い?」
ほむら「……そんな感じよ」
杏子「そっかー!私らもいろいろ持ってきたからさ?」
マミ「ご一緒しちゃダメかしら?」
杏子「よっしゃ!」
ほむら「取り合えずあなた達の分のシチューをよそってくるわ」スタスタ
マミ「私も運ぶの手伝うわ」タタタ
杏子「おー、チキンにピザにケーキまである!」
杏子「ん?はっぴーばーすでー?」
ほむら「…そうよ」
マミ「あら?暁美さん今日だったの?言ってくれればよかったのに…」
ほむら「私じゃないわ」
杏子「あー例の」
ほむら「ごめんなさい…」
マミ「何言ってるのよ!」
マミ「まどかさんは私達の友達なんでしょ?」
杏子「そうそう、くだらねー事気にすんな?」
ほむら「…ありがとう」ニコッ
杏子「せっかくの料理だ美味しく食わなきゃな!」
マミ「もう!佐倉さん!」
ほむら「フフッ」
ほむら「いいの?」
杏子「祝うときはしっかり祝わなきゃな!」
ほむら「じゃあ」シュボ
マミ「電気消すわよー?」
ほむら「こっちは大丈夫よ」
パチン
マミ「いいわね、綺麗」ストッ
マミ「…ーッピバースデイ トゥ ユー♪」
マミ「もう、何してるの皆で歌わなきゃ!」
杏子「えー…は、恥ずかしいよ」
マミ「祝うときはしっかり祝うんでしょ?」
杏子「ぐぬぅ…」
ハッピバースデイ トゥ ユー♪
ハッピバースデイ トゥ ユー♪
ハッピバースデイ ディア まどかー♪
ハッピバースデイ トゥ ユー♪
マミ・杏子・ほむら・さやか「おめでとうー」パンパン
ほむら「といっても消す人が居ないから…電気をつけるわ」パチッ
さやか「まどかぁ…どうしてここに居ないのよ」
マミ「がっつかない!」
ほむら「量はそこそこあるからゆっくり食べなさい」
ギャーギャー
さやか「まどか…」
まど神「なぁにかな?」
さやか「え?」
まど神「ウェヒヒ」ニコッ
さやか「い、いいいつから居たの?」
まど神「ほむらちゃんが帰って来た時にはいたよ?」
まど神「さやかちゃんを驚かせたかったのと…」
まど神「居てもほむらちゃん達には分からないからね…」
さやか「まどか……」
杏子「うっ…」
マミ「佐倉さん…慌てるから」
ほむら「ほら、ジュースを飲みなさい」
ワーワー
まど神「楽しそうだね?」
さやか「まどかの誕生日だからね?」
さやか「なに?」
まど神「休暇は早いけど終わりだよ!」
さやか「え!?ちょっと待って!まだ明日まで時間あるじゃん!」
まど神「さやかちゃんはロスタイムがある為休暇は早く終わります!」
さやか「そんなー……!まだ恭介にも会ってないのに!」
まど神「また来年までガンバロー」
さやか「帰りたくないー」ズルズル
まど神「さあ皆にお別れだよー」グイグイ
さやか「くそー」ズルズル
まど神「皆の元気な姿見れたでしょ?」
さやか「…んー」
まど神「じゃあ行くよー」スー
さやか「仕方ないなぁー」スー
まど神「だから大丈夫だよほむらちゃん」フー
ロウソク スッ
ほむら「!」
杏子「私は意地汚くない!」
マミ「いいから少し落ち着いて」
ほむら「…マミ、もう良いから杏子の好きにさせましょう」
ほむら「せっかくの誕生日なんだから?」
ほむら「ね?まどか…」
おわり
では おやすみなさいいい夢を
Entry ⇒ 2012.10.04 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
小蒔「今夜はついに初めての夜伽ですね……」
小蒔「熱が出て寝込んでいる霞ちゃんに夜伽します!」
巴「……姫様、意味わかって言ってますか?」
小蒔「もちろんです!」
小蒔「夜伽とは、看病などのために夜通し眠らないでそばに付き添うことです!」ドヤァ
巴「夜通しは合ってますけど……」
小蒔「いつも霞ちゃんのお世話になってるので今夜は私がお世話しようと思います」
巴(まあ看病なら平気かな……)
小蒔「行ってきます!」
小蒔「失礼します」
霞「小蒔ちゃん?」
小蒔「調子はどうですか?」
霞「相変わらずよ、心配してくれてありがとう」
霞「でも移しちゃうと悪いから、私に構わなくていいわよ」
霞「……夜伽?」コホッ
小蒔「今夜私はずっとここに居ます!」
霞「あらあら」
霞(意味分かって……ないわよね。小蒔ちゃんだし)
霞「そうねぇ……」
霞「じゃあこのタオルの水変えてきてくれる?」
小蒔「分かりました!任せて下さい!」
霞(看病っていっても微熱よりちょっと高いくらいだからやること無いのよね)
小蒔「こんな時広いお屋敷は不便ですね……」テクテク
初美「あれ姫様何してるんですかー」
小蒔「!わっ、とっと」ワタワタ
初美「大丈夫ですかー? 」
小蒔「大丈夫ですっ」
小蒔(零すところだった……)
小蒔「これを霞ちゃんの部屋に持って行くんです」
初美「どうしてですかー?」
小蒔「夜伽をする為です!」ドヤッ
初美「……夜伽?」
小蒔「はい!あ、霞ちゃん待たせているのでごめんなさい!」トコトコ
初美「姫様が夜伽……」
初美「これは一大事ですよー」
霞「ごめんなさいね、大変だったでしょう?」
小蒔「これくらい何でもありません!」
霞「そう?ありがとう」
小蒔「他に何かありませんか?」
霞「そうねえ……」
小蒔「はいっ」
霞(正直もう無いんだけど……)チラッ
小蒔「」キラキラ
霞「そうねえ……」
小蒔「はいっ」キラキラ
霞(この時間帯なら巴ちゃんが厨房に居るはず……)
霞「厨房に巴ちゃんが居るはずだから、お粥を作ってくれるようにお願いしてくれると助かるわ」
小蒔「お粥ですね!分かりました!」
巴「姫様?看病の方は?」
小蒔「霞ちゃんのおつかいです」
巴「ああなるほど。それで霞ちゃんは何だと?」
小蒔「お粥を作って欲しいとのことです」
巴「そういえばお昼に食べたっきりですね。分かりました」
小蒔「」ジーッ
巴(あとネギとかかな)
小蒔「」ジーッ
巴「……あの、姫様?」
小蒔「」ジーッ
巴「……一緒に作ります?」
小蒔「!」
小蒔「はいっ」
小蒔「それは平気です」
巴「じゃあ大丈夫ですね。私はちょっと納屋のほうにネギを取りに行ってきますから」
小蒔「はい!」
小蒔「えーっと、お米を研いで水を捨てて……」
小蒔「あっ、お米は捨てないようにしなきゃっ」ワタワタ
小蒔(そういえば)
小蒔(前見たアニメ……何と言いましたっけ)
小蒔(あんぱんのヒーローがみなさんに施しをする……)
小蒔(それの職人のおじいさまがパンをこねる時にやってた……)
小蒔「お、美味しくなーれー 」ワシャワシャ
小蒔「えへへっ」
霞「巴ちゃんと一緒に作ってるのかしら」
ガラッ
初美「失礼するのですよー」
春「」ポリポリ
霞「あらあら」
春「姫の手伝い……」ポリッ
初美「姫様のサポートですー」ズルズル
霞「……ねえ、引きずってるそれは何?」
初美「姫様のお布団ですよー」
春「」ポリッ
春「ん」ポリポリ
霞「ねえ、お布団の距離近過ぎない?」
初美「当たり前ですよー」
春「今夜はついに初めての姫様の夜伽」ポリポリ
初美「私たちは全力でサポートしますよー。霞ちゃんが相手なのはビックリしましたか」
霞(……私風邪引いているのだけれど)
初美「お布団の準備終わりましたー」
春「うん」ポリポリ
霞「あのね、」
初美「おっと、はるる大事なものを忘れていましたね」
初美「これが無いと始まりませんよ」
春「……はい、これ」ポリポリ
初美「ティッシュここ置いときますねー」
春「ここが定位置って昔から決まってる」ポリポリ
初美「明日はお赤飯ですよー」
春「……頑張って」グッ
霞(はっちゃん、治ったら覚えていてね)
巴「姫様、お米出来ました?」ヒョコッ
小蒔「っ!」ビクッ
巴「あれ、どうしたんですか?」
小蒔「な、何でもないですっ」
小蒔(聞こえていたらどうしようかと思いました……)ドキドキ
巴「後はネギ切って……」
小蒔「」キラキラ
巴「……姫様やります?」
小蒔「はい!」
巴(本当は姫様に包丁持たせたって知られると叱られちゃうんだけど)
巴(まあいいか)
巴(……大丈夫かな)ドキドキ
小蒔「ふーっ」キラーン
巴「ひ、姫様そんな包丁を振りかぶらないで下さいっ」
巴「ええっとですね、包丁を使うときは左手で抑えながら手を丸めて猫の手みたいにするんです」
小蒔「猫の手……」
巴「包丁はそんなに振りかざさないでも切れますから」
小蒔「はい!」
巴(緊張するなあ……)
小蒔(なかなか大変な作業ですね……)トンッ
巴「」ドキドキ
小蒔「」トンッ
巴「」ドキドキ
小蒔「!っ」
巴「ひ、姫様!」
巴「大丈夫ですかっ?絆創膏……」
小蒔「でもネギもちゃんと切れましたよ!」
巴「それ所じゃないです!」ワタワタ
巴(姫様に怪我させちゃった……)
巴(霞ちゃんに殺られる……!)
巴「はい」
小蒔「迷惑かけて本当にごめんなさい……」
巴「いえ、姫様の気持ちは分かっているつもりですから」
巴「後片付けは私がやっておくので、姫様は持って行ってあげてください」
小蒔「はい、ありがとうございますっ」
初美「姫様ー!」
小蒔「」ビクッ
初美「あれ、お粥ですかー」
春「部屋に運ぶの?」ポリポリ
小蒔「びっくりしました……」ドキドキ
小蒔「はい」
初美「そして夜伽にー?」
小蒔「?はい」
春「間にあった」ポリポリ
小蒔「何がですか?」
初美「姫様に大事なアドバイスですよー」
小蒔「わっ、本当ですか?ありがとうございますっ」
初美「夜伽にはやるべき事があるのですよー」
小蒔「やるべき事ですか?」
春「これをすれば間違いない」ポリッ
初美「あのですねー……」
霞(出来れば片付けておきたいのよね……小蒔ちゃんに移しちゃうし)
霞(でも今お布団を運ぶ程元気では無いし……)
霞(巴ちゃんが来てくれれば片付けて貰うのだけど)
ガラッ
小蒔「持ってきましたー」
霞「ありがとう小蒔ちゃん」
霞「はっちゃん達が置いていったのよ」
小蒔(そういえば夜伽に必要だとか言ってましたね……)
小蒔「でも今はそんなことよりお粥です」
小蒔「はい、霞ちゃん」
霞「ありがとう」
小蒔「……」
霞「あの、器渡してくれないと食べられないのだけれど……」
小蒔「巴ちゃんが教えてくれたんです」
小蒔「看病と言ったらこれだって」
小蒔「霞ちゃん、あーん」
霞「あらあら……」
小蒔「ほら、霞ちゃんっ」キラキラ
小蒔(霞ちゃんに初めてのあーんです!)
霞「……あーん」
小蒔「美味しいですか?」
霞「ええとっても。……でも恥ずかしいわね」
霞「もしかしてこれ、小蒔ちゃんが作ったの?」
小蒔「どうして分かったのですか?」
霞「そりゃあねぇ」
霞(凄く期待を込めてこっちを見てるし、指に絆創膏あるし……)
霞「小蒔ちゃんの事だから分かるのよ」
小蒔「えへへ」
小蒔「はい、あーん」
霞「あーん」
巴「2人で居るのにそこにお邪魔するのも悪い気がするけど……うーん 」
巴「ちゃっちゃと渡して去ればいいか」
巴「……」
初美「……」
春「……」ポリッ
春「静かに。バレちゃう」ポリッ
初美「六女仙の1人として私達はこれを見届ける義務があるのです」
巴「ていうか襖に穴開けちゃって。後で霞ちゃんにバレたら怒られるよ」
初美「それはそれ、これはこれですー」
巴「もうっ」
初美「ああっ」
春「」ボリィッ
小蒔「あ、巴ちゃん」
霞「……はっちゃんに春ちゃん?」
巴「お薬渡すの忘れてました。食後に二錠ですよ。はいどうぞ」
霞「ありがとう」
巴「いえいえ。ほら、2人とも覗き見なんてしないで帰るよ」
春「……私は通りかかっただけ」ポリッ
初美「はるるが私の事売りましたー!」
巴「ほらほら。霞ちゃん、ちゃんと早く寝てね」
霞「ええ」
巴「姫様もよろしくお願いしますねー」
小蒔「はい」
巴「ほら、行くよ」ズルズル
霞「確かに巴ちゃんは早く寝ろって言ったけれど」
霞「まだ8時よ?」
小蒔「早く寝れば寝るほどきっと早く治りますよ」
小蒔「私が添い寝しますから!」ニコニコ
霞(添い寝したいのね)
霞「?小蒔ちゃん正座なんてしてどうしたの」
小蒔「えーっと、」
小蒔(いざ言うとなると緊張しますね……でもこれをやらなくては夜伽にはならないと聞きました)
小蒔「ふ、不束者ですがよろしくお願いします」
霞「」
霞(……どうしようかしら)
霞「いきなりどうしたの小蒔ちゃん」
小蒔「あの、夜伽にはこれが必要だって聞いて……」
霞(吹き込んだのは、絶対はっちゃんよね)
霞(ていうかあの子私の部屋の襖に穴開けていったわね)
小蒔「」イソイソ
小蒔「初美ちゃんから聞いたんですっ」
小蒔「よ、夜伽にはお互い服を脱ぐんだって」
小蒔「私それを知って驚きました」
霞(一応私風邪引いてるのだけれど)
霞「ちょっと待って、ね、小蒔ちゃん」
小蒔「はい」
霞「夜伽についてあの子は何てあなたに言ったのかしら」
小蒔「えーっと、お互いに裸になって寝ると」
霞「それで?」
小蒔「その先は霞ちゃんに任せれば大丈夫だって言ってたんです」
霞「」
霞「……なあに? 」
小蒔「霞ちゃんに……しょじょ?を捧げるんだそうです」
小蒔「しょじょって何ですか?」
霞(薄墨初美ぃ……)
霞(知識があのはっちゃん以下だなんて思ってなかったわ)
霞(本当のこと言ったら……ふむ……)
霞「……初めてのことよ」
小蒔「初めて?」
霞「ほら、作家さんの初めての作品を処女作とか言うでしょう?」
小蒔「そう言えば……じゃあそこから来ているんですね」
霞「人が今まで未経験なことを経験したとき、処女を失うことになるの」
霞(我ながら上手いわ)
霞「(語弊はあるけど)まあそういうこと」
霞「でもね小蒔ちゃん。それをするのは好きな人じゃなきゃ駄目なのよ」
小蒔「?私は霞ちゃんの事が好きですよ」
霞(うーん……伝えるのが難しい……)
小蒔「とにかく初めてなことをやればいいんですよね」イソイソ
小蒔「裸で寝たことは無いのでそれは私の処女ですねっ」
霞「こ、小蒔ちゃんっ」
小蒔「……霞ちゃん」
小蒔「私と夜伽をするのは嫌ですか?」ウルウル
霞「そ、そういう訳では無いけれど」
小蒔「じゃ、じゃあ私の処女を貰うのは嫌ですか?」ウルウル
霞(とんでもない殺し台詞を吐くのね……)
霞(でもここで小蒔ちゃんを泣かせるのも……)
霞「夜伽については裸で寝るとだけ聞いてるのね?」
小蒔「はい」
霞「……はぁ」
霞「分かったわ」スルッ
小蒔「え、霞ちゃん?」
小蒔「か、霞ちゃん……」
霞「さて、そんな話しているうちに9時になっちゃったわね」
霞「もう寝ましょうか」
小蒔「はい!」
小蒔(裸で霞ちゃんと寝るの凄いドキドキする……)ドキドキ
霞「おやすみなさい小蒔ちゃん」ナデナデ
小蒔「ん……」
霞「おはよう小蒔ちゃん」
小蒔「……!?な、なんで裸……」
霞「昨日小蒔ちゃんが裸で寝たいって言ったじゃない」
小蒔「え、あ、そうでした……」
小蒔(つまり私は夜伽に成功したんですね)
霞「ほら小蒔ちゃんも服を着て。朝ご飯に遅れちゃうわ」
小蒔「はいっ。あ、霞ちゃん熱は……」
霞「起きたら下がってたから小蒔ちゃんのおかげかしらね」
小蒔「えへへ」
霞「じゃあ朝ご飯に行きましょうか」
小蒔「はいっ!」
霞(何かザワザワしてるわね)
小蒔「遅れましたー」
ザワザワ ヒメサマダ ヒメサマガキタゾ カスミサンモイッショダ ザワザワ
霞(……何かしら)
初美「姫様ー」
小蒔「初美ちゃん、おはようございます」
シーン……
霞(まわりが静まった……)
小蒔「昨夜ですか?」
小蒔「無事に役目を終える事が出来ました」
オオオオオオオ
ワイワイ ワーマツリダー オセキハンモッテコーイ! ワイワイ
霞「!?」
初美「やりましたね姫様ー!」
小蒔「??はいっ」
霞「いっ、一体これは何の騒ぎ……なの?」
巴「お赤飯持ってきましたー!」
巴「いやー驚きましたよ!」
霞「え」
巴「はっちゃんが懲りずに覗き見してたみたいで」
初美「霞ちゃんが姫様の服を脱がしてるのを見ましたー 」
小蒔「改めて言われると恥ずかしいですね」
春「めでたい」ポリッ
アトツギダー コレデアンタイダー コンインノジュンビイソゲー
霞「こ、これ……まさか私と小蒔ちゃんのを皆知って……?」
初美「姫様の一大イベントですから。私がみんなに知らせました」ドヤッ
霞「」
小蒔「何だか皆さん楽しそうですね」
霞「婚姻ってちょっと待って。小蒔ちゃんは子供を残さなきゃいけないのよ?」
春「心配ない」ポリポリ
巴「はるるがこの新聞を今朝方持ってきてからずっとお祭りなんです」
霞「……」ガサガサ
小蒔「何が書いてあるのですか?」ヒョコッ
霞「……iPS細胞?」
カン
夜のは一応してない設定
乙
おつー
はっちゃんかわいい
Entry ⇒ 2012.10.04 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
貴音「あなた様あなた様」
P「ん?」
貴音「お仕事はいかがでしょうか?」
P「あと5分くらいだな。もう少し待ってくれ」
貴音「はい」
P「ん?」
貴音「今日は事務所に誰も居ないようですね」
P「みんな直帰したみたいだな。音無さんは入れ違いに帰ったし」
P「ん?」
貴音「わたくしの帽子をご存知ないでしょうか」
P「んーと、あった。ほれ」
貴音「ありがとうございます」
P「んじゃ、帰るか」
貴音「はい」
P「ん?」
貴音「まこと、風が快いですね」
P「ああ、秋の夜って感じだな」
貴音「ふふ、風流ですね」
P「ああ」
P「ん?」
貴音「らぁめんの香りが致しました」
P「そうか?」
貴音「ええ」
P「店とか見えないけどなぁ」
貴音「確かに致しました」
P「そうか?……ほんとだ。角曲がったら屋台があったぞ」
貴音「ふふ、当たりましたね」
P「食べていくか?」
貴音「いえ、やめておきましょう」
P「……そうか」
P「ん?」
貴音「美希の歌声ですね」
P「ああ、有線で流れてたな」
貴音「美しいものです」
P「そうだな」
P「ん?」
貴音「寄り道をしてもよろしいでしょうか?」
P「いいけど、どこだ?」
貴音「公園、などいかがでしょう」
P「いいぞ。じゃあこっちだな」
貴音「はい」
P「ん?」
貴音「静かですね」
P「誰もいないみたいだな」
貴音「よい空気です」
P「ベンチにでも座るか?」
貴音「はい」
P「ん?」
貴音「虫の声が致しますね」
P「ああ、コオロギか何かかな」
貴音「まこと、綺麗ですね」
P「ああ、綺麗だ」
P「ん?」
貴音「手を握っていただけますか」
P「ずっとつないでたじゃないか」
貴音「今、握っていただきたいのです」
P「……わかった」
P「ん?」
貴音「月が、綺麗ですね」
P「…そうだな」
貴音「告白ではありませんよ?」
P「分かってるよ」
貴音「……相変わらず、嘘を吐くのがお下手ですね」
P「っ」
P「……いや、晴れてるよ。ただ、新月だ。月は、見えない」
貴音「そうですか」
P「その目、本当に治らないのか?」
貴音「良いのです」
P「でも!」
貴音「もう、良いのです」
P「……そうか」
貴音「そろそろ、帰りましょうか」
P「……そうだな」
P「ん?」
貴音「明日は、月は見えるでしょうか」
P「ああ、見えるといいな」
貴音「ええ」
P「じゃあ、またな、貴音」
貴音「ええ、さようなら、あなた様」
おわり
ありがとうございました。
おひめちんかわいいよおひめちん
この貴音はPに幸せにされるべき
でも綺麗な話でよかった乙乙
Entry ⇒ 2012.10.04 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
モバマスP「すいません、アイドルとかに興味ってありませんか?」
P「そうですか……いえ、時間をとらせてしまい申し訳ありませんでした……」
??「そもそも私にそのようなものが向いてるとは思わないが?」
P「いえいえ、十分魅力的だと思いますよ?」
??「お世辞だと分かっていても照れくさいね」
P「いえいえ、そのようなことはありませんよ」
??「じゃあチラシだけでも貰っていこうかな?」
P「ありがとうございます。ではこれを」
??「シンデレラガールプロジェクト……」
P「はい。未だ発掘されていないアイドルの原石をデビューさせるという企画です」
P「そうですか?十分に通用すると思いますが……」
??「君はお世辞が上手だな、やってもいいという気になってしまう」
P「強制はしません。その気になったらこちらの電話番号までお願いします」
??「チラシに書いてある番号だね。わかったよ」
P「最後にですが、名前だけ教えてもらって良いですか?そのほうが電話を貰ったときに直ぐに対応出来ると思います」
??「おっと、自己紹介がまだだってね」
あい「私は東郷あい」
P「ぶふぉっ!?」
P「ごほっがはっ!……い……いえ、何でも。それでは今日はありがとうございました。時間を取らせてしまい大変失礼いたしました」
あい「ふうん……よくわからないが、お大事に」
P「は、はい。では近いうちに、また」
あい「それはこちらの気分次第なんだがね……」
P「それもそうですね」
あい「じゃあ、気が向いたら連絡するよ」
P「それでは」
――――
――
P「只今戻りましたー」
ちひろ「おかえりなさい」
??「おかえりなさぁい!」
??「おかえりなさい……今日は、いい人いましたか?」
P「ああ、お前らとも全くタイプが違うし、これでトリオのメンバーがそろった」
ちひろ「あれ?チラシ渡しただけじゃないんですか?」
P「いや、絶対に電話は来るよ」
ちひろ「自信たっぷりですね……」
P「まぁ」
あい「はい……どうしたの母さん?」
母「元気にやってるかい?」
あい「うん。中々仕事は増えないけど、楽しくやってるよ」
母「それなら良かった。それと本題。アンタの幼馴染にPってのがいただろ」
あい「……懐かしい話だね。それがどうしたの?」
母「なんでもアイドル?のプロデューサーをやってるって話だよ」
あい「は!?」
あい「……こっちの話」
母「そっかい。まぁ、会ったら宜しくしてやってくれよ」
あい「会ったら、ね」
母「意味深だねぇ……」
あい「何でもないよ、じゃあ」
母「はいはい」
.....Pi......
あい「まさか……ね」
??「電話、本当に来るんですか?」
P「間違いないよ。多分朝一だ」
??「どうして言い切れるんですかぁ?」
P「後々わかるよ」
ちひろ「はい、○○プロです……はい……はい……」
P「おいでなすった」
ちひろ「プロデューサーさん、面接を希望してる人がいます。東郷さんという人ですけど」
P「履歴書いらないんで直ぐにでも来てくれって伝えてください」
ちひろ「……ああ、昨日言ってた人ですね。わかりました」
??「とーごーさん……っていう人ですかぁ?」
??「怖い人じゃなきゃいいですね……」
P「そう怖気づくな。大丈夫、いい人だよ」
ちひろ「プロデューサーさん。今から40分くらいで来るそうです」
P「やっぱりな。あがとうございます」
??「今日はめんせつ?するんですか?」
P「いや、とりあえずお前らと顔を合わせてもらう」
??「ええ?いきなりですか?」
P「俺の予感が正しいなら、面接なんていらないさ」
P「多分時間きっかりに来ます。そしたら応接間に通してもらっていいですか?」
ちひろ「わかりました」
P「さて、最初は俺一人のほうがいいわな」
あい「すいません、連絡した東郷ですが……」
ちひろ「はい、承っていますよ。どうぞこちらへ」
あい「失礼します」
ちひろ「ではこちらのほうで待っていてください。今担当が来ます」
あい「わかりました」
コンコン
P「失礼します。お待たせしました」
あい「いや、待ってないよ」
P「では、早速ですが挨拶を」
あい「待ちたまえ」
5年前まで高校生だもんな
あい「私たちの間で他人行儀はいくら何でもナシだろう?」
P「……」
あい「13年ぶりじゃないか。Pくん?」
P「あ、わかっちゃった?」
あい「昨日母から電話があってね」
P「おばさんかー。うちの母親め、言いふらしてるな」
あい「どうやらそうみたいだね。相変わらずパワフルみたいだな」
P「まぁな」
あい「しかしまあ、Pくんがアイドルのプロデューサーねぇ……?」
P「しかしあいだと気付かずにスカウトしてしまうとは、俺も落ちたかな」
P「いやあのあいがこうなるなんてと思うとね」
あい「やたらに恥ずかしい言葉ばかり言ってたじゃないか」
P「うぐ」
あい「録音でもしてPくんの母君にでも送ればよかったかな」
P「やめてくれ、自分の子供がナンパ師になりました。みたいなもんじゃないか」
あい「ふふ……」
P「で、アイドルだけど。どうする?」
あい「どうせ君のことだからやると踏んでるんだろう?」
あい「生憎そっちの方がよろしく無くてね……掛け持ちは可能かい?」
P「んー、こっちに比重を置いてくれるなら」
あい「かまわないよ」
P「んじゃ、宜しく」
あい「頼んだよ? 立派なアイドルにしてくれ」
P「可能な限りそうさせてもらうよ。俺も新人だから多少は大目にみてくれ」
あい「じゃあ、頑張っていこうか」
P「……と、その前に」
あい「ソロではない。ということかな?」
P「そういうこと。今事務所に2人ともいるから紹介するよ」
あい「わかった、行こうか」
P「……13年か」
あい「ああ」
P「久しぶり、あい」
あい「久しぶりだ、Pくん」
P「んじゃ、行こう」
??「頼りになる人って聞いてますけど……わかりません」
??「Pさんが言うなら間違いないですね!」
??「……だと、思います」
P「よっす、2人ともいるな」
??「はい! あ、その方が……」
??「私たちとユニットを組む人、ですかぁ?」
P「ああ、東郷あいさんだ。仲良くしてやってくれ」
あい「初めまして」
??「こんにちわぁ」
??「よ……よろしくお願いします……」
P「いやいや!お前らも名前言わないとわからんから!」
裕美「関裕美といいます……よ、よろしくお願いします」
あい「私は東郷あい。宜しく頼むよふたりとも」
ちひろ「事務員をしています千川ちひろと言います。これからよろしくお願いします」
あい「よろしくお願いします。ちひろさん」
P「さて、今日は3人集まったし。顔合わせだけってのも寂しいよな?」
イヴ「そうですねぇ」
裕美「何かします……?」
あい「ふむ。なんとなくPくんが私を入れたがってたのがわかったよ」
P「察してくれると助かる」
イヴ「あれ?お知り合いなんですかぁ?」
面白い組み合わせだな
イヴ「あいさん、よろしくお願いしますぅ。イヴって読んでくださぁい」
裕美「私の事も……裕美でおねがします」
あい「イヴに裕美、だね。覚えたよ」
P「じゃあ、飯でも食いに行くか!」
あい「今日はやることがないのか?」
P「無い!」
あい「じゃあ、私の知ってる店でいいかな?」
イヴ「是非お願いしますぅ」
P「じゃあ出発!ちひろさん、後お願いします」
ちひろ「私も行きたいなー……」
裕美「だ、だめです……」
P「残ってる仕事片付けてくださいよ」
ちひろ「はぁい……」
P「それじゃ、新ユニット発足ということで!」
イヴ「カンパイですっ☆」
裕美「か、かんぱーい」
あい「乾杯」
ごく ごく
P「ふぅ……」
イヴ「おじさんくさいですよー?」
P「紅茶花伝がうまいのが悪い」
あい「どうしてそんな甘ったるいの飲んでるんだ」
裕美「あ……あの……あいさん……」
あい「何だい?」
裕美「プロデューサーさんと昔の馴染みだって言ってましたけど」
あい「小さいころに近所だっただけだよ」
P「まぁ幼馴染ってやつかな? 学校帰りとか一緒に遊んでたよ」
イヴ「あいさんあいさん!Pさんはどんなお子様だったのでしょう?」
あい「ちょっと優しい、どこにでもいる男の子だよ」
裕美「優しい……ですか?」
あい「うん。私はあまり口調とかが女ぽくないだろう?そうするとからかう奴とかも出てくるんだ」
あい「そんなタチの悪いことじゃないよ。おとこんなー!とか言われたりするくらいさ」
P「あいも女の子だからな。そんなの言われてたら放っておけないわけだ」
裕美「プロデューサーさん、カッコイイです!」
P「んなこたぁない」
あい「そんなことあるんだよ」
P「え」
あい「彼は事あるごとに助けてくれてね。結構頼ってしまっていたんだ」
イヴ「そうですよね……Pさんは優しいですぅ」
イヴ「はいぃ……衣装とプレゼントを全部奪われてしまって……寒さをしのいでいたらPさんが手を差し伸べてくれたんですぅ」
あい「おやおや、さしずめイヴにとってのサンタクロースになったわけだね」
イヴ「きゃっ☆ 寝床まで提供して貰って……だからこうしてアイドルしながらお金を貯めてるんですぅ」
あい「寝床?」
イヴ「はぁい。Pさんの家にお邪魔させて貰ってますぅ」
P「アカン!」
あい「……Pくん」
P「なーに?あいちゃん?」
あい「………」
P「………」
あい「……ところで、裕美は?」
P「裕美は光るものを持ってたからな。ティンときてスカウトした」
あい「裕美は、いやじゃなかったのかい?」
裕美「最初は断ったんです、私は目つきもきついしブサイクなので……」
イブ「いっつも言ってるけど、そんなこと無いですよ?」
裕美「そうでしょうか……?」
P「俺は裕美がかわいいと思ったからスカウトしたんだよ。目標はもうちょっと自信を持つことだな」
裕美「はい……頑張りますっ!」
あい「Pくん……」
P「なあ?素直でいい子だと思わないか?あ……」
P「そうだろうそうだろう」
イヴ「あいさんは、どうしてアイドルになったんですか?」
あい「簡単だよ」
裕美「……?」
あい「スカウトしてくれたのがPくんだから。断る理由が無いんだ」
イヴ「きゃぁ☆」
P「oh...」
裕美「あの……」
あい「ん?」
裕美「どうして、プロデューサーさんなら断る理由が無いんですか?」
P「やめてやめて、顔が熱いから」
イヴ「Pさん大胆ですねぇ~☆」
裕美「こ……これが告白……」
P「ち、違う!」
あい「おや、私は別にかまわないが?」
P「えっえー」
イヴ「もしかしてカップルさんですかぁ?」
裕美「おめでとうございますっ」
P「NO!違う!」
あい「ふふ……」
裕美「どうしたんですか?」
イヴ「あいさんって微笑むとすごい可愛いんですね!」
あい「そ……そうかな?」
イヴ「あ!今度は照れましたぁ。可愛いですねぇ~☆」
あい「よしてくれ……そういう褒められ方は慣れてないんだ……」
P「そうか?昔からお前は可愛いって言ってきた気がするんだが」
裕美「ひゃう!?」
あい「そういう褒め方をしてくるのがPくんしかいなかったんだ」
イヴ「だから久しぶりすぎて照れてるんですね~♪きゃ~☆」
あい「うう……み、店を変えよう!私の仕事場でどうかな?」
裕美「あいさん、他にお仕事してるんですか?」
あい「まぁね、中々繁盛はしないけども」
P「ほう、あいが何の仕事をしてるかは知らないからな」
あい「Pくんが引っ越した後に始めたことだからね。昔を辿っても出てこないよ」
イヴ「Pさんの知らないあいさんの一面にきゅん☆」
P「無いわ」
イヴ「えー……」
あい「やあ、失礼するよ」
マスター「おお、あいちゃんじゃないか。……て、一緒に来たのはP君かい」
あい「……知ってるの?」
マスター「知ってるもなにもここの常連だよ」
P「え、あいの仕事場ここだったの?」
あい「そうなんだが……もしかして、会ってるのかな?」
P「かもしれないなぁ」
あい「じゃあ2人のことは任せたよ。私は準備してくる」
P「はいよ。……どうした?」
イヴ「飲まれちゃいます……」
P「仕方ないなぁ……ほら、こっちだ」
マスター「ソフトドリンクでいいかな?そろそろあいちゃんのステージが始まるよ」
~~~~♪
裕美「サックス……ですね」
P「げ!」
イヴ「どうしたんですかぁ?」
マスター「そうだよ。仲いいみたいだけどコレかい?」
P「違いますって……13年ぶりの幼馴染ですよ」
マスター「久々の再開というわけか」
P「はい、美人になってたんでびっくりしましたよ」
イヴ「気付かないでスカウトしちゃうくらいですもんね~☆」
P「やめろ!」
マスター「あー、昨日嬉しそうにアイドルになるって言ってたのはそういうわけだったのか」
裕美「嬉しそうにですか?」
マスター「ああ、何でも『ずっと会いたかった人に会えるから』って言ってたよ」
P「」
イヴ「きゃ~☆」
裕美「………」
P「なんだ?」
裕美「……あいさんのことを話してるときのプロデューサーさん、とても生き生きしてます」
P「そうかな……」
裕美「はいっ」
~~~♪
~~♪
~♪
パチ パチ パチ
あい「ありがとうございました」
イヴ「格好よかったです!」
裕美「あいさん……すごかったです!」
あい「そりゃあね……中学に入ってから始めたんだ」
P「なるほどな。それなら知らなくて当然だ」
あい「ふふ……ありがとう。君たちも折角だから歌ってくるかい?」
P「何言ってるんだお前?」
マスター「折角アイドルの子達が来てくれてるんだ、歌ってもらおうじゃないか」
P「音源が無いですよ音源が」
マスター「君が演奏すればいい」
P「……マジですか……」
マスター「うむ。まだアレは置いてあるぞ」
イヴ「何を歌うんですかぁ?」
裕美「私たちまだデビューもしてません……歌ありませんよ?」
P「そりゃな……この曲ならわかるか?」
イヴ「これなら知ってますぅ……わかりましたぁ」
P「さあ、ここえ舞台度胸をつけておこうな」
裕美「が……頑張ります……」
P「久しぶりだな。……あいをぎゃふんと言わせてやる」
イヴ「ところで、その楽器はなんていうんですかぁ?」
裕美「見たことありませんね」
P「ふっふっふ」
マスター「聞き惚れてたよ」
あい「ふふっ……それなら良かった……」
マスター「なんせずっと会いたかった人だもんね?」
あい「……うん」
マスター「今日は未成年の子がいるからノンアルコールだよ」
あい「じゃあ、適当に作ってくれるかい?」
マスター「わかったよ。いい人じゃないか。P君は」
あい「ふふ……追いかけてきて、正解だったかな」
マスター「大正解だと思うよ」
マスター「P君のショーが始まるみたいだね」
あい「マスター、彼は何か楽器をやるのかい?」
マスター「うん、見てればわかるよ」
あい「どれどれ……」
イヴ「あいさんの演奏の後は、私たちの歌を聞いてください~」
裕美「頑張って歌います。よろしくお願いします」
P「常連の皆様、7ヶ月ぶりくらいでしょうか。久々に演奏させてもらいますね」
マスター「あいちゃんがココに来るようになったのが半年前だから、丁度入れ替わりかな」
~~~~~~♪
あい「!?」
マスター「びっくりするだろう?」
あい「そりゃね……」
マスター「でも、お客様の評判は良かったんだよ?」
あい「そうだろうね……上手い……」
マスター「彼のクリスタルフルートは魔性の笛だからね。その道のプロにもなれるレベルさ」
※クリスタルフルート
ttp://crystalflutes.web.fc2.com/m.htm
マスター「初めて聞くけどいいものを持ってるね、流石P君の目に狂いは無い」
あい「……」
マスター「あいちゃん」
あい「何かな」
マスター「焦らなくても大丈夫だと思うよ?」
あい「……何の事だか」
マスター「彼は、君をちゃんと見てる」
あい「そうだと、嬉しいね」
マスター「………」
あい「………」
消化器を口にあてて吹きならしてる例の画像が浮かんできてヤバい
裕美「あ……ありがとうございました……」
P「ありがとうございました」
あい「2人とも、歌上手だね」
イヴ「ありがとうございますぅ、一生懸命レッスンしたんですよ~」
裕美「私なんてまだまだで……」
P「そんなことない、裕美も上手だったぞ?」
裕美「ありがとうございます……」
あい「Pくんがクリスタルフルートをやるのが一番違外だったのだが?」
P「どうよ、見直したか?」
P「よせやい」
イヴ「本当に格好良かったです~☆」
裕美「また、聞かせてくださいね?」
P「いいぞ。ココに来る機会が有ったら聴かせてやる」
あい「それなら、ミーティングはここでしようか」
マスター「ん?あいちゃんをプロデュースするのって?」
P「それが俺なんです……」
イヴ「私たちがトリオを組むんです~」
P「本当ですか?ありがとうございます」
マスター「ただし、条件があるよ」
P「はい?」
マスター「来るたびに聴かせてもらうからね?」
P「うわー……まぁいいです」
あい「交渉成立かな?」
P「よし、シンデレラガールズ、頑張っていくぞ!」
イヴ「おー☆」
裕美「お、おー!」
あい「おー」
――――
――
イヴ「Zzzz」
裕美「……むにゃ……」
P「さて、2人とも寝ちゃったし。そろそろお開きだな」
あい「そうだね。でも1杯だけ付き合ってもらうか?」
P「車で送らないとならんからノンアルな」
あい「わかってるさ」
マスター「じゃあ、こんなものを」
P「桃……ですか?」
P「なあ、あい」
あい「なんだい?」
P「13年ぶりだ」
あい「ああ」
P「まぁ、幸いここからは一緒に活動をしていくからな」
あい「そうだね、13年分の空白を取り返していこうか」
P「……そうだな」
あい「……また、会えて嬉しいよ」
P「……俺もだ」
あい「これからと」
P「俺らみんなの活躍を祈って」
P・あい「「乾杯」」
end
友達以上恋人未満ってこいういうのなんじゃないかな?
読み返してお風呂はいってきます。
乙
Entry ⇒ 2012.10.04 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
球磨川(女装)「ねえねえ善吉ちゃん、超大好きなんだぜ?」
球磨川「あれ、おかしいな。僕の声が聞こえなかったのかな?」
球磨川「ならもう一度告白してあげるよ、あのね、善吉ちゃ───」
善吉「いや、待ってくれッ! いやいや待ってください球磨川先輩ッ!
そのアンタの格好に対しても突っ込みが追いついてませんから!」
球磨川「おいおい。僕と善吉ちゃんの仲じゃあないか、
そんな他人行儀な謝礼行儀な口調と呼び名はやめてよ」
球磨川「──気軽に禊きゅんって呼んでくれても構わないんだよ?」
善吉「」
犬がエメラルドマウンテン登って頂上を拝んだような顔をしてるけど」
善吉「……はっ!?」
球磨川「──熱でもあるのかな、どれどれ」ぴとっ
善吉「っ!?」
球磨川「よかった大丈夫みたいだね、熱も無いし、具合も悪くなさそうだし」すっ…
球磨川「いつもの善吉ちゃんのようで安心したよっ!」ぐっ
善吉「」ぞわぁ!
球磨川「ん?」
善吉「───俺から離れろォ! 球磨川禊ぃいいいい!!」ドガァッ!
球磨川「キャー」ドコォ!
ぱたーん
善吉「はぁっ……はぁっ……!」
球磨川「…酷いなぁ、まったくもって酷いよ」ゆらり
球磨川「フツー告白してきた娘に対して本気の蹴りを食らわせる?
フツーに死んじゃうぜ、今の善吉ちゃんの蹴り食らっちゃうと」
善吉「あ、アンタは何処をどう見ても、今も昔も現状も普通じゃないからいいだろうがっ!」
球磨川「あはは、言うねぇ善吉ちゃん」
球磨川「…だけど、まあ、そういった精神はこの際に横へと置いといてさ」
善吉「…」
球磨川「流れて流れて、今の僕の現状までに流れ落ちて、
僕とイチャイチャしようじゃあないか、ね?」
善吉「い、嫌だ」
球磨川「どうしてかな? んー、もしかして僕のことが嫌いだから?」
善吉「そ…それもあるが、それ以前に! アンタどうしてそんな事言うんだよっ!?」
球磨川「……そんなことって」
善吉「そんなことだろ!? ど、どうして俺に……す、すすすきとか! 言うんだ全くわからねぇだろ!」
球磨川「……」
球磨川「だって善吉ちゃん、男の姿で告白してきたら割かし引いちゃうだろ?」
善吉「十全で引くわ! どっちでも全力で引く!」
球磨川「そりゃないぜ……僕の気苦労が水の泡として消え去るようなこと言わないでくれよ、はぁ~」
善吉「だっ、だったらその泡が消え去る前に今自分がしてることをよーく考えろよ!?」
球磨川「……」
善吉「……」
球磨川「密かに思う乙女心から……肉食系女子の弾ける思いへ、クラスチェンジ!」びしっ
善吉「その思い弾け飛べッ!」グォッ!
がっきぃいいん!
球磨川「───あっはは、楽しいなぁ善吉ちゃん
僕はこうやってきみとイチャイチャできて楽しくてしょうがない」
球磨川「!」
善吉「はぁっ……アンタが言ってることが、全部全部虫酸が走る!
今までにないほどに、これでもかってぐらいに! 寒気がヤバイんだよ!」
球磨川「…つれない事いうなよ善吉ちゃん、僕だってけっこうアレなんだぜ?」
善吉「な、なんだよ」
球磨川「…………」
くるっ
球磨川「……その、恥ずかしいんだよ、言わせるな恥ずかしい」
ちらっ
球磨川「きゃっ」
善吉「」ぞわぁああ!
ここまで何の躊躇も無くやってのけた、今の僕の姿は?」
善吉「ただの女装してる、変態だ!」
球磨川「その通り、実にその通りだよ善吉ちゃん。矛盾だらけでこれといった法則性も無い。
今ある現状だけがこの場の解決への手がかりだね、実に困った、その通りすぎてね」
善吉「な、なにが言いたいんだよ球磨川先輩…」
球磨川「じゃあ聞くけど善吉ちゃん」
球磨川「───どうして僕の声に〝虫唾〟が走るのかな? ん?」
善吉「え…?」
球磨川「君はある程度まで、僕の嫌悪感の塗りたくられた言葉に──きちんとした耐性があるはずだ」
球磨川「だが今の善吉ちゃんには、どうもその耐性とやらが発動できていない用にみえるんだけど…」
球磨川「…なるほどね、やっぱり、そういったことになるんだ」
球磨川「ザ・シンキングターイム……一体全体どうしてきみは対抗できない?」
善吉「っ…」
球磨川「僕の言葉にたいして、最も人間の中で信ぴょう性のない僕に対して───」
球磨川「───どうしてそこまで〝本気になって嫌悪感を持てるんだい?〟」
善吉(どうしてって…そりゃ球磨川先輩の言ってることは誰にだって信用されない。
それほどまでコイツの言っている発言は不確定で、虚無に等しい責任皆無なんだから)
球磨川「……」にやにや
善吉(…だけど、球磨川先輩が言っている通り今の俺は最上級に嫌悪してしまってる。
コイツの顔を見たくないほどに、視線を絶対に合わせたくないほどに)
善吉(だってそれは───コイツの言ってることは気に障るから、気に触って、そして気を掴んでしまうから)
善吉(だから俺は球磨川先輩の言ってることを無視できない、対抗できない───いや、待てよ?)
球磨川「──はい、終わり。さて答えを聞こうか善吉ちゃん?」
球磨川「理由はわかったかい? 自分の気持ちの整理はきちんと片付けたかい?」
球磨川「それでは聞こうかきみの答えを……さあ、聞かせて頂戴」
善吉「……」
球磨川「? どうしたの?」
善吉「……」ガクガク…
球磨川「ねえ、どうしたの善吉ちゃん? あはは──」すた…
球磨川「──そんなに濡れたような犬のように、震えてしまって」すたすた…
善吉「……」ガクブル…
球磨川「見てるとこっちまで可哀想になってくるじゃあないか、くすくす」すたすた
すた
球磨川「──ねえ、善吉ちゃん。きみの答えを聞かせてよ、その可愛い口から教えてくれないかな」
善吉「あ、あんた……」
球磨川「うん?」
善吉「か、括弧……つけてないの…?」
善吉「」
球磨川「あははっ、もうもう! 遅いぞ善吉ちゃん!
いくらなんでも初めに合った瞬間から気づいたとしてもおかしくない程に不自然だったろ?」
くるくる
球磨川「何処をどう見ても僕という今の人間は──不自然の塊なんだから!」
球磨川「見てくれよこのスカート! 短すぎやしないと思わない? あとこのカツラ!」
球磨川「善吉ちゃんが好きだろうとロングにしてみたんだけど、どうかな? あとで感想教えてよ!」
球磨川「あーでも、やっぱり善吉ちゃんから感想言われちゃうとなー照れちゃうからなー」
ぴた
球磨川「…あとで僕の下駄箱に感想を書いた手紙を入れておいてよ、お願いだよ?」
球磨川「ね? 善吉ちゃん?」
善吉「」
善吉「っ」
球磨川「だからどうだい、ここはひとつ提案なんだけど──」くいっ
球磨川「──僕も我慢するから、必死に我慢するから、全力で恥ずかしがらないから」
球磨川「僕の今の姿に対する、ひとつ感想を言ってみては如何かな?」
善吉「いや、球磨川せんっ…!」
球磨川「答えろ」
善吉「っ……!!」びくぅ!
球磨川「……僕が手放しに本気で言っている言葉だ、
これがどういった意味でどういった配慮なのかわかってるのかい」
善吉「っ……そ、それは……その……」
球磨川「早く言えよ」
善吉「ッ~~~……ええっと、きもいです…はい…」
善吉「すっごく…気持ち悪いですっ…ヤバイぐらいに…吐きそうなぐらいに…!」
球磨川「………」
善吉「今すぐにでも…球磨川先輩を殴り倒して…それから教室へと走り逃げ去りたいです…!」
球磨川「………」
善吉「こ、これが俺の……本音です…!」
球磨川「………あっそ」ぱっ
善吉「うっ……っとと……」
球磨川「…ふーん、そうかい。善吉ちゃんはそう思ってたのか、それはそれは」
善吉「あ、あの……球磨川先輩…?」
球磨川「確かにそれは……『仕方ないことだよね、だって普通なことじゃないし、決して許されるようなことでもないから』」
球磨川「『語ったりとか思ったりとか片思いとか恋しくなったりとか蒔くったりとか恋慕とか』」
球磨川「『そんなこと全部ひっくるめて吐き気が催す程に気持ち悪くて、信じられないほどに嫌悪が満載で』」
球磨川「『たとえそれが僕という人間だからなんて、そんな言い訳が通じないほどに───』」
球磨川「『僕という人間は気持ち悪くて善吉ちゃんに嫌われるような人間なんだなあって、大丈夫、僕も気づいてるよ』」
くる…
球磨川「『…あはは、善吉ちゃんも素直だなあ。言えって言ったら直ぐに応えちゃうんだから、もう』」
善吉「…球磨川先輩?」
球磨川「『なんだよ、こっち見るなよ。気持ち悪いと思ってるんだろ』」
善吉「…ま、まあ」
球磨川「『だったら僕に近づくなよ、慰めようとかするなよ、ふざけるなよ』」
球磨川「『………』」
善吉「勝手に悲しがるなら、どうぞご勝手にと…はい」
球磨川「『………』」
善吉「そんな感じです…」
球磨川「『───だよねー!』」くるっ
球磨川「『善吉ちゃん、まさにその通りなんだよ! あは、実に明快その通り!』」
球磨川「『今きみが言った言葉は……正しすぎるほどにこの場の答えなんだから!』」
球磨川「『そう! 善吉ちゃんがしなければならなかったのはただひとつ、それは僕への明確な拒否!』」
球磨川「『何時になったら言ってくれるのなーなんて、僕らしく無く気長に待っちゃったよ、あはは』」
球磨川「『おめでとう、善吉ちゃん。これでこの場の謎は全て解決だ。これにて一件落着』」くるっ…
球磨川「───なわけないだろ、善吉ちゃんのばかっ!」だだだだっ!
球磨川「ばかー!」だだだ…
善吉「……」
善吉「……何だったんだ、一体全体…」
「───いやはや、なんともおぞましくも面白いことに首を突っ込んだねぇ…人吉くん」すた
善吉「この声は……安心院さん!」
安心院「やあ、お久しぶり」
善吉「お久しぶり? いや、さっきの時間に廊下であったじゃないですか」
安心院「おっと、そうだったね。これは失敬、忘れてくれよ人吉くん」
善吉「は、はあ…」
安心院「それよりも、そんなことよりも…なあなあ、なにがあってこうなってるんだい」
安心院「ちょいとこの安心院なじみさんに、ご相談しては如何かな?」
安心院「───ヘェー……あの彼がそんなことを」
善吉「そうなんですよ…いやね?
俺が思うにあの人、どっかで頭を打ったか殴られたかしたと思うんです」
安心院「それはどうかな、彼は当たり前に不死身で頑丈で卑屈な男なんだよ?」
安心院「彼のようなマイナスな人間は死を経験するほどのものでない限り──
おっと、死という概念すら彼には生ぬるかった、これは安心院さんも失念失念…」
善吉「確かに、あの人不死身でしかも死ねないですしね…」
安心院「それはさておき、人吉くん」
善吉「なんですか?」
安心院「僕が思うにね、こういう事情ってものは結構いとも簡単に解決するもんなんだよ」
善吉「本当にですか!? 本当に解決できるんですか安心院さん!?」
安心院「くっく、必死だねぇ…それほどまでに嫌悪してたのかい?
これは流石にあの球磨川くんだったとしても可哀想になってくるよ」
逃げられてしまったら、その…欠片も思わないことは、無いですけど」
善吉「俺は…今までの、球磨川先輩のほうが…断然いいです!」
安心院「…ふむ、確かにキミの言ってることも一理ある」
安心院「あのような球磨川くんは見てて楽しすぎて腹が捻じれ千切れてしまいそうになるけれど」
安心院「僕という存在が一度は認めかけた、そして期待しかけた人間だから」
安心院「彼という人間性をどうにか元に戻したいという気持ちはあるんだよね」
善吉「ほ、本当ですか…!?」
安心院「ああ、安心していいよ人吉くん(安心院さんだけに)」
安心院「───キミの抱えている、後生大事に腹の奥底に抱えているその思い……」
安心院「この安心院なじみが、どうにかしてあげようじゃあないか げらげら」
善吉「………」
善吉「……だ、大丈夫だろうか」
善吉「デビル不安でしょうがねぇよ! ……例えあの安心院さんであっても、相手は球磨川先輩だしなぁ」
~~~
安心院「人吉くん、キミはこれから普通に教室に戻っていいよ」
善吉「だ、大丈夫なんですか?」
安心院「平気平気、その間に僕が彼をどうにかさせておくからさ」
安心院「──キミは平然と気楽に、普段通りの学校生活を送ればいいんだよ」
安心院「──さすればそのとおりに、今の間違った現状もその流れに付き添ってくれるはずだからね あはは」
善吉「は、はあ……わかりました」
~~~
善吉「よくわかんねー言い方だったけど、まあ、あの人が言うことだから大丈夫だよな…うん!」
がらっ
ドドドドドッドドドド!
善吉「…んあ?」
善吉(な、なんだこの教室に溢れかえるっ…この重圧感…!?)
ドドドドドドッド!
善吉(っ……いや、違う! これはコレは、ただの所謂漫画的効果音ではなくて…!?)
ドドッドドドドドドド!
善吉「──この教室にいる奴らの、鼓動の…音だと!?」
「やあやあ、善吉ちゃん。遅かったね、心配しちゃったよ」
善吉「──え」
「どうしたんだい、犬が初めて別の品種を目撃したような顔をして……」
「…くす、もしかして、もしかすると善吉ちゃん───」
球磨川(女)「───この僕に見惚れちゃったとでも、いうのかな?」
善吉「───………」
球磨川「イェイ☆」パチッ
善吉「……あ、アンタ…球磨川先輩…?」
球磨川「それ以外にどんな人物だって思うんだよ、こんな可愛らしい女の子なんて他に居ないだろ?」
善吉「じ、自分で可愛いって……それ、本心で言ってるのか…?」
球磨川「あはは、じゃあ試して実践して賭けてみようか善吉くん──」
球磨川「───この僕の瞳を、十秒間見つめ続けてみてよ」ずいっ
球磨川「んー? どうしたの? ねえねえ、善吉ちゃん?」
球磨川「もっともっと、善吉ちゃんの顔を見せてくれよーねぇーってばー」ぐいぐいっ
善吉(顔が近いっ…!)
球磨川「くすくす、どうしたっていうんだよ。おいおい、人吉善吉ともあろう男が───」
球磨川「──女の子一人に手間取るなんて、らしくなくて可愛くて笑顔になってしまいそうだ」ニコ
善吉「ッ~~~───!?」
球磨川「さあさあ…わかってるんだろ? こんな風に密着しあって」
ぎゅっ
球磨川「…息がかかりそうな距離で喋り合って」
はぁー…ふぅー…
球磨川「僕と善吉ちゃんは、見つめ合ってるんだぜー?」
この現状もそうだがッ…そんなことよりも球磨川の言葉に!)
善吉(テンパッて頭の整理が追いつかねえよ! どうしたの俺!? どうしちゃったの俺!?
落ち着け落ち着け、まずはこの場を把握しねえと───)
善吉(───教室にいる奴らは…なんだ、異様にこっちを見てるような…いや違う!)
善吉(《球磨川先輩だけを見続けてる》のかこれ…!?)
善吉(ど、どうしてんなことっ…いや、わかるけども! そうじゃなくて!)
球磨川「ふぅー…」
善吉(というか息がくすぐったい!)
球磨川「あのさー、善吉ちゃん。周りにいる生徒の様子を確認するだけじゃなくって───」
球磨川「──もっと僕の姿を見てくれよ、ねえねえって」ぎゅうっ
むにゅむにゅ
善吉(柔っ!? 二つの弾力が柔っ!?)
球磨川「………善吉ちゃん」ぎゅっ
善吉「ッ…!?」ドッキーン!
球磨川「……ふふっ」
善吉(わ、分かった! 初見から一発で見抜けたけどやっぱりわかった!)
善吉(何故か先ほど変わって、いつも通りの学ラン姿!
しかしそれとは変わってスラリとした体格は表れておらず!)
善吉(その内側から浮き出る…女性特有のラインを持った美しい脚線美!)
善吉(抱えたら思わず崩れてしまうかのような、均等の取れた腰つき!)
善吉(雪崩れるように背中まで伸びた、黒よりも黒に染まった繊細な髪質!)
善吉(そして! もともと童顔だった顔がさらに丸美を帯びて可愛らしさの質上がった顔立ち!)
善吉(……そして現状を持ってして、形を変え続ける二つの膨らみ)
善吉(この全ての情報によって至らしめている───今の現状は!)
善吉「…どうして、女になってるんだ…?」
球磨川「今更過ぎる質問だよ、善吉ちゃん」
善吉「え、ちょっ…どうして俺の制服に顔を押し付ける!?」
球磨川「ぁう……ん? だってホラ、欠伸をしている顔なんて見られたくないじゃあないか」
球磨川「だから善吉ちゃんの制服に顔を押し付けて、欠伸したんだ」
球磨川「…それとも僕の欠伸顔、見たかったかい? ふふっ」
善吉「み、みたくねえよ!」
球磨川「そっか、それは残念。もしかしたら僕の欠伸が移って善吉ちゃんの欠伸顔を拝めると思ったのに」
球磨川「あはは、見たかったなぁ善吉ちゃんの欠伸顔……今度、僕だけに見せてくれない? だめ?」
善吉「だ、ダメに決まってる! いや、そうじゃない…ノセられてどうするんだ俺…!」
善吉「だぁー! 猫みたいにひっついてくるんじゃねえっ!」バッ!
球磨川「おっとと…」
善吉「はぁっ…はぁっ…もう一度聞く! アンタ本当に球磨川禊なんだなっ!?」
球磨川「何度もそう言ってるじゃあないか、相変わらず把握能力が乏しいなあ…まあ、そんな所も可愛いって僕は思うけど」
善吉「か、可愛いとかいうな!」
球磨川「照れてる照れてる」
善吉「照れてない!」
球磨川「まあ、そういうなって───お、ジャスト十秒だぜ」ぴっ
球磨川「…それでどうだい、善吉ちゃん。今あるきみの懐の気持ちは」
球磨川「──その心臓の高鳴りは、はたして嘘偽りなのかどうなのかってさ」
球磨川「そうだよねぇ、うんうん。言わなくたってわかる、大丈夫、だって男の子だし」
球磨川「女の子の身体にここまで密着されれば、清く正しく美しい男子高校生であれば──ね」
球磨川「……まあだって、その逆を言うなれば」ちら
球磨川「──僕だって実の所物凄くヤバイぐらいに恥ずかしいんだから」
球磨川「つまりコレといった僕に罪はなく、その善吉ちゃんの胸の高なりに対して…」
球磨川「僕は悪くない」
善吉「…そ、それは…!」
球磨川「だってそういうモンだろ? 善吉ちゃん」
球磨川「──今は男と女だ、その感情に罪も嘘も仮も偽も負も腐も辞も血も体も性も──」
球磨川「関係は全くないんだぜ?」
球磨川「?」
善吉「うっ…嘯くじゃねえ! 球磨川! 例え確かに何らかの理由があってお前が女になったとしてもだっ!」
善吉「お前が元が男だってことは、俺の中でキチンとした記憶があるんだぜっ!?」
球磨川「………」
善吉「今のお前の姿は女だ! だがな、俺は決してそんなふうに
テメーの口車に乗せられるほど馬鹿なヤツじゃねーんだよ!」
球磨川「………」
善吉「お前のわけのわかんねー真っ黒な企みがあるのは、重々承知の上でこの発言だ!」
善吉「もういいだろ!? ここまで俺を辱めたんだ! そろそろ本音とやらを言いやがれよ!」
球磨川「…企み?」
善吉「ああ、そうだっ…! お前は絶対に理由なしにこんな事をしないはずだからな!」
球磨川「…おい」
球磨川「…おいおい、おいおいおいおい」
球磨川「あのさ、善吉ちゃん」
善吉「な、なんだよ……」
球磨川「………待ってくれよ、そりゃないぜ、本当にさ」
球磨川「何を口にだすのかと思えば……球磨川禊が企み? っは、はは」
善吉「…な、なにがおかしい!」
球磨川「やれやれ、何言ってるんだこの善吉ちゃんはってさ、本当にばかわいいなぁって思ってるところ」
球磨川「可愛くて可愛くて──どうしようもなりそうなぐらい、愛おしくて」
球磨川「分かって貰えてなかった怒りよりも、知ってほしいという愛情のほうが上回ってしまうじゃあないか」
善吉「っ……な、なんだよ! 何が言いたい…!?」
球磨川「───球磨川禊という女に、企みは無い」
球磨川「もう一度言ってあげようか? しょうがない、じゃあいうよ?」
球磨川「球磨川禊という女に、策略や謀略、その他に渡る暗躍的情景は一切ない」
球磨川「──まあ、ぶっちゃければ善吉ちゃん大好きー!」ぎゅうっ!
球磨川「ってことかな? えへへ」ぎゅうう~…!
善吉「ふぁあっ!?」
球磨川「んーん~! あ、善吉ちゃんってもしかして僕と同じボディソープ使ってる?」くんくん
善吉「か、かぐんじゃねえ!」
球磨川「いいだろ別に、気にするなって。寧ろ気にしてくれるのかい? いいねえ、感謝するよ」
善吉「や、やめろって!」
球磨川「あーもう、暴れたから匂いが飛んじゃうだろ。大人しく僕に抱かれておけって、ね?」
球磨川「…しょうがないなー」
ぞぞぞぞぞんっ!
球磨川「──これでどうだい、善吉くん…あはは、見事に貼り付けだ」
善吉「なっ…!」
球磨川「きみが暴れるから致し方ないしと、僕も不承不承ながらも心鬼にしてやったことだから」
球磨川「僕は悪くないよ?」ニコ
善吉「わ、悪いわ! は、はなせっ…床に貼り付けやがって──って、おいっ…どうして俺にもたれ掛かる!
やめろ! 俺の上に乗りかかるな! 女豹のポーズをとるんじゃねえ!」
球磨川「善吉ちゃん…大丈夫だって、大人しくして、全部のことを僕に任せればいいから」ごそごそ
善吉「な、なにをだよ!? なにをするきだよ球磨川───!!!」
「───時を操るスキル『時感作用』タイムバニー」
善吉「………え?」
「──いやはや、これには安心院さんもびっくりだぜ……」
善吉「あ、安心院さん!」
安心院「天井から失礼するよ、人吉くん……よっと」とん…
善吉「あ……安心院さん……っ!」ぱぁああ!
安心院「よしよし、怖かったねぇ人吉くん。きみの気持ちもよーくわかる」
安心院「しかし人吉くんの貞操の危機はさほど現状では問題にならないんだな、これが」
善吉「えっ…?」
安心院「うん、まあ、今この教室の時を少し止めてるんだけど───」
球磨川「」ぎぎぎぎぎ
安心院「──やっぱりきみは動くと思ったよ。流石は僕が見込みかけた男だ」
安心院「さて、完全に時を嘘っぱちにされる前に…人吉くん、ほら、逃げるよ」
善吉(螺子が触れること無く抜けていく……)
安心院「そしてきみにはやってもらいたい
ことがあるのだから、ここで間違いを起こしてもらっちゃー困るんだよ」
善吉「…やってもらうこと?」
安心院「そうとも、だがここでは出来ない相談だから、まずは逃走を図る」ぐいっ
善吉「うぉっ?!」
安心院「さてさて、どうにもこうにも儘ならないことばかりだぜ……」
ぎゅんっ!
~~~~~~
安心院「走りながらだけど、つまりどういうことかを説明するよ、人吉くん」
善吉「あががががががが」
安心院「あの球磨川禊は───正真正銘、本物の球磨川禊だ」
安心院「彼は実の所……まあ、ぶっちゃければ僕が色々とスキルで弄ってあげたんだよね あはは」
安心院「どうして、と思うかい? そうだろうねぇ、きみは彼を元の彼に戻して欲しいと願ったはずなのに」
安心院「いやはや、だからと言って不安に成らなくてもいいんだよ。
ちゃんときちんと安心院さん的にウィークポイントを残しておいたさ、やるなあ僕」
安心院「とどのつまり、彼はきみへの欲求に飢えている──それは決して認められるようなものではなく、
そして一般的に現状の関係性ではその欲求を日々耐えて行かなければならない」
安心院「それは球磨川禊という人間には───まさに拷問の日々。常日頃から心はささくれ、
筋の通った、通りすぎて筋が弓なり曲がっていた彼の自己意識は崩壊を迎え──」
安心院「──キミの前へ、女装をして現れることとなった」
安心院「可哀想にねぇ、なんていじらしいんだろう。彼は決してきみから良い返事とやらを貰うつもりはなかったらしいよ」
安心院「ただただ、きみへ自分の想いをぶつけたかっただけなんだろうと、僕は予想しているよ」
安心院「しかしそれでも、現状は打破されない。彼の想いは常に降り積もってゆくばかりだし、
その想いに踏ん切りをつけるほどに彼の強さは強くなく、そして弱者らしく諦めもしない」
安心院「ところがどっこい、僕みたいなチート女子がいたもんで」
安心院「その彼の──執拗的な根性に──横槍を入れるがごとく」
安心院「僕という存在で、彼の悩みを解決させてあげようと思ったんだ」
安心院「結論からいっちゃうけど、人吉くん」
安心院「──球磨川禊(女)を、キミの力で満足させるんだ」
安心院「そうすれば、さすればもしくは、いや完璧に、じゃなくても十全に」
安心院「彼の繋がらない想いは霧散霧消する予定にしておいたんだぜ?」
安心院「まあ、言っちゃえばそれだけの話し。無論、頑張ってくれると思ってるぜ人吉くん」
安心院「頑張れよ、それなりに応援してやっておくからさ」ぱっ
安心院「んじゃこれで。…あ、それと今回のこと解決させれば人吉くんの記憶も消してあげなくもないよ、ばいばい」
善吉「う、ううん……」
善吉「……あれ、ここは…?」
「──おや、目覚めたのかな善吉くん」
善吉「ああ、おう……なんだか悪い夢をみてたような…」
「………」
善吉「だけど、それでもちょっと柔らかくて…嬉し──って、なんだぁ!?」がばぁ!
球磨川「わあ」ぱっ
善吉「…!? …!?!?」
球磨川「やるじゃあないか、善吉ちゃん。把握能力が向上したみたいだね」
善吉「なっ…なななな! なんで俺!? 球磨川先輩とベットで添い寝してんの!?」
球磨川「……ちょっとちょっと、そんなにも毛布をめくらないでくれよ」
球磨川「……僕が今、裸なのがバレちゃうだろ」
球磨川「……」ちら
善吉「み、みせんじゃねぇええ!!!」ばばっ!
球磨川「あれ? みないの?」
善吉「みっ…みっねーよ!! 誰がお前みたいな貧相な身体をっ…!」
球磨川「………」
球磨川「『……そりゃーまぁ、僕の身体はめだかちゃんに比べてメリハリ少なくて突出部分も少ないよ…』」もぞっ…
善吉「っ……ああ、そうだな! お前みたいなお子ちゃまな身体なんて! これっぽっちもみたかぁーないね!」ちら
球磨川「『………』」くるくる…もぞもぞ…
善吉「……その、なにやってるんだ?」
球磨川「『みのむしのまね』」
善吉「…拗ねてるの?」
球磨川「『な、なわけないだろっ……ふざけるなよ、善吉ちゃん。僕だって怒ることもあるんだからね、言って良いことと悪いことを考えろよ』」
つぅーかみのむしって、それ毛布が体全体に巻き付いてるだけで、体のラインが浮き彫りになって逆にエロ──)
善吉「──げほっこほっ、んんッ!」
球磨川「?」
善吉「あー……えっと、球磨川先輩?」
球磨川「『…禊』」
善吉「はい?」
球磨川「『禊って呼んでほしいなー……僕』」
善吉「い、いい…嫌だ!」
球磨川「『じゃあこの格好のままに、全力で全身全霊をかけて叫んでやる』」
善吉「それだけはやめてくださいお願いします」
球磨川「『じゃあ呼んでよ、禊ってさ』」
もぞっ…
球磨川「…だめ?」ちら
球磨川「……」じっ
善吉「っ……あ……ぐっ……」
善吉「……その、えっとっ………」
善吉「…………み、禊…」ぼそっ
球磨川「っ~~~~~~!!」ぱぁああ!
球磨川「も、もう一回言って!」
善吉「禊……」ぽりぽり…
球磨川「~~~!! も、もう一回……」
善吉「だ、だめだだめ! もう言わないぜ! デビル言わない! そう決めた!」ぷいっ
球磨川「『えー……なんだよそれ、善吉ちゃんが恥ずかしがる顔が見れないだろー』」
善吉「っ…! そっちかテメーの狙いは!」
球磨川「『あははー! 善吉ちゃん顔真っ赤だぜ?』」
球磨川「えっ? あ、いやっ…そ、そ『そんなことないだろ、何を言ってるんだよ善吉ちゃんは』」もぞっ!
善吉「いーや! お前のほうが顔が赤かったぜ! この目は嘘を付けねえからな!」
球磨川「………」
善吉「ほらほら~? どうした、んん? 毛布に顔隠してないで、しっかりこっちに見せやがれって」
球磨川「『ば、馬鹿だろ善吉ちゃんは。こんなこと女の子にするなんて、本当に最低だぜ』」
善吉「別にいーじゃねえか、あはは…なんか知らねえけど俺も段々と慣れてきたようだ」
球磨川「『………』」
善吉「そうだ、そうなんだ。別に女の姿だからって、球磨川禊って人間に変わりはないんだ」
善吉「…俺のほうが常に強気であれば、どうにか切り抜けられる問題ってことだろ! カッ! ひよってかっこ悪いぜ俺!」
球磨川「『……なあ、善吉ちゃん』」
善吉「なんすか球磨川せんぱーい?」
善吉「あー? きこえないっすよ、もっと大きな声で言ってもらわないとさ~」
球磨川「…ねえ、ちょっとこっちきてよ善吉ちゃん」
善吉「あ?」
球磨川「上手く聞こえないんでしょ? じゃあもうちょっと此方においでよ」
善吉「いいっすけど~、まあかったるいんで、長いこと喋るのやめてくださいねほんっと」すた…
球磨川「……」
善吉「んで、なんすか? 早いとこパパっと喋っちまって───」
球磨川「えーいっ」がばぁっ!
善吉「──んぁああっ!?」
ばさあ……
善吉「え、急に毛布の中に引きずり込まれ………て……」
球磨川「……」
善吉「……は……」
球磨川「…そんなに見るなよ、恥ずかしいだろ、もう」
球磨川「おっと、欲視力で僕の視界にしたって無駄だぜ?」すっ
善吉「ぶはぁっ!?」
球磨川「──ようは僕が自分の体を見ればいいって話だろ?
どうだい小ぶりだけど、中々綺麗なおわん型をしてると思わないかな?」
善吉「くっ……」キュウン…
球磨川「ん、それでいいんだよ善吉ちゃん」
善吉「……アンタ、一体俺に何をしたいんだよ」
球磨川「え? 特に何も?」
善吉「……」
球磨川「しぃーて言うなら…そうだね、まさに今。って感じかな」
球磨川「──球磨川禊は、今の現状を今まで散々に砕け散るまでに」
球磨川「待ち望んで、欲して欲していたんだろうね、あはは善吉ちゃん!」
球磨川「禊」
善吉「……禊」
球磨川「えへへ、なにかな?」
善吉「その…その、アンタはどうして……そこまで…」
球磨川「………」
善吉「お、俺のことを……俺のことが───」
がらり!
球磨川「!」
善吉「!?」
「───失礼する、ここに生徒会役員の人吉善吉書記がいると聞き…」
めだか「…来たのだが、ふむ」
球磨川「…しぃ、静かに」
善吉「!? !?」
球磨川「…今、僕達がかぶっている毛布の存在感を嘘にしたから。
いくらめだかちゃんでも中にはいってる僕達には気づかないはずだよ」
善吉(そ、そうじゃねえよ! 抱きついて! アンタ抱きついてるから俺に! ふ、膨らみがががが!)
球磨川「あ、ちょ……だめだって、ば…善吉ちゃんっ」
めだか「?」
めだか「…今声が聞こえた気が」すた…
球磨川「………そんなに欲しいの? 別にいまじゃなくっても、あ! そういうスリリングが欲しい感じ?」
善吉(ちっげえええええええよ!!)
めだか「…この辺か」
シャアアア…
めだか「──失礼する、突然開け放って済まないが…」
めだか「む?」
めだか「……誰もいないな、おかしい。確かに声が聞こえたはず」
善吉「っ……っ……」
めだか「? ?」
球磨川(『まさかめだかちゃんも、天井に張り付いてるとは思わないだろうね。
いやはや、螺子で毛布ごと天井を突き刺す音を嘘にすればの簡単なことだったけれど…』)
球磨川(……いや、マジで怖かった)
善吉「っ…」ちょんちょん!
球磨川(ん、どうしたの善吉ちゃんそんなに暴れてさ……あれ? 螺子、外れそうになってない?)
善吉「っ……っ…」こくこくっ
球磨川(わお)
善吉「っ……わお、じゃねーよ! ばか!」
球磨川&善吉「あ」
びりっ! びぃいいいいいいいいいいい!!
どっしゃああああああああん!!
善吉「けほっ…! こほっ…! あ、いやいやいや!
違うんだめだかちゃん! これはそういったことじゃなくて!」
「──男らしい間抜けな弁解をしてないで、さっさと逃げてくれないかな人吉くん」
善吉「へ…?」
安心院「本当に世話の掛かる主人公だ、それでもハーレムを作ろうとした身なのかい」
善吉「安心院……さん?」
安心院「そうだよ、安心院さんだ。だけど、悠長に自己紹介を四回目する暇はないんだぜ」
がががががががが!!
安心院「──今僕の『僕』たちがめだかちゃんを止めてるから、はやくここから出るんだ」
善吉「と、止めてるって…?」
安心院「いいから早く、彼女は既に事の半分を闘いながら把握しつつあるよ」
善吉「!?」
安心院「もって後……二秒かな、僕もご参加願えるなら───十二時間持たせてあげよう」
安心院「だけど、言うなれば……あ、ちょっと待って。ん、そうだね…じゃあ次は腕を飛ばそうかな」
善吉「アンタ今不吉なこと言わなかったか!?」
安心院「違う違う、今のは僕の分身に向かっていった言葉で。特にそういった意味合いは……あちゃー、バレたか」
善吉「ば、バレた…?」
安心院「うん、バレたぜ人吉くん。こうなれば箱庭学園じゃ行えないなあ、うん、じゃあ次のステップに行こうか」
安心院「そこで頭を打って伸びてる球磨川くんに服を着させて、外に連れ出すんだ」
安心院「デートコースはこちらで用意しておく、気兼ねなく楽しみ給え」
安心院「ではこれで、ああ──ちょっとまってくれめだかちゃん、こっちをそんなにも睨まないでくれると嬉しい」
安心院「平気さ、今の現状はさらに楽しいことになりつつある──あはは げらげら …な?」
ががががががががががg!!
善吉「っ……一体なんだっていうんだよっ! くそっ!」だっ
善吉「──行くぞ禊! とりあえず服の調達だ!」だだだっ
善吉「……」
球磨川「僕、こういうところ来るの実は初めてなんだよ」
善吉「…そうか」
球磨川「善吉くんは以前、来たことある感じ?」
善吉「うん、まあ…それなりに」
球磨川「そっかー、それじゃあそれなりに甘えさせてもらってもいいかな?」ぎゅっ…
善吉「…おう、エスコート任せろ」
球磨川「うんっ!」
~~~~
赤「はいこれ?」
善吉「え、これって…女の子の服?」
赤「そう、これきてさっさと箱庭学園からでてってくれたら」
球磨川「おー」
赤「…本当に女の子になってるのね?」
赤「……」
球磨川「『?』」
善吉「い、いいから服を着てくれ…! 毛布だけじゃ、さっきから眼のやり場に困る!」
球磨川「はーい」
赤「…あとこれペアチケット」
善吉「…ペアチケット?」
赤「そう、あとは任せたわよ。本当に箱庭学園無くならないうちに」
善吉「わ、わかった」
~~~~~~
善吉「…はぁーあ、なんだかとんでもねぇことになってきたんじゃねえかこれ…」
球磨川「あはは、おーい! 善吉ちゃーん!」ぶんぶん!
善吉「……」ふりふり
善吉(球磨川の奴はメリーゴーランドでお楽しみ中だし……なんか、俺、すごいことやってるんじゃねえのか)
球磨川「──あー、意外にも年甲斐なく楽しんでしまったぜ。ふぃー」
善吉(全力で楽しそうだ…)
球磨川「善吉ちゃんは乗らなくてよかったのかい?」
善吉「え? いや、俺はいいんで…」
善吉(全然楽しむ余裕がねえよ……)
球磨川「………」じっ
善吉「えっと、なんすか? 俺の顔見つめて…」
球磨川「……むー」ぷくぅー
善吉「っ」
球磨川「…善吉ちゃん、ぜんぜん楽しそうじゃないじゃないか」
善吉「…それは、まあ」
球磨川「どうして?」
球磨川「そうなのかい?」
善吉「ええ、だからというのも言い訳っぽく聞こえますけど。
あんまり女子と二人で楽しむ遊園地ってのも、その……苦手つーか」
球磨川「それはそれは寂しい人生を送ってきたんだね、善吉ちゃん」
善吉「………」
球磨川「『でも、僕は違うんだろ?』」ぐいっ
善吉「えっ…?」
球磨川「『正直な善吉くんのことだから、まだまだ僕のことを掛け値なしに女の子と見てないきみなら』」
球磨川「『──この僕のことを、うまい具合にエスコートできるんじゃあないかな』」
善吉「べ、別に俺はそんな事思って…! だから、球磨川せんぱ……あっ」
球磨川「……くす」
球磨川「ほらほら、行こうぜ善吉ちゃん。楽しい時間は待っててくれないんだぜ?」
球磨川「そら、早く」くいくい
善吉「あ、うん……」
すたすた…
ジェットコースター
球磨川「うひゃー! 高いよ凄いよ善吉ちゃん!」
善吉「お、落ちる落ちるっ…もう落ち───」
球磨川&善吉「──うわぁあああああああああああああああああああ!!」
コーヒーカップ
球磨川「あはははははは!」ぐるぐるぐる
善吉「おぇっ……おぇええええええ!!」
射的
球磨川「螺子で捻り飛ばしたほうが良くない?」
善吉「だ、駄目だ! 俺が取りますからおとなしくしててください!」
善吉「っはぁー…っはぁー…デビル疲労感ッ…!」くたー
球磨川「くすくす」ニコニコ
善吉「はぁ…その人形、そんなにも取れて嬉しいですか」
球磨川「うん!」
善吉「…そうっすか、それなら取った方もまんざらでもないですね」
球磨川「『いやはや、すげーぜ善吉ちゃん。射的のセンスが合ったなんて、見なおしたぜ、チューしていい?』」
善吉「…やめてください、冗談は」
球磨川「お? 流石に気づき始めたようだね」
善吉「ええ、まあ……アンタの口調とトーンで括弧つけてるパターンがあるって」
球磨川「やるねぇ、流石は僕が惚れた男だ」
善吉「…素直に受け止めておきます」
善吉「……今日は、楽しかったですか」
球磨川「うん? 当たり前に決まってるだろ、馬鹿言うなよ善吉ちゃん」
球磨川「きみと過ごせる時間は全て、喜怒哀楽が全てさ」
球磨川「本当に飽きさせない人間だよ、善吉ちゃんってさ~」
善吉「…そりゃ、良かったです」
球磨川「どうして? あはは、別に善吉ちゃんが気にすることじゃないだろ?」
善吉「……そうかもしれない、けれど」
球磨川「?」
善吉「俺は、アンタの……その、貴方の……」
善吉「っ……貴女の想いを、ちゃんとわかってるのかなって…思って」
球磨川「………」
善吉「俺は……そういうの、わからないんですけど…やっぱり」
善吉「苦しかったんですか? 自分だけの想いにして、ひた隠しにしてた現実は…」
善吉「貴女にとって、重くて苦々しいものだったんですか…?」
球磨川「………」
善吉「……言いたくなければ、答えたくなければ別に、いいです」
善吉「というか答えたくないでしょうけどね、俺に対する悩みですし──」
球磨川「『それは…』」
善吉「………」
球磨川「『…ううん、そうじゃあないな』」
球磨川「──それは、そうだよ。苦しかったさ」
球磨川「どうして僕はこうなんだろうと、今ある現実は一つなのに。
なのにどうして僕はここまで──苦しんでいるんだろうと」
球磨川「体が不死身であっても、性格が捻れていても、質がマイナスだったとしても」
球磨川「努力が嫌いだったとしても、天才や秀才を嫌悪していたとしても」
球磨川「人として大事なものが大きく欠けていた人間でさえも───」
球磨川「───人を心から、好きでたまらないと感じてしまうんだと」
球磨川「僕は、それに気づいてしまったんだぜ、善吉ちゃん」
善吉「……そうなんですか」
球磨川「そう、だからきみがそこまで重く受け止める必要はない」
善吉「……」
球磨川「差し出された役割を最後まで演じ続ければいいだけ──それでオシマイ、全て解決だ」
球磨川「それが善吉ちゃん、『正しい選択』なんだよ?」
球磨川「ふぅー、本当にきみは人のためにならなんだってしそうだから恐いよね」
善吉「…俺は別にそこまでの人間じゃ」
球磨川「人のために死を選ぶほどなのにかい?」
善吉「……」
球磨川「あれは痛かったよね、ハブハブ、マジで死んじゃうかと思った」
善吉「ええ…アレは痛かった」
球磨川「だけどね、善吉ちゃんの前蹴りのほうがすごかったよ? 肋骨バッキバキだったし」
善吉「…よく言うよ、アンタの螺子だって肺を突き破ってたぞ」
球磨川「あはは、でもちゃんと無かったことにしたじゃあないか」
善吉「あの時の痛みとトラウマは忘れようがないんだが…」
球磨川「そうなのかい? あ、だったらそうだね、あの時の───」
善吉「ええ、いや! あれはアンタが────」
球磨川「けっこうお喋りしちゃったね、どうする?」
善吉「そうだなぁ…とりあえず最後になにか乗るか?」
球磨川「うん、乗りたいね」
善吉「だけど大半の乗り物はもう……あ、あれがあったぜそういえば!」びしっ
球磨川「おー」
善吉「───観覧車、最後に乗って行こうぜっ?」
観覧車
球磨川「『い、意外と高いなぁ。どうしてくれよう、いや、僕としては別に高い所は平気なんだけどさ』」
善吉「声がぶるっぶるだぞさっきから…」
球磨川「『そ、そんなわけないだろ! ばか! ばか善吉!』」
善吉「はいはい…」
球磨川「『あれは……その、まさに燃える闘士で周りが見えてなかったというかね』」
善吉「本当の所はどうなんだ?」
球磨川「………」
善吉「顔見れば一発とか凄いな」
球磨川「…イジワルなことはしないでくれると嬉しいな、僕は」
善吉「すみませんでしたー」
球磨川「よろしい、あはは」
善吉「…カッ」
球磨川「……なんだかあれだね、こういった話とか、普段の僕らなら地球が滅んでもしなかっただろうね」
善吉「まさにその通りとしかいいようがないぜ」
球磨川「死んだって認め合おうともしなかったくせに、なんていうか、神様は残酷だって思った」
球磨川「───善吉ちゃんと観覧車にも乗れないなんて、残酷だよ」
善吉「……別に乗ればいーじゃねえか」
球磨川「え?」
善吉「色々と終わって、すっきり片付けて、それからまた一緒に乗ればいいだろ」
球磨川「…でも、それは」
善吉「何か悪いってのかよ。別に悪い要素一つもないだろうが」
球磨川「………」
善吉「思うんだがよ、つかマジで本音ぶっちゃけると、今回のことで重く受け止めてるのは……その…」
善吉「…禊のほうじゃねーかっ」
球磨川「っ……」
善吉「俺よりも禊、だろ……色々と深く悩んじまってるのは」
球磨川「この思いが! どれだけの人を不幸にするか考えてもみればいいッ!」
善吉「…だからって、禊の想いを無くしてもいいのかよ」
球磨川「詭弁だね、そんな事を言えば誰もが不幸になるだろ」
善吉「……あーそれだ、不幸不幸、それだよ禊」
球磨川「………」
善吉「そこが俺が一番気になってたことだな。禊みたいな奴が、どうして人の不幸を心配するんだ」
善吉「──お前みたいな人間が、立派に生きようとするから間違いなんだ」
善吉「なにらしくないことやっちゃってんの? カッ、わらえねーぞ」
善吉「球磨川禊って奴は、俺が知っているそんなマイナスな奴はよ!」
善吉「人にどうこう言われたことを、他人にとやかく言われたことを」
善吉「──いちいち気にして生きてきた奴だったか? 違うだろ?」
善吉「事実、その通りだったろうが。例えそれが禊の括弧つけだったとしてもだ」
善吉「禊自体の根本的なマイナスは──絶対に変わらねえ、それは今までの経験で事実として語れるよな」
善吉「それなのに、お前はその根本を…馬鹿みたいに他人のために変えようとしちまってる!」
善吉「…それなら苦しいはずだぜ、変われないことを消せないことを無理やり消そうと努力してたわけだろ?」
善吉「その努力を……俺のためにしてたわけなんだろ、禊」
球磨川「それはっ……それは……」
善吉「んだよ、言ってみろ正直に」
球磨川「『…それは違うよ善吉ちゃん、きみがこの小さな観覧車で言い放ったことは』」
球磨川「『大半が間違いで、ミスだらけの回答だよ』」
球磨川「『馬鹿言っちゃいけないよ、僕がどうして努力なんてしなきゃいけないんだい?
ふざけるなよ、いやふざけてないからこそ僕は苛ついているのかもしれないね』」
僕は色々と昔の自分とは変わった事は自覚してるつもりだし、だから素敵なアドバイスをひとつきみに送るよ』」
球磨川「『──マイナスな人間を理解しようとするのは、時間と青春の無駄だよ?』」
球磨川「『事実、きみも経験してるじゃあないか。僕達マイナス十三組が関わったことによって。
まったくもって高校生活の貴重な時間が無駄に浪費されてしまったことを』」
球磨川「『僕らという存在がなかったのなら、決してあの夏休みはもっと良い青春を遅れたはずだったのに』」
球磨川「『僕らマイナスと関わったばかりに、かかわり合いを持ってしまったばかりに』」
球磨川「『きみらの大切な時間を根こそぎ奪ってしまったじゃあないか』」
球磨川「『忘れてはいけないよ、これは本当にあったことなんだ。
だから善吉ちゃん、きみはきみの楽しい時間を過ごしていけばいいんだよ』」
球磨川「『なにも人生をマイナスにする必要な無いんだ、だからこそ、これからはプラスに生きて向上心を上げ続ければいいんだ』」
球磨川「『そうなれば、もはや時の流れによって加速されたプラスは留まることを知らず───』」
球磨川「『──善吉ちゃんを悪くない方向へ持っていくはずだから』」
球磨川「『だとすれば、ほら、僕もこのセリフを言えるだろう?』」
球磨川「『僕は悪くない』」
球磨川「『理解してくれとは言わないよ、優しい善吉ちゃんのことだ、理解も何もちゃーんと把握してると思ってる』」
球磨川「『だからさ、そうやって僕に優しくするのはもう……やめろよ』」
球磨川「『迷惑だからさ、こっちも』」
善吉「……───」
善吉「──そっか!」
善吉「なるほどな、うん、わかった。確かにお前の言いたいこと、よーくわかったぜ」
善吉「じゃあ最後に、観覧車も今が頂上間近だし」
善吉「お前に向かって言う言葉も、これがラストにしてやろうじゃねーか」
球磨川「『うん、なにかな?』」
善吉「おう! なあ禊、ひとつ言いたいんだが───」
善吉「───ちょっと括弧つけずに、『』付けづに言ってみろ」
善吉「──聞いててやるぜ、ちゃんと最後までな」
「 『……』 」
「 『』 」
「────好き」
球磨川「──好き!! 善吉ちゃんのこと大好きで大好き!!」
脳みそがからっぽになってしまうんじゃないかって! 善吉ちゃんのことだけが頭の中いっぱいで!」
球磨川「なにもかも自分のステータスを捨て去ってもいいぐらいに!!」
球磨川「この好きって想いを大切にするためになら、努力だって天才にだって頼って!!」
球磨川「惨めで弱ったらしく、汚れた心のままただひたすらに君のことを思えるように!!」
球磨川「ずっと好きでいたいんだよ! 例えそれが悪かったとしても!!」
球磨川「多大な人を不幸にしたって!! そうだったとしても僕は……!」
球磨川「僕はっ…きみを、善吉くんをっ……好きで、好きでありたかったんだよぉっ…!」
球磨川「ぐしっ…それの何が悪いんだよ! 僕が人を好きになっちゃだめだっていうのか!?」
球磨川「僕だって人間だ! 人だよ! 恋する男子だ!!」
球磨川「それなのにっ…僕は、それがっ…!」
球磨川「ダメだって……知ってるから…!」
球磨川「僕は……悪いやつだってことを、しってしまったからっ…!」
球磨川「……もう、後戻りは…できないんだよっ……」
善吉「──おっと、それまでだぜ」ぎゅっ
球磨川「ふぇっ…?」
善吉「そこまでだって言ってるんだ、禊」
善吉「…そこからは、その言おうとしていた言葉は───」
善吉「──お前にとって、マイナスにしかならないからな」
球磨川「どういう、こと…?」
善吉「言ったよな俺は最後まで聞いてやるって。
そしてそれにお前は答えてくれた、堂々と、自分の中で燻らせていたその…」
善吉「…俺への想いを、そのプラスを、きちんと話してくれた」
球磨川「ぷらす…?」
善吉「ああ、そうだぜ。だけど、そんな自分のプラスを…否定しようとしたろ、お前」
善吉「だったらそれは、ただのマイナスだ。んなもん、言わせるかよ俺が」
善吉「違う、プラスだ」
球磨川「わからずやっ……違うって言ってるだろ!?
僕がかっこつけずに言ったことは、醜くてどうしようもなくて、最低で…!」
善吉「それのどこがマイナスだ、馬鹿言うんじゃねーよ」
善吉「それはプラスなんだよ禊、何度だって、いくらだってお前に言ってやる」
善吉「それはマイナスじゃねえ! プラスだ!」
球磨川「っ…じゃあどうしてそんな事を言えるんだ! プラスだと! どうしてそれがいいことだって言えるんだよ!」
善吉「そんなの俺が喜んじまってるからに決まってるだろッ!!」
球磨川「……え」
善吉「い、言わせるなよっ…こんなこと! そうとしか言えねーだろうが!」
善吉「お前が言ってくれた言葉全部! 俺のとっちゃー……なんだその、あれだよあれ! 嬉しかったよばーか!!」
括弧付けずに言ってみろよ
善吉「はぁっ…はぁっ…んだよ、なんか言えよっ」
球磨川「う……うれしかったの?」
善吉「そ、そーだよ何が悪い!? 嬉しかったよ、色々とデビル複雑だぜ全く!」
球磨川「う、うん……だ、だけど」
善吉「……わーってるよ、それってつまり、さっきの告白は───」
善吉「───女の体だからの告白ではい、と言いたいんだろーが」
球磨川「…………」
善吉「今更だろ。もう最後まで正直に話せって」
球磨川「っ………」
球磨川「……うん、その通り…だよ」
球磨川「だけどっ……それなのに、善吉ちゃんはっ……僕の言った言葉を…?」
善吉「ああ、プラスだと言ってやるよ」
善吉「そしてコレも言ってやる、俺が言うのも何だけどな」
善吉「お前は悪くない」
善吉「まったくもって、何一つお前は悪くない」
善吉「それを俺が、お前に言ってやるよ禊」
球磨川「っ……っは…ぜん、きちっ……ちゃん……」
善吉「…おいおい泣くなよ、もっと辛くなっちまうぞ」
球磨川「だ、だめ…泣いちゃうよ…僕、本当にこれ…感じたことのないぐらいに胸がいっぱいで…っ」
善吉「大袈裟だって、もうちっと落ち着け」なで…
球磨川「ふぁ…」
善吉「な?」
球磨川「…うん」
善吉「…色々と、考えなきゃいけないことあると思うけどよ」なでなで…
球磨川「……」
善吉「大丈夫、へーきへーき! 俺が最後までちゃんと一緒にいてやるよ!」
善吉「…バレたか」
球磨川「バレバレだぜっ……でも、嬉しいよ…うんっ!」がた…
ぎゅうう…
善吉「おっとと、急に抱きつくなよ…!」
球磨川「『いやいや、ここは抱きつく場面だぜ…っ?』」
善吉「…ボロボロと泣きながらカッコつけられても、正直なぁ」
球磨川「あははっ…そりゃあ止まらない…よ、あれだけの……大切な言葉を…」
球磨川「僕に向かって、言ってくれたんだからね……?」ぎゅう…
善吉「…そっか、がんばる」
球磨川「うん…頑張ってくれ、僕も……また頑張るからさ」
善吉「おう、楽しみだぜ…禊の頑張りとやらを───」
球磨川「んっ」
ちゅっ
善吉「っ~~~~!!? ッ!? ッ!?」
球磨川「んーーーーーーーーーーー」
善吉「っ! っ! っ!」
球磨川「んっんっんっ!」
善吉「っ───」
球磨川「『…ぷはぁ、よし頑張った!』」ぐっ
善吉「」
球磨川「『しかしキスっていうものは正直な所、非常にやりにくいなあ。
何度も前歯が当たるし、口内の状況を確かめようにも食いしばってちゃ無理だし』」
善吉「」
球磨川「『まあそうだったとしても──』──やっぱり、嬉しいなあ!」
球磨川「あはは、どうしよう嬉しくて楽しくって本当に幸せなのに───」
「───そういう終わり方なんだぜ、球磨川禊くん」
球磨川「うんっ! わかってるよ、十分さこれで!」
善吉「ハッ!?」
善吉「こ、ここは……教室?」
「そういうことになるね、そして五度登場───」
安心院「安心院さんだぜ、よっと」すとん
善吉「安心院さん!」
安心院「いぇーい! もう物語も終りに近いし、目立ちに入っていくよ」
善吉「そ、そうなんですか…?」
安心院「まあね、キミには関係ないことだからね。つまるところ忘れてくれていい」
善吉「は、はあ…」
安心院「はてさて、どうやら無事に終わったようで心休まるばかりだよ。
途中で何度も遭遇しそうになっためだかちゃんを遠ざけるのに骨を折ったよ、物理的に」
安心院「すぐに治ったから別に平気だけどさ! いぇーい☆」ぴーす
善吉(あれ? なんだ、さっきから何か…忘れてるような…?)
安心院「ああ人吉くん、それは大丈夫だよ、今キミが思い出そうとしていることは…」
安心院「…いずれきちんと脳内から抹消されるはずだから
──記憶のスキル『記憶操失』メモリーソート──実に万能なスキルだからね」
善吉「………」
安心院「しかし、それでもキミの中にある──実は不確定用のものがさ」
安心院「彼の事実を憶えている可能性があるんだよね、これまた不思議なもんで」
安心院「人は一般的にこう呼ぶんだろうね……それは『心』というもの」
安心院「例え記憶から完全に抹消したとされても、それを思い返させる媒体が脳に残ってないとしても」
安心院「やっぱりそれは、スキルでさえも消し得ない絶対的な『想いの強さ』というものが存在し得るんだ」
安心院「だけど僕は抜かりなくこの計画を立てたつもりだ」
安心院「心? 想いの強さ? くっく 笑わせるなよ、笑ったけど」
善吉「………」
安心院「見事だったと思うよ、人吉くん。キミが成し遂げた一人の人間の変化…」
安心院「…単純な言葉だけでは決してなりえなかっただろうね、
その強さと根性と、そして類まれぬ勇気が彼というマイナスをほんの少しだけプラスにしたんだ」
安心院「人吉くん、きみは誇っていい。死を持ってしても変われないと謳われた彼を───」
安心院「───たったひとつのキスで、変えたんだよ結局は」
安心院「惜しみない拍手を送るよ…」
安心院「…あ、僕の腕折れてたんだった。じゃあ口で言おう、ぱちぱちぱち」
安心院「そして治すと、うんおっけいおっけい」
安心院「更にそしてついでとばかしにぃ? その心に残るやも知れない想いも──」
安心院「──粉々に消し飛ばしておこうかな」
安心院「一目惚れさせるスキル『私だけの凹滋様』カルチャーショックネーム」
安心院「つまり球磨川がキミに好意を寄せてたのはこのせいだよ げらげら」
安心院「──はは、これまた色々と考えさせられるスキルだと思わないかい?」
安心院「例えばマイナスがプラスに惹かれるとすれば」
安心院「…このスキルを使えばマイナスは他の誰かに惹かれる場合もあるんじゃあないかって話だよ」
安心院「そして成功、僕ってやっぱり天才だね」
安心院「はてさて、どうだい、この覆しようもない事実というものは」
安心院「───きみの中にある、その強さと根性と類まれぬ勇気を……」
安心院「…見事に断ち切る、無残な言葉だと思わないかい?」
安心院「ふむ、どうやら効果は抜群のようだね。思ってもないほどお絶大な浸透力だぜ」
安心院「時期にこの世界も閉じて、この物語も終焉となるだろう」
安心院「事実、この世の全ては変わること無く。
ことさらに激化していく物語に支障をきたすことはないのだから」
安心院「一夜だけの華麗に輝く物語───楽しんでいただけたかな?」
安心院「それでは『僕』たち、また来週にでもお会いしようじゃあないか」
ぷちんっ!
「『───そう簡単に、終わらせるかよ…』」
「『───なにが一夜限りの物語だっ…んなこと、勝手に言わせてたまるかよ…!』」
安心院「………」
「『なあ安心院さん! 俺はアンタにひとつだけいいたいことがある!』」
「『そんなうそっぱちのスキル! 誰が信用するかよ!!!』」
「『大した捻りもねぇ、馬鹿みたいに頭固い野郎が一時間頑張って考えたような名前が!』」
「『本物の訳がねえだろ! わかってんよそんぐらい! カッ!』」
安心院「…おやおや、マイナスだねえ。この僕の言葉を信用しないとは」
安心院「だがそれを蔑にし、茶番とも断言できるこの醜い助演を行おうとでも言うのかい?」
「『──そうだねぇ、安心院さん』」
「『確かに貴女の言う通り、僕らが無駄に伸ばすこの時間はただの無粋にしかならないよ』」
「『だけどね、安心院さん』」
「『だからどうしたっていうのかな?』」
安心院「……」
「『無粋に続き、邪険に扱われ、無音に終わる』」
「『これこそが僕たちが紡ぐ〝マイナスな物語〟───つまり…』」
「『…過負荷な物語なんだぜ?』」
「『だけど、それは確かにそこにあるんだ』」
「『例え誰一人として俺たちのマイナスを見てなかったとしても!』」
「『しかしながら、僕たちという物語はそこにあったんだ』」
「『ふざけんじゃねーぞ、そう簡単に終わらせるかよ!』」
「『最後までどうかあがいて見せようじゃあないか』」
「「『『アンタが作った物語は、全て! フィクションで終わらせてやる!』』」」
安心院「………」
安心院「…こりゃまいった」
安心院「……思うにきみたち、あれかな」
安心院「つまり、この物語は以前として───」
~~~~~
球磨川「ばかー!」だだだ…
善吉「……」
善吉「……何だったんだ、一体全体…」
「───いやはや、なんともおぞましくも面白いことに首を突っ込んだねぇ…人吉くん」すた
善吉「この声は……安心院さん!」
安心院「やあ、お久しぶり」
善吉「お久しぶり? いや、さっきの時間に廊下であったじゃないですか」
安心院「おっと、そうだったね。これは失敬、忘れてくれよ人吉くん」
善吉「は、はあ…」
安心院「それよりも、そんなことよりも…なあなあ、なにがあってこうなってるんだい」
安心院「ちょいとこの安心院なじむさんに、ご相談しては如何かな?
善吉「そうなんですよ…いやね?
俺が思うにあの人、どっかで頭を打ったか殴られたかしたと思うんです」
安心院「それはどうかな、彼は当たり前に不死身で頑丈で卑屈な男なんだよ?」
安心院「彼のようなマイナスな人間は死を経験するほどのものでない限り──
おっと、死という概念すら彼には生ぬるかった、これは安心院さんも失念失念…」
善吉「確かに、あの人不死身でしかも死ねないですしね…」
安心院「それはさておき、人吉くん」
善吉「なんですか?」
安心院「僕が思うにね、こういう事情ってものは結構いとも簡単に解決するもんなんだよ」
善吉「本当にですか!? 本当に解決できるんですか安心院さん!?」
安心院「くっく、必死だねぇ…それほどまでに嫌悪してたのかい?
これは流石にあの球磨川くんだったとしても可哀想になってくるよ」
逃げられてしまったら、その…欠片も思わないことは、無いですけど」
善吉「俺は…今までの、球磨川先輩のほうが…断然いいです!」
安心院「…ふむ、確かにキミの言ってることも一理ある」
安心院「あのような球磨川くんは見てて楽しすぎて腹が捻じれ千切れてしまいそうになるけれど」
安心院「僕という存在が一度は認めかけた、そして期待しかけた人間だから」
安心院「彼という人間性をどうにか元に戻したいという気持ちはあるんだよね」
善吉「ほ、本当ですか…!?」
安心院「ああ、安心していいよ人吉くん(安心院さんだけに)」
安心院「───キミの抱えている、後生大事に腹の奥底に抱えているその思い……」
安心院「この安心院なじみが、どうにかしてあげようじゃあないか げらげら」
善吉「待った!」
善吉「待ってくれ……いや、違うな言い方が違う」
善吉「『ちょっと待ってくれないか、安心院さんよう』」
安心院「な、なんだい…その喋り方は?」
善吉「『え? わからないのか? そりゃこまったぜ、アンタが一番知っているもんだと思ってたが』」
善吉「『いやー、まあいいや。それよりもちょっと聞きたいことがある』」
安心院「…い、いいよ。なんでも安心院さんに聞くがいいさ」
善吉「『アンタ、俺の前に何回目の登場だ?』」
安心院「っ!」
善吉「『教えてくれ』」
善吉「『安心院さん、俺という存在に対して───』」
善吉「『───この物語にいる俺という存在に対して、一体全体何回目の安心院さんなんだ?』」
善吉「『さあ? 俺にもわっかんねーけど、どうにもこうにもしっくりとこないんだ』」
善吉「『まるでシナリオどおりに進めべきだったものを、途端にやめてしまったような』」
善吉「『見ていたかった映画を途中で変えてしまったような』」
善吉「『買っていた犬が死んでから猫だと気づいてしまったような』」
善吉「『恐ろしく取り返しのつかないことのはずなのに、だけどそれを望んでしまっている俺がいる』」
安心院「っ……つまり、それは?」
善吉「『俺はここで、嘘をつかなきゃいけない気がするんだ』」
善吉「『物語自体を大きく変換させてしまうほどの、大きな大きな──』」
善吉「『───大嘘憑きを』」
安心院「──却本作りで、自分と同等のマイナスにしてやがったな!」
安心院(しかしなぜ、この時間帯の人吉くんは未来の終わった人吉くんとは別人!)
善吉「あっ……そうか…」
安心院(じゃあどうして彼がマイナスにっ…? 何処か見落とした所は───)
安心院「あっ……僕?」ころ…
安心院「……。あっはは、コレは参った。本当に本当に、無粋にもほどがあるだろ球磨川くん!」
安心院「『僕』という存在に却本作りをしやがったな!」
安心院「そして僕が人吉くんに関わる時、その瞬間発動するよう計算しておいて!」
安心院「あはははははは! どうしてそんな微細な調整ができるんだい」
安心院「本当にきみはどうしようもないやつだよ、とんでもねえやつだ」
僕が人吉くんがマイナスになることを、この瞬間に望むようにセットしていた!」
安心院「くっく、すげーぜ尊敬するぜマジでぱねぇよ球磨川くん」
安心院「……」
安心院「……で? どうなんだいマイナスの人吉くん?」
善吉「『………』」
安心院「そろそろ、何だか色々と思い出してきそうなんじゃあ無いのかい?」
善吉「『…確かに』」
善吉「『面倒くさいぐらいにややこしい感情が、どろっどろ俺の中に入り込んでくる』」
安心院「そうだろうねぇ…彼が僕に仕掛けた却本づくりは……」
安心院「あの時の、不幸に散った球磨川禊のステータスなんだからねぇ」
安心院「その却本をそのままキミに渡してしまったんだ、無意識に、いや自意識にかもしれないねぇ…くっく」
安心院「さて、僕の物語はたったひとつの思い入れに『なかったことに』されたワケだけど───」
安心院「───これからどうしたい? 人吉くん?」
善吉「『…そうだな、安心院さん』」
善吉「『とりあえず、俺が貴方に言いたいことはただ一つだけだ』」
安心院「げらげら 一体それはなんだい?」
善吉「『ああ、言わせてもらう』」
善吉「『──これから大事な奴と会うんだ』」
善吉「『めだかちゃんの移動範囲の制限、あと遊園地のチケットをもらおうじゃねえか』」
安心院「女体化スキルはいらないのかい?」
善吉「『カッ! ……馬鹿言えよ安心院さん』」
善吉「『俺の』……いや、俺のあの時の気持ちは」
善吉「なにがあろうと、なかったことにはできねーぜ!」
その二つを使ってイチャイチャさせたら可愛いかなっと思って書いた
ただただ、それだけなんだぜ
支援ありがとう
うんこして寝る
おもしろかった
Entry ⇒ 2012.10.03 | Category ⇒ 版権物SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
咲 「県予選で大将だった四人でお酒を飲みに来ました」
店員 「いらっしゃいませ~」
咲 「予約していた宮永ですけど席はどちらでしょうか?」
店員 「宮永様……はい、幹事様は池田様ですね?もう揃われてますから一番奥の席へ進まれて下さい」
咲 「ご親切にありがとうございます」ペコッ
店員 「宮永様、…神域杯優勝おめでとうございます」
咲 「いえいえ組み合わせに助けられただけですよ」
書き溜めをコピペするから少し遅くなります
ガラッ
池田 「おー来たか清澄」
咲 「もう…いつまでも『清澄』って呼ばないでよ」
池田 「じゃあ宮永プロと呼ばせて貰おうか?なぁ加治木プロ」
かじゅ 「ふっ…そうだな」ニッ
咲 「どうしてそんな他人行儀な呼び方で呼ぶかな?…ねぇ衣ちゃん」
衣 「池田に加治木もノリが良いな…宮永プロも早く席に座れ、衣の隣だ」
咲 「…」ゴッ
池田 「じょ、冗談だって…今日は咲の神域奪取を祝う集まりだからほんの茶目っ気だって」
かじゅ 「そ、そうだぞ…だからその状態になるのはやめてくれ」
咲 「冗談だよ」ニコッ
衣 「どうかな…それにしても方向音痴は相変わらずだな」
かじゅ 「だから地図を書くと言ったのに…」
咲 「そこまで迷惑は掛けられないよ…」
衣 「タルタル!衣はハンバーグエビフライが食べたい!」
池田 「はいよ…加治木はどうする?」カキカキカキ
かじゅ 「皆でシェア出来るようにサラダなんかはどうだろうか?後は軽く摘めるように餃子や唐揚げといった小さな物を頼むのが良いだろう」
咲 「やっぱり加治木さんが居ると効率的に進むね!…あっ…」
衣 「こ、これは別に加治木を仲間外れにした訳ではないぞ?」
池田 「そうだぞ?加治木はフリースタイルの解説に呼ばれてたから誘えなかったんだ」
かじゅ 「私達も社会人なんだ…都合の善し悪しは解ってるよ」
池田 「ドリンクだけど衣はジュースで良かったか?」
衣 「りんごサワー!衣だってやっと少し飲めるようになったんだぞ!」エッヘン
咲 「この前までは酎ハイ一口で酔ってたのにね」クスッ
衣 「むっ…」
池田 「加治木はいつも通りワインで良いんだろ?」
かじゅ 「あぁ、赤を頼む」
池田 「咲はどうする?」
咲 「私は…『魔王』をお願い」
池田 「!」ガタッ
かじゅ 「なっ…!」ガタッ
衣 「?」キョトン
池田 「さ、咲が焼酎を飲むなんて意外だなぁ…ハイボールと思ってたよ…なぁ加治木」
かじゅ 「そうだな…いつもハイボールを飲んでたから面食らったよ」
咲 「私だって強いお酒くらい飲むよ…それとも『魔王』ってお酒に何か?」ゴゴゴゴゴッ
衣 「全く…飽きない奴等だな」クスッ
かじゅ 「いの一番に反応した癖に…」
池田 「声を出したのはお前が最初じゃないか」
衣 「そこまでにしておけ…池田、そろそろ注文を頼む」
咲 「こうして騒ぐのも久しぶりだから…ごめんね?」
かじゅ 「なぁに気にするな」
池田 「すいませーん!」
店員 「お待たせしました、ご注文をお願いします」
池田 「ハンバーグエビフライタルタル乗せ、シーザーサラダ、一口餃子三人前そして唐揚げを三人前お願いします」
店員 「…ドリンクの方はどうされますか?」
池田 「りんごサワー、赤ワインを一本、ハイボールに魔王を」
咲 「魔王はお湯割でお願いします」
店員 「かしこまりました…失礼ですが年齢確認を取らせて頂いても良いでしょうか?」
池田 「私は22歳だ」
咲 「私は21歳です」
衣 「衣も22歳だ」
店員 「え…?」
店員 「申し訳ありません、身分証…あっ、これは大変失礼しました」ペコッ
店員 「天江プロと気付かず本当に申し訳ありません」ペコッ
衣 「衣は慣れっこだからな…気にせず続けてくれ」
池田 (あの決勝の時のままだもんな…知り合いじゃなかったら華菜ちゃんでも確かめるし)
店員 「お酒は先にお持ちしますか?」
かじゅ 「そうだな…先に飲みたいが口寂しい、すぐに出せる物はあるかだろうか」
店員 「それでしたら…おでんなんていかがでしょう?」
かじゅ 「じゃあ…おでんを適当に見繕って持ってきてくれ」
店員 「おでんにご注文されたお酒をお持ちしました、…ごゆっくりどうぞ」カチャッ
池田・かじゅ・衣 「かんぱーい!」カチャッ
咲 「っ…みんな…」ポロッポロッ
衣 「泣くなんて咲は子供だな」チビッ
池田 「似合わないし」クビッ
かじゅ 「祝いの席なんだ…笑ってくれ」
咲 「そんな事急に言われたって…」ポロッポロッ
池田 「全く…麻雀は鬼みたいな癖にこういう所は繊細だな」モグモグ
咲 「余計なお世話だよ!」プンスカ
咲 「あ、大根凄く味が染みて美味しい…」モグモグ
かじゅ 「だろう?…牛すじも中々…」
池田 「衣、気をつけて食べろよ?熱くて火傷するかもしれないからな」モグモグ
衣 「見くびるな…衣はそんなドジじゃ…熱ッ…」
池田 「あー…ほら、言わんこっちゃない…」フキフキ
衣 「よせ!…これぐらいなんともない!」
咲 「優希ちゃんに衣ちゃんも口には出さないけど池田さんを大好きなんだもんね」
かじゅ 「違いない…私も口うるさい奴だと思っていたが実直で素直な良い奴だと思っているよ」
咲 「うん、最後まで勝負を投げ出さない所もね。覚えてる?県予選のオーラス、池田さんは四暗刻単騎を和了放棄して勝ちに来た事」
かじゅ 「牌譜や録画を見て驚いたよ」
咲 「池田さん、プロに転向しないのかな?」
かじゅ 「実力の程は申し分ないはずだ…ほぼ必ず満貫以上には仕上げてくる手作りのセンスはあるからな」
咲 「怖いよね、ヤミテン倍満なんて結構あるし」
池田 「どうした?」
咲 「んー…池田さんがプロに転向しないのは何でなんだろうって話してたの」
衣 「最後まで衣に刃向かったお前だ、実業団程度に埋もれさせておくには惜しい」
池田 「…」
かじゅ 「話がない訳じゃないだろう?三尋木プロが何回も足を運んでいると聞くが」
咲 「“迫り来る怒涛の火力”あの高火力麻雀に憧れる人も少なくないって聞くもん」
池田 「確かに実業団の監督を通じて話も来てるし、加治木の言うように三尋木さんからも誘われてる」
衣 「だったら頂きの上を目指すのが道理だろう?今よりずっと収入も上がる」
池田 「ははっ…華菜ちゃんは自分の実力は良く解ってるし、原村和や竜門渕みたいに判断良く打てないし衣や咲達のように華があるわけじゃないからな」
店員 「お待たせしましたーご注文の品です」
池田 「さぁ!飲むぞ騒ぐぞ!今日はお祝いなんだ…飲め飲め咲ィ!」トクトク
咲 「こ、零れるよ…」
衣 「…」
池田 「どうした?衣に加治木、飲まないのか?」
かじゅ 「あぁ、飲もう…」クビッ
衣 「衣が唐揚げにレモンをかけるぞ!」
咲 「…」ゴッ
衣 「…!」ビクッ
咲 「私ね、大皿に盛られた料理の味を勝手に変える人…一番嫌いなの」ゴゴゴゴッ
咲 「ピザにタバスコを全員分かけるような人はね…ゴッ潰すって決めてる」ゴゴゴゴッ
かじゅ 「同感だな、私も好きではない味の強要は良く思わない」
衣 「衣…何か悪い事したのかな?」ジワッ
咲 「うん、実際にはしようとしたが正解だけどね」
池田 「ま、まぁ…ギリギリだったんだし良いじゃないか…な?小皿に分けて個別に味付けすれば良いんだし」
衣 「…うん」シュン
池田 「な、泣くなよ…ほら」フキフキ
何も言わず許してたんだな
モンブチメンバーのぐう聖っぷり
衣 「須賀京太郎とかいったか?」
咲 「京ちゃん?うん…今は一緒に暮らしてるよ…///」デレデレ
池田 「原村和が聞いたら泣きそうだな…」
咲 「原村さんなら隣の家だよ?」
衣 「ののかが?…まさかとは思うがお前を…」
咲 「やめて!それはちょっと怖いから…」
池田 「ゴシップ記事で読んだんだけど滝〇プロが相当アタックしてきたんだろ?」
咲 「うん…でも、結婚するならやっぱり幼なじみの京ちゃんが一番だもん////」
??? 「そ、そんなオk…むぐっ
??? 「おやめなさいな…そんな事で目立っても私は嬉しくありません」ヒソヒソ
かじゅ 「あぁ…///…モモは私の子を身篭ってるよ…」
咲 「ゆみさんおめでとー」カチャン
衣 「飲み過ぎだぞ…咲」
池田 「まぁ祝いの席なんだし良いじゃないか…帰りは旦那さんに迎えに来て貰うんだし…このこの!」ゲシゲシ
咲 「幸せでーす」テヘッ
かじゅ 「あぁ…私も幸せだ」クスッ
池田 「キャプテンは清澄の部長に持っていかれたし…」チビッ
かじゅ 「な、なんだと…!」ガタッ
衣 「ふぇ?」
かじゅ 「あぁ…久のヤツ……私を振ったのは…」ブツブツブツ
池田 「姫松に居た愛宕洋榎、永水の滝見春、キャプテンに…竜門渕の国広一」
衣 「なにっ!」ガタッ
??? 「なんでsむぐっ
??? 「静かにしないと迷惑が掛かりますよ」ヒソヒソ
??? 「貴女に言われたくありませんわ!」ヒソヒソ
咲 「あはは部長、相変わらずだなぁ…」グビッ
池田 「最近では自分で竹井塾?ってのを開いたら女流男流問わず入門殺到らしいな」
かじゅ 「竹井塾か…」ボソッ
池田 「大星淡も入ったらしいな」
咲 「…あぁ、あの娘ね…無駄な事するだ」クスクス
衣 「…咲、慢心は足元を救われるぞ」
咲 「慢心せずして何が魔王か!…なんてね、どうして私…魔王なんて呼ばれるんだろ」グスン
池田 (な、泣き上戸!)
池田 「ま、まだプラマイゼロやってたのか?」
咲 「だって卓にお姉ちゃんに淡がいるんだもん」
衣 「仲直りしたんじゃなかったのか?」
咲 「したよ?…でも、今度は私の生シュークリームを食べたんだよ…許せないよ」
かじゅ 「食べ物の恨みは恐ろしいと言うからな…」
池田 「どうする?調度なくなったしお開きにするか二次会に行くか…」
衣 「麻雀!衣はあの時以来に四人で麻雀が打ちたい!」
咲 「良いね!隣に雀荘あるし打ちに行こうよ!」
かじゅ 「四人か…懐かしいな」
池田 「よーし、華菜ちゃん今度は負けないし!」
カランカラン
ボーイ 「いらっしゃ…えっ?…えぇぇっ!」ガクッ
客1 「み、宮永プロだ…」
客2 「北関東のコンピューターと名高い加治木プロも」
客3 「海底の天江…!そしてもう一人は…」
??? 「池田華菜、名門風越で三年連続大将を勤め近々プロ転向とも言われてる未完の大器…知らんけど」
客1 「み、三尋木プロ!」
池田 「……うわっ」
三尋木 「うわっとは失礼だな華菜ちゃん、どうだい考えてくれたかな?」
池田 「言ったじゃないですか…私はそんな器じゃないって」
三尋木 「過小評価しすぎなんじゃないかなぁ?ドラゴンロードちゃんプロになるみたいだし…知らんけど」
宥ちゃんはどうなったんだろ
かじゅ 「そうだぞ」
衣 「また衣が海底で全員を震えさせてやる」
咲 「また私が責任払いで負かすけどね」
かじゅ 「ふっ…その嶺上また私が潰そう」
池田 「今度も華菜ちゃんは役満和了るし!」
三尋木 「ねぇ、…君がもしこの半荘で満足のいく結果を出せたらプロ転向考えくれるかな?」
池田 「……わかりました、この三人に満足の結果を出せたなら」
三尋木 「期待してるからね」
咲 「さぁ、麻雀を楽しもうよ!」チャッ
かじゅ 「あぁ…望む所だ」チャッ
衣 「完成した一向聴地獄味わうといい…!」チャッ
池田 「さぁて魔物退治といきますか!」チャッ
衣 「海底模月!」
かじゅ 「槍槓!だ…そのカン成立せず…!」
客1 「一進一退の攻防…これは今日の負け分払ってもお釣りが来るぞ…」
客2 「役も滅多に出ないのばかりだしな」
客3 「あの三尋木プロお気に入りの娘も負けてないぞ…ほら…!」
池田 「…やっと来たな、ツモ…四暗刻単騎!」
かじゅ 「ばかな…こんな序盤で!!……無駄ツモなしだと?」
咲 「カン…!もういっこカン!…カン…カン!」
客1 「ス、スーカンツ…!」
かじゅ 「ツモ、大車輪」
衣 「リーチ、一発、海底、タンヤオ、チートイ、ドラドラ」
池田 「くそっ…三位か…」
池田 「三尋木さん…私、プロになります…!…まだまだ弱いけど三尋木さんの元で勉強させて下さい」
三尋木 「良いよ~…でも私の門下に入るからには覚悟しなきゃダメだよ?…知らんけど」
池田 「あーもう全てがわっかんねー」
三尋木 「ははっこりゃ期待出来そうだね」
かじゅ 「良かったな」
咲 「うん…これでまた四人で…プロの世界で麻雀が打てるね」
衣 「楽しみだ…なぁ咲」
咲 「なぁに?」
衣 「麻雀は楽しいな!」
咲 「う……っぷ」
咲 「違う…これ、つわりだよ」
かじゅ 「二つめのお祝いだな、おめでとう」
衣 「おめでとう」
池田 「おめでとう!」
咲 「ありがとう…みんな大好き」
――――
『さぁ、女流モンド決勝も残り半荘一回となりました』
『“迫り来る怒涛の火力”池田プロ』
『卓上に開くは白百合の花!嶺上の宮永プロ』
『対峙すればまるで深海の圧力!海底の天江プロ』
『その打ち筋はまるでコンピューター…!七対の加治木プロ』
『藤田プロ…どう見ますか?』
藤田 「この四人が揃うのはIH県予選以来だな、あの時は宮永プロが勝ったが今回は――――やはり衣が何もせずに終わるとは思えないな」
『…………ありがとうございます、さぁ闘牌開始!!』
おわりです、読んでくれてありがとうございます
カツ丼さんはやっぱりころたんびいきだなwww
隣に住んでるガチ村さんが怖すぎるんですが・・・
京ちゃんさん勝ち組すぎぃ
Entry ⇒ 2012.10.03 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
P「春香が散歩してるとしよう」千早「はい」
千早「そうですね」
P「で、誰もいないのに頭コツンてやって「てへへ」ってやるじゃん」
千早「やるでしょうね」
P「で、何事もなかったかのように立ち上がって歩きだすじゃん」
千早「はい」
P「で、前方に犬の糞みつけんだよ」
P「そして、踏まずに見つけたことを心の中でガッツポーズするんだ」
千早「まあ、するでしょうね」
千早「で、その上に転んでしまうと」
P「ああ、柔らかめの犬の糞を顔でぐちゃぁっと潰してしまうんだ」
千早「なるほど」
P「で、ちょっと戸惑いながらも立ち上がってとりあえず顔を洗える場所を探すんだ」
千早「内心、あせっているので何度も転ぶんですね?」
P「そうそう」
P「で、やっと公園をみつけて、トイレに入るんだ」
千早「そこで顔を洗うんですね」
P「でも、ちょっと古めのトイレだから汚いの」
千早「なるほど、いいですね」
千早「ちょっと公園で遊んでいこうとするんですね」
P「鉄棒で逆上がりするんだけど、スカートだからちっちゃい子にパンツ見られるんだよ」
千早「それを指摘されてちょっと恥ずかしい思いをするんですね」
P「うん」
千早「真っ赤な声で公園を後にする、と」
P「いいね」
春香「いいですね」
春香「プロデューサーさん、こんにちは」
P「お、おう」
春香「千早ちゃんも、こんにちは」
千早「ええ…・」
春香「……プロデューサーさん」
P「な、なにかな」
春香「流石の私も、犬のうんちの上に転んだりはしないですよ」
P「そ、そりゃそうだよな」
春香「転んでる途中で身体を捻りますから!」
千早「春香、そこまで進化していたのね」
P「え?」
春香「このまま、妄想の私を散歩させません?」
P「……いいね!」
千早「春香……いいの?」
春香「うん、すごく楽しそうだもん」
P「よし、じゃあ公園の後はどこにいこう?」
千早「お菓子作りの研究のために、ケーキ屋さんとか?」
春香「それだよ、千早ちゃん!」
P「何を頼む?」
春香「そうですね……、何がいいでしょう?」
千早「たまたま、四条さんと出くわしていて…。全部というのはどうかしら?」
P「おいおい、いくらになるんだよ」
春香「き、きっと半額セールしているんですよ」
P「なるほど」
千早「一口食べて、フォークをテーブルに置くんですね」
P「で、こういうんだ「パティシエを呼べ!」と」
春香「えぇっ!?」
千早「で、やってきたパティシエに一言言うんですよ」
千早「「コレを作ったのはお前か!」と」
春香「ちょちょ、ちょっと!私海原雄山みたいになってるよ!」
P「で、ケーキに関する講釈をだらだらと垂れて、貴音をおいて店を後にするんだ」
千早「あ、四条さんはおいていくんですね」
P「ケーキ選ぶ手間省くための登場だしな」
千早「何しにいくのかしら?」
P「ケーキもってきてくれるんだよ」
春香「で、2人で一緒にプロデューサーさんのお家でケーキ食べるんですよね」
P「うん、いいね。そこに千早がくるわけだ」
千早「私ですか」
春香「でも、ケーキは2つしかありませんよ?」
P「実は、俺の家の冷蔵庫にデカイプリンがあるんだよ」
春香「千早ちゃんはそれを食べるんですね」
春香「それで、冬馬君が熱湯風呂やらされてるんですね」
千早「後の2人に本気で「押すな、押すなよ」って言ってるんでしょうね」
P「でも、結局落とされるんだよ」
春香「で、会場がワッっと盛り上がるんですよね」
千早「急いで水風呂にまで逃げ込んで……」
P「そんな冬馬をカメラがアップにしたタイミングで」
3人「Get you!」
P「で、春香が「あれ、冬馬君いまテレビに……」っていって」
P「アイツが「それ録画だししかも再放送だろうが!」って突っ込むわけだ」
千早「あざとくアホ毛を揺らしつつですね」
P「むしろ、あのアホ毛でウチのドア切り裂いて登場したりしてな」
春香「あはははは、いくら妄想でもいきすぎじゃないですか?」
P「冬馬だからいいんじゃない?」
千早「でも、ある程度のリアリティあったほうがいいんじゃ……」
P「そもそも、アイツは俺の家に何しにきたんだ?」
春香「きっと、スパイですよスパイ!」
P「スパイ、すっぱい、失敗」
千早「ぶふぉっ!!」
千早「お菓子がないんですね」
P「うん」
春香「本当は欲しいんだけど、カッコつけて言わないんですよね!」
P「可愛いな、アイツ」
千早「母性本能くすぐるタイプですね」
春香「なんていうか、庇護対象ですよね」
P「で、4人でテレビみるわけだよ」
春香「じゃあ、じゃあ、千早ちゃん」
春香「冬馬くんが、最初の事件起こったときに」
春香「「絶対犯人コイツだろ」っていうんだけど」
千早「第二の事件で殺されてしまうのね」
P「で、すごくうろたえると」
千早「涙目になりそうですね」
春香「なんとか取り繕おうとするんですよね」
P「やっぱ可愛いな、アイツ」
千早「主役が犯人を諭すシーンで」
P「冬馬がちょっと涙堪えるわけだよ」
春香「冬馬君って妄想に出すとものすごく扱いやすいですね」
千早「そうね……」
P「さあ、夕方になってるわけだが、次はどうする?」
春香「時間を数時間飛ばして、夕食を食べにいきません?」
P「四人で?」
千早「まあ、一応彼もつれていってかげないと可哀想ですし」
春香「どこにいきましょうか」
P「ファミレスでいいんじゃ?」
P「なに頼む?」
千早「無難にハンバーグとかじゃないですか?」
P「スープ付きか」
千早「スープ付きですね」
春香「冬馬君が「熱っ!」ってなるんですね、プロデューサーさん」
P「で、ここで俺も「熱っ」ってなる」
春香「プロデューサーさん可愛い!」
千早「で、色々話して食べ終わった後は……」
P「とりあえず、解散?」
春香「私が夜の街を1人で散歩するんですね」
P「うん。あくまで夜になった街をだけどな」
P「そしたら冬馬がクリームソーダ飲んでるんだな」
千早「で、春香がわざわざ彼から見える位置にすわって」
P「「すいませーん、私〝も〟クリームソーダください!」」
春香「そしてクリームソーダを吹き出して、テーブルを拭きだす冬馬君の図ですね」
千早「ぶふぉっ」
P「で、春香は悠然と喫茶店を後にするんだ」
千早「あれ、ソーダ飲まないんですか?」
P「「そちらの彼が、ソーダを吹いてしまったようなので。これをあげてください」」
P「っていうんだ」
千早「春香、かっこいいわ!」
P「そして、次の日だ」
小鳥「私も参加していいですか?」
P「もちろん」
千早「あの、できれば18歳未満でも安心できる内容に……」
P「善処する」
小鳥「ええ、善処するわよ」
春香「ふ、不安だね」
千早「ええ」
P「あ、いいですね。では……、まず千早が目覚めて」
小鳥「隣に、真ちゃんがいる、と」
P「ですね」
千早「えぇっ!?」
P「安心しろ、あの後真から電話がって、いろいろ会って泊まりに来ただけだ」
千早「そ、それなら安心ですね」
春香「それでそれで、「昨日の千早は激しかったね」ってか言うんですね」
千早「ちょっと、春香!」
春香「大丈夫、腹筋してただけだから」
千早「そ、それなら……」
小鳥「「真だって、あんなに激しく何回も私のお腹を突いて……」と」
千早「音無さん、それもうアウトです、というか真には生えてませんよ!」
小鳥「大丈夫よ、千早ちゃんの腹筋を試すために正拳突きを繰り返しただけだから」
千早「な、なるほど……」
P「で、一緒に朝ごはんを食べるわけだが」
小鳥「千早ちゃんに「朝ごはん、何がいいかしら」と聞かれて応えるんですよ」
P・小鳥「「ボク、千早のお味噌汁が飲みたいな」!!」
小鳥「きゃーっ!真ちゃん大胆だわっ!!」
春香「もうプロポーズですよ、プロポーズ!」
千早「あ、朝から濃いわね……」
P「味噌汁がね」
小鳥「あまり味が濃いと、身体に悪いですよね」
春香「ふたりで散歩なんですね」
小鳥「もうデートじゃない、デートじゃない!!」
千早「お、大げさですよ」
P「きっと、真は言うんだ。「千早、どこに行きたい?」と。」
春香「そして千早ちゃんが応える「どこでもいいわよ?」と」
小鳥「それに、「真と一緒なら」を勝手に付け足しちゃう真ちゃん」
P「しかし、2人の前に新たなる影が」
千早「だ、誰ですか?」
P「やよいだ」
千早「続けて下さい」
春香「まず、真が声をかけますよね」
小鳥「そして、やよいちゃんも2人に気づいて」
春香「千早ちゃんが、見えないように……」
P「ニヤァっと、笑う」
小鳥「もうニヤニヤとしてくるのが我慢できないんでしょうね」
千早「…………」
P「おい、妄想だけでちょっとにやっとしてるぞ」
千早「……だって、真に高槻さん」
千早「ハーレムじゃないですか」
千早「わが世の春、愛すべき二人の妻!」
P「妄想にとどめておけよー」
春香「美希と雪歩と伊織ですね、わかります」
小鳥「人数的には3対3。ですが、彼女達の狙いは千早ちゃんただ1人!」
春香「戸惑うやよい達、襲い掛かる伊織達」
P「もうだめだ、とおもったその時──!」
千早「だ、誰かくるんですか!?」
P「たまたま冬馬が通りがかる」
春香「颯爽と千早ちゃんを助け、一言」
小鳥「「通りすがりの、木星さ」」
千早「で、彼に3人が気を取られている間に、私達はにげればいいんですね?」
P「ああ。そして冬馬はお弟子さんに連れて行かれる」
P「千早たちの心の中に、一生生き続ける。そう、彼女達はきっと忘れないだろう」
春香「フィギュアを投げ捨てて、女の子の可愛い喧嘩に本気で割り込む男の姿を」
千早「と、冬馬さん……」
P「で、仕切りなおして三人で街を歩くわけだが」
春香「あずささんが出てくるんですね?」
小鳥「また迷ったんですね」
P「ああ!」
千早「多分、行きたい方向と逆方向にいってしまったんでしょうね……」
春香「で、で、「私、また迷っちゃったみたいで~」ですね」
小鳥「でも、そこまで大事な用じゃないから、このまま千早ちゃん達に同行するんですね?」
千早「それで、どこにいきましょう?」
春香「どこにいきたい?」
千早「そうね、多分そろそろお昼でしょうし、昼食でも」
小鳥「じゃあ、どこかのお店にはいりましょうか」
千早「ご飯を食べる高槻さんは、きっと可愛いと思います」
千早「いいえ、何をしていても可愛い」
春香「で、ご飯を食べたあとはどうしましょう?」
小鳥「千早ちゃんの家で、お泊り会でもしましょうか」
P「それです、それ!」
春香「もりあがってきましたね」
この食事ですでにあずささんが旅立ってるという
きっとトイレに行くと言い残して席を立ったんだよ
千早「まあ、入らないことはないんでしょうけど」
春香「お風呂に入ったあと。ワイワイ、ガヤガヤとご飯を食べるんだけど」
小鳥「みんなは、千早ちゃんのパジャマを借りることになって……」
千早「あずさん……ごめんなさい……」
P「ってなるだろうな、サイズ的に」
春香「一方、その頃私は……」
P「家で転んで誰もみてないのに「てへっ」ってやってました」
P「はい、そして次の日です」
春香「次の主役はもちろん……?」
千早「彼ね……」
4人「GET YOU!」
小鳥「厄介なのに捕まるんですよね」
春香「亜美と真美ですね」
千早「「お、あまとうだ」からの「あまとうじゃねぇ!」は外せませんね」
P「そして、亜美と真美に付きまとわれる冬馬の図」
P「どうにかしたいけど、どうしようもできない」
P「しかたがないので、765プロにきて律子に押し付けることにした」
春香「いるかどうかもわからないのに……」
小鳥「道中、あまとう、あまとう言われつづけるんでしょうね」
千早「なんていうか、ほほえましいですね」
P「「俺の周りに立つんじゃねぇ!」って涙声でいったりね」
P「ホント可愛いな、あいつ」
俺ってあまとう萌えSS見てたんだっけ
小鳥「チャンス、といわんばかりに響ちゃんに亜美ちゃん真美ちゃんを押し付けようとするんですね」
P「でも、だめなんでしょうね」
春香「ナチュラルに「冬馬、随分懐かれるなー」とかいいそうですね」
千早「まあ、彼は亜美たちにとっては、からかいやすいでしょうしね」
P「でも、なんだかんだで、冬馬についてきてくれるんだよ、響は」
小鳥「亜美ちゃんたちとお話して、彼の負担を軽減してくれるんですね」
春香「そうなったら、自分は逃げてもいいのにそれに気づかないんですね」
P「ホント可愛いな、あいつ」
冬馬「秋月、いるか?」
P「って言うんだよ」
P「え」
冬馬「お、よかった。あんたがいたか」
冬馬「ちょっと散歩してたらあんたのトコロのアイドルに捕まっちまってよ」
亜美「お、兄ちゃんたちおそろいで!」
真美「みんなで何してたの?」
P「悪いね、引き取っていくよ」
千早「亜美、真美。あまり他所のアイドルに迷惑かけちゃだめよ?」
春香「そうだよ、律子さんに怒られちゃうよ?」
響「自分もそういったんだけどなー、かまわず冬馬をからかってたぞ」
亜美「あまとうってー、アホ毛すごいよね」
真美「ねー。亜美隊員、引っ張ってみますか?」
冬馬「やめろ!」
冬馬「まさかってどういう意味だよ」
春香「冬馬君の一日を妄想してたんだよ」
冬馬「天海って結構ヒマなんだな」
春香「わざわざウチに亜美たちを連れてくる冬馬君もたいがいだよ」
P「まあ、大変だったな」
冬馬「まったくだぜ……」
春香「あ、冬馬君もやる?」
冬馬「やるって、何をだよ」
春香「妄想!」
冬馬「……おもしろそうだな」
亜美「亜美たちもやる→」
響「あ、自分もやるぞー!」
春香「誰でいく?」
冬馬「北斗でいこうぜ」
小鳥「なんとなく、裸で寝てそうじゃないですか?」
響「あー、そういうイメージあるよね」
冬馬「姿見の前で、ポーズ決めそうだよな裸で」
真美「ほくほくなら、そのまま「チャオ☆」っていいそうだよね」
千早「30分くらいやってから、下着を穿きそうですね」
春香「ううん、今日は調子がいいからとかいって、一時間ほどやるんじゃないかな?」
P「こう、一挙手一投足がやたらフェロモンむんむん」
千早「北斗さんは、オフでも北斗さんだと思います」
P「冬馬はオフだとあまとうになっちまうのになぁ」
冬馬「どういう意味だよ、それ!」
小鳥「で、ご飯を食べたあとは……」
春香「スタイリッシュ朝シャワーですね」
春香「それで、服をきて、髪の毛をセットして」
小鳥「その他、身だしなみを整えて街に繰り出すんです」
冬馬「何するんだろうな、ナンパか?」
P「むしろ、大量のファンにサインをねだられて」
冬馬「あれか、「並んで、エンジェル達!」か?」
亜美「ほくほくがいうと、様になるけど」
真美「あまとうじゃねぇ…」
冬馬「どういう意味だそれ!」
P「まあ、それはいいと思うよ」
春香「多分、次々と押し寄せてきそうですよね」
響「なんだかんだ、人気あるしなー」
亜美「さっすがほくほく!」
冬馬「そこはさすがジュピターって言ってくれ!」
真美「ぇー?」
冬馬「……」
千早「夜はどうするんでしょうか」
冬馬「………スタイリッシュ入浴?」
小鳥「みんな、充実した一日を送ってますね」
冬馬「まあ、仕事してるほうが充実してっけどな!」
春香「私達アイドルだもんげ!」
冬馬「……つーか、なんでこんな話を始めたんだ?」
千早「最初は、私とプロデューサーで春香の散歩の様子を考えていて」
小鳥「ここまで来ると、すごく飛躍しましたね」
冬馬「……なるほど」
P「よし、じゃあもっとぶっ飛ばせてみようか」
そんな彼女が、ついに世界を滅ぼすために暗躍しはじめる!
だが、それをとめようとする水瀬伊織によって、戦う力を与えられた天ヶ瀬冬馬。
変身ベルトを腰に巻き、男は戦いに身を投じる!」
千早「仮面ライダージュピター……ですか」
春香「わ、私悪役ですか!?」
冬馬「つまり、俺がフィギュアになるんだな!?」
亜美(変身したあまとうが、だけどね)
小鳥「変身した後の決めセリフはGET YOU!ですね」
P「主題歌はウチで歌いましょうか」
冬馬「こう、変身!っていうの変身……!ってのとどっちがいいと思うよ?」
響「そこは、場面によってでいいと思うぞー?」
冬馬「まじか」
小鳥「本家はムリでしょうけど、バラエティの1コーナーにはできそうですね」
千早「765プロと、961プロの完全なるコラボですね」
冬馬「パーフェクトハーモニーだな」
P「冬馬、多分ウチのやつら誰もカブトはわからん」
千早「いまですか?」
P「まあ、変身ポーズだけ」
冬馬「こういう事もあるかと思って、ポーズは考えてるぜ!」
P「流石だな、じゃあ俺はベルトの音声をやってみる」
冬馬「よし。変身……!」
シュバババッ ババッ
ギュゥィイイイイン
P『チェィンジ…………アリスフォーム』
冬馬「……GET YOU!」
♪コッエノー……
P「完璧」
冬馬「非の打ち所がねぇよな!!」
小鳥(男の子ですね……)
春香「ああ、そういう「or」ですか」
冬馬「これ、いけるんじゃねぇか?」
P「うん、そういうのが好きなスタッフに持ち込んだら絶対いけるわ」
冬馬「だよな、だよなぁ!」
P「いや、下手したら仮面ライダーGみたいに公認でやれるかもしれない」
冬馬「ライバルは福くんだぜ」
P「このさい、福くんとコラボもしたいな」
春香(ねえ、千早ちゃん……)
千早(ええ、なんていうか)
響(凄く眼が輝いてるさー)
亜美(亜美たち、怪人役にされたりして)
真美(えー……)
冬馬「天海ィ………」
春香「さあ、変身して?最後にしようよ!」
冬馬「そうだな……」
冬馬「変身……!」
ギルティフォーム……
冬馬「……GET YOU!」
春香「それじゃ、いくよ!」
P「みたいな!」
冬馬「うぉおおお、最終回の前の週だな!」
春香「よかった、ちゃんとラスボスだ私」
千早「そこなのね」
冬馬「おれも、黒井のおっさんにいってくるぜ!」
春香「2人とも、やる気まんまん……」
小鳥「男の子は皆そうなのよ」
亜美「あまとうはともかく……」
真美「兄ちゃんは……」
響「でも、自分もちょっと面白そうかなーって思うぞ」
千早「確かに、彼はライダー役似合いそうだものね……」
響「プロデューサーのあんな楽しそうな顔久々に見た……」
春香「ねえ、千早ちゃん」
千早「何かしら?」
春香「か、幹部役やらない?」
千早「話が通るの前提なのね」
亜美「はるるん、その辺決めるの多分製作側だよ?」
真美「でも、兄ちゃんとあまとうは結構口出しそうだよね」
小鳥「何にしても、妄想っていいわねぇ……」
小鳥「さぁ、私もあの2人で妄想してきますか!」
春香「……ど、どっちがどうなんですか?」
小鳥「決まっているじゃない、プロデューサーさんが攻め!」
亜美「あまとうは総受けだと思う」
響「自分もそうだとおもうぞー」
P「どうしたんだよ、冬馬?こんなにしちまって」
冬馬「うる……せェ……!」
P「そういや、お前最近そわそわしてるよな」
冬馬「だって、あんたが、……ツレねぇから」
P「ん、聞こえない」
冬馬「アンタが……!黒井のおっさんや、北斗ばっかりにかまうから!」
P「それで、俺に犯される妄想してズリセンこいてたのか…」
P「そりゃぁ、脱がされるだけでこんなになっちまうわけだな」
冬馬「あ、あんたは……、本当にタチの悪い男だな」
P「そこがいいんだろ?その、減らず口。塞いでやろうか……」
冬馬「そのための減らず口だよ…」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
小鳥「よし!」
春香「なんだかんだいって、従順そうですよね!」
響「でも、たまには逆転してみるのもいいぞ!」
亜美「おお!ひびきんったらマニアックですなぁ?」
小鳥「……やってみますか!!!」
P「くっ……、冬、馬!」
P「お、俺には心に決めたアイドルが……!」
冬馬「なんだよ、その眼……、いままで散々アイドルを食ってきた男の眼にはみえないな」
冬馬「それで女に飽きかけて、それを試したいって言ってきたのはあんただろ?」
P「くっ……あっ」
冬馬「ほら、もう乳首もこっちも、ビンビンじゃないか」
冬馬「なんで、俺を選んだよ、なぁ…?」
P「お、お前が……、すげえウマいって、有名だから」
冬馬「じゃあ、俺の技をみせてやらないとなぁ……?」
冬馬「安心しろよ、痛くはしねぇから……、肩の力ぬいて」
冬馬「俺に全てを委ねな……」
P「ふぁああ……とう、……まぁ……」
冬馬「くっ、流石に狭ぇな……、いい締りしてやがんぜ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
小鳥「……いいですね」
春香「はい」
千早「最初に誰か特定の相手を匂わせているのがいいですね」
響「NTRさー!」
亜美「流石ピヨちゃん……」
真美「真美、妄想がとまらないよ」
春香「冬馬くん、こういうのもいいけれど」
千早「やっぱり、彼は受けよね」
小鳥「そうね……、受けで光る男よ、彼は」
千早「高木社長と黒井社長とか」
小鳥「王道ね!」
春香「黒井社長は確実に受けだと思います!」
春香「ああいうひとが、いざっていうときには受けに回るのはベタだけどいいと思うんです!」
響「プロデューサーが、スポンサーの人相手に枕営業するのもいいと思うぞ」
亜美「亜美たちのために、知らないおじさんに抱かれるわけですな」
真美「いいね、真美そういうの好きだよ!」
高木「……君も感じたかね」
P「ええ、なんだか……」
────────────────
冬馬「でさ、あっち側もすげえやる気でよ……!?」
高木「……感じたか」
冬馬「ああ、なんていうか……」
P・冬馬「殺気すら生ぬるい何かを感じた」
END
ありがとう、見てくれて。とても楽しめてかけた。
ライダーはいつか書きたいな、って思った。
ライダー楽しみにしてる
ライダーSS、どうぞ
Entry ⇒ 2012.10.03 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (2) | Trackbacks (0)
ニャース「おミャーらを許さないニャ……」ピカチュウ「……」
ピカチュウ「……」
ニャース「毎回毎回同じパターンで飛ばされながらも考えてきたけど……」
ピカチュウ「……」
ニャース「やっぱりおミャーらはやりすぎニャ」
え?
え?マジで?
ロケット団に捨てられてサトシに飼われてたことがあった
今は知らん
いつの話だよ
ニャース「挙げ句の果てに電撃を浴びさせられてメカが爆発して吹き飛ばされる……」
ニャース「普通の人間ならバラバラになって即死だニャ」
ピカチュウ「……」
ニャース「ニャー達も今までそれに耐えて、おミャーを捕まえる為に来る日も来る日も汗水流して頑張ってきたニャ……」
ピカチュウ「……」
ニャース「だけど……やっぱり人間には限界があったニャ。……この前飛ばされた時にムサシとコジロウは……」
ニャース「死んでしまったニャ」
ドゴーン
ニャース『はぁ、またこうなるのニャ』ヒュー
ニャース『やーニャかんじーwwww』ヒュー
ソーナンス『ソォーナンス!』
ムサシ『』ヒュー
コジロウ『』ヒュー
ニャース『あれ?二人ともどうしたのニャ?』ヒュー
ニャース『ムサシー?コジロウー?』ヒュー
ムサシ『』ヒュー
コジロウ『』ヒュー
ドサッ
ニャース『毎回のことながら痛いのニャ……』
ムサシ『』
コジロウ『』
ムサシ『』
コジロウ『』
ニャース『まさか……』ピト
ムサシ『』
コジロウ『』
ニャース『し、心臓が動いてないニャ……』
ニャース『と、とにかく病院!早く病院に連れてかニャイと……!』ダダダダ
―――――――――――――――
ニャース「……その後急いで病院に連れて行ったけど……」
ニャース「病院に着いた頃にはもう手遅れだったニャ……」
ピカチュウ「……」
ニャース「ソーナンスも落ちた時に木の幹に心臓を貫かれて即死だったニャ……」
ピカチュウ「……」
ニャース「ニャーはしばらく立ち直れなかったニャ……」
ニャース「一時期はみんなのあとを追おうかとも考えたニャ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『……ス!……ース!』
ニャース『んん……誰ニャ……?』
ムサシ『ニャース!』
ニャース『ム、ムサシ!?』
コジロウ『お、やっと起きたか!』
ニャース『コジロウも!』
ニャース『ニャンで……?二人とも死んだはずじゃ……』
ムサシ『バッカねー。私達があの程度で死ぬわけないでしょー』
コジロウ『そうだそうだー!』
ムサシ『そうよ!さ、さっさと準備してジャリボーイ達の先回りをするわよ!』
コジロウ『今度こそピカチュウゲットするぞー!』
ニャース『そうニャ!そしてピカチュウをボスに献上すれば……』
『かんぶーしょうしん!じむちょうしゅうにん!』
『いいかんじー!』
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
BWになってからつまらなくなったのは間違いない
それは君が大人になったからだよ…
大人になると純粋に楽しめなくなるし、思い出補正も付くからなあ
大人になるって悲しいね
も一度子供に戻ってみた~い~
ニャース「……もちろん夢だったから、起きた時には誰もいなかったニャ……」
ピカチュウ「……」
ニャース「そして、気づいたニャ」
ニャース「もうああやって、借金してまでメカを作ったり、落とし穴を掘ったり、昼ご飯のビスケットを三人で分けたり……」ポロポロ
ニャース「そんなことは……そんなことはもうできないのニャ!」
ニャース「おミャーらの!おミャーらのせいで!」
ニャース「ムサシと……コジロウは……」ポロポロ
ピカチュウ「……」
ピカチュウ「……」
ニャース「二人を殺した後ものうのうと生きてるおミャーらを……」
ニャース「ニャーは絶対許さないニャ!!」
ピカチュウ「……」
ニャース「おミャーを殺した後は、ジャリボーイ達も殺してやるニャ……」
ニャース「ニャーの憎しみは……苦しみは……おミャーらを殺すまで……」
ニャース「消えることはないのニャ!!」
ピカチュウ「……」
ピカチュウ「……」スクッ
ピカチュウ「……」スタスタ
ニャース「な、何ニャ!やるニャーか!?く、来るなら来いニャ!」
ピカチュウ「」ポン
ニャース「!!」
ピカチュウ「辛かったな……」
ピカチュウ「そう構えるな……俺は今お前に危害を加えたりはしないさ」
ニャース「な、何ニャ急に!?」
ピカチュウ「まぁ、待ってくれ。まずは俺の話を聞いてくれ」
ニャース「ふざけるニャ!おミャーの話なんか聞きたくもないニャ!いいからとっととニャーと……」
バッ
ニャース「!?」
ピカチュウ「……すまなかったっ……!」
ピカチュウ「すまなかった……!今の俺にはこんなことぐらいしかできないが……」
ピカチュウ「今はただ、こうやって誠心誠意謝ることが……」
ピカチュウ「死んでしまったお前の仲間にできるせめてもの弔いだ……!」
ニャース「や、やめるニャ!そんなことしたって二人は帰ってこないニャ!」
バキッ
ニャース「……っ!?」
ピカチュウ「現実を見ろおぉぉぉぉぉ!!」
ニャース「いや、今のはそういうんじゃなくて……その、比喩っていうか、決まり文句みたいな……」
ピカチュウ「…………!!」
バッ
ピカチュウ「すまなかったっ……!」
ピカチュウ「すまない……!とんだ早とちりをしてしまったっ……!」
ニャース「まったく……いきなり殴ってくるから何事かと思ったニャ……」
ピカチュウ「すまんっ……」
ニャース「いいから頭をあげるニャ……まぁ、謝ったところでニャーはおミャーを許すつもりはないニャ……」
ピカチュウ「待て……。さっきも言ったが、まずは俺の話を聞いてくれ……」
ニャース「……何ニャ」
ピカチュウ「二人は確かに俺の電撃のせいで死んだ……」
ニャース「……あぁ、そうだニャ」グッ
ニャース「……どういうことニャ」
ピカチュウ「よく考えてくれ。人に飼われているポケモンは誰かの指示で攻撃を出す……」
ニャース「トレーナー……」
ピカチュウ「そう。そして俺のトレーナーは……」
ニャース「……ジャリボーイ!!」
ピカチュウ「そう……サトシだ」
ピカチュウ「とんでもない……。俺はむしろお前らの仲間になりたかったぐらいだ」
ニャース「……は?」
ピカチュウ「よく考えてみろよ。お前らは何でいつもいつも、すぐに俺達を見つけられると思う?」
ニャース「そりゃあ、ニャー達が必死に探して……」
ピカチュウ「違うな。逆だよ。俺がサトシ達をお前らから見つけやすいような道にわざと誘導させてたんだよ」
ニャース「なっ……!」
ニャース「で、でも!いつもニャー達には威嚇してるような態度で……」
ピカチュウ「それは演技だ。お前らに媚びてるような顔をしたら、サトシが警戒してお前らとの接触回数が減るかもしれないからな」
ニャース「……それでも……毎回あんなにフルパワーで攻撃することはないんじゃニャいか!?」
ピカチュウ「わかんねぇ奴だな。だからそれも演技だ。力をセーブしたりしたら不審に思われるかもしれないだろ?」
ニャース「でも……」
ポン
ニャース「!!」
ニャース「……?」
ピカチュウ「縛り付けられた生活、毎日同じ食事、やりたくもないジム戦の特訓」
ピカチュウ「……そして、強要されるお前らとの戦い」
ニャース「……」
ピカチュウ「俺はお前らが羨ましかった……いつも仲がよくて、助け合って、それでいて自由気ままで……」
ピカチュウ「いつも楽しそうだった」
ニャース「……」
ピカチュウ「こっちはダメだ。ポケモン同士の過剰な馴れ合い、根性だの気合いだのでごり押しさせる単細胞トレーナー」
ピカチュウ「心から楽しいと思えることなんて……一つもなかった」
ニャース「……」
ピカチュウ「お前は、一人じゃない」
ニャース「……っ」ポロポロ
ピカチュウ「今日から俺はあいつらの元を抜けて、お前と一緒に行く」
ピカチュウ「それが、お前や、死んでいった二人にできるせめてもの償いだ……」
ピカチュウ「あとソーナンスもな」
ニャース「……本当に信じていいニャか?」グスッ
ピカチュウ「あぁ……」
ニャース「おミャーは、かつての仲間を殺されても、いいのか?」
ピカチュウ「さっきも言ったろ。俺は元々お前らの仲間になりたかったんだ。仲間になったらあいつらは敵だ。憎むべき相手だ。未練はない」
ニャース「……その言葉、信じるニャ」
ピカチュウ「ありがとう」
ピカチュウ「……じゃあ、仲間になるのを誓っての握手だ」スッ
ニャース「!……何だか恥ずかしいニャ……」ギュッ
ピカチュウ「」ギュッ
二人が固い握手を交わしたその時――
ガサガサッ
「あれー?ピカチュウ!こんなとこにいたのか!」
ニャース「!?」
サトシ「ピカチュウ!探したぞー!」
ニャース「(ジャリボーイ……!)」ギリッ
サトシ「さぁ、行くぞピカチュウ……って、ん?」
ニャース「!?」
サトシ「お前……ロケット団のニャースか!?」
サトシ「お前ピカチュウと一緒にいるってことは……!またピカチュウを連れて行こうとしてたな!」
ニャース「……そんなとこだニャ」
サトシ「他の二人はどうした?」
ニャース「!!……二人は……いない、ニャ」
サトシ「いない?何でだ?捨てられたのか?」
ニャース「……っ」ギリッ
サトシ「じゃあ、なん……」
ニャース「うるさいニャアァァァァァ!」
サトシ「!?」
ニャース「二人は死んだニャ!おミャーのせいで!」
サトシ「ど、どういうことだ……?」
ニャース「分からないならいいニャ……。その代わり、死んでもらうニャ」
サトシ「え?」
ニャース「ピカチュウ!やるニャ!」
ピカチュウ「」コクッ
サトシ「……え?」
ニャース「いけニャアァァァァァァァァァァ!!!!」
ピカチュウ「チューーー!!!」カッ
ドシャァァァーン
ニャース「ニ゛ャア゛ァァァァァァァァァァ!?」ビリビリ
ピカチュウ「ピッカァ!」
ニャース「……にゃ、んで……」ピリピリ
サトシ「よし、じゃあ行くぞピカチュウ」
ピカチュウ「ピカァ!」
タッタッタッタッ
ニャース「……や、やにゃ、かん……じ」ガクッ
~~~~~~~~~~~~~~~
ピカチュウ「(すまんなニャース)」
ピカチュウ「(でも、俺の演技も結構イケるもんだな)」ニヤリ
サトシ「おーい、行くぞーピカチュウ?」
ピカチュウ「ピッカァ!」
おしまい
即興で書き進めてって、もしもしだから書き溜めもしてなかったけど無事完結できてよかったわ
初SSだったけど、楽しんで読んでもらえれば光栄っすわ
最後まで付き合ってくれてありがとう
ニャースがわりかし本気で殺そうとしてきそうだったから隙を作るためにこんなことした
まぁ、そんなことしなくても10万で一発KOだけども
次⇒ニャース「もう騙されないニャ……」ピカチュウ「……」
Entry ⇒ 2012.10.03 | Category ⇒ ポケモンSS | Comments (2) | Trackbacks (0)
魔梨威「私は目先の利益に騙されてなどいない!」
木胡桃「わぁい!お昼だぁ!」
手寅「まぁ、コンビニでなんだけどね。色々買ってきたから好きなの選んで?あ、飲み物もあるから」
木胡桃「えっとー、私メロンパン!」
丸京「弁当でいいかな」
苦来「テトラちゃんは何食べるの?」
手寅「私?私は余ったのでいいよ」
苦来「そう……じゃあ私はおにぎり」
魔梨威「じゃあ私サンドイッチなー」
魔梨威「なんだよ、私がサンドイッチ食べちゃ悪いかよ」
手寅「悪くはないけど、確かにちょっと似合わないかも」
魔梨威「じゃあ何なら似合うんだよ?」
丸京「立ち食いそば」
苦来「牛丼」
木胡桃「焼き鳥」
魔梨威「全部オヤジくせーなオイ!」
全員「いただきまーす!」
魔梨威「っただきまーす」ぱくっ
魔梨威「!?おい、これ……」
木胡桃「マリーさんどうしたんですか?」もふもふ
魔梨威「このサンドイッチ、具がほとんど無いじゃないか!」ぺらっ
苦来「本当、表から見えるところにしか具がない」
魔梨威「くそう、騙された!!具沢山だと思ったから選んだのに!!」
魔梨威「食事ごときで本質だの考えるかよ普通!」
手寅「そうよガンちゃん。普通考えないわよ」もぐもぐ
木胡桃「テトちゃん……その肉まん、すごく具沢山じゃないですか?」
手寅「そう?」
魔梨威「ホントだ、肉がやけに多い…!」
苦来「そういうのって、品質一定なんじゃないの?」
丸京「考えずともアタリを引くテトは置いといて、実際問題、見た目で騙される事はどこにでもあるんだよ!」
手寅「実際のハンバーグとか、かなり薄っぺらかったりするよね」
丸京「実際のオムライスがふわふわじゃなくてカチカチだったり」
木胡桃「実際のパフェ、アイスかと思った部分がクリームだったり」
魔梨威「実際のナポリタンとか立ってねーもんな」
苦来「…え?」
丸京「食品サンプル通りに立ってると思って注文する奴はいないだろ」
魔梨威「え?いないのか?私だけ?」
手寅「あー、わかるわかる。お店の明かりのせいで綺麗に見えたりするよね」
木胡桃「家で着ると微妙なのは、照明のせいだったんですね」
丸京「照明だけじゃない。洋服屋の鏡は、痩せて見えるように出来ているらしい」
魔梨威「なんかズルいなそれ……」
手寅「あとネット通販で買う物って、イメージと微妙に違ったりするよね」
苦来「勝手に良いほうにイメージしちゃう自分も悪いんだけど」
丸京「騙してるわけじゃないだろうけど、騙された気はするよな」
魔梨威「何?今ケータイを変えると一万円キャッシュバックだって?」
丸京「お得に見えるだろう?」
苦来「それって一万円は戻っても、結局機種代はうん万円するじゃない」
魔梨威「はぁ?何言ってんだよ。何も戻らないよりは一万円戻るほうが得だろ?」
苦来「まぁ、それはそうだけど……」
魔梨威「じゃあケータイ変えても良いじゃないか!」
木胡桃「目先の利益に騙された!」
魔梨威「私は目先の利益に騙されてなどいない!」
手寅「騙されてるじゃない」
・綺麗事のマニフェスト
→(実行しない)
・可愛い自撮り画像
→(角度が違うと微妙)
・可愛いアニメアイコン
→(中身はオタク)
・事故率の高いヘリ
→(配備された型の事故率は低い)
・100円パソコン
→(当社ブロードバンド契約時)
・昔のゲームのHDエディション
→(中身は前と同じ)
・ムービーの綺麗なゲーム
→(中身は一本道)
・漫画:ヤス
→(原作はシモネタ漫画家)
丸京「所詮、誰もが見た目で……顔で相手を選ぶんだよ!」
木胡桃「でもやっぱり、顔含めての第一印象は大事です!」
木胡桃「はい、ピンク色で甘くて美味しいです!」
丸京「それならよかった」ニヤリ
木胡桃「え…?なんですか!何が言いたいんですか!?」
丸京「成分に コチニール って入ってないか?」
木胡桃「入ってますけど……」
丸京「それ、虫を潰して作った色素だよ」
魔梨威「マジかよ!?」
丸京「見た目に可愛らしいピンク色は、実は虫を潰して作った色なんだよ!!」
木胡桃「うわああん!もういちごミルク飲めないぃ!!」
丸京「ほーら、いくら第一印象が良くても、本質に近づくと恐ろしくなったろう!」
苦来「でもその話って割と有名よね。多分蚕の糞よりは」
手寅「まぁ、どっちも天然由来の色素だから合成着色料よりは安全らしいけど」
苦来「赤色○号とか、いかにも体に悪そうだしね」
木胡桃「…え?まさかこれも」
丸京「そう、コチニールは布地の染色にも使われている。ピンクの服に使われている可能性は十分にある!」
木胡桃「うわぁぁん!!」
丸京「更に追い打ちするなら、化粧品の赤色。口紅や頬紅にもコチニールはよく使われている!」
木胡桃「いやあああああああ!!!」
魔梨威「おい丸京、あんまりいじめるなよ!キグが泣いちゃうだろ!?」
木胡桃「うぅ…」グスン
魔梨威「よーしよしキグ、大丈夫だぞー?きっと虫は虫でも可愛い虫だからな!」
魔梨威「そうだとも!きっとバグズ・ライフくらい可愛い虫だよ!」
木胡桃「あれは可愛くないです……」
魔梨威「えー?アンツよりは可愛いだろ?」
苦来「ジャイアント・ピーチくらい可愛くないとダメでしょ」
丸京「スターシップ・トゥルーパーズ!」
苦来「それはキモいから!全然毛色違うし…!」
手寅「あ、コチニールの原料。今調べたらこんな虫らしい」
(閲覧注意)
http://blog-imgs-55.2nt.com/s/s/h/ssh123/Cochineal_drawing.jpg
木胡桃「いやああああ!!思いっきり虫です!!!」
魔梨威「一番デカい追い打ちするなよ!!大丈夫だよキグぅ!」
苦来「……マリーさんの服も赤いけど、やっぱり使われてるのかな…?」
木胡桃「…!」ススッ
魔梨威「おい!引くなよ!」
魔梨威「引いてるだろ!?…どうしてくれるんだ丸京!」
丸京「どうもこうも、私は真実を、そして見た目に騙されるなと教えただけだ」
木胡桃「見た目に騙されない…?」
手寅「そう。マリーさんの羽織は赤く見えるけど、実際は赤じゃないかもしれない!」
魔梨威「なんだよそれ」
手寅「自分の見ている色と他人の見ている色は、同じではないかもしれない!」
苦来「あぁ、クオリア?」
手寅「自分の見ている放送版と他人の見ているBD/DVD版は、同じではないかもしれない!」
丸京「いや、それは実際にほんの少し違うから」
苦来「ほんの少しだけ違う話はともかく、放送版ですら違った十二話とかどうなるんだろう」
丸京「領有権主張してきたら楽しそうだな」
手寅「あのカレーは、本当は温めるだけのレトルトかもしれない!」
苦来「だとしたら爽快かも……」
手寅「マリーさんは本当に男の子かもしれない!」
魔梨威「いや、それはないから!」
手寅「でもそう考えると、いざマリーさんが本当に男でも 騙された! とは感じないじゃない?」
魔梨威「そうだけど、男じゃないからな?本当に!」
手寅「見た目に騙されたくなければ、色んな角度から物を見れば良いのよ」
木胡桃「色んな角度から?」
魔梨威「なんだよ?」
手寅「マリーさんを後ろから見ると……」つつ…
木胡桃「わ!後ろだけ裸!」
丸京「びんぼっちゃま君かよ」
魔梨威「えぇぇ!!?なんだよこれ!!いつやったんだよぉ!?」
苦来「マリーさん、私達を騙してたのね!」
魔梨威「騙してねーよ!っていうか逆に私が騙されてるだろコレ!」
魔梨威(よく考えたら、いつもいつも私は尻を晒したり、尻を晒したり、はたまた尻を晒したり……)
魔梨威(色んな角度から考えると、こいつらもしや私の敵!?)
手寅「どうしたの?マリーさん」ニコニコ
木胡桃「考え事ですか?」ニコニコ
苦来「顔色悪いよ?」ニコニコ
丸京「尻色も悪いぞ?」ニコニコ
魔梨威(まただ…!また笑いながら私を陥れるつもりだ…!)
魔梨威「ダマサレルモノカ ダマサレルモノカ…」ブツブツ
手寅「ちょっとマリーさん、本当にどうしたの?」
魔梨威「……やられる前に」ボソ
丸京「何?」
魔梨威「やられる前に、やらいでか!!!」ぐわばっ!
木胡桃「きゃあああ!!!」
魔梨威「ダマサレルモノカ ダマサレルモノカ…」ブツブツ
医者「マリーさん、気分はどうですか?」
魔梨威「サイアクだよ!四六時中電磁波で攻撃されてるからな!」
魔梨威「それよりお前か!?私を監視しているのは!電波で悪口を言うのはお前かぁ!?」
丸京「マリーさん、すっかり疑り深くなってしまった」
手寅「色んな角度から見てるんだね!」
苦来「それ被害妄想っていう一つの角度だから…!」
木胡桃「赤色怖い…赤色怖いよぉ…!」
おわり
駄文ですいませんでした
さては本人だな
ご苦労様です
アニメじょしらくBD/DVD一巻発売中です
買わない客はただの客と言ってましたが、どうぞ気にせずにお買い求めください
じょしらくコミック第5巻、アニメDVD付き限定版が2013年2月8日発売予定です
限定版は数に限りがございますので、ぜひご予約してお買い求めください
Entry ⇒ 2012.10.03 | Category ⇒ 版権物SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
まどか「ごめん、ね……ほむらちゃん……」
ほむら「まどか……!しっかりして、まどかぁ!!」
さやか「あれ、まどかにほむら?何やってんの?」
ほむら「大変なの!まどかが、まどかが……!紙で指を……!」
さやか「ッ……!?う、うそでしょ!?」
さやか「……!う、うっすら血が滲んで……!」
まどか「はぁっ……はぁっ……」
ほむら「まどかぁ!しっかりして、まどかぁ!」
さやか「ど、どうしよ、どうしよ……そうだ!あ、あたし、マミさん呼んでくる!
マミさんならきっと、なんとかしてくれるはずだよ!」
ほむら「さやか……!」
さやか「待っててね、まどか!すぐ戻ってくるからね!」
マミ「お待たせ!2人とも!」
ほむら「巴さんっ……!」
マミ「大丈夫、鹿目さ……!?ひ、酷い……!」
さやか「そんな!?さっきまで滲んでる程度だったのに……血が、垂れてきちゃってる……!」
ほむら「は、早くなんとかしてあげて!私にはもう、指を心臓より高い位置に上げるくらいしか……!」
さやか「何か良い方法があるんですか!?」
ほむら「ポーチなんか取り出して、何を……まさか!」
マミ「あったわ!これを鹿目さんに!」
さやか「ば、絆創膏!!」
ほむら「すごい……これがあれば、傷を治せる……!」
まどか「ぁ、ぅ……」
ほむら「くっ……!片手でまどかの手を支えながらじゃ、テープが上手くはがせない……!」
さやか「そ、そんな!せっかく絆創膏があるのに、そんなことって……!」
マミ「っ……暁美さん!私も手伝うわ!」
ほむら「巴さん……!」
ほむら「で、でもそんなことをすれば、ゴミを捨てる人が……」
さやか「ご、ゴミならあたしが捨てるよ!」
マミ「美樹さん、あなた……!」
さやか「だからほむら、早くテープをはがして!!急がないと、まどかが……!」
ほむら「っ……ありがとう……!」
すごい、これなら……これならきっと……まどかを救える!)
マミ「支えたわ……!今よ、暁美さん!」
ほむら「えぇ!」
さやか「ほむら、ゴミを!」
ほむら「頼んだわ、さやか!あなたが戻る頃には、きっとまどかは、元気な顔を見せてくれるから……。
だから、絶対に戻ってくるのよ!約束して……!」
さやか「もっちろん!じゃあね、絆創膏、頼んだよ!」
マミ「……!傷が、絆創膏で覆われて……!」
まどか「……ぅ……ぁ、あれ、わたし……」
ほむら「まどか……!」
まどか「ほむらちゃん、マミさん……。あ、そっか、わたし、紙で指を切っちゃって……
そしたら血が滲んできて、それで……わ、わたし、わたし……!」
マミ「鹿目さん……」
ほむら「怖かったのね、まどか……でも、もう大丈夫よ」
まどか「うっ……ぅわぁああああん!!怖かった、怖かったよぉおお!!」
ほむら「安心して、もう絆創膏を貼ったから。ね?」
マミ「えぇ。だからもう、何も怖がることはないわ。そんな傷なんて、すぐに治っちゃうから」
まどか「えっく……ぅく……ほむらちゃん、マミさん……」
まどか「っ!さ、さやか、ちゃん……」
ほむら「あなた、ゴミを無事に捨てて来れたのね……!」
さやか「良かった……良かったぁ!助かったんだね、まどかぁ!」
まどか「うん、うん……!でもさやかちゃん、その、ゴミって……?」
マミ「美樹さんはね……絆創膏のゴミを捨ててきてくれたの。それも、自分の意志で」
さやか「あはは、なんていうんだろ……。
目の前でまどかが苦しんでるの見てたら、居ても立っても居られなかったっていうか、
あんまり深いこと考えてなかったや。ただただ、まどかを助けなきゃって、そう思ってさ」
まどか「さやか、ちゃん……ごめんね、ありがとう……!本当に、ありがとう……!」
ほむら「さやかは向こう見ずだけれど……でもそのおかげで、まどかを救うことができた」
マミ「えぇ。美樹さんも鹿目さんも、本当に無事で良かったわ」
マミ「あら、今日は志筑さんは一緒じゃないの?」
まどか「はい、今日もお稽古事らしくて。
今日は新作パフェが出るから仁美ちゃんも連れて行ってあげたかったんですけど」
さやか「あぁ、かわいそうな仁美……。
仕方ない、明日も仁美のためにパフェを食べに付き合ってあげますか!」
ほむら「あなたが食べたいだけでしょう」
さやか「あはっ、バレた?まーとにかく、早く喫茶店行こうよ!」
まどか「うん、楽しみだなー、新しいパ……」グゥゥウ~
マミ「……え?」
マミ「鹿目、さん……?今、何か……」
ほむら「……そんな、まさか……」
さやか「あ、あははは……き、きっと聞き間違えだよ!
まどか「そ、そう、だよね?聞き間違え、だよn」グゥウウゥウウ~
ほむら「うそ、そんな……!」
さやか「お、お腹の音!?そんな、なんで……!?」
まどか「や、やだ、やだっ!どうして、どうしてこんな……!」
ほむら「いけない、このままじゃ、まどかが……!」
まどか「や、やだぁ……そんなの、やだよぉ……!」
マミ「い、急いで何か口に入れないと!」
ほむら「駄目、遠すぎる……ここからじゃ、どんなに急いでも5分はかかるわ!」
さやか「で、でも……」
ほむら「喫茶店に着くまでの間、ずっとまどかにお腹の音を響かせ続けろと言うの!?
冗談じゃないわ!そんなの、あんまりよ……!」
マミ「暁美さん……」
ほむら「何か、何か別の方法を考えないと、何か、喫茶店に行く意外で、別の方法を……。
そ、そうだわ!2人とも、何か食べるものは持ってないの!?」
まどか「あ、あぁあ……」グゥウウウ~
さやか「え、待って、うそ、やだ……!な、何もない……!」
マミ「わ、私も……非常用のカロリーメイトしか持ってないなんて!こんな時に……!」
ほむら「そん、な……。それじゃあ、どうすれば良いの!?
何か別の方法を探さないと、何か、何か……!」
まどか「良い、よ……」
ほむら「え……?」
ほむら「まどか……駄目!そんなことしたら、あなたが……!」
まどか「ううん、良いの……私は平気……。
それにね……喫茶店のパフェ、すっごく楽しみだったから……えへへ」
マミ「鹿目さん、あなた……」
まどか「だから、ね……?みんなで一緒に、喫茶店に……」グゥウウウゥウ~
さやか「っ……!まどかぁああ……!」
杏子「ん……?よぉ、あんたら何やってんだ?」
杏子「……なんだ。何かただ事じゃないみたいだね」
さやか「ま、まどかが大変なの!」
杏子「まどかが……!?おい、まどか!どうした、何があった!?」
まどか「杏子、ちゃん……」
杏子「腹なんか押さえて……痛いのか!?どうしたんだ!」
ほむら「お腹の……お腹の音が鳴ったの……!」
さやか「杏子、あんた……!」
杏子「いてっ!?な、なんだよ!急に肩なんか掴んで……」
マミ「佐倉さん……!?そんな、はっきり……!」
杏子「はぁ……?」
まどか「う、ううん……良いの……。わたし、分かってたから……」
ほむら「まどか、あなた……!」
ほむら「まどか、そんなことない、あなたは……!」
さやか「ぅくっ……ぐすっ……」
杏子「なんで泣いてんの?」
まどか「そうだよ、泣かないで、さやかちゃん……」
マミ「……えぇ、泣いてる暇なんてないわ。今は一刻でも早く、鹿目さんに何か食べさせてあげないと……!」
さやか「で、でも……あたしもほむらも何も持ってないし、マミさんだって、非常用のカロリーメイトしか……」
杏子「その非常用のカロリーメイトとやらを食わせてやれよ」
ほむら「佐倉杏子……あなた、そこまで思慮分別のつかない人間だったかしら」
マミ「佐倉さん、話を聞いてなかったの……?」
杏子「は……?」
さやか「良い!?マミさんのカロリーメイトは非常用なの!取っておかなきゃいけないの!わかる!?」
杏子「いや、まぁそりゃ非常用ってんなら、こんなくだらないとこで使わないのが普通だろうけどさ……」
ほむら「……あなた、今なんて?」
ほむら「あなた、今……なんて言ったの……?」
杏子「だから、非常用ってんなら、こんなくだらないとこじゃあ……」
ほむら「ふざけないで!!」
杏子「なっ!銃!?」
マミ「暁美さん!駄目!」
ほむら「ッ……!」パァン
マミ「暁美さん、今は仲間割れなんてしてる場合じゃないわ!」
ほむら「フーッ……フーッ……!くだらないですって……!?
まどかのお腹が鳴ってるのに、くだらないですって……!?」
さやか「杏子……謝ってよ」
杏子「はぁ!?なんでだよ!?いきなり発砲されて、謝って欲しいのはこっちだっつーの!」
さやか「良いから謝って!今すぐ謝って!訂正して!!」
杏子「は、はぁ?」
マミ「人が困ってるところを助けるなんてくだらない……また、そんな考え。
最近は昔のあなたに戻ってきたと思っていたのは、私だけだったのね……」
さやか「……幻滅したよ、杏子」
ほむら「消えて……私が殺してしまう前に、早く消えて……!」
杏子「っ……どうしちまったんだよ、あんたたち……!」
マミ「っ!待って!」
杏子「あん!?なんだよ!」
マミ「あなた、今口に加えてるそれ……何なの……?」
杏子「見りゃわかんだろ。ロッキーだよ」
さやか「ロッキーって……あのロッキー!?お菓子の!?」
ほむら「杏子……お願い。そのロッキーを、まどかにあげて……!」
杏子「ちっ……なんだよ、急に手のひら返しやがって」
さやか「あたしからもお願い……。まどかもあんたが咥えたやつなら気にしないはずだよ!ね、まどか!」
まどか「うん……わたしは、気にしないよ。杏子ちゃんなら……」
杏子「しかも今咥えてるやつかよ!?だったら箱ごとやるわ!」
マミ「えっ……!?」
杏子「どこにロッキー1本だけ加えて出歩く人間が居るんだよ……」
さやか「ほ、ほんとに、くれるの……?箱ごと、まどかに……?」
杏子「あーもうどうでも良いよ。ほら、さっさと食えってんだ」
ほむら「あ、ありがとう……!杏子、本当にありがとう……!」
杏子「はぁ……わっけわかんね。なんか疲れたしあたしはもう行くわ。じゃあね」
マミ「さぁ鹿目さん、早く食べて!」
まどか「はい、それじゃ……」グゥウウウゥウ~
さやか「!ちょっと待って!」
ほむら「どうしたの。早く食べさせてあげないとお腹の音が……」
さやか「あのさ……あたしたち今から、新作パフェ食べに行くんだよね?」
ほむら「そのためにも早くまどかのお腹に何か入れないと」
さやか「ちょっと思ったんだけどさ……。
ロッキー食べちゃったら、パフェが入らなくならない?」
まどか「っ……!ほ、ほんとだ……!」
さやか「ただでさえまどか少食なんだから、ロッキー1箱なんて食べちゃったりしたら……」
ほむら「……きっと、せっかくの新作パフェも美味しく食べられないわね」
もう少しで大変な間違いを犯してしまうところだったわね」
さやか「でも、1つ問題があって……。まどかに空腹を我慢してもらわないと……」
ほむら「まどか、大丈夫?我慢できる?」
まどか「うん、大丈夫……。今までも、我慢してきたんだもん……わたし、頑張るよ」
ほむら「……あなたは本当に強い子ね、まどか。でも、我慢できなさそうだったらすぐに言うのよ。
その時はみんなで全力で走りましょう」
マミ「そうね。それじゃあ、行きましょうか!」
マミ「これはきっと定番メニューになるわね。私、毎日通っちゃおうかしら、ふふっ」
ほむら「少し量が多めだったわね。まどか、大丈夫?」
まどか「うん、大丈夫!でもやっぱりちょっとお腹いっぱいかな?」
さやか「あ、そう言えば杏子にもらったロッキーどうしよ?」
まどか「うーん……わたしはもうお腹いっぱいだし、みんなで食べて良いよっ」
マミ「残念だけど、それは無理かな……。だってそのロッキーは鹿目さんがもらったものですもの」
ほむら「幸い箱ごと貰ったから持ち歩くのには苦労しないから……杏子に返すというのはどうかしら」
マミ「そうね、それしかなさそうね」
さやか「それじゃ今からみんなで杏子探しに行きますか!」
マミ「どうする?手分けして探しましょうか?」
ほむら「えぇ、それが一番効率的ね」
マミ「私は美樹さんとね」
まどか「うん、そうだね。あ、ロッキーは私が持ってても良いかな?」
さやか「そりゃまぁ、まどかが貰ったやつだし」
ほむら「そうと決まれば早速探しに行きましょう」
マミ「えぇ!また後でね、2人とも!」
まどか「あ、居た!杏子ちゃーん!」
杏子「あん?まどか、それにほむら……?」
ほむら「こんなところに居たのね、探したわよ」
杏子「何よ、また何か用?」
ほむら「ちょっと待って。今、美樹さんとさやかを呼ぶから」
杏子「……?」
マミ「良かったぁ、見付かったのね」
杏子「なんだかよく分からないが……あ、そう言えばまどか。腹の音はおさまったのかい」
まどか「うん!パフェ食べたら治ったよ!」
杏子「ん?パフェ?ロッキーじゃ足らなかったってか?」
まどか「ううん、ロッキーは食べなかったの」
杏子「は?」
杏子「……なんだそりゃ……」
まどか「でも気持ちはとっても嬉しかったよ!ありがとう!」
杏子「……まぁ良いや。で?用事ってのはなんだよ。
わざわざみんな集まったんだ。大事な話じゃないの?」
さやか「えっ?用事なら済んだよ」
杏子「は?」
マミ「鹿目さんがパフェでお腹いっぱいになったから、ロッキーを返しに来たのよ」
まどか「杏子ちゃん?どうしたの?」
杏子「いや、なんでもない。もうツッコむ気力も失せただけだ」
ほむら「……?」
杏子「それより、あんたら気付いてないの?まぁ気付いてないんだろうな……」
マミ「なぁに?どうしたの?」
杏子「魔力探知してみなって。この辺りでもうすぐ結界が出来るよ」
マミ「じゃあ鹿目さんは結界の外で……」
ほむら「駄目よ、まどかを1人にするなんて出来ないわ!」
さやか「それじゃ、結界の中に連れてくの?そんな危ないこと、もっと出来ないよ!」
杏子「いや、誰かが外に残ってやれば……」
QB「それなら僕に良い考えがあるよ」
さやか「良い考えって何よ?」
QB「君たちが問題にしてるのは、まどかが自分の身を守れないということだろう?
だから1人には出来ないし、連れて行くことも危険だから出来ない。そういうことだね?」
マミ「えぇ、その通りよ」
QB「だったら簡単なことじゃないか。まどかが僕と契約して、魔法少女になれば良いんだよ!」
杏子「……あのさぁ。いつになったら懲りるのさ。何回勧誘しようが……」
ほむら「確かに……キュゥべえの言う通りね」
まどか「そっか、わたしが契約すれば良いんだ。そうすればみんなと一緒に結界に入って行けるよね!」
マミ「盲点だったわ。さすがはキュゥべえね!」
さやか「たまにはやるじゃん!」
ほむら「そうと決まれば早速契約しましょう、まどか」
まどか「うん!わたしの願いごとは……」
杏子「ま、待てよてめぇら!何言ってんだ!」
ほむら「でも仕方ないじゃない。
今のままじゃまどかを1人残すことも出来ない、連れて行くことも出来ない。
このまま結界の外で立ち往生しろと言うの?」
マミ「あなたもしかして……魔女を見逃す気……?」
さやか「杏子あんた、使い魔だけじゃなくて魔女まで見逃すの!?」
まどか「ひ、酷いよ杏子ちゃん!そんなのあんまりだよ……!」
杏子「は、はぁ!?」
マミ「誰かって、誰?」
さやか「あたしたちはみんな、正義の魔法少女なんだよ。
魔女と戦わずにただ見てるだけだなんて出来るわけないじゃん!
そんなことしたら正義の魔法少女失格だもん!」
ほむら「だったらあなたが残る?杏子」
杏子「っ……」
せめてあたしが居ないと……!)
杏子「くそっ……!じゃあもう分かった!まどかも連れて行くぞ!」
ほむら「あなた……話を聞いてたの?それは危険だってさっき……」
杏子「うるせぇ!こいつはあたしが守る!何か文句あるか!?」
ほむら「!」
まどか「杏子ちゃん……」
杏子「心配すんな、まどか。あんたはあたしが責任を持って守ってやるからさ」
マミ「私も!後輩にばかり良い格好させられないもの!」
ほむら「まどかを守るのはこの私よ。今までも、これからも」
まどか「み、みんな……ありがとう……!」
杏子「じゃあ全員で結界に入るってことで良いな!行くぞ!」
QB「やれやれ……みんな入って行ったね。無事で済むと良いんだけど」
さやか「これはまた不気味な結界だね……」
マミ「もう結構歩いたけど……」
ほむら「……まどか?」
まどか「……い……痛い……」
杏子「!?なんだ、どうした!?」
まどか「わ、わき腹が……」
ほむら「まさか……食べてすぐ歩き回ったから……!?」
さやか「そ、そんなことって……!」
まどか「ごめん、なさい……。わたし、もう……歩けそうに、ない……」
マミ「……私のせいだわ」
ほむら「巴さん……?」
マミ「私が今日、新作パフェを食べに行こうなんて提案したから……私のせいで……!」
ほむら「そんな……それを言ったら、私だって!杏子を探しに行こうと言い出したのは私よ!
私があんなことを提案しなければ、まどかが歩き回ることもなかった!
まどかのわき腹が痛くなることだって、なかった!全部、私が悪いのよ!」
さやか「ち、違うよ……。2人とも、悪くないよ。あ、あたしが……。
あたしが、ロッキーを食べずにパフェを食べようなんて言わなければ……。
あ、あたしがあんなこと言わなかったら、まどかのわき腹は……」
杏子「あんたたち、今そんなこと言ってる場合かよ!?」
ほむら「杏子……!」
杏子「わき腹が痛くなってんだぞ!まずまどかを心配してやるべきだろうが!」
マミ「そうね……。後悔も落ち込むのも、鹿目さんが元気になってから!
まずは鹿目さんのわき腹の痛みを抑えてあげなきゃ!」
まどか「き、杏子、ちゃん……わたし……」
杏子「もう喋るな、まどか……。ここで少し休もう」
まどか「でも、魔女は……」
杏子「魔女なんかより、まどかの方を優先するべきだよ」
ほむら「何か良い手があるの……!?」
杏子「魔法だよ……魔法を使うんだ!」
さやか「えっ!?で、でもわき腹の痛みをなくす魔法なんて……」
マミ「美樹さん……魔法にはいくらでも応用が利くのよ!」
さやか「あぁ!マミさんのリボンがまるで包帯のように……!」
マミ「応急処置みたいなものだけど、やらないよりはずっと良いでしょ?たぶん」
まどか「あ、ありがとうございます……!ずいぶん楽になったような気がします!」
杏子「さすがはマミだな!」
ほむら「もう痛みは大丈夫?まどか」
まどか「うん、もう平気だよ!マミさん、ありがとうございました!」
マミ「ふふっ、どういたしまして」
さやか「いやー、魔法にあんな応用の仕方があったとは。勉強になります」
杏子「しかし、まどかに何事もなくて本当に良かっ……」
魔女「オォオオオオオオオオ!!」
さやか「げえっ!魔女!いつの間に!」
マミ「私も保護結界を張るわ!」
さやか「あ、あたしも!」
ほむら「まどか、ここから動かないでね!」
まどか「み、みんなありが……」
魔女「オォオオオオオオ!!」
まどか「きゃっ!?」
杏子「し、しまっ……」
マミ「よろけて、こけ……」
ほむら「まっ……まどかぁああああああああ!!」
まどか「……ほむら、ちゃん……」
ほむら「まどか、しっかりして、まどかぁああ!!」
まどか「……え、へへ……ごめん、ね……ほむらちゃん……こけちゃった……」
さやか「や、やだ!まどかぁ、まどかぁ!!」
杏子「くそっ……くそっ、くそっ、くそぉおおお!!
まどかのことを考えれば怯んでこけるくらいのこと、想定できたはずなのに!!
馬鹿野郎……あたしの、大馬鹿野郎がっ……!」
まどか「どうして、だろ……なんだかね、すごく、眠いんだ……」
ほむら「い、いや、いやぁ!目を開けて、まどか、お願い、まどかぁあ!!」
まどか「甘いもの食べて、お腹、いっぱいになって……歩き回って……疲れちゃったから、かな……。
今ね、とっても、 眠いの……えへへ……」
まどか「……みん、な……わたしのことは、放っておいて……。
わたし、なんかより……魔女、を……」
マミ「か……鹿目、さん?」
まどか「…………」
さやか「ま、まどか、やだ、まどか……。まどか、まどかぁ、まどかぁああ……!ぅわぁあああああん!!」
杏子「……許さねぇ……殺してやる……殺してやる……ぶっ殺す、絶対に、ぶっ殺す!
てめぇだけは、絶対にぶっ殺してやる!うぁあああああああああ!!」
魔女「オォオオオオオオ!!」
ほむら「……私の戦場は……もう、ここじゃない……。でも……お前だけは、殺してやるわ」
さやか「死ねぇえええええええぇえええ!!」
杏子「だぁらぁあああああああああああ!!」
ほむら「まどか……ごめんね。すぐ、終わらせるからね」
魔女「ギャァアアアアアアアアアアア……!」
QB「いくらなんでもやりすぎじゃないかな」
ほむら「……終わったわね」
マミ「……あら……?」
杏子「ん、なんだ……?なんか、記憶が……」
まどか「ん……ふわぁあ……あれ?わたし、なんで寝ちゃってるの?」
さやか「キュゥべえ!どういうこと?」
QB「君たちは今の今まで、魔女の呪いの影響を受けていたんだよ。
今日1日の記憶がところどころぼやけてるのは、そのせいだ」
ほむら「……?」
マミ「私たちが、魔女の呪いを……?どんな魔女なの?」
QB「簡単に言うと、人間の庇護欲に付け込む魔女さ。
杏子、君は結界に入る頃から急に記憶が曖昧になってはいないかい?」
杏子「あぁ、確かに。まどかを守ると決めてから……あぁ、そういうことかい」
QB「まぁ、何はともあれ魔女も倒せたし、みんなが元に戻って良かった」
まどか「はい!……あっ!」
さやか「おわっ!まどか、大丈夫?」
杏子「おいおい、何もないとこでこけるとか、しっかりしなよ?」
マミ「怪我はない?一応絆創膏は持ってるけど。酷いようなら魔法で治しましょうか?」
まどか「いたた……いえ、ちょっとお尻打っちゃったけど、大丈夫で……」
ほむら「まっ……まどかぁああ!!大丈夫!?本当になんともない!?あざになったりしてない!?」
まどか「あはは、平気だよ。ありがとう、ほむらちゃん」
QB「うん、みんな元通りだね。一件落着だ」
おしまい
みんなかわいかった
Entry ⇒ 2012.10.03 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
女「だって、君はボクの友達だろう?」
男「……あのなあ」
女「ん? なんだい」
男「なんでいるんだ?」
女「君が起きるのを待っていたのさ」
男「勝手に帰れよ……ふわぁ……もう夕方か」
女「うん、太陽も沈みかけてる」
男「だいぶ寝てたみたいだな……」
女「部活でもないのに、放課後に残っているのはボク達ぐらいかもね」
男「そうだな」
男「あくまで一緒に帰るのか?」
女「うん、嫌かい?」
男「別にそうじゃないんだが、先に帰ってても良かったんだぞ?」
女「ふふ、そうもいかないよ。君はここ最近お疲れ気味だったからね。眠くなるのも当然さ」
男「確かに、文化祭の企画、未だにできてないんだよなぁ」
女「手伝おうか?」
男「いや、いい」
男「手伝いたいのか?」
女「もちろん」
男「ほぼ雑用だぞ、こんなの進んでやるのは……」
女「変かい?」
男「んー、ドMに近い印象だな」
女「なんだ、それならボクはうってつけじゃないか」
男「……お前、ドMなのか!?」
男「おお……あっさり暴露したな」
女「痴女と行っても、触ると言うよりは見せる、方だけど」
男「聞きたくない情報だった」
女「だからクラスの女の子と同じくらいスカートが短い」
男「そういうことだったのか……」
女「今日は下に何も穿いていない」
男「えっ」
女「嘘、だけどね」
女「期待しちゃった?」
男「しないけどな」
女「見ないとわからないよ?」
男「見せるなよ、放課後のこんな時間に変なことをするな」
女「んー、盛り上がってきたね」
男「きてねえよ」
女「おや、どうしてだい?」
男「俺はあと少しだけ企画考えてから帰るから」
女「ふむ、そうか」
男「……」
女「……」
男「なんで改めて席に座るんだ?」
女「待ってるからさ」
女「君は色んな顔をして面白いね」
男「……バカにしてんのか?」
女「そうじゃないよ、とても素敵だって、言ってるのさ」
男「……はぁ、お前いると集中できないんだけどなあ」
女「ボクのことは、何もないと考えてくれてもいいよ」
男「本気で無視するぞ?」
女「うん、構わないよ。その代わりここで脱ぎ始めるけど」
男「いや、無視できるはずがねえだろ」
女「なにか、問題が?」
男「……どうして俺のこと、待つんだ?」
女「そんなこと、決まってるじゃないか」
男「……なんだよ?」
女「言わなくてもわかると思うけれど」
男「言わんとわからんだろ」
女「じゃあ、言うよ」
男「ああ」
女「君の、友達だからさ」
……友達ねえ。
男「友達って言っても、俺がつるんでるおとこどもはみんな帰っちまったぞ?」
女「彼らよりも友達なのさ。体ごとつるんでるからね」
言い方おかしいな。
男「お前とは体ごとではないと思うが」
女「おや、違ったかい? あの日、ボクと君は過ちを犯してしまったではないか」
なぜ目を潤ませる。
女「犯し……?」
男「字が違う!」
女「そうか、君が一方的に犯し……」
男「話を続けるな」
こんがらがるだろう。
女「ボクも、抵抗することはできなかった……」
男「あー……そろそろ戻ってきてください」
女「いや、しなかった、痴女だから」
男「しなかったのかよ!」
思わずツッコんじまったじゃねえか。
女「いやいや、ついついやってしまうんだ」
反省をしているように、頭を掻いた。
女「……んっ?」
男「ど、どうした?」
女「ついつい、ヤってしまった?」
男「いや、それは俺言ってねえぞ!?」
あっという間に外は暗くなり、部活の喧騒も、少しずつ小さくなっていく。
男「け、結局全然進められなかった……」
女「それは大変だ。文化祭に支障をきたしてしまう」
誰のせいだ、誰の。
女「それじゃあ、ボクが人肌脱ごうか?」
そう言って、彼女は静かにブラウスの一番上のボタンを外す。
男「そっちかよ!」
彼女はゆっくりと、第二のボタンに手を移動させていた。
男「痴女になるぞ!」
女「痴女だが?」
そうでした。
女「襲われてしまうかもしれないね」
誤解されるんだ。
ふふっ、と彼女は軽く笑って、
女「驚いた顔、とっても危機迫る感じがあっていいね」
男「そりゃな……」
いきなり同じクラスのおんなが、目の前でボタンを外し始めたら。
それはそれは驚く、困る、怖い。
周りの目が、怖い。良かった、放課後で。
女「酷いなあ。一緒に帰るっていうのに」
男「家そんなに近くないだろ」
女「同じ方向じゃないか」
まあ、そうだけども。
女「ふふ、ボクみたいな痴女と、一緒に帰りたくないかい?」
男「逆にお前が一人で帰って露出しないか心配だ」
女「おや、ボクを心配してくれてるのかな?」
俺がバッグに荷物を入れていると、彼女は椅子から立ち上がり、スカートのしわを伸ばした。
男「なんだよそれ」
痴女じゃないじゃないか。
それは嬉しい。いや、見せないことではなく。
俺以外に見せないことが嬉しいわけではない。
断じて。
女「言い方を変えると、限定痴女、かな?」
彼女はキメ顔をして、こちらを見た。
俺は、何も言えなかった。
女「ははは、ここはお世辞でも『今からその限定のモノを見せてもらう』って言ってくれなきゃ」
お世辞でも言えない。
そう言って、胸を隠すような仕草をする。
女「これから育ち盛りだから、もうしばらくの辛抱を」
男「辛抱って……」
女「もうしばらくの待望を」
男「待ち望んでねえよ!」
どんだけ俺はお前の成長に期待してるんだよ。
男「全然意味違うじゃねえか」
成長するか、しないかみたいに使うな。
女「確かに、ボクは胸も……ミニマムだし、お尻も大きくない。身長も、あまり高くない」
男「そういうの好きな人もいるんじゃねえか?」
女「君は好き?」
男「……んー」
胸はでかい方が好きだし、尻もちょっとは大きい方がいいと思う。
女「微妙な反応だね」
女「うん、それはそうだと思う。ボクも、大きな胸と、大きなお尻は大好きだ」
もちろん女の子のだけどね。
と、付け加えた。
男「レズ?」
女「ふふっ、それはどうでしょう」
ぼかすな。
男「えっ?」
腕時計を見てみる。
男「! もうこんな時間なのか!?」
女「疲れたからホテルにでも行こうか? もちろんラブだが」
男「んな冗談に付き合ってる暇はねえ、さっさと出るぞ」
女「ああ、わかった」
女「ふふ、怒られてしまったね」
男「誰のせいだ、誰の」
女「君が企画を考える、と言ったんじゃないか」
男「お、俺のせいなのか?」
女「君の責任だよ。……責任、取ってくれるかい?」
なんのだ。
女「なるほど、自慰か」
職員室の前で堂々と言うな。
男「帰るぞ」
女「ああ」
まったく、困った奴だ。
女「やっと帰れるね」
そう言うなら先に帰ればよかったのに。
女「ああ、これは皮肉じゃないよ。勘違いしないでくれ」
女「おや、機嫌を損ねてしまったかな?」
別に。
そんなことで損ねるようなこどもじゃない。
まあ、とりあえず黙っておくか。
女「ふむ、これは困ったな」
顎に手をあてて考えているようだ。
そして、彼女は考えた結果、次の行動に移った。
女「よしよし、機嫌直してね」
背伸びをして、頭を撫でてきた。
男「俺はこどもか!」
居ても立ってもいられなくなり、つい叫んでしまう。
男「ああ、それならお前は赤ちゃんだな」
女「赤ちゃんプレイがお好みかい?」
男「ちげえよ!」
身長とか、そういうの鑑みてだ。
女「それにしても、大きいね、君」
男「下を見て言うな」
勘違いされるだろ。
男「明らかに誤解されるな、それ」
女「でも、何センチくらいだい?」
背伸びをして、頭に触れようとする。
女「おっと」
体勢を崩して、俺にもたれかかってきた。
女「あはは、ごめん」
少し顔を赤くして、微笑んだ。
何やってんだ、こいつは。
男「離れろ、暑苦しい!」
女「ふふっ、ちょっと発情してるから暑苦しいかもね」
発情中かよ。
女「君には勝てそうにないなぁ、身長」
ここから俺を越したら流石に引く。
女「何を食べれば、そんなに大きくなるんだい? おかずは?」
下を見るな。おかずってどういう意味だ。
女「へえ、巨乳は?」
男「基本的には、やっぱり牛乳かな」
女「タンパク質を分泌してるんだ、タンパク質を摂ったほうがいいんじゃないかな?」
話が噛み合ってねえ!
ドッジボールみたいだ!
男「あのなあ、いちいち下品にするなよ」
女「そうだね、おタンパク質をもっと……」
『お』をつければいいってもんじゃないけどな。
女「うむ、それよりも一番驚いたのは巨乳より牛乳ということだ」
男「いや、そのおかずじゃねえからな!?」
女「『その』おかずって?」
ニヤリと笑って、彼女は顔を近づけてきた。
しまった。
女「どんなおかずだい? ボクに教えてくれないかな」
トンッ、と軽く頭に手刀。
女「うっ……」
ボケーッとした顔をして、直立不動に。
男「何してんだ」
女「俗にいう、賢者タイムを体感してみた」
なんか嫌な予感はしてたんだ。
女「賢者タイムって、どんな気分なんだい? どうして、賢者になるんだい?」
知りたがりめ!
女「そうだ、ボクは初めて電気を開発した自家発電大好きな、エジソンさ!」
自家発電は違うだろ!
女「そういえば、男の子も自家発電をするらしいね」
関連付けて話が広がっていく!
男「あー! もうこの話なーし!」
男「しねえよ、こういう話は終わりが見えねえから」
女「君もよく、教室で話をしているじゃないか」
……聞こえてるのか!?
女「今日はクラスの女子を見て品定めをしていたようにも見えたけれど」
男「ああ……」
やべえ、筒抜けだ。
女「君はその時、胸の大きい人がいい、と言っていたね」
知ってたのかよ!
ならなんでさっき質問したんだよ!
男「いや……えっと……」
やばい、なんだこれ。
めちゃくちゃ恥ずかしい。
身内でがやがや笑って話してるのに。
すげえ恥ずかしい。
女「……だから、ボクとこういう話をするのも、別に構わないんじゃないかな?」
男「な、なんでだよ……」
女「ボクは友達だからさ、そうだろう?」
下を向いた俺を、覗きこむように伺っている。
女「ふふっ、顔が真っ赤だよ。熱でもあるのかな?」
女「ずるい? バイバイありがとうさようなら?」
ネタが古い。
男「上手く誘導するのが、ずるい」
女「誘導なんてしてないよ。ボクはただ、君とありのままに話がしたいのさ」
にっこりと笑ったように思えたが、顔が見えないのでわからなかった。
あたりが、もう本当に暗い。
男「ああ、そうだな」
照明のない道を、歩いて行く。
暗ければ、少しずつ目も慣れてくるだろうから、それまでの辛抱だ。
女「ふふっ、何も見えないと、都合がいいね」
男「どういう意味だよ」
女「実は、既にボクはブラウスを脱いだ」
男「は!?」
男「お前マジか!?」
女「おっと、こちらを見ないでくれ、ボクが痴女だとはっきりとわかってしまうからね」
嘘だな。
きっと、嘘だ。
いつものことのように、冗談だろう。
男「ったく、流石にそんなことできないだろう」
女「ふふっ、そうだね」
そう言って。
彼女は俺の手を持って、彼女の体を触らせた。
男「……」
ぬ、脱いでね?
女「どういうことって、こういうことだろう?」
この感触は、生身の体……?
ブラウスの感触じゃない。
まさか、本当に……?
確認しないと、やばい。
主に、隣を歩いている俺は、やばい。
しかも触ってるし、やばい!!
しかし、こちらを見てニッコリと笑う、やつの顔が一瞬見えた。
まずい、監視されてる。
女「ふふっ、手が汗ばんできたよ」
そりゃそうだ。
色んな気持ちがぐるぐると体の中をかき乱していく。
男「お前、何やってんだよ」
女「ふふっ、ナニも?」
言い方おかしいって。
男「……」
もう、我慢できん。
俺のためにも、こいつのためにも。
男「おい、いいかげんにしろよ!」
俺は思い切って、彼女の方を向いた。
すると。
女「ふふっ、どうしたんだい?」
ブラウス姿の、彼女がいた。
男「お、お前……は、裸は……?」
女「ふふっ、引っかかったかい?」
どうやら、嘘だったようだ。
でも、肌の感触は……?
暗闇に慣れてきた目でよく見てみると、ブラウスがスカートからはみ出している。
まさか、そこに手を入れたのか?
女「とっても驚いているね。さっきとはまた、違う顔だ」
彼女は口の両端を軽くつりあげた。
女「あはは」
彼女は珍しく、すこし声をあげて笑った。
いつもは小さく一笑なのだが。
男「そういう、本気で騙そうとする冗談はやめろ」
女「怒ってるのかい?」
男「怒ってはいないけど」
それに、なんだろう。
男「……普通に、体とか触らせるなよな」
彼女は、言葉を失った。
さらに、顔もいつもと違っている。
女「ああ、そうだね」
静かに、そうポツリと言った。
男「? どうした」
女「いや、なんでもないよ」
男「……?」
いつもの余裕が、なくなった?
男「ん?」
女「暗すぎて、ビックリだ」
確かに、今日はいつになく、暗い。
まだ真っ暗になるのには、ちょっと早すぎる時間。
女「何か過ちがありそうな予感だね」
男「ねえよ」
即答した。
そりゃもう、すぐに。
どうなってるんだ。
男「あのな、確かに周り何も見えないけど、あくまで外だからな?」
女「わかってるさ」
だからこそだよ、と。
堂々と宣言する。
女「青姦なんて、素晴らしいじゃないか」
何がだ。
ゾクゾクっと、体を震わせた。
女「考えただけで、ダメだ」
男「ああ、ダメだ」
相当ダメだ。
女「ボクのやってみたいことリストに入っているよ」
男「実にいや響きのリストだな」
他のは聞きたくない。
女「ふふっ、応援してくれるのかい?」
男「いや、しないけどな」
女「そう言うと思ったよ」
彼女はゆっくりと伸びをした。
女「ふぅ」
息をもらして、ニッコリと笑った。
女「君があの日、話しかけてきてくれなければ、こんな日も、なかったんだよね」
俺とこいつがこうやって話をするようになってのは、数ヶ月前のことだ。
女「あれが初めて、君の優しさに触れたところかな?」
男「なんか、その言い方照れるな」
女「君がボクの初めてを奪ったんだからね」
なんの初めてだ。
男「どんな成り行きだったか忘れちまったなぁ」
女「そうなのかい? それは残念だなぁ」
そう言って、彼女はすこし、顔をふくらませた。
男「そうなのか」
女「まあ、言わないけどね」
男「言わないのかよ」
言う流れじゃねえか。
女「ふふっ、あっという間に家だね」
男「ああ、本当だ」
女「今日は、一緒に帰ることができて、とっても楽しかったよ。また」
男「おう、また明日」
女「うん」
手を振って、別れた。
なんだか、濃い帰り道だったな……。
ポツーンと、声が響いた。
親は、まあ基本的には夜中まで仕事だしな。
妹は寝ちまったかな?
男「腹減ったな」
これならあいつと一緒に食えばよかったかな。
まあ、そうも言ってられないな。
しかし、何かあるだろうか。
ゴツっと、何かに当たった。
男「うおっ、なんだ?」
妹「……」
頭をぶつけたように見える、妹がいる。
男「おう、ただいま」
妹「……どこに行ってたの」
男「学校」
妹「なわけないじゃん、遅いじゃん、どう考えてもおかしいじゃん」
すげえご機嫌斜めだ。
男「は、はい」
妹「当てたら怒らないであげる」
男「おそらく4時間前くらい?」
妹「……」
あれ、合ってたか?
妹「合ってたけど不正解だよ!」
理不尽な!
妹「ご飯作っといたげたのにさ」
男「おお、お腹ペコペコだから食べさせてくれよ」
妹「はぁ!? 『あーん』とか絶対にしないからね!」
いや、頼んでない。
男「とりあえず、それはどこに?」
妹「ん」
顎で示すなよ。酷い扱いだ。
妹はふいっ、とそっぽを向いた。
男「いただきます」
妹のやつは、怒りながらも、料理の出来を気にしているらしく、
妹「どうなの?」
と、聞いてきた。
男「ああ、美味しいよ」
すると、顔がにやけて、「でしょでしょ?」という顔になった。
男「なるほど、いつもがそんなでもないから今日は美味いのか」
妹「その言い方は酷いよ?」
男「わるいわるい」
結局妹は笑顔になった。
まだまだ子どもだな、こいつも。
料理は、俺以上だが。
男「ん?」
妹「クラスの女の子とは、どんな感じで話してんの?」
男「どんな感じって?」
妹「んー、ほらさ。私みたいな接し方とかしてない?」
男「こんなに愛でた接し方してないよ」
妹「は、はあ? バカじゃないの?」
凄く嫌な顔をして、引かれてしまった。
男「んー、別にあんまり変わらないかな。お前と」
妹「あー……そうなんだ」
男「?」
少し深刻そうな顔をして、俺の様子を窺っていた。
妹「それじゃあ、なんか彼女はできなさそうだね」
男「は?」
いきなり極論を言われた。
妹「だって、それじゃあ平行線って感じだしさ」
男「……と、いうと?」
妹「だからさ、お兄ちゃんの付き合いは、ただの友達ってこと」
男「友達」
妹「うん、友達」
男「別にそれでいいじゃねえか」
悪いこと、あるのか?
大げさに、大きめにテーブルを叩かれた。くそ、ビビっちまった。
妹「好きな人ができても、そのままずっと平行線のままなんだよ?」
悲しくないの? と、強い瞳に気圧される。
男「……まあ、そりゃ困るだろうけど」
妹「だから、少しは改めるべきだよ」
男「改めるっつってもなぁ……」
妹「私が教えたげよっか?」
妹「なんでさー!」
男「妹に教わることなんかなにもないね!」
そう言って、ご飯を口に放り込む。
全部食べきって、俺は椅子から立ち上がった。
男「じゃあ、後片付け頼んだ!」
妹「あー! また私にさせるの!?」
さっきの笑顔はなくなり、一気にぷりぷりと怒った顔になった。
ベッドに横たわって、今日のことを思い出す。
男「文化祭、どうしようかなぁ」
目を伏せて、すこし考える。
駄目だ、何も浮かばない。
男「やっぱり、みんなの意見を聞くのが最善かな」
一人の考えより、みんなの多数決の方が決まるのは早い。
男「……それよりも」
さっき、妹に言われた言葉が引っかかる。
それのどこが悪いんだ。
しかし、あの妹の呆れた顔は、正直悔しかった。
男「……つってもなぁ」
いきなり態度変えることも、できねえし。
いつもは、みんなでワイワイするのが好きなわけで。
別に、好きだとか嫌いだとかは、どうでも良くて。
男「まあ、苦手なやつが苦手なんだが」
気にすること、ないか。
いつも通りにしておけば、別に。
今なにか支障がでてるわけじゃないし。
男「風呂入るかな」
妹は既にパジャマだったので、おそらく風呂はもう入っている。
さっさと入って寝よう。
今朝は、放課後に寝ていたせいか、あまり眠くなく、起きるのは苦ではなかった。
ただ寝付きが悪かったのが、少し嫌なところだ。
男「……ん」
食卓に500円がある。
多分、昼食代だ。
男「飲み物代も込みで頼むぜ……」
ため息をつき、500円をポケットに入れる。
妹「おはよう」
男「おう、おはよう」
男「ほい、もう行くのか?」
妹「うん、日直だから」
男「了解」
妹「今日はしっかり帰ってきてね、あと、朝食の感想もよろしく」
小さな紙を俺に差し出して、妹は早々と家を出た。
毎回感想を書かせるのは、どうかと思うんだが。
既に制服に着替えていた俺は、朝食をすませて、外に出た。
ドアを開けて、他には誰もいないので鍵を閉める。
ツーロックなので、二つとも施錠。
自分でドアを閉めたことを指を差して確認していると。
「とても、用心深いんだね」
と、そんな声が聞こえた。
男「この声は……」
女「やあ」
平然と、俺の家の前に、彼女は立っていた。
男「なんだその変な名詞は」
言いたいことはわかるんだが。
肉体……?
男「というか、どうしてここにいるんだ」
女「一緒に行こうかと思ってね」
男「おいおい、お前遠くなってるじゃねえか」
女「そういう考え方もあるかもしれないね」
他の考えがあるのか。
女「でも、君と会うには最高の近道だ」
女「それに、君がボクの家を素通りする可能性も、あるからね」
男「誘って行くことなんてないからな」
女「確かに、いなかったら大変だね」
男「逆に、俺がいなかったらどうするつもりだったんだ?」
女「ふふっ、それはありえないから」
サラッと言い切られた。
男「なんで知ってんだよ」
女「君が教室に来る時間から逆算すれば簡単さ」
恐ろしい。
確かにこいつ、いっつも俺より先に来てるな。
それで、決まったようにニヤリと笑って「おはよう」と言ってくる。
男「とりあえず、行くんなら行くぞ」
女「ああ」
女「眠そうだね」
男「いや、なんか気が緩んだ」
女「ボクに会ったからかい?」
男「そうなのかね」
女「ボクも、君に会ってからここがやけに締まってるんだ」
どこを指さしてるんだ。
女「やれやれ、といったところだね」
自分にやれやれと思う奴がこんなところにいたとは。
男「ああ」
きっと文化祭のことだろう。
男「でも、まったく思いつかなかったな」
女「そうか」
珍しく、話が途切れた。
女「ふふっ、初めてというのは緊張するものだね」
男「初めて?」
女「下校は何度かあるけれど、一緒に登校するのは初めてだろう?」
男「ああ……確かに」
別に、あんまり変わらないと思うけど。
きょろきょろと周りを見渡して。
女「ボクの色んなところを、みんなが見てる……見られている」
男「自意識過剰すぎるぞ」
女「それくらいがちょうどいい」
いや、良くないだろ。
女「教室でも一番前の席だと、誰かが自分の後頭部を凝視しているかもしれない……」
男「あんまり考えねえけどな、そんなこと……」
女「ボクは君の後頭部をよく凝視することはあるけど」
お前かよ!
女「だから、誰かがやっていてもおかしくないだろう?」
まあ、そう考えることもできるか。
女「ボクが自慰をしているのがいつバレるかとても怖いよ……」
お前は授業中になにをしてんだ!?
男「嘘をつくな」
女「君はボクの監視下にいるから、そんなことできないよね」
いや、しねえよ。
女「友達の行動を見るのは、普通のことだろう?」
君は見ていて飽きないからね、と。
にっこりと笑った。
男「……俺はお前のこと見てないぞ」
女「見てくれたら、笑顔で応えるよ」
手も振っちゃうと、本当に手を振りながら言った。
女「怒られて職員室に連行はいやだね」
男「ならやるなよ」
女「ふふっ、怒られることより君に応える方が最優先だよ」
俺、だいぶ比重があるのか。
女「文化祭、今日も考えるのかい?」
男「いや、今日は放課後にささっとみんなに意見を聞くことにした」
女「それはいいね。君にしては名案だ」
俺にしては、だと?
女「ボクは構わないけどね」
男「お前が構わなくても、他は困るだろ?」
女「ボクは構ってしまうね」
男「……?」
女「君のことを、かまわないことなんてできないよ」
……意味が違うようだな。
男「ああ」
学校が見えてきた。
話をしていると、すぐに終わってしまう。
女「文化祭、何になるか楽しみだね」
男「そうだな。色々と会議とかもあってだるいんだけどな」
女「委員になっただけでも、偉いよ。ボクはエロいだけだし」
言いたかっただけだろ、それ。
女「君が頼むのなら、いいよ」
男「すげえ上から目線だな」
女「そうでもないよ、友達の頼みは、聞かなきゃ」
男「じゃあ、フォロー頼んだ」
女「フェラーね」
いや、無理があるだろ、それ
女「ボクはまだしたことがないから、下手なのは大目に見てくれ」
期待してねえし、させねえよ。
女「ふふ、テクが凄いからね」
話術のテクか。
女「おや」
男「どうした?」
ある、一通の手紙が彼女の下駄箱に入っていた。
女「これは?」
男「そ、それはまさか……」
いわゆる、ラブレター?
女「ラブ、レター?」
キョトンと、首を傾げた。
女「ラブホテルみたいなものか?」
男「なわけないだろ」
そんなの下駄箱に入ってたら恐ろしい。
女「……恋文?」
男「そう、そう」
なんか古い言い方だな。
男「お前の下駄箱に入ってるんだからそうだろ」
女「そ、そうか……そうなんだね」
いきなり顔を赤くして、慌てふためいた。
女「でも、ボクなんかで、いいのかな……」
男「とりあえず、読んでみろよ」
女「ああ、その前に教室に行こう」
そうしないと、ゆっくり読めないからな。俺はさっさと了解した。
机に座って、丁寧にラブレターを読んでいる。
男「誰からだ?」
女「学年が同じようだが、知らない人だね」
男「へー」
こいつ、わりと人気あるのか。
女「違うクラスの人が、どうしてボクに?」
男「知らねえよ」
女「こんなド淫乱雌豚野郎に?」
卑下しすぎだろ
女「屋上に来てくださいと書いてある」
男「屋上か、それっぽいな」
女「それっぽいって?」
男「告白する時とかって、屋上とか、校舎裏がセオリーだからな」
女「君は、告白されたことがあるのかい?」
なんでそんなに焦った感じなんだ。
男「されたことねーよ、悪かったな」
ホッと息を吐かれた。畜生。
俺に先越されるのは嫌か。
男「で、どうするんだ?」
女「うーん……」
唇に人差し指をあてて、思いふけっている。
女「ふふっ、どうするんだろうね」
他人事みたいに言うなよ。
男「なんだよ、それ」
女「ちょっと、顔が近いかな」
男「んっ……」
確かに、近くになっていた。
すこし、熱中してた。
女「危うく唇を奪うところだったよ」
奪われるんじゃなくて、奪うのかよ。
強引だな。
まあ気にすることはない。
こいつと付き合うやつの顔が見てみたいが。
放課後になればわかることだ。
女「さて、そろそろみんなが来るね」
男「そうだな」
ホームルーム手前に来る奴が多いので、まだ全然来ていない。
しかし、数分すると、一気に全員集合する。
俺はできるだけ、遅刻ギリギリは避けようと早めに来ているから、そんなことないけどな。
問題を出されて焦ったりしていると、授業はあっという間に過ぎていった。
昼食は500円しっかり使って食べれるものを食べた。
珍しく、やつは食べている最中、あまり話さなかった。
やっぱり、ラブレターを気にしているらしい。
男「って、わけで、みんなに色々と意見出して欲しいんだけど……」
ホームルームに、時間をもらって、文化祭の出し物を決める。
たくさんの意見の結果、メイド喫茶になった。
しかし、メイド喫茶は他のクラスも何個かあった気がするんだが……参ったな。
まあ、当然だろう。
やつを見ても、笑顔にならない、手も振らない。
早速嘘をつかれた。
男「それじゃあ、メイド喫茶でいいな。もしも通らなかったら、また今度決めるから、みんな協力頼んだ」
そう言って、ホームルームは終わった。
女「いい指揮だったよ。とてもスムーズに事が運んでいたね」
男「で、お前はいいのかよ、屋上行かねえのか?」
女「ああ、今から行くよ」
男「ついていってやろうか」
冗談で言ってみた。
女「ははは、いいよ」
きっぱりと断られて、
女「これは、ボクの問題だから」
女「だから、ボク一人で解決したい、かな」
なんだか、煮え切らない。
男「まあ、結果は教えてくれよ。今日は先に帰るぞ」
女「待っててくれてもいいんだよ、別に」
男「いや、いい。OKされたらそいつと一緒に帰れよ」
女「……そうか、そうなるんだね」
男「じゃあな、健闘を祈る」
女「はは、まるでボクが告白するみたいだね」
実際は逆だけど、な。
男「ああ」
そう言って、俺は教室を出た。
男「……」
気持ちが、変だ。
なんだか胸騒ぎがするというか、なんというか。
男「なんだよ、あいつ」
友達だって、言い張るくせに。
自分の問題は、自分一人で解決かよ。
なんか、納得いかねえな。
昨日とは違って、長く感じた帰り道だった。
黙々と帰ると、歩けど歩けどたどり着かないような気持ちになる。
妹「おかえり、今日は早かったんだね」
男「お前に会いたかったからさ」
妹「だったら昨日も早く帰ってきてよね」
軽く流されたが、まあいい。
妹「ん?」
妹「お兄ちゃん、なんかあった?」
男「えっ、なにがだ?」
妹「なんか変な顔してる」
いつもだけど、と。
余計なことを付け加えてきた。
男「悪かったな」
妹「それはいいから、何かあったんなら言ってよ」
男「いや、ないよ」
妹「もしかして、朝食まずかった?」
妹「感想が『びみ』ってひらがなで書いてあるから、美味なのか微味なのかわかんなかったよ……」
男「それはお前を悩ませるために無理にそうしたんだ」
妹「なによそれ、不安になるからやめてよ」
男「不安なもんを食べさせるなよ」
妹「うっさいなー、作ってもらってるだけ感謝してよね」
まあ、確かに。
妹「……で、なにがあったの?」
男「あくまで聞いてくるんだな……」
男「……えーっとだな」
そして、とりあえず今日あったことを話した。
やつが告白されたこと、文化祭の出し物がメイド喫茶に決まったこと……など。
妹「確実にお兄ちゃん、それって……」
男「お前に言及される気はない、話したから部屋に行くぞ」
妹「えー待ってよー!」
俺は無視して、階段を登った。
あいつは携帯を持っていない。
だから、結果を今メールで聞くことはできない。
電話するほどでもないと思うし。
男「寝るか」
上手くいかない気持ちを抑えこんで、俺はまぶたを閉じた。
男「!」
妹「晩御飯まだでしょ、それに制服のまま寝たらシワになっちゃう!」
男「お前……俺より年下なのにしっかりしてるな」
妹「ダメなお兄ちゃん持つとこうなるのよ!」
と言って、部屋を退出する間際に、
妹「あ、ちゃんとご飯食べて風呂入んなきゃダメだよ。気分もすっきりしないんだから」
男「……あー」
まるで母親みたいな妹だ。
まあ、妹の言う通りかもしれない。
まだ残暑が残る日、ベタリとした体のままだと気持ちもジメジメしちまう。
どうやら、少し寝ていたようだ。
飯を食って、風呂に入ろう。
それでももやもやするなら、寝よう。
男「よいしょっと」
俺はのんびりとベッドから立った。
「気にしなくてもいいぞ」と言ったが、聞いちゃいない。
妹「そんな顔されたら、気にしないなんてできないから」
そんな、大人みたいなことを言う。
なんか、情けない。
妹「お兄ちゃんにはいつも迷惑かけてるんだから、こういう時ぐらいね」
良い妹を持ったなあと、痛感する。
だが、気分は晴れない。
晴れるわけ、ない。
男「……」
ちゃぷんと、小さく波紋が広がる。
男「はぁ……」
汗のジメジメはなくなったのに、気分はスッキリしない。
男「なんなんだ、この気持ちは」
頭をくしゃくしゃと掻いた。びしょ濡れの髪の毛は、そのまま形を保っている。
男「……駄目だ」
呟いて、風呂を上がった。もう、寝よう。
いつになく、ベッドから起き上がれない。
男「あー……」
今日は休もうか、というくらいに体が重い。
男「つっても、そりゃ無理か」
変に学校を休んでちゃまずい。
ただでさえ、文化祭まで時間がありそうでないんだから。
男「ふぅ……」
一度、深呼吸をして、ゆっくりと上半身を起こした。
男「おう、おはよう」
妹「お兄ちゃん、昨日は寝れなかったみたいだね」
男「ああ……」
小さく俺がそういうと、妹はニッコリと笑って、
妹「まあ、お兄ちゃんもそういう気持ち、味わった方がいいと思うよ」
男「どういうことだ?」
妹「なんでもなーい」
すこし無邪気に言葉を伸ばして、妹は食パンを頬張った。
腫れ物に触るような感じで接されると逆に困るというか。
男「いただきます」
妹「今日はお弁当作ってみました」
男「おお」
妹「さらに、今日は自信作なので不安じゃないです」
そりゃ珍しい。
妹「今珍しいと思わなかった?」
男「いいや、まったく」
心が読まれている気がした。
男「ん、今日は何かあるのか?」
妹「なにもないけど、早めに行ったらお得な気がするから」
得……するのか?
妹「じゃあ、いってきます」
男「ああ、行ってらっしゃい」
俺も用意された朝食を食べる。
妹のやつ、俺は味噌汁とかなのに自分は食パンなのか。
なんか、悪い気がするなぁ。
飯を食い終え、片付ける。
男「俺も行くか」
時計をみると、いつもより少し早い。
男「……」
さて、学校に行くか。
振り返っても、誰もいない。
男「当然、か」
何を期待していたんだ、俺は。
期待する必要なんて、ないだろう。
男「いってきます」
小さく、家に向かってひとりごち、学校に向かった。
昨日は聞こえなかったように思える。
それもこれも、話をしていたからかもしれない。
男「……早いな」
平均より、10分くらい早い。
男「こんなに雰囲気、変わるもんなんだな」
まったく違うところに来たみたいだ。
教室には、誰もいなかった。
男「鍵取りに行かねえと」
職員室に行こうと、方向転換したが。
その必要は無くなった。
女「やあ」
男「お、おう」
彼女が鍵を握りしめて、やってきた。
女「どうぞ」
男「すまんな」
女「いつものことだから」
確かに、この前もそうだった。
「鍵取ってくるから、先に行っててくれ」と、ラブレターをいそいそとバッグに入れながら、職員室に行っていた。
男「……」
女「ふふ、入らないのかい?」
男「お前が先に入れよ」
女「そうか、わかった」
男「……」
バッグを机に置いて、少し間があった。
俺もやつも、静かに何も言わない。
切り出そうにも、切り出しづらい。
女「文化祭はメイド喫茶に決まったけれど、やっぱりメイド服を着ることになるのかな」
と、ぽつりと俺に向けて彼女は口を開いた。
男「まあ、これから色々と話を決めていかないといけないから、まだわかんねえよ」
女「そうか。雑用か、料理がいいのだけれど」
男「料理? お前、料理できるのか?」
女「多少は、ね」
女「ふふ、そういう話、しないからね」
いきなり変なネタに突入するせいでな。
男「……」
今なら、聞ける。
女「よいしょっと」
男「ん?」
バッグの中身が、やけに膨らんでいる。
男「なんか、持ってきたのか?」
女「あ、ああ……」
男「……」
女「お弁当をね」
女「うん、ちょっと多めに」
こいつの弁当は、あまり大きくなかったはず。
女の子が食べるような、小さめの弁当箱だ。
女「……まあ、そんなことは置いとこうよ」
置いとけるかよ。
男「なあ、昨日のことなんだけど」
俺は、思い切って、聞いた。
男「返事……どうしたんだ?」
男「……」
女「OKしたよ」
男「……」
女「だからこその、弁当なんだから」
そう言って、大きいサイズの弁当箱と。
いつものやつの弁当箱を出した。
女「どれほど食べるかわからないから、とりあえず量は多めにしたんだ」
男「……」
女「どうしたんだい?」
男「いや、なんでもない」
なんでもない。
わけが、ない。
ニコッと笑った。
その笑顔が、なんだか違う笑顔に見えた。
幸せのような、なんというか。
形容しがたい、何かに。
男「そ、そうか……そうだったのか……」
彼女は、告白されて、OKをした。
つまり、彼女には彼氏がいる。
そういうことになる。
男「えっ……」
女「ボクと君は友達なんだから」
『友達』。
そうだ、『友達』だ。
それ以上でも、それ以下でもない。
俺は、何を考えてたんだ。
バカみたいだ。
女「……」
にんまりと、彼女は笑っていた。
男「……じゃあ、そろそろ席に着くわ」
女「まだ、時間はあるよ、お話でもしようじゃないか」
男「いい。ちょっと、寝る」
女「今日はいつもより早かったからね、了解した」
机に突っ伏して、俺は目を閉じた。
このまま、目を開ければ何もなければいいと。
心から願った。
男「……」
チャイムの音で、目が覚める。
今日も授業がはじまるのだ。
何も変わらず、何も起こらず。
ただ淡々と、時が流れていくのだ。
人の気持ちも知らないで、ゆっくりと、着実に。
そのまま、ずっと流れなければいい。
男「……」
でも、何も変わらないのは嫌だ。
男「くそ」
小さく、声を漏らす。
男「くそ……」
そして、また机に突っ伏した。
静かに頭を上げて、軽い口調で詫びる。
ふいに、やつを見た。
なぜか俺の方を見ていて、笑顔で応えて、手を振ってきた。
俺はすぐに目をそらした。
なんだか、嫌だった。
男「なんでだよ」
変にかまうなよ、俺に。
こっちはどう反応すればいいか、わからないだろう。
男「……」
ノートに落書きをはじめる。
しかし、駄目だ。
何故か、文字ばかりを書いてしまう。
落書きすらできないくらいに、気分が良くなかった。
勉強に身が入るわけがない。
ただでさえ、真面目にうけてないのに。
今の状態で受けられる奴なんて、相当破滅願望のあるやつだ。
破滅……?
なんで俺は、破滅したと思ってるんだ?
そんなこと、ないだろう。
勝手に気落ちして、勝手に複雑な気持ちになっているだけじゃねえか。
男「……馬鹿馬鹿しい」
自分に嫌気がさす。
男「別に」
どんな想いでも、ねえだろ。
ただ話かけてくるから、話をしていただけじゃねえか。
特別、何かを求めているわけでもない。
そうだろう、男。
男「……」
うんざりする。
平然とした顔で、通りすぎていく。
男「……飯、食うか」
ふと、周りを見てしまう。
やつは、教室を出ていく途中だった。
男「……」
関係ないことだ。
これから、離れていく存在なんだから。
俺には、関係ない。
どうして俺は。
あいつを追いかけているんだろう。
男「……」
やつは二つの弁当箱を持って、屋上に向かっているようだった。
どうして俺は、やつについていってるんだ。
バカだ、本当に。
自分を本当の絶望に沈めないと気がすまないみたいだ。
本当に、終わってやがる。
男「……やめるか」
そう口では言っているのに、歩みは止まらない。
止まる気配は、まったくない。
屋上への階段を、やつとだいぶ間をあけて、歩く。
もう、どう思われてもいい。
最悪なやつだと、
最低なやつだと、
絶好と言われても、構わない。
確かめたかった。
どんな結果になろうとも。
手が震える。
何を弱気になってるんだ。
終わらせようぜ、全部。
決心して、俺は勢い良くドアを開けた。
女「やっぱり、来てくれたんだね」
満面の笑みをした、やつがいた。
男「……えっ」
女「ふふっ、驚いた?」
男「ど、どういうことだ?」
女「どうもこうも、こういうことだよ」
弁当を差し出して、彼女はハニカむ。
女「昨日弁当が無かったから、作ってきたんだ」
男「それ、彼氏のじゃ……」
女「あー……やっぱり本気で信じてたんだ」
嘘、だったのか?
女「ふふ、君を驚かせようとしたんだ。あんなにビックリした顔してたから、すこし、面白かったな」
男「な、なんだよそれ……」
俺は、こいつに騙されてたのか。
強ばっていた肩の力が、一気に抜ける。
女「でも、やっぱりやりすぎちゃったかな」
ああ……まったくだ。
女「はは、ごめんごめん」
手を合わせて、頭を下げてきた。
男「……」
女「いくらなんでも、友達にするには少し酷すぎることをした、謝ろう」
男「……友達じゃねえよ」
女「……え?」
彼女は戸惑った声をだす。
女「だって、君はボクの友達だろう?」
男「俺はお前のこと、友達として見てねえ」
俺は、
男「俺は、お前のことが、好きなんだから」
俺は今何を口走った?
自分で、いったいどんな馬鹿げたことを、漏らした?
女「えっ……ええっ……?」
顔を真っ赤にして、驚いている。
男「い、いや、なんでもない、今のは……」
『嘘だ』とは、言えない。
嘘でも冗談でもない。
正真正銘、俺の本音だ。
女「ボクのことが……好き?」
俺は頭を下げて、腹に力をグッと押し込んで、
男「お前が、大好きだ。変な口調も、変に下品なとこも、貧乳も、小さい尻も、短い髪も、全部含めて」
女「……」
自分の気持ちに嘘をつくことは、できそうになかった。
もう、どうなってもいいから。
女「……ふふっ」
彼女は笑って、
女「貧乳とか、ちょっと余計かな」
と、俺の頭を撫でた。
頭を撫でながら、彼女は言った。
男「……それは」
女「うん、ボクは君のこと、君以上に大好きだよ」
男「……!」
俺が頭をあげた瞬間、彼女は俺に抱きついてきた。
女「ほらね、君を離したくないって、思ってるみたい」
女「うわっ……!」
驚いて、ビックリしている。
女「ふふふっ、君もボクを、離したくないのかい?」
男「離したくないに決まってんだろうが」
女「熱い言葉だね……嫌いじゃないよ」
むしろ大好きだよ、と。
涙を流して、笑った。
彼女は自分が涙を流していることに気づくと、とてもあたふたとしはじめた。
女「どうして、嬉しい時に、涙が出ちゃうんだろう」
男「……嬉しい、のか?」
女「うん、当たり前だよ。君と、両想いだったんだから」
ゴシゴシと、涙を拭いて、笑い直す。
女「ごめん、変な顔、しちゃってるかも」
そんなこと、ない。
男「いつもとなんか雰囲気違ってて、可愛いぞ」
女「か、可愛い!?」
ボッと顔を真っ赤にした。
男「彼女になるやつ以外に、逆に使いづらいと思うんだが」
女「そ、そうなのかな……」
顔をうつむかせて、彼女は一つ小さく咳払いをした。
女「……それじゃあ、ご飯、食べる?」
男「ああ」
女「……きっと、美味しいよ」
俺に弁当を渡して、
女「すっごく、気持ちが入っているからね」
女「うん、やましい気持ちと、いやらしい気持ちと、すさまじい気持ちが入ってます」
うわ、食いたくねえ。
女「もしかしたら、体の一部が入ってるかもね」
男「食う気を削ぐなよ……」
女「ふふっ、残さず食べてくれよ?」
男「もちろんだ」
一口食べただけで、こいつの料理は相当うまいことがわかる出来だった。
女「やっぱり、男の子だね、全部食べ切っちゃうなんて」
男「そうか、これくらい普通だぞ」
女「じゃあ、もっといるかい? ボクは少しお腹いっぱいなんだけれど」
というよりは、気持ちがいっぱいになってる、と。
恥ずかしいことを言ってくる。
男「じゃあ、食べてやるよ、貸せ」
女「ううん、はい」
あーん。
男「……美味い」
女「そうか、それは良かった」
……どうしよう。
やべえくらい恥ずかしい。
男「……」
なんか、放心状態だ。
色んなことを体験しすぎたせいか、体が熱い。
女「これからも、作っていいかな?」
男「ああ、いいぞ」
いつもパンとかを買って食ってるからな。
それは凄く嬉しい。
……ん。
男「あっ!!!」
男「……」
妹の弁当、忘れてた。
今日は自信作だって言ってたのに……。
これはやばいな、とりあえず、帰るまでに食うしかない……!
女「相当まずいことに気づいてしまったみたいだけど、ボクは力になれる?」
男「難しいかもな」
はぁ、どうしよう。
教室は何も変わらず、いつも通りだ。
そして、友人達に報告してみた結果、
「お前たち、まだ付き合ってなかったのか」
という言葉が返ってきた。
女「はは、なんだか、恥ずかしいね」
頭を掻きながら、彼女は照れくさそうに言った。
男「なあ、女」
女「なんだい、男」
男「この大量の弁当はいつになったら、終わるんだろうな」
妹の弁当は、女の以上に量があった。
女が作ってくれた弁当と、女が残した弁当を食べた俺には、相当な、莫大な量だった。
男「し、死ぬ……」
女「死んだら、困るよ」
いや、冗談だから、今そんな真剣な顔しないでくれ。
男「また先生にこっぴどく叱られた……」
女「ふふっ、先生に渡す時にゲップを何度もするからね」
男「うるせー……」
でもまあ、食べれたのは正直びっくりした。
吐くこともなく、なんとかなったしな。
そして、二人で夜の道を歩いていると、
女「あ、そういえば」
口を開いたのは女。
女「まだキス、してないね」
確かに、俺も気にしていたけれど。
女「……君に、まかせようかな」
男「……」
俺にまかせる!?
ど、どうしよう。
初めてだから、どうすれば、わからない。
女「あ、でも」
彼女は離れて。
女「お弁当食べたばっかりだから、遠慮するね」
男「な!」
なんだよそれ!
女「ふふふっ」
俺のドキドキを返せ!
男「酷い言いようだな!」
なんか悲しくなってきた!
女「キスは、おあずけにしようよ」
男「ん、あ、ああ」
別に、俺も今すぐしたい、ってわけじゃないしな。
女「だから、さ」
ギュッと手を繋いで。
女「こうして、帰ろう」
男「……ああ」
彼女はニッコリしながら俺をみて、うんうんと頷いた。
月がとっても綺麗な、そんな日だった。
END
男「おう、遅くなった、悪い」
妹「いいよいいよ、それより今日のお弁当はどうだった? 美味しかったでしょ!」
男「……うぷっ」
妹「!?」
男「あ、ああ、美味かった……」
妹「……? そ、それなら良かった。それじゃあ晩御飯食べよ」
男「晩御飯……いらない」
妹「は、はあ!?」
男「俺、食ってきた……」
妹「……もー、なんなのよー!!」
終
面白かった
Entry ⇒ 2012.10.02 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
P「暇だからネット掲示板で釣りしよう」
今月の使用料金ヤバイ ゴールドプラン入っとけば良かった
P「まあ今更こんなのに引っかかるやつは……」
千早「し、使用料金!?」
あずさ「そんなものがあるのね~」
真「聞いてないよ……」
雪歩「あぅぅ……」
亜美「これはちょっと洒落になんないかも……」
真美「無料だって書いてたじゃん……」
美希「こんなの嘘っぱちなの!!聞いたこと無いもん!」
響「だ、大丈夫。自分そんなに使ってないし……」
貴音「なんということでしょう」
春香「こんなの誰にも相談出来ないよ……こんなサイト使ってるなんて……」
あー、もうそんな時期か すっかり忘れてた
以下、名無しにかわりましてローソン店長がお送りします
つーか計画的にやってるから余裕
りっちゃんは今月は20万ぐらいだった
春香「に、20万!?」
以下、名無しにかわりましてデコちゃんがお送りします
ああ、その程度の金額なのね
安心したわ
千早「全然安心できないわよ!!」
以下、名無しにかわりましてドタプーンがお送りします
あのー、この掲示板は無料だと聞いていたのですが
P「おっ、何かのっかってくれてる」
以下、名無しにかわりましてPがお送りします
閲覧
1スレッド 25円
ニュース・文化・ゲーム 3分1円
書きこみ
1レス 10円
スレ立て 500円
■書きこみ放題(3ヵ月)
プラチナプラン 4800円 閲覧無料 スレ立て200円、通常3スレ/月、実況5スレ/週の
無料サービス
ゴールドプラン 3500円 閲覧無料 スレ立て半額
厨房プラン(夏限定) 2000円 閲覧無料 スレ立て無料(一回限り)
支払日:毎月末or毎年末(支払われなかった場合、然るべき措置をとる次第です。)
住所の登録:必要なし。IPアドレスから各プロバイダ(全てのプロバイダとは、契約済み)を通し、
使用した瞬間から住所が登録されます(proxyなどは、無効になっています。)
響「うぎゃああああああああああ!!嘘だあああああああああああ!!」
亜美「ちょ、まずいじゃんよ!!」
雪歩「こ、今月真ちゃんの事で一杯書き込んだり閲覧したりしたから……」
貴音「らぁめんと書き込むだけで料金がかかるのですね……」
真「トレーニングの参考にしようと思って色々見ちゃったよ……」
以下、名無しにかわりましてデコちゃんがお送りします
ふーん、妥当な値段って所かしら
もう少し上げても問題ないと思うけど
美希「何言っちゃってくれてるの、この人」
プラン入るのいっつも忘れるから困る
以下、名無しにかわりましてわた、春香さんがお送りします
プランって後からでも入れますか?
以下、名無しにかわりましてPがお送りします
とりあえず未納料金全て払ってからじゃないと無理かと
以下、名無しにかわりましてDあるもんがお送りします
どうしてそう言う事を管理側は目立つ所に書かないんですか!!!!!!????
明らかにわたsた地にお金を払わせたいだけじゃないすあくぁwせdrftgyふじこlp
小鳥「ちょっとからかってあげようかしら」
以下、名無しにかわりましてピヨがお送りします
2年前の高校生時代に家に人が来てマジで焦った
以下、名無しにかわりましてローソン店長がお送りします
いつ来るか分からない恐怖感 あれは地獄
以下、名無しにかわりましててぃんがお送りします
私も若いころはよくやってしまったよ
雪歩「家に来ちゃうんですか……」
響「ちょ、ちょっと、自分何も悪い事してないぞ……」
どこにふりこんだら良いの?
以下、名無しにかわりましてPがお送りします
そんぐらい調べろ
以下、名無しにかわりましてピヨがお送りします
これだからゆとりは
以下、名無しにかわりましてデコちゃんがお送りします
調べても分からないから聞いてるのに
以下、名無しにかわりましてAFUUUUUUUUがお送りします
新参の人のために教えてあげたら?可哀想だし
つか、ヤバイヤバイ言ってる人達使用料金晒してよ
以下、名無しにかわりましてPがお送りします
約10万ですた
以下、名無しにかわりましてピヨがお送りします
34000
以下、名無しにかわりましてウィセレブがお送りします
182000だけど
以下、名無しにかわりましてローソン店長がお送りします
結局20万の私が大勝利ということで
美希「せっかくさりげなく振り込み方法を聞きだそうと思ったのに流れが変わっちゃったの……」
真美「皆お金かかりすぎだよ……どうすんの……」
デコ→伊織
ローソン店長→律子
ドタプーン→あずさ
春香さん→春香
Dあるもん→千早
てぃん→社長
AFUUUUUUUU→美希
ウィセレブ→黒井社長
使用料金とやらはどのようにして知る事が出来るのですか?
以下、名無しにかわりましてPがお送りします
それ釣りか?
以下、名無しにかわりましてピヨがお送りします
書き込み欄に「!PIYOKAWAI」で出てくるけど
ちなみに私はもうやったから出ないピヨ
以下、名無しにかわりましてあまとうがお送りします
マジなんだろうな!?
以下、名無しにかわりましてエリーがお送りします
テスト 【87600円】
亜美「うぅ……怖い……」
千早「でも……やらなきゃ……」
!PIYOKAWAI
以下、名無しにかわりましてデコちゃんがお送りします
!PIYOKAWAI
以下、名無しにかわりましてドタプーンがお送りします
!PIYOKAWAI
以下、名無しにかわりましてDあるもんがお送りします
!PIYOKAWAI
以下、名無しにかわりましてまっこりんがお送りします
!PIYOKAWAI
以下、名無しにかわりましてドリラーがお送りします
!PIYOKAWAI
以下、名無しにかわりましてあみんちゅがお送りします
!PIYOKAWAI
以下、名無しにかわりましてまみんちゅがお送りします
!PIYOKAWAI
以下、名無しにかわりましてAFUUUUUUUUがお送りします
!PIYOKAWAI
以下、名無しにかわりまして完璧な我那覇響がお送りします
!PIYOKAWAI
以下、名無しにかわりましてらぁめんまんがお送りします
!PIYOKAWAI
ちょっと出ないじゃないですか!!
以下、名無しにかわりましてPがお送りします
えっ
以下、名無しにかわりましてローソン店長がお送りします
何この一体感
以下、名無しにかわりましてチャオ☆がお送りします
すごい一体感を感じる。今までにない何か熱いチャオを
以下、名無しにかわりましてウィセレブがお送りします
マジレスすると表示されないやつは相当使ってる
直接管理者に聞いた方が良いと思うよ
以下、名無しにかわりましてピヨがお送りします
教えるなよ屑
せっかく気付かず破産してく連中が大量にいたのに
たかが掲示板で破産するはずないじゃない
馬鹿みたい
以下、名無しにかわりまして完璧な我那覇響がお送りします
そうだぞ
以下、名無しにかわりましてあまとうがお送りします
神様頼む 10000円以内でお願いします
!PIYOKAWAI
以下、名無しにかわりましてまみんちゅがお送りします
だよねー これじゃ詐欺じゃん
以下、名無しにかわりまして豆タンクがお送りします
ママに怒られませんように!!!!!
!PIYOKAWAI
以下、名無しにかわりましてエリーがお送りします
ちなみに使用料金を踏み倒すとk……おや、誰か来たようだ
【79000円】
これ強制徴収とかちょっと酷いですよ!!
知ってたらスレとか立てなかったのに
以下、名無しにかわりましてローソン店長がお送りします
お小遣い貰ってる厨房は大人しくしてなさいってことだ
以下、名無しにかわりましてあみんちゅがお送りします
どうしたらいいの?
以下、名無しにかわりましてPがお送りします
俺だってお金払いたくねえよ
よくよく考えたら住所なんか分かるはずありません 書き込んだだけで
以下、名無しにかわりまして完璧な我那覇響がお送りします
そうだよね
以下、名無しにかわりましてエリーがお送りします
書き込み→IP割→回線割→住所→特定しますた
以下、名無しにかわりましてDあるもんがお送りします
そんんあの犯罪sじゃあれすか!!勝手に住所特定とかダメですよ!!
以下、名無しにかわりまして!_?がお送りします
【100800円】
まあ10万ちょっと越えるぐらいかな?
以下、名無しにかわりましてピヨがお送りします
えっと掲示板に書き込むってのはそれ相応の行為なんだけど
むしろ公に住所を晒さないだけマシだと思う
中の人
まあ誰もが一度は通る道だ 気にしないで良い
親に土下座するというのがいつか大きな財産になる
以下、名無しにかわりましてわた、春香さんがお送りします
そんな
どうにかならないんですか?知らなかったんです
以下、名無しにかわりましてPがお送りします
知らないで済んだら警察いらない
以下、名無しにかわりましてドタプーンがお送りします
あの、料金が表示されない時ってどのくらいの金額ですか?
以下、名無しにかわりましてピヨがお送りします
まあ軽く7ケタですね
以下、名無しにかわりましてあまとうがお送りします
母ちゃんに泣いて謝ってくる 死にたい
以下、名無しにかわりまして豆タンクがお送りします
100万円ってお小遣い何カ月分だろう あははははははは
そりゃこれだけ釣り甲斐があればな
ハニーごめんなさい キラキラどころか捕まっちゃうかも
以下、名無しにかわりましてDあるもんがお送りします
ああああああああばなばあなあばんあばばっばば!!!!!!!!!!!!!1111
以下、名無しにかわりましてらぁめんまんがお送りします
これだけのお金があればらぁめんが何杯食べられるのでしょうか
P「こいつら何だ……マジで釣られてるのか?」
小鳥「見てて少し可哀想になってきた……」
律子「まさか今頃こんなのに引っかかるなんて……」
しょうがないなぁ 料金帳消しにする方法教えてあげようか?
千早「えっ!?何なのそれ!?」
あずさ「帳消し……?」
真「ええええええええええ!!まだ助かるの!?」
雪歩「何が何でも教えてもらわないと……」
亜美「よーしよしよし」
真美「教えてくれたらご褒美に何でもしてあげる」
美希「お願い、あなたが頼りなの……!」
響「信じてる……」
貴音「なんと素晴らしい方なのでしょうか……」
伊織「流石に百万単位を失うのは……こいつに期待するしかないわね」
春香「この人に全てが……」
お願いします!
以下、名無しにかわりましてデコちゃんがお送りします
ありがとうね
以下、名無しにかわりましてドタプーンがお送りします
本当に本当にありがとうございます
以下、名無しにかわりましてDあるもんがお送りします
世の中が皆あなたみたいな人ばかりだったら良いのに
以下、名無しにかわりましてまっこりんがお送りします
良い性格だってよく言われるでしょ!
以下、名無しにかわりましてドリラーがお送りします
あの、何も出来ませんけどお願いします……
以下、名無しにかわりましてあみんちゅがお送りします
いかすぜ兄ちゃん!
以下、名無しにかわりましてまみんちゅがお送りします
姉ちゃんかもしれないけどサンキュー!
以下、名無しにかわりましてAFUUUUUUUUがお送りします
ハニーの次に大好きだよ
以下、名無しにかわりまして完璧な我那覇響がお送りします
感謝してもしきれない
以下、名無しにかわりましてらぁめんまんがお送りします
どうか私たちに慈悲を
以下、名無しにかわりましてあまとうがお送りします
お前最高だぜ
以下、名無しにかわりまして豆タンクがお送りします
ママに殺されちゃいます!!!お願いします!!!
それだけお願いされたら仕方ないなぁ
名前欄にね「fusianasan」って入力したら全部チャラだよ!
P「やよいは俺に泣きついてこないよな?借金がとか意味が分からない文字が出て怖くなったとか言わないよな?」
やよい「何の事ですか?」
P「やよいはネット掲示板なんか使ってないよな?」
やよい「ネット繋がってませんし……」
P「それで良いんだ……!やよいはかしこいなぁ」ナデナデ
やよい「?」
終わり
面白かった
Entry ⇒ 2012.10.02 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
翔太「えっ!ドーナツが半額!?」北斗「あぁ」
冬馬「100円セールじゃなくて半額かよ。すげぇな」
翔太「何が半額なの!?ハニーディップあるの!?」
北斗「落ち着け翔太。ほら、これがチラシだ」
翔太「貸してっ!」
冬馬「チラシまで持ってくんなよ……」
北斗「事務所の掲示板に貼ってあったから拝借してきたんだ」
冬馬「芸能事務所になんでドーナツのチラシが貼ってるんだよ」
北斗「社長の趣味じゃないか?」
冬馬「……まぁそんなとこだろうな」
P「俺が引き抜き!?」黒井「ウィ」
P「冬馬が765プロに?」黒井「ウィ」
P「冬馬はどんな女が好みなんだ?」冬馬「そうだな……」
P「今日真美と亜美の誕生日なんだよ」冬馬「へぇ」
P「ピジョンの次なんだっけ?」北斗「コダックですよ」
冬馬「寿司食いに行かね?」P「いいな」
P「そういえば律子も二十歳になるんだよな」黒井「ほう」
黒井「生レバーが……終わってしまった」P「そうですね」
冬馬「海老グラタンパイねーの?」
北斗「ドーナツだけみたいだな」
冬馬「Dーポップもないとかミスドわかってねぇなー」
翔太「ねぇ冬馬君!北斗君!ドーナツ買いに行こうよ!」
冬馬「今日収録入ってるだろ。これいつまでやってんの?」
北斗「明日までだったか?」
翔太「じゃあ明日行こうよっ!お願い!」
冬馬「つーか翔太一人で行けばいいじゃねーか。俺エンゼルフレンチとポンデリングな」
北斗「オールドファッションとゴールデンチョコレート」
翔太「そんなつまんないこと言わないで皆で行こうよっ!」
冬馬「単に食欲だろ……まぁそこまで言うなら行ってやってもいいけどよ」
翔太「やった!」
北斗「今日の夕飯からカロリー抑えておかないとな」
冬馬「ドーナツなんて久しぶりだぜ」
翔太「そういえばクロちゃんも誘うの?」
北斗「俺達だけで行ったら拗ねそうだしな……声だけかけておくか」
ガチャ
黒井「その必要はないぞ」
冬馬「うおぁ!?」
翔太「あっクロちゃん丁度いいとこに。明日なんだけど」
黒井「ウィ。話は全て聞かせてもらった。当日は私も行こう」
翔太「さっすがクロちゃん!セレブ!」
黒井「もっと褒めていいぞ。私はセレブだからなはーっはっはっは!」
北斗「ずっと聞き耳立ててたんですか……」
冬馬「ガキみたいなおっさんだな……」
黒井「では明日の夜はドーナツパーティだ」
翔太「ドーナツパーティ?」
北斗「ようするにドーナツ食べて喋るだけだな」
翔太「いつもの僕たちじゃん」
黒井「まぁそう言うな。最近は忙しく全員揃う時間がとれなかったからな」
黒井「社員を労うのも王者たる私の役目だ」
冬馬「ただドーナツ食いたいじゃね」
翔太「そこは黙ってようよ」
北斗「どうせですし、765のプロデューサーさんも誘っておきますか?」
黒井「既にメール済みだ。抜かりは無い」
冬馬「速すぎだろ」
翔太「有能なクロちゃんは顔からセレブが滲みでてるねっ!」
黒井「鈍感不手際765プロとは何もかもが違うのだよ」
件名 :ドーナツシャイニーフェスタ招待
「明日」に行われるドーナツフェスティバルに、「ジュピター」と「私黒井」が参加する予定だ
要注目のフェスティバルだから、合格すれば、「10万人」はファンが増えるだろうし
君にはいいことが、あるかもしれないな。ただし、出場を辞退し続ければ
いつか必ずしっぺ返しが来るだろう。そう、最後には必ずね
ま、ムダだと思うが、恥を晒したければ明日の昼、961プロに来てみたまえ!はっははは!
P「10万人ってなんだ……」
響 「メールか?プロデューサー」
P「え、あぁ。業者からの迷惑メールだったよ」
響 「最近多いよなー。おかげで自分アドレス変えてばっかりだぞ」
P「長いアドレスにしたら届きにくいらしいぞ」
響 「へぇー」
亜美「皆で今から行こうYO!」
あずさ「いいわね~」
P「えらく騒がしいな」
響 「どうしたんだー?」
真 「あ、響!これ見なよ!」
響 「広告?……ドーナツ、半額……半額かぁ」
P「これのことか……」
真美「ねぇりっちゃんいいっしょ?皆でドーナツ買いに行こうよ~」
律子「ダメよ!今週撮影があるのにドーナツなんて食べちゃダメ!」
亜美「えぇー!」
美希「酷いの!人権侵害なの!訴えてやるってカンジ!」
律子「馬鹿なこと言ってないでレッスンの準備しなさい!」
ギャーギャーギャー
物陰から覗くトップアイドル(予定)天海春香は、朝自宅でチラシを見た瞬間から、この機を伺っていた。
春香(春香ちゃんと言えばクッキーと言われがちな私ですが、ドーナツだって作れるんですよ!)
春香『あちゃ~まぁお店のドーナツってカロリー高いし食べ過ぎちゃうからね!』
真美『はるるん……』
春香『でも、手作りドーナツなら大丈夫なんだよ?そう、ハルカードーナツならね』
千早『素敵!抱いて!』
P『すごいな春香!さすが裏芸能界一緒に墓に入りたいランキングぶっちぎり1位なだけあるな!』
春香「うへへ……よっし」
春香「ハルカ・アマミ!インベル、出ます!」
響 「じゃあ今度自分がサーターアンダギー作ってきてあげるよ!」
春香「!?」
亜美「あんたがたどこさ?」
響 「サーターアンダギーっていうのは……」
貴音「サーターアンダーギーは、沖縄県の揚げ菓子の一種ですよ」
貴音「首里方言でサーターは砂糖、アンダーギーはアンダとアギーで揚げ物を意味します」
貴音「その名の通り砂糖を多めに使用した球状の揚げドーナツで、気泡が小さくて密度が……」
真美「あ、はい」
美希「揚げパンみたいなお菓子なの」
P「揚げパンか。美希は物知りだな」
美希「ふふん、なの」
あずさ「そういえばこの前デパートで売ってたわね~」
亜美「この際ドーナツっぽいなら何でもいいから食べたいYO!」
響 「うん!あんまーに教えてもらったから一通りのことはできるんだ」
真 「すごいね響!」
響 「え、そ、そう?……へへっ自分完璧だからな!」
貴音「摂氏140から150度で数分間揚げるのです。低めの油温から揚げ始めそこから油温が……聞いていますか真美」
真美「はい」
やよい「おはようございまーす!」
伊織「おはよう。何盛り上がってるのよ」
雪歩「響ちゃんがお菓子作ってきてくれるんだって」
やよい「はわっ!楽しみですー!」
伊織「お菓子ぃ?あんた達今週のスケジュール忘れたの?」
小鳥「じゃあ伊織ちゃんの分は私が貰うわね!」
伊織「ちょっと!食べないなんて言ってないでしょ!」
春香「ソウダネ」
律子「だから今週は撮影が……聞いちゃいないわ」
P「一人ひとつくらいなら大丈夫だろ。調整すればいけるさ」
律子「まぁそうですけどね……」
小鳥「ドーナツも捨てがたいんですけどねぇ。今朝すっごい行列できてましたよ」
P「並んでまで食べたいものなんですかね」
小鳥「普段より安い、というのがキモなんですよ」
律子「120円だと60円ですからね」
P「確かにでかいな……ん?お、おい!時間やばくないか!?」
律子「え……?げ!!」
律子「皆!もうレッスンまで時間ないわよ!」
響 「あ、律子!自分達今から伊織の家でお菓子作りしてくるから!」
律子「 早 く 準 備 し な さ い ! ! !」
響 「ひぃ!」
高木「おはよう諸君!巷で噂のドーナツを買ってきたよ!」
律子「もうドーナツの話はやめてください!」キッ
高木「な、なんだね……」
P「これから皆を送ってきますんで!失礼します!」
美希「ミキ黒糖味が食べたいな」
響 「ちゃんと用意しておくさー」
貴音「生地に南瓜、紅いも等を練り入れたばりえいしょんも存在するらしいですよ」
真美「はい」
雪歩「春香ちゃんも早く!」
春香「ウン」
小鳥「ちょっとタイミングが悪かったみたいですね」
高木「たくさん買ってきたんだがなぁ」
小鳥「じゃあ私達で食べちゃいましょうか!お茶淹れてきますね!」
高木「そうするか……」
真美「ガッテン!必要以上にカロリーを消費するんだNE!」
亜美「それドーナツ!ドーナツ!」
美希「ドーナツ!ドーナツ!」
やよい「ドーナツ!ドーナツ!」
講師「凄い気迫だわ……近いうちにライブでもあるのかしら」
伊織(お菓子のためなんてとても言えないわね……)
響 「ドーナツじゃなくてサーターアンダギーだぞ」
亜美「それ言いにくいからドーナツってあだ名つけたんだよ!」
響 「あだ名なら仕方ないなぁ」
高木「それでは今週もランキングどっとっぷTVが始まるよ!」
千早「今日は内容の濃いメニューで良かったわね」
雪歩「で、でも疲れるね……脚が痛くって……」
真 「普段の倍くらい動いてたしね」
伊織「小鳥なんか丸くない?」
小鳥「き、気のせいじゃないかしら……」
P「あ、そういえばメール返事してないな」
P「了解ですっと」
響 「何してるんだ?」
P「明日オフだろ?仕事の付き合いで人と会う約束してたんだよ」
響 「休みでも大変なんだなープロデューサーは」
P「半分以上遊びに行くようなもんだけどな……あ、そうだ」
響 「?」
黒井「ようやく返事がきたか。要領の悪い男だ」
翔太「ずっと正座で待ってたもんね」
北斗「まるで恋する乙女だな」
冬馬「気持ち悪いこと言うなよ……」
翔太「で、なんて書いてるの?」
黒井「承諾と一人同伴させたいとのことだ」
冬馬「難しいな」
北斗「ドーナツ繋がりですか」
翔太「うーん……やよいちゃん?」
北斗「どうだろうな」
冬馬「つーか俺達と765プロの連中皆で買いに行くのかよ?週刊誌にすっぱ抜かれたらどうすんだ」
黒井「厳重に変装すれば問題ないだろう。策は用意してある」
羅刹「策ってこれかよ……偽名の名札とか意味わかんねーよ」
白井「念には念を入れろと言うだろう」
南斗「そうかもしれませんが、これは……」
TOTO「……」
羅刹「お、来たみたいだぜ」
P「悪い!遅れ……」
響 「はいさ……!?」
羅刹「よう」
南斗「こんにちは。プロデューサーさん。もう一人って響ちゃんだったんですね」
TOTO「こんにちは……」
P「え、なんなのこの人たち……」
響 「うぎゃー!変態がたくさんいるぞっ!」
P「いや、普通に帽子と眼鏡だけでいいじゃないですか。名札とゼッケンとか変態ですよ」
白井「妬くなセンスの無い765プロ。ちゃんと貴様の分も用意してある」
響 「P-Dragonって書いてあるぞ」
P「完全にパクりじゃないですか……」
P「翔太は人ですらないし、訴えられますよ」
白井「訴えられるのは困るな……全く庶民の感覚はわからんものだ」
黒井「仕方あるまい。全員名札とゼッケンは外せ」
冬馬「ったく。とんだ羞恥プレイだったぜ」
北斗「スタッフさん達の生暖かい視線がきつかったな……」
翔太「ありがとうプロデューサーさん……」
P「な、泣くなよ……そんなに辛かったのか……」
P「ん?」
響 「なんでプロデューサーと961プロが一緒にいるんだ?」
冬馬「今の俺達はジュピターの枠を超えた戦士なんだぜ」
翔太「意味わかんないよ冬馬君」
北斗「ライバル同士でもオフではそこまで仲は悪くないってことだよ」
P「そういうわけで今日は響が一緒だ。皆仲良くしてやってくれ」
響 「まぁプロデューサーが一緒ならなんくるないさー?」
P「なんくるないなんくるない」」
冬馬「なんくるねぇな」
北斗「あぁ。なんくるない」
黒井「では行くか。約束の地へ」
冬馬「仕方ねぇだろ。顔バレしたら大騒ぎどころじゃすまねぇし」
響 「黒井社長は変装する必要ないんじゃないの?」
P「まぁ一応有名人になるのか?」
黒井「私ほどのセレブになると顔から王気(オーラ)が滲み出るからな」
冬馬「ただの若作りしたおっさんがよく言うぜ」
黒井「何か言ったか?」
冬馬「セレブなら今日は社長の奢りだよなって言ったんだよ」
黒井「菓子の100や200など宇宙一のスーパープレジデント黒井祟男に任せておけ」
響 「なんで大統領なんだ?」
北斗「社長を英語で言ったらプレジデントなんだよ」
響 「へぇーフランス語で言わないんだな」
黒井「えっ」
冬馬「普段からウィだのアデューだの使ってるなら知ってるよな」
黒井「……」
北斗「社長?」
冬馬「俺フランス語なんてフランスパンしか知らないぜ」
翔太「それは違うと思うよ……」
P「フランスパンはフランス語でバゲットらしい」
冬馬「うどんヌードルみたいなもんか」
北斗「その例えはどうかと思うぞ」
黒井「さぁもうすぐ到着だ!」
響 「あれ?フランスパンは……」
黒井「黙れ汚い765プロ!ドーナツを買うのが目的だったろうが!」
響 「ご、ごめん」
響 「なんだ?」
冬馬「ほら、あいつは今日一緒じゃないのか?」
P「あいつ?ハム蔵さんなら今日はいらっしゃらないぞ」
冬馬「あんな雑魚じゃねえ!我那覇と一緒にいた豚……」
響 「ブタ太のことか?」
冬馬「そう!あの豚だ!」
響 「今日は留守番してるぞ」
冬馬「お前もう帰れよ」
響 「んな!?」
北斗「人の趣味には寛容にいこうな」
翔太「うん」
P「お前アイドルのくせに可愛い女の子より豚を選ぶのか」
冬馬「女なんて見飽きたぜ。今の時代は豚だろ」
P「どの時代に人間より豚を選ぶ男がいるんだ……」
響 「自分ブタ太以下だったのか……」
北斗「ところで社長はさっきから黙ってどうしたんです?」
黒井「……あれを見てみろ」
ガヤガヤ
翔太「あれって目当てのドーナツ屋じゃない」
冬馬「なんか人多くねえ?」
P「いや、多いってもんじゃないだろあれ……」
響 「店外にまで行列できてるぞ!」
黒井「来るのが遅すぎたか!急げお前達!」
黒井「店の外だけでも20人はいたな」
P「そこまでドーナツが食べたいのか……」
響 「店員さんも大変だろうなぁ」
冬馬「今のうちに何買うか決めておこうぜ」
P「俺はなんでもいいよ」
響 「自分ココナッツチョコレートとポンデリングがいいな」
北斗「社長はどうします?」
黒井「全部だ」
冬馬「は?」
黒井「ノンノン。961プロはどこぞの事務所と違って他のお客様の迷惑になるような真似はしない」
P「うちだってしませんよ……」
冬馬「じゃあ何個買うんだよ」
黒井「15種類を5個ずつだ」
響 「15×5って75個も買うのか!?」
P「すごいな響。かけざん早いじゃないか」
響 「えっそうかな……えへへ」
北斗「まぁそれでも5千円以内には収まりますか」
冬馬「半額セールはすげぇなぁ」
黒井「これだけあれば口寂しくなることもないだろう」
P「響は食べ過ぎないように注意しろよ」
響 「食べた分運動するから大丈夫さー」
P「どこまで見に行ってるんだろうな」
翔太「……」トボトボ
北斗「噂をすれば、ですよ」
冬馬「何人くらい並んでたんだ?」
翔太「お店の中まで見てきたんだけど……」
P「かなり混雑してただろ」
翔太「なかったよ……」
響 「え?」
冬馬「なかったってドーナツか?やっぱ半額だから在庫少ないのな」
北斗「どれが余ってたんだ?」
翔太「なにもなかった……」
P「」
翔太「全部売り切れてた……」
黒井「なん……だと……」
翔太「うん……お店の入り口に張り紙がしてあったよ……ぐすっ」
冬馬「な、泣くなよ……たかがドーナツだろ」
P「で、でも追加でどんどん作ってるんじゃないか?これだけの行列なのに告知もないし」
北斗「そうですよ。きっと今頃中は大忙しですよ。もう少しの辛抱だぞ翔太!」
店員「真に申し訳ございません!ドーナツの製造が追いつかないため一時閉店させていただきます!」
店員「19時をめどに再開予定になっております!真に申し訳ございません!」
P「……」
北斗「……」
響 「今何時だっけ……」
黒井「2時だな……」
P「5時間待ちですか……」
冬馬「ねずみの国じゃねぇんだぞ……」
冬馬「そ、そんな落ち込むなって……ココ壱でも行くか?奢ってやるからよ」
翔太「ドーナツがいい……」
P「他だとクリスピードーナツとかか?」
北斗「今ならお客さんも少なそうですね」
翔太「半額……」
黒井「我侭を言うな翔太よ。他に策はないのだから仕方あるまい」
響 「うーん……。あ、そうだ。いい事思いついたぞ!」
P「なんだ?スーパーで特売のドーナツでも買うのか?」
冬馬「それはいくらなんでもねーよ」
響 「半額どころか無料でドーナツ食べられる場所知ってるよ!」
翔太「無料っ!?」
北斗「ひ、響ちゃん……あんまり無茶言うと翔太がまた落ち込んじゃうよ」
響 「無茶なんかじゃないぞ。自分考えたんだ」
響 「自分が作ればお店で買う必要なんかないってね!」
響 「ブタ太達のご飯作ってるのも自分なんだぞ。最近は忙しくて市販のフードになってるけど」
冬馬「すげぇ……」
P「そういえば昨日ドーナツを作るとかなんとか話してたな」
響 「今日多めに作って明日皆に持って行けば丁度いいんさー」
響 「まぁ材料費はかかるけどな。きっとお店で買うより安いぞ」
冬馬「いや普通に店のほうがやすむごご」
黒井「お前は黙ってろ。では悪いが頼めるか?」
響 「わかやびたん!」
P「今のは沖縄方言でわかったって意味なんだぞ」
冬馬「なんであんたが詳しいんだよ」
翔太「ドーナツ食べられるの?」
北斗「それもタダらしいぞ」
翔太「わぁ……!あ、ありがとう響さんっ!」
響 「自分を誘ってくれたプロデューサーのおかげだなっ!」
響 「うん。調理器具全部家にあるし」
冬馬「じゃ、じゃあ豚いるんじゃねぇの!?」
響 「い、いるけど……」
冬馬「ファインプレーだぜ我那覇!さっさと行こうぜ!」
響 「なんか冬馬と会わせたくないさー……」
北斗「ただ動物が好きなだけだよ。……多分」
翔太「これからどうするの?響さん」
響 「昨日に足りない材料確認しといたからな。まずスーパーに行って材料を買おう」
冬馬「先に家にいかね?俺豚と遊んで待ってるからよ」
P「年頃の娘さんの部屋にお前一人置いていくとか正気の沙汰じゃない」
黒井「通報されたければ好きにするがいい」
冬馬「ちっ……わかったよ。俺も行くよ」
P「過程を吹っ飛ばしたな」
黒井「無駄は省くのがセレブなのだ。贅肉のついた765プロにはわかるまい」
P「太ってるスタッフなんていませんよ……」
響 「えーっと。一人何個くらい食べるんだ?」
P「2、3個じゃないか?」
翔太「僕5個くらい食べたいな」
響 「ふんふん。じゃあ家にある分じゃ足りないから卵も買って……」
響 「後はバターとバニラエッセンス……は残ってるんだったな」
P「全くわからん」
北斗「俺達は見守るだけですね」
冬馬「なぁ牛乳はあんの?」
響 「牛乳なんて何に使うんだ?」
冬馬「ドーナツ作るならいるだろ」
響 「?」
響 「うん」
P「何むきになってるんだ?」
北斗「冬馬は料理が趣味ですから思うところでもあるんですかね」
P「危なそうなら止めるぞ」
北斗「わかってますよ」
冬馬「あ、水にすんのか。俺基本は牛乳だったから見逃してたぜ」
響 「使わないぞ」
冬馬「……お前それ本当にドーナツなの?」
響 「あ、正式にはドーナツじゃないぞ。ドーナツはあだ名だからな」
冬馬「はぁ?」
響 「サーターアンダギーを作るんさ!」
響 「丸っこいあれだぞ」
冬馬「あれ牛乳使わねーの?」
響 「うん。あんまーから教わったから間違いないよ」
冬馬「なるほどな……あぁだから生地が重いのか。そうなると温度も低音にしねぇと……」
響 「変なやつだな……必要なの揃ったからレジ行ってくるね」
P「あ、俺が」
黒井「おい!ドデカイラーメンチキンが特売だぞ!6個持ってきた!」
P「何やってんだこの人」
北斗「社長……」
黒井「なんだラーメンおつまみのほうが良かったか?まぁ両方買ってやろう」
黒井「お前達も好きなものを買え!私はセレブだからなはーっはっはっは!」
翔太「僕蒲焼さんと焼肉さんとウメトラマン!」
黒井「私を高木と一緒にするなよ。王者は部下思いでなくてはならん」
P「なんで冬馬はオレンジなんて買ったんだ?」
冬馬「皮刻んで生地に加えたら美味そうだろ」
響 「へぇー色々考えてるんだな」
冬馬「ちょっと作り方違うだろうから後で台所使わせてくれよ」
響 「いいぞー」
P「疎外感を感じる」
北斗「俺達は食べ専ですしね」
黒井「タクシーを呼んである。行くぞ」
翔太「相変わらず羽振りいいねぇクロちゃんは」
黒井「こんな時くらいしか金を使わんからな
冬馬「」ドキドキ
P「もう突っ込むのも疲れてきたな」
響 「ただいまー!みんな留守番させてごめんなー」
いぬ美「ばうばう!」
P「うわっ」
北斗「プ、プロデューサーさん!!!冬馬と翔太は逃げろ!ここは俺が……!」
翔太「ひぃぃぃ!!」ガタガタ
冬馬「な、なんで熊が我那覇の家にいるんだよ……」ブルブル
いぬ美「ぺろちゅぱ」
P「舐めすぎだいぬ美!ちょっと離れてくれ!」
いぬ美「ばう!」
北斗「い、犬……?」
いぬ美「ばうわう!」
響 「ちょっと他の子みてくるなー」
冬馬「へ、へっ……驚かせやがって……い、犬なんてこれっぽっちも怖くねーぜ」プルプル
P「震えてるぞ……あぁ服がべちょべちょだ」
北斗「そ、れにしても大きい犬ですね」
P「俺も最初は驚いたよ」
翔太「こ、これ犬なの?」
P「犬だよ。な?」
いぬ美「ばうばう!」
北斗「俺こんな犬見たの初めてですよ……これは社長も驚いたんじゃ……社長?」
黒井「」
冬馬「気絶してるぜこのおっさん……」
いぬ美「ばう!」ヒョイ
黒井「」
翔太「た、食べたりしないよね?」
P「いぬ美は美食家だから大丈夫さ」
響 「何やってるんだ?早く入ればいいのに」
ブタ太「ブー!」
冬馬「豚!豚じゃねえか!」
北斗「と、とりあえずお邪魔させてもらおうかな」
響 「今さんぴん茶出すから部屋でくつろいでて!」
いぬ美「」ドスドス
P「おい冬馬も入るぞ」
冬馬「おう!行こうぜ豚!」
ブタ太「ブヒ!」
冬馬「んじゃ一口……これジャスミン茶じゃねーか」
響 「違うぞーほら。パッケージ見てみろ」
北斗「さんぴん茶って書いてるな」
P「似てるよなぁやっぱり」
黒井「さんぴん茶の語源は、中国語の香片茶(シャンピェンツァー)からきているからな」
P「うわっ!」
翔太「しぇんぴん?」
黒井「シャンピェンツァーだ翔太よ。ジャスミン茶のことだな」
北斗「つまり双子のようなものですか」
黒井「ウィ。察しが良くて助かるぞ」
冬馬「急に起きんなよ。びっくりしたじゃねーか」
黒井「私にも一杯くれ」
響 「はいはい」
冬馬「俺達調理部隊の出番ってわけだな」ガタタッ
P「俺は何もできないからテレビでも見てるよ」
北斗「あ、トランプでもしませんか?俺持ってきたんですよ」
黒井「賭けてポーカーでもするか。ベビースターでもつまみながら」ポリポリ
翔太「うまうま」モグモグ
冬馬「おい!今から作るのに菓子食ってんじゃねーよ!」
響 「プロデューサーは手伝ってよ!」
P「えぇ……でも俺洗い物くらいしかできないぞ」
響 「いいからっ!」
P「仕方ないな……」
冬馬「さぁて、まな板と包丁借りるぜー」
響 「あ、オレンジは冷蔵庫に入れてるから勝手に使っていいぞー」
冬馬「助かるぜ。よし、豚はちょっとあっちで待っててくれよな」
ブタ太「ブゥ」
冬馬「我那覇が作るやつって生地寝かしたりすんの?」
響 「しないぞー。あ、プロデューサー卵取って」
P「ん」
響 「……いっぱい作るのになんで卵1個なんだよっ!」
P「じゃあ何個なんだよ……」
響 「えーっと、今回は10個くらい使おうかな」
P「10個な。ほれ」
響 「ありがと!あとは薄力粉をふるいにかけてっと」
P「たまにテレビで見るけどなんで粉をシャカシャカするんだ?」
響 「さぁ?あんまーがそうしろって言ってたからなー」
冬馬「そのまま使うと固まった粉がダマになっちまうからな」
P「ダマ?」
冬馬「小麦粉が溶けずに塊ができちまうんだ。それを防ぐために一度解してやるんだよ」
響 「へぇー」
冬馬「ある程度のことはできるぜ。鍋借りるぞ」
響 「あ、うん」
P「あと何かすることあるか?」
響 「うーん。応援?」
P「じゃあ心の中で応援しながらポーカー混ざってくるよ」
響 「ここで応援してよっ!」
P「何やってるかもわからないのに酷なことを……」
響 「プロデューサーも料理すれば?節約できるぞ」ドバァ
P「うわっお前これ砂糖入れすぎじゃないのか?」
響 「これくらい入れないと美味しくないからね」
P「でも流石にこれは……」
響 「まぁまぁ食べたらわかるってば!」
黒井「コール」
翔太「あーあまたブタだよ」
ブタ太「ブ?」
翔太「あ、君じゃないよ」
北斗「先に役言ったらダメじゃないか……ん?」
ゴソゴソ
北斗「社長の近くの揺れてるのって何です?物陰でよく見えないな」
黒井「猫かモモンガだろう。我那覇響が言っていた」
翔太「へぇー!僕ハムスター好きなんだ!出ておいでよ!」
ワニ子「……」ノソノソ
翔太「きぇあああああああああああ!!!」
北斗「う、うわぁぁぁぁあああああ!!」
ヘビ香「シュルシュル」
黒井「ひ、ひぃぃ……」
冬馬「うおっ!」ビクン
P「な、なんだ?」
響 「あぁワニ子あたりが驚かせちゃったのかな。自分ちょっと行ってくるね」
響 「あ、やっぱりワニ子とヘビ香じゃないか!ダメだろお客さん驚かせちゃ!」
冬馬「俺こっちにいてよかった……」
P「噛んだりしないから意外と可愛いんだぞ」
冬馬「可愛くても怖いもんは怖いんだよ……っとこれで生地は出来たな」
P「もうできたのか?」
冬馬「後は1時間くらい冷蔵庫に寝かせて揚げたら完成、だぜ!」
P「こっちは後何するんだろうなぁ」
冬馬「へぇ、本当に水も牛乳も入れてねぇな。この臭いはバニラエッセンス使ったのか」
P「あぁバニラの匂いのするやつな。タバスコみたいな入れ物に入ってたよ」
冬馬「どうせならシロップって言おうぜ……」
P「3人ともなんともなかっただろ?」
響 「黒井社長が気絶しちゃったからまた寝かせておいたさー」
冬馬「どこの乙女だよあのおっさんは」
響 「さぁて後はバターを入れてー混ぜて混ぜてっと!」
響 「こっち先に作っちゃっていいか?」
冬馬「俺のはまだ時間かかるからな」
響 「じゃあ油温めるぞー」
冬馬「温度どれくらいなんだ?」
響 「150度だぞ」
冬馬「やっぱ低いな」
響 「あ、もう大丈夫だからプロデューサーはあっち行ってていいよ」
P「了解。楽しみにしてるよ」
冬馬「俺も時間あるから一緒に行くよ」
響 「できたら呼ぶからなー」
ねこ吉「にゃーん」
北斗「癒されますね……」
黒井「ウィ……」
うさ江「……」
モモ次郎「……」
翔太「ぐーぐー」
いぬ美「スンスン」
シマ男「ヒュヒュヒュヒューン」
冬馬「ふれあい動物園じゃねーか」
ブタ太「ブィ」スリスリ
冬馬「豚ぁ!」
P「テレビでも見てるか……ほら、お前達もおいで」
ワニ子「……」ノシノシ
ヘビ香「シャー」
響 「みんなお待たせー!我那覇家のサーターアンダギーが出来たぞー!」
冬馬「じゃあ撮るぜ。社長の口癖はー?」
北斗「ウィー」
P「ウィー」
翔太「ウィー」
黒井「ウィ」
冬馬「あ、犬!お前こっち向いてねぇから失敗しただろ!」
いぬ美「きゅーん」
響 「何してるんだ?」
P「響王国の住人と記念撮影会だよ」
響 「じ、自分だけ写真に入ってないなんて酷いじゃないか!」
響 「本当だろうな……」
黒井「この男にはしっかり目線を入れるから顔バレの心配はしなくていいぞ」
ヘビ香「シャー」
黒井「王者の私の前ではコブラですら従順になるようだなはーっはっはは!ほら食え!」
冬馬「ヘビにへんなもん食わせんなよ!」
響 「自分が料理してる間に随分仲良くなったんだなぁ。コブラじゃないけど」
翔太「出来たんなら食べようよー」
北斗「写真は後回しにするか」
黒井「ところでこのスカンクはあまり臭わないな」
響 「シマ男はシマリスだぞ!」
翔太「僕この大きいのもらいっ!」
北斗「いい匂いだな」
冬馬「これ揚げる前はピンポン玉くらいなんだぜ」
黒井「では頂くとしよう」
響 「50個くらいあるから一4個は食べても大丈夫だからね」
P「50!?そんなに作って大丈夫なのか?」
響 「残りは765プロの皆にあげればいいんさー」
北斗「お、結構甘いね」
黒井「柔らかいな……それでいてしっとりしている」
P「ドーナツとはちょっと違うけど、これはこれで美味いな」
響 「そりゃあんまーに教わったからな!」
冬馬「畜生!うめぇ!畜生!」モグモグ
黒井「こいつは何を怒っているんだ」
北斗「料理好きとして悔しいんでしょう」
P「あぁすごいよ響は。これでオーディションも合格できたら完璧だな」
響 「うぎゃー!今日は仕事の話は無しにしてほしいぞ!」
冬馬「あぁ畜生うめぇ……くそっ」
翔太「結構お腹にくるねこれ」パクパク
北斗「俺は3個で十分だな」
黒井「私は2個でいい。おやつカンパニーの策に乗せられてしまってな」
P「自分から地雷原に突撃しただけでしょうに……」
翔太「僕もう1個食べてもいい?」
響 「いいぞー。家族以外に食べてもらうなんて初めてで嬉しいさ」
冬馬「あぁーよし!そろそろだな」
翔太「どうしたの?」
冬馬「今度は俺が作ったのを食べてみてくれ!どっちが美味いか勝負だぜ!」
北斗「俺もう腹いっぱいだから響ちゃんに1票」
冬馬「は!?」
翔太「僕1個くらいなら食べられるかな」
黒井「いらんぞ」
冬馬「プロデューサー!」
P「テイクアウトで」
冬馬「おい!!」
響 「じ、自分食べ過ぎたら律子達に怒られるから……ごめんな」
冬馬「ち、ちくしょう……」
ブタ太「ブヒ」
冬馬「豚……」
ブタ太「ブヒヒ」
冬馬「豚……!俺をわかってくれるのはお前だけだ!」
冬馬「待ってろよ!今すぐ最高のサーターアンダギーを作ってやるからな!」
ブタ太「ブゥ!」
翔太「ブタ太と会話してるんだけど……」
北斗「ショックで頭のネジが緩んだのかもな」
響 「いい話だなぁ」
P「えっ響今のわかったのか?」
響 「えっわからなかったのか?」
P「あ、あぁ……」
ブタ太「ブヒブヒ!」
冬馬「さぁ食ってくれ!火傷すんなよ!いっぱいあるから慌てんな!」
響 「あ、ブタ太にこんな砂糖いっぱいのお菓子食べさせたらダメだぞ!」
冬馬「な!?」
ブタ太「!?」
響 「これは皆で分けて持って帰ってもらおうな」ヒョイ
ブタ太「ブ、ブヒャアア!!」ダッ
響 「あっ!ブタ太!?ブタ太ー!」ダッ
P「出て行ってしまった……」
冬馬「確かに豚にこんなもん食わせたら腹壊しちまうよな……」
冬馬「負けたよ我那覇……お前がNo1だ!」
P「そしてお前は何一人で完結してるんだ」
P「よしっ!いけ!」
冬馬「おい!俺ばっか狙うなよ!」
北斗「悪いな。これも作戦のうちだ」
響 「な、何やってるんだ?」
翔太「クロちゃんが持ってきたスマブラしてるんだよ!よしっ!冬馬君最下位ー!」
冬馬「あぁくそ!」
黒井「すやすや」
響 「じ、自分抜きでゲームするなんて酷いじゃないか!」
P「だって響の携帯ここに置いてあるから連絡のとりようがなかったんだよ」
響 「自分だって遊びたいのに……」
P「悪い悪い、じゃあ皆で人生ゲームでもやるか」
翔太「銀行係は最下位の冬馬君ね!」
冬馬「違うゲームになったらリセットに決まってんだろ!」
響 「やったぞー!自分ついに1位になれたんだ!」
北斗「おめでとう響ちゃん」
冬馬「まさか1位になるまで連戦するとは思わなかったぜ……」
P「同じ人生ゲーム何回もやるのは結構くるな……」
翔太「っていうかもう遅いしそろそろ帰らないと不味くない?」
P「もうそんな時間か」
冬馬「久々に長時間遊んだな」
北斗「夕飯どうします?」
P「ドーナツもどきが結構腹に溜まってるからなぁ」
黒井「今日は無しでもいいだろう。解散後各自の判断で食べればいい」
黒井「カロリーを考えて軽めにしておけよ」
冬馬「了解だぜ」
北斗「じゃあ帰るよ響ちゃん」
響 「あ、自分皆の散歩あるから途中まで一緒に行くよ」
冬馬「年寄りくせぇ声出すなよ」
P「お前達と違ってもう学生じゃないからな」
黒井「鍛え方が足りんぞ」
P「ジョギングでも始めようかな……」
響 「じゃ、じゃあいぬ美達の散歩手伝ってよ!いい運動になるでしょ?」
P「そうだなぁ」
北斗「……」チョイチョイ
冬馬「んあ?……あぁ」
北斗「いいんじゃないですか?ジョギングよりまずはウォーキングのほうが効果あるんですよ」
冬馬「運動不足にジョギングは長続きしねぇしな」
P「確かにいきなり走るのは厳しいかもな」
響 「じゃ、じゃあ!」
P「時間空いた時にでも付き合わせてくれるか?」
響 「もちろんだぞ!これでプロデューサーと、じゃなかったプロデューサーも健康になれるな!」
響 「まずはいぬ美とブタ太とねこ吉と……今日は人手が足りてるから全員いけるな!」
黒井「コブラよ。私の背に乗るがいい」
ヘビ香「シュルシュル」
P「いぬ美ー乗せてくれー」
冬馬「あんた最初からやる気なさすぎだろ。運動するんじゃなかったのかよ」
P「座りすぎて疲れた……」
翔太「おじさんぽいよプロデューサーさん」
響 「乗せなくていいからな。プロデューサー引っ張ってやってくれ」
いぬ美「ばう!」ダッ
P「うわっ!おいやめろ!服が伸びる破ける千切れる!うぉおおお!!」
北斗「どうします?駅まで歩いて電車で帰りますか?」
黒井「ある程度歩いたらタクシーを拾えばいい」
翔太「ちゃんと考えてるんだねー」
黒井「ウィ。セレブだからな」
P「はっはっはっ……ちょ、ちょちょちょっと止まってくれ!本当に死ぬ!」
いぬ美「ばう!」
P「はーっ……はーっ……つ、疲れた……」
P「か、かなり……は、離れただろうし……少し休憩……ふぅ」
タッタッタッタッ
北斗「お待たせしましたプロデューサーさん」
P「ぇ……北斗?お前走ってきたのか……」
冬馬「こんなもん走ったうちに入らねーだろ」
翔太「食後の運動は気持ちいいねー」
P「冬馬に翔太もか……ということは響も……」
響 「オウ助ー!今まで忘れててごめんなー!自分が悪かったから帰ってきてくれー!」タッタッタッ
P「行ってしまった……」
黒井「はっ……はっ……き、鍛えがはっ!……き、鍛え方が、違う、からな……っ」
P「俺より死にそうじゃないですか」
P「そうしてください……」
冬馬「だらしねぇな」
北斗「普段鍛えてる俺達と一緒にしちゃ可哀想かもな」
翔太「響さんはさすがの体力だねー」
冬馬「どっか行っちまったけどな……」
冬馬「あ、そうだ。今のうちに渡しておくぜ」
P「はぁ……ふぅ……ん?何だこれ」
冬馬「俺が作ったやつだよ。オレンジの皮入ってるんだぜ」
P「そういえば食べてなかったな」
冬馬「今度感想くれよな」
黒井「の、乗るぞ……お前達……ふぅ」
翔太「タクシー来るの超早くない?」
黒井「5万上乗せすると言ったらこの結果だ。世の中金だな」
北斗「愛以外はお金で買える時代ですね」
冬馬「すげぇデジャビュを感じる」
翔太「あ、それ言おうとしたのに」
P「まぁ食べたらメールなりで連絡するよ」
黒井「明日の朝にでも食べてみるか」
響 「な、何やってるんだ?」
P「冬馬が作ったサーターアンダギー貰ってたんだよ」
響 「自分がいない間に渡すなんて酷いじゃないか!」
冬馬「お前そればっかだな……ほら、これ我那覇の分」
響 「おぉ!ありがと!」
翔太「僕前乗るねっ!」
P「なんで3台あるんです?」
黒井「私達の車、貴様の車、我那覇響ファミリーの車だ」
響 「自分歩いて帰れるぞ」
黒井「さっきまで走っていただろう。少しは休まないと明日に響くぞ」
P「まるでプロデューサーみたいだ」
冬馬「あんたが言うな!」
響 「じゃあお言葉に甘えて……皆乗ってくれー!」
ワニ子「……」ノソノソ
いぬ美「フンフン」ドスドス
オウ助「……」バサバサ
運ちゃん「ひゃあああ」
北斗「その分楽しかったですよ。響ちゃんもお菓子美味しかったよ」
冬馬「豚……また会いに行くからな」
ブタ太「ブヒィ……」
翔太「最初我侭言っちゃってごめんねみんな」
P「ま、気にするなよ。結果的にドーナツより美味いの食べられたんだしな」
響 「今度は本当にドーナツ皆で食べたいな!」
黒井「時が来ればそんな事もあるだろう。では今日はここまでだ」
北斗「チャオ☆」
冬馬「豚も元気でな!」
翔太「お疲れ様ー」
響 「じゃあなー!」
P「響はまた明日だな」
響 「うん!また明日。プロデューサー!」
P「うーん……胃が重い……昨日と朝続けてサーターアンダギーはヘヴィだな……」
P「おはようございまーす」
美希「えぇー!すごいの!絶対食べたいの!」
小鳥「でしょ!?こんな機会もうないわよ!」
真美「りっちゃん!」
律子「アンタ達ねぇ……」
P「なんだまだドーナツの話してるのか?」
真 「あ、プロデューサー!これ見てくださいよ!」
P「チラシ?なになに……10000店出店記念ピザLサイズ全品半額」
バン!
冬馬「プロデューサーいるか!」
冬馬「ちょっとずつ間違えてんじゃねぇ!俺は天ヶ瀬冬馬だ!」
雪歩「あ、おはようございますぅ」
伊織「あんた何でこんなとこに来てんのよ!」
冬馬「そんなことはどうでもいい!それより今日の広告見たか!?」
北斗「チャオ☆765プロのエンジェル達!」
翔太「僕達とピザパーティしようよ!」
黒井「高木!会員登録できんのだ!なんとかしろ!」
高木「急に来ていきなり何を言い出すんだお前は……」
貴音「なんと黒井社長まで」
真美「一体何が始まるんです?」
亜美「第三次アイドルマスターだ!」
律子「プロデューサー殿?説明していただけますか?」
P「俺達の戦いはこれからだ……!」
おわり
悔しかったので書きなぐった。支援、保守ありがとうございました。お疲れ様でした。
お疲れ様でした
Entry ⇒ 2012.10.02 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
咲「もしも三年生と一年生が逆だったら…」
久「最近落ち目の風越より、随分と学費が安くて助かったわ。まぁ、清澄は二年前に突然現れた無名の高校だったし…」
久「しかし、麻雀部に入部届けを出しに来たけど、人多いわねぇー」
久「全国個人戦の一位と三位と十位を抱えてるから当たり前か。原村和さんなんて、アイドル並みにカワイイし、胸もボインボインだし」
まこ「おお、一年か?入部希望か?」
※全国の一年と三年が逆です。二年生は据え置き。
まこ「おぉ、見た事ある顔じゃと思ったら、上埜の所の嬢ちゃんか!って今は竹井じゃったか」
久「はい、雀荘ではお世話になりました」ペコリ
まこ「お主なら、入部テストも合格して一年からレギュラーに選ばれるかもなー。すまんなー、今年は入部希望者が多くて部長が入部テストするゆうてなー」
和「まこ、お知り合いですか?」
久(うわー、本物の原村さんだー!テレビで見たまんま!オッパイすごーい!)
和「そうですか。まぁ、打ってみないとわかりませんが」
優希「だじぇー。聞いて驚けー、一年坊主達よ。今日の入部テストは、あの宮永咲直々に相手してくれるんだじぇー」
モブ一年A「うそっ!あの宮永咲さんが!」
モブ一年B「私、麻雀楽しまされるのかなぁ」ブルブル
久(楽しそうじゃない!)ニヤリ
和「…」
まこ「ふふふ」
和「入部テスト辞退する一年生も出ましたね」
まこ「そりゃー、全国大会のチャンピオンと麻雀打って勝てるなんて思う小娘はなかなか居ませんよー。まぁ、一人闘志を燃やしてるようじゃが…」
優希「咲ちゃんは相変わらず、大人数の前で喋るのは苦手なんだじぇー」
和「コホン、部長の原村和です。みなさん、入学おめでとうございます。我が清澄高校は…」
長いのでキンクリ
和「では、咲さん。いつものアレお願いしますね」
咲「あっ、うん。最近、封印してけど、多分大丈夫。わかった、調整してみる」
咲「お疲れ様です。±0で二位です」
モブA「やったーーーー!!!!!!!!チャンピオンに勝ったーーーーーーー!!!!!!!後でクラスのみんなに自慢しよっと!!」ワーイ
和「…」
優希「…」
まこ「…」
久「」プルプル
久「あ、あの!もう一度、打たせて下さい!!お願いします!!」
まこ「ほぅ…」
モブA「えー、私も入っちゃおうかなー。チャンピオンに二連勝しちゃったりしてー」チラッ
優希「ダメだじぇー。一位を取った子は、テスト終わりだじぇー」
まこ「じゃといいなー」
久(あの子、気づいてないの!?宮永先輩、ずっと±0で二位しか取ってないのに!!)
久「…」
優希「おぉー、あの一年根性あるなー。もう四回目だじぇー」
モブB「あの竹井って人、ずっと最下位なのに、まだ打とうとしてる。麻雀弱いんだから、大人しく帰ればいいのに」プッ
まこ「こらぁ、一位取った人は終わりじゃゆうとろーが。さっさと帰るー」
宮永咲 37000
竹井久 15000
モブC 24000
モブD 24000
モブE「おっ、やっとチャンピオンが一位かー。でも、もう何局も打って、やっと一位だなんて…。これなら龍門か風越行けば良かったなー」
久「…ありがとうございました」
咲「えーっと、竹井さんだったよね?貴方の悪待ち、面白いね」ニコッ
久「自信喪失だわー。しかも収支もダントツで一年生で最下位。これは来年に賭けるしかないわねー」
久「まぁ、高校生活は三年もあるし一年くらい待っても…」トボトボ
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
和「咲さん、最後の局」
咲「うん、出来なかったね。±0」
優希「あの一年、かなり面白いじぇ。次は私が東風戦で打ちたいじぇ」
和「ハッキリ言って私から見れば、そう大した事ないように思えましたけどね。わざと待ちを悪くするとか何を考えてるんでしょうか」
あっ(察し)
流石に2年間咲さんにボコられたら身の程をわきまえると思う
多分
アレは決して本心からそう思ってるわけではなくて、
自信なんてない自分を必死で奮い立たそうとしてるだけだろいい加減にしろ
咲「そうだね。レギュラーもほぼ確定だね。染谷さん、頑張らないと?」フフフ…
まこ「えぇー、わしのレギュラーも危ないんですかー!」
優希「ワカメスープでも飲めば、強くなるんじゃね?」
和「こらっ、優希。私達もレギュラー落ちもありえますよ!実力主義ですからね!」
咲「うーん、私も油断してたら二軍かなー」
まこ・優希・和「「「そんなオカルトありえません(ありえないじぇ)」」」
誠子「くっそー、また逃げられた!」
尭深「大星先輩、めんどくさい事はいつも私達に押し付けるんだから」ズズズ
誠子「入部テストだって言うのに、部長が居なくてどうするんだよ!」プンプン
尭深「あの人、打倒宮永咲にしか興味ないから…。とりあえず私達で、入部テストやろうよ」
白糸台高校屋上
淡「あーあー、かったるいなー。なんで私が部長に選ばれたんだかー」
淡「そりゃー、私が原因でもありますよー?」
淡「去年は、一回戦で清澄と当たっちゃったからなー。大将戦前で、6万点も差つけられて、あの魔王咲ちゃんだよ?」
淡「諦めなかった、私は偉い。まぁ、負けたのは事実だけどねー」
淡「にしても、阿知賀の脳筋猿にすら負けたってレッテル張られたのは…、ぐぬぬ」
淡「あの猿の諦めなさは、私以上だよー。まぁ、所詮は脳筋猿だけどねー」
淡「とりあえず、入部テストで上位20位とか入れればいいんじゃない?そう考える私は屋上で、サボってるわけだよ諸君」
淡「さてさて、そろそろ入部テスト終わったかなー。見に行きますかー。もし、誠子か尭深を飛ばすようなルーキー居たら、私が打っちゃうんだけどなー」
淡「居るわけないよねー」
・
・
・
淡「なに…ここれ…」
誠子「トビで」
尭深「トビ」
白糸台一軍三年「トビっす」
淡「ちょっと待ったーーーーー!!これアンタの牌譜表?」
照「はい、そうです。大星淡さん、ご活躍、テレビで拝見しておりました。お会い出来て光栄です」
淡「ふーん。まぁ、私、有名人だしーって…、そんな事はどうでもいいのよ!ねぇ、アンタ、私と打たせてあげる!光栄に思いなさい」
照「…はい、ぜひ、お手柔らかにお願いします」ペコリ
淡(あぁ…、ゾクゾクする。この小娘、間違いなく魔物級!!捻り潰してみたい!!二度と麻雀したくないって思うくらい!!)
水着とネコミミが似合う小学生雀士すこやん
淡「えっ…、私、二位?」
照「飛ばせなかった…」チッ
誠子「ってか、大星先輩が二位とか、しばらく見た事無かったな」
尭深「あの宮永照って一年生、怖い」ブルブル
照「あの、もう一局打ちませんか?」
淡「えぇー、いいですともー、いいですともー、クソ生意気な一年のお嬢ちゃんをボコボコに沈めるまで、勝ち逃げなんかさせませんよー、ほほほほー」ピキピキ
淡「はっ!?ここはどこ!私は誰!」
誠子「おはよーっす。あぁ、大星先輩は、宮永と麻雀打って倒れましたよ」
淡「私、一位取った!?」
誠子「あっはい。倒れる直前に。しかし、あの一年、先輩より強…」
淡「コホン、その先は言わなくてよろしい。わかってるから、その辺は」
誠子「でも、チャンピオンの関係者が清澄に入らないとか変ですよね。なんでわざわざこんな所に」
淡「そんな事はどうでもいい!って、一応聞いてみるか」
誠子「珍しく部長っぽいですね、大星さん」
淡「あー、そうですねーそうですねー。ってか一年に部長補佐出来そうな真面目で成績優秀な子居ない?」
誠子「居ますよー。去年のインターミドル一位かつ、入学試験でも主席の一年」
誠子「名前は確か、弘世菫とか言ったような」
菫「はい!私、○○中学からやって参りました…」
淡「あーうん。わかったわかった。あんたとは確か照と打った時に同卓してたわね。えー合格。ついでに一軍の座もくれてやるよー。まぁ、何と言いますか…」
菫「はい」ドキドキ
淡「三年神、二年人間、一年奴隷。アンタ、私の奴隷になりなさい!」
菫「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!」
・
・
・
淡「スミレー、あの書類、全部やっといてねー」
菫「…了解です(この金髪クソビッチ早く死ねばいいのに)」
照「はい」
淡「でさー、なんでアンタ、清澄に入らなかったわけ?」トン
照「大星さんは、宮永咲さんと何度も打った事ありますよね?」チー
淡「うん、あるよー。なんと言うか人の皮を被った魔物だよねー。私の永遠のライバルだよ!」トン
照「そうですか…。対局してみてどうでした?」ポン
淡「んー、手加減されてる感じが半端なくウザいよね。ライバルって言ったけど、まずあの女の本気の本気を出させてみたいかな」トン
淡「で、あんた。咲やんの何なの?」トン
照「妹です」
淡「やっぱりねー。だと思ってた」トン
照「私、全国で本気のお姉ちゃんと闘ってみたいです!!」チー
淡「ふーん、あの女、家族麻雀とかでも手加減してるわけだ」トン
照「はい、優しい姉で、自慢の姉です」ロン
淡「ふーん、あんた姉を超えたいんだ。まぁ、気持ちはわかるなー。手加減されてるってわかったのいつくらい?」
照「小学生の時、負け続けて、ずっとコツコツと貯めてた豚さんの貯金箱を壊した日からです。あの日からちょっとずつ、賭けてたお年玉が返ってきて…」
淡「ふむふむ、いつの間にか失ったお年玉が返って来たっと」
照「はい、そしてお姉ちゃんの貯金が減ってるのも気づきました」
照「全然、うれしくなかった!!私はずっと、手加減されて、恵んで貰えた勝利に喜んでたなんて!!」
照「はい、自慢の姉ですが、麻雀は別です。最低の打ち手だと思ってます」
淡「あの女さー、あれだけの実力持ってながら、プロになる気ないんだって。高校で三連覇達成したら、麻雀も辞めるんだと」
照「…」
淡「このまま引退させたら、私の負け越し確定なんだよねー。だから、私は私自身のために麻雀やるわけだよー。負けず嫌いだからねー」
照「そうですか。私も姉が居ない、長野以外ならどこの強豪校でも良かった。負けず嫌いですから」
照「負けず嫌いです」
淡「先鋒で10万点削らなきゃ、負けって言われたら?」
照「削ります。私の能力なら、可能ですから」
淡「ふーん、言うねー。咲やん以外にも、強い高校生はいっぱい居るよ?二年の神代小蒔とか」
照「私の敵は姉だけですから」
淡「私は大将と言うポジション動けないわけだから…、そうだなー。じゃあ、白糸台の先鋒はクソ生意気な一年生にしちゃおうかな」
照「えっ?」
淡「まぁ、せいぜい各高校のエースにボコボコにされて来なさいな。お姉ちゃんに会う前に負けたら、それまでって事ね」
照「先鋒はエースを置くのが、主流とされますが…。私でいいんですか?」
淡「いいよー。まぁ、大量失点されても、主将にはこの白糸台の真のエース、大星淡ちゃんが居るわけだからね!」ドヤッ
淡「菫のヤツ、もうちょっと鍛えてみようかなー。一年で二人もレギュラー出したら、三年生が怒るかなー。でも仕方ないよねー。」
淡「勝ちたいんだから!」
淡「さぁ、今年の夏は団体戦も楽しめそうだなー」フフフ
終わり
泉「船Q、今日は入部テストの日やで!!今年は私の最後の年や!最強の千里山女子に二条泉ありと言われたるでー」
船Q「えぇ、まぁ先輩は最後の年ですね、張り切る気持ちはわかりつもりです(うっざいなー、ここ最近ベスト8にも入ってないやんけ)」
泉「いい新人入って来るとええけどな!ちょっと、私が揉んだるでー」
船Q「はいはい、 データありますけど見ます?」
泉「いらん。一年坊主達なんか、私の実力で粉砕してくれるわ!まぁ、あんまりやり過ぎても、誰も入部しやんからなー」
泉「ほどほどに、ほどほどに、手を抜かんとなー」ニヤニヤ
船Q「二年の船久保浩子です。このアホ…いえ部長の補佐をしてまして、副部長です」
泉「今から、入部テストを行う!全国大会クラスの実力を身を持って体感して欲しい」
泉「正直、飛ばなければ合格と言ってもいいくらいや」
セーラ(あっちゃー、あのタレ目女おらんやん…。アイツは姫松受けたかー)
泉「おい、そこの学ラン!お前は、男か!」
セーラ「むっ」カチン
泉「公式戦は、制服じゃアホー」
セーラ「先輩こそ、改造制服ですやん」
泉「うちはいいんや。うちは」
セーラ「そんなん筋が通ってないっす!」
泉「生意気な一年めー(でもアイツ、特待生か。カモ二人欲しい所やな)」
怜「」ゴホゴホ
泉「むっ、そこの一年!先輩が喋ってる途中に、音立てるとはなんやこらー!やる気がない証拠や」
泉「体弱い?今年の夏は、うちの最後の年やからビシバシしごくで。そんな調子じゃ入部しても、パシリも出来んやん」
竜華「…怜をパシリですか?」
泉「せや。実力主義の世界やで千里山女子は。しかも一年。パシリでもありがたいと思わな」
竜華「…」ゴゴゴ
怜「竜華、うちはいいんや。うちは元々、ここの入部テストに受かる雀力を持ち合わせてないんやから…」
泉「はっ!?誰に物言うてるんや!うちは全国大会で、活躍する二条泉やで!?今年のドラフトの目玉にもなるんやで!」
船Q(清水谷竜華っと、あーあかん。アレ怒らせたら、あかんタイプや)ポチポチ
泉「いいやろ。やれるもんなら、やってみ!船Q、同卓入って!」
船Q(うちが三年の時に最強の千里山作ればいいわ…。さて、今年は清水谷と江口のために犠牲になって貰おか…)
船Q「来年の夏が非常に楽しみやね」
勝敗はもちろん、泉ちゃんの飛び終了
もう一個カン
憧「今年でうちらもいよいよ引退かー」
穏乃「うん、今年の夏は和と長く長く遊んでたいよね」
玄「負けなければ、ずっと遊んでられますねー」
憧「玄の妹さん、今年入って来るんでしょ?」
玄「はい、宥ちゃんって言うんですよー。とってもカワイイ妹で、そしておもちは姉の私より大きくてですねー、うへへ」ポワーン
灼(おっぱい偏差値、上がっちゃうのか)スカスカ
やえ「このニワカ先生、なかなかいい目利きをしてる。この私の圧倒的、麻雀力に気づくとは」
やえ「この私が入ったからには、全国優勝も夢ではないぞ。ニワカども。奈良県をおおいに盛り上げよう」
やえ「略して、N(奈良県を)O(おおいに盛り上げる)K(小走やえ)、NOK団」
憧「こらぁ」ゴチン
やえ「あ、いッッー。なにをするニワカ!」
憧「先輩には敬語を使う!中学校で習ってこなかったの!これだから、最近のゆとりは…」
やえ「貴様もニワカでゆとりだろうがー」
憧「敬語!」ゴチン
やえ先輩は憧が卒業するまで最後まで敬語を使いませんでしたとさ
もう一個カン
ていうか書いてください
桃子「この子、スポンジが水を吸収するがの如く、どんどん成長するっすねー」ポチポチ
桃子「才能あるっす。いやー、麻雀教えるのがこんなにも楽しいとは。ここはこれを切ると待ちが増えるっすよー」ポチポチ
東横桃子はネット麻雀が趣味だった。どうせ誰も入らないだろと、麻雀同好会まで作った始末だ。
ホントはのんびりサボれる場所が欲しかっただけだが。
ゆみ「私、桃子お姉さんの学校に行きたいです!」カタカタ
桃子「辞めとくっすよー。ゆみちんは、才能あるから清澄でも風越でも龍門でも好きな所に行くといいっすよ」カタカタ
ゆみ「私は、麻雀を教えてくれた桃子お姉さんに恩返しがしたいんです!」カタカタ
桃子「いやー、カワイイ中学生っすねー。まぁ、気持ちだけで十分っすよ。どーせ誰も私に気付かない…」
そうして東横桃子二年の冬が終わり…。
睦月「うむぅ。ここなら投牌の練習が好きなだけ出来る」
睦月「いやー、いい場所見つけたなー」
桃子(まーた、来たあの一年。今は二年っすかね。注意したくても、私の声聞こえるんっすかねー。私のサボり専用部室になってますし)
桃子(うーん、言うべきか悩む。麻雀同好会の活動らしい活動もしてないし)
桃子(まぁいいっす。ほっとけば飽きて、来なくなるかもしれないっす)
ゆみ「桃子姉さん、どこだ!私は君に会うために鶴賀に入学して来た!!」
ゆみ「居たら返事をして欲しい!!」
睦月「う、うむぅ!?」ビクッ
蒲原「わはは、先輩ですか?ゆみちんがご迷惑かけてすいません。わははー」
佳織「あっ、同じ学年の津山睦月さんだよ。こんにちわー」
睦月「あぁ、妹尾佳織ですね。こんにちわ」
蒲原「わはは、もう探してない部屋はここくらいだしなー。麻雀同好会って言うから、ここがビンゴだと思ったけど、わははー」
桃子(あれは…いつかの写メ交換で見せて貰った、ゆみちん!)
桃子(本当に私に会いに、鶴賀に入学するなんて…。清澄にも簡単に入れるくらいの子なのに…)
桃子「バカな後輩っすね。先輩がきっちり指導してあげないと」
ゆみ(あれ、急に目の前が真っ暗になった!)
桃子「えへへ、だーれだ//」
もう一個、カン、四槓子
Entry ⇒ 2012.10.02 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
綾乃「恋愛相談?」向日葵「はい……」
放課後・・・
綾乃「今日は千歳と会長と大室さんが先生の手伝いで呼び出されていて、生徒会室で仕事するのは私と古谷さんだけか……」
向日葵「よろしくお願いしますわ、杉浦先輩」ニコッ
綾乃「ええ。一緒に頑張りましょう?」ニコッ
~10分後~
向日葵「はぁ……櫻子……」ハァ
綾乃「えっ?」
向日葵「あっ! えっと、なんでもありませんわ!」オロオロ
向日葵「ただ、いつも騒がしいあの子がいないと、仕事がはかどりますわ!って思っただけで……」
綾乃「古谷さんは大室さんといつも一緒ですものね」ウフフ
向日葵「べ、べつに好きで一緒にいるわけでは!」カァァ
向日葵「……あの、杉浦先輩……」
綾乃「何かしら?」
向日葵「悩み事……聞いてもらってもいいですか?」オズオズ
綾乃「ほえっ!?」
綾乃「何か悩みがあるなら、よかったら話してみてくれないかしら? 私でよかったら、その……力になるわ。微力ながら、ね」ニコッ
向日葵「杉浦先輩……///」
綾乃「古谷さんは私の大事な後輩ですもの。遠慮しないでいいわ」
向日葵「ありがとうございます! えっと、それでは、その……」
向日葵「実は私、恋……しているみたいなんですの」
綾乃「」
綾乃(……れ、れれれれ恋愛相談!?)ガーン
綾乃「」ギクッ
向日葵「そ、その子とはケンカばっかりだったはずなのに、ライバル関係のようなものだったはずなのに、でも、その子のことを考えると心が暖かくなるというか、顔が熱くなるというか……」カァァ
綾乃「」ギクギクッ
向日葵「でも私は、いつも素直になれなくて……」
綾乃「」ギクギクギクッ
向日葵「これはやっぱり、恋なんでしょうか……?」
綾乃(あなたは私かッ!!)
綾乃(いやいやいやそれ以前に! この私が恋愛相談!? 相談に乗って欲しいのは私のほうよ!)
綾乃(私だって、四六時中歳納京子のことが頭から離れなくてライバル関係的なはずなのに歳納京子のことを考えると心が暖かくなるしいつも素直になれないし……)
向日葵「杉浦先輩? あの、やっぱり迷惑でした……?」
綾乃「い、いえ? そ、そそそんなことはないないナイアガラよ! つ、続けて続けて」
向日葵「あの子が私以外の誰かと結ばれる未来を想像したら、とても悲しくて……あの子が幸せならそれでいいって考えようとしても、嫉妬心を抑えきれなくて……」
向日葵「ですから私は、さk…あの子とお付き合いがしたいって、そう考えて……でも……」
綾乃「な、なるほどね。つまり古谷さんは恋に素直になって、おおm……その人と交際したいんだけれど、恋に踏み出してアプローチする決心がまだつかない、ってことかしら?」
向日葵「そうですわ! さすが杉浦先輩、頼りになりますわ!」キラキラ
綾乃「」
綾乃「……古谷さん?」
向日葵「はい、なんでしょうか?」
綾乃「恋というものは……早い者勝ちなのよ!」
向日葵「!?」
向日葵「!?」ガーン
綾乃「モタモタしていたら持ってかれる。ウジウジしてたら攫われる。いつまでも素直になれなかったら……負けよ」
向日葵「そ、そうですわよね! さくらk…じゃなかったあの子は、明るくて社交的でクラスの人気者で……そんなあの子ですもの、競争率も高いに違いありませんわ!」
綾乃「そうよ! でも、古谷さんだってきっと競争率は高いはずよ」ニコッ
向日葵「えっ!?」
綾乃「私が、保証してあげる」ニコッ
向日葵「す、杉浦先輩……///」
綾乃「だから頑張って! 私はいつでも、あなたに力を貸すわ」ニコッ
向日葵「は、はい! ありがとうございます……本当に、ありがとうございますわ!」ウルッ
※綾乃自宅にて
~その夜~
綾乃「死にたい……」ズーン
綾乃「いくら後輩の背中を押すためとはいえ、自分のことを完ッ全に棚に上げて、あんな……」
綾乃『恋というものは……早い者勝ちなのよ!』キリッ
綾乃「バカバカバカバカ私のバカァ!」ポカポカ
綾乃「バカバカバカ……バカ……」グスン
~廊下の片隅で~
向日葵「杉浦先輩、昨日は本当にありがとうございましたわ」ペコリ
綾乃「い、いえ! 全然気にしないでいいのよ?」
向日葵「感謝してもしきれませんわ。おかげで私、覚悟を決めることができましたの」
綾乃「そ、そう。よかったわ……」ホッ
向日葵「それで、その……手始めに、今から櫻子にクッキーをプレゼントしに行こうと思いますの。よろしかったら、その……見守ってていただけないでしょうか?」オズオズ
綾乃「ほえっ!?」
綾乃(うん、知ってたわ)
向日葵「私はよく櫻子にお菓子を作ったりしてあげているんですけど、この気持ちを恋だと意識し始めたら急に照れくさくなって……///」モジモジ
綾乃(古谷さん可愛いなぁ…)フフッ
綾乃(乗りかかった船だし、協力するって約束したし……最後まで応援するわ! ホントはそんな余裕ないんだどね……)トホホ
向日葵「杉浦先輩も自分の恋で忙しいのに、本当にごめんなさい」ペコリ
綾乃「なっ/// べ、べべべべべつに私は恋なんて!!」カァァ
綾乃「わ、私のことはいいから! 古谷さんよ古谷さん!」アワアワ
向日葵(照れ隠しする先輩も可愛いですわ)フフッ
向日葵「でも、正直意外でしたわ」
綾乃「えっ?」
綾乃(そ、それは事実よ!)
向日葵「けど、『恋は早い者勝ち』って……杉浦先輩も真剣に自分の恋路を歩んでいるんですね」ニコッ
綾乃「はうっ!」ズキッ
綾乃(耳が痛い……)
『モタモタしていたらもってかれる。ウジウジしていたら攫われる。いつまでも素直になれなかったら……負けよ』
…この言葉を胸に刻ませてもらいますわ」ニコニコッ
綾乃「はううぅ!」ズキン
綾乃(やめて! それ以上私の傷をほじくらないで!)
綾乃(そんな……そんな尊敬の眼差しで見ないでちょうだい! あれはちょっと見栄張ってみただけなの! 本当の私はウブでヘタレなのよ! ごめんなさい!)
向日葵「? 杉浦先輩?」
綾乃「な、なんでもナイアガラよ! と、とにかく、勇気が出たみたいで、わ、私も嬉しいわ!」オドオド
向日葵「は、はい! それと一緒に、櫻子をデ、デデデデートに誘おうかなって……///」キャッ
綾乃(いいなぁ、デートかぁ……)
向日葵「ヤダ私ったら! よく2人きりで遊んだりするのに、なんでこんなに緊張するんですの!?」ソワソワ
綾乃「お、落ち着いて古谷さん! 平常心、平常心よ……。あくまで誘うのはいつも通りで、本番はデート当日! ここはさりげなく切り抜けるのよ!」
向日葵「はい、さすが杉浦先輩ですわ!」
綾乃「うぅ……///」
櫻子「なんだよひまわり~、こんなところに呼び出してさ」
向日葵「えっと、その……」モジモジ
綾乃(壁に隠れて見守ってるんだけど……バレたりしないかしら?)
向日葵「…………」チラッ
綾乃(あ、あまりこっち向かないで!)オロオロ
綾乃(え、えっと……頑張れ! 古谷さん!)サムズアップ!
向日葵(ありがとうございますわ!)
櫻子「おおクッキー! ちょうどお腹減ってたところなんだよね! ありがとう!」
向日葵「ど、どういたしまして、ですわ///」
向日葵「そ、それで、来週の日曜日……よかったら、一緒にお出かけでもしません?」オズオズ
櫻子「おへはへ? もぐもぐ……いいおー! おほいく?」モグモグ
向日葵「ちゃんと飲み込んでから喋りなさいな……」ヤレヤレ
向日葵(でも……やりましたわ、杉浦先輩!)チラッ
綾乃(おめでとう、古谷さん!)ホッ
向日葵「杉浦先輩、ありがとうございました」ペコリ
綾乃「よかったわね。バッチリだったわよ」ニコッ
向日葵「あの、お礼にこれ、受け取ってください」スッ
綾乃「これ、大室さんに作ったクッキー?」
向日葵「杉浦先輩の分も作らせていただきましたの。お口に合うかわかりませんけど、よかったら召し上がってください」
綾乃「ふふっ、ありがとね、古谷さん」ニコッ
綾乃(古谷さん、上手くいくといいわね……)
綾乃(そういえば、生徒会に入ったおかげで、こうして後輩の子ともお友達になれたのよね)
綾乃(初めは千歳しかお友達がいなかったけど、生徒会のみんなやごらく部のみんなともお友達になれて……)
綾乃(感謝しないとね)フフッ
綾乃(古谷さんがくれたクッキー……)
綾乃(……もぐもぐ……美味しい!)モグシ
千歳「綾乃ちゃん、最近何かあったん? ため息ついたり肩落としたり、かと思えば嬉しそうな顔したり……あ、まさか歳納さんと!」クワッ
綾乃「ちちち違うわよ! 心配はノンノンノートルダムよ!」
綾乃(言えない……後輩の前で見栄張って偉そうにした黒歴史を思い出して悶々としているなんて!)
綾乃(……でも、後輩に頼られて嬉しいなぁ、なんて思っちゃってることは……もっと言えない!)
向日葵「ふふっ」ニコニコ
向日葵(杉浦先輩、ありがとうございますわ)
櫻子「なんだよ向日葵、ニヤニヤしてて気持ち悪いなぁ」
向日葵「な、なんですって!?」
櫻子「あ、そうそう、そういえば日曜どこ行くかまだ決めてないじゃん! どーする?」
向日葵「あ、えっと…/// い、今は仕事中ですから、後にしましょう///」
ガラッ
京子「綾乃いるー?」
千歳「あら、歳納さん。どうしたん?」
京子「綾乃……ちょっと来てもらっていいかな?」
綾乃「えっ?」
京子「突然呼び出したりしてごめん」
綾乃「ど、どうしたっていうのよ。何か用かしら?」ワクワク
綾乃(こっちから茶道部室に行く手間が省けたわ!)
京子「あのさ、悩み事……聞いてもらってもいいかな?」
綾乃「……えっ?」
京子「実は私……結衣に恋してるのかもしれない」
綾乃「………………………」
綾乃「………………………………!?」
京子「でももう限界で、最近ずっと気持ちがぐちゃぐちゃしてて気持ち悪くて、すぐに誰かに相談したくて……綾乃だけが頼りなんだ! あかりやちなつちゃんには言いにくくてさ……」
京子「まだよくわかんないんだ! 恋かどうかなんて。けど、どうにか気持ちを落ち着けたくて……」
京子「……? 綾乃……?」
綾乃「……え、ええ。なんでもないわ。続け……て……」
京子「迷惑かけてごめんね。……このままじゃ私、ごらく部のみんなと会えないよ……」
綾乃「…………………」
綾乃「こ、恋というものは……は、早い者勝ち、な、なのよ……」
京子「綾乃……?」
綾乃「け、けど……」ガクガク
綾乃(見栄を……張りなさいよ! 古谷さんのときみたいに、カッコつけてみせなさいって!)
綾乃「あ、ああ、あなたがその人に恋しているように……」ブルブル
綾乃(歳納京子が他の人に恋するんなら……応援して、あげなくちゃ……)
綾乃(応援して……応援して……)
綾乃「他の誰かも……『あなた』に恋しているかもしれないのよ!!」ダッ
京子「綾乃!? 待ってよ! どこ行くんだよ!」
ウジウジしていたから攫われた。
いつまでも素直になれなかったから……負けたんだわ
※
向日葵「まだ負けだなんて……はぁはぁ……決まって、い、いません……わよ……」ハァハァ
綾乃「ふ、古谷さん!? どうしてここに……?」ビクッ
向日葵「は、走って追いかけて……来たんですの……」ハァハァ
向日葵「探しましたわよ……そこら中……」ハァハァ
向日葵「まさか、学校からこんなに離れた公園にいるなんて……」
向日葵「歳納先輩が来たとき、なんだか嫌な予感がしたから……すみません、あとをつけてしまいました」ペコリ
綾乃「じゃ、じゃあ全部見てたの!?」
向日葵「はい。本当に申し訳ありませんわ。けど……」
綾乃「謝らなきゃいけないのは私よ!」
向日葵「」ビクッ
綾乃「偉そうにあれこれ言ってごめんなさい! 私は本当は、どうしようもないヘタレなの!」
綾乃「私に、あなたの恋を応援する資格なんて……」
向日葵「杉浦先輩!!」
ギュッ
綾乃「!?」
向日葵「私が杉浦先輩からたくさん勇気をいただいたのは……紛れもない事実ですわ」
向日葵「私は櫻子のことが大好き。その気持ちを行動に移すことができたのは……全部杉浦先輩のおかげ。杉浦先輩は私の……」
向日葵「私の自慢の先輩ですわ」ニコッ
向日葵「それだけじゃないですわ。入学したてで右も左もわからなかった私と櫻子を辛抱強く指導してくださったのも、他ならぬ杉浦先輩。優しくて頼りになる……私の憧れです」
向日葵「……歳納先輩は、『これが恋かはまだわからない』って、言っていましたよね?」
向日葵「それなのに諦めてしまっては……もったいないです」
向日葵「杉浦先輩にとってもったいないだけじゃなくて……杉浦先輩みたいな人を恋人にできないなんて、歳納先輩にとってももったいないことだと思いますの」ニコッ
綾乃「……ありがとっ///」
向日葵「どういたしまして」ニコニコ
向日葵「……どうやら、私の出番はここまでのようですわね」
綾乃「えっ?」
ダッダッダッ
京子「あやのー!」
京子「あ、綾乃! ……ここに……いたんだ…………って、あ、あれ? なんでおっぱいちゃんが…ここ…に?」ハァハァ
向日葵「帰り道で偶然会ったんですの……って、その呼び方はちょっと……」
綾乃「歳納京子……突然逃げ出したりして、ごめんなさい」
京子「ううん、いいの。それより綾乃! 大丈夫? 私、もしかして何か酷いこと……」
綾乃「ねえ、歳納京子……」
向日葵(杉浦先輩……!)チラッ
綾乃(……古谷さん!)
綾乃「私はね、歳納京子……あなたのことが……あなたのことが大好きなの!」
京子「……え、ええっ!?」
京子「ちょっと待って、それどういう……」
綾乃「ずっと前から、あなただけを見つめてきた! あなたは私の憧れで、時々目を逸らしたくなるくらい眩しくて、私は素直になれなくて……」
綾乃「それでもあなたは、いつだって気さくに話しかけてくれた! 私に笑顔をくれた! そんなあなたのことが、世界中の誰よりも……」
綾乃「好き……好きなの!」
綾乃「歳納京子は悪くない!」
京子「えっ!?」
綾乃「私がいつまでも、ウジウジしていたから。言葉にしなきゃ、行動にしめさなきゃ……伝わるわけないのにね……」
京子「綾乃……」
綾乃「お願いします!」ペコッ
京子「ま、待って待って待って! 私やっぱりまだ、頭がこんがらがって……///」オロオロ
京子「えっ……綾乃が私を、す、好!?」カァァ
向日葵(おや? これはもしかして……)
綾乃「と、歳納京子……?」ドキドキ
向日葵(脈アリですわ!)クワッ
京子「嬉しい……すごく嬉しいよ綾乃!」
京子「でも、ちょっとだけ待って……私まだ、気持ちの整理がつかないっていうか……もう少しよく考えたいっていうか……///」
綾乃「待つわ。歳納京子が、ちゃんと返事をくれるなら……」
京子「うん。ありがと……///」
京子「あー、えっと……学校、戻ろっか///」
綾乃「え、ええ! そうね///」カァァ
綾乃(私……しちゃったんだ! 歳納京子に、こ、ここここ告白……///)プシュー
綾乃(い、今更ながら、恥ずかしくなってきたわ///)
向日葵「…………」ニコッ
※茶道部室にて
~数日後~
ガラッ
綾乃「とーしのーきょーこー!」
京子「あ、綾乃///」
綾乃「えっ/// あっ///」
京子「……お、おはよー///」
綾乃「い、今は昼間よ///」
結衣(最近何かあったのかな?)
あかり(2人とも顔真っ赤だなぁ)
ガラッ
向日葵「失礼しますわ」
京子「あれ? おっぱいちゃんじゃん、どーしたの?」
向日葵「すみません、櫻子来ていませんでしょうか?」
結衣「ここには来てないよ」
あかり「櫻子ちゃんなら、『石焼き芋の屋台の声が聞こえたから行ってくる』って言ってたよぉ」
向日葵「まったく、あの子ったら……」ハァ
向日葵(せっかくパンケーキ焼いてきましたのに……)
京子「あっ、いっけね! 忘れてた!」
綾乃「まったく、歳納京子ったら……」ヤレヤレ
向日葵(どうやら、歳納先輩からまだ返事はもらっていないようですけど……)
京子「そういえば、今度の日曜どこ行くかまだ決めてなかったよね。どーする?」
綾乃「えっ!?」
京子「あっ……」
ちなつ「あれ? もしかして2人っきりでお出かけするんですか?」
綾乃(バ、バカ! みんなのいる前で!)
結衣(めちゃめちゃ焦っとる……)
向日葵(……どうやら、順調に関係は進展中のようで……なによりですわ)ニコッ
ガラッ
櫻子「ひまわりいるかーい?」
向日葵「あら、櫻子」
櫻子「ほら、焼き芋買ってきてやったぞ! ありがたく食べるがよい!」エッヘン
向日葵「あ、ありがとうございますわ///」
綾乃(古谷さんの恋も、まだまだこれから。……けれど順調そうね)ニコッ
向日葵(……お互い頑張りましょうね? 杉浦先輩)ニコッ
おわり
恋愛要素よりは友情要素のほうが多くなったかもしれない
京綾もひまさくも両方好きなので、こんな形で書いてみました
Entry ⇒ 2012.10.02 | Category ⇒ ゆるゆりSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
黒井「えー、お騒がせいたしております」キーン
P「ライバルプロダクションに、アポ無しで拡声器を持って乗り込んでくるとは……穏やかではありませんね」
美希「ある晴れた昼下がりの、絶好の昼寝日和になんの用なの?」
雪歩「ま、真ちゃん……」ブルブル
真「雪歩、ボクの後ろに隠れて」
伊織「ふうん。単身で乗り込んでくるとは、いい度胸じゃない」
貴音「英語で言えば『ぐっどどきょう』ですね」
亜美「! お姫ちんが、え→ごを!」
あずさ「最近、勉強を始めたらしいのよ~」
春香「だから、いったい何の用なんですか!?」
千早「春香、気をつけて!」
真美「かえれかえれ!!」
やよい「あ。今、お茶を出しますねー」
美希「やよい、そんなの出すことないの」
黒井「毎度お馴染み、不要品回収業者でございます」キーン
響「え?」
P「は?」
黒井「ご不要になられました、日用品、雑貨、古新聞、古雑誌にダンーボール……アイドルなどございましたら……」キーン
アイドル一同「!」
P「!」
黒井「高級化粧紙、トイレットペーパーと交換させていただきます」キーン
伊織「ば、ばっかじゃないの! ここには不要になったアイドルなんて……」
春香「そ、そうだよ。私たちは、みんな家族みたいな……」
P「……ほう」
雪歩「え?」
真美「に、兄ちゃん?」
やよい「ぅっぅー……プロデューサー、まさか……」
P「黒井社長、ひとつ伺いたい」
黒井「なんなりと」キーン
P「そのトイレットペーパーだが……」
黒井「無論、シングルロールなどではない。ダブル! ダブルロールだよ、君ぃ!」キーン
P「ほほう……」
亜美「兄ちゃん? 兄ちゃん……」
響「まさか、まさか……」
あずさ「嘘、ですよね~?」
黒井「そしてティッシュは、セレブな私にふさわしく鼻セレブだ!」キーン
P「ほほう!」
美希「やよい、舐めたことあるの?」
貴音「面妖な!」
黒井「いかがかな?」キーン
春香「ぷ、プロデューサーさん? こんな話、まともに相手をしたりしませんよね?」
伊織「私たちを、交換に出したりしないわよね? ね!?」
貴音「あなた様?」
P「なかなか魅力的な提案、だと思います」
亜美「兄ちゃん!?」
雪歩「いやあああぁぁぁーーーっっっ!!!」
真「嘘ですよね? 嘘って言ってくださいよ!」
黒井「ありがとうございます!!!」キーン
P「とはいえ、765プロにはそんな……不要なアイドルなんて……」
響「そ、そうだぞ!」
真「みんな、がんばってるもんね!」
亜美「あ、亜美、もうお菓子とかがまんして、買って買ってとかいわないから……」
真美「まっ、真美ももう兄ちゃんに宿題やらせたりしないから!」
美希「ミキ、これからはもうサボらずにレッスンするの!」
千早「グラビアでもバラエティでも、好き嫌いせずになんでも出演します!」
貴音「らぁめんを1日3食までにいたします!」
春香「こ、個性を身につけます!!」
あずさ「痩せます!!!」
P「……あっ!」
アイドル一同「「えっ!?」」
P「穴……」
雪歩「!」ビクッ
P「最近、給湯室の床に穴が……」
真「ぷ、プロデューサー!」
春香「あ、穴は塞ぎます! 雪歩にもよく言ってきかせますから!」
P「……シャベル」
響「え?」
美希「な、なんなのハニー?」
P「シャベルが無ければ……シャベルさえ無ければ、もう穴について心配しなくてもいいんだよな……雪歩はいいんだけど、シャベルがなあ……」
真美「しゃ、シャベル! 亜美、シャベル持ってきて!!」
亜美「はい、兄ちゃん! シャベルだよ!!」
雪歩「わ、私のシャベル! ゾーリンゲン製の最高級円匙……」
貴音「雪歩、ここは耐えるのです。たとえシャベルを失っても、わたくし達は雪歩を失いたくはありません」
春香「そうだよ、雪歩!」
雪歩「貴音さん、春香ちゃん……うう、わかりました」
P「黒井社長、これを交換して欲しいんですが」
伊織「さあ、これでもう気が済んだでしょ。帰りなさいよ!」
黒井「ありがとうございましたー!」キーン
あずさ「昨日は大変だったわね~」
亜美「大変なんてモンじゃないよ!」
伊織「まったく! 思い出すだけでも腹立たしいわね!」
律子「? どうしたの?」
亜美「そっか、りっちゃんはいなかったんだっけ。あのね→……」
黒井「えー、お騒がせいたしております」キーン
亜美「うわ! でた→!!」
伊織「性懲りもなく、また出たわね」
あずさ「……」(お腹空いたわね~)
律子「黒井社長? どうも、おはようございます」
律子「流石に、そうもいかないでしょ。それで? わざわざ楽屋に何のご用ですか?」
黒井「毎度お馴染み、不要品回収業者でございます」キーン
律子「え?」
黒井「ご不要になられました、日用品、雑貨、古新聞、古雑誌にLBX……ユニットメンバーなどございましたら……」キーン
律子「!?」
黒井「高級化粧紙、トイレットペーパーと交換させていただきます」キーン
伊織「耳を貸しちゃダメよ、律子」
亜美「りっちゃ→ん」
あずさ「竜宮小町に、不要なメンバーなんて~」
律子「……へえ」
あずさ「ええ!?」
亜美「り、りっちゃん?」
黒井「今なら、ティッシュペーパーもお付けいたします」キーン
律子「へえ!」
あずさ「じょ、冗談……ですよね?」
黒井「携帯にも便利な、ポケットティツシュもサービスいたします」キーン
律子「へええ!!」
亜美「もうやだよ、亜美。毎日こんなの→」ウルウル
律子「なかなか魅力的なお話ですけど……生憎、竜宮小町に要らないメンバーなんて……」
伊織「そ、そうよ!」
亜美「亜美、いい子になったんだもん」
あずさ「私、一日で100グラムもダイエットに成功したのよ~」
律子「……あ」
伊織「え?」ビクッ
律子「そういえば……」
亜美「り、りっちゃん?」
律子「うーん……」
亜美「もう勝手にりっちゃんの化粧道具、使ってみたりしないから!」
あずさ「もっと痩せます!」
律子「……ゲーム」
伊織「え?」
律子「待ち時間にゲームばっかりして、挨拶回りとか行かないメンバーが……」
あずさ「伊織ちゃん、ゲーム機よ!」
伊織「はい、律子!」
亜美「あ、亜美のゲーム機……」
律子「亜美はいいのよね。亜美は。このゲーム機さえなければ、亜美はいいんだけど……」
伊織「亜美、ここは我慢よ」
あずさ「いいわよね?」
亜美「……うう。サヨナラ、亜美のミッシングム→ン……」ポロッ
律子「いいのね? じゃあ黒井社長、このゲーム機を交換お願いします」
伊織「さあ、これでもう気が済んだでしょ。帰りなさいよ!」
黒井「ありがとうございましたー!」キーン
伊織「……て、いう事があったのよ!」
亜美「も→最悪だよ、黒井社長!」
雪歩「私のシャベルも……」
千早「困ったものね。もう、来ないといいんだけど……」
黒井「毎度、お騒がせいたしております!」キーン
春香「で、でたー!」
真「そんなに毎日来たって、交換に出すものなんてないぞ!」
黒井「毎度お馴染み、不要品回収業者でございます」キーン
真美「だから→!」
響「765プロに、要らないアイドルなんていないぞー!」
小鳥「ピヨッ!?」
黒井「高級化粧紙、トイレットペーパーと交換させていただきます」キーン
千早「……駄目よ」
真「そ、そうだ。そうだ!」
春香「こ、小鳥さんも、大事な765プロの仲間。家族なんだから!」
小鳥「みんな……」(ちょっと間があったみたいだけど、気のせいよね)
黒井「今なら……」キーン
伊織「はいはい。これ、交換ね」
小鳥「ピヨッ!! 私の秘蔵の薄い本!!!」
あずさ「小鳥さん、これも小鳥さんを交換に出さないためですよ~」
真美「そ→そ→。真美たちもホントはこんなこと、したくないんだよ」
雪歩「私たち、小鳥さんを守るために心を鬼にして……」
亜美「ね→」
伊織「いいのね? じゃあ、これ」
黒井「では、トイレットペーパー1巻と交換で」キーン
小鳥「ピヨピヨッ!! や、安すぎませんか!?」
黒井「ありがとうございましたー!」キーン
小鳥「うう……」
春香「良かったですね。小鳥さんが連れて行かれなくて」
やよい「うっうー!」
小鳥「……うん」(……なんか、体よく本を処分された気も……)
P「へえ。そうなんですか」
春香「とか言っていると、また来るかもしれないですよ」
美希「さすがにそんなに毎日は来ないと、ミキ思うな」
黒井「毎度、お騒がせいたしております!」キーン
春香「って、本当に来た!?」
亜美「しつこいよ→」
黒井「毎度お馴染み、不要品回収業者でございます」キーン
伊織「アンタね、いいかげんにしないと……」
響「……ちょっと待つんだぞ。今までの流れでいくと……」
真「え?」
響「アイドル、ユニットメンバー、事務員……次に黒井社長が、交換として狙っているのは……」
雪歩「ええと……」
千早「たぶん……」
あずさ「きっとプロデューサーさんね~……えっ!?」
真美「兄ちゃん! いっちゃだめだYO!!」
やよい「プロデューサー。私、プロデューサーがいなくなっちゃったら……さびしいかなーって」ポロポロ
美希「ハニーは絶対に渡さないの!!!」
貴音「黒井殿、あの方だけは渡せません」
黒井「ご不要になられました、日用品、雑貨、古新聞、古雑誌にサンポール……」キーン
真「みんな! プロデューサーを、守るんだ」
黒井「プロダンション社長など、ございましたら……」キーン
あずさ「みんなでプロデューサーさんを死守……え?」
春香「社長、さん?」
黒井「高級化粧紙、トイレットペーパーと交換させていただきます」キーン
真美「……」
亜美「……」
やよい「……」
美希「……」
響「……」
千早「……」
真「……」
雪歩「……」
貴音「……」
あずさ「……」
律子「……」
小鳥「……」
春香「あ、じゃ、じゃあ……」
伊織「これ、お願いね」
春香「黒井社長、あれから来なくなりましたね」
千早「そうね」
律子「もともと高木元社長が、目的だったのかもね」
小鳥「今は高木社……さんも、961プロで黒井社長さんと仲良くやってるみたいですよ」
伊織「まったく、ツンデレとか傍迷惑よね。素直になればいいのに」
真美「!」
やよい「えへへー。そうだね、伊織ちゃん」
あずさ「でもああいうアタックの仕方もあるのね~」
貴音「参考になります」
亜美「どうゆ→こと?」
響「まだ亜美には早いさー」
真「押しても駄目なら、もっと押せ! だね」
雪歩「違うと思うよ? 真ちゃん」
あいつそれなりに有能なんだろ?
一同「「はーい! P新社長!!!」」
黒井「毎度、お騒がせいたしております!
毎度お馴染み、不要品回収業者でございます。
ご不要になられました、日用品、雑貨、古新聞、古雑誌にザーボンさん……国会議員などございましたら、高級化粧紙、トイレットペーパーと交換させていただきます」キーン』
終わり
ありがとうございました。
最後までテンション変わらなかったな乙
Entry ⇒ 2012.10.02 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (2) | Trackbacks (0)