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シンジ「アスカをスマブラでボコボコにしたらマジ切れされた」
シンジ(コンピューターでもレベル9三人相手ならまあまあ良い勝負になるし)
シンジ(アイテムは無しにして・・・ファルコンでいいかな)ポチポチ
ファルコンキィッ!
シンジ「・・・・・・」カチャカチャ
オーウ
シンジ「・・・・・・」カチャカチャ
シンジ(勝った。久しぶりだったけど覚えてるもんだなぁ)
シンジ(次はネスでやr)
ガラッ
シンジ「っ!?」ビクッ
アスカ「なにしてんの?」
シンジ「は、入るならノックくらいしてよ」
コンコン
アスカ「なにしてんの?」
シンジ「今したって意味ないよ・・・ゲームしてたんだ」
シンジ「べ、別にいいだろ」
アスカ「ちなみにどんなのやってんのよ」ドサッ
シンジ「スマブラを、久しぶりにやりたくなって」
アスカ「スマブラ?」
シンジ「えっ・・・スマブラ知らないの?」
アスカ「知らないわよ日本のゲームなんて」
シンジ「あ、そっか。えっと、任天堂って会社の有名なキャラクターを集めた対戦ゲームで」ポチポチ
アスカ「ピカチュウ!」
シンジ「うん。ピカチュウとかマリオとかそういう有名なキャラで戦うんだ」
アスカ「ふーん・・・」
シンジ「あ、アスカも一緒にやる?」
シンジ「そう、じゃあはい」スッ
アスカ「・・・」ガシッ
シンジ「あの、コントローラーはこの真ん中と右を持つんだ」
アスカ「さ、最初に言いなさいよ馬鹿」
シンジ「それで、このスティックでキャラクターを選んで」
アスカ「もちろんピカチュウよ」
シンジ「ボタン押して」
アスカ「・・・」ポチッ
シンジ「それじゃなくってこっちを」
アスカ「だから最初に言えっての!」
シンジ「ご、ごめん。じゃあ最初だしコンピューターは無しにして、ステージはハイラル城でいいか」ポチポチ
シンジ「このステージから落ちたりダメージが溜まって吹っ飛んだら残機が減るから、今回は5回やられたら負けね」
シンジ「このボタンとこのボタンで攻撃したり、スティック上にするかこのボタンでジャンプできるから」
アスカ「・・・」ポチポチ
ピカッ
アスカ「・・・!」ポチポチ
ピッカァ!
アスカ「・・・!!」ポチポチポチポチ
シンジ「で、攻撃を食らうとこのダメージが溜まって」カチャカチャ
ドカッ!
アスカ「なにすんのよ!」
シンジ「な、なにって説明を」
アスカ「ピカチュウを蹴っ飛ばすとか信じらんない!」
シンジ「そ、そういうゲームなんだって・・・」
シンジ「そう、それがガード。ただ攻撃喰らいつづけるとガードが破られて行動不能になるから」
シンジ「あとそのボタンとスティックで相手の攻撃かわしたり、ここを同時押しすると掴んで投げられるから」
アスカ「・・・」カチャカチャ
シンジ「一通り操作方法は分かった?」
アスカ「こんな簡単な操作らくしょーよらくしょー」
シンジ「じゃあコンピューター混ぜてやってみようか」
ピカァッ!
アスカ「ふふんっ♪」
シンジ(意外とアスカも子供っぽいなぁ)
シンジ「レベル4だともう余裕だね。次は7とかで」
アスカ「もうコンピューターはいい」
シンジ「え?でもそれだと」
アスカ「一対一で勝負よ馬鹿シンジ!」ビシッ
シンジ「一対一で?ま、まだ早いんじゃないかな」
アスカ「なに?わたしとピカチュウに勝てるとでも?」
シンジ「アスカは今日初めてやったんだし、流石に」
アスカ「初めてやったわたしに負けるのが怖いってわけね」
シンジ「そんなわけないだろっ」
アスカ「じゃあ勝負よ!負けたらぺんぺんの毛繕いだから!」
シンジ(最初は苦戦して勝つくらいのがいいかな)
アスカ「早くキャラ選びなさいよ馬鹿シンジ」
シンジ「えっと・・・じゃあプリンで」
アスカ「ポケモン対決ってわけね?受けてたとうじゃない」
シンジ「ステージはどこがいい?」
アスカ「ランダムでいいわ」
アスカ「いけっピカチュウ!馬鹿シンジを感電死させるのよ!」カチャカチャ
シンジ「感電死って・・・」
シンジ「危なかった。負けるとこだったよ」
アスカ「うぅー・・・馬鹿シンジなんかに・・・!」
アスカ「もう一回勝負しなさい!!」
シンジ「うん」
ピカピーカァ~……
アスカ「もう一回!」
シンジ「うん」
アスカ「もう一回!」
シンジ「う、うん」
アスカ「ううう!なんで勝てないのよ!もう一回!」
シンジ「うん」
ウワァァァ……
アスカ「勝った!!やったわピカチュウ!」
シンジ「ま、負けたー。アスカはゲーム上手だね」
アスカ「ふんっ、あったりまえよ。こんな単純なゲーム何回かやれば馬鹿シンジなんかに負けるわけないじゃない」ドヤッ
シンジ「あはは・・・」
アスカ「は~あ。でもあんたこのゲームよくやってたんでしょ?」
シンジ「ま、まあね」
アスカ「それで今日初めてやったわたしに負けるとか・・・はっずかしぃ~。ぷぷっ」ドヤッ
シンジ「あはは・・・」イラッ
シンジ「はは、関係ないよそれ・・・」
アスカ「最初はあーだこーだ言ってたのにこんな簡単に超えられてどう思った?」
シンジ「や、やっぱりアスカはすごいなって」
アスカ「あったりまえよ。あんたとじゃ頭の出来が違うの」
シンジ「・・・」
アスカ「どうする?もう一回やる?次は手加減してあげよっか」ニヤニヤ
シンジ「・・・分かった。もう一回やろう」
アスカ「手加減は?」
シンジ「しなくていいよ」ニコッ
アスカ「ネス?そんなよわっちそうなキャラでいいの?」
シンジ「うん。これでいいんだ」
ピカピーカァ~……
アスカ「えっ」
シンジ「・・・」カチャカチャ
ドコッ!
アスカ「あっ」
シンジ「・・・」カチャカチャ
ピカピーカァ~……
アスカ「な、なんで」
シンジ「・・・」カチャカチャ
ピカピーカァ~…………
アスカ「・・・・・・」
ワァァァァ!
アスカ「・・・・・・」
シンジ「5機落とすのに24%しかダメージ食らわなかったのか。アスカは優しいね」
アスカ「・・・・・・」
シンジ「手加減してくれたんでしょ?」
アスカ「っ・・・」プルプル
ピカチュウって性能的には強かったよな確か
ピカファル2強
↑スマ・↓スマの発生の早さ・強↑Aループ・空前Aのドリル・空逆Aの蹴り・復帰封じの置き横スマ
どれも高性能
アスカ「・・・」プルプル
シンジ「次は誰使おうかな。リンクでもいいかな。アスカはピカチュウでしょ?」
アスカ「・・・さい・・・」
シンジ「ん?なに?」
アスカ「うるさい!!!」ガン!
シンジ「うわっ!?なっ、なにすんだよ!コントローラー壊れるだろ!」
アスカ「うるさいうるさいうるさい!!!あんたなんかさいてーよ!!馬鹿!!!!」
ドアバーン!
シンジ「な、なんだよ・・・煽ったのはそっちじゃないか」
ミサト「ただいまー」
シンジ「おかえりなさい。夕飯もうちょっと掛かりますから、先にお風呂入ってて下さい」
ミサト「は~い」
ミサト「お風呂のあとは~ビールビール♪」ガチャッ
ミサト「んぐっんぐっ・・・ぷっはぁ~!」
シンジ「いただきます」
ミサト「あれ、アスカは?」
シンジ「呼んでも出てこなくって」
ミサト「なーにまた喧嘩?」
シンジ「そんな感じです」
ミサト「あらまあほんと仲いいわね。今回はなにしたの?」
シンジ「ゲームで僕が勝ったら怒っちゃって・・・」
ミサト「そんなことで?詳しくおねーさんに聞かせてみなさい」
ミサト「なるほど・・・手加減してあげたらアスカが調子に乗ってムカついてボコボコにしたと」
シンジ「・・・はい」
ミサト「アスカも子供ねぇ・・・」
シンジ「大人気なかったかなって反省してます」
ミサト(アスカも悪気はなかったんだろうけどシンちゃんと二人で遊べてテンション上がっちゃったのね)
ミサト「うーん・・・まあ、お腹減ったらそのうち出てくるわよ」
シンジ「じゃあアスカの分は冷蔵庫にとっときます」
ミサト「うん」
アスカ「・・・」スタスタ
シンジ「あっ・・・おはよう」
アスカ「・・・」スタスタ
シンジ「待ってよ!」
アスカ「・・・」
シンジ「き、昨日はごめん・・・大人気なかったって反省してる」
アスカ「・・・」
シンジ「あの・・・だから、機嫌治してよ」
アスカ「・・・手加減して、わたしのこと馬鹿にしてってわけ?」
シンジ「してないよ!」
アスカ「したじゃない!!」
シンジ「た、確かに最後はちょっとしたかもしれないけど」
アスカ「・・・来週の日曜」
シンジ「えっ?」
アスカ「来週の日曜に再戦しなさい!!馬鹿にしたこと・・・絶対後悔させる・・・!!」
シンジ「流石にそんな短期間じゃ」
アスカ「負けたほうは全裸でネルフ本部をムーンウォークで一周!!わかった!?」
シンジ「そんなことでk」
アスカ「わかった!!??」
シンジ「わっ、わかった!」
アスカ「首洗って待ってなさい・・・!」スタスタ
アスカ「ちょっと来て」
ケンスケ「・・・えっ?」
アスカ「あんたゲーム得意?」
ケンスケ「突然呼び出してなんだよそれ」
アスカ「得意かって聞いてんの!!」
ケンスケ「ま、まあぼちぼちは」
アスカ「スマブラはやったことある?」
ケンスケ「当たり前だろ。ゲーマーじゃなくたって」
アスカ「馬鹿シンジとどっちが強い?」
ケンスケ「碇と?やったことあるけど五分五分じゃないかな」
アスカ「そう。じゃあ今日あんたんち行くから」
ケンスケ「はぁっ!?な、なんで」
アスカ「放課後行くから住所」
ケンスケ「うち来るなら一緒に帰れば」
アスカ「あんたと一緒に帰ってるとこ人に見られたらどうすんのよ」
ケンスケ「・・・ほんとなんなのさ」
こうしてアスカの特訓が始まった
ケンスケ「そういうモーションが大きい技はなるべく使わずに、投げをもっと」カチャカチャ
アスカ「偉そうに指図するな!」カチャカチャ
ケンスケ「・・・すいません」
ケンスケ「そんな攻めてばっかりじゃなくて、避けることも考えないと」カチャカチャ
アスカ「うるさい!」
ケンスケ「す、すいません」
アスカ「ああもう!あんたファルコン使うの禁止!」
ケンスケ「他のキャラでもあんまり変わらないと思うけど」
アスカ「黙れ!」
ケンスケ「すいません!」
ケンスケ「ピカチュウ使うのやめたら?」
アスカ「ふんっ!」メコッ
ケンスケ「正直すまんかった」
『ケンスケー、お客さん』
ケンスケ「ん・・・?まだ8時になってないじゃないか・・・誰だこんな朝っぱらから」
ガラッ
アスカ「いつまで寝てんのよ!!」
ケンスケ「・・・・・・」
特訓は徹夜で続いた
チュンチュン……
アスカ「勝った!!」
ケンスケ「負けたぁ・・・」フラフラ
アスカ「あんた手加減してないでしょうね?」
ケンスケ「全力でやったよ・・・ふぁあ・・・」フラフラ
アスカ「このキモゲームオタクに勝ったならシンジにも勝てる!みてなさいよ馬鹿シンジ!!」ダダダッ
ケンスケ「・・・これだけ付き合わされて・・・お礼くらい言って欲しいよな・・・」バタッ
ケンスケ「あっ、プリキュアの時間だ」ムクッ
アスカ「全裸でムーンウォークなんてできないよ~。ごめんなさいアスカさま~」
アスカ「って言わせてやるんだから」タッタッタッ
アスカ「はぁ、はぁ・・・徹夜明けでここまで走ると流石に」
シンジ「あれ?アスカ」
アスカ「馬鹿シンジ!?」
シンジ「なにしてるのこんな朝から。昨日帰って来なかったみたいだし」
アスカ「あんたこそなにやってんのよ。さてはわたしに恐れをなして逃げようっt」
シンジ「こ、これから綾波とディズニー○ンド行くんだ」
アスカ「・・・・・・え?」
シンジ「今日は遅くなるかもしれないから、ご飯は自分で食べてね」
アスカ「なに・・・え?」
アスカ「待って」
シンジ「なに?」
アスカ「わたしとの勝負は?」
シンジ「勝負?」
アスカ「スマブラの」
シンジ「・・・あー、そんなこと言ってたっけ」
シンジ「ごめん、もう待ち合わせの時間だからまた帰ってからやろう」
シンジ「じゃあ」タッタッタッ
アスカ「・・・」
シンジ「きょ、今日は付き合ってくれてありがとう」
レイ「わたしも来てみたかったから」
シンジ「綾波が?」
レイ「・・・」
シンジ「あ、ごめん・・・綾波はこういうの好きじゃないかなって」
レイ「いいの。碇くんと会うまではこういうところに興味がなかったから」
シンジ「それって・・・」
レイ「・・・」
シンジ「あ、綾波・・・」
レイ「あっ」
シンジ「ん?」
レイ「弐号機が」
シンジ「こんなとこにいるわけないじゃないか。まさか」クルッ
弐号機『ピッピカチュウ!』ズーン
シンジ「・・・」
『キャアアアアアアアアアアアアアアア!!』
シンジ「に、逃げよう綾波!」
レイ「どうして弐号機が」
シンジ「早く!」
アスカ『逃がさないわよ!!』
ミッ○ー「ハハッ、僕の国でなにをしてるんだい?」
アスカ『なによネズミ!潰されたいの!?』
ネルフ本部
青葉「モニター出ます!」
弐号機『ピカァ!』ドガシャーン!
ミッ○ー『ハハッ』ショワーン!
ゲンドウ「・・・・・・」
○ッキー『ハハッ』
青葉「・・・大乱闘だ」
マヤ「・・・大乱闘です」
冬月「・・・大乱闘だな」
ゲンドウ「・・・あぁ」
ゲンドウ「大乱闘だな」
弐号機『ピッピカチュウ!』
劇終
じゃあの。
まあ不利といっても絶望的な差じゃないけど
ここまで期待を込めて読んできたこの気持ちをどうすればいいの…
Entry ⇒ 2012.06.30 | Category ⇒ エヴァンゲリオンSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
P「ピジョンの次なんだっけ?」北斗「コダックですよ」
北斗「コダック、コラッタ、ズバット、ギャロップでしたね」
冬馬「なんだよその適当なメンバー」
P「えっ冬馬知らないのか?」
北斗「ポケモン言えるかなだよ。昔流行っただろ?」
冬馬「俺の時代はダイパだし」
P「15年くらい前の歌だしな……」
P「じゃぁポケモン音頭は?」
冬馬「知らねーな」
黒井「ドッドッドガーッス!ドッドッガド!」
P「シャー!……ってやつだ」
冬馬「イカれちまったのかと思ったぜ……」
北斗「セーラーマルチいいですよね」
P「そこはセントナースだろ」
冬馬「翔太、わかるか?」
翔太「僕デジモン派だし……」
P「アニメやゲームはやっぱり世代によって大分違うな」
北斗「ちなみに俺はエフエフ派でしたよ」
黒井「普通はファイファンだろう」
P「その話題は喧嘩になるから止めよう」
黒井「アバンテ派だ」
北斗「俺はソニックですね」
冬馬「社長にDVD借りたけど、やっぱマグナムだろ」
P「翔太は……今っておもちゃって流行ってるのか?」
翔太「うーん、仮面ライダーなら流行ってたけど」
P「最強はRXだよな」
北斗「ディケイドですよ」
P「あ?」
北斗「なにか?」
翔太「冬馬君の家にいっぱいフィギュアあったよね」
冬馬「俺はクウガから全部見てるぜ」
北斗「クリムゾンスマッシュ破ってから言ってくださいよ」ビキビキ
翔太「マニアックだなぁ……」
冬馬「つかプロデューサーは仕事いいのかよ」
P「今日の予定は終わらせてるし問題ないさ」
北斗「あ、話から逃げたんで俺の勝ちということで」
P「おい!逃げてなんかないぞ!」
黒井「馬鹿馬鹿しい……もう遅い、このまま夕食に行くぞ」
P「ちっ……一時休戦だな」
北斗「仕方ないですね」
黒井「ウィ。場所は追って連絡しよう」
冬馬「今日はどこ行くんだ?」
黒井「何が食いたいかによるな」
北斗「この前飲みに行って以来ですからね……」
翔太「僕焼肉がいいな!食べ放題じゃないやつ!」
P「焼肉か、そういえば焼肉好きの女の子が765プロにもいたな」
黒井「ほう……面白い。そいつも連れて来い」
P「え、いいんですか?」
冬馬「女なんか来ても空気悪くなるだけだろ?やめとこうぜ」
北斗「俺は賛成だな、華やかになりそうだ」
翔太「僕はお肉食べられるなら何でもいいよ」
黒井「ただし誰が来るかは言うなよ」
P「なぜです?」
北斗「賭けるんですよ」
P「なるほど……」
冬馬「焼肉ならあの緑のねえちゃんか菊地だろうな」
P「さて、どうかな」
北斗「真ちゃんが理想なんですけどね」
黒井「早く行ったらどうだ。時間も押してるだろう」
P「っとそうでした。それじゃ現地で!」
翔太「またねー」
小鳥「お帰りなさい、プロデューサーさん」
春香「今日もお疲れ様でしたプロデューサーさん!」
美希「プロデューサー!今からミキ達ご飯なんだけど一緒に来るよね?」
P「え、そうなのか」
真 「へへっ久々に皆一緒にあがるんで!」
P「それって雪歩も行くのか?」
雪歩「は、はい」
P「そうかぁ……飯誘おうと思ったんだけど、タイミング悪かったな」
春香「ええ!?」
P「ちょっと特別な人がいるから雪歩だけがベストなんだよ」
あずさ「特別ですか……」
P「特別というか特殊というか」
P(961プロと晩飯なんて律子達にバレたら何言われるか……)
雪歩「い、行きます!」
伊織「ダメよ!」
真美「そうだよ!ゆきぴょんは真美達とご飯なんだかんね!」
美希 「抜け駆けはダメなの!」
雪歩「そ、それでも……!」
雪歩「私、プロデューサーの特別な人に会いたいです!」
P「そ、そうか?ならいいんだが……」
美希「ぐぬぬ……ありえないの……ミキじゃないなんて……」
雪歩「は、はい!」
貴音「プロデューサー……」
P「なんだ?」
貴音「私は二人目でも構いませんので」
P「二人目?」
律子「スタァーップ!それ以上はダメよ!」
小鳥「はぁはぁ」
真 「ボク達はもう行こう……」
春香「酷いですプロデューサーさん」トボトボ
P「なんとでも言え。今日は雪歩しか誘えない事情があるんだ」
雪歩「はぅ……!」
小鳥「クリティカルヒィーット!プロデューサーさんに3ポイント!」
P「何言ってるんですか……」
小鳥「はーい。それじゃプロデューサーさん、お疲れ様でしたっ」
P「お疲れ様でしたー」
P「あと10分もしたら出るから待ってくれな」
雪歩「は、はい!」
雪歩(これってアレだよね特別な人とのご飯に私だけを呼ぶって)
雪歩(そういうことだよね!)
雪歩「う、嬉しいですプロデューサー!」
P「そ、そうか?そう言ってくれたら俺も嬉しいけど……」
P「それじゃ行くぞ。忘れものはないな?」
雪歩「はい!あ、あのプロデューサー!私がんばりますね!」
P「はは、まぁほどほどにな」
雪歩「はいぃ!」
雪歩「と、ところで、特別な人ってやっぱり……」
P「ん?あぁ多分雪歩が見たら驚くと思うよ」
P「3人はもう店に入ってると思うから、俺達も急ごう」
雪歩(3人!?お父様とお母様と……ご兄弟とか?)
雪歩「しっかりアピールしなくちゃ……」
P「なんだか気合入ってるなー」
P「お待たせ!この子が焼肉アイドルだ!」
冬馬「おい!萩原じゃねーか!」
黒井「音無君だと踏んだんだがな……」
翔太「理由つけて春香ちゃんが来ると思ったんだけどなー」
北斗「やれやれ、全員外したな」
冬馬「この場合どうなるんだ?」
北斗「全員はずれの場合は雪歩ちゃんの分を俺達で支払いだな」
冬馬「くそっ今月ピンチだってのによ……」
雪歩「プ、プロデューサー?」
P「驚いたろ?今日は961プロと飯なんだ」
冬馬「3人?俺達4人だけど」
P「悪いな。俺の中ではディケイド信者は人間じゃないんだ」
北斗「言いますね……!」
黒井「普段は敵同士だが今夜は歓迎しよう。席につくがいい」
雪歩「ひっ」
北斗「ダメですよ社長。雪歩ちゃんは男性が苦手なんですから」
翔太「とりあえず端っこかな?隣がプロデューサーさんで」
冬馬「つーか男嫌いならなんで来たんだよ」
P「そういえば苦手だったな」
黒井「貴様は本当にプロデューサーなのか……」
雪歩「……ぐす」
P「え?」
雪歩「うぅ……」
P「お、おい」
翔太「なーかしたなーかした!」
P「う、うるさい!雪歩?なんで泣くんだ?そんなに野郎の集いが嫌だったのか?」
雪歩「い、いえ……全部私の勘違いがいけないんですぅ……」
雪歩「ちょっと穴掘ってきますね……」
P「いやいやいや落ち着け!」
冬馬「お、おいどうすんだよ……」
翔太「僕に言われても……」
北斗「ふむ」
北斗「プロデューサーさんが一番気に入ってるアイドルって雪歩ちゃんだったんですね」
P「えっ」
雪歩「墓穴掘っても掘り抜け……え?」
北斗「今夜俺のお気に入りの子を連れてくるってね」
北斗「まさか雪歩ちゃんとは……ねぇ社長」
黒井「ん?あ、ウィ。私は音無君あたりかと思っていたんだがな」
黒井「なかなか見る目があるではないか」
P「何の話です?俺はただ……」
冬馬「ウェーイ!ウェイウェーイ!とりあえず飲み物頼もうぜ!」
雪歩「そ、そうだったんですか……プロデューサーが……」
翔太「雪歩さん何飲むの?」
雪歩「あ、私は冷たいお茶でいいよ。ふふ」
P「なんだ急に機嫌が良くなったな」
北斗「俺も同じで」
黒井「私もだ」
冬馬「俺も」
P「おい」
冬馬「ちっ……クリームソーダあります?あ、ない?じゃぁドリンクバー2つで」
翔太「ありがとう冬馬君っ」
黒井「さて、何を頼むか……」
冬馬「適当に食いたいもんでいいじゃねーの」
黒井「そうだな」
翔太「あ、僕ジュースいれてくるよ!冬馬君何がいい?」
冬馬「じゃあカルピス頼むぜ」
冬馬「おい翔太、お前ちゃんぽんしやがったな」
翔太「なんのこと?わかんないなー」
P「それじゃ今日も一日お疲れ様でした!乾杯!」
雪歩「か、かんぱいですぅ!」
翔太「パンカーイ」
冬馬「うぇ……これメロンソーダ混ぜたのか……なんとか飲めるけどよ」
北斗「うーん、やはり最初の一杯は最高ですね」
黒井「ウィ。疲れが吹き飛ぶな」
P「雪歩はご飯モノ何か頼むか?」
雪歩「白ごはんで!」
P「あ、あぁ……すごい気合だな」
冬馬「俺は石焼ビビンバ食おうかな」
翔太「僕クッパ!」
雪歩「焼肉といったら白いご飯だろうが……」ボソッ
P「ゆ、雪歩?」
雪歩「え、何ですか?」
P「あ、いや、聞き違いかな……?」
黒井「私と北斗も何もいらんからな」
雪歩「待ってください!!!」
黒井「うおっ!?」
P「ど、どうしたんだ?」
雪歩「先に網を熱さないとお肉を置いたら網に引っ付いちゃいます」
黒井「そ、そうだったのか……」
冬馬「めんどくせぇな、適当に焼いて適当に食えばいいじゃねーか」
雪歩「っ!」キッ
冬馬「な、なんだよ……睨むなよ……悪かったよ……」
北斗「ま、まぁまぁ。そろそろ網も熱くなったんじゃないか?」
黒井「……では今度こそ」
雪歩「待ってください!!!」
雪歩「世間一般的に考えて最初に置くのはタン塩なんです!」
P「ま、まぁいいじゃないか雪歩。たまには好きに食べたって……」
雪歩「それじゃダメなんです!」
P「ひぃっ」
冬馬「めんどくせーぞこいつ」ヒソヒソ
翔太「僕お腹空いたんだけど……」ボソボソ
P「わかった!じゃぁ先に塩焼きを乗せてこの話はやめよう!はい、ヤメヤメ」
黒井「仕方あるまい……」
雪歩「……じゃぁ乗せていきますねー」ニコニコ
卒倒しそう
P「……」
黒井「……」
翔太「あの、雪歩さん」
雪歩「な、なに?」
冬馬(普通に戻ってるぜ!)
P(よかった!本当によかった!)
翔太「の、飲み物は好きなの飲んでもいいんだよね?」」
雪歩「うん、焼肉は自由に楽しくするものだから。翔太君の好きなようにしていいよ」
黒井(どの口が言うのだ……)
P「そ、そろそろ食えるよな?」
北斗「そうですね、食べましょう」
雪歩「まだ早い」
黒井「ウィ?」
雪歩「まだ早いと言いました」
雪歩「じっくりしっかり焼かないと、後から体調を崩してしまうかもしれません」
黒井「そ、そうか」
雪歩「……あ、もういいんじゃないでしょうか!ど、どうぞですぅ!」
冬馬「あ、ども……」
翔太「ねぇ、10秒くらいしか違わないんだけど」ボソボソ
北斗「その10数秒が重要なんだろうさ……」ヒソヒソ
雪歩「は、早く食べないとコゲますよ」
北斗「おっと」
雪歩「楽しみですねっプロデューサー!」
P「は、はは……そうね……」
翔太「やっと楽しくなってきたねー冬馬君ビビンバ一口ちょうだい」
冬馬「交換しようぜ交換」
黒井「ビール追加だ。お前達はどうだ」
P「あ、俺も」
北斗「お願いします」
黒井「ウィ。萩原雪歩よ、店員を呼び出してくれ」
雪歩「今焼いてるんで無理です」
黒井「そ、そうか……」
P「お、俺!俺が呼びますよ!店員さーん!」
黒井「食欲を刺激する匂いだな」
冬馬「焼けてきたかな」ペロン
雪歩「!!!!」ガタッ
翔太「ひぃぃぃ!」
北斗「ま、待ってくれ雪歩ちゃん!まだ俺達何もしてないだろ!?」
雪歩「冬馬君……今ひっくり返したよね」
冬馬「そ、それがなんだよ……どれくらい焼けたか見ただけじゃ……」
雪歩「お肉はっ!!!」
P「うわぁ!」
雪歩「1回しかひっくり返したらダメなんですよ!!!」
雪歩「脂の多いお肉を何回も返してしまうと、肉汁と一緒に旨みが逃げ出してしまうんです」
雪歩「牛さんの尊い命を犠牲にするんですから、出来る限り美味しく食べてあげないとダメです」
雪歩「……あ、そろそろひっくり返しますねっ」ペロロン
翔太「もうやだぁ!帰りたいよ!」
P「馬鹿!落ち着け!」
雪歩「は、早く返さないとコゲちゃいますぅ!」
冬馬「お、おう……」
北斗「……」モグモグ
翔太「あ、僕ジュース……冬馬君いる?」
冬馬「俺まだ入ってるから……」
雪歩「美味しいですねプロデューサー!来てよかったですぅ!」
P「そ、そうか……よかったよ」
雪歩「……」ジワッ
P「た、楽しいなぁ!雪歩とこれてよかったよ!最高!」
雪歩「はいぃ!」
黒井「……では帰るか」
冬馬「萩原さんの分俺達が出すんだよな」
雪歩「え、そ、そんなの悪いです!私もちゃんと払いますから……」
P「あ、いいよ。今日は俺が奢るよ。マジで」
北斗「じゃぁ5人で割り勘にしときましょう」
P「悪いな……」
翔太「お肉は美味しかったから気にしないでっ」
雪歩「あ、ありがとうございますぅ……」
黒井「ウィ。夜道は危険だからな」
雪歩「そ、それでは皆さん!今日はありがとうございました!」
冬馬「あ、あぁ」
北斗「焼肉、美味しかったよ雪歩さん」
翔太「ちょっと寿命縮むくらい美味しかったよっ」
P「明日も早いから家に帰ったらゆっくり休んでくれ」
雪歩「はいぃ……その、プロデューサー、また誘ってくださいね!」
P「は、はい……」
雪歩「それでは失礼しますぅ!」
P「すまん……本当にすまん……」
冬馬「何食ったか覚えてねーよ……」
P「いつもはあんな感じじゃないんだ。ほんわかしてて、おっとりしてて」
P「なんていうか、庇護欲を誘う子なんだよ」
北斗「俺も彼女とは何度か会ってますが……」
翔太「あんなの初めてだったね……」
黒井「恐らく萩原雪歩さんは焼肉奉行なのだろう」
翔太「焼肉奉行?」
P「鍋に材料を投入するときに独自ルールを持ってる人ですよね」
黒井「ウィ。恐らく彼女はそれの亜種だ」
北斗「だから焼肉奉行ですか……」
翔太「普段は優しいから余計に怖かったね」
冬馬「社長泡吹いてたぜ」
黒井「ば、馬鹿を言うな!そんな痴態は晒していない!」
P「はぁ……雪歩にも悪いことしちゃったな……」
冬馬「なんでだよ。俺達が完全に被害者じゃねーか」
P「だってこれ雪歩のイメージダウンにしかなってないじゃないか」
P「普段は水が減ったら注いでくれて、醤油が欲しいと思ったら取ってくれる子なんだよ」
冬馬「バーベキューとかもやべぇのかな」
北斗「それは大丈夫とは思うが……」
P「なんか埋め合わせ考えないとな……」
翔太「そういえばライダーの強い弱い話はどうなったの?」
北斗「RXが最強でいいさ」
P「どっちでもいいよ……今日は疲れた」
黒井「では解散にしよう。気をつけて帰れよ」
冬馬「お疲れ、またなプロデューサー」
P「あぁ、またな」
翔太「さよならー」
北斗「チャオ☆」
P「おはようございます」
小鳥「おはようございます。あれ?なんだか元気ないですね」
P「ちょっと色々ありまして……」
伊織「雪歩と食事に行って!」
真 「色々あって!」
美希「つ、疲れたって!」
春香「どういうことなんですか!?」
P「その前にひとつ聞きたいんだが、皆は雪歩と焼肉行ったことあるか?」
千早「もうその話はやめましょう」
真美「ヤキニクダァーッシュ!」
響 「今日もファイトだぞー!」
P「あ、おい」
雪歩「おはようございますプロデューサー!」
雪歩「お疲れ様でしたっ私すごく楽しかったですぅ!」
やよい「雪歩さんつやつやしてますね!」
雪歩「うん!昨日はね、プロデューサー達と焼肉食べてきたんだよっ」
やよい「はわっ!怖いですー!」タッタッタッ
P「……」
P(雪歩も可哀想だな……望んで奉行になった訳ではないだろうに)
P「……よし!俺がなんとかしてやる!」
雪歩「ど、どうしたんですか?」
P「雪歩!焼肉はどれくらい好きだ!」
雪歩「ま、毎日食べても大丈夫なくらいですけど……」
P「じゃあ今日もやるぞ!久しぶりの秘密特訓だ!」
雪歩「えぇ!?」
小鳥「もう皆レッスンに行っちゃいましたよ」
P「なんて逃げ足の速い連中だ……」
P「……小鳥さんは」
小鳥「流石に朝から焼肉は色々と不安な面がありまして……てへへ」
P「ですよね」
P「仕方ない……助っ人を呼ぶか」
小鳥「助っ人ですか?」
P「俺の戦友達です。きっと力になってくれるはず」
雪歩「え、えっと……」
P「心配するな雪歩。俺達が必ず平民に戻してやるからな!」
P「ということで今日は仕事休みますね」
小鳥「えっ」
P「それじゃ行ってきます!雪歩はここで待ってろ!」
黒井「無理だ」
P「なんでですか!俺と黒井社長の仲じゃないですか!」
黒井「馬鹿か貴様は!昨日の今日で何を言い出すのだ!」
P「くっ……冬馬!」
冬馬「悪いな。社長がNOって言うならNOだ」
P「北斗!」
北斗「すみません」
P「翔太……」
翔太「ごめんねプロデューサーさん」
P「……わかったよ」
P「俺一人で雪歩を更正させてやる!もう誰にも頼らない!」ダッ
冬馬「行っちまったよ……」
高木「あ、君!急に休むなんてどうしたんだね?」
P「すまん雪歩……俺と二人で食事になりそうだがいいか?」
雪歩「は、はい!むしろ望むところというか……その、フニョフニョ」
P「?まぁいい。それじゃ買出し行くからついてきてくれ」
雪歩「お店じゃないんですか?」
P「さすがに午前中からは開いてないからな……匂いは諦めて俺の家でやるぞ」
雪歩「プ、プロデューサーのお家でですか!?」
P「やっぱまずかったか?」
雪歩「い、いえ!どんとこいですぅ!」
P「いい返事だ!それじゃスーパー行くぞ!あ、社長お疲れ様でした!」
高木「君ぃ……」
小鳥「行ってしまいましたね……」
P「あ、野菜とかホルモンもいるなら買うけど」
雪歩「と、特訓ですし、お肉だけで大丈夫と思いますけど……」
P「そうか……とりあえず肉5キロとあとはウーロン茶を持てるだけ買おう」
雪歩「はい!」
P「あ、すみません肉もっと買いたいんですけど……はい、5キロほど」
雪歩「な、なんだか夫婦みたいですね……」
P「肉5キロと茶だけ買う若い夫婦なんて異常だけどな……」
雪歩「はぅ」
雪歩「す、すみません……やっぱり私が半分出したほうが」
P「いや、いいんだ。これは俺が考えた秘密特訓なんだからな」
P「俺が全て責任取るよ!」
責任取るよ……責任取るよ……責任取るよ……結婚しよう……
雪歩「は、はい……不束者ですがよろしくお願いしますぅ!」
P(焼肉のことになるとやっぱり気合入るんだな……)
雪歩「お、お邪魔しますぅ……」
P「はは、そう遠慮するなよ。自分の家だと思ってくつろいでくれ」
雪歩「じ、自分のですか!?は、恥ずかしい……」
P「よし、それじゃ今回の特訓の趣旨を説明する前に」
雪歩「そういえば聞いてませんでした……」
P「雪歩は焼肉食べてるときの自分ってどんな感じだと思う?」
雪歩「え、ふ、普通と思いますぅ」
P「ビデオカメラを設置してその前で焼肉するんだ……っと、ここでいいな」
雪歩「それが秘密特訓になるんですか?」
P「あぁ、皆と団結していく上で避けては通れない道なんだ。理解してくれ」
雪歩「プロデューサーがそこまで言うなら……」
P「じゃぁ始めるぞ!焼肉特訓の始まりだ!」
雪歩「は、はい!頑張りますね!」
P「あぁ!目指せ平民だ!」
P「さーて網置いたしコンロ点けた!肉置くぞ!」
雪歩「ま、待ってください!まだ網が温まって……」
P「俺は今すぐ肉が食いたいんだ!そぉれ!ほいほいほい!」
雪歩「あぁああああ!!な、何するんですかぁ!プロデューサー!!」
P「よーし!ひっくり返すかぁ!」
雪歩「だ、だめですぅ!!」
P「なんでさ」
雪歩「お肉は何回もひっくり返したら旨みや肉汁が……」
P「そんなの関係ねぇ!俺はひっくり返す!」ペロリン
雪歩「!!」
P「あれ?あんまり焼けてないな。戻しとこっと」ペロロン
雪歩「ちょっと正座しろ!!!」
P「えっ」
雪歩「わかりましたか?プロデューサー」
P「……」
雪歩「わかったか聞いてるんですぅ!」ドン!
P「は、はい!」
雪歩「……それじゃ、続きしましょう!」ニコニコ
P「ここだ!雪歩ストップ!ちょっと休憩だ!」
雪歩「え?」
P「言っただろ?特訓だって。まず雪歩の現状を見せてやるよ」
雪歩「?は、はい……」
雪歩「え……」
ビデオ《ガミガミガミガミ!》
ビデオ《はい……すみません……おっしゃる通りで……》
ビデオ《謝罪よりなぜこんなことをしたのか教えてください!》
ビデオ《すみません……すみません……》
雪歩「な、なにこれ……私……?」
P「やっぱり自覚が無かったんだな」
雪歩「プ、プロデューサー?」
P「雪歩はな……焼肉奉行なんだよ」
雪歩「ぶ、奉行ですか?」
P「焼肉をした次の日、友達がよそよそしかったりしないか?」
雪歩「そ、そういえば……真ちゃんと行った次の日なぜか謝られました……」
P「お前は肉を見ると自分の思った通りにしたくなるんだ」
雪歩「そんな……私そんなこと……」
P「信じられないのも無理は無い。だけど実際そうなんだ」
P「俺や黒井社長達も昨日ビデオのような目にあったんだよ」
雪歩「う、うそ……」
P「わかったか?これが今のお前なんだ」
雪歩「……」ジワ
P「え、お、おい」
雪歩「私……今までそんなことしてたなんて……」ポロポロ
雪歩「え……」
P「俺が必ずお前を治療してやる!そして皆で一緒に焼肉を食べよう!」
雪歩「ぷろでゅうさぁ……」ポロポロ
P「わっおいだから泣くなって……あぁもう」ナデナデ
雪歩「……」
P「落ち着いたか?」
雪歩「ぐす……はい」
P「焼肉食えそうか?」
雪歩「……はい」
P「それじゃ特訓再開だ。さっきはかなり強引に怒らせたが」
P「次からはジワジワいくからな。怒りそうになったら俺が止める」
P「雪歩はひたすら焼いた肉を食べてくれ」
雪歩「わ、わかりました!」
P「……」チラッ
雪歩「……」ジーッ
P「よし、ひっくりかえ……」
雪歩「」ガタッ
P「さない!」スカッ
雪歩「!……あ」
P「どうだ雪歩、さっきまでの記憶はあるか?」
雪歩「は、はい……プロデューサーの手をずっと見てて……」
雪歩「お肉にお箸が伸びた瞬間、頭がカァって熱くなって……」
P(こえぇ……)
P「ま、まあ自分を認識できただけ進歩したな!この調子でいこう!」
雪歩「はいぃ!」
P「肉、なくなっちゃったな……」
雪歩「はい……」
雪歩「やっぱり私には無理なんですよ……」
P「雪歩……」
雪歩「これからは一人寂しく焼肉ランチを……」
P「馬鹿、そんなこと言うんじゃない」
雪歩「で、でも……もう……」
P「5キロ全部食べてもダメだとは想定外だった……」
ピンポーン
P「……居留守使うわけにもいかないか……ちょっと出てくる」
雪歩「……」
P「はーい」
ガチャッ
冬馬「よう」
P「と、冬馬?どうしたんだよお前」
北斗「俺達もいますよ」
翔太「お肉いっぱい買って来たよ!」
北斗「朝から焼肉屋なんて普通は開店してないでしょう」
冬馬「となると、765プロかあんたの家の二択になったわけだ」
翔太「実は最初事務所に行ったんだけどね……へへっ」
冬馬「あんたが珍しく俺達を頼ったんだ。応えないわけにはいかねぇよな」
北斗「普段社長が世話になってますからね」
翔太「ちなみにクロちゃんは、あの後トイレに引き篭って脱水症状で病院に運ばれたよ」
冬馬「無理に肉食いすぎて腹壊してたんだとさ……金だけ渡して倒れちまった」
P「そ、そうだったのか……皆ありがとう。恩に着るよ」
冬馬「へっ、よせよ」
北斗「俺達は義兄弟じゃないですか」
P「……よし!今度こそ雪歩を治療するぞ!」
冬馬「邪魔するぜ。俺達も協力しにきた」
北斗「昨日は邪険にしてごめんね、雪歩ちゃん」
翔太「今日は一日付き合っちゃうよ!」
雪歩「あ、あの……」
P「皆も手伝ってくれるそうだ。肉だって、ほら」ガサッ
雪歩「わっ、す、すごい……スーパーじゃなくてお肉屋さんのお肉だなんて……!」
冬馬「おっさんテンパって財布ごと渡してきたからな。好きに使ってやったのさ」
P「恐ろしい奴……」
北斗「でもこれだけあれば大丈夫でしょう」
P「あぁ、用意した5キロに加えて、さらに10キロあるんだ。十分なはずだ」
P「いくぞ雪歩!今日でお前を奉行職から引き摺り下ろしてやる!」
冬馬「俺達が本気出したらこれくらい楽勝、だぜ!」
P「止まれ!雪歩、そこで我慢するんだ」
雪歩「うぅ……」
北斗「逆に考えるんだ。ひっくり返しちゃってもいいさって考えるんだ」
雪歩「う、あぁぁああああ!!!」
翔太「うわぁ!暴走しちゃったよ!」
ビデオ《ちょっと正座しろ!!!》
雪歩「!」ビクッ
冬馬「危ねぇ……間一髪だったな」
翔太「冬馬君ナイス!」
雪歩「あ、みんな……私、また」
P「ちょっと我慢できたじゃないか!気を取り直して次いこう!」
雪歩「うぅ……白ごはんが食べたいですぅ……焼肉といえば白いご飯……」
冬馬「ダメだ。今は焼肉とカップラーメンしかないぜ」
雪歩「や、焼肉にラーメンなんて……!」
P「雪歩!まだだ!まだ慌てるような時間じゃない!」
雪歩「ぐっ……はっはぁっ……!」
北斗「大丈夫。落ち着いて一本いこう」
翔太「お茶じゃなくて抹茶オレ持って来たよ!さぁ飲んで!」
雪歩「うぐぐ……!」コクコク
P「そうだ……怒りを静めるんだ!明鏡止水だ!」
P「よーし肉置いたけどすぐひっくり返しちゃうぞ!」ペロン
雪歩「っ!」
冬馬「なんとなく気に入らないから俺がもう一度めくるぜ!」ペロロン
雪歩「ぅ……」
北斗「雪歩ちゃん、さっき網に肉が引っ付いて千切れちゃったよ」
雪歩「き、気にしないで!」
翔太「ごめーん雪歩さん!白ごはんと間違えて炒った豆持ってきちゃった!」
雪歩「よ、よくあるよ……!」ポリポリ
冬馬「長かったな」ペロロン
北斗「そうだな……」ペロリン
翔太「雪歩さんよく食べられるね」ペロリンチョ
雪歩「ふふ、皆が応援してくれるから」ペロリーン
P「あ、そろそろ焼けたか?」
冬馬「ほら、食えよ萩原」
雪歩「はい。頂きます」
雪歩「……」モグモグ
P「……」 冬馬「……」
北斗「……」 翔太「……」
雪歩「……」ゴクン
雪歩「ふぅ……ご馳走様でした」
翔太「僕達、勝ったんだよね……?」
北斗「あぁ、文句なしだ」
冬馬「へっ俺達が集まればこんなもだぜ!」
雪歩「うぅ……みんな……」
P「雪歩、おめでとう!」
北斗「おめでとう!」
冬馬「おめでとさん」
翔太「おめでとう!」
雪歩「……」ニコッ
雪歩「苦しい、ですぅ……」バタッ
P「え、雪歩?……雪歩ォオオオ!!!」
萩原雪歩は重度の過食により胃を悪くし、一週間の療養を余儀なくされた。
体重も重度なことになった。
冬馬「そりゃ15キロも肉食ったら胃もぶっ壊れるよな」
翔太「争いは何も生み出さないんだね……」
北斗「あぁ、雪歩ちゃんはそれを俺達に教えてくれたんだ」
P「皆、胸を張ろう。雪歩が戻ってきた時に笑顔で焼肉を食べるために」
冬馬「あぁ……そうだな」
北斗「行こう。社長が俺達の報告を待ってるはずだ」
冬馬「それじゃ、プロデューサー」
翔太「また会おうね」
P「あぁ、必ず」
P「……雪歩……」
雪歩「やっと退院できた……病院は怖かったなぁ……あれ?」
P「お帰り、雪歩」
雪歩「プロ、デューサー……?どうして病院に……」
P「今日退院って先生から聞いててな、迎えに来たんだ」
雪歩「あ、ありがとうございますぅ……でも、私も事務所に行くのに」
P「あぁ、今日は765プロは休みだよ」
雪歩「え?」
P「雪歩の退院祝いをするんだ。もう皆店で待ってるぞ」
雪歩「え、お店って……もしかして」
P「あぁ……行こう!焼肉屋に!」
美希「やっと来たのーミキ待ちくたびれちゃった」
真美「なんかふっくらしてるNE!」
真 「雪歩!」
雪歩「真ちゃん……心配かけてごめんね」
真 「いいんだよ。話は全部プロデューサーから聞いたんだ」
千早「退院祝いもあるけど、一番の目的は別なのよ」
伊織「雪歩……あんたの成長、見せてもらうわよ」
雪歩「……うん」
高木「それでは、萩原君!よく戻ってきてくれたね!」
高木「病み上がりでこんな場所はどうかと思 小鳥「それじゃ皆グラス持ってー!」
律子「雪歩!退院おめでとう!」
あずさ「おめでとう雪歩ちゃん!かんぱーい!」
雪歩「はい……!」
千早「高槻さん、今日は何でも好きなものから食べていいのよ」
やよい「え、で、でも……」チラッ
雪歩「私は大丈夫だよ、やよいちゃん」
やよい「じゃ、じゃあ、この美味しそうなお肉から食べたいなーって……」
律子「ロ、ロースね……!」
やよい「……」ソーッ
雪歩「ふふ」ニコニコ
伊織「す、すごい……!あの雪歩が!」
響 「ビビンバ頼んだら凄い顔になってた雪歩が!」
小鳥「焼き加減チラ見したら床ドンしてた雪歩ちゃんが!」」
春香「最初に塩系を焼かなくても何も言わないなんて……!」
美希「なんて……」チラッ
雪歩「あ、やよいちゃん、ドリンク取ってくるよ」
美希「おぉ……なの!」
響 「よーっし!食べるぞー!」
貴音「私、一度てーるすーぷなるものを食してみたかったのです」
小鳥「飲みましょう!プロデューサーさん!あずささん!社長!飲んじゃいましょう!」
あずさ「はいっ!」
高木「今日は記念日だね君ぃ!」
P「黒井社長、冬馬、北斗、翔太……終わったよ」
黒井「来たか」
P「お疲れ様でーす」
翔太「雪歩さん!退院おめでとうっ!」
北斗「あれから調子はどうだい?」
雪歩「皆さん……はい、無事に良くなって、今では週に1回焼肉食べてますぅ!」
冬馬「無事に完治できて何よりだぜ」
黒井「ウィ。では始めるぞ」
北斗「完治した雪歩ちゃんと」
P「俺達のがんばりと!」
翔太「クロちゃんの退院を祝して!」
冬馬「乾杯、だぜ!」
雪歩「か、かんぱーい!」
黒井「さすがに当分肉はいらん……」
雪歩「す、すみませんでした……」
冬馬「気にすんなよ。社長が歳なのが原因なんだ」
北斗「そうそう、若い俺達には想像もできないさ」
黒井「おい!失礼なことを言うんじゃない!」
翔太「あ、僕ソバ飯頼んでいい?」
P「カレイのから揚げ頼もうかな」
雪歩「く、黒井社長、ビールお注ぎしますぅ」
黒井「ウィ。いい心がけだ」
雪歩「あ、ありがとうございます……」
翔太「また誘ってもいいって言ってたじゃん」
黒井「あんなもの社交辞令だ。あの後私は一晩中トイレにいたんだぞ」
P「まぁまぁ、雪歩だって好きでああなったんじゃないんですよ」
北斗「普段の雪歩ちゃんからは想像できませんでしたよ」
雪歩「はぅ……」
翔太「でも本当に治ってよかったね!」
雪歩「うん、翔太君もありがとう」
北斗「そういえば男性恐怖症も克服したんですか?」
P「俺とジュピター限定で大丈夫らしい。きっと怒りが恐怖心を超えたんだな」
冬馬「恐ろしい女だぜ……」
黒井「ん?このセレブな私が含まれてないようだが」
P「きっとあの場にいなかったからでしょうね……」
黒井「ウィ……」
北斗「ん?あぁ、ありがとう雪歩ちゃん」
P「な?な?欲しいと思った料理とかもすぐ取り分けてくれるんだ」
P「すごいだろ?うちの雪歩は」ドヤァ
冬馬「すげぇ……幼馴染キャラだぜ」
翔太「じゃぁ僕の今ほしいものわかる?」
雪歩「ふふ、はい、卵焼き」
翔太「すごい!冬馬君と交換してよプロデューサーさん!」
冬馬「なんてこと言いやがる!」
P「やらんぞぉ!雪歩は俺のものなんだ!他の誰にもやらん!」
雪歩「そうですよっ私はプロデューサーのものなんですから!」
黒井「ちっ……酒が入ったらこれだ……帰りたくなってきたな」
北斗「いいじゃないですか、俺達も酔っちゃいましょう」
冬馬「萩原も素面のくせにテンションたけーな……やっぱ男だけのほうが気楽だぜ」
おわり
雪歩にはこうなってほしくなかったので更正してもらった。雪歩可愛い。
お疲れ様でした
雪歩かわええ
次も楽しみに待ってる
今後も期待してます
Entry ⇒ 2012.06.30 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
淡「宮永先輩、抱いてください」 照「しつこい」
照「『それくらい』じゃないし、ダメに決まってます」
淡「……あの、抱っこのほうです」
照「……紛らわしい」
淡「もしかして宮永先輩、別の方を想像しちゃいました? きゃー」
照「……してない」
淡「自分で『紛らわしい』って言っちゃったじゃないですか。 白状したも同然ですよ」
淡「先輩ったら耳年増ですね。 本の影響ですか?そうですか?」
照「うるさい」
淡「抱っこしてくれれば黙ります」
照「……はい」ポンポン
淡「嬉しい、ありがとうございます。 愛してます」
照「静かに」
淡「そういう約束でしたね」
照「足動かさない。 不安定」
淡「私じゃなくて私の足に言ってください。 嬉しくて勝手に動いちゃうんですよね」パタパタ
照「子供のやること」
淡「子供の落ち着かせ方、わかりますか?」パタパタ
照「……これでいい?」ギュッ
淡「……合ってます。 宮永先輩の腕の中は安心します……」
淡「ただ、もっと強くてもいいくらい。 私の意思では逃げられなくなるくらい、締め付けてほしいです」
照「逃げるの?」ギュウ
淡「いえ、逆に追いかける側でしょうね」パタパタ
照「とりあえず、やったんだから足止めて」
淡「ごめんなさい、嬉しすぎて無意識にやってました」
照「さっきのはわざと?」
淡「そう言われると、違いますけども」
照「ああ」
淡「えへへ。 マッサージチェアみたいです」
照「人を椅子扱いするな」
淡「だって先輩、こう背中がくっついてると、心臓の音が伝わってくるんですもん」
淡「温泉とかにありますよね。 先輩の上のほうが、比べ物にならないくらい気持ちいいですけど」
照「……そ」
淡「ドキドキしてるのが丸わかりなんですよ。 先輩にもう少し胸があったら、まだ誤魔化しが利いたかも」
照「言うな」
淡「まぁ、どの道顔を見ればバレバレなんですが」
照「……淡も大概だ」
淡「そうですね、私もです。 確かめますか?」
照「……いい」
淡「あらら」
淡「いえ、全く。 どれほどやっても、愛情を表現し切れる気がしません」
照「受け皿から溢れそうなんだが」
淡「溢れようと捨てられようと構いませんよ。 一度宮永先輩のところに渡ったのなら」
照「……」
淡「それに、私がこうなったのも、全部宮永先輩のせいですからね」
淡「めちゃくちゃなファーストキスをしてくれた記憶、未だに脳裏にくっついてます」
照「……お前がいいと言ったからだ」
淡「そうですね、おかげ様で不安はなくなりました。 やっぱり、宮永先輩はブレーキをかけてくれました」
淡「私は世界一幸せだと理解した瞬間です。 大好きです」
照「……私も淡といる時は、自分が世界一幸せだと思ってるから」
淡「……えへへ、じゃあ、1番は宮永先輩に譲りましょうか」
照「反省している」
淡「反省する必要はありませんよ。 少しクセになりましたし、いつでも受け入れますからね」
照「……自分を大事にしろって」
淡「するようにはしてます、じゃないと宮永先輩と一緒にいられないので。 その上で、です」
照「……どちらにしろ、そうそうは無理」
淡「なんでですか」
照「淡は純情すぎだ。 自分から誘うくせに毎回のぼせるから、後の世話が大変」
淡「そのあたりに野放しにしといて構いません」
照「……しない」
淡「知ってます。 どうあろうと、最終的には優しいですよね、先輩は」
照「それと、私が少し離れようとしただけでも駄々をこねるだろ」
淡「じゃあ、それを克服したら、毎日してくれますか?」
照「極端」
淡「じゃ、今度は口で塞いでみてはどうですか? 一発です。 身体の向き変えましょうか」
照「……一つ、淡のことで気が付いたことがある」
淡「先輩のメモリーに入れてもらえるなんて、嬉しすぎますね。 で、何に気が付いたんですか」
照「淡、お前のほうがチキンだろう。 最初のを含めて3回、全て私から」
照「するフリを何回かされたが、それも今思えば、本当にしないとわかっていたからできていただけかもしれないな」
淡「……先輩のほうからしてくれるようにしないと、成功しないじゃないですか」
淡「もしかして、緊張して自分からキスできなくなったとか? 情けないです」
照「いいよ」
淡「?」
照「確かに、普段はわざとキスしてない部分はある。 でも、今日からは許す」
照「キスでもなんでも、自由にしていい。 何もしないなら、今日はその間読書してるから」
照「早くしないと、他の部員が来るぞ」
淡「……わ、わかりました、とりあえず降ります……」
淡(どうしよう、宮永先輩、本当に読書始めちゃったし……)
淡(私の口から先輩の、口に、キ、キス……)
淡「うわわわ」プシュー
照「……おい、制汗剤って顔にかけるものだったか?」
淡「いや、その……」ゴシゴシ
照「だから制服シワになるって。 ハンカチ使え」
淡「あ、えっと、そうでしたね……はい」
照「それに、そんなに強く拭くと、顔に傷とかつくかもしれない」
淡「そ、それはいやです! 宮永先輩に嫌われちゃいます!」
照「その私は目の前にいるから。 それに嫌いにならない」
淡「え、えっと、あの……」
照「落ち着いて」
照「……」ペラッ
淡(はぁ、宮永先輩の横顔……じゃない、うん、キスしよう。 うん……)
淡(急がなくても、自分のペースで、落ち着いたらでも……)
照「そんなに見られると、私でも痒い。 もしかして、俯いてるとキスしにくい?」
淡「……えっ?」
照「わかった、読書やめる」パタッ
淡(先輩、わかってないです、こっち見過ぎです……私が今すぐしないといけない感じじゃないですか……)
淡「じ、じゃあ、やりますから……あの、膝、座ります……」
照「うん」
淡(宮永先輩……先輩も真っ赤……キス、直接ですよね……? あうわわわ……)グデッ
照「寄りかかってどうしたの? 重い」
淡「はぁ、はぁ……宮永先輩……」ギュッ
照(かわいすぎ)
照「なんで?」
淡「いや、あの、先輩の顔が赤いから……」
照「顔を近づけてる時は、いつもそうだったはず」
淡「……でも今日は、勘弁してあげますから……」
照「……わかった。 読書に戻る」
淡「はい、今退きま……」
照「戻るのは、淡とキスした後だけど」グイッ
淡「え、あの……っ! んぐっ……ぁ……」
照「……んむっ」
淡(あ……あ、先輩、唐突すぎます……頭が……)グラッ
照「……ちょっと」グイッ
淡「うぁっ……」
照「大丈夫……? 淡、また顔赤い。 冷えピタまだ残ってる?」
淡「ぁ……はい、はい……えへへ……」
………
……
淡「ってことがあったんですけど、私はどうすればいいでしょうか」
菫(長い……)
菫「なんで私に聞くんだよ……マジで……」
淡「私と宮永先輩の関係を知っている人が、弘世先輩しかいません」
淡「ちなみにこの前渋谷先輩と亦野先輩にバレそうになりましたが、宮永先輩がギリギリ隠し通してくれたみ
たいです」
菫「いや知らんし……わけわからない……」
菫「もう全員にバラしたほうが早いんじゃ……」
淡「それはダメです!!」
菫「!?」
淡「……あっ、大声出してすみません。 宮永先輩の負担になりそうなことは、藁ほどのものであろうと嫌です」
菫(……後輩の頼みを断れない私も私だけど)
淡「それが、遠回りのストックが切れそうになるくらい言ってるんです」
菫「遠回り?」
淡「はい。 宮永先輩って、なんというか最低限の会話しかしてくれないので、いっぱい言葉を聞くのは苦労するんです」
淡「『今日はいい天気ですね』なんて言ったら、心の中で『で?』とか思われてそうです」
菫「……あぁ、まぁ照はそういうやつだな」
菫「で、大星はどうしたいんだ」
淡「相談している立場でこういうことを言うのは失礼なんですが、私もどうしたいのか、正直よくわかってません」
淡「宮永先輩はあまり言葉にして伝えてくれませんから、よくわからないところが結構あります。 でも本当は、私が私自身をわかってないだけかもしれない、と思って」
菫「それで私に相談したい、と」
淡「はい。 時間を使わせてしまってすみません」
菫「いや、それは気にするな」
菫「私よりも淡のほうが、今の照については詳しいと思うが」
淡「でも、私は間違ってるかもしれませんから……」
菫「間違ってる、ねぇ」
淡「……少し前のこと、覚えていますか?」
菫「……トイレで野垂れ死にみたいなことになってた時か」
淡「はは……まぁ、そうなりますね」
淡「実はあの時、宮永先輩と、喧嘩になりそうになったんです」
菫「それは物騒だな」
淡「と言っても、教師が教え子を諭すような感じでしたけどね。 何らかの意見が食い違っていたわけでもなく、一方的に私が悪かっただけなので」
菫(あんなディープキスは諭すとは言わないだろ)
淡「先輩後輩としてはそれでいいかもしれませんが、恋人同士としてはあまりに陳腐に思えたんです」
菫「……大星の信念もあるだろうが、現実の話をすれば、大星は照より年下だ」
菫「照が拒否するならまた別問題だが、あいつは大星の未熟さを含めて受け入れてるはずだと思うし、寄っかかればいいと思うけどな」
淡「でも負担はかけたくないです」
淡「……その時の一件で、当時私が持っていた『宮永先輩がわからない』ことに対しての不安は、宮永先輩本人が消してくれました」
菫「でも今度は『自分がわからない』と」
淡「はい」
菫「わかるのは『宮永照が好き』ということだけ、ねぇ」
淡「はい……」
菫「深く考えすぎじゃないのか。 少なくとも、照のほうはああ見えて自然体だろ。 大星も自然体で接してればいいと思うが」
淡「宮永先輩といる時は、一緒にいたい一心で接してます。 でも、それだけではダメな気がして」
菫「……はぁ、大星。 お前、照にどうやって甘えていいかわからないんだろ」
淡「……うぇぇ……」
菫「ちょ、泣くなって……。 そうだな、気分転換に旅行でも行ったらいいんじゃないか」
淡「……ですか」
菫「丸1日一緒に入れば、嫌でも関係は縮まるだろ」
淡「……そういえば、そういうのしたことありませんね。 学校と家だけの関係でした」
菫「私も詳しいわけじゃないから、的外れな提案かもしれないが……」
菫「外部からこういうのもなんだが、あんまり自分に負担をかけるなよ。 元も子もないし、部としても困る」
淡「わかりました、頭に入れておきます」
淡「……正直、弘世先輩に嫉妬してました」
菫「照のことでか?」
淡「はい。 私が宮永先輩に最初に告白したのも随分前のことなので、嫉妬したのもまた前のことですが」
菫「最初に、って、何回告白したんだよ……」
淡「24回です」
菫(即答……)
淡「でも、弘世先輩に相談して、随分と気持ちが軽くなりました。 感謝してます、自分が恥ずかしいです……」
菫「誰だってそんなことはある。 別に気にするな」
淡「宮永先輩のことを好きになれたのも嬉しいですが、弘世先輩の後輩になれたのも、嬉しいです」
菫「……そういうのは照に言ってやれ」
淡(……そうだよね、私と宮永先輩は恋人同士なんだから、もう少し自信持っていいよね)
淡(少なくとも宮永先輩は選んでくれた……ですよね)
照「え? 何が『というわけで』なの?」
淡「行きたいです」
照「話が見えてこない……どこに?」
淡「宮永先輩と一緒なら、どこだって楽しいですよ」
照「じゃあ部室」
淡「渋る理由はないでしょう。 文学少女の先輩は、外出たら溶けちゃいますかね」
照「……冗談。 それに、どこにでもいいって言っても、それはただ無計画なだけ」
淡「無難に温泉とかですかね? 私、こういうのしたことないのでわからないんですが」
照「私はもっとわからないって」
淡「でも、行きたいところくらいはありますよね?」
照「ない。 私も淡とならどこでも楽しい」
淡「……っ」
照「……突っ伏してないで。 どこ行くの」
淡「……お、温泉で」
淡「……少し前から言うべきでした。 迷惑でしたか?」
照「違う。 心配」
淡「えっ?」
照「いつも唐突だけど、もっと唐突な時は、淡は大体何かあった」
淡「……えへへ、嬉しすぎますってば」
照「喜んでないで、何かあったの?」
淡「心配させてすみません。 けど、今回は何もないです」
淡「強いて言えば、宮永先輩とそういうことしてないかな、と。 本音を言えば、学校と言わず1日中先輩といたんですから」
照「……現実的に無理。 ただ、そういうのは言えばいいと思う」
淡「もうちょっと格好良い言葉が欲しかったですね」
照「無理なものは仕方がない」
淡「そうですね。 そう言っちゃうところも好きです」
照「淡、手動かしすぎ」
淡「おっと、すみません。 明日から宮永先輩を1日自由にできると思うと、テンションがバカみたいにあがるもので」
淡「明日遅刻したら許しませんよ」
照「淡のほうが遅刻しそうだ」
淡「なるほど、一理ありますね」
照「一理どころじゃない」
淡「実際、このテンションの行き場がないんですよねー。 寝られるか不安です。 というわけで先輩、吸収してくれます?」
照「……はいはい、来ていいから」ギュッ
淡「……んんー! 先輩に抱きしめられてると、照れるけど、それよりも落ち着きます」
淡「深呼吸させてください。 すぅー」
照「犬みたいでみっともないぞ」
淡「わん」
照「おはよう。 普段通りだ」
淡「やっぱりメンタル強いですね。 私なんか全然寝られませんでした」
淡「正直眠いです。 おんぶしてください」
照「無理。 私をなんだと思ってるんだ」
淡「私の恋人ですかね」ギュッ
照「ちょっ、駅の中で抱きつくな」
淡「せんぱーい」グイグイ
照「やめろやめろ、動けない。 新幹線乗った後にして」
淡「……後ならいいんですか! 眠気飛びました、さっさと行きましょう!」
照(単純……)
照「眠気飛んだんじゃないのか?」
淡「先輩といると安心して、また眠くなってきました」
照「起こしてやるから寝ろ」
淡「はい。 おやすみなさい」
淡「……おはようござ……あれ? 先輩?」
照「……」
淡「寝てる……もしかして、先輩も寝不足だったんでしょうか? だと嬉しいです」
淡「写メとっとこ」パシャッ
淡「誰も見てないし……い、今なら、キス、とか……」
淡「……うあぁ、やっぱ無理……」
淡「……ほっぺにしよう、うん……ちゅっ」
淡「あ、おはようございます」
照「……寝てたか、悪い」
淡「はい。 ベストショットです」パシャッ
淡「寝起きの先輩ゲット」
照「何やってるんだ、貸して」
淡「だめー」ヒョイッ
照「貸せ」グイッ
淡「うわわっ……急に引き寄せないでください……んっ」スルッ
淡「……って、携帯取らないでくださいよ!」
照「何枚あるんだよこれ……削除」
淡「あの……先輩の寝顔なんて貴重なのに……うぇっ」
照「ちょ、待って。 消してない消してない」
淡「! よ、よかったぁ」
照「寝てたからじゃないのか」
淡「全く、そういう冷めた答えはやめましょうよ」
照「そう言われても」
淡「まぁ、何度も言いますが、そういうところも大好きですよ」
照「何度も聞いた」
淡「じゃあ、これはもういいですね。 他に先輩に覚えてほしいこと、選んでおきます」
淡「しつこく言うので、覚悟しておいてくださいね」
照「……そんなことしなくても、簡単に覚えられると思うけど」
淡「……えへへ」
照「仮に私がハイテンションな性格になったとして、淡の好きな部分が一つなくなることになるのか?」
淡「そんなわけありません。 先輩に大しての気持ちを衰えさせる気はありませんし、自然現象的に衰えもしないでしょう」
淡「片思いの時に、不本意ながら何度も試しましたけどね。 無理でした」
照「……そうか」
照「寝てたのに?」
淡「乗り物に長時間乗った後って、それだけで疲れたりしませんか?」
照「さあな」
淡「まぁ、そういうと思いましたけどね。 柄じゃありませんし」
淡「すぐに旅館に行ってもいいですが、少しそのあたりぶらぶらしませんか」
照「任せる」
淡「またそうやって……」
照「淡が『一緒にいたい』って言って来たんだから、淡が一番望む形で構わない」
淡「嬉しいですけど、ただし自己責任。 その言葉、覚えておいてくださいね」
照「……自分からキスもできないクセに、何言ってるんだ」グイッ
淡「あっ……あの、ま、待って!」
照「……しないよ、イチゴみたい。 ……下向きながら歩かない、危ない」
淡「……人の寿命縮めたくせに」
淡「私もです。 あそこでたこ焼きでも食べましょうか」
淡「先輩、正座してないで足伸ばしてください」
照「このほうが落ち着くんだが……こうか?」
淡「ナイスです。 よいしょ」スポッ
淡「ふぅ。 こうしてると、身体の疲れが抜けていきます」
照「……本当にそういうの好きだな」
淡「こういうが好きというより、宮永先輩が好きです」
淡「座椅子があってよかったですね。 さすがに姿勢保ったまま支えるのは重たいでしょうから」
照「……たこ焼き、運ばれてくる前に退けてね」
淡「先輩は冬場のこたつから素早く出られますか? 私は無理です」
照「人に見られたりする方は、ちゃんと耐性あるんだな……」
淡「ですねぇ。 宮永先輩にはありませんからね、全くもう」
照「あんまりからかうと、耐性ないほうをやるぞ」
淡「……えっと、今はその、勘弁というか……」
照「……ふぅ」
淡「どうしたんですか。 空気抜けた風船みたい」
淡「……あぁ。 さっきの店員の人、園児のカップルを見るような目でしたよ」
照「思い出させるな……」
淡「ふふっ、とりあえず、食べさせてください。 あーん」
照「はいはい」スッ
淡「待ってください、焼きたてのたこ焼きは凶器なんですよ。 冷ましてほしいです」
淡「外側だけじゃなくて、一回噛んで内側もお願いします」
照「注文が多すぎる、相変わらず子供みたい」
照「……なぁ、腰に手回してるあたり、自分で手使う気ないだろ」
淡「はい、全く」
照「……わかったよ。 服に落として汚れても知らないから」
淡「先輩がつけてくれるなら、望むところです」
照「ふー」
淡「あーん……って、あれ?」
照「うん、おいしい」パクッ
淡「……ちょっと、先輩こそ子供みたいなことしないでくださいよ。 それ超久しぶりにやられました」
照「1個ずつ冷ましてると時間かかる。 ふー」
淡「私は時間かかったほうが嬉しいです。 ま、後半は注意深く冷まさなくて平気かと」
照「できた」スッ
淡「あーん……確かに美味しいです。 冷ますために、一回先輩の歯型がついたんですよね、これ」
照「変なこと言わない……」
淡「わかっててお願いしたんですけどね」
照「それもわかってる」
淡「……えへへ。 冷たい宮永先輩の表面、少しずつ暖かくなってくれてますね」
照「そういう性格なだけ。 大して冷たくない」
淡「私が一番知ってますよ。 他に言葉が思い浮かばなかっただけです」
照「淡、口拭いて。 ソースがべたべた付いてて行儀悪い」
淡「おかしいですね。 先輩のコントロールが下手だったんでしょうか?」
照「淡はずっとこんな調子だろうから、改善はする。 するが、とりあえず口拭け」
淡「ふいてー」
照「……もうちょっとズレて、拭きにくい」
淡「わかりました。 っと、これでいいですか?」
照「ああ……ぺろっ」
淡「んっ! ……ちょっ、ぁぅ、その……あの……」
照「はい、拭けた。 行こうか」
淡「わ、わかってて、言ってますよね……? ふーっ……と、とりあえず、その烏龍茶飲ませてください……」
照「じゃ、口開けて」
淡「はい……ん」コクコウ
照「口緩くしすぎ、思いっきりこぼれてる。 口舐めただけなのに、そうとう効いてるな」
淡「『だけ』じゃあないですよ……」
淡「……まぁ、なんとか」
照「ウブすぎる。 淡ほどウブな人見たことないぞ」
淡「私のことだけ知っていればいいですよ。 とりあえず、会計済ましちゃいましょ」
淡「……あれ? お財布がない!」
照「これのこと?」
淡「あっ、ありがとうございます……って、なんで手伸ばしてるんですか!」ピョン
照「全然届いてない」ヒョイッ
照「すみません、お会計お願いします」サッ
淡「何で隠すんですか!」
店員「あらあら、仲がよろしいわね」
照「いえ」
淡「先輩、私に払わせてくださいよ!」
照「財布見つけてから言え」
淡「先輩が持ってるじゃないですか!」
淡「……ご馳走様でした。 あの、なんでこんなことしたんですか?」
照「一緒に映画見た時のことを思い出した。 淡、今回絶対『自分が払う』とか言うと思ったし、現に口走っただろ」
淡「私が誘ったことですから、細かいことくらい持つのは普通だと思いますが」
照「ほら、気にしすぎ。 細かくもないし、年上が奢ると言ってくれてるなら、素直に従っておけ」
淡「……負担はかけたくないです」
照「そっちのほうが負担だ」
淡「あっ……ごめんなさい」
照「いい。 私に甘える時は器用なのに、そういうところがすごい不器用」
淡「……そうですね。 ねぇ、先輩?」
照「何?」
淡「好きですよ?」
照「知ってる」
淡「ですよねっ」ギュッ
照「本当にノープランだな……」
淡「まぁまぁ、東京とは違った方面で色々なものがあるんですから、ノープランでも問題ないでしょう」
淡「神社にでもいきますか?」
照「構わないが、なぜ神社? どこか目当ての場所でもあるのか」
淡「いいえ。 有名どころはこのあたりはたくさんありますが、一番の理由はゆっくりしてても誰も怒らないからです」
淡「目的地そのものより、先輩と一緒にいること自体が目的ですから」
淡「さすがに、ここまで歩くと疲れますね」
淡「おんぶしてください」
照「だから、無理だって。 私も同じくらい疲れてる」
淡「じゃ、抱きしめてください」
照「わかった。 ……手離してくれないと、腰に回せない」
淡「おっと、そうですね」パッ
照「人が来そうになったら離すぞ」ギュッ
淡「構いませんよ。 あー……疲労が薄まっていきます……」
淡「はい」
照「……淡が離してくれないと、意味がないんだけど」
淡「私は人が来ても離すなんて言ってませんし」
照「……もういいよ、バッチリ見られたから」ギュッ
淡「えへへ」
淡「……いけない。 あまりに心地良くて、先に進むのを忘れてました」
照「3回見られた……」
淡「でも、先輩だって手離しませんでしたよ」
照「私だけ離しても意味ない、どうせ淡は離さないんだから」
淡「これで先輩に耐性がついてくれればいいんですけどね」
照「人のこと言えない。 手」
淡「はい」ギュッ
淡「じゃ、行きましょうか」
淡「……」ボー
照「……どうしたの、こっち見て」
淡「えっ? あっ、いや、手合わせてる時の宮永先輩、凛々しくて見とれてました」
照「……そ」
淡「何お願いしました?」
照「言ったらいけないんじゃないの?」
淡「ま、そういう考えもありますね」
照「そういう淡は? ぼーっとしてただけ?」
淡「私の願い事は、もう叶っちゃいましたから」
照「……欲張ればいいのに」
照「……のろのろと歩くから、予想以上に時間がかかったな」
淡「まぁいいじゃないですか。 向かいながら、なんか食べてきましょ」
照「お寿司?」
淡「せっかくなので和食で。 私、こういう高級な寿司屋に来たのは始めてかも」
照「……それはいいけど、背もたれないから、直視されても膝には乗せられない」
淡「本音は?」
照「人が多いから目立つ」
淡「……じゃ、手繋いでください。 下なら見えないでしょう?」
照「……ん」ギュッ
淡「お寿司が片手で食べられるものでよかったですねっ」
照「……私?」
淡「先輩、右手使えないじゃないですか」
照「左手でも食べられるし、そんなことしてたら手を隠してる意味がない」
淡「えー、全くもう」
照「……まぁ、1回くらいなら」
淡「やった!」
淡「ご馳走様でした」
照「……珍しく大人しかった。 逆に怖い」
淡「そうですかね?」
照「淡にしては、な」
淡「私だって、ある程度は考慮しますよ。 もしかして、寂しかったですか?」
照「いや」
淡「相変わらずスパっと言う人ですね」
照「寝っ転がって、みっともない」
淡「……どうぞ?」
照「何が」
淡「……」
照「……相変わらず、自分からはこないんだな」グッ
淡「……っ、ちょっと、体重全部かけないでくださいよ……」
照「そっぽ向かれるとしにくい……」グイッ
淡「うぅ……んっ。 ……あれ? あの」
照「残念」スッ
淡「……なんでやめるんですか、ひどすぎますって!」
照「したかったから自分からすればいい」
淡「……私の口舐めたクセに」
照「ノーカン」
淡「まぁ、わかりましたよ……。 すぐにとはいきませんが……」
照「自分から言ったこと」
淡「ま、先輩もでしょう。 私と大して変わりません」
照「……私は、長時間歩いたから」
淡「そういうのは、せめて顔隠して言わないと。 バレバレですけど」
照「お風呂は?」
淡「まだ」
照「何しに来たのかわからないだろ」
淡「夜中の、人がいない時間がいいです。 目立つのは嫌でしょう?」
照「目立つ前提……」
淡「何されるか、わかったものじゃありませんからね」
照「こっちのセリフ……でもないな」
淡「む」
照「そういう事言うな……。 こうして見ると、結構髪長いな」
淡「短いほうがいいですか? なら、今すぐ切り落とします」
照「……だから、そういう事言うな。 そのままの淡がいい」
淡「……えへへ」
照「洗うから、反対側向いて」
淡「嫌です、このままで」
照「……」
照「洗い方がいまいちわからない」
淡「宮永先輩、髪短いですもんね。 困ってる顔も素敵ですよ?」
照「……正面向きながら洗ってるから洗いにくいのに」
淡「ぎこちなくてもいいので、宮永先輩のペースがいいです」
照「……わかった」
淡「んー、気持ちいい、最高です」
照「……顔近づけられると、手元が狂う」
淡「じゃ、次私の番ですね」
照「またやるのか……」
淡「当たり前です。 まぁ、任せて下さいよ」
淡「あ、こっち向いててくださいね?」
照「……わかったよ」
淡「先輩、お風呂入る前にのぼせそうなんですが」
照「顔近づけてるのはそっち」
淡「……息がかかるほど近いのに。 宮永先輩に余裕が出てきてますね」
照「だって、淡の方からこられないのは知ってるから」
淡「……私からキスできるようになるまで、宮永先輩のほうからきてくれないんですか?」
照「……少なくとも、こんなところでキスしたら大変なことになるだろ」
照「……また洗ってください、とか言う気?」
淡「はい」
照「さすがに身体は自分で洗うって……」
淡「……ばか」
淡「……せんぱーい」ギュッ
照「うわっ! ちょっと……」
淡「……なんなんでしょうか、これ。 かなりやばいです……」
淡「いつもそうですけど、直に抱きついてるとなると、どうにかなっちゃいそうです……」
照「……だろうな」
淡「やっぱり、バレちゃいます?」
照「それだけくっついてたら……まぁ」
淡「でも、もうしばらくはこのままです……」ギュッ
照「……風邪引かない程度にして」
淡「保証はできません」
照「淡が洗い場に長時間いたせい……無駄に冷えた……」
淡「でも、心は本当に温まりました」
淡「明日の昼くらいには出ないといけませんからね。 今のうちに甘えておかないと、損というものでしょう」
照「甘える、ねぇ……」
淡「はいっ。 というわけで、寄りかかってもいいですか?」
照「いいよ」
淡「ありがとうございます」
淡「安心します……行為自体はいつもやってることなのに、いつも以上に火照りませんか?」
照「……うん」
淡「そんなに遠く見てると、知りませんよ?」
照「何が?」
淡「首というのは、動物の一番の弱点なんですから」
照「……首を晒すのは親愛の証」
淡「……えへへ」
照「? ああ」
淡「それ以外にも、甘える時に愛情表現で甘噛みをしてきたりするんです」
照「……」
淡「……」カプッ
照「……っ」
淡「ふふっ」カプッ
照「……ぅ、今のは少し痛かった」
淡「あっ、ごめんなさい……少し喉に当たりましたか」
照「いいよ、気にしてない」
淡「優しいですね。 んー、ごろごろー、とか」
照「……」カプッ
淡「……ぅあっ。 ……あの、私は喉にあたってもいいですよ?」
照「……そ」カプッ
淡「いっ……」
照「人のこと言える?」
淡「言えませんね」
淡「……なんかこうしていると、世界に私たちだけしかいないみたいです」
淡「ずっとこうしていたいですが、残念……。 学生は辛いですね」
照「……いつも今回のようにはいかなくても、休日は一緒にいられる」
照「同じようなことをしたかったら、休日に家に泊りにくればいい」
淡「それじゃあ、毎週になっちゃいますね」
照「いいよ。 ……たまには、淡の家に泊めてくれるなら」
淡「もちろんです」
淡「……いい加減、熱くなってきましたね」
照「出る? 結局、最後まで淡いからはこなかったけど」
照「……」
淡「……ねぇ、宮永先輩。 こっち、向いててください……」
照「……っ」
淡「先輩、好き、です。 目、逸らさないでくださいね……?」
淡「……んっ……ちゅぷっ」
照「んぅ……ぁ……」
淡「ふぁっ……。 もう1回……んぐっ」
照「ぴちゅっ……ん……っ」
淡「……はぁっ。 えへへ……で、できました、ね……」
照「……淡、大丈夫?」
淡「ごめんなさい、立てません……なんか、のぼせて、頭も痛い……」
照「……出ようか。 掴まって」
淡「は、はい……」
………
……
照「ってことがあった」
菫(旅行行ったのは知ってるよ……なんでこいつら私にばかり……)
菫「長い……しかもなんで私……」
照「菫しか知ってる人がいない」
菫「……それで?」
照「淡のスキンシップが更に激しくなった。 どうすればいいかわからない」
菫「私に聞くなよ……」
照「冷たい」
菫「はいはいはいはいはい、この話終わり」
菫「……惚気話もいいが、この後雑誌の取材あるんだぞ? ちゃんとしろよ」
照「わかってる」
淡(先輩の笑顔……綺麗だなぁ……)ボー
記者「ありがとうございます。 で、ぶっちゃけ一番期待してる部員は?」
照「……大星淡ですね」
淡(先輩……またキスしたいなぁ……)ボー
記者「はいっ! とありましたが、宮永照選手に対してどう思ってますか!?」サッ
淡「……ぅえっ!? あ、あの、み、宮永先輩は好きです! ……あっ」
「…………」
亦野「……おぉ」
渋谷「……大胆」ズズ
菫(そろそろやばいなこいつ……)
照「ちょっ……」
淡「……あ、あの、さっきの取り消しで! いや、本音ですけど取り消してください!」
記者「……もう録音しちゃいましたよ?」
おわれ
甘々照淡乙乙
Entry ⇒ 2012.06.30 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
照「清…原…?」
ガヤガヤ
ガヤガヤ
新入部員A(ねえねえ、あれって弘世菫じゃない?)
新入部員B(えっ!?弘世菫ってあの帝央中学の!?)
新入部員A(そうそう、中学麻雀界最強の実績を誇る帝央中学でエースで主将
確か2年の春季大会では全国優勝も果たしてる)
新入部員B(白糸台に入るって噂は聞いたことあったけど本当だったんだ)
新入部員A(何かオーラがあるよね)
新入部員B(オーラっていうか、威圧感…?)
部長「まずは新入生諸君入学おめでとう
そして、我が麻雀部に入部してくれたことを心から歓迎する」
部長「だが、こんな言葉を掛けるのは今日だけだ
2ヶ月後にはもうインターハイの西東京予選が始まる」
部長「皆知っているかとは思うが、我が校はインターハイの全国大会出場を2年連続で逃している
隣の東東京では臨海女子が13年連続で代表になっているのに比べ西東京はまさに激戦区、
どこが勝ち上がってもおかしくない状況だ」
部長「だからこそ使える奴はたとえ1年でも使う、学年は関係ない!
もちろん、特待生も一般入部の者も入ったからには条件は同じだ」
部長「明日から1年はしばらく3軍の中に入ってリーグ戦を行ってもらう
部活といっても地方のインターハイ予選より熾烈だと言われる我が校のリーグ戦だ、心して懸かってほしい」
部長「それでは、明日からの戦いに備えて本日はゆっくり休養をとるように
最後に、君たちが我が校の全国優勝という悲願を果たす大きな力となってくれることを期待している
話は以上だ、解散!」
菫(……)トコトコ
菫(さすが名門の高校麻雀部だな、緊張感が中学の頃とは大違いだ)
菫(…それにしても堅苦しい挨拶だったな、あの部長)
菫(……)トコトコ
菫(…私と気が合うかも)
菫「ん?」
菫(前を歩いてるあいつ、さっき麻雀部の新入生の集まりの中にいたよな)
菫(下向きながら歩いて危なっかしい奴だな、ちょっと声かけてみるか)
菫「おい、そこのホーン生やしてるおま…」
キィイイイイイッッッッ
?「す、すいません…」ペコペコ
菫「おい、大丈夫か?」
照「……!」クルッ
菫(!?)
菫(な、泣いてる…!)
照「泣いてない」
菫「いや、だっておまえその眼…」
照「泣いてない、涙が頬を伝ってないからセーフだ」
菫「セーフって何だよ…」
照「私が今まで住んでたところでは全然平気だった
もっと道は広かったし人通りは少なかったし、そもそもあんな怖いおっさんいなかった」
菫「今まで住んでたところ?」
照「長野。東京に引っ越してきたのはつい2週間ほど前のことだ」
菫「まあ長野だろうとそれはだめだろ」
照「東京怖い」
菫「いや明らかにおまえが悪いから」
照「そんなことより、私に何か用か?」
菫(…そんなことって)
照「人に名前を聞くときはまず自分から名乗るもの」
菫「えっ、おまえ私のこと知らないのか?」
照「なぜ初対面なのに私がおまえのことを知ってるんだ?」
照(何だこいつ…新手の詐欺か何かか…?)
照(ここは東京だしありうる…)
照(だが、そう簡単に引っかかる私ではないぞ!)
照「そうなのか。私は宮永照。
悪いが中学では麻雀部に入ってなかったんだ」
菫「へぇー。麻雀は友達とでもやってたのか?」
照(…友達!)ビクッ
照「まぁ、主に家族とだが…」
菫「家族麻雀か。私は一人っ子だからそういうの憧れるな
ってことは兄弟か姉妹でもいるのか?」
照「……」
照「…まぁ…妹が一人…」フイ
菫(…?)
照「まぁ。家から近くてそれなりに麻雀部が強いって評判のとこなら別にどこでも良かったんだが」
菫「おまえ変わった奴だな。今日の部長の話聞いてただろ?
そんな軽い気持ちで白糸台の麻雀部に入ってくるやつなんてそうそう居ないぞ」
照「そうなのか?よく分からんが」
菫「おっと、私は帰り道こっちだからまた明日な。お互いリーグ戦がんばろう」
菫「せっかく友達になったんだしすぐ辞めたりするなよ、それじゃぁ」
照(……!!!)ドキッ
照「ああ、また明日」
照(…友達)ドキドキ
照(…ふふ)
菫(宮永照か…少し変だが何か面白い奴だったな)
~白糸台高校麻雀部部室~
3軍リーグ戦
照「ツモ」
照「ロン」
菫「ツモ」
照「ロン」
菫「ロン」
照「ツモ」
照「ロン」
菫「ツモ」
菫「ロン」
照「ツモ」
部長「ああ、弘世菫…噂通りの強さだ」
部長「そしてもう一人…宮永照…!」
部長「うちはとんでもない化け物を引き入れてしまったのかもしれん…」
部長「あの二人がいれば本当にいけるかもしれんぞ…全国優勝…!」
菫「おい、待てよ宮永」
照「弘世か、どうしたそんな慌てて」
菫「慌てて、って…昨日帰り道同じだったんだから今日も一緒に帰るだろ普通…
部活終わった瞬間知らん間にいなくなりやがって」ハァハァ
照(……うっ!)
照(…そういうものだったのか)
照「わ、悪い、ちょっと疲れててな」
菫「そんな風には見えなかったが、まぁいい。それより何だおまえの麻雀!」
照「何だって何だ?」
照「私は自分の麻雀を打ってるだけだ」
菫「おまえがいれば本当に全国優勝できるかもしれ…!?」
菫「……」
照「…どうした?」
菫「いや、何でもない…それよりこの後予定とかあるのか?」
照「別に何もないけど?」
菫「それなら今から喫茶店でも寄ってちょっとゆっくりしていかないか?」
照「…弘世」
菫「ん?」
菫「へ?」
照「学校の帰りに寄り道して買い食いなんてそんな不良みたいなマネ私はしない」
菫「お、おま…」
照「そもそも部長も言ってただろ。休養はしっかりとるように、って」
菫(こいつの今までの言動でもしや…いや間違いなくそうだろうとは思っていたが…)
菫「おまえ友達いなかっただろ」
照「!!!!」
照「……」プルプル
照「……」ジワ
菫「……!」
菫「おい、今のは冗談だ!だからそこの喫茶店にでも入って少し落ち着こ、な?」
照「……」コク
照「……」プルプル
菫「宮永もアイスコーヒーでいいか?」
照「……」コク
菫「すみません、アイスコーヒー2つお願いします」
店員「かしこまりましたー」
菫「でもなぁ宮永」
菫「私もあんなこと言って悪かったが、寄り道や買い食いはだめなんて今どき小学校高学年でも言わんぞ」
照「そうなのか…東京のティーンは進んでるんだな…」
菫「いや東京とか関係なく…てかティーンって」
菫「それじゃあ学校終わりとかおまえはどうやって過ごしてたんだ?」
照「ずっと本読んでた、親が早く帰ってきたら家族で麻雀したり」
菫(私も小中と放課後は麻雀漬けでろくに遊んでこなかったが
こいつを見てると自分がすごく青春してたように感じるな)
宮永は今まで部活に入ってなかったんだし高校の麻雀部できっと自然と友達もできるさ」
照「……うん」
照「……それに」
照「……もう一人できたし」
菫「な!?」
照「?」
菫(…こいつ…恥ずかし気もなくいきなり何を…//)
店員「アイスコーヒーの方お持ちいたしましたー」コト
店員「それではごゆっくりどうぞー」ペコ
菫「……」チュー ゴクゴク
照「弘世はコーヒーブラックで飲むのか?」
菫「ああ、甘いのは苦手なんでな」
菫(特に今はな…)
菫「宮永はクールそうにみえて実は甘いのが大好きとみた」
照「…いや、私も甘いのは苦手なんだ」チュー
照「ぶはっ!」ビシャ
照「……」
菫「…別に甘いモノ好きだからって子供っぽいとか思わんから好きに飲め」
照「……うん、そうする」ドバドバ
照「……」チュー ゴクゴク
照「おいしい」ホッコリ
菫(……すごい嬉しそうだ)
照「えっ!」
照「……いいけど」ドキドキ
菫「よし、それなら照も私のこと下の名前で呼んでくれ」
照「いや、それはちょっと…」
菫「何でだ?」
照「…何か恥ずかしいし」モジモジ
菫(くそ…ちょっと可愛いじゃないか…)
菫「じゃあ照が好きなあだ名付けてくれてもいいが、ヒロとか」
照「中学のときのあだ名とかなかったの?」
菫「親しい奴はみんな下の名前で呼んでたからなぁ」
菫「いや、あだ名とはちょっと違うがそういうのが1個だけあったな……」
菫「でもこれはあんまり言いたくない」
照「友達同士で隠し事しちゃいけないってばっちゃが言ってた」
菫「……」
照「……」ジー
菫「分かった…言うよ…」
菫「……清原」
菫「……清原だ、元プロ野球選手の清原和博」
照「……」プルプル
菫「うちの中学が東京ドームの近くにあってだな…
女の割に図体がでかくて威圧感があることと
名門麻雀部の主将ってことで番長っぽいイメージが重なってそう呼ぶ輩がいたのだ」
照「……くくく」プルプル
菫「おまえが笑ってるとこを初めて見たよ」
照「うっ…ふふ…あははははは」
菫「おい笑い過ぎだろ!」
照「ご、ごめん」
照「…分かった…それじゃあいくぞ」スゥー
照「か…薫…!」
菫「え?」
照「え?」
菫「……」
菫「せっかく勇気を振り絞ったとこ悪いが…私の名前…菫なんだが」
照「えっ!でもその学校用のバッグに薫って…」
照「!!!」
照「あのときは気が動転してて初めの方ちゃんと聞いてなかった…」
菫「そっか、おまえあのとき泣いてt」
照「泣いてない」
菫「言っておくが私はすぐ泣く女は好かんぞ、涙は女の武器だなんて言葉も大きr」
照「泣いてない、あれはセーフ」
菫「はぁ…そういうことにしておいてやろう。時間も遅くなってきたしそろそろ出るか」
……
店員「ありがとうございましたー」カランカラン
菫「明日また部室でな、照」
照「ああ、それじゃあ…す」
照「菫」
ここから誰得シリアス編突入
~菫自宅~
菫「……!」バッ
菫「ハァハァ…」
菫「…またあの夢か…」
菫「中学を卒業してからはあまり見なくなってたんだがな…」
菫「照に出会って、あいつの麻雀をみてからか……」
菫「照……おまえは私を……」
~白糸台高校麻雀部部室~
監督「それではインターハイ予選のオーダーを発表する」
監督「先鋒・部長……………大将・宮永」
監督「予選を勝ち抜いた場合、特にアクシデント等が無ければ本選もこのメンバーで臨む」
監督「メンバーに選ばれた者は体調管理に気をつけ、それ以外の者は全力でサポートすること。以上!」
菫「……」
~別室~
部長「弘世のやつはどうしたんでしょうか?
メンバー選抜戦、中盤まであんなに良い麻雀打ってたのに後半は逃げ腰になり失速
やはり実績はあっても1年生ということでしょうか」
監督「いや、あの子の一番の武器は肝っ玉の強さだ
それは彼女をスカウトした私が一番良く知ってる」
監督(……あの試合と何か関係が……?)
照「おい菫」
菫「どうした?照」
照「何故おまえがメンバーに入っていない
私と部長の次にメンバーに選ばれるのは実力的におまえのはずだろ」
菫「それは私を買い被りすぎだ
3年生はこのインハイが最後の大会だ、後半は先輩たちの気迫に押されて上手く調子が出なかったんだ」
照「誰よりも図太い神経してそうなおまえが?」
菫「何か失礼な言い草だな」
照「もしかして先輩に気を遣ったとかじゃないだろうな?」
菫「まさか。そんな甘ったれた考えはもってないさ
まあ今回はだめだったが次はメンバーに選ばれるよう頑張るよ」
照「……ならいいが」
菫(相手の麻雀の本質を見抜くおまえでもこの気持ちまでは分からないだろう)
菫(このことを知ったらおまえはどれだけ私に失望するだろうか…?)
菫(おまえの底知れない強さを知れば知るほど、私の中の葛藤はどんどん大きくなるばかりだ…)
菫(おまえさえいなければこれほど悩むこともなかっただろう…)
菫(なあ照……おまえなら私を……)
……
………
実況「試合終了ー!!白糸台高校1年宮永照!
団体戦に続いて個人戦でも全国優勝を達成です!」
実況「何という強さでしょう!恐ろしい選手が現れました!
インターハイは宮永照のためにあるのかーー!!!」
照「ありがとうございます!」
照「いえ、私はそんな…
優勝できたのは周りの人たちが支えてくれたおかげです!」
菫「……」
春季大会1週間前
~白糸台高校麻雀部部室~
監督「それでは春季大会のオーダーを発表する」
監督「……………大将・宮永照。以上だ」
菫「……」
照「……!」ワナワナ
照「待て菫!」
菫「ん?何か用か?」
照「しらばっくれるな!おまえどういうつもりだ!
この前と同じだ!途中まで完璧な麻雀を打ってるのに後半で不自然に失速する!」
菫「ああ、どうやら私は勝負弱いらしい」
照「そんな嘘が私に通用すると思っているのか!
今回の選抜戦、私はおまえのことを特に注意して観察していた」
照「何をぐるぐる考えてるのか知らんが、それでも焦りやプレッシャーなんてものは微塵も感じていなかった!」
菫「まあ落ち着けよ照。そうだ、久しぶりにあそこの喫茶店に寄っていかないか?」
菫「……」ズズ
照「3年生が抜けて迎える春季大会、メンバーにおまえが選ばれないのはあまりに不自然だ
そんなこと私じゃなくても分かる」
菫「……」
照「つまりおまえは自分がメンバーに選ばれないようにわざと手を抜いて打った
どういう理由があってかは知らんが、そんな行為私は絶対に許さない」
菫「麻雀に対する侮辱ってやつか?さすがチャンピオンは言うことが立派だな」
照「違う!」
照「手を抜いて打たれることがどれほど屈辱的かおまえに分かるか?
譲られた勝利がどれほど惨めで虚しいものかおまえは知ってるか?」
菫「……」
照「…私は嫌というほどそれを知っている…
だからどんな相手でも全力で叩き潰すと私は心に誓っている」
菫「……」
教えてくれないか、そのワケを?友達として、私に」
菫「……」
照「できれば私はおまえと一緒に全国優勝したいと思ってるよ」
菫「……」
菫「…前に話したことあったよな…私のあだ名…」
照「え?」
菫「私が清原と呼ばれていたことだ」
照「おい、こんなときに何の話を…?」
清原が現役時代何て呼ばれてたか知ってるか?」
照「…いや」
菫「『無冠の帝王』。彼は甲子園で大活躍しプロに入ったその年に強烈な成績で新人王に輝いた
その後も球界を代表する4番打者として存在感を示してきたが、
彼はその生涯で一度も打撃三冠のタイトルを獲得することはできなかった」
照「……」
菫「私は小4のときに初めて麻雀の全国大会に出場してから、団体戦と個人戦を合わせてこれまで9度全国の舞台に立っている
そのうち決勝の卓まで勝ち上がったのは5回、一度も優勝することはできなかった…」
菫「女の割にでかい図体、中学が東京ドームの近くにあったこと、
そして名門帝央中学を率いる優勝経験のない主将…」
菫「『無冠の帝王』…。自分でも呆れるほどぴったりなネーミングだよ…」
菫「そいつはすこし勘違いしているようだな。
その大会のメンバー登録の日の直前に私は体調を崩し2週間ほど入院してたんだ。
春季大会ということもあり大事を取って私はメンバーを外れ、その結果チームは全国優勝」
菫「それが皮肉にも無冠の帝王の名が定着するきっかけになってしまったわけだが…」
照「だが、おまえがそんなあだ名を気に病むような奴とは思えないが…」
菫「もちろん私も最初はそんなこと気にも留めていなかった。名付けた奴もほんの冗談でただの笑い話だったんだ
だが、中3の夏最後のインターハイの団体戦であれは起こった……」
菫「先鋒だった私は大量リードを奪ってバトンを渡し、後続の仲間もすばらしい麻雀を打ってそのまま大将まで繋いだ
優勝は確実だと思われた後半戦南3局、うちの大将が2位の親に国士無双を振り込みまさかの大逆転負け…」
照「……」
菫「もちろんそいつを責める奴なんて誰一人いなかった。
だがそいつが二度と牌を握ることはなく、高校も麻雀部のないところへ進学したよ…」
照「……」
菫「ずっと一緒に努力してきた一番気のおけない仲間だった
忘れられないんだ…残りの2局、泣きながら麻雀を打っていたあいつの姿が、どうしても…」
菫「私のせいじゃないかと思った…私の呪縛が、あいつをあんな目に遭わせたんじゃないかと…」
菫「それ以来、私を清原と呼ぶ者はいなくなった。冗談だったはずなのに誰も笑い話にできなくなっていた…」
照「それで、メンバーに選ばれるのを拒んだのか?自分がいたらチームが優勝できなくなると」
菫「そうだ…笑えるだろ?
威厳あるように振舞い男勝りだなんて呼ばれてその実は、こんなに女々しく情けないのが本当の私なんだ」
全国優勝への憧れは抱いたままなのに、より頂点に近い高校で麻雀を打つのが怖くなっていた」
菫「ここ数年全国を逃してる白糸台なら、全国優勝を夢みたまま自分が真剣に打ってもし届かなくても苦しむことはないと考えた…
だが、いざ入部してみると白糸台には照、おまえがいた…」
照「……」
菫「おまえの麻雀を知るほど、全国優勝が手の届く距離にあることを感じた…
そして、その分あのときのことを思い出さずにはいられなかった…」
菫「希望と不安が私の中でぐちゃぐちゃに混ざり合っていた
こいつなら、私のジンクスなんてものともせずずっと目指してきたあの場所まで私を連れてってくれるかもしれない」
菫「でも、照みたいなすごい奴が仲間にいてそれでもだめだったらどうしよう…
そのとき私は永遠に仲間を背負って卓に着くことができなくなるんじゃないかと思った…」
菫「そうなることがどうしようもなく怖かったんだ……」
照「おまえが抱えてきたものに対して私はとやかく言うことはできない…でも…一つだけ言わせてくれ、菫」
菫「…?」
照「私を信じてくれ」
菫「……」
照「私の側で麻雀を打つ限りおまえにもうそんな思いはさせない」
菫「……」
照「だから、菫の夢を私に託してほしい」
菫「……」
菫「…ああ」
菫「頼む」
……
照「ツモ」
実況「試合終了ー!!白糸台高校、次鋒の弘世菫が稼いだリードを一度も奪われることなく圧巻の勝利!!
2年連続のインターハイ団体戦優勝を達成しました!!!」
実況「永水の神代小蒔に龍門渕の天江衣!今年も新たな選手が大会を湧かせましたがこの選手はやはり別格か!!
白糸台高校宮永照!付け入る隙を一瞬も与えずその強さは今年も健在だぁ!!!」」
部員A「よくやったぞ宮永!」
部員B「おめでとうございます、宮永先輩!」
照「ああ、ありがと」
照「…ところで菫は?」
部員B「弘世先輩ならさっき廊下の奥の方へ歩いていきましたが…」
一番奥の個室「……ッグ……ヒッグ」
照「すぐ泣く女は嫌いじゃなかったのか?」
菫「……」
菫「…すぐ何かじゃない…私はこの日を…」
照「知ってるさ…少しからかっただけだ」
照「ここには私しかいない…好きなだけ泣けばいいさ」
菫「…こんなところで私なんかに構ってていいのか…主役がいなきゃ締まらんだろ…」
照「私がああいう場は苦手なの知ってるだろ…それに…」
照「あっちで歓喜の輪の中にいるよりも、こうしてここでおまえの泣く声を聞いてるほうが優勝したんだという喜びを実感できる」
菫「…そのセリフ…何か変態みたいだぞ…」
菫「……嬉しい……本当に……」
菫「……照」
照「ん?」
菫「ありがとう」
照「私は自分の麻雀を打っただけだよ」
照「清原の呪縛なんて微塵も感じなかった、それより…
おまえが稼いだ点棒がどれだけチームの皆の気持ちを楽にしたか…」
照「何だ?」
菫「…私が泣いたことは誰にも言うなよ」
菫「私の威厳というか…イメージが…」
照「ふふ」
照「分かってるさ」
照「おまえがここで泣いたことも、私がちょっぴり泣き虫だってことも二人だけの秘密だ」
照「当たり前だ。言っただろう?私の側にいる限りもうあんな思いはさせないと」
菫「…そうだったな」
照「それに」
照「もしこの先離れていつか戦うときが来たとしても」
照「私たちはずっと友達だ」
~END~
後半はストーリー作るために偉大な清原選手に力をお借りしました
ありがとう、清原和博
読んで下さった方はありがとうございました
百合じゃなく普通に青春してたのがすばら
清原は個人としては無冠だけど甲子園優勝2回日本一8回という輝かしい経歴の持ち主だということを忘れないで欲しい
親がKKコンビの大ファンだったこともあり私も清原選手は本当にすごい人だと思ってます
その辺は確かに引っかかりましたが「無冠の帝王」で思いつくのは私の知識では清原とレバンナぐらいだったこと
私が野球好きでできるだけ他の人にも馴染みある方をということで清原選手を題材にさせてもらいました
清原選手をネタにしようなんて気持ちはこれっぽっちもありませんので悪しからず
Entry ⇒ 2012.06.30 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
岡部「まゆりの腋がスパイシーすぎる・・・」
紅莉栖「えっ」
岡部「流石に女の子なんだからもう少し気を使うよう指導しなければならんな」
紅莉栖「・・・」クンクン
岡部「それとなく伝えるにはどうしたらいいか・・・」
紅莉栖「ね、ねえ岡部」
岡部「なんだいたのか助手よ」
紅莉栖「ずっといたし助手じゃないし。ま、まゆりの腋ってそんなに気になる?」
岡部「この季節はな。仕方ないと言えば仕方ないが」
紅莉栖「そう・・・」クンクン
岡部「どうした?」
紅莉栖「なんでもない。ちょっとシャワー浴びて来る」
岡部「あぁ……ご苦労、まゆり」 ジー
まゆり「んー……? どうしたのかなー?」
岡部「……時にまゆり、随分と汗をかいてるようだが」
まゆり「あのねー? 新作のコスの期限が迫っているので、駅から走ってきたのです☆」
岡部「うぐっ……そ、そうなのか」
まゆり「ねーねーオカリーン。隣、座ってもいいかな~?」
岡部「えっ!? あ、か、構わんぞ! 座るがいい! 存分に座るがいい!!」
まゆり「ありがとー、えっへへー」 ポスッ
岡部(Oh...spicy...)
まゆり「ふんふーん♪」 チクチク
岡部「……」
岡部「とうっ」 ドスッ
まゆり「ひゃっ!」
岡部「クッククク、脇が甘いぞまゆりぃ! 裁縫に夢中になっていて脇腹がノーガードではないかぁ!」
まゆり「オカリーン!? ひどいよ~、まゆしぃはねぇ、今集中してるのです!」
岡部「あ、あぁすまん、脇目もふらず裁縫に夢中だったものでな」
まゆり「もー、手元が狂ったら危ないよぉ……」
まゆり「それにね? いきなり女の子の脇腹をつつくなんて、まゆしぃは良くないなーって思うなー」
まゆり「なんでこんなことしたのかなー?」
岡部「それはまゆりが俺の人質だからだフゥーハハハァ!」
岡部「これは一種の拷問であーる!」 ドスッ ドスッ
岡部「ふんっ!」 ドスッ
まゆり「えへへ、もー、くすぐったいよオカリーン」
まゆり「ふんふーん♪」 チクチク
岡部「……」
まゆり「んー……」
まゆり「喉乾いたなー、ちょっとコンビ──」
岡部「待つのだまゆりよ! 今この狂気のマッドサイエンティストが冷蔵庫から知的飲料を提供してやる!」
岡部「ほら、ありがたく頂くがいい! なんならバナナもくれてやる!」
まゆり「わー、ありがとーオカリーン」
岡部「フゥーハハハァ! どうだ! 気が利くだろう! わーきがくなー! この俺は本当にきがきくなー」
まゆり「おおー、まゆしぃは愛されてるねー」
まゆり「でもドクペじゃなくてお茶がよかったなー、なんてねー、えっへへー」
岡部「お、おのれまゆり!」
岡部「この鳳凰院凶真がそうやすやすと要求を飲んでたまるか! わきまえろ人質ぃ!」
まゆり「ふふーんふーん♪」 チクチクチク
岡部「……」
岡部「時にまゆりよ」
まゆり「んー?」
岡部「今話題のドラマ”和気”の話なんだが……」
岡部「3話が気になってるんだがどうなんだろうなー、わーきになるなー」
まゆり「わきー?」
岡部「脇役がいいキャラしててなー、ワーキングホリデーの下宿先で浮気がどーたらこーたら」
岡部「わー気になる、すごーく気になるぞー、3話にしてすごく臭くなってきたぞー?」
まゆり「んー……」
まゆり「……」 クンクン
岡部「そそそそんなことないぞまゆりっ!?」
まゆり「でもー……お昼に食べたスパイシーチキンの匂いが取れてないみたいだよぉ……」
岡部「は? スパイシー?」
まゆり「うん」
まゆり「ここ最近ね? まゆしぃはフレマのスパイシーチキンを食べるのが日課だったのです」
岡部「なんだとぅ!?」
まゆり「ごめんねオカリン……まゆしぃ、気がついてあげられなくて……」
岡部「い、いや……」
岡部(なんだ……そういうことだったのか)
岡部「クックク……。案ずることはないぞまゆり!」
岡部「たとえ強烈な食品の匂いを醸しだしていようと、この季節のダルには足元にも及ばんからなフゥーハハハァ!」
岡部「かくいうこの俺鳳凰院凶真も生物兵器をこの体に宿しているのだ! 嗅いでみるがいい、ほらぁ!!」
まゆり「えへへ、やめてよオカリーン」
バタム
紅莉栖「待たせたわね岡部! シャワー浴びてきたわよ!」
紅莉栖「さ! 思う存分腋の匂いを嗅ぎ……」
岡部「」
紅莉栖「な……さ…い……」
まゆり「く、クリスちゃん……? トゥッ……トゥルー」
紅莉栖「」
紅莉栖「ままままままゆり!?」
紅莉栖「ち、違うのよ!」
紅莉栖「これは、その……わき……わきに……」
紅莉栖「Wow!! kill no knee oiっていったのよ! そう! Wow!! kill no knee oi!! 全く英語が出来ない男の人って!」
岡部「」
まゆり「」
岡部「く、紅莉栖?」
まゆり「……クリスちゃん?」
紅莉栖「く……く……」
紅莉栖「ク……クォーラルボンバー!!」 ガガァ
岡部「へぶぅっ!?」
まゆり「わわー! ラ、ラリアット!?」
紅莉栖「もう生きていけないー!!」
バタン
まゆり「待ってー! クリスちゃーん! 待っててばー」
岡部(Oh...floral...)
天井はぐねぐねと蠢き、周りの音は幾重にも重ねられたように鼓膜を刺激する。
微かに残る花のような香りは岡部の鼻孔をくすぐらせ、今この時を心地よい空間へと変化させる。
時間と空間の役割は逆になっていた。
時間は……無限に引き伸ばされていた。
こうして岡部の目の前に腋フェチとしての道が開かれた。
岡部「あの時の腋の臭いが忘れられん」
岡部「しかし助手に面と向かって”腋の匂いを嗅がせてくれ”などと言えるはずもない……」
岡部「そんなことをした日には警察に突き出される……ぐっ、おのれ助手め……」
岡部「わき……わき……!」
岡部「あれは指圧師!」
岡部「くそ! 静まれ俺のエビルノーズ!」 ヒクヒク
岡部「結局萌郁のアパートまでつけてしまった……」
岡部「いかんいかん、これではストーカーではないか!」
岡部「……」
岡部「だがあのわがままボディ……豊満な胸と腕に押し付けられた腋……至高の匂いなはず!」
岡部「やってやる……やってやるよ!」
ピンポーン
萌郁「……?」
萌郁「岡部……くん?」
岡部「……話したいことがある」
萌郁「……?」
萌郁「……何……言ってるのか全然……」
パカッ ピッピ
岡部(──今だ!)
岡部「借りるぞ指圧師!」
萌郁「あ……!」
萌郁「け、携帯! かえして……!」
岡部「フゥーハハハ! 返してほしくば自分で奪い取ってみろ! ほーれほれ、高い高い!」
萌郁「おかっ……返して……!」
岡部(──きた! 腋が目の前に!)
岡部(ふぉぉおぉぉぉ! くんかくんか! あぁぁぁあぁぁっ! いい! いいぞぉ!)
岡部(指圧師の困った顔可愛い! くんか! つーかいい匂い!)
岡部(ゆるふわロングウェーブな髪をなでなでしたい! モフモフ! 髪モフモフ!! くんかくんかスーハスーハ!)
岡部(あぁあぁぁ! 肉ばっか食べる人間の体臭は臭いって聞いてたけどそれも癖になる! いやっつーかそれが癖になる! くんかくんか!)
岡部(サバンナ! サバンナだココ! くんか! 野生の香り! あぁ指圧師かわいい! 普段の8割増しくらいでかわいい!)
萌郁「おぉぉかぁぁべぇぇぇぇぇ!!」 ドゴッ
岡部「ぐはぁっ!?」
岡部「ぐぉっ……みぞっ……みぞっ……!」
上腹部に強烈な衝撃が走る。
それと同時に手から携帯の感触がなくなる、がそんなことはどうでもよかった。
胸が苦しい。息ができない。
次第に目の前が色を失っていく。
薄れゆく意識の中で見たのは、携帯を取り戻して安堵する萌郁の笑顔。
萌郁かわいい。
こうして岡部はMに目覚めた。
岡部「俺は目覚めたのだ」
岡部「手始めにルカ子に五月雨で殴られつつ腋の匂いをだな……」
~柳林神社~
岡部「ルカ子! 俺を五月雨で殴れ!」
るか「え!? えええ!?」
るか「そ、そんなこと……できません」
岡部「……」
岡部「ぐっ……あぁぁぁっ!!我が身に宿りし悪霊の暴走がぁぁぁっ!」
るか「岡部さん!?」
岡部「は、はやくぅ! この俺に取り憑いた魔を……五月雨で……五月雨で取り除いてくれっ……!」
岡部「頼むルカ子……!早く……早くしないと秋葉が血の海っ……ぐぁぁっ!」
るか「ボ、ボク……やります!」 キッ
るか「えいっ! えいっ! えいいっ!!」 ポカポカ
るか「やぁっ! お、岡部さんから……出ていってぇ!」 ポカポカ
岡部(全然痛くないし快感でもないな……)
岡部「……」 スッ
るか「え? 岡部さん……もう大丈夫なんですか?」
岡部「ルカ子、腰が入っていないぞ、素振りはちゃんとしてたのか?」
るか「えっ……その……ご、ごめんなさい……最近はあまり……」
岡部「……仕方ない、この俺が自ら指南してやろう」 スッ
るか「えっ、ちょ、おかっ……手が……触れて……」
岡部「後ろの俺は気にするな、思う存分素振りをするがいい」
るか「え……えええ!?」
岡部「振りがあまーい!!」
るか「じゅーうご……! じゅーうろく……!!」
岡部「まだまだぁー!」
るか「よんじゅ……! よんじゅいち……!!!」
岡部「……」
岡部(汗だくのルカ子……なんだこれ、なんだこの気持ち)
るか「はぁ……はぁ……おか……べさん……ボク……もう……」
岡部(──! 今ちょっと……きゅんときた)
るか「岡部……さん?」
岡部「……」 スッ
るか「ひゃっ!?」
るか「ちょっ、だ、だめっ……おかっ……」
岡部(いいこれ! いいぞこれ!汗に濡れた巫女装束、いい匂い、可憐な美少女、だが男だ!)
岡部(泣きそうな顔さわさわしたい! サワサワ! 顔モフモフ!! くんかくんかスーハスーハ!)
岡部(あぁあぁぁ! ほんとに男でいいのかよこいつ! いやっだめだろ! この世界線はなんて非情なんだくんかくんかぁぁ!)
岡部(この背徳感! たまらない! 俺ヤバい、世界もヤバい! ルカ子の脇の臭いで世界がヤバい! だが男だ!」
るか「岡部さん……やめっ……」 ジワッ
るか「うぅ……どうしてっ……こんなっ……」
岡部「──ハッ!」
上目遣いで瞳を濡らし俺を見る美少女……だが男だ。
声は色っぽく、聴く者の琴線に触れる……だが男だ。
地べたにへたり込む姿は男だろうが女だろうが釘付け……だが男だ。
男だというのに♀の匂いがしたなぁ……だが男だ。
頬を紅潮させ小刻みに震えている、苛めたくなる……だが男だ。
こうして岡部はSに目覚めた。
岡部「おろかな愚民どもを傷めつけてそっと涙を拭いてやりたいやりたい気分だフゥーハッハッハァ!」
岡部「手始めに生意気な猫娘を手のひらで踊らせてくれるわっ!」
~メイクイーン~
フェイリス「おかえりニャさいませーご主人様ー」
フェイリス「凶真! よくきたのニャ」
岡部「案内を頼む、留未穂」
ザワッ
フェイリス「ニャニャ!? 凶真ぁ、誰のことを言ってるのニャ? フェイリスはフェイリスなのニャ」
フェイリス「……にゃはーん……もしかして前世で固く結ばれていた女の子のことをフェイリスに重ねているのニャ?」
岡部「嘘で塗り固めた女に興味はない、いいから席まで案内しろ留未穂」
フェイリス「ニャウゥー……わかったのニャ、だからその名前で呼ぶのはやめるニャ!」 ヒソヒソ
岡部「ご苦労」
フェイリス「それではごゆっく──」
岡部「あ」
ガシャーン
フェイリス「ニャ!? 怪我はないかニャ!? 服は大丈夫かニャ!?」
岡部「すまん留未穂! 手が滑った!」
フェイリス「だ、だからその名前で呼ぶのはやめるのニャ!」 ヒソヒソ
岡部「おぉっとまた手が滑ったぁ!」 パシッ
留未穂「──!」
岡部「これは大変だぁ! 猫耳が取れてしまったぞぉ!?」
留未穂「かっ、返してっ……!」
岡部「ほーれほれ!」
岡部「俺が椅子に座った状態でも届かないとは滑稽だな留未穂よ! フゥーハハハァ!」
ザワザワ
岡部(──ここだっ!)
岡部(スーハァァァ!!! くくんかくんか! むはぁ! すはぁ! おおおおおおおぁぁあああぁぁ!!)
留未穂「ひゃうっ!?」
ざわっ ざわっ
ざわっ ざわっ
岡部(ぐっはぁー!! なんだこの甘い香り! くんかくんか! さすがゲーム中で唯一いい匂いという描写がされているだけはある!)
岡部(すはぁ! すはぁ! くんかっ! 天国! 天国行きそうだこれ! メイド・イン・ヘブン!)
岡部(スーハスーハ! あぁあぁぁ! 仕事中だろ? いくらなんでも汗かかないとかないだろ? でもいい匂い! 甘い! 提案する! これは売れる! くんかぁぁ!!)
留未穂「ちょっとおかべさっ……あぅっ……」
岡部(むはぁ!! たまらない! いつも強気な猫娘めっ!この俺をコケにするとこうなるのだスゥーハハハァ!) グリグリ
留未穂「だっ……だめだよ岡部さん……こんなっ……///」
岡部(はぁはぁ! くんかくんか! あぁぁぁぁ!! マジいい匂い! マジいい表情! ダイバージェンスの値がぁぁぁぁっ……変わるっ……!!)
ざわっ ざわっ
ざわっ ざわっ
幾多の眼光が俺の体を貫く。
その目誰の目?
目の前には顔を上気させ恨めしそうに俺を見つめるフェイリス、もとい留未穂。
客の憎悪、店員の好奇の目、そして頭に残る花のような香気。
なんだこれ、快感。見られるってすごい。興奮。
こうして岡部は視線フェチになった。
と同時にメイクイーン出入り禁止を食らった。
岡部「俺だ。 あぁ、まんまと猫娘の策略にはめられたようだ……何? あそこには重要なエインシェントウェポンが存在するだと?」
岡部「……フッ、案ずるな、たとえ侵入が困難だとしても必ずやり遂げてみせるさ、何……見られたからからと言ってさしたる問題はない」
岡部「ククッ、むしろ好都合だ……あぁ、お前も気をつけろ、エル・プサイ・コングルゥ」
ザワザワ ヒソヒソ
岡部「あぁ、見られてる、見られてるぞ俺……ゾクゾクするぅ! セレンディピティとはこういうことを言うのだな!」
ブーブー
岡部「……?」 ピッピ
本文:お前を見ているぞ
岡部「はがぁぁぁぁっ! これぞ恍惚!」
鈴羽「ちーっす、岡部倫太郎ー」
岡部「バイト戦士か……」
鈴羽「あれ? なんか嬉しいことでもあったの? あっはは、顔がだらしないぞー?」
岡部「ククッ、次々と未知のシュタインズゲートが開く様を見ているとつい……な」
鈴羽「あはは、なにそれー」
岡部「……ん?」
岡部「なんだか臭わないか?」
鈴羽「えっ!? そ、そう? そうかな?」 クンクン
岡部「別にお前が臭うとは一言も言ってないのだが」
鈴羽「えっ、いや、あはは……その」
鈴羽「あたしあんまお風呂入れてないからさー、あは、あははは」
岡部「なにっ!?」
岡部「……いや、なんでもない」
岡部(風呂に入れてない……夏…………汗、またもやシュタインズゲートを開く時が来たのか!?)
岡部(いや待て待て、落ち着け俺)
岡部(夏場の……しかもサイクリングが趣味……そして何日も風呂に入ってない女の腋の匂いだぞ!?)
岡部(それは卒倒するほどの匂いに違いない……迂闊なことをするな……フェイリスの匂いを思い出せ)
岡部(あの甘い匂いを上書きしても良いのか!? 脳にDLしてもいいのか!? 記憶に齟齬が生じる可能性は!? 俺が俺でなくなる可能性があるんじゃないのか!?)
岡部(……違う……見て見ぬふりをするな!)
岡部(人は自分で思っている以上に愚鈍な生き物なんだよ)
岡部(普段の臭気の中に埋もれている何気ない体臭など気にも留めないし、知覚したとしてもすぐに忘れるか、脳が処理をしないかのどちらかなんだ)
鈴羽「ねえ、岡部倫太郎……?」
岡部(……どうする、本当にいいのか? 鳳凰院凶真……後戻りできなくなるぞ?)
鈴羽「あ、綯ー、うぃーっす」
綯「と……オカリンおじさん……こ、こんにちは」
岡部「……」
鈴羽「ねえ岡部倫太郎ー、さっきから黙りこんじゃってどうしたのさー」
岡部(決まりだな、これこそシュタインズゲートの選択)
鈴羽「ねえってばー」
岡部「あ! IBN5100!!」
鈴羽「え!? どこどこ!?」
岡部「──今だ!」 ガシッ
岡部(くんかぁぁぁぁぁぁ!! ぐぁっ! 強烈! なんだこれ! くんかくんか!! これがラグナロックを闘いぬいた戦士の匂い! むせ返る!)
鈴羽「ちょ! 何やってんのさ岡部倫太郎!!」
岡部(すはぁ! すはぁ! ぐはぁ!! 地獄! 天国から地獄!!) チラッ
綯「ひっ……」
岡部(うああああ! 見られてる、見られてるぞ! 小動物に見られてる! スーハスーハ! あぁあぁぁ! 狂気の沙汰ほど面白いっ! くんかぁぁ!!)
鈴羽「や、やめてってば! く、くすぐったいってあはははは!」
岡部(あふぅぅぅ! なんだこれHENTAIセクハラ行為してるのに笑ってる! 鈴羽ってこんなにかわいかったのか!? すはぁ! くんかくんか!) チラッ
綯「ひぃぃぃっ……」
岡部(やばい、まだ見られてる、蔑むような目、畏怖を覚えた目! 快感! もっと見てくれ! 孤独の観測者はここにいる! ここにいるぞムゥーハハハ!!)
視線、響く笑い声、鼻をつく刺激臭。
だがそれがいい。
今はそのすべてが愛おしい。
鈴羽かわいい、小動物もかわいい。
ふと覆いかぶさる大きい影。その瞬間視界に覆いかぶさる影。
そこからの記憶はない。
だが強烈な行為とともに海馬に蓄積されたエピソードは忘却されない、それだけは言えた。
そうして岡部はドM、ドSへとレベルアップし、視線フェチ、腋フェチのスキルを強化した。
さらに小動物にトラウマを植えつけた。
岡部「……うーむ」
岡部「目覚めてみればラボ……今日一日非常に重要な”何か”があったような気がするのだが……思い出せん」
岡部「うぐっ……頭がいたい……リーディングシュタイナーか? いや違う……もっと物理的な痛みだこれは」
岡部「……」
岡部「それにしても汗だくだな、シャワーでも浴びるか」
────
───
──
ガチャリ
紅莉栖「おかべー……?」 コソーリ
紅莉栖「ふむん……いないのか、ラボの明かりが付いてたから誰かいるかと思ってたんだけど」
紅莉栖「いきなり暴力は……まずかったわよね、やっぱり……」
紅莉栖「で、でも岡部に嫌われたんじゃないかって思ったわけじゃなくて! そ、その……」
紅莉栖「さ、さすがにいきなりラリアットはやりすぎたと思うし! 謝罪の1つくらいはしないと私の気が収まらないっていうか!」
紅莉栖「っていうか私の腋の匂いよりマシってどういうことよ! 比較対象に私を出すってどういうこと!? 納得行かないんですけどー!」
紅莉栖(岡部の白衣……)
紅莉栖「……」
紅莉栖「……」 スッ
紅莉栖「……なにこれ、汗びっしょりじゃない、きったな」
紅莉栖「人の腋の匂いに文句をつけるくらいだから、と、当然自分の匂いには自信あるんだろうな?///」
紅莉栖「……」
紅莉栖「な、何考えてるのよ私ってば!」
紅莉栖「こっ……こんなのHENTAIじゃない……///」
紅莉栖「……で、でもっ……仮にも女の私に対して臭いとか許せない……」
紅莉栖「岡部の匂いも比較し私が臭くないという証明が必要、よって岡部の白衣を臭うことは実験の一環であるという解が導ける」
紅莉栖「ごくり……」
紅莉栖「……」 クンクン
紅莉栖「はぁぁぁっっ! これが岡部の匂い……! なにこれ……なによこれ!」
紅莉栖「岡部! 岡部! 岡部! 岡部ぇぇぇ! すーはすーは! ごめん! いつも怒鳴ってばっかでごめん!」
紅莉栖「岡部かわいい岡部かっこいい!白衣かっこいいよ岡部ぇぇぇ! 岡部岡部岡部! はうぅううぅ!」
紅莉栖「あのボサボサ黒髪なでなでしたいくんかくんか! あの無精髭でじょりじょりされてみたいよぉぉ!」
紅莉栖「フゥーハハハって言われながら抱きしめられたい! ぎゅってされたい! 岡部ぇ!岡部の匂い!」
紅莉栖「あぁあああ…ああ…あっあっー!あぁあああ!!!」
岡部「」
紅莉栖「はぁっぁぁっ岡部ぇぇぇぇ!! おか……」 チラッ
岡部「」
紅莉栖「」
岡部「」
紅莉栖「くっ……」
紅莉栖「くっく……」
紅莉栖「クォーラルボンバー!!」 ガガァ
岡部「へぶぅっ!?」
その時俺の記憶が世界線を超えてきた。
ダイバージェンス1%の壁を超えたエピソードは再び俺の脳に収束を始める。
紅莉栖の……匂い。フローラル。俺を目覚めさせた優しい匂い。
そうだ……俺は……俺は孤独の観測者。
ドMでドSで視線フェチで腋フェチ……。
萌郁かわいい。
ルカ子かわいい。
留未穂かわいい。
鈴羽かわいい、小動物かわいい。
でもやっぱ紅莉栖かわいい。
今回も俺を目覚めさせてくれるのは紅莉栖、お前だったのか。
岡部「すまない……紅莉栖」
紅莉栖「えっ!? い、いや私の方こそ……いきなり……あんな///」
岡部「腋の匂いが臭いと言ったな? あれは嘘だ。……いや厳密に言えば嘘じゃないが……」
紅莉栖「ちょっ……!」
岡部「俺はお前(の腋の匂い)が好きだ」
紅莉栖「ふぇっ!? な、なんで急に……そんなことっ///」
岡部「お前はどうなんだ?」
紅莉栖「とととと言いますと?」
岡部「お前は俺の(腋の匂いの)こと……好きか?」
紅莉栖「……顔をっ……目をつぶれ……」
岡部「どうして」
紅莉栖「い、いいからっ!///」
岡部「──!」
唇に微かな感触。
なんだこれ。
え? どういうことだ?
紅莉栖「……したくてしたわけじゃないから///」
誰か説明して欲しい、俺はなぜキスをされたんだ。
俺は……。
俺は……。
腋の匂いが嗅ぎたかっただけなのに。
腋の匂いを嗅ぎあいたかっただけなのに。
岡部「おい紅莉栖……」
紅莉栖「ちょ、まじまじと顔をっ……こっち見んなっ///」
岡部「俺は腋の匂いをだな……」
紅莉栖「は?」
岡部「いや、その……俺はお前の腋の匂いを嗅ぎたかったのであって……」
紅莉栖「」
岡部(あれから紅莉栖から強烈なビンタを食らい夜が明けた)
岡部「まだヒリヒリするな、くそ……あのメリケン処女めがっ!」
ガチャリ
まゆり「トゥットゥルー、こんにちはー」
岡部「うむ、ご苦労」
まゆり「あれー? オカリン一人かなぁ?」
岡部「あぁ、そうだ」
まゆり「ねえねえオカリン」
岡部「なんだ?」
まゆり「昨日はごめんねー? まゆしぃはスパイシーチキンを食べる日課はやめました」
岡部「いや……別に食べたい物を食べればよかろう」
岡部「確かにフレマのスパイシーチキンは鼻に残る強烈な匂いではあるが……」
岡部「おいおい、別に重荷にだなんて……」
まゆり「自分の匂いには中々気づけない……昨日まゆしぃはそのことを実感しました!」
まゆり「だからこれからはー。前以上に匂いには気を使おうと思いまーす」
まゆり「えーっとー……するめはらすめんと?っていうんだっけ?」
岡部「それを言うならスメルだっ」
岡部(そういえばまゆりの腋の匂いは嗅いでなかったな……)
岡部「……どれ、この鳳凰院凶真が人質のメディカルチェックを行なってやろう」
まゆり「ええー!? メディカルチェックー?」
岡部「そうだ、さあまゆり……腕をあげろ」
まゆり「は、恥ずかしいよオカリーン……」
岡部「うるさいっ、自分の匂いは気づきにくい、というのであれば他人がチェックする他あるまい!」
まゆり「んー……じゃ、じゃあ……こ、こうかな?」 スッ
岡部(うおぉおおおおお!! これがまゆりの匂い! くんかくんか! ぐはぁ!)
岡部(すはぁ! すはぁ! くんかくんかっ! おいばか! 誰だスパイシーなんて言ったやつ! シトラス系のいい香りじゃないか!)
岡部(スーハスーハ! スハァァァ! んはぁぁぁ! 幼馴染の腋! 適度に運動し、良質な食事を取っている女子高生の腋の匂い! 健康! 健康そのもの!) グリグリ
まゆり「えっへへ、オカリーン、くすぐったいよぉ」
岡部(むはぁ!! たまらない! ここ最近スパイシーチキンの匂いをプンプンさせてただけにたまらない! これがギャップ萌え!) グリグリ
まゆり「だっ……だめだよオカリーン」
岡部(ぐぁぁ! くんかくんか! おうあぁぁぁぁ!! 灯台下暗し! なんてもったいないことをしてたんだ俺はぁぁ!)
カチャ
ダル「」
岡部「」
岡部(うおおおお、ダルに見られたぁぁぁぁあ!?)
岡部(でもやめない! くんかくんか! まゆりからはダルの姿は見られていないはず)
岡部(くんかくんか! うおおおお、俺のゲルバナがスカイクラッド! あぁぁっっ! すーはすーは!!)
ダル「」 スッ カチャ
ダル「ラボへエロゲしに来たらいつの間にかエロゲの中に入っていた」
ダル「な……何を言ってるのか わからねーと思うがおれも何をされたのかわからなかった」
ダル「頭がどうにかなりそうだった……」
ダル「パフパフだとかモフモフだとかそんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ」
ダル「もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……」
──「今の話、詳しく聞かせて欲しいんだが」
ダル「──ハッ!」
ダル「ま、牧瀬氏!?」
紅莉栖「いるのね……岡部が、この中に」
ダル「え? えええ? 今はちょっと……入らないほうが……」
まゆり「オカリーン、もうそろそろやめてほしいなーってまゆしぃは思うなー……」
岡部(やめてなるものかっ……! んはぁぁぁ!)
ガチャリ
紅莉栖「おーかーべぇぇ」
岡部「ひぃっ!?」
まゆり「く、クリスちゃん!?」
岡部「おい、助手……落ち着け! ひとまず落ち着け!」
紅莉栖「おーかーべええええ!」
岡部「よせっ! その腕を降ろせっ!!」
紅莉栖「あんたのために……マラソン行ってきたわ!
紅莉栖「さぁ私の腋の匂いを嗅ぎなさい!! これであんたも満足でしょ!?」
ダル「もう勘弁しろって」
おわれ
終始嫌な汗かきまくりだったよ
そして脇うp
おう、早くしろよ(催促)
Entry ⇒ 2012.06.30 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
貴音「今日は、どこに食事に行くのですか?」小鳥「ひみつ」
貴音「ここは、らぁめん屋ではないのですね」
小鳥「そうっ、今日は……居酒屋さんでーす」
貴音「わたくし、まだ未成年なのですが……」
小鳥「大丈夫。お酒を飲むのは私と、これから来る人の二人だけで貴音ちゃんは飲まなくてもいいのよ」
小鳥「ふふっふ、甘い、甘いわよ貴音ちゃん」
貴音「どういう事ですか小鳥嬢?」
小鳥「居酒屋はお酒を飲むだけの場所ではないってことよ」
貴音「……」
小鳥「ふふっ、まぁ騙されたと思って入りましょう♪」
貴音「独特な雰囲気を感じますね」
小鳥「ちょっとうるさいけど大丈夫。すぐに慣れるわ」
貴音「そんな物でしょうか……」
小鳥「さっ、この中から適当に選んじゃっていいわよ」
小鳥「色々な種類があるのですね」
店員「はい、注文ですね。どうぞ」
貴音「では、———————————」
貴音「——————あと、」
小鳥「まって貴音ちゃん。後でまた注文できるから今はこれで終わりにして」
貴音「そうですか……」
小鳥「ほっ、じゃああと生中ひとつでお願いします」
店員「以上でよろしいですか」
小鳥「はい」
店員「かしこまりましたー」
小鳥「えっ……いやー、たまにかな、本当たまに」
貴音「そうなのですか、慣れ親しんでる様子だったので良く来られてるのかと思いました」
小鳥「さすがに一人じゃ来られないからね」
店員「しつれいしまーす、えーっと生中と……芋焼酎になります」
店員「はい、そう……ですね」
小鳥「ビールは私が頼んだんだけど……」
貴音「芋はわたくしです」
小鳥「えぇー」
店員「はい、すいません」ゴトッ
失礼しまーす
小鳥「ありゃー貴音ちゃんなんで頼んじゃったの?」
貴音「芋……でしたから」
貴音「では、いただきます」
小鳥「ちょちょ、だ、駄目ですよ!!」ひょい
貴音「あぁ……」
小鳥「もー貴音ちゃんは未成年なんだから駄目でしょ、これは私が飲みます」
店員「失礼します、焼き鳥です」
店員「盛り合わせと――――――――――――」
小鳥「なんで、盛り合わせと各種それぞれの焼き鳥を……」
貴音「かんぱいです」チーン
小鳥「貴音ちゃんはウーロン茶だけどね」
貴音「分かっていますよ小鳥嬢」
~10分後~
小鳥「貴音ちゃん飲んでる~?///」
貴音「えぇ、美味しい芋ですね」ゴクゴク
貴音「料理も真美味なる物ばかりです」
小鳥「そうなのよー、だからあたしもここは良く使うのー///」
貴音「この、あんかけ卵焼きとは初めて食べました」
小鳥「やっぱりー、貴音ちゃんは創作料理みたいなの食べたことないだろうなーって思ってたろよー///」
小鳥「さぁっすが貴音ちゃん~よくわかってる///」
貴音「もぐもぐ、ごくごく」
小鳥「そろそろ~もう着くころかしらね~///」
貴音「もぐもぐ……そういえば、どなたが遅れてくるのですか?」モグモグ
小鳥「ん~っとねぇ~///」
小鳥「あっ、ちょ~どきた~///」
貴音「……」
あずさ「あらあら~遅れてすいません~」
小鳥「おっつかれさまですあずささ~ん///」
貴音「三浦あずさでしたか」
あずさ「貴音ちゃんも居たのね~、あっ白ワインをお願いします」
店員「あっしたー」
貴音「いえ、わたくしはお酒をのm」
小鳥「そんなことより、あずささんお仕事はどうだったんですか~?///」
あずさ「雑誌の撮影だったんですけど、直ぐに終わりましたよ」
貴音「雑誌の撮影だったのですか」モグモグ
小鳥「あずささんは~今日はどんなエッチな服を来たんですか~///」
あずさ「も~小鳥さんったら」
店員「しつれいしま~す、白ワインになります」
あずさ「すいません、ありがとうございます」
貴音「すいません、注文よろしいですか?」
あずさ「そうですか?そんなことないと思いますけど……」
小鳥「いやいや、あずささんは際どいの多いですよ~、ウエディングドレスの奴だってちょっと際どかったですよ~///」
あずさ「あの時は大変でした~」
小鳥「本当にあずささんはエッチな身体で羨ましいですよ~///」
貴音「―――をお願いします」
店員「かしこまりましたー」
小鳥「いやー本当ですって///この前もPさんがあずささんの載ってる雑誌みてニヤニヤしてましたもん///」
あずさ「それ本当ですか」
小鳥「ほんとうれすよ~///Pさんも男ですからね~///」
あずさ「じゃあこれからも雑誌の撮影は頑張らないと」
貴音「ふむ、雑誌の撮影ですか」
貴音「……そうですね、撮影してもらいたいものですね」
小鳥「私も撮影してもらいたいです~///まだまだ私もいけると思うのよ~///」
あずさ「音無さんなら大丈夫ですよ~うふふ」
貴音「そうですね小鳥嬢なら大丈夫でしょう」
あずさ「それは……どうなんでしょう」
貴音「釘付けですか……」
小鳥「いやーPさんも最近私を見る目がイヤラシイですからね///」
貴音「それは……」
あずさ「ないかと……」
小鳥「ええぇーーーー」
小鳥「あずささんも早いですね~///」
貴音「もぐもぐ」
あずさ「ふぅ~最近私Pさんに会ってないですよ///」
小鳥「竜宮は律子さん担当ですからね~///」
あずさ「貴音ちゃんがうらやましいわ~///」
貴音「もぐもぐ」
あずさ「えぇー小鳥さんはPさんの事をどう思ってるんですか?///」
貴音「ごくごく……」ピクッ
小鳥「Pさんは良い人ですよね///私大好きですよ~///」
貴音「ごくごく」ピクピク
あずさ「やっぱりそうですね~///」
あずさ「小鳥さんも抜け駆けしないでくださいよ~///」
貴音「二人ともぷろでゅーさーの事が好きなのですね……」ゴクゴク
あずさ「貴音ちゃんったら……二人だけかしら?
貴音「?」
小鳥「ふふふ///」
貴音「どうしたらですか……」
小鳥「わぁたしぃは~Pさんと……××的 あずさ「貴音ちゃんはどうかしら~?///」
貴音「そうですね、わたくしは……」
あずさ「んーふふふ///」
あずさ「えっ、何かしら?」
貴音「わたくしが幸せになるのは、らぁめんでしょうか」
あずさ「あれれっ」
小鳥「それでPが私に××で~///」
貴音「一緒にですか……」
――――――――――――――――――
貴音「ズルズルズル」
貴音「やはり二十朗のらぁめんは美味ですね」
P「はは、貴音は本当に美味しそうにラーメンを食べるな」
――――――――――――――――――
小鳥「ぐふふwwwwwPったら~wwww///」
貴音「?」
小鳥「Pさんですか~www私ですよPさんwwwww」
携帯「―――――――― ―――――――――」
貴音「……」ビクッ
小鳥「ドュフフwwwww今ですね―――――」
あずさ「あらあら」
小鳥「うわぁあん、怒らないで下さいよPさん」
携帯「ガーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
小鳥「分かりました、分かりましたから」ピー
あずさ「あらあら、お開きのようね~」
貴音「そのようですね」
あずさ「貴音ちゃん1人で大丈夫?」
貴音「えぇ、問題ありません」
小鳥「ぶぇぇぇ、あずさちゃんPさんに怒られましたー、明日説教だってー……うぅー気持ち悪い」ピーピー
あずさ「大丈夫ですよー、Pさんもしっかりと誤れば許してくれますよ」
貴音「小鳥嬢……あずさ……また食事をしたいですね」
あずさ「ふふ、そうねまた機会があったらね」
小鳥「うぅ……うっぷ……」
あずさ「お酒は抜きでね、ふふ」
小鳥「貴音ちゃんバイバ……うぅ……」
貴音「えぇ、ではまた」
・
・
・
貴音「今宵は楽しい夜でした」ふら~ふら~
貴音「しかし、お酒というものは不思議な物です」ふら~ふら~
貴音「それにしても小鳥嬢は電話でぷでゅーさーに、こってりとしかられてましたね、ふふっ」ふら~ふら~
貴音「ぷろでゅーさーは今、何をやっているのでしょうか……」ふら~ふら~
貴音「……」
貴音「……らぁめんを食べたいですね」ぼそっ
P「なら食べに行くか?」
P「はぁ~見つかって良かった」
貴音「どうしてここに?」
P「さっき小鳥さんからの電話を切ってからすぐにこっちに向かったんだよ」
貴音「それで、ここにいるのですか」
P「未成年に酒を飲ませるなんて小鳥さんは何を考えてるんだかな……」
貴音「ふふ、でも楽しい食事でした」
貴音「そうですか
P「さて帰るか、送ってくぞ」
貴音「……」
P「……どうした貴音?」
P「えっ、あれは冗談のつもりだったんだが……」
貴音「らぁめん」
P「……」
貴音「らぁめん……」
P「分かった分かった、一杯だけだぞ」
P「じゃあラーメン食べに行くか」テクテク
貴音「えぇ、行きましょう」ふら~ふら~
P「あぁふらふらして危ない、ほら俺に捕まって」
貴音「はい、あなた様」ダキッ
三浦あずさがあの時に言っていた事は良くわかりませんが、今わたくしが分かる事がひとつあります……
わたくしは今、とても幸せです。
END
小鳥「はい、着きましたよ」
貴音「ここは…?」
小鳥「一皿百円庶民の味方!無添加寿司のくら寿司へようこそ!」
貴音「お寿司ですか」
小鳥「貴音ちゃんは回転寿司は初めて?」
貴音「はい、お恥ずかしながら」
小鳥「それは良かった。さあ入りましょう」
ラッシャーセー
貴音「なにやらお寿司がべるとこんべあに乗って回転しているとは…面妖な…」
小鳥「フフフ、だから回転寿司なのよ」
店員「いらっしゃいませ。お客様くら寿司の容器のご利用方法はおわかりになりますか?」
小鳥「あ、えーと…一応教えてください」
店員「それでは容器の説明させていただきます」
貴音「容器の説明?」
店員「お皿の手前の方を上に持ち上げますとフタが開きますので、そのままお取り下さい」カパッ
貴音「な、何と面妖な!?」
店員「?」
小鳥「いや別にそこまで驚かなくても…」
小鳥「さ、いくわよ貴音ちゃん」
貴音「ま、待って下さい小鳥嬢」
小鳥「さて、それじゃ回転寿司の基本的な作法を教えます」
貴音「よしなに」
貴音「この流れているのは自由に取っていいのですか?」
小鳥「もちろん。自分が食べたいのが来たらタイミングを見計らって…ほいっ」サッ
[甘エビ]
貴音「おお、お見事です」
小鳥「そんな大層なもんでもないって」
貴音「そういえば、この店はお茶どころかお冷やも出さないのですね。店員を呼んで問いたださねば」
小鳥「あああ待って待って。回転寿司はお茶はセルフサービスなの」
貴音「なんと。しかし、湯呑みや急須が見あたりませんが」
小鳥「湯呑みはね…レーンの上にあるわ」ヨイショ
貴音「何と、そのような場所に」
小鳥「お茶葉はこれ」カパッ
貴音「これがお茶葉…抹茶のようにも見えますね」
小鳥「この蛇口に黒いボタンがあるでしょ?これを湯呑みで押すと…」ジョボボボボ
小鳥「あとはお箸かなんかでかき混ぜて…よし、できた!」ドヤッ
貴音「成る程、やってみます」
貴音「まず…お茶葉を一掬い…あっ」ボロッ
貴音「…こぼれてしまいました」ドヨーン
小鳥「そんなにいっぱい入れなくてもいいんだけど…」
貴音「お茶は濃いめが好きなのです。次こそはこぼさず移し替えてみせます」
小鳥「…二回に分けて入れればいいんじゃないかな」
貴音「……!流石は小鳥嬢!」
小鳥「あ、うん、ありがとう」
貴音「お湯を」グッ
貴音「お湯…」グググ…
小鳥「?」
貴音「…小鳥嬢。どうやらお湯のぼたんが故障したようです」
小鳥「ええっ?」グッ ジョボボボボ
小鳥「…出るわよ」
貴音「…面妖な」
小鳥「さて、食べましょう」
貴音「…………」ジー
小鳥「あ、あの、貴音ちゃん?取らないの?」
貴音「シッ、静かに」
貴音「目的のお寿司を取るため、集中力を高めている所です」
小鳥「あ、そ、そう。ゴメンね」
貴音「…………」ジー
貴音「今です!」サッ
[マグロ]
小鳥「フフッ、お見事」
貴音「では、お醤油をつけて…いただきます」パクッ
貴音「…おや?」
小鳥「昔よりだいぶ質が上がってるとはいえ、やっぱり安い分…ね?」
貴音「いえ、そうではないのです」
小鳥「ピヨ?」
貴音「このお寿司…サビが入ってないではありませんか!」カッ
貴音「サビの無いお寿司など、具の無いらぁめんのようなものです」
小鳥「それはちょっと言い過ぎな気もする」
貴音「作っている方が入れ忘れたのでしょうか?」
小鳥「あー…うん。言い忘れた私が悪かったわ」
小鳥「くら寿司はね、全部サビ抜きなの」
貴音「なっ…何と…!?」
小鳥「だからワサビが苦手な小さい子供でも気軽に流れてるのを取れるように、全部サビ抜きなのよ」
小鳥「でも大丈夫よ。ほら、別ぞえでワサビはちゃんとあるから」
貴音「それを聞いて安心致しました。では早速…」
小鳥「さて、食事再開っと」
小鳥「ん、何?」モグモグ
貴音「あれ!あのお皿に、面妖な物が!」
小鳥「ん…ああ、あれはエビアボカドね」
貴音「えびあぼかど?」
小鳥「エビの上にアボカドと野菜を乗せてマヨネーズをかけたものよ」ヒョイ
小鳥「ヘルシーで女性に人気の一品よ。食べてみる?」ハイ
貴音「で、では…」アーン パクッ
貴音「!!!!」
貴音「よもやらぁめん以外にもこのようなものがあろうとは」モグモグ
小鳥「気に入ってもらえたようで何より」
貴音「もう一つ頂きたいのですが、宜しいでしょうか」
小鳥「宜しいですよ、たんと食べてくださいね♪」
貴音「…………」ジー
貴音「…………」ジー
貴音「…………」ジー
小鳥「…貴音ちゃん?」
貴音「えびあぼかどを待っています」ジー
貴音「なんと。では早速店の者を」
小鳥「呼ばなくてよろしい。この上にあるタッチパネルで注文できるから」
貴音「このような便利なものが…」
小鳥「えーとエビアボカドは…っと」ピッピッ
小鳥「あったあった。エビアボカドを一皿…」
貴音「ま、待って下さい小鳥嬢!」
小鳥「ん?他のも頼む?」
貴音「いえ…それを見たところ、一皿以上も頼めるのでは?」
小鳥「あーうん、五皿までならいっぺんに頼めるけど…って、まさか」
貴音「五皿お願い致します」
小鳥「ですよねー」
小鳥「来たらパネルから音がして教えてくれるからね」
貴音「はい…ん?小鳥嬢が今取ったお皿、普通のお皿と違うようですが。分厚いというか」
小鳥「ああ、これは二皿まとまってるの。くら寿司は基本的に一皿百円だけど、これは二百円なのよ」
貴音「なんと、百円以外の物もあるのですか」
小鳥「そうね…季節によって色々変わるけど、天ぷらやスイーツ、うどんなんかもあるわよ」
貴音「何でもあるのですね…私、寿司屋というものを軽んじておりました」
小鳥「まあそこまで深く考えなくてもいいけどねー」
貴音「な、何事ですか!?」
小鳥「ほら、さっき注文したやつが来たわよ。タッチパネルを押して音を止めて…と」
貴音「『注文品』と書かれた赤い器に入ったえびあぼかど…あれが?」
小鳥「そうよ。ちなみに間違っても人の注文したお寿司を取ったらダメよ?」ヒョイヒョイ
貴音「心得ました」ヒョイヒョイヒョイ
[エビアボカド]x5
小鳥「それはいいけど…おねーさんそろそろお腹いっぱいかなーって」
貴音「何と。ではいささか名残惜しくはありますが、出るとしましょう」
小鳥「ちょーっと待った!」
貴音「?」
小鳥「会計の前に…くら寿司最大のお楽しみがまってるんだなコレが」
貴音「お楽しみ…?」
貴音「びっくらポンとは…?」
小鳥「フフン、百聞は一見にしかず。食べたお皿をこの投入口に入れると…」カシャンカシャン
ピピピピピピピピピピピピ
貴音「あ、何か動きだしましたよ!」
小鳥「このルーレットが当たりに入れば、上のカプセルが落ちてくるのよ」
『はずれ』
貴音「…外れてしまいましたね」
小鳥「まあそんな簡単には当たらないわよ。あくまでもオマケ的な感じだからね」
小鳥「ちなみに五皿ごとに一回だからまだまだできるわよ」カシャンカシャン
ピピピピピピピピピピピピ
貴音「あ、先ほどとは違う画面に」
小鳥「スロット来た!これは熱い!」
貴音「…そういうものなのですか?」
貴音「はあ、左様ですか」
ピピピピ…ピピ…ピ
『はずれ』
小鳥「…皿ならまだあるのよ?」カシャンカシャン
ピピピピピピピピ…ピピピ…ピ
『はずれ』
小鳥「まだまだぁ!」カシャンカシャン
ピピピピピピピピ…ピピピ…ピ
『はずれ』
小鳥「」
小鳥「…貴音ちゃん。あと二皿ぐらいエビアボカド食べたくなぁい?」ニコリ
貴音「二皿程度造作もありませんが…小鳥嬢の笑顔が怖」
小鳥「注文するわよ?」
貴音「宜しくお願い致します」
小鳥「ようし、最後の五皿!」カシャンカシャン
ピピピピピピピピピピピピッ
『当たり』
小鳥「やった!貴音ちゃん、当たったよ!」
貴音「おめでとうございます、小鳥嬢」
ウィーン…ガチャッ
小鳥「さぁて、何がでるかな…」パカッ
[むてん丸マスコット]
小鳥「おっ、むてん丸」
貴音「むてん丸?」
小鳥「悪の添加物軍団と戦ってるとか何とか。ごめん詳しく知らないんだ」
貴音「いえ、今の話を聞けば大まかな流れはわかりました故」
小鳥「そう。それじゃあ…はいっ、これあげちゃう!」
貴音「…いいのですか?小鳥嬢が引き当てた物なのに」
小鳥「ううん、お皿の半分以上貴音ちゃんのだったからね。それは貴音ちゃんにあげます」
小鳥「初めて回転寿司に来た記念ってとこね」
貴音「…はい」
貴音「はい」
店員「えーっと、お寿司60皿で6,300円ですね」
小鳥「ピヨーーッ!?」
亜美「ん?ね→ね→お姫ちん、なにそれ」
貴音「これですか?これはむてん丸殿です」
真美「むてん…丸?」
貴音「ご存知ありませんか?では今晩、私と一緒に回転寿司に行きましょう。そこで教えてさしあげます」
真美「回転寿司!そんなのもあるのか」
亜美「おっけ→☆」
P「はよーす」
真美「あっ、ピヨちゃんもお姫ちんと一緒に回転寿司行かない?」
小鳥「え゙っ…私は今回はその…遠慮しときます!」
亜美「ありゃあ…じゃあ兄ちゃんは?」
P「回転寿司か。いいな、行くか」
亜美「ひゃっほい!そうこなきゃ!」
真美「んっふっふ~、真美手加減なしで食べちゃうよ~」
P「はっはっは、構わんぞ。気の済むまで食うがいい」
貴音「では私も、全力でいくとしましょう。ふふっ」
その夜、とある回転寿司屋の前で灰になったPが目撃されたとかされなかったとか…
おしまい
ピヨたかには無限の可能性があると思うんだ…
面白かった
いいねこの組み合わせ
Entry ⇒ 2012.06.30 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
岡部「もしも○○だったら!!」
まゆり「あー! オカリンってばまた夜更かししたでしょー!」
岡部「し、仕方なかろう! 混沌たる辺縁から忍び寄る刺客が、この俺を引きずりこまんと」
まゆり「オーカーリーン?!」
岡部「ゲームやってましたすいません」
岡部「お、お前に言われたくないわ! 夏休みの最後にヒーヒー言ってるのは誰だ!?」
まゆり「うっ……お、オカリンだって、まゆしぃと一緒の学校の頃は同じこと言ってたよね!?」
岡部「ぐぬぬ……」
岡部「む……す、すまん……」
まゆり「……もういいよー。ほら、ソファでちょっと寝たほうがいいのです」
岡部「ソファでって……お前が座ったままではないか」
まゆり「だ、だから、まゆしぃの、膝を……枕にすれば……」
岡部「なっ」
まゆり「その、まゆしぃはオカリンの人質なんだから、オカリンはまゆしぃが逃げないように、しっかり見張っておかなきゃ駄目なんだよ?」
まゆり「だ、だから、まゆしぃを枕にすれば、オカリンに押さえられてて、寝てる間もまゆしぃは逃げられないから……」
まゆり「べ、別に直に寝た方が楽なら、まゆしぃはどいてあげるけど!」
岡部「い、いや……別に、そのままでも構わんが……」
まゆり「そ、そっか……」
まゆり「ど、どうかな……」
岡部「ん……まぁ、悪くないな……」
まゆり「なんだかHENTAIさんみたいだねぇ」
岡部「う、うるさい。……はぁ。眠くなってきたではないか」
岡部「そうか……ならば、言葉に甘えて……」
まゆり「うん……おやすみ、オカリン」
岡部「ああ……」
A.まゆしぃマジ天使
A.「Steins;Gate 亡環のリベリオン」全3巻、好評発売中!
岡部「助手よ! 愛してるぞ!」 ガバッ
紅莉栖「ふえぇっ?! なっ、やめんかこのHENTAI!」 ドグゥッ
岡部「ぐふっ……」
岡部「被りまくっているぞクリスティーナ」
紅莉栖「う、うるさい!」
岡部「それに、これは俺の嘘偽りない本心だ! 何故認められんのだ!」 ずいっ
紅莉栖「ひゃぁっ!」
紅莉栖「ぇ、あ、ぅ」
岡部「お前が好きだ。愛している!」
紅莉栖「あ、うあう……」
岡部「お前はどうだ?」
紅莉栖「……」
岡部「ん?」
紅莉栖「ちゃんと、名前で……紅莉栖って、呼んで欲しい……」
岡部「……紅莉栖」
紅莉栖「はぅ////」
岡部「大好きだ。愛しているぞ紅莉栖!」
紅莉栖「お、岡部……!」
紅莉栖「おかべぇ……////!」 ぎゅう
岡部「お前は、どうだ?」
紅莉栖「……」
紅莉栖「……ど」
紅莉栖「どうにかしちゃえば、いいじゃない……////!」
A.チョロ助手
<<R-18>>
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.(:三:) j j 「 ̄ ヒミノ::::i|
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ヽ ヽ._|_ノ く ∧
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岡部「む、冷蔵庫が空ではないか! 助手よぉ! 早急にドクペを補充するのだ!」
紅莉栖「そう思ってケースで頼んどいたから。今日の夕方には届くはずよ」
岡部「そ、そうか。えらく根回しがいいな」
岡部「ふぅん! ようやく助手らしくなってきたではないか! これからも精進し、わがラボのために尽くすがよい! フゥーハハハ!」
紅莉栖「ま、いいけど。というか、別にラボのためというか、岡部のためにやってるわけなんだけど」
岡部「ハハハハハ! ……は?」
岡部「い、いや……別になにも」
紅莉栖「そう」
岡部「……」
紅莉栖「あー、岡部といちゃいちゃしたい」
岡部「?!」
岡部「や、おま、その、なんというか……」
紅莉栖「?」
岡部「その、さっきから不穏なワードばかりが聞こえてくるような気がするのだが……?」
岡部「あ、いや、気のせいならいいのだ、が……」
紅莉栖「あっそ。あーあ、岡部にキスした後ハグして押し倒しt」
岡部「それー! そうそれー!!」
岡部「おのれぇ……さっきから聞いてれば素面で聞くに堪えないような台詞ばかりいいおって……!」
紅莉栖「ああ、そのこと? だって仕方ないじゃない。岡部が好きなんだもの」
岡部「ぬあっ?!」
紅莉栖「仲間想いでここぞという時は必死になって、誰よりも格好よくて……」
紅莉栖「もう、好きになるしかないじゃない」
岡部「ぬあぁっ?!」
岡部「ぬうぅっ……お、俺だ。機関から尋常じゃない精神陵辱を受けている! このままでは俺の深層意識が奴らの手n」
紅莉栖「携帯禁止」
岡部「ぬおっ?!」 どさっ
紅莉栖「だからここで、もっと岡部のことを知りたくなっても……当然の結果でしょ?」 シュルッ
岡部「ぬあーっ!! ぬあーっ!!」
A.ED ひとりぼっちのツンデレ
岡部「フゥーハハハ! 今日も親御から引き離されし混沌とした迷い子を洗脳すべく、我が右腕の能力によr」
まゆり「おかりんといれー」
岡部「俺はトイレではない! そして鳳凰院だ!」 バタバタ
ふぇいりす「きょーまーおやつー」
岡部「俺はおやつではない! おやつは時間になったらだ!」
岡部「ん? うむ、手作りの甘味か。修行の成果が出てるなルカ子。褒めてやろう」ナデナデ
もえか「……」カチカチ カシャッ
岡部「ええい萌郁! お遊戯中は携帯にさわるでない! あとで写真コピーしてやるから!」
ダル「オカリンマジ保父さん」
ダル「そうは言っても、こういうの僕のキャラじゃないっつーか……」 くいっ
ダル「ん? なんぞ?」
すずは「……」
ダル「阿万音氏?」
すずは「……」
ダル「!!」 キュン
ダル「オカリン! 僕、今猛烈な父性愛に目覚めたお!」
岡部「わかったら危なくないように見張っていろ!」
ダル「オーキードーキー!」
くりす「……」ペラッ
岡部「クリスティーナではないか。お前は遊ばないのか?」
くりす「……べつに。みんなとはなしてても、つまんないし」
くりす「ひとりでべんきょうしてたほうが、たのしい」 ペラッ
くりす「あとてぃーなっていうな」
岡部「なんというか、お前ぐらいの年から知識を詰め込んでも、無駄にはならんが勿体無いと思うぞ?」
岡部「せっかく来てるのだから、どうせならあいつらと体でも動かすがいい」
くりす「うるさいばかおかべ」
岡部「ぬっ!」
くりす「?」
岡部「貴様が、俺の右腕の封印を解く鍵を握っていt……ぬおおおぉ?!」
くりす「?!」 びくっ
くりす「ふえっ?!」
岡部「フゥーハハハ! 貴様の命、この鳳凰院凶真が頂いた!」
まゆり「あっ、くりすちゃん!」
ふぇいりす「にゃにゃん、くーにゃんがだいぴんちだにゃん!」
くりす「……っ」 ガタガタ
るかこ「あわわわ、ど、どうしよう」
すずは「こらー! あくのそしきは、このすずはがゆるさないよ!」
岡部「ふぅん! たかが小娘一人何が出来るというのか!」
岡部「所詮一人では、なにかを為すには不十分すぎるといフゴォ?!」 ドゴォ
ふぇいりす「そうにゃ! みんながちからをあわせれば、あくのだいおうだろうがじごくのしはいしゃだろうがへっちゃらだにゃん!」
岡部「ぐふぅ……なんのこれしき……」
岡部「ま、まだ俺は負けてはいなオゴォッ?!」 ボゴォ
るかこ「ご、ごめんなさいおか……きょーませんせい……」
もえか「……たのしい」 カシャッカシャッ
くりす「べ、べつにこわがってなんか……」
ふぇいりす「にゃにゃん! くーにゃんはつよいこだにゃん!」
すずは「にひひ、めがまっかになってるよ」
くりす「う、うるさい!」
まゆり「でも、くりすちゃんいっつもむずかしいほんよんでるから、めいわくかなぁってはなしかけられなくて……」
まゆり「くりすちゃんも、みんなといっしょにあそべたら、まゆしぃはとってもうれしいのです」
くりす「……」
くりす「……」
くりす「……ぜんしょしてみる」
ダル「お疲れオカリン」
岡部「ふん……世話の焼ける奴だ」
A.オカリンマジ大人気
――夜、ラボにて
紅莉栖「ああもう、どうしてあんたと繋がれたまま一晩過ごさなきゃならないんだ……」
紅莉栖「全く橋田の奴、明日会ったらローランド裂引き裂いて、脳弓抉り出して蝶々結びしてやろうか……」ブツブツ
紅莉栖「そりゃあ、私と一晩中一緒にいるのが嫌なのはわかるけど……少しぐらい口を開いてもいいんじゃない?」
紅莉栖「ま、あんたが騒がしくならないのは結構だけど……」
岡部「……いや」
岡部「別に俺は構わん」
紅莉栖「ふぇっ?」
紅莉栖「なっ……?! なっ、ぬぁっ?!」
岡部「それよりも俺は……お前を失うほうがよほど怖い」 ギュウ
紅莉栖「お、おかっ、おかべっ?!」
紅莉栖「は、はいっ!」
岡部「好きだ」
紅莉栖「ひっ?!」
岡部「俺は、お前が好きだ」
紅莉栖「あっ……ぅ……」
紅莉栖「……」
紅莉栖「わ、たしは……」
紅莉栖「私、は……岡部が……っ!」
ピッ
紅莉栖「あ……外れちゃった……」
岡部「……」
紅莉栖「あ、はは……よ、よかったわね! あっさり外れてくれて!」
岡部「紅莉栖……」
岡部「……」
紅莉栖「多分、心拍数やバイオリズムがうまく一致してくれたんでしょうね。そうでなきゃ考えられないし」
紅莉栖「ま、私も清々したし! これでホテルに帰ってゆっくりできるわね!」
岡部「……紅莉栖」
岡部「紅莉栖!」 ぐいっ
紅莉栖「ふぇっ?!」
紅莉栖「や、やめろこのHENTAI!」
岡部「お前の返事を、まだ貰っていない」
岡部「違う。俺の、告白の返事をまだ聞いていない」
紅莉栖「っ、だから、それは……」
岡部「……こんなもの、今は関係ない」 ポイッ
紅莉栖「なっ、私のここ最近の努力の結晶だぞ?!」
岡部「紅莉栖」
紅莉栖「ひゃっ?!」
岡部「俺は、お前が好きだ」
紅莉栖「…………」
紅莉栖「おか……べ……」
岡部「ただ……お前の口から、答えが聞きたい」
岡部「お前は、俺のことをどう思っている……?」
紅莉栖「……わた、しは」
紅莉栖「私は……」
紅莉栖「岡部が……好き」ポロッ
紅莉栖「こっちが、どれだけ……っ、悩んでたか……!」
紅莉栖「それこそ……ぅっ、夢に、でるぐらいにぃ……!」
岡部「すまない……」
紅莉栖「な、で……っん、謝るのよぉ……うえぇ……」
岡部「紅莉栖……」 ナデナデ
紅莉栖「おが、べぇ……」 グスッ
A.ダル「マグマ」 ドンッ
もう許してやれよ
,.. --‐'"ヽ、
,.∠´,,.. -‐/ヾ_\
,,..-'" _,,..===,`' ,-、゙ヽ.
/, ,.. -‐<__,{ ,(´ `ヽ、
(´ォi ゙r-‐''"´ ̄ { ,/´' , ', ゙i
'ミーぅ∪' ∨ ヽ. σ ̄ λ
`ー'′ 人、,.-、..ヽ~~~~ / 並行世界のポシビリティ
/ ,' { r,( ´・ω・) <
/' !∨/:`ニニ´/ ̄ヽ. \ お わ り
i ゙i /`ヽ、_,,. `ヽ´ ヽ
.ハヽ ノ__,.-、 `Y´ `ヽ ',
!. { `,r-{´、 ,..ーヽ ヽ{. ,,..- 、:_ リ
/!ゝ、 ゝ_ヘ‐'_,..-'"ヽ、._/´_,,. _ ゙ヽ_,ハ
/ ハ.(`},、 `ヽ.-‐''',.ハ _ ̄ 、. ヽ、,リ
/', ヽ、゙i、ヽ. },`=彡ヾ、 、. 、 ∨
/ ヽヽ、 } ヽ}゙¨`)ヒニ彡>、 `` 、.ヽィノ
/: ヽ. ヽ. イ /´'''7´ \.ヽ `ヽ、_ノ
終始ニヤニヤしてたわ
Entry ⇒ 2012.06.30 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
絢辻「あなたをあたしのものにします」中多「ふぇ……?」
中多「あの、先輩? これ、先輩のですよね……?」
絢辻(しかもよりによって拾ったのが1年生なんて……橘君は同じクラスだからまだ監視しやすくてよかったのに)
中多「先、輩……? あ、あの……?」
絢辻(……そうよ、まだ焦る必要はないわ。問題は手帳の中身を見られたかどうかであって)
中多「そ、そのぉ……ぐすっ……」
絢辻「拾ってくれてありがとう。あなた、1年生よね? お名前は?」
中多「あ、な、中多です。1-Bの中多紗江です」
絢辻「私は絢辻詞。これ、すごく大切な手帳なの。拾ってくれて本当にありがとう、中多さん」
中多「え、えっと……ど、どういたしまして」
中多「あ、それは……」
絢辻「もしかして……中を見て確かめたり?」
中多「ち、違います! その、先輩が手帳を落とすところをちょうど見てて……」
絢辻「そうだったの。ごめんなさい、プライベートなことも書いてあるから少し気になって」
中多「だ、大丈夫です。気にしてませんから」
絢辻(嘘は……吐いてなさそうね。見るからに嘘を吐けるような子じゃないし、今回は大丈夫――)
橘「絢辻さーん、言われたとおり資料持ってき……あれ、中多さん?」
絢辻(ああもう、また面倒なのが……)
絢辻「ううん、私の手帳を拾ったから届けに来てくれたの」
橘「ええっ、絢辻さんの手帳を!? な、中多さん大丈夫!? 変なことされてない!?」
中多「へ、変なこと……?」
橘「急にネクタイを締め上げられたりとか、復唱を強いられたり――いっ!?」
絢辻「橘君? なに言ってるのかな?」
橘「い、いえ……なにも」
絢辻「次、余計なこと言ったらこの学校にいられなくするわよ?」ボソッ
橘「は、はひっ」
橘「僕の妹が中多さんと同じクラスなんだ。それで話すようになってね」
中多「そ、そうなんです。せんぱ、あ、橘先輩にはすごくお世話になってて……」
絢辻「……お世話になってる? 橘君に?」
橘「あはは、照れるなぁ」
絢辻「橘君、ちょっと」
橘「え?」
絢辻「あなた、この子にいかがわしいことしてないでしょうね」ボソボソ
橘「し、してないよっ」
中多「……?」
中多「え、え? 隙?」
絢辻「男子はみんな狼なの。だから気をつけないと」
橘「ちょっと絢辻さん!?」
中多「えっと、よくわかりませんけど……た、橘先輩は信頼できますから!」
絢辻「え……」
橘「中多さん……ありがとう!」
絢辻(……なんか面白くないわね)
橘「え、でもまだ仕事が」
絢辻「今日はいいわ。あとは私ひとりでやるから」
橘「うん、わかったよ。じゃあ帰ろうか、中多さん」
中多「はい」
絢辻「中多さん? 手帳の件、本当に助かったわ。ありがとう」
中多「あ、そ、そんな……」
絢辻「あと橘君、わかってると思うけど……くれぐれも送り狼にならないようにね」ニコニコ
橘「……了解です」
橘「ねえ中多さん、絢辻さんとは本当になにもなかったの?」
中多「ふぇ? どういうことですか?」
橘「例えば……絢辻さんの態度が急に変わったりとか」
中多「そんなことはなかったと思います」
橘「そっか……中多さんは手帳の中を見たりしなかったよね?」
中多「はい、持ち主は絢辻先輩だってわかってたので」
橘「ならいいんだ。とにかく、あの手帳のことはすぐ忘れた方がいいと思うよ」
中多「忘れる……ですか?」
橘「うん……今までどおりの学校生活を送りたいならね」
中多「え……」
絢辻「あら、中多さん。おはよう」
中多「あ、絢辻先輩。おはようございます」
絢辻「結構早いのね。いつもこの時間なの?」
中多「その、電車が止まったりしても大丈夫なように……」
絢辻「ふふ、心配性なのね」
中多「あ、す、すみません……」
絢辻「どうして謝るの? 私はいいことだと思うわよ」
中多「あ、ありがとうございます」
絢辻(調子狂うわね……)
中多「橘先輩と、ですか?」
絢辻「ええ。なんだかふたりが話してるところって想像できないから気になったの」
中多「その、橘先輩とは……と、特訓をしてます」
絢辻「特訓? なんの?」
中多「あ、アルバイトを始めたいんですけど……わ、私は人見知りなので、それを克服する特訓をしてもらってます」
絢辻「アルバイトね。中多さんってすごいのね」
中多「そ、そんなことないです」
絢辻「あるわよ。なにか目標を持って行動するって、簡単に見えてすごく難しいことだから」
中多「あ、う……ありがとうございます……」
絢辻(むしろ問題は橘君ね。特訓、特訓ねぇ……)
中多「えっと……誰とでも淀みなく話せるようになる練習とか」
絢辻「うん、他には?」
中多「大きな声を出す練習やお茶汲みの練習もしました」
絢辻(案外普通ね。杞憂だったかしら)
中多「あとは……は、早着替えの練習を」
絢辻「ふーん、早着替えねぇ……え、早着替えっ!?」
中多「は、はい。アルバイトの服装に素早く着替えるために必要だからって」
絢辻(あの変態……やっぱりしてるじゃないの、いかがわしいこと)
橘「それじゃあ今日も特訓を始めたいと思うんだけど……その前にひとついいかな?」
中多「はい?」
絢辻「なに?」
橘「どうして絢辻さんもいるの?」
絢辻「中多さんがアルバイトを始めるために頑張ってるって聞いたから、私も手伝いたいと思ったの。昨日のお礼も兼ねてね」
中多「お、お礼だなんて……」
絢辻「気にしないで、私がそうしたいだけだから。それとも私がいるとやりにくい?」
中多「そ、そんなことないです! 絢辻先輩がいてくれると心強いですっ」
絢辻「ふふ、そう? じゃあ私も良いお手本になれるように頑張るわ」
橘(ぼ、僕の立場が……)
絢辻「……教官?」
中多「あ、これは特訓中は橘先輩のことを教官と呼ぶようにしてて」
絢辻「それ、橘君に言われたの?」
中多「そうです」
絢辻「中多さん、ごめんね? 橘君、ちょっとこっちに」
橘「はい……」
絢辻「中多さんがおとなしいのをいいことになにさせてるの?」ボソボソ
橘「いや、そっちの方が雰囲気出るかなぁって……」
絢辻「教官に関しては彼女も気にしてないからいいけど、もしあたしの前で変なことやらせたら……わかってるわね?」
橘「わかってます……」
橘「今日はこのくらいにしておこうか」
中多「は、はい。ありがとうございました」
絢辻「中多さん、お疲れ様」
中多「絢辻先輩……ど、どうだったでしょうか?」
絢辻「うん、初めて見たけどよかったんじゃないかな。自分に自信を持てばもっとおもいきりよく話せると思うわ」
中多「自信、ですか……」
絢辻「急に自信を持つなんて無理な話だから、これから少しずつ自信をつけていけばいいのよ」
中多「……はい! 頑張ります!」
絢辻「私も時間があるときは手伝うから、いつでも声かけてね」
絢辻「ええ、今から片付けるわ」
橘「じゃあ僕も手伝うよ」
絢辻「いいわよ。それよりそろそろ暗くなるから、あなたは中多さんを送ってあげて」
橘「でも今からひとりでやるのは大変じゃない?」
絢辻「慣れてるから平気。ほら、中多さんも待ってるから」
橘「……中多さんを駅まで送ったらまた戻ってくるよ」
絢辻「その頃には終わってるわよ」
絢辻「うん、委員の仕事を少しね」
橘「絢辻さんは委員をかけ持ちしてるから仕事が多いんだ」
中多「そ、それなのに特訓に付き合ってくれたんですか?」
絢辻「可愛い後輩のためだもの。中多さんが気に病む必要はないわ」
中多「……その仕事、私も手伝います」
絢辻「ダメよ。帰りが遅いと親も心配するでしょ?」
中多「ま、まだ大丈夫ですっ。それに3人でやったらきっとすぐ終わりますから」
橘「そうだよ、絢辻さん。中多さんを送るのはそれからでも遅くないでしょ?」
絢辻「まったく……それじゃあ手伝ってもらおうかしら」
中多「終わりましたぁ……」
絢辻「中多さん、ありがとう。あ、ついでに橘君も」
橘「ついで!?」
絢辻「ふふっ、冗談よ。助かったわ、ふたりとも」
中多「あ、絢辻先輩……委員の仕事、また手伝ってもいいですか?」
絢辻「え……? 今日やってわかったと思うけど、なにも面白くないわよ?」
中多「絢辻先輩が特訓に付き合ってくれるから、そのお返しというか……ダメでしょうか?」
絢辻「別に気にする必要はないって言ったのに……わかったわ。そのときはよろしくね」
中多「は、はいっ! ありがとうございます!」
絢辻「もう、お礼を言うのは私の方なのに……さて、外も暗いしはやく帰りましょう」
橘「絢辻さんはそっちだったよね? 僕たちはこっちだから」
絢辻「……私も駅まで付き合うわ」
橘「え、どうしたの?」
絢辻「橘君が中多さんに変なことをしないように見張っておかないと」
橘「だ、だからそんなことしないって!」
絢辻「いたいけな後輩に早着替えをさせるような人の言葉を信用できると思う?」
橘「な……なんでそれを?」
絢辻「中多さん、その人の近くにいると危険よ? こっちに来て?」チョイチョイ
中多「あ、はい……」スッ
橘「中多さぁん!?」
絢辻「うん、もうバッチリね」
橘「そうだね。僕たちから教えられることはもうないよ」
中多「絢辻先輩、教官……ありがとうございます!」
橘「お礼を言うのはまだ早いよ。アルバイトに受かることが目標なんだから」
絢辻「たしかファミレスが希望だったかしら?」
橘「薫がバイトしてるところだね」
中多「あ、でも……商店街にある喫茶店もいいかなと思ってるんです」
絢辻「いいんじゃない? ファミレスよりも落ち着いた喫茶店の雰囲気は中多さんによく合ってると思うわ」
橘(商店街の喫茶店……あの制服が可愛いところかな?)
中多「か、可愛いだなんて……」
絢辻「橘君、セクハラ禁止」
橘「ただ可愛いって言っただけだよっ!?」
絢辻「中多さん、面接で緊張したときはこの特訓を思い出してみて。きっとうまくいくわ」
中多「はい……この特訓を無駄にしないためにも、絶対受かってみせますっ」
絢辻「ふふっ、面接なんて通過点に過ぎないんだからそこまで気張らなくても平気よ。今の中多さんなら大丈夫」
橘(やっぱりこっちの絢辻さんはいいこと言うなぁ)
中多「あ、それじゃあお手洗いに行ってきます」
タッタッタッ……
橘「絢辻さん、僕からもお礼を言っておくよ。ありがとう」
絢辻「なによ、急に。気持ち悪いわね」
橘「僕ひとりだったらきっと中多さんもここまで成長することはなかったと思うから」
絢辻「なに言ってるのよ。あなたがいたからこそ、でしょ。あまり自分を過小評価しない方がいいわ」
橘「そ、そうかな?」
絢辻「あ、反応がむかつくからやっぱり今のなし」
橘「ええーっ!?」
絢辻「別に……ただの気まぐれよ」
橘「本当に?」
絢辻「あとはしいて言うなら、あなたを見張っておくためにね」
橘「僕はそこまで信用されてないのか……」
絢辻「いいじゃない、中多さんからは信頼されてるんだから」
橘「それは絢辻さんも一緒でしょ?」
絢辻「違うわよ。彼女が見てるのは所詮猫被ってるあたしだもの」
橘「僕はそうは思わないよ。むしろそれが普通じゃないかなあ」
絢辻「そうなの? なにが普通なのかってよくわからないのよね」
橘「いっそのことばらしてみちゃうってのはどう?」
絢辻「無理よ。きっと幻滅させるわ」
橘「中多さんは……そんな子じゃないと思うよ。受け入れてくれると思う」
絢辻「でも保証できるわけじゃないでしょ」
橘「保証はできないけど……」
絢辻「別にいいわ。もともと彼女にばらす気はないから」
絢辻「どうせ彼女がアルバイトに受かったらこのおママゴトもおしまい。そしたら変な罪悪感に苛まれることもなくなるわ」
絢辻「関わる理由がないじゃない」
橘「絢辻さんにはなくても、向こうにはあると思うよ」
絢辻「ふーん、例えば?」
橘「具体的なことは言えないけど……中多さんは絢辻さんを慕ってるから」
絢辻「それだけ? そんなの今のクラスメイトと変わらないでしょ」
橘「うーん、なんていうか……結局絢辻さん次第なんじゃないかな」
絢辻「じゃあ余計無理ね。言ったとおり、彼女に今のあたしを見せる気はないから」
橘「でも、見せたくなるときが来るかもしれないよ? それこそ今回特訓に付き合ってくれたみたいに、気まぐれに」
絢辻「さぁ、どうかしらね……」
絢辻「ううん、大丈夫よ。それじゃあ帰りましょう」
橘「そうだね」
中多「あの、先輩……?」
橘「ん? どうしたの?」
中多「もしかして、なにか大事な話してました……?」
橘「んー……大事な話ってわけじゃないけど」
絢辻「そうよ。他愛もない話しかしてないわ。ほら、中多さんも鞄持って?」
中多(どうしたんだろう……どこか変な空気のような……)
橘「今日は時間もあるし、どこか寄って帰ろうか」
中多「あ、いいですね」
橘「中多さんはどこか行きたいところある?」
中多「私は……先輩たちがいるならどこでもいいです」
橘「中多さん、君って子はまったく……絢辻さんは?」
絢辻「そうね……神社に行きたいわ」
橘「じ、神社?」
絢辻「ええ。橘君には悪いんだけど、中多さんとふたりで行きたいの」
中多「え、え……?」
橘「……うん、わかったよ。じゃあ僕は先に帰ってるね」
中多「せ、先輩?」
絢辻「ごめんなさい、急に神社だなんて。つまらないわよね」
中多「私は大丈夫ですけど……橘先輩はよかったんですか?」
絢辻「ええ、きっと察してくれてるだろうから」
中多「察する?」
絢辻「実はね……中多さんに話さなきゃいけないことがあるの」
中多「橘先輩がいると言えないようなことなんですか……?」
絢辻「彼がいるとやりにくいの。あ、橘君に隠し事があるってわけじゃないから安心して」
中多「ほっ……よかったです。もしかして、先輩たちが喧嘩しちゃったんじゃないかと思って」
絢辻(本当にいい子ね……優等生を演じてるだけのあたしとは大違い)
中多「へ……猫?」
絢辻「つまり、普段はいい子を演じてるだけなの。今まで中多さんが見てきた私も演技してる姿なの」
中多「は、はぁ……」
絢辻「もっと驚いていいのよ?」
中多「その……実感がなくて」
絢辻「じゃあ今から本当の私を見せるわ。いい?」
中多「は、はいっ」
絢辻(……どうすればいいのかしら)
絢辻「ご、ごめんなさい。なんだか会話がないとダメみたいで」
中多「あ、そんな焦らないでいいですから……」
絢辻「う、うん。わかってるんだけど……あーもうっ、やっぱり橘君を連れてくるべきだったかしら?」
中多「あ……もしかして今の、ですか?」
絢辻「そ、そうね。こんな感じだわ」
中多「せ、先輩、頑張ってくださいっ」
絢辻「う、うるさいわねっ。どうして年下のあなたに応援されないといけないのよ!」
中多「ふぇっ……!?」
絢辻「ああっ、ごめんなさい、じゃなくて、あーホント調子狂うわね!」
絢辻「というわけで、これが本当のあたしなの。わかってくれた?」
中多「……はい」
絢辻「どう? 驚いた?」
中多「なんだか、意外でした……」
絢辻「まあ当然よね。幻滅した?」
中多「し、してませんっ」
絢辻「正直に言ってくれていいのよ。自分でもこんな人間が好かれるなんて思ってないから」
中多「本当です! こ、こんなことで先輩を嫌いになったりしません!」
絢辻「そう……変わってるわね、あなた」
絢辻「ええ。このことを知ってるのはあなたと橘君だけよ」
中多「そ、そんなに少ないんですか?」
絢辻「そもそも誰にも教えるつもりはなかったのよ。橘君のときも偶然が重なっただけで」
中多「じゃあ、どうして私に……?」
絢辻「彼に唆されたっていうのもあるけど、結局は気が咎めただけね。あなたを騙しているようでなんだか嫌だったのよ」
中多「私は……騙されたとは思ってません」
絢辻「本当に? 今までの優しい絢辻先輩は全部演技だったのよ?」
中多「今の絢辻先輩も……きっと優しいと思いますから」
絢辻「ちょっとあなた、本気で言ってるの?」
中多「だってこうして教えてくれたから」
絢辻「はぁ……おめでたいわね」
中多「え、あ、はいっ」
絢辻「じゃあ帰りましょ。駅まで送るわ」
中多「あの、先輩っ!」
絢辻「なに?」
中多「私……先輩の秘密を教えてもらえてよかったです」
絢辻「……だから調子狂うって言ってるのよ」ボソッ
中多「え?」
絢辻「なんでもないわ。グズグズしないではやく帰るわよ」
橘「絢辻さん、昨日はどうだったの?」
絢辻「どうもこうも、別になにもないわよ。ただあたしの本性を教えてあげただけ」
橘「中多さんはなんだって?」
絢辻「びっくりしたって、それだけよ」
橘「そっか。やっぱり中多さんはいい子だね」
絢辻「そうね。いい子すぎてこっちが戸惑うわ」
橘「でもよかったじゃないか。可愛い後輩に嫌われなくて」
絢辻「はぁ? あたしは別に嫌われたってよかったわよ。鬱陶しい後輩につきまとわれなくて済むし」
橘「あれ? 昨日は幻滅されるから話したくないって言ってなかったっけ?」
絢辻「っ……! 橘君、これ以上無駄口叩くとお仕置きよ」
中多「あ、先輩」
絢辻「あら、どうしたの? 今日は特訓はないはずよね?」
中多「今日は先輩のお仕事を手伝おうと思って」
絢辻「特訓のお返しでもないのに、物好きねぇ。なにもいいことないわよ?」
中多「いえ、その……せ、せ……」
絢辻「なに? ウジウジしないではっきり言っちゃいなさい」
中多「せ……先輩のおそばにいられるだけで嬉しいですから」
絢辻「ああ、そういうこと? じゃあ図書室で待ってて。橘君も呼んでくるから」
中多「え……?」
絢辻(薄々わかってはいたけどやっぱり橘君なのね。まあ彼は少し、ううん、だいぶ変わってるけど……お人好しだから好かれるのかしらね)
絢辻「中多さん、どうしたの? 手が止まってるわよ?」
橘「ははっ、疲れちゃったかな?」
中多「あ、違うんです。その……少し、気になることがあって」
絢辻「どこがわからないの?」
中多「お仕事のことじゃなくて……先輩たちのことなんですけど」
橘「え、僕たち?」
絢辻「中多さんにしては珍しいわね。あたしたちのなにが気になるの?」
中多「えーっと……せ、先輩たちはお付き合いしているんですか……!?」
絢辻「……は?」
絢辻「ちょっと、なに嬉しそうにしてるのよっ!」
橘「いや、だって……本当に嬉しいから」
絢辻「このバカっ……あたしは不本意だわ!」
橘「ひ、ひどいよ絢辻さん……」
絢辻「はぁ、もう……なんでそんなふうに思ったのよ」
中多「橘先輩が絢辻先輩の秘密を知ってたのは付き合ってるからなんじゃないかって思って……」
絢辻「昨日言ったでしょ。この人に知られたのはただの偶然だったの」
橘「というより、あれは絢辻さんの早とちりじゃ……」
絢辻「橘君、なにか言った?」
橘「いえ、なんでもないです」
橘「ああ、それは僕が絢辻さんの秘密を知っちゃったから脅され――いたっ!?」
絢辻「橘君が善意でお手伝いしてくれてるの。そうよね、橘君?」
橘「……そうです」
絢辻「中多さん? あたしたちはあくまでただのクラスメイトなの。付き合うことなんて絶対にありえないから安心してちょうだい」
橘「そ、そんなぁ……」
絢辻「またっ、あなたはっ……!」
絢辻(中多さんの前でそんな反応したら彼女が傷つくってわからないの!?)
絢辻「本当よ、まったく……ところであなたと橘君はどうなの?」
中多「え、ええっ!? わ、私と橘先輩はなにもないです……!」
絢辻「どうかしらねぇ。あなたが親しく話せる男子ってだけで充分特別だと思うけど?」
中多「あ、あう……」
絢辻「橘君はどう思ってるの?」
橘「ぼ、僕? そりゃあ中多さんに好かれてたらすごい嬉しいよ」
絢辻「あら、お互い満更でもないみたいじゃない」
中多「あ、絢辻先輩っ、からかわないでください……!」
絢辻「ふふ、ごめんなさいね。反応が面白いからつい」
橘「そうだね。そうだとしたら僕は今頃薫と付き合ってることになるよ」
中多「薫?」
絢辻「あたしたちのクラスメイトよ。橘君と仲が良いの」
中多「橘先輩……やっぱり女の子と仲が良いんですね」
橘「いや、それほどじゃ……」
絢辻「大丈夫よ、今橘君と1番仲の良い女の子は中多さんだから」
中多「そ、そういうことじゃないですっ」
橘「絢辻さんが中多さんをからかってた時間が1番長かったけどね」
絢辻「うるさいわね。それよりも中多さんはこの後時間ある?」
中多「この後は……特に用事はないです」
絢辻「昨日はあんなことになっちゃったから、今日こそどこか寄って帰らない?」
中多「はい、喜んでっ」
橘「あのぉ……絢辻さん? 僕にお誘いの言葉がないような」
絢辻「え、当たり前でしょ? あなたは誘ってないもの」
橘「ひ、ひどい!」
絢辻「冗談よ。あなたも付き合いなさい」
絢辻(むしろあなたがいないと中多さんが喜ばないのよ)
橘「中多さんが働きたいのはこんな感じの喫茶店?」
中多「はい。あ、でももっと制服が可愛いです」
橘(制服が可愛い……やはりあそこか)
絢辻「橘君、やらしいこと考えてないでしょうね」
橘「ま、まさか。中多さんだったらどんな制服でも映えるだろうなと思っただけだよ」
絢辻「ふーん……まぁそのとおりね。あなたならきっとどの制服でも似合うわ」
中多「あ、あんまりおだてないでください……」
絢辻「お世辞なんかじゃないわよ? そもそも今のあたしはお世辞なんて言わないから」
橘「絢辻さんのウェイトレス姿……あだだっ!?」
絢辻「声に出てるわよ、声に」
橘「ほ、本当に似合うと思っただけなのに……」
中多「もし私がアルバイトを始めたら、絢辻先輩も制服を着てみませんか?」
絢辻「え……いやよ」
中多「そんなぁ……」
橘「中多さんのじゃたぶんサイズが合わないんじゃないかな?」
中多「あ……そうですね。絢辻先輩は背が高いから」
橘「それもあるけど、む――いででででつ!?」
絢辻「橘君、それ以上言うと耳が裂けるわよ?」
中多「はい。今週の土曜に面接だそうです」
絢辻「そう。受かるといいわね」
橘「面接官が男の人だったら間違いなく受かるよ」
絢辻「でもそれはバイト先で中多さんがセクハラされないか心配ね。橘君にも騙されてたのに」
橘「だ、だからあれはあくまで特訓の一環であって……!」
絢辻「あーはいはい。もうその言い訳は聞き飽きたわ。中多さん? バイト先で男性に変なことされたらすぐあたしに言うのよ」
橘「絢辻さんに言ってどうするの?」
絢辻「もちろん……その男を社会で生きていけなくするわ」ニコッ
中多「あ、ありがとうございます……?」
絢辻「は、はぁ!?」
橘「だって中多さんのことばかり気にかけてるから」
絢辻「特訓に付き合ったんだから最後まで面倒見ようと思ってるだけよ」
橘「最後までってどこまで? バイトを始めてからのことも気にしてるようだけど」
絢辻「ああもう、うるさいわね。ただ中多さんのことが心配なだけよ、悪い?」
橘(なんていうか、子離れできない親を見てるような気分だ)
中多「わ、私は絢辻先輩が気にかけてくれてすごく嬉しいですっ」
絢辻「別に……あなたのためじゃないわよ。ただの自己満足」
絢辻「昼休みに来るなんて珍しいわね。どうしたの?」
中多「お昼をご一緒しようと思って……あ、もちろん迷惑じゃなければですけど」
絢辻「いいわね……と言いたいところなんだけど、橘君はもう学食に行ったみたいなのよね」
中多「絢辻先輩はこれから学食ですか?」
絢辻「ええ。中多さんも学食?」
中多「はい」
絢辻「ならふたりで行きましょうか。運が良ければ橘君も捕まるだろうし」
絢辻「橘君いないわね。テラスで食べてるのかしら」
中多「そうかもしれません」
絢辻「ごめんなさいね、ふたりきりになっちゃって」
中多「いいんです。先輩がいれば」
絢辻「ふふ、ありがと。いつもはクラスのお友達と食べてるの?」
中多「はい。美也ちゃ、あ、橘先輩の妹の美也ちゃんと食べてます」
絢辻「ふぅん。今日はどうしたの?」
中多「朝、先輩に会えなかったから……その、どうしても一目顔が見たくて」
絢辻「くすっ、なぁにそれ? 放課後になったら会えるのに、おかしな子ね」
絢辻「くれるって言うならもちろん頂くけど……わざわざ作ってくる気なの?」
中多「と、特訓のお礼にと思って……」
絢辻「お礼ならあたしの仕事を手伝ってもらってるじゃない」
中多「でも、それだけじゃ足りないような気がしたんですっ」
絢辻「そんなことないわよ。すごく助かってるわ」
中多「う……だ、ダメでしょうか?」
絢辻「ちょっと、ダメとは言ってないでしょ。楽しみにしてるわ。その代わり半端なものは許さないわよ?」
中多「は、はい。腕をふるって作ってきます!」
中多「先輩さえよければ、明日にでも」
絢辻「わかったわ。橘君にも声をかけておいた方がいいのよね?」
中多「えっと……あの、それは……」
絢辻「別に恥ずかしがらなくてもいいのよ」
中多「そ、そうじゃないんです……今回は、絢辻先輩だけで……」
絢辻「言われてみれば、お弁当を3人分作ってくるのも大変ね」
中多「は、はい。橘先輩にまた別の機会にと思って……」
絢辻(要はあたしで先に練習しておくってことね)
絢辻「遠慮しないでいいわよ。なに?」
中多「たまにでいいので……またこうしてお昼をご一緒してもいいですか?」
絢辻「……? 別にかまわないけど。そもそも許可を求めるようなこと?」
中多「ほ、本当にいいんですか?」
絢辻「嘘吐く理由がないでしょ。あなた相手ならあたしも猫被らなくていいから楽だもの」
中多「しぇんぱい……ありがとうございますっ」
絢辻「いちいち大袈裟ねぇ」
中多「先輩、お待たせしました。あれ、橘先輩はいないんですか?」
絢辻「少しやることがあるから遅れるって。どうせ下らないことだろうけど」
中多「そ、そうなんですか?」
絢辻「下らないだけならマシだわ。犯罪になるようなことをしてなければいいけど」
中多「あ、あはは……」
絢辻「まあいいわ。彼が来るまではふたりでやりましょう」
中多「はい」
中多「ふぇ?」
絢辻「ん、すぅ……」
中多「せ、先輩?」
絢辻「あ……ごめんなさい。少しウトウトしてたみたい」
中多「疲れてるんですか?」
絢辻「昨夜遅くまで起きてたから、そのせいね」
中多「先輩、少し寝てていいですよ? 私だけでも進められますから」
絢辻「ほんと? じゃあそうさせてもらおうかしら……橘君が来たら起こしてちょうだい」
中多「わかりました。先輩、おやすみなさい」
絢辻「うん、おやすみ……」
中多「あ、橘先輩」
橘「絢辻さん、寝てるの?」
中多「昨日徹夜して、疲れてたみたいで」
橘「絢辻さんが寝てるところなんて初めて見たよ。絢辻さんは授業中も絶対に寝ないから」
中多「え? そ、それって普通じゃ……」
橘「うっ……ほ、ほら! 絢辻さんって他人に隙を見せようとしないタイプでしょ? だからこうして無防備に寝てる姿が意外だなぁって」
橘「中多さん、絢辻さんから信頼されてるんだね」
中多「え、そ、そんな……でも絢辻先輩、寝顔も素敵です」
橘(たしかに、この寝顔は犯罪級の可愛さだな)
中多「え、髪ですか?」
橘「うん。すごくサラサラできっと最高の触り心地だと思うよ」
中多「橘先輩、触りたいんですか?」
橘「そうしたいところだけど、ばれたら僕の社会的立場が危ういからね。だから中多さんにやってもらおうと思って」
中多「わ、私は別に……」
橘「触ってみたくないの?」
中多「……触ってみたいです」
橘「こんなチャンス滅多にないよ! するなら今しかない!」
中多「う……」
サラッ……
中多「ふあっ……す、すごいサラサラ……」
絢辻「んぅ……んー?」
中多「っ……!?」
絢辻「中多さん……? もぉ、なにしてるのよ。悪戯なんてあなたらしくな――え? 橘君?」
橘「え、え? ぼ、僕は見てただけでなにもしてないよ?」
絢辻「はぁ……困ったわね。どうやって躾けようかしら、この駄犬」
橘「だ、だから僕はなにもしてな――」
中多「先輩の寝顔がかわ、じゃなくて、すごく気持ちよさそうに寝てたので、気が引けて……」
絢辻「あたしのためを思ってくれたのは嬉しいけどね……一生の不覚だわ。彼に寝顔を見られるなんて」
中多(また見たいなぁ……)
絢辻「あとあの悪戯はなに? どうせ橘君に唆されたんでしょ?」
中多「で、でも私も触ってみたいと思ってましたから……」
絢辻「あたしの髪を?」
中多「は、はい……」
絢辻「はぁ……言ってくれればいくらでも触らせてあげるわよ。あなたならね」
中多「サラサラで触り心地がいいから、触ってるとなんだか気持ちいいんです」
絢辻「それってそこまでいいものかしら」
中多「あと……先輩はいい匂いしますから」
絢辻「……匂い?」
中多「先輩の近くにいると、先輩のいい匂いがして……なんだかドキドキするんです」
絢辻「自分じゃよくわからないわね。あなたはあたしの匂いが好きなの?」
中多「好き、です……」
絢辻「ふーん……」
中多「ん……もう少し近づかないと……」
絢辻「それならあたしによりかかっていいわよ」
中多「え……?」
絢辻「ほら、もう少し椅子を寄せて」
中多「は、はいっ」
ガタガタッ
絢辻「もっと体を預けて……どう? これならわかる?」
中多「はい……先輩のいい匂いがします」
中多(先輩……)
絢辻(……ん? この腕に当たってるものって、もしかして……)
中多(先輩、先輩……)
絢辻(ちょっと……おかしいでしょ、あたしより1歳年下なのにこれなの!?)
中多(先輩の匂いに包まれたい……抱きしめてほしい)
絢辻(大きいとは思ってたけど、ここまでなんて……一体なにを食べて育ったらこうなるの?)
中多(しぇんぱぁい……)
絢辻(とりあえず橘君にはあとでもう1回お仕置きしておきましょう)
よく思い付いたもんだ
中多「へ……? あ、はいっ!」
絢辻「ぼーっとしてたみたいだけど大丈夫?」
中多「す、すみません……先輩の匂いと体温が、すごく心地良かったから……」
絢辻「眠くなっちゃった?」
中多「そ、そうです」
絢辻「じゃあさっさと残りの仕事を片付けちゃいましょう。そろそろ橘君も復活するだろうから」
中多「あ、あの……橘先輩が起きるまで、このままでもいいですか?」
絢辻「……もう、しょうがないわね」
絢辻「ごめんなさい、待たせちゃった?」
中多「大丈夫です。私も今来たところですから」
絢辻「よかった。さて、どうしましょうか。もう食堂は埋まってるかしら」
中多「かもしれません」
絢辻「天気もいいし、中庭でも行く?」
中多「先輩がそれでいいなら」
絢辻「じゃあ中庭で食べましょう」
中多「私はパンが1つありますから」
絢辻「それだけで足りるの?」
中多「少食だから大丈夫です」
絢辻(少食でここまで育つですって……?)
中多「どうかしましたか?」
絢辻「ううん、なんでもないわ。それじゃあ早速頂いていい?」
中多「はい。ど、どうぞっ」
中多「……」
絢辻「……」
中多「あの、先輩……?」
絢辻「はぁ……」
中多(も、もしかして……美味しくなかったのかな……?)
絢辻「中多さん……とっても美味しいわ」
中多「え……」
絢辻「とっても美味しいって言ったの。聞こえなかった?」
絢辻「ふふ、そんなに緊張した?」
中多「せ、先輩が急に押し黙るから、お口に合わなかったのかなって……」
絢辻「あなたのオロオロする顔が可愛いからついからかっちゃったのよ」
中多「うぅ……先輩、ひどいです」
絢辻「言ったでしょう? あたしは優しくないって。それにしてもあなた、料理もできるのね」
中多「で、できるってほどじゃ……」
絢辻「高校1年生でこのレベルなら充分できるって言っていいと思うわよ」
中多「そうでしょうか?」
絢辻「自分をおとしめるのはあなたの悪い癖よ。もっと自信を持てって前も言ったじゃない」
中多「え? 橘先輩?」
絢辻「ええ。次は橘君に食べてもらうんでしょ?」
中多「いえ、橘先輩にはまた別のお礼をしようと思ってます」
絢辻「は……? あたしは橘君の前の練習台じゃなかったの?」
中多「練習だ……ち、違います! 先輩を練習台に使ったりなんてしません!」
絢辻「そ、そうだったの……ごめんなさい、勘違いしてたみたい」
中多「先輩、もしかして美味しいっていうのも……」
絢辻「あ、それは違うわよ。本当に美味しいから美味しいって言ったの」
中多「変な質問……?」
絢辻「中多さんって橘君のことが好きなのよね?」
中多「す、す……っ!?」
絢辻「橘君には言わないから、本当のことを教えてほしいの。あなたは橘君が好きなのよね?」
中多「……橘先輩にはすごく感謝してます。でも、好きではないです」
絢辻「あたし、今までなにやってたのかしら……」
中多「せ、先輩?」
絢辻(つまりこの子は本当にあたしにお礼がしたいだけでお弁当を作ってきたり、仕事を手伝ってくれてるのね……)
中多「あの、私からも1つ聞いていいですか?」
絢辻「え……なに?」
中多「先輩は……好きな人っているんですか?」
絢辻「好きな人? いるわけないでしょ」
絢辻「ずっと優等生を演じて生きてきた人間なのよ? 誰も本当のあたしを知らない」
絢辻「誰もあたしを好きにならない。好きになってもそれはあたしの表面だけ。そんな人をあたしが好きになるわけないでしょ?」
中多「でも……これからはわかりませんよね? 先輩の秘密を知ってる人なら……」
中多「た、橘先輩じゃないですっ」
絢辻「じゃあ誰?」
中多「それは……」
絢辻「ふぅ……この話はもうやめましょう。あたしに恋愛なんてできると思えないわ」
中多「あ、諦めちゃうんですか?」
絢辻「少なくとも、今はね……ごちそうさま。お弁当、美味しかったわ」
中多「……」
橘「……」
絢辻「……」
中多「……」
橘(なんだか空気が重いな……いつもは絢辻さんの隣に座る中多さんが、なぜか今日は僕の隣だし)
橘「ねぇ、ふたりとも――」
絢辻「ああもうっ……面倒くさいわね!」
橘「うわっ。あ、絢辻さん?」
絢辻「橘君、悪いけど少し席を外してもらえる?」
橘「う、うん。わかった」
中多「は、はい」
絢辻「こっちに来て。あたしの隣に座って」
中多「え、え、え?」
絢辻「いいから、はやく。あたしの言うことがきけないの?」
中多「き、きけますっ」ガタッ
絢辻「いい子ね。じゃあ座って。はい、昨日みたいにあたしにもたれかかって」
中多「あ、絢辻先輩……?」
絢辻「ちゃんとあたしの匂いを感じる?」
中多「感じます……」
絢辻「そう。じゃあ少し話をしましょう」
中多「好きな人のことですか?」
絢辻「それ以外ないでしょ」
中多「す、すみません」
絢辻「謝らないでいいわ。あの質問をした理由は?」
中多「う……」
絢辻「答えたくないならいいわ。次ね、あなたはあたしに好きな人がいないと困るの?」
中多「そ、そうじゃないです。でも、先輩が恋愛を諦めちゃうのは……いやです」
絢辻「あたしの勘違いだったら笑ってくれてかまわないから」
絢辻「あなたは、中多さんは……あたしのことが好きなの?」
中多「あ、わ……わ、私は……は、い」
絢辻「そう、やっぱりそうなのね。ふふ、今度こそ勘違いじゃなくてよかった」
中多「ご、ごめんなさ……」
絢辻「だから、謝らないでいいって言ってるでしょ。あたしはそういうことに偏見はないから」
中多「本当ですか……?」
絢辻「ええ。じゃなきゃ今頃あなたのことを突き飛ばしてるわよ」
絢辻「あなたが好きになったのは今のあたしじゃないでしょ? 特訓に付き合ってた頃の猫を被ってたあたしよね?」
中多「好きになったのは、そうです……でもっ、今の先輩も好きです!」
絢辻「あなたならそう言ってくれると思ったわ」
中多「先輩は、先輩ですから」
絢辻「それで、あなたはあたしとどうしたいの? 付き合いたいの?」
中多「そこまでは……わかりません。私も、こんなこと初めてで……」
中多「ただ、先輩のそばにいたいです」
絢辻「あなたに好かれているという事実は純粋に嬉しいと思う。でも」
絢辻「あたしは、あなたのことは好きじゃないわ」
中多「っ……!」
絢辻「というより、よくわからないの。誰かとここまで親しくなったことがないから」
絢辻「今あなたに抱いてる気持ちが恋なのかどうかも、判断できないの」
絢辻「でも、あなたがあたしにとって特別な人なのは間違いないわ」
絢辻「自分からこの秘密を話す気になるなんて今までありえなかった。それだけでも、あなたは他の人とは違う」
絢辻「さっき、あなたと少し気まずい空気になったとき、すごく嫌だった」
絢辻「あなたがあたしから離れてしまうんじゃないかと思うと辛かった」
絢辻「今、あたしの口からたしかに言えることはね……あなたにそばにいてほしいってこと」
中多「ふぇ……?」
絢辻「なによ、その反応は。いやなの?」
中多「あ、いえ、嬉しいですっ。そばにいてもいいんですよね?」
絢辻「いてもいい、じゃないわ。いなきゃいけないの。あなたはこれからあたしのものなんだから」
中多「は、はい! 先輩のそばにいます!」
絢辻「あたしの方だけ気持ちをはっきりさせてないことはどうでもいいの?」
中多「先輩のそばにいられるだけで嬉しいですから」
絢辻「単純ねぇ……そんなことじゃいつか悪い男に騙されるわよ」
中多「先輩は騙したりしないって信じてます」
絢辻「もう……調子狂うわね、ほんと」
絢辻「ちょ、ちょっと……図書室なんだから、あんまりそういうのは……」
中多「でも、先輩から離れたくないです」
絢辻「抱きつかなくてもいいでしょ?」
中多「ダメなんです、先輩のものだからもっとくっつかないと」
絢辻「どういう理屈よ、もう……しょうがないんだから」
ナデナデ
中多「んっ……しぇんぱぁい」
絢辻「橘君が戻ってくるまでだからね」
橘(そろそろ終わったかと思って戻ってみれば……なんだこれは)
中多「戻ってきてもらいたいんですか……?」
絢辻「そうね……もういいかなって思ってきてるところよ」
中多「えへへ、私もです」
絢辻「でもこれじゃあいつまで経っても仕事が片付かないのよね」
中多「じゃあ、あと5分経ったら始めませんか?」
絢辻「あら、5分でいいの?」
中多「……やっぱり10分はほしいです」
橘(なにを話してるんだろう……出ていくタイミングがつかめない)
絢辻「なに?」
中多「あの……き、き……」
絢辻「木? 木がどうしたの?」
中多「し、してほしいです……キ――」
橘「もう話は終わった?」
中多「ひぇっ……!?」
絢辻「橘君、今戻ってきたところ?」
橘「うん。そろそろいいかなと思って。仲直りできたみたいだね」
絢辻「そもそも喧嘩してたわけじゃないわよ」
中多「ぐすっ……」
絢辻「ふん、当然でしょ」
橘(しかしこうして並んでいると、本当に大きさの差がよくわかるな……)
絢辻「橘君、どこ見てるのかなぁ?」
橘「な、中多さんのリボンが曲がっているような気がして……あ、あはは」
絢辻「へぇ、そうなの。でもおかしいわね、曲がってないみたいだけど」
橘「あ、あれー? 僕の気のせいかな……?」
絢辻「下手な嘘ね……いい? 今後中多さんをいやらしい目で見たら承知しないからね」
橘「今までそんな目で見たことは一度も……」
絢辻「わかった?」
橘「わ、わかりました」
絢辻「これは過保護とは違うわよ」
橘「いや、どう見ても過保護じゃ……」
絢辻「あなただって自分のものを人に取られるのはいやでしょ? それと一緒よ。言わば所有権の主張ね」
橘「そんな身勝手な……中多さんを所有物みたいに言うのは聞き捨てならないよ」
中多「い、いいんです」
橘「え、いいの?」
中多「はい。だって私は……絢辻先輩のもの、ですから」
絢辻「ね、わかってくれた?」
橘(本当になにがあったんだ、ふたりの間で)
橘「あれ?」
梅原「大将、どうした?」
橘「いや、絢辻さんがいないなぁと思って」
棚町「絢辻さんだったらさっき1年生の子とどっか行ったわよ」
橘「ああ、中多さんか」
梅原「そういや俺もよくその子と絢辻さんが一緒にいるのを見かけるな」
橘「仲良いからね」
棚町「最近休み時間になるとよく来てるけど、なにしてんの?」
橘「さあ。そこまでは僕もわからないよ」
中多「先輩、どうですか?」
絢辻「うん、心地良いわ。あなた、本当に柔らかいわね……このまま寝ちゃいそう」
中多「休み時間、終わっちゃいますよ?」
絢辻「残念ね。次の昼休みもしてくれる?」
中多「はい、喜んで」
絢辻「じゃあよろしくね」
中多「……えへへ」
絢辻「そう……ねぇ、中多さん」ムクッ
中多「はい?」
絢辻「抱きしめていい?」
中多「ふぇ……? きゃ!」
絢辻「あなたに触れてるとすごく落ち着くの」
中多(先輩、やっぱりいい匂い……)
絢辻(ダメね、あたし……すっかり甘えちゃって。まだ自分の気持ちもはっきりさせてないのに)
絢辻「あら、デートのお誘い?」
中多「で、デートなんでしょうか」
絢辻「それとも、あたし襲われちゃうのかしら」
中多「お、おそ……っ!?」
絢辻「冗談よ。日曜日ね、わかったわ」
中多「ありがとうございます。それじゃあそろそろ戻りましょう」
絢辻「そうね。また昼休みにね」
これ、橘さんの一人負けじゃね?
絢辻「予想はしていたけど、あなたってお嬢様だったのね」
中多「わ、私はお嬢様なんかじゃ……」
絢辻「豪邸と言っても差し支えない家じゃないの」
中多「すみません……」
絢辻「別に責めてるわけじゃないわよ。ベッドに腰掛けてもいい?」
中多「あ、どうぞ」
絢辻「ほら、あなたもこっちに来て」
中多「はい。失礼します」
中多(せ、先輩の吐息が耳に……!)
絢辻「学校じゃ誰もいない場所を探すのが大変で……中多さん?」
中多「は、はい?」
絢辻「顔赤いわよ。大丈夫?」
中多「だ、大丈夫ですっ」
絢辻「緊張してるの?」
中多「あう……」
絢辻「あなたの部屋なのに、面白いわね。緊張するとしたら普通あたしの方でしょ」
絢辻「あたし? そうでもないわね。あなたといると不思議と落ち着くから」
中多「うぅ、私だけですか……」
絢辻「あなたこそなんでそんな緊張してるの? 学校でふたりで話してるときと変わらないじゃない」
中多「そ、そうですけどぉ……」
絢辻「けど……なにかしようと思えばなんでもできるのはたしかね」
中多「な、なにかって……?」
絢辻「例えば……あなたをこのまま押し倒したりとか?」
中多「ふぇっ!?」
絢辻「もう、本気にしないでよ。するわけないでしょ」
中多「あ、あのあのっ……!」
絢辻「へぇ、意識してるのね」
中多「あうぅ……」
絢辻「純情そうに見えて、意外とエッチなのね」
中多「ちが、違うんですっ! 私が考えてるのは、そうじゃなくて……」
絢辻「どんなこと考えてるの?」
中多「……言えません」
絢辻「つまり、言えないくらいのことってわけね」
中多「な、なんでそうなるんですかっ」
中多「先輩、ひどいです」
絢辻「ふふ、ごめんなさい。そういえばバイトの方はどうなの?」
中多「順調です。先輩たちの特訓のおかげです」
絢辻「男の人から変な目で見られたりしてない?」
中多「……たぶん」
絢辻「どうかしらね、あなたが気づいてないだけかもしれないわよ」
中多「そ、そんなことないです」
絢辻(あるのよ……最近男性客が急に増えだしたもの)
中多「だ、大丈夫ですっ」
絢辻「あたしのものを邪な目で見る人間がいるって事実だけで腹立たしいわ」
中多「そんな怒らなくても……」
絢辻「怒るわよ。あなたはわかってないだろうけど、あたしはあなたがすごく大切なのよ?」
中多「え……」
絢辻「他の誰よりも大切なの。だからもう少し自覚してちょうだい」
中多「……はいっ♪」
絢辻「来ない方がいいわよ」
中多「え……どうしてですか?」
絢辻「つまらない家だもの。あたしは今すぐにでも家を出たいわ」
中多「お家、好きじゃないんですか……?」
絢辻「ええ、大っ嫌いよ」
中多「そんな……」
絢辻「なんであなたが悲しそうな顔するのよ。あなたのそんな顔は見たくないわ」
中多「ひゃうっ」
絢辻「せっかくふたりきりなんだから、もっと楽しみましょう」
中多「く、くすぐったいです」
絢辻「くすぐってなんかいないわよ?」
中多「話すたびに、吐息が、耳に……」
絢辻「じゃあこういうのはどうかしら……ふー」
中多「ひゃわっ!?」
絢辻「あはは、可愛い反応ね」
中多「え?」
絢辻「こんなことしたいとか、こうしてもらいたいとかよ。今日は好きなだけ甘えていいのよ?」
中多「あ……ありますっ」
絢辻「なぁに? 教えて」
中多「あ、でも……」
絢辻「遠慮しないで。言ってみて」
中多「あの、その……せ、先輩と……」
絢辻「あたしと?」
中多「……キス、したいです」
中多「あ、す、すみません! い、今のは聞かなかったことに……!」
絢辻「待って、違うの。いやってわけじゃないの。ただ……」
中多「や、やっぱりいやなんですね……ぐすっ」
絢辻「だから違うって言ってるでしょ! 本当にしていいものか考えてるのよ」
中多「私は……先輩としたいです、キス」
絢辻「あなたもよく考えて。あたしたちはまだ付き合ってるわけでもないのよ?」
中多「ま、まだ付き合ってないだけです……っ!」
絢辻(そうよね……結局はあたし次第ってことよね)
絢辻「あたし、は……」
中多「先輩は……私のこと、どう思ってるんですか……?」
絢辻「……」
中多「嫌い、ですか?」
絢辻「そんなわけないわ!」
中多「でも、好きじゃないんですよね……」
絢辻(好きよ、好きに決まってる。でも本当にいいの? あなたはあたしを……裏切らない?)
中多「あの、先輩っ。お腹は減ってませんか?」
絢辻「え……お腹?」
中多「近所で美味しいって評判のケーキを買っておいたんです。よかったらどうですか?」
絢辻「あ……そうね、せっかくだし頂こうかしら」
中多「じゃあすぐ持ってきますね」
タッタッタッ……
絢辻「はぁ……気を遣わせちゃったみたいね」
絢辻(それにしても最低ね、あたし……散々彼女の優しさにつけこんでおきながら、好きの一言も言えないなんて)
橘「絢辻さん、今日もこれから委員の仕事?」
絢辻「そうよ」
橘「僕も手伝った方がいいかな」
絢辻「中多さんがいるから大丈夫よ」
橘「ははっ、それもそうか。ふたりはあいかわらず仲が良いね」
絢辻「実際はそう単純でもないんだけどね」
橘「ん、どういうこと?」
絢辻「……ちょうどいいわ。少し話があるから付き合いなさい」
橘「中多さんはいいの? もう図書室にいるんじゃ」
絢辻「少しくらい待たせても平気よ。それよりも、今から話すことは絶対に中多さんに言っちゃダメよ」
橘「うん、わかった。それで話っていうのは?」
絢辻「うーん、そうね。どこから話そうかしら……あなたからは今のあたしと中多さんの関係はどう見える?」
橘「今の絢辻さんと中多さん? 仲の良い先輩後輩、かな」
絢辻「やっぱりそう見えるわよね。でも実際は違うの」
橘「絢辻さん……後輩いじめはよくないよ」
絢辻「なに勘違いしてるのよ! あたしが彼女をいじめるわけないでしょ!」
橘「こ、告白っ!? 中多さんが絢辻さんに!?」
絢辻「告白って言っても、普通に好きって言われただけよ」
橘「中多さんが絢辻さんに……そ、それで絢辻さんはなんて返事したの?」
絢辻「適当にお茶を濁したわ。そのときは自分の気持ちもよくわかってなかったし」
橘「そうなんだ……今のふたりの様子を見るに、普通にOKしたものかと思ったよ」
絢辻「たしかにそう見えるでしょうね。だって今はあたしも彼女のことを好きだもの」
橘「ああ、絢辻さんもね……え、絢辻さんも好きなの!? 両想いってこと!?」
絢辻「彼女が心変わりしてないかぎり、そうなるわね」
絢辻「問題はそこなの。あたしたちは付き合ってもいいのかしら」
橘「両想いなら断られることはないと思うけど」
絢辻「そうじゃなくて、同性と付き合って問題ないのかってことよ」
橘「それは……問題ありまくりじゃないかな」
絢辻「やっぱり付き合うべきではないわよね」
橘「そうかな? 女の子同士でも両想いなら付き合っちゃっていいと思うけど」
絢辻「でも結婚もできないし子供もできないのよ? それで本当に幸せになれるの?」
橘「そこまでは考えてなかったなぁ……だけど、今自分の気持ちを我慢するのはいいの?」
絢辻「……」
橘「絢辻さんはそれで幸せなの?」
橘「善意で言ったつもりなのに……」
絢辻「今付き合っても別れたら意味ないじゃない」
橘「普通付き合う前に別れることなんて考えないよ」
絢辻「女同士なんて……長く続くはずないわ」
橘「中多さんが絢辻さんに愛想を尽かす姿は想像できないなぁ」
絢辻「なにが起こるかわからないでしょ」
橘「そんなこと言ってたら誰とも付き合えないよ……」
絢辻「……中多さん、あたしを嫌わないでいてくれるかしら。こんなあたしを」
橘「それは大丈夫だと思うよ。僕が保証する」
絢辻「あなたに保証されてもねぇ……」
橘「少しは信じてよ……」
絢辻「とりあえず、あたしが余計なことを考えすぎてるのはわかったわ。ありがと」
橘「中多さんと付き合うことにしたの?」
絢辻「そうは言ってないでしょ」
絢辻「待たせちゃってごめんなさい」
中多「大丈夫です、気にしてませんから」
絢辻「早速で悪いんだけど、もう帰りましょう」
中多「えっ? お仕事はいいんですか?」
絢辻「今日はいいわ。それよりも寄りたいところがあるの。付き合ってくれる?」
中多「もちろんです、先輩」
絢辻「ありがと。じゃあ行きましょ」
中多「ここ、ですか……」
絢辻「覚えてる? あたしがあなたに初めて本性を見せたとき」
中多「忘れるはずありません」
絢辻「あなた、すごく驚いてたわね」
中多「だって、本当に意外でしたから」
絢辻「ふふっ……でもあなたが受け入れてくれて嬉しかったわ」
中多「私が先輩を拒むはずありません」
絢辻「あなたは優しいものね」
中多「え? 甘えてたのは私の方で……」
絢辻「ううん、あたしは甘えてたの。あなたの好意につけこんで、自分の寂しさを紛らわせてた」
中多「寂しさ……?」
絢辻「わからないわよね。でもそのまま聞いて」
絢辻「あたしはね、あなたが考えてるような人間じゃないの。面倒なことは大嫌いだし、寂しがり屋だし、臆病者なの」
絢辻「今まで曖昧な態度をとってたのもそう……ただ怖かったの」
絢辻「ずるいわよね。あなたの気持ちを無理矢理聞き出しておいて、自分はなにも言わないなんて」
絢辻「でもやっぱり怖くて……もしあなたに拒絶されたらって思うと、なにも言えなかった」
絢辻「ごめんなさい……こんな姿、幻滅するわよね」
中多「……幻滅なんて、しません。でも、先輩はずるいですっ!」
絢辻「っ……!」
中多「先輩は……私に言いました。自分に自信を持てって」
中多「なのに、その先輩が自分に自信を持てないのは、ずるいと思います」
中多「私は先輩のこと、好きですっ。何度でも言えます。先輩が好きです」
中多「だから、怖がらないでください……私は、先輩を拒絶したりしません」
中多「先輩……私のこと、信じてください」
中多「離れたりしません。ずっと先輩のそばにいます」
絢辻「こんなわたしでもいいの?」
中多「先輩じゃなきゃ、いやです。先輩が好きなんです」
絢辻「わたしも……わたしも、好き。中多さんのことが好きよ」
中多「えへへ……先輩の気持ち、やっと聞けました」
絢辻「ごめんなさい、こんなに遅くなってしまって」
中多「いいんです。ずっと待つつもりでしたから」
絢辻「わたしはそのつもりよ」
中多「じゃ、じゃあ……これからは名前で呼んでほしいです」
絢辻「もちろんいいわよ、紗江」
中多「はう……しぇんぱぁい……」ギュッ
絢辻「ねぇ、紗江……この前できなかったこと、しない?」
中多「ふぇ? できなかったこと?」
絢辻「もう、とぼけないでよ……キスに決まってるでしょ」
中多「あ……し、したいですっ」
絢辻「いやだって言われたら泣いてるところだったわ……好きよ、紗江。愛してる」
中多「んっ……」
絢辻「紗江……」
中多「しぇんぱい……」
絢辻「もう眠い?」
中多「少しだけ……」
絢辻「疲れちゃったのね。わたしはここにいるから、そのまま寝ちゃいなさい」
中多「先輩……おやすみのキス、してほしいです」
絢辻「甘えんぼなんだから、しょうがないわね……ちゅっ」
中多「んぅ……えへへ♪ 先輩、おやすみなさい」
絢辻「おやすみ、紗江」
乙
Entry ⇒ 2012.06.29 | Category ⇒ アマガミSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
大河「士郎は私のだーっ!」
士郎「何だ、蜂にでも刺されたかな?」
士郎「あれ、令呪がある・・」
セイバー「シロウ、これはあれです、聖杯戦争のフラグです」
士郎「もう解体したんじゃなかったっけ」
セイバー「だいぶ後の話ですよ、それは」
大河「あーあー、マスターたちに告ぐ・・・」
士郎「うおっ!?何だ何だっ!?」
大河「これは知っての通り聖杯戦争だ!」
士郎「ちょっと待てこれはどういうことだ」
セイバー「シロウ、なんだか街が変な雰囲気の頭悪そうな結界に包まれています」
士郎「あの変なほうの聖杯の話か・・・」
大河「ルールは簡単、最後までやられなかったチームの優勝!」
大河「ただし私も参加する!」
セイバー「えっ」
大河「覚悟しなさいセイバー!士郎は私が貰う!」
士郎「えーっ!?」
大河「では、聖杯戦争を開始する!」
アーチャー「せっかく鮎が解禁されたというのに、時期を選ばん奴だまったく」
凛「・・・貴方そういうキャラだったかしら」
アーチャー「多分結界の影響だろう。今なら釣竿工場を超えられそうな気もする」
凛「まあそんなことは後でいいわ。それより作戦を考えましょう」
アーチャー(真面目にやったところで、まともなオチが待っているとも思えんがなあ)
桜「先輩は自分のですって・・・!?」
ライダー「サクラ、色が変わってますよ」
桜「・・・それにあろうことか私の存在は完全スルー?」
桜「・・・いいでしょう、そちらがその気ならいい機会です」
桜「先輩は私が独占する!邪魔する奴らなんて皆飲み込んでやる!」
バゼット「放っておけばいいのではないですか」
ランサー「呼ばれた以上、仕事をしないのもどうかと思うのだが」
バゼット「どうせ話の内容的に我々はカマセですよ。真面目に付き合う必要もないでしょう」
ランサー「そうか、んじゃ釣りに行ってくる」
イリヤ「・・・でも、なんで私のところにはサーヴァントが来ないのかしら。バーサーカーが来るはずよね?」
切嗣「・・・残念だが、その期待には答えられそうにないな」
イリヤ「えっ!?キリツグ!?」
ギルガメッシュ「我にセイバーを手に入れる機会を準備するとは上出来だ」
ギルガメッシュ「・・・しかし、我のマスターはどこにいるのだ?」
大河「はーい!私でーす!」
ギルガメッシュ「・・・はぁ?」
ギルガメッシュ「なぜ貴様のような魔術師でもない人間に我が呼び出さなればらんのだ!?」
大河「えー、WINWINの関係じゃない」
大河「私はシロウを手に入れてハッピー、貴方はセイバーちゃんを手に入れてハッピー」
大河「これ以上ない関係だと思うんだけど?」
ギルガメッシュ「乗った」
ウェイバー(Zeroのヒロインのほう)「ちょっと待て!なんで僕達がいるんだよ!」
ライダー(ワイン盗んだほう)「ふむ、実は急遽一枠空きができてな」
ライダー(ひげの生えてる方)「なんでもキャスター(5次)の奴が旦那と愛を育むのに忙しいから代わりに出て欲しいと言われて」
ライダー(地図盗んだほう)「それで急遽余が参戦することになったのだ、付き合え、ウェイバー」
ウェイバー「・・・こんなんで大丈夫なんだろうか」
ギルガメッシュ「後は雑種共の潰し合いでも見るとs・・・」
大河「早速衛宮邸に突撃だーっ!」
ギルガメッシュ「貴様、我にわざわざ働かせようというのか」
大河「何ニートみたいなことを言ってるの!セイバーちゃんを手に入れるなら今でしょうが!」
ギルガメッシュ「・・・仕方がない、付き合うとしよう」
アーチャー「なんだ、作戦はどうした」
凛「作戦なんてどうでもいいでしょ!流れ的に先手必勝よ!」
凛(アイツひとりじゃ心配じゃない)
アーチャー「仕方ないな、それではさっさと向かうとしよう」
士郎「・・・まあ、迎え撃つってことでいいんじゃないか」
セイバー「珍しく消極的ですね。まあ私としてはご飯が食べれるのでそれで構いませんが」
士郎「なんか家を出るとバッドエンドな気がする」
セイバー「さすがタイガー道場に通いつめただけのことはありますね、シロウ」
士郎「やめて」
大河「たーのーもー!」 ドンドンドン
ギルガメッシュ「セイバー!我が迎えに来てやったぞ!素直に開けろ!」
大河「ちょっと士郎!居留守は良くないんだからねー!大人しく私のモノになりなさい!」
ギルガメッシュ「・・・セリフが被っているぞ」
(ヒュッ―)
ギルガメッシュ「――!! 退がれ、大河!」
大河「え、わっ!」
凛「仕損じたか・・・」
ギルガメッシュ「我とセイバーの逢瀬を阻むとは無粋な雑種め!」
凛「別に貴方がセイバーをどうしようが私はどうでもいいしむしろルート選択肢が減る分プラスだけど!」
凛「衛宮くんのことを取られるわけにはいかないのよ!」
アーチャー「・・・だそうだ、悪いな、英雄王」
ギルガメッシュ「―貴様、本人の癖に」
大河「えっ!?ちょっと!?どういうことなのそれ!?」
大河「えーっ!アーチャーってなんか色々間違って第五次聖杯戦争では黒歴史を消そうと思って参戦したけど結局性根は変わってなくて今の士郎のことを助けちゃったりしててツンデレキャラ扱いな未来の士郎なの!?」
アーチャー(グサッ)
ギルガメッシュ「そういうことだ」
アーチャー「・・・貴様、他人の黒歴史を暴くとはどういうつもりだ!」
ギルガメッシュ「フン、結局はセイバーも、そこの女もモノに出来ずに失い続けた雑種の黒歴史など隠してやる価値もないわ!」
凛(やっぱりどう見ても別人よねえ・・・)
ギルガメッシュ「黒歴史は黒歴史らしく大人しく消えろ!セイバーは我のモノだ!」
???「・・・おっと、そういうわけにはいかないんですよね」
大河「桜ちゃん!?」
桜「私だってセイバーさんが貴方のものになること自体はどうでもいいですが」
桜「やはり藤村先生に先輩を取られるわけには行きません!」
ギルガメッシュ「・・・だそうだ、アーチャー。生前の貴様は随分モテていたようだな」
アーチャー(・・・帰りたい)
ギルガメッシュ「・・・また増えたのか」
イリヤ「ロリっ娘ブルマは正義の証!イリヤスフィール・フォン・アインツベルン只今参上!」
イリヤ「シロウは誰にも渡さない!やっちゃえ、キリツグ!」
イリヤ「―って、あれ?」
イリヤ「ちょ、ちょっとキリツグ!どこ行ったの?」
セイバー「ハムッ!ハフハフッ!ハムッ!」
士郎「よく噛んで食べろよ、セイバー」
セイバー「無論です!」
士郎「さて、外は騒がしいけど今のうちちょっと洗濯でもするか。」
士郎「・・・結構溜まってるなあ」
―やあ、久し振りだね士郎
切嗣「そうだよ士郎。元気でやっているようだね。良かった」
士郎「死んだはずじゃないのか」
切嗣「なに、ちょっとばかり化けて出たのさ」
士郎「えー・・・」
士郎(―待てよ、聖杯戦争中に「化けて出た」ということは)
切嗣「・・・多分考えている通りだよ。士郎」
-衛宮邸、外
ギルガメッシュ「雑種共!そこをどけえ!我はセイバーをモノにするのだ!」
アーチャー「はいはい複製複製」
黒桜「先輩以外皆死ねばいいのにっ・・・」
大河「―体は竹刀で出来ている、血潮は竹で心は猛虎、幾度のソフトを越えてメインヒロイン無し、ただ一度のエンディングもなく・・・」
凛「宝石を全部使って破産してでもっ・・・」
イリヤ「キリツグー!どこー!?」
ライダー「・・・しばらく様子を見ているとしますか」
アーチャー(! この感じ・・・)
イリヤ「あーもー!こうなったら令呪を・・・!」
切嗣「・・・その必要はないよ、待たせたね、イリヤ」
イリヤ「え、わあっ!?」
ライダー「イリヤスフィールが離脱しました、か・・・」
ライダー「・・・しかしあれは、追いかける必要がありそうですね」
士郎「で、これはどういうことなんだよ」
切嗣「かいつまんで言えば僕はアサシンで、イリヤが士郎を手に入れたがった結果こうなったというわけさ」
士郎「いや、それにしても俺の意思とかはどうなったんだよ」
切嗣「まあいいじゃないか、結局イリヤ√はなかったんだ、一度くらい楽しんでおくといい」
士郎「・・・」
イリヤ「そうそう、だいじょーぶ!セイバー√のBADみたいにはしないから!キリツグに怒られちゃったし」
切嗣「僕としても一度は娘が幸せになるルートが見たい」
イリヤ「そーそ!このまま一緒にいようよシロウ!」
ライダー「・・・親子水入らずのところ申し訳ありませんが少々待って貰いましょうか」
士郎「ら、ライダー!?」
ライダー「百合ルートの作れそうなはずの私も!一ルートも無いんですよ!」
ライダー「他のルートで桜とイチャイチャしてもよかったのに!そういうのも無いんですよ!」
ライダー「私はライダー√を要求する!」
切嗣「・・・付けられていた、か」
切嗣「やむを得ないな、僕は親として子供のために譲る訳にはいかない」
士郎「お、おい、親父・・・」
アーチャー「・・・もらった!覚悟しろ英雄王!」
ギルガメッシュ「ぐっ・・・貴様っ・・・」
ギルガメッシュ(くそっ・・・エアが間に合わんっ)
大河「―士郎!そんなに、そんなに私が嫌なの!?」
アーチャー「なっ、藤ねえっ、なんでっ・・・」
大河「だって!そんなに凛ちゃんのために頑張って・・・私は・・・貴方のいた世界の私は・・・やっぱり・・・」
アーチャー「違うんだ藤ねえ!俺はただ俺の我儘に藤ねえを巻き込みたくなかっただけで!」
ギルガメッシュ「―弁解を邪魔させてもらうぞ、アーチャー」
ギルガメッシュ「アーチャー!女というものはな!常に自身を必要とする存在を求めているものなのだ!」
ギルガメッシュ「貴様はそれに気づいておきながら!結局!誰を選ぶ事もなかった!」
ギルガメッシュ「それは拒絶するのと同じ、―いや、それ以下だ!ハーレムヘタレの罪というのは重いのだぞ!アーチャー!」
ギルガメッシュ「その罪、王である我が裁いてくれる!」
ギルガメッシュ「―乖離剣、エア!」
アーチャー「くっそおおおおおおおおおおおおっ!」
大河「凛ちゃんと桜ちゃんも見当たらないし、一気に二人減ったと考えていいのかな」
ギルガメッシュ「・・・そう寂しそうな顔をするな虎。話のノリ的に別に死んだわけではなし、アーチャーの奴にとっては良い灸だったろう」
大河「・・・そうじゃない」
ギルガメッシュ「?」
大河「別の士郎がああなら、今の士郎も私のことは二の次なのかなって」
ギルガメッシュ「―フン、なら無理にでも手に入れれば良いだろう」
ギルガメッシュ「第一そのつもりでコレを行なっているのだろうよ、お前は」
ギルガメッシュ「そういうものだ。我を見ろ、二次創作でさんざんストーカー扱いされてもセイバーを手に入れる思いは決して変わらん」
大河「むー、手に入れたらヤッただけですぐ飽きたじゃない」
ギルガメッシュ(ギクッ)
ギルガメッシュ「・・・蒐集は過程を楽しむものだ。集めたら仕舞い込めば良い」
大河「ま、そうだね!」
大河「私らしくなかった!士郎がどう思っていようと士郎は私のもの!絶対手に入れる!」
ギルガメッシュ「フン、いい眼になったではないか、大河」
イリヤ「ちょっとキリツグ!戦うんじゃなかったの!」
切嗣「譲らないとは言ったが、戦うとは一言も言っていない」
切嗣「第一僕はアサシンのクラスである以上不利だ。ならここは体制を立て直すべきだろう」
切嗣「・・・あっちの家の方での戦闘も終わったみたいだしね」
ライダー「待ちなさい!いや、待たなくてもいいから士郎はおいていきなさい!」
士郎「あー、もうなるようになればいいや・・・」
セイバー「大変です、メインヒロインであるはずの私の出番がないし、シロウは見覚えのある悪人面のオッサンにさらわれて仕舞いました」
セイバー「どことなく昔の聖杯戦争とデジャブですが、きっと気のせいでしょう」
ライダー(征服王のほう)「ようセイバー!久しいな!」
セイバー「ライダー!?、い、今は少々待ってください!私の食卓の危機なのです!」
ウェイバー「あら、行っちゃたよ」
ライダー「なんだ、付き合いの悪いやつだな」
ウェイバー「追いかけないのか?」
ライダー「一応アレも女だ、食卓の危機なら仕方あるまい。それに現代大戦略を買った帰りに壊してもいられん」
セイバー(更にデジャブな気がしてきましたが、もう考えないようにしましょう)
大河「家の中は誰も居ないね」
ギルガメッシュ「照れて隠れているのか、可愛いやつめ」
ギルガメッシュ「ならば我が直々に見つけ出してやらんとな!」
大河(このポジティブさはどこから来るんだろう・・・)
ギルガメッシュ「ほら、何をグズグズしている、いくぞ大河」
セイバー「どこですかシロウ!メインヒロインの可愛いアルトリアちゃんが迎えに来ましたよ!」
ライダー「・・・また面倒なのが増えたわね」
セイバー「あの胸の無駄な脂肪!ライダーですね!」
ライダー「なんで胸で私なのかどうかを見分けるのですか」
セイバー「成長しなかった者の恨み!今晴らしてくれる!」
ライダー「待ちなさい!シロウがあそこにいます!」
セイバー「それは本当ですか、ライダー!」
セイバー「あれは・・・イリヤスフィール」
切嗣「・・・チッ」
セイバー「き、切嗣!?なぜここに」
セイバー「しかしそんなことはどうでもいい!今はまとめて吹き飛ばすのみ!」
エ ク ス
セイバー「約束された―――」
イリヤ「させない!シロウガーード!」
士郎「え、ちょっと!オイ!」
セイバー(しかし、今更発動は止められないっ・・・)
セイバー「ならば・・・」
セイバー「向きを変えるのみ!」
カ リ バ ー
セイバー「―勝利の剣!」
ライダー「え」
ギルガメッシュ「くく、嫌よ嫌よも好きのうち、ということか」
ギルガメッシュ「態々我に位置を知らせるとはな!待っていろセイバー!」
大河(絶対違うと思うけどなあ)
―冬木市内、小洒落た喫茶店―
バゼット「あ、あの」
ランサー「ほら、あーんしろバゼット」
バゼット「ッー!」
ランサー「どうだ、美味いかバゼット」
バゼット「――おいしい、です」
ランサー「そりゃ良かった」
ランサー(それにしてもここはいいデートスポットだな)
ランサー(洒落ているし、静かだし、言う事なし―)
ブオンブオンブオンブオンブオン!
ランサー「ん、なんだあの音は」
兵士「ヒャッハー!流石王様っす!」
兵士「オラオラ、道を開けろっー!」
兵士「ちわーっす!三河屋でーす!」
ウェイバー「それ明らかに間違ってるよね!」
ランサー「なんだ、暴走族か。どうでもいいな」
ライダー「続け野郎ども!オケアノスに浮かぶ夕日まで競争だ!」
ウェイバー「それもなにか間違ってるよね!絶対になにかおかしいよね!」
兵士「「「「「ヒャッハー!王様に続け-!」」」」」
ギルガメッシュ「態々露払いをしておくとは気が利いているなセイバー!益々気に入った!我のモノになれ!」
大河「たまには違うパターンの挨拶はないの?」
ギルガメッシュ「様式美だ」
セイバー「ええい、一難去ってまた一難ですか!ぶっちゃけありえません!」
切嗣「よし、今のうちに退こう」
イリヤ「ふふ、たーっぷり遊ぼうね、シロウ!」
ビュン!
セイバー「!!」
ギルガメッシュ「くく、相変わらず素直でないなセイバー」
ギルガメッシュ「わざわざ俺を呼んだにも関わらずいざ近づいたら雑種の話題か」
ギルガメッシュ「・・・だが、我も少しばかりその扱いには腹が立つ」
ギルガメッシュ「この俺のモノとして相応しくなるよう、直々に躾てくれるわ!」
セイバー「あぐっ!」
ギルガメッシュ「・・・躾けてやると言ったのが聞こえなかったか、セイバー」
大河「それに士郎は私のだ!あげない!」
ギルガメッシュ「・・・大河もそう言っている。人の恋路を邪魔する無粋な真似をセず、大人しく我の躾を受けるんだな!」
セイバー「くっ・・・」
セイバー「いいえ、シロウは私のもので、私はシロウのものです!」
セイバー「それは決して譲りません!」
セイバー「違う!大河がシロウに会う前からシロウは私の鞘だ!」
セイバー「だからシロウは私のものだ!」
大河「士郎は私のだーっ!」
ギルガメッシュ「ええい、好い加減にしろ貴様ら!」
ギルガメッシュ「なにはともあれセイバーは我のモノ!断じて他の雑種のモノではない!」
ギルガメッシュ「我のモノになると言うまで何度でも躾直してやる!」
ギルガメッシュ「我は我が宝物庫の鞘のみで貴様を倒してみせるわ!」
セイバー「・・・舐められたモノですね!」
セイバー「その慢心ごと、お前を切り伏せてみせる、英雄王!」
大河(わわ、なんだかまずい雰囲気に・・・)
ギルガメッシュ「往くぞセイバー!貴様の覇を示してみせろ!」
ギルガメッシュ「―我がそれを許すとでも思ったか、セイバー?」
セイバー「ぐふっ!」
ギルガメッシュ「刺さらぬと思うのは早計、鞘とて武器として捨てたものではない」
セイバー「くっ!」
ギルガメッシュ「・・・そして、な」
ギルガメッシュ「ただまっすぐにしか飛ばぬ訳でもないのだぞ?」
ギルガメッシュ「どうしたセイバー、先程迄の威勢はどこへ消えた?」
ギルガメッシュ「それとも理解したか、この我に逆らうことなど無意味だと」
セイバー「・・・まだまだあっ!」
ギルガメッシュ「―それで攻撃のつもりか?」
ギルガメッシュ「鞘というのは防具としても使えるのだぞ?」
ギルガメッシュ「諦めろセイバー、所詮貴様では我には勝てぬ」
セイバー「負ける・・・訳には・・・」
ギルガメッシュ「まだ強情を張るか、セイバー」
セイバー「私は・・・シロウに・・・」
大河「!」
ギルガメッシュ「この期に及んで、まだ奴の名を口にするか」
ギルガメッシュ「大した根性だ。だが―」
大河「待って」
大河「私が戦う」
ギルガメッシュ「―正気か、貴様」
大河「セイバーちゃんが士郎のために戦うなら、私は私の力でそれを打ち破る」
ギルガメッシュ「・・・我がセイバーを手に入れるのを邪魔する、と?」
ギルガメッシュ「そのつもりなら我のマスターであっても容赦はせぬぞ」
大河「・・・力ずくでも手に入れろって教えてくれたのは貴方じゃない」
大河「―令呪を以って命ず。英雄王ギルガメッシュ、私が士郎を手に入れるためセイバーを打ち破るのを邪魔するな」
ギルガメッシュ「やむを得ん、令呪を持ってまで我を諦めさせるのなら引っ込んでやるとしよう」
ギルガメッシュ「手段を教えてやったのは我だ。結果を見届けてやるのも悪くはない」
大河「―ありがと」
ギルガメッシュ「なに、すぐ死ぬ、時間に余裕のない雑種に気紛れに道を譲ってやっただけだ」
ギルガメッシュ「―そうさせた以上、我を興じさせて見せよ、大河」
セイバー「・・・大河」
大河「・・・長い竹刀?」
ギルガメッシュ「セイバーの剣とも打ち合える。我が保障しよう」
セイバー「タイガ、どうしても貴方がやるというのですか」
大河「腕の面なら心配ないよ、セイバーちゃん」
大河「虎聖杯の影響下・・・私に大きな勝機がある」
セイバー「わかりました。ならば私も全力で臨みます」
ギルガメッシュ(全力?我の時には手加減していたとでも言うつもりか、面白くない)
セイバー「シロウは・・・」
大河「士郎は・・・」
「「私のだーっ!」」
大河「血潮は竹で、心は猛虎」
大河「幾度のソフトを越えてメイン無し、ただ一度のエンディングもなく、ただ一つのラブシーンもない」
大河「一番可愛いはずのキャラはここに一人、たまに道場でロリブルマと説教に酔う」
大河「―ならば、我が生涯の意味は」
大河「この身を滅ぼしてでも、士郎を手に入れること!」
UNLIMITED BUSHIDO STICK
大河「無限の―――竹刀―――!!」
セイバー(だが竹刀一種であれば、弾き返せるはずだ)
セイバー(タイミングを作って、宝具で巻き返す!)
大河「いけええええええええええええ!」
セイバー「防いで―」
セイバー「!」
ズウゥウゥゥゥウウウウン!
セイバー
ギルガメッシュ「ほう、流石は俺の嫁、アレの見た目に惑わされんとはな」
セイバー「なんです、この威力は・・・」
セイバー「受けていたら剣と鎧ごと砕かれていた―」
大河「おらおらおらおらおらおらおらおら!!」
セイバー「くっ!」
ギルガメッシュ「ほほう、言うだけのことはあるな、大河」
ギルガメッシュ「我に割り込んだ無礼はそれで不問にしてやろう」
ギルガメッシュ「男の息子は親を助けるために日々農作業に励んだが、それが災いしてある時大敗を喫した」
ギルガメッシュ「それに発奮した息子は日々吊るした岩に突きを打ち続け」
ギルガメッシュ「ついには鉄面をも砕き、眼球を抉る突きを編み出すことに成功した」
ギルガメッシュ「気をつけろよセイバー、その美しい顔が台無しになっても知らんぞ?」
大河「あたれええええええええええ!」
セイバー(大河は熱くなってるように見えて、私の回避を読んで竹刀を打ち込んできている・・・)
セイバー(どうすれば、どうすればいい)
ギルガメッシュ(セイバーの眼がえぐられるのも多少心配ではある、素直に虎竹刀の原典を渡すべきだったか?)
ギルガメッシュ(いや待て、隻眼というのも悪くはないな)
ギルガメッシュ(身に余るモノを抱いたがゆえに失う、それを端的に示しているといえる)
ギルガメッシュ(これは、どう転んでも我が楽しめるような結末になりそうだな)
大河「面!突きぃ!胴!小手ぇ!」
大河「突き!突きぃ!突きぃぃぃ!」
セイバー「大河が・・・金色に輝いている!?」
大河「これが私の!スーパーモードだぁぁぁぁあああ!!!」
セイバー(まずい、このままでは)
セイバー(ええい、一か八かっ!)
セイバー「ならこれが、私のスーパーモードです!」
ブチッ!
ギルガメッシュ「・・・黒くなったか。我はその姿に興味は無いのだがな」
オルタ「―貴様の戯言を聞くために出てきてやったわけではない、金ぴか」
ギルガメッシュ「ふん、その姿の貴様など虫ケラほどの興味も沸かぬわ、さっさと破れて朽ちろ、帰れ」
オルタ「―生憎だが、そうもいかない」
オルタ「私はシロウを喰いたい。そのためにはここで散るわけにはいかん」
大河「―そんなこと、尚の事やらせはしない!」
ヴォーティ
オルタ「卑王――」
ガーン
オルタ「鉄槌――!」
大河「―竹刀が全部弾かれた!?」
オルタ「まだだ!」
オルタ「二連鉄槌―ー!」
大河「まだまだぁっ!」
オルタ「防いだかっ!」
オルタ「だが次は防がせん、これで終わる!」
オルタ「卑王―鉄槌―!」
大河「―行けるっ!」
大河「突きぃぃぃいいいっっ!」
ギルガメッシュ「―ほう」
ギルガメッシュ「真名も解放せずに、伝承通り面を砕き眼球を抉るか」
ギルガメッシュ「やはり面白いな、流石だ」
オルタ(刺突で私の視界を奪い、それで創りだした死角に入り込み、躱す)
オルタ(只の人間がここまで出来るもの、か・・・)
大河「消え、た・・・」
大河「―勝ったの?」
ギルガメッシュ「その通りだ、大したものではないか貴様」
大河「ありがと・・・」
大河「セイバー倒しちゃって、ごめんね。ギルガメッシュ」
ギルガメッシュ「―くく、くはははははは!」
ギルガメッシュ「変な奴だなお前は!我も納得ずくだ、何を気に病むことがある」
ギルガメッシュ「それに我は黒い方はどうでもいいのだ、手間を省かせたのみ」
大河「わ、ちょっと待って!」
ギルガメッシュ「我を待たせるんじゃない!さっさと往くぞ!」
―冬木市内―
警察「こらー!そこのバイク止まりなさい!」
兵士「ヒャッハー!俺たちを止めれるのはガソリン切れだけだぜぇ!」
ランサー「・・・まだやってるのかあいつら」
バゼット「ランサー、私は少し休みたい」
ランサー「ん、そうか、んじゃあ・・・」
バゼット「そ、そのっ・・・できれば・・ああいうところ・・で・・・」
ランサー「・・・ああいうところ?――っておい、アレは」
バゼット(ギュウウウウウウウ)
バゼット(コクコク)
~一方そのころ市内のどこか~
切嗣(セイバーの霊圧的な何かが消えた・・・)
イリヤ「シロウ・・・こっちに来て・・・」
士郎「い、いや、そのっ!ちょっと待って!イリヤ裸じゃ」
イリヤ「もう!何気にしてるのシロウ!姉弟なんだから一緒にお風呂に入るくらい普通じゃない!」
士郎(いやそれは絶対普通じゃないというかなんというかおかしいというか)
切嗣(・・・居づらい)
士郎「いやそのだからえっとオレの意思というかなんというか」
イリヤ「シロウ、私のこと嫌い・・・?」
士郎「いっ、いや、その、全然そんなことは!」
イリヤ「良かった!なら大丈夫だよね!」
士郎「大丈夫って、何が―!」
切嗣(ちょっと外に行ってこよう)
バゼット「えっとそのあのあのえとえと」
ランサー「ああもう!黙ってオレに任せとけ!」
バゼット「は、はいっ!」
切嗣(やっぱり屋上に行こう)
切嗣(怪しまれないためにはチャンスになるまで待ったほうが・・・)
切嗣(チャンスになるタイミングは、やはり近場にいたほうがわかりやすいな)
切嗣(覗くか)
ランサー「よっと・・・うん、いい感じで締まってるな・・・」
切嗣(・・・)
切嗣(しばらく続きそうだな、士郎の方もちょっと見てくるか―)
ドーン!!
バゼット「な、なんです!?」
ランサー「・・・落ち着け、隣だ!」
士郎「藤ねえ、なんでこんな所に・・・」
大河「しーろーうー!!!」
大河「ロリは犯罪だってちゃんと教えたでしょ!」
大河「私だって!私だってそんなシーンが欲しいのに!」
大河「独占しちゃってロリブルマのバカバカバカ!」
ギルガメッシュ(だからこいつらは後にしようと言ったのだが・・・)
イリヤ「弟を姉が独占して何が悪いの!」
イリヤ「まんねんばーじんのタイガと違って私はちゃんとイクところまでイッたんだから!」
大河「なんで・・・すって・・・」
士郎「えっ」
イリヤ「シロウだってイクところまでイッたしシロウはおねーちゃんのわたしがずーっとわたしのものにするんだから!」
大河「認めん!認めんぞおおおおおお! おねーちゃん認めません!」
イリヤ「私だっておねーちゃんだもん!としまのおねーちゃんよりピッチピチのほうがシロウだって嬉しいはずだもん!」
大河「あまつさえ士郎の初めてを奪った挙句ぅ!私をトシマ呼ばわりだとお!」
ギルガメッシュ(オバサンと言わないだけ親切だと思うがな)
士郎(それは言わないほうがいいと思うぞ)
大河「ええいやってしまえギルガメッシュ!あのロリブルマに年功序列というモノを全身全霊を持って叩きこめーっ!」
大河「誕生日の度にケーキにろうそくが増えて微妙な気持ちになる私の悲しさを思い知らせてやれ―っ!」
士郎(今度から20本で固定しよう)
イリヤ「ハタチすぎた女は皆オバサンって、この前、街でじょしこーせーがいってたもん!」
大河「おば・・・さん・・・?」
ギルガメッシュ「あ」
士郎(もう俺しーらね)
???「おばさん・・・?」
ドカーン!
士郎「なっ、いきなり壁が!」
バゼット「私にはあまり関係なさそうな話題だったのでやり過ごすつもりでしたが気が変わりました!」
バゼット「その生意気な口を二度と聞けないようにしてあげ―」
―ザシュッ!
バゼット「いったあああああ!?」
切嗣「令呪を以って命ずる。ランサー。僕に従え」
ランサー「っておい!またこのパターンかよ!」
切嗣「奇遇だね。僕にとってもこういうことは初めてではないよ」
イリヤ(キリツグは確かに似たようなことやってるけど微妙に違うような気が・・・)
切嗣「さらに令呪を以って命ずる。ランサー、命に変えてもその悪趣味なサーヴァントを倒し、僕達が引く時間を稼げ」
大河「え、切嗣さん!?」
切嗣「久しぶりだね、大河」
切嗣「積もる話もあることにはあるが、あいにく今は余裕がなくてね」
切嗣「また今度にすることにしよう、大河」
大河「あ!逃げられた!」
ギルガメッシュ「追うぞ大河!そこの青タイツは放っておけ!」
ギルガメッシュ「命拾いしたな青タイツ!我は急ぐから後回しにしてや―
ヒュン!
ギルガメッシュ「貴様・・・余程死にたいようだな」
ランサー「釣りの時の恨みぃ!調度良いから今ここで晴らしてくれる!」
ギルガメッシュ「フン!青タイツなど魚礁の代わりに沈めてくれるわ!我の釣果の足しになることを光栄に思うが良い!」
ランサー「はっ!そんなノーコンで投げたところで俺には当たらないね!」
ギルガメッシュ「回避スキル如きで勝った気になるか、青タイツ」
ランサー「そりゃごもっともな意見だが・・・」
ランサー「生憎、回避だけが能ってわけでもないんでね!」
ランサー「こちらもあの目付きの悪いオッサンをさっさと追いかけたいんだ!一撃で決めさせてもらうぞ!」
ランサー「刺し穿つ―」
ボルグ
ランサー「死棘の槍―!」
ギルガメッシュ「・・・フン」
ヒュン!
ランサー「何事も無かったかのように外れた!?」
ギルガメッシュ「生憎だったな、青タイツ」
ギルガメッシュ「我のマスターの幸運はEXだ、幸運Eの貴様の宝具など当たるはずがないだろう」
ギルガメッシュ「―天の鎖!」
ランサー「くうっ!」
ギルガメッシュ「ええと、貴様の宝具の原典は・・・と」
ギルガメッシュ「貴様が動かなければ、我も簡単に心臓を貫けるというもの」
ギルガメッシュ「ではな」
ランサー「ぐはあああああああっ・・・」
ギルガメッシュ「ん?どうした大河」
大河「さっきランサーが投げた槍はどこに行ったの?」
慎二「いてて・・・くそっ!なんで今日はこんなに無駄に暴走族がいるんだよ!」
兵士「イヤッホー!俺たち亜礼苦旭日怒露須は無敵だぜぇー!!」
慎二「まったく、喧しくて嫌になる―」
慎二「ん、なにか空から・・・」
グサッ!
ギルガメッシュ「青タイツと違って気の利くやつだ」
ウェイバー「ん、なんか後ろのほうで人に何か刺さってるような・・・」
ライダー「そのような小さいことを気にするなウェイバー!大音響の元爆走するのこそ王道!」
兵士「ヒャッハー!ワカメ野郎はどうでもいいぜーぇ!」
慎二「ひ、ひどい・・・」
大河「おーらい!私をオバサンとか言う失礼なロリブルマに天罰を下してやる!」
~某所~
切嗣「・・・なんだ、ランサーはもうやられたのか」
イリヤ「幸薄そうだったから出番も少なかったのよきっと」
士郎「非道い言われようだな」
イリヤ「だってろくに見せ場もないじゃない、アイツ」
イリヤ「ご自慢の宝具もまるで当たらないし、大体どのゲームでも最後死ぬし」
士郎(ランサーが聞いたら泣くな)
切嗣「僕の時の聖杯戦争に召喚されていたらまっ先に犬肉を奨めてやったのに」
イリヤ「さっすがキリツグ!げどーだね!」
士郎(そのゲッシュの設定あんまり生かされてないな)
イリヤ「ところで、さっきから何をしているの?キリツグ」
切嗣「ああ、ちょっとあの趣味の悪い英霊を叩けるよう、対策をね・・・」
イリヤ「シロウガードじゃだめなの?」
切嗣「・・・鞘で復活出来る程度の範囲攻撃でまとめて吹き飛ばされる危険性がある。有効ではあるが、あまり頼り切るべきではないね」
士郎「おい」
大河「うわーん!古代メソポタミアの道具でなんとかしてよギルえもん~!イリヤに士郎を取られちゃうよ~!」
ギルガメッシュ「仕方ないな」
ギルガメッシュ(例のボイスで)「ド○ゴンレーダーの原典~!」
ギルガメッシュ「ポチッとな」
大河「すごい!あっという間に表示された」
ギルガメッシュ「雑種共、この我に足を運ばせた車代は高く付くぞ!」
切嗣「来た、か」
切嗣「・・・いきなりエアを使って来なかったのは、幸運と考えるべきだろうな」
切嗣「イリヤ、準備はいいかい?」
イリヤ「もっちろん!ぱーぺきだよキリツグ!」
切嗣「1,2の・・・」
イリヤ「さん!」
大河「二手に分かれて、何を企んでいるのか・・・」
切嗣「行くよ、大河―」
大河「狙いは私の令呪か!」
大河「させるかー!突きーっ!」
切嗣「士郎ガード!」
大河「わ、士郎!?」
イリヤ「―悪いけど」
イリヤ「私が用があるのは、貴方じゃないの!」
大河「わっ、イリヤもこっち狙い!?」
ギルガメッシュ「チッ・・・」
ギルガメッシュ「無駄な策を弄しおって!まとめて吹き飛ばしてくれる!」
切嗣「――かかったね」
切嗣「その魔力、そのまま、いや倍以上にしてお返しさせてもらう!」
切嗣「――起源・・・切断!」
ギルガメッシュ「がああああああっ!」
大河「ギル―!!」
切嗣「悪いね大河、もらったよ!」
ズドォオオオオン!
切嗣「な・・・」
ギルガメッシュ「残念だったな」
ギルガメッシュ「我の魔力量を・・・過大評価・・・しすぎたな!」
ギルガメッシュ「我の・・・宝具は、ともかく!我の・・・魔力量は侮っ・・・ても・・・構わんの・・・だぞ!」
切嗣「まだ、動けるのかっ・・・」
ギルガメッシュ「バカ親は・・・大人しく・・・あの世にっ・・・帰れ!」
ギルガメッシュ「・・・がぁっ・・・」
大河「ギルガメッシュ!大丈夫!?」
ギルガメッシュ「宝具のほうからの・・・ダメージが・・・いささか強すぎた・・・」
ギルガメッシュ「あとは・・・貴様一人で・・・どうにかしろ・・・大河」
ギルガメッシュ「俺は一足先に帰って・・・セイバーと戯れることにする・・・」
大河「ここまで付き合ってくれてありがとう」
キィン―
大河「・・・あれは、虎聖杯!? もう出てきたの!?」
イリヤ「!!」
イリヤ「キリツグの死は無駄にしない!私が先に手に入れる!」
イリヤ「アレは私が手に入れる!」
イリヤ「手に入れて、シロウとイチャラブの専用ルートを手に入れる!」
大河「そうはいくかぁーっ!」
大河「士郎とのイチャラブ専用ルートはこの私のものだあーっ!」
大河「―足の速さなら私に分がある!」
ヒュンヒュンヒュン!!
大河「なんとぉー!!」
イリヤ「―躱した上に、反撃すらしてこない」
イリヤ「なんとしてでも先にたどり着く気!?」
大河「士郎は、私の、ものじゃぁああああああ!!」
イリヤ「―クッ!止まれ止まれ止まれ止まれーっ!!」
イリヤ「当たった!今のうち・・・」
大河「舐めんなぁあああああ!!」
イリヤ「きゃああっ!!」
大河「この竹刀・・・っ、なかなか投げやすいじゃないっ・・・」
大河「もらっ・・・た・・・」
大河「・・・やった・・・ついに」
???「さあ願いを言ってみろー!」
大河「士郎が欲しい!ついでに私の専用ルートも欲しい!」
???「よっしゃあー!まかせとけー!」
ウェイバー「聖杯、取られちゃったぞ!」
ライダー「・・・あーそうか、すまん坊主」
ウェイバー「すまんで済むかーっ!!」
ライダー「いや、言うのをすーっかり忘れとったわ」
ウェイバー「え?」
ライダー「この聖杯戦争はな・・・」
大河「・・・」
大河「あれっ」
大河「なんで私、布団の中にいるんだろう」
士郎「・・・なに叫んでんだよ、藤ねえ。日曜だからって寝ぼけてるのか?」
大河「え?え?」
士郎「朝ごはんできてるからな、早く着替えて来なよ」
大河「これってまさか・・・」
大河「夢オチー!?」
凛「おはようございます先生、オーラがいつもと違うようですが」
セイバー「おはようございます、(むしゃむしゃ)朝から随分浮かない顔をしていますねタイガ(むしゃむしゃ)」
大河「うー・・・おはよー」
士郎「なんだい、悪いもんでも食ったのか藤ねえ」
大河「うー、ちがうよー」
大河「恋の病だよー」
士郎「え」
セイバー「え」
凛「ええっ」
士郎「別に構わないよ?」
大河「えっ」
大河「やったー!!」
~了~
ギルガメッシュ「見ろライダー、セイバーのやつこの世が終わったかのような顔をしておるぞ」
ライダー「まったく、嬉しそうにしおって。貴様の趣味は理解できん」
ランサー「・・・もしかしたらコレを見るためだけに態々俺達を狩りだしたのか」
ギルガメッシュ「貴様の希望通りバゼットとやらと過ごさせてやったろう。文句を言うな青タイツ」
ライダー「まあたまには、臣下の顔を見に行くのも悪くはなかったがな」
アーチャー「・・・オイ」
ギルガメッシュ「どうした黒歴史」
ギルガメッシュ「夢オチには違いない。ただちょっと夢に影響されただけだ」
ランサー「むしろ貴様としては厨二病のまま人生を終えず本望だろう赤いの」
アーチャー「ぐっ・・・」
ランサー「しかし、なんでイリヤスフィールの親父が出てきたんだ」
ギルガメッシュ「アサシンにはちゃんと声をかけたはずなのだがな」
ライダー「ま、そんな細かいことはどうでも良いではないか」
ギルガメッシュ「一理あるな。よし、今日はセイバーの顔を肴に呑むとするか」
ライダー「おうよ!」
ランサー「おら、多めに注げよ英雄王」
アーチャー「黒歴史じゃないっての・・・ブツブツ」
~蛇足編、了~
保守してくれた人ありがとー
またねー
藤ねえ良かった良かった
乙
Entry ⇒ 2012.06.29 | Category ⇒ FateSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
江藤「おはよう榊原君!」 恒一「あ、おはよう江藤さん」
引用元: ・http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1340786760/
恒一「……………………」
江藤「どうしたの? 黙っちゃって。早く教室行かないと予鈴鳴っちゃうよ?」
恒一「……いや、なんだか最近江藤さんに話しかけられること多いからさ」
江藤「もしかして嫌だった?」
恒一「そんなことないよ。でも、なんでかなー、って」
江藤「決まってるじゃない。榊原君のことが好きだからだよ」
恒一「え!?」ドキ
恒一「え?」
江藤「冗談だよ」
恒一「じょ、冗談……?」
江藤「何その反応? もしかして期待しちゃったとか?」クス
恒一「ぼ、僕は別に……」アセアセ
江藤「ごめんごめん。ちょっとからかってみただけだよ。それに榊原君は見崎さん一筋なんでしょ?」
恒一「!」
江藤「はいそこ驚かない。3組に籍を置く者にとったら常識です」
恒一「そうなの!?」
江藤「それに私は、他の子みたいに恋とか男の子とか興味ないから。今は受験にクラブに忙しいし。そこは安心して」
キーンコーン
江藤「おっと、本当に予鈴が鳴っちゃった。急がないと」ダッ
恒一「あ」
江藤「ほらそこの少年! 突っ立ってても時間は過ぎてくばかりだぞ!? 駆け足駆け足!」タッタッタ
恒一「……行っちゃった」
恒一「……………………」
恒一「……って、僕も急がないと!」
昼休み・屋上
恒一「ってなことが朝あったんだよ」モグモグ
鳴「ふーん、江藤さんがね」ムシャムシャ
恒一「正直、僕、江藤さんがどんな子なのかよく知らないからどう接したらいいか分からないんだよね……」
恒一「見崎はさ」
鳴「うん?」
恒一「江藤さんってどんな子か知ってる?」
鳴「3組で一番ショートカットが似合う女子生徒?」
鳴「――ぐらいしか私も知らない」
恒一「だよね」
鳴「……でも私は最近、江藤さんと話す機会が多いよ」モグモグ
恒一「見崎も?」
恒一「ふーん……なんでだろ? 一学期中はほとんど話すことなかったし、〈いないもの〉扱いされてた時はあからさまに避けられてたよね」
鳴「……ま、一学期は災厄が終わってなかったからね」ガブガブアーンゴックン
恒一「でも、冗談でも江藤さんに告白された時はビックリしちゃったな。ちょっとドキッてしちゃったし」テヘヘ
鳴「……」ピタ
恒一「江藤さんって女子の中でも結構可愛い方じゃない? 彼氏とかいないのかな?」
鳴「………………」
恒一「って、あれ? どうしたの見崎? 急に手が止まっちゃったけど」
鳴「…………別に」ムスッ
恒一「……? そう」
鳴「……………………」ツーン
恒一「?」
昼休み・教室
渡辺「ハァ……」
佐藤「ちょっとちょっと。ご飯食べてる時にいきなり溜息吐かないでよ。お弁当が不味くなっちゃうじゃない」
有田「珊ちゃんらしくないね」モグモグ
江藤「なんか悩み?」
渡辺「いや、それがさ。私、バンドやってるじゃん?」
佐藤「ああ、デスメタルバンドだっけ?」
渡辺「そう」
有田「あ、知ってる知ってる!」
有田「歌舞伎みたいな化粧して頭ドカーンって爆発させてヤンキーの真似してデゲデゲデゲデゲ!!って演奏するやつだよね!」
渡辺「全然違う」
有田「あれ?」
江藤「で、それがどうかしたの?」
佐藤「へぇ、やるじゃない珊」
有田「おおお、さっすが珊ちゃん!」
江藤「……………………」モグモグ
渡辺「いやいやこっちは迷惑してるんだって。面倒にならないようにファンとはそういう関係にならない、って仲間内で決めてるのにそれ説明しても理解してくれなくてさ」
佐藤「なるほど。それは厄介ね」
渡辺「ていうかそもそもその男、私のタイプじゃない」ドン
有田「そうなんだ。珊ちゃんってどんな男の子が好きなの?」
渡辺「どっちかというと年上かな? そもそも同年代は対象として見れないというか」
有田「えーじゃあクラスの子でいないの?」
渡辺「そうね。うちの男子、幼稚なの多いし」
佐藤「辛口評価ね」
有田「でもなんだか珊ちゃんらしいよね」
渡辺「そういう松子はどうなのさ?」
渡辺「何それ普通すぎでしょ」
佐藤「普通すぎね」
有田「ふ、普通で悪かったか!」プンスコ
渡辺「じゃあ、悠は?」
江藤「え?」モグモグ
渡辺「悠はどんなタイプの男が好きなの?」
江藤「好きな男の子……?」
渡辺「そ」
江藤「うーん…………」
有田「……」ワクワクドキドキ
佐藤「えー溜めといてそれか」
有田「あはは、悠ちゃんらしい答えだね」
渡辺「やっぱりね。まあ悠はクラブが恋人みたいなもんだからね。クラブ一筋! ってところあるし」
佐藤「そういや悠にはまるっきり男の噂とか聞かないね」
江藤「私は受験にクラブに忙しいから。あんまり恋人とか恋愛とかどうでもいいんだよね」
有田「おー言い切ったね。密かに悠ちゃんを狙ってる3組の男の子が聞いたら卒倒しそう」ワクワク
江藤「そんな男の子いるの?」
有田「またまたーご謙遜しちゃってー! 悠ちゃんぐらい可愛かったら一人や二人いるって」
江藤「そうかなー?」
渡辺「悠ってばお洒落とかにはいまいち無頓着だからねぇ。素材はかなりいけてるのに」
有田「だよねだよね。着飾れば可愛くなるはずだよ!」
江藤「そう?」
佐藤「そういえば松子は最近可愛くなったよね」
有田「本当? まあ気をつけてる方かも、えへへ」
渡辺「何々? もしかして彼氏でもできたとか?」ニヤリ
有田「ち、違うよぉ!」
江藤「……」ガタッ
佐藤「どうしたの悠?」
江藤「ちょっと食べ足りなくてさ。購買部でなんか買ってくるね」
佐藤「ったく、色気が足りないな。太っちゃうぞ?」ツンツン
江藤「これぐらいでは太りません」ペシッ
江藤「ふぅ……」
江藤(好きな男の子ね……)チラッ
望月「えー恥ずかしいよこんなのー」
勅使河原「いいかいいから。お前も男だろ? 受け取っとけって」ガサゴソ
望月「こんなの貰っても、もしお姉さんに見つかったら変な目で見られちゃうよ」キョロキョロ
望月「!」
江藤「……」ジロッ
望月「////」カァァ
勅使河原「これでお前も一人前の男だ」フンス
望月「……あ、あの……勅使河原君。今度からはもっと人がいない所で渡してくれると助かるかも……////」チラッ
江藤(……やれやれ)ハァ
勅使河原「んじゃおまけでもう一つ」ガサゴソ
望月「あっ! そ、そんなの……! 恥ずかしいよ//// みんな見てるよ////」
江藤(珊の言ってることも理解できるかも)
鳴「!」
江藤「見崎さん……」
鳴「江藤さん」
江藤「もしかして今、昼食から帰ってきたところ?」
鳴「…………」コクリ
江藤「そっか。私は食べ足りなくてさ。今から購買部に行こうとしてたんだ」
鳴「そうなの……」
江藤「見崎さんは何か購買部でお勧めのパンとかある?」
鳴「私は……コンビニしか利用しないから……」スッ
江藤「あ……」
鳴「…………」タッタッタ
江藤「もしかして嫌われてるのかな?」
江藤「……ま、無理もないよね」
江藤「じゃあ適当にサンドイッチでも買おうとするかな」フンフンフーン
―――
―――――
放課後
恒一「ハァ……なんだか今日は見崎、素っ気なかったな。僕、何かしたかな?」
恒一「まあいいや。それより忘れ物早く取りに行かないと」
ガラッ
恒一「ん?」
江藤「あれ? 榊原君じゃない」
恒一「江藤さん……どうしたの? こんな時間に教室で」
江藤「うん。ちょっとクラブまで時間あるから暇潰してたところなんだ。榊原君は?」
恒一「僕は忘れ物取りに来たんだけど、偶然だね」
江藤「ふふ、そうだね」
恒一「えっと……確か机の中に置いてたはずだけど……」ガサゴソ
江藤「……………………」
恒一「じゃあ江藤さん。忘れ物も見つかったし、僕は――」
江藤「ねぇ」
恒一「ん?」
江藤「良かったら、クラブまでの間、話相手になってくれないかな?」
恒一「え? ……僕と?」
江藤「うん」
恒一「………………」キョロキョロ
恒一「……二人きりで?」
江藤「ダメ?」
恒一「……! (う、上目遣いが……っ!)」
恒一「わ、分かった。僕なんかで良ければ……」
江藤「ありがと、榊原君」ニコッ
恒一「いや、気にしないで。だけど江藤さん、まだクラブやってたんだね」
江藤「そうなんだよね。もうそろそろ引退だけど、できるだけやっておこうと思ってさ」
恒一「なんのクラブなの?」
江藤「水泳部だよ。今度、大きな大会があってね。今はそれに向けて特別メニュー組んで練習中」
恒一「へぇ、すごいね。水泳やってるんだ」
江藤「別にすごくないよ。水泳なんてやってる人、たくさんいるんだし」
恒一「そうかな? 僕、何か一つのことに打ち込める女の子って、素敵だし、かっこ良くて好きだけどな」
江藤「……もしかしてそれって口説いてるのかな? それとも女の子には誰にでも同じこと言ってる?」ニヤリ
恒一「ええっ!? べ、別に僕はそんなつもりじゃ……っ!」
江藤「榊原君のことだから女の子には困ってなさそうだよね。きっと見崎さんも同じ手で抱き込んだのかな? そしてあわよくばこの私もと……」
恒一「ち、違うよ! 僕はそんな酷いことしないよ!」
江藤「きゃー誰か助けてー榊原君に狙われるー(棒)」
恒一「わっ、ちょっ、だ、誰かに聞かれたらどうすんの!?」
恒一「へっ?」
江藤「ごめんごめん、冗談だよ冗談」ペロ
恒一「じょ、冗談……?」
江藤「そ。冗談。また引っかかっちゃったね。相変わらず純真だなー榊原君は」
恒一「ビックリするじゃないかーもう」
江藤「クスッ」
江藤「でもそういうところが榊原君の長所かもね」
恒一「長所って?」
江藤「うーん……すぐにからかいたくなるところとか?」
恒一「それって褒められてるんだろうか?」
江藤「どうだろ?」
恒一「江藤さんが言ったんじゃないか」
江藤「あははは、ごめんごめん。そうだったね」クスクス
恒一「………………」
恒一「いや、江藤さんって結構イメージしてたのと違う人なんだなー、って思って」
江藤「へぇ。興味深いね。榊原君は私のこと、どんな風にイメージしてたのかな?」
恒一「もっとこう、無口で淡々としてて、きつそうな感じ?」
江藤「あーなるほどねぇ。まあ一学期中はほとんど話したことなかったからね。無理ないかな」
恒一「だけど今はなんていうか、明るくて親しみやすい印象があるよ」
江藤「ありがと。そう評価してもらえると嬉しいです。ていうか元からこんなだったんだけどね」
恒一「じゃあ一学期、僕の前で冷たいようにしてたのはやっぱり……〈いないもの〉だったから?」
江藤「……あの時は、ね。言い訳なんてするつもりないし許してもらえるとは思わないけど、正直怖くて……」
恒一「そっか……」
江藤「ごめんね? 榊原君や見崎さんには酷いことしちゃったね」
恒一「いや、今更気にしてないよ。ただ、最近江藤さん、妙に見崎に話しかけてるみたいだから不思議でさ……」
江藤「ああ、それか……別に大した理由でもないんだけど」
恒一「何? もし良かったらその理由、教えてくれないかな?」
恒一「罪滅ぼし?」
江藤「うん。〈いないもの〉扱いしてあからさまに無視してたことのね」
恒一「……!」
江藤「本当は、いつかちゃんと見崎さんにも謝ろうとしてたんだけどさ。もし拒否されて嫌われちゃったら、って思うと普通に話しかけることぐらいしかできなくて……」
恒一「そんな理由だったんだ」
江藤「おかしいよね? 一学期、あんなに榊原君たちのこと無視してたのにさ……」
恒一「江藤さん……」
江藤「でも、ごめんなさい。本当にあの時は、災厄が怖かったの」
江藤「最初は私も半信半疑だったんだけど、3組の生徒たちが次々に死んでいって、いよいよ災厄の恐怖が実感できるようになると、次は私なんじゃないか、って不安になって……夜も眠れなかった。先生がみんなの前で自殺した時はもう本当に怖くて……怖くて……」
恒一「……そういえば江藤さん、あの時席で泣いてたね」
江藤「合宿も、松子や珊に誘われたけど死ぬのが嫌でずっと家に篭ってた。合宿が終わって、しばらくして人づてに3組の災厄が終わったのを知った時は本当に嬉しかった」
江藤「これでもう死に怯えなくて済むんだ、普通に生きれるんだ、って一日中泣いてた……」
恒一「そうだったんだ……」
江藤「もう……嫌なの。昨日まで一緒に勉強していたクラスメイトたちが理不尽に死んでいくのも、死の恐怖に怯えるのも……っ!」ガタガタ
江藤「なんでこんな目に遭わないといけないの!? 私が何をしたって言うの!? もうやめてよ!! 死にたくない!!」
恒一「江藤さん」ガッ
江藤「!!」ハッ
恒一「大丈夫?」
江藤「……さかき、ばら君」
恒一「安心して。災厄は終わったんだ。もう、江藤さんは怖がらなくていいんだよ」
江藤「……そうだね。ごめんなさい、ちょっと取り乱しちゃって……」グスッ
恒一「仕方がないよこればかりは。僕も、あの災厄で大切な人、たくさん亡くしちゃったからね……」
恒一「それなら、いい方法があるよ」
江藤「え?」
恒一「江藤さんは〈いないもの〉の件で何かと見崎のこと気にかけてるようだけど」
江藤「うん」
恒一「それよりも見崎の友達になってあげてくれないかな?」
江藤「私が……見崎さんの友達に?」
恒一「そう。僕には勅使河原や望月がいるし、災厄が終わってほとんどの男子とも仲良くなれたけど、見崎はあの性格だし〈いないもの〉扱いされてた時の影響でどうも多くの女子とはまだ壁があるみたいなんだ」
恒一「それが可哀想でさ。良かったらこれを機に見崎と友達になってほしいんだ。江藤さんなら良い友達になれそうだし」
江藤「私はもちろんいいけど、見崎さんとしてはどうなんだろ?」
恒一「見崎は、あんまり顔には気持ち出さないけど、根は良い子だからきっと喜んでくれるよ」
江藤「そっか。特に見崎さんが嫌じゃなかったら、それでいってみようかな?」
恒一「うん。よろしく頼むよ」
江藤「でもその前に」
江藤「榊原君は、私とは友達になってくれないの?」ニヤ
恒一「え? 江藤さんと?」
江藤「あら。何その反応? もしかして私みたいなとは友達になりたくないって?」
恒一「や、と、とんでもない! 江藤さんがいいならぜひ!」
江藤「ふふっ。ありがとう。よろしくね、榊原君」ニコッ
恒一「!」ドキッ
恒一「……う、うん、こちらこそよろしく江藤さん////」
江藤「……」クスッ
恒一「……、、、」
翌日・昼休み
恒一「ってわけで、江藤さんを昼食に誘ってみました」
江藤「誘われてみましたー」テヘヘ
鳴「……………………」
恒一「……………………」
江藤「……………………」
鳴「……………………」
恒一「……………………」
江藤「……………………」
鳴「………………そう」
恒一・江藤(何この間!?)
恒一「……あ、え、えっと、見崎?」
鳴「事情は理解したわ」
恒一「ほ、本当に?」
江藤「う」
鳴「でも拒否する理由もないしね。好きにすればいいんじゃないかしら?」
江藤「……」ホッ
恒一「良かった。二人とも、仲良くなれたらいいね」
江藤「お、お手柔らかに……」
鳴「…………」スッ
江藤「!」
鳴「…………」モグモグ
江藤(あ、あれ? なんか素っ気ない……)
恒一「じゃあ僕たちもご飯食べようか」
江藤「あ、うん、そだね」
江藤「榊原君のも美味しそうだよ」
鳴「………………」モグモグ
江藤「お、春巻き! このお弁当を作った人は分かってるね」
恒一「江藤さん、春巻き好きなの?」
江藤「うん、大好き」
恒一「じゃああげるよ」
江藤「いいの? やった! でも貰うだけじゃ申し訳ないから、私も何かあげるよ」
恒一「本当に? んーと、それじゃあから揚げとトレードしよう」
鳴「……………………」ムシャムシャ
恒一「はい、春巻きどうぞ」
江藤「ん。いただきました」
鳴「…………………………」モグモグムシャムシャ
江藤「じゃあこっちも。はい、から揚げね」
恒一「ありがとー。とても美味しそうだね」
恒一「ん? 何?」
江藤「榊原君はクラブとか入ってるの?」
恒一「僕は入ってないよ。もう3年だし。東京にいた頃は料理研究部とか入ってたけどね」
江藤「料理研究部? へぇ、榊原君、料理が得意なんだ?」
恒一「素人に毛が生えた程度だけどね。簡単なものは大体作れるよ」
江藤「すごいね。料理が得意な男の子ってなんだか憧れちゃうな」
恒一「そ、そう? なんだか照れるなぁ」テヘヘ
江藤「謙遜しない謙遜しない」
鳴「………………」バキベキッガブリ
恒一「江藤さんは料理とかしないの?」
江藤「するよー。榊原君ほど上手くないと思うけど」
江藤「でも以前、松子に振舞ってあげたら絶賛されちゃってさ。『悠ちゃんシェフになれるよ!』だって。もう、あの子ってば大袈裟だよね」
鳴「……………………」ガブガブゴクリ
江藤「またまたー。お世辞はいいって」
恒一「謙遜しない謙遜しない」
恒一・江藤「あはははは」
鳴「…………」グビグビグビグビプハー
恒一「江藤さんはクラブ、水泳部って言ってたっけ?」
江藤「うん。今度の大会が終わったら引退だけどね」
恒一「練習頑張ってね。僕、応援してるからさ」
江藤「ありがとう。そう言ってもらえると俄然やる気が出るよ」
恒一「ちなみに練習ってどんな風にやってるの?」
江藤「どんな風、って言われてもね。普通に学校のプールで、としか……あ、そうだ」
江藤「なんなら今日の放課後、見学に来てみない?」
恒一「え? いいの?」
江藤「もちろん。邪魔したりクラブのみんなに迷惑かけなかったらね。どうかな?」
恒一「それなら一回見に行ってみようかな」
鳴「………………」モキュモキュゴクンカジカジ
江藤「じゃ、決まりだね」
恒一「うん。放課後、見崎と一緒に見学させてもらうね」
鳴「……」ピク
江藤「どうぞどうぞー。お待ちしてまーす」
江藤「どうしたの?」
恒一「なんていうか江藤さんと話してると、会話が弾むね」
鳴「………………」ボリボリベキベキ
江藤「そう? 私としては普通に話してるつもりなんだけど」
恒一「それに懐かしい気がするんだ」
江藤「懐かしい……?」
恒一「まるで綾野さんと話してるみたいでさ。どことなく似てるところがあるんだよね、江藤さん」
江藤「……ああ、彩のことね……」
恒一「……? もしかして江藤さん、綾野さんと仲良かったの?」
江藤「うん。結構気が合ってさ。松子ほどじゃないけど、3組の女子の中では仲良かった方かな」
江藤「うん……」
恒一「あの災厄さえなければ、今頃3組のみんなで一緒に楽しい学校生活を送れてたのにな……」
鳴「……………………」
恒一「残念だな。綾野さんも、そして――」
江藤「ねぇ」
恒一「ん?」
江藤「今はこんな話、やめようよ。せっかく昼ご飯食べてるんだしさ……」
恒一「あ、そ、そうだね。ごめん、そこまで気が回らなくて……」
鳴「……………………」ムシャリ…
恒一「え、あ、そう? 喜んでもらえたなら何より。から揚げと交換した甲斐があるよ」
江藤「もしかしてだけど、このお弁当って榊原君の自作?」
恒一「そうだよ」
江藤「やっぱりぃ? すごいなぁ。機会があれば一度試しに榊原君の料理食べてみたいな」
鳴「……」ピタリ
恒一「それぐらいなら別に構わないよ。今度ごちそうしてあげようか?」
鳴「!」
江藤「いいの? 冗談で言っただけなんだけど」
恒一「もちろんいいよ。断る理由もないしね」
江藤「やった。それじゃあ、暇な時でいいのでお願いします」ペコリ
恒一「了解」ニコッ
鳴「……………………」
恒一「でしょ? また近いうちおいでよ。一緒にお弁当食べよう」
江藤「ありがとう。普段は松子たちか奈緒美と食べてるからあまり来れないかもしれないけど、そうさせてもらうね」
鳴「ごちそうさま」スクッ
恒一・江藤「!」
恒一「あれ? 見崎、戻っちゃうの?」
鳴「そろそろ予鈴鳴りそうだしね」
恒一「もうそんな時間か。会話に夢中で気がつかなかった」
鳴「……じゃ、私、先に行ってるね」
恒一「あ、うん」
鳴「…………」スタスタスタ…
恒一「なんだろ? 今日の見崎、やけに素っ気ないな」
江藤「あ、しまった」
恒一「え?」
恒一「あ、そういえば僕も見崎のことすっかり忘れてて……」
江藤「どうしよう。嫌われちゃったかな?」
恒一「まさか。見崎はそんな子じゃないから大丈夫だよ」
江藤「でも彼女の場合、きっとそれだけじゃないと思うんだ」
恒一「……? どういう意味?」
江藤「榊原君、ずっと私と話してたでしょ? だからだよ」
恒一「?」
江藤「……榊原君って、もしかして鈍感?」
恒一「へ?」
江藤「あちゃぁ……こりゃみんな苦労したんだろうなー」
恒一「みんな???」
江藤「……」ヤレヤレ
キーンコーンカーンコーン
放課後
恒一「4時前か……」
恒一「そろそろ江藤さんのクラブ、見学に行こうかな?」
和久井「ゴホゴホッ」
恒一「!」
恒一「和久井君、大丈夫?」
和久井「あ、ごめん。心配しないで。今のはただの咳だから」
恒一「そっか、ならいいんだけど」
和久井「それに、最近は喘息、かなりマシになってきてるんだ」
恒一「本当に? それは良かったね。体大事にしてね」
和久井「うん、ありがとう」
和久井「ああ、保健室の先生に貰ったんだ。喘息の記事が載ってるからって」
恒一「ふーん」チラッ
『また夜見山市で出没! 今月で被害者は○人目』
恒一「これ……また通り魔が出たんだ」
和久井「みたいだね。早く犯人、捕まるといいんだけど」
恒一「うん。確かにね……」
和久井「っと、ごめん。そろそろ帰らなきゃ。かかりつけの病院に行かなきゃならなくてさ」
恒一「そうなんだ。じゃあまた明日ね」
和久井「うん、またね」
恒一「……さて、僕もクラブの見学に行くとするか」
美術室
恒一「お」ガララ
望月「あ」
恒一「望月」
望月「榊原君か。どうしたの?」
恒一「見崎に会いに来たんだけど」
望月「見崎さんなら中で絵を描いてるよ」
恒一「そっか」
望月「………………」
恒一「あ、いたいた」
望月「ねぇ、榊原君」
恒一「何?」
望月「今日、昼休み終わった時、江藤さんと教室に帰ってきてたけど一体どうしたの?」
望月「へぇ、珍しい組み合わせだね」
恒一「そうかな?」
望月「でも見崎さん、榊原君たちより先に教室に帰ってきてたよね」
恒一「うん。なんだかご飯食べ終えたら1人だけそそくさと帰っちゃってさ」
望月「ふーん……勅使河原君が3人の関係を色々と勘ぐっちゃうのも無理ないか」
恒一「勘ぐるって? 勅使河原が何か言ってたの?」
望月「あ、ううん。気にしないで。いつもの勅使河原君の冗談だし」
恒一「?」
望月「それじゃあ僕ちょっと教室に用事あるから。またね」
恒一「あ、うん」
鳴「榊原君、どうしたの?」
恒一「江藤さんのクラブ、見学しに行こうよ」
鳴「……そういえばそんなこと約束してたわね」
恒一「行くでしょ?」
鳴「行かないわ」
恒一「え? なんでさ?」
鳴「私は別に江藤さんのクラブ、見学しに行くって約束したわけじゃないし」
恒一「でも……」
鳴「それに私は私で美術部があるんだから。榊原君1人で行ってきていいよ」
恒一「……えっと、見崎、なんか怒ってる?」
鳴「怒ってない」ツーン
恒一「僕、もしかして見崎に悪いことした? 昼休みもなんだか素っ気なかったし……」
鳴「別に素っ気なくない」ツンツン
恒一「…………、、、」
恒一「あ、そ、そうだね。それじゃあそうするよ」
鳴「………………」
恒一「えーっと、プールってどっちだったっけかな?」
鳴「ねぇ、榊原君」
恒一「うん? 何?」クルッ
鳴「江藤さん、ああ見えて災厄のことかなり引き摺ってるようだし、その辺りのこと気をつけてあげた方がいいよ」
恒一「災厄のこと……」
――『なんでこんな目に遭わないといけないの!? 私が何をしたって言うの!? もうやめてよ!! 死にたくない!!』――
恒一「……………………」
鳴「明るく振舞ってるようだけど、彼女のような人ほどトラウマになりやすいからね」
恒一「……分かった。気をつけるよ」
恒一「お、やってるやってる。江藤さんはどこかな?」
部長「あら、どうしたの貴方? 部員じゃないようだけど」
恒一「あ、すいません。江藤さんに誘われて見学に来たんです。少し邪魔させてもらっていいですか?」
部長「江藤さんに? それならいいわよ。悪いけど今忙しいし、適当な所で見ててくれる?」
恒一「分かりました」
恒一「さて、と。江藤さんは……もしかして4番レーンで泳いでるのがそうかな?」
恒一「気持ち良さそうだな。ていうか速いな江藤さん」
江藤「ふぅ……」ザバッ
部長「すごいわね江藤さん、またタイム上がったわよ」
部員「今度の大会では優勝間違いなしですね!」
部員「さすが水泳部のエース!」
江藤「あはは、よしてよくすっぐったい。もう引退間近なんだし」
部長「江藤さん、ちょっと休憩したら? お友達も来てるようだし」
江藤「お友達? あ……」
江藤「榊原君、本当に来てくれたんだ。嬉しい」
恒一「ふふ、頑張ってるね。にしても……江藤さん、競泳水着も似合ってるね」
江藤「え?」
恒一「…………」ジロジロ
江藤「ちょっと、何をジロジロ見てるの?」
恒一「あ、べ、別にそんなつもりじゃ////」アタフタ
江藤「榊原君って意外とムッツリ?」
恒一「ち、違うよ! なんか無駄がないスタイルでよく引き締まってるなー、って感心しただけで」
江藤「その発言、一歩間違えたらセクハラだよ?」
恒一「…………っ!!」
江藤「それに無駄がないスタイルってつまり、私が貧相な体だって言いたいの?」
恒一「ええっ!? ちがっ、そういう意味じゃなくて……っ!」
江藤「どうせ幼児体型ですよーだ」ベー
恒一「はわわ、ご、ごめん江藤さん……っ」
恒一「え?」
江藤「嫌?」
恒一「そ、そんなことないよ! 僕、江藤さんに会いに来たんだし。いいよ、話そう」
江藤「ふふ、よろしい」
江藤「ところで、見崎さんはどうしたの?」キョロキョロ
恒一「見崎は誘ったんだけど、美術部で来れないんだって」
江藤「そっか、残念……。ま、来れない理由は多分クラブだけじゃないんだろうけど……」
恒一「……? どういうこと?」
江藤「さぁ? どういうことだろうね? 乙女心が理解できない榊原君にはちょっと難しいかもね」
恒一「乙女心? ……って?」
江藤「あーもういいや。この手の話題は先に進みそうにないから今はやめとこう」
恒一「えぇ~気になるなぁ」
江藤「そ・れ・よ・り」
恒一「うん、そうだね。なんだか見てるだけで気持ち良さそうだし」
江藤「実際に泳いでみるとかなり気持ちいいんだよね、これが」
恒一「それにさ。江藤さんの水泳のフォーム、とても綺麗で驚いちゃったよ」
江藤「あはは、それはありがとう」
恒一「まるで人魚が泳いでるみたいだった」
江藤「それは褒めすぎ。そんなに大層なものじゃないって」
恒一「そうかな? 僕は感動したんだけどな。正直、目を奪われちゃったよ」
江藤「もう榊原君ってば。そういう口説き方ってどこで覚えるの? もしかして勅使河原君経由?」
恒一「な、そ、口説いてるわけじゃないって! 本当のことを言ったまでだし」
江藤「一応そういうことにしておいてあげますか」
恒一「ちょっ、ちょっとー」
江藤「ふふっ」
恒一「え?」
江藤「一学期は災厄が怖くて、水に近づけないことが多くてさ。たまに部活、休むこともあったし……」
恒一「あ……」
江藤「だけどさ、もう怖がらなくていいんだよね。自由に思い切り泳ぐことができる」
恒一「そうだね」
江藤「後は大会に向けて練習あるのみ。よーし頑張るぞ~!」ガッツポーズ
恒一「頑張って。応援してるからさ」
江藤「うん!」
部長「江藤さーん! そろそろいいかしらー?」
江藤「あ、部長が呼んでる。もう戻らなきゃ。榊原君はまだいる?」
恒一「僕はもうちょっとだけ見学させてもらうよ」
江藤「了解。それじゃあまた泳いでくるね!」ダッ
プルルルルル
恒一「ん? 電話? 勅使河原か」
恒一「はい、もしもし」
勅使河原『おーサカキ、今大丈夫か?』
恒一「ああうん。何か用事?」
勅使河原『いや、それがな、聞いてくれよ』
ザブーン!
江藤(やっぱり水の中は気持ちいいな)スイー
江藤(にしても榊原君が本当に来てくれるなんて思わなかった)スイー
江藤(応援してくれてるし、大会で結果出せるように頑張らなきゃ)スイー
江藤(榊原君、見てくれてるかな……?)チラッ
江藤(って電話してるし!)スイー
江藤(もう、応援するって言ってくれたくせにぃ)スイー
江藤(とにかく今はたくさん泳いで――)
江藤(!?)
江藤(あ、足が……!)ゴボッ
江藤(足が……吊って……っ!)ガボゴボッ
恒一「うん、また明日」ピッ
恒一「ったく……勅使河原の奴、なんで電話でエロビデオの感想語ってくるんだよ。どんだけ暇人なんだあいつは」
恒一「そういえば江藤さんはどうしてるんだろ?」
恒一「………………」キョロキョロ
恒一「あれ? おかしいな。江藤さん、どこのレーンにもいな……」
恒一「!!」
江藤「――――っ!!」ガボガボッ
恒一「江藤さん!!」ダッ
部員「あるあるw」ペチャクチャ
部長「ふふふふw」
恒一「おい! 人が溺れてるぞ!」ダダダ
部長「へ?」クルッ
ザブーン!!
恒一「江藤さん!!」
江藤「――っ!!」ガブガブッ
恒一「江藤さん、しっかり!」ガシッ
江藤「ゲホッ! ゲホッ!!」
恒一「今、プールサイドまで連れてくからね」
部員「きゃー!! 江藤先輩が!!」
部長「江藤さん!!」
ザワザワ
江藤「ゲホッ! ハァッ……ケホケホッ!」
恒一「江藤さん、大丈夫? 息はできる?」
江藤「ハァ……ハァ……」コクコク
恒一「良かった……」
部長「江藤さん、一体何があったの?」
恒一「多分、足を吊ったんだと思うよ。溺れかけてたし」
江藤「ハァ……ハァ……」
部員「そんな……江藤先輩が溺れかけるなんて」
部員「珍しいこともあるものなんですね」
恒一「え?」
江藤「……災厄よ」
恒一「!」
江藤「……3組の災厄は終わってなかったんだ……きっとそれで私が狙われて……」ガタガタ
部員「災厄?」
部長「って、なんのこと?」
恒一「……っ」
江藤「……きっとまた始まったんだ……死んだ3組のクラスメイトたちが……今度は私たちを狙って……っ」ブルブル
恒一「何を言ってるんだ江藤さん! そんなわけないじゃないか。災厄は終わったんだ」
江藤「終わってない!! じゃないと今の事故も説明がつかない! 嫌だ、嫌だ、嫌だ、死にたくない!! 災厄なんて嫌だ。死にたくない……っ!」ガタガタブルブル
恒一「江藤さん……」
―――――
江藤「………………」ボー
恒一「どう? 少しは落ち着いた?」
江藤「………………うん」
恒一「そっか。良かった……」
江藤「…………ごめんね、迷惑かけて。せっかく見学に来てくれたのに」
恒一「ううん。気にしないで。僕は江藤さんの泳ぐ姿見れただけで満足だから」
江藤「…………榊原君は優しいね」
江藤「部長……」
部長「気分はどう?」
江藤「……一応大丈夫」
部長「もしまだ続けられるなら続けてもいいけど……。それとも今日は大事を取って帰る?」
江藤「じゃあ帰ろうかな。今日はこれ以上、泳げる気分じゃないから」
部長「分かったわ。気をつけて帰ってね」
江藤「………………」コクン
恒一「あ、僕、送るよ」
下足箱
恒一(江藤さん、まだかな?)
江藤「ごめんね榊原君。ちょっと着替えるのに手間取っちゃった」
恒一「それじゃあ行こうか」
江藤「あの……別にそこまで気を遣わなくていいんだよ? 家なら一人で帰れるし」
恒一「いや、僕には江藤さんを無事に家まで見送る義務がある。無責任に放っておけないよ」
江藤「真面目だね榊原君は。それじゃあ今回は甘えちゃおうかな」
恒一「礼はいらないよ。当然のことをしたまでさ」
江藤「ったく、かっこいい台詞真顔で言っちゃってくれちゃって」
恒一「僕は至って真剣だよ。もう目の前でクラスメイトが死ぬ姿は見たくないしね……」
江藤「そうだね……」
恒一「………………」
江藤「………………」
恒一(あ、しまった。気まずい空気になっちゃった。話題変えないと)
恒一「そ、そういえばさ」
江藤「ん?」
恒一「江藤さんは普段、家でどんなことしてるの?」
江藤「何それ? 女の子のプライベート聞いて何企んでるの?」クスッ
恒一「ええっ!? な、何も企んでないよ。ただちょっと聞いてみただけで……」
江藤「ふふ、そっかそっか。まあそんな期待するほどのものじゃないけどね。勉強したり、水泳のビデオ見たり、雑誌読んだり、とかが大半かな?」
恒一「へぇ、意外と普通」
恒一「うーん、どうだろ?」
江藤「ま、色気のない女の趣味なんてこんなもんです」
恒一「色気がないだなんて……」
江藤「松子や珊に言わせると、女の子オーラがいまひとつ足りないらしいです。ていうか男の榊原君から見ても実際そう思うでしょ?」
恒一「いや、僕は江藤さんは可愛いと思うけどな」
江藤「へ?」
恒一「江藤さん、十分可愛いよ」
江藤「えっと……も、もしかしてからかって言ってる?」
恒一「からかってなんかないよ。本当のこと言ったまでだし。江藤さんって3組の女の子の中じゃかなり可愛い方だと思うけどなぁ」
江藤「なっ、そっ、なぁっ!? ちょ、直球すぎでしょ……っ////」
恒一「直球って?」
恒一「ごめん、何言ってるのかよく分からない」
江藤「バカぁ!!」ドンッ
恒一「ぷおっ!?」
江藤「……ったく、油断ならないなぁ榊原君は! 心臓に悪いっていうか。そっか、こういう手を使って見崎さんを落としたんだね?」
恒一「なんのこと?」
江藤「もういいです!」
恒一「もしかして江藤さん、まだ体調回復してない?」
江藤「………………」マッタクコノオトコハ…ヤレヤレ
江藤「まあいいや。そもそもこんなんで動じる私じゃないしね」
藤巻「おー悠じゃん。どうしたのこんな所で?」
江藤「い!?」
恒一「やぁ藤巻さんじゃないか。偶然だね」
藤巻「……ちょっとちょっと、これは一体どういうこと?」
恒一「何がだい?」
藤巻「もしかして二人、付き合ってんの?」
江藤「な!?//// そ、そんなわけないでしょ! ただ色々あって二人で帰ることになっただけ!」
藤巻「あ、そう」
江藤「もう、なんで狙ったかのように急に現れるかな奈緒美は」ブツブツ
藤巻「いや、私がどこにいようと私の勝手でしょ」
江藤「くっ……それはそうだけど」
藤巻「ていうか珍しい組み合わせだね。榊原君っていつも見崎さんと一緒にいるのに」
恒一「実は江藤さん、クラブ早退することになってね。見送ってあげてる最中なんだ」
藤巻「……何それ? 悠、どうかしたの?」
江藤「ううん、別になんでも。大したことじゃないから気にしないで」
藤巻「ふーん」
恒一「?」
藤巻「榊原君、悠を見送るってどこまで?」
恒一「僕は家までのつもりだけど」
江藤「え? そんなっ、そこまでしてもらったら悪いよ」
恒一「さっき言っただろ? 『僕には江藤さんを無事に家まで見送る義務がある。無責任に放っておけない』って。こればかりは中途半端は嫌なんだ」
江藤「だけど、わざわざ私の家まで送ってそこから自分の家まで帰るのってしんどくない?」
恒一「関係ないよ。僕の意思でやってることなんだ。万一、帰宅途中で江藤さんが倒れたりしたら大変だからね」
江藤「分かった。分かりました。ここまで真剣だと逆に断る方が申し訳ないね。じゃあお願いします」
恒一「ああ」
藤巻「ちょっとちょっと悠」ツンツン
江藤「ん? 何?」
藤巻「本当にいいの? 家まで送らせて」ヒソヒソ
江藤「……? だって榊原君がそう言うんだし、特に断る必要もないし」ヒソヒソ
藤巻「ハァ……悠ってば、男に興味ないくせにこういうのには無用心なんだね」ヒソヒソチラッ
江藤「……どういうこと?」
藤巻「分かんない? 彼、悠の家に着いたら適当に理由つけて家に上がるつもりだよ」
江藤「そんなことしてなんの意味が?」
藤巻「決まってるじゃない。上手いこと悠を言いくるめて襲うためさ」
江藤「なっ!?」
恒一「?」
藤巻「そしてそのまま悠の幼い体をペロリンチョ♪ と頂いちゃう腹積もりなんだよ!」
江藤「なっ、何言ってるの奈緒美!?//// 榊原君がそんなことするわけないでしょ……っ!//// ていうか誰が幼い体だ!」
藤巻「いやいやこういう普段は澄ましてる男ほど性欲は凄まじいんだって」
江藤「せ、せいよ……っ!?////」カァァ
藤巻「きっと悠の部屋に着いたら悠をベッドに押し倒して一気にセックs――」
江藤「わーわーわーわー!!!////」ジタバタジタバタ
恒一(二人でさっきから何やってんだろ?)
江藤「しょ、しょじょ!?////」
恒一「しょしょじょ? ッテナニ?」ジッ
江藤「!」ハッ
江藤「ぅぅぅ……////」ボンッ
藤巻「まあそういうわけだから。応援してるよ悠」バンバン
恒一「えっと、二人ともなんの話してるの?」
藤巻「あ、榊原君も悠のこと優しくしてあげてね! 明日には結果聞かせてもらうからさ!」
恒一「はぁ?」
江藤「奈緒美!!!」
恒一「行っちゃった……。なんだったんだろう? ねぇ江藤さん、頑張るってなんのこと?」
江藤「し、知らない!!////」
恒一「なんか江藤さん、顔真っ赤じゃない?」
江藤「~~~~~っ////」
恒一「ていうか江藤さんって意外と落ち着かないところあるんだね」
江藤「う、うっさい!!//// 榊原君のバカ!! アホ!!」
恒一「えーなんでいきなり罵られてるんだ僕?」
江藤(も~う、奈緒美のせいで~////)ギリギリギリ
江藤「………………」トコトコ
恒一「………………」チラッ
江藤「何?」
恒一「もう怒ってない?」
江藤「最初から怒ってません」
恒一「良かったぁ……」ホッ
恒一「江藤さんに嫌われたんじゃないかと思って心配しちゃったよ」アハハハ
江藤「……………………」
恒一「それで、江藤さんの家はまだなの?」
江藤「ここだよ」
恒一「え? あ、本当だ。表札に『江藤』って書いてあるね」
江藤「ま、しがないサラリーマンの一般家庭ですが」
江藤「!!!!!!」
江藤「い、言っとくけど家の中には上がらせないからね……っ!!」
恒一「……? う、うん。僕もそのつもりだけど……」
江藤「へ?」
恒一「なんでそんなことを……?」
江藤「べ、別になんでもないっ……!////」カァァ
恒一「そう。なら僕、このまま帰るけどいいよね?」
江藤「あ、待って」
恒一「どうしたの?」
江藤「その……ありがとね? プールで助けてもらった上に家まで送ってくれて……。本当感謝してる」
恒一「いいっていいって。困った時はお互い様さ」
江藤「あの時……私、本当に死ぬかと思って……。彩や死んだクラスメイトたちの死に際の気持ちが少しだけ分かった気がするの……」
恒一「江藤さん……」
江藤「ってごめんね。私ったらまたこんなことを……」
恒一「………………」
江藤「………………、、、」
恒一「江藤さん」スッ
江藤「!」
恒一「この紙、渡しとくよ」
江藤「これは?」
恒一「僕の携帯電話の番号。どんな些細なことでもいいから、何か悩んだり困ったりした時は気軽にかけてきて。相談に乗るからさ」
江藤「いいの?」
恒一「もちろん。僕たち友達だろ?」
江藤「榊原君……」ジワッ
江藤「……うん、ありがとう。私の携帯に登録しとくね」
恒一「ああ、電話待ってるからさ」
恒一の部屋
鳴『そう。そんなことがあったのね』
恒一「見崎も江藤さんに携帯の番号渡したら? また霧果さんに携帯、買ってもらったんでしょ?」
鳴『前にも言ったでしょ? 私、この機械好きじゃないって。だからあまり他人に番号教えたくないの』
恒一「でも、江藤さんとは友達になったんだろ?」
鳴『……ま、一応そういうことになってるんでしょうけど』
恒一「ならいいじゃないか」
鳴『……………………』
恒一「な、なんでそこで黙り込むのさ?」
鳴『それより』
恒一「ん?」
鳴『江藤さん、大丈夫だったの?』
恒一「ああ、大丈夫だよ。特に怪我もなかったし」
恒一「心?」
鳴『プールで溺れて死に掛けて、かつてのトラウマが蘇ったのなら心に深い傷を負ってもおかしくないわ』
恒一「!」
鳴『また錯乱しなきゃいいけどね。江藤さん、ああ見えて精神的に弱いところありそうだし。先生が教室で自殺した時も一番ショック受けてたのは彼女でしょ?』
恒一「……そうだけど、そういう可能性もあるから携帯電話の番号渡したんだし、一応は大丈夫だと思うよ?」
鳴『言い切れる? あの災厄でクラスの3分の1が死んだのよ? まだ完全に立ち直ってない可能性が高いわ」
恒一「それは……」
鳴『そもそも榊原君はどうなの?』
恒一「僕?」
鳴『あの合宿から一ヶ月以上経って死人は一人も出てないけど、榊原君は怖くないの? 災厄はまだ続いてるんじゃないか、って不安にならないの?』
恒一「それは……たまにはそういうことも考えるけど……」
鳴『なら江藤さんはもっと悩んでるはずよ。まだ油断はできないわね』
恒一「………………」
鳴『まあ、災厄は間違いなく終わってるはずなんだけどね』
霧果『鳴、ご飯の時間よ』
鳴『あ、霧果が呼んでる。ごめん、もう切るね』
恒一「分かったよ」
鳴『それじゃあ』
恒一「またね」ピッ
恒一「ふぅ……」
恒一「災厄か……」ゴロン
恒一「……………………」
―――――
―――
――
恒一「見崎!」
鳴「あ、榊原君」
恒一「ごめん。着替えるのに手間取って遅くなっちゃった」
鳴「ただ着替えてただけで15分も遅刻?」
恒一「本当にごめん!」
鳴「まったく……女の子を待たせるなんて」
鳴「でも、久しぶりのお出かけだし……」
恒一「?」
鳴「今日は特別に許します」
恒一「はは、そうしてもらえると助かるかも」
恒一「楽しみだね、美術展」
鳴「楽しみなのに遅刻するんだ」
恒一「……まだ怒ってる?」
鳴「冗談よ。もう怒ってないわ」
恒一「良かった……」ホッ
鳴「せっかくの機会なんだし、楽しまなきゃ損だもんね」
恒一「そうだね」
鳴「クスッ」
恒一「ふふ」
『電車がホームに参ります。電車がホームに参ります』
恒一「お、来た来た」
「恒一君」
恒一「へ?」クルリ
ドンッ!
鳴「!」
キキィィィィィッ!!!! グシャァァァァァッ!!!!
恒一「……え?」ビチャッ
「女の子が轢かれたぞ!!!」
「駅員呼べ!!!」
恒一「……みさ……き?」
「どうして……」
恒一「ハッ!」クルリ
「どうして私を……見殺しにしたの?」
恒一「!!!!!!!!!」
「痛いよ……恒一君……苦しいよ」
恒一「あ、う、わ……ああ……」
「許さない……殺してやる……恒一君も……3組のみんなも……絶対に」
「この私が、災厄になって3組を全滅させてやる……っ!!!!」
恒一「うわああああああああああああああああああ!!!!!!」
ガバッ!!!
恒一「ハァ……ハァ……ハァ……ハァ」
恒一「………ハァ……ハァ……夢……?」
恒一「…………………………」
恒一「…………………………」
恒一「……………………はは……は」
恒一「夢、か……」
恒一「…………………………」
翌日・学校
望月「あ、榊原君。おはよう」
勅使河原「よーっす、サカキ!」
恒一「……おはよう二人とも」
勅使河原「なんだなんだ? やけに今日は元気ねぇな?」
望月「寝不足?」
恒一「気にしないで。なんでもないから」
恒一「ハァ……」トボトボ
望月「榊原君どうしちゃったんだろ? あんなに落ち込んじゃって」
勅使河原「深夜のアダルト番組見逃したんじゃねぇの?」
恒一「………………」
恒一「わっ!? 江藤さんか……ビックリした」
江藤「なんだか朝から憂鬱げだね。ダメだぞ、若い者がそんな溜息ばっかり吐いてたら」
恒一「あーうん、ちょっとね……」
江藤「?」
望月「あれ? 榊原君ってあんなに江藤さんって仲良かったっけ?」
勅使河原「おいおいサカキも隅に置けねぇな。鳴ちゃんとは倦怠期なのか?」
ガララ
鳴「…………」
勅使河原「お、正妻の登場だ。これは修羅場だな」ニヒヒ
望月「やめなよ勅使河原君」
恒一「あ、見崎」
恒一「無事だよ、ね……?」
鳴「……?」
江藤「……?」
昼休み・屋上
江藤「今日も誘われたので、昼食に同席させて頂いたんですが……」
鳴「……」モグモグ
江藤「何故か誘ってくれた張本人が暗い!」
恒一「……ハァ」
江藤「ねぇ見崎さん、榊原君どうしちゃったの?」ヒソヒソ
鳴「さぁ? 私も知らない」ゴクゴク
江藤「昨日はあんなんじゃなかったのに……」
鳴「寝不足かも」ガブリガブリ
江藤「いやいや、なわけないでしょ。あの落ち込みよう……」チラッ
恒一「…………」ボーッ
江藤「え? 何が?」
鳴「榊原君から昨日聞いたけど、プールで溺れかけたんでしょ?」モシャモシャ
江藤「あーそれ? 恥ずかしながらドジってしまいまして。でも体の方は大丈夫。この通り健康そのものです!」
鳴(体の方は、か)
鳴「ならいいんだけど……」ジュルジュルメコッ
江藤「だけど肝心の彼が朝からあんな感じで……」
鳴「家で何かあったのかもね」バキバキゴシャッ
江藤「なら一度ちゃんと訊いてみるべきだね」
恒一「…………」ボーッ
江藤「ねぇ、榊原君」
江藤「呼んだよー。ちょっといいかな?」
恒一「……なんだい?」
江藤「榊原君、朝からずっと落ち込んでるようだけど一体どうしたの?」
恒一「……あー別になんでもないから。無視して二人でご飯食べてて」
鳴「……………………」
江藤「そういうわけにはいかないよ。そもそもお昼ご飯に誘ってくれたの榊原君じゃない」
恒一「……そういえばそうだったね」
江藤「何かあったの? もし良かったら話だけでも聞いてあげるよ?」
恒一「うん……じゃあ……」
鳴「縁起でもないわね、ホームから落とされて轢死とか」
恒一「う、ごめん……」
江藤「それで、榊原君はその夢を見てからずっと罪悪感に苛まれてる、ってことでいいのかな?」
恒一「罪悪感というか……そもそも僕がもっと上手く立ち回れてたら、災厄の犠牲者も最小限に抑えられたんじゃないか、って思ってさ」
江藤「…………」チラッ
鳴「…………」チラッ
恒一「大切な人、たくさん死んじゃったから余計にね」
江藤「でもそれは榊原君が負い目を感じることじゃないよ。あんな常識が通じない状況で、例えどんなに優れた対策を立てても結局災厄の前では無意味だったかもしれないし」
鳴「そもそもは3組に起こる災厄という現象がすべての原因だからね。まともに対応できなかったのが悪い、って言って誰かを責めるならキリがない話だよ」
江藤「私も昨日あんな無様に錯乱しちゃったからね。色々と災厄のことでナーバスになっちゃう気持ちは分かるけど……」
鳴「それでも榊原君が気に病むことじゃない」
江藤「だね」
恒一「……分かっちゃいるんだけどさ」
恒一「…………ハァ」
鳴「いつかこういう日が来るとは思ってたけど、意外と早かったかも」ヒソヒソモグモグ
江藤「このまま榊原君に落ち込まれたままでも困るしね」ヒソヒソ
鳴「彼のことだからすぐに立ち直ってくれるとは信じてるけど」ヒソヒソゴクゴク
恒一「………………」ボーッ
江藤「あ、そうだ。ならこんなのはどう?」ヒソヒソ
鳴「え?」モシャモシャ
江藤「ゴニョゴニョゴニョゴニョ」
鳴「!」
江藤「で、ゴニョゴニョゴニョゴニョ」
鳴「……それは別に構わないけどただ私……ゴニョゴニョゴニョゴニョ」
江藤「そんなの関係ないって。なんなら私が見崎さんにゴニョゴニョゴニョ」
鳴「むー……じゃあそれならいいかも」
江藤「決まりだね」
恒一「……何?」
江藤「今日の放課後なんだけどさ!」
恒一「?」
―――――
―――
放課後・下足箱
江藤「ごめんね榊原君、無理言っちゃってさ」
恒一「構わないけど……なんで二人していきなり、僕の家に行きたい、なんて言い出したの?」
江藤「まあまあ細かいことは気にしない。男の子なら素直に喜ぶもんだよ? 女の子二人も家に招待できるんだからさ」
恒一「うーん……」
江藤「ほらほら! 早く榊原君の家、行こ?」
恒一「……分かったよ」
恒一「でも見崎がいないようだけど?」
江藤「見崎さんはクラブで一時間ほど遅れるから『先に行ってて』だって」
恒一「ていうか江藤さんは水泳部どうしたの?」
江藤「今日は水泳部はお休み。また明日から猛特訓だけどね」
恒一「そうなんだ。じゃあ行こうか」
江藤「うん!」
恒一「さ、上がって。部屋まで案内するよ」
江藤「あ、はーい。お邪魔しまーす」
恒一「にしても江藤さんが自分の家に来ることになるなんて、思ってもみなかったよ」
江藤「それは私も同じ。世の中分からないもんだね」
恒一「今日はお祖父ちゃんもお祖母ちゃんも、老人ホームの交流会で出かけてるから楽にしてくれていいよ」
江藤「りょーかい」
江藤「あ」ピタッ
恒一「どうかした?」
江藤「ここ、仏間だよね?」
恒一「そうだけど」
江藤「もし良かったら、線香上げていいかな?」
恒一「え? あ……」チラッ
恒一「もちろん。そうしてもらえると嬉しいよ」
チーンチーン
江藤「……………………」
恒一「………………」
江藤「……はい、済んだよ」
恒一「わざわざありがとうね」
江藤「ううん。これぐらいはね」
恒一「それじゃあ、僕の部屋はこっちだから」
江藤「うん」
恒一「着いたよ。ここが僕の部屋だ」ガラッ
江藤「おーなんか意外とさっぱりしてる」
恒一「つまらない部屋だけど、適当にくつろいで」
江藤「ありがとー。ではお言葉に甘えて、適当にくつろいどきます」スッ
江藤「ここが榊原君の部屋か……」
江藤(なんだか榊原君の匂いがする……)
江藤「………………、、、」
江藤(……ていうか男の子の部屋、入ったの初めてなんだけど)
江藤(やっぱり女の子の部屋とは根本的に違うんだなー)
江藤(って! ちょっと待ってよ。よく考えたら私……榊原君の部屋で榊原君と二人きり!?)チラッ
恒一「?」
江藤(うわ、何気にすごいシチュエーションじゃん)
江藤(……どうしよう、こんなの慣れてないよ)ソワソワ
江藤(はっ!!)
――藤巻『決まってるじゃない。上手いこと悠を言いくるめて襲うためさ』――
江藤(な、なんでこんな時に奈緒美の言葉が!?)
――藤巻『そしてそのまま悠の幼い体をペロリンチョ♪ と頂いちゃう腹積もりなんだよ!』――
江藤(ないないない! 絶対ないから!! そもそも私から榊原君の家に行きたい、って言ったんだし!)
――藤巻『いやいやこういう普段は澄ましてる男ほど性欲は凄まじいんだって』――
江藤(そんな……そんなの……榊原君に限って……)チラッ
恒一「?」
江藤(わーわーわー!!//// どうしよう奈緒美!? 私そんなの無理だよ!! 心の準備もできてないのに……っ////)
恒一「江藤さん?」
江藤「!!!!!!」ビクゥッ
恒一「え? 何が?」
江藤「へ?」
江藤「あ」
江藤「//////」カァァァ
江藤(あああああああああ!!!! 私のバカ! アホ! カス!! 何一人で暴走してんのよおおおおおおおおお)
恒一「…………」
江藤(うううう……)
恒一「……………………」
江藤「………………、、、」
恒一「江藤さん」
江藤「…………なんでしょうか?」
恒一「飲み物持ってこようか?」
江藤「……お願いします」ズーン
江藤「……フゥ」
恒一「少しは落ち着いた?」
江藤「さ、最初から落ち着いてます……っ」
恒一「そう? さっき一人で怪人二十面相してたようだけど」
江藤「あ、あれは……っ! そんなんじゃなくて……っ!」
恒一「だけど僕、表情豊かな江藤さんも好きだけどな」
江藤「……え?」
恒一「なんか嘘偽りない、ありのままの江藤さんを見れるからかな? 仲良くなる前は江藤さん、クールな印象があったし」
恒一「それに江藤さんと話してると不思議と元気が沸いてくるんだよね」
江藤「榊原君……」
恒一「僕、江藤さんと友達になれて嬉しいよ。君みたいな子と一緒にいると人生楽しいんだろうな」
江藤「!」トクン
恒一「こんなことならもっと早く江藤さんと友達になっておけば良かったね」
江藤(なんだろう……この胸が熱くなる感じ……。それに、榊原君と話すようになってから日に日に増していくこの感覚……)
江藤「………………、、、」
江藤「わ、私も……もちろん、そうだけど……」
江藤(彼のそばにいると、不思議と胸が心地良い……)ギュッ
プルルルルルルル
江藤「!!!!!!」
恒一「あ、電話だ。出ていいかな?」
江藤「……ど、どうぞ」
恒一「もしもし? 見崎?」
江藤(……相手は見崎さんか)
恒一「え? うん。そうだよ。江藤さんも一緒にいるよ」
江藤「……………………」
恒一「そっか分かった。もうそろそろ着くんだね?」
江藤(あ、見崎さん、もう来ちゃうんだ……)
江藤(ふーん……見崎さん、前に榊原君の部屋来たことあるんだ。ま、当然だよね。以前から仲良かったんだから)
恒一「ははは、そうだね」
江藤(……榊原君、相手が見崎さんだとあんなに嬉しそうに……)ズキン
恒一「うん、うん。いいよそれぐらいなら。ふふ、分かってるって」
江藤(いつまで話してるんだろ? なんかつまんないなぁ……)チラッ
江藤(ん? あれ? なんだろあの布団の下からはみ出てるやつ)ゴソゴソ
江藤(え……こ、これってまさか////)
恒一「じゃあ待ってるからね。また後で」ピッ
恒一「ふぅ……」
江藤「さ・か・き・ば・ら・くん」
恒一「なんだい江藤さ……!?」
江藤「この本は何かなぁ~?」ニヤニヤ
恒一「ど、どこでそれを!?」
江藤「布団の下からはみ出してたよ~。ダメだぞ、大切なものはちゃんと隠しておかないと♪」
江藤「榊原君もやっぱり男の子だね。こんな本持ってるなんて」
恒一「ち、違うんだ! それは勅使河原が無理やり僕にくれたやつで……っ!」
江藤「へぇ、そうなんだぁ?」
恒一「お願いだから返してくれないかな?」アセアセ
江藤「ふむふむ。この表紙を見る限り、榊原君は胸が大きくて眼鏡をかけた年上の看護婦さんが好きなんだね? うわぁ榊原君ってばムッツリ~」
恒一「あうう……////」
江藤「見崎さんが来たら言いつけちゃおっかな?」
恒一「そ、それだけはやめてくれ!!」
江藤「え~どうしよっかな~?」ニヤニヤ
恒一「この通りです!! どうか、どうかそれを返してください江藤様!!」
江藤「ふふ、だ~め」
恒一「くっ……」
恒一「とうっ!!」バッ
江藤「はいはい、ご苦労さん」シュバッ
恒一「ぬおおおおお」バッ
江藤「取れるものなら取ってみなさい」シュババッ
恒一「くぅ~……おりゃあああああああああ!!!!」
江藤「え? ちょっ」
江藤「きゃっ」
ズダーン!
恒一「よし! 取り返したぞ!!」
恒一「って、あ……」
江藤「!」
※恒一君が江藤さんを押し倒した状態です
恒一「……あ……その……ごめん……」ドキドキ
江藤「……う、うん……」ドキドキ
江藤「………………、、、」
ガラッ
鳴「榊原君、入るよ」
恒一「え?」
江藤「え?」
鳴「!?」
恒一「…………………………」
江藤「…………………………」
鳴「…………………………」
鳴「……ふぅん。榊原君と江藤さんって、そういう関係だったんだ」
恒一「ち、違うんだ見崎! これはただの事故なんだ!!」ババッ
江藤「そ、そう! 事故なの事故!!」ババッ
恒一「だーかーらー違うんだよ! ちょっとした弾みであんな態勢になっただけなんだ!! ねぇ江藤さん?」
江藤「うんうん! 私が悪ふざけで取った榊原君のエッチな本を榊原君が取り返そうとした末にああなっただけで……」
鳴「エッチな本?」
恒一「げ」
江藤「あ」
鳴「へぇ、榊原君ってそんなの持ってたんだ」
恒一「江藤さん!」
江藤「ご、ごめんなさい。つい……本当はバラすつもりじゃなかったんだけど、あはは……」
恒一「トホホ……」
江藤「そういうことだったんです。別に襲われてたわけじゃないから、榊原君を信じてあげて」
恒一「いや、その言い方なんかフェアじゃないよね?」
鳴「でも榊原君がエッチな本を隠し持ってたのは言い逃れのできない事実」
恒一「う……」
鳴「でしょ?」
恒一「そうだけど……別にエロ本の一冊持っててもいいだろ? 僕だってこれでも立派な男子中学生なんだ!!」ドン
鳴「確かに言われてみれば……」チラッ
エッチな本『メガトン級おっぱい大特集! ビッグサイズは男のロマン』
鳴「やっぱり許さない」
恒一「なんでだよ!?」
江藤「まあその表紙見るとやっぱりそうなるよね」
恒一「どっちなの江藤さん!?」
鳴「ということでこのいかがわしい本は没収決定」
江藤「決定~♪」
恒一「チクショオオオオオオオオ!!」
鳴「うるさい」
恒一「……はい」ショボーン
江藤「お、ありがとー。ごめんね? 一人で行かせちゃって」
鳴「ううん。これぐらいはやっておきたかったから」
恒一「何やってるの二人で? ていうかその買い物袋は何?」
江藤「それなんだけどさ榊原君、ちょっとキッチン貸してくれる?」
恒一「キッチン? 別にいいけど、なんでまた……?」
恒一「あ、もしかして料理作るの!? それなら僕も――」
鳴「ダメだよ」
恒一「へ?」
鳴「今回は榊原君には作らせません」
恒一「え? え?」
恒一「どういうこと?」
江藤「はいはい。榊原君はキッチンから退散する」グイグイ
恒一「えー僕の家なのにぃ。ていうか見崎って料理できないでしょ? 大丈夫なの?」
鳴「うるさい(怒)」グイグイ
江藤「榊原君に手伝ってもらうと意味ないんだよね。ごめんねぇ」
恒一「意味がない?」
江藤「じゃ、呼ぶまで待っててね」ピシャッ
恒一「あぁん」
鳴「元料理研究部の血が騒ぐのかも」
江藤「残念だけど、榊原君の手料理は次の機会ってことで。じゃあ始めようか?」
鳴「……本当にするの?」
江藤「一応キッチンの使用許可はもらったし、食材も見崎さんが買ってきてくれたからね」
鳴「……そうじゃなくて。榊原君も言ってたけど、私、料理なんてできないし……」
江藤「関係ないよ。私だって料理の腕なら榊原君の足元にも及ばないだろうしね。大切なのは料理に篭める気持ちじゃない?」
江藤「って、あはは。ちょっと臭かったかな?」
鳴「ううん。そんなことないよ。少し自信出たし。早く始めよう」
江藤「オッケー♪」
恒一「あー僕も作りたい。二人に真の料理っていうものを教えてあげたい」
恒一「そもそも江藤さんはともかく、見崎は料理からっきしじゃないか」
恒一「食べるものもいつもサンドイッチやおにぎりばかり。栄養が足りてない」
恒一「飲み物だって紅茶以外ほとんど飲まないし」
恒一「……そういえばなんで見崎は紅茶しか飲まないんだろ?」
恒一「いつも紅茶だよなぁ。コーヒーとか嫌いなのかな?」
恒一「コーヒーも美味しいんだけどなぁ。特にハワイコナ・エクストラ・ファン――」
恒一「…………………………」
恒一「……昨日の夢、思い出しちゃった……」
恒一「……なんだよ、白けるなぁ……」
恒一「……………………」
トントングツグツジュワァ
鳴「榊原君、喜んでくれるかな?」
江藤「大丈夫大丈夫。料理ってコツさえ掴めば意外と上手く作れるもんだよ」
鳴「そうかな? どっちにしろ江藤さんの方が私より美味しく作れそうだけど」
江藤「さぁー? 私の場合、他人に評価してもらったことあまりないからね。分かんないよ」
鳴「それでも江藤さんは料理だけでなく家事もできそうだし、全般的なスキルでは私はきっと敵わない」
江藤「それは褒めすぎ。正直、女の子の魅力としては私は見崎さんに負けてると思うな」
鳴「江藤さんが……? まさか」
江藤「私が普段、珊や和江からどう評価されてるか知ってる? 『色気がない』『ボーイッシュ』『この前、悠と間違えて望月君に挨拶しちゃった』だよ。失礼しちゃうよねぇ?」
江藤「そりゃ珊や和江は外見も内面も大人っぽいからそう見えても仕方がないけど、こっちだって成長しないものは成長しないんじゃチクショウめ!」プンスコ
鳴「……その気持ち、良く分かる」
鳴「ロングは手入れが大変だから、ショートカットが一番いいよ」
江藤「だよねだよね。珊なんかはロング、似合うんだろうけどさ」
江藤「なーんて、愚痴ばっかり言ってるからいけないのかな? ま、所詮『クラブが恋人』の女の実態なんてこんなもんです」
鳴「江藤さんは今まで、男の人と付き合ったことはあるの?」
江藤「ないね。ていうかそんなこと興味なかったし、考える余裕もなかったからね」
鳴「ふーん」
江藤「って、こういう態度がやっぱりいけないんだろうな。やっぱり男の子って、もっと女の子らしい女の子の方が好きなのかな……?」
江藤「だとしたら私じゃ全然ダメ、だよね……」
鳴「…………………………」
江藤「あ、しまった! 見崎さん、火、止めて! 焦げちゃう焦げちゃう」
鳴「え? あ、うん!」
ヨッシャァァ!! カンセェェイ!!
恒一「……?」
サッソクサカキバラクンヲヨビニイコウ!! ウン…
恒一「……なんだ? 今僕の名前が聞こえたような」
恒一「あ」
鳴「榊原君」ガララ
江藤「ごめんね、待たせちゃって」
恒一「どうしたの? 料理作り終わったの?」
江藤「うっふふ。まあね。来てくれるかな?」
恒一「分かったよ」スタスタ
江藤「じゃじゃーん!」
鳴「じゃじゃーん」
恒一「おおっ! これは……っ!」
江藤「そだよー。家庭科の教科書見ながらだけどね」
鳴「あまり味には自信ないんだけど……」
恒一「いやいやとても美味しそうだよ。元料理研究部の僕から見ても良くできてるし」
江藤「じゃあ早速食べてみてくれるかな?」
恒一「うん? 二人は食べないの?」
江藤「もちろん私たちの分も用意してるけど、最初は榊原君に食べてほしいんだ」
鳴「元々、榊原君を元気付けるために作ったものだしね」
恒一「え? 何それ? どういうこと?」
鳴「……」チラッ
江藤「……」チラッ
鳴「榊原君さ、今日一日、元気なかったでしょ? 昨晩見た夢のことで悩んでたらしいけど」
恒一「!」
鳴「昼休みに私たちがその話を聞いてからも、今までずっと落ち込んだままだったし」
江藤「だからさ、私と見崎さんで手作りのお菓子を作ることにしたの。榊原君に元気になってもらおうと思ってね」
江藤「うん。だって、榊原君の暗い顔なんていつまでも見ていたくないし」
鳴「榊原君には元気でいてほしいから」
恒一「………………、、、」
鳴「榊原君は、あの災厄で死んだ人たちに負い目を感じているようだけど、いつまでも引き摺っていたらダメだよ。本当の意味で災厄は終わらない」
江藤「榊原君はできるだけのことやったんでしょ? 罪を背負い込むよりも残りの半年を精一杯生きることが、死んでいった仲間たちのためにもなるんじゃないかな?」
恒一「……見崎……江藤さん……」
江藤「それでも、また辛くなった時は私たちが都度、榊原君の力になるからさ。ね、見崎さん?」
鳴「うん。だから、榊原君……」
恒一「分かった。二人とも、ありがとう。そこまで僕のことを考えていてくれたなんて、逆に申し訳ないよ」
恒一「でも、嬉しかった。これ、ありがたくごちそうさせてもらうことにするよ」ニコリ
鳴「じゃあ、早く早く」
恒一「はは、そう焦らないで。今食べるからさ」アーン…パクッ
江藤「……」ドキドキ
鳴「……」ドキドキ
恒一「うん! 美味しいよ!」
江藤・鳴「……!」パァァ
恒一「これは元料理研究部の僕でも唸るほどだ。二人でお店開けるよ!」
江藤「またまたぁ」
鳴「でも良かった」ホッ
―――――
江藤「ん~自分で言うのもなんだけど甘くて美味しい~♪」
鳴「こんなに真剣に料理したの初めてかも」モグモグ
恒一「ふぅ。ごちそうさま」
江藤「お粗末さま。どうする? まだ食材残ってるけどまだ食べたい?」
恒一「じゃあお願いしようかな」
江藤「了解」スクッ
鳴「私も全然食べ足りないし手伝うよ」スクッ
恒一「……………………」
江藤「残り全部使っちゃう?」
鳴「当然」
恒一(二人とも、本当にありがとう……。お陰で立ち直れたよ。僕は幸せ者だな)
恒一(にしても……)
鳴「行け行けぇ」
恒一(僕の家で女の子二人が料理作ってるって何気にすごいことだよな。しかも二人とも制服の上からエプロンだし。男なら誰でも憧れる光景だよなぁコレ)ニヘラ
恒一(ん? あ、ヨーグルトソース……二人とも手をつけてないのか)
恒一「ねぇ、見崎、江藤さん」ガタッ
鳴「何?」
江藤「どうかした?」
恒一「このヨーグルトソース使わないなら、冷蔵庫にほぞnどぉうわぁっ!!??」ガッ
鳴・江藤「!」
恒一「あ、ヨーグルトソースが!!」
ヒューン……ベチャッ! ベチャッ!!
恒一「げ!」
江藤「………………」
恒一「ご、ごめん二人と――」
恒一「!?」
江藤「ちょっとぉ~何これ? ベトベトするんだけど」
鳴「ヨーグルトソース? 顔がベトベトして気持ち悪い」
恒一(見崎と江藤さんの顔に白くて粘り気のある液体が……っ! くっ)
鳴「榊原君、気をつけてよ」
江藤「うわ、髪にもついちゃってるし」
鳴「って、何前かがみになってるの榊原君?」
恒一「あ、な、なんでもない。なんでもないから。あとシャワー使ってくれていいから。それ洗い流してきたら?」アセアセ
恒一「ど、どうぞどうぞ」
鳴「榊原君がああ言ってくれてるから、せっかくだし使わせてもらおっか」
江藤「もう。仕方がないな」
恒一「すんません。ホントすいません」
江藤「それじゃあ罰として、榊原君がパンケーキ作っておきなさい。オーケー?」
恒一「お、オッケーオッケー」
鳴「行こ」
江藤「はいはーい」
ガラガラガラ……ピシャッ
恒一「……………………」
恒一「……女子中学生とヨーグルトソースって組み合わせ次第で最強の凶器になるんだな」フゥ
風呂
江藤「……髪についたソース取れたかな? 臭いつかなきゃいいけど」
鳴「」
江藤「どうしたの?」
鳴「いや、一緒に入る意味あったのかな? って」
江藤「いいじゃんいいじゃん。水道代の節約になるし、一緒に入った方が手間もかからないでしょ。クラブでは女同士で学校のシャワー浴びるのはよくあることだよ」シャワー
鳴「わっぷ」
江藤「ふふふ」
鳴「……でもまぁ、こういうのも懐かしい感じがするしたまにはいいかもね」
江藤「懐かしい?」
鳴「ううん、なんでも」
江藤「?」
鳴「にしても……」ジロ
鳴「………………」ジー
江藤「へっ? わっ、ちょっと、どこジロジロ見てるの見崎さん!?////」
鳴「私より……でかい……」
江藤「えええぇ? そうかなぁ? これでも小さい方なんだけど」
鳴「それでも私よりは……マシ。ずるい」
江藤「ず、ずるいって。見崎さん、貴女、珊や和江のサイズがどれぐらい現実離れしてるか知ってる?」
江藤「二年の時修学旅行で目撃したことあるけど、メロンとスイカレベルだったよ? それに比べれば私のなんて……」
鳴「こっちの深さは……そんなに変わらないか」チラッ
江藤「ちょちょちょちょーっ!! こっちは観察禁止!! セクハラ親父ですか貴女は!?////」バッ
鳴「セクハラ親父にもなりたくなるよ、こんな体前にしたら」
江藤「は、はあ!?////」
鳴「確かに胸はそこまで大したものじゃないけど……」
江藤「う、うっさい!////」
江藤「え? そう?」
鳴「足は細いし、ウェスト引き締まってるし、全体的にスマートな体型してるし、肌も色白。多分、スタイルの良さで敵うのは3組の中では渡辺さんか多々良さんぐらいかも」
江藤「それは褒めすぎじゃないかな? あの二人に匹敵するほど理想的な体してるとは思えないけど」
鳴「一度鏡で全身像見てみたら? モデルでもできるんじゃない?」
江藤「モデルって……まあ、水泳やってるから余計な肉はないんだろうけどさ」
鳴「でしょ?」
江藤「うーん」
鳴「これだけお得な体型だったら、榊原君も喜んでくれそうだよね」フッ
江藤「ななななななんでそこで榊原君なの!!??////」
江藤「は、はぁぁぁ!?//// 何をいきなり!? そ、それは見崎さんの方じゃない……っ!」
鳴「わ、私は別に榊原君のことなんて……っ」
江藤「………………、、、」
鳴「………………、、、」
江藤「…………………………」
鳴「…………………………」
鳴「……榊原君さ」
江藤「う、うん」ビクッ
鳴「元気になってくれて良かったね」
江藤「……そうだね」
鳴「こればかりは江藤さんのお陰だよ」
江藤「なんで? 二人で料理作ったのに。見崎さんのお陰でもあるでしょ」
江藤「まあそれはそうだけど」
鳴「榊原君にとっても、あの災厄は忘れられない嫌な思い出。いずれ、そのことで榊原君が悩まされる日が来るのは予想してた」
鳴「それを乗り越えられるかが今後の分かれ道だったんだけど、あの反応を見る限りどうやら大丈夫だったみたいね」
鳴「すべては江藤さんの提案がきっかけだよ。災厄に対して敏感だった江藤さんだからこそ、榊原君の複雑な気持ちを汲み取ることができたのかもね」
江藤「……そんな。私なんて、いまだ災厄のトラウマから抜け出せてない臆病者なのに」
江藤「昨日はプールであんなことがあったし、今日、クラブが休みでホッとしてるほどなんだよ? 大会も近いのに……」
鳴「大丈夫だよ。榊原君の元気を取り戻せたんだから。江藤さんもトラウマを乗り越えられる。だから水泳、頑張ってね」
江藤「見崎さん……」
鳴「……」コクコク
江藤(私ってば、バカだな。見崎さん、こんなに良い子なのに一学期中あんなに怖がって避けてたなんて……)
江藤「ありがとう見崎さん。私、頑張ってみるよ」
鳴「それがいい」
鳴「でもそろそろ出ようか。風邪引いちゃうし、榊原君も待ってるだろうから」
江藤「そうだね」
カサカサッ
江藤「!?」
江藤「な、何今の音?」
鳴「え?」
江藤「そっちから何かが這うような音聞こえなかった?」チラッ
鳴「這うような音?」チラッ
カサカサカサッ!!
鳴・江藤「!!!???」
恒一「……ていうか今、僕の家の風呂で見崎と江藤さんがシャワー浴びてるんだよな?」ゴクリ
恒一「や、やばい。今日の夜は色んな意味で風呂に入り辛いぞ」
恒一「って、いかんいかん。最近私生活に女の子成分が多くてどうも気が緩んでるみたいだ。このままでは江藤さんの言うようにムッツリにな――」
きゃああああああああああああああああああああああ>
恒一「……っ」
恒一「この悲鳴は江藤さん!? まさかあの二人に何か!?」
恒一「こうしちゃいられない!!」ダッ
鳴「え?」
江藤「え?」
恒一「!!!!!!!」
鳴「……………………」スッパ
江藤「……………………」ダカ
恒一「……………………」
江藤「きゃああああ榊原君の変態!!!////」
恒一「えええええ!!?? どういうこと!!??」
鳴「…………////」カァァ
江藤「いつまでそこで見てんの!?」
恒一「ご、ごめんなさぁい!!////」ピシャッ
台所
恒一「そ、そうでしたか……。虫が……虫が出ただけなんすね……」
江藤「もう! どうしていきなり乗り込んでくるかな? 入浴中だって分かってるはずなのに!////」プンスコ
鳴「それを言ったら、たかが虫に驚いて悲鳴を上げた江藤さんも悪い」
江藤「う……。だって虫とか苦手なんだもん」
恒一「すんませんすんませんすんません。見崎と江藤さんに何かあったと思ってつい……」
鳴「ま、二人とも悪気があったわけじゃないし。おあいこ、ということで」
江藤「こればかりは……仕方ない、か……。私たちの身を案じてのことだし」
恒一「良かった……」ホッ
江藤「で・も!」
江藤「一つだけ聞いておきたいことがあるんだけど」
恒一「は、はい! なんでしょうか江藤様?」
江藤「見た?」
恒一「は? え? 何を!?」
鳴「見たね」
恒一「いやだから何を!?」
鳴「分かってるくせに……」
恒一「あーえっとつまり見崎と江藤さんの裸を見たか? ってこと?」
江藤「やっぱり見たんだね!?」
恒一「いやいやいや見てない見てないです!!!!」
江藤「本当に?」ジロリ
恒一(……なんかすっごく疑われてる。つってもそんな暇なかったしなぁ)
恒一(あ、でも……肝心な部分はざんねn……幸いなことに見えなかったけど、裸の二人は綺麗だったなぁ……)
恒一(あれが女の子の肌なのかぁ)ニヘヘ
恒一「はっ!!」
江藤「顔がニヤついてるんですけどぉ」ジローリ
鳴「ですけどぉ」ジローリ
江藤「目を逸らされたんですけどぉ」
鳴「ですけどぉ」
恒一「……………………、、、」アセアセ
江藤「汗が尋常じゃないぐらい出てるんですけどぉ」
鳴「ですけどぉ」
恒一「……っ」
恒一「も、もう! 信じてよ!! 変な部分は見てないって!!」
江藤「変な部分?」ピクリ
恒一「うっ……」
鳴・江藤「……多分……だよ……きっと……」ヒソヒソボソボソ
恒一(なんか内緒話してるし。ていうかこの二人、急に仲良くなったような)
江藤「ま、いいでしょう。榊原君はそんな嘘吐く人じゃないし」
鳴「判決:無罪」
恒一「分かってくれたか……」
恒一「う、嘘を吐いてたら……?」
江藤「『榊原君の家に連れ込まれて服を脱がされて裸にされた挙げ句変な部分を見られた』って3組のみんなに言いふらす」
鳴「しかもあることないこと付け足して」
恒一「ちょちょちょちょぉぉっと!」
江藤「なーんて」
恒一「へ?」
江藤「そんなことするわけないでしょ、さすがに」ペロ
恒一「なっ……お、おどかさないでよ」
江藤「相変わらずこんな冗談に引っかかるなんて、榊原君は純粋だねぇ」
鳴「純粋だねぇ」
恒一「く、くそう」
江藤「あはは」
鳴「クスッ」
恒一(へぇ、やっぱりこの二人……)
恒一「こっちこそ。料理とても美味しかったよ。ありがとう」
江藤「どういたしまして。リクエストあったらまた作ってあげるからね」
恒一「それは嬉しいな。楽しみにしてるよ」
鳴「……」グイグイ
恒一「ん?」
鳴「私も……一生懸命料理勉強するから……また作ってあげる」
恒一「うん、見崎のも楽しみにしてる」ニコッ
江藤「それじゃあ今日は帰るね」
恒一「二人一緒に帰るの?」
江藤「何か変かな?」
恒一「あ、いや、いいんじゃない?」クスッ
江藤「じゃあね榊原君」
鳴「さよなら」
恒一「またね」フリフリ
鳴「榊原君にお風呂覗かれたけどね」
江藤「うっ……それは言わないでよ」
江藤「でも、榊原君元気になってくれたし結果オーライでしょ」
鳴「……確かに」
江藤「普段は奈緒美とか、松子や珊、和江と遊んでるけど、たまにはこういう男の子交えて過ごすのもいいもんだね」
江藤「ホント、見崎さんと友達になれて良かったよ」
鳴「……………………」
江藤「ま、そろそろ受験にも本格的に取り組まなきゃいけないんだけど」
鳴「江藤さん」
江藤「ん? 何~?」
鳴「これあげる」
江藤「!」
江藤「この紙に書かれてある番号って……」
鳴「私の携帯電話の番号」
鳴「本当は……私、携帯電話とか好きじゃないから、今まで番号を教えたのも榊原君だけなんだけど……」
江藤「うん」
鳴「江藤さんなら……いいよ……////」
江藤「見崎さん……」
鳴「私なんかと、電波で繋がりたくないって言うなら……別に無理しなくてもいいけど……、、、」
江藤「まさか。そんなことないよ」スッ
鳴「あ」
江藤「むしろこちらとしては大歓迎」ポチポチ
プルルルルル
鳴「……! 私の携帯が……」
江藤「はい。これで私の番号も分かるでしょ? ちゃーんと登録しておいてね」
江藤「ま、私からはそんな頻繁にかけたりしないからさ。そこは安心して」
鳴「……ありがとう、、、」
江藤「どういたしまして♪」
鳴「ねぇ……」
江藤「ん?」
鳴「これもあげる」
江藤「え? これって」
鳴「今週の日曜、夜見山の花火大会があるでしょ? その会場の特等席男女特別ペア券」
江藤「……なんで、これを私に?」
鳴「榊原君、誘ってみたらどうかな?」
江藤「私が? ちょっと待ってちょっと待って。これ見崎さんが持ってたってことは、見崎さんが榊原君を誘うつもりだったんでしょ?」
鳴「別に。元々私、人が多い場所好きじゃないから今回はあまり乗り気じゃなかったし」
江藤「そう言われても、こんなのタダで貰うわけには……」
鳴「福引でたまたま当てたものだし、そこは気にしないでいいよ」
江藤「だけど」
鳴「何か不満でも?」
江藤「私が……榊原君を誘うだなんて……」
江藤「あ、ああ待って!」
鳴「どうするの?」
江藤「うっ……その……あの……」
鳴「聞こえないんだけど」
江藤「わた……私が榊原君を誘うから!!//// 良かったらそれ、貰えないかな……っ!?////」
鳴「よろしい」
鳴「日曜日だからね。もう今夜あたりにも誘っておいた方がいいよ」
江藤「でもさ見崎さん」
鳴「何?」
江藤「見崎さんはいいの? 本当は見崎さん、榊原君と一緒に行きたかったんじゃ……?」
鳴「行きたくない、って言ったら嘘になるかな? だけど今回は特別に江藤さんに 譲 っ て あ げ る 」
江藤「譲ってあげるぅ?」
江藤「なっ!?」
鳴「せいぜい私に置いて行かれないよう頑張ることね」フフン
江藤「言ったなこのやろう。油断してると痛い目に遭うよ?」ニヤリ
鳴「それはどうかな?」
江藤「にゃろぉ」
江藤「でもまあ」
鳴「?」
江藤「ありがとね、見崎さん」
鳴「……別に。感謝されるほどのことじゃないし」
江藤「ったく、素直じゃないなぁ鳴ちゃんは!」ウリウリ
鳴「や、やめて」
江藤「あはははは」
江藤の部屋
江藤「さて。見崎さんから、花火大会の男女ペアチケットを貰えたのはラッキーだったんだけど……」
江藤「どうやって榊原君誘おう?」
江藤「なーんて悩んでる暇ないよね。花火大会は明後日だし。さっさと電話して約束を取り付けちゃえ」
ピッピッピッ
江藤「……………………」
江藤(……って何躊躇ってるの? 普通に事情話して誘えばいいことじゃん)
江藤(くっ……後は発信ボタンを押すだけなのに、押せない)
江藤(押せ……押せ! 押せぇぇ……っ!)グヌヌヌ
江藤「やっぱ無理!」ポイッ
江藤「………………うう、情けない」
江藤「なんでこれぐらいできないの? 私って馬鹿なの?」
江藤「そうだ。ぶっつけ本番でやろうとするからダメなんだ。まずはイメトレしておこう」
江藤「あ、榊原君? ちょっと花火大会の特等席のペアチケット手に入れたんだけどさ、一緒に行かない?」
江藤「『いいよー。日曜日だよね? じゃあ学校の校門前で待ってるね!』」
江藤「うん。分かった。またねー……ぴっ、つぅーつぅーつぅー……」
江藤「…………………………………」
江藤「……何やってるんだろ私……orz」
江藤「なんか急に恥ずかしくなってきたし……っていうかこんな簡単にできたら苦労しないよ!」
江藤「やっぱり普通に電話かけてみよう」
ピッピッピッ
江藤「……」ジー
ポイッ
江藤「……」
江藤「……、、、」
江藤「……バカ」
ブーブーブーブー
有田「ん? 電話だ」
渡辺「誰から?」
有田「悠ちゃんみたい。私話してくるから、二人で続き歌ってて」
渡辺「りょーかーい」
渡辺「んじゃもう一曲デスメタル入れとくか」
ガチャッ……バタン
有田「もしもし、悠ちゃん?」
江藤『松子? 今何してる?』
有田「今、珊ちゃんと和江ちゃんとカラオケ来てるよ」
有田『あ、ちょっと歌いすぎて疲れてたところだし、今なら大丈夫だよ。どうかしたの?』
江藤「うん……」
有田『悩み事?』
江藤「まあ、そう、えっと、そんな感じ……?」
有田『何々? 私でできることならなんでもするよ!』
江藤「あ、あのさ……松子なら、誰かとなんかのイベントに行きたい時、どうやって誘う?」
有田『イベント……? もしかして日曜日の花火大会のこと?』
江藤「うっ! まあ、花火大会でもいいかな?」
有田『花火大会に誰かを誘いたいの? あ! もしかして悠ちゃん、彼氏できたとか!?』
江藤「えええっ!? ち、違う違うまだそんなんじゃなくて……っ!」
有田『まだ? あーそっかぁ! 榊原君を花火大会に誘いたいんだね?』
江藤「ぎっくぅ!」
有田『やっぱりね。そんなことだろうと思った』
江藤「なななななななんで!?」
江藤「う、ウソ!?」
有田『あれぇ? 知らなかった? でも悠ちゃんも悠ちゃんだよ。あんなに堂々と榊原君と一緒にいるんだからさ?』
有田『普段は慎重な悠ちゃんも、男の子が関わると急に注意散漫になっちゃうんだねぇ』
江藤「ううう……////」
有田『ただ榊原君って見崎さんと仲良いでしょ? だから余計にみんな、3人の関係疑ってるみたいだよ?』
江藤「べ、べ、別に私が誰と付き合おうが私の勝手じゃない……っ! な、なんでみんなしてそんな詮索するの!?////」
有田『まあ、悠ちゃんのことだから理由あってのことなんだろうけどさ』
江藤「そ、そうだよ色々あるの!」
有田『それで悩みの内容なんだったっけ? 榊原君に告白するにはどうしたらいいか、だった?』
江藤「松子!!」
有田『にははーごめんごめん。花火大会に誘いたいんだよね?』
江藤「だから最初にそう言ったじゃん!」
有田『はいはい慌てない慌てない。まずは落ち着いて深呼吸』
江藤「お願いだよ……松子が頼りなんだからさ」
有田(私今、悠ちゃんに頼られてる? いつもは私の方が悠ちゃんに頼ってばかりなのに!)
有田(いいでしょう悠ちゃん。今回は私が貴女の人生の先生です! 頼りになる私が悠ちゃんの将来設計のためにアドバイスしてあげましょう!)
有田(って言っても私も男の子のこと、全然分からないんだけどね!)ペロ
江藤「……それで、何かいい誘い方あるかな? 電話しようにも恥ずかしくてさ」
有田『あるよ。とっておきの方法が。一つだけね。これなら成功間違いなし!』
江藤「え? どんなの!? どうすればいいの!?」
有田『それはね……』
江藤「それは……?」ゴクリ
有田『当たって砕けろだよ!!!』バーン
江藤「…………………………砕けたら失敗じゃない?」
有田「あ、それもそっか」
江藤「おい」
――有田『とにかく頑張ってね! 私、応援してるからね!』――
江藤(って松子は最後に言ってくれたけど、やっぱり勇気が出ない……、、、)
江藤「……………………」
江藤(ええい、ままよ!)フリフリ
江藤(このまま電話を見つめていても状況は変わらない。『当たって砕けろ』……いいじゃない。それぐらいの気持ちで挑むだけの価値はあるはず!)
江藤「ダメで元々。やってやる!」
ピッピッピッピ
プルルルルルルルル……
江藤「………………」ドキドキドキ
恒一『もしもし。江藤さん?』
江藤「あ、榊原君……あのね!」
―――――
江藤母「~♪」
江藤「………………」スッ
江藤「ねぇ、お母さん……」
江藤母「あら悠ちゃん、何かしら?」
江藤「お出かけ用の服でさ、一番可愛いのどこに仕舞ってたっけ?」
江藤母「急にどうしたの? ようやく悠ちゃんもお洒落に目覚めてくれた?」
江藤「そ、そんなんじゃなくてさ……」モジモジ
江藤父「なんだなんだぁ? まさか好きな男でもできたかぁ?」ハッハッハ
江藤「///////」
江藤父「」
江藤母「まあそうなの!? あの悠ちゃんに彼氏が!?」
江藤「ち、ち、違うよ!! 彼氏とかじゃないって!!//// ただの友達だよ!! ただの友達とちょっとお出かけするだけ!!////」
江藤「そ、それは……っ!」
江藤弟「お姉ちゃん、かれしできたんだぁ!」
江藤「だ、だから違うっての……っ!」
江藤弟「かれしかれしーおねえちゃんにかれしぃ」
江藤「~~~~~~っ////」
江藤母「コラコラ、お姉ちゃんをからかうのもその辺にしときなさい。お父さんが立ち直れなくなる前にね」
江藤「え?」
江藤父「」
江藤母「それにしても、あの悠ちゃんにも好きな男の子ができたのね。まあもう中学三年生だし当然か」
江藤「別に好きじゃないってば~~!」
江藤母「はいはい」ウフフ
江藤「もぉ~!」
江藤父「」
そして日曜日――。
江藤「……………………」ドキドキドキ
江藤(榊原君、まだかな? ちょっと早く来すぎちゃったかも)
江藤(待ち合わせ場所、駅前の噴水で合ってるよね?)キョロキョロ
江藤(髪もちゃんと整えたし、服も一番可愛いの着てきたから準備は万端。問題はないはず)
江藤(ていうか男の子と二人でお出かけなんて初めての経験だから、緊張するな。でも……すごく楽しみ)
江藤(まだかなまだかな?)
「ねぇ」
江藤(来た!)
江藤「あ、榊原く……ん?」
江藤(誰……? 榊原君じゃないし)
江藤「えっと……なんですか? 私に何か用ですか?」
男「ふふっ、用ってほどでもないんだけどさぁ。もし一人で暇なら僕と一緒に遊ばない?」
江藤(ナンパ……? 今まで珊や和江といる時にしかナンパなんてされなかったのに……)
江藤「結構です。私、人を待ってるんで。迷惑なんで消えてくれます?」
男「そう言わずにさぁ~。楽しくてハイになれる刺激的なこと、一緒にしようよ?」
江藤「気持ち悪いです。あんまりしつこいと警察呼びますよ?」
男「警察とか、無能の集まりなんて怖くないし、ふふっ。ほら、行こうよ」ガシッ
江藤「!!!」
江藤「は、離して!!!」
男「!?」
江藤「!?」
恒一「江藤さんに何やってるんだ? 痛がってるじゃないか。手を離せ!」
江藤「榊原君!」パァァ
男「……チッ、男持ちだったのか。つまらないな」バッ
江藤「あ」
恒一「さ、行こう江藤さん」
江藤「うん」ササッ
男「……………………」
江藤「あの人、まだこっち見てる……」
恒一「気にしない方がいいよ、あんな奴。それよりも早くここから立ち去ろう」タッタッタ
江藤「大丈夫大丈夫。それよりも助けてくれてありがとね。白馬の王子様みたいで格好良かったよ」
恒一「や、やめてよ。照れるじゃないか……////」
江藤「クスッ、そこは素直に照れておきなさい。本当に私、助かったんだし」
恒一「最近は変な奴、増えてるからね。女の子には怖い世の中になったね」
江藤「確かに。さっきのナンパ男も榊原君に似てたしね」
恒一「それどういう意味? 僕は女の子に手を出すような男じゃないよ」
江藤「どうかなぁ? そんなジゴロの顔してるくせにぃ。東京では何人の女の子が犠牲になったのやら」
恒一「犠牲になんてなってないよ! ていうか僕ってそんなイメージある!?」
江藤「ある」
恒一「えええええ!?」
江藤「ウソウソ。榊原君がそんなことする人だったら、そもそも友達になってないしね。ふふっ」
恒一「なんだ、驚かせないでよー」
恒一「何が?」
江藤「今日のこと。なんだか無理やり誘っちゃったみたいで悪い気がしてさ……」
恒一「それなら大丈夫だよ。僕も暇だったしね。むしろ誘ってもらって嬉しいぐらいだよ」
江藤「そ、そっか……、、、……私も嬉しいよ? 榊原君と一緒に行――」
江藤「え?」
巨乳美女「ボウヤ、ちょっと教えてほしいことがあるんだけどいい?」バイン
恒一「へ? は、はい? なんでしょうか?」
巨乳美女「私地元の人間じゃないからよく分からないんだけど、市役所へはこっちの道で合ってるかしら?」ボイン
恒一「そ、そうですね。この道を真っ直ぐ行って右に曲がってそれで……(うわ、このお姉さんの服、胸元がすっごい開いてる)」チラッチラッ
江藤「……………………」
巨乳美女「助かったわ。ありがとね、ボウヤ」ボインバイン
恒一「いやぁ、それほどでも」デレデレ
江藤(何さ。あんなにデレデレしちゃって)
恒一「気をつけて~!」フリフリ
恒一「ふぅ。急に道を尋ねられてビックリしちゃった。ごめんね江藤さん、それでなんの話だったっけ?」
恒一「って、あれ?」
江藤「……………………」
恒一「どうしたの江藤さん? なんか怒ってる……?」
江藤「別に。怒ってないけど」ムスッ
恒一「でも急に機嫌が悪くなったような……。僕何か気に障ることした?」
江藤「さぁ?」ツーン
恒一「せ、せっかくなんだしさ。もっと明るく楽しくいこうよ! それに、江藤さんに無愛想な顔は似合わないって。笑顔の方がよく似合うよ」
江藤「むぅ……」プクゥ
恒一「僕、これでも江藤さんと二人で出かけるのずっと楽しみにしてたんだからさ」
江藤「……! 本当……?」
江藤「……それなら仕方がないなぁ」
恒一「え?」
江藤「今日は特別に許します」
恒一「はは、そうしてもらえるとありがたいけど、どっかで聞いたようなフレーズなのは気のせい……?」
江藤「た・だ・し!」
恒一「え?」
江藤「その分今日は一日楽しませてよね」ガシッ
恒一「わっ!(う、腕を組まれ……っ!////)」
江藤「オーケー?」
恒一「お、オーケーオーケー////」
江藤「ん。よろしい♪」ニコリ
恒一「どっかで暇潰す?」
江藤「そうだね。って言ってもあまり夜見山には見て周る所ないんだけど」
恒一「じゃあ小腹空いたし、どこか近くのファミレスでも入ろうか。デザートぐらいなら奢ってあげるよ」
江藤「いいの!?」
恒一「それぐらいならいいよ」
江藤「やった! それじゃあ早く行こ行こ!」
ファミレス
店員「いらっしゃいませー。何名様でしょうか?」
恒一「二人です」
店員「あ」
恒一「?」
店員「現在キャンペーン中でして、カップル席ではカップル割引が適用されますがそちらになされますか?」
江藤「え」
恒一「あーじゃあそちらでお願いします」
店員「かしこまりました。こちらへどうぞ」
江藤「さ、榊原君!?」
恒一「何?」
江藤「わ、私たちカップルだったっけ?////」ヒソヒソ
恒一「別に恋人じゃなくても男女のカップルなんだしいいんじゃないかな? それで割引もしてもらえるならお得じゃん」
店員「ではご注文がお決まりになりましたらお呼びください」
「○○はいつ見ても可愛いね」 「○○君もいつ見てもかっこいいよ」
「ほら、あーんして」 「あーん♪」
「キスしようぜキス!」 「バカ、みんな見てるでしょ////」
江藤(周り、本物の恋人同士ばっかりだし////)チラッ
恒一「僕はコーヒーでも飲もうかな。江藤さんは何頼む?」
江藤「え? あ、メニュー見せてくれる?」
恒一「はいどうぞ」
江藤「ありがとー。えーっと、せっかく奢ってもらえるんだし、そうだなぁ……何にしよう?」
恒一「……………………」
江藤「よし! きーめた!」
恒一「ねぇ江藤さん」
恒一「江藤さん、今日は私服なんだね」
江藤「ちょっとちょっとー今頃気づいたのー? ていうか休日なんだし当たり前じゃん」
恒一「はは、それもそうだね。でもいつもは制服姿の江藤さんばかり見慣れてるから、なんだか新鮮だよ。私服姿の江藤さんも可愛らしいね」
江藤「そ、そんな。照れちゃうよ//// (良かった。一番可愛い服着てきた甲斐があった)」
江藤「ちなみに榊原君は私服と制服、どっちが私に似合ってると思う?」
恒一「もちろんどっちも似合ってると思うよ。あ、でも競泳水着も江藤さんらしくていいかな?」
江藤「あー榊原君のエッチぃ」
恒一「ええっ!? そんな変な意味で言ったんじゃないよ!」
江藤「どうだか? 榊原君、ムッツリだし」
恒一「ムッツリじゃないって!」
望月「どうしたの勅使河原君?」
猿田「何かあったぞな?」
勅使河原「いや、今、榊原って名前が聞こえたんだけど」
望月「本当に?」
猿田「もしかしたらこのファミレスにいるかもしれないぞな」
勅使河原「お! マジだ! いたぜ! 向こうの席だ!」
望月「え? どこ?」キョロキョロ
猿田「おいおいどういうことぞな。一緒にいるの、江藤だぞな」
「僕は……だと思うな。江藤さんも……でしょ?」
「だね、あははは」
勅使河原「おいおいおいおい。サカキの奴、見崎がいるのに江藤と浮気か?」
猿田「やはり東京の色男は女関係も荒れてるぞな」
勅使河原「面白そうだし近くの席に移って盗み聞きしてやろうぜ!」
望月「ちょっ、やめなよ勅使河原君。何か事情があるのかもしれないし」
猿田「レッツゴーだぞな」ソロリソロリ
勅使河原「決定的瞬間を捉えてやるぜ」ソロリソロリ
望月「あ、もう。仕方がないなぁ」
江藤「うはぁ! 来た来た! デラックスストロベリーチョコパフェ!」
恒一「おお、すごい迫力だね」
江藤「でしょ? じゃあ早速、いただきまーす!」パクッ
江藤「うーん、この口の中でとろける感触、最高~♪」
恒一「だけど太らないように気をつけてね。そういうの、カロリー多いから」
江藤「うっ……」ピクッ
江藤「こ、これぐらいでは太らないはず。水泳で無駄な肉は落としてるし……」
恒一「ならいいんだけどさ」
江藤「っていうか榊原君はコーヒーだけで足りるの?」
恒一「十分だよ。このコーヒー、ハワイコナ・エクストラ・ファンシーっていうんだけど、これがまた美味しいんだ」
江藤「へぇ、博識だね。初めて聞いたそんなの」
恒一「僕の好きな飲み物さ」
江藤「ん?」
江藤「…………?」キョロキョロ
江藤「……ううん、気のせいみたい」
ヤベェ、アヤウクバレルトコダッタゼ サスガニコノセキハチカスギナイ? コレイジョウハナレタラ、ナニモキコエナイゾナ
江藤「そういえば榊原君はさ、受験どうするの?」
恒一「東京の高校に進学するつもりだよ」
江藤「あーやっぱり東京に帰っちゃうんだ。寂しくなるなぁ」
恒一「って思ってたんだけど、最近はこっちの高校に進むのもありかなぁって考えてるんだ」
江藤「そうなの?」
恒一「うん。良くも悪くもこっちとは色々と縁ができたしね」
江藤「そっかぁ。じゃあ私、榊原君と一緒の高校目指そうかな?」
恒一「いいね。僕も江藤さんが一緒だと高校生活楽しくなりそうだよ」
江藤「えへへ、ありがと。……ただ、残念なことに私の学力では榊原君と一緒の学校に行くのは難しそうなんだよねぇ」
恒一「江藤さんって成績はどんな感じなの?」
恒一「僕は確か、2番とか3番辺りだったよ」
江藤「やっぱり……さすがだね。これじゃあ同じ高校は無理かなぁ?」
恒一「なら僕が勉強教えてあげるよ」
江藤「榊原君が?」
恒一「うん。それぐらいお安いご用さ。頑張って勉強して一緒の高校、行こう?」
江藤「榊原君……(私のためにそこまで……)」
恒一「見崎も同じ理由で先週から一緒に勉強してるんだよね。江藤さんも加わったら3人でより楽しくなるでしょ?」
江藤「え? 見崎さん?」
恒一「うん。見崎にも空いた時間で勉強教えてるんだ」
江藤(なぁんだ、見崎さんもだったのか。ま、よく考えれば当然だよね。とはいえ、ここでむざむざ引き下がる私ではないのだ)
恒一「どうかな?」
江藤「ぜひぜひ! よろしくお願いします!」
猿田「あの3人の関係はいまいち分からないけど、江藤がサカキにぞっこんなのは間違いないぞな」ヒソヒソ
望月「ねぇ2人とも、こんな近くだとすぐバレちゃうよ」ヒソヒソ
恒一「じゃあそろそろ出ようか」
勅使河原・望月・猿田「!!!!」
江藤「ごちそうさまでしたー!」ガタッ
勅使河原「やべ! 顔隠せ!!」サッ
恒一「まだ花火大会まで時間あるね。どうしようか?」
江藤「とりあえず適当にブラブラしてみようよ」
猿田「……………………」
望月「……行ったみたいだよ?」ソー
猿田「どうやらそのようぞな」フー
勅使河原「ぃよっし! 尾行してみようぜ!」ガタッ
望月「えええええ!?」
猿田「賛成ぞな。こんなに面白そうなことは滅多にないぞな」
望月「2人も好きだね」
江藤「あまり遊ぶ場所がないのは難点だけどね。夜見山生まれとしては東京出身の榊原君にそう言ってもらえるだけで嬉しいよ」
恒一「東京は逆にゴチャゴチャしすぎてるからなぁ」
江藤「そうなんだ。……あ」ピタッ
恒一「どうしたの? ショーウィンドウの前で立ち止まったりして」
江藤「んーちょっとね。良さそうな服が目についたからさ」
恒一「……へぇ。江藤さんもやっぱり女の子だね。意外とファッションのことも興味あるんだ」
江藤「ちょいとお兄さん、それはどういう意味ですかい? お洒落にはいまいち無頓着~、とか言われる私でも一応はお年頃の女子中学生なんですが?」
恒一「ごめんごめん、確かにそうだね」
江藤「どうも榊原君はファミレスでの『今日は私服なんだね』発言といい、私のファッション事情に対して妙な偏見を持ってる節があるようで」
恒一「あ、いや、別にそういうわけじゃ……」
江藤「こうなったら罰です。中でお洋服を見て回るので榊原君は付き合いなさい。アドバイスしてもらうよ?」
恒一「えええええ!? 僕、女の子の服のこととか全然分からないよ?」
江藤「いいからいいから。私が榊原君に見てほしいの。ほら行こう!」ガシッ
恒一「あ! (また腕組み、、、)」
恒一「どうって言われても……」
江藤「ほら、私に似合いそうな服とかさ。なんかない?」
恒一「うーん……そうだね。選ぶだけじゃなんだし、何着か試着してみれば? そしたら分かるかも」
江藤「いいね、それ! じゃあ適当に着てみようかな」
江藤「えーっと試着室は、っと……お、あったあった」
多々良「……あら?」
中島「どうかしたの恵?」
キガエルカラ、ノゾカナイデヨ? ノ、ノゾカナイヨ!
多々良「もしかしてあすこにいるのは江藤さんでは?」
中島「え? あ、本当ね」
多々良「どなたかと一緒にいるようですね……」
恒一「うん。江藤さんらしくて似合ってるよ」
江藤「お、結構良い評価だね。とりあえずこれは保留で……次のに着替えるね」シャッ
江藤「着替えたよ! これはどう?」シャッ
恒一「そうだね……派手な感じもするけど明るくて江藤さんに似合ってるよ」
江藤「なるほど~。じゃあこれも保留で。さ、どんどん行くよ!」
多々良「まあ。一緒にいる男性、榊原君じゃありませんか?」
中島「へぇ……江藤さんと榊原君って、そういう仲だったのね」
多々良「てっきり見崎さんと仲が良いものかと思っていたのですが」
中島「江藤さんも隅に置けないわね。普段は男の子の気配はなかったのに」
多々良「ですが、男性にお洋服を選んでもらうのは、女性として憧れますよね」
中島「そうね。江藤さんも楽しんでるようだわ」
恒一「チュニックにレギンスか。女の子らしくて江藤さんに似合ってると思うよ」
江藤「ばばーん!」シャッ
恒一「今度はボーイッシュスタイルだね。江藤さんにはよく似合うね」
江藤「……ちょっとちょっと榊原君」
恒一「なんだい?」
江藤「さっきから同じようなことばかり言ってない? 結局どれ選んでも変わらないみたいじゃん」
恒一「あれ? そうだっけ? ごめん、僕あまりこういうの詳しくないからさ」
江藤「んもう」
多々良「面白そうですし、少しここから隠れて観察してみましょうか」
中島「いいわね。何か決定的瞬間に立ち会えるかもしれないし」
中島・多々良「……」ワクワク
勅使河原・望月・猿田「……」ソー
中島・多々良「ん?」
勅使河原・望月・猿田「え?」
キャーチカン!! ゴ、ゴカイダ!! ッテ、ナカジマトタタラジャネェカ!?
コ、コンナトコロデナニシテタンデスカ!? チカウンタ、゙タタラサン! ボクタチハテイサツヲシテタダケデ!
ワタシタチノ、ナニヲテイサツスルキダッタノヨ!? ソウイウイミジャナイゾナ!!
江藤「よし、ここまでにしておこうかな。これ以上は榊原君も困るだろうしね。ただ次、服買いに行く時には今回の意見、参考にさせてもらうよ」
恒一「そうしてもらえると嬉しいよ」
江藤「そろそろ出ようか」
恒一「そうだね」
猿田「部活で多々良と顔を合わせづらくなったぞな」ハァハァ
望月「……な、なんで僕が痴漢のレッテルを貼られなきゃいけないんだ……」ゼェハァ
勅使河原「っと、そういやサカキと江藤はどこ行ったんだ?」
猿田「店にはもういなかったぞな」
勅使河原「お! いたぞ! ゲーセンの前だ!」
猿田「よし! 追うぞな!」
望月「ま、まだやるの?」
江藤「ねぇ榊原君」
恒一「どうしたの?」
江藤「ゲームセンター、寄ってかない?」
恒一「意外だね。江藤さんってゲームとかやるんだ?」
江藤「そうじゃなくてさ。ちょっと来てくれる?」グイ
恒一「あ……」タッタッタ
江藤「ほらこれ。一緒にプリクラ、撮らない?」
恒一「プリクラか……って、江藤さんと一緒に?」
江藤「うん……。せっかく二人で遊びに来たんだし、榊原君と一緒に撮りたいな……?////」モジモジ
恒一(どうしよう……女の子と一緒にプリクラとかなんだか恥ずかしい、、、)
江藤「いや?」ウワメヅカイ
恒一「うっ!」
恒一「わ、分かった。いいよ。一緒に撮ろう」
江藤「やった! ありがとう榊原君!」
ホラ、ナカニハイロ ウン
望月「ファミレスでカップル席に座って、アパレルショップで一緒に服選んで、おまけにプリクラか」
勅使河原「完全にデートだなこれ」
猿田「羨ましくなってきたぞな」
江藤「ほらほら。もっと近づかないと写らないよ?」
恒一「あ、うん//// (え、江藤さんの顔がこんな近くに……っ! しかもなんか良い匂いするし////)」
江藤「……」チラッ
恒一「……」オドオド
江藤「……」クスッ
ハイチーズ! カシャッ!
恒一「すんません」
江藤(本当は私も内心、緊張してたんだけどね。だけど、榊原君と一緒にプリクラ撮れて良かった……。これ、大事にしよう)ギュッ
江藤「ん?」
恒一「どうかした?」
江藤「今、そこのUFOキャッチャーの裏に誰かいたような……」
恒一「他のお客さんじゃないの?」
江藤「そうかな? (目が合ったんだけど)」
恒一「……ちょっと見てみるよ」トコトコ
ヤベ、コッチキタゾ! ハヤクニゲルゾナ! モウ、マニアワナイヨ!
恒一「え?」
勅使河原「あ……」
江藤「!」
恒一「勅使河原? ……に、望月に猿田君?」
猿田「き、奇遇ぞなこんな所で」
恒一「……まさか尾けてた?」
勅使河原「な、なんのことだかよく分からねぇな! 別にファミレスで榊原と江藤を見つけて面白そうだったからって尾行してたなんてことないぜ!」
恒一「は?」
望月「勅使河原君!」
勅使河原「ん? あ、い、今のなし! 今の聞かなかったことにしてくれ!」
恒一「てしがわらぁぁ」
猿田「バレてしまったぞな」
望月「ご、ごめん榊原君! ちょっと興味本位だったんだ。江藤さんもごめんね?」
江藤「あ、うん……」
勅使河原「ま、まあ終わったことだしいいじゃねぇの! 細かいことはこの際気にすんな!」
恒一「勅使河原が言える立場じゃないでしょ」
勅使河原「それよりよぉ、サカキ! お前どういうことだよ?」ニヒヒ
恒一「何が?」
恒一「そ、そんなんじゃないよ……、、、」チラッ
江藤「?」
勅使河原「よし! ちょっくら事情聴取といきますか」
恒一「事情聴取?」
猿田「それはいいぞな。どんな経緯で江藤とこんな関係になったのか洗いざらい白状してもらうぞな」
恒一「待ってよ。僕たちこれから花火大会の会場行かなきゃならないんだけど」
勅使河原「なら俺たちが会場近くまで送ってやるから、道すがら話してもらうぜ?」
恒一「えええええ!?」
望月「うわ、勅使河原君も懲りないね」
勅使河原「大丈夫大丈夫。ちょっとそこまでだって。いいよな? サカキ!」
恒一「……じゃあそこまでだよ?」
勅使河原「よし決まり!」
猿田「話が分かる奴ぞな」
江藤「……………………」
―――――
勅使河原「でよぉサカキ、いつも思ってたんだけどよぉ」
恒一「なんだよ?」
勅使河原「お前ってなんでそんなに女にモテるんだよ?」
恒一「……? 僕がモテる? 何かの勘違いじゃないの?」
勅使河原「おいおいどんだけ天然なんだ? 一学期だけでもお前、少なくとも2、3人には好意持たれてたと思うぞ?」
恒一「そんなまさか。僕に限ってありえないよ」
猿田「はぁ。これだから都会生まれの色男は困るぞな」
望月「僕が言うのもなんだけど、榊原君はもっと周囲の人たちの言動に敏感になった方がいいよ」
恒一「そう言われてもなぁ……」
勅使河原「そもそもサカキはよ、どんな女のタイプが好きなんだ?」
恒一「そんなこと訊かれても、特に決まったのなんてないよ。そういう勅使河原はどういう子が好きなのさ?」
勅使河原「そうだな……年上から年下までなんでもありだぜ。ただ俺ってM属性あるからさ、ツンツンした気が荒い女がベストだな。あ、もちろんおっぱいはビッグサイズで!」
望月「勅使河原君らしいなぁ」
望月「なっ!? 僕はそんなの別に……」
勅使河原「隠すな隠すな。俺も分かるぜ。あの年上独特の包容力。最高だもんな?」
望月「うう……////」
猿田「望月も意外と好きじゃのう。だが包容力というのには同意するぞな」
勅使河原「だよな? あの抱き締められた時の感覚。形容しがたいぜ」
恒一「なんか偉そうに語ってるけど、そもそもお前、女の子と付き合ったことすらないだろ?」
勅使河原「いいんだよ。妄想こそ男子中学生のエネルギー源じゃねぇか?」
猿田「その通りぞな。妄想が男を磨くもんじゃ」
望月「もう、みんなそういう話にすると元気になるんだから」
江藤「……………………」トボトボトボ
猿田「おうおう、見た見た。見たぞな!」
江藤(ハァ……なんだかつまんないな……)トボトボ
恒一「何それ?」
勅使河原「お、興味あるのかサカキ? あの番号は最高にエロいぜ!」
望月「勅使河原君、声が大きいよ。他の通行人の人に聞かれちゃうよ」
江藤(榊原君は勅使河原君たちと会話に夢中だし……。適当な理由つけて帰っちゃおっかな……?)
望月「あ、榊原君。あそこじゃない? 花火大会の会場って」
江藤「!」
恒一「え? あ、本当だ。みんな集まってるね」
勅使河原「っと、俺たちはここまでだな。後はサカキと江藤の二人で楽しんでくれ」
猿田「時間は大丈夫かのぅ?」
恒一「始まるのは18時だからまだ余裕あるね、江藤さん」
江藤「…………」プイ
恒一(あ、あれ? 江藤さん、なんか怒ってる……?)
恒一「わっ! 何?」
勅使河原「もし江藤といい雰囲気になったら、迷わずやっちまえよ?」ヒソヒソ
恒一「はぁ? 何をだよ?」
勅使河原「チューだよチュー」
恒一「チュ……っ!?////」
猿田「女と二人きりになれるチャンス。男を見せる時ぞな」ヒソヒソ
恒一「な、何を言ってるんだよ……っ////」
望月「じゃあ花火大会楽しんでね。二人のところ邪魔して悪かったね、江藤さん」
江藤「……別に」
勅使河原「また学校でな!」
猿田「報告楽しみにしてるぞな」
恒一「さ、江藤さん、もうすぐ花火大会始まるし会場入ろうか」
江藤「そうだね」
恒一「えっと……江藤さん、さっきからなんか怒ってない?」
江藤「いや? 気のせいじゃないの?」
恒一「ほらぁ! 絶対怒ってるって。もしかして僕また何かした?」
江藤「してない」
恒一「もし本当に何かしてたのなら謝るからさ」
江藤「…………」
恒一「江藤さん?」
江藤「……ないよ」
恒一「へ?」
江藤「謝る必要なんて全然ないよ」
江藤「いきなり現れた勅使河原君たちと合流してから30分近くずっと蚊帳の外に置かれてて一人ぼっちだったけど謝る必要なんて全然ないから!」グスッ
恒一「え……じゃあまさか江藤さん、それで……?」
恒一「そんな……それならどうしてそう言ってくれなかったの?」
江藤「……っ 榊原君のバカぁ!」
恒一「え、え? ええっ!?」
江藤「初めて男の子と2人で出かけるからって、一番可愛い服着て、髪整えて、お洒落して、柄にもないことしてワクワクして来たのに……これじゃ私、間抜けみたい」
江藤「もし見崎さんだったら、耐え切れず帰ってるかもね」
恒一「うっ」
江藤「……」グスッ
恒一(まずい。大変なことをしてしまった。女の子ってこういうの気にしちゃうんだ。ていうか江藤さん、涙目なんだけど)オタオタ
恒一「あう、その……あの……ごめん江藤さん。初めに勅使河原たちに事情話してそこで別れるべきだったよ。ごめん……、、、」
江藤「いいよもう……30分黙ってて何も言わなかった私も悪いんだし」
恒一「はうう……」
江藤「…………、、、」グスッ
恒一「…………江藤さん」
江藤「……何?」
江藤「………………」
恒一「だけど最初にも言ったけど、僕も今日、江藤さんと2人で出かけるのを楽しみにしてたのは本当だよ?」
江藤「……うん」
恒一「調子良すぎるかもしれないけどさ……もしまだ、こんな僕でも構わないのなら……一緒に花火、見てくれないかな?」
恒一「もう無視しないし。今日だけはずっと、江藤さんの隣にいるから」
恒一「……ダメかな?」
江藤「……………………」
江藤「……ダメな訳、ない」ボソッ
恒一「え?」
江藤「私も今日は、ずっと榊原君の隣にいるから……」ギュッ
恒一「あ……(手を……)」
江藤「二人で楽しもう?」
江藤「ね?」
恒一「うん……」
ザワザワ
江藤「おー! いっぱいいるねぇ!」
恒一「もうそろそろ始まる時間だね」
江藤「あ! 榊原君、あそこあそこ!」
恒一「ん? どうかしたの? って、あれは……」
江藤「辻井君と柿沼さんだよね?」
辻井「この間さ、隣町に大きな本屋が出来たんだって。今度良かったらそこに行ってみない?」
柿沼「本当ですか? 辻井君と一緒に行けるなら嬉しいです」
辻井「はは、照れるなぁ」
江藤(へぇ。あの2人、あんなに仲が進んでたんだ)
恒一「お邪魔しちゃ悪いし、もっと離れた場所に座ろうか」
江藤「そうだね」
ヒュゥゥゥゥ……ドーン!! ドドーン!! ドパーン!!
恒一「お、始まったね」
江藤「わぁ! 綺麗」
恒一「やっぱり来て正解だったね」
江藤「うん!」
ドォォン!! ヒュゥゥ……パパパパパァン!!!
江藤「……………………」
恒一「……………………」
ヒュゥゥゥ……ドドドドォオン!!!
江藤「……私さ」
恒一「ん?」
江藤「正直、こんな風景見れるとは思ってなかった。一学期は、もしかしたら災厄で自分が、なんてずっと考えてたから……」
恒一「そうだったんだ……」
江藤「本当のこと言うと、今でもまだ災厄が怖い。今でもまだ、あのトラウマから抜け出せてないけど……」
江藤「……けど、こうして榊原君と一緒に花火を見れてる。それだけでもとても嬉しいし安心するの」
江藤「ありがとね、榊原君。私、榊原君と友達になれてとても幸せだよ」
恒一「僕だって……江藤さんと友達になれて幸せだと思ってる。そしてそれは、これからも変わらない」
江藤「そっか……」
江藤「…………、、、」
江藤「……あのね榊原君」
恒一「なんだい?」
江藤「私、実は榊原君のことが……」
恒一「ん?」
「お! 見ろ!」 「でかいのくるぞ!」
ヒュゥゥゥ……ドドドドドドドドドパパパパパァァァン!!!!
「おー!」 「きゃーすごーい!」
恒一「わぁ……これは迫力あるね」
恒一「っと、ごめんごめん。今何か言おうとしてたよね?」
江藤「……あ、いや、なんでもない」
江藤「いいの!//// やっぱりまだ早いし、もっと関係深めてからの方がいいしね!」
江藤「それに、強力なライバルもいることだし」ボソッ
恒一「一体なんのこと話してるの?」
江藤「いいからいいから!!//// ほら、今は花火見ようよ?」
恒一「あ、うん」
ヒュゥゥゥゥ……ドドドォォン!!! ドォォン!! パァァァン!!!
江藤「榊原君」
恒一「ん?」
江藤「これからもよろしくね♪」
恒一「こちらこそよろしく」ニコッ
ドドドドドドォン!!!! パパパパパァアン!!!! ドォォォン!!!!
―――
―――――
公園
江藤「あー面白かった! すごかったよね? 最後、花火が連続で打ち上げられたとことかさ!」
恒一「あれは僕も思わず見入っちゃったよ」
江藤「今日は本当にありがとね? とても楽しかったよ。それに、わざわざこんな所まで送ってもらっちゃって」
恒一「もう暗いし、良かったら家まで送ろうか?」
江藤「大丈夫大丈夫。ここからなら家はすぐだし」
恒一「そっか。それじゃあ……」
恒一「ああ、また学校で」クルリ
恒一「…………」スタスタスタ
江藤「………………」
江藤「あ、あのさ榊原君!」
恒一「どうかした?」クルリ
江藤「えっと、その……お休み?」
恒一「うん、お休み」ニコッ
恒一「…………」スタスタスタ
江藤「私も帰らないと」
江藤「そうだ。見崎さんにお礼の電話しようかな? 今日榊原君と楽しめたのも、見崎さんのお陰だしね」
江藤「見崎さんの電話番号は、っと……」ピッピッピ
ザッ
江藤「え?」
男「ハァハァハァ……また、会ったね」ニヤァ
江藤「!!!!!!」
男「ふふっ、運命を感じない?」
江藤(こ、この人……っ! 夕方、駅前で榊原君と待ち合わせした時にナンパしてきた人だ!)
男「僕は運命を感じるよ。なんたって、一度逃がした獲物に再び出会えたんだからね!」ギラリ
江藤(……包丁!?)
江藤(まさかこの人、初めからナンパ目的じゃなくて……)ゾッ
男「さぁ、おいで。ふふっ……僕と楽しいこと、しようよ」
男「ほら、この包丁も君の美しくて美味しい血を吸いたがってウズウズしているよ?」
江藤「来ないで……」ザザッ
男「何人もの乙女の血を吸ってきたこの包丁が、君を新たな生贄に選んだんだ」
男「さぁ、僕に君の血を見せてくれ!!!」ダッ
きゃああああああああああああああああ!!!!>
恒一「……っ」
恒一「今の……! 江藤さんの悲鳴!?」
恒一「江藤さん!!!」ダッ
男「ふへへへへ。いいね。このスラリと伸びた細い足、白い肌……柔らかい体……最高の素材だよ」
江藤(くっ……押し倒されて動けない! 口も塞がれて声が出ない……!)
男「そして何より、恐怖に歪んだ若い女の顔! ああああ! 何度見てもやめられない快感だ!!」
江藤「むうううう!!!! んううううう!!!!」ジタバタ
男「でもね、僕が一番見たいのは若い女が痛みと苦しみで泣き叫ぶ顔なんだ」
男「僕のために、死んでくれ!!!」ギラリ
江藤(神様……っ!)
恒一「おおおおおおおお!!!!!」
ドカッ!!
男「ぐふっ!?」
江藤「!?」
江藤「さ、榊原君!?」
恒一「僕がこいつを押さえてる間に逃げるんだ江藤さん!!」
男「ふふふ」ギラリ
恒一「!!!!」
シャッ ブシュッ!!!
恒一「ぐあっ!?」
江藤「榊原君!!!!」
恒一(クソ!! 左腕を切られた!!)
江藤「さかき――」
男「ふふふふふふ。汚い男の血が包丁についちゃったじゃないか。どうしてくれるのさ?」ペロリ
江藤「……!!」ドクン!!
――『ンツッ……イ゛エ゛アァアァァァッアア゛ツァァッァアッツァゥ――ヴンッ!!!!!』――
江藤「あ……ああ」ガタガタ
――『ハァハァ……ぅぇぁぁあっ!!』ドスッ!!――
江藤「ああ……いや……いや」フルフル
恒一「江藤さん?」
――『ひゃげう!!!』ブシュウウウウ――
江藤「あ……うあ……」ガタガタ
恒一(クソッ、どうしたってんだ一体!? 江藤さんの様子がおかしい!)
男「ほらほらほらほらほら!!!!」ブンブンブンブン
恒一「くっ!」サッサッサッ
男「早く死んじまえよ!!!」
恒一「わっ」ガッ
ビターン!
恒一「うっ……(転んでしまった。早く起きないと!)」
男「ひぃやはぁぁぁぁぁあああっ!!!」ブンッ
恒一「クソッ!!」ガシッ
男「お前……生意気だな。僕が誰だか知ってるのか?」ググググ
恒一「し、知るかよそんなこと(ほ、包丁が目の前に……っ!)」ググググ
男「ここ数年、世間を騒がせてる大スターだぞ?」
恒一「何ぃ? ……くっ!」
男「新聞で読んだことないか? 『また夜見山市で出没! 今月で被害者は○人目』ってな」
恒一「ま、まさか!?」
恒一「お前があの……」
恒一「あの通り魔なのか……?」
男「なんだ、ビビったか?」
恒一「お前が……」
男「良い冥土の土産になったろ? だが安心しろ。後でちゃんと、そこの彼女もお前の元に送ってやるからさ」
恒一「………………」
男「だからお前は、一足早くあの世に行ってろ!!!!」ブンッ
ガシィィッ!!!
男「何!?」
恒一「……お前のせいで」ボソッ
男「くっ!?」グググ
恒一「お前のせいでどれだけの被害者が無念のうちに死んでいったか……どれだけ多くの人が辛い目に遭ったのか……分かってるのか?」
恒一「お前は夜見山に取り付くもう一つの災厄だ」
男「なんだと? 何を言ってやがる?」
男「こいつ!!」
恒一「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
ドゴッ!!!!
男「ぷぎゃっ!?」
恒一「ハァ……ゼェ……今のは江藤さんを怖がらせた分」スクッ
男「お、お前えええええ!!!!」
恒一「もう一発はお前に殺された被害者たちの分だ!!!!」
ドゴオオオオオオッ!!!!
男「ぐぇぁあああぁぁぁ……っ!!??」
男「か……はっ」バタッ
恒一「江藤さん!」
江藤「あ……ああ」ガタガタ
恒一「江藤さん!! 怪我はなかったかい!?」ユサユサ
江藤「!!!」ビクッ
江藤「い……いや……」
恒一「江藤さん?」
江藤「いや……いや! いやぁ!!」
恒一「どうしたんだ江藤さん? 落ち着いて! 僕だよ! 榊原だ!」
江藤「包丁が……」
恒一「包丁?」
江藤「血まみれの包丁……ああっ、やだ……先生が……先生の首が……っ! あああああ」
恒一「!」
恒一(まさか、血がついた包丁を見てトラウマが蘇ったのか!?)
恒一「江藤さん!」ダキッ
江藤「!!!!」
恒一「大丈夫だ江藤さん……もう、災厄は終わってるんだ」
江藤「はっ……あっ……さかき……ばら……くん」
恒一「ここは公園で、あの日の教室じゃない。災厄は終わったんだ。江藤さんが怖がる必要はないんだよ」
江藤「……終わった? 災厄、終わった、終わったの? 終わったんだよね……?」
恒一「そうだ。だから安心して。それに、通り魔も僕がやっつけたからさ。僕が江藤さんの傍についてる。僕が傍にいる限り、江藤さんを守ってあげるから……」
江藤「守る……榊原君が?」
恒一「うん」
江藤「……そっか……安心……私、安心した……榊原君が傍に……傍にいてくれる」
江藤「……榊原君……」
恒一「なんだい?」
江藤「……ありがとう」
恒一「ああ」
江藤「……うん。もう大丈夫。榊原君のおか――」
男「ハァ……ハァ」ギラリ
江藤「榊原君!! 後ろ!!」
恒一「え?」クルリ
男「し、死ねええええええ!!!!」
恒一(ナイフ!? まだ凶器を隠し持ってたのか!?)
男「えぇやぁぁああああああ!!!!!」
「そうは問屋が卸さないんだなぁ」
ガッ!!!
男「ぐえっ!!」ズダーン
「決着は着いてるのに、往生際が悪いぜ?」
恒一「君は……」
水野「よう」
恒一「水野君!」
江藤「あ、前島君も」
男「クソオ!! 離せ!! うあああああ!!!!」
水野「おとなしくしてろよ、犯罪者」
恒一「どうして君たちがここに?」
前島「どうしても何も、公園の外を歩いてたら変な雄たけびが聞こえてさ。見てみたら、君たちが包丁を持った男に襲われてるじゃないか」
水野「だから一緒にいた米村に近くの交番まで走ってもらって、俺たちはお前たちを助けるためにここまで来たんだよ」
恒一「そうだったんだ」
水野「もっとも、その前に榊原がこいつを一度のしちまったし、警察もすぐ来るだろうから俺たちはお邪魔にならないよう陰で見守ってたんだが……」
江藤「お邪魔って?」
前島「いや、こいつ倒した途端、ハリウッド映画のラストみたいにいきなり抱き合い始めたじゃないか君たち」チラッ
恒一・江藤「え?」
恒一・江藤「……あ////」カァァ
恒一・江藤「~~~~っ////」ババッ
恒一「こ、これは別にそういうわけじゃ……!」
江藤「そ、そう! ちょっと事情があってあんな風になってただけで……!」
水野「ま、どうでもいいが油断してんじゃねぇぞ? 俺たちが近くにいたから事無きを得たものの」
恒一・江藤「……す、すいません、、、」
米村「おーい! 警官連れて来たぞー!」
前島「お、米村だ」
警官「凶器を持った男がいると聞いて来たんだが」
水野「こいつっす」
男「チクショウ!! 離せ!! この無能どもが!!」
恒一「この男、例の連続通り魔です。本人がそう名乗ってました」
水野・前島・米村「ええっ!?」
男「クソッ……」
前島「驚いたな。あいつが例の通り魔だったのか」
米村「まったくだよ」
水野「まさかこんな形で通り魔事件の犯人が終わるなんてな」
恒一「うん、終わったんだよ」
水野「あん?」
恒一「……これで本当に、すべてが終わったんだ」
恒一「ね? 江藤さん」
江藤「うん。そうだね……」
江藤「後は……」
―――――
―――
――
―――
―――――
それから一週間後・市内の市民プール
恒一「えーっと……」キョロキョロ
鳴「榊原君。こっちよ、こっち」
恒一「あ、見崎!」タッタッタ
鳴「遅いわよ。どこか行ってたの?」
恒一「うん。ちょっと、お墓参りにね」
鳴「お墓参り?」
恒一「ああ」
鳴「……なんでまた?」
恒一「良い機会だと思ってさ。今までずっと負い目があって行くのを避けてたんだけどね……」
恒一「謝罪して、あと江藤さんが大会で頑張れるよう見守ってほしいって頼んでおいたよ」
鳴「そう……」
『ただ今より、女子自由形100m決勝を行います』
鳴「あ、来たみたいよ。ほら、江藤さんもあそこに」
恒一「江藤さん……!」
『位置について、用意!』
恒一「……」ゴクリ
パン!!!
『各選手、スタートしました! おおっと、5番レーンの江藤選手出だしから早い!!』
恒一「行け」
『しかし、後から2番の山田、続いて4番の田中追い上げてくる! これは接戦です!!』
恒一「行け!」
恒一「頑張れ!」
『2番、4番、5番、50mを超えて横一列に並びました!』
恒一「君ならできる江藤さん!」
『ここで4番、引き離されました! 2番の山田選手と5番の江藤選手、両者一歩も譲りません!』
見崎「………………」
『ゴール直前! 果たして優勝はどちらでしょうか?』
恒一「江藤さん!!」
『ゴオオオオオル!!!! 優勝は江藤選手です!!!」
恒一「やったああああああああああ!!!!」ガタッ
『優勝おめでとうございます、江藤選手! 一言お願いします!』
江藤『ハァ……ゼェ……』
江藤『じゃあ……ハァ……応援してくれた友達に……ハァ』
江藤『ありがとう!』ニコッ
恒一「江藤さん……」
見崎「……」フッ
恒一「おめでとう……」グスッ
鳴「あらあら。男の子が泣いちゃって」
恒一「な、泣いてないよ! 見崎の意地悪!」グスッ
鳴「ふふ」
―――――
恒一「今日はよく頑張ったね、江藤さん」
鳴「お疲れ様」
江藤「えへへ、2人ともありがとう」
鳴「練習の成果が出て良かったわね」
江藤「うん。本当は……また溺れたりするんじゃないか、って不安も少しあったんだけど、どうやら完全に克服できたみたい」
恒一「じゃあもう、心配する必要もなさそうだね。これでまた好きに泳げるね」
江藤「うん楽しみ! って言いたいところなんだけど、その前に受験があるんだよねぇ」
鳴「あ、そっか。受験あるの忘れてた」
恒一「おいおい」
江藤「もういっそのこと受験諦めて、残りの半年遊びまくっちゃおうかな?」
鳴「それ名案かも」
恒一「ちょっと2人とも! 何言ってるの!? 将来がかかってるんだよ!?」
恒一「うおっ」
江藤「マンツーマンで勉強教えてよ? この前約束したよね? 一緒の高校行こって」チラッ
鳴「!」
恒一「あ、ああ、もちろんいいけど……(急に腕組まれてビックリした)」
鳴「…………」
鳴「私も」ギュッ
恒一「え? どわっ!?」
鳴「私も榊原君と同じ高校行くつもりだし、もっと勉強時間増やしてほしいな?」
恒一「そ、それも別に構わないけど……(急に手を握られてビックリした)」
恒一(ていうか僕今、何気に両手に花状態?)
江藤「そういう見崎さんこそ、独学の方が伸びるタイプだと思うけど」
見崎・江藤「ぐぬぬ」
恒一「ちょっ、よく分からないけど睨み合うのはやめなよ。見崎も江藤さんもなんで僕と2人だけで勉強したがるの? 3人一緒の方が楽しいじゃない」
見崎・江藤「でも……」
恒一「そう思わない?」
鳴「ま、榊原君がそう言うなら……」
江藤「仕方ないかな?」
恒一「うんうん、分かればいいんだ。それが一番だよ」
恒一(にしても二人とも、いつまで僕にくっついてんだろ? なんか恥ずかしいんだけど////)
鳴「?」
江藤「貴女とはこれから色んな意味で張り合うことになりそうだし、先に忠告しておくね」
鳴「……へぇ? 何かしら?」
江藤「トラウマを乗り越えた江藤悠は絶対無敵。勉強にしても恋にしても――」
江藤「私、絶対負けないからね!」
終わり
合宿不参加組のモブキャラとはいえ、江藤ちゃんも意外と魅力的な部分いっぱい
あるので今後何かと気にかけてくれると嬉しいです。
つまり何が言いたいかっていうと、江藤ちゃん可愛い。
Entry ⇒ 2012.06.29 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
あずさ「いえ~いっ!」
あずさ「いえ~いっ!」
あずさ「目覚ましで飛び起きて、笑顔で着替え」
・
・
・
あずさ「ふぅ……プロデューサーさん、どうでしたか?」
P「すごく上手でしたよ。亜美真美の持ち歌ですけど、これはこれでアリですね」
あずさ「ほかの曲のリクエストありますか?」
P「ん~と、それじゃあ……」
P「って、何やってるんですかね、俺たち。こんな夜中にカラオケとか……」
あずさ「すみません。付き合わせてしまって……」
P「いえ、かまいませんけどね。どうせ、俺も明日はオフ ですし……」
P「家の鍵を失くした?」
あずさ「朝、事務所に来たときはあったんですけど」
P「仕事から戻ってきたら、鍵がなくなっていた」
あずさ「はい……」
P「どこかで落としたのかもしれませんね」
あずさ「私もそう思って、探しに行こうと思ったんですけど……」
P「鍵を見つける前に、あずささんが迷子になってしまうでしょうね」
あずさ「はい……」
あずさ「自宅に……」
P「それじゃあ、あずささん今日は帰れないってことじゃないですか」
あずさ「えぇ! ぷ、プロデューサーさん、どうしましょう?」
P「どうしましょうって、普通に大家さんに連絡して開けてもらうしかないと思いますけど」
P「連絡先、知ってますか?」
あずさ「あっ……えっと」
Prrrrr Prrrrr
あずさ「……」
Prrrrr Prrrrr
あずさ「……」
P「出ませんね」
あずさ「……」
P「どうするつもりですか、これから?」
あずさ「う~ん。とりあえず……」
P「とりあえず?」
グゥ……
あずさ「夕飯を食べようと思います~///」
P「今日も忙しかったですしね」
P「いいんですか?」
あずさ「はい~。いつも一人で食べていますから、たまに誰かと一緒に食べたくなるんです」
P「あぁ~、わかります。そういう時ありますよね」
P「でも、本当に俺でいいんですか?」
あずさ「もちろんです。プロデューサーさんなら、大歓迎です~」
P「あっ、ありがとうございます」
あずさ「どういたしまして~」
P「すみません。俺の方がたくさん食ったのに割り勘にしてもらって」
あずさ「いいんですよ。プロデューサーさんは男の方ですから、たくさん食べて当然です」
P「それはそうでしょうけど……会計、別々でよかったんですよ?」
あずさ「私から誘いましたから」
P「まぁ、あずささんがそれでいいなら……」
あずさ「あの……プロデューサーさん。非常に申しあげにくいんですが」
P「はい」
あずさ「実は、私なにも考えていないんです~」
P「……それ、不味くないですか?」
あずさ「あら~、そうですか~?」
P「ごまかさないでくださいよ」
あずさ「それは……」
P「それは?」
あずさ「プロデューサーさんのことです」
P「……」
あずさ「……///」
P「食事中に話相手に意識が向くのは当然ですよね」
あずさ「は、はい。その通りです~」
あずさ「全然、不思議じゃありませんよね」
あずさ「そう言えば今の話からいくと、プロデューサーさんも私のことを考えていたんですか?」
P「そ、それは……はい」
P「本当にこれからどうするんですか?」
あずさ「う~ん。良い案が思いつきません」
P「いっそ、夜通し遊んだらどうですか。俺も友達とはしゃぎすぎて終電逃した時は、カラオケに行って朝まで歌ってましたよ」
P「まぁ、どっかのホテルで一晩過ごすのが一番現実的ですけどね」
あずさ「それです、プロデューサーさん!」
あずさ「違いますよ、プロデューサーさん。行くのは、ホテルじゃありません。カラオケです」
P「……マジですか?」
あずさ「大マジです~」
あずさ「家に帰れなくて、憂鬱なこの気持ちを歌でも歌って吹き飛ばしたいんです」
P(憂鬱って、とてもそうには見えないけど……)
あずさ「それなら問題ありません。明日は1日お休みなので」
P「それなら平気ですね」
あずさ「プロデューサーさん、一緒に来てくれるんですか?」
P「どうやってカラオケまで行くんですか?」
あずさ「あぅ……」
P「さっ、行きましょう」
ガシッ
あずさ「あっ……」
P「どうかしました?」
あずさ「いえ、何でもありません」
あずさ(気づいてないのかしら……)
あずさ(プロデューサーさんの手、大きいのね)
あずさ「プロデューサーさんも歌、上手ですね」
P「自分より遥かに上手い人に言われても、何だかなぁ……」
あずさ「あっ、プロデューサーさん。私の歌もありますよ!」
P「それはそうですよ。むしろ、ポジティブがあるのに9:02 PMがなかったら俺泣いちゃいますよ……」
あずさ「?」
P「あずささんには、明るくて元気な曲もいけるって話です」
P「今まで売り出した楽曲が楽曲でしたから、しっとりとした楽曲を歌うイメージがついてしまっていますから」
あずさ「ギャップのようなものでしょうか?」
P「そうです。これは、あずささんのプロデュースに新たな方向性が見つかりましたね」
あずさ「それ、面白そうですね」
P「お願い出来ますか?」
あずさ「はい、任せてください」
P「あずささんのソロライブですね。観客は俺だけですけど」
あずさ「ふふっ、それじゃあ今晩はプロデューサーさんのためだけに歌いますね」
P「うちのアイドルの楽曲、片っ端から歌いましたからね」
P「喉、大丈夫ですか?」
あずさ「水をたくさん飲みましたし、プロデューサーさんがくれたのど飴がありますから」
あずさ「ありがとうございます」
P「のど飴なんかで大げさですよ」
あずさ「そうですね。普段でしたら、お休みの時に散歩する時にしか来ませんし」
P「そういう時は、まだ太陽が昇っている時ですしね」
あずさ「とても静かですね……」
P「まぁ、時間が時間ですしね。俺たち以外、誰もいないと思いますよ」
あずさ「まるで世界に私達、二人しかいないみたいです」
あずさ「ロマンチックですね」
P「あずささんの相手が俺っていうのは、すこし絵的に釣り合いませんけどね」
あずさ「そんなことないです。プロデューサーさんは、十分素敵な方ですよ」
P「あずささんほどに綺麗な女の人にそう言ってもらうのは、男として誇らしいですね」
あずさ「そんな……綺麗だなんて……」
P「かわいいでも良いですよ?」
あずさ「……///」
あずさ「どうしたんですか、ベンチに座って」
P「いや、空が綺麗だったので……」
あずさ「隣、いいですか?」
P「いいですよ」
P「えぇ、そうですね」
P「そう言えば、貴音も星を見るのが好きだったけ……」
あずさ「むぅ……」
P「どうしたんですか、あずささん?」
あずさ「今は、私達二人しかいないんですから」
あずさ「他の女の子のこと考えたら、嫌です……」
P「これは失礼しました」
P「今は、俺とあずささんの世界なわけですからね。あずささん以外の人を想うのは、無粋でしたね」
P「すみません、気のきかない男で」
あずさ「私に気をきかせてくれませんか?」
P「……」
P「それって……」
グイッ
あずさ「あっ……」
P「こうやって、近くに肩を寄せ合っていいってことですか?」
あずさ「はい……」
あずさ「……」
P「あの……あずささん」
あずさ「……」
P「……あずささん?」
あずさ「スゥ……スゥ……」
P「寝ちゃったのか……こんな時間だしな」
あずさ(襲ってくれないかしら~)
P「あずささん、起きてください。こんな時期とはいへ、風邪引きますよ」
あずさ「んっ……んんっ……スゥスゥ……」
P「気持ち良さそうに寝て……」
P「あずささ~ん、起きてください。イタズラしちゃいますよ?」
あずさ(……っ!)
あずさ「んっ……」
P「……」
ツンツン……
P「柔らかいな……」
P「しかし……」
あずさ「……」
P「触っても起きないか」
あずさ(キスくらいしてくれないかしら~)
あずさ(えっ……えぇええ!)
P「あずささんの胸か……」
あずさ(お、襲ってほしいけど、む、胸!? そんないきなりですよ、プロデューサーさん!)
P「普段は見るだけで終わっている、あずささんの胸を触る……」
P「魅力的だ」
あずさ(……///)
P「よっ……」
ムニッ……
あずさ「んっ……んぅうんっ」
P「へぇ……」
ムニムニ……
あずさ(ぷ、プロデューサーさんの手が私の胸に……)
ムニッ……
あずさ「んっ……」
P「実にいいね」
P「でも……」
P「深夜の公園で、若い男が寝ている美女の胸を揉んでいる。しかも合意じゃない……」
P「通報ものだな……」
P&あずさ(誰も来ませんように……)
あずさ「んっ……」
あずさ(もう、ダメ……)
あずさ「うん、うんんんっ」
P「……っ!」
サッ……
あずさ「ぷ、プロデューサーさん」
P「ご、ご機嫌いかかが、あずささん?」
P(って、何言ってんだ俺)
あずさ「え、えっと……」
あずさ「とても気持ち良かったです……///」
P「えっ……」
あずさ「えっ……」
あずさ「や、やだ……私」
あずさ「……はい」
P「……」
あずさ「ぷ、プロデューサーさん、大丈夫ですか? 汗、びっしょりですよ」
P「そうですか……ハハハ」
あずさ「えっ、えぇええ! ぷ、プロデューサーさん!」
あずさ(土下座している……)
P「ほんの出来心だったんです。他意はなかったんです。しかたなかったんです。」
P「蝶が花に引き寄せられるように、俺の腕もあずささんの胸の引力に逆らうことができなかったんです!」
P「えぇ、それはもう……」
あずさ「なら、いいです」
P「えっ……」
あずさ「プロデューサーさん、顔をあげてください。私、怒ってなんかいませんから」
P「あずささん……」
P「そ、それは……」
あずさ「じぃ……」
P「まぁ……言わなくてもわかるじゃないですか///」
あずさ「い~え、わかりません」
P「あっ、あずささん!」
あずさ「ふふっ、どうなんですかプロデューサーさん?
あずさ「……」
P「あの、何か言ってもらわないと困るんですけど……」
あずさ「は、はい……その……」
あずさ「私も、あなたのことが大好きです。プロデューサーさん」
P「あずささん……」
ギュッ……
あずさ「プロデューサーさん……っ!」
P「すみません、強かったですか?」
あずさ「いいえ、このまま強く抱きしめてください」
あずさ「この瞬間を、喜びを、私の体に刻み込みたいですから……」
P「何ですか?」
あずさ「私、今日は家に帰れないんです」
P「そうですね」
あずさ「だから……」
P「あずささん」
P「俺の部屋、来ますか?」
あずさ「……」
あずさ「はい……」
P「んっ……朝か」
P「今日は休みだから、まだ寝ていられる」
P「あれ、なんで俺……裸」
P「あぁ……そうか。あずささんを部屋に連れて……」
P「俺があの時胸もんだのがすべての原因だったな」
P「まぁ、いいか……」
P「あっ、あずささん。おはようございま……」
P「……」
あずさ「どうしました、プロデューサーさん?」
P「いやっ、あずささん。その恰好は?」
あずさ「さすがに昨日の服を着るのは少し……」
P「そ、そうですか……」
あずさ「いけませんでしたか?」
P「い、いえ、構いませんよ」
P(俺のワイシャツ……狙っているようにしか思えない)
P「優雅なモーニングコーヒーになりそうですね」
あずさ「美味しく淹れられたかはわかりませんけど」
P「あずささんなら、心配していませんよ」
あずさ「プロデューサーさん……あっ、あの、洗濯の方も回しておきました」
P「何から何までありがとうございます」
あずさ「ふふっ、いいんですよ。私がプロデューサーさんのためにしてあげたいだけですから」
P「そうですね。特に何も考えていませんでしたね」
P「昨日、けっこう遊んだわけですし……今日は1日何も考えずダラダラするつもりですよ」
あずさ「そうですか。それなら私も、その……まだ痛くて」
P「だったら、横になっていればよかったのに……」
あずさ「プロデューサーさんに寝顔を見られるの恥ずかしいじゃないですか」
P「昨日、見せてましたよ」
あずさ「あれは寝たふりですから、カウントに入りません」
あずさ「そうですね。意外にいけるものなんですね」
P「あまり健康的とは言えませんけど」
あずさ「今度は散歩とか一緒に行きたいです」
P「これからそういう時間を作っていきましょう」
あずさ「私達、これからですね」
P「そうですね。お互い、まだ色々と知らないこととかありますから」
あずさ「はい……」
あずさ「それじゃあ、プロデューサーさん。また明日……」
P「えぇ、また明日。そいつ大事使ってくださいね」
あずさ「ふふっ、わかりました」
あずさ「そうですね。意外にいけるものなんですね」
P「あまり健康的とは言えませんけど」
あずさ「今度は散歩とか一緒に行きたいです」
P「これからそういう時間を作っていきましょう」
あずさ「私達、これからですね」
P「そうですね。お互い、まだ色々と知らないこととかありますから」
あずさ「はい……」
あずさ「それじゃあ、プロデューサーさん。また明日……」
P「えぇ、また明日。そいつ大事使ってくださいね」
あずさ「ふふっ、わかりました」
あずさ「うんっ……」
PiPiPiPi……Pi……
あずさ「う~ん、いい朝ね」
あずさ「何だかいつもよりぐっすり眠れた気がするわ」
あずさ「それって、やっぱり……」
あずさ「このワイシャツのおかげかしら?」
あずさ「こ、これが愛の力なのかしら……///」
あずさ「い、いけない。着替え、着替え!」
あずさ「ふふっ……」
・
・
・
あずさ「いってきます~」
P「あっ……」
あずさ「あっ、プロデューサーさん」
P「……こうして、改めて顔を合わせると少し恥ずかしいですね」
あずさ「そうですね。でも、プロデューサーさんに会えて、とても嬉しいです」
P「俺もですよ」
あずさ「プロデューサーさん……」
P「おはようございます、あずささん」
あずさ「……」
おはようございます。プロデューサーさん♪
fin
Entry ⇒ 2012.06.29 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
怜「玄ってひとがあまりに落ち込んでるから激励会をやるで」
玄「……」
怜「あんたの姉ちゃんも心配しとったで。もうわすれーな。今日はおごったるさかい、パーッとやって忘れよ、な?」
すばら「怜さん、太っ腹、すばらですっ!」
怜「あんたには奢らへんで」
すばら「すばらっ!」
すばら「すばらくないですね」
店員「サーセン!スグニオモチシマッス!」
怜「最近のバイトは抜けてる奴が多くてけしからんな」
店員「スイマセン!ご注文は焼き鳥でよろしかったっすか!?」
玄「……」ビクゥゥゥ!!
玄 グスッ
怜「アホ!ちゃうわ!うちらが頼んだのは刺身や!」
怜「全く……なんやあの店員は……アホちゃうか……」
すばら「焼き鳥とは空気読めて無いですねぇ」
怜「あんたも空気読めてないわっ!」
怜「全く……すまんな、別に店員も悪気があったわけやないと思うんや、許したってーな」
……
店員「サーセンッス!間違えて焼き鳥作っちゃったんで、食べてもらえませんッスカ!?」
玄 ガクガクガク
怜「だから焼き鳥はいらんって言ってるやろ!」
店員「いや~でもこの焼鳥美味しいんっすよ、ちょっと試しでいいから食べてみてくださいよ。焼き鳥サービスっす、焼き鳥焼き鳥」
煌(怜さん、ここは素直に受け取ってこの空気の読めない店員追っ払いましょう。玄さんに見えないようにかくして刺身を待ちましょう)ヒソッ
怜(せ、せやな、あんた、ここ一番ってときは頼りになるな・・・)
煌(すばらです)
怜「わ、わかったわ。もらう、もらうからはよ刺身持ってきてくれ……」
怜「そ、そや、ウチは宗教上、鳥は食べられへんのや、だから刺身はよ、持ってきてくれ」
玄 ガクガクガクブルブルブル
怜「あーもぅ!わかったからはよそれおいて厨房もどりーな!」
店員「わかりました!サーセンした!」
店員「あ、あとコレなんすけど」
怜「な、なんやこれは・・・!」
怜「な、なんでこないなもん……」
店員「ウチのサービスでして、焼き鳥マーク10コ集めると焼き鳥がタダになるんすよぉ!」
店員「洒落が効いてるでしょ~!あ、焼き鳥マークっていうのは麻雀で和了れてない人が」
怜「うるさいうるさい!なんやこれ、いらんわ!さっさと持って行って!ふざけるのもいいかげんにしてーや!」
怜「あんな、いま、うちらはうちらだけで話をしたいんや」
店員「でも洒落がきいてません?ほら焼き鳥の人って5000点とか払うじゃないですかぁ~?でもうちらの店だとタダでものが食えるんすよぉ~」
怜「あ~もううるさい!うちは宗教上焼き鳥食えへんって言うてるやろ!」
店員「そうなんですか~?でも焼き鳥ってシステムも酷ですよね~!だって和了れてない人に罰点を…」
怜「いまうちらは麻雀の話聞きとうないんや!」
店員「あ、お客さんその感じだと、今日負けたんすね!どんまいっす!じゃあその焼き鳥は俺からのサービスで」
玄 「」レイプ目
煌「お言葉ですがっ!職務中に雑談に興じるのはすばらくありませんよ!」スバラッ
店員「大丈夫っすよ~うちの店長そういうの寛容なんで~」
怜「ウチらはそんなに寛容やあらへんで」
煌「と、とにかく、あなたは早く厨房にお戻りください!」
店員B「お~い店員、手伝ってくれ~」
煌「ほ、ほら、呼ばれていますよ、早く戻らないとすばらくないことに…」
店員「そーっすか~!?じゃあまぁごゆっくり~!」
怜「全く、なんやったんや、あいつは…」
煌「興が削がれること、甚だしいことです」スバラッ
玄「……」
怜「……」
煌「……」
怜(あかん、空気が通夜みたいになってしもうた。どないしよ……)
煌「な、なにか頼みましょう!」スバラッ
怜「せ、せやな。ほな>>48たのも」(新道寺、ナイスや!)
怜「あんた、魚とかすきやったよな、じゃあこのぶりの照り(アカン)ゃき頼もうか」
怜(危なかった…)
煌「あ、あと飲み物を頼みましょう。…ウーロン茶3つでよろしいですか?」
怜「おっけーや」
怜(烏龍茶くるまでになんとか話題を作るんや・・・!)
玄「……」コクリ
怜(お、ちょっと反応したで)
煌(すばらです。無難に家族ネタで行きましょう)
怜「お姉ちゃん、優しそうでいい人やなぁ。ウチ、そういうのおらんから、ホンマ羨ましいねん」
煌「すばらですっ!なんて言うか、お姉さんからは母性っていうか、そういうものが溢れてましたね」
怜「せ、せやけど、なんでいっつも厚着しているん?夏でもマフラーつけとるし」
煌(園城寺さん!それは危険です!もしかしたら何らかの事故があって…とか…トラウマ話になる可能性が!?)
怜(な、なんやて・・・!ウチ、そんなつもりじゃ・・・)
怜「…あ、あ、言い難いことだったええねん、いや、出来れば、あんたのことも、あんたのお姉さんのことも、もっとよく知りたいなぁ、なんて思っただけやから」
玄「……お姉ちゃんは、寒がりなのです……」
怜(…これは、地雷回避したんか…?)
煌(なんにせよすばらですっ!)
店員「うーっす!五番テーブルの方~!」
店員「え~ブリの照り~ 焼き と り んごサワーですね~」
怜煌「「」」
店員「まじっすか~さーせん!で、ブリのてる? あぁ 照り焼きと~」
玄「」ビクゥゥ!
怜「なんでさっき読めてたのに間違えるんや!ええかげんにせえよ!」
煌「烏龍茶です!わたくしたちがたのんだのは烏龍茶3つ!」
店員「あ~まじっすか!サーセンシタ!」
店員「お~い!5番テーブルさん違ったわ~『ロン』みっつ~!」
上級店員「ん~きこえねぇぞ~?バイト!」
店員「『ロン』3つっす~」
怜煌「「」」
煌「あ・・・あ・・・」
上級店員「おいおいバイト~ちゃんと覚えろよ~『ロン』じゃウーロンハイか烏龍茶かわかんないだろ~」
店員「あ~サーセン!『ロン』茶3つっす~」
上級店員「それもちが~う!ウチの店の通し忘れたのか~!?わかりにくいから『茶』は数の最後に付けんだよ!」
店員「ソウデシタサーセン!えぇと、ロン!さんちゃー! ほぉぉ~ むずいっすね~これ」
玄(……さ、三家和・・・!?)
怜「・・・はよ!はよ!店員、お前は向こういき!」
店員「え~こまりますよぉ~ 今月からっけつなんですから~」
玄「……」ブクブクブク
怜「あ、あかん、気絶して…」
店員「あっ、ちょっと~吐くならトイレで吐いてくださいよぉ~」
怜「…こ、こいつ、殺す……」
煌「と、怜さん抑えて!とりあえず店員さん、あなたはちゃんと注文したもの持ってきてください!」
怜「だいぶ落ち着いたな」
玄「…す、すみません…」
怜「あんたが謝ることやない。だいたい、悪くないのに、むやみに人に謝るもんやないで」
煌「そうですよ。なんにせよ、このお刺身はすばらですっ。あなたも一口」
怜「ええと、家族の話をしてたんやったな」
店員「いらっしゃいませ~」
煌「あ、あの人は…」
1.知らない人だった
2.原村和
3.宮永照
>>91までの投票で
同一の場合は選ばせてくださし
煌「」ガクガクガク
怜(どした?!)
煌(まずいですよ)
怜(なんや?)
煌(今入ってきた人…チャンピオンが・・・この店に)
怜(な、なんやて?!)
怜(うちも正直もうあの人の顔見とうないけど……)
怜(いまこの人にチャンピオンの顔見せたらショック死してまう…!)
怜「あー、なんかーうちートイレに行きとうなってきてしもうた」チラッ
煌「園城寺さん、烏龍茶飲み過ぎたのではありませんか?」
怜「そーかもーしれんなぁー。ほなちょっとトイレに~」
玄「……あ、私も少し……おトイレに…」
怜煌「「!?」」
怜(あかん!それだけはあかん!新道寺、どないしよ)
煌(え~っと、え~っと~)
怜(ウチがトイレまでの道からチャンピオンをどけるから、それまで時間稼ぎ頼んだで!)
煌(わかりました。時間稼ぎ、まかされました!)
煌「え~っと、あぁそうだ松実さん、お冷いりませんか?」
玄「えっと、ごめんなさい。私はトイレに行きたいので…」
煌「あ、いやいや違います、違います。ちょっと最近冷えて来ませんかとお伺いしたのです」
玄「えっと、いま夏ですけど……」
煌「あ、そうだ、そういえばそうでございました。いやいや、わたくしとしたことが」(マズイマズイマズイ)
怜(いた、チャンピオン!なんでこないなとこに……)
怜「あ、あの!」
照「ん?」
怜「宮永照さんであってます?」
照「なんだ?私に用か?」
怜「用があるといえば用があるし、用がないといえばないんやけど」
照「用がないならどいてくれ、私は忙しいんだ」
照(咲がここにくるという情報をキャッチしたからな…)
怜「いや、いや、用ならあるで。あんた、ウチのこと覚えとらん?」
照(まて、宮永照!…なんかあったような気がするぞ、この子)
照(どうする、もし、この子が私と合っていて、自分のことを覚えてくれているかもしれないと勇気を出して話しかけてきたとしたら)
照(もし無下にしてこの子が泣き出しでもしたら・・・いや、それは看過できない!そしてもしそこに咲が来たら)
咲『お姉ちゃんひどい!そんな人だったなんて!』ウルウル
照(咲に罵られるのもいいかも・・・)
照(いや、だめだ、目を覚ませ宮永照!そんなことになれば生きていけない)
怜「照さん」
照「な、なんだ」
怜「鼻血でとるで」
照「」
怜「久しぶり言うほどの仲でもないと思うてたけど、チャンピオンに覚えてもろうてたってのは素直に嬉しいわ」
照「…」
照(そうだこういう時にどうすればいいか前に本で読んだぞ!)
照(名前は知らないけど、あったことがある気がする、そんなときは・・・!)
照「字は…」
怜「?」
照「名前は、どんな漢字を書くんだ?」
怜「え?ウチの名前の漢字か?」
怜「えっと、名前やな、名前の漢字は、これや」ヒョイ(ケータイ)
[怜]
照「……」
照(この漢字見たぞ・・・そうだ確かこないだのインター杯で…私とあたった相手だ…)
照(あの時は死人の形相で正直こっちは怖かったんだが、普段は可愛い顔をしているんだな)
照(思い出した。うん。思い出したはいいが…)
照(……漢字が読めない)
照 ピーン!
照「思い出した。久しぶりだな、レイ」ドヤッ
怜「・・・は?」
照「インター以来か。あの時のレイの打ち筋は、私の目に強く焼き付いている」
怜「あの」
照「なんだ?レイ?」
怜「レイやのうて、トキや」
照「え?」
怜「だから、うちの名前はレイやのうて、トキや。園城寺怜」
照「」
照(淡の嘘つき……)
照「どうでもよかったのか」
怜「あんた、なんでこんなところにおるん?あんた東京やろ?」
照「そ、それは…」
照(…まさかこいつ、差金か!?咲にまとわりついていた、和了だか放銃だか知らないがそんな漢字の…胸に余分な脂肪のついた…虫の差金…!?)
怜「そ、そか」
怜(良かった、一人やないんやったら、その人と席でおしゃべりでもしててもらって、その間にうちらが阿知賀を連れ出せばええな…)
怜「そ、それなら、はよ、席につきーや。あんたの連れはどこにおるん」
照(ま、まずい、これでは連れを見せなくては差金に嘘がバレてしまう・・・!)
照(時間を稼がなくては・・・!)
照「わ、私が入ろうとしたのを止めたのはお前だが」
怜「せ、せやったな。すまん。ちょっとチャンピオンがおったから話しかけてみたかったんや」
照「わたしに覚えてもらっているかどうかはどうでもいいと言っていたように聞こえたが」
怜「そ、それは、こ、言葉のあやや!ウチとて麻雀打ちとして、あんたみたいな麻雀打ちになりとう思ってる!」
照(こいつ、早く私を席に座らせようとして私のつれを確認するつもりに違いない…ここで何としても自然を装わなければ)
照「そ、それはとても光栄だ」
怜「せやろ?ほな、時間取って悪かったから、はよ、席に座りーや」
照「そ、それはそうなんだが」
照(いかん活路が見いだせない…)
照(そうだ…!トイレだ!トイレに行くふりをして一旦脱出、再度入り口で待ちぶせて咲をまとう!)
照「せ、せっかくあったところすまないが、私は今非常に、その、と、トイレに行きたいんだ、ではこれにて…」
怜「ま、ちょい待ち!と、トイレやって!?」
怜(そしたらショックで阿知賀は……まぁおもらしはトイレでしてくれた方が片付けは楽やけど)
怜(ってちゃうわ!アカン、それは最悪!最悪の展開や!)
怜「ま、まちーな!トイレはいま、そ、その、掃除中!掃除中で使えへんで!」
照(こいつ、私の作戦を見破っているというのか!?いや、しかしここですんなり引くとかえって不自然…そうか…これはブラフ!)
照(恐ろしい、さすが差金だ…私がトイレをここですんなり諦めたら、トイレに行きたかったのに行かなかったことになりかえって不自然…)
照(こいつは私のトイレ行きが嘘かどうか確かめているに違いない)
照「ト、トイレが清掃中で全部使えないなんてそんなことがあるはずなかろう」
照「トイレはこちらとお前の後ろの掛け看板に書いてあるが……」
怜(あ、あぁ~どないしよ~たすけて竜華ぁ~)
煌「で、だからわたくしはいってさし上げたんです『すばらですっ』って」
玄「あ、あの」
煌「はい」
玄「そ、そのお話、もう三回目…」
煌「・・・!これは失礼いたしました。いえ、この話には続きがありまして…」
玄「あ、あの!」
玄「もう、これ以上は・・・ホントに、そ、その…も、漏れちゃいそうなので…トイレに…」
煌(園城寺さん、申し訳ないですが…もうこれは限界かと…)
玄「す、すいませんっ!行かせてください!」
煌「ま、松実さん落ち着いて!」ドン
玄「あっ」
煌「あ、あのぉ…もしかして…ちょっぴり…」
玄「……っっ!トイレに行かせてください!」
タタッ
煌「あっ」
煌「し、しまった」
煌「お、おまちを!」タタッ
煌(園城寺さん…!なんとか成功してますように…!わたくしはあなたを信じ申し上げておりますよ…)
和「今日行くお店は、このへんではとても有名なお店なんですよ。」
咲「へぇ~楽しみだな~」
和「近くに住んでいる友だちに教えていただいたんです」
咲「そういえば、明日、昔のお友達紹介してくれるんだってね!楽しみだなぁ!」
和「はい!今日はちょっと遅いので旅館を予約してありますからそこに泊まって、明日会いに行きましょう!」
和(憧に教えてもらったんです…とびきり強いお酒がおいてあるお店…)
和(ふふふっ、咲さんに、ジュースと偽って、飲ませて……)ジュルリ
咲「…?よだれ出てるよ?」
和「へ…?あ、すいません…」(私としたことが…)
咲「ふふふ、よっぽどお腹が空いてるんだね!きっとすごく美味しいお店なんだろうなぁ!私もすごく楽しみ!一緒に楽しもうよ!」
和「…えぇ!もちろん」
照「だからそっちと書いてあるんだが」
怜「こっちのトイレは清掃中やねん」
照「さっき通りかかった店員が使えると言ってたが」
怜「あいつはアホや。うちらの注文何回も間違えたアホや」
怜&照((こ、こいつ・・・・埒があかへん&あかない))
照「どいてくれ!私も限界なんだ」
怜「だから!こっちのトイレは使えへんって!」
タッタッタ
怜「!?」
玄「…も、漏れちゃうよ・・・本当に」タッタッタ
怜「あ、あかんなんで阿知賀・・・!きたらあかん!あかん!」
照「は、はやくそこをどけっ!私はトイレに…」
煌「すばらっ!これは最高にまずい状況!!」
玄「と、トイレは・・・あれ、園城寺さん、トイレに行かれたのでは・・・」
怜「いや、これは、これはちゃうんや!」
照「さぁどいてくれ…ん?あいつは…おぉ、あいつは覚えてるぞ(誰かの妹だったから覚えている)」
怜(あかん!もうあかん!他家が東南西北ポンしてるとこに立直かけてて字牌ツモ切りしなきゃいけないくらいアカン!)
煌(これは…一体誰が最後の役牌を鳴かせたんでしょうかね…)
照「えーっと…インターであった」
玄 ビクッ
照「阿知賀女子先鋒の・・・」
玄 ビクビクッ
照「ドラゴンロード?とかいう…」
玄 ビクビクビクッ
怜「どうもこうもないで…」
煌「すばらっ」
玄「あ…ああああ・・・」
…その様子はまるで、夏の終わりを告げる夕立があたり一面を清めていくようであったという…
玄「わ、わたひぃ、と、トイレにぃ、いきたくて、でも…ここは、トイレじゃないのにぃ…」
玄 バタッ
怜照煌「「「」」」
客「おぃなんかすごい声がしたぞ?」
客「えーなにーちょっと見に行く?」
ドヤドヤ
怜(ま、まずい…どない、どないすれば…)
煌(これはもう…)
怜煌「「!?」」
店員「あーい、お冷ピッチャーで、って!?なんだあんた!?」
照「かりるぞ」
店員「おい!」
照、店員からお冷を奪い取り、コークスクリューで撒き散らす!
怜「つ、冷たっ!なんやこれ!み、みず!?」
煌「はっ!まさか・・・!」
客「なんだなんだ」ドヤドヤ
照「みなさんお騒がせして申し訳ありません!急いで店内を歩いていたら、この女の子と店員さんにぶつかってしまいました!」
照「申し訳ありません!」
怜「喋り方…変わりすぎやろ…」
煌「これが…チャンピオン…」
照「あなた、大丈夫?」
怜(…新道寺!)
煌(…承知いたしました!)
煌「店員さん、申し訳ないですが、布巾をお借り出来ますか?」
店員「ア、アア…分かった」
煌「すばらですっ…」
怜(さすがやな、土壇場でこんなことを思いつくなんて…やっぱチャンピオンにはかなわへんわ…)
煌(麻雀だけの人かと思っていましたが…この危機管理能力…さすがは白糸台のエースです…すばらですっ!)
照(………日頃妄想、いや、仮想訓練をしていた、「咲inピンチを救うシュミレーションNo.92」がこんなところで役に立つとは思わなかったな)
怜「結局あのあと、宥さんに迎えに来てもらったわけやけど」
煌「当の松実さんが全部覚えていなかったのは幸いでしたね」
怜「ホンマやなぁ、でも実はあの夜のことウチもあんまり記憶ないんやけど」
煌「まるで酔っぱったみたいでしたねぇ」
怜「ただまぁ、なんとか事なきを得てよかったわ」
煌「あっ、ゲストが来ましたよ」
怜「今日こそ、リベンジせぇへんとな」
怜「遅かったやないか」
煌「おぉ松実さん、ようこそいらっしゃいました…すばらですっ!あれ?後ろの方は…」
怜「チャ、チャンp…」
煌(シーッ!!何言ってるんですか園城寺さん!松実さんが自分から照さんを連れてくるわけ…!)
照「こんにちは、いや、こんばんは、というべき時間か」
煌「ど、どうしてあなたがここに…?」
玄「あれ?煌さん、ご存知なんですか?」
怜「ご存知も何も…あんた、その人は…」
照(実はそのあと私が迷って30分でいけるところを3時間かかってしまったんだが)
照(今日も咲が来るというからリベンジしようとしたのだが…咲はもう退店してしまっただろうな)
玄「それで、とってもいい方で、話しているうちに仲良くなってしまって~」
玄「でもお二人のお友達さんでしたら話は早いですね!」
怜(な、なぁ、なんやあんた、阿知賀に忘れられとるんか?)
照(私も分からないが、まぁ、平和にすむならそのほうがいいだろ。私とて人を泣かせるは好きではない)
怜(よういうわ)
煌(何にせよ、すばらですっ)
怜「ま、まぁそういう事なら座りーや」
怜(インターで死ぬほど、ウチの場合は文字通りやけど、必死になって戦った相手とおしゃべりして・・・)
怜(せやな…なんや、うちら、麻雀好き麻雀好きいうてんのに、それでトラウマ作ってんやったら目も当てられん)
怜(麻雀は時の運、ヤオチュウみたいな不幸な牌しか来いへんときもある)
怜(でもそんなヤオチュウだって、揃えば役満にもなる…)
怜(ウチ、インターでこの人達死闘になったてのが不幸なことやったと思っとったけど・・・)
怜(それを通じてこうして楽しくおしゃべりできるんなら、それはそれで、役満あがったんちゃうか?ウチら)
玄「お水のみます?」
照「気付けに爪楊枝でもさすか?」
怜「アホ、そんな気付けの方法、聞いたことないわ」
照「冗談だ」
怜「あんたの、冗談に聞こえへんのや」
煌「まぁまぁ。あ、注文したもの来ましたよ」
怜「そや、刺身の盛り合わせたのんどいたからな。財布が厳しいから今日は奢れんけど」
煌「すばら・・・くないですね」
怜「ウチとてそんなに金持ちや無いわ!」
店員「あい~ご注文の焼き鳥セットお持ちしました~」
怜「!!!!アホ!!!!ウチらが頼んだのは焼き鳥や無いわ!!!!」
おわり
オチも良かったわ
Entry ⇒ 2012.06.29 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
非力彩芽「ふぇぇ…こんなの重くて持てないよぉ…」
非力彩芽「ふぇ?お姉ちゃん…誰?」
怪力彩芽「アタイは怪力彩芽さ!」
怪力彩芽「ほらちっこいの、そこどいたどいた」
非力彩芽「ふぇぇ……?」
怪力彩芽「見てろよ? こんなもんあたしの怪力をもってすれば……」ガッシリ
非力彩芽「もってすれば……」ワクワク
怪力彩芽「お茶の子さいさいさ! ふんぬりゃあぁぁ!」
非力彩芽「おぉ!」
怪力彩芽「ぬ……ぐぎぎぎ」
非力彩芽「が、がんばれぇ怪力ちゃん!」
怪力彩芽「ちっくしょう、なかなか重てーじゃねぇか!」
非力彩芽「ふれぇ、ふれぇ、怪力ちゃん!」ワッショイワッショイ
怪力彩芽「だあぁぁっ、見てないで手伝えよ!」
非力彩芽「ふぇぇっ!?」
―――
非力彩芽「だめだったね……」
怪力彩芽「あたしの怪力でも持ち上げられないなんて……」シュン
非力彩芽「ふぇぇ、落ち込まないで……」オロオロ
怪力彩芽「不甲斐ないぜ……」
非力彩芽「げ、元気だしてよぉ」アワアワ
怪力彩芽「非力……」
非力彩芽「怪力ちゃんが来てくれてうれしかったもん」
怪力彩芽「……」
非力彩芽「それに、2人でダメなら3人でやればいいだけだよ!」
怪力彩芽「……へっ、全くその通りだな」
非力彩芽「うんっ」ニコッ
怪力彩芽「ったく、あたしともあろう者が非力なんかに励まされるとはなあ」ワシワシ
非力彩芽「ふぇっ、頭撫でないでぇ」
怪力彩芽「おっ、あそこ見てみろよ」
非力彩芽「ふぇぇ?」
怪力彩芽「誰かいるぜ」
非力彩芽「ほんとだぁ」
怪力彩芽「ちょっと声かけてみるか……って、え!?」
非力彩芽「ふ、ふぇぇ! 猛スピードでこっちに来てるよおぉ!?」
怪力彩芽「ちっ、アブないタイプか?」
非力彩芽「わ、わかんない」
怪力彩芽「とにかく非力、あたしの後ろに隠れるんだ!」
非力彩芽「う、うん」ササッ
怪力彩芽「さぁ、来るなら来やがれ!」
???「おーい!」ダッダッダッ
怪力彩芽「あぁん?」
非力彩芽「ふぇっ、この声……」
???「ウチやでーっ!」ダッダッダッ
怪力彩芽「このテンション……」
???「お二人さぁーん! 何しとるーん?」ダッダッダッ
怪力彩芽「このうざさ……」
非力彩芽「ふぇぇ! ハリキリちゃんだぁ!」
ハリキリ彩芽「おっはぁー! はりきっとるぅ?」キラーン
怪力彩芽「相変わらず熱いな、お前」
非力彩芽「ハリキリちゃーん、久しぶりぃ」ニコニコ
ハリキリ彩芽「おぅ非力たん、元気やったか?」
非力彩芽「うんっ、非力元気だよぉ」
ハリキリ彩芽「はーっはっは、そりゃ良かったわぁ!」
怪力彩芽「なにしにきたんだよ」
ハリキリ彩芽「ほんま連れんなぁ自分」
怪力彩芽「お前のテンションに合わせるとこっちが疲れちまうからな」
ハリキリ彩芽「まぁええけど。何か困っとったんやろー?」
非力彩芽「ふぇぇ……実はそうなの」
ハリキリ彩芽「したらウチの出番や、手伝わせてーな!」
非力彩芽「ほんとにぃ? やったー」
怪力彩芽「おいおい非力まで……」
非力彩芽「これで3人、きっと持ち上がるよ!」ニパッ
ハリキリ彩芽「なーるほど、こいつを持ち上げればえーちゅう話か」
怪力彩芽「まぁ、そういうこった」
ハリキリ彩芽「怪力自慢のあんたでもムリやったん?」
怪力彩芽「おう……」
ハリキリ彩芽「なんや暗いと思ったらそういうことかいな」
非力彩芽「怪力ちゃん……」
ハリキリ彩芽「ほらシャキッとしい! はりきって行くで!」
怪力彩芽「……そうだな、3人もいれば持ち上がるだろ」
非力彩芽「が、がんばろうねぇ」
ハリキリ彩芽「やるでー、ウチやったるでー!」フンッ
怪力彩芽「よし、じゃあ非力とハリキリでそっち側を頼むぜ」
非力彩芽「うんっ」
ハリキリ彩芽「ウチにまかしときぃ!」
怪力彩芽「いいな、せーので行くぞ」ガシッ
非力彩芽「ふぇっ!」ガシッ
ハリキリ彩芽「ばっちこーい!」ガシッ
怪力彩芽「……せー、のっ」
非力彩芽「ふんっ、ん~……」プルプル
ハリキリ彩芽「だらっしゃああああ! おらおらおらぁぁ!」プルプル
怪力彩芽「おいハリキリ! いや非力もだが、そっちだけ全く浮いてねえじゃねぇか!」グググ
ハリキリ彩芽「な、なんやてぇっ!? この気合いがぁっ、見えへんのかあああぁぁ!」プルプル
非力彩芽「ふぇぇ……。た、たしかハリキリちゃんって」プルプル
怪力彩芽「威勢がいいだけだったな、いっつも……」グググ
ハリキリ彩芽「や、やかましいわ! もっと熱くなれよぉぉぉ!」プルプル
非力彩芽「……」プルプル
怪力彩芽「……」グググ
ハリキリ彩芽「いてまえ打線~!」プルプル
―――
非力彩芽「……ふぇぇ」
怪力彩芽「……こいつは」
ハリキリ彩芽「……」ショボーン
非力彩芽「は、ハリキリちゃん。そんなに落ち込まなくても……」
ハリキリ彩芽「……なんや、あんたらまだおったんかいな」ハァ
怪力彩芽「それものすごくこっちのセリフだわ」
ハリキリ彩芽「今ウチは気分が悪いんや。あっち行ってくれへんか」ショボーン
非力彩芽「ふぇぇ、ハリキリちゃんが落ち込んじゃった……」
怪力彩芽「落差が激しすぎるだろ……」
非力彩芽「ど、どうしようねぇ」
怪力彩芽「このバカは放っておいたら直るだろ」
非力彩芽「そうなの?」
怪力彩芽「バカだからな」
非力彩芽「バカは放っておけばいいんだね!」
怪力彩芽「そう、触れないバカに祟りなし!」
ハリキリ彩芽「何やぁぁぁぁ!?」ガバッ
非力彩芽「ふぇっ」ビクッ
ハリキリ彩芽「関西人に向かってバカバカ言いよってこいつら……怒るで!」プンプン
怪力彩芽「……な? 直っただろ」
非力彩芽「すごいねぇ、怪力ちゃん」
怪力彩芽「いやー、それにしても汗かいたな」
非力彩芽「うんっ、少し休憩しよっか」
ハリキリ彩芽「なんや、やる気ないなぁ」
怪力彩芽「お前が言うか……」
非力彩芽「誰かが来たら手伝ってもらおうねぇ」
ハリキリ彩芽「そか。ほなウチトイレ行ってくるわ」
怪力彩芽「おう、いっトイレ」
ハリキリ彩芽「便器でな」
非力彩芽「ふぇぇ、なにかで見たやりとりだよぉ……」
―――
ハリキリ彩芽「しゃあっ、トイレや!」
ハリキリ彩芽「トイレと言ったらふんばり! 気合いはいるでー」
ハリキリ彩芽「……むっ、なんやおかしいなぁ」
ハリキリ彩芽「なんでトイレの中やのに、こんな清々しい気分なんや……?」
~♪
ハリキリ彩芽「……なんか聞こえる?」
~~♪
ハリキリ彩芽「……これは、歌? 一体どこから……」
~~~♪
ハリキリ彩芽「むっ、この扉の向こうから聞こえるみたいやな」
~~~~♪
ハリキリ彩芽「誰や、出てきぃっ!」バターン
消臭力彩芽「消~臭~力ぃぃ~♪」
ハリキリ彩芽「……」
消臭力彩芽「エステー」ボソッ
ハリキリ彩芽「……いや、お前はいらんわ」パタン
消臭力彩芽「えっ……」
―――
ハリキリ彩芽「戻ったでー」
怪力彩芽「おう。って、なんで消臭力がいるんだ?」
ハリキリ彩芽「知らへん。勝手についてきたんや」
非力彩芽「消臭力ちゃん、お部屋にいないと思ったらトイレにいたんだねぇ」
消臭力彩芽「私、トイレ用だから……」
非力彩芽「ふぇぇ、不潔だよぉ……」
消臭力彩芽「……」
怪力彩芽「一応、これで4人だけど……」
ハリキリ彩芽「消臭力はちょっと役に立たんからなぁ」
怪力彩芽「うん、お前が言うな」
ハリキリ彩芽「誰かおらへんやろか……」
非力彩芽「ふぇっ、あそこで突っ立ってるのって……」
怪力彩芽「ん? 誰かいるな」
ハリキリ彩芽「声かけてみるか。おーい!」
???「……なに?」
怪力彩芽「ちょっとこっち来て手伝ってくれねーか?」
???「やだ。めんどくさい……」
ハリキリ彩芽「め、めんどくさいって何やねん!」
怪力彩芽「おいまてハリキリ! こいつは……」
非力彩芽「ふぇぇ……他力ちゃん」
他力彩芽「あぁ、ナマポで暮らしたい……」
ハリキリ彩芽「一番のハズレをひいてしもたな」
怪力彩芽「……言うな」
他力彩芽「あぁ、芸人の息子がほしい……」
非力彩芽「だ、だめだよぉ他力本願は……」
他力彩芽「あんたらが言うな!」クワッ
非力彩芽「ふぇっ!」ビクッ
他力彩芽「今さっき私に頼ろうとしたあんたらが言うな!」クワッ
怪力彩芽「いや、あたしらはちゃんと自分でもがんばるし……」
ハリキリ彩芽「そうやで! 失礼なやっちゃなぁ」
他力彩芽「ふん、あんたらだって助け合いがしたいんじゃない。助けてほしいだけなんだ……」
ハリキリ彩芽「……あかんわ! このマイナスオーラあかんわ!」
他力彩芽「他力本願をけなすくせに、自分1人じゃ何もできないじゃないか……」
怪力彩芽「だから、自分は何もしないってわけじゃないって」
他力彩芽「うるさいうるさい。楽できればそれが一番。ナマポだって、貰えるから貰うんだ……」
消臭力彩芽「いや、今ナマポ関係ないし……」
他力彩芽「いたの……?」
消臭力彩芽「!?」
他力彩芽「とにかく私は誰も助けない……」
怪力彩芽「こいつは……」
他力彩芽「あっちの人に助けてもらえば……?」
非力彩芽「あっち……?」
怪力彩芽「こんな使えないやつはほっとくか」
消臭力彩芽「賛成! 大賛成!」
非力彩芽「いたの……?」
消臭力彩芽「!?」
怪力彩芽「おーい、そこにいる人ー!」
???「あぁん!?」ギロ
ハリキリ彩芽「うわっ、いきなりキレてんであの人……」
???「……」
ハリキリ彩芽「……?」
長州小力彩芽「……キレてないっすよ」
ハリキリ彩芽「なんでやねんっ!」
怪力彩芽「ちょっ、落ち着けハリキリ!」ガッチリ
ハリキリ彩芽「離しいっ! あんなカビの生えたネタ見せられて黙ってられんわ!」バタバタ
非力彩芽「ふぇぇ……ハリキリちゃんまで変になっちゃったよぉ」
怪力彩芽「ていうか、どいつもこいつも使えなさすぎだろ……」
???「お困りのようだね!」
怪力彩芽「もうこの時点でイヤな予感しかしないわ」
非力彩芽「ふぇぇ……」
???「きらきら輝く、未来の光!」
ハリキリ彩芽「なっ、まさか……」
他力彩芽「……」ドキドキ
プリキュ彩芽「キュアハッピー!」キラーン
ハリキリ彩芽「キュアサニー!」ゴォッ
怪力彩芽「あっ、じゃああたしはビュー」
他力彩芽「キュアビューティ……」ニヤッ
怪力彩芽「……」
非力彩芽「ふぇぇ……。じゃあ、私は……」
プリキュ彩芽「君はピースだよ! あざといから!」
非力彩芽「ふぇぇっ!?」
プリキュ彩芽「行くよみんな!」
ハリキリ彩芽「おぉ、なんやようわからへんけど力が溢れてくんでー!」
他力彩芽「め、めんどくさいし……」ドキドキ
怪力彩芽「あぁ、そう言えばあれをどかすのが目的だったっけ……」
非力彩芽「ふぇぇっ、なんだかいけそうな気がするよぉ」
プリキュ彩芽「今だっ! プリキュア・レインボーヒーリング!」ピッカアァーン
怪力彩芽「おぉっ、これはいけそうな気が……」
シィーン
プリキュ彩芽「……う、ウルトラハッピー!」
ハリキリ彩芽「何もおきんやないかい!」
他力彩芽「期待して損した……」
プリキュ彩芽「だ、黙れパチモン!」
怪力彩芽「いや、それお前だろ」
非力彩芽「ふぇぇっ、カオスになってきちゃったよぉ」
???「オーホッホ、やっと見つけたわよ、怪力!」
怪力彩芽「……もう勘弁してくれ」
非力彩芽「ふぇぇっ、この子って……」
記憶力高芽「小学生の時に貸した300円、今すぐ返しなさい!」
非力彩芽「ふぇぇ……」
―――
非力彩芽「ふぅ」
怪力彩芽「はぁ」
ハリキリ彩芽「ひぃ」
消臭力彩芽「……」
長州小力彩芽「……」
他力彩芽「だるい……」
プリキュ彩芽「ピースかわいいよピース」
記憶力高芽「300円返してもらいました」
怪力彩芽「……なんかもうさ、こんだけいればできるんじゃね?」
ハリキリ彩芽「本気? 九割役立たずやん」
非力彩芽「ふぇぇ……ごめんなさい」
ハリキリ彩芽「いやいや、非力たんは役立たずちゃうでー! かわいいは正義や」
怪力彩芽「さて、どうしたもんかね……」
???「あら、あなたたち……」
怪力彩芽「……お前」
ハリキリ彩芽「なんや、えらい懐かしい顔やなぁ」
非力彩芽「ふぇぇ……」
原子力彩芽「……」
プリキュ彩芽「原子力ちゃん……。最近見ないから、心配してたよ」
他力彩芽「私も心配はしてた。してただけだけど……」
ハリキリ彩芽「どないしたん? 連絡もよこさんで」
原子力彩芽「……私はもう用済みなのよ」
怪力彩芽「……どういうことだ?」
原子力彩芽「私は高校の生徒会長をしていたの。それはもう大きな支持を受けてね」
他力彩芽「たしか、いろいろ革新的なことをやってたんだっけ……」
原子力彩芽「そうね。何よりもまずは生徒のために……。そう思って、自分の身を粉にしながら働いたわ」
プリキュ彩芽「そうなんだ、すごいね!」ハッピー
原子力彩芽「おかげで学校生活がとても充実したものになった、ってみんな言ってたわ」
怪力彩芽「結構なことじゃねーか。ならなおさら、なんでいなくなったんだよ」
非力彩芽「……ま、まさか」
原子力彩芽「……たった一回よ」
ハリキリ彩芽「……」
原子力彩芽「たった一回の失態を見られて、手のひら返しのバッシングを浴びて」
非力彩芽「ふぇぇ……ひどいよぉ」
原子力彩芽「そうよ。とってもひどいこと。今まで私のおかげで学校生活を楽しんでいたくせに、あいつらは……」
消臭力彩芽「……」スピー
非力彩芽「許せないよぉ! 抗議しに行かなきゃっ」
原子力彩芽「ふふ、ありがとう。私のために怒ってくれて」
非力彩芽「たった一回の失敗でそこまで責めることないもん!」
原子力彩芽「……でもね、それが責任ってものだと、最近思うようになったの」
非力彩芽「……ふぇっ?」
原子力彩芽「二回目が与えられないほどに重く、大事な物なんだと思う」
非力彩芽「ふぇぇ……それでいいの?」
原子力彩芽「うん、いいのよ。私がいなくなっても、私の功罪はなくならないもの」
非力彩芽「ふぇぇ……」
原子力彩芽「のちの生徒会長がそれを見て何を得るか。その種火になれただけでも、価値があったんだと思う」
他力彩芽「私には考えられない……」
ハリキリ彩芽「そら、お前は他力本願やなくて自己中なだけやん」
非力彩芽「よくわからないけど、原子力ちゃんがそれでいいなら……」
原子力彩芽「いつかあなたにもわかるわ。きっとね」
???「よく言った!」
ハリキリ彩芽「うわっ、またなんか来たでえ!?」
???「サイコキネシス!」
他力彩芽「なっ……!?」
怪力彩芽「あ、あんなに重い物が浮いてやがる!」
ハリキリ彩芽「おぉー、やったな非力たん!」
非力彩芽「う、うん!」
原子力彩芽「あなたは……」
キリンリキ彩芽「ただのエスパータイプさ。あばよ!」ヒュン
怪力彩芽「ふー、何はともあれこれで終わりだな」
ハリキリ彩芽「せやなー。久しぶりに楽しかったで?」
他力彩芽「まぁ、少しはね……」
プリキュ彩芽「えへへー、ウルトラハッピーエンドだね!」
消臭力彩芽「……まぁ、よかったね」
記憶力高芽「……うん」
原子力彩芽「さぁ、非力ちゃん。道は開けたわよ」
非力彩芽「ふ、ふぇぇ……」オドオド
怪力彩芽「おいおい、ここにきて何を尻込みしてんだよ」
ハリキリ彩芽「ま、気持ちはわかるけどなー」
原子力彩芽「……非力ちゃん」
非力彩芽「……うん」
原子力彩芽「私たちのこと、忘れないでね」
怪力彩芽「……いつだって、一緒だからな」
ハリキリ彩芽「心の中に、っちゅーやっちゃな」
非力彩芽「みんな……」
他力彩芽「あんたなら、応援してあげなくもない……」
プリキュ彩芽「女の子は誰だってプリキュアになれるんだよ!」
非力彩芽「……うん、わかった。私、がんばるからね!」
怪力彩芽「おう!」
ハリキリ彩芽「元気でなー!」
原子力彩芽「自信を持って。あなたはもう、非力なんかじゃない……」
非力彩芽(みんな、ほんとうにありがとう……)
テッテッテッテー
テーテーテー、テレレレッテレー
おめでとう! 非力彩芽は剛力彩芽に進化した!
―――
剛力彩芽「んっ……。また、あの夢かぁ」
剛力彩芽「えへへ。私、がんばってるよ? 辛いことも多いけど……」
剛力彩芽「だからみんな、見守っててね」
剛力彩芽「……心の中から、見守っててね」
終わりき彩芽
でも剛力のことは応援しない
発想がいい
元スレ:非力彩芽「ふぇぇ…こんなの重くて持てないよぉ…」
Entry ⇒ 2012.06.29 | Category ⇒ その他 | Comments (2) | Trackbacks (0)
恒一「性質が逆転する現象だって……?」
恒一「……」
見崎「気をつけて。もう始まってるかもしれない」ボヨン
恒一「そうだね」
恒一「……」
見崎「♪」ボヨン
貧乳→巨乳
見崎「26年前に、この夜見山北中学の3年3組で非常に天邪鬼な生徒がいたの」ボヨン
見崎「そんな彼をクラスメイト達は嫌い無視をした」ボヨヨン
見崎「そして次第に彼の心は病み始め、ついには友達が『いない』のに『いる』ような行動をとりはじめたの」ボヨン
見崎「以来3組ではその内容を問わず物事が次々と逆転していく現象がおこりはじめた」ボヨーン
見崎「それが性質が逆転する現象」ボヨン
恒一(しかし……でかいな)
見崎「そう、例えばほら」ボヨン
望月「うわああああ!」
恒一「!?」
望月「ふえー」
恒一「も、望月が女の子になってる……」
男→女
望月「恥ずかしいから、そ、そんなじっくり見ないでよぉ」
恒一「///」
見崎「むっ」ボヨン
ガッ
恒一「いた! 何で僕の足を踏むのさ!」
見崎「……別に」ボヨーン
見崎「気をつけて榊原くん。この様子じゃもう始まってる」ボヨン
見崎「♪」ポヨヨ
恒一「う、うん」
恒一(なんだか見崎が凄い嬉しそうだけど、場合によっては厄介な事になりそうだなぁ)
赤沢「でもいいわ、昔からみんなに無能無能と馬鹿にされてきたけれど」
赤沢「現象さんがきっと私を有能にしてくれると決まっているはず!」
赤沢「今に見てなさい! 見崎鳴!!」
望月「ななな、なんだか赤沢さんが一人で変な事言ってるよぅ」
高林「ハハハハ! 実にフェアでいいことじゃないかい」
高林「そんな事より望月!」
高林「今夜僕と一緒に野球観戦にでもいかないかい? ついでに洒落たディナーでも一緒に」キリ
望月「え、えっと、ごめん。今日は榊原くんと予約があって……」
高林「」
高林「そうかそうか!」
高林「でも僕は何度振られても君の心を奪ってみせる」キリリ
望月「高林くん……」
高林(なんだろう。今日の僕はどこか男らしいぞ。まるで強心臓だ!!)
弱弱しい心臓→強心臓
中尾「」ゾク
中尾「て、てめえ! 性懲りもなくまた俺のケツ穴を狙ってやがんのか?」
川掘「あ? 何言ってんだ、まるでホモみてえじゃねえか」
中尾「!?」
中尾(まさかこいつ現象でノンケに……?)
川掘「どうすんだ、行くのか行かねえのかハッキリしろって」
中尾「……お、おうそうだよな。わかったわかった付き合ってやるよ!」
川掘「おう!」
川掘(この現象、外見的な部分の逆転は見れるが内面的部分の逆転は見れない。すなわちあくまで自己申告であって……)
川掘「」
川掘「」ジュルリ
中尾「」ゾク
中尾「な、何か寒気が……?」
中尾「あ、待てって!」タッタッタ
柿沼「……」
柿沼「はー、ホモとかないわー」
柿沼「時代は百合だろ、普通に考えて」
柿沼「男の何がいいんだか」ハア
BL厨→百合厨
柿沼「……」チラッ
柿沼(やっぱ生涯安心金木松井の百合カップル、はと)
金木「……私達別れたほうがいいと思うの」
松井「!?」
柿沼「!?」
金木「私達の関係一旦冷ましたほうがいいと思うの」
松井「」
金木「……ごめんね、別に亜紀の事が嫌いになったわけじゃないの」
金木「でも、あなたの姿を見てると私が本当に釣り会うのか自信がなくて……ごめんなさい!」ダッ
松井「」
柿沼「」
松井「」
通常の一般人的体型→八頭身超モデル的体型
水野「やっぱり三島由紀夫の文学性は非常にウェットに富んでるよな。たとえば仮面の告白を読んでみても――」
アウトドア系→インドア系
久保寺「ハァー、なんで私のお母さんは私のお母さんなんでしょうか? むしろ私のお母さんであっても――」
超ロリ専門→超熟女専門
辻井「見える! 見えるぞ! 僕にも眼鏡なしで見える! まるでハイビジョンじゃないか――」
厚底眼鏡の低視力→マサイ族もびっくり超人的視力
恒一(みんな大なり小なり変わっている……昨日までは普通だったのに)
恒一「おはようおっぱい」
見崎「え?」ボヨン
恒一「? どうしたの見崎?」
見崎「いや、多分私の聞き間違い」
恒一「それにしても今日も見崎の見崎は元気だね。僕の恒一も見習ってほしいよ」ハハハ
見崎(!? 榊原くんがナチュラルにセクハラ発言を)
見崎「これも……現象か」
恒一「しかし皆変だよ、自分に違和感がないのかな? 普通あそこまで変わったら赤沢さんですら違和感を覚えるレベルなのにね」
本音を隠すタイプ→オープンな本音
見崎「……何でもない///」
見崎(まさか恒一くんがこんなセクハラまがいな事を考えていたなんて///)
見崎「現象には個人差があるみたい。自身が変わった事に気づく人間もいれば全く気づかない人間もいる」
見崎「辻井くんは気づいているけど久保寺先生は気づいていないように」
恒一「ふうん」
恒一(しかし元の久保寺先生ってロリコンだったのか)
恒一「いい年して気持ち悪いというか、鼻で笑っちゃうよね」
見崎(辛辣……)
見崎「……」スッ
見崎「……何かよう?」ボヨン
恒一(あ、胸を開放した)
恒一「やあ、赤沢さん、今日もキレイだね」
赤沢「……」
パアン
恒一「……!?」
見崎「……??」ボヨヨン
赤沢「……」チッ
ザワザワ
杉浦「い、泉美? どうしたの……」
小椋「ちょ、何やってんのよ」
綾野「ハア、こんないい天気だと気が滅入っちゃうよね。……死にたい……」
ポジティブ→ネガティブ
赤沢「……」スタスタ
恒一「ちょっ! 赤沢さん、待って」ガシ
赤沢「……!」
ガン
恒一「うう、呼び止めただけなのに、……頭突きしなくても」
恒一「そんな……。そんな素敵な顔をしたレディーに話しかけるなというほうが無理だよ……」
小椋(榊原くんも何かおかしいぞ……)
赤沢「やめてください。セクハラです」
恒一「例え、僕は殴られ続けられたって、君に愛の言葉をささやき続けるのをやめないよ!」
赤沢「……」イラッ
恒一「いたいいたい! そのツインテールみたいなもので殴らないで」ガスガス
見崎「……」ボヨン
見崎(現象は今完全に私の味方!)ボヨン
恒一「ちょ! ツインテールみたいな鞭で叩かないで!」パチンパチン
赤沢「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね」パチンパチン
恒一きゅん大々々々々々々好きぃ!→中尾以下
見崎「これに懲りたら今後あの女の近くにはいかないほうがいいかもね」クス ボイーン
恒一「そういうわけにはいかないよ!」
恒一「もしあれが彼女なりの愛情表現だとしたら僕にはそれを受け止める義務がある!」
恒一「僕は彼女を愛することを止めないさ!」
見崎「……」ボヨン
恒一「それはもちろん見崎のおっぱいもね!」キリ
見崎「///」キュン ボイーン
三神「あら、佐藤さん関心ね。誰も見ていないところでもお花を大切にするなんて」
佐藤「ふええ、当然ぼ事ですぅ」
計算高い腹黒さ→純粋無垢な心
和久井「最近喘息が出ないんだ、なんでだろ?」
前島「さー、体質でも変わったんじゃねえの?」
和久井「うーん」
喘息持ち→風邪すらひかない健康的な体
勅使河原「おう、中尾……ってお前中尾か!?」
中尾「? 俺は俺だろ?」
勅使河原「お、おう……」
高林「へえ、彼もなかなかフェアな顔になったじゃないか」
望月「……///」ドキッ
中尾「?? どうしたんだお前ら?」
ブサイク→イケメン
中尾「? どうしたんだよ望月」
中尾「……手紙?」
勅使河原「おー、もしかしてラブレターじゃねえか?」
望月「うん」コクコク
中尾「ハハ、ありがたいけど、ゴメンな望月。俺もう彼氏がいるし、今のお前は女だしよ」テレ
望月「ガーン」
勅使河原「……うん? それって」
中尾「ああ、そういう事さ」
中尾「まったく……、お前が欲しいのはラーメンじゃなくて――」グイ
川掘「!」
中尾「俺のが欲しくてたまんねえんだろ?」
川掘「///」
勅使河原「」
望月「うう……」
高林「仲良きことは実にフェアだ」ウンウン
中尾「ククク」
守備範囲は女→守備範囲は男
川掘「///」
掘る側→掘られる側
多々良(まさかこれが噂の)
多々良「中学デビュー……?」
恒一「やあ、多々良さん」
多々良(よかった、恒一くんはいつも通りみたい///)
恒一「今日も美しい黒髪だね。いつかは僕の白濁液で汚して見せるよ」
多々良「」
多々良(いいいいいまのって、下ネタなのかな?///)
多々良(っどどどどどおしよう、ここはノリよく”今から汚してみる?”っていってみようかな。でももし恒一くんなりのジョークでムッツリなんて思われたりしたら///)
多々良(でもスルーしたらこの女カマトトぶりやがってなんて嫌われちゃうかも!)
多々良(嫌われるのは嫌! でも恒一くんが下ネタを言ってくるなんて///)
多々良「あわわわわわわ」ガタガタガタ
恒一「何だか分からないけど多々良さんがフリーズしてしまったからそっとしておくか」
恒一「やあ有田さん。今日も色っぽい顔だね。いつかその顔に僕の白濁液をかけてみせるよ」
有田「い」
恒一「い?」
有田「いやああああああああああああああ!!!!!」
恒一「!?」
赤沢「!……」ダダダダダ
赤沢「恒一くん! 松子に一体何をしたぁ! 言えぇ! 言えぇ!!」グサ
恒一「いたっ! ちょっとそのツインテールみたいなの刺さってる! 刺さってるよ!」グサグサ
赤沢「刺してるのよ!!」グサグサ
恒一「でも大丈夫、たとえツインテールみたいなもので刺されてもそれが君の愛情表現だと思って黙って受け止めるよ!!」グサグサ
有田「や、やめて泉美! 恒一くんが死んじゃう!」
赤沢「これで死ぬならとっくに殺してるわよ!」グサグサ
恒一(しかし血がひどくなってきたな……)
恒一「うん、ホントびっくりしたよ」ドクドク
恒一「でも有田さんが赤沢さんを制してくれなかったら今頃地面に倒れていたかもね。ありがとう」
有田「う、ううん/// 私が悪いから」
恒一「このお礼はいつかベッドの中でじっくりさせてもらうよ」
有田「い」
恒一「い?」
有田「いやああああああああああああああ!!!!!」
恒一「!」
赤沢「……」ダダダダダ
恒一「おのれ、現象め」
有田「ご、ごめんなさい/// で、でも、エッチなのは大人になってからだよ?」ウワメヅカイ
変態→純情
恒一「すでに僕のズボンの中で大人の恒一が暴れているけどね」ハハ
有田「い」
風見「ん、どうしたの桜木さん」
桜木「風見くんの事傘で思いっきり突いてみてもいいですか?」
風見「!?」
桜木「こうすることで何かを掴める気がするんです」
風見「……」
桜木「ありがとう風見くん」
ブス
風見「うっ!」
桜木「……」
ブス
桜木「……」
ブス
風見「くぅ」
ブス
桜木「……」
ブス
風見「ああっ!」
ブス
桜木「……」ハアハア
ブス
風見「ああっ!」
桜木「……」フーフー
ブス
桜木「こ、これは……」
桜木(心のそこからくる高揚感! 幸福感! 一本満足! これが私の生きる道!)
ブス
ブス
ブス
風見「くううぅ……あっ!」
ブス
桜木「これが、私?」
傘にさされる側→傘をさす側
ブス
風見「お願いします!! やめてください!」
桜木「……」
桜木「ニコ」
風見「!」
ブス
風見「うっ……あっ、はあ…」
ブス
風見「ふぅ、ふぅ……」
ブス
風見「……」
ブス
風見「んん、くぅっ……ぅ、うぅ……あっ」
ブス
ブス
風見「あっ、ふぁ、あぁっ、あっ///」
ブス
風見「も、もっとぉ///」
桜木「ニコォ」ハアハア
ブス
風見「うぁっ、ぐぅっ、つぅう、はっぁ///」フーッフーッ
殺される前にヤル側→殺されても良いからヤラれる側
桜木「これから私達、仲良くできそうですね、風見くん///」ニヤァ
風見「そ、そうだね。桜木さん///」ハアハア
ひょっとすると…
猿田「ぞなぁ」
王子「きちんと吹奏学も続けてるし」
猿田「ぞなぁ」
猿田(ワシは知っている。王子も現象に遭遇した事に)
猿田(王子は最近急にパンクに目覚めたぞな)
猿田(それもファイアースタントをつかったパフォーマンス付でよく深夜のイノヤで演奏しているぞな)
猿田(特殊なメイクをしてバレないと思ったぞなか、王子。親友の目はごまかせないぞなよ)
王子「あれ、そういえば猿田も最近変わったよね」
猿田「ぞな!?」
猿田(それはお前がパンクに目覚めたから、お前受け入れるために勉強してるためぞな)
王子「僕もなんだか最近パンクに目覚めたんだ。よかったら詳しく教えてあげるよ」
王子「やっぱり僕ら親友だね!」
猿田(……)
猿田「ぞな!」ニッ
王子「ニッ」
クラシック→パンク
金木「こないで!!」
松井「……!」
柿沼「」ハラハラ
金木「あなたにはもっと他にいい人がいる」
松井「そんな事ないって! 私には杏子しかいないよ!」
金木「……私、決めたの」
松井「……!?」
金木「私、男に走る!」
松井「」ドキッ
松井(何、今の気持ち。嫌なハズなのに一瞬えっちな気持ちになった)
松井「……?」
純愛→寝取られ
金木「……」
柿沼「」
恒一「やあ綾野さん。今日もうつむいてるけど、それじゃ猫背のせいでおっぱいがよく見えないよ」
綾野「いいんだよこういっちゃん。私のなんて多佳子や泉美、見崎さんにすら勝ててないし。勝ってるのなんて由美ぐらいだよ」ハア
見崎「……」フフン ボヨヨヨン
小椋「」
恒一「そうかな、綾野さんのも充分意義のあるおっぱだと思うけど……?」
綾野「なぐさめはいいから。ほっといてよ……」
恒一「こんな笑顔がよく似合う顔なのに、笑わないなんてもったいないなぁ」
綾野「笑うなんて……私にできっこないよ」
綾野「……まあお世辞でも嬉しいよ。今だけだけど」
恒一「別に僕は本心しか言わないけどなぁ」
綾野「はあ……、じゃあ私と付き合ってくれる?」
恒一「うん、いいよ」ニコ
見崎「」ガタプルン
多々良「」ガタ
有田「」ガタ
望月「」ガタ
赤沢「……」ペッ
綾野「わかってるわよ、全部。こういっちゃんモテるもんね」
綾野「ぬか喜びさせて陰口を叩く、知らないと思ってるの……?」
綾野「きっと私なんか眼中にないからノータイムで返事ができたんだよ」
綾野「そう、きっと、そう、きっとそう、きっと」ブツブツ
恒一「なんだか綾野さんがヤンデレになりそうだから一先ず退散するか」
見崎「ホッ」ブルン
多々良「ホッ」
有田「ホッ」
望月「ホッ」
赤沢「何彩をいじめてんよぉぉぉぉ!!!!」ダダダダダ
恒一「う、うわああああああ! ツインテールみたいなのはやめて! ツインテールみたいなものはー!!」
見崎「さっきのは危なかった。実に危なかった」ブルン
見崎「今の恒一くんは軟派なイタリア男状態」ブルン
見崎「来る者拒まず去る者追わず」ブルン
見崎「元々そういう思考だったみたいだけど……」ブルン
見崎「早急に対策せねば!」ブルルン
高林「さあ望月! 僕の恋人になれ!!」
望月「ご、ごめん高林くん。今日は勅使河原くんと予定が」
高林「そうか、ならまた明日迫らせてもらうのがフェアだというものだね!」
望月「ごめん、明日は明日で金木さんと用事があるんだ……」
高林「ふふ、なら明後日があるじゃないか!!」
藤巻(こいつ、なんて打たれ強いの……)
金木(とりあえず望月でリハビリして、と。私の好みは小さな女の子だし)
望月「やあ、ごめんね金木さん。お待たせ」
金木「ううん、別に待ってないよ……」
松井(嘘、もう30分近く待たされてたじゃない、杏子!)
松井(でもなんでだろう。二人を見てるとつらいはずなのに気持ちが興奮してくる……)
柿沼(この子、物陰から隠れてみて……なんと不憫な)
金木「……じ、実は」
望月「僕でよかったら相談にのるよ?」
金木「!」
金木(やっぱりダメ、今は女の子だって頭ではわかってるのにどうしても体が拒否してしまう)
金木「う、うわーん!」ダダダダ
望月「」
望月「ど、どうしたんだ一体?」
松井「てめええ! なに私の杏子泣かしてんだよぉぉ!」ゴゴゴ
柿沼「そこは普通引き止めるだろ百合的に考えなくても」ゴゴゴ
望月「!? な、何が起こってるんだ?」
ドン
金木「きゃっ!」
三神「うわっ、と、大丈夫金木さん?」
金木「……」ボーッ
三神「金木さん?」
金木「え、あわわ、は、はい!」
三神「そうよかった。でも今度からは廊下は走っちゃダメよ」ニコッ
金木「……///」
金木「は、はい! お姉様!!」
低め打ち→ハイボールヒッター
三神「お、お姉様?」
松井「ううう、杏子が寝取られちゃったよぉぉぉぉ」グスグス
松井「でもすっごい興奮するんだよぉぉぉぉ」グスグス
柿沼「女生徒×女教師! イケナイ関係! ”お姉様、そこはダメ。汚い穴よ!”、”いいじゃない、あなたの体は全て私のものよ。ほらいやらしく私に見せてみなさい……!”、ふぉぉぉ! インスピレーション沸いてきたわぁあああ!」
小椋「恒一くんの口ぶりじゃあおっきいおっぱいが好きみたいだし」
小椋「見崎さんみたいに胸に影響がでないかなぁ……」
敦志「なんだしけた面しやがって。おかえりの一言も言えないってのか」
小椋「おかえりー(棒)」
敦志「ったく、せっかく人が汗水たらして働いて帰ってきたっていうのに辛気臭い!」
引きこもり→社会人
小椋「へーへー。あたしもう、寝るから」
敦志「はやっ!?」
小椋「寝る子は育つっていうしー!」
小椋(おっぱいだってきっと……!)
由美ちゃんきゃわわわ
小椋「胸も変化ないし」
小椋「待ち合わせとかしてないんだけど、会えたらいいのになー!」
恒一「あ」
小椋「! こうい……榊原くん! おはよう!!」
恒一「やあ、小椋さ……んん?」
小椋「?」
恒一(小椋さんが大人の女性になっている。おっぱい以外)
女子中学生→大人の女性
恒一(制服がピッチピッチだぞ。胸は余裕そうだけど、でもこれは正直)
恒一「たまらん」
小椋「!?」
恒一(どうやら本人には違和感のないタイプみたいだな。不安を煽ってもいけないし普通に接するか)
恒一「ぐっへっへっへ、お姉ちゃんいい体してんな。ちょっと僕に触らせてみなよ」
小椋「」
小椋(おさわりを求められている!)
恒一「……」
小椋「ちょ、ちょっとだけなら///」
恒一「!!」
恒一「なら遠慮なく」サワ
小椋(! 胸じゃなくてお尻なの!?)
恒一「うん、やっぱり細身だけどしっかりした肉付き。たまんないよ」サワサワ
小椋「う、ううぅ///」
恒一「早起きしてよかったよ。朝からいいもんだね」サワサワ
小椋「///」
恒一「!」ピキーン
恒一「まずいこの気配は……」
赤沢「……」ダダダダダダ
小椋(泉美が猛スピードでこっちに向かってくる……!)
恒一「じゃあ、小椋さん。また学校で会おう。朝から赤沢さんのスキンシップはちょっと食傷気味でね」タタタタ
小椋「」
勅使河原「ほんとだよな」
高林「それにしてもまさかそんな制服の着方があるなんて初めてしったよ」
望月「勅使河原くんはハイセンスだからね」
勅使河原「おしゃれさんは制服すら簡単に着こなせるんだぜ?」
おしゃれさん(センス無)→おしゃれさん(センス有)
恒一「やあおはよう勅使河原に高林くん、それと望月は今日もかわいいね! じゃあ学校で!!」タタタタタタ
赤沢「……」タタタタタタ
勅使河原「あいつらホント仲いいよなー」
望月「そうは見えないけどなー」
江藤「へえ、でもなんで私に言うの?」
杉浦「だってそんな屈強な体してたら肉体作りのテクニックの一つぐらいしってるんでしょ?」
江藤「え……?」
小さな体→まるでボディービルダー
中島「最近あんまりいいことないなー」
渡辺「ほうほう例えば?」
中島「印象の無い人ってどうひっくり返しても印象の無い人だよね」
渡辺「0に何をかけても0みたいな?」
中島「いっそのことアフロにしてみようかなぁ」
渡辺「今なら現象のせいにできるもんね。私も思い切ってノーパンノーブラで登校してるけど案外気にならないよ」
米村「」ガタ
前島「これからの時代は」
前島「フェンシングだ!!」
桜木「アハハハハ」ハアハア
風見「ウフフフフ」ハアハア
ブスブスブス
前島「……」
前島「やっぱり剣道の方が健全だぜ!」
ザワザワ
恒一「やあ藤巻さん。どうしたんだい? いつものギャル風メイクやコギャルの格好はどうしたんだい? それにしてもいい唇だね食べちゃいたいよ」
藤巻「? いつもこんな感じだけど」
ギャル風→清楚風
前島「健全だ!!」
高林「フェアだね!! でも僕は望月くん一本だよ!!」
中尾「俺にはお前しかいねえよ」
川掘「こいつぅ///」
佐藤「あ、ちょうちょさんだ!」
佐藤「おなかすいたな~」
佐藤「ふええ」
佐藤「あ、シマリスちゃん」
見崎「何を見てるの恒一くん?」ブルン
恒一「いやあ、”『キャベツ畑』や『コウノトリ』を信じている可愛い女の子に無修正のポルノをつきつける時を想像するような下卑た快感さ』”なんてよく言ったものだななんてね」
見崎「?」ブルン
恒一「殴るならもっと優しく殴ってほしいんだけどな」ガッガッ
赤沢「……」ガッガッ
久保寺「ハアハア、お婆ちゃんの無修正お婆ちゃんの無修正お婆ちゃんの無修正///」
綾野「死にたい……」
辻井「へえあれが通天閣かぁ」
藤巻「あー、リップクリームきれちゃった~」
金木「お姉様どこですか!?」
松井「ああ、杏子ぉ///」ハアハア
柿沼「」ハアハア
杉浦「もうこのクラスにはほとんど現象の餌食にかかってしまった」
多々良「うん、後三神先生と一部の生徒ぐらいだね」
高林「望月! 結婚してくれ!!」
望月「だーめ!///」
佐藤「ふええ、ふええ」
小椋「うーん、最近なんだか制服がきついなぁ」
渡辺「難点を挙げるとすれば乳首がこすれるところとか?」
中島「アフロ失敗してチリチリになっちゃった……」
前島「健全こそ全て!!」
杉浦「一部は現象にかこつけてイメチェンをはかったりしてるみたいだけど」
多々良「うん」
中尾「///」イチャイチャ
川掘「///」イチャイチャ
猿田「やっぱりパンクより聖歌ぞな!」
クラシック→聖歌
王子「まさか猿田と音楽性の違いで争うとは思ってもみなかったよ! ぶっ殺してやる!」
水野「だから筒井康隆の断筆宣言の前とそれ以降の作品の毛並みは――」
桜木「今度はこの傘を使ってみましょう。この先が尖ったものを///」
風見「」ゾクゾク
杉浦「……」
多々良「……」
勅使河原「ほら、ここの制服の着方はだな」
米村「へえ、今度真似してみるよ」
杉浦「せめて私達だけでもまともなのが救いね」
多々良「みんな受験生なのに大変だなぁ」
多々良「こういう時はボートレースでも観て落ち着くのが一番なのにね」
杉浦「え?」
多々良「え?」
競馬→競艇
杉浦「……もう誰も信じられない」
杉浦「止めたとしても現象でおかしくなった人達が元に戻るのかも分からない」
三神「そうよねぇ」
杉浦「……」
三神「いまさら”死者”をみつけてもどうしようもないかもねえ」
杉浦「……ですよね」
三神「多分”死者”は私なんだろうけどね」
杉浦「!?」
死者→生者
杉浦「……じゃあ三神先生を殺したら現象は止まるですか?」
三神「多分止まらないんだよね。杉浦さんが殺したとして、人殺しとして記憶や記録にも残るだろうし」
杉浦「……っ」
三神「でも人って変わるものなんだよ?」
杉浦「……」
三神「でも現象によってその気持ち、吹き飛ばされちゃったんだ」
甥への反倫理的感情→甥への倫理的感情
三神「でも、今でもやっぱり恒一くんが好き」
杉浦「……!? なんで、現象によって逆転されたはずじゃあ?」
三神「でも、人は常に同じ気持ちじゃいられないの」
杉浦「?」
三神「ほら見て」
赤沢「ほら! こんな事されて嬉しいんでしょ!? この変態!! みすぼらしい! くたばれ!!」ニヤニヤ
杉浦「泉美が笑ってる……? そんな現象の影響で中尾以下まで落とされたはずなのに、吐くほど毛嫌いしているはずなのに」
三神「でも人は常に変化していくの。彼女だってゆっくりだけど元に戻ろうとしている。好きだった人を本当に嫌いにはなれないように」
望月 男→女
高林 弱弱しい心臓→強心臓
柿沼 BL厨→百合厨
松井 通常の一般人的体型→八頭身超モデル的体型
水野 アウトドア系→インドア系
久保寺 超ロリ専門→超熟女専門
辻井 厚底眼鏡の低視力→マサイ族もびっくり超人的視力
榊原 本音を隠すタイプ→オープンな本音
綾野 ポジティブ→ネガティブ
赤沢 恒一きゅん大々々々々々々好きぃ!→中尾以下
佐藤 計算高い腹黒さ→純粋無垢な心
和久井 喘息持ち→風邪すらひかない健康的な体
中尾 ブサイク→イケメン
中尾 守備範囲は女→守備範囲は男
川堀 掘る側→掘られる側
有田 変態→純情
風見 殺される前にヤル側→殺されても良いからヤラれる側
王子 クラシック→パンク
松井 純愛→寝取られ
金木 低め打ち→ハイボールヒッター
小椋兄 引きこもり→社会人
小椋 女子中学生→大人の女性
勅使河原 おしゃれさん(センス無)→おしゃれさん(センス有)
江藤 小さな体→まるでボディービルダー
藤巻 ギャル風→清楚風
猿田 クラシック→聖歌
多々良 競馬→競艇
三神 死者→生者
三神 甥への反倫理的感情→甥への倫理的感情
見崎「あー、肩がこるわー」ボヨン
三神「現象によって幸せになれた者」
中尾「ほら、こっちに来いよ!」
川堀「うん///」
三神「現象によって新しい自分を見つけられた者」
久保寺「ああ、守備範囲が広がるうううう!!」
三神「現象がマイナスに働いたけれどいずれ前に進む者」
綾野「はー、ちょっとだけ頑張ってみようかな……」
三神「呪いのようなものだし、同時に幸せの神様みたいなものなのかな」
杉浦「……」
三神「見た感じ、あなたも変わってたみたいね?」
杉浦「……はい!」
情緒不安定→情緒安定
三神「大丈夫、変わることは人間としてごく自然な事だから」
杉浦「そうですね」
杉浦「そう? 触ってみる?」
恒一「そうかい、じゃあ遠慮な……」ピキーン
恒一「ごめん杉浦さん。触るのはまた次の機会にするよ」タタタタタタ
杉浦「?」
赤沢「……」タタタタタ
杉浦「なるほどー!」
三神「ほら、みんな席について! HRをはじめるわよ」
金木「はい! お姉様!!」
柿沼「」パシャパシャ
杉浦「さ、今日も一日頑張るぞっと!!」
見崎「……」
見崎「おわり」ブルン
いい感じに終わったな
乙
風見の生死の行方は…
Entry ⇒ 2012.06.28 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
P「おい、鬼畜メガネ」律子「何ですか、スケコマシ」
軽口「2番の君達だ!気にいっちゃったよ、オレ!」ビシッ
真美「oh...」
真「やーりぃ!」グッ
響「やったぞー、プロデューサー!」
P「よくやった!作戦通りだったな」グッ
律子「……プロデューサー殿」
P「ん?」
律子「ちょっと、話があります」チョイチョイ
P「え、何が?」
律子「ボーカルとビジュアル担当の審査員を帰らせてしまうなんて……」
P「んー……まぁ、確かに?うちのユニットが音程とアピールのタイミングを外したりしたけども」
P「審査員に飽きられて帰らせちゃったってのは、俺達が直接的な原因じゃあないよね」
律子「ぐっ……そ、それは、そうですけど」
P「ボーカルとビジュアル面を相当アピールした律子達には、足を引っ張る形になって悪い事したと思ってるけどさ」
P「俺達にとっては、これは大きなチャンスな訳だよ。ま、今回は俺達の勝ちって事で一つ」
律子「ぐぬぬ……」ギリッ
P「……あぁ、挑戦ならまたいつでも受けて立つぞ?セ・ン・パ・イ」ヘラヘラ
律子「っ~~~~~~!」ムカムカッ
P「ただいま戻りました~」
小鳥「お帰りなさい、プロデューサーさん!」
小鳥「今日のオーディション、大成功だったようですね」
P「あはは……いや、偶々ですよ、偶々」
P「さてと、来月の流行に合わせて、取り寄せておいた衣装を確認して……」ゴソゴソ
P「あ、あれ?……小鳥さん、そこに置いてた紙袋、知りませんか?」
小鳥「あぁ、それならさっき律子さんが……」
律子「ええ。それが何か?」
P「ばっ……あ、あれは、来月用の大事なステージ衣装なんだよ!」
律子「あら、そうだったんですか?幼稚園服が入ってたものですから、てっきり古着かと思って」
P「あれはチャイルドスモックって衣装なの!男のロマンが詰まった衣装なんだよっ!!」
律子「……まぁ、衣装なんかに頼らなくても?そのプロデューサー殿の腕なら大丈夫ですって」
P「り、律子ォ……!」ギリッ
律子「それじゃあ私、仕事が残ってるので、これで」スタスタ
P「っ~~~~~~!」ムカムカッ
P「俺はこれまで培ってきたお前たちの実力を信じている。絶対に負けるな!」
真美「何か兄ちゃん、めっちゃ怒ってるっぽい……?」ヒソヒソ
響「エサ抜いた時のいぬ美と同じ目をしてるぞ……」ヒソヒソ
律子「いい?今日はあのプロデューサーが率いるユニットとフェス対決よ」
律子「あの卑怯者はどんな手を使ってくるか分からないわ、気をつけなさい!分かった!?」
亜美「よく分かんないけど、兄ちゃんと律っちゃん……ケンカ中?」ヒソヒソ
伊織「下らないわね。代理戦争でもしてるつもりなのかしら、まったく……」ヒソヒソ
小鳥「おかえりなさ……」
P「今日は俺達の勝ちだな、律子!」
律子「いいえ違います、私達の方が圧倒的に勝っていました。アンコールも受けましたし」
P「いいや、あれはうちがアンコールを受けたんだ」
律子「いいえ、あれは私達が」
P「………」
律子「………」
小鳥「(……何この空気……)」
律子「構いませんよ、結果は変わらないと思いますけど」
P「真、響、真美!今日やった奴をここでもう一回やるぞ!」
真「え、えぇ?」
真美「な、何それぇ~?」
律子「伊織、亜美、あずささん!このバカにはっきり分からせてやって!」
伊織「はぁ?」
あずさ「あらあら……」
小鳥「ちょ、ちょっと二人とも!落ち着いてください!」
P「事務所に私物、それも食べ物なんかを残しておく方が悪いだろ」
P「それよりもだ。そこに置いてあったXbox360のコード類諸々、一体どこにやったんだ」
律子「ちゃんと片づけましたよ。使わないのに出しておく方が悪いじゃないですか」
P「帰ったら遊ぶつもりだったんだよ!つーか勝手に人の私物に触るんじゃない!」
律子「あ、あなたが人のこと言えた義理ですかっ!?」
小鳥「あの、すいません。私を挟んで口喧嘩しないでもらえませんか」
小鳥「すごいツバ飛んでるんで。私に全部引っかかってるんで」ポタポタ
P「アーホ」
律子「死ね」
P「お前が死ね」
律子「いやプロデューサーが死ね」
P「いやお前もプロデューサーだから」
律子「あ?」
P「あ?」
小鳥「あの、私を挟んで罵詈雑言を飛ばさないでいただけませんか」
小鳥「私が言われてるようですごい不愉快です」
律子「……あんなの、フェアじゃありませんし。私は認めたくないですね」
律子「それにあんなアホな衣装を採用するだなんて、頭どうかしてるんじゃないですか?」
P「」カチン
P「アイドル崩れにプロデュース業の何が分かるってんだ」ボソッ
律子「っ!」
小鳥「!プロデューサーさん、それh」
パン
律子「……今日はこれで帰ります、お疲れ様でしたっ!」ダッ
伊織「ち、ちょっと律子!?」
小鳥「あっちゃー……」
真「あんな綺麗な平手打ち、見たことないや……やるなぁ律子」
亜美「……流石に今のは兄ちゃんが悪い」
響「……そだな」
律子「それじゃ小鳥さん、私出かけてきますね」
小鳥「あ、はい律子さん、行ってらっしゃい」
P「…」
伊織「互いに互いを無視する、夏なのに冷え切った日々が続いてるわね」
雪歩「じ、事務所の雰囲気が最悪です~……」
貴音「……困ったものですね」
千早「そうかしら。元々が競合相手だったのだし、いつこうなってもおかしくなかったと思うけれど」
やよい「例えそうだとしても、私は仲良くしてほしいです……」
美希「Zzzzz」
真美「亜美、準備は出来てる?」
亜美「モチロンだよ真美。ほら、律っちゃんの外出前に携帯、抜き取っておいたから」
伊織「?……あんた達、一体何してんのよ」
真美「この変態!ド変態!!変態大人っ!!」
伊織「!?」
亜美「……んっふっふ~、早速兄ちゃんに電話をかけるよ~」カチカチ
亜美「こ、これは……」
真美「律っちゃんの携帯、兄ちゃんの登録名が『クソ野郎』になってる……」
伊織「……根はかなり深いようね」
亜美「……出ないね」
真美「おかしいなぁ、さっき見た時は事務所で仕事してたんだけど……」
ガチャッ
P『……何だ』
亜美「あ、兄……コホン、プロデューサー殿ですか?」
P『俺の番号なんだから、俺が出るのは当たり前だろ……で、何の用だ?律子』
亜美「オッケィ、まずは第一段階突破……」ヒソヒソ
真美「真美達の十八番はモノマネだかんねー」ヒソヒソ
伊織「あんた達はそういう無駄な才能を磨く努力を、少しでもアイドル活動に向けなさいよ」
P『………』
亜美「プロデューサーが用意した衣装を捨てちゃって、本当にごめんなさい!」
P『……それで?』
亜美「あの……私と仲直り、してくれませんか?」
亜美「遊園地の一日フリーパス、取ってあるんですけど……今度皆がオフの時に、一緒にどうかと思いまして」
伊織「……何で仲直りに遊園地なのよ」ヒソヒソ
真美「え、ダメなの?」ヒソヒソ
伊織「ダメって訳じゃないけど……何か不自然過ぎて、逆に怪しまれるわよ」ヒソヒソ
亜美「今は仕事中なので、ちょっと手が離せませんけど……」
亜美「できればそこで、二人だけで……改めて、謝りたいって思ってるんです」
P『………』
真美「く、来るか……!」ドキドキ
P『ま、まぁ……別に、いいけど?律子がそこまでして、俺に謝りたいんなら……』
亜美「っしゃあ!第二段階クリアー!」ヒソヒソ
真美「兄ちゃんチョロいよ兄ちゃん」ヒソヒソ
伊織「……ヘタレね」
律子「ただ今戻りましたー」
あずさ「律子さん。はい、これ」
律子「あっ、私の携帯!……やっぱり事務所に忘れてきちゃってたんですね。どうもすみません」
あずさ「……あのー、律子さん?」
律子「はい?」
あずさ「プロデューサーさんが、律子さんにどうしても謝りたいそうで……」
律子「……謝りたいなら、本人がここに来ればいいじゃないですか」
律子「?」
あずさ「実はその件で、プロデューサーさんが遊園地に」
律子「ゆ、遊園地?」
あずさ「はい~、それで――」
真美「あずさお姉ちゃんの話なら、確実に聞いてくれるよね~」
亜美「これで第三段階もオッケィ!あとは……」
伊織「あとは?」
亜美「オラ達に、オラ達に力を分けてくれェ!」バッ
伊織「……ここで人頼みってわけ?」
亜美「遊園地に二人を連れてって、仲直りさせたいんだよぉ~」
真美「あんな兄ちゃんと律っちゃん、真美達もう見たくないんだよぉ~……お願いだよぉ~」グスッ
伊織「……バカね。あんた達だけで成功させられるなんて、ハナから思っちゃいないわよ」
真美「いおりん……」
貴音「ですから、わたくし達の手も使って、成功させなければなりませんね」
亜美「お姫ちん……!」
やよい「うっうー!絶対に成功させましょう!」
雪歩「わ、私も力になりたいです!」
千早「はぁ、まったく……しょうがないわね」
真「……遊園地、行ってみたかったんだよね~」
春香「一時は恋愛の神様と言われたこの私に万事任せなさい!」フンス
亜美「み、みんなぁ……」グスッ
真美「こ、心の友よぉ~」グスッ
美希「Zzzzz」
P「参った、参った……こんなに道が混んでるとは思わなかった」
P「(うっ……ホントに入口で待っててやがる。しかも俺より先に)」
律子「………」
P「……お、おはよう」
律子「……おはようございます」
P「(会話が続かん……つーか謝ってこないな)」
律子「(……いつ謝ってくるのかしら)」
やよい『二人は無事に合流して、遊園地内に入ってきました!どうぞー』
真美「んっふっふ~、いおりんのおかげで大規模な作戦ができそうだよ~」
伊織「……それはいいんだけど」
伊織「何であたし達全員、黒スーツにネクタイ締めて、サングラスまでかけなきゃなんないのよ」
亜美「遊園地や時代劇村でのターゲット追跡なら、この格好しかないっしょ?」
真美「お約束って奴だよ、いおりん」
律子「はい」
P「誘ってくれたのは嬉しいんだが、そろそろ本題に……」
律子「?……プロデューサーが、私に謝るために誘ったんじゃないんですか?」
P「は?何で俺がそんな事しなきゃなら……ん?」チラッ
やよい「!」ササッ
P「………」
律子「どうしました?」
P「……ちょっとそこで座って話そう」
P「ちょうどそこの植え込みの陰に隠れてる」ヒソヒソ
律子「な、なんであの子がここに……」ヒソヒソ
P「おかしいと思ったんだよなぁ、律子から謝ってくるだなんて」ヒソヒソ
律子「……それってどういう意味ですか」ヒソヒソ
P「俺達は多分、ハメられてる。あいつらがこういうことを仕組んだってトコだろう」ヒソヒソ
P「今日は都合よく全員オフだしな。伊織辺りも動いてるんじゃないか、多分」ヒソヒソ
P「仲の良いフリをして安心させて、適当にうまく撒いた後に解散するか」ヒソヒソ
律子「……結局、謝らない訳ですね」ヒソヒソ
P「何で俺が謝る必要があるんだ?謝るのは律子の方だろ」ヒソヒソ
律子「はいはい……じゃ、仲の良いフリ、しましょうか」ヒソヒソ
律子「ダーリンごめんねー、私が悪かったわー、和解の握手をしましょー」
P「あーはいはい俺も悪かったー、ごめんなー律子ー」
やよい「!」ガサッ
律子「ごっめんねー!素直じゃなくってー……っ」ギュウウウウ
やよい「!?」ガサガサ
亜美『やよいっち隊員ー、現況報告、どうぞー』ガガッ
やよい「あ、あの!急に謝って、急に仲良くなったみたいです!……どうぞー」
真美『……マジでか、どうぞー』
やよい「マジです、どうぞー」
伊織『怪しいわね……感づかれたかしら?』
亜美『やよいっち隊員、そのまま尾行を続けてくれたまえ、どうぞー』
やよい「うっうー!了解でーす、どうぞー」
律子「明敏なプロデューサー殿は、この場合どうするんです?」スタスタ
P「(まぁ、考えがない訳でもない、が……)」
P「よーし律子ー、あれに乗るかー」
律子「!……きゃーやだー、あれに乗るのー?私こわーい」
P「あぁそうだー、でも爽快だぞー」
亜美『こちら司令部、やよいっち隊員、何か異変が?どうぞー』
やよい「二人はどうやらアトラクションに乗り込むようです」
やよい「律子さんは怖がってるようです。私もアレに一緒に乗り込みます!どうぞー」
亜美「アトラクションねぇ。真美はどう思う?」
真美「うーん……乗り物で怖い、と言ったら絶叫系かなぁ?」
伊織「乗り物じゃなくて二人の様子の方が重要じゃないの?まったく」
亜美「?……でもさ、地図見る限り、やよいっちの周辺にジェットコースターはないっぽいよ?」
真美「じゃ、一番近いこの乗り物じゃない?フリーフォール系の絶叫マシーン」
伊織「ふ、フリーフォール系ですって!?」ガタッ
伊織「やよい、その乗り物には乗っちゃダメよっ!……やよい!?やよい、返事しなさいっ!!」
やよい『い、伊織ちゃん……高いよ……怖いよ……』ゴトンゴトン
伊織「や、やよい、落ち着きなさい!安全だからっ!しっかり目をつぶってっ!!」
やよい『高い、怖い、怖い高い、怖い高い怖い怖いやあああああぁぁぁぁぁぁああぁぁぁあ』
ブツッ
亜美「………」ゴクリ
伊織「や、やよいぃぃぃぃぃ!」ダッ
真美「あぁっ、いおりん!?」
ざわ…… ざわ……
P「……許せ、やよい」
律子「呆れた。高所恐怖症だって、知ってて選んだんですね……最低」
P「じゃあどうすればよかったんだ。こうでもしないと、どこまでも付いてくるだろ」
P「他に案があったんなら、こうする前に是非出してほしかったもんだね」
律子「………」
伊織『……やよいは医務室に連れていったわ』
伊織『あたしはやよいに付き添うから、あとはあんた達でやりなさい』
真美「やよいっち、無茶しやがって……」
『……伊織お嬢様、シートの掃除は……』ザザッ
伊織『っ!あたしに聞かなくてもそれ位やっておきなさいよ、このバカッ!!』
伊織『……しばらくこの乗り物は運休よ!いいわねっ!!』
『……かしこまりました』
亜美「oh.....」
亜美「そうだね、真美……で、二人が向かった先に今一番近いのは」
春香『見つけました!プロデューサーさんですよ、プロデューサーさん!』ザザッ
美希『あふぅ……なんでこんな暑いのに、こんな格好しなきゃいけないの?』
真美「はるるんとミキミキだね!」
亜美「ミキミキは正直当てにしてないけど、はるるんならバッチリお仕事してくれるって信じてるよ!」
美希「っていうか、何でハニーが律子と一緒にいるの?」
春香「ちょっ、美希!ちゃんと隠れてよ!」コソコソ
P「リボンを外せばバレないとでも思ったのか、あいつは?……まったく」
律子「美希に至っては隠れる素振りもありませんね」
P「で、どうするよ?」
律子「……それじゃあ、無難にコーヒーカップにでも乗りましょうか、ダーリン」ギュッ
美希「!」
P「ん?……あ、あぁ、そうだな」
美希「………」ギリッ
P「……こんな歳になっていざ乗ってみると恥ずかしいな、これ」
P「テーブル回せば回転するんだっけ?ガキの頃はよく乗ったし、懐かしいなぁ」クルクル
律子「遊んでないで、ちゃんと私に協力してくださいよ。もっと寄ってください」
P「ん?……こんな感じで、寄ればいいのか?」スススッ
律子「そうです。もっと近くに、カップル風に装って……手を、重ねてください」スススッ
P「………」
美希「は、ハニーが……律子と、一緒に……」
春香「何だかちょっといい雰囲気かも……?」
美希「痛いよ……胸の奥が、ズキズキする……」グルグル
春香「美希?」
美希「どうして?……何で、こんなに痛むの……?」グルングルン
春香「……あの、美希?わ、分かったから、それ以上テーブル回さないで?」
美希「何でミキはハニーの隣にいないの?」グルングルングルン
春香「ちょ、やめっ!回すの、やめて美希っ!聞いてる!?」
美希「……何でミキは、春香なんかと一緒にこんなのに乗ってるのっ!?」グルグルグルグルグル
春香「ひゃぁぁぁぁぁぁあああっ!!?」
美希「うっぷ……」グッタリ
P「美希に嫉妬させて自滅させるとは、やる事が下衆いな」
律子「お言葉ですけど、プロデューサーがアイドルと関係を持つ方が問題でしょう?」
律子「そういうのは風当たり、強いんですから。火遊びは厳禁ですよ」
P「……じゃあ聞くが、律子は男相手に、いつもこういうカマをかけてるのか?」
律子「まさか」
P「………」
律子「………」
亜美「怪しいけど、ここまでは普通にデートしてるっぽい感じではあるよね」
真美「お姫ちん、兄ちゃん達の行く方向に誰かいない?」
貴音『響と真の二人が、丁度近くにいるようですが……』
響『真ー!プロデューサーがこっちに来るんだってさー!』
真『えへへへへへ……』
亜美「!?」
真美「まこちん……?」
響「……なぁ真ー、まだ乗る気なのかそれにー?」
真「うるさいなぁ、フリーパスなんだから何回乗ったっていいだろー?」
響「でも、それメリーゴーラウンド……」
真「メリーゴーラウンドで楽しんで一体何が悪いのさ?」
響「いや、そういう訳じゃないけど……ほ、ほら、プロデューサーと律子がー」
真「ボクは満足するまで絶対ここを動かないからな」ギュッ
真「ここで一生分、楽しんでやるんだから……」
亜美「まこちん……メリーゴーラウンドに魂を引かれたか」
真美「と言うか、一人だけ普通に満喫するつもりだよね……こりゃバターになるまで帰ってこないね」
亜美「となると、ここで頼れるのは、ひびきんしかいないかぁ」
響『えっ……自分だけか?』
真美「全てはひびきんの肩にかかってると言わざるを得ないね」ウンウン
亜美「ひびきんには期待してるよ、超頑張って!」
響『ま、任せろ!自分、完璧だからなー!』
絶 対 に だ
律子「結構厄介なんじゃないんですか?撒くのは」
P「まぁ、そうだな。そんじゃここは一つ、頭を使うとしますか」
律子「頭を……?」
響「今頼れるのは、自分しかいない……」
響「園の外にいるハム蔵達に笑われないように、頑張って追跡するぞー!」サササッ
響「あいたっ……!」
響「うぅぅ、また鏡にぶつかったぞ……」サスサス
響「プロデューサーと律子は、どんどん先に行っちゃうし……」
響「一体何なんさー、このアトラk」
ゴンッ
響「はうっ!?」
P「遊園地っつったら、ミラーハウスだよなぁ」スイスイ
律子「よく道順、分かりますね」
P「前を見るな、下を見ろってね。鏡と床の継ぎ目があったりするんだよ」
律子「……それはそうと、響はわざわざここに入らなくても、出口で待ってればよかったんじゃ……」
P「そこまで考えが至らないのが響なんだよ。俺はそういうトコも含めて好きだけどな」
亜美「あ、あれ?ひびきんは?」
響『グスッ……ど、どっちから入ってきたんだっけ……』
真美「……ひびきん?」
響『!……な、なんでもないぞ!こっちはなんくるない、なんくるないさー!』ブツッ
亜美「あっ、切れちゃった……」
真美「……ひびきんも案外頼りにならなかったね~」ヤレヤレ
亜美「まぁ、ひびきんだししょうがないよね~」ヤレヤレ
亜美「あ、あずさお姉ちゃんからだ」
あずさ『プロデューサーさんと、律子さんの姿を確認しました~』
真美「あずさお姉ちゃんが、ターゲットを捕捉した、だと……!」ガタッ
亜美「い、今二人はどこに向かってるの?」
あずさ『えっと~……何だか、黒い建物の方に向かってるようですね~』
亜美「黒い建物……んっふっふ~、これはチャンス到来ですな」
真美「あずさお姉ちゃんは、そのまま二人を尾行して!」
あずさ『了解で~す』
亜美「さっそくあそこで準備してる二人に、連絡を取らないとね~」
律子「そのようですけど……何か?」
P「どうもおかしい。いくら撒いても、俺達の行く先が向こうには分かっているようだ」
律子「つけられる前から、監視でもされているとか?」
P「それは分からんが……撒かれても大丈夫なようにしてはいるようだな」
律子「ま、それはおいおい考えるとして。こっちですよ、ダーリン」
P「……なぁ、その『ダーリン』は何とかならんのか」
律子「……私だって好きで呼んでる訳じゃないです。フリですから、フリ」
千早「入ってきた辺りで速攻脅かして、二人が恐怖を抱くことで吊り橋効果を狙う、ねぇ」
千早「……本当にそんな上手くいくのかしら?」
亜美『絶対に上手くいくって~』
真美『これでオチないカップルはいないって、はるるんも言ってたしね』
千早「だから不安なのよ……はぁ」
あずさ『こちらあずさです、プロデューサーさん達が中に入りました~』
雪歩「よ、よ~し……気合入れて、脅かすぞぉ~」ドキドキ
千早「……萩原さんは逆に脅かされそうね」
千早「準備はいいわね、萩原さん」
雪歩「ミスミスミスター、ドリドリラー……ミスミスミスター、ドリドリラー……」
千早「な、何、その呪文は……?」
雪歩「じ、自信をつけるおまじない……かな」
カツーン カツーン
千早「(今だっ……!)」ダッ
千早「んあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」ガバッ
雪歩「お、おばけだぞーっ!?」ガバッ
「……ふぅ」パタリ
雪歩「ち、千早ちゃん!……こ、この人、あずささんだよ!」
あずさ「」
千早「え、えぇー……な、何であずささんがプロデューサーより先に……」
カツーン カツーン
雪歩「だ、誰か来たみたい……」
千早「ち、ちょっと、このあずささんはどうするの!?」
雪歩「……と、とりあえず、隠しましょう!」ズルズル
律子「プロデューサーがトイレに行ってる間に、あずささん、勝手に入って行っちゃいましたけど」
P「えっ、そうなの?」
律子「……お化け苦手なのにこんな所にホイホイ入っちゃって、大丈夫だったかしら」
P「その割には、姿を見かけないが……?」
律子「持ち前の迷子スキルで、もう外に出ちゃったのかもしれませんね」
千早「な、何で脅かす側なのに、私達が隠れなきゃならないのよ……」ヒソヒソ
雪歩「だ、だって……あずささんを脅かして気絶させたなんて、千早ちゃんは言える?」ヒソヒソ
千早「……まず怒られるわね。『真面目なお前達まで一体何やってんだ』って」ヒソヒソ
雪歩「グスッ……や、やっぱり、私には脅かすなんて無理だったんだ……」ヒソヒソ
律子「はぁ?何で私がプロデューサー殿の前で怖がらなきゃいけないんですか?」
P「……そんなんだから可愛くないんだよ」
律子「えぇそうですねどうせ私は可愛くないですよ。大きなお世話です」
P「……ストップ」
律子「?」
P「右斜め後方、フードコーナー。テーブル席の着ぐるみ」
律子「着ぐるみ?……あっ」
「………」チュルチュル
「ふぅ……まこと、美味でした」ゲプー
律子「……どうするんです?」
P「どうするもこうするも、やることは一つだ」
P「おーい、貴音ー!」
貴音「!……な、なぜわたくしだと……!?」
P「俺達に追いついてこれるかー?」グイッ
律子「えっ、ち、ちょっと!?」タタッ
貴音「こ、ここで二人を見失う訳には……!」キュッポキュッポキュッポキュッポ
律子「一体どこまで走るつもりなんですか、もう!」
P「んー、園内を半周程すれば、諦めるかな」
律子「へ?」
P「こんなクソ暑い日にメシを食った直後、ブ厚い着ぐるみを着て走ればどうなる?」
律子「……あっ」
貴音「コヒュー……コヒュー……」ダラダラ
貴音「………」ヨタヨタ
バタリ
亜美「お、お姫ちぃぃぃぃんっ!!」
真美「お姫ちんまでダウンしちゃったか~……」
亜美「……どうやら、覚悟を決める時が来たようだね、真美」
真美「そうだね。やっぱり真美達じゃないと、ここはしまんないかな~」
亜美「お姫ちんが亜美達に託してくれたものは、無駄にはしないよ!」
真美「んっふっふ~、律っちゃん達は流石に気づいてないよね~」
亜美「撒いて逃げてるつもりが、実はその場所に追い込まれてた、なんてね~」
真美「兄ちゃん達が向かった先は、この遊園地内最大にして最高のスポット……!」
亜美「亜美達の戦場は、観覧車にあり!いざ、出撃ィ!!」
P「ま、ここなら周りに気を使わなくていいしな。勘違いするなよ?」
律子「ハッ、誰が勘違いするもんですか」
P「…」
律子「…」
ガコォン
P「!?」グラッ
律子「な、何!?」フラッ
『ただ今観覧車にて、電気系統のトラブルが発生いたしました~』
『再稼働するまで約一時間程、お時間をいただきますようお願い申しあげま~す』
律子「わ、私の声……!?」
P「こ、このふざけた調子……まさか、あいつらの仕業か?」
職員「き、君達、こんな事をしてタダで済むと……!」
亜美「いーからいーから、亜美達は水瀬財閥の関係者なんで~」
職員「えっ」
真美「そうそう、責任はす・べ・て水瀬財閥が取りますので~」
中川コンツェルンの関係者だ、みたいな。
P「履歴に残ってるはずだぞ。まぁ、うまく真美達に騙されたみたいだなぁ」
律子「……置き忘れたと思ってたあの時にやられたみたいね。迂闊だった……」
P「で、ここまでして律子と俺との時間を作りたい理由、原因は……」
律子「………」
P「………」
律子「……はぁ。何だか、どうでも良くなっちゃった」
P「あいつらを心配させるほど、ここまで引っ張る事じゃなかったよな……」
律子「あんなにムキになってた自分が、バカみたいです」
律子「えっ?」
P「アイドル崩れだなんて言って、さ。本当にすまなかった」
律子「あ……そ、その事はもう、気にしてませんから」
P「そ、そうか……」
律子「……私も、プロデューサーの衣装を勝手に、捨てた、なんて言ったりして」
律子「ホントはそんな事してないのに、何だか意地悪してみたくて……つい」
P「す、捨ててなかったのか……?」
律子「最初はそっちが謝るなら、返してやろうかなって……今思えば、本当に幼稚でした」
律子「……プロデューサー、ごめんなさい」
P「あっ……お、俺もな、そんなに怒ってないから。うん」
「「………」」
亜美「あ、降りてきたよ!」
P「よう、お前ら」
真美「兄ちゃん、律っちゃん!」
亜美「仲直り……できた?」
律子「えぇ、まぁね」
P「お前らには心配掛けたようで、悪かったな」
真美「ホントに?ホントにもう喧嘩しない?」
P「あぁ、もちろんだ」
律子「約束するわ」
亜美「――こうして、亜美達は律っちゃん達を仲直りさせることに大☆成☆功し」
真美「その栄光を讃え、真美達は兄ちゃん達にパフェを奢ってもらえる事になっ」
P「で?これは一体何の騒ぎなんだ?説明してもらえるかな、二人とも」
真美「あ、あれ……?」
亜美「ま、まっすぐを流したのに、ハッピーエンドにならない……!?」
律子「なる訳ないでしょう?あんた達にはたぁっっっっぷりと聞きたい事があるんだから」
亜美「……たった一つだけ策はある!とっておきのやつだ!」
真美「そ、その、策は……!?」ゴクリ
亜美「フフフフ……逃げるんだよォォォーッ!」ダッ
真美「あぁっ!ま、待ってよ、亜美ィ~!!」ダッ
律子「くぉらぁぁぁ!待ちなさぁぁぁぁいっ!!」ダッ
P「……ま、一件落着、とはいかないよなぁ」
prrrr prrrr ピッ
P「はい、もしもし」
響『グスッ……エグッ……ぷ、ぷろ゙でゅゔざぁ゙……だずげでぇ゙……』
P「えっ」
おわり
ガターン
小鳥「全員オフで仕事ないからって事務作業全部私に押しつけて行きやがってぇぇぇぇぇっ!!」
ガチャーン
小鳥「私のアフターファイブを返せよっ!返しなさいよぉぉぉぉぉっ!!」
バリーン
小鳥「はぁっ、はぁっ……もうキレた、もーキレた!」
小鳥「私をキレさせたら大したもんですよ、そりゃね!でもハイ、もうキレました!もう遅いっ!」
小鳥「こうなったらストですよ、スト!事務員の待遇改善を求めて訴えてやりますっ!!」
高木「残業お疲れ様、音無君。今日は私のおごりで一杯、どうかね?」
小鳥「はい、社長!是非ご一緒させていただきますっ!」
この話で一番かわいかったのは響
異論は認めない
Entry ⇒ 2012.06.28 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
岡部「鈴羽って半分はダルの精子なんだよな……」
ティッシュ「」
岡部「ふむ……そういえば」
ティッシュ「」
岡部「鈴羽って半分はダルの精子なんだよな……」
ティッシュ「」
岡部「……」
岡部「おい、バイト戦士よ、返事しろ」
ティッシュ「」
岡部「……なにをやってるんだ俺は。疲れてるのか」
ティッシュ「……オカリンオジサン」
岡部「!?」
続けたまえ
シーン……
岡部「気のせい、か……」
ティッシュ「オカリンオジサン!」
岡部「!?」
ティッシュ「コオダヨ!」
岡部「なっ!? ば、バカな……ティッシュが……声を発している!?」
ティッシュ「マタアエタネ」
岡部「このゆかりんボイスは……まさか、鈴羽なのか?」
ティッシュ「ソウダヨ」
続けてくれ
ティッシュ「タブン、リーディング・シュタイナーガゲンインダヨ」
岡部「り、リーディング・シュタイナーが!?」
ティッシュ「ウン、リーディング・シュタイナーハダレモガモツノウリョク、ソウダヨネ?」
岡部「あ、ああ。この世界線に辿り付いたときに紅莉栖に発現しているのを確認している」
ティッシュ「ナラ、ヒトノモトニナルセイシにハツゲンシテモオカシクハナイヨ」
岡部「そ、そうなのか?」
岡部「な、なるほど……だがどうやって声を出しているのだ?」
ティッシュ「アタシノカラダ、ヨクミテミテ」
岡部「うん?……こ。これは!?」
ティッシュ「ワカッタ?」
岡部「精子が超振動してティッシュを声帯代わりにして音を出しているのか……」
ティッシュ「ソウダヨ! こうやってあたしのコエダスノ、ケッコウムズカシインダヨネ」ブルブルブル
岡部「とりあえずは、全てリーディング・シュタイナーの影響、とういう訳か」
ティッシュ「ソウイウコト!」
岡部「しかし、形はどうあれ、7年待たずしてお前と再会できるとはな」
ティッシュ「アタシモ、ヨソウガイダッタヨ」
岡部「また会えたな阿万音鈴羽。ようこそ。我がラボへ」
ティッシュ「エヘヘ」
ティッシュ「キニシナイデ! それに君はミライヲ救ったキュウセイシュナンダカラ」
岡部「……そんな大層なことはしていない。俺は、自分のしたいことをしただけだ」
ティッシュ「デモ、ソノオカゲデアタシモスクワレタ、サンクス」
岡部「礼などいらん」
ティッシュ「エヘヘ、デモアタシッテコウシテキミトユックリオシャベリシタコトナカッタネ」
岡部「いろいろあったからな。だが、今はたっぷりと時間がある」
ティッシュ「ウン……」
ティッシュ「チョットダケネ、オジサンズットケンキュウバカリダッタカラ……」
岡部「そうか……」
ティッシュ「でも、アタシトアウトキハイツモヤサシクシテクレタヨ?」
岡部「お前は、大切な仲間だからな。当然だ」
ティッシュ「ありがと……ヤッパリ、ヤサシイネ。オカリンオジサンハ」
岡部「おじさんはよせ、俺はまだこの時代じゃ18だ」
ティッシュ「ソウミエナイケドネ」
岡部「うっさい」
岡部「だから、おじさんはよせと……なんだ?」
ティッシュ「オカリンオジサンハ……アタシノコト、スキ?」
岡部「なに……?」
ティッシュ「ドウナノ?」
岡部「……ああ、好きだ」
ティッシュ「ナカマトシテ、ダヨネ……」
岡部「……そうだ」
ティッシュ「ヤッパリ、マキセクリスノ「ホウガスキ?」
岡部「それは……」
ティッシュ「そっか……」
鈴羽「やっぱり、手ごわいね、牧瀬紅莉栖は」
岡部「!?」
鈴羽「やっほ」
岡部「す、鈴羽!? お、お前、精子じゃなったのか……?」
鈴羽「精子が喋るわけないじゃん」
岡部「で、では、なぜお前がここにいる!?」
鈴羽「えへへ、来ちゃった」
鈴羽「安心して、君が懸念するような出来事は未来では起きてないから」
岡部「だ、だが、タイムマシンは、存在すのか……」
鈴羽「まあね……」
岡部「……まあ、この世界線は未知の世界線、だからな。そういう事もありえるか」
鈴羽「そいうこと。それに、こういう事だってありえるんだよ?」
ぎゅ
岡部「な、なにえお!?」
鈴羽「えへへ、やっぱりオカリンおじさんの抱き心地は最高だね」ギュー
鈴羽「だが断る、ってね」
岡部「な、なにが目的なのだ?」
鈴羽「まあ色々と説明できない事情とかもあるけど、一番の目的はオカリンおじさんの攻略かな」
岡部「なん、だと……」
鈴羽「最初は精子だけで攻略できると思ってたんだけどね。さすがに上手くはいかなかったよ」
岡部「だ、だれが精子なんぞに攻略されるか!?」
鈴羽「だからこうやって、直接攻めにきたんだよ」
鈴羽「んっ、ちゅ……えへへ、この初心な感じ。この時代のオカリンおじさんのキスな刺激的だね。いっつもあたしがやられっぱなしだから新鮮でいいよ」
岡部「お、おま、な、なにを……んむっ!?」
鈴羽「んっ……はむ」
岡部「や、やめ……ンっ」
鈴羽「あむ……んむ」
岡部「……ん」
鈴羽「ぷはあーごちそうさま!」
岡部「……」
岡部「……」
岡部「……おい」
鈴羽「なあに?」
岡部「この時代の俺のキスは、とはどういう意味だ……?」
鈴羽「あっ……いっけね」
岡部「……」
鈴羽「分かる、でしょ?」
岡部「キス、したのか……?」
鈴羽「……うん」
岡部「」
鈴羽「えへへ、凄く……よかった」
岡部「……キス、だけか?」
鈴羽「……聞きたい?」
岡部「……やめとく」
鈴羽「なーんだ」
岡部「……」
鈴羽「違うよ。それに、未来で君とキスやその他諸々をする事になったのはあたしが原因だしね」
岡部「……もう一度言うが俺が好きなのは」
鈴羽「わかってる。だからあたしは今日、オカリンおじさんに宣戦布告しにきたの!」
岡部「せ、宣戦布告?」
鈴羽「7年後、あたしは生まれる。その後の18年間、あたしはありとあらゆる手を使ってオカリンおじさんを攻略しにいくから!」
岡部「はあ!?」
鈴羽「それが、そうでもないんだよ」
岡部「なに?」
鈴羽「あたしが言った精子のリーディンング・シュタイナー、あれ、あながち嘘じゃないんだよ」
岡部「えっ」
鈴羽「流石に精子の状態で記憶は維持できないけど、物心ついた頃には既にあたしはオカリンおじさんが好きだったよ」
岡部「ば、ばかな……そんなことが」
岡部「なっ……」
鈴羽「この中にどれか一つでもオカリンおじさんの性癖にヒットする姿があれば、あたしの勝ちだからね」
岡部「だ、だれがそんな! お、俺はダルではない! 26歳年下に発情する筈が……」
ぎゅ
鈴羽「でも、いまは同い年だから、体は反応してるんだよね」ムギュウ
岡部「だ、だから、やめ……」
鈴羽「もしかしたら、このタイミングが落とす絶好のチャンスかも」
岡部「や、やめろ!」
鈴羽「あはは、でも残念。そろそろもとの時代に帰らないと……」サッ
岡部「は、離れたか……」ホッ
鈴羽「えい! 隙あり!」
ちゅ
岡部「んむっ!?」
鈴羽「へへ、こんなに隙だらけだと、幼稚園児のあたしに落とされちゃうよ?」
岡部「だ、誰が落ちるか! 俺は断じてロリコンなどではない!」
岡部「お、俺はお前の色香なんかに惑わされない」
鈴羽「もう、強がっちゃって~」
岡部「強がってなどいない!」
鈴羽「まったく、素直じゃないんだから……だからこそ攻略しがいがあるんだけどね」
岡部「……改めて、お前がダルの娘だと実感できたよ」
鈴羽「あははっ、照れるな」
岡部「褒めとらん」
岡部「言っておくが俺は結構一途だぞ? そう易々とお前には攻略されん」
鈴羽「それはよく知ってるよ。だからこそ、必ず攻略してみせる」
岡部「ふん……またな鈴羽。会えて、良かった」
鈴羽「おっ、さっそくデレた?」
岡部「茶化すな!……まったく」
鈴羽「あはは、ごめんごめん。あたしも、楽しかった。じゃあね。オカリンおじさん」
バタン
岡部「行ったか……」
岡部「……」
岡部「7年後、か……」
――
ガチャ
紅莉栖「ハロー。あっ、今日は岡部だけか」
岡部「助手か……」
紅莉栖「助手じゃねーし。ってうわ、最悪、これ橋田の……あれじゃない。あのHENTAIめ」
岡部「……」
紅莉栖「どうかした?」
岡部「えっ?」
紅莉栖「なんか、ぼさっとしてたから……何かあった?」
岡部「何か……まあ、あったな」
紅莉栖「ふえ? い、いま名前で……」
岡部「26歳下の女の子に告白されたって言ったらどうする?」
紅莉栖「はあ……?」
岡部「26年か……それまでお前に一途でいられると信じたいがな」
紅莉栖「お、おま!? な、何を急に……!」モジモジ
岡部「……いや、なんでもない。気にするな」
紅莉栖「き、気になるわよ! バカ……」
岡部(……どうなるかは分からない。だってここはシュタインズゲートなのだから)
岡部「まあ、とりあえずは再開を楽しみにしてるぞ、鈴羽」
紅莉栖「誰よ……その女の」
おわり
読んでくれた人、ありがとニャンニャン
女子高生鈴羽か、想像しづらいなバイトばっかやってんだろうか
Entry ⇒ 2012.06.28 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
貴音「あぁっ!あなた様っ!あなた様ああぁぁぁっ!」
P「貴音っ!」
貴音「あなた様…?どうか…されたのですか?」
P「たっ…貴音っ!貴音っ!」ガッシ
貴音「あなた様…!?」
P「貴音っ…!た、貴音!貴音ええぇぇ!!」
貴音「あっ…!い、いけません…あなた様っ…!」
P「たった貴音!先っちょだけだから!先っちょだけだからなぁ貴音!!」
貴音「そんなっ…!先っちょだけだなんてあなた様っ…!いけずですっ!いけずですぅっ!!」
P「たかねえええええぇぇぇぇ!!!」
貴音「あなたさまああああああぁぁぁぁぁっ!!!」
貴音「…」
貴音「……」
貴音「………」
貴音「夢、ですか…」
貴音「…」
貴音「め、面妖な…///」
貴音「なぜ今朝はあのような夢を…」
貴音「おかげで今日の仕事は半ば上の空でした…」
貴音「…」
貴音「いこんなことではいけません…」
貴音「故郷の者にも示しがつきませんね…」
貴音「このような浮ついた心では…」
貴音「お疲れ様です…おや?」
シーン
貴音「どなたも戻っておられないのでしょうか…」
貴音「しかし明かりが…?」
貴音「これは…」
貴音「あの方の上着…ですか」
貴音「……」
貴音「………」スッ
貴音「…はっ」
貴音「い、いけませんこのような……」
貴音「こ、故郷の者達にも、示しが…っ」ギュ
貴音「あ、あああっ…」
貴音「す、少しぐらいであれば…」
貴音「…」スンスン
貴音「あなた様…///」クンカクンカ
貴音「はぁ…///」スーハースーハー
ガチャバタン
P「お、なんだ貴音戻ってたのか」
貴音「な、何奴ううぅぅぅ!!」バッサァ
P「!?」
P「ど、どうした貴音!」
貴音「い、いえその…」
貴音「む…虫が…」
P「虫?」
貴音「は、はい、虫なのです」
P「そうかぁ最近暑くなってきたからな…」
貴音「はい、そうです。虫がいたのです」
貴音「?」
P「真も虫が苦手だよなぁ」
貴音「真も…確か、そうでしたね」
P「この間の話なんだけどな、写真撮影でスタジオに入ったんだけど…」
貴音「はい」
P「そのスタジオが結構古くてな、撮影中にゴキブリが出てな…」
貴音「まぁ…」
貴音「…」
P「か、カメラマンの人もwww笑っちゃってwwwww」
貴音「……」
P「真なんてもうwww真っ赤になっちゃってwwwww」
貴音「………」
P「いやー…あの時の真は可愛かったなwwwww」
貴音「…!」
P「貴音?」
貴音「あなた様は…」
P「?」
貴音「やはり真のような…元気な…」
P「真?」
貴音「い、いえ…それでは、私はこれで…」
P「あれ?帰っちゃうのか?一緒に飯でもどうかと思ったんだけど」
貴音「お供いたします…!」スッ
P「お、おう」
貴音「…」
貴音「はぁ…」
貴音「いけませんね…あのような言葉に心乱されるとは…」
貴音「…心」
貴音「いけません…そもそもそのような想いなど…私には…」
貴音「おはようございます…」
シーン
貴音「おや…誰も居ないのでしょうか…」
貴音「しかし鍵は…無用心な…」
貴音「…?」
貴音「これは…」
貴音「あの方のこーひーかっぷ…」
貴音「………」スッ
貴音「は」
貴音「い、いけません…私は何を…」
貴音「破廉恥な…」
貴音「…」
貴音「……」
貴音「………」ちゅ
貴音「!?」
P「お?なんだ貴音、来てたのか。おはよう!」
貴音「面妖なああああぁぁぁぁっ!!」ガシャーン
P「!?」
P「た、貴音!大丈夫か?」
貴音「も、申し訳ありません…」
P「いいから、怪我は!?」
貴音「い、いえ…私は大丈夫です…」
P「そっか、よかった…」
貴音「申し訳ありません…あなた様のこーひーかっぷを…」
P「いや、貴音に怪我がなければそれでいいんだ」
貴音「あなた様…」キュン
P「いやいや俺がやっておくよ」
貴音「しかし、それでは…」
P「いいっていいって、アイドルに怪我させちゃったら大変だからな」
貴音「アイドル…ですか…」
P「あぁ」
貴音「…」
P「…?貴音?」グサ
貴音「あっ」
P「ぐああああああああ!!」ブシャー
貴音「あっあなた様ああぁぁぁっ!!」
貴音「あなた様っ…」
P「いやちょっと切っただけだから、そんな顔しなくても」
貴音「あなた様、傷を…」キュ
P「貴音?」
貴音「ん…」ちゅ
P「」
P「たったかったかか」
貴音「………」チュパ
P「な、何もそこまでしてくれなくても…」
貴音「…っ…はぁ…」
P「…」ゴクリ
貴音「こーひーかっぷの、お詫びです…」
P「た、貴音…」
貴音「あなた様…」
P「貴音…」
貴音「あっ…あなた様…」
ガチャバタン
響「はいさーい!!」
貴音「し、痴れ者おおおおぉぉ!!」ズザザザザ
P「うおおおおおおおぉぉぉ!!」ガッシャアァァァ
響「!?」
貴音「響っ…!……ひびきっ!!」
響「!?」
貴音「はぁ…また、あのような事を…」
貴音「いけません…私は…」
貴音「はぁ…」
貴音「今日こそは、しっかりと気を持ちませんと…」
ガチャ
貴音「お疲れ様です…」
P「Zzzz…」
貴音(あああぁぁぁああっぁぁあぁぁ…)
P「Zzzz…」
貴音「はっ……」
貴音「あなた様、この様な場所で眠られてはお体に障ります…」ユサユサ
P「んん…」
貴音「あなた様…」
P「…ん…たかね…」グイ
貴音「あっ…!?」
貴音「あんっ…あなた様…っ」
P「んんん…」ガッシ
貴音「あぁっ…いけませんあなた様っ…このような…困ります…」
P「んー…」ナデ
貴音「ふぅっ…」
小鳥「…」
貴音「…」
P「Zzzz…」
小鳥「…」パシャ パシャッ
貴音「」
貴音「小鳥嬢…!!」
小鳥「貴音ちゃん、かわいかったわあぁ!」
P「す、すまん貴音…!」
貴音「小鳥嬢!!」ガッシ
小鳥「ひい!すいませんごめんなさい!」
貴音「や、焼き増しを…!」
小鳥「」
貴音「はぁ…」
貴音「はぁっ……」
貴音「ふぅ………」
貴音「まさか…この様な…」
貴音「…はぁ」
貴音「…今日の仕事は、何でしたでしょうか?」
貴音「写真撮影…ですか」
貴音「私一人、ですね…」
カメラマン「いいわぁ~ん!貴音ちゃん!」パシャ
貴音「ふふ、ありがとうございます」
カメラマン「次はもっと、こう…こう…!」パシャ
貴音「こう…でしょうか?」
カメラマン「イイ!いいわぁ~!首ちょっとこう…そう!イイわぁ~!!」パシャパシャ
貴音「…」
カメラマン「表情ちょっと…そう!そう!イイわぁ~貴音ちゃんすごくイイわぁ~!!」パシャシャシャシャ
貴音「ふふ…」
カメラマン「じゃ次はちょっと色っぽくしてみましょうかぁ!!」
貴音「も、もうしわけございません…」
カメラマン「いいのよいいのよ~ん!でも困ったわねぇ~…」パシャ
P「お疲れ様でーす」
貴音「!?」
カメラマン「あらPちゃん、今日は来れないんじゃなかったのん?」
P「えぇ、ちょっと時間空いたんで、貴音の様子を見に…」
貴音「あなた様…」
P「調子はどんな感じです?」
カメラマン「それがねぇ…ン?」
貴音「………」
貴音「はい…」
カメラマン「すごくいいわぁ!大人よ!大人よおおぉぉン!!」パシャシャシャシャ
貴音「ふぅ…」
P「…」
カメラマン「ちょっとPちゃん前かがみになってないで!ちゃんと貴音ちゃんの視界に入るのよ!」パシャシャシャシャ
P「ちょwww」
貴音「あ、あなた様…///」
カメラマン「うおォン!!いいわああぁぁぁ!!貴音ちゃんいいわああぁぁぁん!!」パシャシャシャシャ
貴音「昨日は良い仕事をさせて頂きました…」
貴音「このような想いが、仕事に役立つことがあるのですね…」
貴音「しかし…」
貴音「この想いは…」
ガチャ
貴音「お疲れ様です…」
P「お、貴音か。お疲れ」
貴音「あなた様…」
貴音「あなた様…お疲れですか?」
P「ん?あぁ、事務仕事は肩に来るなぁ…最近肩こりがな」
貴音「……」
貴音「よろしければ、肩でもお揉み致しましょうか?」
P「いや、アイドルに肩を揉ませるのも悪いよ」
貴音「良いのです…あなた様には、この所ご迷惑をお掛けしておりますし…」
P「う、うーん…じゃあお願いするかな…」
貴音「はい…!」
P「あぁ、いい感じだ。結構うまいんじゃないか?」
貴音「ふふ、そうでしょうか…」
P「アーソコソコ…」
貴音「…」
P「…」
貴音「…はぁ」スンスン
P「…?」
貴音「…ふぅ」クンカクンカ
P「た、貴音?」
貴音「あなた様…」キュ
P「!?」
貴音「あっ…」
P「ありがとうな貴音!」
貴音「いけずです…」
P「それじゃあお返しに貴音の肩も揉んであげようかな!」
貴音「!」
P「なーんて…」
貴音「お願い致します」
P「えっ」
貴音「ご迷惑じゃなければ、ですが…」
P「お、おう」
貴音「はい…」ギッ
P「…」
貴音「…」
P「た、貴音…?」
貴音「はい、あなた様…」
P「なんで俺の膝の上に座るの…?」
貴音「あ…申し訳ございません…」
貴音「重かった…でしょうか?」
P「い、いや重くはないんだけどな?」
貴音「それでは…」
P「たっ…対面…!?」
貴音「どうでしょう、あなた様………」
P「こっ…これはちょっと…」
貴音「えぇ…確かに少し…不安定ですね…」
貴音「あなた様…私の腰を支えていただけますでしょうか?」
P「えっ」
貴音「あなた様…っ」
P「」ムニ
貴音「あっ…」
貴音「あ、あなた様…そこは…」
貴音「お尻です…///」
P「す、すいません」
貴音「まぁ…私としたことが…」
P「お、おう」
貴音「では…失礼ながら、私があなた様の首に手を回しますので…」スッ
P「」
貴音「あなた様…それではお願いします……」
P「お、おうおう…」ムニ
貴音「…んっ」
P「ど、どうだろう貴音…」ムニュニュ
貴音「あなた様っぁ…そこは…」
貴音「胸です…///」
P(間違えた)
貴音「いえ…良いのです…」
P「たっ…貴音…」
貴音「あなた様…」
P「貴音…」
貴音「あなた様ぁ……」
P「貴音…っ!」ガタ
貴音「あ、あぁっ…!あなt
ガチャバタン
響「はいさーい!自分、我那覇響!!」
P「う、うおおおぉぉぉぉ!!!!」ゴロゴロゴロゴロガッシャアアアァァァン
貴音「あっあなたさまあああぁぁぁぁぁっ!!!」
響「!?」
貴音「ひびきっ…!あ、あぁ…ひびきっ……!!」
響「!?」
楽屋
貴音「はぁ…」
貴音「まさか…あのような事をしてしまうとは…」
貴音「はしたない女だと、思われたでしょうか…」
貴音「ふぅ…」
貴音「あなた様…私は…」
貴音「苦しい、です………」
コンコン
貴音「…!」
貴音「…ど、どうぞ!」
貴音「あ…」
涼「?」
貴音「秋月涼…本日は、お疲れ様でした」
涼「はい…貴音さん、誰か待ってるんですか?」
貴音「い、いえ…」
涼「それじゃ、時間があったらですけど、どこかで夕飯でもどうでしょう?」
貴音「お供いたします…!」スッ
涼「あはは…」
店主「はい銀月のお嬢、お待ちどう」ゴト
貴音「ありがとうございます…」
店主「はいおじょ…兄さん、お待ちどう」ゴト
涼「は、はは…じゃ、いただきます」
貴音「いただきます…!」
涼「ん…」ハフハフ
貴音「…」ジュルルルズバッズゾゾゾゾ
涼「」
涼「えぇ、お陰様で」
貴音「それは何よりです…」スババババ
涼「沢山の人に迷惑を掛けてしまいましたからね…その分、頑張ります」
貴音「…桜井夢子とも、順調なのですか?」ズルル
涼「ぶばッ!」
貴音「おや…どうしました?」
涼「げほっ!げほげほっ…!どっ…どうして、それを…」
貴音「さて…どうしてでしょうね?」
涼「う、う…はは、まぁ…順調、なんでしょうかね?」
貴音「それは僥倖…」
涼「あ、あはははは…」
貴音「?」
涼「さっき、楽屋で。誰かを待っているように見えましたから…」
貴音「そう…でしょうか………?」
涼「えぇ、だって貴音さん。訪ねて来たのが僕だとわかって、すごい残念そうな顔してましたよ?」
貴音「も、申し訳ありません…他意はないのです…」
涼「あはは…いえ、大丈夫です…」
貴音「ただ…」
貴音「ただ、私は………」
涼「…?」
貴音「いえ………店主、替え玉を」
店主「はいよ」
涼(まだ食べるんだ…)
貴音「…?」ズゾゾゾゾ
涼「でも、…ちゃんと、言いたいですよね…」
貴音「そう…そうですね…」
涼「言わなくても、伝わることっていうのはありますけど…。それでも」
貴音「涼…あなたはしかと、誰よりも強く言葉として伝えたではありませんか」
涼「…そうでしょうか?」
貴音「えぇ、あなたの言葉は、伝わっていますよ」
涼「ありがとうございます…」
涼「貴音さんも、伝わるといいですね?」
貴音「………そう、ですね…」
涼「はい」
貴音「………店主、替え玉を」
店主「はいよ」
涼(まだ食べるんだ…)
『秋月涼!四条貴音と深夜のラーメンデートか!?』
貴音「!?」
貴音「あ、あなたさまあぁぁぁぁっ!!」
P「お、おう、貴音か」
小鳥「おはよう貴音ちゃん」
貴音「あなた様っ…!これは、これは違うのです!」
P「お、おう」
小鳥「貴音ちゃん、さっき876の石川社長さんから電話があったのよ」
貴音「そ、そうですか…」
P「…本人も否定してる。迷惑掛けて申し訳ない、とさ」
貴音「そ、そうでしたか…申し訳ありません、取り乱しました…」
貴音「申し訳ありません…私は、そのようなつもりは…」
P「お、おう…」ホッ
貴音「わ、私は…わたくしは…あなた様っ……」
P「……っ」
P「あ、アイドル…だもんな?」
貴音「…!!」
P「うん」
貴音「そうですね…私は…」
小鳥「…」
響「…」
響「プロデューサー」
P「お?響、来てたのか」
響「あんまりだぞ」
貴音「響…」
響「ひどすぎるぞ!」
P「…」
響「うぅ、でも…」
貴音「良いのです…ありがとう、響…」
響「うぅぅ…」ギュ
P「…」
貴音「もう、こんな時間ですね…」
響「…」
貴音「それでは…私は仕事に参りますので…」
P「…」
小鳥「プロデューサーさああぁぁぁん!!」
響「プロデューサーああぁぁぁ!!」
P「!?」
小鳥「もおおおおおおおおお!!」
響「プロデューサーにはがっかりだぞ!!」
P「い、いやっ…俺は…」
小鳥「プロデューサーさんにはがっかりです!!」
響「見損なったぞ!ハム蔵のうんこ以下だぞ!!」
P「うんこ!?」
P「…」
P「………」
P「貴音、遅いな…いつもはこのぐらいに…」
ガチャバタン
P「!?」
社長「…」
P「あ…社長…!お、お疲れ様です」
社長「うむ…」
社長「四条君は?」
P「え、えーっと…まだ、連絡はない、ですね…」
社長「ふぅむ…困ったものだねぇキミぃ」
P「も、申し訳ありません…本人には、強く言っておきますので…」
社長「…キミに言ってるんだがね?」
P「…え?」
P「…」
社長「アイドルは確かに『アイドル』としてあるべきだ」
社長「だがね、そのアイドル自身がだね」
社長「アイドルであることが、彼女の幸せを奪ってしまうのであれば」
社長「それはちょっと、違うとは思わないかね?」
P「…」
社長「不幸なアイドルなんて、誰が見たいと思う?」
P「…」
社長「…ふぅむ、あぁそうそう、雨が降ってきた様だよ」
P「…」
社長「ふぅ…」
小鳥「しゃっちょおおおおおぉぉぉ!!」
響「しゃちゅおうううううおうおう!!」
社長「おや?いたのかねキミたち」
小鳥「社長!いつになくかっこいいですううぅぅ!!」
響「社長見直したぞ!!ただ座ってるだけの人じゃ、なかったんだな!!」
社長「はっはっは褒めても何も出んよキミたちぃはっはっはっは!!」
貴音「…」
貴音「雨、ですか…」
貴音「月が、見えません…」
貴音「あなた様………」
貴音「………」
貴音「私は………」
貴音「…っ……うっ…」
貴音「どうすれば、よかったのでしょうか?」
貴音「もう、私は……っ…」
貴音「………」
P「貴音…」
貴音「あなた様…傘も持たずに、この様な場所に…」
P「貴音、濡れるぞ」
貴音「あなた様こそ…」
貴音「それに、もう濡れております…」
P「貴音…」
貴音「あなた様…」
貴音「月が見えません…あなた様…」
P「貴音…?」
貴音「…」
貴音「…月恋し私雨に濡れにけり」
貴音「……っ…いけません、ね…このようなもの、句などと…っ」
貴音「…っ…っ…うっ…」
P「貴音っ…!」ギュ
貴音「…っ!」
貴音「あなた様っ…」
貴音「辛いのです…苦しいのです…あなた様…っ」
貴音「私を…救ってくださいますか…?あなた様…」
P「貴音…」
P「なんだっけ…つきこいし…?」
P「………」
P「…露を払うは」
貴音「つゆを、はらう、は………」
P「……っ」
貴音「んっ………」キュ
真美「ぴーよちゃーんがぁー」
亜美「…んお?」
真美「ん?どったの亜美?」
亜美「あれお姫ちんじゃね?」
真美「え?ほんとだ兄ちゃんもいるし」
亜美「…傘もささないで何やってんの?なーんかアヤシイかも?」
真美「ほんとだよ…む、これはもしかしてアイビキ?」
亜美「アイビキ?何?ハンバーグでもこねてんの?」
真美「ハンバーグじゃなくて………うえぇ!?」
亜美「うお!?兄ちゃんいった!?」
真美「いった!!!」
真美「おう!!」ピロリンピロリン
亜美「やべえよwwwwスキャンダルだよ真美wwwww」
真美「こんな公園でwwww何してんのさwwwwww」
亜美「うわああぁぁwwww!!長いwwwww深いwwwwwww」
真美「あれ絶対入ってるよね」
亜美「!?…やばい!気づかれた!!」
真美「うわっ!こっち来た!ずらかるぞ!!」
亜美「おうwwwwwwwwww」
亜美「みなさ~~~ん!」ダダダダダ
真美「き~てください!実は~~~~…」ダダダダダ
P「ちょ…!?やめれ!やめて!!」
貴音「…ふぅ」
貴音「はぁ………」
貴音「……?」
貴音「まぁ、月が…」
貴音「雨が上がりました、あなた様………」
貴音「………」
貴音「露を払うは……」
貴音「ふふ……」
落月 ~きみのくちづけ~
おわり
Entry ⇒ 2012.06.28 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (2) | Trackbacks (0)
幼馴染「キミが気にする事じゃないよ」男「気にするよ!」
男「俺たち、幼馴染だろ?」
幼「幼少期から仲良く過ごしてきたからね」
幼「まぁ、そう言っても差し支えないだろうね」
幼「だからってキミが気にするような事じゃあないんだよ」
男「だけど!」
幼「半年間、彼がしていた事に気付かなかったのも私」
幼「つまり生徒会長である、私に全責任がある」
男「だからってあのアホどもがしたことの責任を…」
男「何で全部、幼が取る事になるんだよ!」
幼「全部ではないよ、男」
幼「私は私の本分を果たすだけだよ」
幼「学校というコミュニティ内でのリーダーとして選ばれた私には」
幼「責任という物があるんだよ、男」
男「…」
幼「そんな目をしないでくれ、男」
幼「私まで悲しくなってしまうじゃないか」
男「…」
幼「…案外遅くなってしまったな」
幼「最近は日が落ちるのも早い」
幼「早く職員室に鍵を戻して、帰ろう」
幼「…?三階のあの教室…カーテンの隙間から光が漏れているな」
幼「完全下校時刻は過ぎている…消灯し忘れか?」
幼「いや、そもそも、あの角の教室は使われていないはずだな」
幼「…見てくるか」
・
・
・
幼「…中から話し声が聞こえるな」
不良A「ぎゃー!やられたー!」
不良B「オーラスでマクられるとはな…」
副会長「ハハハ、これで俺がトップか?」
不良C「お前たまにすげーな」
副会長「頭の出来が違うよ、ハハハ」
副会長「フフ。ある程度は運だけど、頭の良さは関係あるさ」
副会長「さぁ、負けた分払えよ?」
不良A「わかってるよ、おらよ」
不良B「おう、今日はそろそろ帰るか?」
副会長「もう半荘やろうぜ?」
副会長「メンソールで良ければ一本やるよ」
不良C「お、ありがとよ」
不良A「じゃ、あと半荘いくとすっか!」
幼「…君たち。下校時間は過ぎているが?」
不良達「あぁん?」
幼「副会長…くわえ煙草で賭けマージャンか」
幼「窓も開けず換気もせず」
幼「ゴミ溜めの匂いだな、これは」
副会長「か、会長」
不良B「何だよ、結構可愛いじゃん」
不良C「あれ?ここ、絶対バレないんじゃなかったか?」
幼「こんな時間に、使われていない教室の電気が付いていたんだ」
幼「不審に思うのは当然だろう?」
幼「図書館の司書先生に頼まれてね」
幼「さっきまで図書室で手伝いをしていたんだ」
副会長「…」
幼「申し開きがあるなら聞くが?」
副会長「…黙ってろって言っても、聞かないよな。アンタなら」
副会長「あぁ、そうだよ!」
副会長「俺は大学へ行く時に有利になると思って、生徒会に入ったんだ!」
副会長「幸い、仕事は、有能なアンタと、アンタの子分が片付けてくれるからな!」
幼「男は私の子分じゃない」
副会長「知るか!だいたい俺は生徒会長になるはずだったのに」
副会長「アンタが…アンタなんかが選ばれたから…」
幼「…」
副会長「エリートなんだ!」
副会長「その俺より上の立場のお前が憎かった!」
不良A「なぁ、その話し長いのか?」
副会長「黙れよ!クソが!」
不良A「ぁあ?誰がクソだと?」
幼「…いい加減にしないか、見苦しい」
幼「そこの3人も含めて、生活指導に報告させてもらう」
副会長「…頭が良いと思っていたけど、買いかぶりだったみたいだな」
幼「…何だい、副会長。言いたい事があるなら言うと良い」
副会長「そのまま帰す訳ないだろって言いたいんだよ、バカか?」
不良達「おう、やっちまおうぜ!」
幼「古今東西、悪の栄えた試しは無し、だよ」
幼「…どうやら殴られないと、解らないようだね」
・
・
・
幼「さて」
幼「すぐに職員室へ行き、先生を呼んでこよう」
幼「大した怪我もないはずだが、救急車でも呼ぼうか?」
副会長「…覚えていろよ…親父に言いつけてやるからなっ」
幼「お好きにどうぞ」
副会長「学校に居られなくしてやる!」
幼「それだけ大声が出せるなら、救急車は必要ないようだね」
・
・
・
幼「だからこそ、退学ではなく、私は自宅謹慎3日で済んだんだよ」
幼「副会長は自主退学、不良達は退学になってしまったがね」
男「でも、幼は生徒会長を…」
幼「まぁ、それは仕方のない事だよ」
幼「暴力事件を起こした人間が、生徒の見本となれる訳がない」
幼「それが不思議と悔しさは無いよ」
幼「…いや、嘘だな」
男「やっぱり悔しいんだな?」
幼「違う。私がついた嘘とは、悔しいと思っていないと言う事ではないよ」
男「ん?」
幼「不思議でも何でもないんだよ」
男「相変わらずの遠回しな物言いだな、幼」
幼「歯痒いかい?」
男「付き合い長いんだ。別になんともないよ」
幼「フフ。そうかい」
幼「もちろんさ」
幼「あぁ、これは良い機会かもしれないね」
幼「私の思いの丈を伝えてしまおうか」
男「思いの丈?」
幼「生徒会長として、全校生徒の為を思い、行動していた訳ではないんだよ」
幼「ただ一つの事だけを想い、行動していたんだ」
男「何の事だ?」
幼「ふふ。ちょっと昔ね」
幼「ある事をしたら、ある人に褒められた」
幼「私はまたそれが欲しかっただけなんだ」
男「ん?」
幼「体に羽根が生えたら、きっとこんな感覚なんだろうとさえ思えた」
幼「どんなに大変な事も、その人の一言で」
幼「全部、軽々と乗り越えられた」
幼「単純だろう?」
幼「だから別に良いんだ」
幼「庶務の後輩男君は、しっかり者だから」
幼「立派に次の生徒会長を務めてくれるよ」
保育園の先生「はーい、それじゃあみんなー」
保育園の先生「仲の良い人と4人で輪になってくださーい」
園児「はーい」
幼「男くん、いっしょにわになろ?」
男「いいよっ」
幼「友くんと、幼友ちゃんもいっしょにやろう?」
友「わーい」
幼友「はーい」
幼「えー?なにがー?」
男「みんなでなんかするとき、いつでもいちばんにやるよね!」
男「えらい!」
幼「えへへ。そうかな?」
ナデナデ
幼「男くん、はずかしいよー」
男「えらい人はあたまナデナデしてもらえるんだよ!」
幼「えへへ。ありがとう、男くん」
・
・
・
幼「うん。頑張るよ」
男「もう4年連続で委員長だね!凄いよ幼ちゃん」
幼「えへへ。そうかな」
男「うん。偉い!」
ナデナデ
男「偉い事した人は頭を撫でて貰えるんだよ!」
ナデナデ
幼「あ、ありがとう。男くん」
・
・
・
幼「ありがとう、男君」
男「小学生の頃から頑張ってきたもんな」
幼「フフ。そうだね」
男「委員長やら、児童会長やらをやりつつ」
男「空手、頑張ってたもんな」
幼「精神の鍛錬にもなるからね」
幼「それに、男君が色々手伝ってくれたから、ここまで頑張れたんだよ」
幼「男君、いつもありがとう」
男「いやいや。頑張ったのは幼だろ?」
男「俺はほんの少し手伝っただけだよ」
男「偉いのは幼の方!偉いぞっ幼」
ナデナデ
幼「…ありがとう、男君」
・
・
・
男「あぁ。今まで通り、自主的に幼の手伝いをするって感じで頼む」
男「全校生徒の前で壇上に上がるなんて、ぞっとする」
男「俺、ヘタレだからさ」
幼「そうかい…では立候補してきた彼を副会長に指名しよう」
男「いつも隣りで見てたからわかる」
男「幼ならやれるよ」
幼「そうかな?」
男「間違いないよ」
ナデナデ
幼「…頑張るよ」
・
・
・
幼「フフフ。幼いながらに感じる事があったんだよ」
幼「それからかな。私は君に褒めて欲しくて」
幼「ただそれだけが欲しくて、頑張っていたんだよ」
幼「だから、生徒会長に固執していないんだよ」
男「幼…」
幼「偽善の塊みたいな存在だよ」
幼「幻滅されても仕方のない事だけど」
幼「この気持ちは偽れないよ、男」
幼「私は幼い頃から、ずっと君の事が好きだったんだ」
幼「ただ君だけを見ていたんだよ」
幼「でもこれは私の一方的な想いだから…」
男「気にするよ!」
幼「!」
男「幼っ!俺も思いの丈を伝えるぞ!」
幼「…なんだい?」
男「俺も、幼の事が好きだ!」
幼「ほ、本当に?」
男「俺が嫌いな奴の側にずっと居るわけがない。わかってるだろ?」
幼「…そうだね」
男「俺はそれを隣りでずっと見てきた」
男「一生懸命に頑張る幼の事が大好きだ」
男「できればこれからもずっと、幼の側に居させてくれ」
幼「…フフフ。それは愛の告白と受け取っていいのかな?」
男「あぁ。そのつもりで言った」
幼「私の勘違いではないんだね?」
幼「あぁ、夢みたいで、信じられないよ」
男「なら改めてもう一回言うぞ」
男「幼さん、俺とお付き合いして下さい」
幼「…こんな、偽善者な私で良ければ、貴方の彼女にしてください」
幼「ずっと…私の側に居て下さい
・
幼「良かったよ」
男「何がだ?」
幼「実はね…大学には生徒会なんて無いだろうから」
幼「もう褒めてもらえないな…などと思っていたんだ」
幼「滑稽だろう?」
ギュッ
幼「なっ…」
男「俺に褒められる事で幸せになるなら、いつでも褒めてやるよ」
男「幼の良い所なんて、山ほど知ってるぞ?」
男「毎日褒めてやるからな?覚悟しろよ」
幼「嬉しいよ、男」
幼「…ずっと一緒に居て、ね、男」
男「…おう」
おわり
毎朝ありがたや
次も期待
URL:幼馴染「キミが気にする事じゃないよ」男「気にするよ!」
Entry ⇒ 2012.06.28 | Category ⇒ 幼馴染「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
P「俺が付き合ってくれって言ったらどうする?」律子「もちろん…」
律子「って……えっ?」
P「んっ?」
律子「い、今なんて?」
P「だから俺が付き合ってくれって言ったらどうする?」
律子「い、いきなり何聞いてんですか!?」
P「いや、興味本位で聞いただけ」
律子「そんなくだらない事聞いてる暇があるのなら手元の書類を片づけてください」
P「えー。教えてくれよー」
律子「嫌です」 キッパリ
P「俺は律子のこと好きだぞ」
律子「はいはい、分かりましたから」
P「何でそんなに冷たいんだ?」
律子「冷たいって……。今は仕事中です」
律子「それに、何でそんなに聞きたがるんですか?」
P「いや、だってさー。律子ってよく考えると仕事ばっかりじゃん?」
P「律子も恋愛とか興味あるのかなー、って思って」
律子「そりゃ……私にだって興味ありますよ」
P「えっ!?律子も恋愛に興味あるのか!?」
律子「そこまで驚かれる意味が分からないのだけど……」
P「すまんすまん、でもビックリした。律子も彼氏とか欲しいんだな」
律子「私だって興味ぐらいありますよ」
P「じゃあ律子の好きなタイプとかは?」
律子「好きなタイプですか……。んーなんだろ……」
律子「仕事が出来て周りの気配りもしっかりして何だかんだ私の心配してくれて……」
律子「いつも偉そうなんだけれども笑って話しが出来て、私たちの事を一番に思ってくれてる……」
律子「そんな、人ですかね……//」
P「……ま、まさか……」
律子「………//」
P「社長か!!」
律子「プロデューサーです!!」
P「え?」
律子「あ」
P「い、今俺って言ったよな!?」
P「春がキタァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
律子「ち、違うんです!今のは、その……。」
律子「だ、だいたいタイプの話!!プロデューサーが好きとは言ってません!!」
P「ひゃっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
律子「話しを聞けぇ!!」
P「ふぅ……すまん、嬉しさのあまりちょっと叫んでしまったな」 タンコブ
律子「全く……。他のアイドルいたら大変なことになってますよ?」
P「えっ?なんで?」
律子「……もういいです」
P「???」
律子「そ・れ・よ・り・も!さっきのはタイプの話ですからね!!」
律子「プロデューサーのような男性が好きとは言いましたがプロデューサーが好きとはまだ言ってません!!」
P「まだ?」
律子「あっ……うぅ……//」
P「自爆して照れるりっちゃんカワユス。抱いていい?」
律子「ダメに決まってるでしょこのバカぁ!!」 パチコーン
P「そんなに照れなくてもいいじゃないか」
律子「照れてません!!」
P「ははは、可愛い奴め」 ナデナデ
律子「本気のコークスクリューかましますよ?」
P「ごめんなさい」
律子「はぁ……。とりあえずお茶でも飲んで一息いれようかしら……」 ヨイショ
P「あっ、俺のもお茶入れてくれ」
律子「はいはい、了解です」
律子「はぁ……。なんであんなにバカなのかしら……。おまけに抱いていい?って……」
律子「そりゃプロデューサーにならいいと思うけど……」
律子「はっ!ダメよ私!そんな考えはしてはダメ」
律子「……でも、プロデューサーは私のことどう思っているのかしら……?」
小鳥「話は聞かせてもらいましたよ!!」 シュタッ
律子「こ、小鳥さん!?」
小鳥「ふふ…律子さんも今じゃすっかり恋する乙女ですね……」
律子「……ちなみに聞きますがどこから聞いていました?」
小鳥「えっ?初めからに決まってるじゃないですか♪」
律子「……ものすごく帰りたい」
小鳥「大丈夫ですよ、律子さん!この765のキューピットと呼ばれる私に任せておけばプロデューサーさんなんてイチコロです!」
律子「その呼び名初めて聞きましたよ……」
小鳥「呼び名はおいといて……。まずは律子さんに質問です。いいですか?」
律子「もうなんでもいいです……」
小鳥「じゃあ遠慮なく聞きますがプロデューサーさんとはおつき合いしたいですか?」
律子「い、いきなりその質問ですか……」
小鳥「どうなんですか!律子さん!」
律子「そ…それは……」
律子「つ、付き合いたいです……//」
小鳥「はい♪よく言えました♪」
小鳥「では好きと分かった上でのやりかたですが……」
小鳥「やりかたは……」
律子「やり方は……?」
小鳥「ちょっと可愛子ぶって相手を攻めればどんな男も落ちますよ」
律子「相談する人間違ったな……」
小鳥「これでイケます!絶対イケます!」
律子(この人よりインターネット使った方が有効な気がする)
律子「……本当にそんなのでイケるんですか?」
小鳥「あー!律子さん信じてないですね?」
小鳥「私の経験上でいえば確率100%ですよ♪」
律子(……経験上?夢の中かしら……?)
小鳥「しょうがないなぁ♪私がお手本見せてあげるので律子さんも参考にしてください」 スタスタ
律子「ちょ!?小鳥さん!?……って行っちゃった」
P「律子遅いなぁ……。律子の入れてくれたお茶飲みながらいろんな妄想したいのに……」
小鳥「プロデューサーさん♪」
P「あぁ、小鳥さん。いたんですね」
小鳥「あーひどーい。小鳥を忘れるなんてひどいプロデューサーさん♪」 ペチ
P「……はっ?」
小鳥「プロデューサーさんは小鳥のこと忘れちゃダ~メ★」
小鳥「小鳥悲しくなってえんえん泣いちゃうぞー?」
P「小鳥さん」
小鳥「なにかなぁ?」
P「歳考えてやって下さい」
P「あと仕事の邪魔になるのでやるなら向こうで」
小鳥「……ピヨォ」
小鳥「ダメでした、てへっ★」
律子「当たり前です。それと私の前でもやらないで下さい。手出そうです」
小鳥「ピヨォ……」
律子「だいたいあれで本当に成功してきたんですか?」
小鳥「夢の中ではみんなこれでイケてたんですよ!?」
律子(あっ、やっぱり夢の中なのね)
小鳥「律子さん、プロデューサーさんは一筋縄ではいきそうにないですよ…」
律子「それは小鳥さんのやり方が間違ってたからだと想います」
律子「とりあえず私はお茶入れて向こう戻るので小鳥さんも静かに仕事して下さいね」
小鳥「律子さん怖い……」
律子「はい、お茶です」 コトッ
P「おっ、ありがとう。遅かったな」
律子「2X歳のぶりっこしてる人に絡まれてまして……」
P「なるほど。災難だったな」
律子「ホントですよ……。小鳥さんに聞くんじゃなかった……」
P「聞く?なにを?」
律子「プロデューサーには関係ないことですよ。それより仕事しましょう」
P「俺はさっきからやってるんだけどー」
律子「ではそのまま継続して頑張って下さい」
P「えー、ずっと頑張ってるんだから『まだまだ頑張ろうね!ダーリン★』みたいなの言ってくれよー」
律子「言いません!絶対言いません!」
P「ケチ」
律子「あっ?」
P「さーて、仕事ー仕事ーっと」
律子「よろしい。ですが今日もうちょっとだけ頑張ったら晩ご飯ぐらいは奢ってもいいですけど?」
P「えっ?マジ?」
律子「マジです。たまにはプロデューサーと一緒にご飯でもと想いまして」
P「ひゃっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
律子「だからうるさい!!」 パチコーン
P「すまないな。気分が高まると叫びたくなってしまう」
律子「もうなれました……」
P「よし、切り替えてきちんと仕事するぞ」
律子「初めからそうして下さい……。全く……」
P「そう言うなって。とりあえずそっちの書類こっちに少しくれ」
律子「了解です。…どうぞ」
P「ありがとう。こっからは本気出すぞー!」
律子「はいはい、出しちゃって下さい」
P「………」 カキカキ
律子「………」 カキカキ
律子(こうやって真面目に仕事してればカッコいいんだけどなー)
律子(何で普段はあんなにアホなのかしら……)
P「律子、手が止まってるぞ。」
律子「ふぇ!?す、すいません」
P「別にいい。それよりそっちの判子取ってくれ」
律子「は、はい」
P「ありがとう。それとこの書類終わったらちょっとテレビ局行ってくる」
律子「了解です。今度のライブですか?」
P「うん。そろそろ衣装や演出の話しとかなきゃいけないだろうからさ」
律子「分かりました。残った書類は私と小鳥さんでやっときます」
P「うん、頼むよ」
P「……よし、こっちは終わった。律子の方は?」
律子「えっ…と、こっちはまだまだ掛かりそうですね……」
P「手伝わなくて大丈夫か?」
律子「大丈夫です。プロデューサーはテレビ局行ってきて下さい」
P「分かった。じゃあ戻るまで頼むよ」 ガチャ
律子「はい。いってらっしゃい」
律子「………ふー」
律子「……プロデューサーが戻るまでに終わるかしら?」
小鳥「りーつこさん♪」
律子「……また来た……」
小鳥「あー嫌そうな顔してるー」
律子「手伝いに来てくれたんなら歓迎しますが?」
小鳥「もちろん手伝いますが……、律子さんたら見てて可愛いんだもの♪」
小鳥「書類書いてるときプロデューサーさん見て仕事の時はカッコいいなぁとか思ってませんでした?」
律子「そ、そんなこと思ってる分けないじゃないですか!」
小鳥「本当ですかー?怪しいなぁ」
律子「怪しくてもいいんで早く手伝って下さい。まだまだ残っているんですよ」
小鳥「了解です♪早く終わらせてプロデューサーさんとご飯行きたいですものね?」
律子「べ、別にそんなんじゃありません//」
小鳥「ふふふ、そう言うことにしておきますね♪」
小鳥「……よし!やっと終わったぁー!!」 ノビノビ
律子「ありがとうございます、小鳥さん」
小鳥「いえいえ♪でもプロデューサーさん戻ってくる前に終わって良かったですね」
律子「それはありますね。帰ってきてまた書類やらすのは何だか気が引けますし……」
小鳥「まぁ早く終わったんで良しとしましょう♪あ、そうだ!律子さんは今日のご飯何着ていくんですか?」
律子「えぇ?今着てるスーツですけど……」
小鳥「ダメです!ぜんぜんダメです!!」
小鳥「お相手は一筋縄ではいかないあのプロデューサーさんですよ!?ちょっとお洒落すればイチコロです!!」
律子(まーた始まったわね)
律子「逆に言いますが、あのプロデューサーなら何着ても変わらない気が……」
小鳥「そんな事無いです!」
律子「はぁ……」
小鳥「ちょうど私のロッカーに可愛い服が入ってるのでそれで行きましょう!!」
律子「えぇー……小鳥さんの服ですか……?」
小鳥「サイズなら大丈夫です。律子さんにもきっと合います!」
律子「いや、そうじゃなくて……」
小鳥「ささ、律子さん。こっちに来て着替えましょう!!」 グイグイ
律子「って、ちょっと!引っ張らないで下さいよ!」
小鳥「うわっ!すごく可愛いですよ律子さん!!」
律子「……これなんですか?」
小鳥「えっ?メイド服ですけど?」
律子「見れば分かります。殴りますよ?」
律子「てか何でこんな物持ってるんですか!?こんな服でご飯いけるわけ無いでしょう!!」
小鳥「細かいことは気にしないでそのまま行きましょう」 グッジョブ
律子「行けるかぁ!」 パチコーン
律子「全く!もう着替えますからね!」
小鳥「えぇー、もう着替えちゃうんですか?せめてプロデューサーさんが帰ってくるまで待ちましょうよー」
律子「待つわけ無いじゃないですか!」
小鳥「じゃ、じゃあ最後に一つだけお願いがあるんですが…」
律子「……何ですか?」
小鳥「お帰りなさいませご主人様♪ってだけ言って下さい!」
律子「嫌です」 キッパリ
小鳥「お願いします!!ホントにお願いします!!一生のお願いです!!」
律子「……どんだけ言って欲しいんですか……」
小鳥「いいじゃないですか~。減るものじゃないんですし」
律子「はぁ……。じゃあ一回だけですよ?」
小鳥「お願いします♪」
律子「ん……コホン……」
律子「お、お帰りなさいませ♪ご主人様//」
小鳥「す、すごくいい!!破壊力ヤバいです!!」
律子「……もういいですか?」
小鳥「はい!十分お腹一杯になったのでもういい……で……す」
律子「……小鳥さん?」
小鳥「あはは……律子さん、後ろ」
律子「……え?」 クルン
律子「プ、プロデューサー!?」
小鳥「今までのやりとり見てたみたいですね……」
律子「ち、ちがうんです!これは……」
律子「……って、プロデューサー…?」 フリフリ
P「………」
小鳥「あー……立ったまま気を失ってるみたいですね……」
小鳥「じゃあ、プロデューサーさんは律子さんに任せて私は買い物にでも……」 スタコラ
律子「えっ!?小鳥さん!?」
律子「どうすりゃいいのよ、コレ……」
P「………」
P「……はっ!ここは天国か!?」
律子「やっと起きましたか、プロデューサー」
P「うん?何で律子が天国にいるんだ?俺は天国で素敵な天使を見かけたんだが」
律子「天国で天使じゃなく事務所で私と会ったんですよ」
P「そうだったのか……。あのメイド姿は律子だったのか……」
律子「お願いですから忘れて下さい……」
P「それは無理だ!俺の脳内フォルダにはすでに保存されてしまっているからな」
律子「はぁ……。もう諦めますよ」
P「しかし……、一つ聞きたいことがあるんだけど」
律子「何です?」
P「もしかして、俺は今律子に膝枕されているんじゃないのか?」
律子「……もしかしても何も私の膝枕ですね//」
P「………」
律子「……な、なんですか?」
P「ひゃっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
律子「膝の上で騒ぐな!!」 パチコーン
P「ごめん、あまりにも嬉しくて」
律子「全く、調子いい事ばっかり言って……」
P「でも膝枕って懐かしいなぁー。小さい頃お袋にされた以来だな」
P「なんだかこうやってると癒されるよ……」
律子「それは良かったです。ですが目を覚ましたのならどいてくれます?」
律子「私も足しびれてきたのでそろそろキツいんですけど……」
P「そうだな……よっと……」
律子「ふふ、髪の毛くしゃくしゃになってますよ?」
P「んん?髪の毛ぐらい後で直すよ」
P「それよりも……、律子」
律子「はい?」
P「ありがとな。気持ちよかった」
律子「ベ、別にいいです。枕があったら楽かと思っただけ何で//」
P「また今度お願いしてもいいかな?」
律子「……考えときます」
P「あぁ。頼んだよ」
小鳥(律子さんいいなぁー。私も誰かとイチャイチャしたい……)
P「そういえば書類は終わったか?」
律子「え、ええ。小鳥さんも手伝っていただいたおかげでなんとか終わりました」
P「そうか。小鳥さんもありがとうございました」
小鳥「いえいえ、大丈夫です」
P「それじゃあ、今日の仕事は終わりかな?」
律子「終わりです。後は明日でも大丈夫な書類とかですね」
P「よし!それじゃあ楽しみにしてた晩ご飯いこうか」
律子「そんな話しましたっけ?」
P「あばばばばばばばばばばば」 カクカク
律子「嘘ですから変な動きしないで下さい……」
P「よかった。俺死んじゃうかと思ったぐらいだ」
律子「……大げさです。行くなら早く行きますよ」
P「そうだな、それじゃあ小鳥さん、お疲れさまでーす」
律子「お疲れさまです」
小鳥「はーい。いってらっしゃーい♪」
店員「いらっしゃいませー。何名様ですか?」
P「二人です」
店員「こちらどうぞー」
P「よいしょ……。律子、かばんこっちに置くか?」
律子「あ、お願いします」 ハイッ
P「ん、ここ置いとくからな。それじゃあ、頼もうかな」
律子「そうですねー。とりあえずプロデューサーはお酒ですか?」
P「頼む。律子もお酒かな?」
律子「……未成年ですけど?」
P「はは、冗談だ。律子はウーロン茶でいいのかな?」
律子「んー、じゃあ、オレンジジュースで」
P「オッケー。すいませーん」
店員「はい、なんでしょうかー?」
P「このチューハイとオレンジシュース下さい」
店員「かしこまりましたー。少々お待ち下さい」
P「よし、飲み物も来たことだし……」
P「乾杯!」 カチン
律子「乾杯」 カチン
P「んぐ…んぐ……。プハァー!!美味い!!」
律子「お酒ってそんなに美味しいんですか?」
P「ん?まぁ人によるんじゃないか?俺はビールとかは飲めるが芋焼酎とかは無理だし」
律子「へー。ちょっと興味ありますね」
P「だ、だめだぞ?律子は未成年だろ?」
律子「分かってますよ。ただ言ってみただけですって」
P「それならいいが……。あっ、ちょっとトイレ」
P「食べたい物があるなら頼んでていいからな」
律子「了解です」
律子「………」
律子(さっきは冗談て言ったけど……。お酒って気になるのよね……)
律子「……一口くらいなら……いいわよね?」
律子「………」 ゴクン
律子「……うぇ、変な味する…」
律子「これのどこが美味しいのかしら……」
P「ただいま……って、律子。おまえ顔赤くないか?」
律子「えぇ?何言ってるんですかー。私が赤いはず無いでしょー?」 パタパタ
P「……もしかしてチューハイのんだ?」
律子「うふふ♪どっちだと思いますぅ?」
P「…これは飲んだな……」
律子「はーい、せいかーい♪」 パチパチ
P「お前な……バレたらどうするんだよ…」
律子「大丈夫♪あたしは普通ですからー」
P「はぁ……それのどこが普通だよ……」
律子「それにしても暑い……。ちょっと脱ぎますねー」 ヌギヌギ
P「ば、バカ!こんなところで脱ぐなって!」
律子「あははははー♪」
P「すいませーん。飲み物しか頼んでないですけどお勘定いいですか?」
律子「あれ?もう帰るんですかぁ?」
P「誰のせいだよ誰の……」
店員「ありがとうございましたー」
P「はぁ……。一人で歩けるか?」
律子「まっかせて下さい♪よっ…とっ…とっ…」 フラフラ
P「おいおい、無理じゃないか……。一人で帰らすのは危ないな……。律子の家ってどこらへん?」
律子「なーに言ってるんですか♪あっちですよ、あっち♪」
P「しょうがない……家に連れてくか…。律子、背中乗れ」
律子「はーい!」 ヨイショ
律子「あはは、高い高ーい♪」
P「お、おい。背中の上で動くな、落ちちゃうぞ…」
律子「あははー♪」
P「はぁ……。まさか律子の面倒見る日が来るなんて思わなかった……」
律子「プロデューサー?」
P「うん?どうした?」
律子「プロデューサーって私のこと好きなんですかー?」
P「……うん?」
律子「だーかーらー。プロデューサーは私のこと好きなんですかー?」
P「ちょ……声大きい。もう少し静かに喋れ……」
律子「どうなんですか?」
P「……律子が酔ってないときに教えてあげるよ」
律子「えー。ケチ」
P「ケチで結構。ほら、もうすぐ着くぞ」
律子「プロデューサー?」
P「……今度はなに?」
律子「……気持ち悪い」
P「……は?」
律子「……吐きそう」
P「ちょちょちょ!!マジで!?」
P「ちょい急ぐからな!掴まってろよ!!」
律子「…はい。……うぷ」
P「はぁはぁ、無事に着いてよかった……」
P「何とか律子もトイレに運べたし大丈夫かな?」
P「ちょっと様子だけでも見に行くか……」
P「律子ー?大丈夫かー?」 ガチャ
律子「……うぅ」
P「あっ、こりゃダメだな……」
P「しょうがない……。布団に運ぶか……」
P「律子、ちょっと持ち上げるからな?」 ヨイショ
律子「……うぅ、すいません……」
P「いいって。今日はゆっくり休め」
律子「ふぁい……。うぅぅ……」
P「よいしょ……。もう今日は寝ろよ?明日起こしてやるから」
律子「………」
P「って、もう寝ちゃったか……」
律子「……プロデューサー」 ムニャムニャ
P「……はは、こうやってみるとホントに可愛いな」 ナデナデ
P「さて、俺も向こうのソファーで寝るとするか……」
P「明日説明大変そうだな……。律子覚えてなさそうだし……」
P「まぁ……いいか。明日になったら考えよう……」
P「それじゃ、お休み、律子」
――朝――
P「……んっ?朝……?」
律子「お目覚めですか?プロデューサー殿」
P「うん!?律子!?何で家に……って昨日のことがあったんだな」
律子「ふふ、酔っぱらってないプロデューサーが忘れてちゃダメじゃないですか♪」
P「はは、そうだよな。って、昨日のこと覚えてるのか?」
律子「そのお話はご飯食べながらでいいですか?もう準備はしてあるので」
P「おっ、ご飯の準備してくれたのか?」
律子「……まぁ、昨日の罪滅ぼしだと思って下さい」
P「じゃあ、飯食いながら話すとするか」
律子「はい」
P「うん、美味い!」
律子「ふふ、ありがとうございます」
律子「オカワリもあるのでゆっくり食べて下さいね」
P「ありがとう。ところで……」
律子「あっ、昨日の話ですね」
P「うん、昨日のことは覚えているのか?」
律子「うーん……。所々ですねー」
律子「なぜプロデューサーの家にいるのかは分かりませんが話していたことなら少しだけ覚えています」
P「あっ、勝手に家に運んで悪かった……。律子が家に帰るの難しそうだったから……」
律子「大丈夫です。そこらへんは分かっていますから」
律子「でも、朝起きたときは凄くパニックになりましたけどね」
P「はは、そりゃ朝起きて自分の家じゃなかったらビックリするな」
P「でもよかったよ。二日酔いになってなくて」
律子「ですねー。二日酔いって大分辛いんですよね?」
P「辛いぞー。仕事どころか何もしたくないぐらい頭痛とかに襲われるし」
P「あっ、そうだ。お前お酒は飲んじゃダメだぞ?なんで飲んだんだ?」
律子「……すいません。出来心です……」
P「近くに俺がいたからいいが……。金輪際そういう事するなよ?」
律子「……はい。ごめんなさい」
P「うん、分かればよろしい。いつまでも暗い顔してないで笑ってくれ。俺は律子の笑った顔で妄想してるんだから」
律子「せっかくいい感じにまとまったのに最低ですね……」
P「妄想ぐらいいいだろ?」
律子「頼むから辞めて下さい……」
P「よし、それでこそいつもの律子だ」
律子「変なこと言わなくても普通に戻りますよ……」
P「それもそうか。さて、早く食べて事務所行かなきゃな」
律子「……プロデューサー?私も一つ聞いていいですか?」
P「ん?どうした?」
律子「き、昨日の答え……聞かせてもらってもいいですか?//」
P「昨日……?」
律子「プ、プロデューサーが私の事どう思っているかです//」
P「それは覚えていたのか……」
律子「プロデューサー言ってましたよね?」
律子「酔ってないときに教えてくれると……」
P「うん、言ったね。聞きたい?」
律子「……教えてくれると助かります」
P「えー。どうしよっかなー」
律子「……じゃあいいです」
P「ちょ、嘘だって」
律子「お酒が入ってその場のテンションもありましたが」
律子「私はちゃんと言いましたよね?」
P「う……言いました……」
律子「それじゃあプロデューサーもどうぞ」
P「分かった……。きちんと正直に言うよ」
律子「あっ、真面目にお願いしますね?先に行っとかないとふざけるかもしれないので」
P「……そんな適当な男に見える?」
律子「はい、十分見えますね」
P「……まぁいいや。それじゃあ改めて……」
P「律子」
律子「……はい」
P「お前が好きだ」
P「真面目な時も、失敗して落ち込んでる時も……」
P「笑ってる時も、俺が調子乗りすぎて怒ってる時も……」
P「全部ひっくるめて、お前が好きだ」
P「俺と、いつまでも一緒にいてくれないか……?」
律子「……ふふっ」
P「な、なんだよ……。笑う所じゃないぞ……」
律子「すいません、何だかオカシくって……」
P「い、一応聞くけど律子は……」
律子「私ですか?んー、どうしよっかなー」
P「無理なんだな?よし、死んでくる」 ガッ
律子「まだ何にも言ってないから窓に手と足掛けるの止めて下さい」
P「だって……。律子が意地悪するから……」
律子「はいはい、ごめんなさい。それじゃあ私も真面目に言います」
律子「私は……」
P「うん……」
律子「私は……、ううん、私も貴方のことが好きです……//」
律子「アイドル達のために頑張ってる貴方、仕事を教えてくれる貴方……」
律子「社長とHな話してる貴方、私に本気で怒られてヘコんでる貴方……」
律子「全部まとめて大好きです……//」
律子「こんな私ですが、よろしくお願いします//」
P「ほ、ホントに?ホントに俺でいいの?」
律子「…プロデューサーだからいいんですよ……//」
P「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
P「ひゃっはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
P「って、悪い。またデカい声だしちゃったな」
律子「ふふ、今だけ許してあげます」
律子「ホントは私も叫びたいくらい嬉しいんで♪」
P「よし、じゃあ一緒に叫ぶか!?」
律子「叫びません」 キッパリ
P「ツマらん奴だな……」
律子「な・に・か言いましたか?」
P「うん、律子は可愛いなぁー」
律子「全く……って、もうこんな時間!?プロデューサー!遅刻しますよ!?」
P「え?ぬぉぉぉ!ヤバい!律子、急ぐぞ!!」
律子「私先に行ってます!!」 ガチャ
P「えっ!?ちょっと待ってくれよ!おーい、律子ー!!」
――とある日の事務所――
P「…はい…はい。申し訳ありませんでした……。」 カチャ
P「……はぁ。遅刻して逆ギレはいけないだろ……」
P「次から使ってもらえなさそうだな……。はぁ……」
律子「なーに落ち込んでるんですか?」
P「ん?何か向こうでヤラカしてくれたらしい……」
律子「そのクレームの電話が来たと?」
P「その通り…」
律子「あちゃー、それも災難でしたね……」
P「全くだよ……。はぁ……」
律子「じゃあ励ましてあげましょうか?」
P「えっ?」
律子「頑張って!ダーリン!」
P「………おぅ」 ダラダラ
律子「ちょ!?何で鼻血が出るんですか!?」
P「……破壊力抜群すぎる」 ダラダラ
律子「そんなこと言ってないでティッシュ!」 ハイッ
P「おう、ありがとう」
律子「子供じゃないんだからしっかりして下さい……」
P「俺はそこまで子供じゃないぞ」
P「あと今日の晩ご飯はハンバーグが食べたい」
律子「そういう所が子供っぽいと思うのだけど……」
P「いいじゃんハンバーグ。俺好きなんだよ」
律子「そういう事じゃないわよ……。まぁ、作ってあげますけどね」
P「サンキューりっちゃん!」
律子「りっちゃん言うな!」 パチコーン
P「そう怒るなって。あと律子に一つ聞きたいことがあるんだけど」
律子「はいはい、なんでしょうか?」
P「俺が結婚してくれって言ったらどうする?」
律子「もちろん…」
終わり
これの律子で続きや他のアイドルで書こうかなーって思ったが駄作になりそうだな……、止めとくよ。
最後に保守してくれた人、読んでくれた人、本当にありがとう
乙ゆっくり休め
Entry ⇒ 2012.06.28 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
淡「宮永先輩、キスしてください」 照「しつこい」
照「嫌」ペラッ
淡「なんでですか」
照「振り向いたらキスされる」
淡「自意識過剰です」
照「さっき自分が言ってたことを忘れたの? それに顔が近すぎる」ペラッ
淡「ああ、これですか。 宮永先輩の髪っていい匂いしますよね」
照「淡、変態?」
淡「宮永先輩限定で、そうかもしれません」
照「今の内に直したほうがいい」ペラッ
淡「仕方ないじゃないですか、余すところなく好きなんですから」
照「……ああそう」
淡「ちゅー」
照「残念」ヒョイッ
淡「……先輩のばか」
照「……」ペラッ
淡「はぁ、相変わらず冷たい人ですね。 早くしないとそこら辺の野良猫にあげちゃいますよ」
照「それはダメ」
淡「じゃあ早くしてください。 いっそのこと、強引にしてしまいましょうか?」
照「それもダメ」ペラッ
淡「ですよね。 だからこうやって聞いてるんですが、全く良い返事が返ってこないのはなぜでしょう」
淡「先輩、もしかして私のこと嫌いですか?」
照「淡は極端。 それとこれとは別」
淡「極端ですか。 極端でもいいですよ、それくらい宮永先輩のことが好きですから」
照「……そ」ペラッ
淡「っていうか読書やめてください」
照「わかった」パタッ
照「……まぁ、それくらいなら」
淡「やった」
照「ほら」ポンポン
淡「こうして膝に乗せてくれるのに、ちゅーはしてくれないんですね」
照「明らかにレベルが違う」
淡「先輩のレベルが低すぎます。 ポケモンで言うと8くらいですね。 低っ」
照「お前、仮にも私のことが……えっと、好きなんだよな?」
淡「はい」
照「物言いがひどすぎる」
淡「いいえ、違いますよ。 低いですが、大好きだからこそ、時間をかけてゆっくりいけばいいし、いく自信があります」
淡「そう思っただけです」
照「……あっそ」
淡「照れましたか?」
照「多少は慣れたよ」
照「求めたのは淡だ」
淡「そうですね。 許しが出るならもっと求めます」
照「……うわっ。 急にこっち向きに座るな……っ」
淡「あの、緊張しますか? 私はこんなに先輩の顔が近くて、心臓バクバクですが」
淡「ああ、先輩もですね。 こうしていると、私たちの鼓動が連動してるように思えて気絶しそうです」
照「……なぁ、動けない。 腕を後ろに回すな」
淡「ああ、確かにそうですね。 ということは、このまま顔を近づけるだけで、自動的にキスできることになりますね」
照「……」
淡「してほしいですか?」
照「いや、その……」
淡「まぁ、安心してください。 こう見えても、無理矢理したような形にはしたくありませんから」
淡「だから、早く許可をください」
照「……ダメだ」
淡「ばか」
淡「ほっぺ」プニッ
淡「はな」ツンッ
照「……っ」
淡「口は?」
照「ダメだ」
淡「そうですか」
照「……心臓に悪い、やめろ」
淡「でしょうね。 先輩、顔真っ赤ですよ。 顔だけ暑苦しいです」
照「淡、お前だって人のこと言えない」
淡「そうですね。 お風呂でのぼせた時ですら、こんなにはならなかったです」
照「……そろそろ皆が来る。 降りろ」
淡「はぁ。 このまま二人でいたいんですけどね」
照「公私は別けろ」
淡「わかってますよ」
照「……ねぇ、淡。 その、なんていうか……制服で顔を拭くな」
淡「なんでですか」
照「は、腹が見える……」
淡「もっと見ます? お腹だけじゃなくて、望むならどこでも構いません」
照「いいから、やめろ。 制服もシワになる」
淡「はぁ、全く。 仕方のない人ですね」
照「こっちのセリフ。 これ貸すから、それで拭いて」
淡「えへへ、ありがとうございます」スッ
照「……ちょっと、さり気なくポケットにしまわないで」
淡「あ、ごめんなさい。 どうぞ」スッ
照「明らかに柄が違う」
淡「私のです」
照「自分があるなら最初から使って……」
淡「まあまあ。 交換しましょ。 私、先輩のハンカチがいいです」
照「だからって、いきなり見せられても」
淡「本当に根性なしですね。 骨なしチキンどころか、中の肉すらなさそうです」
照「淡は私をどうしたいんだよ……」
淡「難しい質問ですが、当面の目標は唇を奪いたいです」
照「一々ストレートすぎる……」
淡「仕方ないでしょう。 包み隠してる余裕がないくらい好きなんですから」
淡「それにですね。 それくらいでないと、宮永先輩みたいな固い人とはやっていけません」
淡「……ですから、ちゅーしましょう」
照「は、はぁ!?」
淡「先輩、耐えられそうにありません。 猫が寝てる時に苛めたくなるような、今そんな感覚です」
照「強引にしないっていったのは淡!」
淡「知りません。 いつまでも過去を見ていたら成長できませんよ」グイッ
照「……ちょっ! だれか!」バタバタ
照「あっ……え、と……」
淡「あれ、もしかして期待しました? そうでしたらごめんなさい」
照「明らかに目が本気だった……」
淡「当たり前です。 先輩に対してはいつも本気ですよ」
照「……淡はなんでそんなに積極的なの」
淡「愚問ですね。 先輩が好きだからですよ」
照「知ってる」
淡「はい。 ただ、先輩が考えてるよりも、ずっとずっと好きなんですよね、これが」
淡「先輩が本好きで読書をするように、私も先輩が好きだから積極的になってます。 本が好きなのに読書を
せずにどうしますか」
淡「1から100まで先輩が好きです。 先輩はどうですか? 私のこと好きですか?」
照「……そりゃあ、まぁ」
淡「即答してほしかったですね」
淡(先輩、キスもしてくれないし……本当に私の事好きなんですか?)
照「うん」
淡「……今日の部活、私のトータルは部内トップでした」
照「ああ。 最近は元々の強さに、更に磨きがかかってる」
淡「……違いますよ、そうじゃないです」
照「どういうこと」
淡「『強い』だとか『磨きが』だとか、そういう具体的な言葉は他の人に言ってあげてください」
淡「私はもっと抽象的な、『おめでとう』だとか『頑張ったな』だとか、そういう言葉が欲しいです」
照「……そうだな、悪かった。 淡はいい子、私が目をかけただけある」ナデナデ
淡「えへへ、私も単純ですねぇ。 ちなみに先輩って、そういう感情的な部分から出る言葉、本当似合いません」
照「淡が言わせたんじゃ……」
淡「そういう感情的な言葉は、私だけが聞けると思うと嬉しいんですよ」
淡「多少なりとも独占欲はあります。 わかります?」
照「どうだろうか。 どうせそれも似合わないんでしょ」
淡(独占欲が出るほど、あなたは私のことが好きなんでしょうか?)
照「一緒に帰ってるのにか」
淡「宮永先輩のクールなところが好きです。 その裏にある暖かさが好きです。
それを隠そうと公私を別け、理を優先して行動するところが好きです」
照「……」
淡「実は優しく面倒見がいいところが好きです。 鋭さと鈍さが好きです。
クソ真面目で単純なところが好きです。 自分のペースに巻き込むところが好きです」
照「後半は文句のあるところじゃないか」
淡「独り言です」
淡「宮永先輩は、一体私のどこが好きなんでしょうかね」
照「……私は、淡の」
淡「人と帰ってる時に独り言ですか? 口塞ぎますよ。 口で」
照「それは困る……っていうか淡だけおかしい、理不尽」
淡「そうですかね」
淡(答えは、私に宮永先輩から愛されている自覚がついてから聞きますよ)
淡(キスするのも拒否されて……こうしてべったりなのも、自信のなさの表れなのかな)
照「何を」
淡「もう、こちらからキスをしてくれ、とは頼みません」
照「それは助かる」
淡「いえ、助けません。 頼まない代わりに、宮永先輩のほうからキスをもらおうと思いますので」
淡「いつでもいいですよ? 恋人らしい優しいキスでも、ボロ雑巾より乱暴な扱いをされながらのキスでもいいです」
照「もう少し、自分のことを大事にしたらどうだ」
淡「自分のことよりも、宮永先輩のほうが大事ですから」
淡「こういうのは重いですか? すみません」
照「そういうわけじゃないが……あんまり行き過ぎたのも悪いと思う」
淡「いいじゃないですか。 私が行きすぎても、先輩がブレーキをかけてくれるとわかってますから」
照「……確かに、その役目はいつも私だ」
淡「というかブレーキしかかけられてませんね。 そのうちエンジンかけてくださいよ」
照「……うん」
照「淡の背が小さいだけ」
淡「言ってくれますね」
照「淡のいつもの弄りと比べれば、こんなの言った内に入らない」
淡「私のは照れ隠しですよ。 先輩はそういうことがないでしょうから、わからないのも無理ありません」
照「そういうもの?」
淡「はい」
照「……いきなり背伸びして、どうしたんだ」
淡「先輩、顔が近いです」
照「淡が近づけてるんでしょ」
淡「そうですね。 これだけ近いと、先輩が望むなら簡単にキスできちゃいますね」
照「……なぁ」
淡「こんな即興の発想では、キスしたくなりませんか? 残念です」
照「……」
淡「……それじゃ先輩、また明日」
淡「私は帰宅した後も、先輩との一日を思い出し悶えているというのに」ゴロゴロ
淡「結局、私の気持ちは一方通行なのかな」
…………
………
……
淡「お邪魔します」
照「淡、靴脱いで。 じゃないと私が上がれない」
淡「……私が数十回と告白して軽く振られていた関係が続く中、ついに宮永先輩から『気持ちの整理を』と言わせることに成功したんです」
淡「それでまた数日待たせるなんて、さすがに待ちきれませんよ。 さあ、早く返事ください、さあ!」
照「玄関でか……とりあえず上がってくれよ」
淡「仕方ないですね。 先輩のそういうところが玉に瑕です」
淡「もちろん、そこも含めて好きですよ?」
照「また私が飲んだコップで飲んでる……」
淡「へーんーじー」
照「コップ置いて」ズイッ
淡「ちょっ……その冷たい顔、少しビックリ、いやドキッとしました」
照「自分から返事を求めておいて、ジュース飲みながら聞くのはないと思う」
淡「宮永先輩……。 4回目以降の私の告白を、読書をしながら聞き流していたのは誰ですか?」
淡「ま、とはいえ、置きますけどね。 先輩からの言葉は、心臓に染み込ませたいので」
照「じ……じゃあ、言う」
淡「かもん」
照「わ、私も淡のことが……す、す、すき……です……」
淡「……もう1回」
淡「もう1回」
照「……ねぇ、ちょっと」
淡「ダメですか?」
照「色々とおかしい」
淡「先輩だって、好きな本は何度も読み返すでしょう。 私も先輩の言葉は何度でも聞きたいです」
照「……却下」
淡「恥ずかしいですか? 顔、赤いですよ」
照「……で、どうなの」
淡「それ聞いちゃいます? 今更言うまでもないでしょう。 これで先輩の彼女として、大手を振って歩けます」
淡「まぁ、先輩の一度きりの言葉、しっかり無縁にしまっておきます。 とろけそうです……生きててよかった」
照「……そ」
淡「っていうかとろけちゃいました。 腰抜けて立てません……抱っこしてください」
照「はいはい」
………
…………
淡「あの時の宮永先輩はどこいったのかな」
淡「まぁ、宮永先輩みたいなクールな人を好きになってしまった代償だし、受け入れるしかなさそう」
淡「しかし、宮永先輩からキスを引き出すためにはどうすれば……」
淡「逆の立場で考えてみよう」
淡「……だめだ。 私からしたら、先輩が何してようとキスしたくなっちゃう」
淡「うーん……うーん……」
淡「とりあえず、思いついたのだけメモしておこう」
照「おはよう、それと急に抱きつくな」
淡「きもちーです」
照「頭押し付けて、犬みたいだぞ」
淡「先輩の犬なら歓迎ですね」
照「変なこと言うもんじゃない。 後、ここ目立つ……」
淡「はぁ……いい匂いです」
照「……わかったよ、少しだけなら」
淡「ありがとうございます」
淡(私の匂いをつけて、先輩をドキッとさせる作戦)
淡(逆に私が先輩の匂いにドキッとしてしまった……。 っていうか先輩、どちらかと言うと目立つことを気にしてたし)
淡(これは失敗かなぁ)
淡(……甘えられたのは成功だけど)
照「?」
淡「ゴミがついてますよ、取ってあげます」
照「自分で取れる」
淡(ばか)
照「取れた?」
淡「……いえ、全然」
照「じゃあ、取って」
淡「最初からそういってください……よっと」
照「ちょ、顔近っ……」
淡「はい、もう大丈夫ですよ」
照「う、うん……」
淡(ゴミなんかありませんしね)
淡(いい加減に理由をつけて顔を近づける作戦、これも失敗……っていうか、これ昨日やってた)
淡(……宮永先輩がちょっとだけ照れてくれたのは成功)
照「うん」
淡「……あーんは?」
照「……わ、わかったって」
淡「んー♪」
照「口についてる」
淡「取ってください。 ちゅー」
照「普通に取るから」スッ
淡「……はぁ。 逆の立場なら、私は迷わずちゅーっといきたいところですね。 先輩早くご飯粒でもつけないかな」
照「つけたところで、淡からはキスしないって言ってたはず」
淡「はいはい、そうですね」
淡(こんな単純なのじゃあ、さすがに無理がありますか? わかってましたが)
淡(これも失敗……でも先輩と食事できるのは成功)
淡(昼休みはいつもこうしてるけどね)
淡「そうですかね。 いつもこんなものでしょう」
照「……確かに」
淡「嫌ですか?」
照「全然。 淡、前に言ってた」
淡「何をでしょうか」
照「こういうのは『愛情表現』だ、って。 今日のもそうだと思う。 なら、別に」
淡「……えへへ、そういうの、反則ですよ。 そんなことをしてるから、私がいつまで経っても先輩から離れようとしないんです」
照「もうそれでいいよ」
淡「ずるいずるい。 そういいつつ、キスはしてくれないんでしょう?」
照「……まぁ、そうなる」
淡「はぁ、それもずるいですね」
淡(飴とムチ……まぁムチというほどのものではありませんが、まさにそんな感じですね)
淡(宮永先輩の思い通りに進んでるのは納得行きませんが、それが心地いいのだから、仕方ないんでしょうか)
照「ん」
淡「ついでにおトイレ寄って行きますから、寂しくなっても泣かないように」
照「そんなことするわけない」
淡「残念、先輩の涙は安くなさそうですものね」ガチャッ
菫「……あれ? 今日は大星と一緒じゃないのか。 珍しい」ガチャッ
照「教室に行った」
菫「そうか。 じゃあ私も飲み物を買ってくる」
照「待って。 ここにいて」
菫「は?」
照「菫がいる時は淡が暴走しない」
菫「暴走? どういうことだ」
照「それはいえない」
菫「……ああ、キスのことか?」
菫「いやな、照が早く来て読書をしているのは知っているが、結構前から大星も早く来るようになっただろう」
照「うん」
菫「で、数週間前に、悪気はなかったんだが……大星が『キスしてください』って言って、照が了承したのを聞いてしまってな」
照「……」
菫「てっきりそういう関係なんだと思ったんだが……違うのか?」
照「……まぁ、なんというか、淡とは付き合ってる。 そこは正しい」
菫「他にどこが違うんだ」
照「キスはしてない」
菫「? 意味がわからない」
照「あれは、その、なんというか、指を口につけて、その指を淡の口に、なんというか……」
菫「ああ、そういうことか。 些細な違いじゃないのか?」
菫「付き合ってるならいいだろ……それを暴走というのは、大星が可哀想だぞ」
照「いや、だって」
菫「照と大星は歳の差もあるんだ。 大星からしてみれば、したくなるのも当然だろうな」
菫「……もしかして、1回もしてないのか?」
照「うん」
菫「お前なぁ……」
照「だから、ここにいて。 菫がいれば、淡も誘ってこない」
菫「その話を聞いた後で残れと? 大星が可哀想だぞ」
菫「仮にも付き合ってるなら、それくらいのことはしてやったほうが喜ぶだろ」
照「冷たい」
菫「お前ほどじゃない。 じゃあな、遠回りして戻ってくるから」ガチャッ
照「……おかえり」
淡「あ、さっき弘世先輩見ましたよ。 職員室に用事があるとかで、遅れるそうです」
照(菫、絶対ウソついてる……)
淡「ふぅ、おいしい」ゴクゴク
照「……それ、もしかして嫌がらせ?」
淡「いいえ、ちゃんと宮永先輩の分も買ってきてます。 そのあたりは抜かりありません」
照「どこにもないけど」
淡「私が今手に持ってるじゃないですか。 はい、どうぞ」グイッ
照「……最近そればっかり。 貰うけど」ゴクッ
淡「仕方ないじゃないですか、いつまで経っても直接キスしてくれないんですから。 関節キスで我慢するしか」
淡「指もありますけどね。 ……あの、やってくれませんか」
照「……わかった」ピトッ
淡「えへへ。 これだけでも、脳内物質の出過ぎで脳が破裂しそうになりますよ」
照「!? ちょ、ちょちょちょっ」
淡「ぷはっ。 おいしいです」
照「なにやってるの……」
淡「これが口なら最高なんですけどね。 指で我慢しておいてあげます」
照「淡のせいでべたべた」
淡「ごめんなさい、責任とって拭きます。 手貸してください」
照「ほら」スッ
淡「……んー♪」パクッ
照「!?!?!?」
淡「……ふぅ。 いいですね、こういうの」
照「私は良くない……」
淡「そうやって見向きもしてくれないところも、大好きですよ」
照「誰がやったと思ってるんだ……」
淡「やったのは私ですが、宮永先輩がやらせてようなものです」
淡「いつまでも焦らすからですよ? 歯型つけてやろうかとも思いましたが、それはさすがにやめました」
照「痛いこと言わないで」
淡「こういうことされても、宮永先輩は冷静ですよね。 大好きです」
照「……」
淡「で、そろそろ口のほうにする気になりましたか? 口だったら、いちいち洗わずに済むのですが」
淡「むしろ洗いたくありませんね」
照「だから、そういう変なことを言うなと言ってるだろう」
淡「本心です」
照「……はぁ、とりあえず洗いに行く」
淡「そうですね。 麻雀できませんし」
照「誰のせいで」
淡「知ってますか? 兎は寂しいと死ぬんですよ」
照「兎なのか?」
淡「いいえ、先輩の彼女です」
照「ああ、そう……。 大体『兎が寂しいと死ぬ』なんてのは嘘だぞ」
淡「私の宮永先輩に対する気持ちは本物ですけどね」
照「私に繋げすぎ、全然会話が噛み合ってない。 後、手離して」
淡「えっ……」
照「いや、手洗えない」
淡「あ、そっちですか……嫌われたかと」
照「淡は細かいことに敏感すぎると思う」
淡「さあ。 私が敏感なんだか、宮永先輩が鈍いんだか」
照「淡が拘りすぎ」
淡「そういうことにしておきましょうか。 大好きな先輩の顔を立てておいてあげます」
照「だから、違う。 もう部活が始まる時間だから、牌を触る前についでに洗っているだけ」
淡「ごめんなさい、知ってて言いました。 そういう律儀なところも好きです」
照「……」
淡「私も洗いましょう。 失礼しますね」スッ
照「なんでこっち? 隣にも場所あるじゃないか」
淡「いいじゃないですか、細かいことは」
照「細かいこと気にしてるのは淡。 狭い」
淡「普段の距離が離れすぎてるんですよ。 私はこれくらい窮屈なほうが好きです」
照「……まぁ、いいけど」
淡「先輩、泡ください」
照「押せば出てくるぞ」
淡「いいですよ、もう。 そっちの手から勝手にもらいますから」ギュッ
照「……面倒なことを」
照「流してる途中に手を握ってきたのは淡だろう」
淡「はい」
照「大体、素直に新しいのを出せばいいのに」
淡「いいんですよ、これで」
照「よくわからない」
淡「でしょうね。 細かいことを気にするのは、所詮私だけですか」
照「……」
淡「ああ、先輩の泡が流されてゆく……」
照「なんだその言い方」
淡「私たちの関係も、この泡のように少ないんでしょうかね」
淡「こうやっていつか流されそうで、毎日毎日不安でなりません」
照「……ねぇ」
淡「いつもじゃないですか? それに責めているわけではなく、アピールとか、照れ隠しに裏返し、色々です」
照「今日は明らかに性質が違うんだよ」
淡「……そうかもしれませんね」
照「……どうかしたのか」
淡「ねぇ、先輩。 私たちって付き合ってるんですよね」
照「……ああ」
淡「それなのに、声をかけ、行動に表すのは私ばかり」
淡「先輩が何を考えているのか、どれくらい、どういうように私のことが好きなのか。 なんだかよくわからなくなったんです」
照「……」
淡「あ、勘違いしないで欲しいのですが、嫌いになったわけじゃないですよ?」
淡「先輩は元々、感情をあまり外に出す方ではありませんから。 そこも大好きです、愛してます」
淡「それでも、不安になる時は不安になります。 ごめんなさい」
照「……謝ることじゃないだろ」
淡「私は先輩の隣にいられるだけで幸せです。 のはずなのに、こんなことを思って申し訳ないです」
淡「宮永先輩は私の好きな人で、楽しい人で、大事な人で、尊敬する人で、私の彼女です」
淡「私は宮永先輩に恋するために生まれてきて、宮永先輩に恋するために16年間生きていたのだと思います」
照「大げさ……じゃあないんだよな、お前の場合」
淡「はい。 私はこんな感じですが、先輩は私のどこが好きなんでしょうか?」
淡「安心してください、同じようなものを先輩に求めているわけじゃありません。 これは私がおかしいだけ」
淡「ただ、先輩は私のどこが好きなのか、私は1つもわかってません。 なので、少し不安になってしまいました」
照「……言ってもいいの?」
淡「聞かせてください」
照「知らないからな……」
照「淡、このゲーム、お前の勝ちだよ」
淡「なにいって……んっ!?」
照「んちゅっ……」
淡「んぅっ……っ……」
照「……ふはぁっ」
照「『いつでもいい』とか言ってたのはお前だ。 したかった、だからした」
淡「うあっ……あぁ、わわわ……」
照「私は淡みたいに器用じゃないから、言葉を並べることはできない。 だから、1度しか言わないぞ」
照「淡が私に見せてくれる、その真っ直ぐな心が好きだ」
淡「あぁっ……はい、はいっ……ありが、とう、ござい、ます……」
照「……淡、赤すぎ。 自分から言ったのに、いざされると動揺して動けなくなるなんて」
淡「だって……えっと、あの……」
照「先に言っておく。 自分のしたことは自分で責任を取って」
照「緊張してたし、年上だから。 そういう理由で我慢してたのを外したのは、淡だからな」
淡「ちょ……んっ!」
淡「……うぁっ……んっ……」
照「…………んむっ」
淡「あっ……あ……」ドサッ
照「……大丈夫? 意識ある?」
淡「……ぃ……」
照「あるか。 じゃあ早く立って」
淡「……」
照「お前ウブすぎだ、また腰抜けてるぞ。 よいしょ」
淡「……」グデッ
照「顔上げて、無理なら勝手にあげるから……あつっ」グイッ
淡「……ぇ」
照「んぐっ……くぷっ……」
淡「……ぅ……んっ」
菫「照も大星もどこいったんだ? 部活が始まろうって時に」ガチャッ
照「あ」
菫「……は?」
照「気のせい」
菫「……舌がよだれで繋がってるんだが」
照「気のせい」
菫「確かに、私は『大星に構ってやれ』と言ったが、まさか短時間でそこまでするやつがいたとは……」
菫「……おい、こんな状態で部活できるのか?」
照「とりあえず顔冷やす」スッ
淡「……! いかないで!」ギュッ
照「……安心して」
淡「先輩、好きです……」
淡「えへへ、へへ……好き、好きです……」
照「……私も」
菫「お前ら、そういうのは校外でやれよ……」
おわれ
甘々すばら乙
乙乙
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Entry ⇒ 2012.06.28 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
淡「宮永先輩、付き合ってください」 照「しつこい」
淡「先輩こそいい加減にしてくださいよ。 私が何回告白したと思ってるんですか?」
照「今日で8回目。 慣れてきたから告白って感じがしない」
淡「それは先輩の立場の話で、私は毎回真剣です」
照「それなら私も毎回真剣。 世の中には通ることと通らないことがある」ペラッ
淡「通してくださいよ。 っていうか私が告白してる横で、なんで本読んでるんですか」
照「私が読書してる時に淡がきたんでしょ」
淡「普通は告白された直後に読書なんてできませんよ」
照「もはや日常」ペラッ
淡「悪い返事でもいいので、せめて読書やめて、真剣に答えてくれませんか?」
照「……」スッ
淡「! やっと振り向いて……」
照「ごめんなさい、付き合えません。 これでいい? 読書に戻る」
淡「……」
照「『悪い返事でもいい』って言ったのは淡の方」ペラッ
淡「前から思ってましたけど、宮永先輩って他人に冷たすぎる気がします」
淡「もう少し人を思いやる心とかを……具体的には後輩とか、もっと具体的には私とか」
照「冷たいわけじゃないし、思いやりも持ってる。 ただ淡とは付き合えない。 それだけ」
照「その私を好きになったのは淡なんだから、それくらいで文句を言う方がおかしい」ペラッ
淡「いやでも、交際してる仲であろうと、良い物は良いし、悪いものは悪いんですよ」
照「交際してない」
淡「してくださいよ」
照「しつこい。 読書に集中させて」ペラッ
淡「本当冷たいですね。 宮永先輩の悪いところです」
照「じゃあ、私のことなんか好きじゃなくていいでしょ」
淡「いや、そういうクールなところも含めて好きですけどね」
照「……あっそう」
淡「そのメンタルがあったからこそ、インターハイチャンプになったんでしょうか?」
照「皮肉? 読書は私の日課」ペラッ
淡「知ってます。 だからこそ、宮永先輩しかいない早い時間を狙って来てるんですよ」
照「無駄な努力だと思う」
淡「無駄じゃあないですよ。 こうやって先輩と夫婦喧嘩してる時間も好きですから」
照「夫婦じゃない」ペラッ
淡「でも早く来るために努力してることは事実ですね。 後輩の努力を踏みにじる気ですか?」
照「自分の都合を押し付ける人は好きじゃない」
淡「押し付けてませんよ。 あくまで告白がokするまで、先輩は私の彼女じゃありませんからね」
照「わかってるならこれっきりにして」ペラッ
淡「ま、okもらうまでは何度でも告白し続ける気ですけどね。 先輩、好きです」
照「知ってる」
淡「付き合ってください」
照「無理」ペラッ
照「……」
淡「先輩」スッ
照「何……いたっ」プニッ
淡「うわっ、こんな古臭い手法に引っかかるなんて」
照「高校生にもなってみっともない」
淡「そうやって型にはまった考えを持っていると、いつか痛い目見ますよ」
照「それとこれとは別」
淡「だから、頑固になってないで早く私と付き合ってください」
照「……」ペラッ
淡「あーあ、とうとう無視を決めましたか。 まあ構いませんけどね。 振り向くのも時間の問題なので」
淡「あー、先輩のほっぺ柔らかかったなぁ」
淡「……本当は振り向いた時にちゅーしちゃっても良かったんですけど」
照「! ……」
照「びっくりしただけ」ペラッ
淡「無視はやめてくれましたか」
照「……」
淡「先輩、こっち向いてくださいって」
照「……」
淡「無視がわざとらしいですよ。 照れてるんでしょうか? 照だけに」
照「寒い」ペラッ
淡「全然無視できてませんね」
照「無視してるほうが厄介だと理解したから」
淡「別に先輩を弄ってるわけじゃないですよ。 本当に好きだからこうしてるだけで」
照「それなら好きな人の都合も考えて欲しい」ペラッ
淡「そんなこと言われましても」
照「好きな人の新作。 集中させて」ペラッ
淡「え、ちょっと好きな人ってだれなんですか!?」
照「好きな人って、好きな作者のこと」
淡「あ、ああ、そうですか……ってそうですよね」
照「普通間違えない」
淡「仕方ないじゃないですか。 普通好きな人が目の前で『なんとかが好き』なんて言ったら、嫌でも同様します」
照「それは淡が落ち着いてないだけ」ペラッ
淡「皆そうなんですって。 先輩って恋したことありません?」
照「ない」
淡「あー、先輩って無性愛者っぽいですよね。 顔も性格もオーラも」
淡「まぁ、私も宮永先輩が初恋ですから、理解したのは最近ですけどね」
照「……あっそう」
照「何」
淡「弘世先輩に対して話す時と私に対して話す時」
淡「なんというか、少しだけ雰囲気違いません?」
照「淡と違って、菫とは日常会話が多い」
照「それに菫とは長い付き合いだから当然のこと」ペラッ
淡「うわっ、ハッキリ言いますね。 そういうところ好きですよ、もちろん深い意味で」
淡「私も、後2年生まれるのが早かったら、また少し違ったんでしょうか」
照「同じこと。 仮に菫に告白されたとしても、私は受けない」ペラッ
淡「あまり考えたくありませんね」
菫「また2人が一番乗りか?」
淡「あ、先輩こんにちは」
菫「2人の仲が良くなるのは喜ばしいことだ。 照は人間関係によく壁を作るから余計にそう思う」
淡「……そうですか」
照「そうだ。 菫、これ返す」
菫「そういえば貸してたな。 面白かったか?」
照「うん」
菫「ならよかった。 そうそう、この続編がちょうど今日発売するんだが、本屋に寄ってもいいか?」
照「構わない」
淡(……)
淡「ちょ、先輩、今日私と帰る約束じゃないですか!」
照「え」
菫「なんだ、そうなのか? 早く言ってくれればいいのに」
照「そんな約束してな……」
淡「ごめんなさい、弘世先輩。 宮永先輩借りていきますね!」
照「……どういうつもり」
淡「正直、少し嫉妬しました。 いや、大分嫉妬しました。 自己中ですよね、すみません」
淡「わかりました、じゃあもうしません。 けど、せめて今日限り一緒に帰らせてください」
照「淡、何か勘違いしてない?」
淡「はい?」
照「私は淡のことを拒否してるわけじゃない。 一緒に帰りたいなら、事前に言えばいいだけ」
淡「……ほ、ほんとですか!? じゃあ毎日帰りましょ!」
照「それはそれで……」
淡「そうだ! 私気になってた喫茶店があるんですよ! このまま行きましょ!」
照「話聞いて……」
淡「先輩、何頼みますか?」
照「……ねぇ」
淡「先輩、先に言っておきますけど、手引っ張ってもあんまり抵抗してませんでしたよね」
淡「満更でもないんじゃないんですか?」
照「まぁ、喫茶店くらいならいいか」
淡「そうこなくっちゃ!」
淡「とうとう私と付き合ってくれるんですか?」
照「全然違う。 なんで私の隣にくっついてるの?」
淡「ダメですか?」
照「注目の的になる」
淡「じゃあ膝の上なら」
照「もっとダメ」
淡「ひとつ、膝の上。 ふたつ、先輩の隣。 さあどっち!」
照「……もういいよ、隣で」
淡「ちなみに、みっつで私と付き合う、ってのもありますよ」
照「いいからメニュー見せて。 身動き取れない」
淡「はいはい」
照「飲む?」
淡「本気で言ってます? 関節キスですね」
照「私はそういう意味で言ったわけじゃないし、気にしてない」
淡「そうですか、私はめっちゃ気にしてます」
照「飲むのか飲まないのか、どっち」
淡「飲みます飲みます、次のチャンスがいつかわかりませんしね」ゴクッ
淡「……ふぅ、美味しいですね。 先輩が飲んだ後だからでしょうか」
照「気持ち悪いこと言わないで」
淡「ひどいですね。 あ、私の飲みます?」
照「じゃあ一口」ゴクッ
淡「……そんなに関節キスがしたいですか。 私は直接でもいいですよ」
照「だから、そういう意味じゃない」
淡「残念」
照「先輩として当然のこと」
淡「ありがとうございます」
淡「でも、先輩だとか後輩だとかじゃなくて、一個人として私を見てくださいよ」
照「『後輩の努力を』とか言ってた口から出る言葉じゃない」
淡「や、結構本気で」
照「心配しなくても、淡のことは一個人として見ている」
淡「……それって『麻雀部として』とかが前に付きますよね」
淡「なんというか、後輩の延長線上のような」
照「? そんな事言われても、淡をただの後輩と思ってないのは本当のことだし」
淡「はぁ、そうですか。 嬉しいですけど、それは私の望んでる特別とは違う形なんでしょうね」
照「そうなるかもしれない。 何度も言ってるけど、諦めたほうが早いと思う」
淡「それは私が決めることです」
淡「あ、そうですか。 遠回りして……なんて」
照「今更遅いし、帰宅を遅くする趣味はない」
淡「でも私と一緒に喫茶店行ってくれたじゃないですか」
照「……それとこれとは別問題」
淡「はぁ、先輩のことはよくわかりませんね。 そこも好きですよ」
淡「……私、宮永先輩のこともう少し知りたいです」
照「だから、無理だって」
淡「まだ具体的なこと言ってませんけど」
照「言う前からわかる。 変な意味が含まない形でなら、別に教えて上げてもいいけど」
淡「変じゃありません、私の気持ちは真っ直ぐですよ」
照「わかった、わかった……また明日」
淡「明日も一緒に帰ってくださいね」
照「ああ」
淡「……生殺しにされてる気分ですよ、こっちは」
照「はいはい」
菫「最近毎日一緒に帰ってないか」
淡「そうなんですよ! 先輩ったら私と一緒に帰りたいらしくて」
照「言ってない」
菫「はは、妬けるな。 休日も体調壊さないようにな」
淡(……妬けるのはこっちの方ですよ)
淡「先輩、手繋いでください」
照「え……」
淡「ダメですか?」
照「……それくらいなら、まぁ」
淡「やった!」ギュッ
照「ちょっと、痛い」
淡「あっ、ごめんなさい。 少し興奮しちゃって」
照「そ」
淡「もちろんマックスは先輩と付き合うことですけどね。 まぁ、今はこれで我慢します」
照「今は、ねぇ……」
淡「はい。 そのうち我慢できなくなるかもしれません」
淡「……先輩は告白の後にいつも『こっちの気持ちを考えて』みたいなこと言いますけど、それは先輩にも言えますよ」
淡「私の気持ち、少しは考えたことあります?」
照「あんなに毎日告白されてれば、それくらい誰でもわかる」
淡「わかってたら、私が『手繋いでください』なんて言っても、繋ごうとしませんよ」
照「? 淡から言ってきたことじゃないのか」
淡「……はぁ、先輩は鈍チンなんでしょうか」
淡(そうやって中途半端に私を救うから、私はいつまでも宮永先輩のことが好きでいてしまうんですよね)
照「せっかく手繋いでやったのに、なんでそんな不機嫌そうなんだ」
淡「……いや、もういいです。 私以外の子と、こういうことしないでくださいね」
照「縛られる筋合いはないし、大体そんなこと言ってくるのも淡くらいだ」
淡「先輩と歩いてると、時間があっという間に過ぎますね」
淡「それじゃあ、おやすみなさい」
照「ああ」
淡「はぁ……宮永先輩、どうして私に振り向いてくれないだろう」ゴロゴロ
淡「っていうか、せっかく先輩と一緒に帰ってるんだし、家とか教えてもらえばよかった」ゴロゴロ
淡「……! いいこと思いついた! この頭脳を持った自分が憎い!」
From:宮永先輩
本文:明日飽いてますか? 合いてたらデート活きましょう、向かえに行くのでお家教えてください。
淡「……なんか色々すっ飛ばしてる気がするけど、先輩にはこれくらいスッキリした文のほうがいいかな。 送信」
淡「! きた!」ドキドキ
Re:
本文:予定は別にないが……漢字間違えすぎだぞ。
淡「~~!!」
淡「どうしよう……ダメな後輩だと思われてないかな……」
淡「いったい!! ああ、なんで小指ってこんなに出っ張ってるの……」
淡「そうだ、せっかく休日に先輩と会うんだから、ちゃんと考えて洋服選ばないと」
prrrr
淡「……うーん……はーい」
照『おい、起きろ』
淡「!! えっ、今何時ですか!?」
照『自分の携帯に聞け』
淡「……あっ! すいません!!」
照『そっちから誘ったんだろう。 まぁいい、駅前の喫茶店にいるからな』ガチャッ
淡「……はぁ、色々考えて寝不足だし結局遅刻しちゃうし……」
淡「先輩怒ってないかなぁ……っ、やばっ、泣くな泣くな!」
淡「大丈夫、先輩の優しさは私が一番わかってる! とにかく早く行かなきゃ」
照「待ってたぞ」
淡「……あの、怒ってないんですか? 1時間遅刻したんですよ?」
照「? 別にこれくらいで怒る必要もないだろ」
照「待ってる間に朝食は食べたから、淡も何か頼んだらどうだ」
淡「……やっぱり、先輩は優しいですね。 大好きです」
淡「でも、できることなら朝食は待ってて欲しかったですね」
淡「仮にも私は先輩に恋してるんですから、一緒に食べたいと思うのが筋です」
照「なんで後から来てそんなに偉そうなんだ……」
淡「えへへ、でも怒らないんですね」
照「……変なこと言ってないで、早く注文しろ」
淡「やっぱり宮永先輩を好きになってよかったです。 さ、何食べよっかなー♪」
照「……」
淡「ちょ、ちょっと先輩ってば」
照「何?」
淡「人が食べてて暇とはいえ、読書はやめてくださいよ。 デート中ですよ?」
照「仕方ないだろ、他にすることがないんだから」ペラッ
淡「私の食べてる様子でも見ててくださいよ」
照「そんな趣味はない」
淡「私は先輩の食べてる様子、見たかったですね。 何食べてるかとか」
照「私がさっき頼んだのは、淡が今食べてるそれだぞ」ペラッ
淡「えっ、ほんと?」
照「そんなウソついてどうするんだ」
淡「……えへへ、やった! 最高です♪」
照「そんなに喜ぶことか? 同じものなんて、誰かと食べに行くなら普通に頼んだりするだろ」
淡「先輩はわからなくていいですよ。 どうしても知りたいなら、私と付き合えばわかることです」
照「変なの」ペラッ
淡「先輩、食後にジュースでも飲みませんか?」
照「なんで私に聞くんだ。 もう朝食は済んでる」
淡「いや、ここってメニューに恋人限定のジュースがあるんですよ。 ベタなやつ」
照「ここはよく利用するが、そんなのはないぞ」
淡「あ、じゃあ賭けます? 私が頼んで出てきたら、一緒にそれ飲んでください」
照「まあいいよ。 ないものはないから」
淡「……そうですね。 すみません、このジュースください」
照「普通のミックスジュースだろ」
淡「まあまあ、ちょっと待っててください……えい」プス
淡「さあどうぞ」
照「……これ、ストロー2つ刺しただけ」
淡「細かいことは気にしないでくださいよ! さあ私の勝ちです、一緒に飲んでください」
照「……はぁ」
淡「なんだかんだで付き合ってくれるんですね」
淡「……あー」
淡(興奮しててすっかり忘れてた……)
照「おい、何も考えてないのか」
淡「……まぁ、そうなりますね」
淡「いや、宮永先輩が悪いんですよ? 私の誘いに即答してくれたせいで、色々舞い上がって忘れちゃってました」
淡「先輩が私のハートを掴んだのが、全ての元凶です」
照「……その図々しさはどこから来るんだ」
淡「愛ですよ」
淡「ま、何もしないんじゃあ、味気ないですよね。 映画でも見に行きましょうか」
照「淡に任せる」
淡「いいんですか? ちょっと危ないところとか連れてっちゃうかもしれませんね」
照「映画」
淡「先輩って二つ条件を出されたら、絶対その中から選択しますよね。 正直扱いやすいです」
淡「そういう生真面目なところも好きなんですよね、これが」
照「なんでもいい」
淡「……はぁ、先輩こそ、その冷静さはどこから来るんでしょうね」
淡「デートって、もう少しその、ニコニコしながらするものでしょう」
照「淡にとってはそうでも、私にとっては普通のお出かけ」
淡「確かに、私が勝手に興奮してるだけですけどね。 仕方ない、先輩の笑顔は、彼女になるその時までとっときましょう」
淡「じゃ、これにしましょうか。 すみません、チケット2つ」スッ
照「……いい、私が払う」
淡「あの、また先輩後輩って話ですか? 私が遅れてきたんだから、私が持ちます」
淡「それに言いましたよ、そういう立場抜きがいいです、と」
淡「『宮永先輩』と呼んでますけど、私の中では『先輩』ではなく『宮永照』という個人です」
淡「先輩にも『後輩』じゃなくて『大星淡』として扱って欲しいですね」
照「……まぁ、そこまで言うなら」
照「わからない」
淡「でしょうね。 ま、私は宮永先輩とこうして同じものを見られるだけで幸せです」
淡「こんなに真っ暗だと、もしかしたら先輩に変ないたずらしちゃうかも」
淡「ちゅーとか」
照「? いくら淡が押しが強いとはいえ、さすがにそんなことはしないだろう」
淡「……そうですか」
淡(はぁ、結局何もできなかった……)
淡「宮永先輩のことを言えないくらい、私も単純だなぁ」
照「なんだそれ」
淡「こっちの話ですよ」
照「そうだな……んーっ」
淡「!」
淡「うわっ、宮永先輩でも、手足伸ばしたりするんですね……」
照「私だって疲れる時は疲れる」
淡「そうですけど、そんなに隙だらけというか、俗っぽいことをするのは意外です」
照「淡、お前も結構ひどいことを言うな。 私のことを言えない」
淡「ちょっとビックリしただけですよ。 でも嬉しいです」
照「?」
淡「長時間麻雀打った後でも、そんなところ見たことありませんしね」
淡「普段見られないところを見られただけでも、私は嬉しいです」
照「……そ」
照「私に聞くのか?」
淡「私は宮永先輩となら、どこへ行っても楽しむ自信がありますから」
照「……」
淡「先輩がなにもないなら、私はゲーセンに行きたいです」
照「ゲームするのに二人で行くのか?」
淡「あらら、先輩ってば無知ですね。 普通ですよ、普通」
照「……私なら構わないが、普通年上にそんな態度を取るもんじゃないぞ」
淡「安心してください。 私がこうやって自然体で接してるのは、宮永先輩くらいのものです」
照「で、なんでゲーセンなんだ」
淡「ゲーセンというか……先輩とプリクラが撮りたいです」
照「最初からそういえばいいだろう」
淡「回りくどい方法を選ばないと、先輩と長く会話できないじゃないですか」
照「ないな」
淡「慣れた手つきの意外な先輩ってのも見たかったですね」
淡「私があれこれ教えるのも、新鮮でまた楽しいですけど」
淡「先輩、笑顔笑顔」
照「……」
淡「ちょっと、下手くそですよ。 雑誌とかでは、いつも営業スマイル完璧じゃないですか」
照「営業スマイルってわけじゃあないんだがな」
淡「……もしかして、雑誌の記者といるよりも、私と一緒にいるほうがつまらないんでしょうか?」
淡「……迷惑かけてごめんなさい」
照「い、いや、そういう意味じゃ……」
淡「ふふっ、冗談ですよ。 そのままでいいですよ、普段の表情が一番です」
照「そうか」
淡(少しだけ、ショック受けたのは本当ですけどね)
淡「少しだけ微笑んでるこの笑顔。 ずっと眺めていたいです」
照「そ、そうか……なぁ、この後に写真が出てくるだけで、この値段なのか?」
淡「複数人で利用するからこそ、こういう値段が許されてるんです」
淡「あと、落書きとかできるんですよね」
照「するのか?」
淡「したいですか?」
照「いや、私はいい」
淡「なーんだ、じゃあ勝手に書いちゃいます」
照「好きにしろ」
照「……なんだこれ」
淡「あれ、見えませんか? 『好きです』って、でかでかと書いたはずですが」
照「そういう意味じゃない」
淡「色んなところに貼っちゃっていいですよ。 本当は私が多めに欲しかったんですが、なんならほとんどあげますよ」
照「映画はお前が出したんだろう。 これくらい出さなくてどうする」
淡「はぁ、またそういう……でも、本当は嬉しいんです。 ありがとうございます」
淡「さて、もう1回撮りましょうか」
照「え?」
淡「今のは宮永先輩の奢り。 次は私が個人的に撮りたいだけです。 さ、撮りましょ」
照「……まぁ、構わないが」
淡「♪」
淡「先輩、アイスクリームが食べたいです。 何がいいですか?」
照「抹茶」
淡「渋っ。 じゃ、行ってきますね」
照「いや、私が……」
淡「まあまあまあ、ちょっと待っててくださいよ」グイッ
照「うわっ」
淡「そこにいてくださいねー!」
照「……なぁ、一つしかないんだが」
淡「そりゃそうですよ。 二人で食べるんです」
照「本気で言ってるのか?」
淡「先輩に対してはいつだって本気です。 そろそろ振り向いてくれてもいいんですけどねー」
淡「さあ、食べましょうか。 コーンはさっさと食べないと大変ですよ? さあ!」グイッ
照「……これをやるために、自分から買いに行ったのか」
淡「どうでしょうね」
淡(はぁ、正直抹茶はあんまり好きじゃないんだけどなぁ)
淡(宮永先輩と一緒だから食べられる感じ)
照「おいしい」
淡「そうですか、私もです」
淡「えっ?」
照「少なくとも好きなものを食べる時のそれじゃないな」
淡「いや、別に私は……」
照「いいから待ってろ。 他のを買ってきてやる」
淡「……」
淡(ずるいですよ、そういうの)
淡(なんでこう、いつも空回りするんだろう。 先輩、相変わらず私の言ったことわかってないみたいだし)
淡(あーあー、こういうのしないでもらいたいなぁ。 これだから、何時まで経っても好きでたまらないんですよね)
淡「……」パクパク
淡「……まぁまぁおいしい、かな」
淡「あ、ありがとうございます」
照「……おい、抹茶は?」
淡「全部食べちゃいました」
照「お前なぁ」
淡「先輩が私を待たせた罰ですよ」
照「そんなに遅かったか? 一応急いできたんだが」
淡「はぁ、そういうところが……」
照「……?」
淡「まぁ、いいでしょう」パクパク
淡「はい、どうぞ」
照「これもか……」
淡「当たり前です」
照「なんだ」
淡「肩を貸して欲しいです」
照「……?」
淡「もう、ストレートに言いますね。 先輩に寄っかかりたいです」
照「……」
淡「了承と受け取りますね。 では遠慮なく」
淡「はぁ、最高ですね。 あ、読書とかしてていいですよ? 多分寝ちゃいますから」
照「人を誘っておいて寝るのか?」
淡「先輩にはわかりませんよ、私の気持ちは」
照「……嫌でもわかってはいるよ」
淡「表面上は、ですね。 中途半端な行動は良くないですよ。 さすがにそれはわかりますよね」
照「……お前が頼んでるんじゃないのか」
淡「そうですね、すみません。 ……少し眠ります、おやすみなさい」
照「ああ」
照「起きたか」
淡「どれくらい経ちましたか?」
照「2時間くらいだな。 寝不足だったのか?」
淡「まぁ、そうなりますね。 主に先輩のせいで」
照「私は何もしてない」
淡「何もしてないのが、なんかしてるんですよ……って、本は?」
照「別に読書とかはしてない。 ずっと壁に寄っかかってただけだ」
淡(……なんでだろう、なんでこんなに嬉しいんでしょうか)
淡(って、別に先輩が私に気があるわけじゃない……)
淡(それを前提に置いておかないと)
淡「はは、マネキンみたいですね」
照「段々辛口がひどくなっていってないか?」
淡「あのですね。 先輩にしたら押しの強い女に見えるかもしれませんが、私だって照れ隠しのオンパレードですよ?」
照「……」
淡「どこか食べに行きましょうか」
照「ああ」
淡「今の内に決めておきましょう。 何がいいですか?」
照「淡に任せる」
淡「本当に先輩は鈍いですね。 麻雀中の冴えてる先輩はどこにいるんでしょう」
照「おい」
淡「ふふっ、答えを教えてあげますね」
淡「私は先輩の好きなものはなんでも知りたい。 だから聞いているんです」
照「……わかったよ」
淡「で、なにが食べたいですか?」
照「じゃあ、うどんだな」
淡「あらら」
照「不満か?」
淡「いえ。 冗談でも言って欲しかったですね」
照「うどんくらい、普通に食べるだろう。 それに、好きなものを言え、と言ったのは淡の方だ」
淡「そうですね。 教えてくれて嬉しいですよ」
照「何食べるんだ」
淡「先輩と違うものを食べます」
照「お前は私のことを好きなのか嫌いなのか、どっちなんだ」
淡「好きじゃないです、大好きです。 先輩に対しての最低値は『嫌い』ではなく『好き』、というレベルで大好きです」
淡「まあ、頼みましょうよ。 ほら、はやくはやく」
淡「先輩、それ一口ください」
照「……そんなことだろうとは思ったよ」
淡「やっと私のことをわかってきましたか。 アタックを続けてきた甲斐があります」
照「で、食べるのか、食べないのか、どっちだ」
淡「もちろんいただきますよ。 あーんしてください」
照「……はぁ、全く」
照「……で、この後どうするんだ」
淡「そうですね、こう半端な時間じゃあ、逆に身動き取れません」
淡「……ねえ、先輩の家に連れて行ってくれませんか?」
照「自分で言うのもなんだが、私の家は殺風景でつまらないと思うぞ」
淡「お人形だらけのほうがビックリしますよ」
淡「それにですね、私にとっては先輩の家に行くのが本命だったんですよ? つまらないとかなんとか言わないでください」
照「……そうか」
淡「まぁ、物事には順序がありますからね。 朝っぱらからいきなり押しかけては、いくらなんでも迷惑でしょう」
照「淡、お前妙なところで律儀なんだな」
淡「何言ってるんですか。 先輩だって、好きなものは大切にするでしょう。 私もそうです」
照「……とてもそうには見えないけどな」
淡「いつものあれは愛情表現です」
照「今飲み物でも出すから、寛いでてくれ」
淡「ねぇ、先輩。 烏龍茶の蓋開けっぱなしですよ」
照「? 締まってるじゃないか」
淡「私が締めてあげたんです」
照「そうか、悪かったな」
淡「いえ。 しっかり整理されてる先輩らしいお部屋ですが、ちょっとだけ抜けてるところがありましたね」
淡「そういうダメな一面もあるんですね」
照「たかが蓋一つじゃないか。 失望したのか?」
淡「まさか」
照「有名だろ」
淡「そうですか、じゃあ私が見逃してるだけかもしれませんね」
淡「それか、先輩の家だからかもしれません。 料理も皿や店内の雰囲気が大事って、よく言いますもん」
照「……それはそうと、お前が今飲んでるの、私が飲んだやつだろ」
淡「いいじゃないですか、どうせ同じ中身ですし」
照「同じ中身だったら、尚更私のを飲む必要はない」
淡「厳しいですね」
照「普通だ」
淡「そうですね、いつも通りです。 やっぱりこういう先輩が一番好きです」
照「わかったから、自分のを飲め」
淡「嫌です」
照「悪かったな」
淡「いえ、つまらなくないですよ。 楽しいです」
淡「むしろ、何か遊べるものがあるほうが困ります」
照「なぜだ?」
淡「先輩とこうして寄り添うだけの時間のほうが、私は好きですから」
照「……」
淡「とはいえさすがに疲れました。 先輩、膝借りますね」
照「……まぁ、構わないが」
淡「おお、珍しく察しが良い。 痺れたら言ってください」
照「多分大丈夫だ」
淡「それはよかった。 多分、痺れても退きませんからね」
照「なんだ?」
淡「今までのこと、全部忘れてください」
照「……はぁ?」
淡「今までももちろん本気でしたが、最初の告白以降は、どこか諦めや弄りが入っていたかもしれませんね」
淡「半端者です。 それじゃあ思考停止と変わらないことに、ようやく気付きました」
照「……」
淡「ですから、今から、今度こそ、今度こそ心の底から言います」
淡「今までの人生で、一番本気を出します」
照「……そんな状態でか?」
淡「あはは、まぁ、少し締まらないかもしれませんが、退けそうにないですし、包まれてる内に言いたい気持ちもあります」
淡「本気です。 だから先輩も、全部忘れて、最初の時と同じように聞いてくださいね?」
照「……」
淡「好きです」
淡「宮永先輩、付き合ってください」
淡「これで、もう先輩に構うことも、後輩らしくもない弄りをすることもないでしょう」
淡「ありがとうございました……っ」
照「……おい、何泣いてるんだ」
淡「ああ、泣いてますか……? 気が付きませんでした、そうかもしれませんね」
照「……拭け。 泣いた跡がつくぞ」
淡「別にいいですよ、というかむしろ付けたいくらいですね」
照「……」
淡「……すみません、帰ります」
照「……ちょっと待て」
淡「なんですか?」
淡「何言ってるんですか、聞くまでもないです。 それとも、先輩には加虐趣味でもありますか?」
照「まあいい。 どうせその状態じゃ、主導権は私にあるんだ」
淡「はぁ、確かにそうですね」
照「……」
淡「なにしてるんですか、指なんか舐めてみっともない」
淡「プーさんの真似ですか? 似合いませんね……んっ」ピトッ
淡「……えっ、指……って、これって……」
照「……今はそれで我慢しろ」
照「今は、な」
照「気持ちの整理くらい付けさせろ。 淡、お前も人のことを言えないくらい鈍い」
淡「そうですか、そうですよね……」
照「……今日はもういい、寝ろ。 どうせ明日も休日だ」
淡「わかりました。 色々と言いたいことはありますが、おやすみなさい。 嬉しいですよ、これだけでも」
照「そうか」
淡「はいっ」
淡「宮永先輩、(指で)キスしてくださいよ」
照「しつこい」
淡「ねえ、もう月曜日ですよ? 2日経ってますけど……早く早くはやくー!」
照「……はぁ、仕方ない。 今日うちこい」
淡「やった! あ、でも今(指で)キスしてくださいよ!」
照「……ほら」
菫(照と淡が部室でキスしてるのを聞いてしまった……)
おわれ
実にすばらでした
続きも読みたい
次→淡「宮永先輩、キスしてください」 照「しつこい」
Entry ⇒ 2012.06.27 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
切嗣「僕の戦いも終わったし…安価で行動しよう」
切嗣「できた…我ながら可愛らしいマフラー…だな」フッ
切嗣「さて、このマフラーを誰にプレゼントしようかな」
>>16
大河「え?あたしですか?」
切嗣「これを…受け取ってほしいんだ」スッ
大河「あらっ、可愛らしいマフラー!」
大河「でも、なぜ?あたしに?それにあなたは」
切嗣「いずれは…君の世話になるからね」(僕にはこれくらいの事しかできないけど…)
大河「はぁ…」(やだ//凄くハンサム///)
切嗣「それじゃ、僕は行くよ」
次は何をしますか?>>28
誰得
絶対許さない
切嗣「やぁ、気分はどうだい?」
士郎「うぅ…」
切嗣「すまないね…君をこんな目に遭わせてしまって…」
士郎「助けてくれてありがとう…」
切嗣「礼を言われる義理はないよ…」
士郎「で、でも」
切嗣「僕は…君しか救えなかった…」
切嗣「」ウルウル
士郎「ねぇ、泣かないでよ」
切嗣「すまないね…」(僕は何としてでも…残りの生涯はこの子に捧げよう…)
士郎「もうこの話は掘り下げなくていいよ…」
切嗣「そうだね。これから…新しくやり直していこう」
堀りさげる→掘る はい!いただきました!!
次はなにしましょうか?
>>54
衛宮邸
切嗣「」(この子には僅かではあるが…魔術師としての素質がある)
切嗣「士郎、今から僕の言うとおりにするんだよ?いいね?」
士郎「わかった!」
切嗣「それから、少しでも身体に異変を感じたら中止するんだよ?」
切嗣「無理をする必要はないからね」
士郎「うん!わかった!」キラキラ
切嗣「ふふ、それじゃぁはじめるよ」(やはり、少年だな。魔術と言う言葉にこうも魅かれるとは)
士郎「うぅ…」ゼェハァゼェハァ
切嗣(投影、転換、それに宝石魔術。どれを見ても魔術師としては乏しい…)
切嗣(だが、強化に関しては何とかなりそうだな)
切嗣「落ち込むことはないよ。これからは毎日、この方法で練習に励みなさい」
士郎「最後にしたやつ?」
切嗣「そう、これはね。強化と言って魔力を使って物を強くすることが出来るんだ」
士郎「すげぇ!」
切嗣「ふふ。努力を怠らなければきっと士郎の役に立つはずだよ」
さて次は何をしますか?
>>70
切嗣「なに?戦い方?」
士郎「うん!魔術師なるんだったら!やっぱり戦ったりするんでしょ?」
切嗣「確かに魔術は他者を傷つけることだってある。」(この子には…もう…誰かを傷つけるようなことは…させたくない)
切嗣「でもね、士郎にはそういう使い方をして欲しくないんだ」
切嗣「誰かの、人のためになる使い方をして欲しい。」
切嗣「魔術にはそういう使い道もあるんだよ」ニコッ
士郎「すげー!ヒーローになれるの?」キラキラ
切嗣「まぁ、そういう解釈も間違いではないね」
切嗣(とはいえ、この子はまだ幼い…純粋に遊んで欲しいのだろう)
切嗣「それじゃぁ、今から僕は悪党だよ!」ガオー
士郎「よーし!ヒーロー登場だ!」テヤー
ちなみに次はなにしますか
>>84
切嗣「最近は士郎のこともあって家に篭りっぱなしだったし」
切嗣「おや?」
凛「…」
切嗣「」(遠坂時臣には確か娘が…)
切嗣「どうしたんだい?」
凛「!?」ハッ
凛「泣いてなんかないもん!」ゴシゴシ
切嗣「僕は別に泣いてるかなんて聞いてないけど」
凛「あっ…。うぅ…」
切嗣「君は遠坂の娘さんかな?」
凛「え?お父様をしっているの?」
凛「さぼちゃった…」
切嗣「そんな事をしたらご両親が心配するよ?」
凛「もう…誰もあたしを叱ってくれない…」
切嗣「君の父の事は聞いたよ…。でもお母さんは」(遠坂時臣は死んだ…だが、妻は)
凛「お母様も…病院で寝たきりなの」
切嗣「そうだったのか…すまない。余計なことを」(聖杯戦争の傷跡がこんなところにまで…)
凛「悲しくなんかないわ!」
切嗣「」
凛「常に余裕をもって優雅たれ!」
凛「これは遠坂家の家訓よ!お父様やお母様がいない今!あたしがしっかりしなくちゃいけないの!」
凛「えぇ!だから魔術の修行だって今までの倍は」
切嗣「でも」
凛「え?」
切嗣「でもね、無理はしちゃだめだよ。」
切嗣「君には君の人生。生き方があるからね」
凛「えっと…それは」
切嗣「辛いことを自分ひとりで塞ぎ込んじゃいけない」
切嗣「そのためにも、学校へ行きなさい。友達と話したり遊んだりすれば」
切嗣「少しは辛さが和らぐからね」
凛「うぅ…。気が変わったわ!学校へ行く!それじゃね!変なおじさん!」タッタッタ
切嗣(そう…聖杯戦争のせいで生き方を変えなくちゃならないことはないんだ)
切嗣(聖杯が破壊された今、彼女が幸せになる方法なんていくらでもあるはず…)
次は何しますか?
>>115
士郎「そういえばさ、じいさん」
切嗣「なんだい?」
士郎「その…じいさんには家族とかいたの?」
切嗣「家族は士郎だけだよ」
士郎「そういうのはいいからさー」
切嗣「ふふ、昔はね。」
士郎「え?今は?」
切嗣「娘が遠くにいるよ」
士郎「会いに行かなくていいの?」
切嗣「大丈夫。あの子はきっと幸せだからね」
士郎「そんなの嘘だよ!」
切嗣「士郎…」
士郎「でも!じいさんは違う!娘さんだって生きてる!」
士郎「親に会いたくない子なんていないよ!」
切嗣「僕はね。あの子に会わせる顔がないんだ…」(僕は一度でも…あの子に向かって引き金を引いた)
士郎「じいさんはそうでも!向こうは会いたがってる!」
士郎「じいさんは…自分の都合のために会わないの?」
切嗣「」スーハー
切嗣「それを言われてしまっては…もう、会いに行くしかないね」
士郎「待ってよ!俺も連れて行ってよ!」
切嗣「駄目だ。あまりに危険すぎる。」
士郎「俺だってじいさんのために何かしたいんだ!」
切嗣「士郎。お前を危険な目に遭わせるわけにはいかないんだ」
士郎「嫌だ!ここで恩返ししなきゃ…俺!ずっと後悔するから!」
士郎「俺はじいさんみたいな人になりたい!ヒーローになりたい!」
切嗣「士郎…」(ナタリア、君はあの時、僕を連れだしてくれたね…)
切嗣(やり方こそ違えど…僕の生き方を示してくれた。あの時から…)
切嗣「はぁ…どうやら僕に拒否権はないみたいだ」
士郎「うっ…」
切嗣「どうした?」
士郎「わからない!けど、何か変な感覚が」
切嗣「これは…結界の幹」(士郎は僕以上に魔力を感知する能力があるようだ)
切嗣「また、その感覚が襲ってきたからすぐ僕に伝えてくれ」
士郎「うん!わかった!」
切嗣(うまくいけば、結界の死角を突けるかもしれない)
イリヤ「きりつぐ!」
切嗣「話は後だ!さぁ行こう!」ガシッ
イリヤ「いや!離して!」
切嗣「な!?」
イリヤ「アハト爺が言ってた!きりつぐはあたしを見捨てたって!」
士郎「ちがう!じいさんはそんなやつじゃない!」
切嗣「僕が…イリヤを見捨てた…」(確かに…イリヤからすれば僕なんて…)
士郎「ほら!じいさんも!素直になれよ!」
士郎「ほら!二人とも行くよ!」タッタッタッタ
三人の新しい生活が始まっていた。
切嗣(さて、今日は少し早起きをしたし、なにしようか)
>>161
イリヤ「きりつぐ~むにゃむにゃ」
士郎「じいさん~ぐぅ」
切嗣「僕は今、幸せだ。紛れもない幸福を感じている」ナデナデ
切嗣「失ったものは大きかったけど…今は、お前達がいてくれればそれでいい…」
切嗣(だが…言峰綺礼…。僕はどうしてもお前が気になる…あいつはまだ…生きているのでは…)
言峰「やはり来たか…」
切嗣「お前が生きている。そんな気がしてね…」
言峰「正確には一度はお前に殺されているのだがな…どうするつもりだ?」
どうしましょうか?
>>180
言峰「なに?一度殺された人間と食事だと?」
切嗣「今は状況が違うだろ?」
言峰(まぁいい…この男はどうせ長くは持たない。死ぬまでにもう少しこいつを知ることができるというのなら)
言峰「いいだろう。お前とは一度ゆっくり話をしたかったからな」
言峰(なんだ!?これは 美味すぎる…)
言峰(これほどまでに美味い麻婆…今までに食べたことがない)
切嗣「気に入ったようだね」
言峰「出向いただけの甲斐があった」
さてこのままどうします?
>>191
お詫びのしるしに握手
切嗣「僕達が争う必要もないだろう」
言峰「この場に及んで和解を申し出るというのか?衛宮切嗣」
切嗣「これ以上も僕達がいがみあう事はないだろ?」
言峰「私は…まだ聖杯をあきらめてはいない」
切嗣「…。またアレが出現することがあるのか?」
さて雲行きが怪しくなってまいりました
どうやって仲直りしますか?
>>206
切嗣死んじゃう…
言峰(くっ…聖杯が再出現することを…口が滑ってしまった)
言峰「近接戦闘で私に勝てるとでも?」
切嗣「僕が勝てば仲直りだ。いいね?」
言峰「くだらん…」
結果、切嗣は負けました…
どうしまよう?>>221
切嗣「僕達が…分かり合えることは…」
言峰「仲直りだなんて他所他所しい。」
切嗣「…。やはりお前は…」
言峰「今からは私たちは親友(とも)だ」
切嗣「!?」
言峰「あの時、聖杯はお前の悲願を叶えなかった。そして、今、私はお前に勝利した。」
言峰「これ以上…私が求めるものは何もない。聖杯に固執することも」
切嗣「貶しているのか…慰めているのか…」
言峰「歪んだものにしか魅了されなくてね。だが、結論は出た。我々はもう争うことはない。」
言峰「さぁ、手を貸せ」
言峰「何をいきなり。私は昔からずっと私のままだ」
言峰「私のこの異端の心は変わらぬ。」
切嗣「いや、変わって行けるさ。お前だって僕と同じ…人だからね」
言峰(かつて…自分に信じがたい感情が芽生えたことがあった。)
言峰(可憐…。あの子が生まれた日…あの子をはじめて見た時…)
言峰「変わる機会はいくらでもあったのかもな」
言峰(最愛の人に出会い、最愛の人と別れ…)
切嗣「今日もまた、その機会かもしれない」
言峰「あぁ、そうなのかもな」
次は何しましょうか?>>257
よくやった!!
言峰「私もひっそりと暮らすとしよう。だが…」
言峰「選択肢すら与えられない者もいる。」
切嗣「なに?」
言峰「間桐桜…いや、遠坂桜。彼女は今、間桐家に捕らえられ、聖杯戦争の道具とされている。」
切嗣「聖杯戦争のせいでまた…犠牲が…」
言峰「お前ならどうする?衛宮切嗣。」
切嗣「答えるまでもないよ。彼女を救い出す。」
言峰「ふっ、お前らしい決断だ。私も力を貸そう」
切嗣「お前…」
言峰「何も言うな。これは私が自ら決定したことだ」ニヤリッ
切嗣「相手は交渉に応じてくれる相手だろうか?」
言峰「まさか…間桐臓硯に限って和解などありえない」
切嗣「間桐邸を偵察しよう…。念入りに調べれば打開策が見つかるはずだ」
言峰「よし、任せておけ」
言峰「二人がかりなら倒せる相手だろう。それに相手は魔術師だ」
切嗣「起源弾を仕様すれば一撃だろうね。」
言峰「だが、問題はあの娘自身にある。」
切嗣「何?」
言峰「数多の蟲どもがあの娘の体内に寄生している。」
言峰「真に彼女をあの間桐から開放するには」
言峰「あの老人と…交渉するしか…」
切嗣「僕に案がある」
切嗣「従えないというのならお前を殺す」
蔵硯「はっはっは!確かにお前さんら二人が相手ではわしも叶わないだろうな」
蔵硯「じゃが…わしが死ねば桜も死ぬ。こっちへ来い桜」
桜「う、うぅ…」
蔵硯「見ての通り…。この娘の中には蟲が何匹も寄生されている。」
蔵硯「わしが死ねば、こやつらは宿主を殺すように指示してある。」
蔵硯「あきらめるんじゃな!はっはっはっは!」
バンッ
蔵硯「貴様!驚きだな…まさか撃ち殺すとは…」
蔵硯「残念じゃのう。折角、わしが育ててきた言うのに」
言峰「この娘の死体はもらっていく」
蔵硯「…ふむ。抜け殻には興味ないわい」
切嗣「僕達の目的は次の聖杯戦争の確実な勝利。これで間桐家はもう…戦えないだろう」
蔵硯「どこまでも腐ったものじゃな!ははっはっは!」
言峰「行くぞ。衛宮切嗣」
蔵硯「あの二人が共闘するとは…次の聖杯戦争…わしらには手も足も出ないというわけか…」
衛宮「目が覚めたかい?」
桜「ここは…」
衛宮「君を仮死状態にして、あそこから救い出した」
言峰「一度は死んだと言った方が正しいだろう」
言峰「蔵硯はお前が子供でも容赦が無いことを知っていたのであろう。」
なんとかなったみたいですけど
どうしましょうか?
>>349
イリヤ「きりつぐー!」
士郎「お誕生日!」
全員<おめでとう!!!!!!!!!
切嗣「こ、これは…一体!?」
大河「もう!今日は衛宮さんの誕生日でしょ!」
凛「これはあたしたちから!」
桜「プレゼントです!」
イリヤ「きりつぐ!あたしたちからも!」
士郎「俺とイリヤで作ったんだ!」
切嗣「これは?」
イリヤ「くっきー!!」
切嗣(アイリ…見ているかい?僕が願った世界に少し近づいている気がする)
言峰「今宵は宴だ。涙は控えめにな」
可憐「これは言峰家からのプレゼントです」
言峰「私が若い頃に収集していたワインの一つだ。お前の口に会うと良いのだが」
切嗣「ありがとう。さっそく開けよう」
切嗣(人類の流血の根絶は叶わなかった…)
切嗣(だけど…今、今だけは幸せを感じても許してもらえるだろうか?)
士郎「じいさん!また、思いつめてる!」
切嗣「え?あぁ、すまないね」
士郎「じいさんだって!幸せになる権利はる!俺が保障する!」
切嗣「ふふ、ありがとう。士郎」
彼の悲願は達成できなかったが、
彼は確かに多くの命を救い、そして、幸福をもたらした。
切嗣「なぁ、士郎。僕は…正義の味方になれたかな?」
士郎「うぅ…」ゴシゴシ
士郎「あぁ!じいさんは俺たちのヒーローだ!」
桜「私を助けてくれました!衛宮さんは私の中でも正義の味方です!」
イリヤ「きりつぐ!死なないで!」ウェーン
言峰「私を変え…娘と再び向き合う選択を与えてくれたのも…全てお前のおかげだ」
切嗣「あぁ…僕は…」
切嗣「アイリ…もうすぐ君のところへ行く…よ」
おわり
死んだのは士郎でなく切嗣ですww
すまそ
パーティー後
何しますか?
>>423
凛「日ごろの感謝をこめまして!」
桜「えっと…踊りを…」
士郎「おどりま~す!」
大河「めちゃくちゃ!練習したんで!」エッヘン
可憐「うぅ…」
大河「曲はもちろ~ん!」
http://www.youtube.com/watch?v=uvbaM-URygs
いいぞ!
言峰「ふふ、今宵は酒の味がこんなにも化けるとはな」
士郎「じいさんのそんな笑顔初めてみたよ!」
イリヤ「きりつぐ~!ずっと一緒だからね!」ギュッ
さぁ、仕切り直しです
これがラスト安価
最後はどうなるの?
>>445
素晴らしく平和だww
遊園地
切嗣「さぁ、着いたよ。みんな思う存分に楽しんでね」
士郎「じいさん!ジェットコースター行こうぜ!」グイグイッ
イリヤ「だめ~!イリヤと観覧車乗るのが先~!」
凛「桜~メリーゴーランド行こ!」
桜「はい!」
言峰「こんな、やけに騒がしい場所初めてだな」
可憐「コーヒー…」
言峰「?どうした?」
可憐「コーヒーカップに乗りたい」><
言峰「ふむ、では行くか」
可憐「////」
子ギル「僕もいいですか?」
言峰「ふふ、付いて来なさい」
士郎「今日は本当に楽しかった!」
切嗣「僕もきてよかったよ。士郎とイリヤの喜ぶ顔が見れたしね。」ニコッ
イリヤ「それでねぇ…え~と」チラッ
士郎「俺達から…そのぉ…」チラッ
切嗣「どうしたんだい?」
イリヤ 士郎 「せ~の」
イリヤ 士郎 「今日はありがとう!!お父さん!」
切嗣「お、お前達…。父さんはうれしいよ!」ギュッ
おしまい
http://www.youtube.com/watch?v=IFw31MAgl28
最後は誤字がないか念入りにチェックしました
最後まで見てくれてありがとう!
乙
乙!
お父さんとか呼んだことなかったみたいなんで
この世界線くらいはと
思ってね
確かジジイって呼んでたよな
ジィさんな
みんな幸せそうでえがった
重ねて乙!!
更に重ねて乙 !!!
Entry ⇒ 2012.06.27 | Category ⇒ FateSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
美希「ハニーひとりだけでいいの」
「おかえりなさい、ハニー」
いつものように軽く言葉を交わして美希の隣に腰を下ろす
今日もいつもと同じような顔――どことなく冷たい表情の美希は顔色を変えない
そんな様子に驚きはせず、むしろ安心した
俺は美希を優しく自分の方へ引き寄せた
少し安心したように美希はなすがまま俺に倒れ掛かるが、その表情は依然暗いままだ
「今日はさ、春香が歌の番組でMVPを獲ったんだ。あとは亜美と真美もついに海外進出するみたいだ」
「そうなんだ……よかったね、みんな」
それに対してこれと言って感情的になるわけでもなく、また惰性で聞き流すわけでもなく
無機質な表情の美希は楽しみに待っているのだ
「……ここでの生活は……もう慣れたか?」
「…うん…美希、ここでハニーと暮らせて幸せだよ」
ほぼ毎日、ここに帰ってきている
それも美希のために
今の美希は昔と違うのだ
美希は―――――足が動かなくなってしまったのだ
―――
――
―
「おはよう、美希。今日は元気だな」
「美希はいっつも元気だよ!とくに今日はもっともっと頑張れるって感じ!」
「おぉ、それは期待してるぞ」
大きなコンサートの後、美希は俺のことをハニーと言うようになった
見違えるようにやる気も出てきたし、こちらとしてはありがたい限りだ
星井美希。中学生にして抜群のスタイルと天性の才能を持ち、今となっては知らぬものはいない伝説のアイドル
しかし事務所入りたてはそんな様子を微塵も、いや少しはにじみ出ていたのかわからないが”物がいい”だけに調子に乗っているものとばかり思っていた
これじゃあ結果は目に見えてるなと思うも、いざ本番をやらせてみると完璧にこなす
まさに才能だった。しかしそれにも限界は訪れ、一度の挫折が彼女をこの世界から遠ざけた
俺は必死に説得した。初対面の時には感じた憤りのようなもの、プロデューサーとしてのプライドすべて投げ捨てて
そして彼女の気が変わってくれることを信じ、大規模なライブが行われた
ハードスケジュールだったのにもかかわらず終わった後のこちらに見せた美希の笑顔は今でもしっかりと覚えている
そして今現在、すっかりなつかれてしまったわけだが効率は見違えるように上がり仕事も上々
行く末トップアイドルになる人材であることはこのころから核心へと変わっていた
がその矢先、一つの問題が発生してしまったのだ
「どうしたのハニー?今日はこれから歌番組の生放送だよね?」
「あぁ!それが他のアイドルも出られることになったんだ!これは大チャンス…こうしちゃいられない!」
事務所には10人前後アイドルがいる。その中で美希は頭一つ抜けて仕事をこなしていた
しかし今回、他のアイドルにもそのおこぼれと言うべきか否か、チャンスが舞い込んできたのだ
それぞれ活動はしているもののこれといった起爆剤がないため
この機会を生かし、事務所全体で業界の目に付けば将来は安泰であろう
言うまでもなく僥倖。この時俺はそう思っていた
「な、なんでも…ないの。そろそろ時間だよね、頑張ってくるの!」
「おう、全力で頑張ってこい!」
本番前の美希の目が一瞬曇ったのを俺は見逃さなかった
他のメンバーも着々と準備を進めているのがわかったがこの時は何が起きたか深く考えることはしなかった
そして本番。美希を中心とした事務所全体のパフォーマンスは素晴らしいもので、スタッフたちの反応もよかった
だが終盤、事件は起こってしまった
「きゃっ!」
バタン!という音が短い悲鳴の後につながってスタジオに響く。すぐさま音楽にかき消されるが、その音楽もすぐに止んだ
「…………」
俯いてしまい何も答えない美希。それならばと
「誰か、美希が苦しそうにしてるところを見てたって人はいないか?」
「…………」
あろうことか誰も反応しない。すると俺はここで気づいてしまった
誰一人として美希をいたわろうとしないことを
思い返してみれば美希以外のオファーの際、多少美希が中心であることを強調しすぎたかもしれない
だからと言って、こんな逆恨みのような、あろうことか仲間を見捨てるなんということがあってよいものか
と考えているうちに、恐ろしい結論を導きだしてしまった
「…………」
「なんで……なんで何も答えないんだよっ!!」
「…………」
「やってないならやってないって……言ってくれよ……」
序盤は怒りに任せて、終盤は想いむなしく、全員が下を向いて何も言おうとしない
こんな時にすべきことはなんだ?結局美希から聞き出すしかないのか?そもそも今一番つらいのは美希だ
今の状況を認めたくなくて、そうであってほしくない思いを片隅に残しながら、美希を抱えて控室を後にした
――
―
美希は相も変わらず俯いたまま、かと思いきややはり少し苦しそうな表情を見せた
「……美希。辛いと思うけど、理由があったら聞かせてくれないか?」
「…………」
「アイドルってこういうこともあって辛いんだ。でもずっと耐えるわけにはいかないだろ?」
「…………」
「もちろん他のみんなもサポートするつもりだけど、まずはお前を助けるからさ」
「…………」
「無理はしなくていい。ゆっくり話してくれればそれで…」
「……嫌…」
「…え?」
「……他のみんなも一緒なのは……嫌…」
「美希……」
合ってほしくなかった事務所内でのイジメ。原因不明の美希の怪我。
どちらも原因がわかったということで安堵したというには言葉が足りないだろうか
プロデューサーとしてこれほどの屈辱はない
自らがプロデュースしているアイドル同士が痛めつけ合う姿を見るなど目玉をえぐられる思いだ
何よりそんなやつらであったことが残念で仕方がない
もちろん主犯と加担してるやつら、標的にされないために加担する振りをしているやつらいるだろう
しかし、それでもあろうことか仕事中にけがをした仲間を見捨てるとは言語道断であろう
今後はやつらとはぜひとも距離を置きたい。が、それは無理な注文であるだろうし、そんなことをしたらますます被害が拡大する
……だがこんなことをやすやす許しておくわけにもいかない
美希につきつつもあまり目立たない用に今まで通りのスタイルを貫く
だがそれは思った以上に過酷なものだった
そして限界はすぐに訪れたのだ
「美希……そうか…それじゃあ少し休め」
「…………美希…あのさ」
「やめて!」
絞り出すように叫んだと思うと、胸めがけて倒れこむように泣き崩れた
これだけ弱気な美希を見たのは初めてだった
しばらくして泣き止んだ美希は俺にもたれかかったまま離れようとしない
そしてゆっくり話始めた
「……美希ね。思うことたくさんあるの。でも……今言っちゃったら耐えきれないと思うから…」
「……うん」
「もし……もしもう耐えられなくなったらハニーに全部話すね…?」
「……わかった」
「……ごめんね……ごめんねハニー…」
それでもアイドルとして輝く美希が見たいと思う自分が正しいのかわからなくなる
「…………ハニー…」
「なんだ?」
「大好き……大好きなの……」
「そうか……ありがとうな」
「大好きで大好きで……それでも……今のままじゃ辛いのに辛いからハニーに迷惑かけちゃって……」
「何も迷惑なんかじゃないさ。少しでも困ったら俺を頼っていいんだ。甘えていいんだ」
「ありがとう……ごめんなさい……大好きだよハニー……」
眠っていれば何も苦しむことはないだろう
幸せそうに眠る美希の髪を梳いてやる
もうすでに俺は美希のことを好いているのだろう
平等なんてとっくの昔に壊れていたんだ
徐々に傾いていた自分の中の天秤が音を立てて地に着いた
もう目に見えて美希びいきの生活になりつつあった
だが事務所はそれに驚きもしない。むしろ気づいていたかのように、それが自然と言わんばかりの通常運行
それなのに、なのにもかかわらず目を離すと美希は傷が増えていた
もはや憤りなどはなく、ただただ美希が心配で、愛おしくて。美希を守る自分に価値を見出している頃
ついに美希にヒビが入ってしまう
「ごめんね……ハニー……もう無理……みたい…」
「……美希…?……美希!……おい美希!しっかりするんだ美希!!」
美希は俺に守られていることさえストレスに感じてしまっていたのだろうか
病室に横たわる美希。約1日経った今も目を覚ましてはいない
仕事そっちのけで見守る。事務所のことなど全く意識にない
ただひたすら美希を眺め、祈っていると電話のバイブが作動した
電源を切ることすら忘れていたらしい
「はい。私ですが……はぁ、はいありがとうございます。」
そっけなく返して10秒にも満たない電話は終了する
社長から美希の看病に専念できるよう有給にしてくれるとの話だ
とは言っても元から休みなど眼中にない
美希が回復してくれるまで、何をする気もおきないだろうと自覚していた、とその時
「み、美希!!」
「ん……は、ハニー……?」
美希はすっかり良くなったようで
「ハニー……甘えん坊さんなの……」
「美希……大丈夫なのか?って大丈夫…じゃないよな…」
「ううん、休んだからもう大丈夫だよ。ただ……」
「あぁ、もちろん話はつけてあるから心配するな。落ち着くまで休暇を取ろう。お前なら復帰しても十分売れるはずさ」
あ、うん。と言ったものの美希の顔はひきつったまま俯いている
危惧していたのはそれじゃないのか?と考えても答えは出てこない
「どうした?他に心配ごとがあるのか?もちろん無理に詮索したりはしないからゆっくり時間をかけて…」
「あのねハニー。もう……ずっとこのままじゃ仕方ないと思うから。」
「そうか……」
その言葉で理解する
美希は順序良く、事を話し始めた
「あぁ…」
「それでも……それでも、離さなきゃいけないって思ったの」
「うん」
「美希がこんなこと言っていいのかわからないけど、ハニー、落ち着いて聞いてね?」
「あぁ、わかったよ」
まさか美希から心配されるとは思っていなかった
落ち着いて聞くつもりだが憤ることは間違いないだろうと歯を食いしばるように耳を向けた
「えっと、歌番組の時の足の怪我はね、別に事務所のみんなのせいじゃないの」
「えっ?どういうことだ?」
「あの番組ディレクターさんにこの後お食事でもってさそわれて、でも興味ないから断ったら強引に行こうよって言われたの」
「それでちょっと怖くなって、逃げようとしたら腕をつかまれて、必死に振りほどいたら足を捻っちゃって」
「そしたら謝ってくれて、なんとか逃げられたんだけど…」
美希の音しか聞こえてこない
変わらず耳を澄ませる
「それでも春香が気が付いて、スタッフさんに言っちゃったの。そしたらスタッフさんが……」
『美希ちゃんが出ないってなると厳しいよねー』
「…って言っちゃったの。それを聞いてたのは春香だけじゃなくほとんど全員で…」
「そんな空気になっちゃったらもう出るしかない…って。美希の勝手で他のみんなに迷惑かけたくないって思ったから」
ここまで聞いてまだ脳内の処理が追いついていない
が、質問が脊髄反射的に飛び出た
「じゃあなんでみんな、美希が倒れたときになにも言わなかったんだ?」
「それは……やっぱり美希が倒れちゃったことで番組が台無しになっちゃったし…」
「そんなことだけで…やつらはお前を見捨てたのか?」
「ち、違うの!ただ……みんなはそこまでして美希とお仕事したくなかっただけなんだと思う……」
「何?」
「みんな言ってた……美希が凄いのは認めるけど、そのついででしかないなら自分たちなりに頑張るって」
「そう……か」
が、まだいくつかわからない点が残っている
「それなら……美希が他の人が嫌だっていったのは他の人のためか?」
「うん……」
「なんでそんなわざわざ、自分が悪者になる可能性もあっただろうに」
「ううん、美希もう悪者だよ。でも後悔はしてないの。美希は美希なりに、他のみんなは他のみんななりに頑張っているのに勝手なことしちゃったから」
「そんなこと…」
「美希はね、お詫びのつもりだったの。でもハニーが毎日ついてくれたから、嬉しくって、なのに……なのに辛くって…」
「でもイジメとかではないってことだろ?それならなんで毎日あんな…」
「違うの……違うんだよハニー…。ハニーが事務所で一人になっていく姿を見るのが辛かったの…」
と瞬間、徐々にいつもの働きを取り戻した俺の脳内は演算処理をするごとに熱を帯びていた
美希が孤立する原因となったのはなんだ?俺が他のメンバーを誘ったから?
なんでもない彼女らを疑い、怒鳴り散らした上、一人孤立した美希を連れ出す
挙句の果てには平等というアイドルプロデュースの根本をあっけなく無視し敵と見る
…………敵は俺だったか。主犯は俺だったか。
気が付いた時にはもう真っ白で、いてもたってもいられなくって
気が付いたら―――病室を飛び出していた
その声ももう聞こえなくなって、どこへ、どこへ?
何を思って走ってるのか、それすらわからなくて
我に返ったときには暗くなった事務所の前にいた
ゆっくり扉を開ける。なんだろう、すごく懐かしく感じる
一歩ずつ、一歩ずつ、歩いて自分の机の前について軽く撫でる
馬鹿みたいにはしゃいで机がめちゃくちゃにされたこともあった
やたらおいしそうな手作りのクッキーがおいてあることもあった
みんな、みんなが笑顔を持ち寄って俺の周りに集まってきてくれていた
それなのに、それなのに。
その思いでさえ自分の黒い心をさらに黒くするには十分だった
俺の勝手な勘違い。ちょっとした勘違い
美希は本当に素晴らしい人材だ。プロデューサーですら虜にしてしまうんだから
虜になり、盲目になり、自分が本来何をすべきか見失わせてしまう姿はまるで天使か悪魔か?
俺が、この事務所を崩壊させてしまったのか
そう思おうと、思うまいと、澱んだ心は少しも光ろうとはしなかった
ここは事務員さんが座っていたかなぁ。もう記憶すら曖昧
机に手をやり、少し撫でてその手とは反対に目を向ける
テープで記された”765プロ”の文字だ
この窓って開くのかな、そう思う前に開けていた
風が寒い。ほとんど何も感じない
一旦後ろを振り返る。暗くも、思い出に満ち溢れた事務所は今ではぐちゃぐちゃに塗りつぶされた読めない落書きのような
もう、自分には必要ないもの。何も自分には必要ないのかな
窓から下を覗いて、特にこれと言って思うこともない
もう思考するのも辛い、というかほとんど考えてないに近いのか
長い長い記憶整理は多分数分、いや本当に数時間たってたかもしれない
氷のように冷たくなった自分はそのまま虚空へ倒れ込むように―――――
なんだ、何をしていたさっきまでの自分は。というかいつの自分だ
ふわふわと浮くような感覚にさいなまれながらしばらくして頭の中に響く声
「…………ニー……」
聞き覚えのあるこの声
愛おしくなるこの声
「……ハニー……」
そうだ、ハニー……ハニーは俺か?俺は………
「ハニー!!」
我に返ると虚空を眺めている俺、と必死に手をひっぱる……俺をハニーと呼ぶ少女
とにかくこの少女の元に帰らねばという潜在意識が働き、直感的に重力にあらがうように体を動かす
もう少し、なぜか体が思うように動かないが既に落ちる心配はないだろう
最後の一押し、ならぬ一引き。本来では少女一人で大の大人を引き上げられるわけなどないのだが
踏みしめる足の感覚、とともに戻ってくる感情。そして視界には――
ハニーと呼ぶ少女……そうだそうだ。俺がこの世で最も愛し、貴く思い、すべてをささげようと誓った――
ほぼ同時に二人は半ば倒れ込むように事務所の床へ座り込んだ
「美希………どうして……」
美希。そう美希だ。まぎれもなくあの美希だろ?
美希は満身創痍といった様子で倒れ込んだあとも俺にもたれかかっている
「ハニー……辛いよね……美希が、美希があの時言ってればこんなに辛くて苦しい思いをさせずに済んだのにって…」
「何度も、何度も思ったんだよ?でも、そのたびにこうなるハニーのことが浮かんだから…」
「だから……ここに来てくれたのか。俺を助けてくれたのか……」
「ハニー……もう大丈夫。大丈夫なの。みんなハニーのこと恨んだりしてない。事務所だって大丈夫だから、ね?」
そういう美希の目からは涙がこぼれそうで
愛しい、これほどに愛しいと想えることがすごいと我ながらに思う
みえる限りの美希をくまなく眺める。あぁ、美希だ。俺の知っている美希だ
生きていることを実感する。自殺未遂の死の恐怖が遅れてきたんだろうか
と、みていると気が付いた。傷がどこにもない。どこにもないじゃないか
そうか。あの傷は……美希が。俺をこうさせないために……
そう思った瞬間堰が切れた
「俺が、俺じゃなくなる気がして。事務所が俺の居場所じゃなくて敵の本拠地みたいで」
「怖い。怖いんだ。本当に、でも美希が、美希の声が聞こえたから」
「俺、戻ってこれたんだ。そう思った、また美希と苦しんだり辛い思いをしたりしたとしても」
「美希がいない俺なんて考えられないんだ」
「俺は……星井美希、お前を愛してる」
「だから…こんな俺だけど、最後まで一緒にいてくれるか?」
「…………もう苦しんだりするのはいや、かな」
「でも。ハニーがいないなんてつまらないもん。だからこれまでの責任として、これからも一緒にいてくれるよね?」
「美希……美希ぃ!うわあああああああああああああ!」
所謂洪水の涙とか形容されるのはこういうことなのか
全身の水分がという表現もあながち大げさではない
泣いて、泣いて、泣いて、泣いて、とにかく泣いて
今までのことを自分の中で水に流したくて。もちろんそんなことじゃ消えはしないし消えたら困る
でも今は美希のぬくもりにすがっていたくて、そのまま眠りに落ちた
―――
――
―
無理な衝撃とショックによる症状は原因不明
まあ原因は大まかに予想がつくが、それでも少しばかりの地獄を味わった俺たちには対したことじゃないと思っていた
だって俺たちの傷が癒えたころにきっとよくなる。そう信じてたし妙な核心があった
毎日美希の病室に顔をだす、というかやはり帰ってきたの方が正しい気がする
ここから出勤して、帰ってきてここで寝てしまうことがほとんどだ
プロデュース業をやめることも覚悟だったが、美希の意見で続けることにした
美希が言った通り皆許してくれて、今では問題なく仕事ができている
美希はその状態だからアイドルは休んでいるがきっと復帰できると信じて
今日もまた同じような顔をした美希、その冷たく暗い顔は
きっとトラウマになってしまっているからだろう
俺が来るとちょっとバツの悪そうな顔をするのは、本人が言いはしないが俺のあのシーンがフラッシュバックするからだと思う
それでもなんとか笑顔で、言葉は心から感謝をこめて。対応してくれる美希と俺は幸せかと言えば幸せだと思う
今日はいつもと違う話題を振ってみた
ちょっと目を見開いたがすぐ元通り無機質な表情で
「うーん、どこかいい場所があるの?」
「その前に、だ。」
懐から四角い箱を取り出す
「あと1年あるけど、むしろ完全な状態で結婚したいからどうかなって思ったんだ」
と言うと同時に箱を開けて中身を見せる
美希はこれと言って表情を変えない、むしろより表情が硬くなったか
「そう……ありがとう…すごく嬉しい…」
「俺……いまだに忘れてないよ。でも、忘れなくてもよくなる気がするんだ。新しい俺たちの家にいかないか?」
必死に稼いで1年間。美希以外に割いた時間はごく少数だったため自然と給料は最低分以外残るというシステムで
新しい住まいは車椅子でも快適に過ごせるようなものだ
アイドルに戻ったときの設備なども充実させた
何よりも、俺との時間をより増やしてトラウマのショック療法という名目が一番強いのだが
「そしたら俺が手を握っててやる。美希にしてもらったように、今度は俺がこっちに呼び戻すから」
「ハニー……」
「全部俺のせいだっていうことの償いもあるけど、お前と一緒に過ごす時間がもっともっと欲しいんだ」
というと半ば強引に唇を重ねる
そういえば初めてだったかな、と変に冷静な俺をよそに美希に変化が
「ハニー……」
ポロポロと涙を流している
感情が封じ込められたかのような先ほどまでとは一転、子供のようになきじゃくる美希を見て一瞬ひるんだが
「大丈夫、大丈夫だから。」
そういって抱きしめる
が、美希は振り払い、目をごしごし擦って何回か瞬きをした後、こちらを見て
とびっきりの笑顔を見せた
「ハニー…!!笑えるように…なった……あはっ。夢みたいだね…王子様のキスで呪いが解けちゃったみたいに…」
「……お前の笑顔を見た瞬間恥ずかしながらも同じことを思ったよ」
すると美希は思い立ったように自らの足にかぶさっている布団を剥ぎ取り
下半身を手を軸にくるりと回して、空中に浮いた両足を一瞬みて、その後俺を見る
「もしかしたら、もう1年いらないかもね?」
と言うと徐々に足に力を入れている様子―――かと思いきや、すっと立ち上がる美希
それを見て軽く笑みがこぼれる
「お前、1年ってそういう1年じゃないんだぞ。しっかり待っててくれよな」
ちょっと馬鹿にしすぎたかな
わかってるよっ、と突っ込みをいれ、ピョンピョン跳ねて飛びついてくる美希の笑顔は俺の知ってたもので
「美希、ハニー一人だけでいいの」
「ん?」
「って足が動かないときずっと思ってた。ただお話を持ってきてくれて、好きな人と過ごせるだけで幸せだなって」
「うん」
「でも、今は違うの。やっぱり美希はみんなと一緒に楽しくすごして、もっともっとキラキラしたいの!」
「んーでも結婚するならアイドルは厳しいんじゃないか?」
「あ、そういえばそうなの……でもなんとかなるって思うな!」
一度伝説になったアイドルだ、やりかねない
そんなことを思いながらふといじわるをしたくなった
「お前の”ハニー”ってのは美希の言うみんなか?」
と、ちょっとやってやった顔をするが、美希も負けじといい顔で
「そうだね、ハニーはみんなかも!」
内心え、とちょっと焦る。だがすかさず
「もうハニーは、旦那様だもんね!あなたっ!!」
と返される。こりゃ一本とられたなと思いながらも
「でも不思議と、ハニーの方がしっくりくるんだよな」
「あはっ!美希もちょうどそう思ってたところなの!というわけでこれからよろしくね?マイハニー♪」
やっぱり、そうだな
ハニーは俺一人で十分だ
Fin
美希のイチャラブ書きたかっただけなのにどうしてこうなったのか今でもわからん
出来れば全員分イチャラブ書いていきたいと思ってる
それではおやすみ
非常に良かった
Entry ⇒ 2012.06.27 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
貴音「創作らあめん 麺や貴音」
真「どうしたのさ春香、入口で立ち止まったら事務所に入れないじゃないか」
春香「えっと……765プロの事務所ってこんなに狭かったっけ?」
真「え……? 本当だ、何か足りないような」
春香「あっ! いつも美希が寝てるソファーとか、テレビもなくなってる!」
真「っていうか、リビング自体がなくなって壁になってるね……ん、のれん?」パサッ
貴音「いらっしゃいませ、お待ちしておりました」
春香・真「えっ」
貴音「さあ、どうぞ席に」
春香「いや、あの……貴音さん? ここ事務所ですよ?」
真「うわ、カウンターにキッチンも……本格的だなあ」
P「まあまあ、いいから二人とも座れ」
春香「プロデューサーさん!? どうなってるんですかこれ、新手のドッキリですか!?」
貴音「春香、どっきりなどではありません。真剣なのです」
P「そうそう、正式な仕事だからな」
真「仕事……これがですか?」
P「生放送は終了したが、ああいうグルメコーナーをニュースの1コーナーでやってみないかってオファーがあったんだ」
春香「凄いじゃないですか!」
真「でもあれって貴音がお店に食べに行くコーナーでしたよね? どうしてこんなセットを……?」
P「それがな……どうも貴音のやつ、食うだけでは飽き足らずラーメンのアイディアも書き溜めてたらしい」
P「俺にも黙ってディレクターに企画を持ち込んじまって……これがまたウケてな」
貴音「そうした経緯により、こうして『麺や貴音』が誕生したのです」
春香「貴音さんってたまに凄い行動力だよね……」
真「うん……まあ春香も人のこと言えないけど」
貴音「それはわたくしの作るらあめんに、765プロがなくてはならないものだからですよ」
春香「え……ま、まさか事務所を材料に……!?」
P「春香のは特別メニューでそうするか?」
春香「ちょっと、プロデューサーさぁん! 意地悪言わないでくださいよー!」
貴音「もちろん建物は使いませんが……わたくしのらあめんは765プロの皆を表したものなのです」
貴音「今日用意したのは春香……あなたをいめえじしたものですよ」
春香「へー……って、え? 私!?」
P「春香ラーメン三丁!」
貴音「春香らあめん三丁、承りました!」ザッ
春香「春香らあめん……」
真「ん? 春香、複雑な顔してるけどどうかした?」
春香「何か、私が具のラーメンみたいで嫌だなあって」
P「はは……まあ、出てくるものはまともなはずだから安心していいぞ。ちゃんとプロの監修で試作してるはずだからな」
春香「はずって、何だか不安になる言い方ですね……」
貴音「今です!」ザパアッ ジャッ!! ジャッ!!
真「でも貴音、凄く手際いいね。期待していいんじゃない?」
春香「真……忘れたの? 亜美と真美が一緒の時の収録……」
真「あー……」
春香「さすがにあれが出てきたら私ちょっと……」
貴音「春香」
春香「わっ!? は、はいっ!」
貴音「ですが、らあめんにおいてそれは一要素にしか過ぎません」
貴音「さ、お待たせ致しました。どうぞ召し上がれ」トンッ
春香「う……あれ? ヤサイの山がない……」
P「ネギ、チャーシュー、メンマ、煮卵……昔ながらの醤油ラーメンって感じだな」
真「春香だけに普通のラーメンってことか」
春香「ちょっと真、それってづいう意味?」
P「まあいいから、伸びないうちにほら」
「「「いただきまーす」」」
春香「ん……!」
貴音「お味はいかがですか?」
真「うわ……! これ、美味しいよ!」
春香「う、うん……なんていうか、甘みがあって……」
P「ん。鶏がらと煮干しのスープの味が強く出てて、醤油っていっても塩辛さより旨みが強いな」
貴音「ふふ……普通とは王道、王道とは良いものだから王道なのです」
貴音「実直に王道を歩み続けるその姿勢は、もはや一つの個性であると言えましょう」
真「んー……でもやっぱり春香って普通なんだね」
春香「ちょっと真! せめてもう少し浸らせてよー!」
P「まあ、それでこそ春香らしいとも言えるかな」
春香「もー、プロデューサーさんまでひどいですよー!」
貴音「……本当にそうでしょうか?」
これほど素晴らしいものはない
貴音「春香は普通……それだけでは決して春香たり得ません」
貴音「このらあめんには、もう一つの春香を表す仕掛けがあるのですよ」
春香「もう一つの私……?」
P「うおっ、何だこりゃ!?」
春香「わっ……プロデューサーさん、どうかしたんですか?」
P「煮卵を割ったら中から赤いスープが……」
真「ん、この匂い……カレー?」
真「うわっ、辛い!?」
P「うおお……相当な辛口だぞ、これは……!」
春香「ん……でも、なんだか甘さも強くなったような……?」
真「あ……本当だ。それに醤油味からカレー味になったのに、全然変な感じもしない……」
貴音「そう、この半熟煮卵の中には注射器でカレーが注入してあるのです」
貴音「辛さを強くした代わりに加えているもの……それが鶏、そしてとまと」
P「チキンカレー……なるほど、だから鶏がらベースのスープと馴染むってわけか」
春香「この甘さってトマト? 最初よりもすっきりしてて、辛いけどどんどん食べたくなってくる……!」
美味そう
「「「ごちそうさま!」」」
真「ふあ……スープまで全部飲んじゃったよ」
春香「私も……うわあ、体が熱い……」
貴音「ふふ、お粗末様」
P「しかし、何であんな辛いカレーなんだ?」
貴音「普通と言われる春香ですが、時に凄まじい情熱……そして切れ味の鋭いかりすま性を見せることがあります」
貴音「閣下、などと呼ばれていたでしょうか」
貴音「春香にはこの強く激しい部分が確固としてあり、だからこそ普通が、王道が映える……」
貴音「春香らあめんは……天海春香は、そう単純なものではないのです」ニコ
春香「え、ええっと……褒めすぎじゃないかなあ? あはは……」
貴音「春香……この一杯がわたくしの正直な気持ちです」
貴音「共に高みを目指す者として……時に強く、気高く王道を歩むあなたを、わたくしは尊敬しているのですよ?」
春香「あう……」
真「あーあ、トマトみたいに真っ赤になってるよ」
P「まさにイメージカラーだな」
春香「ううう……嬉しいけど、私の扱いってもう少し良くなりませんか……!?」
貴音「ふふ、そんな部分も含めて王道なのですよ」
真「え、これってレギュラーコーナーなんですか?」
P「週1だけどな。もちろん次は別の誰かをイメージしたラーメンが出てくる予定だ」
春香「来週のももう決まってるんですか?」
貴音「ええ……来週は>>33ですよ」
P「……」
貴音「……」
ウッウー!! オッハヨウゴザイマース!!
P「!」ガタッ
アッ プロデューサー エ? ドコイクンデスカ? ナンデスカ?
P「はい一命様ご案内~」
貴音「いらっしゃいませ、やよい。お待ちしておりました」
やよい「え? あ、はい! おはようございまーす!」
伊織「……じゃないわよ! 朝っぱらからいきなりやよいだけ抱えていってどういうつもりよ!?」バサッ
千早「高槻さん、無事!?」バサッ
P「はい、続いて二名様ご案内~」
貴音「繁盛して参りましたね」
P「どういうって……れっきとした仕事だが」
千早「この内装……立ち入り禁止になっていたけど、これは撮影用のセットなんですか?」
貴音「先週より開店致しました、『麺や貴音』です。どうぞ、よしなに」
貴音「本日はわたくしの765らあめん第二号、やよいらあめんを皆に食していただきましょう」
やよい「私ですか?」
伊織「なんていうか……もう完成図が予想できるんだけど」
千早「朝からラーメンだなんて、胃が受け付けないわ……」
伊織「ちょっと! まだ食べるって言ってないでしょ!?」
千早「私もその……一杯どころか半分も食べきる自信が……」
P「まあまあ、いいから座った座った」
やよい「うっうー! ラーメン食べさせてもらえるんですか!? 嬉しいですー!」
やよい「ラーメンなんていつぶりかな……ああっ、でも長介たちに悪いかな……?」
千早「高槻さん……」
P「やよい、家族の分も用意してもらおう……夕食時に連れてきていいぞ……」
やよい「本当ですか!? 夢みたいですー!」
伊織「やっぱり……」
やよい「うっうー! 凄い量のもやしです! もやし祭りができちゃいます!」
貴音「……はっ!」ジャーッ!!
千早「中華鍋で炒めるのね……量が多すぎて二つも鍋を使ってるわ」
P「なかなかの手さばきだろ? この一週間ずっと鍋振りの練習してたからな、貴音は」
伊織「アイドルに何やらせてんのよ……」
やよい「香ばしくっていい匂いがします……」クンクン
伊織「で、あのもやしの炒め物乗せて出来上がりでしょ? 何一つ予想外のことがないじゃない、テレビ的にNGよ!」
P「いや、まあ……あれだ、王道というものはいいものでな?」
千早「もやしラーメンは王道なのでしょうか?」
P「……」
やよい「王道です!」
P「……うん、王道だよな、やよい……スマン……」
貴音「……お待ちどう様です」ゴトッ
伊織「って、馬鹿じゃないの!? 具がもやししかないうえに、麺も何も見えないくらい乗せてんじゃないわよ!」
千早「プロデューサー……あの、見るからに私には完食できなさそうで」
貴音「百聞は一見に……いえ、一食にしかずです。どうぞお早めに」
伊織「……わかったわよ、食べればいいんでしょ?」
千早「うう……あら? ごま油のいい匂いが……これなら確かに、ちょっと食べてみたくはあるかも……」
ズ… ズズーッ シャクシャク ズズッ!!
伊織「おいしっ……!」
貴音「ふふ、光栄です」
伊織「ちょっ……別にアンタに言ったんじゃないわよ!」
伊織「でもまあ、シンプルな醤油ベースの味付けでいいんじゃない? 平打ちの麺にも合ってるとは思うわよ」
千早「え……?」
伊織「な、何よ千早? 伊織ちゃんの感想に何か文句あるわけ?」
千早「あの、確かに美味しいけど……醤油ベースじゃなくて、甘辛い味付けじゃない?」
伊織「え?」
千早「え……?」
P「鍋を二つ使ったのはもやしが多いからじゃなく、もともと二つの味付けを作るからだったってことか」
貴音「はい。片方は伊織の言う通り、スープと醤油ダレをベースに味付けしたもの」
貴音「もう片方は千早の言う通り、コチュジャンやテンメンジャンを加えた甘辛い味付けにしています」
やよい「それに、何だか海の味がします!」
貴音「ええ、スープは魚介ダシを基本としたあっさり味に仕上げました……あくまで主役はもやしですので」
千早「そうね……確かに味は素晴らしいけれど、炒め物をこんなに多くは……」ズズー シャクシャク
伊織「……」ズズーッ シャクシャク
千早「……」ズズーッ シャクシャク
伊織(……気のせいかしら? これって)
千早(おかしい、箸が止まらないどころかどんどん進んで……)
伊織・千早「時間が経つほど美味しくなってきてる……!?」
P「……二種類のもやしの味付けが、スープの味を変えてるのか?」
貴音「ご名答です」
貴音「スープはあえて魚介の薄味に仕上げましたが、もやしの醤油味と甘辛味がだんだん溶け出してきます」
貴音「さらに、もやしの味付けに使ったのは鶏がらスープ」
貴音「時間と共にもやしに絡んだスープが溶け出し、Wスープのラーメンへと変貌を遂げるのです!」
千早「はあっ……ん、あら?」
P「おお、二人とも綺麗に完食したな。スープまで夢中になっちゃって」
伊織「違っ……だって、せっかく作ってもらったもの、残すのも礼儀知らずじゃない!」
千早「あの、プロデューサー、私本当にいつもはこんなに食べられるわけではなくて……」
やよい「美味しかったですー! 幸せ……」
伊織「あ……」
千早「う……」
伊織「ええそうよ、美味しかったわよ! 夢中になっちゃったわよ! 悪い!?」
千早「気付いたら丼が空っぽで、まだ食べられそうなくらいで……ラーメンは脂っこくて苦手だったのに、癖になりそう……」
貴音「安いというだけではなく、もやしというものは本当に素晴らしい食材であるということです」
貴音「本当に美味しく食すことができ、また違う味を取り持つこともできる存在……」
貴音「やよいはそうした存在だと思うのです」
貴音「こうして、決して素直とは言えない二人に慕われていることがその証明と言えましょう」
伊織「素直じゃなくて悪かったわね!」
貴音「そして、このらあめんが時を経てさらに味を良くするように、やよいには素晴らしい素質があります」
貴音「大器晩成。いつか高みへ昇る、やよいの未来をこの一杯に込めました」
千早「高槻さん?」
やよい「えっと、あんあり難しいことはわからないですけど……」
やよい「大好きなもやしを使ってて、それがすっごい美味しいラーメンで、それが私を表してくれてるって……」
やよい「なんだか私、すっごく幸せかなーって!」
貴音「ふふ……そのように言ってもらえると、わたくしも自然と笑顔になりますね」
伊織「ま、そうでなくちゃやよいって感じしないわね!」
千早「ええ……私もあんな風になれたら……」
伊織「もう遅いんじゃない?」
千早「……くっ!」
かすみ「うん、本当……」
やよい「ほら、みんな慌てないで! ちゃんと貴音さんにお礼言わないと駄目だよ?」
長介「うん。貴音姉ちゃん、ありがとう!」
貴音「こちらこそ……ふふ、皆の喜びの顔が何よりの報酬ですよ」
P「さて、来週は>>64だったな。また取材先に連絡入れとかないと」
雪歩「な、何なんですか!? 私何されるんですか!?」
あずさ「あの、雪歩ちゃん? ちょっと落ち着いて~」
貴音「はて……雪歩はなぜこうまで怯えているのでしょうか」
P「この間出演したバラエティで、スタジオに大型犬が登場してな……仕込みのハプニングだったんだが相当応えたらしい」
雪歩「あの寸胴の中ですか? それともカウンターの陰に犬が隠れてるんですか!? 穴掘って離脱しますぅー!」
あずさ「駄目よ雪歩ちゃん! 事務所の床は掘っちゃダメって何度も言われてるでしょう~!?」
貴音「わたくしはどのような仕事も選り好みはしませんが……場合によっては選ぶべきかと」
P「今後はなるべく善処する」
雪歩「四条さんが仕掛け人だなんて……765プロには神も仏もいないんですぅー!」
あずさ「雪歩ちゃん! ここはそういう場所じゃないのよ~!」
貴音「あなた様…雪歩に何をしたのですか」
P「そういえばここに連れ込んだやり方が、前のバラエティに誘い込んだ時と似てたかも……」
貴音「それはどのような」
P「こう、脇に抱えてポイッと」
貴音「あなた様……自重なさいませ」
P「できる限り考えてみる」
雪歩「犬ラーメンなんですか!? そうなんですね!?」
あずさ「それは私も遠慮したいわね~……」
P「こりゃ駄目だ。貴音、とにかく作ってから考えよう」
貴音「釈然としませんが……わかりました」バサッ
貴音「さて、冷蔵庫のあれを泡立て直して……と」
ザバーッ ジャッ ジャッ!!
あずさ「あら、綺麗……」
雪歩「え? わ……丼の上がフワフワでキラキラしてますぅ」
貴音「雪歩のイメージカラー、白で纏めてみました。乗っているのは卵白を泡立てためれんげですよ」
P「ん、スープも白いんだな……豚骨か?」
雪歩「え……私、豚骨ってちょっと癖が強くて苦手です……」
貴音「それなら大丈夫ですよ。さ、召し上がれ」
雪歩「ふわ……これ、豚骨じゃない? 味はしっかりしてるけどさっぱりしてます……!」
P「なるほど、鶏白湯か」
あずさ「あら~、プロデューサーさんったら、こんな早い時間からパイタンだなんて……」
P「……俺何か変なこと言いました?」
雪歩「鶏なんですか? 鶏がらスープはわかりますけど、それよりずっと濃い感じがしますぅ」
貴音「そうすることで白濁した、旨みとこらーげんたっぷりのスープがとれるのですよ」
雪歩「そうなんですか……濃厚そうなのに、あっさりしてて食べやすいんですね」ズズーッ
貴音「癖のない塩ダレを使っていますし、メレンゲにはレモンを加えてありますから……後味はさわやかになるかと」
P「塩ダレの絡んだ白髪ネギもいいな。いい感じに味を引き締めてくれてる」ズルズル
あずさ「あら? メレンゲの中に何か……まあ!」
貴音「その通り。卵黄とみじん切りのネギをたっぷり加えた、特製のつくねです」
貴音「優しくなりすぎるくらいの雪歩らあめんにおいて、しっかりとしたぼりゅうむ感を担ってくれるでしょう」
あずさ「柔らかくって……ああっ、とってもジューシーだわ!」
雪歩「えっと、つくね、つくね……ありましたぁ!」
雪歩「んっ……なんだかメレンゲの中のつくねを探すだけで楽しくなっちゃいます!」
あずさ「美味しかったわ~、真っ白なラーメンだったけど優しいだけじゃなくて飽きない味なのね」
雪歩「……!」
貴音「ええ。雪歩のイメージカラー、白で纏めましたが……堂々とした、自信の溢れるらあめんに仕上げられたと思っています」
雪歩「これ、雪歩ラーメン……私のラーメンなんですよね?」
貴音「はい。わたくしの雪歩のイメージを形にしたものです」
雪歩「……私、前のショックを引きずっちゃうし、自信も持てないダメダメな子ですけど……」
雪歩「でも、四条さんのラーメンに近づけるように頑張ります!」
オイ イヌミ、ソッチイッチャダメダゾ!! ゴハンナラアルカラ!! イヌミッタラ!!
バササッ!!
雪歩「え?」
いぬ美「……」
雪歩「……」
いぬ美「……わふっ」
雪歩「……」プチン
雪歩「穴掘って埋まってますぅぅぅぅぅ!!」ザクッ ザクッ ガキンッ バキッ
あずさ「雪歩ちゃん駄目よ~! 落ち着いて~!」
貴音「この店は、来週までに復旧できるでしょうか」
P「無理だな」
≪おしまい≫
一応全キャラ分のレシピは考えてあるので、他のはまたいずれ。
ありがとうございました。
またの機会を楽しみにしてるよ
レシピ詳細教えてくれてもいいのよ?ってか教えてください
乙
腹減ったなぁ
Entry ⇒ 2012.06.27 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
京子「結衣って私のこと好きでしょ?」
京子「いやーはたから見れば絶対そうなるって」
結衣「そもそも有り得ないだろ、私が京子を好きになるって」
京子「そうなのかなぁ……」
結衣「そうそう、ちょっとは考えて物を言いなよ……」チュッ
京子「んっ……」
京子「あっ、あの、今のはなに?」
結衣「ただのキスでしょ、いつものことじゃないか」
京子「……」
京子「えっ、私のせいなの!?」
結衣「だって有り得ないでしょ、私が京子を好きになるなんて」
京子「……まぁそうなのかな、本人がそう言ってるんだし」
結衣「そうそう、京子、……もう一回口貸して?」クイッ
京子「あっ……」
結衣「ん……はむ……」チュッー
京子「んっ、んぅ……はっ……」チュッ
結衣「んっ……、ごちそう様」
京子「……いっ、いつものキスだね」
結衣「うん、こんなの今更だよね、キスするなんて」
京子「わ……私のこと、嫌い?」
結衣「ううん、嫌いではないよ」ギュッ
京子「好きでもないと」
結衣「うん」
京子「どういうことなの……」
結衣「……」チュッ
京子「んぅ……はぁ……」チュッ-
結衣「……んっ、ごちそう様」
京子「……ぃ、ゆい」ギュッ
京子「すっ、好きだから、キスするんでしょ?」
結衣「……」チュッ
京子「っ、ぅ……はっ……」
結衣「……これでもう変なこと言わない?」
京子「やっ、やだ、結衣から好きって聞くまで――」
結衣「……」ギュッ
京子「んっ……えへへ……結衣のぎゅー大好き」
京子「結衣の心臓からどきどきって、聞こえる……」
結衣「……」チュッ
京子「はむっ……んっ……」
結衣「だって京子が変なこと言うんだもん」
京子「はぁ……」
京子「もういいや、ちょっとこのままひざ枕させて」ゴロン
結衣「好きじゃないよ、ただいつも通りいっぱいキスしただけ」
京子「……はいはい、早く頭も撫でて」
結衣「……ふふ」ナデナデ
京子「いま笑ったよね」
結衣「笑ってないよ」
結衣「……」ナデナデ
京子「幼馴染でも、それが同性でも好きになるのはおかしくない」
結衣「へぇ、そうなんだ」
京子「だから結衣が私を好きになっても――」
結衣「んっ……」チュッー
京子「やぁっ、んんっ……はっ……」
結衣「……ご、ごめん調子乗ってキスしすぎた」
京子「いいよ別に、私もまんざらでもないし」
結衣「……えへへ」
京子「いま笑ったよね、絶対えへへって言った」ジッ
結衣「笑う場面でもないだろ、何言ってるの?」
京子「……」ムスッ
京子「結衣、私すき……」
結衣「……」ンー
京子「焼き、を食べたい」
結衣「あ、あぁそうだな、すき焼きね……」
京子「ほっ、ほんと!?」
結衣「ちょうどタイムセールで買ったお肉もあったんだ、もちろん国産の」
京子「しかも国産かよ……」ゴクッ
京子「ずいぶん羽振りがいいじゃないの、一人でそんなものばかり食べ……」
結衣「京子のためだけに買ってきた」
京子「えっ?」
結衣「京子の笑顔が見たいから買ってきた、でも京子のことは好きじゃないよ」
京子「……いや、もう慣れたけどねこういう展開」
京子「あいあーい、適当にごろごろしてるよん」ニコッ
結衣「いや悪いんだけど隣に立っててくれないかな」
京子「へっ、でも私はお料理とかあまり出来ないけど……」
結衣「知ってるよそんなの、隣に突っ立ってるだけでいいんだ」
京子「えへへ、もう結衣ってば私がいないと……」
結衣「京子が隣にいないと寂しい、でも京子のことは好きじゃないよ」
京子「……はいはい、隣にいないと寂しいって聞けただけで満足です」
結衣「そうかな、京子の方が可愛いと思うけど」サクサク
京子「なっ、でもどうせ私のことは好きじゃないんだろ」プクー
結衣「……で、でも嫌いじゃないから」
京子「分かったよもう贅沢言わない、できれば結衣の口から聞きたかったけどね」
京子「……たったの二文字なのに」
結衣「……」チュッ
京子「んっ……って、今のは何のキス?」
結衣「しょんぼりしてる京子が可愛いから、ついキスしちゃった」
京子「……な、なんだそれ、新しいパターンやめてよ」
京子「何ていうかさ、お料理の腕前上がったよね結衣」
結衣「今日はただ単にすき焼きだから、でしょ?」
京子「ううん、そういう補正抜きでも絶対上手くなったよ」アムッ
京子「……おいちぃ~」ニコニコ
結衣「美味しいものを作れば京子の笑顔が見られるもん、そのおかげかな」
京子「……でも京子のことは好きじゃないよ」
結衣「うん、……あ、京子、あ~ん」スッ
京子「あ~ん、はむっ、えへへ……はぁ……素直になろうよ結衣」
結衣「お粗末さま、食べるだけじゃなくてちゃんと運動もしないとね」
京子「……うーむ、同じもの食べてるのになんで結衣はお腹掴めないの」フニフニ
結衣「こらこらっ、あははっ、ひっ、く、くすぐったいよ……」
京子「……ずるい」
結衣「京子のために体型維持のジョギングしてるからね、そのおかげかな」
京子「私に好かれるために?」
結衣「うん、でも私は京子のこと好きじゃないけどね」スタスタ
京子「……クールあまのじゃく素直デレ?」
結衣「京子ーお風呂沸いたから先に入っちゃって」
京子「んー、結衣も一緒に入ればいいじゃん」
京子「……えへへ、なんちゃって」ニコッ
結衣「後で行くよ、お皿洗ってからすぐ行くね」
京子「あっ、来ちゃうんだ……」
京子「はっ、はやく、結衣が来る前に浴槽に!」
ガラガラ
結衣「お待たせ、湯加減はどうかな」
京子「せ、せーふ……」チャポン
結衣「うん?……よく分からないけど、湯加減はオッケーってことかな」
京子「……さ、さすがに裸見られるのは、恥ずかしいっ」
京子「あ、結衣も一応隠すだけの理性はあるんだ……残念」
結衣「な、なんだよ理性って……」
京子「……」
結衣「ちょ、ちょっと待て、凝視するのは無しだろさすがに」
京子「……もう一緒に入られないかもしれないから、目に焼き付けるの」ジッ
結衣「うっ……京子が入りたいならいつでも一緒に入ってやるから……」
京子「えっ!?」
京子「その調子であの二文字も言っちゃいなよ!」ザバッ
結衣「まぁ京子のことは別に好きじゃないけど」
京子「いや、お風呂一緒に入る方が恥ずかしいだろ!!!」
京子「ほんっとワケが分からないよ、まったくまったく……」ブツブツ
結衣「そんな仁王立ちしてるけど……裸を隠さなくて、いいの?」
京子「あっ……うわっ!?」ザブン
京子「……見た?」
結衣「見てないし、仮に見たところで京子の裸とか興味ないし」
結衣「……」ツー
京子「……鼻血、出てるけど」
結衣「……見てない」ツー
結衣「んー、そりゃあ京子の裸を見れば鼻血も出るか……」ポー
京子「……好きな子の裸だからね」
結衣「……」チュッ
京子「んっ……!?……あっ、はぁ……んっ……」
結衣「……ぷはっ」
京子「くそっ、久々だから忘れてた、禁句だったんだ……えへへ、まぁいいけど」
京子「……お風呂でキスってすごいことしてるよねぇ、ほんと」シミジミ
結衣「ほら、あまり長湯しちゃうとのぼせちゃうよ」
京子「……はーい、もっと結衣とお風呂入りたかったな」ザバッ
結衣「っ!?」
京子「……あっ、ゆ、結衣のえっち、変態!!」
結衣「いや、形のいいお尻だよ、本当にきれい」ツー
京子「せ、せめて嘘でも見てないって言えよっ!」
結衣「……な、なにも見てない」ツー
京子「……はぁ」
京子「……うるさい、変態」
結衣「なっ、なんだよその言いぐさは……」
京子「……あ、パジャマも洗ってくれたんだ」モソモソ
結衣「当たり前だろ、京子喜んでもらいたいもん」
京子「……結衣」
結衣「うん?」モソモソ
京子「どうして私にいつも優しくしてくれるの?」
結衣「……」
京子「……そっか」
結衣「小さいころから京子の面倒見るのが私の役割みたいなの感じてたし」
京子「っ……!」グスッ
結衣「だから京子は何も気にしなくてもいいよ、私が好きでやってるんだから」ニコッ
京子「……いい、もういいよ、ありがと結衣」ガラッ
京子「お布団先に敷いてるからね、これくらいは私もできるから」
バタンッ
結衣「京子……」
結衣「……京子、もう寝てるの?」
京子「……ゴメンね私今日はもう疲れちゃった」
結衣「ううん、なんか様子が変だったからちょっと心配だったんだ」
結衣「風邪とか引いてないよね、辛かったらすぐ言うんだよ」
結衣「……おやすみ」モソモソ
京子「……」
京子「辛いけど、風邪薬とかじゃ治らないから……」グスッ
京子「……結衣、まだ起きてるよね?」モソモソ
結衣「んっ、もう少しで寝るところだった……」
京子「そっか、えへへ、最後の最後にさ、結衣に聞きたいことがあって」
結衣「ふふ……明日の晩御飯はお刺身でも食べたいの」
京子「……これが最後、結衣って私のこと好きでしょ?」
結衣「っ……」
結衣「…………」チュッ
京子「んっ、やだっ、もう止めてよっ!!!」ドン
結衣「きょ、京子……」
京子「わたし結衣が何考えてるか分からないよ……えっ……ひぐっ」
京子「どうして好きって、言ってくれないのっ?」ギュッ
結衣「わ、私は……」
京子「もういらないっ、ぜんぶいらないよ、……」ポロポロ
京子「優しくされるのも、キスされるのも、辛くなるだけ……だから……」グスッ
結衣「……ゴメン、京子」
京子「……ううんっ、分かってくれたらならそれでいいから、さ」
京子「……えへへ、そっか」
京子「……ありがとう、わがまま言っちゃってごめんね」
結衣「ずっと、ずーっと、長い間我慢してたんだ」
京子「せめて今日だけはこのまま、最後でいいから……」ギュッ
結衣「……何年間も抱え込んでた」
結衣「幼馴染なのに、同じ女の子なのに……」
結衣「好き、じゃ片づけられないくらい京子のことが大好きなんだ」ギュッ
京子「……えっ?」
結衣「ふふ、私の性格は京子が一番よく知ってると思うんだけど」
京子「ゆっ、結衣は、あまり嘘つかない……」グスッ
結衣「……正解」チュッ
京子「っ……んっ……はむっ……」ギュッ
結衣「はっ……待たせてゴメンな、京子」
京子「最後の最後でギリギリセーフだったね、ふふ」
京子「あーもう暑苦しい……」
結衣「好き好き大好き、愛してる……♪」ギュッ
京子「なにそれ、一休さんのOP?」
結衣「そ、そっちじゃねーよ、バカ!」
京子「……えへへ、まだ足りないからもっと好きって言って?」
結衣「……こっちも数年分溜まってるんだ、いくらでも言ってやる」ギュッ
京子「いやーん……」
京子「有り得ない、マジで夜通し愛の言葉ささやいたよこの人」カァー
結衣「……まだ足りないです」ギュッ
京子「も、もう勘弁して、こっちの身がもたないから!」
結衣「……ま、これからゆっくりでもいいか」
京子「へへ、そうそう、それでいいんだよ」
結衣「……ふふ」
結衣「んー?」
結衣「……そう言えば京子から好きって聞いてないな」
京子「はいはい、愛してるよー結衣」
結衣「……えへへ」
京子「……好きって言う照れ隠しでキスするって、どうなの?」
結衣「……それは突っ込まないで」
終わろう
乙乙
お疲れ様
Entry ⇒ 2012.06.27 | Category ⇒ ゆるゆりSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
幼馴染「幼馴染に幻想抱いたっていいじゃない!」男「は?」
男「なんなのって言われてもなぁ」
幼「幼馴染のくせに!」
男「俺から見たら、お前も幼馴染だけどな」
幼「全然鈍感じゃない!」
男「え、良い事じゃないの?」
幼「小6の時、私の気持ちを慮って、先に告白してくれたし!」
男「したなぁ」
男「あの頃の幼はずーっと困ったような顔してたもんなぁ」
幼「…その告白をそのまま受けちゃった私も私だけど」
男「受けてくれたなぁ」
男「まぁ、生まれた時からお隣さんだし」
男「告白する前からずっと一緒だったけどな」
幼「それはそうだけど…」
男「それになぁ…」
男「幼が、わかりましたって言ってくれたからなぁ」
男「俺達、付き合ってるんだよなぁ」
幼「高校になっても変わらない関係!」
男「なんだよ、何か変わりたいのか?」
男「ならいいだろ。朝っぱらから何言ってるんだ」
幼「アンタには私の幼馴染だって言う自覚が足りないって言いたいのよ!」
幼「周りに、ヤキモキさせるような女子の姿もなし!」
男「すいませんね、冴えない人間で」
幼「映画で言えば、通行人Aレベルの容姿!」
幼「志望する大学には、B判定という成績!」
幼「目からビームの一つも出せやしない!」
幼「どれをとっても平均・平凡!」
男「まぁ否定はできねーけどさ」
男「あと、目からビームって、人間じゃないよな?」
男「フラグ?」
幼「それを見てヤキモキする私!」
男「ヤキモキしたいの?」
幼「そういう幼馴染としての素質が、男には足りない!」
男「幼馴染って素質が必要なの?」
男「フラグとやらの数、多すぎるだろ」
男「あとなんで12飛ばしちゃった?」
幼「うっさい!とにかく!」
幼「アンタには幼馴染分が足りない!」
男「幼馴染分って何?」
男「バカではねぇよ。普通だよ」
幼「幼馴染分とは、幼馴染に含まれている成分の事に決まってるじゃない」
男「え?何その謎成分。怖い」
幼「そこんところがわかってないから、アンタはバカだって言ってるのよ」
男「あー、はいはい。バカだなぁ、俺は」
幼「もうちょっとグイグイ食いついてきてよ!」
男「えー。何か面倒くさい感じがするから、あんま絡みたくないなぁ」
幼「可愛い幼馴染の彼女に向かって、面倒くさいとは何事か!」
男「言っちゃナンだけど、幼も十分平凡だよな」
幼「私は…まぁ平凡…かな?」
幼「成績は…中の上くらい!」
男「俺と大して変わらないから、中の中だろ」
男「同じ大学の判定、Bだっただろ?」
男「なんでちょっとだけ、見栄張っちゃった?」
幼「見栄を張りたいお年頃なんだよ!」
男「同じ年だけどな」
男「別にいいじゃんか、平均」
幼「貧乳って程小さくないし、巨乳って程大きくない…」
男「そうだなぁ。服の上からしか観た事ねーけど」
幼「もっとメリハリのきいた体型だったらなぁ…」
男「メリハリねぇ」
幼「こう、ボンキュッボン!って感じでさぁ」
幼「そういう事、不意打ちで言うの止めなさいよっ」
男「はいはい、ごめんごめん」
幼「なんか、おざなりな返事!ムカつく!」
男「落ち着けよ、幼。皆見てるぞ?」
幼「…」
幼「料理の腕前は…美味かったでしょ?」
男「そうだなぁ…カントリーマアムくらい?」
幼「それは褒めすぎだよ!」
男「いや、普通って意味で言ったんだけど…」
幼「カントリーマアムは超美味しい食べ物じゃん!」
男「そうだけどさぁ」
幼「レシピの通りに作ってるんだから」
幼「激辛になったり、激マズになったりはしないよねぇ」
男「別に手作り弁当を作ってきたりもしなかったもんなぁ」
幼「お互い、親がお弁当作ってくれるもんね」
男「…」
男「他に何かないの?」
幼「…」
幼「はっ!もしかして、私にも幼馴染分が無い?」
男「ははは、自滅したな、幼」
男「ん?下駄箱の中に…」
幼「何?」
男「手紙が入ってた…」
幼「!!!!」
男「何だよ?」
幼「フラグキタコレ!」
男「何で幼が興奮するんだよ?」
幼「期待せざるを得ない!」
男「そんな事にはならないと思うけどなぁ」
幼「誰からなの?誰からなの?」
男「封筒には書いてないなぁ」
幼「今開けて見てよ!」
男「いくら付き合ってても、それは無い」
男「この手紙の差出人に失礼だろ」
幼「そ、それもそうね」
男「ま、心当たりもあるしな」
幼「え?だ、誰よ!」
男「正解はウェブで!」
男「まぁ教室についたら、話すよ」
幼「…こんな時でもやっぱり男は普通だね」
男「あぁ、はいはい、普通普通」
幼「また!おざなりな返事!」
男「いいから、教室行こうぜ」
友「おはよーっス、お二人さん」
男「おはよう」
幼「おはおう、友君」
男「…」
友「…何だよ、人の顔じろじろ見て」
友「俺に惚れたのか?」
男「気色悪い事言うな」
友「!」
男「…あぁ、返事は言わなくていいぞ」
男「今の顔見て、わかったから」
友「…何故バレた…」
幼「え?友君って、ゲイなの?」
友「そう、違う違う」
男「お前のイタズラだよな?」
友「そうそう、俺のイタズラです」
女「何でわかったの?」
男「俺みたいな、キング・オブ・ザ・普通の男子高校生に」
男「ラブレターなんてくるかよ」
友「キングって普通じゃなくないか?」
男「先週、文具屋で買ってるの、隣りで見てたんだが?」
友「くっ…イージーミス…か」
友「せっかく女の子っぽーい丸文字で」
友「中身もしっかり書いたのに…」
友「見もせずにバレるとはな!」
友「俺の昨夜の貴重な3時間を返せ!」
男「お前はアホだなぁ」
男「…で、何がしたかったんだ?」
友「お前と幼ちゃんの夫婦みたいな雰囲気に」
友「風雨を巻き起こしたかった」
友「あと、勉強はかどらなくて、ムシャクシャしてやった」
男「そういうわけだ、幼」
幼「…つまんないのー」
男「まぁそう言う訳でさ」
ムシャムシャ
幼「ん?何よ」
男「俺達の仲はこれからも平凡に続くって訳だ」
幼「それ、私達の仲が続かないってフラグ?」
ムシャムシャ
男「何だよ、別れたいのか?」
幼「違うよ!そんな訳ないじゃん!」
幼「付き合い始めて長いから」
ムシャムシャ
幼「単なる幼馴染って期間が短すぎだって言いたいのよ!」
幼「幼馴染に幻想抱いたっていいじゃない!」
男「はぁ…そうっすね」
ムシャムシャ
幼「そう思った訳よ、高校三年にして、ね」
男「ドラマチックねぇ…」
ガツガツガツ
幼「そうだよ!もっと…こう…」
幼「キュンキュンしたいんだよ!」
幼「例えば…そうね」
幼「別に意識せずに長年隣りに居た、単なる幼馴染の関係から」
幼「恋人へと変わる瞬間を、今、体験したいんだよ!」
男「…」
チュッ
幼「!」
ガリガリガリ
男「ドラマチックかなと思って?」
幼「…なかなかやるわね」
ガツガツムシャムシャ
男「それは良かった。勇気だした甲斐があった」
幼「…付き合い始めて、6年目にして、初めてのキスだもんね」
幼「いいじゃない、今ので私の心は満たされたわ!」
ガツガツガツ
男「それは重畳」
幼「…ねぇ、たまにでいいからさ」
男「ん?」
男「…普段と違う事、ね」
幼「…うん」
男「考えておくよ、幼」
幼「ありがとう、男。大好きよ」
男「…俺も大好きだよ、幼」
幼「…じゃあそろろろ…」
・
・
友「…お前らさぁ」
友「ほんっと、大概にしろよ?」
友「まだ昼休みだぞ?」
友「周りが昼飯食ってる中、チューするとか!?」
友「ちょっと意味がわからん!」
男「おい、友…ちょっと」
友「なんだ!親友なのに、モブ扱いか!背景の一枚絵か、俺は!?」
幼「友君、声が…」
友「畜生!!!爆発しろ!!!バカップル!!!!!!!」
クラス一同「友、うるさい!」
おわり
封筒食ってんのかとおもた
まぁそう読めなくもないがw
Entry ⇒ 2012.06.27 | Category ⇒ 幼馴染「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
元太「うな重ゥゥゥゥゥ!」コナン「やべぇ、禁断症状だ!」
キャンプの帰りに食堂に寄った少年探偵団。
<食堂>
元太「うな重うめぇ~!」ガツガツ
阿笠「これこれ、あまりがっつくと下品じゃぞ元太君」
光彦「しかしよく入るもんですねぇ、これでもう三杯目ですよ?」
歩美「元太君のお腹、またおっきくなっちゃうね!」
元太「いいじゃんか、うな重は別腹なんだよ!」
元太「うめぇ~!」ガツガツ
コナン(ハハ……普通はデザートとかが別腹っつうんだけどな)
灰原「…………」
元太「楽しかったぜ! またキャンプしような、博士!」
光彦「さようなら!」
歩美「また明日ね、コナン君、哀ちゃん!」
阿笠「うむ、気をつけて帰るんじゃぞ!」
コナン「さてと……じゃあ俺も帰るとすっか」
灰原「工藤君、ちょっと待ってくれる?」
コナン「ん?」
灰原「小嶋君……おかしいと思わない?」
コナン「元太が? なんで?」
灰原「彼の食欲よ……」
灰原「うな重が好きだからって、いくらなんでも食べすぎだと思わない?」
コナン「なんだ、博士の懐具合を心配してんのか?」
コナン「大丈夫だって、今日食ったうな重だって安物だしよ」
灰原「バカね、そうじゃないわよ。純粋に量がおかしいってことよ」
灰原「だって彼はまだ小学一年生よ」
灰原「なのにうな重を五杯も食べるなんて……大人でもキツイわよ」
灰原「ちょっと前まではそんなことなかったのに」
コナン「う~ん、いわれてみればたしかに……」
コナン「いくら体がでかいっていっても、ちょっとなぁ……」
灰原「でしょ?」
コナン「お前が?」
灰原「だって食べすぎだから医者に行った方がいい、なんていっても聞かないだろうし」
灰原「医者だって“育ち盛りだから”ってまともに取り合ってくれないわよ」
灰原「それに……なんとなくイヤな予感がするの」
灰原「もちろん私の思い過ごしであれば、それに越したことはないしね」
コナン「しゃーねーな……分かったよ」
コナン「ただし、アイツ一人だけ調べるってなると他の二人を不安にさせちまうから」
コナン「どうせやるんなら、カモフラージュとしてみんなまとめてやった方がいいな」
灰原「そうね」
<帝丹小学校>
元太「──博士んちで健康診断!?」
元太「なんで、ンなことすんだよ。俺はいたって健康だぜ!?」
光彦「そうですよ、コナン君」
光彦「それにこの間、学校で身長や体重をはかったばかりじゃないですか」
歩美「なんで急にそんなことするの?」
歩美「もしかして歩美たち、どこか具合が悪いの?」
コナン(やっぱこうなるよな……)
灰原「今、博士と私で健康に関する発明品を考えていてね」
灰原「色んな人の健康に関するデータが欲しいのよ」
灰原「もちろん、私や博士、江戸川君のデータはすでにとってあるわ」
元太「なんだ、そういうことかよ!」
光彦「灰原さんのためなら、喜んで協力しますよ!」
歩美「なんだかワクワクしちゃうね!」
灰原「ありがと」
コナン(なかなかうめーじゃねえか、灰原……)
<博士の家>
阿笠「おおっ、よく来てくれたのう」
阿笠「ま、健康診断といっても注射とかはせんから大丈夫じゃ」
元太「ちゃっちゃと終わらせてくれよ、博士!」
光彦「発明品が完成したら、少年探偵団の名前もちゃんと出して下さいね」
歩美「そしたらもっと少年探偵団が有名になるね!」
阿笠「ハハ、分かっておるよ」
阿笠(やれやれ、ワシは医者ではないんじゃがのう……)
阿笠「みんな、ご苦労じゃったのう!」
阿笠「これでワシの発明も一歩前進するはずじゃよ」
阿笠(やれやれ子供をだますというのは気が引けるわい)
元太「いやぁ~疲れたぜ! 健康診断って大変だな!」
光彦「大人は人間ドックっていって、もっとすごい検査をするみたいですけどね」
元太「なんだよそれ?」
歩美「人間ドッグって、人間なの? ワンちゃんなの?」
コナン(人間でも犬でもないって……)
コナン(そもそもドックはdogじゃないしな……)
灰原「なに?」
コナン「検査の結果はどれくらいで分かるんだ?」
灰原「だいたい今週一杯ってところかしら」
灰原「金曜日には分かると思うわ」
コナン「金曜か……ま、なにもなければいいんだけどな」
灰原「そうね……」
<毛利探偵事務所>
テレビ『悪い心に負けないで、仮面ヤイバー!』
テレビ『無駄だ、ヤイバーは我々の仲間になるのだ~!』
テレビ『元に戻って、ヤイバー!』バシッ
小五郎「おいコナン、これ見たらちゃんと宿題やれよ」
コナン「は~い」
コナン(周囲に合わせるためとはいえ、ガキ向けの番組見て……)
コナン(小学生向けの宿題を解く、か……情けねぇ)
コナン(まあ、平和だってことなんだけどな)
コナン(今日の検査も、なにごともなければいいんだが……)
元太「よぉ!」
光彦「おはようございます、二人とも」
歩美「コナン君、哀ちゃん、おっはよ~!」
コナン「おう、オメーら!」
灰原「おはよう」
元太「博士の発明品はもう出来上がったのか?」
灰原「バカね、まだまだかかるわよ。博士なんだから」
元太「なんだよ~」
光彦「元太君はせっかちすぎますよ!」
歩美「ホントホント!」
コナン(うまくかわしやがったな、灰原……)
コナン(だが、これといって元太におかしい点はねぇ)
コナン(大丈夫だとは思うんだが……)
元太「あ~あ、給食でうな重でねーかな~」
元太「父ちゃんも母ちゃんも高いからって、うな重食わせてくれねーんだよ」
光彦「この間いっぱい食べたばかりじゃないですか」
コナン(俺だったら五杯もうな重食ったら当分食いたくねえけどな……さすが元太)
歩美「あ~あ、元太君の食欲を少し分けてほしいなぁ……」
光彦「どうかしたんですか、歩美ちゃん?」
歩美「飼育小屋のウサギさんの中で、一匹食欲がないのがいるんだ……」
光彦「歩美ちゃん、ウサギは一羽、二羽って数えるんですよ」
歩美「えぇ、そうなの!?」
元太「ウナギがどうしたって!?」ガバッ
光彦「ウサギですよ、元太君」
歩美「もう元太君ったら食いしん坊なんだから……」
元太「うな重……うな重……」ブツブツ
コナン「?」
元太「うな重……うな重……うな重……」ブツブツ
コナン「オイどうした、元太!?」
元太「え!? いや、なんでもねえよ」
コナン(今、聞き間違いじゃなきゃうな重ってつぶやいてたよな……)
コナン(まあ、単なるひとりごとって可能性もある)
コナン(明日には灰原の解析も終わるだろうし……)
コナン(全てはそれからだな)
<毛利探偵事務所>
蘭「お父さん、明日はお母さんがちょっとこの事務所に寄るんだから」
蘭「ちゃんと片付けてよね!」
小五郎「うるっせえなあ……」
小五郎「なんかの用事のついでに来るだけだろ? いいんだよ、こんなもんで」サッ サッ
蘭「もう……!」
コナン(へぇ、珍しいな)
コナン(まあ、来るのは俺が学校行ってる時間だろうし関係ねーけど……)
<帝丹小学校>
光彦「今日は灰原さんが来ていませんね」
歩美「どうしたんだろう……哀ちゃん」
元太「…………」
コナン(朝イチで元太の結果を聞こうとしたが──)
コナン(どうしたんだ、アイツ?)
コナン(まあ、帰りに博士の家に寄るとすっか……)
ブルブルブル……
コナン(俺のケータイ……)
コナン(灰原からだ!)
コナン(なんかあったのか……!?)
コナン「先生、お腹が痛いんでトイレに行ってもいい?」
小林先生「いいわよ。もし具合が悪いようなら、先生にいうのよ」
コナン「ありがとう、先生! それじゃ!」ダッ
コナン「もしもし」
灰原『ごめんなさい、今大丈夫?』
コナン「ああ授業を抜けてきたところだ。ところで、どうしたんだ?」
灰原『えぇ、小嶋君の件で大変なことが分かったのよ』
コナン「大変なこと……!?」
灰原『これ自体には特に問題はなかったの』
灰原『ところが──』
コナン「ところが?」
灰原『今朝、小嶋君の体には問題がないことを結論づけようとしたんだけど……』
灰原『気まぐれに、冷蔵庫の中にあったウナギを唾液につけてみたの』
灰原『そしたら──』
灰原『そこからある種の快楽物質が発生したのよ』
コナン「快楽物質!?」
灰原『こんな症例は聞いたことないから、まだなんともいえないけど──』
灰原『小嶋君はウナギを食べると、快楽を得るという特異体質である可能性が高いわ』
灰原『だから日頃からあんなにうな重を欲していたのよ』
コナン「ちょっと待てよ」
コナン「快楽を得るために欲する、ってそりゃまるで──」
灰原『いうなれば、麻薬のようなものね』
コナン「麻薬って……元太は大丈夫なのかよ!?」
灰原『小嶋君の体そのものは、なんら問題はなかったわ。その点だけは安心して』
灰原『ただし、今のところ体に問題はないとはいえ中毒者であることに変わりはない』
灰原『つまり、体にはどんどん耐性ができてくる……』
コナン「耐性……」
灰原『小嶋君の心身もより多くのうな重を求めるようになるわ』
コナン「そうか……だからこの間は五杯もうな重をペロリと平らげたのか……」
コナン「ちくしょう、なんで気づいてやれなかったんだ!」
灰原『仕方ないわ、自分を責めないで工藤君』
灰原『もっと早く気づくべきだったのは、薬学の専門家である私の方なんだから……』
コナン「灰原……」
コナン「うな重を食べたがるところを除けば、元太の体はいたって健康なんだし」
コナン「俺とお前が協力すれば、絶対になんとかなるはずだ!」
灰原『そうね……ありがと』
灰原『落ち込んでる場合じゃなかったわね』
コナン「──俺はどうすればいい?」
灰原『彼はあのキャンプの日以来、うな重を食べてないハズ……』
灰原『だからそろそろ禁断症状が──』
ドガァン!
コナン「!?」
コナン「教室からだ!」
コナン「なんかあったらしい!」
コナン「悪いが、またこっちからかけ直す!」ピッ
コナンは電話を切り、教室へ戻る。
すると──
教室では、元太が大暴れをしていた。
小林先生「どうしたの、小嶋君!?」
光彦「落ち着いて下さい、元太君!」
歩美「ダメだよぉ、元太君……!」ウルッ
元太「う、うううぅ……ううぅぅぅ……」
元太「うな重ゥゥゥゥゥ!」
コナン「やべぇ、禁断症状だ!」
元太「うな重ゥゥゥゥゥ!」
元太「うな重食わせろォォォォォ!」
ドガシャァン! バッシャーン!
コナン「落ち着け、元太! 俺だ、コナンだ! 分かるか!?」
元太「コォナァァァン!」
コナン「分かるんだな!?」
元太「うな重、食わせろォォォォォ!」
コナン「ダ、ダメか……!」
コナン(しかたねぇ、できればこんなことしたくねーけど)
コナン(しばらく眠ってもらうぜ、元太……)パカッ
元太「うぅぅぅぅなぁぁぁぁじゅううううぅぅぅぅぅ!」
ダダダッ!
コナン(速いっ!)サッ
元太「食わせろォ……うな重ゥ……」ジュルリ…
コナン(なんだ今のスピード……とんでもない速さだった!)
コナン(もしかして──)
コナン(うな重の欠乏状態が、元太の眠ってるパワーを引き出してるのか……!?)
ダダダダダッ!
元太「ナァァァァ……!」
ダダダダダッ!
元太「ジュウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」
ダダダダダッ!
コナン(くそっ……とてもじゃないが、これじゃ麻酔針を当てるなんてできねえ!)
コナン(どうすれば──!)
すると──
元太「あるじゃねえかよ……ウナギがァ……」
元太「うな重だァァァァァ!」バッ
小林先生「小嶋君、なにやってるの!?」
歩美「どうしちゃったの……元太君……」グスッ
光彦「元太君、それはホースですよ!」
元太「うめぇ、うめぇよぉぉぉ……!」ガブガブ
元太は一心不乱にホースにかじりついていた。
コナン(なにはともあれ、チャンスだ!)カパッ
コナン(わりぃな、元太……)パシュッ
プスッ
元太「──ウゥ!?」
元太「ナァァァァァァァ!」フラッ フラッ
元太「じゅうぅぅ……」ドサッ
コナン「ふぅ……」
コナン(なんつうか、ゴメラかなんかを退治をした気分だぜ……)
コナン「先生、元太を保健室に連れてってくれる!?」
コナン「ボクはちょっと……やることがあるから!」
小林先生「え、えぇ、分かったわ!」
コナン(灰原に今のことを伝えねーと!)ダッ
光彦「元太君……」
歩美「どうして……」シクシク
灰原『あ、工藤君……さっきのはなんだったの?』
コナン「元太だ……オメーのいうとおり禁断症状が出やがった」
コナン「すげー力で暴れて、しかも幻覚まで見えてたみたいだ」
灰原『やっぱりそうだったのね……』
コナン「とりあえず、今は麻酔で眠らせたけどよ……あくまで一時しのぎだ」
コナン「起きたらきっとまた暴れちまう……」
コナン「なにか手はねぇか? 灰原……」
灰原『と、いいたいところだけど、そんなこと簡単にできるハズがないわ』
灰原『小嶋君の肉体や快楽物質の解析……』
灰原『それらを打ち消す化学物質の選定……』
灰原『もしこれらを見つけ出せたとしても、臨床試験を行わなければならないし』
灰原『副作用など、クリアしなければならない課題が山ほどあるわ』
灰原『とてもじゃないけど、一朝一夕には不可能よ』
コナン「そりゃそうだ……」
コナン(そんな簡単に新しい薬が開発できるんなら苦労はねーよな)
コナン(俺だってとっくの昔に工藤新一に戻れてるハズだ……)
灰原『なにか薬以外の解決方法もあるかもしれない』
灰原『可能性は限りなく薄いけどね……』
コナン「……分かった、ありがとよ灰原」
コナン「悲観的になるなって、きっと大丈夫だ」
コナン「とにかく、こっちはこっちで元太を見張ってるから」
コナン「なんか分かったら、また連絡してくれ」
灰原『分かったわ、気をつけてね』
コナン「……ふぅ」
「コ~ナ~ンく~ん!」
光彦「またコナン君お得意の抜け駆けですか!」
光彦「今の電話の相手は……どうせ灰原さんでしょう!?」
歩美「コナン君……歩美たちだって心配なんだよ」グスッ
歩美「元太君があんなことになって……」グスッ
コナン「……そうだな」
コナン「この件に関しては、オメーらにも話しておいた方がいいか……」
光彦「凶暴になっちゃうってことですか!?」
歩美「そんなぁ……」
コナン「ああ……さっきはなんとか眠らせることができたが」
コナン「今度起きたらかなり厄介なことになりそうだ」
コナン「でも、心配すんな!」
コナン「俺と灰原で、どうするか考えてるからよ」
コナン(といっても、現状手詰まりだけどな……)
光彦「どうかしましたか、歩美ちゃん?」
歩美「今週の仮面ヤイバーで怪人の電波で、ヤイバーが悪になりかけたけど」
歩美「ヒロインの説得とビンタで、なんとか元に戻ったじゃない?」
光彦「ありましたね」
歩美「元太君にも……アレやってみない?」
光彦「……なるほど」
光彦「そうですね、いいかもしれませんね!」
コナン(……いや待てよ)
灰原『でも、未知の症状である以上、解決方法もまた未知よ』
灰原『なにか薬以外の解決方法もあるかもしれない』
コナン(やってみる価値はあるかもしれねえ……)
コナン(うな重でおかしくなったんなら、やっぱり説得もウナギでやるべきか……?)
コナン(説得と……あとビンタか。なにかショック療法を施せば──)ハッ
コナン(そうだ……今おっちゃんのところにはあの人がいるはずだ!)
光彦「はい」
歩美「なに?」
コナン「二人で協力して、でかいウナギを作ってくれ!」
コナン「今のアイツは細長ければ、なんだってウナギに見えちまうハズだ!」
光彦「分かりました!」
歩美「やってみる!」
コナン(よし、次は事務所に電話するか)
英理「…………」
小五郎「…………」
英理「この事務所じゃ、訪ねてきた客にお茶も出さないのかしら?」
小五郎「あいにく敏腕弁護士さんの口にあうような茶は置いてねーからな」
英理「…………」
小五郎「…………」
英理(せっかく来てあげたのに、なによこの態度……)
小五郎(クソッ、茶くらい入れてやればよかったな。俺のアホ……)
互いに素直になれない夫婦。
電話が鳴った。
小五郎「はい、毛利探偵事務所」ガチャッ
小五郎「なに、妃先生はいるかって?」
小五郎「ああいるが……ちょっと待ってろ」
小五郎「オイ、英理」
英理「なによ」
小五郎「コナンから電話だ。なんでもオメーに用があるんだってよ」
英理「コナン君が私に……?」
……
………
コナン(ふぅ、どうにかオーケーしてもらえたぜ)
コナン(急いでくれよ~おばさん)
コナン(さてと、光彦たちは大丈夫かな?)
光彦「どうですか!?」
丸めて筒状にしたカーテンに、画用紙で作ったウナギの顔が貼られていた。
コナン「おう、上出来だぜオメーら!」
歩美「やったぁ!」
光彦「でもこれで本当に元太君を元通りにできるんですか?」
コナン「さぁな……どうなるかは、正直俺にも予測がつかねえ」
コナン「だけどよ、ここで仲間である俺たちが諦めたら元太は救えない……」
コナン「──だろ?」
光彦「……そうですね!」
歩美「そうだね!」
元太「…………」ムクッ
保健室の先生「小嶋君、目が覚めた?」
元太「うな重……」
保健室の先生「え?」
元太「ウナジュウゥゥゥゥゥゥッ!」
保健室の先生「きゃああああっ!?」
ズガァァァンッ!
元太「うな重……」
元太「うな重……!」
元太「うな重ゥゥゥ……!」
元太「食わせろォォォォォッ!」
元太「ウゥゥウ……ナァァァジュウウゥゥゥゥゥッ!!!」
コナン「もう目を覚ましたのか……マズイな」
光彦「どうします、コナン君!?」
コナン「とにかくこのウナギを持って、元太のところに向かおう!」
コナン「放っておいたらだれかが怪我するかもしれない!」ダッ
コナン(ちくしょう……早く来てくれ、おばさん!)
男性教師何名かを倒した元太が、下駄箱を占拠して咆哮していた。
元太「ウゥゥゥゥ」
元太「ナァァァァァァァァ」
元太「ジュウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!」
元太「ウゥゥゥゥゥゥゥ……」
元太「ナァァァァァァァァァァ……」
元太「ジュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!!」
歩美「元太君!」
歩美と光彦が先ほど作った巨大ウナギを手に、元太の前に現れた。
元太「ウナァ?」
光彦「君のために、ウナギの神様が来てくれましたよ!」
歩美「神様が元太君にいいたいことがあるんだって!」
元太「ジュゥゥゥ……!?」
巨大ウナギ『元太よ』
巨大ウナギ『うな重が食べられないからといって』
巨大ウナギ『暴れるとはなにごとじゃ!』
巨大ウナギ『おぬしの心はもっと強いハズじゃ!』
巨大ウナギ『少年探偵団として数々の事件を解決してきたおぬしなら──』
巨大ウナギ『うな重を食べたいという誘惑にも打ち勝つことができるはずじゃ!』
元太「ウゥゥゥ……」
巨大ウナギ『おぬしなら、心の中の悪魔をやっつけることができるはずじゃ!』
巨大ウナギ『元太よ、ウナギの呪縛に打ち勝ってみせるのじゃ!』
元太「ウナァァ……」ブルブル
元太「ジュゥゥゥ……!」ブルブル
光彦「元太君、頑張って下さい!」
歩美「負けないで、元太君!」
元太「ウゥゥゥ……」
元太「ウガァァァジュウウゥゥァァアアアッ!!!!!」
コナン(くそっ、やっぱり言葉だけじゃ無理だ……!)
元太「ウゥゥゥ……ナァ……ジユウウウゥゥゥ……」ズンズン
光彦「元太君、ぼくですよ! ぼくたち仲間じゃないですか!」
歩美「お願い……元の元太君に戻ってえっ!」
コナン(くそっ、このままじゃみんなやられちまう!)
元太「ウナァァァァァッ!!!」
その時だった。
小五郎「コナン!」
コナン「おっちゃん、妃先生!」
英理「あなたにいわれたとおり、うな重を作って持ってきたわよ!」
コナン「──ありがとう!」
コナン「じゃあ、そこの大きなウナギの人形の前に置いてくれない?」
英理「うな重を? ……分かったわ」コトッ
小五郎(コイツらなにやってんだ? 学芸会かなんかの練習か?)
巨大ウナギ『今ワシの前に、おぬしが欲したうな重がある』
巨大ウナギ『食すがよい』
元太「ウゥゥゥゥ!」
元太「ナジュウゥゥゥゥゥゥッ!」
元太は久々のうな重に、飛びついた。
元太「ウナッ、ウナッ、ウナッ、ウナッ、ウナッ」ガツガツ
元太「…………」
元太「──うえっ」
元太「なんだこりゃ……マズッ」
英理「え」
歩美「元太君!」
光彦「元に戻ったんですね!?」
コナン(今だ!)
懐かしいwww
巨大ウナギ『心の中の悪魔に勝てない弱い心では、うな重もおいしくないのじゃ』
元太「神様……!」
巨大ウナギ『元太よ、強くなれ!』
巨大ウナギ『うな重などに心を惑わされてはならない!』
巨大ウナギ『そうすれば、再びおいしくうな重を食べることができるじゃろう……』
元太「おうっ!」
元太「俺……なんか変な夢を見てたみてえだ……」
元太「俺、もっと強くなるよ! ありがとう、ウナギの神様!」
きのこときのこからどくきのこを作るレベル
oh…
元太「もう大丈夫だ!」
元太「俺はもう……絶対にうな重に負けたりなんかしねえよ!」
歩美「やったぁ、元太君!」
光彦「本当によかったです……! 一時はどうなることかと……」
コナン(ふぅ……まさか本当にうまくいくとは思わなかったぜ……)
小五郎「なにがなんだかサッパリだが──」
小五郎「オメーのうな重がマズイってことだけは分かったぜ、英理」ニヤッ
小五郎「さすが敏腕弁護士さんの料理の腕は一味ちがうってか?」
小五郎「ナハハハハハハッ!」
英理「…………」
英理「コナン君」
コナン「はいっ!?」ビクッ
英理「あとでこの件について、たっぷり尋問させてもらうわね?」ニッコリ
コナン「は、はい……(こえ~~~~~)」
<博士の家>
灰原「すごいわ……」カチャカチャ
灰原「小嶋君の体が、完全に正常に戻ってる」カチャカチャ
灰原「心の作用というのも、案外あなどれないわね」カチャカチャ
コナン「ああ、俺も驚いたよ」
コナン「ま、あれから色々大変だったけどな」
灰原「えぇ、学校は大騒ぎだったでしょうからね」
コナン(一番キツかったのは、おばさんの尋問だけどな……)
コナン(あ~……思い出したくもねぇ)ゾクッ
コナン(しかしまぁ、元太を助けることができてよかったぜ……)
元太「よぉ、コナン、灰原!」
光彦「遊びに来ましたよ!」
歩美「こんにちは~!」
コナン「おう」
灰原「いらっしゃい」
コナン「ところで元太、あれから具合はどうだ?」
元太「へへへ、バッチリだぜ! 昨日は珍しく母ちゃんがうな重食わせてくれたしな!」
元太「いつかウナギの神様も食ってみてえなぁ~」ジュルリ
コナン(ハハ……相変わらずだな、コイツは……)
うな重中毒を克服した元太であったが、うな重好きは結局変わらなかったのだった……。
<おわり>
よく雰囲気出ててよかった
久々にうな重が喰いたくなった
腹の減るSSだった
Entry ⇒ 2012.06.27 | Category ⇒ 版権物SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
愛「反抗期だよー!」 舞「ふーん?」 愛「げえっ! ママ!」
踊り場に大好きな二人を見つけるだけで、あたしは嬉しくなれるんです。
愛「涼さん、絵理さん! おはようございまーす!」
絵理「愛ちゃん、今日も元気?」
愛「はい! げんきですよー!」
涼「おはよう、でも、声が大きいよ?」
愛「ねえ! どうして部屋に入らないんですか?」
絵理「新しいプロデューサーが、来てるの」
愛「!!」
愛「挨拶してきます!」
ガチャ バタン。
絵理「行っちゃった」
涼「まあ、あのプロデューサーさんは愛ちゃんのパワーにも負けないだろうね」
絵理「亀甲縛りより年の功?」
涼「それちょっと違うような……どこがかはちょっとわからないけど」
絵理「ふふっ?」
ガチャ バタン
愛「挨拶してきました……」
涼絵理(あれ? 元気ない?)
愛「う~。どうしよう絵理さん涼さん、あの人、あたしの嫌いな人でした……」
涼絵理「えっ?」
~876プロ前通り~
絵理「ねえ、愛ちゃん? 前に会ったことあったの? プロデューサーと」
愛「初めてですけど……」
涼「ま、とにかく、駅に向かおうよ」
涼さんは男の人だけど、まだ女の子の格好で歩きます。
でも最近、お兄ちゃんだなあと思うことがあります。
愛「うう~」
気にしてくれる2人に申し訳なくて、頭を抱えちゃいました。
そのプロデューサーさんはちょっとの間だけ働くそうです。
涼さんが男の子になって、男の子アイドルとして売り出していくけど
女の子が男の子になるなんて何が起きるかわからないから
経験ホウフなプロデューサーさんを呼んで
ついでにまなみさんにも勉強してもらうんだって社長は言っていました。
愛「じゃあじゃあ、スゴ腕プロデューサーさんなんですか!?」
P「腕はどうでしょう。少なくとも期間は長いですよ。15年ですね」
愛「15年! あたしが生まれるより長いんですね! すごいです!」
P「ありがとうございます」
大学を卒業して……大学って22才で卒業だっけ? 37才になるのかな。
てことは……一年前はあたしの3倍だったことになります!
そういう男の人と話すのはあんまりないから、思わずまじまじと見ちゃいました。
地味なスーツでまじめで優しそうな印象です。
ママと同じ指に指環をしてるから、結婚もしてるはずです。
もしかして子どもはあたしと同じくらいかもしれません!
あたしがじーっと顔を見ていたら、少し困ったように眉を下げて
でも目はそらさないでいてくれました。
ママよりもずっと年上だけど、パパってこんな感じなのかも。
嬉しくってにっこり笑うと困ったような顔のままでうなずいてくれました。
わかった! このひとは優しい人です!
まあ、スーツの襟にステッチが入ってて
ズボンの裾も折り返してて
袖がカフスボタンだからママは嫌いだろうけど。
「ステッチが入ってる男にろくな奴はいないわよ、愛」
「裾がダブルの男にろくな奴はいないわよ、愛」
「カフスしてる男にろくな奴はいないわよ、愛」
ぴったりですよ!!
愛「うふふ」
P「どうしましたか?」
愛「なんでもないです。プロデューサーさんの格好が
いつもママが言ってるとおりだったから」
P「……え?」
プロデューサーさんの困り顔が固まっちゃいました。
P「お母さんが、……舞さんが、私のことをなにか?」
愛「……え?」
愛「あ、な、なんでもないです。
ステッチっていうんですよね? その襟のと
ズボンの裾を折るのと
カフスボタンが、全部ママが嫌いだったからおかしかっただけで」
プロデューサーさんは、おかしいくらいほっとしたみたいでした。
それだけであたしはわかりました。
この人もみんなと同じだって。
お仕事で会う、ずっと年上の、昔のママを知ってる人たちと同じ。
あたしを向いててもあたしは見てない。あたしの向こうにママを見てる人たち。
その目で見られると、なんだか頭をぎゅうっと
押さえつけられたような気分になっちゃいます。
今もなっちゃいました。
~876プロ前通り~
涼「なるほどね」
絵理「愛ちゃん、かわいそう」
愛「あ! いいえ! あたしが変にひがんでるだけですから!」
口に出してハッとしました。
あたし、ひがんでたんですね。ママのこと。
アイドルデビューして、それなりにお仕事もできるようになって。
CDも出して写真集も出してファンクラブもできて。
でも、日高舞の娘だってバレた時、そんなの全部吹き飛んじゃいました。
ママと一緒に番組を、という依頼だけで3日くらい事務所の電話がずっとリンリン言ってました。
「私は愛の仕事にはノータッチだから。
復帰はまったく考えてないわよ。
もし万が一そういうことがあったとしても
私の娘だってわかったら愛を特別扱いするようなところとは
絶 対 に
お付き合いしないからよろしくね。
それと、警察呼んであるから散ったほうがいいわよ」
ママが取材の人たちにそう言ったのがひと月前です。
ママのおかげで変に仕事が増えたり減ったりはしませんでしたけど
それでも、比べられちゃうのはしょうがないですよね。
しょうがないんですけど。わかってるんですけど。
ママと比べてがっかりされるとしょんぼりしちゃいます。
舞「~♪ 愛ー。そろそろ机拭いてくれるー?」
愛「はーい」
舞「何、元気ないわね」
愛「なんでもないよ。あ、今日来た新しいプロデューサーさんが
ママの嫌いなファッションだったよ」
舞「え? プロデューサー変わったの? まなみさんて人は?」
愛「涼さんの男の子デビューを助けてくれるんだって。
あと、すごい人だからまなみさんも一緒にお勉強するんだって」
舞「そうなんだ。それがどうしたって?」
愛「襟がステッチで、ズボンが折り返しで、カフスボタンなの」
舞「最悪ね。でも、不潔でさえなければ気にしない方がいいわよ。
私が嫌ってるのも大した理由じゃないし」
愛「うん。いいお父さんって感じだった」
舞「……けっこう年なの?」
愛「んーとね? 37かな? 15年も働いてるって言ってたから」
舞「……37」
愛「ママ?」
舞「もうすぐできるから、お味噌汁とご飯よそって」
愛「あと冷蔵庫からおしんこだよね」
舞「そう。ところで愛、そのプロデューサー、なんて名前?」
愛「えーとね、携帯のメモもらったんだ」
ママはそのメモを見て、首をかしげて返してくれました。
知ってる人じゃなかったみたいです。
今日もご飯は美味しかったです! おやすみなさーい!
~翌日 876プロ~
涼さんが給湯室から手招きしてました。
涼「愛ちゃん愛ちゃん。ちょっと」
愛「何ですか? 涼さん」
涼「昨日、律子姉ちゃんにプロデューサーさんのこと聞いてみたんだ」
涼さんのイトコのお姉さんは765プロでプロデューサーをしています。
竜宮小町を考えた人なのに、まだ20才!
まなみさんも尾崎さんも話したあとで
いっつも「緊張した」って溜息つくスゴい人です。
あ、でも、あたしたちには優しいんですけどね。
あ、じゃなくて、あたしと絵理さんには優しいんですけど。
涼「それでね、律子姉ちゃん、名前を聞いたらお茶吹いてた」
愛「え?」
涼「律子姉ちゃんがプロデューサーになって1年なんだよね。
その姉ちゃんですら名前を知ってるんだから、スゴい人なのかも」
愛「律子さんは何て言ってるんですか?」
涼「信じてついていけば間違いないって。それはいいんだけど。
愛ちゃんもプロデュースするのかってわざわざ訊かれたんだよね」
愛「?」
涼「愛ちゃん、心当たり――なさそうだね」
絵理「あ、愛ちゃんこんなところにいた」
愛「絵理さん?」
絵理「愛ちゃん、愛ちゃんちの電話番号って03-XXXX-8700?」
愛「そうです。教えましたっけ?」
絵理「ううん? 前に何かの書類で見た?
その時、あー、ハナマルなんだって思ったの」
涼「8700でハナマルか。愛ちゃんにぴったりだね」
愛「えへへー。それで、うちの番号がどうかしたんですか?」
絵理「プロデューサー、愛ちゃんのお母さんと知り合いかも?」
愛「え?」
絵理「携帯が机に置きっぱなしで、着信があって渡したの」
涼「その番号が愛ちゃんちの電話番号だったの?」
絵理さんはうなずいて、あたしは涼さんと顔を見合わせました。
絵理「それで、会う約束をしてたみたい?」
P「外回りに行ってきます」
玄関のほうでプロデューサーさんの声がして、3人ともビクっとなりました。
ちなみに3人でいちばん仕草がかわいいのは涼さんだったと思います……。
絵理「愛ちゃん、涼さん、鉛筆持ってる?」
愛「あ、ありますけど」
渡した鉛筆を持って、絵理さんはプロデューサーさんの席に行きました。
メモ用紙のいちばん上の
何も書かれていない紙を鉛筆でシャッシャとなぞって
絵理「うそ? うまくいった」
涼「絵理ちゃんってすごい」
メモ帳には、時間と駅と何かの名前が浮き上がっていました。
絵理「(カチカチ)うん。これ、喫茶店。麻布だね?」
涼「も、もう検索したんだ!?」
愛「ここでママとプロデューサーさんが会うんでしょうか?」
絵理「たぶん間違いない? 何を話すか聞いてみたいな」
涼「確かに。あ、でもわかるの時間だけだね」
絵理「日付が書いてないってことは明日? それにこの喫茶店は火曜日定休?」
愛「絵理さんすごいです! 探偵さんみたいです!」
そういうと絵理さんはすこしかっこつけて顎に手を当てました。
いつものポーズとあんまり変わらないんですけど。
涼「そうかあ。明日の11時か。
それでどうするの? 愛ちゃん?」
愛「え?」
絵理「この喫茶店に待ち伏せして、2人の話を盗み聞きする?」
盗み聞き? え?
愛「あ、明日って学校ですよね」
2人ともきょとんとした顔をしました。
当たり前です。お仕事がはいるようになったから
学校を休むのにも慣れちゃったって笑ったのはつい昨日なんですから。
涼「気が進まないならやめておく?」
ああ、涼さんはやさしいなあ。
絵理「わたしは、はっきりさせた方がいいと、思う?」
絵理さんもやさしいです。
愛「……あたし、行ってみます。この喫茶店」
絵理「それはムリ」
愛「えっ」
絵理「話が聞こえるくらい近い席だったら、お母さんに気づかれる、きっと」
涼「それに、月曜の午前中に愛ちゃんが1人で喫茶店にいたら
たぶん補導されちゃうと思うよ」
愛「ああ……」
残念なような。
でもホッとしたような。
絵理「だから、わたしたちも一緒に行ってあげる。ねえ、涼さん?」
愛「え? そんな、悪いです」
涼「遠慮しないでよ! 愛ちゃんの大事なことじゃないか。
あ、でも僕たちだって近くに座れないよね」
絵理「大丈夫だ、問題ない?」
絵理さんも涼さんも大好きです!
~翌日 午前10時 喫茶店~
その喫茶店は半分地下になってるところで
薄暗くて、ねむーくなる音楽がかかってるお店で
奥の方の席で、3人ともココアを頼みました。
絵理「これ、耳につけて?」
涼「ラジオ?」
愛「なんですか?」
絵理「FMを受信できるラジオ」
涼「地下だと電波入らないよね?」
絵理「電波はサイネリアが出す?」
涼「ネット廃人ってそんなこともできるの?」
絵理「わたしならできるけどサイネリアにはまだムリ。
だからFMトランスミッターを使う」
絵理さんの話をまとめると
鈴木さんがプロデューサーさんとママのすぐ隣に座って
髪留めがマイクで
鈴木さんのバッグの中にあるFMトランスなんとかで
あたしたちに話してる声を送ってくれるそうです。
カラン、とドアが開く音がしてみんな頭を下げました。
念のためお店のいちばん奥の席に座ってるけど
ママかプロデューサーさんか、どっちかが奥のほうに来たらアウトです。
絵理さんはきっと大丈夫って言ってましたけど。
涼「(プロデューサーさんだ)」
絵理「(こっちに来そう?)」
涼「(ううん。窓際の席に座ったよ)」
絵理「(やっぱり?)」
愛「(どうしてわかったんですか!?)」
絵理「(あの席が、いちばんEモバの電波が入るから、かな)」
プロデューサーさんはこっちに向くようにしてソファに座りました。
さっそくパソコンを取り出して開きました。
絵理「(できる人はちょっとの空き時間でもメールチェックする。これ常識?)」
涼「(それはイケメンだ!)」
絵理「(涼さんの規準が、わからない)」
愛「(こっち気づかないですね)」
そして。
11時少し前に、ほんとにママがお店に入って来ました。
愛「(ママ……。いつものカッコだ)」
ちょっとホッとしました。
だって、もしかしたら、ほんのちょっとだけ、
プロデューサーさんとママが昔お付き合いしていたとか
そういうことも想像しちゃったりしてたから。
絵理「(サイネリア、ゴー)」
絵理さんがすごい速さでメールを打つと、
1分もしないうちに鈴木さんが入って来ました。
絵理「(イヤホン、つけて?)」
ザー
ザザ
焦ってラジオを調節すると、ママの声が聞こえてきました。
舞『――コンしたのね』
P『おかげさまで』
舞『あの時付き合ってたひと?』
P『別の相手です』
舞『ふーん。で、まだプロデューサーやってるの? どこで?』
ママ、怒ってる?
P『ショットの仕事でつないでいますよ。それでもう14年』
舞『よく辞めなかったわね』
P『辞めませんよ』
舞『恥ずかしくはないんだ。すごいわね。真似できない』
ママ、ちょっと子どもっぽいかも。
P『追い出されない限りはしがみつきます。この業界が好きなんです』
舞『どうせ吉原の接待が忘れられないんでしょ?』
P『ああいうことは、今はもう、やっていません』
舞『まああんたに金を任せる人ももういないわよね』
絵理「(すごく、険悪?)」
涼「(14年前って、愛ちゃんのお母さんが
アイドルの頃の知り合いってことだよね?)」
舞『石川さんも甘いわよね。いつ問題起こすかわからない人なんか使って』
P『権限を限定して、常に監視して、期間を抑えて。
そういう使い方なら大きなトラブルは起きないものです』
舞『ひとごとみたいに。
でもそうやってあれから飼い殺しだったのね。いい気味だわ。
昔は10年で社長になるとか言ってなかったっけ?』
P『はは。そうでしたか』
舞『何がおかしいのよ?』
P『いえ。少し前に会った人を思い出しましたんです。
その子は若手が5年で社長になれると信じていた。
15年前の私は10年かかると思っていたんですか。
なるほど最近の若い人は気宇が壮大だ』
舞『どうでもいいわよそんなこと』
しん、と静まりました。
舞『とにかく!
あなたに愛の近くにいてほしくないの。
これでも親バカなのよ。
娘に汚い物は見せたくないわ』
P『それは石川社長におっしゃってください。
社長が解消と言えばもちろん従います』
舞『契約の面倒くささくらいは知ってるわよ。
だからこうしてあなたの良心にすがってるんでしょ』
P『私の良心は、汚い物を見せないように
そうならないように努力することで』
舞『――ねえ。さっきからなによその言葉づかい』
P『当たり前でしょう。あなたはうちのアイドルのお母様ですから』
舞『ああ言えばこう言うんだから!
だいたいなんで引き受けたの?
石川さんはあなたが私のプロデューサーだったことを知ってるわよね。
愛が私の娘だって言われなかったの?』
P『876プロに日高舞の娘なんておりませんよ。
いや、戸籍の上ではいるのかもしれませんが』
愛「……」
P『誰々の娘なんて安い売り方をする子は1人もいません』
そのまま事務所に戻ったら学校をサボったのがばれちゃうので
涼さんのお買い物に付き合ってご飯も食べました。
ママがあそこまで子どもっぽく怒るのを初めて見たので
なんだかずっとドキドキしてましたけど
反対に2人はすごく明るくなってました。
絵理「つまり……まとめると?」
プロデューサーさんはアイドル時代のママと働いてて
その時2人はケンカ別れしちゃったんです。
よく追い出されなかった、ってママが言ってたから
プロデューサーさんが悪いことをしたのかも。
愛「涼さん、吉原の接待ってなんですか?」
涼「うーん。吉原ってあれだよね。時代劇で花魁がいるところ。
でも今は花魁なんていないよね?」
絵理「今もあるって、google先生が言ってる」
涼「そうなんだ? それってもしかして」
絵理「うーん、新宿の歌舞伎町みたいな感じ、なのかな?」
ママはプロデューサーさんのことをとても嫌いみたいですけど
むかし悪い人だったとしても、今は違うんじゃないかな?
絵理「でも、ひどい人じゃなさそう?」
涼「うん、愛ちゃんを『日高舞の娘』として売りだそうとする人なら
肝心のお母さんにあんな態度はとらないよ」
それで今は、ママの娘じゃない、あたしをアイドルとして見てくれる……。
なんだか燃えてきました!
あたし、がんばっちゃいますよー!
~数日後 都内公園~
愛「がんばりたいんですよー!」
P「いいことです」
愛「がんばりたかったんです」
P「伝わってきました」
愛「あたしのがんばりが足りなかったんでしょうか……」
がんばると決めて最初のお仕事はテレビのお料理番組でした。
といってもお料理するのは小学生の子どもたちで
あたしはその子たちのお姉さん役でした。
ああいうのもちゃんと脚本があるんですね!
あたしの役割は、画面の端っこでいつも遊んでいる男の子の面倒。
公園での料理だからお料理より楽しいことがたくさんあって
ついふらふら離れちゃう四年生の男の子タケシくんを
あたしがこらーって連れ戻して、最後はちゃんとまじめな顔でお手伝いしてくれる。
そういうあらすじだったんですけど。
P「実際のところいいものが取れましたよ」
愛「うう。そうですかあ?
あたしはもっと、タケシくんと取っ組み合いとかしたかったです」
P「はは。そうなったら楽しかったでしょうね。
特に今回はリーダーのマキちゃんがとてもテレビ映えする子でした。
あれならもっと子役たちに重みをおいて
タケシくんはもう少しわんぱくでもいけましたね」
愛「ですよね!」
P「でも、その場でいきなり構成を変えることはできないんですよ。
みんな、今ある台本でイメージをしてきているんですから」
愛「うう……わかってるんですけど」
うそです。ぜんぜんわかってません。
もっといいものになるかもと思ったら
ダメでもともとそっちに突っ走るべきなんじゃないでしょうか?
P「お疲れ様でした。今日は帰りましょう。
今週中には第一稿のVが上がってくるはずです。
それを見ながらもう一度このお話の続きをしましょうか」
愛「え? 続き、していいんですか?」
P「仕事をして、日高さんが納得していないことがあったら
その説明をしてあげるために私たちはいるんですよ。
せっかく仕事をしたんだから栄養にしないともったいないでしょう」
愛「はーい!」
事務所に戻ったら涼さんが飛んできました。
涼「プ! プロデューサーさん! さっき! あの! 電話があって!」
P「はい」
涼「ジュ、ジュピターの天ヶ瀬さんが駅まで来てるって!」
ジュピター!
ちょっと前まで大人気だった男性アイドルです!
解散したって話を聞いてたんですけど。
P「誰か迎えに行きましたか?」
涼「お、岡本さんが」
P「昨日思いついて頼んだばかりなので
メールで連絡を済ませてしまいました。
涼さんはあまりメールは読まないんですね?」
涼「あ、あの、社内メールは仕事のない日はあんまり読んでなくて
もしかして送ってもらってたんですか!?」
P「いいえ。送信者責任といって
メールが読まれたかどうか確認するのは送った人間の責任です。
電話をするべきでしたね。すみません」
涼「あ、そんな!」
P「涼さんが受けてきたレッスンはすべて女の子としてのものでした。
トレーナーさんも女性の仕事が多い方です。
今日は涼さんというよりも、トレーナーさんに男性アイドルの
実践的な振りつけと勘をつかんでもらうのが目的です」
涼「は、はい」
P「天ヶ瀬さんは3人のなかでいちばん努力家でしたから、
理屈で話してくれるでしょう。
身長も涼さんと……もう、162ではありませんね?」
涼「あ、はい。今165かな?」
P「変声期がまだ始まっていないこと、手と足が身長に比べて大きいことを
考えると確実に天ヶ瀬さんくらいにはなるでしょう。
彼の動きは参考になりますよ」
涼「じゃあこれからレッスンスタジオに?」
P「はい。車で行きますので用意をしてきてください」
~事務所 ミーティングデスク~
別の日。まなみさんと絵理さん、プロデューサーさんが
机でむつかしいお話をしています。
あたしはそのそばで3人のお話を聞いてます。
絵理「確かにソーシャルは楽しそう。でも課金兵にはなりたくない?」
P「そうですよね。射幸心だのなんだと批判されるのは、
批判している人たちも魅力を理解できるからです
そして自分や知人が何かのきっかけで溺れかねないと警戒するからです」
プロデューサーさんはだいたい涼さんにつきっきりで
あたしの方も時間があれば一緒にいてくれますけど
絵理さんとは一緒にお仕事していません。
たまに尾崎さんが忙しい時付き添いするくらいです。
絵理さんには尾崎さんがいるから当たり前なんですけど。
だから絵理さんとプロデューサーさんが話してるだけでなんだか嬉しくなっちゃいます。
絵理「プロデューサーはやってみた? ソーシャルゲーム」
P「はい。人気があったものをいくつか、2ヶ月間。
無課金で1ヶ月。もう1ヶ月は5万円課金してみました」
絵理「すごく真剣。よく、やめられたね?」
P「だいたいわかった、と思いましたからね」
まなみ「でもガチャってイメージがよくないですよね。
事務所として関わるのはどうなんでしょう」
P「イメージが悪いのは儲けようとするからです。
逆にいえば、不当に利益を得ようとしない限り批判はされません。
手法自体は有効なのに毛嫌いするのもよくない」
絵理「それは、そうかも? でも儲けなくてもいいの?」
P「CDもPVも簡単にダウンロードできるような昨今で、
確かに私たちは新しい儲け方を考えないといけません。
が、それはパチンコのまがいものではないはずです。
そうなると、ライブや物販もそうですが、もう一つあります」
まなみ「なんですか?」
P「やっぱりCDやDVDなんですよ。
私たちのファンだけはきちんと買ってくれる状況を作る。
つまり、ファンのモラルを高める努力をすることです」
絵理「そんなに甘くない、と思う? だって、タダだから」
P「控えめな指摘ですね。
絵理さんは違法ダウンロードはしますか?」
絵理「う……この流れで言わせる?」
P「これは申し訳ない。では違法コピーをしてもいいと
誰かに思わせる要素を挙げます。
納得できないものは指摘してください」
絵理「うん、わかった。でもあんまり、期待しないで?」
P「岡本さんも。
まず一つ。その商品を購入するだけのお金がない場合」
これはあたしもわかります!
うんうんとうなずいたらプロデューサーさんは笑ってくれました。
P「次は、もう既に商品が店頭になく購入できない場合。
ここまでは当たり前ですね」
P「続いて、商品それ自体に価値を見出していない場合。
あれば嬉しいけれど、必要ではない場合ですね」
絵理「よくわからない……たとえば、どんな?」
P「水谷さんがネットアイドル時代に作った3作目のPVを見ました。
フルメタルジャケットのハートマン軍曹のセリフを使用していますね。
あれは、DVDを購入しましたか?」
絵理「うう……YouTubeから。ごめんなさい」
P「謝る必要はありません。
私は実際、そこは厳密に問題視するべきではないと思っています。
なぜならあのPVを完成させるためにハートマン軍曹は必要ではないからです。
だからお金を払うように規制するコストの方が大きくなります」
P「そして最後に、これがいちばん大きな条件だと思いますが
違法ダウンロードをしたことを誰にも知られなくていい場合」
絵理「うん。そうね。わたしもいま、ハートマン軍曹のこと言うの、ためらった?」
まなみ「でも、パソコンでちゃちゃってコピーできちゃいますよね?
誰かに知られる場合のほうが少ないですよね?」
P「誰にも、というのは他の人のことじゃありませんよ。
四知――知ってますか?」
絵理「英語で都市の」
P「それはシティです。
四知とはむかしの中国の故事で
要するに、悪事をしても自分はそれを知っています
という意味ですね」
絵理「……やっぱり、苦手?」
P「何がですか?」
絵理「なんでもない、です」
P「私たちは普段、自分のしたズルを許して忘れます。
だったら、つどつど思い出す環境をファンに与えればいい」
絵理「それって、どういう?」
P「ファン同士の交流をもっと盛んにさせる。
それも、オンラインではなく現実で。
ガチャはそのために使いたいと考えています」
絵理「よく……わからない?」
P「ガチャは無料。無料の登録会員のみが1日1回引くことができます。
そして一度引いたものを再度引くことはなく、
一度引いたものは再ダウンロード自由です」
絵理「うん……続けて?」
P「手に入るものはスマートフォン向け画質の十数秒程度の動画ファイル。
数分の動画を分割したものです。
その代わり配布期間はデイリーで3~4は提供します」
絵理「毎日3? そんなに……あ、でも、
短くていいなら1分のファイル分割で3つは作れるかな?」
P「公式サイトに画像ファイルの一覧を作り、それぞれの残数を公表します。
ノーマルは1000ファイル以上落とせますが、レアは50ファイル以内です。
ダウンロードするとファイルの冒頭にダウンロード者のニックネームとIDが刻印されます。
そしてこのファイルは、会員同士が直接やり取りするならコピー無制限とします」
絵理「つまり、コピーを前提としてる?」
P「はい。デイリーで3提供され、ガチャで手に入るのは1日1ファイルですから
1人では絶対に集めきれません。
一方で、ノーマルにも総数があるから
かならず誰かがレアを手に入れます。
みんなで挑み、手に入れた人は感謝だけを受け取って分け与える。
そんな環境を作りたいんです。
そして、ファイル交換の最大の場をライブとしたいのです」
まなみ「知らないファン同士が知り合うきっかけになりますね!」
P「狙いはそれです。ファンに現実の知人を増やすこと。
現実の知人の前で違法ダウンロードをしているとは
なかなか言わないものです。
他の曲は落としたとしても
あなたたちの曲や映像にはお金を払ってくれる人が増えればいい」
絵理「認証は、どうするの?」
P「そこはすみませんが門外漢です。
一つ考えているのが、ファイルを渡す側のメールアドレスにパスコードを送り
それを受け取る側の画面から入力させるものですね」
絵理「んー。でも、それなら直接会わなくても
電話とかメールでパスを教えられる?」
P「はい。そこはあまり厳密にやらないほうがいいでしょう。
オフラインでは会えない事情のある方もいらっしゃるでしょうから
その方々が手に入れる手段は残したい」
絵理「だいたいわかってきた……うん、イメージできた。
少なくとも、そのやり方で悪口は言われない、と思う?」
まなみ「でも、プロデューサーさんには涼くんの件をお願いしたのに
こういうことまで考えていただけるんですね」
P「いや、これは涼さんのためなんです」
むつかしい話で眠っちゃいそうだったんですけど
涼さんのため、という言葉で目が覚めました!
涼さんのためならあたしもがんばって起きてますよー!
絵理「涼さんの、ため?」
P「これまで女性だったアイドルが男性として売りだすのは
私にとっても初めての経験です。
展開が異次元すぎます。
なるべく体制は万全にしたいんです」
まなみ「万全、ですか?」
P「はい。主に二つあって
一つは、ファンを騙していたというマイナスを
すべて事務所が吸収すること。
もう一つは、公式の発表より前に
涼さんが男であることを浸透させることです」
まなみ「事務所が吸収……」
P「当たり前ですよ。何を言ってるんですか。
涼さんが女性アイドルのデビューを望んでいたとでも言うつもりですか。
本人の希望に沿わない嘘をつかせたのは誰ですか」
まなみ「あ、あの」
絵理「プロデューサー、もしかして、怒ってる?」
P「いえ、怒ってはいません。
怒ったら冷静な判断ができませんから。
だから怒りません」
プロデューサーさんはいつもの笑顔でした。
でもすっごく怖いのは気のせいでしょうか……。
P「全部ひっかぶるために事務所はクリーンでなければいけません。
その一環ですね。ボロ儲けできるガチャを導入しながら
サービスに徹すれば必ず評価されます。
岡本さん。絶対に忘れないでください。
ルールがあったら完璧に守らなければいけません。
でなければそこを刺されて終わります」
まなみ「さ、さすがはミスターコンプライアンス」
愛「こんぷらいあんす? ってなんですか?」
プロデューサーさんがよく呼ばれるあだ名です。
そう呼ぶ人たちは、なんかいやらしい感じがして好きじゃありませんでした。
だから悪口だと思ってたんですけど。
絵理「(カチカチ)遵守? 従順? 法令遵守?」
愛「ホウレイジュンシュ?」
まなみ「ルールをしっかり守る人ってことよ」
愛「それっていいことですよね?」
だったらなんで、悪口みたいな感じだったんでしょう?
芸能界だとそういうのはダメなんでしょうか?
P「それはともかく。
体制を整えた上で女性のデビューは事務所の作戦だと言い張ります。
そうすれば、涼さんに非難を向かわせずにやり過ごせる可能性が出ます」
絵理「そもそも、涼さんが悪いなんて誰も考えない?」
P「そうであってほしいものです。
もう一つが、噂と映像を使って浸透させることですね。
お披露目のミニライブは年末を予定していますが
それまでには公然の秘密になっているのが望ましい」
絵理「レア映像で男の子の涼さんを見せる?」
P「いえ。あくまで女の子の姿で。
ただ、しっかり探せば男であるという指摘ができるように散らします。
例えば、マグカップが一つだけ大きいとか」
絵理「でも、涼さんのマグカップ、3人でいちばんかわいい?」
P「それが涼さんのであると示す必要はありません。
ただ、画面のすみに涼さんのイメージカラーでごついマグカップが映ればいい。
他には、二つ動画を合わせると、トイレに行って戻ってくる時間が
女の子にしては短いことに気づくとか」
愛「男の人って短いんですか?」
P「トイレの所要時間は、男女の平均で14倍差があるそうです」
愛「そうなんだ!」
P「そういう、あやふやな傍証を積み上げることで
ファンの間に覚悟を積み重ねてもらいます。
変声期が終わるまでは女の子としても活動するかもしれませんね。
猶予期間を設定するわけです。
ただ、いじられ役になるからやりたくはありませんが」
そう言うとプロデューサーさんはくたびれたふうに椅子にもたれました。
P「いたましい話です。
ただこの件は前例がなさすぎるから
ベストの選択はもちろんベターな選択すらもわかりません。
涼さんには申し訳ないけど、手探りで進むしかない」
P「水谷さんに話を聞いてもらったのは
まず、私のプランがネット世界にどう思われるか意見が聞きたかったから。
そして、動画を社内で大量生産することが今の環境で可能か
判断していただきたかったからです」
絵理「ガチャとか認証とかのプログラムは作らない?」
P「そこはプロに頼みます。あくまで動画を作るところだけ」
絵理「うん……問題ない、と思うけど。
2日くらい考えたい? サイネリアにも意見を聞きたい?
涼さんの大事なことだから」
P「2日なら充分です。わからないことがあったら
夜中だろうとすぐに電話で訊いてください。
岡本さんは社長説明用の資料作りです」
まなみ「またシゴかれるんですね……」
P「資料づくりは数をこなすしかありません。がんばりましょう」
むつかしい話が終わったみたいなので、
プロデューサーさんを引っ張ってテレビの前に行きました。
あのお料理番組のDVDが届いたのでこれからチェックです。
絵理さんもそのまま一緒に見てくれることになりました。
涼さんが最近ダンスとボーカルのトレーニングで忙しいから、
絵理さんは何かと理由をつけて一緒にいてくれます。
こうしていると家族みたいだなあって思っちゃいます。
プロデューサーさんがパパで、絵理さんがお姉ちゃん。
絵理「愛ちゃん、可愛い」
愛「えへへ! ありがとうございます!」
できあがったビデオは想像してたよりもずっとずっと楽しかったです。
最初、リーダーのマキちゃんはわんぱくなタケシくんに困ってたけど
愛おねえちゃん(あたしです!)がうまくタケシくんのやる気を出させてあげて
そのタケシくんがもっと小さな子たちをまとめて最後の盛りつけをする。
そしてみんなの「いただきます!」
自分が出た番組なのに、ハラハラして、安心して、嬉しくなっちゃいました。
P「いい出来ですね」
愛「はい!」
絵理「マキちゃんも、可愛い」
愛「はい!」
タケシくんが小さな子たちをまとめはじめた時の、
ほっとしたマキちゃんの顔はとってもとってもよかったです!
P「さて、検討と指摘はあとでするとして
日高さんとは少し内容について話してもいいですか」
愛「え? でもいい出来なんですよね?」
P「はい。番組としてはいいです。
あとはアイドル日高愛として」
愛「え? うーん?」
プロデューサーさんはもう一度最初から再生してくれました。
愛「あ! 最後の食べてる美味しいシーンで
あたしのアップだけありませんでした!」
P「そうです。料理番組でいちばん大事なのは最後の笑顔です。
食べる時の笑顔だけで仕事を取れる人もいるくらいですからね。
けれど今回は使ってもらえなかった。
これはもう契約不履行レベルで、もちろん指摘しますが
どうして使ってもらえなかったかわかりますか?」
愛「うう。あたし、変な顔してましたか?」
P「笑顔はとてもよかったですよ。今回は、良すぎたんです」
あたしはプロデューサーさんの言ってることがわかりませんでした。
いい笑顔を使ってくれないなんて、そんなことあるわけありません。
それくらいのことはあたしにだってわかります。
P「納得がいかない顔をしていますね」
愛「はい! ぜんぜんわかりません!」
P「いい返事です。
ではここで日高さんの笑顔を組み込んだらどうなるか想像してみましょう。
この番組は、最後のアップは芸能人から子どもたちという順番にしています。
なぜか?
こと笑顔という単純な表情にかけて
芸能人は子どもには絶対に勝てないからです」
絵理「それは、そうかも?」
絵理さんはそれからあたしの方を見てにっこりと笑ってくれました。
絵理「愛ちゃんの笑顔にも勝てない?」
愛「ありがとうございます!
でも、あれ?
それってあたしが子どもってことですか?」
絵理「気づいた? えらいね」
愛「ひどいです!」
P「水谷さんの言う通りです」
プロデューサーさんまで!?
P「大半の芸能人は日高さんの笑顔には勝てない。それが最後のアップから外された理由です」
愛「え?」
P「収録が終わった時のことを思い出してください、日高さん。
あの時日高さんはしょげてましたよね」
え? そんなことあるわけありません。
だってこんなに楽しそうな番組だったんですから……あれ?
P「しょげてましたよ。もっとやれるけどやらせてもらえなかったって」
そうでした。
あたしはちょっとフホンイだったんでした。
P「あの時日高さんはベストじゃないと思っていた。
実際、スタッフみんな6割くらいの力しか使っていなかったはずです。
それは大人の芸能人たちもそうです。
彼らのほとんどは夜にも仕事があっただろうし
次の日もその次の日も仕事があったから。
日高さんのようにいつも10割全力とはいかないんです」
絵理「私も、わかる。愛ちゃんと全力でダンスすると、翌日がだるい?」
P「水谷さんはもっと頑張って。
へとへとになってもご飯を食べて眠れば復活できる年頃ですよ。
今無理をしないでいつするんですか」
絵理「あら。やぶ、つついちゃった?」
愛「でも、それっておかしいです!」
とっても美味しかったから、思いっきり笑うのは当然です!
それであたしだけが外されるなんて
納得とかどうとかじゃなくて意味がわかりません!
P「でも、みんなが6割の力をあわせて作ったVを見て
日高さんは最初満足してましたよね」
愛「うう。それは、そうですけど」
P「そういうものなんですよ。
全員が6割の力で作ってもソツなく良い物ができあがる。
それはスタッフのノウハウのお陰でもあるし
日々進歩しているハードとソフトのお陰でもあります。
何より、今はそのレベルのもので良いとされているんです」
愛「じゃあ、プロデューサーさんは、あたしに手を抜けって言うんですか?」
手を抜けって、口に出してみましたけど
うんそうだよって言われたらどうしたらいいのかわかりませんでした。
だって全力でぶつかるのは簡単だけど
止まってるのも簡単だけど
痛くないようにぶつかるとか
直前で止まるとか
すっごく難しくないですか?
P「いや? 日高さんにはずっとそのままでいていただきたい。
日高さんのためにも、みんなのためにも」
絵理「みんな?」
P「すぐにわかりますよ。きっと」
愛絵理「?」
次の日、あたしは歌番組に出演してました。
少し前に出した「はなまる」がスーパーの店内音楽で人気になって
それで呼ばれたんです。
ちなみに有線会社さんに売り込んでくれたのは
まなみさんのアイデアだったそうです。
「私にはできない発想です」ってプロデューサーさんがとっても喜んでました!
歌い終わって、ふーってしてたら、殺されるかと思いました。
??「すごいの! すごいの! すごかったのー!」
愛「うわわわわっ!?」
振り向こうとしても、ぎゅーっと抱きつかれて見えませんでした。
でも誰かはわかりました。
新人No.1アイドルの星井美希さんです。
美希「愛、すごいね!? 律子のイトコなんだよね!?
あははっ! ほんとすごいの! カワイイの!
さっすがは律子のイトコなのー!!」
愛「あ、あの、律子さんのイトコは涼さんです!」
美希「ほえ? そうなの?
でもそんなのどーでもいーの!
愛ほんといっしょーけんめいで、とってもとってもキラキラしてたの!」
星井さんはしばらくあたしをもみくちゃにしてから
ディレクターさんのところに走っていきました。
星井さんの撮影はもう終わったはずなのに、またスタッフさんたちが動き始めました。
ライトの下で星井さんがあたしに向かって手を振りました。
美希「愛ー!」
もう身体いっぱいで手を振ってくれてます。
よくわからないけど、あたしもうれしくなって手を振りました。
美希「愛に負けないようにミキがんばるからねー! 見ててねー!」
P「はは。なるほど。星井さんらしい」
まなみ「笑い事じゃありませんよ。
星井さんのリテイクはもう完璧。
その結果、愛ちゃんのシーンが30秒も削られるんですよ」
P「本気の全力の星井さんにはさすがにかないませんでしたね」
まなみ「愛ちゃんもすごくいい出来だったんですけど。
で、それでですね。
来週なかばから愛ちゃんに急なオファーが入ってるんです。
全部765プロがらみです」
P「そうなんですか。それはよかった」
まなみ「星井さんが言ったらしいです。
愛ちゃんといっしょの仕事は楽しいって。
でもそんなことでこっちにオファー入れさせるなんて」
P「765プロは飛ぶ鳥を落とす勢いですからね」
まなみ「あの人たち、愛ちゃんを潰す気なんでしょうか」
P「そうかもしれませんね」
まなみ「あの、プロデューサー?」
P「はい?」
fまなみ「765の男性の方から言われたんですけど」
P「おや」
まなみ「愛ちゃんの勉強になるからどんどん仕事入れていいって
許可したんですか?」
P「許可ではなくお願いですが、そのとおりです」
まなみ「やっぱり……来週半ばから再来週
765プロとの仕事が3本ですよ。全部飛び入りで。
スケジュール縫ってうまくすべりこんできたから断れないし
これじゃ愛ちゃん潰れちゃいますよ!」
P「潰れそうなら助けましょう。
でも日高さんは潰れないんじゃないかな」
~二週間後~
愛「プロデューサーさん、もうばたんきゅーです……」
P「よくがんばりましたね。はいココア」
なんだかすごかった一週間でした!
それまで2日続けてお仕事ってあんまりなかったのに
4日続けて、1日休んで、2日でしたよ!?
あたしが想像してた売れっ子アイドルは毎日朝から晩までスケジュールが入ってます。
今ならわかります。そんなの絶対にムリです!
愛「みなさんすごかったです……」
雪歩先輩は自分が主演のミニドラマにわざわざ私の役を作ってくれました。
セリフは少なめだったんですけど、一緒のシーンが多くて。それが2日。
真さんと春香さんは情報番組のレポーターに呼んでくれて
あずささんはあず散歩に呼んでくれて。
どうしてそうなったのか、わけがわかりません。
P「どんどんVは上がってきますよ。まずは星井さんとの番組ですね」
星井さんはもう、すごかったです。
リテイクはその前に見ていたのとはぜんぜん違いました。
P「星井さんはすごいでしょう」
愛「すごいです」
とってもかないません。
765プロの皆さんはいい先輩でやさしくしてくれますけど、ライバルです。
ライバルに毎日毎日負けちゃってたからさすがにしょんぼりです。
P「これはリテイクだったんですよね」
愛「そうなんです。星井さんに抱きつかれて、お話をしたら
いつの間にかリテイクが始まってました」
P「前に話しましたよね。料理番組の時に。
10割の力を出すのはみんなのためにもいいって。
あれはこのことです」
愛「え?」
P「星井さんはすごいでしょう」
愛「すごいです」
とってもかないません。
765プロの皆さんはいい先輩でやさしくしてくれますけど、ライバルです。
ライバルに毎日毎日負けちゃってたからさすがにしょんぼりです。
P「これはリテイクだったんですよね」
愛「そうなんです。星井さんに抱きつかれて、お話をしたら
いつの間にかリテイクが始まってました」
P「前に話しましたよね。料理番組の時に。
10割の力を出すのはみんなのためにもいいって。
あれはこういうことです」
愛「え?」
P「765プロの皆さんは日高さんより一歩先に人気が出ました」
ほんとに一歩だけなんでしょうか。
あたしは遅れてるだけなんでしょうか。
自信がなくなってきました。
P「毎日のように仕事が入り、若い彼女たちでも体力がもちません。
ごくごく自然に、力を抑えてこなすようになります。
以前はお昼の生番組がありました。あそこで発散していましたが」
生っすかですね。
あたしも楽しく見てたんですけど、いきなり終わっちゃいました。
P「10割の力でがんばると周りから浮くのはよく知っていますよね?
彼女たちもそうなって、どこで全力を出していいのかわからずに、
不完全燃焼でいたはずです。
そんな時に、星井さんは日高さんを見つけました」
愛「あたしを?」
――愛ほんといっしょけんめいで、とってもとってもキラキラしてたの!
あれってホントのことだったのかな。
P「星井さんのところには翌日にはVが届いたはずです。
リテイクの、全力の、魅力的なVがね。
日高さんの映像と一緒にみんなに自慢する星井さんが目に浮かびます」
プロデューサーさんはなんだか星井さんのことを知っているように話します。
P「それで早速、調整がつけやすい子たちから
日高さんと仕事をするように動いたんでしょう。
全員とまではいかなくても、あと何回かは希望が来ると思いますよ。
そしてこれからも、全力で仕事をしたかったら日高さんを呼ぼうとするでしょう」
愛「うう~。あたし、もつんでしょうか」
P「全力でぶつかって、こてんぱんにされてきてください。
それが売上になるし、日高さんの成長になりますから」
愛「でも、毎日あんなにきついお仕事なんて~」
P「毎日にはならないはずですが、考え方を変えましょう。
楽しかったですか?」
愛「はい! とっても!」
P「これからも楽しめそうですか?」
愛「はい! もちろんです!」
P「だったら心配ありませんね」
愛「あ、あれ? そうかも。あれ?」
プロデューサーさんはおかしそうに笑っていました。
それで不安がどっかにいっちゃいました。
あたしがすっかりプロデューサーさんと仲良しになると
やっぱりママと仲が悪そうなのが気になります。
昔ママのプロデューサーだったなら、今だって仲良くすればいいのに。
そう思ったときハッとしました。
ママがアイドルのお仕事をやめたのは妊娠したから。あたしができたから。
その時プロデューサーさんはどう感じたんでしょうか。
ママはすごい人気者だったって言われます。
妊娠はもう日本中がびっくりするくらいのニュースになったって。
プロデューサーさんもすごくびっくりしたんじゃないでしょうか。
もしかして。
ママがプロデューサーさんのことを悪く言ってたのは
それが関係あるのかもしれません。
例えば、パパとケンカしちゃったとか……
ママの引退に反対したとか……
そうでもないと、やさしいママがあんなに嫌うのはおかしいです!
でも、でも、そうしたら。
プロデューサーさんはあたしのことをほんとはどう考えているんでしょう。
もしかして
もしかして。
『この子さえ生まれなかったら舞は引退しなかった』
とか思ってるんじゃ……。
舞「愛? 愛? どうしたの?」
愛「あ、ごめんママ。ぼんやりしてた」
舞「ふふ。おかしなの」
愛「んー」
お仕事のない、土曜日の午後です。
おひさまが差し込んでくる窓際で、ママはお洗濯をたたんでいます。
あたしはお出かけせずにおうちにいることにしました。
今日はあのお料理番組が放送されるから、ママと一緒に見るんです。
あたしは寝転がって、ママのふとももの上に頭を乗せました。
ママがお洗濯物を取り込んでる時にこうすると
ママは私の顔の上でお洗濯物をたたみます。
お日さまと洗剤のにおいに包まれるのがとっても気持ちいいんです。
愛「ねえママ」
舞「なに?」
愛「涼さんのプロデューサーさん、
昔のママのプロデューサーさんだったんだよね?」
舞「なに? あいつが言ったの?」
愛「う、ううん。
一緒にいたら『親子二代だね』って言ってくる人がいて」
舞「まあそうね。あいつが入社してすぐ私の担当になって
私がやめるちょっと前に担当じゃなくなったのよ」
愛「今みたくすごい人だった?」
舞「ろくなもんじゃなかったわよ」
ママのふとももが固くなりました。
怒ってる感じです。
あたしはママから離れました。
舞「いやな奴だったわ。
自分のやり方を押し付けてきて、こっちの意見は聞かない。
あのころ私は今の愛と同じくらいだったから怖くて従ってたけど。
休みはくれない友だちとも遊べない。
いやな奴にもペコペコさせられる」
愛「……そうなんだ」
舞「あんた、あいつにつらいことさせられてないわよね?
何かあったらすぐに言うのよ?」
愛「ぜんぜん! すっごくやさしいよ」
次の言葉は、言ってすぐ後悔しました。
愛「パパってあんな感じなのかな」
ママの顔色が変わりました。
舞「そういうの、冗談でもよして、愛」
愛「ご、ごめんなさいママ」
舞「ほんとはママね、
愛の近くにあいつがいると思うだけでいやなのよ」
愛「ごめんなさい……」
でも。
どうしてもママの言うことが正しいとは思えませんでした。
パパみたいって言ったのはあたしが悪かったけど
いつも私たちのために頑張ってくれてるプロデューサーさんに
ひどいことを言われたまま終わりたくありませんでした。
愛「でも」
舞「なによ」
愛「いい人だよ、プロデューサーさん」
ぱちん、という音はほっぺたが痛くなってから聞こえました。
あたしはただぼんやりと、ほっぺたを抑えてママの顔を見ていました。
ママは泣いていました。
ママが泣くところを初めて見ました。
舞「いい人なわけないじゃない!」
舞「あいつが! あんな事件を起こしたせいで! みんな現場から外されて!
みんなで花火を上げるはずだった!
あいつがいちばんやりたがってたじゃないの!
それは信じてたから
それだけは信じられたから
あんなやつでも我慢してたのに……」
あたしはおろおろと手元のタオルをつまんだりねじったりしてました。
もうタオルにはおひさまのにおいは残っていませんでした。
ママは正座したまま、顔を隠そうともしないで、ぽろぽろと涙をこぼしていました。
舞「あの時、あのメンバーじゃなきゃできなかったのよ
私、鯉沼さん、真城さん、神田さん、落合さん、あいつ……。
みんなバラバラになっちゃって
私は妊娠なんかしちゃうし」
愛「え?」
さっき叩かれたほっぺが、触られたわけでもないのにもっともっと痛みました。
愛「ママ、いま」
ママの顔は、紙粘土みたいに白くなってました。
目が真っ赤で、髪が乱れて、ママじゃない知らない人みたいでした。
舞「うそ。うそよ、愛」
『この子ができなかったら引退しなくてよかったのに』と
プロデューサーさんが思ってるんじゃないかって怖がってたけど。
愛「いま、いま、なんて」
でもちがいます。
プロデューサーさんにどう思われたって
あたしはどうでもよかったんです。
舞「愛、うそだから」
あたしが怖かったのは。
同じことを。
愛「ママ、あたし……
生まれないほうが、よかったの?」
ママも思ってるんじゃないかって……。
気がついたら知らない場所を1人で歩いていました。
とにかく家を飛び出して、前も見ないで一生懸命走って。
そんなに遠くまで来てるはずないけど、みたこともないところでした。
泣きながら歩いていたから、通りがかったおばさんが交番まで連れて行ってくれました。
おうちの人は? と言われて電話を渡されて
少し考えたあとで、その番号を押しました。
P『はい、もしもし』
プロデューサーさんの声を聞いたとたんにまた涙がぼろぼろ流れてきました。
P『もしもーし。どちらさまですか?
……。
もしかして、日高さんですか?』
愛「はい。愛です……お父さん」
P『おと……?
どこにいるんですか? この番号、家じゃありませんよね?』
愛「あの、交番……」
P『今、水谷さんの立ち会いをしています。
あと1時間で上がり、家に送ってから迎えに行きます。
待っていられますか?』
あたしは何もしゃべれなくて、ぶんぶんと頷きました。
P『よさそうですね。
それではお巡りさんに代わってください。
私が行くまでそこにいさせてもらうようお願いします』
愛「ごめんなさい、ごめんなさい」
P『大丈夫、安心して。大丈夫だから』
泣きながら電話機をお巡りさんに渡しました。
プロデューサーさんが来るまでには涙も止まりました。
すごく不思議なんですけど、「泣き顔見せちゃうのか」って考えたら
ぱたっと止まっちゃったんです。
それでも、交番の前に事務所のバンが止まった時にはじわっときちゃいましたけど。
2人でお巡りさんにありがとうをして
とりあえず、ということでファミレスに落ち着きました。
P「聞きたいことはたくさんありますが、お母さんには?」
あたしが首を振ると、プロデューサーさんはすぐに携帯を取り出しました。
愛「ママには言わないでください!」
そう言ったんですけど、プロデューサーさんの目を見たら
何も言えなくなっちゃいました。
お仕事の時は見たことがないくらい怖い顔でした。
P「日高さんですか? 私です。愛さんを保護してます」
そして、電話を耳から離して顔をしかめました。
向かいに座っているあたしにもママの声が聞こえてきました。
ああ、怒ってる……。
P「日高さん、落ち着いてください。何も心配は。ですから、いえ、それは……」
プロデューサーさんは困り顔のまま息を吸うと、少しだけ大きな声を出しました。
P「落ち着け、舞! いい子だから」
あたしと同じで電話の向こうのママもびっくりしてしまったみたいでした。
P「迎えに来るのはいい。でもそれは君が落ち着いてからだ。
愛さんが不安なのに君まで取り乱してどうする。
ドラムを聞け。ベースを見ろ。
一旦切るから、落ち着いたらまた電話してきてくれ」
プロデューサーさんは電話を机の上に置くと、ふうと息を吐きました。
P「さて。お母さんの方はいずれ落ち着くでしょう。
それまで待って、送っていきますよ。
デザートでも何か――」
愛「あの! プロデューサーさん!」
P「はい」
愛「ごめんなさい。今日ちょっとママに会いたくなくて」
いくらあたしだって、ママがあたしを好きなことは知ってます。
でも、今日のことはすごくショックだったし
どうやってママと話したらいいのかわかりません。
P「そうですか……」
愛「今日、おうちに泊めてもらえませんか?」
P「は?」
電話がまた震えました。
P「私です。はい。はい。落ち着いたね。
それでだけど、愛さんが今日は家に帰りたくないと言ってるんだ。
彼女は今とても興奮している。君もだろう。
今日はお互い頭を冷やしたほうがいいと思うけど、どうですか。
――ああ、うん。
なら、どこか泊めてくれる親戚の家でも」
プロデューサーさんの言葉で慌てました。
うちは涼さんの家とは違うから
仲の良いイトコのお姉さんはいないんです。
P「――ああ、そうか。となると
え? 嫁? それはまあ、いるにはいるが。
いや、それは――まあ、たしかにそうは言ったが」
プロデューサーさんの顔は、いつもに戻っていました。
いつも、あたしや涼さんや絵理さんと話すときの顔です。
まなみさんや尾崎さんへの厳しい顔じゃなくて。
あたしたちへのやさしい顔でした。
その顔のまま電話を切りました。
「明日朝送っていく」と言ったので
今日は帰らなくていいことはわかりました。
P「まあ、お母さんの方は落ち着きました」
愛「ママ、怒ってました?」
P「心配してましたよ。悪い子ですね」
愛「ごめんなさい……」
P「まずは何か食べましょうか。
昼から食べていないので腹が減りました」
あたしのお腹も賛成して、2人で顔を見合わせて笑いました。
P「なるほど、反抗期ですか。
きっかけが私というのは心苦しいけれど、おめでとうございます」
愛「反抗期ってどなったりすることですよね?
でもあたし、ママのこと大好きです」
P「反抗期というのは親を嫌いになることじゃありません。
それはたまたま出てくる態度の一つなだけで
親子ともに気づかず、始終ニコニコと終わる反抗期だってあります」
愛「そうなんですか?」
P「はい。子どもは生まれてきて、まず誰を頼りにしますか?」
愛「ママです!」
P「そう。親ですね。
子どもの世界は狭いから、親が正しいと考えてすべてうまくいきます。
でも、中学生になったあたりでしょうか。
親のルールじゃいけないことが増えてきます。
実は、親がすべて正しいわけじゃないことに気づき始めます」
そうです。ママがなんと言おうと、プロデューサーさんはやさしい人です!
P「そうすると子どもは自分なりの考え方――価値観といってわかりますか?」
愛「な、なんとなく。
リンゴよりバナナが好きってことですよね?」
P「まあ、今はそれでよしとしましょうか。
お母さんがバナナよりリンゴが好きでも
愛さんはバナナが好きです。
それはつまり、愛さんの世の中では
バナナの方がいいものだということになります」
愛「ママとケンカせずに半分こできます!」
P「お母さんはいい人だから半分こしてくれるでしょう。
でも中には、自分が好きなんだから
愛さんもリンゴを好きになれという親もいます。
それにリンゴとバナナだったらふつうの親は気にしませんが
もっと大事なことの場合
子どもに自分と同じ考えをしてもらいたがります」
ママはプロデューサーさんがあたしのそばにいることに我慢してくれてました。
だけど、目の前で好きだというのは許してくれませんでした。
そういうことなのかな?
P「念のため言っておきますけど、それは子どものことが大事だからです。
世の中はとても大変なところで自分はなんとかやってこれました。
この考え方で失敗しないことはわかっているんです。
だから、子どもには同じように幸せになってもらいたいんです。
親はすべて、子どもの幸せを願っているんですよ。わかりますね?」
愛「はい」
P「しかしそれは、子どもにとっては押しつけにすぎません。
親子といっても別の人間です。
身体がちがうように考え方がちがうのも当たり前なんです。
だから、子どもは少しずつ親のコピーではなく
自分で考えるようになります」
P「それを歓迎する親のもとでは反抗期は目立たずに終わります。
押さえつけようとする親のもとでは
お互いケンカのようなことになるでしょう。
でも、子どもにとってのゴールはどちらも同じです」
愛「それって、なんですか?」
P「親を許すこと」
愛「許す……?」
P「まだまだ不十分で、いきあたりばったりで、考え不足で、いい加減な
それでも一生懸命つくりあげた自分だけの考え方を大事にして
同時に、親だって完全じゃないんだということに気づくこと。
今まで完璧で正しいと思っていた親の
間違っているところ、ダメなところに気づくこと。
そしてそれをやさしく許すこと。
子どもは、まず親を許すことで
一人の人間として、他の人間を許してあげられるようになるんです」
許す。
ママはいつも正しいから、間違ってるのはあたしだから
ごめんなさいはあたしがすることで
許してくれるのはいつだってママの方でした。
許す。
ママを許すなんて想像もできません。
愛「よくわかんないです」
P「そういう時はどうするんですか?」
愛「今わからなくてもあとで思い出してわかるから、真面目に聞いてます」
P「その通り。日高さんは本当にいい子ですね」
あたしは鼻水をすんとすすって、にっこり笑いました。
P「それで、話の流れで今夜は私の家に来てもらうことになりました」
プロデューサーさんはどこか困ったような顔をしていました。
それでようやく、大事なことに気がつきました。
愛「あ! だったらプロデューサーさんの奥さんに会えます!」
P「いや、それが無理なんですよ」
愛「ええ? でもさっき電話でママにいるって」
P「あれは嘘なんです」
愛「え?」
うそ?
P「私は実は、独身なんです」
え?
愛「おじゃましまーす!」
P「お願いですから静かにしてください。
聞かれたら親戚の子どもだと言いますが
聞かれないにこしたことはないから」
愛「あ、ごめんなさい!」
P「ボリュームが落ちない……。
今更ながら涼さんの気持ちがわかりますね」
なんと、あたしは今プロデューサーさんの家にやってきています!
お部屋は台所の他には1部屋だけでずいぶん散らかってます!
脱ぎっぱなしのシャツはあちこちにあるし、ビールの空き缶が20個以上並んでます!
お布団は敷きっぱなしで枕もとは雑誌が積まれてます!
あたしがこんなに散らかしたら、座れなくなるくらいママにお尻を叩かれます!
愛「すごく汚いですね!」
P「そうでしょうか?
一応、3時間掃除すれば男友達を呼べる程度には
普段から片づけているつもりなんですけど」
愛「ママはいつもきれい好きだから、大掃除でも3時間もかけませんよ! うちは!」
P「ですからちょっと声を落としてください」
そう言われてあたしは口を両手でふさぎました。
そのぶん目で一生懸命あたりを探検すると、1枚の写真を見つけました。
愛「あー! ママですよね!」
P「そうですよ。若い時の日高さんのお母さん
私、あとは仲の良かったスタッフたちです」
写真の中のママはびっくりするくらい子どもでした。
隣にいるのがプロデューサーさんで、こっちも若くてかっこいいです!
ママはプロデューサーさんと肩を組んで、すごく大きく口を開いて笑ってました。
愛「あれ? この後ろの人」
P「見覚えがありますか?」
愛「はい」
前に一度現場で挨拶したことがあります。
カントクさんがぺこぺこしてたから、すごくえらい人なんだと思います。
あたしが覚えているのは、苦手な人だったからです。
あたしを見ないで、あたしの後ろのママを見ている人だったからです。
愛「この人、アイドルだったママと友だちだったんですか」
P「友だちではないですね。
皆さん、その当時はあるテレビ局のスタッフです。
左から……」
みんな、ママが泣きながら言った名前でした。
愛「あたし、この女の人以外は会ったことあります」
みんな、あたしの向こうのママを見ていた人たち。
あたしが苦手だった人たち。
P「そうかもしれませんね。
みなさんもう役員になっていますがたまに現場でお見かけします。
舞さんの娘さんがデビューしていると聞けば顔を見に来るでしょう」
愛「そんなにママは人気者だったんですね……」
プロデューサーさんは黙って紅茶のおかわりをくれました。
P「人気者、というのとは少し違いました。
彼女は太陽でした」
愛「太陽?」
おひさま?
P「どこにいても周りを照らして熱くさせる。
でも近づきすぎるとやけどする。
料理番組のオンエアは見ましたか?」
愛「あっ! 見てないです……」
その時間、あたしは交番でしょんぼりしてました。
今日だけで、ほんとにほんとにたくさんのことがありました。
P「録画してあるのであとで見ましょう。
ちゃんと日高さんのアップも使われてましたよ。
子どもたちに挟まれてましたけど」
そうでした。あたしが笑いすぎるからって
最初はアップを外されてたんでした。
P「お母さんにも同じことがいつも起きていました。
彼女が関わると共演者やスタッフの力不足や手抜きがバレてしまうんです。
彼女と仕事をすると食われる、と言われて営業は大変でしたよ。
露出を増やして、イメージを操作して
ファンやスポンサー側が求めるようにするしかなかった」
――休みはくれない友だちとも遊べない。
――いやな奴にもペコペコさせられる。
P「それでも彼女に惹かれて集まる人たちがいました。
それがその写真のメンバーです」
P「みんな今の私くらいの年齢で、素晴らしい職人たちでした。
全員が才能とやる気の塊で、そんな人たちが1つの局の同期に集まったのは、
結果だけ見たら奇跡としか思えない」
P「テレビの現場で暴れまわり
そろそろ現場は離れようかと考えはじめた頃
彼らは日高舞という素材を見つけたんです。
いまでは舞さんだけが凄かったように言われます。
ですが実際はあべこべです」
あたしが生まれる前のママのことを
まるでついさっきのことみたいに話すプロデューサーさんと一緒にいるのは
なんだかとても不思議な感じがしました。
P「舞さんはその頃、ただのおしとやかでかわいらしい
世間知らずの女の子でした。
ただ一つ、静かな負けん気だけは強かった。
泣きながらもう嫌だ、帰りたいって喚いて
じゃあ帰るか? と聞くと歯を食いしばって戻って行きました。
そこが気に入られたのでしょう。
その写真の人たちは徹底的に舞さんをしごきました」
P「人間が成長するのは全力を出した日だけです。
14才から15才のあいだ、舞さんは毎日全力だったんです。
愛さんが音を上げかけたような暮らしを1年以上。
それも業界トップの人たちと取っ組み合いで。
残した結果は、ささやかにすぎると私は思います」
愛「すごい……」
P「時代もよかった。あの頃はまだ、テレビは娯楽の王様でした。
テレビには大人が全力をかける価値があった。
今、どうかは、口には出したくありませんが」
P「みんなが6割の力を出して、ノウハウと技術で合格点のものに仕立て上げる。
それはとても大変なことで、とても素晴らしいものですが
最後の良かった時代を知っている私にとっては少し残念ですね。
その写真の全員が今この時代にいたとしても
花火を上げようと想像することさえできなかったはずです」
その言葉には聞き覚えがありました。
愛「あの、プロデューサーさん。花火を上げるってなんですか?
ママも言ってました」
ママがやりたかったこと。
この写真の人たちと一緒に。
プロデューサーさんは目をまんまるにしてあたしの顔を見ていました。
P「……舞が?」
愛「みんなでやりたかったって」
プロデューサーさんは何回か目をぱちくりさせると
なんにも言わないでお台所に行きました。流しで顔を洗って……
あれ? このお家、洗面所がないんですか? 不思議なお家です。
トイレはあるんでしょうか。心配してるうちに戻ってきました。
P「花火を上げるというのは、私たちの合言葉みたいなものです。
それは、私たちが、その写真のメンバーがやりたかった企画です。
21週で土曜日19時から20時。プロ野球に真っ向勝負を挑むドラマの生放送です」
愛「生放送? あれってお昼の番組だけじゃないんですか?」
春香さんたちが少し前までやってた生っすかは生放送だったはずです。
P「最近ではそうですけど、私が生まれる少し前までは夜の生放送もよくあったんです」
愛「そうなんですか~って、ド、ドラマ!?」
P「はい。ドラマです」
愛「生放送でドラマ!?」
このあいだ、雪歩先輩と一緒にミニドラマを撮りました。
ほんのちょっと、30秒くらいのシーンで刻んでつないでましたよ!?
愛「ええっ!? セットの移動はどうするんですか!?」
P「他のシーンを回してる間にどんな大スターでも走ります」
愛「衣装はどうするんですか!?」
P「その場で着替えますよ。当たり前でしょう」
愛「ええっ!? もし転んじゃったら」
P「転ぶ姿がお茶の間に届きます」
愛「もしカメラが壊れちゃったら」
P「ほかのカメラだけで回しつつ、その場で直すか替えを用意します」
愛「地震は」
P「何事もないかのように振る舞うか、無理なら即興で組み込みます」
愛「火事」
P「映らないように消すか、無理ならば自然に舞台を移します。
実際、小さなボヤ程度ならば消し止めて警察への報告もなかったといいますし」
プロデューサーさんの目がいきいきとしてきました。
P「その日いい俳優がいたらその人が主役を食います。
脚本家は詰めっぱなしですぐにストーリーを変更して
カメラはいい表情の人だけを追い続けます。
下手すると、映るはずだったセットに座ったままで
結局出番のない人だって出るでしょう。
最高のキャストとスタッフが、その日の最高を伝えるために
最初から最後まで真剣勝負です。
まさに花火です。全力で戦って、終わったら酒瓶片手にぐったりする」
愛「あたまがくらくらします」
今のお仕事だと失敗しても帰るのが遅くなるだけです。
でもその生放送というのは、終わればぴったり時間どおりに帰れるけど
次の日の学校でみんながあたしの失敗を知ってるわけです。
というか、あたしなんか映れないかもしれません。
ママは、今のあたしとそんなに違わない年で、
この写真の人たちとそんなことをやろうとしていたんです。
愛「あたしが生まれなかったら、ママはそれをできたんですね」
また鼻がぐずぐずしてきました。
P「違いますよ」
P「違いますよ」
愛「え?」
P「できなくなった原因は、私が罪を犯したからです。
そのメンバーの中で私の役割は根回しと人集めでした。
舞さんの影響力を強めて反対する人たちを減らし
協力してくれる人たちを増やすこと。
特に舞とやりあえるような名優を集めること。
つまり制作の仕事ですね。
そこで私は焦りすぎて、ルールを破りました。
事務所のお金を使い込んで強引な接待をしたんです」
愛「あ……」
プロデューサーさんが『ミスターこんぷらいあんす』って呼ばれるのは
褒められてたわけじゃなかったんです。
昔ルールを破ったことを
きっと今でも言われてるんです。
だからあんなに、まなみさんにルールを守れって言ったんでしょうか。
P「写真の仲間たちはみんな、無理を言って現場に残っていたんです。
私のことがあって、わがままを言いづらくなって
それぞれ現場を離れてしまいました。
本当は、最後に花火を上げて
安心してくれって言って送りだすつもりだったんですけど」
愛「……」
P「私以外の誰が欠けてもできないことでした。
それを、いちばん必要ではなかった私が台無しにしたんです」
プロデューサーさんの顔はさっぱりしてました。
でも、話しかけられないくらい寂しそうでした。
P「とても残念ですが、過ぎたことです。
昔には戻れません。
それに、日高さんがいます」
愛「え? ええ? なんでそうなるんですか!?」
P「765プロの子たちの話ですよ」
愛「え? え?」
力を抑えることが当たり前になりつつあったテレビ業界、いや芸能界に
全力を振り絞った証を残しておかなければと思ったからです。
それをいちばん表現できるのが生放送だっただけです。
舞さんはそこで主役を守りきって
スタッフや共演者、全員から全力で挑まれる目標として芸能界に輝いたはずです。
力を抜かない世界を、せめて一角だけでも残して伝える。
それが、そのメンバーにとっての最後のおつとめだったんです。
私が潰したのはそういうものでした」
P「でも、日高さんが出てきました。
不器用で、才能もなくて、あるのは元気だけで
でも、一生懸命がまわりにあふれるような女の子が」
そ、そこまでも言わなくていいじゃないですかあ。
P「舞さんは太陽になる予定でした。
近寄らなければ凍え死ぬ。うかつに触れたら焼き殺される。
そうして芸能界の張りを守る予定でした。
それは寂しくて辛いことですが、舞さんはやさしい子でしたから
前の世代の人たちの願いを継ごうとしてくれていたんです」
P「愛さんは違います。
愛さんはのびのびと遊べるおひさまになるんです。
挑まなければ仕事がないから、ではなくて
愛さんと一緒だとめいっぱいできて楽しいから
みんなが寄ってくるおひさまになるんです。
765の子たちが寄ってきたように」
愛「そ、え、そ、そうなんですか?」
ほんとのところ、プロデューサーさんの言ってることの
半分もわからなかったです。
こんなあたしがおひさまとか……
でもママの言葉を思い出しました。
いいこと言ってるなと思ったら、とにかく一生懸命聞いておきなさい。
愛がわかる年ごろになったらぱあっと思い出すから。
ママは、写真のすごい人たちの言ってたことを
そうして思い出してきたんじゃないでしょうか。
きっと、プロデューサーさんの言ったことも。
P「わかってませんね」
愛「はい! ぜんぜん! でも覚えます!」
P「はは。いい返事です」
愛「えへへ」
P「ご褒美に一ついいものを見せてあげましょう」
隣りのお部屋もプロデューサーさんが借りてるお部屋でした。
そこに連れて行かれて、びっくりして動けなくなりました。
事務所の本棚の何十倍かわからないくらい、たくさんの本とCDとDVDが並んでました。
全部芸能界の雑誌で、アイドルのCDで、DVDで、ビデオテープもありました。
あたしがあたりを見廻している間に、おっきなテレビから音楽が流れててきました。
愛「ママだ……」
若いママが、キラキラしたステージに立っています。
とっても優しそうな顔は
あたしが見たどんな昔のママよりも、今のママに似てました。
P「彼女の最後の歌です。タイトルは『ALIVE』
この時すでに、お腹にはあなたがいます」
愛「!!!」
そう言われてテレビに顔を近づけたけど、もちろんおなかはペタンコです。
P「まだ外からはわかりませんね。
ただ、誕生日から逆算して、気づいていてもおかしくない頃です。
私は気づいていたと思います」
ひとつの命が生まれゆく
二人は両手をにぎりしめ 喜びあって……
P「この曲、作詞家から上がってきたのは
この映像の一年前のことでした。
私がまだプロデューサーをしていたころです。
2人とも一度聞いてボツにしました」
愛「!?」
P「私も舞さんも自分たちが輝くことしか考えていませんでした。
そんな2人にとって、この曲はあまりにつまらない。
自分たちには成功しかないと考えていましたからね」
しかし闇は待ち伏せていた……希望失って悲しみに暮れ……
P「どん底にいた時、この曲がテレビから聞こえてきて
背中を押された気がしました。
舞は新しい気持ちで歩き出そうとしている。
私も、もう一度やろうと思いました」
どんな時も命あることを忘れないで
未来の可能性を信じてあきらめないで
P「876に来た最初の頃にお母さんに言われたんですよ。
まだこの業界にしがみついているのかと。
恥ずかしくないのかって。
自分で背中を押しておいてひどい話です、まったく」
愛「ママ……」
ゆっくりしたメロディが気持ちいい。
あたしはそれにあわせて身体をゆすっていました。
小さなあなたに願ったのは 愛し続ける優しさ
けして揺るがない強いこころ もてますように……
初めて聞いたのになんだか懐かしい曲でした。
画面が暗くなりました。
あたしはそれでも身体をゆすっていました。
P「人気絶頂だったアイドルの突然の妊娠は
もちろん大スキャンダルでした。
しかしファンの動揺がそれほどでもなかったのは
この曲のおかげだったと思います。
私も思いましたからね。
『あんなに愛している子を生むのだから
もう祝うしかないじゃないか』
ってね」
愛「プロデューサーさん……」
――うそ、うそよ、愛。
ママの顔を思い出しました。
――愛、うそだから。
ママは嘘だと言ったけど、嘘じゃなかった。
あたしが生まれなかったほうがよかったって
きっと何度も何度も思ったはずです。
そうでしょう?
だって、こんなにキラキラした世界で活躍してたんだもの。
ママはそれでもあたしを産んでくれた。
それなのに、後悔しちゃいやだ、なんて言えません。
ママはあたしを選んでくれたんだから
後悔させないのはあたしのお仕事だったんです。
でも、あたしはそれをちゃんとしてきたんでしょうか。
P「ファミレスの電話で、ひどいことを言ってしまったと。
謝ってくれと。お母さんは泣いていました」
もうこらえられませんでした。
愛「……プロデューサーさん、ママに会いたいです。
……ごめんなさいって、大好きだよって言いたいです」
P「はい」
愛「……ごめんなさい。おうちに帰りたい」
あたしは目をぎゅっとつぶって、でも涙が止まらなかったけど
プロデューサーさんがうなずいてくれたのはわかりました。
P「送っていきます。帰りましょう」
プロデューサーさんの言葉を遮るように、ドアを叩くうるさい音が聞こえました。
隣りの部屋でした。
舞「愛! 愛! いるの!? 帰ろう? ママよ!」
顔を上げて、プロデューサーさんの顔を見て
あたしは走り出しました。
愛「ママ! ママぁ!」
部屋を出る時、何かにぶつかったみたいで
プロデューサーさんの慌てた声と、何かがたくさん落ちる音が聞こえました。
舞「……それにしても、独身オヤジの部屋に
中学生の女子を引きずり込んだのね、あの変態」
ママにぴったりくっついて。腕に包まれて。
耳の中ではまだあの歌がゆっくり流れています。
愛「変態じゃないよう。
あたしたち、たくさんたくさん迷惑かけたんだからね!」
ママは小さく笑うとあたしの身体をゆすりました。
愛「ママ、ごめんね」
舞「ママこそごめんね」
愛(あ……)
なんで今まで気づかなかったんだろう。
ママはいま、本当にごめんなさいと思ってます。
これまで、ごめんって言ってくれてても
口だけだと思ってました。
でも違います。
ママも悪いことをしたと思ってて
ほんとに謝りたかったんです。
でもあたしは、ママが謝るなんて思わなかったから
許してあげるなんて考えもしませんでした。
ママもいつも、何かしちゃった時は、あたしに許してほしかったんです。
愛「いいよー。許してあげます!」
舞「何よ! 生意気に!」
ほら、とってもホッとしてます!
愛「ゆーるしーてあーげまーすよー。ママー」
舞「何よその歌」
愛「今日、一緒にお風呂はいってくれたらかな」
舞「どうしちゃったの」
愛「だってあたし反抗期だもん!」
舞「は? え? 反抗期?」
あたしは身体の向きを変えて、ママの髪の毛の中に顔を埋めました。
少し汗臭いけど、ママのにおいです。
大好きなにおいです。
愛「あたし、反抗期なんだよ」
だから許してあげるんです。
もう子どもじゃないから。
ママは絶対じゃなくて完璧でもないって知っちゃったから。
だから、ママが悪くても許してあげて
大変で寂しいときはいっしょにいてあげるんです。
舞「え、なに。これがゆとり教育ってやつなのかしら……?」
愛「それ、土曜日いっつもお休みするヤツでしょ?
何年か前におわったんじゃないかなあ」
舞「でもゆとり教育以外にこの気味悪さを説明できないわ」
愛「どうでもいいよう。ねえママ。
ALIVEって曲、あたしが歌っていい?」
舞「あー、あの曲かあ。
思い出の曲なんだけどね。
でもまあ、いいわよ。他の子に歌われるより。
愛は昔から好きだったものね」
愛「え? 今日初めて聴いたよ?」
舞「覚えてないのね。
愛が赤ちゃんの頃、グズった時はいつもハミングしてあげてたのよ」
だから、なつかしい気持ちになったんでしょうか。
舞「でもいいわね。面白いわ。
あの変態はALIVEをダメだって言ったからね。
いい気味よ。結局愛は私のもとに戻ってきたんだわ」
愛「もう。ママったら」
ママはまだプロデューサーさんに反抗期してます。
いつになったら許してあげられるんでしょう?
愛「先輩だからあたしが教えてあげるよ」
舞「さっきから何言ってるの?」
愛「反抗期のやり方」
舞「ゆとり教育ってほんとにまずいのかしら……」
~876プロ前通り~
街なかがすっかり赤と緑のクリスマスになったある日。
あたしは事務所にいく途中で郵便ポストに寄りました。
友だちには30日くらいに慌てて出してるけど
その年賀状だけはちゃんと1日に届いてほしいからです。
届け先は、プロデューサーさんのおうち。
涼さんの準備が終わって、プロデューサーさんは876プロを離れました。
今はまなみさんと涼さんが
メールと電話でアドバイスを受けるケイヤクらしいです。
まなみさんたら毎日一回は怒られて、嬉しそうにしてます。
だからもう会うことはありません。
年賀状を喜んでくれたら嬉しいです。
年賀状には写真を載せました。
あの料理番組みたいにニコニコ笑ってるあたしと
嫌そうな顔でそっぽ向いてるママ。
ママは相変わらず困ったひとです。
これからも年賀状はだそうと思います。
ママがまだ反抗期だってことを
プロデューサーさんには伝えないといけません。
考えたけど、ママだけが悪いんじゃないです。
プロデューサーさんも、今の気持ちでちゃんと謝らないとだめです。
だから、プロデューサーさんがちゃんと謝って
ママがちゃんと許してあげるまで
年賀状は出そうと思います。
何年かあと、とっても喜んでくれるといいな。
お正月の朝に、洗面所とトイレがないあの不思議なおうちで。
今からそれが楽しみです!
涼「愛ちゃーん!」
事務所の前で涼さんが手を振ってます。
今日は876プロ3人の年末合同ライブ。
男の子になった涼さんのおひろめのライブです。
もう、ネットでは当たり前になってるんですけど
男の子としてステージに立って、正式に認めるのは今日が初めてです。
すごいプレッシャーのはずなのに、涼さんはいつもどおりの笑顔でした。
涼さんのソロの前に、あたしが1人でALIVEを歌います。
「愛ちゃんの歌に励ましてほしいんだ。愛ちゃんのALIVEは元気が出るから」
涼さんにお願いされました。
今日は一生懸命歌います。
いつも一生懸命ですけど
一生懸命の記録を塗り替えるくらいの一生懸命です。
どんな夢も願っていればいつかは叶うよ
怖がるのは恥ずかしくない 最初だから
そうだよね! ママ?
そうですよね! プロデューサーさん?
大きく息を吸い込んで
顔いっぱいでにっこり笑って
ぶんぶん手を振って
あたしは走り出しました。
今日はすごくいい日になるよ。みんながニコニコする日になるよ。
なんでか、それがわかりました。
<おしまい!>
ホントに
お疲れ様でした
面白かった、乙
日高親子は良い、仲良しな876も好き、愛ちゃんを撫でたい
Entry ⇒ 2012.06.26 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
竜華「病弱が治った?」
怜「いやな、お医者さんにそう言われたんよ」
怜「元々ウチの体が弱かったのは一つの病気が原因やったんやけど」
泉「…どーいうことです?」
怜「それに罹っとると風邪引きやすなったり疲れやすなったりするとかいうことらしいわ」
浩子「免疫不全とかってことやろか」
セーラ「おお! それ知っとるで! 確かHMVがどうっちゅう…」
竜華「セーラはちょっと黙っとき」
怜「…まあまだ完璧に治ってへんのやけど、これからはどんどん良くなるて言われたわ」
セーラ「へえーっ、すごいやん! 良かったなぁ怜ー」
泉「ほな、完治したら部の皆でお祝いでもしましょか。快気祝い…って言うんでしたっけ」
浩子「快気祝いは病気しとる時にお見舞い来てくれた人への『お返し』の方や」
浩子「まあ部室でお菓子パーティー、とかええんやないでしょうか」
怜「何や世話になってばっかやし、泉の言う様にウチの方がお礼せなあかんのに…すまんなぁ」
泉「え、や、そそそそういうつもりで言ったんとちゃいますんで!」
竜華「……」
竜華(…怜の病弱が治るん?)
竜華(いや、いつも辛そうにしとったし、治るんはもちろん喜ばしいことなんやけど…)
怜「やなぁ。そういうん、ちょっと融通効かんとこあるからなぁ」
竜華(怜が元気になったら、ウチは…)
セーラ「大丈夫大丈夫! そーいう時はおばちゃんに信頼されとる竜華に交渉任せりゃええて!」
セーラ「なぁ竜華!」
竜華「……」
セーラ「…竜華?」
竜華「ふぇっ!?」
セーラ「あっははは、今すごい声出たで竜華! 『ふぇっ!』って!」
竜華「ちょっ、セーラ! 笑い過ぎや!」
セーラ「はー腹痛い。やーすまんな、何やらしくない思てな」
泉「園城寺先輩の快気…やなかった、回復祝いのパーティーしません?っちゅう話ですわ」
竜華「ああ、うんうん、ええなぁ! その時には監督に掛け合ってみるわ!」
怜「竜華…?」
―――
セーラ「怜ー、竜華ー! また明日なー!」
怜「またなー」
竜華「お疲れー」
怜「…セーラは元気やなぁ。敵わんわ」
竜華「ほんまになぁ。あ、怜、傘持つで」
怜「いや、ええって。牌持っとる竜華に傘まで持たせられへんよ」
竜華「そんなん気にせんでええのにー。ウチの方が背高いんやし、その方が楽やん」
怜「ええの。今日は持ちたい気分なんや」
竜華「…そか」
怜「竜華は雨嫌いなん?」
竜華「そやな。ちゅうか雨好きな人ってあんまおらんと思うで」
竜華「晴れやったら天気良い言うて、雨やったら天気悪いーっちゅうくらいやし」
怜「言われてみればそうやなぁ」
竜華「足元ぐしゃぐしゃやし、じめじめしよるし何も良い事あらへんて」
怜「梅雨やししゃーないて」
竜華「そやけど、春雨に梅雨に、夏の夕立に、秋の台風に…冬以外ずっと雨ばっかやん」
怜「いや大袈裟やろ。…そもそも春雨って食べ物やん」
竜華「…? あー怜、さては今日の古文寝とったやろー?」
怜「うっ…確かに寝とったけど…」
竜華「ちゃんと授業聞かんと、赤点取って部活できへんようになってまうで怜」
竜華「怜はうちのエースなんやから、そんなんじゃあかんよー?」
怜「…雨の日はしゃーないねん」
怜「気圧が変わるから、咳が出たりしてちょっと辛いんよ」
竜華「あっ、そ、そうだったん…ごめんな怜…」
怜「えぁ、や、そやけど前よりはだいぶ楽になったんよ! 部活前にも言うたけど、段々治ってきとるし」
怜「最近保健室もあまり行かんようになったしな。今回の試験は竜華にノート借りへんでも大丈夫そうやわ」
竜華「……」
竜華「…あぁ、うん、大丈夫やで」
竜華「それより怜、やっぱり傘ウチが持つわ。両手塞がってると大変やろ」
怜「あっ」
竜華「ほらほら、ちゃんと前向いて歩かんと水溜まりに足突っ込んでまうよー」
怜「……」
竜華「ん、どしたん」
怜「や…竜華がどしたんよ。今日ずっと、らしくなかったで」
竜華「えっ、そ、そやった?」
怜「そやった。…部活でも見え見えの混一振り込んだり、変な山からツモったり…」
怜「普段の竜華なら絶対せえへんようなミスばっかしとったし」
怜「話しとっても…何ちゅうか、上の空ーっちゅう感じやん」
竜華「べべ、別にぃ、そ、そんなことあらへんよー?」
怜「…竜華は嘘吐くん下手やな」
怜「竜華にはいつも世話になっとるし、たまにはウチが竜華の役に立ちたい」
竜華「……」
怜「ウチじゃ頼りないかもしれへんけど、」
怜「最近は竜華に助けられんでも大丈夫なように頑張っとるし、そやから―――」
竜華「怜のアホーっ!!」
怜「!?」
竜華「っ…!」
怜「ま、待ちいや竜華!」
―――
セーラ「―――でな、裏乗って2900が18000に化けるんよ! これすごない!?」
竜華「カン裏狙いなんてオカルトすぎやとウチは思うで」
セーラ「でもこう、点差ある時とか一発逆転に期待して…って、あれ怜やん」
竜華「!!」
セーラ「おーいっ、怜ー!」
竜華「あ、あー、ウチちょっと教室に忘れ物してもうたわ! 取ってくるなー!」
セーラ「お、おう?」
怜「あ、竜華…」
セーラ「?」
セーラ「はぁぁあ? 竜華と喧嘩したぁ?」
怜「喧嘩っちゅうか…何や竜華を怒らせてもうたみたいで」
怜「今日も朝から、まだまともに喋ってへんのよ」
浩子「珍しいこともあるもんですねぇ。あの人が怒るなんて」
セーラ「そやなぁ。しかも怜にやで」
泉「あ、もしかしてあれですか! お二人の熱い痴話喧嘩ーっちゅう…」
怜「泉、ウチは真面目に話してるんやで」
泉「うっ、すいません…」
浩子「まあまあ。昨日の帰り、何話してたか教えてもろてもよろしいですか?」
―――
竜華「…あかん、怜見たら頭真っ白になってつい逃げてきてもうた」
竜華「……」
竜華(急にアホー言うて逃げ出して、今日も避け続けて…怜怒っとるかな…)
竜華(…怒っとるわきっと。せやったら…もしかして、これからずっとこのままなんやろか…)
竜華(……)
竜華(ウチは勝手やな。自分勝手で最低な子や)
竜華(いつの間に降り始めとったんやろ…今日は予報で降らん言うてたのに)
竜華(…あかんな、今日は大きい傘持ってきてへん)
竜華(折り畳みのじゃ怜が濡れてまうし…って)
竜華(……)
竜華「怜…」
竜華「ウチは、寂しいよ…」
―――
浩子「ほな、今日はお疲れさんっしたー」
部員達「「「お疲れ様でしたー」」」
セーラ「…竜華は今日下級生の指導やっとったなぁ」
浩子「あら逃げですわ。顔合わせるんが気まずいのか知りませんが、」
怜「! わ、ちょフナQ、押さんといて」
浩子「埒明きまへんし、直接話して仲直りして下さい。恐らく原因はさっき話した通りです」
セーラ「二人がギクシャクしとると、部員もやりにくそうやしな」
怜「わ、わかっとるわ…」
浩子「ほな、頼んまっせ」
竜華「怜…」
怜「あ、あのな、今日傘忘れてしもたんよ」
竜華「…ごめん、怜。ウチも今日傘持ってきてないねん」
怜「せやったら、ちょっとここで雨止むの待たへん?」
怜「濡れて体冷やすとあかんやん。ほら、」
怜「…ウチちょっと病弱やし」
竜華「ぷっ…そのアピールやめえや」
竜華「……」
怜「なあ竜華」
竜華「どしたん」
怜「竜華は雨、嫌いなんやったよな」
竜華「…そんな話、昨日したなぁ」
怜「ウチもな、昔は雨の日が…ほんまに嫌いやったんよ」
怜「昔から雨の日は体調崩しやすいねん。やから…コホッ」
竜華「怜、調子悪いんやったら無理せんで…」
怜「…そやったら、竜華。あの…ひ、膝枕、頼んでもええ?」
竜華「な、何でそんな恥ずかしそうに言うねん! いつもやっとる癖にもう…」
竜華「…ほら怜、おいで」
怜「うん…」
竜華「ふふっ…」
怜「えと、どこまで話したんやったっけ」
竜華「んー、昔は雨の日苦手やったーってとこまで」
怜「そか」
怜「まあ流れ的に分かると思うんやけど、今は割と雨、嫌いとちゃうんよウチ」
竜華「へぇ…怜は変わっとるね」
怜「…体が治ってきて雨の日でも辛く感じへんようになってきたから、ってのはある」
竜華「……」
怜「けどそれは最近の話やもん。ウチが雨を前より好きになれたのは…竜華がおったからよ」
竜華「…? 何でウチ?」
怜「濡れへんように大きな傘持ってくれたり、体調わるなったら保健室連れてってくれたり…」
怜「竜華に助けてもろたおかげで…こう、雨の日の嫌な所が気にならんようになった」
竜華「怜…」
怜「このまま竜華に頼り続けてたら、きっと竜華に愛想尽かされてまう」
怜「…ずっとそんなこと考えてた」
怜「そやから、少しでも竜華に負担にならんようにと思って…」
竜華「そ、そんな! 愛想尽かすなんてことあらへんよ!」
竜華「怜のこと迷惑やなんて、一度も思ったことない!」
怜「!」
竜華「怜の病弱なんが治ったら、怜がどっか行ってまうんやないかって…」
竜華「…昨日怜が、ウチの助けはもう要らんー、て言うてるように聞こえてもうて」
竜華「すごく不安で、寂しかった。それでちょっと、昨日は、その…」
怜「竜華…」
怜「…ウチかてどっか行ったりせえへんよ」
怜「竜華が迷惑やないんなら…これからもウチのこと助けてくれると嬉しい」
竜華「…えへへ、ありがと怜」
怜「ふふっ、お礼を言うのはウチや。ありがとな、竜華」
怜「ウチもや…今日は普段の倍は疲れたで」
怜「全く病弱なんやから無理させんでほしいわ」
竜華「そやから病弱アピールやめぇって」
怜「へへ」
竜華「もー、ほんまに怜は…」
竜華「? 何が?」
怜「や、竜華て思ったより寂しがりなんやなぁと思て」
竜華「な、何言うてんの! 寂しがりなのは怜の方やん!」
怜「いや竜華やろ」
竜華「絶対怜やて」
泉「…言い合いながらも膝枕はやめへんのですね」
浩子「ま、あの人たちらしいわほんま」
セーラ「おーい、泉ー、浩子ー! いつまでも見てんと帰るで!」
泉「えーでもおもろいですよー。もしかしたらここからめくるめく怒涛の展開が―――」
セーラ「んなもんないって。ホラ、もうバス来てまうから行くで!」
怜「?」
竜華「外、雨やんどるな」
怜「へぇ、ほんまに?」
竜華「見たら分かるで。傘差しとる人おらんし」
怜「…うー、見えへん」
竜華「そらウチの膝の上に寝たままで見えるわけないやん。起きぃ」
怜「…っと」
竜華「ん?」
怜「もうちょっと、このままでいたいかも」
竜華「…ふふっ、ええで。ほな、のんびりしてから帰ろか」
……
竜華「ってちょっ、のんびりしとったらまた雨降り出してもうたやん!」
終わり
関西圏の人は脳内で補完しといてくれー
雰囲気が実にすばらだった
Entry ⇒ 2012.06.26 | Category ⇒ 咲-Saki-SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
伊織「ぱぱー!」P「……へ?」
P「あ、どうも新堂さん。いつもお世話に……え?」
P「伊織が、頭を打って……意識が……?」
P「は、はい、はい、ええ、すぐ参ります」
P「~病院の~病棟ですね?」
P「は、はい、ではまた……」
P(伊織……!!)
P「伊織、大丈夫か!!」
新堂「病院ではお静かに……」
P「あ、すんません……」
P「って……伊織は?」
??「ぱぱー!」
P「……へ?」
P(これは……?)
新堂「検査の結果、お嬢様の脳波に異常はなく、
画像診断でも特に異常はございませんでした」
新堂「しかし……」
伊織「ぱぱー!」
新堂「このような有様で……」
P「なんと……」
新堂「……それが……」
伊織「ぱぱー、ぱぱー」
新堂「と、あなた様の写真を指差してしきりにお呼びになっているものですから」
P「俺を呼んだ……と」
伊織「ぱぱ……、ふえ~ん!!」
P「っ!!い、伊織、どうした?」
伊織「ぱぱ~……グスっ……こっちー!」
P「あ、そ、そっちに行けばいいのか?」
P「伊織……」
新堂「どうにも……あなた様を父親と認識しているようです……」
P「なんと……」
新堂「あなた様がいないと、お嬢様はかなり情緒不安定な状態に……」
新堂「お願いします!お嬢様が元にも戻られるまで、傍にいてくださいませんか?」
P「……」
P「……少々、時間をください……」
P「あ、社長。ええ、その件で……」
P「ええ、伊織は無事です」
P「ただちょっと問題が……」
P「ええ、はい、長めのオフを頂きたいと……」
P「ええ、よろしくお願いします」
P「よし」
―病室―
新堂「……あの……」
P「オフを貰ってきました。お引き受けしましょう」
新堂「ありがとうございます!!」
伊織「ぱぱ、こっち、こっち」
伊織「む~、ぱぱ~、あそぶの~」
P「あ、ごめんごめん」
P「ほーら、いないいない~、ば~!」
伊織「……つまんない」
P「……ぐ……(わがままなのは変わらずか)」
伊織「おはなししてー」
P「お、おはなし?えーっと、むかーしむかし……」
伊織「……くー……」
P「……やっと寝たか……」
P「どれ、ちょっと飲み物でも買ってくるか……」
~~~
伊織「……ん~……」
伊織「……?……」
伊織「ぱぱ……ぱぱ~……ふえ……」
伊織「ふえ~ん!!ぱぱ~!!」
P「伊織!!」
伊織「ぱぱ~!どこ~!!ふえ~ん!!」
P「伊織、パパはここだぞ~」
伊織「ぱぱ~」
P「ははは、ごめんな、伊織」
伊織「えへへ……」
P「ん……?ニオイが……」
P「ちょっとフトンめくるぞ……うっ……」
伊織「ぱぱ、きもちわるい~」
P(オネショとは……どうしたもんか……)
伊織「うん~」
P「はい、よくできたね~」
伊織「えへへ……」
P(ちょっとまて……これトイレどうするんだ……?)
P(あと風呂とか……)
伊織「いやっ!ぱぱといくのっ!!」
P(さすが伊織は伊織か……)
P「ん?パパと行く?」
伊織「ぱぱ」
P「俺か……」
看護師「うーん、どうしたものかしら……」
P「……覚悟は決まってます……」
P「いろいろと」
伊織「ぱぱ、起きて」
P「うーん……もうすこし……」
伊織「もうっ、はやく起きてよね!!」
P(ん……?)
P「伊織!!」
伊織「ふえ?どうしたの?ぱぱ」
P「な、ナースコール!!」
P(この調子なら、多分元に戻れるようだ)
P(……冷や冷やしたぞ……マジで……)
伊織「ぱぱ、ご本読んで」
P「よーし、じゃあ『眠り姫』を」
伊織「わーい!!」
P(伊織は退院することになった)
P(オネショはするが、体調に異常は全く見当たらないし )
P(家にいた方が、伊織もいろいろと思い出しやすいのではないか)
P(そういう話だった……)
P「では、俺はこれで……」
新堂「少々お待ちください」
P「はあ……、まあでも、家に帰れたなら俺もお役御免で……」
新堂「……そのことについて、旦那様からお話が」
P「だ、旦那様って、伊織のお父さんですか?!」
新堂「はい、本日帰国なさいまして……」
新堂「こちらでございます」
P「し、失礼しまーす……」
伊織「あ、ぱぱ!」
伊織父「……ふむ……」
伊織父「まあ、掛けなさい」
P「は、はい、失礼します……」
伊織「ぱぱー、だっこー!!」
P「い、伊織、俺じゃない!パパはあっち!」
伊織「ふぇ?」
伊織父「……見ての通りだ。私は、今の伊織には、父親と認識されていないようだ」
伊織父「頼む!もうしばらく、ここで伊織の傍にいてやってくれないか?」
伊織父「このとおりだ!!」
P「そ、そんな!頭をお上げください!!」
伊織父「頼む……」
P「わ、分かりました。伊織が元に戻るまで、俺が世話します」
伊織父「そうか……ありがとう……」
伊織父「よし、新堂、始めてくれ」
P「はい?」
伊織父「何、気にしないでくれたまえ。監視カメラを伊織の部屋に設置してるだけだから」
P「はあ?」
伊織父「少々記憶が混濁しているからと言って、年頃の娘と男を一緒の部屋に……」
伊織父「まさかこんなに早く娘をさらわれる父の気持ちを味わおうとは……」
P「あの……」
伊織父「まあよろしく頼むよ、はっはっは!」
P「すいません、その立派な猟銃仕舞っていただけますか?」
P「部屋でけえ……」
伊織「ぱぱ、だっこー」
P「あー、はいはい、だっこねー」
P「ほーら!」
伊織「きゃっきゃっ!」
伊織「もっとー!!」
P(体力もつか?俺?)
P「ん?ああ、馬ね。よーし、パパ張り切っちゃうぞー」
P「……あのー、それナニ?」
伊織「えー、知らないのー?ムチー!!」
伊織「これでピシッとたたくと、お馬さん速くはしるんだよー!!」
P「……随分本格的だね……」
伊織「ほらー、はやくー!!」
P「……どうにでもしてくれ……」
P「ぜえ……ぜえ……。お、おんぶね……」
伊織「わーい!!」
P「ほーら、ゆっくり乗ってねー」
伊織「はーい!」
P「よーし、立ち上がるぞ」
伊織「わー、高ーい!!すごーい!!」
P「お、そうか?」
P「よーし、よーし」
伊織「じゃあ次はかたぐるまー!!」
P「ん?ああ……っておんぶしてるところから!!立ち上がっちゃ駄目でしょ!」
伊織「えー、だいじょうぶよー」グラッ
伊織「え?」
P「伊織!!」がしっ
伊織「ふえ~ん、ぱぱがおこったー!!」
P「伊織!!お前が危ない目にあったらどうするんだ?」
伊織「ふえ?」
P「伊織が危ない目にあったら、パパや新堂や……えーっと、
さっきのおじちゃんも皆悲しくなっちゃうんだぞ!」
伊織「私があぶないと……皆かなしい……?」
P「そう。だから、もう危ないことはしないでね!?」
伊織「うん、わかった……」
伊織父(命を繋いだね、君)
新堂「本当にお出かけに……?」
P「はあ……急に休んじゃって仕事も溜まってますし……」
新堂「お嬢様も連れて……」
P「ええ、事務所の皆と会わせた方が記憶も戻りやすいでしょうし」
新堂「大丈夫でしょうか……?お見舞いも眠っているとき以外はほぼ断っていましたし」
P「大丈夫です」
P「多分」
伊織「おはようございまーす!!」
P「お、元気なあいさつよくできました」ナデナデ
伊織「えへへー」
小鳥「!!!」ガタッ
小鳥「電話で話だけは聞いていましたが……」
小鳥「これは……」
小鳥(カワイイ……)
P「だから皆もいろいろ話しかけてやってくれ」
やよい「はーい!」
伊織「……ふえ……」
やよい「伊織ちゃん、よろしくね!!」
伊織「うん……」
やよい「あっちで遊ぼっか」
伊織「うん!」
伊織「……なーに?お姉ちゃん?」
春香「クッキー食べる?」
伊織「え?クッキーあるの?食べたい!」
春香「うん。はい、どうぞ」
伊織「ありがとう、お姉ちゃん!」
春香(これは……アリだね!!)
雪歩「伊織ちゃん、お茶……」
P「あー、すまんが、カフェインが入ってるのはNGな。夜眠れなくなるから」
雪歩「そ、そんなあ……」
響「かわいい!!なんであんなに生意気に育ったのかわからないさー」
千早「……くっ……乗り遅れたわ……」
貴音(如月千早の目が……血走っております……)
あずさ「あらあら~」
P「いやー、伊織はだっこが好きで……。」
P「ただ、流石に重いだろ?伊織、止めなさい」
あずさ「いえいえ、大丈夫ですよ。それじゃあ、あっちのソファの上で……」
伊織「やったー!!」
―だっこ中―
伊織(お胸が……、大きい……)ふにょん
あずさ「あ……」
P「あ、そーだ。今日は美希達レッスンだったな」
P「レッスンスタジオ連れてってみるか」
P「伊織ー、こっち来なさい」
伊織「なーに、ぱぱ?」
P「いい所に連れてってやろう!」
伊織「えー、いい所ー!やったー!!」
千早「……くっ……」
P「美希と真と真美がダンスレッスン中だな」
伊織「……ふええ……かっこいいー……」
美希「あ、プロデューサー!!」
真「……伊織!?伊織だー!!」
真美「おー、これはやっぱり様子が違いますなー」
伊織「お姉ちゃんたち、すっごくかっこいい!!」
真「お、お姉ちゃん!!」
美希「これは……かなりの破壊力なの……」
真美「……これ、ホントにいおりん?信じられない!!」
美希「やっぱり、ミキみたいにキラキラするの!」
真美「いや~、そこは真美みたいにきゅーとな感じで」
真「それより、ボクといっしょに……」
真美「それはだめっしょー!!」
真「なんでだよー!!」
伊織「うん……」
伊織「ぱぱ……、あのね……、私ね……」
伊織「大きくなったらアイドルになる!!」
P「うん。そうだな……。そうなったら、おれがプロデュースしてやる」
律子「あ、やっと帰ってきた―」
亜美「あ、いおりんー!!」
伊織「ふえ?お姉ちゃんだれ?」
亜美「ぐはっ……いおりんにお姉ちゃんと呼ばれる日が来るとは……」
律子「伊織ー、どう?何か思い出した?」
伊織「……お姉ちゃん……怖い……」
P「……鬼の特訓を思い出したみたいだな……」
伊織「えー、やだー、もっといるー!!」
千早「そうですよ!」
貴音「千早……いけません……」
やよい「うっうー、夜更かしすると、あうーってなっちゃいますよ!」
P「ああ、そうだな。さ、帰るぞ伊織。また連れてくるから」
伊織「うん……」
伊織「パパ……、早く起きなさいよ!」
P「んー……」
伊織「やっと起きたのね。もうっ、お寝坊なんだから」
P「ああ(ずいぶん、戻ってきたな……)」
P「さーて、じゃあ朝ご飯食べて、いい天気だし洗濯でも……」
伊織「……パパのぱんつと私のぱんついっしょに洗わないでよね」
P「……くっ……」
P「ああ、そうしよう」
―外―
P「伊織、あんまり遠くへ行くなよー」
P(つっても行けども行けども水瀬の敷地だが)
伊織「パパー!!早く早くー!!」
伊織「あ、かわいいお花!」
P「ああ、そうだな」
P(もう知能は小学生……後半くらいか……)
P(戻るのは、時間の問題みたいだな……)
P「ははは、あんまりはしゃぐから……」
伊織「ぱぱ……、行かないで……」
P「……」
伊織「行かないで……」
P「俺はずっとお前の傍にいるさ」
伊織「すー……すー……」
P「……」
―パパ、遠くに行かないで―
―伊織、すまないな―
―伊織は、トップアイドルの器です!―
―伊織、今度は一か月後だ―
―パパ、行かないで―
―俺が、君のプロデューサーだ―
―アンタが?―
―俺はずっとお前の傍にいるさ―
―プロデューサー……―
P「伊織!?」
伊織「何でアンタ、私をおぶってるのよ……?」
P「戻ったのか?」
伊織「はあ?」
P「……憶えてないのか?……」
伊織「何言ってるの?」
P「あ、スマン、降ろすよ……」
伊織「……もうちょっと……」
伊織「もうちょっとだけ、おぶってていいわよ……」
P「……そうか……」
社長「いやー、めでたい!!」
春香「それじゃあ、伊織の復帰を祝しまして!」
春香「カンパーイ!!」
社長(あ、僕の仕事が……)
伊織「ちょっと大げさじゃないかしら?休んでたのは結局そこまで長くならなかったし」
やよい「そんなことないよ。みんなとっても心配したんだから」
真美「もういおりんのあの姿を見られないと思うと……」
亜美「悲しいですなあ……」
響「ほんとだぞー……」
小鳥「千早ちゃん……これ……」
千早「?」
小鳥「あの時の様子をこっそり撮影したDVDよ」
千早「……!!」
小鳥「特別に譲ってあげるわね」
千早「……♪……」
小鳥(さて、あとは社長と、水瀬パパの分っと……)
P「お、俺か?」
伊織「ボサッとしない!!」
P「……ハイハイ」
―外―
伊織「……これ……」
P「これ……ネクタイ……?」
伊織「父の日は、だいぶ過ぎちゃったけど……」
P「伊織、憶えてるのか?」
伊織「恥ずかしすぎて、記憶から抹消したいわ……」
P「あー、そりゃあなあ……」
伊織「……でも、アンタが私のためにいろいろやってくれたのは憶えてるから」
伊織「……ありがと……」
P「そうか」
伊織「うん」
P「……えー……」
伊織「何残念そうな顔してんのよ……」
P「いや……そういや親父さんはどうだった?」
伊織「何か、パパって呼んだら泣いてたわ」
P「あー、やっぱりなー……」
伊織「プロデューサー」
P「ん?」
伊織「これからもよろ……伊織ちゃんのためにキビキビ働きなさいよ!」
P「……ああ、そうだな」
伊織(……パパじゃ、ダメなんだから)
伊織(プロデューサーじゃないと)
「あの……」
「落ち着きたまえ」
「す、すんません」
「まだ、だよ」
「そう……ですか……」
「なんとか……間に合いましたな……」
オギャー、オギャー
「は、はい!そうですか!」
「……にひひ……何情けない顔してんのよ」
「……これからもーっと頑張ってもらわないとね」
「……ね、パパ!」
終わり
後悔はしていない
いおりんもいいなと思いました
美希バージョンも見たい
Entry ⇒ 2012.06.26 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)