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橘「な、七咲!?なんでパンツをはいてないんだ!?」
橘「だ、だからね?何でパンツはいてないのかな〜って?」
七咲「……」
橘「は、ははっ……」
七咲「……いや、はいてますし」
橘「そっか……七咲にはガッカリだな」
七咲「えっ?」
美也「ふぅ、逢ちゃんはダメダメだねぇ……」
七咲「み、美也ちゃん!?」
中多「し、失望……したよ?」
七咲「な、中多さん!?」
美也「お、にぃに!?元気だしなよ!?」
中多「せ、先輩!?早まらないで下さい!」
七咲「な、何ですか!?私はパンツをはいてちゃいけないんですか!?」
橘「そ、そこじゃないよ!七咲のわからずや!」
七咲「わ、わからずや!?」
美也「逢ちゃん?にぃにはね、逢ちゃんの反応にガッカリしたんだと思うな」
七咲「……えっ?」
中多「パンツをはいてるのなんて当たり前だよ……?へ、変態さんじゃないんだから」
七咲「ど、どういうことなの!?」
美也「にぃにはね?逢ちゃんに叱られたかったんだと思うんだ」
美也「『な、何を馬鹿なことをいってるんですか!この変態ッ!』って」
七咲「あっ……」
中多「な、なのに逢ちゃんときたら……」
七咲「で、でも!そんなのわかるわけないよね!?」
美也「はぁ……普通は気の利いたリアクションの一つくらい準備してるものだって」
中多「あ、遊びでやってるんじゃないんだよ?」
七咲「なっ……じゃ、じゃあ!美也ちゃんならどうしたの!?」
美也「……仕方ないなぁ」
美也「お兄ちゃん?悪いんだけどさ……」
橘「う、うん……」
美也「ちょ、ちょっと!声が大きいって!?」
橘「だ、だって!お前……!ぱ、パンツ!パンツが!……はいてない!?」
美也「パンツパンツうるさい!」
橘「ま、まさか……お前……高校生にもなってお漏らしを……」
美也「!?」
橘「えっ……そ、そうなのか!?」
美也「……ぃにの」
橘「み、美也?」
美也「にぃにのバカ!信じらんない!」
橘「み、美也!?落ち着け!な?」
美也「みゃーーーーーーーっ!」
橘「そ、そんなに暴れたら!見えちゃう!見えちゃうぞ!?」
・
・
・
中多「先輩、美也ちゃん……お疲れ様でした」
橘「み、美也のお陰で少し元気になっちゃったかな!ははっ!」
七咲「……な、中多さんは!?」
中多「え?」
七咲「中多さんも、こんなリアクション準備してるの!?」
中多「あ、当たり前だよ……」
七咲「な、なら……!」
中多「……先輩?だそうですよ?」
橘「や、やってみよう!」
中多「は、はい!」
橘「そ、そのね?……何でパンツはいてないのかな……?はははっ」
中多「み、見えましたか?」
橘「う、うん……ごめん」
中多「こ、これはですね……」
中多「せんぱ……いえ、教官が『人前でパンツをはいてないよりは、恥ずかしくない!』とおっしゃっていたので……」
中多「……こ、克服する為に」
橘「中多さん……」
中多「……教官のおっしゃる通りでした!これに比べたら男の人とお話しすることくらい……!」
中多「だから……私っ!」
橘「中多さん!」
中多「きょ、教官!」
・
・
・
七咲「……くっ」
橘「僕さ!本当にはいてないんじゃないかって気さえしてきちゃったよ!」
美也「……それに比べて、逢ちゃんときたら」
橘・美也・中多「はぁ……」
七咲「ま、待ってください!」
中多「……い、言い訳は見苦しいよ?」
七咲「ち、違うんです!そ、その!」
七咲「美也ちゃんと中多さんは急にふられたわけじゃないですよね!?」
七咲「そ、そう!わ、私より有利な条件です!」
七咲「……ですから!」
美也「あ、あそこにちょうど森島先輩がいるからさ」
橘「うん。僕ちょっと行ってくるよ」
森島「あ、橘君!どうしたの?」
橘「そ、その……」
森島「うん?」
橘「な、何でパンツをはいてないんですか!?」
森島「えっ?」
橘「……」
森島「ふふっ、バレてしまっては仕方ないわね!」
森島「これはノーパン健康法よ!」
橘「の、ノーパン健康法!?まさかの!?」
森島「うん!橘君に教えてもらったじゃない?」
森島「……だから、試してみたくなっちゃってね!」
森島「ちなみに三日目!なんだか身体が軽くなって気さえするわ!」
橘「そ、そんな……森島先輩が本当にノーパン健康法を……」
橘(僕は……僕はどうしたらいいんだ!?)
橘(も、森島先輩!その健康法は男共に刺激的すぎます!)
森島「ふっふっふっー、私の勝ちね?」
橘「……えっ?」
森島「もう、本当に困った顔をしちゃって!可愛い〜!」
橘「あっ……」
森島「どうしたの?顔真っ赤だよ?」
橘「し、失礼します!」
森島「顔を洗って出直してらっしゃい!私はいつでもキミの挑戦を待ってるわ!」
・
・
・
美也「さすが森島先輩だったね!」
中多「……く、悔しい!……けどっ!」
七咲「……ちょっと待って下さい」
橘「うん?どうしたの?」
七咲「あの人は別格ですよね?……色々な意味で」
美也「もう!また言い訳!?」
中多「……逢ちゃん?これ以上生き恥晒すのは……」
七咲「ほ、他の人!他の人にも訊いてみましょう!」
七咲「ほ、ほら!あそこにちょうどよく棚町先輩がいらっしゃるじゃないですか!」
橘「薫か〜……。まぁ、何とかなるかな」
棚町「あ、純一じゃん」
橘「突然で悪いんだけどな……」
橘「お前がそんな変態だったなんて……僕は知らなかったぞ?」
棚町「は?何の話?」
橘「……何ではいてないんだ?」
棚町「だから何の話よ?」
橘「なぁ!?何でパンツをはいてないんだ!?何が狙いなんだよ!?」
棚町「なっ……!」
棚町「……」
棚町「ち、違うの!そういうわけじゃないのよ!?」
橘「じゃあ、どういうわけなんだよ!?」
棚町「こ、これは……」
棚町「ついさっきね?屈強な男に無理矢理脱がされちゃったのよ……」
だから次は田中さんで行こう?
棚町「えぇ……一瞬の出来事だったわ」
棚町「……廊下の向こうから、世紀末覇者みたいな風貌の男が歩いてきて」
棚町「い、いきなり!あたしを押し倒して……っ!」
橘「だ、大丈夫か!?怪我は!?」
棚町「幸いパンツを無理矢理剥ぎ取られただけで、怪我はないんだけど……」
棚町「うぅ……純一、どうしよう!あたし、あんな辱めを受けたら、もうお嫁にいけないわ!」
橘「か、薫!?」
棚町「……ご、ごめんなさい。あなたという人がいるのにこんなことになっちゃって」
棚町「あたし……もう死ぬしかないわ!」
橘「薫!早まるな!僕はそんなことでお前を捨てたりはしない!」
棚町「ほ、本当に!?」
橘「あぁ……本当さ」
橘「何度もいわせないでくれよ……」
棚町「純一……」
橘「薫……」
橘「ところでさ、世紀末覇者みたいな男はやっぱり馬に乗ってたの?」
棚町「えぇ、山みたいな大きさの馬に乗ってたわ……」
橘「そっか……うぬぅ」
棚町「で?本当は何の用なのよ?」
橘「薫?僕は今大変機嫌がいいから、ジュース奢ってやるよ」
棚町「あ?本当に?てんきゅ!」
・
・
・
美也「お兄ちゃん?私のジュースは?」
橘「あ、はいはい。ほら、中多さんと七咲も」
中多「あ、ありがとうございます……」
七咲「すみません、気を遣わせてしまったみたいで」
橘・美也・中多・七咲「……」
七咲「……次は普通な人にしましょう。普通な人に」
美也「えぇ!?まだやるの!?」
中多「あ、諦めが肝心……だよ?」
七咲「先輩?あそこの普通そうな人に訊いてきてもらえますか?」
橘「えぇ!?あの子に!?」
橘「……わかった。やってみる」
田中「あ、橘君?何してるの?」
橘「あ、あのさ……?」
田中「うん?」
橘「……田中さん、何でパンツをはいてないの?」
田中「えっ?」
橘「だから、何でパンツを……」
田中「橘君……何でわかったの?」
橘「えっ?」
田中「何で私がパンツはいてないってわかったの?」
橘「えぇぇぇ!?」
橘「……なんではいてないの?」
田中「そ、それは……占いでね?」
橘「占い?」
田中「うん。占いによると、今日はパンツをはかずに帰ると素敵な出会いがあるって」
橘「そ、そっか!なら仕方ないよね!」
田中「うんうん、恥ずかしいけど頑張ってみたんだ。あはははっ」
橘「……田中さん?」
田中「……うん」
橘「……出会ったのが、よりによって僕で大変申し訳ないんだけどね?」
田中「……うん」
橘「……はこうか?パンツを」
田中「…….うん」
美也「……うん」
中多「……そうですね」
七咲「……びっくりしました」
橘・美也・中多・七咲「……」
七咲「な、なら!今度は常識人にしましょう!そうしましょう!」
橘「……常識人?」
七咲「あ!あそこにいるのは創設祭実行委員長の絢辻先輩!」
橘「……七咲?僕を亡き者にする気なの?」
七咲「えっ?何でですか?」
橘「わかったよ!骨は拾ってくれよ!?」
橘「うん。僕が悪かったよ」
橘「だからさ、校舎裏じゃなくて……もうちょっと賑やかな場所でお話しようよ?ははははっ」
絢辻「……橘君はシュレディンガーの猫って知ってる?」
橘「あ、うん。箱を開けてみないと中の猫の生死はわからないってヤツだよね?」
絢辻「えぇ、観測されるまでは二つの可能性が重なっている。量子力学の有名なお話よね。」
橘(な、何がいいたいんだ!?僕の死は観測されたも同然じゃないか!?)
絢辻「……だからね?あたしのパンツも観測されるまでは、ここにあるかどうかわからないでしょ?」
橘「う、うん?」
絢辻「理系の橘君が、量子力学的な観点から、あたしのパンツに知的好奇心を持つのも仕方ないわよね。男の子ってSFが好きさ」
絢辻「……ねぇ?観測実験してみる?」
橘「……すみませんでした」
絢辻「ま、あたしも鬼じゃないから」
絢辻「顔は勘弁してあげるわよ?」
橘「……優しくしてね?」
橘「わかったろ?世の中には冗談が通じる人と通じない人がいるってことが……」
美也「でも、逢ちゃんよりはノリがあったよ?」
中多「た、橘先輩を折檻する絢辻先輩……物凄くイキイキとしてました」
橘「……ちなみに、今日の絢辻さんは機嫌がいい方の絢辻さんだよ?気を付けてね?」
七咲「さ、さぁ!気を取り直して!次にいってみましょう!」
美也「……逢ちゃんが納得するまで続ける気?」
中多「み、美也ちゃん?もうこの子も引けないんだよ……」
七咲「ほ、ほら!あそこのほんわかした子とか!多分何も反応できませんよ!?」
橘「梨穂子か……」
橘「えぇぃ!やってやるよ!」
梨穂子「あ、純一!」
橘「なぁ?梨穂子?僕、気になることがあるんだけどさ?」
梨穂子「え?なぁに?」
橘「梨穂子ってパンツ……」
梨穂子「な、な、な、何のこと!?」
橘「えっ?」
橘(まだ言い終わっていないうちから食い気味に……さては何か隠してるな?)
橘「なぁ?梨穂子?お前、パンツを」
梨穂子「こ、これは手違いなの!?」
橘「手違い?」
梨穂子「そ、そう!手違いなのです!」
橘(ま、まさか!田中さんに続き梨穂子も!?)
橘(そ、そんな……っ!)
梨穂子「だーかーらー!手違いなの!」
梨穂子「今朝遅刻しそうだったから、間違えてお母さんの下着をはいてきちゃって!」
橘「えっ……おばさんのを?」
梨穂子「ま、まさか純一に見られてるとは思わなかったよ……あははっ」
橘「そ、そっか!次から気をつけろよ?」
梨穂子「もう!言われなくてもわかってますよ〜だ!」
橘「はははっ、このドジっこめ!」
梨穂子「ドジっこっていうな〜!」
・
・
・
かわいいなあ!!
かわいいなあ!!!
橘「うん。事故だからね……はははっ」
美也「事故でも逢ちゃんよりは〜」
中多「美也ちゃん?それは死人に鞭だよ?」
七咲「しかし、困りましたね。次はどうするか……」
七咲「あ、あそこの木の影からこっちを見てる女の子は、橘先輩のお知り合いですか?」
橘「い、いや?知らない女の子だけど……えっ?まさか?」
七咲「そのまさか、です」
橘「えぇぇぇ!?……やらなきゃダメ?」
七咲「はい。お願いします」
橘「……わかったよ」
美也(あ、あの子は!?)
?「は、はい!?」
橘「僕、二年の橘純一というものなのですが……」
?「う、うん。知ってるよ?」
橘「そ、そうなんですか!?光栄だなぁ、あははっ……」
橘「お、お気を悪くしないで下さいね?」
?「え?うん……なに?」
橘「その……どうして下着をお召しになららてないのかなって……はははっ」
?「えぇ!?た、橘君!?」
?「た、橘君はそっちの方が……好きなの?」
橘「す、好きというかなんていうか……まぁ、好きですけど……」
橘(ぼ、僕は初対面の女の子と何て会話をしてるんだ……)
?「そ、そうだったんだね!?」
?「あ、あなたがそっちの方が好きなら……あたし、ここで脱いでも……」
橘「……えっ?」
?「み、美也ちゃん!?」
美也「二人はもっとちゃんと出会わなきゃダメなの!こんなのみゃーは認めないよ!?」
橘「み、美也!?この子を知ってるのか?」
?「あ、あたしは二年の!」
美也「だからダメ!日を改めてもう一度!」
?「そ、そんなぁ」
美也「ほら、帰って帰って!」
?「美也ちゃん、ひどいよ……うぅっ」
?「でも仕方ないよね……橘君?またね?」
橘「う、うん。またね」
橘「あと、変なことを聞いてごめん」
?「ううん、大丈夫だよ?だから、気にしないで?」
美也「さっさと帰れーっ!」
・
・
橘「なんだか大変なことになっちゃったんだけど……」
七咲「ど、どうなってるんですか!?」
橘「なぁ?七咲……?」
橘「今日はもう遅いし……終わりにしないか?」
美也「うん、お腹空いた」
中多「ね?みんなでラーメンでも食べて帰ろ?」
七咲「な、何をいってるんですか!?これからですよ!?」
橘「そ、そんなことをいっても!もう校舎に残ってる人なんて誰も……」
?「あら?七咲?橘君?こんなところで何をしてるの?」
七咲「塚原先輩!」
橘「うわぁ……また冗談の通じない人が……」
塚原「う、うん?どうしたの?」
塚原「えっ?何かしら?」
橘(七咲のヤツ……なんて強引な真似を!)
橘(こうなったら、引くに引けないし……)
橘(よし!ここは素直に塚原先輩にぶっ転がされて帰ろう!)
橘「塚原先輩!なんで先輩はパンツをはいてないんですか!?」
塚原「な、な!?」
塚原「……ねぇ?橘君?」
橘「は、はい!」
塚原「明日、暇はあるかな?」
橘「あ、明日ですか?放課後でよろしければ……」
塚原「じゃあね、放課後に手伝ってもらいたいことがあるんだけど……いいかな?」
橘「な、何をすればいいんですか?」
塚原「はるかにさ、復讐するから手伝ってもらえるかな?」
橘「ふ、復讐!?」
塚原「私ね?はるかにパンツ盗まれたみたいで……」
橘「えぇ!?森島先輩に!?」
塚原「うん。あの子にパンツ盗まれちゃって」
橘(なんてことだ……全く意味が分からないなんて……)
塚原「……今はブルマを代わりにはいてるんだけど」
橘「ぶ、ブルマを!?」
塚原「こら!いやらしい想像をしないの!」
塚原「……で、まぁね。さっきも話した通り、明日はるかに復讐するから」
塚原「あ、詳しいことは明日話すわね?」
橘「は、はい!わかりました!」
塚原「ふふふっ……橘君が協力してくれるなら、はるかを十二分に辱められそうね……」
塚原「あ、それじゃあ私は失礼するわね。あ、みんなも気を付けて帰るのよー?」
橘「は、はい!お疲れ様です!」
七咲「はい。天にまで見離されてるようなので」
美也「もう!逢ちゃんは認めるのが遅い!」
中多「ま、負け犬の匂いがするよ?」
七咲「……よく考えたら、先輩に面白いリアクションをしなければならない理由がありませんでしたよ、ふふっ」
美也「うわっ、元も子もないよ!?」
中多「こ、ここにきて開き直りとか……」
橘「まぁ、いいや。今日は色々疲れたし……」
橘「みんなで食事でもしてから帰ろうか!」
美也・中多・七咲「おーっ!」
橘「……勿論、七咲の奢りで」
七咲「えっ?……はい。500円までなら、なんとか」
完
黒沢ちゃん…
乙
Entry ⇒ 2012.05.26 | Category ⇒ アマガミSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
火憐「キスしたって事は、結婚する気があるってことだよな?」
火憐「いやー私も照れっけどさ、、まぁ兄ちゃんならいいかなって///」
暦「……ちょ、ちょt」
火憐「兄妹だから問題とか多いと思うけど、私たちなら何とかなると思うんだよ!!兄ちゃん」
暦「あ、あの」
火憐「キスしちゃたんだからしょうがないよなー、私も嫌だけどキスしちゃったからな」二ヒヒ
火憐「なんだよ兄ちゃん」
暦「その……冗談だよな?」
火憐「ん?……何のどこで何が冗談なんだ?」
暦「結婚とか……」
暦「火憐ちゃん……兄妹って結婚出来ないんだぜ」
火憐「え、まじかよ兄ちゃん」
暦「もちのロンだ、僕は嘘をつかない」
火憐「確かに兄ちゃんは嘘をつかないな、なら本当なんだな」
暦「そうだよ火憐ちゃん、つまり僕たちは結婚などでk」
火憐「なんてこった、私と兄ちゃんは兄妹じゃなかったのか……」
暦「はい?」
八九寺「ですから、私はいつ阿良々木さんにめとって頂けるのでしょうか?」
暦「ふむふむ、えっ?」
八九寺「はて?私変な事を言いましたかね?」
暦「……」
八九寺「まぁどうでもいいです。そんなことよりいつ責任を取ってもらえるのですか?」
暦「せ、責任って?」
暦「まぁそうだよな」
八九寺「しかしですね、現代役所に届け出る人は多くはないのですよ」
暦「……」
八九寺「事実婚……と言うそうです」
暦「つまり……」
八九寺「事実婚もとい、阿良々木さんと一緒に暮らし始めるのはいつからなのかなと思いまして」
八九寺「あの、やはり迷惑でしょうか?」
暦「いや、そんなことは1mmも、1ナノも思ってはいないのだけれども」
八九寺「そうですか、安心しました……」
八九寺「私は事故にあってからずっと一人でしたからね、誰かと一緒にいたい……なんて馬鹿げた事がうらやましいんですよ」
八九寺「一人ではない、誰かと一緒にいたい……いや、阿良々木さんとただ一緒にいたい。なんて考えてしまったのですよ……」
暦「八九寺……」
こうして僕と小さな女のこ幽霊との奇妙な生活が始まった。
true end
暦「な、神原!?」
神原「どうだ阿良々木先輩。以前にも言ったが、私は身体には自身があるのだ」
暦「自信があろうが無かろうが、そんなことは関係ない!」
神原「それに、阿良々木先輩のどんなエロい要求にも、答える覚悟が私にはある!」
暦「僕が人生の伴侶を選ぶ過程において、お前の自信も覚悟も一切考慮されることはない!」
暦「ぐっ!だ、だけどあれは不可抗力だ!あの時の僕に、いやらしい下心なと断じて無かった!」
神原「しかし先輩は、あのとき私に言わなかったか?」
暦「……ッ!なにをだよ!」
神原「はて、私は確かに聞いたのだがな。先輩のあの言葉を。それとも私の尊敬する阿良々木先輩は、あんな大事な言葉を軽々しく口にするような人だったのか」
暦「分かった。言った、言いました!その件に関しては僕が全面的に悪い。認めてやるよ」
神原「いやいや阿良々木先輩、私は別に責めている訳ではないのだ。ただあのとき、阿良々木先輩がなんと言ったか覚えているか、今一度確認しておきたいのだが」
暦「いやその……結婚しよう神原って」
神原「よろこんで!」
暦「ベタな誘導尋問してんじゃねぇよ!」
暦「え……」
神原「こんな私のために、文字通り身体を張って、血ヘドを吐いてまで力になってくれる。そんな人、私でなくても好きにならない訳がない」
暦「神原……」
神原「結局のところ、レズだの百合だのと自分の気持ちを誤魔化してみても、私の先輩に対する気持ちが消えることはなかった」
暦「でも僕には戦場ヶ原が……」
神原「先輩が戦場ヶ原先輩のことを本当に愛しているのは、私とて十分理解しているつもりだ。だから先輩は、好きなとき、好きなだけ私の身体を使ってくれればいい」
暦「おまえ何言って」
神原「好きと言ってくれなくてもいい。キスもしてもらえなくたっていい。阿良々木先輩が私の身体を求めてくれさえすれば、それで私は幸せなのだ」
暦「……」
神原「好きだ、阿良々木先輩」
こうして、表向きは戦場ヶ原と付き合いつつも、裏では毎日のように神原と身体を求め合うという、淫らで背徳的な生活がはじまったのだった。
abnomal end
Entry ⇒ 2012.05.26 | Category ⇒ 化物語SS | Comments (3) | Trackbacks (0)
幼馴染「あのさ、あんた友くんと仲良いんでしょ?」
幼馴染「じゃあさ、これ渡しといて?」スッ
男「……えっ、手紙?」
幼馴染「ほら、早く持ってって!」
男「……ああ、うん」
男(どうみてもラブレターだよなこれ)
男「はぁ……」
モブ子「良かったぁ……」
幼馴染「約束通り駅前の喫茶店でケーキセット奢ってよね」
モブ子「うんっ。ありがとね、幼馴染!」
という舞台裏を希望します
友「なに? って、え!? これって……」
男「手紙渡してくれって預かった」
友「びっくりしたー。一瞬男がボクにって思ったよ」
男「人をホモ扱いするなよ」
友「し、してないよ! まったく、もう……」
男「確かに渡したから。じゃ」
友「う、うん。またね」
友「ね、帰りにどこか寄ってかない?」
男「今日は課題少ないし良いよ」
友「ゲーセンでも行く?」
男「いや、俺の家が良い」
友「男の家?」
男「たまには売上に貢献してくれ」
友「……あ、なるほどね」
カランカラン
男「ただいま」
父「おかえり。おや、今日は友達も一緒なんだね」
友「は、はじめまして。男君のクラスメートの友です」
父「はは。そう畏まらなくても良いんだよ」
男「友、どうせ閑古鳥だから適当に座って待ってて。部屋に鞄置いてくる」
友「うん。分かった」
男「父さん、ココア二つ宜しく」
父「ココア二つだね。直ぐに用意しよう」
――
―
友「男の家って喫茶店だったんだね」
男「言って無かったっけ」
友「初耳だよ」
男「そっか」
父「ココア二つ。お待たせ致しました」コト
友「あ、どうも」
男「それは俺からの奢りな。他に欲しい物はオーダーして売上に貢献してくれ」
友「うん、ありがとう。それじゃ、ナポリタン一つお願いします」
父「ナポリタンですね。少々お待ち下さい」
友「そうだ、課題今済ませる?」ズズッ
友「あ……」
男「ん? 舌でも火傷したか」
友「いや、ココア凄い美味しいから……」
男「そりゃ市販の物とは違うからな」
友「へぇ……」ズズ…
男「課題終わったらゼビウスでもやるか? 奥にまだ動くテーブル筐体があるんだ」
友「ゼビウス? テーブル筐体?」
男「ま、課題終わってからのお楽しみって事で」
友「わっ。ありがとうございますっ」
男「あれ、なんで二つ?」
父「一人だけ食べるのは気まずいだろ? 今日の分は息子が友人を招いた記念と言う事で、僕からのプレゼント」
友「良いんですか?」
父「もちろん」
友「ありがとうございます」
父「はは。今度は友人家族を連れての来店を待ってるよ」
男「餌付けかよ」
父「どうかな? それじゃ勉強頑張って」
友「そうだね」チュルッ
友「ん……」
男「どう?」
友「これも美味しい。男のお父さんは名シェフだね」
男「本人に言ってやりなよ」ズルズル
友「それもそうか」チュルチュル
友「にしても……」
男「ん?」
友「お店の雰囲気も良いし、ココアもナポリタンも美味しい。なのに……」
男「……ああ。客が居ない」
男「それに、駅前のカフェ行けば安くてそれなりのコーヒーが飲める」
男「友だって無名の喫茶店より、有名チェーンのカフェの方が入りやすいだろ?」
友「……それは、確かに…………」
男「おし、課題始めようか。終わったらゲームな」
友「う、うん」
男「ゼビウス以外に脱衣麻雀もあるけど、そっちにするか?」
友「だっ!? や、やらないよ!」
男「ははは……」
――
―
友「あ、もうこんな時間か」
男「そろそろ帰るか?」
友「うん、そうするよ」
友「男君のお父さん、今日はご馳走様でした。とても美味しかったです」
父「それは嬉しい言葉だね」
友「今度はちゃんとお客として来ますね」
父「ああ。待っているよ」
男「……父さん、欲しい本あるから途中まで送ってくるわ」
友「え?」
父「ああ。外はもう暗いから気を付けるんだよ」
男「分かってる。さ、行こうか」
友「う、うん。ありがとう」
友「気を使わなくても良いのに」
男「父さんと二人きりってのが苦手なんだ」
友「……そうなんだ。仲良さそうに見えたけど」
男「気を使う人だから。父さんは」
友「…………」
男「さ、行こうか。友はバス通学だっけ」
友「うん。本屋行くなら途中まで一緒だね」
男「そうだな。自転車で二人乗りする?」
友「暗いから止めとく」クスッ
男「確かに危ないか」
友「今日は色々ありがとう」
男「ああ」
友「またね。お父さんにも宜しく」
男「そうだ、友」
友「なに?」
男「手紙……どうするんだ?」
友「……良く考えてから答えを出すよ」
男「そうか……」
友「じゃ、また明日ね」
男「……ああ。またな」
男(カフェ飯レシピ集、ねぇ……)ペラッ
男(へぇ、結構しっかりしたレシピもあるんだな)
「なに読んでるの?」
男「ん?」
幼馴染「……へぇ、あんた料理に興味あったんだ」
男「別に……」
幼馴染「ところでさ、ちゃんと手紙渡してくれた?」
男「……ああ」
幼馴染「そっか。友くん何か言ってた?」
男「……よく考えてから答えを出すってさ」
幼馴染「ふぅん」
男「あのさ、用無いなら帰って良いかな。帰って残った課題やらなきゃいけないんだ」
幼馴染「じゃあ一緒に帰ろ」
男「…………」
男「別に、そんな事は……」
幼馴染「外もう暗いんだよ? 女の子一人で歩かせて平気なの?」
男「こんな暗くなる前に帰れば良かったのに」ボソ
幼馴染「むっ。なにか言った?」
男「別に。こんな遅くまで何やってたんだろうって思っただけ」
幼馴染「友達と近くのカフェでお喋りしてたら、つい、さ……」
男「……そうか」
幼馴染「あ……ごめん」
男「良いよ、気にしてないから。それより本買うから少し待ってて」
幼馴染「え?」
男「送るから少し待っててって事」
幼馴染「う、うん。じゃ、待ってるねっ」
幼馴染「……」
男「……」
幼馴染「あ、あのさっ」
男「なに?」
幼馴染「えーっと……」
男「……?」
幼馴染「そ、そう。本! 本なに買ったの?」
男「……参考書」
幼馴染「へ、へぇ。男ってば真面目ー」
男「来年大学受験だから。塾とか行く余裕無いし、今の内からしっかりやらないと」
幼馴染「……そう」
男「うん」
幼馴染「そういえば昔から言ってたっけ。人生レールに乗った者勝ちだって」
幼馴染「……あんたは本気でレールに乗る為の努力をしてるんだね」
幼馴染「……」
男「……つまらない奴になってごめん」
幼馴染「そ、そんな事無いって!」
男「……もうすぐ幼馴染の家だね。おやすみ」
幼馴染「うん、おやすみ……」
幼馴染「……」
幼馴染「あ、あのさ!」
男「なに?」
幼馴染「今度男の家……喫茶店行って良い?」
男「客としてなら歓迎するよ」
幼馴染「……うん。幼馴染みだからって適当な接客しないでよ? じゃあおやすみ!」タタタッ
男「おやすみ」
友「おはよう」
男「おはよう……って、また手紙貰ったんだ」
友「あはは……」
男「もう誰かと付き合った方が良いんじゃないか。それなら他の女も諦め付くだろうし」
友「そんな物かな」
男「さあ?」
友「もうっ。他人事だからって適当過ぎない?」
男「俺モテた事無いから、そういう苦労は理解出来ないし」
友「むう……」
男「ま、頑張れ」ポン
友「ううーっ」
男「あ……おはよう」
友「……知り合い?」
幼馴染「私は幼馴染。宜しくね」
友「宜しく。男君の知り合いなのかな」
幼馴染「うん。男とは所謂幼馴染みって奴ね」
男「中学からクラス違ったりで疎遠だったけどな。昨日声掛けられた時は一瞬誰かと思ったよ」
幼馴染「う……」
男「それで、何か用か?」
幼馴染「ううん。姿見えたから声掛けただけ」
友「……ふふっ」
男「どうした、急に笑って?」
友「ごめん。さすが幼馴染みだなって思ってさ」
友「変って言うか、しばらく疎遠だったって言ってたのに、お互い気兼ねの無い感じで話してたのが凄いなって……」
男「そんな物かな」
幼馴染「さあ?」
友「二人は不思議な関係なんだね」
男「?」
友「少し……羨ましいな……」ボソッ
幼馴染「おはよー」
モブ子「珍しいね、こんな早いなんて」
幼馴染「そ、そう? 何時もこんなくらいじゃない?」
男「友達来たみたいだし、俺達は先行くな」
幼馴染「え? う、うん……」
友「じゃあね、幼馴染さん」
モブ子「!」
モブ子「お、幼馴染!」
幼馴染「あ、そっか」
幼馴染「男っ。せっかくだから4人で学校行こうよ!」
友「ボクも構わないよ」
幼馴染「なら決まりね。この子は私の友達のモブ子」
モブ子「は、はじめまして!」ペコッ
幼馴染「こっちが前に話してた男で、この人が……」
友「友です。宜しくね、モブ子さん」
モブ子「は、はいっ。宜しくお願いします!」
幼馴染「あははっ。モブ子緊張し過ぎだよっ」
男「……」
幼馴染「……男?」
男「ごめん、先行って良いかな?」
幼馴染「あ……」
男「……それじゃあ」タタタ…
モブ子「わ、私何か気に障る事しちゃったかな!?」
幼馴染「ううん、モブ子は悪く無い」
モブ子「そう……なの?」
幼馴染「……あいつ、まだ賑やかなの駄目だったんだ」
友(賑やかなのが駄目?)
幼馴染「……ごめん。私も先に行くから、二人で登校して」
モブ子「えっ」
幼馴染「頑張ってね」
モブ子「う、うんっ」
幼馴染「友くん。モブ子を宜しくね!」タタタッ
友「う、うんっ」
モブ子「……私達も行きましょうか?」
友「そうだね。うん、行こうか」
男「……」スタスタスタ
幼馴染「ちょっと、足早すぎ!」ガシッ
男「……っ」ビクッ
幼馴染「……ご、ごめん」
男「……幼馴染は悪く無い。俺の方こそ空気悪くしてごめん」
幼馴染「ううん。私が考え無しに賑やかにしたから……」
男「もう、落ち着いてたと思ってたんだけどな」
男「ああ言う空気は、さ。まだ……駄目だった」
幼馴染「……ごめんね」
男「だから謝らないでって。それに、もう落ち着いたから」
幼馴染「……うん。ねっ、久し振りに二人で学校行こ?」
男「そうだね。行こうか」
友「今朝は急にどうしたの?」
男「あ、えーと、急にトイレ行きたくなって……」
友「本当に?」
男「う……」
友「……」ジーッ
男「今度ちゃんと話すから、今は……その、良いかな?」
友「分かった。悩みがあるなら、何時でも聞くからね」
男「ありがとう、友」
ガララっ
幼馴染「すいませーん、男君いますか?」
友「こんにちは」
男「何か用?」
幼馴染「お昼どうしてるかなって思ってさ」
男「……俺は何時もの所で済ませる」
幼馴染「何時もの所?」
友「化学準備室だね」
幼馴染「そんな所で?」
友「先生にお弁当って賄賂渡して使わせて貰ってるんだ」ヒソヒソ
幼馴染「へー」ヒソヒソ
男「友はどうするんだ?」
友「ボクは弁当じゃないから、適当に食堂で済ませるよ」
幼馴染「友くんお弁当無いの?」
友「そうだけど、なに?」
幼「ふふっ。それなら良い話があるんだけど、どう?」
男「先生、これ」
化学教諭「何時も悪いわね。それで今日のお弁当は何かしら」
男「オムライスとサラダだそうです。こっちのタッパにチリソース入ってるんで、温めてからかけて下さい」
化学教諭「やった、オムライス! これで午後も戦えるわっ」
男「はは……」
化学教諭「それにしても……」
友・幼馴染・モブ子「……」
化学教諭「今日は随分と大所帯ね」
男「幼馴染みとその友人ですよ、先生」
化学教諭「ふーん」ニヤニヤ
男「……レンジ借ります」
化学教諭「おけー。そうだ、あんた達インスタントで良かったらコーヒー飲む?」
男「俺は要りません」
友「ミルクあるならいただきます」
幼馴染「あ、私もミルクあるなら」
モブ子「砂糖ありますか?」
化学教諭「はいはい。ミルク入り二つと砂糖ミルク入り1つね」
化学教諭(長テーブルを使って微妙に距離を開けて座ってるわね)
化学教諭(うん。これなら心配無いか)
化学「はいコーヒー入ったわよ。カップ無いからビーカーだけど気にしないでね」コトッ
幼馴染「あ、どうも」
モブ子(ビーカー……)
友「毎回ありがとうございます、先生」
化学教諭「構わないわよ。どうせ普段は私しか飲まないから」
男「先生、弁当温めておきました」
化学教諭「ありがと。それじゃいただきまーすっ」
男「ああ。日替わりランチの仕込みついでに作って貰ってるんだ」モグモグ
幼馴染「じゃあ今日はオムライスなんだ」
男「ん」モグモグ
モブ子「え? 日替わり?」
幼馴染「男の家、喫茶店やってるのよ」
モブ子「すごいっ。実家が喫茶店なんですか?」
男「……うん」
幼馴染「そ、それよりモブ子! お弁当っ」
モブ子「はっ。そうでした」
友「多め……」
男「確かに多いね」
幼馴染「普段は私とモブ子とで食べてるんだけど、ほら、友くんお弁当無いって言ってたからさ」
モブ子「は、はいっ。宜しければ食べて下さい、友くん!」
友「そ、それじゃ少し貰おうかな」
化学教諭「青春ねぇ。男君、私達は同じお弁当同士隅でひっそり食べましょう?」
男「はぁ。別に構いませんが」
幼馴染「わ、私も!」ガタッ
化学教諭(……ほう)
幼馴染「その……一緒に、食べて良い?」
化学教諭(なるほどね)
男「別に構わないよ」
幼馴染「良かった……」
化学教諭「まったく……青春過ぎて眩しいわ、貴方達」
男「どうしました、先生?」
化学教諭「なんでも無いわよ。それより早く食べましょう」
幼馴染「そ、そうですねっ」
化学教諭(私、男君、幼馴染さん)
化学教諭(この子、バッサリ分けたわね)
男「……」モグモグ
幼馴染「男、大丈夫?」
男「……平気。他人事の距離だから」
幼馴染「あのさ」
男「ん?」
幼馴染「私は嫌じゃない?」
男「嫌じゃないよ」
幼馴染「良かった……」
男「……」モグモグ
幼馴染「なにが?」
男「お前、友にラブレター渡してくれって……」
幼馴染「ラブ……?」
幼馴染「……あ、ああああああれはモブ子に頼まれてっ」アタフタ
モブ子「呼んだ? 幼馴染」
幼馴染「う、ううん。ほら、モブ子は友くんにお弁当食べて貰いなよ!」
モブ子「ふぇっ!?」
化学教諭「ああっ、もう。羨ましいなぁっ」
男「先生、白衣にチリソース付いてます」モグモグ
化学教諭「ありゃ。これはうっかり」
男「子供じゃ無いんですから……」フキフキ
幼馴染「…………」
化学教諭「そう?」
男「そうかな」
幼馴染「……」
男「どうした?」
幼馴染「別にっ」
男「変な奴……」モグモグ
男「ご馳走様」
幼馴染「……」モグモグ
友「ご馳走様でした。美味しかったよ、モブ子さん」
モブ子「お、お粗末様でしたっ」
幼馴染「ご馳走様」
化学教諭「さて、食後にコーヒー要るひとー?」
友「いただきます。モブ子さんも要る?」
モブ子「は、はいっ」
化学教諭「おけー。幼馴染さん、ちょっと手伝って」
幼馴染「え、私ですか?」
化学教諭「そ。貴女も飲むでしょ?」クスッ
幼馴染「……分かりました」
幼馴染「はい」
化学教諭「お湯沸くまでもう少しかな」
幼馴染「あの、先生……」
化学教諭「あ、ついでに同じ棚にあるインスタントミルクティー取ってくれる?」
幼馴染「ミルクティー? この缶ですか?」
化学教諭「うん。それそれ」
幼馴染「……これって、男用ですよね」
化学教諭「そうよ」
幼馴染「あの、先生」
化学教諭「なにかな?」
幼馴染「先生は男がコーヒー飲めない理由、知ってるんですか?」
幼馴染「そう……ですか」
幼馴染「じゃあ、ここでお弁当食べさせているのは……」
化学教諭「……ま、多分貴女の想像通りよ」
幼馴染「……やっぱり」
化学教諭「さ、お湯が沸いたわ」
幼馴染「……」
化学教諭「貴女も理由を知ってるなら、男君の事はそっとしておきなさい」
幼馴染「!?」
化学教諭「今迄ずっとそうして来たのでしょう?」
幼馴染「それは……そうだけど……」
幼馴染「……」
化学教諭「男君は何時もの奴ね」カチャ
男「どうも」
化学教諭「はい、幼馴染さん。貴女はミルク入りよね?」カチャ
幼馴染「……はい」
幼馴染「……」ズズ
幼馴染「にが……」ボソッ
幼馴染「私も砂糖入れようかな……」
友「男、今日も男の家に行って良いかな?」
男「客としてなら構わないよ」
友「ふふっ、もちろんお客として行くよ」
男「それなら大歓迎」
友「何かオススメってある?」
男「パンケーキセットかな。家のは安い割に量多いからお得感があるよ」
友「パンケーキかぁ……甘い物も悪く無いね」
男「お友達サービスでメープルシロップとバターを増量してあげよう」
友「シロップでヒタヒタにするのは勘弁してよ?」フフッ
カランカラン
男「ただいま」
友「こんにちは」
父「やあ、いらっしゃい。男もお帰り」
男「今日は客だってさ」
父「おや、そうなのかい?」
友「はい。パンケーキセット、飲み物はホットコーヒーでお願いします」
父「パンケーキセット、にホット一つですね。畏まりました」
父「男。卵少なくなって来たから、補充をお願いして良いかな?」
男「分かった。着替えてくる」
男「悪いけど友、少し待ってて」
友「うん。行ってらっしゃい」
友「いえっ、お構い無く」
父「棚に漫画があるからね」
友「は、はいっ」
父「……」
友「……良いお店ですね」
父「はは。ありがとう」
友「なんだか、とても落ち着きます」
父「なかなかお世辞が上手だね。はい、コーヒー」カチャ
友「お世辞じゃありませんよ」
父「……ありがとう」
男「……入らないのか?」
幼馴染「……」
男「客なら歓迎するよ」
幼馴染「えっと……」
男「……」
幼馴染「男は買い出し?」
男「の帰り」
幼馴染「そうなんだ」
男「ん」
幼馴染「……入って良い?」
男「……良いよ」
男「ただいま」
父「お帰り……おや?」
幼馴染「お久しぶりです。おじさん」
父「久し振りだね。カフェオレで良いかい?」
幼馴染「あ、はいっ」
友「お帰り」
男「ただいま。父さん、卵ここに置いとくから」
父「ああ。ありがとう」
幼馴染「友くん来てたんだ」
友「うん。常連になる予定だからね」
男「そりゃありがたい」
幼馴染「ふふふ。男ったら現金ね」
友「ありがとうございます」
男「……父さん、パンケーキセットにバニラアイスなんて付いてたか?」
父「はは。今後ともご贔屓にってね」
男「まったく……」
父「熱々のパンケーキにバニラアイスを絡めて食べると美味しいから試してごらん?」
友「はい。いただきますっ」
父「はい、こちらのお嬢さんはカフェオレでしたね」カチャ
幼馴染「あ、どうも」
父「それと、これはサービスのアイス。一人だけ贔屓は良く無いからね」カチャ
幼馴染「良いんですか?」
父「もちろん。今後とも当店をご贔屓にお願いします……なんてね」フフッ
男「はあ……」
男「分かった。明日のランチは何にするんだ?」
父「ミルクカレーだよ。それじゃカウンター宜しく」
男「ああ」
幼馴染「明日ミルクカレーなの?」
男「みたいだね」
友「ミルクカレー?」
男「ミルクを入れてまろやかに仕上げたカレーだよ」
友「へぇ。ボク辛いのが苦手だから興味あるな」
幼馴染「明日休みだし来ようかな……」
男「そういや幼馴染は父さんのカレー好きだったよな」
幼馴染「うんっ」
友「ボクも明日来ようかな……」
――
―
友「あ……そろそろ帰らないと。お勘定お願いします」
父「あー。今日は仕込みが上手く行ったからサービスって事で……」
男「父さん」
父「う……」
友「おじさん、ボクは今日客として来ているんです。だからちゃんと支払わせて下さい」
男「そうだよ父さん。こういう事はしっかししないと駄目だ」
父「申し訳ない……」
男「ん。またね」
幼馴染「ばいばい」
父「ありがとうございました」
カランカラン
男「幼馴染はまだ帰らなくて良いのか?」
幼馴染「私もそろそろ帰ろうかな」
父「もう店を閉めるから送ってあげたらどうだい?」
男「送るって言っても近所だし……」
父「まあまあ」
男「……仕方ない。行こうか、幼馴染」
幼馴染「良いの?」
男「構わないよ」
幼馴染「……ありがと」
男「帰らなくて良いのか?」
幼馴染「ちょっと寄り道」
男「寄り道、か」
幼馴染「あのさ、男」
男「……なに?」
幼馴染「ずっと疎遠だった私が言える事じゃ無いけど……」
男「……」
幼馴染「辛くなる前に頼って良いからね」
男「……ありがとう」
幼馴染「たぶんって……」
男「他人事の距離なら、周りがどれだけ賑やかだろうと、幸せだろうと辛くならないから」
幼馴染「……」
幼馴染(全然……全然大丈夫じゃないよ、それ……)
男「それでもどうしようも無くなったら、幼馴染を頼るよ」
幼馴染「……うん」
幼馴染(幸せになっても、それが不意に壊れる事を知っているから)
幼馴染(幸せを壊されてしまったから。だから、幸せになる事が怖いままなんだ……)
男「……どうしたの?」
幼馴染「な、なに?」
男「俺より、幼馴染の方が辛そうに見えるから」
幼馴染「……」
男「……帰ろうか」
幼馴染「……うん」
友『あ、あのっ』
父『なにかな?』
友『今日学校行く途中、男の様子が少し変だったんです』
父『……』
友『ただの体調不良なら良いんですが……』
父『心配かい?』
友『それは勿論! 大切な友人ですから』
父『……そうか』
父『息子はね、僕の妻……つまり母親を事故で亡くしているんだ』
父『この店も、妻と僕の二人でデザインして作ったんだよ』
父『家族三人、本当に幸せだった』
父『だけど……妻は事故で……』
友『そんな事が……』
父『妻が無くなって、息子は酷く塞ぎ込んでしまった』
父『それ以来かな。息子は幸福だと感じると、酷く恐怖を覚えしまう様になったんだ』
友『幸せと感じる事が怖い……?』
友『そんな……』
父『だから息子が友君をここに連れて来た時は驚いたよ』
父『それと同時に嬉しかった。やっと立ち直ってくれたんだって』
父『けど、まだ立ち直りきれて無いんだね……』
友『はい。今朝、男が幼馴染さんと話てると突然……』
父『友君。情けない話だが、僕じゃ息子を立ち直らせる事が出来なかった』
父『息子が君をここに連れて来たって事は、君の事を本当に信頼しているんだと思う』
父『だから、これからも息子の良い友人でいて欲しい』
友『は、はい! こちらこそ、宜しくお願いします!』
カランカラン
男「いらっしゃいませ」
友「こんにちは」
男「友か。今ちょっと混んでるから、一段落付くまで俺の部屋で待ってるか?」
友「良いの?」
男「ああ。後一時間もすりゃ落ち着くから、適当にゲームでもやって待っててよ」
友「……いや、ボクも手伝うよ。その方が作業が減るだろ?」
男「良いの?」
父「お手伝いなら歓迎するよ。そうだね、このピークを乗り切ったらランチをご馳走するって言うのはどうだい?」
友「良いんですか?」
父「こちらからお願いしたいくらいさ」
男「よし。エプロン貸すから来てくれ!」
友「うん、分かった!」
友「い、いらっしゃいませ……」モジモジ
幼馴染「友……くん?」
友「うう……」
幼馴染「なにそのフリル付きエプロン……しかも絶妙に似合ってるし……」
友「ウエイトレス用のしか無いって言われて……」
男「いらっしゃい、幼馴染。もうすぐ空くから、カウンターで待ってて」
幼馴染「あ、男! 友君が何であんな格好を?」
男「バイトだよ。友、奥のテーブルのオーダー頼む。父さん、ランチセット、アイスコーヒー一つ!」
父「あいよー」
幼馴染「……バイトで女装……?」
客「お嬢ちゃん、お冷やお願い」
友「あ、はいっ。ただいま!」
幼馴染(お嬢ちゃん……?)
――
―
男「ようやく客が引いたか……」
友「疲れた……」
父「お疲れ様。助かったよ」
男「ああ。本当に助かったよ、友」
友「どう致しまして……」
父「幼馴染ちゃんも、せっかく来てくれたのに洗い物やらせちゃってゴメンね」
幼馴染「このくらいなら、何時でも手伝いますよ」
父「はは。それは嬉しい申し出だね」
父「さてと。少し遅くなったけどお昼にしようか」
幼馴染「私オレンジジュース」
友「ボクは烏龍茶」
男「分かった。適当に座って待ってて」
幼馴染「はーい。そこのテーブル行こ、友君」
友「うん。男、手伝う事あったら言ってね」
男「バイトはもう良いから、ゆっくりしてなって」
幼馴染「そういえば着替え無いの?」
友「あ……」カアッ
――
―
父「お待たせー。あれ、友君は?」
男「着替えに俺の部屋行った」
父「そうか。中々似合ってたのに、勿体ない」
友「変な事言わないで下さい!」
幼馴染「早かったね」
男「ちょうど良かった。カレーの用意出来てるぞ」
友「うん、直ぐ行く!」タタタ
――
―
男「ご馳走様」
友「ご馳走様でした。すっごい美味しかったです!」
父「ありがとう。そう言って貰えると作った甲斐があるよ」
幼馴染「ご馳走様でした。久し振りに食べたけど、やっぱりおじさんのカレーは最高ですねっ」
父「あ、あはは。そんな絶賛されると照れるな……」
父「よーし、父さん頑張って食後のコーヒー入れようかな!」
男「俺は烏龍茶にしとくよ」
父「そうか……二人はどうする?」
幼馴染「暖かいコーヒーが飲みたいです」
友「ボクも同じ物をお願いします」
友(お母さんが好きだったから、幸せだった頃を思いだして飲めないのかな……)
男「どうかした?」
幼馴染「ううん。なんでもないよ」
友「うん。ご飯食べて少しぼーっとしちゃったのかな」
幼馴染「そうだ、今度モブ子も連れて来て良いかな?」
男「別に構わないけど……」
友「気に入ってくれると良いね」
男「……そうだね」
男「大丈夫……まだ大丈夫だから……」
友「大丈夫って……酷い汗出てるじゃないか!」
男「大丈夫だよ……直ぐ落ち着く」
幼馴染「ご、ごめんっ。私がはしゃいだから!」
男「幼馴染は悪く無い。これは俺の問題なんだ……」
幼馴染「でも!」
友「……」
友(男は幸せだと感じるとこうなってしまう)
友(それはつまり、今が幸せだと感じていたんだ)
友(男君は今幸せだったのに何でこんな……)
友(幸せだと感じると恐怖を覚えるなら、男は何に幸せを感じたんだろう)
友(……少なくとも、ボクと居る時にこうなる事は無かった)
友(だとしたら、男は幼馴染さんと居ると幸せなの?)
友(……少し違う気がする。なら一体何が男にとっての幸せなんだろう……)
友「……うん」
幼馴染「心配するに決まってるでしょ!」
男「……」
幼馴染「もっと頼ってって言ったのに、何で……」
男「そうだったね。ごめん」
友(……あ)
友(もしかしたら、男は……)
男「……なに?」
友「ボクはどこにも行かない。ボク達はずっと友達だ!」
友「だから……安心して」
男「…………」
男「友、急にどうした?」
友「……落ち着いた?」
男「そういえば」
幼馴染「男の汗が引いてる」
友「よかった、思った通りで」
幼馴染「え、なに? どういう事?」
友「実は、昨日おじさんから男の昔の話を聞いていたんだ」
男「昔の?」
友「うん……」
幼馴染「……おじさんが話したんだ」
友「男、昨日の登校中に急におかしくなったろ? その事おじさんに相談したら……」
男「……そっか」
友「それで、ボクなり男がどうして幸せを怖がるか考えたんだ」
友「男はね。きっと幸せが怖いんじゃなくて、幸せな時間が失われる事が怖いんだと思う」
幼馴染(私と同じ考えだ……)
幼馴染(幸せが壊れたから、幸せになって壊れる事が怖い)
幼馴染(それをたった1日で気付くなんて……)
友「男がボクを信頼してくれたから、ボクの言葉を信じて、落ち着けたんだと思う」
友(だからこそ危ういのだけど)
男「……そうなんだ」
友「ただし根本的な解決じゃないよ。最終的には男自身が乗り越えなきゃいけないんだから」
男「……うん。ありがとう、友」
幼馴染「……良かったね、良い友達が出来て」
幼馴染「疎遠になってた私じゃ、こうは行かなかったわ」
友(本当にそうかな、幼馴染さん)
友(疎遠だったから大丈夫だったけど、また昔みたいに親密になったら、男はキミを失う事を一番恐れるとボクは思う)
友(……ただ、悔しいからキミが気付くまで秘密にしておくよ)
父(良かった。男は友人に支えられて、お前の死を乗り越えられそうだよ)
父(本当に良かった……)
父「コーヒーと烏龍茶お待たせ」
男「あ、父さん……」
父「ん、どうした?」
男「……なんでも無い」
父「そうか。さあ、冷めないうちにどうぞ、二人とも」
友「はい。いただきます」
幼馴染「いただきます。おじさん」
男「友、奥のテーブルのオーダー頼む!」
友「うん!」
幼馴染「ランチセット二つ入りましたー!!」
父「あいよー!」
カランカラン
男「いらっしゃいませ! 空いてる席にどうぞ!」
男「先生?」
化学教諭「思ってたより繁盛してるのね。可愛らしいウエイトレスのお陰かしら」
友「あ……」
幼馴染「どんまい……」
化学教諭「あら?」
化学教諭「なかなか似合ってるじゃない。友君」
友「くっ……」
モブ子「すいませーん。アイスコーヒーまだですかー?」
友「あ、はい! ただ今お持ちしまーす!」
化学教諭「おけー。あ、ランチセットの飲み物はアイスラテで宜しくね」
男「はい。かしこまりました」
男「父さん、ランチとアイスラテ一つ!」
父「あいよー」
ーー
ー
男「よっしゃ、山越えたーっ」
父「お疲れ様。みんな休憩入って良いよ」
男・幼馴染・友「はーい」
モブ子「そうですねー」
化学教諭「またまたー。本当は私が来てくれて嬉しい癖にっ」
幼馴染「モブ子も来てくれたんだね!」
モブ子「うん! 制服可愛いね! 二人とも良く似合ってると思うよっ」
友「そ、それはどうも……」
モブ子「は、はいっ」
化学教諭「……」
幼馴染「先生?」
化学教諭「こ、これは初めまして男君のお父様!」
父「これはご丁寧にどうも」
父「ああ、ごめんごめん」
父「お二人もゆっくりして行って下さいね」
化学教諭「はいっ。ゆっくりして行きます!」
モブ子「先生何か変……」
ーー
ー
幼馴染「美味しかったーっ」
友「ご馳走様」
モブ子「二人とも着替えちゃったんだ」
幼馴染「私と友くんはお昼のお手伝いだけだからね」
モブ子「むー。せっかく可愛かったのに」
化学教諭「サービス!? 是非!!」
モブ子「私も良いんですか?」
父「はい。もちろん」
モブ子「そ、それじゃあ、お願いしますっ」
男「俺は……」
幼馴染「……」
友「男……」
男「俺も、貰おうかな。父さんの入れたコーヒー」
父「……! そうか! 男も飲むか! みんな飲むなら一番良い豆挽かないとな!!」
幼馴染「もう……大丈夫なの?」
友「無理しなくて良いからね」
男「うん……なんかさ、急に飲んでみようかなって思ったんだ」
幼馴染「そっか……」
友「疎遠だった癖に」
幼馴染「う……」
友「どちらかと言うなら、生涯友人である事を誓ったボクのお陰じゃない?」
幼馴染「むむぅ……」
幼馴染「だったら私は男と添い遂げるわ!!」
男「へ?」
友「なっ……」
モブ子「こ、これって……ぷ、プロポーズ!?」
幼馴染「私だって男が大切なの!!」
男「え、なに? なんなの?」
化学教諭「愛されてるわぁ。もう爆発しちゃえば良いのに」
幼馴染「男! 駄目なの!?」
男「うぇっ!?」
男「だっ、駄目じゃ無いけど……俺、まだ高二だし……」
幼馴染「将来の話なら、どうかな?」
男「……うん。将来的な事で良いなら」
モブ子「おおーっ」
幼馴染「……えっと、私は久し振りに話した時に……かな」
幼馴染「ああ、この人と居るだけで心地良いなぁ……って言うか……」
男「俺も、そんな感じ……」
友「……ふふっ。これはかなわないな」
友「……そうですね」
化学教諭「私としても息子の様に可愛がってた生徒がトラウマを乗り越えた事は喜ばしいわ!」
モブ子「息子?」
友「…………」
モブ子「乗り越えるとかトラウマって何の事だかわからないけど、良かったね二人とも!」
化学教諭「そうね、良かったわね。先生的にはこのまま丸く納まるとやりやすいわ」
友「幼馴染さんに関しては納得し難い部分はあるけど、男が幸せを苦痛に思わなくなった事は嬉しいよ」
幼馴染「ありがとうモブ子、ありがとう先生!」
男「幼馴染の告白からなんかおかしな方向に話が進んでないか?」
父「なにやら随分と賑やかになっているね」
男「あ、父さん」
男「ありがとう、父さん」
父「その豆はね、僕とその大切な人が好きな豆を、二人が好きな加減で焙煎して挽いた物だよ」
男「そうなんだ……」ズズッ
父「どうかな?」
男「うん。美味しいよ、父さん」
男「コーヒーって、こんなに美味しい物だったんだね……」
父「ああ。なにしろお前を愛した二人が、この世で二番目に好きなものだからね」
男「そっか……」
友「あ、ありがとうございます」
幼馴染「いただきます」
化学教諭「良い香りですね」
モブ子「ちゃんとした喫茶店のコーヒーは初めてです!」
父「どうぞ。冷めないうちに」
男「うん。子供の頃は砂糖もミルクもたっぷり入れないと飲めなかったのにね」
幼馴染「大人になったのかな?」クスッ
男「かもね」クスッ
幼馴染「……あのさ」
男「なに?」
幼馴染「さっきは勢いで言っちゃったけど、私は今度こそずっと側に居るから」
男「……うん」
幼馴染「腫れ物扱いで距離を置くなんて絶対しない。だから、側に居ても良いよね?」
男「……うん」
幼馴染「ありがと、男……」
幼馴染「むっ……友くんは早くモブ子ちゃんに返事するべきだと思うな!」
モブ子「え?」
友「え?」
モブ子「言ってないの、友くん?」
友「言ってなかったの、モブ子さん?」
幼馴染「え……まさかあんたら……」
モブ子「え、えへへ……」
男「知らなかった……」
化学教諭「ええ……」
父「これからも息子をお願いします。先生」
化学教諭「え、これからも……?」
化学教諭(これからも息子をお願いしますって、つまり公私共々息子さんを息子としてどうぞ宜しくお願いしますって事?)
化学教諭(それは父さんをダーリンっと呼んで、男君をマイサンって呼ぶって事なの!?)
化学教諭「は、はいっ。息子さん……いえ、男君は私が責任持って面倒を見させていただきます!」
父「はは。真面目な方ですね」
モブ子「先生……私ね、正直おじさんと先生じゃ脈無いと思う」
友「ちゃんと考えてから答えを出すって言ったろ?」
友「それに誰かと付き合えばって言ったのは男じゃないか」
男「そういえば……」
幼馴染「私何で♂と張り合ってたんだろ……」
モブ子「友くん可愛いから仕方ないよ」ポッ
友「そんな事無い。モブ子さんの方が素敵だよ」ウフフ アハハ
男「ははは……」
男(側で笑ってくれる幼馴染や友、先生にモブ子さんが居れば)
男(俺の胸を抉った痛みを少しでも埋められる気がする)
幼馴染「……どうしたの。じっと見て来て」
男「これからも宜しくね、幼馴染」
幼馴染「……これからも、ずっと。でしょ?」
男「……そうだね、これからも、ずっと。宜しくね、幼馴染」
幼馴染「うん。宜しくね、男!」
日食見に行きながら書くものじゃないね
乙やの
追い討ちなくてよかった
Entry ⇒ 2012.05.26 | Category ⇒ 幼馴染「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
P「神崎蘭子と同棲を初めてから他のアイドルが中二病パンデミック」
「この手の趣味はよくわからんが、他へ越す時に影響が無いようにな……つまりあまり汚さないように」
先日、765プロに新人アイドルが加入した。
名前を『神崎蘭子』という少女だ。
九州から上京してきた彼女の下宿先は、事務所が充てがった寮やアパートではなく――…職員の家。
つまり我が自宅なのだが、幸い部屋はいくつか空いていたので生活スペースに関してはなんら影響が無い。
音無さんが一人暮らしをしているマンションに住ませても良かったのだが、普段から彼女には世話になっているのでこれ以上は迷惑をかける事が出来なかった。婚活に身を入れてほしいしね。
ともかく、新しい住人はその……ゴスロリ? 知識は無いが中世のヨーロッパ貴族でも着用を渋るような、漆黒のドレスにその身を包んでいる。
「クッ……私とした事が、生命の奔流を……(あぁ、エアコンの前にカーテンかけちゃった……orz)」
「ん? ああ、あれじゃエアコン使えないな」
蘭子は、やけに回りくどい台詞を好む。それが意図的なものなのか、教育されて身に付いたものなのかは定かではないが……会話のキャッチボールというより、彼女が壁にぶつけてどこぞに跳ね返ったボールを俺が試行錯誤をして捕球する。作業に近いものになっていた。
「我が友 P。今こそ旅立ちの時よ!(一緒に仕事いこ?)」
「……あー、わかった。先に駐車場へ向かってくれ」
蘭子にとって、アイドル人生は始まったばかり。
俺はプロデューサーとして、この子をトップアイドルにさせてあげる。言葉の壁なんて、問題ではない。……相手は同じ日本人なのだが。
P「おはようございます」
音無「あっ、おはようございますプロデューサーさん」ニコッ
蘭子「煩わしい太陽ね(おはよう!)」
音無「はい、おはようございます蘭子ちゃん」ニコッ
P「……お前さ、俺はそろそろ脳内に自動翻訳機能が付いてきたからなにを話してるのかはわかってきたけどさ」
P「他人が聞けばチンプンカンプンだと思うぞ」
蘭子「人の世……というものは。(気をつけます!)」
P「現場では注意してくれよ……」ハァ
蘭子「ククク、夜の始まりね(頑張ろ〜♪)」
ガチャッ
春香『あっ、プロデューサーさんに蘭子ちゃん』
P「ああ春…」
春香「煩わしい太陽ですねっ」ニコ
P「あ、ああ……」
春香「?」キョトン
P「遊ぶにしても事務所内だけで……な?」
春香「わかってますよ」クス
P「そ、そうか」ホッ
春香「あっ、蘭子ちゃん」
蘭子「何かしら?(ご用ですか?)」
春香「この前蘭子ちゃんが描いてたイラストなんだけど」
蘭子「え、絵……見た、の?」カァ
春香「うん……? 後ろからチラっとだけど」
春香「上手だねっ」ニコ
蘭子「わ、我が下僕 P。旅立ちの準備をしなさい(は、はやく行きましょう!)」
P「なにを急いでるんだ?」
P「あと、イラスト描くのか。今度よかったら見せてくれ」ニコ
蘭子「ぁ……」カアァ
蘭子「く……クッ、心の臓が…(は、はずかしいよ〜)」
P「?」
陶器といえば表面がザラザラしたものを真っ先に想像するが、なるほど。確かに血が通ってないように見えるほど白く、絹のような……という比喩も似合いそうなほど、神崎蘭子の御腕は綺麗である。
身体全体を覆う服装で、露出している部分は少ないが……髪型のせいか、見える白いうなじが醸し出すのは色気より妖艶な美しさだ。
切れ長の目も相まって、掛け値なしの美少女なのだが――…
「さぁ狩りの時間よ(仕事いこ?)」
この口調がひどく、勿体無いと感じる。
これも彼女の魅力の一つだと割り切って、伸び伸びとさせるのが正しいのならプロデューサーとして、俺は好きにさせたいと思う。
ドレスの色と同じ、漆黒の日傘を咲かせながら蘭子は歩く。
「プロデューサー……今日も、その、よろしく…」
彼女の歩む道の先に、トップアイドルという終着地点が待っていることを……強く望んだ。
P「蘭子、突然だが俺は他の現場に向かう」
蘭子「ぇ?」
P「戻ってくるまで事務所に待機してくれないか?」
蘭子「ぁ……プロデュー…」
P「そういうことだから」グッ
ガチャンッ
蘭子「あ……」
蘭子「……」
蘭子「いっちゃった」
『らーんこっ!』
蘭子「っ!」ビク
蘭子「……」チラ
響「はいさい! ……じゃなかった、闇のまだぞ蘭子!」
蘭子「(あ、我那覇さん)」
蘭子「や、闇に飲まれよ」キリッ
響「お〜っやっぱり本物はちがうゾ!」
蘭子「光の住人よ……。(元気な子、苦手だよー)」タラ
蘭子「……ふ。(そうですね♪)」
――…
小鳥「……」チラ
響「それでさー貴音のやつが……」
蘭子「……クク。(我那覇さん面白い〜)」
響「……蘭子? 怒ってるのか??」シュン
蘭子「我が身体は愉悦に震えている。(お腹いたい……)」クス
響「難しい言葉を使わないでほしいさー…」
響「……じぶん、完璧だけどその、普通の言葉で喋ってほしいゾ!」
蘭子「ぇ、ええと……(どうしよー……)」
蘭子「……」チラ
響「……」ムム
蘭子「……」
蘭子「……」
蘭子「………………うん」コク
響「やった! ありがとうだぞ蘭子〜っ!」ワーイ
蘭子「他愛もない……(な、仲良くなれたかな……)」ドキドキ
小鳥「……ふふ」クス
響「あっ、貴音! いま行くぞ!」
蘭子「(四条さん……上品でカッコいい)」
貴音「蘭子。お疲れさまです」フフ
蘭子「ぁっ」
蘭子「(お、お疲れさまって言わなきゃ……っ)」
蘭子「お…………や、闇に…飲まれよ……(あぁ…orz)」
貴音「?」
貴音「まこと……蘭子は愉快な子ですね」クス
蘭子「闇が……泣いている。(わーっ褒められた♪)」
貴音「では……失礼します」
貴音「響……」
響「じゃあ蘭子、またな!」ニッ
タッタッタ…
蘭子「ぁ……」
蘭子「ま……また…」フリ…
小鳥「……」フフ
小鳥「蘭子ちゃん、もうそろそろプロデューサーさん戻ってくるって言ってましたよ」ニコ
蘭子「……夜が近い。(プロデューサー、はやく戻ってきてっ)」
前に、蘭子の部屋のドアが開いていた時に中を覗いたら画用紙に色々と描いていた。
蘭子に似た少女が格好の良い……と本人は思って描いているのかは謎だが、黒い天使を彷彿とさせる衣装を着たキャラクターが生き生きと描かれていた。
その時、絵の感想を蘭子に告げたら酷く狼狽し……その日は夕飯の時間になってもリビングに姿を現さなかった。
しかし、少しだけ吹っ切れたのか『描いているイラストを見ない』という約束をした後、今では料理を作っている俺をよそに、いそいそとテーブルの上で絵を仕上げている。
『なにを描いているのだけ教えてくれないか』と聞いたところ、
『わ、私の…………なんでもない……』とだけ恥ずかしそうに返された。やはりあの時見た絵は、蘭子自身で正解だったようだ。
そして今は、夕飯の支度中。ということは蘭子はといえば……
「料理、持っていくまでにテーブルの上片しておいてくれよ」
「クク……夕餉の直前まで我が進撃は止まぬ…」
なるほど。少し急いで持っていこう。
どう反応するだろうか。画用紙を濡らしても悪いだろうから、ご飯をよそった茶碗を先に持っていってやろう。
最近は、この同居人の反応が逐一楽しみなのだ。
P「まだ機嫌、治らないのか」
蘭子「……」ツン
P「すまない……その」
P「でも変だとは思わないぞ? 日傘をさした少女の横に、どうして白馬に乗った王子様がいるのとか」
蘭子「……」フイ
P「王子様、馬に少女を乗せてあげないのかな。とか、王子様なんでネクタイしてるのかとか……見知ったネクタイだったとかは些細な事だ」
蘭子「…………」カァ
P「ほら、お食べ」
蘭子「……」パク
P「よしよし」
P「それでさ…」
P「……周りに男がいないのはわかるけど、俺をモデルに使うなら肖像権が発生するんだけど」
蘭子「!」カァ
蘭子「じ、地獄の業火を受けよっ!(もープロデューサーのばかーっ!)」カアァ
P「冷たっ、コップの水を指で弾くなっ!」アセ
やよい「えへへー、闇に飲まれよ! ですっ」ニパァ
真「プロデューサー、闇飲まですっ!」ニコッ
雪歩「や、闇に飲まれよですぅ……」カァ
亜美「兄ちゃ〜んっ」
真美「やみのま〜っ!」ニッ
あずさ「あらあら……」ニコ
千早「…………や、闇飲まです」
伊織「なによ、皆してバカみたい…………闇のま。プロデューサー」ボソ
P「はは……ご苦労様」ハァ
蘭子「……?」カキカキ
P「今さらだけど…」
P「……その、話し方どうにかならないのか?」
蘭子「っ」
蘭子「……ククク、私の翼を折るなど… P「それそれっ」
蘭子「……」キョトン
P「それが悪いとは言わないけどな」
P「その口調が無くなれば、もっと……普通に話せたりさ」
P「明るくなれたりするんじゃないか」
蘭子「!」
蘭子「…………そんなに、暗い……かな…」
P「そう気を落とすな。蘭子のファンの中には、確かに蘭子のそういう部分を愛してくれている人たちがいるのも知っている」
P「けど、トップアイドルを目指すんだろう」
蘭子「…………笑止(う、うん!)」
P「じゃあ……意地張ったり、変なプライドに固執するのはやめて。前に進むべきじゃないのか?」
蘭子「…………」シュン
P「……夕飯の準備、出来たぞ」
蘭子「……」ショボン
P「そうしょげるなって」
P「まず、食べるところから。な? お食べ」
コトッ
蘭子「…………いただきます」ボソ
P「……」モグ
蘭子「……」パク
P「……」モグモグ
蘭子「……」パクリ
P「……」
蘭子「……」
P「……なあ、蘭子。元気だしてくれよ」
蘭子「……」チラ
P「いつもなら『クク、今宵の贄は格別。(オカズに大好物がある! やったー♪)』くらいの饒舌ぶりじゃないか」
蘭子「…………」
P「(俺が間違えているのかな…)」
P「(……いや、これも蘭子のためを想ってなんだ)」
蘭子「…………」パク、リ。
MC『あれ、蘭子ちゃん今日は大人しいねえ』
蘭子「…………は、はは」
MC「う〜ん、いつもみたいに『スタジオの照明は身体に障る……バサァッ!!』って感じで日傘広げないの?」
蘭子「ぁの…………」
蘭子「……その…」
MC「……」
MC「まあいいや次のコーナーいっちゃおうっ!」
ワー ワー!! パチパチ
P「……蘭子」
蘭子「…………」
――…
スタッフ『一旦休憩でーすっ!』
P「蘭子、ちょっといいか」
スタッフ『すみません』
P「あっ、はい」
スタッフ「今日、蘭子ちゃん身体の調子でも悪いんですか?」
P「あ……ええと…」チラ
蘭子「……」
P「……」
スタッフ「……今回の出演もMCさん直々のお願いで実現したんですから」
P「はい……大変恐縮です」
P「すみません。少し話し合いをしますので」
スタッフ「」ペコ
タッタッタ…
P「蘭子、聞いていただろう」
蘭子「……」シュン
P「気落ちしている場合じゃないと思うが」
蘭子「……クク、奇をてらう必要など…」
P「いつもが奇をてらってるようなもので。ちゃんとしてる方が普通だろう」ハァ
蘭子「……いつもが、私らしさなんですっ!(皮肉なものだ。光が強くなれば、闇がより濃くその輪郭を顕す)」
P「……もしやとは思うが本音と建前、逆に言ってないか?」
蘭子「っ」ハッ
蘭子「……」カァ
P「うーん、どうしたものか……」
MC「それでは、抜き打ちの楽屋訪問と参ります〜っ! 現場にはスタッフが…」
蘭子「!」
蘭子「ぇっ?」キョロ
P「(出演者には内緒だが、鞄の中は見ないって打ち合わせでしてあるから安心し…)」
P「(……あっ)」
蘭子「画用紙……」
P「(画用紙は鞄に入りきらないんだった……)」
P「……マズい…」
MC「現場のスタッフゥーっ!」
スタッフ『はい、只今人気急上昇中の新人アイドル。神崎蘭子ちゃんの楽屋前に来てますー』
蘭子「……っ」ガタッ
P「(蘭子! ダメだその場からは動けないぞっ)」
蘭子「……」キッ
P「す、すまない……」
スタッフ『さあ中に入りましょう〜』
ガチャッ
ワーワー!! ガヤガヤ!!
蘭子「……」ドキドキ
『あれ? なにか画用紙がありますよ』
蘭子「!」チラ
P「(今からじゃ……回収に行けないっ)」
MC「蘭子ちゃん、あの画用紙は?」ニコ
蘭子「ぁ……えぇと…」
スタッフ『じゃあ、少し中を拝見させてもらいまーす』
パラッ
蘭子「ぁっ」
MC「これは……蘭子ちゃんのイラスト? みたいだね」
蘭子「ぁ……その…」カアァ
MC「どうなの?」
蘭子「わ、わた……」
蘭子「わ……」
蘭子『我が下僕 Pよっ!』
P「!」
蘭子「今すぐに禁断の書をこの世から抹消せよっ!(お願いっ、あの子を……)」
P「ら、蘭子」
P「(! わかった!!)」ダダッ
―――
P「すみません!」
スタッフ「え?」
MC『あ〜スタッフさん? いま蘭子ちゃんの配下の人が禁断の書を抹消しに行きましたから!』
スタッフ「あっ、はい」
スタッフ「ええと……」
P「それを、渡してください!」
スタッフ「は、はい」スッ
P「どうも!」
ガシッ
P「そぉい!!!」バシュッ!!
キラーンッ!
MC「あ、ありゃー空の彼方に飛んでっちゃった」
MC「ど、どうなの? 蘭子ちゃん」
蘭子「ククク……アレは今朝拾った封印の書…………我が魂を封印するための恐ろしい魔術書。それを葬らせただけのこと」クツクツ
MC「な、なんだかよくわからないけどいつもの蘭子ちゃんだね!」
MC「よぅし! この調子で次のコーナーいこうか!! 蘭子ちゃんCM入りのコメントお願いっ!」
蘭子『CM? CMの後で何人が息をしていられるのかしら』クス
『はいカットーッ!!』
P「これで、良かったのか……?」
P「収録、ご苦労様」
蘭子「……」
P「あと、画用紙回収してきたんだ」
P「車に何度か轢かれて、ボロボロになっていたけど……」
蘭子「ククク、所詮我が創造物の一つ。何度でも創る事は可能」クス
P「そうか……すまないっ! 俺の配慮が足りなかった」ペコッ
蘭子「プ、プロ……デューサー。平気、だから」
P「……お前が一生懸命描いていたものをこんなにしてしまって…
蘭子「……本当…気にしてないから……」ニコ
P「蘭子……」
P「……じゃあ、車。エンジンかけてくるから少し待っていてくれ」
蘭子「……」コク
――…
蘭子「…………ごめんね……こんなに汚しちゃって…」グス
――
P「……」
P「蘭子ー、夕飯そろそろ出来るぞ〜」
蘭子「ククク、いま白の世界を私色に染めているところ……(新品の画用紙。今度はたくさん描くからね♪)」カキカキ
P「……そうだな。お前はそれが一番蘭子らしいのかもしれない」
(『この口調がひどく、勿体無いと感じる。
これも彼女の魅力の一つだと割り切って、伸び伸びとさせるのが正しいのならプロデューサーとして、俺は好きにさせたいと思う。』)
P「前にこんな事を決心しておいて……結局、自分の考えを押し付けただけになってしまった」
P「蘭子に口調の事を注意した時も……」
(蘭子「……ククク、私の翼を折るなど…)
P「……確かに、蘭子自身がそう言っていたじゃないか」
P「アレは、蘭子の個性であり翼なのかもしれない……なんとも表現し難い形をしているが」タラ
P「……そろそろいいかー?」
蘭子「プ……プロ…プロヴァンスの風…」
蘭子「……」ブンブン
P「?」
蘭子「……」ギュ
蘭子「その……わ、私。絶対、あなたの期待に答えてみせるから……!」
P「」キョトン
蘭子「そ、それだけ……言いたかったの…」モジ
P「……ああ」ニコ
……やっぱり、素の蘭子も可愛いと思うんだけどなぁ。
「天界が……近い。(おはようございます! いい天気ですねっ)」
東京に越して来てから、幾月か経つ。
福岡ほどではないにせよ、熊本も九州では都会。そう思って暮らしていた……しかし、やはり東京はすごい。
まず人が多い。ゴスロリを着ている人をたまに見かけてはテンションが上がる毎日だ。でも、他の通行人達はソレを見ても驚きもせず……無視して歩いていく。
地元でピンク色の集団が歩いていたら、誰もが一様に振り返るだろう。東京すごい。
東京に来てから私も色々と変わってきた、と思いたい。
まず、少し明るくなった……ような気がするし。人前に出ても堂々と出来るようになった……と信じたい。自分が好きなものを曲げたくないから。
そして……
「おう、またイラスト描いていたのか」
「きゃっ……」
……最近、プロデューサーを見るとアガってしまって上手く話せなくなる。
もう子供でもない。この気持ちがなんなのかくらい自覚している……けど、
「真・地獄の業火で燃え尽きるがいい!」
「それは勘弁してほしいな」
……こういう時にだけ、"いつも通り"が顔を出す。
もっと、素直になれないものだろうか――…
……むずかしいなー。
その辺の裏話はいつか聞きたいって思うな
真美「太陽、煩わしいっスねー!」ニッ
蘭子「……。(そ、そうだね)」
蘭子「蘭姉ちゃん……?」
亜美「よくぞ聞いてくれました!」
真美「ここにおわすはかの有名な敗戦探偵双海亜美様であらされるぞっ!」
亜美「ほらー、名探偵には"蘭姉ちゃん"が付き物じゃん?」ニシシ
蘭子「……是。(そ、そう…)」
千早『おはよう、神崎さん』
蘭子「(ぁ……如月さん)」
蘭子「おは……」チラ
亜美「」キラキラ
真美「」ワクワク
蘭子「……」タラ
蘭子「わ、煩わしい太陽ね……歌姫」
亜美「でたー!!」
真美「本家はちがうね〜やっぱっ!」ウンウン
千早「じゃ、じゃあ私はこれで……」
蘭子「ククク……視える。衆人共が平伏す姿が。(頑張ってきてくださいねっ!)」
――…
蘭子「……」ガク
蘭子「(どうして上手くいかないんだろう……)」ハァ
私はたぶん……特別な力を持っている。それが前世からの繋がりなのか、隔世遺伝ならぬ覚醒遺伝なのかは定かではない。
吸血鬼の血が薄れたのか、幼少の頃に天から降り注いだシャインシャワーをこの身に浴びたからか。地獄の悪魔に見定められ、『力』を供給されているのかもしれない。
『瞳』の眷属として恥ずかしくないように生きる。それが、先祖だか天界や地底の番人だかわからない使い魔へのせめてもの礼儀だろう。
そんな『人ならざる』私が恋をしたと定義しよう。
……常識の範疇では収まりきらないものであるのは確かだ。だって『人ならざる者』なんだもん。人とは違う存在なのだから。
そう、きっと特別な魔方陣や悪魔の契約書があって初めて、恋人の契りが可能になるのだ。口約束や、言葉のみの告白では足りない…………はず。
世の中からすれば、私のような『気付いた』側の存在は……『中二病』などという低俗な存在として周知されているらしい。なんたる羞恥、なんたる仕打ちだろう。
もし、仮の仮に……地球の自転が逆になるくらいの確率で、私に『特別な力』が無かったとしよう。その時は…
……その時は、努めて、人として生きようと思う。甘んじて。絶対ないけど。
だから、人を好きになったらどうすればいいのだろうか。
ごちゃごちゃ思考を巡らせたが、結局なにも解決していない。
「あ〜……悩み、ほうらつかね。」
とりあえず。プロデューサーがくるまで、一眠り……しよう…。
スピー。
(『――…恋愛は、キチンと火を通してキチンと皿に盛り付けるもの。』)
恋愛を料理に例えるなんて……現世の女はなんて粗野なのだろう。要約すると『段階をふんで、告白をする。そして晴れて恋人同士になれる』だったか、
『キチンと盛り付ける』の方は、恋人同士になった後もまともな身の振り方をしろという意味でもあったような……どちらにせよ私には理解が難しい。
血の契約書があれば一発で主従関係が結べるし、サモンであれば身体の契りで結びつけられる。うだうだ小難しい言葉を並べるだけ、無駄なこと。
と、また別の同期に言うと……その子は『血の契約書ww あんず的には恋愛自体、面倒くさいけど〜』だと。『あとなに? 身体の契り(笑)って。エロ……最近の若い子こわいわぁー』だって。ははん。
「愛想無しもニートも、わかったような口を聞いて……」
愚痴を溢したが、愛想無しは私よりは愛想があるし。ニートはなんだかんだで働いている。努力せずとも、やたらキュートなアイドルの原石だ。
そもそも『ただの人』に相談した私が悪かった。そんな私にも一目置く先輩アイドルがいるのだが……
「蘭子。どうしました? 難しい顔をして」
銀髪の……正体が一切不明なかぐや姫(私独断認定)四条貴音。
貴音「蘭子。いつもの"ゆにーく"な話し方はやめたのですか?」
蘭子「……ええと」
蘭子「今は、四条さんと……二人きりの時だけは、キャストオフと言いますか…力を封印しているといいますか……」
貴音「……」
貴音「なるほど。わかりました」クス
貴音「では、少しだけお話をしましょうか」
蘭子「話……ですか」
貴音「都合が悪いのなら無理にとは言いませんが……」
蘭子「い、いえ……喜んで…」
貴音「そうですか……」クス
貴音「では、紅茶を煎れますので少々お待ちになってくださるよう」
――…
蘭子「(し、四条さんと二人きりで会話……)」
貴音「?」
貴音「……秘匿情報ですから」
蘭子「あえてミステリアスを演出しているとか?」
貴音「"みすてりあす"……さあ、よくわかりません」
蘭子「……」
貴音「蘭子には……」
貴音「真実の姿。もしくは"第二段階"があると聞き及んでいました」
蘭子「そ……そう」
蘭子「ククク……この身体はただの借宿…真の姿を知るものは存在しない…」
蘭子「……知ったとしても、気付いた時にはこの世の住人では無くなっているだろう…」
貴音「……驚きました」
蘭子「……?」
貴音「貴女も……そう、ですか」
蘭子「はあ……」
貴音「では、今日はこの変にしておきましょう」
蘭子「あ、あの……」
貴音「お互い、帰るべき故郷があります。それがどれだけ離れていようとも、夜……水面に映るソレであろうとも…」クス
蘭子「……く、クク…ペテルギウス…懐かしい名よ……(四条さん。わかりやすくお願いします!)」
貴音「それでは……」ニコ
蘭子「や、闇に飲まれよ……(お、お疲れさまです……)」ハァ
かぐや姫クラスまでいくと、話のキャッチボールがうまくいかないみたいだ。
私が壁に球をぶつけ、話し相手に捕球させるとすれば。四条さんは壁の上を飛び越える投球で捕球者のやる気ではどうしようもない……球広いすら難しい。むしろ我那覇さんがスゴいのではないかと勘繰ってしまうくらい。
悩めば悩むほど、絵を描くのが捗る。それはもう……初代スケブを超える勢いで白が漆黒に染まっていく。
「この衣装、格好よく描けたなぁ」
最新作は上出来だ。いつか、こんな素敵な装束に身を包み、ステージの上に立ちたいと夢見るのは……人ならざる私でも、女なら仕方のない事だろう。
『格好良いな……被服のデザインでも食っていけるんじゃないか?』
「ふぇ?」
「ん?」
「っ、ぷ、プロデューサー……っ!」
この雄は……我が聖域探査範囲を乗り越え、いとも容易く最重要機密書類を盗み見る。北だったら即死刑だ。
P「たまたま視界に入っただけだ。現場に向かうぞ」
蘭子「天と地、どちらの裁きがご所望かしら(どちらにせよ正拳突き!)」
P「ええと……天国? まだ優しそうだs…ぐぇっ!?」
P「物理攻撃かよ……お得意のスピリチュアルなアレはどうした?」イテテ
蘭子「人は脆い……。(べ〜っだ!)」
P「……まあそれより仕事だ。速やかに移動しろ」
P「ああ、画用紙は責任を持って預かっておくから」
蘭子「……」スッ
P「たしかに、受け取った」
蘭子「……」
P「……どうした?」
蘭子「……ぁの」
P「?」
蘭子「ぁ……」カァ
蘭子「や、闇に飲まれよ!」カアァ
ドスッ!
P「ぐぇっ、言葉の使い方が違うっ!?」
P「痛た……なんだよ…闇飲まってそんな時に使う言葉じゃないだろう……」
蘭子「サクリファイスは深淵に……。(は、はずかしいよー)」
蘭子「……」ハァ
確信した。
嫌いの逆……賛成の反対なのだ〜と、捻りハチマキのキャラクターが言うように。
『嫌悪の反対なのだ〜!』と、同じく捻りハチマキをした小さい私が……デフォルメされたそのナリで、何人も両手を上げて騒いでいる。
早い話が『大好きなのだ〜!』ということ。否定はしない。事実なのだから、受け入れよう。
気持ちを再確認したところで、脳内では捻りハチマキを巻いた私の前に二つの立て看板が立っている。二択らしい。
目を凝らして見る。左には、『YES』。右には『NO』。これでは答えようが無い。
視点を上に向けていくと、案の定、大きめの釣り看板が下がっていた。内容は、『この恋を成就させたいか』――…なるほど。
さて、悩む。
『NO』を選んだ場合に起こりうること。
?関係は維持される。?日々、悶々としてしまう。?余計、引っ込み思案が強くなる。
しかし、今『NO』を選んでも。後々、『YES』を選択することが可能だ。急がずとも、賢い者はこちらを選ぶ。
して、『YES』を選択した場合。《失敗》
?微妙な空気になる。?悶々としてしまう。?引っ込み思案がマッハ。
……良いことが無い。しかし、リスクがあるならメリットも存在する。
『YES』《成就》
?恋人同士になる。?日々、悶々とする。?少しは、前向きになれる。?天空の光よ!(訳:毎日楽しい!)?ちゅ、チュー…とか……
『保留』が一番、楽なのだが……。
脳内の私は、頭の捻りハチマキを脱いで――…
……『NO』の看板を覆い隠した。そして、『YES』をタッチ。
瞬間、強い光に世界は包まれる。
「………………よし!」
不運(ハードラック)とダンスっちまう未来しか浮かばないが、決断したのだ。私は……好きだから、成就…させたいと思う。
相談出来る相手……親は、近くにいないし、電話越しでこんな話…出来ない。
「はぁ……」
『蘭子。晴れないようですね』
……この声は。
「四条さん?」
「恋について悩んでいるようでしたので。"すけっと"を呼んできました」
恋愛要素皆無のあの会話から、どう読み取ったのかは聞けないけど…………四条さん△です。素敵!
「それで、スケットというのは……」
『蘭子ー、闇のまちゃんなの〜!』
……おおルシファーよ、我を見放したか。
それに『闇のまちゃん』ってなんだ。名前ではない。『お疲れちゃ〜ん』的なアレなのだろうか。全く――…
――…私は、星井 美希が…苦手だ。
美希「その"さん"付け、ミキが律子にしているのと同じ感じかも……」
蘭子「(つまりは嫌々、というわけですか)」
蘭子「……」チラ
貴音「?」
貴音「恋に関しては、美希の隣に並ぶものはいないと思ったのですが……」
美希「ミキねぇ、恋のキューピッドなの。よろしくね、蘭子」ニコッ
蘭子「(天使なら地獄の業火を司る私の敵なのだが……)」
蘭子「(けど……『YES』を選んだのは、私だ)」
蘭子「……よろしく、お願い、します」ペコ
美希「蘭子のまともなトコ、初めて見たの。普通なの」
美希「それで、相手は誰なの? なの」ニコ
蘭子「えっと……」
蘭子「(言っていいのだろうか。……星井美希に)」
蘭子「(とどのつまり。『貴女のハニーが好きなんです』と言うのと同義……)」
蘭子「……ええと…」
蘭子「…………歳上の、男性……なのですが」チョン、チョン
蘭子「(ああ、ヘタレ……)」ハァ
蘭子「……うん…」
美希「…………そう」
蘭子「……」チラ
美希「…………」ジィ
蘭子「…………?」
美希「……わかったの」ニコ
蘭子「……」ホッ
美希「じゃ〜あ、うーんと…」
美希「……ハニー、最近新しいネクタイが欲しいって言っていたの」ニコッ
蘭子「そうなんだ……新しいネクタイ…そう」フム
蘭子「って、え?」
美希「……」ニコ
蘭子「ぇ、ええと……」
蘭子「ええと……」
蘭子「ど、どうしてプロデューサーの名前が……はは」
美希「ちがった? ミキ、こういう時の勘は良いの」
美希「それに、今の蘭子。普通なの…」
美希「……普通の女の子じゃ、ミキには勝てないよ?」ニコ
蘭子「ぇ……と」
美希「……」
蘭子「…………」ギュッ
蘭子「金色の毛虫よ……」
美希「? こんじきの…なに……なの??」
蘭子「神の座席はベルフェゴールのために!(わたし……まけません!)」
美希「……さっぱりなの」タラ
美希「でもぉ、その蘭子の方が可愛いって。ミキは思うな」ニコ
蘭子「(余裕そうですね……)」ハァ
貴音「……?」モグモグ
蘭子「ぇ……良いんですか?」
美希「だって、ミキと同じ事をして。ハニーが蘭子を選んだら、蘭子の方が魅力的だったってことだよね?」
美希「それならミキも仕方ないなぁって…」
美希「……諦めはしないと思うけど」クス
蘭子「な、なるほど」
蘭子「例えば……」
美希「じゃあ、教えるから。メモをとるの」ニコ
蘭子「スケブ…スケブ……」メモメモ
貴音「まこと、友情とは素晴らしいもの…」
貴音「……そして、"かすてえら"も素晴らしいものです」パクリ。
――…夜【P宅】
蘭子「(ぷ、プライドはひとまず置いておく。勝つためには必要だってベルゼバブが言っていたもん)」カァ
P「……どうした、力んで…?」
P「……なんだ美希みたいなこと言って」
蘭子「……」
ギュッ
蘭子「は、ハニーの腕、あ……暖かいの…なの」カァ
P「……だ、大丈夫か? 蘭子」タラ
蘭子「(ええと……)」チラ
メモ:【腕にくっついたら後は胸を押しつけるの!】
蘭子「ひゃ……」
蘭子「……あ、あの…」カアァ
ムギュー
蘭子「わ、私……プロデューサーのこと…」ボッ
P「お前……華奢なのに、胸はあるんだな…」
P「いや、セクハラとかじゃなくてな。単純な感想として……」アセ
蘭子「ふぇ……っ」カアァッ
ボンッ
P「あーっ、今にも湯気が出そうだぞ……」
蘭子「………………や、闇に飲まれよ……」カアァ
P「お、お疲れさま……」
P「本当か? 助かるよ」
P「今日は『もう一人の私』が出てこないみたいだし……普通に話せてるじゃないか」
蘭子「い、今だけ……」
蘭子「ええと、冷蔵庫の中……」
ガチャッ
――…
P「こ、これは……」
蘭子「…………」ジィ…
P「(……すごい見られてる…)」
P「(まさか、カレールーを入れてカレー以外の料理が出来るとは思わなかったし……)」ゴク
パクッ
蘭子「……」ジ…
P「…………」サアァ
P「う、……美味いっ…なぁ…!」タラタラ
蘭子「!」
蘭子「ほ、本当……?」パアァ
蘭子「や……やたっ…えへへ」ニコ
P「…………可愛いけど、コレはどう処理するか……」タラ
蘭子「〜♪」
P「……」
蘭子「〜〜♪」
キュッキュ
P「……蘭子ー」
蘭子「?」
フキフキ
P「お前……エプロン似合うな」
蘭子「そ……そう、かな」
P「ああ。可愛い」
P「良い嫁さんになるんじゃないか?(料理スキルさえなんとかすれば)」
蘭子「!」
蘭子「…………」カァ
蘭子「(料理が大丈夫なら……簿記、とか勉強しようかな…)」テレ
キュッキュ
P「おーい、そろそろ寝るぞ〜」
蘭子「っ」コクッ
チラ
メモ:【ミキがハニーと一緒に住んでたらぁ〜、迷わずベッドに潜り込むの♪】
蘭子「べ、ベッド……は…」ウーン
スタスタ…
P「……」
テトテト…
蘭子「……」
P「……どうして付いて来るんだ?」
蘭子「えっ、あの」
P「それに、なぜ俺のYシャツを着ている」
蘭子「ええと……(美希メモに書いてあったから…)」カァ
P「パジャマ洗ってしまって着る物が無いとか……」
P「……とにかく、話があるなら明日聞くから」
P「お休みー……」フワァ
蘭子「……深淵の彼方に。(おやすみなさい……)」
――…1時間後
スピー
P「……んっ」パチ
蘭子「ぁっ」
P「…………え?」
……最近、ご無沙汰だったからな…。こんな幻想まで見るのかもしれない。
「……」
「……」
男物のYシャツを羽織った蘭子は、いつものツインテールをほどいた髪型で……少しだけ大人びていた。顔が真っ赤だから、歳相応にしか見えないのが残念だ。
さて、幻想だろうか夢だろうか。どちらにせよ選択肢は一つしかない。
「……蘭子」
「ぷ、プロ…プロデューサー…」
「…………好き…………です…」
こんな美少女に、赤面しながら上目遣いでなにやら告白らしきものをされた日には――…
……寝よう。
明日、時間をつくって……コンビニで本でも買って。20分もあれば、こんな幻想を見ずに済むようになる。賢者の域に達すれば仕事も捗るだろう……。
「……おやすみ、蘭子」
そう言って、頭を撫でる。
「ん……」
「………………………………おやすみなさい。P……さん」
ん? いま本名で呼ばれたか。そう悪いものでもないな……今度、蘭子に言って呼ばせてみようか…………きっと……可愛…い…………い……。
「……………………まだ、子供……にしか…見られないよね」
P「……ふわぁ〜あ、おはよう」
蘭子「煩わしい太陽ね(おはよう!)」
P「お……戻ったか」フワァ
P「……蘭子」
蘭子「?」
P「目指すは頂点。これからもよろしくな」ニコッ
蘭子「…………我が友 P、さぁ終焉を初めましょう(トップめざそー!)」
蘭子「……」
蘭子「ぁ……」
P「ん?」
蘭子「…………」スゥ…ハァ
蘭子「……っ」
ギュッ
蘭子「あの、Pさん。私、今よりもっと頑張って……あ、あなたのことを助けられるくらいのアイドルになるから……!」
P「!」
P「……ああ、楽しみにしているよ。俺も、お前と一緒にてっぺん。目指したいと思う」ナデ
蘭子「ん……」カァ
蘭子「アカシックレコードのさえずりが聞こえる……(ありがとうの気持ち、伝わったかな…?)」
P「……よし、まずは朝食からだ」
P「…………ちなみに、俺が作るな」
蘭子「?」
『ククク、ようやく我が城が真実の姿を発現したわ』(訳:部屋の模様替え、終〜わり♪)
「お……エアコンの前 片したのか。バッチリだな」
蘭子は、あれから少し変わってきたと思う。……妙な言葉遣いはそのままだが。
最近は掃除に洗濯……家計簿までつける具合だ。所帯染みて良いのかはわかないけど……。
「蘭子、この前……お前のイラストを見てしまった時に、画用紙借りただろう?」
「? ……あっ」
「あのイラストを元に、衣装を作って貰ったんだけどさ」
「ぇ…………わぁ!」
こうやって、跳び跳ねて喜ぶ姿を見れば……まだまだ少女なんだなって思う。
「ありがとうプロデューサー! ……あっ」
「こほん……我が友 P、深淵の……………………いや、やっぱり……」
「…………ありがとうっ」
子どもの内は、子どもらしくしていれば良い。取り繕うのはもう少し大人になってからだ。
「あとな蘭子……いっかい、名前で呼んでみてもらえないか?」
「ふぇ?」
「P…………P……さん…?」
赤面と上目遣いの組み合わせは素晴らしいと改めて実感する。
またいつか、呼んでもらおう。
……今度は、トップアイドルになった蘭子に…その時はまた、赤面するだろうか――…。
<了>
千早、凛に続いての蘭子ですがいかがでしたか。距離感的には蘭子くらいが付かず離れずで、もどかしいです。
続きを投下しても良さそうですが、GWも最終日なのでここで一度〆とします。
次は続編か、他のキャラクターでいきたいですがご要望があれば。
乙です。
もっといちゃらぶしてくれても良かったんだよ?
いやむしろして下さい
やみのま!
良いものを見せて貰った。蘭子ちゃんかわいいよ蘭子ちゃん
凛編の全員ちょっと妙な感じがよかったな。続編が見たい
別キャラだと城ヶ崎姉妹とかどうっすか
Entry ⇒ 2012.05.25 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
魔王「来たかッ!」ガタッ!
側近「まだで御座います」
魔王「そうか……」ガタッ
側近「………」
魔王「来たかッ!」ガタッ!
側近「まだで御座います」
魔王「そうか……」ガタッ
側近「………」
魔王「……来たか?」ガタ
側近「まだで御座います」
魔王「そうか」
側近「………」
側近「………」
魔王「………」
側近「まだで御座います」
魔王「そうか……」ガタッ
側近「………」
魔王「……そろそろ?」
側近「まだまだで御座います」
魔王「そうか……」
側近「………」
魔王「………」ガタッ!
側近「まだで御座いますよ?」
魔王「……トイレ」
側近「左様で御座いますか」
側近「まだで御座います」
魔王「………」
側近「………」
魔王「………」
側近「いかがなさいましたか?」
魔王「立ち眩み……」
側近「御夕食に鉄分の多い物を用意いたしますので」
魔王「すまん……」
側近「………」
魔王「………」
側近「まだで御座います」
魔王「そうか」ガタッ
側近「………」
魔王「……遅くない?」
側近「このような物かと」
魔王「そうか……」
側近「………」
魔王「……来たかッ!」ガタッ
側近「まだで御座います」
魔王「そうか……」
側近「………」
側近「まだで御座います」
魔王「そうか」ガタッ
側近「………」
魔王「……部屋で待ってていい?」
側近「駄目で御座います」
魔王「そうか……」
側近「………」
魔王「もし……勇者来なかったらどうしよう……」
側近「その時は私めが勇者を努めさせて頂きますので御安心ください」
魔王「そうか、なら安心だ」
側近「………」
側近「まだで御座います」ガタッ!
魔王「………」
側近「………」ガタッ
魔王「……やめてくれる?」
側近「申し訳ございません」
魔王「わかればいい」ガタッ
側近「………」
魔王「……来たかッ!」……ガタッ!
側近「もう致しませんので御安心ください」
魔王「そうかッ!」ガタッ
側近「………」
側近「まだで御座います」
魔王「そうか」ガタッ
側近「………」
魔王「来たかぁぁッ!」ガタッズデンッ!
側近「大丈夫で御座いますか?……プッ」
魔王「……笑うな」
側近「申し訳ございません」
魔王「………」
側近「………」
魔王「来たか……」カタ……
側近「まだで……御座います」プルプル
魔王「………」
側近「まだで御座います」
魔王「ん?……ンギギギッ!」
側近「いかがなさいました?」
魔王「動かないんだけど……」
側近「………」
魔王「……何かした?」
側近「前回のような事がまた御座いませんように改造致しました」
魔王「………」
側近「………」
魔王「元に戻して……」
側近「かしこまりました」
魔王「………」
側近「まだで御座います」
魔王「……元に戻して」
側近「お気に召されなかったでしょうか?」
魔王「余計な事しないで……」
側近「………」
魔王「………」
側近「……かしこまりました」
魔王「来たかッ!」ポワーン
側近「………」
魔王「………」
側近「お戻し致しましたので大丈夫で御座います」
魔王「そうかッ!」ガタッ!
側近「………」
魔王「……来たかッ!」ガタッ
側近「まだで御座います」
魔王「そうか」ガタッ!
側近「………」
魔王「………」
側近「いかがなさいました?」
魔王「いや……座りたいんだけど……」
側近「左様で御座いますか」
魔王「………」
側近「まだで御座います」
魔王「そうか」ガタッ
側近「………」
魔王「遅いね……」
側近「左様で御座いますね」
魔王「………」
側近「………」
魔王「来たかぁー」
側近「まだで御座いますぅー」
魔王「そうかぁー」
側近「………」
魔王「………」
魔物「まだでゲス」
魔王「………」
魔物「………」
魔王「……側近は?」
魔物「有給休暇でゲス」
魔王「そう……」ガタッ
魔物「………」
魔王「来たかッ!」ガタッ!
魔物「まだでゲス」
魔王「……そのゲスって言うのやめてくれる?」
魔物「なんでゲス?」
魔王「何かムカつく……」
魔物「酷いッ!」
魔王「来たかッ!」ガタッ!ニコニコ
側近「まだで御座います」
魔王「そうかッ!」ガタッニコニコ
側近「……何やら嬉しそうで御座いますね」
魔王「そのような事無い」
側近「左様で御座いますか」
魔王「来たかッ!」ガタッ!ニコニコ
側近「……まだで御座います」
魔王「そうかッ!」ガタッニコニコ
側近「……?」
魔王「………」ニコニコ
勇者「来たよ」
魔王「そうか」ガタッ
側近「………」
魔王「………」
勇者「………」
魔王「来たかッ!」ガタッ!
勇者「来たよ」
魔王「そうか」ガタッ
側近「………」
魔王「来たかッ!」ガタッ!
勇者「帰るね」
魔王「そうか」ガタッ
側近「………」
側近「そのようで御座いますね」
魔王「言ってよ……」
側近「………」
魔王「………」
側近「わざとおやりになっていたのですよね?」
魔王「……も、もちろん」
側近「………」
魔王「本当だから……」
側近「………」
魔王「………」
側近「まだで……何をやっている!」
魔物「そうゲスか」ガタッ
側近「……やめろ」
魔物「はい……ゲス」
側近「魔王様は?」
魔物「お部屋から出てこないでゲス」
側近「何故?」
魔物「さぁ……ゲス」
側近「………」
魔物「………」
側近「……そのゲスって言うのやめろ」
魔物「嫌でゲス」
側近「………」
……「………」
側近「魔王様いかがなさいましたか?」
……「側近……」
側近「………」
……「何か嫌になっちゃった……」
側近「……左様で御座いますか」
……「………」
側近「このような事は申し上げるべきでは御座いませんが……」
……「………」
側近「魔王様にしか出来ない事を放置されるのは大変勿体無いかと」
……「………」
側近「全国津々浦々の魔物の長でおらせられる魔王様が勇者を待つ姿……大変立派で御座います」
……「………」
……「………」
側近「……あのッ!ご立派なお姿はもう拝見出来ないので御座いますねッ!」
……「………」
側近「……残念で御座いますッ!」
……「……側近」
側近「いかがなさいましたか?」
……「もう少しやってみようかな……」
側近「左様で御座いますか」
……「………」
側近「………」
側近「まだで御座います」
魔王「そうか」ガタッ
側近「………」
魔王「ふふふ……」
側近「……?」
魔王「感じる……感じるぞッ!尊敬する眼差しッ!」
側近「………」
魔王「微かだが歓声も……」
側近「………」
魔王「どうだ?立派だろ?」
側近「左様で御座いますね……」
側近「………」
魔王「………」
側近「………」
魔王「……?」
側近「………」
魔王「……側近?」
側近「いかがなさいましたか?」
魔王「いや……いつもの……」
側近「はて?いつもので御座いますか?」
魔王「………」
側近「はぁ……まだで御座います」
魔王「そうかッ!」ガタッ
側近「………」
魔王「?」
側近「?」
騎士「………」
魔王「誰?」
騎士「騎士だよ」
魔王「何しに来たの?」
騎士「魔王を倒しに」
魔王「へぇ……頑張って」
騎士「頑張る」
魔王「………」
側近「………」
騎士「………」
魔王「帰らないの?」
騎士「帰らないよ」
魔王「来たかッ!」ガタッ!
側近「そのようで御座いますね」
騎士「………」
魔王「……何?」
騎士「私の時はやってくれなかった……」
魔王「勇者じゃ無いから」
騎士「勇者になったらやってくれるの?」
魔王「そうだね」
騎士「………」
魔王、側近「?」
騎士「勇者覚悟ッ!」ガタッ!
勇者「……帰るね」
魔王「そうか」ガタッ
側近「………」
側近「まだで御座います」
魔王「そうか」ガタッ
騎士「………」
魔王「どうしたの?」
騎士「勇者に勝てなかった」
魔王「そう」
側近「……いい加減追い出しては?」
魔王「何か可哀想だから……」
側近「左様で御座いますか」
魔王「勇者の仲間になったら?」
騎士「え?」
魔王「そうすればやってあげるよ」
騎士「仲間になってくるッ!」
魔王「………」
側近「まだで御座います」
魔王「そうか」ガタッ
側近「………」
魔物「ゲス」
魔王、側近「………」
魔物「どうしたでゲス?」
魔王「……ゲスって言うな」
側近「……ゲスはやめろ」
魔物「………」
魔王「どうした?」
魔物「うわあああん!俺のアイデンティティーが否定されたでゲス!」
魔王「………」
側近「………」
魔王「勝手にしろ……」
側近「………」
魔物「魔王様のバカァ!あほ!つるつるでゲス!」
だだだだだッ!
魔王「………」
側近「……つるつるとは?」
魔王「し、知らん!」
側近「………」
魔王「………」
側近「しまったッ!有給休暇取れなくなるッ!」ガタッ!
魔王「………」
側近「まだで御座います」
魔王「そうか」ガタッ
側近「………」
魔王「そろそろか?」
側近「そのようで御座いますね」
魔王「そうか」
勇者、騎士、魔物「来たでゲス」
魔王「………」
勇者、騎士、魔物「魔王覚悟でゲスッ!」
側近「……来いッ!そのふざけた口調粛清してやるッ!」
魔王「………」
おわり
こーゆうの好きだ(^ω^)
元スレ:魔王「来たかッ!」ガタッ!
Entry ⇒ 2012.05.25 | Category ⇒ 勇者魔王「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
える「スケッチブック……?」
える「どういうことなのでしょう………」ドキドキ
える「………」ペラッ
える「!!!」
える「そんな……ええっ?」ドキドキ
える「まさか……本当に……」
える「私、気になりますっ!」
こんな平穏は何カ月ぶりだろうか。
里志が称するところの『女帝』事件に一通りの決着がついて数週間が過ぎた。
古典部の文集は入稿済みで印刷しあがるのを待つばかり。
このところは千反田がやっかいな案件を持ってくることもない。
その結果として俺は、この地学準備室――古典部の部室で文庫本を片手に無為な時間を享受していた。
折木(今日は誰も来ないな……)ペラッ
今日は金曜なので伊原は図書委員の当番に行っているはずだ。
里志も来ないところをみると、あいつもそっちへ行っているのだろう。
そして残る千反田もまだ顔を見せていない。
折木(平和なのは歓迎だが、本を読むなら家で読んでも同じだな)ペラッ
主人公のパートナーであり物語の語り部である記者の視点では主人公の眼の大きさがたびたび強調される。
「猫をイメージさせる」と形容されるその眼は、いかなる違和感も見逃さない……とのことだ。
大きな眼、か。
折木「……アイツはどちらかというと猫と言うより犬だな」
俺は、まだ来ないこの部屋の主の顔を思い浮かべた。
それにしてもこの主人公も記者も鈍感過ぎはしないか。
色恋に疎い俺ではあるがこうまで描写が露骨だと閉口してしまう。
なんだか白けてしまった俺は、いま呼んでいる章を読み終わったら帰ろうと決めた。
その時
ガラッ
える「おそくなりました……」
この部屋の主、我らが古典部部長・千反田えるが引き戸の影から遠慮がちに顔を出していた。
える「すみません、掃除当番だったもので」
折木「いや、非難しているワケじゃない。ただ、お前が黙って遅れるのは珍しいと思っただけだ」
える「そうですか」
折木「気を悪くしたなら、済まない」
える「いえ、そんな……」ガタッ
と、そんな話をしながら、千反田もいつもの席についた。
そう、いつも通りだったのだ。
この時までは。
折木「…………」ペラッ
える「………」チラッ
折木「……?」フイッ
える「!………」バッ
折木「…………何だ?」
える「あっ、いえ!何でも、ありません」
える「……………」チラッ
折木「…………」
………さっきから何なんだこいつは。
席に着くなり押し黙ったかと思ったらチラチラとこっちを見てくる。
しかも俺の見間違いじゃなければ、わずかに頬が赤いような気がする。
ハッキリ言ってものすごく気になるが、藪をつついて蛇を出す気は毛頭ない。
「やらなくてもいいことならやらない」、だ。
える「………」チラッ
折木「……何だ、と訊いている」
える「えっとその……何を読んでいらっしゃるのかなと」
折木「ならば最初からそう言えばいい」
える「す、すみません……」ショボン
へこんでしまった。
さすがにキツく言いすぎたか。
える「!」
まぁ、わざわざ隠すようなものでもあるまい。
折木「“面白くて知恵がつく、人の死なないミステリー”だそうだ」
える「人が死なない、ですか」
折木「ああ、俺に合っているような気がして手に取った」
える「折木さんに?」
折木「………人の生き死にに関わるのは、エネルギーがいるだろう?」
える「……そうですね」
える「はい。血なまぐさいものよりは」
折木「………読み終わったら置いていく。読みたければもっていけ」
える「!あ、ありがとうございます」
物の貸し借りとは本来それなりのエネルギーを使うのだが相手がこいつなら話は別だ。
借り手が千反田なら、ブツが帰ってこない心配をする必要がない。
とにかく、これで千反田の訊きたいことには答え……
える「……」チラッ
………られてはいないようだった。
俺は意を決して文庫本を閉じ、千反田に向き直った
折木「……さっきから何だ」
える「なっ、何のことですか?」ドキッ
折木「ごまかすな。さっきから人のことをじろじろと。気になって集中できん」
最初からそれほど集中していたわけではないが、こいつにはこれぐらい言っておいてちょうどいい。
える「す、すみません………」
折木「俺に言いたいことがあるならハッキリ言え、はっきり」
思えばこの一言が分水嶺だったのだ。
久しぶりに訪れた平穏と、
俺の矜持を賭けた闘争との。
える「はっきり……わかりました!」
折木「おお」
千反田は幾分か迷った後、
顔を真っ赤にしながらこう切り出した。
える「お、折木さんは、その………
男の人が好きなんですか!?」
折木「…………………………は?」
我ながらゾッとするほど冷たい声だった。
正直、耳がいかれたのかと思った。
える「だから、折木さんは男の人が恋愛対象として好きなんですか?」
折木「あー、千反田?」
える「やっぱり相手は福部さんなのですか?」
折木「あのな」
える「私、気になります!」
………頭が痛くなってきた。
どういうわけか千反田は、俺が男好き……同性愛者だと思い込んでいるらしい。
どういうわけか?
こっちがききたいわ!
折木「……千反田」ガシッ
える「!」ビクッ
俺は千反田の両肩をしっかりつかみ、
その清楚なイメージを唯一裏切る大きな瞳をまっすぐ射すくめたまま俺はこう切り出した。
出来るだけ声音を抑えることを忘れずに。
折木「お前がそのような……俺が同性愛者であるという 誤 解 をするに到った経緯を詳細に説明しろ。
一字一句、余すところなくだ……!!」
あくまで「誤解」を強調することも怠らない
える「は、はい……」
千反田の眼には若干怯えの色が浮かんでいる。
だが断言してもいい。
この場で恐怖しているのは間違いなく俺の方である、と。
える「一昨日のことです」
千反田はそう話し始めた。
一昨日と言えば、家の用で部室には顔を出さずに帰った日だ。
里志には伝えたはずだが。
える「はい。福部さんからもそのように聞きました。
その福部さんも総務委員の会議があると言って、私たちは特別棟の入口で別れたんです」
える「いつもの通り鍵を開けて部室に入りました。
そうしたら、机の上にあったんです。
一冊のスケッチブックが」
スケッチブック。
それが、千反田の荒唐無稽な『誤解』を生んだ真犯人と言うことだ。
折木「つまりお前は………その中身を見たんだな?」
える「………見ました」
折木「そうか……」
まぁ。ほぼ自分たちしか使っていない教室に見慣れないものがあれば思わず見てしまうのが人の性だろう。
……俺は放置するだろうが。
と。
ここまで聞いて大体分かった。
スケッチブックの存在と、今までの千反田の発言。
閃きも洞察力も必要ない。この二つを結び付けれ自ずと想像はつく。
折木「そのスケッチブックに描かれていたのは、俺と里志だな?
……………恐らく、異常に仲睦まじい様子の」
あまりの気持ち悪さに思わずマイルドな表現をしてしまったが、早い話が俺と里志の濡れ場………ラブシーンだろう。
える「!!! お、折木さんも見たんですか!!?」
折木「見てない。“恐らく”と言っただろう」
そして絶対に見たくない。
こいつ、動揺のあまり自分が数分前に言ったことも忘れているようだ。
折木「お前が言ったんだろうが。『相手はやっぱり里志か』、とな」
える「あっ……」
折木「そう。“やっぱり”と言ったんだよ、お前は。
この言葉は実際に見たり聞いたりしないと出てこない」
そして、それをこいつが実際に目撃することはありえない。
そんな事実は存在しないからだ。
折木「そのことに今の話の流れを合わせれば、描いてある内容は想像がつく」
える「なるほど……さすがは折木さんですね!」キラキラ
折木「感心している場合か!」
える「す、すみません!!」
折木「……怒鳴ってすまん。
で、そのスケッチブックはどうした?」
える「ええ。私、すごくびっくりして……
それを置いたまま帰ってしまいました」
折木「ここにか?」
える「はい」
折木「ふむ…………昨日はそんなものなかったよな?」
える「ええ。お昼休みにも探してみたんですが、この部屋にはありませんでした」
折木「となると、持ち主の元へ戻ったと考えるのが妥当だな」
える「そうですね……」チラッ
……こいつ、まだ要らん勘違いをしているようだ。
心を鬼にして、俺は努めて冷たい声音で訊いた。
える「あの……折木さんは本当に、そういう趣味はないんですよね……?」
折木「『誤解だ』………そう言ったはずだが?」
同じことを繰り返して言う趣味はない。
エネルギー効率が悪いからな。
そう、これは誤解だ。許されざる誤解だ。
普段の俺ならば、多少の誤解や讒言は放っておく。
誤解を解くのにはエネルギーを使うし、忘れるまで放置するのが一番だ。
だが相手が千反田なら話は別だ。
そして隠し事が絶望的にヘタだ。
誹謗中傷は別として、積極的に言いふらすことはしないにしろ、人に訊かれれば答えてしまうだろう。
そして噂が噂を呼び、俺の高校生活は灰色を通り越して真っ黒だ。
「やらなくていいことなら、やらない。やらなくてはならないことは手短に」。それがおれのモットーでありスタイル。
これは……絶対にやらなくてはいけないことだ!
折木「ときに千反田よ」
える「は、はい!何ですか、折木さん?」
折木「そのスケッチブックに描かれていた絵について、他に覚えていることはないか?」
える「他に、ですか?そう言われましても……」
やはり強烈なファーストインプレッションが邪魔をして上手く思い出せないようだ。
思い切ってカマをかけてみるか。
折木「何でもいい。たとえば……俺が着ていた服とか」
える「……あっ!」ハッ
折木「思いだしたか」
える「はい!確か折木さんも福部さんも制服を着ていました!それも…」
折木「神高の制服じゃなかった、だろ?」
える「!!!」
ビンゴ。
手近にあった紙に描いて説明してみる。
……我ながら絵心のカケラもないな。
だがまぁ、概ね特徴は捉えられていると思う。
今はこれで十分だ。
折木「こういう制服じゃなかったか?」
える「折木さん……やっぱりあのスケッチブックを見たんですね!?」
折木「くどい。見てないと言っている」
折木「やっぱりな……」
える「やっぱり?どういうことですか?」
折木「………この制服はな、千反田」
折木「俺が卒業した鏑矢中のものだ」
根拠は全くない。ほとんど言いがかりレベルの仮説だ。
しかし、その仮説に基づく推論が全て正しかった場合、
やはりそれは「真実」と呼ぶのがふさわしいのだろう。
折木「もう分かっただろ、千反田」
える「はい………」
える「スケッチブックの持ち主は、摩耶花さんだったんですね」
なおかつこの部屋に頻繁に出入りしており、
そして千反田が一目で「それ」と分かるほどの絵が描ける人間。
そんなヤツは一人しかいない。
伊原摩耶花。
俺や里志と同じ鏑矢中学出身で古典部員。
さらに漫画研究会もかけもちしているアイツにまちがいない。
俺たちのいない昼休みを使ってな」
この地学準備室は特別棟の四階。
神高の最辺境だ。
人目を忍んで何かをやるにはうってつけである。
折木「まぁ何をしていたかは……この際どうでもいいだろう」
える「えっ」
折木「そういうことにしておけ。それが伊原のためだ」
千反田がいくら好奇心の塊でも、このことだけは俺の胸にしまっておいた方がいいだろう。
伊原の名誉のために。俺の身の安全のために。
感謝しろよ、伊原。
折木「ギリギリまで作業をしていたんだろうな。始業のチャイムが鳴って、伊原は慌ててここを飛び出した。
ここから教室まで、どんなに急いでも5分はかかるからな。
そして、大事なスケッチブックを置き忘れてしまった、と。
まぁこんなところだろう」
える「待ってください折木さん」
折木「何だ?」
える「普通、そんな大事なものを忘れたと気づいたら、急いで取りに来るんじゃないでしょうか?
もし私が摩耶花さんなら、放課後すぐに…」ハッ
折木「取りに来れなかったのさ。
一昨日は漫研の活動日だったからな」
そうでなくても俺たちは一年生だ。
休んだり遅れたりして先輩方から無用な不興は買いたくないだろう。
折木「それでも隙を見て取りに行くことはできただろうな。
お前がそれを見て、顔を真っ赤にしながら逃げ帰るには十分な時間が経った後だろうが」
える「折木さん!」カァァ
これで状況の説明は出来たはずだ。
このお嬢様の誤解も……
える「………………」
………………解けていないというのか?
折木「どうした。まだ何か納得いかないことがあるか?」
える「スケッチブックの持ち主が摩耶花さんだということも、それがこの部屋に合った理由も分かりました。
ですが……」
折木「何だ?」
える「それって折木さんが同性愛者じゃないことと何の関係もないですよね?」
折木「」
バレた。
俺は何でそんな気色の悪いものがこの部屋にあったか、という状況に理屈をつけただけで、
こいつの最初の問いには何も答えてはいない。
俺のホモ疑惑は未だ晴れていない……!
やばい、冷や汗が出てきた。
折木「あー……千反田さんや」
える「やっぱり……折木さんは、福部さんとただならぬ関係に!」
折木「千反田」
折木「これから俺の言うことに深い意味はないからそのつもりで聞け」
そうだ、これはあくまで「やらなければならないこと」なのだ。
他意はない。あるわけがない。
俺はさっきのように、千反田の両肩をつかみ、
紫苑の瞳をまっすぐ見つめてこう言った。
折木「いいか。俺は恋愛というものがよく分からん」
える「………はい」
える「そう……ですか………」
まて。下を向くな。そんな悲しそうな顔をするな!
俺はまだ何も肝心なことは言っていない。
折木「だけどな」
折木「もし俺が誰かを好きになるとしたら、それは間違いなく女だ」
える「えっ……?」
俺の言葉に千反田は再び上を向いた。
える「あの……折木さん。私、その……
そういう方たちに対して差別的な感情を持っているのではないのですよ?」
折木「!」
コイツ、この期に及んで何もわかっていない!!
える「その、人を好きになるというのはとても素敵なことですし!
たとえそれがどんな形であっても立派な一つの愛というか……」
折木「ちがう!!」
結局コレを言うしかないのか。
この一言を言うのが、一番疲れる。
だから言いたくなかったのに。
だけどこうなっては仕方がない。
それが、
俺の「やらなければいけないこと」だから。
やらなくてもいいことならやらない、それが俺だ。折木奉太郎だ!」
える「折木さん…………」
折木「本当だったらな、こんな下らないデマ放っておくんだ。
聞いた人間全員の誤解を解くなんて体力の無駄だからな。
みんなが忘れるのを待つのが一番手っ取り早いんだ!」
折木「その俺がこんなにみっともなく声を荒げている理由がお前に分かるか!」
折木「お前には!お前にだけは!そんな誤解をしたまま俺に接してほしくなかったんだ!!」
える「!!!」
さっき自分で言った通りだと思った。
こんな狭い空間で、女子の肩を掴んで、声を張り上げて。
くそっ。
コレでは省エネ主義の名折れだ。
里志が見たらさぞ笑い転げることだろう。
える「」ポーッ
見ろ。千反田も面食らっている。
こいつは神高一年屈指の優等生だ。
今まで人に怒鳴られた経験があまりないのだろう
える「あっ……いえ」
俺は千反田の肩に掛けたままの手を下し、
脱力するように椅子に腰を下ろした。
折木「………さっきも言った通り、深い意味はない」
える「……はい」
折木「ただ……俺がどれだけ必死かは伝わったか?」
える「はい!」ニコッ
今日初めて、千反田が笑った顔を見た。
あーくそ。顔から火が出るとはこのことか。
える「折木さん」
折木「…………何だ」
俺は千反田から顔をそむけたまま答えた。
というよりも、今はまだ千反田の顔をまともに見れそうにない。
える「私の誤解の所為で、折木さんを傷つけてしまったみたいですね」
折木「そういう言い方はやめてくれ」
人を乙女みたいに言うな。
える「本当にすみませんでした」
折木「っ………」
何故だろう。強烈な罪悪感がわいてくる。
折木「頭を上げてくれ。………俺も言いすぎた。
乱暴な物言いをしてすまなかったな、千反田」ペコッ
俺も一緒に頭を下げる。
える「いえ!折木さんは悪くありません!私がその……ヘンな早とちりをしたせいで」
折木「そうか。じゃあ……お互い様、だな」フッ
える「……ですね」フフッ
部室に残された一冊のスケッチブック。
それをきっかけにこの部屋で起こった「コップの中の嵐」は、
俺たちの「仲直り」によって幕を閉じたのだった。
折木「ところでそのスケッチブックのことなんだが」
える「はい?」
………………それで済むはずがないだろうが伊原ぁ!
ほ、本当のことじゃ、ないんですよね?」
伊原よ。あとで存分に後悔するがいい。
折木「ああ、そんなものはすべて伊原の妄想の産物だ」
自らの恥部とも言うべきスケブをこんな場所に置き忘れたことを。
える「ええ。でも、その、摩耶花さんは福部さんのことが、その……」カァァァ
折木「そのことなんだがなぁ、千反田。
俺に一つ仮説がある」
そして俺はお前に恥をかかされた分、
折木「伊原はな、腐女子なんだよ」
―――お前の恥を全力でブチ撒ける!!
折木「あー、それは字が違う。俺が言ってるのはな、『腐った女子』と書いてフジョシと読むんだ」
える「なっ……!折木さん!言っていいことと悪いことがあります!」プンプン
うむ。思った通りの反応だ。
折木「違うんだよ千反田。これはある特定の作品群を愛好する女子の総称なんだ」
える「作品群………?」キョトン
折木「BL……ボーイズラブと言ってな。
男同士の恋愛を描いた作品を愛してやまない女性諸君が、
自嘲気味に生み出した呼び方が腐女子なんだ」
える「お、とこどうし……」ハァァ
伊原は文集の台割りの作り方を知っていた。
普通の高校生……ついこの間まで中学生だったヤツが知ってることじゃない。
つまり。
折木「伊原は恐らく今までに自分で本を作ったことがあるんだ。
同人誌、ってやつだな」
える「同人誌……?アララギ派文学などの、アレですか?」
さすがは優等生。言葉の正しい意味を知っている。
折木「本来はそういう意味なんだがな。今では自主製作の本や漫画を指すことが多い
そしてこの同人誌製作に手を出すのはもう救いようのないレベルの腐女子ばかりだ」
える「そう、なのですか?」
折木「そうだ」コクン
俺は今日で一番力強くうなずいた。
いや、精神そのものと言っても過言ではない
そしてそれを見られるということは、
自分の恥部を、いや、頭の中をカチ割って覗かれるも同義なのだ。
折木「だから伊原ははぐらかしたんだ。千反田に『台割りの書き方なんてどこで覚えたのか』と聞かれたときにな」
える「はぁ………でもそれだけじゃ」
折木「もちろんこれは俺の推測だ。
―――だから確かめに行く」
折木「あぁ」
える「でも、どうやるんですか?
それはその、摩耶花さんにとって恥ずかしいことなのでは……」
折木「心配するな。策はある。
伊原が恥をかかずに、俺たちだけが真実をしる方法がな」
える「そんな方法が?」
折木「ある。あのな――――」
―――図書室
伊原「あ、ちーちゃん!………と、何だ、折木も一緒か」
いきなり御挨拶だな。
伊原「今日はどうしたの?何か必要な資料でもある?それなら一緒に探すけど」
える「いえ、その」モジモジ
伊原「……ちーちゃん?」
さすがの伊原も、千反田のただならぬ様子に気がついたようだ。
デカい声で人聞きの悪いことを言うな。
誰が変なことなどするか。
える「違うんです。……摩耶花さん!」
ちょっと要らない知恵を吹き込んだだけだ。
伊原「な、何?」
える「せ……」
伊原「?」
える「『攻め』の反対は何ですか?」
伊原「!!!!!!?」
10分前
える『それだけでいいんですか?』
折木『ああ。「攻め」の反対は何か?………そう訊けばいい』
える『えと……守り、ですよね?』
折木『そうだ。伊原が迷いなくそう答えたらシロ。
一瞬でも言い淀んだり、動揺したりしたらクロだ』
える『????』
折木『………ま、訊けばすぐに分かる。行くぞ』
える『はい』
伊原「ち、ちーちゃん?それはどういう……?」ワナワナ
える「……折木さん」クルッ
折木「クロだな」
伊原「!!!!!やっぱりアンタかおーれーきー………!!!!」ギヌロッ
怖い怖い。
伊原は俺を視線で殺さんばかりの勢いで睨みつけてきた。
伊原「八つ裂きにしてやる……!!」
だが残念。そんな気迫だけで俺は殺せん。
何せ、俺は先ほどお前の不始末の所為で社会的に抹殺されるところだったのだからな。
伊原「アンタ……あれを見たのね!?」
折木「いや、見たのはコイツだけだ」
伊原「なっ!!
ほ、ホントなの、ちーちゃん?」
える「摩耶花さん」
伊原「」ビクッ
える「摩耶花さんの嗜好を、私は否定しません」
伊原「あ…あ……」カァァァァ
える「いつか、読ませてくださいね。
摩耶花さんの描いた作品を」ニコッ
ゴツン!
という鈍い音が図書室に響いた。
伊原が貸出カウンターに突っ伏して頭をぶつけた音だ。
伊原「……………死にたい……………」プシュー
ショートカットからわずかに見える耳まで真っ赤になっている。
………勝った。
こいつとは里志以上に長い付き合いだが、ここまで完膚なきまでに叩きのめしたのは初めてだった。
今日は初めてづくしだ。
折木「用は済んだ。行くぞ、千反田」
える「え?あの、摩耶花さんは?」
折木「糸魚川先生も里志もいるし、心配ない。俺たちは『部活』の続きだ」スタスタ
―――伊原さん?どこか具合でも悪いの?
折木「……な?」
える「………はい」タタッ
そのまま俺たちは、敗残兵を振り返ることなくその場を後にし、部室へ引き返した。
える「………折木さん」
折木「何だ?」
図書室が見えなくなったところで、千反田がそう囁きかけた
える「部室で折木さんが言ってくださったあの言葉」
おいやめろ。
せっかく勝利の余韻に浸っているのに思い出させるな。
える「あれを聞いた時、私もほっとしたんですよ?」
っ…………
本当に、このお嬢様は………
折木「お互い様、か?」
える「ですね!」ニコッ
おしまい
乙!
原作っぽさも出ててよかったよ
かあいかったぜ、雰囲気もよかった
Entry ⇒ 2012.05.25 | Category ⇒ 氷菓SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
アカオーニ「連立方程式オニか」やよい「プリキュアは頭が大事!」
アカンベェ「もんだい!!」テテーン
サニー「わったしはぁ〜、キュアサニぃい〜!」ブブー
ピース「えっと、ちょっと待ってぇ……いちたすぅ……」ブブー
マーチ「徳川家なんとかぁあああ!!」ブブー
ハッピー「犬も歩けばここ掘れワンワン♪」ブブー
アカオーニ「ウハハハ!! こんな簡単な問題も分からないとは馬鹿な奴らオニー!」
アカンベェ「あっか〜ん!」ギャハハ
ハッピー「うう……」クーン
ピース「時間があれば掛け算までできるもん!」プク
サニー「ウチも筆記なら〜!?」ドギマギ
マーチ「徳川家康なら知ってるよ!」エヘン
アカオーニ「プリキュアは馬鹿ばっかりオニなー!」ワハハ
アカンベェ「あっかんあっかん!」ギャハハ
ピース「むう、そんなことないもん!」
サニー「こっちにはビューティがおるんや!」
マーチ「学年トップの天才のね!」
ハッピー「ビューティにかかればこ〜んな問題楽勝なんだからぁ!」
ビューティ「皆さんの言う通りです!」
アカオーニ「キュアビューティ!?」
アカオーニ「て、天才オニ……?」
サニー「ビューティにかかればそないな問題、二秒で解けるわ!」
ビューティ「順番に答えはマイネームイズキュアビューティ!」ピンポーン
ビューティ「10っ!」ピンポーン
ビューティ「徳川家光ッ!」ピンポーン
ビューティ「犬も歩けば棒に当たるッッ!!」ピンポンピンポーン
ピース「全問正解だよ!」
アカオーニ「ぬぬう、ならとびっきり難しいのを!」
アカンベェ「もんだい!」テテーン
アカンベェ「童貞とはなに!」
ビューティ「……」
サニー「」
ピース「」
マーチ「……」
ハッピー「?」
アカオーニ「ウハハハ! 答えられるわけないオニー!! ちなみに答えは俺様も分からんオニ!」
ビューティ「……」
アカンベェ「さあ、答えろ!」ニヤニヤ
ピース(あっかん! 楽しんでる!)
サニー「ひひひ卑怯やでぇ! こないなこと女の子にぃ……!!//」
マーチ「……」ドキドキ
ハッピー「?」
アカオーニ「意味わからんオニ。キュアビューティ、もうすぐ時間オニ!」
ビューティ「……」
サニー「ビューティ!」
ピース「ビューティ!」
ビューティ「……知っています」
アカオーニ「なにい!?」
サニー「ビューティ……!」
ピース「ビューティ……!」
マーチ「……」ドキドキ
ハッピー「ビューティ物知りぃ〜!」
アカオーニ「お、俺様でも分からないことをどうして……!」
ビューティ「私の兄が、その単語を口にするのを聞きました」
サニー「ビューティ……」
ピース「ビューティ……」
マーチ「……//」ドキドキ
ハッピー「」ドキドキ
ビューティ「そう……私の兄は…………」
ビューティ「童貞です……っ!!」
サニー「いや何てこと暴露してんねん」
マーチ「つまりビューティは処女……」ボソッ
ハッピー「処女ってなにー?」
ビューティ「処女とは女性がまだ男性との性的経験をもっていないこと。また、その女性のことです」
ビューティ「童貞は同じ意味で男性のことを言います」
ハッピー「へえ〜」
キャンディ「勉強になるクルぅ〜」
アカオーニ「ふむふむ」
ハッピー「で、性的経験って?」
ビューティ「セッ……」
サニー「ぁあああああああああああー!!」
ピース「わーわー!」
マーチ「チッ……」
アカンベェ「正解〜!!」シュワアア
ハッピー「アカンベェが浄化されてく! 必殺技をうってないのに何で!?」
キャンディ「やったクルー!」
アカオーニ「むむぅ、今日のところはここまで……」シュ
ビューティ「お待ちなさい!」
アカオーニ「オニ?」
ビューティ「敵ながら、心配になってきました……」
アカオーニ「何がオニ?」
ビューティ「あなた、少し頭が……」
サニー「悪すぎるな」
マーチ「あなたも問題分からないんでしょ?」
ピース「勉強しなきゃ」
ハッピー「うんうん」
キャンディ「四人には言われたくないクルぅ」
アカオーニ「むっか〜! お前たちまでそんなこと言うオニ!?」
アカオーニ「俺様は勉強が大嫌いオニー!!」
ビューティ「まあまあ、勉強はいいものですよ」
サニー「せやせや。例えば、バレーボール選手になったとして、英語を話せんかったら外国人選手とコミュニケーションとりづらいやろ?」
ピース「数学は分からない人こそ、絵とかでやり方を説明できると思うの!」
マーチ「サッカーの歴史は興味深いし」
ハッピー「色んなことを知ってれば絵本を楽しく読めて、ウルトラハッピーだよ!」
キャンディ「誰の受け売りクル」
ビューティ「世界をバッドエンドにするにも、頭を使うと思いますよ」
アカオーニ「なるほど……。ジョーカーが言ってた意味はそういうことかオニ……」
アカオーニ「でも何を勉強すれば……」
教科書<ドササッ
アカオーニ「これは?」
ビューティ「七色ヶ丘の教科書です。これを読めば基礎知識は学べるかと」
アカオーニ「よし! 早速読んでみるオニ!」
アカオーニ「ありがとうオニ、プリキュア!」シュンッ
プリキュア「」ノシ
ビューティ「これでしばらくは安心ですね」
サニー「せやな」
♪バッドエンド王国
ジョーカー「三幹部のみんなさぁ〜〜〜ん! 少々お集まりくださいまっせええ!」クルクル
ウルフルン「なんだよ朝っぱらから」
マジョリーナ「わたしゃ発明の途中だわさ!」
ジョーカー「まあまあ。そんなことより私、たいへぇえええんなことに気付いてしまいましてねえ?」
マジョリーナ「大変なことぉ?」
ウルフルン「お前が変態なのは見ればわかる」
ジョーカー「うっふううん? 冗談を言っている場合ではないんですうう、はいぃ」
ウルフルン「で、なんだよ」
マジョリーナ「もったいぶらずに言うだわさ」
ジョーカー「私、考えてみたんですよおっ? あなた達が何故ぇ、プリキュアに勝てないのかをねえええっ?」
ウルフルン「あぁ? 喧嘩売ってんのか、クソピエロ!!」
マジョリーナ「私達の仕事はバッドエナジーを集めるだけ! プリキュアなんて本来アウトオブ眼中さね!」
ジョーカー「うっふっふうん? プリキュアはよくその仕事の邪魔をしますよねえ? どうしてそれを眼中にないなんて言えるのですかぁ?」
マジョリーナ「むう……」
ジョーカー「ハッキリ言いましょう〜。今のままではあなた方……」
ジョーカー「プリキュアに絶対に勝てまっせええええええええええええん!!」
ウルマジョ「……っ!!」
ジョーカー「そんなこと自覚なさってますよねえっ? 自分達のことですからねえっ?」
ウルフルン「チッ……!」
ジョーカー「んっふふふうっ! そうですか、分かっているならあなた方にも救いようはありますねええ?」
マジョリーナ「ジョーカーのくせに生意気な……!」
ジョーカー「いいですかぁ? あなた方に足りないのはずっばぁぁ〜っりぃ! 知識ですよおおっ!!」
ウルフルン「……はぁ?」
ジョーカー「私の見ているかぎりぃ、あなた方は戦術が甘すぎるんですよおっ」
ジョーカー「ウルフルンさんはアカンベェに任せすぎですしぃ、アカオーニさんは論外でしょう」
ジョーカー「ウルフルンさんは私が渡してすぐにアオッパナの秘密をプリキュアに話してしまいましたしぃ?」
ウルフルン「べ、別にいいじゃねえか」
マジョリーナ「私の戦術にはケチをつけられないだわさ!」
ジョーカー「そもそも鏡の性質なんて小学生でも知ってますよねえっ?」
マジョリーナ「」
ジョーカー「私、呆れ果ててしまいましたよおっ。みなさんはそれぞれ優秀な特技を持っているのに、知識の無さが足を引っ張って……もったいないもったいない」
ジョーカー「そこで私、提案があるんですううううう! 皆さんでお勉強をしてみたら、知識が高まるのではないかと思うんですよおおおおっ!!」クルクル
マジョリーナ「お勉強だわさ?」
ウルフルン「けっ、なんで悪の三幹部の俺達がお勉強なんざやらなくちゃならねえんだ」
ジョーカー「あっらぁん? 知識を蓄えるのはプリキュアを倒すため、プリキュアを倒すのはバッドエナジーを集めるため〜、バッドエナジーを集めるのは何故でしょう?」
ウルフルン「ピエーロ様を復活させるために決まってんだろ」
ジョーカー「でっしょう? なら繋がりませんかぁ? お勉強をするのと、ピエーロ様復活がっ」
ウルフルン「……!」
ウルフルン「お勉強すりゃあ、結局はピエーロ様復活に貢献できるってわけだな!」
マジョリーナ「それはもうお勉強するしかないねえ」
ジョーカー(うふふ、馬鹿な人達で助かりますよ)
ウルフルン「んでまず何をやりゃいいんだ?」
マジョリーナ「私は大学生程度の知識はあるだわさ」
ウルフルン「俺様は高校生くらいだ!」
ジョーカー「……ですよねえ。実は困ったことがあるんですう」
ウルマジョ「ん?」
ジョーカー「あなた方二人が中学生以上の知識を有しているのは知っています。ですが一人、心配な人物が……」
アカオーニ「ただいまオニー♪」
ジョーカー「ンァッナタでっすうううううううううううううっ!!」ビシイッ
アカオーニ「オニ?」
ジョーカー「……」ジロッ
ウルフルン「……」ウンウン
マジョリーナ「……」ウンウン
アカオーニ「いったい何の話オニ……」
ジョーカー「実はかくかくぴえろで……」
アカオーニ「かくかくおにおに……、ってなんだとオニ!?」
ウルフルン(やべえ、キレるぞ)
マジョリーナ(アカオーニがキレると面倒臭いだわさ)
ジョーカー(私に任せてください)
ジョーカー「いんやぁ、アカオーニさん。別にあなたが……」
アカオーニ「お勉強、やってやるオニー!」ウシッ
ジョーカー「えっ」
アカオーニ「今時悪の三幹部がお勉強できないとか、ぶっちゃけありえないオニ!!」
アカオーニ「これを見るオニ!」ドササッ
ウルフルン「こいつは?」
アカオーニ「ちゅーがっこーの教科書オニ!」
ウルフルン「お前……まさか……俺達が言う前からお勉強を…………?」
ジョーカー「いつの間にかご立派になりましたねぇぇぇ……」
マジョリーナ「おばあちゃん嬉しいだわさ……」グスッ
アカオーニ「俺様、東大目指すオニ!」
それから5分後
アカオーニ「♪」ペラペラ
ウルフルン「本当にお勉強してやがる……」
マジョリーナ「見直しただわさ」
ジョーカー「……お二方、アカオーニさぁんのために私達にできることをしてあげましょう」
ウルフルン「ああ」
マジョリーナ「まずはお勉強の環境を整えるだわさ」
ジョーカー「人間界の学校に通わせましょう!」
マジョリーナ「その手があっただわさ!」
ウルフルン「大丈夫なんかよ? あんな姿で」
マジョリーナ「抜かりはないだわさ! 確か私の発明で役に立つものが……」ガサゴソ
マジョリーナ「あっただわさ!」
ウルフルン「まぁた発明か。今度はなんだ?」
マジョリーナ「この服は着た者を中学生の姿に変えてしまう、世にも奇妙な服……」
マジョリーナ「その名も、チュウニニナ〜ル!」テッテレー
ウルフルン「ただの学生服じゃねえか」
マジョリーナ「そうとも言う」
ジョーカー「草津の湯ぅ〜」
ウルフルン「てめえは黙っとけ」
マジョリーナ「これをアカオーニに着させれば、学校に行けるだわさ!」
ウルフルン「あったまEー!!」
アカオーニ「さっぱり分からんオニ……」ウーム
マジョリーナ「アカオーニ」
アカオーニ「なんだオニ?」
マジョリーナ「頑張っているようだねえ。わたしゃ、お前がそんな頑張り屋さんだったとはしらなかったよ」
アカオーニ「そんな店やってないオニ」
ジョーカー「ですがどんなに頑張っても、世間は学歴でしか人を見ません」
ウルフルン「お前東大目指してんだろ? なら学校に行った方がいいと思うぜ」
アカオーニ「学校オニ? 俺様、鬼ヶ島小学校に通っていたオニ」
ウルフルン「進学するんだよ、中学校にな」
アカオーニ「オニー」
アカオーニ「それはいいオニ!」
ジョーカー「ちょうど中学校の教科書を持っていますしねえっ」
マジョリーナ「この学生服を着てくだわさ」
ウルフルン「もう学生服って言ってんじゃん」
アカオーニ「俺様のたもに……」ウルッ
アカオーニ「ありがとうオニ!! 俺様、絶対に東大に受かってみせるオニ!!」
マジョリーナ「応援してるだわさ」
ウルフルン「頑張れよ」
アカオーニ「みんなの思い、無駄にしないオニ……!!」グッ
ジョーカー「あっ、そうそぉう。あと別件なんですが」
アカオーニ「なんだオニ」
ジョーカー「私、アカオーニさんに渡したいものが……」スッ
アカオーニ「? なんだこれオニ」
ジョーカー「受験のお守りです」
アカオーニ「! ジョーカー……!」
ジョーカー「勘違いしないでくださぁい。私は別に……」
アカオーニ「ジョーカー!!」ダキッ
ジョーカー「いやあああっ!?」
ジョーカー「はあはあ……」ゲンナリ
アカオーニ「お前、実はいい奴だったオニなぁ!」グスッ
ジョーカー「だから誤解ですって……お守りを開けてくださぁい」
アカオーニ「うむ」ガサゴソ
お守り<コロコロ
アカオーニ「なんか出てきたオニ」
ウルフルン「黄色のボール?」
マジョリーナ「なんだいこりゃ」
ジョーカー「キイッパナです!」
狼鬼魔女「キイッパナぁ?」
ジョーカー「そぉおおう! アカッパナ、アオッパナとはまた違うアカンベェを生み出す鼻でええええっす!」
マジョリーナ「今度は何が違うだわさ?」
ジョーカー「アカッパナはキュアデコルで作られたもの。アオッパナはキュアデコルで作られたものではないため、プリキュアの技が効きません」
ジョーカー「そしてぇ、このキイッパナはプリキュアの技が効いて、力も弱まりますぅ」
ウルフルン「……はぁ?」
アカオーニ「それじゃアオッパナより使えないオニ!」
ジョーカー「ノンノン! よく聞いてくださぁああい。たしかにキイッパナはプリキュアの技も効いて、力は弱まりますぅ」
ジョーカー「ですが一発で倒れるとは言っていませんよぉおおっ」
ウルフルン「なに?」
マジョリーナ「まさかプリキュアの必殺技を何回も耐えられるだわさ!?」
ジョーカー「ええ〜そうですともぉ。しかも力が弱まるとは言っても、アオッパナよりは強さは上です」
アカオーニ「そいつは使えるオニ」
ジョーカー「もっちろおおおんっ? レインボーヒーリングは完全に効果はナッシィイイイング!! 効くのは普段の必殺技のみ」
マジョリーナ「ほう、上手く使えばプリキュアを倒せるかもしれないねえ……」
ジョーカー「ちなみにどうしてキイッパナがそんな性質を持つかというと〜」
アカオーニ「いうと?」
ジョーカー「キイッパナは半分はキュアデコル、もう半分はアオッパナの材料で出来ているからなんでええええっすう!」
マジョリーナ「なるほど、いい具合に配合しただわさ」
ジョーカー「お分かりいただけましたぁ? 皆さんに知識をつけてもらい、そうして編み出した完璧な戦略とこのキイッパナでプリキュアを倒して貰いたいんですよぉおおお!」
マジョリーナ「いーっひぃっひ! そりゃ楽しみだわさ」
ウルフルン「やっと奴らに一泡吹かせられるぜ」
ジョーカー「アカオーニさんには東大目指しつっつぅうう〜んっ? プリキュアを探ってほしいんですうう」
アカオーニ「お安い御用オニ!」
アカオーニ「そのためにはまずはお勉強オニ!」タタッ
ウルフルン「おお、また机に向かったぞ」
マジョリーナ「切り替えが早い子だわさ」
アカオーニ「ううんと……」ペラペラ
マジョリーナ「頑張るだわさ〜!」
ウルフルン「目指せ、東大〜!!」
マジョリーナ「バッドエンド王国の未来は明るい……いや、真っ暗だわさー!!」
ワーワー
ジョーカー「……ふふっ。馬鹿な人達♪」
ジョーカー「あなた方がどれだけ頭が悪かろうと私には関係ありまっせん。むしろ悪い方が好都合ぅ……♪」
ジョーカー「ミラクルジュエルの手がかり、ゆっくり探すとしましょう」
♪アカオーニの部屋
アカオーニ「よーし! 明日から学校オニ! 予習をするオニ!!」
アカオーニ「夜食はマジョリーナが作ってくれた犬のから揚げ、猿の煮物、キジの野菜炒めがあるからバッチリオニ!」
アカオーニ「まずは数学オニか!」
アカオーニ「算数は小学校から得意だったし、九九も三の段まで言えるオニ!」
教科書<ペラペラ
アカオーニ「ふむ、ふむ……………………………………なんだこれオニ」
x-y=5
2x-y=10
アカオーニ「連立方程式オニか……」
アカオーニ「つまり二式が成り立つように二つの文字の値を出せばいいオニ」
アカオーニ「だからまずは……どうすればいいオニ?」
アカオーニ「……。分からなかったら、人に聞くのが早いオニ」
アカオーニ「マジョリーナー!」
ウルフルン「マジョリーナならもう寝たぞ」
アカオーニ「まだ八時オニ!」
ウルフルン「年寄りだからな」
アカオーニ「まあいいオニ。実は分からない問題があるオニ」
ウルフルン「どれどれ」
ウルフルン「ほおー、連立方程式か。懐かしいな」
アカオーニ「解るオニか?」
ウルフルン「あったり前だろ。俺様を誰だと思ってやがんだ。狼界のアインシュタインと呼ばれた男だぜ」
アカオーニ「よくわからんが、すごいオニ!」
ウルフルン「連立方程式は見た目はややこしいけどなぁ、解いてみると意外と簡単なのに驚くもんだぜ」
カキカキ
ウルフルン「まずはx=1とおく」カキカキ
アカオーニ「ふむふむ」
総当たりで出す気じゃね?
ウルフルン「そうすると上がy=-4、下がy=-8になって値が違ってくるわけだ」
アカオーニ「じゃあこれは誤答オニ」
ウルフルン「そういうことだ。で、次にx=2とおいて……」
アカオーニ「ふむふむ」
5分後
ウルフルン「出来たな。答えはx=5,y=0だな」
アカオーニ「おお、さすがオニ。ウルフルン」
ウルフルン「どうだ。やってみると簡単だろ?」
アカオーニ「でも結構疲れたオニ」
ウルフルン「この作業にも慣れる」
アカオーニ「ありがとうオニ、また何かあったら聞くオニ」
ウルフルン「おお」
アカオーニ「次は二次方程式オニか」
x2+2x+1=0(右のは指数)
アカオーニ「またxを求める問題オニか……」
アカオーニ「でも今度は簡単そうオニ♪ さっき教えてもらったやり方で……んん?」
アカオーニ「なんだオニ、この右上の数字は……」
アカオーニ「ウルフル……いや、自分で解くオニ! 右上の数字は無視して……」
アカオーニ「答えはx=-1/4オニな」
アカオーニ「因数分解を利用して解けと書いてあるオニが、知らないからいいオニ」
アカオーニ「次行くオニ」
アカオーニ「そろそろ違う教科をやるオニ。数字の次は……国語オニ!」
アカオーニ「でも予習することがないオニな。俺様、漢字書けないけど」
アカオーニ「国語はおいといて、英語オニ!」
アカオーニ「英語オニか。確かアカンベェがマヨネーズとか言っていたオニ」
アカオーニ「マヨネーズ アカオーニ。バッドエンドキングダム〜。ピエーロ様〜、ウルフル〜ン、マジョリーナ〜、エ〜ンドジョーカー」ペラペラ
アカオーニ「完璧オニな。英語はもういいかオニ」
アカオーニ「次は社会……。なんだか人間ばっかりで目が痛いオニ」
アカオーニ「人の一生は重き荷をを負うて遠き道を往くがごとしぃ? 誰オニ、このオッサン」
アカオーニ「落書きしてやるオニ!」カキカキ
アカオーニ「ウハハハ!! ピエーロ様そっくりオニー!!」ギャハハ
アカオーニ「……こんなことしてる場合じゃなかったオニ。もう九時オニ」
アカオーニ「次は科学……」ペラッ
アカオーニ「むう。眠いことしか書いてないオニ……」ウツラウツラ
アカオーニ「オニぃ……」バタリ
アカオーニ「zzz」
♪翌朝
マジョリーナ「ほら、起きるだわさ」ユサユサ
アカオーニ「うう〜ん……まだバッドエナジーを集める時間じゃないオニ〜」
マジョリーナ「何寝ぼけてるだわさ! 今日から学校だろ?」
アカオーニ「学校……? はっ! そうだったオニ!!」ガバッ
時計<八時ダヨ
アカオーニ「ち、遅刻オニ〜!!」タタタ
マジョリーナ「顔洗ってきなさいだわさー!」
アカオーニ「オニぃいい〜!!」タタタ
ウルフルン「よお、アカオーニ。お勉強は捗ったか?」
アカオーニ「今はそれどころじゃないオニ! 遅刻しそうなんだオニ!!」ワタワタ
ウルフルン「学生は大変だなー。朝ごはんは食ってけよ?」つトースト
アカオーニ「分かってるオニ!」パクリッ
マジョリーナ「アカオーニ、お弁当はどうするだわさ?」
アカオーニ「どっかで買うオニ! じゃあ行ってきますオーニー!!」タタッ
マジョリーナ「大丈夫かねえ」
ウルフルン「俺は好きだぜ、ああいうの」
アカオーニ「はあはあ……」タッタタッタ
アカオーニ「学校まで結構距離があるオニー」タッタタッタ
ザワザワ……
アカオーニ「? なんか見られてるオニ?」
アカオーニ(俺様は今、学生服を着たちゃんとした中学生のはずオニ……)
アカオーニ「って学生服着てくるの忘れてたオニいいいいー!?」イツモノフク
アカオーニ「取りに帰るしかないオニー!!」エンエン
アカオーニ「クソー!」シュンッ
道の曲がり角<ヒョコ
やよい「? 人だかり出来てたけど、何だったんだろう?」
あかね「やよいー! 遅刻するでー!」
やよい「う、うん!」タタッ
♪教室
あかね「おっはよー!」
オハヨー オッハ オハー
あかね「おおきに、おおきにー」パチパチ
やよい「おはよー」
オスー オハヨー キョウモカワイイネ
れいか「おはようございます。あかねさん、やよいさん」
なお「おはよう!」
あかね「おー、もう来てたんやな」
やよい「いつもの……ってみゆきちゃんは?」キョロキョロ
なお「また遅刻かなー」アハハ
れいか「昨日はプリキュアもありましたから」
あかね「しょうがないやっちゃで」
キーンコーンカーンコーン
みゆき「ギリギリせーえっふ!!」タッ
佐々木「アウトよ、星空さん」ポカ
みゆき「ええーっ!?」
アハハハハハ!
みゆき「うう……//」
佐々木「ほら、席に着きなさい」
みゆき「はぁーい」トボトボ
あかね「おはようさん。今日も遅刻やなー」
みゆき「おはよー。違うの、今日はお母さんがさー」
佐々木「そこ、ホームルーム中に喋らない!」
あかね「いぅっ」
みゆき「ご、ごめんなさ〜い……」
佐々木「まったく」
みゆき(でもね、今回はただの遅刻じゃないの)コソコソ
あかね(遅刻に種類があんのかいな)コソコソ
みゆき(耳寄りな情報があるんでっせ、お客さん)
あかね(耳寄りな情報?)
みゆき(今日はね……転校生がやってくるのー!)
あかね(転校生!?)
みゆき(うん! 外国から来たみたい!)
あかね(ってことは外国人? ウチ、英語苦手やからなぁ)
みゆき(ピーター・パンみたいな人だったらいいなぁ〜!)キラキラ
あかね(んなアホな。おらんやろ、そんな人)
みゆき(わ、わかってるよ〜私だって絵本と現実の世界の区別くらいできてるよ〜)ハププ
あかね(できてたんや)
みゆき(でも夢くらい見てもいいじゃない!)
あかね(夢ねえ……)
佐々木「以上でホームルームは終わりですが」
井上「が?」
佐々木「今日は転校生が来ています」
井上「うおおっ! マジでー!?」
ワー!!
あかね「ほんまやったな」
みゆき「でしょー?」エヘヘ
なお「転校生かー。どんな人だろ」
れいか(クラス委員として、すぐにクラスに馴染んでもらいましょう)グッ
佐々木「さあ、入ってきてくださーい」
シン……
佐々木「?」ガララッ
佐々木「まだ来てないようね」
井上「初日っから遅刻かよー。で佐々木先生、転校生って男なの? 女なの?」
佐々木「男の子よ」
井上「ええーマジかよー」
佐々木「確か外国人だったかしら」
井上「外国人!? 男なのは残念だけど、そりゃ楽しみだぜー!」
やよい(外国人かぁ。目の前だから緊張するなぁ)
あかね「ほんまに外国人かいな」
みゆき「すごいでしょ!」エヘン
あかね「そないな情報どこで仕入れたん?」
みゆき「キャンディが職員室の近くで聞いたみたい」
キャンディ「キャンディのお耳は、遠く離れたコインの音も聞き取れるクル」
井上「どこの国なのー?」
佐々木「そうね。聞いたことない国だったわ。確かバッドエンド……」
タタタ
佐々木「! 来たみたい」
井上「よっ! 話題の外国人転校生のお出ましだぜー!!」
佐々木「入ってきていいわよー」
ガララッ
クラス<ジイッ
アカオーニ「遅れてしまったオニ〜。ごめんねごめんね、ごめんオニ」
やよい「」
あかね「」
なお「」
みゆき「へえ〜、面白そうな人〜」
あかね「マジか自分!?」
佐々木「では赤鬼くん、自己紹介をお願いします」
アカオーニ「俺様は、鬼界のスーパーコンピューターことアカオーニだオニー!!」
佐々木「」ポカン
アカオーニ「むう?」
佐々木「え、ええと? 君の名前は赤鬼つよしくんと聞いたけれど……」
アカオーニ「あっ」
アカオーニ(マジョリーナが偽名で登録してあると言っていたんだったオニ)
アカオーニ「まあ細かいことは気にしなくていいオニー」テヘッ
佐々木(ええー)
あかね「なんやあれ……」
なお「なんでアカオーニが……」
女子達<キャッキャッ
カッコイイー サスガガイジン キャー アカオニクンコッチムイテー
あかね「……」
男子達<キャッキャッ
ガタイイイナー ジンシュノカベー イケメン タイイクサイキタイダイ
なお「……」
れいか「どうやらクラスに馴染めそうな方で良かったです」ホッ
なお「いや絶対馴染めないよ! あれどうみても人間じゃないもん!! てかアカオーニだもん!!」
れいか「アカオーニ……?」ハテ
みゆき「コワモテだね」
キャンディ「王子様みたいクルぅー」
やよい「」
あかね(アカン)
佐々木「はい、みなさん仲良くしてあげてくださいねー」
佐々木「じゃあ席は……」キョロキョロ
アカオーニ「……」ジイッ
井上「?」
アカオーニ「……」
井上(そういや修学旅行で見たような……)
アカオーニ(ウルフルンに聞いた話だと、前の席の方がお勉強が捗るみたいオニ)
アカオーニ「……」ギロッ
井上「……」ゾクッ
佐々木「そうね、宗本くんの後ろがあいて……」
アカオーニ「」つ金棒
井上「はい! 僕がそこにいきます、はい!!」ピュンッ
佐々木「え、ええっ?」
アカオーニ「ふふっ」
ひろこ(こいつ……できる……!!)ゾクッ
佐々木「ではホームルームはここまで。一時間の用意をしてくださーい」スタスタ
ガララッ
あかね「」チラッ
なお「」コクッ
あかね(アカオーニに説明してもらわんと!)ダッ
なお(アカオーニに話を聞こう!)ダッ
ゴチイン!
あかね「っ! なんや、この人だかりは……」
なお「! クラスのみんながアカオーニに質問攻めしようとしてるんだ!」
れいか「転校生のさだめですね。ほほえましいものです」ホウ
みゆき「私よりも盛大だー。はっぷっぷー」
あかね「ウチかてはっぷっぷーやて! なんでアカオーニがあんな人気なん!?」
みゆき「そういえばやよいちゃんは?」
れいか「自分の席で絵を描いています」
なお「隣が渋谷でシュール!!」
あかね「やよいぃー! そこは危ないでーえ!!」
やよい「♪」カキカキ
やよい「なかなかの出来かな。バイクが上手く描けないけど……」
ガヤガヤガヤガヤ
アカオニクン! ドコノクニシュッシン! エイゴハナセル! バカ ハナセルニキマッテルダロ! ムシロニホンゴハナセルカドウカ! サッキハナシテタジャン!
ガヤガヤガヤガヤ
やよい「わぁああああ!? なにこれええええええ!!」ビクウッ
やよい「きゃああああ〜!」
人の波<ドシャアッ
みゆき「やよいちゃん!」
なお「あんな一カ所に固まるから……」
やよい「いたた……」
アーア ツクエタオレター オマエガオシタカラダロー ワタシジャナイモン! オレデモネエッテノ!
ギャーギャー
やよい「う、うぅ……」ウルウル
オマエガ! アンタ! ナンダ! ナニヨ! ヤイノヤイノ!!
やよい「うぅ……!」ウルウル
ギャーギャーギャーギャー
れいか「み、みなさんお静かに……」アタフタ
ギャーギャーギャーギャー
やよい「うぅ……」ガシッ
スマイルパクト<カチャッ
ギャーギャーギャーギャー
アカオーニ「うるっさいオニぃいいいー!!」
やよい「みんな静かにしてえええー!!」バリバリ
バリイイッ!!
アカオーニ「ぬおおおおおおおおおっ!?」ビリビリ
やよい「あ……」
アカオーニ「けほっ」コゲコゲ
クラス<ナ ナニ……?
アカオーニ「」バタリ
やよい「アカオニさぁ〜〜〜ん!?」
あかね「あれらぁ……」
アカオーニ「ううむ……」パチッ
やよい「あっ、起きた!」パアアッ
アカオーニ「お前はプリキュアの……どうして俺様は……」キョロキョロ
アカオーニ「ここはどこオニ?」
やよい「学校の保健室だよ」
アカオーニ「保健室ぅ?」
やよい「怪我とか病気をしたらここに来るの」
アカオーニ「怪我ぁ? 俺様、どこか悪いところがあったのかオニ?」
やよい「え、ええと……その。私の、雷で……」
アカオーニ「オニぃ?」
やよい「みんなの注意をひこうとして、放電したら、アカオニさんに……」
アカオーニ「ほう。俺様に電撃を浴びせてくれたオニか」
やよい「ご、ごめんなさい……」
アカオーニ「構わんオニ」
やよい「えっ……」
アカオーニ「あれくらいの電撃、俺様の強靭な身体をもってすればぜーんぜん痛くもかゆくもないオニ!」
やよい「そ、そっかぁ……。はぁあ、よかったぁ……」ホッ
アカオーニ「でもちょっと頭の頭痛が痛いオニ」ヒリヒリ
やよい「え、ええーっ!?」ビクッ
アカオーニ「冗談オニ。おかえしだオニ」ハハハ
やよい「も、もぉー! アカオニさんったらぁ〜!」プンスカ
やよい「でもどうしてアカオニさんがここに?」
アカオーニ「お勉強しに来たオニ」
やよい「お、お勉強?」
アカオーニ「中学生に見えないかオニ?」
やよい「み、見えるんじゃないかな。私はわかんないけど……」
アカオーニ「ふふっ♪」
やよい「ねえ、まさかお勉強って……昨日れいかちゃんが言ってたから?」
アカオーニ「む? ああ〜、悪役としてお勉強は当然オニからな〜」
やよい「へえ〜、アカオニさんでもお勉強するんだ」
アカオーニ「どういう意味オニ!」
やよい「えへへ、ひみつ♪」
アカオーニ「むう!」
キーンコーンカーンコーン
やよい「あ、もうすぐ二時間目が始まっちゃう」
アカオーニ「むう? 一時間目はどうしたオニ! いなくなっちゃったオニ!?」
やよい「やだなぁ、動物じゃないんだから」クスッ
やよい「アカオニさんが寝てる間に一時間目は終わっちゃったんだよ」
アカオーニ「へえ、そんなすぐに終わるものなのかオニ」
やよい「えー、そんなことないよ。アカオニさんは知らないだろうけど、授業ってホントに長く感じるんだからぁ!」
アカオーニ「そうなのかオニ?」
やよい「そうだよー」
アカオーニ「ふうん……。というかお前さんは一時間目どうしたオニ?」
やよい「あっ、私ずっとここにいたから……サボっちゃった」
アカオーニ「プリキュアのくせに悪い奴オニ」ハンッ
やよい「それを言われると何も返せないんだけど……」エヘヘ
ガララッ
あかね「おっ、やよい戻ってきたで」
みゆき「アカオニさんも」
れいか「まさかアカオーニが転校生さんなんて……驚きです」
なお「私は今の今まで気づかない二人にびっくりだよ」
やよい「みんな心配かけてごめんね〜」タタ
あかね「怪我したんはアカオーニやけどな」
アカオーニ「この通りピンピンオニ!」
みゆき「よかった〜」
なお「そうそう、あんたなんで転校しに……」
れいか「みなさん、そろそろ先生が来ますよ」
みゆき「数学だったね!」
あかね「アカン、用意してへん」
なお「数学の先生、そういうとこは厳しいからねー」
れいか「起立、きをつけ、お願いします」
チャクセーキ
ガタガタ
やよい「……」
アカオーニ「……」
やよい「そういえば隣だったね、席」
アカオーニ「そうみたいだオニ」
数学「はい、私語は慎んでー。今日は〜」
アカオーニ(初めての授業オニ)ドキドキ
やよい(数学かぁ……憂鬱)ハア
数学「おお、そうだ。転校生がいたんだったな」
アカオーニ「オニ!」ドキドキ
数学「よーし。なら最初は転校生くんに問題をやってもらおうかなー」カキカキ
数学「教科書の問六、連立方程式だな。これをやってみてくれ」
アカオーニ(連立方程式オニか)
3x+4y=25
3x+2y=5
アカオーニ(数字が大きいオニな……)
アカオーニ(とりあえずウルフルンがやったようにx=1から……)カキカキ
やよい「?」
数学(なんかめっちゃ書いとる)
10分後
アカオーニ「x=100……x=131……」ブツブツ
数学「お、おいおい! 黒板もう真っ白だから! 壁に突入してるから!」
アカオーニ「おかしいオニ! ここまでやっても求まらんオニ!!」ウガー
アカオーニ「むう……!」チエネツ
数学(外国では連立方程式やってないのかな……)
数学「よし、アカオーニくん。もういいもう休め」ポンポン
アカオーニ「オニぃ……」シュン
あかね(お前はようやったで……)
女子達<キャッキャッ
アタマヨサソウナノニアタマヨワーイ ギャップモエー カワイイー
あかね「はいはい」
数学「では代わりに……そうだな。隣の黄瀬さん、助け舟を出してやってくれ」
やよい「は、はいぃ!」スタッ
やよい「」ガチガチ
数学「緊張しすぎだ」
アハハハハハ!!
やよい「……ううっ//」グスッ
カキカキ
アカオーニ(ふん! 足し算もろくに出来ない奴に、こ〜んな難しい問題を解けるわけないオニ!)
やよい「」カキカキ
アカオーニ(む……? なんだオニ、あの線は……)
アカオーニ(なんで三つ目の式なんか書いて……?)
やよい「あ、できました」
x=-5,y=10
アカオーニ「オニぃいいいいいいいいいいいいいいいい!?」
数学「正解だ! さすが黄瀬、連立方程式を解かせたら右に出るものはいない!」
やよい「ほ、ほめてるんですか? それ」
あかね「やよいは連立方程式得意やもんなー!」
井上「よっ! 憎いね、キング連立方程式!!」
やよい「ちょ、ちょっとやめてよおっ!//」ワタタ
アハハハハハハハハ!!
アカオーニ「な……な……」ガタガタ
やよい「?」
アカオーニ「なんでそんな速く解けるオニぃいいいいいいい!!」ガバッ
やよい「きゃああああ〜!?」
アカオーニ「オニぃいいいいいいいいいい!!」
やよい「きゃああああー!!」
数学「」
あかね「ちょっ、離さんかいわれええ!?」
なお「ついに本性を現したね!」
れいか「クラスに馴染めないようなら、あなたはお黙りなさい!」
キャンディ「みんな、変身クルぅー!」
みゆき「キャンディ出ちゃダメ……!」
アカオーニ「……」ガクッ
やよい「? アカオニさん?」
アカオーニ「弟子にしてください!!」オニ
やよい「……ええー」
数学「」
やよい「連立方程式が解けない?」
アカオーニ「そうオニ……ウルフルンから教わったやり方じゃあ、速く解けないオニ……」
みゆき「オオカミさんから?」
アカオーニ「かくかくおにおに」
れいか「かくかくなおなお……なるほど」
なお「いや、なおなおって何よ」
あかね「あの犬っころ、なんてこと教えてんねん」
みゆき「さすがの私もがっかり」
あかね「解けもしんかったやつが言うなやー」
みゆき「あはは〜」
なお「総当たりはないよ」
やよい「うん」
アカオーニ「オニ……」
数学(なんだこれ)
アカオーニ「」シュン
やよい「よーし、わかったよ!」
あかね「なにが?」
やよい「アカオニさんに連立方程式の解き方を私が教えてあげる!」
アカオーニ「オニ……?」
れいか「それはいいですね」
なお「連立方程式クイーンのやよいちゃんなら!」
みゆき「アカオニさんもマスター間違いなしだね!」
あかね「みゆきも教えてもらいやー」
みゆき「ええー!?」
アハハハハハ!!
アカオーニ「お前……」
やよい「雷のお詫びだよ。これで貸し借りなし♪」
アカオーニ「お前……いい奴だオニいいいいいいー!!」ガバッ
やよい「きゃああああー!?」
やよい「いい?」メガネクイッ
3x+4y=25
3x+2y=5
やよい「まずアカオニさんのやり方でやってみて」
アカオーニ「わかったオニ、やよやよ先生!」カキカキ
アカオーニ「まずはx=1とおいて……」
やよい「ちがうちが〜う!」バシバシ
アカオーニ「オニぃー?」
やよい「それじゃあ時間がかかっちゃうの! 総当たりでいくなんて無謀すぎるよ! マイナスだったらどうするの?」
アカオーニ「マイナスぅ?」キョトン
やよい「きょとんってしなぁ〜い!」バシン
アカオーニ「オニぃ〜!?」
やよい「マイナスも知らないなんて、中学生やってけないよ〜!」プンスカ
アカオーニ「な、なんで叩くオニ……」ヒリヒリ
やよい「気分♪」
数学「俺の授業……」
れいか「先生、お茶どうぞ」
やよい「いい? 私のやり方を見てて」
アカオーニ「オニ!」
やよい「」スラスラ
アカオーニ「きれいな字オニ」
やよい「……」スラスラ
アカオーニ「きれいな手オニ」
やよい「……//」スラスラ
アカオーニ「きれいな……」
やよい「わぁあああ!! 見ちゃダメええええええ!?//」ガバアッ
アカオーニ「な、なんでオニ!? 解き方教えてくれオニ!!」
やよい「らめええええええっ!!//」
なお「なんか腹立つね」ズズ
井上「だな」ズズ
アカオーニ「んなるっほどぉー。式を足したり引いたりすればいいオニかー」
やよい「うん、そだよ……」ツカレタ
アカオーニ「なんだ。やってみたら簡単オニな!」
やよい「でしょ?」
アカオーニ「ウルフルンの言う通りオニ!」
やよい「え?」
アカオーニ「もともとはウルフルンにも教えてもらったオニからな。ウルフルンには感謝するオニ!」
アカオーニ「もちろんお前さんにもオニ!」
やよい「あっ、えへへ……うん!」
アカオーニ「これで一歩前進オニー!」
やよい「まもの アカオーニはレベルアップした!」
キーンコーンカーンコーン
やよい「あ、二時間目終わりだ」
アカオーニ「あの音が終わりと始まりの合図オニか」
数学「……では今日はここまで」
れいか「起立、きをつけー、ありがとうございました」
アリャッシャター
数学(……疲れた)トボトボ
アカオーニ「次は何だオニ?」
やよい「英語だよ」
アカーンエイゴヤー! サイアクヤー!
アカオーニ「英語は得意オニ!」
やよい「なら大丈夫だね」
キーンコーンカーンコーン
アリャッシャタバー
アカオーニ「……」
やよい「わかった?」
アカオーニ「ぜんぜん」
やよい「だよね……アカオニさん、焦ってドイツ語喋ってたもん」
アカオーニ「情けないオニ……」
やよい「アルファベットかける?」
キャンディ「なにそりクルぅー?」
アカオーニ「レフトコモン」
やよい「右はライトだよ。めちゃくちゃだよ」
キーンコーンカーンコーン
アリャシャター
なお「歴史意味がわかんない〜!」バタリ
れいか「どおどお」ヨシヨシ
あかね「ウチも外国人の偉人は大嫌いや」
みゆき「私ぜんぶ無理」
キャンディ「織田信長を覚えたクルぅー」
やよい「キャンディすごーい」
アカオーニ「信長はかっこいい奴オニー!」
キャンディ「相棒のゼクロムにはキャンディ会ったことがあるクルぅー!」
アカオーニ「そうだ、やよやよ先生。次は何の授業オニ?」
やよい「その呼び方やめて。って今はお昼休みだよ」
アカオーニ「お昼休みぃ?」
やよい「そう。みんなでお弁当持ち寄って、仲良く話しながらお昼ご飯を食べるの」
アカオーニ「お弁当? ……あっ」
アカオーニ(朝はバタバタしててお弁当買えなかったオニー……)ズーン
やよい「どうしたの?」
アカオーニ「……お弁当、忘れたオニ」ズーン
やよい「ええええっ!?」
みゆき「なになにー? どうしたのー?」
やよい「アカオニさんがお弁当忘れちゃったんだって」
あかね「そらかわいそやなー」
なお「あ、私サンドイッチ余分に作ってるけど」
れいか「私も量は多いので」ズシッ
あかね「ものスゴッ!」
アカオーニ「はあ〜あ、見せ付けるとは嫌らしい奴らオニ」イジイジ
なお「いや……鈍感さん?」
れいか「あなたにおすそ分けをしようという提案なのですが」
アカオーニ「オニ!? 本当オニか!!」
なお「本当はれいかに作ったんだけど」
れいか「なおのだしまきタマゴですが」
あかね「なんやねん自分ら」
みゆき「私もあかねちゃんに作ったよ!」
あかね「食えん」
みゆき「ひどいっ!」
アカオーニ「うう、ううっ……」ウルウル
やよい「良かったね、アカオニさん」
アカオーニ「心のともオニ〜!!」ガバアッ
やよい「なんで私いい!?」
おまわりさーん!!
あかね「やっぱお昼ご飯はここで食べるんが落ち着くわ」
れいか「私なおの隣っ」
なお「私れいかの隣っ」
やよい「アカオニさん、座れる?」
アカオーニ「何とか……オニ」キツキツ
キャンディ「キャンディ、お腹すいたクルぅー!」
みゆき「じゃっ、七人で〜」
イッタダキマース!! オニ クル
みゆき「わあ、あかねちゃんのお弁当おいしそ〜!」
あかね「ウチの特製やー!」
なお「れいかのだしまきタマゴおいしい♪」
れいか「なおのお弁当もおいしいです♪」
やよい「みてみて、キャラ弁なんだけど」
アカオーニ「よくわからんオニ」
キャンディ「またキャンディの作ってほしいクルぅ」
ワイワイワイワイ
先輩1「ちょっと、あなたたち!」
先輩2「あなたたち!」
みゆき「なになに?」モグモグ
あかね「げっ、前にいちゃもん付けに来た先輩やん」
やよい「また怒ってるけど……」ブルブル
れいか「どなたで?」
なお「! 先輩達、またですか!?」ガタッ
先輩1「あら、緑川さん」
先輩2「緑川さん」
先輩1「そう、またよ。私はしつこいの」
先輩2「しつこいの」
なお「く……、今度という今度は!」
ガシッ
なお「!」
アカオーニ「待つオニ」
なお「アカオーニ……」
やよい「アカオニさん!」
先輩1「ど、どなた? 結構大きいわね……」アトズサリ
先輩2「大きいわね……」アトズサリ
アカオーニ「よく分からんオニが、お前達空気読めてないオニ? 人のお昼ご飯タイムを邪魔する奴にいい奴はいないオニ!」
先輩1「な、なによあなた」
先輩2「あなた」
先輩1「あっ、わかったわ! あなた転校生ね! 話題になってる……」
先輩2「なってる……」
アカオーニ「話題かどうかは知らんが、転校生オニ」
先輩1「やっぱりね。いい? 転校生くん。この学校ではねえ、私達に逆らうことは死を表すのよ!」
先輩2「表すのよ!」
アカオーニ「なに!?」
なお「真に受けないでよ」
アカオーニ「オ、オニ」
先輩1「だから転校生くん! この学校で生き残りたいなら……」
入江「ちょっといいかな?」
先輩1「……!?」
れいか「入江会長!」
入江「やあ、今日は青木さんもか」
れいか「今日は……?」
入江「へえ、賑やかそうだなあ。僕も混ざりたいくらいだね。ははは、冗談さ」ニコニコ
アカオーニ(こいつ誰だオニ)
入江「で、君達」ニコニコ
先輩達「ぎくっ」
入江「また下らないことをしてるのかな?」ニコニコゴゴゴ……
先輩1「チッ、ずらかるわよ!」ダッ
先輩2「わよ!」ダッ
入江「」ニコニコ
れいか「さすが入江会長……」
あかね「イケメンやなあ」
みゆき「あかねちゃんの方がイケメンだよ」
あかね「はいはい」
入江「」ニコニコ
アカオーニ(で、この人誰オニ?)コソコソ
やよい(入江生徒会長。成績優秀で人望厚い人)コソコソ
アカオーニ(へえ……)
なお「あの、二回も助けてもらって……」
入江「いやいやいいよ。当然のことをしたまでだし、今回はアカオーニくんのおかげじゃないか?」
なお「そうですね……」
アカオーニ「む? 俺様のことを知ってるオニ?」
入江「知ってるさ。今話題の外国人転校生ってね」
アカオーニ「なんか照れるオニー」テレテレ
入江「では僕はこれで。ゆっくり楽しいランチタイムを過ごしてくれ」ニコニコ
アリガトウゴザイマシタ!
アカオーニ「む?」
入江「じゃあね、アカオーニくん」つトランプ
アカオーニ「トランプぅ?」
入江「」スタスタ
トランプ<ピラッ
アカオーニ「ババ、オニ……」
ヒュウウッ……
入江「うふふっ」ニヤリ
やよい「これから午後の授業だよ」
アカオーニ「腹一杯で眠いオニー」フアー
あかね「気持ちはわかる」
みゆき「わかりすぎる」
れいか「みなさん、顔を洗えば目が覚めますよ」
みゆき「わーい!」
やよい「あそぼあそぼー!」
れいか「いえっ! 遊ぶのでは……!」
あかね「困った二人やで」
アカオーニ「水遊びオニー!」
キャンディ「クルぅー!」
あかね「いや四人……」
なお「それそれー!」バシャバシャ
れいか「きゃあー!」
あかね「……六人やな」
キーンコーンカーンコーン
やよい「びちゃびちゃ……」
アカオーニ「オニ……」
なお「れいか、透けてるよ。隠してあげる」ギュッ
あかね「自業自得やな」ベチャベチャ
みゆき「……」ベチャベチャ
やよい「まあ次は体育だし、着替えれるし」
アカオーニ「体育オニ?」
やよい「運動するの」
みゆき「体操服に着替えて外で遊ぶんだよー」
あかね「授業やで」
アカオーニ「それは楽しそうオニ!」
あかね「じゃ、更衣室に移動しよかー」
オー! オニー! イヤ オマエハツイテクンナ オニー!?
五人<ワイワイ
アカオーニ「はぶられたオニ……」ズーン
井上「おお、アカオーニ! まだ着替えてないのかー?」
豊島「やべえ! 次体育か、すっかり忘れてたー!」アセアセ
宗本「デュフフwwwwwwwwwwww」
アカオーニ「オニ……」
井上「お前、黄瀬たちと仲良いみたいだけどさ! 俺ら男子も仲良くしたいんだぜ!」
豊島「一緒に行こうぜ!」
宗本「コポォwwwwwwwwwwwwww」
アカオーニ「お前ら……心のともオニー!!」ガバアッ
ワー! ダキツクナヨ! オニー! ナクナー アハハハ ブヒヒ
やよい「ふああっ、疲れたぁ〜」ヘトリ
アカオーニ「情けないオニな〜♪ 体育くらいで」
やよい「むむう。さっきまで体育の意味も知らなかったのにぃ」プクッ
アカオーニ「所詮、連立方程式は出来ても身体能力では俺様には勝てんオニ!」ワハハ
やよい「わ、私だってプリキュアに変身すれば〜!」バシバシ
アカオーニ「ウハハハ! 効かないオニ効かないオニ〜!」
やよい「むううっ」プクウ
ぜんじろう(目の前でいちゃつくのやめてくれないかな)
アカオーニ「次は6時間目オニな」
やよい「これで最後の授業だよ」
アカオーニ「おお、早いものオニ」
やよい「遅すぎるくらい」
アカオーニ「そうオニ?」
やよい「アカオニさんも毎日学校に来ればわかるよ」
アカオーニ「そういうものオニかー。俺様はいつでも楽しいと思うオニけど」
やよい「ふふ、アカオニさんっておバカさんだよね」クスッ
アカオーニ「お、おバカさん?」
やよい「うん、連立方程式解けないし」
アカオーニ「それは痛い所オニ」
やよい「お弁当忘れちゃうし、転校初日から遅刻しちゃうし」
やよい「英語と間違えてドイツ語喋っちゃうし、授業中にいきなり弟子にしてくださーいって」
アカオーニ「むむ、今思えば笑える話オニ」
やよい「……でも、恐い先輩から守ってくれたり……優しいところもあるんだよね」
アカオーニ「オニ?」
やよい「なんでもないよ。あっ、最後は音楽だから音楽室行かないと!」ホラホラ
アカオーニ「も、持ち物はぁ?」
やよい「私の貸してあげる!」
アカオーニ「ふむ、ここが音楽室かー」
やよい「あれ滝川れんげそう!」
アカオーニ「ほう。なんか浮いてるオニな」
あかね「日本人の肖像少ないしなー」
みゆき「ベートァルトは知ってるよ」
なお「ごっちゃになってるよ」
キャンディ「おいしそうクルぅー」
れいか「ベートーベンはその耳が聴こえなくなってからも、色々な曲を書いた作曲家です」
みゆき「へえ〜、すごいね!」
アカオーニ「耳が聴こえないと曲を聴けないオニ?」
あかね「まあ、そこはセンスやな」
やよい「私も目が見えなくなっても、絵を描きたいな!」
あかね「なんや縁起でもない」
やよい「こ、言葉のあやだよぉ」
音楽「では音楽の授業を始めますよぉ〜♪」
アカオーニ「音楽は歌を歌う授業オニ?」
やよい「うん。他に楽器で演奏したりするよ」
アカオーニ「太鼓なら任せるオニ!」ドドンガドーン
やよい「太鼓はやらないと思うけど」
音楽「お〜♪ あなたが転校生くんですねぇ〜〜〜♪ とても音楽性がありそうですぅ〜〜〜〜♪」
アカオーニ「この先生は歌わないと話せんオニか?」
やよい「しーっ」
音楽「さぁ〜てぇ〜〜〜♪ 本日は〜〜リコーダーで『イェイ! イェイ! イェイ!』を弾いてもらいますよぉ〜〜〜〜♪」
あかね「んな無茶な……」
なお「あかねは手先が不器用だからリコーダー苦手だよね」
れいか「なおは得意よね」
なお「そういうれいかだって」
れいか「ふふっ」
みゆき「リコーダーも苦手ぇ〜……」ピッププ
キャンディ「」ピーピーピー ピピピー ピピピピーピー
あかね「キャンディうまっ」
アカオーニ「その小さいリコーダーはどこで手に入れたオニ」
やよい「私達も練習しよっか」
アカオーニ「オニ」
ピピピーピピー
アカオーニ「むう、サビが難しいオニ」
やよい「リコーダーあったんだ」
アカオーニ「ん? マジョリーナが買ってくれたオニ」
やよい「そ、そっかぁー」シュン
やよい(って何がっかりしてるの私! 私、何を考えてええっ)ブンブン
アカオーニ「? どうしたオニ?」
やよい「な、なんでもない! 練習しよ練習!」ハムッ
アカオーニ「リコーダー逆さまオニ」
やよい「ふええっ!?」アワアワ
キーンコーンカーンコーン
アカオーニ「あ〜、もう帰るオニか」シュン
やよい「寂しいの?」
アカオーニ「そうオニなぁ。せっかくみんなと仲良くなったのに」
やよい「また明日会えるよ」
アカオーニ「オニ……。そうオニな!」
みゆき「やよいちゃーん、一緒に帰ろー!」タタッ
やよい「う、うん!」
アカオーニ「俺様も帰るオニ」
やよい「じゃあ、また明日」
アカオーニ「また明日オニ!」シュンッ
やよい「あっ……」
あかね「やよいー!」
やよい「ご、ごめん! 今行くね!」
やよい「ただいまー」ガチャ
ちはる「おかえり、やよい」
やよい「ただいま、ママ」
ちはる「あら、制服濡れてる……」
やよい「えへへ、水遊びしたから……」
ちはる「まったくもうっ。やよいもまだまだ子供ねえ」
やよい「そんなことないもーん」
ちはる「さあ風邪引いちゃうから着替えて、そのままお風呂入っちゃいなさい」
やよい「うん」ヌギヌギ
チャポン
やよい「ぷはー」
やよい「いいキモチ〜♪」
やよい「今日は体育で疲れちゃったし、お風呂が気持ちいいなぁ〜」
やよい「アカオニさんに雷うっちゃって、変身してないのに力を吸い取られちゃったし」
やよい「ふふっ、アカオニさんったら一時間も気絶しちゃってるんだもん。もう起きないのかもって焦っちゃったよ」
やよい「体育の時間なんかアカオニさん大活躍みたいで、私とは正反対だよね……ってなんでアカオニさんのことばっかり……」
やよい「なんで……」ブクブク
やよい「一日学校で一緒に過ごしただけなのに……」ブクブク
やよい「……」ブクブク
ガチャ
やよい「ふう〜、いいお湯でしたぁ〜」ホカホカ
ちはる「うふふ、それは良かったわ」
やよい「晩御飯なにー?」クシャクシャ
ちはる「こらこら、髪乾かさないと風邪引いちゃうわよ」
やよい「へっくし!」
ちはる「ほらぁ」
やよい「ううっ」ズズ
ちはる「ふふっ、今日はホットケーキよ」
やよい「本当!?」キラキラ
やよい「……ってママ、今日はエイプリルフールじゃないよ?」
ちはる「うふふ。ウソじゃないわよ」
やよい「ホントに〜?」タタッ
ホットケーキ<ホカホカ
やよい「わぁ〜! 本当にあったぁ〜!!」キラキラ
ちはる「でしょう?」
やよい「ありがとう、ママ〜!」
やよい「……でもなんで?」
ちはる「うふふ、やよいったら何か疲れた顔してたから」
やよい「ママ……」
ちはる「何かあったの?」
やよい「ママにはなんでも分かっちゃうんだね」エヘヘ
ちはる「当たり前よ」
やよい「えっとね、私その……ボーイフレンドができちゃった!」
ちはる「ええっ!? ……って今日はエイプリルフールじゃないわよ?」
やよい「……わかんない」
ちはる「えっ?」
やよい「私、わかんないよ……」
ちはる「やよい……」ギュッ
やよい「……」グスッ
ちはる「さ、ご飯を食べましょう?」
やよい「……うんっ」
♪バッドエンド王国
アカオーニ「帰ったオニー」ガララッ
マジョリーナ「おかえりだわさ」
ウルフルン「飯なら出来てるぜー」
アカオーニ「おお、すまんオニ」
マジョリーナ「今日は桃鍋だわさ。猿とキジも入ってる」
アカオーニ「犬のから揚げはどうしたオニ?」
ウルフルン「やめろ」
アカオーニ「は〜、食った食ったオニ〜♪」ポンポン
マジョリーナ「横になるとお前は寝ちゃうから、さっさと風呂に入るだわさ」
ウルフルン「牛になるぞ」
アカオーニ「むう、わかったオニ〜」シブシブ
ウルフルン「……」
マジョリーナ「……出てくるだわさ」
トランプ<ピカアアッ
ジョーカー「はんぁあい! みなさんのためのジョーカーですうっ!」
ウルフルン「で、どうなんだよ。学校でのアカオーニの奴は」
ジョーカー「しっかりと勉学に励んでおられますよおおおうっん? ご友人も多くいらっしゃいますううううっ! 特に問題はな、い、か、とっ」
ウルフルン「そうかよ。問題がないならそれでいい」
ジョーカー「うっふふううん? 何かおかしな言い方ですねええっん?」
ジョーカー「私だけではないのにいっ! アカオーニさんと同じで、中学校に潜伏しているのはねえええええっんっふうう?」
ウルフルン「……」
マジョリーナ「……」
ジョーカー「まっ、あなた方がどう思おうと構いませんよ。今はアカオーニさんを見守ろうではありませんかぁ」
ウルフルン「チッ……あいつのためだ」
マジョリーナ「だわさ」
ジョーカー「うっふぅうんっ!」
アカオーニ「いいお湯だったオニー」ポカポカ
アカオーニ「あれ? あいつら居間にいないオニ? まあいいオニ」
アカオーニ「俺様はお勉強でもするオニー!」
アカオーニ「予習を完璧にして、やよやよ先生をあっと言わせてやるオニー!」
アカオーニ「むう? そういえばやよやよ先生という呼び方はやめてくれ、と言っていたオニ」
アカオーニ「じゃあ何と呼べばいいオニ?」
アカオーニ「うーん……わからんオニ……」
アカオーニ「明日聞いてみるオニ? うーん……」ウツラウツラ
アカオーニ「zzz」
♪翌朝
アカオーニ「うおおおおお!? 寝過ごしたオニぃいいいい!!」ダダダ
マジョリーナ「アカオーニ、お弁当は……」
アカオーニ「どっかで買うオニ!」ダダダ
ウルフルン「ほら、トースト」
アカオーニ「ありがとオニ!」パクッ
アカオーニ「行ってきますオニぃいいいい!!」ダダダ
やよい「あ、あ〜! 遅刻しちゃう〜!」タタタ
ちはる「やよい、お弁当よー」
やよい「ありがとう!」
やよ父「ほれ、トースト」
やよい「はむうっ!」パクッ
やよい「いっへひは〜す!!」タタタ
やよ父「……騒々しいな」
ちはる「ふふ、元気になったみたいで良かったわ」
やよい「はあはあ……」
やよい(この気持ちが何なのかは分からないままだけど、私はこの気持ちを大切にしたい!)
やよい(少しずつ分かっていけばいいの。だから今日は元気いっぱいにアカオニさんにおはよう! って言うんだ)
やよい「……なのに決心した初日に遅刻しそうなんて〜!」タタタ
やよい「ぶっちゃけありえ……」
ゴチイン!
やよい「きゃああっ!?」ドサッ
アカオーニ「オニいいいい!?」ドサッ
やよい「ア、アカオニさん?」
アカオーニ「む、やよや……むう……」
アカオーニ「大丈夫かオニ?」スッ
やよい「あ、ありがと」
アカオーニ「もしかしてお前も遅刻オニ?」
やよい「う、うん」
やよい(おはようって言いそびれちゃった)
やよい「……って、も?」
アカオーニ「ウハハハ! 俺様も遅刻だオニ!」
やよい「威張ることじゃないよ」
アカオーニ「それもそうオニ」
やよい「ていうか、いい加減動かないと遅刻しちゃうよ」パクリッ
アカオーニ「それはトーストオニ?」
やよい「うん。ってアカオニさんも?」
アカオーニ「ハハハ、考えることは同じオニなぁ」
やよい「あれ?」
やよい(私のジャムが塗ってなかったっけ?)
やよトースト<ジャムナイ
やよい「……」
アカオーニ「あ〜ん」
やよい「それ私のおおおっ!」ワー!
アカオーニ「オニ?」
やよい「か、返して返して!」ワアワア
アカオーニ「返してって……どっちみち同じトーストオニ」
やよい「だってそれ私の食べかけだし! 同じじゃないよおっ!」ポカポカ!
アカオーニ「お前も俺様のトーストをかじったオニ」
やよい「あっ……」
アカオーニ「だから俺様も食べていいオニ!」バクンッ
やよい「ああぁ〜!?」ガーン
アカオーニ「お前も早く食べるオニ」
やよい「わ、わわわかってるもん! 今食べるもんっ!」
やよい「……これは違う。これは違うから。こんなの違うもん……」ブツブツ
アカオーニ「?」
やよい「え〜い!!//」パクッ
やよい(た、食べちゃった! 食べちゃった!? アカオニさんの食べかけの……)
やよい「///」ボンッ
アカオーニ「ど、どうしたオニ!?」
やよい「げほごほ!」
アカオーニ「詰まったオニ!? なら俺様の飲みかけのコーヒーを飲むオニ!」
やよい「んん〜!」ゴクゴク
やよい「って飲みかけ〜!?//」ブハアッ
アカオーニ「汚いオニー!」バチャッ
アカオーニ「」フキフキ
やよい「ご、ごめんなさい……」シュン
アカオーニ「まあ、井上とかだったら殴ってるところオニ」フキフキ
やよい「ていうかコーヒー甘いね」
アカオーニ「苦いのは飲めんオニ」
やよい「わ、私も……」
アカオーニ「ウハハハ! 遅刻仲間のうえ、甘党仲間オニ!!」
やよい「ふふふっ」
アカオーニ「ウハハハ!」
やよい「って笑ってる場合じゃない!」
アカオーニ「そうだったオニ!」
オニやよ「遅刻するぅうううううううう!!!」ダダダ
キーンコーンカーンコーン
みゆき「せふとぉーっ!!」
佐々木「アウトよ、星空さん」ポカ
みゆき「ええーっ!?」
アハハハハハハ!
佐々木「あれ? 今日は前二人がいないのね」
ぜんじろう「黄瀬さんとアカオーニくんがいません」
あかね「あのバカップルコンビか」
みゆき「バカップル?」
なお「どうみてもそうでしょ」チュッ
れいか「不純異性交遊は私が許しませんよ」チュッ
あかね「いやもういいや」
ガララッ
やよい「ただいまー!」
アカオーニ「今帰ったオニー!」
あかね「どこの夫婦漫才や」
佐々木「遅刻よ二人とも」
やよい「ご、ごめんなさい!」
アカオーニ「先生、こいつは悪くないオニ!」
やよい「う、ううん! 私が悪いんです!」
アカオーニ「そうオニな。すべてこいつの責任にしてくれオニ」ハンッ
やよい「ひどぉ〜い〜!!」ウルウル
佐々木「」イラッ
ぜんじろう「」イラッ
あかね「気持ちはわかる」
佐々木「えー、最近遅刻が多くなってきています。みなさん気をつけるようにー。以、上!」
あかね「投げやりやな」
アリャッシャシタイ!
みゆき「一時間目はなんだっけ?」
あかね「家庭科や」
やよい「楽しみだねー♪」
アカオーニ「オニぃー♪」
あかね「……アカン。ストレスしか溜まらん授業になりそや」
井上「気持ちは分かるぞ」
あかね「黙っとけ」
♪家庭科室
家庭「えー、きょうは、ケーキ、を、作ってもらいたい、のでー。そこにある、材料や、器具を使ってー。ペア、でー」ゴチャゴチャ
あかね「いよっしゃー! やったるで、みゆき!!」
みゆき「私、頑張るね!」ボチャ
あかね「うん! さっそく卵落としとる奴に説得力はないで!」
なお「れいか、私達も頑張ろう!」
れいか「私達の愛の力なら、ウェディングケーキでも作れるわ」
なお「むしろ作りたい」
れいか「なお……」
なお「れいか……」
やよい「よーし、張り切っちゃうよぉー!」グッ
アカオーニ「料理できるオニ?」
やよい「えへへ、それなりにできるもん!」
アカオーニ「ほう。それは楽しみオニ」
やよい「え? アカオニさんはやらないの?」
アカオーニ「料理はさっぱりオニー」
やよい「だよね」
アカオーニ「俺様は食べる専門オニー」
やよい「!」
やよい「腕によりをかけて作っちゃうよぉー!」ヨシッ
家庭「えー、そろそろ、時間となります、のでー。仕上げに、取り掛かって、ください」
あかね「アカン、ホイップが上手くいかへん」ブキッチョ
みゆき「それくらいなら!」ヨイショッ
あかね「おおっ! これに関してはウチより上手いなあ!」
みゆき「へっへーん!」
あかね「いや褒めてはないけどな」
なお「れいかぁー! あと一段だよー!」
れいか「はい、頂上に乗せるウエハースですぅー!」
井上・豊島(パネエ)
やよい「も、もうちょっと……」
やよい(うう……上手く描けないなあ)
アカオーニ「……?」
やよい「あっ、やった……! できたぁ!!」
アカオーニ「ほう、見せてみるオニ!」
やよい「み、見ちゃダメええええ!!」ガバアッ
アカオーニ「何でオニ! どうせ食べる時に……って」ジイッ
アカオーニ「これ、俺様オニ?」
やよい「うぅ……あ、あんまり上手く描けなかったけど……」
アカオーニ「そんなことは……む! そうだ!」
やよい「?」
アカオーニ「先にテーブルに着いてるオニ!」
やよい「う、うん?」
家庭「ではー、試食を、してくださいー。二時間目とか、知りません」
みゆき「あかねちゃんのケーキいっただきまぁーす!」
あかね「たぁーんと召し上がれー」
みゆき「おいしい! おいしいよ、あかねちゃん!」バクバク
キャンディ「クルぅー!」バクバク
あかね「そらよかった!」ニカッ
れいか「ふう、出来たわね」
なお「私達のウェディングケーキ!」
れいか「まずは」
なお「ケーキ入刀!」キャッ
れいか「二人の初めての共同作業です!」キャッ
れいか「あ、西村ちなみに日本刀で」
井上・豊島(パネエ)
やよい「アカオニさん、ケーキは?」
アカオーニ「これオニ」スッ
やよい「? なにか描いてある……って、あ……」
やよい「もしかして私……?」
アカオーニ「ウハハハ、難しいオニなぁ! クレヨンで書くより難しいオニ!」
やよい(私が描いたアカオニさんとの間に私の置いたハートのチョコがある……偶然、だよね)
やよい(なんか幼稚園児が描いたみたいな絵だけど……)
やよい「う、うれじぃ……」ウルウル
アカオーニ「な、なんで泣くオニぃー!?」
やよい「ルンルン♪」スキップスキップ
みゆき「やよいちゃんはしゃいでるねー」
なお「今時スキップだもんね」
れいか「やよいさんが楽しそうだと私も嬉しいです。ね、なお」
なお「うん、れいか」
キャンディ「キャンディもクル」
あかね「干されるで」
やよい「♪」
数学「よーし、三時間目は数学だー。二時間目の国語の先生が泣きながら職員室に戻っていたが、先生はなにも見ていないぞー」
アカオーニ「数学オニか」
やよい「大丈夫? アカオニさん」
アカオーニ「解き方を教えてもらったし、バッチリオニ!」
数学「あー、すまんが今回は連立方程式じゃない」
アカオーニ「そ、そうオニか?」
数学「今日は二次方程式をやる」
やよい「二次方程式かぁ」
アカオーニ「あれは簡単だったオニ!」
やよい「因数分解得意なの?」
アカオーニ「知らんオニ」
やよい「……うん」
数学「もう最初からやり方を教えよう。昨日みたいにはなりたくない」
あかね「それが普通やねん」
アリャッシャタッ
数学(今日はちゃんとした授業ができたな)スタスタ
やよい「ふああっ、難しかったぁ〜」
アカオーニ「」プシュウウ
あかね「あれらぁ」
みゆき「」プシュウウ
あかね「うん、予想はしてたで」
れいか「数学はここからややこしくなるんですよ」ナデナデ
なお「くーん」
あかね(手なずけとるなぁ)
やよい「もっと難しくなるのかぁ。私も燃え尽きそう……」ハア
れいか「定期テストも近いですし、そんな暇はありませんよ」
あかね「テストの話はしんといてぇ……」ウウ
アカオーニ「ってテストってなにオニ?」
みゆき「一言でいえば地獄ッ!」
あかね「前日も当日も後日も地獄ッ!!」
やよい「まさにそう」
アカオーニ「地獄ぅ? ウワハハハ!! 鬼でいう地獄とは人間でいう天国オニ!!」
なお「人間でいう地獄は鬼でいう天国だよ」
アカオーニ「はっ……!」
やよい「テストなんてなくなればいいのに」
キャンディ「みんなからバッドエナジーを感じるクル」
四時間目 合同体育
体育「今日は二人三脚をやるぞー」
体育「二人組でペアをつくれー。そうか宗本、先生と組もうなー」
あかね「またみゆきとか」
みゆき「これはもはや運命じゃないかな?」チラッ
あかね「はいはい」
れいか「なお、すみません。私が足を引っ張りそうですが……」
なお「そんなことないよ。一人のペースに合わせるなんていや。二人のペースで行こう」
れいか「うん♪」
やよい「身長差ありすぎぃー!!」
アカオーニ「今更オニ」
体育「位置についてー。よーい、ドン!!」
ダダッ
あかね「悪いけど一番はウチらがもらうでー!」ダッ
みゆき「あかねちゃん、ひきずってるひきずってるぅう!」ズザザァ
なお「二人のペースで」ノロノロ
れいか「この赤い紐がほどかないように」ノロノロ
やよい「あたぁっ」ドテッ
アカオーニ「このままでは桃橙チームに負けてしまうオニ」
やよい「ていうかあれ二人三脚じゃないよね。完全に西部劇だよね」
アカオーニ「かくなる上は……!」ダキッ
やよい「へええっ!?」
なお「!」
なお(お姫様だっこだと……私じゃれいかに出来ない至難の技……!)
やよい「いやあああっ!//」
アカオーニ「ウハハハ!! 一番乗りオニー!!」
やよい「お、おろしてええっ!! 恥ずかしいからああっ!!//」ポカポカ
あかね「あんなん二人三脚ちゃうで!」
みゆき「」ズザザァ
体育「もういいやなんでも」
♪お昼休み
あかね「ふー、ハードな体育やったで」
みゆき「まだ耳に砂が……」
あかね「ほんまにすまん」
みゆき「あかねちゃんが砂を舐め取ったら許してあげる」チラチラッ
あかね「それはない」
みゆき「なおちゃんとれいかちゃんはやってるじゃん!!」
なお「れいか、れいかぁ……」ペロペロ
れいか「♪」ナデナデ
あかね「あれは見たらアカン」
やよい「えへへ〜」
やよい(お姫様だっこされちゃったぁ〜)
やよい「えへへ〜」
アカオーニ「おい、黄色が別の世界に行ってしまったオニ」
あかね「やよい、って呼んだら飛び起きると思うで」
アカオーニ「や、やよい!? そんな呼び方できるわけないオニ!」
やよい「や、やよいって呼んだ!?//」ハッ
あかね「ウチがな」
やよい「なんだぁ……」シュン
あかね「露骨に落ち込まれるとくるものがあるで」
やよい「アカオニさん、今日はお弁当持ってきたの?」
アカオーニ「あっ……」
あかね「またかいな」
なお「しょうがないなぁ」カパッ
やよい「あ、ああっ! き、今日は大丈夫だよ!」
なお「?」
やよい「えと、そのぉ……」モジモジ
れいか「……なお、邪魔をしてはいけません。こちらに来なさい」
なお「れいかぁー」ピョンピョン
やよい「えっとね、アカオニさん」
アカオーニ「なんだオニ? 俺様腹が減ってるんだオニ」
やよい「そ、そっか。それなら……これ! お弁当!」
アカオーニ「オニぃ?」
やよい「その……アカオニさんのために、作ったんだけど……」
アカオーニ「俺様のため?」
やよい「い、嫌だった?」ウルウル
アカオーニ「そんなわけないオニ! 嬉しいオニ!」
やよい「え、えへへ……///」
アカオーニ「おお、俺様オニ!」
みゆき「すごーい! キャラ弁!?」
あかね「キャラっていうんか?」
キャンディ「これは時間がかかったはずクルぅ〜」ムシャムシャ
あかね「おい」
やよい「ど、どうかな?」
アカオーニ「ケーキの時と同じくらい嬉しいオニ!」
やよい「ケ、ケーキと同じって……制作時間はお弁当の方が長いのに……」
アカオーニ「愛情はどちらも詰まってるオニ!」ナデナデ
やよい「ああっ……」
やよい(は、初めてこういうのされたかも……)
やよい「っ///」
みゆき「私だけナデナデされてない〜!」
あかね「だーめ」
ゴチソウサマデシター
みゆき「午後の授業も頑張ろうー!」
やよい「おおー!」
アカオーニ「? 妙に張り切ってるオニな」
あかね「五時間目は美術なんやでぇー」
アカオーニ「なるほど」
やよい「あー! 私が美術しか楽しみにしてないとか思ったでしょー!」
アカオーニ「あと家庭科オニ」
やよい「……」プクウッ
あかね(熟知しとんなぁ)
美術「今日は人物を描いてみましょう!」
美術「もちろん、クラスの人を描くのもいいですが、日頃お世話になっている人に向けての感謝の気持ちを絵のプレゼントで表現するのもいいものですよー」
あかね「やよいが得意そやなあ」
みゆき「私あかねちゃん……じゃなくてキャンディ描いてあげるー♪」
キャンディ「クルぅ〜」
みゆき「」チラッ
あかね「うん、んで?」
みゆき「……」ウルウル
あかね「泣くなや」
なお「れいか、何を描こう?」
れいか「私はなおの絵を描こうかと。なおも……」
なお「……。そっか、でも私れいかの絵は描かないよ」
れいか「えっ……? ど、どうして!」
なお「れいかの絵は描かないよ。一人映ってるれいかなんて、耐えられない」
れいか「……なお」
なお「二人合わせた絵を描こう! 私達の愛が伝わる絵を!」
れいか「うん♪」
あかね「エロはアカンで」
アカオーニ「〜♪」カキカキ
やよい「なに描いてるの?」
やよい(もしかして私の絵だったり……)
アカオーニ「ふふふ。これは鬼が桃太郎を倒す紙芝居オニ!」ジャン
やよい(ざ、残念。てか人物画でもないし)
やよい「でもアカオニさんらしいかも」クス
アカオーニ「お前は何を描いてるオニ?」
やよい「わ、私はそのぉ……」
やよい(なんだろう。ケーキとかお弁当の時より恥ずかしいよぉ……)モジモジ
やよい「ま、まだ途中なんだけどね」
アカオーニ「ふむふむ、男の人オニな」ジロジロ
やよい「み、見ないでええっ//」
アカオーニ「線だけで誰か分からんオニ」
やよい「え……あ、えっと、そう! パパを描いたんだよ!」
アカオーニ「パパぁ?」
やよい「う、うん。父の日のプレゼントで……」
アカオーニ「父の日? ああ、もうそんな時期オニかぁ」
アカオーニ「よーし! 俺様もパパンの絵を描くことにするオニー!」
やよい「え、えええええ〜っ!」ガーン
アカオーニ「〜♪」カキカキ
やよい「あ、あぁ……」
やよい(私の絵を描いてほしかったんだけど……)
やよい「まっ、楽しそうだからいっか」ムウ
やよい(……なおちゃんとれいかちゃんみたいに、描きあいっこしたかったなぁ)
アカオーニ「〜♪」カキカキ
やよい(次の授業では!)グッ
やよい「頑張るぞー!」オー
残っていたら今日書きたいけど、落ちてたらまた今度書くクルぅ〜
できる範囲でほす
ヒロポンデコルを使うクルー
Entry ⇒ 2012.05.25 | Category ⇒ プリキュアSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
える「私、気になりまs……あぅ///」折木「……」ナデナデ
える「お、折木さん……////」
える「……////」
折木(しかし何というか、こう……こうしていると俺も落ち着く)
折木(いや待て。何を考えているんだ俺。いかんいかん)
える「あの、折木さん……////」
える「いえ、あの、はずかしぃ……デス////」ゴニョゴニョ
折木「ん? 何だって?」ピタッ
える「あっ……な、何でやめちゃうんですか!? 何かよくないことでもあるんですか!? 私、気になりますっ!!」
折木(う、うるさい!)
える「ぁぅ////」
折木(……こうして見ると、意外に……まぁ可愛いといえる顔かも知れんな)
える「……////」
折木(ちょっと、からかってみるか。普段俺のエネルギーを消費させてる仕返しだ)
折木(……)ツンツン
える「むにゃっ///」
える「や、やめてくだしゃい///」
折木「やめていいのか」
える「ぁ……」
える「や、やめないでくださいっ!! 私、こうしていると新たな何かを見つけ出せそうな気がするんですっ!!」
折木「わ、分かった分かった!」ツンツン
える「はぁぅ////」
える「////」
折木「……」ツンツン
える「////」
折木「……」ピタッ
える「折木さんやめないでくだs――!!」
折木「」ツンツンツンツン
える「////」
折木(これは省エネではないッ……!!)ツンツン
折木(今日は伊原とその他も部活に来ないから、こんなこともできたが……)
折木(もし明日、廊下なんかで急に――)
える「折木さん! なでなでつんつんしてくださいっ!!」
エー アノフタリソウイウカンケイダッタノー キャー
折木(いかんいかんいかん! それだけは……非常に面倒くさいことになる……!!)
える「折木さんっ! 手が止まってますっ!!」
折木「うがッァ……」ガタンッ
える「!? ど、どうしたんですか折木さん!」
折木「くッ、バ、バカ……近づくなっ!」
折木「ぁア……ぁぁあぁああ!」グガガガ
える「えぇええっと……ど、どうしましょう!?」
折木(疲れるなぁこれ)
える「えっえっ……」オロオロ
折木「これは俺の深い闇と凄惨な過去により生じた事象、お前に介入してほしくないッ……」
える「で、でもっ! ほ、保健室に行きましょう!」グイッ
折木「!?」
折木(千反田の手……すべすべでやわらかくて……何だッ!?)
える「はいっ? どうしました? 苦しいんですか? 大丈夫ですよ、すぐに保健室へ――」
折木「違う、そうじゃなくて……」
える「?」
折木「……」
折木「……」ペロッ
える「ひゃわっ!?////」
折木(あ、甘い……)
甘いのか!?女の子の手は甘いのか!?
える「お、おれきっ、さんっ……指を……ぁあ////」ビクビクッ
折木「……」ペロペロ
折木(まさか……)ピタッ
える「……折木さん? やめちゃうんですか? 何でやめちゃうんですか?」
折木(やっぱり)ペロペロ
える「ぁぁあっ////」
える「ひゃぁぅっ! ぃゃぁ////」
折木「……」パクッ
える「むにゃぁ!?////」
折木(甘い。氷菓子みたいだ)
える「……折木さん……////」
折木(こいつの伯父が文集を『氷菓』と名付けたのは、こいつが氷菓子のように甘いからか?)
折木(……。いや、伯父がこいつの味を知ってるってのは無理があるな。名付ける意味もない)
折木(でも他の可能性を考えるのも面倒だし、これを結論にして後で三人に発表するか)
える「あ、あの、折木さんっ」
折木「ん」
える「早く、保健室に……」
折木「ああ、そうだったな。それじゃあ、行こうか」
える「はい?」
折木(俺は思春期の男子高校生だ。この欲求は決して異常ではない)
折木(まずはドアに鍵をかける)ガチャガチャ
える「え? 折木さん、どうして鍵を?」
折木「すまん。さっき鍵をかけてたんだ」
える「……そうでしたっけ?」
える「はい。分かりました……」
折木(小首を傾げている。どうにも腑に落ちていないようだな。さすがは好奇心の亡者)
える「……」ガタガタンッ
える「え? あれ? 折木さん、ドアが開きません――」
折木(そして後ろからこうする、と)ギュゥッ
える「ッ!?////」
折木「大変だ千反田。倒れそうだ。しばらく肩を貸してくれないか」
える「か、肩じゃない……/////」
折木「ん?」
える「なんでもない……です……/////」
折木「ぁあ、今すぐ倒れそうだぁ。しっかり支えてくれぇ」ギュゥゥゥゥ
える「ゃぁぁ……/////」
折木(そういえば前に読んだ小説で、『女の子は耳が弱い』っていう話があった)
折木(よし、やってみるか)
折木「なあ、ちょっといいか」
える「は、はい……」
折木「……える」ボソリ
える「はぅ!?/////」
折木「えるって可愛い声してるよな」
折木「目も大きくて、えるに引き込まれるようだ」
折木「千反田えるって名前も、響きが素敵だと思う」
折木「なあ、折木える、にならないか? それとも千反田奉太郎かなぁ」
える(だ、だめ……そんな……おかしくなりそう……////)
える「ぁ……////」
える「」
折木「える?」
える「」
折木「……何てこった。気を失っている」
える「」プシャァァァ
折木「うわッ! こ、これはやばいかも知れん」
折木「とりあえず、寝かせておくか。いや、でもこんなびちゃびちゃだと身体に悪いな」
折木「……」
折木「スカートと下着を脱がせて、イスを並べて寝かせよう」
折木「よし」スッスッ
折木(下半身に何も身に着けていない少女の横で読書し続ける忍耐。何て辛いんだ)
折木(……)チラッチラッ
折木(いかん。邪な考えは捨てろ。手を出したら人生が終わる)
折木(既に終わってる感が否めないが、さらに終わる)
える「……ぁ……ぅ?」
折木「あ、おはよう」
える「おれき……さん?」
える「あれ? えーと……」
える「……」
える「あ」
える「……」
える「…………」
える「ほ、奉太郎のえっち/////」
折木「!!?」ドッキーン
折木「……千反田、まずは下を隠せ」
える「へ?」
える「……」
える「ひゃあぁぁあっ!!?/////」
折木「……」フーヤレヤレ
える(あぁぁあう! ぬ、ぬがされた……ってこと……? みられた……? みられた……!?)
える(折木さんに……みられた……ぁあぁぁ……)
える(……しかも、名前で呼んでもらえなかった)ショボン
える「ぁ、ぁの……///」モジモジ
折木「ん?」
える「あっち向いててもらえませんか……?////」
折木「ああ、すまん」
える(いつもの折木さんだ……)
折木(さっきまでの俺はどうかしてた。ああ、俺らしくない)
折木(いろいろと手遅れかも知れんが、今まで通り千反田に接しよう、そうしよう)
折木(……)
折木(……)チラッ
折木(エロい……)
折木(千反田も落ち着いてきたか。さっきから俯いて動かないままだ)
折木(髪がだらっと垂れて、何というか、貞子みたいだな)
える「……」
折木「なあ、千反田」
える「はひっ!?」ビクッ
折木「さっきはすまなかったな。謝っても許されることではないと思うが」ペコリ
える「い、いえ! ほうたr……折木さんも男性ですし……」
折木「奉太郎って言おうとしたよな?」
える「!! ち、ちが……噛んだだけですよ」
折木「言おうとしたよな?」
える「……はぃ////」
える「////」
折木「ふむ」
える「……?///」
折木(千反田と会話しているというのにこの静けさ。この状況はもはや芸術の域に達している)
える「折木さん……?」
折木「何でもない。そのままでいい」
える「そのまま?」
折木「気にするな」
える「えっ」
折木「おやすみ」
える「あ、は、はい。おやすみなさい」
折木「……、……Zzz」
える「……」
折木「Zzz」
える「……」
折木「Zzz」
える「……」ドキドキ
折木「Zzz」
える「……ほ、ほーたろ////」ボソッ
折木「何だ?」ヒョイッ
える「きゃぁぁあっ!?」
折木「ほーたろーのお目覚めだ。何か用か?」
える(あぁぁぁ……ぁああぁ! 恥ずかしいぃぃ……/////)カァァァッ
折木(顔が真っ赤だ。何とまあ可愛らしい)
える「……はい」
折木「……」
える「……」
折木「Zzz」
える(怪しい。わたし、気になります)
える(そうだ。呼べばいいんだ)
える「折木さーん?」
折木「Zzz」
える(返事がない。寝てる!)
える「ほーたろ////」
折木「Zzz」
える「ほーたろ、寝てますか……?////」
折木「Zzz……ん……Zzz」
える(あんまり声かけると起きちゃうかな)
える(でも、名前呼ぶの何か楽しい)ドキドキ
える「ほーたろ♪ ほーたろー♪」
折木(里志、分かったよ。俺は千反田に惹かれていたんだ。もう変な見栄は張らない)
える「ほーたろ」ドキドキ
える「……好き、ほーたろー////」
折木(ッ)ドキッ
折木(……)
折木「んー……むにゃむにゃ」
える「!」
える「あ……////」
える「私も、愛してます。好きです。大好きです////」
折木「うん……俺も……」
える「……ほーたろー////」ギュゥゥゥ
折木「える……」
える「……」スピー
折木「いつの間にか、寝ちまってたのか。こいつまで……」
折木「……」
折木「……」チュッ
える「……えへへ///」
折木「うわッ!?」
える「ほーたろ、大好き////」
折木(は、はめられた……なんてこった……)
里志「やぁホータロー。今日は早いね」
折木「いろいろあってな。生活を改めることにした」
里志「へぇ? 失恋でもしたのかい?」
折木「縁起の悪い……まぁ紙一重とは言うが……」
里志「紙一重!? ついにホータローも恋を……!」
折木「いや口が滑った。じゃない、冗談だ冗談」
里志「本当に〜?」
里志「やぁ。そうみたいだね」
折木「……」
里志「ホータローぉ? 何だか寂しそうだねぇ」
折木「な、何言ってんだ。ちょっとぼーっとしていただけだ」
里志「ふ〜ん?」
伊原「え、なになに? 折木が何かオモシロイことになってるの?」
折木「あー、もう……やめてくれ」
里志「まさかぁ、千反田さんと何かあったのかなぁ?」
里志「おぉ? こりゃ図星みたいだね」ニヤニヤ
伊原「なによぉ、いつの間にデキてんじゃないわよぉ」ニヤニヤ
折木(恥ずかしい……辛い……)
える「お、遅れてごめんなさいっ」ガララッ
里志「おっ。ウワサをすれば」
える「へっ?」
伊原「ちーちゃん、やっほー♪ お待ちかねだったよー」
える「あ、は、はい……はい?」
える「ふぇっ!?////」
折木「おいッ!?」
里志「いやぁ、ビックリだね。もっと早く教えてくれたらなぁ」
える「え、あ、その……昨日、お付き合いを始めさせていただいて……////」
折木「えるも何言ってんだ!」
伊原「わっ。下の名前で呼んでるんだ! アツアツだね〜」
折木(ぎゃああああああああ)
える「////」
希望を胸に抱いて、さあ、レッツ省エネ生活!
おしまい
は?
いやいやいや
もうちょっと行きましょうや
あとちょっと!!
える「ほーたろ! これってどういうことなんでしょう!? わたし、気になります!」
折木「……」ナデナデ
える「はうっ////」
折木「……」ナデナデ
える「……////」
折木「謎はどうでもよくなったか?」
える「はい////」
折木「いいコだ」ナデナデ
える「んっ……///」
折木「おう」
える「ご、ごめんなさい……」
里志「いや幸せそうで何よりだけどさ。ホータローの膝の上に千反田さんが乗ってる絵はなかなかシュールだね」
折木「こいつ軽いからな。膝に乗せても問題ない」
折木「あと、良い匂いがする。もう俺は、この匂いなしじゃ生きていけん」
える「ど、どんな匂いなんですかそれ////」
折木「甘くて、何ていうのかな、大好きなヒトの匂いがする」
える「〜〜〜/////」
里志「ホータローも結構クサいセリフを吐くねぇ」
折木「余計なお世話だ」
折木「……」
える「……」
折木「あ、手が滑った」フニッ
える「んぁっ////」
える「ほ、ほーたろっ……えっちなのはだめです……////」
折木「手が滑ったと言っているだろう」モミモミッ
える「んぅっ……! ぁぅ……////」
折木「二人きりなんだから……な?」
える「……はぃ////」
おしまい!
おい
寸どめとはこれいかに
Entry ⇒ 2012.05.25 | Category ⇒ 氷菓SS | Comments (2) | Trackbacks (0)
カズマ「最近かなみの様子がおかしいんだけどよ」 劉鳳「……」
劉鳳「なぜそれを俺に言う」
カズマ「まともそうなのがお前だけだったんだよ!」
劉鳳「お前の友人はどうした」
カズマ「君島かぁ?……なんかわかんねぇけど、めんどくさくなりそうなんだよ」
劉鳳「クーガーは……」
カズマ「なに言ってんのかわかんなくなると思う」
劉鳳「……それもそうだな」
カズマ「…で、どうすりゃいいと思う?」
劉鳳「俺にもよく分からん、そもそもかなみの様子がどうおかしいんだ」
カズマ「どう……ってなぁ」
カズマ「なんつーか…あんまり面と向かって話さなくなったな」
かなみ『カ、カズくん はい、お昼ごはん』
カズマ『ん、おお、ワリィな』
かなみ『だ、大丈夫だよ……』タッタッタッ
カズマ『お、おい、かなみ!』
劉鳳「ふむ……」
劉鳳「どこか体調がおかしいのかもしれんぞ」
カズマ「それも考えたんだが……本人に聞いてもなんでもないって言うんだ」
劉鳳「……」
カズマ「……」
劉鳳「分からんな」
カズマ「やっぱりか」
劉鳳「どういう意味だ」イラッ
カズマ「最初から期待してねぇってことだよ」ヘラッ
劉鳳「人を頼っておいてその言い草か……絶影!!」
カズマ「ハッ!やろうってのかよ、いいぜぇ!!」
―― ドンガラガッシャーン
社長「で、この有様ってわけですか」
劉鳳「すまん……」
クーガー「水くせぇなぁカズヤ!そんなことならもっと早く、最速に!俺に相談すればよかっただろう」
カズマ「カズマだぁ!……あんたに相談するとまともな答えが帰ってこねぇ気がするんだよ」
君島「でもよぉ、そのかなみちゃんのその反応って、答えがまんまでてるようなもんだろ?」
カズマ「いたのかよお前」
君島「ひっでぇ!」
劉鳳「……で、かなみの反応の正体とはなんだ?」
社長「それは…」
クーガー「おぉっと!野暮なマネはするなぁ! ここはひとつ、カズヤ自身に気づかせたほうが面白…文化的だろう!」
カズマ「おい、面白いってなんだぁ!」
君島「ま、たしかに昔っからお前はそんなんだからな、そろそろ改善したほうがいいぜ?」
劉鳳「ついでにバカなところもな」
カズマ「バカは余計だぁ!大体『そんな』ってどんなだよ!」
クーガー「『そんな』は『そんな』だ!このバカチンがぁ!」
カズマ「ぐっ!よりよってバカの『さいじょーきゅー』ってやつを…」
社長(たしかに、そろそろカズマとかなみちゃんの関係もなぁなぁで済ませていい物じゃなくなってきますし、丁度いいかもしれませんね)
水守「最近、カズマくんを見てると胸が苦しい?」
かなみ「はい、そうなんです…そのせいで、カズくんともあまり話せなくなって…」
シェリス「んっふっふー、乙女ねぇかなみちゃん!でも大丈夫、私達もその問題に何年も付き合ってきたわ!」
水守(付き合ってきただけで、解決はしてないんだけれど……)
かなみ「そ、そうなんですか?」
シェリス「ええ!だから、その悩みの正体をズバリ言うわよ!」
水守「シェリスさん、ちょっと古過ぎやしないかしら……」
シェリス「かなみちゃんの悩みの正体、それはね……」
ドゥルルルルルル……
かなみ「は、はい…」
ルルルルルル…
水守「どこから聞こえてくるの?この音楽……」
ルルルルルル……
シェリス「それは……」
ルルルルルr…
かなみ「それは……?」
ドゥドゥン!
シェリス「ズバリ!恋よ!!!」
かなみ「こ、こい?」カー…
シェリス「そう、恋!例えば私達としては劉鳳と一緒にいたいし、キスしたいし、押し倒してラブラブチュッチュしたい!そういう感情が恋よ!!」
水守「うん、後半はあなただけね」
かなみ「ら、らぶらぶちゅっちゅ?」
水守「かなみちゃんはしらなくていいのよ。あの娘、半分頭おかしくなってるから」
シェリス「し、失礼ね!私が頭おかしいっていうなら水守さん、あなたも相当よ!」
水守「なにがかしら……」
シェリス「そのペンダント!」
水守「…これがどうかしたのかしら?」
シェリス「――のウラに付いているチップの中身を私は知っている!」
水守「なっ?!」
シェリス「3GBにわたる劉鳳の(隠し撮り)写真の数々……HDDの中にいたっては「言わないでー!!」」
水守「うぅ…いつの間に……」
シェリス「敵情視察は常識よ!
かなみ(ついていけない……)
かなみ「あ、あのう」
水守「ハッ!ご、ゴメンね、かなみちゃん……コホン!ようするに、恋っていうのはその人のことをもっと知りたいとか、色んな表情を見たいっていう想いよ」
シェリス(水守さんが言うと生々しい)
水守「かなみちゃんは、カズマくんにそういう想いを持ってるかしら?」
シェリス(そして、うまくまとめた)
かなみ「もっと…はい、多分あります、私の中に」
かなみ「…あと、カズくんに喜んで欲しいとか、ずっと一緒にいたいとか……色んな想いが…」
シェリス「あはは……プラトニックね、水 守 さ ん と 違 っ て」
水守「そうかしら?個人的にはシェリスさんよりはマシだと思ってるわ、あなたのソレは既に腐れ爛れた肉欲よ」
シェリス「うふふ〜♪」
水守「ふふふ♪」
かなみ(なんだか怖い……今のうちに出たほうがいいかも、また来ます水守さん、シェリスさん)
劉鳳「というか、俺はもう帰りたいんだが」
クーガー「おーいおいおいおい、面白いところはこっからだぜぇ?劉鳳、それにこれはお前さんにも関係ある」
劉鳳「……なに?」
社長「ああー…大いにありますね」
君島「劉鳳くんに関係ありすぎて宇宙がヤバイ!だな」
劉鳳「ええい!俺にも関係あるのならさっさと教えろ!」
カズマ「全くだ!気づくって、俺が何かしたのかよ!」
クーガー「ん〜したといえば、したし してないといえば、してない」
カズマ「だぁ!さっきから一々もったいぶんなよ!『最速』がアンタの信条だろうが!」
クーガー「ああ、確かに俺は最速を求める、しかしなこれはお前の問題だ
己の心の想い、そして相手の想いを悟ろうとせずに生きれば
いつか必ず破滅がやってくる、そして何よりも文化文明とは
考えることからも始まるのだ!あらゆる実験思考証明過ちを繰り返し
人類はここまで進歩してきた!これは恋愛や人間関係にも同じことが言える
アイツは今何を考えているのか、何をして欲しいのか、そうしたことを
いち早く察し、それに応えてやる!それがあらゆる人間関係を円滑にし
何よりも自分の人生における速さを挙げてくれる秘訣なのだァ!」
君島「……なに言ってるか、分かったか?」
社長「はじまりだけ……」
カズマ「わ、わけわかんねぇこと速攻で言いやがって……」
劉鳳「いやまて、クーガー……いま貴様、「恋」と言ったか?」
クーガー「……さ、さぁ〜何のことやら」
社長(言っちゃいましたね)
君島(口滑らせたな)
カズマ「こい、だぁ?」
クーガー「……ああ、恋だ!そういったさ!」
君島「開き直った!」
クーガー「過ちを悔いても始まらない!俺は俺の道を最速で走り抜けるだけだ!」
社長「いや、カッコつけてもダメですよ」
カズマ「こい、こい……」
劉鳳「恋愛、というやつか…なるほど」
カズマ「な、なにテメェ一人で納得してやがる!」
劉鳳「ふん、どうせ貴様のことだ、「こい」という文字も「恋」とは分からんのだろう」
カズマ「こいこいうっせぇ!!」
劉鳳「恋…すなわち恋愛とはだ」
クーガー「おぉ〜っと劉鳳、お前の広辞苑的な知識じゃぁ、カズヤは理解できん」
劉鳳「……それもそうだな、実体験のあるやつから聞いたほうがいいだろう」
カズマ「さり気なくバカにしやがったな」
君島「事実だろーカズくん それじゃ、一番成功例を叩き出してるあすかくんからどうぞぉ!」
社長「ぼ、僕ですか?!」
―
カズマ「よーするに、かなみのやつは俺と一緒にいると「ドキドキ」ってやつがすんのか」
劉鳳「そのせいで顔も見てられないというわけだな」
カズマ「イマイチわっかんねぇなぁ」
社長「まぁ、こればっかりは実際になってみないと……」
君島「っていうかよ、お前はかなみちゃんのことどう思ってるんだ?」
クーガー「ああ、それをいの一番に聞くべきだったな」
カズマ「俺がかなみのことをどう思ってるかぁ……?」
カズマ「……難しい言葉じゃ言えねぇけど『題字』とか『耐雪』ってやつか?」
社長「カズマ、字が違います。「大事」に「大切」です」
君島「おほほうおほほう……中々なアンサーが帰って来ましたなぁ兄貴」ニヤニヤ
クーガー「全くだぁ、思ったより心配はしらんかもな」ニヤニヤ
劉鳳「何故ニヤついてるんだ」
カズマ「気味わりぃ……」
社長「とりあえず、カズマ あの二人のことは置いといて、対策を教えます」
カズマ「本当か?!やっぱアンタは頼りになんな!」
社長「ありがとうございます そうですね…まず、カズマは今までと同じ感じでかなみちゃんと接していいです」
カズマ「そうなのか……?」
劉鳳「コイツのいつもどおりはお前のいつもどおりと随分違う感じがするが」
カズマ「うっせぇな!人がマジメに聞いてんだから入って来んじゃねぇ!」
社長「そして……出来れば」
カズマ「あん?」
社長「さっきの言葉を、かなみちゃんにも言ってあげて下さい」
カズマ「さっきのって……「大切」とかか?」
社長「ええ、あなたの態度でも分かっているでしょうが、やっぱり一度くらいは言葉で言わないと……」
カズマ「そうか、分かった!あんがとな、橘!早速帰るわ!」
社長「ええ、お気をつけて」
クーガー「……俺たちは無視か」
君島「全く、恩知らずなやつだ!」
劉鳳「いや、当たり前だと思うが……さて、今度こそ俺も帰らせてもらうぞ」
クーガー「おぉーっと、待ったぁぁ!!お前さんの方にも関係があると言ったろ!」
君島「ねぇねぇ劉鳳くん劉鳳くん、結局君はあの二人のどっちを選ぶのん?」
劉鳳「何のことだ!いいから帰らせろ!」
クーガー「おいおい、今更知らんぷりはないだろう……?」
君島「うまくいかないとnice boat!クー!羨ましいねぇ!!」
社長「ご愁傷様です、劉鳳……」
ワイワイガヤガヤ
――
―
カズマ「戻ったぞぉ、かなみぃ」ガチャッ
かなみ「あ、カズくん!お、おかえりなさい…」
カズマ「……」
かなみ「……」ソワソワ
かなみ(カズくんだ…なにを話せばいいんだろう……)
かなみ(恋をしちゃったの……とかだめだよね!ダメダメ!!その前に言えないよ!」
カズマ「うぉ?!いきなりどうした、かなみ」
かなみ「あ、ううん なんでもないよ」
カズマ「そうか……」
かなみ「うん……」
カズマ「……」
かなみ「……」ソワソワ
かなみ(いきなり叫んで…吃驚しただろうな……嫌われたり、しないよね?)ウルッ
かなみ(だ、大丈夫だよ!カズくんだもん、本当は、だれよりも優しいんだもん……)グスッ
かなみ「だけど、だけどぉ…うぇぇっ!」
カズマ「か、かなみ?!お、落ち着け!何があった?あの黒蛇野郎にでもなんかされたか?!だ、だったら今すぐぶっ飛ば……」アタフタ
かなみ「違う、違うよカズくん…!どこも、どこにも行かないで!」
カズマ「……かなみ」
かなみ「最近、おかしいの カズくんがいないと寂しくて寂しくて、どうしようもなくて……」
かなみ「だけど、一緒にいたらいたで……なんだか胸が苦しくて……」
もっと増えてほしいものだ
カズマ「かなみ」
ギュッ
かなみ「へ?」
カズマ「大丈夫だ、俺はどこにも行かねぇ 行ったとしても、速攻で戻ってきてやる」
ナデナデ
かなみ「ほんとう……?」
かなみ(カズくんに、抱きしめられて、なでられてる……安心する)
カズマ「ああ、本当だ」
カズマ「……ははっ情けねぇな、俺は」
かなみ「カズくん?」
カズマ「お前が泣くまで、行動もできねぇなんてよ なぁにがシェルブリットのカズマだ」
かなみ「どういう……?」
カズマ「かなみ、いいか?よく聞いとけ」
かなみ「う、うん」ドキドキ
かなみ(まさか……まさか…?!)
カズマ「俺はな、お前のことが……」
かなみ「うん、うん……!」ドキドキドキドキ
かなみ(だ、大丈夫だよね、年齢差なんて…!
カズマ「いっちばん守ってやりてぇ、そばに居てやりてぇ……笑っていてもらいてぇんだ」
社長『僕の場合、キャミーのことが大好きです、あの娘を泣かせるのなら、どんな者であろうとも倒すというくらいに』
カズマ(こういうことかよ、橘……「大好き」っつーのはよ)
かなみ「!!」
かなみ「ふぇ、ふぇぇえええ」
カズマ「か、かなみ?!どうしてまた……!やっぱどっか痛ぇのか?!」
かなみ「違う、違うよぉ、嬉しいの!とっても……とっても!嬉しいの!!」
カッコ良いのにロリコンなのか
やめてよね
ロリコンが認められない世界は嫌なんだ!
かなみ「わたしも、私も大好きだよぉ!カズくん!!」ヒック
カズマ「ああ、ありがとな…俺も、大好きだ」
―――
――
―
夢を、夢を見ていたんです。
とても幸せで幸せな夢を
大好きな大好きなあの人のことを
私は、久しぶりに見ていました……。
かなみ「カズくん!早く起きないと君島さん来ちゃうよ!」
カズマ「んー…今何時だぁ…」
かなみ「もう8時!ほら、着替えて着替えて!」
カズマ「おー……」
だけど、今は夢を見なくても、あの人の側に居られます。
とっても幸福で、夢なんじゃないのかと想うほど幸福な毎日を、送ることができています。
夢のなかじゃないあの人は、ちょっぴりだらしないけど、いつまでも私との約束を守ってくれる
私の一番大好きな……いえ、世界で一番愛してる人です!
おわり
http://www.animax.co.jp/program/NN10001207
上手い事纏まった終わり方だった
その後の展開期待していいのかな
乙
Entry ⇒ 2012.05.25 | Category ⇒ 版権物SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
女「なぁ、ボーイズトークをしないか?」男「んん?」
女「最近知り合いに”ボーイズトーク”という単語を聞いてな。ガールズトークならわかるが、ボーイズトークだぞ?」
男「ほうほう、動気はそれか」
女「ああ。気になるだろう、異性の会話というのは」
男「まぁな」
女「では、私にボーイズトークを教授してくれるかな?」
男「仕方ないな。――さて、まあ先ず椅子ではなく床に座ろう」
女「床か。了解した」
男「そして俗に言う胡座で座ってくれ」
女「こう・・・か?」
男「うむ・・・いい眺めだ」
女「ふむ。君はそんなに下着が見たいのか?」
男「まてまて、違うぞ。そういう時は『今日の下着は白色なんだぜ!』と言って盛り上がるところだ。ボーイズだとな」
女「そうなのか」
男「そうだ」
男「ああ。清楚で綺麗な感じが似合ってるぞ」
女「そうか。照れるな」
男「生地はシルクか?」
女「そんな馬鹿な。多分ナイロンだ」
男「シルクに見えるほど似合っているね」
女「それは褒め言葉なのか?」
男「褒め言葉さ」
女「――というよりこれでボーイズトークというのは合ってるのか?」
男「ああ、滞りなく順調に進んでいる」
女「ならいいのだが」
男「では次のステップに進もう」
女「お願いしよう」
女「何をだ?」
男「男の性質というものについてだ」
女「ほうほう。興味深いな」
男「男というものは元来、戦・・・要するに戦いをする生き物だ」
女「ああ。狩りなどを請け負う凄い者だと思っている」
男「その認識で間違いはない。で、だ。その名残として、男同士のコミュニケーションというのは女性のそれと違う」
女「というと?」
男「内面から外面まで、さらけ出してからの友情・・・というところかな」
女「内面から外面まで・・・?」
男「赤くならないでいい」
女「別に赤くなってはないないぞ」
女「うむ」
男「男には”裸の付き合い”という言葉が存在する」
女「おお、聞いたことがあるぞ」
男「これは外面からさらけ出すパターンだな」
女「ふむふむ」
男「そして修学旅行の夜のピロートークだ」
女「それは女子のほうが強いんじゃないのか?話す時間とかそういう意味では女性のほうがやってる感じが強いが」
男「それは誤解だ。女性は赤裸々に話し合ってはいない。建前だけだ」
女「そうなのか」
男「それに比べ男というのは言わなくていいことまで話す」
女「ほう。その根拠は?」
男「経験だ」
女「ああ」
男「先述した事を踏まえ、ここに言えることは、だ」
女「内面も外面もさらけ出しての会話という事か?」
男「察しがいいな。教え甲斐がある」
女「光栄だよ」
男「さて、ここでボーイズトークをするとしよう。何を話すべきか・・・わかるかな?」
女「何を話すべきか・・・か」
男「その関門をクリアしなければ、ボーイズトークへの道は門前払いということだ」
女「ううむ。難しいな」
男「ヒントをやろう」
女「おお、有難い」
男「―――男は性欲の塊だ」
女「ほう。それがヒントか」
女「ううむ。過度の期待はプレッシャーとなるぞ」
男「覚えておこう。で、見つけられたか?」
女「自信はないが」
男「オーケーだ。何事も失敗は次への糧となる。恐れてはならない」
女「――鎖骨」
男「鎖骨とな」
女「鎖骨というのは性的魅力があると思わないか?」
男「良いセンスだ」
女「合格か?」
男「ううむ。及第点と言ったところだろう」
女「ふふっ、良かった。これで先生の授業を受講できるな」
男「よし。では話題も決まったことだ。鎖骨についての話をしよう」
女「了解した。鎖骨・・・ね」
男「そう、鎖骨だ」
男「ほうほう」
女「確かにほかの骨も常に形を露わにしているものがあるが――」
男「まて、ストップだ」
女「何だ?ここからが盛り上がるのに」
男「性的魅力のある鎖骨について・・・だったよな?」
女「ああ」
男「只の骨マニアのレポートにしか聞こえなかった」
女「うう・・・単刀直入に言うな」
男「言う時は言う。それがモットーだ」
女「時と場合を考慮してほしかったかもしれない」
男「時には厳しく言うことも必要なのさ」
女「ううむ・・・。では、では、だ。私の意見がダメならば」
男「任せるがいい。本当のボーイズトークを見せてやろう」
女「ほう。自信満々だな」
女「問いかけか。いい会話のパターンだ」
男「答えは?」
女「そうだな。曲線的なところか?」
男「違うな。見えるようで見えない、神秘的な部分というところだ」
女「ほう」
男「男というのは女性の見えそうで見えない部分。もしくは見えない部分というのに性的欲求を示す」
女「ほう」
男「普段見えない部分というのは凄く唆られる」
女「分からないな」
男「女性の感性で居るからさ。男になったつもりで考えて欲しい」
女「うむ・・・」
男「鎖骨というのは首の下・・・詰まりは胸の上部にあることになる」
女「ふむふむ」
女「股間部と胸部だ」
男「ということは必然的に鎖骨も隠れがちになる・・・分かるかな?」
女「ああ。成る程、少しは分かってきたぞ」
男「ではそのまま付いてきて貰おう。――隠れがちな鎖骨。しかし、だ。隠されるのは胸部であって鎖骨ではない」
女「その通りだな」
男「と言うことは、鎖骨というのは無防備になりやすいということだ」
女「まぁ、必然的に、な」
男「服の構造上、鎖骨は立った状態から前かがみになると鎖骨付近が露わになりがちである」
女「前かがみになる事は少なくはないな」
男「そう。そこがポイントだ。隠されているのに日常的に見えがちな部分・・・それが鎖骨なのだよ。それこそが鎖骨の魅力なのだ」
女「でもそれは他の部分にも言えることではないのか?」
男「そう。太腿などにも十分この説が通用する」
女「だろうと思ったよ」
女「ん? どういうことだ」
男「鎖骨等が顕になる時・・・それは隠されるべきところが見えそうになる瞬間でもある」
女「ほうほう」
男「その二つの魔力に導かれて男は視線が釘付けになるのだ」
女「・・・ふむ。勉強になるな」
男「いや、受け身になってはいけないぞ」
女「? と言うと」
男「受け身にならず、反論や修正論を言うべきだと言っているのだよ」
女「反論と言われてもね」
男「男の感覚で考えるんだ」
女「ううむ・・・」
男「まぁ、女性が一朝一夕で分かるようなものでもないと思うがな」
女「確かに難しいみたいだよ、私には」
女「ガールズトークを織り交ぜるというのはどうだい?」
男「いい案だ。早速話題を振ってくれ」
女「それでは。――最近暑いな」
男「そうだな。夏めいた風が吹いて憂鬱になるばかりだよ」
女「そうだな。私も夏は嫌いだ」
男「汗を流すのがなんともね」
女「汗を流すのは常日頃やっていることじゃないか」
男「流す量が半端じゃなくなるだろう? 家で涼んでいたくなる季節だよ」
女「そうか。ここで私の話題だ」
男「何だ」
女「暑くて汗をかくような夏の日はどういうスタイルで寝る?――と言ったところかな」
男「ほうほう。では先ず話題提供者から話してもらおうか」
女「私は下着にキャミソールかな」
男「ほっほう・・・」
男「食いつくさ、食いつくものだよ女性の私生活というのは。男にとっちゃ神秘も神秘だ」
女「ボーイズトークの融合か。いい傾向にあるみたいだ。さあ話を続けるといい」
男「ピンクか?ピンクのフリフリか?」
女「いいや。男で言うランニングシャツみたいなものを着用してるね。着やすくていいんだ」
男「ほう・・・それもそれで有りだな」
女「ちなみに今も着てる」
男「見せて欲しい。見せて欲しい」
女「即答な上に二回も言うとは・・・。やれやれ困った性欲の塊だ」
男「何と言われても性欲には勝てない。それが男だ」
女「困った性別だな」
男「ああ。日々愕然としているよ。なんで男に生まれたんだろうと」
女「・・・それはもう精神学的な話になってくるんじゃないだろうか」
男「それはさて置き。キャミソールだキャミソール」
女「ええい、急かすんじゃない。まだ見せるとも言ってないのに」
女「いや、見せないとも言ってないが」
男「見せてくれないのか・・・」
女「そんな世界の終わりみたいな顔をするんじゃない。――全く、見せてやらなきゃいけない気がしてきたじゃないか」
男「作戦通りだ」
女「真顔で言うな。私の母性が泣いている」
男「しかし母性には抗わないほうがいい。女性の象徴とも言える母性だ。」
女「こんな形で利用されてはかなわないよ」
男「まぁまぁ。別に全裸になってくれと言ってるわけでもなく、キャミソールを見せて欲しいと言ってるだけだ」
女「ううむ。そう言われると別に恥ずかしくもないな」
男「というわけで頼む」
女「やれやれ。仕方がないね」
女「・・・ブラウスのボタンを全部外すとかはやめてくれよ」
男「そんなわかってないやり方はしない」
女「わかってない・・・?」
男「チラリズムだよチラリズム。全体像が見えるより、一部から全体像を想像するほうが興奮を覚えるのだ」
女「鎖骨への性的魅力もそれにはいるのかな?」
男「そうだったな。忘れていた」
女「――で、どうするんだ?」
男「先ずはそのスカートに入っているブラウスの裾を出してもらおう」
女「裾下から見るのか?」
男「ああ」
女「よくわからないな」
男「分かるようになればボーイズトークも軽々とできるようになるだろう」
女「ほう・・・。じゃあ分かるように善処しよう」
男「ああ、そうするといい」
男「ああ。これだけでも興奮を感じ得ないな」
女「そういうものなのか?」
男「そういうものなのだ」
女「で?」
男「で?」
女「いや、私がこれからどうすればいいのか聞きたくてな」
男「ブラウスの裾を上にあげて欲しい」
女「こうか?」
男「――ふむ、良い絵面だ」
女「褒めているのか?」
男「褒めるだなんてとんでも無い。感動してるんだよ」
女「興奮の間違いじゃないのか?」
男「ははは、一本取られたね。これは」
男「腹部だ」
女「女性の体を触るのに無許可でいいのかな?」
男「ああ・・・悪かった。あまりに綺麗でね。キャミソールの上からでもよく分かる」
女「ふむ、何ならキャミソールを上に上げてもいいんだぞ?」
男「なんとも嬉しい提案だな」
女「腹部を見せるぐらいどうってことはない」
男「じゃあお言葉に甘えて――――」
女「どうだ?それなりに運動はしているから醜くは無いはずだが」
男「良いものだと思うぞ」
女「有難う。素直にその言葉は受け取っておくよ」
男「おおっと。やれやれキャミソールを見るつもりが腹部の観察ばかりしてしまっていた」
女「本当にね。本来の目的と違うとこをしているなんて良くあることではあるけど」
男「ちょっと脱線しすぎたかな」
女「やっと自分のを話すつもりになったか」
男「ああ。と言っても全然面白くもなんとも無いぞ」
女「ああ。構わない」
男「パンツ一丁だ」
女「私と変わらないな」
男「そうだな。しかし上半身裸というのは男性ならではだぞ」
女「そうか?女性も別に上半身裸で寝るのも珍しくはないが」
男「そうなのか」
女「そうだが」
男「止めておいたほうがいい・・・乳房が垂れてしまう」
女「ううむ、まぁ確かに」
男「そんなに全裸で寝たいのなら、ブラジャーの役を引き受けたいね」
女「ブラジャーに役なんてあるものか」
女「どうした?」
男「ブラジャーというのは元々、女性の乳房を支える職業の事を指していた。これは常識だよ?」
女「そうだったのか」
男「ああ。ルネサンス運動と称してこの職業をどうにか復活させて欲しいものだよ」
女「ふぅむ。しかしそれはそれで手が疲れないか?」
男「しかし手に感じられる幸せと差し引き零だと思うよ」
女「それが職業となり、日常となればその幸せも一般化するんじゃないかな?」
男「確かに。慣れてしまえば幸福は感じられないかもしれないな」
女「先程言ったように、見れないからこそ興奮するんだろう?」
男「ううむ・・・」
女「復活しないってことは多分そういう事なんだと私は思うよ」
男「やれやれ、優秀な生徒を請け負ってしまったものだ」
女「照れるよ」
女「携帯か?随分と俗物なものを持っているんだな」
男「携帯なんて今や誰でも持ってしまってる時代だよ。個人的には好きじゃないけど連絡用に持たされている」
女「と言うことは、今のメールは連絡じゃあないのか?」
男「まぁ・・・多分、妹からのメールだろう」
女「妹さんと二人暮らしだったんじゃあなかったか?何か急用かもしれない。見たほうがいい」
男「じゃあとりあえず。――――やれやれ、普通に帰宅を促す催促だったよ」
女「一人で心細いのさ。帰ってあげるといい」
男「しかしな、帰ると一人になる人間が居るものでね」
女「・・・ん?私か?私なら気にしないでくれよ」
男「女性を一人置いて帰るほど、まだ廃れちゃいない」
女「変なプライドは捨てたほうが身のためかもしれないぞ?」
男「意味深な忠告だな」
女「一般論を言ったまでさ」
男「それでも、まだ帰るつもりはないけどね」
男「まぁ・・・ほら、なんて言うんだ」
女「なんだ。はっきりと言うがいい」
男「―――一緒にいる時間が楽しいから、だな」
女「なんだ。そんな理由か」
男「そんな理由?ちょっと言い方が悪くないか?」
女「――ああ、悪い悪い。そういうつもりじゃなかったんだが」
男「じゃあどういうつもりだったんだ?」
女「――――私たちは、いつも一緒じゃないか」
男「ははは、そうだったな」
女「ふふっ。少しの間、離れるだけじゃないか。ね?」
男「ん?何をだ?」
女「隠れているもののほうが性的魅力を感じられるって」
男「ああ、言ったな」
女「――じゃあ、少しの間隠されていようかな?」
男「・・・やれやれ、本当に困った生徒だよ」
女「ふふふ、良い生徒と言ったり困った生徒と言ったり忙しいな」
男「誰のせいだ」
女「私のせいかな?」
男「確信犯か」
女「確信犯かも」
男「全く・・・」
女「ふふふっ」
女「さようならじゃなくて、おやすみかな?」
男「そうだな。それがいいだろう」
女「では」
男「おやすみ」
女「おやすみ」
〜fin〜
矛盾点、誤字脱字等有りましたら脳内補完でお願いします。
二人結婚しろ
乙
Entry ⇒ 2012.05.24 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
岡部「ジョン・タイターが可愛さすぎてつらい……」鈴羽「!?」
鈴羽「いやー、いきなり突拍子もないことを言うから驚いちゃってさ」
鈴羽「ジョン・タイターのことを可愛いなんていう人間なんて、きっと君ぐらいのものだよ」
岡部「そうか?」
鈴羽「そうそう。参考までに聞きたいんだけど、岡部倫太郎はジョン・タイターのどこが可愛いと思ってるんだい?」
岡部「ふむ、そうだな……例えば、世界がヤバいってことを@ちゃんねるで必死に説いてるのにまともに相手にされてない所とか」
鈴羽「は?」
岡部「この世界のために一生懸命頑張ってるのに誰にも相手されないジョン・タイターとか……最高ではないか!」
鈴羽「…………」
鈴羽「メールのやり取りしてるんだっけ?」
岡部「その通りだ! ジョン・タイターの言うことを信じているのは、きっと俺ぐらいだ」
岡部「ジョン・タイターは俺だけを信頼し、新たなる事実を打ち明けてくれた。俺だけにだ!」
鈴羽「あのさー、ジョン・タイターって名前的に考えれば男だと思うんだけど?」
岡部「ふっ……甘いぞ鈴羽! ネットで女などと書き込んだら@ちゃんねらどもは間違いなくおっぱいうpだの顔うpだの言う!」
岡部「そのトラブルを避けるために、あえて男の名前を名乗っているのだよ!」
鈴羽(理由は全く違うけどその通りなんだよねぇ。鋭いというべきか、妄想がすごいというべきか)
岡部「それはありえないのだ、バイト戦士よ」
鈴羽「へぇ……なんでそこまで言い切れるのかな」
鈴羽(まさか、私がジョン・タイターだってことを知ってるの? まさか岡部倫太郎はラウンダー!?)
岡部「それは……」
鈴羽「それは?」
岡部「そうでなければ俺が同性愛者になってしまうからだ!」
鈴羽「」
岡部「そうだ。俺は、俺は……ジョン・タイターに恋をしている!」
岡部「数年前に@ちゃんねるで出会った俺たち。だが世界線変動によって、彼女の記憶からその出会いは消されてしまった」
岡部「しかし俺たちは再び@ちゃんねるで出会い、メールをやり取りするような仲になったのだ」
鈴羽(いや、それは未来を救うためなんだけど……)
岡部「これを運命と言わずに何を運命と言うのだろう」
岡部「そしてそんな運命に導かれた二人が……同性であるはずがないのだ!」
鈴羽「…………」
岡部「そうかそうか……ん? バイト戦士よ、顔が赤いではないか。熱でもあるのか?」
鈴羽「えっ?」
岡部「古典的ではあるが、おでこ同士で熱を測ってやろう」
鈴羽「ば、ばかっ……近いよ岡部倫太郎!」
岡部「近づかなければ熱が測れんだろう。おい、暴れるな」
鈴羽「だ、だだだだだだだってぇ!」
いいぞもっとやれ
鈴羽「あう……」
岡部「それじゃ、いくぞ……」
鈴羽「う、うん」
綯「ただいまー!」
鈴羽「な、綯っ!? ちょっと、そんな勢いでこっちに向かってきたら……!」
綯「え?」
岡部「ぐわっ! 俺のケツにシスターブラウンが直撃だと!?」
鈴羽「ちょっと岡部倫太郎、こっちに倒れて来ないでーっ!」
岡部「そんなことを言ってもだな……」バターン
鈴羽「っ!?」
鈴羽「うん……受け身とったから」
岡部「さすがは戦士だな」
鈴羽「どうも。あのさ……そろそろどいてくれない? 恥ずかしいんだけど……」
岡部「おわぁあああっ! お、俺はなんてことを! すまない!」
鈴羽「いいよ別に、悪気があったわけじゃないんだしさ」
岡部「愛しのジョン・タイター以外の女を押し倒すとは……俺は最低な男だ!」
鈴羽「……私には謝る気ないわけ?」
岡部「いや、そういうわけではないぞバイト戦士よ! 本当にすまなかった!」
鈴羽「もういい……」
岡部「?」
天王寺「おい、お前ら……綯の前で盛ってんじゃねぇぞ!」
岡部「ミ、ミスターブラウン! ここはひとまず撤退する!」
天王寺「やれやれ、あいつは本当に女たらしだな……」
鈴羽「……ばか」
岡部「ゼーハー、ゼーハー……鳳凰院凶真、ただいま帰還したっ!」
まゆり「どうしたのオカリン、そんなに息を切らして……」
ダル「これだから身体能力が低い奴は困る」
岡部「お前にだけは言われたくないぞ!」
紅莉栖「どうせブラウン管工房で何かやらかして怒られたんでしょ」
ダル「うんうん。オカリンざまぁ」
岡部「貴様ら……ラボの創設者に向かってよくもそんな事が言えるな」
ダル「創設者(笑)」
紅莉栖「はいはいワロスワロス」
ダル「オカリンにも春が来たんですね。リア充爆ぜろ」
まゆり「でもでも、ジョン・タイターさんって男の人じゃないの?」
紅莉栖「男でも漆原さんみたいな人なら……」
ダル「なにさりげなく爆弾発言してるんすか牧瀬氏」
紅莉栖「じょ、冗談に決まってるじゃない!」
まゆり「るか君は可愛いからねぇ」
ダル「それは同意」
ダル「だってどんな外見なのか知らないんだろ? よくそんな人のこと嫁だとか言えるよなオカリン」
紅莉栖「もしかしてSERNの陰謀を知ったせいで脳にショックを与えてしまったのかしら」
ダル「それはありえる」
まゆり「えぇっ! オカリン病気なの……?」
紅莉栖「海外にいい病院があるんだけど……紹介しましょうか?」
岡部「いいだろう……そこまで言うのなら実際に会ってやろうではないか、ジョン・タイターに」
紅莉栖「どうやって? かなりガード硬いと思うんだけど」
紅莉栖「SERNにとっては消しておきたい相手かもしれない」
ダル「どうだろ。もし本当に邪魔だと思うなら……掲示板に書き込みさせない、ぐらいやるんじゃねSERN」
紅莉栖「うーん、確かに……」
岡部「直接会わないと渡せない情報がある、とでも言えばいいだろう」
岡部「メール送信……と。あとは返信を待つだけだ、首を洗って待っているがいいぞ貴様ら」
ダカライマー イチビョウゴトニー
岡部「きたか! どれどれ……」
岡部「馬鹿なっ!? なぜだ、なぜ会ってくれないのだ……ジョン・タイターよ!」
紅莉栖「ま、こうなるわよね」
ダル「ですよねー」
まゆり「オカリン……」
岡部「ちくしょう、ちくしょおおおおおっ!」
ダル「オカリン涙ふけよ」
まゆり「きっと何か理由があったんだよ、会えない理由が」
岡部「同情なんてやめてくれ! うわあああああああああっ!」ダッ
ダル「おいオカリン、どこ行くん?」
紅莉栖「待ちなさい岡部!
岡部「俺のことは放っておいてくれ!」
岡部「だが、それは俺の一方的な思い込みだった」
岡部「当然だな。冷静に考えてみれば分かるじゃないか」
岡部「…………」
岡部「一人で舞い上がって、バカみたいだな……俺」
岡部「こんな日は……こんな日は、走ってすべてを忘れよう! うおおおおおおおおっ!」
岡部「フゥーハハハッ! 俺は、風になったぞぉおおお……ってまずい、曲がり角から人が出てきた! 避けてくれぇええ!」
「えっ、ええええっ!?」
岡部「ダメだ、ぶつかる……!」
どーん
鈴羽「岡部倫太郎!?」
岡部「怪我はないか?」
鈴羽「平気、鍛えてるからね。君こそ大丈夫?」
岡部「あぁ……む、このケータイはあーうー製か。ん? お前のケータイはあーうーじゃなくてsocomoだろ?」
鈴羽「そうだっけ? そういえば岡部倫太郎、こんな所で何してるの?」
岡部「あぁ、実はな……」
岡部「そうなんだ」
鈴羽「しかし走って忘れようだなんて……ちょっとカッコイイかも」
岡部「そうか?」
鈴羽「よーし、それじゃあ私と走ろう! 一人で走るより、二人で走った方が楽しいよ」
岡部「ふ……ならば我がスピードを見せてくれる!」
岡部「はぁっ、はぁっ……ま、待ってくれ鈴羽!」
鈴羽「ちょっと、もう限界なの? 情けないなぁ」
岡部「どう考えてもお前の体力がおかしい、ゴリラか」
鈴羽「女の子に向かってゴリラはないでしょ……そんなんだからフラれちゃったんじゃない?」
岡部「ぐ」
鈴羽「あ、ゴメン……」
岡部「いいさ、もう気にしてない。ジョン・タイターのことは忘れる」
鈴羽「えぇっ!?」
岡部「なぜそんな反応をする?」
鈴羽「だって、君とジョン・タイターが協力しないと……世界がヤバいんじゃないの?」
岡部「あぁ、協力は続けるさ。恋愛うんぬんを忘れるというだけだよ」
鈴羽「そっか……安心したような、悲しいような」
岡部「??? 変なヤツだな……」
岡部「気になるのか?」
鈴羽「まぁねー、何だか面白そうだし」
岡部「そんなものはない」
鈴羽「えっ」
岡部「直接会うための口実だよ」
鈴羽「なんだー、残念……おっと、そろそろ帰らないとね」
岡部「もうこんな時間か」
鈴羽「今日は疲れただろうし、私のMTBの後ろにのせてあげるよ」
岡部「助かる。もう一歩も動けん……」
岡部(あれ、タイターに直接会わないと話せないことがあるなんて話……鈴羽にしたか?)
岡部「お邪魔するぞ」
鈴羽「いらっしゃーい……ってなんだ、岡部倫太郎じゃん」
岡部「なんだとはひどい言い草だな」
鈴羽「あはは。で、今日はどうしたの? 店長は綯と一緒にお出かけしてるんだけど」
岡部「それは好都合だ。今日はお前に話があるんだ」
鈴羽「ん? もしかしてデートのお誘いかな?」
岡部「な、何を言っているのだっ!」
鈴羽「おやぁ、顔が真っ赤だよ岡部倫太郎」
岡部「そんなことはないっ!」
鈴羽「にやにや」
岡部「えぇいっ、話を進めるぞ!」
鈴羽「えっ?」
岡部「これからする話は、誰にも聞かれるわけにはいかないのでな」
岡部「どうせ客なんて来ないんだ。ミスターブラウンも帰りが遅くなるんだろう?」
鈴羽「そりゃそうだけどさ……」
岡部「よし、閉めたぞ」
鈴羽「どうなってもしらないからねー」
岡部「ふ、何も問題はないさ。なぜなら俺は狂気の――」
鈴羽「いいから話を進めてよ」
鈴羽「!」
鈴羽「何の話かと思えば……なにその冗談。そんな冗談を言うために店を閉めたのかな?」
岡部「冗談ではない。証拠もある」
鈴羽「証拠? それなら見せてもらおうかな」
岡部「覚えているか? お前は俺に『ジョン・タイターに直接会わないと話せないことって何だったの?』と聞いたな」
鈴羽「言ったかもね。で、それがどうかしたのかな?」
岡部「俺はお前に、タイターと直接会わないと話せないだの何だの……言った覚えはないんだが」
鈴羽「あー、それはね……聞いたんだよ、椎名まゆりに」
岡部「まゆりはお前にそんな話をしてないと言っている」
鈴羽「あれ、橋田至だったかな?」
岡部「ダルも同様だ、残念ながらラボメン全員に確認済みだよ」
鈴羽「っ……」
鈴羽「…………」
岡部「ジョン・タイターのメールアドレスはjohn-titor@ezweb.ne.jp」
岡部「ezwebと言えば、あーうーのケータイだな。鈴羽は持ってたよな、あーうーのケータイ」
岡部「そのケータイを見せてもらえば全てが分かる」
鈴羽「……やれやれ、さすがは岡部倫太郎だね」
岡部「認めるのか、ジョン・タイターだと」
鈴羽「まさかこんなことになるなんて思ってなかったけど、まぁいいか……」
鈴羽「そうだよ、私がジョン・タイターだ」
鈴羽「教える? 私が持ってる情報を知りたいだなんて……まさか、君はラウンダーなの?」
岡部「ラウンダー? 何だそれは」
鈴羽「その様子だと違うみたいだね。今の台詞は忘れて」
岡部「? あぁ……では教えてくれ」
鈴羽「…………」
岡部「なぜ俺と直接会ってくれなかったのだ!」
鈴羽「へ?」
鈴羽「いや、それには理由があってさ……」
岡部「分かっている、SERNに狙われる可能性があるからだろう」
鈴羽「まぁね……って分かってるじゃん岡部倫太郎」
岡部「だが俺はお前のことが好きで、好きで仕方がなかったんだ……」
鈴羽「はぁ……@ちゃんねるやメールでのやり取りで人を好きになるなんて、君って変だねぇ」
岡部「男のふりして未来からやってきたとか言う奴に言われたくないな」
鈴羽「でもそういう所が好きなんでしょ?」
岡部「まぁ、な……」
岡部「Zzz……」
鈴羽「ねぇ、起きて。起きてってば、遅刻するよー!」
岡部「Zzzzz……」
鈴羽「もう、起きない人には……こうだー!」バキバキバキッ
岡部「ぐわあああああああっ! 朝から関節技とか勘弁してくれ……」
鈴羽「目は覚めた? 朝ごはんできてるから、早く顔洗って着替えてきなよー」
岡部「あぁ……」
鈴羽「はい、召し上がれ」
岡部「あれからもう何年も経ったんだな……」
鈴羽「ん? いきなりどうしたの?」
岡部「ふと、思い出してな」
鈴羽「まさか君が私を孕ませるとはねぇ。あの頃の君ってば、毎晩激しかったよホント……」
岡部「う……思い出すだけで恥ずかしくなってくるな」
岡部「しかし、鈴羽を孕ませることで世界線が大きく変わるだなんて……何が起こるか分からないものだな」
鈴羽「まったく……私が消えてもおかしくなかったんだよ? 未来から来た人間を孕ませるだなんてさ」
岡部「鈴羽が可愛すぎて押し倒してしまった。反省はしている」
鈴羽「ま、それで未来も変わったんだからいいけど……」
岡部「終わり良ければなんとやら、だな」
ぶっちゃけ眠くなったんだ、うん
あんだーりん2巻が出たらしいから早く読まないとな・・・
Entry ⇒ 2012.05.24 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
アルビノ少女「どこからきたの?」
アルビノ「人懐っこいね。街の誰かの犬かな?」
仔犬「あんあんっ!」パタパタッ
アルビノ「でも、ここに来たらダメだよ。」
仔犬「きゃぅん?」
アルビノ「この森にはこわーい魔女がいてね、目が合うと石にされちゃうんだよ。」
仔犬「きゃうっ!」パタパタッ
アルビノ「まぁ、私のことなんだけどね。」
仔犬「くぅん?」
アルビノ「紐がついてるし、お前迷子なの?」
仔犬「わふっ!」
アルビノ「あ、首輪にネームプレートがついてるね。」
仔犬「あんっ」
アルビノ「お前、仔犬って、言うんだ。」
仔犬「きゃんきゃんっ」
アルビノ「お前のご主人、探してあげようか?」
仔犬「わんっ!」
アルビノ「ちょっと、待っててね。」
仔犬「わふぅ?」パタパタ
アルビノ「なんで目隠ししてるかって?」
仔犬「あんあんっ!」
アルビノ「私と目を合わせた人は石になってしまうから、そうしないためだよ。」
仔犬「わぅ?」
アルビノ「もっとも、お前のご主人に会うつもりはないけどね。」
仔犬「あぅっ!」
アルビノ「じゃあ、いこうか。」
仔犬「わんわんっ!」クルクル
アルビノ「お前は元気だね。」
仔犬「あぅ?」
アルビノ「お前に期待できるわけもないか………」
仔犬「あんっ!」パタパタッ
アルビノ「仕方ないね、“千里眼”」
仔犬「きゃうん?」
アルビノ「これはね、遠くのものを見ることができる魔法なんだよ。………近くに人がいるね、お前を探しているのかな?」
仔犬「わんわんっ!」
アルビノ「うん、わかったよ、ついておいで。」
仔犬「きゃんっ!」
青年「おーい!仔犬ー、どこだーっ!?」
青年「………いないな。」
青年「たぶん、こっちの方に走っていったと思うんだけど………」
青年「まったく、あのチビ、こっちの制止も聞かずに走っていっちゃうんだもなぁ………」
青年「ここら辺はアンマリ人の気配がしないな………」
青年「まぁ、森のなかだから当たり前だけど、人が手を加えたっていう形跡もない。」
青年「もったいないよなぁ、こんなに綺麗なのに。」
青年「いや、手が加えられてないからこそ、綺麗なままなのか………」
青年「どっちでもいいや。おーい!仔犬ー!でてこーい!」
アルビノ「向こうのブツブツ言ってるのが、お前のご主人?」
仔犬「あんあんっ!」パタパタッ
アルビノ「そうみたいだね。じゃあ、お行き。」
仔犬「あぅ?」
アルビノ「私はなるべく人とは関わりたくないから。お前をここまで連れてきたのだって、森の奥まで探されたら困るからだよ。」
仔犬「わぅ………」
アルビノ「わかったなら、ご主人のところに行って。もう迷子になるんじゃないよ。」
仔犬「あんっ!」タッタッタッ
アルビノ「元気でねー。」
仔犬「あんっ!」パタパタッ
青年「おー、チビ!どこいってたんだよ、このやろー。」グリグリ
仔犬「きゃんきゃんっ」ペロペロ
青年「ははっ!くすぐったいよ。」
仔犬「あぅん!」
青年「よし、お前も見つかったことだし、もう今日は散歩おしまいにするか。」
仔犬「あぅっ!」グイグイッ
青年「どうしたんだよ、服の裾引っ張って。」
仔犬「あぅあぅっ!」グイグイッ
青年「………着いてこいってことか?」
仔犬「わふっ!」
アルビノ「よかった。ちゃんと会えたみたいだ。」
アルビノ「私も帰ろうっと。」
アルビノ「今日はたしか、夜に白猫が来るはずだし……」
アルビノ「………薬の材料は採集しておいた方がいいかな。」
アルビノ「もう目隠しははずしても………っ!?」
アルビノ「あの人、こっちに来てる?」
アンアンッ!
アルビノ「どうしよう……」
コッチニナニカアルノカ?
キャン!
ウオー,オオキナキダナー
アルビノ「………隠れなきゃ!」バタバタ
ドテン
アルビノ「きゃっ!」
青年「うわっ!」
仔犬「あんっ!」
青年「あの………」
アルビノ「ひゃ、ひゃいっ!」
青年「大丈夫ですか?」
アルビノ「だ、大丈夫でふっ!ちょっと、つまづいただけですっ!」
アルビノ(お、落ち着け私っ!目は合わせることはないんだから、大丈夫。落ち着け落ち着け………)
仔犬「あんあんっ!」
仔犬「わぅんっ!」ガバッ
アルビノ「きゃっ……」ドシャ
青年「あー、こらっ、チビ!ダメじゃないか急に飛び付いたりしたら。………すみません、大丈夫ですか、お怪我はしていませんか?」
アルビノ「は、はいっ!け、怪我なんかしてませんっ!」
青年「本当にそうですか?お顔がやや赤いようですが………それに、包帯で目を覆ったままですと、危ないですよ?」
アルビノ「き、気にしないでくださいっ!」
アルビノ「さ、さわらないでくださいっ!」パシッ
青年「っ………!」
アルビノ「………あ、ご、ごごごめんなさいっ!」
青年「いえ、大丈夫です。」
アルビノ「腫れたりしていませんか?骨とか折れていませんか?それからそれから………」アセアセ
青年「落ち着いてください。女の子に叩かれた程度で骨が折れるほど、柔ではありませんから。」
仔犬「わふっ!」
アルビノ「は、はいっ!」
青年「外したくない理由でもあるんですか?」
アルビノ「えぇっと………わ、私、生まれたときから目が見えなくて………」
青年「それなら、目隠しする必要はない気がしますが……」
アルビノ「ひ、瞳が変だから……見てほしくないんです。」
青年「そういうものですか………」
アルビノ「は、はい、そういうものなんです。」
アルビノ「あ………えっと、その………こ、この森の奥に住んでるんです。」
青年「えぇっ、こんな不便なところにですか?」
アルビノ「………そう不便ではないですよ。」
青年「そうですか………とすると、どうしてここに?」
アルビノ「その子が………」
仔犬「わぅ?」
アルビノ「森に迷いこんでいたので、せめて入り口までは送っていってあげようかと。」
青年「………その目で?」
アルビノ「はい、森の中でしたら、匂いや質感でおおよその場所はわかりますから。」
アルビノ(本当は見えているんだけど。)
青年「待ってください。」
アルビノ「まだ、なにか?」
青年「その……コイツ送ってくれたお礼に、今度は僕がアナタを送りましょうか?」
アルビノ「い、いいですっ、ひ、一人で帰れま……きゃうっ!」ドテッ!
青年「なれている場所とはいえ、やっぱり危ないですよ。」
アルビノ「ほ、本当に大丈夫ですから………」サスサス
青年「いえ、このまま何度もアナタがコケるのを、見過ごすのも嫌ですので、送りましょう。手を借りますね。」
アルビノ「あ、ありがとうございます。」
アルビノ(どうしようどうしようどうしよう)
アルビノ(目が見えない振りをしたのが裏目に出た………)
アルビノ(なんか、手とか繋がれてるし………)
青年「あの……」
アルビノ「ひゃ、ひゃいっ!」
青年「道は間違ってないですか?」
アルビノ「ま、間違ってないと思います………このまま、まっすぐいけば、着くはずです」
アルビノ(………こうしてヒトと過ごすのっていつ以来だったかな)
アルビノ(暖かいなぁ………)
青年「開けた場所に一軒、家があったのですが、ここで間違いないでしょうか?」
仔犬「あんあんっ!」パタパタッ
アルビノ「はい、間違いないです。送っていただき、ありがとうございました。」
青年「一人で大丈夫ですか?」
アルビノ「はい………」
アルビノ(この人がいなければ、目隠しをとることができるから、普段通りに過ごすことができる。)
アルビノ(だけど、お礼もしないままっていうのはよくないよね……)
アルビノ「あ、あのっ!」
青年「はい、なんでしょうか?」
アルビノ「せっかくここまで来たのですから、よ、よろしければお茶でも飲んでいきませんか?」
アルビノ「ど、どうぞ」カチャ
青年「ありがとうございます。………面白い香りですね。」
アルビノ「近くで採れるハーブをお茶にしたんです。」
青年「そうなんですか。………それにしても、アナタはスゴい人ですね。」
アルビノ「………何がですか?」
青年「目が見えないというのに、お茶を入れることもできるし、森の中を歩くこともできる。」
アルビノ「………な、慣れてますから。」
アルビノ(“千里眼”の応用で、周りは見えてるんだけど、教えるわけにはいかないよね。)
アルビノ「はい、基本的には一人です。」
青年「それは大変でしょう。こんな人のいない場所よりも、街に住んだほうが生活しやすいんじゃないですか?」
アルビノ「街は、ちょっと………。私、ヒトとは少し違うから。」
青年「………その髪のことですか?」
アルビノ「はい。真っ白で気持ち悪いでしょ?」
青年「そうですかね?雪みたいで、綺麗だと僕は思いますよ。」
アルビノ「………アナタは優しいんですね。」
アルビノ(この人はいい人だ。普通、ヒトは自分と違うものを気味悪がる。)
青年「そうなんですか?」
アルビノ「一週間に一回、優秀なハウスキーパーが来るんです。」
青年「………寂しくはないんですか?」
アルビノ「それも、慣れてますから。前は一年おきくらいにしか来なかったんですから。」
青年「そう、ですか………」
アルビノ「お粗末様でした。」
青年「カップは流し台まで運びましょうか?」
アルビノ「いえ、おかまいなく。………引き留めておいて、なんですが、はやく帰った方がよろしいですよ。この森、夜になると危ないですからね。」
青年「夜の森はどこでも危ないでしょう。」
アルビノ「それもそうですね。」
青年「では、暗くなる前に僕はこれで。」
アルビノ「はい、気を付けてくださいね。」
青年「あの……」
アルビノ「どうかなされましたか?」
青年「もし、迷惑じゃなかったら、ここに遊びに来てもいいですか?」
アルビノ「え?」
青年「いくらハウスキーパーさんが来るとはいえ、こんな森奥に一人きりというのは寂しいでしょう?」
アルビノ「……………」
青年「僕なんかでよければ、話し相手になれたらなーって………」
アルビノ「……………」
青年「なんて、押し付けがましかったですね。ごめんなさい。」
青年「え?」
アルビノ「わ、私、こんな眼だし、街に出ることなんてないから、お話しする相手とかいないんです。」
青年「…………」
アルビノ「だから、迷惑なんかじゃないです………」
青年「つまり、またここに来てもいいと?」
アルビノ「はい……お暇があればまた………」
仔犬「あんあんっ!」
アルビノ「………この子も一緒に。」
青年「わかりました。また今度、コイツと遊びに来ます。」
仔犬「あんっ!」
リビング
アルビノ「今日は楽しかったな………」
アルビノ「あの人はいい人だった。」
アルビノ「また、遊びに来るって言ってくれたし……」
アルビノ「お部屋のお掃除とかしなくちゃ。」
白猫「どうせ、途中で飽きて、ニャーに投げ出すのが見えてますニャ。」
アルビノ「し、白猫っ!?」
白猫「どうも、ですニャ、お嬢。」
アルビノ「い、いつ来たの?」
白猫「お茶してる辺りくらいからですニャ。」
アルビノ「気づかなかった………」
白猫「ニャーは猫ですからニャ、気配を消すにゃんてオチャノコサイサイですニャ。」
白猫「お嬢以外にもいたから、気配を消すのは当然ですニャ。」
アルビノ「アナタは普通の猫のふりしてたらいいでしょ。」
白猫「優秀にゃハウスキーパーですから、そのようにゃ真似はできませんニャ。」
アルビノ「聞いてたのね………」
白猫「まぁ、それがにゃくとも出てはいきませんニャ。生来、犬っころとは、気が合いませんニャ。」
アルビノ「あの仔犬はかわいかったじゃない。………と、なんか、飲み物だしてあげるね。ミルクでいい?先週アナタが持ってきてくれたヤツだけど。」
白猫「古くなってるのをニャーで、処分しないでほしいですニャ………」
アルビノ「なにがー?………あ、マッチきれてる。」
白猫「ニンゲンを家に招き入れるにゃんて、普通じゃ考えられにゃいことですニャ。」
アルビノ「勝手についてこられたんだよ。………仕方ない“粉火炎”」ボォォ
白猫「にゃーにが、“勝手についてこられた”ですかニャ。仲良くお手々つにゃいで歩いてたくせに………」
アルビノ「し、仕方ないじゃない。“千里眼”で見てると、俯瞰図でしか見れないから足元が見えにくいんだし」コポコポ
白猫「へーへー、そうですかニャ。」
アルビノ「なに、その態度。新しい薬の実験台にでもなる?」コトコト
白猫「勘弁ですニャ。お嬢の作った薬はどれもこれも、効きがよすぎるからニャ。」
アルビノ「ハイハイ。………よし、できた。」
白猫「にゃにを作っていたんですかニャ?」
アルビノ「白猫用のホットミルク。」
白猫「ニャーは猫舌にゃんですけど………」
白猫「んー、特ににゃいですニャ。」フーッフーッ
アルビノ「薬の評判は?」
白猫「上々でしたニャ。ただ、新しい薬……不眠薬でしたかニャ?あれは不評でしたニャ。」フーッフーッ
アルビノ「なんで?」
白猫「服用者いわく、三日は眠れにゃかったそうですニャ。そして、反動で丸一日眠ってしまったと………」フーッフーッ
アルビノ「そういう効果の薬なんだけどな………」
白猫「使用する側としては、1日くらい眠気が吹き飛ぶレベルを求めていたみたいですニャ。後は副作用を軽微なものにしてほしい、と。」フーッフーッ
アルビノ「効能を弱めれば副作用も弱まるだろうから、次からはそうする。………さっきから何してるの?」
白猫「ミルクを冷ましてるんですニャ。」ズズズッ
白猫「あちっ!」
アルビノ「不眠薬の?」
白猫「そーですニャ。眠らずの薬ではなく、覚醒させる薬として、覚醒薬とかどうですニャ?」
アルビノ「却下。その名前はなんか危うい気がする………」
白猫「常用者はボロボロの廃人になっていそうですニャ。」
アルビノ「ダメ、ゼッタイ。」
白猫「言ってみただけですニャ。」
白猫「まず、商工会の方が傷薬と万能毒消しを小瓶詰めで、30ずつ。」
アルビノ「今回は少ないね。」
白猫「ここのところ平和ですからニャ。次に魔女会の方から精神統一薬を、樽2つほど。」
アルビノ「うげ、こっちは多いの………」
白猫「新人育成の時期ですからニャ。仕方にゃいですニャ。後は個人の依頼ですニャ。魔女長の婆さんが腰痛の薬、海の町に住んでるジジィが精力剤、 他はいつも通りですニャ。」
アルビノ「お婆ちゃん、また、腰が悪くなったんだ………」
白猫「よる年波には勝てにゃいと言ってましたニャ。」
アルビノ「お爺さんは………うん。」
白猫「よる年波には勝てにゃいとのたまってやがりましたニャ。」
アルビノ「水でいいか。」
白猫「プラシーボ効果が起きないかが不安ですニャ………」
白猫「すでに氷箱に入れておりますニャ。卵はやや古いのでお早めに、とのことですニャ。」
アルビノ「うん、わかった。………本は?」
白猫「お嬢の趣味に合いそうにゃのが、にゃかったから、今回は抜きですニャ。」
アルビノ「えー………」
白猫「文句があるなら、自分で街に出て買ってくればいいじゃにゃいですか。」
アルビノ「わかってて言ってるでしょ。」
アルビノ「変わるわけないよ。うっかりで誰か石にしちゃったりしたら、私、退治されちゃうよ。」
白猫「婆さんが頑張ったお陰で、魔女にもようやく人権みたいなものができたんですけどニャ。」
アルビノ「あくまでヒトに危害を加えない限り、でしょ。私にそのつもりがなくても、この眼はお構い無しだからね。」
白猫「つくづく、不便ですニャ。」
アルビノ「呪いだからね、仕方ないよ。」
白猫「そう、割りきれるお嬢はスゴいですニャ。」
アルビノ「何年、私がこの眼と付き合ってると思うの?」
白猫「何年ににゃるんですかニャ?」
アルビノ「さぁ?忘れちゃった。」
白猫「いただきますニャ。」
アルビノ「なにか食べたいものはある?」
白猫「お嬢に料理のリクエストをして、希望通りにニャったことがにゃいので、にゃんでもいいですニャ。」
アルビノ「じゃあ、玉葱フルコースとかどう?」
白猫「………魚が食べたいですニャ。」
アルビノ「魚ね、おっけー。」ルンルン
白猫「はぁ………」
アルビノ「できたよー。」
白猫「魚が食べたいといったはずにゃのに、にゃんでオムレツににゃってるんですかニャ………」
アルビノ「なんか、卵が私に食べて、っていってる気がした。」
白猫「そうですかニャ………」
アルビノ「じゃあ、手を合わせて」パチン
白猫「ニャ」プニン
アルビノ・白猫「「いただきます」」
白猫「にゃんですか?」クンクン
アルビノ「ニンゲン嫌い?」モグモグ
白猫「嫌いですニャ。」
アルビノ「ふーん、そっかー………」カチャカチャ
白猫「お嬢はどうなんですかニャ?」
アルビノ「私?んー……わからない。だけど、嫌いじゃないと思う。お昼にあった人みたいに優しいヒトもいるし。」
白猫「それはごく一部のニンゲンですニャ。それに、お嬢は魔女であることを、あのニンゲンには隠していたでしょ?」
アルビノ「そうだった………次会うときに、教えてもいいかな?」
白猫「ニャー以外の話し相手を欲しくにゃいにゃら、教えてもいいんじゃにゃいですかニャ?」
アルビノ「冗談だよ。それくらいはわかってる。」
白猫「にゃにをですか?」
アルビノ「本当のことを話しても、あの人なら変わらずに接してくれないんじゃないかなぁ、って。」
白猫「………夢を見るのも、大概にしてくださいニャ。」
アルビノ「想像するくらいいいじゃない。」
白猫「お嬢の手料理って言うのがにゃー……」
アルビノ「なに?私の料理になにか、文句でもあるの?」
白猫「お嬢は味覚に味を合わせるんじゃにゃくて、味に味覚を合わせますからニャ………」
アルビノ「美味しければいいじゃない。それに、味覚を誤魔化す薬の研究にもなるし。」
白猫「そんにゃ研究をするくらいにゃら、料理の研究をするようにしてくださいニャ………」
アルビノ「今日は何をしようかな。」
アルビノ「白猫も、行商に行っちゃったし………」
アルビノ「もうちょっとゆっくりしていってもいいのになぁ。」
アルビノ「薬でも作るか。」
アルビノ「………あの人、来たりしないよね。」
アルビノ「ここを、こうして………」グルグル
アルビノ「後は煮詰めていけば完成っと。………“粉火炎”」ボォォ
アルビノ「………あ、もうこんな時間か。お昼ご飯作らなくちゃ。」
アルビノ「………一人だと、食べる気が起きないなぁ。」
アルビノ「ま、食べなくてもいいか。必要ないんだし。」
アルビノ「ニンゲンらしい生活を、ってお婆ちゃんに言われたけどさ。」
アルビノ「無理だよ、そんなの。」
アルビノ「………私、ニンゲンじゃないもの。」
アルビノ「魔女というより、メデューサだよね。」
アルビノ「蛇髪じゃないけど。」
アルビノ「これ、私の力じゃないのに………」
アルビノ「進んで使ったことなんて一度もないのに………」
アルビノ「………私は悪くないのになぁ」
花畑
赤目の幼女「………できた。」
赤目の幼女「花冠、ママの分……これでお揃い。」
ガサガサ
赤目の幼女「………誰?」
少年A「うは、おい、見ろよ」
少年B「なんだよ。」
少年A「あんなところに化け物がいるぜ。」ニヤニヤ
少年C「ホントだ。」ニヤニヤ
赤目の幼女「ち、違うよ、私、化け物なんかじゃないよ?」カタカタ
少年A「なーに、言ってんだよ。」
少年C「俺らと違う姿のクセによぉ。」
少年B「魔女の子供が、化け物じゃないわけないだろ。」
赤目の幼女「違う、違うよ………」カタカタ
少年C「どうやって?」
少年A「こうするんだよ」ブンッ
赤目の幼女「―――ゲホッ」
少年B「うわ、ひでぇ。鳩尾はいってんじゃねーの?」
少年A「いーのいーの、問題なし。相手は化け物なんだぜ?」ドガッバギィ
赤目の幼女「がっ……ゴボォ」ビチャビチャ
少年C「うわっゲロ吐きやがった!」
少年A「きたねぇな……この化け物がっ!」ボゴッ
赤目の幼女「ぐっ………」
少年C「おい、泣き出したぜ」
少年A「でも、やめるつもりなんかねーし。コッチは人間なんだ。化け物に手を抜いたら殺されちまう」ドゴッ
赤目の幼女「うっ!」ドサッ
少年A「よしっ!化け物討伐ぅ!」
少年B「まぁ、恨むんなら、魔女の子供なんかに、生まれた自分を恨むんだな。」
少年C「そーそー、魔女に人権なんかないもんな。まず人間じゃねーんだからよぉ」
赤目の幼女「うっ……うっ……」ユラリ
少年A「んだよ、その目は。まだやろうっての―――」
少年A「……………」カチーン
少年B「お、おい、コイツ!石になってるぞっ!なにしやがっ―――」
赤目の幼女「………え?なに、これ……」カタカタ
少年B「め、目が光って―――」
少年B「……………」コチーン
赤目の幼女「違う、こんなの違う。………こんなこと望んでなんか……」ブンブン
少年C「ひ、ひぃっ、化け物っ、ち、ちかよ―――」
アルビノ「はっ………」
アルビノ「………夢、か。」
アルビノ「忘れるくらい前のことなのに。」
アルビノ「たまに見るんだよね。」
アルビノ「………化け物、か。」
アルビノ「間違ってはないよね。」
アルビノ「さ、お昼寝もしたし、薬作りの続きでもしようっと。」
アルビノ「昼光草が切れてたんだった………」
アルビノ「昨日、集められなかったからなぁ。」
アルビノ「探してみるか………“千里眼”」
アルビノ「……………あ。」
アルビノ「昨日の人だ。」
青年「お前さ、頼むからジッと、しててくれよ………」
仔犬「わぅん………」
青年「お前が元気に走り回ったせいで、迷ったって理解してるか?」
仔犬「わふっ?」
青年「お前、今度言うこと聞かずにどこかにいったら、当分散歩に連れていってやらないからな。」
仔犬「あんっ!」スンスン
青年「返事だけは一人前だな………」
仔犬「くぅ?」ピタッ
仔犬「あんあんっ!」ダッ
青年「言ったそばから走るなよっ!」
仔犬「あんあんっ!」ガバッ
アルビノ「きゃっ!」
アルビノ「いたた……」
仔犬「わぅーん」ペロペロ
青年「待てって言ってる………あれ?」
アルビノ「あ、ど、どうも。」
青年「こんにちは。………僕のこと、わかりますか?」
アルビノ「はい、昨日、お会いした方ですよね。」
青年「正解です。目が見えないのによくわかりましたね。」
アルビノ「耳と鼻には自信がありますので。」
青年「あはは………昨日のお茶のお礼に遊びにいこうと思ったんですけど。」チラッ
仔犬「あんっ!」パタパタ
青年「コイツのせいで、迷子になっていたんです。」
アルビノ「そうだったんですか………」
青年「アナタはどうして?」
アルビノ「えと………森の中を散歩してたら、アナタの匂いがしたので………」
アルビノ(ホントは“千里眼”で見かけたからなんだけど。)
青年「う………僕臭いますか?」
アルビノ「あ、そ、そういう意味ではなくてですね………私、犬並みに鼻がきくから、匂いで個人が区別できるんです。」
仔犬「わふっ?」
青年「え?」
アルビノ「遊びにいらっしゃったのでしょ?」
青年「あ、あー、そうですね。なんだか、アナタにあったことで、目的を達した気分になってました。では―――」スッ
アルビノ「あ、え?ど、どうして、手を………」
青年「アナタが転ばないように、と思ったのですが………迷惑ですか?」
アルビノ「い、いえ、そんなことはないです………。つ、着いてきてくださいね。」
アルビノ(暖かい………)
青年「なんだか、すみません。お礼に来たって言うのに………」
アルビノ「いえ、来てくれて嬉しいです。」カチャ
青年「昨日とは違う香りですね。」
アルビノ「同じものを出すのは芸がないかな、と。前の方がよかったですか?」
青年「あぁ、いえ、これも美味しそうですよ。」
青年「………そうだ。お茶請けにと思ってクッキーを持ってきたんです。」
アルビノ「………クッキー、ですか?」
青年「えぇ、あまり見映えはよくないんですが………」
アルビノ「私は目が見えませんから。味がよければ気にしませんよ。」
アルビノ(確かに形は不揃いだ。手作りなのかな?)
青年「あ、はい。一応、僕が作ったりなんか………」
アルビノ「お上手ですね。」モグモグ
青年「見た目は不恰好なんですけどね。」ポリポリ
アルビノ「型抜きを使わずに手で形作ると、こうなっちゃいますよね。」モグモグ
青年「………えぇ、そうですよね。」
アルビノ「なにか?」モグモグ
青年「いや、よく食べるなぁ、と。もう、半分以上食べてますよ。」
アルビノ「あ、ご、ごめんなさいっ!美味しくて、つい………」
青年「そう言ってもらえると、作った方としては嬉しい限りです。」
アルビノ「もうお帰りになるのですか?」
青年「えぇ、今日は到着したのが遅かったですからね。次は迷わないようにします。」
仔犬「あんっ!」パタパタ
青年「お前のせいで遅くなったんだけど、わかってるか?」
仔犬「わふぅ?」
アルビノ「その様子だとわかってないみたいですね。」クスクス
青年「全くです。」
青年「そうですね………明日は用事があるので来れませんが、明後日なら………」
アルビノ「そうですか………」
青年「クッキーならまた持ってきますよ?」
アルビノ「ち、違いますっ!そ、そんないやしくなんかありませんっ!」
青年「いやー、あれだけ綺麗にたいらげてくれると、作った方も嬉しいですよ。」
アルビノ「うー………とにかく、明後日ですね。今度は私もアナタに負けないくらい………」
青年「どうかされましたか?」
アルビノ「………名前、まだ聞いてませんでしたよね。」
青年「あ、そう言えば………僕は青年って言います。」
アルビノ「私はアルビノと言います。」
青年「こちらこそ。」
アルビノ「………自己紹介ってもっと最初の方にするものですよね。」
青年「なんとなくで、話してましたからね………」
仔犬「あんあんっ!」グィーッ
青年「なんだよ、帰ろうって言ってるのか?」
仔犬「あんっ!」ブンブン
アルビノ「仔犬の言う通りです。早く帰らないと、暗くなってしまいますよ。」
青年「そうですね。では、お邪魔しました。」
アルビノ「はい、また来てください。」
町外れの家
青年「いいか、今日は大人しくここで待ってるんだぞ。」
仔犬「あぅ?」パタパタ
青年「今日は兄さんたちの式典なんだから、お前は連れていけないってこと。」
仔犬「わふ?」
青年「お前が嫌いな人だよ。ほら、こんな顔してる人。」カキカキ
仔犬「ぐるるるっ」
青年「書いた絵に威嚇するなよ………」
青年「まぁ、とりあえず、大人しくしてくれよ。家の中なら好き勝手していいからな。」
仔犬「あんっ!」
青年「じゃ、いってきます」
アルビノ「………はぁ〜」グルグル
アルビノ「退屈だなぁ」グルグル
アルビノ「いつもと変わらないのに」グルグル
アルビノ「なんでだろ」グルグル
アルビノ「んー………」グルグル
アルビノ「………あの人が来ないから?」
アルビノ「そ、そんなことない、よね」シュー
アルビノ「………あ」キューン
ボンッ
アルビノ「ケホッケホッ………失敗した。」
アルビノ「………片付けなきゃ」
青年「兄上、この度はご結婚おめでとうございます」
団長「ぬはははっ!なんだその言葉使いはっ!背中が痒くなるっ!」
青年「結婚に伴いこの街の防衛騎士団の団長様にもなった兄さんに、穀潰しの僕がフランクに話せるわけないじゃないですか。」
団長「ぬはははっ!どの口が言うかっ!お前は私の数倍頭がよいではないかっ!親父殿に頼めば私なんかよりも、ずっと上の地位につけるであろうに」
青年「そんなことないですよ。僕なんかは一介の町人がお似合いですよ。」
団長「ふん、ぬかしおるっ!王都の学術院を首席で卒業しておいて何を言うかっ!」
青年「最後の試験が簡単だっただけですよ。みんな満点をとって仲良く首席になったんです。」
団長「まぁよいっ!今日は式典だ!お前も飲めっ!」
青年「ほどほどにしておきますよ。兄さんもほどほどにしてくださいよ?なんたって主役なんですから。」
仔犬「くぅ………」テコテコ
仔犬「わんっ!」グルグル
ガタンッ
仔犬「わぅ?」ジィー
仔犬「あんっ!」ピョン
仔犬「ぐぅぅ……」ガジガジ
ガタガタ……ガチャン
キィィ……
仔犬「わふっ!」パタパタ
アルビノ「ふぅ………」ガチャン
アルビノ「だいたい片付いたかな。」ゴシゴシ
アルビノ「あとの細かいところは白猫に………」
アルビノ「………ダメだ。明日あの人が来るんだった。」
アルビノ「仕方ない……頑張るか。」
仔犬「あんっ!」パタパタ
アルビノ「お前が手伝ってくれたら………って、あれ?」
仔犬「わふっ!」パタパタ
アルビノ「………どうしてお前がここに?」
アルビノ「リードがついてないね。今日は散歩中じゃないの?」
仔犬「わぅ?」
アルビノ「あの人は?」
仔犬「くぅ?」
アルビノ「……………」
仔犬「あんっ!」パタパタ
アルビノ「ここまで来れたんだから、放っておいても、帰ることできるよね?」
仔犬「わふっ!」
アルビノ「果てしなく不安だ………」
団長「ぬはははっ!弟よっ!結婚はいいぞぉっ!」
青年「幸せそうで何よりです。」
団長「どうだっ!お前も結婚はしないのかっ!」
青年「相手がいませんよ。」
団長「なんだ、つまらんっ!気になる相手はおらんのかっ!」
青年「気になる人なんて………」
団長「どうしたっ!言葉を濁してっ!」
青年「……いませんよ。」
団長「そうかっ!なら私が見繕ってやろうかっ!」
青年「慎んで遠慮させてもらいます。」
青年「……………」
青年(………どうして、アルビノさんのことを考えたんだ?)
アルビノ「はい」コトッ
仔犬「………わぅ?」キョトン
アルビノ「お前のご飯だよ。もうすぐお昼だし、お腹すいたでしょ?」
仔犬「くぅ?」スンスン
アルビノ「大丈夫、毒なんかは入ってないよ。」
仔犬「わふっ」ペロ
仔犬「あんっ!」ガツガツ
アルビノ「よく食べてね。」
アルビノ「………さて、片付けを再開しなきゃ。」
青年「ふぅ、すっかり遅くなったな。」
青年「まったく、夕飯に誘ってくるなんて兄さんも、わかってないなぁ。」
青年「奥さん、はやく二人きりになりたいって顔してたし。」
青年「というか、なんで熊みたいな兄さんにあんな綺麗な奥さんが………」
青年「………結婚かぁ」
青年「……………」
青年「………だからなんで、僕はあの人のことを考えてるんだ。」
青年「ただいまー」
青年「……………」
青年「……………」
青年「……………」
青年「………仔犬がでてこない。」
青年「寝てるのか?」
青年「おーい、仔犬ー。」
アルビノ「もうやだ、疲れた………」
仔犬「わぅ?」
アルビノ「お前はまだここにいるし」
仔犬「わんっ!」パタパタ
アルビノ「帰らないの?」
仔犬「くぅ?」
アルビノ「もうすぐ夕方だよ。青年さんのところに帰った方がいいんじゃない?」
仔犬「あぅ?」
アルビノ「………帰り道わかる?」
仔犬「わふっ?」
アルビノ「………わからないの?」
仔犬「わんっ!」
アルビノ「………はぁ。」
仔犬「わふっ!」パタパタ
アルビノ「………嬉しそうだね。」
仔犬「あんあんっ!」グイグイ
アルビノ「ちょっと、服を引っ張らないで。すぐに準備するから。」
アルビノ「“千里眼”」
アルビノ「……………うん。誰もいないみたいだし、包帯はいいかな。」
アルビノ「待たせたね。じゃあ、行こうか。」
仔犬「あんっ!」
アルビノ「ここまで来たらもう帰ることできるよね?」
仔犬「わんっ!」パタパタ
アルビノ「そっちは逆方向だよ。街はこっち。」
仔犬「くぅ………」
アルビノ「そんな目をしてもダメだよ。早く帰ってあげないと青年さんが心配しちゃうよ。」
仔犬「あぅ………」トボトボ
アルビノ「気をつけて帰るんだよ。」
アルビノ「……………」
アルビノ「いったね。」
アルビノ「うん、私も薬の材料採取してから帰ろうっと。」
アルビノ「帰る足でここに来たけど」
アルビノ「………まだ摘み時じゃないね。」
アルビノ「宵泣草って花が咲いてるときに摘まないと効能薄いし」
アルビノ「日暮れまでもう少しか………」
アルビノ「そういえばこの花の話、よくママがしてくれたんだよね。」
アルビノ「“宵泣草が夜に泣くのは、いくら待っても現れない恋人を思ってるから”」
アルビノ「………恋人かぁ」
アルビノ「……………」
アルビノ「また、あの人のこと考えてる………」カァァ
アルビノ「……………」
アルビノ「……………」
アルビノ「………ある、かも。」
アルビノ「………………」ポロポロ
アルビノ「あはは……私、どうしちゃったんだろ。泣いたりして。」ポロポロ
アルビノ「あの人といたいなんて、思ったら………思うだけで胸が苦しいよ」ポロポロ
アルビノ「……………嫌い」
アルビノ「この眼が嫌い。嫌いっ嫌いっ!大っ嫌いっ!」
アルビノ「どうして、私はこんな目を持ってるの?」ポロポロ
アルビノ「うっ………うっ………」
仔犬「くぅ………」テコテコ
仔犬「わぅっ!」ピョンピョン
仔犬「………わふぅ」ショボン
青年「あ、こんなところにいやがったなっ!」
仔犬「わふぅっ!?」ビクッ
青年「ったく、どこいってたんだよ」
仔犬「わ、わぅ………」タジタジ
青年「あんまり心配かけさせな―――」
仔犬「きゃん!」ダッ
青年「あ、待て逃げるなっ!」
白髪の女性「お前は優しい娘だよ。」
白髪の女性「私は嬉しいよ。お前がそういう風に育ってくれて。」
白髪の女性「だからこそ悲しい。」
白髪の女性「どうしてお前がこんな目にあわなければいけないのかと。」
白髪の女性「ヒトを好きと言ったお前がどうしてヒトから嫌われる眼を持ったのか。」
白髪の女性「今から私達の時間をお前に渡す。」
白髪の女性「だから死なないで。」
白髪の女性「生きていればきっといいことがあるから。」
――――――――
白髪の女性「だから死なないで。」
アルビノ「っ!ママ!?」ガバッ
アルビノ「………夢、か。」
アルビノ「いくら春先とはいえ、外で眠ってしまうのはどうなんだろ………」
キュウキュウウ
アルビノ「でもまぁ、宵泣草が鳴き出す前に起きたからいいとしようっと。」
アルビノ「さっさと摘まないと、うるさいし。」
アルビノ「この花鳴かなければ、ボンヤリ光るだけで綺麗なのになぁ………」
アルビノ「………いいこと、か。」
アルビノ「あの人に会えたことはいいことなのかな?」
青年「ようやく捕まえたっ!」ガシッ
仔犬「きゃうんっ!」バタバタ
青年「暴れるな。もう怒らないからさ。」
仔犬「わぅ?」
青年「勝手に抜け出したことを悪いって思ったから逃げたんだろ?」
仔犬「わふっ」
青年「だったら怒らないよ。次からこんなことしなければな。」
仔犬「わんっ!」
青年「いい返事だ。」
青年「………で、ここはどこだ?」
青年「夜の森というのは、視界が聞かないからなぁ」
青年「灯りもないし」
青年「熊とかでない、よな?」
青年「さて、どうしたものか………」
仔犬「わふっ!」ジタバタ
青年「下ろせってか?」ヒョイ
仔犬「わんっ!」トトト
青年「そっちに何かあるのか?」
仔犬「わんわんっ!」パタパタ
青年「おい、これ、森の奥に向かってる感じなんだけど、大丈夫なのか?」
仔犬「わふっ!」パタパタ
キュウキュウウ
青年「なんだ、この音………」
仔犬「わん」スンスン
青年「その花から聞こえてるのか。………うっすらと光ってるな。」
仔犬「あんっ!」パタパタ
青年「不思議な花だな………」
青年「だいぶ音が大きくなってきたな。」
仔犬「あんっ!」
青年「なんだか、物悲しい音だよな。」
仔犬「わぅ?」
青年「お前にはわからないか………ん?」
仔犬「くぅ?」
青年「アソコ、開けた場所に誰かいないか?」
仔犬「わんっ!」
青年「あれは………アルビノさん?」
仔犬「わぅ………」
青年「すごく幻想的な風景だよな………」
青年(花と月の光に照らされて、まるで絵画みたいに………)
青年(そのせいで声がかけづらいけど。)
青年(それにしても、なんだか違和感がある……)
青年「あ、包帯をつけてないんだ。」
青年「それはそうか、誰かに眼を見られるというわけではないんだし………」
青年「あ――――」
アルビノ「宵泣草も鳴き止んできたし。そろそろ潮時だね。」
アルビノ「これだけ摘めれば当分は材料に困らないだろうし。」
アルビノ「うん、もう帰ろう。」
ガサガサッ
アルビノ「っ!?」
アルビノ「だ、誰?」
ガサガサッ
青年「こ、こんばんは〜。」ヒョコ
アルビノ「……………あ!」バッ
青年「だ、大丈夫ですか!?」
アルビノ「ち、近づかないでくださいっ!」
青年「っ!」
アルビノ「あ、……ご、ごめんなさい。」
青年「いえ………」
アルビノ「………ちょっと待ってください」ゴソゴソ
アルビノ(あれ………包帯がない………)
アルビノ「あの………青年さん。」
青年「はい、なんでしょうか。」
アルビノ「何か眼を隠せるものはありませんか?」
青年「……………」
アルビノ「……………」
青年「……………」
アルビノ「……………」
青年「………アルビノさんは」
アルビノ「はい………」
青年「目、見えてるんですよね。」
アルビノ「………はい。」
青年「どうして、盲目のフリをしているんですか?」
アルビノ「………私は」
アルビノ「……………」
アルビノ「私は化け物なんです。」
アルビノ「そんな化け物です。」
アルビノ「……………」
アルビノ「………私は、アナタには知ってほしくなかった。」
アルビノ「だって、怖いじゃないですか。化け物なんて。」
アルビノ「アナタに嫌われたくなかった。」
アルビノ「だけど、ダメなんですよね。化け物がニンゲンのフリをすることは。」
アルビノ「嫌ってくれていいです。」
アルビノ「怖がってくれていいです。」
アルビノ「アナタがそういう態度をとってくれたら、私はまだ生きていけます。」
アルビノ「化け物じゃなくなるその日まで。」
アルビノ「……………」
アルビノ「あとは、この道を真っ直ぐ行けば街に出ることができます。」
アルビノ「………サヨウナラ」
青年「……………」
…………………おい
青年「……………」
仔犬「わぅ………」ツンツン
青年「……………」
仔犬「わんっ!」
青年「……………」
仔犬「わふぅ………」
仔犬「………ぁぅ?」スンスン
仔犬「わふっ!」ビクッ
仔犬「ぐるるる……」
団長「ぬはははっ!そう威嚇するな、チビよっ!」
青年「兄さん………」
団長「さぁ、飲むぞっ!弟よっ!」
青年「………また、喧嘩でもしたんですか?」
団長「ぬはははっ!相変わらずお前は察しがいいなっ!」
青年「奥さん……義姉さんと同棲してるときから、喧嘩したらいつも来てたじゃないですか。」
団長「一つ屋根の下で生活してるとなっ!喧嘩すると顔を合わせづらいのだっ!」
青年「顔を合わせる………ねぇ。」
団長「それにしても、お前はどうしたというのだっ!昼間あったときとはまるで別人ではないかっ!」
青年「兄さんがそういうってことは、今の僕はよほどひどい顔をしてるんですね。」
青年「………そうですね。嫁さんと喧嘩して、帰ろうとしない大男が僕の家にいることが悩みでしょうか。」
団長「誤魔化すではないっ!」
青年「……………」
団長「正直に言おう、私はバカだっ!昔から、お前の考えていることなど一つもわかりはしないっ!」
青年「………だったら」
団長「しかし、お前が何かに悩んでいることくらいはわかるっ!」
青年「……………」
団長「相談してみろっ!打ち明けてみろっ!人と言うのはなっ!言葉を交わすだけでも楽になれるものだぞっ!」
団長「うむっ!」
青年「そうかもしれませんね。」
団長「ぬはははっ、そうであろうっ!して、どうだっ!打ち明ける気になったかっ!」
青年「いえ、全く。」
団長「なんとっ!」
青年「ですが、悩みは解消できるかもしれません。」
団長「そうかっ!それは、よかったっ!」
青年「兄さん、悩みを解決するためにも一つ質問です。」
青年「義姉さんのために死ねますか?」
団長「あぁもちろんだっ!」
団長「男として生まれた以上っ!惚れた女のためなら命など、いくらでもかけようぞっ!」
青年「………そっか。」
青年「そうですよね。」
森の奥の家
アルビノ「……………」
アルビノ「………朝、か。」
アルビノ「……………」
アルビノ「……………」
アルビノ「………やる気、でないなぁ。」
アルビノ「わかってたことじゃない。」
アルビノ「物語の中でも怖がられる役ばっかりで。」
アルビノ「そんな私がニンゲンと仲よくできるわけなんて………」
アルビノ「………仲よく、できないのかなぁ」
アルビノ「あの人のハンカチだ。」
アルビノ「昨日、目隠しするのに借りたんだっけ………」
アルビノ「……………」
アルビノ「………これを取りにあの人は来るかな?」
アルビノ「………来ないよね。」
アルビノ「……………」
アルビノ「あーあ、退屈だなぁ」
コンコン
アルビノ「気のせい、かな?」
コンコン
アルビノ「気のせいじゃない………白猫かな?」
アルビノ「入っていいよー。」
??「あー、………その、入ってもいいんですか?」
アルビノ「………え?」
アルビノ「青年……さん?」
青年「………来ちゃいました。上がっても、いいですか?」
アルビノ「あ、………ダメっ!ダメですっ!」
カクッ
アルビノ「え、―――きゃぁっ!」
ドンガラガッシャーン
青年「あ、アルビノさんっ!だ、大丈夫ですかっ!?」ガチャガチャ
青年「あれ?………開かない。」
青年「け、怪我はしてませんか?」
アルビノ「はい、多分大丈夫です………」
青年「……………」
アルビノ「……………」
青年「あの、………鍵を開けてくれませんか?」
アルビノ「……………」
アルビノ「………嫌です。」
アルビノ「……………」
青年「………仕方ありません。僕がドアを開けるのは諦めましょう。」
アルビノ「……………」
青年「少し、お話ししませんか?ドア越しでいいですから。」
アルビノ「………“空間転移”」シュン
青年「うわっ!………椅子?」
アルビノ「どうぞ、かけてください。………魔法を使う化け物が怖くないと言うのでしたら。」
アルビノ(これで、いい。………怖がらせて、近寄らないようにしたら………。)
青年「いやー、助かりました。ちょっと疲れてるんですよね。」
アルビノ「……………え?」
アルビノ「………あ、は、はい、聞こえています。」
青年「それはよかった。では、何を話しましょうか?」
アルビノ「……………」
青年「……………」
アルビノ「……………」
青年「………あの」
アルビノ「………どうして」
青年「……………」
アルビノ「どうして、私を怖がってないんですか?」
青年「………どうして、怖がる必要があるんですか?」
青年「それで、僕が怖がる理由になるんですか?」
青年「僕の知ってるアルビノさんは、大人しくて優しい、可愛らしい女の子です。」
アルビノ「そ、それはっ!私を………よく、知らないから………」
青年「でしたら、嫌うことも怖がることもできませんよ。」
青年「アルビノさんは、僕のこと嫌いですか?」
アルビノ「………それは、ぁぅ………」
アルビノ「……………」
青年「……………」
アルビノ「……………」
青年「……………」
アルビノ「………その、…好き、かな?」
青年「………そうですか。」
アルビノ「わからないんです。今まで、アナタみたいなヒトに会ったこと、ないですから………」
アルビノ「……………」
アルビノ「……………」
アルビノ「………いままで、ずっと嫌われ続けていたんです。」
アルビノ「魔女だから」
アルビノ「白い髪だから」
アルビノ「紅い眼だから」
アルビノ「そんな理由で気味悪がられ、怖がられて生きてきました。」
アルビノ「大多数の他人とは違うんですから。」
アルビノ「化け物と呼ばれて」
アルビノ「死ねと言われて」
アルビノ「生きてきました。」
アルビノ「気の遠くなるほどの昔のことです。」
アルビノ「お母さんとお父さんは、私に時間をくれました。」
アルビノ「他人をいとも容易く終わらせることのできる呪いを持った私に」
アルビノ「世界なんて、なくなってしまえばいいと呪ってしまった私に」
アルビノ「一度でも世界を呪ってしまった私には」
アルビノ「自分も」
アルビノ「他人も」
アルビノ「心のそこから信じることができないんです。」
アルビノ「そんな自分が誰かに好いてもらう権利なんてあるわけないじゃないですか。」
アルビノ「アナタを好きだと感じているこの気持ちでさえ疑っている自分は」
アルビノ「アナタに好かれてはいけないんです。」
アルビノ「え?」
青年「信じることができないから、誰かに好きになってもらうことがいけないなんて、そんなことはないです。」
青年「そんな悲しいことを言わないでください。」
アルビノ「で、でも………」
青年「ねぇ、アルビノさん、鍵開けてくれませんか?見せたいものがあるんです。」
青年「見たいものがあるんです。」
アルビノ「……………」
青年「……………」
アルビノ「……………」
青年「……………」
アルビノ「……………」
青年「……………」
アルビノ「……………」
青年「……………」
アルビノ「……………」
アルビノ「……………」
アルビノ「……………」ゴソゴソ
カチャン
アルビノ「えぇ。」
ガチャ
青年「………やっぱり、眼は隠したままなんですね。」
アルビノ「はい………」
青年「でも、それじゃダメなんです。」
青年「アルビノさん、先に謝っておきますね―――」
シュルッ
アルビノ「……………え?」
青年「隠さないでくださいっ!」
アルビノ「っ!?」ピタッ
青年「隠しちゃダメなんです。目を背けちゃダメなんです。」
青年「アルビノさん―――こっちを向いてくれませんか?」
アルビノ「そ、それはっ………」
青年「できませんか?」
アルビノ「……………」コクン
青年「石にしてしまうから?」
アルビノ「……………」コクン
青年「そのことなら、多分………いや、絶対に大丈夫です。」
青年「だから、僕の目をみてください。」
青年「無理じゃないです。ただ、目を合わせるだけじゃないですか。」
アルビノ「それだけで、アナタが石になってしまうんですよ?」
青年「絶対になりませから………」グイッ
アルビノ「―――あ」
青年「……………」
青年「……………」
アルビノ「……………」
青年「……………」
アルビノ「……………」
青年「……………」
アルビノ「……………あれ?」
青年「ね?大丈夫だったでしょ?」
青年「ふぅ………よかった……」
アルビノ「はい?」
青年「っと………」ガクン
アルビノ「あ、せ、青年さんっ!大丈夫ですかっ!」
青年「ちょっと気が抜けちゃって………」
アルビノ「???」
青年「いや、絶対に、とは言ったものの確証はなかったですからね。………ひょっとしたらということはあったんですよ。」
アルビノ「え?」
アルビノ「えええぇぇぇぇっ!?」
アルビノ「あ、ぁぅぅ………」
アルビノ「せ、説明してください。」
青年「はい?」
アルビノ「どうして、石にならなかったのか、とかですよ………」
青年「あぁ、……………えぇっと、勘、です。」
アルビノ「は?」
青年「………なっとくしてくれ、ませんよね?」
アルビノ「………自白材ってどこにしまってあったかな。」
青年「説明しますっ!説明させていただきますっ!」
青年「でも、とりあえず………」
アルビノ「………?」
青年「今日もクッキーを持ってきたんです。お茶にしませんか?」
青年「ありがとうございます。」
アルビノ「……………」
青年「……………」
アルビノ「……………」
青年「………そう、顔を伏せなくても。」スッ
アルビノ「……………」ピクッ
青年「………この、ハーブティー、なにも入ってませんよね?」
アルビノ「ソ、ソンナコトナイデスヨ?」
青年「そういうときは、僕の目を見て言ってください。」
アルビノ「う………」
青年「なんて、冗談ですよ。」
青年「先に断っておきますけど、僕は魔術というか、魔法と言いますか………そういうことに全然詳しくないです。」
アルビノ「………そうなんですか?」
アルビノ「それで、あんな強引なことをしたんですか?」ニコニコ
青年「あの、アルビノさん………アナタ、そんな性格でしたっけ?」
アルビノ「魔女ですから。性格は悪くて当たり前ですよ?」ニコニコ
青年「兄さんが喧嘩したときに、僕のところへ逃げてくる気持ちがわかるなぁ………」
アルビノ「……………」ニコニコ
青年「ゴホンッ………端的に説明させてもらいます。」
アルビノ「会いましたね。私は化け物だと、お伝えしました。」
青年「アルビノさんは、化け物なんかじゃないですよ。」
青年「で、そのときにですね、アナタの目を、僕はバッチリ見ていた訳なんですよ。」
アルビノ「…………はい?」
青年「とっても綺麗でした。」
アルビノ「はい、送りました。」
青年「で、アナタのことを語ってくださったじゃないですか。」
アルビノ「はい、イロイロといった記憶はあります。まさか、ここまで語ったのに、私のもとに来る人がいるとは思いませんでした。」
青年「まぁ、信じていませんでしたからね。」
アルビノ「……………」
青年「……………」
アルビノ「……………」
青年「……………」
アルビノ「……………は?」
アルビノ「………確かに、目に見えるようには使ってませんでしたね。」
アルビノ「……………」
青年「……………」
アルビノ「………ということは、青年さんは私のことを狂言者か何かだと思っていたと言うことですか?」
青年「あはは………少し違います。」
アルビノ「……………?」
青年「子供の頃の傷のせいで、心がちょっとだけ傷んでしまった女の子だと………思っていました。」
アルビノ「………過去形ですか。」
青年「魔法を目の前で使われましたからね。見た以上は信じるしかないんです。」
青年「どうかしましたか?」
アルビノ「青年さんは、私が魔法なんか使えない、だから、呪いも持っていない、という考えだったんですよね?」
青年「えぇ、そうですね。」
アルビノ「でも、私は魔法を使っているところを見せましたよね?」
青年「この椅子のことですね。」
アルビノ「………だったら、私の呪いもあるかもしれないとは、考えなかったんですか?」
青年「あはは……」
アルビノ「………まさか、確証もなく?」
青年「………はい。」
青年「いや、でも、最初に言ったじゃないですかっ!確証はなかったって!」
アルビノ「………石になることは怖くなかったんですか?」
青年「………正直に言っても構いませんか?」
アルビノ「……………」
青年「……………」
アルビノ「……………」コクン
青年「ありがとうございます。………正直、怖かったです。」
アルビノ「……………」
青年「だけど、躊躇うことはなかったですね。」
青年「惚れた女性のために命くらい投げ出せますから。」
青年「アルビノさん、僕はアナタのことが好きです。」
アルビノ「は、はぁ………」
青年「……………」
アルビノ「っ!?」
アルビノ「い、いや、ちょっ、ちょっと待ってくださいっ!」
青年「はい?」
アルビノ「好きって………私たち会ってまだ3日くらいしかたってませんよっ!」
青年「一目惚れというやつです。」
アルビノ「はぁ?」
青年「いや、初めて会ったときにはここまで惹かれてなかったから………ふむ、二目惚れと言い直した方が………」
アルビノ「そんなことじゃなくてっ!」バンッ
アルビノ「…………イタタ」サスサス
アルビノ「は、はい、大丈夫です………って、だから――」
青年「僕は本気です。」
アルビノ「――――っ!」
青年「だから、アナタのことを嫌うなんて無理なんですよ。」
アルビノ「……………」
青年「……………」
アルビノ「……………」
青年「……………」
アルビノ「………ズルいです。」
アルビノ「今まで、そんなこと言われたことないんですよ?」
アルビノ「だから、そんなこと言われたら………」
アルビノ「私だってアナタのことを………」
―――好きになっちゃうじゃないですか。
アルビノ「勝手に私のことを好きになって。」
アルビノ「私が今まで、悩んでいたことを全部壊しちゃって。」
アルビノ「青年さんはズルいです。」
青年「……………」
アルビノ「………青年さん」
青年「はい。」
アルビノ「化け物の私だけど、アナタのことを好きになってもいいですか?」
アルビノ「アナタに恋していいですか?」
青年「構いませんよ。僕も………」
青年「僕も、アナタのことが好きです。」
青年「何の変哲もないアナタと同じただの人間ですけど、アナタに恋していますから。」
白猫「全く、甘ったるくて見てられにゃいですニャー」
魔女婆「ふぇふぇ、そう言うでないよ。甘酸っぱいじゃないかぇ?」
白猫「お陰でニャーのお役目もようやくごめんとにゃるんですニャ。」
魔女婆「そうだねぃ……」
白猫「あのニンゲンにお嬢を任せるのはシャクですがニャ。」
白猫「魔女の世界でも忌み子として恐れられてたお嬢に正面から向き合った勇気は、認めてやらにゃいこともにゃいですかニャ。」
魔女婆「ふぇふぇ、全くだよ。ニンゲンも存外捨てたもんじゃないねぇ。」
魔女婆「おや?どういうことだぃ?」
白猫「だって、ニャー達なら呪いの知識が半端にある以上、お嬢と目を合わすことにゃんて無理じゃにゃいですかニャ?」
白猫「あの目はお嬢が世界を呪う限り発動する、自動防御装置みたいなものにゃんですからニャ。」
魔女婆「まぁ、そうだねぃ……」
白猫「ですよニャー」
魔女婆「しかし、そういうと少しロマンに欠けるよ、猫の坊っちゃん。」
白猫「どういう意味ですかニャ?」
魔女婆「あの小僧が、嬢ちゃんに目をあわせることができる理由はねぃ、こういうべきなのさ。」
白猫「というと?」
魔女婆「愛じゃよ愛。」
魔女婆「おや、なにかいったかぇ?」
白猫「にゃーにも言ってにゃいですニャ。」
魔女婆「ふぇふぇ、そうかいそうかい。」
魔女婆「しかし、これ以上覗き見するのも、悪いかねぇ。」
白猫「悪いに決まってますニャ。バレたら、薬の実験台にされますニャ。」
魔女婆「じゃあここら辺でやめるとしようか。」
プツン
魔女婆「しかしまぁ、前途は多難であろうねぃ。」
白猫「お嬢の母上、マスターも、ニンゲンの男と恋してたんでしょ?前列がにゃい訳じゃにゃいですから、にゃんとかにゃるでしょうニャ。」
魔女婆「そうだといいねぇ………」
アルビノ「そう言えば………」
青年「どうかしましたか?」
アルビノ「今日はあの子連れてきてないんですか?」
青年「いや、まぁ………今日は道に迷うわけには行かなかったので、置いてきました。」
アルビノ「そうなんですか………」
青年「まぁ、次くるときには―――」
アンアンッ!
青年「え?」
アルビノ「ふふっ………」
アルビノ少女「どこからきたの?」
〜fin〜
休み休み書いたせいでぐだっちゃいましたが、これでアルビノ少女と青年の話はおしまいです。
白猫や団長なんかは、実は伏線にしたかったんですが、これ以上長くすると、あと一ヶ月は使い込みそうなので、ここで終わりとします。
自分語りが長いと
後味が悪くなるのでここら辺で。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
元スレ:アルビノ少女「どこからきたの?」
Entry ⇒ 2012.05.24 | Category ⇒ その他 | Comments (0) | Trackbacks (0)
恒一「イチャイチャいないもの生活」
鳴「うん。でも毎日じゃなくてもいいのに」
恒一「自分の奴のついでだから気にしないでよ。それに見崎ずっとパンか惣菜じゃないか。そんなのじゃ栄養偏って大きくられないよ?」
鳴「むっ」ペターン
恒一「? ごめん、もしかして迷惑だった?」
鳴「そうじゃない。榊原君の料理は美味しいから好き」
恒一「そっか、良かった。じゃあ食べよ。今日も屋上でいいよね?」
鳴「うん」
鳴「おいひい」モグモグ
恒一「そう。こないだのとどっちが好み?」
鳴「どっちも」ムシャムシャ
恒一「あはは。……見崎、御飯粒ついてるよ」
鳴「ん……どこ?」
恒一「ほっぺ。もう、何でこんなとこに……」ヒョイ
鳴「……」ジー
鳴「あむ」パク
「」ムグムグ
恒一「うわっ! 噛まないでよ見崎」チュポン
鳴「美味しかった」ゴチソウサマー
鳴「榊原君も食べなよ。全然手付けてない」ジー
恒一「うん。でも見崎の食べっぷり見てたらもうお腹膨れた気がするよ」ハハハ
鳴「半分食べてあげようか?」ジー
恒一「いいけど……そんなに食べたら太っちゃうよ?」ヒョイ
鳴「そしたら、ムグムグ、痩せるようなの作って」アーン
恒一「まぁ、見崎は大丈夫か」ヒョイ
鳴「あ、次卵焼き取って」アーン
恒一「はいはい」クスクス
鳴「美味しいの」
恒一「うん。頑張るね」ニコッ
鳴「あ、今度は榊原君が付けてるよ。御飯粒」
恒一「え?」
鳴「もう。ここ」ヒョイパク
恒一「あ、ありがとう」
鳴「? どういたしまして」
鳴「そうね」
恒一「本でも読もうかな……取って来るね」スタスタ
鳴「行ってらっしゃい」
鳴「……」ゴソゴソ
恒一「ただいま」
鳴「おかえり。今日は何の本?」
恒一「キングのアンダー・ザ・ドームだよ」
「見崎も何か読む? 貸すよ」
鳴「ううん。やることあるから」
恒一「そっか」ペラ
鳴「……」ジー
恒一「……」ペラ
鳴「……」カリカリ
恒一「……」ペラ
鳴「……」ジー
「……」カリカリ
「あれ? 見崎なにしてるの?」
鳴「絵、書いてた。いいから本読んでて」カキカキ
恒一「うん」
「何書いてるの?」ペラ
鳴「秘密」ジー
恒一「出来上がったら見せてくれる?」ペラ
鳴「それは……ちょっと恥ずかしいかな」カリカリ
鳴「――できた」
鳴「見たい?」
恒一「無理強いはしないけど、見せてくれるなら。羽は付けてあげた?」
鳴「」フルフル
「これには要らないかなって。それになんにでも羽を付けるわけじゃないよ」
恒一「そうなんだ」アハハ
鳴「馬鹿にされた気がする……」
「意地悪な榊原君には見せてあげません」
恒一「えー」
恒一「見崎、絵上手じゃない」
鳴「そういう事じゃないの。とにかく、見せてあげない」
恒一「残念」
キーンコーン
恒一「あ、予鈴だね。次の授業どうしようか」
鳴「お腹一杯になったら眠くなっちゃった」ファー
恒一「それじゃ保健室行こうか。ベット空いてるかなぁ」
恒一「ここで寝ちゃ駄目だよ」
「ほら、手繋いで。こけない様に掴まってね」ギュ
鳴「うん」ギュ
恒一「いつもは昼休み中に寝ちゃうのに」
鳴「授業はいないものだから大丈夫」
恒一「そういう事じゃないと思うけどなぁ……」スタスタ
恒一「失礼します」ガララ
「ほら見崎、ベットまであと少しだよ」
鳴「」コク
恒一「もう。――良かった、一つ空いてる」
鳴「」クークー
恒一「寝ちゃってるよ……おーい見崎?」
鳴「Zzz」
恒一「……とりあえず寝かせよう。ちょっとごめんね」ヒョイ
「ほら見崎、おろすよ」ポス
鳴「ん……」ギュ
恒一(首に手を回された……まるで小さい子供みたいだ)
鳴「んぅ……さかきばらくん……」ムニャムニャ
恒一(どうしようこれ)
(睫毛長いなー。普段こんなジロジロ見ないから何か新鮮だ)
鳴「Zzz」
恒一(良く寝てる。ま、起こしちゃ悪いしそろそろ離れよう。そーっと――)
鳴「むにゃ」ゴロン
恒一「うわ」グイ
鳴「ぅむ」グーグー
恒一(いいタイミングで寝返りうつなぁ……寝転がって向かい合う体勢になっちゃった)
(もういいや。僕もこのまま寝ちゃおう。掛け布団して、一応周りからは気付かれないようにしてっと)ゴソゴソ
鳴「すぴー」
恒一「ふふ」ナデナデ
「おやすみ、見崎」
綾野「うわ、もう5限目終わりじゃん。寝過ぎたー」
綾野「ま、いっか。もうちょっとゆっくりしていこ」ゴロン
「むにゅ……」
綾野(横にも誰かいるのかな? 静かにしとかなきゃ)
綾野(それよりも問題はこういっちゃんだよ……)ハァー
(こういっちゃんと見崎さん……付き合ってるのかなぁ。毎日四六時中一緒に居て、ことあるごとに手を繋いだり抱きついたり。こういっちゃんがいないものじゃなかったら、私も――)
綾野「こういっちゃん……」
「みさきぃ……」
綾野「!? こういっちゃん!?」
(こういっちゃんの寝顔とか、見たい。寝てるんなら、胸元とか緩めてるかも……)ドキドキ
綾野「――よし」
綾野(ちょっとだけ、ちらっと隣を覗くだけ! 触ったり、話かけたり嗅いだり舐めたりしない!)
綾野「……」ソロー
恒一「くー」ギュー
鳴「すぴー」ギュー
綾野「」
鳴「ん……ふぁぁ」
「よく寝た……」ショボショボ
鳴「ん?」ギュー
恒一「」スヤスヤ
鳴「!?」バッ
(び、びっくりした。抱き着いたまま寝ちゃったのかな? 抱き締められてるし……)
恒一「みしゃき……」ギュウー
鳴「もう……いいから起きて。ちょっと苦しいから」ペンペン
恒一「Zzz」
鳴「反応しない。どうしよう」ウーン
「」ウーン
鳴「……」ウトウト
恒一「」グー
鳴「」スピー
恒一「見崎ー!」アハハ
鳴「榊原君!」ウフフ
恒一「見崎!」アハハ
鳴「さ・か・き・ば・ら・くん!」ウフフ
恒一「み・さ・き!」アハハ
鳴「恒一君!」ウフフ
恒一「鳴!」アハハ
アハハウフフ
恒一「――ぐふふ」スヤスヤ
鳴「えい」バシッ
恒一「ぶっ! ――いたた……」
恒一「おはよう……あれ? どんな夢見てたんだっけ?」
鳴「さぁ?」
恒一「それよりも見崎、もっと優しく起こしてよ」ズキズキ
鳴「だって全然起きないんだもの。もうこんな時間だよ?」
恒一「――うわ、もう授業終わってるよ」
鳴「部活も始まってるみたいね」
鳴「ううん。結構前」
恒一「ごめんね。暇だったでしょ?」
鳴「榊原君の寝顔、可愛かったよ?」クスッ
恒一「! わ、忘れて……」
鳴「どうかな。意外とずっと覚えてるかも」
恒一「み、見崎ぃ……」
恒一「そうだね。……あれ? 見崎だけ出れば良かったんじゃ……」
鳴「それ、自分の手離してから言って」
恒一「!? ご、ごめん!」バッ
(気付かなかった……まさか寝てる間も抱き締めっぱなしだったのか僕!?)
恒一「見崎! こ、これは不可抗力であって、決して下心は無くてその――」アタフタ
鳴「……そう」
恒一「その、許してくれる?」
鳴「別に怒ってないよ」
(私も抱き着いてたし)
恒一「そ、そっか」ホッ
鳴「じゃ、帰りましょ」
恒一「だね」
恒一「今日は何の授業にしようか」
鳴「今日も家庭教師するの?」
恒一「当たり前じゃないか。いないものになってから授業サボリっぱなしで碌に勉強してないからね。このままだと来年の受験どころかテストすら危ういよ?」
鳴「それは榊原君もじゃない」
恒一「僕は正直言って勉強しなくても分かるから」
鳴「今の風見君や勅使河原君に聞かせたら? いないもの解除してくれるかもよ? その後は知らないけど」
恒一「もう、屁理屈ばっか言って……」
恒一「教科書丸写ししてる事を勉強って言い張るのやめない?」ハァー
鳴「勉強は勉強でしょ?」
恒一「答え見ながら問題集やってるのと一緒だよソレ」
鳴「榊原君、将来学校の先生にでもなるの?」
恒一「話逸らさないでよ……将来は彫刻関係の仕事に行きたいかな」
鳴「ふぅん、そういうの好きなんだ」
恒一「まぁね。見崎は? 将来の夢とか、そういうの」
鳴「私? 私は、なんだろ……お嫁さん?」
恒一「お嫁さんかぁ……」
鳴「ま、適当にね」
鳴「ただいま」
恒一「お邪魔します。今日はお店お休みなんだね」
鳴「天根おばぁちゃんが地区の旅行で居ないから、店を見てる人がいないの」
恒一「霧果さんは?」
鳴「霧果が店番なんてする筈ないし、出来ると思う?」
恒一「……ノーコメント」
鳴「ま、一日ぐらいはいいんじゃない? それよりも早く行きましょ」スタスタ
恒一「あ、待ってよ」
鳴「着替えてくるから、適当に座ってて」スタスタ
恒一「うん」
(すっかり慣れちゃったな、ココで過ごすのも。まぁ毎日来てれば当たり前か)
恒一「さて、今日は数学と英語かな。昨日みたいに雑談で終わらない様にキチンと用意して――」ブツブツ
ガチャ
恒一「あ、おかえり――」
霧果「あら、ただいま。ここって榊原君の御宅だったかしら?」
恒一「す、すいません霧果さん! 見崎と勘違いしちゃって!」ワタワタ
霧果「冗談よ。いらっしゃい」クスッ
(この人、冗談とか言う人だったっけ?)
霧果「今日も鳴の家庭教師?」
恒一「は、はい」
霧果「そう。ゆっくりしていってね」
ガチャ
鳴「ただいま」
恒一「あ、おかえり見崎」
霧果「おかえり」
鳴「ただいま帰りましたお母さん」
鳴「はい」
霧果「ごめんね。榊原君もおもてなしできなくて……」
恒一「い、いえ。気持ちだけで」
霧果「じゃ、後は二人でね」スタスタ
ガチャ
恒一「……」
鳴「……」
鳴「変なだけ。何か話してたみたいだけど」
恒一「挨拶してただけだよ」
(ちょっと珍しい? ものを見たけど)
鳴「ふぅん。本当に?」
恒一「ホントだよ。何で疑うのさ」
鳴「別に」フイ
恒一「? まぁいいや。勉強しよ」
鳴「本当にするの?」
恒一「一時間ぐらいだよ。早く終わらせられたら御飯作ってあげるから」
鳴「やりましょ。ほら榊原君も早く」グイグイ
恒一「はいはい」
(現金だなぁ……可愛いからいいけど)
鳴「え? え?」
恒一「……見崎、これ教科書に載ってた問題なんだけど」
鳴「だって、途中式なんて書いて無かったから」
恒一「ほら、丸写しするとそういう事になるんだよ。一から説明するから、ほら、ペン持って」
鳴「……はい」グヌヌ
恒一「いい? まずは基本の――」
鳴(榊原君はスパルタ過ぎる……)
恒一「見崎、手」
鳴「はい」
(早くお喋りしたいのに……)
鳴(結局一時間以上勉強してた)グテー
恒一(結局英語は障りだけだったな。明日はもっと効率的に……)ムムム
鳴「」グー
恒一「――お腹減った?」
鳴「///」コクッ
恒一「じゃあ御飯にしようか。冷蔵庫見てくるね」
鳴「お願いします」
恒一「はは。何かリクエストは?」
鳴「肉じゃが」
恒一「肉じゃがね」ゴソゴソ
「材料は揃ってるから、見崎はテレビでも見てて。すぐ作るから」
鳴「うん」ワクワク
恒一「♪」トントン
鳴「……」ボケー
恒一「よるをーおおうー」カチャカチャ
鳴(楽しそう……)
恒一「? 見崎、まだできないよ」
鳴「そういう意味で見てたんじゃない」
恒一「じゃあなんで……」
鳴「別に。どうだっていいでしょ」ジー
恒一「気になるんだけど……。暇なら手伝ってくれる?」
鳴「いいの?」
鳴「分かった」
恒一「洗剤とかいらないからね」
鳴「そこまで料理しないわけじゃないよ」ムー
恒一「冗談だよ」
(可愛いなぁ)
鳴「もう」
(何か遊ばれてる気がする……)
鳴「はい」
恒一「ありがとう。――はい、見崎」
鳴「いただきます」ヒョイパク
恒一「ゆっくり噛んでね」ハハハ
鳴「うん」ムシャムシャ
恒一「美味しい?」
鳴「おいひいよ」モグモグゴクン
「榊原君も食べなよ」ヒョイ
「」モグモグ
鳴「美味しいでしょ?」
恒一「うん。自分じゃいつも通りの味だけど」ヒョイ
鳴「お袋の味って奴だよね」アーン
恒一「そうなのかな?」
鳴「多分」ムギュムギュゴックン
「私も良く知らないけどね」アーン
恒一「見崎が美味しいって言ってくれるならいいよ」アーン
鳴「そう?」
恒一「うん」ムグムグ
鳴「そっか」
恒一「お粗末様。片付けてくるね」
鳴「いいよ、そのままで」
恒一「折角だしやって帰るよ。お風呂にでも入ってきなよ」
鳴「時間大丈夫なの? もう8時過ぎちゃってるけど」
恒一「……家に帰ると、どうしても怜子さんと顔会わせちゃって気まずいんだよ」
鳴「あ……」
恒一「ごめんね。僕の勝手でこんなことしちゃって」
恒一「見崎が謝る事じゃないよ」ナデ
鳴「――ありがとう」
鳴「お風呂、入ってくるね」
恒一「うん」ニコ
鳴「榊原君も後で来なよ」
恒一「え?」
鳴「冗談。じゃ」スタスタ
恒一「あ、あはは」
鳴(今日も楽しかったな……)チャプチャプ
鳴(榊原君も楽しかったかな……。いないものになって落ち込んでたみたいだったし、先輩として私が元気づけてあげなきゃいけないのに)ブクブク
鳴「よし。明日からは少しづつ榊原君を私に甘えさせる」ザパー
「……でも何をしたらいいんだろ」フキフキ
恒一「見崎ー? 僕そろそろ帰るねー」
鳴「」ビクッ
「ちょ、ちょっと待ってー」ワタワタ
恒一「? うーん」
恒一「あ、眼帯外してるんだね」
鳴「蒸れちゃうから」
恒一「へー」ジロジロ
鳴「何?」
恒一「ん? いや、綺麗だなって思って。それで何か用だった?」
鳴「用って言うか、勝手に帰られるのが嫌だっただけ」
鳴「するよ。じゃ、またね」フリフリ
恒一「うん。また明日」フリフリ
「あ、余った材料で霧果さんの分の料理作ってるから持っていってあげて。いらなかったら捨てていいから」
鳴「(いつの間に……)うん。ありがと」
恒一「おやすみ見崎」
霧果「あら、榊原君帰ったの?」
鳴「はい。これ、彼が作ったんです」スッ
霧果「へぇ……美味しそうなチャーハンじゃない」
鳴「お母さんにって。要らないなら私食べますけど」
霧果「じゃあ、せっかくだしいただこうかしら」パク
「! おいしい」パクパク
鳴「榊原君の料理ですから」ドヤァ
霧果「鳴も見習いなさい」モギュモギュ
鳴「……それなんですけど」モジモジ
霧果「?」バクバク
恒一(おはよー)
ザワザワ キノウナカオガー マカセロー
恒一(皆楽しそうだなー)
(見崎は……まだか。仕方ない、本でも読んでよう)ペラッ
ガララ
恒一「!」チラッ
久保寺「皆さんおはようございます」
恒一(違った。見崎遅いなぁ……)ペラッ
見崎「……」テクテク
恒一「! おはよう見崎。遅かったね」
見崎「おはよ」ファ
恒一「寝不足?」
鳴「うん……ちょっと早起きしたから」ショボショボ
恒一「なのに遅刻したの?」クスッ
鳴「用意に手間取っちゃって」
恒一「用意?」
鳴「ごめん。私ちょっと寝るね……」テクテク
恒一「? お大事にー」
勅使河原(俺の後ろでイチャイチャしてんじゃねーよ)グヌヌ
鳴「くーくー」ギュム
川堀(俺の席……)ショボーン
赤沢(対策を対策を対策を対策を対策を対策を対策を対策を対策を対策を対策を対策を)イライラ
恒一「見崎、もうお昼だよ。御飯食べよう」ユサユサ
鳴「むにゃ……」ファァ
恒一「おはよう。良く寝てたね」
鳴「おはよ……ごはん」ゴシゴシ
恒一「ふふ。屋上行く前に顔洗って行こうか」
鳴「うん」コクン
「」フラフラ
恒一「ほら、手」スッ
鳴「ん」ギュ
赤沢「」
鳴「えぇ」キリッ
恒一「寝起きの見崎は、見てて面白いよ」
鳴「そういう冗談、嫌い」プイ
恒一「ごめんごめん。じゃ、行こう」ギュ
鳴「はぁ……」ギュ
(可愛いって言うところだと思うんだけど……)
恒一「今日は食べやすい様にサンドイッチにしてみたよ。見崎の好きな玉子サンドも――」
鳴「あっ、あのっ、その……」モジモジ
恒一「え?」
鳴「」スーハー
「ううん。はい、これ」スッ
恒一「お弁当箱……?」
鳴「うん」
恒一「これ、もしかして見崎が?」
鳴「」コクン
恒一「僕に?」
鳴「」コクコク
恒一「あ、開けてみてもいい?」ドキドキ
鳴「どうぞ」
恒一「……ごくり」パカッ
(唐揚げにミートボール。串で刺した野菜とハム。卵焼き、ポテトサラダ……)
鳴「ど、どうかな」オソルオソル
恒一「凄く美味しそうだね。嬉しいよ見崎」ニコッ
鳴「……良かった」ホッ
恒一(ヤバい凄い嬉しい。なんだろコレ)ニヨニヨ
鳴(お弁当見ながら笑ってる……喜んでるのかな?)ドキドキ
恒一「た、食べてもいいの?」
鳴「うん。榊原君みたいに上手には出来なかったけど、味見はしたから」
恒一「じゃ、じゃあいただきます」
鳴「めしあがれ」
(お、美味しい!)モグモグ
鳴「どう?」ドキドキ
恒一「美味しいよ! 凄いね見崎!」パクパク
鳴「ほ、ほんと?」
恒一「うん!」モグモグ
鳴「やった……!」グッ
恒一「でも、何でいきなり?」
鳴「……それはね、謝罪とお礼」
恒一「? 見崎が謝るような事も、僕がお礼を言われる事も無い気が――」
「榊原君がいないものになったのは、私のせいだもの。ちゃんと拒絶してたら、榊原君は今頃こんな事してない」
恒一「……」
鳴「それに三神先生との関係にも、要らない溝作っちゃったみたいだし」
「――ごめんなさい」ペコ
恒一「やめてよ……僕は――」
鳴「もう一個はね、その……さっき言ったのと、少し矛盾するんだけど」
「榊原君が話しかけてくれた時凄く驚いて、戸惑って――嬉しかったの」
鳴「いないものになって、皆から無視されるのはどうも無かったけどね。やっぱりどこかでストレス溜まってたのかな? 榊原君が『見崎』って呼んでくれるのが楽しみになってた」
「でもそのせいで榊原君までいないものになっちゃって、申し訳なくて――でも、すごく嬉しかった」
恒一「――見崎」ギュ
鳴「ぁ……」
恒一「見崎、見崎、見崎……」ギュウ
鳴「ごめんなさい。榊原君、ごめんなさい」ギュ
恒一「いいよ。いいから――泣かないでくれ」ギュ
鳴「うん。ありがとう、ありがとう」
鳴「……」ダキッ
恒一「……お腹、減らない?」
鳴「」コクン
恒一「食べようか」
鳴「」コクコク
恒一「はい見崎」ヒョイ
鳴「あー」モグモグ
恒一「おいしい?」
鳴「うん」
恒一「サンドイッチってあんまり作った事ないから不安だったんだ。口に合ったなら良かった」ニコッ
鳴「ぅん……///」
「もしかして今日遅刻したのって、これ作ってたから?」
鳴「昨日榊原君が帰ってから、メニュー決めたり買い物に行ったりしてたから。朝は朝で手際が、ね」フー
恒一「そういうのは慣れだしね」ハハハ
「でも、嬉しいよ。ありがとう見崎」
鳴「気にしないで」
恒一「――僕は、良かったと思ってるよ。いないものになって、見崎と過ごせて」
鳴「え?」
鳴「……毎日、作ってあげようか?」
恒一「たまにでいいよ。今日みたいに遅刻しちゃうかもしれないし」
鳴「必要なのは慣れだって言ったのに……」
恒一「うーん。じゃあ今夜の御飯、一緒に作ろう? 僕が教えるよ」
鳴「いいの?」
恒一「もちろん」
鳴「じゃあ、お願いします」ペコッ
恒一「うん。じゃあ何を作ろうか。あ、材料も買っていかないと」ブツブツ
恒一「そう?」
鳴「うん。でも榊原君はお母さんにはなれないかな」
恒一「男だからね」
鳴「……お婿さん?」
恒一「だね」
鳴「……もう」
恒一「? 見崎? どうかした――」
チュ
鳴「鈍感」
恒一「……いきなりは、卑怯だよ」
鳴「前フリはしたんだけど」
恒一「分かりづらいって」
鳴「そうかな?」
恒一「……ま、いいか」
鳴「今は晩ご飯のメニュー考えないとね。昨日のチャーハン食べてから、霧果も榊原君の料理食べたがってたよ」
恒一「ホント? じゃあ今日は――」
恒一(こんな風に僕らのいないもの生活は続いていく。期限付きの二人だけの世界。今はそれを楽しむことだけ考えよう)
おわれ
乙
GW中インフルで寝込んでた時に書いてたから集中が続かんかったのよ
乙
Entry ⇒ 2012.05.24 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
涼「愛プラス?」
絵理「ラブプラスって知ってる?」
涼「うん、名前だけなら。やったことはないけどね」
絵理「その愛ちゃん版。と言っても名前を借りただけの、別物?」
涼「いや、もともとのを知らないから、愛ちゃん版って言われてもピンとこないんだけど……」
絵理「そこから説明しなきゃダメ?」
涼「やるって言ってないんだけどな」
絵理「せっかく作ったんだから、感想が欲しい? 私と仲がいい男の人って涼さんだけ」
涼「少しだけだよ?」
絵理「うん」
涼「え? 恋人になって終わりじゃないの?」
絵理「ラブプラスはその常識を覆したの。でも3DSのはバグが多くて少しがっかり?」
涼「バグって言われても何のことやら……」
絵理「涼さんは知らなくて、良い? 説明続けるね」
涼「うん」
絵理「でもまだ試作段階だから、本家ほどのクオリティは期待しないでね」
涼「気にはしないけど……。あれ? ラブプラスってたしか3人彼女候補がいるんじゃなかったっけ?」
絵理「意外に詳しい?」
涼「いや、冬馬君が言ってたんだ。寧々さんがどうって言ってたけど、大塚寧々さんがどうしたの?」
絵理「その寧々さんじゃないよ。姉ヶ崎寧々さん」
絵理「うん、でも愛ちゃんだけじゃ物足りないから、いくつか愛ちゃんの別設定を作った?」
涼「どういうこと?」
絵理「年下属性の愛ちゃんはそのままに、年上属性の愛ちゃん、ダウナーな同級生愛ちゃんを作った。本家とは違うよ」
涼「と、年上属性愛ちゃん? 想像できないかな……」
絵理「あくまで私の想像する大人愛ちゃんだから、現実とはかけ離れてる?」
涼「絵理ちゃんの想像する大人愛ちゃん……、尾崎さんみたいな?」
絵理「まるで駄目な尾崎さんは関係ないよ」
涼「マダオ!?」
絵理「でもそこがいい?」
涼「はいはい、良かったね」
涼「うん、えっとボタンはこれだね」
愛『愛プラス!!!!』
涼「うわぁ!」
絵理「ごめんなさい、ボリュームが最大になってた」
涼「悪意しか感じないよ〜!」
絵理「これでちょうどいいくらい?」
愛『愛プラス!!!』
涼「いつもの愛ちゃんの声量だね。ってこれもしかして……」
絵理「うん、愛ちゃんにも協力してもらった」
絵理「1200円上げたらやってくれたよ?」
涼「安! パチンコ店の時給!?」
絵理「コストパフォーマンスは……最高?」
涼「そんな風に仲間を使いたくないかな、うん」
絵理「まずは名前を入れてみて。涼さんは、ギャルゲーを自分の名前でする派? デフォルトにする派?」
涼「いや、ギャルゲー自体したことないんだけど。デフォルトの名前ってどんなの?」
絵理「秋月涼?」
涼「すでにデフォルト名!? どっちにしても一緒じゃん!!」
絵理「そこは好きに変えてね」
涼「本名で良いよ……」
涼「なにが!?」
絵理「なんでもない? じゃあ進めて行って」
涼「何でもないなら疑問形つけないでよ……」
絵理「癖みたいなもの。涼さんのぎゃおおおおん! と同じ?」
涼「そこまで頻繁に使わないよ!!」
絵理「そんなことない? 着ボイス3週連続2位おめでとう?」
涼「嬉しくないのは何でだろ……。しかも一位はやよいさんのうっうー! ボイスなんだよね」
絵理「まずは口調を決めてね」
絵理「うん、一人称で変わってくる」
涼「そうなんだ。どんなのがあるんだろ? イケメンなのがあればいいな?」
・僕
・俺
・おいどん
涼「三つ目なに!?」
絵理「鹿児島の方にも、対応?」
涼「いやいや、なんで鹿児島狙い撃ちなの!? 西郷さんでも出てくるの!?」
絵理「幅広いニーズにこたえた結果?」
涼「局所的だよ! もういいよ、ゲームの中ぐらいは俺で……」
涼「どういうこと? あっ、ゲームが始まった」
涼『ククク……、新たなる地獄、ニューオーダーの始まりだ……。血が騒ぐぜ。けっ、禁断の果実の味が身に染みるぜ』
涼「厨二病!? リンゴ食べながら何言ってるの!?」
絵理「俺を選んだ場合、こんな主人公」
涼「上級者向けすぎるよ! 愛ちゃんとの恋愛を目指してたはずなのに、いきなりこんな痛いのが出てきたらやだよー!」
絵理「涼さん、わがままばかり?」
涼「言いたくもなるよ! やっぱり僕で……」
絵理「それはいつもの涼さんと同じ?」
涼「こっちが聞きたいんだけど、それ」
絵理「一応口調が違うだけで、内容は同じ?」
涼「さっきの僕は何があったの!?」
絵理「虐められていた設定」
涼「そこは疑問形にしてほしかったかなぁ! 断定されちゃったよ!」
絵理「大丈夫、こっちの涼さんは真紀子に虐められてないから」
涼「真紀子って誰!?」
絵理「世界で一番死んでほしい人? 私の下駄箱に、蛇の死体を入れた」
涼「ヘビーだよ! そもそも絵理ちゃんの都合なんか知らないよ!」
・和室
・洋室
涼「これは関係あるの?」
絵理「部屋の内装が変わるぐらいだから、大きく変わらない?」
涼「そうなんだ。じゃあ和室で……」
絵理「お手洗いも、もちろん和風?」
涼「洋室にしまーす!!」
絵理「賢明な判断?」
涼「って和式トイレの部屋って……。愛ちゃんが出る前から突っ込みどころ満載だよ……」
涼「あれー!? 和室になってるよ!?」
絵理「あっ、バグ発見。たぶん部屋自体は洋室、なはず?」
涼「ならいいけどさ……」
涼『うん、綺麗な洋室だ』
涼「良かった、内装は洋室だった」
絵理「お手洗いだけ、和式?」
涼「いつまでそれ引っ張るの!?」
涼『おっと、遅刻しちゃうや。急がなきゃ』
涼「そろそろ愛ちゃんが来るのかな?」
涼「あれ、まさかこれは……」
涼『わっ!』
?『きゃあああああ!!!!』
涼「古典的すぎるよ! でもこの殺人ボイスは……」
武田『そう、僕だ』
涼「なんで!?」
涼『なんてことはなく、頭をぶつけた相手は……』
涼「絶対今のカットイン不要だよね」
絵理「匠の遊び心?」
涼「誰が匠!?」
絵理「教えて、あげない?」
涼「ひぅう! 耳元で囁かないで!」
涼『う、うん……。君こそ大丈夫?』
?「はい! 私丈夫なのが取り柄ですから! じゃあ急ぎますね!!」
涼『今の子、可愛かったなぁ。パンツは不幸にも見れなかったけど』
絵理「涼さんの、エッチ?」
涼「僕じゃないよ! 同姓同名同一人称の0と1の偶像!!」
絵理「普通に突っ込めばいいのに」
涼「素で返されちゃった……。でもこういう時って、パンチラが定番だよね」
絵理「愛プラスは全年齢対象? そもそもパンチラは頻繁に行うべきじゃない。たまにあるから嬉しいサービス、毎回毎回見せられても不快なだけ?」
涼「なにパンチラ議論してるの!?」
涼「姉ちゃん? ってことは」
律子『こらっ! 涼、何遅刻してるのよ!!』
涼『り、律子姉ちゃん!?』
絵理「うん、株の裏情報を教えたら、引き受けてくれた?」
涼「マジですか……」
絵理「ちなみに人件費削減のため、愛ちゃん以外のモブ女性とは律子さんの声?」
涼「良く引き受けたね、律子姉ちゃん」
絵理「涼で遊ぶ口実が出来たってノリノリだった? 歌も歌ってる?」
涼「そこは愛ちゃんに譲ってあげようよ!! 愛プラスでしょ、これ!!」
絵理「大丈夫、バッドエンドのみかかる、聖母たちのララバイ」
涼「サスペンスじゃん!! バッドエンドって何が起こるの!?」
涼『気を付けるよー』
律子『それと、あんたのクラスだけど、担任私だから』
涼「律子姉ちゃんは何の担当なの?」
絵理「化学」
涼「なんかそれっぽいかも」
律子『今それっぽいとか思ったやつ、お仕置きね』
涼「ゲームに読まれてる!?」
絵理「それだけ律子さんのイメージは、根暗?」
涼「せめて理知的とか理系って言ってあげて!!」
涼「は組っていつの時代!?」
絵理「忍たま見ながらやってたから、つい」
涼「落第忍者!?」
涼『うう、自己紹介は緊張するなぁ』
律子『別にそこまで深刻にならなくていいじゃない。こういうのは、気軽に行きなさい』
涼『うん、僕頑張るよ!! めざせ、友達100人!』
律子『子供みたいなこと言うのね』
涼『ううん、フレンドの前に、SE』
涼「絵理ちゃん!!!」
絵理「セックスアンドシティ見てたからつい……」
涼「金曜ロードSHOW見てたの!?」
絵理「清史郎君には、がっかり?」
涼「まだ小学生なんだよ!?」
涼『律子姉ちゃんが記念すべき1人でも良いんだぜぇ?』
涼「この僕のキャラがいまいち分からないです……」
絵理「私の思う、涼さんを多角的に表現した?」
涼「そんなこと思ってないよ!!」
律子『馬鹿言ってないで、行くわよ! 私が合図したら入ってくれるかしら?』
涼『うん』
涼「ようやく話が進むね」
絵理「うん、ここまでどうだった?」
涼「どこから突っ込んでいいか分からなかったよ……」
絵理「下半身?」
涼「違うよ! 何でそう息を吸うように下ネタが言えるの!?」
涼『秋月涼です! よろしくお願いしマッスル!!』
クラスメイト「」
???「筋肉がたんねーぞ!!」
涼「何この自己紹介!! ダダ滑りじゃん!」
絵理「これはとある人の体験談? 真紀子に虐められる前の話?」
涼「絵理ちゃんの実話!?」
絵理「ち、違うよ??? そんな寒いギャグ知らない????」
涼「いつもより多めに疑問形がついてるよ、うん」
涼「バンドメンバーみたいに紹介しないでよ!!」
?『さっむ……』
涼『き、君はさっきの!?』
?『は? なにその原始的なナンパ。どこまでも寒いよ、あんた』
律子『気にしないで、あの子いつもあんなのだから』
クラスメイトA『まーた始まったぜ、日高愛のダウナータイム……』
クラスメイトB『ほんと、ああやってクールぶって、格好いいと思ってるのかしら?』
愛『チッ』
涼「あれ、さっきの愛ちゃんと雰囲気違うね。夢子ちゃんがぐれたみたい」
涼「その凜子ってのがピンと来ないんだよね」
絵理「でもデレたらすっごく可愛いかも」
涼「これも愛ちゃんの声なんだよね」
絵理「うん、この世界の日高愛はみんな、愛ちゃんが1200円で引き受けてくれたの」
涼「元気な愛ちゃんか、落ち込んだ愛ちゃんしか見たことなかったから、少し新鮮だね。にしても愛ちゃんアフレコ上手いね」
絵理「声のモデルは安城鳴子、通称あなR」
涼「こらっ!!」
涼『ええ!?』
愛『チッ』
涼「やけにガラが悪いね……」
絵理「きっと不器用なだけ。それが攻略のヒント。でもこれは試作段階だから、愛ちゃんの顔見せぐらいの長さ。完成版が出来たら、データは引き継いであげるね」
涼「じゃあデートとかできないの?」
絵理「続きは、本編で? でも体験版使用で、ノーマル愛ちゃんとだけデートできる?」
涼「それってゲームで改めてする意味ないよね」
絵理「ぶっちゃけ愛プラスってゴロが良かったから作った、それだけ?」
涼「ですよねー」
涼「もうとってるなら、使わなきゃ勿体ないよね」
絵理「うん、だから完成したら遊んでね。私は見てるから」
涼「良いけど、出来れば友達百人の下りは変更してほしいかな……」
絵理「それは涼さんが思ってると思って」
涼「思ってないよ! そんな不純な動機でアイドルしてないよー!」
絵理「分かってる、冗談? あっ、でも」
涼「でも?」
絵理「涼さんなら、私良いよ?」
涼「うひゃあ! 耳元で囁かないでぇ!」
絵理「涼さんは耳が弱い……。新発見?」
絵理「ごめんなさい、涼さんが可愛くて、つい?」
涼「か、可愛いって……。嬉しくない……」
絵理「ゲームを進めるね」
涼『えっと、日高さん、よろしくね?』
愛『よろしく。もう話しかけないで』
涼『そんなぁ!』
愛『鬱陶しいだけよ』
律子『じゃあ授業始めるわよ! 教科書を……』
涼『前の学校と同じで良かったなぁ』
愛『あ、あれ?』
愛『わ、忘れた……』
律子『はぁ、涼。見せてあげなさい』
涼『ええ!? でも話しかけないでって言われたし……』
律子『真ん中において授業聞いたらいいでしょ? って授業中は私語厳禁! 私語したら、実験台にするわよ』
涼『えっと、日高さん。真ん中に、置いとくね……』
愛『……がと』
涼『え?』
愛『な、何でもない! こっちみんな!』
絵理「可愛くない女の子は、この世にいない?」
涼「これで好感度上がるの?」
絵理「ラブプラスは、選択肢と言うよりも、パラメーターが攻略のカギだった? だから一日の初めに、予定を入れれる。それで自分を磨くと良いことある?」
涼「ふーん、奥が深いなぁ」
絵理「ダウナー系愛ちゃんはこんな感じ。次、少し飛ぶね」
愛『ワープするよー!!!』
涼「セーブみたいに言わなくても!!」
涼『1人暮らしだし、アルバイト始めようかな?』
律子『殊勝な考えね。うちの学校は届け出さえすればバイトはオッケーよ。もちろん、公序良俗に反しない程度でね』
涼『じゃあマダムの紐になるのはやめるよ』
律子『それがいいわね』
涼「どんな学園生活送る気なの!?」
絵理「少年じゃなくて、娼年?」
涼「石田衣良!?」
涼『ファミレスかぁ』
絵理「原作だと、デキシーズってお店で、寧々さんに会える。でもこれは愛プラスだから、ちょっぴり違う?」
涼「ちょっとどころじゃない気がするな」
涼『無銭飲食できるかな?』
涼「こらあああ! 不純すぎるよもう一人の僕!」
絵理「サイネリアが言ってたけど、ファミレスで働いてる人ってこっそりつまみ食いしてる時もあるんだって」
涼「バレたら大変なことになるよね、それ」
絵理「そのスリルも一興?」
涼「理解に苦しむよ……」
絵理「ネを入れるか、ゼを煎れるかは涼さんしだい?」
涼「ゼで」
涼『えっと、店長さんはどこかな……』
?『あら? 何か用でしょうか?』
涼『えっと、アルバイト募集してると聞いたんですけど……』
?『あっ、アルバイトの面接ですね。少し待ってください』
涼(日高愛、さんか)
涼「見た目は舞さんだね」
絵理「大人になった愛ちゃんをイメージ?」
涼『あっ、はい!!』
涼「この愛ちゃんも静かだね」
絵理「落ち着いてきた愛ちゃん、って感じ?」
涼「でも舞さんみたいに傍若無人ではなさそうかな?」
絵理「身近に反面教師がいれば、良成長を迎える?」
涼「愛ちゃんの将来が楽しみになったかな」
涼『ふぅ、面接に受かったぞ』
愛『ふふっ、おめでとうございます。一緒に仕事できますね』
涼『はい!』
涼「これはこれで……」
絵理「あり?」
涼『えっと、折角だしクラブに入ろうかな。セクシーコマンドー部? はやめておこうか、うん』
愛『あー! あなたはこの前の人!』
涼『ああ! 君はあの時の』
愛『はい! 1年2組の日高愛です!!』
涼「1年は数字のクラスなんだね」
絵理「あっ、本当だ。ろ組にしなきゃ」
涼「普通にしなよ!!」
愛『えっと、クラブをお探しですか?』
絵理「ラブプラスでは、愛花がテニス部なの」
涼『クラブ? うん、転校してきたばっかでどこか入ろうかなって』
愛『だったら水泳部はどうですか? すっごく気持ちいですよ!!』
涼「水泳部なんだ」
絵理「水着が好きな皆様へのニーズに応えた?」
涼『ふーん、水泳部か。大変そうだね』
愛『でも私マネージャーですから……。恥ずかしい話、泳げないんです』
涼「愛ちゃんって金槌だっけ?」
絵理「ううん、泳げるよ? でもこれはあくまで、愛プラスだから」
絵理「……」
涼「黙った!? これじゃニーズに応えてないよ! 詐欺だよ!!」
絵理「うーん、これは完成版のネタバレになるから、あまり言いたくないけど、話が進むと環境も変わってくる?」
涼「え? 愛ちゃんも泳ぐようになるの?」
絵理「教えて、あげない? はむ」
涼「ぎゃおおおおん! 耳を噛まないでぇえん」
絵理「涼さん、女の子みたい」
涼「僕は男だよおおおお!!」
涼『涼だよ、秋月涼。2年い組』
愛『あっ、先輩だったんですね! じゃあ涼さんって呼びます! 気が向いたら水泳部の部室を見に来てくださいね!』
涼『あっ、愛ちゃん』
愛『はい! 何でしょうか?』
涼『買い出しだけど、僕も着いて言っていいかな?』
愛『え? どうしてですか?』
涼『この町に来たばっかりだし、買い出しがてら案内してくれたら嬉しいかな?』
愛『いいですよー! じゃあ涼さん、行きましょう!!』
涼『わっ! 速いよ愛ちゃん!』
絵理「デートに行くのが少し強引? 嫌われちゃう?」
涼「プログラミングしたの絵理ちゃんでしょうが!!」
デバッグー!涼のクラス変わってんぞ!
涼「デートと言うよりかは、買い出しに付き合うってのが正しいよね」
愛『えっと、ここがウィニングバーガーですね。練習帰りに良く寄ってます!』
涼『ハンバーガーショップか。小腹すいたらちょうどいいかな?』
絵理「こうやってデートスポットも増えていく?」
涼「ふーん、良く出来てるね」
絵理「デートに誘うには、前準備も必要? 涼さんも私をデートに誘いたいなら、私の好きそうなところ選んでね?」
涼「え、絵理ちゃんとデート?!」
絵理「いや?」
涼「そ、そんなことないけど……、って何を言ってるんだ僕はああああ!!」
涼『愛ちゃんの手、小さくてかわいいなぁ……』
涼「あれ? なんかコマンドが出て来たよ?」
絵理「ムードが出来ていたら、手を繋げる?」
涼「ムードね……。そういうの苦手なんだよなぁ」
絵理「Hな雰囲気とか、そういうの」
涼「ガンパレ?」
絵理「いちいち反応してくれる、涼さん。嫌いじゃない?」
涼「律子姉ちゃんがやってたんだよね、あのゲーム」
絵理「誰かガンパレとのクロスを書いてほしい?」
涼「なんの話やねん」
涼「ホントだ。選択肢の一つが光ってる。ポチッとな」
涼『愛ちゃんとこうやって並んでたら、デートみたいに見えるのかな?』
愛『で、で、デートですか!? そ、そう見えるのでしょうか? 私小さいから、妹みたいに見えるんじゃ……』
涼『そんなことないよ、ほらっ!』
愛『あっ、手を握って……』
涼『こうやって絡めていれば、恋人みたいじゃない?』
愛『りょ、涼さぁん……』
絵理「この後2人がどうなるかは、本編で?」
涼「あっ、切っちゃった!」
涼「うん、前半は壊れてたけど、後半は割と普通だったかな。ゲームとしては面白いんじゃない?」
絵理「そう言ってくれると、嬉しい? でも……」
涼「でも?」
絵理「殆ど出来たけど、肝心のデートがうまく作れない?」
涼「デートが?」
絵理「だって私、男の人と2人で遊んだことないから。経験が足りない?」
涼「それでなんだ……」
絵理「うん、だから涼さん」
涼「絵理ちゃん?」
涼「え? また噛もうなんて思ってないよね?」
絵理「しないよ? 私を信じて」
涼「そこまでいうなら、なあに絵理ちゃん?」
絵理「……しい」
涼「え? いまいち聞こえないかな……」
絵理「私に、デートを教えて欲しい?」
涼「え?」
絵理「は、恥ずかしいから、二度も言わせないで?」
涼「え、絵理ちゃん……」
絵理「……ダメ?」
涼「え、えっとその……」
涼「こちらこそ、よろしく?」
絵理「なんで疑問形やねん?」
愛「終わりだよーー!!」
デート編はまた別の機会にでも。
876メインは珍しくて楽しかったよ、かわいいよ絵理ちゃん
Entry ⇒ 2012.05.24 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
シャロ「特番制作決定!!安価でミルキィのSSを書きますー!!」
シャロ「ついに先生がアニメに登場するんでしょうか!?今から期待が高まります!!」
シャロ「これは、安価先のお題・キーワードで短いSSを書かないわけにはいきません!!」
シャロ「それじゃあ最初は>>5から行ってみましょー!!」
シャロ「ココロちゃーん、スカトロって何ですか?」
小衣「ココロちゃん言うな!IQ1300の天才美少女警察官明智小衣には楽勝すぎる問題ね!」
小衣「それは…!キューバの革命家のことよ!」
シャロ「さ、さすがココロちゃん…!!」
次子「小衣は頭いいなあ」
コーデリア「そのまま汚れなき明智さんのままでいて欲しいわね…」
ネロ「いたなぁそんなの」
シャロ「次は>>16でお願いします!!」
アルセーヌ「アニメの特番の制作が決定したそうです」
トゥエンティ「また美しい僕を電波に乗せてお届けできる!?」ガタッ
トゥエンティ「夏まで待ちきれない全国のトゥエンティストのみんな!もう少しの辛抱だッ!!」バッ
アルセーヌ(また脱ぐ…)
トゥエンティ「美しい画質!美しい音声!!地上デジタルより美しい僕!!」
アルセーヌ「…トゥエンティ」
トゥエンティ「お茶の間に届け僕の乳首!!ビューティフォートゥ……ん?なにか?」
アルセーヌ「もしかしたら、特番はゲーム版準拠かもしれないので…」
アルセーヌ「貴方は脱げないかもしれませんわ」
トゥエンティ「…………えっ?」
ネロ「ゲーム準拠だったら僕の帽子からケーキが出る!!」
シャロ「次は>>26ですー」
コーデリア「ネロ…ほら、チェリー画伯の絵よ…」
ネロ「なんていうか、すごいセンスだね…ふあ〜ぁ」
ネロ「…疲れたよコーデリア、なんだかとっても眠いんだ」ムニャムニャ
コーデリア「え?まだお昼よ?」
ネロ「朝っから美術館にこもりっきりの僕の気持ちにもなってよ…」
コーデリア「審美眼を磨くのも乙女の務めよ!」
ネロ「そういうのは僕に向いてないから…ぐー」Zzz
コーデリア「あぁ!もう、ネロったら!」ガシッ
コーデリア「仕方ないわね…よいしょ、っと」ヒョイ
ネロ「…………」Zzz
コーデリア「…重いわ、ネロ」
ネロ「重くないよ…」Zzz
シャロ「むにゃむにゃ…>>35……ぐー」Zzz
小衣「え?小衣のベッドの下?」
小衣「洋服とか仕舞ってあるけど…それがなにか?」
…
次子「あたしのベッドの下?」
次子「んー…猫がいるよ、いっぱい」
…
咲「ベッドの下?」
咲(……そろそろ掃除しなきゃかなー)
…
平乃「何もないですねー、うちお布団なんです」
平乃(布団の下には……ふふっ)ニヤリ
エリー「…………!」ビクッ
シャロ「ウィジャボードですー」
エリー「……ほっ」
シャロ「ホームズさん…ホームズさん…次は>>45ですか…?」
平乃「〜♪」カタカタ
次子「平乃がパソコンなんて珍しいじゃんか」
平乃「今日はネットアイドル咲りんのライブ生放送が配信されるんですよ」
小衣「仕事しなさいよ…」
次子「ネットアイドル?」
平乃「ネット上で活動するアイドルのことです」
次子「なるほど、分からん」
PC『咲りんライブスタートなうー』
小衣「あっ、始まった」
PC『今日はきてくれてありがとー』ワーワー
次子「…咲?」
平乃「はい、咲りんですよ」
小衣「いや、え?咲…」
PC『いぇーい、平乃見てるー?』
平乃「忘れてくださいよ…」
シャロ「次は>>53ですー」
シャロ「ったく…!いつまで待たせれば気が済むのよ…!」
アルセーヌ「ミルキィホームズ…ここであったが百年目!!」ザッ
シャロ「かっ、勘違いしないでよね!別にあんたを探してここで待ってたわけじゃないんだからね!」
アルセーヌ「ふっ…分かっていますわ、怪盗と探偵は惹かれあう運命なのだから…!」
シャロ「はぁ!?う、運命とか…ばばばばバッカじゃないの!?」
アルセーヌ「そうでなくとも、貴女と私の間には切れぬ因縁がある!」
シャロ「え、縁とか…そんなの信じてるわけ!?おかしいったらありゃしないわ!」
シャロ「で、でも…あんたとの縁だったら、その、あたし…」ドキドキ
アルセーヌ「隙アリですわ!はぁっ!!」ガッ!
シャロ「ぎにゃああああああああ!!!」
アルセーヌ(殴ったらデレた…)
シャロ「つ、次は>>61なんだから!」
シャロ「ココロちゃーん、シャロですよー!」
小衣「ココロちゃん言うなーっ!!」ガッ
シャロ「あうぅ…!」
小衣「で?また捜査を邪魔にし来たわけ?」
シャロ「違いますー、あたしも探偵としてココロちゃんのお手伝いを…」
小衣「ダメダメに助けてもらうほど落ちぶれてないわ!帰れ!!」ギュムー
シャロ「こ、ココロちゃんー…!!」
ネロ「…あそこまで邪険にされてなんでへこたれないんだろう…」
コーデリア「むしろ殴られたがってる節もあるような…」
平乃「シャーロックさんは小衣さんにベタ惚れですからねー」
小衣「黄金仮面スマッーーシュ!!」ベキッ
シャロ「あふぅっ…!ココロちゃんっ…!」
小衣「殴っても殴っても!なんでついてくんのよ!!」
シャロ「次は>>71です−」
シャロ「祝!小林先生アニメ出演!!おめでとうございますー!!」パチパチ
小林「ありがとう、シャーロック…!」
小林「思えば…長かったなぁ…!」
小林「一期の最後に顔だけちょっと出たくらいで…そんな僕がいよいよアニメに!」
小林「そうだよ、アニメのせいで忘れてたけど僕が主人公なんだ!!」
小林「夏の特番でそれをみんなに改めて証明してみせる!!」
小林「さらにこれを足掛かりに第三幕は完全に僕が主人公に復帰し…!」フフフ
ネロ「…まだ小林出るって決まったわけじゃないけど」
エリー「もしかしたら…回想だけ、とか…?」
コーデリア「教官…」
小林「さらにミルキィ2でもかっこよく再登場を果たし、第四幕!ミルキィ3!劇場版…!」フフフフ
小林「えっ」オッペラーン
シャロ「次は>>81です!」
コーデリア「お花畑〜♪」ドドドドドド
シャロ「コーデリアさんの様子がおかしいッ!!」ドドドドド
ネロ「間違いないッ!コーデリアはスタンド攻撃を受けているッ!!」ゴゴゴゴゴゴ
エリー「この中に…敵スタンド使いが…!!」ゴゴゴゴゴ
シャロ「この中に!?いいや!違いますッ!!」
シャロ「コーデリアさんが、スタンド使いだァーーーッ!!」ドギューーーン
ネロ「何ィーーー!!!」
コーデリア「お花畑ェェ〜ッ!!」ドドドドドド
コーデリア「お花お花お花お花お花お花お花お花お花畑ェッ!!」ドゴドゴドゴドゴドゴ
ネロ「ううあっ!!」ズドオオオォ
コーデリア「私のスタンド…『お花畑』に触れたわね…?」ゴゴゴゴ
コーデリア「私のスタンド能力!『お花畑』に触れた者は、二十四時間以内にお花畑になるッ!!」
シャロ「何ィーーッ!!!」
To Be Continued…
小衣「ココロちゃん言うなココロちゃん言うなココロちゃん言うなココロちゃん言うなココロちゃん言うなーっ!!!」
小衣「勝ったッ!第>>90部完!!」
アンリエット「………ふぅ」カランッ
アンリエット「いつになったらミルキィホームズのトイズは…」
アンリエット「もしかして、このまま二度ともとに戻らないのでは…?」
アンリエット「もしそうなったら、私は…」
アンリエット「…………」
石流「アンリエット様…烏龍茶はそれくらいにしておいたほうが…」
アンリエット「…私の事は放っておいてください」
石流「は、はい…」
アンリエット「…ストーンリバー、私は何をしているのでしょう?」
石流「……分かりかねます」
アンリエット「ミルキィホームズ………」
アンリエット「………」
アンリエット「>>101までに取り戻しなさい!!」キィッ
神津「俺の好きなタイプか?」
小衣「こ、後学のために是非っ!!教えてくださいっ!」ドキドキ
神津(なにが後学なのか分からんが…)
小衣「………」ジーッ
神津「…そうだな」
神津「…正義感が強くて、頑張っている女性が好きだ」
小衣「なるほど…!小衣ももっと頑張ります!!」ビシッ
神津「…頑張れ、小衣」
小衣「はいっ!!」ビシッ
シャロ「ってわけでおしまいですー」
Entry ⇒ 2012.05.23 | Category ⇒ ミルキィホームズSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
さやか「ほむらの頭撫でてたらなついた」
ほむら「だから忠告したじゃない」
さやか「あ、転校生・・いたの?」
ほむら「いたわよ」
ほむら「愚かね・・美樹さやか、こうなることなんてわかりきっていたのに、ど」
さやか「あーうるさいうるさい!契約しちゃったもんは仕方ないでしょ!あんたなんてこうしてやる!」 なでなで
ほむら「え、ちょっ・・な、何するのよ!?」
さやか「うるさい!」 なでなで
ほむら「ちょ、ちょっと、やめてよ・・」
ほむら「やめなさいよ。髪が乱れるでしょう」
さやか「そう言うわりにはろくに抵抗もしないけど?」ナデナデ
ほむら「そんなこと……いいからやめなさいよ」
さやか「説得力が無いぞー」ナデナデ
ほむら「……」
さやか「ま、転校生が嫌がるならやめてあげましょうか」
ほむら「あ……」
さやか「あれ? もしかしてやめて欲しくなかった?」
ほむら「……そんなこと言ってないでしょ」
ほむら「別に撫でて欲しいわけじゃないわ」プイ
さやか「あ、そ。じゃ、あたしは帰ろっと――」
ほむら「……」ガシッ
さやか「……なんで転校生はあたしの腕を掴んでるのかな?」
ほむら「……」
さやか「ほら、あたしは帰るんだからさ。離してよ」
ほむら「……なで……て欲しぃ……」
さやか「んー? 聞こえないなぁ」
ほむら「……」
ほむら「……もう一回、撫でて……欲しい」
さやか「聞き取りづらいけど……ま、いっか」
ほむら「……」
さやか「いやー、しかしあの無愛想な転校生が撫でて欲しい、なんてねぇ」
ほむら「うるさいわね……言ったんだから、早くしてよ」
さやか「……こういう状況なんだから、もうちょっと愛想良くしてくれても良さそうなのに」
ほむら「……」プイ
さやか「……あんまり意地の悪い態度取ってると、あたしもだんだん意地が悪くなっていくよ?」
ほむら「……お願い」
さやか「にひひ」
ほむら「……」
さやか「そんな期待に満ちた目で見るなよー」
ほむら「……気のせいよ」
さやか「あれれー? 撫でて欲しいんじゃないのー?」
ほむら「…………」グヌヌ
さやか「ふっふっふ、まさかあの転校生に優位に立てる日が来るとは……」
ほむら「貴女、調子に乗りす……」
さやか「そこですかさず」ナデナデ
ほむら「……ふぁ」
さやか(効果はばつぐんだ!)
ほむら「……さあ、どうかしら」
さやか「……」ナデナデ
ほむら「……///」
さやか「……表情緩んでるよ」ナデナデ
ほむら「……」キリッ
さやか「……」ナデナデ
ほむら「……///」
さやか(これが萌えかー!? 萌えなのかー!?)
ほむら「か、勘違いしないで。私は……」
さやか「私は?」ナデナデ
ほむら「…………」
さやか「……どうしたの?」ナデナデ
ほむら「……なんでもないわ」
さやか「気になるじゃん」ナデナデ
ほむら「……なんでもないって言ってるでしょ……」グヌヌ
さやか(何も思いつかなかったんだろうなあ)
ほむら「……好きにすればいいじゃない」
さやか「んじゃ」ピタッ
ほむら「……」
さやか「なにかなー? そのおねだりするような目はー?」
ほむら「空気が読めない貴女に人の心が読めるとは思わないけど」ファサ
さやか「帰る」
ほむら「待って」
さやか「愛想は無いけど素直になったね」
ほむら「……」プイ
さやか「でもなー、さっき『もう一回』って言ったしなー」
ほむら「……何が望みなの?」
さやか「それだとあたしが悪者みたいじゃん……」
ほむら「人の弱みに付け込んでるんだから、間違いではないでしょ」
さやか「弱みって……これが?」ナデナデ
ほむら「///」
さやか(確かに撫でられるのにめちゃくちゃ弱いけど……)
ほむら「……」
さやか「うーん……なんか普段絶対やってくれないようなことを……」ナデナデ
ほむら「……やるわけないじゃない」
さやか「……ちょっとお姉ちゃんって言ってみて」ナデナデ
ほむら「……」
さやか「嫌ならいいんだけど」ピタッ
ほむら「……お、お姉ちゃん///」
さやか「お、おう」ナデナデ
さやか(やばいやばいやばい、なにこれなにこれなにこれ)
ほむら「……」
さやか「そういう態度取ったらどうなるかわかってるはずなのに」ピタッ
ほむら「……さやかお姉ちゃん、もっと……///」
さやか「素直になったねー。いい子いい子」ナデナデ
ほむら「……///」
さやか(しかしここまでキャラが変わるとは……)
ほむら「調子に乗るんじゃないわよ」
さやか「そんな幸せそうな顔で言われても……」ナデナデ
ほむら「これが幸せに見えるなんて、貴女目が腐ってるんじゃないの?」
さやか「その表情じゃ全然腹が立たないぞー」
ほむら「私はこんなことされたって、嬉しくもなんとも無いわよ」
さやか「……この表情じゃただの強がりにしか」ナデナデ
ほむら「強がってなんか……いないわ」
さやか(……)
ほむら「……当たり前でしょう」
さやか「じゃあ、何で撫でて欲しいなんて言ったの?」ナデナデ
ほむら「……貴女には関係ないでしょ」
さやか「……」ナデナデ
ほむら「……」
さやか「……お姉ちゃん」ナデナデ
ほむら「え?」
さやか「お姉ちゃん、って呼んでって言ったよね」ナデナデ
ほむら「……お姉ちゃん」
さやか「うん、それでいいよ」ナデナデ
ついつい油断して自分の秘密を漏らしちゃうとなお良い
ほむら「……そんなの……」
さやか「今日のことは忘れてあげるから。もちろん誰にも言わないよ」ナデナデ
ほむら「……本当に?」
さやか「……お姉ちゃんは嘘つかないよ」ナデナデ
ほむら「……さやかお姉ちゃん」
さやか「なに? ほむら」ナデナデ
ほむら「……信じてくれるかわからないけど……」
魔法少女のこと、時間遡行のこと、ほむらの体験してきた未来のこと
そのほとんどが衝撃なことだったけど
そんなことよりも
ほむらがあたしに心を開いてくれたことが
どうしようもなく嬉しくて
気がついたら、ほむらを抱きしめていた
ほむら「つらくなんて……私は自分がしたいように……」グスッ
さやか「いいんだよ、今日だけはあたしに甘えて」ナデナデ
ほむら「……つらかったんです。どんなにがんばっても、うまくいかなくて……」
さやか「うん」ナデナデ
ほむら「私の目の前で……何度もみなさんは命を……」
さやか「……そっか。それでほむらはあんな態度を取ってたんだね」ナデナデ
ほむら「もう誰にも頼らないって決めたのに……こんな……」
さやか「そんな寂しいこと言わないで。もう、あたしはほむらの味方だから」ナデナデ
ほむら「ありがとう……ございます」グスッ
ほむら「……私なんて……元々弱かった……ううん、今でも弱いんです」
さやか「……強いよ、ほむらは」ナデナデ
ほむら「そんなこと……」
さやか「あたしだったら途中で挫折しちゃってるよ」ナデナデ
ほむら「……美樹さんは」
さやか「お姉ちゃん」
ほむら「……さやかお姉ちゃんは、私なんかよりずっと……」
さやか「そうでもないよ。あたしだって、今日のことは結構堪えてたんだ」ナデナデ
ほむら「……魔法少女になったことを?」
さやか「……というか恭介のこと、かな」ナデナデ
ほむら「……そう、なんですか」
さやか「そ。だからさ、ほむらだけが弱いわけじゃないんだよ」ナデナデ
ほむら「……ありがとう、ございます」
さやか「こら。お姉ちゃんに敬語なんか使わないの」ナデナデ
ほむら「……ありがとう、お姉ちゃん」
さやか「どういたしまして、ほむら」ナデナデ
ほむら「……もう少し、こうしてていい?」ギュ
さやか「うん、ほむらの気がすむまで、こうしててあげるよ」ナデナデ
――
さやか「……気がすんだの?」
ほむら「うn……ええ」ファサ
さやか「あ、そのキャラに戻るんだ」
ほむら「私は元々こういう性格よ。勘違いしないで」
さやか「さんざん人の胸で甘えてたくせに……」
ほむら「き、今日のことは忘れてくれるんでしょ///
さやか「うん、明日になったら忘れるよ」
ほむら「……信用できないわ」
さやか「おいおい、仲間のことを信用できないなんて寂しいこと言うなよー」
ほむら「……仲間、ね」
さやか「それも無かったことにする?」
ほむら「……その必要はないわ」プイ
ほむら「な、何よその顔……///」
さやか「頭撫でて欲しいなんて言うとは」ニヤニヤ
ほむら「――っ///」
さやか「さらにさやかお姉ちゃん、なんて……」
ほむら「そ、それは貴女が言えって……!」
さやか「頭撫でて欲しくて言ったんだよね」
ほむら「そ、そうよ! 仕方なく……」
さやか「でもわりと素直にお姉ちゃんって呼んでくれてたよね」
ほむら「〜〜〜〜///」
ほむら「忘れなさい忘れなさい/// 明日と言わず今すぐ忘れなさい///」
さやか「ほら、あたしの制服にほむらの涙の後がくっきりと」
ほむら「し、しょうがないじゃない/// あの体勢じゃしょうがないじゃない///」
さやか「抱きしめた時もおとなしくしてたし、いつものキャラはなんなんだろうね」
ほむら「あ、あれは……///」
さやか「そうそう、あの敬語でしゃべる弱気なほむらが本当のほむらなんだよね?」
ほむら「知らない、知らない、そんな私知らないんだからぁっ///」ダダダダダ
さやか「あ、逃げた……」
あたしの心の中にそっとしまっておいた
本当はまどかやマミさんに話してしまいたかったけど
ほむらはそれを望んでいなかったから
その代わり、あたしが力になろう
あたしに心を開いてくれた、ほむらのために
あたしができる精いっぱいの力で
――
さやか「さし当たって思いついたのはこんなことなんだけどね。おはよー、ほむら」
ほむら「……わざわざ迎えに来たの?」
さやか「迎えに来ないと一緒に学校行けないじゃん」
ほむら「……必要ないわ」ファサ
さやか「で、まどかと仁美と4人で登校しようよ」
ほむら「人の話聞きなさいよ」
さやか「明日からは迎えに来なくてもちゃんと来るんだぞ」
ほむら「……はいはい」
さやか「そんな態度とってても嬉しいのはわかってるんだぞー」ウリウリ
ほむら「くっ……」
さやか「忘れようとがんばったけど覚えてた」
ほむら「勉強はすぐ忘れるのにね」
さやか「……私なんて……元々弱かった……」
ほむら「やめなさい///」
さやか「まあ、そんなわけで。とりあえず学校行こ」
ほむら「……遅刻したくないから行くけどね」
さやか「えらいえらい」ナデナデ
ほむら「……やめてよ///」
さやか「あ、昨日のことは忘れてあげるんだったね」ピタッ
ほむら「……」グヌヌ
ほむら「そんなこと、もう二度とないかもしれないわよ」
さやか「撫でて欲しいときはさやかお姉ちゃんって言うんだぞ」
ほむら「……二度と言うもんですか」
さやか「言わなかったら撫でてあげないからねー」
ほむら「……卑怯者」
さやか「……卑怯、かなあ」
ほむら「卑怯よ」
さやか「まあ、ほむらが言いたくないなら仕方ないね」
ほむら「……」ムー
まどか「おはよう、さやかちゃん。……と、ほむらちゃん?」
仁美「おはようございます、さやかさん。……と、暁美さんも」
ほむら「……おはよう」
さやか「もっと愛想良くしなよー」
ほむら「……」プイ
まどか「えーっと、どういうこと?」
さやか「ごめんね、うちのほむらがちゃんと挨拶もできなく――痛っ」
ほむら「貴女何口走ってるのよ!」
さやか「いや、つい。挨拶をちゃんとしてればこんなこともなかったのになー」
ほむら「……おはよう、鹿目まどか。志筑仁美」
まどか「うん、おはよ、ほむらちゃん」
仁美「おはようございます」
さやか「挨拶は大事だよね☆」
ほむら「……」
さやか「ほら、ほむら。ちゃんと呼んであげなさ――痛っ」
ほむら「……いい加減にしなさいよ……」
さやか「あんたこそちゃんとしなよ。……誤解されたまんまじゃつらいでしょ」
ほむら「……」
まどか「さやかちゃんとほむらちゃん、いつの間に仲良くなったんだろうね」ヒソヒソ
仁美「さあ……どちらかというと仲が悪かったはずなんですけど……」
まどか「えへへー」
仁美「では、私のことも仁美で構いませんわ」
ほむら「……ええ、仁美」
さやか「善哉善哉」
ほむら「……その表情、腹立つわ」
さやか「……あたしができることって、こういうことしかないからさ」
ほむら「?」
ほむら「ええ」
まどか「ねえ、さやかちゃん、昨日何かあったの?」
さやか「うーん、何か……あったかなー」ニヤニヤ
ほむら「……何もないわよ」
仁美「でも、確かさやかさんはほむらさんのことを転校生と……」
さやか「んー? そだっけー?」
まどか(やっぱり何かあったんだ……)
仁美(何かありましたのね……)
ほむら「ここまでやってくれたお礼はするからね……」
さやか「……うん、ちょっとやりすぎた気がしなくもないけど」
ほむら「悪いと思ってるなら……後で誰もいないときに頭撫でて……さやかお姉ちゃん///」ボソッ
さやか「……あっはっはー、人間素直が一番だよねー!」ナデナデ
ほむら「な! やめなさい/// なんで今……///」
まどか「……後でさやかちゃんの話、楽しみにしてるからねー」ウェヒヒ
仁美「キ、キ、キ、キマ、キマ……」
まどか「仁美ちゃん、落ち着いて!」
ほむら「何言ってるのよ/// こら、手をどかしなさい///」
さやか「あたしに命令は聞かないのだ。お願い、なら聞いてあげなくもない」ナデナデ
ほむら「だから、手をどかしてって……」
さやか「お願いするときには必要なものがあるでしょー?」
ほむら「……さやかお姉ちゃん、恥ずかしいからやめて……」ボソッ
さやか「うふふふ、あー、もう、ほむらは可愛いなぁ!」ナデナデ
ほむら「は、話が違うじゃない///」
まどか(なんかいいなぁ……私も混ぜて欲しいな……)
仁美(もう学校とかどうでもいいですわ)
ほむら「まどか!?」
仁美「私も混ぜていただきますわ」ナデナデ
ほむら「仁美まで!?」
さやか「もちろんさやかちゃんもだー!」ナデナデ
ほむら「おね……さやかも! もぅ、みんなしてなんなのよー///」
おしまい
支援ありがとうございました
ここのところほむさや多めで楽しい
まどほむ、ほむさや、ほむあん、さやあん、あんまみ……なんでもいいんだけど
良いナデナデだった
俺も撫でてくる
とても良い
なんやかんやでワルプル撃破してうっかりみんなの前でお姉ちゃん発言しちゃったりするとものすごく良い
杏子「ワルプルギスの夜が……消えた?」
マミ「やった……の?」
さやか「ど、どうなの、ほむら?」
ほむら「どうって……こんなこと始めてで……わからない」
マミ「キュゥべえ、いるんでしょう? ワルプルギスの夜は……」
QB「……驚いたね。まさか、ワルプルギスの夜を倒してしまうとは……」
さやか「それじゃあ……」
ほむら「本当に……私、やったの……? まどかを……救えたの……?」
QB「救うっていうのは良くわからないけど……君の視点からだとそういうことになるのかな」
杏子「やったな、ほむら!」
マミ「やったわね、暁美さん!」
さやか「やったね、ほむら!」ギュッ
ほむら「やっと……やっと……」ポロポロ
さやか「うん、うん。がんばったね、がんばったよ……グス」ナデナデ
ほむら「さやかお姉ちゃん……私、私ぃ……」ポロポロ
さやか「いっぱい泣いていいよ。ずっとこうしててあげるから」ナデナデ
杏子「……なあ、前から気になってたんだけど、そのお姉ちゃんってなんなんだ」
マミ「暁美さん、時々口にしてたわよね」
さやか「……ほむらがつらいときに、支えてあげるおまじない、かな」ナデナデ
あんまみ「?」
さやか「お、まどかも来たのか」
まどか「うん、急に嵐が晴れて……キュゥべえも大丈夫だって言ったから」
ほむら「まどかぁ……良かった……」
さやか「うん、ほむらががんばった結果だよ」ナデナデ
ほむら「ありがとう、さやかお姉ちゃん……」
まどか「……お姉ちゃん?」
杏子「まどかも知らないのか」
マミ「おまじないらしいわよ」
まどか「?」
さやか「んー、どうしようかなー。どうする? ほむら」
ほむら「……」ギュウ
さやか「……ま、これはあたしとほむらの秘密ってことで」
まどか「えー」
杏子「えー」
マミ「えー」
さやか「ね」
ほむら「……うん」
QB「君たちは最強の魔女を倒した後だって言うのに……まったく、わけがわからないよ」
おまけおしまい
ほむら「貴女はもっと自信を持っていいのよ」ナデナデ
メガほむ「そんな……同じ私でも……貴女みたいには……」
ほむら「なれるわ。強い思いがあれば、できないことなんてないわ」ナデナデ
メガほむ「強い……思い……?」
ほむら「まどかを守れる私になりたくて、私は強くなった。その思いは、貴女も同じでしょう」ナデナデ
メガほむ「……鹿目さんを……守れる……私……」
ほむら「ええ。守られるんじゃなくて、守れるように」ナデナデ
メガほむ「……なれるでしょうか……」
ほむら「私がなれたんだもの。貴女だって、必ず」ナデナデ
メガほむ「……ありがとうございます。……ふふ、自分にお礼って変ですね」
ほむら「……つらいことはいっぱいあるけど……がんばってね……私」ナデナデ
こうですか?
最高だった
乙
Entry ⇒ 2012.05.23 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
岡部「まゆりが可愛すぎてつらい……」紅莉栖「!?」
まゆり「なあに?オカリン」
岡部「外が暗くなってきた。そろそろ帰った方がいい」
まゆり「ええ〜でもまだコスを作ってる途中だよ?」
岡部「明日にしろ、遅くなりと危険だからな。ほら、帰るぞ」
まゆり「今日もオカリンが送ってくれるの?」
岡部「無論だ。お前は俺の人質だからな」
まゆり「えへへ、そっか〜」
岡部「じゃあ、行くか」
まゆり「うんっ」ギュッ
バタン
紅莉栖「……」
岡部「なんだ?」
まゆり「どうして最近になって毎日まゆしぃをお家まで送ってくれるの?前まではたまにしか送ってくれなかったのに」
岡部「最近になって機関の警戒が強くなったからな。人質であるお前にも奴らの魔の手が迫っている。この俺が直接護衛に付いてやってるのだ感謝するがいい」
まゆり「う〜ん、まゆしぃはよく分からないのです」
岡部「分からなくていい。お前が側にいれば、それでいいのだ」
まゆり「ほぇ?」
岡部「な、何でもない!ほら、そろそろお前の家が見えてきたぞ」
まゆり「うん」
岡部「フッ、礼などいらん!お前は俺の人質なのだ。当然の事をしたまでだ」
まゆり「オカリンはラボに戻るの?」
岡部「ああ、完成させねばならんガジェットがあるからな」
まゆり「たまにはお家に帰った方がいいよ〜?オカリンのお父さんとお母さんも心配してるよ、きっと」
岡部「ふんっ、そんな訳ある筈がなかろう」
まゆり「オカリ〜ン?」
岡部「……わかった。ちゃんと近い内に帰る」
まゆり「えへへ、それでいいのです」
岡部「ぐぬぬ、人質の分際で」
岡部「何がおかしいのだ」
まゆり「うんとね、こうやってオカリンと毎日一緒に帰ってると、何だか昔に戻ったみたいだね〜」
岡部「お前が小学校を卒業まではずっと一緒に帰ってたからな」
まゆり「オカリンが中学生に上がっても、門でまゆしぃを待ってくれたよね」
岡部「……あの時から、お前はずっと俺の人質だったからな」
まゆり「……うん」
岡部「なっ!何を言い出すのだ!お、俺がお前を送り迎えするのはお前がひ、人質であるからであって!」
まゆり「おっかり〜ん」ムギュ
岡部「こ、こら抱き付くな!」
まゆり「ええ〜、昔はよくこうやって寒い時に抱き付いてたよ〜?」
岡部「今は夏だ!それにこんな所をご近所に見られたら」
まゆり「えへへ」
岡部「ぐ、……仕方ない奴め」ギュッ
まゆり「んっ、えへへ……」
岡部「まったく……」
――
ガチャ
岡部「なんとか終電に間に合ったか……ん?」
紅莉栖「……」
岡部「なんだ助手。居たのか」
紅莉栖「居たわよずっと」
岡部「……何を怒っているのだ」
紅莉栖「怒ってねーし」
岡部「どう見ても怒ってるではないか」
紅莉栖「怒ってなんかないから!最近まゆりに対して過保護すぎるとか、私との扱いの差に不満があるとか、そんな事ないからな!」
岡部「……ツンデレ乙」
岡部「とうとう隠す気もなくしたかネラーめ」
紅莉栖「うっさい!というか本当に最近、まゆりに構いすぎじゃない?」
岡部「何を言うか。まゆりは俺の人質なのだ。何も変わっておらん」
紅莉栖「……毎日一緒に手を握って帰り」
岡部「ぐっ」
紅莉栖「来る時もわざわざまゆりの家まで迎えに行くし」
岡部「ぐぬぬ」
紅莉栖「バイト先まで送り迎えをするとか」
岡部「ぐはっ」
紅莉栖「明らかに人質(笑)の範疇を越えてると思うんだけど?」
紅莉栖「えっ?う、うん……その、まだ半信半疑というか、確認してない要素は多いけど」
岡部「……あの体験から、どうにもまゆりに対して過保護になってしまってな。あいつの側に居てないと落ち着かないんだ」
紅莉栖「岡部……」
岡部「あともう一つ、これも世界線漂流の弊害なのかもしれんのだが……」
紅莉栖「なに?」
岡部「まゆりが可愛いすぎてつらい……」
紅莉栖「……」
紅莉栖「は?」
紅莉栖「ま、まゆりは元からキュートじゃない」
岡部「見た目の話ではない。何と言うか普段の仕草とか……」
紅莉栖「た、例えば?」
岡部「笑顔とか、たまに怒って頬を膨らます表情とか……こう、きゅんとくる」
紅莉栖「ま、まあ、まゆりの笑顔は素敵だからね。きゅんとくるのも無理ないわ」
まゆり『 おかえりんにゃさいませ、オカリン♪』
岡部「……正直抱き締めたくなった」
紅莉栖「Oh……」
岡部「今更だが……まゆりって可愛いな」
紅莉栖「本当に今更ね……」
岡部「……もし中学生の俺がまゆりの可愛さに気付いていたら人質ではなく恋人にしてたかもしれん」
紅莉栖「なっ!だ、ダメよ!そんなの!」
紅莉栖「そ、そうね。そうよね……」
岡部「しかしまゆりは可愛いな……」
紅莉栖「……」
岡部「なあ、紅莉栖」
紅莉栖「ふぇ?い、今名前で」
岡部「俺的にはまゆりは猫ではなく犬の方が似合うと思うのだが、お前はどう思う?」
紅莉栖「はっ?」
岡部「だから、マユシィ・ニャンニャンよりもマユシィ・わんわんの方が似合うのではないかと聞いている」
紅莉栖「……」
岡部「うむ、そうか。やはりそうだな。まゆりは猫というより犬だ」
紅莉栖「ね、ねえ」
岡部「なんだ?」
紅莉栖「わ、私は?」
岡部「何の話だ」
紅莉栖「だ、だから私は犬か猫かどっちが似合うかと聞いている!」
岡部「な、何故そんな事を答えねばならんのだ!」
紅莉栖「い、いいから!答えろ!」
紅莉栖「り、理由は?」
岡部「フッ、その小生意気な所が猫そっくりではないか!フゥーハハハ!」
紅莉栖「な、なによそれ!」
岡部「答えたのだ。これで満足だろ」
紅莉栖「ぐぬぬ」
岡部「しかし、メイクイーンと言えばフェイリスに一つ物申さねばならんな」
紅莉栖「フェイリスさんに?」
岡部「まゆりはウィッグなんぞ付けなくても可愛い。むしろ付けない方が可愛いだろうが」
紅莉栖「……」
岡部「ふんっ、これだからメリケン処女は困る……」
紅莉栖「なっ!黙れDTの分際で!」
岡部「いいかよく聞け!まゆりは黒髪が一番似合うのだ!」
紅莉栖「ま、まあそれは同意する」
岡部「それなのになんだあのふざけたメリケン風味のウィッグは!?まゆりの良さを損なわせてるではないか!」
岡部「いや?」
紅莉栖「えっ?」
岡部「絶対に黒髪がいいとは言っていない。まゆりには黒髪が似合うし、フェイリスの髪もあいつには似合っているからあれでいいと思うしな」
紅莉栖「ふ、ふーん。じゃ、じゃあ、私は?」
岡部「似合っているのではないか?少なくとも、お前の髪はそれ以外想像できん」
紅莉栖「そ、そう?ふふっ……」
紅莉栖「えっ?あっ、しまった終電逃しちゃった……」
岡部「お前のホテルなら徒歩でも帰れるだろ?」
紅莉栖「深夜に女の子一人で帰らそうとする男の人って……」
岡部「何を勘違いしている助手」
紅莉栖「えっ?」
岡部「早く帰る支度をしろ。こっちはラボからお前のホテルまで今から往復するのだ。時間が惜しい」
紅莉栖「お、送ってくれるの?」
岡部「泊まる予定だったのか?」
紅莉栖「ち、違うけど」
岡部「なら早くしろ」
紅莉栖「うん……ありがと」
岡部「なんだ?クリスティーナ。暗くて怖くて歩けないので手を繋いでほしいのか?」
紅莉栖「ち、ちがっ……ううん」
岡部「……? どうした、助手」
ギュッ
岡部「なっ!?」
紅莉栖「暗くて怖くて歩けないから仕方なく手を繋いでるんだからな、勘違いするなよ」
岡部「嘘つけ!」
紅莉栖「ふんっ」
岡部「あっ、おい!て、手を握ったまま先に行くでない!こら!」
紅莉栖「……」ピタッ
岡部「よし、それじゃあ次は手を」
紅莉栖「断る」
岡部「な、なに!?」
紅莉栖「……岡部、今から私が質問する。それに答えたら話してあげる」
岡部「そんなまどろっこしい真似をせんでも普通に聞けばいいだろう……」
紅莉栖「多分、っていうか絶対、この質問聞いたら岡部、逃げると思うから逃がさない為よ」
岡部「に、逃げるだと!?フゥーハハハ!この鳳凰院凶真逃げも隠れもせんわ!」
岡部(一体どんな質問だ? 世界線漂流について、こいつには一部伏せている情報もあるが……)
紅莉栖「単刀直入に聞く」
岡部「……なんだ?」
紅莉栖「あんたは、私とまゆりどっちが好き?」
岡部「わんもあ」
紅莉栖「だ、だから!あんたは!私とまゆり!どっちが好きかって聞いてる!」
岡部「………」
岡部「す、好きというのは当然lik」
紅莉栖「likeじゃなくてloveの方ね」
岡部「……」
紅莉栖「ど、どっちなの?」
紅莉栖「鳳凰院は禁止。岡部倫太郎としての意見を聞いているの」
岡部「……ふっ、その台詞、タイムリープマシンが完成した時にも言われたな」
紅莉栖「………」
岡部「紅莉栖……お前はまた、俺にお前とまゆりのどちらかを選べと言うのだな」
岡部(この世界線はシュタインズ・ゲート。他の世界線の干渉は受けないと聞いたが……二人のどちらかを選ばなければならない、という結果は収束するのか)
岡部「……俺はな、紅莉栖。お前を一度は見捨てた」
紅莉栖「そうしろと言ったのは私よ」
岡部「だが選んだのは俺の意志だ。俺はまゆりを取った」
紅莉栖「……」
岡部「その時に思った。『もし二度目の選択肢』があったらその時はお前を、紅莉栖を見捨てないと」
紅莉栖「……同情や哀れみで私を選ぶのは止めて!」
岡部「同情や哀れみなどではない!」
紅莉栖「っ」ビクッ
岡部「俺はお前が好きだと」
紅莉栖「……じゃあ!」
岡部「ああ、……俺はお前が好きだ」
紅莉栖「私も、私も岡部の事が!」
岡部「済まない……」
紅莉栖「えっ?」
岡部「今度こそはお前を選ぶと決めたのに!なのに俺は……!」
岡部「……まゆりの方が好きなんだ」
岡部「ずっと、ガキの頃から思っていたまゆりに抱く自分の気持ちを初めて理解できた」
岡部「俺が祖母亡くして呆然と毎日を過ごすあいつを支えてやりたい思ったのは幼馴染みだからじゃない……」
岡部「何回も何十回も何百回もタイムリープを繰り返し、ラボメン達の思いを踏みにじりながらあいつを救おうとしたのは、人質だからじゃない……!」
岡部「俺にとって椎名まゆりは、この世界線で一番大切な人なんだ」
紅莉栖「……」
紅莉栖「………ふ」
岡部「……紅莉栖?」
紅莉栖「ふぅーははは!」
岡部「なっ」
紅莉栖「はあ、完敗ね……『今回は』私の負けよ。まっ、相手がまゆりなら仕方ない、か」
岡部「……済まない」
紅莉栖「謝るな!」
岡部「っ」
紅莉栖「謝らないでよ……あんたが、決めた事なんだから」
岡部「……ああ」
岡部「なっ!、う、うるさい……!だいたい、本人がいないのでは告白と言えんだろうが!」
紅莉栖「まっ、それもそうね。でもヘタレの岡部がまゆりの前であんな風に告白できるかしら?」
岡部「ぐっ、い、今は時期でないのだ!」
紅莉栖「ふーん、そっ。でも油断してると盗られるわよ」
岡部「なっ!まゆりは誰にも渡さん!あいつは俺の人質なのだっ!」
紅莉栖「まあ、まゆりもそうだけど……心配するならまゆりよりもまず自分の心配をしない」
岡部「はあ?どういう意味だ?」
紅莉栖「さあね、んじゃ、岡部。お休みなさい!」バッ
岡部「あっ、おい!」
岡部「行ってしまったか……」
岡部「なあ、助手」
紅莉栖「助手じゃないと言っとろーが。なに?」
岡部「何の真似だ?」
紅莉栖「何ってまゆりと一緒に岡部の腕に抱きついてるのよ。見て分からない?」
まゆり「魔法カード、右手に紅莉栖ちゃん、左手にまゆしぃを〜!」
岡部「ええい、そんな事しても攻守は入れ替わらんわ!二人とも離れろ!」
紅莉栖「断る」
まゆり「断るのです」
岡部「なっ!だいたい、クリスティーナよ!貴様どういうつもりだ!?」
紅莉栖「何の事?」
岡部「き、昨日!夜!俺はお前を……」
紅莉栖「私が岡部を好きな事に変わりないから問題ないわ、でしょ?」
まゆり「あわわ、紅莉栖ちゃん、大胆発言なのですっ!」
岡部「問題大ありだ!俺が好きなのはまゆりだと言っただろうが!」
まゆり「……ふぇ?」
岡部「し、しまっ」
まゆり「お、オカリン?今のって」
岡部「ふ、フゥーハハハ!な、何の事だまゆり、俺は何も言って」
まゆり「オカリン!」
岡部「」ビクッ
まゆり「……オカリン、もう一度、言って?」
岡部「お、俺は……」
まゆり「うん……」
岡部「……まゆり、俺はお前が好きだ」
まゆり「ほ、本当!?」
岡部「嘘じゃない。事実だ。俺は、椎名まゆりが好きだ」
岡部「まゆり……」
まゆり「まゆしぃもね、オカリンの事が大好き……ずっと、ずっと前から大好き」
岡部「……俺もだ。ずっと前から好きだった。もっと早く気付いていれば、お前を待たせずに済んだのに、ごめんな」ナデナデ
まゆり「ううん、いいよ……オカリンが好きって、まゆしぃと同じ気持ちだって、分かったから、それだけで十分なのです」
岡部「まゆり……」
まゆり「オカリン……んっ」
ダル「うはー朝っぱらから凄いもん見せられてダルシィ右手が真っ赤に唸りそうだお」
紅莉栖「今は自重しなさい」
ダル「……牧瀬氏は良かったん?」
紅莉栖「私が岡部を好きな気持ちに変わりはないわ。でもそれ同じようにまゆりは私にとって大切な友達だから。今は二人の仲を祝うわよ」
ダル「そう……」
紅莉栖「それに、橋田。誰も諦めたとは言ってない」
ダル「えっ?」
紅莉栖「隙あらば岡部を私の婿にしてみせるわ」
ダル「……あの二人に隙なんてないと思われ」
岡部「まゆり……愛している」
まゆり「オカ、リン……ずっと、一緒だよ?」
おわり
読んでくれた人、保守してくれた人、ありがとニャンニャン
Entry ⇒ 2012.05.23 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
クワトロ「私、クワトロ・バジーナが便所飯をしているのだよ」
カミーユ「トイレトイレ……!」タッタッタッ
ハロ「カミーユ!ウンコカ!」
カミーユ「……うるさいぞハロ」
カミーユ「ああ、個室が全部埋まってるか……」
カミーユ「あ!一つだけ開いてるぞ!」
ガチャッ
クワトロ「………」モグモグ
カミーユ「す、すいませんクワトロ大尉!」
バタン!
カミーユ「………ん?」
クワトロ「………」モグモグ
カミーユ「って大尉、何してるんです!?」
クワトロ「便所飯だが」モグモグ
カミーユ「……えっ」
アムロ「どうした騒がしいな」
カミーユ「あ、あ、アムロさん!クワトロ大尉が……」
クワトロ「私、クワトロ・バジーナことシャア・アズナブルは便所飯をしているのだよ、アムロ」モグモグ
アムロ「えっ……」
アムロ「べ……便所飯って、情けないぞ!シャア!」
クワトロ「情けないことがあるか。便所飯は素晴らしいのだぞアムロ!」
アムロ「便所で飯を食う……在るべき人間の姿かそれは!」
カミーユ「そうですよ!こんなこと、人間がしちゃいけないんだ!」
クワトロ「これだから、食堂に魂を引かれた人間は排除しなければならないのだ!」
アムロ「なんだと!」
カミーユ「………メリットですって」
クワトロ「第一に個室内では完全に独りになれる。と、言うことはだ。特別な人間でなくとも、手軽にゆっくり、落ち着いて食事を楽しむことができるのだ」
アムロ「でも不潔じゃないか」
クワトロ「そんなことはない。便器は携帯電話より清潔だと言うし、最近のトイレは脱臭機能も優れている」
クワトロ「なにより、トイレに行くために食事を中断する必要がないからな」ドヤッ
アムロ「隣の個室では誰かがウンコしているかも知れないんだぞ」
クワトロ「そんなことは意識しなければいい」
カミーユ「尿の音がBGMっていうのも何だか」
クワトロ「ならば、今すぐ人類全てに食事用の個室スペースを授けてみせろ!」
アムロ・カミーユ(………逆ギレかよ)
クワトロ「違うな。食事の時にのみ与えられる個別の空間の贅沢さ、それが便所飯の魅力だ。要はピクニックに来ている感覚に近い」
カミーユ「……何を言ってるんだかさっぱり」
アムロ「とにかく、みっともないから便所飯は止めろ。ララァが泣いてるぞ」
カミーユ「ですよね。便所飯とか……」
ブライト「便所飯をして何が悪い!!」バンッ
アムロ「ぶ……ブライト」
カミーユ「………艦長!」
クワトロ「その通りだブライト艦長」ギュ
ブライト「あなたも立派な『ベンメシスト』ですな、大尉」ギュ
カミーユ「……べ」
アムロ「……ベンメシスト?」
ブライト「便所飯愛好家を我々の業界ではそう呼んでいる」
クワトロ「逃げの為の便所飯ではない。嗜好の為の便所飯が我々のモットーだ」
カミーユ「何か言葉まで作っちゃってますけど」
アムロ「イかれてるな……」
ブライト「社交場である以上ルールを守らなければならない」
カミーユ「ルールですって?」
アストナージ「二つ。一人使用は最大10分まで」ガチャッ
ヘンケン「三つ。混雑時は便所飯は行わない。ベンメシストは混雑のピークが過ぎた時間、そうだな、15時あたりに食事を行うのがマナーだな」ガチャッ
ハサン「四つ。飲食物持ち込み不可のトイレでは便所飯は絶対に行わないこと。例外はない。」ガチャッ
アポリー「五つ。掃除のおばさんには最大限の敬意を払うこと。」ガチャッ
ロベルト「見かけたら『いつもありがとうございます』と声を掛けるべきだ。必ずな。」ガチャッ
ブライト「六つ。ゴミはキチンと持ち帰る。また、トイレに置きっぱなしのゴミもあれば一緒に処分する。トイレに対しても感謝しなければならないな」
アムロ「……もしかして全員、便所飯してたのか」
ヘンケン「なんとなく便所飯していることに後ろめたさがあったのですが」
ロベルト「大尉達に心打たれました。今日から胸を張って、便所飯をしているといえます!」
クワトロ「ははっ、こいつめ!」
アムロ「………アホか」
アムロ「か、カミーユ?」
カミーユ「ベンメシにおすすめの場所を教えて下さい大尉!」
クワトロ「そうだな……デパートやホテルは初心者向きではあるな。この戦艦のトイレは初心者には少し難しいがカミーユ、君ならやれる」
カミーユ「そうか……」
カミーユ「やってみます!僕もベンメシ、やってみますよ大尉!」
アムロ「えぇ………」
アムロ「流行らないだろう」
クワトロ「ふふふ……はははははは!!」
アムロ「何を笑ってるんだ」
クワトロ「いま計算してみたが、これから便所飯は大体人類の半数位には流行すると見た!」
クワトロ「これからアーガマ中に便所飯の素晴らしさを広めてくる、行くぞカミーユ!」
カミーユ「はい!大尉!」
アムロ「………馬鹿なことはやめろよ、シャア」
ミネバ「便所飯は楽しいなぁハマーン」モグモグ
ハマーン「ミネバ様!おやめくださいミネバ様!」ドンドン
シロッコ「便所飯、気に入った!」モグモグ
サラ「……パプティマス様!おやめくださいパプティマス様ぁ!」ドンドン
ガヤガヤガヤガヤ
クワトロ「ええい、まだか!まだ個室は開かないのか!」
カミーユ「早く食べろよ!」
アポリー「6人並んでますからね、トイレの数を考えるとあと30分は待ちますね……」
クワトロ「……便所飯が流行りだしてからというもの落ち着かなくて適わない」
グチャー
カミーユ「マナーも大分悪くなりましたしね……」
シーン…
アムロ「あれ、誰もいないのか」
アムロ「貸切状態だな」
ハロ「ミンナ!ベンジョ!ベンジョ!」
アムロ「そうか。普通に食堂で食べた方が落ち着くなんて皮肉なもんだな……」モグモグ
ハマーン「………」モグモグ
ハマーン(便所飯を広めたのはシャアだという)モグモグ
ハマーン(今頃シャアも私と同じように便所飯をしているのだろうか……)モグモグ
ハマーン(あ、ある意味シャアと同じ空間を共有しているのかもな///)
キャラ「美しいハマーン様!おやめくださいハマーン様ぁ!」ドンドン
マシュマー「それだけはいけませんハマーン様ああああ!!」ドンドン
便所飯は一人だけど孤独じゃない!
マナーを守って楽しく食べよう!
おしまい
ぼっちだったが開き直っていつも一人食堂だった俺は初めて便所飯の素晴らしさを知ったよ
アムロは取り込まれなかったか
Entry ⇒ 2012.05.23 | Category ⇒ ガンダムSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
恒一「将来は喫茶店を経営してみたいなって」
恒一「もう少し規模は小さくていいとは思うね」
望月「夫婦二人で、みたいな?」
赤沢「」ガタッ
恒一「理想的だね。赤沢さんの勧めてくれたコーヒーのお陰で結構ハマっちゃって色々調べてみたりしてるんだ」
赤沢「」ガタタッ
恒一「ハハハッ、そうかもね」
赤沢「!」ガタッ
赤沢「…」ツカツカ
赤沢「…恒一くん」
望月「あっ、赤沢さん」
恒一「ごめん、聞こえてた…?」
赤沢「う、うん…//」
恒一「//」
赤沢「//」
恒一(怒ってるかな…?)
赤沢(お、おおお落ち着くのよ泉美!)
赤沢「こ、恒一くん」
恒一「は、はい」
赤沢「将来、喫茶店経営したいの?」
恒一「うん」
赤沢「じゃあ…勉強がてら今日、イノヤに寄って行かない?」
恒一「え…」
赤沢「コーヒーについてなら、私が色々教えてあげるわよ?」
恒一「赤沢さん…ありがとう!」
恒一「そうだね」
望月「あ、姉さんによろしく」
赤沢「ええ、わかったわ」
恒一「望月は来ないの?」
望月「うん」
望月(邪魔しちゃ悪いしね…)
赤沢「こうやって2人で歩くのは初めてね…」
恒一「う、うん」
赤沢(何だかデートしてるみたい//)
赤沢「そうね…」
赤沢(この場所で、私は恒一くんと出会った…)
赤沢(恒一くんは覚えてるのかしら……)チラッ
恒一「ん?」
赤沢「な、何でもないっ//」
恒一「?」
望月姉「あら、いらっしゃい」
恒一「あ、どうも」
赤沢「恒一くん、またあの奥の席でいいわよね?」
恒一「うん」
望月姉「ご注文は何にしますか?」
赤沢「そうね…恒一くんどうする?」
恒一「とりあえず、今日はコーヒーの勉強だから…キリマンジャロで」
赤沢「じゃあ私はウィンナー」
望月姉「かしこまりました」
恒一「そうだなぁ…とりあえず、場所は夜見山がいいかな」
赤沢「ふぅん。…で、でさ…あの……夫婦でとか言ってたけど…」
恒一「いや、あれは//」
赤沢「…別に良いと思うわよ?…す、素敵だと思うな//」
恒一「//」
望月姉「お待たせしました」
恒一「あ、どうも」
望月姉「ふふっ、今日はデート?」
赤沢「ち、違います!そんなんじゃ…//」
恒一「はい」
赤沢「まったくもう…やんなっちゃう//」ゴクッ
恒一「はははっ」ゴクゴク
赤沢「…恒一くん、それ美味しい?」
恒一「ん〜、ちょっと苦いかなぁ」
赤沢「私のと少し交換してみない?私が飲んでるのはそんなに苦くないわよ?」
恒一「え//」
赤沢「ほら」
恒一「う、うん…」
恒一(赤沢さんの唇の跡がある…//)
赤沢「//」ドキドキ ゴクッ
恒一「//」ドキドキ ゴクッ
恒一 赤沢((か、間接キス…//))
赤沢「…ど、どうだった?」
恒一「すごく…美味しい//」
赤沢「そ、そう。なら良かったわ」
恒一「それは僕が担当するよ。料理にはそれなりに自信があるからね」
赤沢「へぇ…そうなんだ?」
恒一「うん。だから調理担当は僕、コーヒー担当は赤沢さんだね」
赤沢「え…それって…」
恒一「! あ、いや、今のはつまり…!」アセアセ
赤沢「…私も、恒一くんと喫茶店で働きたいな」
恒一「赤沢さん?//」
望月姉「いらっしゃいませ」
小椋「あ、ご無沙汰してます」
有田「あ!榊原くんと赤沢さんがいる」
榊原「小椋さんに有田さん…」
赤沢「あら、珍しいわね」
有田「じゃあ私、榊原くんの隣に座っちゃおうかなっ」
榊原「え?ま、まあ良いけど…」
赤沢「ムッ」
赤沢「べ、別に何だって良いじゃない」
恒一「実は、将来喫茶店を経営したくて、今日はコーヒーについて勉強しに来たんだ」
小椋「へえ…喫茶店?」
恒一「うん」
有田「じゃあ私ウェイトレスになろっかな」
恒一「はは…」
赤沢「ムゥ」
赤沢(恒一くん…//)
有田(やだ…恒一くんまさか私と…//)
小椋「そうだ!」
恒一「?」
小椋「試しに赤沢さんと榊原くんで喫茶店やってみなよ!」
赤沢「え…?」
小椋「要は喫茶店ごっこよ。それで、クラスの人たちを接客してみるのよ」
赤沢「なるほど…」
恒一「僕の家なら、いつでも出来ると思うよ」
小椋「じゃあ決まりね!」
有田(何で榊原くんと赤沢さんなのよ…)ムクーッ
赤沢「あ、恒一くん、喫茶店のことなんだけど…」
恒一「丁度良かった、僕もその事で話があったんだ」
赤沢「何?」
恒一「メニューとか決めたいから、今日僕の家に…来てくれないかな?」
赤沢「い、行く!//」
恒一「じゃあ、また一緒に帰れるね」
赤沢「そ、そうね!」
赤沢(やった…!恒一くんの家に入れる!)
赤沢「そうね…」
赤沢(そうよね…きっと恒一くんはあの時の事覚えてない……)
赤沢(私もつい最近思い出したばっかりだし)
赤沢(何で…忘れてたんだろ…?)
赤沢(あんなに大切な思い出……)
恒一「赤沢さん、赤沢さん?」
赤沢「あ、ご、ごめんなさい…聞いてなかった…」
赤沢「も、もぉ!バカにしないでよ!//」
恒一「ごめんごめん」
赤沢「で、何の話?//」
恒一「うん…。この河原なんだけどね…通る度に思うことがあるんだ」
赤沢「…?」
恒一「前に、この場所に来たことがあるかも知れないって…」
恒一「不思議だけど、ここで僕は何か…大事なことをした記憶があるって…」
赤沢「恒一くん…」
恒一「何かモヤモヤするな…」
赤沢(今は、それでいいよ?そこまで思い出してくれただけでも…私は……)
恒一「何もないけど、くつろいでよ」
赤沢「布団出しっぱなし…ま、男の子らしいって言えばらしいわね」
恒一「今朝はちょっと寝坊してドタバタしてて…」
赤沢「へぇ〜。恒一くんでも寝坊とかするんだ?」
恒一「まあね。あ、何か飲み物持ってくるよ」
赤沢「ありがと」
赤沢「ふふふ…」
赤沢「恒一くぅーん♪」ガバッ
赤沢「あぁ…恒一くんの布団…//」ギュッ
赤沢「恒一くんの匂いがすりゅよぉ//」クンクンッ
赤沢「恒一くん…!恒一くん!」
ガラッ
恒一「おまたせ」
赤沢「うん」
赤沢「ドリンク類は、とりあえず市販の物でいいわよね」
恒一「あくまでごっこだしね」
赤沢「料理はどうするの?」
恒一「サンドウィッチとか…オムライスぐらいなら作れると思うよ」
赤沢「じゃあそれで決まりね」
恒一「あとはリビングをちょっと内装すれば良いよね?」
赤沢「そうね!」
恒一「何だかワクワクして来たよ」
赤沢「私も♪」
勅使河原「喫茶店?」
恒一「うん、赤沢さんとやるんだ。是非来てよ!」
中尾「なにぃ…!」
和久井「僕も行っていいかな?」
恒一「もちろんさ!」
王子「へー、楽しそうだね。僕らも行かせてもらうよ」
猿田「もちろんチョコバナナあるんぞなな?」
恒一「ねーよ」
赤沢「そうよ」フフン
小椋「あ、本当にやるんだ?」
有田「ぐぬぬっ」
多々良「へぇ…楽しそうね。私たちも行っていいかしら」
赤沢「無論よ。席に限りがあるし予約制だから、順番にね」
綾野「ズルイよ泉美!こういっちゃんとそんな事…!」
赤沢「ごめんね彩…。私も本気なの…」
恒一「最初のお客様は勅使河原、望月、中尾くんの3名様か」
赤沢「こ、恒一くん…//」
恒一「赤沢さん…そのウェイトレスの服…凄い似合ってるよ」
赤沢「恒一も…ウェイターの服似合ってるわよ?//」
恒一「//」
ピンポーン
恒一「来たみたいだ!」
望月「へぇ、なかなか凝ってるんだね」
中尾「赤沢さん!何て神々しいウェイトレス姿!!」
赤沢「いらっしゃいませ、3名様でよろしいですか?」
望月「うん」
赤沢「ではこちらの席へどうぞ」
勅使河原「赤沢が接客とか、何か違和感あるな…」
中尾「こう言うプレイもなかなか良い!」
赤沢「ご注文は?」
望月「僕はクリームソーダを」
中尾「赤沢さんの愛が詰まったアメリカンコーヒーください!!」
赤沢「コーラとクリームソーダとアメリカンですね。」
赤沢「食べ物もご一緒にいかがですか?」
勅使河原「ここ来る前に駄菓子屋に行って来たから、いいや」
恒一「…」シュン
赤沢「元気出して恒一くんっ!」
赤沢「頑張ろうね、恒一くん♪」
ピンポーン
赤沢「いらっしゃいませ」
綾野「うわぁ、泉美そう言うの似合わないね」
赤沢「るさいっ//」
赤沢「さっさと席に座りなさいよね!」
小椋「それが客に対する態度かよ…」
綾野「んーと…私オレンジジュース!」
有田「じゃあ私はトマトジュースください」
小椋「私は豆乳でいいわ」
綾野「あとサンドウィッチね」
赤沢「かしこまりました」
赤沢「恒一くん!サンドウィッチのご注文入ったわよ!!」
恒一「やった!」
有田(これが…榊原くんの手作りサンドウィッチね…)ジュワッ
綾野(こういっちゃんの手がこのパンに触れたと思うと…)ジュン
小椋「いただきまーす」ヒョイ パクッ
有田「あっ、ずるい!私も!」
綾野「私だって!」モグモグ
小椋「んまー♪」
赤沢「ふふっ」
赤沢「恒一くん!大好評よ!!」
恒一「嬉しい…!」ホロリ
赤沢「多々良さん、王子くん、猿、見崎さんの4名様になってるわ」
榊原「え?見崎も来てくれるんだ」
赤沢「ええ。4人とも食事しに来るみたい」
榊原「そっかぁ…腕がなるなぁ!」
赤沢「ふふっ、頑張りましょうね♪」
ピンポーン
赤沢「いらっしゃいませー」
猿田「うひひっ。楽しみじゃのぉ!」
鳴「…」
赤沢「それではご注文をどうぞ」
多々良「そうね…牛ほほ肉のビーフシチューを」
王子「僕はアサリの香草焼きを」
鳴「私は特製オムライスを」
猿田「ワシはナポリタンを」
赤沢「承知致しました」
赤沢(猿はともかく、他の3人はなかなかのグルメね…でも恒一くんなら…!」
恒一「! ついに…ついに来たんだね…!」
赤沢「ええ…私たちが研究に研究を重ねた自信作…!」
恒一「僕と赤沢さんの、汗と涙の結晶…!」
赤沢「アサリとナポリタンは私に任せといて」
恒一「ありがとう、赤沢さんも沢山練習したもんね」
赤沢「ええ!」
恒一「…」
恒一「えいっ」
赤沢「すごい!上手っ」パチパチ
恒一「いやぁ//」
赤沢「よし、これで全部完成ね」
恒一「あとは皆に食べてもらうだけだ…」
赤沢「お待たせ致しました」
猿田「待ってたぞな!」
鳴「…食べ方、汚ない」
多々良「猿田くん、もう少し上品に食べられないの?」
王子「せっかくの料理が台無しだよ」
猿田「ぞ、ぞな」
多々良「へぇ…このシチューとってね美味しいわ。お肉も柔らかい」
鳴「オムライスも…美味しい」
王子「うん、最高だよ。味付けもバッチリ」
赤沢(よしっ!)
赤沢「へ?」
多々良「そうね、シェフを呼んでくださらない?」
赤沢「かしこまりました」
恒一「あ、ど、どうも」
多々良「とっても美味しかったわ、榊原くん」
王子「うん。僕も満足だよ」
猿田「ワシは食べられれば何でもいいぞな」
見崎「…ただ、少し塩が足りなかった」
恒一「えっ?」
恒一「う、うん…」
鳴「でも」
鳴「こんなに美味しいオムライス、初めて食べた」
恒一「見崎…!」
赤沢(良かったね、恒一くん…)ホロリ
多々良「ご馳走様。また来たいわ」
鳴「そうね、私も」
猿田「次はチョバナナを用意しておけぞな」
恒一「やだよ」
恒一「そうだね」カチャカチャ
赤沢「私も洗い物手伝うわ」
恒一「えっ、でも悪いよ…」
赤沢「平気よ」カチャカチャ
ジジイ「あぁ〜、うぁ〜」
恒一「あっ、お爺ちゃん」
赤沢「恒一くんのお爺様…?」
恒一「クラスメイトの赤沢さんだよ、お爺ちゃん」
赤沢「よ、宜しくお願いします!」ペコッ
ジジイ「そぉか…恒一にも恋人ができたか」
恒一「んなっ//」
ジジイ「恋人といえば結婚だな。結婚はいいなぁ、結婚はいいなぁ」
恒一「ちょ、ちょっとやめてよお爺ちゃんっ//」
赤沢(こ、恒一くんと結婚か…//)
ジジイ「それまでには生きていたいなぁ」
恒一「んもぉ!あっち行っててよお爺ちゃん!」
ジジイ「避妊はちゃんとしろよ恒一」
赤沢「ううん、気にしてないわよ」
恒一「それなら良いけど…」
赤沢「……//」カチャカチャ
恒一「……//」カチャカチャ
2人の肩がふいに当たる
赤沢「! ご、ごめんなさい」
恒一「い、いいよ//」
赤沢(何か…気まずい空気になっちゃったわね…)
赤沢「じゃあ私、そろそろ帰るわね」
恒一「あっ、途中まで送って行くよ」
赤沢「いいわよ、お見送りなんて」
赤沢「それに、私は見かけ通り逞しいんでしょ〜?」
恒一「い、意地悪やめてよ。確かにそう言ったけどさぁ…」
赤沢「本当にいいわよ。一人で帰れるから」
恒一「…でも、赤沢さんも女の子なんだし。…ね?」
赤沢「こ、恒一くんてば…//」
赤沢「か、勝手にすればっ?//」
恒一「そうさせてもらうよ」ニコッ
恒一「何?」
赤沢「あの……あの、その……」
恒一「…?」
赤沢「な、何でもない…」
恒一「え?言ってよ、気になるじゃないか」
赤沢「嫌よっ」
恒一「んもぉ…」
赤沢「恒一くん」
恒一「んー?……んんっ!?」
チュッ
赤沢「…初キス、だから//」
赤沢「じゃあね!」タタッ
赤沢「はぁ…はぁ……」
赤沢「キス…しちゃった//」
恒一「赤沢さんに…キスされた…//」
恒一「心臓がバクバクする…!」
ジジイ「キスといえば結婚だな。結婚はいいなぁ。葬式と違ってめでたいからなぁ」
恒一「もぉ!お爺ちゃん!」
ジジイ「すまんな」
榊原「おはよう」
勅使河原「おーす、サカキ!」
望月「おはよう、榊原くん」
ガラッ
赤沢「あ…」
恒一「あっ……」
赤沢「//」
恒一「//」
勅使河原「おいおい…何だこの空気…」
多々良「うん、昨日辻井くんが目撃したんだって」
猿田「羨ましいのぉ、ワシも多々良さんとキスしたいぞな」
多々良「ごめん無理、ほんと勘弁」
王子「それにしても榊原くんと赤沢さんがねぇ」
多々良「まぁ、最近ずっと一緒にいたからね」
王子「案外、お似合いのカップルかもね」
久保寺「…と、その前に」
赤沢「?」
久保寺「我がクラスの赤沢泉美さんと榊原恒一くんが付き合ってるらしいと、耳にしました」
榊原「ちょ…!」
ざわわ…ざわわ…
赤沢「ち、違います先生!//」
榊原「そうですよっ!//」
久保寺「恥ずかしがることはありません。先生はお2人を応援するつもりです」
久保寺「ですから皆さんも一緒に、2人を心から祝福しましょう」
赤沢「そうね…」
赤沢「…でも…それもいいかな」ボソッ
恒一「……あのさぁ、赤沢さん」
赤沢「ん?」
恒一「本当に…付き合っちゃおうか?//」
赤沢「え…?//」
恒一「赤沢さんさえ良ければ、僕はそれでもいいかなって…」
恒一「いや、むしろ…そうしたい//」
赤沢「恒一くん…//」
そして僕と赤沢さんは付き合うことになった・・・。
トゥルルルッ
赤沢『あっ、もしもし恒一くん?//』
恒一「やあ赤沢さん」
赤沢『明日…暇?暇なら…その…デ、デートしない…?』
恒一「あー…ごめん、明日は勅使河原や望月たちと遊ぶ予定なんだ」
赤沢『え……』
恒一「赤沢さんとは昨日もデートしたし、明後日またデートしようよ。ね?」
赤沢『……嫌』
恒一「え?」
赤沢『私以外の人と遊んじゃ嫌!!』
赤沢さんは独占欲が強く、僕を束縛しはじめた・・・。
赤沢『それでも嫌!』
赤沢『男も女も関係ない!私以外の人と遊んじゃダメ!!』
恒一「そう言われても…」
ピンポーン
恒一「ん…?」
赤沢『ドア…開けて?今、恒一くんの家の玄関前に立ってるの』
恒一「赤沢さん…」
恒一「分かった、今行くよ」
赤沢「恒一くぅん!」ガバッ
恒一「うわっとっと……赤沢さん…」
赤沢「会いたかった…!」
恒一「今日学校で会ったでしょ…」
赤沢「恒一くん大好きっ!」ギューッ
恒一「赤沢さん…」
恒一「で、でも…」
赤沢「わがままなのは分かってる…でも!」
赤沢「恒一くんを独占したい!恒一くんと少しでも一緒にいたいの!!」
恒一「それは僕だって同じさ」
恒一「でもね、それは無理だよ」
赤沢「恒一くん…」
恒一「安心して、赤沢さん」
恒一「結婚すれば、ずっと一緒にいられるじゃないか」
赤沢「恒一くん…!!//」
赤沢「うん…、うんっ!」
恒一「だから今は、お互いこの距離を保っていようよ」
赤沢「わかった、そうする//」
恒一「いい子だ」ナデナデ
赤沢「きゅぅぅぅ//」
赤沢「もっとなでなで…して?」
恒一「いいよ。赤沢さんは甘えん坊なんだから」
赤沢「…クラスの皆には内緒だからね//」
恒一「わかってます」ナデナデ
でもそれも悪くなかった。
なぜなら、僕も依存されるのが好きだったからだ。
赤沢「恒一くん…私幸せ…//」
恒一「僕もだよ、泉美」
fin
Entry ⇒ 2012.05.23 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
小鳥「おもいでのアルバム」
9月6日/7:30/音無邸
小鳥「今日は天気がいいわね〜」ガラリ
小鳥「外の空気が気持ちいいわ」
小鳥「こんな日はのんびり過ごしたいけれど」
小鳥「でも私はOL。765プロの事務員として、頑張らなくっちゃ」
小鳥「さてと……そろそろ出ようかな」
小鳥「うん。お化粧もバッチリ。行ってきます」ガチャン
小鳥「……まあ、誰も居ないんだケドね」ハア
――――
――
10:00/765プロ事務所
電話「プルルルル」
小鳥『はい、765プロダクションです……』
小鳥『あ、はい。伝えておきます……』
電話「ガチャン」
小鳥「ふう。今日は朝から忙しいわね〜」
春香「小鳥さん。お疲れですか?」
小鳥「春香ちゃん。最近、みんなのお仕事も増えてきたからね〜」
春香「えへへ。もっともっと、頑張っちゃいますよ? わたし」テヘヘ
小鳥「喜ばしい事だけれど、事務員も大変だわ〜」
春香「実質、小鳥さん一人ですもんね〜」
小鳥「でも、人を雇うわけにもいかないのよね」
春香「大丈夫です! 私たちが有名になって、テレビとかバンバン出ちゃえば、余裕も出来ると思います!」
小鳥「ホント、お願いね、春香ちゃん」
春香「はい! あ、ところで、さっきから気になっていたんですけど」
小鳥「なあに?」
春香「机の上のカメラ、何に使っているんですか?」
小鳥「これでね、皆の写真を撮っているのよ」
春香「へ? どうしてですか?」
小鳥「うーん、特に理由は無いんだけれど。皆の成長記録? を残しておこうかなって。アルバムも作っているのよ」ニコッ
春香「それ、素敵ですね!」
小鳥「そうだわ。春香ちゃんも撮っておかなきゃ」
春香「えええ? 私もですか〜?」
小鳥「当たり前じゃない。ほらほら、ちょっとソコに立って?」
春香「うう、今日朝寝坊しちゃって寝癖が……」
小鳥「大丈夫♪ ほら、ポーズとって?」
春香「わ、わかりました〜」
のワの「い、いぇい!」キメ
小鳥(あざとい!)パシャ
小鳥「うん! バッチリ。現像したら見せてあげるわね」
春香「は、はい。それじゃ、ダンスレッスン行ってきますね」タタタ
小鳥「頑張ってねー」
小鳥「さて、私もお仕事、頑張らなくっちゃ!」オー
――――
――
21:00/音無邸
小鳥「やっぱり、お風呂上がりに飲む梅酒は美味しいわね〜」ゴクリ
小鳥「今日も一日、お疲れ様」
ベッド「ばふん」
小鳥「久しぶりに、ラジオでも聴こうかな」ポチ
DJ『最近、わたし……彼と美術館に行ったんです。やっぱり、こう歳を取ってくると……自然とデートの行き先も変わってくるものですよね〜』
小鳥「彼とデートかあ……」
DJ『28にもなると、もうオバサンです……。10代のピチピチお肌の娘たちが羨ましいっ! さ、続いての曲は話題沸騰中のアイドル……』
小鳥「私も、そろそろマズイわよね〜」
小鳥「このまま彼氏も出来なくて、結婚せずに独り身……」
小鳥「ちょっと、寂しいわよね……」ハアア
携帯「ピロピロリン」
小鳥「あ、メールだわ」パカ
小鳥「……? プロデューサーさんから? なんだろう」
P『こんばんは。今日もお疲れ様です、小鳥さん』
P『突然ですが、三日後のオフ、暇だったりしますか?』
P『実は、行きたいところがあるんですけど』
P『小鳥さんさえ良ければ、付き合ってくれませんか?』
小鳥「…………」
小鳥「……?」
小鳥「これ、送り先間違えて……、ないわよね」ハテナ
小鳥「……!?」
小鳥「こ、これって、デートのお誘いってこと!?」
小鳥「ぷ、プロデューサーさんと……? ど、どうしよう……」
小鳥「洋服とか、新しいの持ってないよ〜。あ、とりあえず返信しなきゃ」
小鳥「ええと……」ポチポチ
小鳥『大丈夫ですよ。ちなみに、プロデューサーさんが行きたい場所って、どこなんですか?』
小鳥「送信、っと……」
小鳥「何か可愛げのないメールよね……」
小鳥「で、でも私みたいなアラサーが絵文字たっぷりのメール送っても……」
小鳥「……自分で言ってて辛くなるわね」ハアア
携帯「ピロリン」
小鳥「あ、プロデューサーさん返信早いなあ」パカッ
P『良かった。えーと、美術館なんですが……小鳥さんが興味あればぜひ』
小鳥「美術館かあ〜。いつ以来かな……」
小鳥「でも、ちょっと楽しみかも」
小鳥「ええと……、好きです。それじゃあ……」ポチポチ
小鳥「……」ポチポチ
小鳥「ふう」
小鳥「……どうしよう。ドキドキしてきちゃった」
小鳥「そ、そうだわ。今からでも準備しとかなきゃ。どんな服で行こうかな」バタバタ
小鳥「今日は……徹夜ねッ」グッ
――――
――
前日/19:30/天海邸・春香の部屋
春香『あ、もしもし? 千早ちゃん?』
千早『こんばんわ。春香。どうしたの?』
春香『実は、明日のことなんだけど……』
千早『ええ。覚えているわ。皆に連絡はしてあるの?』
春香『うん。メールで知らせてあるよ。何人か遅れちゃうかもだけど』
千早『そう。それじゃあ、準備は午後からで大丈夫かしら?』
春香『うん! みんなで頑張ればすぐだよ』
千早『ふふっ。驚くわね、きっと』
春香『うん! じゃあ、オヤスミ。千早ちゃん』
千早『おやすみなさい。春香』
携帯「プーッ、プー」
春香「これで良しっと」
春香「……喜んで、くれるといいな」
――――
――
前日/20:30/音無邸
小鳥「一応、お洋服も決まったわね」ウン
携帯「ピロリン」
小鳥「あ、プロデューサーさんから電話だ♪」
小鳥「こんばんわ。プロデューサーさん」
P『お疲れ様です。ええと、明日のことなんですが、待ち合わせは何時ごろにしましょうか? 一応、美術館は18時まで開いているみたいなんで』
小鳥『私は、多少早い時間でも平気ですよ〜』
P『そうですか。それじゃあ、11時にしましょう。ランチでもどうですか?』
小鳥『了解です♪ プロデューサーさん、寝坊しちゃダメですよ〜?』
P『ははは。わかってますよ。それじゃ』
小鳥『はい。お休みなさい。プロデューサーさん』ポチッ
携帯『ツー、ツー』
小鳥「何だか、久しぶりだな。こういうの」
小鳥「ふふっ。楽しみだなあ」
小鳥「あ、そうだわ……」トコトコ
小鳥「せっかくだから、プロデューサーさんにも、アルバム見せてあげようかな」
小鳥「…………」ペラリ
小鳥「こうしてみると、皆変わっているのね〜」
小鳥「あ、この真ちゃんカッコイイなあ」
小鳥「亜美と真美は相変わらずね……」クスクス
小鳥「…………」ペラペラ
小鳥「そういえば、プロデューサーさんの写真、撮らせてもらってないなあ」
小鳥「明日、頼んでみようかな」
小鳥「カメラ、持っていかなきゃ」
――――
――
当日/9:30/音無邸
小鳥「この服で……大丈夫かなあ」クルリ
小鳥「……できるだけ、若く見えるよう意識してみたけれど」
小鳥「デートなんて初めてだし……」
小鳥「あ、そうだわ! 指輪とか、つけない方がいいわよね!」グッ
小鳥「まあ……自分で買ったものばかりだけど」ハアア
小鳥「ピアスくらいなら、つけて行ってもいいかな?」
小鳥「…………」
小鳥「バッグの中も確認しておかなきゃっ」トコトコ
小鳥「ええと……、お財布、ハンカチ、ティッシュ……」
小鳥「な、なんだか学生時代の遠足を思い出すわねっ……」
小鳥「だ、ダメよ小鳥! 今日の私は大人の女性。年下のプロデューサーさんをリードしなきゃだわ!」
小鳥「でも、こういう経験少ないし……」シュン
小鳥「って、もうこんな時間? 待ち合わせの30分前には着きたいし、そろそろ出なくちゃ」
小鳥「……そうそう、アルバムとカメラも忘れずに」ガサゴソ
小鳥「うん。大丈夫ね」
小鳥「ファイトよ! 小鳥!」グッ
小鳥「あ、靴どうしよう……ヒールとか履いた方がいいかな……」
――――
――
10:50/待ち合わせ場所
P「すみません。お待たせしてしまって」
小鳥「ピヨッ!? ぷ、プロデューサーさん」
P「あはは。そんなに驚かなくても。ずいぶん早かったですね」
小鳥「そ、その……遅刻するわけにもいかないですし……」アセアセ
P「俺も早めに来たつもりなんですが、それじゃ、行きましょうか」
小鳥「はい! えっと、こ、こういうの慣れてなくって……わたし」
P「大丈夫ですよ。いつも通りで。まずはお昼でも食べましょう」クルリ
小鳥「そ、そうですね〜」トテテ
小鳥(お、落ち着きなさい小鳥! シミュレーション(妄想)通りに……)
P「小鳥さん? どうしました?」ニコッ
小鳥「わあっ! な、何でもないですよ〜」ドギマギ
――――
――
11:30/レストラン
P「それにしても、晴れて良かったですね」
小鳥「はい。雨も嫌いじゃないんですけどね〜」
P「ええと、メニューは……」
小鳥「プロデューサーさんって、好きな食べ物とか、ありますか?」
P「そうですね。オムライス、とか?」
小鳥「ふふっ。何だかちょっと可愛いですね」
P「卵料理が好きなんですよ」ハハ
小鳥「そうなんですかあ……」ポワーン
小鳥(はっ……!)
小鳥(卵料理が好き?)
小鳥(たまご……。ひよこ……? ピヨピヨ……? 小鳥……?)
小鳥(もしかして、私、告白されてる!?)カアア
P「こ、小鳥さん? 大丈夫ですか? 顔赤いですよ」
小鳥「ピヨッ!? へ、平気です。はい」
P「…………?」
小鳥(な、何考えてるのわたし! 考え過ぎよ!)
P「それじゃ、俺はオムライスで。小鳥さんはどうしますか?」
小鳥「わ、私も……同じで……」
P「了解です。すみませーん」ピンポーン
小鳥(……ど、どうしちゃったのわたし……)
――――
――
12:10/レストラン
P「小鳥さん、セザンヌっていう画家、知ってます?」
小鳥「すみません。あまり詳しくなくって」
P「いえ。今日はその画家の展覧会みたいです」
小鳥「そうなんですか。プロデューサーさんって、芸術に興味があったんですね〜」
P「まあ……趣味ってわけじゃないんですが。たまたま駅で広告を見かけて……」
小鳥「なるほど。でも……」
小鳥(ど、どうしよう。何で私を誘ったんですかって、聞きたいけど……///)
小鳥(どうせ深い意味はないだろうし……)シュン
P「小鳥さん?」
小鳥「は、はひっ」
P「なんだか今日の小鳥さん、可愛いですね」
小鳥「……か、可愛い?」
P「ええ。仕事でしか顔を合せませんからね。新鮮ですし、私服も似合ってますよ」
小鳥「あ、ありがとうございます……」カアア
小鳥(やば……嬉しいかも……///)
P「さ、そろそろ行きましょうか」スッ
小鳥「は、はい……」
――――
――
12:30/街
P「小鳥さんって、休みの日はどう過ごしているんですか?」
小鳥「え、えーと……。まあ、ショッピングとか、でしょうか」
P「そうなんですか。流石ですね。俺なんか家でゴロゴロしてばかりですよ」ハハハ
小鳥(言えない……! 一日中テレビ見ながら3チャンネルに没頭しているなんて……)シクシク
P「小鳥さん、趣味とかあるんですか?」
小鳥「え!? そ、そうですね……。ありきたりですけど、音楽を聴いたりでしょうか」
P「いいですね。俺も昔楽器やっていたんで、好きです」
小鳥「わあ、カッコイイですね〜」
P「まあ、高校や大学時代の話ですけどね」
小鳥(うう……プロデューサーさんから滲み出るリア充っぽさが辛いわ……)シクシク
P「昔はバンドなんかもやっていました。でも、最近は仕事が忙しいですからね〜」
小鳥「やっぱり、社会人は自由な時間が少ないですよね」
P「でも、仕事が楽しいっていうのが、まだ救いですね」ニコッ
小鳥(ああ、プロデューサーさんの笑顔が眩しい……!)
P「そういえば、小鳥さんのCD聴きましたよ」
小鳥「ピヨッ!? な、なんで聴いちゃったんですかあ〜?」
P「だって気になるじゃないですか。春香やみんなが絶賛していたんで」
小鳥「は、恥ずかしいですよう……」カアア
P「小鳥さんって、歌が上手かったんですね。びっくりしましたよ、俺」
小鳥「そ、そんなことないです」ブンブン
P「はは。そんなに謙遜しなくても」
小鳥(もう……あれがまさか録音されていたなんて〜)
P「あ、小鳥さん。ハンカチ落としましたよ」スッ
小鳥「あ、いけない……」スッ
ピト……。
小鳥「!?!?」
P「あ、すみません」
小鳥「い、いえ……こちらこそ……」バッ
小鳥(て、手に触っちゃった……。男の人の手って、大きい///)
P「はい。気を付けて下さいね。小鳥さん」ニコッ
小鳥「あ、ありがとうございます……」
P「それじゃ。行きましょうか」クルリ
小鳥(2X年生きてきて……ようやく男性の手に……)
小鳥(私……今日で運を遣い果たしちゃうかも……)
――――
――
12:40/765プロ事務所
春香「それじゃあ、3チームに別れよ。食べ物の買出しと、グッズ買出し、事務所で準備の3つね」
亜美「はいはい! 亜美と真美はドン〇行きたい!」
真美「真美たちの得意分野だからねっ! やよいっちも強制参加!」
やよい「ええ〜? わたしもですかあ?」
亜美「あと、いおりんも来てね→」
伊織「な、何でこの伊織ちゃんがこの暑いなか外に出なきゃならないのよ!」フン
やよい「でも、伊織ちゃんはこういうの選ぶセンスが良いかなーって思いますよ?」
伊織「そ、そうかしら? まあ、どうしてもって言うなら着いて行ってあげるわ」
春香「じゃあ、グッズ買出しはその4人で決定ね」
千早「春香。私たちはどうしましょう?」
春香「うーん、一応私が言い出したコトだし、私も買出しに出るよ」
千早「そう。それなら私も手伝うわ」
春香「ありがとう、千早ちゃん」
真「じゃあ、ボクも行くよ。雪歩もどう?」
雪歩「あまり役に立たないかもですけど……。私で良ければ」
真「オッケー。じゃあ、ボクたち4人で食糧の買出しだね!」
響「それじゃあ、自分と貴音、美希とあずささんで、準備しておくぞ!」
貴音「春香。お昼にらあめんを頼みたいのですが……」
あずさ「そうね〜。近くのお店で、折り紙とか買ってこなくっちゃ」
美希「ミキ……今日はちょっと眠いかも、なの……」
春香「あ、あずささんは事務所から出ないほうが……。とりあえず、皆よろしくねっ」
――――
――
12:50/美術館
P「小鳥さん。見てください」
P「このポール・セザンヌっていう画家の個展なんですけど、パリとプロヴァンスの、二つの場所に注目して振り返るものらしいです」
小鳥「わあ……とっても綺麗ですね」
P「生まれ故郷であるプロヴァンスと、画家としての成功を夢見た場所であるパリ。フランスの二つの地で描かれた作品を並べて、楽しむみたいですね」
小鳥「こういう場所って、あまり来たことがないので……新鮮です」
P「俺も、よく来るわけじゃありませんよ。本当、何年振りかな」
小鳥「でも、たまには良いですよね」
P「ええ。絵画とか見てると、何だか考えさせるというか」
小鳥「それ……ちょっと分かります」
P「ですよね。それじゃ、ゆっくり見て廻りましょうか」クルリ
小鳥「はい」
小鳥(なんか……楽しいなあ)
――――
――
13:10/ドン〇ホーテ
伊織「なんなのよ。このごちゃごちゃした店は」
亜美「いおり〜ん。知らないの→? パーティーグッズ買うならここっしょ→」
真美「コスプレグッズもあるから、いおりんは買って着なきゃだねっ!」
やよい「うわあ〜。見たことないモノがいっぱいです〜」キラキラ
伊織「それで、何を買うつもりなのよ」
亜美「とりあえず、クラッカーは人数分用意しなきゃだよねっ」
真美「あとは……かつらとか、鼻メガネとか? それからそれから……」
やよい「あれー? 何だかあっちの方、ピンク色ですね〜」
伊織「ぴんくー? あ、あれは……//」
亜美「んっふふ。やよいっち〜、あの暖簾をくぐるとだなあ〜」
真美「真美たちの知らない、オ・ト・ナな世界が待っているのだよ→」
やよい「はえ? な、何だかよく分からないです……」
伊織「や、やよいにはまだ早いわ! 亜美と真美も、ふざけてないで急ぐわよっ!」ツン
亜美「ぷぷ。いおりんは清いですな」
真美「まったく、可愛いツンデレちゃんだねっ」
やよい「……???」キョトン
――――
――
13:20/美術館
小鳥「わあ、この風景画、綺麗ですね〜」
P「サント=ヴィクトワール山、ですね。外国の田舎って、こんな感じなんですかね」
小鳥「日本とはまた違った趣がありますよね」
P「はい。俺、海外と言えば中国くらいしか行ったことがないんで。一度行ってみたいです」
小鳥「へえ。中国ですか。旅行か何かですか?」ハテナ
P「大学時代に、親父が向こうで会社を任されていたんです。それで、夏休みに観光もかねて会いに行ったんですよ」
小鳥「すごいなあ。私、海外って一度も行ったことないんですよね〜」
P「そうなんですか。いつか、事務所の皆で海外へ慰安旅行! なんてどうでしょう?」
小鳥「南国とか、良いですよね!」パアア
P「まあ、当分先の事になりそうですけどね」
小鳥「それまで、私もサポート頑張りますね」
P「はい。俺ももっと、皆に仕事取ってこなきゃ」
小鳥「期待してます♪ プロデューサーさん」
――――
――
13:40/765プロ事務所
響「折り紙と糊買ってきたさー」ガチャリ
あずさ「おかえりなさい。響ちゃん」
貴音「はて、その折り紙は、何に使うのですか?」
あずさ「えーと、輪っかを作って、それを繋げて……ほら、こうするの」
貴音「これを……飾るのですか?」ジーッ
響「少しはパーティーっぽくなる気がするぞ」
あずさ「私たちに出来ることと言えば……後はテーブルを並べるくらいかしら?」
響「お、ハム蔵も一緒にやるのか?」
ハム蔵「うい」
貴音「それでは……わたくしもその、輪っかを作る作業に……」
あずさ「あらあら。それじゃあ、皆で頑張りましょう」
美希「……Zzz」スヤスヤ
――――
――
13:50/美術館
小鳥「これは……肖像画ですか」
P「ああ。えーと、これはセザンヌの奥さんを描いてるみたいですね」
小鳥「……綺麗な人だなあ」
P「何だか、素敵ですよね。こういうの」
小鳥「はい……。奥さんかあ」
P「小鳥さんは、結婚願望とかあるんですか?」
小鳥「ぴよっ!? な、何でですか?」アセアセ
P「ちょっと、気になって」
小鳥「そ、そうですね……。一応あります」
P「まあ、女性の方は持っているものですよね」
小鳥(でも……そんな相手、今までどこにも居なかったのよね……)シクシク
P「俺も、将来的には結婚、したいですね」
小鳥「プロデューサーさんって、その……彼女さんとか、居ないんですか?」
P「残念ながら。まあ、欲しいとは思いますけどね」
小鳥「そうですか。あ、あの……プロデューサーさんは、どんな女性が好みなんですか?」
P「え? そうですね……」
小鳥「…………」ゴクッ
P「どうだろう……」ウーン
小鳥「じゃ、じゃあ、例えば事務所の子なら、誰が良いですか?」
P「そうだなあ……」
小鳥(やっぱり……春香ちゃん? 美希ちゃんかなあ? 流石にやよいちゃんは……歳が離れすぎてるし……)
小鳥(あ、あずささんかな? 最年長だもんね)
小鳥(もしかして、同僚の律子さんなんて事も……)
P「事務所の中で彼女にするなら……」
小鳥「……するなら?」ゴクッ
P「……小鳥さんですね」
小鳥「……ぴ、ぴよ?」
P「だって、キレイですし。一番歳も近いですし……」
小鳥「…………」←石化中
P「歌も上手いですし。少し子供っぽいところもあって、可愛いと思いますよ」
小鳥「……わ、わたしですか?」
P「そうですね。まあ、俺なんかじゃ小鳥さんには釣り合いませんよ」ハハハ
小鳥「……///」
P「小鳥さん? どうしました?」
小鳥「ちょ、ちょっとお手洗いに行ってきます……」タタタ
P「わかりました。俺はここで待ってますね」
小鳥「…………」ドキドキ
小鳥「……わたしが、プロデューサーさんの好みの女性……?」
小鳥「ほ、本当かな? 嘘じゃないよね?」
小鳥「きっと、お世辞よね……うん。わたしにそんな魅力……」
小鳥「でも……」
小鳥「どうしてこんなに、嬉しいのかなぁ」カアア
――――
――
14:10/ケーキ屋
春香「ね、千早ちゃん。どんなのがいいかなあ?」クルリ
千早「そうね……。とりあえず、いくつ買えばいいのかしら?」
真「ええと……社長と律子、プロデューサーと小鳥さんも入れて16人だから……」ウーン
雪歩「ホールケーキを3つくらいかなあ?」
春香「やっぱり、いちごショートは欠かせないよね〜」パアア
千早「私はナンでもいいわ」
真「チョコレートケーキはどうかなあ?」
雪歩「わあ……紅茶のスイーツ美味しそう……」キラキラ
春香「皆の好みも考慮しないとだね」
千早「無難に選べば大丈夫じゃないかしら?」
真「だよねっ! じゃあ、いちごショートとチョコは確定で!」
雪歩「このレアチーズケーキなんてどうでしょうか?」
春香「あっ! いいかも! じゃあ、ロウソク立てるのは、このハート型のいちごショートで……」
千早「そういえば、ロウソクって何本買えば良いのかしら?」
真「う〜ん……そういえば、今日で何歳になるのかな?」
雪歩「にじゅうチョメチョメ歳としか情報がありませんし……」
春香「そんなにいっぱい立てたら穴だらけになっちゃうよ〜」
千早「そうよね。じゃあ、10本にしましょう」
真「だね。そうと決まれば、早く買って冷やしておかないと!」
雪歩「もう9月なのに、今日も暑いですね……」ヘタリ
春香「あはは。それじゃ、買っちゃおう♪」
――――
――
14:30/美術館
P「小鳥さん。ちょっと」
小鳥「……? 何ですか?」
P「見てください。晩年のセザンヌのアトリエを再現しているみたいです」
小鳥「なんだか、素敵ですね」
P「はい。芸術家って、本当にいろんな人がいますよね」
小鳥「この人……どんな気持ちで絵を描いていたんですかね〜」
P「どうでしょう。一度頭の中を覗いてみたいですよね」
小鳥「ですね。プロデューサーさんは絵も描いたりするんですか?」
P「いえ。俺、美術はからっきしダメだったんです」
小鳥「でも、音楽は得意だったんですよね」
P「まあ、子供の頃からピアノ習ってましたから」
小鳥「いいなあ。私も幼いころは憧れました」
P「これでも、夢はピアニストだったんですよ」ハハ
小鳥「プロデューサーさんって、結構何でも出来ますよね〜」
P「そんな事ないですよ。それより、今度教えましょうか? ピアノ」
小鳥「ええ? いいんですか?」
P「まあ一応、家に電子ピアノ置いてるんで」
小鳥「でも……迷惑になりませんか?」
P「大丈夫です。オフの日とか、暇だったら連絡下さい」
小鳥「わあ、ありがとうございます」パアア
P「そんな大げさですよ。じゃあ、一通り廻りましたし、そろそろ出ましょうか」
小鳥「そうですね。とっても楽しかったです」
P「俺もですよ。小鳥さんと来れてよかったです」ニコッ
小鳥(本当に、幸せだな)
――――
――
15:00/765プロ事務所
春香「ただいまー」
亜美「あ、はるるんお帰り〜」
真美「うわあ、すっごい荷物だね→」
真「準備の方は、どんな感じ?」
響「上出来さー。 自分、頑張ったぞ! な、ハム蔵♪」
貴音「輪っかを作り続け、時を忘れてしまいました」ボーッ
あずさ「後は、みんなでお掃除をすれば大丈夫じゃないかしら〜?」
やよい「うっうー! お掃除なら任せてくださいっ!」キラリン
伊織「グッズは、とりあえずテーブルの上にまとめておいたわ」
春香「ありがと伊織。千早ちゃん、ケーキ冷蔵庫に入れておいてくれるかな?」
千早「わかったわ。春香じゃ、転んで台無しにしてしまうから」
春香「もう、ひどいなあ千早ちゃんは」テヘヘ
雪歩「じゃあ、わたしはとりあえずお茶をいれてきますね〜」トテテ
美希「……ミキは、おにぎり作るね〜」トコトコ
春香「…………」
春香「なんだかいいな。こういうの」
――――
――
15:30/アクセサリーショップ
P「小鳥さんって、こういうの好きなんですか?」
小鳥「やっぱり、可愛いじゃないですか」
P「そうですね。今日のピアスも、似合ってますよ」
小鳥「ふふ、ありがとうございます」
P(やっぱり、指輪じゃ重すぎるし……)
小鳥「わあ、これ可愛いな〜」キラキラ
小鳥「ね、プロデューサーさん。どっちが良いと思いますか?」クルリ
P「そうですね。俺はこっちのが好きですね」
小鳥「実は、私もこっちかなーって思ってました」
P「趣味が合いますね」
小鳥「はい。どうしよう、これ買っちゃおうかなあ」
P(ピアスくらいなら、大丈夫かな)
P「小鳥さん。良かったら俺がプレゼントしますよ」
小鳥「え? プロデューサーさんが?」
P「はい。せっかく付き合ってもらいましたし。お礼がしたいです」
小鳥「そんな……。私も楽しませてもらったのに。悪いです」
P「いえ。俺がそうしたいんです。お願いしますよ」
小鳥「でも、これ結構高いし……」オロオロ
P「はは。大丈夫ですよ。一応、765プロの敏腕プロデューサーですから」
小鳥「自分で言うのはちょっとヘンですよ、プロデューサーさん」クスクス
P「まあ、とにかく。今日はトクベツって事で」ニコッ
小鳥「ほ、本当に……イイんですか?」
P「はい。それじゃあ、店員さん呼んできますよ」
小鳥「あっ……」
小鳥「…………」
小鳥「どうして、プレゼントなんか……」
小鳥「私、プロデューサーさんと居るだけで幸せなのにな」
――――
――
16:00/765プロ事務所
春香「これで、後は待つだけだね!」
千早「みんな、お疲れ様」
伊織「何だか準備だけで疲れちゃったわね」
亜美「きっと驚くよねっ! 真美」ニパッ
真美「そだねっ。もしかしたら泣いちゃうかも」
あずさ「ハム蔵ちゃんも、お疲れ様〜」ナデナデ
真「社長と律子は、何時ごろ着くのかな?」
響「17時には来れるって、さっき電話があったぞ」
貴音「美希……つまみ食いをしてはなりませんよ」
美希「お腹減ったの……。ハニーはいつ帰ってくるの〜?」バタバタ
やよい「プロデューサーが、連れてくるんですよね?」
雪歩「そうだったと思います……」
春香「プロデューサーさんが、その役目は俺に任せてほしいって。でも、どうしてなのかな?」
伊織「プロデューサーの事だから、小鳥とデートでもしているんじゃない?」
美希「そ、それは初耳なの! そうなの? 春香」
春香「言い出しっぺは私だけど、計画したのはプロデューサーさんだし……。私にもわからないよ〜」
千早「とりあえず、待っていましょう」
真「春香。プロデューサーに、準備できましたメール、送らなきゃ」
春香「そ、そうだね。じゃあ、みんなは休んでてね」
――――
――
16:30/公園
小鳥「今日は、とっても楽しかったです」
P「俺の方こそ。小鳥さんと過ごせて良かったですよ」
小鳥「あのう……本当にピアス、貰っちゃっていいんですか?」
P「はは。もう何回目ですか。受け取ってくださいよ」
小鳥「本当に、ありがとうございます。大切にしますね」
P「……はい。そう言っていただけると嬉しいです」
小鳥「あ、そうそう。プロデューサーさんに見てもらいたい物があったんです」
P「……? 何ですか?」
小鳥「ええと、これです」ガサゴソ
P「これは……アルバムですか?」
小鳥「はい。みんなの写真を残しておこうと思って」
P「すごく丁寧ですね。ぷっ、春香は相変わらず転んでばかりだなあ」
小鳥「後何枚か、転ぶ瞬間の写真がありますよ」クスクス
P「ていうか、美希も寝てばかりじゃないか」
小鳥「でも、最近はレッスンも頑張るようになりました」
P「千早……よく笑うようになりましたね」
小鳥「ええ。昔は、歌にしか興味がないみたいでした」
P「あ、真が髪伸ばし始めたのって、この頃かあ」
小鳥「女の子っぽく見られたい、って気持ちが出てますよね〜」
P「貴音……どんだけラーメンばかり食べているんだ」
小鳥「最近貴音ちゃんも、人気出てきましたね」
P「あずささんは……少しは迷子にならなくなったかな?」
小鳥「それでも、週一で事務所に辿りつきませんけどね」
P「響も頑張ってますよね。何事にも」
小鳥「響ちゃんを見ていると、元気が湧いてきますよね」
P「雪歩……。少しは俺に慣れてくれましたかね?」
小鳥「はい。雪歩ちゃんなりに、信頼していると思います」
P「伊織は何だかんだで、一番常識人ですよね。それに、仲間想い」
小鳥「素直じゃないですけど、とっても良い子ですね」
P「俺、実はやよいのこと尊敬してるんですよね」
小鳥「私もです。まだ中学生なのに、いつも楽しそうに笑って」
P「はい。亜美も真美も、一緒に居ると楽しい」
小鳥「ムードメーカーですから。二人が居ないと、さみしいです」
P「律子も、若いのにしっかりしてる」
小鳥「もう今の765プロは、プロデューサーさんだけじゃ仕事になりませんからね」
P「はい。それに社長も、小鳥さんも」
小鳥「そして、プロデューサーさんが居て、やっと765プロなんですよね」
P「…………」
小鳥「…………」
P「どうして、アルバムを?」
小鳥「何だか、寂しかったのかもしれません」
P「寂しい?」
小鳥「はい。皆、どんどん成長して、お仕事も増えて。もしかしたら、事務所の全員で集まれることも、少なくなるかもしれない」
小鳥「だから、みんなの想い出を、残しておきたいなと思ったんです。お仕事が辛い時や、泣きそうな時に、このアルバムを見て欲しいんです」
P「……いいですね。そうやって、皆で助け合えるのって」
小鳥「はい。それに、プロデューサーさんにも、私は感謝してます」
P「そんな。俺は何もしてないですよ」
小鳥「プロデューサーさんが来てから、毎日が楽しいです。写真の中で、みんなが笑っていられるのは、プロデューサーさんのおかげなんですから」
P「……小鳥さんだって、同じです」
P「春香が言ってましたよ」
小鳥「春香ちゃんが?」
P「はい。仕事で辛い事があって、ヘコんで事務所に戻った時に……小鳥さんが言ってくれた『おかえりなさい』に、何度救われたかわかりませんって」
小鳥「……本当なら、嬉しいな」
P「小鳥さんは、俺たちを支えてくれているんです。だから皆も、俺も感謝しているんですよ」
小鳥「……ありがとう、ございます」
P「いいえ。それに俺、小鳥さんのこと……」
小鳥「へ……? 私のこと?」
P「…………」
小鳥「…………」ドキドキ
携帯「ブルルルル」
P「うわあ! め、メールだ」
小鳥(び、びっくりした……)
P「……よし」パタン
小鳥「……?」キョトン
P「小鳥さん。突然ですけど、今から事務所いきませんか?」
小鳥「……何か忘れ物ですか?」
P「いえ……。どうしても、小鳥さんと行きたいんですよ」
小鳥「……? わかりました」
小鳥(なんだろ? お仕事かな?)
P「それじゃあ、行きましょうか。小鳥さん」スタ
――――
――
17:30/765プロ事務所
P「小鳥さん」
P「今からドアを開けます。その前にお願いがあります」
小鳥「何ですか?」
P「俺が良いって言うまで、目を瞑っていてください」
小鳥「……わかりました」
P「ありがとうございます」
ガチャ……。コツ、コツ……
小鳥「…………」
P「さ、もういいですよ。目を開けてください」
小鳥「…………!」
小鳥「こ、これは……?」クルリ
P「今日は……小鳥さんの誕生日、ですから」
――――
――
事務所の中はとても暗かった。カーテンも締め切っていて、外からの光も遮断している。
P「春香。頼む」
けれど、プロデューサーさんが口を開いた瞬間に、前方で小さなオレンジ色の光が灯った。
春香「小鳥さん! お誕生日、おめでとうございます!」
春香ちゃんの声に続いて、耳に届くのは、『Happy birthday to you……』というみんなの声。
その優しい歌声を聴いて私は初めて、今日が9月9日。私の誕生日だったことに気がついた。
小鳥「ぷ、プロデューサーさん。これは……?」
P「おめでとうございます。小鳥さん。 ほら、ケーキの火、消さないと」
プロデューサーさんが、私の背中をそっと押してくれる。
見れば、みんなが笑顔で、はやくはやく、と私を手招きしてくれる。
驚きと、嬉しさと気恥しさが胸の内で渦巻いていた。
ふわふわのケーキの上には、形の良い真っ赤なイチゴ。
その隙間に立てられた、カラフルなロウソクに向かって、私は息を吹きかけた。
全員「おめでと〜ございまーす!」
パーン、とクラッカーの弾ける音がところどころで鳴った。
誰かが照明を点けたのか、ようやくいつもの事務所の風景が目に入る。
小鳥「これ……私のために?」
春香「もちろんです! 社長に聞いたんですよ。小鳥さんの誕生日」パアア
小鳥「しゃ、社長!?」
社長「いやあ、小鳥くんも、765プロの一員だからね。皆で祝うべきだと思ったのだよ」
春香「発案は、私とプロデューサーさんですけどね」テヘヘ
小鳥「ぷ、プロデューサーさんも?」
P「はい。春香が、小鳥さんにもお礼がしたいって」
小鳥「…………」
春香「どうしたんですか? 小鳥さん」
小鳥「……ぐすん」
亜美「あー! ピヨちゃんが泣いちゃった!」
真美「ちょっと、いくらなんでも涙脆すぎっしょ→」ニヤニヤ
P「こ、小鳥さん? 大丈夫ですか?」
小鳥「うええん。こ、こんなのズルイですよ〜」シクシク
P「……黙っててすみません。サプライズだったんで」
小鳥「もう……私嬉しくって……。泣いちゃうに決まってます……」
P「泣かないでくださいよ。ほら、ケーキ食べましょう?」
小鳥「……ひっく。……くすん」
どうしてこんなにも嬉しいのに、涙が出るんだろう。
我ながらみっともないなあと思うけれど。
今だけは、泣いてもいいかな。
こんなに嬉しい誕生日は、生まれて初めてだったのだから。
――――
――
社長「キミ。例のもの、持ってきておいたよ」
律子「もう……。相変わらず、プロデューサーは無茶を言いますね」
P「ありがとうございます。社長。律子も、助かったよ」
律子「まあ、構わないですけど。何に使うんですか? 電子ピアノなんて」
P「まあ、二つ目のサプライズってとこかな」
律子「……?」
P「春香。部屋の照明、少し落としてくれるか」
春香「はい。ええと……これくらいでいいですか?」トテテ
P「おっけー。サンキューな」
美希「ハニー? 何を始めるの?」キョトン
伊織「あんた、またろくでもない事考えてるんじゃないでしょうね?」ツン
やよい「プロデューサー? どーしたんですかあ?」
P「小鳥さん。ちょっと、前に出てきてもらえますか?」
小鳥「……?」トコトコ
真「プロデューサー。そのピアノは?」
P「ああ。俺が使うんだよ」
亜美「え→!? 兄(C)ってピアノ弾けるの!?」
真美「な、なんかカッコイイかも!」
あずさ「あらあら。プロデューサーさんは芸達者ですね〜」
P「小鳥さん。今から俺が伴奏するんで、何か歌ってくれませんか?」ニコッ
小鳥「え、えええ!?」
千早「わ、小鳥さんの歌、ぜひ聴かせてください!」
響「自分も聴きたいぞ!」ニパッ
雪歩「小鳥さんって、すっごく上手なんですよね〜」ポワーン
貴音「これは……心して聴かねばいけませんね」
小鳥「ちょ、ちょっとプロデューサーさん! 何を言い出すんですか!?」アセアセ
P「まあパーティーの主賓ですし。何か歌いたい曲ありませんか?」
小鳥「歌いたい曲……?」
社長「……小鳥君の歌がまた聴けるとは……うう」
律子「社長、涙ぐむにはまだ早いですよ」ポン
小鳥「……何でも、弾けるんですか?」
P「まあ、コードをさらうだけですから。知っている曲で、よほど難しい曲じゃなければ」
小鳥「それじゃあ……『おもいでのアルバム』を」
P「……みんなのうた、ですか?」
小鳥「……はい」
P「懐かしいですね。わかりました」
小鳥「それでは、音無小鳥、歌います」
――――
――
いつのことだか 思い出してごらん
あんなこと こんなこと あったでしょう
嬉しかったこと 面白かったこと
いつになっても 忘れない
人前で歌うことは、好きではなかった。いや、得意ではなかったと言うべきかもしれない。
それでも、今はとても気持ちよく、自然と声が出る気がした。
もしかしたら、プロデューサーさんが奏でる優しい音色のおかげかもしれない。
これまで、本当に色々な事があった。
それこそ、春も、夏も、秋も、冬も。一年中が思い出でいっぱいだ。
時には、辛いこと、苦しいこともあったけれど。
こうして、皆で支えあって、私たちは過ごしてきた。
私は、本当に良い仲間に恵まれたと思う。
だって、こんなにも暖かい。
優しさに包まれるような、この場所と765プロのみんなは、私にとって、二つ目の家であり、家族みたいなもの。
これからも、たくさん写真を撮ろう。 例えアルバムが何冊増えたとしても。
みんなで振り返られる思い出になるなら。
それほど嬉しいことは、きっとないよね。
――――
――
P「小鳥さんの歌、ほんと素晴らしかったですよ」
小鳥「いえ。プロデューサーさんの伴奏も素敵でした」
P「無茶ぶりでスミマセン」
小鳥「ほんとですよ、もう。でも……」
P「…………?」
小鳥「今日は、ありがとうございました」
P「……はい」
小鳥「……今日は最初からこのために私を?」
P「ここまで連れて来るのは俺の役目でした」
小鳥「じゃあ……その、で、デートもこのパーティーのために……?」
P「あ、いや……。美術館は飽くまでも俺が小鳥さんを誘いたかったからで……」ドギマギ
小鳥「そ、そうですか……。嬉しいです///」カアア
P「いえ……///」
小鳥「そ、そうだわ。プロデューサーさん、一緒に、写真撮りませんか?」モジモジ
P「いいですね。じゃあ誰かにシャッターを……」
亜美「…………」
真美「……」
亜美「……なんか、仲いいね」ジーッ
真美「そだね。二人だけのセカイって感じだね」ジロジロ
P「うわっ! 亜美に真美! 驚かせるなよ」
美希「むう〜! 小鳥! ハニーはミキのなんだよ?」プクーッ
春香「わあ! 小鳥さん。そのピアス、綺麗ですね!」
小鳥「ぴ、ぴよっ!? このピアスは……その……」チラリ
伊織「も、もしかして……あんたが!?」
P「えーと……こ、これはだなあ……」
美希「ハニー! 説明するの〜!」
P「うわ美希っ! くっつくな〜」
律子「プロデューサー! 社内恋愛は禁止ですよっ!」
社長「キミ……まさか小鳥君に手を出したのかねっ!?」
わーわー、がやがや……。
小鳥「……くす」
小鳥「ずっと、これからも」
小鳥「幸せな思い出が、増えますように」
小鳥『おもいでのアルバム』―Happy Birthday―
お疲れ様!
Entry ⇒ 2012.05.23 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
ギル「貴様が我のマスターか」 両津「そうだ金ピカくん」
両津「何を言う!マスターの物はマスターの物、サーヴァントの物はマスターのものだろ」
両津「それより馬さんが負けちまったから、また二つ三つよこしなさい」
ギル「もはや許せぬ!雑種ゥ!!王の財宝!!」ドンッ
両津「ほいほいほいっと!」ヒュンヒュン
ギル「ば、バカな…」
両津「いやwwありがとう金ピカくんこれでまた競馬に行けるよwww」
両津「さらば明智君!」
ギル「我の宝物を返せ!!」
バサカ「グァァァアアアアア」
部長「今度という今度は許せんぞ!!!」
部長「行くぞバーサーカー!!両津にきついお灸据えてやらねばならん」
バサカ「…」コクコク
ランサー「あ、あのーマスター?聖杯戦争の説明聞きました?」
左近寺「俺は沙織さえいれば満足だ〜〜〜」
ランサー「ですが聖杯は万能の願望機。もし手にすることができれば」
ランサー「沙織殿をこの世に呼ぶことも可能で…」シュタ
左近寺「オッス!!!ランサー!!気合入れろ!!!」
本田「ひぇぇ〜〜〜そうです〜〜〜」
ライダー「何だ。おどおどしおって。男なら胸を張らんか!!」
本田「わ、分かりました〜〜〜」
ライダー「これが我がが宝具神威の車輪だ!!」
本田「す、すごいです〜〜」
ライダー「どうだマスターちょっと触ってみろ」
本田「は、はい〜」
ライダー「といってもワシ以外には動か…」ドゴンッ
ライダー「な、なにーーー」
本田「おっさん!!振り落とされんなよ!!うおりゃぁぁ!!」
ライダー「…スゲー」
ボルボ「うむ…悟られぬように」
アサシン「はっ!」
ボルボ「あ!そこは…」ドゴン
アサシン「グヘァァアア」
ボルボ「侵入者避けの地雷があるのに…」
切継「…舞弥」
舞弥「はい…判明しているサーヴァントは3人。アーチャー、バーサーカー、ランサーです」
舞弥「またマスターはどれも魔術に関しては素人のようです」
アイリ「まさか…聖杯戦争に3人も素人が選ばれるなんて」
切継「だが僕たちには好都合だ」
切継「舞弥。君は残るサーヴァントの情報を」
切継「アイリ。君は手筈通りセイバーを連れて亀有に向ってくれ」
アイリ「分かったわ、セイバー」
セイバー「分かりました」
ギル「我が宝具は一つが一国に値する」
ギル「それがすでに5つも質に入れられた…どういうことだ!カンキチ!!」
両津「それがなー質屋の親父足元を見やがって!!後プラモ屋の親父にも」
両津「借金の型に持っていかれてしまってww残ったのは馬さんに持って行かれた」
ギル「」
両津「まあいいじゃないか!!金は天下の回りものっていうだろ」
両津「そんなことより聖杯とか言うのを手に入れることを考えろ」
両津「金金金金金金」(ワシは警察官として亀有の平和を願う)
ギル「…ダダ漏れだ雑種」
両津「いっ!…まあまあそんなことはどうでもいいんだよ」
両津「やるからには勝たねば」
ギル「無論だ。我に敗北は無い」
アイリ「エスコートしてくださる?騎士様」
セイバー「ええ、もちろんですアイリスフィール」
海辺
アイリ「今日は楽しかったわ。セイバー」
セイバー「私もですアイリスフィール。ですが…」
アイリ「…ええ、敵ね」
セイバー「出てきなさい」
ランサー「お初お目にかかるセイバー」
セイバー「貴方はランサーですね」
ランサー「ああ。我が主の沙織三次元化計画の為に倒れてもらうぞ!!」
セイバー「こちらも参る(沙織って何でしょう?)」
ランサー「これが我がゲイ・ボウの力だ」
セイバー「不味いですね…」
???「うわぁぁあああ!1止めろマスターーーーーーー」
本田「ヒャッホーーーーーー」
ライダー「無茶し過ぎじゃマスター…」
セイバー「新手か…」
ライダー「はあはあ…我こそはマケドニアのイスカンダル!!!!」
本田「ひぇえええ!!怖いです〜〜帰りましょう〜〜」
ライダー「…ホントにさっきのマスター?」
ライダー「まあ、とにかくお前たちの武勇を見込んだワシに仕えろ」
セイバー「何を馬鹿な…」
ランサー「我が槍はマスターの為だけに…」
ライダー「残念じゃのー」
セイバー「黄金のサーヴァント…」
ランサー「また新手か」
ライダー「いや、もう一人いるな」
部長「いたぞ…両津のサーヴァントだ…イケ!!バーサーカー」
バサカ「グォオオオオオオオ」ドンッ
ギル「狂犬が…消え失せろ!!」
バサカ「グァアアアアア」カキンカキン
ギル「我が宝具を…カンキチのようにしおって!!」
ランサー・セイバー・ライダー『カンキチ?』
セイバー「クッ…こちらに向かってきた!!」
バサカ「グギャアアアアア」
セイバー「クッ…不味いですね」
バッッカモーーーーーン
バサカ「」ビクッ
セイバー「あれ?攻撃が止まった」
バーサーカー、ワシは両津のサーヴァントを狙えと言ったはずだ
後でお仕置きだ!!
バサカ「」プルプル ヒュッ
セイバー「帰りましたね…」
ランサー「帰ったね」
ライダー「うちのマスターと同じくらい怖そうじゃ」
ギル(両津…?カンキチの知り合いのようだな…)
左近寺「おう!」ピコピコ
ランサー「…あのーマスターいつまでゲームしているんですか?」
左近寺「もうすぐ告白イベントなんだよ!!さおりーーーー」
ランサー「…私はそこで見張りをしています」
ランサー(こんなことでいいのか…マスターと心を通じ合わせなくては)
ランサー(私もあのゲームやってみよう)
ランサー「マスターは留守か…ちょうどいい」
ランサー「えーっと名前を入れてくださいか…ディルムッドっと」
ランサー「この沙織とかいう女性と恋仲になればいいのだな」
ランサー「輝く貌の名に懸け必ず落として見せる!!」
ダイスキダヨ ディルムッドクン
左近寺「」パサ
ランサー「ふぅ…とうとうクリアか…」
ランサー「おやっ…マスターお戻りでしたか」
左近寺「…に」
ランサー「えっ?何ですかマスター」
左近寺「なに、してるって言ってるんだ!!ランサー!!!!!!」
ランサー「え、なにって…」
左近寺「やはり伝承どおり主人の女をNTRずにはいられないみたいだな」
ランサー「そ、そのようなことは…」
左近寺「自害せよ!!ランサー!!!!」
ランサー「何をするだー…グヘァア」ドシュッ
ランサー「貴様らに呪いあれ!!聖杯に呪いあれ!!!!」
ランサー脱落
ボルボ「左近寺…お前…」
ボルボ「…残りのキャスターについての情報を集めろ」
アサシン「はっ(あぶねーーあそこ確か地雷あったな…避けないと)」
ボルボ「あっ!」ドッゴーーーン
アサシン「グヘオラアアアア」
ボルボ「罠の場所変えてたんだ…」
ギル「…元手は?」
両津「部屋にあったお前の金ピカ鎧」
ギル「キッサマーーーーーーーーー」
ギル「…もういい寝る」
両津「グッドイブニーング金ピカくん。わしはこれからもうひと当てしてくる!」
ギル「はあ…エアと我が友エンキドゥはいつも持ってよう…」
両津「金ピカ!!!金貸してくれ!!!」
ギル「貴様。昨夜の金はどうした?」
両津「てやんでぇ江戸っ子は宵越しの銭は持たねえんだ!!」
ギル「…スッタな」
両津「そうというかもしれないしそうでないかもしれない」
両津「すぐにいくぞギルガメッシュキリッ」
両津「というわけで亀有にあるアインツベルンさんの城にきました」
ギル「誰に言っている…」
両津「気分気分ってデカイ城だな…ワシが貰ってしまうか」
両津「ん?あれはボルボ…」
ボルボ「まずは一番弱そうなセイバーを倒すぞ」
アサシン「…セイバーは三騎士のひとりですよ」
ボルボ「両津相手よりよっぽど楽だ」
アサシン「分かりました」
ボルボ「俺がマスターの相手をする。セイバーは頼む」
アサシン「はっ!」
セイバー「私がアサシンに後れをとるとでも」
アイリ「セイバーはアサシンを、私はマスターの相手を」
セイバー「心得ましたアイリスフィール」
ボルボ「来たな衛宮切継!」
アイリ「えっ!あなた何故切継の事を!」
ボルボ「お、女!!」
アイリ「切継の所へは行かせないわ」
ボルボ「うわわわ…来るな!!」
アイリ「切継から習った格闘技よ!!」ボインッ
ボルボ(む、、胸が…は、鼻血が…)
アイリ「隙ありよ!!」
ボルボ「し〜あ〜わ〜せ〜〜〜〜」ドタッ
アイリ「…案外弱いのね…」
セイバー「どうやらマスターがやられたみたいですね…」
アサシン「マジかよ―――良いとこなしーーー」
アサシン脱落
両津「まあ…ボルボの奴だったからな」
ギル「どうするカンキチ。乗り込むか?」
両津「もちろんだ!!」
両津「おい開けんか!!警察だ!!」ドンドン
城内部
切継「…」
アイリ「…普通にやってきたわね」
セイバー「…何なんでしょうか」
アイリ「どうしましょう?」
切継「僕が隠れて狙撃する…アイリは気を付けて奴を内部に」
アイリ「わかったわ…」
両津「がははは!!どうだ金ピカ頼めば何とかなるだろう」
ギル「どう考えても罠だ…カンキチ」
両津「失礼しますよ奥さん」
切継(もう少しだ…よし、今だ…)ドンッ
両津「ブエックショーーーン」ヒョオイ
切継「ば、バカな…くしゃみのせいで…」
両津「ん、そこのおっさんは何してんだ?」
切継「な、何でもない」
アイリ「貴方もマスターでしょう。何の用かしら」
両津「まあまあいいから」
???「この名門アーチボルト家の私が聖杯戦争に参加できないとは…」
???「くそう!!」
???「このせいでソラウにも振られてしまった」
???「あー名門の私がなぜこんなことに――」ヒュー
???「ん?何の音だ?」ドゴンッ
???「グヘァアア」
名門アーチボルト家のおっさん切継の流れ弾で脱落
アイリ「それでカンキチさん。あなたが聖杯を狙う理由は」
両津(警察官として亀有の平和を願う)「金に決まってる!!!」
ギル「…もう突っ込まんぞ…」
セイバー「…貴方も苦労してますね」
ギル「ああ…どうだ向こうで飲まんか…神代の美酒もあるぞ」
セイバー「付き合いましょう」
両津「んーーーそうといえばそうだな」
アイリ「…ではこの聖杯戦争で私たちに協力してくださればお金ならいくらでも差し上げます」
両津「協力しようキリッ」
アイリ「切継もそれでいい?」
切継「ああ…」
アイリ「後残っているサーヴァントは私たちを除けば」
アイリ「バーサーカー、ライダー、キャスターね」
アイリ「キャスターのマスターは分かっていないわ」
アイリ「ライダーは本田という一般人よ」
両津「本田ぁ?あいつならワシが何とかしよう」
アイリ「バーサーカーがブチョウと呼ばれる中年よ」
両津「ぶぶぶぶぶちょーーーー」
アイリ「知ってるの?」
両津「ワシの天敵だ」
キャスター「おおっ!!我がマスターよ今だ目覚めないのですか!」
キャスター「んん…どうすればいいのやら」
キャスター「すでに聖杯戦争が始まって1カ月」
キャスター「マスターは今だ目覚めない」
キャスター「しかたありません。もう少し待ちますか」
キャスター「しかしテレビというのは便利ですねー」
テレビ「オリンピックまで残り1週間となりました」
本田「せ、センパイー何ですかーびっくりしましたよ〜」
両津「お前マスターだろ。ワシに協力しろ!」
本田「ええっ!先輩もマスター何ですか〜」
両津「そうだ。良いから協力しろ」
本田「駄目ですよ〜聖杯で奈々ちゃんとデートに〜〜」
両津「それくらい自分でしろ!!」
本田「わ、分かりましたよ〜〜」
両津「という訳で快く協力してくれる本田君だ」
アイリ、切継、セイバー、ギル(絶対無理やりだろー)
両津「頼むぞ本田」
本田「はい〜〜泣」
ライダー「いや…マスターが決めたのならしょうがない」
セイバー「あのリョーツという男は何者なのでしょうか…」
ギル「英雄でないことは確かだな…」
1週間後
アイリ「切継、カンキチキャスターの魔力反応よ!!」
切継「場所は?」
アイリ「えーっと亀有商店街みたいだわ」
両津「ワシの家の近くじゃないか」
本田「急ぎましょう先輩〜」
プラモ屋「何だあいつは」
寮のおばちゃん「変な人だね〜」
キャスター「…コホン、まあいいです」
キャスター「目覚めよ我がマスター!!」
日暮「zzzzzz」
日暮「zzzzzはっ!」
キャスター「おおっ!ついについにお目覚め…グハッ」
キャスター「な、なにを…」
キャスター脱落
両津「作りかけのプラモが…」
両津グゥウウ…「誰がこんなことを」
ギル「…どうやらあれのせいらしい」
両津「日暮ィ!!どこの馬鹿が無理やり起こしたんだ!!」
本田「うわ〜〜〜日暮さんめっちゃ怒ってますよ〜〜」
アイリ「な、なんなのあれ」
両津「ワシの同僚の超能力者だ!無理に起こしたから暴走してるんだ」
アイリ「止めないと!セイバー」
セイバー「心得ました」
本田「両津のダンナぁ!!コイツに乗ってくれ」
両津「おう、助かったぜ本田!」
ライダー「ワシの宝具なのに…」
ギル「我が宝物を防ぐとは…亀有の人間は化け物揃いだな…」
日暮「グァアアアヨクモオコシタナ!!!」
両津「日暮ィーーー止めろ―――」
本田「やっぱ駄目みたいですね…旦那」
両津「気絶させるしかないか…」
両津「おーい金ピカアイツを何とか気絶させろーーー」
ギル「カンキチめ無茶を言いよる…」
ギル「だが手がないわけではないか…」
ギル「騎士王、征服王お前たちも何かあるか?」
セイバー「ええっ…我が宝剣の一撃であれば」
ライダー「我が固有結界の軍勢を使おう」
ギル「我がエアをここで抜けばこの町が消し飛んでしまう」
ギル「征服王貴様の固有結界で奴を閉じ込めろ」
ギル「そこを我とセイバーが叩く」
ギルが商店街の心配してるぞwwwwww
ライダー「無茶言いよるのー」
ギル「ではいくぞ!」
ライダー「くらえ我が王の軍勢!!!」
日暮「ナンダァアアアア」
ギル「いくぞセイバー!!」
セイバー「はいっ!!」
ギル「エヌマァ・エリッシュ!!!」ギャオン
セイバー「エクスカリバー―――――!!!」ドゴン
日暮「バ、バカナーーーーーーー」シュッ
両津「やったぞ!金ピカ!!」
本田「でも日暮さんのせいで町は滅茶苦茶ですぜ旦那」
両津「それはしょうがない」
日暮「うぅーーんよく寝たなーー」
日暮「あっ!両さん頼んでたゲーム手に入った?」
両津「そんなこといっとる場合か!!」
アイリ「生きてるわよ…」
切継「僕この仕事辞めるよ…自信無くした」
セイバー「人間スゲー」
ギル「我ももう少しまともになろう…」
ライダー「世界征服なんて言ってた頃がワシにもありました」
両津「何はともあれ一件落ちゃ…」
リョーーーツーーーーーーー
ギャオオオオオオオ
部長「両津ーーーー街を滅茶苦茶にしおってーーー」
バサカ「」ブルブル
両津「あわわわわ…誤解です!!!ぶちょーーーーーー!!」
部長「バッカモーーーーーーーーーーーーン」
両津「ひぇぇぇぇええええ聖杯戦争なんてコリゴリだ!!!!!!」
終わり
乙
ある意味平和だった・・・?
乙
Entry ⇒ 2012.05.22 | Category ⇒ FateSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
純一「色々みんなと、イチャイチャしよう!」
アパート
純一「………」ごと…
純一「──よし、こんな感じでいいかな。だいぶ片付いたと思うけど…」きょろきょろ…
純一「まあ、大丈夫だろ。美也が来るだけだしな」
純一「………」
純一(……綺麗に片付いたら、ちょっと一服してきたくなったなぁ。
美也が来るのはもうちょっと後だし、少し経てば匂いも取れるだろう)
純一「………」かさかさ… じゅっ
純一「……ふー…」 ガチャ!
美也「にぃにー! 遊びにきったよぉ……ってああ!!」
純一「ぶほっ!?けほっけほっ……美也!?」
紗江「え……美也ちゃん、どうしたの…? あ……」
美也「にぃにまたタバコすってる! こらぁー!」
美也「そうだけど! でもにぃにを驚かせようとして早めに来てみればぁ……にぃに!駄目だよそんなの!」どたどだ!
純一「あ、ちょ……危ない美也…! わかったわかった、捨てる! 捨てるから!」
紗江「み、美也ちゃん…!」
美也「だ、大学生になったからって、すぐオトナっぽいことするんだから!
そんなことしても女の子にもてないよ!」
純一「べ、べつにモテようってわけですってるわけじゃ…!」
紗江「せ、せんぱい……」
純一「ていうか紗江ちゃん! どうしてここに紗江ちゃんが…っ?」
美也「さっき買い物してる時に、そこでバッタリあったんだよ…!もう、これ捨てるからねにぃに!」ぽいっ
純一「ああっ…! 最後の一箱が…!」
美也「いいの! これで最後の一箱にしてよね! ったく……ごめんね紗江ちゃん?」
紗江「…………」
純一「しっかりしてるよ…! ほら、ちゃんとアパートで一人暮らしもしてるし…!」
美也「こんなことしてるにぃには、ぜんぜんまったくしっかりしてないよっ!」
純一「え、えぇぇ……」
紗江「──み、美也ちゃんっ……」
美也「うん? 紗江ちゃんどうかしたの? タバコの煙きつかった?」
純一「煙出るほどすってないよ……」
紗江「う、ううん…大丈夫っ…そ、それよりも先輩許してあげて…」
美也「え〜! でも許したら、すぐタバコ吸っちゃうよ〜?」
純一「そこまで中毒じゃない!」
紗江「せ、先輩もこういってるし…! ね? 美也ちゃん、もういいでしょ…?」
美也「……紗江ちゃんがそこまでいうなら……もうすっちゃ駄目だからねにぃにっ」
純一「わ、わかったよ……」
紗江「は、はいっ…! おひさしぶりです、せんぱい…!」
純一「うん。僕が輝日東高卒業してからだから……一年ぐらいかな?」
紗江「そ、そうですね……でも、ちょくちょく先輩の姿は町でお見かけしてましたので…
わ、わたしてきにはっ…一年ぶりではない、です」
純一「そうなの? だったら話しかけてくれればよかったのに」
紗江「あっ……その、先輩が…知らない方と、歩いていたので…ちょっと話しかけにくくてっ…」
純一「知らない人? ──あー、サークルの人かぁ……それだったら仕方ないね。
でも、僕が一人の時に見かけたらちゃんと話しかけてね? 僕もそのほうが嬉しいからさ」
紗江「う、嬉しいですか…っ?」
純一「当たり前だよ! こんなかわいい後輩に呼びかけられるなんて、大学で有名になっちゃうかもね僕!」
紗江「っ……か、かわいいって……せんぱいっ…」テレテレ
美也「──にぃにー! 冷蔵庫勝手に開けるよー! ……ってろくなものはいってない…」
純一「し、仕方ないだろ…! 今日は美也が夕ごはん作ってくれるって約束だったから、何も買ってないんだよ…!」
純一「はぁ……冷凍庫に、買ってきたアイスが入ってるよ」
美也「本当にっ? あ、みゃーの大好きなまんま肉まんアイスバーだっ。にっししし!」
純一「……ったく、現金な奴…」
紗江「っ……っ……」キョロキョロ…
純一「ん、紗江ちゃん。とりあえずゆっくりしていきなよ、何も無いところだけどさ」
紗江「あっ……はい、わかりましたっ…!」すとん!
純一「そんなに勢い良くすわんなくても……とりあえず、テレビでも見る?」
紗江「あ、ありがとうございます…!」
純一「どういたしまして」ぴっ
美也「みぃひみぃひ〜! ほらべってほこにはるほ〜?」もぐもぐ
純一「なんでもうアイスを食べてるんだ美也……とりあえず、食べながら喋るなよ」
美也「ごくんっ……ごめんごめん、にししっ。えっとさ、土鍋ってどこにあるのにぃに?」
純一「土鍋? それだったらキッチンの下の段に入ってるよ」
美也「えっとね〜……今日はなんと、お鍋さんなのだ!にしし!」
純一「ほ〜…鍋料理かぁ。いいね、寒い時期だし、ちょうどいいじゃないか」
美也「でしょでしょっ、しかもちょっとお洒落で良い感じのお鍋なんだよ〜?」
純一「鍋でおしゃれ……大丈夫なのか、美也…?」
美也「だいじょうぶだよ? だって美也が作るんじゃないし」
純一「え? なにをいってるんだよ…? じゃあ誰が…」
紗江「よいしょ……よいしょ…」ごそごそ…
純一「……えっと、紗江ちゃん。なんでエプロンに着替えてるの…?」
紗江「えっ? えっとその、美也ちゃんがどうしてもっていうから…」
美也「買い物中にばったり紗江ちゃんとあって、それから今日のことを言ったんだけどね。
そしたら紗江ちゃんが鍋がいいんじゃないかなっていうからさ」
純一「…それで紗江ちゃんにお願いしたのか?」
美也「だってにぃにと会いたいっていってたから、ちょうどいいかなぁ…って。
に、にぃに……こ、怖い顔しないでよ…!」
美也「そ、そうだけどっ…! でも、みゃーが作る晩御飯よりも絶対に紗江ちゃんのが美味しいよっ」
純一「それはそうだと思うけど……これは、これだぞ。美也」
美也「う、うぅ〜……っ」
紗江「せ、せんぱい……っ」
純一「──ごめんね、紗江ちゃん。こんな我が儘な妹につきあわせちゃってさ…
今日はお客さんとしてゆっくりして行っていいからさ。全部、美也のやつにまかっせきりでいいよ?」
美也「えー! そ、それはやだよー…!」
紗江「えっと、そのっ……私はだいじょうぶです……よ…っ?」
純一「でも……いきなり連れてこられて、ばんごはんをつくれって……家の人にも迷惑だろうし、
それに紗江ちゃん自身が迷惑なんじゃ…」
紗江「心配してくださってありがとうございます……でも、今日はもう両親には美也ちゃん家に泊まるっていってあるので…
それに…きょ、今日はっ……せんぱいに、晩ご飯作ってあげたくて…きたので……その…」
純一「紗江ちゃん……」
美也「ほ、ほら! 紗江ちゃんだってそういってるし…! ねっ! にぃに、いいんでしょ…?」
純一「っ〜〜〜〜〜〜………わかった、わかったよ。じゃあ紗江ちゃん、お願いできるかな…?」
純一「うん、よろしく頼むよ。……美也、ちゃんと紗江ちゃんにお礼」
美也「ありがとね、紗江ちゃん…?」
紗江「ううん、いいいの。ほら、美也ちゃん一緒につくろっ…?」
美也「おっけー!」
純一「ったく……僕はとりあえず、なにもしなくていいんだな?」
美也「にぃにはいつもみたく、だらーだらしとけばいいよー」
純一「いつもはしてないよ!」
紗江「ふふふっ……美也ちゃん。ほら、エプロンしてね…?」
美也「はいなのだー!」ごそごそ
純一「………はぁ」
純一(美也だけがくるってだけでも、色々と騒がしいのに……紗江ちゃんまで連れてきて。
というか男住まいの所に、女の子を連れてくるなよ……まったく)
純一「……でも、紗江ちゃんと久しぶりに会えたし。それもまたいっか」
純一(煙草が吸いたい……)ちらっ
美也「え、これって切るものなの紗江ちゃん?」
紗江「え、だってそれは……御ダイコンさんだよ? まるごといれちゃだめだよ…」
純一(二人は料理に夢中……今、さり気なくベランダに出てすぐ戻れば…なんとかなる、かな…?)すっ…
純一「………」しゃっ!
美也「……んっ? にぃに、急にカーテン閉めてどうしたの?」
純一「っ……あーいやー! その、そろそろ暗くなってきたし、閉めようかなーって……あはは!」
美也「あ、もうそんな時間か〜。はやく作っちゃお紗江ちゃん」
紗江「そうだね、はやくつろっか」
純一「…………」
純一 がらら…… ぴしゃ
純一「……ふぅ、どうにかこれたぞ。よかった、まだベランダに置いてあった煙草が残ってたのを思い出して」かさかさっ
純一「……あの娘の忘れ物かな。たぶん、銘柄違うけど別にいっか」
純一「ふー……なんというか、僕も煙草をやるって思わなかったなぁ…」
純一「……高校生の頃は、紳士たるもの俗物に染まるべからず! なんて思ってたけど…」
純一「……案外、こうやってすぐに染まっていっちゃうものなのかな」じりり…
純一「……ふぅー…。やっぱ銘柄違うと、ちょっと舌に味が残っちゃうな…
よくこんな重いの吸えるなぁ、あの娘……」
キッチン
紗江「──それと、これはね……あれ、せんぱい…?」
美也「なるほどなるほど……うん? にぃになら、たぶんベランダだよ」
紗江「え、どうしてベランダに…? 外、寒いのに……」
美也「どーせぷーすかしてるんでしょ、タバコ」
紗江「えっ……えっと、美也ちゃん。とめなくていいの…?」
美也「いいよどうせ、止めたって聞きやしないんだから」
紗江「…………」
美也「──まあね、本当はやめて欲しいけど。にぃにはもう……大学生だしさ。
妹と兄ってのも……融通が利かないってこともあるって思うんだみゃーも」
美也「……にしし、でもね!こうやって家に遊びにこさせてくれるってだけでも、みゃーは嬉しいんだよ?
にぃにはにぃになんだって、改めてそう思うしさ」
紗江「…………」
美也「だからね、紗江ちゃん……にぃにがどんな風に変わっていっても。幻滅とか、嫌ったりしてあげないでね…?
みゃーはいつでもにぃにのこと、にぃにだって思ってるし」
美也「頼りにならなくて、ふぬけで、でも……いつまでも優しいにぃにだって保証するからさ。
妹のいうことなんだから、物凄く信用できる言葉だよ! これ!」
紗江「……うん、美也ちゃんがいうなら絶対そうだって思うよ」
美也「そっか、そっかそっか。にししし、ありがとね紗江ちゃん!」
紗江「うん……それじゃ、先輩が凍えないように…ぱぱっとつくっちゃおう…っ」ぐっ
美也「おっけー! まっかせとけー!」
ベランダ
純一「……なんだか中が騒がしいなぁ。バレちゃったかな…?」
純一「…………」
純一「さむい……どうしよう、戻るタイミングを図ることが難しいことが今わかっちゃったよ…!」
純一「……ふー…」 がらら…
「──せんぱい…?」
純一「っ……あ、あれ…? 紗江ちゃんっ…?」さっ!
紗江「はい、こんばんわ……」すた…
純一「う、うんっ…こんばんわ…! ど、どうかしたのっ…?」
紗江「あ、いえ…そのせんぱいのお姿が見えなかったので…ベランダに入るのかなって思って」
純一「そ、そうなんだ……あれ? もしかしてもう料理できちゃった…?」
紗江「お鍋の方はもうできたんですけど、お箸と御茶碗が足りないことに気づいて……今、美也ちゃんが
お家に取りに行ってるところです…」
純一「あー……確かに、そこまで考えてなかったなぁ……」もくもく
紗江「っ……せ、せんぱいっ…! う、後ろから煙が……っ」
純一「え? あ、ああっ! 服に火がっ……!」バタバタ!
紗江「だ、だいじょうぶですか……っ?」
純一「あ、うんっ…だ、大丈夫! ほら、消えた!」もく…
紗江「よ、よかったぁ……」
紗江「………」
純一「……えっと、その……ごめんね、なんかその…」
紗江「え、あっ、いえっ……だいじょうぶです、その…」
純一「……………」
紗江「……………」
純一「と、とりあず……となり座る? 寒けど…」
紗江「は、はいっ……ちょっと、お邪魔します…よいしょ」すとん
純一「………………」
紗江「………………」
純一「きょ、今日は本当にありがとうね紗江ちゃん…!」
紗江「えっ!? あ、はいっ……その、私が来たいって美也ちゃんに言ったからで…
べつにそこまで感謝されることではない、です……」
純一「そ、そっか…そう言ってもらえると嬉しいよ…うん、嬉しいな」
紗江「…………」
純一「うん……」
純一「あ、うんっ…! どうかした紗江ちゃんっ?」
紗江「……その、先輩って…いつから、あの……」
純一「うん?」
紗江「……タバコを、吸い始められたのですか…?」
純一「………えっと、その……僕もよくはわかってないんだけどさ…」
紗江「…………」
純一「……そうだね、正直に言うよ。
サークルでさ、ちょっときになる子がいてね……その娘が煙草を吸ってたんだよ」
紗江「気になる娘、ですか……?」
純一「うん…気になるって言っても、その…恋人とか、恋愛の好きっていうのかどうかはわからないけど…
とにかく気になる人がいて、その人が…とても綺麗に煙草を吸うんだよね」
紗江「きれい、に……」
純一「……それをみてたらさ、僕もあんなふうに吸えたら良いなって思って…もう単純なんだけどさ…。
それで今、僕はこうやって隠れながらタバコを吸ってるってわけんだ」
紗江「…………」
純一「……えっと、その。幻滅、したかな…あははっ……ごめんね、紗江ちゃん」
梅原にだって言われてるしさ、薫とかにも…」
紗江「……どうしてですか…?」
純一「うん…? どうしてって……その、煙草のこと…?」
紗江「あ、いえ……そうじゃなくてその、どうして、わたしに……」
紗江「……謝るんですか…?」
純一「……だってさ、煙草なんか吸ってても…悪いイメージしか無いじゃない?
美也だってやめてほしそうにしてるみたいだし、紗江ちゃんだって…知り合いに煙草すってる人がいたら嫌でしょ?」
紗江「っ…………」
純一「だからほら、こうやって辞められないでいる僕は……悪いじゃないか。だから紗江ちゃんに───」
紗江「───べつに、わたしは大丈夫です…っ」ぐいっ
純一「えっ……?」
紗江「わ、わたしはっ……せんぱいがタバコ吸ってらっしゃってもっ……」ぐいぐいっ
純一「う、うん……っ!」
紗江「むかしのせんぱいとくらべたりっ……げ、幻滅したりなんか…したりなんか……しましぇん…っ!」かち
紗江「かんひゃった……」
紗江「だ、だいひょうぶれふ……! んんっ〜……!」ぎゅう…
純一(恥ずかしそうに頬を包んでる……かわいいなぁ、相変わらず紗江ちゃんは)
紗江「……っっ……だ、だからせんぱいっ…! わたしは、今のせんぱいでも……大丈夫ですからっ…!」
紗江「謝ったりなんか……しないで、ください…お願いします…」ぺこり
純一「ど、どうして紗江ちゃんがお願いするの……むしろ僕がお願いしたいぐらいだよ」
紗江「…え、お願いですか…?」
純一「うん、だってさ…こんな僕でも嫌いにならないでいてくれてる紗江ちゃんに……これからも、
よければ僕を嫌わないでいてくれたら…いいなって、お願いしたいんだよ」
紗江「そ、そんなことっ……全然かまいません…!」
純一「…そっか、ありがとう紗江ちゃん」
紗江「……えへへ…はいっ!」
純一「…………」
純一(──本当にいい子だなぁ、紗江ちゃんは。人を思いやって、きちんとしてる……美也も、
いや、僕も見な習わないとね)
純一「……うん? 紗江ちゃん、やっぱり寒いの?」
紗江「あっ、いえっ……私に気にせず、美也ちゃんが帰ってくる前に…もう一本すってどうぞ…!」
純一「気にせずって……僕はもういいよ? タバコももう少ないし…」
紗江「………あの、そのっ…じつは、お願いがあって…」
純一「うん…?お願いって…?」
紗江「何度もお願いしてすみません…でも、一回だけでいいんですけど……そのっ…」
紗江「せんぱいが、タバコを吸ってる姿が……みてみたいんです、私…」
純一「え? 僕がタバコを吸ってる姿が……見たいの?」
紗江「よ、よければ…の話しですけど…」
純一「…吸ったら一緒にちゃんと部屋に戻ってくれる?」
紗江「も、もちろんです…!」
純一「……。わかった、それじゃ一本だけ吸ってあげるね」すっ…
純一「ありがとうございますって……あはは。タバコを吸うだけでそんな事言われたの初めてだよ」
紗江「え、えっと……えへへ…」
純一「それじゃあ、吸うよ? 煙がそっち行かないようにするから……でも、苦しくなったらすぐ言ってね?
即座に火を消すからさ」
紗江「わ、わかりました……っ! どうぞ……!」
純一 かさっ……じゅぽっ
紗江「…………」じぃー
純一(…すっごい見てる、なんか気まずい…)じりり…
紗江「わ、わわっ…火がついた…」じぃー
純一「………」じりり…
紗江「わぁー……まっかになって、ちょっと綺麗ですね……」
純一「………」じりりり……
紗江「……そ、そんなに一気に吸っちゃうものなんですかっ…?」
純一 ぱっ……ぷかー
純一「……あはは、どう? すごいでしょ?」
紗江「はいっ…! すごいです! せんぱい、今のってどうやったんですか…っ?」
純一「どうやったのかって言われると難しんだけど……煙を口いっぱいに貯めてね」
紗江「っ…っ……」こくっこくっ
純一「こうやっておちょこ口にして……ぽってするんだよ?」
紗江「へぇ〜っ……たばこでこんなことできるなんて、はじめてしりました…!」
純一「あはは、そっか。それじゃあもっと色んな技を見せてあげたいけど……煙草が凄く早くなくなっちゃうから、
また今度に見せようかな」
紗江「っ……ま、また今度ですか…?」
純一「うん、また今度。あ、でも美也には秘密だよ…?」
紗江「み、みやちゃんには内緒……わ、わかりましたっ…隊長!」ぴしっ
純一「おっ、それ懐かしいなぁ。あはは、わかったかね中多君!」
紗江「は、はいっ…! 今後またご指導…お願いしますっ…!」
紗江「は、はい…わかりました」
純一「……ふー……大丈夫かな? 煙たくない?」
紗江「だ、大丈夫です…! お気になさらずに…!」
純一「そっか、ありがと……」じりり…
紗江「…………っ」ぶるる…
紗江(──ちょっと、寒くなってきちゃった…けっこうベランダにいたし…せんぱいは、さむくないのかなっ…)ちら
純一「……ふー…」
紗江(…タバコを吸ってるせんぱい、って…とっても大人って感じがするなぁ…美也ちゃんは大人ぶってるって言ってたけど…。
わたしにも、いまのせんぱいは…とっても綺麗にタバコを吸ってるようにみえるけれど…)
紗江「…………」ぶるっ…
紗江(……高校の頃から、先輩はいっつも頼り甲斐があって……ご迷惑をかけぱなしだった…
でも、こうやってせんぱいと…べらんだで、ぼーっとしていることが出来て…私はとっても嬉しい…)
紗江「っ………」どきどき…
とすっ……
純一「ふー……げほっ!? けほっ、さ、紗江ちゃん……っ? どうしたの急に寄りかかって…!」
紗江「は、はい…わかりました」
純一「……ふー……大丈夫かな? 煙たくない?」
紗江「だ、大丈夫です…! お気になさらずに…!」
純一「そっか、ありがと……」じりり…
紗江「…………っ」ぶるる…
紗江(──ちょっと、寒くなってきちゃった…けっこうベランダにいたし…せんぱいは、さむくないのかなっ…)ちら
純一「……ふー…」
紗江(…タバコを吸ってるせんぱい、って…とっても大人って感じがするなぁ…美也ちゃんは大人ぶってるって言ってたけど…。
わたしにも、いまのせんぱいは…とっても綺麗にタバコを吸ってるようにみえるけれど…)
紗江「…………」ぶるっ…
紗江(……高校の頃から、先輩は頼り甲斐があって……今もこうしてる先輩は、とっても……かっこ良く見える。
昔と変わらない、わたしの……わたしだけの、王子様……)
紗江「っ………」どきどき…
とすっ……
純一「ふー……げほっ!? けほっ、さ、紗江ちゃん……っ? どうしたの急に寄りかかって…!」
純一「えっ、それじゃあ…! 僕も早く吸っちゃうね…!」
紗江「………い、いんですっ…ゆっくり、ゆっくりすってください…」
純一「で、でも…」
紗江「…こうやって、私はせんぱいから……体温をもらってますから、大丈夫です…あったかいですよ、せんぱいの身体…」
純一「その、あのっ……け、煙とかっ…髪にしみついちゃうよ…!」
紗江「っ……………せ、せんぱいにだったらっ…………その、いいですっ…」
純一「い、いいですって…家の人になんて説明するの…?」
紗江「…後でお風呂にでも入れば、おっけーなんですよっ……隊長っ…」ぎゅっ…
紗江「…それでも、だめ…ですか?」ちらっ
純一「っ……い、いやっ…うん! だめじゃないぞ中多くん…! おっけーだぞ…!」
紗江「は、はいっ……ありがとうございます、隊長…っ」ぎゅう…
純一「すぅー……けほっこほっ!……ふ、ふー……」
純一「ふ、ふー………」どきどき…
紗江「………せんぱい、あの…」
純一「う、うん…? ど、どうかした紗江ちゃん…?」
紗江「あのですね……そうやってタバコ吸っている先輩は、とってもかっこいいですよ…」ぎゅっ…
純一「ほ、本当に……? あ、ありがとう…嬉しいよ!」
紗江「はい、前と違ったせんぱいが見れて……わたしはとっても嬉しいです…」
純一「そ、そっか……うん、こんな僕でよかったら何時だって見においでよ…!」
紗江「………本当に、ですか…? 見に来てもいいんですか…?」
純一「うん、紗江ちゃんの都合が良ければ…いつだって見に来てもいいよ…?」
紗江「……会えなかった一年間を、埋め合わせるぐらい…いいんですか…?」
純一「え…?」
紗江「せんぱいと、ずっと会えなかった……一年間。わたしはとっても、悲しかったです…」
純一「紗江ちゃん……?」
紗江「さっきは、冗談みたいにいっちゃいましたけど…先輩、私は……本気にしちゃいますよ…?」
せんぱいがさっき行った言葉、いまいってくださった言葉……全部、信じてもいいんですか…?」
純一「………」
紗江「……わたしは、その言葉を信じて…これからさき、せんぱいの家に…来たいと思います…
それでいいのなら、どうかせんぱい……もう一度、もう一度だけでいいですから…」
紗江「…わたしに、このアパートに来ていいと……いってください…お願いします」きゅ…
純一「……紗江ちゃん…」
紗江「………」
純一「……ごめん、紗江ちゃんがこんなにも……僕、気づけなくて…」
紗江「っ……せ、せんぱいは悪くありませんっ…! わ、わたしが正直に言わなかったから…それで…!」
純一「…うん、でも気づけなかった僕も悪かったよ。紗江ちゃん、ごめん」
紗江「せん、ぱい……」
純一「…じゃあ、紗江ちゃん。もう一度言うね?」
紗江「は、はい……お願いします…っ」
紗江「…はい、せんぱい…」
純一「……ご飯を、つくりにきてもいいよ?」
紗江「はいっ……わかりま──ええっ…?」
がたん!
純一「え、どうしたの声をあげ──…誰だそこにいるの!」がらら!
美也「いたた……おでこぶつけちゃったよ…っ」
純一「み、美也……!お、おまっ…!」
紗江「み、みやちゃ…っ!」
美也「あかくなってないかなぁ〜…大丈夫、紗江ちゃん?」ずいっ
紗江「う、うんっ…だいじょうぶ、だよ…?」
美也「そっか〜! よかったよかったぁ……じゃないよにぃに!ばかにぃに!」ぐわっ
純一「い、いきなり現れて、いきなり怒りはじめて…! なんだよ美也!」
純一「…な、なんだよ…そんなに睨みつけて…!」
美也「……ほんっと、にぃにったら朴念仁の唐変木なんだからっ…!」ぷいっ
純一「ど、どういう意味だよ…!」
美也「なんでもない! ……ほら、紗江ちゃんいこ! 手がこんなに冷たくなってるよ?」
紗江「あ、うんっ……」
美也「…あとにぃに! タバコ吸うならもうちょっと、あたま使ってよね! バレバレだよ!」
純一「ば、ばれてたか…美也なら騙せると思ったのに」
美也「む〜! それみゃーのことばかにしてるでしょ!」
純一「してないしてない」
美也「う〜…そんなにぃにはベランダで一人、反省しておきなさい!」ぴしゃ!
純一『え、こら! 美也! 外はすっごく寒いんだぞー!』
美也「べぇ〜っだ!」しゃっ
紗江「み、美也ちゃんっ…だ、だいじょうぶかな…っ?」
純一『美也ー! ごめんってば! 本当にごめんー!』がたがた
紗江「っ……っ……」おろおろ…
美也「それじゃー紗江ちゃん! お鍋も煮てきた頃だろうし、食べよう食べようっ」
紗江「え、あ、うんっ……!」ちらっ
純一『ごめんよぉー…! もう、馬鹿だなんていわないからさぁー…!みやぁー!』
数分後
「「「いただきまーす」」」 ぐつぐつ…
美也「じゃあ、開けるよ〜? それ〜!」ぱかっ
純一「おぉ〜……!白いなぁ!」
紗江「はいっ…今日のお鍋は、牛乳を使ったミルク鍋です…!」
美也「おいしそぉ〜! すごいすごい! オシャンティーだね!」
純一「すごいなぁ…これ、紗江ちゃんが作ったんでしょ?」
美也「紗江ちゃん特性ミルク鍋だね!にししっ」
純一「ほう……紗江ちゃんミルク鍋、か」
美也「それじゃーたっべよー!」
紗江「うんっ…それじゃあ、私がよそってあげるね、美也ちゃん」すっ
美也「うんうん! みゃーね、このお肉とお肉がいい!」
純一「野菜も食べろよ…」
美也「たべるよ〜。でもまずはお肉って決まってるでしょ!」
紗江「──はい、どうぞ美也ちゃん」
美也「わはぁー! ありがとう紗江ちゃん!」
紗江「……それじゃあ、せんぱいも。小皿を渡してください」
純一「あ、うん。ありがとう」すっ
紗江「い、いえっ……なににしますか…?」
紗江「そ、そうですか……わかりましたっ…!」いそいそ…
純一「……うん、ありがと。そんな感じでいいよ」
紗江「は、はいっ…じゃあ、熱いうちに…食べてください、せんぱい」すっ…
純一「そうだね、そしたら紗江ちゃんの分は僕がとってあげるよ…」すっ…
紗江「えっ、そんなわたしは…」
純一「いいからいいから……よし、こんなもんでいいかな?」す…
紗江「……あ、ありがとうございます…」
純一「うん、どういたしまして──それじゃあみなさん、ご一緒に!」
いただきまーす
美也「おっいしぃいー! なにこれ、とっても美味しいねにぃに!」
純一「ああ、びっくりだよ…流石は紗江ちゃんミルク鍋……!」
紗江「そ、そんなっ…おおげさですっ…」テレテレ
純一「あ、こら! もっとちゃんと味わって食べろよ、それと確認は最後まで取ってくれ!」
紗江「み、美也ちゃん…そんなに慌てて食べなくても、いっぱいあるから…っ」
純一「あ、紗江ちゃん。お茶のおかわりいる?」
紗江「あ。ありがとうございます…せんぱいは?」
純一「うん? 僕はちょっとね……」
美也「!……にぃに、冷凍庫に入ってたアレ飲むんでしょ!」
純一「そうだよ! こんな美味しい鍋なんだから、飲まずにはいられないさ!」すたすた…
純一「……ふふっ。予め冷凍庫から取り出し、すでに解凍済みだ……このチューハイだ!」
紗江「わ、わぁ〜……お酒…!」
美也「すぐ酔っちゃうくせにね〜」
純一「う、うるさい! 美也にはあげないぞ!」
美也「みゃーは飲まないよ!ばかにぃに!」
純一「…うん? どうしたの、紗江ちゃん。綺麗に手を上げて…」
紗江「っ……わ、わたしっ……飲んでみたいのであります、たいちょー……っ」
美也「えぇぇー! 美味しくないよあんなの〜! やめときなって紗江ちゃん!」
純一「…まぁ、待て。美也」
美也「に、にぃに…?」
純一「……中多くん。その度胸、真のものか?」
紗江「っ……は、はいっ…たいちょう……私の覚悟は、ほんものですッ…!」
純一「───そうか、わかった…わかったぞ、中多くん……」かしゅっ こぽぽ…
紗江「………っ」どきどき
純一「コップ半分だ、一応未成年だからね。これぐらいで許してほしい」
美也「半分でもアウトだけどね……にぃに」
紗江「ご、ごくり……そ、それじゃ…その、いただきますっ……」ぐいっ
純一「え、イッキなの!? 紗江ちゃんそれは……!」
美也&純一「紗江、ちゃん……?」
紗江「…………」
純一「だ、大丈夫……?」
紗江「………せんぱい?」ちら
純一「う、うん…僕だよ? わかる?」
美也「紗江ちゃん、顔真っ赤だけど…」
紗江「美也ちゃん…うん、大丈夫、大丈夫だよ…」
純一「本当に大丈夫かな……まさか一気飲みするなんて…」
美也「み、美也もまさか紗江ちゃんが一気に飲むなんて思わなかったよ…」
紗江「……心配しすぎです、二人共……ひっくっ」
純一「そ、そっか……ん?」
紗江「……よいしょ、よいしょ…」ぬぎぬぎ
純一「え、あっ、ちょ紗江ちゃん!?」
紗江「…ふぇ…?どうしてとめるんですか、せんぱい…?」
純一「どうしてって…! そりゃー服を脱ぎ始めたら、止めるに決まってるよ…!」
紗江「……。あはは! あは! せんぱいったら〜…おもしろいこというんですねぇ〜…えへへ」ぬぎぬぎ
純一「あははー…僕、面白い事言ったかなって脱がいない脱がない!」ぐいぐいっ
紗江「……ぷぅ」
純一「ほ、ほほを膨らませてもだめなものはだめなんだよ…!」
紗江「……せんぱい、えっちです」
純一「僕は脱がそうとしてないよ!?」
紗江「じゃあ、脱いでもいいですよね…あつくてあつくて……よいしょ、っと」ぬぎっ!
純一「どうして!? どうしてそうなるの……美也! 助けてくれ! 紗江ちゃんは僕だけじゃ──」
美也「にぃひにぃひ〜!」のしっ べたぁ〜
純一「……え?」
純一「ちょ、あ、こらっ…! 僕の上で暴れるな…! なんでこんなことに───」カラン…
純一(……チューハイの缶が、空っぽだと…!)
純一「ま、まさか美也…お前残りの半分をぜんぶ……いつのまに飲んだんだよ!」
美也「え〜……それはねえっとぉ…わかんにゃい!にしし!」
純一「なんだよそれ! あーもうちょっとまて、これじゃあどうしろって…」
紗江「……ふぅ」
純一「どうして紗江ちゃんもう下着姿なの!? だめだよ、ほらっ…ちゃんと着なきゃ…!」
紗江「さむいです…」がたがた…
純一「だろうね! ほら、とりあえずこたつの中に…!」
美也「にぃには♪こたつの中で♪まーるくなる♪」
純一「あー耳元で歌うな…! とりあえずは紗江ちゃんはこたつの中、美也は水でも飲んどけ!」
美也「みゃーはもっとぽやぽや飲みたい〜!」
美也「え〜……でも、紗江ちゃん飲んでるよ〜?」
純一「え……?」
紗江 ごきゅ ごきゅ
純一「さ、紗江ちゃん!? なんで男らしく立ちながら一気飲みを…!
だめだよ、ほら、離して紗江ちゃん…!」ぐいぐい
紗江「ぷはっ……あふぇ〜? しぇんぱいが、五十人もいる……しぇんぱぁい!」ぎゅう
純一「おぶっ! ぷはぁ! ちょ、さえっ……おむっ!?」ぽにゅ
美也 ごきゅ…ごきゅ…
純一「…ぷはぁ! み、美也…!? なんでお前も飲んでんだ…!」
美也「…ぷは……にぃに……にぃにはどこ…?」
純一「め、目の前でお前の同級生に捕まってるよ…!」
美也「ほんとだ……にぃには、にぃにはみゃーのだよ! 紗江ちゃん!」
紗江「……だめ」
美也「っ……!」
美也「……なにいってるのかな、紗江ちゃん…付き合いはみゃーのほうが長いんだよ…?」フシャー
紗江「……そんなの、同じ時を一緒に過ごしたことが大切なんだよ。だから、美也ちゃんは私に……負けてるの」
美也「っ……そんなことないよ! みゃーは…みゃーはっ……にゃあああああああ!!」がりがり
純一「え、どうしてそこで僕を攻撃す──ぐわぁあー!」ばたん
紗江「せ、せんぱいっ……だいじょうぶですかっ…?」
純一「あ、うん…大丈夫だけど…ってこの状況は駄目だよ! 紗江ちゃん、流石に下着姿で膝枕は…!」
紗江「せんぱい…!」
純一(下からみる揺れぐらいも素晴らしいな……)
美也「みゃーもひざまくら!」ずさー! ごちん!
純一「あたっ!? あたまから突っ込んでくるなよ美也!」
美也「えっへへ〜…紗江ちゃんの膝枕、きもちいねにぃに〜」
純一「そ、そうだな……」
純一「───……う、う〜んっ……」ごそっ
純一「………」ごしごし…
純一「……今、何時だ…?……夜中の三時、か……ふわぁ〜」
純一(…思い出したくないけど、鮮明に思い出せてしまう数時間前…
僕もやけっぱちになって、チューハイ飲んで阿鼻叫喚だったな…うん)
純一「……次の日が休みでよかった。美也たちも休みだろうし…」ぽりぽり…
純一「…みんなこたつで寝ちゃってるのかな。風邪引かないといいけど」
純一(僕も…もうすこしだけ、寝るか……)ごそっ…
「……せんぱい…」コソッ…
純一「………ん?」
紗江「………」くいくいっ
純一「あ、紗江ちゃん……ごめん、起こしちゃった…?」コソコソ…
紗江「あ、いえ……元から起きてたんです。色々とさっきまでの出来事が思い出せなくて…考え事してました」
純一「そ、そうなんだ……た、たいしたことはしてなかったから。安心していいよ? うん」
純一「だ、大丈夫だよ…! ね、ほら今日はもう遅いからさ、ゆっくりと眠ろうよ」
紗江「……はい、せんぱいがいうなら…」
純一「うん……それじゃあ、おやすみ。紗江ちゃん」
紗江「はい、せんぱい……」
純一「…………」
紗江「…………」
純一「……あはは、寝れないね。なんだか」
紗江「そう、ですね……なんだか寝れないです」
純一「……今日は楽しかった?」
紗江「…もちろんです、とっても楽しかったです…本当に」
純一「そっか、それはよかったよ」
紗江「…………せんぱい」コソッ
純一「うん?」
純一「えっ? えっと、紗江ちゃんがいいって言うなら…」
紗江「──はい、わたしは先輩の方にいきたいです……では…」ごそっ… ぴと
純一「っ……ち、近いね…」
紗江「そ、そうですね……」
純一「あはは…こうやって暗い部屋の中、こたつでぴったりくっつきあうなんて…まるで恋人みたいだよ」
紗江「……みたい、ですか…?」
純一「うん、だってさ…お鍋食べて飲んで騒いで、そのまま泊まるって…なかなか無いことだと思うし…」
紗江「………」
純一「……紗江ちゃん? 寝ちゃったかな…?」
紗江「……せんぱい…」
純一「あ、うん…どうかしたかな?」
紗江「……キス、したことありますか…?」
紗江「っ…あ、いえっ! す、すみませんっ……わたしったら、なんてことをっ…!」
純一「あ、うんっ……いいよいいよ。落ち着いて、美也が起きちゃうからさ」
美也 ぐーすかぴー
紗江「っ……ご、ごめんなさいっ…へんなこといってしまって…!」
純一「大丈夫、気にしてないからさ」
紗江「は、はい……」
純一「…うーんと、キスだっけ? 僕はしたことないよ」
紗江「っ……ほ、本当にですか…っ?だ、だってサークルで…気になる人がいるって…」
純一「…んーとね、その人はたまに僕の家に泊まりに来るけど。キス、なんてことはならないよ」
紗江「…その人は、女の人ですよね…?」
純一「そうだよ、僕の先輩なんだけどね。でも、そんなことはならないよ……たぶん、これからさきずっとね」
紗江「……振られちゃったんですか…?」
純一「…ううん、恋をする暇もなかった。感じかな? 僕にはとうてい追いつけない…そんな領域にいる人だったんだ」
純一「うん、僕がタバコを吸い始めた原因の人だからね……そういうと、いっつも怒るんだけどさ。あはは」
紗江「………」
純一「まぁ、そうやって…馬鹿みたいに話して、家に気軽に泊まりに来る関係……ってもの悪く無いかなって思っててさ」
純一「そうやって、どんどん距離が近づくかなって思ったりしてたけど…もっと距離が明白になってきて、結局はものすごく逆効果だったんだけどね」
紗江「……もう、諦めちゃたんですか…?」
純一「……うん、そういうことだよ。さっきは誤魔化した感じで言ってたけど、やっぱりあの人のことが…
その、好きだったんだなって」
紗江「…………」
純一「あはは…こんなこ、紗江ちゃんに話してもつまんないよね」
紗江「………」ぎゅっ…
純一「……ん、紗江ちゃん…?」
紗江「せんぱい、どうして……」
純一「うん?」
紗江「どうして、そんな弱気なんですか……?」
純一「……うーん、と。なんでだろうね、というか僕っていつも強気だったかな?」
純一「そっか…そしたら、ごめん。僕ってばこんなに弱いやつだったみたいだよ…」
紗江「っ……そん、なことないですっ…ぜったいに…っ!」ぎゅっ…
純一「…紗江ちゃん…?」
紗江「例え、今の先輩が…弱くなってたとしても……
──強かった、昔の先輩もしっています……!」
純一「………」
紗江「…強かった先輩は、なんだってがんばってました…いいことだったら全力でやって、
悪いことだったら無理矢理でもして……」
紗江「…たとえ報われなくても。それにまっすぐ突き進む度胸と心をもった人で……っ」ごそっ…
純一「っ…さ、紗江ちゃん…顔が…」
紗江「っ…き、気にしないでください……だから、どうか、元気になってください…わたしは…わたしは、せんぱいが本気になれば…
誰とだって付き合えだだって思ってます、から」
純一「…僕が、本気になれば…?」
紗江「……はい、それがせんぱい……橘先輩のすごいところって思ってますから…ね?」テレテレ
紗江「いいんです……せんぱいの、お役に立てれれば…それで」
純一「うん、でも…紗江ちゃんに行ってもらえたお陰でちょっと元気が出てきたよ」
紗江「それは、よかったです……はい」
純一「……でも、こうやってこたつの中に入るってのは予想できないけど…まぁ、頑張ってみるよ」
紗江「………じゃあ、せんぱい…その…」ごそっ…
純一「……うん? あれ、紗江ちゃん…?」
紗江「練習……してみませんか、わたしと…」
純一「れんしゅう…?」
紗江「せんぱいが、高校時代にやってくださったように……今度は、私が教官となって…」
紗江「……せんぱいに、すこしだけ…ほんのちょっとだけ…おしえてあげます」
純一「え……なにを、する───」
ちゅ
紗江「…ほら、どうでしょうか……練習、です…」
純一「……さ、紗江ちゃん…これ、もしかして…」
紗江「こ、こら! 教官にためぐちはだめ、ですよ…?」
純一「え、えぇー…! だって、でもこれは…!」
紗江「……つぎ、いきますよ…!」ぐぐっ
純一「ちょ、さえ──んむっ」
紗江「……えへへ、せんぱいのたばこの味がしますね…」
純一「……っ…」どきっ…
紗江「──せんぱいは、ずっと大きくいてください…」
純一「えっ…?」
紗江「せんぱいが…どんな風になっても、どんな方をすきでいても…
わたしの…あの時の頃の……王子様だということは、いつまでも変わりはありません…」
ずっとずっと…せんぱいを支え続けて見せます、から」
純一「さえ、ちゃん……」
紗江「…ふふっ…わたしも、いつまでも弱い私じゃいなんですよ…?
こうやって、せんぱいに……イタズラだってしちゃうんですから…」ちゅ
純一「……す、すごいね…紗江ちゃん、見ないうちに…すっごく大人だ」
紗江「いいえ、大人なんかじゃないです。ただ、ただ……せんぱいに鍛えられた一人で…」
紗江「…せんぱいがいないと、なんにもできない…ただの弱い子です」
純一「………」
紗江「さぁ、まだ練習はつづきますよ…! せんぱい?」
純一「……うん、紗江教官…!」
紗江「よろしいっ……えへへ、それじゃあせんぱい……」
紗江「キス、つづけましょうか……?」
長かったな、うん
次は裏表ないさん
ちょっと一時間だけ寝させてくださったらすんまそん
今回も ながらクオリティなのであしからず
ついに絢辻さん来るか
純一「………」ぼぉー…
絢辻「………」じぃー
純一「………」ぼぉー…
絢辻「………」すっ…
ぱちんっ
純一「───…あいたっ。え、なに…っ」
絢辻「なにをぼーっとしてるの、橘くん?」
純一「……。えっ! 僕ってばまたボーってしてた…!?」
絢辻「してたわ。ものすっごくしてた」じっ…
純一「う、ううっ…! ご、ごめん…! さっきも同じ事言われたのに……僕ってば…」
絢辻「もうっ! しっかりしてよ! そうよこれ言うの何度目なのかしら……本当に、橘くん。しゃきっとしなさい」
純一「ご、ごめん……そうだよね、移動中だからってぼーっとするのはいけないよね!」
絢辻「当たり前よ、今だってちゃんとした授業……そう───」
絢辻「───修学旅行なんだから」
絢辻「普段、見慣れない光景だものね。その気持ちはわかるわ」
純一「うんうん、ほら。あそことか、僕らが住んでる街にはないだろうし」
絢辻「…そうかしら? あたしは街で同じようなもの見たことあるわよ」
純一「え? そうなの? そしたら今度、一緒に二人で見に行こっか」
絢辻「そうね、修学旅行が終わったら──……って。どうしてもう終わった時のことを話ししているのよ」
純一「それもそうだね、あはは」
絢辻「ったく……貴方と会話していると、馬鹿が伝染してくるわ…こわいこわい」
純一「こわいってなにさ、これもれっきとした僕の……ふふっ、魅力だよ?」キリッ
絢辻「窓に映る自分にでも言っておきなさい」
純一「えぇー……」
絢辻「とにかく、ぼーってする暇があるのなら……持っている修学旅行のしおりを読んでおきなさい。
これから向かう先の予定とかを、もう一度おさらいしておくのはいいと思うわよ?」
純一「そうだね、でも…それは昨日までに絢辻さんと夜中まで一緒に考えてたから。
もうなにもおさらいすることないけどね」
絢辻「…ちょっと、そういうことをさらって言わないの。誰が聞いてるかわからないんだから…っ」
純一「…誰も聞いてなかったかな?」
絢辻「大丈夫よ、さっきまでやってたカラオケ大会のお陰で…みんなちょっとお休み中だから。
目的地につくまで、ずっとぐっすりしていると思うわ」
純一「移動に四時間かかってるもんね……何人かは起きてるみたいだけど、すこし声のトーン落とすかな…」こそこそ…
絢辻「まあ、そこまで気にしなくていいわよ? 仮に聞こえていたとしても、あたしならどうにか誤魔化せる自信あるし」
純一「そ、それを言われると尚更…小さく声をだそうって思っちゃうよ…」
絢辻「あら? ふふっ…どうしてかしら? 手荒いことはしないわよ?」
純一「しようという欠片も思っちゃ駄目だよ…! よ、よしっ……小さく喋ります、はい」
絢辻「ふむ、よろしい。じゃあ橘くん……いや、純一くん」こそっ…
純一「…うん? どうかしたの?──お、それは…」
絢辻「ん、たべる?」すいっ
純一「ポッキーか、いいねっ。たべるたべる」
絢辻「そお?じゃあ……はい、どうぞ」くいっ
絢辻「あら、何を……手で受け取ろうってしているの? そこはく・ち…でしょ?」
純一「う、うん……そっか。それじゃあいただきまーす……あれ?」すいっ
絢辻「まあ、ごめんなさい。ちょっと照準がずれちゃった、もういっかいお願い純一くん」
純一「わ、わかったよ……あーん」すいっ
絢辻「またズレちゃったわね、くすくす……ごめんなさい」
純一「……わざとやってるでしょ、絢辻さん…っ」
絢辻「べっつに〜……いらないっていうのなら、これはもうあたしが食べちゃうわよ?」ぱくっ
純一「あぁっ…!」
絢辻「ぽりぽりっ…うーん、甘くて美味しい」
純一「っ…あ、絢辻さん……僕にも…っ」
絢辻「…食べたいのかしら? うん? だったら──……おねだり、してみなさいよ。ほら」すいっ
純一「っ……た、たべたいですっ…絢辻さん、それをっ…!」
絢辻「くすくす……ほら、もっとしっかりおねだりして」
絢辻「うん? ちょっと小さくて聞こえないわよ? なんていったのかしら…くすくす」
純一「っ……声を小さくっていったのは絢辻さんじゃないか…!」
絢辻「…あら、口答えするのね。じゃあこれはもうあーげない」ぽりぽり…
純一「あぁっ……そんなぁ…」
絢辻「…はやくおねだりしないと、全部たべちゃうわよ? ほらほら、はやくはやく」
純一(くそ〜……えらく楽しそうな絢辻さんだから、べつに僕はいいけど…ちょっとやりかえしたくなったぞ…!)
絢辻「ほれ、ほれほれ〜」くるくる
純一「っ……わかったよ、絢辻さ──いや、詞…」ずいっ…
絢辻「え……?」
純一「……詞、僕は君が持ってるポッキー…どうしても食べたいんだ、いいかな…?」ボソボソ…
絢辻「っ〜〜〜〜!……こ、こらっ…耳元に近づいてしゃべらないのっ…くすぐったいでしょっ…!」
純一「どうして? だっておねだりしろっていったのは、絢辻さんじゃないか……」ボソボソ…
純一「…大丈夫だよ、ほら。昨日みたいに…もっとイチャイチャしようよ、ね?」ぼそ…
絢辻「んっ……こ、こら! そんなことすると、もうポッキーあげないわよ…っ」ぐいっ
純一「…あ、くれるんだ? そしたら…ぱくっ」ぽきっ
絢辻「あ……」
純一「う〜んっ…美味しいね、やっぱり〜」ぽりぽり…
絢辻「っ……じゅ、純一くんのくせに中々策士じゃない…ふんっ。今の負けを認めてあげるわ…!」
純一「ごくん……負けって、絢辻さん。まぁ仕返しできたから僕はいいけど……ハッ!」
絢辻「……ふ〜ん、そうなの。仕返しだったのね、へ〜……わかってたけど」
純一「い、いや……そのね? でも、こうやってイチャイチャしたいなって思ってたのは事実で…あはは…」
絢辻「目的がべつになってるわよ、それ……わかったわ、そしたらあたしも仕返ししてあげる」すっ
純一「え…? あ、絢辻さんっ…それって…!」
絢辻「…ひゃい、ひゅうひきくん…ふぁーん」すっ…
純一「う、噂でしか聞いたことのないっ……ポッキーゲーム……!?」
こうやって生で見るのは初めてだよ…! しかも、相手は絢辻さん!)
絢辻「……ひゃべないの?」くいっ
純一「た、たべます…! すっごくたべたいです…!」びしっ
絢辻「ほう? ひゃ……ふぁい、ふぉうふぉ」すいっ
純一「っ……ご、ごくり…」ぷるぷる…こり
絢辻「っ……ふっふりと、ね…?」
純一「う、うんっ……!」こくこく
絢辻「………」ポリポリ…
純一「………」ポリポリ…
絢辻「………」じぃー… ポリポリ…
純一(う、うわー…すっごく僕のこと見てるよ、絢辻さんっ……普段とは違った近づき方で、どうしよう赤くなってないかなっ…)ポリポリ…
絢辻「…………」ポリポリ… すっ…
純一(あ、目をつぶった……こ、これって…あの、そうだよね…っ!)ぽりぽり…
純一「っ……」すっ… ポリポリ…
純一「………」ポリ…
ちゅ…
絢辻「──ふっ、ん……はい、オシマイよ純一くん。ふふ、楽しかった?」
純一「もぐもぐ…うん、なんだかすごく……すごかったよ」
絢辻「そ、そお? ならあたしも、仕返し成功ね」
純一「うん、そうだね……そうだね…」
絢辻「っ……な、なによっ…もうポッキーはあげないわよ?」
純一「………もっかい、しないかな? 今のさ」
絢辻「え…? 今の、もう一回したいの…?」
純一「あ、うん……なんだかあっというまでさ、もう一回やって記憶に残しておきたいなぁっておもって」
絢辻「っ……も、もう一回…」
純一「だめ、かな…?」
絢辻「っ……だ、だめじゃないわよ。うんっ、どんどんきてらっしゃい…!」
純一「本当にっ? ありがとう、絢辻さん!」
純一「うーんと、でもさ……またポッキーでやるのはちょっとあれだし…」ごそごそ…
絢辻「え、他になにかあるの?」
純一「うん、僕もお菓子持ってきてたんだ……ほら、こういうのとかはどうかな?」
絢辻「……そ、それって…」
純一「うん、ジャガリコだよ。ざくざくって美味しいやつ」
絢辻「し、しってるわよっ……でも、それ…ちょ、ちょっと短くないかしら…?」
純一「そうかな? そんなにポッキーと変わんないよ、じゃあ…はい。今度は僕からだからね」すっ…
絢辻「わ、わかったわ……それじゃ」すっ…
純一「………」ぽりぽり…
絢辻「っ……」ぽりぽり…
純一(…あれ、さっきより何だか恥ずかしそうだな絢辻さん…やられる側だと、慣れてないのかな…?)ぽり…
絢辻「………」ちらっ
純一(あ、ちらってこっちみた……眼があって恥ずかしそうだな、あはは)
絢辻「……っ」ぽり… ちゅっ
純一「……うん、ありがと。絢辻さん、ちゃんと味わえたかな?」
絢辻「う、うんっ……美味しかったわ、ちゃんと…っ」
純一(…ちょっと悔しそうに上目づかいしてくる絢辻さん、かわいい…!)
絢辻「……ふ、ふぅ〜…塩辛いの食べちゃって、ちょっと喉が渇いたわね…うん…っ」ごそごそ…
純一「あ、お茶だったら僕のがあるよ?」
絢辻「じ、自分のがちゃんとあるわよ!」
純一「そっか、それは残念」
絢辻「も、もうっ……ごくごく…」
純一「………」じー…
絢辻「ごくっ……ぷは、なにかしら純一くん? 貴方も飲みたいの?」
純一「え、ああ、うん……そうじゃなくてね。お茶ってさ……こう、できないかな?」
絢辻「え…? どういうこと…?」
純一「えっとそのさ、ポッキーゲームみたいに……こう、口に含んでやるみたいな」
そ、それもちょっとマニアックなっ…!」
純一「でも、楽しそうじゃないかな? なんて思ったりして、あはは」
絢辻「楽しくなんかないわよ…っ! もう、何を見てるかと思えばっ…!」
純一「あはは…ごめんごめん」
絢辻「ごくごく……ぷはっ──……そ、それで…もうオシマイなのかしらっ…?」
純一「え、なにが?」
絢辻「…なにやら勝ち誇った表情してるみたいだけど、あたしはまだ負けを認めたわけじゃないわよ…?」
純一「まけって……これって勝負だったの?」
絢辻「いま、そうなったの。だから、かかってきなさい……その余裕綽々の顔。へしおってやるわよっ」
純一「お、おおう……わかったよ、それじゃあ次ぎで勝敗を決めるために、実はこれぞってものがあるんだ」
絢辻「な、なにかしら…? いいわよ、なんだって受けてみせてあげるわ」
純一「…後悔しいても遅いからね? いいんだよね?」
絢辻「っ……そ、そんなにすごいものなの…?」
絢辻「……こ、これって…あの…!」
純一「……そう、あのお菓子。僕はこっち派なんだけど、美也は…たけのこ派なんだよね。
だから今日の修学旅行にはこっちをもってきたんだ」
純一「──……きのこの山。これをつかって、今からポッキーゲームをしようじゃないか、絢辻さん…!」
絢辻「で、でもっ……それじゃ小さすぎてすぐに…」
純一「だからね、このおかしの先端……傘の部分を絢辻さんに咥えてもらってさ」
絢辻「う、うん…っ」
純一「そして…クッキーの部分を、僕がざくざく食べていくんだ。それは僕だけが食べ進めることになるから、
絢辻さんはそのまま待っててくれるだけでいいんだよ」
絢辻「な、なるほどね……それだと、すぐにはなくならないわね…うん…」
純一「でしょ? それじゃあ、さっそくだけどはい……絢辻さん、これ咥えてね」すいっ
絢辻「っ……わ、わかったわ───……こ、こうかな…っ?」
純一「おっけーだよ。そしたら、行くよ…?」
絢辻「っ……」こくっ…
純一「よし、そしたら……」ずい…
絢辻「っ………っ……」ぷるぷる…
純一(ものすごく震えてる……恐いのかな…? いや、これは緊張してるんだ…
生徒会長になった時だって、あんなにも堂々としてたのに…僕とこんなゲームをするだけで、緊張してる…)かり…
絢辻「っっ………」ぷるぷる…
純一(なんだか必死だなぁ…かわいそうだけど、その表情…とってもとってもかわいいよ絢辻さん……)かり…かり
絢辻「………っ…」ぷる…
純一「………」かりかり……かりっ…
ちゅ
絢辻「んっ──……」
純一「…………」
絢辻「……んん…? んっ! んん!」
純一「…ぺろり」
絢辻「…!?」ぴくんっ
純一「もぐ……うん、やっぱチョコレートは食べないとなって思って」
絢辻「思って、じゃないわよ…! い、いま…し、舌が……口の中に…!」
純一「え、だってそれは昨日の夜にもやったから別に大丈夫じゃ──ごふっ…!?」どすっ
絢辻「い、言わないの…っ! な、なにを急に口走って…!」
梅原「──う、うーん……あれ、たいしょー…?」ごしごし…
純一「っ…う、梅原…!」
梅原「…ふわぁ〜…どうやら寝ちまったようだな、って大将…!? どうしたんだよ、悶絶して…!」
絢辻「あっ、えっとこれはね梅原くん…! ちょっとバス酔いしちゃったみたいで…!」
梅原「おいおい…大丈夫か大将…?吐きそうなのか?」
純一「だ、大丈夫だ……気にしなくて、うんっ……」
梅原「お、おう……そうか、ならいいんだが…ん?」
梅原「……あっ、いやー…その、俺の勘違いだったらいいんだけどさ、絢辻さん」
絢辻「う、うん…?」
梅原「…くちびるによ、チョコレートがついてるって言いたいんだが………大将と同じ位置に」
絢辻「っ……う、うそ…!」ささっ
梅原「………。一緒にお菓子を食べてたみたいだが、
一緒の位置につくってのいささか…出来過ぎだと思うわけだよなぁ、うん」
絢辻「っ…ご、ごめんなさい……見苦しい所御見せちゃって…っ…」ごしごし
梅原「い、いいってことよー! なぁ大将! お前も幸せもんだな…? おい?」
純一「あ、ああっ……なんてたって、僕の彼女だからなっ…!」
梅原「おおう、否定もしないでやんの……ったく、お菓子で何やってたんだが……まぁ想像できるけどよ」
絢辻「っ…………」ぷしゅー…
純一「……ふぅ…なんとか痛みもおさまった…絢辻さん、あのさ」
絢辻「な、なにかしらっ…? じゅ、橘くん…?」
絢辻「つ、ついてるわよ…?そ、それがどうかしたのかしら?」
純一「そっか……なるほどね」
絢辻「……なにが、なるほどなの橘くん…?」
純一「あ、えっとさ。ちょっと考えたんだけど……こうお互いにチョコレートを唇に塗ってさ。
舐めあうっていうのもいいんじゃないかなって思って…」
絢辻「っ〜〜〜〜……!! な、なんてこと口走るの…!」
梅原(おおう、あんな絢辻さんの顔は初めてみたぜ…大将やるなぁ…!)
純一「じゃあ、今日の夜さ。部屋に遊びに行った時にでも……」
絢辻「ば、ばかっ…! 本当に貴方って人は…!」ぽかぽかっ…!
純一「い、いたいってば…! 全然痛くないけど、あはは…いたいよ絢辻さん……っ」
絢辻「もう、知らないんだからっ……今日の自由時間、もう一緒に行動してあげないからっ」
純一「え、えぇぇー…! それは嫌だよ! ごめん絢辻さんっ…!」
絢辻「……そしたらそうねぇ…今から行く目的地の動物園だけど…
そこでゴリラの飼育小屋にはいって、ゴリラちゃんと戯れてきなさい。それで許してあげるわ」
純一「え、ええぇー! 僕、ぜったいに死んじゃうよ…!」
絢辻「そうかしら? あ、そしたらメスのゴリラとポッキゲームしてきなさいよ……案外、盛り上がるかもよ?」
純一「い、いやだっ…想像するだけでもいやだ…!」
絢辻「拒否権はナシよ」
純一「本気なの…!?」
絢辻「当たり前よ、こんなばかな高校生は……動物園で見世物になるのが十分だわ。
ほら、もうすぐつくみたいだから、服をぬいで準備しておきなさい」
純一「い、いやだよ…! ごめんなさい、絢辻さん…! 僕調子にのってました…!」
絢辻「遅い、もう遅いんだから」ぷいっ
純一(ど、どうしようっ……ゴリラは冗談だろうって思うけど、機嫌が悪くなったのは事実だし…
調子に乗って変なこと言わなきゃよかった…)
純一「──あっ、絢辻さんっ……!」ばっ
絢辻「……なによ、どうしたの」
純一「えっとその、出てるよ…! あれが…!」
絢辻「でてる? なにがでてるの?」
純一「……は」
絢辻「は?」
純一「………鼻血、がでてるんだ…」
絢辻「……え?」
純一「絢辻さんの…その、小さいお鼻から…!」
絢辻「………」たら…
絢辻「っ……!」ばっ…
純一「あ、ちょ、触っちゃ駄目だよ…! 手が汚れちゃうから…ねっ?」
絢辻「み、みないで…! とにかく、みないで…!」
絢辻「あ、あたしも持ってるわよ…! それ、とり出すからちょっと待ちなさい…!」ごそごそ…
純一「ま、間に合わないよ…! ほら、僕によくみせて……」
絢辻「いいってば…!」ぱしっ
純一「あっ…ハンカチが座席の下にっ…!」
絢辻「後であたしが拾ってあげるから、とにかくハンカチかティッシュ…!
あれ、ない…まさかキャリーのほうに…!」たらり…
純一「あ、ああっ…もう、垂れてきそう…! どうにかしないと……!」
絢辻「こっちもないっ…こっちのほうにもない、どうしようここは…周りに人に借りるしかっ…」
純一(だめだ、それじゃ間に合わない…! 座席の下のやつを取るのも惜しい時間なのに……)
純一(……だから──だからこれは、彼氏として僕がどうにかきゃいけないことなんだ…ッ!)がたっ
絢辻「で、でもみんな眠ってて…起きてくれるかしら──……」
純一「…あ、絢辻さん…っ! こっちのほう向いて!」
絢辻「え、なにか拭くものでもあったのかし───」
純一「…えいっ」ちゅ… ちゅるるっ…
純一「じゅぶ…ぺろ……ふぅ、これで大丈夫だと思うよ。絢辻さん…!」
絢辻「っ……っ……!?」
純一(きょとんってしてるな……うん、まぁ、普通はこんな表情はするよね…)
絢辻「……た、橘くん…いまあたしになにか…?」
純一「う、うん……ちょっと啜った、かな…?」
絢辻「…す、啜った…? え、どういうことなのかしら……よく状況がわからなく…ちゃんと教えてくれる?」
純一「え、えっとその……鼻血が制服に垂れそうだったから、もうここは僕がすするしか無いって思って…」
絢辻「…思って…?」
純一「……吸っちゃいました」
絢辻「………」
純一(ふたたびきょとん……あ、これは来る。主に打撃が)
純一「は、はい…っ」
絢辻「正座」
純一「えっ…?」
絢辻「目的地まで、ずっと正座」
純一「え、だって…目的地まであと一時間ぐらいあるよ…?」
絢辻「だからなんなのかしら? いいから、はやくしなさい」
純一「はいっ…!」ささっ…
絢辻「よろしい、じゃあ次は」
純一(ま、まだあるのか…っ! どうしよう、次はなにがくるんだろう…!)どきどき…!
絢辻「………」ごそごそ…
純一「っ……なにを、とりだそうとしているの絢辻さん…?」
絢辻「黙ってなさい」
純一「はい……」
純一「──え、それってさっきのポッキーじゃ…」
絢辻「食べなさい、早く」
純一「あ、うんっ……わかった。ぽりぽり……」
絢辻「……美味しい?」
純一「う、うん……普通に美味しいよ…?」
絢辻「…そう、ならよかった」
純一(…どうして急にポッキーを渡してきたんだろ…?
……あ、もしかしてまたゲームをしたかったとか…?)
絢辻「…違うわよ、ばかね」
純一「っ!…けほっこほっ……どうして心の声が…!?」
絢辻「貴方が考えてることぐらい、すぐにわかるわよ。はぁっ……ほんっと貴方って思考が足りてないわよね」
純一「ご、ごめんなさい……でも、どうしてポッキーを…?」
絢辻「っ……く、口直しよっ……口直し!」
純一「……口直し?」
純一「う、うんっ…そうだけど…?」
絢辻「だからその、あれじゃないっ…そんなの、橘くんに悪いからっ……だからその、あれよ!」
純一「あ、あれ…?」
絢辻「と、とにかく! 口の中が血の味がしてたらっ……貴方も気持ち悪いでしょ…っ」
純一「…………」
絢辻「はぁっ…はぁっ……なんで、そこできょとんとした表情になるの…っ?」
純一「……あ、いや、だってさ。べつに絢辻さんの血ぐらい、どうってことないよ?」
絢辻「なっ……そ、そんなわけ…!」
純一「むしろ嬉しいくらいだよ。うん、ありがとう飲ませてくれて絢辻さん」
絢辻「ちょ、ちょっとやめてよ…! そんな感謝の仕方なんて全然うれしくないわ…っ!」
純一「あはは、じゃあどうしたらいいかな…?」
絢辻「っ……もう黙ってなさい…!」
原作一通りプレイし終えたら多分お前も立派な紳士や
絢辻「っ………」ぷいっ
純一(あはは…なんだかちょっと怒ってるなぁ。すこしまた調子に乗りすぎたかな、まぁそれはいいかなって思ってるんだけどさ)
絢辻「……ねぇ、橘くん」
純一「…うん? どうかしたの絢辻さん?」
絢辻「…………」
純一「………?」
絢辻「……そのね、ありがと…」
純一「!……いいよ、どういたしまして。あはは」
絢辻「っ…わ、笑わないの!……とにかく正座は続行なんだから…!」
純一「うん、わかってるよ……」
絢辻「…………」ぷいっ
純一(……バスの中でもこんなに楽しいことが出来るだなんて、
これから先の三日間、もしかしたらこれ以上なことがおこるんじゃないかな…?)
純一「絢辻さん、修学旅行楽しみだね……?」
絢辻「──……ふふっ、そうね…本当に、楽しみだわ」
予想は心のなかで!これはファミ通からのおねがいだよ!
ここで昼ごはんタイム
&安価です
麻耶ちゃんは次の次で書く
この安価は『いままで一度イチャイチャしたヒロインも可』です
>>205をかきます
おまえ・・・
お前…絢辻さんによりによってお姉さんによるNTR体験させようとか…
鬼畜やな
なんでそんなにネガティブなんだよ
ここは姉妹丼目指そうぜ
姉さんか
イチャ済みキャラだったらハーレムもう一人安価して
ハーレムかくつもりだった
お話は地続きじゃないのでご了解を
四十分に戻る
河原
純一「………」 ひゅう〜 ざわわぁぁ〜…
純一「───よし、行くか……」ざりっ
純一「…………」ぐっぐっ…
純一(天気も晴れ、河原の土具合も良好。
僕の体調も今日という訓練のために……万全の態勢に整えてきた)
純一「今日こそは、あの領域にいけるはず…!」
純一(自分を信じろ……橘純一…ッ!
なにごとも信じることから得られるんだ! もとより諦めてかかったら出来たはずのことも出来やしない!)
純一(──全ては、全てはここにある……体の奥にある、ひとつの可能性。それを引き出して、
呼び覚まして、覚醒させる……───)
純一「──野性的、本能…!」
純一(人が本来持つその本能……それを、僕は今日出しきるのだ……そう、この瞬間に全てを)
純一「っ……行くぞ、僕…!」ぱん!ぱん!
純一(今日という日が……僕の人生で最良の日となることを願って──……よし!いくぞ!)
純一「わんわんわん!!!わぉーん!!」ばたばたっ…!
純一「ハッハッハ…ッ!」ざりりっ!
純一(──そう、このコーナリング! 野生の犬は身体を少し斜めにし、一度足りとも速さを緩めることなく!
維持したままコーナーを曲がり切るんだ…!)
純一「ハッハッ…ヘッヘッヘ…!」ぎゅん!
純一(そしてこのダッシュ力! 四足歩行が可能にした、人間の領域を脱したスピード…ッ!
それは初速にして最速! 常に両手足によって最速を維持し、目的地まで駆け抜ける…ッ!)
純一「ヘッヘッヘ!……ぱく!」ぴょん!
純一(最後のこの運動性能…ッ!投げたボールを自らキャッチ!
そのためには驚異的な瞬発力と共に、何処に落ちるのか予測観測も長けてなければならない…ッ!)
純一「………」ずさぁー…
純一「──……完璧、だ。流石は、僕……なんという犬だ…!」
純一(今日の日のために、色々と筋トレしておいてよかったなぁ…)ごろごろ…
純一「…とりあえず、喉乾いたし水でも飲むか。よいしょ」ごろり! よちよち…
純一(お皿でいただくアクエリも中々どうして……ふむ、これもメモっておくかな)めもめも…
純一「……ふぅ。だいぶ落ち着いたかな、僕の野性的本能も…」
純一「………」
純一(……元々、森島先輩の気持ちに答えるために。全力で犬になろうとした計画だったけれど…
なんだか僕自身がいぬになることに、ハマりつつあるようなきがするよ…あはは、どうしてかな?)
純一「僕はちゃんとした人間なのにね、おかしいはなしだよ」
純一(……さて、休憩もそこら辺にして…次は二段階目の本能に目覚めるため、さらなる過酷な訓練に…)
わんわん! きゃいーん!
純一「…ん?あれは───」
「…こらぁ〜!だめでしょ? 小さい子をいじめちゃ!」
グゥーグルルルル…!
「もぉ〜う! そんな風に涎を垂らしても、この晩御飯はあげませんよー?」
「あらまぁ〜……そんなに騒いで、なにがそんなに楽しいのかな〜?」クゥーん…キュンキュン…
「ん〜だいじょうぶよ〜? このおっきな御いぬさんはね〜 ちょっとお腹が減ってるだけだから〜」
グルルルッ……
「あら、どうしたの〜? こっちににじり寄ってきて……──」
ルル……がうっ!! ばっ
「あっ…─────」
だっだっだっだ…!!
純一「わぉおおおおおおおおん!!」だだだ だん!
キャイン!? ずさー…
純一「はっはっはっ……わんっ!わんわん!」じりじり…
ウ、ウ〜 ワ、ワン!
純一「…………」じぃー
ワ、ワン…!
純一「………わん」じぃー
ワ、ワッフ……キャインキャイン! だっだっだ!
純一「…へっへっへ…」くるっ
純一(……うわぁー! なんだこの人…! すっごい美人だ…!
びっくりしたよ、ものすごくびっくりした!)
「………───」
純一(あ…でもしまった、こんな野生的な僕をみても…一般の人ならドン引きしちゃうって知ってるから…
ここはともかく、この人の胸元だけを記憶に残して去ろう───)
「──……なんて、お利口さんなお犬さんなのかしら〜!」
純一(え……?)
「ご飯が食べたくて我慢出来なかったお犬さんをおっぱらってくれるなんて〜すごいすごい〜」ぱちぱちぱち
純一「わ、わんっ……」
「うんうん! いいこね〜 よしよし〜」なでなで
純一「く、くぅん……へっへっへ…!」
「あらあら、甘えてきちゃって…うふふ、かわいいわぁ…」
思わず犬のままで接しちゃったよ…!)ちらっ…
「んん〜…かわいいでちゅね〜」こしょこしょ
純一(おっ…おっふ…! じゃなくて! どうしよう、この人まさか…僕があまりにも
野性的すぎて、人だって気づいてない…?)
純一「…………」くるっ…
「…あら? どうしておなか見せるのやめちゃったの〜?」
純一(だめだ、この人を騙しているようで申し訳ない……僕は人を騙すために、犬になったわけじゃないんだ…
ここでさよならをしとこう───白色だったなぁ…)
純一「わふっ!……わんわんっ」よちよち…
「……いってましまったわ…残念、おうちに上がらせてご飯でも食べさせてあげようかなって思ってたのに…」
純一「………」よち…
「そしたら、貴方が一緒に来る〜?子犬ちゃん?」
くぅーん…わんわんっ
「あらそぉ〜? ふふっ、それじゃあ行きましょうね〜」
純一「…………」だっ
ジョン「わんわん! わぉ〜ん!」くるくる
縁「こらこら、わたしのまわりをうろうろしちゃだめよ〜?」すたすた…
ジョン「わん…っ!へっへっへ……」ぴた…
縁「いいこね〜 ふふっ、それじゃーつきましたよ〜!」ぎぃ…
ジョン(──この人の名前は、緑さん。家に来る途中で教えてもらったけれど…
なんてお美しいひとなんだ……まるで聖女だよ!)
縁「まずは足をふきふきしましょね〜」ふきふき
ジョン(こんな野生的な僕を家に上がらしてくれるなんて……すごい人だなぁ!尊敬しちゃうよ!)ふきふき…
縁「じゃー二人共、居間の方にごーごー!」だっ!
ジョン「わんわん!」だっだっだ!
わんわん! だっだっだ!
ジョン「わんわ──……」だっだっだ
詞「………」ぺら…
ジョン「…………」だっ!
ジョン「わ、わふっ……ゲホコオッ…わんっ…!」ガクブル…
ジョン(えっ…!? なんで!? どうしてあ、絢辻さんがっ…この家で…
居間で雑誌を読んでるの……!?)
ジョン「………っ!」ぴきーん
縁「?」
ジョン(よくよく思い返してみると……玄関のあった名前…絢辻、だった…っ?
うそだろ……ということを僕は…!)
縁「ジョン〜? どうしたの〜?」
ジョン(あの、絢辻さんのおうちに……あがってしまったとでもいうのか…っ!)ぴしゃーごろごろ!
ジョン「………」
縁「ジョンくーん…? 大丈夫かな〜…急に元気なくなっちゃったけど…よしよーし」
ジョン「わふっ……わん…」
ジョン(ど、どうにかっ…まだバレてないうちにこの家から出るしか無い…!
絢辻さんにバレてしまったら…なんというか、僕はクラスで終わっちゃう気がする…!)
ジョン(と、とりあえずっ…玄関のドアをかりかりやっとけば、外に出してくれるかな…)かりかり…
縁「ふんふふーん…♪ あ〜! あったあったぁ〜 うふふっ」
ジョン(うん…? どうしたんだろう、緑さん嬉しそうだけど──)かちゃん
ジョン(えっ…?)
縁「前に使ってた首輪だよ〜? なんとなんと、お犬さんの肌にも優しい特別な皮で作られたやつなんだから〜」
ジョン(えっ……なんだってー! と、とれない!)かちゃかちゃ
縁「あ〜だめだよ? そんな風にイタズラしちゃ〜…めっ」
ジョン「わ、わふぅっ……」
縁「いいこいいこ〜…ちょっとの間だけだからね? 詞ちゃんが、暴れるわるい子は嫌いだから〜……ね?」
ジョン(そんなわるい子はもう帰りますから! 外してください! お願いします…!)ずりずり…
縁「それじゃあ居間にれっつご〜」すたすた
かちゃ
縁「ただいま〜」
詞「──っ……お姉さん。おかえりなさい」
縁「うん〜! 詞ちゃんもさっき帰ってきたところ〜?」
詞「チ……今朝に言ったでしょ、今日は学校は休みだからって」
縁「そっかぁ〜…そういえばわたしも大学やすみだったよ〜」
詞「はぁ…そう───それで、その抱えている子犬は……どうしたの?」
縁「あ、この子〜? この子はね、河原でおっきなお犬さんに虐められたところをみかけて〜」くぅーん
詞「…やめて、そういうの。また…お父さんに怒られてもしらないから」
縁「あ、うん〜…ごめんねぇ?」
詞「どうして私に謝るの、それと…もうひとつ。その握ってる手綱はなに…?」
「っ……」びく!
縁「あ、この子はね〜…そんな虐められてた子を助けてくれた〜 とってもとっても勇敢なお犬さんなんだよ〜!
ちょっと恥ずかしがり屋さんで、今はソファーの後ろに隠れちゃってるけれどね〜」
詞「──……それ、大型犬用の首輪なのに。ちゃんとサイズ合ってるの?」
縁「ぴったりだったよ〜? だって、おっきなお犬さんだったし〜」
詞「……ふーん、そう…大型犬にしてはやけに静ね。荒い息を吐くものだって思ってたけど」
ジョン「っ……はっはっはっはっ…!!」
詞「……あら、聞こえたね」
縁「心配しなくても大丈夫だよ〜? ちゃーんと大人しくしてるし、それにこうやってリードもつけてるから〜
……だからその、ね? ちょっとの間だけでいいから…おうちに上がらしてもいいでしょ?」
詞「……いいけど、私に近づけさせないでねお姉さん」
縁「わかった〜 それじゃあいこっか? ふたりとも〜」ぐいっ
ジョン(え、ああぁ…! ひっぱらないで…! 姿がっ! ソファーからはみ出て絢辻さんに…!)
詞「………」ぺら…
ジョン(……あ、あれ…? 絢辻さんもうお姉さんのこと見てない…まるで、はなしが終わればそれまでって…
ひどく無関心みたいな雰囲気をかんにじるよ)
縁「私の部屋まで、いくよー?」たんたん…
ジョン(ごふっ!……ちゃ、ちゃんと登らなきゃ…!)たんたん…
緑べや
ジョン(お、おおっ…なんだか女女の子してる部屋だなぁー…くんくん、あ。良い匂い…)
縁「ちょっと着替えるから、まっててね〜」すすっ…
ジョン(もちろんです!)くるっ
ジョン(……さて、着替えを見ないようにまずは…この部屋にあるものとか眺めておこうっと)
ジョン「…………」きょろきょろ…
ジョン(……ぬいぐるみが多いけど、これって全部買ってるのかなぁ…すごい量だ…あ、これは…)すたすた…
ジョン(家族全員が写ってる写真だ…絢辻さんも写ってるし、もちろん緑さんも写ってる)
ジョン(──でもなんでだろう、なんだか家族写真……って感じがしないなぁ。どうしてだろう?)
縁「おまたせー じょぉんっ」ぎゅう…
ジョン「お、おふぅっ…!?」
ジョン(ふ、ふわわ! ふわふわ!)
縁「ふふっ…あーやっぱりおっきなお犬さんはいいなぁー…抱き心地がとっても素敵〜」ぎゅう〜
ジョン(ぬ、ぬわーっ……これはすごいよ!たまらないよ!)
縁「くんくん…あ、ちょっと土の匂いが残ってるねー…あとで一緒にお風呂はいる?」
ジョン「……わん」キリッ
縁「ん〜? それはだめだ! って顔をしてるね……そっか、お風呂は苦手なのかな?」
ジョン(さすがにそれは……欲を言えば男として、一緒に入りたいですけどね!)
縁「う〜〜〜んっ……はぁ〜! 堪能した〜! よいしょっと」
縁「うふふっ……こらこら、子犬ちゃん? そんなに引っ付かなくても大丈夫よ〜?」きゃんきゃん!
ジョン(素敵な方だ……僕の飼い主になってほしい…ってだめだ! ぼ、僕にはちゃんと森島先輩っていう
可憐な飼い主が……でも、こっちも…)
ジョン(……というか、この人が絢辻さんのお姉さんなんだよな…なんだか全然似てないや…
…主に性格面とか…あ、でも目元とか少し似てるかな…?)
ジョン「…………」
縁「うふふっ〜…楽しいわね〜───むかしは、こうやってよく詞ちゃんと遊んでたっけ〜」
ジョン「!………わふっ…」
縁「うん? ジョン君も気になるかな? 詞ちゃんのこと」
ジョン(気になる気になります!)
縁「お〜! 興味津々な目だね〜……じゃあ、特別だよ? じゃあベットの上においでー」ぽんぽん
ジョン「わふっ…!」いそいそ… すっ…
縁「うふふー……よしよし…あのね、昔はね詞ちゃんは〜…とっても泣き虫さんだったの」
ジョン(な、なんだってー…!?)
縁「今はあんなにすっごくかっこいい娘だけど、昔は本当にすぐ泣いちゃって…
わたしが夜、同じ布団の中でいつも慰めててあげてたの」
当時のわたしは、その詞ちゃんの言葉がもうほんっとに大好きでね……」
ジョン「…………」
縁「……今は、そんなこと言ってくれることもなくなっちゃったけど。
でも、いつまでも詞ちゃんは…わたしのかわいい妹で、素敵な妹なの……うふふ、なかなか言えないけれどね」
ジョン(…お姉さん、絢辻さんのこと……大好きなんだな。こうやって犬な僕にぼやくぐらいなんだろうし…うん。
やっぱり素敵な方だ…)
縁「昔の詞ちゃんも大好きだけどー……今のかっこいい詞ちゃんも大好きなんだよ。
でも、最近の詞ちゃんは…ほんのちょっとだけ、冷たい感じがする…かな?」うんうん
ジョン(……そ、そうかな…?
居間で見た時、パッと見ただけの僕でも…すごくなんだか絢辻さん、お姉さんのこと苦手ぽかったけど…?)
縁「だからいつか……前みたいに、一緒にオフロに入って。一緒に髪を乾かしっこしてー……それから同じベットで眠るってことを
したいんだけど……ふふ、いつになったらできるのかな〜? ねぇ〜ジョン〜? うりうり〜」
ジョン「お、おっふっ…!」
縁「はぁー……」ぱたん…ころん
ジョン「………?」
ジョン(縁さん……)
縁「──すぅ……すやすや…」
ジョン(ってあれ……もしかして、寝ちゃった…?)ゆさゆさ…
ジョン「わおわおん?」ゆさ…
縁「くぅー……くぅー……むにゃ…」
ジョン(ね、寝ちゃったよ…寝るタイミングが掴めないぐらいに、素早かった…!
まるでのび太くんだよ…!すごい!)
ジョン「………このうちに、この家から出とくかな…ともかく、綾辻さんにバレずに帰れれば
それでいいんだ、居間をどうにかすれば……」すたすた…
縁「むにゃむにゃ……ジョン…君……すぅー…」
ジョン「…………」すた…
ジョン「──今日は、家に上がらしてもらってありがとうございます。
この御礼はまた今度、僕が人間の時に……渡したいと思いますね」
ジョン(──では、縁さん…これで)
ジョン(……か、階段を上がってくる音…! 僕の野性的感が告げている…!急いで隠れないと!)ばばっ
こんこん…
「…姉さん、入るわよ」がちゃ
詞「──姉さん、そろそろ晩御飯の……あら?」
ジョン「っ……」どきどき…
詞「……またそうやって寝て…風邪を引いたらどうするの」すたすた… ぐいっ
ジョン「…………」どきどき…
詞「──これでよし…晩ご飯は後もう少し、伸ばしてもらうから。一時間後にくるからね」
縁「つかさちゃーん……えへへ、まって〜……」
詞「っ……」ぴくんっ…
詞「──……ったく、貴女って人はどうして……ぎりっ」ぐ…
ジョン(……絢辻、さん…?)
詞「……っはぁー…!……もういいんだから、もう大丈夫。もう……」くる
詞「……私は……あたしは、貴女には負けてないんだから……」すた…
関係があるのかな…?)
詞「……あら、そういえば…」すた
ジョン(……ん?)
詞「姉さんが連れてきた……もう一匹の大型犬はどうかしたのかしら。子犬の方はベットの上だし…」
ジョン(し、しまった……ここは、どうにかくぐり抜けるしか無い…!)
ジョン「わ、わぉーん……!」
詞「……ベットの下? そこにいるの?」すたすた…
ジョン(馬鹿だ僕! なんでいるってことにしたんだ! 帰らせたってことにしとけばよかっただろ!
あ、あわわ…! どうしよう、絢辻さんがリードに繋がれてベットの下に隠れた僕を見つけてしまう…!これはおわった!)ごそごそ…
詞「──よいしょっと……」すっ…
ジョン「っっ………!!」
ジョン「っ………」どきどき…
詞「──……あれ、なにもいない…?」
ジョン「……っ……」どきどき
詞「確かに、声がここから──……あら、ベットにもう一つの膨らみが」
ジョン(──た、助かったァー! なんだこの奇跡! 絢辻さんが屈んだ瞬間に、急いでベットに潜り込んでみたけど…
成功するなんて……もう僕ってば明日には死んじゃうんじゃないかな…!)どきどき…
詞「いつの間に…まぁ犬ならやってのけるか。ふぅ…あんまり毛とか付けないでよね、掃除が大変なんだから」
ジョン「わ、わふっ…!」
詞「あら、返事をしてくれるなんて……お利口さんな犬なこと」
ジョン「……わ、わふっ…」どきどき…
詞「……さて、晩御飯の手伝いでもしてきますかぁー」すたすた…ばたん…
ジョン「──た、たすかったぁー……もうダメだって思った…!本当に…!」
ジョン(この家に来てから、なんど奇跡を行っただろう……もう、僕へにゃへにゃだよっ…!
色々と面倒な事にならないうちに、この家から出よう…!)
ジョン「とりあえず、この首輪をどうにか外して……あれ、案外軽く取れた…落ち着いてやれば出来るもんなんだ…」かちゃ
純一「えっ…?」ばさぁ…!
純一(ベットの中に引き込まれっ…!?むぐっ!)ぽにょ!
純一「むぐぐっ……ぷはぁ! なにこれ、やわらかむふっ!?」
「う、う〜ん……はれぇ? ジョン君…?」ぎゅう…
純一「ゆ、縁さん…!?って…あっ!」ぱしっ
縁「うーん……パチパチ……うん?」
純一(やばいっ! ものすごく凝視されてる…! 目の前で、胸に抱かれながら…!)
縁「……あれ? ジョン君だったと思ったのに……あはは、いつも詞ちゃんといる子だぁ〜」
純一「え…? あ、はい…どうも…?」
縁「どうもー……ふわぁ〜…何だか不思議な夢〜…ジョン君が、あのこに変わっちゃうなんて〜…」
純一(も、もしかして…これ夢だって思ってるっ…?まさかそこまで都合がいいこと…!)
こんな夢を見られるなんて……ちょっと神様に感謝しないとね〜」
純一(どうやら本気で思ってるっぽい!)
縁「……ん〜〜……こうやってお話するのは初めてだよね?君とは」
純一「あ、はいっ……そうですね、確かに…」
縁「あははー! そこまでかしこまらなくてもいいんだよ?取って食べるわけでもないからね」
純一「そ、そうですか……」
純一(というか、いつまで僕は抱かれたまんま何だろう…!
たとえ夢だと思ってたとしても、この人にとってはそれでいいのか…っ?)
縁「……うーんとね、君ともし会ったら色入とお話ししたいことがあったんだけど…夢の中だし、いいかなー?」
純一「えっとその、ちゃんと話しをきいたらっ…手を離してくれますか…?」
縁「うん、いいよー」
純一「……わ、わかりました。それじゃあ聞きます…」
純一「はい、1つだけ…?」
縁「うん、それはね……つかさちゃんのこと」
純一「…絢辻さんこと、ですか?」
縁「そうなの、つかさちゃん…私の妹なんだけどね。
あのこ、最近ずっとずぅーっと……笑った所、見たことないの」
純一「ずっと、ですか?」
縁「……どれぐらいたつかなぁ〜…もう、忘れちゃうぐらいにだと思うよ。
それぐらい見てないつかさちゃんの笑顔をね……実は、最近になってみたんだよね」
純一「え、本当ですか…っ?」
縁「うん! わたしもびっくりしてー…そこで一時間ぐらい立ちっぱなしでいてね。
今でも足がちょっと凝っちゃってるんだ〜」
純一「は、はぁー…そ、それでいつ絢辻さんが笑ったんですか…?」
縁「うん? 君と一緒にいるときだよ?」
純一「え……?」
純一「は、はい……」
縁「…そしてそんな笑顔の先にね、君がいたんだよ? わたしそこでもっとびっくりしちゃってね」
純一「なるほど……」
縁「……家ではよく笑ってはいるんだけど、あれは少し…違うんだって思わせるぐらい、綺麗な笑顔を…
君だけに、君のためにしていて……ものすごく、びっくりしたんだー…うん」
純一「…………」
縁「……だから、聞きたいんです。君に…どうやったら、つかさちゃんに…」
縁「あの笑顔を、してくれるようになるのか……私は知りたいの」
純一「……知りたいっていわれましても、僕は…」
縁「う〜〜〜〜んっと……たしかに、これは私の夢であって〜〜〜…君本人じゃないから、
本当の答えじゃないけど〜〜〜…でも、君に聞いてるわけだから、それは答えで〜〜〜うーっん…まぁいいや!」
純一「え、えぇー…いいんですか…?」
縁「いいのいいの! わたしがすっきり出来ればそれでいいんだから」
縁「わたしも、あの笑顔を…つかさちゃんから向けて欲しいの。ものすごく、いっぱいに」
純一「……っ……あの、その…正直にいいますと、ですね…」
縁「うん?なになに?」
純一「……わ、わからないです……はい…」
縁「え〜〜! それは嘘!」
純一「う、うそじゃないですよ…! 本当です! ……本当に、僕は…」
純一「…絢辻さんが、その、綺麗に笑ったってことは……よくわからないです」
縁「…そうなの?」
純一「……まぁ、たしかに。最近はよく笑ってくれるようになって来ましたけど…
それは以前までも、変わらずに笑っていたと思います…確かに、種類が違いますけどね…」
縁「でしょでしょ! わたしもずっと悩んで悩んでわかったことだから…すっごく自信があるの!」
純一「そうですか……でも、僕は絢辻さんは…いつだって笑顔が可愛い人だって思ってます」
縁「……うんうん、それでそれで?」
純一「だからその……貴女がいった、綺麗な笑顔っていうのは…ただ、貴女が久しぶりに見た笑顔が…
とても印象深かっただけなんじゃないかって思いますけど…?」
純一「……貴女が見た久しぶりに絢辻さんの笑顔が眩しくて、そこにちょうど僕がいただけの話なんですよ…」
縁「ふむふむ……わかった、わかったよ君ー!」
純一「ほ、本当にですか…? よかったぁー…!」
縁「うんうん、やっと君があほのこだってわかったよ〜」
純一「……え?」
縁「つかさちゃんも大変だなぁ〜…なるほどね、だから好きになったのかなぁ〜…」
純一「えっと、お姉さん…?」
縁「──……ふぅ、そしたら。最後にひとつだけいおっかな」
純一(……あれ、なんだか雰囲気が…どこかで見たことのある感じの…?)
縁「……君が、どれだけの子をね? 元気にしてあげても。強くさせてもだよ?」
純一「は、はいっ…?」
縁「数あるこの中で──……幸せにできるのは、必ず一人だけだからね?
それだけを覚えておいて……橘純一くん?」
縁「うん〜? ひ・み・つ。だよー?」
純一「え、ええぇ〜…! すごく気になりますけど…! 秘密なら、しかたないですね…」
縁「……ふふふ、やっぱりつかさちゃんが気に入ったのもわかるわぁ。いいこね君は」なでなで…
純一「そ、そうですか…?」
縁「うん、とってもいい子よ。こんな子なら…ちゃーんとつかさちゃんを悲しませずにしてくれそうで、
お姉さんとっても安心したよー?」ぐりぐり
純一「わ、わっぷ……ちょ、苦しいですって…!」
縁「うふふっ……ありがと、今日は私の話しをきいてくれて…感謝してる。
貴方も頑張ってね…お姉さんも応援してるから、ね?」
純一「は、はい…?」
縁「いろんな事があっても、大変な目にあっても……くじけずに頑張らなくちゃだめだよ?
でも、もし……だめになりそうになったときは、またここにおいで」
縁「……もう一度、こうやって抱きしめてあげるから」ぎゅう…
縁「───大丈夫、君はただひたすらに……わんわんって走っていけば。それだけでいい」ぎゅう…
純一「…………」ぎゅっ…
縁「君はとってもすごい子。なんだって出来る子。そんな自分に自信を持ってね…?
その自信が高ければ高いほど、君もっと凄くいい子にしていくはずだから…」
純一「……はい、縁さん…」
縁「……つかさちゃんを、どうかよろしくお願いします。橘くん……」
純一「……─────」
数分後
純一「──………ハッ!」がばっ
純一「こ、ここどこ…!? え、あ、か、河原だ……」
純一「ど、どうしてここで僕は寝てるんだ…? えっ!?恐い!?」
純一「というか寒い……ってあれ、そんなに寒くない…冬なのに…?」
純一(なんだか、さっきまで誰かに抱かれていたような…そんな暖かさが残ってる…)
純一「…………だめだ、思い出せない…!どうしてだろう、こんなにも…」
純一「…こんなにも、すっきりした気分で要られてるのに…どうして、なにも覚えてないんだろう…」
純一「──……帰るか、うん」すっ……
純一「……絢辻さん、かぁ…」すたすた…
ちゃりり…ちゃり…
絢辻家
縁「きょーのごはんはなんだろうなー!」
詞「今日はカレーライス」
縁「え〜? ほんとにー! 大好きよカレーライス〜」
詞「そう、じゃあいただきます」
縁「いっただきまーす……もぐもぐ、おいひぃ〜!」
詞「あ、ほら。そんなにこぼして食べないで!」
縁「えっへへ〜……やっぱり、いいことした後っておなかがすくよね〜つかさちゃん!」
詞「はいはい、そうねそうね」ふきふき…
次は麻耶ちゃんいくよ頑張る
ちょっと三十分ぐらいうんこ
次も期待だ
純一「──おじゃましまーす…」がちゃ…
純一「……えっと、高橋せんせーい…いらっしゃいますか〜?」
純一「…………」
純一(──あれ、いないのかな…鍵はあいてるし。
それにチャイムが壊れてるみたいだから、確認も取れないしなぁ…)
純一「うーん……どうしよう、勝手に上がってもいいものなのか…だめだよなぁ」
純一「……。とりあえず、要件のものだけ玄関においておくか……それだけで、いいよね」こと…
純一「……」しーん…
純一「本当にいないのかな…? 鍵も閉めないで外出なんて、とっても無用心だよ……」
がたんごとん!
純一「ん……? なんだ、今…物音が…」
がしゃんぱりーん!
純一「っ…!? 先生!? 高橋先生っ!」だっ
純一「高橋先生っ…! いるんですか!? いるんですよ───……ねって…」
高橋「……きゅー」
純一「……たかはし、せんせっ…! な、ちょ、どうしてバスタオル一枚で大の字にっ…!?」
高橋「……ふぇ…?」むく…
純一「ちょ、ちょっと……先生! しっかりしてください、本当に…!
あ、やっぱだめですしっかりしないで!僕が後で怒られそう…!」
高橋「…た、たちばな……くん…?」
純一「は、はいっ…! そうです、僕は橘純一です…!」
高橋「…………」
純一「せ、先生っ……?」
高橋「……たちばなくん、遅刻はだめですよっ…」ばたん
純一「せ、せんせぇー! ど、どうして最後まで…僕の心配をっ……」
純一(ってちがうちがう!…のってる場合じゃないよ…!どうやらのぼせてるのかな…?
冷やしてあげないとっ…でも、その前にこの格好をどうにかしないと…!)
純一(ど、どうしようっ…先生の家だし、勝手にあさくるのも……!)
高橋「はぁっ…はぁっ……くっ……」
純一「……くそ、もう怒られるのは慣れてるよ! ここはもう紳士魂すべて込めて、
全力でやってやる…!」
高橋「っ……はぁっ……あ、あれ……たち、ばなくん…?どうしてここに───」
純一「──行きますよ、先生。あとでたくさん怒ってもいいですから……」
高橋「え……?」
純一「今だけは、ほんの今だけは……全部、許してくださいっ!」がばっ
高橋「きゃっ…!た、たちばなくんっ…? 急になにをっ…!」
純一「いきなり抱き抱えてすみません!とりあえず!先生はまたお風呂場に戻って下着を履いてください!
僕はその間に、氷とか水とか用意しておきますので……お願いします!」だっだっだ!
高橋「あ、はいっ…できます…!」
純一「わかりました! じゃあ僕はちょっと台所を借りますよ!」だっだだだ!
高橋「…………」
高橋「あっ…わたしったらぼーっとして…………下着、下着…」
高橋「…………」いそいそ…
高橋「ってなにこれ…!? えっ!? たちばなくんっ! なんで貴方がここにいるのっ!」だっ
純一「え、なんでってそれはっ……」
高橋「わ、わたしのアパートですよ…! というか、わたしっ…なんでこんなかっこうっ…!
たちばなくん! ちゃんとせつめいをしなさ──きゃっ…!」ずりっ
純一「え、あ、ちょ、なんで自分の下着を踏んづけて……先生ッ!」だっ
ばたーん
高橋「──いたた……どうして急に、なにか足元にあったのかしら……」ひょい
高橋「……っ!?」ばっ
純一「いたた……せ、先生大丈夫ですか…っ?」
ちょ、ちょっと先生の……し、下着が落ちてますから…!」ささっ…
純一「…えっと、そうなんですかって言いたいんですが……あの、その」かぁぁー…
高橋「な、なによ…! どうかしたんですかっ…!」
純一「……すみません、とりあえず謝っておきます…その…」すっ…
高橋「えっ……────」
純一「………まる、みえぐはぁあああ!?」ごすん!
高橋「っ…!…っ…!…っ…!」ばっばっ(バスタオル回収中)
高橋「っっっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」ぎゅうう…
高橋「た、たちばなくんのっ───…ば、ばかっ……!!」だっ
がらら ばたん がちゃ!
純一「………」
純一「……大丈夫ですよ、先生。大事なところはふとももで見えませんでした」
『ちょ、ちょっと黙ってなさい! もうっ!』
高橋「───っはぁ〜〜〜〜〜…………」
純一「あはは、はは……なんというか、災難でしたね先生」
高橋「っ……災難、ってどころの話じゃないでしょう…!もう、またなんてことを私は…あぁ〜…」
純一「まぁまぁ、先生。別に減るもんじゃなしに……すみません、減りますよね色々と」
高橋「ぐぐっ……わ、わかればいいんですっ…! っはぁ〜……もう、本当にわたしは…教師失格です…」
純一「…………」とく…とくとく…
高橋「教師生活を始めて五年目……今までいろんな事があったけど…貴方の担任を持った以来、
全ての失敗を覆すほどのことばっかりやってるわ……はぁ〜…」
純一「へー……高橋先生も、僕以外の前で色々と失敗してたんですか。はい、どうぞ」
高橋「あ。ありがとう橘くん……橘くんっ!それってどういう意味かしら…っ?」
純一「え、だって…先生が失敗する姿なんて、僕と一緒にいる時ぐらいしか見ませんし……」
純一(絢辻さんとかの色々は秘密として)
純一「だから、僕の時のことをはぶいたら…先生って結構、完璧な女性じゃないですか?」
高橋「……わたしが、完璧な女性……?」
高橋「そ、そうかしらっ……? わたしって、ちょっといけてるかしら…っ?」
純一「いけてますよ! すっごいいけてます!」
純一(…ふぅ、機嫌治ってきたかなちょっとは)
高橋「……ま、まぁ…おだてても、何も出ませんからね。橘くん!」
純一「え? いやー僕はなにもいりませんよ、高橋先生」
高橋「そ、そうなの…? なにも、いらないの…?」
純一「ええ、僕は何も要りません。だって僕は……」
ちゅ
純一「……ほら、もう先生を手に入れてますから。ね?」
高橋「お、おでこにっ……こら! なんてことを…!」
純一「あはは、ちょっと大人ぶってみました。どうです?具合の方は?」
高橋「っ〜〜〜……す、すこしだけよくなりましたよ…たぶん…!」
先生…具合がわるいんですか?」
高橋「……そ、そうなのよ…今日はちょっと朝から風邪気味で…」
純一「なるほど、だから学校に来てなかったんですね」
高橋「…え? 何で知らないの? 一応、学校には連絡しておいたのに…」
純一(……多分、絢辻さんが裏で何かしたな。有益なことをするために)
純一「え、えっとぉ〜…なんでですかねっ?たぶんだけど、代わりの先生がきたとき……
梅原が色々と騒いでたから、その時に連絡が聞こえづらかったのかも〜…しれないです」
高橋「……梅原君っ…覚えておきなさい、みっちり指導してあげるんだから…!」
純一(すまん、梅原っ……後生だ…!)
高橋「……それで、橘くんは今日はなにしにここにきたの?」
純一「あ、それなんですけどね…」ごそごそ
純一「──これです、進路希望調査紙を持ってきたんですよ」
高橋「ああ、確か今日が締切の……」ぱらぱら…
もしかしたら一周目だと見つけられないかもね
高橋「ふーん……そう、なのね…」ぱらぱら…
純一(スルーされた……)
高橋「……あら、橘くん。大学希望なのね、大丈夫?」
純一「どういうことですか!? せ、先生から言われると……あれなんですけど…!」
高橋「うふふっ。冗談よ、じょーだん…いやね、てっきり専門とかに行くと思ってたから」
純一「…そうですね、一年の時はそう書いてましたね」
高橋「じゃあどういった心変わりなの? なにか君に、変化を与えてくれたことでもあったのかしら?」
純一「…………」
高橋「……うん? 先生の顔に、なにかついてる?」
純一「……いえっ、その……先生が居たからです…はい…」
高橋「…えっと、なにがどういうこと?」
純一「せ、先生を…知ってから。僕はやってみたい職業ができたんです…」
高橋「──えっ…それって、もしかして……教師、に?」
純一「……っ……」こく…
純一「っ〜〜〜〜っっ! そ、そうです! 僕は先生を見て…教師になりたいって思いました…!」
高橋「橘くん…」
純一「へ、変なことを言ってるってわかってます…けど! 先生みたいに…いろんな人に慕われて、
生徒たちに勉学を教える立場ってのが…どれほど素晴らしいものなのか…知ってみたいって思ったんです…!」
高橋「……………」
純一「…だ、だからっ……その、いつかは輝日東高校で教鞭をとって、先生と…高橋先生と一緒に……先生?」
高橋「…………」ボロボロ…
純一「え、ちょ……なんで泣いてるんですかっ? えぇー…!」
高橋「たち、ばなくんっ……わたし、わたしっ……ぐすっ…」
純一「え、はい…っ? どうしたんですか…? 具合が悪くなったんですか…?」
高橋「ううん、違うの……そうじゃなくてね…?…ぐしゅっ…」
高橋「とっても、とっても……すっごく、嬉しいのっ…!…ぐすっ…君が、私を見て…
…きょ、教師になりたいって言ってくれて……本当に、わたしは…っ…」
純一「先生……」
純一「…願い、ですか?」
高橋「そう、そうなの……これから先、生徒たちを教えていく立場になっていくけれど…
でも、もしかしたらいずれ…私と同じように、教師という立場を目指してくれる子がいればいいって…」
純一「…………」
高橋「…そん、な子がっ…ひっく……一人だけ、一人だけでいいから先生……っ…」
純一「…わかりました、わかりましたよ。先生の気持ち…」
高橋「ひっく……ほ、ほんとうに…っ?」
純一「ええ、本当にです。先生は、ちゃんと願いは叶えられましたよ…ここで、いま」
高橋「ひっくえっぐ……でも、橘くんっ……むっ…ぐすっ…無理じゃない…?」
純一「無理じゃないですよ! 頑張ります!」
高橋「…ぐすっ……」
純一「実はちょっと自信が持てなかったんですけど……今の、高橋先生の……いや」
純一「麻耶ちゃんの願いを聞いて、僕は完全に決意しましたよ」
高橋「た、たちばなくん……っ」
純一「待っててください、先生。僕は必ず先生に……なります」
純一「それがなんだっていうんですか! 麻耶ちゃんは麻耶ちゃん年ですよ!いつまでも!」
高橋「なに、それ……ふふっ…麻耶ちゃん年って…あははっ」
純一「あはは。だから先生、僕は絶対に…貴方と一緒に教鞭を取ります。必ずです」
高橋「ぐすっ……そう、なのねっ…! 決意は、決まってるのかしら…っ?」
純一「ばっちしです!」ぐっ
高橋「ぐしゅっ……ふぅ。うん、ごめんね。先生急に泣き出して」
純一「あ、いえ……可愛かったですよ、泣き顔も」
高橋「こ、こらっ…! 年上に向かってなにをいうの…っ!」
純一「あはは…」
高橋「もうっ……そしたら、橘くん。今まで以上に貴方をちゃんと指導しなきゃ駄目ね、こうなったら」
純一「ん……?え?」
高橋「だってそうでしょう? 貴方が教師という……神聖な立場になりたいというのなら、まずは…
その垂れ流し状態の煩悩をどうにかしないとだめね」
純一「垂れ流しって……そこまでひどくはないですよ…!」
純一「え、ええー…そんなぁ〜!」
高橋「とりあえず! 先生はこれまで以上に、きつく指導していきますからね?
はい、返事!橘くん!」
純一「は、はいっ…! 麻耶ちゃん!」
高橋「麻耶ちゃんじゃありません…! た・か・は・し先生です!」
純一「はい! 高橋先生!」
高橋「はい、おりこうさんです」なでなで
純一「ふへへ〜……」
高橋「…だらしない顔をしないの!それは駄目ですよ!」
純一「えっ!? これも駄目なんですか…?」
高橋「そうですよ! だって先生になでられただけで…そうだらしない顔になっては駄目です!」
純一「えー……先生以外の人になでられても、僕は嬉しくないですよ?」
高橋「……そ、そうなの…? そうなんだ……えへへ、って違います!」
高橋「な、なってません! なってませんから…っ!」
純一「そ、そうですか……と、とりあえず落ち着きましょう、先生。熱が上がっちゃいますよ…?」
高橋「えっ? あ、そういえば私…風邪ひいてたんだっけ……」
高橋(でも、今朝よりもすごく身体が軽い……)
純一「……あ、それと氷枕ありますから。これで寝てくださいね」そっ…
高橋「あ、うん……ありがとう…」
高橋(…あれだけ怠くて、お風呂にも頑張って入ったのに…今は全然普通…)
純一「…まだ何か飲まれますか?」
高橋「ううん、大丈夫……大丈夫よ───」
高橋(…これも全て、君のおかげなのかな…感謝、しなくちゃね……君に)
高橋「───ありがとう、純一くん…」
純一「っ………はい!」
高橋「──……た、橘くん…? 本当に大丈夫?」
純一「大丈夫ですって! これぐらいのことだったら僕にだって出来ますから〜」
高橋「…………」おろ…
高橋「やっぱり、先生も台所にたったほうが…っ」
純一「…いや、高校生ですからそれぐらい信用してくださいよ…というか、出来ましたよ」すたすた…
高橋「っ……そ、そう…?」
純一「はい、じゃあ開ますよ? それ〜」ぱかー!
高橋「わぁぁ…! 案外、美味しそうにできてるわねぇ…」
純一(案外…?)
高橋「ふふっ…そんな顔しないの。冗談よ」
純一「本当にですか…? せっかく麻耶ちゃんのために作ってあげたのに……」
高橋「ほ、本当よっ…! 本当に、嬉しいんだから…!」
純一「…………」
高橋「……ほ、本当よ…?」
純一「……じゃあ、あーんさせてください」
高橋「えっ!? そ、それはぁー……だめ、じゃないかしら…?」
純一「じゃあ嬉しくなかったんですね」
高橋「そ、そうじゃなくてっ…! ど、どうしてそうなるのよ…っ…」
純一「───あーんっ」ずいっ
高橋「っ……え、ちょ、た、橘くん…っ?」あたふた…
純一「ほら、麻耶ちゃん。あーんしてください」
高橋「っ……っ……」きょろきょろ…
純一「…………あーん」
高橋「っ…………あ、あーん…っ…!」ぷるぷる…
純一「……ぱくっ」
高橋「っ……」ぷるぷる…
高橋「……あれ…?」
高橋「……………」
純一「…ってあれ、先生。どうかしましたか? うん?」
高橋「……………………」もぞもぞ…
純一「あ、ちょ、先生っ…どうして無言で布団の中に…!」
高橋『しらない』
純一「え、ええぇー…しらないって、先生…!」
高橋『意地悪な橘くんは、わたし知らない』
純一「ご、ごめんなさいっ…! ちょ、ちょっと先生をからかってみたくて…!」
高橋『…………』
純一「そ、その……ごめんなさい、高橋先生…」
高橋『…………』
高橋『麻耶ちゃん』
高橋『…………』
純一「なにか、いま言いましたか…?」
高橋『いってない』
純一「ぜ、絶対にいま言いましたって…!先生!お願いします!もう一度だけ…!」ぱんっ
高橋『……………』
純一「………っ…」ぐぐぐ…
高橋『麻耶ちゃんごめんなさい』
高橋『…って言ってくれたら許してあげなくもない』
純一「っ……言ったら許して、くれるんですか…?」
高橋『うん』もぞっ…
純一「……ま、麻耶ちゃんっ…」
高橋『…………』
純一「ごめんなさい……でしたっ!」
最高だな
純一「っ〜〜〜……」
高橋『……エヘヘ』
純一(わ、笑った…?)
高橋『……コホン』もぞもぞ…
高橋「──う、うんっ…反省しているようなら、それでいいわっ…!
もうこんなことはしないこと!いいっ?」
純一「わ、わかりました…っ!」
高橋「よ、よろしい……じゃあ、そのっ…」ちらっ
純一「…?」
高橋「……さ、さっきの……つ、つづきは…っ?」
純一「!……はい、そしたら──…あーん」すっ…
高橋「っ……ごくり…」
高橋「……あ、あーん…」
ぱくっ
純一「……どうですか?美味しいですか…?」
高橋「こくん───……」
純一「…………」どきどき…
高橋「……美味しいわ、純一くん…すごいじゃない!」
純一「ほ、本当ですか…!」
高橋「うんっ! もっと食べたいわ……純一くん、はやくはやく」
純一「え、あっ、はいっ…どうぞ!」
高橋「あーん……もくもく…うん、美味しいっ」
純一「ありがとう、ございます…! たくさんありますから、ゆっくり…!」
高橋「実は朝から何も食べてないの……だから、もっとちょうだい…純一くん…?」
純一「っ…はい!…あーん…!」
高橋「あーん……ぱく!」
純一「──よし、洗い物も終わったし……」ぱっぱ…
純一「……まやちゃーん、僕もうそろそろ家に──」
高橋「くー…くー……」
純一「───寝ちゃいましたか…先生…」すっ
高橋「くー……純一、くん……」
純一「はい、なんですか…? はは、寝言で僕名前を言うなんて…先生もかわいいなぁ」
純一「……先生、高橋先生」
純一「僕はいつだって、いつまでも……先生と一緒に居ます。これだけは、信じてください」
高橋「くー……くー……ううん、わたしもよ……むにゃ…」
純一「……あはは。ありがとうございます、麻耶ちゃん…」すっ…
ちゅ
純一「……さて、帰ろうかな。うん!」
はい、これにて一応
仮定していた目標人数に達しました
みなさん、本当にありがとう!
これを読んでくれた方で、より多くのアマガミストが増えることを願って
これにてイチャイチャスレに
終わりを告げたいと思います
ご保守ご支援本当にありがとう
なんというか、期待に答えれたものだったら嬉しいですノシ
で、イチャイチャのあとの修羅場SSはまだかい?
Entry ⇒ 2012.05.22 | Category ⇒ アマガミSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
ソーニャ「武器商人と旅をした」
ほうかご
やすな「ソーニャちゃん一緒にかーえろ!」
ソーニャ「断る」
やすな「えぇ〜?ねぇ帰ろうよぉ〜」ギュッ
ソーニャ「今日は用事がある!離せバカ!」
やすな「用事・・・!」ピキーン
ソーニャ「じゃあな」
やすな「ちょ、ちょっと待ってソーニャちゃん!」
ソーニャ「その手には乗らない」
やすな「違うよ!行く前にその肩の虫はらった方が・・・」
ソーニャ「へぇっ!?」バッ
やすな「とぅえ!!」シュビ
ソーニャ「あぁ!バッグ!」
トトンッ
やすな「ひいいいいいい刺さる刺さる」ガクブル
ソーニャ「あんまり私をてこずらせないでくれ・・・」
やすな「ま、まだ諦めない!」
やすな「くらえ必殺!クマをも倒したやすなハイパーヘッドアタック!!」ビューン
ソーニャ「・・・」スッ
ガッシャンガラガラ
やすな「ひぎゃあああああ!避けるなんて卑怯な!」
やすな「ま、待ってよソーニャちゃん!ダメだよ!もう殺し屋なんか辞めようよぉ!」
ソーニャ「今更辞められないっつってんだろ!物分かりの悪い!」
やすな「そこをなんとか!今日だけは!」
ソーニャ「だから・・・ハァ」
ソーニャ「だーーーーーもう!!」
ソーニャ「どっかにコイツに邪魔されずに仕事のできる世界はないのか!!」
ココ「さぁヨナ急ぐぞ!この先の港でみんなと合流だ!」
ヨナ「・・・」
キャーキャーワーワー
ヨナ(・・・公園か、気付かなかった)
ヨナ(僕と変わらなそうな歳の子が遊んでる)
ココ「・・・おぉっ!?ヨナがいない!」
ココ「なんだ、あんなとこで立ち止まってる」
ココ「フフーン・・・公園かぁ」
ココ「もうちょい余裕がある日ならなぁ・・・遊んで来い!とも言えたんだが」
ココ「生憎今はそんな余裕ないんだよなぁ」
ココ「ほらほらヨナ隊員!急ぎたまえよ!」
ヨナ「ん、あぁ」
ヨナ(僕はこれから仕事で、また武器を握る)
ヨナ「・・・はぁ」
ヨナ(もし、もし武器から遠く離れた場所へ行けたら、僕は・・・)
キン...
ココ「うん?なんだこの音」
ココ「ねぇヨナ!聞こえた?今の・・・」
ソーニャ「えっ」
ココ「・・・うん!?」
やすな「なんか今すごい高い音が・・・ねぇソーニャちゃん」
やすな「あっ、あれ・・・?ソーニャちゃん・・・?」
ヨナ「・・・?・・・??」
やすな「ソ、ソ、ソ」
やすな「ソーニャちゃんが男の子に変身した!?」
ヨナ(夢・・・?スレトスの溜まり過ぎで幻覚でも見てるのか?)
やすな「何!?病気!?病気かな!?」
あぎり「ど〜したの〜?」スッ
やすな「あ、あぎりさん!」
やすな「大変なんですよ!ソーニャちゃんが男の子に変身する病気に!」
しえ
あぎり「でも、ただの別人だと思いますよ〜?」
やすな「べ、別人!その手があったか!」
やすな「しかしちょっと目をはなしたスキに別人と入れ替わるなんて」
やすな「ソーニャちゃんも変わり身の術を習得していたんですね!」
あぎり「それはどうでしょうか〜・・・、う〜ん」
あぎり「案外異世界人と入れ替わったとかかもしれませんよ〜?」
やすな「いやいや!そんなバカな!」
ヨナ「異世界・・・」
ヨナ「・・・その人の言ってること、正しいかもしれない」
やすな「!?」
あぎり(あっれ〜?冗談のつもりだったんですけどね〜)
ヨナ「ここがどこだか全く分からない、気付いたらここにいたんだ」
やすな「じゃあまさかソーニャちゃんも今頃別世界!?」
あぎり「SFみたいになってきましたね〜」
ソーニャ「・・・確かに私はさっきまでやすなに絡まれてて」
ソーニャ「静かに仕事ができる世界はないものかと思った瞬間に目の前が真っ白になって」
ソーニャ「ここは一体どこなんだ・・・わけが分からない」
ココ「わけ分かんないのはこっちだよ!変な音がしたと思ったらヨナの代わりに君が・・・あれ?」
ココ「ちょっと待って、君もう一回喋ってくれる?」
ソーニャ「は?な、何言ってるんだ急に・・・」
ココ「やっぱり!フフー、これは面白い現象だ!」
ココ「凄いな、完全一致だよこれは」
ソーニャ「だから何が!」
ココ「しかもこの子は仕事がしたい、そして平和に暮らしたいヨナ・・・」
ココ「かなり不思議な話ではあるが、辻褄は合うか」
ソーニャ「お、おい!」
ココ「あーごめんね!でもなんで君がここに来たのか、大体目星はついたよ」
ソーニャ「はぁ・・・?」
ココ「ついといで!まずは仲間と合流したい、詳しくはそこで話すよ」
ソーニャ「あぁ・・・」
ソーニャ(嵐のような奴・・・)
やすな「色々考える前にまずは自己紹介!」
やすな「私は折部やすな!賢くて気品のあるパーフェクトお姉さんだよ!」ドヤッ
やすな「ひゅー!ツッコミがないっていいね!」
ヨナ(一人で漫才してるみたいだ、この人)
あぎり「呉織あぎりです〜、はいこれ名刺」
ヨナ「十字型の・・・刃物?」
あぎり「手裏剣って言うんですよ〜」
ヨナ「しゅりけん・・・、この世界ではこれを名刺にする文化があるのか」
やすな「普通しないよ!」
あぎり「忍者の間では常識ですよ〜?」
ヨナ「あぎりはニンジャなのか?」
あぎり「あれ、忍者をご存知ですか〜」
あぎり「照れちゃいますね〜」
やすな「ちょっと胡散臭いけどね・・・」ボソッ
やすな「それはさておき君の名前は?」
ヨナ「・・・ジョナサン・マル。ヨナでいいよ」
やすな「ヨナ君ね!よろしく!」ニコー
ヨナ「・・・よろしく」
やすな「なんか君とは初めて会った気がしないな、凄い親近感」
やすな「なんでだろ・・・外人さんだから?」
やすな「うーん、ヨナ君どっかで会った?」
ヨナ「いや、全然」
ヨナ「?」
やすな「そっか!分かった!」
ヨナ「何が」
やすな「気にしないで、こっちの話だから!」
ヨナ「・・・?」
あぎり「やっぱり気が付きました〜?」
やすな「凄いですね、そっくりです!」
ヨナ「・・・」
輸送船内
ココ小隊一同「えええええええ!?ヨナが消えた!?」
ココ「そう!一緒に歩いてたのにだ!」
ココ「そしてヨナの代わりに現れたのがこの子」
ソーニャ「どうも・・・」
一同(女の子だ!しかもなんか聞き覚えのある声だ!)
ココ「ありえない話だが、私はこの子が別世界から来たのではないかと考える」
レーム「なんだなんだ、ドッキリでも仕掛けようとしてんのかい?」
バルメ「私はどんなにありえなくても、ココの言うことなら何でも信じます!」
ココ「ありがとバルメ。続きを話すよ」
ココ「そこで現れたこの子は、静かに仕事がしたいと願っている」
ココ「そこでこう、神の力みたいなものがバァーーーーッと働いて、別世界のこの子と入れ替わりに!」
一同「・・・」ポカーン
トージョ「・・・ダッハハ!ロマンティストだなココさんは!」
アール「そこまで真剣に言われたら信じるっきゃないじゃん?」
ルツ「で?ヨナ坊の抜けた穴はどうすんのさ」
ココ「何言ってるかルツ!私達はもともとヨナ無しで戦ってたじゃないか!それくらい気合いでなんとかせい!」
ソーニャ「ちょ、ちょっと待ってくれ」
ココ「そうか、一番重要なことを言いそびれていたな!」
ココ「私は世界を飛び回る武器商人!そしてこの一見グダクダな彼らが実は・・・」
ココ「私を殺し屋なんかから護衛してくれる頼もしい奴らなんだ!」
ソーニャ「!?」
ソーニャ「そ、そうか、殺し屋から護衛、な・・・」
ココ「どーした?急に顔色が悪く・・・あぁ、怖がることはないよ!君の安全は必ず守ると約束しよう!」
ソーニャ「ならいいんだ、ありがとう」
ソーニャ(ヤバいな・・・もしかすると)
ソーニャ(バレたら殺される・・・!?)
やすな「じゃあヨナ君!事情聴取を始めるよ!」
ヨナ「・・・この電気スタンドと食べ物は何?」
やすな「カツ丼です!この世界では人から何か聞き出す時はみんなこうするのです!」
ヨナ「面白い世界なんだな」
やすな「それじゃあヨナ君、正直に答えたまえよ」
ヨナ(嘘ついても仕方ないけど・・・)
やすな「まず君はここに来る前、何をしておったのかね」
ヨナ「・・・仕事に行く途中。ココと・・・上司と一緒だった」
やすな「仕事!?その歳で!?」
ヨナ「仕方ないんだ。僕にはそれしかないから」
やすな(可哀想に・・・きっと小さい頃に両親を亡くして自分で働いて食べていくしかないという設定が・・・)ジーン
やすな「そ、そうだよね!子供なんだから遊ばなきゃ!」
やすな「全く、ソーニャちゃんとは正反対だよ!ソーニャちゃんもこんな感じなら苦労しないのに!」
やすな「・・・ん?正反対?」
やすな「ああー!だから入れ替わったとか!?」
やすな「きた!謎は解けた!犯人はお前だ!」ビシッ
ヨナ「・・・急に何?」
やすな「一回やってみたかったの!」
ヨナ「・・・」
ココ「何にせよ、このままではダメだ!」バンッ
ココ「緊急会議!どうすれば再びこの子とヨナを入れ替えることができると思う!?」
トージョ「無難だけど、その子がまた元の世界に戻りたいと思えばいいんじゃないか?」
ココ「採用!じゃあちょっとやってみてくれ」
ソーニャ「分かった・・・」
ソーニャ「・・・」
やすな(脳内)「ソーニャちゃーん!あっそぼーうよー!」
やすな(脳内)「殺し屋なんかやめちゃいなよ!いけないよそういうのは!」
やすな(脳内)「ひゃっはー!騙されてやんのー!」
やすな(脳内)「何言っちゃってるの?もしかしてバカ?」
ココ「うおっ!?・・・こりゃダメだ、しばらく戻りそうにないね」
ソーニャ「す、すまん・・・」
ココ「しゃーない!長い付き合いになるなら名前を聞いておこうか!」
ソーニャ「ソーニャだ、しばらく世話になる」
ココ「私はココ!よろしく!」
バルメ「バルメです!好きなものはトレーニングとココです!」
レーム「レームだ。変な奴ばっかだが、まぁいい奴揃いだから気楽にな」
ワイリ「ワイリだよ。このメンバーの中じゃ穏便派だ」
一同「ウソつけ!」
トージョ「俺はトージョ。主に情報収集担当。力くらべの方はまぁ・・・そこそこ!」
ルツ「ルツだぜ!小隊随一のスナイピング能力!俺の遠距離射撃が火を吹くぜ!」
アール「スナイピング以外はいいとこないがな!あ、俺はアール。女の子は大歓迎だぜ!」
マオ「マオです。子供の面倒を見るのは得意です・・・けど、もう面倒見てもらうって歳でもないかな?」
ウゴ「ウゴっす。主に操縦担当。車詳しくないお嬢の代わりやってます」
ココ「あとは・・・まあいいや、とりあえず解散!いつまでみんなして1人の女の子囲んでても意味ないし!」
ココ「各自武器の手入れでも何でもしてること!」
一同「ウェーイ」
ダラダラ...
ココ「・・・さてね、それじゃあ君の仕事を教えてもらおうか」
ソーニャ(来た!)
やすな「さて、ヨナ君がここに来た理由も大体分かったので」
やすな「次は元に戻す方法を考えます!」
あぎり「お〜」パチパチ
ヨナ「・・・」パチパチ
やすな「2人が入れ替わった理由はズバリ、2人の考えが正反対だったこと!」
やすな「ということは、ソーニャちゃんが仕事に飽きてヨナ君が遊びに飽きれば戻るかも!!」
あぎり「ソーニャが仕事に飽きることはほぼ無いと思いますよ〜?」
やすな「ハッ!!しまった・・・」
やすな「で、でも!奇跡が起きるかもしれないし!そうなったらこっちもこっちで準備しとかなきゃ!」
あぎり「つまるところ、飽きるまで遊びたいわけですね〜」
やすな「そうで・・・いやいや!そんな聞き捨てのならない!私はただヨナ君を早く元の世界に戻してあげたいだけです!」
あぎり「そうですか〜♪」
やすな「そうと決まれば公園にGO!!」
やすな「よっしゃあヨナ君!君はかくれんぼを知ってるかい!?」
ヨナ「・・・隠れるのは得意。隠れて授業をさぼるんだ」
やすな「何ぃ!?私も隠れる側だった!」
あぎり「私は忍者なので〜、当然隠れる方が得意ですね〜」
3人「・・・」
やすな「・・・かくれんぼはやめた!おにごっこしよう!」
ヨナ「いいけど・・・大丈夫?」
やすな「おにごっこの女王ことやすな様をなめるなよ!?」
やすな「す、ストップ!ストオオーップ!」ゼェゼェ
ヨナ「もうやめるのか?」
やすな「君は一体・・・何でこんなに速いの・・・」ハァハァ
ヨナ「元山岳兵だから」
やすな「はぇ?」
ヨナ「元山岳兵だからだよ。足腰が強くなきゃやっていけない世界だったんだ」
やすな「あ、あぎりさん・・・サンガクヘーって何ですか?」コソコソ
あぎり「山の中で戦う兵隊さんのことですよ〜」
やすな「へ、兵隊!?」
やすな「えっ、えっ、じゃあ」
やすな「自分の仕事が好きじゃないって・・・そういうことだったの・・・?」
やすな「私、子供がやらされる仕事なんて新聞配達くらいだと思ってて・・・」
あぎり「残念な話ですが、少年兵なんてよくありますからね〜」
あぎり「特にヨナ君の見た目から察するに、そういうことがよくある地域の方なんじゃないかと〜」
やすな「・・・」
やすな「・・・よし!」
ヨナ「?」
やすな「ヨナ君に一つ言い忘れてたことがあるの!」
やすな「私にも仕事があってだね・・・それは!」
やすな「アブナイお仕事をしてる友達を辞めさせて、一緒に遊ぶことです!」
ヨナ「!」
やすな「ブルータスお前もか!!」
ヨナ「?」
ヨナ「・・・でも、嬉しいよ。」ニコ
やすな「ほんとっ!?お世辞じゃない!?」
ヨナ「ほんとだって。今日会ったばかりなのに、やすなは友達になるのが早いな」
やすな「私は世界中、いや別世界までどんな人とでも友達になれることに定評があるのです!」エッヘン
やすな「ところでヨナ君今日初めて笑ったね!やった!」
ヨナ「・・・///」フイッ
ココ「君の年齢からして、仕事と言ってもよくてバイトくらいだと思うけど」
ココ「何だっていいよ!出来るだけうちの隊で有効に働けるように考えるから!」
ソーニャ「・・・」
ココ「何々!?言えないような仕事!?君金髪で可愛いしなぁ、まさかソッチ系の仕事!?」
ソーニャ「・・・本当に」
ソーニャ「本当に何でもいいんだな?」
ココ「おう、任せなさい!」
ソーニャ「・・・アンタは武闘派には見えないし、言ってしまおう」
ソーニャ「私は殺し屋、組織の殺し屋だ」
ココ「!!」
ソーニャ「分かってると思うが私は何故ここに来たのかも分からないんだ!」
ソーニャ「そもそもアンタがいなきゃ私は全く知らない世界で路頭に迷うことになるし・・・」
ココ「・・・プフ!フフー・・・ フ、フ!アッハッハッハッハ!!」
ソーニャ「!?」
ココ「面白い!面白いよ君!必死すぎ、殺し屋なのに!カワイイ!!」
ソーニャ「は・・・?///」ポカーン
ココ「私達は相手が殺し屋でした、はいズドン!なんて気の短い奴らじゃないよ!」
ココ「君に殺意が無いのは明らか!むしろ戦えるなら好都合じゃないか!」
ココ「でも殺し屋が好きじゃないのも確か。だから・・・」
ココ「ここにいる間は殺し屋忘れない?」
ソーニャ「!」
ソーニャ「それでも辞めろ辞めろとうるさい奴もいたが・・・」
ソーニャ「ま、今は殺し屋である意味も無いしかまわないぞ」
ココ「おっ!交渉成立!」
ソーニャ(アイツ、私が殺し屋辞めてたって知ったらどんな反応するかな)
ソーニャ(もういつも通り殺し屋だよ、なんて言ったら悔しがるだろうなぁ)
ココ「フフフ・・・ウフッ、アーハハハハハ!!」バンバン
ソーニャ「またか!?今度はどうした!」
ココ「フハッ、だ、だって!殺し屋忘れるってなった瞬間に凄い良い表情するんだもん!」
ココ「実は内心辞めたくてしかたなかったのかもね!」
ガチャッ
ルツ「おいおい、解散した途端に随分楽しそうじゃねーか!ズルいぜお嬢!」
アール「新顔ちゃんのことがメチャクチャ気になっててさ!ついみんなで立ち聞きしちまった!悪りぃ!」
ココ「もー!プライバシーのかけらも無い奴らだな!コラ!」
ガヤガヤ...
ソーニャ「・・・表情変わってたか?おかしいな・・・」
ゆうがた
やすな「さーて!やっと打ち解けてきたことだし、今度は何して遊ぼうか!」
ヨナ「・・・もう遅いよ」
やすな「へ?」
カァー...カァー...
やすな「いつの間に!!」
あぎり「あ、私そろそろ用事が〜」
あぎり「最後にこれ、今日は特別サービス、無料お試し配布ですよ〜」
ヨナ「?」
あぎり「それじゃあこれにて、どろん〜♪」ボフンッ
やすな「ひょえ!急に忍術使わないで下さい!・・・ってやっぱりもういないし!」
ヨナ「・・・!」キラキラ
やすな「しょうがないな、ヨナ君これからどう・・・」
ヨナ「すごい!ニンジャすごい!今のどうやって消えたんだ!?」
やすな「凄い食いついてる!!」
やすな「結局流れでヨナ君うちに泊めることになっちゃったなあ・・・」
やすな「お母さんになんて説明しよう・・・」
ヨナ「なぁやすな、これまだ開けちゃダメか?」ワクワク
やすな「開けてもいいけど後悔するよ、多分」
ヨナ「?」ガサガサ
「アリの巣観察キット!」テッテケテッテッテー
ヨナ「」
やすな「お母さんがヨナ君のこと海外旅行客だと思ってくれたから助かったけど」
やすな「ヨナ君めちゃくちゃガッカリしてるなぁ・・・」
やすな「まるで初めて忍法グッズ買わされた時の私を見てるようだ・・・」
やすな「あ!いいこと思い付いた!!」
トントン
やすな「ヨーナ君っ!」
ヨナ「?」
やすな「ピョン助4号だよ!ソーニャちゃんに次々と敗れ去って4号だよ!」
ヨナ「!」
ヨナ「・・・あは!」
やすな「あー!笑った!」
ヨナ「っ・・・///」
ソーニャ「くそっ!」シュッ
バルメ「なかなか良い動きをするじゃないですか!」ザッ
ソーニャ(なんなんだコイツ、こんな重そうなもの2つもくっつけてなんでこんなに速く動ける!?)
バルメ(この子、どう見てもこんな力があるようには思えない!どこにこんな・・・)
ビッ
ソーニャ「うっ!」
ソーニャ「・・・私の負けだ、勉強になった」
バルメ「こちらこそ!もう少しでやられるところでした、危なかったです!」
一同「うおおおおおーっ!すげええええええ!!」
トージョ「アネゴに危なかったと思わせるとか、ハンパじゃねーよ!」
ルツ「るせぇ!まだ分かんねえだろ!」
一同「決まったようなもんだ!」ワッハハハハ
ルツ「そこまで言うなら見てろよ!かかってこい新入り!」
ココ「いよっ!既に疲れてる相手に大人げないぞー!ルツファイトー!」
〜数十秒後〜
ルツ「おかしいって!なんでこんなちっこい女の子がこんなに強いんだよ!」
ソーニャ「スキだらけじゃないか・・・」ビュッ
ビリィ
ルツ「こええええええ!!ゴムナイフでズボン破かれた!!」
一同「またケツかよ!!」ギャハハハハハ
ソーニャ「・・・!」
ココ「さて!」スタッ
ココ「うちの隊では新入りに必ずやってもらう儀式があってね。君にももちろんやってもらう!ついて来い!」
食堂
ココ「君にはこれから卵料理を作ってもらおう!」
ソーニャ「それが儀式?」
ココ「そうだよ!腕によりをかけて作ってくれたまえ!」
ソーニャ「料理はあまりやらないんだが・・・パンばっか食ってたし・・・」ブツブツ
ソーニャ「まぁ・・・見た目はそこそこ・・・」
ソーニャ(そういや味見してないな・・・まあいいか)
ココ「ソーニャ、ヨナのいない間この隊の一員として働く者よ」
ココ「殺し屋であることを忘れ、護衛として一から出直した君は今、卵だ。」
ココ「それでは頂こう!」
一同「・・・マッズゥ!!」
よる
やすな「あり合わせの服でごめんね・・・お父さんのTシャツなんかワンピースみたい!」
ヨナ「問題ない。それより、仮眠じゃなくてちゃんと寝られるのは久しぶりだ」
やすな「兵隊さんって大変なんだなぁ・・・」
やすな「子供なんだからよく寝てよく遊ばなきゃダメだと思うんだよね!」
やすな「ということで、明日の土曜日は遊園地に行こうと思います!」
ヨナ「ほんとっ?」キラッ
やすな「まかせなさい!あぎりさんも誘ってまた忍法見せてもらおう!」
ヨナ「ニンジャも来るのか!」
やすな「おう!ヨナ君のためなら引きずってでもついてこさせちゃうっゼェーーーーイ!」ビシッ
ヨナ「わかった」
ヨナ(・・・と言っても、昨日の今日で急に気を抜いて寝ようと思っても無理だな)
やすな「ZZZ...」
ヨナ(ココ、平気かな。みんながいるし心配ないと思うけど)
ヨナ(考えてもどうにも出来ないし、寝よう・・・)
ココ「ソーニャ臨時隊員と親睦を深めるためにも今日は」
ココ「一緒にお風呂に入りたいと思います!!」
ソーニャ「はぁ!?///」
ココ「せっかくだからバルメも!福眼!福眼!」
バルメ「喜んで!!」オッホー
アール「おいおい!楽しそうじゃないか!」ハァハァ
ココ「あ、男性陣も一緒に入りたいなら入っていいよ。男だけで。」
アール「エンリョします・・・」ズーン
ソーニャ(結局入らされた・・・)
ソーニャ(っていうか)
バルメ「ココー!お背中流しましょうかー!」キラキラ
ソーニャ(おかしいだろあれ・・・)
ココ「どうだ?デカいだろー、あれはもうスイカだよ!スイカ!」スイー
ソーニャ「あ?あ、あぁ」
ソーニャ「・・・」チャプン
ココ「・・・気にするなソーニャ隊員!あれだけ巨大だと困る事もある!」
ココ「その点私達はほどよい!ほどよいことはいいことだ!ってバルメが言ってた!」
ソーニャ「ほ、ほどよい・・・!」
ココ「バルメー!揉ませろ!揉ませろ!」スイー
バルメ「どうぞお好きに!!」
ココ「私のシャツ。ちょっと大きいけど大丈夫そうだね」
ソーニャ「ああ、悪いな」
ココ「私とバルメ、ソーニャはこの部屋。見回りは男共に任せるが、警戒は怠るな」
バルメ「了解です!ではおやすみなさい、ココ!」
ココ「おやすみ!」
ソーニャ「・・・おやすみ」
ココ「うーん・・・ヨナ、大丈夫?ヨナ・・・」ブツブツ
ソーニャ「? どうした?」
ソーニャ「・・・なんだ寝言か」
バルメ「ココ、あんなに明るく振舞ってましたけど、ヨナ君がいなくなったんで相当ショック受けてると思いますよ」
ソーニャ「え?」
バルメ「ヨナ君とは、隊の中でも特にベッタリでしたから。そりゃもう、嫉妬しちゃうくらい」
ソーニャ「そのヨナっての、どんな奴なんだ?」
バルメ「山岳部隊出身の少年兵。強くて無表情。でも子供っぽくて可愛いところもある、まぁ隊のマスコットみたいな子でしたよ」
バルメ「あと貴女と声が似てました」
ソーニャ「? そ、そうか」
バルメ「・・・これは勝手な想像ですけど、ココが武器商人なんて心の荒む仕事をしながらなお、あれだけ気丈に振る舞えるのは」
バルメ「ヨナ君という拠り所があるからだと思うんですよ」
ソーニャ「・・・」
ソーニャ「少なくとも、アンタがいるおかげで助かってると思うぞ?ココは」
バルメ「ほんとですか!?ココ〜っ!私はいつでもあなたの味方ですよ〜っ!」ギュウウウウウウウ
ソーニャ「じゃ、じゃあ私は寝るぞ」
ソーニャ(心の安らぎ、か)
やすな(脳内)「ずっと友達だよ、ソーニャちゃん!」ニコー
ソーニャ(いやいや、それはない)
よくじつのあさ
やすな「グーテンモルゲーン!」
ヨナ「・・・はよ」
やすな「今日は何の日っふっふううううう?」
やすな「ゆーーーーえーーーーんちいいいいいいい!!」
ヨナ(ウザい・・・)
やすな「さーてあぎりさんも呼んじゃおっかなー!?呼んじゃうかなー!?」
やすな「あっ・・・」
やすな「あぎりさんの電話番号知ってるのソーニャちゃんだった・・・」
ヨナ「・・・」
やすな「い、いや!まだ手はある!ついて来て!」
やすな「スゥーーーー・・・」
やすな「あぎりさぁーーーーーん!!」サァーン...サァーン...
しーん・・・
ヨナ「・・・いや、さすがにそれじゃ来な」
あぎり「お呼びですか〜?」
ヨナ「えっ」
やすな「ほんとに来るとは!!」
あぎり「忍者ですから〜!行くんでしょ〜?遊園地〜」ニコニコ
ヨナ「ニンジャすごい!」キラッ
やすな「いやー来たなぁ!」
あぎり「来ましたねぇ〜」
ヨナ「来た。」
やすな「何したい!?何したい!?私メリーゴーランド!」
あぎり「マジックハウスがいいですね〜」
ヨナ「射的。」
やすな「わ、分かれたなぁ・・・」
ココ「起きろ、起きろソーニャ臨時隊員!」
ソーニャ「ん・・・暗っ、てまだ5時じゃないか」
ココ「みんな寝てるよ。バルメとトージョ以外」
バルメ「ココの声はこの世で一番の目覚ましです!」
トージョ「くそー、ねっみぃ!情報係はこれだからキツいぜ」
ココ「今から2時間車で移動。国軍のお偉いさんと××ホテルで7時半から商談。」
ソーニャ「なんでそんなに急ぐんだ?」
ココ「この国は、隣国との間柄がピリピリしっぱなし。一触即発。」
ココ「つい先日、隣国の方が大量に武器を輸入したと情報が入った。早く対抗したくて仕方ないはず。」
ココ「そしてこの国の国防の方針として、一回の紛争につき一社のみから武器を買い続けることが有名。」
ココ「一度この国に武器を売ってしまえば、しばらくはお客様には困らないってわけだ。」
ココ「結論を言ってしまえば、早い者勝ち!きっとたくさんのライバル武器商がこのチャンスを狙ってる!だから急いでいるのであーーーる!」
バルメ「はい!」
トージョ「って、よく考えたら俺ハーレムじゃん!?俄然気合い入るぜ!」
ココ「あぁ、トージョは留守番だよ。この2人強いし、戦力は間に合ってるから」
ココ「そう簡単にハーレム体験できると思うなよ?」
トージョ「ぐあああああああああ」
やすな「間を取ってジェットコースターにしてみました!」
あぎり「絶叫系は平気なんですか??」
やすな「もちろんですよ!あまりの余裕さに係員さんがガッカリするところが目に見える!」
やすな「ひゃーーーーーーーーーーーーー!!」
あぎり「速〜い♪」
ヨナ「・・・」
やすな「ま、まあまあでしたね!もう少し速くてもよかったですよ!」
ヨナ「本当にね。ウゴの本気の運転の方がよっぽど怖いよ」
やすな「ヨナ君終始無表情だったなぁ・・・」
やすな「次は絶対楽しませるよ!ついて来て!」
ココ「女性しかいないのにこんなに頼もしいことってないな!」
バルメ(ほんとはココと2人がよかったですけど、トージョが来なかっただけマシです)
ソーニャ「聞きたいことがあるんだが」
ココ「なになに?何でも聞いて!」
ソーニャ「もし私がこのまま帰れなかったら、ココはどうする?」
ココ「唐突だねぇ!」
ソーニャ「アンタ、ヨナって奴のこと相当気に入ってたんだろ?」
ココ「まあね。でも、うーん・・・」
ココ「帰れなかった時のことは考えてないよ!帰れるって信じてなきゃ、帰れるものも帰れない!」
ココ「・・・まぁいざとなったら君を正式に雇うよ。ソーニャ、ヨナばりに可愛いしな!」
ソーニャ「そりゃどうも・・・」
バルメ(敵がいなくなったと思ったらまた増えた!)
ココ「お、トージョから連絡」ピッ
ココ「はーい」
トージョ『やべーよココさん!最初にココさんが7時にアポ取ろうとした時、半にしてくれって言われたろ?』
ココ「そうだったね、んでそれがどうした?」
トージョ『それが・・・ココさんの前に既に一社、商談の予定が入ってるらしいんだ!』
ココ「なぬ〜〜〜っ!?」
ココ「ムーン・・・仕方ない、先回りして武力で帰らせよう!!」
トージョ『ダハハ、やめとけココさん。それにココさんとの商談を断らなかったってことは、まだ決めかねてるってことだろ?』
トージョ『ようは相手の商品よりこっちの商品が魅力的であればいいんだ。自信無いのかい?』
ココ「フフーフ!馬鹿言ってんじゃないよ。絶対うちのを買わせてみせるから!」
トージョ『言うね。期待してるぜボス!』
ココ「おうよ!」
ココ「ちょっとヤな予感すんだよね〜・・・」
バルメ「どういうことです?」
ココ「ここの軍人さん、陸軍・・・特に歩兵隊に力入れてるんだよ」
ココ「てことはつまり、欲しいのは小火器なんだよね。小火器と言えば・・・」
バルメ「あ。」
バルメ「い、いや、さすがにそれはないでしょう!」
ソーニャ「?」
やすな「コーヒーカップ、フリーフォール、バイキング・・・色々行ったけど全く反応なし!慣れっこですけど何か?みたいな顔!」
やすな「彼の笑顔を再び見るためには・・・ムムム」
ヨナ「・・・」パンッ
係員「僕うまいねえ!ほら人形だよ」
ヨナ「ありがとう」
ヨナ「・・・♪」ニコニコ
やすな「あれだぁ!任せなさいヨナ君!やすなお姉様が人形を2つにしてあげよう!」
ヨナ(持ちきらないからいらないのになぁ)
やすな「どりゃあああああああああ」パンッ
やすな「はずしたあああああああああ」
やすな「よし!もう1回!」
やすな「くそう!またはずした!」
やすな「オゥ!まただよ!」
あぎり「破産するタイプですね〜」
××ホテル前
ココ「や、やっぱり貴様らかぁーーーーー!」
ミルド「ココちゃんまた会ったぁー!」
カリー「いやはや、こんなところで会えますとはな!お先に失礼しますよ!」
ココ「こんのタヌキやろ・・・おっと。言葉が悪いですね」
ココ「負ける気がしませんよ、カリー社長。ジャンケンと一緒です。後出しの方が強い。」
カリー「この商談をジャンケンと同じに考えてはいけませんよ?」
ルー「社長、そろそろ」
カリー「おっと、それでは時間なので」
ミルド「ファイト社長ぉーーーっ!」
ココ「私達の商売敵!カリー社長率いるCCAT社の奴らだよ!」
バルメ「できれば会いたくなかったですけど。これぞ腐れ縁。」
ミルド「バルメェー!アンタと会えんの待ってたんだよ!」
バルメ「ウザいです。というか、貴女はついて行かないんですか?」
ミルド「社長がついてくんなってさ。それよりリベンジさせろー!」
バルメ「お断りします。こんな街中で何考えてるんですか」
ミルド「えぇー!いいじゃんいいじゃん・・・あれ?」
ミルド「あんな子いたっけ?また新入り?」
ココ「事情でヨナの代わりに入ってもらってる。ソーニャだよ」
ミルド「ヨナの・・・ってことは戦闘要員!?あの可愛い子が!?ブハッ」
ソーニャ「何だあの異様にムカつく奴は・・・いやああいうのには慣れてるが」
バルメ「ぶちのめしたくなるでしょう?」
ミルド「おっ、やる気満々!?いいね!好きだよそのノリ!返り討ちにしてやる!」
バルメ「ハァ・・・仕方ない、片付けちゃって下さい。ほっといてもずっとうるさいですし。」
バルメ「ただし街中なんで、なるべく静かに」
ソーニャ「言うまでもない。静かに仕留めるのが私達の仕事だからな」シャキッ
ミルド「アンタもナイフ使い?なんか知んないけど、ソイツで私に挑もうなんて100年早いよお嬢ちゃん!」
やすな「お金もう無い・・・」
ヨナ「結局1個も取れなかったね」
やすな「くそう!くそう!」
あぎり「じゃあ〜、お金のかからない観覧車にでも行きましょうか〜」
やすな「行きます!」
やすな「ひゅーーーーっ!高ーーーーい!」
あぎり(ソーニャだったら絶対言いますね、バカは高いところが・・・)
ヨナ「凄いな!海が見える!」
あぎり(おやおや〜、ヨナ君もですか〜)
やすな「今日はだいぶ遊んだね!ヨナ君楽しかった?」
ヨナ「何も気にしないでゆっくり遊べたのは久しぶりだ。」
ヨナ「もし元に戻れた時、自分が駄目になっちゃうんじゃないかってくらい・・・楽しかった」
やすな「そっかあ!よかったあーーー!」ニッコー
やすな「あんまり素直に喜ばれるとムズムズするね!特にその声だと!いつも完全にスルーだったから・・・こんな感じで」
やすな「ねぇソーニャちゃん!殺し屋なんか辞めて私と遊ぼうよ!」(高音)
やすな「ぞんなごどやっでられっがー!殺ずぞー!」(低音)
ヨナ「・・・!」
ヨナ「・・・ずっと言ってたソーニャって奴、殺し屋だったのか?」
やすな「へ?」
ミルド「ハァッ、ハッ、な、なんでこんなちっちゃい女の子がこんなに強いワケぇ!?」ビュンッ
ココ(面白っ!ルツと同じ事言ってるよ!)
ソーニャ「話にならないな、100年早いのはどっちだ」スッ
ガキィンッ
ミルド「あっ・・・」ヒュルヒュルヒュル...
ソーニャ「ちゃんと握ってろ、ナイフ」
ミルド「すげぇ悔しい!こんなお子様に負けるなんてー!!」
ソーニャ「子供だと思って余裕こいてたのが運の尽きだ」
カリー「何をやっとるか!ミルド!」
ミルド「社長!ルー!」
カリー「そんな子供相手に負けたのか!」
ミルド「だってぇー!この子超強いんですよぉー!聞いて下さい社長ぉーーーー!」
ココ「あれっ、もう帰るんです?結果は?」
カリー「電話でのちのち。もう間違い無さそうですからな。」
カリー「分かり切った結果を待つよりは、時間を有効に使いますよ」バタムッ
ヴゥゥゥーーーーーン...
ココ「嘘付け!ほんとは私と鉢合わせした時点で諦めてたくせに!!・・・って、もう聞こえないか」
ココ「あいつら、私達が敵だと分かってしっぽ巻いて逃げたんだ!タヌキのくせにチキンとは!」
バルメ「自信満々ですね、ココ」
ココ「当たり前!あんなオッサンに負けてたまるかー!」
ヨナ「じゃあやすなは殺し屋と友達だっていうのか」
ヨナ「危ない仕事を辞めさせるっていうのもそういうこと・・・」
やすな「そーだよ!ヨナ君も同じようなものだし」
ヨナ「違う!!」
やすな「!?」ビクッ
ヨナ「僕らと殺し屋は敵同士なんだ!だからって僕らが正義で殺し屋が悪なんて言わないけど・・・」
ヨナ「ごめん、でも・・・やすなは殺し屋なんかと一緒にいるべきじゃない」
ヨナ「殺し屋と友達になるにはやすなはちょっと、綺麗すぎる・・・」
あぎり「・・・」
やすな「・・・それはやだよ!ソーニャちゃんと私は大親友だもん!」
ヨナ「!」
やすな「殺し屋にもいい人はいる!ソーニャちゃんはすっごく優しいよ!」
やすな「文句ばっかり言うけど、結局私の遊びに付き合ってくれて!」
やすな「お化けが嫌いだったり、犬が嫌いだったり、女の子らしくて可愛い所もたくさんあるんだよ!」
やすな「だから」
パンッ
3人「!?」
ヨナ「伏せて!狙撃だ!」
ココ「それでは、我が社から武器を買っていただけるということですね!」
バルメ「やりましたねココ!」
ココ「おっしゃあーーー!ざまあ見やがれタヌキ親父ーーー!!」
ココ「・・・おっと。失礼しました、ではここにサインを・・・」
車内
バルメ「楽勝でしたねココ!流石です!」
ココ「余裕余裕!」
ソーニャ「この後は何するんだ?」
ココ「うーん・・・船に戻って、武器の準備が出来るまではちょっと暇になるかな。」
ソーニャ「そうか」
ココ「何?物足りない?もっとバンバン銃撃戦とかやりたい?」
ソーニャ「・・・いや、遠慮しておく」
キャーキャー...
あぎり「下の方、騒がしくなってきましたね〜」
ヨナ「なんで狙われた!?全く分からない!」
あぎり「おそらく、やすなさんでしょうね〜」
やすな「私!?」
あぎり「ソーニャと一緒にいすぎたんですよ〜。そう、敵に人質に使えると判断されるくらいに〜」
やすな「にしてもなんでこんな時に限って!・・・ごめんねヨナ君」
ヨナ「僕はいいんだ。でも、殺し屋と友達でいたいならこれくらい覚悟しなきゃならない」
ヨナ「やすなはそれは分かってるのか?」
やすな「もちろんだよ!ちょっとくらい怖くても大丈夫!」
ヨナ「・・・」
やすな「了解!」
やすな「せーの!」ガチャ
グッ
やすな「っ!?」
ヨナ「やすな!!」
刺客「まんまと出てきたな・・・?」
船内
ソーニャ「・・・」
バルメ「元の世界のことでも考えてるんですか?」
ソーニャ「うおっ!?・・・いたのか」
バルメ「私に気付かないとは、相当考え込んでましたね」
ソーニャ「も、元の世界のことなんか考えてない!」
バルメ「嘘。私も時々昔の事を考えますけど、ココ曰く、どこか遠くを見ている目をしているらしいです」
バルメ「ちょうど今の貴女みたいに。」
ソーニャ「・・・駄目なんだ」
バルメ「えっ」
ソーニャ「アイツから離れたくてついに別世界まで来てしまったというのに、結局気が付くとアイツの事を考えてる」
ソーニャ「・・・浸食されまくってるな、私」
バルメ「その子のこと、どう思ってるんです?ソーニャは。」
ソーニャ「ウザい!絡んで来んな!バカ!そんな簡単に殺し屋辞められるか!・・・って感じだ」
バルメ「アッハハ、素直じゃないんですねぇ!」
ソーニャ「・・・?」
ヨナ「くっ」チャキッ
あぎり「あ、駄目ですよ〜」
ヨナ「どうして!はやく殺らないとやすなが危ない!」
あぎり「・・・ソーニャはやすなさんの前で人を殺したことが無いんですよ」
ヨナ「!」
あぎり「何回か刺客の襲撃にも遭いましたけど、敵を殺さずやすなさんを救ってたんです」
あぎり「何故だか分かりますか〜?」
ヨナ「・・・なんでだ?」
あぎり「目の前で人が死ぬのなんて見たら、普通おかしくなっちゃいますよ〜」
あぎり「ソーニャはやすなさんの綺麗な心を守りたいと思ってるんです」
あぎり「あの子は優しい子ですよ〜、殺し屋には似合わないくらいに・・・」
ヨナ「・・・」
やすな「助けてぇ!ソーニャちゃあーーんっ!」
ヨナ「・・・世の中、まだまだ知らない人間がたくさんいるんだな」
バルメ「それはつまり、愛です!!」
ソーニャ「は!?」
バルメ「羨ましいくらいに愛し合ってますね!気付いてないみたいですけど!」
ソーニャ「愛っ・・・て、そんなわけないだろ!!何考えてんだ!!///」
バルメ「正直愛は言い過ぎましたけど、仲が良いんですよ結局。うすうす勘付いてたんじゃないですか?」
ソーニャ「・・・まぁな」
ソーニャ「いればウザいがいないと寂しい、そんな奴だよ。アイツは」
ソーニャ「クソウ!何言ってんだよ私は!」
バルメ「・・・もう答えは出たみたいですね。帰ってあげたらいかがです?」
ソーニャ「はぁ・・・ったく、仕方ないな」
ソーニャ「帰ってやるか!アイツ今頃寂しくてピーピー泣いてるだろうからな!」
ヨナ「ごめん、やすな・・・僕じゃ君を守れない」
ヨナ「ココの言った通りだ、僕は銃を捨てられなかった」
ヨナ「僕と友達になるには、君は綺麗すぎる・・・」
キン...
ソーニャ「・・・やっぱり泣いてるじゃねーか」
やすな「ソーニャちゃん!!」
ソーニャ「のこのこ捕まりやがって・・・手間のかかる奴だ」ダッ
グキッ
刺客「ぐあっ・・・」
ココ「ヨ、ヨナ?ヨナだよね!?」
ヨナ「ただいま、ココ」
ココ「ヨナ〜っ!会いたかったよぉ!」
バルメ「ココ!いたんですか!」
ココ「結構前からね!んもー、心配したよヨナぁー!」グリグリ
ヨナ「・・・ごめんココ、勝手にいなくなって」
ココ「フフーフ!いいっていいって!それより聞く?可愛い殺し屋さんの話!」
ヨナ「いい。もうたくさん聞いたから」
ココ「君にそっくりな声しててさ!金髪でちっちゃい女の子なの!」
ヨナ「・・・人の話聞いてる?」
やすな「ねー入ろうよお化け屋敷!」
ソーニャ「断わる!そもそもさっきまで怪奇現象に見舞われてたようなもんじゃねーか!」
やすな「えぇー?言い訳でしょそれ!言い訳していいわけ?」
ソーニャ「ウザい!」バキッ
やすな「ぎゃふなっ!!」
HAPPY END
久々に良いもの見れたよ
寝る前に良いもん見れた
ソーニャ「お前がヨナか」
ヨナ「じゃあ君がソーニャ?」
ソーニャ(声が似てるってこういうことか・・・自分と話してるみたいで気持ち悪い!)
ヨナ(聞いてた通りの金髪ツインテール・・・どう見ても強そうには見えないが)
ココ「ヨナ可愛かったろー!うちの自慢のマスコットだからな!」
やすな「ソーニャちゃんも可愛かったでしょう?うちの自慢のマスコッ・・・」
ソーニャ「マスコットじゃねーーー!!」ヒュンッ
トトトッ
やすな「ひえーーーーー!!」
ヨナ(ナイフだらけ・・・)
ソーニャ「愛し合ってねぇよ!!」ギリギリ
やすな「ぐええええ!!こ、この掛け技も愛の結晶ですよ!」
ソーニャ「てめぇ!その口2度と変な事言えないように縫い合わせてやろうか!!」
やすな「暴力はんたーい!!」
バルメ「ココ!私にも愛の掛け技を!」
ココ「ほんとにやっていいの!?じゃあお言葉に甘えて・・・それーーーっ!」モミモミモミモミ
バルメ「おっほー!テクニカル!テクニカルです!」
ヨナ(収集つかないな)
おわりんこ。
乙
面白かったわ
Entry ⇒ 2012.05.22 | Category ⇒ キルミーベイベーSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
橘純一「夏っていいよね!みんな薄着になるし!」
田中「海の家で食べる不味い焼きそば!」
棚町「だ、誰の髪型が不味い焼きそばみたいだって!?」
絢辻「あら?確かにこれは不味そうね?」
橘・田中・絢辻・棚町「うぇーい!」
橘「と、まぁ、浮かれてはみたものの」
橘「『高校生活最後の夏!』とか、僕らには特に関係ない話だったよ……」
田中「遊んでる場合じゃないもんね……私達受験生だし」
絢辻「えぇ……あたし達に出来ることといえば夏期講習の合間に学食で燻ることくらいよ」
棚町「……せっかくの夏なのにねぇ」
絢辻「朝から夏期講習に参加して」
絢辻「講習が終わったら、みんなで図書室で勉強会!」
絢辻「……で、適当な所で勉強会を切り上げて、自販機でジュースを買って駄弁りながら帰る」
絢辻「ふふっ、意外と青春っぽくない?」
橘「……そう言われてみれば確かに」
棚町「で、でも!夏らしさが足りないのよ!」
棚町「夏らしい要素なんて、冷房の効きすぎた図書室くらいじゃない!?」
橘「うんうん。それでみんな上着を羽織るから、僕としては大変面白くない」
橘「こうっ……ブラウスから透けた下着とかさ!すごく素敵なのに!」
絢辻「……えっ?何?」
田中「透けた下着?」
橘「昨日の夜のことなんだけど」
絢辻「蚊が鬱陶しくて寝れなかった?」
橘「そ、そんなこと一々報告しないよ?」
棚町「じゃあ何よ?」
橘「いやさ、昨日の夜に突然の来訪者がね」
田中「来訪者?お客さん?」
橘「うん。僕を困らせることに至上の喜びを感じるラブリーな大学生こと、森島はるかさんがね」
橘「……金属バット片手に殴り込みにきた」
田中「えっ……?」
絢辻「何それ怖い」
棚町「で!?で!?」
橘「『橘君!?夏といえばスイカ割りよ!?』ってさ」
絢辻「あぁ、だからバット持参なのね?」
橘「うん。だけど、肝心のスイカなんてないし、夜だから外真っ暗だし……」
橘「だから『はははっ、明るいうちにスイカを持って出直してきやがれ!この暇人め!』って言い返したんだけど」
橘「……それが全ての間違いだったことにすぐに気付かされたよ、うん」
田中「……というと?」
橘「まず、何故かうちにスイカがあった。しかも冷やされてた」
田中「えっ?」
橘「……あとで美也に問いただしたらわかったことなんだけど、森島先輩から連絡があったから、こっそりと準備しといたそうでね」
絢辻「獅子身中の虫、ね」
棚町「それで?どうしたの?」
橘「それに夏期講習の予習があったし、今からは出かけられないと、先輩へ告げたんだよね」
橘「そしたら……」
棚町「ま、まさか!?」
橘「『むむむっ!ならここでスイカ割りをすれば解決ね!』とか言い出して」
橘「目隠しをしながら『バットに額を当てて10回回ればいいのよね!?そーれ、一回!二回!』とか僕が止める前に始めちゃってさ」
絢辻「……自由すぎるわね」
田中「家の中でスイカ割りはエキセントリックすぎるよ」
橘「いやー、もうね。久し振りに必死になっちゃったよ!」
橘「『あぁ〜!橘君!目が回るわ!』とかいって危なっかしいったりゃありゃしないし!」
棚町「……ねぇ?その後どうしたの?」
絢辻「あぁ、そういう体にしたのね?」
橘「台所でスイカを切り分けて、縁側で二人で美味しく頂いたよ。月を見ながら」
棚町「風情があることをしてんじゃないわよ」
橘「まぁ、それで満足したらしく帰ってくれたんだけど」
橘「去り際に『これで終わったと思わないことね!?覚えてなさい!?』って言い捨てていったのが、気になって気になって……」
絢辻「……そう、受難はまだまだ続くのね」
田中「あははっ、本当に退屈させない人だよね、森島先輩って」
棚町「ホント、どんな大学生活を送ってらっしゃるのか気になっちゃうわよね」
田中「今日は花火大会だよね!」
絢辻「そういえば、そうだったわね」
田中「あっ……でもっ……」
橘「ははっ……花火の音を聞きながらの勉強も悪くないかもね……」
棚町「純一……あんた……」
絢辻「う〜ん……そうね。よし、決めた!」
絢辻「今日の勉強会は中止とします!」
橘「えっ?」
田中「ななな、何で!?」
絢辻「他ならないあなた達だから、歯に衣着せぬ言い方をするけどね?」
絢辻「毎日毎日!バカの相手をするの、疲れたの!たまには休みを頂戴!?」
棚町「おぉ、ついに本音が出たわね」
絢辻「そんなの睡眠時間を削ってやりなさい!花火を見に行くことはもう決定事項!」
棚町「お、横暴よ!?」
絢辻「いーやーだー!みんなと花火を見にいーきーたーいーのー!」
田中「あ、絢辻さんが……いつも冷静な絢辻さんが駄々をこねるなんて!」
橘「わ、わかったよ!今日の勉強会は中止にしよう!」
絢辻「……初めからそうすればいいのよ」
橘「……ただし条件があるよ?」
絢辻「条件、ねぇ?試しに言ってご覧なさいよ?」
橘「ぜ、全員浴衣でくること!以上!」
田中「ゆ、浴衣で!?」
棚町「そうね!こんなことがないと着ないし!」
絢辻「……わかったわ、その条件を飲みましょう」
橘・田中・絢辻・棚町「うぇーい!」
欲望をねじ込む人間を紳士と言えるのか…
それを人は変態紳士と呼ぶ
・
・
絢辻「純一?花火……綺麗だね?」
棚町「恵子……君の方が綺麗だよ……」
絢辻「も、もう!純一ったら!」
棚町「恵子……」
絢辻「純一……」
棚町「……みたいな?」
絢辻「あー、あると思うわ」
絢辻・棚町「うぇーい!」
橘「い、いくら僕でも!そんなのないよ!?」
田中「そ、そうだよ!陳腐すぎてびっくりだよ!?」
絢辻「妄想する時間を与えてやったんだから、感謝しなさいよ?この変態」
田中「……で、どうかな?」
橘「す、スゴくいいと思います……」
棚町「ん?誰の浴衣姿が?」
橘「み、みんな違ってみんないい!」
絢辻「はぁ?そんな言葉聞きたいわけじゃないんだけど?」
橘「で、でも!僕としては……た、田中さんの浴衣姿が……一番グッときたかも」
田中「……ありがとう、橘君」
絢辻「はー、これだからカップルは嫌ね!棚町さん?」
棚町「ホントよねー!あたしも素敵な彼氏がいたらなー!」
絢辻・棚町「うぇーい!」
橘「くっ……こいつら……」
田中「まぁまぁ、抑えて抑えて」
絢辻「確かに。男の人って持ってないイメージがあったけど」
田中「……橘君のことだから、何か由来があるんだよね?」
橘「あー、うん。これはね……」
橘「森島先輩の従姉妹にジェシカさんって方がいらっしゃるんだけど」
棚町「セクシーさんのこと?」
橘「そうそう、セクシーさん。森島家はミドルネームからして攻めの姿勢なのが素晴らしいよね!」
絢辻「で?そのジェシカさんがどうかしたの?」
橘「あ、うん。ジェシカさん、つい最近来日されたんだけど」
橘「……先週くらいかな、急に二人で訪ねてきてさ」
橘「ジェシカさんが『ジュンイチ!何でニッポンジンなのにワフクを着てないの!?』とか言い出して」
橘「そこに森島先輩も悪ノリも加わってね?……うぅっ」
田中「……無理矢理買わされたんだね?」
橘「うん……」
絢辻「橘君……」
橘「……あ、でも!あの二人が浴衣の代金の殆どを払っていったから、経済的にはそこまで打撃はなかったんだけどね!」
棚町「……それは不幸中の幸いだったわね」
橘「まぁ、こうしてみんなと浴衣で出かけることもできたし。悪いことばかりではないかな。ははっ」
田中「じゃあさ?その浴衣は森島先輩とジェシカさんが選んだんだ?」
橘「う、うん。二時間くらいあーじゃないこーじゃないが続いた結果かな」
棚町「……ん?恵子?……これはもしかして?」
田中「嫉妬!……というか、焼き餅かな!その浴衣ね、橘君にバッチリ似合ってて悔しい……」
田中「こ、今度は私と買いにいこうね!?」
橘「う、うん!?そ、そうだね!はははっ……」
絢辻「みなさーん!また見せつけてくれちゃってますよー!」
・
・
橘「……とか何とか言ってる間に会場についちゃったね」
田中「わぁ!やっぱり見にきてる人が沢山いるね!」
棚町「恵子……人だかりではぐれないよう、手を繋ごうか?」
絢辻「……う、うん。純一?頼りにしてるね?」
棚町「……あるわね」
絢辻「……間違いないわ」
絢辻・棚町「うぇーい!」
橘「い、いい加減にしろ!」
田中「まぁまぁ、落ちついて」
棚町「とりあえずさ、出店で何か買って食べながら花火をみない?」
絢辻「あ、共食いがみれるのね?」
棚町「あ、あんたねぇ!?誰の髪型が焼きそばみたいだって!?」
橘「……落ち着けよ、薫」
・
・
ヒュー……ドーン!パラパラパラ……
棚町「綺麗ね……」
絢辻「……うん。これは見にきた甲斐があったわ」
田中「来年も……またこうしてみんなで花火を見にきたいね」
棚町「……そうね。あ、でも絢辻さんはあたし達とは志望してる大学が違うし……」
絢辻「あたしね?……あの家にはあまり帰りたくないけど」
絢辻「……みんなと遊ぶためなら、帰ってくるから」
橘「うん、待ってるよ!」
絢辻「ま、今から来年の話をしても仕方がないけどね!」
絢辻「明日からも勉強頑張りましょう!」
橘・田中・絢辻・棚町「うぇーい!」
・
・
絢辻「さて、花火も終わったことだし」
棚町「ぼちぼち帰りますか!」
絢辻「あ、橘君?田中さんを頼んだわよ?」
棚町「恵子に何かあったら、タダじゃおかないからね?」
橘「えっ?みんなで帰れば……」
絢辻「……あなたねぇ?あたし達の気遣いを無に帰する気?」
棚町「……仕方ないわね。ほら、絢辻さん!帰るわよ!?」
絢辻・棚町「うぇーい!」
カランコロンカランコロン……
橘「ふ、二人とも!?下駄を履いたままなのに何てスピードで!?」
田中「あははっ……じゃあ、私達も帰ろうか?」
橘「そ、そうだね!」
橘「公園によって、お話でもしようか?」
田中「うん!そうしよう!」
田中「えへへ、実は下駄なんて履き慣れてないから、足が痛くて痛くて」
橘「ははっ、普通はそうだよ」
橘「……おかしいのはあの二人だ。自分の目で見たことなのに、やっぱり信じられないというか……」
田中「……多分、あの二人は都市伝説になると思うよ、あははっ……」
・
・
・
橘「あ、あのベンチにでも座ろうか?」
田中「うん。そうだね」
橘「……ふぅ、今日はお疲れ様でした」
田中「……うん、明日からも頑張ろうね」
橘「……花火、綺麗だったね」
田中「わ、私とどっちが?……なんちゃって」
橘「……そんなの田中さんに決まってるだろ?」
田中「た、橘君……ううん、純一……」
橘「け、恵子……」
チュッ……
パシャッ!!
橘・田中「!?」
棚町「いい絵が撮れたわよ!絢辻さん!」
絢辻「ふふふっ、褒めてつかはすわよ?棚町さん」
橘「ふ、二人とも!?先に帰ったんじゃ!?」
橘「というか!その立派なカメラは何!?」
絢辻「……橘君?質問は一つずつにしてね?」
橘「じゃ、じゃあ……何でここにいるの!?」
棚町「……あんたもバカねぇ。こんな面白いの、あたし達が見逃すわけないでしょ?」
橘「そ、そっか!じゃあ、その高校生が持つのには立派すぎるカメラは!?」
絢辻「……あたしが買ったのよ?いつか使う日が来るだろうと思って」
橘「ざ、財源は!?財源はどこなの!?」
絢辻「そうね……絢辻さんの七不思議ってことにしとこうかしら」
橘「くっ……そういわれてしまうと、何も言い返せない……!」
棚町「まぁまぁ、高校生活最後の夏の思い出ってことで」
棚町「あ、ちゃんとあんた達の分も焼き増しして渡すから、安心してね?」
橘「そんな心配してないから!」
棚町「じゃあ何が不満なのよ!?わっからないな〜!?」
絢辻「棚町さん?きっと彼らは写りを心配してるのよ?」
絢辻「だから……今度は隠し撮りじゃなくて、堂々と正面からとってみない?」
棚町「あ、いいわね!それ!」
橘「ふ、ふざけるのも……!」
田中「た、橘君!」
橘「えっ」
チュッ……パシャッ!
絢辻「はい、大変いい絵がとれました〜!」
橘「あ〜、夏ももう終わりか……」
田中「あははっ、勉強しかしない夏だったね」
棚町「は?なにいってんのよ?ここにあんた達が一夏の思い出を作ってる証拠が……」
田中「が、学校でそれを取り出すのはやめて!?」
絢辻「……そういえば、模試の結果はどうだったの?」
橘「僕はA判定」
田中「私はBだよ!」
棚町「Cよ!悪かったわね!?」
絢辻「はぁ、橘君はともかく、他の二人はもう少し頑張らなきゃね?」
絢辻「来年も……浴衣を着て、みんなで花火を見に行くんでしょ?もちろん笑顔で」
橘・田中・絢辻・棚町「うぇーい!」
完
次は何だろう
乙
田中さんうぇーいかわいい
Entry ⇒ 2012.05.22 | Category ⇒ アマガミSS | Comments (1) | Trackbacks (0)
京子「ありがとう、おねえちゃん」
綾乃「あ、あれ…?私……」
綾乃(ここは……学校の近くの…)
綾乃(おっかしいな、さっきまで学校にいたはずなのに…)
綾乃「と、とにかく学校に戻らないと…」
??「ぐすっ……ひっく…」
綾乃(あら…?女の子……?)
綾乃(……なんだかほっとけないわね)
??「……!」ビクッ
綾乃「あ、大丈夫よ。怖がらないで」
??「……」
綾乃「えっと…どうしたのかしら?」
??「…友達と、あそんでて…だけど、はぐれちゃって…」
綾乃「友達と…?」
??「ぐすっ……ゆいぃ…あかりちゃぁん…」
綾乃(……ん!?)
綾乃「ね、ねえ、もしかしてその友達って船見さんと…赤座さん?」
??「え?う、うん…」
綾乃「もしかしてあ、あなたのお名前は…」
??「わたし…としのうきょうこ…」
綾乃「え……」
綾乃(ええ〜〜〜〜っ!!?)
綾乃(どことなく歳納京子に似ているとは思ったけれど、まさか本当に…)
きょうこ「おねえちゃん…?」
綾乃「あの…今日って何年の何月何日かしら…?」
きょうこ「え?ええと、今日はね…」
綾乃(…そんな、どうなってるの……?夢でも見ているのかしら……)
きょうこ「お、おねえちゃん……」
綾乃「あ、な、なぁに?」
きょうこ「ゆいとあかりちゃんのこと、知ってるの…?」
綾乃(夢だろうがなんだろうが、こんな悲しそうな歳納京子を見過ごすわけにはいかないもんね)
綾乃「…ええ、知ってるわ。もちろん、歳納きょ…京子ちゃん、あなたの事もね」
きょうこ「わたしのことも…?」
綾乃「京子ちゃんっ」ギュ
きょうこ「わぁっ!?」
綾乃「お姉ちゃんが絶対にお友達を見つけてあげるからね!心配はノンノンノートルダムよっ!」ニコッ
きょうこ「う…うんっ、ありがとうおねーちゃん(の、のーとる…?)」
・
・
綾乃「そこまで遠くまでは行ってないだろうし、すぐに見つかるはずよ」
きょうこ「うん…」
綾乃「ほらほら、元気だして!ねっ」
きょうこ「う、うんっ」
綾乃「……」
綾乃(なんだか意外ね…)
綾乃(あれだけ破天荒で底抜けに元気な歳納京子が)
綾乃(小さいころはこんなに内気な子だったなんて…)
綾乃(一体何が歳納京子をあそこまで変えたのやら…)ハァ
綾乃(まあでも、あのめちゃくちゃなところもひっくるめて歳納京子が好…って、何考えてんのよ私はっ///)
綾乃「えっ!?あ、な、ななな、なんでもないわよっ///」
きょうこ「くすっ、へんなおねえちゃん」
綾乃「ぐっ……」
綾乃(まったく、あなたのせいでこんなに悩んでるっていうのに…)
綾乃(…まあ、少しでも元気がでたようでなによりだわ……)
綾乃「ふふっ…」
きょうこ「……?どうしたのおねえちゃん」
綾乃「だって…さっきからずっと結衣ちゃんのお話しかしてないんだもの」
きょうこ「え?そ、そうだっけ…?」
綾乃「そうよ。あなたのお話の中心にはいつも結衣ちゃんがいる」
きょうこ「そ、そうかな…えへへ…///」
綾乃「結衣ちゃんのこと、大事なんだね」
きょうこ「うん!ゆいのこと、だいすきだよ!」
綾乃「……」
綾乃「…そっか」
きょうこ「あ…ゆ、ゆいにはないしょだよ…?///」
綾乃「うん…言わないよ」
綾乃「……」
綾乃(船見さん、か……)
・
・
綾乃「…公園か。少し休もっか」
きょうこ「うん…二人とも、どこ行っちゃったのかなぁ…」ジワ
綾乃「京子ちゃん…」
綾乃「大丈夫、二人だってあなたの事を一生懸命探してるに決まってるわ。絶対に会えるから元気出して」
きょうこ「う、うん…」
??「あ!あんた、この前の!!」
綾乃「ん?」
きょうこ「あっ…!」
綾乃(この特徴的なピンクの髪…も、もしかして、吉川さん…?)
きょうこ「ふぇ、ち、ちがうよぉ…」
綾乃「復讐?」
ちなつ「うるさい!ひきょうものめ!これでもくらえっ!」ポイッ
きょうこ「ひっ…」
綾乃「危ない!」パシ
ちなつ「な!?」
綾乃「こらっ!石なんて投げちゃ危ないでしょ!」
ちなつ「ううっ…!」
ちなつ「なによ!うるさいわね!かまととぶってんじゃないわよ!!」(※意味はわかっていない)
綾乃「は、はぁ…?」
綾乃「あ、あなたねぇ…」
ちなつ「なによ!よこれんぼー!まけぐみー!うれのこりーっ!!!」(※意味はry)
綾乃「……」ビキビキィ
ちなつ「(自主規制)ー!(検閲削除)ー!それからそれから…」
綾乃「」ガシィ
ちなつ「ひっ……!?」
綾乃「少しおしおきが必要なようね……」にこぉ〜〜〜〜〜〜っ
ちなつ「……!!?」ゾクッ
ヒギャァァァァァァ……
綾乃「…はっ!私としたことが…」
きょうこ「お、おねえちゃんこわい……」ガクガク
??「あ、いたいた!きょうこーっ!」
??「きょうこちゃ〜ん」
綾乃「あら…?」
きょうこ「あ!ゆい!あかりちゃん!」
ゆい「あ!あいつはこの前の…!」
ゆい「おいお前っ!」
ちなつ「……はっ!」パチ
ちなつ「あ、ああぁあぁ、あ……!」ガタガタブルブル
ちなつ「いやああああああっ!!おばあちゃああああ〜〜〜〜ん!!」ピューッ
ゆい「?なんだあいつ…」
きっとそうなんだよ
ゆい「わぁっ」
きょうこ「うわ〜〜〜ん!よかったよぉ〜〜〜〜っ!」ギュウゥゥ
ゆい「きょうこも無事でよかったよ…ほんと、なんともなくて…」
あかり「あ〜っ!ゆいたいちょーが泣いてる〜〜〜っ!」
ゆい「う、うるさいぞあかりっ」
綾乃「……」
綾乃(そっか、歳納京子と船見さん、こんなに小さい頃から……)
きょうこ「えっとね、このおねえちゃんが助けてくれたの!二人を一緒に探してくれたんだよ!」
ゆい「そっか…おねえちゃん、きょうこを助けてくれてありがとう!」
きょうこ「ほんとにありがとうおねえちゃん!」
あかり「ありがとうございましたぁ!」
綾乃「…………」
ゆい「よーし、行くぞ二人ともー!」
きょうこ「うんっ」
あかり「わ〜い」
綾乃「あ…………」
綾乃「ま、待っ…………」
−−−−
−−
綾乃「……ん」
千歳「お?綾乃ちゃん起きた?」
綾乃(あれ…?生徒会室?)
千歳「綾乃ちゃん、だいぶお疲れやね〜。ぐっすりやったで〜?」
綾乃「あ…ご、ごめんね千歳…」
千歳「ええよええよ、今日はうちがやっとくからゆっくりしててな?」
綾乃「で、でも…」
千歳「ええからええから〜」
綾乃「…もう……」
綾乃「……」
綾乃(歳納京子と船見さん、二人とも小さい頃からあんなにお互いを想ってて…)
綾乃(夢だって分かってるのに、実際の昔の二人を見ていたようで…)
綾乃(こんなの…これじゃ、私なんかがかなうわけが……)
綾乃「……っ」ジワ
千歳「…綾乃ちゃん?」
綾乃「え……」ポロッ
千歳「あ、綾乃ちゃんどうしたん!?どこか痛むん!?」
綾乃「あ……ち、違っ…ぐす…ごめんなさ…わたしっ……」
千歳「綾乃ちゃん、落ち着いて…」
綾乃「ごめん、なんでもないの…ただ、ちょっと変な、夢見て……」
千歳「そっか…綾乃ちゃん、もう大丈夫やで」ギュ
綾乃「……」
・
・
綾乃「はぁ……」
千歳「綾乃ちゃん、大丈夫?」
綾乃「うん、顔洗ってきたらちょっとすっきりしたわ」
綾乃「迷惑ばかり掛けちゃってごめんね、千歳」
千歳「も〜さっきからあやまってばっかりやで?うちは何ともないから気にせんといてや綾乃ちゃんっ」
綾乃「う、うん…ごめ」
千歳「ほ〜らっ」
綾乃「あ…」
千歳「ふふっ」
綾乃「…あははっ」
綾乃「歳納京子…」
綾乃(うん…夢なんかでいちいち沈んでちゃだめよね)
綾乃(しっかりしなくっちゃ…!)
綾乃「…まったく、歳納京子はしょうがないわね!」
綾乃「ほら千歳、早速ごらく部に乗り込むわよ!」
千歳「お、すっかりいつもの綾乃ちゃんや」
綾乃「よ〜し!覚悟なさいよ歳納京子ー!!」
千歳「待って〜綾乃ちゃ〜んっ」
おしまい
Entry ⇒ 2012.05.22 | Category ⇒ ゆるゆりSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
貴音「めんばぁに不良のような態度を取る娯楽、ですか」
貴音「ふふ 普段おそらく比較的穏やかな私がとんでもない態度を取る…」
貴音「小鳥嬢がかめらを構えていますが 気にせずに始めましょう」
小鳥「あれっ、バレてた!?」
貴音「気にしない理由ですか…? なぜならこれは…」
小鳥「…い、一応いっておくわ ごくり!」
貴音「ただの余興だからですよ」
春香「あ、貴音さん!今日は早いですね?おはようございます!」
貴音「…ちっ! 朝からうるさい小娘ですね!」
春香「…はい?」
貴音「どうせ毎週のくっきぃやどーなっつは、人の気を引こうとしているだけ!」
春香「貴音さん…? どうしたんですか?」
貴音「ちっ! 春香はあざとい小娘ですよ!」
春香「貴音さん、舌打ちは「ちっ」ってしゃべるものじゃないです… こうやるんですよ? …チッ」
貴音「…ひっ」
春香「あ、すみません ちょっとやってみたかっただけです… はい、貴音さん 今日は抹茶味のクッキーです」サッ
貴音「…いただきます… ではなくて!」
貴音「あれが本物の…舌打ち…!」
貴音「いいでしょう ならば次は…おや 千早、ですか」
千早「四条さん おはようございます 最近いつもその席にいますね」
貴音「…ここは私の縄張りです 近寄るのではありません」
千早「はぁ、そうですか…すみません」
貴音(千早、驚いています!この調子…!)
貴音「まったく 歌がうまいだけで調子に乗るなど愚の骨頂!千早など、歌がただただうまいだけの歌バカでしょうに!」
千早「ありがとう… 私には歌しかありませんから そんな言い方でもうれしいです」
貴音「効果がない…? 面妖な…」
貴音「らぁ! ちょっとこんびにで…らぁめん買ってきなさい!」ガゴン
千早「え… どうしたんですか、四条さん そんなに興奮して…」
貴音「びびって声も出ませんか!」
千早「何言ってるんですか 喋ってるじゃないですか…」
貴音「禁じ手ですが やむを得ませんね この、あぶそりゅーとうぉーる!」
千早「………」
貴音「ふふ びびって声も…」
千早「…言っていいことと、いけないことってあると思います absolute wall 直訳で絶壁、ですよね」イラ
貴音「はっ! す、すみません千早 言いすぎました」
千早「知っていますか? 絶壁って本当はcriffっていうんです クリフハンガーとかあるじゃないですか」スーッ
貴音「く、くるのではありません千早! 私は不良ですよ!」
千早「結構」
貴音「おや…いいところに やよい、ですか」
やよい「貴音さぁん!こんにちはぁ」
貴音「どうしたお嬢ちゃん! 貧乏な子供が来るところじゃありませんよ!」
やよい「え…? なんか古いドラマみたいですぁ! 貴音さんさすがに演技力がありますねぇ!」キラキラ
貴音「うっ…まばゆい…しかし負けませんよ 焼きそばぱんを買ってきなさい!おつりはやりますよ!」 っミ 1000円
やよい「何個ですか?」
貴音「えっ… か、買えるだけに決まっているでしょう、この、ばかやろう!」
やよい「はい…すみません いってきますぅ!」スタタタタ
貴音「…や、やりすぎでしょうか…」
貴音「ご、ご苦労様です」
やよい「おつり、86円も残りましたぁ 本当にもらっていいんですかぁ!?」パァ
貴音「……すみません…」
やよい「えっ…?」
貴音「すみませんやよい!こんな可愛いやよいに私はなんということを…! ほら、おつりだけと言わず焼きそばぱんもいただきなさい!」サッ
やよい「え、でも 悪いです…」
貴音「いいのです! ほら、すべて食べなさい! 無理なら持ち帰り、家族に与えてよいのですよ!」
やよい「あ…ありがとうございます…貴音さんっ!」
貴音「いえいえ…」ニコニコ
貴音「…はっ! 私としたことが全然不良ではありません!」
響「お、貴音ー 最近その席すきだね 美希がよく寝てるからよだれ注意だぞ」
貴音「…よりによって響、ですか」
響「え?どしたの?」
貴音「この一人ぼっち沖縄娘やろう! "孤独"な響ごときが"孤高"な私に近寄るなど愚か者の極、直ちにこの場から失せなさい! さもないとしばきますよ!」
響「……」ジワッ
貴音「あっ」
響「う、うわぁぁぁぁん! 貴音が、たかねがおかしいぞぉ…!」
貴音「本気で泣いて…響、うそです、泣き止んで……」
響「貴音も結局自分のこと1人ボッチだと思ってたんだぁぁぁっ! もうやだぁ!」
貴音「あうあう… 響、冗談ですから…」
響「うっ、ぐすっ 貴音なんか…知らないぞ! もう知らないからなっ!」ダッ
貴音「あっ… ひ、響!」
小鳥「今のはやりすぎよ、貴音ちゃん…」ジーッ
貴音「…びでおを自重してから言ってほしいものです」
響「やだ!もうくるなよ!」
貴音「ひびき!」ガシッ
響「は、離してよ 1人ボッチの自分なんかと話すことなんてないはずだぞ」
貴音「1人ぼっちだから放っておけないのではありませんか… 先ほどの発言は冗談です 落ち着いて…」ナデナデ
響「……ほんと…?」
貴音「ええ すみません 今とある余興を愉しんでいるのです… 私が響を嫌うわけがないではありませんか」
響「……そ、そっか 信じていいんだよね…」
貴音「私が響を嫌うようなことを言った時は…そうですね 地球に月が衝突するときでしょう」
響「はは… び、微妙にあり得そうな例えで怖いぞ… 貴音」
貴音「笑顔が一番です 本当にすみませんでした」
貴音「これはいいところに…! 伊織、ですか」
伊織「貴音じゃない どうしたのよ、息切らせて…」
貴音「ふっ… 軽い運動をしただけのこと… だぜ」
伊織「…え… …だぜ…?」
貴音「そうだぜ 今日は竜宮小町の仕事はないのですか …だぜ」
伊織「え、ええ 今日はあずさが竜宮小町とは別の仕事があるから」
貴音「そうで…だぜ 伊織は予定がなくて寂しそうですだぜ」
伊織「ねえ さっきからなにそれ…罰ゲームかなにか…?」
貴音「不良だぜ…」
貴音(完璧です)
伊織「なんか時代劇の下っ端みたいになってるわよ…? やめたら?」
貴音「そんなわけないです…ぜ…だぜ」
伊織「………はぁ」
貴音「ふっ びびって声も出ないみたいだぜ」
伊織「…もういいわ、ブレないのが貴音だし やってなさい…」トコトコ
貴音「勝利ですね… さすが不良です」ドヤ
小鳥(明らかにスルーされてる… けどドヤ顔な貴音ちゃん)ジーッ
貴音「おや 真美と亜美、ですか」
真美「お姫ちん!おはよ→!」
亜美「今日もお姫ちんだね→!」
貴音「真美、亜美 ふっ よく来た…」
真美「え なんか口調変じゃない…?」
亜美「お姫ちん…?どったの?」
貴音「どうもしておらぬ… さ、突っ立っておらず肩を揉め」
真美「なんか本物のお姫ちんみたい!ちょっとわがままな!」
亜美「わがままお姫ちんのお→せのままに→!」
貴音(ふふ 舎弟…舎妹?に肩を揉ませる 完璧です)
真美「へい合点! どうですか→ お姫さま→」モミモミ
亜美「お姫ちんじゃないね 本物の貴音姫だ→」ギュー
貴音「…はぅ 効きました 肩もみがうまいですね2人とも」
真美「元のお姫ちんだ→」
亜美「戻ったね→」
貴音「はっ…! で、でかした 褒めて遣わす!」
小鳥(もう不良関係ないんだけど… 面白いからいっか)
貴音「おや… 真、ですか」
真「あっ貴音 聞いたよ この前、まこまこしいって言葉作ったんだって…?」
貴音「…あれかよ! つい浮かんで使っただけかよ!」
真「うーんまぁ別にいやじゃないんだけどさ… どんな意味なのかなって」
貴音「一見美男子な真は本当はピュアな心を持っている乙女で可愛い という意味かよ!」
真「うっ…/// な、ならいいや… ただ頻繁に使うのは恥ずかしいからやめて」
貴音(ふふ、真もタジタジです!)
貴音「参ったのかよ」
真「それ、どこかの夏'sのマネ…? まさか貴音がやるわけないよね…」
貴音「はっ 考えてみればそうです…」
真「うーん どうしたの? なんか変だよ貴音」
貴音「いいえ、これはただの余興なのです 気にしないでください」
真「そ、そっか… 最近よくやってるみたいだけど 貴音って別に暇じゃないよね…?」
貴音「実は帰宅後は暇なのです なのでぎりぎりまで事務所に残り余興を愉しんでいます」
真「そうなんだ なんか楽しそうだし、今度僕も巻き込んでね」キラ
貴音「ええ 是非とも 可愛らしさと格好の良さを含む魅力 ある意味真は完璧なのやもしれません」
貴音「…完全に主となる余興を忘れていました」
雪歩「あっ四条さん…呼びました?」
貴音「おいィ? 呼んでいませんよ」
雪歩「そ、そうですか」ビクッ
貴音「おいィ? そこは空いていますよ 自由に座りなさい」
雪歩「あっはい… 四条さんもどうですかぁ? この時期でもお茶は美味しいですー」
貴音「おいィ? ぜひいただきましょう」
貴音(ふふ 気が強いほうではない雪歩を脅すような話始め 究極です)
小鳥(もう何がしたいのかわからないわ、貴音ちゃん 撮るけど)ジーッ
雪歩「ぼちぼち、です… 前よりはダメダメな自分を少しは直せたかなって…」
貴音「おいィ? 雪歩はがんばっていますよ そのままいけば、もっと高みを目指せるでしょう」
雪歩「四条さん… ありがとうございますっ」
貴音「おいィ? 自分のぺーすで頑張ればよいのですよ…」
雪歩「そういってくれる人、あんまりいないから…うれしいかな…」ウルッ
貴音(ふふ、泣かせました 勝ち星も増えつつあります)
あずさ「ただいまぁ… やっぱり2件連続でモデルのお仕事は疲れるわねぇー」クタッ
貴音「…ふっ 歳では?」
あずさ「……」
貴音「…ふっ 固まりました」
あずさ「た、貴音ちゃん それね すっごーく気にしてるの」ニコッ
貴音「…ふ、ふっ 階段を上るときの「よっこいしょ」」
あずさ「…貴音ちゃん? 運命の人も見つからないし、こう見えて結構いろいろ溜まってるんだから」ニコッ
貴音「…参りました」
あずさ「あらー」
あずさ「さ、さっきのは全然不良には思えなかったわー…? ただのあんまりしゃべらない人みたいな…」
貴音「なんと!」ガーン
あずさ「本物の不良はこう、長いスカートでマスクをつけてね バットとか持ってるのよ 「おらぁ」とか言えばそれらしいわね」
貴音「なるほど! 参考になりますね、ありがとう あずさ」
あずさ「いえいえー」
小鳥(何年前の不良の話…? って簡単に姿が浮かぶあたしもあたしだけど…)
貴音「完璧です …いいところに律子嬢、ですか」
律子「うわっ!た、貴音 何やってるの…?」
貴音「おらぁ おらぁ」
律子「なにオラオラ言ってるの… ふざけてないで着替えなさい、午後から撮影でしょ?」
貴音「おらぁ」
律子「そんな私でもアニメとかでしか見たことないようなレベルの不良、今時いないから…」
貴音「おらぁ えっ」
律子「しかも、オラオラ言われるだけで怖い?」
貴音「ある意味、恐怖に値すると思いますが」
律子「それはそうだけど」
貴音「…あずさに一杯食わされたのですか… 今度罰としてらぁめんを一杯食わされましょう」
律子「いい? 本当の不良っていうのはね 誰も見てないようなところで気弱な子からお金を奪ったり」
貴音「なんと!」
律子「授業とか仕事に出ないでどっかで遊んで、妨害とかしたり」
貴音「…面妖な…!」
律子「親御さんに、それはもう大きな迷惑かけるようなことしたり…」
貴音「…っ…」
律子「まぁそんな感じだから わかった?」
貴音「不良はいけません!」
律子「えっ…ええ…まぁそうね そうだけど」
貴音「美希!不良はいけません!仕事にはちゃんと出るのです!」
美希「うわっどうしたの貴音 別に美希、サボるなんて言ってないの」
貴音「…そ、そうですか」
美希「なんか甘いもの食べたいの… ハニーにおごってもらっちゃおうかな」
貴音「美希! ですから、不良はダメだと!」
美希「えぇ…? 」
貴音「失礼しました 別に奪うわけではありませんね」
美希「もう… あ、すごいパトカーなの 何かあったのかな」
貴音「美希!!不良は」
美希「貴音うるさいの! パトカーって言っただけなの…」
貴音「す、すみません つい」
貴音「今回の余興…どうやら失敗のようですね… 次は努力いたします」
おわり
乙!
お姫ちんかわいい乙
Entry ⇒ 2012.05.22 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
恒一「有田さんって普通に可愛いと思う」
恒一「普通に可愛くてさ、レベルの高いこのクラスだと埋もれるけれど、他のクラスならクラスで二番目にはモテるくらい、普通に可愛いよね」
勅使河原「まぁ、そうかもな」
恒一「テストも様子をみる限りことごとく平均点前後で、クラスの皆と仲が良いし、普通に可愛いよね」
勅使河原「サカキ、よくわからないのろけは良いから、本題は何だよ」
恒一「有田さんと仲良くなりたいんだ……」
勅使河原「? 別に、普通に話しかければ良いだろ?」
恒一「普通に普通な有田さんに……僕は何て話しかければ良いと思う?」
恒一「趣味もこれといってわからなくて、話しかける内容が無いんだ!」
勅使河原「空が青いですね。とかで良いだろ」
恒一「普通すぎるよ!」
勅使河原「普通が好きだったんじゃないのかよ!」
恒一「違うんだ、僕はたしかに普通な有田さんを好ましく思っているけれど、僕が普通じゃダメなんだ」
恒一「だって、考えてもみてよ、そんな事を有田さんにいったら、そうだね。しか返ってきそうにないじゃないか!」
恒一「僕は、普通じゃない有田さんに話しかける為に、考え得る全ての状況を想定し、常に最良の選択肢を選ばなくちゃいけないんだ!」
勅使河原「お前は何の指揮官なんだ」
恒一「普通に可愛いくて普通に可愛い、そんな普通の有田さんと、僕はどうやって仲良くなれば良いんだ……っ!」ダン
勅使河原「まぁ、えっと、取りあえず落ち着け、サカキ」
恒一「ちくしょう! 僕は普通少女に話しかける事も出来ないのか!」
有田(え? ええ? えええええええっ?)
有田(何で教室で榊原君が私の名前を呼びながら叫んでるのっ!?)
有田(私、忘れ物取りに来ただけだよ? し、しかも、可愛いって言われてるよ?)
有田(それも、榊原君にっ!?)
有田(勅使河原君じゃなくて、榊原君にっ!)
有田(でも、どうすれば良いんだろう。榊原君は何だか私に話しかけにくいらしいし……)
有田(今入ったら、普通に気まずいし……)
有田(でも、入らないと明日の数学の宿題をやれないよ!)
有田(うーん……)
勅使河原「取りあえずさ、いったん有田の机でも調べてみろって」
恒一「……発言が中尾君みたいだよ」
勅使河原「ちげーよ、ほら、机を見てみれば何かしらの趣味がわかるかもしれないだろ。ほら、そこの江藤の机見てみろ」
恒一「……? 何か、数字が書いてあるね」
勅使河原「それ、アイツの水泳のタイムだぜ」
恒一「すごいね! どんどんタイムが縮んでるじゃないか!」
勅使河原「毎朝、嬉しそうにそこに書いてるぜ。なら、有田だって……」
恒一「わかったよ! 普通な有田さんにだって、何かしら……」
ガサゴソ
恒一「っ!?」
恒一「数学のノートだ、それも明日の宿題をやってない……」
勅使河原「……普通だな。だが、有田にとってはアンラッキーだが、サカキ、お前にとってはラッキーだぜ」
恒一「どういう、事?」
勅使河原「明日、有田に宿題を見せてやるんだよ。ナチュラルに、かつ相手に良く見られる、完璧だろ?」
恒一「で、でもそんな有田さんの不幸につけこむような事……」
勅使河原「あのな、今更忘れ物を取りにくるわけが無いんだ。明日の有田を救えるのは……お前だけだぞ、サカキ」
恒一「勅使河原君……」
有田(いるよ! 絶賛忘れ物回収中だよ! 榊原君達が一番の障害だよ!)
有田(で、でも、明日榊原君が私に宿題を見せてくれるなら、やらなくても良いよね? むしろやらない方が良いよね?)
有田(どうしよう……?)
有田(あっ!? でも明日の数学は一時間目だよ! 朝に見せて貰わないと、間に合わないっ!)
有田(……少なくとも、私が遅刻しないようにしないと)
有田(そうと決まれば、早寝しなきゃね! どの道、今更教室には入れないし……帰ってすぐに寝ようっと!)タタタタ
恒一「あれ?」
勅使河原「どうした、サカキ」
恒一「今、廊下で足音がしなかった?」
勅使河原「こんな時間に、いるはずが無いだろ。それよりも、そろそろ帰ろうぜ」
恒一「そうだね。僕も今日は早く寝ないと」
勅使河原「お前、何時にくるつもりだよ……」
恒一「少なくとも、有田さんより速く来ないとね」
恒一(念入りに、一寸の間違いも無いように、宿題の問題を繰り返し三時間)
恒一(朝、登校してきた有田さんとの会話プラン百通りを考える事、八時間)
恒一(有田さんが学校に着く時間を考え、僕は……そろそろ学校に着く!)
恒一(万全だ、完璧だ、さすがに有田さんも、こんな時間にいるはずが無いっ!)
恒一(教室で、静かに精神を落ち着けよう。普通少女との邂逅を、最良で成し遂げるために……あれ?)
恒一「校門前に、誰か、いる……?」
恒一「お、おおおはよう、有田ひゃん!」
恒一(ちくしょう! 噛んだ!)
有田「さ、さささっかきばら君っ!?」
恒一(しかも軽く引かれたっ! 三歩下がられたっ!)
恒一(想定外すぎる。有田さんがこんな時間にこんな場所にいるなんて……)
恒一「は、早いね。どうしたの?」
有田「ええっ!? そ、それはね……」
有田(何か、何かネタを探さないと……っ!)
有田「!? 空が青いからっ!」
恒一「まだ真っ暗だよっ!?」
有田(そうだったっ!)
恒一「な、何で校門に立ってるの?」
有田「え、だって……その……」ユビサシ
恒一(閉まってた……っ! そりゃそうだよ!)
恒一「あ、あはは……僕達、ちょっとだけ、早すぎたみたいだね」
有田「う、うん……そ、それもこれも、空が青いからだよ!」
恒一(だからまだ暗いって!)
恒一「あはは……」
有田「あはは……」
恒一「…………」
有田「…………」
有田(どうしよう? どうしよう? どうしよう?)
恒一(さすがに、ここで宿題の話を出すわけには行かないっ! 考えろ、昨日、一晩中考えたプランを応用するんだ!)
有田(昨日ぐっすり寝ないで、何か話題を考えておくんだった! うぅ、おかげで起きれたし、こんなに早くに榊原君に会えたけど、いくら何でも早すぎるよっ!)
恒一「あ、有田さん!」
恒一(好きな食べ物を聞こう!)
有田「は、はい!」
恒一「す、好きな……」
有田「すすす、好きなっ!?」
有田(好きな……人っ!? 早い、早すぎるよ! こんな時間に登校するより早いよっ! その話題はもっと親密度を上げてからにしてほしいよっ!)
恒一(な、何だこの食いつきはっ!? もしかして、何か触れてはいけないタブーだったのかっ!?)
恒一(女子中学生が普通に好きそうな話題……そうだ! 恋愛トークだっ!)
恒一「す、好きな人は……いるの?」
有田(本当に好きな人だったぁっ!?)
有田「いい、今は、まだ、いない……かな?」
恒一「そ、そっか……」
恒一(そうか、いないのか……いや、それよりも、これじゃ話が広がらないよ! そもそもほぼ初めて話すのに、恋愛トークはおかしいよ!)
有田(あ、あれ? なんかしょんぼりしてる? 私何か間違えた? え? あれ?)
有田(いや、それは無いよ。でも、ももももしかしたら……榊原君、私の事が好きだったり?)
有田(いやいやいやいや、そんな一目惚れみたいな話……で、でも、う、うん?)
有田(榊原君なら、私も、嬉しいかなって……)
恒一(っ!? よくわからないけど、有田さんが嬉しそうだ! 何だ? 一体何が、有田さんを喜ばせたんだ!)
有田(いやぁ、でも、そんな榊原君みたいなカッコイい人が、普通に普通で普通な私の事なんて……でも、昨日も可愛いって言ってくれてたし、も、もしかしたら! ね! ねね!)
恒一(か、顔を真っ赤にして嬉しそう? いや、違うのか! あれはそうだ! 恥ずかしがってるんだな!)
恒一(きっと有田さんは、何か秘密があって、こんな時間に学校に来たんだ。それを、僕が、この僕が、このろくに会話も出来ない僕が、邪魔をしてしまった!?)
恒一(そしてきっと、秘密がバレることを恐れ、恥ずかしがっているんだ!)
恒一(それに、本当は秘密は秘密のままにするべきなのに、僕は……有田さんがもしかしたら普通じゃなくなるその秘密を……知りたいっ!)
恒一「あ、有田さん……」
有田(こ、今度はやけに落ち着いた表情!? そ、そんなに見つめないで! 好きになっちゃうよぉ!)
恒一「僕に、教えてほしいな……なんて」
恒一(くっ! 弱気になって「なんて」をつけてしまった! この意気地なし!)
有田(ここ、これって遠まわしな告白なのかな! なのかな! どこをどう遠まわしなのか、よくわからないけど、何を教えれば良いのかわからないけれど、でも、何か前進してるよね!)
恒一(はっ!? 「秘密を」なんて主語が抜けてるっ!? まずい、これじゃ僕がよくわからない事を言っているみたいだ! 嫌われちゃう!?)
有田「さささ、榊原君!」
恒一「は、はい!」
有田「い、良い、よ?」
有田(おお、オッケーしちゃったよ! どうなるの、どうなっちゃうの! 私!)
有田(え、でも、どうすればいいの? きききき、キスとかするの? え、早すぎだよね!? ででも、その、ね、ほら、今なら二人っきりだし!)
恒一(秘密を話してくれるなら、こんな場所じゃダメだ。あんなに恥ずかしがってたんだ。万に一つも人に見聞きされる場所じゃいけない)
恒一「有田さん」
有田「はい!」
恒一「本当はダメだけど、学校の中に入っちゃおうか。人目につくと、やっぱり、ね」
有田(ひひひひひ人目に付かない場所で何をするのっ!?)
有田(でも、さすがに性急すぎるよぉ! 私、心の準備がまだだし……それに、そういうのは、ゆっくりが良いと思うのに……)
恒一(あ、あれ? 今度はがっかりしてる? 僕、今、最高に気を利かせたはずなのに!? 何だ、どうなって?)
有田(ででも、一度オッケーをした以上、そんな形で断っちゃ……っ! そうだ! 幸い時間もあるんだし!)
有田「榊原君っ!」
恒一「は、はい!」
有田「私の、家でも、良いかな?」
恒一(自宅……だと……!?)
有田(い、言っちゃったよ! もう後戻り出来ないよ!)
恒一(来ちゃったよ。来ちゃったよ? 来ちゃったよ! ここまでするなんて、一体どんな秘密なんだ! ぼ、僕は、その重みに耐えられるのか!?)
恒一(腹を括るんだ、榊原恒一! ここで帰るなんてとんでもない! 一度手を出したんだ。それを放棄すれば、男が廃る!)
恒一「有田さん、親御さんは?」
有田「どっちもいないよ。仕事柄で、世界中を飛び回ってるの」
有田(でなきゃ、家でなんて……うぅ……、家に帰ってきたのに、扉を開けるのが怖いよぉ!)
恒一(りょ、両親不在だって!? やった! やったよ! 有田さんの普通じゃなくい所を、僕はついに知ったよ!)
恒一(でも、つまり、有田さんの秘密は、この状況にも関わってくるはずだ……! いや、もう迷いは無い! 僕は、僕は全力で、有田さんの秘密を受け入れる!)
有田(へへへへ、部屋は、一応片づいてるよね? 汚く無いよね? 大丈夫だよね?)
恒一(お、女の子の部屋…… なんというか、その、ドキドキするね!)
恒一「じゃ、じゃあ、その……」
有田「う、うん……私は、良いよ」
有田(さ、榊原君なら、優しくしてくれるよね?)
恒一(どうした、有田さん。何かを待っているようだ。ここに来て、やっぱり恥ずかしくなっちゃったのか!?)
恒一「有田さん、その、有田さんが始めてくれないと……」
有田「ええっ!? そっちなの!?」
有田(び、びっくりだよ! だって、え? ええええ!?)
恒一「う、うん?」
恒一(何だ、何かがずれてる? 僕は、何か盛大な思い違いをしている!?)
恒一(有田さんは、僕から何かを待っている!? え? ……そうか、自分が秘密を話すのなら、僕にも秘密を言えってるんだな)
恒一「有田さんは、どんなのが良いの?」
有田「ど、どんなのっ!?」
有田(そ、それはどういうタイプでやればいいかって事っ!?)
有田「……優しいのが、いいな」
恒一(や、優しい秘密!? それは、え? どういう事だ?)
有田(榊原君が、晴れ晴れとした表情をしてるっ!?)
恒一「有田さん、君は、昨日の僕と勅使河原君の会話を、聞いていたんだね」
有田(ばれた!?)
有田「榊原君……うん、わかった。私、榊原君を信じる!」
有田(最初は痛いっていうけど、榊原君は自信があるみたいだし、その、ちょっとだけ悲しいけれど、経験者みたいだし……)
有田(ここで、誰と? なんて聞いたら、嫌な子になっちゃうよね。気になるし、いずれ知りたいけれど、今日は榊原君がエスコートしてくれるんだもん、文句は言えないよ)
有田(え、えっと、服は自分から脱いだ方が良いのかな? でも、脱がせたい人もいるらしいし……ううん、榊原君が任せてって言ったんだもん、私が勝手に脱いだらダメだよね!)
有田(よし、ちょっと深呼吸をしよう! すー、はー ……うん、大丈夫)
恒一「有田さん」
有田「ひゃい!」
有田(噛んじゃったよ!)
有田「…………え?」
恒一「大丈夫、僕、しっかり予習したから、全部しっかりきっちり教えれるよ!」
恒一(数学の宿題をやるために、早くから学校に来ていた有田さんを、引き止めたのは僕だ。その責任を、取らなきゃいけない)
恒一(有田さんは昨日、宿題のためにノートを取りに戻ってきたんだ。なのに、僕と勅使河原君が、ノートの話をしていた)
恒一(有田さんは……これは僕の憶測でしか無いけれど、僕にわざわざ教えてもらわなくても良いように、朝早くに来て宿題をやろうとしていた)
恒一(なのに、僕も来てしまった)
恒一(自分の為に解いてきた僕に悪く思い、有田さんは恥ずかしそうにしていたんだ)
恒一(それなのに、僕は勘違いして「教えてくれるかな?」なんて、それじゃまるで「(何で早く来てるか)教えてくれるかな?」って思われちゃうよ!)
恒一(これじゃあ僕は、嫌な奴だ。わざわざ問い詰めるなんて)
恒一(有田さんには、僕は全てを知って起きながら、誰もいない学校に連れ込もうとした悪人に見えただろう。だから、彼女なりに抵抗して、こうして彼女のホームグラウンドの自宅に招いた)
恒一(僕は、秘密がどうのこうのなんて幻想を見て、有田さんを怯えさせてしまっていた……)
恒一(一度括った腹だ。僕は、有田さんに責任をとる!)
恒一「……先に謝るよ、有田さん。誤解を招くような事をして、本当にごめん」
有田「……どういう、事? わ、私、覚悟を決めたんだよ? 榊原君なら、って。私はいつでも良いんだよ?」
恒一「うん、だから、僕は責任を取るよ。有田さんの為に、今から宿題を教えようと思う。それで有田さんが許してくれるとは思わないけど、僕も勘違いをしてたんだ。ごめん」
有田(……か、勘違いを勘違いしてるよぉ……うぅ)
恒一「こんな責任の取り方じゃ、ダメ、かな?」
有田「……よくわからないけど、責任、取ってくれるんだよね?」
恒一「うん、僕に出来ることなら、なんだって!」
有田(恋人になってほしいの? そりゃほしいよ! 私、もう、榊原君の事が、その……好きだもん)
有田(でも、強制したって、それはちゃんとした恋人じゃないよ。そんなの、嬉しくない)
有田(なら? 私はどうしたいの?)
有田「じゃあ……」
恒一「……じゃあ?」
有田(私は、少しでも長く、榊原君と一緒にいたい。少しずつでも、榊原君に近づけるように、一緒にいてほしい!)
有田「私に、勉強を教えて下さい! 平均点を超えて、その、榊原君が行くような高校にいけるくらい、私の頭を良くしてくださいっ!」
恒一「……わかった。僕に出来るだけ、毎日だって、教えるよ」
有田「榊原君、思ったよりスパルタだね……」
恒一「大丈夫、次のテストで有田さんは、クラストップレベルまで頭が良くなるから」
有田「そんなにっ!?」
恒一「当然だよ。高校入試には、中学での評定も関わるからね」
有田「う、うわぁ……」
恒一「でも、不思議だね」
有田「何が?」
恒一「昨日まで、どう有田さんと話せばいいか、ずっと悩んでたのに、今はこうして、一緒に登校してる。何でだろう?」
有田「……うーん、それはきっと」
恒一「それはきっと?」
有田「空が青いからじゃないかな!」
Aritar
おわり
Entry ⇒ 2012.05.21 | Category ⇒ AnotherSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
勇者「俺と魔王の結婚式だと!?」
勇者「……」パチッ
魔王「……」パチッ
勇者「ん?」
魔王「え?」
神父「ほれ、はよチッスせんかい」
勇者「なんだ?どこだここ?」
魔王「なぜ私はこんなところに……?」
神父「ほれほれ、新郎勇者よ、新婦の魔王にチッスせよ」
勇者「はぁ?魔王?」
魔王「勇者とキス!?///」
新婦「御主らの結婚式だろう。ほれほれっ、口と口を合わせて、こうブチュッっとな」
勇者「俺と魔王の結婚式だと!?」
側近「魔王様がんばってー」
ワイワイ
勇者「って!魔王!?」ズササササッ
勇者「てめぇ……ここで仕留めて……ん?剣……がない……」スカッ
魔王「勇者だと!?これは貴様の仕業か!?な、なんだこのヒラヒラした格好は……」
魔王「ええい!動きにくい!うっとうしい!」ビリビリビリッ
側近「ちょっ、魔王様せっかくのウェディングドレスを……」
王様「ひょー。色っぽいわい」
勇者「なんなんだこれは。魔王」
魔王「それはこっちの台詞だ。こんなまやかしで誤魔化されないぞ、私は」
魔王「やるか!?」バチバチ
勇者「ああ、素手でも仕留めて……」
魔王「くくくっ、馬鹿め。このような場所、お前には不利だろうに」
勇者「何!?」
魔王「ふふふっ」ダッ
グイッ
王様「え?」
魔王「勇者!動くな!こいつを殺すぞ」グッ
王様「ちょっ!」
勇者「王様!」
勇者「さすが魔王……汚い……」
魔王「さあ、その命私に差し出すがいい」
勇者「くぅ……」
勇者「ん?こいつは……?」ニヤリ
勇者「ふっ、このモフモフした生物は……」グイッ
魔王「どうした!勇者!」
勇者「魔王!こっちを見ろ!」
魔王「なっ!」
勇者「王様を離せ!さもないと……こいつがどうなっても知らんぞ!」ガシッ
ケルベロス「わふ?」「がう?」「わんわんお!」
魔王「チャッピー!!」
魔王「チャッピーを……チャッピーだけは解放してくれ!」
勇者「チャッピーってどれだよ」
魔王「一番かわいいやつだ」
勇者「わかんねーよ!」
魔王「3つめのだ、早く解放しろ!」
勇者「お前か?」
ケルベロス「……」「……」「わんわんお!」
勇者「ちなみに他の2匹は何て名前なんだよ」
魔王「知らん!名前などない!」
ケルベロス「わふっ!?」「がうっ!?」「わんわんお!」
勇者「お前ら……」
魔王「早くしないとこいつを……」ガシッ
王様「あわわわわ……」
王様「あっ、わしの王冠……」
勇者「貴様!まさか王様唯一のチャームポイントを……」
魔王「こうして……」グニャア
王様「ちょっ!」
魔王「こうだ!」ポーイ
勇者「王様ー!」
魔王「くくくっ、どうだ」
勇者「よくも……王冠がなければ王様はただのおっさんじゃないか……くっ……酷い……」
おっさん「お前が一番酷いこといってるぞ……」
魔王「ははは、ショックで言葉も出ないか」
勇者「ならば俺も……」
魔王「は?」
勇者「これを……」スッ
魔王「そ、それは骨っこ!?」
勇者「こうして……」スッ
勇者「こうしてやる!!」
魔王「や、やめ……」
勇者「ほーら!お食べ」
ケルベロス「わふ!」「がう!」「わんわんお!」ガツガツッ
勇者「よーしよしよしよし!」ナデナデナデ
勇者「ははは、よしよしよしよし」ナデナデ
ケルベロス「わふわふっ」ベロベロ
ケルベロス「がうっ!」ベロンベロン
ケルベロス「わんわんお!」ペロペロ
勇者「ははは、かわいいやつよ」ペロペロ
ケルベロス「わふっ」「がうっ」「わんわんお!」ガジガジ
おっさん「勇者、お前齧られてるぞ」
側近「血だらけです」
勇者「ははは、太郎、次郎、チャッピー。俺が可愛がってやるぞぉ」
魔王「貴様ー!」
グシャア
王冠「」
勇者「なっ、王様に何をする!」
おっさん「いや、王様わしなんだけど」
おっさん「いや、生きてるから!わし!」
勇者「ん?よく見りゃ教会に魔族の幹部まで勢ぞろいじゃないか」
勇者「っということは……魔王城がら空きか!?」
魔王「ちょっ!」
勇者「ふっ、行くぜ!太郎!次郎!チャッピー!」グッ
ケルベロス「わふっ!」「がうっ!「わんわんおっ!」
魔王「こら!私のチャッピーに乗るな!」
勇者「はぁぁぁ……爆裂魔法!」ドゴーン
神父「ちょっと!壁に穴を開けるなどなんと罪深い……新婦に穴をあけるのが新郎の役目でしょう!」
勇者「うるせえ!神父はお前だろ!」
勇者「行くぜ!」
ダダッダダッ
魔王「ま、待てー!」
おっさん「いや、王様だよ?」
側近「見た目があまりにもショボかったので、つい……王様、なんか失敗しちゃったみたいですね」
おっさん「ああ……せっかくの計画が……」
側近「魔王様と勇者を眠らせて、催眠中に結婚させてしまう計画でしたのに……」
おっさん「催眠が甘かったか……」
側近「裏で魔族と人間の友好はもう結ばれていますのにね……」
おっさん「ああ……まったく勇者はいつまでも魔王を倒す倒すと……」
側近「ええ、うちの魔王様もです……」
側近「二人が結婚しちゃえば平和になりますのにねー」
おっさん「まったくだ……はぁ……どうしたものか……」
魔王「あの程度で懐いて……」
魔王「おのれ勇者……許さない……許さないぞ……」ググッ
魔王「それに魔王城で何をする気だ……ま、まさか私の家を……」
魔王「急がないと……」バサァ
側近「あ、あの魔王様?結婚式は……」
おっさん「勇者もああ見えてなかなかいいところあるぞ?ちょっと考えてみても……」
魔王「貴様も一緒に来い!人質だ!」ガシッ
おっさん「へ?」
魔王「いくぞ!」バサッバサッ
側近「ちょっと!魔王様ー!王様はこっちですよー」
王冠「」
「これで平和になるなー!」
「魔王っていっても結構いい女じゃねーか。この幸せ者!」
ワイワイ
勇者「な……なんだこれ?」
ケルベロス「わふっ?」「がうっ?」「わんわんお?」
勇者「俺の聞き違いに違いない……」
「結婚おめでとー!」
「新婦どこだよー」
「ははは!早速夫婦喧嘩か?」
勇者「なんだこれ?」
勇者「おかしい……誰もが俺と魔王が結婚していると思っている……」
ケルベロス「わふっ?」「がうっ?」「わんわんお?」ペロペロ
勇者「そういえば飯食ってる最終に眠くなってそれから記憶が無い……」
ケルベロス「わふっ?」「がうっ?」「わんわんお?」ペロペロ
勇者「俺を混乱させる作戦か?」
ケルベロス「わふっ?」「がうっ?」「わんわんお?」ペロペロ
勇者「とにかく……魔王を倒す……それが俺の使命だったはずだ……」
ケルベロス「わふっ?」「がうっ?」「わんわんお?」ペロペロ
勇者「あー!もう!かわいいなぁ!お前らは!」
ケルベロス「わふっわふっ!」「がうっがうっ!」「わんわんお!わんわんお!」
門番「ん?勇者じゃねーか?」
勇者「むっ……」
門番「おーい!結婚したんだってな!このこのっ!」ツンツンッ
勇者「……」ビキビキッ
門番「俺も魔王様狙ってたってのによー」ツンツンッ
門番「おっ、さっそくチャッピーに気に入られたのか」
門番「魔王様も猫っかわいがりしてたからなー。お前相性いいよ」
勇者「魔族がため口きいてんじゃねえ」ガシッ
門番「ちょっ……頭離して……」ギリギリ
ギリギリギリッ
門番「つ、つぶれる……つぶれますから……」
門番「す、すんませんっした……手……離して……」
勇者「ふんっ」スッ
門番「ふぅ……死ぬかと思った……」
勇者「なんで俺と魔王が結婚したことになってるんだ」
門番「え?なんでってほらっ、この新聞」スッ
勇者「なっ……一面にデカデカと……」
門番「何かあったんですか……」
門番「どうしたんです?」
勇者「魔王の部屋はどこだ?」
門番「え?え……あー、なるほど」ニヤリッ
門番「今夜が初夜っすかー。へへへー、このエッチ!」ツンッ
勇者「ふんぬーっ!」ボゴォ
ガラガラガラッ
門番「」
魔王「追いついた!」バサッバサッ
魔王「なっ……貴様門番に何をした!?」
勇者「ちょっと眠ってもらっただけだ」
魔王「おのれ……」ゴゴゴゴゴゴッ
勇者「おっ、やるか?ここで決着つけるか?」
魔王「ああ!ここが貴様の墓場だ!」バサァ
おっさん「あ、あのわし危ないんで離してくれない?」
勇者「行け!太郎!火炎ブレスだ!」
ケルベロス「わふぅ!」ゴゴゴゥ
おっさん「ちょっ!聞けよ!あちー!」
魔王「くっ……その程度……この盾があれば……」バッ
勇者「次郎!氷結ブレスだ!」
ケルベロス「がうっ!!」ドヒュー
おっさん「寒い!」
勇者「とどめだ!チャッピー!」
ケルベロス「わんわんお!」ペロペロペロペロ
勇者「ああ、お前はかわいいなぁ」ペロペロペロペロ
魔王「NOOOOOOOOOOOOO!チャッピーに何をするー!」
勇者「いくぜ!太郎!次郎!チャッピー!」
ケルベロス「わふっ」「がうっ」「わんわんお!」ダダッダダッ
魔王「チャッピーが……汚されてしまった……」ガックリッ
おっさん「あれそんなに可愛いか?」
魔王「私のチャッピーをアレとか言うな」グイッ
おっさん「ぐぅ……くっ、くるし……」
魔王「チャッピーは小さい頃から私の癒しだったのだ……つらい時も苦しいときも一緒だった……」
おっさん「じゃあ他の2匹も可愛がってやっては……」
魔王「可愛くないからやだ」ツーン
おっさん「これじゃあの犬が勇者についていくのも分かるわ……」
魔王「そ、そうだ!勇者は!?」キョロキョロ
おっさん「もう城の中にいってしまったぞ?」
勇者「さぞかし禍々しいところなんだろうな」
ケルベロス「わふっ」「がうっ」「わんわんお!」フリフリッ
勇者「そんなにしっぽを振って……お前も怖いか」ナデナデ
勇者「悪の巣窟……この俺がつぶしてやる」
勇者「いくぜ!」
ガチャッ
勇者「なんだ……この可愛らしい……女の子の部屋?」
勇者「どういうことだ??」
ケルベロス「わんわんお?」
勇者「ここがあいつの部屋で間違いないよな?」
勇者「???」
ケルベロス「わふわふっ!」ダダッ
勇者「あ、おい、暴れるな」
ケルベロス「がうがうっ」バタバタッ
ケルベロス「わんわんお!わんわんお!」ドタドタ
勇者「ちょっ、待てって」
ケルベロス「わんわんお!わんわんお!」カプカプ
勇者「タンス開けんなって、おい」
ケルベロス「わふっ!わふわふっ!」ガシャーン
勇者「ん?なんだこれ、俺の写真?なんでこんなもんがここに……」
ケルベロス「がうっ!」ドタドタ
勇者「ちょっ……」
ヒラヒラッ
勇者「ん?これは……ブラジャーに……パン……」
魔王「勇者あああああああああああ!」バタンッ
魔王「はぁ……はぁ……私のチャッピーを……チャッピーを……」
勇者「あ、いや、これは……だな」
魔王「何を……している……勇者……」
魔王「私の下着で何を……///」
勇者「えっと……」
勇者「っていうかお前がこんなヒラヒラした可愛いもんつけんの?」
勇者「魔王がこんなんつけるとか、似合わねー。はははは……は?」
魔王「うっ……」ウルウル
勇者「お、おい……」
魔王「酷い……」ポタポタ
勇者「えー」
魔王「ううっ……」ダッ
タッタッタ
おっさん「ないわー、今のはないわー」ヒョコッ
側近「ですねー、女の子にあれはないですねー」ヒョコッ
ケルベロス「わんわんお!」
側近「ええ、心配でしたから」
おっさん「まったく勇者と来たらまったくデリカシーの欠片もないやつですまん」
側近「本当ですね。あれほどとは思いませんでした」
おっさん「酷いやつだ」
側近「酷い人です」
勇者「ドアから頭だけ出して何やってんだ、あんたら……」
おっさん「泣かせた」
勇者「うっ……」
側近「女の子を泣かせた……」
勇者「女たってあいつは魔王……」
側近「さいてーねー」
おっさん「ねーっ」
側近「魔王様も女の子なんですよ」
勇者「だっ、だからなんだ」
おっさん「泣き顔……可愛かっただろう?」
勇者「何言ってやがる!///」
側近「あー、照れた照れた」
おっさん「うい奴じゃのう」
勇者「うっさい!」
側近「女の子泣かせてそのままにしておく気ですかー?」
おっさん「責任とれー」
勇者「責任とかわけわかんねーよ!どうしろってんだ!」
側近「そんなの追っかけるしかないですよねーっ」
おっさん「ねーっ」
魔王「私だって好きでいつも真っ黒な格好や偉そうな話し方してるんじゃないのに……」ポイッ
ポチャーン
魔王「外では魔王らしくしてるだけじゃあないかぁ……ううっ」
魔王「それをあんな私の部屋荒らして……私の……見て……」
魔王「それでそんなの似合わないって……」
魔王「でも……私の……見てたってことは興味はあったのかな……」
魔王「だ、だったらどうしよう///」ドキドキ
勇者「魔王!」
魔王「!?」ドキッ
おっさん「よしいけー」
側近「がんばれー」
おっさん「さっさと押し倒して子供つくってしまえー」
側近「そうですよー、それが世界の平和のためですー」
ケルベロス「わふっ」「がうっ」「わんわんおっ!」
勇者「外野うっさい!」
おっさん「これは……?」
側近「魔王様の部屋から拝借してきたんです……」
おっさん「お、おお……立派な王冠だ……」
側近「付けてみてください///給料の3か月分です」ポッ
おっさん「装……着!」シャキーン
王様「ぴったりだ……」キラキラッ
側近「素敵っ!」キラキラッ
王様「っとこんな感じで行け!勇者!」
勇者「だからうるせえって!」
側近「魔王様あんなに目をはらして……かわいい!」
王様「それ行け!勇者!」
勇者「魔王……」ジー
魔王「な、なんだ……」ドキドキ
勇者「俺……お前のこと……」
魔王「!?」
王様「おお!」
側近「これは……」
魔王「こ、この……」
側近「ああー、また女の子に恥かかせて……」
王様「へたれ勇者ー」
勇者「それが俺の運命だからだ!」
魔王「そ、そんなこと……分かってるもん!」
勇者「もん?」
側近「もん?」
王様「もん?」
ケルベロス「わふっ?」
勇者「ああ、こんな糞犬返してやるよ!」ゲシッ
ケルベロス「わふっ!?」「がうっ!?」「わんわんおっ!?」
勇者「ほれっ、さっさとあっちいけ!」
ケルベロス「きゃうんきゃうんっ!」「がうがうっ!」「わんわんお!」グルグル フリフリ
勇者「近づくな!しっぽ振っても無駄だ」
ケルベロス「わんわんおー!」ペロペロ
勇者「駄目だ、ほらっ、帰れ」
トコトコ
勇者「こっちみんな」
ケルベロス「がうっ!」タッ
魔王「チャッピー!」ギュッ
ケルベロス「わふっ」「がうっ」「わんわんおっ」
勇者「ちゃんと他のやつにも名前つけてやれよ」
魔王「ああ……」
側近「太郎、次郎とかつけた人に言われたくないですよね?」
王様「ねーっ」
勇者「そこお願いだから黙ってろよ」
勇者「初心に戻って決着つけちまおうぜ」ゴゴゴゴゴゴ
魔王「ふっ……」
魔王「ふははははは、いいだろう!それでこそ勇者だ」
魔王「行くぞ!ジュヌヴィエーヴ!エリザベス!チャッピー!」
ケルベロス「わふっ!」「がうっ!」「わんわんお!?」
側近「なんか偉い名前付けましたね」
王様「チャッピーだけ格下な感じになってしまったな」
勇者「はぁぁ……」ゴゴゴゴゴゴ
勇者「魔王……言霊って知っているか?」
魔王「ん?魔力を言葉にこめて放つものだろう?死の呪詛なんかもその類だが……まさか!?」
勇者「はぁぁ……食らえ!」ゴゴゴゴゴゴ
勇者『俺はお前が嫌いだ!』ゴゥ
魔王「ぐはぁ!」グサッ
魔王「がっ……」グサグサッ
勇者『貧乳のくせにあのエロい下着はなんだよ!』
魔王「うぐぅ……」グサグサグサッ
勇者『似合う似合わない以前の問題だろうが!』
魔王「……」ビクッビクッ
側近「も、もうやめてあげて!魔王様のライフは0よ!」
王様「言霊でなんつーことを言うんだ、あいつは……」
ケルベロス「わんわんお?」
勇者「まだ立つか……」
魔王「今度は……私の番だ……///」
側近「魔王様がんばってー」
魔王「すーっ……はーっ……」
勇者「くっ、来るか!?」
魔王『わ、私は……』
魔王『私は勇者のことがそんなに嫌いではないぞ!///』
勇者「ぐはっ……」ズキューン
相性が良いじゃないか
勇者「おうふっ」ズキッ
魔王『それに……泣き顔を見られたことも恥ずかしかった』ゴゥ
勇者「ぬおっ」ズキズキッ
魔王『でも……嫌いに……ならないで欲しい……』ゴゥ
勇者「……///」ズキズキズキッ
王様「効いてる効いてる」
側近「魔王様もうちょっとですよー」
魔王『だから……でも……』
魔王『べ、別にお前と結婚したいわけじゃないんだからな!///』
勇者「ぐはっ///」バタッ
側近「仕留めましたよ!魔王様の言霊で!」
王様「おお!」
神父「えー、改めて勇者と魔王の結婚式をとり行う」
魔王「……勇者///」チラッ
勇者「あー、もう、かわいいな!チクショウ!」
魔王「チャッピーより……可愛い?///」
勇者「ああ、チャッピーより可愛いよ!」
ケルベロス「わふっ」「がうっ」ガブガブッ
勇者「いてぇ!こいつら噛みやがった!」
ケルベロス「わんわんおっ!」ハッハッハッ ペロペロ
勇者「お前は相変わらず馬鹿でかわいいなぁ」ペロペロ
ケルベロス「わんわんおっ!」
勇者「あー、はいはい」
神父「では近いのベロチューを」
勇者「おい」
王様「どうした勇者、ベロ入れろ。ベロ」
側近「いっちゃってください!」
勇者「神父の変更を希望する!」
神父「みんな待っておるぞ。ぶちゅーっとな」
神父「もう濃密な感じでぶちゅーと、ほれほれっ」
神父「どうした?やらないのか?じゃあ私がやっちゃよ?ええのか?それでええのんか?」
神父「では……んーっ」
勇者「うおりゃあああ!」ドガッ
神父「」バタッ
勇者「あぶねぇ……まじでやろうとしやがった……」
魔王「……勇者ぁ」
勇者「ああ、もう分かったよ!」
勇者「魔王!これでお前は俺のもんだ!」
魔王「は……はいっ///んっ……」チュッ
魔王「勇者の馬鹿!もう知らない!」
勇者「なんだってんだよ、今度は!」
魔王「今日も側近ばかりと仲良くしてた!」
勇者「いいだろ、別に。仲良くなったんだから」
魔王「もっと私を見てよ!」
勇者「あーもううるさいうるさい!」
勇者「ちょっ、物投げるな……って何投げようとしてんだ!」
ケルベロス「わふっ?」「がうっ?」「わんわんおっ?」
魔王「この……ばかー!」ブンッ
勇者「ケルベロス投げんな!おっと……」ギュッ
ケルベロス「わんわんおっ」
勇者「セーフ」
魔王「もう……もう人間なんて滅ぼしてやるーーーー!」
側近「はぁ……また痴話喧嘩ですか……」
王様「はぁ……なんだ?まだ家追い出させたのか?」
勇者「王様……人類は危機にあります……」クッ
王様「痴話喧嘩に人類巻き込むなよ」
勇者「相手はあの魔王です……このままでは……」
王様「あのさぁ……」
勇者「でも安心してください!俺とこいつが絶対に倒して見せますから!」
ケルベロス「わふっ!」「がうっ!」「わんわんおっ!わんわんおっ!」フリフリ
王様「帰って謝ってくればいいだろ?」
勇者「ふっ、見ていろ……人間の底力をみせてやるぞ……」
王様「いや、ほんともう迷惑なんて帰ってくんない?」
勇者「俺たちの冒険はこれからだ!」
おしまい
Entry ⇒ 2012.05.21 | Category ⇒ 勇者魔王「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
れいか「みゆきさんと」なお「あかねが」やよい「喧嘩?」
やよい「うん……私達にも普通に、おはよう、って。挨拶してくれたよ?」
キャンディ「そりは多分、まだあかねが来てないから、クルぅ……」
れいか「いったい、何があったの?キャンディ……あら」
ガラッ
あかね「おっはよーさーん」
やよい「あ、あかねちゃんが入ってきたよ……あ」
みゆき「あっははー、ハンカチ忘れちゃったぁ……」
なお「あ、そこに丁度みゆきちゃんが……」
あかね「……」
みゆき「……」
なお「……あぁー」
やよい「ふ、二人とも……黙っちゃった」
れいか「お互いに、険悪な顔をしているわ……」
キャンディ「クルゥ……」
みゆき「」
やよい「み、みゆきちゃんの『はっぷっぷー顔』以外の不機嫌顔って、初めてみたよぉ……」
なお「うん、だからってスケッチはやめようね、やよいちゃん」
みゆき「日野さん、早く入ってよ。入り口塞がれてたらみんな迷惑だよ?自分のことしか考えない、さすがは関西人でおまんがな」
あかね「」ビキッ
れいか「あ、あかねさんのこめかみに、絵に描いたような怒りの印が」
やよい「煽りが強烈だよぉ、みゆきちゃん」
みゆき「ぷん!」
なお「二人ともそっぽ向いて、自分の席戻っていくね」
みゆき「……着いてこないでよ!」
あかね「自分こそ、うちの前歩かんといてんか!」
なお「いや、席前後でしょあんたたち……ほんと、なんでこんなことになっちゃったの?キャンディ?」
れいか「昨日の、学校までは。あんなことはなかったはず。ということは、放課後に何か……?」
やよい「私達は部活と生徒会で、昨日はみゆきちゃんとあかねちゃん、それにキャンディだけで秘密基地に行ってたんだよ、ね?」
キャンディ「クルゥ……実は……」
あかね『そのロマンをうちに求めんといて……みゆきの絵本も増えよったなぁ、ここ。よ、っと!』
みゆき『えっへへー、まぁね……おぉー!あかねちゃんのコテ返しスペシャルだぁー!すっごいね!あっという間にお好み焼きが二枚ひっくり返ったよ!』
あかね『ふっふふ〜ん、もっと褒めたってー!っと、キャンディは寝てもうたから、とりあえずー二枚でよかったんやよなー?』
みゆき『うん、私が絵本読んであげてたら、眠っちゃったんだよね』
キャンディ『クルゥ……』
あかね『なーんや、子供みたいやなキャンディて』
みゆき『えへへ、そだね。家族から離れて頑張ってるけど、キャンディもまだまだ子供だもん、私がしっかり面倒みなきゃ!』
あかね『ぷっ、みゆきがしっかり面倒、なぁ?おもろい冗談ですことー』
みゆき『なにそれもー、はっぷっぷー!』
あかね『はっはは、すまんすまん。っと、うち先に片付けとくさかい、みゆき食べといてんか。コゲは早うとっといたほうがえぇし』
みゆき『うん、それじゃいっただっきまーす!』
キャンディ『クル、クルゥ……いいにおいが、するクルぅ?』
みゆき『あ、キャンディ起きた?あー、もう少し早く起きてくれればよかったのにー』
キャンディ『クル?あ、みゆきずるいクルぅ!キャンディもお好み焼き食べたいクルー!!!』
みゆき『あー、ちょっと待っててね?今あかねちゃんを……』
キャンディ『あり?なーんだ、キャンディの分もとっててくれたクルゥ?ありがとークルー!はむっ!はふはふっ!』
みゆき『あっ……あー……』
なお「……」
やよい「……」
れいか「……キャンディ?きっと今ならまだ……」
キャンディ「ま、待って欲しいクル、話はまだ続くクル。キャンディが悪いわけじゃ、いや分かってるクル。キャンディも、この後ちゃんと謝るクル、待って欲しいクル!!!!」
キャンディ『クルッ!?』
みゆき『あーいや、私達もキャンディの分を先に作っておけばよかったんだよね、うん。ごめんごめん』
キャンディ『クルぅ……あかねに謝るクル』
みゆき『あっはは、大丈夫大丈夫!ちゃんと謝れば、みんな仲良しハッピーになれるから!あかねちゃんがお好み焼き作る、きらきらしてるとこも見れるしウルトラハッピーだよ!……あ、あっかねちゃーん』
あかね『おっこのーみやーきやーでー♪お、なんやキャンディ起きたん?早かったな眠りの浅さもやっぱり子供みたいや……れ?』
キャンディ『あかねぇ、ごめんなさいクル……』
あかね『あー、そか。食べてもーたか?や、かまへんかまへん。ホットプレートはなおしてもーたけど、すぐに出せるさかいな』
みゆき『そうだよね』
みゆき『お好み焼き“くらい”、また焼いちゃえば……』
あかね『……は?』
みゆき『?なに、あかねちゃん?』
あかね『お好み焼きくらい、て。なんやねん』
みゆき『え?』
あかね『自分、今、うちのお好み焼きを馬鹿にしてゆーたやろ、なぁ』
みゆき『え、あ、そう?そんなつもりじゃ、なかったんだけど……』
あかね『……事情が変わったわ。なんやの、人のお好み焼きとっといて、その態度』
キャンディ『く、クルッ!?ご、ごめんなさいクルあかね!キャンディ、手伝うくr』
あかね『いや、キャンディにゆうたんちゃう。あんたやあんた、みゆき。あんたがちゃーんとキャンディに説明しとけば、こないなならんかったやろが』
みゆき『え?え?わ、私のせいなの!?』
みゆき『え、えぇ!?それがなに!?』
あかね『そっからなーんもキャンディ成長してへんやん!あんたが面倒みてやんとちゃうんかこら!それとも、なんや!?飼い主ににたんかのーえー!?』
みゆき『はっぷっぷー!あかねちゃんおかしいよ!なんでこんなことなんかで、そんなに怒られないといけないのっ!?』
あかね『なんか、てなんや!こちとら人生馬鹿にされとんのや!』
みゆき『だ、だからそんなつもりじゃなかったんだってばー!』
あかね『んなもんで済まされるかい!キャンディが、どこぞの野良みたくなってもーたらどないすんねんアホ!!』
みゆき『あ、アホって言った方がアホだもーん!きゃ、キャンディは私がちゃーんと面倒みてるもん!!!』
あかね『せやから、その結果がこれやーゆうとるんやろが!!!』
やよい「……なんだか、拾った子犬とか子猫のことで揉めるおかーさんと娘、みたいだね」
なお「あたしもそれ思った」
れいか「この流れならば、どちらかが冷静になって謝れそう、ですが?」
キャンディ「ま、まだあるクル……あとキャンディは犬猫じゃないクル」
みゆき『私はキャンディとはとっても仲良しだし、そのことについて責められる筋合いはないよ!?大体、あかねちゃんのそれ八つ当たりでしょ!?お好み焼き食べられちゃったことのっ!』
あかね『っ、そんなんとちゃう!うち、うちはなぁ!』
みゆき『材料はあるんだから、作ればいいじゃん!そうすれば、すぐに……』
あかね『まだゆうかこら!あんた、うちのお好み焼きをなんやと思って……!』
キャンディ『っ!二人とも、喧嘩をやめるクルーーーーー!!』
あかね『キャンディは黙っといてんか!!!!』
ダンッ! グラッ ベチャッ!!
みゆき『あ……あぁああああーーーーーー!!』
キャンディ『く、クル!?』
あかね『し、しもた、ソースが倒れて、もーて……みゆきの、絵本に』
あかね『あー……す、すまn』
みゆき『……あかねちゃんの馬鹿!!!怒ったからって、物に当たらなくたっていいじゃない!!』
あかね『なっ、う、うちかてわざとちゃうわ!な、なんや、そもそもやな、そないなとこで絵本広げとくほうが悪いんやろ!!』
みゆき『絵本は悪くないもん!!!返してよ!私の、私のピータァパァン!!!』
あかね『当たり前や、悪いのは片付けへんかったみゆきやーゆうとるんや!なんや、絵本の一つで子供みたいなこと言いよって!どーせもう何度も読んでんのやろ、えぇ機会やから卒業しー、そないなもん!』
みゆき『あ、あかねちゃんには分かんないよ!私が、私がどれだけこれを大切に、馬鹿、ばかばかばかーーーーー!』
あかね『みゆきかて、うちのことなんも分かってへんやんか、な、なんやねん!なんやねんもーーーー!!』
みゆき『なんやねんてなんやねん!!大体、なんでお好み焼きなの!?私、もんじゃの方が好きなのに!!』
あかね『は、はぁあああああ!?!?あんなゲ■みたいなもんのどこがえぇねや!みゆきこそピーターパンてなんや!あんた将来、どーしよーもない男にひっかかってまうでアダルトチルドレンにやなー!』
みゆき『子供の心いいじゃん!何がいけないの!!』
あかね『なにがなにがてうっさいねん!このさいやからゆわしてもらうけどなぁ!みゆきはなぁ!!』
みゆき『それを言ったら、あかねちゃんだって!!!!』
キャンディ『く、クル、クルぅ。みゆき、あかねぇ……』
キャンディ『……はい』
キャンディ「……今に至る、クル」
なお「あー……お互いが、お互いにうっかり相手の大事なものを」
やよい「うーん……どっちの言い分もすこーしは、分かるけど。ちょっと意地張りすぎ?」
れいか「ですが、簡単にはいかなそうですね」
みゆき「つーん!」
あかね「ふんっ!」
れいか「そうね。もうすぐ授業が始まるから、今すぐにとはいかないけれど」
やよい「うん。でも、二人とも単純だから、時間がたったら元通り、だったりして?」
なお「言うね、やよいちゃん……そうなってくれれば、ありがたいけどね」
キャンディ「みんなごめんクル。キャンディが……キャンディは駄目な妖精クル」
れいか「……よく頑張ったわね、キャンディ?きっとあなたがいなければ、二人はもっといがみあってたかもしれないわ?」
キャンディ「……そう、クル?」
なお「うん。さ、ここからはみんなで仲直りのために頑張ろう?ね?」
やよい「波乱の喧嘩回も、みんなで乗り越えれば怖くないんだよ!」
キャンディ「クルッ!」
鬼「うむむむむぅ」
狼「ウ〜ルルル〜、俺様ウルフルン〜♪……あぁん?アカオーニ、どうした珍しく難しい顔しやがって」
鬼「ちょっと勉強中オニ、邪魔するなオニー」
狼「てめぇが、勉強?はっ、こりゃぁ明日は酸性雨だな……ってぇと、あれか?こないだクソジョーカーがでしゃばって渡してきた、あの分厚い紙の束でも眺めて……?」
『泣いた赤鬼』
狼「」
鬼「……俺様が悪になった原点を思い出して、すこ、少しでも力を……」
狼「もうやめろ!てめぇ自身がバッドエナジーに囚われかねねぇだろうが!!!」
狼「だから、凹んでんじゃねぇよ、ったぁく……どっかで元気にしてんだろ。聞いた話じゃ善人、いや善鬼か?らしいから、ひょーっとしたらのたれ死んでっかもだけど、なぁ」
鬼「どっちオニ!?」
狼「知るかってーの。ほら、これやるよ。ババア風に言えば『プレゼント・フォー・ユー』だ」
鬼「赤っ鼻、オニ?でも俺様は、こないだの出撃で手持ちは……」
狼「やるっつってんだろ。それで一暴れして、スッキリしてきやがれ馬鹿が。てめぇがしょぼくれてちゃ、張り合いがねーんだよ
鬼「……オニ!そうするオニ!ウルフルンは羽鳥の次に良い奴オニー!」
狼「悪い奴に決まってんだろ黙れバーカ!」
ジョーカー「おぉーぉぅ、うーるっふるんさぁ〜ん!っふふぅん、ツンデレとは世のトレンドを分かってらっしゃぁる〜!」
狼「キモいからやめろクソジョーカーが」
佐々木先生「それじゃ、始めます。教科書は……」
あかね「……あ、しもうた。あれ入れたから、うっかり……せ、せんせ!すんませーん!日野ちゃん教科書忘れてしまいましたーぁ!」
佐々木「……せめて真面目にあやまりなさーい!もう」
アハハハハハハハハハハ!
あかね「は、ははー、かなわんわーせんせには……」
みゆき「……ぷっ」
あかね「……なんや。うちが忘れものしたんが、おもろいんか」
みゆき「べっつにー、何も言ってないもーん。はっぷっぷーだ」
あかね「……ふんっ!」
みゆき「ぷんっ!」
れいか「……(思っていた以上に、溝はふかそう、ですね)」
やよい「……(『あかねちゃんの気持ちが少し変われば……ね?結び合う……』よし、これでいこう。磁石探しておかなきゃ!)」
れいか「えぇ……どうやらお互いの一挙動が、全て自分を貶めるものだ、と、思うようになっているみたい」
やよい「あ、そんなことになってたんだ」
みゆき「……」ゴソゴソ
キャンディ「クル?みゆき、そりなにクル?」
みゆき「あ、うん。えっとね……あ。あの、ひnちが、あかねt」
「あかねー、ちょっと今日の練習のことでさー」
あかね「んー、すぐ行くわー!」
みゆき「あ……」
あかね「……なんや、星空さん早弁でっかー?二時間目も始まってへんのに腹ペコハッピー、こら傑作や」
みゆき「ち、ちがうもん!早く行きなよ、エース“候補”さん」
あかね「……ふん!」
みゆき「ぷん!」
なお「……一々とげがあるね、二人とも」
れいか「まずはみゆきさんから、説得しましょうか」
みゆき「あ、れいかちゃん、みんな……えーっと、キャンディが話したの?」
キャンディ「クルぅ……ごめんなさいクル」
みゆき「あ、ううん!あのね、私も困ってて。私今まであんまり、お友達と喧嘩、って……したこと、ないから。はは」
やよい「みゆきちゃんも、仲直りしたい、って思ってるんだ!よかった」
なお「じゃぁ、話は簡単だよ。一緒に謝りにいこう?ね?」
みゆき「で、でも……あかねちゃんが先に、怒り出したんだよ?私から謝ること、なのかなぁ?」
れいか「……それは」
なお「みゆきちゃんは、あかねに謝ってほしい?」
みゆき「……うん」
なお「じゃ、もっと簡単だね。あかねに『私は悪くないから、謝ってください』って。言いにいこっか」
なお「……言えないってことは、みゆきちゃんはもう分かってるんだよね?」
みゆき「……ごめん。ごめんね。私も悪い、私の方が、悪いって。分かってる、うん。だけど、あかねちゃんに……あかねちゃん、きっと怒ってて。許して、くれないよ」
やよい「……大丈夫だよ、みゆきちゃん。あかねちゃんが、本当にみゆきちゃんのことを嫌いになるはずなんて、ないもん!」
れいか「そうですよ。あかねさんも、意地になっているだけです。まずはみゆきさんの方から、歩み寄りましょう?ね?」
みゆき「でも、で、も……」
キャンディ「みゆきっ!みゆきは、昨日。あかねのお好み焼きを食べたキャンディに、言ってくれたクル」
みゆき「え……?」
キャンディ「ちゃんと謝れば、みんな仲良しハッピーになれるクル!……そうクル?」
なお「あー、ごめんね、答えを迫っちゃって。ほら、まだ一日は長いしさっ。もう少し考えてからにしようか?」
みゆき「……うん。ありがとう、ありがとうみんな、ごめんね?」
れいか「いいえ、気になさらないで。辛いのはみゆきさんなのですから」
やよい「みゆきちゃん、スマイル、スマイル!ねっ!?」
みゆき「……うんっ。ぐすっ」
キャンディ「……みゆきぃ」
みゆき「ぐすっ。キャンディも、ありがと。でもちょっと、ぐすっ。一人にして?」
れいか「そう思う?小さい弟妹たちの喧嘩を日夜仲裁し続けて早十四年の、喧嘩師のなお?」
なお「れいか、それ喧嘩する人みたいになってるから。うん、みゆきちゃんってほら、けっこう気にしだすと、とことん落ち込むタイプじゃない?」
やよい「うん。ふっきれると、すっごくまっすぐなんだけどね」
キャンディ「クルぅ……」
なお「あかねにこれ以上嫌われたくない、っていうのが邪魔して、謝ることが出来なくなっちゃってるよ」
れいか「……あのままでは、何も進展しないわ。それどころか、かえって悪化してしまうのに」
なお「そこが、本人としてももどかしいとこなんだ、きっと。でも、なんだか自分で打開策を見つけてる気がするけどね、みゆきちゃんは」
やよい「?そうなの?」
なお「うん。それじゃ、あかねのとこ行こうか」
キャンディ「クル!今度こそキャンディ、役に立つクル!」
あかね「……あ、すまんすまん。なーんや春の陽気に誘われてもーて、あっはははー!」
「もー、しっかりしてよねー」
「あ、あれじゃないあかね?ひょっとして、星空さんがうつった?」
あかね「……は?」
「ほらー、最近星空さんと仲いいじゃん、あかねって」
「あの子のハッピーがうつったんじゃなーい、って!ははは!」
あかね「……全っ然、おもろないな、自分」
「は、は……え?」
あかね「それ、うちにゆうのはどういうつもりなん?みゆきがなに?馬鹿にしとんの?」
「え、あ、いやほら、あかねさっき、星空さんとなんか険悪だったし……」
あかね「それで、あんたがみゆきを馬鹿にしていい道理になるんかこら。あんまいちびってんとちゃうぞこの……」
なお「あーかねっ。どうどう」
あかね「んなっ、なんやなお!離しーこの、っちょやめ、制服伸びるやろがー!」
「あ、青木副会長……えぇ、もう終わったわ」
やよい「えっとね、あかねちゃんはちょっと機嫌が悪いだけだから、あんまりさっきの……」
「あー、うん。私もちょっと言い過ぎたよ」
あかね「そ、れ、を!うちにゆうな!みゆきに……!」
なお「はいはい、あかねこそあかねが言うな。さー、こっちこっちー」
あかね「だから離せっちゅーのに!わこうたから、もう暴れへんて!!」
あかね「……あれは、陰口叩いとるのが腹たっただけや。みんなかて同じことゆうやろ、きっと」
れいか「えぇ。私達は仲間ですから。それで、あかねさん?仲間なら、私達のいいたいことも分かっていただけます、よね?」
あかね「……なんや、みゆきが泣きついてきたんか。けったいやなぁ」
キャンディ「キャンディが、みんなに話したクル……あかね、ごめんなさいクル。みゆきを許して……」
あかね「何度もゆーとるやろ、キャンディがどうこう、っちゅー話やあれへん。みゆき自身の問題や、これは」
なお「あかねも、でしょ。意地はっちゃってさ」
あかね「意地ちゃうし、うちのは正当切れや」
なお「それが意地なんだってば。もー、みゆきちゃんに言ったのと同じこと言わせたいの?」
あかね「なんやもう、さっきからみゆきみゆきて……あんたら他に友達おらんの?」
いいよね
やよい「……」
なお「……」
キャンディ「……」
あかね「あ、ちゃうな。うちらの他に友達おらへんのは、みゆきの……方で……」
なお「あかね」
あかね「……」
なお「本気で言ってるなら、あたしはあかねを迷わずぶん殴る」
あかね「……ごめん。うち、最低や。さっきあの子に怒ったこと、ゆえへんやん……アホか、うち」
れいか「……あかねさん。仲直り、しましょう?今のあかねさんは、無理して、とても無理して怒っているようにみえて。とても、辛そうです」
あかね「……」
やよい「あかねちゃん、あかねちゃんがちょっと勇気を出してあげれば、きっとみゆきちゃんは……」
あかね「……うちな」
あかね「みゆきがお好み焼き食べるとこ見るの、好っきゃねん」
あかね「ほんま美味しそうに食べよるし。せやのに、みゆきにあないなゆわれてもーて」
れいか「……」
あかね「したら、なんや自分でもわけわからへんくらい、頭に血ぃが、な……」
やよい「……」
あかね「つまらん意地や、わかってんねん。でも、うちもみゆきの、大事なもん……もう、どの面下げて……あやまればえぇねん、なぁ!」
れいか「それでは、このまま拒絶し続けるのですか?」
あかね「わかっとる、わかっとるんや、うちがアホで間違うてることくらい!でも、でも……」
キャンディ「あかねぇ。みゆき、キャンディに言ってたクルぅ」
あかね「……なんや」
キャンディ「みゆきも、あかねのお好み焼きが。あかねがお好み焼きを作るのを、見るのが好き、って。きらきらしてて、ウルトラハッピー、って。言ってたクルぅ」
キャンディ「仲直り、してほしいクルぅ。キャンディ、キャンディは……」
やよい「……もういいよ、キャンディ。頑張ったね。はい、ハンカチ」
れいか「……あかねさん。お昼休みに、待ってます。いつもの場所で」
なお「みゆきちゃんと一緒にね。あかね……ちょっと頭冷やしてから、おいでよ。ね?」
あかね「……おーきに、や、おーきにちゃうわ……大きな世話や、自分ら」
なお「ほんっと、手がかかって困るよ」
れいか「あとは、お二人自身で考えてもらうほかありません。……それで、駄目なら」
なお「緑川家伝統の、二人っきりで真っ暗な納屋に一日中閉じ込める、といこう、うん」
やよい「す、すっごく効果がありそうなのがいやだね……よーし、私、二人が絶対仲直りできるように、漫画を描いちゃおっ!」
れいか「漫画、ですか?」
やよい「うん!可愛いイラストで、二人が仲直りしてる場面を!」
なお「よく分からないけど、二人がそれで和むならいいよね。お願いできる?」
やよい「任せて!えーっと『喧嘩は〜〜〜〜』っと……」
あかね「……」
みゆき「……」
やよい「……け、険悪ムードからお通夜に変わっている……」
なお「来てくれただけよしとしようか……えー、オホン。二人とも?」
れいか「お二人とも、何かお互いに言いたいことがあるのでは、ないですか?」
あかね「……うちは……べ、別に。星空さんのーが、なーんかあるんとちゃうのー?」
なお「……ひっぱたいてやろうかこいつ」
やよい「な、なおちゃんどうどう、抑えて抑えて」
みゆき「わ、私は……ない、もん。日野さん、には……なんにも」
なお「……じゃあなんで二人ともここ来たのさ、筋が通ってないよ、筋が!!」
れいか「……なお、落ち着いて。お二人とも、お弁当のほかに鞄まで持ってきたのには、何か理由がおありですか?」
あかね「……」
みゆき「……」
なお「あ、突然の突風でやよいちゃんの描いた漫画が空へ!?」
れいか「なんという悲劇でしょう」
やよい「わ、私の絵ってなんだか毎度こんな扱いな気がするよぉー!?」
あかね「……」
みゆき「……」
やよい「そ、そしてこの空気。どう、どうすれ、ば……」
鬼「良い子はいねーがー!俺様が食っちまうオnうぉ!?なにオニこの紙は!?なんだか前もこんな目にあった気がするオニー!」
鬼「……真ん中に涙目のピースと、そっぽ向いてるピンクいのと橙の、オニ?」
鬼「それで、ピースが……喧嘩は駄目だよぴかぴかりん☆……って、言ってるオニ?」
鬼「……」
鬼「……喧嘩、オニ?」
あかね「!?」
みゆき「!?」
れいか「なお、まだ早いです。最終手段はまだ早いですから」
キャンディ「みゆきぃ、あかねぇ。二人とも、どっちも大好きなはずクルぅ。お願いクルぅ」
やよい「みゆきちゃん、あかねちゃん……け、喧嘩はだめだy……だ、駄目だ、この空気ではさすがにあれは、言えない、うん」
あかね「……なんや、外野がわーわー、ゆうとるけど。みゆ……星空さん」
みゆき「……なに、あか……日野さん」
あかね「うちは、謝る気はあらへん。それだけ、言いに来た」
みゆき「っ。そ、そっか。うん、それじゃ、私だって。お、同じだよ、はっぷ、っぷー」
あかね「……せやけどな、せやけど。これだけはあんたに……」
鬼「世界よ!最悪の結末!!バッドエンドに染まるオニ!」
れいか「この声は……!」
鬼「白紙の未来を、黒く塗りつぶすオニー!」
やよい「お、お空が暗く……お、鬼さんだー!?」
鬼「人間どもの発したバッドエナジーが、悪の皇帝ピエーロ様をよみがえらせていくオニー!お、プリキュアいたオニー?」
あかね「……いたオニー、やあれへんやろ。ここはうちらのがっこや、なに晒す気やあんたらは何度も何度も」
みゆき「……学校の、人たちが」
「一生昼休みがいい……」「部活なんてしたくない」
「午後一の体育は吐ける……」
キャンディ「み、みんな!とにかく変身クルー!」
あかね「やよい、ちょっと」
やよい「よ、よーし……え?な、なに?あかねちゃん」
あかね「ちょっと、立ち位置変わってんか。やりづらい」
やよい「えっ、っちょな、お約束は崩しちゃだめだよ!?そんな、あ、あかねちゃーーん!?!?」
プリキュア!スマイルチャージ!
ピース「あ、えっと!ピカピカぴかりん☆じゃん、けん、ぽん!キュアピース!」
サニー「……太陽サンサン、熱血パワゥァ!キュアサニェー!」
マーチ「勇気凛々、直球勝負!キュアマーチッッ!」
ビューティ「深々と降り積もる、清き心。キュアビューティ!」
五つの光りが導く未来
輝け!スマイル?プリキュア!
サニー「……ハップィーやて(笑)」
ハッピー「……人のこと言えないよね、サニェーさん(爆)」
マーチ「ちょっとサニー、ハッピー!何やってんのこんなときに!」
鬼「……ふんっ、これはピースの嘘じゃなかったオニね……アカンベェ!!こいオニー!!」
やよいの漫画「」ギュワンッ!
アカンベェ「アカーーーンベェーーーー!」
ビューティ「あれは……白黒の大きいハッピーに、赤っ鼻が!?」
サニー「えぇから集中しー、大差あれへんし」
ハッピー「……もう!なんなのサニー!大体、サニーは!!」
サニー「なんや、文句なら後にしーや!今は……!」
マーチ「後にするのは二人ともだよ!何やってるのさっきから!!!」
ビューティ「お二人とも、先程まではまだ許されます。ですが、気持ちは切り替えていただかないと……」
ピース「そ、そうだよハッピー!サニー!みんなで協力、しないと……!」
キャンディ「クルッ!?ピース、マーチ、ビューティ!背中を見せちゃ駄目クルゥウウ!!」
アカンベェ「アーーーッカァーーーン!!!!」
マーチ「っ!な、なにこれ!へんなので拘束、もう!!」
ピース「ふぁぁ!?ね、練りけしで動きが、できなく!?」
ビューティ「くっ!油断、しました!」
ハッピー「あ、み、みんなぁ!だいじょうぶ……」
鬼「ピンクいのを、掴み挙げるオニ!アカンベェ!!」
ハッピー「え、わ、わぁああーー!?」
サニー「あんま、調子こいとるんとちゃうぞこら!まだ、うちがおるやろ!」
鬼「そうオニ、お前さんだけ残って、ピースと緑のと青いのは拘束。それで、ピンクいのはアカンベェに締め付けられてるオニー」
ハッピー「っく、ぁ、ぁあ!」
サニー「!ハッピー、い、今……」
鬼「助けるオニ?喧嘩している相手を?」
鬼「どうでもいいオニ。お前は喧嘩しているこのピンクいのを、本心から助けたいオニ?怒って、腹が立って、大っ嫌いで!!いなくなればいいって思ったはずオニ?それでも助けるオニ?」
サニー「……」
鬼「バッドエナジーの高まってるこの場所でくらい、素直になっちまえばいいオニ!絆なんて、友情なんて脆いものオニ!たった一度の喧嘩で台無しに、そんなもんなんだオニ!!お前も分かるはず、今のお前の!!心なら!!!」
サニー「……うちの、心」
ハッピー「さ、にぃ……」
マーチ「サニー!サニー!!」
ビューティ「はや、く、ハッピーを!」
ピース「サニー、お願い……!」
サニー「……せやな」
鬼「そうオニ。お前は憎んだハッピーを、見捨てれば。それで……」
サニー「あんまアホぬかしなや、このどアホがぁああああああ!!!!!!!!!!!!」
アカンベェ「あ、アカァアアアン!?!?!?」
ハッピー「わぁ!?あ、あれ、私は熱くないや」
サニー「ハッピーいまや、飛び降り!!!」
ハッピー「う、うん!っ、っとと……サニー、その」
サニー「後や!ドたまにきたで、この赤ら顔!!いてこましたらぁ!!」
鬼「……何故オニ?俺様は、人間の負の感情もよく分かるオニ。さっきのお前さんは、揺らいでこそいたけど本心からそこのピンクのに怒ってたはずオニ。なんで、助けてやるオニ!」
サニー「あぁ、なんや、喧嘩で絆がどーたら、か?だからアホぬかすなゆーとるんや……」
サニー「うちらの、友情が!!たった一度の喧嘩で壊れてまうわけ、ないやろが!!!」
サニー「あぁ、そや!うちは意地はって!!ハッピーにひどいことばっかゆうとった!!」
アカンベェ「あ、アカァン、アッカァンッ!!」
サニー「っ!!!けどなぁ!!本当は、本当は!!腹たってたんは、ハッピーにちゃう!!!あないなことしかゆえん、アホな自分が!!なにより……っだぁああっらぁあああ!!」
アカンベェ「あ、ッカンッ!?」
サニー「なによりむかついて、こんな自分はもう、ハッピーに、って……!!!」
サニー「見捨てるやと!?!?嫌うやと!?!?アホぬかすなアホ!!!!嫌いな相手にここまで考えるかい!!!!!いらんツッコミさすなやっ!!!!」
サニー「喧嘩、しとっても!うち、うちは!!!ハッピーが!!!!!」
アカンベェ「アァァ……ッカーーーーーン!!!」
サニー「っ、し、しもt」
ハッピー「ったぁああああああああっっ!!!!」
アカンベェ「!?!?あっかーーーんっっ」
サニー「は、ハッピー……助けてくれたんか」
鬼「オニ!おかしいオニ!お前も、お前も!!喧嘩してたくせに!どうしてオニー!」
ハッピー「そんなの、決まってる……私も、サニーと同じ気持ちだったからに、決まってる!!」
ハッピー「他の人なら、あんなに怒らないもん!悲しくならないもん!!!」
ハッピー「喧嘩になるのは、仲が悪いからってだけじゃないの!!!仲が良いから、喧嘩になることだってあるんだもん!あなたには分からないかもしれないけど、私は!!!」
ハッピー「私は、サニーが、あかねちゃんが大好きだから!!!」
ハッピー「だから、喧嘩なんかで……私達は、ばらばらになんてならない!!!!」
ハッピー「この喧嘩は……ウルトラハッピーエンドのための、たったの一幕なんだから!!!!」
ハッピー「私とあかねちゃんは、もっともっとこれから!!!!ハッピーなことが待ってるに、決まってるんだからぁ!!!」
ハッピー「うん!はっ、たぁああ!!!!」
アカンベェ「アッカ、アカァンッッッ!?!?!?」
鬼「ぐっ、な、なんであんなに息の合った動き、認めんオニ、俺様は、俺様は認めないオニ!!!」
サニー「いくで、みゆき!!!巧く上げぇやー!!」
ハッピー「うん!あかねちゃん!!!」
マーチ「……なんだか二人で盛り上がって、二人で解決しちゃったね、はぁーぁ」
ビューティ「ふふっ、よかったじゃない。より一層、深い絆になったみたいだし」
ピース「あれは……合体必殺技!?っひゅー!二人ともわかってるぅー!!」
サニー「サニィーーー……」
ハッピー「ハップィー、シャワーーーァ!」
サニー「ファイヤーーーーーーーーッ!!!!」
鬼「!?!?橙のが出した炎の球をピンクいのが技で打ち上げて、上乗せされたでかい球を橙のが打ちこんだオニ!?そんな、そんなもんをなんで一発でできちまうオニーーーー!!!」
サニー「んなもん、きまっとるやろ!」
ハッピー「友情パワゥァ!だよね!!」
アカンベェ「アカァァン べエエエェェェェ……」
鬼「……ふん!知らんオニ、そんなくだらないもの!!!」シュンッ
キャンディ「空が元に戻ったクルぅ。デコルも手に入ったし、みゆきとあかねも元通り、クル?」
あかね「……せやな。や、もうちーっと、残っとるか」
なお「はぁ、やっとこれで……え?なに?」
みゆき「……そうだね。私、まだ。あかねちゃんに、謝れないよ」
やよい「一件落着……えぇ!?」
れいか「やよいさん、なお?答えは、お二人の鞄にあるみたいよ?」
あかね「……れいかには叶わへんわ、ほんま。……あ、あんな、みゆき。あの、渡したいもの、あるねん」
みゆき「……私も。あの、先に!先に渡させて!?元はと言えば、私が……えっと、こ、これ……」
やよい「?あれ、どうしてもう一つお弁当箱持ってきてるの?みゆきちゃん?」
なお「……あ、それ中身、まさか……」
あかね「……」
パカッ
みゆき「え、えへへ。下手っくそだけど……お好み焼き。作ってみたんだ」
みゆき「……全然、上手くいかなかったよ。あかねちゃんみたいには」
みゆき「……だよね。あかねちゃんが、これまでいーっぱい頑張ってきたこと、とか。私、私……あの、ごめんなs」
あかね「……」
パクッ
みゆき「あ……」
あかね「……中まで火ぃ、通ってへん。具材もてんでバラバラや。こんなもん店で出したら、一日でつぶれてまうで」
みゆき「……」
あかね「……でも、なんでやろな。こんな美味いお好み焼き、うち、初めて食べたわ。みゆき、あんたが言いかけたこと。うちがこれゆうてからにしてくれへん?」
あかね「おーきに、みゆき」
みゆき「うんっ、うん!!」
みゆき「?アルバム、かな?開けていい?」
あかね「……笑うんちゃうで、や、笑らかすのは関西人の本望やけど、ほんまもう……」
みゆき「あ……」
あかね「う、うち、やよいみたく絵ぇ上手ないし!れいかみたく字も上手く書けへんし!なおみたく器用でもあらへんから、なんや、けったいなもんなってもーた、けど!」
みゆき「……あかねちゃん、手づくりの。絵本?」
あかね「……オコノミマンの冒険や。わ、笑いー、存分に笑いやもう、こうなったら」
あかね「あー、そぉやぁ?食べごろ出来立てはユラユラ揺れよるから、あんま上手く飛べへんねん」
みゆき「……ふふっ」
あかね「それ、描こ思うてな。図書館行って、なんや、ごっつ久々に絵本コーナーなんか行ったわ。は、恥ずかしかったでもー」
みゆき「楽しかった?」
あかね「恥ずかしかったゆーとるやろ!で、でもな……なんや、こういうのも悪くないな、思えたわ」
みゆき「あんまり、活かされてないけどね、ふふっ」
あかね「う、うっさいわ!どーせ下手くそやわるいか!」
みゆき「うん、お話もコロコロ変わるし、1ページごとに主役の見た目が様変わりしてる、けど」
みゆき「私、こんなにあったかくて。すごく、すごくいい絵本。初めて、読んだよ?あかねちゃん?ずっとずっと、大事にするね」
みゆき「ありがとう、あかねちゃん!」
あかね「……うん」
みゆき・あかね「「ごめんなさい!!!」」
なお「敵に塩を送る、あんたの行動も大概だと思うよ?」
鬼「オニっ!?!?な、なんで俺様がまだここにいるって分かったオニー!?か、完璧に隠れていたはずオニー!?」
キャンディ「クっクっクルぅ。こういう時にキャンディが役に立つクルぅ〜」
れいか「そうでなくとも、虎柄のお下着がはみ出ていましたけどね?」
やよい「ふふふっ。鬼さん、なんでかは知らないけど。二人が喧嘩をやめるように、協力してくれたんだよね?」
鬼「ピースたnゴホン!!!な、なんのことか知らんオニ!俺様はそんなもん、興味ないオニ!……ただ」
鬼「……悪の俺様にだって、仲間がいなくなるとどれだけ大変かくらい、わかるオニ。お前さん達には強くあってもらわないと張り合いがない!それだけオニ!ふん!!」
なお「あ、っそ。はははっ。あんたいい奴だね?」
鬼「ふざけんじゃないオニ!俺様は悪い奴オニっ!!〜〜〜っ!帰るオニー!次会う時は、絶対絶対コテンパンの泣いたプリキュアにしてやるオニーーー!!」
やよい「あ、走って行っちゃった……鬼さーん!ありがとーっ!ぴかぴかぴかりん☆」
鬼「じゃんけんぽn言わすなオニーーーーーーーーー!!!!」
20話当たりでやってもおかしくないぞ
みゆき「えー、そう?私は、へへへぇ、嬉しかったよ?あっかねちゃーん!」
あかね「抱きつきなやっ!がっこのど真ん中でなにさらすんじゃーい!」
キャンディ「仲良しこよし、クルぅ」
なお「そうだね……はぁー、長かったー。もう、これっきりにしてよねー二人とも」
れいか「ふふっ、そうね。出来ればご遠慮願いたいわ」
やよい「……私は、二人のあんまり見られない表情がすこーしだけ、楽しかったりしたなぁ。ふふふっ」
みゆき「えっへへぇ、私のもおまけだよやーよいちゃーん!」
やよい「ふわっ!?え、っちょ、そんな待って、そのくすぐる手はやめ、やめてぇーー!乱暴しないでぇー!わーん!」
なお「ははは、まったくもう。でも私達らしいね、喧嘩してもすぐにスマイル、って」
れいか「えぇ、とても。キャンディ?あなたたちの国は、もっともっと素晴らしいのかしら」
キャンディ「クルぅ。でも、みんなも全然負けてないクル〜!」
みゆき「……えへへ!」
みゆき「みんな笑顔で、ウルトラハッピー!」
完
あかね「や、やよいすまん、まさかこけよるとは……」
やよい「ぴーーーっ!あかねちゃんの、あかねちゃんのオコノミマーン!!!!!」
今度こそ、完
日野ちゃんが途中りんちゃんさんと被ってしゃーなかったのはナイショやで!
じゃあの!
ABC朝日放送 日曜朝八時半
スマイルプリキュア!
大好評放送中!
関連グッズも続々発売中!!
おもしろかった
乙
Entry ⇒ 2012.05.21 | Category ⇒ プリキュアSS | Comments (3) | Trackbacks (0)
橘純一「GWッ!その素敵な好奇心が僕をッ!」
田中「……僕を?」
橘「……僕は」
田中「……う、うん。僕は?」
橘「僕は無力だ……」
田中「あははっ、橘君が無力なことくらいみんな知ってるよ?」
橘「おっと!さすが田中さん!今日も手厳しいや!」
橘・田中「うぇーい!」
橘「……明日から本当にゴールデンウイークなんだな……うぅっ」
田中「た、橘君!?躁と鬱の差がいつもより酷いよ!?」
田中「うん?」
橘「薫は連日バイトで」
田中「い、忙しい時期だから仕方ないよ」
橘「暇を持て余した大学生こと、森島先輩は家族でイギリス旅行だし」
田中「み、美也ちゃんと遊べば!?美也ちゃんと遊べばいいんだよ!?」
橘「美也は……七咲と中多さんと三人で旅行だってさ……」
橘「こ、こうなったら!いつも通り田中さんと!」
田中「あ……ごめん」
田中「……私も家族で旅行」
橘「えっ……」
橘「そっか……そうだよな、はははっ」
橘「梅原は自家の寿司屋修行!船で遠くまで行っちゃうよ!」
橘「そのせいでご立腹な香苗さんがGW中は梨穂子を連れ回すから、僕の遊び相手は全滅だ!」
橘「くっ……一人がこんなに辛いなんて!」
田中「ねぇ、ねぇ?橘君?」
橘「何だよ!たまには僕も嫉妬に乱れてもいいだろ!?」
田中「あ、あははっ。そうじゃなくて……」
橘「こ、この期に及んでみっともないからやめなさい!なんて言うつもり!?」
田中「……はい、ここで絢辻さんから有難いお言葉だよ」
絢辻「あ、あたしを!あたしを意図的に無視するなんていい度胸じゃない!?」
家族と一緒に旅行とか行くイメージ無いわ
橘「『はぁ?あたしは橘君と遊んでるほど暇な人生を送ってないの。お分かり?』」
橘「とかいうのは、目に見えてるだろ!?」
絢辻「……訊いてみないことにはわからないでしょ?」
橘「じゃ、じゃあ!絢辻さんはGW暇なの?暇だったら、僕と……」
絢辻「はぁ?あたしは橘君と遊んでるほど暇な人生を送ってないの。お分かり?」
橘「ほ、ほら!やっぱりそうじゃないか!?」
絢辻「田中さん?せーのっ」
田中「う、うん!」
絢辻・田中「うぇーい!」
橘「くっ……腹立つ……!」
田中「えっ?何で?」
絢辻「まさか『孤独死高校生!押入れから発見される!』って朝刊に載るから、とか言わないわよね?ね?」
橘「……ほら、やるなら早くやりなよ?」
絢辻・田中「うぇーい!」
橘「……それで?」
絢辻「へっ?」
橘「絢辻さんはそんなことをやる為に文句を言いにきたの?」
絢辻「そうよ?何を隠そう、あたしも『うぇーい!』したかったの!」
橘「……さてと、僕は色々と忙しいから帰ろうかな」
絢辻「ま、待ちなさい!この暇人!」
田中「うんうん。すぐにバレる嘘は美しくないよ?」
橘「おっと!布団に入る時間に遅れる……」
絢辻「だから、待ちなさいって!」
田中「おーい!そんな意地になるものじゃないよ!?」
絢辻「……本当に帰っちゃったし」
田中「もう、絢辻さんも素直じゃないなぁ?」
絢辻「……うん」
田中「まぁ、明日になればコロっと忘れてるだろうし」
田中「絢辻さん?」
絢辻「なに?」
田中「今回は絢辻さんに譲るよ、私の定位置」
絢辻「……いいの?」
田中「少し……いやいや。とっても悔しいけどね。誰に振り向くのは、あの人次第だし」
ピンポーン!
橘「……う〜ん……ダメですよ、塚原先輩……」
ピンポーン!
橘「……そんな可愛い顔しても、子どもは怖がっちゃいますって!……むにゃむにゃ」
ピンポーン!
橘「……」
ピンポーン!
橘「……美也ー!……出てくれ!」
橘「……っと、美也は旅行か」
ピンポーン!
橘「はいはい、今出ますよー!」
橘「……あれ?絢辻さん?何で?」
橘「……今って何時?」
絢辻「朝九時」
橘「……絢辻さんは早起きだなぁ」
橘「それで……僕に何か用事があるの?」
絢辻「暇。あたしと遊びなさい。以上」
橘「……えっ?何だって?」
絢辻「……暇だから遊んでって言ってるの!」
絢辻「……昨日は変な意地を張って悪かったわよ」
橘「……うん、まぁ。上がって?」
絢辻「うん!お邪魔するわね?」
絢辻「……ねぇ?家族の人は?」
橘「両親は僕を放置して旅行へ行ってしまったよ」
橘「美也も友達と旅行へ」
絢辻「……あたしと同じね」
絢辻「……といっても、あたしは自分から拒否した方だけど」
橘「そっか」
絢辻「あれ?何も訊かないの?」
橘「わかってる地雷を踏む程、僕はマゾっ気ないよ?」
絢辻「ふふっ、それもそうね」
橘「まさかGWに引き篭もってテレビゲームなんてしないよね?」
絢辻「あったりまえでしょ?出掛けるわよ?」
橘「だよね!そうだよね!」
橘「ど、どこに出掛けよう!」
絢辻「ふふふっ、これを見なさい!」
橘「え〜と?これ、旅券だよね?」
絢辻「えぇ、旅券よ?」
絢辻「一泊二日で温泉旅館を手配しておいたわ」
橘「温泉か!温泉ね。うん、ゆっくり出来そうな気がするよ」
橘「えっ?温泉……?絢辻さんと二人で?」
絢辻さん、完全にかなり前から計画練ってただろ…
絢辻「飛行機、今からでも取れるかな……」
橘「ま、待って!そうじゃなくて!」
橘「……色々と質問があるんだけど」
絢辻「はい、どうぞ?ただし一つずつにしてね?」
橘「ま、まず!この旅券はどうやって!?」
絢辻「え?旅行会社で手配をして、お金を振り込んだだけだけど?」
絢辻「あ、普段お世話になってるからお金はいいわよ?」
橘「そ、そうじゃなくて!」
絢辻「あぁ、資金源の話?」
橘「う、うん!」
絢辻「……本当に知りたい?」
橘「い、いや!いいです!」
橘「な、七不思議!?じゃあ全部知ってしまうと……?」
絢辻「……知りたい?」
橘「よ、世の中には知らない方がいいことって沢山あるよね!」
絢辻「そうそう。あなたもわかってきたわね」
橘・絢辻「うぇーい!」
橘「あ、もしかして!この旅券はいつから準備していたのか、とかも?」
絢辻「そうね。昨日の今日で準備できるわけないものね」
橘「七不思議……なんだね?」
絢辻「……えぇ」
橘・絢辻「うぇーい!」
橘「……お、恐るべし!七不思議!」
絢辻「他に質問は?」
橘「ぼ、僕と二人で温泉旅行だなんて!本当にいいの?」
絢辻「嫌だったら、ここにこうして来ないし」
絢辻「……卒業旅行って名目で森島先輩と塚原先輩に拉致された男が何を今更?」
橘「そ、それを言われてしまうと、何も言い返せないな!ははっ」
絢辻「橘君は紳士だからね。襲われることなんてない、とあたしは踏んだわけ」
橘「ま、万が一があるかもよ!?」
絢辻「……その時はその時で、ね」
絢辻「国家権力のお世話にでもなろうかしら」
橘「わ、わかりやすい!とってもわかりやすいぞ!さすが絢辻さんだ!」
橘・絢辻「うぇーい!」
絢辻「というか、そろそろ出ないとスケジュールに色々と影響が」
橘「ま、待ってよ!温泉なんて聞いてなかったから、何も準備なんて」
絢辻「女の子と違って、準備にそんな時間かからないでしょ?」
絢辻「40秒で支度ッ!はい、開始ッ!」
橘「くっ!絶対にそれが言いたかっただけだ!」
絢辻「ほらほら!急いで、急いで!」
橘「うぉぉぉぉぉぉ!」
絢辻(……騒がしい人ね、全く)
絢辻「うん、67秒!やるじゃない!」
橘「ははっ、下着と着替えと歯ブラシ位あれば足りるからね!」
ピンポーン!
橘「えっ?こんな時に誰だろう?」
絢辻「あ、駅までのタクシーよ。手配したから」
橘「えっ……いつの間に……」
絢辻「……手際が良すぎるって?」
橘「う、うん……」
絢辻「七不思議……」
橘「ははっ、こ、細かいことを気にしたらダメだよね!」
橘・絢辻「うぇーい!温泉へいっくぞー!」
・
・
橘「と、到着!」
絢辻「……我ながらいい場所を押さえたと思うわ」
橘・絢辻「うぇーい!」
橘「うぅ……この卵の臭い!この臭いだけでお肌がツルツルになる気がするよ!」
絢辻「そうね。あたしもこの臭いがないと温泉へ来た気がしないと思うわ」
橘・絢辻「うぇーい!」
絢辻「……っと、こんな所で浮かれてる場合じゃないわね」
絢辻「早いところチェックインしないと」
橘「そ、そうだね!そうしよう!」
・
・
若女将「ごゆっくり〜」
橘「絢辻さん!若女将だよ!若女将!」
絢辻「……綺麗な人だったわね」
橘「若女将って響きは素晴らしいね!女将って響きだけでも素晴らしいのに、そこに『若』がついてるだなんて!」
絢辻「はいはい、感動したのは分かったから」
橘「さて、何をしようね。温泉街をブラブラしてみる?」
絢辻「なら浴衣に着替えないと、雰囲気出ないわよね」
橘「ゆ、浴衣に!絢辻さんが!?」
絢辻「……テンション高いのはね、あたしとしても嬉しいんだけど」
絢辻「……わかったなら、さっさと出ていけ!この変態!」
橘「あぁ……変態って久し振りに言われた気がするよ……!」
GWだから仕方ないのか、絢辻さんが本気なのか
・
・
橘「さて、僕らは浴衣に着替えて温泉街へ繰り出したわけなんだけど」
橘「う〜ん、風情溢れる街並みだね!」
絢辻「日本にまだこんな所があったのか、って感じね」
橘「絢辻さん!玉こん!玉こん!」
絢辻「あら、いい匂いがしてるわね」
橘「た、食べたい……!玉こん食べたい!」
絢辻「そうね。小腹も空いてるし」
橘「すみませ〜ん!玉こん二つ!」
※玉こん……玉のようなこんにゃくを串に刺して煮たもの。東北、特に山形ではメジャーな食べ物。場合によってはタダで配られることも!?
・
・
橘「うん!しみてる、しみてる!」
絢辻「……ゲフッ」
橘「あ、絢辻さん?大丈夫?」
絢辻「か、辛子をつけ過ぎちゃって、ね?……ハフッ」
橘(あ、絢辻さん……あんなに涙目でむせながら玉こんを頬張るなんて……!)
橘(イケない想像をしても仕方ないよね!紳士たる僕はしないけど!)
橘(お、おぉ!?そんな食べ方が!?)
橘(ごめんね?でも、仕方ないよね……?)
絢辻「何をジロジロ見てんのよ?そんなにおかしかった?」
橘「ご、ごめん。何でもないんだ、はははっ……」
※玉こんに辛子をつけ過ぎると死ぬ。時々店員が調子にのって沢山つけるから要注意だ!
・
・
絢辻「さて、温泉街も満喫したところで……」
橘「そろそろ宿に戻って、温泉へ入ろうか!」
絢辻「そうね。宿での夕食の前に一同入りましょうか」
橘「しかし、こうして絢辻さんと肩を並べて下駄をカランコロン鳴らすことになるとは思いもしなかったよ」
絢辻「へぇ?誰なら想像出来るの?」
橘「そ、そういうことじゃないよ!?」
絢辻「ふふっ、分かってるわよ」
絢辻「ほら、そうと決まったら早く戻るわよ?温泉があたしを待ってるから!」
橘「あ、待って!まだ下駄に慣れてないからそんなに早く歩けないよ!」
絢辻「このノロマ!早くしなさい!」
橘「……酷いよね、はははっ」
・
・
絢辻「いいお湯だったわね」
絢辻「……って、何で落ち込んでるの?」
橘「……混浴な気がしたけど、そんなことはなかったからかな」
絢辻「……それは温泉といえば湯けむり殺人事件くらいあって然るべし、と同じレベルの無理難題だから」
橘「……デンデンデーン、なの?」
絢辻「デンデンデーン!よ?」
橘・絢辻「うぇーい!」
橘「そんなことより夕ご飯だよ、夕ご飯!」
絢辻「えぇ、楽しみね。少しばかり奮発してやったからね」
橘「こう……四季折々の食材が……!」
絢辻「そうね。郷土料理もならんでみたり」
橘・絢辻「うぇーい!」
・
・
橘「ふぅ、美味しかった」
絢辻「えぇ、期待通り!って感じだったわね」
橘「……」
絢辻「どうしたの?」
橘「ほら、僕ら二人で一部屋だろ?」
絢辻「……ごめんなさい。絢辻さんの謎パワーでも二部屋は無理だったの」
橘「せ、責めるつもりはないんだよ?」
橘「ただ……ね?」
絢辻「……何?」
橘「よし!確認する為に一度部屋へ戻ろう!」
絢辻「え?うん、戻ろっか」
絢辻「あら?お布団が並べて敷かれてるわね?」
橘「……」
絢辻「……」
橘・絢辻「うぇーい!」
橘「ぼ、僕らはそんな関係じゃないのにさ!困っちゃうよね!」
絢辻「そ、そうよね!いらぬ気遣いもいい所よ!」
橘「は、ははっ!とりあえずお布団を離そうか!」
絢辻「……あたしは別にこのままでもいいわよ?」
橘「えっ……?」
絢辻「……二度も言わせないでよ、馬鹿っ」
・
・
橘「……ダメだよ、絢辻さん!僕らは高校生なんだよ!?」
橘「……えっ?高校生である前に男と女だって!?」
橘「そ、そんな!絢辻さんに襲われるなんて……僕は!僕はっ……!」
橘「……」
橘「……なんだ、夢か」
橘「そりゃそうだよね……何だよ、七不思議って。はははっ」
橘「……うぅ……自己嫌悪だよ」
橘「……もう夕方か。GW初日から爆睡しちゃったな」
ピンポーン!
橘「……ん?誰だろう?」
橘「ゆ、夢なのに夢じゃなかった!?」
絢辻「……は?何が?」
橘「い、いや。こっちの話なんだよ……ははっ」
絢辻「もう、いつまで寝呆けてるの?」
絢辻「はぁ、GW初日から弛んでるとしか思えないわ」
橘「……うん、その通り」
絢辻「ねぇ?……お邪魔するわよ?」
橘「ちょ、ちょっと!絢辻さん!?」
橘「……僕を放置して旅行へ行ってしまったからね」
絢辻「ま、そんな一人で寂しい橘君の為に」
絢辻「あたしは晩御飯を作りに来たわよ?」
橘「……えっ?」
絢辻「何を間抜けな顔をしてんのよ?顔を洗ってきたら?」
絢辻「あ、お台所借りるわね?」
橘「う、うん。好きに使ってよ」
絢辻「はいは〜い、了解したわ」
・
・
絢辻「はい、お待ち遠様」
橘「おぉっ……生姜焼き!」
絢辻「簡単で美味しいからね」
橘「しょ、食欲をそそるいい匂いがするぞ!」
絢辻「えぇ、我ながらいい出来だと思うわ」
橘「で、では……」
絢辻「えぇ、そうね」
橘・絢辻「うぇーい!いただきまーす!」
・
・
橘「ご馳走様でした!」
絢辻「お粗末さまでした」
橘「いやぁ、助かったよ!僕はチャーハンしか作れないし!」
絢辻「そこまで喜んで貰えると、わざわざ作りに来た甲斐があったってものね」
橘「……そういえば、絢辻さんは僕の両親が留守にしていることを知っている節があったよね?」
絢辻「ふふふっ……何でか知りたい?」
橘「ま、まさか!『絢辻さんの七不思議、』!?」
絢辻「ひ、人を怪談呼ばわりしないで!?」
絢辻「橘君のご両親って留守にされることが多いって聞いてたから、もしかしてと思っただけよ!?」
橘「あっ……そうか、そうだよね」
橘「うん、何?」
絢辻「単刀直入に聞くけど、橘君って田中さんのことが好きなの?」
橘「えぇ!?な、何を!?」
絢辻「……いいから、素直に答えなさい」
橘「う、うん……僕は田中さんのことが好き……なんだと思う」
絢辻「煮え切らない返事。少しは梅原君を見習ったら?」
橘「……うん。田中さんに失礼だよね」
絢辻「ま、あなたの気持ちはよくわかったわ」
絢辻「……あたし、帰るね」
橘「あ、絢辻さん!?」
橘「えっ?……そ、そんなつもりは」
橘「と、というか、絢辻さんって僕のことを!?」
絢辻「好きだけど、何か?」
橘「……」
絢辻「……ごめん。今のはあたしが悪かった」
絢辻「……今日は一人で泣かせてちょうだい。じゃあね」
橘「うん……」
絢辻「……あっ、でもね?明日も晩御飯を作りに来てもいいかな?」
絢辻「……あたし、明日も独りで暇だから」
絢辻「あ、明日は……ちゃんと面白い話を準備してくるから。いつもの絢辻さんに戻ってるから」
絢辻「……ダメかな?」
橘「……僕も面白い話を準備しとくよ」
絢辻「……ふふっ、いっそ来るなって言ってくれればいいのに」
絢辻「……でも、ありがとう」
橘・絢辻「うぇーい!」
田中「な、なんだか知らないけど、二人が物凄く仲良くなってる!?」
絢辻「……あたしはこのGWで田中さんが大嫌いになったけどね!」
田中「えぇぇぇ!?そんなことをストレートに言われちゃったよ!?」
絢辻「……まぁ、今のは絢辻ジョークなんだけど」
絢辻「ほら、橘君!田中さんにいうことがあるでしょ?」
橘「う、うん!田中さん!僕、田中さんに伝えなきゃいけないことがあるんだ!」
橘「……だから!放課後に校舎裏に一人で来い!」
田中「お、穏やかじゃないことを言われちゃったよ!?」
絢辻「……はぁ、この場で勢いで言ってしまえばいいのに」
橘「そ、それって?こんな感じに?」
橘・絢辻「うぇーい!」
完
橘「田中さん……」
田中「た、橘君?話って何かな?」
橘「絢辻さんに習って単刀直入に言うと!ぼ、僕は田中さんのことが……!」
田中「ま、待って!まだ言わないで?」
橘「えっ?」
田中「あははっ。ちょっと深呼吸させてね?」
田中「……うん、いいよ?」
橘「僕は田中さんのことが……好きだ」
田中「……私で本当にいいの?」
橘「た、田中さんだからいいんだ!」
田中「……他にも可愛い子が沢山いるのに?」
橘「えぇぃ!何回も言わせないでよ!?」
橘「僕は田中さん……いや、恵子のことが好きなんだ!大好きなんだ!」
田中「私も……好きだよ?」
田中「ほら?クリスマスの時さ、公園でキスしそうになったでしょ?」
橘「あ、あぁ……梅原のお陰で未遂だったけどね」
田中「あははっ、そうだったね」
田中「私が橘君を好きになったのはあの時……」
田中「きっとあの雰囲気にやられちゃったんだね、ドキドキしたし」
田中「……ねぇ?また私をドキドキさせてくれないかな?」
橘「えっ?それって?」
田中「お、女の子に恥をかかせちゃダメだよ?」
田中「じゅ、純一……」
チュッ……
田中「……んっ、ドキドキしたよ」
橘「ぼ、僕もドキドキしちゃったよ」
橘・田中「ふふふっ、あははははっ!」
ガサッ
橘「えっ?」
田中「だ、誰!?誰かいるの!?」
棚町「あ、あんたが押すから!見つかっちゃったじゃないの!?」
絢辻「あら?あなたが勝手にずっこけたんでしょ?」
橘「絢辻さん……と、薫?」
田中「な、何してるの!?」
絢辻「な〜にも違わないわよ?あたしが悪いみたいな言い草はやめてちょうだい」
絢辻「ま、とりあえず。ね?」
棚町「……そうね」
絢辻・棚町「うぇーい!おめでとう!」
橘「あ、あぁ……うん」
田中「う、うん?……って、えぇぇぇ!?」
絢辻「ふふっ、今日は祝賀会でしょ?悪いんだけど、時間が押してるから動いてもらえるかな?」
棚町「細かい文句は後で聞くから!ほらほら、歩いた歩いた!」
橘「ちょ、ちょっと!」
田中「……こ、こういう時はとりあえず!」
橘・田中・絢辻・棚町「うぇーい!」
完
乙
田中さんうぇーいかわいい
Entry ⇒ 2012.05.21 | Category ⇒ アマガミSS | Comments (0) | Trackbacks (0)