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阿良々木「ロードバイクが欲しいなぁ」
忍「だれがのぶえもんじゃ、なんじゃ前のマウンテンバイクが壊れてからママチャリに乗っとったのに飽きたのかの?」
暦「いやーでもやっぱりロードバイクってかっこいいじゃん?あのフォルムっつーかあの速く走ることを意識して作られているカンジがさ」
忍「ふぅむ、そんなものかのまぁ買ったら儂も乗せてもらうかの」
暦「ロードバイクにカゴはねぇよ」
暦「…っていう話を昨日したんだよ羽川」
羽川「ふぅん、確かに阿良々木君自転車好きだもんね」
暦「だけどロードバイクとかそんな感じはまだサッパリでさ、羽川に相談を」
羽川「なんで私なのよ…まぁちょっとなら知ってるからアドバイスはしてあげるけど」
暦「サンキュー羽川!」
暦「うーんそれも考えたんだけどさ、やっぱりロードバイクの方に惹かれるんだよな」
羽川「阿良々木君がいいならいいけど……ロードバイク高いよ?」
暦「……マジで?」
羽川「マジです」
暦「最低でもどのくらいがいいのかな?」
羽川「そうだねー有名なとこでジャイアントってメーカーのが7万円くらいかな最低でも」
暦「マジかよ…でもまぁ貯金はあるから、予算は10万くらいにするよ」
暦「そういえば最近ネットとかでも買えるじゃん?そっちの方が安かったりするけどそれはどうなんだ?」
羽川「別に悪いとは言わないけど阿良々木君今回が始めてでしょ?ロードバイク買うの、安い買い物じゃないしもし身体に合わないとロードバイクとかって結構苦痛なんだよね、だから最初はお店に行った方がいいと思うよ」
暦「そうなのか…羽川、お前は何でも知ってるよなまさか自転車方面の知識もあるなんてさ」
羽川「なんでもは知らないわ、知ってることだけ」
暦「そうか…一応ここにカタログはあるんだ」ゴソゴソ
羽川「あれ?もうお店で話してきたの?」
暦「いや…なんかまだしっかり意思が固まってないのに店員と話すってのがなんか気まずくてカタログだけもらってきた」
羽川「わからなくもないけどさ…」
羽川「あ、戦場ヶ原さん、ちょっと阿良々木君から相談を受けててね」
戦場ヶ原「ふぅん、ロードバイクね…懐かしいわ」
暦「え!?お前ロードバイク持ってたの?」
戦場ヶ原「前の家の時にはあったのよ」
暦「そういえば前は金持ちだったなお前」
暦「へー、ってレコードってなんなんだ?」
戦場ヶ原「阿良々木君、レコードを知らないの?それでよくロードバイク買うとか言い出せたわね、自転車乗りの恥…いえ、人類の恥といっても過言ではないわね」
暦「過言だよ!しょうがねーだろ!ロードバイク始めてなんだし!」
戦場ヶ原「そうよ阿良々木君50万はしたみたいよ?分かる、阿良々木君が50万年働いてようやく手に入るお値段よ」
暦「毒舌抜きなら素直に尊敬できたんだが…」
戦場ヶ原「ジャイアント…それは阿良々木君が背が低いことを意識してのチョイスかしら?」
暦「別にメーカーの名前がジャイアント(巨人)だから選んだわけじゃねーよ!いや1番大手っぽいしさ」
羽川「ジャイアントね、いいじゃないかな、色んな価格帯のロードバイクもあるし」
羽川「そうだね、アルミフレームにカーボンフォーク、あと105のセット…なかなかコスパもいいんじゃないかな?」
暦「へぇー2人が言うから良いものなんだろうなぁ」
羽川「まぁ実車とカタログじゃちょっとカンジ違ったりするしお店で見てくるといいと思うよ」
戦場ヶ原「じゃあ阿良々木君、私が付き添ってあげるわ、なにか罵と…アドバイスもできるでしょうし」
暦「明らかに罵倒と言いそうになったのは気になるがよろしく頼むよ」
戦場ヶ原「ここがサイクルショップね」
暦「この町にもあったんだな、自転車屋」
戦場ヶ原「まぁ通勤などに使ったりとユーザーは増えてシェア自体は最近あがっているはずよロードバイクは」
暦「へぇーブームなんだな、ところで気になったんだけれどもし在庫が無かったらどうするんだ?」
戦場ヶ原「それは自転車屋がメーカーに問い合わせて取り寄せてくれるわ、寧ろ小さな自転車屋なら取り寄せの方が多いかもしれないわね、そのかわりアフターケアやアドバイスなんかもしっかりしてくれるからそこが強みね」
戦場ヶ原「取り寄せで2週間ほどらしいわね」
暦「ヘルメットやら備品込み込みで12万か…ちょい予算オーバーだけどまぁこのくらいなら大丈夫かな」
戦場ヶ原「それにしても阿良々木君にロードバイクを乗りこなせるかしらね?」
暦「ばっ馬鹿にすんなよ!伊達に自転車ばっか乗ってないぜ!」
戦場ヶ原「いや、運転云々もあるけど…ロードバイクって普通サドルから足つかないわよ」
暦「え」
暦「うわぁ、どうしよう今になって不安だよ」
戦場ヶ原「しょうがないわね、いくらなんでもまともに乗ることも出来ないゴミムシ以下の阿良々木君に乗られたのでは自転車も哀れね、私が教えてあげないでもないわ乗り方」
暦「この際ツッコまねーからたのむ!」
戦場ヶ原「ハッまったく、この御時世ムラタカセイ君でも自転車乗れるというのにこの男ときたら!しょうがないわね、この私が教えてあげましょう乗り方を」
暦「ロードバイクが届いたぞぅぉぉぉぉぉ!」
忍「なんじゃうるさいぞお前様朝っぱらから、結局のところ自転車じゃろうに」
暦「馬っ鹿、よく見ろよこれ…空気を切り裂く形をしてるだろう…」
忍「そんなBLEACHみたいなことを言われてものう、でもまぁ美味そうな形はしてるのr
暦「!!」ババッ
忍「冗談じゃよ」
暦「お前は手錠とか食ったことあるから洒落になってないんだよ」
暦「5分前じゃねーか、とりあえずたのむ」
戦場ヶ原「じゃあ乗り方からね」
暦「へー跨って…よっと」
戦場ヶ原「自転車に関してはスジがいいのね」
暦「おぉ!一漕ぎの感覚が違う!」
戦場ヶ原「阿良々木君の日本語が分からないわ」
暦「ちょっとそこらへん一周してくるよ」スィー
戦場ヶ原「そう、慣れないのだから余り無理はしちゃだめよ」
暦「ふぃー楽しかったー」
戦場ヶ原「そう、なによりだわ」
暦「あぁ、ずっと乗っていたいくらいだぜ、通学とかにも使おうかな」
戦場ヶ原「それじゃあのママチャリはお役御免なのかしら?」
暦「いや…あのママチャリは特別だよ、色んな時に使ったし…初めて戦場ヶ原と2人乗りしたのもあの自転車だしな」
暦「珍しいな、どのくらいだ?」
戦場ヶ原「賽銭箱のよこで1円拾ったくらいかしらね」
暦「果てしなく微妙じゃねーか!」
暦「いいのか?高いんじゃ?」
戦場ヶ原「そのかわりロードバイクを私と思って乗るのよ」
暦「その言葉には若干のダブルミーミングがあるように感じるのは気のせいか?」
戦場ヶ原「もちろんいやらしい意味よ」
暦「台無しだ!」
僕はディスクホイールを自転車屋で取り付けてもらったわけだがそこで驚くべきものを目にした
そう、ディスクホイールにでかでかとカッティングされた「戦場ヶ原蕩れ」の文字
暦「これじゃ嫌でもお前のこと思い出しちまうよ」
ツッコミをいれつつそれでも僕は笑顔だった。
買物語 こよみバイク
完
うまくまとめやがって
乙!
にわかの俺にもわかりやすくてよかった
Entry ⇒ 2012.01.05 | Category ⇒ 化物語SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
一夏「こ、この気持ちは....恋!?」
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1325320345/
一夏「このもやもやは....きっと恋だ!」
一夏「だが俺は一体誰に恋しているんだろう?」
>>5
選択肢
1.ラウラ
2.ドイツの娘
3.眼帯の娘
4.銀髪の娘
5.ボーデビッヒ
∧_∧
( ´・ω・`) ∧_∧
/ \ ( )そうだったのか!
.__| | .| |_ / ヽ
||\  ̄ ̄ ̄ ̄ / .| | |
||\..∧_∧ (⌒\|__./ ./
||. ( ) ~\_____ノ| ∧_∧
/ ヽ カッコイイ \| ( )
| ヽ \/ ヽ. 詳しいなお前
| |ヽ、二⌒) / .| | |
.| ヽ \∧_∧ (⌒\|__./ /
かっこいい……///
~回想~
デパ地下にて
一夏(今日は食堂が使えないからなぁ~)
一夏(晩飯どうしようかな~)
一夏「おっ半額弁当みっけ!」
ピト
一夏が弁当を取ろうとした瞬間、隣の男と手が重なった
男「いや、いいんだ」
一夏「俺、あっちの弁当でいいんで..それじゃあ」
スタスタ
男「ちょっと待ちな!」
一夏「え?」
男「この弁当、おまえにやるよ」
一夏「で、でも」
男「お前さん学生だろ?こんな中年オヤジなんかよりよっぽど未来があるじゃねえか」
男「将来のあるお前さんの飯を奪うほど俺は野暮じゃねえよ」
男「だからこれはお前が食べな」
一夏「......はい」
男「じゃあな」スタスタ
一夏「......」
一夏「あの!」
一夏「お名前を!」
男「そーだな.....>>5とでもよんでくれ」
>>5は振り返らずそう言った...
一夏「でもどうやって気持ちを伝えたらいいんだ?」
一夏「ってか何処にいるかもわかんねーし」
コンコン
一夏(こんな時間に誰だ?)
一夏「はーい、今開けますよ」
>>30誰がきた
>>5「よっ」
一夏「なんでここに?」
>>5「未来のある青少年が悩んでたら助けるのは当たり前だろ?」
一夏「はぁ?」
>>5「デパ地下で会ったときから分かってたんだ」
一夏「な、何を?」
>>5「お前は今、俺に恋をしている」
一夏「な、なんでそれを?ってかなんでここにいるんですか?」
>>5「言ったろ?未来のあるお前さんの飯を奪うほど俺は野暮じゃねぇって」
>>5「それと同じで、俺は未来のあるお前さんから愛奪うほど野暮じゃねぇんだよ」
一夏「!...>>5さん////」プシャァァァ
>>5「おっといきなり抱きつくなよ」
一夏「でも、俺!耐えられなくて!」
>>5「わかってるさ.....今夜だけは俺もお前を愛してやるよ」
サワッ
一夏「ど、どこ触ってんですか!?」
>>5「楽しませてやるよ...」
一夏「うぅ///」
~部屋前~
ラウラ「.....?」
ラウラ(だれかいるのか?)
一夏「やば!この時間に俺の部屋に来るといえば多分ラウラだ!」
一夏(どうすれば...)アセアセ
>>5「安心しろ.....俺が出る」
一夏「え?ちょ」
ガチャ
ラウラ「入るぞよm......って誰だ貴様?」
>>5「やぁ嬢ちゃん」
ラウラ「........」ピポパポ
プルルル ガチャ
ラウラ「もしもし教官ですか?」
ラウラ「........はい......はい...すぐ来てください」
ラウラ「貴様に教える義務はない」
ラウラ「それより嫁はいるn...
ウーン ウーン
>>5「警報だと?」
千冬「動くな!!」
>>5「チッ!侵入は完璧なハズなのに」
千冬「貴様、最近噂の性犯罪者だな?」
千冬「幼児誘拐から強姦、婦女暴行、最近では男にも手を出してるらしいな」
>>5「ばれちゃ仕方ねぇ!そうだ!俺がその事件の犯人だ」
>>5「そしてこの部屋の少年は被害者って事だな」
千冬「貴様一夏を!」
>>5「だが俺に惚れてはいるがな!」カチャ
バンッ シュワー
千冬「ゲホッ.....スモークだと?」
ラウラ「教官!ヤツは屋上に逃げました」
千冬「よし!追うぞ」
~屋上~
>>5「チッ!パラシュートが故障してやがる」
タッタッタ
千冬「そこまでだ!」
>>5「ったく、もう追いついたのかよ」
千冬「警察にも連絡してある」
千冬「大人しくしとけ」
千冬「一夏!貴様....」
一夏「確かに>>5は犯罪者かもしれない!」
一夏「でも俺が初めて心から愛した人なんだ!」
>>5「ふ!何を感じがいしてる」
>>5「俺はお前を利用しただk
一夏「それでも好きなんだよ!!」
一夏「俺は>>5さんが......どうしようもなく好きなんだよ....」
千冬「一夏....」
>>5(....若い時の俺にそっくりだ)
>>5(なにひとつ曇りの無いまっすぐな目...)
>>5「フッ!ハッハッハッハ!」
一夏「な、何がおかしい!?」
>>5「いやな、お前があまりにも面白かったんでな」
一夏「な、何を!?」
一夏「!?.....(泣いてる.....>>5さんが泣いてる)」
>>5「おい坊主!」
一夏「....」
>>5「俺もお前が好きだったぜ」
一夏「!」
>>5「あばよ」スッ
一夏「>>5さぁぁぁん!!」
そう言って>>5は屋上から飛び降りた
泣いてる
号泣してる
>>5さぁあああああんん!!!!
千冬(あれ以来一夏は塞ぎ込んでしまった)
千冬(かろうじて授業は受けているがまったく精気がない)
~教室にて~
セシリア「一夏さんどうなされたんでしょうか?」
鈴「確かにおかしいわ!私の酢豚も食べなかったし」
シャル「それは鈴のがマズいからじゃ...」
鈴「何か言ったぁあ?」
箒「それより何か知ってるんじゃないか?
ラウラ」
ラウラ「...」
箒「こ、恋!」
鈴「そ、それって一夏が誰かにフラれたってこと!」
セシリア「まぁ!」アセアセ
シャル「た、確かにあの落ち込み様は....」
シャル(で、でもこれってチャンスなんじゃない!?)
シャル(失恋には新しい恋が1番だっていうし)ウヘヘヘ
この時シャルロットは気付いていなかった。みんなも同じ結論にたどり着いたということに。
「俺、好きな人がいるから」
と全員フラれた。
その後も一夏は何かに取り憑かれたように「>>5さん、あぁ>>5さん」と叫び続けた。そして一夏は>>5の後を追うように屋上から飛び降りた。
一夏はその時初めて愛の重さを知ったのだ。
END
Entry ⇒ 2012.01.05 | Category ⇒ インフィニット・ストラトスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
あかり「未来日記?」
結衣「随分と眠そうだな。また夜更かししてたのか?」
京子「あーうん。ちょっと深夜アニメ見てたらさ」
あかり「へえ~、何ていうアニメ?」
京子「『未来日記』ってのだよ」
あかり「『未来日記』?」
未来に自分が書き込むはずの内容が記される『未来日記』に変えられちゃうんだよね」
ちなつ「それって、未来が分かるって事ですか?」
京子「まあ、簡単に言えばそういうことかな」
あかり「へえー」
結衣「ったく・・・アニメもいいけどほどほどにしとけよな」
京子「えー」
あかり(・・・あれ、ここどこ?夢?)
???「お前は選ばれたのだ」
あかり「えっ、誰?何??」
???「お前に未来日記を与えよう――」
あかり(『未来日記』って、昨日京子ちゃんが話してた・・・?)
あかり「ちょ、ちょっと待ってよ!どうしてあかりが?」
???「・・・・・・」
あかり「ねえってば!」
あかり「ハッ」
あかり(何か変な夢見た気がするけど・・・)
あかり「・・・思い出せないや。学校行く支度しないと」
結衣「ほら、渡せよ!」
京子「ゆ、結衣!やめろってば!」
あかり「おはよー!京子ちゃん、結衣ちゃん・・・って、何してるの?ケンカ?」
結衣「・・・はっ!?あ、ああ。おはようあかり」
京子「お・・・おはよー!」
あかり「どうしたの二人とも。何か変だよ?」
京子「そんな事ないぞ!あかりは気にしーだな!」
結衣「・・・おい京子」
京子「・・・ごめん」
あかり「??どうしたの?」
結衣「ああ」
あかり「それって昨日京子ちゃんが話してた、あの?」
京子「そうそう、それそれ」
結衣「初めは夢かとも思ったんだが・・・」
結衣「ふあ・・・なんか変な夢見たな。昨日京子があんな話するから」
結衣「ん、メールが来てる」ピッ
結衣「何だ迷惑メールか。よし、まだ時間あるし少しゲームでも・・・ん?」
結衣(何かおかしいな・・・)ピッピッ
6:05
学校に行く準備の前にゲームを始める。
「φなるクエスト」を続きからプレイ。
6:30
氷の洞窟の最深部にてボス戦
6:35
全体攻撃のブレスに苦しめられ敗北。
炎耐性の装備をしていなかったのが敗因。
学校に行く準備をするためゲーム終了。
結衣「こ、これって・・・」
結衣(・・・もしかして私、夢遊病だったのか?)
結衣(氷の洞窟の入り口からか。とりあえず奥を目指そう)
20分後――
結衣「やっと最深部か。もうすぐ6時半に・・・ハッ」
結衣(戦闘前の会話でちょうど半になるくらいか?いや、偶然だ偶然)
結衣「・・・一応炎耐性の装備に変えてみるか」ピコピコ
結衣「装備変更完了・・・って、氷の洞窟で何で炎なんだよ。馬鹿らしい」
(ブゥーンン・・・)
結衣「あれ、ケータイからノイズ?」ピッ
6:31
氷の洞窟の最深部にてボス戦
6:36
全体攻撃のブレスが厄介だったが炎耐性の装備のおかげでボスを撃破。
学校に行く準備をするためセーブしてゲーム終了。
結衣「内容が書き換わってる・・・!?」
結衣「まあいい、とりあえずボス戦だったな・・・何だって、『凍土の火竜』?
どうしてこんなところに火竜が居るんだよ。卑怯だな」
5分後――
結衣「倒した・・・強かったな、レベル高めのはずなのに」
結衣(もし装備を変えてなかったら・・・)
結衣「――とりあえずセーブして学校に行く準備しよう」
京子「おはよー結衣・・・ちょっと話があるんだけど」
結衣「・・・おい京子」
京子「えっ、何?」
結衣「お前私のケータイに変な細工しただろ」
京子「いやしてないよ?細工って何さ」
結衣「嘘つけ!まったく、お前はいつもいつも・・・」
京子「あっ、私の話ってのもケータイの事なんだけど――」
結衣「人の話を聞けよ!」
京子「なんか未来日記になっちゃったみたいなんだよね」
結衣「・・・えっ」
京子「いや、私も信じられなかったけど本当なんだってば!勝手に内容書き換わったし!」
結衣「・・・マジか」
京子「まじまじ!」
結衣「そうか。実は私も――」
(かくかくしかじか)
結衣「ああ。どうやらゲームのプレイ情報が記されるみたいだ」
京子「なるほど、『ゲーム日記』ってところだね」
結衣「それでお前はどんな内容なんだ?」
京子「うーん、そう言われると自信なくなってきちゃったな」
結衣「どういう事だよ」
京子「だってある意味でどうでもいい内容だったし」
結衣「いいから言ってみろって」
京子「うん、分かったよ」
京子「もう朝かー、学校行く支度しないとー・・・」
京子「あれ、ケータイどこ行った?」ガサゴソ
京子「あったあった」ピッ
7:05
お目覚めのラムレーズン。今日も一日がんばれそうだ
16:20
生徒会室で千歳と綾乃の目を盗みラムレーズンを拝借する。
ラムレーズンうめえ!今日もいい一日だった!
17:40
結衣の家で『φなるクエスト』のプレイを見ながらラムレーズンを頬張る。幸せだ!
京子「・・・何だこれ」
京子「いただきまー・・・」
京子(・・・待てよ、さっきのは未来日記?)
京子「・・・・・・」
京子「よし、今日の朝はラムレーズンお預けにしてみよう。
力は補充できないけど、がんばれ私!」
(ブィーンン・・・)
京子「ん?ノイズ?」ピッ
今朝のラムレーズンはおあずけ。冷凍庫にしまう。
ラムレーズンパワー無しでこの先生き残れるだろうか・・・
9:30
体育の授業。100m走のタイムが普段より0.5秒くらい遅い。
ラムレーズン食べなかったせいで力が出ない・・・
12:40
ランチタイム終了。から揚げおいしかった!
デザートにラムレーズン食べたい・・・
14:20
国語の授業中。二葉亭四迷って面白い名前だよね。
そんな事よりラムレーズンはまだか・・・
16:20
生徒会室で千歳と綾乃の目を盗みラムレーズンを拝借する。
ラムレーズンうめえ!何とか今日一日を乗り切ったぞ!
17:40
結衣の家で『φなるクエスト』のプレイを見ながらラムレーズンを頬張る。幸せだ!
京子「うそっ!?」
京子「ってな感じで」
結衣「・・・つまり、お前の未来日記は」
京子「『ラムレーズン日記』!」
結衣(・・・いらねえ)
京子「まったく、これで他の日記所有者をどうしろっていうんだろうね?」
結衣「はっ?」
京子「・・・ん?」
結衣「どうしろ、って何だよ?」
京子「えっ。何って、何が?」
結衣「未来日記の詳しいストーリーを教えろ!」
京子「えっ?わかったよ」
結衣「うん」
京子「主人公は未来日記を利用してテストで満点取ったり目立つようになる」
結衣「ふむふむ」
京子「それで、3rd・・・あっ、日記所有者は12人居て三番目の人ね。主人公は1st」
結衣「12人、か・・・それでその3rdがどうしたって?」
京子「あー、主人公が3rdに命を狙われる」
結衣「はあっ!?何でだよ!!」
京子「お、落ち着いてって!3rdは殺人犯で所有日記が『殺人日記』なんだよ」
結衣「あ、ああ。なるほどな」
結衣「ふむ」
京子「3rdを消滅させる」
結衣「消・・・滅?日記所有者から一般人に戻ったって事か?」
京子「違うよ、文字通り『消滅』。日記所有者は日記を壊されるとこの世から消えちゃうんだよね」
結衣「・・・お前、それ本気で言ってるのか?」
京子「いや、そういうストーリーなんだってば」
結衣「すると何か?このケータイが壊れたら私は消えてなくなるのか?馬鹿な事言うなよ・・・!」
京子「そうと決まったわけじゃないけど・・・」
結衣「何でだよ!どうしてこんな・・・」
京子「落ち着いてってば!本当にそうなるのかは分からないし、まだ話は途中だから!」
結衣「あ、ああ。そうだな、とりあえず最後まで聞かないとな」
結衣「話?」
京子「うん。未来日記所有者同士で戦い合い、最後に生き残った一人が次の神になるって」
結衣「・・・何だそれ」
京子「そして未来日記を用いたバトルロワイヤルが始まるんだよ」
結衣「京子。絶望しか無くなったんだがどうしてくれる?」
京子「お、大げさだよ結衣!アニメの話だって!」
結衣「・・・そうか、そうだよな」
京子「うんうん」
結衣「うん、それならいいよな・・・京子、携帯貸せ。試しに折ってみるから」
京子「はぁっ!?」
結衣「ほら、渡せよ!」
京子「ゆ、結衣!やめろってば!」
あかり「そ、そんな・・・」
結衣「・・・さっきはごめん、京子。少し錯乱してた」
京子「まあでも、このケータイが未来の情報を記してる事は確かだから不安になる気持ちは分かるよ。
というか、現実問題として警戒しないとまずいかもね」
結衣「そうだな・・・まったく、どうしてこうなったんだ」
あかり「・・・あ」
京子「どうしたのあかり?」
あかり「あかりも夢で未来日記がどうのとか言われてたこと思い出しちゃった・・・」
結衣「あかりも・・・!?」
京子「ケータイは見たの?」
あかり「いや、今日はまだ一度も・・・ちょっと見てみるね」
結衣ちゃん、京子ちゃんと物語の大筋に関わるお話をしている。
あかり目立ててるかな?
8:15
ちなつちゃんとお話。主役であるあかりの視点で物語が進んでるよ!
9:40
授業中問題を答えさせられた!正解、さすが主役だね!
11:30
また授業で当てられた。不正解だったけど、これはこれでおいしいよね・・・
あかり(・・・何これ)
結衣「これは・・・」
京子「主人公である自分の活躍を記した『主役日記』?」
あかり「うわぁっ、二人とも勝手に見ないでよー!」
京子「あはは、ごめんごめん」
あかり「確か未来日記所有者って12人居るんだよね?」
京子「うん。まあ原作ではだけどね」
結衣「ふむ・・・この三人が選ばれたとなると、おそらくちなつもだな」
あかり「そうだね」
京子「うーん・・・」
結衣「どうした京子?」
京子「いや、どこまで原作通りかなって思ってさ」
あかり「どういうこと?」
京子「例えば、『未来日記』では未来日記所有者同士で近しいのって主人公とヒロインくらいだし
それを踏まえると、この三人が選ばれてる時点で原作とは少し遠いなって」
結衣「なるほど。原作の情報はそれほどあてにならないって事か」
結衣「うーん・・・まずは学校で情報を集めるしか無いな」
京子「そうだね、もしかしたら他の所有者も見つかるかもしれないし」
結衣「私たちは綾乃や千歳を当たってみる。あかりはちなつや生徒会の一年生を頼む」
あかり「うん、分かった!」
京子「あんまり直接的な質問は駄目だからね。未来日記と関係ない人の場合困るし」
結衣「了解」
あかり「はーい」
あかり「ちなつちゃん!おはよー」
ちなつ「あっ、あかりちゃんおはよー」ソワソワ
あかり「何そわそわしてるの?」
ちなつ「えっ?私、何か変?」チラッ
あかり(露骨にケータイ意識してるんだけど・・・)
あかり「ケータイに何かあった?」
ちなつ「え、ええっ?あーそうそう、実は好きなバンドのライブチケットの当選メールを待ってるの!
まあ、当たるとは限らないんだけどね・・・」
あかり「なーんだ、そういうことかー」
あかり(ちなつちゃんは違うか。次はあの二人だね)
向日葵「さっきから何ですの?」
櫻子「だって、今日の数学の小テストで向日葵に負けるって書いてあるんだもん!」
あかり(か、書いてある!?)
向日葵「そんなの当然ですの。日記を見るまでもない事ですわよ」
あかり(日記!?)
櫻子「何だとー!」
あかり「ちょ、ちょっと二人とも。書いてあるとか日記とか何の話?」
向日葵「あっ・・・櫻子、少し声が大きいですわ!」
櫻子「へっ?聞かれてた?」
あかり「あ~、心配しなくても大丈夫だよ!」
あかり「実はそうなんだよ~」
櫻子「ちなみに私の日記は向日葵との競り合いの情報が記される『次期副会長日記』だ」
向日葵「私の日記は生徒会の仕事の情報が記される『生徒会日記』ですわ」
あかり「なるほど」
櫻子「で、あかりの日記は?」
あかり「え、ええっ?それは秘密だよ」
向日葵「あら、自分の日記の情報だけ隠すんですの?」
あかり「しゅ、『主役日記』だよ!あかりの主役としての情報が記されるの!」
向日葵「ああ、そういう・・・」
櫻子「ま、がんばれよ・・・」
あかり「何その反応・・・酷いよ二人とも・・・」
結衣「なるほど、ちなつは白だったのか」
あかり「そっちはどうだったの?」
京子「生徒会全員が未来日記所有者だってさ・・・」
あかり「ええっ!?」
結衣「マジらしい。まず綾乃の日記は『歳納京子日記』。京子の行動が筒抜けみたいだな」
京子「えへへ、照れるなー」
結衣「次は千歳の日記、『百合妄想日記』だそうだ。京子と綾乃の遭遇・やり取りについて書かれるらしい」
京子「私ってば人気者だね・・・」
結衣「そして会長は・・・よく分からん。ただ未来日記所有者という事は確かみたいだ。
それと一年生コンビは・・・お前も知っての通りだろう」
あかり「あっ、うん。えーっと・・・これで8人?」
結衣「そうなるな。あと4人はどこに居るのか」
あかり「あっ、ちなつちゃん」
京子「ちなつちゅわーん!」
結衣「む・・・」
ちなつ「三人で何の話してたんですか?」
あかり「な、何でもないよ?」
結衣(そうだ、ちなつは未来日記所持者じゃない・・・巻き込むわけには・・・)
京子「『未来日記』の話だよ」
ちなつ「未来日記・・・?」
結衣「ばっ・・・!京子!」
京子「えっ、どうかしたの?」
京子「そうそう」
あかり「う、うんうん」
結衣「あっ・・・」
結衣(そうか、馬鹿は私の方だ。ここで変に隠したら怪しまれてしまうじゃないか。
『未来日記』という作品は存在するんだから適当にごまかせる・・・)
京子「いやあ、『未来日記』が手に入るならどんな日記がいいかなーって思ってさ」
ちなつ「なるほど」
京子「ちなみに私は『ラムレーズン日記』!未来に食べるラムレーズンの情報が記される!」
結衣(だが京子、それは少し言い過ぎじゃ・・・)
ちなつ「それ、あんまり意味ないんじゃないですか?楽しみも半減してしまいますし・・・」
京子「えっ、そうかなー?じゃあちなつちゃんはどんな日記が欲しい?」
ちなつ「私ですか?うーん・・・いきなり振られても思い浮かびませんね」
ちなつ「それはそうですよ。未来が見えるってすごい事だから迷っちゃいます」
京子「なるほどね」
ちなつ「・・・あっ、ちょっと用事を思い出したので今日はもう帰りますね」
あかり「あ・・・うん、また明日ね」
結衣「おう、お疲れ様」
ちなつ「はい、さようなら」トテトテ
京子「またねー」
京子「・・・怪しい」
結衣「えっ?」
京子「ちなつちゃんほどの猛者なら『結衣先輩日記』が欲しい!と言いそうなものなのに」
結衣「猛者って何だよ。でも、まあ確かに・・・」
あかり「じゃあちなつちゃんも所有者って事?」
京子「分からないけど、私の中では限りなく黒に近い!」
結衣「ふーむ・・・」
京子「そんなわけで、生徒会室行こうぜ!」
結衣「どんなわけだよ」
京子「おーっす!」
綾乃「あ、あら。歳納京子、来たのね」
千歳「来たのね、じゃないやろ~?日記で知ってたはずやんか~」
綾乃「そ・・・そうだったかしら?そういえばそんな事書いてあったかも・・・」
あかり(この二人の日記には京子ちゃんが来る事が記されてたって事だよね・・・)
りせ「・・・・・・」
結衣「おっ。会長も居たのか」
京子「会長、日記見せろー!」
あかり「だ、駄目だよ京子ちゃん。あの、日記見せてもらえませんか?」
りせ「・・・・・・・・・」スッ
・・・・・・
16:40
・・・・・・
17:00
・・・・・・
17:15
・・・・・・
あかり「うわ・・・」
京子「な、何じゃこりゃー!?」
りせ「・・・・・・・・・」
西垣「自分の身の回りの未来が分かる『寡黙日記』、だと言っている」
結衣「西垣先生!」
りせ「・・・・・・・・・・・・」
西垣「おそらく誰にも読めないと思うが、私には未来の情報が読み取れる。と言っているな」
あかり「先生こそどうしたんですか?」
西垣「いや、何となくな。ああそうだ・・・私の日記も見るか?」
結衣「えっ、先生も日記所有者なんですか?」
西垣「うむ。見てみろ」
16:30
調合中に出歩いてしまったせいか、理科室にて爆発。
幸いな事に犠牲者は無し。
17:15
調合中の素材がまだ安定化してなかったらしく、理科室にて爆発の第二波。
松本を巻き込んでしまったが、幸い軽傷で済んだ。
西垣「『爆友日記』だ!」
結衣「おいコラ」
西垣「なに、あと15分ある。ゆっくりして行こう」
結衣「アンタって人は・・・」
西垣「そうそう。この未来日記だが、私が作ったものだ」
京子「へ?先生が?」
結衣「ああ・・・どういう原理かは分かりませんが納得は一瞬で出来ました」
西垣「だから当然ながら、日記が壊れたら所有者が消滅する、なんて事はない」
千歳「消滅~?何やー、そんな物騒な設定あったんか?」
りせ「・・・・・・」
(ブィィンン・・・)
りせ「・・・・・・?」カチャッ
りせ「・・・!」
西垣「おお、そうだな。そろそろ止めに行くか。
日記を作ってるところなんだが、良かったらみんなも一緒に・・・」
あかり「え、ええー・・・怖いよ~・・・」
京子「でもちょっと見てみたいかも!」
りせ「・・・・・・」
西垣「・・・松本も一緒に止めに行こうと言っているぞ」
綾乃「まあ、会長が行くのならついて行くけど・・・」
千歳「そうやなぁ」
西垣「じゃあ、止めてくるぞ」スタスタ
綾乃「はい」
西垣が理科室へと入っていく。
りせ「・・・・・・」
結衣「・・・ったく。あの先生何とかならないのか?」
京子「無理だと思う」
千歳「うちもそう思うわ~」
綾乃「まあ、ああいう人だから仕方ないわね」
西垣の声「おーい、もう入ってきて大丈夫だぞー」
綾乃「よし、行きましょうか」
りせ「・・・・・・」
りせがみんなの前に立ち塞がる。
あかり「会長さん?」
りせ「・・・」スッ
16:24
・・・・・・
DEAD END
結衣「・・・はっ?」
あかり「な、なになに!?」
りせ「・・・」ポーイ
りせがケータイを理科室の中に放り投げる。
綾乃「会長!?何して・・・」
りせ(先生を、止めてあげて)
(ドオオオオォォン!!)
理科準備室から西垣が出てくる。
結衣「先生・・・」
西垣「むぅ。これは・・・」
りせ「」シュゥゥゥ…
あかり「ゆ、結衣ちゃん!会長さんが・・・」
綾乃「消え、て・・・?」
京子「おい、一体どういう事だよ先生!?」
西垣「日記が壊れて所有者が消滅、か・・・やはり本物だったか」タッタッタッ
逃げる西垣。
結衣「待て!!」
だがまさか、命を賭してみんなに伝えるとは・・・思いもしなかったよ。
西垣「・・・ふむ」
西垣(あいつは日記が壊れると所有者が死ぬという事実を知ってたのか?
いや――どちらか分からなかったからこそ日記を捧げたのか・・・)
西垣「さすが松本だ」
西垣(しばらく秘密基地に身を隠そう)
結衣「・・・ごめんみんな、先生を見失ってしまった」
あかり「結衣ちゃんは悪くないよ・・・」
千歳「でも何でやろか?先生の日記には爆発は16:30って・・・」
結衣「操作して爆発の時間を早めたか、あるいはケータイのメモ帳機能で普通に書いたのかもな」
京子「たぶん、私たちの日記もどこかで書き換わってたはず・・・
ノイズが発生して、私たちの中の誰か――或いは全員にDEAD ENDフラグが立ってたはずなんだ」
綾乃「会長が消えた・・・って事はつまり、日記が壊れたら所有者が消えるって事・・・?」
結衣「そうだな。西垣先生の捨て台詞からして、先生が日記を作ったという事自体も嘘っぽい」
綾乃「なんて物騒な代物なの・・・明日大室さんと古谷さんにも伝えないとね」
千歳「千鶴にも教えてやらんとなぁ」
京子「・・・ん?千鶴?」
千歳「あの子も未来日記所有者なんや~」
あかり「な、なんだってー」
結衣「百合妄想・・・って、あれ?それは千歳の日記じゃ・・・」
千歳「ふふ、それがなー。あの子の『百合妄想日記』はうちと綾乃ちゃんの遭遇情報ややり取りを記すんや~」
あかり「な、なるほどー」
結衣「つまりこれで所有者は・・・私、京子、綾乃、千歳、千鶴、それと先生と会長と、えっと・・・」
あかり「結衣ちゃん、誰か忘れてない?」
結衣「ああ、一年生コンビが居たな。9人か」
あかり「どうして二人が出てあかりが出ないの!?」
結衣「あ、あー・・・悪い悪い。10人だな」
京子「それとちなつちゃんで11人!」
結衣「決め付けるなって。だがもしそうだとしても1人足りないな」
結衣「思い当たらんが・・・」
京子「・・・あっ!」
綾乃「歳納京子、何か思いついたの?」
京子「ラムレーズン食べてない・・・そこにあるのは分かってるぞー!」
綾乃「はぁっ!?どうして知ってるのよ!」
結衣「『ラムレーズン日記』か。おい京子、17:40に私の家で食べるんだろ?」
京子「そうだった」
結衣「とりあえず、今日のところは帰ろうか」
千歳「そうやなぁ」
あかり「あれ?ちなつちゃん、櫻子ちゃんと向日葵ちゃんは?」
ちなつ「さあ・・・今日はまだ一度も見てないよ」
あかり「そう・・・」
あかり(どうしたんだろう、二人とも)
[生徒会室 PM0:50]
あかり「えっ、生徒会室にも顔出してないんですか?」
綾乃「ええ・・・昨日の事もあるから忠告してあげようと思ったんだけど」
千歳「心配やわぁ・・・」
あかり「そう、ですか」
あかり「・・・というわけなんだけど」
結衣「二人とも来てないのか。心配だな」
京子「まさか西垣先生に・・・」
結衣「やめろって」
京子「でも、先生もまだ見つかってないしさ」
結衣「それはそうだが・・・」
結衣「ああ、今日も用事があるって帰って行ったぞ」
あかり「また?」
京子「露骨に避けてる・・・やっぱり怪しい!」
結衣「うーむ。もしちなつちゃんが所有者だったとして、危険性があることを知ってるのかどうか・・・」
あかり「うーん・・・」
まり「うにー!」
あかり「あ、あれ!?まりちゃん??」
結衣「お前、どうしてここに・・・」
まり「うに食べに来た!」
結衣「ねぇよ」
結衣「・・・日記だと?」
まり「うん。これだ!」
16:00
おねえちゃんたちのへやのおそとでうにはっけん!
17:00
うにぶんがたりない・・・
18:00
ごはんをたべる。うにはなかった
結衣「これは・・・」
まり「うにのことが書かれる『うに日記』!」
京子「うわ、つかえねー」
結衣「いやお前が言うなよ」
結衣「部屋の外にうにがあるって書いてあったな」
まり「あっ、あれだ!」
30mほど先の皿に乗ったうにの寿司を指差すまりちゃん。
結衣「うわ・・・露骨に置かれてるな」
あかり「何でこんなところに?」
京子「罠?」
結衣「うーん、少し周りを警戒しつつ近づこう」
あかり「・・・結局何もなかったね」
結衣「いや、まだ分からないぞ。このうにに毒が盛られてるかも・・・」
まり「そんなばかな!」
京子「まあ西垣先生が敵だもんねー。普通にありそう」
まり「なんだって。ここまできておあずけ・・・」
結衣「仕方ないだろ。あんなところにうに寿司が置かれてる時点でおかしいんだよ」
まり「ぶー」
結衣「ん?ああ、まあな」
まり「どんなの?見せて!」
結衣「えっ・・・」
京子(・・・・・・)
京子「おー、いいぞ。ほれ」
まりちゃんにケータイを差し出す京子。
まり「へえ、これが・・・えいっ」バキッ
まりちゃんがケータイを折る。
結衣「なっ!?お前何して・・・!!」
あかり「京子ちゃん!!」
京子「あー・・・はっはっは!」
あかり「消え・・・ない?」
京子「ごめんごめん、まりちゃん。それ私が用意しておいたダミーだったよー。本物はこっち」スッ
まり「なぬっ」
結衣「おい、まり・・・お前どういうつもりだ?」
まり「こ、これはつまり・・・にげのいって!」ステテテテー
結衣「待て!!」
結衣「追い詰めたぞ、まり」
まり「うう・・・」
京子「どういうことか説明してもらおうか!」
まり「へんなふくめんをつけた人が・・・」
結衣「うん?」
まり「へんなふくめんをつけた人が、きんぱつかくろかみのケータイをこわせって・・・
そうすればうにをあげるって言ってたんだよ!ほら、日記のここ見て・・・ってあれ?」
16:32
ざんねん、うにを食べることなくばくはつしてしぬ。
DEAD END
(ドオオォォン!!)
結衣「くっ・・・まり!!」
爆発が収まると、壊れたケータイが――消えていくところが見えた。
京子「まりちゃん・・・」
あかり「ひどい・・・こんなのってないよ・・・」
結衣「・・・クソッ!!」
結衣「・・・・・・」
京子「結衣・・・」
あかり「結衣ちゃん・・・」
結衣(こうしていても始まらない、か・・・)
結衣「なぁ・・・さっきの、誰の差し金だと思う?」
あかり「えっ?」
京子「うーん、それは私も考えてたんだけど・・・」
結衣「あの爆発、やっぱり西垣先生かな」
京子「そうとも言い切れないよ。まりちゃんは『金髪か黒髪のケータイを』って言ってたよね?」
結衣「やっぱりお前もそこが気になってたか」
京子「うん」
あかり「あかりの『主役日記』が脅威じゃないと考えた?」
結衣「いや・・・それなら京子の『ラムレーズン日記』や私の『ゲーム日記』の方が限定的で使えない」
京子「そうだよねぇ・・・」
結衣「とすると、やはり・・・あかりをかばいたい人物って事になるよな」
あかり「あかりを?」
京子「うーん・・・でも、そんな人居たっけ?」
結衣「怪しいのは、生徒会の一年生コンビだな。今日は誰も目撃していないし」
あかり「櫻子ちゃんか向日葵ちゃんが!?」
京子「あるいは、その両方だね」
結衣「なるほど。黒幕はまりちゃんの事を信頼しておらず、ちゃんとケータイを狙うならそれでよし、
私たちに味方して情報を流してもそれはそれで混乱を誘える・・・って作戦か」
京子「そして後者の場合はすぐに始末するつもりだった・・・」
結衣「ふむ。とすると、私たちが最初にまりちゃんの日記を見た時はDEAD ENDフラグは立っていなかったが
最期にまりちゃんが日記を確認した時点では立っていたというのも・・・」
京子「うん。最初はまりちゃんが私たちのケータイを狙うつもりだったから殺す気は無かったけど
それに失敗して私たちに情報を流した時点で用済みになったから・・・ってこと」
あかり「えっと、DEAD ENDフラグって何?」
京子「ああ、あかりには説明してなかったっけ。全ての未来日記共通の予知内容で、
そのまま過ごしていたら持ち主が死ぬであろう時間の記述に『DEAD END』って書かれるんだよ」
あかり「ええっ!?それ書かれちゃったらもう終わりって事!?」
結衣「どうやらそうでもないらしい。持ち主、或いは他の日記所有者の行動によっては回避も出来る」
京子「アニメだと結構回避してたしね。特に未来日記所有者が集まってる場所だとあてにならないよ」
あかり「へえー・・・」
結衣「分からんな。どれも推測の域を出ないし」
京子「怪しいのは西垣先生と生徒会の面々・・・それに千鶴だね」
結衣「それ今分かってる全員じゃねーか」
あかり「あ、あはは・・・あっ。そういえば京子ちゃん、ダミーなんて作ってたんだね」
京子「ああ、あのサンプルのケータイ?こんなこともあろうかとね!」
結衣「ったく、あれ壊された時はどうなる事かと思ったぞ」
京子「日記の内容が役に立たないなら他でカバーするしか無いのだ!12thとか催眠術使ってたし」
結衣「何だよそいつ・・・」
あかり「寝坊した!早く学校行く準備しないと!」
(ピンポーン)
あかり「あっ、はーい!」ガチャッ
あかりが玄関のドアを開けると、そこに居たのはちなつだった。
あかり「あれ、ちなつちゃん?」
ちなつ「・・・」
あかり「な、何?どうしたの?」
ちなつ「あかりちゃん」ガバッ
突然あかりを押し倒すちなつ。
あかり「いたっ!ち、ちなつちゃん何するの!?」
ちなつ「抵抗しないで」
あかり「嫌、駄目だよこんなの・・・!」
あかり「え――」チュッ
そう言うとちなつはあかりの唇を奪った。
あかり「っ~~!!」
ちなつ「・・・ぷぁっ。フフ、作戦は成功ね」
あかり「ひどいよちなつちゃん・・・作戦?」
ちなつ「私の未来日記は結衣先輩と私の未来を記す『結衣先輩日記』!
今日結衣先輩の唇を奪うための作戦を決行するわ。デモンストレーションは完璧・・・」
あかり「うう、あかりをデモンストレーションに使うなんて・・・」
ちなつ「それじゃ、また学校で会おうね」バタン
家から出て行くちなつ。
あかり「まったく、ちなつちゃんにも困ったものだよ・・・」
あかり「ああっ!!早く学校に行く準備しないと!」
ちなつの声「きゃああっっ!!」
あかり「えっ!!ちなつちゃん!?」
急いで家の外に出てあたりを見回す。倒れているちなつを見つけた。
あかり「ちなつちゃん!」
ちなつ「ぅ・・・日記・・・」
あかり「日記?・・・無いの!?」
そこへあかりを迎えに来た京子と結衣がやってくる。
京子「あれ・・・ちなつちゃん!!」
結衣「おい、どうした!?」
京子「あっ、ちなつちゃんやっぱり日記所有者だったのか!」
結衣「いやそれより・・・誰に取られた!?」
ちなつ「分からないです・・・急に・・・あれっ・・・?」シュゥ…
ちなつの体が消え始める。
あかり「ちなつちゃん!?」
結衣「日記を壊されたんだ!」
ちなつ「」シュウゥゥ…
ちなつが完全に消える。
京子「ちなつちゃん・・・」
結衣「さて」
京子「完全に遅刻したわけだが」
あかり「ご、ごめんなさい・・・」
結衣「いやそれはいいよ。それよりちなつちゃんが消えた件だ。授業なんていってる場合じゃない」
京子「えーっと、とりあえず日記所有者は娯楽部の4人、生徒会の5人、先生、まりちゃん、千鶴・・・」
あかり「あっ、12人揃ったね」
結衣「その内すでに死亡が確認されているのはちなつちゃん、会長、まりちゃんの三人だな」
あかり「行方が分からないのは櫻子ちゃん、向日葵ちゃん、西垣先生だね」
結衣「ふーむ」
あかり「どうして?」
京子「勘だ!」
結衣「まあ、それはともかくやっぱり一年生コンビと先生が怪しいよな」
結衣(だとして、だ。うーむ・・・)
結衣「情報が少なすぎる・・・」
あかり「そうだね、ちなつちゃん自身も誰に襲われたか分かってなかったし」
京子「現状ではどうしようもないねー」
西垣「ふぅ・・・さすがに地下までは警戒されてないらしいな」
西垣(さて。少し、外の様子を見てくるか)
秘密基地の外に出る西垣。
西垣「・・・ふむ、今日も異常は――むっ?」
少し離れたところに人影を発見する。隠れながら様子を見守る西垣。
千歳「うーん、見つからへんな~」
西垣(誰かを探してる・・・私か?)
千歳「あの人さえ何とかすれば、後は仲良しこよしの甘ちゃんばかりなんやけどなぁ」
西垣(な・・・に?)ガサッ
西垣「しまっ・・・!」
千歳「おやぁ?」
西垣「クッ」タッタッタッ
逃げる西垣。それを追う千歳。
千歳「やっぱり、西垣先生や~。逃がさへんよ?」タッタッタッタッ
西垣(秘密基地に逃げ込むのはやばいな。一端学校へ・・・)
考えていると、目の前からも誰かが現れる。
西垣「なっ!?」
千鶴「逃がしませんよ」
西垣「妹か・・・!」
西垣(後には池田・・・どうする?逃げ道は・・・)
西垣「くそっ!やっぱりここしかないか!」
地下への扉を開ける西垣。
千歳「そんなところに隠れてたんなぁ。どうりで見つからへんはずやわ~」
西垣「篭城戦か・・・」
千歳「先生。ここ、開けてもらえへんやろか?」ドンドンドン
西垣「それは出来ないな。ああ、一つ言っておくが、その扉は無理やり開けると爆発するぞ」
千鶴「嘘ですね。爆弾が付いているのならば今すぐにでも起爆しているはずです」
西垣(こいつ・・・!)
西垣「・・・よく一瞬で見破ったな。だがこの基地自体に自爆装置が付いている」
千鶴「確かに、それは貴女ならやりかねませんね」
西垣「フフ・・・そこを開けた瞬間お前たちも巻き添えにして自爆するぞ」
千歳「何や、それなら簡単や~。ここを開けたら千鶴一人で突入すればええんやろ?」
千鶴「そうですね、姉さん」
西垣「お前ら・・・!」
千鶴「はい」
西垣(駄目だ、このままでは時間の問題だ。日記によるとDEAD ENDは今日の夕方・・・
ここにある発明品を使えば一端は何とか切り抜けられるということか。
だが、ここを破棄してしまったらもう発明環境が無くなってしまう。
そうなったら私に勝ち目は無い・・・学校は敵だらけ・・・)
西垣「そしてDEAD END、か」
西垣(ここで私が死んだら、ほぼ100%池田の勝利で終わる・・・
こうなったらせめてそれだけは阻止してやるぞ!)
杉浦が『歳納京子日記』で、大室と古谷は行方不明、松本はもう居ない・・・
歳納、船見・・・ともう一人の一年はいつも一緒に行動してる」
西垣(ここまでの情報でまず池田姉妹の戦力を削ぐ方法は見えているんだ。問題はこの先・・・)
西垣「対抗馬となる歳納と船見の日記が『ラムレーズン日記』と『ゲーム日記』。あと一人のは・・・忘れた」
西垣(こいつらが使えないんだよな・・・)
西垣「いや、よく考えろ私・・・とりあえず池田姉妹のヤバさを伝えるのは必須だ。
だが私では、ここを脱出して命を投げて伝えたとしても信用されるかどうか・・・
それにただ知らせるだけではあの姉妹に対抗できる気がしないし・・・
せめて頼りになりそうな船見がしっかりした日記を持っていれば・・・」
西垣(・・・いや待てよ?そうか、なるほど!)
(ブゥゥン・・・)
西垣「このノイズ・・・」ピッ
日記の内容を確認する西垣。
西垣「クク、これが上手く行けば船見たちの勝利が見えてくるな」
西垣「完成した・・・この薬があれば」
千歳「待たせたな、千鶴ー」
千鶴「おかえり姉さん。これで中に入れるね・・・」
千歳「そうやなぁ。待っててや、先生」
西垣「やなこった!」ガチャ
千鶴「出てくる気!?」
身構える千歳と千鶴。西垣は扉を開けると閃光弾を放つ。
千歳「これは・・・千鶴、目と耳!」
千鶴「はい!」
(キイィィィーン)
千歳「くっ・・・」
千鶴「ううっ・・・!」
西垣「ふぅ、やはり逃げ出す事自体は容易だったか」
西垣「そして幸いな事に今は授業中だな」
西垣(目指すは二年教室!)
[七森中・京子たちの教室前 AM10:13]
西垣(ここだな・・・)スゥッ
少しドアを開け、教室内を覗き込む西垣。
西垣(歳納と船見は居ないか・・・だが杉浦が居るなら上出来だ)
綾乃「歳納京子・・・はぁはぁ・・・」
西垣(ケータイ見て何やってるんだあいつ。まあそっちの方が都合がいい)
西垣が教室に入り込む。
授業中の教師「に、西垣先生!?」
綾乃「えっ!?」
綾乃の元へ駆け寄る西垣。
西垣「杉浦、授業中にケータイ使うな!没収だ!」パシッ
綾乃「あっ!!」
西垣「では、失礼しました!」スタスタスタ
綾乃「ちょ、ちょっと待って!」タッタッタッ
綾乃から携帯を取り上げ教室から立ち去る西垣、綾乃はそれを追う。
西垣「ふむ、やはり歳納たちは部室か」
綾乃「先生!!突然現れて何なんですか?私の日記を使わないでください!」
西垣「まあ落ち着け。世界の平和のためだ」
[西垣の秘密基地前 AM10:20]
千鶴「姉さん、大丈夫?」
千歳「大丈夫や・・・」
(ブゥゥーンン・・・)
千鶴「ノイズ?」
千歳「・・・私の日記やな。5分後に歳納さんと綾乃ちゃんが遭遇?」
千鶴「えっ?今は授業中のはず・・・」
千歳「ふむぅ。先生、何か仕掛けてきおったなぁ」
西垣「さて、と。少し離れろ杉浦」ポイッ
爆弾を放り投げ、部室の入り口脇に身を隠す西垣。
綾乃「な、何を・・・!?」
(ドオオォォォン・・・!)
爆発音を聞いてあかり、京子、結衣が部室から出てくる。
京子「何だ何だ!?」
結衣「あれ、綾乃・・・うっ!?」ガバッ
西垣「おっと、動くな」
結衣は西垣に後ろを取られ拘束される。そしてそのまま10mほど離れる。
西垣「動いたら船見にこの薬を飲ませる」
西垣「さーて。とっても面白い薬なんだが、ちょっと言えないな」
綾乃「どうしてこんな事を・・・!」
西垣「おっと、杉浦の日記もこっちの手にあるんだぞ」
京子「卑怯な!結衣を放せ!」
結衣「・・・目的は?」
西垣「さすが船見は話が早いな。私の話を聞いて欲しいんだ」
結衣「話だと?」
西垣「ああ」
京子「ちゃんと12人見つけたぞー!」
西垣「そうか、それは良かった。ちなみに私の真の日記内容は『発明日記』だ。
自分の発明品についての情報が記される。これで容易に発明品が作れたよ」
京子「なに、『爆友日記』はブラフだったのか!」
結衣「それで?どうしてそんな事を教える?」
西垣「ここからの話をするに当たって少しでも信用を得たかったんだ。
それで本題だが・・・池田姉妹は神の座を狙っている」
杉浦「神の座って・・・」
結衣「・・・まさか、他の日記所有者を殺してるって事か?」
西垣「その通り。行方知れずの大室と古谷もあいつらにやられたのかもしれん」
あかり「二人が・・・!?」
結衣「・・・その話が本当だという証拠は?」
京子「そうだ!そんな事言って同士討ちさせる寸法だろ!」
西垣「証拠、か・・・そんな物は無いが、私の命を賭けよう」
あかり「えっ?」
千歳「先生!」
どこからか千歳と千鶴が駆け寄ってくる。
千歳「先生、また変な嘘言うのやめてや・・・」
千鶴「そうですよ。こんなの、酷すぎます」
西垣「フフ・・・お前らは本当に優秀だな。だがそんな茶番には付き合ってられん」
結衣「うぐっ!?」
西垣は結衣に謎の薬を飲ませると、その場を離れた。
西垣「そしてさらばだ!私と杉浦の死を無駄にするなよ!」カチッ
綾乃「えっ・・・」
(ドオオォォォン!!)
あかり「自爆した!?」
綾乃「あ、あああ・・・」シュゥゥ…
京子「綾乃!!」
綾乃「」シュゥン…
千歳(くぅ・・・うちと千鶴の『百合妄想日記』はそれぞれ「歳納さんと綾乃ちゃん」、「綾乃ちゃんとうち」の
二人両方が居ないと効果のない日記・・・綾乃ちゃんが欠けた時点でうちら姉妹の日記の価値は無くなる・・・)
千鶴(そして、娯楽部の三人が共に行動する事を考えると、その内の一人の情報が分かる『歳納京子日記』は
是非とも利用したい日記だった・・・それを失うなんて・・・)
結衣「う、うう・・・」
京子「・・・はっ。大丈夫か、結衣!」
結衣「ああ、何だか頭がおかしくなった気がするが・・・何だこれ。これ現実か?」
あかり「結衣ちゃん!やっぱり変な薬飲まされちゃったんだね・・・」
結衣「ああ。人が死んでいってる重い状況なのに実感が無いっつーか・・・」
結衣(そうだ――まるで、ゲームでもやってるかのような)
(ブイィィン・・・)
結衣「このノイズは・・・?」ピッ
10:45
千歳が騙し討ちを仕掛けてくる。どうやら先生の攻略情報通り敵だったようだ。
まあ、善人面した悪役なんてよくある話か。
10:47
千鶴が助けに入ったことで千歳に逃げられる。今回は勝てないイベント戦闘か。
結衣(なんて事してくれるんだあの先生は!)
あかり「結衣ちゃん、大丈夫?」
千歳「大丈夫か~?」
結衣「ああ、ばっちりだよ。把握した」
京子「把握?」
千歳「しかし、綾乃ちゃんの事は残念やったなぁ・・・あの先生、むちゃくちゃやわぁ」
結衣「そうだな、無茶苦茶だな」
千歳「せやから、うちらが変な事企んでるなんて嘘、信じひんよな?」
結衣「ああ」
そう言うと千歳はハンカチを取り出す。
結衣「おっと、すまないな」スッ
千歳(いただきや!)ニィッ
千歳の持っていたハンカチに隠されていたナイフが顔を出す。
だが結衣はそれを読み、ケータイを引っ込める。
結衣「・・・なんて、騙されるか!」サッ
千歳「何やて!?」
京子「ち・・・千歳!?」
あかり「まさか・・・」
京子「うおっ!?」
千歳の元に駆け寄る千鶴。
そして千歳を抱き寄せると結衣たちから離れた。
結衣「お前ら・・・」
千歳「フフフ・・・ああ、そうや。うちは神の座を狙ってるんや。
ここで船見さんを始末できれば楽やったんやけどなぁ・・・」
京子「千歳、やっぱり敵だったのかー!」
千歳「せやけど、うちの攻撃を見破るとはどんなマジックや?」
結衣「それは、この『ゲーム日記』に書いてあったからだ」
あかり「ええっ!?」
京子「うそっ!」
結衣「その通り。でも、ゲームってテレビゲームだけじゃないだろ?」
千歳「まさか・・・この未来日記を使った争いを『ゲーム』とでも言い張る気なんか?」
結衣「私だってとてもそうは考えられなかったさ。でも西垣先生に飲まされた薬によって、ね」
京子「あの薬にはそんな効果があったのか・・・」
千歳「・・・アホらし。今回はここまでにしとこか・・・千鶴!」
千鶴「はい、姉さん」
そういって立ち去る千歳と千鶴。
京子「あっ、待てー!」
結衣「お前が待て。深追いはやめろ」
千歳「ふーむ・・・」
千鶴「どうしたの、姉さん」
千歳「船見さんの『ゲーム日記』、厄介やなぁ」
千鶴「・・・はい」
千歳「でも、日記の情報は他の所有者の行動によって変わったりもする・・・
何とか逆手に取れそうな気もするんやけどな。決め手に欠けるわぁ」
千鶴「私たちの日記ももう役に立たないし・・・」
千歳「そうやなー。もはやDEAD ENDフラグしか書かれへん、足かせのような物やから・・・
・・・いや、DEAD ENDフラグ・・・やから、つまり・・・」
千鶴「姉さん?」
千歳「・・・行けるかもしれへんな」
娯楽部部室前にて待ち構える結衣、京子、あかり。
そこに千歳が一人でやってくる。
千歳「待っててくれたんか?嬉しいわぁ」
結衣「・・・来たな」
京子「あれ、一人?千鶴は?」
結衣「大丈夫だ京子。何を企んでようとこの『ゲーム日記』で見破るさ」
千歳「ふふ・・・企むだなんて人聞き悪いこと言わんといてや~。うちは話し合いに来たんよ」
あかり「い、今さら話し合いだなんて・・・」
千歳「仕方ないやろ?うちには『ゲーム日記』を破る方法は思い浮かばへん。よくて相討ちや」
結衣「相討ちまで持っていけると?」
千歳「どうやろなぁ。実は、うちには既にDEAD ENDフラグが立っとるんや。ほれ」
11:35
DEAD END
千歳「元々は歳納さんと綾乃ちゃんの事を記す日記やから、DEAD ENDにもうちの死因が書かれへんのやな」
結衣「・・・そうか。で、それを教えてどうするつもりだ?」
千歳「ゲームをしようや。うちが勝ったら三人の日記情報にDEAD ENDフラグがあるかどうか見せてもらう。
うちが攻撃する事でどれくらい被害を与えられるか知りたいんや。負けたら・・・そうやね・・・
まあ、どっち道死ぬ運命やから日記を差し出すわぁ」
あかり「ほんとに?」
千歳「ゲームの内容は、21を言ったら負けというゲームや。1からスタートして、お互いに数字を最大3つカウントし合う。
数字を言い合っていき、最終的に21をカウントしてしまった方が負け・・・」
結衣(聞いた事あるな。確か必勝法があったはずだが・・・)
(ブゥゥーン・・・)
結衣(ノイズ・・・?)ピッ
11:34
21を言ったら負けゲーム開始。先攻では勝てない、後攻をもらう。
後攻側は4の倍数をキープしていれば最後に20を確保できるので負けない。
千歳→1,2,3、私→4、千歳→5,6、私→7,8
11:35
千歳→9,10,11、私→12、千歳→13、私→14,15,16
この時点で千歳が思考をめぐらし負けを悟る。私の勝ち。
千鶴「はい、姉さん!」
結衣たちの背後から千鶴が襲い掛かる。
京子「なにぃ!!」
結衣「しまった!?」
(ブゥゥーン・・・)
11:34
千鶴のバックアタック。体勢を整えられない。
11:35
千鶴の攻撃、自爆。私に即死ダメージ。
DEAD END
結衣「自爆・・・!?」
千鶴「うおおぉぉ!!」ギュッ バタン
千鶴が結衣を押し倒す。
あかり「結衣ちゃん!」
京子「え、ええっ!?」
千鶴「姉さん、後はがんばって」
(ドオオォォォン!!)
京子「うおっ!?」
あかり「うわぁっ!!」
千歳「あーはっはっはっは!やっぱり『ゲーム日記』にはゲームで対抗するのが一番やったみたいやなぁ」
あかり「そんな・・・結衣ちゃん・・・」
千歳「いやー、船見さんが『未来日記』初心者で助かったわぁ。日記なんて所有者の集まる場所では
そこまでの信頼性はあらへんのや。所有者たちの行動でころころ変わるからなぁ。
せやけども、無視できるレベルってわけでもないってところが難しいんやけどな~」
京子「千歳!お前、DEAD ENDフラグはどうしたー!」
千歳「ああ、あれか?あれは千鶴の日記や。そっちを油断させる材料が少しでも多く欲しかったからなぁ。
千鶴の体に時限爆弾をセットしてあったんやわ。発明品類を残してくれた西垣先生に感謝せんと」
あかり「妹を道具のように使うなんて、ひどい・・・」
うちが生き残るなら千鶴がいつ犠牲になってもかまわへんわ」
あかり「でも・・・!」
千歳「千鶴も了承済みや。最後に二人で生き残ってもどの道殺さなあかんやろ?それも嫌やん」
京子「むぅ・・・」
千歳「まあ何にしても、船見さんが消えてくれてありがたいわぁ。残りが雑魚二人なら・・・
・・・ああ、そういえば他の日記所有者知っとるん?12人にはあと2人足らんのよ。
うちの知ってる限りだと、生徒会5人と先生、千鶴・・・それと娯楽部の3人だけや」
あかり「・・・3人?ちなつちゃんは?」
千歳「ほお、娯楽部は4人ともそうやったんかいな」
京子「ちなつちゃんは千歳がやったんじゃないのか!?」
千歳「知らんなぁ」
あかり「って事は、まりちゃんをあかりたちに差し向けたのも違うの?」
千歳「誰やそれ・・・まあ、それはおそらく西垣先生やろなぁ。その子はどうなったん?」
京子「・・・死んだよ」
千歳「ほうほう」
京子「こっちも聞きたい事がある!生徒会の一年生2人はどうなった!」
千歳「さあなぁ。まあ、ここまでまったく音沙汰がないという事は西垣先生に消されたんやろうけど」
あかり「あ、あれ?でも先生は池田姉妹が消したと思うって言ってたよ?」
千歳「そうなんか?なら、もしかしたら千鶴がやったんかもなぁ。それか吉川さんか、まりちゃんって子か・・・
どちらにしても残るはうちら3人だけやな。安心したでぇ」
あかり「うう・・・」チラッ
11:50
主役なのにいいところが無いまま殺されちゃう。
DEAD END
あかり(あかり、死んじゃうの・・・?)
千歳「あらあら・・・どうやって変えるつもりやろか?そのゴミ日記二つで」
あかり「あ、あかりに出番があればゴミじゃないもん!」
京子「それに今は千歳が一番ゴミだろー!?」
千歳「あはは、せやったせやった。でもこっちにはDEAD ENDフラグが立ってへんし、どうやらそっちには立ってるみたいやよ?」
京子「ふ・・・フッフッフ!こいつを受け取れー!」ポーイッ
京子はポケットから何かを取り出すと千歳へと投げる。千歳はそれを反射的に受け取ってしまう。
千歳「何やっ・・・!?」パシッ
あかり「ラムレーズン??」
千歳「何や、つまらんジョークかいな。冗談きついわー」ポイッ
そう言うと千歳はラムレーズンを投げ捨てた。
(ブゥーンン・・・)
千歳「さて、そろそろおしゃべりは終わりや」
京子「・・・・・・」ピッ
京子は日記を確認する。
千歳「そんなゴミ日記見たところで何も変わらへんわ!覚悟しぃ!」
千歳がどこからかナイフを取り出し、京子に襲い掛かる。
あかり「京子ちゃん!」
スウェーで千歳の攻撃をかわす京子。
千歳「はっ・・・?」
京子「そして右のわき腹に僅かな隙が出来る!」デュクシ!
千歳「ぐはぁっ!!」
京子が千歳のわき腹にパンチを叩き込むと、千歳はその場にうずくまった。
あかり「ええっ!?」
千歳「ば、馬鹿な・・・何でや・・・?」
京子「私の日記はゴミ日記じゃなくて『ラムレーズン日記』だ!」
千歳「ら、ラムレー・・・・・・ま、さか・・・」
京子「フフフ・・・見ろ!」
千歳が我が愛しのラムレーズンを無碍にする。絶対に許せねえ!
11:46
ラムレーズンをゴミのように扱った千歳が襲い掛かる。
初撃は喉元狙い。その攻撃によりラムレーズンを馬鹿にした輩の右わき腹に死角が生まれる。
11:47
カウンター気味に入ったパンチによりラムレーズンを粗末にした千歳をKO。
ラムレーズンは正義!
あかり「す、すごい・・・」
千歳「んな・・・アホな・・・それは、卑怯、やろ・・・?」
京子「ところがどっこい!これが現実だ!」
千歳「は、はは・・・歳納さん、らしいわ・・・う、うちの負けや・・・」
京子「うむ。策を練り、みんなを陥れ、私たちを追い詰めた数々の行動、
ご苦労だった・・・と言いたいところだがお前には消えてもらう!」
千歳「今まで堪忍な・・・二人なら、きっといい世界を築けるわ・・・」
京子「・・・死ぬがよい」バキッ
千歳「」シュゥゥン…
京子は千歳の日記を破壊した。
あかり「終わったね・・・」
京子「・・・・・・」
あかり「京子ちゃん?」
京子「あかり、私はラスボスだぞ?」
あかり「えっ・・・」
京子「あかりが神になる上での最後の障害だ」
あかり「あ、あかりはそんなつもりないよ?」
京子「じゃあ私が神になってもいい?」
あかり「えっ、それって・・・」
あかり「だからあかりを・・・?」
京子「私も気乗りしないけどさ。勝った方は神になる」
あかり「・・・あかり、そんなの興味ない」
京子「私も、そこまではね。でも神になれば世界は思うまま・・・」
あかり「だから、興味ないってば・・・」
京子「本当に?みんなを生き返らせて、また平穏な日常を送れるかもしれないのに?」
あかり「あっ・・・」
京子「そうだよ、あかり。このままだとみんな死んじゃったままだ。
だったら一時的にでも戦い合って、神になった方がみんなの居る平穏な世界を作ろう」
あかり「それは、確かに・・・それがいい」
あかり「ええっ!?じゃ、じゃんけんとかじゃ・・・」
京子「えー、それじゃつまんないよ」
あかり「つまらなくていいから早く平和な世界に戻りたいんだけど・・・」
京子「まったく、あかりはあかりだなー。せっかく未来日記手に入れたんだよ?」
あかり「こんな日記もううんざりだってば!」
???「嫌だわ、早くすり潰さないと」バキッ
京子「・・・へっ?」シュゥゥ…
京子の背後から何者かが現れケータイを破壊する。
あかり「京子ちゃん!?」
京子「」シュゥン…
――京子は消滅した。
あかり「そんな、京子ちゃん・・・一体誰が!?」
あかね「・・・あかり」
あかり「お、お姉ちゃん!?どうして・・・」
あかね「このゲームの勝利者は神になれる」
あかり「なんでお姉ちゃんがそれを・・・」
あかね「私は神になってあかりと二人きりの世界を作り出すのよ」
あかり「えっ」
あかね「ふふ、そうよあかり。私も未来日記所有者・・・」
あかり「お・・・姉ちゃんが・・・?」
あかり「そんな!所有者は12人のはずじゃ・・・」
あかね「それは原作の話でしょう?」
あかり「・・・お姉ちゃん、『未来日記』知ってたの?」
あかね「そうよ。前からずーっと、欲しいって思ってたのよ」
あかり「何を・・・?」
あかね「この未来日記。あかりに近づく虫どもを教えてくれる『妹日記』を、よ!」
あかり「そ、そんな・・・」
あかり「櫻子ちゃんと向日葵ちゃんはお姉ちゃんが・・・!?」
あかね「そしてうにうに言ってる子供を使ってさらに数を減らそうとした・・・失敗したけどね」
あかり「まりちゃんも・・・あっ、それで私を狙わなかったのか・・・」
あかね「後はあのにっくきピンク髪ね・・・」
あかり「ちなつちゃんも?」
あかね「当然よ。あの子はあろう事かあかりの唇を奪った・・・だからあかりにも死に様を見せてあげた」
あかり「そういえばケータイ取られたって・・・わざわざあかりが駆けつけてから壊したんだね・・・」
あかね「うふふ、その通りよ。あとは勝手に潰し合ってくれたし・・・残るはあかり一人だけ」
あかり「お姉ちゃん・・・こんなの絶対おかしいよ・・・!」
そしてそのために私は一度だけあかりを手にかける・・・自らの手でね」
あかり「やめようよ、お姉ちゃん!」
あかね「どうして?あかりはお姉ちゃんの事好きじゃないの?」
あかり「そ、それは好きだけど・・・でも、こんなの嫌だよ!」
あかね「うふふ、怖いのね。かわいいわ。大丈夫、痛みは一瞬だから・・・」
あかり「そ、そうじゃなくって・・・いやそれもそうだけど・・・」
あかり(そうだ、日記は・・・)ピッ
12:30
主役が姉に殺されちゃうなんて・・・
DEAD END
あかり(駄目・・・なの?)
あかり「うう・・・」
あかね「ほら、私の日記の方にはもうあかりに近付く悪い虫は居ないと・・・」ピッ
12:30
あかりに赤座あかねという虫が近付く。あかりのために排除すべし。
あかね「えっ」
(ブゥゥーン・・・)
あかり「ノイズ・・・?」チラッ
12:30
さすが主人公!千歳ちゃんが使ってたナイフで最後の日記所有者を倒し、見事エンディングを迎える。
HAPPY END
あかり(これは・・・!)
あかり「お姉ちゃん、ごめん!」ベキョッ
その場に落ちていたナイフを使い、あかねのケータイを傷つける。
するとあかねの体が消え始めた。
あかね「ああっ」シュゥ…
あかり「お姉ちゃん・・・」
あかね「私は・・・間違って・・・」シュゥウン…
あかねは完全に消滅した。
突然あかりの周りの風景が変わる。
あかり「あ、あれ・・・?ここ部室だったよね?」
???「おめでとう。お前は見事勝ち残った・・・」
あかり「あなたは・・・」
神「我は神・・・今は、だが」
あかり「今は・・・?」
神「我はもうすぐ滅びる・・・お前はこのゲームに勝利した。次はお前が神になる」
あかり「あかり、神になんてなりたくない!みんなを返して!」
神「そう言われてもな・・・もう決まった事だ。お前が神になってから変えればいい」
あかり「あかりが・・・?」
結衣「なげーよ」
ちなつ「・・・私が全然活躍してなかった気がしますけど?」
あかり「あかり、殺し合いなんて嫌だよ・・・」
京子「あはは、最初は適当にみんなの未来日記がどんな感じになるか考えてただけなのに
気付いたら本当に戦い始めちゃってたよ。ごめんごめん」
結衣「お前なぁ・・・」
京子「だけど、あれだよね。未来は分からないからこそ面白い、だから人は生きる・・・みたいな?」
ちなつ「いい事言ったみたいな感じで締めくくろうとしないで下さい」
京子「何だとー!そんな事言ったら落ちがつかないだろー!」
結衣「えっ、私か?そうだな・・・やっぱり平凡な人生ってのが一番ってことなんじゃないか?」
ちなつ「キャー!先輩かっこいい!しびれます!」
京子「薄っぺらさでは私と大差ないじゃんか!えこひいきするなー!」
あかり「あ、あはは・・・でも、『平凡が一番』か。そうだよね!
きっとあかり、そこで神になったら・・・平凡で平穏で平和な、そんな世界を願ったと思う」
京子「おお、あかりがそれっぽい事を!」
結衣「・・・まああかりは平凡じゃなくて空気だけどな」
ちなつ「ですよねー」
あかり「ええっ!?みんなひどいよー!」
END
Entry ⇒ 2012.01.05 | Category ⇒ ゆるゆりSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
刃牙「お父さんスイッチ貰ったんだけど…親父…」
刃牙(でもさァ、親父ィ……)
このくらいは……
刃牙「お父さんスイッチ、『あ』」
刃牙(言ったッッ!言ってやったッッ!)
勇次郎「…………」ニコ
刃牙(さぁ……何だ!?どんな『お仕置き』が来るッッ!?)
刃牙、この時、瞬時にピクルを卒倒寸前に追い込んだ3恐竜を『復活』させる。
息子のここまでの成長……!!
かの不用意な味見にも関わらず…料理は出来上がった!
勇次郎「…『あ』……握撃か……」
刃牙「~~~~~~ッッ!?」
刃牙「…どっ…」
刃牙「何処をっ…とかじゃなくて?」カラダの…
勇次郎「このちゃぶ台か…」ガシッ
刃牙「」
勇次郎「」ニタァアアアアアアア
メシッ……メシシッ……
刃牙「…ッッ」
刃牙(親父が…ちゃぶ台をッッ!)
親父が!
範馬勇次郎がッッ!!
他人の指示通りに動いたことッッ!!
刃牙(おそらく前代未聞の偉業ッッ!)
いや……
違う……
刃牙「そうじゃねぇだろ 範馬 勇次郎ォオオォオオッッ!!」
刃牙「俺の知ってる範馬勇次郎はそうじゃねえッッッ!!!」ガシャァンッ
勇次郎「…」ニヤニヤ
勇次郎「エフッ」
勇次郎「さぁ早く次のスイッチを押せ」ニヤニヤ
刃牙(~~~ッッ!?)
親父が…指示を待っているッッ!?
刃牙……この瞬間、範馬勇次郎という、地上最強のラジコンを手にする
刃牙「……」
刃牙「やだね」
刃牙「俺の知ってる範馬勇次郎は…こんなラジコンにはならない…命令なんて聞かないよ…親父…」
勇次郎「…何を勘違いしている」ニヤァアアアアア
勇次郎「…」緩ッ……
かの愚地克己のマッハ、そのスピードで打ち出される、鞭打ッ!!
地上最強が織りなす、魔のコラボレーションッ!!
バ チ ィ ィ イ インッ!!
永遠に近い猶予
痛みへの
覚悟の時間
刃牙「」
襲いかかる
痛ッッッッ!!
来たッッッッッ!!
刃牙「jgtjatatag@ァアアアアjgtja!!」
そして地獄ッッ!!
3恐竜は……霧散……
勇次郎「この俺が」
刃牙「」ピクッ…ピクッ…
勇次郎「指示しろと、『命令』しているのだ」
刃牙(なッ……なるほどォ~~~~ッッ!!)
命令されながの命令ッッ!
兵隊に脅される指揮官ッッ…!!
ベトナムでの他の隊の指揮をとっていた、ルゼルネ=ビップ(62)は、当時を振り返る。
「彼ですか?」
「いやぁ~~私の隊には、彼のような人物はいませんでしたが…いや、地球上のどこを探しても、彼のような人物は他にいないでしょう」アハハ
「ハンマ ユウジロウは…兵にして兵に非ず……」
「指揮官…違う…」
「ぶっちゃけ……役職があるんですよ…一等兵…中佐……准将…色々ありますけれど…」
「範馬勇次郎っていう…役職が……」
刃牙「お父さんスイッチッ……『し』!!」
勇次郎「『し』……消力か……」
範馬刃牙の策略ッ!!
握撃…鞭打…其の他の技の殆どが、攻撃ッッ!
勇次郎が相手を選ぶ。もしくは必要がない。
しかし消力では…相手が必要ッ!!
誰かの攻撃がなければ成立しないッ!!
刃牙(さァ…どうするんだよ…親父ッ!)
勇次郎は『知っていた』
今、この家から出れば待ち受けるものは
鉄の獣ッッ!!
猛スピードで走る4tトラックッッ!!
トラックの運転手の顔は既に蒼白
目の前にいる男の命よりも
本能が叫ぶ
今、自分が牽こうとするこの男に、自分は殺されるッッ!
失禁もやむなし。
刃牙「親父ィイイイイッッ!!」
勇次郎「…刃牙よ…ご近所に迷惑だ」ニヤァアアアア
刃牙の目の前で、範馬勇次郎はトラックに飛ばされた
運転手は、その場から立ち去った。
自らのはねた男が、飛ばされるのを目の当たりにして。
やむなしッッ!!
勇次郎「……」ニヤァアアアア
刃牙「お、親父……」
刃牙「だ、大丈……」
刃牙「…いや、なんでもない…」
勇次郎「さぁ…早く指示を出せッッ!!」
ラジコンからの…有無を言わせぬ命令ッ!!
刃牙「おっ…お父さんスイッチ……」
勇次郎「それでいい」ニヤァアアアア
哀れッッ…!
花山「めッ…目も当てられねぇッ…」
刃牙「『あ』ッ!」
勇次郎「!」
二度目の『あ』ッッ!!
オリバ「バキ……オーガを前に血迷ったか……!?」
烈「いやッッ…これは!?」
親父…
『あ』……洗い物やってくんねッ!?
Entry ⇒ 2012.01.05 | Category ⇒ 版権物SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
姉「これ、足拭きマットだから使って」姉友「弟君?」
姉「どういう事って、足拭きマットよ。ねっ?」
弟「……はい」
姉友「えっ?えっ?」
姉「こいつね、足フェチのM男でね、昨日洗濯機から私のストッキング盗んでオナニーしてたのよ」
姉友「……」
姉「ねっ?」
弟「……はい」
姉「だから、そんなに足が好きなら、足拭きマットになりなさいって言ったら、喜んでなるって言ったの。ねっ?」
弟「うぅ……はい……」
弟「うぅ……はい……」
姉「こうやって、足拭いてね」グリグリ
弟「うぐ……うぐぐ……」
姉友「ちょっと……!靴のままで弟君、可哀想だよっ!」
姉「大丈夫よ。これはただの足拭きマットだし」グリグリ
弟「うぐぐ……」
弟「……うぅ」
姉「ほら、友ちゃんも。靴拭いてから、あがって?」ヌギヌギ
姉友「弟君!大丈夫!?」
弟「うぅぅ……」
姉「どうしたの?なんで玄関で固まってるの?」
姉友「姉……酷いよ……弟君が可哀想だよ……」
姉友「……」
姉「うちには、洗濯機からストッキング盗んでオナニーする変態なんていないもん。ねっ?君は何?」
弟「……僕は」
姉「うん」
弟「……足拭きマットです」
姉友「……」
姉「ねっ、ただの足拭きマットでしょ?友も靴拭きなよ」
姉「あ~ぁ!」
弟「!」
姉「うちの足拭きマットが変なせいで、友ちゃん足拭いてくれないや!」
弟「!」
姉「これは、お母さんに洗濯機からストッキングなくなった事、相談しないといけないかな~」
弟「姉友さんっ……!」
姉友「わっ、弟君……?」
弟「ぼ…僕を踏んで下さいっ……!お願いしますっ……!」ベタッ
姉友「……弟君」
弟「お願い……します……」ボロボロ
姉友「……ねぇ?私が踏んだら、黙っててあげるんだよね?」
姉「うん」
弟「お願い……しますっ……踏んで下さい……」ボロボロ
姉友「……じゃあ……踏む」
弟「あっ……ありがとう……ございますっ……」ボロボロ
弟「うぅ……はい……」グスッ
姉友「……じゃあ、踏むよ?」
弟「……はい」グスッ
姉友「あっ……!あの……私、スカートだから……目、瞑ってて……?」
弟「……わかり……ました」ギュッ
姉友「……じゃあ、踏むね?」ソーッ
弟「……はい」
姉「クスクス」
弟「……あっ」
姉友「姉……踏んだよ……?」
姉「ダメよ、そんなのじゃ靴、綺麗になってないでしょ?」
姉友「えっ……でも……」
姉「もっと、こういう風に」ガスッ
弟「ぐっ!」
姉「こういう風にしなきゃ、綺麗にならないよ」グリグリ
弟「がっ……!うぐっ……!」
弟「はぁ……はぁ……」
姉友「……本当にするの?」
姉「何、気をつかってんのよ。これはただの足拭きマットなんだから、気にしないでよ」クスクス
姉友「……でも」
姉「ねっ?あんたは何?」クスクス
弟「はい……僕は……足拭きマットです……」
姉友「弟君……」
弟「姉友さん……踏んで下さい……」
弟「悪いのは僕だから……気にしないで踏んで下さい……」ギュッ
姉友「……んっ」グリグリ
弟「あっ……がっ……」
姉「ふふ」クスクス
姉友「弟君、ごめんね……」グリグリ
弟「うぐっ……がっ……」
姉友「姉……靴、綺麗にしたよ?」
姉「うん、じゃあ、部屋あがろっか?」ニコッ
弟「ごめん……なさい……」
姉友「弟君……!ごめんね?大丈夫?」
弟「気に……しないで下さい……」
姉「友~、何してんの~?それはもう、ほっといていいから」
姉友「うぅ……」
姉「ほら、早く~」
姉友「ごめんね……」タタッ
姉友「ねぇ……ちょっとやりすぎだよ……」
姉「ん~?何が?」
姉友「弟君の事……」
姉「あ~、足拭きマットの事ね」クスクス
姉友「もうっ!」
姉「あはは、ごめんごめん。でも、私のストッキング盗んでオナニーしてたんだよ?いいお灸よ」クスクス
姉「まぁ、でも、あいつもそんなに嫌がってなかったと思うよ?」クスクス
姉友「……そんなワケないじゃんっ!」
姉「いやいや……だって、あいつ足フェチのM男だよ?ブラとかパンツじゃなくて、ストッキング盗んじゃうような奴だよ?」
姉友「それは……」
姉「それにアイツ、そういうやらしいDVDいっぱ~いもってるし」クスクス
姉友「……そうなの?」
姉「どうせ今頃、友ちゃんに踏まれたのオカズにオナニーでもしてるでしょ」クスクス
姉「いやいや、してるって。絶対」クスクス
姉友「……してないよ」
姉「じゃあ、覗きに行ってみる?」
姉友「えっ……?」
姉「ねっ?覗きに行ってみようよ?しっこしこオナニーしてるからさ」クスクス
姉友「……」
姉「まぁまぁ、してなかったらしてなかったで、あいつの部屋でゲームでもしようよ。ねっ?」
姉「オナニー中の弟君、こんにちは~!」ガチャ
弟「わっ……!わわっ……!姉ちゃん!?」
姉「ほ~ら、してた!やっぱりオナニーしてた!」
弟「ううぅ……」
姉「ねっ?言ったでしょ?やっぱりオナニーしてたでしょ?」クスクス
姉友「わかったから……!もういいよ……!」
弟「うぅぅ……」グスッ
姉「ね~?あんた、何オカズにしてたの~?」クスクス
弟「うぅ……」グスッ
姉友「もう、やめてあげようよ……!弟君、泣いてるよ!」
姉「ねぇ~?友ちゃんに踏まれて興奮したんでしょ~?変態~」クスクス
弟「うぅぅ……」
姉友「もう、姉っ!」
姉「あっ……友ちゃん、弟に足、ガン見されてるよ?」
姉友「えっ……?」
弟「あっ……違っ……見てませんっ……!」
姉「ふふ、慌ててる~。やっぱり、踏まれた事オカズにしてたんでしょ?」クスクス
弟「うぅ……」
姉友「姉っ!」
姉「答えないと、ストッキングの事言うよ?いいの?」
弟「待って……!」
姉「何?じゃあ、何オカズにしてたの?教えてよ」
弟「……さっきの事」ボソッ
姉「ん~?さっきの事って何~?」クスクス
弟「踏まれた事です……」グスッ
姉「ほ~ら、やっぱり!」クスクス
弟「……はい」
姉「友ちゃん、ドン引きだよ」ボソッ
弟「……えっ!?」
姉友「……えっ!?」
姉「まぁ、普通引くよね~?足拭きマットにされて、お腹とか顔とか踏まれてるのに、それオカズにしてオナニーしてるんだもんね」クスクス
弟「……うぅ」グスッ
姉友「大丈夫だよ……?私、引いてないからっ……!」
姉「あ~ぁ、友ちゃんに気使わせちゃって……弟君惨めだねぇ~?」クスクス
姉友「もう!弟君、泣いてるよ!」
姉「ふふ……」ソーッ
弟「……えっ?」
姉「ちんちん、踏んであげるね」ギュッ
弟「あっ……お姉ちゃんっ……!」
姉友「ちょ、ちょっと……!姉っ!」///
姉「ほら、踏まれてるのにどんどん大きくなってくるよ?どうしてだろうね~?」クスクス
弟「あっ……あぁっ……」ガクガク
姉「なんで?こいつ、喜んでるよ?ほら、どんどんちんちん大きくなってきてるし」グリグリ
姉友「えっ……?」
弟「やめて……お姉ちゃん……」
姉「ほら、もっと力づくで抵抗したらいいのに、大人しく踏まれてるし」グリグリ
弟「それは……」ガクガク
姉「本当は好きなんでしょ?正直に言ったら、出るまでしてあげるよ?どうなの?」
弟「うぅ……」
姉「な~に?聞こえな~い」グリグリ
弟「……好き……です」
姉「ほら、ねっ?言ったでしょ?」グリグリ
姉友「……」
姉「じゃあ、してあげる。ほら、そのまま股開きなさい」
弟「うぅ……はい……」
姉「じゃあ、おちんちん踏んでぐりぐりしてあげるね?」グリグリ
弟「あっ……あぁっ……んぁっ……!」
姉友「……」
姉「ふふ、友ちゃんがドン引きしながら見てるよ?」グリグリ
弟「あぁっ……うぅ……」チラッ
姉友「えっ……?」
姉「ほ~ら、軽蔑されてる~。情けな~い」グリグリ
弟「うぅ……」
姉友「違っ……軽蔑なんかしてないよ……」アセアセ
姉「ねぇ?足舐めさせて下さ~いって、頼んでみなよ」クスクス
姉友「……えっ?」
弟「んぁっ……!舐めさせて……下さいっ……!」
姉友「えっ……?」
姉「ほら、もっとちゃんと!」グリッ
弟「足……舐めさせて下さいっ……!お願いしますっ……!」
姉友「うぅ……」
姉「あはは、弟君軽蔑されてるよ?」
弟「うぅぅ……」
姉「でも、おちんちんはまたおっきくなってきたや。変態~」グリグリ
弟「うぅぅ……」
姉「そんな変態だから、彼女も友達もいないんだよねぇ~?」グリグリ
弟「あっ……うぅ……」グスッ
姉「あはは、泣きながら感じてるんだ?悲しいの?気持ちいいの?ねぇ、どっち?」グリグリ
弟「うぅっ……」
姉「友達のいない変態な弟君はお姉ちゃんがず~っと、調教してあげるからねぇ~?」クスクス
姉友「……私は軽蔑……してないよ?」
弟「……えっ?」
姉友「姉……確かに下着盗んだのは悪い事だよ?」
姉「ストッキングね」
姉友「うん……でも、それで友達とか、彼女の事まで責めるのは可哀想だよ……」
弟「うぅ……」
姉友「大丈夫だよ。弟君がこんな……趣味でも受け入れてくれる人はいるよ?ほら、足舐めていいよ?」
弟「うぅぅ……姉友さん……」グスッ
姉「えいっ、えいっ」グリグリ
弟「んあっ……あぁんっ……!」ビクッ
弟「んあっ……姉友さんの足っ……」ペロッ
姉友「きゃっ……」
弟「あっ……ごめんなさい……」
姉友「ううん、大丈夫。続けていいよ?」ニコッ
弟「はいっ……」ペロペロ
姉友「んっ……」
姉「弟君、友ちゃん優しくてよかったねぇ~?」グリグリ
弟「あっ……あぁっ……」ペロペロ
弟「あああぁっ……!イッちゃう……あああぁっ……!」
姉友「弟君……大丈夫……?」
弟「あああっ……姉友さん……ああぁっ……」アーン
姉友「えっ……?」
弟「あぁっ……姉友さん……」アーン
姉友「足……お口に入れてほしいの……?」
姉「うりうり」ググッ、ググッ
弟「んあっ……!あっ……ああっ……!」コクン
弟「んんっ……!んふっ……んあっ……!」ジュプジュプ
姉友「ひゃっ……!」
弟「んんっ……んんっ……」
姉友「……大丈夫、ちょっとくすぐったかっただから」ニコッ
姉「変態~、おちんちん踏まれながら、友ちゃんの足くわえて……ホントに変態~!」ググッ、ググッ
弟「んんっ……!い…く…」ピュッ
姉友「えっ……?」
姉「ほらほら、でたでた」クスクス
弟「はぁ……はぁ……」
姉「あんた舐めるのも好きなんでしょ?ほら、舐めて掃除……」
弟「うぅ……姉友さん……」ペロペロ
姉友「えっ?弟君……?」
弟「姉友さん……姉友さん……」ペロペロ
姉「ちょっと、私の足舐めなさいよ!あんたのがついてるのよ!」
弟「うぅ……」ペロペロ
姉「こら、弟~!」ムカッ
弟「うぅ……姉友さん……」ペロペロ
姉「……そんなに友ちゃんの足が好きだったら、ずっと舐めておけばいいじゃない。ストッキングの事、言うからね!」フキフキ
弟「えっ……!?ごめんなさいっ……!」
姉「もう、遅いっ!」
バタンッ
姉友「あっ……」
弟「うぅっ……」
姉(何よ……バカ……)
弟「うぅぅ……」グスッ
姉友「ねっ?弟君も、ちょっと興奮してわけわかんなくなっちゃったんだよねっ?」
弟「うぅ……そう……です……」グスッ
姉友「ふふ」クスッ
弟「あっ……!違っ……!いや、あのっ……」
姉友「私は、大丈夫だよ?最初はびっくりしたけど、そういう趣味の人もいるもんね?」クスッ
弟「……はい」///
姉友「お姉ちゃんには、私から説明しておくから、安心して?」ニコッ
弟「……はい」
姉友「今日はお邪魔しました~」
姉「一人で大丈夫?駅まで送っていこうか?」
姉友「ううん、大丈夫。あっ、そうだ弟君?」
弟「……はい?」
姉友「ふふ、また今度しようね?私も、はまっちゃったかも」ボソッ
弟「……えっ?」
姉友「ふふ、じゃあお邪魔しました~」クスクス
姉「……」
姉「……あんた、友ちゃんと最後、何話してたの?」
弟「えっ……?」アセアセ
姉「だから……友ちゃんが帰る時」
弟「いやっ……あのっ……」アセアセ
姉「言わないと、ストッキングの事、言うわよ?」
弟「えっ……?あの、それは……うぅっ……」
姉「……もう、いいっ!お風呂入る」
弟「あっ……」
姉「……お風呂の足拭きマットがきれてるから、お風呂上がりに準備しておきなさい。そしたら、ストッキングの事考えてあげる」
弟「……はい」
おわり
終わりかよ…
Entry ⇒ 2012.01.05 | Category ⇒ 兄弟姉妹「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
紅莉栖「岡部がキスしかしてくれなかった」
紅莉栖「……キスしかしてくれなかった」
岡部「おい、助手。貴様なにを言って」
紅莉栖「キスしか……してくれなかった」
岡部「ま、まさかあの世界線の記憶を思い出したのか!?」
紅莉栖「二人っきりのラボで、告白までしてきたくせに」
岡部「いや待て、キスだけだと言ったのはお前だろうが!」
紅莉栖「……キスしか、してくれなかった」グス
岡部「………」
紅莉栖「何回も何回もちゅっちゅしたのに……」
岡部「き、キスだけでも俺はお前に救われたんだ。あの時の俺はそれだけで十分過ぎるほど刺激的だった訳で」
紅莉栖「岡部の方から……何回も何回もちゅっちゅしたのに」グス
岡部「あ、あれは!お前の事を忘れたくなかったからであって」
紅莉栖「忘れたくないなら、キスよりもっと刺激的な事をすればいいじゃない……はい、論破」グス
岡部「いや、だからお前がキスだけって」
紅莉栖「……」グス
岡部「………」
紅莉栖「漆原くんのルートじゃ小作りしたくせに……」グス
岡部「なっ!?」
紅莉栖「フェイリスさんのルートでもセクロスねだられてたし……」グス
岡部「お、おい!お前なにを!」
紅莉栖「まゆりとも恋人になって……あの後ちゅっちゅ以上の事するんですね、わかります………うぅ」グス
岡部「いや、それは……」
紅莉栖「阿万音さんと二人っきりで過去に戻って……どうせその後、ちゅっちゅ以上の事するんだろ?」
岡部「だ、だからそれは……」
紅莉栖「なのに、……私だけキスしかしてくれなかった」グス
岡部「………」
紅莉栖「でも、結局岡部が私にキスしかしてくれなかった事には変わりないじゃない」
岡部「そ、それは……だな」
紅莉栖「……普通、キス以上の事するだろjk」グス
岡部「俺はお前からのこ、告白の返事を聞いていないのだ!き、キス以上の事なんて出来る訳が」
紅莉栖「ドラマCDでちゃんと返事したもん」
岡部「……えっ?」
紅莉栖「……告白の返事、したもん」グス
紅莉栖「……じゃあ、ラボで返事してたらキス以上の事、してくれたの?」
岡部「いや、そういう問題ではなくてだな、ラボはそういう行為をするのが」
紅莉栖「なら私のホテルですればよかったじゃない」
岡部「はっ………?」
紅莉栖「私のホテルですれば」
岡部「に、二回も言うな!お前には恥じらいがないのか!このHENTAI天才処女め」
紅莉栖「岡部のせいで今も処女のまま……うぅ」グス
岡部「………」
紅莉栖「セクロスですね」
岡部「黙れHENTAI!……その、そういう行為をしたとしてだ」
紅莉栖「岡部と……えへへ」
岡部「……話を続けるぞ?そういう行為をしたとしても、この世界線でお前が処女だという事に変わりはない」
紅莉栖「ねえ、岡部」
岡部「納得したか?」
紅莉栖「その、初めてだから優しく、ね……?えへへ」
岡部「………ダメだ、こいつ。早くなんとかしないと」
岡部「だ、だからさっきのは仮の話だと言っただろう!」
紅莉栖「……」グス
岡部「………その、まあ、いずれ、な」ボソ
紅莉栖「ふぇ?い、いまなんて」
岡部「な、なんでもない!ただの戯れ言だ」
紅莉栖「ふふっ、戯れ言、ね。そういう事にしておく」
岡部「ああ、そういう事にしておけ」
紅莉栖「ふふっ」ニコニコ
岡部(くっ……そんなにニコニコするな!は、恥ずかしいではないか)
岡部「な、なんだ、クリスティーナ」
紅莉栖「呼んでみただけよっ……ふふ」
岡部「そうか……」
紅莉栖「ねえ、岡部」
岡部「なんだ」
紅莉栖「えへへ、また呼んでみただけ」
岡部「そ、そうか……」
紅莉栖「ふふっ」ニコニコ
岡部(全く、さっきからなんなんだ……)
紅莉栖「ねえ、倫太郎」
岡部「なんだ、また呼んでみただけとかじゃ……」
岡部「………」
紅莉栖「ふふ……」ニコニコ
岡部「はあっ!?」
紅莉栖「よくよく考えれば、あんたの周りで倫太郎って呼ぶ人いないでしょ?」
岡部「そ、そ、それがどうしたと言うのだ」
紅莉栖「まゆりと橋田はオカリン、フェイリスさんと漆原くんは凶真、阿万音さんはフルネームで、天王寺さんや桐生さんは名字」
岡部「……何が言いたい?」
紅莉栖「一人くらいは名前で呼ぶ人がいてもいいかなって思って」
岡部「いや、別にいなくても構わんが……」
紅莉栖「それに」
岡部「まだ何かあるのか?」
紅莉栖「しょ、将来を考えると何時までも岡部って呼んでられないじゃない……えへへ」
紅莉栖「岡部紅莉栖かぁ……ふふっ」
岡部「こ、この世界線ではまだ付き合ってもないのだぞ!?」
紅莉栖「『まだ』付き合ってない、ね……えへへ」
岡部「こ、告白もまだ……」
紅莉栖「それなら前の世界線であんたがしてくれた」
岡部「だ、だが返事が……」
紅莉栖「今更、必要……?」
岡部「……いや、不要だな」
紅莉栖「だろ?」
岡部「ああ、そうだな」
紅莉栖「なに、倫太郎?」
岡部「……で、出来れば今まで通り岡部で頼む」
紅莉栖「だが断る」
岡部「くっ!……もういい、好きに呼べ」
紅莉栖「言われなくてもそうするわよ。今まであんなに好き放題呼ばれてたんだし、お返しよ」
岡部「……話を戻すぞ。その、確認はするが記憶が戻ったんだな?」
紅莉栖「……岡部がキスしかしてくれなかった」
岡部「その話題はもういい!」
紅莉栖「ふふっ」
紅莉栖「約束って……もしかして青森行きのこと?」
岡部「ああ……」
紅莉栖「うん、覚えてる。あんな事になっちゃったから結局、約束は果たせそうにないけど」
岡部「その、だな……もし、良ければ」
紅莉栖「……?」
岡部「俺を紅莉栖の青森の家に連れて行ってほしい」
紅莉栖「えっ?それって……」
岡部「当初の目的は果たせないが……二人で青森に行く、という約束は果たせるだろう?か、勘違いするなよ、ラボメンとの約束は絶対だからであって、別にお前と二人で旅行に行きたい訳では」
紅莉栖「あんたって、結構ツンデレよね」
岡部「お前が言うな」
紅莉栖「私は岡部にデレデレよ。はい、論破」
岡部「ぐぬぬ」
岡部「本当か!」
紅莉栖「約束だもの、あんたが嫌って言っても一緒に行くからな」
岡部「そうだ、約束、だからな……」
紅莉栖「うん……その、覚えていてくれたんだね。あんなに大変な事が起きたのに」
岡部「あの世界線の出来事は何一つ忘れるな、なかった事にするなと言われたからな」
紅莉栖「えっ……だれに?」
岡部「……秘密だ」
紅莉栖「そう、まあいいわ。でも本当に全部覚えているの?」
岡部「む、無論だ」
紅莉栖「じゃあ、問題。私が一番欲しかったものは?」
岡部「ふっ、簡単だな。マイフォークだろ?」
紅莉栖「ぶっぶー残念、不正確」
岡部「な、なに!?」
ぎゅっ
岡部「!?」
紅莉栖「確かにマイフォークも欲しかったけど……私が本当に欲しかったのは岡部、あんた」
岡部「お、おい!そんなの反則だぞ!?」
紅莉栖「……反則じゃないし。事実だから問題ない」
岡部「くっ……」
紅莉栖「さて、外したんだし罰が必要よね」
岡部「な、なに?」
紅莉栖「当然でしょ、そういう事だから……目を瞑れ」
岡部「なっ、おまっ、まさか」
紅莉栖「ほら、いいから目を瞑れ!」
岡部「あ、ああ」
岡部「んむ……」
紅莉栖「んっ、あっ、……はむっ」クチュクチュ
岡部「んっ、んむ、……ぷはっ」
紅莉栖「はあ、はあ……ふふっ」
岡部「……もう、二度と忘れない為だ。もう一度、『罰』が必要だと思うのだが、お前はどう思う?紅莉栖」
紅莉栖「異論はないわ」
岡部「そうか、ならもう一度……」
紅莉栖「待って!」
岡部「なんだ?まさか今更、嫌になったか?」
紅莉栖「そ、そうじゃない……その」
岡部「……?」
紅莉栖「今度は、キスだけじゃダメだからなっ!」
岡部「ふっ、無論だ!」
おわり
で、続きはどこだい?
呼んでくれた人、ありがとニャンニャン
Entry ⇒ 2012.01.05 | Category ⇒ シュタインズゲートSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
一方通行「あったけェ……」
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1325160233/
注意書き
・ほのぼのキャラブレイク
・原作から誰も死なずにハッピーエンド迎えて数年後みたいな妄想
・キャラ相関とかは脳内で適当に補完してね☆
・短い
・ちょっと前に似たようなSS書いた気がするけどそんなの関係ねぇ!
こんな感じでよければダラダラ付き合ってくれ
一方通行「コタツってすげェなァ……」ホウ
垣根「全くだな、悪魔の暖房器具だぜコイツは」ヌクヌク
御坂「日本人に生まれてよかったって実感するわー」ホッコリ
麦野「コタツで食べる蜜柑はどうしてこんなに美味しいのかしら」ムギムギ
一方通行「暖房器具の頂点はコタツで間違いねェな、ストーブやエアコンじゃこの空気は作れねェ」
垣根「この包み込んでくれるような暖かさは一度体験すると抜け出せねぇよ」
御坂「コタツに対抗出来るのは人肌に暖められた布団くらいよねー」
麦野「あ、蜜柑なくなった」
一方通行「……ところで何でオマエらここ(俺ン家)にいンだ?」
垣根「え、何を今更」
御坂「だってうちコタツないしー」
麦野「蜜柑どっかに残ってないかしら……」キョロキョロ
一方通行「無ェなら買えよコタツくらい」
垣根「買いてぇのは山々なんだがな、俺ん家洋室だからコタツ合わねぇのよ」
御坂「うちもうちも」
一方通行「この部屋も洋室だろォが」
垣根「センス皆無のオマエと違って部屋の内装に気ぃ使ってるから置きたくねぇって事だよ」
御坂「うんうん」
一方通行「喧嘩売ってンのかオマエら」イラッ
麦野「第一位、蜜柑が無くなったわ」
一方通行「あァ?冷蔵庫の隣にダンボール置いてっから勝手に取って来いよ」
麦野「垣根の隣には何もないわよ?」
垣根「おいコラ誰が冷蔵庫だ」
一方通行「垣根じゃなくてキッチンにある本物の冷蔵庫の隣だ」
麦野「取ってきて第一位、私寒いからコタツから出たくないの」ニコッ
一方通行「ブン殴りたくなるような素敵な笑顔だなクソッタレが。
ほとンどオマエが食ったンだからオマエが取って来い」
麦野「だってよ垣根」
一方通行「マジで動く気ねェのなオマエ」
垣根「俺蜜柑の皮しか食ってねぇんだけど」
御坂「何で皮なんて食べるのよ……」
垣根「受けるかなって」
一方通行「ドン引きだよバァカ」
麦野「んなことどうでもいいからさっさと取ってこい垣根」ゲシゲシ
垣根「痛ッ!やめろ蹴るな、コタツの中の戦争は悲しみしか生まねぇぞ」
麦野「あぁ?蹴ってんのは私じゃねーよ」ゲシゲシ
垣根「いやいやオマエだよ、間違いなくオマエだ。身体が小刻みに震えてんじゃねぇか」イタイイタイ
麦野「たったそれだけの状況証拠で私を犯人に仕立て上げようってか?いい度胸してるわね」ゲシゲシ
垣根「確定レベルの状況証拠だろクソ、つーかさっきから『ゲシゲシ』って擬音が入ってるしな!」
麦野「何のことやらさっぱりわからないわ。ねぇ美琴?」ゲシゲシ
御坂「麦野さんは寒がりだから震えてるだけよ垣根さん」
垣根「どうしてオマエは麦野の味方すんの?被害者は明らかに俺なのに。
じゃあもうコタツ布団めくって誰が蹴ってるかハッキリさせようぜ」
麦野「女の子が二人も入ってるコタツの布団めくろうとか、お前どんだけ変態だよ。
死ねこの足フェチが」
一方通行「女の子ォ……?」
麦野「あぁ?何か文句あっか?」
一方通行「いや別に……お前がそォ思うンならそォなンだろう、お前ン中ではな」
麦野「あ?」
垣根「おい誰が足フェチだボケ、どっちかっつーと尻フェチだ」
御坂「その情報はいらない……て言うか凄く忘れたい……」
麦野「気持ち悪ぃ事言いやがって、死ね」ゲシゲシゲシ
垣根「ちょ、痛い痛い、割とマジで痛い!」
一方通行「オマエら暴れンな、追い出すぞ」チッ
麦野「あぁもうほら、垣根がさっさと蜜柑取りに行かないから第一位が怒ってるじゃない」ハァ
垣根「何この扱い……」
御坂「蜜柑はともかく、お腹は空いたわね。もう結構いい時間帯じゃない?」
一方通行「ン、あァもう20時回ってンのか、確かに晩飯時だなァ」
垣根「よっしゃ、なら材料買ってきて鍋でもしようぜ」
麦野「コタツで鍋か……魅力的ね、垣根にしちゃいい案出すじゃない」
垣根「俺にかかればこの程度ちょろいもんよ」ヘ
一方通行「オマエらここで飯食う気なのかよ……帰れよ……」
御坂「帰ったらコタツがないもん」
一方通行「どンだけコタツ中毒だよ」
垣根「オマエもな」
麦野「で、誰が材料買いに行くわけ?言っとくけど私は絶対嫌だからな?寒いし」
御坂「私もコタツから出たくない」
一方通行「家主である俺が家からいなくなるわけにはいかねェだろ、そォすっと……」
垣根「また俺かよ!俺だってコタツから出たくねぇよ!!」
麦野「大丈夫でしょ、あんたほら、羽毛みたいの出せるし」
垣根「言っとくけどあれ別に暖かくはねぇぞ?」
一方通行「意外と硬ェしな、あの羽」
御坂「え、そうなの?モフモフしてると思ってたのに……何かちょっとショックなんだけど」
麦野「期待外れね全く」フゥ
垣根「うっせぇボケ、とにかく俺も行かねぇからな!」
麦野「じゃぁもうダメね、私達全員飢えて死ぬしかないわ、この人殺し」
垣根「オマエとりあえず俺を罵っときゃ面白ぇと思ってんなら大間違いだぞ」
麦野「私は面白いからいいのよ」
垣根「マジでファックだなオマエ」
御坂「ねぇ、今から誰か呼んで来る途中に鍋の材料買ってきてもらうって言うのはどうかな?」
垣根「お、そりゃ名案だな。それなら誰も不幸にならずに済む」
麦野「流石美琴ね、どっかのメルヘンとはワケが違うわ」
一方通行「これ以上人増やす気かよ……」
御坂「ダメ?」
一方通行「いや、もォ好きにしろ」ハァ
垣根「御坂には優しいよな、オマエ」
麦野「負い目があるからね」クク
一方通行「黙ってろカスどもが」
垣根「しかし誰呼ぶんだ?第一位から第四位まで勢揃いしてる中に物怖じせずに入ってこれる奴なんざそう多くはねぇだろ」
麦野「第一位の家知ってて、パシリやってくれて、尚且つこの中に違和感なく混じれる奴か……」
一方通行「まず俺ン家知ってる奴があンまりいねェからなァ」
御坂「黒子……はちょっとこの中に混ぜるのはかわいそうだし、なんとなく同じ鍋つつきたくないし……
そうだ一方通行、打ち止めはどう?」
一方通行「あァー、無理だな無理。あのガキ、遅めの反抗期だか思春期だか知らねェが
最近は俺の言うこと何一つ聞きゃしねェ」
垣根「え、あんなにオマエに懐いてたのに?」
一方通行「今じゃ毛虫のごとく嫌われてンよ。挨拶しても無視されっし、目が合や逸らされるし、
アイツの学校行事に顔出した日にゃマジギレされっしな。
俺が一人暮らし始めた要因の一つはその辺だぜ?」ハァ
麦野「反抗期の娘を持った父親みたいね」
垣根「まぁオマエが学校行事の見学とかしてたら俺でもマジギレするけどな」
一方通行「何でだよ……」
御坂「それにしてもあの素直でいい子だった打ち止めがねぇ……
いくら反抗期だって言ってもちょっと信じられないわ。
一方通行、あんたあの子に何かやらかしたんじゃないの?」ジロ
一方通行「俺もそォ思って何度か自問自答したンだけどよォ、心当たりが全くねェンだわこれが」
垣根「むしろ何もしなかったからじゃねぇの?」
一方通行「あァ?」
御坂「どういうこと?」
垣根「ある所に可愛らしい女の子がいました。
んで、その子は物心ついた頃から一つ屋根の下で年上のお兄さんと一緒に暮らしています」
一方通行「はァ……?」
麦野「女の子は憧れとも恋心ともつかない淡い想いをお兄さんに抱いてるんだけど、
ところがどっこい、そのお兄さんは女の子の事を娘か妹程度にしか思ってなくて、
どんだけアピールしても子供扱いされて軽~くいなされてしまうのよ」
御坂「ふむふむ」
垣根「それもこれも自分が子供だからだ、と考えた女の子は必死に努力を重ね、
女を磨きながらじっとお兄さんが振り向いてくれるその時を待ち続けます」
麦野「何年か経って女の子もそこそこ成長してね、
常日頃の努力の甲斐もあって、まぁ胸も尻も出てきて女っぽい身体つきになるわけ」
垣根「まだまだ青い果実ではありますが、それでも自分の身体が女のそれに変わっていくことに少女は喜びを覚えます。
『もうそろそろあの人もミサカに振り向いてくれるはず!ってミサカはミサカは云々かんぬん』」
一方通行「オマエの表現何かきめェな……
あと裏声で打ち止めの声真似すンのやめろ、微妙に似てンのがすげェ腹立つ」
御坂「て言うか打ち止めの話だったんだ?てことは一緒に住んでるお兄さんは一方通行?」
麦野「とーこーろーがー、甲斐性なしのクソモヤシはそんな乙女心なんぞ露知らず
相変わらず女の子を異性として意識せずに娘のように扱いやがるのよ」
一方通行「おいそこ『お兄さン』で統一しとけよ、何でわざわざ俺の事罵倒してンだよ」
垣根「挙句の果てには『最近色気付いてンな、男でも出来たか?』とか聞く始末です」
一方通行「ンな事言った覚えはねェよ!!」
麦野「数年間我慢に我慢を重ねた上でのこの仕打ちに、ついに女の子はプッツン」
垣根「『このファッキンモヤシのクソインポ野郎が!テメェ二度とその小汚ぇ面見せんじゃねぇ!!
ってミサカはミサカは云々かんぬん』」
一方通行「オマエ喧嘩売ってンだろ?」
御坂「あんたそんな事言われたの……?」
一方通行「言われたわけねェだろアホ!」
麦野「こうして今までの不満が爆発し、かつ思春期特有の気恥ずかしさも手伝って
女の子は最悪なレベルの反抗期に突入しましたとさ」
垣根「オマケにお兄さんはキレた女の子にビビッて家から逃げ出して一人暮らしを始める始末。
そりゃぁ反抗期も更に悪化するよオマエ……ってな感じのストーリーでどうだ?」
一方通行「ねェわ」
麦野「あるって」
一方通行「いや、ねェよ」
御坂「でもでも打ち止めは間違いなくあんたに好意持ってたわよ?ずーっとべったりだったし」
一方通行「好意つってもラブじゃなくてライクだろォが。
身近に俺以外の男がいなかったから何か勘違いしたンだろォよ」
垣根「うわぁぁぁ一方通行がラブとライクの違いについて語ってるうぅぅぅ!!」
麦野「きめえぇぇぇ!!」
一方通行「何オマエらそンな死にてェの?」
垣根「ラブじゃなくてライクだろ(キリッ」
麦野「やめろ!私を笑い死にさせる気か!」プククク
一方通行「よォし表出ろやクソムシどもがァ!!!」ガタン
御坂「あーもう、とにかく打ち止めは無理なのね?それじゃ他の候補は……」
垣根「んー、上条はどうよ?どうせ暇してんだろアイツ。
暖房器具の無いボロアパートで凍えてるだろうし呼んでやったら喜ぶんじゃねぇ?」
一方通行「あの三下に鍋の材料買ってくるだけの財力があると思ってンのか?」チッ
御坂「……間違いなく無いでしょうね」
垣根「そんな貧乏なのかアイツ」
麦野「無能力者って不憫ね」
一方通行「それにアイツに任せると安ィモンばっか買って来そうだしよォ、
パッサパサの鶏胸肉とシナシナのモヤシがメインの鍋なンざ食いたくねェだろ」
垣根「そりゃ確かに御免だわ。それじゃ上条も無し、と……」
御坂「あいつの食生活は本気で同情したくなるわね……」
麦野「似たような理由で浜面も無しね、あいつも貧乏根性が染み付いてるし、つーか貧乏だし」
垣根「暗部にいたのにそんな貧乏なのか?いくら下っ端でも普通に仕事こなしてたら結構金貰えたはずだろ」
麦野「浜面には生きるのに必要な最低限の分け前しか渡してなかったわ」ニコッ
垣根「悪魔かオマエは」
一方通行「まァ浜面の生活レベルなンざどォでもいいンだよ、それより誰呼ぶかだ」
麦野「もう第七位とかでいいんじゃない?暑苦しいけど」
垣根「あー、アイツならここ知ってるし物怖じするようなタマでもねぇしな。暑苦しいけど」
御坂「基本はいい人だし、お願いすれば鍋の材料くらい買ってきてくれそうよね。暑苦しいけど」
一方通行「いや、アイツ確かこの時期は山篭りしてンだろ」
垣根「ん……そうか、もうそんな時期だったか」
麦野「そう言えばそんな事してたわね、あの根性馬鹿」
御坂「えっと、毎年恒例で冬山で修行してるんだっけ?」
一方通行「おォ、凍死しそうなくらいクッソ寒ィ山ン中で滝に打たれたりしてンだとよ」
御坂「うわぁ……」
垣根「想像しただけで凍えるわ。つかアイツ馬鹿じゃねぇの?」
麦野「根性とか修行とかじゃなくて、実はドMなだけなんじゃない?」
一方通行「かもなァ」
麦野「にしても、第七位も没となると後は……」
垣根「レベル5つながりで第五位はどうよ?食蜂だっけか」
御坂「あいつが買出しなんてしてきてくれるわけないでしょ。
ふんぞり返って取り巻きを好き勝手操りながら今日まで生きてきた奴なのよ?」
垣根「ですよねー」
麦野「性格悪いもんねぇあいつ」
一方通行「オマエが言うのか」
垣根「これ笑うところでいいのか?」
御坂「いやー麦野さんの比じゃないわよ、あいつの性格の悪さは」
垣根「それ食蜂ほどじゃないけど麦野も性格悪いって言ってるようなもんだよな」
麦野「へぇ?美琴ちゃんはそういう目で私を見てるわけ?」ギロ
御坂「こ、言葉の綾よ!」
一方通行「つかアイツそンな性格悪ィのか?結構普通ってかむしろ従順な感じだった気がすンだが」
御坂「あいつが従順って……あんた知らない間にあいつの精神操作でも反射して逆に操っちゃってるんじゃないの?」
麦野「それか、一切対抗出来ないほど力の差がある相手には大人しく尻尾振るタイプなのかもね」
垣根「ん、じゃぁ一方通行が頼めば買出しして来てくれるんじゃねぇの?」
御坂「いやいや止めときましょう、あいつだけはダメだってば」
一方通行「あァ?やけに毛嫌いするじゃねェか」
麦野「あんたらそんな仲悪かったかしら?」
垣根「常盤台時代の因縁でもあんのか?」
御坂「いや、昔はともかく今は別に仲悪くないわよ。
ただあいつと一緒に鍋するのはちょっと……」
一方通行「何か一緒にやりたくねェ理由があるわけか」
御坂「ん、ちょっと前あいつ含めた常盤台OB数人で焼肉食べに行ったんだけどさ、」
麦野「へぇ」
垣根「あ、何かもうオチ読めたぞ」
御坂「あいつ、能力で他人の頭の中読んで、他人が取ろうとしてる肉を優先的に取りやがるのよ……」ハァ
一方通行「あァー……うぜェなそりゃ……」
御坂「しかも肉横取りした後にこっち見てドヤ顔するのよ、危うく超電磁砲ぶっ放すところだったわ」
麦野「それは確かに同じ鍋は囲みたくないわ」
垣根「チッ、食蜂もダメか……んで他に候補は誰かいるか?」
御坂「番外個体は?」
麦野「ミサワかぁ、最近会ってないけど元気にしてんの?」
一方通行「元気は元気だけどよォ、アイツが他人の為、ましてや俺の為に動くと思うかァ?」
御坂「やっぱ無理?」
一方通行「断言してもいいぜ、絶対無理だ。
あの馬鹿、反抗期になった打ち止めの負の感情吸いまくって今えらい事になってっしよォ」
御坂「そうなんだ……」
垣根「妹達の負の感情かき集める仕様は結局治ってねぇのか」
一方通行「冥土帰しやらにも協力してもらって色々試してンだけど中々なァ……
アイツも気にしてっから早ェとこ何とかしてやりてェンだが」ハァ
御坂「でも実害受けるのは一方通行だけだし、気長に治せばいいわよ」グッ
一方通行「何親指立ててンだオマエ、フォローのつもりなのか今の」
麦野「ってかもう呼べそうな奴いないし、どうすんのよ第一位」
御坂「どうするつもりよ一方通行」
一方通行「帰ればいいンじゃねェか?」
垣根「オマエん家の冷蔵庫は何か鍋の具材になるもん入ってねぇの?
もう適当に有り合わせの食材で鍋作っちまおうぜ」
御坂「外には出たくないし、それでいっか」
麦野「垣根の口から冷蔵庫って単語が出ると妙に面白いわね」
垣根「ぶっ殺すぞ」
一方通行「なァンで勝手に居座ってるオマエらの為にうちの食料献上しなきゃならねェンだよ」
垣根「じゃあオマエが買出し行くか?あ?イヤだろ?だったら今この家にあるもん使うしかねぇだろうがよ!」
一方通行「え、何でこいつ逆ギレしてンの……」
麦野「腹減ってんでしょ、多分」
御坂「お腹が空くとわけもなくイラつくもんね」
垣根「そういうことだ一方通行、早く食料を出さなきゃ大変なことになるぜ?」
一方通行「うっぜェ……もォ好きに冷蔵庫漁りやがれ、一週間分くらいの食料は買い込ンであっから」ハァ
麦野「流石は第一位、太っ腹ね。遠慮なく頂くわ、えぇ、一切遠慮する気はないわ」
垣根「よっしゃ高級そうなもんから食い漁ってやろうぜ」
一方通行「オマエら二人ホントに死なねェかなァ……
今すぐオマエらの脳天にピンポイントで隕石でも振ってこねェかなァ……」
御坂「あのさ、食材の心配がなくなったのはいいけどもう一つ問題があるわよね?」
垣根「ん?」
麦野「何よ?食材さえあれば鍋なんて簡単に出来るでしょ?」
一方通行「出汁とって材料切って鍋に放り込むだけだしなァ」
御坂「それよそれ、誰が出汁とるの?誰が材料切るの?
その人は必然的にコタツから出なくちゃいけないのよ?」
垣根「なん……」
麦野「だと……」
御坂「蜜柑取りに行くのすら皆嫌がってたのに、誰が寒いキッチンで料理するのよ……」
一方通行「……盲点だったなァ、結局誰かがコタツから出なきゃならねェってのに変わりはねェわけか」
垣根「振り出しに戻っちまったってことか、クソッタレめ……」
麦野「……ここは第一位の家なんだし、勝手がわかってる第一位が料理するべきなんじゃないかしら?」
一方通行「食料提供させられた上に飯まで作れってか?ふざけンなボケが」
麦野「でもほら、他人の家の台所に立ったり冷蔵庫勝手に開けたりするのはお行儀が悪いじゃない?
私はその辺しっかり弁えるタイプだし?」ネ
一方通行「勝手に家に上がりこんで蜜柑貪り食ってた女が何寝言ぶっこいてンだコラ」
垣根「俺も他人の家の冷蔵庫漁るほど常識知らずじゃねぇから、悪ぃが料理すんのを手伝ってやるのは無理だな」ザンネン
一方通行「オマエこの前ウチの冷蔵庫勝手に開けてコーヒー飲ンでただろ!!」
御坂「んー、ちょっとかわいそうだけど話進まないし、
多数決の結果一方通行が鍋を作るってことでオッケー?」
垣根「異議なし」
麦野「頑張ってね第一位」ニコッ
一方通行「…………」カチッ
垣根「!!?こ、この野郎コタツの電源切りやがった!!」
麦野「おい何やってんだモヤシふざけんな!!」
一方通行「ふざけてンのはテメェらだろォがァァァァ!!!」
御坂「あぁ、温もりがどんどん失われていく……」
一方通行「オラ、コタツから出ろ馬鹿どもが!全員でサクッとやっちまうぞ!」
垣根「チッ、仕方ねぇな……電源握られてるんじゃお手上げだ」モゾモゾ
麦野「よし、垣根がコタツから出たわよ第一位」
一方通行「スイッチオン」カチ
御坂「あー温かーい」ホクホク
垣根「うおおぉぉい何やってんだテメェらぁぁぁ!!!」ガビーン
一方通行「ハッ、あっさりとコタツから出たオマエの負けってこった」ククク
麦野「てめぇのコタツ愛は所詮その程度だったってことよ」フ
御坂「折角コタツから出たんだし料理お願いね?」ニヤリ
垣根「ち、ちくしょう……」
一方通行「それじゃ任せたぜ負け犬くゥン」
垣根「クソ、貸しにしとくからな……」ギリリ
御坂「あ、そこは素直に料理してくれるんだ」
垣根「腹減ってんだよ、鍋食いてぇって言い出したのも俺だしな。
正直、薄々こんなことになるんじゃねぇかとは思ってたぜ……」ハァ
麦野「ついでに蜜柑とってもらえる?」
垣根「食前にそんなもん食べようとするんじゃありません」
麦野「何よその保護者みたいな態度?すっげぇうざいんだけど」
垣根「うっせぇバーカ!蜜柑食いたけりゃテメェもコタツから出ろってんだ!
おい一方通行、冷蔵庫の中身は好きに使わせてもらうぞ!」ガチャ
一方通行「勝手にしろ」
垣根「ふむ、鶏肉と白菜が大量にあるな……水炊きが出来そうだ」
麦野「水炊きね、アッサリしてていいんじゃないかしら」
御坂「何で鶏肉と白菜ばっか買い込んでんのよ?」
一方通行「冬だしなァ、クリーム煮でも作り置きしとこうと思ってたンだよ」
麦野「鶏肉と白菜のクリーム煮を作る第一位……想像すると限りなくキモいわ」ブルッ
垣根「クリーム煮みてぇな色しやがって」ハッ
一方通行「オマエらマジで蹴り出すぞ?」
御坂「抑えて抑えて、今垣根さんを蹴り出すと料理する人がいなくなるわよ」
垣根「腹黒いなぁこの子……麦野、オマエが悪影響与えてんじゃねぇか?」
麦野「はぁ?前からこんなもんだったでしょ、ねぇ第一位?」
一方通行「ノーコメントだ」
麦野「あら優しい」
御坂「べ、別に腹黒くなんてないわよ!何よ皆して!」
垣根「はいはいそうね腹黒くないね。
それじゃ御坂さんに騙されてコタツから出ちゃった垣根お兄さんは鍋を作り始めますよ」フゥ
御坂「ちょ、騙したの私じゃないし!!」
麦野「コタツから出る素振りも見せずに黙って垣根を見送った時点で同罪でしょ?」
一方通行「最年少なのに全く自分から動こうとしねェしなァ」
御坂「く……わ、悪かったわよ……」
麦野「と反省するフリをしながらやっぱり動かない美琴ちゃんです」
御坂「だって寒いし!」
一方通行「うン、やっぱ腹黒いわオマエ」
垣根「おい一方通行、包丁の切れ味が異常に悪ぃぞ、オマエちゃんと手入れしてんのか?」
一方通行「あン?……あァ、そォいやずっと能力使って料理してたから包丁は長いこと研いでねェわ」
御坂「能力使って料理って……それ料理って呼んでいいの?何かズルくない?
てか無駄遣いにも程があるでしょ」
一方通行「ズルくねェし無駄でもねェよ、わざわざ原始的な方法で料理する方がよっぽど時間の無駄だろォが」
麦野「やっぱ反則的に万能ね、そりゃ第一位だわ」
一方通行「本気出しゃァ生きた豚を5分で角煮に出来ンぞ。今度見せてやろォか?」
垣根「んな所で本気出すな!豚の解体ショーなんざみたくねぇよ!!
てか他に包丁ねぇのか?鶏肉が切れねぇぞこれ」
一方通行「ねェな、その一本だけだ。肉切るのも魚切るのも野菜に細工すンのも全部能力でやるからよォ」
御坂「どんだけ能力浪費してんのよあんた」
垣根「はぁ……仕方ねぇな、俺も能力で切るか」ファサ
麦野「え、その羽で切れんの?」
垣根「俺の未元物質に常識は通用しねぇんだよ」バサバサ
一方通行「オマエそれ言いてェだけだろ」
麦野「へぇ……羽が刃みたいになるわけね」
垣根「かっこいいだろ?」スパスパッ
一方通行「そォだな、使い所を間違わなけりゃかっこいいかもなァ」
御坂「背中から生えてる羽で鶏肉切ってる……シュールって言うかなんて言うか……」ウワァ
麦野「いいのよ?はっきり『キモい』って言ってやっても」
垣根「うるせぇ!!俺だって好き好んでこんな大袈裟な真似して鶏肉刻んでるわけじゃねぇよ!!
包丁が使い物にならねぇんだから仕方ねぇだろ!!!」
一方通行「まな板まで一緒に切るンじゃねェぞ」
垣根「いっそ台所全部切り刻んでやりてぇ気分だよクソッタレ」ザクザク
麦野「さて、垣根が料理してる間暇つぶしに本でも読もうかしらね」モゾモゾ
一方通行「何の断りもなく勝手に本棚いじるンじゃねェ」
麦野「固い事言わないの、減るもんじゃなし。
あーでもコタツから手の届く範囲に本棚があるっていいわ、わかってる配置ね」ゴソゴソ
御坂「麦野さん、私にも何か適当にとってもらえる?」
麦野「はいはい。んー、何か面白そうなものは……ん?」ゴソゴソ
【百合姫】
麦野「……」ゴシゴシ
御坂「どしたの?目なんてこすっちゃって」
麦野「いや、何か第一位の部屋にあっちゃいけないようなタイトルの本があった気がして……」ゴシゴシ
一方通行「あァ?………あっ」
御坂「?」
【百合姫】
【マリア様がみてる】
麦野「見間違いじゃねぇ!やっぱあるし!!しかももう一種類似たジャンルのが!!」バッ
御坂「え、何々?……うわぁ、何よこの本……」
一方通行「あァー……」
麦野「第一位!てめぇこんな趣味があったのかよ!!?」
一方通行「あるかボケ!!俺のじゃねェよ!!」
御坂「見苦しいわよ一方通行!あんたの部屋の本棚に並んでたのに自分のじゃないなんて、
そんな言い訳通ると思ってんの!?」
麦野「見た目と喋り方以外はマトモな方だと思ってたのに、まさかこんな性癖を隠してるなんてねぇ」
垣根「何々?何かあったのか?」チラッ
麦野「いいからてめぇは黙って料理してろ!」
御坂「白菜の芯は火が通りやすいようにちゃんと下処理してね!」
垣根「ちくしょう」
一方通行「いやマジで俺のじゃねェンだって」
御坂「仮にあんたの物じゃなかったとしても、
今この場にあるって事はあんたの意思で誰かから借りたってことなんじゃないの?どうなのよ?え?」
麦野「認めなよ第一位、別にてめぇがレズ物で抜いてようが周りに言い触らしたりはしないわよ。
ただちょっと距離は置かせてもらうけど」
一方通行「まァ待て、何でそンな本がここにあンのか、
キッチリ納得の行く説明してやっから聞いてくれ」
御坂「フフン、精々無駄な弁明をするといいわ」
麦野「楽しみね、どんな愚にもつかない言い訳をしてくれるのかしら?」
一方通行「何でオマエら二人してドヤ顔決めてンだよ、うざってェ……
いいか、先週の事なンだけどよォ、どっかの誰かの後輩の
ツインテールのジャッジメントがうちを訪ねて来てだなァ、」
御坂「………」
―――回想
白井「第一位様、こちらにお姉さまが訪ねて来ませんでしたか?」
一方通行「あァ?いや、来てねェけど」
白井「本当ですの?」ジロ
一方通行「嘘ついてどォすンだよ、何だっていきなり疑われなきゃならねェンだ」チッ
白井「そんな事を言って、実は奥の部屋にお姉さまを監禁していたり……」
一方通行「何だオマエ、喧嘩売りに来たンならもっと早く言えよ。いくらでも買ってやっからよォ」ニコッ
白井「じょ、冗談ですの冗談!そのトラウマ級に恐ろしい笑顔はやめてくださいまし!」ビクゥ
一方通行「つか携帯にでも電話するなり直接家に乗り込むなりすりゃいいじゃねェか」
白井「あ、いえ実は先日からお姉さま携帯がつながらず学校にもいらっしゃらず家にもおられないんですの。
また何処かで厄介ごとに首を突っ込んでいたり
事件に巻き込まれていたりするのではないかと思うと気が気でなくて……」ハァ
一方通行「ンでェ、俺に監禁されてるかも知れねェからここにきた、と」
白井「で、ですからそれはただの冗談で……」
一方通行「まァさっきも言った通り、ここにはいねェし俺は居場所なンざ知らねェよ。
そもそも俺ン所に来るのはお門違いだろ、俺とアイツはンなに仲良かねェぞ?」
白井「お姉さまと仲良くないだなんて、そんな事言わないでくださいまし!」
一方通行「はァ?」
白井「お姉さまは孤高なお方ですから、同年代のお友達が少ないんですの。
ですから、どうかレベル5同士仲良くしてあげてくださいまし」
一方通行「あァ、はい」
―――回想中断
御坂「少なくないわよ!!ちゃんと友達いるもん!!」
一方通行「あァうン、そォだな、わかってるわかってる」
麦野「ちょっと携帯の電話帳見せてみ?何人くらい登録してんの?マ行に私以外のアドレス入ってる?」
御坂「入ってるわよ失礼ね!」キー
一方通行「ほォ、誰のが入ってンだ?」
御坂「……番外個体、とか」
麦野「他には?」
御坂「………」
一方通行「……」
麦野「……」
御坂「一方通行、続き話してもらえる?」
一方通行「お、おォ……」
麦野「……まぁ深くは追求しないであげるわ、かわいそうだし」
―――回想再開
一方通行「つーかよォ、アイツの心配なンざする必要ねェだろ。
レベル5の第三位、泣く子も黙る超電磁砲だぜ?
仮に騒動に巻き込まれてよォがそうそう死にゃァしねェよ」
白井「それは重々承知しておりますの。しかぁし!理屈ではないんですの!
いかにお姉さまが強かろうと、やはり心配なものは心配なんですの!!」
一方通行「はァ」
白井「そう、この気持ち……まさしく愛ですの!」キリッ
一方通行「声高に宣言してンじゃねェよクソレズ女が」
白井「レズではありませんの、お姉さま一筋ですの。
仮にお姉さまが男だったとしても、きっと黒子はお姉さまを愛していたに違いありませんの」
一方通行「あァはいそォですか、とにかくここには超電磁砲いねェから、もう用はねェな?」
白井「時に、第一位様には思い浮かべるだけで心臓が停止しそうなほど愛しているお方はおられませんの?」
一方通行「用が済ンだンならさっさと帰れよ、何で会話続けようとすンだよ。
思い浮かべるだけで心臓が停止ってそれもう病気だろ、心筋梗塞の疑いがあンぞ」
白井「お姉さまを想いながら逝けるなら本望ですの」フ
一方通行「やっべェ会話が噛み合わねェ、何だコイツ」
白井「ジャッジメントですの(キリッ」
一方通行「いや、もうそういうのいいから、マジで」
白井「話を戻しますが、第一位様にはお慕いしている方はいらっしゃらないんですの?」
一方通行「何でそこに戻るンだよワケわかンねェよ超電磁砲が心配で探してたンじゃねェのかよさっさと探しに行けよ。
大体俺に愛だの恋だのそンな高尚なモンが理解出来るわけねェだろォが」
白井「ふむ、理解出来ない、ですか」
一方通行「あァ、普通の男女間の色恋すら理解出来ねェし、
ましてやオマエみてェに同性間でそォいう感情を持つなンざサッパリわかンねェ。
子孫も残せねェし、そンなモン非生産的にも程があンだろ」
白井「生産性で愛は語れないんですのよ。
そうだ、実はわたくし今とってもいい物を持っておりまして」ゴソゴソ
一方通行「イヤな予感しかしねェなオイ」
白井「これ、わたくしの愛読書ですの。これさえ読めばきっと第一位様も愛のなんたるかを理解出来るかと」ス
一方通行「何だコレ……【百合姫】?【マリア様がみてる】?」
白井「これで第一位様も立派な百合男子に!」
一方通行「ならねェよ!!オマエやっぱりただのレズじゃねェか!!
つーか持ち歩いてンのか!?この本常に持ち歩いてンのか!?」
白井「それではわたくしはお姉さまの捜索に戻りますので、これで」ヒュッ
一方通行「おい待て空間移動すンな!本置いて行くな!持って帰れェェェ!!!」
――回想終了
御坂「……」
一方通行「……とまァ、こンな感じで強制的にその本押し付けられたわけだ」
麦野「……」
一方通行「一応借りモンっつー事になるし、
あンまりぞんざいに扱うわけにもいかねェからとりあえず本棚に入れといたンだよ」ハァ
御坂「……何かごめんね?」
一方通行「いや、別にオマエが悪ィワケじゃねェだろ」
御坂「うん、そうなんだけど……でも何かごめん」
一方通行「とりあえずこの本オマエから白黒に返しといて貰えねェか?読む気ねェし読みたくもねェ」
御坂「えー、それはちょっと……黒子に取りに来させればいいんじゃないの?」
一方通行「俺から直接返すとなると感想とか求められそうでよォ……」ハァ
御坂「あー……」
麦野「んで結局あんたは何で携帯繋がらなかったわけ?」
御坂「先週の話よね?多分、映画見に行ってた時かな」
一方通行「映画ァ?」
御坂「今ね、第六学区の映画館でアニメ祭りやってて……」
麦野「あぁ……ケロヨンだかゲコ太だか、それ目当てに行ったわけね、高校生にもなって」
御坂「べ、別にいいでしょ!好きなものは好きなんだから!」
一方通行「ンで、アニメに熱中してたら学校行くのも忘れて白黒の電話にも気付かなかった、と」
御坂「電話に気付かなかったって言うか携帯の電源切ってたのよ、映画館では当然のマナーでしょ?」
麦野「あんた絹旗と仲良くなれそうだわ」
垣根「おい一方通行、カセットコンロあるか?」
一方通行「食器棚の一番下に置いてンよ」
垣根「おう、それじゃそろそろ鍋持ってくからコタツの上片付けといてくれ」
一方通行「だってよ。第四位、蜜柑の皮片付けろ」
麦野「えー……だってゴミ箱遠いじゃない?」
御坂「その位は動きなさいよ……」
麦野「でも面倒だし……そうだ、こうすればいっか」バシュン、ジュッ
御坂「の、能力使って……」
一方通行「蜜柑の皮消し飛ばしやがった……」
麦野「出力さえ抑えればこういう使い方もありか。今度からゴミはこうやって処理しようかね」
一方通行「便利なモン持つと人間堕落しちまうってのは本当だなァ」
御坂「いやいやあんたも人の事言えないでしょ……」
垣根「待たせたなボンクラども、垣根様の手料理だ、心して食えよ」グツグツ
一方通行「……そォか、たかが鍋とは言えオマエの手料理なのか」
麦野「物凄い勢いで食欲が失せて行ったわ……」
御坂「出来立ての鍋を前にして食欲が湧かないなんて初めてよ……
見た目は美味しそうなのに……」
垣根「ナチュラルに酷いなオマエら……俺にあったかく接してくれるのはコタツだけかよ……」ハァ
一方通行「まァ捨てるのは勿体ねェし食おうぜ」イタダキマス
麦野「そうね」イタダキマス
垣根「え、何?捨てるかどうか悩むレベル?オマエらマジで俺の事病原菌か何かかと思ってねぇ?」
御坂「まぁまぁ、この二人がこんななのは今に始まったことじゃないし」
垣根「言っとくけどオマエも相当だからな?」
麦野「ところでどうして鮭が入ってないのかにゃーん?てめぇは鍋一つマトモに作れねぇのか?」
垣根「普通水炊きに鮭は入れねぇよ!鮭中毒も大概にしろ!!」
一方通行「はァ……鍋も久々に食うといいモンだな、あったまるぜ……」フゥ
麦野「皆で食べるから美味しいのよ。私達がいる事に感謝しな第一位」フ
一方通行「オマエだけは本当に帰ってくれねェかなァ」モグモグ
御坂「今更だけど、あんた一人暮らしなのによくカセットコンロと土鍋なんて持ってたわね」ハフハフ
一方通行「引っ越す時に黄泉川がよこしやがったンだよ。
『お前くらいの年齢ならそのうちきっと使う日が来るじゃん』とか何とか言って」
垣根「ほう、随分先見が利くじゃねぇか、あの巨乳警備員」ムシャムシャ
一方通行「まさか本当に使う事があるとはなァ……」
御坂「私達のお陰ね」ニコッ
一方通行「あァ、オマエらのせいだ」ケッ
麦野「しっかしあれね、鍋が美味しいのはいいんだけどそれだけじゃちょっと物足りないわね」
垣根「うん?」
御坂「そう?」
麦野「具体的に言うと鍋に良く合う飲み物が欲しいのよ。アルコール的な……あんたら欲しくならない?」
御坂「私まだ高校生だし……」
一方通行「オマエは完全にババアの発想だな」
麦野「もう一回言ってみろ、この家が消し飛ぶわよ」
一方通行「何て酷ェ脅しだ……」
垣根「いらん挑発はやめろ一方通行、こいつはマジでやりかねねぇ」
麦野「あーそれにしても温かい鍋にお酒が組み合わさったらとっても幸せだと思うんだけどなー、
誰かお酒持ってきてくれないかしら」チラッ
御坂「どこまでも人任せね……」
垣根「安心しろ麦野、誰かがそう言い出すと思ってさっき冷蔵庫漁った時にビールの六缶パックを確保しといた」ドン
一方通行「おま、勝手に……」
垣根「固ぇ事言うなよ一方通行、冷蔵庫の中身好きに使っていいつったのはオマエだろ?
ほら、ビール回せ。っと、御坂にはコーヒーな」ハイ
御坂「鍋にコーヒーって……」
垣根「ノンアルコールの飲み物はそれしか見当たらなかったんだ、文句は一方通行に言え」
一方通行「勝手に飲み物ぶんどられた上に文句まで言われンのか俺は」
麦野「珍しく気が利くわね垣根、今私の中であんたのランキングがかなり上がったわよ」
垣根「ほう、どのくらいまで上がった?俺は今ランキング何位くらいだ?」
麦野「セロハンテープと同じくらいね。順位にすると……わかんねーわ」
垣根「セロハンテープレベル!?人間ですらねぇって言うか元はどんだけ低かったんだよ!?」
麦野「元はホッチキスくらいかしら」
垣根「違いがわからねぇ……」
一方通行「まァ実際オマエ人間かどうか怪しいだろ、冷蔵庫になったり工場になったりよォ」
垣根「お前のせいだよ!?」
御坂「ある意味凄いと思うけどね、人間がそんな風になるって……」
一方通行「つーか俺のせいってちょっとおかしいンじゃねェか?
俺はオマエから喧嘩売ってきたのを返り討ちにしただけだろ」
垣根「いやまぁそりゃそうなんだが……」
一方通行「そもそもあン時のオマエは打ち止めに手ェ出そうとするわ黄泉川に怪我させるわド外道だったじゃねェか。
そりゃァ俺だってブチギレるし、大体オマエ相手に手加減なンざ出来ねェっての」
垣根「……すまんかった、あん時は俺もちょっとテンパってたんだよ」
麦野「汚い手使おうとして逆に相手を怒らせてボコられるって、あんた三流悪役の鑑ね」
垣根「オマエが言うな」
御坂「ねぇちょっと、垣根さんが打ち止めに手を出そうとしたって初耳なんだけどどういう事?ロリコンだったの?」
垣根「そういう意味の手を出すじゃねぇよ!!」
一方通行「この馬鹿正面から俺とやり合うの怖ェからって打ち止め人質にしようとしやがったンだよ」
御坂「うわぁちょっと引くわよそれ……」
麦野(ちょっとなのか)
一方通行(ちょっとで済むのかよ)
垣根「その節はどうもすいませんでした。ただ名誉の為に言っとくけど別に怖かったわけじゃねぇよ?マジで」
麦野「幼女人質に取ろうとした時点で名誉もクソも……」
垣根「ですよね……」
一方通行「あー……あン頃の打ち止めは素直で純真な子だったンだがなァ……
ちょろちょろ動き回るから手もかかったけどよォ」
垣根「その純真さを奪ったのはオマエだオマエ」
一方通行「やっぱ俺のせいなンかな……」
御坂「ねぇ一方通行、正直な所あんたは打ち止めの事どう思ってるわけ?」
麦野「そうね、そこはっきりさせとくのは大事よ第一位」
垣根「ぶっちゃけ抱きたいとか思った事ねぇの?」
一方通行「あるかボケ!!何で俺があンなガキに欲情しなきゃならねェンだ!?」
麦野「あっれー、第一位ってロリコンじゃなかったの?」アレー
一方通行「どっから流れンだよそォいうデマは!?絶対に違ェからな!!」
御坂「デマって言うかさ、打ち止めはずっとあんたにベッタリだったし
あんたも満更でもなさそうだったから、多分皆そんな風に思ってるわよ?」
一方通行「……そりゃまァ、アレだ、あのガキは俺にとって世界で一番大切な存在だからよォ、
手はかかるが一緒にいてつまらねェって事はねェし、出来ればずっと一緒にいてェとは思ってたよ」
垣根「何だロリコンか」
一方通行「張り倒すぞオマエ!?ンな薄汚れた感情は一切ねェよ!!」
麦野「そんだけ大事なら何で一人暮らし始めたのよ?一緒に暮らしてりゃよかったじゃない」
一方通行「思春期のガキと血の繋がってねェ男がいつまでも一つ屋根の下で暮らしてちゃ不味ィだろ。
それにアイツはもう俺と一緒にいたくなかったみてェだしな。だったら俺が出て行くのがベストだろ?
アイツが幸せなら俺はそれでいいンだよ」
垣根(何か意外と重い話になってつまんねぇな……)モグモグ
御坂「えーっと、多分あんたが思ってるみたいに打ち止めはあんたの事嫌いになってないと思うわよ?
反抗期でちょっと素直になれないだけだってば」
一方通行「挨拶代わりとばかりに電撃が飛ンでくンのにか?」
御坂「そ、それは、えっと……」
垣根「何だ、昔御坂が上条にやってたのと同じじゃねぇか。構って欲しいだけだろそれ」
麦野「反抗期ってのは近しい相手にこそ反抗する傾向があるからねぇ。今度ゆっくり話し合ってみなさい?
て言うか今言った『世界で一番大切~』とか面と向かって言ってやったらコロッといくわよ多分」
垣根「む、麦野が……」
御坂「真面目にアドバイスをするだなんて……」
一方通行「何だ、この言い知れねェ不信感は……」ゴクリ
麦野「何よあんたら、私だって偶にはお姉さんっぽい事するわよ」
垣根「そんなの麦野じゃねぇよ……」
御坂「誰よあんた!?」
麦野「……まぁそれに、知り合いがロリコンの道に堕ちて行く姿を間近で観察してみたいしね。
第一位が犯罪を恐れずにあのガキンチョとくっつこうって言うんならいくらでも手を貸すわ」
垣根「良かった、いつもの麦野だ」
御坂「お帰り麦野さん」
麦野「てめぇらそろそろ表に出ろ。私は出ないけど」サムイカラ
一方通行「いや待てっての、俺とあのガキとくっつくとかあり得ねェからな?」
御坂「え?でも世界で一番大切でずっと一緒にいたい相手なんでしょ?」
垣根「それを愛と呼ばずして何と呼ぶよ」
一方通行「でも俺アイツに女性的な魅力は一切感じてねェし?」
御坂「ぶっ!!」
麦野「サラッと最低な事言いやがったわこいつ」
一方通行「大切な存在なのは間違いねェよ、アイツの為なら俺の薄汚ェ命なンざ喜ンで捨ててやる。
けど俺にとってアイツは浮ついた感情を向ける対象じゃねェンだよ。
つーかマジでそういう感情は一切湧かねェ。再三言うが俺ロリコンじゃねェし」
垣根「んー、愛は愛でも家族愛とかそっち方面みてぇだな」
御坂「何か打ち止めの事神聖視してる感もあるわね」
麦野「つまんないわ、これだから童貞は」ハァ
一方通行「いや童貞ではねェけどな」
御坂「……え?」
麦野「嘘、マジで?」
垣根「何だ素人童貞か」
一方通行「ちょっと表に出ようか垣根くン」クイ
垣根「寒いからイヤどす」
麦野「童貞でも素人童貞でもない?」
御坂「って事は……」
垣根「レイプか……」ウワァ
一方通行「やっぱ表出ようか垣根くン」クイクイ
垣根「だってオマエが恋愛してるところとか想像出来ねぇし!?」
御坂「うん、確かに……一方通行が誰かとデートしてるところなんて想像出来ないわよね」
麦野「てかさっき『愛だの恋だのは理解出来ない』とか言ってたのは嘘だったわけ?」
一方通行「嘘じゃねェよ、恋愛なンざ生まれてこの方した覚えがねェ」
垣根「だったらもうレイプしかねぇだろ、ん?嫌がる女を力ずくで無理矢理ヤったんだろ?こう、後ろから」
一方通行「ちゃンと合意の上だっての!!つーか何でバック限定なンだよ!?」
垣根「オマエはバックでヤりながら女の胸を揉みしだくのが好きそうな顔をしてる」
一方通行「どンな顔だ!?」
御坂「合意の上なのに恋愛じゃないの?どういう意味?」
麦野「ちょっとシチュエーション詳しく説明してもらえる?」
一方通行「あァ?何だってそンな事話さなきゃならねェンだよ……どォでもいいだろ……」
麦野「話したくないなら話さなくてもいいけど、このままだとレイプ犯認定されるわよ?垣根に」
垣根「言えないってことはやっぱ後ろめたい事があるんだろ?それとも童貞の妄想か?」ケケケ
一方通行「うっぜェ、マジうぜェ……あァークソ……
……まァ何だ、傷の舐め合いっつーかある種の契約っつーか、そンな感じで、
互いに合意の上で身体だけの関係結ンでたンだよ」チッ
御坂「な、何か大人な関係ね……」ドキドキ
垣根「爛れてるっつーんだよ。つーかそれじゃサッパリわかんねぇしもうちょっと詳しく頼むわ」
一方通行「これ以上は絶対話さねェ、絶対にだ」ギロ
垣根「そんな本気で殺気込めて睨むのやめてくれ怖ぇから。わかったよもう聞かねぇって」
麦野「今はどうなってんの?まだ続いてるわけ?」
一方通行「話さねェつってンだろ」
麦野「そん位別にいいでしょ、相手探ったりなんて野暮な真似はしないわよ」
一方通行「……チッ、とっくに切れたわ。互いに黒歴史みてェなモンだ」
御坂「うー、相手誰なんだろ、気になるなぁ……」ウズウズ
垣根「そこつっこむのはやめとこうな、冗談じゃ済まなくなりそうだから」
麦野「あーあ、でもこれで身近な所で『童貞』って馬鹿に出来るのは浜面くらいかー、つまんねーの」
一方通行「馬鹿にしてやンなよ、浜面だって生きて……ン?」
垣根「え?」
麦野「ん?」
御坂「?」
垣根「浜面童貞なの!?彼女いんのに!?」
麦野「あぁ、もうビックリするくらい童貞よ。近くにいるとイカ臭いわ」
一方通行「いやいやいや、もう三年くらいあの能力追跡の女と付き合ってンだろ?え?マジで童貞?」
垣根「十代後半のヤりたい盛りを童貞で過ごしてきたのアイツ?」
麦野「処女童貞同士のカップルってめんどくせえのよ、浜面はヘタレだし滝壺は初心だし」
一方通行「えェー……」
垣根「マジかよ浜面ェ……」
御坂(こういう話って私入り辛いわー……)パクパクモグモグ
一方通行「けどよォ、浜面ってあンま我慢強ェタイプじゃねェだろ?
いくらヘタレだつっても性欲に任せて襲い掛かったりしねェのか?」
垣根「彼女いるのにヤれねぇとか俺なら三日持たねぇぞ」
一方通行「オマエは猿過ぎンだよ」
麦野「あーうん、それが笑えるのよ。この前あいつら二人っきりにしてやったんだけどさ」
垣根「うんうん」
麦野「直前に酒飲ませてた甲斐もあって浜面がついに滝壺に襲い掛かったのよ、押し倒す感じでガバっと!」
一方通行「おォ!やるじゃねェか!」
麦野「でもね、焦った滝壺が咄嗟に巴投げ喰らわせちゃって、哀れ浜面はそのまま窓ガラスに特攻。
その後三日間病院で過ごす羽目になりましたとさ、めでたしめでたし」
一方通行「あァー、めでたくねェー……」
垣根「秋口にあいつがちょっと入院してたのはそれか……」
麦野「せっかくいい感じにお膳立てしてやったってのに、ホントめんどくさいわあいつら」ヤレヤレ
垣根「しかし、何だかんだで面倒見がいいんだなオマエ」
一方通行「あァ、てっきり二人の仲を引き裂こうと画策してンじゃねェかと思ってたが見直したぜ」
麦野「お前らの中で私はどんだけ外道なんだ?」
御坂「……あのさ、二人っきりにしてあげたはずなのにどうして麦野さんはその一部始終を知ってるの?」
麦野「え?そりゃぁ隠しカメラの一つや二つ設置してあるわよ?毎回愉快なネタを提供してくれてるわ」
一方通行「事も無げに言い放ちやがったなコイツ……」
垣根「ちょっと見直したと思った瞬間コレだよ……そんなだからオマエは独り身なんだっての」
麦野「うっせぇコラ、私は独りが好きで独りなんだ勘違いすんなボケ、
私に釣り合う男がいねぇのが悪ぃんだよクソが」チッ
垣根「図星突かれたからってそんなマジギレしなくても……あ、痛ッ!やめろ蹴るな!!痛い!おいやめろって!!」
御坂「そういえば聞いたことなかったけど、麦野さんってどういう人がタイプなの?」
麦野「タイプ?んー、そうね……強くて頭良くて顔良くて金持ってて……」
一方通行「天井知らずな理想の高さだなァオイ」
御坂「まぁ、そんな事だろうとは思ってたけど……」
垣根「おい麦野」
麦野「あぁ?」
垣根「オマエの理想を満たす男が、ここに二人もいるぜ」グッ
一方通行「あァ?」
御坂「あー……確かにあんたら二人とも条件満たしてると言えなくもないわね……
頭いいかどうかは意見の分かれるところだろうけど」
麦野「……優しくて器が大きくて常識があって逞しくて……」
御坂「あ、二人とも条件から外れた」
垣根「何てこった……別にいいけど」
一方通行「むしろこっちから願い下げだ」
麦野「ま、今挙げた条件に当てはまる男が出てきたら本気出すわよ」
垣根「……見つかるといいな」
一方通行「夢見ンのはタダだしなァ」
御坂「人の夢と書いて儚い……何か物悲しいわね……」
麦野「んじゃ次美琴の番ね、何かピンク色な話はないわけ?」
御坂「ふぇ!?そんな流れだっけ!?」
垣根「そうだな、上条とはどうなってんのか酒の肴に聞かせて貰おうか」ククク
御坂「酒の肴なら鍋があるでしょうに……」ク
一方通行「ぼちぼち告白の一つくらいしてやったか?
あの三下アホみてェに鈍いからストレートに行かねェと一生オトモダチのままだぜェ?
競争率高ェンだし急いだ方がいいンじゃねェか?」
麦野「実際、滅茶苦茶モテてるわよね。何であいつまだフリーなわけ?」
垣根「障害レベルで鈍い上にチキンだからだろ、あー勿体無ぇ勿体無ぇ」アーア
一方通行「加えて、アイツに好意持ってる女が全員まとめて告白する度胸もねェ雑魚だからだな」
麦野「なーんか誰か一人でも告白したら一気に修羅場になりそうねー。
面白そうだから先陣切りなさい美琴」ククク
御坂「あの、色々気にしてくれてるところ悪いんだけどさ」
垣根「お?」
御坂「ぶっちゃけ今私そこまであいつに夢中ってわけじゃないって言うか、冷却期間って言うか……」
一方通行「なン……」
麦野「だと……」
垣根「一時期ストーカーかって位追い掛け回してたのにか」
御坂「ストーカーって、そんなには酷くなかったでしょ……」
一方通行「自覚ねェのかよ……」
麦野「一体何があったのよ?バレンタインにハート型のチョコ手作りしたのに結局渡せず
『来年こそは』って泣きながら自分で食べてたようなあんたが……」
御坂「いやさ、夏休みにちょっとアイツの家に行く機会があってね?」
垣根「何だ?まさかそん時襲われたのか?」
一方通行「あの三下野郎……ッ」
御坂「違う違う違う!襲われてない!!」
垣根「じゃぁ合意の上か!?」
御坂「ワケわかんないわよ!!」
麦野「垣根うっせぇ、黙って続き聞くわよ」
御坂「コホン……えっとね、夏だってのにあいつはろくな物食べて無くてバテ気味だって言うから、
あいつの家まで食材買って手料理作りに行ったのよ」
垣根「おー通い妻みてぇだな、そいつはポイント高ぇぞ」
御坂「でしょでしょ?私もあの時はちょっと舞い上がっちゃって、かなり気合入れて行ったの覚えてるわ」
一方通行「つまりそン時はまだ三下に夢中だったってワケか」
麦野「そしてその日に何かあったって事ね」
御坂「出来る女アピールしてポイント稼いで他の女と差を付けるぞ!なんてその時は思ってたんだけど、
買って行った食材を一旦冷蔵庫に仕舞おうとした時に……」
垣根「した時に?」
御坂「冷蔵庫の中にね、パンツが入ってる事に気付いたの……」
一方通行「あァー……」
垣根「冷やしパンツ……」
麦野「え、何で冷蔵庫にパンツ入ってんのよ?意味わかんねーんだけど」
垣根「あー……クーラー使う金すらねぇ貧乏人が偶にやるんだよ、そういう事」
一方通行「冷蔵庫でキンキンに冷やしたパンツ履くと身体が冷えてしばらく涼しい、冷房いらず。
ってな感じらしいンだが、俺も詳しくは知らねェ」
垣根「浜面辺りに聞いてみたら詳しいんじゃねぇの?アイツは実際にやってそうだしよ」
麦野「ふーん、まぁとにかく貧乏人の涼み方なわけね」
御坂「冷蔵庫のど真ん中にパンツが鎮座してるの見た瞬間ね、『あ、何か違うな』って……」
一方通行「冷めちまったわけか」
御坂「冷めたって言うか醒めたって言うか……」
麦野「うん?どういう事よ」
御坂「あいつは世界を救った英雄で、私の事超能力者って言う色眼鏡で見ずに対等に接してくれて、
何度も私の事助けてくれて……でも私生活にはあんまり踏み込ませてくれなかったからさ、
私知らず知らずの内にあいつに凄い過度の幻想を抱いてたみたいなのよね」
一方通行「ところが現実は冷蔵庫の中にパンツ突っ込ンでるような貧乏学生でした、と」
御坂「うん……貧乏なのは知ってたけど、冷蔵庫の中にパンツ入ってるの見たときは正直ちょっと引いたわ」
垣根「100年の恋が冷める瞬間なんざ往々にして下らねぇもんだって事だな」
御坂「勿論嫌いになったわけじゃないし、今でも多分好きよ?
けどね、ずっとフィルター越しに自分勝手な幻想のあいつを見てたから、
本当に好きなのかどうかわからなくなっちゃって……」
麦野「んで、ちょっと一線引いて冷静になろうとしてるわけね」
御坂「まぁそんな所。身勝手な理想を持たれたまま告白されたんじゃあいつも迷惑だろうし、
仮に告白成功しても長続きしないだろうしね。
今は等身大のあいつをじっくり見定めてる最中って感じかな」
垣根「何か良さ気な感じにまとめてますが事の発端は冷やしパンツです」
一方通行「その日は結局その後どうしたンだ?」
御坂「パンツはスルーして普通に料理作ってあげたわよ?けどそれだけ」
麦野「ちなみにどんな料理作ったのよ?気合入れてたつってたけど」
御坂「鰻とすっぽんを……」
一方通行「他の女に差をつけるどころか既成事実作る気全開だったンじゃねェか!!」
垣根「怖いわこの子……」
御坂「ち、違うわよ!!バテ気味だって言うから元気出して貰おうと思っただけよ!」
麦野「その後襲われなかった?女の子がそんな料理出してきたら普通OKサインだと思うわよ?」
御坂「だーから襲われてないってば」
一方通行「鈍さに定評のある三下さンだからなァ……
ってかチョコ渡す度胸はねェのに鰻とすっぽんは平然と出せるのかよ」
垣根「そもそも鰻とすっぽんって調理すんのに免許必要だろ。気合入れたってレベルじゃねぇぞ……」
御坂「も、もういいじゃない!結局何事も無かったんだし!!
それよりも、あいつ猫飼ってるのよ猫、三毛猫。かわいかったわよー、私も猫飼いたいわー」
麦野「ちょっとその話題転換は強引過ぎじゃないかしら?」
垣根「乗っといてやろうぜここは。いいよな猫」
御坂「いいわよね猫!……はぁ、私も発電系能力者じゃなければもっと触れ合えるのに……
猫じゃなくてもいいから何か癒し系なペット飼いたいなぁ」
一方通行「あンまり迂闊にペット飼いてェとか言ってっと
『わたくしを飼ってくださいまし』とか言い出す馬鹿が出てくンぞ」
御坂「あー、頭の中で完全に黒子の声で再生されたわ今の……」
一方通行「それと『自分をペットにしてください』とか言い出す馬鹿も」
御坂「やめて、想像すると気持ち悪いから……」
麦野「大人気ね美琴」
垣根「とりあえず手頃な所でオマエの大好きな蛙でも飼ってみたらどうだ?
ゴム手袋でも付けてりゃ何とか世話出来るだろ」
御坂「触れ合えないし癒されないわよ!!ゲコ太が好きなだけでリアルな蛙はそんなに好きじゃないっての!!」
麦野「爬虫類とか両生類ってよく見ると結構かわいい顔してるわよ?」
御坂「あの、もっとこう毛がモフモフした系統の奴をね?わかんないかな……」
一方通行「わかってて言ってるに決まってンだろ」
垣根「しかしペットか……もし飼うんならやっぱ犬か猫の二択になるかな」
御坂「その二択なら私は断然猫派よ。あの大きな目が堪んないわ」
垣根「わかるぜ、猫の目には何か不思議な魅力があるからな」
一方通行「猫目石なンて宝石もあるくらいだしなァ」
麦野「ペットとして飼うなら私は犬派かな。触れ合うだけなら猫でもいいんだけど、
やっぱりペットは飼い主に忠実じゃないとね」
垣根(バターとか舐めさせたりすんのかな)
麦野「垣根、お前今物凄く失礼なこと考えただろう?」
垣根「バター犬」
一方通行「口に出しちまったよこの馬鹿!!」
御坂「バター犬って何?ゆるキャラか何か?」
一方通行「知らなくていい、忘れろ」
垣根「何でバター猫ってのは無いんだろうな?」
麦野「知るかボケ、もう黙れよ」
一方通行「『バター猫のパラドックス』が一瞬で卑猥な言葉になっちまったな……」
垣根「冗談は置いといて、犬もいいよな。レトリバーとかの大型犬と全力でじゃれ合うとマジで楽しい」
御坂「あ、それはちょっと魅力的かも……」
麦野「何より『イヌ』って響きが良いのよ、イヌ」
一方通行「そォか?」
麦野「だってそのまま罵倒語にもなるのよ?このイヌが!とか」
御坂「えー……」
垣根「そんな理由で犬が好きなのなんざ世界中でオマエくらいだ」
麦野「ところでイヌ……」
御坂「ん?」
一方通行「犬がどォかしたか?」
麦野「間違えたわ。ところで垣根、」
垣根「おい何をどう間違えやがった」
一方通行「まァ気にすンなよイヌ……垣根」
御坂「気を落とさないでイヌ……垣根さん」
垣根「ナメてやがるな。よほど愉快な死体になりてぇと見える」ビキビキ
麦野「そう怒んなっての。それよりビールもう一本取ってくれる?」
垣根「チッ……ほらよ」シャカシャカ、ヒョイ
麦野「おい今振っただろ、ふざけてんのか?」
垣根「気のせいだ」
麦野「目の前で振りやがっただろ!気のせいであって堪るか!!」
一方通行「飲食物で遊ぶンじゃねェ」
御坂「はい麦野さん、新しいビール」トン
麦野「お、ありがとね美琴」
垣根「チッ」
一方通行「振ったやつはオマエが責任持って飲めよ?」
垣根「ヤなこった。ほら御坂、オマエにやるよ、コーヒー全然飲んでねぇみてぇだし」コト
御坂「いやいらないわよ」
麦野「それより垣根、鍋の具が減ってきたから追加してきて」
垣根「また俺!?てかかなりの量あったはずなのにもうなくなりかけてんのか!?」
御坂「一方通行が肉ばっか食べてるからほとんど野菜だけになっちゃってるわね」
垣根「野菜も食えこの野郎」
一方通行「場所も食材も俺が提供してンだぞ?俺が肉食うのは当然の権利だろうが」
麦野「何で太んねーんだお前」
御坂「羨ましいわよねー」
垣根「確かに羨ましいけどよ、超偏食家だからその内身体壊して死ぬだろ」
一方通行「ずっとこンな生活してっけど病気なンざしたことねェぞ」
麦野「無駄に健やかね、モヤシの癖に……馬鹿は風引かないってのと似たようなもんなのかしら?」
垣根「まぁ、モヤシは意外と生命力高ぇからな、腐ったり枯れたりすんのも早ぇけど」
御坂「つまり今は元気な一方通行だけどそう遠くない内にくたばるって事?」
一方通行「あっれ、もしかして俺喧嘩売られてンのか?
オマエらこの寒ィのにコンクリ抱いて水泳でもしてェの?」
垣根「そうやってすぐ他人を脅して従わせようとすっから友達少ねぇんだよオマエ」
麦野「そんなに短気じゃ女の子にモテないぞ☆」
一方通行「よし、オマエらは殺す。近い内に絶対殺す」
御坂「それより私喉乾いたんだけど、コーヒーかビール以外に飲み物って無いの?」
一方通行「あァ?コーヒーの何が不満だってンだ」
御坂「苦いのはちょっと……鍋には合わないし、眠れなくなるし……ジュースとかお茶とかない?」
一方通行「悪ィがコーヒー以外には酒しか置いてねェよ。
甘ェモンは俺が得意じゃねェからな。茶ァ飲むくらいならコーヒー飲むしよォ」
御坂「えー本当に何もないんだ」
麦野「味覚障害者に多くを求めてはダメよ、美琴」
一方通行「オマエいい加減にしろよコラ」
垣根「ちょっと粘性の高いカルピスで良ければ一方通行から搾り取れるぞ」ククク
御坂「?」
一方通行「あァっと手が滑ったァー」ガッシャーン
垣根「ぎゃあああぁぁぁあっちいいいいぃぃぃ!!!!!」バッシャー
御坂「うわ、頭から煮立ってる鍋かぶった……」
一方通行「大丈夫か垣根ェー、つい手が滑ってオマエに鍋ブン投げちまったァー」
御坂「あーあ勿体無い……」
麦野「もうほとんど白菜しか残ってなかったし別にいいでしょ。
それに手が滑ったんなら仕方が無いわ」
垣根「ちったぁ俺の心配しろ!!俺じゃなかったら病院送りになってんぞこれ!?」アチチチチ
一方通行「暖かそうで何よりだなァ垣根くゥン、もォコタツに入っとく必要ねェだろ?
そこ片付けて鍋作り直してこいや」
垣根「オマエ流石に鬼畜すぎじゃねぇ?俺も冗談が過ぎたけどよぉ……」アツイアツイ
麦野「てか今ので鍋にヒビ入ってるわ、もう使えそうに無いわね」
御坂「え、じゃぁもう鍋終わり?まぁ結構食べたけどさ」
一方通行「あーあ垣根のせいだなァこりゃ」
垣根「ハイハイすいませんでしたぁ!」
麦野「それじゃ後はビールでもちびちびやりながら駄弁りましょうか」
一方通行「え、帰らねェの?」
御坂「こんな寒い中帰れないわよ、てかコタツから出たくないし」
麦野「そう言えば明日は雪が降るらしいわよ?寒いわけね全く」
垣根「マジかよ、日が暮れたらもう寒くて外出歩けねぇな」
御坂「こうも寒いと温泉でも入りに行きたいわねー」
垣根「お、いいな温泉。その内皆で行くか」
麦野「いや、お前は来るな」
一方通行「………おいオマエら、まさかとは思うが今日泊まる気じゃ……」
麦野「安心しな第一位、私はソファーでいいからベッドは美琴に使わせてあげなさい」
御坂「え、いいの?何か悪いわね……」
一方通行「おい」
垣根「俺はコタツで構わねぇよ。それとシャワー浴びさせてくれ、鍋でベタベタだから」
麦野「て事は第一位はその辺の床で寝るわけね」
御坂「そんなに気を使わなくてもいいのに……」
一方通行「おい何言ってンだ」
麦野「それじゃ夜はまだ長いし、今日は騒ぐわよー」
垣根「おう!の前に俺はシャワー行って来る」ガタン
麦野「戻ってくる時でいいから適当にツマミ探してきてもらえる?」
垣根「ったくしょうがねぇな……」
一方通行「おい」
御坂「わ、私もビール飲んでみようかな……」
麦野「おっとお酒初体験?いいわねー気合十分ねー」ククク
一方通行「帰れよオマエらァァァァァ!!!」
終わりだよ!
最近長編書く体力も時間もなくて困るわぁ
書きかけのSSが二本あるけど形として纏るのはいつになるのやら・・・
それじゃ読んでくれてありがとな!
乙でした。
面白かった
長編も期待してます!
他の作品が気になる。
Entry ⇒ 2012.01.04 | Category ⇒ 禁書目録SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
結衣「ちなつちゃんに笑ってほしい」
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1324434714/l50
何度も落としてすみません
完結させたいので、こちらに移動します
短い間になるとは思いますがよければお付き合い下さい
京子が先生に呼び出しを食らい、廊下で掃除をしているあかりともすれ違ったから
部室にはちなつちゃんしかいないはずだ。
急ぐ理由なんて無いけど、この季節、廊下はひどく冷えていて、
自然と足早になってしまう。
早く中に――
あっという間に辿り着いた部室の前。ドアに手をかけて、それから私は。
そのドアを開くことが出来なかった。
結衣「……ちなつちゃん?」
薄く開いたドアの隙間。
こちらに背を向けて座っているちなつちゃんは。
なんだか、泣いているみたいだった。
結衣「……」
バクバクと鳴っている心臓を落ち着けようと、私は大きく深呼吸した。
思わず戻ってきてしまった教室には誰もいない。
おかげで声を出して息を吐き出すことが出来た。自分の声で、少し頭が
冷静になってくれる。
結衣「……なにやってんだ私」
冷静になった頭で、私はどうして逃げてしまったのだと後悔した。
ちなつちゃんはいつも明るくて、泣いているところなんて見たことなかったから。
一人で泣いてるなんて、見られたくないだろうし。
なにより、私なんかが声をかけていいのかわからなかったから、どうしても部室に
入れなかったのだ。
京子「あれ、結衣?」
自分の対応に頭をかきむしりたくなったとき、のんびりとした声が
私を教室へと引き戻した。
結衣「京子……」
京子「先部室行ったんじゃないのー?さては私を待っててくれたか!」
結衣「ちげーよ」
えぇと口を尖らせながら、京子は自分の机に駆け寄って置いてあった鞄を肩に
かけた。
どうやら今の今まで先生にこってり絞られていたのだろう。
けれどそんな様子は微塵も見せずに京子はそう言って私に寄って来た。
ちょっと待ってと言う暇もなく、京子が私の背を押して教室を出ようとする。
京子「今日はなにする?」
結衣「なにするって……」
なんとか鞄を持ち出しながら、私は返答に詰まった。
京子はちなつちゃんが泣いていたことを知らない、当たり前だけど。
それに私だってちなつちゃんがどうして泣いていたのかなんてわからないし。
京子「結衣?」
結衣「……っ」
立ち止まった私を、京子が「なんだよー」というように振り返った。
行きたくないわけではないけど、今ちなつちゃんと顔を合わせるのは
正直きつい。
結衣「ごめん、今日は」
そう言い掛けたとき、京子が「どうした?」と首を傾げた。
「なにが」と問い返すと、「なにかあったのかなって」
結衣「……そういうわけじゃ、ないけど」
こういうときの京子はへんに鋭い。
それでも私は、京子から目を逸らして首を振った。
なんとなく、ちなつちゃんのことは言い辛かった。京子のことだからちなつちゃんに
真正面切って何か言いそうだし。
京子「ふーん?」
結衣「と、とりあえず今日は私」
けれど、京子は「大丈夫だって」と笑った。
そのまま、私の後ろに回ると教室を出たときのようにぐいぐいと私の背中を
押して行く。
結衣「ちょ、京子」
京子「あかりもちなつちゃんも待ってるしさ」
ちなつちゃんも。
私は何も言えなくなって、結局部室の前まで来てしまった。
けれど、ここまで来てなお京子がドアに手をかけようとしたのをつい止めて
しまっていた。
京子「なに?」
結衣「いや……」
京子「結衣の手邪魔なんだけど」
結衣「う、うん……」
無理矢理私の手をどかそうとする京子と、なんとか中に入るのを阻止しようとする私。
結局押し問答になってしまったとき、中からこちらへ走り寄って来る音が聞こえた。
結衣「あっ……」
そして、あっけなく開いてしまったドアから顔を覗かせたのは。
きょとんとした表情のちなつちゃんだった。
ちなつ「……な、なにやってるんですか」
京子が「結衣のやつが」と文句を言い始めるのを口に手を当てて阻みながら、
私は苦笑して「なにも」と答えた。
結衣「……えっと、遅くなってごめんね?」
ちなつちゃんは一瞬何か言いたそうな顔をしたあと、すぐに首を振って
笑ってくれた。
ちなつ「結衣先輩が来てくれただけで嬉しいですっ」
その笑顔を見て、私はようやくほっとした。
―――――
その日はそれ以上なにも変わったことなんてなくって、いつものとおりの部活
(というかただの遊び)が始まって。ちなつちゃんも変わった様子はなく、けれど
私はちなつちゃんの小刻みに震えた背中が忘れられなかった。
結衣「……」
ちなつ「……」
結衣「……」
ちなつ「……あのっ、結衣先輩っ?」
だから次の日からも、ついちなつちゃんの顔をじっと観察してしまっていた。
ちなつちゃんが少し赤くなって「どうしたんですか?」と慌てるのを、私は
「いやなんでも……」と同じく慌てながら目を逸らした。
あかり「えへへ、結衣ちゃんさっきからちなつちゃんのほう見てばっかりだよぉ」
ちなつ「キャー、やっぱりそう!?」
京子「結衣にちなつちゃんは渡さんぞ!」
結衣「何言ってんだよ」
とりあえず京子に突っ込みながら、私はお茶に手を伸ばした。
ちなつちゃんの淹れてくれたお茶はすっかりぬるくなってしまっていた。
あかり「京子ちゃん、あかりは?」
京子「あかりはどうでもいい!」
あかり「そんなっ!?」
今日は少し、いつもより苦い気がした。
それでもごくんとそれを身体に流し込むと、私はコップ越しにまた、ちなつちゃんの
横顔をじっと見詰めて。
結衣「……」
変わったことはない、たぶん。
ただ、時々ふとした瞬間に見える翳りがどうしても気になってしまった。
たとえば京子が私になにか言ってきたときとか、京子がちなつちゃんに何かしている
ときとか。
結衣「……ん?」
ってことは、ちなつちゃんが泣いていたのは京子のせいってこと?
私はわからなくなってぐびっとお茶を飲み干して首を傾げた。
帰り道。
後ろを歩く一年生組を気にしながら、私はこそっと京子に話しかけた。
京子「うん?」
結衣「だから、お前、ちなつちゃんになんかした?」
京子「うん、してるよ!」
えっ、と言いかけてすぐに思い直す。
確かに京子はちなつちゃんに毎回なにかしているわけだし。
結衣「……じゃなくて、ちなつちゃんを、泣かせるようなことっていうか」
今度は京子が「えっ」という番だった。
「はあ?」というように首を捻る京子。
京子「いくら私でも大事なちなつちゃんを泣かせるわけなんてない!」
結衣「……うん、そうだよな」
本当に、そうなのだ。
京子は人に迷惑をかけてばかりだけど、誰かを泣かせるなんてことはするわけないし、
京子ができるはずなんてない。
ちなつ「先輩、私がどうかしました?」
声が大きかったのか、ちなつちゃんが後ろから不思議そうに声をかけてきて
私は慌てて「なんでもない!」と答え返して、京子の手を引いて少しだけ足早に
なった。
京子「えっ、なに?ちなつちゃん泣いてたの?」
結衣「いや……」
京子は「なんだよー」と突いてくるけれど、それ以上なにかを聞いて来ようとは
しなかった。無理矢理聞いてくるような奴じゃなくて良かったとこういうときになって
思う。
だからそんな京子に、私はぽつりと訊ねてみた。
結衣「もし、泣いてたとしたら京子ならどうする?」
京子「笑わせる」
結衣「即行だな」
京子「ちょっとかっこよくない?」
結衣「……まあ」
笑わせる、か。
あの時逃げてしまったこともあって、京子の言ったことなのに、
その言葉はずしりと重く聞こえてしまった。
―――――
結衣「……んー」
その夜、私は薄暗い部屋でテレビを垂れ流しながら、クッションを胸に抱えて
ごろりと後ろに倒れこんだ。
カーペットの上だとしても、床だから少し頭が痛い。
こういうとき、ごらく部の部室はいいよなあ、なんて思ってしまう。
畳は過ごしやすいのだ。
そんなことよりも。
結衣「……」
テレビから聞こえる笑い声をBGMに、私はちなつちゃんのことを考えていた。
泣いているところを見てしまったからには、やっぱりそのままにしておくわけには
いかないと思ったのだ。先輩としても、同じ部活の仲間としても。
今さらかもしれないし、あの時なにかあっただけであの後すぐにあかりが行っているはず
だから解決してるかもしれないけど。
時々見える翳りだって、もしかするとまだなにかあるのかもしれないわけで。
私なんかが、なにかできるかはわからないけど、それでもやっぱり
考えずにはいられない。
昔から、誰かの涙には弱いのだ。
京子のやつも、あかりのやつも小さい頃はすぐに泣いちゃって。
私がずっと二人のお守り。
ちなつちゃんのことも、何からかはわからないけど守ってあげなきゃ。
結衣「……」
とは思いつつ、逃げちゃったものだから本人を前にしては聞きにくい。
突然「どうして泣いてたの」と訊ねるわけにもいかないし。
そんなふうに思考がぐちゃぐちゃになって、私はテレビも消さずに目を閉じた。
ちなつちゃんの背中が、ずっと目蓋の裏に映ったまま。
翌日の放課後、まるで図ったかのように部室にはちなつちゃんしかいなかった。
ドアを開きかけて思わず止めてしまったのは、またちなつちゃんの後姿が
見えたから。
けれど今日は、泣いているわけではないみたいだった。
結衣「……」
そっと部室に入ると、ちなつちゃんは小さく身動ぎ。
眠っているみたいだった。
私は今朝あかりに聞いた話を思い出しながら、ちなつちゃんの隣に腰を下ろす。
あかり『え、ちなつちゃん?』
京子にちなつちゃんを任せながら、私はあかりにこっそり訊ねていた。
最近、元気なかったりとかするかな。
するとあかりは「うーん」と首を傾げたのだ。
あかり『そんなことはないと思うけどなぁ』
ちなつちゃんはいつも通りだよ、とあかりは確かにそう言って。
あかりは嘘をつけるような子ではないし、第一ちなつちゃんが元気ないみたいなのなら
すぐに私達に言ってくるだろう。
うん、そうだよねと私は苦笑して。
代わりに、「それなら」と言った。
あかり『……えーっとね』
きょとんとしながらもあかりは、「なんでも」と答えた。
問い返すと、今度はいつものあかりの笑顔で。
あかり『結衣ちゃんのすることなら、ちなつちゃんはきっとなんでも嬉しいだろうし
どんなことでも元気になると思うなぁ』
――なんでも、ね。
結衣「……はあ」
私は溜息をついて、机に頬杖。
なんでもと言われたって、具体的にどんなことをすればいいのかわからない。
あかりもちなつちゃんはいつも通りだといっていたから、どうして泣いていたのかも
聞けなかったし。
ちなつちゃんのことは気になりながらも、中々前へ進めない自分がひどく
もどかしかった。泣いていた理由もわからないのにちなつちゃんを元気にできるわけ
なんてないわけで。
私って案外へたれなのかもな、なんてことを思いながら。
びくっとした。
突然名前を呼ばれて、ちなつちゃんが起きてるのかと思ったけれど、
覗き込んだ横顔はちゃんと眠っている。
結衣「……なんだ」
ほっと安堵の息をつきながらも、どんな夢見てるんだろうなあ、と考える。
私の名前を呼ぶってことは、私のことを見てくれているのだろうか。
少し、嬉しくなる。
最初は茶道部志望で、無理矢理京子に入らされたこのごらく部に今でも律儀に
居続けてくれているちなつちゃん。
ちょっと黒いところもある気がするけれど、本当にいい子だと思う。
私と京子、そしてあかりの幼馴染三人しかいなかったこの部活に、ちなつちゃんが
入ってきてくれて本当に良かったと思うし、最初は少し浮き気味かななんて思っても
いたけれど、今となっては手の掛かる可愛い妹が増えた感じだ。
そんなちなつちゃんだけど。
やっぱり私はまだまだちなつちゃんのことをわかっていないんだなとも思って。
ちなつちゃんの柔らかい髪に埋もれる、そっと伸ばした手。
あたたかいし、気持ちいい。
ちなつちゃんの温かさだな、なんて柄にもないことを思って赤面したくなる。
結衣「……」
ちなつ「……ふふっ」
気持ち良さそうなちなつちゃんの寝顔に、
けれどそんなことまでどうでもよくなってきてしまった。
少しあどけないくらいの子供っぽい横顔。
こんな顔を見るのも、今までなかったような気がする。
ふと、ちなつちゃんはどんな顔をして泣いていたんだろうと思った。
背中しか見えなかった、あの時。
もちろん、見たかったわけではないけれど。
ちなつちゃんの頭をゆっくりと撫でながら、私は首をふるふると振って。
ぼんやりそう思った。
いつのまにか、ちなつちゃんの寝顔を見詰めていると自分まで眠くなってきてしまい、
うとうとと頭が傾き始める。
やばいかな。
ちょうどそう思った時「結衣先輩……?」と寝ぼけたちなつちゃんの声が
聞こえ、眠かった頭が一気に覚めた。
結衣「あ、ちなつちゃん……!」
慌ててちなつちゃんの頭に置いていた自分の手を引っ込めた。
ちなつちゃんは気付いていなかったのか、こしこしと目を擦りながら「なにか
しましたか?」と。
結衣「いや、なにも」
私は苦笑して、微妙に熱くなった手をそっと背後に隠した。
見えていたってなんの問題もないわけだけど。
ちなつ「そうですか?」
結衣「うん」
ちなつ「……そっかあ」
身体を起こして、ちなつちゃんは少し残念そうにそう言った。
一瞬、その表情に落ちた影に、ドキッとした。
それからすぐに、ちなつちゃんは恥ずかしそうにはにかんで。
私は「ううん」と首を振りながらそっとちなつちゃんから目を逸らした。
『結衣ちゃんのすることなら、ちなつちゃんはきっとなんでも嬉しいだろうし
どんなことでも元気になると思うなぁ』
あかりの言葉を思い出す。
私は迷いながらも、ちなつちゃんと目を合わせないようにしながら「ちなつちゃん」と
名前を呼んでみた。
ちなつ「へっ!?」
結衣「えっ」
ちなつ「ななな、なんですか結衣先輩!?」
あまりにもいきなりだったからだろう、ちなつちゃんは噛み噛みになりながら
私を見詰めてきた。
結衣「う、うん……」
ちなつ「あ、お茶ですか?それなら私、すぐに――」
結衣「いや、そうじゃなくって!」
見上げたちなつちゃんは、困惑したように私を見返してくる。
その視線を、今度ははっきり受け止めて私は言った。
結衣「私になにかしてほしいこととかある、かな」
ちなつ「……結衣先輩に、してほしいこと……ですか?」
うん、と私は真剣な顔をして頷いた。
ちなつちゃんは「そんなの、そんなのそんなのそんなの……!」と今にも叫びだしそうな
くらいぱたぱたとして――脱力したようにその場に座り込んだ。
ちなつ「……そ、そんなのたくさんありすぎて」
あぁ、たくさんあるんじゃなくってその……!
ちなつちゃんは「もう私ったらなに言ってるのよ」と頭をふるふる縦に横に振って。
それからぺたんと座り込んだまま。
ちなつ「私、結衣先輩と一緒にいられるだけで、その……」
時々ちらちらと私に視線を向けながら、今にも沸騰しそうなくらい真っ赤になった
ちなつちゃんが小さな声でそう言った。
ちなつ「……だから、これからも一緒にいて、ほしいなあ、なんて」
ちなつちゃんの様子を見ているうちに、私まで落ち着かなくなってきてしまった。
熱くなってきた頬をなんとか冷めさせる方法はないかと考えあぐねながら、
私は「そんなの当たり前だろ」と。
少しだけ、言葉遣いが荒々しくなってしまったかもしれない。
ちなつちゃんの「えっ……」という小さな声。
結衣「いや、だから……一緒にいられない理由なんてないんだし」
ちなつ「……先輩」
結衣「だからね、私、その他にちなつちゃんにしてあげられること、ない?」
言い方がまずかっただろうか、そう考えていると、ふいに再起動したちなつちゃんが
「そ、それじゃあ!」と。
結衣「うん、なに?」
ちなつ「今だけで、いいんですけど……」
――ちなつ、って呼んでくれませんか?
ちなつちゃんは、不安そうな瞳で私を見上げてきて。
そんな目で見られて、断れるはずなんてなかった。
第一自分がちなつちゃんのためになにかしたいと言ったのだから。
結衣「……ほんとに、そんなことでいいの?」
そんなことで、ちなつちゃんが元気になるとは思わないけど。
それでもちなつちゃんがこくんと頷いた。
私はかりかりと頬をかいて、ちなつちゃんの不安そうな瞳から視線を逸らした。
結衣「……ちな、つ」
しかたがない。
せっかく冷め始めていた熱がまたぶり返してくるのがわかった。
結衣「……」
ちなつ「……」
結衣「……ちなつちゃん?」
中々反応のないちなつちゃんのほうを見ると、ちなつちゃんは放心状態のように
ただ一心に私を見ていた。
真正面からそんなふうに見られると、恥ずかしいどころじゃない。
「ちなつちゃん、あの……」ともう一度声をかけると、ちなつちゃんはようやく
はっとしたようにこちらへ戻ってきた。
ちなつ「す、すみません私……!」
結衣「いや、いいけど……」
とりあえず視線を逸らされてほっとする。
本当にこんなことでいいのだろうか。ちなつちゃんがこれで元気になってくれるのなら、
いくらでも呼べる気がするけど。
結衣「びっくりって、ちなつちゃんが呼んでほしいって言ったのに」
ちなつ「そ、そうなんですけど……」
あたふたとしながら私になにかを伝えてこようとするちなつちゃんが、
すごく可愛く見えた。
「嬉しかったかな……?」と訊ねてみると、ちなつちゃんは「それこそ当たり前です!」と。
ちなつ「う、嬉しくて、ほんとに……!」
結衣「……ち、ちなつちゃん!?」
今度は私が驚く番だった。
思わず膝を立てると、ちなつちゃんは自分でもきょとんとした顔で。
ちなつ「や、やだ私ったら……!すみません……!」
私が慌てる訳に気付いたのか、ちなつちゃんは俯いて目許を拭った。
それでも止まらないのか、ぽたぽたとちなつちゃんの膝に涙が零れ落ちる。
どうしてちなつちゃんが泣いているのかわからなくて、だから私は。
ちなつ「……ゆいせんぱい?」
ちなつちゃんが、はっとしたように息を呑んだのがわかった。
私は照れや戸惑いを押し殺して、ちなつちゃんをぎゅっとする。
声にできない言葉の代わりに。
結衣「……ちなつちゃん、どうしたの?私に言えないようなこと?」
ちなつ「へ……?」
結衣「教えて欲しいんだ、ちなつちゃんが泣いちゃう理由」
お互いの顔は見えない。
今、ちなつちゃんがどんな顔をしているかもわからないし、私がどんな顔をしているかも
わかるはずない。
私ね、前にちなつちゃんが泣いてるとこ、見ちゃったんだ。
だから、正直に私はそう言った。それからそっとちなつちゃんを離すと、
今度はきちんと目を合わせた。
結衣「だから、教えてほしい」
私はちなつちゃんの力になりたい。
ちなつちゃんが泣いているなら、私はちなつちゃんの涙を止めてあげたいと思う。
京子やあかりのときみたいに。
ちなつ「……結衣先輩」
ああ、もうどうすればいいんだ。
そう思った瞬間。
ちなつ「……好きなんです」
なんの声も出なかった。
ただ、ちなつちゃんは他の誰にでもなく、私にその言葉を言っていることだけは
はっきりとわかって。
ちなつ「結衣先輩のことが、好きなんです」
一度言ってしまったことで吹っ切れてしまったのだろう。
今度は本当に、私のことが好きなのだと、そう言った。
やっと出てくれた声は「えっ」という間抜けなものだった。
結衣「……ちなつちゃん」
ちなつ「私、本気なんです」
潤んだ瞳で怖いくらいに真剣な顔をして私を見詰めてくるちなつちゃんに、
冗談だろと笑い飛ばせるはずもない。
ちなつちゃんの涙が、肩に置いた私の手を伝って畳の上に落ちた。
なんだか生ぬるいのか冷たいのか、わからなかった。
ちなつ「……なんて」
結衣「え?」
ふと、ちなつちゃんは目を伏せて小さく笑った。
なんて、こんなこと言っちゃったらさすがの結衣先輩も引いちゃいますよね。
ちなつ「……結衣先輩が優しくしてくれて、私本当に嬉しかったです!」
結衣「ちなつちゃん……あの」
ちなつ「私、今日はもう帰りますね!」
俯いたままでちなつちゃんはそう言うと、ばっと私から離れて鞄を持つと、
ぺこっと私に頭を下げて部室を飛び出して行った。
ちなつちゃんが頭を下げたとき、また一粒、ちなつちゃんの涙が畳を湿らせたのが見えて。
守ってあげなきゃなんて考えてたくせに。
ようやくわかった理由に、私は打ちのめされそうになる。
ちなつちゃんの「結衣先輩のことが、好きなんです」という真剣な声が
何度もリピートされて、今さらになって頭がぼんっと熱くなってきて。
結衣「……」
追いかけられなかった。
追いかけられるはずなんてなかった。
私はただ呆然と、ちなつちゃんが出て行ったほうに背を向けていた。
―――――
あかり「結衣ちゃん、今日はあんまり元気ないね」
結衣「……えっ」
あかりに声をかけられて、私ははっと顔を上げた。
あかりだけじゃなく、京子も怪訝そうな顔で私を見ている。
あれからすぐに京子とあかりが来て、ちなつちゃんのいないまま、ごらく部の
活動が始まった。
結衣「そ、そんなことないよ」
京子「そうか?最近の結衣、ちょっと変」
結衣「京子には言われたくない」
京子「んなっ!別に私は変じゃないもんねー!」
ね、ちなつちゃん、と京子はいつものように言いかけて、「あっ、いないのか」と。
あかりが「なんだか一人いないだけでも変な感じだよねぇ」と苦笑する。
その言葉通り、たった四人の部活で一人でも欠けると、ただでさえ無駄に広い茶室を
占拠してしまっているのだ、途端に物寂しくなってしまう。
ちなつちゃんが入る前は三人だけだったけれど、ちなつちゃんが入ってからは四人の居場所として
定着してしまっていたから、次第に落ち着かなくなってしまう。
京子「あー、ちなつちゃんのお茶が飲みてー」
あかり「あかり淹れようか?」
あかり「そんなっ!?」
あんまりあかりをいじめんなと京子をどつこうとしたけれど、なんだか今日は
そんなことすらできる気がしなかった。
ちなつちゃんのことがずっと、頭から離れない。
あかり「あっ、そういえば……」
なんだかんだ言いながらも京子のためにお茶を準備するあかりが、ふと気付いたように
私を見た。
あかり「ちなつちゃん、今日先に部室に来てたはずなんだけど……」
結衣「えっ、あ、うん……」
帰っちゃったのかなぁと首を傾げるあかりに、私は曖昧に頷いた。
「一緒に遊びたかったのになぁ」とあかりが頬を膨らませるのを見て、
あかりが私たち以外で誰かに執着するのは珍しいなとぼんやり思った。
結衣「……」
あかりにとっても、もちろん京子にとっても、ちなつちゃんは大切なごらく部の
仲間で友達で後輩で。
私だけが大切に思っているわけじゃないのだ、そんなのわかっていて。
きっと、ちなつちゃんだって。
――『結衣先輩のことが、好きなんです』
ただ、私たちとは違う種類の好意を私に寄せてくれているだけで。
なにを、返せるのだろう。
京子「あーっ、ちなつちゃんをもふりたい!」
あかり「えへへ、そんなこと言ったらまたちなつちゃんに怒られちゃうよぉ」
賑やかでもなんだか少し足りない気のする会話を聞きながら、
私はあかりの淹れた薄いお茶を、こぼれそうになる溜息を押し込むために
こくんと喉の奥に流し込んだ。
突然着信が鳴り響いて、私は読んでいた本を思わず投げ出しそうになった。
読んでいたとはいっても内容はまったく頭に入っていなかったから、眺めていただけ
というほうがきっと正しいのだろうけど。
結衣「……ちなつちゃんからだ」
声に出して呟いたのは、騒ぐ心を落ち着かせるためだ。
一件のメール。
いつもちなつちゃんからメールをもらっているはずなのに、告白(だと思っていいだろう)されて
からのメールを見るのは、なんだか色々ときつかった。
内容は、やっぱり今日のことだった。
『件名:放課後のこと』
突然変なこと言っちゃってごめんなさい。
気にしないで下さいね。
あとそれから、しばらく部活には行けないかもです。
変わらない、絵文字がいっぱいのちなつちゃんらしいメール。
それなのになんだか私は怖かった。
怖いというよりも、きっと不安だ。
ちなつちゃんがいなくなってしまうかもしれないという不安が、私をとらえて離さなかった。
しばらく部活には行けないかもです。
ごめんなさい、という絵文字つきのその一文だけ、私は何度も何度も読み返した。
今日最後に見たちなつちゃんの涙を思い出す。
私は、なにも言えなかった。
好きですと言われたとき、なにも言ってあげることができなくて。
気まずくないはずなんてないのだ、いくらちなつちゃんでも。
退部という二文字が、私の頭の中でちらつきだす。
そんなはずはないし、京子が許すはずないと思いながらも。
一人、欠けてしまった放課後の茶室。
少し前の風景に戻っただけのはずなのに、随分とよそよそしく思えた。
それがもしかしたら現実になってしまうかもしれないと思うと、怖くて仕方がなかった。
いつのまにか四人でのごらく部が私の生活の一部になってしまっていた。
それくらい、大切だって思えるのに。
一人でも欠けてしまったら、きっともうだめになってしまう。
そうならないために、だったら私は――
―――――
京子「ちなつちゃん、今日は部活来るかなー」
呑気な声でそう言う京子の隣で、私は「来るよ」と固い声で答えた。
「はあ?」と京子が怪訝そうに断言した私を見る。
私が、来させるから。
声には出さずに、私は自分に言い聞かせるためにも心に言い放って。
昨日の夜、結局メールは返せなかった。
それでもずっと悶々とちなつちゃんのことを考え続けていたのは本当だ。
そして私が出した答え。
結衣「ごめん、ちなつちゃん連れて来るから京子は先に部室行ってて」
茶室の前まで来ると、私はくるりと踵をかえした。
さすがの京子も「ちょっ、結衣!?」と慌てた声を上げる。
そんな京子に自分の鞄を押し付けて、私は一年生の教室の方へ歩き出した。
緊張、しているのかもしれない。
外のひんやりとした空気を胸いっぱい吸い込んでも、今から既に頭が熱かった。
手もすっかり汗ばんでしまっている。
やっぱり私は俗にいうへたれというやつなのだろう。
だとしても、とりあえず言わなきゃいけないことは言わなきゃ。
私は一年生の波に紛れて、ちなつちゃんを探した。
結衣「あっ……」
ここ数日、ずっと頭の中にちなつちゃんの後姿があったから、
見つけることは容易だった。
きっと友達だろう、数人の女の子たちに囲まれているちなつちゃんの背中。
遠くたって、間違えるはずはない。
部活へ、家へ急ぐ一年生たちをすり抜けて、私はちなつちゃんに近付いた。
一人の女の子が私に気付いたようにちなつちゃんに何かを耳打ちした。
振り返ったちなつちゃんは、驚いたみたいな顔をして。
結衣「ちなつちゃん」
私が名前を呼ぶと、今度はまた、昨日みたいに泣き出しそうな顔をした。
結衣先輩、どうして。
私の数歩後ろを歩きながら、ちなつちゃんが言った。
迎えに来たんだ。
そう答えると、ちなつちゃんは「へ?」と声を上げて立ち止まった。
ようやく自分が茶室へ向かっていたことに気付いたのだろう。
ちなつ「……結衣先輩」
結衣「ちなつちゃん、あのさ」
私は立ち止まったちなつちゃんと向き合って。
ちなつちゃんが、逃げ出そうとしたのか一歩後ろに退がったのを、無防備な手を
掴んで引き止めた。
ちなつ「な、なんですか」
掴んだ手から、一瞬ちなつちゃんが驚いたように震えたのが伝わってきた。
そんなにびっくりさせるつもりはなかったのにと苦笑したのも、きっと
私自身を落ち着かせるためだ。
結衣「私のこと、好きだって言ってくれただろ?」
ちなつ「……い、言いましたけど」
結衣「本気だって、言ってくれたよね?」
だんだんと、こくんと頷いたちなつちゃんの頬が赤く染まっていく。
自分だって、鏡を見なくてもそうだということはわかっている。
私はそれでも言った。
ちなつちゃんが、はっとしたように私を見る。
だったら。
私たち、付き合おうか。
ちなつちゃんが、これからもなんの気負いもなしにごらく部にいられること。
あかりも京子も私も、ちなつちゃんがごらく部に来られなくなるのは嫌だから。
私が昨日、出した答えはそれだった。
結衣「付き合おうよ」
ちなつ「……結衣先輩……っ?」
結衣「それで、ちゃんと部活に来て」
赤い顔のまま、こくんと頷いてくれた。
「これから先輩と私、恋人同士なんですね」と笑うその一瞬の間、ちなつちゃんの
表情が翳ったことに私は気付かない振りをして。
結衣「……うん、そうだね」
そう言って微笑みかけて。
ちなつちゃんは、今度こそ本当に、嬉しそうな笑顔を見せてくれた。
―――――
京子「あ、ちなつちゃん!」
二人で部室に戻ると、京子が待っていたかのように立ち上がった。
それからいつものようにちなつちゃんに抱きつこうとするのを、私はがしっと
止めた。
結衣「ちなつちゃんが嫌がるからやめろ」
京子「ええー、久し振りにちなつちゃんに抱きつけるのにー!」
ちなつ「久し振りって、昨日会わなかっただけじゃないですか」
私の後ろに隠れながら、ちなつちゃんが言う。
いつもより、私の制服の裾を掴むちなつちゃんの力が強いような気がした。
京子「ちぇー別にいいじゃん」
結衣「だめ」
ぐぐぐと京子を押し留めていると、あかりが流しから顔を覗かせた。
「あー、ちなつちゃん!」と嬉しそうに名前を呼ぶ。
ちなつちゃんは、あかりがお茶を持っているのを見ると、「私やるよ!」と
駆け寄っていった。
それをほっとして見送って、京子の頭から手を離した。
京子もようやく楽に息が出来るようになったのだろう、大きく息を吐いて。
ぼそりと呟いた。
「え?」と聞き返すと、京子はちなつちゃんに触れられなくて手持ち無沙汰に
なったのであろう手をぶらぶらさせながら「だってさー」と言った。
京子「あかりが結衣たち来る前に、今日はずっとちなつちゃんの様子が変だったって
言ってたから。何かあったのかなって思って」
そっとあかりたちの消えた流しのほうに目をやった。
なにやら賑やかな音と声が聞こえてくる。
「なんでもないよ」と私は言った。
京子「結衣の話してないんだけど……」
結衣「私がなんでもないって言うんだからなんでもない」
なんだそれと言うように京子が頬を膨らませる。
なんでもないんだ、と私はもう一度心の中で呟いた。
ただ、私とちなつちゃんが付き合い始めただけで。
今日はずっとちなつちゃんの様子が変だったって。
その言葉に少しだけ、ずしりと心が重くなったけれど。
その夜届いたメール。
『件名:Re:
本文:先輩に付き合おうよと言われたとき、嬉しくて死ぬかと思いました。
本当に嬉しくてしかたなかったです!キャー!
これからもよろしくおねがいしますね♪大好きです! 』
私はうん、と一言だけ返そうとして。
これはメールなのだと気付いた。頭の中で思い切りちなつちゃんの声で再生されて
しまっていたから、思わず「うん」と声に出していた自分に苦笑する。
一人暮らしでよかったな。
そんなことを思いながら、私は返信した。
『件名:こちらこそよろしく
本文:昨日は何も言えずにいてごめんね。
ちなつちゃんの気持ち嬉しかったよ。』
家を出ると、ちなつちゃんがいた。
翌朝のことだった。
結衣「え、ちなつちゃん?」
ちなつ「えへへ、来ちゃいました」
私の反応に嬉しそうにはにかみながら、ちなつちゃんが腕にぎゅっと抱きついてきた。
ちなつちゃんとこんなふうになる前からもよくされていたけれど、その前でも
ちなつちゃんが私のことを好きだと思ってこうしてくれていたのなら、私は随分と
ひどかったんだなと少し落ち込みそうになってしまった。
今度こそ、ちなつちゃんを泣かせないようにしなきゃ。
心の中で私ははっきりそう自分に刻み付けた。
ちなつ「少しでも結衣先輩と二人きりになりたいんですっ」
結衣「そ、そっか……」
これまではこんな言葉も本気には捉えていなかったけれど、今こうしてはっきり
言われてみると、私はこんなにも真直ぐ好意を寄せられていたんだなあと思う。
そしてそう思うと、なんだかすごくこそばくて、照れ臭くなってしまった。
ちなつ「朝からこんなふうに結衣先輩に抱きつけるなんて、すっごく幸せです」
結衣「うん……」
ちなつ「結衣先輩は」
ふと、ちなつちゃんがそう言って立ち止まった。
私は家の鍵を閉めながら、「え?」とちなつちゃんを見た。
ちなつちゃんは私を見上げるわけでもなく、むしろ私からの視線を避けるかのように
俯いていた。
結衣「私が、なに?」
ちなつ「……」
結衣「……ちなつちゃん?」
しばらくの間、お互いの呼吸を探るかのような沈黙。
それから立ち止まったときと同じようにふと、ちなつちゃんは顔を上げて
「すみません」と笑った。
そう言って、私の腕に絡めた腕の力をこれでもかっていうくらい強くして、
「行きましょう」と元気に歩き始める。
半ば引っ張られる形になりながらも、私は「そんなに強くしなくても離れないよ」
そう言おうとして。
言えなかった。
―――――
どうやら私は、またちなつちゃんを泣かせてしまったらしい。
「らしい」というか、実際そうなのだけど。
結衣「……」
京子「おーい、結衣さーん?」
結衣「うっさい」
軽く頭を叩くと、ごふっとわざとらしく私の机に倒れこんできた京子が、
倒れこんだまま恨めしそうな顔をして私の顔を覗きこんできた。
京子は本当に、お節介というかなんというか。
今朝のちなつちゃんのことを思い出す。
いつもの待ち合わせ場所に着く前には、もうすっかり普段のちなつちゃんに
戻っていたけれど、確かにちなつちゃんの横顔は泣いているように見えた。
もしかしたら、私がちなつちゃんの一挙一動に敏感になりすぎているだけなのかも
知れないけれど。
泣かせないと決めたはずなのに、やっぱり朝の私の反応がまずかったのだろうか。
もう溜息さえ出てこない。
ちなつちゃんを泣かせないために、私はどうすればいいんだ。
ちなつ「結衣先輩」
放課後、ごらく部がいつものように何事もなく活動を終了した直後、
控えめなちなつちゃんの声がして私は「うん?」と振り向いた。
それからすぐに、「どうしたの」と出来るだけ優しい声になるよう気をつけて、
私は訊ねなおした。
ちなつ「あ、はい……」
京子たちはまだテーブルの周りでぐだぐだしている。
ちなつちゃんは、流しの前に立つ私の隣に立つと、「今度の日曜日、どこか行きませんか」
結衣「え?」
ちなつ「……先輩と、デートしたいです」
思いつめたような声に聞こえた。
そっとちなつちゃんの様子を伺うと、ちなつちゃんは俯きながらじっと、冷たい水の
溢れ出す蛇口を見詰めていた。
いやまあそういう言い方になるんだろうけど。
ちなつちゃんが、「だめですか?」というように顔を上げて私を見た。
少しドキッとした。大丈夫、ちなつちゃんは泣いてない。
ちなつ「結衣先輩と恋人らしいこと、したいんです」
ちなつちゃんの瞳は、希望というよりも不安に揺らいでいた。
恋人らしいことの、その意味も考えずに私はこくんと頷いた。
「しよう、デート」
これが今の私にできる精一杯だ。
―――――
結衣「どこに行きたい?」
ちなつ「結衣先輩はどこがいいですか?」
結衣「私はどこでもいいよ」
日曜日。
可愛い服に身を包んだちなつちゃんが、うきうきしたように「それじゃあ!」と言った。
私たち中学生でも、少し無理をすれば十分に行ける範囲の、すっかり廃れ始めた遊園地。
ちなつちゃんはそこに行きたいと言った。
今日は少し混んでるかも。
そうは思ったけれど、ちなつちゃんのいる手前、そんなことを言い出すのもよくないと
思って「わかった」と頷いた。
お金ならなんとかなるはずだし、ちなつちゃんを楽しませてあげたい。
もしかすると、ダメ元で言っただけなのかもしれない。
だとしても、少しでもいいとこを見せなきゃ。
私は「いいよ、行こう」ともう一度。
ちなつ「わあ……!一度好きな人と二人で行ってみたかったんです!」
結衣「……そっか」
好きな人という言葉に、少しだけ痛みが混じった。
乗っていたバスを降りて、遊園地行きのものに乗り換える。
予想通り、いくら廃れ始めたとはいっても日曜日だから、それなりに
人の数はあった。親子連れだったり家族の波に揉まれて、正直車酔いしそうになる。
言いかけて、突然身体が傾いた。少し前に立っていたちなつちゃんの身体も、
私のほうへ倒れこんでくる。
慌てて踏ん張って、ちなつちゃんの身体を受け止めた。
ちなつ「は、はい……」
前の車が急停止したらしい。バスの中が少しだけ騒然とするが、
すぐに元通りの雰囲気になる。
ただ、私たちだけはそうもいかなかった。
ちなつ「……」
結衣「……」
こんなこと、別に大したことじゃないのに。
私のほうに倒れ掛かってきたちなつちゃんの身体をなんとなく離せなくて、
ちなつちゃんも恥ずかしそうに俯いたまま、そのまま。
あんなふうに、誰かに気持ちをぶつけられることなんてめったになかったのだから。
結衣「……大丈夫?」
やっとのことで搾り出した声に、ちなつちゃんはハッと顔を上げた。さっきも同じようなことを
聞いたはずなのに、頭がまわらないから気の利いた言葉もかけられない。
大丈夫です、と答えたちなつちゃんの声も、いつものちなつちゃんからは考えられないくらい
か細いものだった。
結衣「そっか、良かった」
ちなつ「すみません、結衣先輩に掴まっちゃって」
ようやくの会話が私たちを冷静にしてくれたのか、私たちの間に
それ相応の距離ができる。
これまでの私たちの関係にふさわしい、距離。
ただ、今の私たちはこれまでの私たちではなくて。
この距離はそれ相応の、と言えるのだろうか。
私にはよくわからないけれど。
ちなつちゃんの表情を見れば、なんとなく違うんだろうなとは思う。
恋人らしいことって、たとえばどんなだろう。
今さらになって、考える。
『まもなく、七森遊園地に――』
車内アナウンスが聞こえて、人でいっぱいのバスが、今度はゆっくりと
小刻みに揺れながら停車した。
立ったままだったこともあって、早く着いてほしいと思っていたから
「あ、着いたみたいだね」と言った私の声は弾んでいたのかもしれない。
ちなつちゃんは少し意外そうな顔をしたものの、「私、だんだんわくわくしてきました……!」と
ぱあっと顔を輝かせた。
ちなつ「いえ、昔はよく来たんですけど……」
結衣「今はあんまり?」
ちなつ「だって、ここって結構子供っぽいじゃないですか」
バスを降りる人の流れに身を任せ、私たちも外へ出る。
子供っぽい?と訊ね返すと、ちなつちゃんはバスを飛び降りて、
私を振り返った。
ちなつ「子供っぽくないですか?乗り物とかもぜんぶ」
まあ、それはそうかもしれないけど。
確かにちなつちゃんの言う通り、この辺りを少し出たところにある大型テーマパークに
比べたら面積も小さいし、なにより子供だましのアトラクションばかりだ。
廃れ始めているのもそのせいで、私たちよりうんと小さい子なんかは喜んでくるだろうが、
小学校の高学年になればみんなここよりも大型テーマパークに行きたいと言うに決まっている。
結衣「ちなつちゃん、それを平気で言っちゃうのはどうかと思うよ……」
一応、周りには夢の国だと信じて疑わない無垢な子供だっているんだし。
「よっ」と駐車場の砂利道に足をつけ、私は苦笑する。
ちなつちゃんは、少し遠くのほうに見える入口と、その向こうにある乗り物を
指差しながら、「でも」と。
上がっていた腕が、力なく下ろされた。
ちなつ「でも、そういうのって嫌いじゃないです」
だって、嘘の世界で、ちゃんとそれもわかるんだけど一生懸命な感じがして許しちゃえるじゃないですか。
ちなつちゃんはそう言って。
そんなふうには考えたことなかったし考えることもなかったから、そんなちなつちゃんの横顔が
大人びて見えた。
ちなつ「結衣先輩、次あれいきましょう、あれ!」
結衣「え、ちょっと待って……」
中へ入ってからのちなつちゃんのはしゃぎっぷりは凄かった。
あっちへ行ったりこっちへ行ったり、さっきの大人びた雰囲気とはうって変わって歳相応の顔を見せる。
楽しそうなちなつちゃんに手を引かれながら、ほんとにころころ表情変わるよなあと思う。
京子やあかりもそうなんだけど、ちなつちゃんも。もしかしたらあの二人以上かもしれない。
だからなのだろうか、どうしても、ちなつちゃんから目が離せない。
ここ最近はずっとそうだったわけだが、今はなんというか、泣きそうな顔を探しているわけではなくて。
単純に、ちなつちゃんの色々な表情が見たくて。
結衣「あれって、お化け屋敷……?」
ちなつ「はいっ」
結衣「ちなつちゃん、怖いのだめなんじゃなかったっけ?」
全力で頷いたちなつちゃんに問うたものの、ちなつちゃんは「結衣先輩がいるなら大丈夫です!」の
一点張り。
ちなつ「心配しすぎですよー」
と嬉しそうにちなつちゃんが言うのは私にとっても嬉しいから、ちなつちゃんの心配というより
自分の身を案じていることなんて言えるはずもない。
(ちなつちゃんの怖がり様はホラー映画やお化け屋敷なんかよりも遥かに怖いと思う)
その列を並んで、私たちは中へ入る。
ちなつちゃんが早速というように私の片腕に抱きついてきた。
うっ、痛くない痛くない――
さすがに小さい子が多いからか、中の造りはそこまで本格的なお化け屋敷ではない。
されどお化け屋敷。あっちからこっちから叫び声やら泣き声が聞こえてきて、ちなつちゃんがその度
びくっとするのが伝わってくる。
ちなつ「こ、こ、怖くなんか、全然、ないですね……!」
結衣「……そうかな」
言葉とは裏腹に、ちなつちゃんの声はがたがたに震えてるんだけど。
まだ入口付近。不気味な声や生ぬるい風がくるだけで、私はなんともないものの、
ちなつちゃんには少し厳しいのかも。
しかし入ってしまったからには引き返すわけにもいかなくて。
ちなつちゃん自身が嫌がるだろうし。
ほら、さっさと歩いてさっさと出ちゃおう――
そう言い掛けて。
目の前に血だらけの女の顔が。
いや、私は少し出てしまったかもしれない。何も声が出ずに、息を呑んだのはきっとちなつちゃんだ。
ちなつちゃんはぱっと私の腕を離すと、目の前のお化け役の人を蹴散らして一目散に逃げ出した。
結衣「ちょっ!?」
ちなつちゃんがお化け屋敷を一人で出られるはずなんてない。
それに暗闇で走ったら危険だ。頭の中、冷静にちなつちゃんを追いかける理由を並べ立てながらも、
私の身体はそれより先にちなつちゃんを追っていた。
あかりや京子がいないからかもしれないけど、いつもなら少し考える暇を作ってしまうのに。
ごめんなさい、とちなつちゃんに一蹴されてきょとんと座り込んだお化けの人に頭を下げ、
ちなつちゃんを追う。
けれど他のお客さんもいて、脅かしてくるお化けもいるからそう簡単には追いつけなかった。
ちなつちゃん、どうやって潜り抜けたんだろうと思うくらいのゾーン(たぶんこのお化け屋敷の山場だろう)を
くぐりぬけて、一息吐いたとき。
ふと顔を上げて、ぎょっとした。お化け屋敷のセットの隅に、震える背中。暗い中、一瞬驚いてしまったが
それでもすぐにちなつちゃんだと気付いた。
結衣「……やっと見つけた」
こんなに時間がかかるとは思わなかった。
外から見れば、そこまで大きいお化け屋敷には思えなかったのに。
私の声に気付いたちなつちゃんが、「ゆいせんぱい……?」とそっと私を振り返った。
ちなつ「……す、すごく」
手を差し出しながら訊ねると、ちなつちゃんはそう気まずそうに目を伏せた。
さすがに大丈夫だと言いながら、あの勢いで一人逃げたことを気にしているのだろう。
背後を親子連れが通って、それでもまだ目を伏せ耳を軽く塞いだままのちなつちゃんに、
私は「ほら、出よう」ともう一度声をかけた。
ちなつ「……うぅ」
だけどまだ迷っているらしいちなつちゃんに、私は自然としかたないなあ、と漏らしていた。
そのまま、ちなつちゃんの手を掴んで引っ張って。
驚いたようなちなつちゃんに、「もう大丈夫だから」
結衣「私から離れないで」
ちなつ「結衣先輩……」
でもまた離れられると困ってしまうし。
自分の中で言い訳しているうちに、震えていたちなつちゃんの身体が、少しずつ落ち着きを取り戻していく。
そんなちなつちゃんの手を引いて、残りの道を辿っていった。
あとはもうたいした仕掛けもなく、私たちは無事に外に出て。
なんてことはない明るさが眩しかった。
結衣「……はあ、やっと出れた」
ほっと一息。
ちなつちゃんも「良かったです……」と息を吐いて。
それから、顔を見合わせた。繋いだ手。
ぱっと離そうとして。
「このままでいてください」
ちなつちゃんが、真剣な顔で私を見ながらそう言った。
ちなつ「ま、まだ怖いから……」
そんなふうな目をして言われて、断れるはずなんて無い。
少しは恋人らしいこと、できているのかもしれないし。
離しかけた手を、私は握りなおして「うん」と頷いた。気恥ずかしかったけど、
この手が離れなくて少しだけ嬉しかった、というか。
そろそろ帰らなきゃいけない時間だ。
そんなこと言い出せるはずもないんだけど。
ちらりと時計に向けた視線にちなつちゃんは気付かなかったのか、それとも
気付かない振りをしたのかはわからない。だけど、「結衣先輩、観覧車」と。
結衣「へ?」
ちなつ「私、次は観覧車乗りたいです」
目の前を見上げたちなつちゃんに釣られて、私も観覧車を見上げた。
今日遊園地に着いたときは随分小さいと思っていたけれど実際近くで見てみると
やっぱり大きいものは大きい。
ちなつ「乗りましょう」
結衣「えっ……」
ちなつちゃんは私の返事も聞かず、強い口調でそう言って先に歩き出した。
手は繋がったままだから、自然と足はちなつちゃんの後ろをついていってしまう。
帰りたくないような、このまま帰ってしまいたいような、微妙な気分。
ぽつりぽつりと人が乗っている程度。
他のカップルがいても、ちなつちゃんは繋いだ手を離そうとはしなかった。
むしろ、握る手の力を強くして。
楽しんできてくださいねーという声に見送られて、乗り込んだ観覧車が動き出した。
それまで私たちの周囲を包んでいた喧騒が、高いところへ上がるにつれて消えていってしまう。
うるさかったはずなのに、今はそれが恋しく思えるほど不自然な沈黙の空間が出来上がって。
ちなつ「……」
結衣「……」
二人きり。
デートの定番中の定番、たぶん。
向かい合った椅子に座って、私は必死に考えをめぐらせた。
ちなつちゃんを泣かせてしまった私が、そんなちなつちゃんにできること。
私のことを好きだって言ってくれたちなつちゃんに、できること。
きっとたくさんあって、あるんだけど。
今日一日、私に付き合ってくれてありがとうございました。
ぽつり、とちなつちゃんが言った。
観覧車が、ちょうど一番高い部分に来たときだった。
結衣「えっ、うん」
ちなつ「私、ほんとにすごく楽しかったです」
ちなつちゃんの顔が、うまく見られなかった。
なにを言い出すのかまったくわからなかったから。
ちなつ「やっぱり結衣先輩、すごく優しくてかっこよくって」
結衣「……そんなこと」
ちなつ「私、やっぱり大好きなんだなあって思っちゃいました」
夕日に照らされた頬が、よけいに熱くなる。
本気で告白されてるのだとわかっているから、話を逸らすことだって
できなくて。
結衣「……うん」
結衣先輩は、私のこと、どう思ってますか?
意外にも静かな声で、ちなつちゃんはそう言った。
答えるべき言葉が見付からず、好きだよ、そう答えようとして。うまく言葉にできないことに
気が付いてしまった。
好きなのに、私だって。
もちろん、ちなつちゃんの好きとはきっと違うのだとはわかっていたけれど。
言葉にしてしまえばいいのだと思っていた。言葉にして伝えてしまえば。
それなのに、声に出せない。
顔を上げて、目が合ったちなつちゃんは、案の定泣いていたから。
観覧車は、急降下していくみたいにあっという間に地上へと私たちを
運んでいく。
降りる前に、なにか言わなきゃ。
でも、なにを?
どうすればちなつちゃんを傷付けずに済む?
そもそも、傷付けたくないからこうやって――
自分の考え方に嫌になる。
傷付けたくないから。
ちなつちゃんを、じゃない。きっと私を、だ。
私が傷付きたくないから、ちなつちゃんの泣いている姿を見たくないから。
全部全部、ほんとのところは私自身のためでもあって。
結衣「……っ」
ガタンッ
私たちの乗っていた箱が僅かに揺れ、さっきとは違うスタッフの人が
早く降りるようにと急かすみたいに扉を開けた。
すくっと立ち上がったちなつちゃんは、まだ泣いていたけれど。
いつもの調子で私の手を引いて、観覧車を降りた。
ずっと揺れていたから、やっと地上に足がついて少しくらっとした。
結衣「ちなつちゃん……」
手は、すぐに離された。
そして言葉通り、ちなつちゃんは先に立って出口へと進んでいく。
隣には並べないから、私はその後ろを追って。
外に出ると、一気にひんやりした空気が私たちを包んだ。
もう真っ暗だ。
お化け屋敷の暗闇のときとはまた別の恐怖が襲ってくる。
駅まで乗せてくれるバスは、今さっき出て行ったばかりらしく
バス停には誰の姿もなく、そこまでくると、ちなつちゃんはぱっと私を振り向いた。
思わず手を伸ばしかけて。
「すみませんでした」
ちなつちゃんの声に、中途半端なまま。
ちなつ「……私、ちゃんとわかってたんです」
結衣先輩が、私のこと好きじゃないってこと。
私が気まずくならないように、付き合おうって言ってくれたこと。
そう言って、ちなつちゃんは笑った。
泣いたまま、きれいな笑顔。
ちなつ「ちょっとの間だけでも、結衣先輩と過ごせて良かったです」
―――――
結衣「……」
深夜の1時を過ぎている。
それでも眠れずに、私はごそごそと布団の中で寝返りを打った。
最後のちなつちゃんの声と表情が、頭から離れなかった。
ずっとずっと、頭の中で同じ場面が繰り返される。
笑うちなつちゃん。
立ち尽くす自分に、過ぎてくバス。
結衣「……っ」
自分のどうしようもなさ。
ちなつちゃんへの気持ち。
全てに整理がつかない。
別れ際、ちなつちゃんはそう言っていたけれど。
私は、ちなつちゃんのいないごらく部は考えられなかった。
京子やあかりのためにも、私がごらく部を守らなきゃなんてへんなこと。
だから、あの言葉に安堵したことは事実だ。
それならもう、ちなつちゃんと付き合う理由なんてなくて。
ちなつちゃんが私のことを忘れてくれるのなら、ちなつちゃんが泣いてしまう
ことだってなくなるだろう。
そんなずるいことも、考えるのだけど。
今はどうしても、それじゃいけない気がした。
暗い中、私は枕もとの携帯を手にとった。
ぼんやりした光が私の目を刺す。
着信0件。
メールは1件。
まだ開けられない、ちなつちゃんからの。
だけど。
開けなきゃ。
私はすっと息を吸い込んで、吐き出すのと同時にメールを開封。
いつものちなつちゃんのメール。
私たちが、こうなる前に普段からしていたような、そんな内容の。
だけど、メールを打ちながら泣いてたのかもしれない。
ところどころにおかしな誤字。
その姿が目に浮かぶようで。
突然、ちなつちゃんを抱き締めたいような衝動に駆られた。
本当になんてことはない内容なのに。
だからこそ、それが少し悲しくて、寂しくて。
ちなつちゃんのことを思うと、苦しくなってくる。
『……好きなんです』
そう言ったちなつちゃんが、泣いていた理由が少し、わかった気がした。
言葉に出来ない気持ちが、代わりに涙となって現れてしまう。
だけどきっと、私が泣くわけにはいかないから。
こんなにも、ちゃんと想いを示してくれる人がいるのだ。
私がしなきゃいけないのは、きっとそれに応えること。
翌朝、目を覚ました私は真っ先に顔を洗って制服に着替え、
朝ごはんもそこそこに家を飛び出した。
待ち合わせ場所。
ちなつちゃんの姿を見つけ、私は止まりそうになる足を必死に前へ
押し出した。
ちなつ「あ……」
結衣「……おはよ」
ちなつ「……おはようございます」
『明日も一番に結衣先輩待ってますから♪』
そう締めくくられていたメールを思い出す。明るい内容とは裏腹に、
ちなつちゃんはもう既に泣き出しそう。
結衣「……うん」
昔から、誰かの涙に弱かった。
あかりでも京子でも、誰かが泣くたびに私は決まって正義面。
だけど。
ちなつちゃんの前じゃ、私はそれもできないらしい。ちなつちゃんを
泣かせることはできても、笑ってはくれない。
だからただ、笑ってほしいと思う。
きっとこれもまた、私自身のためなのかもしれないけれど。
結衣「あのね、ちなつちゃん」
ちなつ「はい?」
きょとんとちなつちゃんが見上げてくる。
その目にはきっと、少しだけ期待が混じっているだろう。
それ以上の不安も、絶対に。
昨日からずっと、考えていた言葉。
ちなつちゃんが「そう、ですよね」と。
きっと泣くのを必死に堪えながら。
結衣「でも、ちなつちゃんに笑ってほしい」
ちなつ「……え?」
結衣「どうしたら笑ってくれるかはわからないけど、でも私はちなつちゃんの笑顔が見たいよ」
だからもう少し、私の近くにいてくれないかな。
顔を上げたちなつちゃんの瞳から、ぽろっと一粒大きな涙。
それから堰をきったように次々とあふれ出していく。
恋人っていう関係には少し違うかもしれないけど。
それでも、このまま離れてしまうのは、私自身が嫌で、まだぼんやりしているこの気持ちが
なんなのかを確かめてみたい。
結衣「……って、やっぱり私がいたら泣いちゃうかな」
じっと私を見上げたまま泣いているちなつちゃんに、私はおろおろと。
けれど、ちなつちゃんが首を振ってくれたので少しほっとした。
ちなつ「……結衣先輩が、もう少しだけじゃなくってずっと傍にいてくれるなら」
結衣「……いるよ」
嘘なんかじゃなくって、私だってずっと、ちなつちゃんの近くにいたいと、思うから。
言葉に出来ない気持ちだけど、きっとこれだけは本当。
ちなつ「……」
私の声に、ちなつちゃんは。
ごしごしと涙を拭って、「なら笑います」
得意げな、いつもの笑顔。
終わり
また書いてくれ楽しみにしてる
結衣が自分に向き合ったラストでよかった
次も期待してる
すごくよかったよ
Entry ⇒ 2012.01.04 | Category ⇒ ゆるゆりSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
あかり「恋の目覚めは白雪姫」
ちなつちゃんは眠ってしまったみたいだった。
「……可愛い寝顔だなぁ」
思わずそう呟いてしまうほど、ちなつちゃんの寝顔は幼くあどけない。
なんだかいつものちなつちゃんと違うちなつちゃんを見ているみたいだった。
ギュッと閉ざされた目蓋も、柔らかく染まった頬も、薄く開いた唇も。
自分の唇をそっと人差し指でなぞった。
いつかちなつちゃんのそれが重なったときのことを思い出す。
あのときは無理矢理だったけど、気持ち悪いとは思わなかった。
今だってそう。
それより、その感触が恋しくてしかたない。
「ごめんね」
私はそう言い置いて。
ちなつちゃんの唇に、自分の唇を重ねた。
生温かなちなつちゃんの感触。
なにやってるんだろなぁ、あかり。
身体を離して、私はぽつりとそんなことを思った。
「嫌いじゃないよ」とちなつちゃんは言う。
嫌いじゃないなら、好きでもないっていうことなのかな。時々、そんなふうな考え方をするように
なってしまったのは、ちなつちゃんに対して他のお友達とは違う感情を抱くようになってからだ。
あかり「それであかりがね――」
ちなつ「……えっ、なに、あかりちゃん?」
あかり「むうー、また聞いてなかったでしょー」
ごめんごめん、とちなつちゃんは笑うけど、その目はきっと私を映してない。
まだどこかの世界へワープ中なのだろう。だって、少しだけ触れている指先にも
なんの反応も示してくれない。どちらにしても、あかりのことなんて意識外なのだろうけど。
期末テストが終わり、あともう少し学校に通ってしまえば待ちに待った冬休み。
そんな季節。
部室で二人こもりっきりになってもちっとも話を聞いてくれない。
少し寂しいかなぁ、なんて思ったりもしちゃう。
せっかく一緒にいるのに。
もっと色々なことを知って色々なことを知ってほしい。
もちろん、そんなことは絶対口には出来ないけど。
変な子だって思われちゃうかもしれないもんね。
ちなつ「はーあ……結衣先輩に会いたいなあ」
二年生は修学旅行があったから、一年生三年生とは期末テストの期間が少し違う。
だから京子ちゃんたち二年生は、今がまさに期末テストの真っ最中。
京子ちゃんも結衣ちゃんもテスト期間まっすぐ家に帰ってしまうから部室には必然的に私たち二人だけになる。
ちなつ「うー、結衣先輩分不足が深刻域に達したわ……」
本当に枯れたお花みたいにしおしおになったちなつちゃんが、テーブルにへたり込んだ。
ここ数日間、ちなつちゃんはあかりの前で結衣ちゃんの話しかしてくれない。
嫌なわけじゃないし、あかりだってちなつちゃんの話を聞くのは楽しいし結衣ちゃんのことだって
好きだから嬉しいけど。嬉しいはずなのに。
あかり「……ちなつちゃんは、あかりだけじゃ不満かな」
ちなつ「……え?」
つい口を突いて出た言葉に、ちなつちゃんが困惑したように顔を上げた。
あかりも自分自身に対して困惑してしまい、それ以外の言葉は喉の奥に張り付いて出てくれなかった。
あかり「う、うん。そうだよね……」
ちなつちゃんの顔も、あかりの顔もきっと同じくらいに困った顔のはずだ。
普段なら冗談で済ませられるかもしれないのに、ちなつちゃんだって大して今の言葉を気にしたりなんか
しなくて、それなのに今日は、ちなつちゃんもあかりも妙な沈黙に押しつぶされそうになる。
ちなつ「……」
あかり「……」
ちなつ「……」
居た堪れなくなった私はつい立ち上がると「ごめん、ちなつちゃん」と。
ちなつちゃんと一緒にいたいのに、一緒にいたくない。
「あかり用事思い出しちゃったから」
そう言って駆け足気味にちなつちゃんに背を向けた。
家に帰って、お姉ちゃんのお喋りに付き合いながら携帯を手にちなつちゃんからのメールをわくわくしながら待つことが
私にとって最近の楽しみだった。
けれど今日は、携帯を机に放置したまま、お姉ちゃんのいない部屋で一人ベッドに沈んでいる。
その日の夜。
お姉ちゃんはお出かけ中で今日は家に帰ってこないと聞いて少し安心してしまったのは
今の私がお姉ちゃんに心配をかけてしまうほどひどい顔をしていることがわかっていたから。
あかり「……」
どうしてあかりは、ちなつちゃんを困らせるようなこと言っちゃったのかなぁ。
結衣ちゃんのことになると一生懸命なちなつちゃんを見ることが好きで、結衣ちゃんのことを嬉しそうに話すちなつちゃんの声が
好きで、結衣ちゃんのこと――大好きなちなつちゃんのことが好きで。
あれが私の本心。
だとしたらあかり、ちなつちゃんの友達じゃいられなくなっちゃうよね――
ぐすっと、泣き虫な私が姿を現す。
声を上げて泣きたくなったのは久し振りだった。
けれど、必死に堪えてしまう。泣きたくなんてなかったから、必死に堪えてよけいに悲しくなって。
唇を噛締めた。
きつく噛締めすぎて滲んできた血の生暖かさが、ぼんやりちなつちゃんのことを思い起こさせた。
―――――
翌朝、ベッドからごそごそ起き出して鏡を覗くと、びっくりするくらい暗い顔をした自分と
目が合ってしまった。
こんな顔をして登校したら、きっとみんな心配しちゃう。
ごしごしと顔を洗って、にっこり笑顔を作る。
お団子は、乱れてないかな。大丈夫。
もう一度鏡の中に笑いかけ、気合を入れた。
あかりはいつでもあかるくいとかなくっちゃ。
朝ごはんを食べて家を出た。
この頃冷たくなってきた空気を吸い込むと、清清しい気分になる。別にちなつちゃんとケンカしたわけでもない。
いつも通りに振舞えば、ちなつちゃんだっていつも通りの笑顔を返してくれるはずで。
昨日に限って、どうしてあんな雰囲気になったのかなんてわからないし、わからないからこそ不安。
その不安の理由もわからないままに、いつも通りに戻るのは、なんだか少し怖かった。
怖いというよりもきっと、嫌なのかもしれない。
なにが嫌なのか、あかり自身でも理解できないのに。
あかり「……」
あぁ、でもだめ。
またあかり、暗い顔しちゃいそうになってたよぉ。
ふう、と大きく息をついたとき。
「あかりー、おはよう!」
どんっと背後から誰かの身体が押し付けられてきた。
びっくりしすぎて心臓がばくばくだ。
振り向くと、京子ちゃんが「へへっ、驚いたか」と笑っていた。
あかり「もうー、朝からびっくりさせるなんてひどいよぉ」
京子「いやあ、こうやってあかりをいじらないと頭がパンクしそうでさ」
そういえば、京子ちゃんたちはまだ期末テスト。
特に一夜漬けの京子ちゃんなんて、ふらふらになってしまうに決まっている。
お疲れさまぁと笑いながら、自分がちゃんと笑えていることにほっとする。
結衣「おーい、京子、なにやってんだよ」
京子ちゃんの背後から結衣ちゃんの声もして、少しだけドキッとした。
結衣ちゃん自身が嫌なわけじゃ無いし、結衣ちゃんのことだって大好きだ。
だからこそ、昨日少しの間抱いてしまった結衣ちゃんへの嫌な気持ちで申し訳なくなってしまう。
あかり「う、うん、おはよう!」
私達に追いついた結衣ちゃんが、いつも通りに声をかけてくるのを私はとてもいつも通りとは思えないふうに
返してしまった。
結衣ちゃんが首を傾げる横で、京子ちゃんが「ちなつちゃんまだ来ないからあかりに触ろう」と抱きついてくる。
京子ちゃんに抱きつかれるのは嬉しいけど、いつも抱きつかれてるちなつちゃんが「暑苦しい!」と怒っている気持ちも
わからなくはないかもしれない。
ちなつちゃん、早く来ないかなぁ。
そう思い掛けてけれど。
あかり「……」
うぅ、よくわからないよ。
来て欲しいけど来て欲しくないような。
こんなふうに思ってしまうのが初めてで、戸惑って仕方が無い。
結衣「おいこら……って、きたきた」
ぐりぐりと私に頬ずりしてくる京子ちゃんを窘めかけた結衣ちゃんが、
ぱっと気が付いたように声のトーンを上げた。
確かに、ちなつちゃんの足音だ。
京子「ちなつちゃんおはよー!私の胸に……」
ちなつ「……」
京子「ありゃ?」
遅くなってすみませーんと走ってきたちなつちゃんは一瞬ぽかんと立ち止まって。
私に抱きついたままちなつちゃんに手を伸ばした京子ちゃんが、首を傾げる。
けれど本当に一瞬で、「遠慮しときますっ」と京子ちゃんの手を掻い潜ってちなつちゃんは
「結衣せんぱーい」と抱きつきにいった。
ちなつ「おはようございますうっ」
きゃーと嬉しそうに声を上げるちなつちゃんに、京子ちゃんの「ちぇっ」という軽い舌打ち。
結衣ちゃんの困ったような顔と、それからあかりは。
あかりは今、どんな顔してるんだろう。
ちなつ「あ……」
京子ちゃんに抱えられたままぼんやりしていると、ちなつちゃんがふとこちらに視線を
向けた。
目が合う。
目が合って、ちなつちゃんは「あかりちゃん、おはよう」
あかり「……お、おはよう、ちなつちゃん」
すぐに逸らされたけど。
確かに聞こえた小さな声。
気付かなかった京子ちゃんが「あかり、行くぞー」といつのまにか私から離れて手を引っ張ってきた。
ちなつ「……」
あかり「……」
昼休みの部室。
いつのまにか放課後じゃなくてもここに集まることが習慣になっていた私たちは、けれどまだ二人きりだということを
忘れていて。
別に絶対部室で過ごさなきゃいけないわけでもないのに、教室にも帰りづらくて結局二人。
昨日のことがあって、少し、というよりもかなり気まずい。
今さら本気で言ったわけじゃないんだよぉ、と笑えるわけもなくて。
あかり「ちなつちゃん、あの、お茶、淹れようか」
身体を震わせた。
その反応に少しだけ落ち込みそうになる。
ちなつ「あ、うん……って、私が淹れるよ!」
あかり「そ、そう……?」
ちなつ「あかりちゃんがお茶汲みってちょっと変な感じだし!」
そうは思いつつ今日初めてきちんと話せたことにいささか安堵。
このまま違う話題を出して話をつなげてしまえばいつもみたいに――
ちなつ「あのね、あかりちゃん」
けれど。
ちなつちゃんはカチャカチャとお茶の用意をしてくれながら、いつもとは
少し違う声音でそう言った。
つい、私まで身体を固くしてしまう。
ちなつ「……その、すっごく言いにくいんだけど」
あかり「う、うん……」
湯呑みに熱いお茶を注ぐちなつちゃん。
一杯、私のを淹れ終えると、ちなつちゃんはそれを私に差し出した。
あかり「ありがとう……」
それから気付かれないようにちなつちゃんの表情を窺って。
――赤い。
あかり「ち、ちなつちゃん……?」
ちなつ「あかりちゃん、私のこと、どう思ってるのかなって」
ちなつちゃんの人差し指が、その口許に触れた。
いつか重ねたことのある、柔らかくて温かな唇。
ドキンッと胸が鳴った。
数日前の放課後の光景が頭を過った。
眠るちなつちゃん。
外から差し込むやわらかな夕日のオレンジと、それから冷えたちなつちゃんの指先。
転がったシャーペンにどうしようもなく止まらない気持ちと。
二回目のキスの味。
かあっとすごい速さで頭に血が上っていくのがわかった。
恥ずかしさとか後悔とか、色んなものが交じり合って頭が正常に動いてくれない気がした。
ちなつちゃんが、私に目を向けないまま「……好き、なの?」
あかりは、ちなつちゃんのこと――
私はえへへと笑って、そう言った。
ずぶずぶと泥沼にはまっていくような感覚。けれど。
ちなつちゃんのことは大好き。
たぶん、誰よりも大好き。
けれど、ちなつちゃんは。
結衣ちゃんのことが大好きなんだもんね。
たぶん、誰よりも大好きなんだもんね。
あかりがちなつちゃんのこと好きなわけなんてないんだよ。
そう思わなきゃ、どうにかなっちゃいそう。
こんなにも今の気持ちに当て嵌まる言葉が「好き」だなんて、そんなの。
ちなつ「……そ、そうだよね」
自分の湯飲みにお茶を注いでいたちなつちゃんは、こぼれそうになる間際ようやくはっとして
手を止め、私を見た。
どうしてか、そんなちなつちゃんの瞳は揺らいでるみたいに見えた。
やだなぁ、こんな顔しちゃったらちなつちゃんがまた。
ちなつ「ごめんね、へんなこと言っちゃって」
あかり「……ううん」
ちなつちゃんが照れたようにはにかんで、あかりから視線を逸らした。
私もうん、と俯いて。
大丈夫、涙はこぼれてこない。あかりは泣いてなんかいない。
ただ、噛締めた唇が痛かった。
―――――
結衣「ちょ、ちょっとちなつちゃん!?」
ちなつ「結衣先輩、もっと私の名前呼んでください!」
結衣「え、あの……」
それから数日後。
二年生の期末テストも終わっていつものごらく部。
京子ちゃんが畳の上に寝そべって、結衣ちゃんに抱きつくちなつちゃん――
あかり「へっ!?」
つい結衣ちゃんたちから目を逸らしてしまう私に気付いた京子ちゃんが、
よいしょ、と起き上がって訊ねてきた。
なんでもないよと首を振る私に、結衣ちゃんが「そうかな……」と低い声で呟いた。
結衣ちゃんに抱きついたままのちなつちゃんは俯いたまま、密かに肩を震わせたのがわかってしまった。
あかりとちなつちゃん。
あれで気まずい雰囲気ではなくなったはずなのに、依然距離は開いたままだった。
ちなつちゃんも私に話しかけてはくれない。
眠っているちなつちゃんにキスしたことを、本当はちなつちゃんは知っていたのかもしれない。
そう思うと、ちなつちゃんの態度も当たり前で、何も言えなくなってしまう。
それに、このままちなつちゃんと微妙な関係を保ったままのほうが
楽なんじゃないかなんて。
そんなことを思って。
ちなつ「な、なんで私なんですか!?」
京子「え、いや……」
結衣「あかりと今一番仲いいのあかりかなって」
京子ちゃんの言葉を引き継いで、結衣ちゃんが言う。
私が「ほんとになんでもないってば!」と言いかけたとき、ちなつちゃんの声。
ちなつ「なんでもないですっ」
ちなつ「……なにも、なかったし、なんでもないんです」
ぷいっと顔を逸らしたちなつちゃんがそう言って。
京子ちゃんは「そっかー」と首を傾げながらもそれっきり何も言わなくなった。
きっとなにか察してくれたのだ、京子ちゃんは言いたくないことは無理に言わせたりなんてしないから。
結衣ちゃんも同じで、私はこんな幼馴染でよかったなぁって思う。
だからこそ、そんな二人にも心配はかけたくないとも思った。
こんなあかりなんて、あかりじゃないもんね。
ちなつちゃんと仲直りして、それからそれから――
ちゃんと、友達に戻らなきゃ。
帰り道、京子ちゃんたちと別れた昇降口。
私は思い切って「ちなつちゃん」と呼び止めた。
靴を履き替えて、上履きを下駄箱に仕舞いかけていたちなつちゃんが「えっ」と私を振り向いた。
ちなつ「あかりちゃん……」
あかり「あ、あのね、あかり……」
必死で声を絞り出す。
あまり話せていなかったせいで、ちなつちゃんとどんな会話をすればいいのか咄嗟には
思いつかない。
あかり「あかり……」
ちなつ「……ごめん、あかりちゃん」
えっ、と自然と漏れ出た声に、ちなつちゃんはもう一度「ごめんね」と言った。
その声に、どうしてかドキドキしてしまう。
隠していた気持ちが、ちなつちゃんが私に向けた声に引きずり出されてきたみたい。
あかり「どうして……?」
ちなつ「えっと、ここ最近無視してた感じだし、だから……」
だんだんと迷ったように言葉が萎んでいく。
お互い、なにを話せばいいのかわからない。
あかり「それはあかりも、一緒だし……ちなつちゃんが悪いわけじゃなくって」
ちなつ「う、うん……」
すごくぎくしゃく。
ちなつちゃんのことを意識しすぎて、言わなきゃいけない言葉も思い付かない。
ごめんなさい?
それともありがとうかな?
それは絶対に違うよね――
それならえっと。
ぼそりとしたちなつちゃんの声に、思考がぱたんと止まってしまった。
ふとちなつちゃんを見ると、いつかと同じように頬が上気していて。
きっと、寒さのせいだけじゃない。
あかり「……どういう、意味かな?」
訊ねると、ちなつちゃんは「うぅっ」と壁に突っ伏した。
やわらかな髪に、ちなつちゃんの表情が隠れてしまう。
――どうしてあかりちゃんのこと気になっちゃうのよ……。
だから、その言葉をちなつちゃんがどんな顔で言ったのかはわからない。
それでもそれが嘘じゃないとはっきりわかって、視界がぼんやりした。
ちなつちゃんのその声は、思考だけでなく理性すらも止めてしまったみたいだ。
唐突に湧き上がってくる気持ち。
ちなつちゃんの寝顔を見たときと同じような、激しい何か。
ちなつ「……あ、あかりちゃん?」
言葉通りこっちを向いたちなつちゃんは、どうしようもないくらいに可愛くて。
もっかいキスしたら、あかりのこと好きになってくれる?
そんな言葉が、躊躇いもせずにこぼれ出てきた。
ちなつ「……ちょ、ちょっとあかりちゃん」
二度目は初めて自分からしたから、かちんこちんだったけれど。
三度目は――
ちなつ「……んっ」
やっぱり、触れるだけ。
だけどこれまでで一番、温かくて優しい、そんな気がした。
あかり「……えへへ」
照れ笑いを浮かべて、私はそれから。
ちなつちゃんを離してその場にへたりこんでしまった。今さら、真っ赤になって。
あかり「……あ、あの、えっと……」
ちなつ「……なんで今正気に戻っちゃうのよもう……」
それから、笑った。
笑ってちなつちゃんが屈みこんできて、もう一度――
ちなつ「……好きになっちゃった責任、とってもらうからね」
ちなつちゃんの囁き声。
ぼんやりした頭の中、「あかりの台詞だよ」小さく反論してみた。
キスで目覚めたのは白雪姫だけじゃないっていう、そんなお話。
結衣「……」
京子「……」
結衣「……先帰ろっか、京子」
京子「私たちもやる?」
結衣「おいこら」
京子「照れ屋さんな結衣さんだ」
終わり
年末に幸せをありがとう
ちなつ「そうだねえ」
あかり「色々あったよねぇ」
ちなつ「まさか私たちがここまでになるとは思わなかったわ」
あかり「えへへ、そうだねぇ。はい、みかん」
ちなつ「ん」パクッ
ちなつ「あかりちゃんも、あーん」
あかり「あーん」モグモグ
ちなつ「でもさ、あかりちゃん」
あかり「うん?」
ちなつ「私たちの世界って、サザエさん空間だからいつ一に戻るかわかんないんだよ」
あかり「年を越してもまた戻っちゃうかもしれないんだよねぇ」
あかり「そうだねぇ」
ちなつ「それでもあかりちゃんは私のこと好きになってくれる?」
あかり「うん」
ちなつ「結衣先輩のこと諦め切れなかったり、京子先輩にふらふらしちゃっても?」
あかり「うん」
ちなつ「私が――あかりちゃんのこと嫌いになっちゃったりしたら?」
あかり「そんなわけないから大丈夫」
ちなつ「……へんな自信」
あかり「それに、もしそうだとしてもあかりが頑張って振り向かせちゃうよ!」
ちなつ「できるかなあ」
あかり「来年はあかりがガンガンリードするからね!」
ちなつ「はいはい。覚悟しとくね」
あかり「えへへっ」
Entry ⇒ 2012.01.04 | Category ⇒ ゆるゆりSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
カミーユ「大尉ぃ~お年玉くださいよ」
カミーユ「くれないんですか?」
クワトロ「弁えろと言っている」
カミーユ「アムロさんは7万くれましたよ」
クワトロ「だからなんだというのだ?」
カミーユ「案外ケチなんですね」
クワトロ「」カチンッ
カミーユ「くれるんですか?」
クワトロ「アムロと同じ額だけ」
カミーユ「案外みみっちいんですね、大人のくせに」
クワトロ「8万だそう」
カミーユ「一枚増やして、それで格好がつくんですか?」
クワトロ「10万」
カミーユ「最初からそうすりゃいいんですよ」
クワトロ「(解せん)」
アムロ「何を言っているんだ?」
クワトロ「なに?」
アムロ「どうして俺がカミーユにお年玉をあげなきゃならないんだ」
クワトロ「」キュピーン
アムロ「」キュピーン
クワトロ「あげていないのか?」
アムロ「やったのか?」
クワトロ「そうだ」
アムロ「なるほど、それがあいつの手口だ」
クワトロ「どういうことだ?」
アムロ「実は俺もカミーユからお年玉をせがまれていたんだよ」
クワトロ「なに?」
アムロ「そのときやつは大尉から7万貰ったといっていた」
クワトロ「なんと」キュピーン
クワトロ「黙れ」
アムロ「大人の見栄か」
クワトロ「黙れと言っている」
アムロ「いくら与えたんだ」
クワトロ「10万だ」
アムロ「バカか?」
クワトロ「黙れ」
クワトロ「部下にお年玉をあげただけだ」
クワトロ「額の問題ではない、ケチなアムロにはわからんだろう」
アムロ「ブライトが標的にされると言っているんだよ」
クワトロ「」キュピーン
クワトロ「ええい、これではクルーがカミーユの餌食にされてしまう」
アムロ「気づくのが遅いだろう」
ブライト「来たよ……」
アムロ「」キュピーン
クワトロ「」キュピーン
ブライト「……」
アムロ「何をやっているんだ?」
クワトロ「何を?お年玉だろう」
アムロ「そういう話はしていない」
ブライト「うるさいよ」
クワトロ「修正するべきタイミングだろう」
ブライト「やられた、やつはまずカツを送り込んできた」
アムロ「なんだと?」
ブライト「カツにお年玉をせがまれ、与えてしまった」
ブライト「そのタイミングにかぶせて部屋へ入ってきたんだ」
アムロ「したたかなやつ」
クワトロ「なんという品性のなさだ」
やり口が汚い
カミーユ「俺には修正を与えるというんですか!?」
ブライト「」
カミーユ「それが大人のやることですか」
カミーユ「わかったぞお前は生きていてはいけない人間なんだ」
ブライト「仕方ないカツと同じ額だけやろう」
カミーユ「カツより年上の僕に同じ額ですって」
カミーユ「遊びでやってんじゃないんだよ!」
ブライト「6万、カツにやった5万に1万のせた」
アムロ「ふざけるな、子供に与える額じゃないぞ」
クワトロ「6万も与えるとは」
アムロ「10万与えた貴様は黙っていてくれ」
クワトロ「バラすな」
ブライト「大尉はバカなのか」
クワトロ「額の問題ではない、やったか、やらないかだ」
アムロ「どっちもバカだよ」
クワトロ「彼女に限ってそういうことはあるまい」
エマ「はぁ~・・・」トボトボ
アムロ「」キュピーン
クワトロ「」キュピーン
ブライト「どうした?」
アムロ「カミーユだよ、あいつがやったんだ」
クワトロ「今度はどういう手口だというのだ」
クワトロ「彼らをどう使ったというのだ?」
エマ「」
カミーユ「シンタとクムにもお年玉ってやつの嬉しさを体験させてやりたいですからね」
エマ「それでカミーユがお年玉をあげたの?」
カミーユ「ええ、それくらいしかできることがありませんから」
エマ「偉いのね、カミーユは 私もカミーユにお年玉をあげないとね」
カミーユ「本当ですか?」
エマ「シンタとクムにはいくらあげたの?」
カミーユ「1人2万、計4万ですけど?」
エマ「(それ以上多くあげないとダメね)」
アムロ「なんというしたたかな」
クワトロ「恐ろしい」
ブライト「大尉の10万、私の6万、エマ中尉の6万」
クワトロ「計22万か」
トレース「え?」
ブライト「どうした?」
トレース「カミーユが発進するそうです」
ブライト「なんだと?」
トレース「あ、出てっちゃった」
アムロ「何を考えているんだ」
ハマーン「なんのつもりだカミーユ・ビダン」
カミーユ「お年玉貰いにきたんですよ」
ハマーン「お年玉?」
カミーユ「ええ」
ハマーン「人の家のこたつに入り込むんじゃない」
カミーユ「僕が凍死してもいいんですか?」
ハマーン「構わんよ」
カミーユ「それよりお茶遅くないですか?」
ハマーン「出て行け!」
ハマーン「シロッコ!」
カミーユ「シロッコ!お年玉をだせ!」
シロッコ「悪しき風習だよ、お年玉などと」ゴソゴソ
ハマーン「こたつに入るな!」
カミーユ「お茶まだ?」
ハマーン「くつろぐな!」
シロッコ「生のピン札を手渡しするわけにもいくまい、サラあれを出せ」
サラ「ジ・Oとしだま袋ー!」
カミーユ「こいつ!」
シロッコ「品性ある額を要求してくれることを願う」
カミーユ「(こちらで額が決められると言うのか)」
サラ「私はパプテマス様から2万円いただきました」
カミーユ「」キュピーン
ハマーン「」キュピーン
カミーユ「(サラに貰った額を言わせることで、ある程度額を絞り込んだだと)」
ハマーン「(なんという策士)」
ハマーン「(それをすれば品性の欠片もないと恥辱を受けるだろうな)」
カミーユ「」キュピーン
ハマーン「」キュピーン
カミーユ「シロッコ、貴様がお年玉を与えるのは何歳までだ?」
シロッコ「質問の意図がいまいち読めんが、大卒で社会人ならば22までは与えられる」
ハマーン「私にも貰う権利があるということだな?」
シロッコ「」キュピーン
シロッコ「(やってくれるものだ)」
シロッコ「構わんよ」
ハマーン「28万8000円だ」
シロッコ「(渋いところをついてくれるものだ)」
シロッコ「サラ、用意しろ」
サラ「私の15倍・・・」
シロッコ「(あとで増やしてやるから今は我慢しろ)」キュピーン
サラ「」キュピーン
サラ「やった!」
シロッコ「品性ある数字だと私は思うよ(挑発にはのらんよ)」
カミーユ「僕もそう思います(もっと出しても構わないと言ってくれれば楽なのに)」
ハマーン「ときにシロッコ」
シロッコ「なんだ?」
ハマーン「貴様部下にはいくら包んだ?」
シロッコ「」キュピーン
シロッコ「サラと同じ額だけだ」
カミーユ「ヤザンにも2万ですか?」
シロッコ「なぜヤザンにお年玉をやらねばならん」
ハマーン「」キュピーン
ハマーン「(額をつりあげる口実を、まだ作りたいか 賢い子だ)」
ハマーン「(だが私にも面子というものがあってなカミーユ・ビダン)」
ハマーン「(行き過ぎた数字を言えば品性を問われるのだよ)」
ハマーン「3万だ」
シロッコ「」キュピーン
シロッコ「(女狐が)」
シロッコ「(追求できんギリギリの見栄をはって)」
カミーユ「」キュピーン
カミーユ「(大尉のようなバカとは違うか)」
カミーユ「(実際のところ俺が要求できる額は2万8800円だ)」
カミーユ「(シロッコにとって俺はただの知り合いの子供でしかない)」
カミーユ「(だからシロッコは部下に与えた額2万をサラに言わせることで)」
カミーユ「(関係性を考慮した上で2万以下で抑えようとしていた)」
カミーユ「(そこでハマーンがついた28万8千・・・その端金8万8千)」
カミーユ「(それが端切りが差、つまり1万8800円が本来要求できた数字)」
カミーユ「(ハマーンが部下に与えた額に1万上乗せしてくれたことで)」
カミーユ「(シロッコにこの場での見栄ができた、つまり)」
カミーユ「(2万8800円、それが今の俺の数字)」
ハマーン「フフフ」
シロッコ「ハハハ」
ハマーン「どうしたカミーユ・ビダン」
シロッコ「いくらでも要求するといい」
カミーユ「これクワトロ大尉のお年玉袋です」スッ
ハマーン「」キュピーン
シロッコ「」キュピーン
ハマーン「(これは、開けるわけにはいかない)」
サラ「見せてもらっていいんですか?」
カミーユ「ああ、大尉の器も知りたいだろう」
サラ「ええ、興味あります」
シロッコ「(待て!あけるな!)」
サラ「22万!すっごっ!」
カミーユ「フフフ」
ハマーン「(私と手を結んでいたように見せかけて)」
ハマーン「(こいつは私も視野に入れて考えているのか)」
カミーユ「フフフ」
シロッコ「(シャアを対抗馬に出されてはハマーンがおかしくなる)」
シロッコ「(ここでハマーンがシャアより多い額をカミーユに与えてしまえば)」
シロッコ「(当然私にもそれと同じ額を要求する権利が生まれてしまう)」
カミーユ「アハハ」
サラ「(パプテマス様が困ってる)」
サラ「(なんとかしないと・・・ん?)」
サラ「クワトロからのお年玉だと言うのに数枚折れ方が違う」
カミーユ「(気づくな!)」
ハマーン「」キュピーン
シロッコ「」キュピーン
ハマーン「(やれやれだな)」
シロッコ「(よくやったサラ!)」キュピーン
サラ「(パプテマス様が今年一番の笑顔を!)」
カミーユ「これはですね!」
カミーユ「あの人おっちょこちょいだから」
カミーユ「カツへのお年玉と僕へのお年玉を間違えたんですよぉ!!!」
カミーユ「最初は全部ピン札を用意してたんですけど」
カミーユ「間違えたもんですからあとに引けなくなって」
カミーユ「急遽、財布から加えてくれたんです!!」
シロッコ「」
カミーユ「お年玉がピン札じゃないなんて人に品性を求められない行為ですよね」
シロッコ「むぅ・・・そうだな」
ハマーン「(ぬけぬけとまぁ、よくも舌が回るものだ)」
シロッコ「サラ」
サラ「」キュピーン
シロッコ「(ウソをついていることは確実だが)」
シロッコ「(ここで証拠もなくウソだと指摘すれば)」
シロッコ「(まるで私が出し惜しみをしているように見えてしまうだろう)」
カミーユ「」キュピーン
カミーユ「(どうして俺が先手を取ったかわかったようだなシロッコ)」
カミーユ「(だがもう遅い!)」
シロッコ「(まだ手はあるさ!)」
ハマーン「」キュピーン
ハマーン「(やれやれ、2人で寄ってたかってカミーユのウソを指摘しようと提案か)」
ハマーン「(だが私は外させてもらうよ)」
シロッコ「」キュピーン
シロッコ「(自分も危ないと言うのに、まだ状況が見えていないのかこの女は)」
カミーユ「(折れ目がついているのは長財布じゃないエマ中尉の6万)」
カミーユ「(設定上、16万がカツへ渡すはずだったお年玉)」
カミーユ「(間違えてカツへ渡した俺へのお年玉は3万上乗せした19万に見えているだろう)」
カミーユ「(だからクワトロ大尉はそれにさらに3万上乗せして22万渡したんだ)」
カミーユ「19万です」
ハマーン「だろうな」
シロッコ「(フンッ、どうするつもりだ)」
ハマーン「おそらくシャアは私へのお年玉に、歳の差を考慮し9万上乗せした」
ハマーン「28万用意しているはずだ」
カミーユ「・・・どういうことです?」
ハマーン「私からのお年玉は、その額全てだ」
カミーユ「」キュピーン
シロッコ「」キュピーン
ハマーン「シャアに請求するといい」
カミーユ「(この人元々くれるつもりがなかったのか!)」
シロッコ「(これが狙いか!)」
カミーユ「(この人は・・・!!)」
ハマーン「フフフ」
カミーユ「(だけど、ここは見切るしかない!)」
カミーユ「(ハマーンは上限を引き上げる役割をやってくれた!)」
カミーユ「28万だ!」
シロッコ「クッ!」
カミーユ「俺は貴様に28万要求するぞシロッコ!!」
シロッコ「おのれ!」
カミーユを躱しつつクアトロにダメージも与えられる
カミーユ「それの8000ダウンの28万だ!」
シロッコ「バカげている、それでは人に品性を求めるなど絶ぼ」
ハマーン「品性を求めるのは結構だが、器の問題だよシロッコ」
シロッコ「クッ!」
カミーユ「別に大尉と同じ額の19万でもいいですけど」
カミーユ「やっぱりアクシズっていいんですね」
ハマーン「そうかい?」
シロッコ「28万包めサラ!」
サラ「私の14倍・・・」
シロッコ「いいから包め!私に恥をかかせるな!」
サラ「はい」
カミーユ「ありがとうございます」
シロッコ「礼には及ばんよ」グッ
カミーユ「はなしてくださいよ」ググッ
シロッコ「だが使い方を間違えんようにな、何せよ額が額だ」
カミーユ「放せシロッコ」グググッ
シロッコ「おじさんに貯金しておくと言う手もあるぞ」
カミーユ「そんなものない!」バッ
シロッコ「(やれやれ二人で56万8000円とは、やってくれるものだよ)」
サラ「パプテマス様」
シロッコ「(サラへも上乗せする約束だった、来るんじゃなかった)」
カミーユ「ありがとうございます」ガシッ
ハマーン「礼には及ばんよ」ガシッ
シロッコ「はぁ~・・・」
Entry ⇒ 2012.01.04 | Category ⇒ ガンダムSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
因果「風守って新十郎のこと好きなの?」風守「え?」
風守「好き……という感情はプログラムであるワタシには持ちえないものなので」
因果「じゃあさー」
因果「どうして刑務所で催眠にかかった新十郎に『風守』って打ったのぉー?」
風守「それは……現実を思い出せるように近しい人物の名前を…」
因果「じゃあさー『因果』でいいじゃんかさ~」
因果「ねぇーどーして~」パタパタ
風守「……うるさいです…」ムゥ
代行ID:1SQPZefQO
因果「いまの時代になに言ってるのさー、ずっと駒守と暮らしてたからAIまで古くさくなっちゃったんじゃないの~?」
風守「……私はネットに流れる現時点での情報を解析出来るので、むしろ随一の新情報通です」
因果「それにさー、雌雄がなんとかって言ったけどさ~」
因果「ボクは新十郎のこと好きだよー、異性とか同性とか関係ないと思うんだけど」
風守「……たしかに、恋愛の枠組みである雌雄の形は変わってきているようですが」
風守「それでも私は、アナタの提起した問題に答えるならば―― 新十郎『二人とも、なに話してるんだ』
風守「!」ビクッ
風守「あ……新十郎様」
因果「えっとねえ、風守が新十郎のこっを好…うう゛ぇっ!?」
ドカンッ
風守「(変なことを言おうとしないでください……)」キッ
因果「じょ、冗談だよ風守……いたいなーもぉ」ヒリヒリ
風守「い、いえ……少し遊びに付き合っていただけなので」
因果「ちぇー、猫被っちゃって」
新十郎「そうか、なにもないなら良い」
新十郎「俺は少しお嬢さんのところに行ってくる」
因果「お嬢さん? またあの女ー?? まったく、探偵を便利屋かなにかと勘違いしてるんじゃないの~」パタパタ
新十郎「こっちにも見返りはあるんだ。暇なうちは話くらい聞いてやるさ」
新十郎「電話で聞いただけなら大したことじゃないらしい。因果と風守は留守番でもしていてくれ」
風守「了解しました」
因果「えぇーボクも連れていってよぉー」
新十郎「お前はなにするかわからんからな、すぐに帰ってくるから今日は我慢しろ」
因果「……はぁ~い」
――…
因果「風守はあの女のことどう思う?」
風守「あの女というと話の流れ上海勝 梨江となりますが。……JJシステム会長、海勝 麟六の一人娘と記憶してます」
因果「だぁかぁらーそういうことじゃなくてさぁ~」ハァ
風守「ですから、私はR.A.I.なので恋愛感情は…」
因果「はいはい、いいよそういうのはー」
因果「じゃあさ、とりあえず恋のライバルとしたら? どう思うの??」
風守「腑に落ちない点がいくつかありますが、話を円滑にすすめるためにその提案に乗りましょう」ハァ
風守「……器量があるとはいえ、新十郎様とお付き合いするには些か歳が若いと思います」
因果「風守だって子供じゃん」
風守「これは少女型のR.A.I.用疑似身体なので。私自身が子供というわけではありません」
因果「ふーん……」
風守「……なんですか」
因果「べっつに~」
因果「でも、あの女最近はいつも新十郎と会ってるよね」
風守「そうですね……ですが、私は寝食を共にしています」
因果「ふぅ~ん……」ニィ
風守「……なんですかその目は」
風守「理知的で冷静沈着な新十郎様がまだまだ子供の海勝 梨江に恋心を抱くということは……」
因果「今日だってボクらを置いて一人で行っちゃったんだよ。実は二人きりになりたい口実だったりして」
風守「……アナタは、新十郎様と海勝 梨江を付き合わせたいのですか?」
因果「?」
因果「えー絶対やだよないない」
因果「う~ん」
因果「はいこの話はおしまいっ、新十郎はあの女のことはどうとも思ってないっ」パンパン
風守「まったく……」ハァ
因果「でもさー」
因果「風守って新十郎だけには"様"って付けるよね」
風守「……」
風守「依怙贔屓ではありません。御主人としてお慕いしている意味を込めて様付けさせてもらっているだけ」
因果「ボクは先輩なんだけど?」
風守「……因果先輩そろそろお昼にしましょうか」
因果「うわ、すごい投げやり」
因果「新十郎は風守のこと嫌いじゃないと思うんだけどなぁ」
風守「」ピク
因果「身の世話とか仕事の手伝いとか嫌いな相手にはさせな… 風守「それは、好意があると捉えていいのでしょうか」
因果「っ、まあ……嫌いじゃないんだから…ちょっとは好きなんじゃないの」
風守「………………そうですか」
因果「なんだよいきなり顔を近づけてきてびっくりするなあ」
風守「因果先輩、留守番を頼まれているのでお昼は私が有りもので作りますね」
因果「え……あ、うん。ありがとう」
ガチャ
因果「御魂料理つくってよー」
風守「材料があれば」
因果「材料があるならボクが新鮮なうちに食べちゃうし」
風守「代案が無いなら麺があるので……あっ」
因果「? どうしたの」
風守「着信です……相手は…"海勝 梨江"」
因果「ええぇ、なんで海勝の娘から」
風守「わからない。でも取ります。私の右手を耳に当ててください」スッ
因果「……あー、もしもs 梨江『結城探偵にお取り継ぎ願います』
因果「……新十郎はただいま留守にしております~、ご用のある方は発信音の後に… 梨江『ふざけないで』
因果「冗談だよ冗談……風守といいどうして通じないかなー」
因果「風守。左手」
風守「口元に当てないと相手もよく聞こえないので」スッ
因果「もしもーし、聞こえてますか~」
梨江『聞こえているわ。ごめんなさいね冗談の通じない相手で』
因果「げー……」
↓
ロボットとか出ちゃったよ何これ
↓
風守可愛い
↓
風守可愛い!
↓
やべぇ面白ぇ
因果「そう。そうだった」
因果「新十郎はー、そっちに向かったはずですけどぉー」
梨江『えっ、私のところに?』
因果「話があるって出ていったから間違いないと思う」
梨江『そ、それはどうしてかしら……どうして私のところに?』
因果「しらないよ。ボクたちを放っておいて若い娘にお熱なんだよきっと」
梨江『お、おおおお熱ですって!?』
風守「因果。あまり適当な事は言わない方が」
因果「んー? ああそうだね」
因果「それじゃあそういうことだから~」
因果「……電話を切るときは?」
風守「左手と握手してください」
因果「はい、あくしゅ握手~」ニギッ
梨江『ちょっと、まだ話は終わってな… ガチャッ
風守「『ツー、ツー』」
因果「一家に一台、風守だね」ワーオ
風守「他にもメール機能や……」エヘン
風守「はい。新十郎様はそう告げられました」
風守「あるとするなら、海勝 梨江が約束を忘れているか……」
因果「新十郎がボク達に嘘を付いて出ていった」
因果「理由が無いよ理由がー」
風守「確かに。大体の時間を私たちと行動している彼が、他とコンタクトを取る様子も確認していない」
因果「まだ遠くに行っていないと思うし、監視カメラの映像を追っていけば新十郎を見つけられるんじゃないの」
風守「……いえ。新十郎様が私たちを置いていったということは必要が無いということ…」
風守「それが"邪魔だから"という理由であろうと私には詮索する気はありません」
因果「ボク達より大事なことってなにさ」
風守「わからない」
風守「人間にとっては異形の者と……所詮、AIなんですから…」
因果「……納得いかないなあ」ムゥ
風守「……」
風守「そんなことはありません」
因果「風守?」
風守「私は、信じたい」
風守「行動を共にしてまだ短いですが、私なりに結城 新十郎の人となりは理解しているつもりです」
風守「なにか理由がある。と」
風守「……それに、私たちの杞憂で終わる可能性も否めませんし」
因果「……へぇ~」ニコニコ
風守「……なんですか」
因果「べっつにぃ~……『私は、信じたい(キリッ)』風守かぁっこいぃ~」パチパチ
風守「む……」
風守「……なんですか、『嫌われちゃったのかな……(ショボン)』因果も可愛いところありますね。ぱちぱち」
因果「むぅ~っ」
風守「なんですか……?」ムム
因果「風守は新十郎のどこが好きなの?」
風守「……その話は終わったはず」
因果「さっきの話は終わったから、先に進んだ話をしてるんじゃ~ん。風守のばかー」
風守「……」
風守「そう、ですね……」
因果「あれ、意外と答えてくれそうな雰囲気」
風守「まあ良いでしょう。理知的で冷静沈着…は、さっき言ったかな」
風守「R.A.I.である私にも人と接するように気づかってくれたりするところとか」
因果「ところとかが?」
風守「……」
因果「そういうところが??」
風守「……」
風守「……好き、ですけど」
因果「へえぇ~」ニマ
風守「……なにか言いたいことがあるならどうぞ」
ポカ
因果「痛っ、僕の口より先に風守の手が出てるじゃんっ……もう」
因果(大)『……ああ見えて、というか意外でなくウブなところもあるから、AIを好きになるなんて倒錯めいた状態に陥る可能性だってあるわよお』クス
風守「……いきなり大きくならないでください」
因果(大)「実際、私が密着しても動揺する素振りもないし……もしかしたら本当に年下好きなのかもしれないわぁ」
風守「……マイペースな人」
因果(大)「だから、貴方にも勝ちの目はあるということよ」
風守「……助言ありがとうございます」
因果(大)「あら……でも」
因果(大)「R.A.I.って、夜の相手もこなせるんでしょう?」
風守「な……ま、まあ…不可能な事ではないですが」
風守「新十郎様は、そんな事望みません」
因果(大)「そう……」
因果『そうだよね~、新十郎ったら固いんだから』ヤレヤレ
風守「……アナタが柔軟飄々としすぎなんです」ハァ
風守「お洒落……ですか?」
因果「あの金塊が見つかった"日輪の会"で着ていた服とかさ、新十郎も褒めていたじゃんかー」
風守「そう……でしたね。AIといえど着飾るのはマンネリを防ぎますし、意外と楽しいものであったりするかも」
因果「でしょ~? だから、新十郎が帰ってきたときに可愛い風守が迎えてくれたらきっと喜ぶと思うんだ」
風守「……そうでしょうか」
因果「間違いないって、"最後の名探偵"結城新十郎の"助手"であるボクが言うんだから」
風守「新十郎様に、喜んでいただけるのなら…」
風守「……日頃の感謝の意味も込めて…」
風守「では因果もお洒落を」
因果「ボク? ボクは今のままで十分だよ、普段から新十郎の役に立ってるし」エヘン
風守「……」ジトー
因果「もう夕方だよ、新十郎なにやってるのさ。すぐに帰るって言ったのに……」
風守「……」
因果「風守だってお洒落して待ってるのに……」
風守「……結局は私たちの独りよがりなのでは」
因果「違うよ、風守だって言ったじゃないか『信じる』って」
風守「……『嫌われた』と悲観していたのはアナタ」
因果「……ごめんね風守…」
風守「……謝らないで。私も反省する身ですから」
因果「いま着てるそれ、似合ってる」
風守「……どうも」
因果「髪型は色々考えたけど、やっぱりいつものに落ち着いたよね」
風守「ええ。一部だけ普段と変える事で、違いがわかりやすくなるとネットで見ました」
因果「こんなに可愛い風守が待ってるのに……新十郎のばか…」
新十郎『誰がばかだって?』
風守「新十郎様っ!」
新十郎『すまない……予定より大分遅れた』ハァ
新十郎「っと、どうしたんだ一体」
新十郎「少しは遅くなったが、一応外出すると行って半日くらいしか経っていないじゃないか」
因果「だってさー、新十郎が海勝の娘にお熱で約束は嘘で御魂料理が食べられなくてさー」
新十郎「言いたい事は頭の中で整理してから頼む……」
風守「新十郎様……」
新十郎「ああ、風守。因果の面倒、大変だったろう」
風守「いえ……それは別に… 新十郎「おっ」
新十郎「おめかししたのか? 似合ってるぞ」
風守「っ」
風守「……ありがとうございます」ニコ
新十郎「? はは、どうしたんだ二人供。今日はやけに感傷的に見えるが」
因果「いいよもう、新十郎が帰ってきたしっ」
風守「はい。……おかえりなさい、新十郎様」
新十郎「? まあ、いいか」ポリ
新十郎「ああ、ただいま……二人とも」ナデ
新十郎「お嬢さんから?」
新十郎「……で、なんか言っていたか」
風守「新十郎様に取り継ぐよう頼まれたので、既に海勝 梨江ご本人のお宅に向かわれた。と」
新十郎「そうか……だから今日は門の前で待っていたんだな」ハァ
因果「ねえー、どうして約束したなんて嘘ついたのさ~」
新十郎「ちょっと、理由があってな…」
新十郎「……お嬢さん相手なら、約束事を理由に家を離れても違和感がないと思ってな」
因果「だーかーらー、それは嘘をつく理由にならないじゃ~ん」
新十郎「いや、海勝の屋敷に出向いたのは本当なんだ」
風守「……どういうことでしょうか?」
新十郎「実はな……」ガサッ
新十郎「お前らへの……その、なんだ」
新十郎「……プレゼントだ」
因果&風守「!」
因果「いややめないでよ! ボクも風守も少し驚いただけだからっ、ねっ? 風守」
風守「はいっ、因果先輩の言う通り、少し処理が追い付かなかっただけです!」
新十郎「因果先輩?……まあ、大したものじゃないからあまり期待するな」
新十郎「……そうだな、どうせだ。一緒に渡すとするか」
因果「? いま渡せば良いじゃん」
新十郎「少しだけ歩いてもらうぞ、いいか?」
風守「構いませんが……?」
新十郎「なに、歩くのはタクシーに乗るまでと下りて少しくらいさ」
――…
【海勝 屋敷】
因果「ええぇ、どうして海勝の家なんかに来たの新十郎っ?」
梨江『こんばんわ。本日二回目の挨拶ですね、結城探偵』ニコ
梨江「……ずいぶんお洒落ないでたちね? なにか会合でもあったの??」
風守「いえ。お気になさらずに」
因果「……」ジー
風守「……」ペコ
麟六「はは……嫌われてしまったかな」
新十郎「馴れないところに来て少し、落ち着かないだけですよ」
麟六「結城新十郎。君も今回、多少僕の力を借りているといっても、普段通りにしてくれるといい」
新十郎「……お前がそう言うならそうさせてもらおう」
新十郎「因果、お前へのプレゼントというのは…」
新十郎「……御魂だ」
因果(大)『あらぁ、貴方にしてはこの上ないプレゼントじゃない……』ペロ
麟六「結城探偵は今日一日、まるで子供に物を与える父親のように熱心に考えていたようだよ」
梨江「父親……お子さんが二人、ということね」チラ
風守「……」
梨江「見た目は可愛い女の子だけど…」
梨江「でもR.A.I.だし、人間の女の子じゃないんだから……」ボソ
新十郎「聞こえているぞ。R.A.I.だろうが人間だろうが知性があればなにが違うんだ」
風守「新十郎様……」
新十郎「どうしたんだ、お嬢さん」
梨江「……ごめんなさい。非礼は侘びます」
梨江「でも、結城探偵にははやく人間の女性にも目を向けてほしいと思いまして」
新十郎「ん? ああ、今はそんな余裕無いな」
新十郎「二人の世話をしないといけないからな」
新十郎「ああ、風守にはむしろ身の回りの世話を焼いてもらってるが」
因果(大)「風守は結城新十郎の内縁の妻みたいなものだから」
因果(大)「まあ私のモノだけど」クス
ギュウ
梨江「は、破廉恥よ人前でっ」
因果(大)「あら、お子様にはまだ早いかしら」
梨江「なっ……こ、子供だって見てるのよ!」
風守「私は子供じゃありませんが……」
新十郎「……どうだ、久しぶりの御霊は?」
因果(大)「ええ、とっても満足よ……」
因果『ありがとう新十郎っ』ニィ
新十郎「ああ」
新十郎「次は風守だな」
風守「私なんかにプレゼントだなんて……」
新十郎「遠慮するな。普段からよくやってくれている」
新十郎「嫌なら"給料"という形で渡しても良い。物品支給だがな」
風守「……」
風守「いえ、"プレゼント"が、良いです」
新十郎「そうか」ニコ
新十郎「まずは……さっき家でも見せたこの箱。開けてみてくれ」
風守「……」ガサ
風守「トランジスタにダイオード……他にもたくさん」
新十郎「前にメンテナンス用の半導体素子があれば良いと溢していただろう? 喜んでくれるかと思ってな」
風守「とても嬉しいです……ですが、どれも今の時代、かなり値が張るものばかりで」
新十郎「たまのプレゼントの予算くらい工面出来ない男に見えるのか? まあ、大分財布は軽くなったが」
風守「……ありがとうございます」クス
麟六「ああ。こちらで用意させてある」
メイド長『暗幕を開けてください』
ザッ ザッ ザッ
ズラーーーーーーーーーーーーーッ
風守「これは……」
風守「洋服に靴、帽子やバッグ……」
麟六「ええと……少し多すぎないかな?」タラ
メイド長「そうでしょうか? 女の子ですもの。これくらいあっても困ることはないと思いまして」フフ
麟六「はは……」ハァ
麟六「結城新十郎、半導体素子に衣類。これで頼まれていた分、全てだ」
新十郎「すまないな。借りは約束通り別件で返す」
風守「すごい……こんなにたくさん」
新十郎「ここのメイド長にプレゼントの事を話したら『若い女の子へのプレゼントはこれに決まってます』と言って聞かなくて…」
新十郎「……風守、因果。これからもよろしくな」
因果&風守「うんっ(はいっ)」
新十郎「……これ全部、ウチのどこに仕舞うんだ……?」ハハ…
因果「しんじゅうろーボクもお洒落しーたーい~」
新十郎「無茶言うな……クローゼットを買い揃える分でもう財布を持つ必要が無いくらい金欠なんだ」ヒソ
因果「ちぇー、風守ばっかり洋服や下着…」
因果「……ていうか、R.A.I.にパンツなんて必要なのぉ? ボクですら数枚しか持ってないのに~」ブンブン
新十郎「……俺に触れないでくれ」
風守「朝食の準備出来ました」
新十郎「ありがとう、いま行くよ」
因果「ねえ新十郎ってばー」ダキッ
新十郎「近いうちに御魂を捕食できるよう事件に介入するから今のところは我慢しろ」
因果「エプロンまで何枚もあるんだ、ボクのパンツより多いよ……」
新十郎「……わかった、今度お前の服も買ってやるから…」ハァ
風守「今日のハムは小田山 新から送られてきた高級なものなので、美味しいと思います」
新十郎「ああ、夜長姫の販売業者だったか」
因果「良いなぁ風守……あっ」
因果「そういえば、風守が新十郎のこと好… 風守「あまり変なことを言うと"新情報拡散防止法"に引っかかりますよ」キラン
因果「その法律って、個人間にも適用されるの? おっかないなぁ風守は」
風守「はい、新十郎様。コーヒーでよろしいですか?」
新十郎「ありがとう。コーヒーで良い…」
新十郎「……そういえば、どうして風守は俺に様を付けるんだ?」
風守「それは…」
風守『……お慕いしてますから』ニコ
<了>
Entry ⇒ 2012.01.03 | Category ⇒ 版権物SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
スネ夫「みんな、僕は友達が少ないのアニメでも見ないかい?」
ジャイアン「おお!はがないか!」
しずか「はがないは面白かったわよねー。見たいわスネ夫さん!」
ジャイアン「俺様もだ!もう一度肉に会いに行きたいぜ!」
のび太「歯が無い・・・?なんだそりゃ?」
スネ夫「僕は友達が少ないも知らないなんてのび太は遅れてるな~」
ジャイアン「字だけの本が原作のアニメ見ても意味わかんねえだろ!」
スネ夫「その通り。じゃあしずかちゃん、ジャイアン。早速僕の家に行こうか」
ジャイアン「おお!」
しずか「ごめんなさいね。のび太さん・・・」
のび太「うう・・・」
のび太「ドラえもん~~~~!!!」
ドラえもん「なんだなんだ。また泣きついてどうしたんだい・・・?」
のび太「スネ夫の奴があああああ~!!!」
ドラえもん「なんだまたか・・・。・・・で、今回はどうして仲間はずれにされたんだい?」
のび太「グス・・・。僕は友達が少ないってアニメを・・・」
ドラえもん「(はがない・・・だと・・・)
ドラえもん「(のび太がはがないに興味を・・・。・・・うーむ、小鳩ちゃんの可愛さをのび太にも教えてやるか・・・)」
ドラえもん「(・・・だが、けいおん・・・まどマギ・・・ゆるゆり・・・。この3つをのび太に見せた時にはロクでも無いことになった・・・)」
ドラえもん「(・・・ま、小鳩ちゃんの可愛さを教えて全話見せてその辺の空気をエア友達とか言ってあげればなんとかなるか)」
のび太「ドラえもん~~~」
ドラえもん「わかったよのび太君。じゃあBDに全話録画してるから1階で見よう」
のび太「やった~~~!」
ドラえもん「パパとママは昨日から一週間旅行でいないから思う存分1階が使えるね」
のび太「そうだねー。じゃあ早く見ようよー!」
ドラえもん「うん。じゃあBDをレコーダーに入れて・・・。・・・よし。準備OK」
のび太「楽しみだなー」
ドラえもん「ちなみに僕は友達が少ないは略すとはがないって言葉に・・・」
のび太「ああそれしずかちゃんから聞いたよ。誰の歯が無いんだろうな~。それも気になる」
ドラえもん「のび太には通じそうもない」
のび太「え?なんだって?」
ドラえもん「いやなんでもない。じゃあ1話から見ようか」
のび太「うん~」
のび太「始まったね~」
ドラえもん「そうだね」
のび太「お。この不良がもしかしてこのアニメの主人公なの?」
ドラえもん「見た目で人を判断してはいけないよ。のび太君」
のび太「・・・お!歌が始まった!」
ドラえもん「(トムファックさんの神OPキター)」
のび太「なんだかどっかで聞いたような曲調だなー」
ドラえもん「するどい」
のび太「うん。やっぱこの不良が主役なんだね~」
ドラえもん「だから人を見た目で判断するなと・・・」
のび太「不良なのに図書館で本読んでるよ~。笑っちゃうなー」
ドラえもん「のび太君には何を言っても無駄なようだ」
のび太「不良はみんなに怖がられてるのか。ジャイアンも高校生になったらこんな感じになるのかな~」
ドラえもん「地味に酷いこと言うな君は」
ドラえもん「(夜空の初登場シーンか)」
のび太「え!?誰もいないのに誰かと喋ってるよこの女の人!」
ドラえもん「(のび太はエア友達をいきなり受け入れるのか)」
のび太「エア友達・・・?」
のび太「・・・ええ~!?目に見えない友達がいるの!?すごいやこの女の人!!」
ドラえもん「(のび太の馬鹿さ加減にはさすがに呆れる)」
のび太「えー?友達なんて簡単に出来るよ~」
ドラえもん「(のび太はある意味リア充だな・・・)」
のび太「しかしこの女の人・・・。夜空って言うのか!夜空ちゃんは可愛いな~」
ドラえもん「(のび太は夜空派になったか)」
ドラえもん「(隣人部を作ったシーンか)」
のび太「お!不良を部活に招待した!すごいや!これで友達ができたね!」
ドラえもん「ところがどっこい。部員同士は友達にならないってわけのわからないルールがこのアニメにはあるんだよ」
のび太「えー。そうなの?どう見ても友達になるってー」
ドラえもん「大人の事情を察してやれ」
ドラえもん「うん。部活は3人以上いないと続けていけないからね」
のび太「へー。・・・ははっ。なんだよあの部員募集の紙~。下手くそな絵だなー」
ドラえもん「(お前が言うな)」
のび太「・・・お。ドアのノック・・・誰か来たみたいだね」
ドラえもん「(くるぞ)」
ドラえもん「・・・」
のび太「・・・う」
ドラえもん「う?」
のび太「・・・うっひょおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
ドラえもん「!」
のび太「何だあの金髪の子!?凄い可愛いよドラえもん~~~」
ドラえもん「そ、そうだね」
のび太「スタイルもしずかちゃんよりいいし・・・もう僕のタイプすぎる!私も友達が欲しいのよだって!可愛い~~~~!!!」
ドラえもん「(のび太が肉派になることは予想できたがここまで食いつくとは・・・なんか自分に合わさる部分があるんだろうな)」
のび太「・・・ああっ!何追い出そうとしてるんだよこいつは~~~!」
ドラえもん「(数分前まで夜空派だった人間をここまで変えるとは・・・肉は恐ろしい子だな。肉の同人誌ばかり増えていくのがよくわかる)」
のび太「やった~~~!なんとか星奈ちゃんが隣人部に入ったー!」
ドラえもん「もう名前覚えるとは・・・」
のび太「もう星奈ちゃんが可愛いよ~。あんなお姉ちゃんが欲しいよ~!藤子タッチでここに来て欲しいくらいだよ!」
ドラえもん「ブリキタッチから藤子タッチになった星奈ちゃんはなんかいろいろ変わると思うけどね」
のび太「ドラえもん何言ってるかよくわからないよ~。とにかく2話見よう!2話!」
ドラえもん「わかった・・・」
のび太「星奈ちゃん!星奈ちゃん!」
ドラえもん「(今後物凄い変態になる肉をのび太は受け入れるかが見ものだな)」
のび太「お。みんなゲームするのかー」
ドラえもん「モンハンだね」
のび太「このゲーム僕も気になってるんだよなー。モンをハンするって意味がよくわからないのが気になる」
ドラえもん「(略語に気づかないとはさすがはのび太)」
のび太「へー。モンハンって自分がゲームの世界に入り込めるのか」
ドラえもん「のび太君それイメージ映像・・・」
のび太「肉と誰かが喧嘩してる!頑張れ!肉!負けるな!肉!」
ドラえもん「(もう肉って呼んでるし。ってか誰かって・・・)」
ドラえもん「ときメモだね」
のび太「このゲームも気になるんだよなー。ときをメモするってのが」
ドラえもん「・・・」←呆れてツッコミをいれる気力もない
のび太「あ!またゲームの世界に入り込んでる!すごいなー最近のゲームは」
ドラえもん「・・・」
のび太「ゲームに夢中になる肉可愛いよおおおおおおおおおおおお!!!」
ドラえもん「(完全に肉にハマったな。のび太は。まあ僕もこの時点だと肉にハアハアしまくってたからなー)」
のび太「うん。肉が相変わらず可愛かった」
ドラえもん「小鷹と夜空も少しは見てくれって。のび太君」
のび太「誰だっけそれ?」
ドラえもん「(他キャラの存在すら忘れさせるとは・・・肉は恐ろしい子だ・・・!)」
のび太「早く3話も見ようよー」
ドラえもん「そうだね」
ドラえもん「(3話で更にのび太は肉にハマるな・・・)」
のび太「おー。肉がまたゲームしてるー」
ドラえもん「(エロゲ音読キター)」
のび太「え、ええ・・・。肉はこれ・・・どんなゲームを・・・?」
ドラえもん「このシーンは小学生が見るには刺激が強い。早送りだ」
のび太「そんなァ~」
ドラえもん「見たかったらyoutubeかなんかで好きなだけ見ることだ」
ドラえもん「(小鳩ちゃんきたあああああああああああああああああああああああ!!!!)」
のび太「うっわ。なんかわけわかんないこと言ってるよー。ちょっとこの人は好きになれない」
ドラえもん「んなっ・・・!?」
のび太「早く次のシーン見よう」
ドラえもん「(バカな・・・。僕はこの小鳩ちゃんで萌え死んだというのに・・・。肉にハマりすぎた人間はこうなってしまうのか・・・!?)」
ドラえもん「!」
のび太「肉の水着くぁwせdrftgyふじこ」バタッ
ドラえもん「マズイ!肉の水着こそのび太には刺激が強すぎた!」
のび太「」
ドラえもん「のび太君!起きろ!起きるんだ!肉が待ってるぞ!のび太君!!」
のび太「に・・・く・・・」
ドラえもん「やはり肉の水着は小学生ののび太君には刺激が強すぎるみたいだからここも飛ばすね」
のび太「そんなァーーーー!」
ドラえもん「悪いねのび太君」
のび太「小学生が見れないシーンが多すぎるよー」
ドラえもん「(てかはがない自体が小学生向けではない気がする)」
ドラえもん「そうだね」
のび太「なんだよー。これこそ飛ばしていいシーンじゃないかー」
ドラえもん「いやこのシーンはかなり重要なシーンだよのび太君」
のび太「ホントに?」
ドラえもん「小鷹と夜空が幼馴染だったっていう前フリだよ」
のび太「へー」
ドラえもん「(あ。さらりとネタバレしてしまった。ま、のび太ならいいか。どうせ忘れるだろうし)」
のび太「重要なシーン飛ばされて意味の無いシーン見てよくわからなかったよー」
ドラえもん「僕は逆だと思うけど」
のび太「でも一瞬見た肉の水着・・・」フラッ…
ドラえもん「やめろ!思い出したらまた気絶する!」
のび太「えへへうへへ・・・」
ドラえもん「早く4話見よう。4話」
ドラえもん「(この回は幸村とマリアと理科が一気に登場する回か)」
のび太「ん?不良を見張ってた人がいたのかー」
ドラえもん「(幸村キター)」
のび太「この子・・・かわいいなあ」
ドラえもん「のび太君・・・残念ながら・・・」
のび太「・・・ええええ!?この子男の子!?」
ドラえもん「残念ながら」
のび太「そんなああああ!せっかく可愛かったのに~~~」
ドラえもん「(頑張って原作5巻まで読まないと幸村を知ることはできないな・・・)」
ドラえもん「(マリアきたー)」
のび太「うーん・・・。この子もなかなか可愛いけど・・・年下は好みじゃないんだよなー」
ドラえもん「(まあそうだろうな)」
のび太「可愛い子はまだ出てこないのかなー」
ドラえもん「(あと一人いる・・・が・・・)」
ドラえもん「ぬあああ!」ピッ
のび太「あ!」
ドラえもん「ふう」
のび太「ドラえもん!なんでまた早送りするのさ!」
ドラえもん「このキャラクター自体が小学生には刺激が強すぎるからこのキャラの登場シーンは全部飛ばすことにした」
のび太「そんなァー!」
ドラえもん「まあ肉がいるからいいじゃないか」
のび太「うう・・・メガネの子・・・」
ドラえもん「そう落ち込むな。あんな痴女は教育上よろしくない」
のび太「地上がどうかしたの?」
ドラえもん「・・・5話見よう」
のび太「う、うん」
のび太「またゲームしてるのかー」
ドラえもん「ロマサガだね」
のび太「ロマをサガってのか・・・」
ドラえもん「・・・」←完全無視
のび太「あ!また黒髪長髪と肉が喧嘩してる!黒髪長髪は憎たらしいやつだなー!」
ドラえもん「(夜空ェ・・・)」
のび太「なんというか肉にちょっかいするあいつが腹立つ」
ドラえもん「まあ肉のファンみんなそう言うらしいよ」
のび太「でもそれでもくじけない肉は可愛い!」
ドラえもん「(ああ・・・こうやって肉の高感度が上がり夜空の好感度が下がったんだろうなあ・・・)」
のび太「さあ6話見よう!」
ドラえもん「うん」
のび太「おお。この回はカラオケかー」
ドラえもん「そのようだね」
のび太「あ。肉は他の人と個室になっちゃったのかー」
ドラえもん「夜空もね」
のび太「不良は意外に歌が上手いなー。ジャイアンとは大違いだ」
ドラえもん「(そろそろ小鷹の名前を覚えてくれのび太)」
のび太「もう半分かー。サザエさんみたいに日曜の夕方で毎週ずっとやってほしいよー」
ドラえもん「偉いおばちゃんやらおじさんが苦情送るから無理だなそれは」
のび太「ちぇー」
ドラえもん「じゃあ後半戦。7話いこうか」
のび太「携帯電話の話かー」
ドラえもん「まあ携帯電話をまだ持ってないのび太君にはよくわからに話かもしれない」
のび太「そんなことないよー。ただ電話するだけの機械だろ」
ドラえもん「まあね」
のび太「一回買ったら永遠にずっと電話できるなんて便利な機械だよねー」
ドラえもん「(のび太は多分毎月代金払うのを知らない)」
ドラえもん「(明らかに偶然じゃないだろあれは)」
のび太「あああ!黒髪長髪が肉に迷惑メールを!」
ドラえもん「(この時の夜空は2ちゃんで叩かれまくってたなー)」
のび太「僕の肉に嫌がらせするとは許せん!絶対に許さない!」
ドラえもん「(僕の肉って)」
のび太「肉はホント可愛い」
ドラえもん「わかったからそれは」
ドラえもん「(肉にハマった人は肉だけしか眼中にないんだろうなあ)」
のび太「さあ!8話の肉!」
ドラえもん「はいはい」
ドラえもん「ふおおおおおおお!」
のび太「!?」
ドラえもん「ふおおおお!小鳩ちゃんの全裸着替え!全裸着替え!」
のび太「ど、ドラえもん!?」
ドラえもん「・・・わ、悪い。つい取り乱した」
のび太「う、うん・・・」
ドラえもん「(やはり小鳩ちゃんは可愛い。世の小鳩ちゃん派と真剣に語り合いたい)」
ドラえもん「マズい!!」ピッ
のび太「あ!」
ドラえもん「ふう」
のび太「ドラえもん~~~!なんでまた飛ばすのさ!」
ドラえもん「だから肉の水着は気には刺激が強いと言っただろ」
のび太「そんな!今見たいよー!」
ドラえもん「きみはじつにばかだな」
のび太「!?」
ドラえもん「このようなエロは大人になって初めて見て興奮するものなんだ!大人になるまで待てのび太!!!」
のび太「ど、ドラえもん・・・」ジーン
のび太「わかったよドラえもん!僕、大人になるまで待つ!」
ドラえもん「それでこそ男だ!!」
ドラえもん「うん」
のび太「このアニメのノリもなんだか慣れてきたなー」
ドラえもん「肉しか眼中にないのにか」
のび太「え?なんだって?」
ドラえもん「いやなんでもない。じゃあ9話見るか」
のび太「うん」
ドラえもん「(9話は小鳩ちゃんの可愛さがビンビン伝わる神回)」
のび太「おお!肉の家だってドラえもん!」
ドラえもん「小鳩ちゃんも行くんだってのび太君!」
のび太「おー。肉のお父さんが出てきた。ペガサスだって!変な名前だなーはははは」
ドラえもん「(のび太もなかなかの変な名前だと思うが)」
ドラえもん「ぬおああああああ!」ドドドドド
のび太「あ!!!」バタン!
ドラえもん「のび太君はこのシーンが終わるまで部屋の外で待っててくれ。このシーンは僕一人で見る」
のび太『そんなァーーー』
ドラえもん「小鳩ちゃんと肉の全裸絡み・・・」ハアハア
のび太「うん・・・」ガチャ
ドラえもん「何を落ち込んでるんだ。さっきも言っただろ。大人になってみるものだと」
のび太「そ、そうだね!大人になるまで僕は頑張る!」
ドラえもん「(まあ僕らの番組はサザエさん時空だから大人になることは永遠にないんだけどね)」
のび太「この回は合宿かー」
ドラえもん「そうだね。隣人部全員集まってる」
のび太「ところで」
ドラえもん「ん?」
のび太「この人達ってもう友達じゃない?」
ドラえもん「のび太君。それは言ってはならないことだよ」
シーッ!お前組織に消されるぞ
のび太「ええ!?もうそこまで!?」
ドラえもん「しかし今回ののび太君には感動した」
のび太「え?」
ドラえもん「今まではには澪ちゃんはかあずにゃんになったり、マミさんからほむほむになったり、あかりからちなつになったりとしたが・・・」
ドラえもん「今回はだいたいブレずに肉一筋!見直したよのび太君!」
のび太「僕はもうブレたりしないよドラえもん!」
ドラえもん「成長したなのび太君」ウルウル
のび太「じゃあ、11話を見よう!」
ドラえもん「うん!」
ドラえもん「夏祭りの回だね」
のび太「完全に季節外れだなー」
ドラえもん「それもまた言っちゃいけないことだよのび太君」
のび太「しかしこれ見てるとこの人達完全にともだ・・・」
ドラえもん「それを言うな!TBSに消されるぞ!」
のび太「ひえええええええ!」
ドラえもん「夜空だよ。いい加減ん名前思い出してよのび太君」
のび太「ああ夜空。夜空ね」
ドラえもん「まあもう最終回だからあんまり意味ないか」
のび太「・・・!!!」
ドラえもん「どうしたのび太く・・・。・・・あ」
ドラえもん「(あれは・・・夜空が髪切って登校して来たシーン・・・)」
のび太「・・・か、可愛い」
ドラえもん「!?」
のび太「髪切った夜空が可愛いいいいいいいいい」
ドラえもん「なん・・・だと・・・」
ドラえもん「ちょっとのび太君。ブレないって今さっき・・・」
のび太「ちょっとあんまり覚えてないなー」
ドラえもん「くっ。君に裏切られた肉はどんな気持ちで・・・」
のび太「肉って誰だっけ。僕は鳥肉が好きだなー」
ドラえもん「くううううう」
のび太「まあまあドラえもん。最終回見ようよ最終回」
ドラえもん「あ、ああ・・・」
のび太「夜空!夜空!髪切った夜空!!」
ドラえもん「君って奴は・・・」
のび太「・・・ええええええ!?不良と夜空ちゃんは幼馴染だったの!?」
ドラえもん「やはりさっき僕がうっかりネタバレした事は忘れていたか」
のび太「そうか!夜空ちゃんはこの不良が好きだったのか!!」
ドラえもん「今更気づいたのかい」
のび太「くっそー。あんなジャイアンみたいな不良を夜空ちゃんは・・・」
ドラえもん「小鷹は不良ではないからね。見た目だけだからねのび太君」
のび太「・・・しかし」
ドラえもん「しかし?」
のび太「この人達ってやっぱりと・・・」
ドラえもん「あああああああ!それは言うなと何度言ったらわかるううううううううう」
のび太「短髪夜空ちゃんが可愛かった」
ドラえもん「ちょっと前までは肉派だったのに…」
ドラえもん「そう言われても…あんなハーレム実際にあるわけがない」
のび太「いや、僕の高校生活はきっとハーレムに決まってる!!」
ドラえもん「そうかなあ…」
ドラえもん「あ!ちょっとのび太君!」
のび太「ちょっとタイムマシン借りるねねー」バッ
ドラえもん「ああ…行っちゃったよ」
のび太「出発!」
ウイーン
ー6年後の世界ー
のび太「…着いた!」
高2のび太「…」スタスタ
のび太「あの道を歩いてるのは間違い無く僕!よし…」
のび太「…確かおしいれにドラえもんの四次元ポケットが…あった!」
のび太「あれを借りて6年後の僕をつけてみよう」
のび太「無事高校に着いたな。よし、借りてきた透明マントを付けて高校の中の僕を見よう」スタタタ
高2のび太「~♪」
のび太「相変わらず高校生になっても僕はだらけてるなあ」
のび太「遅刻で相変わらず廊下に立たされてるし…」
高2のび太「さて」ガタ
のび太「お。どこか行くのか」
高2のび太「…」スタスタ
のび太「きっと部活だ!きっと…夜空ちゃんや肉みたいな子と…!」
高2のび太「さて」
のび太「お!部室だ!隣人部だ!」
高2のび太「…」ガチャ
のび太「よ、よし…」スタタ
「あらのび太じゃない」
「のび太か…」
ジャイ空「ふ…」
ジャイ奈「今日は早いわねー」
ジャイ村「あにきこんにちは」
のび太「」
のび太「(ジャイ子がいっぱい!?)」
ジャイリア「お兄ちゃん~!」
ジャイ鳩「あんちゃんに話し掛けるなー!」
ジャイ科「先輩~」
のび太「」
高2のび太「隣人部はいつも通りだな。うん」
のび太「…」
スタスタ ガチャ バタン
のび太「おええええええええええええ」ビチャビチャ
のび太「ななななななんで…なんで…ジャイ子ハーレムに…」
のび太「いや…だ…いやだ…あんな未来いや…おえええええええええ」ビチャビチャ
のび太「い、いや…だ…」フラフラ
バタッ
のび太「…はっ!」バッ
ドラえもん「目が覚めたかい?のび太君」
のび太「ドラえもん!…ここは…元の時代の僕の家!」
ドラえもん「そうだよ」
のび太「…そうか!あれは悪い夢…」
ドラえもん「残念ながら夢じゃない」
のび太「」
のび太「そうなの…」
ドラえもん「そしたらのび太君が吐いて倒れてたから連れ帰ってきた」
のび太「う、うん…」
ドラえもん「まあ…そんな所さ…」
のび太「ああ…」
のび太「ん?タイムテレビを出して何か見るの?」
ドラえもん「ジャイアンものび太君と同じ高校に通ってたからさ。ジャイアンの未来も見てみようと思って」
のび太「う、うん…」
のび太「ええ!?あれジャイアン!?」
ドラえもん「うん。凄い変わったんだ。高校デビューってやつかな」
のび太「やせ細って髪型も変えて髪を赤く染めてる…」
ジャイアン『今日もあいつらに会いに行くか』スタスタ
のび太「まさか…」
マミ『あら武さん』
スミレ『今日は早かったわね』
ミヨ『武さんったら相変わらずイカしてるわ』
ジャイアン『ははは』
のび太「」
ジャイ子『お兄ちゃんー』
ジャイアン『やあジャイ子』
のび太「これがジャイ子!?」
ドラえもん「髪も染めて長くしていろいろ変わったようだ」
のび太「それにしてもジャイアンったらモテモテだな…」
ドラえもん「問題はここからだ」
ジャイ鷹『やあ兄さん』
ジャイアン『ジャイ鷹か』
のび太「誰!?この青い髪の人!?」
ドラえもん「ジャイアンの弟らしい」
のび太「ええ!?」
ジャイアン『お前も大変だなジャイ鷹』
ジャイ鷹『ああ。今日も隣人部に行ってくるよ』
のび太「隣人部って…僕がいるんじゃ…」
ジャイ鷹『やい!』
高2のび太『ふえ!?』
ジャイ鷹『お前ら。俺らの部室を勝手に使うのやめろよな』
ジャイ奈『ああのび太~』
ジャイ鷹『お前ら女共も俺らのジャイを名前に入れて名乗るのを辞めろブス共が』
ジャイ空『ひいいい』
のび太『あわ…わわわ…』アタフタ
ジャイ鷹『もう少しだ』
星音『もう。ゲーム出来ないじゃないのよ』
高2のび太『ひ、ひええええええええええええ!』スタタタタ
ジャイ鷹『ははは。ひでえ顔で逃げやがったぜあいつwww』
のび太「」
ドラえもん「まあまあ落ち込むなよのび太」
のび太「これが落ち込んでいられるか!」
ドラえもん「この悲惨な未来を変えるのが僕の役目なんだよ」
のび太「!」
ドラえもん「うんうん。きっと君を将来小鷹にしてみせる」
のび太「普通に女の友達がいたらそれでいいよ~!」
ドラえもん「うんうん」
のび太「これからもよろしくね。ドラえもん!」
ドラえもん「こちらこそ」
空き地
ドラえもん「うぃーっす」
ニャン空「ニャ…」
ニャン奈「ニャニャニャ~」
ニャン村「ニャニャ…」
ニャンリア「ニャンニャニャ!」
ニャン鳩「ニャー!」
ニャン科「ニャンニャ~」
ドラえもん「今日も始めるか。のび太に付き合った疲れを癒すドラ隣人部を!」
お わ り
Entry ⇒ 2012.01.03 | Category ⇒ 版権物SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
スナイパー♀「ふむふむ、狙撃ポイントはここか」男「あの」
男「俺の部屋で何してるんですか?」
スナイパー「あ、そげきです」
男「狙撃って…あなたは誰ですか?」
スナイパー「狙撃手見習いのスナイパーですけど…何か?」
男「なんていうか…とりあえずここ俺の部屋なんですけど」
スナイパー「え?そ、そんなバカな…確かに狙撃ポイントは」ペラペラ
男「あー…これターゲットの住所ですね」
スナイパー「」
マテリアルスナイパー
スナイパー「男さんでいらっしゃいますか?」
男「うん…じゃなくて俺殺されるの?スナイパーさんに?」
スナイパー「私まだ練習中なんで…実弾じゃないんですけど、そこそこは痛いかも」
男「えっ?わからない、俺なんかしたの?」
スナイパー「ターゲットはランダムで選ばれます、不運でしたね」
男「ふざけてんの?」ガシ
スナイパー「痛い痛い!アイアンクローは古いよぉ!」
スナイパー「と、言うわけで狙撃しますね」
男「あぁ…うん、スナイパーさんの将来のために我慢する」
スナイパー「それじゃ!狙撃ポイントまで行きますね」
男「場所分かる?」
スナイパー「ば、バカにするなっ!」
男「ごめんごめん」
スナイパー「それではっ!」タタタッ
スナイパー「きゃっ!」ズテン
スナイパー「…」チラッ
男「…」
スナイパー「えへへ…そ、それではっ!」
男「え、あ…」ドキッ
ーー
男(全然撃たれねえ…)
ピンポーン
男「はーい」ガチャッ
スナイパー「あの…その……」
男「…何ですか?」
スナイパー「狙撃ポイントが、ですね…ちょっとした迷宮の奥にあるのかな?…あはは」
男「バカにしちゃいけないんですよね」バタン
スナイパー「あ、いや、待って!!ごめんなさい!バカです!」
男「なんだ、バカでしたか」
スナイパー「ぐぬぬ…」
スナイパー「あ、はい…どうも」
男「いいですか?あのビルです」
スナイパー「はい、あの一際寂れた、はい…分かりました、どうも」
男「ほんとですか?」
スナイパー「ば、バカにしてるな!?」
男「いや、そんなことないですよ」
スナイパー「ホントかっ!?なら良い、もう一回行ってくる」トテトテ
ーー
男(結局昨日は撃たれなかったな…)
ピンポーン
男「…はい」ガチャッ
スナイパー「お、おはよ」
男「…」バタン
スナイパー「あぁ!待って!か、カーテン開けておいてよぉ!!」
男「なんでですか?」
スナイパー「当たり前じゃないか!見えなきゃ撃てな
男「夜になったらカーテンも
しますよ…それに、ゴルゴは撃ち抜いてましたよ」
スナイパー「ごるごさんと、較べられても…」
男「…」
スナイパー「あ、どうも…お願いします」
男「がんばってくださいね」
スナイパー「!」
スナイパー「が、頑張r
バタン
スナイパー「」
スナイパー「…」トボトボ
男「…」
ガシャン
男(窓になんか当たってる…)
ーーー
ーー
ピンポーン
男「はい」ガチャッ
スナイパー「いや、あの違うんです」
男「そうですね、違います」バタン
スナイパー「やだ!待って!窓開けといてぇ!」
男「窓ぐらい割れましょうよ…」
スナイパー「ダメなんですよ…そんな強い弾じゃ男さん怪我しちゃうかも知れないし…」
スナイパー「…はい」
男「…」
スナイパー「…」モジモジ
男「…しょうがないです」
スナイパー「っ!」
男「次は失敗しないで下さいね」
スナイパー「頑張るっ!」
男「それじゃ」
男(そろそろかな)
エリオ「」ガシャン
男「エリオっ!!??」
ほむら「」ガシャン
男「ほむほむぅぅぅ!!!」
撫子「」ガシャン
男「」
ーーー
ーー
ピンポーン
男「…」
ピンポーン
男「…」
スナイパー「お、男さーん…?」オドオド
スナイパー「え、えへへ…」
男「」ガチャッ
スナイパー「ひっ!え、閻魔様!?」ビクッ
男「何か、言い残すことは」
スナイパー「いや、あの…べ、弁償はしますので…」
男「他には?」
スナイパー「あ、新しいのも幾つか…その」
男「…」
スナイパー「…」
男「…」
スナイパー「えへへ…じ、自腹切るのでどうか…」
スナイパー「す、スイス銀行?200万ドル…?ちょ、流石にむりですってば」
男「…」
スナイパー「あっ!ゴルゴ!ごるごさんだ!」
男「…」
スナイパー「その条件で許して頂けた…と、言うことで?」
男「…」
スナイパー「そうですよね、あの人無口で…」
男「めっちゃ喋るゴルゴも居ますけどね」
スナイパー「!」
スナイパー「いやー!練習の練習はここまでっ、なかなかうまくいったなー」ウンウン
男「おい」ガシッ
スナイパー「あ、またアイアンクロー…やだいたい」
男「ふざけんな」
スナイパー「正直調子のってすいませんでした、土下座しときますね」グリグリ
男「ちょ!待って、女の子に土下座させる趣味はないから!」
スナイパー「でもぉ…」
男「いや、それは弁償+αで何とか我慢するから」
スナイパー「ぁ、やっぱりそっちは…」
男「あ?」
スナイパー「ぃゃ…その…なんでも…」
スナイパー「これまでも…その、ちゃんとやってたと、言いますか…」
男「え?」
スナイパー「だから…これまでもちゃんと…」
男「何かいってますか?気のせいですか?」
スナイパー「…気のせいです」
男「ですよね、良かった」
スナイパー「…」シュン
男「がんばってくださいね」
スナイパー「…っ!」パァァ
ーー
男(?…今日はなにも来ないな)
ピンポーン
男「はい」ガチャッ
スナイパー「いや!これはですね!…なんと言いますか」
男「?…何が?」
スナイパー「あれっ?…ん?」
男「何?…どうしたの?」
スナイパー「…」
スナイパー「あ!いや、何でもないです!あはははは…」
男「?」
幼馴染「おはよっ!」
男「おはよー…って、ん?」
男「その足どうしたんだ?」
幼馴染「昨日窓の外から何か投げ込まれてね…びっくりして足くじいちゃったの」
男「あ、あー…あははっ!それは大変だったな…」
幼馴染「そうなのよ…」
男「…」
男「良いところにいたな」
スナイパー「え?なんですか?私は順調ですよ?」
男「昨日も狙撃してたのか?」
スナイパー「いや、えっと…き、昨日はゴルゴ読んでました」
男「何巻だ?」
スナイパー「お、沖縄シンドローム?」
男「沖縄シンドロームで撃たれたの誰だった?」
スナイパー「あの…それは…」
男「…」
スナイパー「…」
男「隣の子撃ってどうするんですか」
スナイパー「同じような背格好だったし…」
男「女の子ですよ、俺の幼馴染です」
スナイパー「女の子!?髪の毛短くて、綺麗な感じの子だったからてっきり…」
男「…ハァ」
スナイパー「ってあれ?幼馴染?女の子?…か、彼女さん、ですか?」モジモジ
男「違いますよ!エロ漫画の読み過ぎじゃないですか?」
スナイパー「そ…そうかなぁ…そんなに読んでないと思うんだけどなぁ…」
男「えっ?」
スナイパー「えっ?」
スナイパー「いや!これは、その…あの…嘘です!」
男「…」
スナイパー「ふふん…だ、騙されましたね、ちょろいです」エッヘン
男「…」
スナイパー「…」
スナイパー「な!なんか言ってよぉ!」
男「嘘つきは好ましくないですね…素直な子の方が可愛くて良いです」
スナイパー「エロ本読んでます、いっぱい持ってます」
男「」
スナイパー「えへへ…か、可愛い?」
男「無理でしょ…」
男「エロ本持ってますって男の前で言っちゃう子が可愛いわけ
スナイパー「嘘つきぃ…」ウルウル
男「あれ?…え?お、おかしいな」
スナイパー「むー…また騙されちゃった…」ゴシゴシ
男「…可愛いな」ボソッ
スナイパー「ふぇっ?い、今なんて!?」
男「いや、別に何も言ってませんよエロガッパさん」
スナイパー「え、えろがっぱ…」シュン
スナイパー「いや!でも確かに今可愛いって!」
男「そうですか?可哀想の間違いじゃないですか?」
スナイパー「可愛い…男さんが私のこと…か、かわわ」ニヤニヤ
男「」
男「とりあえず早く成功させて下さいね」
スナイパー「~♪」
男「…だめだこいつ」
スナイパー「ふふふっ…あははっ」ニヤニヤ
男「うわ気持ち悪い」
バタン ガチャッ
スナイパー「男さん!私頑張りますねっ」
スナイパー「男さんにあ、愛の弾丸お届け」クルッ
スナイパー「あれ?えっ、やだ…鍵まで…ちょっとぉ!」ガチャガチャ
ーー
ゴスッ
祖父「あふぅ」ピクピク
男「じ、じいちゃあああああん!!!」
…
ピンポーン
男「」ガチャッ
スナイパー「し、身長が
男「全然違う」
スナイパー「う、後ろ姿が
男「似てない」
スナイパー「あ、歩き方とか
男「もういい」
男「じいちゃんなら大丈夫でしたから」
スナイパー「ほ、ホントですかぁ?」ウルウル
男「ピンピンしてますから」
スナイパー「よかったぁ…もし、その…し、死んじゃったりしたらどうしようかって」ポロポロ
男「よしよし」ナデナデ
スナイパー「うわあああああん!!」ギュッ
男「そんなんで狙撃手になれるんですか?」
スナイパー「だって!だってぇ…」ジュルジュル
男「あーもう、鼻水付けちゃって…」
スナイパー「ご、ごべんなざぁい」
スナイパー「な、なんですか?」
男「スナイパーさんの愛の弾丸」
スナイパー「あ、いやいや、やめて!あれは…いろいろ、違くて」
男「俺のじいちゃんに当たりましたね」
スナイパー「」
男「…少し、だけ…寂しいです」
スナイパー「えっ?それは…どういう…」
男「そろそろ当ててくださいね、それでは」バタン
スナイパー「男さぁん!今のって!」ドンドン
スナイパー「今のって、まさか…お、男さんはツンデレだったのか…」
男「違います」
スナイパー「ひぁっ!」
男「勘違いしないでくださいね」
スナイパー(ま、間違いない…)
男「間違いなくないですよ、勘違いしないでって言ったじゃないですか」
スナイパー「えっ?今、声に…出てたの?」
男「はい」
スナイパー「…」
男(…最近全然来ないな)
男(大丈夫、なのかな)
ーー
ー
ピンポーン
男「はーい」
スナイパー「おとこさーん!」ダキッ
男「え?え?」
スナイパー「ぎゅー…ふわぁ…男さぁん」
男「いや、あの…」
スナイパー「ぎゅー!ぎゅーっ!」
男「…これまで何してたんですか?」
スナイパー「狙撃手なんて止めてきました!」
男「ゑ?」
男「そんなことないですよ、まだ見習いなんですから」
スナイパー「もう見習いじゃないよっ!」
男「…良かったんですか?」
スナイパー「良いの良いの!もっと大切なもの見つかったから!」
男「それって…」
スナイパー「私のターゲットはまだまだ男さんですからね!」
男「もう撃ち落とされてますけどね」
スナイパー「っ!」
スナイパー「もー!すきすきっ!私も大好きですよ!んっ」チュ
男「ん、…ちょ、ちょっと!俺なんかで、良いんですか?」
スナイパー「男さんなんかで良いんですよー!」
男「」
スナイパー「ドジってばかりの私に呆れないで付き合ってくれて…嬉しかったです」
男「ドジっこスナイパーさん可愛いらしくて良かったですよ」
スナイパー「男さん…///」
男「これからもお願いします」ギュッ
スナイパー「ふぁぁ…ん、落ち着く………ね、狙われてるのは私だったみたいですねっ!」スリスリ
おわる
ちょっと駆け足になったのは勘弁ね
ね、ネタが無くなったとかじゃないんだからねっ!
ありがとうございました
乙
俺のデリンジャーもビンビンだぜ
Entry ⇒ 2012.01.03 | Category ⇒ その他 | Comments (0) | Trackbacks (0)
まどか「私と契約してマスコットになってよ!」QB「マスコット?」
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1325160004/l50
野良猫「ミャゴミャゴミャゴ」ガツガツ
QB「ぼくにも少し分けてくれないかな?」
野良猫「ミャッ! フゥ~~~~~……ッ!」ギロッ
QB「さよなら」ダッ
QB(ふう、もう三日もご飯にありつけてないや)
人工的にさまざまな動物を造る場所であり、もちろんぼくも数ある作品の一つ。
ぼくは既存の動物を組み合わせて作られた、いわゆるキメラ生物だ。
人間も混ざっていたらしく、こうしてしゃべることができる。
知恵がついたおかげで、ぼくは研究所で実験動物として生を終える運命に気づいてしまった。
だからある日、ぼくは研究所から逃げ出した。
目立つことをすれば、たちまち研究所から追っ手が来るだろう。
だからぼくは目立たぬよう、野良猫や野良犬のような生活を余儀なくされた。
キメラであるにもかかわらず、戦闘能力や狩猟能力に恵まれないぼくにとって、
野良生活は困難を極めた。
???「これ、食べる?」
QB「!?」
QBの前には、一切れのパンが置かれていた。
QB「あ、ありが(しまった、しゃべっちゃダメだ)きゅっ、きゅっぷい」ガツガツ
???「ふふっ」
???「あなた、本当はしゃべれるんでしょ」
QB「!」
???「お名前は?」
QB(……今からごまかすのは、無理だろうな)
QB「キュゥべえ」
???「私は鹿目まどかっていうんだ。ねぇ、私と契約してマスコットになってよ!」
まどか「うん。簡単にいえば、私のそばで色々サポートしてほしいの!」
QB「サポートってどういうこと? わけがわからないよ」
まどか「口でいうより見せてあげた方が早いかもね」
まどかはQBの前で変身してみせた。
QB「!?」
まどか「私、魔法少女なんだ」
まどか「私ね、この格好で魔獣や魔女と戦ってるの」
QB「まじゅう……? まじょ……?」
まどか「魔法少女のマスコットとして、色々なサポートをして欲しいんだ」
まどか「見返りとして、あなたの望みを一つ叶えてあげる」
まどか「どう?」
QB(魔法や魔女って単語に、まだいまいちピンと来てないけど)
QB(これは根なし草のぼくにとっては願ってもない話だ)
QB「うん! ありがたく契約──」
QB「いきなり何をするんだ!」
??「ええい、これ以上新米マスコットなんていらないワン!」
??「あ、まどかちゃん。さっき一人魔女化させてエネルギーをゲットしたワン」
まどか「えらいえらい。ありがとう、ポチ」
ポチ「まどかちゃんに褒められると照れるワン……。でも、浮気だなんてひどいワン!」
まどか「ゴメンね、浮気したわけじゃないんだけど」
ポチ「こいつワンね。ボクのまどかちゃんをたぶらかしたのは……!」ギロッ
QB「うひぃっ! わけが分からないよ!」
まどか「ポチ、かわいそうだよ!」
ポチ「い~や、ボクのまどかちゃんに手を出した輩はボクが成敗するワン」
ポチ「こっちに来るワン!」ダッ
QB「いたた、離してよ……!」
まどか「………」
ポチ(ここまで来れば大丈夫かな)ドサッ
QB「いてて……ひどいじゃないか!」
ポチ「すまなかったワン。……いや、もうこの喋り方はやめよう」
ポチ「すまなかったっ!」ガバッ
QB「あれだけ殴ってから謝るなんて、わけがわからないよ」
ポチ「あの場ではああする以外に思いつかなかったんだ……!」
ポチ「もちろんキミとアイツの契約を阻止するため、だ」
QB「阻止……って。ご主人が浮気したからかい?」
ポチ「ちがう。キミのためだ」
QB「やっぱりわけが分からないよ」
ポチ「……さっきの鹿目まどか。君、ヤツが何歳に見えた?」
QB「中学生くらいかな……12~13歳くらい?」
ポチ「………」フルフル
ポチ「オレも正確な年齢は知らないが、軽く数百年は生きているはずだ」
ポチ「どう見ても子供じゃないか、か?」
QB「!」
ポチ「ヤツは……いやヤツらは魔力で生き永らえているのさ」
ポチ「体は若い少女のまま、心もまるで老成しちゃいない」
QB「……詳しく話してもらえるかい?」
ポチ「──かなり長くなるが、よく聞いてくれ」
QB(たしか、嫉妬、強欲、暴食、憤怒、色欲、傲慢、怠惰、だっけ)
ポチ「ヤツらは全員が絶大な魔力を持ち、若さを保ち、世のために魔法を駆使した」
ポチ「人々はヤツらを尊敬し、ヤツらも感謝されて嬉しい。理想的な関係だった」
ポチ「だが……ヤツらの魔力(エネルギー)も無限ではなかった」
ポチ「ある時、気づいたのさ。このままでは魔に堕ちて、魔法少女でいられなくなる、とな」
ポチ「あらゆる秘術を尽くしても、魔力の減少を止めることはできなかった」
ポチ「そしてヤツらの考えついた方法は──」
QB「………」ゴクリ
ポチ「簡単なハナシだ。食い止められないなら、補給し続ければいい」
ポチ「普通の少女を魔法少女にして、ある程度成長させたら魔力を奪うって寸法だ」
QB「まるで家畜じゃないか」
ポチ「しかし、生粋の魔法少女である七人と違い、インスタントな魔法少女だからな」
ポチ「いくら作って奪っても、魔力減少のペースの方がはるかに早かった」
QB「だろうね。そんなことで解決したら苦労はないよ」
ポチ「──だが、ヤツらは気づいた」
ポチ「たしかに魔法少女のままでは大した魔力にはならないが……」
ポチ「絶望した彼女らが魔女になった時に生まれる莫大なエネルギーが」
ポチ「アイツらにとって非常に都合がいいことに!」
ポチ「しかも、魔女ってのはとても元が少女とは思えないようなバケモノなんだ」
ポチ「魔法少女でしか倒せない、ひたすら人々を苦しめる悲しい存在さ」
ポチ「人の世に害をなす魔女を、ヤツらが倒す……喜ばれる」
ポチ「魔力の供給源と、名誉欲を満たす材料を、同時に手に入れたんだ」
QB「なるほどね」
ポチ「ところが、この方法でも魔力の現状維持が精一杯だった」
ポチ「減少した魔力を回復し、増強するところまではいかなかった」
ポチ「次に考えたのが、人手を増やすことだ」
ポチ「下請けが誰かは……もう分かるだろ?」
QB「君だね。いや君たち、か」
ポチ「正解。オレは、ヤツらの手駒として、少女をだまくらかす役(マスコット)だ」
ポチ「オレのようなマスコットを大量に作り、世界中に散らばらせた」
ポチ「契約(種まき)と魔力回収(収穫)をひたすらに繰り返す奴隷軍団」
ポチ「これが大当たりだった。かくして魔法少女(作物)の大量生産体制が完成した」
QB「彼女らのエネルギー問題は解決したってわけか」
QB「ところで君は、なぜマスコットに?」
ポチ「オレは元々野良犬でね、死にかけてたところに契約を持ちかけられた」
ポチ「もちろん二つ返事でOKさ。こうしてしゃべれるのも魔力のおかげ」
ポチ「君は元々話せるみたいだがな」
ポチ「ただしヤツらに見限られたら最後、魔力の供給を絶たれ半日も生きられないがな」
ポチ「いったい何人を魔法少女にしたか……いや、犠牲にしたか数えられないほどに」
ポチ「語尾に“ワン”なんてつけて、マスコットになりきってやったよ」
ポチ「気を許したヤツらがオレに真実を明かした時、本当は噛み殺してやりたかった」
ポチ「でも、オレには笑って尻尾をふって服従するしかなかった」
ポチ「みんなのために、これからも魔法少女を作るワン! ってな……」ギリッ
QB「……彼女らを倒す方法はないのかい?」
ポチ「あの五人は強すぎる」
ポチ「しかも肉体を魂と分離しているから、ほとんど不死身だ」
ポチ「魔力の枯渇も望めない以上、倒すのはほぼ不可能、といっていいだろう」
ポチ「七人のうち二人はもう死んでいる」
QB「なぜ?」
ポチ「仲間割れさ」
ポチ「少女や動物を使い捨てにするやり口に我慢ならず、反発したのが二人いたんだ」
ポチ「二人も共犯ではあったが、七人の中ではいい人と呼べる人たちだった。でも──」
ポチ「結果はあっけなかった。30秒とかからなかったよ」
QB「二対五じゃ不利すぎるよ。無理もないさ」
ポチ「いや、二対一だったよ。ちなみに一はさっきの鹿目まどか」
QB「わけがわからないよ」
ポチ「同じ魔法少女とはいえ、実力の差は歴然としていたってことさ」
ポチ「実現できるかはさておき、ヤツらを倒す方法自体はある」
ポチ「一つは、スキを見てソウルジェムという魂を奪い取ること」
ポチ「それを砕くなり、肉体と引き離しさえすれば、ヤツらは無力化するはず」
QB「弱点をみすみす奪取されるようなヘマをやらかすとは思えないけど」
ポチ「ああ、分かってる。絶対に無理だ」
ポチ「かつてオレと同じような志を持ったマスコットが何体かいてな」
ポチ「ソウルジェム奪取を試みたが、全員むごたらしい最期を遂げたよ」
QB「だろうね……」
QB「さて本題に入ろうか。君が実現しようとしている案を教えてくれ」
ポチ「超強力な魔女と魔獣に、ヤツらを倒してもらうことだ」
QB「魔女と魔獣……。鹿目まどかもいっていた、魔法少女の敵“役”か」
QB「でも今の話では、魔女というのはインスタント魔法少女のなれの果てだろう?」
QB「その中で最強なのをぶつけても、とても勝ち目はなさそうだけど……」
ポチ「実はな、強力な魔女については、オレの手で準備が済んでいる」
QB「!」
ポチ「オレたちマスコットの仕事には、さっきもいったがエネルギー回収も含まれる」
ポチ「本来献上すべきエネルギーから少しずつピンハネをして、作り上げたんだ」
ポチ「西欧の魔女にまつわる行事から、オレは彼女をワルプルギスの夜と名づけた」
QB「へぇ、詩人じゃないか」
ポチ「茶化すなよ」
QB「魔力が足りていないのかい?」
ポチ「いや、最強の魔女である彼女を、最強の魔獣と合体させ──」
ポチ「やっとヤツらに対抗しうる戦力が完成する」
ポチ「この最強の魔獣を手に入れるには、君の協力が必要不可欠なんだ」
QB「わけがわからないよ」
QB「魔女についてはおおよそ理解できたけど、魔獣っていうのはなんなんだい?」
QB「今までの流れからすると、君らマスコットのなれの果てってところかい?」
ポチ「マスコットが変化することはない。死ぬまでヤツらの可愛い奴隷さ」
ポチ「魔獣ってのはね、魔法とか魔力じゃなく科学で造られた存在なんだ」
QB「!」
ポチ「君が生まれたところでね」
ポチ「遺伝子工学研究所は、魔法少女のための魔獣を製造する場所なんだよ」
ポチ「魔女ってのは一般人には見えないんだ」
ポチ「だから倒しても、活躍が人々に伝わりにくいんだよ」
ポチ「ヤツらは魔女以外の“敵”を欲した。より魔法少女としての名誉欲を満たすために」
ポチ「そして政府を脅迫し、バケモノを生み出す研究所を造らせたんだ」
QB「いくら魔法少女が強くとも、そうやすやすと政府が従うものかな」
ポチ「従うさ。政府も魔女の存在を知っている。それを倒せるのが魔法少女だけなのも」
ポチ「だが、魔女が元々は魔法少女というところまでは知らない」
ポチ「ヤツらにしか解決できない脅威がこの世にある以上、政府は従うしかなかった」
ポチ「政府にも、遺伝子研究に魔法少女の力が加わるというメリットがあるしな」
ポチ「君があそこを脱走したのは、君にとってもオレにとっても幸運だった」
ポチ「脱走していなければ、君はいつか魔獣にされていただろうし」
ポチ「オレとしても、君の協力なしに研究所をどうにかできる気がしない」
ポチ「もちろん偶然なんかじゃない」
ポチ「ヤツは研究所の情報を掌握している。オレも君があそこ出身だと、ヤツから聞いた」
ポチ「これが、オレが君を協力者に選んだ理由のひとつだ」
QB「研究所出身で、最強の魔獣とやらの入手に役立つからだね」
ポチ「ああ、研究所の中に非常に強力な魔獣が温存されていることは間違いない」
ポチ「きっとハロウィンとかクリスマスとか、いかにもな日に市街に解き放つんだろう」
ポチ「ヤツらを楽しませるために──」
ポチ「そしてオレが君を選んだ理由は、もうひとつある」
ポチ「おそらく、オレは近いうちにヤツらに殺される」
ポチ「信頼に足る後継者が欲しかったんだ」
ポチ「まだ尻尾をつかまれてはいないけど、かなり疑われているはずだ」
ポチ「ワルプルギスの完成を急ぐあまり、ピンハネ量を増やしてしまった。オレのミスだ」
ポチ「鹿目まどかが君に接近したのも、オレがクロだった場合の後釜探しの意味もある」
ポチ「研究所からの資料に、君は優秀な頭脳を持っているとあったからな」
ポチ「そう遠くない未来、オレのピンハネはバレる」
ポチ「バレれば、ヤツらは長年貢献してきたオレをためらいなく処分するだろう」
ポチ「これは日々仕事に追われている他のマスコット連中には荷が重い仕事だ」
ポチ「──だから頼むっ!」
ポチ「オレの後を継いで、ヤツらを倒してくれ!」
ポチ「魔女とマスコットの無念を……晴らしてくれっ!」
QB「………」
QB「なにしろ、つい最近まで研究所暮らしだったわけだからね」
QB「だから、ぼくはさっきの娘と契約してみようと思っている」
ポチ「──バカな! ヤツらに生殺与奪を委ねる気か!?」
ポチ「使えないと判断されたら、半日と生きていられないんだぞ!」
ポチ「それにマスコットはヤツらが滅びれば、同時に滅びる」
ポチ「君までオレの計画の巻き添えにするわけにはいかない!」
ポチ「君がオレを信用できないのは構わないが、せめてヤツらとの契約はやめろ!」
ポチ「ひたすら魔法少女と魔女を生産する日々だ! ノルマと絶望が待つ地獄だ!」
QB「どうせ、ぼくは野良じゃ生きていけない身だ」
QB「それに今までの話を聞いて、君たちに少し興味が湧いた」
QB「五人の魔法少女が本当に倒すべき敵かどうかは、ぼくが決めるよ」
QB「その結果、倒すべきではないと判断しても、君の邪魔はしない」
QB「まどかのところに案内してくれるかい?」
ポチ「……勝手にしろ!」
叶えてもらった願いは、疲れを知らない体になること。
これからどういう道を選ぶにせよ、忙しくなるのはたしかだったからだ。
この時点ではまだ、まどかたち魔法少女と戦うかは決めていなかったが
ぼくとポチは時折時間を作り、情報交換を行った。
彼女らが蓄えた財を全てつぎ込み建設したとのことだ。
大量にいるマスコットのうち、城に住めるのは成績優秀な数体のみ。
ぼくはポチの指導もあり次々と普通の少女を契約させることに成功し、
早くも城で暮らすことを許された。
意外に天職だったのかもしれない。
ここでようやく、ぼくは五人の魔法少女全員と顔を合わすことになる。
ポチ「ここが、マスコットの部屋だ」
QB「広いんだね」
タマ(猫)「こんにちは、ポチ。あら新しい子ね」
ネーク(蛇)「ウサギか? いやちょっと違うな……」
ブー(豚)「よろしくな、ブヒヒヒ」
ハート(鳩)「ポッポー、ちょうど今日は会議の日ですね。我らが主人と会えますよ」
QB「会議?」
ポチ「オレたち優秀なマスコットだけが参加できる会議だ」
ポチ「定期的に、魔法少女と直接エネルギー回収戦略について話し合うんだ」
ネーク「みんな、そろそろ会議室に行こうぜ」
マミ「さっそく会議を始めましょう」
マミ「まずブー、先月かなり素質があるって少女の話を聞いたけど、どうなったかしら」
ブー「! ──は、はい。な、なかなか口説き落とせず難航しておりますブー」
マミ「今後どうやって攻略するつもり?」
ブー「え、えぇ、あの、明日以降もっとアプローチを……」
マミ「いつまでに魔法少女にできる? 魔女化は?」
ブー「い、いつまで、と申しますと……えぇと……ブー……」
マミ「いつまで?」
ブー「来週中には……なんとか!」
マミ「なんとか?」
ブー「かっ……か、必ず!」
マミ「今年度のノルマ50人を、今のペースで達成できると思う?」
ネーク「し、下半期に、挽回して……通期で達成を……」ビクビク
さやか「○○地区はもっと少女がいるでしょ。ちゃんと仕事してんの?」
タマ「人口の、わりに、素質のある子が少なくてですね……その……」オドオド
杏子「要は、やる気が足りねェんじゃねぇの?」
ハート「い、いえっ! やる気はあるのですが……成果がついてこず……ポッポー」アセアセ
QB(う~ん、想像以上にピリピリした会議だ)
QB(最も優秀なはずのマスコットたちが、まだ一度も褒められてないぞ)
ポチ「はいワン」
マミ「契約数はさすが順調ね。でも、魔力量がいまいち振るわないけど理由があるの?」
QB(ピンハネの影響だな)
ポチ「質より数という方針を採ってしまったためワン」
ポチ「魔女化時に生じる魔力が少なく、契約数に比べノルマギリギリの数字になったワン」
ポチ「来月からは素質を吟味した契約を心がけるワン」
マミ「なるほどね」
杏子「しょうがねーな。次からは気をつけろよ」
ほむら「ポチ。まさかとは思うけど、中間搾取なんてしてないでしょうね?」
ポチ「もちろんだワン」
ほむら「ならいいわ」
QB(乗り切った、か……?)
まどか「……んふっ」
QB「うん、ぼくは××地区と△△地区での、新規開拓を計画してる」
QB「今アプローチをかけてる少女は7人」
QB「うち3人は家庭に問題を抱えているから、一週間もあれば落とせるだろう」
QB「残り4人のうち、2人はイジメに遭うタイプだから彼女らも二週間以内目標」
QB「あと2人は容姿に優れないから、そっちの方面から攻めようと思っている」
マミ「! へぇ……」
杏子「ハハッ、すげぇな。こいつ、本当に新入りか?」
さやか「期待の大型新人! ってやつだねぇ」
ほむら「他のマスコット達も見習うべきね。この調子じゃすぐ抜かれるわよ」
ポチ(やはりキュゥべえはすごい。魔法少女に対抗できる器だ!)
まどか「……ふふっ」
『たった今、□□市に魔獣を10頭放ちました! ただちに急行して下さい!』
QB(これは、おそらく研究所からの連絡だな)
マミ「あら、会議に夢中ですっかり忘れてたわ。今日は魔獣の日だったわね」
さやか「マミさん、今日は何人くらいで?」
マミ「そうね、25人くらいにしましょうか。暁美さん、何分後に向かえばいい?」
ほむら「10分後に出れば、ちょうどそのくらいの数になるはずよ」
QB(25人? 10分後? なんですぐ出発しないんだ?)
杏子「魔獣退治は“客”が盛り上がるから面白いけど、まだまだ魔女に比べて弱くてなぁ」
杏子「なんたら研究所の奴らには、もっと骨のあるヤツを作って欲しいよ」
さやか「魔獣もいいけどさ、あいつらに“あたしらが作らせた”って公表されたら面倒よね」
さやか「口封じの手段も考えておかないと」
まどか「問題ないよ」
まどか「一人でも私たちに不利益なことをする人間が出たら──」
まどか「全員消え去るようにって」
さやか「へぇ~いつの間に。さっすがまどか!」
ほむら「むしろ当然の処置でしょ、さやか」
さやか「あんたはいちいち……!」
杏子「おいおいやめとけよ、これから戦闘って時に」
マミ「そろそろ時間だわ、みんな行くわよ!」バッ
五人は城から出撃していった。
ハート「ふぅ~……まだ胃がキリキリしてますよ」
ブー「まったくだブー」
QB「さっき彼女らがいってた、15人とか10分ってのはなんのことだい?」
ポチ「決まってんだろ。15人くらい魔獣の犠牲者が出た頃に到着しようって意味だ」
QB「なぜ、わざわざそんなことを? わけがわからないよ」
ポチ「死人が出ないと、魔法少女のありがたみが減るだろ?」
ポチ「少なくともヤツらはそう考えているのさ」
QB「自分で作った怪物に人々を襲わせ、それを自分で倒して称賛を浴びる、か」
QB「彼女らは本当に気ままな魔法少女として、永久に地球に君臨しようとしてるんだね」
ポチ「ああ、今のうちに手を打たないと本当に手がつけられなくなる」
ポチ「ヤツらはきっと、五人で神かなんかにでもなるつもりなんだ……!」
QB(そういえば、今日はポチの姿を見てないな……)
まどか「キュゥべえ」
QB「やあまどか、どうしたの? こんな時間に城にいるなんて珍しいじゃないか」
まどか「こっちに来て」
QB「?」
まどか「ちょっと見せたいものがあるんだ」
QB「見せたいもの?」
まどか「この扉の向こうだよ」ギィィ…
QB「………?」
QB「!」
QB(ポチ……!)
QB(信じられない……!)
QB(これほどまでに一個の生命に対して残酷に振る舞えるなんて)
QB(何をどうやったらあのポチがこんな形状になるのか、ぼくには理解できない)
まどか「ポチね、実は悪いコだったの」
まどか「魔法少女や魔女から回収したエネルギーの一部を、自分のモノにしてたの」
まどか「だから、こうなっちゃったんだよ」
まどか「キュゥべえはポチと仲が良かったけど、もちろんそんなことしてないよね?」
QB「もちろんだよ、まどか」
QB「思い返すと、ポチには色々と不審な点があった。これは当然の末路とさえ思うね」
まどか「なら大丈夫。これからもよろしくね、キュゥべえ」
あの残酷の極みのような死体は、ポチと親しく、限りなくグレーなぼくに対する
警告だったのだろう。
疑わしきは罰する、としなかったのは、ぼくは“使える”と判断されたからだ。
これでぼくの決意は固まった。
ポチの後を継ぎ、彼女ら魔法少女を倒す、と。
ポチは最期まで口を割らなかったのか、まだ切り札は残されている。
むろん、ポチの仇討ちのつもりなどさらさらない。
彼女たち五人はわけがわからない。
ぼくはわけがわからないのが嫌いなんだ。
QBかっこよすぎるだろ……
ネーク「ちくしょう……ふざけんなっ!」ガンッ
タマ「ひどすぎるわ……あんな死に方……」
ハート「いい犬でしたが……くっ」
QB「さて、ぼくは仕事に行くよ。もうすぐ落とせそうな少女がいるからね」
ネーク「てめぇっ! 少しくらい悲しんだらどうだ!? 仲間が死んだんだぞ!」
QB「鹿目まどかの話では、彼は不正をしていた。不正に対する罰は当然じゃないか」
タマ「ひどいっ! そんな冷たい言い方しなくても……」
QB「嘆く暇があったら、きちんと仕事して彼女らのご機嫌をとる方が賢いって話だよ」
ブー「見損なったブー! オレたちは心までヤツらのいいなりじゃないブー!」
QB「君たちはいつもそうだ。新入りのぼくがあっという間に成績トップになるわけだよ」
ハート「さっさと行きなさい! これから私たちはポチの死について抗議しますから!」
QB「好きにするといい。じゃあぼくは行ってくるよ」
QB(……やれやれ。ポチがマスコット連中を頼れなかった理由が分かった。浅慮すぎるよ)
マミ「今日から城に住むマスコットは、あなただけになったわ。寂しくなるけど我慢してね」
さやか「期待の大型新人が、瞬く間にエースになっちゃったね」
杏子「少しは腹の足しになったな、あいつら。熟成した肉って感じだったよ」
ほむら「本当に雑食ね、杏子は」
まどか「キュゥべえは仕事熱心だね。ポチの死を無駄にしないでくれて、嬉しいよ」
QB「ありがとう、みんな!」
QB(どうやら信頼は得たようだ。第一関門クリアー。これでだいぶ好きに動ける)
QB(あとは研究所からの魔獣の奪取と、魔女と魔獣の合体、か)
QB(あんまりモタモタしていると、この五人はどんどん強くなる)
QB(決戦は一ヶ月後、だ)
大勢の人間を従えたQBは、故郷である遺伝子工学研究所にやって来ていた。
QB「さぁ、ここを破壊すれば、みんなは正義のヒーローになれるよ!」
一般人A「ありがとう、キュゥべえ様!」
一般人B「よし、行くぞ! みんなーっ!」
一般人C「おおーっ! 悪のアジトを叩きつぶせ!」
一般市民数十名を扇動し、研究所正門に突撃させる。
マスコットとしての仕事で鍛え上げた話術があってこそできる所業だ。
QB(おそらく彼らは7~8分で警備兵に全員射殺されるだろう)
QB(7~8分もあれば十分だ)
QB(最強の魔獣入手には──)
QB(警備兵は全員正門に向かっている。所員はパニックだ。狙い通りだね)タタッ
QB(ここを右に曲がって)タタタッ
QB(この階段を下りると)トトトッ
QB(よし、着いた)
QB(セキュリティか)ピポパッ
ガシャン
魔獣「グォォォォ……」
QB「君がポチのいってた最強の魔獣だね? さすがに強そうだ」
魔獣「ゴォルルゥゥ……」
QB(営業の基本は明るく元気に、誠意と熱意を込めること)
QB「ぼくと契約して、魔女と合体してよ!」
正門の一般人を全滅させた警備兵や研究所員が集まってきた。
所員A「ひぃぃぃ! な、なんで外に出てるんだ!?」
所員B「背中に乗ってるアイツは、たしか前にここを脱走した──!」
QB「よく覚えてたね。でももう手遅れだよ」
QB「さぁ、彼らを殲滅してくれ」
警備兵A「うわっ、こっち来たぞ!」ドギューン
警備兵B「銃が効かない!?」バキューン
ギャオオオオン メキメキ ウギャアア ヒイイイ タスケテー ギュオオオン ワー ギャー
QB「あとは君とワルプルギスの夜を合体させれば、舞台は整う」
魔獣「グォォォォォ……!」メキメキ
QB「羽根を生やせるのか」
バッサバッサ
~
ポチ「ワルプルギスの夜は──」
ポチ「城の地下の地下に安置してある」
ポチ「ヤツら、互いの魔力がデカすぎるから、余りに近くにいる彼女に気づけないのさ」
ポチ「へへっ、灯台もと暗しってやつだ」
ポチ「時が来たら、城の真上から彼女を呼んでやれ!」
~
QB「行ってくれ、見滝原の城へ」
ほむら「ここまでよ」
ほむら「ずいぶんと強力な魔獣を味方につけたみたいだけど」
ほむら「私たち一人一人の力にすら遠く及ばないわ」
QB「やってみなきゃ分からないよ」
QB(やはりこんな巨大な魔獣が飛んでくれば、察知されてしまうか)
QB(城の真上といえる地点まで、あと20メートルはある。彼女らをすり抜けなければ)
マミ「残念ね……。あなたは史上最高のマスコットになると思っていたのに」
さやか「あーあ、なんでわざわざ死にたがるのかねぇ。仮にあたしらを倒せたって死ぬのに」
まどか「ひどいよ、キュゥべえ……」ウルッ
まどか「私の信頼を……」ポロッ
まどか「裏切るなんて……!」ゴゴゴゴゴ
QB(まっ、まずい! このままじゃ合体前に一瞬で消し飛ばされる!)
まどか「なに、杏子ちゃん」ギロッ
杏子「(アンタは城を壊しかねないから)あたしがやるよ、最近なまってたからね」
杏子「アンタの信頼を裏切ったヤツ相手に、わざわざ手を汚すこともないだろ?」
まどか「うん……そうだね。じゃあお願い」
QB(しめた! 佐倉杏子ならなんとか──)
ならなかった。
ガシュンッ ドズッ ドシュウッ ザンッ
魔獣「ギャッ! ……キィヤォオオン!」
杏子「なんだつまらない、この程度かい?」
QB(全く本気を出していない杏子にすら、まるで歯が立たない……!)
QB(こうなったら、やられながら頑張って城へ近づくしかないな)
ガスッ ゴシュッ ガンッ
マミ「久々の強敵かと少し胸がときめいたけど……佐倉さん一人で十分そうね」
ドゴッ ドバッ ズシャッ
ほむら(おかしい……槍を受けるたびの吹き飛び方がどこか不自然……)
杏子「そらっ!」ザシュッ
ほむら(ダメージを受けながら、城に近づいている──!?)
ほむら「杏子! そいつを城に近づけてはダメ!」
杏子「え?」
QB「きゅっぷい。危なかったよ、もう少しで魔獣が死んでしまうところだった」
QB「来るんだ、ワルプルギスの夜!」
ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
巨城を崩壊させ地上に現れた、絶望に歪んだその姿は、ある種の神々しささえ放っていた。
瞬く間にぼくが乗っていた魔獣を飲み込んで、魔力の結晶と科学の結晶が
歴史的な融合を遂げた。
ワルプルギスの夜・完全体の完成だ。
杏子「くっ……! まさか、あんなのが城の地下にいやがったとは……」
ほむら「どうやらこの前まどかが始末したマスコットの作品のようね」
マミ「仕方ないわ。こうなったら五人総がかりで倒しましょう!」
QB(ポチ、ついに切り札が始動したよ。あとはもう彼女に任せるしかない)
さやか「あたしらが複数でないと危うい相手なんて何百年ぶりかねぇ、まどか──」
まどか「……せない」
さやか「まどか?」
まどか「絶対に許さないっ!」
ドンッ!
さやか「うわっ!」
まどか渾身の一撃が炸裂 ──が、無傷。
杏子「あれを喰らってノーダメって……冗談だろ……?」
QB「これは勝てるかもしれない……!」
,-、_/7// /;/〉/7-/.7、_ム/ /:. /ミ-、
ノ ̄/ '´ // /:////:::/ /:/ / /`7ァェ_/ ,/ 7
./⌒,,.-==-ヽV /:////::./ /:/ / /`/ /、/ / 〉/-,
ヽ// ヽ匸`゙'‐'- '、〈./_/_/`/ /、/ /、// /〉/ヽ__
}'´ ヽ)::::::::::::::::::::::::::::`゙-/__/_/`// /// /::/〉__
ヽ l l ノ_/ニ/_/ニ/_>‐;;:::::::::::ヽ//_/// /::// / 〉-、
ヽl ヽヽ::::::::::::::::::`'-/、/〉::::::::::::::`ヽ/::// / / //ァ、
l ',:ノ:::::::::::::::::::::__::::::::゙〈/〉、::::::::::>、../ / /// /〉
l/ミ 、 l }::::::::::::::/ /:::::::::::::::゙ 〈/〉;-‐/⌒v⌒>-/
l `゙'、`、 .l.`}:::::::./ /:::::::::::::::::::,-、ノ_=‐'´ ̄ヾヽ __)
l ヽヘ l:二∨ /-、::::::::::_ナ彡'´ .} {´ 」-、
', ヽヘ l_ソ⌒`ヽ-、,`=// l l _ノ
,-=‐- 、 ' , ヽ丶 lヽ⌒ヽミヽフ'´. ,.┴'‐-'
ノ \ ヽ ヽ. Vヘl三ヽ,ィ<≡=-‐''" ̄ ゙̄'''7' ´
く ヽ l \:.... l ll{/'´ /
\ \ l_ヘ へ ::::mnv'、 ,.イ
` -( `ヾ ∧ 〉}メ{{:::::::........ _ . -=''"´
 ̄、 \ /,}刈l´  ̄ ̄ ´ _
`丶、 丶_ _ム}},'}{ l /´  ̄ヽ
`ー- ニ二{゙==={―――-----‐=--― }
__〕 ,-‐'==‐- ....,,__〃 ̄ヾ}ー--=/
/ -=、ヽ `  ̄´ヘニ _ノ´
_.。ャぁリゝ、__...イ
O ̄ ̄ ̄ ̄\ ∧
ヽ∧
`O
さやか(こうなったら、もう手がつけられないな)
杏子「さやか! あたしらは逆側から切り込もう!」
さやか「わかった!」
ほむら「力を温存して勝てる相手じゃなさそうね」ズドドッ
マミ「五人そろった私たちに敵はないわ。ティロ・フィナーレ!」ズオッ
QB「こっちも応戦しよう! ワルプルギスの夜!」ズァオッ
激闘は一時間ほど続いた。もはや城など影も形もない。
QB(これはまずいな、序盤こそ勢いでこっちが押してたけど)
QB(戦闘経験に長けた彼女らが、徐々にペースを握り始めている)
QB(たしかに完全体は強力だけど、力だけでは彼女らには勝てない!)
QB(せめてもう少し知能があれば、勝機が見えてくるはず)
QBは瞬時に、彼女の頭脳となりうる素材に気づいた。他ならぬ自分だ。
カッ!
夜「よし、同化成功!」
杏子「ちぃっ! 急に動きが変わったぞ、なんか賢くなった!」
ほむら「あのマスコットが魔女の“頭脳”になったのね。あなどれないわよ」
まどか「関係ないよ、全て消し去ってあげるからっ!」ドドドドドドッ
魔法少女 vs 魔女+魔獣+マスコット の最終決戦
三日三晩にも及ぶ壮絶な死闘の後、地に伏せっていたのは──
ワルプルギスの夜だった。
夜「……む、むぐぐ……!」
さやか「ここまで手こずるとはね……魔力を消耗しすぎちゃったよ」
マミ「大丈夫よ、この地球には魔力の供給源がまだまだ沢山あるんだから」
まどか「この戦いで使った分も──」
まどか「キュゥべえやポチが台無しにしてくれた分も──」
まどか「いっぱいいっぱいいっぱいいっぱいいっぱいいっぱいいっぱいいっぱいいっぱい」
まどか「吸収しないとね」
ほむら「終わりよ、ワルプルギス。いえ、キュゥべえ」
ほむら「あなたは強かったわ。でも私たちが五人そろっていたことが不運だったわね」
夜「逆だよ」
ほむら「!」
夜「いくら君たちでも、ぼくの最後のプレゼントを防ぐ力は残ってないはずだ」
夜「五人そろっていてくれて、ありがとう。短い間だったけど、楽しかったよ」
ズオッ─────
見滝原は魔女の炎に包まれた。
大爆発から生じた光の矢は、世界中の作られた魔法少女と魔女を貫き、全てを浄化した。
世界中で活動していたマスコットたちも、主人たる五人の魔法少女が天に召されたことで
運命を共にすることになった。
恐るべき五人の魔法少女に勇敢にも立ち向かい、散っていった救世主、キュゥべえ。
決して歴史に残ることのない彼の功績を称え、あえてここでは彼をこう呼びたいと思う。
救べえ、と……!
<おわり>
>>1乙!
Entry ⇒ 2012.01.02 | Category ⇒ まどかマギカSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
不良♀「おい、なんだよおめーは」男「まぁまぁwww」
男「ぐふっ!…だいじょぶだいじょぶwwwww」
不良「な、なんだよ!近づいてくんじゃねーよ!殴るぞ!」
男「安心して、何もしないからwwwwww」
不良「大分強く殴ったぞ?…お前なんだよ、きめーよ、やめろよ!」
男「…」ギュッ
不良「ぁ…」
男「じゃあな!」ダダダッ
友「お前もう罰ゲームやったの?」
男「当たり前だろ、超怖かったぞ…殴られたし」
友「は!?誰も見てないときにやるなよバカ!…もう一回な」
男「うるせー!やったっつってんだろ!」
不良「…」ジーッ
今晩はこんな感じでどうかひとつ
男「鬼!悪魔!」
友「負けたお前が悪い」
男「えー!もう殴られたくないよお…」
友「上目遣いでもダメだ、むしろ逆効果だ」
友「つーかさっきから不良さんこっち、見てんぞ」
男「?」チラッ
不良「…」
男「見てねえじゃねーか!脅かすなよ!」
友「いや、見てたんだっ
不良「…」ギロ
友「あー…俺の勘違いだったかも」
友「…」
男「なんかいえよ!怖いだろ!」
友「とりあえず…なんだ、もう一回やれよ」
男「わかったよ…」
友「今日の放課後とか大丈夫か?」
男「おう、しっかり見とけよ!」
友「安心しろ」
男「不良さん不良さんwww」
不良「あ゛?またおめーかよ?」
男「昨日はごめんねwwwwww」
不良「へらへら笑ってんじゃねーよ」バチン
男「ビンタwwwちょ、涙出てきたwwwww」
不良「ちかよんなバカ!」
男「待ってwww待ってwww」
不良「ま、また抱きしめるんだろ?気持ち悪い…」
男「だいじょぶだいじょぶwwww」
不良「うるせー!だまされねーぞ!」
不良「同じ手使うんじゃねーよ!そ、そんなにバカじゃねーから!」
男「まぁまぁwww」
不良「来んなって!やめてよっ!」
男「そんなこと言わずにww」
不良「だ…抱きしめたい、のか?」
男「あははははwww」
不良「なんだよ!そうならそうって言えよアホ!き、気味がわりーんだよっ」
男「グリーンだよwwwwww」
不良「…」
男「www」
不良「て、手ならいいぞ…」
不良「手なら握って良いって言ってんだよっ!」
男「かーらーのー?wwwww」
不良「いきなりハグは、その…恥ずかしいんだよ!」
男「ハグwww英語wwww」
不良「ばっ、バカにすんなって言ってんだろうが!///」
男「ごめんねごめんねーwww」
不良「コイツ…そ、それで…どうなんだ!?手じゃダメ、なのか?」
男「まぁいいかwwwwww」ギュッ
不良「ぁっ」
男「じゃあね!」ダダダッ
男「どうだ?」
友「じゃねえだろうが!!!!!」
男「な、なんだよ…ビンタまでされたんだぞ?」
友「抱きついてこいっつっただろうが!!!!!」
男「いや、でも…なぁ」
友「しかもなんで…いい感じになってんだよ!!!!」
男「お前もビンタされたいのか?そういうタイプの人だったのか?…うわ、引くわ」
友「萌えたわ!!なんであんなに可愛らしいんだよくそがっ!!!!」
男「何言ってんだお前?告白か?うるさいぞ」
友「ふぅ…疲れたわ」
男「お疲れさま」
男「まじかよ」
友「抱きついてねえだろうが」
男「あれは結構善戦しただろ」
友「だめだ」
男「しかも不良さんから言い出したぞ」
友「そこがだめだ、羨ましい」
男「あ?お前やるか?」
友「お、俺にもできるかな…」
男「おう、やれやれ」
不良「あ゛!?なんだよおめー、殴るぞ?」
友「ごめんなさい」
不良「二度と近寄んな」
友「はい」
友「危なかった…」
男「おい」
友「…なんでおまえあんな感じでいけるんだよ!」
男「不良さん相手に普通にいけるわけねーだろ!ノリでいけるかな…って」
友「とにかくあれだ、罰ゲーム頑張れよ」
男「へたれ」
友「なんとでも言えよ!」
友「帰ったのかな…」
男「そっか、じゃあまた明日な」
友「抱きつかなきゃダメだからな」
男「分かってるよ、一回やったのに…」
友「まだ言ってんのかよ、やったとしてもダメだ」
男「えー」
友「もっと殴られろ」
男「冗談じゃないよ…ホントに、笑えない」
友「知らねえから、地獄へ落ちろ」
男「おい、不良さん見てるか?」
友「あぁ、授業中ずっとだ」コソコソ
男「やべえよ、目付けられたら…」
友「ガン見だ、鬼ガン」
不良「…」ジーッ
男「…」チラッ
不良「!」
男「超見てるよ…俺なんかしたか?」
友「昨日思い出して見ろよ」
男「…したな、死にたい」
友「当たり前だろ」
男「…」
友「そもそもこの罰ゲームに決めたのお前だろうが」
男「負けるとは思わなかったし…」
友「なめんなよ」
男「こんなにバイオレンスだと思わなかったし」
男「骨ぐらいは…拾ってくれよ?」
友「まかせとけ」
不良「…」
男「不良さんまだいたんだwww」
不良「!」
男「ちょっといいかな?wwwwww」
不良「ま、またか?」
男「つれないこと言わないでwww」
不良「て、手じゃダメだったのか…?」
男「だめだめwww抱きしめていい?ww」
不良「なっ!なんだおめー!くるなっ!」メキョッ
男「ごふっ!…だ、だいじょう、ぶ」
男「肋骨丈夫だからwwwwww」
不良「わ、わるい!あたし…その、乱暴で…」
男「ぎりセーフwww生きてるよwww」
不良「緊張すると…つい、手が出ちゃって」
男「どんまいwwww」
不良「こんなんだから…女の友達とか、いないし」ジワ
男「あれ?ちょ、ちょっと待って…ごめん!急用思い出した!また明日!」ダダダッ
不良「ふぇっ?」
可愛いな おい
友「予想外だったな」
男「あれは反則だろ」
友「萌えたか?」
男「あぁ」
友「抱きしめたいか」
男「とっておきの熱いヤツを」
友「うわ、キモイな死ねよ」
男「ゑっ?」
友「くせーな、骨折しろ」
男「え?普通に傷ついた」
友「悪い悪い」ハハハッ
友「おう、分かってる」
男「沸き上がってきてるか?」
友「この気持ちはなんーだろー」
男「大地からー足の裏ーを伝わってー」
友「…」
男「不良さんてめっちゃ怖いけど」
友「案外さ…いや、めちゃくちゃさ」
男、友「「可愛いよな」」
男「あれ?不良さんも電車なの?」
不良「な、なんだよ…電車使っちゃいけねーのかよ」
男「あ、いや…そういう事じゃなくて、全然会わなかったなーって」
不良「そうでもねーよ、結構同じ時間の乗ってたぞ」
男「そうなんだ…って、なんでそんなこと知ってるの?」
不良「ばっ、バカ!そんなのどうでもいいだろうが!」アタフタ
男「あ、なんか不良さん可愛い」
不良「かっ、かわわわわっ!?」プシュー
男「両手で顔覆ってどうしたの?」
不良「あ、暑いな今日は…この電車暖房効かせすぎなんじゃないか?」
男「暖房って…まだここホームなんですけど」
不良「…」
男「あ、耳まで真っ赤になっ
不良「おらぁ!」ビタン
男「いてぇっ!冬!ふ・ゆ!!寒空のビンタは反則だって決まっただろ!」
不良「な、何で決まったんだよ!!しらねーよバカ!」
不良「そういえばこれまでの話し方やめたのか?」
男「うん、不良さんにもなれてきたって言うか」
不良「良かった…」
男「なんで?フランクな感じで良くなかった?」
不良「気味がわりーよ!思いっきり殴ってもへらへら近づいてくるんだぞ…」
男「そうかなー…おかしいなー…」
不良「おめーもやってみるか?」
男「…そうだよね、体験するのが一番か」
不良「まぁまぁwwwだいじょぶだいじょぶwwwwww」
男「えっ?こんなんだった?キモイおらっ!」バチン
不良「えっ?え?…い、痛いよぉ」ジワ
不良「叩かれた…痛いよ、うぅ…」ウルウル
ザワザワ
男「降りよう!とりあえず一回降りよっ!」グイッ
不良「ひりひりするよぉ…」
男「ごめんなさい」
不良「ぐすっ…だめ、許さない」
男「何でもします許してください」
不良「な、なんでも…?」
男「できることなら何でも」
不良「ゆるす」
男「本当にごめんなさ、えっ?」
男「あれっ?え?…涙は?」
不良「よし…あたしの弁当を食え」
男「は?」
不良「りょ、料理が好きなんだよあたしは!」
男「料理?好き?」
不良「誰かに…食べてもらいたいだろうが!でも…ほら」ジワ
男「あ、いや!その先は良いから!大丈夫大丈夫!」
不良「お父さんぐらいしか感想くれなくて…」
男「お父さん?」
男「お父さんに弁当作ってるの?」
不良「そうだよ…いけねーのかよ!」
男「あ、いや、ポイント高いよ」
不良「ポイント?」
男「ううん、気にしないで」
不良「お父さんは美味しいって言ってくれるんだけど…その、気を使ってるかもしれないし…」
男「うん、いいよ」
不良「軽いなおい…でもそうか!早速明日から作ってくるからな!」
友「今日こそ抱きつけよ」
男「あ?…そういやそんなことも言ってたな」
友「なんだよそれは…おい」
不良「おいこらぁ!おめーちょっと屋上来いよ」
男「ははっ、おkwwwwww」
ザワザワ
友「お、おい…大丈夫か?」
男「骨は、拾ってくれよ…」
友「ふざけてる場合かよ」
男「まぁまぁwww」
カパッ
不良「おい…なんか言えよ?」
男「…」
不良「み、見た目はわるいけど味は…きっと」
男「茶色いな…」
不良「男ってのは…肉が、好きなんじゃないのか?」
男「それは、そうだけど…野菜も食べたいって言うか…」
不良「野菜はほら、こっちだ」
男「あ、これ野菜か」
不良「ば、バカやろー!失礼だなお前は!」
友「…」ジーッ
男「バカはお前だッ!!」
不良「…っ!な、なんだよ」
男「自分で食えるわい!」
不良「そうか、そうだよな…悪い」
不良「でっでも、男の子はこれで喜ぶってお母さんが…」ボソボソ
男(恥ずかしさのあまり惜しいことをした…いや、でも間違ってなかった気がする)
友(男と絶交しなきゃいけないところだったぜ…)
不良「…」
男「…」モグモグ
不良「…ど、どうだ?」
男「なんていうか、うん、フツー」
不良「…そっか、自信あったんだけどな」シュン
男「うん、フツーにうまいよ、凄いフツー」
不良「?…なんだそれは、喜んで良いのか?」
男「結構見なおした、見た目が見た目だったし」
不良「そうか!そうか…うんうん」
男「すごいすごい」
不良「えへへ…」
不良「ばか!それじゃあ、明日つくってこれねーだろうが!!」
男「えっ?」
不良「えっ?」
男「明日も?」
不良「も、もう食いたくないか…?」
男「いやいや!食べたいよ!」
不良「っ!…そっかそっか、そうだよな…当たり前だよな」ウンウン
男「それじゃあこれ、先行くな」
不良「うん、じゃあな!」
ガチャッ バタン
友「待てこら」ガシッ
男「うおっ!!!!」
男「見てた?」
友「カパッからバッチリ」
男「恥ずかしぃ…///」モジモジ
友「殴って良いか?良いよな」
男「待てっ!まてまて俺が悪かった」
友「よし、全部吐け」
男「細工は流々」
友「後は仕掛けをご覧じろ」
友「じゃねえよ!!!」
…
男「こう言うことだ」
男「いってぇ!」
友「これでもまだ足りないよな」
男「何がだよバカ!」
友「不幸ポイントだよアホ!」
男「なんだよそれは…」
友「私の不幸ポイントは53万です」
男「ふっ」
友「鼻で笑うなぁ!」パチン
男「あ、優しい」
友「お前とガチで喧嘩したくは無いからな」
男「そういうとこ、好きだよ…」
友「やめて、気持ち悪い」ゾクッ
男「あー、役得役得」
友「ぎりぎり」
男「口で言うな」
友「歯ぎしりすると痛いんだよ」
男「虫歯あったもんな」
友「来週歯医者だ」
男「歯医者って良いよな」
友「歯科助手の胸を味わうヤツは三流」
男「舌と唇に当たる指の感触だろ?」
友「分かってるな」
男「歯医者行きたくなってきた」
友「まて、抱きつきにいけよ」
男「そうだったな」
友「まだいるぞ不良さん」
男「いつもは本なんか読んでないのにな」
不良「…」
友「じゃ、俺はコソコソ見てるからよろしく」
男「じゃあな!」
友「おぅ!また明日!!」
不良「うるせーな、ゆっくり読書もできねー」スッ パタン
男「あれ?読まなくてもいいの?」
不良「き、キリが良いとこだったんだよバカ!」
男「じゃあ、もう帰っちゃうの?」
不良「…おめーはどうすんだよ」
男「不良さんが帰るなら帰っちゃうけど…」
不良「…そっか」
男「帰るの?」
不良「………しょーがねーなぁ」
男「良かったぁ」
不良「どっ、どういう意味だよ!」
不良「…なんだ」
男「抱きしめて良い?」
不良「ま、まだ言ってんのかよ!」
男「一回で良いから」
不良「一回…か」ボソッ
男「えっ?ごめん、なんて?」
不良「だ、抱きしめるのはダメだ」
男「えー、なんでー?」
不良「はずかしいからだっていっただろ!鳥!鳥頭!」
男「じゃあ抱きしめるにはどうすればいいの?」
不良「まずはその…わ、私に触らせろ」
不良「おめーが悪いんだぞ!」
男「俺が?」
不良「いきなり男が迫ってきて抱きしめて帰って行ったら怖いだろうが!」
男「あぁ…あのときのか」
不良「お、襲われるかと思ったんだぞ!」ウルウル
男「結局俺が襲われたんだけどな、暴力的な意味で」
不良「」
男「でもごめん、そんなだったとは知らなくて」
不良「よし、じゃああたしが触るから動くなよ」
男「…」
不良「…」ニギニギ
男「…」
不良「…」ムニムニ
男「なんか分かったか?」
不良「鼻、割と低いんだな」
男「母さん譲りだ!バカにすんな!」
不良「睫毛は長い」
男「ふふん、父さん譲りだ」
不良「そっか…」
不良「っ!」
男「ぼーっとしてた」
不良「く、癖だ!集中すると緩むんだよ」
男「一回涎出そうだったよね」
不良「うるさいっ!ばかばか!」
男「よし、じゃあ抱きついて良いよね?」
不良「やめろっ!」
男「慣れたんじゃない?」
不良「慣れたけど…こういうのは、ひ、一晩寝かさないとだめだ!」
不良「…に、似たようなものだ」
男「美味しく頂けるようにってことね、把握」
不良「ばっ!勘違いすんなよ!ドキドキしてるからダメなんだっ」
男「ドキドキしてるの?」
不良「当たり前だろ!男の体触るなんて初めてだし…」
不良「あんまり、ゴツゴツしてないんだな…」
男「ごめんなさい」
不良「いやっ!そんなつもりじゃなくて…割と筋肉質で、堅かったけど…優しくて」
男「…」
不良「な、何言ってんだろうなあたし!か、帰る!もう帰るっ!」
男「お、おぅ…じゃあな」
不良「じゃ、じゃあね!」ダダダッ
いいなあこれいいなあ
友「おまえ、いい加減ふざけんなよ」
男「なにがだ?」
友「散々いちゃいちゃしといて俺置いて帰るか?普通」
男「ん、あー…そういやお前見てたんだっけ」
友「」
男「ごめん」
友「俺、お前とうまくやっていけるか不安になってきた」
男「俺はお前とうまくやっていけると思ってる」
友「」
男「真顔で無言になるの止めろ」
友「」
男「相当良い顔してるぞwwwwww」
友「なんとかやっていけそうな気がしてきた」
男(ちょろいな)
友「お前今ちょろいなって思っただろ」
男「よくわかったな」
友「」
男「やめろwwwwww」
友「まぁいい、そろそろ罰ゲームして次のゲーム行こうぜ」
男「任せとけ、昼休みも見とけよ」
友「昼休み…また俺はあの、いちゃらぶちゅっちゅを一人で物陰見なければいけないのか…」
男「ちゅっちゅはしてねえよ」
カパッ
不良「こ、今度はどうだ…?」
男「えっ?なにこれ?」
不良「お、お母さんに教えてもらったんだよ…」
男「凄い、全然違う」
不良「そうかっ!?…ふふっ、見直したか?」ニコニコ
男「まだちょっとべちゃっ、としてるけど」
不良「…」シュン
男「綺麗綺麗」
不良「!」
友(忙しいなおい)
不良「本だ、本…それで、味はどうだ?」
男「うまいうまい」
不良「普通に、か?」
男「フツーにうまい、こう言うの好きだよ」
不良「ほ、ホントか?」
男「うん、卵焼きは甘くちゃいけないよね」
不良「そうだよな!うんうん、おめーは分かってるな!」
男「もちろん甘いのも美味しいけど…」
不良「他のも食べろ!これは自信作だ」
不良「…」ニコニコ
男「それでさ」
不良「なんだ?」
男「一晩寝かせてさ、それで、抱きしめても良い?」
不良「いやっ、それは…その」
男「覚悟はできた?」
不良「…うん、できたけど」
男「それじゃ」
不良「…」
男「じゃあ、いくぞ?」
不良「ぁ、待って…あ、あたしからでも良い、か?」
男「…えっと」チラッ
友「…」グッ
男「…うん、良いよ」
不良「じゃ、じゃあ…」スッ
男「いつでもどうぞ」
不良「ん」ギュッ
不良「なめんな」ギューッ
男「いやっ、ちょ…強…」
不良「ふぁ…男の匂い」スンスン
キーンコーンカーンコーン
男「昼休み終わっちゃった…教室帰ろうか」
不良「ヤだ」
男「えっ?」
不良「い、一回キリなんだろ…?」
不良「もうちょっと」スリスリ
男「え?」
不良「やだやだやだ」ギュッ
男「…」
不良「おめーの体、やっぱり優しくて…」
不良「ん、落ち着く…」
男「あの」
不良「ば、罰ゲームなんだろ?」
男「あ、いや…その」
不良「あたしみたいな暴力女に抱きつきたいヤツなんていないもんな…」グスッ
男「し、知ってたの?」
不良「知ってたよ…聞こえてた」
男「…でも、そういうことじゃなくて」
不良「いいよ、ズルくてごめんな…でも、もうちょっと」スリスリ
不良「えっ?」
男「…」
不良「…ん、ありがと」ギューッ
男「好きです」
不良「…」
男「大好きです」
不良「ふぇっ!?」
男「これっきりじゃなくてこれからも抱きつきたいです、弁当食べたいです」
不良「えっ?えっ?」
男「付き合ってください」
男「うん、最初はそうだったけど…不良さん可愛いんだもん」
不良「な、なんだよ!あたしは…もっと前から…す、好きだったんだぞ!」
男「ん、ありがと…だから電車で見ててくれたんだ」
不良「お、覚えてんじゃねーよ!」
男「嬉しかったから」
不良「うぅ…卑怯だなおめーは」
男「ほら、これからも出来るから今日は教室帰ろうよ」
不良「だ、だめだ…もうちょっと」
不良「だめだって言ってんだろ!」
男「ん?あれ?」
不良「きょ、今日も暑いな…暖房効きすぎてるぞ」
男「いや、ほら…今度はここ屋上だし」
不良「」
男「あ、耳まで真っ赤になっ
不良「うるせーバカ!」ゴスッ
男「ぐふっ!い、今のは効いたぜ……」
不良「あっ、ご、ごめんな…つい、やぁ、嫌いに、ならないで…」
男「」
不良「おめーは…大好きっ!」ギュッ
友「ぐぬぬぬぬ」ギギギ
ーーー
ーー
不良「おとこー!」ギュッ
男「お、おい!ここ教室だぞ」
不良「いいじゃねーかよー付き合ってんだから、ほらほら」
男「おい、なんだよお前は」
不良「まぁまぁwwwwww」ギューッ
おわり
今年はいい年になる
不器用な感じが伝われば良いと思った反省はしていない
良いお年を
これはいいものだ
Entry ⇒ 2012.01.02 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
男「年末だし狐耳幼女ちょっと来い」
男「サンタさんへ、狐耳幼女をください」
男「中身はババアで」
男「おはよう、いい天気だ」
男「……」
狐子「すやすや」
男「……」
男「……オゥ」
男「オゥオゥ」
男「うっひょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
狐子「な、なんじゃあああああああ!!!」ガバッ
男「うおっおっまじこれやべええええええええええええええサンタすげえええええええええええええええ」
男「ふわあああああああああああああああああああああああああああああ」
弧子「話を聞け!」
男「ひおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
男「どりゅうううううううううううううううううううううううう」
男「むへょおおおおおおおおおっふうううううううううううううううううううううううう」
弧子「うるせええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」
男「ふううううううううううううううううううううううううううううううううう」
弧子「少しは黙らんか! うるさい!」
男「にはあああああああああああああああああああああああぷひゅっ」
弧子「む」
男「ひゅるひゅる……」
弧子「そ、そうじゃ。やればできるじゃないか」
男「くおっくおっ」
弧子「それで、此処は何処なのじゃ?」
男「へへへへへ」
弧子「だから……!」
男「ヘヘヘイ!」
男「ヘエエエエエエイ! ヘエエエエエエイ!」
弧子「……」
男「ヘイ! ヘーヘイ!」
男「ヘーヘイ! ヘーヘイ!」
男「ヘイヘイ!」
弧子「……」
弧子「ヘ、ヘーイ……」オズオズ
男「ッヘーーーーーーーーーーーーーーイ!!」パチン
弧子「うおっ」
狐子「……」
男「フォオオ! フォオオ! フォオオフッフー!!!」
狐子「……」ウズウズ
男「フォオオ! フォオオ! フォオオフッフー!!!」
狐子「フォオオ、フォオオ、フォオオ」
「「フッフー!!!」」
男「イエーイッ!」パチン
狐子「いえー!」
狐子「……」
狐子「はっ」
狐子「(先ずは今の状況を整理すると……)」
狐子「(わしは……うん、時の大妖怪、狐子様じゃ。記憶喪失ではないのぅ)」
狐子「(殺生石に封されて……忌々しいがの)」
狐子「(そして、此処にいる)」
狐子「(……うん)」
狐子「なんでじゃ」
狐子「おい、そこの」
男「ひあああああああああああああ! ひあああああああああああああ!」
狐子「(こやつは……やはり気狂いの類か?)」
いいぞ、もっとやれ
狐子「(しかし封じられておる間に数百年経っているのは分かっておる。加えて此処が何処かもわからん。)」
狐子「(もしかしたら異国の言葉であるかもしれんの)」
狐子「(言語であるならば法則性があるはず。くくく、わしに掛かれば解読など容易いことよ)」
男「う゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
狐子「おい」
男「びくっ」
狐子「……」
男「……」
狐子「ヘーイ」
男「イヤッフウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ」
狐子「な、なんでじゃ! さっきと反応が違うではないかっ!」
男「うひっうひっ」
狐子「……まぁよい。外に出れば何かしらわかるじゃろ」
男「うひ……」ピク
狐子「頭の腐った人間など喰う気もおきんわ。じゃあの」
男「ま゛っでえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛」
狐子「うおっ! なんじゃ!」
狐子「うひぃ気色悪! 死ねっ!」ペシ
男「にゃ゛っ」
狐子「……」ペシペシ
男「……」
狐子「何故じゃあ……力が入らん……」ペシペシ
男「しっぽああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
狐子「うひょぅ!」
男「狐耳! 幼女に! しっぽで! ぺしん! ハイッ!」
男「狐耳! 幼女に! しっぽで! ぺしん!」
男「御清聴ありがとおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
狐子「た、助けてぇ……」アワアワ
―――― 一時間後
男「……」ピクピクッ
狐子「ひっく……」
狐子「やっと酸欠で倒れてくれた……ぐすっ」
狐子「と、とにかく此処から逃げねば」
狐子「どんな妖術かはわからぬが、こやつに対しては力が出せないようじゃ」
狐子「封印されていたとはいえ、人一人殺せないほど弱まったとも思えん。どんな呪いかわからんがの」
狐子「まぁよい。こんどこそ、さらばじゃ」
男「……」ピクリン
狐子「さて、抜け出せたはいいが……」
狐子「結局あの男からは何の情報も得られなかったの」
狐子「……思い出すのも嫌じゃ」
狐子「先ずは現状を把握せねば」
狐子「だがその前に」
狐子「腹が減ったの」
狐子「(その昔、人を騙り、王を惑わし、国を傾けて命を啜ったわしが低俗な妖怪のように狩りをするなど……)」
狐子「落ちぶれたもんじゃ」
狐子「とはいえ、こうして復活出来たこと自体が奇跡じゃの。背に腹は抱えられん」
狐子「それじゃ通りにでてみるか、の」
狐子「どいつにするかのー」
女「」テクテク
狐子「ふむ、肉が固くて不味そうじゃ」
友「」テケテケ
狐子「こっちはやわっこそーじゃ」
狐子「いただきます」
女「おい」ゴス
狐子「あぎゃ!」
女「こんな往来でなにしてるんだ」ゴスゴス
狐子「ぐっ! やっ! な、なんじゃお主、わしの姿が見えているとでも……」
女「見えてるから殴ってるんだろう」
狐子「そ、そんな……わしの力はそこまで衰えておるのか……」
女「いや、なんでもないよ」ゴスゴス
狐子「あっあっ痛い痛い」
友「ふーんそっかー」
女「ちょっと用事思い出したから先に行っててよ」
友「ん。わかったーまたねー」
女「ちょっとこっちに来たまえ」ボソボソ
狐子「ぐぬぬ……どういうことじゃ……」
――――脇道
女「さて、白昼堂々人を襲うとはいい度胸だ化け狐」
狐子「口は災いの元じゃぞ小娘。人ごときがわしに敵うとでも思っとるのかや」ゴゴゴ
女「低俗妖怪のくせにずいぶん偉そうじゃないか。いや、だからこそ低俗か」
狐子「このわしを捕まえて低俗とは、無知とは罪よの」
女「……」
狐子「……」ペシペシ
女「……」
狐子「なんでじゃああああああああああああああああああああああ」
女「いや君から妖力とか全く感じないから」
狐子「ぐぬぬ……」
女「気は済んだか? それじゃ消えろ」
狐子「ままままま待て待て! どうする気じゃ!」
女「人に危害を加える妖怪は、問答無用で消滅刑」
狐子「わっわしが消滅!? ははは、せ、せいぜい封印がいいとこじゃろ」
女「いや君ほとんど妖力ないし。たぶん一発当てれば消えてしまうぞ?」
狐子「」
狐子「ぬわーーーーーーーー!!」
女「……」
狐子「……」キョトン
女「ばいなら」ボン
狐子「ぬわーーーーーーーー!!」
女「……」
狐子「……」
女「あれ?」
狐子「……ぷくく、ばいなら……しかも二回……」プークスクス
女「うっせええええええええええええええええええ」ゴスッ
狐子「うひぃ理不尽!」バタンキュー
女「あれ?」
狐子「……」
狐子「……ううう」
狐子「ヘ、ヘーイ……ヘーイイ……」
狐子「はっ」
狐子「此処は何処じゃ」
狐子「あれ? デジャブ?」
女「起きたかい」
狐子「あっ」
狐子「がるる」
女「ここは私の家だよ。そう怒るな」
女「そうそう、早速だけどその話」
女「まずは自己紹介からしよう」
女「私は一応、この街で退魔士をやってる女だ」
狐子「……狐子じゃ」
女「そうか、よろしく」
狐子「通りでわしの姿が見えたわけじゃ」
女「君が何者かは知らないが、ここじゃ妖怪がそう簡単に人を喰えるなどと思わないほうがいい」
狐子「お主らがおるからか」
女「そういうこと」
狐子「まったく、嘆かわしいの。妖怪も腑抜けになったもんじゃ」
女「それでも人を襲うのは、何が危険かも理解できない、知能の低い低俗妖怪ぐらいだ」
狐子「それでわしを低俗と呼んだのか」
女「それに関してはすまなかった」
狐子「なんじゃ? ずいぶん下手にでたのぉ」
女「ああ。それじゃその理由を話そう」
女「まったく、始めに言ってもらわないと困る」
狐子「何をじゃ」
女「君、式神だろ」
狐子「……」
狐子「なんと」
狐子「なかなか新鮮な冗談じゃな。数千年生きたが初めて聞いたわ」
女「それが本当なら君はとんでもない妖力を持っていてもいいものなんだけどね」
狐子「……」
女「ま、退魔というものは、相手の妖力を吹き飛ばして消滅させるものだ」
女「私は君を本当に消すつもりでいたんだが……」
女「消せなかった。君にはどうやら、使役者からの妖力供給がされていたから」
狐子「お主の実力不足じゃろう」
女「まだ言うかい、君に妖力がほとんどないのは確かだ」
女「しかもそれは、使役者から送られてくる妖力が極端に低いから、だよ」
狐子「?!」
女「まったく、君みたいなのは初めて見たよ。普通式神ってのはそれなりに力のある霊能者が使役するものなのにね」
狐子「待て待て、それじゃわしは……」
女「だから式神だろう? ……もしかして自覚ないの?」
女「……」
女「これも初めての経験だな……まさか自覚のない式神がいるとは」
狐子「いやいや、わしは齢数千年の大妖怪のはずじゃ」
女「そうかもしれない。だが式神も人と契約を結ぶまでは普通の妖怪だ」
女「その契約方法にも様々あるが……相手が死ぬ間際になったらその身体を喰わせる、なんて相互利益の契約もあれば」
女「人がその妖怪を調伏することによって下るというのもある」
狐子「ぐ……(確かに殺生石に封じられはしたが……)」
女「どうやら身に覚えがあるようだね」
狐子「(まさか式神として使役するために封印を解いたのか? しかしいったい誰が……)」
女「とにかく、そういうことだ。君は式神で、君の罪は君の使役者の責任だ」
狐子「はぁ?」サラ・・
女「当たり前だろう。白昼堂々人を襲っておいて。私がいなかったらどうなっていたことか。これは使役者の管理怠慢だ」
狐子「そんなことを言われてものぅ……いったい何処の誰やら」サラサラ・・
狐子「お主、そいつが誰だかわかるのか?」
女「式神や使い魔が犯罪に使われるなんてのは、たまにある話でね。そういう時、式神だけを捕えてもほとんどが口を割らないんだ」
女「純粋な忠誠から話さないこともあれば、あらかじめ口封じの呪いをかけてあることもある」
女「だけどそんなもの、本当は無意味でね」
狐子「何か方法があると」サラサラ・・
女「そう、さっきも言った、霊力供給。その出所を辿るんだ」
狐子「なるほどの」サラサラ・・
女「一応聞いておくけど、使役者を庇って知らないふりをしているわけじゃないよね」
狐子「ど阿呆。そんな奴むしろ殺して欲しいわ」サラサラ・・
女「そう。それと、もう一つ聞きたいんだけど」
狐子「なんじゃ、早くせい」サラ・・
女「君の体はどうして消えていってるのかな」
狐子「」サラ・・
女「あ、暴れると余計に……」
狐子「消えてるううううう! わしの体がきえるううううううううう!」サラアアアアアアアアアアアアアア
女「これは酷い、さっきまでもほとんどなかった妖力供給のラインがプッツリ途切れてるじゃないか」
狐子「なんでじゃああああああああああああああああああああああああ」スラアアアアアアア
女「考えられる理由としては……」
狐子「早く言え!」セラララララララ
女「さっき言った犯罪者が足が付かないように切り捨てたってのが一般的」
狐子「じゃああれか、わしは顔も知らない奴に理由もわからぬままほっぽり出されて、理由もわからぬまま見捨てられたのか!」ソラアアアアアアア
女「君の事情はよくわからないけど……」
狐子「不幸じゃあああああああああああああああ」サララララララ
狐子「なんじゃ!」サラララ
女「式神や使い魔に限らず術一般においては、術者が妖力を供給出来なくなった場合だ」
狐子「どういうことじゃ」サラオ
女「うーん、例えば密閉空間や地下に入ったとか、間に高いビルがあるとか……」
狐子「これって携帯の電波か何かか?」サラサーティ
女「つまりは結界に遮られたりとか、ああ、妖力を渡せないほど術者が衰弱したり、死亡したときもだめだったな」
狐子「つまり、どういうことだってばよ」
女「使役者を探し出さないと助かりませんことよ」
狐子「間に合うわけないじゃろおおおおお!?」シャララララ
狐子「諦めないで! もう少し頼らせて!」
女「とは言っても、ここで君の記憶がいきなりよみがえるようなミラクルがない限り助からないと思うけどなぁ」
狐子「思い出せばいいんじゃろう! 思い出せば!」
女「お、君も自分が式神だって認めたのかい?」
狐子「それどころじゃないわ!」
女「ふふふ、こればっかりは何の力にもなれないからね。せいぜい頑張って」
狐子「……お主楽しんでるじゃろ」
女「だから君を家に連れてきたわけだが?」
狐子「ちっくしょおおおおおおおおおおおおおおおおお」
狐子「(わしを追い詰めたあの武士、は、もう死んどるのぅ)」
狐子「(殺生石を封じたあの禿も、もういないはずじゃ)」
狐子「(さっきまでは一応ラインは繋がってたはずじゃ、となると今生きている人間……)」
狐子「(……)」
狐子「あれ、わし知り合いいなくね?」サララララ
狐子「ままままて待て、話せばわかる」
女「それは私に言っても無駄だと思うけど」
狐子「ぬおおおおお!」サランラー
女「そう難しいことでもないんじゃないかな? 消去法で、君の知り合いのうち、この短時間に妖力供給が出来なくなりそうな人」
狐子「……」
女「ほらほら」
狐子「貴様……知っておるのか!」
女「ん? いや知らないけど、心当たりありますって顔してるじゃないか」
狐子「……ぐぬぬ」
女「きっとその人であってるよ。いったい何が問題なんだい?」
狐子「知り合いだと……」
狐子「知り合いだと思いたくなかったんじゃ!」
狐子「ついて来い!」
女「お、私も行っていいのかな」
狐子「使役やら契約やらはわしにはわからん。その場でいろいろと聞けたほうが助かる」
狐子「妖怪のわしだけでは対処しきれないこともあるじゃろう」
女「本音は」
狐子「あやつと二人きりになりたくない」
女「……これは私も覚悟したほうがよさそうだ」
狐子「お主が犠牲になってくれればわしが助かる」
女「……もともと君の責任を取らせに行く予定だったけどね」
狐子「急ぐぞ、わしの体が消えきってしまう」
女「罪を問うとはいえ未遂の初犯なら、本人の態度しだいだが、厳重注意のうえ罰金ってとこかな」
狐子「軽いもんじゃな。一応殺人未遂じゃろ」
女「妖怪にとって人喰いは本能みたいなものだし、それを防ぐために私たちがいるんだ。よくあることだよ」
女「それに君には知性もあるし妖力もない。もう間違ったことはしないだろうしね」
狐子「褒めるか貶すかはっきりせい」
狐子「おっと、着いたぞ」
狐子「おーい」ゴンゴン
女「留守?」
狐子「いや、案の定まだ気絶しているんじゃろう……」
女「それじゃ早く助けないと」
狐子「出来ることならもう関わりたくなかった」
狐子「開けるぞ」ギイィ
女「うわっ!」
男「……」グタッ
狐子「……」
女「……これか?」
狐子「うん……たぶんこれ」
狐子「とにかくこいつを起こさないと……」
女「どうやって」
狐子「決まっている、女、こいつに人工呼吸じゃ」
女「は」
狐子「早くしろわしが消える」
女「笑えない冗談だ。何で私がこんなおっさんと」
狐子「何のためにお主を連れてきたと思っているのじゃ!」
女「君がやればいいじゃないか! ご主人様だろ」
狐子「誰がじゃ! それにわしの知識は千年近く前で止まっておるのじゃ! やり方すら知らんわ!」
女「じゃあなんで人工呼吸知ってるんだ」
狐子「……」
狐子「うおおなんでじゃああああああああああああああ」
狐子「なぁ気づいとるか、わしもうへそから下ないんじゃぞ」
女「知らんな」
男「その必要はないです……」グググ
女「うおっ」
狐子「自力で息を吹き返しおった!」
男「狐娘ちゃんの声が聴こえれば、三途の川すら泳いで渡るさ……」
狐子「化け物め」
女「よかったじゃないか、仲間が増えたぞ」
狐子「うるせぇ」
狐子「というかお主、喋れたのじゃな」
男「喋れるに決まってるだろう。何を言っているのかな狐娘ちゃんは」
女「え、何言ってるんだ君は」
狐子「わしがおかしいみたいにすんのやめろ」
女「どうやらこの人が君の使役者で間違いないようだね。君の体も元に戻ってるじゃないか」
狐子「ほんとじゃ! 助かった……」
男「本物の狐耳」サワサワ
狐子「気安く触るな気狂い」
男「本物の尻尾」モフモフ
狐子「や、やめろというに……」
男「本物のロリババア」
狐子「殺されたいようじゃな」
狐子「やめろ、やめんか! やめ……やめてぇ!」
男「モフッモフッモフッモフッ」
狐子「小娘! 助けろ!」
女「と言いつつも体は嫌がってないぜ淫乱」
狐子「こいつには……はぁっ! なぜか反撃できんのじゃっ! んっ! あと淫乱とか言うんじゃねえ」
男「モフッモフッモフッモフッモ……」
男「モモモモモモモモモモモモモモモ」
男「もっひゅうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう」
狐子「!!!!!」
狐子「っまた壊れたぁ!」
男「ぶびょぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼおぼぼ」ズゾゾゾ
狐子「嫌じゃあ! それは嫌じゃあ!」
男「も゛も゛も゛も゛も゛も゛も゛も゛も゛も゛も゛も゛も゛も゛も゛も゛も゛も゛も゛も゛も゛」
狐子「たすけてえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」
女「君も大概ヒステリックだな」
女「仕方ない、ご近所さんに見つかっても面倒だ」
女「バルス!」ボン
男「こけっ!」バタンキュー
狐子「た、たしゅかった……」ハァハァ
女「……」
狐子「……」
女「バルス!」ボン
狐子「うひぃ理不尽!」バタンキュー
女「なんかバカにされた気がした」
男「いやいや、恥ずかしいところをお見せしてしまった」
女「お気になさらず」
狐子「さすがに気にしろ」
男「他人に情事を見せつけるなど、社会人として恥ずべきことでした」
狐子「情事って言うな」
男「しかし失礼ですが、あなたがどなたかお伺いしてもよろしいでしょうか」
狐子「わしがお前に聞きたいわ」
女「自己紹介が遅れました。私こういうものでして」メイシー
男「これはこれは……退魔士さん?」
女「はい」
男「それはよかった。しかしそれではどんなご用向きですか」
女「この子です」
狐子「む」
女「今更聞くのも変ですが……ご存じでいらっしゃいますか」
男「もちろん。私の家族です」
狐子「おい、息を吐くように嘘をつくな」
女「……それでは、この子はあなたの式神ということでよろしいですか」
男「失礼。なにぶん無学なもので、式神というものが何かわかりません」
女「この子と契約した覚えはありますか」
男「……? すみません、それもわかりません」
狐子「おい女よ、何かわかったのか」
女「いえ……式神というものは、契約により人の命令を聞くようになった妖怪のことです」
男「ほお」
女「あなたがこの子と契約した人間……使役者であるかどうかの確認に来たのですが」
男「たびたびすみませんが、記憶にありませんね」
女「なるほど。ならば、あなたたちが出会った時のことを詳しく教えていただきたい」
男「馴れ初めですか、照れますね」
狐子「慣れる以前にわしがいっしょにいた時間は女のほうが長いからなお前」
男「そうですね、あれは今日の朝のことでした」
男「終わり」
狐子「」
女「」
男「それじゃあ、狐娘ちゃんも話してあげなさい」
狐子「」
女「」
狐子「どっせえええええええええええええええええええええええい」ペチ
男「うひゃん!」
男「……」
男「しっぽああああああああああああ」
女「うっせえええええええええええええええ」ゴスッ
男「へもぐろっ!」
狐子「すまんな」
女「いえいえ」
女「ふむ」
男「すみません」
狐子「手がかりなしか……わしはいったいどうして復活したんじゃ」
女「いや、ひとつ気になることがある」
狐子「今のでか?」
女「君は知らないだろうけどね」
狐子「なんじゃ」
女「昨日はクリスマスだったんだよ」
狐子「?」
狐子「それじゃ、そのサンタサンというやつのせいでわしはこいつの式神になったのか」グヌヌ
女「うーん」
男「ついにサンタ神が恵みをくださった。一生ついて行く所存です」
女「確かにあれは実在することはするんですが」
男「やはり退魔士さんともなるとご存じなんですね」
女「あれは一種の都市伝説です。人が信じるから実体化するのです」
男「ほう」
女「噂や、伝承、それを人が信じ恐れるから存在する。そんな妖怪は、昔は多くいたらしいですが」
女「今の世の中じゃほとんどいない。今じゃ妖怪の話すらめったにしないでしょう」
男「なるほど、その数少ない例と」
女「人が信じれば信じるほどその妖力は強くなり、中には自我を持ち妖怪化するものもおります。しかし契約を捏造するほどの力など初めて聞きました」
狐子「わしは大妖怪じゃぞ! そんなよくわからんやつの力でどうにかできるものか!」
男「ふふふ、私の信仰がサンタ神に力を与えたということですかな」
女「失礼ですが、昔からこのような願いを続けておられたのでは……?」
男「ええ、今年で十年目です」
狐子「……お主、歳は」
男「二九だよ狐娘ちゃん」
女「(三十路前でサンタ信じるか……)」
狐子「そ、そんな……」
女「とにかく、あなたはこの子の使役者となったわけです。こちらの書類にサインをお願いします」
男「なんですかこれ」
女「登録用紙です。式神や使い魔用の住民登録ですね」
男「はい」
女「そして今日、そちらの子が少しイタズラをしましてね。補導したんですよ」
狐子「おい」
男「それはそれはうちのこがどーもすいません」
狐子「おい」
女「まぁ今回は事情もあるので不問にしましょう。保護者として躾はきっちりお願いします」
男「まかせてください」
狐子「わしこの中でいちばん年上じゃぞ」
男「いえいえ、いろいろとお世話になりました」
狐子「置いていくのか?」
女「そう恨みがましい目で見ないでくれ。ここから先は君たちの問題だ」
狐子「……」
女「そう涙ぐんだ目で見ないでくれ。罪悪感がひどい」
狐子「……」
女「そう上目使いで見ないでくれ。惚れてしまいそうだ」
狐子「子供扱いしおって」
女「私が君と話したいんだ。それじゃダメかな?」
狐子「……ふふ、せいぜいわしを満足させてみろよ?」
女「うん。少し気になることもあるしね」
狐子「?」
女「それじゃ、またね」
男「さて、改めまして狐娘ちゃん」
狐子「待て」
男「?」
狐子「先ずは自己紹介からじゃろう? わしはお主のことを、何にもしらんのじゃからな」
男「ということで、十年前、友人から借りた本を読んで以来僕は狐耳幼女の魅力に取りつかれてしまった」
狐子「そのライトノベルとやらがなんなのかはわからんが、なるほど理由はわかった」
男「十年来の悲願なんだ。頼む、モフモフさせてください」
狐子「ど阿呆」
男「ぐぬぬ」
男「いや、それは違う」
狐子「ほう?」
男「僕は君の力になりたいんだ」
狐子「……は?」
男「狐子は殺生石に封じられていた妖狐なんだろ?」
狐子「まぁの」
男「人に疎まれ、殺され、封され、辛かったろう」
狐子「……小僧、わしを侮辱するかえ」
男「僕はそんな君の力になりたい。君を支えたいんだ」
男「そうやって人と確執を生んでいては、いつまでたっても君と歩み寄ることはできないだろう?」
狐子「歩み寄る……? 勘違いもいいとこじゃな」
男「敵キャラだったんだ」
狐子「はぁ?」
男「そのライトノベル……物語の中の狐っ子は敵役でね、執拗に主人公たちと争っていたが……」
男「悪というわけではなかった。彼女にも理由があったんだ」
狐子「……」
男「妖狐の肉を食べた人間はその妖力を手に入れることができる。そんな噂が人の間で流行った時期があった」
男「それを信じる人々により、妖狐たちは次々と狩られていった」
男「もちろんその子も幼いころから人に追われ、人を恨むようになった」
男「そうだね。だけど君も似たようなものじゃないか?」
男「君の姿はその狐っ子にそっくりだ。殺生石で封じられたところまで同じだよ」
狐子「……さっきから勝手に決めつけおって。わしは現実じゃし、この姿は仮の姿じゃ」
男「僕は歴史に詳しくないし、数百年前に起きた出来事の実際なんて誰にもわからない」
男「作り話の狐のモデルになった妖怪が、作り話と同じ生き方をしたかなんて、わからないよ」
男「それでも、狐子というのは、そのキャラの名前なんだよ」
狐子「……はぁ」
男「それはよかった!」
狐子「……」
男「どうしたんだい?」
狐子「いや、なんでも」
男「それじゃ一緒にお風呂に」
狐子「死ね」ペチ
男「……フオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」
狐子「(……これから大変じゃな、いろいろと)」ペチペチ
男「お風呂沸きましたよー」
狐子「そうか、上がったぞ」ホカホカ
男「……」
狐子「どうした」
男「なんで入ってるのおおおおお!」
狐子「沸いてからじゃとaお主一緒に入ってこようとするじゃろ。沸くの待ちながら入ってたんじゃ」
男「そ、そんなベテランのお父さんみたいな入浴法」
狐子「ふふん、わしのほうが年上じゃぞ」
男「……ところで、タオルはどうしたの?」
狐子「あるの使わせてもらったぞ」
男「……っ!」バタバタ
男『ぬけげええええええええええええええええええええええええええええええええええええふおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』
狐子「……?」
狐子「なんじゃ」
男「こっちにおいで」
狐子「?」
男「ドライヤーオン!」ブオオオ
狐子「にゃふううう?!」
男「ほら、暴れないで」
狐子「いやあああああああああああああああああああああああ」
男「尻尾も出そうか」
狐子「ふひっふひっ」
男「ご飯ですよー」
狐子「ふふん、悪いが飯にはうるさいぞ。なんせ人型をしてた時は宮中にいたからの」
男「一応いつになく力をこめて作ってみたけど、そこまで言われると……」
狐子「わしは齢数千年の大妖怪じゃぞ、そこまでするのが当然じゃ。ふふん」
男「これから精進します」
狐子「よろしい。ふふん」
狐子「うむ。……これは肉塊か?」
男「ハンバーグに御座います」
狐子「ふん。わしの時代にはなかったものじゃな」
男「……」
狐子「その目、大方わしがこれを食べて」
狐子『こんな美味いもの初めてじゃああああ』
狐子「とでも言うのを期待しておるんじゃろうが……残念じゃったな」
男「なんと」
男「ぐぬぬ」
狐子「あむあむ」
狐子「……」
狐子「……」ポロポロ
男「(泣くほどか……)」
男「さて、急なことだったから、まだ狐子の寝場所がないんだ」
狐子「まぁ、それも仕方ないの」
男「あれ、怒らないの?」
狐子「仕方ないことで怒る気はない。もちろん、お主がそのあとに言おうとしていたことも」
男「……まいったな」
狐子「わしはお前の式神じゃからな、今日だけと言わず、これからずっと一緒に寝ても構わんのじゃぞ?」
男「それは」
狐子「なんならわしを抱いてもいいんじゃぞ? 主の願いなら、逆らえんしな」
狐子「別に捨て鉢になっとるわけじゃない。お主が主でわしが僕、これは事実じゃ」
男「さっきまで否定してたじゃないか」
狐子「何が何かもわからないのに従えるわけがなかろう。今とは状況が違う」
男「すみませんでした」
狐子「よろしい」
男「それは君の望みかい」
狐子「事実を述べているだけだと言っておろうに」
男「それなら駄目だ。僕はそんなことしないよ」
狐子「何故じゃ? 一国を亡ぼすほどの美女……美幼女……美妖女? を好きにできるんじゃぞ」
男「僕は君の力になりたいんだ。君を自分のものにしたいわけじゃない」
狐子「……あのもふもふするやつは?」
男「あれは違う、違う違う」
狐子「お主どこで線引いとるんじゃ?」
狐子「へぇ、わしが抱いてくれとお主に鳴いて懇願するまで何もしないというのか」
男「やめてくれ……君の主になるというのは予想外だったんだ」
狐子「そうなのか?」
男「君を支えたいというのは僕の積年の夢だけど、それは対等の立場での話だ」
男「だから君も僕のことを対等に見てくれて構わない。むしろ僕が狐子に望むのはそのことだよ」
狐子「ど阿呆じゃな」
男「ははは、まぁそういうことだから、安心してほしい。それじゃ寝ようか」
狐子「……」
狐子「……これは予想以上じゃな」
女「いらっしゃい」
狐子「ちわっす」
女「ずいぶん俗っぽくなったじゃないか」
狐子「元からじゃ」
女「その通りだね」
狐子「そんなもの気にしてたらいつまでも来れんぞ」
女「まぁ時期が時期だしね。それで、男さんとはうまくやってるかい」
狐子「それなりじゃ」
女「それなりか」
狐子「発狂さえしなければ基本的に真面目なやつじゃよ。その発狂も最近は慣れてきたしの」
女「適応早いな」
狐子「わしを侮ってもらっては困る。ふふん」
狐子「なんじゃ?」
女「こっちこっち」
狐子「なんじゃなんじゃ」
女「……」ガシッ
狐子「ひえっ?!」
女「もっふもっふ」
狐子「こ、こら、やめんか」
女「もふもふもふもふもふもふもふもふ」
狐子「やめてええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ」
女「まったく、適応できてないどころかトラウマになってるじゃないか」モフモフ
狐子「ひぎやああああああああああああああああ」
女「しかしこれ暖かいな」モフモッフ
狐子「おえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛」
女「やりたくなる気持ちもわかる」モフモフ
狐子「じょろろろろろろろろろろろろ」
女「ちょっとした冗談じゃないか」
狐子「冗談で精神崩壊させられてたまるか」
女「君が可愛すぎるのがいけない」
狐子「おい、お主まで変態だとわしの知り合い全滅になるんじゃが」
女「もっと友達を作るべきだな。妖怪の引きこもりなど目も当てられない」
狐子「対人恐怖症になったのは誰のせいじゃ」
女「男さん」
狐子「確かに」
狐子「退魔士なら少しは抗ってみたらどうじゃ」
女「君は知性もあるし妖力もない。警戒する理由はないよ。それに」
女「好きだという感情に抗うのはなかなか難しい。それは君の伝承が証明している」
狐子「ふん」
女「伝承では悪意ある妖狐が王を惑わし国を傾けたそうだが、はたしてどこまでが真実かな」
狐子「あまり図に乗るなよ」
女「……すまなかった」
女「それは……」
狐子「お主が言った気になることというのも、きっとこのことじゃろ?」
女「……参ったな」
狐子「人はすぐ調子に乗る。わしを嘗めるなということじゃ」
女「それじゃ、自分でも気づいているのか」
狐子「違和感はあったからの」
狐子「いや」
女「?」
狐子「参ったと言ったな。ならば、お主の口からはっきりと言え」
女「いいのか?」
狐子「構わん。わしが納得いくまで説明しろ」
女「……確証はないが」
狐子「……」
女「それどころか、妖狐ですらない。妖怪ですらないかもしれない」
狐子「やはり、の」
女「いつから気づいた?」
狐子「この身体、しようと思っても主以外から妖力を摂ることができん」
狐子「人を喰らおうとしたわけではないが、妖怪というのは、大気に漂う精気を取り込むことでも生きていけるはずじゃ」
狐子「だからこそ人喰いが禁じられた今の世でも妖が生きていられるはずじゃろ」
女「まぁね」
狐子「主が死んだら自分も消える、というのもおかしいのぅ。それでは相互利益の契約など結びようもない」
狐子「ふふん、ま、それだけじゃないんじゃがの」
女「というと」
狐子「記憶がないんじゃよ」
女「……」
狐子「最初は封印されていた障害かと思ったが、それにしては不自然なほど記憶がない」
狐子「仮にも数千年生きたはず、にも関わらず、わしがわし自身について知っている情報は男と変わらない」
狐子「変わらなすぎるのじゃよ。あやつの言うことを、否定できたためしがない」
狐子「それどころか、わしは自分が知らないはずのことを何故か知っているということもあった」
狐子「あやつは自分の願望が投影されたなどと、胸中複雑そうな顔をしとったが」
女「それは、おそらく……」
狐子「ん。言うてくれ」
女「君がそのキャラクターだからだ。君は伝説の妖狐ではなく、そのライトノベルのキャラクターだからだ」
狐子「少し違うの。わしはそのきゃらくたーですらない」
狐子「伝承に残る化け狐、その妖を元に作られた作り話、さらにそれを一人の男の妄言、妄想、妄執で塗り固めた存在」
狐子「それがわしじゃ、違うか?」
狐子「大事なことじゃ。失礼にあたる」
女「卑下なんてしないでくれ」
狐子「するわけがなかろう。阿呆」
女「私は君が好きなんだ」
狐子「出会って二度目の逢瀬でそこまで言うてくれるか。ふふふ」
女「友人として、だよ」
狐子「なんじゃつまらんのぅ」
女「茶化さないでほしい」
狐子「勿論じゃ。有り難う、な」
女「む……」
狐子「くっくっく」
女「いくつか前例はある。生霊や怨霊なんかはまさにそれだが」
女「そうそうあることじゃないのは確かだ」
狐子「ふむ……」
女「生霊や怨霊にしても、何かを成し遂げたいという思いが形になったものだ。実体化すれば必ず何かに働きかける」
女「得てしてそういうものは、働きかける対象にしか見えなかったりする」
狐子「わしが見えるのは」
女「男さんだけにしか、姿が見えないんだろう?」
女「そうだね、でも妖怪は人に自分の意思で働きかけることができるし、精気も吸える」
狐子「お主に見えるのはなんでじゃ?」
女「私は退魔士だからね。人が信じるものを見るのが仕事だ」
狐子「お主がいてくれて助かったぞ」
女「それは光栄だ」
女「……いや、嬉しいよ」
狐子「ふふ」
女「……さっきも言ったが、生霊なんてものはそうそう生まれない」
女「いや、男さんなら生霊を生み出すほどの強い思いを持つことも……失言だな」
狐子「よい。あやつが少々いかれておるのは知っておる」
女「すまない」
狐子「よいと言ったぞ。それに、そこまで惚れられたのじゃ。悪い気はせぬ」
狐子「色恋に狂った男の扱いなど、慣れておるでな」
女「……話をもどそう。もしも君が男さんが望んだ生霊であったなら、話は単純だった」
女「もし生霊なら君は彼が望んだ通りに彼を頼り、彼を満足させただろうさ。それが生霊の目的だから」
女「だが君はそうじゃない。彼を拒み、逃げてきた」
狐子「ふん、精神を守るためじゃ!」
女「……もしかして、今もかい?」
狐子「はっはっは」
女「まったく」
狐子「……」
女「あれは妖怪の一歩手前みたいなものだ。多数の人間が信じるから、生霊ほどの力はないにしても、自我の出来そこないのようなものを持つことがある」
女「はっきりとした自我を持てば妖怪になるだろう」
狐子「わしは一つしか知らんな」
女「そう、それだよ」
女「君はサンタクロースだ」
女「棒読み」
狐子「ちっ」
女「知ってたのかい? 自分ではとんでもないことを言ってると思うんだが」
狐子「いや、お主の言うことを疑う必要がないからの。驚く必要もない」
女「……さらりと言うから困るよ」
狐子「せめて場だけでも盛り上げてやろうという優しさじゃ」
女「台無しだ」
女「だが、一介の都市伝説に既存の妖怪と契約を捏造する力も、新たに妖怪を生み出す力もない」
女「もちろん、大妖怪の封印を解く力も持っちゃいない」
女「だけど、男の望む姿になりすますことはできた」
女「人により信じる姿や性格が異なるが故に、確固たる自我が持てないのが都市伝説と妖怪の違いだ」
女「その都市伝説が、生霊という型枠を見つけて入り込んだ」
女「あやふやだったものが、自我を模った」
女「君はあの日生まれたと言ってもいい」
狐子「仮説? わしに嘘をついたのか?」
女「自分なりの結論だ」
狐子「なら胸を張れ。わしはお主を信じるだけだ」
女「……うん」
狐子「よしよし」
女「生霊の皮を被った都市伝説……
と思いきや、もはや男さん一人からしか信じられていないから妖力も失い、妖怪じゃないから精気を吸って生きることもできない哀れな存在」
狐子「おい」
女「あるいは狐耳ロリババアの上サンタとかババア自重だが実は生後数日のペド野郎だったという属性過多の生物」
狐子「おい」
女「もっと短いのもあるな」
狐子「なんじゃ」
女「狐子」
狐子「……ああ、それはいいな。今度からそれで呼べ」
女「そうしよう」
狐子「聞きたいことも聞けたし、そろそろわしも行くとするか」
女「男さんの元に?」
狐子「あやつを今まで放っておいたのも、今ここにわしがいるのも、どうやらわしの責任じゃからな」
女「それは、狐子の責任じゃないよ」
狐子「狐子の責任じゃよ。だがまぁ」
狐子「わしはあやつが嫌いじゃない」
狐子「それだけじゃ」
狐子「さむさむ」
狐子「……」
――――
――
女『なら、私も行こう』
狐子『なんでじゃ』
女『狐子が消えるかもしれない』
狐子『わし、消えるのか?』
女『男さんが自殺でもしたら、消えてしまうだろ』
狐子『この年の瀬に自殺なんてしたら、それはそれでそこまでの男じゃ』
女『狐子が消えていい理由にはならない』
狐子『……』
女『私としてはそちらが怖い』
狐子『心配性じゃな、わしも男も大丈夫じゃから、大人しく待っとれ』
女『ついて行くぐらいいいだろう?』
狐子『わしは、半分あやつ自身じゃ』
女『……』
狐子『人には、見られたく、ない』
女『そうか』
狐子『うむ』
女『なら、待つよ』
狐子『頼む』
女『それじゃ』
女『よいお年を』
――――
狐子「さて」
狐子「帰ったぞー」
男「……うお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛」
狐子「おちつけ」
男「あ、うん。おかえり」
狐子「うむ」
狐子「わしの勝手じゃ」
男「そうだけどさ」
狐子「なんじゃ、寂しかったか」
男「もちろん」
狐子「それなら迎えに来ればよかったのじゃ」
男「狐子に友達ができるのはいいことだ。そんな野暮はしないよ」
狐子「自由意志に任せる、というやつかの」
男「そうそう」
狐子「あー待て待て。その前に話がある」
男「話?」
狐子「うむ」
狐子「わし、この家から出ていくから」
狐子「言った通りの意味じゃ。世話になったの」
男「意味がわからない」
狐子「いきなりこんな狐もどきがやって来て迷惑だったじゃろ。だから出ていく」
男「それは僕の望みだ。構わないよ」
狐子「わしが構う」
男「僕に遠慮なんかしなくていい! 君の助けになりたいんだ!」
狐子「そうか、それじゃわしをこのまま見送ってくれ」
狐子「もふもふ!」
狐子「……いや、まぁ許そう。とにかく、わしはお主と一緒にいたくない」
男「間違いがあるなら直そう。君の好きなように言ってくれ」
狐子「いやいい。とにかく、わしは女のもとで暮らす」
男「退魔士さん……」
狐子「そうじゃ。あやつは退魔士じゃし、妖のわしにはいろいろと都合がいいからの」
男「僕が彼女より劣っているからか」
狐子「いちばんの決め手は劣っているからではない。単純に好みの問題じゃ」
狐子「わしの意思じゃ」
男「僕は……」
狐子「お主、わしのことが好きか?」
男「もちろんだ」
狐子「ならわしに行くなと命令すればいい」
男「それは、できない。僕は君に強制はしたくない」
狐子「ならばわしの好きにさせてくれ。わしとお主は対等なんじゃろう?」
男「僕は君のために何でもしよう。それじゃダメなのか」
狐子「わしはそんなものいらない」
男「……っ!」
男「……」
狐子「心なんてままならんもんじゃ。わしにはお主が言うとおり、人に追われ、人を憎んだ記憶がある」
男「それなら」
狐子「わしの力になってくれるという言葉は嬉しかった。でものぅ、だからと言って、その人を愛することとは話が別なんじゃよ」
狐子「ああ、わしは今、とても酷いことを言っておるな。主様よ、幻滅しておくれ」
狐子「だけど、それは人も妖も変わらない、ままならぬ恋心というやつじゃ」
狐子「さぁの……憎むかや?」
男「……憎いさ」
狐子「ふふ。だが、主様は、それが仕方のないことだともわかっておるはずじゃ」
男「……」
狐子「わしは主様の望みから生まれたのじゃ。主様のことは、いちばんわかる」
男「僕はどうすればよかった」
狐子「前にも言ったのぅ」
狐子「わしに抱いてくれと言わせる気かや?」
狐子「そうじゃな、主様は紳士なお方じゃ」
狐子「だが紳士ならば、決めるときはきっぱり決めるのじゃ」
男「……そうだな」
狐子「ん」
男「」
男「どういうつもりだ」
狐子「さぁの」
男「……まったく、惚れた相手にここまで説教されるとは、情けない」
狐子「ふふふ、その顔なら、もう大丈夫じゃろ」
男「何が?」
狐子「ないしょじゃ」サラ
狐子「……」サラサラ
狐子「」サラサラサラサラ
狐子「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」サララララララララ
男「うおっ」
狐子「なんでじゃああああああああなんで消えるんじゃあああああああ」
男「ちょ、ちょっと待って、消えちゃうのか?!」
狐子「ぐぬぬ、あれか、『もう私の助けはいりませんね』とかいう定番か!」
狐子「お主、わしのこと嫌いになったのか?!」
男「嫌いにはならないさ! 諦めはついたけど」
狐子「ぬ゛びい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛」シュワアアアアアアア
狐子「どうしてそこで諦めるんじゃ! そこで諦めるな馬鹿者!」
狐子「そんなこと言っとらん!」
男「ええー……」
狐子「出ていくというのも嘘に決まっておろうが!」
男「おい」
狐子「わしはその歳になって童貞こじらせてるお主のためを思ってやったのに!」
男「……」
狐子「まったく、自分の主様が童貞こじらしてるとか恥ずかしくてたまらんわ」
男「余計なお世話だ馬鹿野郎!」ゴスリ
狐子「へべれけっ!」サララアラ
男「ど、どうすればいい」
狐子「主をわしに夢中にさせる……」
狐子「あれしか……あれしかないのか……」
男「何か方法があるのか?!」
狐子「お主、ちょっとこっちに来るのじゃ!」
男「こっちか?!」
狐子「もっと近くじゃ!」
男「……」
狐子「……」ペシペシ
男「……がばっ」モフ
男「…………」モフモフモフモフ
男「もふううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう」
狐子「ちっくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
女「おや」
狐子「あけおめ……」ゼイゼイ
男「ことよろ」テカテカ
女「うん、おはよう。いい年になりそうかい?」
おしまい
いい狐子だった
良いSSであった
乙!
Entry ⇒ 2012.01.02 | Category ⇒ 男女「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
響「もしもし」春香「響ちゃん元旦暇?」
春香「あははーやっぱりね」
ガチャ
響「…」ズーン
響「もしもし…」
貴音「夜分遅くに申し訳ありません、四条貴音です」
響「貴音かーどうした?」
貴音「実は元日に初詣に行きたいのですが」
響「うんうん」
貴音「どこか良い所はないでしょうか?」
響「初詣なら明治神宮がいいぞ」
響「それで、もしよかったら自分が案内する…」
貴音「分かりましたありがとうございます」ガチャ
響「…」ズーン
響「はい…もしもし」
真「もしもし、ってどうしたの響?なんか声暗いよ」
響「な、なんくるないさ~」
真「あ、あのさ…もし響がお正月デートするならどこがいい…かな?」
響「え?自分が?」
真「お願い!真面目に答えて欲しいんだ」
響「そ、そうだな~街に出てデパートに行って…あと家でお餅食べたりお雑煮食べたりしたいぞ!」
真「ありがとう参考になるよ」
響(自分、元旦は暇だぞー)チラッチラッ
真「早速雪歩を誘ってみるよ、それじゃ」ガチャ
響「…」ズーン
プルルルルル
響「もう出るのが嫌になってきたぞ」
プルルルルル プルルルルル
響「…しつこいぞ」
ガチャ
響「もしもし」
小鳥「遅い!響ちゃん、電話は2コールで出てください」
響「ごめんなさいだぞ」
小鳥「それでね、えーっと……そうだ、響ちゃん1月1日の予定は無いはずよね?」
響「またそれか…」ボソッ
小鳥「無いわよね?」
小鳥「あれ?おかしいな…私のミス?」
響「何がどうなってるんだぞ?」
小鳥「いえ、響ちゃんのスケジュール確認をしたかったんだけど」
響「スケジュール確認?」
小鳥「そうですよ、もし空いてるならプロデューサーさんが仕事を入れてくれるって!」
響(プロデューサーありがとうだぞ)
小鳥「でも予定があるなら仕方ないですね、仕事はバラしておきます」
響「あ、ちょっと待っ…」
小鳥「それではよいお年をー」ガチャ
響「…」ズーン
響「はぁ…」
ガチャ
響「もしもし」
P「もしもし、小鳥さんから聞いたぞ!響は確か正月はオフじゃなかったか?」
響「えーと……ごめんなさい、自分嘘つきました」
P「どういうことだ?」
響「自分、ぼっちじゃないって見栄張って…思わず小鳥さんにウソついてしまったんだぞ」
P「はぁ、どうしてまたそんなこと」
響「自分、もうプロデューサーしかいないぞ」
P「なんの話だ?」
P「え…?」
響「だから自分と付き合ってほしいと」
P「いや、それは分かるんだが…」
響「ダメなのか?」
P「いや、ダメというわけじゃ」
響「じゃあ自分と…」
P「待て待て、こういうのは順序がだな」
響「…順序が必要なのか?」
P「そ、そうだな…まずはデートから始めないと」
響「デ、デート!?」
P「いや、響が言い出したことじゃないか」
響(プロデューサーとデート、プロデューサーとデート…)
P「あのー響さーん」
響「ハッ、な、何でもないぞ」
P「えーっと…それじゃ響はお正月は予定無いんだな?」
響「うん、そうだぞ」
P「だったら、一緒に初詣に行かないか?」
響「初詣にか?行く!一緒に行きたいぞ」
P「よし、決まりだな」
響「髪の毛もアップにしてお化粧もして」
響「プロデューサーが見たら驚くくらい綺麗になってみせるぞ」
P「響、そこまで俺のことを…」
響「あー…なんかプロデューサーの声聞いてると安心して涙が出てくるさー」
P「お、俺のせいなのか?すまん…」
響「プロデューサーが謝ることないさー」
響「むしろ自分がプロデューサーに付き合ってもらえるなんて想像してなかったのさー」
P「響、ごめん今まで響の気持ちに気付いてやれなくて」
響「代わりにプロデューサーもこれからはなんくるないさを使えばいいぞ」
P「な、なんくるないさ」
響「照れが入ってるぞプロデューサー」
P「なんくるないさー」
響「もっと元気よく!」
P「なんくるないさー!」
響「うん、今のは完璧だったぞ」
P「本当か?やったぜ」
響「その調子でお正月もよろしく頼むさー」
P「おう、これからもよろしくな響」
終われ
どうぞ
38から続きます
響「髪の毛もアップにしてお化粧もして」
響「プロデューサーが見たら驚くくらい綺麗になってみせるぞ」
P「響、そこまで俺のことを…」
響「あー…なんかプロデューサーの声聞いてると安心して涙が出てくるさー」
P「お、俺のせいなのか?すまん…」
響「プロデューサーが謝ることないさー」
響「むしろ自分がプロデューサーに付き合ってもらえるなんて想像してなかったのさー」
P「響、ごめん今まで響の気持ちに気付いてやれなくて」
P「へ?」
響「あのっ、自分、その…春香とか、真とかと電話したけどみんな予定入ってるみたいで…
…せっかくの元日なのに……ひ、一人とか、寂しかったから…つい…」
P「そ、そうか…あはは、すまんな響。何か俺、変な勘違いしちまったみたいで…」
響「でっ、でも!プロデューサー…その、いっしょに過ごしてくれたら、自分寂しくないぞ!」
響「とっ、とにかく元日は頼んだんだぞ!約束だぞっ!」
P「あっ、おい響!まだ全然…ガチャッツーツー
響「…電話、つい恥ずかしくなって切ってしまったさー…」
響「…そういえばプロデューサー、ごめんとか言ってたさ…付き合うってまさか…」
響「いやいやいやっ!!そ、そんなこと有り得ないさー!き、きっとプロデューサーも色々勘違いしてただけさ!
あははっ、プロデューサーもう正月ボケしてるさあ!……」
響「……でも、もしかしたら……どうしよう、自分デートのオーケーも聞かずに電話切っちゃったぞ…」
響「もしかしたら、さっきので嫌われちゃったかも知れないぞ…怒鳴るみたいに切っちゃったし…」
響「…ど、どうしよう…謝んないと…でももう嫌われちゃったかも…プロデューサぁ…」グスン
響「っ!?」ビックゥウウ
響「あっ!プロデューサーから…あ、あのプロデューサー…?」
P「いきなり切らないでくれよ…何かあったのかと心配したぞ。それで、元日の待ち合わせ場所だけどな」
響「! きっ、来てくれるのかっ、プロデューサー!」
P「ぐおおおっ!?だ、だから電話越しにそんな大声出すなよっ!鼓膜が破れるかと思ったぞ」
響「そ、それで!どこにするんだプロデューサー!?自分はマンションの前とかが面倒臭くなくて
大歓迎さー!」
P「あー、もう落ち着けよ響!大体お前のマンションとか住所はわかるけど道筋がわからないぞ」
響「じゃあ、じゃあっ!プロデューサー、明日は事務所にいる?」
P「? まぁ忘れ物を取りに午前中ちょっと寄る予定だが…」
P「まぁそれでいいか。じゃあ一応待ち合わせ時間を」
響「自分、朝イチで事務所に行って待ってるさー!えへへっ、楽しみに待ってるんだぞっ!」
P「あっ、おい!話を最後まで…」ガチャッツーツー
響「えへへへっ、デートっ、デートっ!プロデューサーとデートだぞっ!」
響「どんな服で行こうか迷うぞー…ハム蔵、これなんてどうかな?」
ハム蔵「チュッチュチュッ」
(いやPに謝るとかどうなったんだよ…何このテンション変化?あと裏表逆だぞ)
響「うんうん、ハム蔵も中々いい目してるぞっ!あっ、でもこっちも捨てがたいぞ…うーん」
ハム蔵「チューチュチュー」
(あーもう好きにしろや!言っとくが泣きを見るのはお前だかんな)
響「あっ、これも!これもいいぞ!あーもう、自分カンペキ過ぎて困っちゃうぞ!あははっ!」
響「……プロデューサー…可愛いとか、言ってくれたりして…えへへっ眠れないさー」
P「あ、はい。これが鍵ですね、お手数おかけして申し訳ありません」
P「さてと……っておいっ!響!?」
響「…ぷっ…プロデューサあああっ!うぇええんっ、自分っ、ずっと待ってたんだぞっ!
事務所に来ても鍵開いてなくてっ、いつまで経ってもプロデューサー来ないし…ひどいんだぞー!
うわあああんっ!」
P「ひ、響…メールや留守電見なかったのか?あの後何通か送ったはずだが…」
響「へ…?あ、マナーモードになってるんだぞ…えーと…
『事務所に寄るのは9時頃になる。もう事務所は休業中だから開いてないぞ』…」
P「…なぁ響、お前何時頃ここに来たんだ?」
響「え、えっと…バスの始発に乗ったから、7時頃だぞ」
P「その間、ずっと事務所前の階段に座ってたのか」
響「だ、だって…プロデューサーが、いつ来るかわかんなかったし…ひくしっ!」
響「ぷっ、プロデューサー!あの、じぶ…ひくしっ!」
P「そこのストーブの前に座ってろ…よし点いたな。下で何か買ってくるから待ってろよ」
響「プロデューサー…その、ごっ、ごめんな…ひくしっ!…あ、行っちゃったんだぞ…」
響「…あったかいさー………うっ、ひくっ…じっ、自分っ…まっ間抜けすぎるさあ…ぐすっ…」
響「プロデューサーに、ひくっ…昨日の電話の事もっ、謝れてないしっ、服選びに浮かれてて
メールにも気付かないしっ……プロデューサぁ…ごめん…プロデュっ、サーっ…自分っ
響「ぷっ、プロデューサー……自分っ、自分っ…!うわあああんっ、ごめんっ!ごめんなさいっ!
プロデューサーにっ、こんなに、迷惑かけちゃってっ、自分っ…うえええっ!」
P「どわあああ!?ひっ、響!声でかっ「うわああああん!!プロデューサあああっ!自分っ自分が情けないぞっ!うぇええんっ!!」
響「うっ、ぐすっ…自分っ、プロデューサーに電話した時…は、恥ずかしくってあんな乱暴に
電話切っちゃったんだぞ…そのあとっ、謝ろうって思ったけど…嬉しくって…結局謝れなくてっ…」
P「何だ、そんな事で泣いてたのか」
響「そんな事なんかじゃないぞっ!…自分、プロデューサーにすぐに謝んなきゃなんないのに……
結局謝れたのは今なんだぞ…プロデューサー、ごめん…あの、その…自分のこと、嫌いになった?
P「……嫌いになる訳ないだろ」
響「…ほんとさー?」
P「響はさ、確かに調子に乗りやすいし人の話最後まで聞かないし忘れ物は多いし…」
響「…うん、そうかもしれないさー…」(そ、そんなにひどいのか自分…)
P「でもそうやって正直に心から謝れるじゃないか。俺は響のそーいうとこ…えーと…大好きだぞ」
P「……あー、ほら肉まん冷めちゃうぞ!熱い内に食え!」
響「え、あ、うん…あちちっ!やけどしちゃうさー!」
P「落ち着いて食えったら!直に掴んで食うもんじゃ無いぞそれ!」
響「はふっ、はふっ…ご、ごめんさープロデュ…ふぁっくしっ!…あっ、プロデューサー…」
P「…おい、響。ちょっとおでこ見せろ」
響「プロデューサー、肉まんのお化けみたいさー」ズビッ
P「ええい、余計な事を言うな!…風邪引いたなお前」
響「そういえば何か頭ぼーっとするさー…ひくしっ!」
P「バカ!さっさと車乗れ、送ってくから」
響「あっ、ちょっと待って!えーっと鏡、鏡…」
P「ほらティッシュ!そこら辺にぬりつけるなよ」
響「ううー、ごめんプロデューサー…ねぇプロデューサー…」
P「何だ響、年末年始に開いてるクリニックとかもう無いぞ」
響「自分、今は寂しくないぞ」
P「…ばか」
おわり。
________ /::::::/l:l
─- 、::::;;;;;;;;;`゙゙''‐ 、 __,,,,......,,,,_/:::::::::/: !|
. : : : : : : `゙'ヽ、:::゙ヾ´::::::::::::::::::::::`゙゙゙'''‐'、. l| またまたご冗談を
、、 . : : : : : : : : r'":::::::::::::::::::::::::,r':ぃ::::ヽ::::::::ヽ! ,、- 、
.ヽ:゙ヽ; : : : : : :ノ:::::::::::::::::::::;;、-、、゙::: rー-:'、 / }¬、
. \::゙、: : : :./::::::::::::::;、-''":::::::::: ,...,:::,::., :::':、 _,,/,, ,、.,/ }
ヽ:ヽ、 /::::::::::::::::::::::::: _ `゙''‐''" __,,',,,,___ /~ ヾ::::ツ,、-/
`ヽ、:::::::::;;;、、--‐‐'''''',,iニ- _| 、-l、,},,  ̄""'''¬-, ' ''‐-、 .,ノ'゙,i';;;;ツ
_,,,、-‐l'''"´:::::::' ,、-'" ,.X,_,,、-v'"''゙''yr-ヽ / ゙゙'ヽ、, ,.' j゙,,, ´ 7
,、-''" .l:::::::::::;、-''" ,.-' ゙、""ヾ'r-;;:l 冫、 ヽ、 / __,,.ノ:::::ヽ. /
l;、-'゙: ,/ ゞ=‐'"~゙゙') ./. \ / '''"/::::;:::;r-''‐ヽ
,、‐゙ ヽ:::::..,.r'゙ ,,. ,r/ ./ ヽ. ,' '、ノ''" ノ
,、‐'゙ ン;"::::::. "´ '゙ ´ / ゙、 ,' /
' //::::::::: {. V /
/ ./::::::::::::: ', / /
. / /:::::::::::::::::. ',. / ,.、 /
響「ひっくし!」
はいさーい!自分、我那覇響!この一年間風邪1つひいてこなかった自分だけど、年の瀬も
押し迫った今日、遂に風邪をひいちゃったんだぞ……でもでも!自分、すっごく幸せなんだ!
P「鼻の下こすっちゃ駄目だぞ響、摩りきれてしみるからな」
響「うー、でもむずむずして我慢できないぞ……ふぇっくし!」
何とプロデューサーが、時々やって来て面倒見てくれるんだ!
こんなんだったら自分、一年中風邪ひいてたっていいんだぞ!
響「うえーん、プロデューサー…鼻が痛いさぁー…」
P「お前またこすっただろ…ほい、軟膏。」
P「アホな事言ってないでさっさと治してくれよ…」
響「んー……?(何か口に入ってるさ…苦いさー)あむぅ……?」
P「わーっ!響っ、放せったら!口に指がっ…!」
響「……あーっ!ご、ごめんさあプロデューサーっ、ついぼーっとしてて…」
P「全く…お前口の中、大丈夫か?ゆすぐか?」
響「え…だっ、大丈夫さぁー…」
響(じっ、自分、プロデューサーの指…舐めちゃったぞ…)
響「う、うん…あの、プロデューサー…ひくしっ!…ううっ、また帰っちゃったんだぞ…」
響「プロデューサーの指…プロデューサーの匂い…」
響「な、何だか身体がかっかしてきたさー!早めに寝ちゃった方が風邪の治りも速いさー!」
響「………プロデューサぁ…全然眠れないぞ…あの時の服……」ゴソゴソ
響「可愛い、よね…?プロデューサーは可愛いって、言ってくれるよね?…」
響「…自分、プロデューサーのことばっか考えてるぞ…プロデューサーは何考えてるのかな?」
響「プロデューサー…プロデューサぁ…」
P「お、開いた…っていぬ美とハム蔵じゃないか。響はどうしたんだ?」
いぬ&ハム「バウバウッ、チューチュッ」
P「何だよそんなに引っ張るなって…あれ、響っ!?」
響「はいさーい、プロデューサーっ!我那覇響っ完全復活だぞっ!」
P「え、おい響、寝てなくていいのか?」
響「言ったでしょ、完全復活って!一晩も眠ればあんな風邪一発さー!」
P「そ、そうか…でも、その格好は」
響「……あの、プロデューサー。自分、風邪直ったし…元日のデートの約束…守ってくれる?」
P「あ、ああもちろんだが…本当に大丈夫か、響?」
響「だーかーらー!大丈夫だって言ってるさー!ほらっこの服、とっても似合ってるぞ!えへへっ」
P「っ! おいっ響っ!」
響「これならプロデューサーも…あれ?」
響(な、何だか頭がぐるぐる回ってるさー…プロデューサー…また迷惑かけちゃったぞ…)
響「あっ…」
P「zzzz…」
響「プロデューサー…寝ちゃってるぞ……」
響「…ごめんさー…何度目になるのかわかんないけど…」
響「プロデューサーの事考えると、自分、歯止めが利かなくなるんだぞ」
響「嬉しくって、わくわくして…いつの間にか体が動いちゃうんだぞ」
響「だから、プロデューサーにたくさん迷惑かけてるさー…でも、でもっ…
都合良すぎるし、わがままかもしれないけどっ…自分、プロデューサーの側にいたいぞ…」
響「だから…だから自分、プロデューサーに嫌われたくないさ…
お願いだから……プロデューサー…」
P「………」
響「プロデューサーは……あはは、いるはずないさー…」
響「あ、もう6時……歌合戦始まっちゃうぞ……」
ハム蔵「チュッ」
響「ハム蔵……あはは、ごめんごめん。すぐご飯作るさー」
P「バカ、病人が何言ってんだ」
響「うわああああっ!?」
P「…相変わらず大きい声だな。それくらい出せりゃもう治りかけだろ。」
響「ぷ、プロデューサー!?帰ったんじゃなかったの!?」
P「なあ響、いいことを教えてやるよ。俺の家はなぁ…」
響「ぷ、プロデューサーの家は…?」
P「NHKが映らないんだよ。というかデジタル放送自体映らん。」
響「………ぷっ、あははははっ!!な、何だそれ、今時有り得ないんだぞっ、あははははっ!」
P「ええい、うるさい!だったら俺の給料をテレビが買い換えられる位に上げてくれよっ!」
響「あはははっ、ひぃっ、苦しいんだぞーっ!あははっ」
P「……やっぱ響は、そういうのが一番似合うよ」
響「…え?」
P「あ、おい響。あの服だけどな…」
響「う、うんっ」
P「うーん、少しというか、大分…ないと思うぞ?」
響「……うっ」
P「あっ、そのだな!個性的だが一般性に欠けるってことで…」
響「うわあああああんっ!ひどいんだぞっ、プロデューサー!」
今度こそおわり。
で、元旦デートはまだですか?
Entry ⇒ 2012.01.02 | Category ⇒ アイマスSS | Comments (0) | Trackbacks (0)
主人公「うわっ……俺の強さランク、低すぎ……?」
主人公「おはよう、相棒。お前もモーニングコーヒーか」
相棒「おお、おはよう」ガサッ
主人公「朝っぱらからカフェで新聞とはシャレてるじゃんか。さすがインテリ」
相棒「インテリじゃなくても新聞くらい目を通すだろうが……」パサッ
主人公「俺は情報は読むんじゃなく、実際に目で見て入手する主義なんでな」
相棒「はいはい」
主人公「ところで、なんか面白い記事あったか?」
相棒「相変わらず、帝王を称える記事がほとんどだな」バサバサッ
相棒「あとは──え~っと……」ペラッ
相棒「お。なんか外の世界で、俺たちの世界の強さ議論が流行ってるそうだぞ」
相棒「外の世界の奴らが俺たちの活躍度合いを分析して、強さの序列を決めるらしい」
相棒「けっこう議論が白熱してるってハナシだ」
主人公「っかぁ~~……くだらねェ」
主人公「そんなこと議論するヒマがあったら、テメェの強さを磨けっていいたいね」
相棒「ハハ、お前ならそういうと思ったよ」
相棒「えーと、他に面白いニュースは……と」バサバサッ
主人公「おい」
相棒「なんだ?」
主人公「その序列って新聞に載ってるのか?」
相棒「ああ」
主人公「ちょっと見せろ」バッ
相棒(興味あるんじゃん……)
【強さランキング】
S 帝王
A 師匠 四天王(雷) ドラゴン
B 相棒 四天王(炎) 四天王(笑) 忍者
C 町民A 四天王(水) アサシン ナイト 盗賊団ボス
D 町長 主人公 盗賊団員 カフェ店員 町民B
E ザコ カス ゴミ クズ ダニ
※同ランク内は左の方が強い
主人公「……ふ~ん」
相棒「!?」
主人公「強さをひけらかすタイプでもないし、このくらいで十分だ」
相棒「え、え……?」
主人公「相棒はBか……。もう少し努力した方がいいかもな。今から特訓やるか?」
相棒「お、おい主人公」
主人公「ん?」
相棒「お前、ランキングの見方、ちゃんと分かってるか?」
主人公「どうって……アルファベットが大きい方が評価が高いんだろ?」
相棒「逆だよ! Eが最低で、小さいアルファベットの方が上なんだよ!」
主人公「え、マジで?」
主人公「一番上のSってなんだよ」
相棒「ん~……多分スペシャルかなんかの略で、Aよりも上って意味だよ」
主人公「じゃあSから数えて、A、B、C、D……。D……D……」
主人公「うわっ……俺の強さランク、低すぎ……?」
相棒「低すぎってことはないだろ。まだ下にEがあるんだから」
主人公「Eなんてザコとかダニとか、ろくなのがいねーじゃんか!」
主人公「実質Dが最低ランクだぞ、この表!」
相棒(それはいえる)
主人公「Aランクには──師匠!? 師匠こんなに強かったのかよ!」
主人公「免許皆伝くれたけど、俺はDで師匠はAってどういうこと!?」
主人公「俺、とっくに師匠超えしてるとばかり……」
相棒(きっと才能なかったから、免許皆伝の基準を下げてあげたんだろうな)
相棒(あるいは育てがいがないから、さっさと追い払いたかったとか……)
主人公「くそっ、今度家行って問い詰めてやる!」
主人公「あとは、ん~……やっぱAランク、Bランクはそうそうたるメンツだな」
相棒「四天王やドラゴンなど、猛者ばかりが集っているな」
主人公「……いや、ちょっと待てよ」
相棒「知らないよ。議論してる奴らに聞いてくれ」エヘッ
主人公「なんだよ、なんかちょっと嬉しそうな顔しやがって!」
主人公「そういやさっき、さりげなく自分も猛者扱いしてたしよ!」
主人公「心の中で俺のことを、D野郎とか思ったんだろ!?」
相棒「お、思ってないよ(D野郎……プッ)」
主人公「俺がDで、お前みたいなインテリがBとか、全然納得できねーわ」
相棒「俺に悪態ついてもしょうがないだろ……」
主人公「勝負しろよ」
相棒「え?」
主人公「お前を負かして、俺もA~Bランクの実力があるって証明してやるよ」
主人公「いってぇ……マジで殴りやがって……くっ」
相棒「お前がいきなり飛びかかってくるからだろうが。ビックリしたよ」
主人公「へへへ……でも今の攻撃で分かったぜ」
相棒「?」
主人公「お前と俺の実力は、BとDって2ランクも差がつくほど離れちゃいない」
主人公「2ランクも差があったら、俺は無事じゃ済まなかっただろうしな」
主人公「俺が一つ上のCなのか、はたまたお前がCなのか、のどちらかだ」
相棒「………」
主人公「まぁ、そろそろこの話題はやめて──」
相棒「もう一回やろうか」
主人公「え?」
相棒「BランクとDランクの差、思い知らせてやるよ」
相棒「ミゾオチに本気で入れたからな、しばらく立つどころか、しゃべるのも無理だろう」
主人公「ふぉっ、ごほっ……(こ、こいつ、こんなに強かったのか……!?)」
相棒(少しやりすぎたかな)
~
主人公「ふう、ようやく呼吸が落ち着いてきたぜ」
相棒「悪かったな、俺もついムキになってしまった」
主人公(おかげで自信がつきました、ってツラにしか見えねーよ)
主人公「ちくしょう……。なんとか強さランクを昇格させたいな」
相棒「いきなりBってのはやはり荷が重かったんだよ。BはAのすぐ下なわけだし」
相棒「まずはBより格下のCから攻略すればいいんじゃないかな。Bはまだまだ先だな」
主人公(クソッ! B、Bと強調しやがって、このB野郎!)
相棒「じゃあ、そろそろ店を出ようか」ガタッ
カフェ店員「どうもありがとうございました」
主人公「………」ジーッ
カフェ店員「お客様? なんでしょうか?」
主人公「………」
D 町長 主人公 盗賊団員 カフェ店員 町民B
主人公「お前、俺より下だな」ニヤッ
カフェ店員「は……?」
相棒「よ、よせよっ! 出るぞっ!」グイッ
カフェ店員「………」
カフェ店員(なんかムカついたぞ……)
主人公「よし、Cランクのだれかと戦うか。え~と、メンツは……」ガサッ
C 町民A 四天王(水) アサシン ナイト 盗賊団ボス
相棒「水の四天王と盗賊団ボスは、もう俺らが倒したから除外だな」
主人公「なんで俺たちが倒した相手が、俺よりランク上なんだよ。おかしいだろ」
相棒(二人とも、ほとんど俺が倒したようなもんだったしな)
主人公「アサシンは神出鬼没だし、ナイトは城に行かないと会えないからなー」
相棒「じゃあ、消去法で町民Aだな」
主人公「よし、見つけ次第ぶっ倒してやる」
相棒(気の毒に……)
主人公「お、さっそく出やがったぜ」
相棒「待て、あいつは町民Bだ。Aじゃない」
主人公「チッ、お前と同じB野郎か。町民Bの強さはどんなだ?」
相棒「え~と……お前と同じDだ。Dの一番右だから、お前より下だな」
主人公「えっ、俺より下なの!? よっしゃ!」スタスタ
町民B(主人公さん……?)
主人公「よう」ジーッ
町民B「ど、どうも。どうかしたんですか? 私の顔になんかついてます?」
主人公「お前は俺より──下だ!」ニヤッ
町民B「えっ?」
相棒「いやいやいやいや、何でもない何でもないんだ。こっち来い!」グイッ
町民B「………」
町民B(なんか腹が立ったぞ……)
主人公「よし……」スタスタ
町民A「あ、主人公さんじゃないっすか」
主人公「よう、俺と勝負──」
町民A「あ、今朝の新聞読みました? 主人公さんDだったんスね、主人公なのに」
町民A「いやぁ~ちなみに自分はCだったんスけどね。あ、CってDより上っすよ」
町民A「主人公さん……Dって! Dはないっしょ! だって実質最下層じゃないスか」
町民A「主人公さんってDをデーって発音しそうっすよね。色々と頭が古そう、悪い意味で」
町民A「あ、なんか涙ぐんでます? いやメンタルもDランクなんスね~ハハ」
町民A「Dとか自殺するレベルっすよ。Dじゃいくら主人公さんでも尊敬できねっすわ」
主人公「うっ……うるせぇぇぇっ!」
バキッ
町民A「いやぁ~図星突かれたからって殴りかかるとか、主人公さんマジDっすね!」
町民A「しかも先手打っておいて負けるとか、主人公さんのD級っぷりパネェっす!」
町民A「もうDすぎて、お先真っ暗っすね! Dとかないっすわ、ジッサイ!」
町民A「もう終わりっすか? Dパワー炸裂させて、立ち上がってDって下さいよ!」
相棒「おい」ポン
町民A「ん? なんスか?」
相棒「俺はそいつの相棒なんだけどさ」
町民A「え、あの……」ガクガク
相棒「俺のランクも知ってるみたいだな。じゃあこれからどうなるかも分かるよな?」
町民A「いや……えぇと……その、っすね……」ブルブル
相棒「選手交代。第二ラウンド始めようか」
相棒「立てるか?」スッ
主人公「……大丈夫だ」
主人公「すまねェな、助けてもらって。さすがに自分が情けなくなったぜ」
相棒「いや、これはお前の悩みに真剣に取り組まなかった俺のせいだ」
主人公「なにいってんだよ、ハハ」
相棒「俺はお前より2ランクも上に評価されて、正直舞い上がっていた」
相棒「だがお前が町民Aにバカにされてる時、なんだか自分のことのように腹が立ってな」
相棒「やっぱり俺だけBランクなんておかしい、と感じたよ」
主人公「なんだよ、急にしおらしくなるなよ。もう気にしてねーし」
相棒「……ダメだ。お前のランクを上げなければ、俺の気が済まない」
相棒「目標は、一週間以内にAランク入りだ」
主人公「───!」
主人公(目標高すぎじゃね……!?)
主人公(一週間以内かぁ~、とりあえず今日はもう一度町民Aに挑むか……)
相棒「おはよう」
主人公「よう」
主人公「さっそく町にランク上げに行くから、一緒に来てくれよ」
相棒「悪いが、今日ちょっと用事があってな」
主人公「え?」
相棒「すぐ戻るよ」スタスタ
主人公「ちっ、なんだよオイ」
主人公(俺にあんなムチャ目標立てておいて、結局放置プレイかよ)
主人公(まあいいや、俺は俺で頑張らないとな)
カフェ店員「昨日はどうも」ザッ
主人公「ん? ああ、カフェの人か。今日は店じゃないの?」
カフェ店員「休みをもらったんですよ、大事な用があるんで」
主人公「ふうん。じゃあまた今度寄らせてもらうよ」クルリ
町民B「こんにちは、主人公さん」ザッ
主人公「おお、町民Bじゃないか。アンタとも昨日会ったな(町民Aを探したいのに……)」
カフェ店員「ふっふっふ」
町民B「くっくっく」
主人公「?」
町民B「主人公さん、今ここにいる3人の共通点、分かります?」
主人公(な、なんだよ突然)
町民B「ハハハ、実はですねえ、ここにいる3人は全員Dクラスなんですよ」
主人公「(強さランキングの話か)あ、あぁそういやそうだった。奇遇だな」
カフェ店員「この中で一番序列が上なのは、あなただ」
主人公「ん……あぁ、たしかそうだったな」
町民B「だから昨日、私をバカにしたんですよね。俺が上だ、って」
主人公「!」
主人公「いや、別に悪気があったわけじゃ……」
カフェ店員「ボクもいわれました。あの言葉、けっこう傷つきましたよ」
町民B「私たち意気投合しましてね、今日は二人がかりで腹いせさせてもらいます」
主人公「おっ、おいやめろっ──!」
主人公「う……ん……」
主人公「朝か……」
ガバッ
主人公「くそっ、一晩寝ても体中がいてぇ……!」
主人公「あそこまでやるか、フツー。たしかに俺も悪かったけどよぉ」
主人公「相棒も帰ってこなかったし、なんなんだアイツ! ちょっと無責任だぞ」
主人公「ちぃぃっ! とにかく今日こそ町民Aと戦って勝つ!」
主人公「おい」
町民A「!」
主人公「勝負しろっ!」
町民A「また来たんスか、D級主人公さん。またD的なやられ方するだけっすよマジで」
町民A「こないだやられたのにまた来るとか超D的発想っすわ。学習していないんスか?」
町民A「こっちも忙しいし、Dとかにかまってられないんスわ。自分、ランクCっすから」
主人公「うるさい! こっちは相棒にムチャ目標立てられてんだ! 勝負!」
町民A「全然イミフっす。まーCとDの格差社会をレクチャーしてやるっすよCDっぽく」
町民A「CDってコンパクトディスクじゃないっすよ、あんたの死のカウントダウンっす」
町民A「あ、俺CだしCのカウントダウン、なんつって! やっべ俺マジCすぎて惚れる」
主人公(ウゼェ……)
町民A「DEATH寸前っすね、さすが主人公さん。マジDな弱さパネェっす!」
町民A「いや~Dってマジ最悪っすよね。主人公さん、Cな俺の足元にも及んでないっす」
町民A「でもDなあんたボコって、またBっぽい相棒さん来ちゃうとメンドーなんで」
町民A「このへんにCとくっすよ、マジもう来ないで、Dなんかと関わりたくねェし」スタスタ
主人公「うぅ……」ガクッ
主人公「あ~体動かねぇ」
主人公「俺、よええ……」
主人公「もう、いいや……めんどくせェ」
主人公「Dでいいよ、Dで……」
主人公「明日、町長になんとか勝って、とりあえずDのトップで我慢しよう」
主人公(また強さ議論が載ってる……変動があったのか?)
主人公「………!」ワナワナ
【強さランキング】
S 帝王
A 師匠 四天王(雷) ドラゴン
B 相棒 四天王(炎) 四天王(笑) 忍者
C 町民A 四天王(水) アサシン ナイト 盗賊団ボス
D 町長 盗賊団員 カフェ店員 町民B
E 主人公 ザコ カス ゴミ クズ ダニ
※同ランク内は左の方が強い
主人公「……どうなってんだ、こりゃ」
主人公「絶対おかしい! どういうこと!?」
主人公「なんで俺のランクがEに落ちてんだよ!」
主人公「まさか……おとといカフェ店員と町民Bに負けたからか!?」
主人公「あんなもん、二人がかりじゃねーか! ノーカウントだろうが!」
主人公「同じランク内で一対二とか、勝てるわけねェじゃん!」
主人公「クソッ!」グシャグシャ ポイッ
主人公「はぁ……はぁ……」
主人公(もう町長に挑むどころじゃない)
主人公(これじゃ表に出られねェよ……恥ずかしくて……)
主人公(主人公なのにEじゃ……生きていけない)
主人公「相棒には悪いけど、もういいや……」
主人公「二度寝しよう」ガバッ
主人公「結局あれから一度も戦わなかったな……」
主人公(つーか、ずっと家に引きこもってたし)
主人公「Eってのも気楽でいいや。これ以上落ちないし」
主人公「気楽でE、なんつって、ハハハ……ハハ」
主人公「相棒もどこ行ったんだ、全然戻ってこねぇ。俺、もしかして見捨てられた?」
主人公「……今日の新聞か」ガサガサッ
主人公(お、また強さランクが載ってる)バサッ
主人公(Eの下にさらに俺専用のFとかできてたりして、ハハ)
主人公「!」
主人公「な……」
主人公「な、な、な」
主人公「なんじゃこりゃあ!?」
S 帝王
A 師匠 主人公 四天王(雷) ドラゴン
B 相棒 四天王(炎) 四天王(笑) 忍者
C 町民A 四天王(水) アサシン ナイト 盗賊団ボス
D 町長 盗賊団員 カフェ店員 町民B
E ザコ カス ゴミ クズ ダニ
※同ランク内は左の方が強い
主人公「この数日で、いったいなにが起きたんだ!?」
主人公「俺一度も戦ってないのに……(それどころか家で寝てたのに……)」
主人公(少し気がひけるが、町に出て人に聞くしかねえな……)
主人公(なんか……町中の俺を見る目が変わった……?)
町民A「主人公さんキター! A級な主人公さんカッケー、マジAな佇まいっすね!」
町民A「スゲェっす! あの最強の四天王キリングしちゃうとかパネェっす!」
主人公「?」
町長「すごいのう! 雷の四天王は帝王の部下の中で一番強いといわれておったのに……」
主人公「??」
カフェ店員「この間はすいませんっ! Aランクの実力がありながら、隠していたとは……」
町民B「わ、私も謝りますっ! と、とんだ無礼を!」
主人公「???」
主人公(相棒がいなくなって……戦ってない俺のランクが上がって……はっ)
主人公「ま、まさか……あのバカ……!」
主人公「どいてくれっ!」ダッ
カフェ店員「うわっ!?」
町民B「ど、どこへ行くんですっ!?」
町民A「やっべ主人公さん、足の速さもAっすね! マジモンの超A的速度っすわ、惚れた」
町長「町をあげてこれから祝賀会を──」
主人公「それどころじゃないっ!」ダダダッ
主人公「うおおおおっ!」ダダダッ
主人公「ハァ、ハァ、ハァ……」
主人公「ホントに壊滅してやがる……!」
主人公(どこもかしこも死体だらけだ。きっとあいつがやったんだ)
主人公「相棒っ、どこだ! いたら返事してくれっ!」
主人公「……二人倒れてる」
主人公(一人は──雷の四天王だ! どう見てもカミナリ様だし!)
主人公(もう一人は……俺、の格好をした──)
主人公「相棒っ!」ダダッ
主人公「相棒っ! おいっ! 起きてくれェ! うわぁぁっ!」グイッ
主人公「お前がこの一週間俺のフリして戦ってる時に、俺は……すまねぇぇっ!」
主人公「……ん」
主人公「いっけねえ、眠ってた……」
主人公(懐かしい夢だったなぁ)
主人公(あれから俺は反省して、猛烈に修業して強くなったんだ──)
主人公(そういや、今の強さ議論のランキングってどうなってんだ?)
主人公(今はいつでも携帯端末から見られるんだっけか)
主人公(あれ以来、ランキングなんて気にしない、って全く見なくなったからなぁ……)
主人公(見てみるか)
主人公「………」カチカチッ
主人公「うわっ」
SSS ワリカン神 主人公(覚醒)
SS サイボーグ相棒 ネコババ神
S 主人公(通常) カレーうどん
A 町民A 忍者 カス 地獄ニート 四天王(笑)
B アル中 アサシン ゾンビ師匠 ストーカー イケメン インチキおばさん 都民A
C 独裁皇帝 ナイト 専業主婦 都民C 市民B 駄犬
D 恐怖のまんじゅう 強盗 無敵王 接待ゴルフ 陰毛マスター
E 市民A 八百屋 教祖 上級兵 ハゲ 闇の伯爵 ホスト
F 都民B いいちこ 帝王 師匠 ドラゴン タクシー運転手
G 四天王(雷) ヘルニア 相棒(人間時代) 四天王(炎) 四天王(水) 盗賊団ボス
H 町長 ひったくり 盗賊団員 カフェ店員 町民B ザコ ゴミ クズ ダニ
※同ランク内は左の方が強い
主人公「……えらいことになってんな」
主人公(いつの間にかランクも増えてるし……。Hとか、SSSとか)
主人公「え、と、俺は普通の状態だと、Sランクなわけだな」
主人公(つーか、地味に町民Aスゲーな。どんだけインフレに食らいついてくるんだか)
ガチャッ ガチャッ ガチャッ ウイーン
主人公「ん? おお、オイル補給終わったのか」
相棒「ふぅ……まったく長旅だと不便だよ、この体は」ウイーン
主人公「愚痴ってないで、さっさとあの巨大要塞に乗り込もうぜ」
相棒「そうだな。俺の背中に乗れ、ジェット噴射で突撃するぞ!」
主人公「おうよ!」ヒョイッ
主人公「Sランクに恥じない戦いをしないとな!」
相棒「?」
おわり
乙
Entry ⇒ 2012.01.01 | Category ⇒ その他 | Comments (0) | Trackbacks (0)
妹「一年間ありがと…スゴック恥ずかしいけど、チューしてもいい…?」
有無を言わさぬ慈愛の掌衣でもって対象を優しく包み込み
先日>>2-1000が数里も先からその殺気に気づき
開くスレを変えた程の精神統一の業を経て蓄積した
>>1の 渾身の全オーラを
目も眩む恒星のごとき腹筋スレに変え撃ち放つ
無慈悲のID腹筋である
γ⌒入__ /ー'´ ヘ
_,,-ゝ⌒ ̄==ヾ~ー-==( ヘ
_/ ノ,j ==/ヘヘヘ
// ⌒0 ノ> 〃ア⌒>、 _,,-―--、
i´《0 /ヘ ~ //,==、 ||( /ヾ、\,,===、, \___
__,vr‐、ヾ、 ヾノ />゙´ (、__,)ノ ||ヘヘi|///\\) >´,,ッ'´
_,/\\ノ \ーi iァ´/ _,,,=‐ヨ ヘー=、( ( 〇 刀~|
_∠≧\ \ノト=、\| |/=≡三三三三ヨ ヘノノ=ヽ ヽ、,,、 ノノ ノ
┌'´ ,,,,,-‐y⌒>\≡〕〕 ト=≡≡≡≡≡シ、ノY \、 i/|〉 ,/
(( / /=( /ヽ ~、(⌒ヽ _,-ーイ 人__,-、 ゙ー| |i-''´
Y | / : ゙'',,)) \、゙=― ̄ ̄__|/ //i| V
\ ( _,,,,;;;(,ノ三=_ ゙ー〕=ニ二二 \// ノ
\コ「 |;;/ ~~==、/ー「γ‐、|| 〉ー=_/ イ
!ヘ( トー| ((__ノ|| ,-―= ヘ/^ヽ
ヽ、> __,/ ヾヽL__ノ / O-=‐-、 |
_/ \ ヽヽ\ \ノ |//⌒゙''ー‐┐
/',,-、 \ヽ、 ,У゙^\ \ |_,-‐、_ |
/《-⌒ヽ、 `≫ ヽ==イー'⌒ー-、j
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