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許嫁「なに?あなた誰からもチョコレート貰っていないの?」
許嫁「クラスの女子がみんなに配ってるような義理チョコも?」
男「ちょうど配ってるときに呼び出しがあって貰えなかったんだよ……」
許嫁「一緒に呼び出されてたイケメン君は後で貰っていたわよ」
男「えっ……」
許嫁「あなたくらいじゃないかしら。貰っていないのって」
男「べ、別に気にしてないし……」
許嫁「強がっているのが見え見え」
男「そ、そういえば、お前昨日なんか作ってたじゃん?それって……」
許嫁「ああ、それイケメン君にあげてしまったわ」
男「」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1329133042/
許嫁「なに?あなた誰からもチョコレート貰っていないの?」
許嫁「なによ」
男「いや……でも……」
許嫁「イライラするわ。ハッキリと言いなさい」
男「それって……本命……?」
許嫁「はい?」
男「いや…その……手作りだったし……それにあんなに時間かけて……」
許嫁「だからなに?」
男「」
許嫁「別にいいでしょう?親が勝手に決めた婚約なんだから。あなただって本気にしてはいないでしょう?」
男「いや……その……」
許嫁「はいはい、この話はもう終わり」
男「………」
男母「お粗末さまでした」
許嫁「……そういえば男は?晩御飯だというのに降りてきませんでしたけど」
男母「どうしちゃったんでしょうね。寝てるのかしら?」
許嫁「そうですか」
男母「疲れてるのかしら。許嫁ちゃん何か知ってる?」
許嫁「……いえ、何も」
男母「そう。まあ、別に気にしなくていいか」
許嫁「…………」
許嫁「なにしているの。晩御飯冷めてしまったわよ」
男「ほっとけよ……」
許嫁「なによ、義理チョコ一つも貰えなかったくらいでウジウジと」
男「本命も貰えなかったけどな……」
許嫁「義理すら貰えないような人が本命を貰えるわけないでしょう」
男「………」
許嫁「そんなに欲しかったの?」
男「……………」
許嫁「ハァ……ウザ……」
男母「あら、やっと起きてきたのね」
男「……許嫁、どっか行ったの?」
男母「ええ、少し出かけてくるって」
男「へえ。どこ行ったんだろう…」
男(イケメンの所かな……)
男母「ご飯はー?」
男「……食欲ないからいいや」
男母「また寝るの?寝てばっかりもよくないわよー」
男「………」
男母「おかえりなさい。あら、買い物に行ってたのね」
許嫁「ええ。少しコンビニに行ってました」
男母「そう」
許嫁「そういえば、男は起きてきましたか?」
男母「さっき起きてきたけどまた寝ちゃったわ」
許嫁「そうですか。どうしようもないですね」
男母「本当、あの子はぐーたらしてばっか」
許嫁「ふふっ……」
許嫁「はい、おやすみなさい」
男母「許嫁ちゃんも早く寝るのよ」
許嫁「はい」
ガチャン
許嫁「………」
許嫁「……さてと」
許嫁「ハァ……めんどくさ……」
男「……喉乾いたな。水でも飲みに行こうかな」
男「………」
ガチャ
許嫁「………!」
男「あれ、許嫁?何して……」
許嫁「ちょ、ちょっと。こんな時間に起きてきてなんなのよ」
男「許嫁こそこんな時間まで何してるんだよ」
許嫁「関係ないでしょ。ほら、あっち行って」
男「いや、俺水飲みにきたんだけど……」
男「そんな汚いことしないから」
許嫁「とにかく、今キッチンはダメだから」
男「どうしてだよ」
許嫁「どうしてもよ」
男「何か作ってるの?ちょっと入るだけだからさ」
許嫁「ダーメー!」
男「はーなーせー!」グググ
許嫁「なによ、今さらこれくらい」グググ
男「なんなんだよもう!」
許嫁「本当にダメだから!」
男「ちょっとだけだから!」グイッ
許嫁「………!」
男「はあ…やっと解放された……ん……?」
許嫁「……なによ」
男「いや……えっと……なんで今頃またチョコレートなんか作ってるのかなって」
許嫁「………」
男「えっと……」
許嫁「それとも何?もしかして欲しいの?」
男「いや、でもそれ、他の人にあげるやつとかじゃないの?」
許嫁「仮にそうだとして、そこまでしてでも欲しいのなら、その惨めな気持ちに同情してあげてあげないこともないわ」
男「………」
許嫁「どうなの?欲しいの?欲しくないの?」
男「ほ、欲しいです……」
許嫁「仕方ないわね」
許嫁「こうも拝み倒されてしまったらあげないわけにはいかないわね」
男「はぁ……」
許嫁「仕方ないけど仕方なくあなたに義理チョコをあげることにするわ」
男「義理……」
許嫁「そうよ。義理」
男「義理か……」
許嫁「義理ね」
男「………やったーーーー!!!」
許嫁「………」
男「やっほおおおおい!許嫁から義理でもチョコレート貰えたぞおおお!!!」
許嫁「……ウザ」カァァ
男「え……?イケメンにあげたのは本命じゃない?」
許嫁「そうよ。あなたが勝手に勘違いしただけ」
男「でも手作りだったし……」
許嫁「手作りチョコを男子にあげると本命というその考えがいかにも童貞ね」
男「……童貞じゃないし」
許嫁「……それにしてもあなたがこんなにチョコを欲しがるなんて思ってなかったわ」
男「誰だってほしいよ、そりゃ」
許嫁「クリスマスのときだってプレゼントあげなかったけど何も言わなかったじゃない」
男「いや、俺的には貰ったと気だったというか……」
許嫁「……ねえ、やっぱり返して貰っていい?」
男「ごめん!悪かった!悪かったから!」
終
きっちん
許婚「…ハァ…色々とグダグダになってしまったわ」
許婚「それにしても男…すごい喜んでたわよね…ふふっ」
許婚「ハッ!いけない…へーじょーしんへーじょーしん」ハンニヤケ
許婚(いけないわ…いい加減遅いけど頭冷やすついでにまたコンビニ行ってこようかしら)
許婚(材料も…というか上げちゃったし)
・・・
こんびに
イケメン「あれ?許婚さんじゃない?」
許婚「あらイケメン君こんばんわ。どうしたの?こんな夜遅く」
イケメン「俺のセリフだよ。っていうかやっぱりどこでもこういうノリなの?俺と許婚さんの仲じゃん」
許婚「…人の目はどこにあるかわからないものなのよ」
・・・
男るーむ
男「愛してる!」
男「zz...そーらにたいようンガッ」ムクッ
男「……んあーのどかわいたー」
男「あぶねぇまた怒られるところだった……ん?片付けてある許婚が後で片付けたのかな」
男「悪いことしちゃったな…」
男「寝よ寝よ」
・・・
ねくすともーにんぐ
男「おはよ…」
男母「はいおはよう」
許婚「ん」
男(機嫌悪い?)「あー許婚さん?昨日はゴメン」
許婚「なにが」
男「いや、そのぉ今更ながら色々邪魔しちゃったから」
許婚「気にしてないわ」
男「ソデスカ」
がっこ
許婚「おはよう男君」
男「おはよう許婚さん」(男です今日も今日とて時間ずらして登校です私は彼女にとって邪魔な存在なんじゃないかと思うようになってきました)
イケメン「おはよう許婚さん男君」
許婚「おはようイケメン君。あ、イケメン君放課後ちょっと体育館裏に来てもらえないかしら」
男(え…昨日本命じゃないって言ってたのに…あれ?え?)「お…おあはようお?」
イケメン「うんわかったよ許婚さん」ニコ
放課後
モブ1「なにあの人…死臭がしてる…」
モブ2「オーラス4着他家全リーチのノーテンラスヅモのような負のオーラ出してる怖い」
男「……家に……帰ろう…」
・・・
いえ
男「ただ…いま…」
男(寝よう寝て全て忘れよう)
数時間後
許婚「ただいま戻りました」
男母「あら、おかえりなさい少し遅かったわねどうしたの?」
許婚「いえ少し買い物をしてきましたので」
男母「?なにも持ってないじゃない。もしかしてお店に置いてきちゃった?」
許婚「いえ小さな物なので」
許婚(小さいけどとても大切な・・・)
男母「あらごめんなさい。うふふ私なんかと違って許婚ちゃんはしっかりしてるものね」
許婚「いえとんでもないです」
許婚「あ、男君帰ってますか」
男母「いるんだけどあの子ったらまた寝てるのよちょっと叩き起こしてきてくれる?寝すぎも身体に障るって」
許婚「はいわかりました」
男るーむ
許婚「男?」コンコン
男「…」
許婚「寝てるの?入るわよ」ガチャ
男「…」モゾモゾ
許婚「ちょっと話があるのだけど」
男「…」
許婚「盗んだバイクで?」
男「…」
許婚「…起きてるわね」
許婚「…ほんとはチョコで驚かせようと思ったんだけどグダグダになっちゃったから」
男「……イケメンが本命じゃないのかよ」
許婚「ハァ…だからそうじゃないって言ったじゃないあなたも大概女々しいわね」
男「…でも放課後呼び出してたじゃん告白したんだろ…」
許婚「してないわよ」
男「ウソだ」ガバッ
許婚「やっと起きた…最初から起きてなさいよ」
許婚「そうよ。チョコがご破算になったから代わりを考えたんだけど
思いつかなかったからあんまりやりたくなかったけどイケメン君…
もとい私の弟に頼んで選ぶの手伝ってもらったの」
男「なるほどイケメンが弟………ふぇ?」
許婚「間抜けな声出さないで。まぁ言ってなかった私が悪いのだけれど」
男「でも苗字違うじゃん学年一緒だし双子だなんて聞いたことないし」
許婚「確かに双子ではないわでもイケメン君もとい弟は早生まれ3月も末。
私は4月生まれ。まぁ無理ではないはずよ。
苗字が違うのはあなたと許婚なんて前時代的なものを結ぶ家なのよ?
養子縁組の一つやふたつしてたっておかしくは無いじゃない」
男「でもでもでもぅ」
許婚「あぁもう女々しいったらありゃしない」ガバッ
チュッ
男「!!?!?!??!!?」
許婚「あなたのことが好きなにょよ!」
男・許婚「…」噛んdバチーン
許婚「ぶつわよ…」ミミマッカ
許婚「なによちょっとぶったぐらいで泣かないでよ女々しいわね」
男「よがっだよぉぉぉぉおぉ嫌われたんじゃなくてよがっだよぉぉぉぉぅ」
許婚「はぁ…嫌ったりなんかしないわよ///」
・
・
・
時はさかのぼり
許嫁「なに?あなた誰からもチョコレート貰っていないの?」
イケメンもとい弟「なぜか姉ちゃんと付き合ってるという噂が流れてて一個ももらえないんだよ!くそぅ」
許婚「しょうがないわね作ってきてあげるわよ」
おわり
乙
Entry ⇒ 2012.02.14 | Category ⇒ その他 | Comments (0) | Trackbacks (0)
メイド「冥土にお送りいたします」主人「かかって来い」
主人「ん……」
若き主人が目を覚ました。
めざまし時計のベルによってではなく、強烈な殺気によって。
ドスッ!
ベッドに包丁が突き立てられた。
が、その位置に横たわっていた主人はいない。かわしたのだ。
メイド「おはようございます、ご主人様」
主人「おはよう」
メイド「冥土にお送りいたします」
主人「かかって来い」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1328097657/
メイド「冥土にお送りいたします」主人「かかって来い」
主人はすかさず机の上にあった万年筆を、メイドの眼球めがけて投げつける。
ビュッ!
飛んでくる万年筆を冷静に包丁でハジくメイド。
ガキンッ!
しかし、弾丸のような万年筆をハジいたため、包丁も砕けた。
主人「………」
メイド「………」
主人「食事にしよう」
メイド「リビングに用意してあります」
主人「今日の朝食はキノコスープか」
メイド「はい。ぜひご賞味下さいませ」
主人「ワライタケ、ベニテングタケ、ドクツルタケにコレラタケ……」
主人「実に美味そうだ」ニコッ
メイド「ありがとうございます」
主人「うん、これは美味しい」ジュルリ
主人は大量の毒キノコを煮詰めたスープを全て平らげた。
主人「君もコーヒーでもどうだい。淹れてあげよう」
メイド「ありがたくいただきます」
メイドの目の前でコーヒーカップに青酸カリのカプセルを入れた。
主人「俺はコーヒーにはうるさいんだよ」
主人「さ、どうぞ」スッ
メイド「ご主人様のコーヒーを堪能できるなんて、光栄ですわ」ゴクゴク
メイドは青酸カリ入りのコーヒーを全て飲み干した。
メイド「美味でございました」
メイド「私、これほど美味しいコーヒーを飲んだのは生まれて初めてでございます」
主人「君に喜んでもらえると、とても嬉しいよ」
テレビ『世界的に暗躍しているテロリストが、日本に潜伏したという情報が~』
テレビ『連続殺人事件を起こした犯人は現在も逃走中~』
どんなに物騒なニュースも主人とメイドにとっては脅威ではない。
主人「君は料理の天才だよ」
メイド「ご主人様こそ、このコーヒーなら今すぐにでも喫茶店を開けますわ」
二人にとって、もっとも脅威となるのは目の前にいるお互いなのだから。
主人「水を用意してもらえるかな?」
ザバァッ!
メイドはバケツ一杯に入った硫酸を、主人めがけて浴びせかけた。
ジュワァ~……
主人は硫酸をジャンプでかわしていた。
だが、メイドは空中に逃れた主人のスキを見逃さない。
ビュバババッ!
メイドは大量の爪楊枝を、散弾のように投げつけた。
主人(これは、かわせないな……やむをえん!)
主人は全身の筋肉を硬直させ、爪楊枝を受け止めた。
ほとんど刺さっていないので、ダメージはないに等しい。
主人「ふう、今のは少しヒヤッとしたよ」
メイド「あれでダメージ無しとはさすがです、ご主人様」
主人「ハハ、ちょっとチクッとしたけどね」
主人「さて、そろそろ本当に準備するか」
主人「あの退屈な時間も、この生活を維持するのには必要だからね」
メイド「かしこまりました、すぐに着替えを用意いたします」
メイドの用意したスーツに着替える主人。
メイド「いつもながら、見事なスーツの着こなしにございます」
主人「ありがとう」
主人「ところで、ちょっと後ろを向いてもらえないかな?」
メイド「かしこまりました」クルリ
主人「………」シュルリ
グイッ!
主人はネクタイを外すと、それで後ろからメイドの首を絞めた。
もちろん全力で、である。
主人「窒息で済ませるつもりはない……首をヘシ折る」グググ…
メイド「………」
メイドはネクタイに指をかけると──
ブチッ
ネクタイを引きちぎり脱出した。
主人「ヒュウ、さすがだね」
メイド「私にはもったいないお言葉ですわ」
主人「さて、そろそろ俺は出かけるよ」
メイド「かしこまりました」
メイド「ご主人様」
主人「ん?」
メイド「どうかお気をつけて」
メイド「くれぐれも……私以外の者に冥土に送られてしまうことがないよう」
主人「分かっているよ」
主人「もっともこの地球上で単独で俺を殺せる可能性があるのは、君くらいのものだろ」
主人「じゃ、行ってくる」
メイド「行ってらっしゃいませ、ご主人様」
砕けた包丁、穴のあいたベッド、折れた万年筆、割れた食器類、
床にぶちまけられた硫酸、同じく散らばった爪楊枝、ちぎれたネクタイ……。
全てを猛スピードで片付け、可能な限り元通りに修復する。
淡々と作業をこなしながらも、メイドの頭にふと今朝の攻防がよぎる。
メイド(爪楊枝攻撃は……惜しかったですわ)
メイド(あれが包丁やナイフだったなら、ダメージを与えられたかもしれないのに)
メイド(しかし、今更悔いても仕方ないこと)
メイド(その後のご主人様の首絞めは、なかなか強烈でしたわ)
メイド(私の頸動脈に食い込むネクタイの感触……十分に死を予感させるものでした)
メイド「さすがは、私のご主人様……」
メイドはぽつりと、そう漏らした。
主人は若手ナンバーワンの社員だった。
いや、もはや能力は会社でナンバーワンといえた。
課長「いや、まさかあの契約を取ってくるとは!」
課長「君はすばらしいよ! ハッハッハ!」
主人「ありがとうございます」
課長「それにしても君は入社以来ミスといえるミスが一度もない」
課長「いいかたは悪いかもしれんが、まるで機械のようだね」
主人「ハハハ、さすがに機械にはかないませんよ」
なぜなら機械は命令以上のことはしないが、彼は命令以上のこともこなすのだ。
同僚「ふんふ~ん」カチャカチャ
主人「おい、そこ計算間違ってるぞ」
同僚「あっ、ホントだ! いっけね!」
同僚「わりぃわりぃ、サンキュー。よく気づいたな」
同僚「ずっと資料と格闘してた俺が気づかなかったのに」
主人「岡目八目ってやつだよ」
OL「あ、いえっ、はいっ!」
OL「しょっ、少々お待ち下さい」カチャ
主人「どうかした?」
OL「ものすごい怒鳴り声で変なクレームが入ってて……」
OL「上司がいないんなら、社長を出せとか、もうメチャクチャなのよ……」
主人「代わるよ。こっちに電話回して」
OL「う、うん……」
主人はみごとにクレーマーを鎮めてみせた。
主人(早く家に帰りたい)
主人(メイドとの攻防に比べ、仕事のなんと退屈なことか)
主人(彼女との戦いは一瞬のミスも油断も許されない)
主人(ひとたびミスをすれば、負傷し、その先に待ち受けるのは死だ)
主人(一方、仕事は考える時間がたっぷりある)
主人(はっきりいって、ミスりようがない)
主人(仮にミスったところで怪我するわけでも、死ぬわけでもない)
主人(たまにわざと会社の存亡に関わるようなミスをしたくなる衝動に駆られるが)
主人(それは俺のポリシーに反する)
主人(俺は雇われている身だし、他の社員に迷惑がかかるからな……)
主人(ああ、早く帰りたい……)
仕事が終わり、主人は課長たちと酒を飲んでいた。
課長「ウィ~、ちゃんと飲んでるか?」
主人「もちろんですよ~、課長~。焼酎最高!」
同僚「しっかしホントお前って顔赤くならないよな」
OL「ホントよね~。でもたまにこういう人っているけどね」
主人「顔は赤くならんけど、酒自体は弱いよ。もうグデングデンだもん」ヨロッ
課長「ハハハ、おいおいしっかりしろよ」
主人は全く酔っていなかった。
毒が通じない人間が、酒(アルコール)で酔えるわけがない。
酔ったフリがうまいだけだ。
主人(ふぅ、今夜はすっかり遅くなってしまったな)
主人(だが感じるぞ……)
主人(このドア一枚へだてた向こう側から……)
主人(俺の帰りを待っていたメイドの強烈な殺気を!)
主人(待たせて悪かったな)
主人(今、開けるから──)
ガチャッ
メイド「お帰りなさいませ、ご主人様」
主人「ただいま」
メイド「冥土にお送りいたします」
主人「かかって来い」
ヒュヒュヒュヒュッ!
メイドが主人の顔面めがけて道具を投げた。
ハサミ、刃の出たカッターナイフ、ボールペン、マイナスドライバー。
主人(マイナスドライバーなんて家にあったんだ……)
などと考えつつ、主人は四つ全てをキャッチしてみせた。
ブオンッ!
メイドはバク宙でこれをかわした。
ドガァッ!
主人が振り下ろした靴ベラがぶつかった廊下が、砕けた。
たとえ靴べらでも力と速度を伴えば、立派な鈍器だ。
メイド「すばらしい一撃ですわ。さすがはご主人様」
主人「君こそ、マイナスドライバーなんてどこで見つけたんだい?」
主人「ありがとう、入らせてもらうよ」
<風呂場>
浴槽には大量の氷が浮かんでいた。
水温はおそらく5℃とないだろう。
もちろん、主人はためらうことなく入る。
ザバァッ
主人「ああ、いい湯加減だ。心も体もポカポカだよ」
外にいるメイドが答える。
メイド「ありがとうございます、ご主人様」
メイド「よろしいのですか?」
主人「今更遠慮する仲でもないだろう」
主人は浴槽に浮かんでいる小さな氷を口に含み、噛み砕いた。
そして、一番大きな氷の塊を手に取った。
ガラッ
メイド「では失礼いたし──」
主人「──プププゥッ!」
メイド「!」
主人(よし、さすがに怯んだか!)
すかさず主人は、浴槽から飛び出す。
主人は右手に持っている大きな氷塊でメイドの頭を殴りつけた。
ガゴンッ!
主人(クリーンヒットォ! ……いや、これは──)
メイド「危ないところでしたわ」
メイドは石鹸で氷をガードしていた。
主人「さっきは鳥肌が立ったよ」
メイド「氷水に浸かったからではありませんか?」
主人「いや、さっきの連続攻撃は我ながら完璧だと思ったんだが──」
主人「アレを瞬時に石鹸でガードしてみせた君に、鳥肌が立ったんだ」
主人「君の冷静さに比べれば、氷水などぬるま湯にも等しい」
メイド「ありがとうございます」
主人「では、今夜はもう休むとするよ。おやすみ」
メイド「おやすみなさいませ、ご主人様」
主人は寝室に入っていった。
投げつけた道具の数々、砕けた廊下、びしょぬれの風呂場などを
猛スピードでまるで戦いなどなかったかのように清掃・修復する。
これが終わると、彼女も就寝することになる。
メイド(先ほどのご主人様の攻撃は見事でしたわ)
メイド(私が作った氷風呂を逆に利用するなんて……)
メイド(石鹸でのガードが間に合わなければ、頭部打撲は避けられなかったでしょう)
メイド「さすがは、私のご主人様……」
メイドはぽつりと、そう漏らした。
このようにして、この家の一日は終わりを告げる。
ある日の午後、メイドは買い物をしていた。
すると──
少年「あ、ボールが道路に転がっちゃった」
母「ダメよ、飛び出しちゃ!」
ブロロロロロッ
少年「あ」
母「イヤアアアッ!」
少年の目前に、大型トラックが迫っていた。
それを見つけたメイドは走った。
メイドは目にも止まらぬ速さで子供をキャッチし、トラックの走行コースから離脱した。
メイド「お怪我はありませんか?」
少年「ご、ごめんなさい……。お姉ちゃん、ありがとう……」
母「本当にありがとうございます! なんとお礼をしたらいいか……」
メイド「いえ、それには及びません」
メイド「買い物途中ですので、これで失礼いたします」
何事もなかったかのように、メイドは買い物に戻った。
メイド「………」
メイド(やはり、ご主人様の足元にも及びませんわね)
メイドにとっては高速で突っ込んでくるトラックよりも、
毎日の主人との戦いの方がよっぽどスリリングであった。
ある日の夜、主人は帰りの電車を待っていた。
すると──
サラリーマン(なんということだ。リストラされてしまうとは……)
サラリーマン(妻よ、子よ、許してくれっ!)
バッ!
一人のサラリーマンが線路の中に飛び込んだ。
もう電車は目前まで迫っていた。
主人は線路の中に飛び込むと、サラリーマンを担ぎ上げ、
瞬く間に線路から脱出した。
その一秒後、急行電車が高速で駆け抜けていった。
サラリーマン「はぁ、はぁ。す、すいませんっ……!」
主人「大変な勇気です」
主人「死にたくないばかりに、毎日見苦しく格闘している俺には到底できない芸当です」
主人「それほどの勇者であるあなたに感動し、つい余計なマネをしてしまいました」
主人「ジャマをして申し訳ありませんでした。では……」
サラリーマン「あ、いえ……」ハァハァ
サラリーマン(行ってしまった……。いったい何者だったんだろう、彼は……)ハァハァ
サラリーマン(私が勇者……か……)ハァハァ
サラリーマン(もう一度……私も立ち上がってみるか……)
主人「………」
主人(やはりメイドには到底かなわないな)
主人にとっては迫りくる電車の前に飛び込むことより、
殺意に満ち満ちたメイドに立ち向かう方がよほど恐ろしいのである。
そしてこんなことがあった日であっても──
メイド「今日は、トラックにひかれそうな子供を助けました」
主人「偶然だね。俺も電車に飛び込んだサラリーマンを助けたよ」
メイド「やはり、人間の幸福とは生きてこそ、でございますわ」
主人「ああ、死んでしまっては、戦えないからね」
メイド「冥土にお送りいたします」
主人「かかって来い」
二人は戦う。
ある日、主人と同僚はお互いの住居の話をしていた。
同僚「お前、若いのにマイホームとかすげぇよな。俺なんかアパートだぜ」
主人「両親のおかげだよ。自分の力でも何でもない」
同僚「しかも、メイドさんを雇ってるんだったよな?」
主人「親の紹介でね。よく気が利く人で、助かってるよ」
同僚「その人と恋愛関係になったりしないのか?」
主人「そういう対象として見てないし、今後も見ないだろうな」
同僚「ふぅん、そんなもんかね」
主人は真実と嘘をうまく織り交ぜて話した。
主人「もちろんいいよ」
すると、ずっと耳を傾けていたOLも会話に参加してきた。
OL「あ、私も行きたーい! メイドさん見たーい!」
主人「いいよ。ぜひ来てくれ」
同僚「よっしゃ、じゃあ今度の日曜に寄らせてもらうよ」
主人「分かった」
主人「駅からの道がけっこう分かりにくいから、最寄駅についたら連絡してくれ」
同僚「オッケー」
その日の夜も、主人とメイドは死闘を繰り広げた。
グシャグシャになったフライパン、散らばったパスタ、へこんだ壁、
真っ二つになったテーブル、天井に突き刺さった包丁とカミソリ……。
これらが二人の死闘の凄まじさを物語っている。
死闘に一段落ついた時、主人がメイドにいった。
主人「今度の日曜、客が来る。俺の会社の同僚たちだ」
主人「悪いが、おもてなしを頼むよ」
メイド「かしこまりました、ご主人様」
<主人の家の前>
同僚「悪いな、駅まで迎えに来てもらっちゃって」
OL「ホント、ごめんなさいね」
主人「駅からここまで、微妙に道が入り組んでるからな」
同僚「──にしても、けっこういい家じゃんか」
OL「キレイねー」
主人「ま、何もないけど入ってくれよ」
ガチャッ
メイド「ようこそいらっしゃいました」
同僚&OL「!」
メイド「さ、どうぞ。お上がりになって下さい」
同僚「は……はい」
OL「お邪魔……します」
同僚とOLは主人に家で働いているというメイドを、はっきりいってナメていた。
そこらにいる女性がメイドの格好をしただけなのだろうと──
からかってやろうとさえ思っていた。
しかし、メイドの気品と優雅さにあふれる佇まいを目の当たりにし、
これらの考えは吹き飛んでしまった。
同僚「こ、こんなに美味い紅茶を飲んだのは初めてですよ……すげぇ」
OL「わ、私も……」
メイド「ありがとうございます」
同僚「まったく、お前にはもったいないメイドさんだな、おい」
主人「ハハハ、まったくだよ」
主人「彼女に家のことは全て任せてあるから、俺は仕事に集中できるのさ」
同僚「そうか、だからお前は仕事ができるんだな」
同僚「俺もメイドさん雇えば仕事できるようになるかな~……なーんてな」
同僚(たしかに彼女を恋愛対象としては見られないな……)
同僚(なんというか、下心アリで彼女と接すること自体に罪悪感を覚えそうだ)
OL「へぇ~……ご両親同士がお付き合いがあって、知り合ったんだ」
メイド「えぇ、この方の一人暮らしの世話をするように、と」
ウソである。
そしてメイドは対外的には主人を主人として扱わない。
主人が自分のことを、あくまで「住み込みで家事をする人」と紹介しているのを
知っているからだ。
このため、「主人」ではなく「この方」「あの方」などと呼ぶことになる。
同僚「やっぱり、家事の修業みたいなのをしたわけかい?」
メイド「ええ、数年間」
同僚「だよなぁ~。さっき食べた料理もプロ級の腕だったもん、すごいよ」
メイド「もったいないお言葉ですわ」
メイド「楽しい方たちでしたね」
主人「ああ。仕事は退屈だが、俺も彼らといるのは楽しいよ」
主人「しかし……君は退屈だっただろう。日曜日は、いつも一日中殺し合ってるからな」
メイド「いえ、私も楽しかったですわ」
メイド「またいつでもお訪ね下さるよう、お伝え下さい」
主人「ありがとう」
主人「しかし、ウソをつくってのは面倒だな」
メイド「仕方ありませんわ。私たちの本当のことを話してしまえば」
メイド「あの方たちがショックを受けることは間違いありません」
主人は平凡な家庭に生まれた。
両親はもちろん平凡であり、当然主人も平凡であると思われた。
しかし、主人は強かった。
他の人間に比べ、あまりにも強すぎた。
猛獣よりも強く、毒も通じず、おそらく銃弾もある程度は耐えられるだろう。
もしその気になれば、オリンピックの全種目で金メダルを取ることも
たやすいほどの身体能力。
だが、主人は自制した。
主人(俺の存在は……社会を壊す)
主人(だから、力を誇示してはならない……)
本能的に、こう自覚していたからだ。
発揮するのはせいぜい、
飛び込み自殺をしたサラリーマンを助けた時のような場面くらいだった。
もちろん、これではフラストレーションが溜まるに決まっている。
主人(戦いたい……)
主人(戦いたい……)
主人(戦いたい!)
ならば格闘技でもやればいい、と思うかもしれないが、彼はこれも自制した。
なぜなら彼は、自分の実力は他の選手全員を相手にしても楽勝してしまうほどだと
分かっていたからだ。
電流が走った。
すぐにお互いは理解した。
彼(彼女)も、自分と同じような人生を歩んできた者なのだと。
主人「あの……」
主人「初対面の人にこんなこというのは、大変非常識かもしれないが……」
主人「今から俺を殺すつもりで……いや、俺を殺すために俺と戦ってくれないか?」
メイド「………」
メイド「あなたを……」
メイド「冥土にお送りいたします」
主人「かかって来い」
二人は殺し合った。
決着はつかなかった。
主人「一緒に……メイドとして暮らしてくれないか。そうすれば毎日戦える」
主人「どちらかが死ぬまで……」
メイド「喜んで」
メイド「ようやく私はお仕えするべきご主人様を見つけたようです」
メイド「必ずや、ご期待に応えてみせましょう」
二人は抱き合った。
いや、サバ折りをやり合った。
ギュウウゥゥゥ……
主人(俺とほぼ互角のパワー……! ああ、やっと俺はパートナーにめぐり会えた)
メイド(一瞬でも気を抜けば、私の背骨はたちまち砕けるでしょう。素晴らしい力……)
巻き添えを出してしまう恐れもある。
なので、まず主人は競馬で儲けて、二人の戦闘に耐えられる家を建てることにした。
「強さ」のパラメータの一つである観察力が存分に発揮された。
主人(天候、気温、湿度、地面、観客の出す騒音、レースの距離……)
主人(馬の骨格、筋肉、呼吸、スタミナ、気性、体調……)
主人(騎手の身長、体重、技量、モチベーション……)
主人(これら全てが、どの馬がどういう順位でゴールするか教えてくれる)
主人は万馬券を連発し、あっという間に大金を儲けた。
ただし、今後二度と競馬を始めとしたギャンブルはしないと誓った。
主人の「自分の力は社会を壊す」という理念に反する行為だったためだ。
・とにかく頑丈なこと。
・音が絶対に外に漏れないこと。
・なおかつ外見は普通の家であること。
こうして出来あがったのが今の家である。
おそらくどんな災害、いや核爆発にすら耐えるかもしれない。
もっともこのくらいの家でなければ、二人の戦闘にはとても耐えられない。
二人は喜び合った。
主人「さあ、今日からは思う存分戦おう!」
メイド「よろしくお願いします、ご主人様」
彼らの戦いのルールは、これまた三つ。
・全力を尽くすこと。
・互いのおもてなしには、誠意をもって応えること。
・出来る限り規則正しい生活をすること。
<リビング>
主人「君と出会えたことは、本当に幸運だった」
メイド「私もですわ」
メイド「私の人生においての夢は二つございます」
メイド「一つは、ご主人様のような方と出会うこと。これはすでに叶いました」
メイド「そしてもう一つは、この手でご主人様を冥土に送ることでございます」
主人「ぜひとも叶えてもらいたいね」
主人「もっとも俺は死ぬのが死ぬほど嫌いだから、そう簡単にはいかない」
主人「さて、昔話もこれくらいにして、そろそろやろうか」
メイド「かしこまりました」
主人はゴルフクラブを、メイドは包丁を手に取った。
OL「いつも食べさせてもらってばかりだから、今日は私が料理を作ってきたの」パカッ
同僚「メイドさんの腕にはとてもかなわないだろうけどな」
OL「なによー」
メイド「いえ、とても美味しいですわ」モグッ
主人「これはホントに美味いよ。OLには才能がある」パクパク
同僚「うん……まぁまぁかな」モグモグ
主人「よーし、じゃあ俺もみんなにコーヒーでも淹れようかな」
同僚「お前、コーヒーとか淹れるんだ」
OL「へぇ~楽しみだわ」
主人とメイドは、二人を心から歓迎していた。
彼らが来ると殺し合いの時間は当然減ってしまうのだが、その分内容は濃密になった。
同僚たちが家を訪ねるようになって、しばらくしてのことだった。
主人は少し遠い取引先のところから、電車で帰社する途中だった。
ヒマなので、携帯電話でテレビのニュースを見る。
ニュース『現場から中継でお伝えいたします』
ニュース『先ほど、反体制グループ“熱湯弁慶”がビルに立てこもり~』
主人(熱湯弁慶……)
主人(たしか日本のトップに立つべきは我々ネット住民であるべき、とかなんとか)
主人(訳の分からん思想を掲げてる連中だったか……)
主人(インターネット上でギャーギャーわめいてるだけの集団と記憶してたが)
主人(ビルに立てこもるとは、大層なことをしたもんだな)
主人(そんな行動力があるなら、普通に政治活動しろって──ん?)
主人(このビル……俺の会社じゃないか!)
事件は主人が会社にいない昼休み直後に発生した。
銃などで武装した熱湯弁慶が、突然集団で押し寄せ、瞬く間に会社ビル内を占拠。
会社に残っていた者全員がビルの最上階に集められ、人質になっている。
主人(もし俺がいれば、この程度の奴らの襲撃は防げたかもしれないが……)
主人(今からじゃどうしようもないな……。あれだけ機動隊がいるし)
主人(ビルを囲んでいる警察の手腕に期待するしかないか……)
最上階は主に会議や行事用の大きな部屋になっている。
30名近い人質たちにマシンガンの銃口を向ける『熱湯弁慶』のリーダー。
そして、もう一人。
リーダー「こうしてあっという間にこのビルを制圧できたのも」
リーダー「君の指導と、調達してくれた武器のおかげだよ。ありがとう」
テロリスト「なぁに、熱湯弁慶の統率力と戦闘力が優れていただけのことだ」
リーダー「そう、ぼくたちは生まれ変わったんだ!」
リーダー「ネットの世界から羽ばたき、この国を支配下に置くんだ!」
リーダー「フハハハハッ!」
課長「あ、あわわ……」
同僚(くそぉ、なんなんだよこいつら……突然乗り込んできやがって)
同僚(あのバカ笑いしてる奴はともかく、もう一人の奴はただもんじゃない)
同僚(目の前にライオンでもいるかのような緊張感だぜ……)
OL(だれか、助けて……)ガタガタ
テロリスト「そろそろ主張や要求などを突きつけてはどうだ?」
リーダー「よ、よしっ! スピーカーを貸してくれっ!」
リーダーは窓を開け、スピーカーを使って叫ぶ。
リーダー「聞け、愚民どもっ!」
リーダー「我々の要求は、国会議事堂をぼくたち“熱湯弁慶”に明け渡すことだ!」
リーダー「今後、この国の政治はぼくらネットエリートが行う!」
リーダー「要求を飲まなければ、ここにいる人質がどんどん死ぬことになるよ!」
リーダー「フハハハハッ!」
同僚(こんなバカげた要求、通るわけがねえ)
同僚(くそっ、死にたくない……)
OL「怖いよ……」ガタガタ
同僚「大丈夫だ、俺がついてる」ギュッ
OL「うん……」ギュッ
同僚はOLをそっと抱き寄せた。
もっとやれ
主人の携帯電話からも、リーダーのバカげた要求を見ることができた。
しかし、主人が注目したのはリーダーではなく、その奥に映るもう一人の人物。
主人はすぐに分かった。
主人(こいつが、黒幕だ!)
主人(こいつが熱湯弁慶に武器と戦い方を与え、こんな事件を起こしたんだ!)
主人(そしてこいつは……おそらくは俺と同類!)
主人(おそろしく強い……。その上、殺しを日常にしている人種だ)
主人(こういうテロ活動をしょっちゅう実行してきたに違いない……)ハッ
テレビ『世界的に暗躍しているテロリストが、日本に潜伏したという情報が~』
主人(もしや、あの時のニュースのテロリストが、あいつか!?)
主人(俺と同類だとすれば、警察では歯が立たん! 俺が行かなくては!)
主人「もしもし、俺だ」
メイド『ご主人様、どうされましたか?』
主人「俺の会社がテロ集団に乗っ取られた。おそらく同僚たちも人質にされた」
主人「俺は今電車にいて、あと30分ほどで会社の最寄り駅に到着する」
主人「そしたら、会社に乗り込むつもりだ」
主人「しかし、相手の中に俺たちと同類……がいる」
主人「もしかしたら、俺は死ぬかもしれない」
主人「俺が死んだら、自動的にその家と俺の資産は君のものになるようになっている」
主人「後は任せたよ」
メイド『かしこまりました』
主人「君になら安心して任せられるよ」ピッ
意外なことに、主人の心の中にあったのは強敵と戦える喜びではなかった。
同類として、己の強大な力を悪用する黒幕(テロリスト)に対する怒りだった。
主人が電車から降りると、駅周辺は騒然としていた。
なにしろ近くで本格的な立てこもり事件が起こっている最中なのだ。
主人(あのテロリストに思想なんてものはない)
主人(ただ戦闘とスリルを求めているだけ……)
主人(きっと今までも世界中のテロ組織に身を置き、助力し)
主人(戦闘と殺戮を行い、飽きたら別の国へ……というのを繰り返してたんだろう)
主人(熱湯弁慶は、奴にとってはただの道具に過ぎない)
主人(あの単純そうなリーダーに武器を与えて、そそのかしたんだろう)
主人(俺の会社を狙ったのも理由なんかない)
主人(熱湯弁慶の規模でも制圧可能な小さなビルを、適当に選んだだけだろう)
主人(同僚、OL、課長……みんな。必ず俺が救い出してやる)
「ご主人様」
主人の前には、家にいるはずのメイドがいた。
主人「どうして君がここに……!」
主人「まさか俺を助けに──!?」
メイド「勘違いなさらないで下さい」
メイド「ご主人様を冥土に送ることができるのは、この地球上で私のみ」
メイド「私はご主人様の力量を疑ったことは一度もありません」
メイド「私がこうして参ったのは、ご主人様のご友人方のためです」
メイド「同僚様とOL様も、人質にされているのでしょう?」
メイド「ご主人様のご友人は、私にとっても友人です」
メイド「あの方々が危機とあらば、動かないわけには参りません」
主人「なるほど、君らしい理由だ」
主人「じゃあ行こうか」ザッ
メイド「かしこまりました」スッ
機動隊が熱湯弁慶の説得に当たるが、リーダーはまるで聞く耳を持たない。
リーダー「国会議事堂はまだぼくらのものにならないのかい!?」
リーダー「早くしないと人質殺して、死体をポイッと窓から投げちゃうよ!?」
リーダー「ぼくらは生まれ変わったんだ!」
リーダー「ネットと現実を支配する、ダブル王者になるんだ!」
リーダー「人殺しぐらい、なんてことないんだ! フハハハハッ!」
~
隊長「……参ったな。まるで話が通じんよ」
隊員A「えぇ、このままじゃ本当にやりかねません」
隊長「かといって奴ら、ああ見えてかなりの重装備な上、統率もとれている」
隊員A「うかつに突入はできませんね……」
隊長「どうした?」
隊員B「変な二人組がこっちに歩いてきてるんです」
隊長「変な二人組?」
隊員B「スーツ姿のサラリーマンと……メイドなんですが」
隊長「な、なんだそりゃ?」
ザッ
主人「皆さん、すいません。ここから先は俺たちに任せて下さい」
メイド「私とこの方で、立てこもり犯を退治いたします」
主人とメイドは自分たちよりも遥か上位にあると本能的に察した。
とはいえ、一般市民に事件解決を委ねるわけにはいかない。
隊長「冗談はよしてくれ! 君たちになにができる!?」
主人「これくらいのことはできます」
主人は機動隊の一人から盾を奪うと──
グシャンッ!
力む表情すらせず腕力だけで丸めてみせた。
隊長(私は夢でも見ているのか……?)
主人「器物破損で捕まりたくないからな。すぐ直してくれ」
メイド「かしこまりました」
メイドはグシャグシャに丸まった盾をこれまた腕力で引き伸ばし、
形を整え、元通りに修復してみせた。
機動隊員たちは言葉を失ってしまった。
主人「ビルの中にも一人、これくらいのことができる人間がいます」
主人「他の人間はともかく、そいつは俺たちでなきゃ倒せないでしょう」
主人「行こう」ザッ
メイド「かしこまりました」スッ
主人「裏口から侵入しよう。俺の会社のビルは七階……」
主人「一階につき30秒でカタをつければ、3分で最上階にたどり着く」
メイド「もし侵入を最上階に察知された場合、人質の方々は大丈夫でしょうか?」
主人「それは大丈夫だ。ただしテロリストが俺の考えているような奴であれば──」
主人「一人死ぬことになる」
主人「武器はいらないのかい?」
メイド「はい。私は武器や道具を用いない方が、戦いやすいので」
主人「ほぉ、つまりいつもは手加減をしてくれてたのか」
メイド「いえ、そうではありません」
メイド「ご主人様ほどの相手に切り札(素手)は見せたくありませんでしたので」
メイド「確実にご主人様を冥土に送れる、と思った時に素手で攻撃しようと……」
主人「まあ俺も似たようなものだ。素手で戦う方がやりやすい」
主人「家での戦いで道具を使うのも、君と同じような理由だ」
主人「さて、おしゃべりはここまでだ」
主人「入ろう」
メイド「はい」バキンッ
鍵のかかったドアを強引にこじ開け、二人は中に突入した。
中にいた熱湯弁慶の武装兵たちは面食らった。
突然、外からサラリーマンとメイドのコンビが侵入してきたのだから。
熱湯兵A(な、なんだっ!?)
熱湯兵B(ここの社員か!? ……とメイド!?)
彼らはテロリストから「誰か入ってきたらかまわず撃て」と命じられている。
テロリストからいわれた通り、マシンガンを構える。
──が、すでに二人の兵の意識は体から抜け落ちていた。
二人の突きで、一瞬にして昏倒させられてしまったのだ。
主人「あと数人いるな。撃たれる前に、倒そう」
メイド「はい」
一階の兵を全滅させた二人は、二階に上がった。
熱湯兵C「な、なんだ、こいつら──」
すでにメイドは兵Cの後ろに回っていた。
そしてチョークスリーパーをかける。
兵Cも必死に逃れようとするが、無駄な努力だった。
熱湯兵C(な、なんだこの女の力は……ビ、ビクとも……し、ねぇ……)ガクッ
メイド「ご安心を。ご主人様以外を冥土送りにするつもりはありませんので」スッ
二階の兵が全滅するのも時間の問題だった。
主人とメイドはほとんど無音で熱湯弁慶を退治していたが、
テロリストだけは侵入者の気配を察知していた。
そして、極上の来客であると理解していた。
テロリスト(凄まじい強者が二人、この階に迫っている……!)
テロリスト(すごい……すごいぞ!)
テロリスト(私が標的にこのビルを選んだ理由は、二つ)
テロリスト(一つは小さい組織である熱湯弁慶でも、制圧可能な大きさだからだ)
テロリスト(もう一つは、このビルを襲えば最上級の獲物に会えると予感したからだ)
テロリスト(私の予感は正しかった!)
リーダー「どうした? 同志よ」
テロリスト「侵入者だ……それも極上のな」
リーダー「な、なんだってっ!?」
OL(私たち助かるの!? それとも死ぬの!?)
リーダー「国会をぼくたちに明け渡さず、突入してくるとは! 警察めえっ!」
リーダー「こ、殺すっ! 人質殺してやるぅっ!」ジャキッ
テロリスト「待ちたまえ。彼らはこれから始まるショーの生き証人となる」
テロリスト「この私が強力な侵入者二名を仕留めるという究極のショーのね」
テロリスト「殺すことは許さん」
リーダー「なんだと!? なにがショーだ! ふざけるなよ、どういうつもりだっ!」
テロリスト「思い上がるなよ、熱湯弁慶」
テロリスト「キサマらなど、私がスリルと戦闘を楽しむための道具にすぎんのだ」
リーダー「なんだとぉっ!?」
リーダー「君がぼくたちなら日本のトップに立てるというから、ぼくらは──」
シュバッ!
リーダーは、手刀で首をハネられた。
テロリスト「バカが……」
テロリスト「ビルに立てこもったくらいで国を獲れるなら、だれも苦労はしない」
課長「うわぁぁぁっ!」
社員A「ひぃぃぃぃっ!」
社員B「首が、首がっ!」
同僚(おいおいマジかよ、仲間を殺しやがった! どーなってんだ、これは)
同僚(しかも今、チョップでやったよな!? んなことできるのかよ!)
OL「やだ……もういやだぁ……!」
同僚「!」
同僚「大丈夫だ、俺が守ってやる……! もう、なにも見るな!」ギュッ
OL「う、うん……」
メイド「少々眠っていただきます」
ストトトトトンッ
メイドはかろやかに宙を舞うと、武装兵たち5名の首に手刀を当て、
同時に気絶させた。
主人「おーしくらまんじゅう、押されて泣くなーっと……」
熱湯兵たち「お、押されっ──!」
グイッ!
主人も武装兵5名を壁に押しつけ、圧力で失神させた。
残るは最上階のみ──
バァンッ!
ドアを蹴破り、大広間になだれ込む主人とメイド。
テロリスト「ようこそっ!」
主人(やはり……“一人死んだ”か)
首と胴体が離れたリーダーを見て、主人はため息をつく。
主人はテロリストの性質を見抜いていた。
弱者を殺すことに興味は薄く、
なおかつ自分の戦闘(強さ)をより多くのギャラリーに見せたがる。
そして用済みになったり目障りになったりした者は、容赦なく殺すタイプ……。
できれば死人を出したくなかったとはいえ、ここまでは想定通りだった。
主人「君は人質を守ってくれ」
メイド「かしこまりました」
テロリスト「フフフ……分かる、分かるぞ」
テロリスト「キサマらも生まれながらに強すぎる力を持った者だろう?」
テロリスト「選ばれし者なのだろう!?」
テロリスト「私は世界中を渡り歩いてきたが、まさか同類に出会えるとは!」
テロリスト「それも同時に! 二人も! この国に来た甲斐があった!!」
主人「力で悪意をばら撒くようなバカが、俺らと同類?」
主人「ふざけるなよ」
主人「もっと早くに出会っていれば、いい好敵手になれたかもしれないが──」
主人「いや、やめておこう」
主人「お前とは分かり合える気がしない」
OL「メイドさん、どうしてあなたがここに!?」
同僚「それにアイツ、武器も持たずにアレと戦うつもりか!?」
同僚「死んじまう! 知らないだろうがあの男、素手で人の首をハネたんだぞ!」
メイド「大丈夫。あの方は勝ちます」
メイド「必ず」
同僚(無理だ!)
同僚(そりゃあ、たしかにアイツ、ちょっと人間離れしてるとこあったけど……)
同僚(あのテロリストは人間離れ、どころじゃない)
同僚(正真正銘の怪物なんだ!)
テロリストはリーダーの死体と首を窓の外に蹴り出した。
そしてマシンガンを構える。
が、すぐに主人に間合いを詰められ、蹴りでマシンガンは破壊された。
テロリスト「やはりこんなオモチャは通用せんか」ポイッ
主人「来い、一対一だ」スッ
テロリスト「よかろう。久々の上客だ、楽しませてくれよ」ザッ
テロリスト「──はあっ!」
ドゴォッ!
テロリストの前蹴りで、主人は吹き飛び、壁に叩きつけられた。
さらに倒れた主人を掴み上げ、頭から床に叩きつける。
ガゴンッ!
壁と床に大きなクレーターができたことは、いうまでもない。
主人も次々に拳を繰り出すが、かわされる。
足払いで転ばされ、顔面を踏みつけられる。
グシャッ!
主人「ぐぉっ……!」
テロリスト「すばらしい。常人ならば最初の蹴りで体がバラバラになってるところだ」
テロリスト「今の踏みつけも、常人なら脳みそが頭蓋骨ごとハジケ飛んでいただろう」
テロリスト「これほどの獲物に出会えるとはな……」
主人「なめるなっ!」
バゴォッ!
主人渾身の右ストレート。
しかし、テロリストは微動だにせず、鼻血を流すだけ。
テロリスト「フフ、いい一撃だったよ」ペロリ
主人「──ぶぉっ!」
テロリスト「君は先ほど私を『力で悪意をばら撒くバカ』と表現してくれたが」
肘鉄が、主人の脳天に突き刺さる。
主人「がっ……!」
テロリスト「君はおそらく自制をして生きてきたのだろう」
アッパーカットで主人が天井に叩きつけられる。
主人「ゴハァッ!」
テロリスト「分かるよ」
テロリスト「私も最初は思ったものさ。この強すぎる力は隠さねばならない、とね」
テロリスト「だから私は幼少の頃より、思う存分戦闘と殺戮を楽しんだよ」
テロリスト「無能なくせに国を変えようなどと夢想するバカどもに力を与え」
テロリスト「ある程度殺戮を楽しんだら、風のように去っていく」
テロリスト「こんなことを延々と繰り返してきたんだ」ドガッ
主人の顔面に、強烈な左ストレートが突き刺さった。
テロリスト「もう分かっただろう?」
テロリスト「発散し続けている私と、抑制し続けた君」
テロリスト「力を思う存分使った者と、使わなかった者」
テロリスト「もしぶつかったらどちらが勝つか……いうまでもない」
テロリスト「私だ」
テロリストの猛ラッシュ。
主人は歯を食いしばり、ガードを固め、耐え続ける。
主人は大人になりメイドと出会うまで、自分の力をほとんど使わなかった。
テロリストは子供の頃から、自分の力をフル悪用してきた。
この時間(キャリア)の差は、あまりにも大きい。
テロリスト「残念だな、もっと苦戦できるかと思っていたのに!」
主人(くそぉ……どうにか決定打を浴びずにいるので精一杯だ!)
主人とテロリストの戦いで飛び散る破片を防ぎ、人質たちを守るメイド。
同僚(すげぇ、すげぇよアイツ……)
同僚(あんなに強かったんだ……)
同僚(俺だったら仮に命が百個あったとしても、もうとっくに全部使い切ってるだろう)
同僚(だが……あのテロリストの方がやはり強い!)
同僚「メイドさん!」
同僚「多分だけど……あなたも強いんだろう!? 頼む、アイツに加勢してやってくれ!」
メイド「………」
メイド「あの方……いえ、ご主人様は必ず勝ちます」
メイド「なぜなら」
メイド「ご主人様を冥土に送ることができるのは、この私だけだからです」
同僚「え……(メ、メイドに送る?)」
凄まじい横蹴りで、壁に叩きつけられる主人。
衝撃で、口から大量の血が飛び出た。
テロリスト「いい戦いができた。だが、もう君に私を楽しませる力は残っていまい」
テロリスト「君の命を終わらせ、次はあのメイドを可愛がるとしよう」スッ
テロリストがニヤつきながらトドメの拳を振り上げた──瞬間。
主人は脚力を総動員させ、テロリストの顔面に頭突きを放った。
ガツンッ!
テロリスト「──ぬおぅっ!?」
主人「メイドを可愛がる……だと?」
さらに主人はラリアットで首に渾身の一撃を与えた。
テロリスト「ごあっ! ──キ、キサマ、どこにそんな力が……」
主人「どこにそんな力が? そんな台詞が出るということは、お前──」
主人「油断したな?」
主人「たしかに、戦闘経験やくぐった修羅場の数はお前の方が上だろう」
主人「だが俺はここ数年、ずっと自分と互角の人間と殺し合ってきた」
主人「俺に油断はない」
主人「少し優位に立ったくらいで油断しちまうお前如きが……」
主人「俺のメイドを可愛がるなんて──」
主人「百年早い!!!」
主人がテロリストの顎を蹴り上げる。
ガゴンッ!
初めてテロリストがダウンした。
例えば、同じ威力のパンチを受けるとしても、
戦闘態勢にある者とない者が受ければ、当然ダメージの大きさには差が出る。
超人同士の戦いでは、そのダメージ差はより顕著に表れる。
テロリスト(あ、あの頭突きで形勢が……!)
テロリスト(ウソだ……この私が、押されている!?)
テロリスト(ありえない……)
テロリストは「選ばれし者」同士の戦いで、
もっともしてはならない「油断」をしてしまったのだ。
だが、敗北の可能性がほんのわずかでもある苦戦となると話は別だ。
テロリストの精神が急速に崩れていく。
テロリストはキレていた。
テロリスト「おのれぇぇっ! 私の方が上なんだっ! 殺してやるっ!」
主人「来い」
メイドを“可愛がる”権利があるのはこの世に自分だけである。
主人もキレていた。
テロリストの力任せのパンチをさばき、顔面にヒジをぶち込む。
グチャアッ!
テロリスト「あがぁ~……っ!」
金属バット10本も楽々へし折るローキックが、テロリストの足にヒット。
ドギャアッ!!
そして、大砲にも匹敵する右ストレートが、テロリストのみぞおちに着弾した。
ドゴォン!!!
テロリスト「おごァッ!」
能力は完全に上をいっていたテロリストが、一分足らずで満身創痍になった。
しかも、主人に油断は微塵もない。
テロリスト「バカなぁ……こんなバカなぁ……!」ハァハァ
主人「俺の会社を狙ったのが運の尽きだったな、今トドメをくれてやる」
テロリスト「う……ぐぬぅ……!」
テロリスト(俺の会社……?)
テロリスト(そうか、コイツは私と戦いに来たというよりはむしろ──)
テロリスト(仕事仲間を助けに来たということか!)
ダッ!
テロリストは人質めがけて走った。
しかし、主人は冷ややかにそれを見送る。
主人「一対一を放棄したのは、お前の方だぞ……」
主人「あとは任せた」
メイド「かしこまりました、ご主人様」
テロリスト(ちぃっ、そういやこのメイドがいたんだった!)
テロリスト「どけぇっ!」
ドゴォッ!
テロリストの拳がメイドの腹に直撃した。
メイド「……っ!」
主人(どうして当たった!? あんな単純なパンチ、彼女ならかわせたはずだ!)
テロリスト「アバラ数本砕いた感触があったぞ……くくくっ……」
テロリスト(こいつも私のように“油断”をしていたようだな……バカめ)
メイド「……安心いたしました」
メイド「この程度の突きでは、ご主人様を冥土送りにするなど到底不可能ですから」
メイド「ご主人様とあなた様の戦いを拝見している最中──」
メイド「ほんの一瞬ではありますが、ご主人様が冥土に送られてしまうのでは……と」
メイド「不安がよぎりました」
メイド「ご主人様を冥土に送っていいのは、私だけです」
メイド「許せません」
テロリスト(なんなんだ、コイツは……? いや、コイツらは……!?)
ベキィッ!
メイドは困惑するテロリストの右膝にカカトをぶつけ、砕いた。
テロリスト「ギャアアアアアアアッ!」
メイド「許せません」
ボキィッ!
さらにもう片方の膝も砕いた。
両腕を砕いた。
メイド「最後は首ですね」ガシッ
メイドはテロリストの首に手をかけた。
テロリスト「や、やめ……てぇ……!」
メイド「さようなら」
メキ…
主人「よせ」
主人「心配かけてしまってすまなかった」
主人「そんな奴なんかに、君に冥土送りにされる権利はない」
主人「その権利があるのは、地球上でたった一人……俺だけだ」
テロリスト「あぐ……う」
主人「こんな奴には一言こういってやればいい」
テロリスト「!」
主人「お前は弱すぎる」
テロリスト「!!!」
主人に追い詰められ、メイドに両手足を壊され、あげく弱いと断ぜられた。
プライドを完全粉砕されたテロリストは絶叫し、
涙、鼻水、汗、唾液、小便、ついでに屁を出し、白目のおまけつきでぶっ倒れた。
主人「これでもう、再起はできないだろう……」
メイド(四肢を砕いても意識を保っていた、あのテロリストの心を)
メイド(たった一言で破壊してみせるなんて……)
メイド「さすがは、私のご主人様……」
メイドはぽつりと、そう漏らした。
いるのは主人とメイドの戦いを、呆然と見つめていた人質(社員)たちだけ。
主人(幸い重役連中は外出でもしてて、いなかったようだが……)
主人(これほどのことを起こしてしまったんだ)
主人(もうこの会社にはいられないな……)
主人(今日のところはひとまず帰り、改めて退職届を持ってこよう)
課長「え!? ……な、なにかね?」ビクビク
主人「ただいま取引先から戻ったんですが、この様子じゃ今日はもう仕事は無理ですね」
主人「早退しても、よろしいですか?」
課長「あ、ああ……いいとも」ビクビク
主人「ありがとうございます……。じゃあ、帰ろう」
メイド「皆さま、ごきげんよう」
同僚「………」
主人「!?」
同僚「今日はありがとうな、助かったぜ!」
同僚「俺たちが一人も怪我せずに済んだのは、みんなお前とメイドさんのおかげだ!」
同僚「色々警察の調査とかも入るだろうし、すぐ会社再開できるか分からないけどよ」
同僚「また一緒に仕事頑張ろうぜ!」
同僚「あと、またOLと家に遊びに行くからさ、茶菓子用意して待っててくれよ!」
OL「………」ハッ
OL「ええ、また遊びに行くわ! 本当に今日はありがとう!」
OL「メイドさん、今度料理を教えてね!」
課長「………」ハッ
課長「早退するからって、寄り道して飲んだりしちゃいかんぞ!」
課長「今度、君にはおごってやらにゃいかんな、ハッハッハ!」
「ありがとう!」 「お疲れさまー!」 「二人とも、一応病院行った方がいいよー!」
「サンキューな!」 「ありがとうございました!」 「気をつけてなー!」
まるで目の前で起きた死闘などすっかり忘れてしまったかのように──
普段の調子で、帰る二人を見送ってくれた。
主人(俺には過ぎた仲間たちだ……)
主人はいつも心の中で
「仕事が退屈」「早く家に帰りたい」「わざと大きなミスをしたくなる」
などと考えていた自分を心の底から恥じた。
そして、会社に残ろうと誓った。
メイド「ご主人様、どうぞハンカチを」スッ
主人「ありがとう……」
事件に関わった人たちが落ち着くのには、しばらく時間がかかった。
ようやく時間がいつものように動き出した頃──
<会社>
同僚「いつも行ってばかりじゃ悪いから、今度俺のアパートに遊びに来ないか?」
主人「喜んで行かせてもらうよ」
同僚「よければメイドさんも一緒に」
主人「きっと彼女も喜んで行くと思うよ」
<同僚のアパート>
主人「ここか」
メイド「キレイなアパートですね」
主人「ああ、意外だった(正直ボロアパートを想像してたよ)」
二人が部屋を訪ねる。
同僚「よっ。お、メイドさんも来てくれたか」
OL「いらっしゃい、二人とも」
主人「なんだOLも来てたのか。いってくれりゃ、待ち合わせしたのに」
メイド「お二人とも、こんにちは」
主人「キレイにしてるじゃんか。もっとグチャ~としてるかと思ってた」
メイド「ええ、整理整頓が行き届いてますわ」
同僚「そりゃいくら俺だって、友人が来るって時くらい掃除するさ」
OL「この部屋以外は汚いまんまだったしね」
同僚「バラすなよ」
同僚「──で、まぁ、今日は重大発表があるんだ」
OL「重大ってほどでもないけどね」
主人「ほお」
メイド「なんでしょうか」
同僚「俺たち──今度結婚するんだ」
主人&メイド「!」
同僚「あの会社が占拠された事件、あったろ?」
同僚「あれ以来、急速に仲が進展しちゃってな」
OL「うん、あの時の同僚はかっこよかったわ。今は見る影もないけど」
同僚「うるさい」
同僚「……そしてこうして俺たちが結婚できるのも、お前とメイドさんのおかげだ」
同僚「改めて礼をいわせてもらう。ありがとう」
OL「ありがとうね、二人とも」
主人「ハハハ、なんか照れるな。どういたしまして」
メイド「お二人のご結婚を、心から祝福いたしますわ」
その後、四人は会話に花を咲かせた。
<リビング>
主人「すっかり驚かされたな」
主人「付き合ってるんじゃないかとは思ってたけど、まさか結婚とはな」
メイド「私も驚きましたわ」
主人「ま、同僚はいい奴だし、OLもできた子だし、幸せになれるだろう」
メイド「ええ、私もあの二人を応援したいと思います」
主人「……さて!」
主人「二人を祝福する意味も込めて、今夜もやるか!」
メイド「かしこまりました」
主人「かかって来い」
テロリストの事件以降、二人は道具を使うことが少なくなった。
そしてそれは、より戦いが激しくなったことを意味する。
主人の拳が、メイドの蹴りが、主人の手刀が、メイドのヒジ打ちが──
家の中を乱舞する。
今宵の二人の宴は、いつもより長くなりそうだ。
~おわり~
おもしろかった
面白かった
いちおついちおつ
なかなか面白かった
Entry ⇒ 2012.02.12 | Category ⇒ その他 | Comments (0) | Trackbacks (0)
犬娘「ご飯中はやめてください」
犬娘「やめてください」
ニート「わかった」シコシコ
犬娘「お願いします」
ニート「わかった」ビュ
犬娘「出してるじゃないですか、でもこれで・・・」
ニート「うん」シコシコ
犬娘「やめてください」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1328013908/
犬娘「ご飯中はやめてください」
ニート「わかった」モソモソ
犬娘「買い物の時くらい手を休めてください」
ニート「わかった」モソモソ
犬娘「お願いします」
ニート「わかった」ジワ
犬娘「出さないでください」
ニート「わかった」シコシコ
犬娘「やめてください」
ニート「わかった」サワサワ
犬娘「その手で商品に触らないでくださいね」
ニート「これこれこれがいい」モゾモゾ
犬娘「ああ、精液がべったり」
ニート「これもいい」ジワジワ
犬娘「触ったのは全部買いますから持ってきてください」
ニート「わかった」シコシコ
ニート「うん」モソモソ
犬娘「やめてください」
ニート「わかった」モソモソ
犬娘「わかってないじゃないですか」
ニート「わかった」ジワ
犬娘「ああ、また出してる」
ニート「わかった」モゾモゾ
犬娘「ホラーですよ」
ニート「わかった」
犬娘「わかりやすいですね」
ニート「わ、わかった」シコシコ
犬娘「変なところで意地を張らないでください」
ニート「わかった」モゾモゾ
犬娘「弄らないでください」
ニート「わかった」モゾモゾ
ニート「・・・」サワ
犬娘「・・・」
あ゛あ゛あ゛あ゛!
ニート「・・・」ビクッ
ニート「・・・」
ニート「・・・」サワ
あ゛あ゛あ゛あ゛!
ニート「・・・」ビクッ
犬娘「(わかりやすい)」
ニート「うん」モゾモゾモゾッ
犬娘「いつにもまして激しいですね」
ニート「うん」モゾモゾモゾッ
犬娘「映画怖くていけなかったんですか」
ニート「違うよ」ッ…モゾモゾッ
犬娘「そうですか」
ニート「うっ」ドピュ
犬娘「すごい量ですね溜まってたんですか」
ニート「違うよ」サワサワ
ニート「何でも良いよ」モゾモゾ
犬娘「何か言ってください」
ニート「お前が食べたいキリッ」ジワ
犬娘「出しながら臭い台詞言わないでください」
ニート「これがほんとの臭い台詞なんちて」シコシコ
犬娘「・・・」
ニート「・・・」シコ
犬娘「何食べたいですか」
ニート「ハンバーグ」モゾモゾ
ニート「わかった」シコシコ
犬娘「精液ついた手で食べ物に触らないでくださいね」
ニート「わかった」ビュ
犬娘「ああ、直接かかってる」
ニート「うん」シコシコ
犬娘「ご主人様が食べてください」
ニート「やだよ」シコシコ
犬娘「そうですよね」
ニート「うん」シコシコ
犬娘「私が食べますね」
ニート「どうぞ」シコシコ
ニート「どうぞ」シコシコ
犬娘「どうぞじゃないです一緒に入るんですよ」
ニート「わかった」シコシコ
犬娘「すごく栗の花の匂いがします」
ニート「ありがとう」シコシコ
犬娘「褒めてません」
ニート「わかった」シコシコ
犬娘「私も脱ぎますね」ヌギヌギ
ニート「・・・」ビュビュビュ
犬娘「いっぱい出ましたね」
ニート「うん」シコシコ
ニート「わかった」シコシコ
犬娘「止めてください」
ニート「わかった」シコシコ
犬娘「・・・洗いますね」
ニート「うん」ビュッ
犬娘「私にかけないでください」
ニート「ごめん」シコシコ
犬娘「・・・でもいつかは・・・」ボソッ
ニート「えっなに」シコシコ
犬娘「なんでもないです、後ろ向いてください」
ニート「わかった」シコシコ
犬娘「お願いしますから射精だけはやめてくださいね」
ニート「わかった」シコシコ
ザブン
犬娘「よいしょよいしょ」ゴシゴシ
ニート「・・・」ビュ
ゴシゴシ
ビュ
ゴシゴシ
ビュ
犬娘「すっきりしましたじゃあ私も湯船に入りますね」
ニート「どうぞ」シコシコ
犬娘「なんですかこれは」
ニート「なんでもないよ」ビュ
犬娘「追加しないでください、こんなのに入ったら孕んじゃいますよ」
ニート「どうぞどうぞ」
犬娘「えっ」ポッ
ニート「どうぞどうぞ」シコシコ
犬娘「じゃなくて嫌です、せっかく洗ったのに」
ニート「お前こそ」シコシコ
犬娘「じゃあ寝ます」
ニート「わかった」シコシコ
犬娘「今日は両手で抱きしめてほしいです」
ニート「わかった」シコシコ
犬娘「わかってないじゃないですか」
ニート「ごめん」シコシコ
犬娘「お休みなさい」ギュ
ニート「お休み」ビュ
犬娘「すー」ギュ
ニート「・・・」シ…コ
犬娘「すー」ギュ
ニート「・・・」ビュ
犬娘「すー」ギュ
ニート「・・・」シ…コ
犬娘「すー」ギュ
ニート「・・・」シ…コ
ニート「おはよう」ビュ
犬娘「シーツが精液まみれです、私も精液臭いです」
ニート「うん」シコシコ
犬娘「少しは反省してください」
ニート「わかった」シコシコ
犬娘「ご飯を食べます」
ニート「わかった」シコシコ
犬娘「このベーコンおいしいですね」
ニート「わかんない」シコシコ
犬娘「弄りながら食べてるからです」
ニート「うん」シコシコ
ニート「わかった」シコシコ
犬娘「あ、あそこなんていいですね」
ニート「うん」シコシコ
犬娘「ご主人様は木登りってできますか」
ニート「小さい頃ならできた」シコシコ
犬娘「私は今ならできますね」
ニート「そうか」シコシコ
犬娘「はい」
~~~~~~
~~~
雌犬「・・・」プルプル
ニート「♪」シコビュ
雌犬「・・・」プルプル
ニート「ん?」シコビュ
雌犬「・・・」プルプル
ニート「うち、来るか?キリッ」ビュ
雌犬「・・・くぅ~ん」ポッ
ニート「うん」シコシコ
犬娘「今では私の方が足も速いです」
ニート「うん」シコシコ
犬娘「負けをすんなり認めるなんて珍しいですね」
ニート「・・・」シコシコ
犬娘「いつもは最初、屁理屈こねるのに」
ニート「ははは」シコシコ
犬娘「なんですか」
ニート「あはは」シコシコ
犬娘「なんなんですか」
ニート「なんでもないよ」シコシコ
ニート「わかった」シコシコ
犬娘「ご飯です」
ニート「わかった」シコシコ
犬娘「手を止めてください」
ニート「わかった」ビュ
犬娘「・・・」
ニート「・・・」シコシコ
犬娘「やっぱりですか」
ニート「ごちそうさま」シコシコ
犬娘「膝枕します」
ニート「わかった」シコシコ
犬娘「手は止めないんですね」
ニート「うん」シコシコ
犬娘「どうぞ」
ポフ
ニート「・・・」シコシコ
犬娘「シュール」
ニート「・・・」シコシコ
犬娘「・・・」
ニート「・・・」シコシコ
犬娘「ああ、恥ずかしいです」カァ
ニート「えっ」シコシコ
犬娘「あ、いやそういう意味ではなく単純に膝枕している事がです」
ニート「わかった」シコシコ
ニート「ごめん」シコシコ
犬娘「いいです、いんですけどもう少し常識で考えてください」
ニート「わかった」シコシコ
犬娘「わかってないです」
ニート「わかった」ビュ
犬娘「セルフ顔射、私にもかかってます」
ニート「うん」シコシコ
ニート「お前が食べたい」
犬娘「もうそれはいいです」
ニート「カレー」シコシコ
犬娘「珍しいですね」
ニート「カレー」シコシコ
犬娘「わかりました」
ニート「い、犬、娘ぇ・・・」シコシコ
ニート「犬娘っ犬娘っ」シコシコ
犬娘「ご主人様は一人でしてるようです」
犬娘「なんですかこの雑誌は」
男子のハートをしっかりゲット!モテかわファッション
犬娘「ご主人様の好みと正反対です」
ボォ
犬娘「とんだゴミを買ってしまいました人生うまく行かないものですね」
犬娘「部屋が煙いです」
犬娘「カレーは私が好きですがご主人様はあまり食べません」
犬娘「そしてご主人様は野菜嫌い肉好きです」
犬娘「私も野菜が嫌いですので肉をたっぷり入れます」
犬娘「具は適当なひき肉と沢山の牛肉のみです」
犬娘「これでご主人様が食べてくれます」
ニート「わかった」シコ
犬娘「おいしいですか」
ニート「おいしい」シコ
犬娘「私もおいしいです」
ニート「そうか」シコ
犬娘「どうして今日はカレーなんですか」
ニート「食べたかった」シコ
犬娘「その理由を聞いてるんです」
ニート「お前にはわからん」シコ
犬娘「そうですか」
ニート「そうだ」シコ
ニート「わかった」シコシコ
犬娘「今日はやめてください」
ニート「わかった」シコシコ
犬娘「・・・」
犬娘「よいしょ」ヌギヌギ
ニート「・・・」ビュ
犬娘「またですか」
ニート「うん」シコシコ
犬娘「反省してください」
ニート「わかった」シコシコ
犬娘「・・・」
ビュッ!ビュッ!ビュッ!
犬娘「わぷっわぷっ、な、なんですか」
ニート「っ!っ!っ!」ビュビュビュ
犬娘「あわわわ、お風呂場だからって出しすぎです」
ニート「っ!っ!っ!」ビュビュビュ
犬娘「わかりました今日は諦めます」
ニート「っ!っ!っ!」ビュビュビュ
ビュビュビュ
ビュビュビュ
犬娘「精液で体を洗います」
ビュビュビュ
犬娘「臭いです」
犬娘「め、珍しいですね弄ってないなんて」
ニート「さっきいっぱい出したからな」
犬娘「じゃ、じゃあ今日は両手で抱きしめてくれますか」
ニート「おう、いいぞ」
犬娘「・・・」ポォ~
犬娘「お、お願いします」
犬娘「お、おぉ」プルプル
ニート「・・・」ナデナデ
犬娘「愛が、こもってます」カァ
ニート「・・・」ポッ
ワシャワシャ
犬娘「ごめなさいごめんなさい」
ニート「ふぅー」
ナデナデ
犬娘「あぁ」ニコニコ
犬娘「は、はい」ギュ
犬娘「苦しいですね」
ニート「うん」
犬娘「でもいいです」
ニート「・・・」
ニート「お休み」
犬娘「おやすみなさい」
犬娘「・・・」
ニート「ふぅー・・・」
犬娘「・・・」
ニート「ふぅー・・・」
犬娘「すー」
ニート「・・・」
犬娘「すー」
ニート「・・・」
犬娘「すー」
ニート「・・・」
ニート「・・・」
犬娘「弄って、ない」
犬娘「あ、あれ」
犬娘「ご主人様、朝ですよ」ニコ
ニート「・・・」
犬娘「あれ、あれ」
犬娘「ま、まさかそんなわけないですよね」アセッアセッ
ニート「・・・」
犬娘「・・・」サー
おい
~~~~~
~~~
ニート「今日からお前は俺の犬だ!」シコビュ
ニート「ここでおしっこしちゃだめっ」シコビュ
ニート「よく出来たな!えらいぞ!」シコビュ
犬娘「まだ、あかちゃんも」ツー
犬娘「わたしのきもちも」ポロポロ
犬娘「なんにも、なんにも」ボロボロ
犬娘「うっ、うっうぅ」ヒックヒック
犬娘「ご主人様は生まれつき短命だったそうです」
犬娘「遺書には子孫を残そうとする本能だと書いてありました」
犬娘「あの夜の精液シャワーもこれで片付けるつもりのようです」
犬娘「ご主人様は最後に私と交わる決意を遺書に残していました」
犬娘「人間と獣の子供ができないよう神様が調整したのでしょうか」
犬娘「ご主人様が意気地なしだっただけでしょうか」
犬娘「私は今日も生きています、ご主人様のいないこの世界で」
おわり
野良犬娘か
ギャグかと思ったのに。。。
乙
Entry ⇒ 2012.02.04 | Category ⇒ その他 | Comments (0) | Trackbacks (0)
闇子「だからっ……トイレの闇子さんなのっ!!」
闇子「その花子さんのライバルなのよっ!」
男「いや…そんなの知らんよ」
闇子「知らないですって!?花子さんの話を知ってたら普通知ってるものでしょ!」
男「知らんもんは知らんし……っていうか君さっきから五月蝿いな……夜の学校なんだからもっと静かにしてくれんか」
闇子「そうね、悪かっ……あんた何で夜中に小学校の女子トイレにいるのよ!?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1327834708/
闇子「だからっ……トイレの闇子さんなのっ!!」
闇子「変態っ!変質者っ!」
男「……変態で何が悪い」
闇子「何開き直ってんのよ変態っ!」
男「小学生女児が好きで何が悪いっ!言ってみろ!」
闇子「小さい女の子が好きだなんておかしいでしょ!」
男「おかしくはないだろ。小さいものは可愛い。女の子は可愛い。小さな女の子はとても可愛い。好きになるのも当然だろ。おれはおかしくない」
闇子「……そ…それは確かに……ってあんた夜中の学校に忍び込んでるじゃない!普通に犯罪者よ!」
闇子「うるさいわね。変態犯罪者。警察を呼んでやるんだから」
男「ま、待て!話し合おう!まだ結論を急ぐのには早すぎる!」
闇子「いいえ、今すぐ呼んであげる。警察を…………」
男「……どうした?考え直してくれたのか?」
闇子「あはは……警察なんて呼べるわけないのよね……私おばけだから」
他にも10人くらいいなかったっけ?
闇子「私ったらドジね」
男「ふはははははははははははははは!」
闇子「何よ!?急に笑い出して気持ち悪い」
男「確かにそうだったな!君は花子さんと同じおばけだ。君には警察は呼べない」
闇子「そうよ……それがどうかしたの?」
男「大事なのは君がおばけだと言うこと。人間の法律なんて適応外。つまり君に何をしようと犯罪にならない」
闇子「なっ…何を言っているのよ!私はおばけよ!」
男「おばけでも小学生女児には変わりないだろ?」
男「おっと、逃げるのか?トイレの花子さんのライバルなんだろ?」
闇子「逃げるもなにもないでしょっ!こんな変態の相手なんてしてらんないわよっ!」
男「ぐへへへっ、逃がさないぞ。合法小学生女児め」
闇子「なによ合法って!?犯罪よ犯罪!」
男「おばけを襲っちゃだめって犯罪はありませーん」
闇子「や…やめなさいよ…くるな…こないで……きゃああああああああ!」
ガバッ スカッ
男「………あれっ?」スカッ
スカッ スカッ
男「……………あれっ?」
男「え?なにそれ?聞いてないんだけど。ちょっと!ねえ、ちょっと!」スカッ
スカッ
闇子「見苦しいわね。あなたは今、トイレの怪談、トイレの闇子さんの前にいるのよ」
男「な、なんだよ!さっきまで涙目で悲鳴あげてたくせに、急に余裕だしやがって」
闇子「さ、さっきのは忘れなさいっ!」
男「いやだね。脳内HDにキチンと保存してやったよ。それをおかずにして毎晩楽しんでやる」
闇子「な、なによっ!毎晩楽しむって!」
闇子「いいから忘れなさい!忘れないとひどいわよ!」
男「なにがひどいんですかー?」
闇子「あら…知りたいの?」
男「………え?何急に雰囲気醸し出しちゃってんのかな?」
闇子「私はおばけ、トイレの闇子さんなのよ?とっても怖いおばけ」
男「…お…おい」
闇子「暗い…汚い…そして怖いトイレから生まれた怪談なのよ」
ギィ バッタン ギィ バッタン ギィ バッタン
男「と…扉が勝手に……」
闇子「ふふふっ…ねぇ怖いの?怖い?怖い?怖い?ちびっちゃいそう?」
男「あわわわわわわわわわわわ」
闇子「怖いでしょう?あなたはこの汲み取り式の汚い便器へと引きずり込まれるのよっ!」
男「…………は?今何て言った」
闇子「だから…この汲み取り……えっ!?なにこれ?」
男「水洗式便所」
男「水洗式便器だって」
闇子「そんな……確かに汲み取り式だったはずなのに……」
男「そんな学校今時殆どないよ。改装されたんだろうね」
闇子「だ、だって、この旧校舎には……」
男「旧校舎?何を言ってるんだ?」
闇子「それは私のセリフよ!ここ旧校舎よね?」
男「そんなもんとっくの昔に取り壊されたけど」
闇子「そ…そんな……」
闇子「仕方ないじゃない……出てくるのなんて十数年ぶりなんだから」
男「そうか。なら仕方ないな」
闇子「…ここ、新校舎だったのね。改めて見回すとキレイなトイレね」
男「よかったじゃないか。住処がキレイになって」
闇子「……よくないわよ。こんなトイレじゃ怖くないじゃない。暗い、汚い、臭い、行きたくない。そして怖い場所だからこそ私みたいな怪談話が生まれるのよ」
男「でも…君みたいな可愛い女の子に汚い場所は似合わないよ」
闇子「………あなた」
男「君にはこのキレイなトイレが似合ってるよ」
闇子「ありがとう………なんて言うわけないでしょっ!!何なのよあんた!死ね!死になさいよっ!」
ポイッ ポイッ
男「や、やめろ!紙は貴重な地球の資源だ!そんな粗末に扱ってはいけない!」
男「あんだけ暴れたんだからそりゃね」
闇子「もうどうでもよくなったわ……」
男「そう気を落とすなよ」スカッ
闇子「…さりげなくボディタッチしようとしないでよ」
男「じゃあさ、朝までお話しようよ。女子小学生と会話できるだけでも幸せを感じれるんだ俺は」
闇子「…嫌よ。もう寝るわ」
男「え?寝るの?おばけって寝るものなの?」
闇子「………」ギィ バタン
男「ちょっ、個室に立てこもらないでよっ!ちょっと!」
闇子「…うるさい」
男「闇子さん!せめて寝顔を見せてよ!闇子さん!闇子さーん!」ドンドンドン ドンドンドン
闇子「うるさいわね……」
男「やーみこさー!」ドンドンドン
闇子「………そういえば、闇子さんを呼び出すおまじないってこんな感じだったかしら。ドアを何回叩くかは、忘れちゃったけど」
男「やーみーこーさーんー」ドンドンドン
闇子さん「あの頃は良かったわね……皆が私を怖がってくれて……」
ピーポーピーポー
男「やべぇ!!サツだ!」
男「畜生っ!」
警官A「不審者を見つけたぞ!」
警官B「そっちに逃げたぞ!」
警官C「捕まえた!確保ー!」
男「ち、違う!俺はやましいことなど何もしていない!トイレの闇子さんとお話していただけだ!」
女児B「なにそれー」
女児A「昨日の夜、この学校に不法侵入した男がいたらしいんだよ」
女児B「いやだ、こわーい」
闇子「………はぁ、今はおばけより、生きてる人間を怖がる時代なのね。嫌になっちゃうわ」
闇子「……まったく、近頃の子供はトイレをまったく怖がらないんだから」
ピカピカ
闇子「……なんて言っても仕方ないわね。こんなに明るくて清潔感溢れるトイレを怖がるほうがどうかしてるわ」
コンコンコンコン
「やーみこさん」
闇子「あら?これって確か……」
ガチャ
男「久しぶり。闇子さん」
闇子「………」
男「保護観察処分中です」
闇子「…それで、こりもせずにまた忍び込んできたの?」
男「………闇子さんに会いたくて」
闇子「……とっても嬉しくないわ」
男「いやね、闇子さんを呼び出す方法とか色々調べたんだよ」
闇子「…そうなの」
男「三番目の個室と迷ったんだけどね」
闇子「三番目は花子さんよ。ちなみに男子トイレの二番目は太郎くん。学校によって色々変わったりするけど」
男「えっ!?花子さんもいるの?」
闇子「残念、ここには私しかいないわよ」
闇子「……なわけないでしょ」
男「なんかさっきから元気ないけど。前なら今みたいな事いったらキーキー言ってたのに」
闇子「……今の世の中、私を怖がる子供なんていないのよ。」
男「どうしたの急に」
闇子「子供はおばけだけを怖がっていればよかったのよ……今の世の中、おばけより怖いものが増えすぎたの」
男「……物騒な世の中だからね」
闇子「その代表であるあんたが………人事みたいに何言ってんのよっ!!」
闇子「うるさいっ!」
男「五月蝿いのは闇子さんのほうじゃないか………」
闇子「……はぁ、本当に嫌になっちゃうわ。久しぶりに出てきたら、こんな変態に会うわ。私の居場所はなくなってるわ」
男「まぁ、そう落ち込まないで」ポンポンッ
闇子「気安く触らないで」パシッ
闇子「だいたい誰のせいで………え?」
男「どうしたんだよ本当に」
闇子「何で私に触れるようになってるのよっ!」
男「いやね、知り合いに寺生まれの奴がいてね。
俺、今回捕まったじゃん?そいつが、煩悩を断つために一から修行したほうがいいって言って無理やり修行させられたんだよ」
闇子「修行って何よっ!?」
男「そしたら何かね。おばけとか触れるようになったんだよ」ワキワキ
闇子「なっ、何よその気持ち悪い手付き!?煩悩払えてないじゃない!」
闇子「……じゃ、じゃあ何でこっちに来るのかしら」
男「これは愛だ!純粋な愛!」
闇子「愛なんて欲望の塊よ!」
男「まぁ、そんなのどうでもいい。素直にペロペロクンカクンカさせるんだ闇子さん」
闇子「嫌に決まってるでしょ!」
闇子「ふふふっ、私がこの数ヶ月間ただぼーっと過ごしてただけだと思ってたのかしら?」
男「ん?」
闇子「新しい必殺技を考えておいたのよ!その名もトイレットペーパーミサイル!」
男「………闇子さん」
闇子「何よ?」
男「必殺技名が小学生レベルなとこが可愛い」
闇子「うっ、うるさいわね!」
男「トイレットペーパーがミサイルになったところでたかが知れてると思うんだけど……」
闇子「甘いわね。トイレットペーパーミサイルの真価は束縛力にあるの。通常の強度を遥かに超えたペーパーがあなたの動きを封じるの」
男「闇子さん……」
男(必殺技が出来たのがよっぽど嬉しかったのかな?自分からそんなに説明しちゃって………可愛いなぁ)
闇子「くらいなさいっ!トイレットペーパーミサイル!」
ヒュン ヒュン ヒュン ヒュン
男「破ぁ!!」
バシュン
闇子「…………はい?」
男「俺にもわからん」
闇子「何でそのよくわからないもので、私のトイレットペーパーミサイルが撃ち落とされているのよっ!」
男「……一言で言うと、寺生まれって」
闇子「あなたは寺生まれじゃないでしょっ!!」
闇子「や…やめて…こっちに来ないで…」
男「断る」
闇子「あわわわわわわわわわわ…」
男「いただきまーすっ!」ガバッ
闇子「いやぁああああああああああああああああ」ジタバタ
男「暴れるな!ペロペロできないだろ!」クンカクンカクンカ
闇子「やめてぇえええええええ」ジタバタ
男「こらっ!だから暴れるな!」チュチュチュチュ
数分後
闇子「………」グッタリ
ペロペロペロペロ
男「クンカクンカやチュチュのほうが良かった?」
闇子「どれも嫌よ!」
男「つまりスーハースーハーなら……」
闇子「……はぁ。昔はこんなんじゃなかったのに」
男「昔?」
闇子「昔は皆、私を怖がっていたわ。最後に怖がらせた男の子なんて震えてその場で腰を抜かしてたんだから」
男「……ああ、多分それ俺だ」
闇子「…………は?」
男「うん」
闇子「…いや、あんた私のこと知らないって」
男「だから、花子さんだと思ってたんだって。皆もトイレの花子さんだと思ってたよ」
闇子「…え?じゃあ昔から私は」
男「トイレの花子さんと間違われてたんだね」
闇子「…そ…そんな……何かの間違いよ……」ガクッ
男「どうした?」
闇子「あなた!昔は私のことを怖がってたんでしょ!何かそこは嬉しいわ!」
男「………怖がる?」
闇子「怖がってたじゃない!震えてたじゃない!腰抜かしてたじゃない!」
男「いや、あのときは、あまりの可愛さに腰抜かして震えてただけだし」
闇子「何でそんなくだらない嘘をつくのよ!確かに怖がってたはずよ!」
男「いや、だって小学生女児好きに目覚めたのそのときだし」
闇子「嘘よ嘘!」
男「その時の俺の表情覚えてる?」
闇子「………小学生だとは思えないほどに気持ち悪いにやけ面だったわ」
男「嫌がらせなんて」
闇子「してるじゃない!!私の体触りまくってたじゃない!!」
男「え?嫌だった?」
闇子「あの反応で喜んでると思う!?馬鹿なの!?」
闇子「責任?死んでくれるの?そうでしょ?早く死んでよ」
男「学校の怪談なりそういうものっていうのはな。人に忘れられると消えてしまうんだ」
闇子「知ってるわ。だから人を怖がらせてその存在感を保つのよ。犠牲を出すにしても必要最小限。
噂話をする人間を残してやらなきゃ意味はないから。
大量虐殺をする怪談話がないのもそのためね」
男「で、君はもう消えようとしている」
闇子「わかってる。だからと言ってどうこうしようとも思わないけど。何?まさかあなた、私の話を宣伝でもしてくれるつもり?」
闇子「ふうん。じゃあどうするつもりよ」
男「君を式紙として使役しようと思う」
闇子「…………………は?」
男「個人で使役するぶんには公のルールも無視できる」
闇子「いやいやいやいや!ちょっと待ちなさいよ!そもそもあなたが修行したのってお寺なんでしょ?」
男「寺生まれに不可能はない」
闇子「だから!あんたは寺生まれじゃないって言ってるでしょ!」
男「時間がない。急がないと」
闇子「第一、あんたなんかに使役されたくないわよ!」
男「毎日ペロペロしてあげるからね」
闇子「嫌ぁあああ!絶対嫌!消えるほうがマシよ!」
闇子「陰陽道じゃないの!?第一使い方あってるの?絶対間違ってるわよ!」
男「ははは、闇子さんはもの知りだなぁ」スッ スッ
闇子「次に何で十字をきってるのよ!絶対適当でしょ!」
男「破ぁ!!」
闇子「結局それじゃない!それでどうとでもなるんでしょ!もう好きにしてっ!」
バシュン バシュンバシュン
闇子「……で?どうなったわけ?何か変わったの?」
男「トイレの外に出てみてくれ」
闇子「トイレの外?……馬鹿じゃないの?私はトイレの闇子さんよ。なんてね。普通に出れるのは知ってるわよ。ここはその逆パターンでしょ?逆に出れない…」ガチャ
闇子「あ……普通に出れたわ…」
闇子「………」ダダダダダッ
男「あっ……逃げた」
闇子「馬鹿!死ね!変態!インチキ仏教徒!もうあんたの顔なんて二度と……」
男「………闇子さんお越しください」
シュワンッ
闇子「見たくなかったわよ……」
男「つまり、いつでも呼び出せるんだよ」
闇子「ああああああああああああ」
男「毎日が幸せすぎてこわいな。闇子さんをいつでもペロペロできるなんて……ふんっ」ブボッブリリリ
闇子「ふんっ…いくら自宅のトイレだからって、トイレの闇子さんの住む家のトイレで呑気にしてるなんて間抜けね」
カチッ
男「おわっ!?急に真っ暗になった」
闇子「ふふふっ、トイレの闇は闇子さんの指先一つで自由自在なのよ」
男「闇子さんお越しください」
シュワンッ
闇子「何読んでるのよ!?って臭っ!?臭いわよ!何食べたらそんなに臭くなるのよ!」
闇子「あんたのが特別臭いのよ!こんなとこいられないわっ!」ガチャッ ガシッ
闇子「離して!離しなさいよ!」
男「排便しながらトイレの闇子を抱きしめるって風流じゃないかな?」ギュッ
闇子「離せ!離せって言ってるでしょ!臭いのよっ………って何かお尻に当たって…いやぁあああああああああ放して離しなさいよ!」
闇子「助けて!トイレの花子さぁああああああああああああん!」
しまい
ちょっと小学校のトイレに行ってくる
Entry ⇒ 2012.01.30 | Category ⇒ その他 | Comments (0) | Trackbacks (0)
北極「気持ち、痩せてきた」CO2「ごめんなさい」
CO2「・・・・・・・・」
北極「なぁ、CO2お前なんか知らない?」
CO2「ご、ごめんなさい・・・・・私のせいかも・・・・・・ひぐっ・・・・・///」
北極「?」
CO2「ま、また・・・人間が・・・・私を出してるのっ・・・・・はぅっ!」
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1326334999/
北極「気持ち、痩せてきた」CO2「ごめんなさい」
CO2「い、今は・・・・言えない・・・・・・・んはぅっ!」
CO2「ま、また・・・火力発電所から・・・・・出てきてる・・・・・・・」
北極「まぁ、お前もあんまり無理すんなよ?北極熊もがんばってるし」
CO2「う、うん・・・・(い、言えない・・・・私が原因だなんて言えない・・・・・)」
北極「おいおい、育ち盛りの苔見せるなって。いつからお前はそんな女になっちまったんだよ」
ツンドラ「う、うるさいわね!ただ、痩せちゃった私を見て欲しかっただけなのよ!バカ!」
北極「あぁ、確かに痩せてるなぁ。主に土地が。」
ツンドラ「うるさいわね!あんたんとこなんか土さえ無い癖に!!」
CO2「(仲良さそう・・・・・)」
北極「ん?どうした?」
CO2「ツ、ツンドラさんとは・・・昔から仲がいいの?」
北極「まぁな。お隣さんの幼馴染だからな。」
CO2「そ、そう・・・・(ライバルなのね・・・)」
ツンドラ「あぁ、もう!また北極、なんとかしなさいよこの状況!」
北極「無理言うなよ。俺だって原因わかんねーんだからよ・・・・・」
ペンギン「いやっほーっ!」ドボーン
北極「あっ、ペンギンかわいい。」
熊「がおおおおおおおおおおおおお!!」
ツンドラ「はぁ・・・・・。」
CO2「ツ、ツンドラさん・・・気を落とさないで・・・・・・。」
ツンドラ「あんたに言われたくないわよ!」
CO2「ご、ごめんなさい・・・・・・」
北極「・・・・・・・・」
CO2「なんですか?」
北極「もしかして、最近の気温上昇ってお前の・・・・・・・」
CO2「えっ、えっ・・・・・・・」おどおど
北極「(やっぱりか)」
北極「いや、気にしないでくれ。ほら、最近原発増えてきてるし・・・・一部じゃ爆発してるけど。」
北極「お前も痩せられるな、ははははは。なーんて思っただけだ。」
CO2「ほ、北極さんのばかぁ・・・・・・///」
北極「太陽光発電に風力発電、原発も安全機動に乗ってるな。」
CO2「そうですね。ほら、私もこんなに痩せ・・・・きゃっ、見ちゃダメです!ドスッ
北極「ぐはっ!!」
CO2「の、ノーパンでした・・・・・・///」
北極「さ、さっさと履け・・・・見れて無い俺だけが被害者だろうが・・・・・・」
CO2「も、もしかして・・・みたいんですか?」ぴらっ
北極「・・・・・!」ジー
北極「気にするな。氷山の一角が隆起しているだけだ。続けていいよ。」ジー
CO2「そ、そんなに見たいんですか?」
ツンドラ「ちょっとあんたたち何やってんのよ!」
北極「太ったツンドラ地帯に興味はねーや。さぁ、CO2続けるんだ。」
ツンドラ「ふ、太ったかしら・・・・・・」ガーン
北極「おおおおおっ!!」
北極「小さくなって、幼女化するとこうも興奮するものなのか!!」
氷山「ドドドドドドドドドッ!」
CO2「あ、あんまり見ないで下さい・・・・・毛とか無くなっちゃって・・・・・割れ目とか出来ちゃってて・・・・」
北極「それがいいんだろ!」キリッ
CO2「ふぇっ?」
北極「(幼女になった)お前のことが好きだ。」
CO2「えっえっえっ!?」
北極「さぁ、海水に溶け込むんだ。そしいて、俺と一緒になろう・・・・」
CO2「ぷ、プロポーズですか!?」ズキューン
北極「太陽がなくなる、その日まで・・・・・・」キリッ
CO2「ほ、北極さん・・・・・」
北極「ほら、オーロラが俺達を祝ってくれてるぜ。」
CO2「やだ綺麗・・・・・・///」
北極「じゃあ、いいよな?」
CO2「は、はい・・・・ずっとよろしくお願いします・・・・・・」
CO2「私の苗字を『北極』にしてください・・・・」
おわり
乙
ツンデレのツンドラだった
北極にペンギンはいない
新しく出来たSS深夜VIPのSSです
いろんなSSがあるので是非見てください!
SS深夜VIP
Entry ⇒ 2012.01.24 | Category ⇒ その他 | Comments (0) | Trackbacks (0)
面接官「嫌いなものは?」幼女「トマトです!」
理由は簡単だ。ロリコンによる盗撮、誘拐・・・・・幼女にとっては非常に住みにくい世界となった。
国会はそれに対し、特別措置案「日本幼女育成保護法案」、通称「幼女法案」を提出、
健全な幼女たちを育成所にて成人まで保護することとなった。
これが今から20年前の出来事である。
俺は、中学校の教師を目指していたが、知り合いの教授から「幼女育成所に行ってみないか?」と頼まれた。
別に教師にこだわりはなかった。それに知り合いの教授からの推薦。確実な内定だ。
俺は幼女育成所に入った。
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/internet/14562/1326352491/
面接官「嫌いなものは?」幼女「トマトです!」
みごとに幼女まみれだ。30代の若い女性が話しかけてくる。
所長「あなたが男さんね?話は聞いてるわ」
男「はい、今日からこちらでお世話になります。男です。」
所長「こんにちは、とりあえず歩きながら案内するわ・・・・。」
艶かしく太陽の光を浴びて光るピンクの口紅。
黒のスーツにYシャツは少しはだけている。そして赤のヒール。
後ろから見ているだけでも興奮してしまう・・・。
施設を一通り回る。幼女が走り回っている。
俺の方をじっと見つめる子。所長に「お姉ちゃん、この人だれ?」と声をかける子・・・。
落胆する俺の肩に手を乗せて、所長が話しかける。
距離が近い!耳元だ!
所長「だいじょうぶよ・・・・すぐに、慣れてくれるから・・・・・・。」
この所長には慣れられそうに無い。
俺はここの幼女よりも順応性が悪そうだ・・・・。
所長「ふふふふふ・・・・・・」カッカッカッ・・・・
完全に遊ばれてるじゃないか、俺・・・・。
ちなみに、「6年」というのは、「6歳児」という意味だ。
興味津々で俺の方を見る幼女たち。
作り笑顔で俺は手を振って答える。
担任「みんなぁ、こっちむいてねぇ~」
この組の担任。20代後半の女性。少し天然気味でめがねをかけている。
それにしても・・・・・・・・なんて爆乳だ。
紺色のスーツのボタンがはじけ飛びそうじゃないか。
この職場は、色々と男の俺にはまずい・・・・。
担任「今日から、ひらがなの授業をはじめますよぉ」にこにこ
担任「この前までお絵かきしていたえんぴつで、ノートに書いてくださいね。」
「はーい!」
みんな、先生に指示されて、「あ」の文字をノートに書く。
えんぴつの持ち方がぎこちない。
力を入れすぎてしまって、鉛筆削り機をいそいそと回す幼女。
「先生、かけたぁ!!」
6歳、普通なら小学1年生だ。
結構普通だなぁ・・・・。
俺が教室を見渡して、見学しているとひとりの幼女が俺の方をじっとみているのに気付く。
それに気付いたその幼女は、すぐに顔を下に向けてえんぴつを走らせた。
「先生、これわかんない!」ぐいぐい
男「あぁ、これは・・・・って、えっ!」
「先生!おだんご作ったよぉ!!」べちゃべちゃ
男「す、スーツが・・・泥まみれに・・・・・」
「せ、先生・・・・ご、ごめんなふぁぃぃ・・・・ふぇええええええん!」
男「大丈夫大丈夫。これくらいすぐ取れるから、ね?」なでなで
「ほ、本当?」ぐすんぐすん
男「あぁ、大丈夫だよ。全然気にしてないからね。」なでなで
「えへへぇ・・・・・///」
椅子に座りながら、短いスカートで足を組んで・・・・・。
ふりふり付きの紫ですよ、もうバッチリ見えてますから・・・やめてくださいよ・・・・・・・。
俺がそんな顔をしていたせいだろうか、所長は少しニヤリとしながら椅子から立ちあがり、
俺の方へ歩きながら言う・・・・。
所長「じゃあ、服を脱がないといけないわね。」
なぜ俺の顎に指を這わせる。
男「は、はぁ・・・・とりあえず今日はYシャツで過ごそうと思います。明日は違うスーツで通勤しますんで。」
すると所長は、なにやら機嫌を損ねたように
所長「クリーニング代は出します。後日領収証と一緒にこの書類を提出して。」
そう言いながら椅子に座って仕事を再開した。
完全に誘っていたな、さっきのは・・・・・・そして失敗して、ご機嫌ななめ、ってところか。
あっちのほうが心が休まる。
「せ、先生・・・・スーツごめんなさい。」
まだ気にしていたのか、この子は。
男「大丈夫だよ」なでなで
しかし、11月だ。ちょっと寒い。手が少し震える。
「先生、全然大丈夫じゃない!寒そう!」ぎゅぅ
男「えっ、どうしたの?」
「私があっためるの!」
「あっ、先生ひとりじめずるい!」
「わたしもぉっ!」
幼女10人ほどに抱きつかれながら押し倒される。
俺は棒倒しの棒か・・・・。
しかし悪い気はしない1日だった。
今日は算数だ。
まただ・・・。またあの子が俺を見ている。
俺は気付かないフリをして周辺視野で彼女を見る。
・・・・・・完全に手が止っているぞ。注意するべきかな。
担任の先生に相談してみる
担任「そうねぇ・・・わたしにはちょっと分からないですねぇ・・」
担任「もしかして、好きになっちゃったんじゃないですか?男さんのこと♪」
男「は、はぁ・・・・・そういうもんなんですか?俺、もう22ですけど・・・。」
担任「恋愛に、歳の差なんて関係ないんですよぉ♪・・・・キャッ!」
突然担任の天然が爆発した
男「ぐはっ!いてててて・・・・・・」
なぜ何も無いところでこけて俺に抱きついてくる・・・・。
そして胸が俺のを押しつぶしてる・・・・・。谷間はヤバイだろ、谷間はぁ・・・・・!
相変わらずあの子は俺のことを見てくる・・・・。
所長のアタックは過激だ。
所長「車で家まで送ってあげるわ。」
車はまさかのGT-R
所長の給料って一体・・・
車を見つめる俺をみて、何かに勘付いたのか、
所長「そんなにもらってないわよ。車は趣味なだけ。」
そしてアパートまで連れて行かれる・・・・
別れ際に、ものすごく意味深に所長が言う。
所長「また、送ってあげる・・・」
一体次はどこに送られてしまうのだろうか・・・・。
ネオンまみれのホテルに連れて行かれないことを祈るばかりだ。
幼女たちも学年が上がると同時に、俺は副担任から、担任へ昇格した。
少し給料が増えて喜んだいた・・・・。
そして、慣れ親しんでいるということもあって、6年生から7年生になった幼女たちのクラスをそのまま担当した。
爆乳先生は隣のクラスだ。
まず1番初めの大仕事・・・・。面接だ。
30人、全員から聞き取り調査のような面接を行う。これは政府からの義務付け。
優良な施設かどうかの判定に使われる。
面接は俺一人だ。同時に他の学年も行っているため、一気に人手が足りなくなるからだ。
さぁ、始めるか・・・・・
「ハンバーグ!」
男「嫌いなものは?」
「トマト!」
男「好きな科目は?」
「んーと・・・・・体育!」
男「元気でよろしい。」
そんな、何気ないやり取りが続く・・・・・
男「はい、出席番号23番。入って。」
「・・・・・・」
そういえば23番はこの子だった・・・・。
いつも俺を見つめてくる。既に1年。
見つめてくる以外は特に俺に接触してこない、不思議な子・・・・。
「・・・・せい?」
しかも今からふたりきりだぞ。何かまずいことがあったら所長に・・・・
「先生?」
男「あっ、あぁ悪い悪い・・・・お日様がぽかぽかして、眠くなっちゃったんだ。さぁはじめようか。」
「・・・・・・・・・」
男「ん?どうした?好きな食べ物は?」
「せ・・・・・」
男「せ?」
「先生・・・・・・////」
男「oh.......」
男「嫌いな食べ物は?」
「先生・・・・・・・///」
へ、へこたれんぞ・・・・
男「好きな科m
「先生・・・・・・・///」
男「言い終わるまえn
「先生・・・・・・・///」
男「わかった。わかった。とりあえず落ち着け、な?」
俺はそういって彼女の元へ歩み寄る。俯いて顔を真っ赤にしている。
肩に手を置いて、頭をなでてやる。
男「落ち着いたか?」
「う、うん・・・・・」
男「どうしてさっきあんなこと言ったんだ?」
「せ、先生が好きだから・・・・・きょ、教室だと・・・・みんな見てて恥かしいし・・・・」
「近づきたくても、近づけなくて・・・・・・・」
「眼中にございません」という奴は所長の相手をして欲しい。
男「わかった。じゃあまた別の日にその話はしよう。とりあえず今は面接だ?いい?」
「は、はい!」
とりあえず形になった報告書をまとめて所長に提出・・・・爆乳先生だ!
男「先生!」
爆乳「あら、どうしたんですか?」ぷるるんっ
男「すみません、面談の報告書はできたんですが、ちょっと問題がありまして。」
男「そっちに急いでいかないといけないので所長にこれを出してもらえませんか?」
爆乳「いいですよぉ♪私のと一緒に出しておきますねぇ♪」ぷるるんぷるるんぷるるん・・・・
男「悪い悪い、ちょっと手間取っちゃって。」
男「で、俺のこと本当に好きなのか?」
「・・・・・・///」こくり
困った。
幼女保護法案でできた施設内で、事件を起こすわけにはいかな・・・・なっ!!
「・・・・・////」ぎゅううぅ
「先生、エッチ・・・///」すりすり
男「エッチは18歳になってから!ダメ!」
根暗なのか積極的なのか無謀なのか一体この子はなんなんだ・・・・。
「エッチ・・・・///」すりすり
そ、そこ股間だからっ!股間ですよ、先生の股間です!
「ほ、ほんと!?」
男「だが、条件がある」
「じょーけん?」
男「あぁ、約束みたいなものだ。破ったら結婚してあげない。いいね?」
「・・・・わかった。」
男「君が、18歳になっても俺のことが好きなら。結婚してあげる。」
男「そう。あと11年。俺は待っててあげる。逃げたりしない。これも約束だ。」
「・・・・11年・・・・・わかった!先生が待ってくれるならがんばる!」
男「まぁ、あんまりがんばるなよ。気長にいこうな?」
「うん・・・・///」
「あっ、先生、靴の裏に何かついてるよ?」
男「え?」
・・・チュッ
「えへへへへぇ・・・・・」たったったったった
彼女は俺のほっぺにキスをして、悪戯が成功した時のような顔で走っていってしまった。
そして、11年後、その子と結婚することになろうとは、その時の俺は知らないでいた・・・。
「先生、約束守ったよ。」
男「あぁ・・・・待ってたよ。」
おわり
途中どきどきしたけど、ハッピーエンドで最高だった
33と18か…俺にも希望gいや違いますおまわりさんわたしじゃないです
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Entry ⇒ 2012.01.22 | Category ⇒ その他 | Comments (0) | Trackbacks (0)
川越シェフ「今日のミッションも過酷だなぁ…」
川越「照英君呼びにいかなきゃ」
川越「照英くーん」
ガチャッ
照英「…川越またか…」
川越「互いに一本背負いしてる画像だって!お母さんの命がかかってるらしいよ」
照英「…」
川越「照英君…?」
照英「もう…もう嫌なんだよ…!!」
川越「! …僕だってもうウンザリだよ!なんで…なんでこんなことになってしまったんだろう…」
川越「最初はボランティアだったのにね…」
照英「最近じゃ調子に乗った奴らが限度を超えたミッションをふっかけてきやがる…」
川越「僕なんてこの前セフィロスと戦ったよ」
川越「そうだね。…さぁ、今日も頑張ろうよ。終わったら美味しいシチューをご馳走するからさ」
照英「…あぁ、ありがとう………。今日が最後になればいいんだが、そうはいかんだろうな…」
川越「僕たちの知名度が上がりすぎたからね。そりゃあ、大切な人の命が助かるなら、無理な要求だってしたくなるさ。彼らにとって僕たちは赤の他人なんだから」
照英「まったく、人の生き死にを他人に託すなんてどうかしてるぜ」
川越・照英「せーい!!!!!」
ダーン!!
川越「やるね…照英君…」
照英「お前もな!」
川越「身体の節々が痛いよ…はぁ…また薬局で湿布買わなきゃ」
照英「ハハハ。相変わらずやわな奴だな!俺はまだピンピンしてるぜ?」
ぴろりろりーん
川越・照英「!?」
照英「さっきので大丈夫だったんだな。互いに一本背負い…なかなか難しいもんだぜ」
川越「まあセフィロスと戦うよりは何倍もマシだったけどね。さて、ミッションもこなしたし家に帰るかな」
照英「ああ…また
ぴろりろりーん
照英「今度は俺か…」
妹が家に帰ってこないんです!
照英「まじかよ…」
川越「うわぁ地味に大変そう(笑)」
照英「笑い事じゃねーよ!!!」
川越「いいよー!その調子で泣いて泣いてー!!!」
照英「うぅっ…うぁあ…ぐずっ……うっ」
~ジャ○コ
川越「さーて墨汁も買ったし、照英君のところに戻らなきゃ!」
子供A「あ!川越シェフだー!」
子供B「ほんとだー!!」
子供C「すっげーサインくれ!」
川越「えっえっ」
子供C「サイン!!」
川越「うっ、うん」
さらさらさら
子供C「サンキュー!」
川越「僕のこと知ってるんだね」
子供A「もちろんだよー!なんたって川越シェフと照英は人類の最終兵器だからな」
子供B「ぼくのお母さんも川越シェフのおかげで助かったんだよ!ありがとう!」
川越「どういたしまして。…君はなんてミッションを僕に頼んだのかな?」
子供B「えっとねえっとね、セフィロス!」
川越「…なん…だと…?」
子供B「凄かったな~!まさかほんとに戦ってくれるなんて。僕感動しちゃった!」
子供A「だよねー!どうせお願いするなら面白い方がいいかなって思って、僕たち工夫したんだ」
子供A「まあお母さんただの盲腸で、川越シェフに頼まなくても助かったんだけどね(笑)」
子供C「川越シェフにお願いする口実にしただけだよな(笑)」
子供ABC「wwwwwwwwwwww」
川越「………」
ぴろりろりーん
川越「…こんなときにミッションか。早く照英君に墨汁を届けないといけないのに」
川越シェフが子供達に墨汁ぶっかけて恍惚な表情してる画像ください!!
お婆ちゃんが危篤なんです!
川越「…ニヤリ」
かわごえは こどもたちに ぼくじゅうのらあめを ふらせた!
子供B「や、やめてよ川越シェフ!!なにするの!!!」
子供C「口に入ったよー!不味いよー!!ぺっぺっ…カハッ…」
川越「ナイスタイミングだね…素晴らしいミッションだ。ハハ、フハハ、ハハハハハハハハハハ!!!!!!」
川越「エクスタシー!」
どぴゅどぴゅっ
子供ABC「や、やめろおおおおお!!!!!」
川越「ハハハハハハハハハハハ!!!たのしー!!!」
川越「お前らみたいなクズのためにな!僕たちは毎日毎日汗水垂らして過酷なミッションに挑んでんだよ!!」
川越「ふざけんな!!!!!!」
川越「僕たちの!平穏を!返せッ!!!!!!!!!!!!」
川越「わかればいいんだよ」
ぴろりろりーん
川越「…ミッションコンプリートだね。…墨汁買い直さなきゃ」
川越「おそくなってごめんね照英君」
照英「待ち侘びたぞ川越…ぐすっ」
川越「いろいろあってね。はい、墨汁」
照英「ああ、ありがとう…ぐすっ…」
川越「味わって飲んでね!」
照英「…良し………。すーはーすーはー」
ズビズビズビッ!!
川越「すっごーい!照英君顔真っ黒(笑)もう涙とかわかんないよ!」
照英「グッ……グスン…ズルズル……」
川越「鼻水汚い(笑)」
照英「もう…良いか…?」
川越「まだメール来てないでしょ?もっと啜らなきゃダメなんじゃない?」
照英「不味い…不味い…ううう………」
川越「流石におかしいな。まだメールが来ないなんて…」
照英「もう…無理…不味い…吐く………」
川越(余った精子をチョイ足ししたのがまずかったのかな?純粋な墨汁じゃないもんな~)
照英「おえっ」
川越「や、やめてよ照英君!堪えて!吐かないで!!!」
照英「おぼろろろろろ」
川越「あーあー…だだ漏れじゃん…」
川越「あっ、達成メールだよ照英君!良かったね!吐くまで飲まなきゃダメだったのかもしれない(あっぶねー僕のせいじゃなかった良かったー!)」
照英「ハァ…ハァ…」
川越「…お疲れ様。さっ、もう帰ろうか。吐瀉物の清掃はきっと掃除のおばさんとかがやってくれるよ。家に帰って休もう。ねっ」
照英「あぁ…」
~川越邸
川越「はぁ…今日も疲れた」
僕はなんでこんなことをしているんだろう。
今日の子供の言葉で理解した。
本当に困っていて僕たちにすがる人はごくわずかだということを。
川越「よしっ」
川越「照英君、話がある」
照英「…なんだ改まって」
川越「もう、ミッションメールは受信拒否。あるいはそれができなければ全て見なかったことに…スルーしようと思うんだ」
照英「…」
川越「昨日君のいないところでいろいろあってね。もうボランティアなんてバカバカしくなっちゃったよ…ははっ」
照英「…俺も同意見だ」
~川越邸
ぴろりろりーん
ぴろりろりーん
ぴろりろりーん
川越「やっぱり受信拒否は無理だったなぁ。もうこの受信音…聞くのも嫌なのに」
ぴろりろりーん
ぴろりろりーん
ぴろりろりーん
川越「ああもう!!!」
はあ…はあ…くそっ!!!」
ダンッ!!!
…ぴろ…りろりーん
ぴろりろりーん
ぴろりろりーん
川越「まだ鳴りやがる…」
ピッ
テレビ「ずんちゃずんちゃ」
川越「音楽番組か…ちょうど良い」
テレビ「ずんちゃずん…ピッ 臨時ニュースが入りました。」
川越「あぁん?」
テレビ「昨日一日だけでも死亡者数は116人」
テレビ「いかがなものでしょう?」
テレビ「このままでは日本は…世界はどうなってしまうのでしょう?」
川越「…」
ピッ
川越「はぁ…」
ぴろりろりーん
ぴろりろりーん
ぴろりろりーん…
照英「まさかこんなことになるとは」
ぴろりろりーん
ぴろりろりーん
ぴろりろりーん
照英「俺はどうしたら…」
どんどんどんっ!
川越「照英君!照英君!開けて!!」
照英「…!川越か!」
川越「ニュース!見た!?」
照英「ああ…」
川越「僕たちどうしたら…」
照英「…俺たちには、関係ない!!!」
川越「照英君…」
照英「俺たちを…巻き込むなよ…!!!」
川越「…きっと、僕たちじゃないと、ダメだったんだよ。きっと僕たちには、他のみんなにはない何かがあるんだ。」
照英「川越…」
川越「ねぇ、照英君。これからも頑張ってみようよ。…僕たちが求める理由は、…まぁ、そのうち、見つかるんじゃないかな」
川越「そりゃ大変だし苦しいけどさ、やっぱり僕たちが誰かの助けになってるなら、それはもう十分すごいことなんだと思うよ」
川越「…行こっ、照英君!」
ぴろりろりーん
ぴろりろりーん
ぴろり
ピッ!
「川越シェフと照英が泣きながらアマゾン川横断する画像ください!お祖父ちゃんが末期の舌癌なんです!」
川越「…まずは目指せアマゾン川だよ!照英君!」
照英「ああ!行くぞ川越!!」
照英(俺の相方がお前で良かったよ、川越…)
~完~
ご愛読ありがとうございました!
すみせんでした!
これからも川越シェフと照英はみんなのために過酷なミッションに立ち向かってくれることでしょう。
あるのかよ
ワロタwwww
ありがとうございます!びっくりしました!!
Entry ⇒ 2012.01.20 | Category ⇒ その他 | Comments (0) | Trackbacks (0)
空気清浄機「おならしちゃらめぇええ」ブオオオオオオ
男「電源をさして、っと。ぽちっとな」
空気「はっ!ここは・・・」
男「しゃ、しゃべった?!」
空気「はい。最新式ですから!それよりも、あなたが私の新しいご主人様ですか?」
男「あ、あぁ・・・そうなるのかな?」
男「お、おう。よろしくな。」
空気「それにしても臭い部屋ですね・・・イカ臭いです」
空気「ちょっとまってくださいね・・・えいっ!」ブオオオオオオ・・・
男「い、いい匂いがする・・・甘酸っぱくて、まるで女の子のような・・・」
空気「はい、終わりました。」
男「タンク?どこにあるんだ?」
空気「えっと、右隣に・・・ひゃうっ!」
男「えっ?えっ?」
空気「き、急に触られると・・・その、敏感なので・・・////」
空気「そ、それです・・・ひぐっ?!・・・はぁはぁ・・・・////」
男「だ、大丈夫か? 」
空気「お、お構い無く・・・////」
空気「それに水をいれてきてください」
空気「はぁ・・・はぁ・・・は、はやくぅ、ご主人様ぁ・・・・///」ピーピーピー
男「いくぞ?」
空気「は、はいぃ!ご主人様のおみじゅ、いっぱいくらしゃいひぃ!!補助タンクの膣中にいっぱいぃぃ!!」
男「ほれ!」ガチャ ドクドクドクドク
空気「入ってくりゅううううう!!」
空気「でちゃう!湿度センサーが反応してでちゃいましゅうううううあ!!」ブオオオオオオ
空気「い、淫乱でごめんなしゃいぃ」ブオオオオオオ
男「それにしても、ちょっとうるさいな・・・静音モードにしてみるか」ポチッ
空気「・・・・」フシュウウ・・・
男「ん?どうした?」
空気静「・・・何?」
男「え?」
空気静「べ、別に何もない・・・////」
男「なにか様子が変だぞ?」
空気静「大丈夫・・・何も問題ない・・・・////」
男「(性格が変わった?)」
空気静「あ、あの・・・」
男「どうした?水が切れたか?」
空気静「ち、ちがう・・・あなたが、私の・・・・ご主人様なの?・・・////」
空気静「そ、そう・・・そ、その・・・よ、よろしく・・・////」
男「よ、よろしく・・・」なでなで
空気静「んはっう!・・・さ、触るのは・・・んっ!・・・や、止めて欲しい・・・////」
男「わ、わりぃ・・・!」
空気静「分かってくれれば、大丈夫・・・」
空気静「!?」
空気静「そ、それは困る・・・////」
男「どうして?」
空気静「み、水の補充ができない・・・から・・・・////」
空気静「フィ、フィルターの交換も・・・ある・・・////」
空気「ひぐぅううううっ!!」ブオオオオオオ
男「やっぱこっちだな」
空気「え、選んでくれてありがとうごじゃいましゅううううう!!」ブオオオオオオ
空気「がんばりましゅううう、はぅううううっ!んぐぅ!」
男「はらほら、お前の前でオナニーしてやるよ!」シコシコシコシコ
空気「あひぃ!ご主人様のぉイカ臭いにほひがぁたまりましぇぇええん!」
男「全部吸えよ?いいな?」
空気「あひぃ!が勝手にターボモードになっちゃいましゅうううう!!」
男「はぁはぁ・・・い、イクぞ!!」
空気「ほ、補助タンクの膣中にぃくだしゃいい!!」ガチャ
男「ここだな、くっ!!」
空気「で、ててりゅう!!補助タンクの膣中が一杯になっちゃいましゅうううう!!」ドクドクドク
空気「ご主人様のせあですよ・・・もう、あんなに出すからですぅ///」
男「そうだったな。でも、ついな・・・?またいいか?」
空気「フ、フィルターのお掃除していただけるなら・・・///」
男「任せろって」ガチャ
空気「はうっ!!」
おわり
面白かったぞ
人増えないなあ
この空気洗浄機は欲しい
乙
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いろんなSSがあるので是非見てください!
SS深夜VIP
Entry ⇒ 2012.01.20 | Category ⇒ その他 | Comments (0) | Trackbacks (0)
少女「こんにちはー!!お向かいさん!!」
このマンションの構造上、内向きにも縁側が作られている。
日の光は入ってこず、湿気が多い。冬になれば部屋と外の温度差で結露が窓を支配する。
構造的欠陥に文句を言うこともなく、大量の雫を拭き取る。
窓を開け、外にでる。向かいの部屋はカーテンで遮られ、中の様子はわからない。
こちらと向こう側までは約10メートル。少し大きな脚立が対岸を繋ぐ橋になりえる距離。
俺は他人の窓に背を向けて、冷たい空気に身を震わせながら濡れたガラスを拭こうとした。
「こんにちはー!!お向かいさん!!」
誰かの声に背中を押された。
振り返ると、そこには欄干に胸を乗せるようにして身を乗り出し、微笑んでいる少女がいた。
「なにしてるんですか?」
無邪気な好奇心で包まれた質問。特に何も思うこともなく、窓を拭いているとだけ伝えた。
「そうなんですかぁ」
それで会話を切り、窓ガラスを磨く。
時折、ガラスに映る少女の姿が気になったが、優先するべきは自分のこと。
全ての水分を拭き取ると、俺は対岸を見た。
少女の姿はない。ただ、吹き抜ける風が寒いだけ。
部屋に入り、鍵を閉め、リビングに向かった。
窓を開けて換気をする。朝の冷風が押し寄せ、机においてあったプリントが吹き飛んだ。
慌ててそれを拾おうと、向こう岸から視線を外した。
「おはようございまーす!!」
朝から威勢の良い声がした。肩越しに後ろを見れば、昨日見た少女だった。
近所にある学校の制服を着ている。その姿に一瞬だけ見惚れた。
「なにしてるんですか?」
昨日の同じ問い。俺は正直に答える。
「大変ですねぇ」
少女は微笑みながら、他人事だと言わんばかりの口調で告げた。
何か用事でもあるのか。そう訊こうかとも思ったが、俺は飛ばされたプリントを拾い集めることを優先する。
視線を戻したときには少女はいなかった。
部屋の明かりをつけ、本を読もうと本棚に近づく。
ふと、閉じられたカーテンが目に入る。
あの少女が覗いているのではないか、と不安になった。
夜にまで見られているのはあまり気分の良いものではない。
何故か足音を殺しながら窓へと向かい、指でカーテンに僅か隙間を作る。
外は廊下を照らす白光でほんのりと明るい。誰かがベランダに立っていればすぐにわかる。
しかし、向こう側の窓は暗く、鏡になっており、俺の情けない姿を映しているだけだった。
安堵してベッドに潜った。
少女の姿はなかった。
換気するために窓を全開にする。早朝の冷え切った微風が前髪を揺らす。
「おはようございまーす!!」
その頑健な挨拶に背中が震えた。振り向けば、またあの少女が制服を着て、笑っていた。
「なにしてるんですか?」
一言一句違わない問い。何もしていない。ただ、窓を開けただけだと答えるしかない。
「へえ……そうなんですか」
興味があるのかないのか、はっきりとしない返事。無視してもよかったが、昨日、一昨日とは違う。
俺にはやるべきことがなく、また少女のことも気になっていた。
君はなにをしているのか、ただそれだけが知りたかった。
少女は屈託なく告げる。
「なにもしていません。何もすることがないので」
「えへへ。いやー、朝は起きてすぐに外の空気を吸うのが健康にいいんですよね?」
それはいいことなのか判断できないので、肯定も否定もしない。
「お兄さんも私と一緒じゃないんですか?」
いいや、と頭を振る。先ほど説明したこと以外に意味なんてない。
少女は笑いながら、それもそうですねえ、と頬を掻いた。
そろそろ朝食の時間であることを伝えると、彼女は胸元で手を合わせた。
「いただきます、しないとだめですよ?」
頷き、俺はリビングへと移動した。
十数分後、案の定、少女の姿はなかった。
昨日と変わらない。廊下側から漏れる蛍光灯の光が夜の暗闇を払拭している。
少女の姿は見当たらない。
特に何もない。それが普通のこと。
夜にまで朝の豪快でいて強壮な声を出されては近所迷惑でもある。
カーテンの隙間を閉じ、電気を消す。
天井を見つめながら、朝のことを思い出す。
不思議な少女。
元気な挨拶。
ただのご近所付き合いだと思えばいい。
珍しいことでもないだろうと考えつつ、まどろみに身を委ねた。
「おはようございまーす!!」
抵抗なく挨拶を交わす。窓辺から喋るだけの人。向こう岸までの距離以上に俺と彼女には隔たりがある。
それでも動揺することなく返事をするだけの余裕は生まれつつあった。
「なにをしているんですか?」
見ればわかるだろう、と自嘲気味に言ってみる。俺は本当になにもしていない。
「私と一緒ですね」
微笑する彼女に引寄せられるように、俺はベランダに出た。
「今日も寒いですね」
頷く。確かに寒い。ベランダに出るだけでもジャケットは着た方がいい。
「着てきたらどうですか?」
そうすると言って部屋に戻り、ジャケットを羽織った。
戻ってみると、少女の姿は―――。
「おかえりなさい」
そこにかわらず、あった。
大学生。そういうことにしておいた。
実際は学校にも殆ど行かず、家に寄生しているだけ。
楽しみといえば食事と睡眠ぐらいだ。
「趣味とかあります?」
高校まではテニスをしていたが、それも中途半端な実力がついただけ。
ラケットもなんの未練もなく捨てることが出来た。
現時点では好きなものはない。
「楽しんですか、それ?」
憐れみの目が突き刺さる。確かに毎日無気力にいるだけで、楽しいことはない。
「ですよね。私も同じですから」
趣味がないのかと口から出る前に、彼女は言う。
「何もないんですよ。だから、趣味もありません」
「それではそろそろ失礼しますね」
そう言って少女は部屋の中へと姿を消した。
彼女のいう何もないが一体、どういうことを意味しているのか。
少しばかり考えてみるものの、すぐにどうでも良くなった。
所詮は他人のことだ。俺が気にしても仕方ない。
部屋に入り、もう一度彼女が居た場所を見る。
寒そうな白い壁と、錆びた欄干、そして空席になったベランダだけがそこにある。
あぁ、と声を漏らす。
あの子がいないと、結構寂しい場所なんだな。と今更気がついた。
ただ、俺のほうは見ずにただぼんやりと狭い寒空を仰いでいる。
窓をスライドさせると、いつものように少女は無垢な笑みを浮かべる。
「おはようございまーす!!」
彼女は手を大きく振ったので、こちらも挨拶と一緒に振り返す。
「今日は何をしているんですか?」
昨日と同じ問い。だから同じ答えを添える。
それでも少女は、そうなんですか、と関心があるのかないのかわからない感想を言う。
だから、負けじとこちらも昨日と同様の疑問を投げかける。
君はなにをしているのか、と。
だが、得られた答えはやはり変わらない。
「何も。何もないですから」
そう言うように指示されているかのように、軽やかな口調で言う。
少女は笑っていた。
「そうですね。何もないんです。そうとしかいえません」
少し間を置く。どのような設問にすれば、その先の答えが聞けるのか思案する。
冗談交じりに家はあるじゃないか。服もあるじゃないか。そういった。
「あー、確かに。そうですね。一本、とられましたぁ!」
俺のふざけた言葉に合わせたのか少女は大げさに破顔した。
でも、それ以上のものは彼女から零れそうになかった。
諦めて次の話題を探そうとしたとき、笑い声が凍りつく。
「家があっても服があっても、私には何もないんです」
そのとき初めて、温暖だった彼女の季節が冬に近づいた気がした。
「話すほどのことではありません」
健やかな笑みを残して、彼女は姿を消した。
体が震えた。自分の手に白い息を吐きつつ、部屋へと戻る。
換気は十分だろう。窓をそっと閉めた。
それにしても、彼女の言う何もないとはいかなるものなのか。
夢や希望、将来、あとはお金だろうか。
だが、考えられるのはここまで。
あの表情を見てしまっては踏み込むかどうか逡巡してしまう。
そしてそう言う場合、踏み込まないほうがいい。
仮に彼女が俺に何か救いを求めているにしても、気の効いた台詞が喉の奥から出てくるとは思えない。
きっと失望させるだけだろう。
あのベランダとの距離は埋められないのと同じように、きっと縮めてはいけないもの。
これからはもう少し言動に気をつけて、近所付き合いを楽しもうと思った。
ベランダに出て、挨拶をする。
気温が低いことに文句をいい、互いの変化など見られない日常を報告する。
そして俺が一つ冗談を言う。彼女はそれに微笑む。
それだけで十分に楽しかった。
寒いだけだった朝に色が付け加えられたのだ。
この数分の朝だけが、俺にとって特別になっていく。
夜になれば日が昇るのを待ち遠しく思い、目が覚めれば幸福に酔う。
そんな日が数日続き、いつしか少女との会話は何事にも優先され始めた。
この距離がとても心地よかった。
簡単に届くけれど、手を伸ばすだけでは足りないこの距離感が。
日曜日の朝は普段よりも寒気が和らいでいて、結露も大して発生していなかった。
カーテンを勢いよくあけると、いつもと同じように少女はいた。
茫々とした眼差しで空を見上げている。
釣られて俺も空を見る。建物の所為で空は狭められているが、天候だけははっきりと分かる。
曇天だ。
ベランダに出ると少女は笑顔になる。こうして話すことは彼女にとっても楽しみになっているのだろうか。
「おはようございまーす!!」
活発な声は反響し、空へと昇り、消えていく。そろそろ文句が出てもおかしくない。
「今日はなにをしているんですか?」
飽きもせずにその台詞を口にする。もはや、これも礼の一つになりつつある。
何もしてないよ。何もすることがない。そう答える。
いつもなら好奇の有無が判別できない言葉を聞くことになる。しかし、今日は違った。
「じゃあ、このまましばらくお話しませんか?」
彼女との距離がふいに無くなったようで、俺は戸惑った。
「なんでもいいです。何を話しましょうか?」
しばらく見つめあい、次の句を必死に探した。
先に見つけたのは少女のほうだった。
「あの休日は一日中、何もしていないんですか?」
訊かれて、ここ半年の休日を振りかえる。
家で惰眠を貪っていた記憶しかない。
そのまま伝えるのは流石にカッコ悪いと思い、俺は嘘を吐く。
大学での課題をしたり、バイトにいったり、そんな当たり障りのないことをいう。
課題なんて大学に行っていないのだから課題そのものが手元にない。
バイトに至っては先月に半日で辞めて以来、情報誌すら手にとってはいなかった。
「へえ、すごいですね」
内心、焦った。もし、その嘘に突っ込んできたらどうしようか。更に俺は嘘を上塗りしないといけない。
咄嗟に架空の課題とバイト先を頭の中ででっちあげたが、必要はなかった。
彼女はただ微笑んでいた。俺の嘘を見透かしているように、優しく。
どうぞ、と俺は右手の平を差し出した。
「平日は学校に行ってます。部活には入ってません。運動は好きなんですけど」
彼女はしばらく学校での様子を訥々と語り始める。
授業中での態度。クラスの雰囲気。ノートの取りかた。友達との関係。
聞けば聞くほど、彼女は私生活において充実しているようだった。
途中、話を断ち切って、何もないなんて嘘じゃないか。と口を挟みそうになるほどに。
そして週末の学校生活を語り終えると、「はい。私の話は終わりです」とやや唐突に話を断った。
長々と聞いていても、そうなんだ。としか言えない。俺はそういう人間だ。
愛想を尽かされても文句は言えないが、彼女は笑みを浮かべてお礼を言う。
「ありがとうございます。私の話を聞いてくれて」
俺はただ頷くだけだった。
冷たい風が下から吹いてくる。俺と彼女の前髪を揺らす。
そして冷風は彼女の言葉に巻き付く。
「私には何もありません」
背筋が震えた。
「何もないってどういうことだと思いますか?」
分からない。
「家があっても、お金があっても、友人がいても、食べ物があっても、それでも何もないって感じるときはありませんか?」
どうだろう。
「自分に価値がないと、正直何も無いのと一緒ですよね?」
自分は何の役にも立っていない。そういうことだろうか。
彼女が俺に何を言いたいのか、まだ分からない。
困惑する俺を見かねて、彼女は付け加えた。
「私、誰からも必要とされていないんです」
きっと答えも同然だった。だけど、俺の口が開くことはない。
そんなことはない。そう安っぽい台詞でいいのか悩んでいる間にも彼女は続ける。
「学校で話すだけで私生活では誰とも関われない。勉強ができても誰も関わってこない」
「それって、価値がない。ってことですよね?」
光の無い眼差しが俺を捉えている。
沈黙だけが俺にできる精一杯の虚勢だった。
「ま、学生にはよくある悩みなのかもしれませんけど」
彼女が寂しげに笑う。胸に痛みが走った気がした。
彼女は俺に何を期待して、そんな話を始めたのか。
どんな言葉を待っているのか。
そもそも、どうして俺に声をかけたのか。
色んな疑問が頭の中で回る。けれど、出た言葉は、そうかも。という平常通りの距離感を保った冷酷な返事だけ。
「そうですよね」
そういって少女は手を振って部屋の中に戻っていった。
俺はしばらく欄干に凭れかかり、狭い空を仰ぎ見ていた。額に一粒の雨が落ちてきた。
当然の帰結だろう。
俺はそれだけのことをしたし、それまでの男でしかない。
失った日常は大きいような気もするし、歯牙にもかけないようなものだった気もする。
カーテンを開けて、少女の姿がないことを確認する。
窓を開けて、対岸に背を向けても、朝の挨拶は聞こえてこない。
落胆はなかった。
元の毎日に戻っただけ。
この二週間は本当に楽しかった。だから満足するべきだ。
俺はリビングに向かい、味気の無い朝食を嚥下する。
食べ終えて時計の針を見る。
そのとき初めて、微かな喪失感を覚えた。
日が増すにつれ、カーテンを開ける前の期待と後の失意が大きくなっていく。
今日も姿は見えず、深い嘆息をつく。
白く濁った自分の息が消えていくのを見ながら、この部屋と自分の心が同じように凍えていることに気づく。
夜にこっそり外を眺めてみても、やはり少女の姿はない。
照明を落とし、黒く染まった天井を見ながら、あの元気な挨拶はもう聞けないのか。そんな不安が頭をよぎる。
どうしてそう思うか。
ただの近所付き合いで始めた朝の会話。
それが楽しくて、嬉しくて、そして少女に見栄まで張って、会話をした。
溜息をもらし、寝返りをうつ。
自然と彼女の姿と声を思い出し、もう一度、と呟いていた。
ベランダに出た。日曜日以来だった。
もう彼女には会えない。漠然とそう感じ始めていた。
あの距離感はもう味わえない。
もし会おうとするなら、この岸と岸を橋で繋ぐしかなく、二週間前には戻れない。
空虚な向こう側を眺めながら、俺は決心をした。
風が止むのを待つ。
頭のどこかで失敗してほしいと願う自分を確認する。
それでも風が止むと俺は自然と腕を思い切り振った。
向こう岸に袋に包まれたキャンディーが落ちる。
すぐさま後悔の念と自分の行動に対する嫌悪が押し寄せてきた。
でも、これでいい。
こうでもしないと、きっとあの子とは話せないから。
開けても彼女はいない。それが理由だった。
カーテンを閉めたままでも窓は開けられる。不都合なことはない。
そして夜を迎えるたびに虚無感に苛まれる。
もしかしたら居たかもしれない。そんなありもしない幻想を嘱望する。
だが、その閉じられた布に手をかけることはしなかった。
俺の出来ることは全てやった。
だから、その結果が出るまで待つことにしたのだ。
久しぶりに大学に行こうと思い立ち、準備を始めた。
どちらかというと家にはいたくなかった。
これからは真面目に大学に行くことになるかもしれない。
少女に感謝しないと、と電車内で考えた自分に呆れ、下を向いた。
汚い靴が目に入った。
家にいるのが辛いという所為もあるが、それでも半年も休学同然だった自分からすれば驚くべきこと。
しかし、講義の内容が頭に入ってきたことはない。
講師の言葉はただのBGMでしかなく、俺のノートはまだ真新しい。
前方の黒板よりもやや上をぼんやりと眺めつつ、少女の姿と声が頭の中に映りこむ。
もう彼女のことを考えない日はなかった。
けれど、あれからもうすぐ一週間。
そろそろ潮時だろう。
明日になっても何もないなら諦めるしかない。
俺はポケットにいれていた携帯電話を強く握りしめていた。
ポケットからゆっくりと取り出し、履歴を見た。
登録されていないためにアドレスがむき出しで表示されている。
画面を開くと『夜に』とだけ書かれていた。
何の感情もない無機質な機械が打ち出した文字。
それでも俺の心音は胸から飛び出し、講義の妨害をしてもおかしくないほどでかく感じられた。
胸を押さえて、深呼吸を二回。
時計を見る。
夜まであと3時間ほどだった。
厚着しても尚、夜の気温は容赦せずに身も心も震わせてくれる。
携帯電話で時刻を確認する。
もうすぐ8時になる。
現れないのか。そんなことを思う。
でも、こうして反応があった以上は、いつまでも待つつもりで居た。
もしかしたらカーテンの向こうでは友人を呼んで俺のことを指差し笑っているかもしれない。
それでもいい。
俺はそうされるだけのことをしたのだから。
震える手で携帯電話を見る。
時刻は9時になる。
彼女の姿は、ない。
諦観し、もう部屋に戻ろうかと何度も思う。
けれどその気を押し留めてくれるのは、朝の挨拶だった。
彼女と交わす朝の日常が恋しくて、自分はここにいた。
午前1時。とうとう眠気が襲ってきた。
欄干に凭れ、夜空を見上げる。
狭小な夜でも星がきちんと輝いていた。
そんなとき流れ星が目にはいった。生まれて初めて見た所為か、できもしないのに流れていった方向を目で追った。
そして、視線が真後ろにきたとき。
「こんばんは、お向かいさん」
少女がそこにいた。
少女は何も言わずこちらを見つめている。
いつも空を眺めていた、おぼろげな眼差しで。
大きく深呼吸をして、言葉を紡ぐ。
「ありがとう。見てくれて」
彼女はキャンディーの包み紙を取り出し、こんなことしてなんのつもりですか、と問う。
「アドレスを書いておけばメールしてくれると思った。ただそれだけ」
「飴は美味しかったです」
「よかった」
小さな笑い声が響く。
その弛緩した空気は気持ちよかった。
いつまでも浸っていたいと思えた。
だけど、その想いを断ち切るように喉から絞りだすようにして声を出す。
「君に会えなくて辛かった」
それだけなのに舌がうまく回らず、二回も言い直した。
「ずっと君のことを考えていた」
彼女はいつもと同じ好奇心があるかどうかわからない表情でいる。
「君と出会ってから、毎日が、正確には朝が楽しくて仕方が無かった」
「だから、君と会えなくなってから、俺には何も無くなった気がした」
彼女の双眸が僅かに大きくなった。
「君の気持ちがよくわかった。何もないって、こういうことだったんだな」
俺はあの朝だけ必要とされていた。
それが嬉しかった。
思えば俺は今まで一度も誰かに期待されたり必要とされたことがなかった。
学校でも家でも。
ただ彼女と違うのは、俺の周囲に人がいなかった点だ。
彼女は外での環境には恵まれているからこそ、家に帰るとその疎外感は強くなっていたんだろう。
一方の俺は外でも内でもそもそも俺に構ってくれる人がいなかった。
故に彼女が何を求めているのか分からなかったし、知りようもなかった。孤独に慣れ過ぎた、駄目な男が俺だ。
少女は俯く。
「こんなに楽しかったのは生まれて初めてって思えるほどだった」
喉が渇いていた。唾液を飲み込もうにも口内は枯渇している。
「今だから君に言えることがある」
少女の顔が上がる。俺と彼女の視線が交錯し、それを断つようにして風が吹き上げる。
それでも俺は目を瞑らなかった。瞑ればあの子がいなくなるような気がして。
「俺が君を必要としている。ちっぽけな価値だけど、何もないよりはマシだと思う」
到底、人の心を動かすには値しない、月並みの台詞。
ここ数日、考えに考えた安っぽい説得。
でも、俺にはこういうしかない。
「それが言いたかったんですか?」
少女の声に棘があるのも仕方が無い。
「それは君の見る目がなかったんだ」
だからこそ、一生懸命に俺は笑った。
彼女が笑う。いつもの朝が戻ってきていた。
「あのさ、どうして俺に声をかけたんだ?」
少女は口元に人差し指を当てて考える素振りをしつつ、柔らかい声で答える。
「いつも一人みたいだったんで、もしかしたら私の気持ちにも気づいてくれるかなって」
彼女曰く、ただ共感してほしかっただけだという。
友人や周囲の大人にその悩みを言っても当たり障りの無いもので、共感には程遠いものだった。
そんな中、いつも一人でいるお向かいさんになら、もしかしたらと考えたらしい。
「ごめんなさい。ただ、構って欲しかっただけなんです。それだけなのに」
彼女は精一杯の笑顔を浮かべ、
「あなたを困らせた」
涙を流していた。
「またメールしてもいいですか?」
俺は頷く。
「電話は?」
勿論、と答える。
「えっと……じゃあ、また」
そういって部屋に戻ろうとするのを俺は引きとめた。
「なんですか?」
ずっとポケットにいれていたキャンディーを投げる。
キャンディーは見事に彼女の両手に納まった。
「ありがとうございます」
夜の会話は終わった。
その余韻で中々部屋に戻れず、ベランダに立ち尽くしていた。
そんな中、携帯電話が震えた。メールが着たようだ。内容を確認してみる。
眩しい液晶画面には『これからもベランダで』と表示されていた。
冷え切った床に足を下ろすと、体の芯まで寒さが伝導する。
カーテンを開ける。窓を静かに開ける。
ベランダはいつも綺麗にしてある。だって、あの人に嫌われたくないから。
まだ朝の挨拶までは時間がありそうなので、空を見上げてみる。
雲が流れてその隙間から日の光が差し込んでいる。
今日は晴れ。体育の授業は残念ながら長距離走になるだろう。
それでも今日は一日上機嫌で過ごせるはずだ。またあの楽しみだった朝が戻ってきたのだから。
ただ共感が欲しかっただけなのに、それ以上の優しさを私にくれた。
だから今日もいっぱい共感してほしい。私のことを知ってほしい。
大好きな貴方に挨拶をするのが嬉しいって、感じて欲しい。
向こう側の窓がスライドする。私は満面の笑みを作ってスタンバイ。
間の抜けた彼の顔が視界に入る。私は大きく息を吸い、近所のことも考えずに叫ぶ。
「―――おはようございまーす!!お向かいさん!!」
END
泣いた
Entry ⇒ 2012.01.17 | Category ⇒ その他 | Comments (0) | Trackbacks (0)
猫「ねぇ、起きてよ」
男「んー…」
猫「起きて」
男「…あと5分…」ゴロン
猫「…むぅ」
男「いだっ!い、一体何…うわわわわわわわ!!!!!」
猫「うるさい」
男「ななななんで全裸の女の子が僕の部屋に…!!!!!」
猫「いつも見てたでしょうが。それよりご飯出して。お腹すいた」
男「ななななななんで…っ」
猫「うるさい」
猫「誰って…あなたの飼い猫よ」
男「…ね、猫…?君はユキだっていうのか…?」
猫「にゃー」
男「う…嘘だ!!こ、これは夢なんだきっと!!」
猫「とりあえず着るもの出して。それからさっきから何度も言うようだけどご飯も」
猫「ん、食べづらい。けど美味しい」ムシャムシャ
男「…これは夢だ。夢なんだ…」
猫「さっきからブツブツうるさい」
男「…君は本当に僕が飼ってた猫なの…?」
猫「そうよ、ユキよ」
男「…本当なの、か…?」
男「…えっ、それは僕のこと…?」
猫「私は茶色いブランケットが好きだわ。猫なのに水も平気。ひなたぼっこも好きよ。鮭を見ると飛びついちゃう」
男「(僕とユキしか知らないことばかり…)」
猫「そして」
男「…?」
猫「あなたの膝の上が一番安心する」
猫「主。私はこの通り、主と同じ人間の姿になってしまった。私はもういらない子?猫では無くなってしまったから、もう主の側には居られない?」
男「(…きゅ、急に元気が無くなったぞ…)」
猫「主…」
男「…そ、そんなこと言ってないよ」
猫「え…?」
猫「主…私嬉しい」ギュッ…
男「!?///」
男「(あ、暖かい…。本当に人間になったんだな…)」
猫「そうと決まれば」
男「え?」
猫「もっと綺麗なお洋服を着せてくれる?あとご飯もおかわり」
男「…はい」
男「い、いや…。想像通り人間になっても可愛いけど…性格はこんなにきつい子だったとは…」
猫「…主。今の言葉、私嫌い。傷ついた」
男「あっ、ご…ごめんユキ」
猫「…むぅ」
男「(怒ったときに顔を背けるのは人間になっても一緒なのか…)」
男「と、とりあえず着るものを買いに行かないと…」トボトボ
男「女の子のお洋服かぁ…。買いづらいし、高いんだろうなぁ…」
男「(でも…ユキが人間になって、なんだか嬉しい僕がいるんだよな…)」
友「よぉ、男!」
男「あ…友」
男「い、いやちょっと服を買いに…」
友「お前が服を?珍しいなぁ。そういや、幼がお前んちに遊びに行くって言ってたぞ?」
男「何だって!?」
友「…な、なんだよいきなり大声出して…」
男「…っ、悪い。また今度な!」ダッ
友「おい男!」
猫「…主、遅い」
~
男「いい?ユキ。僕はこれから買いものに行ってくる」
猫「分かってるわ。私が着るお洋服よね」
男「いつもみたいに留守番してて欲しいんだ。大丈夫だよね?」
猫「大丈夫。心配しないで」
男「じゃ、行ってきます」
~
猫「…そう、大丈夫。いつもみたいに主を待ってればいいんだから。寂しくなんか、ないもん」
コツコツコツ...
猫「誰か来る…。でも、主の足音じゃない」
猫「この声は…」
猫「(主と仲が良いご友人の方…確か名前は…)」
幼「おーい。幼だっての。早く開けろよ」
猫「(そうだ、幼さん。この方が来ると主はいつも嬉しそうにする。お家に上げたら、主は喜んでくれるかしら…)」
幼「おい、男。何度も呼ん…誰だお前」
猫「主なら居ないわ」
幼「…主って誰だ。てかお前も誰だ」
猫「先に自分の名前を名乗るのが礼儀じゃなくて?」
幼「あぁ?」
猫「まぁ、とりあえず入って。幼さん」
幼「はぁ!?てかお前俺の名前知ってんのかよ!」
猫「うるさい」
男「はぁ…っ、はぁ!」タッタッタッ
男「(早く帰らないとユキと幼が鉢合わせってことになって面倒な事態になってしまう…!)」
男「ユキ…!」
…
幼「んでお前は誰だ。男の何なんだ。なぜここにいる」
猫「…めんどい」ハァ
幼「聞こえてんだよコラ」
猫「やっぱり主以外の男性は受け付けない。無理。自分の飼い主が一番」キッパリ
幼「だからその主ってのも誰だよ!?」
猫「…は?」
幼「なんせ俺達は幼なじみだからな。小せぇ頃からずっと一緒だったんだぜ?」
猫「(この人…。やっぱり容姿が整ってるわりには何かしらうざったい…)」
猫「(それになんか…負けた感じがして苛々する…)」
バタンッ!
幼「な、何だ!?」
男「はぁ…はぁ…」
幼「男。帰ってきたのか。なぁ、このムカつく女何なん…」
男「ユキ。大丈夫だった?何もされてない?」
猫「えぇ、大丈夫よ主。おかえりなさい」ニッコリ
男「そう…。よかった…」
幼「俺を無視するな」
幼「はぁ?」
男「本っ当にごめん!」
幼「ちょ、押すなって…おい!」
猫「さよならー」ニッコリ
幼「そのどや顔やめろ、女!男、一体何な…」
バタンッ!
男「はぁ…ま、まだばれてない…?」
猫「えぇ、多分」
男「よかったぁ…」
幼「おい、男!…ちっ、何なんだよ…ったく」
女「…あれ、幼君?何してるの?」
幼「…」フイッ。スタスタ…
女「ありゃ、無視されちゃった。まだ嫌われてるのか私」
女「…男君、そろそろご飯の準備の時間かなぁ」
男「そうか。じゃ、幼とは大して話はしなかったんだね」
猫「うん」
男「はぁ…安心…」
猫「ねぇ、主。やっぱり飼い猫がいきなり人間になったなんてバレたら大変なことになってしまうのよね」
男「う、うん…。ニュースとかにも載ったりしちゃうかもしれないし…。前代未聞のことだからね…」
猫「なら、私は主の"従姉妹"ってことにしましょう」
男「なるほど!わかった。そういうことにしておこう」
男「あ…僕のことか。な、何かな」
猫「私は今日、どこに寝ればいいのかしら」
男「あ…」
猫「さすがにこの身体じゃブランケットの上では眠れない」
男「そ、そうだよね!じゃ、僕のベッドを使っていいよ」
猫「…主はどこで眠るの?」
男「ソファーに寝るから大丈夫だよ」
猫「…そう」
猫「…」
男「(わ…。なんかこの部屋に女の子がいるってだけでドキドキする…)」
男「(…僕は何を考えてるんだ!あの子はユキなんだぞ!元は猫なんだぞ!)」
猫「…主」
男「!な、何!?」ビクッ
男「あ…じゃ、布団増やすね」
猫「…それじゃダメよ」
男「え?」
猫「きっと、この家中の布団を使っても私は寒いままだわ」
男「それじゃどうしたら…」
猫「…来て?」
猫「こっちに来て」
男「…な、なななななんで」
猫「なんでって、一緒に寝るからに決まってるじゃない」
男「!?」
猫「…だめなの?」シュン...
男「いや、だめとかじゃないけど!」
男「そ、そうだね」
猫「だから、あなたのことは何でも知ってる」
男「…?」
猫「携帯で女の子の身体を見ながら気持ちいい声を出してることも」
男「!?」
猫「えっちな本を堪能しまくってる主の姿とかも、ね?」ニヤリ
男「そ、それ以上言わないで!///」
猫「なら一緒に寝て」
男「…はい」
男「…うぅ…」
猫「すごくすごくやらしい事ばかり私の前でしてきたくせに」
男「だから!///もう言わないでくれって!///」
猫「主、可愛い。すごく可愛い」
男「…っ、か、からかうな///」
猫「淫乱なご主人様ね」
男「するわけないだろ!?///お願いだから大人しく寝てくれ!」
猫「あら残念」
男「(そうか…。この子はユキだから俺のあんなことやこんなことも見てるわけか…なんか急激に恥ずかしくなってきた///)」
猫「大丈夫よ、主。人間にも猫にも性欲はあるわ」
男「頼むから大人しく寝てくれ!///」
男「え…?」
猫「こうやって主と寝られる日が来るなんて。ずっとずっとこうしたかった…」
男「…ユキ…?」
猫「やっと、あなたと同じ目線になれた。やっと、あなたと同じ動作ができる」
男「ユキ…」
猫「主、私は…スー…スー…」
男「…寝ちゃった…」
男「本当に、この子はユキなんだ。俺が大事に大事にしていたユキ…」
男「(そんなユキが俺の隣で寝息をたてて、気持ち良さそうに人間として眠ってる…)」
男「…やばい、これは眠れそうにないぞ…」ハァ
男「…結局、一睡も出来なかった…」
猫「んぅ…」
男「!お…おはよう、ユキ」
猫「おはよう、主」ニッコリ
男「(可愛いなぁ…)」
猫「お腹空いた。早くご飯ちょうだい?あ、あとそれからミルクも欲しい」
男「(やっぱり性格はちょっと…)」ハァ
猫「わかってる。私の嫌いな月曜日だもの」
男「僕も嫌いだよ。月曜日ってテンション下がるからね」
猫「…」
男「(なんか元気ないな…。もしかして…)」
男「ユキ…。もしかして僕が学校に行くようになってしまうから月曜日が嫌いだったの?」
猫「!…っ、ち、違う!」
男「顔が真っ赤だよ?」
猫「…むぅ」
男「(あ、むんつけた)」
男「それじゃ、行ってくるね」
猫「行ってらっしゃい」
男「いい?ユキ。何度も言うようだけど…」
猫「分かってる。絶対に部屋から出ない。誰か来ても無視する」
男「うん。じゃ、留守番よろしくね」
猫「主」
男「ん、何?」
猫「…何でもない、行ってらっしゃい」
男「?行ってきます」
猫「やっぱり言えなかった…。だめね、ちゃんと我慢しなきゃね」
猫「(…でも、お外まで出てお見送りできた…嬉しい…)」
猫「でも早く戻らなきゃ…」
女「ねぇ、あなた誰?」
女「ここは男君が住んでるアパート。そしてさっき、男君と楽しそうに喋って見送りまでしてた」
猫「(全て見てたのね)」
女「あなたは誰?男君の何?」
女「なに?」
猫「従姉妹です。初めまして」ペコリ
女「従姉妹…?」
猫「はい」
女「あ…っ、やだ!そうだったんだ!なーんだ!」
猫「(…表情と声のトーンがモロに変わった)」
猫「(きっとこの子、主のこと好きなんだろうな…)」
女「ところで男君って今彼女いないよね?結構自分で色々調べたりはしたんだけど、身内から決定的なこと聞いて安心しておきたくて」ニコニコ
猫「(決まりだな…)」
猫「えぇ、居ませんよ」ニッコリ
猫「それでは、失礼します」
女「あ、待って!」
猫「?」
女「ね、男君の好きな色って何色かな?」
猫「好きな色…」
猫「(確か…赤色の物を買う度喜んでた気がする…)」
猫「赤、じゃないですかね」
女「…そっかぁ。赤か」ニッコリ
女「あっ、別に!それじゃあね!」タタッ
猫「(…変な人)」
…
友「あー!やっと来たか男!」
男「な、何?」
友「幼のやつ、めちゃくちゃ機嫌悪いんだけどなんか知らねぇ?」
男「…やっぱりか」ハァ
幼「…んだよ、話って」ムスッ
男「そう怒らないで。この前は悪かったよ」
幼「別に怒ってねーよ」
男「(怒ってるだろ…)」
男「ちゃんと…話すよ」
幼「…おう」
…
男「…ってわけなんだ」
幼「…は?」
男「そうじゃない。本当だよ、事実なんだ」
幼「…あんなに可愛かったユキがなぁ」
男「人間になっても可愛いだろ」
幼「見かけだけはな」
男「…そ、そんなことないよ」
…
友「あれー?女ちゃん!今日も可愛いねー」
女「ありがとう。男君いる?」ニッコリ
友「どっか行っちゃったよー。何々?」
女「あっ、ううん。何でもないんだ…ただ…」
友「?」
女「…友君。友君の知り合いで彼女探してる人っているかな?」
友「そりゃ探せばいるけど…」
女「実は私の従姉妹が男に飢えててうるさくてね…。誰か紹介してあげたいんだ…もう嫌になる位、男が欲しい欲しいうるさいの…」
友「そりゃあ大変だ!俺の後輩がちょうど探してたから話しといてみるよ」
女「そう。ありがとう」ニッコリ
幼「…知らなかったとはいえ、あれだけ俺も可愛がってたユキに申し訳ないことしたな…」
男「あはは。いいよ、大丈夫」
幼「今度謝るわ」
男「別にいいのに」
幼「…なんか」
男「ん?」
幼「あのユキだってわかった瞬間、急に可愛く思えてしまうのはなんでなんだろうな」
男「それは幼がそれだけユキを大事に思ってたってことだろ。分かるよ、その気持ち」
猫「…ん、もうこんな時間…知らないうちに寝ちゃってた…」
猫「(主、そろそろ帰ってくる)」
猫「早く…帰ってきますように…」
ピンポーン...
猫「ん…誰だろ…」
猫「(覗くだけでも…)」
猫「…あれ」
猫「朝話しかけてきた人…確か主の同級生の…」
猫「(何かすごく焦ってる…。もしかして主に何かあったんじゃ…!)」
女「よかった!出てくれた!」
猫「あの…どうしたんですか…?」
女「大変なの…っ、実は男君が公園で大怪我をしちゃったみたいで…」
猫「え!?」
女「ここから真っすぐ行った公園でだよ!早く行ってあげて!」
猫「は…っ、はい!」ダダッ
猫「はぁはぁ…こ、ここで合ってるかしら…」キョロキョロ
後「よぉ」
猫「…主!?」パッ
後「おーっ、可愛いー!聞いてた通り」
猫「…誰ですか、あなたは」
猫「(何なのこの人…。それより主は…)」
猫「申し訳ありませんが急いでるので…」
後「会ったばっかじゃん!つうか近くのゲーセンでも行こうよ」ギュッ
猫「…っ、私に触らないで!」
猫「…や、めて…」
~
「ごめんね。もう飼ってられなくなったの」
「さよなら」
「誰かいい人が貰ってくれるといいんだけど」
~
猫「やめて…」
~
猫「主。私はこの通り、主と同じ人間の姿になってしまった。私はもういらない子?猫では無くなってしまったから、もう主の側には居られない?」
男「君を捨てたりなんかしないよ」
猫「主…私嬉しい」
~
猫「主…助けて…っ」
?「ちょっとそこの坊や。可愛い女の子に何してんのよ。不細工の分際で」
後「…んだよてめぇ!」
猫「…はぁ…はぁ…主…じゃない…」
?「大丈夫?立てる?」
猫「は…はい…」
後「…ったく意味わかんねぇ!」タタタッ
猫「い、いえ…ありがとうございました」
猫「(すごく綺麗な人…。主のご家族や知り合いではないはず…)」
猫「!…そうだ、主…っ、主は…!」
?「まずは一旦落ち着きなさい!いい子だから」
猫「…っ」
?「そう。じゃ、あなたは騙されてしまったのね」
猫「はい…」
?「それにしても面倒ね。恋してる女の子って。可愛いげがあれば別だけど」
猫「あの…助けて下さってありがとうございました…。えと…」
?「お礼なんかいいから早く帰りなさい。そのほうがいいんでしょ?」
猫「そうだ…っ、早く帰らなきゃ!」
猫「あの!ありがとうございました!…それじゃ!」
?「だからお礼はいいって言ってるのに」クスクス
猫「よかった…。主はまだ帰ってない…」ハァ
猫「(なんで女の子はあんな嘘ついたんだろう…。)」
猫「(まさかあの男の人もあの子が…)」
猫「それにしても…嫌なこと思い出してしまった…。もう忘れたと思っていたのに…」
猫「主…、早く帰ってきて…」ギュッ…
猫「!これは間違いなく主の足音…っ!」
ガチャッ
男「ユキ、ただいま。いい子にしてた?」ニッコリ
猫「あ、るじ…」
男「ユキ…?」
猫「主…主…」ギュッ
男「わわっ!倒れる…っ」
バタンッ
男「い、いた…ユキ、いきなりどうし…」
猫「主…」スリスリ
男「(僕の膝に擦りよってる…。まるで猫だった頃のユキだ…)」
猫「…何も」
男「どうして話してくれない…?」
猫「…寂しかった、だけ。猫の姿よりも人間の姿でいたほうが不思議と時間経つのが遅く感じてしまって」
男「そ、そっか…」
猫「ごめんなさい、主」
男「ユキが謝ることないよ」
猫「嘘をついてしまって、ごめんなさい…」ボソッ
プルルルル...
女「あ、後君?うまくいった?」ニコニコ
後「うまくいくどころか何かめちゃくちゃ感じ悪かったし、そのまま放置して帰ってきちゃいましたよー」
女「…え?じゃ、何もしてないの?」
後「何をですかー?」
女「…もういい。じゃあね」ピッ
女「今頃男君に慰めてもらったりしてるのかな…許せない…」
女「でも…でもやっぱり…」
~
「赤、じゃないですかね?」
~
女「私が知らない男君のことをあんな淡々と答えるなんて…。絶対に許せない!私より男君のことを知ってるなんて!認めない!」
男「え?女さんと会ったことがある?」
猫「だからそう言ってる」
男「いつ?」
猫「私が主を学校へ見送った日」
男「そっか…。ユキ、何もされなかった?大丈夫?」
猫「大丈夫だけれど…どうして?」
猫「話して」
男「あの子、すごく苦手なんだ。僕、一度も同じクラスとかになったことないのに僕のこと色々と知ってるし…それに…」
猫「それに?」
男「なんか…いつもいつも見られてるような気がして…」
男「ユキを飼い始めた頃あたりかな…。そんな風に感じるようになったの。だから、ユキが一緒に居てすごくすごく安心してたんだ」
男「ま、まぁ僕の思い過ごしだろうけどね!」
猫「…じゃ、私は少しでも主の役に立ててるの?」
男「もちろんだよ!役に立ててるっていうか…家族みたいなものだし、ユキが居てくれて僕は本当に、本当に幸せだから」
猫「主…。私、嬉しい。ありがとう」
男「こちらこそだよ、ユキ。なんか改めて言うと照れるね」
猫「そうね」ニッコリ
猫「主。早く来て」
男「やっぱり今日も一緒に寝るのか…」
猫「なに?嫌なの?」
男「嫌じゃないよ!けど…」
猫「…私、今日すごく寂しかった」
男「わわわわかったよ寝るよ!」
男「(なんだか…足元に違和感が…なんだこれは…)」モゾ...
男「!ぱぱぱぱんつ…!?///」
猫「主うるさい」
猫「だって変な感じがする。ムズムズする。だからいらない」
男「ちゃんと履いて!///」
猫「…むぅ」
男「(ってここで履いちゃったら中が見える…っ!)」
男「ややややっぱり履かないで!」
猫「…うざ。主うざい」
猫「…やっぱり履かなきゃいけないのね」ムスッ
猫「…主は、"彼女"って居ないよね」
男「い、いるわけないよ。ていうかそれはユキが一番よく知ってるだろ?」
猫「…そうね」
男「…?」
男「ユキ。おはよう」
猫「おはよう。主」
男「(ユキが人間になってから結構な時間が経ったな…。けど…)」
猫「…なに?ジッと私を見て」
男「な、なんでもない」
男「(猫に戻る気配はない…。このままでも全然いいんだけどね)」
猫「さては私を見てやらしいことを考えていたな。さすがはすけべな主」
男「違うよ!ていうか、すけべっていうな!///」
猫「行ってらっしゃい」
男「…」
猫「何よ、またジッと見たりして。さてはまたすけべな…」
男「違うよ!じゃあね!///」
タッタッタッ
猫「…主は本当に可愛いなぁ」クスクス
猫「猫の姿のときはすぐ眠くなれた。けど、人間の姿はあまり眠くなれない」
猫「眠っていたり、ひなたぼっこをしていると時間が経つのがあっという間だったから、あまり寂しくなかったのに…な」
猫「…一人でこうして待ってるのは、すごくすごく寂しい…」
女「どうやったらあの"従姉妹"が男君の家から出ていってくれるんだろう…」ブツブツ
親「女ー。今日ちょっと時間ある?」
女「あるよ。どうしたの?」ニッコリ
親「実はあたしの家で飼ってる猫を捨ててこいって頼まれてさ。男が噛まれて心底嫌いになったみたいで」
女「そっかそっか…。理由があるなら仕方ないよ。私も猫苦手だからわかるなぁ」
幼「なぁ。今日家行ってもいい?」
男「もちろんいいよ」
幼「その…ユキにさ、謝りてぇし」
男「あはは。まだ気にしてたんだ」
男「ただ…新しいユキの洋服とか買いに行ってから帰らないといけないからさ。先に行っててくれる?」
幼「おぅ」
猫「…暇。つまんない」グダー
猫「(人間の姿って便利だし楽しいけれど、時間が有り余って仕方ない)」
猫「まぁ、主が居ないからなんだろうけど…」
猫「…窓を少し開けるぐらい、大丈夫だよね」
ガラッ
猫「…あれは…」
猫「…あれ。段ボールの中に小猫が…」
猫「…!?」
…
親「…よし。ここら辺は住んでる人多いし誰か拾ってくれるっしょ!」
女「そうだね」
女「(参ったなぁ…。すぐそこは男君のアパートだから早くここから離れないと。こんなとこ見つかったら絶対に好感度下がっちゃう)」
女「ね。早くいこ?」
親「あ、うん」
猫「…っ、待って!」
親「え?」
女「あっ、ううん。何でもない」ニッコリ
猫「そこで…何をしているのですか?」
親「誰だかわかんないけどちょうど良かった!ね、今さペットとか欲しくない?この猫…」
猫「そこで、何をしているのかと私は尋ねたのです」
猫「その小猫を捨てるのですか」
女「(いきなり何なのこの子…。まさか真相を聞き出して男君に言う気じゃ…!)」
女「親…」
親「確かに捨てる気ですけど?なんか文句でもあるわけ?」
女「…」チッ
親「あんたには関係のないことでしょ!?」イライラ
猫「訳を知りたい」
女「ね、親。早くここから離れようよ」
猫「訳を話してほしい」
親「うぜーな!猫なんか毎日寝てばっかで、餌貰ってりゃ懐くし、構ってもらえなくたって一人で生きていけるじゃんかよ!」
猫「…っ」
親「はぁ?」
猫「…餌を頂けてることにも、構ってもらえてることにも感謝してる…心から…。でも…っ、お世話になってることもあって甘えるのを遠慮してる部分があるの…!」
親「な、なによいきなり泣き出して…」
猫「上手に、上手に素直になれないだけ…だから…っ」
女「だから頭がちょっとおかしいんだって。早く離れましょ?」ボソッ
猫「ま…待って…!この子を捨てないであげて…まだ小さいから一人で生きてくなんて無理なの…っ」
親「やば、おかしいよ本当に。女、行こ」
女「うん」
女「(よし、これで男君に直接見られなくて済む。後はいくらでも誤解は解け…)」
幼「おかしいのはお前らの頭だろうがよ」
親「あ…っ、幼君///」
女「(厄介なのがぞろぞろと…!)」ギリッ
猫「あ…」ポロポロ...
幼「泣くな泣くな。ユキらしくねぇぞ」
猫「…な、名前…どうして…」
女「(何話してるか聞こえない…)」イライラ
親「幼君…えっと、これには深いわけがあってさ。ていうか、家ここら辺なの?///」
女「(あぁ…親は幼君狙ってたんだっけか)」
親「え…っ」
女「幼君、ごめんね変なとこお見せしちゃって。でも何か勘違いしてるよ。親にも訳があって…」
幼「訳があろうがなかろうが、こんなところに放置してくって考えが頭おかしいっつってんだよ」
親「幼君…だからその…」
女「親、今はやめとこ。あの、幼君。このこと、男君には…」
幼「お前はもっと気持ちわりぃから早く消えろ」
女「…っ」タタタッ
親「あ、女待って!」
猫「…うぅ…」
幼「だーかーらー、泣くなっての!」
猫「わかってる…っ」グスッ
幼「…猫だったとはなー。もう立派な人間じゃねぇかよ。泣いたりするし」
猫「私のこと…主に聞いたのね?」
幼「ん。そう」
幼「主って、そういう意味だったのな」
猫「そうよ。私の"ご主人様"だもの」
幼「別に礼言われるようなことしてねーし。気持ち悪いやつに気持ち悪いつっただけだし」
猫「(やっぱり…素直じゃないところは私に似てる。この人)」
幼「結局猫置いてくし…。信じらんねぇ」
猫「この子…まだ子猫だから一人でなんか生きていけない。野良猫にでも襲われてしまったら…」
幼「…」
幼「名前」
猫「え…?」
幼「こいつに名前付けようぜ?名前がなかったら飼っててもなんて呼べばいいか分かんねぇし」
猫「…それって…」
幼「俺が飼うっつってんの」
親(親友)だったのね
幼「…だから、別にお前から礼を言われることなんてしてねぇって」
幼「(こんな嬉しそうに笑ったりなんかするんだな…)」
猫「名前…名前を付けてあげないと」ニッコリ
猫「…主じゃないの?」
幼「実は俺なんだよ。男がお前を拾った日、ちょうど俺も男の家に居たんだ」
猫「私の、名付け親…なの?」
幼「あの日雪が降ってたし、雪と同じくらい綺麗な毛並みしてっからさ、白色で。だから"ユキ"って名前付けたんだよ」
猫「雪…」
猫「ううん、嬉しい。私、この名前すごくすごく気に入ってるから
幼「それが聞けて俺も嬉しい」
猫「…っ///こ、この子の名前は!?」
幼「んー、そうだなぁ。悩むな」
猫「…え…やっぱり飼えないから…?」
幼「いや、そういうことじゃねーよ。ただ…」
猫「ただ?」
幼「俺の中でも、お前に付けた名前が一番気に入っちゃったから」
猫「え…?」
幼「あんな嬉しそうに気に入っただなんて言われたら、誰だって嬉しいっての」
猫「私が、名付け親?」
幼「ん」
猫「そうだなぁ…。じゃ、今の季節が春だからハルちゃん!」
幼「お前も安易だなぁ」クスクス
猫「…っ、私なりに、一生懸命考えたのよ!」
幼「いーんじゃね?お前も冬から来てるようなもんだし」
猫「…むぅ」
幼「よぉ。買い物終わったのか?」
猫「主、おかえり」
男「な、なんで急にそんな仲良くなってるの?」
猫「主、主。この子のおかげ」
男「あれ…猫?」
男「へぇ、可愛いねー。ハルちゃんかぁ」
幼「…男には、女のこと言うなよ?」ボソッ
猫「え?」
幼「男、女のことすげぇ気にしてるし精神的にも参ってる部分あるから」
猫「(幼さん、やっぱりそういう部分も気づいてたのね…)」
猫「分かったわ」
幼「女に何かされたら、俺に言うんだぞ?」
猫「…うん」ニッコリ
男「でも良かったね。幼が飼ってくれることになって」
猫「うん、良かった。嬉しい」
猫「…主様は、私を拾って嬉しい?」
男「前にも同じようなことを言ったけれど、僕は本当に嬉しいし幸せだよ」
猫「私も、主に拾われて嬉しいし幸せ」
男「あっ、あのさ」
猫「なに?」
男「…一緒に、寝てくれる?」
猫「はじめて人間になって、主から誘ってくれた」
男「だめかな…?」
猫「もちろんいいわ」ニッコリ
猫「そうね」
男「段々慣れてきたかも。やっとって感じだけど…」
猫「なら、私の前で気持ちよくなっても…」
男「ししししないよ!///」
猫「我慢すると良くないって、幼さんと主が喋っていたのを聞いたことがあるわ」
男「…忘れて下さい///」
猫「ふふっ、やっぱり主は可愛い」
男「今日は掃除が無くなったから早く帰れるなぁ」ニコニコ
友「すっげー嬉しそう。なぁ、なんで早く帰れると嬉しいんだ?」
男「一人でも寂しくないから、かな?」
友「は?」
男「話し相手がいるってすごく嬉しいことだなって改めて思えたんだ」
友「…意味わかんねぇ」
幼「まぁお前には一生わかんねーだろうな」
友「ひでぇよ!」
女「…あれから男君は何も言ってこない。普通に楽しそうだし…」
女「男君が楽しそうにしてると、すごくすごく嫌…。私じゃない誰かが男君を喜ばせてるなんて…」ブツブツ
男「…あ」
女「!」
男「…偶然?」
女「えっと…///なんか、学校でこうやって鉢合わせなんてなんだか照れちゃうねっ」ニコニコ
男「…そうだね」
女「なんか最近、すごく嬉しそうだけど…何かいいことでもあったの?」
男「うん。確かに"いいこと"かも」
女「(何を思い出してこんなに嬉しそうな顔をするの…っ。嫌だ…嫌だ…)」
女「え?あっ、うん!すごくすごく可愛い子だったね」ニコニコ
男「…まだこの街にも慣れてないし、人見知りする子だから、そっとしておいてくれる?」
女「わ…分かった!」
男「ありがとう。それじゃあね」
女「…そんなに大事にしてるんだね、あの子のことを」ギリッ…
猫「ふふっ。少しだけなら日中出掛けてもいいって言ってもらえた。やっぱり外は気持ちいい」
?「あら、この前の」
猫「(あ!私を助けてくれた美人な方…!」
猫「この前は本当にありがとうございました」ペコリ
?「全然よ。もう大丈夫そうで良かったわ」
猫「ありがとうございます…///」
?「お名前はなんて言うのかしら?」
猫「あ、ユキと申します」ニッコリ
?「ユキ。とても素敵な名前」
猫「はい!すごくすごくお気に入りなのです」
?「本当に可愛いわねぇ」クスクス
猫「え?」
?「きっと、あなたがこんなに可愛いから嫉妬してしまったのね」
猫「(前話した女さんのことかしら…)」
?「でも、忘れないで。あなたもとてもとてもいい子だから」
猫「(あなた…も?)」
?「あ、そうそう。今度ホットケーキやあんみつ、食べてみてね。きっと美味しいから」ニッコリ
猫「?は、はい!」
猫「(不思議な人…。まるで、私のことを全て見透かしてるような…)」
幼「ユキ!」
猫「あ…幼さん」
幼「一人で何してんだ?危ないだろ?」
猫「主が少しだけなら外に出て気分転換してもいいって」
幼「まぁ…少しだけなら大丈夫か」
幼「そうだと思って、明日一緒に遊びに行く予定だったんだよ」
猫「本当に!?嬉しい!」ニッコリ
幼「…そ、そうか///」
女「ん…?あれは幼君と…。隣にいるのはもしかして…!」
女「やっぱり絶対に絶対に許せない…まるであいつと一緒…」
…
幼「でも一人で歩ける位慣れてきたんだな。人間の暮らしにも」
猫「でもまだまだ分からないことがたくさんあるわ。人間って難しいし面倒なことがたくさん」
幼「よしよし」ナデナデ
猫「!?///」
幼「なんかあったら、いつでも頼っていいんだからな?」
猫「…う、うん」
猫「わ、私…」
幼「あ!悪い。そろそろバイトの時間だ。んじゃ、またなっ!」
猫「あ…っ、行っちゃった…」
猫「早いとこお家に戻らなきゃ…主が帰ってきちゃう。私が主をお迎えしなきゃ」
女「ねぇ」
猫「あ…」
女「あんた、いい加減にしてよ」
女「この淫乱女!次から次へと手出して恥ずかしくないわけ!?」
猫「(全くもって意味がわからない…)」ハァ
女「本当に気に食わない…っ。あいつと一緒よ!そうやって私から男君を奪おうとするなんて!」
猫「…あいつ…?」
猫「何を言って…」
女「あんたも一緒!私から男君を奪ってく!
あの小汚い雌猫と一緒!」
女「あんたも知ってるでしょ?男君んちで飼われてる白い雌猫」
ドクンドクンドクンドクンドクン…
猫「(…待って…)」
猫「(主は…ずっとずっと…)」
~
男「あの子、すごく苦手なんだ。僕、一度も同じクラスとかになったことないのに僕のこと色々と知ってるし…それに…」
猫「それに?」
男「なんか…いつもいつも見られてるような気がして…」
~
女「だから…っ、すごく悔しくて悲しくて…男君のことを異常なまでに執着するようになってしまった…。そのぐらい、憎くて、仕方なかったから…っ」
~
男「ユキを飼い始めた頃あたりかな…。そんな風に感じるようになったの。だから、ユキが一緒に居てすごくすごく安心してたんだ」
男「ま、まぁ僕の思い過ごしだろうけどね!」
~
猫「(わ、たし…が…)」
~
幼「…男には、女のこと言うなよ?」ボソッ
幼「男、女のことすげぇ気にしてるし精神的にも参ってる部分あるから」
~
猫「私が…居なかったら…主は…主は…」
女「…はぁ?何をぶつぶつ言ってるの?」
ドクンドクンドクンドクン…
女「まぁ、そうね。あの雌猫を飼い始めた話をしたときの男君のあの笑顔…。本当に今まで見たことなくて…っ。あー!本当にうざったい!」
猫「…私が、居なければ…私が…」
猫「…私が、居なかったら…主は傷つかなかった…嫌な思いもしなかった…」
猫「…ご、めんなさい…ごめんなさい…」
男「ん…?あれは…」
…
猫「…っ、ぅ…うぅ…」ポロポロ...
男「…ユキ!ユキ!」
猫「…!」ビクッ
男「こんなところで何してたの?」ニッコリ
猫「ごめんなさ…い…ごめんなさい主…」
男「え?」
猫「私が、主を傷つけてしまっていたのね…」
男「何を言って…」
猫「主、私はあなたの飼い猫失格でした」
猫「私は…あんなに大事に、大事にされていたのに…。お返し出来ていなかった…」
男「待って。一体何があったの…?」
猫「…っ、ごめんなさい…!」タタタッ
男「ユキ…!ユキ!」
男「とりあえず探さないと…!」
ダッ…ドン!
男「うわっ!」
?「…ったぁ…ちょっと!何なのよあんた!」
男「す、すみません…」
?「まぁ…私は大丈夫だけど…。そんなに何を急いでるのよ、少年」
男「…大事な、大事な…俺にとっては家族と同じくらい大事な存在の子が傷ついてしまったみたいで…」
?「…ふぅん。それは大変ね」
男「すみません…っ、急いでますので!」ダッ
?「色々と大変みたいねぇ」
幼「お疲れさまっしたー」
幼「(いつもよりバイト長引いちまった…)」
幼「…ん?不在着信が10件以上も…全部男から…」
幼「まさか…ユキに何かあったんじゃ…っ!」
男「もしもし!?」
幼「何かあったのか?」
男「実は…」
…
猫「…はぁ…はぁ…」
猫「(さっきから身体が熱い…苦しい…)」
猫「咄嗟に走ってきてしまったけれど…私はこれからどうしたら…」
子「お姉ちゃん、どうしたの?どこか痛いの?」
猫「え…?」
猫「大丈夫よ。心配ないわ」ニッコリ
子「でもすごくすごく苦しそう…」
猫「平気。私、こう見えても打たれ強いんだから」
子「…無理してる。嘘ついてる」
猫「え…」
子「お姉ちゃん、私のこと救ってくれた。だから今度は、私がお姉ちゃんを救う番」
子「お姉ちゃんを悲しませてるのは誰?」
猫「え、えと…」
子「女の人?」
猫「それが…」
猫「私が悲しんでるのではなく、私が悲しませてしまったの…」
子「…うそ!そんなこと有り得ない!」
子「本当にお姉ちゃんは誰かを悲しませてるだけ?幸せにはしてないの?」
猫「それは…」
子「お姉ちゃんは誰かを幸せにすることができる人なんだよ!わたし知ってるよ!」
猫「…っ」
~
「もちろんだよ!役に立ててるっていうか…家族みたいなものだし、ユキが居てくれて僕は本当に、本当に幸せだから」
~
猫「そうよ…主は優しい笑顔でそう言ってくれた…私に幸せだと教えてくれた…」
猫「主…主…」ポロポロ...
猫「う…っ、ぅ…」ポロポロ
子「お姉ちゃんは、その人のこと大事?」
猫「…ぐすっ。えぇ、大事。すごく大事よ」
子「じゃ、好き?」
猫「…す、き…?」
猫「…飼われてる立場な上にあんなに大事にして頂いてるだけで嬉しくて、幸せなのに…好きになるなんてとんでもない…」
子「…」ジッ
猫「!あっ、飼われてるっていうのは…その…」
子「お姉ちゃんは"今"飼われてるの?その人に」
猫「え…」
猫「(確かに飼われてはいないけど…居候の身だってことは変わってないし…)」
子「今飼われてないならいーじゃんか!」
猫「へ!?」
子「お姉ちゃんは、好きに生きていーんだよ?素直になっていーんだよ?」
子「今までいっぱいいっぱい素直になれなかった分、わがまま言ってもいーんだよ!」
猫「怖い…怖いの…っ」
子「大丈夫だよ。こんなに優しくて可愛いお姉ちゃんをもう誰も捨てたりなんかしない。絶対、絶対だよ」
子「わたしも、優しいお姉ちゃんとお兄ちゃんに拾ってもらえたからすごくすごく分かるよ」
猫「…今、なんて…?」
猫「ね、ちょっと待って。あなたは…」
子「お姉ちゃんのおかげで、わたしはすごく幸せ。この鈴がその証だよ」ニッコリ
猫「ハルちゃん…っ」
タタタッ…
猫「…行っちゃった…」
猫「ハルちゃんありがとう…私、頑張る…っ」
…
男「はぁ…っ、そっちにはいた!?」
幼「いや、全然だった…。ったく、どこに行っちまったんだよ…」
男「…僕、もう一度家の近くを探してくるよ」
チリンッ
幼「…ハル?」
猫「みゃー」
男「あれ、ハルちゃん?」
幼「何してたんだよこんなところで」
猫「みゃっ、みゃ」
男「とりあえず僕行ってくるね!」
幼「待てって!俺も…っ、ハル!なんでくっついてくるんだ!今忙しいんだからお前と遊んでる場合じゃないんだっての!」
猫「にゃ!にゃ!」
幼「…わりぃ。男一人で行ってくれるか?ハルをここに残しておけねぇし」
男「わ、わかった!何かあったら連絡するよ!」
幼「…お前さ!素直になってもいいと思うぞ!」
男「え?」
幼「もう"飼い主"じゃねぇんだからさ!」
幼「俺、お前のことなーんでも知ってっから。ユキよりもな」
男「…っ、な、何が!」
幼「もうユキは猫じゃねぇんだから、人間として好きになってもいいってことだよ」
男「…!」
男「ぼ、僕は…!」
男「それは駄目だ!!」
男「…あ…えと…」
幼「なら早く行ってこい。きっと待ってっから」
男「う、うん…!」
タタタッ…
幼「…さぁ、ハル。帰るか!」
猫「にゃー」
幼「なぁ、お前が俺のこと今足止めしたのは偶然じゃないよな?」
猫「みゃっ」プイッ
幼「お前も素直じゃねーな。どっかの白猫みてぇだ」
友「なぁ、マジ頼むよ!」
女「…合コンは興味ないなぁ」
女「(しつこいなぁもう…)」
友「一回だけ!女ちゃんが出てくれるってなったら皆喜ぶからさ!」
女「あのねぇ…っ」
友「あ」
女「え?」
友「あの走ってるやつ、男じゃね?」
友「すっげぇ全速力…。何かあったのか?」
女「(…確か…)」
友「つうか、すげぇ苦しそうなんだけど…」
女「…早く止めてきて!!!早く!!!」
友「え…え!?」
友「いきなり何だよ!?」
女「…ちっ!もう!使えない!」ダッ
友「女ちゃん!?」
…
猫「主…主…」キョロキョロ
猫「まだ…帰ってきてないのね…」
猫「きっと…きっと私には時間が無いんだわ…」
猫「主…っ、主…!」
…
男「…ユキ!絶対に、絶対に居てくれ…っ」
女「男君!!!」
女「嘘なんでしょ!あの女が従姉妹だって嘘!」
男「…はぁ…はぁっ…」
女「男君、私に隠し事してる!従姉妹なんかじゃないでしょ!」
男「…っ!」
女「!?」ビクッ
男「従姉妹なんかじゃないよ!ユキに言われるまで、そんな関係性を偽ることすら頭に無かった!!!」
女「男、く…ん…?」
男「必死に…必死に隠してたんだよ!!自分の気持ちに!!だって…だって俺は飼い主だったから…っ、あの子を好きになる資格よりも、大事に"親"同然の気持ちで育てていくことのほうが必要だって思ってたから…!」
男「ユキを拾ったときから…ずっとずっと、僕がこの子を大事に大事に育てていくって決めてたから…!」
男「あの女って呼ぶな…!あの子にはユキっていう名前がついてるんだ…!」
女「…!」ビクッ
男「…もう、僕達に構わないで。それじゃ…!」
女「待っ…怒らないで…嫌いにならないで…!」
女「男君!」
男「はぁ…っ、アパートの周りには居ない…」
男「もしかして…部屋にもう帰ってきてるんじゃ…」
タッタッタッタッ
男「ユキ!君に伝えたいことが…っ」
男「あれ…部屋の中にも居ない…」
猫「みゃぁ」
男「え…?」
猫「にゃ」
男「…ユ、キ…?」
猫「にゃ」
男「…駄目だよ。それは…ユキの好きだった茶色いブランケットだよ…」
猫「みゃぁ」
男「駄目だってば…。僕の膝はユキの大事な大事な場所なんだ…」
猫「…にゃ」
男「駄目、だよ…ユキと同じ白色で同じ毛並みなんか…駄目、駄目だよ…っ!」
猫「…みゃ」
男「やめて…名前を呼ぶ度反応しないでくれ…。まるで、まるで…」
男「待って…。まだ伝えてないことがたくさんあるんだ…っ。僕にはユキが必要なんだよ…!」
?「ごめんなさいね。時間が来てしまったの」
?「んー、そうね。その質問をされる度、私は困ってしまうのだけれど…まぁ、猫の神様ってところね。一応ね」
男「神、様…?」
?「あなたの飼い猫を人間にしたのは私よ」
男「ユキを…?」
?「えぇ。願いを叶えてあげに来たの」
男「な、なんで…」
?「ユキちゃんが人間の姿でいると…精神的に辛いことばかりで身体が耐え切れなさそうだったから」
男「精神的、に…」
?「元々、心に傷がある状態であなたの元に来た猫ちゃんだったから尚更ね」
?「あなたのせいではないのよ。私もきちんと事前に色々調べていれば、人間にさせる上手なタイミングがあったはずなのに…。本当に、ごめんなさいね」
男「ユキ…」
?「本当に、本当にいい子だったわ。あなたは素敵な愛情を注いでいたのね」
男「ユキ…ユキ…」
猫「にゃ、にゃ」
男「留守番は今までしてたから平気だとか…外に出しても大丈夫だからとか…安易に考え過ぎてたから…だから…っ」
男「ごめん…ごめんねユキ…」
猫「…にゃぁ」
?「それはユキちゃんも一緒よ」
男「…っ、ユキも…?」
猫「みゃぁ」
男「僕と…同じ気持ち、だったの…?」
猫「…にゃ」
男「ユキ…ッ!」
男「え…?」
?「さっき、私が言ったこと覚えてる?」
男「なにを…」
?「私は"願いを叶える前に"猫に戻したの、ってあなたに話したわ」
男「…じゃあ…!」
?「えぇ。ユキちゃんの願いは、私がちゃんと叶えてあげる」
?「ただし」
男「…?」
?「ユキちゃんが猫に戻ってしまったのだから、ユキちゃんがどんな願いをして、いつその願いが叶うかもあなたは分からない状態」
男「は、はい…」
?「あなたはそれでも平気?待っていられる?もし、あなたが望むような願いでなくても、ずっとずっとユキちゃんを大事にできる自信はある?」
猫のユキも、人間のユキも…僕にとっては家族…いや、家族以上に大事な存在です。
一番の気持ちは…もし人間のユキにまた出会えることが出来たら伝えたい…」
?「それが聞けて安心したわ。あなたも、ユキちゃんも本当に、本当にいい子だから…きっとあの子も幸せになれたのね」
男「…あの子?」
?「ごめんなさい。ユキちゃんとある子猫ちゃんを出会わせたのは私の勝手な行動なの。ユキちゃんなら、きっと助けてくれるって信じてたから」
?「何かしら」
男「ユキは、僕に拾われて本当に心から幸せだったのでしょうか?」
?「…それは人間のユキちゃんにまた出会えたら聞いてあげて」ニッコリ
男「はい…っ」
猫「にゃっ、にゃ」
男「ユキ…。猫の姿としては久しぶりだね」
猫「みゃぁ」
男「…あの!」
?「なぁに?」
男「色々と、ありがとうございました」ペコリ
?「お礼を言うのはまだ早いぞ、少年」
男「あ…す、すいません」
?「幸せにしてあげてね。お願いね」
男「…はい、約束します」
猫「みゃぁ」
…
男「ただいま、ユキ」
猫「にゃー」
男「ははっ、やっぱりユキを抱きしめると暖かいや。外は一段と冷えるから」
猫「みゃっ、みゃ」
男「今日はハルちゃんを連れて幼が遊びに来てくれるよ」
猫「にゃー」
男「幼が言ってた。ユキは僕への好きって気持ちを抑える為に無理矢理幼のことを好きになろうとしてた、って。本当なの?」
猫「みゃー、みゃ」
男「…どっちだか分からないよ」クスクス
猫「にゃ」
男「違うよ。ユキも一緒に行くんだ」
猫「…みゃっ」
男「こうやって抱きしめていれば外にだって一緒に行けるね」
猫「にゃ」
…
男「あ」
女「あ…」
「「…」」
女「…ごめんなさい!」
男「え…」
女「もう…本当に、何もしないから…。ごめんなさい」
男「そ、そう…」
女「そ、それじゃ…っ」
男「な…何だったんだ…」
猫「にゃー」
猫「にゃー」
男「まぁいいや。いこうか」
猫「にゃっ」
男「…夜はもっと冷え込むだろうなぁ」
猫「ねぇ、起きてよ」
男「…あ、れ…」キョロキョロ
男「そうか…夢か…」
男「(夢とはいえ…人間だった頃のユキを見るのは久しぶりだな…)」
男「ユキ…」
男「…あれ…」
男「どこに行ったんだ…?確かにブランケットの上で寝ていたはずなのに…」
男「ユキ…ッ!」
…
男「…はぁ、寒い…外にユキが飛び出るなんて滅多にないけど家には居ないし…」キョロキョロ
男「ユキ…ユキどこだ…?」
男「…」
~
「誰って…あなたの飼い猫よ」
猫「主。私はこの通り、主と同じ人間の姿になってしまった。私はもういらない子?猫では無くなってしまったから、もう主の側には居られない?」
猫「こうやって主と寝られる日が来るなんて。ずっとずっとこうしたかった…」
~
男「ユキ…」
男「ユキ…?」
雪「ごめんなさい。起こしてしまって。しかもこんな寒い中」
雪「でも、少しでも早くあなたに会いたかったから。お話したかったから」
雪「そうよ。"ユキ"よ」
男「人間に…なれたの…?」
雪「えぇ、あなたと一緒。これからもずっとずっと一緒」
男「…伝えたいことが、たくさん…たくさんあるんだ」
雪「奇遇ね。私もよ」
雪「私も…やっと言える。一人の男性として、あなたを好きでありたい。傍に居続けたい」
雪「もう…鮭が出てきて跳ねて喜んだり、茶色いブランケットで眠れなかったり、ミルクをお腹いっぱい飲んで猫なで声を出したりなんて出来ないけど…」
雪「それでも…それでもお傍に居てもいいですか…?」
雪「…よかった…」
雪「本当に、よかった…」ポロポロ...
男「泣かないで、雪」
雪「う、うん…っ。でも嬉しくて…私、ずっと素直になれなかったから…上手に気持ちを表現出来なかったから…っ」
男「それは僕も一緒だよ…。ごめんね、そしてありがとう」
雪「う…っ、ぅ…」ポロポロ
男「雪、おかえり。ずっとずっと君のことを待ってたよ」
雪「…ただいま、男さん」
end.
それなのにここまで読んで下さって本当にありがとうございました
チロルやあんみつのことを覚えててくれてる人がいて嬉しかった
もう2~3年ぐらい経ってるのに
ありがとう ありがとう
楽しめたよ
素晴らしく良かった!
良い話だった。
Entry ⇒ 2012.01.17 | Category ⇒ その他 | Comments (0) | Trackbacks (0)
猫「主様、起きて起きて!」
男「ん…あと5分…」ゴロン
猫「主様!お腹空いたー、喉渇いたー」ユサユサ
男「うるせ………あ?」
猫「!主様が起きたー」
ギュッ
猫「言葉が通じると便利!」
男「…誰だよお前」
男「人の話を聞け。大体、主様って何だ」
猫「…私のこと、分からない?」
男「…」
ジーッ
男「…おい」
猫「なになに?主様」
男「自分の名前、言えるか?」
猫「あんみつー!」
男「…どうしてこうなった」
猫「起きてたらこうなってたー」
猫「うん!」
男「…」
男「…とりあえず、これ着とけ」バサッ
猫「わ、主様のパジャマー。ふわふわ良いにおーい」
男「いいから着ろ」
男「(これから…どうすりゃいいんだ…)」
猫「ごーはーんー」
男「…猫まんまでも作るか」
猫「えへへー」
男「何だよ」
猫「主様とね、ずっと喋ってみたかったの!」
男「ほう」
猫「こっちが喋りかけてもね、全然通じなかったから!」
猫「だから、すーっごく嬉しー」ニッコリ
男「…俺は混乱中」ハァ
猫「えー、嬉しくないの!?なんで混乱するの!?」
男「いや、これからのこととか…色々」
猫「むぅ」
猫「私ね、あんみつって言うのー。自分の名前言えるのー」
猫「にゃー」
猫「すごいでしょー」
猫「みゃぁ」
男「おい!あんみつ!」
猫「あ、主様だ!」タタタッ
男「何してんだよ。外にはむやみに出るなっつっただろ?」
猫「お友達とお話したかったの。ごめんね主様」シュン
男「友達?」
猫「にゃー」
男「…なるほど」
…
猫「ね。主様っ、主様!」
男「何だ?」
猫「呼んでみたかっただけー。喋れるって良いね!」
男「お気楽で良いな、お前は」
姉「はい、頼まれたやつ」
男「サンキュ」
姉「何なの?いきなり。女もんの服だの下着だのよこせって…」
男「い、いや…。彼女が、その…」
姉「やだちょっと。変な女に誑かされてるんじゃないでしょうね?」
男「…っ、あんみつはそんな子じゃねーよ!!!」
姉「…随分美味しそうな名前ね」
男「(…しまった…)」
猫「主様が帰ってくるまでに帰ればいいよね!」ニパッ
トタトタトタ...
猫「すごいすごい!いつも見てる景色と違ーう!」
猫「(こんなに色鮮やかなんだなぁ…綺麗だなぁ…)」
猫「あ!あの人、お家に来たことある!確か…主様のご友人!」
猫「ご友人様!」
友「え?」
猫「こんにちはー!」スリスリ
友「…どこかでお会いしましたっけ?」
猫「!…あわわわわわっ、今は違う姿だったー!」
友「え、えと…」
猫「ごめんなさーい!」タタタッ
友「何だったんだろう…」
猫「恥ずかしい恥ずかしい!人間って難しいよー!」
猫「…はぁ、良かった!帰ってきてないや」
猫「この姿になって結構経つけど…、今だになれないなぁ…。服を着るのもやだし、お風呂入らなきゃだし…」ハァ
男「ただいまー」
猫「主様!おかえりー!」タタタッ
ギュッ
猫「学校楽しかった?」
男「まぁまぁ」
猫「そっかそっかー」ニコニコ
男「?随分機嫌がいいな、あんみつ」
猫「やっぱり、主様とお話出来るのは素敵だなって思って!」
男「俺も、最近は慣れてきたかな」
猫「わーい!」ピョンピョン
男「…とは言ったものの、これからのことを考えると憂鬱だな」ハァ
友「男がため息つくなんて珍しいね。何かあった?」
男「…話したら、お前絶対引く。頭おかしいって思う」
友「そんなことしないし、思わないよ」
男「じゃ、話すからな」
…
友「…」
男「ってわけだ」
友「…最近、寝てないんじゃない?何だったら近くの病院にでも…」
男「ほらやっぱり」
友「冗談だよ」
友「(まさか…猫が人間になるなんてなぁ…漫画じゃあるまいし)」ブツブツ
女「友くーん!」
友「あ、女さん。こんにちは」
女「…さっき、男君と喋ってたよね?」
友「うん」
女「何のことー?」
友「次の授業のことだよ」
女「あははっ、なら良かったー。ね、男君って彼女居ないよね!?」
友「うん」
女「…そっかぁ」ニコリ
友「(別れた後も未練たらたらなんだなぁ…この女)」
猫「主様ー!今日は一緒にねよー!」
男「無理」キッパリ
猫「にゃ!何で何でっ」
男「(久しぶりに”にゃ”って呼んだな…)」
男「無理なもんは無理なんだよ。諦めて一人で寝ろ」
猫「むぅ…」
男「(一緒に寝たら何すっかわかんねーからだっての…。これでも頑張って我慢してんだよ)」
猫「(猫の時はいつも一緒に寝てたのに!むーっ!)」
男「(寝たか…。よし、俺もそろそろ…)」
プルルルル...
男「はい」
女「あっ、男?ごめんね、電話なんか掛けちゃって。今日久しぶりに学校で見…」
男「もう掛けてくんなって言っただろうが」
女「で、でもやっぱり…」
猫「んぅ…っ、暑い…」
女「!?」
男「…とにかく、もう掛けてくんなよ」
ピッ…プープー…
女「今…女の声がした…」
猫「主様は学校!私はいつも通りお留守番!」
猫「…暇ー。人間ってすっごく暇ー」
猫「…お外出ちゃえ!」
…
猫「わー、やっぱり気持ちがいいなぁ二足歩行は!」ニッコリ
?「あ、あのっ」
猫「?」
?「このへんで一番近い本屋さんってどこでしょうか?」
猫「…ほんや?」
猫「!私、”ほんや”は分からないけど”ご主人様”は分かるよ!私にも主様がいるよー!」
?「!ほんとですか!?」
猫「一緒だねー」ニコニコ
?「はいっ、一緒です」ニッコリ
猫「せっかくの機会だし、一緒に”ほんや”探してあげるー」
?「ありがとうございます…!助かりますっ」
猫「良かったねー」
?「本当にありがとうございました!えと、お名前は…」
猫「あんみつ!主様が付けてくれたの」
?「とても可愛いお名前ですね」
猫「お姉さんはー?」
チ「私はチロルと言います」ニッコリ
猫「なんか美味しそうな名前だね」
チ「あんみつちゃんには負けますよ」クスクス
猫「主様、お友達が一人出来たー!猫じゃなくて、人間のお友達ー!」
男「(やっぱり度々抜け出してたか…)」
男「良かったじゃねーか」
猫「今度会った時はお茶しようって言われた!」
男「…よし」
猫「?」
男「ん。ずっと前から、渡そうと思ってたやつ」
猫「なにこれ」
男「その中にはお金ってのが入ってる。お金ってのはだな…」
猫「むぅ!そのぐらい分かるー!でも、私にお金はいらないんじゃないかなぁ…」
男「好きなもん買えよ。その友達とお茶する時だって必要だしな」
猫「…っ!主様優しいね!ありがとうー!」スリスリ
男「…その擦り寄ってくる癖、そろそろどうにかしてくれ」
男「それは猫ん時に学んだのか?」
猫「んーん。これー」
男「あ、なるほどな。テレビでか」
猫「テレビさんには色々教えてもらったよー」
男「例えば?」
猫「”ふりん”とか、”おしゅうとめ”とか!」
男「…!」ブッ
猫「主様ばっちぃ!」
男「(完全に昼ドラからだろ…っ!)」
男「…あんみつ。お前が見ていいチャンネルはココとココだ。分かったな?」
猫「えー」
男「問答無用」
猫「むぅ」
男「…あいつが人間になって、大分経つな…」
友「ねぇ、そろそろ会わせて欲しいな。”あんみつちゃん”に」
男「そうだな。俺以外の人間とも話せるようになっただろうし」
友「楽しみ」ニコニコ
男「この前なんて、人間の友達が出来たっつって喜んでやがってさ」
友「へぇ」
男「今度一緒にお茶するんだとよ」
友「(随分嬉しそう…。親馬鹿ってこーいうことを言うんだろうなぁ)」
男「…お前やだ。うぜーから」
親「親友なのにうぜーってどういうことだよ!」
友「まぁまぁ」
親「あ、そういや。女のやつ、最近すっげー機嫌悪いみたいだぜ?」
男「俺には関係ねーよ」
親「ふーん」ニヤニヤ
男「…きも」
猫「ねー、主様。今日は一緒に寝たい!」
男「ダメって言っただろうが」
猫「やだ!寝る寝るー!」
男「…はぁ、無理だって」
猫「何で…?前は良く一緒に寝てたのに…」
男「それは”猫”だったからだろ?」
猫「今の姿じゃどうして駄目なのー…」
男「…お前にはまだ早い。とにかくもう寝ろ」
猫「主様と仲良く出来ないなら猫のほうが良かったー!!」ベシベシ
男「こら、でけぇ声出すな!近所迷惑だろうが!つーか痛ぇって…!」
猫「…」
男「んだよ、まだ怒ってんのか」ハァ
猫「怒ってるよ。あんみつ、すごーい怒ってるよ」ムスッ
男「怖くも何ともねーよ馬鹿」
猫「!馬鹿って言うほうが馬鹿なんだよ!」
男「じゃ、お前も馬鹿だろ」
猫「…むぅー!悔しい悔しい!」
男「言い方変えてきやがったなこの野郎」
猫「ふーんだ」
男「…悪い子には、これやんねーぞ?」
猫「…な、何それ」ジー
男「あんみつ」
猫「?あんみつは私だもん」
男「あんみつっていうデザート。すっげー甘い」
猫「!あ、まい…?ミルクより?」
男「そりゃもう」
猫「食べる食べる!私と同じ名前ー!甘いー!」
男「なんか色々混じって日本語が大変なことになってんぞ」
猫「…あれ」
男「どした」
猫「お友達が、何言ってるかわかんなくなってきちゃった」
男「…人間になったからじゃないか?」
猫「でもでも!最初はお話出来てた!」
男「んー、俺にはわかんねーな…」
猫「…寂しい」
男「んな顔すんなって。人間の友達作ればいい話だろ?明日には俺の友達もあんみつに会いに来てくれるしよ」
猫「うん…」
友「えっと次は移動だから…」
女「友君!」
友「!わっ、びっくりした…ど、どうしたの?」
女「嘘つき!」
友「え…?」
女「男君に彼女いないって言ったよね!?」
友「言ったけど…」
女「いるんじゃない!嘘つくなんて酷いよ…っ!」
タタタタッ…
友「意味が…分からないんだけど…」
ギュッ
男「おっと…っ、ただいま」
友「随分可愛らしいお出迎えだね。こんにちは、男の友達で…あ、あれ?」
猫「…あー!」
男「?お前ら、知り合いなのか?」
猫「あ、あの時は本当にごめんなさいでした…」オロオロ
友「いや、全然平気だよ。君があんみつちゃんだったんだね」
男「…」
友「偶然道端でばったり。ね?」
猫「ばったりー」
男「ふーん…」
…
友「じゃ、僕のことは覚えててくれてたんだ!嬉しいな」
猫「あんみつ、すごいすごい!?」
友「とってもね」ニッコリ
猫「…っ!主様、褒められちゃったー」
男「…」
猫「友さん、優しい人だったねー」
男「…」
猫「主様、さっきから私とお話してくれてない」
男「…別に」
猫「別に、じゃない!話し掛けても無視する!」
男「…っ、あんみつが悪いんだろ!?」
猫「!?」ビクッ
男「俺以外の奴に…簡単に懐きやがって…」
男「(うぜぇくらい、俺にしかまとわりつかなかったのによ…)」
男「…だろうな。俺もよくわかんねーもん」
猫「…主様、痛そうなお顔してる。ごめん、ごめんね」
男「あんみつ…」
男「…かった」
猫「…?」
男「お、俺のほうこそ悪かった…ごめんな、あんみつ」
ギュッ…
猫「主様…ちょっと痛い」
男「わりぃ…もう少しだけ…。頼む」
男「んー…?」
猫「主様にギュッてされたらドキドキした。すごくドキドキした」
男「いつも抱きしめてたじゃねーか」
猫「そう!だからびっくりなのー」
男「…可愛い奴」ナデナデ
猫「なでなでもドキドキするからやめてー」
猫「主様、どっか行くの?」
男「あぁ。今日は帰りが遅くなる」
猫「…あんみつは行けない?」
男「悪いな。今日はサークルの集まりだから」
猫「行ってらっしゃーい…」
男「行ってくる」
バタン
猫「…変だなぁ。お留守番は得意っていうか、一人になるのも好きだったんだけどなぁ」ショボン
猫「早く帰ってきてー…」
猫「にゃー」
猫「…ごめんね。何言ってるかわかんないのー」
猫「みゃぁみゃぁ」
猫「…っ!」ダッ
…
トボトボ...
猫「つまんないよー…」
友「あんみつちゃん!」
猫「!?」
友「こんなところで何してるの?男が心配しちゃうよ」
猫「今日、主様いないの。だから心配なんかされないの」
友「…」
猫「し、んぱいなんか…」
友「…一人が寂しいんだ?」
猫「…」コクリ
友「じゃ、僕が一緒に居てあげるよ」ニコッ
猫「!…ほんとに!?」
友「用事を済ませて帰ってきたところだったしね」
猫「ありがとうー!」
女「ねぇってば!」
男「しつけーな…。何回も言ってんだろ?やり直す気はねぇって」
女「…なんで?あんなに好きって言ってくれてたのに…」
男「あぁ、好きだったよ」
女「じゃあ…どうして…っ」
男「どうしてだ?よくそんなことが言えるよな。浮気したくせによ」
女「!そ、それは違うのっ」
男「…話になんねぇ。じゃあな」
女「やだ…っ、行かないで!」
ギユッ…
女「やだ…お願い、行かないで…」
男「ふざけんなよ…」ハァ
女「…っ、あれは勘違いだったの!私、男の気を引きたくて…だから…」
男「…聞きたくねぇし、興味もねぇ。じゃあな」バシッ
女「…っ!」
スタスタスタ...
女「…ふぇ…っ、ぅ…」ポロポロ
男「…何やってんだ、俺」
男「(抱きしめられた瞬間、すぐに引き剥がせなかった…。名前で、呼んじまった…)」
男「…っ、何なんだよ…」
…
猫「うわぁ、大きな噴水ー」
友「ここは来たことなかったんだ」
猫「私が出ていい範囲はお家のすぐ側までだから」
友「それは今も?」
猫「うん」
友「相変わらず大事にされてるんだなぁ」
友「忘れちゃってるのかな?」
猫「少しは覚えてるよ!…ねぇ、友さん」
友「ん?」
猫「私、大事にされてたの?」
友「そりゃもう。すごく可愛がられてたよ。それも覚えてない?」
猫「少しだけ。でも確かめたかったのー。友さんはよくお家に来てたから何でも知ってるでしょ?」
友「まぁ、ある程度はね」
猫「じゃあ、私が忘れちゃったことはまた色々教えてね!」
友「うん、いいよ。約束する」
友「そんなことないよ」
猫「お話出来るのってすごく嬉しい!」
友「今みたいに?」
猫「うん。猫の時はね、相手が何話してるか分からないし、何を話してるか分かってもらえないから」
友「へぇ」
猫「だから、いじけて生意気な態度取ったり無視したり、言葉が通じないから精一杯甘えたりしてた」
友「…なるほどね」
友「?」
猫「な、何でもない!」プルプル
友「…何かあったら、いつでも相談しなよ?僕で良かったら力になるからね」
猫「…ありがとう!」
友「どういたしまして」ニッコリ
猫「(友さんといると楽しい!主様とは違うドキドキだ!)」
男「…はぁ」
猫「主様、ため息つくと幸せが逃げちゃうよー」
男「逃げねーよ」
猫「むぅ。せっかく教えてあげたのにー」
男「(何でアイツのことばっかり考えてんだっての…)」
猫「あんみつ、もう寝るね。おやすみー」
男「…おい」
猫「?」
男「今日は、一緒に寝たいって駄々こねないのか?」
男「…は?」
猫「あんみつと寝れないって言ったのは主様だよ?」
男「いや、まぁ…それはそうだけど…」
猫「だからもう言わないの。今までとは違うって分かったから」
男「…あんみつ」
猫「おやすみね、主様」
男「…おやすみ」
男「(猫にも反抗期ってあったっけか…)」
猫「んー、迷う…。主様からもらった”お金”があるけど…むぅ…」
?「何かお困りー?」
猫「(綺麗な人…!)」
猫「お、おやつを買おうか迷ってて!」
?「へー、可愛いわね。何々?…あんみつ?」
猫「私と同じ名前で、甘くて、主様からもらったことがあるのです!」
?「待って待ってー。なんか日本語変よ」クスクス
猫「ほ、ほんとに良かったのですか!?」
?「いいのいいの。受け取ってちょうだい」ニッコリ
猫「!ありがとう…!大事に食べます」
?「あははっ、その心掛けは素晴らしいけど早めに食べちゃってね。腐っちゃうから」
猫「…!そ、そうでした!」アワアワ
?「…可愛い子。あんみつって名前も素敵ね」
猫「主様が付けてくれたの!」ニパッ
?「あなたとはまた会って話がしたいわ」
猫「ぜひお願いします!」
?「今度はホットケーキってものを食べてみてね?美味しいからオススメよ」
猫「了解ですー」ニッコリ
猫「ってわけで、お金を使わずにあんみつゲーット!」
男「それは良かったな。けど、今度会ったら改めてお礼言っとけよ?」
猫「はーい!」コクリ
猫「あんみつ、人間になれてまたちょっと嬉しくなっちゃったー」
男「よしよし。可愛いな」ナデナデ
猫「えへへ」
男「?」
猫「私、主様の膝元で寝るの好きだったでしょ?だから、少しだけっ。ね、おねがーい!」
男「す…少しだけだぞ」
猫「…!やったー!」ゴロン
猫「幸せ幸せー。猫の時に戻ったみたい!」
男「こ…これならいつだってしてやるよ」
猫「主様やさしー!」
親「男と寄りを戻したい?」
女「うん」
親「…無理だろ」
女「やだ…っ、戻したいの!親、どうにかしてよ」
親「はぁ?」
女「大体、親が勝手にあたしが浮気してるって勘違いして、男に告げ口したんじゃん!」
親「…そうだっけ」
女「惚けないでよ!!」
親「分かった分かった!頑張ってみっから」
女「…よろしくねっ」
男「…あんみつ。ちょっとこっち来い」
猫「はーい!」タタッ
男「せ、洗濯物はちゃんとしまえよ!///」
猫「あっ、忘れてたー。ごめんね、主様」
男「…分かれば良いんだよ」
男「(何で下着見ただけでドキドキしてんだ…馬鹿か俺は)」
男「わり、そろそろ家出ねーと遅刻しちまう!」ドタバタ
猫「主さまぁ…」
男「じゃ、留守番頼んだぞ!行ってくる」
タタタタッ バタン!!
猫「…むぅ。主様ひどい…あんみつ、こんなに苦しいのに…」シュン
猫「(お散歩行けば少しは気分転換になるかな…)」
…
猫「ふぁ…具合が悪い時は、主様何してたっけ。思い出さなきゃ…」
猫「!そうだ、お薬飲んでた!…主様からもらったお金で買ってみよ」
猫「お薬飲んで元気が出たら、主様心配させないで済むもんね…っ。やったぁー…」ニッコリ
タタタタッ…ドン!!
猫「…うわっ!…いたたた…あ、あのごめんなさい…大丈夫、です…か…」
猫「…あれ…?走って行っちゃった…」ジー
猫「!あれ…何で私のお財布を持って走ってるの!?だめ…っ」ダッ
猫「はぁ…っ、ま、待って…!」
猫「(全然追い付かない…!苦しい…!)」
猫「主様からもらったの…!大切にするって約束したの…!」ハァハァ
”ん。ずっと前から、渡そうと思ってたやつ”
猫「あんみつの…っ、為に用意してくれてたんだよぉ…!」
”好きなもん買えよ。その友達とお茶する時だって必要だしな”
猫「…っ、はぁ!お願い…、ぅ…っ、か、返して…!」ポロポロ
猫「はぁ…はぁ…、い…行っちゃった…」ポロ…
猫「ふ…ふぇ…っ、うわあああん!」ポロポロ
チ「!…あんみつ、ちゃん?どうしました?どこか痛いのですか?」オロオロ
猫「チ…ロルちゃ…」バタッ
チ「あんみつちゃん…!しっかりして下さい…っ」
猫「…あれ…」
チ「あぁ、良かった!気がついたのですねっ…」ギュッ
猫「チロ、ルちゃ…苦しい…!」
チ「あわわわ!ごめんなさいっ、つい癖で…」
猫「私…どうしちゃったの…?」
チ「道路でしゃがみ込みながら泣いていました…。私が声を掛けた途端、倒れてしまったのですよ…」
猫「…そうだ。あんみつ、お金取られちゃったんだ」ポロ…
チ「…酷い方ですね!具合が悪いあんみつちゃんからお金を奪うなんて…っ」
猫「しっかりしてなかった私も悪い…から」
チ「あんみつちゃんは悪くないです…!」
猫「だるかったのもそうだけど、猫の時より大分走るのが遅くなっちゃったなぁ…」ボソッ
チ「猫の時?あんみつちゃんも、昔は猫さんだったのですか?」
猫「(しまった…!この事はあんまり他の人に言っちゃいけないって主様から言われてたのに!)」アワアワ
猫「…あれ?」
猫「あんみつ、”も”?」
?「チロル、チロル!」
猫「?」
チ「あっ、ご主人様が呼んでいます!」
猫「チロルちゃん、早く行ってあげて」
チ「で、でもあんみつちゃんが…」オロオロ
猫「私ならもう大丈夫ー!それじゃあね!」ダッ
チ「ま、待って…っ」
猫「…チロルちゃんは良いなぁ…。心配して迎えに来てもらえるんだもんなぁ」ハァ
猫「また具合悪くなってきちゃった…早く帰らなきゃ」
…
猫「た、だいまぁー…」
姉「…」
猫「あれ?」
姉「あなたが、男の彼女なの?」
猫「…っ、姉様だ!主様の姉様だ!」
姉「あら、あたしのこと聞いてたの!なんか嬉しいー」ニコニコ
猫「姉様姉様っ!会いたかったー」
ギュッ
姉「…でも、その”主様”って何?あの馬鹿がそういう風に呼ばせてるわけ?」
猫「主様は主様だよー」
姉「(可愛い女の子に何を言わせてんのよ…)」
猫「?」
姉「よし!今度来た時は色々持ってきてあげるわ!」
猫「やったー」
姉「ね、何が好き?どんなブランドが好み?」ワクワク
猫「あんみつ!」
姉「あ、あんみつ?聞いたことないわね…。分かった!頑張って探すわ!」
姉「じゃ、また来るわ」
猫「またねー」
姉「…もうっ、本当に可愛い!」
ギュッ
猫「ま、また痛い…っ」
姉「あんた抱き心地良いわねー!」
…
猫「姉様、相変わらず優しかったー。相変わらず力も強かったけど…」
猫「姉様とお話してたら、いつの間にか具合良くなったみたい!良かった良かったー」ニッコリ
猫「私は、主様の”彼女”じゃないのになー」
猫「…じゃ、主様の”彼女”って誰、なの…かな…」
…
男「…なるほどね」
猫「ごめんね、主様」
男「何かされなかったか?怪我とかしてねーよな?」
猫「…心配、してくれるの?」
男「ばか、当たり前だろ?金なんかより、お前のほうが大事だからな」
猫「…主様、あんみつの心配してくれた…嬉しい…」
男「そういや…どうしてあんみつは人間になったんだろうな」
友「随分今さらな話だね」クスクス
男「そういう心配してる余裕なんかなかったんだよ」
友「…いつ、戻っちゃうんだろうね」
男「…」
友「戻ったら、寂しくなっちゃうね?男」
男「あ?別に寂しくも何ともねーよ。猫のほうが食費浮くし」
友「(嘘ばっか…)」
男「(猫に…戻る、か…深く考えたことなかったな)」
親「男ー!いたいた」タタッ
男「何だよ」
親「なぁ、明日暇?」
男「予定はねぇけど…」
親「やりぃ!じゃ、明日3人で遊園地行こうぜ!」
男「野郎と遊園地なんて嫌に決まってんだろ」ハァ
親「暇なら良いじゃねーかよ。じゃ、いつもんとこに9時なー!」タタタタッ
男「お、おい親…!」
男「…はぁ。ま、気分転換にはなる、か…」
猫「主様、今日もお出かけ?」
男「あぁ。出来るだけ早く帰るようには心掛ける」
猫「いってらっしゃーい」
男「…あんみつ」
猫「なぁに?」
男「お前は…猫に戻っちまうのか?」
猫「わかんない」
男「そんなキッパリ…」
猫「だってわかんないもーん。人間になった理由だってわかんないしー」
男「まぁ…そうだけど…」
猫「あんみつはいつ戻っても良いけどー。あ、そうだ主様!」
男「何だ?」
猫「気を付けてね!」
男「…おう」
男「…!何考えてんだ、俺…」
…
男「…誰もいねぇじゃねーか」
男「(親はともかく、友が遅刻って珍しいな…。電話でもしてみっか)」
ピッピ... ピ
女「男くーん!」
ピ...
男「…なんで、ここに女が…」
男「…何しに来た」
女「え?親君にここで男君と待ち合わせ、ってメールが来たんだけど…」
男「(あの野郎…後で殺す。ぜってぇ殺す)」
…
ゴソゴソ...
友「…あーあ。やっぱり怒ってる」
親「やべーかな、後で切れっかな、男」
友「殺されるかもね」
親「…」
男「何がせっかくだよ…俺は帰…」
女「いいから!」グイッ
男「お、おい…!」
…
友「あー、流されちゃってる流されちゃってる」クスクス
親「…案外楽しんでるな、友」
友「人間模様ほど、見てて面白いものはないんだよ?親」
親「こわー」
友「ま、僕はあんみつちゃんの味方になるかもしれないけどね」
親「あんみつ?」
女「次はあれね!あれっ!」
男「(…早く帰りてぇ…)」
男「(観覧車…。あんみつが喜びそうだな…)」
男「(あー、観覧車よりかはメリーゴーランドのほうが好きそうだ)」
女「…ん、男君!」
男「!な…何だよ」
女「人の話聞いてた!?」
男「いや…全然…悪かった」
女「もうー」
男「(あれ…。今、俺あんみつのことばっかり…)」
猫「(寝れないし、寂しいし、何だか苦しい…)」
猫「人間って…やっぱり辛いかもだよ…主様)」
…
女「男君、次はあれ…」
男「悪い、女」
女「…?」
男「もう、お前とはこうして二人にはなれない」
男「傍に居て欲しい人が出来たから、だろうな」
女「例の彼女?」
男「…彼女では、ない。けれど、前々から大事な存在だった」
女「…」
男「大切だったのに、なかなかその思いに気付けなかったんだ。でも…」
”…いつ、戻っちゃうんだろうね”
”気を付けてね!”
男「居なくなるかもしれないって不安を感じたことで、段々と大切さが分かってきたっていうか…」
男「それどころか、恋愛感情かどうかも分からねぇ」
女「…!そんなのおかしいよ!」
男「…あいつとの時間を何よりも大事にしたいんだよ、今は」
女「…」
男「確かに、お前のことは好きだった。別れてから、心が揺れたことも度々あった」
男「でも…今はあいつでいっぱいいっぱいになってる俺がいるんだ…」
男「馬鹿な上に単純だろ?そんなもんなんだよ、男って」
女「…」
女「やだ…やだよ、男君…」フルフル...
男「…悪いな。気を付けて帰れよ」
スタスタスタ...
女「やだ…やだよ…っ」
…
友「(僕が思ってる以上、だなぁ…当たり前か)」
親「お、おい!男が帰っちまったぜ!?」
友「男からも女さんからも責められちゃうだろうね、親」
親「…」
ガチャ…
猫「…!主様おかえりーっ!」
男「…っ、あんみつ…!」
ギュッ
猫「あ、あれ…?」
男「ただいま…ごめんな、寂しかっただろ…」
猫「(いつもは、私からぎゅーってしたり、すりすりしたりするのに…)」
猫「主様、変。何かあった?」
男「…」
猫「?もちろんだよ!楽しいし、すごく幸せだよ」
男「良かった…」
男「俺も、すげぇ幸せ」
猫「!…主様、あんみつが側に居るだけで幸せ?」
男「そりゃもう」
猫「じゃ、ずっと側に居るよ!それならあんみつにも出来るもん!」
男「…さんきゅ」ギュッ..
友「へぇ、一人暮らしするんだ」
男「あぁ。学校から近いほうが便利だと思ってな」
友「でも寂しいんじゃない?男、こー見えて寂しがり屋だから」クスクス
男「…んなことねーよ」
友「寂しいのなら、癒してくれるペットでも飼ってみたらどうかな?」
男「だから寂しくなんかねーっての!」
?「いらっしゃいませー」
男「(…来ちまった)」
男「(ま、まぁ別にちょっと見に来ただけだからな!)」
?「どんな種類の子をお探しで?」
男「…じゃ、猫で」
?「(じゃあ?)」
男「(猫なら実家でも飼ってるから慣れて…いやいや、ただ見に来ただけなのに何考えてんだよ!)」フルフル
?「…お、お客様?」
男「(…流行って何だ。猫は猫だろ)」
ジー…
男「…何で、コイツだけケージに入ってるんだ?」
?「あ、あぁその子は売れ残りでして…今から裏に運ぶ予定なんですよ」
猫「みゃぁ」
男「(…可愛いし)」
?「はい?」
男「この猫はいくらかって聞いるんですよ」
?「あぁ、無料で結構ですよ」キッパリ
男「…つい最近までは値を付けてたのに?」
?「もう売ってるわけではありませんから」
男「(良い人なんだか悪い奴なんだかわっかんねーな…)」
男「じゃ、俺が貰っていきます」
男「…美味いか?」
猫「…」モグモグ
男「無視かよ」
男「(つーか…飼っちまった…)」
猫「にゃあ」
男「…何だよ」
猫「にゃ、にゃ」
男「…ははっ、お前可愛いな」
ナデナデ
男「なぁ、さっきは無視なんて言っちまって悪かったな」
猫「…」モグモグ
男「無視かよ」
男「そういや、冷蔵庫にあんみつが…」
猫「にゃ!にゃ」
男「…何だ?急に」
男「おーい、美味いか?」
猫「…」
男「…そういや、冷蔵庫にあんみつ…」
猫「にゃあ!みゃ」
男「そういや」
猫「…」
男「冷蔵庫」
猫「…」
男「…あんみつ」
猫「みゃー!にゃあにゃあ」
男「…あんみつ」ボソッ
猫「みゃー」
スリスリ
猫「にゃ、にゃ」
男「お前の前世はあんみつなのか?」
猫「にゃ?」
男「…何でもない」
男「(猫相手に何本気に頭捻ってんだよ…)」
男「んでな、今日は友達にすっげー自慢してきたんだ」
猫「…」
男「名前呼ぶとすっげー反応してくれる、ってな」
猫「みゃー」
男「親馬鹿だ、って言われちまった。ったく、馬鹿って言ったほうが馬鹿なんだっての」
猫「?」
男「お前も覚えとけよ、あんみつ」
猫「みゃ!」
猫「…」
男「利用してるみてぇで…ごめんな」
猫「みゃ、みゃ!」
男「大丈夫だって、捨てたりしねーから。一人の寂しさに慣れたって、お前は手放さねーよ」
猫「にゃ…っ、にゃ」
男「今まで以上に、幸せにしてやっから。そしたら…帳消しとまではいかないだろうけど、少しは許してくれよな」
猫「…」
猫「みゃ」
男「今日は一緒に寝ようぜ」
猫「にゃぁ」
男「(…名前以外にも反応してくれるようになったな)」
男「お前が猫として側に居てくれて…本当に幸せだ」
猫「みゃ…」
男「ありがとな、あんみつ」
~
ギシッ…
男「(随分懐かしい頃の夢だったな…。)」
男「まぁ、何年も経ってねーか…」
猫「何が経ってないのー?」
男「!…いきなり声掛けんな、びっくりすんだろうが!」アセアセ
猫「主様がいけないんだよー、一人言うるさいからー」
男「ご主人様に向かって何だその言い方は」ベシッ
猫「むぅ。痛い!馬鹿!」
男「馬鹿って言ったほうが馬鹿だって何回も教えただろうが」
ピンポーン..
猫「!おっきゃくさまー。姉様かな?」
猫「はーい」
ガチャッ
友「こんにちは。あんみつちゃん」
猫「わぁ、友さんでしたー!」
猫「主様はただいま外出中!あんみつの好きなベーコンを買いに行ってくれてるの」
友「そっか。じゃ、これ渡しておいてくれる?」
猫「もちろんです!」
友「…僕は、ずっと前からあんみつちゃんの味方だからね。これからもずっと」
猫「?」
友「あはは、ごめんごめん。こんな話、急にされてもビックリするだけだよね」
友「なら良かった」ニッコリ
猫「でも、どうしてあんみつの味方で居てくれるの?」
友「…男のことを、誰よりも何よりも癒してくれてた存在だからだよ」
”聞けよ、友。あんみつの奴、自分の名前に反応するんだぜ”
”俺がこんなに幸せなのは、お前が薦めてくれたおかげだよな!サンキュ”
友「ずっと、ずっと前から君にお礼が言いたくて仕方がなかったんだ」
猫「…」
友「でも、男が助けてくれたんだ」
猫「主様すごい!」
友「うん。男が居なかったら、今の僕はなかったと思う」
友「だからね、男には恩返しがしたかったんだけど…なかなか出来なくて」
友「でも、僕の代わりに男を幸せにしてくれる存在が現れたんだ。それがあんみつちゃんなんだよ」
猫「…えへへ、嬉しいな」
猫「前に、主様にも同じようなことを気がする…」
友「両親が居ないからね、なかなか素直に接することが出来る人だって少ないだろうし」
猫「…私、ちゃんと主様のお役に立ててるよね?」
友「もちろんだよ。これからもきっとそうだろうし、僕が誰にも邪魔させない」
猫「…っ、私、これからもずっとずっと主様のお側に居るよ!友さんの為にも!」
友「ありがとう、あんみつちゃん」
友「うん。恩人だしね」
猫「友さんは優しいからあんみつも好き!」
友「僕も好きだよ」
猫「なんかね、友さんは主様とは違うの」
友「?」
猫「…友さんは、私のお友達でいいんだよね?」ソワソワ
友「うん、大歓迎だよ」ニッコリ
猫「!…嬉しいっ!」
猫「そうだよ!主様は、私の”ご主人様”だからお友達じゃないの」
友「うん、友達とは違うかもね」
猫「…主様には、”彼女”って居るのかなぁ」
友「居ないよ!てか、居るはずがないよ」
猫「どうして…?」
友「男はあんみつちゃんで頭がいっぱいだからね。他の女の子なんか眼中にないと思う」
猫「あんみつ、特別なんだね!」
友「そうだよ。特別」
猫「主様!お、おかえりー」
友「おかえり」
男「…何が特別なんだよ。気になるじゃねーか」
猫「な、何でもないよー!」アワアワ
男「?」
友「…」クスクス
猫「主様、主様」
男「んー?」
猫「いつもお側に居させてくれてありがとう」
男「…なんだよ、いきなり」
猫「だって、私が人間になっても気持ち悪がらないでくれた。変わらずに接してくれたもん、主様」
男「あんみつはあんみつだからな」
猫「だからね、あんみつ嬉しいの。ありがとう」
男「分かった分かった!あんまり言うなって。照れっから…」
猫「人間になれて良かったな、って久しぶりに思えたよ!こうやってお礼が言えたり、友さんともお話出来たしー」ニッコリ
男「…だから何なんだよ、何が特別なんだよ」
猫「ひみつー」
男「教えろよ!」
親「こ、この前はごめんな!」
女「…別に?元はと言えば私が頼んだことだし」
親「(…!怒られないで済む!)」
女「それに、まだ諦めたわけじゃないから」キッパリ
親「…へ?」
女「協力、してよね?」
親「(マジかよ…)」
友「男」
男「…」
友「(最近、ボーッとしてることが多いなぁ…)」
?「おーい、男!」
友「今は話し掛けても無駄みたい。どうしたの?」
?「男に話があるって、女の子が尋ねてきたんだよ」
友「(女さん…かな?)」
友「分かった。代わりに僕が応対するよ」ガタッ
友「こんにちは」ニッコリ
後「…あれ?友先輩、ですよね」
友「ごめんね。男、今忙しくて話を出来る状況じゃないんだ」
後「…」
友「何か言付けがあるなら、僕が伝えとくよ?」
後「…いえ、大丈夫です。ありがとうございました」ペコリ
スタスタスタスタ
友「(何の用だったんだろう…)」
友「男、男!」ユサユサ
男「…っ、あ…わり。どした?」
友「(よく見たらすごい顔してる…。寝てるのかな)」
友「さっき、後ちゃんが来たよ。男に用がありそうな感じだった」
男「…マジかよ。俺、あいつ苦手なんだよな」
友「何で?」
男「んー、色々とな。今更何の用なんだか」
友「…?」
猫「…ほぇ」
猫「んー、寝てたのかー…」グシグシ
猫「(まだ3時…。主様が帰ってくるのは4時くらい…)」
猫「…寂しいなー」ゴロン
…
親「さ、今日はデートデート!」
男「おい」
親「…な、何!?」ビクッ
男「掃除代われ」
親「…はい」
男「(…っ、はぁ…早く帰らねーと。あんみつには俺が…)」
ドン!!
男「…いてぇっ」
?「ちょっと!それはこっちの台詞よ!」
男「…あぁ?」
?「いきなり飛び出してきた君が悪い」
男「な…っ、あんただって走ってただろ!?」
?「…夢中になりすぎて、何かを見失っちゃ駄目よ」
男「何を言って…」
?「ちゃんと忠告しといたからね?少年」
猫「(今日は遅くなるって言わなかったもん。主様、嘘付いた!)」
ガチャッ…タタタタッ
男「あんみつ、ただいま」
猫「…おかえりー」ボソッ
男「はぁ…変な女に会ってさ。何だか知らねーけど説教された」ハァ
猫「(お、んな…)」
男「挙げ句の果てにはあんみつ奢れ、なーんて脅迫してきたんだぜ?有り得ねぇよな」
猫「…」
男「な、何だよいきなり」ビクッ
猫「あんみつ、すごく寂しかった…。心配だってしてたのに…っ!」
男「あ、あんみつ…」
猫「それなのに、あんみつのことなんか忘れて他の人とイチャイチャしてたなんて!」
男「イチャイチャなんかしてねーよ!」
猫「ばかばか!主様なんて嫌い!」
男「…っ!」
猫「…」
男「俺だって必死に走って帰ってきたってのに。お前が一人で寂しがってると思ったから…お前が、心配だったから…っ」
猫「…そ、そんなの嘘だ」
男「…そうか。分かった」
猫「あんみつのことなんて、どうで…」
男「ならそう思ってればいい。もう知らねぇよ、お前のことなんか」
猫「っ、そ、そーするもん!」
猫「…主様、どこか行…」
バタン!
猫「…っ!」ビクッ
猫「…あんみつ、主様のこと怒らせた…。ついムキになって、あんなことを…。最低だ、私…」ポロ...
猫「ご、ごめんね主様…駄目な子でごめんね…」ポロポロ
男「はぁ…勢いで外出ちまった…」
男「(俺の気持ちも知らないで…あんみつの奴…っ)」
トタトタトタ...
男「(!…あんみつ、か…?)」
男「んだよ。テメェか…」チッ
後「誰だったら良かったんですか」
男「関係ねぇだろ。つうか、もう関わってくんなって言ったよな」
後「私じゃなくて、誰が良かったか聞いてるのに」
男「(うっぜぇ…)」
男「…っ、うっせーな!俺の大切な女からの迎え待ってただけだっての!」
後「…そんな人居るなんて聞いてない」
男「何でお前にいちいち話さなきゃいけないんだよ」
後「女って人?まだ付き合ってるの?」
男「んなわけねーだろ」
後「…誰」
男「誰が教えるか。もう近寄んなよ」ガタッ
スタスタスタスタ...
後「…誰なんだろ」
猫「ぅ…っ、主…様…」ポロポロ
ガチャ...バタン
スタスタ…
男「…あんみつ」
猫「ひっく…、主様…主様」
ギュッ
猫「ご…ごめんね、ごめんなさい…っ」
男「あんみつ…」
男「俺こそごめん、ごめんな…」
男「最低なのは俺のほうだ。怒鳴った上にあんみつを放っちまったんだから…。結局、寂しい思いをさせたな…ごめんな、あんみつ」
猫「…あんみつのほうが悪かったの。ごめんね…ごめんね…。やっぱり、喋れないほうが迷惑掛けないよね…っ」
男「何言ってんだよ。悪いのは俺だって…」
猫「うぅ…っ、はぁ」
男「もう大丈夫だからな…」ギュッ
男「今日は寝付くまで側にいっから」
猫「…ありがとう」
男「本当に悪かった」
猫「私もごめんね、迷惑掛けちゃってごめんね」
男「…あぁ」ナデナデ
猫「私、主様に頭撫でてもらうのすごく好き。ずっと前から好き」
男「…おやすみ」
猫「おやすみ、なさい…」
男「それじゃ、行ってきます」
猫「行ってらっしゃい」
男「…」
猫「…」
男「今日はちゃんと4時に帰ってくるから」
猫「…!うん、待ってる!」ニパッ
男「いい子だ」ナデナデ
…バタン
猫「いい子って言ってもらえた!嬉しいなっ、嬉しいな」
猫「…あれ?」
猫「(このノート、主様のだ…。忘れ物かな?)」
友「(今日は機嫌がすこぶる良いみたいだなぁ)」クスクス
親「なぁなぁ」
友「何?」
親「なんか今日の男…にたにたしてて気持ち悪くね?」
友「幸せな証拠だよ」
親「何で幸せ!?新しい彼女でも出来た!?」
友「どうしていつも女関係の話に持ってくかな…親は」
男「(あんみつでも買って帰るか…。いや、帰ってから2人で買いに行くのもアリだな)」
親「今度は悩んでるな…」
友「コロコロ表情が変わるから見てて面白いね」
猫「…お家から出てきたは良いけど、学校がどこにあるか分からないんだったー!」
猫「(ど、どうしよう…!)」アワアワ
?「あら、今度は迷子?」
猫「この前の…!」
?「こんにちは」ニッコリ
猫「こ、こんにちは!」ペコリ
?「また会えるなんて嬉しいわ。それで?どこに行きたいの?」
猫「え…えと、主様の学校に…」
?「任せて」ニパッ
猫「…わ、ここが学校…」
?「ね?任せてって言ったでしょ」
猫「ありがとうございました!」
?「挨拶も、お礼もきちんと出来るのね。それに引き換え、”主様”は…」ブツブツ
猫「?」
?「何でもないわ。それじゃ、またね。ちゃんといい子にしてるのよ?」
猫「あんみつはちゃんといい子にします!主様との約束でもありますし!」
?「よしよし」
…
猫「(…あれ?そういえば、何であの人は主様がここの学校に通ってるって知ってるんだろう…?)」
猫「…ま、いいや!それよりも早く届けないと!」タタタタッ
猫「…よし、誰かに尋ねてみよー!」
猫「(待っててね、主様…!)」タタタタッ
…
猫「あ、あの…!」
女「?どうしたのー?」
女「(あたしよりちょっと下、かな?私服だから学生じゃないし)」
猫「(そ、そうだ!主様って呼んでも通じないんだ)」アセアセ
女「?」キョトン
猫「…男、さんって知ってますか?」
女「…!」
猫「も、もしもーし…」
女「…ちょっと。男君の何なの?」
猫「(い、いきなり雰囲気変わった!?」ビクッ
猫「わ、私は…」
友「彼女は男の従姉妹だよ」
猫「…友君」
女「あっ、そうだったの?なーんだ!それならそうと早く言ってくれれば良かったのに」ニッコリ
猫「へ…?」
女「(男君のご親戚に失礼な態度を取るとこだった…危ない危ない!)」
猫「主…、男…さんに忘れ物を届けに」
女「えーっ、わざわざ来てくれたんだ!」
友「分かった。男のところまで案内するよ」ニッコリ
猫「あ…ありがとう!」
女「またねー」
猫「は…はいっ」ペコリ
スタスタ…
友「大丈夫だった?」
猫「う、うん。あの人、ちょっと苦手かも…うぅ…」
友「気持ちは分かるよ」
猫「…それに、男君って呼ぶのにも抵抗あったの」
友「慣れてないからだろうね」
猫「…ありがとう。友さんが来てくれなかったら、あんみつ…どうすれば良いか混乱してた」
友「いや、僕も勝手に従姉妹だなんて言っちゃってごめんね」
猫「ううん!そう言っておいたほうが良いんだって、あの雰囲気で分かったから大丈夫。助かったよー…」ハァ
友「(結構…頭が良いんだよな、あんみつちゃんって)」
親「さっきから何ブツブツ言ってんの?」
男「お前には関係ねーよ」
親「ひでぇ!」ガーン
友「男」
親「友!良いとこに来たーっ。男ってば酷いんだぜ?なんか俺には…」
友「ちょっとうるさいから黙ってて」
親「もっとひでぇよ!」
男「…後だろ、どうせ」
友「(?随分表情が暗くなったな…何かあったのか)」
友「違うよ、あんみつちゃん」
男「…っ!!本当か!」ガタッ
友「うん。廊下で待たせてるから早く会いに行ってあげて」
男「サンキュ…ッ」タタタタッ
男「あんみつ…!」
猫「あ、主様ー!良かった、会えたー」ニッコリ
男「ど…どうしたんだよ」
猫「これ、お届けに来たの!」
男「(数学のノート…。でも、今日は必要なかったんだけどな)」
猫「主様が困ってるかな、って思って!あんみつ、頑張って学校に来たんだよ!」
男「…あんみつ」ジーン...
男「ありがとな、おかげで助かった。今日はこれがなきゃ駄目な日だったからよ」
猫「へへっ、良かったー」ニッコリ
猫「?」
男「今日、ずっとあんみつのことばっかり考えてたんだ。だから…お前が来てくれて、なんつーか…すっげぇ嬉しいんだ」
猫「…主、様…」
男「…変だよな!」アセアセ
猫「そんなことないよ、主様」
男「そ、そうか…?」
男「あ、んみつ…」
猫「ずっと、ずっと…主様が私を選んでくれた日から、ずっと」
猫「あんみつの大切な”ご主人様”だから」
男「…ありがとな。いい子だ」ナデナデ
猫「今日は褒められてばっかりだー」ニッコリ
男「…もう帰っちまうのか?」
猫「学校は私が長居しちゃいけない場所だから!お邪魔になっちゃう」
男「分かった。気をつけて帰れよ?」
猫「うん!あんみつ、ちゃんと帰って主様のお帰り待ってるー」ニパッ
友「(端から見たらカップルそのものだなぁ…)」
親「友!」
友「…何、邪魔しないでよ。せっかく今良いと…」
親「だ、誰だよあの女の子!」
友「男の従姉妹っていう設定だよ」
親「設定!?どういう意味だよ!」
友「…声大きいって」ハァ
親「…ノート持ったまま、立ち尽くしてるな」
友「顔が真っ赤だ。珍しいね」クスクス
スタスタ…
男「…んだよ、お前ら居たのか」
友「帰っちゃったの?」
男「あぁ」
友「なんだ、残念だな」
親「な、従姉妹っていう設定ってどういう意味だよ」
男「…友がそう言ったのか?」コソッ
友「うん」
男「サンキュ。そのほうが良いだろうな」
親「なー、教えろよー」
猫「ふんふんふーん。ちゃんとお届け出来たー」ニコニコ
猫「私、ちゃんとお力になれたよね。主様、喜んでくれたよね!」
…
親「なーに言ってんだよ!有り得ねーだろ!」
男「…だから言いたくなかったんだ」ムスッ
友「同意見だね」
親「は…?え、何?マジなの?」
男「(やっと放課後…!さっさと帰んねーと!)」ダッ
親「男!さっきの話の続き…ってもういねーし…」
友「僕が話してあげるから」
…
男「…くそっ、何でこーいう時に限って靴紐が解けてんだよ!」
後「…先輩」
後「さっき、女の子と喋ってたでしょ。見てた」
男「…何で2年の校舎に来てんだよ。相変わらずだな、お前」
後「先輩。誰?あの子。この前言ってた子?」
男「(めんどくせぇなもう…)」イライラ
後「…私だって我慢してたよ。先輩に、怒られてから…。でも、でも女って人とデートしてた…!私が、我慢してるのに先輩はデートだなんて…!」ギリッ…
男「(はぁ…。やっぱり行かなきゃ良かった)」
後「女って人ずるい。先輩と別れたと思ったら、またデートするなんて、ずるいずるい…!」
男「…俺とアイツが別れることになったのはお前のせいだろ」
後「…っ!」
男「親に女の浮気現場を見られるよう、仕向けたのはお前だろ」
後「…」
男「女は勘違いだって言い張ってるけどな。親は親でお前の思惑通り誤解しまくったし」
後「…どうして、私のせいだって分かったんですか」
男「女の浮気相手がお前の元彼だって聞いたら、そりゃあ誰でもピンと来るだろ」
男「…意味わかんね」ハァ
後「ねぇ、お願い先輩…。好きで、好きで仕方がないんです…!仕方がないことだったんですよ!」
男「…もう、うんざりなんだよ」
後「え…?」
男「浮気だとか、他の女がどうとか…うんざりなんだって…」
後「…」
男「お願いだから…今の幸せを壊さないで欲しい。頼むから」
男「本当に、大切なんだよ。初めてなんだよ、こんな気持ちを持ったのは」
後「せ…んぱい…」
男「…帰る」スタ..
後「…その存在って、やっぱり前に言ってた子ですよね。先輩の彼女なんですよね」
男「…っ」
後「い、とこ」
後「そ…んなの変ですよ!親戚に恋してるなんて…!」
男「うっせーな!関係ねーだろ!!」バンッ
後「…!」ビクッ..
男「もう話掛けるんじゃねーぞ…近寄っても来るな」
スタスタスタ...
後「おかしいですよ、先輩…。目を、覚まさなきゃ…」ボソボソ
男「(彼女ではない…。従姉妹、でもない…)」
タタッ...ピタ...
男「…今の俺とあんみつの関係って、何なんだろう…」
…
友「…ん?あれは…」
後「…」
友「(後ちゃん…。なんで下駄箱に立ち尽くしてるんだろ…)」
親「友ー!!わりぃ、待たせたな!!」
後「…!」ビクッ
タタタタッ...
友「…あーあ、行っちゃった」
親「?何がだ?」
猫「ね、主様ー」
男「ん?」
猫「さっきね、テレビ見てたの。そしたらね、男より女のほうが寿命短いって。本当なの?」
男「あー、ほんとほんと」
猫「どうして?」
男「さぁ、どうしてだろうな。それよりもお前、テレビを見る時は離れろっつったろ」
猫「だだだだってテレビ面白いからついつい近くで見ちゃうんだもん!」
猫「何?ちゃんと離れて見てるよ?」
男「そうじゃなくて」
猫「?」
男「…あんみつは、俺の…こ、こ…」
猫「こ?」
男「…っ、なんでもない」プイッ
猫「?変な主様ー」
男「(心臓がバクバクうるさい…!何だこれ…っ)」
男「行ってきます」
猫「行ってらっしゃーい!早く帰ってきてねー」
男「…お、おう」
猫「…なーんか変。主様、昨日から変!」
男「んなことねーよ…」
猫「変ったら変!」
男「よく考えてみると…新婚みたいだな…って、な…」ボソッ
猫「何?よく聞こえない」
男「…っ、行ってくる!」
ガチャッ...ダダダ
猫「…むぅ。やっぱり変」
友「…それで、あんみつちゃんと上手く話せないわけか」
男「おう…」
友「(意識してるってことに気付いてないのかな…)」
友「何でだか分からないの?」
男「分かってたらこうして相談なんかするかよ」
友「(無自覚か…)」
男「なぁ…何でだか友には分かるか?」
友「(男が男自身で気付く問題だよな…)」
友「どうだろ。分からないかも」
猫「…はぁ、やっぱりお外は気持ちいいなー」
猫「みゃぁ」
猫「…うぅ、ごめんね。何言ってるかやっぱり分からないや」ショボン
猫「(そう言えば、このお友達の猫ちゃんの名前…なんだっけ…)」
後「…あの」
猫「?」
後「…男さんの、お家って分かります?」
猫「はい!知ってますー」ニッコリ
後「どうして、分かるんですか?」
猫「ふぇ!?え…えと…」オロオロ
後「教えて下さい」
猫「(あ、あれを言えば…っ)」
猫「私、は…従姉妹だからですよ!」
後「(この子が…男先輩の言ってた…)」
猫「あ、あの…」オロオロ
後「…男さんに、会いたいんです。家の前で待たせてもらっても良いですか?」
猫「だ、大丈夫ですけど」
スタスタ…
猫「(あ、れ…何でこの人、こっち方面だって知ってるんだろ)」
猫「(結局…私が付いてく形になっちゃった。おかしい…)」
後「じゃ、待たせてもらうんで」
猫「…だめ」
後「は?」
猫「よ、用件なら私が聞いて男、さんに伝えます!なので、お帰り頂けますか…っ?」
猫「(やっぱりだ…。なんか、嫌な予感がする…。学校で会った女の人と喋った時と一緒の…)」
猫「(この人と、主様を会わせちゃ駄目な気がする…!)」
後「ねぇ」
猫「…っ」ビクッ
後「どうして、いきなりそんなこと言い出したの?」
後「もしかして、先輩から聞いてるの?」
猫「え…」
後「私が先輩のことを執着してて、ストーカーまでしてたこと」
猫「…す、とーかー」
”実はさ、最近ストーカーに悩まされてんだよな…”
”ずっと見張られてるみてぇで怖いんだ…。今日は一緒に寝てくれるか?”
”どうして、こんな目に合わないといけないんだろうな”
猫「(私が猫だった時…主様が悩んでたのは、この人のせいだったんだ…)」
後「!?」
猫「お願いだから帰って…っ!主様を困らせるのはもうやめて!」
後「…」
猫「主様、すごく傷付いてた…!いつも寝れない日々を過ごしてた!だか…」
パンッ!!
猫「…え…」
後「あんたに先輩の何が分かるの!?”従姉妹”だから特別とでも思ってるんでしょ!」
猫「(ほっぺ…じんじんする)」
猫「まっ…」
タタタタッ
猫「…行っちゃった」
猫「あんみつ…頑張ったよね。主様のこと、守れた…よね」
ポロポロ…
猫「っ…ひっく…わ、私は特別だもん…っ。”従姉妹”なんかより、きっと特別だもん…!」
猫「…痛いよ、主様…。色んなところが痛いよ…」
猫「(道路のど真ん中でしゃがんでたら…迷惑になっちゃう…)」スクッ..
トボトボ…
猫「最近…主様の様子がおかしかったのは、あの人のせいなのかなぁ…」
猫「はぁ…とにかく、早く冷やさなきゃ…」
男「ただいま。今日は少し時間があったからスーパーであんみ…」
猫「主様おかえりー」トタトタ
男「ど、どうしたんだよ…!その頬!真っ赤じゃねーか」
猫「(やっぱり冷やしても駄目だったかぁ…)」
男「あんみつ!」
猫「か、階段で転げ落ちちゃった時にほっぺを手摺りにぶつけちゃったの」アセアセ
男「…痛かっただろ。待ってろよ、今冷やすもん持ってくっから!」
猫「待って、主様」
男「…っ、なんだ…?」
男「…?」
猫「”従姉妹”よりも特別だよね…?主様の”ペット”だよね…?」
男「特別に決まってんだろ…。ごめんな、従姉妹だなんて嘘ついちまって」
猫「良いの。そう言わなきゃいけないこと、分かってるから…でも、少し不安になっちゃったの」
男「あんみつ…」
猫「私、ずっとずっと主様のこと見てきたよね?ずっと一緒だったよね?ちゃんと主様のこ…」
ギュッ…
男「あんみつが1番大切だ…。不安にさせて悪かった。ごめん、ごめんな…」
猫「…」スースー
男「寝てる…」
…
男「…おし、これで大丈夫だな」ピタッ
男「すっげー痛そう…。どんな落ち方したらこんなになるんだよ…」
猫「主…様…」
男「!…あ、んみつ…?」
男「(…寝言かよ…)」
親「なぁ、あんみつにはいつ会わせてくれんだよ」
男「…誰がいつ”あんみつ”呼ばわりしていいって言った?」ギロッ
親「(こわ…!)」
友「親、人間になれて数ヶ月が経ったからってまだまだ環境に慣れてないんだから初対面の人間に気軽に会えるわけじゃないんだよ」
親「お前は会ってるじゃねーか」
友「僕は猫の時から何回も会ってるからね」ニッコリ
親「だから俺も家に誘ってくれれば良かったのに!」
女「ね」
親「…!な、何だよ女か…」ハァ
女「最近、男君はどんな感じ?」
親「ど…どうって…あん…!」
”いい?あんみつちゃんのことは、あまり人にべらべら喋っちゃ駄目だからね”
女「何?」
親「あんパンにハマってるみたいだぜ!」アセアセ
女「はぁ?」
猫「(最近、チロルちゃんに会えてないな…)」
猫「連絡先、聞けば良かった…」ショボン
姉「あ、いたいたー」タタタッ
猫「!姉様っ」
姉「家に居ないから探しちゃったわよ!」
猫「(わざわざ探しに来てくれたんだ…っ。姉様はやっぱり優しいなー…)」
姉「ね、最近はどう?男と上手くいってる?」
猫「ちゃんと仲良し!いつも笑ってるよー」
姉「そう。良かった」ニッコリ
姉「あなたみたいな素敵な家族が増えるのなら大歓迎だわ!」
猫「家族?」
姉「2人が結婚したら、あたしはあなたのお姉さんになるのよ」
猫「結婚は無理だよー」
姉「まぁ、今はね!でも、このまま仲良くやってたらその可能性が無いわけじゃないわ」
猫「姉様、もう行っちゃう?」
姉「ごめんなさいね。仕事抜け出してきたものだから…そろそろ戻らないと」
猫「また会える?」
姉「もちろんよ!男にもよろしく伝えといて」
猫「うん!姉様、バイバイ!」
姉「またね」ニッコリ
猫「…また、会えるといいな」
猫「わっ、また会ったー」
?「せっかく腫れも引いたんでしょ?なら笑って笑って!」
猫「…笑えない、です」
?「どうして?」
猫「最近、嫌なことばっかり…。姉様にも、嘘付いちゃった」
?「あんなの嘘なんて言わないわ。お姉さんに心配掛けさせたくないが為のことでしょう?」
猫「…でも」
?「大丈夫。きっと、そのうち良いことが起きるから」
猫「ほんと…?」
?「私が保証するわ」
猫「…はっ、忘れてたー!」
?「コラコラ。せっかく教えてあげたのに」
猫「ごめんなさい。最近、物忘れが激しくて…」
?「…そうね、色々と忘れてるかもしれないわね」ボソッ
猫「へ?」
?「また会いましょう。その時は、ちゃんとホットケーキを食べた感想を教えてね?」
猫「は、はいっ!」コクリ
猫「…待って下さい」
?「何?」ニッコリ
猫「あなたは、何物なの?」
?「…どういう事かしら」
猫「どうして私の頬が腫れたことを知ってるの?どうして…」
?「お姉さんに嘘を付いたことを知ってるかって?」
猫「…!は、い…」コクリ
猫「な、んで…私が猫だったことを…」
?「言ったでしょ?ずっと見てきた、って」クスクス
猫「…あなたもストーカーなの?」
?「ちょ、ちょっと!そんな者と一緒にしないでくれる!?」アセアセ
猫「だ、だってずっと見てるって…」
?「私は、あなたを猫から人間に変えた張本人よ」
?「もう!ネタバレするのはもう少し先の話だったのに!」
猫「あ…あの…」
?「しっ!」
猫「!?」
?「その続きは今度会った時に聞いてあげる。その時まで、ちゃんと変わらず良い子にしてるのよ」
猫「は、はい…」
?「じゃあね」ニッコリ
猫「…私を、人間にしたのはあの人だったんだ…」
男「…俺、ずっと無意識に否定し続けてたのかも」
友「うん?」
男「あんみつは元々猫だったし、いつ戻るかも分かんねーだろ?」
友「そうだね」
男「だから…自分の気持ちを、必死に抑え込んでた。否定…し続けてた」
友「…」
男「…正直、どうすれば良いか分かんねーんだ」
友「男」
男「ん…?」
友「そろそろ、自分に正直になっても良いんじゃない?もう、考えはまとまってるだろうし」
男「…おう」
猫「(今日の出来事は…主様には言っちゃいけない、よね。きっと混乱しちゃうだろうし)」
男「…あんみつ」
猫「!な、なに?」
男「話が…あるんだ」
猫「は、なし?」
男「…っ、やっぱりまた今度で良い!」プイッ
猫「へ?」
トボトボ...
猫「(昨日の主様、おかしかったな…。もしかしてまた…あの人が…)」
後「…ちょっと」
猫「(噂をすれば、だ…)」ハァ
後「先輩とは一緒に住んでるの?」
猫「…だったら何だって言うんですか」
猫「私は…」
猫「(あ、れ…いつから、主様とは一緒なんだっけ…)」
猫「(そもそも…どうやって主様とは知り合ったん…だっけか…)」
猫「(あ、れ…あれ…?)」
猫「…」
後「…ちょっと!無視しないで!」ガシッ
猫「…っ!?」
後「この前から何よ、その態度…!見てて本当にムカつく!」ギリッ…
猫「い、いた…っ」
ギリ…ッ
猫「痛い…っ!」
後「私は出来る!彼女にも、奥さんにもなれるんだからね!あんたとは違う…!」
猫「…結婚が出来ないことくらい、知ってるもん」ボソッ
後「何…?」
猫「私は…、私は…!」
女「ちょっと!何してんの!!」
猫「…っ、あ…
」後「(この人に見られちゃまずい…っ!)」タタタタッ
女「あ、ちょっと!待ちなさいよ!」
猫「…はぁ」
女「…何よ、いつもはあんなに大人しいくせに逃げ足は速いんだから!」
猫「(二人は…顔見知りなんだ…)」
女「とりあえず冷やさないとね」
猫「…いたっ…」ズキ..
女「あ、ごめん。染みちゃったかな…」
女「随分強く掴まれたんだね…っ。すごく赤くなってる」
猫「(どうしよう…また主様に心配かけちゃう…)」
猫「あ、あの…ありがとう」
女「平気平気!それにしても酷いね…」
orz
さっきから本当にすみません…
この世界では出来ないという設定でお願いしm
女「!まだ座ってれば良いのに…」
猫「…いえ、ちゃんとお家で待ってる約束をしたので。それじゃ…」ペコリ
女「(何だ…すごく良い子じゃない)」
猫「っ、はぁ…」
猫「(痛いけど…そんなこと気にしてる場合じゃない…っ。早く、早く帰って主様に…)」
スタスタ…ピタッ
猫「…あ、れ…お家、どこだったっけ…」
猫「何で、私は”主様”なんて呼んでるんだろ」
猫「…あ、れ…」
?「腕を掴まれただけじゃなくて、引っ張られた時に足も捻ったのね。可哀相に」
猫「あ、はは…何でも、お見通しなんですね」
?「ごめんなさいね。もう少し猶予をあげたかったんだけど…。まぁ、あなたの中では考えがまとまってるみたいだから大丈夫よね」
猫「…?」
?「んー、”猫の神様”ってところね。あなたの願いを叶えに来たのよ」
猫「か、みさま…」
?「もう少しきちんと説明したいんだけど、精神的にキテるみたいだから…」
猫「…」ポロ...
神「…ご、ごめんなさい。せっかく人間にしてくれたのに…」
?「大丈夫よ。ちゃんと分かってるから」
猫「…っ、ぅ…はい…」ポロ...
?「あなたの主様ときちんと話し合って決めなさい」
猫「はい…はい、ごめんなさい…」
?「私こそごめんなさいね、辛い思いをさせちゃって。ホットケーキの感想、聞きたかったわ」
猫「うぅ…っ、ひっく…」
男「(あんみつ…何してんのかな)」ボー
友「…男」
男「んー…?」
友「女さん、話があるって」
男「…ぜってぇ聞かね」
友「後ちゃんのことで…話があるみたいなんだ。あと、従姉妹がどうとか…」
男「!?」
女「ごめんね、呼び出したりして」
男「…どうしたんだよ」
女「さっき、偶然見ちゃったの。後って子が男君の従姉妹に突っ掛かってるのを…」
男「…いつの話だ?」
女「今日の朝だよ。あたしが学校に来る前のことだから」
チ「ご主人はあっちを探して下さいね!」
主「う、うん」
主「(学校あるんだけどな…。ま、いっか)」
主「でも、そんなに焦るチロルも珍しいな。急用なのか?」
チ「いえ…。でも、今会っておかなきゃ…もう会えないような気がして…」シュン..
主「(引っ越しの予定でもある友達なのか…?)」
男「(あの時も様子がおかしかった…。思ってみれば、手摺りにぶつかっただけであんなに腫れるはずがないのに…)」
男「…後、のせいだったのか…」ブツブツ
女「…男?」
男「!…わり、ボーッとしてた…」
女「でも、さ…男がそんなに心配がるのなんて珍しいよね」
男「…」
女「そんなに大事な”従姉妹”なんだねっ!」
男「…違う」
女「?」
男「あんみつは…俺の、俺の…っ!」
男「…っ」
女「友、君…」
友「話し合ってる最中、邪魔しちゃってごめんね」
友「…女さん、さっき友達が呼んでたみたい。教室で待ってるって」
女「あ、うん…。分かった、ありがとう」タタッ
男「…」
友「…」
友「…ごめんね、少しだけ」
男「いや、お前になら良い」
友「やっぱり…後ちゃんが何かやらかしたみたいだね」
男「やっぱりって何だよ…」
友「前々から様子がおかしかったんだ。そんなに接触はしてなかったけど」
男「…あんみつが心配だ。俺、このまま抜ける」
友「うん、先生には僕からちゃんと…」
?「ちょっと待って、少年」
友「え、知り合いなの?」キョロキョロ
?「この前はどうも」ニッコリ
男「…慰謝料でも貰いに来たのかよ。わざわざ学校まで調べて」
?「…本当に生意気ね。あんたの飼ってた可愛い猫ちゃんとは大違い!」
男「…あ?」
友「(猫って…あんみつちゃんのこと、だよな…)」
?「少年…少しは言葉遣いに気をつけたら?仮にも私は”猫の神様”なのよ?」イライラ
男「はぁ?何を言って…」
友「待って!」
男「!?な、何だよ」
友「僕らが話を出す前に、あんみつちゃんの話題をしてきたのはあの女の人からだ」
男「それが何だってんだよ…」
友「あんみつちゃんが猫だって前々から知ってたってことだろ?」
男「…」
友「この人なんじゃないかな、あんみつちゃんを人間にしたのは…」
男「…!」
?「何よ」
男「本当に、”神様”なのか…?」
?「…そうよ?何か文句あるの、少年」
男「いや…そうだったら礼を言わなくちゃ、と思って」
?「礼?」
男「あんみつ、を…人間にしてくれたこと、すげぇ嬉しく思ってるから…」
?「…」
男「…ありがとう。そして、すみませんでした」ペコリ
?「…どうも調子が狂っちゃうわね」
友「…それは、何故?」
?「人間になって、自分の主と喋ってみたかったんじゃないかしら。あの子の場合はあなたの言ってることが通じなかったみたいだし」
男「…」
友「え、通じる場合もあるんですか?」
?「人間の言葉を理解出来る猫もいるわ。ごくたまーにだけどね」
?「誤解しないで。違うわよ」
男「…猫に戻すわけじゃないのか…」ホッ
?「随分と頭が良い猫ちゃんをお持ちで羨ましいわ。それに、とっても良い子だし」
男「…?」
?「私はね、そんなあんみつちゃんの願いをもう1度だけ叶えに来たの」
」
男「…願い…」
?「このことはもう、あの子には話してあるの。だから2人でゆっくり話し合っ…」
男「…!」ダッ
友「男!?」
?「あー、こら!まだ話の途中でしょうが!!」
男「…!」タタタタッ
男「(あんみつが、ずっとずっと人間でいられる…!これからもずっと…!)」
男「…っ、はぁ…これで、これでやっと言える…!」
…
ガチャッ!!ダダダッ
男「あんみつ…!」
男「ただいま…っ、いや、それどころじゃないんだ!お前も会ったんだろ!?」
猫「神様にでしょ?」
男「そうだよ!願いを叶えてくれるって…!だから、俺達はずっと人間同士として…っ」
猫「…」
男「俺、ずっと怖くて言えなかったけどやっと言えるんだ…お前のことが、」
猫「私、人間にはならないよ主様」
猫「私は、猫に戻るの。もう決めたの」
男「な、何言ってんだよ…冗談だろ…」
猫「ううん、冗談じゃない」フルフル
男「…っ、あんみつ!!」
猫「…ごめんね。私は、人間にはなれないの」
友「はぁ…、男足早過ぎ…っ。まぁ、家に向かったんだろうけど…」タタタッ
友「(それにしても…)」
~
?「…ったく、人の話は最後まで聞きなさいよ!」
友「あの…」
?「何、まだ居たの」
友「願いを叶えるにあたって、男やあんみつちゃんにリスクってありません…よね?」
?「…さぁ、どうかな」
友「答えて下さい」
?「駄目よ。内緒って言われちゃったの。私がここで喋ったら、約束を破ることになる」
友「…誰との、ですか」
?「あんみつちゃんとの」
~
友「(一体…何を隠してるんだ…)」
トタトタ...
友「…はぁ、やっと着いた…」
友「(ドアが開いてる…入っちゃって良いかな…)」
友「男…」
男「…ふざけんなよ!!!」
友「!?」ビクッ
友「(な、何だ…?)」
友「(どうして男が怒ってるんだ…?)」
猫「…説明も何も、もう決めたことだから…」
男「それで俺が納得出来るとでも思ってんのか!?」
猫「…っ」
男「…あんみつ」
猫「…い、から」
男「あ?」
猫「私は、ずっと…ずっと主様のペットとして生きていたいから…!」
”…っ、私、これからもずっとずっと主様のお側に居るよ!友さんの為にも!”
友「(あんみつちゃんは、ずっと…ずっと…)」
”…それに、男君って呼ぶのにも抵抗あったの”
友「…っ、…何で気づかなかったんだろう…」
”そうだよ!主様は、私の”ご主人様”だからお友達じゃないの”
猫「…」
男「喋れるし、感情をちゃんと表現出来るし…!」
男「お前だって言ってただろ!?俺と喋れて嬉しい、って…人間になれて良かったなって!!」
猫「…」
男「第一、あんみつが願ったことじゃねーかよ!!」
男「…っ、はぁ…」
猫「確かに人間になりたいと願ったのはあんみつだよ?人間になれて、素敵だなって思ったこともあった」
男「なら…!」
猫「でも、思い出して欲しいな」
男「な、何を…」
猫「私は本当に、人間になりたがってた?」
男「…な、何言って…」
”主様と仲良く出来ないなら猫のほうが良かったー!!”
男「違う…違う…」
”あんみつはいつ戻っても良いけどー”
男「そんなこと…そんなこと…っ!!」
”ずっと、ずっと…主様が私を選んでくれた日から、ずっと
あんみつの大切な”ご主人様”だから”
猫「ごめんね…ごめんね、主様」
友「(人間になっても、男を”主様”としてしか思ってなかったわけか…)」
男「…」
猫「主…さ、ま」
男「…ごめん、ごめん…気づけなくて、分かってやれなくて…」
猫「…」
男「この前の頬の腫れも、その手首の傷も…俺のせいなんだ」
~
?「…夢中になりすぎて、何かを見失っちゃ駄目よ」
男「何を言って…」
?「ちゃんと忠告しといたからね?少年」
~
男「…っ、そいつを責めたって何にもならないことは…学んだはずだったのに…」
男「お、俺が…ちゃんと対処してたら…あんみつが傷付かなくても良かった、から…!」ポロ...
男「ご…ごめん、ごめんな、あんみつ…っ」
男「っ、く…う…」ポロポロ
猫「主様は悪くないよ。悪いのは…人間になりたいだなんて、軽々しく願った私なんだから」
男「…!」
猫「私が、人間にならなかったら…主様も傷付くこと、なかった。他の人だってそう…」
男「ちが…ちがう…っ」
猫「あんみつは、人間になっちゃ駄目な子だったね。”願い”でも、何でもなかったね」
男「あんみつ…!!!」
猫「だから、もう解放してあげる。あんみつの”わがまま”から、解放してあげる」
”っ…ひっく…わ、私は特別だもん…っ。”従姉妹”なんかより、きっと特別だもん…!”
猫「人間でいれば、いるほど…何もかもを欲しがりそうな気がして…怖かった」
”…結婚が出来ないことくらい、知ってるもん”
猫「一つの”願い”が叶えば、また新しい”願い”が出来ちゃって…」
”…じゃ、主様の”彼女”って誰、なの…かな…”
猫「あんみつも…苦しかったんだ。すごく…辛かったの」
猫「…ご、めんね…本当にごめんなさい…」ポロポロ...
友「(全ては男に迷惑を掛けたくないが為のこと)」
友「”主様”として見てる他なかったってわけか…」ポツリ
…
男「…」
猫「え…へへ。あんみつ、最後までわがままだよね」
男「(あんみつは…)」
猫「ほ…っ、本当はね、主様が先に死んじゃうのも嫌だったのっ。ほら、前寿命のお話したでしょ?」
男「(俺のことを…ずっと、ずっと想ってくれてたのに…)」
猫「さ、早く神様にお願い叶えてもらわなきゃ!あんみつの記憶が無くなっちゃう前に!」
男「(なのに俺は…俺は…っ!)」
男「…分かった」
猫「え…?」
男「あんみつの”願い”なんだから、俺が無理強いするのも変な話だしな」
猫「主、様」
男「あんみつの好きにしたら良い。俺はもう、何も言わない」
猫「…」
男「…今度は、俺が我慢する番だから」
男「俺が嘘付いたこと、あるか?」
猫「…ない」
友「(男…)」
男「まぁ、前の生活に戻るだけだしな」
猫「…」
男「…ただ、戻るだけだ」
猫「う、ん」
男「…なぁ、あんみつ」
猫「なぁに?」
男「俺も、ずっとずっと…
…主人として、”ペット”としてのあんみつが好きだからな」
男「ほら、神様とやらんとこにさっさと行って来い。早いほうが良いだろ」
猫「主…様」
男「どうなるかは知らねぇけど、俺はずっとここに居るから」
猫「…っ、うん。行ってきます、主様」
男「気をつけてな、あんみつ」
猫「…」タタタッ
男「…うっせ、見物料取るぞ」
友「ほんと…二人揃って嘘つきだね」
…
猫「…っ、いた…!」ズキズキ
猫「(やっぱりまだ痛い…)」
猫「…違う。痛いのは、足と腕だけじゃないみたいだね…」
猫「…神様だぁ…。良かった、早めに見つかって」ホッ
?「ちゃんと、話し合ったのね?」
猫「…はい」コクリ
?「さっきのお願い事に変更は?」
猫「…ありません。よろしくお願いします」
?「あの2人には、あなたの”願い”のことに関して聞かれても絶対に何も話さない、って約束」
猫「…ありがとう」ニッコリ
?「まだ時間をあげられるわ。もう少し、お別れの挨拶でもしてきたほうが良いじゃない?」
猫「ううん、良いんです」
?「…後悔、しない?」
猫「はい!」
猫「私が後悔してるのは…知らず知らずのうちに”ご主人様”としてはなく、主様を見てしまっていたこと…ただ、それだけだから」
猫「…な、何だか怖いです
?「大丈夫大丈夫。すぐに終わるから」
?「あなたが願ってくれたことで、きっとあの少年も幸せになってくれるわ。今以上にね」
猫「…よかった、です」
?「自然に意識を失い始めるから、それまでは目を開けたら駄目よ」
猫「…神様」
?「なぁに?」
猫「主様にはあんなこと言ったけど、主様と過ごせたこの数日間、幸せでもありました…。ありがとう…」
?「…どういたしまして、あんみつちゃん」
ほわほわする。
…あ、チロルちゃんと約束してたお茶…行けなかったな。
ごめんね、チロルちゃん
姉様にも、お洋服ありがとうって言いそびれちゃった。
ごめんなさい。
学校でも、道路でも助けてくれた…あの子にもお礼を言いに行くつもりだったのに…
友さんにも、”ありがとう”って伝えたかった。
神様にちゃんとホットケーキを食べた感想も言いたかった。
…みんな、ごめんなさい。
あれ…あんみつ謝ってばっかりだ…。
やっぱり、私は少しでも早く戻りたかった。
主様に迷惑の掛からない姿に戻りたかったの。
最後までわがままでごめんね。
駄目な子で、ごめんなさい。
…大丈夫。寂しくなんかない。
これからはずっと、主様と一緒
これからもずっと、大好きな主様と一緒。
男「…」
”何を言ってるんだろう、この人…。どうしてずっと、こっちを見てるんだろう”
男「…」
”…何?怖い怖い。どうしてこの人にだっこされてるの?どこに連れていかれるの?
”やっぱり、私は他の猫とは違うんだ…。駄目な子、なんだ”
”あ、れ…。暖かい。さっきまでと居た場所じゃない”
”もしかして、この人が私を助けてくれたのかな…”
男「…」
”あれ、聞こえてないのかな…。すごい嫌そうな顔してる…”
猫「にゃ、にゃ」
男「…」
”…頭、撫でてくれた…。え、ちゃんと伝わったのかな。だから…褒めてくれたのかな…”
男「…」
”こ、今度は何か考えこんじゃった…。うぅ…難しい
男「…」
”待って…どこ行っちゃうの…?ごめんなさい、ちゃんと伝わるまで頑張るから…っ
猫「にゃあ!みゃ」
”だからもう…一人にしないで…っ”
男「…」
”私、ちゃんと感謝してるよ。本当だよ”
猫「みゃー」
スリスリ
”ありがとう、ありがとう…”
猫「にゃ、にゃ」
男「…」
猫「にゃ?」
”な、何でこの人首捻ったの?”
”あれ?でも、すごく嬉しそう…。あ、笑ってくれた…!”
”…あれ、でも今日は寂しそう…。どうして泣いてるんだろう”
男「…」
”泣かないで、お願いだから…”
猫「みゃ、みゃ!」
男「…」
”私がついてるよ…っ、ちゃんとお傍についてるから…”
猫「にゃ…っ、にゃ」
”ずっと、ずっとあなたのお傍に居るって約束するから”
?「泣かないで。大丈夫、別に記憶が全て無くなるわけじゃないんだから」
猫「ほ、んとに…?」
?「今回は特別よ。あなたの記憶が無くなっちゃったら、ホットケーキの感想が聞けなくなっちゃうもの」ニッコリ
猫「…お気持ちは嬉しいけど、私が猫に戻ったら…感想なんて、喋れない…」
?「猫に戻る、それがあなたの”願い”なの?」
猫「はい。だから、本当は話し合いなんか必要ないの。もう、決めたことだから…」
猫「…私、駄目なの。猫のくせに…主様を好きになりかけてて…。そのことで主様を困らせたり、傷付けちゃって…」
?「…」
猫「だから、事が大きくなる前に…幸せな記憶が残ってる間に、戻りたいんです」
猫「…主様が辛かったり、悲しんでる顔は…もう見たくないから…」
猫「その通りです…っ!さすがは神様ですね」
?「まあね。じゃ、あなたの”願い”はこんな感じでいいのよね」ニッ
猫「はい!え、へへ…ホッとしました。これで、主様にちゃんとご報告出来ます!ありがとう」
?「あんみつちゃん」
猫「はい?」
?「願い事には、色々な可能性が秘められてることと、上手なお願いの仕方があることを覚えておいてね」
猫「?分かりました!」ニッコリ
~
”あれ…何だか良い匂い…”
男「…あんみつー。もうすぐベーコンが焼きあがるぜ?俺1人で食っちゃうぞー」ボソッ
あ「…駄目!」ガバッ
”…あ、れ?”
あ「主様が…何言ってるか分かる…」
男「何ブツブツ言ってるんだよ。ほら、さっさと制服に着替えろって」
あ「!馬鹿って言ったほう…が…」
”あ…れ、主様と喋れてる…”
男「今日もお前のせいで遅刻したら晩飯抜きだからな」
”…ひょっとして、私…”
あ「私って、特別…?」
男「何だよ今更。当たり前だろ」
”…結婚が出来ないことくらい、知ってるもん”
あ「あんみつと、主様は結婚出来る…の?」
男「ちゃんとする約束しただろ?つーかそろそろ…、その”主様”って呼び方やめろよ。付き合ってんだから」
”…じゃ、主様の”彼女”って誰、なの…かな…”
猫「…っ、主様の”彼女”ってあんみつなの?」
男「こら、今更過ぎだろうが。他に誰が居るんだよ」
ギュッ
男「お、おい…っ。いきなり何だよ…!」アセアセ
あ「主様とあんみつ、ずっと一緒だよね!あんみつが彼女でも迷惑じゃないんだよね!」
男「迷惑なわけねーだろ。ずっと、ずっと一緒だ」
あ「良かった…っ、良かった…。これで主様の”願い”も、私の”願い”も叶ったんだ!」
男「何のことだ…?」ポカン
あ「ずっと、ずっと主様のお傍に居るからねっ。ちゃんと約束守るからね!」
Fin.
良かったよ
そして読み返してみたら矛盾点や誤字脱字が…うわああああ
いつにもまして内容がぐちゃぐちゃでした…。
すみませんすみません orz
でも、無事に終われて良かったです!
見て下さった方、保守や支援して下さった方本当にありがとう。
お疲れ様。
なんというか、図々しいリクエストかもしれんが
その後の友人たちやチロルとそのご主人様とかの絡みエピソードを書いてくれると嬉しい・・・w
考え次第、スレが残ってたらまた来ます。
ちなみに、あんみつ以外の人達の中では
あんみつ=男と長年付き合ってる同棲中の彼女
と都合よくインプットされてる、なんとも有りがちな設定です。
有りがち大好きですごめんなさい
ミ。・ω・ミ 乙でしたー
ミ_uuミ
次→猫「ねぇ、起きてよ」
Entry ⇒ 2012.01.17 | Category ⇒ その他 | Comments (0) | Trackbacks (0)
猫「ご主人様、起きて下さい」
男「ん…。何だよ、もう少し寝かせてくれよ」ゴロン
猫「起きて下さい。私、チロルですよ!人間になれたのですよ!」
男「…は?」
猫「えへへ、ご主人様」
ギュッ
男「…ダメだ、俺はまだ夢を見てるんだ」ゴロン
猫「!せっかく起きて下さったのにっ。寝ちゃダメですー!」
猫「はい、存じております」ニッコリ
男「君みたいに、真っ裸で男に跨るようなビッチな子じゃないの。分かる?」
猫「え?あわわわ、すみません///」
男「…」
猫「…ご主人様、この首輪をご存じですよね?」
男「俺がチロルに買ってあげたやつ。何してんの?そういうプレイが好きなの?」
猫「違いますってばー!」
猫「わ・た・し・が!チロルなんです!」
猫「はい」ニコニコ
男「君の好きな食べ物は?」
猫「鰹節の入った猫まんまとミルクです!」
男「好きなおもちゃは?」
猫「ねずみさんの形をしたやつと…あ、ねこじゃらしも好きです」
男「…一番好きな場所は?」
猫「ご主人様の膝の上です!」
男「…君は、猫だったよね」
猫「朝起きてたらご主人様と同じ姿になってましたっ。えへへ」
男「とりあえず、それ着てて」
猫「ぶっかぶかですー!それに、ご主人様の匂いがします」ニコニコ
男「…」
男「あのさ」
猫「はいっ」
男「俺ね、今すっげー混乱してる」
猫「そうは見えませんが」
男「ポーカーフェイスだからね」
猫「でも、私には色んな表情を見せて下さってみました!」
男「まぁ…前の君にはね」
猫「…」
猫「今の私には、見せて下さらないのですか…?」
猫「…」シュン
男「俺が今まで一緒に居たのは、今の君じゃないから」
猫「…でも、私はチロルですよ。ご主人様」
男「うん、まあね。でもさ、猫だったし」
猫「ご主人様は…私が人間になっても嬉しくはありませんか?」
男「…上手く答えられないや。ごめんな」
猫「…」
男「…でもさ」
猫「…?」
男「今、混乱してるだけだから。これから一緒にいれば、慣れてくるかもしれない」
猫「!本当ですかっ!?私、ご主人様の傍に居てもよろしいんですか!?」
男「当たり前だろ?君はチロルなんだから」
猫「…!ご主人様、大好きですっ」
ギュッ
男「…大丈夫かなぁ、俺の理性は」ボソッ
猫「私、これで良いです」ギュッ
男「いやいや駄目駄目。なんか色んな意味で駄目」
猫「…?そうですか」シュン
男「とりあえず、留守番しててね」
猫「はいっ。良い子にしてます。お留守番は任せて下さい!」
男「いってきまーす」
…
男「女性の服なんて買ったことないからなぁ…」キョロキョロ
女「あれ?男君じゃない」
男「(…誰だっけ)」
女「えー、覚えてないの!?同じクラスでしょ!」
男「あぁ!そうだったね」
女「ひっどーい…。てか、なんでこんなところに男君が?」
男「え…あ、いや…」
女「もしかして彼女さんへのプレゼントとか?」ニヤニヤ
男「ち、違う!従姉妹が…急に泊ることになって…」
女「ふーん」
女「(なーんだ。男君って彼女居るかと思ったのに…)」
男「あ、そうだね。じゃ、それにしよっかな」アセアセ
女「下着とかもちゃんとあるのー?」
男「…そうか、下着も必要なのか」
女「うわー。駄目だよ、ちゃんと用意しなきゃ!」
…
男「…さんきゅ。おかげで助かったよ」
女「いえいえ」
男「悪かったね、付き合ってもらっちゃって」
ゴソゴソ
男「はい」
女「?」
男「買物に付き合ってくれたお礼。こんなんで悪いけど…」
女「アメ…?」
男「嫌い?イチゴ味なんだけど」
女「ううん!嫌いじゃない。ありがとうね」ニッコリ
男「それじゃ」
女「またね!」
女「(男の子から…アメなんてもらったの初めて)」
ガチャッ
猫「!」
男「ただいまー」
猫「おかえりなさいませ、ご主人様」ニコニコ
男「寂しくなかった?」
猫「ちょっとだけっ。でも、慣れてますから」
男「(そうか…。いつもチロルには寂しい思いをさせてたんだな)」
男「…ごめんな」
猫「え?」
男「何でもない。それより、見て。服とか色々買ってきた」
猫「わぁ!”テレビ”というもので見たことがあるものばっかりですー」
男「お、似合ってる似合ってる」
猫「なんだかムズムズしますー」
男「ごめんな。でも、そういうのを着てないと駄目なんだよ。人間って」
猫「そうですねっ、我慢します!」
…
男「そういやさ、飯って何食べる?今日納豆なんだけど」
猫「!納豆は苦手ですーっ。ネバネバしてますもの…」
猫「私、いつものご飯で良いです」ニコリ
男「そ、それはちょっと…。あ!鮭があるからそれ焼いてあげるよ!」
猫「鮭!鮭は大好物なのです!」
猫「わーっ、美味しかったです!まっしろなご飯!」ニコニコ
男「そりゃ良かった」
猫「お風呂も面白かったですー」
男「…今度からは一人で入ってな」
猫「!嫌ですっ、ご主人様と入りたいですっ!」
ギュッ
男「…そろそろ寝ようか(あー、理性が…)」
猫「はい!」ニッコリ
猫「へ?お布団にもぐってますー」モゾモゾ
男「俺みたいに寝なきゃ駄目だって!窒息しちゃう」
猫「あ、そーでした!私、今は人間なのでした」
猫「…あの、ご主人様」
男「何?チロル」
猫「なぜ、お布団が2つあるのですか?いつもは1つでしたよ?」
男「…」
猫「ご主人様と一緒に寝るのが、やっぱり一緒良いですー」ニコニコ
男「(耐えろ耐えろ耐えろ相手は猫なんだぞチロルなんだぞ)」
猫「そーいえばご主人様。あれはしなくても良いんですか?」
男「あれって?」
猫「ほらっ、女の人がいっぱい写った本を見て、ご主人様が苦しそうな声を出しちゃうやつですよ」
男「!!!」
猫「今日はしないのですか?」
男「しないっつーか、出来ないっつーか…」
猫「!良かったぁ、私…ご主人様が苦しがってる声を聞くのがすごく辛かったんです…」
男「…あはは」
猫「ご主人様が苦しくなっちゃうのは、チロルにとっても苦しいことなのですよ」
男「(今も色んな意味で苦しいよ、ご主人様は…)」
猫「?はーい、おやすみなさい」
男「おやすみ…」
男「(もう寝ちゃえばこっちのもんだ…!)」
…
モゾモゾ
男「…ん、何…って、チロル!?」
猫「ご主人様…やっぱり私はもぐらなきゃ寝れないみたいです」シュン
男「(何で俺の股間に…!)」
猫「ここが一番暖かいので嫌ですー」スリスリ
男「う…っ、ぁ…」
猫「!ご主人様、今苦しい声が出ましたよっ。大丈夫ですか!?」
男「だ…大丈夫だよ…っ」
猫「ふぇ…苦しそうです…」スリスリ
男「!(もう我慢出来ない…っ)」
ガバッ
猫「わっ!」
男「チロル…」スッ
猫「ひゃぁっ///く、くすぐったいです…っ」
…
猫「…んはぁ、ご主人様…な、なんか変ですぅ///」
男「ごめん…我慢出来ない。俺も…男なんだよ…っ」
猫「や…っ、ご主人様…!」
猫「…ん、なんか…気持ち良いかも…っ///
男「チロル…俺もそろそろ…」
男「(我慢なんか出来ねーって…っ)」
猫「はぁ、ご主人様…ご主人様の体温が心地好いです…」
ギュッ
男「チロル…可愛い」
男「…あれ?」
猫「すーすー」
男「…寝てる」
男「(はぁ…良い雰囲気だったのにさすがにここで寝られたら萎え…)」
猫「んぅ…ご主人さまぁ…」スリスリ
男「…るわけがないよな」ハァ
男「(仕方ない…トイレで抜いてくっか…)」スクッ
スタスタ…ガチャッ
猫「えへへ…くすぐったいですよぉ…」ムニャムニャ
猫「んぅ…良く寝たぁ…」
男「…おはよ」
猫「にゃ!!ご、ご主人様!顔色が悪いですよ!?」アセアセ
男「だ、大丈夫。ちょっと眠れなかっただけ…」
猫「そ、そうですか…」
猫「(やっぱり、もぐって寝るのはいけなかったのかな。ご主人様の様子もおかしかったし…)」シュン
猫「ご主人様のお帰りが遅くなるってことですよね」
男「…さすがはチロルだね」ナデナデ
猫「えへへ」ニコッ
男「なるべく早く帰って来るから」
猫「はい!行ってらっしゃいませ」ペコリ
男「…行ってきます」ニコッ
猫「…どうしてでしょう。猫で居る時より、寂しさが増している気がします…」
男「…はぁ、これからどうするべきなんだ」
友「何だー?男、元気ねえな」
男「俺にも悩みだってあるんだよ」
友「聞いたか?親友。男にも悩みがあるんだってよ」
親「…友は男を何だと思ってるんだよ」ハァ
男「(今の姿も良いけど、色んな意味で危険だしなぁ…)」
猫「…全然、眠くならないです」
猫「どうしましょう…。寂しさを紛らわせるのは、寝るのが一番だったのに…」アセアセ
プルルルル
猫「!お、お電話が鳴っていますっ。私が取ってもいいのかな…」
猫「(…大丈夫ですよねっ)」
ガチャッ
猫「はい、もしもし…?」
猫「!ご主人様…っ!」
男「ちょっと心配でさ。電話してみた。大丈夫?」
猫「はいっ、全然大丈夫なのです!チロルはお留守番が得意ですから!」
男「ははっ、そうだったな。じゃ、帰るまでよろしく」
ピッ…ツーツーツ-
猫「ご主人様の…声を聞けるなんて思ってもみなかったです」ジーン
猫「(前の姿の時は、ただ我慢するしか出来なかったのに…。今は声を聞けることが出来るし、それだけで頑張れる気になります…っ!)」
男「…出来るだけ、早めに帰りたいな」ボソッ
女「あ!男くーんっ」タタタッ
男「…あぁ、女さんか。この前はどうも」ペコリ
女「やだ!さん付けなんて辞めてよっ。同い年なのに」クスクス
男「うん、分かった。ごめん」
女「今度からは名前呼びしてねー」
女「…そういえばさ、今日って暇?」
女「あ…やっぱり、従姉妹が来てるから?」
男「そう」
女「そ、そっか!じゃ、また今度ね。良かったら連絡先交換しよ!」
男「(ま、別に良いか)大丈夫だけど?」
女「やった!」ニッコリ
男「…それじゃ」
女「うん」
…
ピッ…ピ
プルルルル
女「…あ、もしもし?確かさ、あんたって男君の幼なじみだよね?ちょっと教えて欲しいことがあるんだけど」
ガチャッ
男「ただいま」
猫「お帰りなさい!」ニコニコ
男「何か、困ったこととかなかった?」
猫「はい!ご主人様が付けてって下さった”てれび”をずっと見ていました」
男「…あれ、飯は?昼に食べるように作ったものをテーブルに置いてったんだけど」
猫「!ご、ごめんなさい…っ!見てるのに夢中で、すっかり忘れてました」ペコリ
男「あはは、大丈夫大丈夫。俺と一緒に今から食べよ」
猫「…っ、はい!」ジーン
幼「…あのさ、男の幼なじみって俺以外に友も親も居るんだけど」
女「だって、あの二人とはそんな仲良くないし」
幼「あーそう…」
女「ね!男君の従姉妹って、どんな子なの?」
幼「俺が知るわけないじゃん」
女「うわっ、使えなーい…」
幼「(何コイツ自分から呼び出しておいて)」
女「その前に話聞いてよ!」
幼「お前が何か奢るっつーからわざわざ来たんだけど…」
女「…あたしね、男君のこと好きになっちゃったの」
幼「へー」
女「なんか反応してよ」
幼「だって前々からカッコイイとかどーとか言ってたじゃん」
女「違うの!本気で好きになったの!」
幼「(どーでも良いし…。つーか帰りたい)」
男「…あーあ。もう寝ちゃってる」
男「(初日はやっぱり緊張やら何やらがあったから、すぐに寝れなかったのだろうか…。今日は飯を食ったら、すぐにおやすみ3秒だったな)」
猫「ん…」ムニャムニャ
男「寝顔は…チロルの時そっくりだな」クスクス
男「(なんか、今日からは普通に寝れそうな気がする…!)」
猫「んにゃぁ…んふふっ」
男「…やっぱり無理かも」ハァ
猫「ご主人様ご主人様!」
男「何?」
猫「私、これやってみたいです!」ビシッ
男「”はじめてのおつかい”の再放送だろ、これ。…って、え?チロルが?」
猫「はい!ご主人様のお力になれるし、喜んでもらえるしで良いこと尽くしだと思ったので!」ニッコリ
男「チロル…!」
男「(猫のときから優しい奴だとは思ってたけど、ここまでとは…)」ジーン
…
男「もう一回、確認な。チロルが買ってくる物は?」
猫「牛乳と卵です!」
男「気をつけることは?」
猫「卵を割らないように、慎重に持ち帰ることです!」
男「よろしい。行っておいで」
猫「行ってきまーすっ」ニコニコ
猫「…いけません!そんなことを考えていてはならないのですっ。私は、”おつかい”をしなくてはならないのですから…!」フルフル
…
猫「わ…色んな物がいっぱいあります…」
猫「!お魚さんがいっぱい…!」
タタタッ…ピタ!
猫「だ、ダメですよチロル!お魚さんに目を奪われていては…っ」フルフル
?「…あの、何かお困りでしたか?」
猫「にゃっ!?」
猫「(ご主人様以外の方とお話するのは初めてですね)」
猫「…じ、実は”おつかい”をしにここへ来たんです」
?「私と同い年ぐらいなのに偉いですねっ!」
猫「でも、牛乳と卵がどこにあるか分からなくて…」シュン
?「私で良ければ案内しましょうか?」
猫「…っ!お願いしますです!」
猫「本当に助かりました!」ペコリ
?「いえいえ。お役に立てて良かったです。それじゃ」
猫「…あのっ」
?「え?」
猫「また、どこかで会ったらお話してくれませんか…?」
?「もちろん構いませんよ」ニッコリ
猫「にゃっ!嬉しいです!」
ギュッ
猫「あわわ、ご…ごめんなさい!つい癖で…っ」
?「あははっ、大丈夫ですよ」ニコッ
ガチャッ
猫「ご主人様ー!」
ダダダッ ギュッ!
男「わっ…ど、どした…?」
猫「私、ちゃんと買えましたよ!あと、女の子と仲良くなれたのです!」ニコッ
男「…!へぇ、そりゃ良かったな」ニッコリ
猫「はい!すごく嬉しかったのです」
男「チロルが嬉しそうで、俺まで嬉しくなっちゃったよ」ナデナデ
猫「えへへっ」
男「…ん、待てよ。抱き着いた衝動で…」
猫「?」
…
男「やっぱり…」
猫「ご、ごめんなさい!」ペコペコ
男「大丈夫大丈夫。二個割れてるぐらいだから。ホットケーキなら作れるし」
猫「はぅ…」シュン
友「今日みんなでカラオケ寄っていこうぜ!」
男「わりぃ。俺、すぐに帰んねーと。今度は行くから」
スタスタスタ…
友「んだよー!じゃ、俺と親と幼の三人か」
幼「俺、今日予定あるっつったじゃん。じゃあね」
スタスタスタ…
友「え?幼の用事って何だっけか?」
親「あれだよ。ずっと片思いしてる、初恋の子と待ち合わせしてるってやつ」
友「あー見えてすげぇ一途だかんなー」
幼「待ち合わせ一時間前から来ちまった…」
?「幼君!」
幼「…っ!初…///」ドキドキ
初「ごめんね?待ったかな」
幼「ぜ、全然!むしろ、もっと遅くても良かったし」
初「嘘ばっかー」クスクス
…
幼「なぁ、どっか行きたいとこある?」
初「んー…特には。帰りにスーパーには寄りたいけど…あ!」
幼「何?」
初「スーパーと言えばっ。この前、とっても可愛い女の子に会ったの」
幼「スーパーで?」
初「うん!なんか猫みたいで本当に可愛かったー」ニコニコ
猫「はぅ…っ」ジュル
男「チロル、よだれ出てる」
猫「!ご、ごめんなさいっ」フキフキ
猫「か、鰹節が踊ってます…!」
男「買ってきたばっかりだから」
猫「まんまるですねっ」
男「タコ焼きだからね」
猫「…」ワクワク
男「…いただきまーす」クスクス
猫「…っ、いただきます!」
猫「にゃー!素敵です、このまんまる!前にご主人様が作って下さった”ほっとけーき”と同じくらい、気に入りました!」
男「そりゃ良かった」モグモグ
猫「…あ、あの…今日は寒いので…」ソワソワ
男「!(チロルは寒い日ほど、布団にもぐる癖があったよな…)」
猫「今日は…もぐらせて下さいっ」ペコリ
男「…あ、足元でだったら良いよ」
猫「やったー!」ニコニコ
猫「おやすみなさいませー」モゾモゾ
男「おやすみ…」
男「(チロルが寝付いたらトイレに猛ダッシュだな…)」
猫「(色んなところに連れていってもらったし、色んな食べ物も知りました。人間って素敵です…!)」ワクワク
猫「…でも、”人間”で居るときのお留守番は辛いです…ご主人様」シュン
猫「そうだ!気晴らしにお散歩でもしてきましょうっ。短時間ならお許しが出てますし!」スタッ
幼「俺、世界一幸せ…」ジーン
友「あいつ、何一人で黄昏れてんだ?」
親「初恋の子に告白したらOKもらえたんだって」
友「!良かったな、幼っ。初彼女じゃねーか!」ニカッ
男「(…彼女か)」
…
男「(例え人間になったとしても、チロルは俺のペットだったっていう事実は消えない…。今だって、そういう関係で接してるんだ…)」
女「…ん、男君ってば!」バシッ
男「!ご、ごめん。考え事しててさ…」
女「もう!話し掛けても気付いてくれないし、連絡だって全然くれないじゃない」
男「悪い…」
猫「…毎日が楽しいはずなのに、モヤモヤが消えてくれません」ハァ
猫「(いつ猫に戻ってしまうか、心配だからなのでしょうか。それとも…)」
ドカッ
猫「…っ、す、すみません!考え事をしてたものですから…っ」アセアセ
猫「(わぁ…とても美人な方…)」
猫「わ…私は大丈夫ですっ!」コクコクッ
?「そう、良かった」ニコリ
猫「本当にごめんなさい…」ペコリ
?「…きちんと謝れるのね。優しい子」
猫「へ?」
?「良い子にしてれば、必ずあなたにとって、素敵なことが起こるわ。頑張ってね」
猫「は…はいっ」
…
?「あなたに…とってはね」
猫「ご主人様っ。今日、不思議な女の人に会いました」
男「またお友達が出来たの?」
猫「いえ、私が前方不注意でぶつかってしまったのです…」
男「ありゃりゃ」
男「まぁ元気出して。今日はチロルの好きな鮭だよ」
猫「?私はホットケーキやタコ焼きのほうが好きなのですっ!」
男「あはは、やっぱりそっちのほうが良くなったか」クスクス
男「いつも一緒に寝てるだろ?」
猫「あっ、そ…そうでした!では、おやすみなさいっ」
男「(最近もぐらないな、チロルのヤツ)」
猫「(私は…何てことを!ご主人様にぎゅーしてもらって寝たかったなんて…///)」ドキドキ
…
男「…」スースー
猫「(あわわわっ。モヤモヤして眠れません…!)」アセアセ
男「どした?」
猫「これ、付けてると痒いです…。取って頂けますか?」チャリ
男「あぁ、もう人間だから首輪は必要ないか。ごめんごめん。すっかり忘れてたよ」
男「…そういやこれ、初めてチロルにあげたプレゼントだったっけ」ジーン
猫「ご主人様!今日は私がお洗濯物を干しましょう」ニコニコ
男「あ、うん。よろしくね」
初「はぁ…」
幼「ど、どした!?デート…楽しくない…?」オロオロ
初「ううん、会えないなって思って…」
幼「?」
初「この前話した、猫みたいな女の子に…。今度会ったらお話しようって約束してたの」シュン
幼「きっとまた会えるって。な?」ナデナデ
初「うん…」
幼「(…初にこんなに思われてるなんて羨ましいんだけど)」
男「今日、何が食べたい?」
猫「ホットケーキ!」
男「よし、じゃホットケーキにしよう。牛乳切れてたから買わないと」
猫「にゃ!ご主人様ありがとうっ」
チュッ
男「い、今ほっぺに…っ///」
猫「こーすると男の人が喜ぶとテレビでやってたのですよ」ニコリ
男「ふ、不意打ちは卑怯だろ///」
幼「…男?」
男「(うっわ、絶対勘違いされる…!)」アセアセ
猫「?ご主人様のお友達ですか?初めまして、私は…むぐっ」
男「ちょっと黙って!」
幼「…ご主人様って…一体彼女にどんなプレイさせてんのは?お前」
男「か、彼女じゃねーよ!」
幼「!彼女じゃない女の子にご主人様って呼ばせてんのかよ!」
男「…はぁ、言うしかないか」
ガチャッ
幼「おっじゃましまーす。男の家久しぶりー」
猫「ただいまなのです!」ニコニコ
男「…」
幼「あれ?確か、チロルって猫飼うことにしたって言ってなかったっけ?」
男「あぁ」
幼「どこにいんの?チロルー?」
猫「はい!私がチロルなのですっ」ニッコリ
幼「…はい?」
男「そうだ、コイツがチロルなんだよ」
幼「…つまり、朝起きたらチロルが人間になってたわけか」
男「そう」
猫「はいっ。人間になれてたのです」ニコニコ
幼「…すげぇな」
男「すげぇよ」
幼「い、色々大変だろ」
男「大変だよ」
猫「?」
幼「ま、良いんじゃね?可愛いし。まぁ、初がいっちばん可愛いけどな」
男「人事だと思って…」ハァ
猫「初さん、という方もご主人様のお友達ですか?」
幼「んーん。俺の恋人さん!今度会わせてやるよ」ニッ
猫「!嬉しいですっ」
男「(…とりあえず、丸く収まって良かった…)」
男「俺はなんか疲れた…」
猫「(ご主人様が疲れてる時、私は何をすれば良かったんだっけ…)」
男「チロル」
猫「は、はい!」ビクッ
男「ここに頭乗っけて?」
猫「ご主人様の膝元に…ですか!?」
男「好きな場所だっただろ?おいで」
猫「…はい。失礼します」ドキドキ
男「(やっぱり、チロルを撫でてると落ち着く…)」
猫「(わぁ…なんか気持ちいいです…)」
女「あ!幼じゃない」
幼「げっ」
友「よぉ!女じゃん」
女「(友も一緒なの…!?やだなぁ、無駄にテンション高いから苦手なんだよねぇ…)」
女「二人で何してたの?」
友「いや、実はさ!男が飼っ…んん!?」アセアセ
幼「馬鹿じゃねーのお前!チロルのことは俺達4人だけの秘密って男に言われただろ!?」ボソッ
友「わ…わりぃ…っ、つか、く…苦しい…!」
女「…男君が、何?」
友「あ、あぁ!そーそー!」
女「…この前、従姉妹の話聞いたら知らないって言ってたじゃない」
幼「そ、それは…。最近になって男から聞いたんだよ」
女「…ふーん」
幼「じゃ、じゃあな!」
友「俺を追いてくなって!」アセアセ
タタタッ
女「…怪しい」ボソッ
親「俺のこと、覚えてない?何度か会ったことがあるんだけど」
猫「はぅ…ごめんなさい。覚えてないみたいです」シュン
親「そっか。でも、俺が君に会ったことは数えるくらいしかないからしょうがないよ」
男「チロルが家に来て、長い月日が経ってたわけじゃないしな」
猫「こ、今度はちゃんと覚えますっ!」
…
親「…うん、普通の女の子だね」
男「だろ?」
親「でも、やっぱりチロルちゃんの面影はあるかも」
男「今も昔も可愛いからな」
親「相変わらず溺愛してるんだね」クスクス
親「行ってらっしゃい」
猫「…行ってらっしゃいませっ」
バタン
親「じゃ、テレビでも見よ…チロルちゃん?どうしたの?」
猫「親さん…。私は駄目な子です。親さんにも、ご主人様にも、最低なことをしてしまいました…」シュン
親「チロルちゃん…?」
猫「…はい」コックリ
…
猫「私、ご主人様に”お留守番は得意なので任せて下さい”と言いました」
親「うん」
猫「寂しくても我慢出来ると、頑張るとも自分で約束をしました」
猫「…でも」ポロ…
猫「今では、胸を張ってお任せ下さいとは言えないのです。我慢だって、出来ないかもしれないのです…」
親「チロルちゃん…」
猫「心から、”行ってきます”を言ってあげることが出来ないし、親さんが一緒に居て下さってるのに…寂しいって思ってしまう私が居るのです…っ!」ポロポロ
親「…」
猫「私、やっぱりおかしいです…。苦しいんです…っ」
親「…チロルちゃん」
猫「は、はい…」
親「人間ってそういうものなんだよ。大好きな人の傍にいれないと、すごくすごく辛いものなんだ」
猫「…痛くもなりますか?く、苦しくなったりもしますか?」
親「うん、なるね。心臓がキュッてなっちゃう感じでしょ?」
猫「!そ、そうですっ!」コクコク
親「おかしくなんかないよ。猫の時から、ずっと男のことが好きだったんだもの。そーなって当たり前なんだ」ニッコリ
猫「私が…ご主人様を好き…」
猫「…私がご主人様を好きでいても、ご主人様は迷惑ではありませんか…?」
親「もちろん。きっと喜んでくれるはずだよ」
猫「好き、だから心臓が痛くなる…んですね」
猫「(でも…私は完璧な人間じゃない…いつ元に戻るか分からない…)」
猫「このままずっと人間でいたいですっ。そして…その…」モジモジ
親「言ってみて」ニッコリ
猫「!」
猫「大好きなご主人様と、ずっと一緒にいたいです!」ニパッ
男「(…俺が居ない間、一体何の話をしてたらそんな台詞が聞こえてくるんだよ///)」
男「…あー、なんか今日は寒いなー」
猫「そうですね!だったら掛け布団を増やしましょうっ」
男「いや、布団はこれで良いの」
猫「?」
男「俺が欲しいのは…抱き枕、かなっ///」
猫「にゃっ!?」
猫「…わ、私で良ければぎゅーして下さいませっ///」
男「しょ、しょうがないなー、特別だぞ」
猫「はいっ!」ニッコリ
猫「えっと…郵便ポストはどこに…」キョロキョロ
トントン
猫「うわっ!」ビクッ
初「やっと会えた。また何か探してるのかな?」ニコッ
猫「こ、この前の…!」
猫「そうでしたか!あなたが幼さんの恋人さんなのですね」
初「お話を聞いたら、すぐにあなたのことだって分かったの。この辺に住んでるって言ってたから、ちょっと探しちゃった」
猫「わ、私の為に…!嬉しいです…っ」ジーン
初「ねぇ、お名前はなんて言うの?そういう女の子が幼君のお友達と住んでるってしか聞いてなかったから」
猫「チロルです!」
初「チロルちゃんかぁ、可愛いお名前だね。私は初だよ」
猫「初、さん?」ドキドキ
初「普通にちゃん付けでいいよ。改めてよろしくね」
猫「よろしくお願いしますっ!」ニパッ
猫「あ、今日はご主人様がいらっしゃらないので鍵を使わなければならないのでしたっ」
ガチャガチャ
猫「んー、難しいのですー」アセアセ
?「でさー、数学の授業の時にメール来てさー」
女「あはは!やっぱり送ってきたんだ」
女「…あれ?この道、初めて通ったんだけど」
?「女知らなかったの?結構有名な道だよー」
女「へぇ」
?「女がカッコイイって言ってた男君が一人暮らししてるアパートもこの近くなんだから」
女「!ど、どこ!?」
女「へぇ…」
?「この前教えてもらってさー。うちの彼氏、男君と仲良いじゃん?」
女「(あそこに…男君が…)」
女「…あれ?」
?「えっ、嘘!女の子泣いてんじゃん!しかも、あのドアんとこって男君んちだよ」
女「!?」
猫「うぅ…、お家に入りたいですっ…」ポロポロ
?「うっわー…、男君と喧嘩でもしたのかな」
女「(どう見たって彼女にしか…。従姉妹なわけないじゃない…っ)」
ダッ
?「ちょ、女!?」
女「ごめん、先帰ってて!」
猫「な、なんて難しいのでしょう…。やり方を教えて頂ければ良かったです…っ」
猫「(このままお家に入れなかったら…うわわわわ、凍死しちゃいます!)」アセアセ
女「…何、してんの?」
猫「ほぇっ?」ビクッ
女「…ねぇ」
猫「!は、はいっ」ビクッ
女「何してんのって聞いたんだけど」
猫「あ…あの…鍵を上手く使いこなせなくて…」
女「(合鍵まで持ってるわけ…!?)」
猫「(な、なんか初ちゃんとは違って怖いです…っ)」ビクビク
猫「えっと…」
~
男「いい?チロル。もし、知らない人に俺との関係を聞かれたら、従姉妹って答えるんだ」
猫「?私はご主人様のペットですよ」
男「そう言っても、信じてくれない人が多いんだ」
猫「…分かりましたっ!」
~
猫「…私は”従姉妹”ですよ」
猫「はいっ、私は”従姉妹”です!」
女「そう」
女「(嘘を付いてるようには見えないけど…)」
…
女「じゃ、あなたには言っておこうかな!」
猫「?」
女「あたしね、男君のことが好きなの」
猫「え…」
女「は?」
猫「私も好きなのです!」
女「はぁ!?」
女「(い、従姉妹なのに!?てか、なんで嬉しそうに話してんの…!?)」
猫「えへへ、一緒ですねー」
女「そ、そうだね」
女「(ちょっと…色々喪失しちゃったんだけど…)」
猫「あ、はいっ」
ガチャガチャ…
猫「わ!開きました!」
女「鍵をさして、こっちに少し回すだけで良いみたいだよ」
猫「ありがとうございますっ!助かりました」ペコリ
女「じゃあね」スタスタスタ
女「…なんだ、良い子じゃんか」
猫「ご主人様ー!」
男「こら、ちゃんとタオルで髪の水分取って上がってこいっていつも言ってるだろ?」フキフキ
猫「…自分で水分を取っちゃうと、ご主人様にこうやって拭いてもらえなくなるから嫌なんです///」ドキドキ
男「…そ、そうなんだ///」
猫「(あの女の人は…ご主人様に対して、どんな”好き”なんでしょうか…)」
猫「今日は雨ですねー」
男「チロル、大丈夫?」
猫「全然平気なのですよ!」ニコニコ
男「風呂も平気だもんね」
男「(…あ、晴れてきたな。もしかしたら…)」
ガラッ
猫「ベランダに出られるのですか?」
男「チロルもおいで」
猫「はいっ」スタスタ
男「ほら」
猫「…わぁ!綺麗ですー!たくさんの色が…っ」
男「虹っていうんだよ」
猫「”虹”…ですか。とても綺麗です…」
男「俺も幸せだよ」ニッコリ
猫「…!///」
猫「(ど…どうしましょう…ドキドキが止まりません…っ)」
…
幼「…へぇ、チロルがね」
親「あれは恋愛感情として、好きなのかもしれない」
幼「でもさ、男はどーなの?めちゃくちゃ好きーってのはわかるけど…」
親「んー…どうだろ」
友「なぁなぁ、何の話だよ!俺も混ぜろって」
幼「俺的にくっついて欲しいなー。お似合いじゃん」
親「そうだね」
友「無視すんなって!」アセアセ
女「男君、おはよう!」
男「あぁ…おはよ」
女「ねぇ、この前男君が言ってた従姉妹の子に会ったよ」
男「!…そ、そうなんだ」
女「可愛らしい子だね」
男「あはは」
男「(一体、何を話したんだろう…。バレては、ないよな…)」
女「そういえば、男君のこと好きって言ってたよ?」
男「あぁ、それはあれだよ。仲が良いからね。お兄さんとしてじゃない?」
女「なるほどねー」
男「え…」
男「(…なんで、すぐに答えられないんだ?俺は)」
女「男君?」
男「ご、ごめん!そろそろ教室戻る」
女「ちょ、ちょっと…っ」
…
男「(何してんだ?俺は…。従姉妹として好きだって答えるだけなのに…。何逃げてんだよ…っ!)」
猫「はぁ、寂しいです…」
猫「気晴らしにお外にでも出てみましょう」
…
猫「今日は曇りですね…。今にも雨が降りそうです」トテトテトテ
初「チロルちゃん!」
猫「!初ちゃんっ」
初「こんにちは。私、今学校の帰りなの。チロルちゃんは?」ニッコリ
猫「あ、えと…お散歩に!」
初「ご一緒しても良い?」
猫「もちろんです!」ニパッ
猫「ま、もない?」
初「えっと、まだこの街になれてないのかなーってことだよ」ニッコリ
猫「はいっ。知らないことがいっぱいあります!」
初「あ、やっぱり!」
初「じゃ、何か困ったらいつでも相談してね」カキカキ
初「はい。これ、私の電話番号」
猫「!これにお電話を掛ければ良いのですね」ジーン
初「うん」
猫「ありがとうございます、初ちゃん!」
女「あ、この前の従姉妹ちゃんだー」
猫「!こ、こんにちはっ」ペコリ
初「(知り合いなのかな…?)」
猫「はいっ。初ちゃんは私のお友達なのです」ニコッ
初「こんにちは」ペコリ
女「そういえばー。この前ね、男君にあなたのことをどう思ってるか、こっそり聞いちゃった!」
猫「え…、ど…どうしてですか?」
女「気になっちゃってね。勝手に聞いちゃってごめんごめん」
猫「…っ、い…いえ」
初「(チロルちゃん…。辛い顔してる…)」
猫「…逃げ、た…ですか?」
女「きっと聞かれたくなかったんだね」クスクス
猫「な、なぜですか…」
女「だって、正直に”嫌い”なんて言えないじゃない。きっと、迷惑してるんじゃない?居候されて」
猫「…っ」
女「なんか様子もおかしかったしねー。嫌そうな顔してたし」
猫「そ、そんな…」
猫「き…らい…」ポロポロ
初「!チロルちゃん…っ」
女「は?」
初「この子と男さんは、すっごく仲が良いって私聞いてます!男さん、妹みたいに可愛がってるって!」
女「聞いただけでしょ?あなた自身が直接見たことじゃないのに、何でそんなこと言えるわけ?」
初「…っ!」
猫「…嫌い…私のことを、嫌い…」ポロポロ
女「(…やっぱりムカつく。あんたの話題を出しただけで表情がコロッと変わる男君も、すぐに泣きわめくこの子も…!)」
女「あたしは実際に話したしね。何なら、男君に直接聞いてみれば良いと思うよ?」クスクス
初「はい、これ使って涙拭いて?」スッ
猫「ありがとうございます…」
幼「ごめんね…。力になれなくて…」
猫「そ、そんなことないのですっ!」フルフルッ
初「チロルちゃんは、男さんの従姉妹だったんだね」
猫「…私、今までご主人様の傍に居るのが当たり前でした」
幼「(ご主人様…?)」
猫「ご主人様が、私の全てなのです」
幼「(ご主人様っていうのが…男さんなのかな)」
猫「…”従姉妹”というのは、自分の主の傍に居てはいけないものなのですか?」
幼「え…?」
猫「傍に居ることが迷惑な関係なのだと他の方に勘違いされるのなら…私はもう”従姉妹”と名乗るのは嫌です…っ。辛いのです…」ポロポロ
初「…チロルちゃん」
初「(従姉妹が何だか、分かってないんだ…。ってことは…)」
猫「ちゃんと、お話します」コクリ
…
初「そっか。チロルちゃんは、”飼い猫のチロルちゃん”だったんだね」
猫「はい…。このことは、あまり人に言ってはいけないとご主人様に言われました…」
猫「…私、すごくモヤモヤしてるのです。ご主人様との関係が分からなくて…」
初「うん」
猫「もう猫ではありませんから…”ペット”ではないし、幼さんと初ちゃんみたいな”恋人同士”でもないし…」
初「…」
猫「私は、ご主人様にとって何なのでしょう…。やっぱり、迷惑な存在なのでしょうか…」
猫「…っ、う…ひっく…」
初「どんな関係か、はっきりはしてないかもしれないけれど」
初「男さんにとって、チロルちゃんは大事な存在だってことには変わりないと思うよ?」
猫「だい、じ…ですか?」
初「うん。チロルちゃんにとってもそうでしょ?」
猫「!はいっ、ご主人様は大事なのです。とっても、とっても大事なのですっ」コクコク
初「なら、男さんもそう想ってるはずだよ」ニッコリ
猫「初ちゃん…」
初「ゆっくり、関係性を探していったら良いんじゃないかな?」
初「大事っていう気持ちが、どんな感情から来てるのかいずれ分かるはずだよ」
猫「…はいっ!」
ガチャッ...
猫「た、ただいまです」
男「おかえりー。遅かったね。心配してたんだよ?」
猫「ご…ごめんなさい」シュン
男「(そ、そんな怒ってるわけじゃないのにな…)」
猫「私、今日疲れました。もうおやすみをさせて下さい」
男「あ…うん、おやすみ…」
猫「おやすみなさいませ…」
男「(…何か、あったのかな?)」
幼「初ー!初から呼び出しなんて初めてじゃん!俺、すっげぇ嬉し…」
初「…幼君のばか」
幼「な、いきなり何!?」
初「チロルちゃんのこと!もっと、ちゃんと教えてくれれば良かったのに…っ」ポロポロ
幼「…!どうしたんだよ…っ、な、泣くなよ初!」アセアセ
初「も、もっとちゃんと分かってればチロルちゃん泣かせなくて済んだのに…」
幼「…誰かに何かされたのか?」
初「私は何もされてないもん!何も出来なかっただけだもん…!」ポロポロ
幼「ご…ごめん!頼むから泣きやめって…!」
モゾ...
猫「…眠れません」
猫「(あれ、ご主人様がいません…)」キョロキョロ
男「あ、起きたんだ」
猫「ご主人様…。ベランダに出てらしたんですね」
男「うん、チロルもおいでよ」
猫「は、はい…」コクリ
…
ガラッ...
猫「何をしてたのですか?」
男「星見てた。上、見てごらん」
猫「?」
猫「…うわぁ、キラキラです!」
男「今の時期は空気が澄んでて星が綺麗に見えるんだ」
猫「”虹”と同じくらい綺麗なのです…」
男「…少しは、元気出た?」
猫「ふぇ?」
男「いや、なんか落ち込んでたみたいだったから」
猫「あ…」
男「俺には話せない?」
猫「そ、そういうことでは…」
男「…」
猫「…あ、あの…」
男「ん?」
猫「私は…ご主人様にとって、”迷惑”な存在ですか…?」
猫「き、聞いてみたくなっただけです!わ、私”いそうろう”というものらしいので…っ」
男「またテレビで知ったの?」
猫「は…はい…」
猫「(嘘を、ついてしまいました…)」
男「答えはNOだよ。迷惑だなんて、思ったことない」
猫「ほ、ほんとですか!?」
男「我慢はしないといけないけどね。色んな意味で」ボソッ
猫「?」
男「我慢が出来るくらい、チロルが大事だってこと」
猫「!(初ちゃんが言って下さったことをご主人様から聞けました…!)」
猫「わ、私もご主人様がとっても大事です!」
男「嬉しい」ニッコリ
猫「(わ…わわわ…!)ドキドキ
男「…いや、大丈夫。ちゃんと出してるから」
猫「それなら平気ですね!良かったー」ホッ
男「…あはは」
…
男「さ、そろそろ寝ようか」
猫「はいっ。あ…ご主人様!」
男「何?」
チュッ
猫「えへへ、何だかしてみたくなっちゃいました」
男「…あ、ありがとう」
男「(今日は我慢して、一緒に寝てみようかな…)」
猫「ご主人様のお言葉でこーんなに元気になりました!ご主人様はやっぱりすごいのです!」
?「あははっ、楽しそうね」ニッコリ
猫「!…この前の美人な方!」
?「どう?良い子にしてる?」
猫「は…!…いえ、良い子ではないかもしれません」シュン
?「どうして?」
猫「わがままを言ったり、嘘をついたりしてしまいました…」
?「…あははっ!」
猫「ふ、ふぇ?」
?「そんなの当たり前のことよ。人間なんだもの」
猫「そ…そうでしょうか…」
?「大丈夫。あなたはちゃーんと良い子よ。その調子その調子」ニマッ
猫「は、はいっ!頑張ります!」
猫「(良い子にしてれば…迷惑な存在ではないはずなのですから)」
猫「頑張らなきゃっ!」ムンッ
…
女「な、何よ…怖い顔しちゃって」
幼「お前、俺の恋人になんかしただろ」
女「は!あの従姉妹、あんたと付き合ってるわけ!?」
幼「そっちじゃない」
女「…あぁ、あっちか」
幼「…!」ガシッ
女「いった…っ、いきなり何すんの!?」
幼「何したんだよ」
女「あたしは何もしてないってば…!」
幼「…お前、初に手出したら殺すから」
女「(こ、こわ…!あの子には近付かないようにしなきゃ…)」
男「…ん、あれは…」
男「初、ちゃんだよね?」
初「…どちら様でしょうか?」
男「幼から話聞いてないかな」
初「!男君ですかっ!?」
男「あたりー」
…
初「よく私が分かりましたね」
男「幼が初ちゃんの画像を待ち受けにしててさ。俺の恋人だって良く自慢されてるから」クスクス
初「…もう、幼君ってば///」
初「いえいえ!」
男「話聞いて、びっくりしなかった?」
初「ちょっとは。でも、会った時から猫っぽいなーとは思ってたんです」ニッコリ
男「あはは」
…
女「幼のヤツ…。まだ背中痛いし」イライラ
女「ん?あれは…男君と、幼の彼女…!?」
男「チロル」
猫「ほぇ?」
男「明日、一緒に公園にでも行かない?ほら、よく散歩に行ってたあの公園」
猫「お散歩で?」
男「あはは、やっぱり覚えてないか。結構前の話だからね」クスクス
男「きっと着いたら思い出すよ」
猫「ご主人様とお出かけ!楽しみですー」ニマニマ
男「(可愛いなぁ…)」
猫「…ほわぁ、お水がいっぱい出てます…」
男「あれは噴水っていうんだよ」
猫「噴水ですか!初めて見ました…っ」ジーン
男「チロルー。早くしないと追いてっちゃうぞー」
猫「あ、はーい!」
…
ピンポーン…
幼「…はいはーい」
ガチャッ
女「なーにー?今起きたの?」クスクス
幼「…わりぃけど、今お前に構ってる暇ねーんだよね。それじゃ」
ガシッ
女「良いの?話きかなくて」
幼「あぁ?」
女「あんたの彼女、浮気してるっぽいよ」
幼「…だから、初が浮気してるって?」
女「楽しそうに二人っきりで歩いてたよー」クスクス
幼「お前、馬鹿じゃね?」
女「は?」
幼「初は浮気するような子じゃねーし、男だって親友の女に手ぇ出すような奴じゃねーもん」
女「わ、わからないじゃん!」
幼「わかるんだよ。あーあ、マジ時間の無駄。じゃーな」
バタン!!
女「…っ、全然騙されなかったし…!」
親「しょうがないよ。二人共忙しいんだから」
友「でも遊びてぇんだもんよー」
親「わがままだなぁ」クスクス
…
プルルルル…
初「もしもし」
幼「あ、出た!」
初「どうしたの?」
幼「ししっ、俺ちょー頑張った。褒めて褒めて」
初「何を頑張ったの?」
幼「ひみつー」
初「何それー」クスクス
初「…頑張ったね、幼君」
幼「!やった、褒められたー」ニンマリ
男「やっぱり、家族連れやカップルでいっぱいだね」
猫「…カップル?」
男「恋人同士のことだよ」
猫「あぁ!幼さんと初ちゃん達のことですねっ」
男「そうそう」
猫「(この前の電話で、初ちゃんが両思いになると恋人同士になれると教えて下さいましたっけ)」
猫「(私とご主人様は…”カップル”になれるのでしょうか…)」
親「こんにちは、チロルちゃん」
猫「はいっ、お久しぶりです」ニコリ
友「へぇ、コイツがあのチロルかー!」
猫「(初めて見る方です…っ)」
親「多分、会ったことを忘れてるみたい。自己紹介してあげて」ボソッ
友「そうか!初めまして。男の親友兼幼なじみで、友っつーんだ。よろしくな!」ニカッ
猫「よ、よろしくですっ」ペコリ
友「かーわいいなー」ニコニコ
猫「はいっ、ご主人様」スタスタ
友「えー、男いいなぁ。やっぱり俺のこともご主人様って呼んでくれ!」
男「だーめ」
男「これは、俺だけの特別な呼び方だから。なぁ?チロル」
猫「は…はい!」コックリ
猫「(特別…。ご主人様だけ、特別…///)」ジーン
男「ホットケーキなら。自分で作って食え」
友「ラッキー!」ニッ
猫「…ホットケーキ…」
親「(わ、なんか欲しがってる)」
親「友」ボソッ
友「んぁ?お前も食べてぇの?」
親「いや、俺のじゃなくてチロルちゃんの分も作ってあげて」
友「おー、いいぜ!」
親「…なにこれ」
友「ホットケーキ?」
親「なんで疑問形なんだよ」
猫「わぁ…真っ黒焦げです…」
男「…ったく」スクッ
親「男、どこか行くの?」
男「ホットケーキの素、買いに行ってくる。チロルも…食べたそうにしてたから」
親「(あ、やっぱり気付いてたんだ)」
親「…大好きなんだね、チロルちゃんのこと」ニッコリ
男「…い、行ってくるっ///」
親「何?」
猫「あの…ご主人様はどこに…?」
親「あぁ、ホットケーキの素を買いに行ったよ」ニコッ
猫「お腹が空いてる友さんの為に…!ご主人様はお優しいのですっ…」ジーン
親「(9割以上はチロルちゃんの為だと思うけどなぁ)」
友「しっかたねーな。これ、食っちまうか。もったいねーし」
猫「真っ黒焦げのホットケーキって食べたことないです。た、食べられるのですか?」ドキドキ
友「まぁ食えるだろ!一緒に食おうぜ!」ニカッ
猫「はいっ」ニッコリ
親「た、食べちゃダメだよ!」アワアワ
男「えーと、ホットケーキの素は…っと」
?「ホットケーキって美味しいの?」
男「いや、俺は別に好きじゃな…って、誰ですか?」アセアセ
?「んー、内緒」ニカッ
男「はぁ…」
男「(美人だけど…怪しい人だな)」
?「…ごめんなさいね」
男「全然平気ですけど。まぁ、普通に美味しいですよ?ホットケーキ」
?「そういうことじゃなくて」
男「(な、なんだ…?)」
友「はぁ…早く帰ってこねーかな…腹減った」
親「友、さっきからそればっか」
猫「…無事に帰ってきてくれると良いのですが…」ハラハラ
親「ほら見なよ。チロルちゃんは男のことを心配してるっていうのに」
友「チロルは、男が大好きなんだなっ!」ニッ
猫「はい!一番好きですっ!」
こういうの大好き
猫「ほぇ?」
親「(…話を反らすべきか?いや、友の単純さで聞き出せることがあるかもしれないし…)」
猫「んー、どうなのでしょう…。まだわからないのです」
親「ははっ、こんだけ一緒に居ても、わかんねーことってあるんだな」
猫「!そうなのですよっ、わからないことだらけなのです!」
猫「ご主人様に大事って言われたり、特別って言われると心がポカポカするんです!不思議ですよねっ」
友「おー。そりゃ可愛いな」
猫「あ、あとですねっ。お出かけしたりするのも楽しいです!」
友「色んな思い出増えるもんなー」
親「(よしよし、いいぞ友)」
友「お?」
親「!」
猫「これが一番の謎かもしれません…。どうして、そんな気持ちになるのでしょう」
親「(…決定だな)」
猫「友さんも、ご主人様にチュッてしたくなりますか?」
友「俺はならねぇかも」
猫「はぅ!やっぱり不思議なのです…っ」
・・・ゴクリ
猫「さ、最初は…こうしたら元気が出るっていうのをテレビで見て、それを真似っこしたんです」
親「うん」
猫「でも…最近はご主人様が落ち込んでるわけではないのに…チュッてしたくなっちゃうんですよ」
親「(いつの間にか…って感じか)」
友「なぁ、それって男を恋愛感情として好きってことなんじゃね?」キッパリ
猫「え!?」
親「(あーあ…言っちゃった)」
親「チロルちゃん、落ち着いて!まだ決まったわけじゃないから…っ」
友「何言ってんだよ、親!もう決定だろー?」
親「…もうお前帰れ」ボソッ
友「はぁ!?」
ガチャッ
男「ただいまー」
猫「あっ、あわわわわ!」アセアセ
親「(はぁ…帰ってきちゃったし…)」
友「一体何してたんだよー」
男「…?チロル、どうした?」
猫「な、何でもありません!」フルフル
男「顔真っ赤なんだけど…」
親「…混乱しちゃってる」ハァ
…
友「いやー、ホットケーキはうめぇし、チロルには会えたしで満足満足」ニカッ
親「…へー、良かったね」
友「おい、さっきから何なんだよ。なんかあったのか?」
親「お前のせいだろ」
友「なんで?」
親「いきなり猫から人間になって、悩みや苦労だってたくさんあるのに、恋愛優先になっちゃったら頭爆発するに決まってるだろ?」
友「た、確かに…」
親「ゆっくり、わかっていけば良かったことだったんだ。チロルちゃんが自分で気付くまで」
友「俺やべぇじゃん!まずった!」
親「…」ハァ
猫「…きょ、今日はソファで寝ます!」
男「え…なんで…?」
猫「そういう気分なのです!」
男「チロルが居なきゃ、寂しいんだけど…」
猫「…っ、おやすみなさい!」ガバッ
男「…」
猫「(ご、ごめんなさいご主人様…っ)」
男「じゃ、行ってきます…」
猫「行ってらっしゃいませっ」ペコリ
男「今日は…一緒に寝れる?」
猫「た、多分今日もソファです!」
男「…そう」
バタン
猫「…私だって、ご主人様と本当は寝たいです。でも…でも、心臓が爆発しそうになっちゃうのですよ…っ」ギュッ…
男「(昨日、すごく寂しかった…。一睡も出来なかったし)」
男「(チロルが居ないと、駄目なんだな。猫の時はそんなことなかったのに…)」
男「はぁ…訳わかんね」
…
プルルルル
初「はい、もしもし」
猫「う…っ、初ちゃん…!」ポロポロ
初「チロルちゃん!?」
女「!ちょっと先行っててっ」タタタッ
…
女「男くーん!」
男「あ、ども…」
女「ちょ…どうしたの!?顔真っ青だよ!?」
男「あー…寝不足のせ…い…」
バタッ
女「!男君っ、しっかりして!」
初「そっか…だから、胸の辺りが苦しくなっちゃったんだね」
猫「そ、そうです…っ。も…どうしたら良いか分からなくて…」
初「落ち着いて、チロルちゃん。そういう時は男さんとの楽しかった時のことを思い出せば良いんだよ?」
猫「楽しかっ…た…こと…」
…
初「どう?落ち着いた?」
猫「はい…っ。あと、ご主人様にすっごく会いたくなりました!不思議です!」
初「よしっ、効果抜群だったね」ニッコリ
猫「初ちゃんはすごいですね!」
初「男さんが、チロルちゃんに素敵な思い出を作ってくれてたおかげだよ」
ズルズル…ガラッ
女「せ、先生…」
女「(あれ、がら空きだ…。もう、保健室の意味ないし…っ)」
女「と、とりあえず寝かさなきゃ」
男「…」スースー
女「なーんだ。本当に寝不足なだけか」
女「…睫毛長いなぁ」スッ…
男「ん…っ、チ…ロル…」
女「…チロル?」
猫「…ご主人様、遅いです…」
”何かあったら、いつでも電話してきて”
猫「ご主人様の携帯とやらに、掛けてみましょうかっ」
ピッピピ…
プルルルル
女「っ!男君の携帯かぁ…ビックリした…」
ゴソッ
女「…”自宅”から?ってことは…」
女「(他人の電話を勝手に使っちゃうのは駄目だよね…)」
プルルルル
女「…もう!」
ピッ
女「ご主人様?」
猫「!(この声は…)」ビクッ
猫「え、えと…なんであなたが電話に…?」
女「男君と今一緒にいるんだけど、手が空いてない状態だからあたしが代わりに出たの」
猫「!?な、何かあったんですか?」
女「…」
猫「(普通…一緒に居ることに突っ込んだりするよね)」
女「…学校で倒れただけ。寝不足で」
猫「倒れた!?」
猫「(朝、元気がなかったのはそのせいだったのですね…。あぁ、どうして気付いてあげられなかったのでしょう…っ)」
猫「(…そういえば…)」
”チロルが居なきゃ、寂しいんだけど…”
”今日は…一緒に寝れる?”
猫「わ、私は何てことを…。ご主人様…っ」ポロ…
猫「うぅ…っ、ごめんなさい…!」ポロポロ
女「また泣くしー…」ガクッ
猫「ご主人様は学校にいらっしゃるのですよね!?」
女「そ、そうだけど?」
猫「今からお迎えに上がります!」
女「はぁ!?」
猫「で…でも、早くご主人様に直接謝りたいのです…っ。早く、早くご主人様に会いたいのですよ…」
女「…」
女「(話の流れが掴めない。けど…)」
女「(男君のこと、すごく想ってるのがこっちまで伝わってくる…悔しいけど)」
女「え?あぁ、そうだけど」
猫「ありがとうございます!ありがとうございます…っ」
女「…」
女「…はいはい、もう降参しますよ」ハァ
猫「へ…?」
女「普通さぁ、あんなこと言われたらひがんだりするのが当たり前じゃない?こんなあたしに、お礼なんか言わなくて良いのに」クスクス
猫「え…っ、あの…」
女「やっぱり調子狂っちゃうなぁ。敵対出来たと思ったのに」
女「学校を入って、右に行くと保健室があるの。男君はそこに寝てるから」
猫「!ありがとうございます…っ」
女「…謝らないからね」ボソッ
猫「えっ?」
女「何でもない。じゃあね」
ピッ…
女「…はぁ、帰ろうかな」
男「…」スースー
女「本気、だったんだけどなぁ。珍しく」
スタスタスタ
女「…アメ、美味しかった。ありがとう」
ガラッ…バタン
タッタッタ…
猫「はぁ…この前お出かけした時に”学校”を教えて頂いておいて良かった…っ」
猫「(右に…いくと…!”保健室”発見です…!)」
ガラッ
猫「ご主人様…っ!」
猫「ご…ご主人様…?」
トテトテ…
男「…」スースー
猫「あ、いました…」
猫「(良かったです…本当に眠っているだけみたいです…っ)」
猫「ふぇ…ひっく…よ…、よかった…っ」ポロポロ
猫「!ご主人様…っ」
男「チロル!な、なんで学校に…!?」ビクッ
ギュッ…
猫「ご主人様…っ、ご主人様…!」
男「…チロル」
男「(チロル…暖かい…)」
男「なんか良くわかんないけど、心配かけちゃったみたいだね。ごめん」ナデナデ
猫「いえ…っ、悪いのは全てチロルなのです…!」
男「…」
猫「私は…ご主人様と色んなことがしたかったのです。でも、ご主人様と一緒にいると…心臓が爆発してしまいそうになるんです…!」
男「心臓が…?」
猫「ご主人様が倒れたって聞いた時は、それ以上に爆発しちゃうかと思うぐらい、胸が高鳴りました。今までで一番、苦しかったです…」
猫「でも…ご主人様の寝顔を見た瞬間、急にギュッて抱き着きたくなりました」
男「うん…」
猫「私、気付いたんです。心臓が爆発しそうになるのも、苦しくなるぐらい、心配しちゃうのも、チュッてしたくなったり…ギュッてしたくなるのも…」
猫「ご主人様が、大好きだから…っ」
猫「!わ、私はなんてことを…!?す、すみませんっ///」ペコペコ
男「…すごく、嬉しいよチロル」
猫「…っ///」
男「俺ね、昨日の夜すごく寂しくて一睡も出来なかった。だから今、こんな状態なんだ」
猫「…」
男「そのことで気付いたんだ。あ、俺にはチロルが居なきゃ駄目なんだって」
猫「ご主人様…」
男「最初は、興味本意ってか…俺も男だから、チロルに酷いことをしそうになっちゃったけど、ちゃんと我慢だって出来てるんだよ」
男「前にも言ったよね?そのくらい、大事だって」
男「ある時、聞かれたんだ。チロルとはどんな関係なの?って。”従姉妹”って嘘を付くことを提案したのは俺のはずなのに、そう答えることが出来なかった」
猫「!(前に、あの女の人が言ってたこと…)」
男「…嫌だったんだ。嘘でも、チロルとの関係を”従姉妹”なんて言うのは」
男「もっともっと、俺の中では大切だから…」
男「チロルを拾った時から、俺は君に救われてたんだ。ずっとずっと、大切だったんだ」
猫「う…っ、ひっく…」
男「楽しい時も、寂しい時も一緒だった。ねぇ、チロル…俺もチロルのことが…」
?「良いところだけど、ちょっとそこでストップね」
猫「…!?」ビクッ
男「あ、あなたは…」
男「俺が、スーパーで会った人…」
猫「!ご主人様、会ったことがあるのですか!?」
男「チ、チロルこそ!」
?「…美味しかったわよ?」
男「は…?」
?「ホットケーキよ!あんな素晴らしい食べ物を嫌いだなんて信じられないわ!」プンスカ
男「あ…そ、そうですか」
猫「ホットケーキは美味しいです!」
男「!」
猫「ホ、ホットケーキはジャムを付けても美味し…」
男「チロル待って」
猫「ほぇっ?」
男「…この人、変だ」
?「ちょっと、そこの少年。酷いんじゃない?変かもしれないなら分かるけど、変って断定してるじゃない」ムッ
猫「そ…そうですよ、ご主人様」アワアワ
男「だって変だ。親しいわけでもないのに、チロルのことを猫だって気付いてる」
男「…」
猫「え?え?」アワワ
男「あなたは、一体何者なんですか?俺やチロルに話掛けたり、猫だって気付いてたり…」
?「んー」
?「”猫の神様”ってところかな?」
男「…は?」
猫「か、神様ですか!?」
男「…仮に、神様だとしましょう。あなたの目的は何なんですか」
?「頭痛を止めるのが目的よ」キッパリ
男「頭痛…?」
猫「頭が、痛いのですか」
?「そうよー?どこぞのかわいい猫ちゃんが”人間になりたい”って、強くつよーく願うもんだから、あたしの頭がズキズキしちゃってねー。大変だったんだから」
猫「…!///」
猫「ご、ごめんなさい…!」ペコリ
?「あー、良いのよ良いのよ。あんなに願う猫ちゃんなんて何百年ぶりだから、あたしも戸惑っちゃったの」クスクス
男「…だから、頭痛を止める為にチロルを人間にしたんですか」
?「そのつもりだったんだけどねぇー…」
男「…?」
男「人間にしたのに?」
?「どうやら、新しいお願い事が出来ちゃったみたいでね」チラッ
猫「…っ///」ビクッ
男「チロル…?どんなお願い事なんだ?それが叶うのなら、この人が俺達にまとまり付かなくても大丈夫になるらしいから聞いておきたいんだ」
?「さっきからいちいち酷いぞ、少年」
猫「…あ、あの…っ」
男「うん」
猫「ずっとずっと…人間として、ご主人様のおそばに居たいのです…!猫には戻りたくないのです…っ」
?「こらー、簡単に言うでない。ていうか、その”え?何?出来ないの?”みたいな表情やめてくれない?」
男「…無理、なんですか?」
?「無理ではないわ。叶えなきゃ、あたしの頭痛も収まらないし」
猫「…本当ですか!?」
男「やった…!」
?「ただし、条件付きなの。猫ちゃん、前に言ったわよね」
?「”良い子にしてれば、必ずあなたにとって、素敵なことが起こるわ。頑張ってね”って」
?「すっごく、すっごく良い子だったわ。だから、あなたのお願いは聞いてあげる」
「「!」」
?「でも、”あなたにとっては”って意味について、きちんとお話してからね」
猫「?わかりました」
男「…」
男「(どんな条件なんだ…)」
猫「は、はい…っ」
?「でも、それは”猫”との契約を断ってしまうことになるの。従って、」
?「猫で居た時の記憶も、あたしが今ここで願いを叶えてあげるまでの記憶も全て無くなるわ」
男「…!?」
男「…」
”ごめんなさい、覚えてないです…”
”鮭、ですか?私はホットケーキが好きなのです!”
”噴水ですかっ。初めて見ました”
男「(待て…。いつからだ?チロルが”にゃ”と呼ばなくなったのは…。いつからだよ、布団にもぐらなくなったのは…!)」
?「そう、ぜーんぶよ」
猫「…でも、それを我慢したら人間でいられるのですね!」
?「えぇ、ずっとね」
猫「…なら、私は…」
男「待てよ!」
猫「!」ビクッ
?「…」
猫「ご主人様…?」
男「俺と出会ったことも、初めて首輪を付けたことも…!」
男「…っ!」
”これ付けてると痒いですー…”
男「…一緒に、散歩しに行ったことも…」
”散歩…ですか?”
男「…くそ!全部全部、本当に忘れちゃうんだよ!」
男「…これから質問するから、答えて」
猫「…?」
男「君の、好きな食べ物は?」
猫「…ホットケーキです」
男「…好きなおもちゃは?」
猫「えっ?おもちゃって言えるかわかりませんが…テレビを見てるのが好きです」
男「…一番好きな場所は?」
猫「もちろん、ご主人様の隣なのですよ!」アセアセ
男「ほら…、消えちゃってるじゃないか…」
?「ね、だから言ったでしょう。”あなたにとっては”って」
猫「…ご主人様は、嬉しくないのですか?私がずっと人間でいられても」
男「そういう問題じゃないんだよ、チロル」
猫「…っ」
?「とにかく、三日だけ時間をあげる。その間にちゃんと話し合って決めなさいね。いい?仲良くしなきゃ駄目よ」
猫「は、はい…」
男「…出来っかよ…」
ガチャッ…
猫「た、ただいまです…」
男「…」スタスタ
猫「うぅ…」オロオロ
男「…座って」
猫「は、はいっ」ビクッ
…ストン
猫「へ…平気なんかじゃないですよ!」
男「じゃあ…何であんな平然と話なんか聞いてられたんだよ!!」
猫「…!」ビクッ
男「俺だけなのかよ…こんなに寂しいって感じてんのは…っ」
猫「…違う」ボソッ
男「俺達が過ごしてきた月日って、そんなに簡単に捨てられるものなのかよ…!」
猫「違うもん!!」
男「(チロルが初めて、叫んだ…)」
猫「…ご主人様、私は記憶が無くなってしまうことをとても辛いことだと思っていますし、今でも…心臓がまた痛いです…」
男「…」
猫「でも、人間でいれることが出来るのなら…私はその可能性に縋りたい…!ご主人様と、ずっと一緒に居たいのです!」
男「チロル…」
猫「こうやってお話が出来て、ご主人様と触れ合えて、笑うことが出来て…チロルはとても幸せなのです」
猫「猫の姿ではそんなこと出来ません…。私は、私は今の生活のほうが良いです…!」
男「…ううん。俺のほうこそ、わがままだったね。チロルの気持ちをきちんと考えてあげられてなかった」
猫「…大丈夫ですよ」
男「?」
猫「神様は、私だけの記憶を消すんです。ご主人様からは…私が消えることはないのですからっ」
男「(そうか…。記憶が消えるのはチロルだけ…)」
猫「…っ!は、はい…」
男「でも」
猫「…?」
男「無くなった記憶に、また新しく作り直した記憶を上乗せすれば良いだけの話」
猫「…」
男「俺が、ちゃんと覚えてるから。チロルに、また教えてあげるから」
猫「…ご主人様…っ」ポロポロ
男「うん、ごめんね。考えなしだった…」
猫「…でも、ご主人様が私のことも、今までのことも覚えてて下さるのなら…っ、大丈夫だと思ったのです…」
…ギュッ
男「うん、大丈夫。覚えてるよ。ちゃんと、教えてあげるから」
猫「どうか…どうか私のことを忘れないで下さい…ご主人様」ギュッ
男「これからずっと一緒に居られるんだから、忘れるわけないだろ?」
猫「…はいっ」コクリ
男「本当に一人で大丈夫?」
猫「はい!」
男「気をつけてね。あまり遅くならないようにするんだよ」
猫「みんなに”さよなら”を言いに行くだけですから、大丈夫なのですよ」ニッコリ
男「”またね”、だろ?」
猫「!そうでしたっ。また、会えますからね」ニッコリ
男「…どこから現れるんですか。いつもいつも」
?「神様だからそのぐらいへっちゃらなのよ」
…
男「あの、一つ疑問点が」
?「何よ」
男「普通、俺やチロルに関わった人間の記憶も無くすもんですよね?俺達が覚えてたら、チロルの記憶を無くしても意味がないと思うんですけど。また教えちゃえば」
?「あんた達から記憶を無くしちゃったら、猫ちゃんが人間になっても一人ぼっちになるじゃない!」
男「まぁ、そうなんですけど…」
?「んー、ホットケーキが美味しいって教えてくれた”お返し”かな」
男「…有り難く、受け取っておきます」ニッコリ
友「おー!人間になれんのか!良かったなぁ、チロル」ニカッ
猫「はいっ!でも…さっき話した通り、記憶が無くなっちゃうのです」
猫「また…お二人のことを忘れてしまいます」シュン
友「なら、また友達になれば良いだけの話じゃね?」
猫「え…?」
親「友の言う通りだよ。また皆でホットケーキ焼いて食べたりしようね」ニッコリ
友「今度はちゃんと綺麗に焼いてみせっからな!」
猫「親さん…、友さん…っ」ジーン
友「あ、じゃ今度こそはご主人様って呼んでもらおっかなー」
猫「駄目なのです!ご主人様だけの”特別”ですからっ」
友「ちぇ」
親「あははっ」
幼「え?記憶が消えるって今まで全部?」
猫「はいっ」
初「私達のことも…?」
猫「はい、ごめんなさい初ちゃん…」シュン
初「じゃ、またチロルちゃんが困ってたら助けに行かなくちゃ!」
猫「ほぇ?」
初「そして、またお友達になれば良いんだもの」ニッコリ
猫「初ちゃん…っ」
幼「俺とも、仲良くしてくれる?」
猫「もちろんです!」
猫「ありがとうっ、私は…私は本当に幸せ者です」ニッコリ
猫「…完全に迷子です」アワワ
猫「ど、どうしましょう…。あとお一人だけ…」
女「道のど真ん中で突っ立ってちゃ駄目でしょ」
猫「!いましたーっ」ジーン
女「な、何!?」ビクッ
猫「あ…あの…っ」
猫「(!この女の人は、私が猫だったことを知らないんでした…っ。)」
女「…もしかして、男君との惚気話でもしに来たの?」
猫「ちっ、違います!」
女「ふん。ま、良いけど。あたしだって良い男捕まえてやるんだから。その時は自慢しに行ってやる!」プンプン
猫「!ぜひお願いしますー!私に話掛けて下さいねっ」
女「はぁ!?普通は嫌がるとこでしょっ」アセアセ
ザァァァ…
男「はぁ…三者面談なんて、いらないのに」
スタスタ…
猫「うみゃぁ」
…ピタッ
男「…猫?」
猫「みゃー、みゃー」
男「捨て猫…だ。一人ぼっちじゃないか」
男「(…俺と一緒だ)」
猫「にゃあ…」
男「(これからもっと雨が強くなりそうだし…風邪引いちゃうだろうな)」
男「…俺と、一緒に住もうか。そしたら、お互い一人ぼっちじゃなくなるね」
猫「みゃぁ」
~
シーン…
男「…はぁ、夢か…」モゾッ
男「(いつのまにか、寝ちゃってたんだな…)」
ガチャッ
猫「ただいまですー!」
男「あ、帰ってきた」
猫「途中で迷子になっちゃったのですが、女さんに助けてもらったのでちゃんと帰ってこれました!」ニッコリ
男「(いつの間に仲良くなってたんだ…)」
猫「お名前をずっと聞くことができなかったんですけど、最後に…ちゃんと…」
男「大丈夫だよ。俺がまた教えてあげるから」
猫「!ありがとうございますっ」ニッコリ
猫「にゃあ」
男「ま、待って!ちゃんと拭かなくちゃ風邪引いちゃう」
ゴシゴシ…
猫「にゃ…」
男「珍しいなぁ。水、全然怖がらなかった」
猫「ふみゃぁ」
男「あははっ、気持ち良さそうだね」
猫「みぃ」
男「水は怖がらないし、気持ち良さそうな顔はするしで…何だか人間みたいだ」クスクス
~
猫「ん…。あ…あれ…」
男「疲れてたのか、あの後すぐ寝ちゃったんだよ」
猫「あ…そうなのですか…」
猫「…夢、を見ました」
男「へぇ、どんな?」
猫「猫と…男の子がお風呂に入ってる夢を…」
男「…え…?」
男「…チロル、俺を呼んで」
猫「は、はいっ!…えっと…」
男「…」
猫「あの…私は、なんてお呼びしていましたっけ?」
男「…っ」
男「(本当に、少しずつ色々なことがチロルの中から消えちゃってる…。大丈夫、落ち着け…落ち着くんだ)」
猫「あ、あの…」
男「…ご主人様、って呼んでくれてたよ」ニッコリ
猫「あぁ!そうでしたそうでしたっ」
男「(良かった…。まだ思い出せないところまでには到達してなかったんだな)」
男「自分の名前は、言える?」
猫「はい!私はチロルですっ。”ご主人様”が付けて下さったんですよね」ニコッ
男「…うん、そうだよ」
男「今日で、全ての記憶が無くなるんだ…」
”猫ちゃんが眠りについた時点で終わりよ。目が覚めた時には、ずっと人間でいられる権利が与えられているわ
男「…目が覚めた時には、記憶も無くなってるんだ」
猫「あ、あのっ」
男「ん?何?」
猫「この写真に写ってる、可愛らしい猫のお名前を教えて欲しいのですが」ニコッ
男「…」
男「!あぁ、ごめん…。ちょっとボッとしてた」
男「この子はね、”チロル”っていうんだ」
猫「私と同じお名前なのですね!」
男「…うん」
猫「どんな猫さんだったのですか!?」
男「明日、教えてあげる」
男「今、教えたって…意味がないからね…」ボソッ
猫「えっと…その…」
…
男「(とうとう、”ご主人様”が消えた…)」
男「大丈夫大丈夫…。今日さえ我慢すれば、チロルとずっと一緒にいられるんだ…っ」
猫「あの…」
男「…どうしたの?」
猫「何だか…眠いのです。おやすみしてもよろしいですか?」
男「!」
猫「な、何だかすごく眠くて」グシグシ
男「…って…」
猫「へ?」
男「待って…お願い…」ヨロ…
ギュッ…
猫「ど、どうしたのですか!?///」ドキドキ
男「まだ、まだチロルの中から消えたくないんだ…っ。お願いだから、もう少し待って…もう少しだけ、我慢して…っ」
猫「あ…えと…」オロオロ
ギュッ…
男「頑張って、心の準備するから…だからそれまでは寝たりしないで…。側に居て、チロル…」
猫「…分かりました」
男「チロル…」
猫「そんなお辛い声を出されている方を、チロルは放っておけるわけがないのです!お傍にちゃんと居ますからねっ」ニコッ
男「…ありがとう」
…。
おいやめろ
猫「…」
…チュッ
男「…チロル?」
猫「…きゅ、急にしたくなっちゃいました///」
”こ…こうすれば、元気が出ると思って…”
”私、気付いたんです。心臓が爆発しそうになるのも、苦しくなるぐらい、心配しちゃうのも、チュッてしたくなったり…ギュッてしたくなるのも…
ご主人様が、大好きだから…っ”
男「チロル…」
男「…ううん、むしろ…すごくうれしかった。ありがとう、元気が出たみたいだ」
猫「!それは良かったですっ」ニパッ
男「(俺がくよくよしててどうするんだよ…。ちゃんと支えてやらなきゃ)」
男「さ、ホットケーキでも焼いて食べようか」
猫「わ!嬉しいです」ニッコリ
猫「…むぅ」コクコク
男「(限界、だな…)」
男「チロル」
猫「…」
男「(…あぁ、そっか)」
トントン
猫「?」
男「もうそろそろ寝ようか。布団に入ろう」
猫「あ、はいっ」
男「寝る前に、ちょっと聞いてくれる?」
猫「はいっ、喜んで」
男「君の名前はチロルっていうんだ」
猫「可愛らしいお名前ですね。誰が付けて下さったのですか?」
男「もちろん俺だよ。センスあるでしょ?」
猫「はいっ」ニッコリ
男「(大丈夫。記憶が消えたって、こうやってまた話してあげれば良い話なんだ
から)」
猫「あははっ、”チロルちゃん”はおてんばさんだったのですねー」
男「こらこら。チロルは君だから」
猫「あっ、そうでした」クスクス
猫「他には、何か面白いエピソードってありますか?」
男「んー、色々あるからなぁ」
猫「じゃ、一番印象に残ってるもので!」
男「印象…に残ってるもの…」
男「今日はね、チロルにプレゼントがあるんだ」
猫「みゃぁ」
チャリ...
男「鈴もちゃんと付いてるんだよ。これで、どこに行ったかすぐ分かると思って」
猫「にゃー」
男「ピンク、気に入ってくれたかな?チロルに似合うかなーって考えながら選んだんだ」
猫「にゃ、にゃっ」
男「そっか、良かった良かった。今付けてあげる」ニッコリ
男「…よし!付いた」
猫「みゃー」
男「あ、やっぱり似合ってるよチロル。これで、正式に俺の家族になったね」
猫「にゃ、にゃ」スリスリ
男「あはは、くすぐったいよ」
~
猫「…?ど、どうかしましたか…?」
男「あ、ううん。何でもない」
男「(…泣くな泣くな。また心配させちゃうだけだ)」
猫「あの…今度は、私から色々お話したりしてもよろしいですか?」
男「え?い、いいけど…」
男「え…?」
猫「色んな事を忘れていますが、あなたを”好き”っていう思いはちゃんと…今でも心の奥底にあるちゃんとした気持ちです」
男「チロル…」
猫「あなたと同じ人間として、ずっと傍に居ることが私の何よりのお願いだったのです」
男「うん…」
猫「どうか、覚えていて下さい。私が忘れていても、私があなたを好きだったってことをきちんと思い出させて欲しいのです。”ご主人様”」
男「い…今俺のこと…」
猫「約束、して下さいますか?
男「…うん、約束するよ。約束するから…っ」
男「うん、頑張ったね。目を閉じても大丈夫だよ」
猫「おやすみなさい」
男「おやすみ、チロル」
猫「…今度はちゃんと、”恋人同士”になれたらいいなぁ」ポツリ
…
男「良い夢見てね。チロルの願い事は俺が必ず叶えてあげるから、安心してゆっくりおやすみ」
猫「わ…ここはどこなのでしょう」
猫「にゃー」
猫「わっ、可愛いのです!猫さんなのです!」ナデナデ
男「チロル」
猫「!にゃぁ」トテトテ
猫「あ…行っちゃいました…」
男「…?ほら、何してるんだよ。君もおいで」
猫「え?私も…ですか?」
男「だって、君も”チロル”だろ?」
猫「私も…?」
~
猫「わ、私は…記憶がないのです」
男「あぁ、そうなんだ」
猫「ご…ごめんなさい」
男「じゃ、俺がもう一回君に名前を付けてあげる」
猫「お名前を…下さるのですか?」
男「うん。忘れないでいて欲しいから」
猫「じゃ、私”チロル”が良いです!」
男「良いの?前と同じもので」
猫「はいっ、私は”チロル”ですから」
男「じゃ、君は今日からも、今日までも”チロル”ってことで」
猫「はい、ありがとうございます!」
男「忘れないでね。自分の名前」
猫「絶対に、絶対に忘れないのです!」
~
男「…ル、チロル」
女「ん…」
男「チロル、そろそろ起きて」
男「(大丈夫。ちゃんと、覚悟は出来てる)」
女「…」
男「おはよう。もうお昼だけどね」
女「…誰、ですか?」
”…!ご主人様、大好きですっ”
女「あの…ここはどこですか?」
”なぜ、お布団が2つあるのですか?いつもは1つでしたよ?”
男「…」
”…私、あなたのことが好きです”
女「あ、あの…」
”…今度はちゃんと、”恋人同士”になれたらいいなぁ”
男「初めまして。俺は男っていうんだ。君の、恋人だったんだよ」
女「私の…恋人…?」
男「うん。両想いだったんだ」
女「私と、あなたが…?」
男「そうだよ」
女「…そう、なのですか」
男「びっくりしちゃったよね、急にこんなことを言われて」
女「少し…だけ。でも…」
男「?」
女「なんだか、懐かしい感じがします。このお部屋…。そしてあなたも」
男「…」
女「初めまして、男さん。私の名前は”チロル”って言います」
End.
i | ミ.\ヾヽ、___ヾヽヾ |
| i 、ヽ_ヽ、_i , / `__,;―'彡-i |
i ,'i/ `,ニ=ミ`-、ヾ三''―-―' / .|
iイ | |' ;'(( ,;/ '~ ゛  ̄`;)" c ミ i.
.i i.| ' ,|| i| ._ _-i ||:i | r-、 ヽ、 / / / | _|_ ― // ̄7l l _|_
丿 `| (( _゛_i__`' (( ; ノ// i |ヽi. _/| _/| / | | ― / \/ | ―――
/ i || i` - -、` i ノノ 'i /ヽ | ヽ | | / | 丿 _/ / 丿
'ノ .. i )) '--、_`7 (( , 'i ノノ ヽ
ノ Y `-- " )) ノ ""i ヽ
ノヽ、 ノノ _/ i \
/ヽ ヽヽ、___,;//--'";;" ,/ヽ、 ヾヽ
ガチャ...
”ご主人様が帰ってきました!”
猫「みゃぁ」
男「…」スタスタ
猫「…?」
”元気がないようなのです…。また、”親戚”の方と喧嘩をしてしまったのでしょうか…”
猫「みゃぁ、にゃ」
”泣かないで下さい、ご主人様。辛い声をお出しにならないで下さい”
”あぁ、私はなんて無力なのでしょう…。こうやって、傍にいることしか出来ないなんて…”
猫「にゃ、にゃ」
男「…そうだったね、俺にはチロルが居るんだ…。大丈夫、大丈夫だよ。ごめんね」
”笑ってるのに、とても辛そうなご主人様”
ねぇ、愛しい愛しいご主人様。
私には、本当に出来ることは
これ以上何もないのでしょうか。
ご主人様と同じ”人間”になれば、
お力になれますか?
ずっと、傍に居ることが出来ますか?
愛して、あげられるのですか?
~
男「…あ、そろそろ時間だったね。ごめん、こんな時間まで起きてて」
”違うのですよ、ご主人様。ただ、元気付けたかっただけなのです”
男「今日は結構暑いからなぁ…。離れて寝たほうが良いかも」
猫「みゃ…にゃっ」
”嫌です…。嫌ですよ、ご主人様”
男「おやすみ、チロル」
”まだ…まだお話を聞いてあげたかったのに…っ”
ご主人様はいつも言って下さいました。
「傍に居てくれるだけで幸せだよ」と。
でも…チロルはもっと、ご主人様の為に尽くしたいのです。
もっと、もっと色んなことがしたいのです。
朝起きたら、ご主人様と同じ”人間”になってたら良いのになぁ…
…
猫「ご主人様、起きて下さい」
本当にすみません orz 重要な部分を忘れてました…
俺もこんな猫が欲しいぜヒャッハー
>>1乙です
次→猫「主様、起きて起きて!」
Entry ⇒ 2012.01.17 | Category ⇒ その他 | Comments (1) | Trackbacks (0)
姫「どこだ、ここは?」
姫「……」
ワイワイ……ガヤガヤ……
姫「……」オロオロ
姫「ここは、どこだ?」
姫「……困ったな」オロオロ
街頭テレビ『―――から来日中の姫君が迷子になったという情報がただいま入りました』
「彼女ー、ひとり?」
姫「なんだ?見ればわかるだろう?」
「うわ、外人じゃん」
姫「誰だ?」
「日本語うまいね」
姫「まぁな」
「俺とお茶しない?」
姫「茶だと?」
「そうそう」
姫「断る。何故、貴様のような下賎な輩と茶を交えなければいけない?」
「なんだよ、こいつ……」
姫「去れ。今なら見逃してやる」
「けっ、ブスが」
姫「ブス……?お前、死にたいのか?」
姫「……おのれ」
「なんだよ?」
姫「私に対して何たる暴言の数々。覚悟はできているのだろうな?」
「はぁ?どっかいけよ、きめえな」
姫「貴様……!!」
「ふん」スタスタ
姫「まて……!!」
ガヤガヤ……
姫「ちっ……見失ったか……」
姫「日本という国は慎ましやかところだと聞いていたが、どうやら間違った情報のようだな」
姫「……」
姫「帰りたい……」
姫「ここは、どこだ……」オロオロ
姫「ふむ……」トボトボ
姫「また景色が変わったな……」
姫「ここは静かで良い場所だ。先ほどのように空気や人が淀んでいない」
姫「んー……気に入った。ここに別荘でも建てようか」
猫「にゃー」
姫「ん?」
猫「にゃー」
姫「野良か。どこの国でも野に生きる者がいるのだな」
猫「にゃぁ」
姫「なんだ、纏わり付くな。服が汚れるだろう」
猫「にゃぁぁ」
姫「言葉が通じんか……しかたない。こほん」
姫「にゃぁー」
猫「にゃぁ?」
猫「にゃぁ」
姫「にゃー(分からぬのか、使えぬ駄猫めが)」
猫「にゃぁ」
姫「にゃー」
猫「にゃー」
姫「にゃぁ!!」
男「あの……」
姫「ん?」
男「すいません。俺の飼い猫になにか?」
姫「お前の猫か?」
男「はい」
姫「ならば、首輪ぐらいしておけ」
男「すいません。ほら、おいで」
猫「にゃぁ」
男「……あの」
姫「なんだ?」
男「えっと……もしかして迷子になってません?」
姫「迷子?私が?あはははは!!」
男「……」
姫「私を誰だと思っている。高貴にして壮麗の桜花とも言われているのだ。そんな私が迷子などと」
男「でも……」
姫「しつこいぞ」
男「すいません」
姫「それではな」
男「……」
姫「……」キョロキョロ
男「あの、どこに行こうとしてますか?」
姫「どこって……あれだ……風まかせだな。うん」
姫「もうよい。去れ」
男「……」
姫「ふむ……」キョロキョロ
男「あの、道案内でも……」
姫「くどい」
男「そうですか……」
姫「さらばだ」
男「はい」
猫「にゃー」
姫「……」
姫「……」オロオロ
姫「行くあてか……確かにないな」
姫「さて、どうしたものか……」
姫「椅子があるな」
姫「少し汚れているが、ま、問題はないか」
姫「ふぅ……」
姫「つかれた……」
姫「全く……私を置いて皆はどこへ行ったのだ」
姫「……」
姫「迷子……」
姫「ふん。ないない」
姫「私は迷子など、なっていない」
姫「ん?」
ブゥゥゥン……プシュ……
姫「なんだ、この大型の車は……」
姫「ああ、迎えか」
姫「すまんな」スタスタ
姫「ふむ……」
アナウンス『次は県立病院前。県立病院前です』
姫「……」
姫「おや?止まったな」
姫「ここで降りろということか」
姫「見知らぬ場所だが……」
運転手「あ。すいません、お金を」
姫「え?」
運転手「だから、お金を」
姫「いくらだ?」
運転手「240円です」
姫「……」
運転手「早くしてください」
姫「しばし待て……えーと……」ゴソゴソ
運転手「……」イライラ
姫「ふむ……ない」
運転手「え?」
姫「そもそも日本の硬貨をもっておらんかった……」
運転手「あのですね……」
姫「こまったものよぉ」
運転手「……これ、立派な犯罪ですよ?」
姫「謝罪しよう」
運転手「謝って済む問題じゃ―――」
おばあさん「ああ、ちょっと」
運転手「え?」
おばあさん「降りたいから、はやくしてほしいのですが」
運転手「あ、ああ。どうぞ」
おばあさん「じゃあ、480円払います。それでは……」
運転手「あの……」
おばあさん「さ、降りましょうか」
姫「うむ」
運転手「……」
おばあさん「今度からはお金を確かめてから乗らないとだめですよ?」
姫「お前は、誰だ?」
おばあさん「ちょっと腰が悪いおばあちゃんよ」
姫「私の祖母か。まさかこのような国にいようとは……」
おばあさん「あはは。面白い人」
姫「身内とはいえ、礼をしなくてはな」
おばあさん「いいですよ」
姫「やらせろ」
おばあさん「そう?―――じゃあ、病院まで話相手になってもらいましょうか」
姫「よかろう。なんでも話せ」
姫「そうだろう。手入れは欠かしていない」
おばあさん「そうですか」
姫「お前も中々、肌艶がいいな。その歳で男でも侍らせているのか?」
おばあさん「いやいや。そんなことないですよ。うちの孫がいい子でね。よく遊びにきてくれるの」
姫「ちょっと待て。孫とは私のことだろう?」
おばあさん「いいえ。もう一人の孫よ」
姫「……?」
おばあさん「うちで飼っている猫が好きでね。よく相手してもらっているのよ」
姫「そうか」
おばあさん「ちょうど、貴方ぐらいの年齢ね」
姫「私と兄妹になるのか?」
おばあさん「ちょうどそのくらいかもしれないわね」
姫「そうか。折角だ、挨拶ぐらいはしておきたいな」
おばあさん「そう。よろこぶと思いますよ」
おばあさん「ありがとう。楽しかったわ」
姫「そうか」
おばあさん「それじゃあ、ちょっと行ってくるから」
姫「分かった。気をつけてな」
おばあさん「はい」
姫「……」
姫「ふむ……」キョロキョロ
姫「椅子があるな」
姫「どうせやることもない。待つとするか」
姫「……ふぅ」
幼女「……」ジーッ
姫「……なんだ?」
幼女「しゃべった……」
姫「喋るに決まっている。かかしではないぞ」
姫「そうだな。日本の人間ではない」
幼女「へえ……」
姫「……」
幼女「おねえちゃん」
姫「なんだ?」
幼女「これよんで」
姫「母上がいるだろう」
幼女「いま、おいしゃさんのところにいるからだめなの」
姫「どうした?体でも悪いのか?」
幼女「うん。そうみたい」
姫「そうか。大変だな」
幼女「おねえちゃん、ごほんよんで」
姫「……」
幼女「……」
幼女「しらない」
姫「日本の童話には少しうるさくてな。いいか?桃太郎は桃から生まれたとされている」
幼女「……」
姫「そもそもどうして桃から生まれたなどという奇抜な設定が生まれたのか」
姫「この桃というのは元来―――」
幼女「つまんない」
姫「なに?!」
幼女「……ふわぁ」
姫「おのれ……」
幼女「おやすみ……」
姫「あ、こら。私の足を枕にするな!」
幼女「すぅ……すぅ……」
姫「なんだこの無礼者は……」
姫「……」
姫「……」ウトウト
母「あの……」
姫「ん……?だれだ?」
母「すいません。うちの娘が……」
姫「ああ、気にするな。足が痺れただけだ」
母「ほら、起きなさい」
幼女「ん……あ、お母さん」
姫「体は良いのか?」
母「え?」
姫「大病を患っているのであろう?」
母「あ……はい」
姫「ふむ……辛いだろうが気を落とすな」
母「どうも」
幼女「おねえちゃん、バイバイ」
姫「来たか。ほら、帰るぞ」
おばあさん「え?」
姫「私の弟が……いや、兄か?とにかく血族がいるのだろう?」
おばあさん「ふふ、どこまで冗談なの?」
姫「冗談?」
おばあさん「一緒に帰りましょうか」
姫「ああ」
おばあさん「行きましょう」
姫「お前も病気なのか?」
おばあさん「ええ。歳には勝てないみたいで」
姫「そうか。ま、気にすることはない。傍から見れば十分に元気だ」
おばあさん「ありがとう」
姫「それにしても私の兄妹か……一体、どんな人物なのやら……」
おばあさん「ただいま」
男「おかえ―――うわぁ!!」
姫「お前か」
おばあさん「あら、お知り合いだったの?」
姫「少しな」
男「ど、どうして……?」
姫「で、お前、年齢は?」
男「20歳だけど……?」
姫「そうか。では、私の兄だな」
男「え?」
おばあさん「さ、あがって」
姫「にしても埃っぽい家屋だ。もう少しマシな家を建てられなかったのか?」
男「ばあちゃん、この人……」
おばあさん「おもしろい人でしょ?ふふ」
おばあさん「お茶です。お口に合えばいいのですけど」
姫「頂こう」
男「……」
姫「うむ。まずいな」
男「……正直ですね」
姫「だが、温まる。これはこれで良いのもかもしれんな」
おばあさん「ありがとうございます。では、私はこれで」
男「ばあちゃん、部屋までついていくよ」
おばあさん「いいから。アンタはその人の相手をしてあげて」
男「でも……」
おばあさん「いいお嫁さんになるかもしれないよ?」
男「な……!?」
猫「にゃあ」
姫「お前もいたのか。飼い猫にしては凛々しいな」
猫「にゃぁ」
姫「腹を見せてどうした?」
男「撫でて欲しいんじゃないですか?」
姫「ほぉ?」
猫「にゃあ」
姫「こうか?」グシャグシャ
猫「ふしゃーー!!」
姫「何を怒っておる?」
男「そんな乱暴にするから」
姫「猫の癖に生意気な奴だな」
男「……」
姫「兄よ」
男「え?」
姫「茶のおかわりだ。はやくしろ」
姫「すまんな」
男「……」
姫「……あいつな。冷ませ」
男「自分でやってくださいよ」
姫「私の兄であろう?冷ませ」
男「なんで俺があなたの兄なんですか……」
姫「血縁上、そうらしい」
男「だれがそんなことを……」
姫「お前の祖母だが?」
男「……」
姫「……冷ませ」
男「はいはい……」
男「ふー……ふー……はい」
姫「おい。全然、冷めてないぞ。兄のくせに使えんな」
姫「どうとは?」
男「迷子、なんでしょう?」
姫「まだいうか?」
男「だって……」
姫「確かにどこにいけばいいかわからんが、迷子ではない」
男「そういうのを迷子っていうと思うんですけど」
姫「兄よ。そうやって妹を貶めて楽しいか?」
男「いや……そういうことじゃないけど」
姫「もうよい。兄とはどんな人物かと思って期待していたのに……」
男「……」
姫「猫のほうがまだ理性的だ」
猫「にゃぁ」
姫「にゃあ?」
男「なんなんだ……この人……」
男「……」
姫「なにか余興はないのか?」
男「そうだ。買い物にいかないと」
姫「買い物?」
男「ええ。ばあちゃんにごはんをつくらないと」
姫「兄は料理ができるのか?」
男「少しだけですけど」
姫「ほお……すばらしいな」
男「え?」
姫「そうかそうか……料理ができるか」
男「なんですか?」
姫「私に出来ぬことをやる。兄とはそうでなくてはな」
男「……とりあえず買い物に行ってきます」
姫「私もいく。兄よ、今まで離れていたのだ。しばらくは一緒にいてやるぞ?」
姫「ここは嫌いだ。空気が淀んでいる……」
男「じゃあ、帰ってもいいですよ?」
姫「ならん。兄よ、これからは兄妹の時間を大切にせよ」
男「……」
姫「なんだ?」
男「別に……」スタスタ
姫「うむ……あれはなんだ……?」フラフラ
男「あ、どこに行くんですか?」
姫「この人形はなんだ?カエルのような……そうでないような……」
男「薬局のマスコットです」
姫「ほぉ……これが噂にきく招き猫か」
男「猫じゃないし……」
姫「む?あっちはなんだ?」フラフラ
男(迷子になるわけだ……)
姫「ほお……すごいな。色とりどりだ」
男「貴女の国にはこういうところないんですか?」
姫「あるが。ここまで品物が揃って居る場所は殆どない」
男「そうなんですか」
姫「日本は豊かだな、兄よ」
男「そうですね」
姫「うむ。うまそうな果実だ。どれどれ……あーん……」
男「駄目ですよ」
姫「何故だ?日本には試食という文化があると聞いているが?」
男「それは……むこう」
姫「ん?」
「どうぞー!!食べていってくださいねー!!どうですかー!?」
姫「なるほど……向こうだな」トテトテ
男「あ、ちょっと」
「はい!」
姫「……」モグモグ
男「もう……」
姫「うむ……悪くない」
「そちらの方もどうですか?」
姫「兄よ。あーん」
男「いいですよ」
姫「私の好意を無碍にするか?怒るぞ?怒ると私は怖いぞ?」
男「はいはい……あーん……」
姫「ほれ」
男「……」モグモグ
姫「どうだ?」
男「美味しいですね。―――すいません、これ一袋もらいます」
「ありがとうございますー」
姫「兄よ」
男「なんですか?」
姫「これはなんだ?」
男「チョコレートですけど」
姫「よし」
男「駄目です」
姫「何故だ」
男「自分で買ってください」
姫「兄よ。妹に対して冷たくないか?あれか。ずっと離れていたから妹に思えないのだな?」
男「俺たちは別に兄妹ってわけじゃあ……」
姫「チョコレート……」
男「甘いの好きなんですか?」
姫「うむ。美味しいな!」
男「……どうぞ。でも、一個だけですからね」
姫「……」モグモグ
男「美味しいですか?」
姫「この国のチョコは美味だ。口内に残る香りが鼻腔を通るときが最も至福を感じることが出来る」
男「よかったですね」
姫「ああ。私は今、幸せだぞ。兄よ」
男「はいはい」
姫「……」モグモグ
男(この人、これからどうするんだろう……?)
姫「うまいなっ!」
街頭テレビ『―――速報です。迷子になった姫君に関し有益な情報を提供してくれた方に100万円の報奨金を出すと発表がありました』
男「ただいまー」
姫「戻ったぞ」
おばあさん「おかえり」
男「今、ごはん作るから」
おばあさん「悪いね」
姫「兄よ。手伝えることはあるか?」
男「え?」
姫「なんでも言ってくれ。妹は兄に従順であるべしと書物に書いてあった」
男「そうなんですか……じゃあ……」
姫「うむ」
男「野菜でも切ってもらえますか?」
姫「いいだろう。任せろ」
男「お願いします」
姫「よしよし」
姫「はぁ!!!」ダンッ!!
男「あぶない!!」
姫「なんだ?」
男「こうやって切るんですよ……」トントン
姫「ふーん」
男「いや……ふーんじゃなくて」
姫「わかった」
男「本当ですか?」
姫「こうだな?」ダンッ
男「そんな力いっぱいに切ったら駄目ですって!!」
姫「そうはいうがな……」
男「包丁、触ったことないんですか?」
姫「ないぞ」
男「……」
おばあちゃん「いつも悪いね」
男「いいから。さ、食べよ」
おばあちゃん「ええ」
姫「大母上よ。聞いてくれ。この野菜は私が切ったのだ。すごいだろう?」
おばあちゃん「ええ。すごいわ」
姫「ふふん」
男「形も大きさもバラバラですけどね」
姫「口に入れば同じだろうに」
男「そうですかね……」
おばあさん「そういえば、今日はどうするのかしら?」
姫「え?」
おばあさん「お家に帰る?」
姫「いや。折角こうして会えたのだ。私は兄といるぞ」
男「え……」
おばあさん「じゃあ、貴女はこの部屋を使ってね」
姫「しかし、兄と同室がいいのだが」
おばあさん「あの子、照れ屋だから無理よ」
姫「そうか。なら、仕方ないな」
おばあちゃん「おやすみ」
姫「ああ、ゆっくり休め」
おばあさん「はい。おやすみ」
姫「……」
姫「このように狭い部屋があろうとはな」
姫「窮屈だが悪くない」
姫「それにしても……」
姫「あいつらはちゃんと私を迎えにきてくれるのだろうな……?」
姫「兄とここで暮らすのもいいが、自国のこともあるからな……」
姫「……」ムクッ
姫「……」フラフラ
姫「トイレはどこだ……?」
姫「……」フラフラ
男「あ、どうしたんですか?」
姫「トイレはどこだ、兄よ」
男「えっと。突き当りを左にいったところです」
姫「わからん。案内しろ」
男「なんで……」
姫「いいから」
男「わ、わかりました」
姫「……」ギュッ
男「え……?あの、服を引っ張らないでください。伸びますから」
姫「いいから、案内しろ。この廊下は寒いし暗い。道に迷ってしまいそうだ」
姫「ここか」
男「それじゃあ」
姫「うむ。ご苦労」
男「……」
ガチャ……バタン
姫「ふぅ……」
姫「……」
姫「この便座……温かいな」
姫「どういうからくりだ……?」
姫「中々どうして落ち着くではないか……」
姫「ほぅ……」
姫「なんだ?ビデ……?」
姫「なんとも卑猥なボタンだ」
姫「……」ポチッ
男「あの人、普通じゃないよな……」
男「なんか上品だし……口は悪いけど……」
男「浮世離れしているところもあるし」
男「……ま、可愛いからいいけど」
ひゃぁぁぁぁぁ!!!!!
男「!?」ビクッ
男「なんだ……?」
ドタドタ!!
姫「あにぃ!!どこだぁ!!でてこい!!」
男「え……?」ガチャ
姫「あに!!」
男「どうした―――うわぁ!!!下、下、はいてください!!」
姫「なんだあの装置は!?いきなり辱めにあったではないかぁ!!」
男「と、とにかく下を!!!」
男「しりません」
姫「全く……もうお嫁にいけんぞ」
男「なんで……」
姫「まさか局部に放水されるとは……」
男「……」
姫「兄よ。よければ、大事になる前に私を娶るつもりはないか?」
男「ないです」
姫「そうか」
男「はやく部屋に戻ってください」
姫「兄は私のことが嫌いなのか?今日一日、まともに話してくれんではないか」
男「いや……そういうことじゃなく……ただ慣れてないだけです」
姫「なれていない?」
男「その……女性と話すのが」
姫「なんだ。そうか。だが、私は妹だ。気兼ねなく話しても良いのだぞ?」
姫「では、失礼する」
男「あ、そうだ」
姫「なんだ?」
男「ばあちゃんの付き添い、ありがとう」
姫「なんだ、そのことか」
男「ばあちゃん、楽しかったって」
姫「喜んでくれてなによりだ」
男「おやすみなさい」
姫「うむ。よい夢を」
男「……」
男「ちゃんと説明しとかないと、いつまでも兄だと思われるな……」
男「……」
男「悪い気はしないけど、やっぱり言わないとな……」
姫「ふわぁ……もう寝ようか」
猫「にゃあ」
姫「お前も来たか……」
猫「ふにゃ……」
姫「よいぞ。ともに寝るか」
猫「にゃぁ」
姫「よし……」
姫「ほら、こっちにこい」
猫「にゃあ……」ヒョコヒョコ
姫「おやすみ……」
猫「にゃあ……」
テレビ『では今朝のニュースです』
姫「ほう、今日も病院にいくのか?」
おばあさん「ええ」
姫「付き合おう」
おばあさん「いいのよ。家に居てくれて」
姫「気にするな」
おばさん「そう?」
姫「兄も行くだろ?」
男「え?」
姫「いくだろ?」
男「あ、うん」
おばあさん「うれしいわ」
姫「大母上のためだ」
男「……」
姫「よかろう」
男「……あの」
姫「なんだ、兄よ?」
男「えっと……言っておきたいことがあるんです」
姫「なんだ?申してみよ」
男「俺たちはその……兄妹じゃない」
姫「え?」
男「似ても似つかないし。きっと貴女が勘違いしているだけだと思う」
姫「父上は何人も浮気相手がいたから、その浮気相手との間に生まれたわけでもないのか?」
男「違うとおもう。うちの両親は随分前に死んだから」
姫「ふむ……」
男「なに?」
姫「兄よ。妹が有能だからと否定することはないだろう?」
男(駄目だ……決定的な証拠でもないと信じてくれそうにないな)
おばあさん「それじゃあ、行ってくるわね」
男「うん」
姫「ゆっくりでいいぞ」
男「さてと……」
姫「あ」
幼女「おねえちゃんだ」
姫「お前も来ていたか」
幼女「うん」
男「知り合いですか?」
姫「膝枕をしてやった仲だ」
男「膝枕?」
幼女「おねえちゃん、ごほんよんで」
姫「まかせる」
男「い、いやですよ」
男「貴女が頼まれたんでしょう?」
姫「そうだが」
幼女「ごほん……」
姫「はいはい……えーと……これは……?」
幼女「しらない」
姫「むぅ……」
男(意外と面倒見がいいのかな……?)
姫「えーと。昔々、あるところにおじいさんとおばあさんが……ってこれ桃太郎ではないか」
幼女「うん」
姫「何故、同じ奴をもってくる。他のにしたらどうだ?」
幼女「だって。おねえちゃんよんでくれなかったもん」
姫「解説をしようとしたらお前が寝てしまったのだろうが」
幼女「よんでー」
姫「よかろう。今度こそ私の講義を最後まで聞くのだぞ」
男「ちょっと」
姫「兄も聞いていくか?」
男「いや。その本にある文章を読んであげればいいじゃないですか」
姫「だから、私が詳しい背景を交えてだな」
男「そんなの誰も聞きたくないですって」
姫「なんだと……?」
幼女「……」コクコク
姫「じゃ、読まん」
幼女「え……」
姫「私のやりかたに文句があるのなら読まん」
男「我侭だ……」
幼女「……」ジーッ
姫「……」
姫「……おじいさんは山に芝刈りに、おばあさんは川に洗濯にいきました」
幼女「すぅ……すぅ……」
男「寝ちゃいましたね」
姫「こやつ……」
男「貴女の声が素敵だからですよ」
姫「なんだと?」
男「優しいというか、落ち着くというか、とにかくずっと聞いていたくなる声ですね」
姫「そうなのか?そんなこと言われたことなかったな」
男「そうなんですか?」
姫「ああ。演説をすることもあったが、声を評価されたりはなかった」
男「演説?」
姫「うむ」
男「それって―――」
母「あ、また」
姫「おお。こやつの母上か。また、世話してやったぞ。感謝せよ」
男「でも、今は気持ちよさそうに寝てますから……そっとしておきましょうか」
姫「なに?兄よ。この娘は今、私の足を枕にしておるのだぞ?」
男「いいじゃないですか」
姫「しかしだなぁ……」
母「あの、よければ少しの間だけ寝かせてあげてください」
姫「何故だ?足が痺れて大変なのだが……」
母「えっと……それはこの子が疲れているから」
男「疲れている?」
母「ええ……」
幼女「すぅ……すぅ……」
姫「どういうことだ?」
母「この子、体が生まれつき弱くて、こうして病院にも頻繁に来ているんです」
男「そうだったんですか」
姫「待て。母上のほうが病を患っているのではないのか?」
姫「そうなのか」
母「少し歩いただけで息切れしたりするし……」
姫「治るのか?」
母「先天的なものですから、難しいかと」
姫「ふむ」
男「すいません。そんな話を……」
母「いいえ。気にしないでください」
幼女「ん……あれ?お母さん……?」
母「あ、起きた?」
幼女「うん……」
姫「はよ頭をどけろ。痺れてかなわん」
幼女「あ、ごほんは?」
姫「続きはまた今度だ」
幼女「うん。やくそくだよ、おねえちゃん?」
男「大丈夫だった?」
おばあさん「ええ」
姫「よし。帰るか」
おばあさん「ごめんなさいね」
姫「構わん」
男「……」
姫「なんだ、兄よ」
男「いえ……」
姫「ふむ。では買い物でもして帰ろうか」
おばあさん「そうね」
男(やっぱりこの人、普通じゃないな……)
テレビ『―――続いてのニュースです』
男「あ、ちょっと待ってください!!」タタタタッ
テレビ『先日から行方不明になっている姫君に関しての情報は―――』
姫「……」モグモグ
男「チョコレート、美味しいですか?」
姫「うむ」
男「あ、そういえば」
姫「なんだ?」
男「着替え……」
姫「心配いらぬ。下着は大母上のを―――」
男「だめでしょそれぇ!?」
姫「何故だ?」
男「なんかこうビジュアル的に……」
姫「この国の下着は素材が素晴らしいな!」
男「想像しないようにしないと……」
姫「ふふん」モグモグ
男「……」
男「んー?」
姫「暇だな」
男「そうですね」
姫「兄よ。でかけるぞ」
男「え?」
姫「支度せよ」
男「ちょっと、どこに行くんですか?」
姫「いいからこい」
男「もう……ご飯の買出しは済んでるんですよ?」
姫「暇なのであろう?では、兄として妹の我侭に付き合うのが筋だ」
男「なんて横暴……」
姫「行くぞ」
男「わかりました」
姫「……ふむ」
姫「よし」
男「どこに行くんですか?」
姫「こっちだ」
男「はい?」
姫「……」トテトテ
男「……?」
姫「兄よ、あったぞ!!カエルだ!!」
男「薬局……?」
姫「失礼するぞ」
「いらっしゃいませ」
男「ここに何の用が?もしかして……あの、生理用品とか?」
姫「兄よ。デリカシーの欠片もないな」
男「だって……」
姫「もうよい。兄は黙っておれ」
「なんでしょうか?」
姫「万病に効く薬はあるか?」
「は?」
男「ちょっと!何を言ってるんですか!!」
姫「ええい、うるさい奴だ」
男「いや、万病に効くとか意味分かりませんから」
姫「ここは薬屋なのだろう?それぐらいおいているはずだが?」
「ええと、風邪薬ですか?」
姫「違う。なんにでも効く薬が欲しい」
「はぁ……?」
姫「ないのか?」
男「あるわけないでしょ?」
「総合剤ってことでいいんですかね?それならありますよ」
姫「ほら、あるではないか。兄よ、会計を頼むぞ」
姫「うむ。あの娘と母上にせめてもの贈り物だ。何度も病院通いなど辛いであろうからな」
男「あ……なるほど」
姫「だから、頼むぞ。私は生憎とお金がないからな」
男「家に帰ればいいのに」
姫「私の家はこの国にはない」
男「警察、いきます?」
姫「私はなにも悪いことはしていない」
男「でも……」
姫「それに私は兄ともう少し一緒に居たいからな」
男「……」
姫「どうした?」
男「い、いえ……なんでも……」
姫「そうか?」
男(一瞬、どきってした……)
男「―――それじゃあ料理の支度をします」
姫「よしきた」
男「貴女は座っててください」
姫「なんでだ!」
男「危なっかしいからです」
姫「兄よ!!拒絶するのもいい加減にしろ!!」
おばあさん「ふふ……」
テレビ『では、続いてのニュースです』
おばあさん「あら……?」
テレビ『昨日から行方が分からなくなっている姫君は、今日県立病院でそれらしい人物を見たと目撃情報がありました』
おばあさん「ねえ、ちょっと」
姫「どうした?」
男「え?」
テレビ『三日後には日本国民へ向けての親和演説を控えており―――』
姫「そうだな」
男「……」
姫「なんだ?」
男「お姫様……?!」
姫「うむ。だが、兄よ。気後れすることはない。身分は違えど血を分かつ者ではないか」
男「いやいや」
おばあさん「お姫さまだったのね……」
姫「知らなかったのか?大母上のくせに」
おばあさん「ごめんなさい」
姫「まあよい。私は気にしない」
男「あの……今から連絡して貴女のことを迎えにきてもらうようにします!!」
姫「こらこら。兄よ。いったであろう?私は兄ともう少し一緒にいたいとな」
男「だけど……!!」
姫「焦らなくても向こうも血眼で捜している。居場所が分かるのも時間の問題だ」
姫「この薬も娘に渡したいし、約束もある」
男「でも、いろんな人に迷惑がかかってるんじゃないんですか!?」
姫「それは……」
男「やっぱり連絡を……」
姫「兄よ」
男「……」
姫「妹としての最後の我侭をきいてくれないか?」
男「……」
姫「頼む」
男「……わかりました」
姫「ありがとう、兄よ」
男「だけど、薬を渡したらすぐに連絡しますからね」
姫「うむ。了承した」
姫「……」トテトテ
男「なにを?」
姫「おお、兄か」
男「……」
姫「明日、私はもうここに帰ってこれない」
男「……そうですね」
姫「そう思うと少しばかり感慨深い」
男「あの……」
姫「すまなかったな、兄よ」
男「え?」
姫「よくぞ一日だけとはいえ兄として振舞ってくれたな」
男「それは……」
姫「もう会うことはないと思うが、元気でな」
男「うん……」
男「あの」
姫「ん?」
男「俺も妹ができたみたいで嬉しかった。我侭すぎるのが玉に瑕だったけど」
姫「言ってくれるな」
男「本当のことですよね?」
姫「そうか?意識したことがないからなぁ」
男「本当に……」
姫「病院……一緒にいってくれるか?」
男「はい」
姫「そうか。では明日、病院を出るまでは兄妹だな」
男「そうなりますね」
姫「よろしく頼むぞ、兄よ」
男「わかりました」
姫「では行ってくる」
おばあさん「気をつけてね」
姫「心配はいらない。兄がいるからな」
男「まあ、はい」
おばあさん「全然似てないけど、本当に兄妹みたいね」
姫「当然だ。兄妹だからな」
男「ばあちゃん、お昼には帰ってくるよ」
おばあさん「わかったわ」
男「じゃ、いきましょうか」
姫「うむ!急ぐぞ!!」
男「あ、ちょっと腕を引っ張らないでください!」
姫「いそぐぞー!」
姫「さてと……」キョロキョロ
男「いないみたいですね」
姫「そうだな……」
男「今日は来てないんじゃ?」
姫「そういう可能性もあったか……」
男「そりゃあ……」
姫「ふむ……」トテトテ
姫「おい」
看護師「なんですか?」
姫「いつもあそこで絵本を抱えていた少女がいただろう?今日は来てないのか?」
看護師「ああ、あの子なら……」
姫「なんだ?」
看護師「昨日、緊急入院になったんです」
姫「入院?」
姫「―――邪魔するぞ」
母「あ……」
男「すいません」
母「いえ……」
姫「何事だ?」
母「昨日、突然高熱が出て……」
姫「死んでないのか?」
母「今は寝ています」
姫「……」
幼女「すう……すぅ……」
姫「では、この薬を」
母「え……?」
姫「目が覚めたら飲ませてやってくれ。きっと元気になるぞ」
母「ありがとう……ございます……」
姫「うむ」
母「失礼します」
男「残念……でしたね」
姫「母上に渡せただけでもよかろう」
男「……」
姫「絵本を読む約束は……どうやら果たせそうにないな……」ナデナデ
幼女「すぅ……すぅ……」
男「あの」
姫「なんだ?」
男「約束果たすまで居ましょう」
姫「え……?」
男「約束したのにそれを守らないのは一国の姫君としてはどうでしょうか?」
姫「うむ。兄よ。流石だな。確かに一度交わした約束を完遂できなくては恥ずかしくて演説もできない」
男「なら、連絡するのはこの子に桃太郎を読ませたあとでってことで」
姫「気にするな。また来る」
母「きっと娘も喜びます」
姫「うむ」
男「ではまた」
母「はい」
姫「―――ふふん、兄もいいところがあるな」
男「まあ、あの子のためでもありますから」
姫「そうか……優しいな」
男「そんなこと……」
姫「私の兄が優しくてよかった。誇りに思うぞ」
男「だから……」
黒服「―――姫様」
姫「あ……」
黒服「お怪我はありませんか?」
黒服「君は?」
男「あの……」
姫「こやつは私に良くしてくれた。なにもされてはおらん」
黒服「しかし……」
姫「くどい」
黒服「……わかりました」
姫「―――というわけだ。ここまでだな」
男「え……」
姫「楽しかったぞ?」
男「ちょっと約束はどうするんですか!!!」
姫「考えておく」
男「そんな……!!」
黒服「では行きましょう」
姫「うむ」
黒服「姫様、本当に何もされていませんか?」
姫「だから、されておらんと言っておるだろう」
黒服「なら、いいのですが」
姫「ふん……」
黒服「二日後の演説に間に合ってよかったです。あれはわが国と日本を繋ぐ演説になりますからね」
姫「そうか」
黒服「……あの男は何者だったのですか?」
姫「私に尽くしてくれた者だ。あとで謝礼を送っておけ」
黒服「わかりました」
姫「……」
姫「楽しかったぞ……兄よ……」
姫「さよなら……」
男「ただいま……」
おばあさん「おかえり」
男「……ごはん、つくるよ」
おばあさん「そうかい」
男「……」
おばあさん「……帰ったのかい?」
男「うん……」
おばあさん「そう……」
男「……」
おばあさん「少し寂しいね」
男「一日だけだったのにな」
おばあさん「そんなものだよ」
男「そっか」
おばあさん「ほら、中継がはじまったよ」
男「あ、うん」
姫『親愛なる日本の皆様へ―――』
男「……」
おばあさん「やっぱり衣装が違うと見違えるねえ……」
男「うん……」
姫『わが国と日本の架け橋をなるべく、私はやってきました』
男「さてと、お茶でもいれるよ」
おばあさん「お願いね」
姫『これからは手を取り合い、ともに繁栄を―――』
幼女「あ、お姉ちゃんだ」
母「ほんとね」
姫『―――以上で私の演説を終了します』
パチパチパチ
ガラッ
姫「ふう……よかった。起きていたか。寝ていれば洒落にならなかったぞ」
幼女「え?」
母「あ、あなた!?」
黒服「姫様……」
姫「外に出ておれ」
黒服「これがバレたら……」
姫「分かっている。だが、約束を果たすのもまた姫君としての務めだ」
黒服「分かりました。ですが、20分だけですよ」
姫「うるさいな。分かっているといっているだろう」
姫「生放送の演説で桃太郎でもよかったのだが、どうしてもこの国の偉い奴らが許してくれなくてな」
幼女「……」
姫「とりあえず、演説は録画したものを放送することにした」
母「でも……これ、生って……」
姫「そんなもの嘘だ。勿論、公に知られてはただ事ではないが」
母「そんなことまでしてもらっては……!!」
姫「気にするな。人一人の約束も守れず、親和を語るなど私にはできない」
母「……」
幼女「おねえちゃん!」
姫「時間がない。読むぞ」
幼女「うん!」
姫「寝るなよ?」
幼女「寝ない!」
姫「よしっ。いい返事だ。今、読み聞かせてやろう」
幼女「すぅ……すぅ……」
姫「こいつぅ……!!」
母「す、すいません!」
姫「仕方ない。続きはまたの機会だな」
母「え?」
姫「では、これで失礼する」
母「あの……本当になんと言ったらいいか……」
姫「私が勝手にしたことだ。気にすることはない」
母「あと……お薬も大事に使わせていただきます」
姫「ああ、存分に使え。賞味期限とかあるかもしれんから早めに飲めよ?」
母「ふふ……」
姫「では、さらばだ」
母「はい」
幼女「すぅ……おねえちゃん……つづきぃ……すぅ……」
黒服「姫様、もう無茶なことはおやめください」
姫「なあ。一つ、私が朗読するから感想を聞かせてくれ」
黒服「え?」
姫「いいか、いくぞ?」
黒服「あの……姫様……?」
姫「感想をいうだけでいいのだ。簡単だろう」
黒服「まぁ……はい」
姫「いいな?読むぞ?」
黒服「は、はい」
姫「ごほん」
姫「―――昔々あるところに」
黒服「……」
姫「どうだ?」
黒服「演説のときにはない声質ですね」
姫「具体的には?」
黒服「えっと、透明感があって、耳を撫でる風のような心地のよい読み方です」
姫「そうか」
黒服「あの……それがなにか?」
姫「私の朗読を何かに録音しろ」
黒服「は、はい?」
姫「ある男に言われたのだ、君の声はずっと聞いていたくなる声だとな」
黒服「そ、それで?」
姫「ならば、私の声を聞かせてやろうと考えた」
黒服「え?」
姫「CDにするんだ。私の朗読をな。―――そうしたら、あの娘との約束も同時に叶うかもしれん」
ピンポーン
母「はーい」
男「どうも」
母「あ、どうしたんですか?」
男「これ、あの子に渡そうと思って」
母「それは……」
男「もしかして……もう買いました?」
母「ええ。娘に懇願されて」
男「ですよね……」
幼女「おにいちゃんだ。こんにちは!」
男「こんにちは。あのCDもう聞いた?」
幼女「うん!おねえちゃんの声、いつでもきけるよ!!」
男「そうだな」
母「素敵ですよね。私もファンになりました」
男「……俺ももう一度、聞こうかな」
男「また新作出るって言うし……次は赤鬼と青鬼だっけ……?」
男「……」
姫「よ」
男「うわぁ!!!」
姫「兄よ、なにを驚いておる」
男「な、なな……!!」
姫「うむ。実は別荘を設けにきたのだ」
男「え?」
姫「ここに来たときに、別荘をここに建てようと思っていたからな。うむ。兄と近所になれて私もうれしいぞ」
男「あ、そ、そうなんだ……」
姫「年間50日ぐらいは来日するつもりでいる。その都度、妹の面倒を見るのだぞ?」
男「……わかった」
姫「それはそうと、私のCDは聞いてくれたか?聞いてないならその口にCDをねじ込んでやるぞ?」
姫「そうか」
男「あの子も何度も聞いているみたいです」
姫「おぉ。では約束は果たしたか。よかったよかった!」
男「でも、やっぱり直接聞きたいと思いますよ。今度、機会があれば読んであげてください」
姫「そうだな。別荘で朗読大会でも開こうか」
男「それいいですね」
姫「うむ。そのときは兄も一緒だぞ?」
男「勿論行きます」
姫「そうだ。再会したときにこれを言おうと思っていたのだ」
男「え?」
姫「―――ただいま、兄上」
男「うん、おかえりなさい」
おしまい。
気分よくなったよ
姫最高
ほっこりするいい話やった
Entry ⇒ 2012.01.15 | Category ⇒ その他 | Comments (0) | Trackbacks (0)
ヒーロー「命をもらう!」 女幹部「かかってらっしゃい」
俺たちは知り合ってから、けっこう経つ。
なのに、互いのことは全く知らないし、聞こうとも話そうともしない。
一日のうち、この喫茶店で会うわずかな時間が全てだった。
男「そのオッサン、泥水まみれになっちゃって……」
女「アハハ、かわいそうに」
男「だろ? でさぁ──」
ピーピーピー
男「!」
女「あ、なにか鳴ってるよ? 腕時計じゃない?」
男「やべっ、変な時間にセットしちゃってたみたい、これ。ハハハ」
なのに、お互いのことは全く知らないし、聞こうとも話そうともしない。
一日のうち、この喫茶店で会うわずかな時間が全てだった。
女「私もたまにやっちゃうよ、そういうこと」
男「あ! そういやちょっと用事を思い出した! 悪い……金は払っとくから!」
女「え、あっ、う、うん」
女「………」
女(ちょうどよかった。私もそろそろ抜けなきゃいけなかったし……)
男「ここら辺でいいかな……」
男「変身っ!」
ヒーロー「これでよし、と」
ヒーローは腕についている装置から、指令を読み取る。
さっきのアラームは指令の合図なのである。
『□□県○×市でワール団の連中が暴れている。至急向かってくれ』
ヒーロー「了解!」
ヒーロー「○×市はここから北に20kmだったな……出動っ!」
ドヒュン!
ボスの下に三人の幹部がおり、さらにその下に大量のザコ戦闘員がいる。
<○×市>
ザコA「道路にガムをひっつけてくれるわ~!」
ザコB「横断歩道の白い部分を全て黄色に変えてやる~!」
ザコC「市内のベンチというベンチを、ペンキ塗りたてにしてくれる~!」
市民「くそっ……なんてひどいことを!」
警官「ワール団め……。お前たちやめないか! う、撃つぞっ!」
幹部「我々に銃など効かぬと、分かっているくせに……」
ドラゴン「俺らの悪事の邪魔はさせねえ。どいてろ」
ドカッ!
警官「うぎゃあ!」
市民「ヒ、ヒーローだっ! ヒーローが来てくれたぞっ!」
幹部「やっと現れたか、ヒーロー。我々の狙いはキサマだからな」
ドラゴン「ガハハハハ、やっちまえ! おめえら!」
ザコA「オラーッ!」
ザコB「アチョー!」
ザコC「強めにお願いします!」
ヒーロー「せりゃっ!」
バキッ! ドゴッ! ガゴッ!
ザコA「ぐはぁっ!」
ザコB「げふぅ!」
ザコC「ありがとうございました~!」
ヒーロー「ワール団! 今日という今日こそ、成敗してくれるっ!」
ヒーロー「……ん? 今日は三幹部のうち幹部とドラゴンの二人しか来てないのか」
ヒーロー「来いっ!」
バキッ! ドカッ! ガンッ!
幹部(さすがはヒーロー、ドラゴンが押されている。仕方ない、加勢するか……)
女幹部「お待たせ~」
幹部「遅いぞ、何をしていた!」
女幹部「あらやだ、レディに野暮なこと聞かないでよ」
幹部「ちっ……これだから女は! まぁいい、ドラゴンを助太刀するぞ!」
女幹部「はいはい」
バゴッ!
ドラゴン「ぐおおっ! くっ、くそう!」
幹部「今加勢するぞ、ドラゴン」
ヒーロー「まとめてかかって来い!」
ヒーロー「これしきの炎、正義に燃えている俺には通じんぞ!」
ドゴッ!
ドラゴン「うぎゃあっ!」ドサッ
幹部「おのれ、エネルギーボール!」ボボボッ
ヒーロー「はあっ!」バシバシバシッ
幹部(全て弾いただと!?)
幹部「くそぉっ! おい女幹部、早く私に加勢するんだ!」
女幹部「うるっさいな、男のくせにみっともないよ!」
(全力疾走してきたばっかで技出せる状態じゃないの、ほんとゴメン)
ヒーロー「とりゃあっ!」バキッ!
幹部「ぐ……また負けた……!」バタッ
ヒーロー「残るはお前一人だ! 観念しろっ!」
女幹部「フン、今日こそアンタを倒してやるよ!」
シュルッ!
ヒーロー「しまった!」
女幹部「このムチで縛られたら、もう身動きできないよ! 覚悟はいい?」
ヒーロー「なんのぉっ!」ブチッ!
弾け飛んだムチの破片が、女幹部の頬をかすめ、傷がついた。
女幹部「あぅっ!」
ヒーロー「あ……!」
女幹部「やるじゃない、キラーウィップを破るとはね! ええいっ!」
ヒーロー「(バカ、動揺している場合か)ていっ!」
バシィッ!
女幹部「くっ……!」ガクッ
女幹部「ちくしょう、次こそはお前を倒してやるからね! 覚えておきなよ!」
ワール団はみじめに退散していった。
市民「やったやったー!」
警官「ありがとうございます、助かりました!」
ヒーロー「うむ、では達者でな!」ヒュンッ
~
ヒーロー「任務完了しました」
『ご苦労』
シュンッ
男(やれやれ、今日もみすみす逃がしちまった……。甘いなぁ、俺は)
男(不可抗力とはいえ、あの女幹部の顔……傷つけちまった)
男(敵とはいえ女だから、なるべく顔は狙わないようにしてたんだけど)
男(──ってかまうもんか! 相手は悪党で、俺はヒーローなんだ!)
ボス「なんという醜態だ!」
ボス「またしても、幹部揃ってヒーローにやられたのか! バカモノどもが!」
幹部「申し訳ございませんっ!」
女幹部「ご、ごめんなさい……!」
ドラゴン「すいませんっ!」
ボス「打倒ヒーローはワシの……我がワール団の悲願なのだぞ!」
ボス「こんなことではいつになったら達成できるか分からん!」
ボス「もうよい、下がれ!」
~
鏡の前で女がつぶやく。
女「この傷、絶対聞かれるよね。どうしようかなぁ……」
女(……にしても、今まであれだけ戦ってるのに、顔に傷ついたの今日が初めてとは)
女(さすがヒーローってだけあって、やっぱ優しいなぁ)
女(なぁ~んてね、相手の優しさに喜んでるようじゃ悪の幹部やる資格ないよね)
<喫茶店>
ヒーローとして戦う日々、ここで彼女と過ごすわずかな時間が俺の唯一の生きがいだ。
互いに互いを探らず、当たり障りのないことばかりを話す。
それだけで十分幸せなはずだったのに──
男「ちょっ……どうしたんだよ、その傷!?」
女「え、と……料理でミスっちゃって……」
男「なにをどうミスれば、料理で顔に怪我するんだよ!」
男「だれかにやられたんだろ!? いえよ、俺が成敗……や、やり返してやるよ!」
女(相手はヒーローでした、なんていえるはずないよね)
女「こんなのすぐ治るし、別にいいじゃない。なんか今日、ちょっと変だよ……?」
男(俺としたことが、女幹部との戦いを思い出してしまった……!)
男「いや……いいんだ。なんでもないんだ。ゴメン」
男「俺たち、互いのことは詮索しないってなってたのにな」
女「こっちこそゴメンね。心配してくれたのに……」
互いに互いを探らず、当たり障りのないことばかりを話す。
それだけで十分幸せだったはずなのに──
女「(話題を変えないと)あ、ニュースやってる」
テレビ『昨日、□□県○×市にワール団一味が現れ、さまざまな悪事を働きましたが』
テレビ『まもなくヒーローが駆けつけ、ワール団は撃退されました』
女「またヒーローが活躍したんだね。おっ、空飛んでるよ。かっこいい~」
男「あんなもん、全然かっこよくないよ」
女「え……?」
男「無駄に腕力ばかりある無能だよ」
女「急にどうしちゃったの? やっぱり今日の男は変だよ……」
男「変じゃないよ。近頃じゃ、ワール団以外の悪の組織も台頭してきてるし」
男「敵は全て殺すくらいの意気込みでなきゃ、真の平和なんて永遠に訪れないんだよ」
女「たしかに、あなたのいってることは正しいのかもしれない……」
女「でも、ヒーローが敵を殺さないのは、なんていうのかな……」
女「たとえ悪人に対しても、優しさを忘れない……みたいなことなんだと思う」
男「優しさなんかじゃないよ、単なる甘えだよ」
男「ようするに怖いんだろうな、殺すのが。決定的な恨みを買う恐れもあるし」
女「ヘ、ヘタレって……! あんなに頑張ってるのに……!」
男「ふうん、お前は悪人にのさばって欲しいとでもいう気か?」
男「あ、女。お前、もしかして実は悪者の一味とか?」
女「ひ、ひどいっ!(す、鋭い……!)」
女「男こそ、まるで自分がヒーローみたいな口ぶりじゃない!」
男「な、なにいってんだ、意味わからねえよ!(し、心臓止まるかと思った……)」
女「そっちが最初にいったんじゃない!」
男「どうせ俺は、ヒーローみたいに優しくねえよ!」バンッ!
女「………」
男「………」
男「………」
男(普通なら、ここで追いかけるんだろうな……)
男(家の前で待ってたりとか……)
男(でも、俺はあいつの住んでる場所を知らない。連絡先すら知らない)
男(むろん、あいつも俺の住んでる場所その他を知らない)
男(知り合ってから今まで、一度たりともお互いの過去を話したことはない)
男(俺には話せない事情があるし、きっと彼女にもあるのだろう)
男(それが暗黙の了解だった。利害が一致した)
男(だから、とても楽だった。心地よかった……)
男(なぜなら、それを教えることは俺がヒーローであるとバラすのとほぼ同義だからだ)
男(きちんと口止めさえすれば、バラすことになんのペナルティもない……)
男(もしバラしても、彼女なら決して他言しないだろう)
男(でも、バラせない)
男(あんなにヒーローに羨望の眼差しを向けている女に、今更いえるわけがない)
男(失望させるだけだ……)
男「はぁ……」
ピーピーピー
女(男がいつもと様子がちがうってのは、分かりきってたのに)
女(とりあえず、家に戻るか……)
<ワール団アジト>
女「ただいま」
青年「お、なんかご機嫌斜めなんじゃないか? ん~? もしかして生理か?」
ドスッ!
青年「いってぇ……ジョークが通じねえ奴」
女(ったく、変身時と性格が違いすぎるっての!)
ドラゴン「今日は活動予定もないのに、えらく帰りが早いじゃねえか。どうした?」
女「なんでもない……」
女「部屋、行ってるね」
女(思い返してみると──)
女(私は女としても女幹部としても、ヒーローのいい面しか見ていない)
女(もしかしたら、ヒーローにだっていわゆる人に見せたくない面があって)
女(普段のヒーローとしての顔とのギャップに苦悩しているのかもしれない)
女(……そして、男もきっと私の知らないところで“いい役目”を演じる立場にいて)
女(なにか辛いことがあって、あのヒーローのニュースで抱えてたことが爆発した……)
女(警察官……とかなのかな? もしかして)
女(悩みがあるのなら聞きたい。聞いてあげたい)
女(でも、自分のことをなにも教えられない私が、聞けるはずがない)
女(私がワール団の幹部だって知られたら──幻滅される)
女(あんなに悪を憎んでいるあの人に、いえるわけがない……)
<△□市>
ヒーローは、悪の組織『アーク団』の怪人軍団と対峙していた。
新鋭の組織であり、悪事の度合いはワール団の比ではない。
怪人A「来やがったか、ヒーロー! 昨日もご活躍だったそうじゃねえか」
怪人B「俺たちはワール団みたいな、甘っちょろい組織とはワケが違うぜ」
ヒーロー「………ブツブツ」
怪人C「フッ、今のうちに念仏でも唱えてるのか?」
ヒーロー「お前たちのような悪がのさばっている限り」ブツブツ
ヒーロー「俺はヒーローをやめられない……」ブツブツ
ヒーロー「好きな人に自分の素姓すら明かせない……」ブツブツ
怪人A「な、なんだぁ? お前、本当にヒーローか? まさかニセモノ?」
グシャッ!
怪人A「ぐげぁ!」
怪人B「な、な、な……!」
ヒーロー「お前たち、皆殺しだっ!」
女(あー……ウジウジ悩んでてもしょうがない)
女(テレビでも見るか……気が晴れるとは思えないけど)
ピッ
テレビ『こちら△□市の上空です……』
テレビ『え~……ヒーローとアーク団の怪人軍団が凄まじい死闘を演じております!』
女「!」
テレビ『で、ですが、なんというか……語弊があるかも知れませんが』
テレビ『ヒーローの戦いぶりが、とてもいつものヒーローとは思えません!』
テレビ『まるで血に飢えた獣のような……』
女「……なんなのこれ。まるで──」
ザッ!
女「はぁっ!」
ブワァッ!
女幹部「行かないと……!」
青年「お、どこ行くんだ? 金に困ってカラダでも売りに行くのか?」
ダダダッ!
青年(む、無視かよ)
ドラゴン「アイツ変身なんかしてどこ行く気だ? ボスからはなにも聞いてないぜ」
青年「……世話の焼ける妹分だ」
ヒーローは10体の怪人軍団のうち、すでに7体を倒していた。
怪人H「ヒィィッ! 助けてくれェ~! も、もうやめ──」
ヒーロー「だまれっ!」
ゴシャッ!
怪人I「お、俺逃げるぜ……あんなのと戦えねえよ……」
怪人J「オイラも……」
ヒーロー「逃がすと思ってるのか? 一刻も早くお前らを全滅させ──」
「待ちなさいな」
女幹部「ずいぶん派手にやってるじゃない、ヒーロー」
怪人I「キサマ、ワール団の女幹部だな!? ワール団如きの出る幕などないぞ!」
怪人J「ここはオイラたちアーク団の戦場だ! 立ち去れ!」
女幹部「アンタら、ジャマ」
女幹部「どいてくれる?」
怪人I&怪人J「ど、どきます……」スゴスゴ
ヒーロー「なんの用だ? まさかアーク団を助けに来たってワケじゃないだろう?」
女幹部「かろうじて、まだ一匹も殺してないみたいね」キョロキョロ
女幹部「まだ、あの不器用なヒーローっぽさが心のどこかに残ってるのかもね」
ヒーロー「なんの用だと聞いてるんだ!」
(むしろアーク団のゲスなやり口はヘドが出るくらいだし)
女幹部「なんていうか、今のアンタ、私の好きな人とソックリだったの」
女幹部「ちょっと他人事とは思えなくってね」
ヒーロー「お前たちのような悪党でも好きな人なんているのか。初耳だな」
女幹部「アハハ、するに決まってるじゃない」
ヒーロー「うらやましいね」
ヒーロー「俺にも愛する人はいる」
ヒーロー「だが俺は恋なんかできない。俺がヒーローである限りな……!」
ヒーロー「だからもう、お前たちに容赦はしない……!」
ヒーロー「命をもらう!」
女幹部「かかってらっしゃい」
女幹部「抱えてるモノ、全部受け止めてあげる」
女幹部「アンタが愛してる人の代わりに、ね」
ビシィッ!
ヒーロー「ぐうっ!」
女幹部「どうしたの、昨日より動きが固いよ? やっぱり戸惑ってるんじゃない?」
ヒーロー「う、うるさいっ! だまれっ!」
バチッ!
女幹部「──つっ、こんなんじゃ、ウチのザコたちも倒せないねぇ」
ヒーロー「う、うるさぁい!」
バキッ! ドゴッ! ドスッ!
女幹部「う……ぐっ! ふふっ……。まだ……悪は生きて、るよ……」
ヒーロー「こ、このっ!」
怪人J「今のうちに仲間連れて逃げよう。アイツが殺られたら、次はオイラたちだぜ!」
ダダダッ!
女幹部「も、もう動け……ないね。さぁ、殺しなよ……」
ヒーロー「……くっ」
女幹部「アンタに殺されるなら……悔いはないさ……」
女『あなたに殺されるなら……悔いはないよ……』
ヒーロー「!」
ヒーロー(な、なんで今、コイツと彼女が重なって見えたんだ! ちくしょう!)
ヒーロー「俺にはもう……できない」
女幹部「ふふ……元の顔に戻れた……じゃないの」
女幹部「よ、よかった……」
ヒーロー「女幹部!」
ヒーロー「敵にこんな気持ちになるのは生まれて初めてだ……」
ヒーロー「だが、やはり俺の一番は……あの人なんだ……。すまん……」
女幹部「ハハ……残念……。少し、妬ける、ね……」ガクッ
ヒーロー「女幹部!? 女幹部っ!」グイッ
ザッ
幹部「遅かったか……! ヒーロー……よくもやってくれたな……!」
ドラゴン「弔い合戦といこうじゃねぇか!」
ヒーロー「……お前たちも来てたのか。ちょうどいい」
ヒーロー「女幹部はまだ生きてる。治療してやってくれ……じゃあな」ドヒュンッ!
幹部(なんだ? 今までのヒーローと、まるで表情がちがったぞ……)
ドラゴン「オイ幹部! 女幹部を連れてアジトへ戻ろう! まだ助かるぜ!」
幹部「あ、ああ……!」
女「えぇっ!? 一週間もここで寝てないといけないの?」
青年「あんだけこっぴどくやられたんだ、当たり前だろうが」
青年「お前の回復力でも完治に一週間はかかる。絶対外に出さないからな」
女「やっぱお父さん怒ってた……? 勝手に動いちゃったし」
青年「激怒も激怒、大激怒だ。治ったら覚悟しとけよ~」
女「分かったよ……(すぐにでも男に会いたいのに……)」
青年「ところでお前、なんでヒーローにあんなにボコられたんだ?」
青年「まさかヒーローの秘密を知っちゃったとか? 包茎とか」
女「んなわけないでしょっ!」
青年「……まぁ、お前は俺の妹みたいなもんだ。あんま心配かけるんじゃないよ」
青年「ドラゴンやザコたちもみんな心配してくれてんだから。じゃな」
ガチャッ バタン
女「うん……」
男(今日は一日待ったが……来なかった。やっぱフラれたかな……)
男(だがいつかまた必ず来てくれる……そんな気がする)
男(その時こそ、俺はもう逃げない)
男(俺に、あの女幹部がしてくれたように……)
~
ヒーロー「さぁ、デビル結社の悪魔ども! かかってこい!」
悪魔A「かかれーっ!」
悪魔B「うおーっ!」
ドゴッ! バキッ!
悪魔A「やられたー!」
悪魔B「ぐえー!」
ヒーロー(こうやって健全にヒーローやってれば、必ず来てくれる……!)
ヒーロー(そんな気がする)
タッタッタッ
女(あ~あ、まさか二時間も説教されるとは……)
女(男はいるかなぁ、いるといいなぁ)
女(でも、一週間もいかなかったし……もし、もう来ないと思われてたら──)
<喫茶店>
マスター「今日こそ来るといいねえ」
男「うん」
マスター「お互いケータイの番号も知らないなんて、古風にも程があるよ」
男(まったくだ)
マスター「でも、だからこそ芽生える愛ってのも──」
ガチャッ カランカラン
女(いたー!)
男(来たー!)
男「いや……おかげで心の準備ができたから、ある意味ではよかったかも」
女「心の準備?」
男「今日は大事な話があるんだ」
女「………」ゴクリ
男「ちょっと前置きしようか」
男「一週間前、喧嘩別れしたろ? あの後、俺はヤケッパチになってた」
男「だが、俺はある人によって救ってもらった。踏みとどまらせてもらった」
男「その人は俺に正面から向き合ってくれた」
男「だから俺も見習って、今日こうして話すことにしたんだ」
女(男もヒーローと同じく、この一週間で悩みから立ち直れたんだ)
女(救ったのが私じゃないってのが、正直少し悔しいけど……ね)
男「俺──」
男「俺、実はヒーローなんだ」
女(え、え、え、え!? えぇ~~~!? え、え、え? え、え、え?)
女(えぇ~~~~~!? えぇ~~~~~!? えぇ~~~~~!?)
女「ふうん……そうだったんだ……」
男「あまり、驚かないんだな」
女「なんとなく……そんな気がしてたから……」
(え、え、え!? ちょっと待って、ちょっと待って待って、どういうこと!?)
男「日々変身して、ワール団やアーク団といった連中と戦ってる」
男「完全な秘密厳守ってわけでもないんだ。でも、いえなかった」
男「君の憧れであるヒーローの正体が、こんなヘタレだと知られたくなかったから……」
女「あなたはヘタレなんかじゃないよ」
(あ~……そういうことだったのか……。まだちょっと混乱してるけど……)
男「ずっと黙っていて……ゴメン」
女「……いいよ。その代わり、私の話も聞いてくれる?」
女「私ね、宿敵でもあり憧れでもあった男性がいたの」
女「私はその人の強い部分しか知らなかった。本当はとても繊細な人なのに」
女「そして、ある日私はその人の弱い部分を見てしまった……」
女「でも、その人はすぐ立ち直ってくれた。やっぱり私の思った通りの人だった」
女「だからその人のためにも、今から本当のことを話す」
男(俺なんかと違って、すばらしい奴なんだろうな。きっと……)
女「私ね──」
女「ワール団の女幹部なの」
男「………」
男(ん~? ん? ワールダンノ、オンナカンブ? ん? ん? ん? ん?)
男(ん!? ん~!? 待てどういうこと? どういうことなんだこれは?)
男「俺も……なんとなくそんな気がしてた……」
(してないしてない! してない! だ、だれか今の状況を分かりやすく教えてくれ)
女「……キ、キラーウィップ」ボソッ ヒュッ
男(この手つき、ホンモノだ……! ちょっと照れてるけど)
男「──ん、ちょっと待てよ。じゃあもしかして一週間来なかったのって……!」
女「アハハ、いやぁ~効いたね、あれは。右脇腹への一撃が特に」
男「ゴメン! 本当にゴメン!! 今すぐにでも、あの分やり返してくれ!」ガタン
男「いや、五倍くらいにしてくれていい!」
女「いいよいいよ、私たち敵同士なんだし。こうして完治したしね」
女「お互いのことを全く知らない二人が、ずっと戦ってたなんてロマンチックじゃない?」
男(そ、そうかぁ……?)
ついに、二人は互いの正体を明かした。
お互いが恐れていたような破滅はなく、意外にも両者すんなりと受け入れることができた。
しかし、これはまだスタート地点に立っただけに過ぎないのだ。
男「多分情報はあるだろうけど、俺は国立ヒーロー本部で暮らしている」
男「たった一人のヒーローである俺を、日々大勢のスタッフが体調管理してくれてるんだ」
男「目的は当然、ワール団やアーク団といった警察じゃ歯が立たない悪党どもの対処だ」
男「5歳の時、俺は父親に本部に連れてかれた。素質があるからってことでな」
男「あ、親父もヒーローだったんだ。いわば先代だな」
男「んで、ずっとそこで教育とか訓練とかを山ほど受けて育った」
男「そして数年前から、俺は親父の後を継いでヒーローになった」
男「親父は一年前に逝っちまった。まだ若かったのによ」
男「女と知り合って喫茶店での会うようになったのも、それからすぐのことだったな」
男「あとはまぁ……知っての通りだ」
女「私みなし子でね、お父さんに拾われたの。あ、お父さんってボスのことね」
女「幹部も同じような境遇よ。私より少し年上だから、実の兄のように接してくれた」
女「ドラゴンも元々はどこかで捨てられてた動物で、お父さんが力を与えたらしいわ」
女「そして悪の英才教育を受けて、今では三幹部の一人にまでなったわ」
女「お父さんも昔は相当ワルだったみたいだけど、今じゃヒーロー打倒に夢中よ」
女「お父さんは、あなたのお父さんとライバルだったみたいだね」
女「私、お父さん大好き。悪の組織の人間がなにをって思うかもしれないけど」
女「いたずらに人を傷つける悪事はしないし、学校も通わせてくれたし」
女「でも今は……あなたが一番好き」
まるでこれまでの分を取り返そうとするかのように。
男「いや~でもお前ってさ、女幹部の時って全然キャラ違うよな。声もドスきいてるし」
男「普段からずっとあの格好なんだと思ってたしさ」
女「な、なによ。あなただって人のこといえないでしょ」
女「でも、たしかに変身すると、まるで別人になった気分になれるから……」
男「分かる分かる。俺も、シラフじゃ恥ずかしくていえないような台詞バンバンいえるし」
女「この間も“正義に燃えている俺に炎は通じん”っていってたよね」
男「ゴメンやめて、ホントやめて」
女「でもホント何度も戦ったよね、私たち」
男「あぁ、俺はヒーローで、お前はワール団幹部なんだもんな」
女「………」
男「………」
男「──そう、俺たちは敵同士なんだ……」
女「私も無理……だね」
男「だが、戦う宿命にある。俺たちは戦い続けなきゃならない」
男「だからさ、ちょっと練習してみないか?」
女「いいかも!」
シュンッ! ブワァッ!
ヒーロー「よし、あのムチを出してくれ」
ヒーロー「少なくともこれからも、戦うフリはしないとヤバイ」
女幹部「キ、キラーウィップ……」ペチッ
ヒーロー「加減しすぎだろ。あと、なんで恥ずかしがるんだよ。いつもの調子でやれよ」
女幹部「ご、ごめんね……」
ヒーロー「いや、その姿で謝られると、なんか戸惑うからやめてくれ」
ヒーロー「マズイな……」
女幹部「うん、どうしても八百長っぽくなっちゃうね」
ヒーロー「場末のヒーローショーの殺陣のが全然マシってレベルだ」
ヒーロー「こんなの実戦でやったら、俺は悪と癒着してるんじゃ、って疑われそうだし」
ヒーロー「お前だってワール団での立場が怪しくなるだろう」
女幹部「うん……」
女幹部「だから私、考えてみたんだけど」
女幹部「ワール団を抜けようと思うの」
ヒーロー「そんなことできるのか?」
女幹部「分からない……。でも、それが一番だと思う。私たちが一緒になるには」
女幹部「それは大丈夫だと思う、けど」
ヒーロー「う~ん」
女幹部「大丈夫よ、必ず説得してみせるって!」
女幹部「とりあえず兄さんに相談してみる。信頼できる人だから」
ヒーロー「分かった。なんかあったらすぐさっきの番号にかけろよ」
ヒーロー「たとえ他の任務があっても飛んでいくから」
女幹部「アハハ、そりゃまずいでしょ」
ヒーロー「俺は本気だよ」
女幹部「……ありがとう」
青年「──なるほど、ヒーローに惚れてしまったからもう戦えない、と」
女「うん」
青年「………」
女「やっぱりまずいかな……」
青年「……ふっ」
青年「成長したな」
青年「俺は嬉しいよ。こんな薄暗いアジトで育ったお前が、人並みに恋をしてくれてよ」
青年「しっかし、あんだけ自分をボコにした相手を好きになるとはなぁ」
青年「ま、こういうのは内緒にしとけばしとくほど、あとが怖い。さっさと済ませよう」
青年「俺も一緒にボスのところに行って、話してやるよ」
女「ありがとう……兄さん」
青年「気にすんな。妹の悩みくらいいつだって聞いてやるよ」
青年「解決できるかどうかはまた別問題だけどな! ハハ」
青年「ところで今度、ヒーローに包茎かどうか聞い」バチッ!
幹部「ボス、単刀直入にいいましょう」
幹部「このたび女幹部がヒーローと恋仲に落ちました」
幹部「なので、自由にしてあげてくれませんか。抜けた穴はこの俺が埋めてみせます」
ボス「な、な、な、なにぃ!?」
幹部(やっぱり……)
女幹部(こうなるよね……)
ボス「このバカモノどもが! ワシとヒーローの長年の因縁は知っておるだろう!」
ボス「部下がだれと逢引をしようといちいち騒ぐワシではないが──」
ボス「よりにもよって相手がヒーローだと!?」
ボス「キサマらワシが手塩にかけて育ててやった恩を、仇で返す気か!!!」
娘が可愛いだけの頑固おやじなのだ
ボス「うるさいっ!」
ドガッ!
幹部「ぐっ!」
ボス「女幹部よ、お前はワシの期待を裏切った」
ボス「ドラゴン! コイツを牢に閉じ込めておけ!」
ドラゴン「はい。命令だ、悪く思うなよ」ガシッ
女幹部「う……!」
ボス「ヒーローめ、ワシの部下をたぶらかすとは……許せんっ!」
ボス「……ちょうどいい機会だ! この上はヒーローに決闘を申し込む!」
ボス「ザコD! お前、足が速かったな。今すぐ果たし状を持っていけ!」
ザコD「はいっ! 私のDはダッシュのDです!」
女幹部(とんでもないことになってしまった……)
男(今日のトレーニング終了、と……)
男(ところで、女はどうなったかな……。こっちから電話かけてみるか?)
男(いやでも、急かすようで悪いよな……)
タタタッ!
スタッフ「た、大変だ!」
男「どうしました?」
スタッフ「君宛に、ワール団から果たし状が届いた!」
男「は、果たし状!?」
果たし状
国立ヒーロー本部所属 ヒーロー殿
我々ワール団は総力を挙げて貴殿に決闘を申し込む
日時は○月×日 17:00
場所はワール団アジト
当日迎えの者をそちらに寄こす
万全に準備を整えた上で来られたし
ワール団首領 ボス ○月△日
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
男(タイミング的に考えて、彼女に何かあったとしか考えられない!)
男「くそっ」ピポパッ
電話『おかけになった電話番号は、電波の届かないところにあるか~』
男「クソッ!」ダンッ!
スタッフ「ひぃっ!」
男(○月×日……ちょうど一週間後か)
男「いいだろう……受けて立ってやる! ワール団!!」グシャッ
青年「……すまなかったな。まさか、あそこまでキレるとは予想外だった」
女「ううん、気にしないで」
青年「できれば出してやりたいが……」
女「大丈夫だって。とりあえずは、しばらくここにいるよ」
女「それより決闘ってどんな内容なの?」
青年「ボスは本気だ。俺やドラゴン、自分も含め全戦力で迎え撃つつもりだろう」
青年「日時は○月×日、場所はここだ。すでに果たし状は送ってある」
青年「やるからには俺もワール団幹部として本気で戦う。それは……分かってくれよ」
女「……うん」
(ごめんなさい、男……! もしあなたが死んだら私も──!)
<国立ヒーロー本部>
男「変身っ!」
シュンッ!
ヒーロー「いよいよか……」
スタッフ「ほ、本当に応援部隊はいらないのかい?」
ヒーロー「えぇ、申し訳ないですが、かえってやりにくくなるので」
ヒーロー「大丈夫、ワール団なんかちょちょいと片付けてみせますよ」
ザコE「ちょちょいとは大きく出たな」ザッ
ヒーロー「お前が迎えか」
ザコE「あぁ、そうだ。今からアジトに連れていく。ついてこい」
ヒーロー「望むところだ!」
ヒーロー(おそらく彼女はボスの怒りに触れて幽閉でもされたんだろう……)
ヒーロー(ボスを倒し、ワール団を壊滅させ、彼女を取り戻す!)
ヒーロー(ヒーローとして、これ以上ないシチュエーションだ。絶対に勝つ!)
ドラゴン「ボスは本気なのか……!?」
幹部「命令なんだ。俺たちは従うだけだ」
ドラゴン「だがよぉ……」
幹部「くどいぞ。俺たちはここでこうしているのが精一杯だ」
ドラゴン「ち、ちくしょう……!」
幹部「しっ、声が大きいぞ。ボスに聞こえたらどうする」
幹部「ちゃんと見ておくんだぞ」
ドラゴン「く、くそ~」
ザコE「……ここだ」
ヒーロー「大勢で出迎えてくれると思いきや、誰もいないじゃないか」
ザコE「お前の相手は……あのお方だ」
ヒーロー「あれは……!(ただならぬ気配を放っている……アイツはまさか……)」
ボス「待っておったぞ、ヒーロー!」
ヒーロー「……ボスか?」
ボス「いかにも!」
ボス「キサマの父親は……強かったぞ。さてキサマはどうかな?」
ヒーロー「果たし状にはワール団総力を挙げる、とあったが?」
ボス「つまりはそういうことだ。ワール団の兵はワシ一人のみ!」
ヒーロー「!?」
<ワール団アジト>
幹部「いよいよヒーローとの決戦は明日です。ボス、どのような布陣で──」
ボス「布陣など必要ない」
幹部「は……?」
ボス「ワール団は本日をもって解散する!」
幹部「な、なにを!?」
ドラゴン「どういうことですか!」
ボス「安心せい。お前たちの次の道は責任を持って用意する。ワシも顔が広いからな」
幹部「俺が聞いてるのは、そういうことじゃありませんよ!」
ボス「実をいうとな……前から決めておった」
ボス「ワシが、このように老いぼれてなお、ワール団を続けてきたのは──」
ボス「ひとつはむろん、ヒーローを倒すこと!」
ボス「そしてもうひとつは、近年台頭する外道どもをのさばらせたくなかったのだ」
ボス「弱きを傷つけ、なぶり、骨までむさぼり尽くす。まるで仁義など感じられぬ」
ボス「だから少しでも奴らを抑えるため──と思ったが、年々ワシの影響力は落ちておる」
ボス「もはや、ここらが潮時なのだ」
ボス「お前たちほどの能力があれば、こんなカビの生えた組織におらずともよかったはず」
ボス「よくぞ、今日までついてきてくれた。心から礼をいう」
幹部「ボスッ!」
ドラゴン「ボスッ!」
ザコ軍団「ボスッ!」
ボス「……いかに鍛えてるとはいえ、ワシの肉体はこれから先、朽ちる一方だろう」
ボス「ちょうどいい機会というのは、このためだ。明日、ワシは一騎打ちを挑む!」
ボス「ワシのプライドと娘を賭けた一世一代の大勝負!」
ボス「これが最後の命令だ! 明日、絶対にワシの邪魔はするな!」
ボス「お前の求めるモノはあそこにおる!」
ボスが指差した先には、女が立っていた。縛られてすらいない。
女「男……」
ヒーロー(なんだ……どういうことだ!?)
ボス「ヒーローよ! あれはワシの娘も同然の女!」
ボス「いかにキサマが好いていようと、そうやすやすとくれてやるワケにはいかん!」
ヒーロー「………」
ヒーロー「ワール団ボス……。ヒーローとしてでなく、一人の男として申し上げる!」
ヒーロー「娘さんを、ぼくにください!」
ボス「ならん! あれが欲しくば、このワシを越えてゆけ!」
ヒーロー「分かりましたっ……!」
ボス「ぬおおおおおおおおおおおおおっ!」
ヒーロー「うおおおおおおおおおおおおおっ!」
ドドドッ! ガガッ! バシッ! ドドドッ! ガンッ!
両者の拳が火花を散らす。
ズバッ! バババッ! ドゴッ! シュババッ! バチィッ!
ヒーロー「娘さんはいただくっ!!」
ボス「断じてならぁーん!!」
身体能力ではヒーローが上だが、経験と気迫でボスはそれをカバーする。
しかし、戦いが長引けば、やはり若いヒーローが有利になってくる。
徐々にヒーローがボスを追い詰めていく。
バキィッ!
ボス「ぬぐぉっ!」
女(お、お父さん……!)
ボス「ぬうっ……(父親以上の強さだ! よもやここまでか……!)」
「待ったっ!」
ヒーロー&ボス「!?」
幹部「ヒーロー! 女を手に入れるのに、いきなり父親からとは──」
幹部「ショートカットしすぎなんじゃないか?」
幹部「まずは兄であるこの俺から、倒してってもらおうか!」
ボス「バ、バカモン! 絶対に邪魔するなと──」
幹部「バカで結構!」
ヒーロー「いや……たしかに俺は順番を間違えていた! 勝負っ!」
幹部「エネルギーボール……連射ァッ!」
ズドドドドドドッ!
大砲以上の威力を持つ無数の光球が、ヒーローめがけて飛んでいく。
ヒーロー(これは避けてはならない……全て真っ向から弾く!)
ババババババシッ!
幹部「バ、バカな!?(さすが、妹が惚れた男だ……!)」
家族愛ってすげー
ヒーローのパンチが、幹部の腹にめり込んだ。
幹部「や、やるな、ヒーロー……ぐほぉっ!」
(お前になら、任せられる……!)
ドラゴン「ならば、次は友人代表として俺様が挑むぜぇっ!」
ヒーロー「来いっ!」
ヒーローはドラゴンの巨大な尻尾攻撃を真っ向から受け止め、持ち上げる。
ドズンッ!
ドラゴンは地面に叩きつけられた。
ドラゴン「ぐおおっ……!」
(さすがは俺たちが、長年倒せなかった男だ……ぜ!)
すると今度は、大勢のザコたちが走ってきた。
ザコ軍団「部下代表として、お前に挑むぅ~!」
ヒーロー「来いっ!!」
ボス「ど、どいつもこいつも……バッカモン!」
幹部(結局総力戦じゃないか……ハハ)
ヒーロー「せりゃあっ!」ドゴッ! バキッ! バシッ!
ザコA「うごふっ!」
ザコB「えぼぁっ!」
ザコC「超気持ちいいっ!」
いつものことではあるが、ヒーローの強さは圧倒的だった。
しかし、今日のワール団は気迫が違っていた。
先ほど倒した幹部やドラゴンも復活し、大混戦になっていった。
ザコD「喰らえっ!」バキッ
ヒーロー「ぐぁっ!」
ザコD(や、やった……! は、初めてヒーローに一発入れた……!)
女「(いくらなんでも数が違いすぎる……)このままじゃ……」
ボス「ふん……」
女「!」ビクッ
ボス「ワシはお前が乳飲み子の頃より、ひたすら悪の道を叩き込んできたっ!」
ボス「こんな時に親不孝ひとつ出来んで、どうするかぁっ!」
女「───!」
幹部「ついでに兄不孝もな」
ドラゴン「竜不孝も頼むぜぇ!」
女(みんな……ありがとう!)
ブワァッ!
女幹部「キラーウィップ!」
ドドドシュッ!
ボス「うごふっ!」
幹部「いってぇ!」
ドラゴン「あだだっ!」
ヒーロー「女……。いや女幹部、いいのか……!?」
女幹部「なぁに驚いてんの。私は悪なんだから、裏切りくらい当然でしょ」
ヒーロー「ザコ軍団の中に突っ込むぞ! 準備はいいか?」
女幹部「オッケー」
二人が組んだことによる戦力上昇は、加算(+)ではなく、乗算(×)だった。
ヒーロー「うおおおおっ!」
女幹部「でやあああっ!」
ズガガガガガッ!
瞬く間にザコたちが蹴散らされていく。
ドラゴン「つ、つええっ! すげぇコンビネーションだ!」
幹部(……まったく。あんなに生き生きと戦う女幹部を見るのは初めてだな)
ボス(クックック。祝福するぞ、我が娘よ!)
ザコたちは片付いた。残るは幹部二人と、ボスのみ!
二人の突撃に、幹部二人のコンビですらなすすべなく吹っ飛ばされた。
ドラゴン「ごふぅ!(完敗だぜ、チクショウッ!)」
幹部「がはぁっ!(ナ、ナイス共同作業……!)」
ヒーロー&女幹部「残るはボス一人っ!」
ボス「フハハハァー! ワシを越えてみせろぉぉぉ!」
ヒーロー&女幹部「いっけぇぇっ!」
ズバシュッ!
ヒーローの拳と、女幹部のムチが、同時にボスを直撃し──打ち倒した。
ボス(最大の好敵手の後継ぎと、最愛の娘に倒されるなんざ……)
ボス(悪の首領冥利に尽きる、ってもんだ、ぜ……)
ボス「ワシは、幸せ者だ……」ドザッ
ボス「完敗だ」
女幹部「大丈夫? お父さん、じゃないボス……」
ボス「キサマらとは鍛え方がちがうわ、バカモン(若い頃から何度負けてきたと思っとる)」
ボス「しかし、こうして全戦力投入して、ワール団は敗北したのだ」
ボス「ワシは現役を退き、ワール団は解散する」
幹部「いや」
幹部「解散はしないよ。俺がワール団を継いで、悪として外道どもを抑えてやる」
幹部「ヒーローだけにこの国を任せておけるものか」
ボス「……勝手にしろ」
ドラゴン「ガハハハ、ワール団は永久に不滅だ!」
ザコ軍団「やったやったぁー!」
ヒーロー(この場に俺がいるってこと、みんな忘れてないか?)
ヒーロー(まぁいいや、聞かなかったことにしよう……)
幹部「ワール団を辞めてヒーローと一緒になるんだろうが、女ヒーローにでもなるのか?」
女幹部「………」
女幹部「今更ヒーローってのも性に合わないし、私は悪のままやらせてもらうよ」
幹部「でも、それだとヒーローと戦うはめになるぞ?」
女幹部「ううん、戦わないよ」
女幹部「だからさ、ヒーローを油断させて寝首をかくために──」
女幹部「一時的にヒーローのパートナーになった悪の女幹部ってことで!」
幹部「そ、そうかい……」ポカーン
ドラゴン「ガハハハ、すげぇ!」
ボス(なんというムチャクチャな設定だ! さすがワシの娘!)ウルッ
女幹部「──というわけで、よろしく!」ガバッ ギュッ
ヒーロー「は、はいっ!(柔らかい……)」
ボス(くそっ、やっぱりいつかヒーローは倒す! 個人的に!)
ヒーローは本部から出ることを許された。
ささやかな結婚式を挙げた男と女は、現在アパートで暮らしている。
女「最近、出動が多いね。大丈夫? 疲れてない?」
男「へっちゃらだよ。本部にいた頃より調子がいいくらいだ」
男「でもやっぱり、ワール団のボス、君のお父さんが引退したのはでかかったようだな」
男「彼の威光を恐れて水面下にいた組織が、次々に表に出てきた」
男「でも被害そのものは以前よりぐっと減っている」
男「新生ワール団が悪側として、奴らを抑えてくれてることも大きい」
女「ありがとう。兄さんたちを褒めてもらえると、なんか嬉しいよ」
男「さて──」
ピーピーピー
戦闘員A「この市庁舎は我らが『バトル団』が乗っ取った!」
戦闘員B「×□市民は我々のドレイとなるのだ!」
ヒーロー「そこまでだっ! 悪党ども!」
女幹部「アンタらみたいな三流どころは大人しくしときなさいな」
戦闘員A「キ、キサマ……ヒーロー!? ……と」
戦闘員B「なぜかヒーローのパートナーになったワール団の女幹部!?」
(もっとも業界じゃ、ヒーローを油断させるための演技だって有名だがな)
ヒーロー「説明ご苦労! じゃあ覚悟はいいな!」ドゴッ!
女幹部「キラーウィップ!」ズガッ!
戦闘員A&B「へぼっ!」
ヒーロー「やれやれ、大したことない奴らだったな。さ、帰るか」
女幹部「お疲れ様。今日は晩ご飯フンパツしてあげる」
ヒーロー「お、ありがたいね」
女幹部「アハハ、たまにはね」
二人は、今日もどこかでこの国の平和を守っている。
~ おわり ~
乙
ヒーローも女幹部もボスも皆カッコ良かった
Entry ⇒ 2012.01.14 | Category ⇒ その他 | Comments (0) | Trackbacks (0)
メリー「俺の名はメリー。今貴様の後ろにいる」
メリー「何を狼狽えている」
少女「うそっ、ひ、ぃや」
メリー「早く振り向け」
少女「こ、こないでぇっ……」
メリー「……」グイッ
少女「いやああああっ!!」
少女「…あれ?」
メリー「俺を呼び出したのは貴様だろう」
少女(男の、ひと?)
少女(しかも、か、カッコいい……///)
少女「はっ!?」
メリー「……何を惚けている」
少女「いや、えっと、その……びっくりしちゃって」
メリー「貴様が俺を呼び出したのだろう?」グイッ
少女(ちっ、近い近い!)
少女「ちがっ、あの、私は都市伝説を試しただけでっ……」
メリー「都市伝説? ……詳しく聞かせろ」
少女「ええっと、友達から聞いたんですけど、ある電話番号に0時丁度に電話をかけると、メリーさんと繋がって、こちらから呼び出すことができるって……」
メリー「……」
少女「わ、わたし、本当に呼び出せるなんて思わなかったんです! た、ただの噂話だと、思って」
少女「は、はい」
メリー「貴様のくだらない好奇心と暇潰しのために」
少女「うっ……はい」
メリー「最近よく同胞が呼び出されるのはその為だったのか……」ハァ
少女「……メリーさんって、たくさんいるんですか?」
メリー「答える必要があるのか?」ギロッ
少女「ひいっ」ビク
メリー「……まあいい、どちらにせよ一度出てきてしまったら、貴様を殺すまで戻れん」
少女「はあ、そうなんですか……へ?」
メリー「一度出てきてしまったら、貴様を殺すまで戻れん、と言ったんだ」
少女「…………」ガクガク
メリー「何だ、危険を冒す覚悟もなしに都市伝説とやらを試したのか?」
メリー「貴様らの知るメリーだって、元々は人を殺すだろう」
少女「ひっ、」
メリー「そういうことだ」ジリッ
少女「いや、っうああっ!?」ガターン!
メリー(……椅子から転がり落ちおった)
少女「こ、こない、で」ボロボロ
メリー「……」
少女「………え?」グスッ
メリー「答えろ」
少女「こ、答えたら、魂抜かれちゃったり」
メリー「俺の気は短いぞ」
少女「しょっ、少女っ! 少女ですっ!!」
メリー「少女」
メリー「これで契約は完了だ」
少女「……け、契約?」
メリー「貴様らのいう都市伝説は本来、我々との契約だ」
少女「そ、その契約って」
メリー「貴様の願いを叶える。その代わり、貴様の命を頂く。それが契約だ」
少女「……私が、名乗らなかったら?」
メリー「貴様を殺して、俺は帰る」
少女「…………」ガクガク
メリー「震えるな、契約は結ばれた。願いを叶えるまで、貴様を殺すことはない」
少女「で、でもっ、願いを叶えたら……」
メリー「殺す」
少女(死神だ。この人は死神なんだあ!!)ボロボロ
少女「……今の流れでいうと思いますか?」
メリー「だが願いくらいあるだろう」
メリー「死んでも叶えたい願いや、死んでも叶えられないような願いだ」
少女「ごくごく普通の女子高生に、そんな願いありませんよっ」
メリー「俺たちを呼び出すのは、いつもそんな願いを抱えた者ばかりだからな」
少女「……その、」グスッ
メリー「?」
少女「知らなくて、呼び出しちゃったのは、ごめんなさい。だから、帰ってもらえませんか?」
メリー「それが貴様の願いか」
少女「ちがっ、いやそうだけど違いますうう!!」
少女「でも、願い叶えちゃったら、私は殺されるんでしょ?」
メリー「そうなるな」
少女「断固拒否しますっ!」ボフッ
メリー「……何をしている」
少女「お布団要塞です。今日はもう寝ます」
メリー「随分守りの薄い要塞だな」スイー
少女「うわあっ!? 擦り抜けて、っていうか近いっ!!」
メリー「擦り抜けも、透明にもなれるぞ」
少女(やっぱり幽霊なんだ……怖いよおぉ……)ブルブル
メリー「おい少女、朝だぞ」
少女「うぅ……ん」
メリー「おい」
少女「ふあぁ……、おふぁよぅございまふ……」
少女「んー……?」
メリー「」ジー
少女「びゃあああ」ガターン
メリー「面白い叫び声だな。死ぬときはその声で頼む」
少女「しっ、死にません!!」ドキドキ
少女(ああっ、びっくりした……何もあんな至近距離に……)
少女(っていうか、やっぱり夢じゃなかったんだ……)ハァ
少女「学校行かなきゃ……」
少女「いってきまーす」
母「いってらっしゃい、少女ちゃん」
少女(はぁ……メリーさん(仮)のおかげでいつもの三十分は早く出ちゃった)トコトコ
少女(……っていうか)
少女「何でついてきてるんですか?」
メリー「貴様がいつ願いを思い付くか分からないだろう」
少女「誰かに見られたら……」
メリー「ならば透明化しておこう。それならいいだろう」スッ
少女「ぐぬぬ……」
メリー「ところで、貴様はいつもそんな堅苦しい格好で学校に行くのか?」
少女「か、堅苦しいって」
メリー「家で髪を降ろしていたときのほうが、似合っていると思うが」
少女「へ? あ、ありがとうございます……/// っじゃなくて、わ、私は委員長だから、ちゃんとした姿じゃなきゃいけないんですっ」オホンッ
少女「そうですよっ」
少女「あと、透明化してるんだから、あんまり話し掛けないでください。変な人に見られちゃう」
メリー「……言っておくが、やろうと思えば俺は貴様を殺せるんだぞ?」
少女「ひ!?」ビクッ
メリー「契約の破棄の一度や二度……」ジリ…
少女「ごっ、ごめんなさいごめんなさいいいっ!!」ボロボロ
メリー「ふん」
少女(うぅ、調子に乗りすぎちゃった……)
少女(でもメリーさん(仮)、会話してると普通の人だもん。ちょっと上から目線だけど……)
少女「っ、ぁ」ピタッ
メリー「?」
同級生たち「」ガヤガヤ
少女「……っ」ビクビク
またはいじめられっ子か・・・
同級生B「マジかよ」
ガヤガヤ…
少女「……」ビク、ビク
メリー「少女」
少女「はっ、はい!?」
メリー「何故こんな端のほうを歩く」
少女「そ、それは……」
メリー「……」
野球部顧問「お、早いな少女。おはよう」
少女「あ、先生、おはようございます……」ペコリ
少女(そっか、野球部の朝練があってるんだ……)
ガラン…
少女(まだ誰もいない……)
メリー「おい、少女」
少女「はい……って、ななな何で実体化してるんですか!」
メリー「何か問題があるか?」
少女「ここは学校ですよ!? 部外者立・入・禁・止なんですっ! 見付かったらどーするんですかっ」
メリー「そんなことより」
少女「話を聞いてください!」
メリー「何をあんなに怯えていた」
少女「……っ」
メリー「奴らに虐めでも受けているのか?」
少女「ち、違います、よ」
少女「怯えてなんていません」
少女「ほ、本当ですっ!」
メリー「奴らに見つからないように、こそこそと逃げてここまで来ただろう」
少女「違いますってば!」
少女「メリーさんには関係ないでしょっ!」ボロッ
メリー「……」
少女「う、っく」ボロボロ
メリー「……うむ」
少女「……?」
メリー「今、確信した」
少女「何、がですか」グスン
メリー「俺は貴様の泣き顔が好きだ」
少女「……はあ?」
メリー「そして今確信した」
メリー「俺は貴様の泣き顔に興奮を覚えている」
少女「……」ブルブル
少女「へ、へんたい!」
メリー「だからはやく貴様も願いを決めろ。俺は貴様が死ぬときに泣き叫ぶ顔がみたい」
少女「へんたい! ドS! 今の話の流れでどーやったらその思考にいたるんですかっ!」
メリー「貴様が奴らに怯える顔にそそられたから、だな」
少女「いやあああっ!!」
メリー「ほら、泣いてみろ、泣かないと殺すぞ」クックックッ
少女「ひいいい」ボロボロ
少女「いやあああっ」ボロボロ
ガラガラッ
同級生「」
少女「あ」
メリー「ん?」
同級生「……お、お取り込み中失礼しましたー」
ピシャッ
少女「……ああああっ! ちょ、違うの、ちょっと待ってえええ!」ウワアァァン
メリー(いい泣きっぷりだ。さて、面倒なことになる前に透明化しておくか)
―――
――…
―…
…
少女「はあ……」
少女(あの後私の兄ってことにして、必死に説明してなんとか分かってもらえたな……)
少女(普段の行いがいいと、こういうときに便利)
メリー「疲れてるな」
少女「メリーさんのせいです」ムスッ
メリー「そんなことを言って、貴様も楽しんでいただろう?」
少女「人をM呼ばわりするの、やめてもらえませんか?」
メリー「素質はあると思うぞ」
少女「冗談やめてください」
メリー「ところで、今どこに向かっているんだ?」
少女「図書室です。放課後は、委員会の仕事があるので……あれ?」
少女(もしかして、……)
少女「……」ビクビク
メリー「?」
同級生A「よお」
少女「!!」ビクッ
同級生B「なあ委員会、今日朝すれ違っただろ? なんで挨拶の一つもしねーんだよ」
同級生C「それどころか目も合わせなかったよ、なあっ!」ドンッ
少女「ひっ」
メリー(今朝の奴ら……)
同級生B「俺らの機嫌とるにはどーすりゃいいかわかるよな?」
少女「……」スッ
同級生C「おっ、ピン札ゲット~」
同級生A「なんだよ今日もこんだけか? 家金持ちなんだからもっと持ってこいよ」
同級生B「おい、聞いてんのかよ委員長」
少女「は、はい……」ボロボロ
メリー「……」
同級生C「さあて、財布もあったまったことだし帰ろうぜ」
少女「……」ホッ
同級生C「――と思ったけどよぉ」
ガチャッ
少女「!?」
同級生B「ちょっと俺らに付き合ってくれよ、委員長」
同級生A「安心しろって、鍵は締めたから誰も来ねーよ」
少女「う、うそ……」ガクガク
同級生A「んな怖がんなよ、すぐ済むって」
同級生B「俺は委員長の泣き顔好きだけどな」
同級生C「わかるわかる、加虐欲そそられるよなー」
少女「ひっ、やあ」
少女(いや……うそ……こんなのやだよ……)
少女(誰かに助けてっ……助けてよお……)
少女「……メリーさん、助けてえ……」ボロボロ
メリー「……了解した」
バチッ
同級生B「あ? て、停電か?」
同級生A「チッ、こんな時にかよ」
……プルルルル
…プルルルル…
同級生C「おい、誰の携帯だよ」
同級生B「俺だ。……非通知? チッ、誰からだ?」
同級生A「お、おい。なんか寒くねーか……?」
ピッ
ザー…『俺はメリー。今、図書室の少女の隣にいるぞ』ザー…
ブツッ
同級生B「……はぁ?」
同級生B「お、おいおい、イタズラ電話かよ。A、C、さっさとやっちまおうぜ」
同級生B「……」
同級生B「……おい、A? C?」
同級生B「A! C! 冗談やめろよな! おいっ!」
同級生B「な、なんだよ……っ急に寒気が……」
同級生B「!!」
プルルルル…
同級生B「……」ガチガチ
ピッ
ザー…ッ、『俺はメリー。今、貴様の後ろにいるぞ』
同級生B「!!」バッ
メリー「よお」
同級生B「ひっ――――」
「うわああああああっっ!!!!」
……バチッ
少女「……あ、あれ?」
メリー「何だ、口程にもない」
少女「メリーさん……助けて、くれたんですか……?」
メリー「それが願いだったようだしな」
少女『助けてよ……メリーさん……!!』
少女(あっ……)
メリー「覚えているか」
少女「……それじゃあ、私……」
メリー「……」
少女「……うっ、」グスッ
少女「ひっ、く。う、あ」ボロボロ
メリー「何故泣く」
少女「あっ、安心、したの、とっ」
少女「……やっぱり、怖くてっ……」
少女「ひっ、く、う……」
メリー「それ相応の対価をもらおう」スッ
少女「……っ!!」ギュッ
少女「……?」
少女「メ、メリーさん……?」
チュッ
少女「ふ、むっ……、!?」
少女「んっ、ちゅ、う、む……っぷは、んん、くちゅ……」
少女「……ぷはっ! はあ、はあ……」
少女「…………」ボーゼン
メリー「……涎伝ってるぞ」スッ
少女「いやああああっ!!」ズザザザ
メリー「……」
少女「なっ、なっ、なっ、なっ……」
少女「何するんですか、いきなりっ!!」ブワッ
メリー「泣くほどか」
少女「っはじめてだったんですよ!」
少女「それに、助けてくれたと思ったのにっ……!」
少女「結局っ、メリーさんまで……うう、」グスッ
メリー「……」
少女「う……、そ、そういえば……」グスン
少女「な、なんで願いを叶えたのに、殺さなかったんですか?」
メリー「……願いを決める権利はこちらにもあるということだ」
少女「……??」
メリー「貴様を助けたのは、俺が勝手にしたことだ」
少女「……メリーさん……」
少女「」ハッ
少女「っで、でも、いきなりあんなこと!!」
メリー「いきなりじゃなきゃ良かったのか?」スッ
少女「ひいいいいっ!!」ズザザザ
少女「!!」ビクッ
メリー「意識が戻りつつあるようだな」
メリー「少女、行かなくていいのか」
少女「行きたいん、ですけど」
少女「こ、腰が抜けて……」
メリー「……」ハァ
少女「なっ、なんですかその溜め息! 半分くらいメリーさんのせいですよ!」
メリー「どこから出れば、あまり人に見つからない」
少女「へ? あ、あっちの非常口からなら……って!!」
メリー「行くぞ」
少女(おおおおお姫様だっこ!?///)カァァァァ
少女「だっ!」
少女「大丈夫! 一人で歩けますっ!!」
メリー「腰が抜けたんじゃなかったのか?」
少女「だ、誰かに見付かったら……」
メリー「だからこの非常口から出るんだろう」
少女「まだ靴も履き替えてないしっ!」
メリー「戻るのか? もう奴らが目覚めているかもしれないぞ」
少女「う、」ビクッ
メリー「そしたら、もう俺は助けない」
メリー「貴様は奴らの怒りを買って酷く弄ばれるだろうな」
少女「ひっ……」ジワッ
メリー「……貴様、本当に泣き虫だな」
少女「うっ、うるさいですっ!」グスッ
少女「……このまま、連れていってください」
メリー「雑だ。もっと詳細に、丁寧に頼め」
少女「い、いやで」
メリー「じゃなきゃ戻……」
少女「言います! いやじゃないです!」
少女「こ、このまま、……お姫様だっこのまま、家まで連れて帰ってください。お願いします……」
メリー「ふん、いいだろう」
少女(やっぱりドSだ、この人……)グスッ
メリー「……」ジッ
少女「な、何ですか」ミガマエ
メリー「何もない」
少女「……??」
少女「……今日は散々な一日だった……」ゴロン
少女(ファーストキスまで奪われるし……)
メリー「またその要塞か」
少女「もう入ってこないでくださいね」ムスッ
メリー「……そんなに、あれが嫌だったか?」
少女「……」
少女「いやですよ」
少女「だって、助けてもらったとはいえ、まだ会ったばかりの人(?)に無理やり……」
メリー「俺は貴様を気に入った」
少女「……はい?」
メリー「その泣き顔や怯えてる顔を、もっとよくみたいと思う」
少女「ああ……はい」
メリー「だから殺さなかった」
少女「……それと今の話と、なにか関係が?」
少女「なんで!」
メリー「言っておくが、俺は貴様をいつでも殺せるんだぞ」
メリー「俺の気分しだいでな」
少女「う……ま、またそれですか」グッ
少女「も、もう怯えませんよ! メリーさんには負けませんからっ!」ブルブル
メリー(要塞の中から言われてもな)
少女「……もう今日は寝ます」グスッ
メリー「そうか」
少女「おやすみなさい、メリーさん」
メリー「……おやすみ」
少女「」コソッ
メリー「……」ジッ
少女「!!」ビクッ
少女(お、起きてた……っていうか見てた……)ドキドキ
少女(……そういえば、メリーさんって、幽霊……なんだよね?……)
少女(……契約……)
少女(何者……なんだろう……)
メリー「……」スッ
スタ…スタ…
少女「……すぅ、すぅ……」
少女「ふあぁ……」ノビッ
メリー「おはよう」
少女「あ、メリーひゃん……おはよーございます……」ファァ
メリー「学校はいいのか」
少女「今日は土曜日ですよー……」
メリー「……貴様、朝弱いのか?」
少女「ちょっと……、顔洗ってきます」
少女「ふー……」パッ
メリー「」スッ
少女「ぬわあああ!?」
メリー「ふむ、及第点だな」
少女「いきなり鏡に表れないでください! 心臓に悪い!!」ドキドキ
少女「っていうか何ですか及第点って……!」
メリー「驚き方だ」
少女「これわざとですか!!」
メリー「そんなことよりさっさとしろ、出掛けるぞ」
少女「はっ? き、休日は勉強を……」
メリー「……つまらん人生を歩んでいるな、貴様は」
少女「し、失敬な。メリーとこうして話してるだけでも十分刺激的な人生になってますよ!」
少女「なっ」ムカチン
少女「いやですよ! 土曜日は勉強するってきめてるんです!」
メリー「そうか……ならば指の一本でももげば言うことを聞くか?」
少女「ひいっ!?」ビクッ
メリー「どんな声で泣くか楽しみだな……」ニヤ
少女「いやああああ! 着替えます! 着替えますからああっ!!」
メリー「わかればいい」
少女(絶対遊ばれてる!)
少女(で、でも怖いよおぉ……)グスン
また夕方きます
少女「……あの」
メリー「なんだ」
少女「まさか、その格好で街を出歩く気ですか?」
メリー「貴様は俺に全裸で出歩けというのか?」
少女「違います!!」
少女「そうじゃなくて、そのローブみたいなの、街に出たらもの凄っっく目立ちますよ!?」
メリー「貴様の格好は目だたなさ過ぎだと思うが」ジミ…
少女「うっ……は、話を逸らさないでくださいっ」
少女「とにかく、その格好だと街じゃ浮いちゃいますよ。ただでさえ目立つのに……」
メリー「ならば、最初に行くところは決まったな」
少女「へ?」
少女「……」ブルブル
メリー「何をそんなに怯えている」
少女「……一人で入ったことないんです」
メリー「俺がいるだろう」
少女「ノーカウントですっ。第一透明化してるじゃないですか」
少女「え、えっと、男の人の服売場は……」
女子高生達「」キャッキャッ
少女「っ」ビクゥ!
少女「あ、あっちみたいですね。早く行きましょう……」コソコソ
メリー「……」
メリー「そうか、入るぞ」
少女「う、ほ、本当に入るんですか……?」
メリー「入らないと服が買えないだろう」
少女(私のお金なのに!)
少女「だ、だって、女一人で男性服売場に入るなんて、変じゃないですか……」
メリー「だから、適当に服を選んで、試着室とやらに入ればいいんだろう?」
少女「……わ、わかりましたよう……」
少女「あ、メ、メリーさん、これなんてどうですか?」
メリー「却下。ダサい」
少女「てっ、適当でいいって言ったじゃないですか!」
メリー「貴様、今見もしないで服を取っただろう……」
少女「うぐっ」
客「」ガヤガヤ
少女(視線が気になる……)
少女(誰も見てないことなんて分かってる、けど……)
客「」ヒソヒソ
少女「っ」ビクッ
少女(さっさと選んじゃおう……あ、これなんて……)カチャカチャ
少女「メリーさん、これはどうですか?」
メリー「……さっきのよりは随分マシになったな」
少女「ちゃんと選びましたよ」
メリー「まあいい、着替えてやろう」
少女(上から目線だなあ……)
メリー「ああ」
少女「そうですか。……あの、メリーさん」
メリー「?」
少女「何で突然出掛けようなんて言い出したんですか?」
メリー「出歩けば、貴様の願いが見付かるかもしれないだろう」
メリー「貴様は意図的に他人との関わりを避けているからな」
少女「そ、そんなこと……」
メリー「ない、か?」
少女「……」
メリー「ふん。まあそれに、他人とすれ違うだけでビクビクしている貴様を見るのも楽しいしな」
少女「なっ!! そ、そっちが本分でしょう!」
メリー「どうかな」クック
少女「うう……」
少女「あ、えっと、じゃあ、て、店員さんを呼ん、で……」
少女「……」ボー
メリー「? どうした」
少女「っ!」ハッ
少女「なっ、何でもないです! 店員さん呼んできますっ!」ダッ
メリー「……?」
少女(が、外国のモデルさんみたい……着替えるだけで別人だよ……)
少女「あ! あのっ、すいません、試着したものを、そのまま着て帰りたいんですけど……」
また夜きます
メリー「……」
周囲「」ザワザワ
少女「……」ビクビク
少女(うわあああ!! 視線が痛いよ――!!)
少女(これは勘違いじゃないよね、あきらかにメリーさん目立ちまくってるよね)
少女(こんな目立つ人の隣にこーんな地味な私! 逆に目立つわっ!!)グスッ
少女「メ、メリーさん、もう出ませんか……?」
メリー「何をいう。まだ来たばかりだろう」
少女(なんかちょっとご機嫌だし!)
メリー「……」
メリー「少女」
少女「な、何ですか」ヒソ
メリー「髪にゴミが付いているぞ」スッ
少女「え? あ、すいませ……って!」
少女(ま、また無意味に近いっっ!!)
周囲「」ザワ…ザワ…
少女(ああああ視線がああああ――!!)サァァ
メリー「どうした? 顔が青いぞ」ニタニタ
少女「なっ! わ……わざとですか!?」
メリー「俺は髪についたゴミを取ってやっただけだ」
少女「ゴミ! 見せてください!」
メリー「もう捨てた」
少女「っ~~!!」ウルウル
メリー「おい、どこにいく?」
少女(確かこの辺りに……)
少女(あっ、あった)
メリー「本屋か」
少女「」ビクッ
少女「つ、ついてこないでくださいよ」
メリー「……俺にそんな言葉を吐く口はこれか?」
少女「っひい! な、なんでもありません!」
メリー「しかし、貴様は本好きだな。貴様の部屋にも本が山積みされていただろう」
少女「……本は一人の世界になれるから、好きなんです……」
少女「あ、この本文庫本になったんだ」パアッ
メリー「そんなに買うのか?」
少女「だってショッピングセンターなんてたまにしか来ないですもん」
少女「まとめ買いしておかないと……続編なんだ、へえ~」
メリー「ふうん……」
少女「うーん、あ、あとこの本も。メリーさん、ちょっと持つの手伝ってください」
メリー「断r」
少女「はいっ」キラキラ
メリー「!?」ズシッ
少女「あっちのコーナーにも行きましょう! あ、メリーさんも興味がある本があれば買ってあげますよ!」ヒョイッヒョイッ
メリー「おい、ちょっ、乗せるな、前が見えな……」
少女「~♪」
少女「いりますよ」
メリー「おい少女、この本は貴様の本棚で見たことがあるぞ」
少女「良い本は二冊揃えるのが基本ですっ」
少女(……あれ、この本)
メリー「おい少女、この似たような女ばかり描かれた表紙の大量の本は……」
少女(新・都市伝説……)
メリー「おい少女、聞いているのか」
少女「……この本もお願いします」ヒョイ
メリー「……」
メリー(帰ったら泣かす)ピキピキ
ウィーン
メリー「……まさか本当に全部買うとはな」
少女「うふふ、良い買い物をしました」ホクホク
メリー「荷物が重い。さっさと帰るぞ」ゲンナリ
少女「えっ」
少女(や……やった!!)
少女「そうですねっ! はやく帰りましょう!」
メリー「嬉しそうだな」ジト
少女「ま、まさかあ、そんなことないですよー?」
メリー「……俺に荷物まで持たせて、覚悟はできているんだろうな」
少女「わ、私だって買い物に付き合ってあげたじゃ……」ビクビク
メリー「口答えか?」
少女「すいませんごめんなさいっ!!」
少女「ふーっ」ドサッ
メリー「本はいいのか?」
少女「はい、仕分けした後読みますから」
少女「あ、そうだ……」
メリー「?」
少女「今日はありがとうございました。(メリーさんのせいで視線浴びまくっちゃったけど……)おかげで、たくさん本が買えました」
メリー「()の部分はいらないな」
少女(ど、読心術!?)ハウアッ
少女「あの、それで、これ、お礼です」キラッ
メリー「……腕輪か?」
少女「はい。こういうの、何を買えばいいか分からなくて、目に入ったもの、選んじゃいましたけど……」エヘヘ
少女「う゛」ドキッ
メリー「ふん、物で釣るとは意外と強かじゃないか」
少女「な、何のことでしょうか……」
メリー「おいおい、俺は褒めているんだぞ?」
少女「……だ、だって、覚悟はできてるんだろうな、とか言うから……」グスッ
メリー「良かったな、俺は今日機嫌がいい」
少女「え?」
メリー「付けろ、そしたら許してやる」
少女「っ、え、と……わ、わかりました……」
メリー「……」
少女「……」チャラ、チャラ…カチッ
クイッ
少女「よ……?」
少女「っ、」(近い近い!!)
メリー「少女」ジイッ
少女「な、何でしょうか……」
メリー「……」
少女「あ、あの、ち、近いんです、けど……」ドッ、ドッ
少女(っもしかして、また、図書館のときみたいに……?)
少女「メ、メリー、さん……?」ビクビク
メリー「……ふん」ニヤ
パッ
少女「え、あ、あの」
メリー「覚悟しておけ、と言ったろう」
少女「……そっ、それがこれですかあっ!?」ボロッ
メリー「貴様は本当にすぐ泣くな」クック
少女「おどかさないでくださいよ! ……幽霊にいうのもなんですけど、」
メリー「今日は貴様が調子に乗って、あろうことか俺を扱き使ったからな」
メリー「どちらの立場が上か、はっきりさせておかなければいけないだろう?」
少女「私はペットか何かですか!」
少女「ふん。私は本の仕分けしますからっ」グスッ
メリー「……」
グイッ
メリー「」ペロッ
少女「…………へ?」
メリー「面白い顔だな。及第点だ」
少女「……なっ、なっな、涙、なめ……///」
少女「いやあああああっ!!」
…あれ?
メリー「おい少女」
少女「メリーさんなんてしりません」グスッ
メリー「……」
少女「……」
メリー「図書室」
少女「そのワードは聞きたくありませんっ」
メリー「……」ハァ
少女「あ、あの時のことだって、雰囲気に流されちゃいましたけど、許したわけじゃありませんからっ!」
メリー「堅物」
少女「柔いよりいいです!」
少女「と、とにかくっ、今日はもうここから出ませんから」ムスッ
メリー「たかが頬を舐めた程度で……」
少女「声に出さないでくださいこのへんたいっ!///」グスン
少女(新・都市伝説……ええっと、メリーさん、メリーさん……)パラパラ
少女(あった、67P)ペラ
少女(『メリーさんの電話』……)
少女(基本の話は一緒かあ。契約については……載ってないか)
少女(ん、なになに)
少女(『メリーさんとは、どの話に基づくにせよ、何らかのきっかけで生まれた悪霊である』――)
少女(……悪霊……)
少女(メリーさんが?)コソッ
メリー「」ニヤリ
少女「」ビクッ
少女(ありそー……)ドキドキ
少女「」ウト、ウト
少女「――すー……すー……」
メリー「……」スッ
―――
―…
…
少女「……ふあぁ……」
少女「おはようございまひゅ……メリーさ……」
少女(あれ?)
少女「……メリーさーん?」
少女(いない)
少女「メリーさん……?」
少女(……どこ行ったんだろう……)
少女(…………って! なんで私ちょっと落ち込んでるの!?)ハッ
少女(あの人がどこにいこうと勝手だもんっ)
少女(……顔洗おう)ファァ
少女(……これで顔上げたらいたりなんかしないよね)
少女「……」ソー
ポツン
少女「……」
少女(だっ、だから何でちょっと落ち込んでるの私っ)ハッ
少女「よし、今日はメリーさんに邪魔されずに勉強するぞー!」オー!
少女「……」
少女「おーっ」
少女(なんか……調子狂うなあ)
カリカリ
カリカリ
カリカリ
少女(メリーさん、どこ行ったんだろう)
カリカリ
カリカリ
カリカ、ッ
少女(もしかして、もう戻ってこないのかな。でも、契約が……)
カリ…カリ…
カリ…
少女(それなら、私にとって好都合じゃない。なのに……なのに……)
少女(……全然集中できない……)グスッ
ガヤガヤ
少女(着ちゃった……)ブルブル
少女(ううう、でもこんな場所にいるはずないよね……)グスッ
少女「はあ……メリーさーん、どこですかー……」
少女(こうなったら、行くしかない……)
少女「……」ガクガク
少女(今度こそ、本当に一人だ……)
少女(でも、開店したばっかりで人は少ないな)ホッ
ウロウロ
少女「……いない、かな……」
少女(あ、ここ、昨日きた店だ)
少女(着替えたメリーさん、すごく目立ってたよなあ)アハハ…
少女(……ここに来たのは、願いを見付けるためだったんだよね……)
少女「私の願い……」
少女「死んでも叶えたい、死んでも叶えられないような夢かあ……」
少女(そんなの、わかんないよ……)
少女(結局メリーさんは見付からなかったけど)
少女「ちょっと休憩……、あ、ベンチがある」
ドサッ
少女「うー、メリーさんどこ行ったんだろ……」ハァ
少女(……もし、)
少女(もしも、このままメリーさんが見付からなかったら)
少女(契約は、多分うやむやになって、私は死ななくてもいい)
少女(メリーさんに振り回されることもなく、普通に毎日をおくれる)
少女「……やだな」
少女(あの怯えてばかりの、怖くてつまらない毎日を)
少女「メリーさん……」グスッ
少女「メリー、さんっ」ボロボロ
メリー「なんだ?」
メリー「どうした、俺を探してたんだろう」
少女「…………なっ、なんでさも当然のように座ってるんですかあっ!」ポロポロ
少女「い、今までどこにいたんですか!?」
メリー「数分前からは貴様の後を尾けていたな」
少女「なっ」
メリー「『久しぶりにこんなに……』の辺りからずっと隣にいたぞ?」
少女「とっ、透明化はずるいですよ!」
メリー「ふん、てっきり家で勉強でもしているかと思えば、こんな所にいるとはな」
少女「うっ、し、しようと思いましたよ! でも集中できなくて……」
メリー「何故だ。貴様が集中できないとなると、よっぽどの理由なのだろう」ニヤ
少女「うぐ……」
少女「……はあ、探したんですよ、メリーさん……」
少女「心配したんです、から……ちょっと」グスッ
メリー「……ああ、悪かった」ポン
メリー「……」
少女「黙秘ですか」
メリー「プライベートだ」
少女「人のプライベートにはずかずか踏み込んでくるクセに……」ムスッ
メリー「貴様には関係のないことだ」
少女「……別に、いいですけど」
メリー「……」
少女「……」
メリー「……」
少女「……あの」
メリー「……」
少女「願いについて、一つ聞いてもいいですか?」
メリー「……そうだ」
少女「じゃあ、」
少女「……」
メリー「……」
少女「……やっぱりなんでもありません」
メリー「はあ?」
少女「聞かなかったことにしてください」
メリー「そこまで言っておいてか? 言え」グニッ
少女「ひゃっ!? は、はにゃひてくださひっ!」
メリー「言え。いいな」
少女「ひゅいまひぇん! 言いまふ! 言いまふからはなひてえ!」グスッ
メリー「ふん」パッ
少女「ほ、頬がじんじんする……」
メリー「前置きはいい」
少女「うっ……、その、もし」
少女「もしも私が、もっとメリーさんと一緒にいたいって願ったら……どうなるんですか?」
メリー「……」
少女「……あの、」
メリー「……後悔するぞ」
少女「へ?」
メリー「その願いは、必ず貴様を後悔させる」
少女「そ、そんな……」
メリー「確かにそう願うことは可能だ」
メリー「そして、貴様が死ぬときか、俺があきるまで、共にいることができる」
少女「メ、メリーさんが飽きてもダメなんですか!?」
メリー「だが、それはつまり、貴様の命が一生捕われることになるんだぞ」
メリー「願いを変更することはできないからな」
メリー「人間の感情は移ろいやすい」
メリー「何年後か、もういっそ死んだほうがマシだと思うかもしれないだろう」
少女「……」
メリー「俺は悪霊だ。貴様が読んでいた本にあったようにな」
少女「見てたんですか」
メリー「透明化も霊の特権だ」
メリー「……今日俺がいなかったのも、その為だ」
少女「え……?」
メリー「俺は、貴様との契約を破棄する」
メリー「安心しろ、貴様を殺すわけではない」
メリー「殺して帰るならさっさとやっている」
少女「……じゃあ……」
メリー「契約破棄の一度や二度、」
少女「ま、待ってくださいよっ!」
メリー「……」
少女「そ、それじゃあ、メリーさんが今日いなかったのは、私を殺さずに帰るためなんですか……?」
メリー「そういうことだ」
少女「っなんで」
メリー「言いださせないつもりだった、貴様に」
少女「……?」グスッ
メリー「さっきのような願いを、だ」
メリー「そもそも、ここに戻ってくるつもりもなかった」
少女「もしかして……」
メリー「もう貴様と俺の間には、何もない」
少女「……」
メリー「ただの悪霊と人間だ」
少女「そんな……」ポロポロ
メリー「なぜ泣く。貴様にとっては都合がいいはずだろう」
少女「っ……勝手です、メリーさん……」
メリー「別れを告げにきたやっただけでもありがたいと思え」
少女「う、うっ、ひ、く……」グスッ
メリー「この泣き虫が……」
スッ
少女「んっ、――――!」
メリー「――……、は」
少女「メ、リー……さん」ポロポロ
メリー「……さようなら、少女」
少女「……メリーさん」
少女「……」
少女「……メリー、さん」
少女「……」
少女「……」
少女「……」
少女「…………」ポロッ
少女「うっ、ひ、っく……」ポロ、ポロ…
少女「う、あ、うあああん……うああああ……!!」
―――
―…
…
母「少女ちゃん、朝ごはんは?」
少女「いらない……」
少女「いってきます」
ガチャ
少女「……」
少女(あれから、結局メリーさん、姿現さなかった)
少女(もう一度、と思って電話してみたけど、繋がらなかったし……)
少女「……」
少女「当然だよね、」
少女「もう、あの人とは何の関わりも繋がりもないんだから」
少女「……」
少女「……」グスッ
少女(自分で言って悲しくなってどうするの……)
キーンコーン…
カーンコーン…
同級生「」ワイワイ
少女「……」
少女(学校なんて、楽しくない)
少女(勉強は好きだけど、同級生たちが何か話してるだけでビクビクする)
少女(陰口叩かれてるんじゃないかって、怖くて仕方ない)
少女(……メリーさんがいてくれたときは……)
メリー『おい少女、今からあの教師のカツラをずらすぞ』
少女『!? ちょっ、ダメですよメリーさん!!』ヒソヒソ
少女(馬鹿なこともしてたけど……)クス
少女(少しだけ、周りのことが気にならなくなった)
ジャー…
パシャパシャ
キュッ、キュッ
少女(まだ目、ちょっと腫れてるなあ)グシグシ
少女「……」ジッ
メリー『――だいたい、貴様は何に怯えている?』
少女『だ、だって、私暗くて引っ込み思案だし』
少女『友達もあんまりいないし、だから周りも……』
メリー『それは貴様のせいだろう』フゥ
少女『そ、そんな……』
少女『そう、ですけど……』グスッ
メリー『変わればいい』
メリー『まずは髪を降ろすことだな』
少女『え!? で、でも私、癖っ毛だし……』
少女「……」フサッ
メリー『降ろしたほうが似合う』
少女「……本当、ですよね。メリーさん?」ニコ
ガラッ
同級生「」ザワッ…
少女「……」ビクビク
少女(う、うわ、やっぱり視線が……)
少女(みっ、みんながこっち見てるよ……)ジワ
少女(もうすぐ授業始まるし、とにかく、席に……)ガタッ
同級生A「委員長、そんなに髪長かったんだ」
少女「……へ?」
同級生B「なんか髪降ろした少女ちゃんって斬新ー」
同級生C「そっちのほうが似合ってるよ!」
少女「そ、そうかな。ありがとう……///」
少女「」チラッ
少女(他の人も、一瞬見ただけで全然気にしてないみたい……)
少女(怖くない……)
少女(メリーさん、私、ちょっと勇気出せましたよ)
教師「先週やったとこの復習だが――……」
少女(……会いたいな……)
―――
―…
…
少女「……」ソーッ
少女(よし、図書室には誰もいないっ)
少女(あれから、あの人たち私にちょっかいださなくなったよなあ……)
少女(よっぽどメリーさんが怖かったんだね)アハハ…
少女「よしっ、委員会の仕事終わらせちゃおう」
カリカリ
カリカリ
少女「……」
カリカリ
カリ…カリ…
少女「……」ウト、ウト
少女(や、やばい、なんか、眠たい……)
少女(最近あんまり寝てなかったからか、な……)カリ…
少女「……すぅ、すぅ……」
プルルルルッ…
ガチャ
ザー…、『俺の名はメリー』ザッ、
ザザ『今、学校の前にいる』
少女(――え?)
ブツッ
ツー、ツー…
――…
少女(っ!!)ガバッ
少女「ゆ、夢……?」
プルルルルッ
少女(っ、!!)ビクッ
プルルルルッ
少女(……)
メリー『さようなら、少女』
メリー『だが、もし――』
ガチャ
ザザ『俺の名はメリー、今靴箱にいる』ザー…
ブツッ
少女「はい……」
『もし、俺から電話があったときは』
プルルルルッ
ガチャ
少女「もしもし」
ザザ…『俺はメリー、今一階にいる』ザッ
ブツッ
少女「……」
メリー『貴様が決めろ』
プルルルルッ
プルルルルッ
ザザ…『俺はメリー、今、二階にいる』ザー…
ブツッ
少女(あと一階……)
メリー『後悔したくないなら、振り向くな』
少女(メリーさんのばか)
少女(その言い方はずるいですよ……)
プルルルルッ
ガチャ
ザー…『俺はメリー、今三階にいる』ザザッ
ブツッ
プルルルルッ…
ガチャ
少女「もしもし」
ザザッ『俺はメリー、今……図書室の前にいる』ザー…
少女「はい……はい」ジワッ
ブツッ
少女「……」ドクン、ドクン
…
少女「はあっ……」
…
少女「……」
…
少女「……あ、あれ?」
少女(いやいや、最後の最後で電話かけないとか、メリーとしてやっちゃいけないでしょっ)
シーン…
少女(……)
…
少女(……)
…プルル
少女「はいっ!」
ザー…『……』ザザ
少女「……メリーさん、」
メリー「俺の名はメリー、今貴様の後ろにいるぞ」
メリー「……」
クルリ
少女「わ、私は少女っ……。少女ですよっ、メリーさん」
メリー「……貴様の願いは」
少女「メリーさんとっ」
少女「一緒に、いることです」ボロボロ
メリー「……いいだろう」
メリー「貴様のつまらない人生に付き合ってやる」
少女「……はいっ!」
メリー「俺の名はメリー。今貴様の後ろにいる」 ――おわり
見てくださってた方々、ありがとうございました
少女漫画みたいなSSでしたが、最後まで書かせてもらえて楽しかったです
少女&メリー「「ばいばーい」」
面白かった
いつかまた書いてくれ
メリーさんの電話番号教えてください
Entry ⇒ 2012.01.11 | Category ⇒ その他 | Comments (0) | Trackbacks (0)
猫「は?見てんじゃねぇよ。あ?」
人「やだかわいい」
猫「あ?殺すぞ?あ?」
人「かわいい」
猫「おい近づいてんじゃねぇよ!あ!?」
人「かわいい」
人「びびんなくて良いよー」
猫「はぁ?殺すぞ!」
人「ほーら、笹かまだよー」
猫「!?」
猫「なっ、なっ」
人「ほーらほらほーら、レアアイテムだよー」フリフリ
猫「う、うっせ!消えろよ!」
人「いらないの?じゃあ良いや」スッ
猫「えっ」
猫「あ、ちょっ、まって」
人「………」
猫「………」
人「ほれ」ポイ
猫「!!」
人「……」
猫「…え、食べて…いいの?」
人「……」
猫「え、平気?いいの?え?」
人「君ガリガリだな」
猫「うめぇうめぇ」
人「ノラなの?」
猫「うめぇうめぇ」
人「うちくる?」
猫「うめぇ?」
猫「うめぇうめぇ」
人「ほらもう一枚」
猫「うめぇうめぇうめぇ」
人「なんとちょうど良いところに段ボールが」
猫「うめぇ」
人「ほら、ここのなかは笹かま天国だよ」
猫「マジか」のそのそ
人「確保ー」
猫「うまし」
医師「うーぃ」
猫「なになになんなの」
医師「プスッとな」
猫「ちょっまって何、痛っ!な、な…」
猫「zzz…」
医師「うーぃ」
人「トイレ、餌入れ」
人「つめとぎ、いるかな」
人「買っとくか」
人「ようこそ玉なし野郎」
猫「さむくない」
人「そこがトイレで、そこが餌場な」
猫「どこここ」ショワワ~
人「そこトイレちがう」
猫「どここここここ」ショワワワ~
人「おちつけ」
人「あたたかい…」
人「床暖房だからね」
人「床暖房で部屋全体が暖まる!」
人「続きはWEBで!」
猫「zzz…」
猫「zzz」
犬「誰ですか」スンスン
猫「zzz」
犬「……」
猫「zzz」
犬「zzz」
人「あらら、一緒に寝てら」
犬「zzz」
猫「でけぇ」
犬「zzz」
猫「えっ、なに、えっ」
犬「zzz」
猫「………」
猫「zzz」
人「はーい」
管理人「ちゃーん」
人「今月分はもう払いましたぜ」
管理人「遊びにきたんだぜ」
人「まああがれや」
管理人「おう」
人「うん」
管理人「二匹以上飼っちゃダメなのに」
人「そう思うだろ?」
管理人「思う思う」
人「一時保護だから」
管理人「かーらーのー?」
人「手放す気はない」
管理人「フゥー!」ハイタッチ パァーン
人「フゥー!」ハイタッチパァーン
管理人「はぁーい猫ちゅあーん」ガチャッ
猫「またきた!」
人「今月分はもう払いましたよ」
管理人「遊びにきたんだぜ」
人「仕事しろ」
管理人「暇なんだもん」
人「仕事しろ」
人「舌こえちゃうじゃん」
管理人「肥えろ肥えろ」
人「やめれ」
管理人「さらに猫じゃらしを買ってきて」スッ
猫「」ピクッ
管理人「一本500円のゴージャスじゃらしだ」
管理人「500円が…」
人「ものの5秒で羽とれたな」
猫「飽きた」
管理人「ボッロボロやないかい…」
猫「なーおっぱい」
犬「出ませんて」
管理人「500円……」
人「俺も仕事するかな」ノビー
管理人「500円……」
人「……」
管理人「……」
人「向かいの野原で摘んでくれば?猫じゃらし」
管理人「ハッ!!!!!!」
人「その手が有ったか!みたいな顔されましても」
人「はいチョコラータ」
編集「原稿どんなぐあい?」
人「エヘヘ」
編集「エヘヘ」
人「エヘヘへへ」
編集「ころすぞ」
人「ごめんなさい」
人「あぁ、はい」
編集「いくつかコラム欄があるんだけど、そのうちの1つ担当してみない?」
人「良いですけど、僕絵画とか全然知らないですよ?」
編集「大丈夫大丈夫、現代アートには文章とか絵画とか枠が無いようなもんだし」
人「はぁ。現代アートちっくなコラム描いたほうが良いですか?」
編集「まあ、ちょっとは」
人「うーん」
編集「へぇ」
人「猫のことで良いですか?」
編集「まぁ、書いてみてよ。先月号送るから参考にして」
人「あい」
人「あ、いま仕事中なんで静かにお願いします」
犬「zzz」
猫「zzz」
管理人「」
管理人「お茶いれます」
人「そんな暇なの」
管理人「暇なの」
人「君が美人な未亡人だったらなぁ…」
管理人「デュフフ」
人「きめぇ」
人「キーボード打つ仕事してるのに!」
管理人「手あらえば良いじゃん」
人「それもそうだ」
猫「眠い…くそが…」
人「あ 起きた」
管理人「よーしお茶の時間だー!」
猫「な、なにそれ なんなんそれ」
人「犬には?」
犬「私には?」
管理人「あ」
犬「私には?」
人「あーあ犬かわいそ」
管理人「ご、ごめん」
犬「私には…?」
管理人「そんな目で見ないでくれ」
人「んじゃ散歩てがらボール遊びしてあげて」
管理人「まかせろ!リードはどこだ!」
人「くつばこの横」
管理人「いこう!」
犬「散歩?散歩ですか?」ふりふり
管理人「フゥー!」
ガチャバタン
人「静かになったな」
猫「寝よ」
人「この子をどう動かすか……」
猫「暇や 構え」ドス
人「うお重い」
猫「構え」
人「邪魔です」
猫「zzz」
人「おーい」
猫「zzz」
人「しかし」フニフニ
猫「z、zz…zzz」
人「少しは肉がついたようで」ナデナデ
人「良かった」ナデナデ
猫「うひぃ!」ビクゥッ
人「あ 起きちゃった」
管理人「ほいほい足拭こうなー。お手!」
犬「はい」
管理人「よーしゃよしゃよーしゃ」フキフキ
人「あーあ すみっこ行っちゃった」
管理人「え?どしたの?」
人「やかましいと」
管理人「ご、ごめす」
犬「ご主人ー!楽しかったよご主人ー!」フリフリ
人「よしよし」ナデナデ
犬「楽しいですよ?運動気持ち良いし、爽快にうんこできますし」
猫「ふーん」
犬「でもやっぱり、ご主人との散歩が一番ですね」
猫「へぇ、あの餌生産機が」
管理人「なになにおしゃべりしてんのー?」
猫「チッ来んなよ餌生産機2号」
人「そりゃな」
管理人「えっなんで?えっ」
人「しつこい奴は嫌だよなー」
猫「早く帰らせろよそいつ」
人「ほら見ろよあの顔」
猫「殺すぞ」
トゥルルルル
管理人「はいチョコラータ」
隣人「え?あの……水道が…」
管理人「あぁ、その件ですね!いま伺いますんで」ピッ
管理人「というわけだ!あばよ!」
人「おう」
ガチャバタン
ピンポーン
隣人「早っ!!」
カチャカチャカチャカチャ
猫「なにこれ」
犬「草ですね。向かいの野原に生えてる」
猫「ふーん」ちょいちょい
猫「へぇ」ガジガジ
犬「汚すと怒られますよ」
猫「へぇ」ガシガシガシガシ
人「なにこれ」
猫「え、なに」
人「ねぇなにこれ」
猫「な、なに、知らねぇし」
人「ねぇ」ガッ
猫「」
人「こういうことは」
猫「な、な」
人「しちゃダメだから」
猫「わ、え、え、」
人「わかった?」
猫「え、え、え」
犬「怒られるって言いましたよ」
猫「あいつ弱っちくないの?」
犬「最強ですよ」
猫「マジかよ…」
猫「……」
人「ほい」
猫「もう怒ってない?」
人「あ、そうだ水もだ」
猫「…」
人「はい」コト
猫(怒ってないみたい)ピチャピチャ
人「あとビールと、笹かま」
猫「笹かま?笹かま?」
人「ん?」
猫「笹かま?」
人「あぁ、これ?」
猫「笹かま」
人「好きね君 ほい」
猫「わーい」ムシャムシャ
人「甘やかしすぎかなあ」
人「風呂入ってからビール飲むんだったな」
人「…まぁ、校了したし、今日くらい」
カコッ プシュア
猫「笹かま?」
人「もう今日はダメー」
猫「笹かま?」
人「ほら、ビールしかないよ」
猫「笹かま…」
人「そんな好きか」
人「プハー」
犬「元気出して」
猫「アホみたいなキャットフードじゃ元気でない」
犬「あなた好きじゃないですか、キャットフード」
猫「べっつに」
人「よーう」ガバァ
猫「なんだいきなり」
犬「酔ったご主人は甘えん坊さんです」
猫「きっしょ」
人「あれ?君ら臭くない?」
犬「ご主人シャンプーつけすぎです 匂いきつい」
人「うーん」スンスン
人「そろそろ洗うかぁ」
犬「まあ良いですけど」
猫「??」
人「良い朝だ」
犬「zzz」
猫「……」ジトー
人「………」
人「おはようございます」
猫「…」ジトー
人「ごめんなさい今すぐ用意しますごめんなさい」
猫「…餌生産機のくせに……」
人「チュリーッス」
管理人「あれ、仕事おわったの?」
人「ふふふ、昨日送った」
管理人「お疲れさん!飲むか!」
人「お前飲みたいだけだろ」
管理人「よーし散歩ついでに買い出しだー!行くぞポチ!」
犬「わーい」
人「勝手に名前かえんな」
猫「触んなカス」バシッ
人「いたいでしょ」ガッ
猫「うぐぅ」
人「クロはなーラブラドールでクロだし」
猫「ぐぬぬ」
人「君灰色だしね」
猫「ぐぬぬ」
猫「はなせや」
人「うーん」
猫「おい」
人「ネズミはいや?」
猫「はなせ」
人「嫌そうだな」パッ
猫「プハァ」
猫「かゆ」カシカシ
人「グレ~」
猫「あ?」
人「お、反応した。グレ決定だな」
猫「あ?」
管理人「うし、かたすか」ザクザク
犬「まだですか」
管理人「袋に入れて、と。うぅ、うまくはいらんな」
犬「まだですか」
管理人「もっと袋の口を広げねば」いそいそ
犬「はあ」
管理人「ガチャバタン」
人「おかいりーありがと」
管理人「足拭くかな」
人「あぁ、軽くで良いよ。今から風呂入れるから」
管理人「ほいさ」
人「んー、動くかぁ」ノビー
管理人「動け動け」
猫「zzz」
管理人「グレ?」
人「グレ。」
管理人「グレにゃーん」
猫「なに見てんだよカス」
管理人「ポチわーん」
人「クロな」
クロ「はーい」
管理人「……」
猫「……」
管理人「ふたりっきり、だね…////」
猫「……」
管理人「みかんくお…」モリモリ
管理人「はぁ」
管理人「はーあぁ」ポケー
猫「おいカス」ボスッ
管理人「ボスッ?」
ゴキにゃん「死ーん」
管理人「」
猫「餌もってきてやったぞ」
人「何うるさい」
管理人「ゴッゴゴゴゴウゴ」
人「あー、出たか…マンションだし仕方ないよね」
管理人「ゴゴ」
人「処分しといて。でもゴミ箱はダメだよ。」
管理人「どどどどうすりゃ」
人「ベランダで焼いといて」
管理人「や…く……?」
ゴキにゃん「死ーん」
犬「ふぅ」
管理人「しにたい」
人「燃やしてくれた?」
炭にゃん「」
人「おぉ、やってくれたのね」
管理人「しにたい」
人「ゴミ箱に捨てたらそこで卵がかえるから。消し炭にしなきゃいけないの」
管理人「なんと」
人「んじゃグレ、おいでー」
猫「は?」
人「もー。よいしょ」ダッコ
猫「なんや」プラーン
人「猫は逃げるっていうからな」ガッ
猫「なに?な、なに?」
人「シャワーじゃビックリするかな…優しく掛け湯にしよ」
ジャバア
猫「!!?!?」
人「はいまってねー。えっと猫用シャンプーは…」
猫「うわあああああああああ」
人「ほら、綺麗になるぞー」ワッシャワッシャ
猫「おぎゃあああああああああああ」
猫「」グッタリ
管理人「おぉ、お疲れ。結構かかったね」
人「かなり暴れた」
管理人「あらら」
猫「」グッタリ
人「バンドエードどこしたっけ」
犬「大丈夫?」
猫「なんなのあれ?なにしてくれんの?」
犬「なんなんでしょうね」
猫「あんたよく大丈夫だよね」
犬「馴れたし、ご主人を信頼していますから」
猫「意味わかんね…絶対おかしいって…」
犬「そう?」
猫「もうやだこんなとこ出てく」
人「飯だよー」
犬「わーい」
人「グレー?」
猫「くそ、くそ…」
人「まだ拗ねてる」
管理人「ごちそうさまです」
人「さて、お風呂沸かすかな」
管理人「おう」
管理人「ん…?なー、グレちゃんは?」
人「その辺にいない?」
管理人「いないよ?」
人「んじゃソファかベッドの下かな」
管理人「いないよ?」
人「……カーテンレールの上は?」
管理人「いない…あ、窓」
人「……!」
管理人「ごめん、私窓閉めてなかったから…!」
人「いや、君は閉めてたよ。俺そのあとベランダで洗濯物取り込んだから」
管理人「……」
人「ちょっとお留守番お願いできる?帰ってくるかもだから」
管理人「わ、わかった」
人「クロ、探しいこう」
犬「お散歩!?夜のお散歩やー!」ハフハフ
管理人「……」
管理人「……」
管理人「見つかるかな…」
管理人「もっと気にしてれば、気付けたかもしれないのに」
管理人「………」
管理人「…グレちゃん……」
人「野原には、いないのか……?」キョロキョロ
人「……グレを拾った駅前、探してみるか」
犬「夜空の下で爽快うんこぉー!」
人「はやくはやく」
管理人(いやいやいや、そんなこと考えても仕方ない)
管理人(マンションの入口に迷い猫ポスターを張ろう。あ、あと住人さんのポストにも入れて)
管理人(商店街の人にも頼んで)
管理人(…………)
管理人(考えろ、考えるんだ…)
人「どこだー…」
人「あっ、灰色い猫!」
人「……ちがう、大きすぎるし顔も違う。毛並みも悪い」
人「あいつの兄弟かな…」
犬「ご主人、ご主人」グイ
人「ん?」
ニャー
人「あの、その猫…」
中年「はい?」
人「あ、…すいません、違います」
中年「猫を探しているんですか?」
人「はい、それとよく似た、灰色の…もうすこし小さい猫を」
中年「うーん、今日僕は見てないですね」
人「そうですか…ありがとうございます」
犬「ご主人?元気出して?」
人「いこ」
犬「ご主人…」
トボトボ
中年「…君の家族かもね?」
ニャー
人「いない…」
人「寒…」
人「グレ寒がりなのに」
犬「ご主人、大丈夫?」
人「ん?クロも心配だよな」ナデナデ
犬「ご主人が心配なだけですよ」
人「はぁ…」
トゥルルルル
人「!」
管理人「きたよグレ!帰ってきた!」
人「……えっ」
管理人「ベランダに戻ってきてな、窓カリカリするもんだから、見たらさ、見たらさ、グレが、」
人「おちついて」
管理人「グ、グレ、うん」
人「そっか、良かった…。ありがと、今帰る」
管理人「おう!」
人「はぁ~」ヘニャ
犬「ごっご主人!?」
人「クロォ…良かったー……」
犬「??」
人「おぉ…グレだ…」
管理人「おかえり。お疲れさん」
人「うん。電話ありがとね」
管理人「ほんと良かったです」
人「君泣きすぎて何言ってるか最初わかんなかったよ」
管理人「泣きたくもなるわ」
人「いつもやかましいやっちゃなー」
犬「ねー」
猫「飯よこせよ飯」
人「ほいご飯」
猫「おー!」
人「」ヒョイ
猫「!?なにすんだ早くよこせ!」
人「グレ」
猫「……」
人「もう出ちゃだめだよ」
猫「……」
人「…わかった?」
猫「……」
人「はいごはん」
猫「…」モグモグ
人「勝手に拉致監禁してるからね。それで飼う責任どうこう言うのは猫からしてみたらおかしいかも」
管理人「野良に餌やるだけで子供増やして餓死させるよかマシだよ。」
人「まあね」
管理人「うむ」
ピンポーン
人「はーい」
「宅急便ぇーす」
人「はーい」
「こちぁにサインおなしゃす」
人「はーい」
「ありじゃあー↑したぁーっ」
人「編集が言ってた雑誌か」
ピンポーン
人「? はーい」
管理人「宅急便でーす」
人「間に合ってまーす」
管理人「してるしてる」
人「結婚しなさいよ」
管理人「うっせ」
人「安マンション管理の干物女の行く末とは」
管理人「グレにゃんグレにゃーん」
管理人「ほーらほらほら、猫じゃらしだよー」
猫「フッ!フッ!」
管理人「その程度のスピードで追い付けると思ったのかね!」
猫「フシャー!」
管理人「痛い痛い引っ掻くのやめて!」
人「しかしよくわからんな」
猫「構って構ってー」
管理人「グレにゃーん遊ぼうよー」
猫「お前はくんなカス」
猫「なー構って構って」
人「どうしようか」
猫「あ?」
人「笹かまでいっか」
猫「笹かま!?笹かま!?」
人「無いけどね」
猫「笹かま!?」
トゥルルルル
人「はいチョコラータ」
編集「はぁいドッピオ。」
人「チョコラータはそういう口調と違う」
編集「知るかハゲ」
人「で、なんでしょう」
編集「コラム人気ですよー、「絵画と人」の。やっぱコンテンツとして猫は愛されますねー」
人「あー」
編集「で、前にも言いましたけど次号が創刊10周年大感謝祭りなんですね。そこで全体的にページが増えるので笹かまの特設コーナーをと」
人「特設コーナー?」
人「対談?誰とです?」
編集「最近サブカル詩で話題のぷるぷるにゃんこさんと」
人「はい?」
編集「ぷるぷるにゃんこさん」
人「プルシェンコ?」
編集「おしい」
人「ぷるぷるにゃんこさん、と」
人「…モデル兼デザイナー兼歌手?」
人「だって」
猫「zzz」
ぷる「はじめましてェー!わー!笹かまさんですねェー!」
人「(それ名前と違うけど)はじめまして」
ぷる「わー!なんかぁー!笹かまさんってぇ、アーティストっぽい雰囲気ですねー!」
人「えっ?あ、はぁ」
ぷる「やっぱあー、私もデザイナーしてるじゃないですかぁー、」
人(あれこの人面倒くさい)
人「はい、まぁ」
ぷる「やっぱあー、私も猫飼ってるんですけど、猫って人の気持ちわかるじゃないですか」
人「そう、…ですね」
ぷる「だったら、私たちも猫の気持ちを考えてあげなきゃだと思うんですよねー!」
人「う、うん」
犬「ご主人ー!」フリフリ
人「よーしよしよし」
犬「ご主人ご主人ご主人ー!」
人「よしよし」
猫「ねぇ餌」
犬「ご主人~ご主人~」
人「よしよし」
猫「なぁ飯」
人「ん?」
猫「カスが」
人「ん?なに?遊びたいの?」
猫「飯っつってんじゃん」カリカリ
人「こーら棚引っ掻くなってば。ごはんね」
猫「はやく」
猫「早く!はやく!」
人「…確かに犬よりわかりにくいかも」
猫「はやくー!」
人「はい」
猫「うましうまし」ガブガブ
猫「ゲフー」
人「かわいいかわいい」
猫「さわんないで」プイッ
人「あ、ごめん」
10分後
猫「構ってー」スリスリ
人「なんだおまえ」
人「とうとうチャイムも鳴らさず来たか」
管理人「つまり女心と一緒なの」
人「どの面下げて言ってんだよ」
管理人「かわいい?」
人「かわいい(裏声)」
猫「うざっ」
管理人「しかし暇だな」
人「仕事しろて」
管理人「構ってー」
人「うざっ」
人「言うねぇ」
管理人「ポチは君と似てるか?」
人「クロな」
管理人「似てなくね?」
人「さあ」
人「投げやりだな」
管理人「いや真面目に真面目に」キリッ
人「ねっころがりながらそんな顔されても」
管理人「よし、ゲームでもするか」キリッ
人「君ってなんかカスだよね」
猫「暇だな」
人「あ、こらコードかむな」チョップ
猫「いて!……チッ」
人「…うん、俺こいつほど目付き悪くないし」
管理人「え?」
人「へ?」
管理人「あ?」
人「嘘ぉ」
管理人「あ、スターゲット」
人「あぁ!」
管理人「君目付き悪いし目あわせないし、声小さいし」
人「そうでしたっけ」
管理人「仲良くなれて良かった」
人「本気でそう思ってんのか」
管理人「じゃあランプの魔神つかいまーす」
人「待って!待って!!」
管理人「え?」
人「はいルーレットでスターの数交換」
管理人「えっえっ」
人「また0個から頑張りたまえ」
管理人「ぐおっ」
人「おぉ、やっと懐いたか」
管理人「グレにゃん重ぇ」
人「でかくなったなーこいつも」
猫「暇や」スンスン
管理人「最初ガリガリだったかんね」
人「そのうち豚に進化するだろ」
猫「暇や」
人「やぁね成金って」
管理人「ぐぬぬ…スターまでたどり着けば」
犬「ご主人ー」ハッハッ
人「ん?あぁ、水もうないか。ちょっと入れてくるね」
管理人「おいすー」
猫「zzz」
犬「ありがとう!ありがとうございます!」グビクビ
管理人「グレ寝ちゃった」
人「あら」
管理人「信頼されている」ジーン
人「クッションとして認められたか」
管理人「それでもよし」
人「じゃあグレも懐いたし、そろそろ結婚しようか」
管理人「あー良いね。え?」
人「え?」
管理人「え?」
管理人「……」
人「もしもし」
管理人「え、あ…あ?」
人「おう?」
管理人「ほわ?」
人「ほら君の番、サイコロまわして」
人「えぇ」
管理人「私たち付き合ってましたっけ」
人「どうでしょう」
管理人「どうなんでしょう」
人「付き合ってても今と変わんないんじゃないですか」
管理人「たしかに」
猫「はらへった」
管理人「嫌じゃないです」
人「というと」
管理人「是非に」
人「干物夫婦の誕生である」
管理人「将来性感じないな」
人「皮肉にも金はある」
管理人「そっか。なら平気か」
人「うん」
どうしてこうなった…orz
人「あぁ、ほいさ」
犬「ごはん?ごはん?」
人「そうだ」
管理人「?」
人「犬や猫が嫉妬する、っていう話を知ってるか」
管理人「というと」
人「ふふふ」
管理人「??」
管理人「ギャー!」
人「これが筋肉バスター」
管理人「ギャー!」
人「これがヘッドバット」
管理人「」
人「いかがだろうか」
猫「zzz」
犬「zzz」
人「この実験は失敗だな」
管理人「」
人「そうですか」
猫「うるせぇ」
人「あ、起きた」
管理人「んじゃ明日私の両親に挨拶いくか」
人「あいよ」
人「娘さんをください」
管理人母「イイネ!」
管理人父「イイネ!」
管理人「やったぁ!」
人「結婚決定した」
人「妹?」
管理人「いま同居してるんだけど、猫嫌いで」
人「なんと」
管理人「好きにさせるしかねぇな」
人「なんと」
妹「臭いし噛むから」
人「洗ったばっかだから臭くないよ。抱いてみ」
ズシッ
妹「ぐわっ」
猫「抱き方がなってねーな」
妹「以外と可愛かった」
管理人「そうだろ?」
人「ところで妹さん」
妹「なにかね」
人「お姉さんを僕にください」
妹「イイネ!」
管理人「やったぁ!」
管理人「バイバイ!」
人「すまねぇな!」
妹「週2で猫じゃらしもってくるから覚悟しろよ!」
人「ありがてぇ!」
人「ゆうて俺が最上階に移り住んだだけだけどね」
管理人「さて、さっそく腕に寄りをかけて手作りキャットフードを」
人「あ、ドア空いてる」
管理人「ん?」
人「グレは?」
管理人「んん?」
管理人「さみしい」
管理人「はぁ……」
管理人「良いことばっか起こると思ったら…もう」
人「どこだー」
犬「夜のお散歩です!夜のお散歩ですよ!」フリフリ
人「…もう一回、駅行ってみようか?」
犬「満点の星空の下でうんこぉ!」
人「はやくー」
人「いないかなぁ…」
犬「ご主人!」グイグイ
人「ん?……あ、あの人」
中年「よーしよしよし」
ニャーン
人「あの、すいません」
中年「あれ、君どこかで」
人「はい。どうも」
中年「あ、猫みつかった?」
人「見つかったんですけど、また今日逃げちゃって」
人「そうそう、それで目付き悪いデブなんですけど」
猫「おう」
人「そう、ちょうどこんな…ん?」
猫「よう」
人「ん?」
中年「いえいえ、たまたまですよ。野良猫とは思えないくらい毅然悠々としてたからね」
人「ほんとありがとうございます」
中年「ふふふ、じゃあねグレ君」
猫「はらへった」
猫「はらへった」
人「もう心配かけさせんなよ」
猫「はらへった」
人「グレ」
猫「……」
人「ダメって言ったでしょ」
猫「…」
人「はぁ。早く帰るよ」
ニャーン
人「……あ」
猫「……」
人「…この前もいた猫」
ニャーン
人「お前の兄弟?」
猫「おなかすいた…」
管理人「あぁ、良かっ…」
猫「めし」
猫2「どこやここ」
人「ガリガリだったから、つい…」
管理人「なんと」
管理人「拉致監禁のうえに身体改造とか非道極まりないな」
人「こいつの名前も決めなきゃね。その前にビールと笹かま」
猫2「……」
人「くう?」
猫「俺の!俺の笹かま!」
人「君のはもうあるから」
猫2「……」スンスン
パクッモグモグ
管理人「うまいか」
猫「笹かま!笹かま!」
人「もう食ったでしょ君は」
人「さて、ビールでも飲むか」
猫「笹かま!笹かま!」
猫2「笹かま!!」
娘「さしゃかま!!!」
おわり
読んでくれたり保守してくれたりで嬉しかったです。
ありがとうございました。
おつ!
俺もこんな家庭が持ちたい( ;´Д`)
Entry ⇒ 2012.01.11 | Category ⇒ その他 | Comments (0) | Trackbacks (0)
スナイパー♀「ふむふむ、狙撃ポイントはここか」男「あの」
男「俺の部屋で何してるんですか?」
スナイパー「あ、そげきです」
男「狙撃って…あなたは誰ですか?」
スナイパー「狙撃手見習いのスナイパーですけど…何か?」
男「なんていうか…とりあえずここ俺の部屋なんですけど」
スナイパー「え?そ、そんなバカな…確かに狙撃ポイントは」ペラペラ
男「あー…これターゲットの住所ですね」
スナイパー「」
マテリアルスナイパー
スナイパー「男さんでいらっしゃいますか?」
男「うん…じゃなくて俺殺されるの?スナイパーさんに?」
スナイパー「私まだ練習中なんで…実弾じゃないんですけど、そこそこは痛いかも」
男「えっ?わからない、俺なんかしたの?」
スナイパー「ターゲットはランダムで選ばれます、不運でしたね」
男「ふざけてんの?」ガシ
スナイパー「痛い痛い!アイアンクローは古いよぉ!」
スナイパー「と、言うわけで狙撃しますね」
男「あぁ…うん、スナイパーさんの将来のために我慢する」
スナイパー「それじゃ!狙撃ポイントまで行きますね」
男「場所分かる?」
スナイパー「ば、バカにするなっ!」
男「ごめんごめん」
スナイパー「それではっ!」タタタッ
スナイパー「きゃっ!」ズテン
スナイパー「…」チラッ
男「…」
スナイパー「えへへ…そ、それではっ!」
男「え、あ…」ドキッ
ーー
男(全然撃たれねえ…)
ピンポーン
男「はーい」ガチャッ
スナイパー「あの…その……」
男「…何ですか?」
スナイパー「狙撃ポイントが、ですね…ちょっとした迷宮の奥にあるのかな?…あはは」
男「バカにしちゃいけないんですよね」バタン
スナイパー「あ、いや、待って!!ごめんなさい!バカです!」
男「なんだ、バカでしたか」
スナイパー「ぐぬぬ…」
スナイパー「あ、はい…どうも」
男「いいですか?あのビルです」
スナイパー「はい、あの一際寂れた、はい…分かりました、どうも」
男「ほんとですか?」
スナイパー「ば、バカにしてるな!?」
男「いや、そんなことないですよ」
スナイパー「ホントかっ!?なら良い、もう一回行ってくる」トテトテ
ーー
男(結局昨日は撃たれなかったな…)
ピンポーン
男「…はい」ガチャッ
スナイパー「お、おはよ」
男「…」バタン
スナイパー「あぁ!待って!か、カーテン開けておいてよぉ!!」
男「なんでですか?」
スナイパー「当たり前じゃないか!見えなきゃ撃てな
男「夜になったらカーテンも
しますよ…それに、ゴルゴは撃ち抜いてましたよ」
スナイパー「ごるごさんと、較べられても…」
男「…」
スナイパー「あ、どうも…お願いします」
男「がんばってくださいね」
スナイパー「!」
スナイパー「が、頑張r
バタン
スナイパー「」
スナイパー「…」トボトボ
男「…」
ガシャン
男(窓になんか当たってる…)
ーーー
ーー
ピンポーン
男「はい」ガチャッ
スナイパー「いや、あの違うんです」
男「そうですね、違います」バタン
スナイパー「やだ!待って!窓開けといてぇ!」
男「窓ぐらい割れましょうよ…」
スナイパー「ダメなんですよ…そんな強い弾じゃ男さん怪我しちゃうかも知れないし…」
スナイパー「…はい」
男「…」
スナイパー「…」モジモジ
男「…しょうがないです」
スナイパー「っ!」
男「次は失敗しないで下さいね」
スナイパー「頑張るっ!」
男「それじゃ」
男(そろそろかな)
エリオ「」ガシャン
男「エリオっ!!??」
ほむら「」ガシャン
男「ほむほむぅぅぅ!!!」
撫子「」ガシャン
男「」
ーーー
ーー
ピンポーン
男「…」
ピンポーン
男「…」
スナイパー「お、男さーん…?」オドオド
スナイパー「え、えへへ…」
男「」ガチャッ
スナイパー「ひっ!え、閻魔様!?」ビクッ
男「何か、言い残すことは」
スナイパー「いや、あの…べ、弁償はしますので…」
男「他には?」
スナイパー「あ、新しいのも幾つか…その」
男「…」
スナイパー「…」
男「…」
スナイパー「えへへ…じ、自腹切るのでどうか…」
スナイパー「す、スイス銀行?200万ドル…?ちょ、流石にむりですってば」
男「…」
スナイパー「あっ!ゴルゴ!ごるごさんだ!」
男「…」
スナイパー「その条件で許して頂けた…と、言うことで?」
男「…」
スナイパー「そうですよね、あの人無口で…」
男「めっちゃ喋るゴルゴも居ますけどね」
スナイパー「!」
スナイパー「いやー!練習の練習はここまでっ、なかなかうまくいったなー」ウンウン
男「おい」ガシッ
スナイパー「あ、またアイアンクロー…やだいたい」
男「ふざけんな」
スナイパー「正直調子のってすいませんでした、土下座しときますね」グリグリ
男「ちょ!待って、女の子に土下座させる趣味はないから!」
スナイパー「でもぉ…」
男「いや、それは弁償+αで何とか我慢するから」
スナイパー「ぁ、やっぱりそっちは…」
男「あ?」
スナイパー「ぃゃ…その…なんでも…」
スナイパー「これまでも…その、ちゃんとやってたと、言いますか…」
男「え?」
スナイパー「だから…これまでもちゃんと…」
男「何かいってますか?気のせいですか?」
スナイパー「…気のせいです」
男「ですよね、良かった」
スナイパー「…」シュン
男「がんばってくださいね」
スナイパー「…っ!」パァァ
ーー
男(?…今日はなにも来ないな)
ピンポーン
男「はい」ガチャッ
スナイパー「いや!これはですね!…なんと言いますか」
男「?…何が?」
スナイパー「あれっ?…ん?」
男「何?…どうしたの?」
スナイパー「…」
スナイパー「あ!いや、何でもないです!あはははは…」
男「?」
幼馴染「おはよっ!」
男「おはよー…って、ん?」
男「その足どうしたんだ?」
幼馴染「昨日窓の外から何か投げ込まれてね…びっくりして足くじいちゃったの」
男「あ、あー…あははっ!それは大変だったな…」
幼馴染「そうなのよ…」
男「…」
男「良いところにいたな」
スナイパー「え?なんですか?私は順調ですよ?」
男「昨日も狙撃してたのか?」
スナイパー「いや、えっと…き、昨日はゴルゴ読んでました」
男「何巻だ?」
スナイパー「お、沖縄シンドローム?」
男「沖縄シンドロームで撃たれたの誰だった?」
スナイパー「あの…それは…」
男「…」
スナイパー「…」
男「隣の子撃ってどうするんですか」
スナイパー「同じような背格好だったし…」
男「女の子ですよ、俺の幼馴染です」
スナイパー「女の子!?髪の毛短くて、綺麗な感じの子だったからてっきり…」
男「…ハァ」
スナイパー「ってあれ?幼馴染?女の子?…か、彼女さん、ですか?」モジモジ
男「違いますよ!エロ漫画の読み過ぎじゃないですか?」
スナイパー「そ…そうかなぁ…そんなに読んでないと思うんだけどなぁ…」
男「えっ?」
スナイパー「えっ?」
スナイパー「いや!これは、その…あの…嘘です!」
男「…」
スナイパー「ふふん…だ、騙されましたね、ちょろいです」エッヘン
男「…」
スナイパー「…」
スナイパー「な!なんか言ってよぉ!」
男「嘘つきは好ましくないですね…素直な子の方が可愛くて良いです」
スナイパー「エロ本読んでます、いっぱい持ってます」
男「」
スナイパー「えへへ…か、可愛い?」
男「無理でしょ…」
男「エロ本持ってますって男の前で言っちゃう子が可愛いわけ
スナイパー「嘘つきぃ…」ウルウル
男「あれ?…え?お、おかしいな」
スナイパー「むー…また騙されちゃった…」ゴシゴシ
男「…可愛いな」ボソッ
スナイパー「ふぇっ?い、今なんて!?」
男「いや、別に何も言ってませんよエロガッパさん」
スナイパー「え、えろがっぱ…」シュン
スナイパー「いや!でも確かに今可愛いって!」
男「そうですか?可哀想の間違いじゃないですか?」
スナイパー「可愛い…男さんが私のこと…か、かわわ」ニヤニヤ
男「」
男「とりあえず早く成功させて下さいね」
スナイパー「~♪」
男「…だめだこいつ」
スナイパー「ふふふっ…あははっ」ニヤニヤ
男「うわ気持ち悪い」
バタン ガチャッ
スナイパー「男さん!私頑張りますねっ」
スナイパー「男さんにあ、愛の弾丸お届け」クルッ
スナイパー「あれ?えっ、やだ…鍵まで…ちょっとぉ!」ガチャガチャ
ーー
ゴスッ
祖父「あふぅ」ピクピク
男「じ、じいちゃあああああん!!!」
…
ピンポーン
男「」ガチャッ
スナイパー「し、身長が
男「全然違う」
スナイパー「う、後ろ姿が
男「似てない」
スナイパー「あ、歩き方とか
男「もういい」
男「じいちゃんなら大丈夫でしたから」
スナイパー「ほ、ホントですかぁ?」ウルウル
男「ピンピンしてますから」
スナイパー「よかったぁ…もし、その…し、死んじゃったりしたらどうしようかって」ポロポロ
男「よしよし」ナデナデ
スナイパー「うわあああああん!!」ギュッ
男「そんなんで狙撃手になれるんですか?」
スナイパー「だって!だってぇ…」ジュルジュル
男「あーもう、鼻水付けちゃって…」
スナイパー「ご、ごべんなざぁい」
スナイパー「な、なんですか?」
男「スナイパーさんの愛の弾丸」
スナイパー「あ、いやいや、やめて!あれは…いろいろ、違くて」
男「俺のじいちゃんに当たりましたね」
スナイパー「」
男「…少し、だけ…寂しいです」
スナイパー「えっ?それは…どういう…」
男「そろそろ当ててくださいね、それでは」バタン
スナイパー「男さぁん!今のって!」ドンドン
スナイパー「今のって、まさか…お、男さんはツンデレだったのか…」
男「違います」
スナイパー「ひぁっ!」
男「勘違いしないでくださいね」
スナイパー(ま、間違いない…)
男「間違いなくないですよ、勘違いしないでって言ったじゃないですか」
スナイパー「えっ?今、声に…出てたの?」
男「はい」
スナイパー「…」
男(…最近全然来ないな)
男(大丈夫、なのかな)
ーー
ー
ピンポーン
男「はーい」
スナイパー「おとこさーん!」ダキッ
男「え?え?」
スナイパー「ぎゅー…ふわぁ…男さぁん」
男「いや、あの…」
スナイパー「ぎゅー!ぎゅーっ!」
男「…これまで何してたんですか?」
スナイパー「狙撃手なんて止めてきました!」
男「ゑ?」
男「そんなことないですよ、まだ見習いなんですから」
スナイパー「もう見習いじゃないよっ!」
男「…良かったんですか?」
スナイパー「良いの良いの!もっと大切なもの見つかったから!」
男「それって…」
スナイパー「私のターゲットはまだまだ男さんですからね!」
男「もう撃ち落とされてますけどね」
スナイパー「っ!」
スナイパー「もー!すきすきっ!私も大好きですよ!んっ」チュ
男「ん、…ちょ、ちょっと!俺なんかで、良いんですか?」
スナイパー「男さんなんかで良いんですよー!」
男「」
スナイパー「ドジってばかりの私に呆れないで付き合ってくれて…嬉しかったです」
男「ドジっこスナイパーさん可愛いらしくて良かったですよ」
スナイパー「男さん…///」
男「これからもお願いします」ギュッ
スナイパー「ふぁぁ…ん、落ち着く………ね、狙われてるのは私だったみたいですねっ!」スリスリ
おわる
ちょっと駆け足になったのは勘弁ね
ね、ネタが無くなったとかじゃないんだからねっ!
ありがとうございました
乙
俺のデリンジャーもビンビンだぜ
Entry ⇒ 2012.01.03 | Category ⇒ その他 | Comments (0) | Trackbacks (0)
主人公「うわっ……俺の強さランク、低すぎ……?」
主人公「おはよう、相棒。お前もモーニングコーヒーか」
相棒「おお、おはよう」ガサッ
主人公「朝っぱらからカフェで新聞とはシャレてるじゃんか。さすがインテリ」
相棒「インテリじゃなくても新聞くらい目を通すだろうが……」パサッ
主人公「俺は情報は読むんじゃなく、実際に目で見て入手する主義なんでな」
相棒「はいはい」
主人公「ところで、なんか面白い記事あったか?」
相棒「相変わらず、帝王を称える記事がほとんどだな」バサバサッ
相棒「あとは──え~っと……」ペラッ
相棒「お。なんか外の世界で、俺たちの世界の強さ議論が流行ってるそうだぞ」
相棒「外の世界の奴らが俺たちの活躍度合いを分析して、強さの序列を決めるらしい」
相棒「けっこう議論が白熱してるってハナシだ」
主人公「っかぁ~~……くだらねェ」
主人公「そんなこと議論するヒマがあったら、テメェの強さを磨けっていいたいね」
相棒「ハハ、お前ならそういうと思ったよ」
相棒「えーと、他に面白いニュースは……と」バサバサッ
主人公「おい」
相棒「なんだ?」
主人公「その序列って新聞に載ってるのか?」
相棒「ああ」
主人公「ちょっと見せろ」バッ
相棒(興味あるんじゃん……)
【強さランキング】
S 帝王
A 師匠 四天王(雷) ドラゴン
B 相棒 四天王(炎) 四天王(笑) 忍者
C 町民A 四天王(水) アサシン ナイト 盗賊団ボス
D 町長 主人公 盗賊団員 カフェ店員 町民B
E ザコ カス ゴミ クズ ダニ
※同ランク内は左の方が強い
主人公「……ふ~ん」
相棒「!?」
主人公「強さをひけらかすタイプでもないし、このくらいで十分だ」
相棒「え、え……?」
主人公「相棒はBか……。もう少し努力した方がいいかもな。今から特訓やるか?」
相棒「お、おい主人公」
主人公「ん?」
相棒「お前、ランキングの見方、ちゃんと分かってるか?」
主人公「どうって……アルファベットが大きい方が評価が高いんだろ?」
相棒「逆だよ! Eが最低で、小さいアルファベットの方が上なんだよ!」
主人公「え、マジで?」
主人公「一番上のSってなんだよ」
相棒「ん~……多分スペシャルかなんかの略で、Aよりも上って意味だよ」
主人公「じゃあSから数えて、A、B、C、D……。D……D……」
主人公「うわっ……俺の強さランク、低すぎ……?」
相棒「低すぎってことはないだろ。まだ下にEがあるんだから」
主人公「Eなんてザコとかダニとか、ろくなのがいねーじゃんか!」
主人公「実質Dが最低ランクだぞ、この表!」
相棒(それはいえる)
主人公「Aランクには──師匠!? 師匠こんなに強かったのかよ!」
主人公「免許皆伝くれたけど、俺はDで師匠はAってどういうこと!?」
主人公「俺、とっくに師匠超えしてるとばかり……」
相棒(きっと才能なかったから、免許皆伝の基準を下げてあげたんだろうな)
相棒(あるいは育てがいがないから、さっさと追い払いたかったとか……)
主人公「くそっ、今度家行って問い詰めてやる!」
主人公「あとは、ん~……やっぱAランク、Bランクはそうそうたるメンツだな」
相棒「四天王やドラゴンなど、猛者ばかりが集っているな」
主人公「……いや、ちょっと待てよ」
相棒「知らないよ。議論してる奴らに聞いてくれ」エヘッ
主人公「なんだよ、なんかちょっと嬉しそうな顔しやがって!」
主人公「そういやさっき、さりげなく自分も猛者扱いしてたしよ!」
主人公「心の中で俺のことを、D野郎とか思ったんだろ!?」
相棒「お、思ってないよ(D野郎……プッ)」
主人公「俺がDで、お前みたいなインテリがBとか、全然納得できねーわ」
相棒「俺に悪態ついてもしょうがないだろ……」
主人公「勝負しろよ」
相棒「え?」
主人公「お前を負かして、俺もA~Bランクの実力があるって証明してやるよ」
主人公「いってぇ……マジで殴りやがって……くっ」
相棒「お前がいきなり飛びかかってくるからだろうが。ビックリしたよ」
主人公「へへへ……でも今の攻撃で分かったぜ」
相棒「?」
主人公「お前と俺の実力は、BとDって2ランクも差がつくほど離れちゃいない」
主人公「2ランクも差があったら、俺は無事じゃ済まなかっただろうしな」
主人公「俺が一つ上のCなのか、はたまたお前がCなのか、のどちらかだ」
相棒「………」
主人公「まぁ、そろそろこの話題はやめて──」
相棒「もう一回やろうか」
主人公「え?」
相棒「BランクとDランクの差、思い知らせてやるよ」
相棒「ミゾオチに本気で入れたからな、しばらく立つどころか、しゃべるのも無理だろう」
主人公「ふぉっ、ごほっ……(こ、こいつ、こんなに強かったのか……!?)」
相棒(少しやりすぎたかな)
~
主人公「ふう、ようやく呼吸が落ち着いてきたぜ」
相棒「悪かったな、俺もついムキになってしまった」
主人公(おかげで自信がつきました、ってツラにしか見えねーよ)
主人公「ちくしょう……。なんとか強さランクを昇格させたいな」
相棒「いきなりBってのはやはり荷が重かったんだよ。BはAのすぐ下なわけだし」
相棒「まずはBより格下のCから攻略すればいいんじゃないかな。Bはまだまだ先だな」
主人公(クソッ! B、Bと強調しやがって、このB野郎!)
相棒「じゃあ、そろそろ店を出ようか」ガタッ
カフェ店員「どうもありがとうございました」
主人公「………」ジーッ
カフェ店員「お客様? なんでしょうか?」
主人公「………」
D 町長 主人公 盗賊団員 カフェ店員 町民B
主人公「お前、俺より下だな」ニヤッ
カフェ店員「は……?」
相棒「よ、よせよっ! 出るぞっ!」グイッ
カフェ店員「………」
カフェ店員(なんかムカついたぞ……)
主人公「よし、Cランクのだれかと戦うか。え~と、メンツは……」ガサッ
C 町民A 四天王(水) アサシン ナイト 盗賊団ボス
相棒「水の四天王と盗賊団ボスは、もう俺らが倒したから除外だな」
主人公「なんで俺たちが倒した相手が、俺よりランク上なんだよ。おかしいだろ」
相棒(二人とも、ほとんど俺が倒したようなもんだったしな)
主人公「アサシンは神出鬼没だし、ナイトは城に行かないと会えないからなー」
相棒「じゃあ、消去法で町民Aだな」
主人公「よし、見つけ次第ぶっ倒してやる」
相棒(気の毒に……)
主人公「お、さっそく出やがったぜ」
相棒「待て、あいつは町民Bだ。Aじゃない」
主人公「チッ、お前と同じB野郎か。町民Bの強さはどんなだ?」
相棒「え~と……お前と同じDだ。Dの一番右だから、お前より下だな」
主人公「えっ、俺より下なの!? よっしゃ!」スタスタ
町民B(主人公さん……?)
主人公「よう」ジーッ
町民B「ど、どうも。どうかしたんですか? 私の顔になんかついてます?」
主人公「お前は俺より──下だ!」ニヤッ
町民B「えっ?」
相棒「いやいやいやいや、何でもない何でもないんだ。こっち来い!」グイッ
町民B「………」
町民B(なんか腹が立ったぞ……)
主人公「よし……」スタスタ
町民A「あ、主人公さんじゃないっすか」
主人公「よう、俺と勝負──」
町民A「あ、今朝の新聞読みました? 主人公さんDだったんスね、主人公なのに」
町民A「いやぁ~ちなみに自分はCだったんスけどね。あ、CってDより上っすよ」
町民A「主人公さん……Dって! Dはないっしょ! だって実質最下層じゃないスか」
町民A「主人公さんってDをデーって発音しそうっすよね。色々と頭が古そう、悪い意味で」
町民A「あ、なんか涙ぐんでます? いやメンタルもDランクなんスね~ハハ」
町民A「Dとか自殺するレベルっすよ。Dじゃいくら主人公さんでも尊敬できねっすわ」
主人公「うっ……うるせぇぇぇっ!」
バキッ
町民A「いやぁ~図星突かれたからって殴りかかるとか、主人公さんマジDっすね!」
町民A「しかも先手打っておいて負けるとか、主人公さんのD級っぷりパネェっす!」
町民A「もうDすぎて、お先真っ暗っすね! Dとかないっすわ、ジッサイ!」
町民A「もう終わりっすか? Dパワー炸裂させて、立ち上がってDって下さいよ!」
相棒「おい」ポン
町民A「ん? なんスか?」
相棒「俺はそいつの相棒なんだけどさ」
町民A「え、あの……」ガクガク
相棒「俺のランクも知ってるみたいだな。じゃあこれからどうなるかも分かるよな?」
町民A「いや……えぇと……その、っすね……」ブルブル
相棒「選手交代。第二ラウンド始めようか」
相棒「立てるか?」スッ
主人公「……大丈夫だ」
主人公「すまねェな、助けてもらって。さすがに自分が情けなくなったぜ」
相棒「いや、これはお前の悩みに真剣に取り組まなかった俺のせいだ」
主人公「なにいってんだよ、ハハ」
相棒「俺はお前より2ランクも上に評価されて、正直舞い上がっていた」
相棒「だがお前が町民Aにバカにされてる時、なんだか自分のことのように腹が立ってな」
相棒「やっぱり俺だけBランクなんておかしい、と感じたよ」
主人公「なんだよ、急にしおらしくなるなよ。もう気にしてねーし」
相棒「……ダメだ。お前のランクを上げなければ、俺の気が済まない」
相棒「目標は、一週間以内にAランク入りだ」
主人公「───!」
主人公(目標高すぎじゃね……!?)
主人公(一週間以内かぁ~、とりあえず今日はもう一度町民Aに挑むか……)
相棒「おはよう」
主人公「よう」
主人公「さっそく町にランク上げに行くから、一緒に来てくれよ」
相棒「悪いが、今日ちょっと用事があってな」
主人公「え?」
相棒「すぐ戻るよ」スタスタ
主人公「ちっ、なんだよオイ」
主人公(俺にあんなムチャ目標立てておいて、結局放置プレイかよ)
主人公(まあいいや、俺は俺で頑張らないとな)
カフェ店員「昨日はどうも」ザッ
主人公「ん? ああ、カフェの人か。今日は店じゃないの?」
カフェ店員「休みをもらったんですよ、大事な用があるんで」
主人公「ふうん。じゃあまた今度寄らせてもらうよ」クルリ
町民B「こんにちは、主人公さん」ザッ
主人公「おお、町民Bじゃないか。アンタとも昨日会ったな(町民Aを探したいのに……)」
カフェ店員「ふっふっふ」
町民B「くっくっく」
主人公「?」
町民B「主人公さん、今ここにいる3人の共通点、分かります?」
主人公(な、なんだよ突然)
町民B「ハハハ、実はですねえ、ここにいる3人は全員Dクラスなんですよ」
主人公「(強さランキングの話か)あ、あぁそういやそうだった。奇遇だな」
カフェ店員「この中で一番序列が上なのは、あなただ」
主人公「ん……あぁ、たしかそうだったな」
町民B「だから昨日、私をバカにしたんですよね。俺が上だ、って」
主人公「!」
主人公「いや、別に悪気があったわけじゃ……」
カフェ店員「ボクもいわれました。あの言葉、けっこう傷つきましたよ」
町民B「私たち意気投合しましてね、今日は二人がかりで腹いせさせてもらいます」
主人公「おっ、おいやめろっ──!」
主人公「う……ん……」
主人公「朝か……」
ガバッ
主人公「くそっ、一晩寝ても体中がいてぇ……!」
主人公「あそこまでやるか、フツー。たしかに俺も悪かったけどよぉ」
主人公「相棒も帰ってこなかったし、なんなんだアイツ! ちょっと無責任だぞ」
主人公「ちぃぃっ! とにかく今日こそ町民Aと戦って勝つ!」
主人公「おい」
町民A「!」
主人公「勝負しろっ!」
町民A「また来たんスか、D級主人公さん。またD的なやられ方するだけっすよマジで」
町民A「こないだやられたのにまた来るとか超D的発想っすわ。学習していないんスか?」
町民A「こっちも忙しいし、Dとかにかまってられないんスわ。自分、ランクCっすから」
主人公「うるさい! こっちは相棒にムチャ目標立てられてんだ! 勝負!」
町民A「全然イミフっす。まーCとDの格差社会をレクチャーしてやるっすよCDっぽく」
町民A「CDってコンパクトディスクじゃないっすよ、あんたの死のカウントダウンっす」
町民A「あ、俺CだしCのカウントダウン、なんつって! やっべ俺マジCすぎて惚れる」
主人公(ウゼェ……)
町民A「DEATH寸前っすね、さすが主人公さん。マジDな弱さパネェっす!」
町民A「いや~Dってマジ最悪っすよね。主人公さん、Cな俺の足元にも及んでないっす」
町民A「でもDなあんたボコって、またBっぽい相棒さん来ちゃうとメンドーなんで」
町民A「このへんにCとくっすよ、マジもう来ないで、Dなんかと関わりたくねェし」スタスタ
主人公「うぅ……」ガクッ
主人公「あ~体動かねぇ」
主人公「俺、よええ……」
主人公「もう、いいや……めんどくせェ」
主人公「Dでいいよ、Dで……」
主人公「明日、町長になんとか勝って、とりあえずDのトップで我慢しよう」
主人公(また強さ議論が載ってる……変動があったのか?)
主人公「………!」ワナワナ
【強さランキング】
S 帝王
A 師匠 四天王(雷) ドラゴン
B 相棒 四天王(炎) 四天王(笑) 忍者
C 町民A 四天王(水) アサシン ナイト 盗賊団ボス
D 町長 盗賊団員 カフェ店員 町民B
E 主人公 ザコ カス ゴミ クズ ダニ
※同ランク内は左の方が強い
主人公「……どうなってんだ、こりゃ」
主人公「絶対おかしい! どういうこと!?」
主人公「なんで俺のランクがEに落ちてんだよ!」
主人公「まさか……おとといカフェ店員と町民Bに負けたからか!?」
主人公「あんなもん、二人がかりじゃねーか! ノーカウントだろうが!」
主人公「同じランク内で一対二とか、勝てるわけねェじゃん!」
主人公「クソッ!」グシャグシャ ポイッ
主人公「はぁ……はぁ……」
主人公(もう町長に挑むどころじゃない)
主人公(これじゃ表に出られねェよ……恥ずかしくて……)
主人公(主人公なのにEじゃ……生きていけない)
主人公「相棒には悪いけど、もういいや……」
主人公「二度寝しよう」ガバッ
主人公「結局あれから一度も戦わなかったな……」
主人公(つーか、ずっと家に引きこもってたし)
主人公「Eってのも気楽でいいや。これ以上落ちないし」
主人公「気楽でE、なんつって、ハハハ……ハハ」
主人公「相棒もどこ行ったんだ、全然戻ってこねぇ。俺、もしかして見捨てられた?」
主人公「……今日の新聞か」ガサガサッ
主人公(お、また強さランクが載ってる)バサッ
主人公(Eの下にさらに俺専用のFとかできてたりして、ハハ)
主人公「!」
主人公「な……」
主人公「な、な、な」
主人公「なんじゃこりゃあ!?」
S 帝王
A 師匠 主人公 四天王(雷) ドラゴン
B 相棒 四天王(炎) 四天王(笑) 忍者
C 町民A 四天王(水) アサシン ナイト 盗賊団ボス
D 町長 盗賊団員 カフェ店員 町民B
E ザコ カス ゴミ クズ ダニ
※同ランク内は左の方が強い
主人公「この数日で、いったいなにが起きたんだ!?」
主人公「俺一度も戦ってないのに……(それどころか家で寝てたのに……)」
主人公(少し気がひけるが、町に出て人に聞くしかねえな……)
主人公(なんか……町中の俺を見る目が変わった……?)
町民A「主人公さんキター! A級な主人公さんカッケー、マジAな佇まいっすね!」
町民A「スゲェっす! あの最強の四天王キリングしちゃうとかパネェっす!」
主人公「?」
町長「すごいのう! 雷の四天王は帝王の部下の中で一番強いといわれておったのに……」
主人公「??」
カフェ店員「この間はすいませんっ! Aランクの実力がありながら、隠していたとは……」
町民B「わ、私も謝りますっ! と、とんだ無礼を!」
主人公「???」
主人公(相棒がいなくなって……戦ってない俺のランクが上がって……はっ)
主人公「ま、まさか……あのバカ……!」
主人公「どいてくれっ!」ダッ
カフェ店員「うわっ!?」
町民B「ど、どこへ行くんですっ!?」
町民A「やっべ主人公さん、足の速さもAっすね! マジモンの超A的速度っすわ、惚れた」
町長「町をあげてこれから祝賀会を──」
主人公「それどころじゃないっ!」ダダダッ
主人公「うおおおおっ!」ダダダッ
主人公「ハァ、ハァ、ハァ……」
主人公「ホントに壊滅してやがる……!」
主人公(どこもかしこも死体だらけだ。きっとあいつがやったんだ)
主人公「相棒っ、どこだ! いたら返事してくれっ!」
主人公「……二人倒れてる」
主人公(一人は──雷の四天王だ! どう見てもカミナリ様だし!)
主人公(もう一人は……俺、の格好をした──)
主人公「相棒っ!」ダダッ
主人公「相棒っ! おいっ! 起きてくれェ! うわぁぁっ!」グイッ
主人公「お前がこの一週間俺のフリして戦ってる時に、俺は……すまねぇぇっ!」
主人公「……ん」
主人公「いっけねえ、眠ってた……」
主人公(懐かしい夢だったなぁ)
主人公(あれから俺は反省して、猛烈に修業して強くなったんだ──)
主人公(そういや、今の強さ議論のランキングってどうなってんだ?)
主人公(今はいつでも携帯端末から見られるんだっけか)
主人公(あれ以来、ランキングなんて気にしない、って全く見なくなったからなぁ……)
主人公(見てみるか)
主人公「………」カチカチッ
主人公「うわっ」
SSS ワリカン神 主人公(覚醒)
SS サイボーグ相棒 ネコババ神
S 主人公(通常) カレーうどん
A 町民A 忍者 カス 地獄ニート 四天王(笑)
B アル中 アサシン ゾンビ師匠 ストーカー イケメン インチキおばさん 都民A
C 独裁皇帝 ナイト 専業主婦 都民C 市民B 駄犬
D 恐怖のまんじゅう 強盗 無敵王 接待ゴルフ 陰毛マスター
E 市民A 八百屋 教祖 上級兵 ハゲ 闇の伯爵 ホスト
F 都民B いいちこ 帝王 師匠 ドラゴン タクシー運転手
G 四天王(雷) ヘルニア 相棒(人間時代) 四天王(炎) 四天王(水) 盗賊団ボス
H 町長 ひったくり 盗賊団員 カフェ店員 町民B ザコ ゴミ クズ ダニ
※同ランク内は左の方が強い
主人公「……えらいことになってんな」
主人公(いつの間にかランクも増えてるし……。Hとか、SSSとか)
主人公「え、と、俺は普通の状態だと、Sランクなわけだな」
主人公(つーか、地味に町民Aスゲーな。どんだけインフレに食らいついてくるんだか)
ガチャッ ガチャッ ガチャッ ウイーン
主人公「ん? おお、オイル補給終わったのか」
相棒「ふぅ……まったく長旅だと不便だよ、この体は」ウイーン
主人公「愚痴ってないで、さっさとあの巨大要塞に乗り込もうぜ」
相棒「そうだな。俺の背中に乗れ、ジェット噴射で突撃するぞ!」
主人公「おうよ!」ヒョイッ
主人公「Sランクに恥じない戦いをしないとな!」
相棒「?」
おわり
乙
Entry ⇒ 2012.01.01 | Category ⇒ その他 | Comments (0) | Trackbacks (0)
妹「一年間ありがと…スゴック恥ずかしいけど、チューしてもいい…?」
有無を言わさぬ慈愛の掌衣でもって対象を優しく包み込み
先日>>2-1000が数里も先からその殺気に気づき
開くスレを変えた程の精神統一の業を経て蓄積した
>>1の 渾身の全オーラを
目も眩む恒星のごとき腹筋スレに変え撃ち放つ
無慈悲のID腹筋である
γ⌒入__ /ー'´ ヘ
_,,-ゝ⌒ ̄==ヾ~ー-==( ヘ
_/ ノ,j ==/ヘヘヘ
// ⌒0 ノ> 〃ア⌒>、 _,,-―--、
i´《0 /ヘ ~ //,==、 ||( /ヾ、\,,===、, \___
__,vr‐、ヾ、 ヾノ />゙´ (、__,)ノ ||ヘヘi|///\\) >´,,ッ'´
_,/\\ノ \ーi iァ´/ _,,,=‐ヨ ヘー=、( ( 〇 刀~|
_∠≧\ \ノト=、\| |/=≡三三三三ヨ ヘノノ=ヽ ヽ、,,、 ノノ ノ
┌'´ ,,,,,-‐y⌒>\≡〕〕 ト=≡≡≡≡≡シ、ノY \、 i/|〉 ,/
(( / /=( /ヽ ~、(⌒ヽ _,-ーイ 人__,-、 ゙ー| |i-''´
Y | / : ゙'',,)) \、゙=― ̄ ̄__|/ //i| V
\ ( _,,,,;;;(,ノ三=_ ゙ー〕=ニ二二 \// ノ
\コ「 |;;/ ~~==、/ー「γ‐、|| 〉ー=_/ イ
!ヘ( トー| ((__ノ|| ,-―= ヘ/^ヽ
ヽ、> __,/ ヾヽL__ノ / O-=‐-、 |
_/ \ ヽヽ\ \ノ |//⌒゙''ー‐┐
/',,-、 \ヽ、 ,У゙^\ \ |_,-‐、_ |
/《-⌒ヽ、 `≫ ヽ==イー'⌒ー-、j
/ 〉ヽ、 ノ_// / `i
Entry ⇒ 2012.01.01 | Category ⇒ その他 | Comments (0) | Trackbacks (0)
メリー「私メリーさん。今こたつの中にいるの」
男「居座られた……」
メリー「みかんって美味しいね」
男「筋の白い部分とるのやめろよ栄養あるんだから」
メリー「おいしくないもん」
男「大きくなれないぞ」
メリー「300年くらい前から成長止まってる」
男「……oh」
メリー「これ剥いてください」
男「どうして俺が……」
メリー「もぐもぐもぐもぐ」
男「……」ソワソワ
メリー「……なんでキョロキョロしてるの?」
男「えっ!? ……そりゃぁ……あんまり人を家にあげたことないからどうしたらいいのか……」
メリー「友達いないんだね」
男「はうっ!」グサッ
メリー「人の家初めてあがったの」
男「へぇ……長いこと生きてるのにか」
メリー「あなたほどみんな好意的じゃない……」
男「そうか……へへへっ///」
メリー「気持ち悪い」
男「むしろ電話がなったことに喜びました」
メリー「んー?」
男「ほら……察してくれよ……」
メリー「わからないけどわかった」
男「ああ、それでいい」
メリー「……」
男「……」
メリー「……もぐもぐ」
男(沈黙が痛い)
メリー「うん」
男「なんで電話で人を脅かしてるの?電話が作られたのはそんなに昔じゃなかったと思うんだけど……」
メリー「……んー、話せば長くなる」
男「ぜひ聞かせて下さい!(間が辛いんです)」
メリー「電話を使い始めたのは最近拾ったから」
男「ほうほう」
メリー「それまでは普通に人を脅かしてた」
男「なんで電話に変えたの?」
メリー「インパクトが欲しかった」
男「……(インパクト?)」
メリー「私あまり脅かすのが得意じゃないから名前が売れなかった……」
メリー「妖怪としてこれほど恥ずかしいことはない……」
男「……なるほど(売れない芸人さんポジションなわけだ)」
男「確かに有名だよね、メリーさん」
メリー「携帯でメリーさんを検索してニヤニヤするのが最近の趣味」
男「……そうか」
メリー「あなたも私の名前を広めるための礎になる予定だった」
男「ふむふむ」
メリー「まさか家に招待されるとは思ってもみなかった」
男「……いやまさか本当に来るとは思わなかったんですはい」
メリー「お呼ばれされたから来てあげた、感謝しなさい」
男「へへーっ!!」
メリー「……みかんなくなった、新しいの剥いて」
男「任せて下さい!」
男「勉強になったよ、ありがとう」
メリー「いい、こたつ気持いいから対価は貰ってる」
男「さいですか……」
メリー「外は寒いから……この時期はほんと嫌いなの」
男「妖怪って温度感じるんだ」
メリー「私の場合はそう……もちろん感じない妖怪もいる」
男「ためになります」
メリー「ふぁぁ……眠ぃ、今日は泊まらせてね」
男「えっ!?」
メリー「……だめなの?」シュン
男「やだなー! おっけーに決まってるじゃないですかー! 冗談ですよー!」
メリー「……ありがとう」
男(どうしてこうなった……)
男「ん、……んんっ……(朝か……)」
メリー「私メリー今あなたの隣にいるの」ヌゥッ
男「うわあああああああああああああぁぁぁっっっ!!」
男「……」
メリー「……」
男「…………ょ、ょぅι゛ょが俺の部屋で腕を組んでいる、……な、なにを言っているのか(ry」
メリー「メリーです」
男「…………ああ」ポン
メリー「忘れるなんて酷い」
男「ご、ごめんなさい!!」
メリー「罰として朝食を要求する」
男「スクランブルエッグでよろしいでしょうか!?」
メリー「ご飯とみそ汁に決まってます」
男「……は、はぃぃ(お米炊ないとあかんやん……)」
男「ハムッ ハフハフ、ハフッ!!」
メリー「お行儀が悪い食べ方です」
男「っつぶぇ!? ……いや、でも飯はかき込んだ方が美味しい」
メリー「そうなのですか……?」
男「ああ、『俺いま飯くってる!』ってより如実に感じさせてくれるんだ」
メリー「……なるほど、では私も……」
男「あ、でも無理しないほうが……」
メリー「ハムッ ハフハフ、……ブハッ!!」ビチャッ
男「…………ぐ、……お、おおお……」ボタボタ
メリー「む、難しいですね///」フキフキ
男「……許した」
メリー「お仕事ですか……」
男「そうなんだ……ねぇ、もしかしてもう少しこの部屋に居る?」
メリー「…………」
男「き、汚くて狭い部屋だけどさ、……ほら、俺あんま友達いないから寂しいし……」
メリー「私はもうお暇します……私も仕事があるから」
男「あ、……そ、そうだよねー……ははは、……ここでお別れかな……?」
メリー「はい」
男「うん……わかったよ、……また縁があったら合おう」
メリー「はい……お邪魔しました」
男「……じゃあ……ね」スタスタスタ
メリー「なぁ?」
男「……ん?なんだいメリー?」
メリー「また電話するね」ニカッ
男「―――おう!」
メリー「みかんが無くなってしまったわ。取りに行くにこたつからは出たくないし」
メリー「ねぇ、あなた代わりに取ってきてくれないかしら」
猫「にゃ」
メリー「なによ、今は猫の手も借りたいのよ。ちょっとくらいいいじゃない」
猫「にゃー」
メリー「仕方ないわね。分かったわよ、自分で取りに行くわよ。……うぅ、寒っ」
メリー「こたつに入って食べる冷たいアイスは別格だわ」
猫「にゃー」
メリー「親父臭いだなんて、失礼しちゃうわ」
メリー「せめて性別は合わせなさいよ」
猫「にゃ」
メリー「婆臭いってのもなんか嫌だわ」
メリー「……ふにゃ」
猫「ふにゃ?」
メリー「な、なんでもないわよ。私だってちょっと位気の抜けるときだってあるわよ」
猫「にゃー」
メリー「いつも気が抜けてるってどういうことよ」
メリー「こたつといえばちゃんちゃんこで二人羽織りよね」
メリー「……二人羽織りする相手が居ない」
猫「にゃー」
メリー「慰めなんていらないわよ」
メリー「……ぐすん」
メリー「来年こそは成果をあげてみせるわ」
猫「にゃー」
メリー「もちろん、今年以上に頑張るわ」
メリ「だから今は、ちょっとだけ休憩」
猫「にゃー」
メリー「ぬくぬく」
メリー「来年は、よろしくね?」
Entry ⇒ 2011.12.31 | Category ⇒ その他 | Comments (1) | Trackbacks (0)
吸血鬼「そういえば、母乳って血液なのよね」女「私は出ないからね」
悪くない
女「赤ちゃんが出来ないと出ないの」
吸血鬼「えー。じゃあさっさと赤ちゃん作ってきなさいよ」
女「できるくぁ! つーか、なんでアタシなのよ!?」
吸血鬼「え、だって……ぽっ」
女「何故そこで頬を赤らめる」
吸血鬼「貴女、お隣さんを売る気?」
女「ぐっ……良心を突いてきやがるこの女郎ッ!」
吸血鬼「おっぱいだしてみなさいよ。もしかしたら出るかもしれないじゃない。エロ漫画みたいに」
女「出るかッ!」
吸血鬼「じゃあどうしろって言うのよ!」
女「こっちの台詞じゃあ!!」
吸血鬼「あんっ、強引ね♪」
女「こうでもせんと母乳談義から離れられん」
吸血鬼「で、何よ?」
女「そろそろ帰りなさいよ。何言ったって血は分けたげないからね」
吸血鬼「えー」
女「えー、じゃない」
女「そんな一時の快楽に身を任せてられるか」
吸血鬼「今ならもれなくお肌も綺麗になるしお通じも良くなるわよ」
女「……」
吸血鬼「あ、今ちょっと揺らいだでしょ?」
女「そ、そそそそんなことあるわけねぇべ!」
吸血鬼「ふふっ、分かりやすいわね」ズイッ
女「ちょ、迫るな」
女「近い近い、顔が近い」
吸血鬼「貴女の血が吸いたくて吸いたくてたまらないの……」
女「おーい、聞こえてるー?」
吸血鬼「ふふ、ねぇ? 一緒になりましょ?」
女「……だぁらっしゃああああい!!」トモエナゲッ
吸血鬼「うきゃあっ」
吸血鬼「んもぅ、痛いじゃないのよぅ」
女「だまらっしゃい! アンタやっぱり危ねーよ!」
吸血鬼「もう少しだったのに……」
女「こんな所で堕ちてたまるか」
吸血鬼「貴女も頑なねぇ」
女「私は白馬に乗った運命の王子様を待ってるの」
吸血鬼「白馬に乗った王子様(笑)」
女「笑うな」
女「ぐぬぬ、取り付く島もない」
吸血鬼「うふふ」
女「とっとと帰って。私の生活に支障をきたすから」
吸血鬼「でも、私も血を飲まないと生きてけないのよねぇ」
女「そんなの代わりがいくらでもいるじゃない。アタシより良い女は星の数ほどいるよ」
吸血鬼「そんな貴女が良いの」
女「だめだ、グダグダだ……」ズーン
吸血鬼「やーだぷー」
女「何それ。なんか知らんけど腹立つ」
吸血鬼「流石の私も学業は邪魔しないわよ。日の光に当たるのも嫌だし」
女「変なところで常識人ね。太陽に行ってとろけちまえ」
吸血鬼「あら、おかえりなさい」
妹吸血鬼「おかえりなさい」
女「何で当然の様に増えてるのよ」
妹吸血鬼「あ、申し遅れました。わたくし、この愚姉の妹をさせてもらってます」
女「あ、ご丁寧にどうも」
妹吸血鬼「この度はうちの姉がご迷惑をお掛けして、誠に申し訳ございません」
女「お、oh,,,」
吸血鬼「や!」
妹吸血鬼「こんな時だけ可愛くしたって無駄です」
吸血鬼「やーなのー!」ダキッ
女「こ、こらっ! 抱きつくな!」
吸血鬼「お願い……もう少しだけ、このままでいさせて?」
女「うっ……」(なんだこの破壊力……すげードキッとした)ドキドキ
妹吸血鬼「こうなったら力づくで……」
女「ちょ、ちょい待ち!」
女「もうちょっとだけ、一緒に居させてあげても……いい、かも」
妹吸血鬼「へ?」
吸血鬼「本当!? ありがとっ!」ギューッ
女「苦しい苦しい……勘違いしないでよね、今のアンタがほんの少しだけ不憫に思っただけなんだから」
妹吸血鬼「はぁ……」
吸血鬼「んふふー」ギュー
吸血鬼「うちの妹は帰ったし、早速ちゅーちゅーさせてもらおうかしら?」
女「アンタ、血を吸わないとどうなる訳?」
吸血鬼「そうねぇ、長期間吸わないと禁断症状が出て見境無く手当たり次第に血を吸っちゃうわね。最悪死ぬ」
女「おぉう……思った以上にヘヴィね」
吸血鬼「私は強引に吸うのって好きじゃないのよねぇ。かといって吸わないわけにもいかないし」
女「……血を吸われる方に、メリットはあるの?」
女「それは本当だったのか」
吸血鬼「詳しい理由は良く分からないんだけどねぇ」
女「デメリットは?」
吸血鬼「ん~、そうねぇ。こちらが吸い過ぎると、吸われる方が依存状態になっちゃうくらいかしら」
女「……嫌な予感しかしない」
女「まぁ、少しの間だけ面倒見るって妹の方にも言っちゃったし、他の人に迷惑掛けられるのもアレだから……」
吸血鬼「だから?」
女「す、少しくらいなら……吸わせてあげてもいい、けど」
吸血鬼「本当? ありがとー!」ギュー
女「苦しいって!」
女「ちょ、ちょっとだけだかんね」
吸血鬼「分かってるわよ。じゃ、遠慮なく」
女「んっ……」ドキドキ
女「痛っ」
吸血鬼「痛いのは最初だけよ。段々気持ち良くなってくるから」
女「さ、さっさと終わらせなさいよね」ドキドキ
吸血鬼「言われなくてもね。……ちゅ、んふ……ちゅる」
女「あっ、んんっ」ビクッ
吸血鬼「ふっ、ん……ちゅ~っ……ぷはっ」
女「んん~っ!」ビクビク
吸血鬼「んふ、ご馳走様」
女「あっ、はぁ……はぁ……」
吸血鬼「ふふっ、どう? 気持ち良かったでしょ?」
女「否定はしない。うわ、首がベトベトだ」
吸血鬼「ごめんなさい、あんまり夢中だったものから」
女「変な汗も掻いたし、ちょっと風呂に入ってくる」
吸血鬼「ふふっ、いってらっしゃい」
吸血鬼「うふふふ……」
女「あ゙ー、やっぱり追い出しときゃ良かった……」
女「しかし、心なしか肌が綺麗になってる気が……イカンイカン、落ち着けスネーク、それはプラシーボ効果だ」
女「気持ち、良かったけどさ」
女「やべー、思い出したら火照ってきた。……ちょっとくらいなら、良いよね?」
女「ん……」チュク
女「ヴぇのあっ!? な、ななななななんでアンタこっここに!!」
吸血鬼「私もシャワー浴びたくなってきたのよ」
女「だったら後で入ってきたらいいでしょうがー!」
吸血鬼「カタイこと言わないの」
女「出てけ!」
女「おいおいおいおいそれ以上近づくなマジヤバイ」
吸血鬼「無理しなくてもいいのよ? 体が疼いて仕方がないんでしょ?」
女「そっ、それは……」
吸血鬼「……ごめんね、ちょっと嘘ついちゃったわ」
女「えっ?」
吸血鬼「一度でも吸血鬼に血を吸われた人間は、その吸血鬼の虜になってしなうの」
女「そ、そんな……」
女「ぅあ……」
吸血鬼「ね、我慢しなくてもいいのよ? ほら、私の手をとって?」
女「ぃ……あ」
吸血鬼「力が抜けてくるでしょ? さぁ。楽にして」
女「んっ」
女「んむ~っ!? ……ちゅ、あ、はむ、れろ」
吸血鬼「ふふっ、自分から舌を絡めちゃって……んんっ」
女「んにゅっ……くちゅ、や、だめっ」
吸血鬼「れりゅ、ちゅっ……ちゅぱっ……素敵な顔になったわね」
女「あ、はぁ、はぁ……」
吸血鬼「あら、来てたの?」
妹吸血鬼「どうする気ですかその人」
吸血鬼「どうするもなにも、この子はもう私のモノ。何をしようが勝手でしょ?」
妹吸血鬼「ですが……」
吸血鬼「貴女もどう? この子は特別、美味しいわよ?」
妹吸血鬼「何を……」
吸血鬼「貴女だって血を吸わずにはいられないのじゃない? 据え膳食わぬはなんとやら、よ?」
女「あ、はぁ……」ビクッビクッ
妹吸血鬼「……」ゴクリ
もう自分が自分とは思えない。快楽を求め、乱れに乱れた。今思えば、彼女たちは淫魔だったのではないか。
だが、もうそんなことはどうでも良い。今は彼女が欲しい。それだけで頭が一杯だ
「じゃあ、今日も楽しもうかしら。おいで、また可愛がってあげる」
彼女の呼ぶ声だ。体の奥が再び疼いてくる。彼女の一言一言が薪をくべる様に、自分の心の炎を燃え立たせる。
嗚呼、また始まるんだ……。重い体をゆらりと起こす。この気だるささえ快楽の波となって押し寄せてくる
「いらっしゃい、宴を始めましょう……」
もう、戻れない
~fin~
乙
出来ることなら俺だってほのぼのエロスにしたかったもん
でもボキャブラリーが貧困過ぎたんだもん
よくやった
よく頑張った
Entry ⇒ 2011.12.28 | Category ⇒ その他 | Comments (0) | Trackbacks (0)
テロリスト「この学校は占拠したぁ!!」生徒「きゃー!!」
生徒「きゃー!!」
テロリスト「うるせえ!!静かにしろ!!」
生徒「きゃー!!きゃー!!」
テロリスト「黙れって言ってんだろ!!」ダダダダ
生徒「きゃー!!!マシンガンだー!!きゃー!!」
テロリスト「蜂の巣になりたくなきゃ、静かにしろぉ!!」
生徒「きゃー!!テロリストー!!きゃー!!」
テロリスト「死にてえのかぁ!!」
生徒「きゃー!!すてきー!!」
テロリスト「……」
生徒「テロリストさん、かっこいいー!!」
先生「しずかにーテロリストさんも困ってるだろ」
生徒「「はぁーい」」
先生「あ、じゃあどうぞ」
テロリスト「お、おう」
テロリスト「いいか!!お前らは人質だ!!」
生徒「しつもーん」
テロリスト「あぁ!?」
生徒「なんでこの学校を選んだんですか?」
テロリスト「……ここは金持ちの子どもが多く通っていると聞いたからな」
生徒「確かに。政治家の親を持ってる人もいるよねー」
生徒「それわたしー」
生徒「じゃ、殺されるんじゃない?」
生徒「まじ!?きゃー!!どうしよー!!」
テロリスト「……」
テロリスト「何が?」
先生「みんな日ごろから妄想していたのか、怖がってません」
テロリスト「……」
生徒「ちょっと、男子ー。ここは俺が!とかいって前にでなさいよー」
生徒「うっせーブス」
生徒「誰がてめえを庇うかよ」
生徒「いったなー!!」
テロリスト「だまれ!!こらぁ!!!」
生徒「きゃー!!」
テロリスト「てめえ、こい」
少女「え?」
テロリスト「俺たちの要求にてめえらの親、警察が応えない場合、殺す」
少女「……」
テロリスト(流石にびびったか……?)
テロリスト「こっちにこい」
少女「あの」
テロリスト「なんだ?」
少女「糸くずがついてますよ」
テロリスト「え?」
少女「はい、とれました」
テロリスト「……お前、怖くないか?」
少女「いえ」
テロリスト「銃を突きつけられてるのにか?」
少女「不思議と……この銃口は優しい目をしています」
テロリスト「……」
少女「あはっ」
テロリスト(なんだ……この学校は……)
少女「仲間は何人ぐらいいるんですか?」
テロリスト「15人だ」
少女「意外と少ないんですね」
テロリスト「まぁな」
少女「ふぅん」
テロリスト「はやくこい」
少女「はい」ヒョコヒョコ
テロリスト「……」
「よぉ。つれてきたか。見せしめ要員」
「よし、このカメラの前に立て」
少女「はぁーい」
「これを読め」
少女「あ、脅迫文ですね。わかりました」
テロリスト「……」
「……なんでハキハキしてんだ?」
「怖がってないな」
テロリスト「……」
「なんだ、あいつは?」
テロリスト「知らん」
少女「―――以上。要望が通らない場合はなんと!!二時間ごとに生徒が脳を撒き散らして死に絶えるでしょう!!」
「そんなこと書いてない!!」
少女「でも、これぐらいインパクトがないと」
「いや……」
テロリスト「まぁ、これでいい。早速このビデオを送ろう」
「そうだな。一時間もすれば大騒ぎになるはずだ」
少女「その間、私は監禁ですか?」
テロリスト「ああ」
少女「じゃ、オセロでもしませんか?」
少女「なぁーんだ」
「じゃあさっそくダビングしてっと……」
少女「手伝います」
「お、わりいな」
少女「これですね?」
「そうそう」
テロリスト「見回りしてくる」
「おう」
少女「どうやって送るんですか?」
「外に仲間がいる。そいつらがバイクで届ける寸法だ」
少女「あったまいー!!」
「そうか?」
テロリスト「……」
テロリスト「……」スタスタ
テロリスト「……ん?」
生徒「……」ヒラヒラ
テロリスト(手を振ってやがる……)
生徒「……」ゴソゴソ
テロリスト「……?」
生徒「……」タン
カンペ『拳銃はロシア製ですか?』
テロリスト「……」コク
生徒「……」カキカキ
カンペ『マジカッケー!!』
テロリスト「……」
テロリスト(おかしい……これがゆとり教育で培われた個性なのか……?)
少女「おかえりなさい」
「どうだった?」
テロリスト「異常はない」
「そうか」
少女「お茶です」
テロリスト「……」
少女「睡眠薬とか盛ってませんから」
テロリスト「そうか」
「しばらくは静観するか」
「だな」
少女「じゃあ、大富豪でもしませんか?」
テロリスト「黙れ」
少女「……」
テロリスト「殺すぞ?」
テロリスト「あのなぁ……」
少女「うえぇぇん……」ポロポロ
テロリスト「泣くポイントがずれてんだよ……」
少女「うぇぇぇん……ウノでもいいですからぁぁ……」ポロポロ
テロリスト「……」
「おい。別のところにいれておけ」
テロリスト「そうだな」
少女「あれ?」
テロリスト「こっちにこい」
少女「はい」
テロリスト「くそ……」
少女「掃除用具ロッカーとかはやめてくださいね?」
テロリスト「入るぞ」
校長「おや?」
少女「パパー!!」
校長「どうした?」
テロリスト「なに……?」
少女「パパ、紹介するね。今、この学校を占拠してるテロリストさん」
校長「そうですか。それはご苦労様です」
テロリスト「この娘は最初の見せしめだ」
校長「ほう」
少女「私、殺されるっぽいよ?」
校長「それは困るな」
テロリスト「ふん……俺たちの要望が通れば殺さないでいてやる」
校長「そうですか。お手数お掛けします」
少女「いい人だよね」
校長「なんだと?!ビデオに!?」
少女「多分、全国に私の顔が公開されちゃうよ」
校長「お前はかわいいからなぁ。アイドルになっちゃうかもしれんな」
少女「もうやだぁ!」
テロリスト「おい」
校長「あ、すいません。今、お茶を出します」
テロリスト「……」
少女「私が淹れる」
校長「そうか、頼んだよ」
少女「うん!!」
テロリスト「なぁ?」
校長「なんでしょうか?」
テロリスト「こう言ってはなんだが……この学校の生徒は全員、頭おかしいのか?」
校長「いえ、滅相もない。人質の価値は十分にあります」
校長「何かご不満でも?」
テロリスト「銃を突きつけても恐怖しないのはおかしいだろ」
校長「ああ、すいません」
テロリスト「……」
校長「今度からカリキュラムに組んでおきましょう。銃を見せられたら怖がるように訓練します」
テロリスト「いや……」
少女「はい。お茶です」
校長「ありがとう」
テロリスト「……お前も変だな」
校長「教育者として、テロリストがいつきてもいいように我々は心構えができていますから」
テロリスト「そんな馬鹿な……」
校長「このご時勢……なにがあっても不思議はありませんからな」
テロリスト「……」
少女「あ、警察がきてるー!!」
少女「いるんじゃないかな?」
テロリスト「意外に早いな」
少女「これからどうしますか?」
校長「髪を整えておこうか」
少女「そっかー、アイドルになれちゃうかもしれないもんね」
校長「ああ」
少女「パパ、がんばるね!!」
校長「がんばれ」
テロリスト「……」
校長「では、娘をお願いします」
少女「私、いつかミリオンヒットを出して見せます!!」
テロリスト「俺はプロデューサーじゃない」
少女「あ、そっか」
校長「あはは、気が早いやつだ」
『こっちでも確認した』
テロリスト「じゃあ、交渉を始めるんだな?」
『既に始まっている。電話がかかってきたからな』
テロリスト「じゃあ、今から二時間後にこいつを殺せばいいんだな?」
『動きがない場合な』
テロリスト「了解」
少女「あー!パパ、あれがSATじゃない?」
校長「ほんとだ。初めてみたよ」
少女「踊る大捜査線でみたことあるある!!」
校長「パパも」
少女「かっこいいねー」
校長「そうだな」
テロリスト「おまえら……いい加減にしろ。緊張感がないのか?」
少女「生憎と」
少女「あ、怒りました?」
テロリスト「呆れただけだ」
少女「よかった」
テロリスト「……」
校長「さて、二時間後はどうなっていることやら……」
少女「ドキドキだね」
校長「そうだな」
テロリスト「お前、娘が死ぬかもしれないというのに余裕だな」
校長「なんでしょう……不思議と娘が死ぬとは思えないのです」
テロリスト「なに?」
校長「貴方の目はとても優しい……だから娘を到底殺せるとは思えないのです」
テロリスト「……」
少女「私もそう思う!!」
テロリスト「ふふ……なめるのも大概にしろ……俺たちは本気だ」
テロリスト「……」バァァン
少女「ひゃ!!」
校長「おぉ……!?」
テロリスト「躊躇なく引き金をひける」
校長「……」
少女「……」
テロリスト(ふっ……ようやく、事態の深刻さを理解したようだな)
校長「今のは……」
テロリスト「……」
校長「ロシア製の拳銃ですね?」
テロリスト「それがなんだ?」
校長「私もマニアでして……ほら」チャカ
テロリスト「!?」
校長「拳銃集めるの、趣味なんです」
校長「……」
少女「パパってばすごいんだよ。ここの引き出しに……何丁もあるの」チャカ
テロリスト「!?」
校長「ふふ……どうです?」
少女「すごいでしょ?」
テロリスト「銃を置け……」
校長「ほら……よく見てください」
少女「結構重たいね」
テロリスト「銃をおけぇ!!」
校長「……ばん!!」
テロリスト「……っ!?!??」
校長「なんちゃって。これモデルガンです」
少女「びっくりしました?」
テロリスト「……」
校長「わっはっはっは」
テロリスト「……」バァァン
少女「きゃぁ!?」
校長「な……?」
テロリスト「人質は死なないとでも思っているのか?」
少女「いや、そんなことは」
テロリスト「こい」
校長「なんですか?」
テロリスト「お前から殺す」
少女「そんな!!私が先です!!」
校長「そうです!!こんな中年の死亡シーンなどお茶の間は期待していません!!殺すなら娘を!!」
テロリスト「うるせえ!!!こい!!!」
少女「パパー!!」
校長「やめてくれぇ!!!」
テロリスト「こいつを見せしめに殺す」
校長「どうも」
「おいおい……なにがあった?」
テロリスト「色々だ」
「やめろ。交渉している最中にそんなことしてみろ、向こうは強硬手段に出るぞ」
テロリスト「怖気づいて譲渡してくれるかもしれないだろ?」
「あのな……どこで殺すんだ?」
テロリスト「ビデオを回せ。殺すところを撮って送りつけやる」
「おいおい、もっとクールになれよ」
テロリスト「うるせえ!!」
校長「そうだ!」
テロリスト「あぁ?!」
校長「私がみなさんに殺されるよりも、レイプされるところをビデオで撮りましょう。インパクトあると思います」
テロリスト「あ、ああ……?」
「あのなぁ……」
校長「だめですか?」
テロリスト「そんな趣味のやつはいねえ!!」
校長「では、体育教師の通称ゴリ先生を呼んでください。あの人なら嬉々としてやってくれましょう」
テロリスト「きもいんだよ!!」
校長「えぇ……」
「つまりあれか……お前はそういう趣味があると全国にカミングアウトしたいのか?」
校長「いえいえ。あくまでも強要されているように見せませんと」
テロリスト「娘が知ったら悲しむぞ!!いいのか!!」
校長「それも拷問のうちです!!」
テロリスト「……」
校長「さぁ!!場所は体育館倉庫で!!」
テロリスト「……元の場所に戻してくる」
「そうしてくれ」
テロリスト「ふぅ……」
少女「あ、おかえり」
校長「ただいま」
少女「よく無事だったね」
校長「死んでもおかしくなかった」
テロリスト「頭いたいな……くそ……」
『応答しろ』
テロリスト「どうした?」
『動きがあった。人質の解放を条件に、俺たちの要求を呑むそうだ』
テロリスト「ふん……テンプレ通りだな。どうする?」
『さっきの校長だけを解放しよう。正直、頭痛のタネだ』
テロリスト「同意だ」
『では、頼んだ』
テロリスト「ああ」
校長「なんですって?!」
少女「やったね!!」
テロリスト「立て」
校長「私だけを解放ですと!?何をおっしゃいますか!!」
テロリスト「なんで困惑してんだよ。普通は歓喜するとこだろ!!」
校長「そうですか」
テロリスト「そうだ」
校長「わかりました。よろこびます……」
テロリスト「全然、嬉しそうじゃねえな」
少女「またね、パパ」
校長「今日の晩御飯はなにがいい?」
少女「ハンバーグ!!」
校長「わかった」
テロリスト「さっさとこい!!」
テロリスト「こいつを解放する!!残りはきちんと要求が通ったあとで随時解放してやる!!」
警察「無駄な抵抗はやめろー。お母さんがかなしむぞー」
テロリスト「あぁ!?」
警察「たけしー!!」
テロリスト「俺はたけしじゃねえ!!」
警察「違うって」
警察「やっぱりたかしだったんじゃ……」
警察「賭けは失敗だな」
警察「じゃあ、二回目いっとく?」
警察「たかしー!!」
テロリスト「いい加減にしろ!!こいつを殺すぞ!!」
校長「マンマミーヤ!!」
警察「それはまずいな!!」
警察「わかった!!もうしない!!人質を解放してくれー!!」
校長「おぉぉ……」
警察「さ、こちらへ!!」
校長「はい……」
警察「お怪我は?」
校長「大丈夫です」
テロリスト「ふん……!!」
警察「まて!!」
テロリスト「なんだ?」
警察「子どもたちは無事なんだろうな?」
テロリスト「知らないね」
警察「いいか。子どもに手を出してみろ……どうなるかわかっているな?」
テロリスト「どうなるんだ?」
警察「児童ポルノ法で―――」
テロリスト「死ね」
テロリスト「ふぅ……早く要求を呑んでくれないかな……疲れてきた」
「もう少しだ。我慢しろ」
テロリスト「……もう昼か」
少女「あのぉ」
「どうした?勝手にうごくんじゃねえ」
少女「すいません。でも、そろそろお昼ごはんの時間なんですけど」
テロリスト「それがどうした?」
少女「ごはん……」グゥ~
テロリスト「そんな状況に見えるのか?」
少女「でも、お弁当を放っておくと臭いとかすごいことに……」
テロリスト「……」
少女「そうなるとテロリストさんたちもテロってる場合ではなくなると思うんですよぉ」
テロリスト「そのときは捨てるまでだ」
少女「駄目です!!せっかくお母さんが作ってくれたのにぃ!!捨てるなんて何言ってるんですかぁ!!」
少女「ひどい!!テロリストさん鬼畜ぅ!!」
テロリスト「最高の褒め言葉だ」
少女「うわ……マゾ?」
テロリスト「こいつ……!!」
「落ちつけ」
テロリスト「だが……!!」
少女「落ち着け」
テロリスト「……」
「わかった。だが、いいのか?」
少女「え?」
「飯を食う。飲み物を飲む。そうなると生理現象が起こる」
少女「そうですね」
「我々はお前たちを教室から一歩も出さないぞ?そうなると……?」
少女「おもらし……大会……開幕!!」
少女「でも……!!」
「我慢するか、欲を満たし教室を汚物で満たすか……どちらがいいかな?」
少女「……!!」
テロリスト「何を言ってんだ?」
少女「窓!!」
「なに?!」
少女「窓から用をたせば……」
「お前……天才か?」
テロリスト「お前、しっかりしろ」
少女「どうやら、私の勝ちですね」
「それをやられるとこちらが困るな」
少女「え?」
「お前たちにそういうことを強要しているように映る。そうなると我々はもれなくロリコンテロリストとなる」
テロリスト「なぁ!!どうしたんだ!!しっかりしろ!!!」
少女「ありがとうございます」
「いいネゴシエーターになれそうだな」
少女「私の夢は公務員です」
「そうか」
テロリスト「……見回りしてくる」
「わかった。おい、校内放送でお昼ご飯の時間になったことを伝えろ」
「わかりました」
テロリスト「……」
少女「テロリストさん!」
テロリスト「なんだ?」
少女「一緒にお弁当どうですか?」
テロリスト「断る」
少女「お腹がすいてはテロもできませんよ?ほらほら」
テロリスト「ひっぱるな!!」
スピーカー『今からランチタイムに突入だ。トイレに行く場合は最寄のテロリストに一声掛けろ。以上』
テロリスト「……」
少女「これ、私のお手製なんですよ」
テロリスト「そうなのか」
少女「私の家、お母さんがいなくて」
テロリスト「そういえばさっき、父親が夕食のことを訊ねていたな」
少女「はい。朝は私。夜はパパなんです」
テロリスト「そうか」
少女「はい、あーん」
テロリスト「やめろ」
少女「え?卵焼き嫌いですか?」
テロリスト「そういうことじゃない」
生徒「あ、仲いいな!!ヒューヒュー!!」
少女「や、やめてよ!!そんなんじゃないんだから!!」
生徒「テロリストさん、私のお弁当……もらってください!!」
生徒「あー!!ぬけがけー!!」
生徒「私のお弁当もおいしいですよ!!!」
テロリスト「……」
少女「み、みんな!!テロリストさんが困ってるから!!」
生徒「なによ!!独り占めにするき?」
生徒「テロリストさんはあなたのテロリストじゃない!!みんなのテロリストなのよ!!」
少女「そ、そうだけど……」
生徒「そうだ!学校を案内します!!」
生徒「あ、それいい!!」
テロリスト「お前ら……うっとうしいから座ってろ」
生徒「あはぁん……声がしぶい……」
生徒「まさにテロリスト……」
テロリスト(殺したい……)
テロリスト「なんだ?」
『第二の要求に関しては妥協案を出してきやがった』
テロリスト「はっ。想像通りだな」
『そこでだ。今度はあのガキを連れて行け』
テロリスト「銃をつきつけてか」
『ああ、それで脅せ。もし向こうが渋るようなら、腕か足を撃て』
テロリスト「ふっ……了解」
少女「誰からでした?」
テロリスト「無線だから仲間だけだ」
少女「へえ」
テロリスト「さてと……こい」
少女「え……や、やだ……そんな……や、やさしくしてください……」
テロリスト「……」
生徒「いいなー。絶対にキスはするね、あの感じ」
警察「へえ、奥さんとはそんな馴れ初めが」
校長「ええ」
警察「うらやましい」
校長「いえいえ」
警察「それで、奥さんの処女はいつ?」
校長「あれは……あいつが中学―――」
テロリスト「おらぁ!!!おまえらぁ!!」
警察「なんだ!?」
警察「なんだ!?なんだ!?」
テロリスト「要求がのめないそうだな!!」
少女「きゃー!!きゃー!!」
警察「貴様!!その子をどうする気だ!!」
テロリスト「お前らの態度次第だ!!」
警察「児童ポルノ法に抵触するぞ!!そんな前科、恥ずかしくて履歴書にかけんぞ!!」
少女「きゃー!!きゃー!!」
警察「なにを……!!」
テロリスト「妥協案なんて出してんじゃねえ。100%要求を呑め」
警察「しかし……!!」
テロリスト「そうか……」
警察「!?」
テロリスト「このガキは五体満足で居られなくなるぞ?」
少女「きゃー!!」
警察「やめろ!!」
テロリスト「要求をのめ」
警察「……っ」
テロリスト「それが答えか……なら!!」
少女「?!」
校長「バァァァン!!!」
少女「きゃー!!」
警察「なに!?」
校長「……」
警察「もう!!びっくりするじゃないですか!!」
校長「銃声のモノマネは十八番なんです」
警察「すごいですね」
校長「空港で鳥を空砲で追い払う仕事あるじゃないですか。老後はそれで食べていこうかと」
警察「あはは、いいですね」
校長「でしょう?」
テロリスト「きさまらぁぁ!!!」
警察「うるさいなぁ」
テロリスト「要求はのむのか!!」
警察「どうする?」
警察「めんどくさいし、のんじゃう?」
少女「きゃー!!」
テロリスト「うるさい」
少女「あ、すいません」
警察「わかった!!呑む!!ただし、人質を解放しろ!!」
テロリスト「お前らがちゃんと我らの要望に応えたらな!!」
警察「オーライ!!では、30分で応えよう!!」
テロリスト「わかった」
警察「よし、各員に知らせろ」
警察「わかりました」
テロリスト「ふ……これで、あとは最後の要求……逃げ足を用意させれば勝ちだな」
少女「もう終わりですか?」
テロリスト「ああ」
警察「おい!!」
テロリスト「あぁ?」
テロリスト「……どうする?」
『いいんじゃないか?』
テロリスト「……よし」ドン
少女「あぅ!?」
警察「大丈夫か?」
少女「はい……」
警察「胸とかお尻とか触られてない?」
少女「え、ええ」
警察「そうか……」
テロリスト「じゃあ、期待しているぞ?」
警察「……」
少女「テロリストさん!!楽しかったです!!ありがとう!!」
テロリスト「ふん……」スタスタ
警察「やはり……ロリコンか……!?」
「こんなもんさ。今の警察は腑抜けだ」
「確かに」
テロリスト「あとは車を用意させるか」
「そうだな。その前に……これを仕掛けて来い」
「へへ……爆弾……ですね?」
「俺たちが逃走して奴らが追ってきたら……ドカーン!ですね?」
「その通りだ」
テロリスト「よし。じゃあ、仕掛けてくる」
「どこに仕掛けるか……」
「教室がいいだろうな」
「確かに……くく、こりゃいっぱい死ぬな」
「―――もしもし?最後の要求をするよくきけ」
テロリスト「……」
テロリスト(ようやくらしくなってきたな)
テロリスト「……」ゴソゴソ
生徒「なにしてるんですかぁ?」
テロリスト「爆弾を仕掛けている」
生徒「すげー!!」
テロリスト「……お前らもここまでだ」
生徒「あー!!初めから生かす気なんてなかったんですね!!」
テロリスト「その通りだ」
生徒「渋い!!」
生徒「立つ鳥後を濁さず……か」
生徒「いいっすね!!」
テロリスト「……ふん」
生徒「よーし!!みんなぁー!!爆弾解体しようぜ!!」
生徒「どうせ最後は赤の線と青の線が残るんだよな!!」
テロリスト「おまえら……!!」
その発想はなかった
生徒「らぁぁん!!」
生徒「知ってる!時計仕掛けの摩天楼!!」
生徒「いいよな」
生徒「おう」
テロリスト「こいつら……マジか……!?」
『おい!!』
テロリスト「どうした!?」
『爆弾を仕掛けたらガキどもが嬉しそうになんか解体を始めようとしている!!』
テロリスト「なんだと!?」
『こっちもだ!!』
『こっちも―――こら!!それに触れるな!!あぶない!!うわぁぁ―――』
テロリスト「どうした!!!おい!!!」
生徒「これランカンじゃね?」
テロリスト「触るな!!」
生徒「切れ切れ」
テロリスト「やめろ!!」
生徒「えー?」
テロリスト「くっ……応答しろ!!」
『聞いている』
テロリスト「爆弾の設置は危険だ」
『みたいだな』
テロリスト「この作戦は中止にしたほうがいい」
『ああ、撤収しろ』
テロリスト「了解」
生徒「爆弾は?」
テロリスト「没収だ」
生徒「そんなぁ」
生徒「殺生な!!」
「ここのガキはクレイジーだ」
「そうだな」
テロリスト「どうする?逃げるときの保険は?」
「よし……人質をとるぞ」
テロリスト「それしかないか」
「爆弾を解体しようとするなんて想定外にもほどがあるからな」
「で、誰にする?」
「そうだな……」
少女「立候補!!」
テロリスト「!?」
校長「私も!!」
「お前ら……!!?」
少女「私が全校生徒の囮になります!!」
「おい、無能な警察ども良くきけ。解放した人質がまた人質になったぞ。どうしてくれる?」
「違う。勝手に帰ってきた。ガキはいいがおっさんは本当にいらん」
警察『ならば解放しろ』
「わかった」
「お前は外にいけ!!」
校長「なんでですかぁ!!必死になって警察の目を盗んできたのに!!」
テロリスト「邪魔なんだよ!!」
校長「くそ……こんなところで……!!」
警察『ところで車なんだが』
「どうした?」
警察『2tトラックしか用意できなかったがよろしいか?』
「貴様……!!」
警察『トラックの荷台に仲間全員乗せればいいと思って……』
「目立つだろ!!」
警察『しらんし』
警察『車種を言わなかったお前たちにも責任はあるぞ!!』
「く……正論を……!!」
テロリスト「押されんな」
「普通車だ!!」
警察『セダンか?』
「それは任せる」
警察『わかった。おい、キューブでいいそうだ』
「あ、こら!!」
「切れた……」
テロリスト「とりあえず逃げるときの人質はこいつでいいな?」
少女「やん」
「もうそいつでいい」
少女「なんですか!失敬な言い方ですね!!」
テロリスト「外にいくぞ」
テロリスト「車は?」
警察「用意した」
「どこにある?」
警察「校門の外だ」
テロリスト「校庭の真ん中までもってこい」
警察「わかった」
少女「あのどこまで行きます?」
「知る必要はない」
少女「いや……どこに行くか相談したいんですけど……」
ブゥゥゥゥン
警察「へい、おまち!!」
テロリスト「降りろ」
警察「……はいはい」
「へい」
テロリスト「追ってきたらどうなるか……わかっているな?」
警察「どうなる?」
テロリスト「このガキを……目を覆いたくなるような姿にしてやるぜ」
警察「アヘ顔ダブルピースか」
テロリスト「違う」
警察「ほぅ……それ以上か。詳しく」
テロリスト「死体にきまってんだろ!!」
警察「警官をなめるな!!死体だけで目を覆いたくなるようではつとまらんよ!!」
テロリスト「そう言う意味じゃない」
警察「ふむ……」
少女「私、助手席ー!!」
警察「シートベルトはちゃんとしろ」
少女「はぁーい」
「そのような反応もないですね」
「よろしい。もらっていく」
警察「80万だ」
「なに?」
警察「あと車庫証明も―――」
「おまえはディーラーか?」
警察「ポリスメンだ」
「……」
警察「……」
テロリスト「ほら、いくぞ」
「ああ」
少女「峠をせめるぜ!!」
警察「道路交通法は守れよ!!」
テロリスト「余計なお世話だ!!」
テロリスト「……」
少女「ラジオを聞いてもいいですか?」
テロリスト「好きにしろ」
「後続車はちゃんとついてきてるか?」
「問題ないです。他のメンバーもちゃんと後ろにいます」
「ふふ……勝ったな」
テロリスト「ああ……完勝だ」
少女「ニュース、ニュース……」
ラジオ「―――速報をお伝えします」
少女「お」
テロリスト「俺たちのことか?」
ラジオ「少女一名を誘拐したテロリスト集団は現在逃走中とのことです」
少女「おぉー!!」
ラジオ「ただいまから車番と車種を読み上げますので、見かけた方はそのまま追跡して警察に連絡をしてください」
少女「なんてこった」
「考えたじゃねえか……」
テロリスト「おい……こいつを殺そう」
少女「なんですか?!」
「……」
テロリスト「追ってくるなと警告したのに……この様だ」
「まて」
テロリスト「なんだ?」
「俺たちは警察に追ってくるなといった……だが、民間人にまではそれを言っていない」
テロリスト「……は?」
「つまり……俺たちの負けだ」
テロリスト「おい!!なに遠い目をしてるんだよ!!しっかりしろ!!!」
少女「負けた……完敗ですね」
テロリスト「なんでお前まで悟った顔をしやがる!?くそ!!なんだよこれ!!!どういうことだよ!!」
「まけたよ」
警察「中々だったぞ」
テロリスト「くそ……こんな終わり方なんて……」
警察「お前は児童ポルノ法で逮捕だ」
テロリスト「!?」
少女「やめて!!お兄ちゃんは悪くないんです!!」
警察「その話はゆっくり署で聞こう」
少女「はい……」
テロリスト「……」
校長「これで一件落着ですな」
警察「ええ。ご協力ありがとうございます」
校長「いえ。私は必死に犯人たちを追いかけただけです。親子で人質になったほうがいいと思いまして」
警官「なるほど」
校長「わっはっはっは!!」
看守「もう来るなよ」
テロリスト「……ああ」
少女「あ、あの……!!」
テロリスト「君は……!!」
少女「……あの……私……」
テロリスト「……」
少女「貴方のテロ被害にあったんです……心が……」
テロリスト「え……?」
少女「私を一生……貴方の人質にしてください……」
テロリスト「……わかった」
少女「うれしい……大好きです……」
おしまい。
乙!
面白かったぜ!
面白かったぞ
Entry ⇒ 2011.12.28 | Category ⇒ その他 | Comments (0) | Trackbacks (0)