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宥「恋人に射ち堕とされた日」

引用元:
1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 19:30:07.64 ID:9rkA5XTJ0

宥「それじゃあ玄ちゃん、お留守番お願いね」」
 
玄「おまかせあれっ!」
 
宥「それじゃあ……行ってくるね」
 
玄「うん、いってらっしゃい、お姉ちゃん」
 
玄「……」

玄(お姉ちゃんは恋人さんとお出かけかぁ~)
 
玄(いいなぁ……私もお姉ちゃんとお出かけしたいよ~)
 
玄(……でもお姉ちゃんの恋人ってどんな人なんだろう?)
 
玄(……まあいっか!)
 
玄(さて、私は旅館のお手伝いをしなきゃ!)


2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 19:32:13.28 ID:9rkA5XTJ0

菫「……!」
 
菫「宥、こっちだ!」
 
宥「ご、ごめんね……待たせちゃった?」
 
菫「いや、こっちもさっき来た所さ」
 
宥「わざわざ東京から来て貰って……ごめんね」
 
菫「いいさ、私も宥の住んでいる所を自分の目で見たかったんだ」
 
菫「……それに、宥の親御さんにも挨拶しておきたいしな」
 
宥「んもう……菫ちゃん///」
 
菫「……///」
 
菫「さ、さて!街を案内してくれるんだよな?」
 
菫「早速行こうか!」
 
宥「うん」


………
……


4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 19:38:31.35 ID:9rkA5XTJ0

菫「ここは……ボウリング場?」
 
宥「うん……同じ部員の子がここでお手伝いしてるの」ウィーン
 
灼「いらっしゃ……あれ、宥さん?」
 
宥「こんにちは、灼ちゃん」
 
灼「珍しい、今日はどうして……って、白糸台の!」
 
菫「……」ペコ
 
宥「うん、ちょっと街を案内してたんだぁ」
 
灼「え、じゃあもしかして……宥さんの恋人って」

宥「う、うん……///」
 
灼「へえ、そうなんだ……おめでとう」

宥「え、あ、ありがとう……?」


7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 19:44:47.53 ID:9rkA5XTJ0

灼「せっかくだし、やっていく?サービスしとくよ」
 
宥「え、でも私ボウリングは苦手だし……」
 
灼「デートでのボウリングは定番中の定番だし、やっておいても損は無いと思う」
 
宥「そ、そうかな……?」
 
灼「そう」
 
宥「……じゃ、じゃあ1回だけやろうかな……」
 
宥「菫ちゃんもいい?」
 
菫「あ、ああ……私もあまり得意ではないが」
 
灼「じゃあ決まりだね、じゃあこれ。3番レーンね」


10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 19:50:16.90 ID:9rkA5XTJ0

ガコンガコン...
 
 
菫「……ふぅ」
 
菫「スコアは……108か」
 
菫(私自身、ボウリングは数えるくらいしかやった事はないが……)
 
菫(まぁこんなもんか)
 
菫(それに対して……)
 
宥「……」
 
宥「……ボウリングって難しい」
 
菫(宥のスコアは……34か)
 
菫「宥は本当に苦手なんだな」
 
宥「わ、私……あんまりこういうのやった事ないから……」


11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 19:56:10.27 ID:9rkA5XTJ0

宥「菫ちゃんはすごいね」
 
菫「そ、そうか?私もあんまりボウリングはやった事がないんだが……」
 
宥「……なんかずるい」
 
菫「い、いや……そう言われてもな……」
 
菫「こればっかりは慣れなんじゃないか?」
 
宥「むー……」
 
菫「……そろそろ出ようか、まだ案内してくれるんだろう?」
 
宥「……」
 
宥「……うん」


………
……


13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 20:02:09.53 ID:9rkA5XTJ0

宥「……っ……ふぅっ」
 
菫「……?」
 
菫「宥、顔が少し赤いけど大丈夫か?」
 
宥「えっ?そうかな?」
 
菫「あ、ああ……」
 
宥「うーん……きっとボウリングで疲れちゃったのかも」
 
菫「少し休むか?」
 
宥「ううん、大丈夫。それにもうすぐ目的地だから」
 
菫「この先が目的地……?」


14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 20:07:04.96 ID:9rkA5XTJ0

菫「……」
 
菫「ここは……神社か?」
 
宥「うん、ここにも部員の子がいてね……」
 
 
『あれー?宥姉?それと……白糸台の!?』
 
『えっ、宥さん!?』
 
 
宥「こんにちは、憧ちゃん、穏乃ちゃん」
 
憧「どうしたのこんなところで……というかその人、白糸台の人だよね?」
 
宥「うん」
 
憧「へえー、じゃああの話本当だったんだ!」
 
穏乃「なんの話?」
 
憧「宥姉に恋人が出来たって話だよ!」


16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 20:12:08.23 ID:9rkA5XTJ0

穏乃「えー!!宥さん恋人いたのー!?」
 
憧「じゃあ、もしかしてその人が?」
 
宥「うん……菫ちゃんだよ」
 
菫「……」ペコ
 
穏乃「わあー……!」
 
穏乃(間近で見るとかっこいい人だなぁ……)
 
憧(むっ……)
 
憧「ゆっ!宥姉はどうしてここに?」
 
宥「えっとね、菫ちゃんに街を案内してるの」
 
憧「街を案内?」
 
宥「うん、それで憧ちゃん家の神社も寄ってみたの」


18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 20:18:19.13 ID:9rkA5XTJ0

憧「ふうん、そうなんだ。でもうちに来ても何も無いよ?」
 
宥「え、えっと……本当に寄っただけだから」
 
憧「でもせっかく来て貰ってなんだし……そうだ」
 
憧「おみくじでも引いて行ってみる?」
 
穏乃「おみくじ!?」
 
憧「あんたが反応してどうすんのよ」
 
宥「おみくじ……面白そう」
 
憧「やる?お代はちゃんと頂くけど」
 
宥「うん、菫ちゃんもやるよね?」
 
菫「あ、ああ……」


………
……


20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 20:23:32.75 ID:9rkA5XTJ0

宥「えっと……11番です」
 

「はい、じゃあこれね」

 
菫「私は……37番」

 
「37番……はい、これね」

 
宥「ありがとうございます」
 
宥「えっと……わわ、大凶……」
 
菫「……大凶」
 
憧「うわ……二人して大凶って」

菫「……おい、この神社……凶ばっかり置いてあるんじゃないだろうな?」
 
憧「そんなわけないでしょ、おみくじの大凶って相当少ない方よ」
 
憧「ふたりとも同じの引いたんだから、むしろレアよ」
 
宥「そうなのかな?」
 
菫「いや、さすがにそれはどうなんだ……」


22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 20:28:47.05 ID:9rkA5XTJ0

穏乃「何て書いてあったんですかー?」
 
宥「えっと……恋愛、別れの気配……病気、危機迫る……注意されたし」

菫「……恋愛、別れの気配……失物、二度と戻らず」

菫「……おい」
 
憧「あ、あたしは知らないわよ!」
 
憧「よっぽど運が悪かったんじゃないの!」
 
宥「た、たまたまだよっ菫ちゃん」
 
菫「はぁ……まぁおみくじなんてこんなものだろうさ」
 
菫「さっさと結んでしまおう」
 
宥「うん」
 
穏乃「憧ー!私もおみくじ引きたーい!」
 
憧「あーはいはい」


23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 20:33:12.93 ID:9rkA5XTJ0

菫「……よしっと」
 
菫「宥の方も終わったか?」
 
宥「……」
 
菫「……宥?」
 
宥「えっ?」
 
菫「いや……ボーッとしてどうしたんだ?」
 
宥「う、ううん、なんでもないよ」
 
菫「……?」
 
宥「……それじゃあ、次の場所行こう?」
 
菫「あ、ああ……」


26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 20:38:31.84 ID:9rkA5XTJ0

………
……

 
 
菫「……」
 
宥「……はぁっ……はぁっ」
 
菫「……宥?」

宥「っ……えっ?な、なに?」
 
菫「い、いや……本当に大丈夫か?さっきよりも顔が赤くなってるし……」
 
宥「……う、うん……大丈……夫…………」フラッ
 
菫「宥っ!」


28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 20:44:01.40 ID:9rkA5XTJ0

菫(なんだ……!?宥の身体がすごい熱い……!)
 
菫(熱とか風邪とかそういうレベルじゃないぞ!?)
 
菫(どうする、とにかくまずは119…………なッ!?)

菫(アンテナが1本も立たないだと!?)
 
菫(くそっ!こんな時に限って電波が……!)

菫(一旦神社の方に戻って……いや、距離がありすぎる!)

菫(近くの民家まで……無理だ、宥をここには置いていけない)
 
菫(どうすればいいんだ……!!)


31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 20:49:07.17 ID:9rkA5XTJ0

ゴォォ...
 
 
望「ごめんねー付き合わせちゃって」
 
晴絵「別にいいわよ、私も暇だったし」
 
望「そう言ってもらえると助かるよ」
 
望「……ん?誰か倒れてる」キィイ
 
晴絵「え?……あれは、宥!?」ガチャ
 
晴絵「宥!!ちょっと、どうしたの!!」
 
菫「すみません!この子、すごい熱みたいで倒れちゃって!」
 
晴絵「あなた白糸台の……いや、今はそれどころじゃないわ」
 
晴絵「とにかく車に乗せて!病院に行くわよ!」
 
菫「っ……はい!」
 
晴絵「望!」
 
望「わかってるわ、急いで病院に向かうよ!」


34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 20:55:58.25 ID:9rkA5XTJ0

キィイ...
 
 
晴絵「すみません、急患です!」

 
「はい!?……松実さん!?」

 
「これはっ……まずいわね!すぐに運んで頂戴!」

 
「はい!」

 
菫「ゆ、宥……!」
 
晴絵「あなたはここにいなさい」
 
晴絵「私は玄の家に電話するから、望は急いで迎えに行ってきて!」
 
望「わかったわ」


38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 21:01:18.75 ID:9rkA5XTJ0

………
……



憧「……はぁっ……はぁっ!ハルエ!宥姉は!?」
 
晴絵「憧!?みんなまで!」
 
玄「それで……お姉ちゃんは」
 
晴絵「……今は集中治療室よ」
 
晴絵「それより玄、お父さんはどうしたの」
 
玄「お父さんは……今出張で出かけてて、他のみんなも手が放せないほど忙しくて……」
 
晴絵「娘が倒れたのよ!?あなたのお父さんはなにやってるの!!」

望「晴絵、落ち着きなさい」
 
晴絵「……っ!くそっ」


39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 21:07:25.91 ID:9rkA5XTJ0

灼「でも宥さん、さっき来た時は元気そうだったのに……」
 
穏乃「灼さんの所にも行ったんですか?」
 
晴絵「どういうこと?」
 
灼「さっき宥さんが恋人とボウリングしに来てた」
 
穏乃「私は憧の家にいて……そこに宥さんとその人が……」
 
菫「……」

玄(っ……この人……!)
 
晴絵「……あなた、弘世菫ね」
 
菫「……そうだが」
 
晴絵「ずっと宥と一緒にいたみたいだけど」
 
菫「……ああ、ずっと一緒にいた」

晴絵「宥が倒れてた時も一緒にいたのよね?」
 
菫「……」
 
菫「……」コクッ


42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 21:12:02.33 ID:9rkA5XTJ0

晴絵「その時の状況を詳しく教えてもらえる?」
 
菫「……」
 
菫「……わからないんだ、最初はあんなに元気だったのに」
 
菫「神社から移動中、急に倒れたんだ……」

晴絵「急に倒れた?」
 
菫「ああ……」
 
晴絵「……他に変わった事はなかった?」
 
菫「……」
 
菫「そういえば……顔が赤かったような」
 
玄「……!」
 
晴絵「顔?」

菫「あ、ああ……ボウリング終わった後、少し顔が赤かったんだ」
 
菫「本人はボウリングで疲れたと言っていたが……」
 
菫「神社から移動する時には、ボーッとしていて……顔も更に赤かった」
 
晴絵「それであの子、あんなに熱かったのね……」


44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 21:17:59.52 ID:9rkA5XTJ0

ガチャッ
 

「「!?」」


菫「ゆ、宥!?」

憧「宥姉!?」
 
晴絵「先生!宥の状態は!?」
 
 
「……率直に申し上げますと、我々の手には負えません」
 
「覚悟を……しておいてください」
 
 
穏乃「覚悟って……」

灼「つまり……もう長くないってこと」
 
憧「嘘……そんな……」
 
菫「っ……!!」ガシッ
 
菫「おい貴様!医者だろう!!なんとかならないのか!」
 
晴絵「お、おい!」


51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 21:22:59.53 ID:9rkA5XTJ0

「……なんとかなるものなら、なんとかしてあげたいものですが」
 
 
菫「なんとかするのがあんたらの仕事だろうが……!!」
 
憧「ちょっと!やめなってば!」
 
 
「……失礼します」
 
 
菫「そんな……嘘だろ……」
 
穏乃「宥さんは……このまま助からないの?」
 
灼「……」
 
晴絵「くそっ……!私達にはどうする事もできないのか!」
 
 
 
――無理だよ――
 
 

菫「……っ!?」


53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 21:26:31.86 ID:9rkA5XTJ0

憧「玄!?」
 
灼「どういうこと?」
 
玄「お姉ちゃんはもう助からないよ」
 
晴絵「……おい玄、どういうことだ」
 
玄「そのまんまの意味だよ」
 
玄「お姉ちゃんは助からない、もうすぐ死ぬ」

菫「……っ!!」
 
晴絵「……玄!!」


55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 21:29:02.30 ID:9rkA5XTJ0

玄「だってこれは”呪い”だから」
 
穏乃「のろ……い?」
 
憧「玄……何言ってるの?」
 
晴絵「”呪い”だと?そんなオカルト誰が信じるって言うんだ?」
 
玄「みんな不思議に思わなかったのかな、お姉ちゃんって異様に寒がりだよね」
 
玄「おかしいよね、普通夏場に長袖着てマフラーまでしないもん」
 
灼「それは……そういう体質の人も中にはいると思う」
 
玄「ありえない、ううん、ありえないよ」
 
玄「いくらそういう体質の人がいたとしても、限度があるよ」
 
玄「でもお姉ちゃんは特別、”呪い”を背負った人だから」
 
菫「お前……宥の何を知っている?」


57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 21:32:14.88 ID:9rkA5XTJ0

玄「知っているのは貴方の方なんじゃないかな」
 
菫「何?」
 
玄「弘世さん……だったよね、小さい頃に山で遭難した事ない?」(※当SSでの設定です)
 
菫「な……何故それを知っている」
 
菫「確かに私は、小さい頃に山で遭難し助けられた事がある」
 
菫「しかし、それが今回の件と何か関係があるのか?」
 
玄「……その時一緒に遭難したのは、弘世さん一人じゃないよね」
 
菫「……ッ……まさか、おまえ……」
 
玄「ううん、私じゃないよ」
 

 
――その時遭難したのは、弘世さんともう一人……私のお姉ちゃん――



58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 21:35:18.26 ID:9rkA5XTJ0

菫「まさか……あの時の子が宥だって言うのか?」
 
菫「冗談はよしてくれ……だとしたらある意味すごい再会だな」
 
玄「冗談じゃないよ、と言っても私もつい最近知ったんだけどね」
 
玄「遭難した時、お姉ちゃんは弘世さんを助けるために”呪い”を負ったの」
 
菫「”呪い”を負った……?馬鹿な、何を言っている」
 
菫「大体、”呪い”なんて……―――」
 
 
――『早く逃げて』――
 
 
菫「……ッ」
 
玄「……思い出した?」


60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 21:38:02.12 ID:9rkA5XTJ0

菫「嘘……だろ……だって、あれは……」

玄「そう……弘世さんとお姉ちゃんが遭難した時、お姉ちゃんは”傷”を負った」
 
玄「野犬から弘世さんを守る為に……」
 
菫「あ、あれは……でも野犬に噛まれただけだろう……」
 
菫「私達もすぐに発見されて、その子はすぐに病院へ連れていかれたはずだ」
 
玄「うん、治療も成功し命に別状はなかったよ」
 
玄「……ある病気を残して」

晴絵「病気……まさか」
 
菫「……それが、あの異様な寒がりなのか?」
 
玄「……」


62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 21:41:18.32 ID:9rkA5XTJ0

玄「それ以降、お姉ちゃんは寒がりになったの」
 
玄「誰もが目を疑うくらいの厚着をして、男の子たちには虐められて」
 
玄「時には今回のように発作を起こして、病院に運ばれて……」
 
菫「……”呪い”」
 
玄「……」
 
 
ガチャ
 
 
「松実さんが目を覚ましました!!」
 
 
「「!?」」

 
菫「ゆ、宥!!」


63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 21:43:15.05 ID:9rkA5XTJ0

宥「……あ……れ、菫ちゃん……?」
 
菫「宥……!」

晴絵「宥!私が分かるか!?」
 
宥「……?赤土さん?それにみんな……」
 
憧「宥姉……よかったぁ」

灼「うん……」
 
玄「お姉ちゃん……」
 
宥「玄ちゃん……」


65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 21:46:00.09 ID:9rkA5XTJ0

 
「失礼、親族の方は………」
 

玄「私です」
 

「親御さんは?」
 
 
玄「すぐには来られない状態なので……まだ」

晴絵「あの、私はこの子の部活の顧問です、私では」
 
 
「……わかりました、ではこちらに」
 
 
菫「わ、私も……!」
 
晴絵「駄目よ弘世さん、いくら貴方が宥の恋人と言っても」
 
玄「いいの、赤土さん」
 
晴絵「玄?」
 
玄「……弘世さんも知っておかなくちゃいけない事だから」
 
晴絵「……はぁ……わかった」


66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 21:49:32.25 ID:9rkA5XTJ0

……


晴絵「見たこともないウイルス?」
 
 
「はい……このような事は初めてで……我々では対処できません」
 
 
晴絵「それなら……急いで専門の病院に見せた方が」
 
 
「……おそらく、その頃にはもう」
 
 
菫「そんな……」
 
 
「彼女がこうして目を覚ましたこと自体が奇跡なんです」
 
「彼女は精々持って……あと数日。いえ、明日かもしれない」
 
 
菫「……どうしようも出来ないのか!」
 
 
「……残念ながら」
 
 
菫「……っ――」


67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 21:52:04.17 ID:9rkA5XTJ0

………
……

 
 
灼「……あ、ハルちゃん!」
 
憧「晴絵!玄!」
 
穏乃「宥さんは……!」
 
晴絵「……」フルフル
 
晴絵「精々持って数日……ヘタすりゃ明日かもしれないとさ……」
 
灼「そんな……」

憧「嘘……」
 
穏乃「……どうにか出来ないんですか?」

晴絵「……悔しい気持ちは私も一緒だ」
 
灼「……玄はそれでいいの?」
 
玄「……私達にはどうする事もできないよ」
 
玄(だからせめて……最期はお姉ちゃんの好きにさせてあげたい)


70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 21:55:16.71 ID:9rkA5XTJ0

………
……

 
 
菫「……」
 
宥「……そう」
 
宥「私……もうすぐ死んじゃうんだね」
 
菫「……っ、まだ決まったわけじゃない」
 
菫「医者の言う事が全て正しいと決まったわけじゃない!」 

菫「きっと、また奇跡だって!」
 
宥「……ありがとう、菫ちゃん」
 
菫「……ゆ……う……?」
 
宥「……いつか、こんな日が来るんじゃないかって思ってた」


71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 21:58:20.71 ID:9rkA5XTJ0

菫「……私の……」
 
菫「私のせいなのか……?」
 
菫「私があの時、宥に助けられたから……」
 
宥「……ううん、違うよ」
 
宥「菫ちゃんを助けたのは、私の意思だから」
 
宥「菫ちゃんのせいじゃないよ」
 
菫「でも!!」 

菫「宥はそれでいいのか!?」
 
菫「もうすぐ死ぬかもしれないんだぞ!?」
 
宥「……」
 
宥「ねえ菫ちゃん、夜にまたここへ来てくれる?」
 
菫「えっ……」


74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 22:01:00.99 ID:9rkA5XTJ0

宥「……それも、夜遅い時間に看護師さんには見つからないように」
 
菫「夜遅く……どうして?」
 
宥「それから…………」ヒソヒソ
 
菫「……」

菫「宥、一体何を」

宥「おねがい」
 
菫「……っ」
 
菫「……わかった」
 
宥「……それじゃあ私、少し眠るから」
 
菫「ああ、また後で……な、必ずだぞ」
 
宥「……うん」
 
 
………
……


77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 22:04:19.29 ID:9rkA5XTJ0


……
………


『きゃあっ!な、なに!』
 
『犬……!っ……!あぶない!』

『き、きみ!!何してるの!!』
 
『早く逃げて!―――あああっ!!』
 
『……う……うああああああ!!』
 
『な……!?こ、この犬っ!!!』
 
『アア…‥ああああっ!!痛いっ……痛いよ!!』
 
『このっ!!あっちいけ!!』
 
『はぁっ……はぁっ……はぁっ……』
 
『やっと行った…………っ!?きみ!大丈夫!?』
 
『は……はっ……だ、大丈夫だよ……っ?った……』

『血がこんなに……!誰か!!早くたすけて!!!』
 
『助けて――――』


78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 22:07:13.52 ID:9rkA5XTJ0

宥「……」
 
宥「……夢……」
 
宥「……懐かしい夢」
 
宥「思えば……あの時に菫ちゃんと会ってたんだね」
 
宥「なんだか……運命みたい」
 
カラカラ...
 
宥「……菫ちゃん?」
 
菫「……ああ」
 
宥「来てくれたんだね」
 
菫「……当たり前だろ」
 
宥「うん、じゃあ……行こうか……」ヨッ
 
菫「宥!?立っちゃ駄目だ、寝てないと!」
 
宥「いいの、行かせて」
 
菫「行くって……どこに……」

宥「……着いてきて」


81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 22:10:51.92 ID:9rkA5XTJ0

ザァァア...
 
 
菫「……ここは、川?」
 
宥「うん……最期に菫ちゃんと二人で見たかったから」
 
菫「……最期なんて言わないでくれ」
 
菫「私はこれからもずっと宥と一緒にいるつもりだ」
 
菫「だから……」
 
宥「……」
 
宥「ごめんね」
 
菫「宥……っ!」

宥「……」
 
宥「……ねえ菫ちゃん……私の最期のお願い聞いてくれる?」
 
 
 
――私を殺して……?――



82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 22:13:13.42 ID:9rkA5XTJ0

菫「宥……?な、なにを言っているんだ……」
 
菫「そんなこと……っ、そんなことできる訳ないだろう!!」
 
宥「……おねがい」
 
菫「……まさかその為に、私に”コレ”を持ってこさせたのか?」
 
宥「……」
 
宥「どうせ死ぬのなら……せめて菫ちゃんの手で……」
 
菫「……」
 
菫「……どうして、どうしてなんだ!」
 
菫「どうして愛する人を、殺さねばならんのだ!!」
 
菫「こんなにも好きで好きで堪らない恋人を、私に殺せだと?おかしいだろう!!」
 
宥「……」
 
宥「ごめんね」
 
菫「……っ……」
 
菫「……私が聞きたいのは、そんな言葉じゃない……」

宥「……」


85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 22:18:11.33 ID:9rkA5XTJ0

宥「……菫ちゃん」
 
宥「私、菫ちゃんと出会えて良かったよ」
 
菫「……」
 
宥「短い間だったけど、菫ちゃんと色んな事が出来て楽しかったよ」
 
菫「やめてくれ……」
 
宥「ううん、菫ちゃんだけじゃない。皆とも出会えて、とても楽しかった」
 
菫「やめてくれ」
 
宥「私、最高に楽しい人生だったよ」
 
菫「やめてくれ!!!」
 
宥「……」


87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 22:22:04.98 ID:9rkA5XTJ0

菫「無理だよ……私に宥を殺める事なんて出来ない!」
 
菫「どうして……どうしてなんだ!!」
 
宥「……」
 
宥「……私はもう、明日まで生きられない」
 
宥「だから、最期は菫ちゃんの手で……私を」
 
菫「……そんなこと……っ」

宥「菫ちゃんは、私に深い”呪い”を負わせた」
 
宥「だから……今度は私が菫ちゃんに”呪い”を負わせる番」


88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 22:27:53.10 ID:9rkA5XTJ0

菫「……っ」

菫「……卑怯だよ、宥」

宥「……ごめんね」

宥「だから、おねがい……」
 
菫「……」
 
宥「……菫ちゃん」
 
菫「……っ」

 
カチャ... ギギギ...
 
 
宥「菫ちゃん……」
 
菫「……っ!!」
 
 


――愛してる――



 


92: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 22:32:51.61 ID:9rkA5XTJ0

―――………タァン―――
 
 

宥「っ……グァはぁっ!」ドサッ
 
菫「ゆ、宥!!」
 
宥「す……すみれちゃ……」
 
菫「宥!宥!!」
 
宥「あり……がと……う」
 
菫「っ!!」
 
宥「すみ……れちゃ……ん」
 
宥「きす……して……っ……?」
 
菫「っ宥……!」
 
 
 
―――んッ
 
 
 


95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 22:36:06.11 ID:9rkA5XTJ0

宥「っ……大好……き……」
 
菫「宥っ……?」
 
宥「……」
 
菫「……お、おい……宥?」
 
宥「……」

菫「……」
 
菫「……っ……――――!!!」 
 


『うっあああああ……――――っ!!!』


 


97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 22:39:18.70 ID:9rkA5XTJ0

………
……

 

菫「……」
 
菫「……これが……私の”呪い”なのか……宥」

菫「この”呪い”はあまりにも辛すぎるよ……」

菫「……宥を失った私に、生きる理由はもう無い」
 
菫「……宥……」
 
菫「私も今……そっちへ行くよ」



カチャ... ギギギ...


 


98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 22:42:29.10 ID:9rkA5XTJ0

――あの日二人出会わなければ――

――殺し合う事もなかったけれど――


――こんなにも深く誰かを愛することを――

――知らずに生きたでしょう――



菫「宥……」

菫「大好き……だよ――」
 
 

――――タァン……




――愛する人を失った世界には どんな色の花が咲くのだろう――




カン


99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 22:44:11.92 ID:9rkA5XTJ0

――物語は続く――
 
――幾度と無く開かれる 楽園への扉――
 
――第四の地平線――



elysioncap.png


105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 22:48:12.26 ID:9rkA5XTJ0

という訳で、SoundHorizonより”恋人に射ち堕とされた日”を元ネタに書かせていただきました
作中での”呪い”や”傷”は、


宥の傷=野犬に噛まれた時、傷は癒える。
宥の呪い=傷によって出来た寒がり症、それによって長く生きられないこと。
菫の呪い=恋人を失い、殺めた罪という呪い。

という解釈をして頂ければ……




101: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 22:44:43.27 ID:Tu31obok0

同時に終わった!乙!


103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 22:44:47.93 ID:0LLdhs8c0

乙ッス。
まさかこんな結末になるとは……。


108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/11/02(金) 22:49:45.36 ID:bVtP/cjvO

キャップの次は尭深「yield」でお願い


この記事へのコメント

- 名無しさん - 2012年11月03日 00:13:18

澪音の世界で書けるものなら書いてみろ

- 名無しさん - 2012年11月03日 01:24:10

なんで普通の女子高生がそんなものを・・・

- 名無しさん - 2012年11月03日 14:49:28

永遠の少年で書けるものなら書いてみろ

- 名無しさん - 2012年11月04日 22:22:31

もし臨海のネリーが運命奏者の設定を引き継ぐなら、黒の予言書周りに使えそうだけど...

- 名無しさん - 2012年11月05日 09:31:37

サンホラ系SSとは珍しい

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