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京子「私達なりの別れ」
引用元: ・http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1342606633/
・・・・・・・・・・
「私達……別れようか」
背筋が凍りついた。
だって、突然のことだったから。
今日、私達は映画見に行ったり、買い物をしたり、
はたから見れば仲のいい女の子同士が遊んでいる、ように見えるけど
確かに、私と結衣はデートをしていた。
なのに――
「別れよう?やっぱりさ、ダメなんだよ……女の子同士で付き合うなんて」
結衣は真剣な表情で、優しく、それでいて切なさを含めた声色でそう言った。
「え?結衣から告白してきたじゃん、勝手すぎるよ」とは言えずに、
「そ、そうだね……分かった」
としか言えなかった。
結衣のことは大好きだ。
でも、この表情をした結衣は多分何を言っても折れないから。
そこで私が「嫌だ」と駄々をこねても、何の解決にもならない。
むしろ、幼馴染という関係には戻れなくなる。
「じゃあ、明日から……幼馴染の関係に戻ろっか」
「うん……」
沈黙が訪れる。
いつもなら、こんな沈黙も心地いいものだったけど、
今の沈黙はただ切なさが募るだけ。
でも、お互い何も言わない。
そろそろ、帰ろうかなと思っていたところ――
「勝手だと思うけど、ごめんな……元に戻るのは明日からだから」ギュ
結衣に抱きしめられた。
「京子、これは私の最後の我が儘だから……許してくれ」
そう言って、結衣は私にキスをし、そのまま振り返らず去っていった。
私のファーストキスは、涙の味だった。
結衣と私が付き合い始めたのは、高校2年生の林間学校の時。
高校生にもなって、林間学校があるとは思わなかった。
けど、案外この林間学校は生徒から人気があった。
「林間マジック」
というものが、この学校では代々伝わっていたからだ。
林間マジック、と言っても本当にマジック……手品を発表することではない。
ましてや、マジックペンのことでもない。
林間マジックというものは、簡潔に言うと、
林間学校中に告白すると成功する、という言い伝えだ。
なぜ、マジックかは分からないけど、その林間マジックで私と結衣は付き合うことになった。
付き合い始めは、お互い顔を見合わせると照れてしまって逸してしまうし、
周りからは喧嘩したのではないか、と心配されたりもした。
でも、恋人という関係になれてからは
幼馴染の時よりもスキンシップをとったし、手つないだりもして、なかなか充実していた。
高校3年生になってからは、受験ということもあり、
あまりデートしなくなったが、その分一緒に勉強をした。
そんな風にすごして、付き合ってから半年がたった。
半年のうちに、結衣とはいろんなことをした。
でも、キスだけはしなかった。
私が拒んだからだ。
以前に、結衣の顔が近づいてきた時に
私は咄嗟に結衣を突き飛ばしてしまった。
結衣を拒んだわけではない。
本当に、驚いただけだった。
正直に、突き飛ばしてしまった理由を言った時、
結衣は、
「驚かせてごめんね、次やった時優しくするから驚かないでね?」
と、悲しげに笑ってそう言った。
次はやってこなかった。
私からやってあげれば良かったんだけど、
私と同じような反応されたら、と思うと怖くてできなかった。
多分、結衣もそう思ってやってこなかったんだと思う。
そして、結衣との最初で最後のキスをした。
胸があつくなって、苦しくて、その場にしゃがみこんで静かに泣いた。
・・・・・・・・・・
翌日
「おはよう、京子」
「お、おはよう……」
朝、京子の家に迎えに行った。
幼馴染として。
多分、ちゃんと挨拶出来てたと思う。
だけど、京子は昨日のこと引きずっていたのかな……。
目の下にクマができていた。
ごめんな……。
「あ、結衣ちゃん、京子ちゃんおはよう」
「おはようございます!」
あかりとちなつちゃんとも合流した。
あかりもちなつちゃんも、私と京子がいる高校へ入学した。
他にも、生徒会メンバーや千鶴さんも同じ高校だ。
「あれ?京子ちゃん、元気なさそうだけど……どうかしたの?」
あかりは周りの様子をしっかり見てるから、こういうことにもよく気がつく。
「あ、うん……ちょっとね、寝不足ってとこかな」
「そっかぁ、ちゃんと睡眠をとらなきゃだよ?」
やっぱり、京子は私のせいで寝れなかったのか……。
私が、京子に別れを告げた理由、それは――
~~~~~
デート前日
「結衣、そこに座りなさい」
突然、父がそんなことを言った。
「嘘であって欲しいが、お前、歳納さんとこの娘さんと付き合っているのか?」
頭の中が真っ白になった。
「どうなの?……結衣?」
隣で母も心配そうに訊いてきた。
「…………」
「否定はしないんだな?」
「…………」
私は何も答えられなかった。
どう答えたら良いかわからなかったからだ。
「単刀直入に言う、別れなさい、同性と付き合うなんて世の恥さらしだ」
父は言った。そして、こう続けた。
「船見の名を汚すんじゃない、お前はこの家のたった1人の娘なんだぞ、
自覚をもちなさい」
父の言う言葉はもっともだった。
確かに、同性間で付き合うことは普通ではない。
でも、それを知っていてもなお、私は京子に告白したのだ。
京子が好きだから。
なのに、大げさかもしれないが、その勇気や頑張りを
全否定されるのは許せなかった。
「嫌です、別れません」
「…今なら、まだ間に合うのよ?」
間に合っていたのなら、私は京子と付き合っていない。
間に合わなかったから、京子に告白した。
絶対口に出して言えないけど、私にとって歳納京子は大きい存在なのだ。
だから――
「とにかく、私は京子と別れるつもりはないので」
パチンッ
「っ!」
初めて父に殴られた。
「頭を冷やしないさい」スタスタ
と言って、私を押入れに閉じ込めて去っていった。
大人は自分勝手だ。都合の悪いことがあるとすぐに手をだす。
そんな人になりたくないと思った。
そして、数時間後
「結衣?ご飯持ってきたわよ」
母がご飯を持ってきてくれたようだ。
だけど、今はそんな気分ではない。
「あのね、結衣……」
また説教か、と思ってため息をついた。
「京子ちゃんとのことなんだけどね、結衣は京子ちゃんのこと本当に好き?」
当たり前だ。私は頷いた。
「だったら、京子ちゃんのこともちゃんと考えて欲しいの」
ちゃんと、考えた結果だって。
京子も私のことが好きだ。
だから、別れない。
「結衣、今日お父さんに言われたこと……すごい悲しかったでしょ?
辛かったでしょ?いつかは、京子ちゃんにもこういうことが起きると思うわ
京子ちゃんも1人っ子よね……だったら尚更」
何が言いたいの?
「酷な話だと思うけど、親から反対される――全てを否定される――悲しみより、
恋人から別れを告げられる悲しみの方がまだ軽いと思うの」
「…………」
「私が言うのもなんだけど……結衣はもう、親から反対される悲しみを知ったでしょ?
それを京子ちゃんにも――」
「もういいっ!」
聞きたくない。聞きたくなかった。
母の話はもっともだ。
結局、私が選んだ道は同時に京子にも悲しみを背負わせる道で、
かと言って、別れるという道も京子に悲しみを与えてしまう。
でも……。
……私は、自分の無力さを思い知った。
そして、私は――
「……分かった、京子と別れます」
~~~~~
自分では、京子の悲しみを共に背負って
京子と幸せに過ごせる自信がなかったから。
いや、悲しみを知った時点で、本当の幸せにはなれないと思う。
そんなこと言ってしまうと、
私が京子に告白した時……京子のことが好きになった時から
私は間違った道を歩んでしまったことになるのかな?
でも、もう終わった恋だ。
京子のことは多分、ずっと好きでいると思うけど、
これからは、幼馴染として過ごさなきゃならない。
もう、戻れないから。
「先輩方、また放課後です!」
「またあとでね~」
そんなこと思っているうちに、もう学校についていたのか。
そういえば、去年から、私達は娯楽部として放課後を過ごしている。
それも、生徒会……綾乃や千歳のおかげだ。
まぁ、正式な部活ではないんだけど。
・・・・・・・・・・
放課後
「歳納さん~、ちょっと時間ええ?」
結衣と、部活に行こうと思って教室を出たところ、
千歳に話しかけられた。まぁ、話の内容はなんとなく……。
「お、おう」
「じゃあ、さきに部活行ってるぞ?」
結衣はそう言って部室に向かった。
「で、話は?」
「ずばり言うで?船見さんと何かあったん?」
おぉ……。さすが千歳。もう、気づいたのか。
「別れたよ」
「やっぱり……、にしてもさっぱりしてるな~……歳納さんからなん?」
さっぱりしてるのか?そんなことない。
そう見えるのなら、私は自分を褒めるよ。
「いや、結衣から」
「えっ……ちょっと驚いたわ~、まさか船見さんが……」
「うん、私も驚いたよ
でも、しょうがないことだし」
そう、しょうがないことなのだ。
私は、結衣の別れを受け入れたのだから。
「しょうがないことって言ったけど、歳納さんはそれでええの?」
「……うん」
「本当に?」
「…………い、いいわけないよ」
いいわけないじゃん!
まだ、結衣から別れの理由すら聞いてないんだよ?
「だったら、ちゃんと話し合わなきゃいけへんな?」
千歳はそう言って微笑んだ。
今、千歳と話してて気づいたけど、
理由きいてないじゃん!!
別れがあまりにも急すぎて、忘れてた……。
帰り道
私は、部活へ行かず結衣たちが帰るのを待った。
1人で頭の整理をしたかったから。
また、別れることには変わりないと思うけど、
せめて理由が聞きたかったから。
そして、今私と結衣の2人きり。
「結衣、ちょっと公園よらない?」
「いいけど……」
話すなら、公園でゆっくり話し合いたい。
「ちょっと、話し合おうよ」
「何について?」
「私たちについて、かな」
「もう、話すことはないと思うんだけど……」
私は、息を吐いた。
そして、大きく息を吸った。
「理由!」
「は?」
「理由が知りたいの!結衣が別れを告げた理由」
「…………」
結衣は、黙ってしまった。
言いにくいこと、なのかな……。
でも、絶対聞き出してやる!
「…………」
「結衣~?早く教えてくれないと……、
結衣の恥ずかしいこと皆に暴露するよ?」
結衣がずっと黙っていたもんだから、脅してみた。
「……っ//」
あ、恥ずかしがった。
「お願い、教えて?納得ができないんだ」
「……それは――――」
結衣の告白が続いた。
主な理由は、親に反対されたから。
親としては、そうなるだろうな~と1人納得する。
でも――
「結衣、ぶっちゃけて言っちゃうね?
私の親、結衣と付き合ってること知ってたよ?」
「えぇぇぇええええ?!」
あ、驚いた。まぁ、そうだよね。うん。
結衣と付き合い始めてから、数週間のうちに
親にバレた。と言うのも、私が、口を滑らしたからだけど。
~~~~~
「~~~~♪」
「あら、京子機嫌がいいじゃないの、何かいいことでもあったの?」
「うん!結衣がね~、デートに誘ってくれたからっ!…………あ」
「デート?!」
「あ、いや……」
うっかり言ってしまった。
「え?!結衣ちゃんと付き合ってるの?女の子同士で?!」
ヤバい。……まずは、否定しなきゃ。
「……ち、ちが」
「否定しなくてもいいのよ?お母さんは、応援するからね?!」
呆気にとられた。
まさか、応援されるとは……。
「じゃあ、今日はお赤飯ね!お父さんにも言っとくけど、多分大丈夫よ
恋に性別なんて関係ないものっ、確かに日本では認められてないけど、
同性愛が認められている国もあるのよ?」
「あ……はい」
「だからね、今のうちにそういう恋を経験しときなさい、
さっき言ったことと矛盾しちゃうけど、
結婚とかの話になっちゃうと、さすがに許せないかな
でも、ほら、どうせ高校で付き合った子が結婚まで続くことは稀だし、ないとは思うんだけど」
お母さん、言ってることむちゃくちゃですが。
「とにかく、今は今!未来は未来!
女の子との恋愛は珍しいのよ?!いつか、別れると思うけど
その時まで、精一杯恋しなさい!」
……びっくりしたぁ。
お母さん、さっぱりしすぎ!
というか、絶対好奇心とかでしょ!
はぁ、素直に喜べばいいのかわかんないよ。
でも、結衣には言わないほうがいいかな……。
~~~~~
「って、ことがあったから」
「ま、マジですか」
結衣は、案の定呆然としている。
まぁ、この話を聞いたからね……。
一般世間ではあり得ない会話だと思う。
「でも、良かった、ちゃんと理由がきけて……うん、
これで、心おきなく幼馴染に戻れるよ」
「そっか……、私達これでよかったのかな」
「分かんないけど、私はよかったと思うよ」
うん。こんな清々しい別れは、これから先経験することないだろうから。
別れを告げられた時は、悲しみで一杯だったけど、
なんか、吹っ切れた。一日で吹っ切れるのはどうかと思うが、
女の子同士だからこそ、別れても……今度は、友達からやり直せる。
結衣と付き合えて本当によかった。
「結衣、ありがとうね」
・・・・・・・・・・
京子の話を聞いた。驚いた。まさか、親公認だったとは……。
このこと、私の親には言わないほうがいいよな。
母が言ってたこと実際ハズれてたし……。
また、ややこしくなりそうだし。
……京子の話を聞いたとき、私は少し期待してしまった。
京子が、恋人であることを望むのを。
でも、京子は別れを選んだ。
案外、未練が残ってるのは私の方だったりして。
けど、確かにこれは恋だった。
私は自分の無力さを呪って、別れを選んだんだけど
むしろ、この選択で良かったと思う。
まぁ、親に感謝する気はないけど……癪だし。
何か、親に説教され殴られ1人悲しんで……
すごい遠回りしたけど――
「京子、ありがとう」
・・・・・・・・・・
後日
あれから、私達は幼馴染として過ごしている。
もう、ギクシャクするようなこともないし、
むしろ……恋人だった頃よりは、心も体も楽かな~なんて思い始めた。
でも、それもちゃんとした思い出で、
いつか大人になった時に、結衣と一緒に懐かしみたいな。
これからも、そんな日々を送っていたい。
「おい、京子何ぼーっとしてんだ?ほら、早く勉強しろよ」
むー、せっかく人がいい感じにまとめてるのにさー。
「はいはい、今からやりますよーだ」
そんな感じで今は、受験勉強頑張ってます。
結衣と同じ大学にいくために!
おわり
以上です。
ぶっちゃけ、「ファーストキスは涙の味だった」
っていう言葉が使いたかっただけです(笑)
たまには、こういう結衣と京子もいいと思ったんですが……難しいですね。
読んでくださった方ありがとうございます!
1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 19:17:13.99 ID:NVIbFSFM0
・・・・・・・・・・
「私達……別れようか」
背筋が凍りついた。
だって、突然のことだったから。
今日、私達は映画見に行ったり、買い物をしたり、
はたから見れば仲のいい女の子同士が遊んでいる、ように見えるけど
確かに、私と結衣はデートをしていた。
なのに――
2: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 19:19:51.24 ID:NVIbFSFM0
「別れよう?やっぱりさ、ダメなんだよ……女の子同士で付き合うなんて」
結衣は真剣な表情で、優しく、それでいて切なさを含めた声色でそう言った。
「え?結衣から告白してきたじゃん、勝手すぎるよ」とは言えずに、
「そ、そうだね……分かった」
3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 19:20:21.44 ID:NVIbFSFM0
としか言えなかった。
結衣のことは大好きだ。
でも、この表情をした結衣は多分何を言っても折れないから。
そこで私が「嫌だ」と駄々をこねても、何の解決にもならない。
むしろ、幼馴染という関係には戻れなくなる。
「じゃあ、明日から……幼馴染の関係に戻ろっか」
「うん……」
4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 19:23:47.81 ID:NVIbFSFM0
沈黙が訪れる。
いつもなら、こんな沈黙も心地いいものだったけど、
今の沈黙はただ切なさが募るだけ。
でも、お互い何も言わない。
そろそろ、帰ろうかなと思っていたところ――
「勝手だと思うけど、ごめんな……元に戻るのは明日からだから」ギュ
6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 19:25:50.98 ID:NVIbFSFM0
結衣に抱きしめられた。
「京子、これは私の最後の我が儘だから……許してくれ」
そう言って、結衣は私にキスをし、そのまま振り返らず去っていった。
私のファーストキスは、涙の味だった。
7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 19:28:02.95 ID:NVIbFSFM0
結衣と私が付き合い始めたのは、高校2年生の林間学校の時。
高校生にもなって、林間学校があるとは思わなかった。
けど、案外この林間学校は生徒から人気があった。
「林間マジック」
というものが、この学校では代々伝わっていたからだ。
林間マジック、と言っても本当にマジック……手品を発表することではない。
ましてや、マジックペンのことでもない。
林間マジックというものは、簡潔に言うと、
林間学校中に告白すると成功する、という言い伝えだ。
なぜ、マジックかは分からないけど、その林間マジックで私と結衣は付き合うことになった。
9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 19:30:22.45 ID:NVIbFSFM0
付き合い始めは、お互い顔を見合わせると照れてしまって逸してしまうし、
周りからは喧嘩したのではないか、と心配されたりもした。
でも、恋人という関係になれてからは
幼馴染の時よりもスキンシップをとったし、手つないだりもして、なかなか充実していた。
高校3年生になってからは、受験ということもあり、
あまりデートしなくなったが、その分一緒に勉強をした。
そんな風にすごして、付き合ってから半年がたった。
半年のうちに、結衣とはいろんなことをした。
でも、キスだけはしなかった。
私が拒んだからだ。
12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 19:32:53.32 ID:NVIbFSFM0
以前に、結衣の顔が近づいてきた時に
私は咄嗟に結衣を突き飛ばしてしまった。
結衣を拒んだわけではない。
本当に、驚いただけだった。
正直に、突き飛ばしてしまった理由を言った時、
結衣は、
「驚かせてごめんね、次やった時優しくするから驚かないでね?」
と、悲しげに笑ってそう言った。
14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 19:34:21.46 ID:NVIbFSFM0
次はやってこなかった。
私からやってあげれば良かったんだけど、
私と同じような反応されたら、と思うと怖くてできなかった。
多分、結衣もそう思ってやってこなかったんだと思う。
そして、結衣との最初で最後のキスをした。
胸があつくなって、苦しくて、その場にしゃがみこんで静かに泣いた。
15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 19:35:44.69 ID:NVIbFSFM0
・・・・・・・・・・
翌日
「おはよう、京子」
「お、おはよう……」
朝、京子の家に迎えに行った。
幼馴染として。
多分、ちゃんと挨拶出来てたと思う。
だけど、京子は昨日のこと引きずっていたのかな……。
目の下にクマができていた。
ごめんな……。
17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 19:36:54.80 ID:NVIbFSFM0
「あ、結衣ちゃん、京子ちゃんおはよう」
「おはようございます!」
あかりとちなつちゃんとも合流した。
あかりもちなつちゃんも、私と京子がいる高校へ入学した。
他にも、生徒会メンバーや千鶴さんも同じ高校だ。
「あれ?京子ちゃん、元気なさそうだけど……どうかしたの?」
あかりは周りの様子をしっかり見てるから、こういうことにもよく気がつく。
18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 19:38:26.36 ID:NVIbFSFM0
「あ、うん……ちょっとね、寝不足ってとこかな」
「そっかぁ、ちゃんと睡眠をとらなきゃだよ?」
やっぱり、京子は私のせいで寝れなかったのか……。
私が、京子に別れを告げた理由、それは――
19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 19:39:01.58 ID:NVIbFSFM0
~~~~~
デート前日
「結衣、そこに座りなさい」
突然、父がそんなことを言った。
「嘘であって欲しいが、お前、歳納さんとこの娘さんと付き合っているのか?」
頭の中が真っ白になった。
「どうなの?……結衣?」
隣で母も心配そうに訊いてきた。
21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 19:40:54.65 ID:NVIbFSFM0
「…………」
「否定はしないんだな?」
「…………」
私は何も答えられなかった。
どう答えたら良いかわからなかったからだ。
「単刀直入に言う、別れなさい、同性と付き合うなんて世の恥さらしだ」
父は言った。そして、こう続けた。
22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 19:41:49.29 ID:NVIbFSFM0
「船見の名を汚すんじゃない、お前はこの家のたった1人の娘なんだぞ、
自覚をもちなさい」
父の言う言葉はもっともだった。
確かに、同性間で付き合うことは普通ではない。
でも、それを知っていてもなお、私は京子に告白したのだ。
京子が好きだから。
なのに、大げさかもしれないが、その勇気や頑張りを
全否定されるのは許せなかった。
24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 19:42:44.95 ID:NVIbFSFM0
「嫌です、別れません」
「…今なら、まだ間に合うのよ?」
間に合っていたのなら、私は京子と付き合っていない。
間に合わなかったから、京子に告白した。
絶対口に出して言えないけど、私にとって歳納京子は大きい存在なのだ。
だから――
「とにかく、私は京子と別れるつもりはないので」
25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 19:45:32.68 ID:NVIbFSFM0
パチンッ
「っ!」
初めて父に殴られた。
「頭を冷やしないさい」スタスタ
と言って、私を押入れに閉じ込めて去っていった。
大人は自分勝手だ。都合の悪いことがあるとすぐに手をだす。
そんな人になりたくないと思った。
26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 19:47:12.28 ID:NVIbFSFM0
そして、数時間後
「結衣?ご飯持ってきたわよ」
母がご飯を持ってきてくれたようだ。
だけど、今はそんな気分ではない。
「あのね、結衣……」
また説教か、と思ってため息をついた。
27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 19:49:01.92 ID:NVIbFSFM0
「京子ちゃんとのことなんだけどね、結衣は京子ちゃんのこと本当に好き?」
当たり前だ。私は頷いた。
「だったら、京子ちゃんのこともちゃんと考えて欲しいの」
ちゃんと、考えた結果だって。
京子も私のことが好きだ。
だから、別れない。
28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 19:50:27.48 ID:NVIbFSFM0
「結衣、今日お父さんに言われたこと……すごい悲しかったでしょ?
辛かったでしょ?いつかは、京子ちゃんにもこういうことが起きると思うわ
京子ちゃんも1人っ子よね……だったら尚更」
何が言いたいの?
「酷な話だと思うけど、親から反対される――全てを否定される――悲しみより、
恋人から別れを告げられる悲しみの方がまだ軽いと思うの」
「…………」
「私が言うのもなんだけど……結衣はもう、親から反対される悲しみを知ったでしょ?
それを京子ちゃんにも――」
「もういいっ!」
29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 19:54:00.95 ID:NVIbFSFM0
聞きたくない。聞きたくなかった。
母の話はもっともだ。
結局、私が選んだ道は同時に京子にも悲しみを背負わせる道で、
かと言って、別れるという道も京子に悲しみを与えてしまう。
でも……。
……私は、自分の無力さを思い知った。
そして、私は――
30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 19:54:48.10 ID:NVIbFSFM0
「……分かった、京子と別れます」
~~~~~
31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 19:57:12.14 ID:NVIbFSFM0
自分では、京子の悲しみを共に背負って
京子と幸せに過ごせる自信がなかったから。
いや、悲しみを知った時点で、本当の幸せにはなれないと思う。
そんなこと言ってしまうと、
私が京子に告白した時……京子のことが好きになった時から
私は間違った道を歩んでしまったことになるのかな?
32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 19:57:48.05 ID:NVIbFSFM0
でも、もう終わった恋だ。
京子のことは多分、ずっと好きでいると思うけど、
これからは、幼馴染として過ごさなきゃならない。
もう、戻れないから。
33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 20:00:13.40 ID:NVIbFSFM0
「先輩方、また放課後です!」
「またあとでね~」
そんなこと思っているうちに、もう学校についていたのか。
そういえば、去年から、私達は娯楽部として放課後を過ごしている。
それも、生徒会……綾乃や千歳のおかげだ。
まぁ、正式な部活ではないんだけど。
35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 20:02:33.98 ID:NVIbFSFM0
・・・・・・・・・・
放課後
「歳納さん~、ちょっと時間ええ?」
結衣と、部活に行こうと思って教室を出たところ、
千歳に話しかけられた。まぁ、話の内容はなんとなく……。
「お、おう」
「じゃあ、さきに部活行ってるぞ?」
結衣はそう言って部室に向かった。
36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 20:04:11.68 ID:NVIbFSFM0
「で、話は?」
「ずばり言うで?船見さんと何かあったん?」
おぉ……。さすが千歳。もう、気づいたのか。
「別れたよ」
「やっぱり……、にしてもさっぱりしてるな~……歳納さんからなん?」
さっぱりしてるのか?そんなことない。
そう見えるのなら、私は自分を褒めるよ。
37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 20:07:04.27 ID:NVIbFSFM0
「いや、結衣から」
「えっ……ちょっと驚いたわ~、まさか船見さんが……」
「うん、私も驚いたよ
でも、しょうがないことだし」
そう、しょうがないことなのだ。
私は、結衣の別れを受け入れたのだから。
「しょうがないことって言ったけど、歳納さんはそれでええの?」
「……うん」
「本当に?」
「…………い、いいわけないよ」
39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 20:09:39.06 ID:NVIbFSFM0
いいわけないじゃん!
まだ、結衣から別れの理由すら聞いてないんだよ?
「だったら、ちゃんと話し合わなきゃいけへんな?」
千歳はそう言って微笑んだ。
今、千歳と話してて気づいたけど、
理由きいてないじゃん!!
別れがあまりにも急すぎて、忘れてた……。
40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 20:11:10.24 ID:NVIbFSFM0
帰り道
私は、部活へ行かず結衣たちが帰るのを待った。
1人で頭の整理をしたかったから。
また、別れることには変わりないと思うけど、
せめて理由が聞きたかったから。
そして、今私と結衣の2人きり。
「結衣、ちょっと公園よらない?」
「いいけど……」
話すなら、公園でゆっくり話し合いたい。
41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 20:13:20.06 ID:NVIbFSFM0
「ちょっと、話し合おうよ」
「何について?」
「私たちについて、かな」
「もう、話すことはないと思うんだけど……」
私は、息を吐いた。
そして、大きく息を吸った。
42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 20:15:07.79 ID:NVIbFSFM0
「理由!」
「は?」
「理由が知りたいの!結衣が別れを告げた理由」
「…………」
結衣は、黙ってしまった。
言いにくいこと、なのかな……。
でも、絶対聞き出してやる!
44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 20:17:22.56 ID:NVIbFSFM0
「…………」
「結衣~?早く教えてくれないと……、
結衣の恥ずかしいこと皆に暴露するよ?」
結衣がずっと黙っていたもんだから、脅してみた。
「……っ//」
あ、恥ずかしがった。
「お願い、教えて?納得ができないんだ」
「……それは――――」
45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 20:19:09.02 ID:NVIbFSFM0
結衣の告白が続いた。
主な理由は、親に反対されたから。
親としては、そうなるだろうな~と1人納得する。
でも――
「結衣、ぶっちゃけて言っちゃうね?
私の親、結衣と付き合ってること知ってたよ?」
「えぇぇぇええええ?!」
あ、驚いた。まぁ、そうだよね。うん。
結衣と付き合い始めてから、数週間のうちに
親にバレた。と言うのも、私が、口を滑らしたからだけど。
46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 20:21:21.25 ID:NVIbFSFM0
~~~~~
「~~~~♪」
「あら、京子機嫌がいいじゃないの、何かいいことでもあったの?」
「うん!結衣がね~、デートに誘ってくれたからっ!…………あ」
「デート?!」
「あ、いや……」
うっかり言ってしまった。
47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 20:23:24.08 ID:NVIbFSFM0
「え?!結衣ちゃんと付き合ってるの?女の子同士で?!」
ヤバい。……まずは、否定しなきゃ。
「……ち、ちが」
「否定しなくてもいいのよ?お母さんは、応援するからね?!」
呆気にとられた。
まさか、応援されるとは……。
48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 20:24:56.74 ID:NVIbFSFM0
「じゃあ、今日はお赤飯ね!お父さんにも言っとくけど、多分大丈夫よ
恋に性別なんて関係ないものっ、確かに日本では認められてないけど、
同性愛が認められている国もあるのよ?」
「あ……はい」
「だからね、今のうちにそういう恋を経験しときなさい、
さっき言ったことと矛盾しちゃうけど、
結婚とかの話になっちゃうと、さすがに許せないかな
でも、ほら、どうせ高校で付き合った子が結婚まで続くことは稀だし、ないとは思うんだけど」
お母さん、言ってることむちゃくちゃですが。
52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 20:26:48.24 ID:NVIbFSFM0
「とにかく、今は今!未来は未来!
女の子との恋愛は珍しいのよ?!いつか、別れると思うけど
その時まで、精一杯恋しなさい!」
……びっくりしたぁ。
お母さん、さっぱりしすぎ!
というか、絶対好奇心とかでしょ!
はぁ、素直に喜べばいいのかわかんないよ。
でも、結衣には言わないほうがいいかな……。
53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 20:29:00.25 ID:NVIbFSFM0
~~~~~
「って、ことがあったから」
「ま、マジですか」
結衣は、案の定呆然としている。
まぁ、この話を聞いたからね……。
一般世間ではあり得ない会話だと思う。
55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 20:30:56.77 ID:NVIbFSFM0
「でも、良かった、ちゃんと理由がきけて……うん、
これで、心おきなく幼馴染に戻れるよ」
「そっか……、私達これでよかったのかな」
「分かんないけど、私はよかったと思うよ」
56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 20:31:27.02 ID:NVIbFSFM0
うん。こんな清々しい別れは、これから先経験することないだろうから。
別れを告げられた時は、悲しみで一杯だったけど、
なんか、吹っ切れた。一日で吹っ切れるのはどうかと思うが、
女の子同士だからこそ、別れても……今度は、友達からやり直せる。
結衣と付き合えて本当によかった。
「結衣、ありがとうね」
57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 20:33:08.74 ID:NVIbFSFM0
・・・・・・・・・・
京子の話を聞いた。驚いた。まさか、親公認だったとは……。
このこと、私の親には言わないほうがいいよな。
母が言ってたこと実際ハズれてたし……。
また、ややこしくなりそうだし。
58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 20:34:37.68 ID:NVIbFSFM0
……京子の話を聞いたとき、私は少し期待してしまった。
京子が、恋人であることを望むのを。
でも、京子は別れを選んだ。
案外、未練が残ってるのは私の方だったりして。
けど、確かにこれは恋だった。
私は自分の無力さを呪って、別れを選んだんだけど
むしろ、この選択で良かったと思う。
まぁ、親に感謝する気はないけど……癪だし。
何か、親に説教され殴られ1人悲しんで……
すごい遠回りしたけど――
「京子、ありがとう」
60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 20:35:46.65 ID:NVIbFSFM0
・・・・・・・・・・
後日
あれから、私達は幼馴染として過ごしている。
もう、ギクシャクするようなこともないし、
むしろ……恋人だった頃よりは、心も体も楽かな~なんて思い始めた。
でも、それもちゃんとした思い出で、
いつか大人になった時に、結衣と一緒に懐かしみたいな。
これからも、そんな日々を送っていたい。
61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 20:37:40.04 ID:NVIbFSFM0
「おい、京子何ぼーっとしてんだ?ほら、早く勉強しろよ」
むー、せっかく人がいい感じにまとめてるのにさー。
「はいはい、今からやりますよーだ」
そんな感じで今は、受験勉強頑張ってます。
結衣と同じ大学にいくために!
63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 20:38:12.23 ID:NVIbFSFM0
おわり
66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 20:39:35.11 ID:NVIbFSFM0
以上です。
ぶっちゃけ、「ファーストキスは涙の味だった」
っていう言葉が使いたかっただけです(笑)
たまには、こういう結衣と京子もいいと思ったんですが……難しいですね。
読んでくださった方ありがとうございます!
69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 20:43:23.03 ID:QF8NO1E5O
乙
71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 20:50:31.32 ID:u4jPBSYb0
乙!
74: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/07/18(水) 20:55:13.72 ID:bYN0gnJ6O
おつおつ
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