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兄「おっぱい枕で眠らせて」 妹「だめ!」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1328874066/
妹「妹に手出すなんて、ヤキが回っちゃってるね」
兄「ああ、何でもいいよ」
兄「それより、早くそのふくよかなおっぱいを……」
妹「だめ!」
兄「だから、な?」
兄「お前といたら、安心できるし」
妹「……」
妹「ほんと?」
兄「うん」
妹「……」
妹(私は、いつも可愛がってもらってる……)
妹(……)
兄「頼む」
妹「……」
妹「う、ん……」
兄「ほんとか!?」
妹「うん」
兄「お前は、いい子だなぁ」ナデナデ
妹「……っ」
兄「じゃあ早速、仰向けに寝ころんでくれ」
妹「うん」
兄「おお……」
タユ タユン
兄「寝転がるだけで、胸が揺れて……」
妹「は、はやくおいで」
妹「やめちゃうよ」
兄「!!」
兄「それでは失礼します!」
妹「ぅ……」ドキドキ
……モニュ
妹「んっ」
兄「はぁはぁ……」
兄「やわらか……っ」
妹「んぅ……」
兄「背中の上の方が、妹のお腹に当たって……」
兄「これもまた……」プニ
妹「……っ」ビクッ
兄「今ビクッてなった?」
妹「な、なってないっ!」カァァァ
妹「……っ」
兄「お兄ちゃんがお前のおっぱいと、赤ちゃんみたいに戯れて」
妹「う、うるさい!」
兄「はぁー、柔らかい……」モニュモニュ
妹「んっ、んんっ……!」
兄「あったかくて、柔らかくて、いい匂いで、安心して……」
兄「幸せだ……」
妹「わ、私も……」
兄「え?」
妹「……」
妹「え?」
兄「よいしょ……」モニュ
妹「んぅ」
兄「……」
兄「はは、可愛い音が聞こえる」
妹「え……?」
兄「とくん、とくんって」
妹「……えへへ、当たり前だよ」
兄「……」ナデナデ
妹「んっ……、おっぱいなでなで、だめ……」
兄「……」ナデナデ
兄「はぁ、女の子のいい匂いだ……」
妹「んっ……」キュン
兄「……」ナデナデ
妹「ん……、だから、だめ……」
兄「……すぅ」
妹「?」
兄「すぅ、すぅ……」
妹「……」
妹「……」ナデナデ
兄「ん……すぅ、すぅ……」
妹「……」キュンキュン
兄「すぅ、すぅ……」
妹「……」
妹「……」ポフ
妹「しょうがないから、妹毛布、使ってね……」ナデナデ
兄「ん……、すぅ……」
フニュ
妹「んっ……、はぁはぁ……」
兄「すぅ……」モゾ
妹「っ」
妹「……」ナデナデ
……
……
兄「くぁっ……」
兄「ふぅー……」
妹「……?」
兄「おー、起きたわ」
兄「お前も寝ちゃってたか」
妹「うん……」ウトウト
兄「なんか、やらしい匂いが……」
妹「う、うるさいっ!」カァァァ
兄「なんだ、お前まさか」
妹「ないから、ばかっ!」
妹「それよりっ」ギュッ
兄「うぁ?」バタッ
妹「……次は、お兄ちゃん掛け布団で寝るの」
ギュゥ
おわり。
妹「いいの、このまま」
兄「ん?」
妹「上から、私を抱きしめて……?」
兄「……」
兄「こ、こうか?」ギュゥ
妹「んぅ……っ」キュン
妹「うん……」
兄「重くないか?」
妹「大丈夫……」
妹「もっとぎゅってして……」
兄「……」ギュゥゥ
妹「……っ」ビクッ
兄(強く抱き締めて……)
妹「んっ……」ハァハァ
兄(顔が横にあるから、妹の呼吸が聞こえて……)
妹「お兄ちゃ……」
妹「気持ちいい……」ハァハァ
兄「……っ」
兄「……」
ギュ
兄「……」
兄(妹の吐息が聞こえる、ヤバいな……)
兄(このままじゃ……)
妹「お兄ちゃん」
兄「ん?」
妹「なんか、かたいよ……」
兄「……っ!」
兄「ぁ……」
兄(太ももを擦り付けられて……)
妹「……?」スリスリ
兄「っ、っ」ハァハァ
妹「……!」
妹(これ、お兄ちゃんの……)
兄「ん……?」
妹「もっとぎゅってして」
兄「……」ギュゥ
妹「ぁ」
妹「……っ」スリスリ
兄「っ」
兄「っ、っ」ハァハァ
妹「……」
「っはぁ、はぁ」
スリスリスリスリ
「んっ……」
「妹っ……」
スリスリスリスリスリスリ
「お兄ちゃんっ……」
「はぁっ、ぁっ……」
……
「お兄ちゃ、お兄ちゃ……っ」
スリスリスリスリスリスリ
「ぁっ、ぁっ……」
「ああっ!」
ビクンッ ビクンッ
「んんっ……!」キュン
「うん……」ビクッ ビクッ
「えへへ……」ナデナデ
ギュゥ
「お、おい、このままだと汚いぞ」
「いいの……」
「一緒に寝よう?お兄ちゃん……」
ギュ
おわり。
それからの眠りは。
途中、お兄ちゃんのズボンから、あったかいのが染み出してきたけど……
それはそれで、うん。
お兄ちゃんと、ぎゅって抱き合って眠れたのが、
何よりの幸せだった。
妹「お兄ちゃん……?」
兄「ん?」
妹「このまま二人で溶けちゃいたいね……」
兄「……うん」
妹「えへへ……」ギュゥ
チュッ
あ~妹ほしいなぁあああ
Entry ⇒ 2012.02.26 | Category ⇒ 兄弟姉妹「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
妹「お化け怖い」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1328856952/
兄「ん?」
妹「ぅぅ……」ギュゥゥ
兄「何だ」
妹「お化け怖いよぅ……」フルフル
兄「お、お化け?」
妹「うん……」
兄(一体、何を言い出すのか……)
兄「近くにいるのか?」
妹「うん、あそこ……」ギュゥ
兄「……」
兄(部屋の隅……)
兄「どんなお化けなんだ?」
妹「女の人……」フルル
兄(うーん……)
妹「怖いよぅ……」ギュゥ
兄「大丈夫だ、大丈夫」ナデナデ
妹「ん……っ」
兄「……」
兄(参ったな……、全く分からん……)
妹「お兄ちゃん……」ギュゥ
兄「……」ナデナデ
妹「……」ギュゥ
兄(とりあえず、しばらく傍に居てやらなきゃな……)
妹「ぅぅ……」
妹「怖い……」
妹「こっち見てる……」ギュゥ
兄「……」ナデナデ
妹「髪の毛、長い……」
兄「……」
兄(本当に居るのかも……)
兄(でも、俺には全く分からんからなぁ……)
妹「お兄ちゃん、怖いよぉ……」ギュゥゥ
兄「だ、大丈夫だって」
妹「ぅぅっ……」
妹「……」
兄「でも、外は寒いか……」
兄「お前の部屋で一緒に居てやろうか?」
妹「うん」ギュ
……
妹「……」ギュゥゥ
兄「そんなに怖かったのか?」
妹「うん……」フルフル
兄「睨まれてたのか?」
妹「うん……」
兄「……」ナデナデ
兄(何なんだろうか……、本当に居るのだろうか……)
兄「ん?」
兄(め、目がうるうるして……、泣きそうなのか……!?)
兄「だ、大丈夫、大丈夫だよ、何もしてこなかったんだろ?」ナデナデ
妹「ぅぅ……」
兄「だ、大丈夫だって!」ギュゥ
妹「っ」
兄「ほら、俺がついてるから、な?」ナデナデ
妹「……っ」ギュゥ
兄「ん?」
妹「ぎゅって」
兄「……」ギュゥ
妹「んっ……」
兄「これで怖くないか?」
妹「うん……」ギュゥ
……
兄(抱き締めてあげてから、どのくらい経つだろう……)
兄(そろそろ、俺も疲れ……)
妹「……」ウトウト
兄「ん、眠いのか?」
妹「うん……」
兄「寝るか?」
妹「うん」
兄「じゃあ、俺はそろそろ……」
ギュゥ
兄「!?」
妹「……」
兄「……一緒に寝るってことか?」
妹「うん……」ギュゥ
妹「……」
兄「まだあそこに居るか、見に行くか?」
妹「……」ギュゥ
兄「……」
兄「いいよ、一緒に寝よう」ナデナデ
妹「……」
兄「俺は横に布団敷いて、そこで寝ようか」
ギュゥ
兄「ん?」
妹「……」
兄「……ん」ナデナデ
兄(まだ相当怖がってるんだな……)
兄「いいよ、ベッドで寝よう」
妹「えへへ……」
兄「……っ」
兄(って言っても、実際、やっぱり狭いよな……)
妹「お兄ちゃん」
兄「ん?」
妹「二人でこうしよ」ギュ
兄「!?」
妹「狭くないよ」
兄「……」
ギュ
妹「んっ……」
兄「……」
兄「狭くないな」
妹「うん」ニコ
兄「……」
妹「あったかい」
兄「うん」
妹「えへへ……」
兄「怖くないか?」
妹「うん」
兄「良かった良かった」
妹「……」ギュゥ
兄「ん?」
妹「……」ギュゥ
兄「何だよ?」
妹「えへへ」
流れで、何となく一緒に寝るようになり、
お風呂も……
そして、何故かその日から、妹はお化けのことを言わなくなった。
おわり。
兄「風呂までついて来いって、流石に……」
妹「だめなの……?」
兄「……」
兄「はぁ、しょうがないな」
妹「えへへ……、ありがと」ニコ
兄「って」
妹「……?」プルン
兄「ちょっとは恥ずかしがれよ!」
妹「……」カァァァ
兄「遅い!」
兄「え、え……」
兄(ヤバい、想像以上におっぱいが……)
兄(そして、それをまじまじと見てしまったせいで、やつが……)
妹「寒いよぉ」
兄「わ、分かった、分かったよ!」カチャカチャ
スルスル
……ビンッ
妹「……っ」
兄「……」カァァァ
兄(お、俺は、妹になんてものを……)
妹「……」ジーッ
兄「あ、あんまり見るな!」
妹「……」ニコ
……
シャァァァ
兄「……」ゴシゴシ
兄「気持ちいいか?」
妹「うん」ニコニコ
兄「熱かったりしたら言ってな」
妹「うん」
妹「お兄ちゃん上手」
兄「……そうか」ゴシゴシ
兄(なんで妹の髪洗ってんだ、俺……)
兄「ふぅ……」
兄「スッキリしたか?」
妹「うん」
兄「そうか、良かった」
兄「じゃあ、カラダは自分で……」
ギュゥ
兄「!?」
妹「……」
兄「わ、分かった、洗うから、今抱きつくのはやめろ!」
妹「……えへへ」
「んっ……」
……ゴシゴシ
「お兄ちゃ……」
……ゴシゴシ
「ぁっ……」
……
……
キュッ
兄「……」
妹「……」ニコニコ
兄(地獄だった……(色々我慢するのが))
兄「お、おう、いいのか?」
妹「うん」
兄「……じゃあ、お願いします」ビンビン
妹「……」
「きもちい?」
「ああ、上手いよ」
……ゴシゴシ
「背中も洗ったげる」
「おー、ありがとう」
……ゴシゴシ
「……ここは?」
「いや、そこは……!」
……ゴシゴシ
「だ、だめだ、そんな……ぁっ……!」
……ゴシゴシ
「お兄ちゃん、すごい気持ち良さそう……」
「ぁっ、ぁっ……あああっ」
……ビュルルルッ
兄「ふぅ……」
兄(妹の前で、まさかの……)
妹「えへへ……」ギュゥ
兄「だ、だから、今抱きつくなって!」
妹「お兄ちゃん、大好き」
兄「……っ」
妹「お兄ちゃん」
兄「ん?」
チュッ
と、こんな感じの、危ない毎日を送っています。
おわり。
乙
Entry ⇒ 2012.02.23 | Category ⇒ 兄弟姉妹「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
姉「弟君、お風呂入っちゃいなさい」弟「やだ」
弟「やだ、お姉ちゃんと入る」
姉「だって、お姉ちゃんもう入ったよ?」
弟「……じゃあ、入らない」
姉「も~う……」
弟「……入らない」
姉「う~ん、じゃあ、お姉ちゃんもう一回入るから……ね?」
弟「……うん」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1328623428/
姉「弟君、お風呂入っちゃいなさい」弟「やだ」
姉「服脱ぐよ」
姉「自分で脱げる?」
弟「やだ」
弟「お姉ちゃんが脱がせて」
姉「もぅ、しょうがないなぁ……」
姉「ばんざーいして」
弟「……」
スルスル
スルスル
……ボロンッ
姉「……」
姉(相変わらず、ここはすごいおっきいなぁ……)
弟「……」
弟「……」
姉「お姉ちゃんも、そろそろ恥ずかしいんだから」
弟「……」
姉「もぅ……」
姉「脱ぐの?」
弟「うん」
姉「……」
スルスル
……パサッ パサッ
姉「……」プルンッ
弟「……」
姉「え……?」
弟「……」ビンビン
弟「……」ビンビン
姉「お、弟くん……」
弟「早く」グイグイ
姉「……っ」
弟「……」
姉「ま、まず、カラダ洗わなきゃね」
弟「……」
姉「……私が洗うの?」
弟「うん」
姉「……はいはい」
キュッ
シャァァァ
姉「……」ゴシゴシ
弟「……」ビンビン
姉「う……」
姉「こ、ここも洗えって……?」
弟「うん」
姉「……」
ニギ
弟「っ」ピク
姉「っ!」ドキッ
ゴシゴシ
弟「……っ、っ」ビクッ ビクッ
姉「う……」
弟「もっと」
姉「……っ」
ゴシゴシ
弟「っ、っ」ビクッ
弟「だめっ」
弟「もっと、もっとっ」
姉「う、うん……」
ゴシゴシ
弟「……っ」
姉「……」
ゴシゴシゴシゴシ
弟「もっ……とっ」
姉「う、うん」
ゴシゴシゴシゴシゴシゴシ
弟「お姉ちゃんっ」
姉「え?」ゴシゴシ
弟「あっ!」ビュッ ビュッ
姉「きゃぁっ!!」ビクッ
姉「え、う、うん……っ!」
ゴシゴシゴシゴシ
弟「あっ、あっ、あっ」ビュッ ビュッ ビュビュッ
姉「う、うぁっ……」
弟「はぁはぁ、お姉ちゃんっ」ギュッ
姉「んっ……」
姉「弟くん……」
姉(なんか、すごい出た……)
姉(いっぱいかかっちゃった……)
弟「……」
姉「どうしたの……?」ナデナデ
弟「……」
姉「何かな?」ナデナデ
弟「あむっ」
姉「ぁんっ」
弟「んむんむ、ちぅちぅ……」
姉「ぁっ、だめっ……!」キュンッ
姉「ぁっ……おっぱいだめっ……!」
弟「ちぅぅぅっ」
姉「はぁぁん……っ!」ビクッ
姉「ぁっ!!」ビクッ
姉「か、噛むのだめっ……!!」
弟「くにくに、きゅぅきゅぅ……」フニフニ
姉「っぁ」ビクンッ
ペタンッ
姉「はぁっ、はぁっ……」
姉(カラダ中が痙攣しちゃったみたいに……)
姉「ごめん、弟く……」
弟「……」ビンビン
姉「う……」
姉「だめだからね?」
弟「……」ビンビン
弟「……」ギュ
姉「ぁっ」
弟「……」スリスリ
姉「んっ……、だ、めだって……っ」
姉「んっ……、何?」
弟「お風呂入ろ」
姉「一緒に……?」
弟「うん」スリスリ
姉「う、うんっ……」
姉「んっ……狭っ……」
弟「……」カクカク
姉「お、弟くん、何して……?」
弟「はぁはぁ……」カクカク
姉「んっ……」ゾクゾクッ
姉「ぁ、ぅ……」カァァァ
姉「そ、そんなに見ても、だめ……」
ニュルッ
姉「ぁっ」
弟「はぁっ、はぁっ」
チャプチャプチャプチャプ
姉「ぁっ、ぁっ、んっ……!!」
弟「はぁはぁ、お姉ちゃん、お姉ちゃん……っ」ギュッ
チャプチャプチャプチャプ
弟「はっ、はっ、はっ……」ギュゥゥ
チャプチャプチャプチャプ
姉「ぁっ、ぁ……」キュンキュン
弟「はっ、はっ、はっ……」
チャプチャプチャプチャプ
姉「んっ……ぁっ……!」
チャプチャプチャプチャプ
姉「んっ、んっ、んっ……!」
弟「お、おねちゃ、おねちゃっ……あっ、あっ……」
チャプチャプチャプチャプチャプチャプチャプチャプチャプチャプ
姉「ぁぁぁんっ……!」キュゥゥッ
弟「ああっ、あっ……!」
弟「ちゅぅっ……!」
姉「んむっ」
弟「ちゅる、ちゅぷ、ちゅっ、にゅるっ……!」
姉「んっ、んっ、んんっ……!」ギュッ
チャプチャプチャプチャプチャプチャプチャプチャプチャプチャプ
弟「あっ、あっ、あっ、あっ……」カクカクカクカクカクカクカクカク
弟「あっ!!」ドクンッ
姉「っっ」ビクンッ
弟「っ、っ、っ」ドクッドクッドクッドクッ
姉「……っ」
姉「んっ、ん……っ」
姉「……」
弟「……」
弟「はぁっ、はぁっ……」
姉「赤ちゃんできちゃう……」
弟「……」ギュゥ
姉「んっ……」
姉「えっ?」
ニュルッ
姉「ぁっ」キュゥ
弟「はぁぁっ……」
チャプチャプチャプチャプ
…………
……
その日から、弟くんに、何回も膣内で射精される日々が続いています。
赤ちゃんも恐らくできてしまっているでしょう。最近、生理が来ません。
でも、止められません。だって、弟くんが、すごく私としたがっているから。
弟くんが、すごく私を求めているから。
私で、気持ちよくなってくれるから。
おわり。
乙
乙
Entry ⇒ 2012.02.19 | Category ⇒ 兄弟姉妹「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
妹「私を埋めたら妹が増えるよ!」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1328361744/
妹「私を埋めたら妹が増えるよ!」
兄「あ?」
妹「うーめーてー」グイグイ
兄「痛い痛い首は痛いから引っ張んな」
妹「じゃあ埋めて、育てて、収穫!」
兄「わかったからちょっと待ってろ」
妹「やったー!これでいっぱいだね!」
兄「たぶんな」
妹「絶対だよー」
妹「あっこあっこ」チョイチョイ
兄「あそこもう花植えてるけど、いいのか?」
妹「もーわかってないなーお兄ちゃんは」
兄「なんで」
妹「花が育つってことは、栄養が良いんだよ?」
兄「ほう」
妹「だから私もよく育つ!」
兄「なるほど、まあ妹がいいっていうならそこにするか」
妹「育つのよ私」
妹「ん、手伝おっか?」
兄「いいよ、こういうのは男がやるから」
妹「私が入る穴なんだから、私も掘りたーい」
兄「あーもう分かったよ、好きにしろ」
妹「頑張って掘るよ」ザクザク
妹「多分こんなもんかな」
兄「いいんじゃねーの」
妹「ちょっとインしてみる・・・うん、バッチシ」
兄「よかったな妹」
妹「よかったよ私」
妹「ちょっとこしょばゆいけど、慣れると思う」
兄「そうか、顔はどの辺まで出すんだ?」
妹「首のー・・・あ、大体この辺、喉の真ん中くらい」
兄「こんくらいか」
妹「うんうん、いいよー」
兄「さーて、今日は疲れたなー」
妹「そだね、もうそろそろ暗いね」
兄「俺もう寝るけど、妹どーすんの」
妹「もう私は育つ準備に入るよ」
兄「そっか、じゃあお休みー」
妹「お休みお兄ちゃん」
妹「・・・・・・痒くて眠れない・・・」
妹「うーん・・・何か出たくなって来たなぁ・・・」
妹「はっ、ダメダメ私何てことを!お兄ちゃんのためなんだから!」
妹「何よりそのお兄ちゃんも頑張ってるんだから、私も耐えないと!」
妹「かゆーい・・・・・・」モゾモゾ
妹「でも出られなーい・・・・・・」モゾモゾ
兄「元気か妹」
妹「お、おはよ・・・お兄ちゃん」
兄「あら?寝てないのか」
妹「かゆかったの」
兄「大変だなー・・・ま、俺は頑張れとしか言えない」
妹「うん、頑張って慣れるよ」
兄「さて、何したらいいんだろ・・・」
妹「お水」
兄「お水?」
妹「育つためには水と空気と適当な温度だよ」
妹「肥料も欲しい」
兄「光は?」
妹「わかんない、でも一応光は当たってるからいいや」
妹「お願いしまーす」
兄「ほれ」ビシャー
妹「ちべたい」
兄「育つためには我慢我慢」ビシャビシャ
妹「うう・・・育つって大変」
兄「早く大きくなってくれよー」
妹「なりまーすガボフッ」
兄「あら、大丈夫か?・・・よし、こんなもんだろ」
妹「潤ったー」ポタポタ
妹「ちょっと寒い・・・」
兄「寒い言われてもなあ」
妹「お湯欲しい」
兄「バカ、熱湯かけたらアウトだろ」
妹「あ、そ、そうだよね・・・ハハ・・・」
兄「じゃあアレ、風除けするか」
妹「あ、それいいね」
兄「じゃあちょっと風除け買ってくるわ」
妹「いってらー」
妹「(何だかんだで私のために動いてくれてる・・・)」
妹「(お兄ちゃんのためにも、頑張るからね)」
妹「あ、おかえりー」
兄「よくあるフェンス」
妹「あ、風通んなくなったかも」
兄「これで少しはマシになったろ」
妹「うんうん」
兄「じゃ、俺はそろそろバイト行くから」
妹「頑張ってねー」
兄「妹もなー」
妹「アイウィルグローアップだよ」
兄「はいはい」
妹「ひまーい」
妹「・・・・・・何か足がダルいなぁ」
妹「手の先も感覚がないし・・・・・・」
妹「もしかして、これって成長準備突入?」
妹「だといいんだけど」
妹「・・・・・・早く帰ってこないかなー」
兄「ったく、あの店長人使い荒いっつーの」
兄「・・・あ、そういやアレ買わんと」
兄「・・・・・・妹、喜ぶかな」
妹「あ、おかえりお兄ちゃん」
兄「調子はどうだ?」
妹「なかなか」
兄「お土産買ってきたぞー」
妹「え、なになに?」
兄「ふふん、それは明日の朝のお楽しみー」
妹「えーケチー」
兄「まあまあ、いいじゃないか」
妹「ぶー・・・」
兄「それじゃ、そろそろ風呂入って寝るわ。何かあったら言えよー」
妹「・・・あ、おやすみ」
兄「おやすみ」ガチャ
兄「おはよう」
妹「おはよー・・・」
兄「あれ、また寝てないのか?」
妹「いや、そういうんじゃなしに、寝れなかった・・・」
兄「そうか、何か顔も疲れてるっぽいしなぁ」
妹「そうかな・・・」
兄「肥料がいるな」
妹「え?」
兄「じゃーん」ガサッ
妹「え、何それ」
兄「肥料、お徳用です」
妹「ほえー」
兄「これ食えば調子も良くなるぞ」
妹「えっ」
妹「いやちょっと待っ」
兄「口開けて」
妹「うわ臭っ、これ何」
兄「大丈夫だって、栄養栄養、ほれ」
妹「がほっ!?」
兄「お、食った食った。まだまだいっぱいあるぞ」
妹「・・・えうっ、まずぅ・・・・・・」モニャモニャ
兄「ありゃ、不味い?まあ、良薬は口に苦しと言うからなぁ」
妹「ほ、ほう・・・・・・やね」ゴクッ
妹「ほえ・・・」
兄「肥料と水はここに置いとくから、好きに使っていいぞ」
妹「あ、ありがと」
兄「お礼なら、育ってからにしてな」
妹「うん・・・」
兄「じゃ、行ってくる」
妹「いってら」
妹「肥料・・・・・・不味いけど、食えなくもないし・・・」
妹「何より疲れがどんどん抜けてく感じがする・・・」
妹「意外と、肥料って良い物なんだなぁ・・・もうちょっと食べよう」
妹「んっ、も、ちょっ、とで・・・・・・と、とろいた!」
妹「いただきまー・・・・・・まずっ、えふっ、でも食べたい!」モニャモニャ
妹「おかえり・・・ゲフッ」
兄「うわ、お前むっちゃ食ってね?」
妹「そうでもないよ」
兄「だってこれ、3分の1は食ってるじゃん」
妹「何か、途中からクセになっちゃって」
兄「あのなぁ・・・食い過ぎはよくねーんだぞ」
妹「ゴメンゴメン、次からは気をつけるから」
兄「ったく・・・んで、調子は?」
妹「肥料のおかげで調子良いよ!」
兄「それは良かった、期待してるぞー」
妹「いもピクミンだよ」
兄「じゃ、後は大丈夫だな」
妹「うん、バイト頑張ってね」
兄「ああ、いってくる」
妹「いってらー」
妹「埋まってから結構経つけど・・・何か、変な感じ」
妹「感覚も首から上しかない・・・。順調、なのかな」
妹「あー、早く育って実ってお兄ちゃんに恩返ししたい!」
兄「調子どうだ?」
妹「いいよ」
兄「変わったことは?」
妹「ないよ」
兄「そっか、じゃあ俺は寝るよ」
妹「おやすみ」
兄「おやすみ」バタン
兄「調子はどうだ」
妹「いい」
兄「何か欲しいものとかは?」
妹「いい」
兄「そうか、じゃあ俺はそろそろ寝るから」
妹「うん」
兄「おやすみ」
兄「そろそろ何かあってもいいんだけどなー」
妹「・・・・・・」
兄「調子は変わりない?大丈夫か?」
妹「・・・・・・」コクコク
兄「お、肥料がそろそろ無くなってきたな。明日買ってくるよ」
妹「・・・・・・」コクコク
兄「よし、じゃあ寝るよ。おやすみ」
妹「・・・・・・ぃ」ニッ
兄「ん?」
妹「・・・・・・」
兄「・・・・・・?」バタン
兄「ただいま!やったぞ妹!来週から俺も正社員だ!」
妹「・・・・・・」
兄「・・・あー、でも、これであんまり一緒にいられんくなるな。お前にとっちゃよろしくないか」
妹「・・・・・・」
兄「まだ花とかは・・・・・・咲いてないか。ま、焦ることはない、ゆっくりいこうな」
妹「・・・・・・」
兄「じゃ、俺は寝るよ。おやすみ」
妹「・・・・・・」フルフル
兄「来週からあんまりかまってやれなくなるけど、寂しがるなよ?」
妹「・・・・・・」フルフル
兄「じゃ、おやすみ」バタン
妹「・・・・・・」
兄「おはよう」
「・・・・・・」
兄「今日はかなりいい天気だなー」
「・・・・・・」
兄「何か顔色がえらいことになってるけど、元気そうだ」
「・・・・・・」
兄「よし、じゃあ会社行ってくるよ」
「・・・・・・」ヒョコ
兄「ん、何か今・・・・・・」
兄「おおっ!つぼみだ!やったな妹!」
「・・・・・・」
兄「よかったよかった!やったなぁ、よく頑張ったな妹!」
「・・・・・・」
兄「よし!元気出た所で会社行ってくる!あとちょっとだから頑張れよ!!」
「」
「・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・ワタシハ」
「・・・・・・・・・オニイ、チャンノ、タメニ」
「・・・・・・・・・イモウト、フヤスヨ」
「・・・・・・・・・ガンバルヨ」
「
モ
ウ 少
シ 」
兄「ただいまー」
兄「調子どうだ?」
兄「良さそうだなー」
兄「つぼみも順調、と」
兄「頑張ってな、それじゃ、おやすみー」
「ねぇ」
「ねぇってば」
「ねぇ起きて」 「ねぇお兄ちゃん」
「朝だよ」 「早くぅ」
兄「・・・・・・ん、、あ、あと5分・・・・・・」
妹「だーめー!!」ブワッ
兄「うわうわ!誰っ・・・・・・って、あれ?妹?お前埋まってたんじゃ・・・・・・」
妹1「うん、さっきまでね」
妹2「埋まってたよ」
妹3「でもね」
妹「実りましたーーーっ!!」
妹1「実ったんだよ!」
妹2「期待に応えたよ!」
妹3「妹増量だよ!」
妹「だいせいこー!!ワーッ!!」
兄「・・・や、やったんだ・・・・・・ついに、やったぞ!」
妹「やったー!!!」
兄「成功した!!増えた!!やった!!!」
妹「ありがとおにーちゃーーん!!」ガバッ
兄「おいおいよせって・・・・・・こーらっ、どこ触ってんだ妹・・・あ、こっちの妹・・・もー訳分かんねーよーー・・・・・・・・・・・・」
兄「・・・・・・夢か」
兄「期待させやがって・・・・・・」
兄「・・・・・・なんか見に行くの辛いなぁ」
兄「ま、でも行かんと」
兄「妹?おはよ・・・・・・あれ?」
兄「いない・・・・・・あれ、何処行った?妹?」
兄「おーい!!妹ーー!!いたら返事しろー!!!」
兄「もしかして、家の中とかか!?」
兄「ベッドに隠れてかっ!?いない!」
兄「台所でこっそり!?でもない!」
兄「トイレで隠れ!?てもない!!」
兄「あ゛あ゛あ゛あ゛!!!どーなってんだ一体!!!!」
ピーンポーン
兄「!?」
隣人「あ、どうも。隣に住んでる戸鳴です」
兄「あ、戸鳴さん・・・どうも」
隣人「えっと・・・実は、ちょっと言いづらい事がありまして・・・・・・」
兄「な、何ですか一体」
隣人「あの、お宅・・・花壇、ありますよね?」
兄「ありますけど・・・も、もしかして妹のこと!?」
隣人「え?・・・あ、いや、妹さんのことはわかんないんですけど・・・・・・」
隣人「実は昨日、その花壇のとこにお茶こぼしちゃいました・・・・・・すいません」
兄「・・・・・・え?」
兄「・・・・・・大丈夫、でしたか?」
隣人「あっ、ご、、ごめんなさい・・・・・・やっぱり、怒ってます・・・・・・?」
兄「・・・・・・そ、ですね・・・・・・ちょっともう一度見に行きましょか・・・・・・」
隣人「す、すいません・・・・・・」
兄「えーと、ここが庭で」
隣人「あ、あそこに転がってるの、私のコップです・・・・・・」
兄「・・・・・・と、いうことは」
兄「・・・・・・妹は、まだそこに!」
隣人「あ、ちょっと!どうしたんですか急に」
兄「(まだあそこに妹はいる!どこかに行ったわけじゃない!!)」
兄「妹!大丈夫か!い・・・・・・」
隣人「あ、あの・・・・・・」
兄「(殻だ・・・・・・しかも、3つ落ちてる!!)」
兄「(そうか、やっと実がなったんだな!!)」
兄「やった・・・やったぞ!ついにやったぞー!!!」
隣人「・・・・・・だ、大丈夫・・・・・・です、か」
兄「ええ?大丈夫?大丈夫に決まってますでしょ!収穫ですよこれから!!」
隣人「え?」
隣人「あ、いや、でも」
兄「いいから」
隣人「その、どうもすみま」
兄「失せろ!!!」
隣人「ひっ」
兄「さーて妹・・・・・・」
兄「思えば長かったなぁ・・・・・・どれぐらい経つんだっけ?」
兄「どんどん喋らなくなってったけど、着実に準備してたんだなぁ・・・・・・」
兄「くっ・・・・・・ぬ・・・・・・ぜ、全然割れない・・・・・・」
兄「やっぱ切らなきゃダメだな・・・・・・包丁でいいか。取ってこ」
電話「ピルルルルルルル」
兄「くっそ、こんな時に誰だよ!」ピッ
兄「はいもしも・・・」
上司「君!大丈夫か!」
兄「はいっ?(しまった、会社のことすっかり忘れてた!)」
上司「はい?じゃない!遅刻だぞ、もしかして、事故にでもあったのか?」
兄「いや、別に・・・・・・」
上司「じゃあどうして来れない?」
兄「それは、えと・・・・・・収穫祭があるからです」
上司「はぁ?収穫・・・?」
兄「これから収穫があるんで、今日は休みます。すみません」ピッ
上司「おいちょっ君・・・・・・」ツーツー
兄「包丁も取ってきたし、いよいよだね」
兄「ああ、緊張する・・・・・・やっと会えるね」プズッ
兄「うりゃあああ!!」ガシャッ
妹1「・・・・・・」
兄「いた・・・・・・妹だ・・・・・・なあ妹、聞こえるか?」
妹1「・・・・・・」パチパチ
兄「そうだ、俺の顔が・・・分かるかい?」
妹1「・・・・・・・・・・・・ケヘヘ」
兄「ん、ケヘヘ?・・・・・・うわっ!」
妹「ケヘヘ、ケヘヘヘヘ-」ペタペタ
兄「う、腕が・・・・・・ない・・・・・・顔も、めちゃくちゃ・・・・・・」
兄「・・・・・・つ、次だ!次のはきっと・・・・・・」プジャッ
妹2「・・・・・・」
兄「・・・こ、今度は・・・顔がない・・・・・・!?」
妹2「・・・・・・」ベタベタ
妹1「ケハハハハハハハハハハハハ」
兄「・・・・・・さ、最後の・・・・・・は・・・・・・」プッ、プズッ
妹3「れとらっ!みらそつををーえいあかるりゅらしょかきがとよって!!」ピョンピョン
兄「ア、アハハ・・・・・・アハハハ・・・・・・」
妹1「ケヒヒヒヒヒヒヒヒ? ヘヘヘ」ペチペチ
妹2「・・・・・・・・・・・・」ユラユラ
妹3「なろろんとばっしゆっかじょろげるっしゃ!ぢゃわけごっすまろへんるめーな!」ピョンピョン
兄「あ、埋まってるのを掘り起こせば妹に会えるんだ」
妹3「りゃりょんちべるべろーもなっしゅ?うるーとわもれしぎゅっちゅるちゅのんが!!」ピョンピョン
兄「ちょ、近づくんじゃねえ!!この化け物がっ!!!」バシッ
妹3「ぎゃぶらっ!!・・・・・・みゅ、みゅいがろざきゅーすかわめちらっそがれめ!!」ピョンピョン
妹2「・・・・・・」
妹1「カッ、カーーーーーーーー・・・・・・カヘッ!」ギロッ
兄「な、なんだよお前ら・・・・・・お前らなんてなあ、妹じゃねえよ!!ただの・・・醜い化け物だ!!」
妹1「・・・・・・キフッ!」ヨロヨロ
妹2「・・・・・・・・・」スタスタ
妹3「・・・・・・るひろもなーかころるっさじゃろめるびー!!めぜんどしさーや!!」ピョンピョン
兄「はぁ・・・・・・い、妹ー・・・・・・」ザクザクザクザク
兄「・・・・・・うわ臭っ!何だこれ!ひっでえ臭い!!」ドサッ
兄「・・・・・・で、でも、もしかしたら・・・・・・お、おーい・・・妹ー・・・?」ペシペシ
物「」
兄「・・・・・・や、やっぱり・・・・・・駄目か・・・・・・」
兄「・・・・・・・・・・・・」
兄「・・・・・・・・・・・・」
兄
「
許
ス
モ
ノ
カ
」
隣人「朝から花とお話してたし、花が大好きな人なんだ・・・・・・」
隣人「やっぱり、もう一回謝りに行こう!」
隣人「確かまだ開けてないお菓子が・・・・・・どっかに・・・・・・あ、あった」
隣人「チョコ・・・・・・好きかなあの人」
隣人「いや、大事なのは誠意だ!お詫びは後でちゃんと考えよう!!」
隣人「・・・・・・ああっ、やっぱり怒ってるだろうなぁ・・・・・・怖いなぁ・・・・・・」
隣人「いや、でも行かなきゃ!行くしかないこれは!!」
兄「・・・・・・ヒヒヒッ」
隣人「あの、す、すみませーん!」
隣人「えっと、さ、さっきのこと・・・・・・本当に、すみませんでした!!」
兄「・・・・・・」
隣人「えと、こ、これチョ、チョコです!とりあえず受け取ってください!!」
兄「・・・・・・」
隣人「あ、あの・・・・・・や、やっぱり・・・・・・だ、ダメ・・・・・・ですかね?」
兄「・・・・・・顔ヲ上げてください」
隣人「は、はい・・・(良かった、怒鳴られるかと思った)」
兄「戸鳴さん・・・・・・」
隣人「は、はい・・・・・・」
エ
兄「許 テモラ ルトデ モ思ッ タ ?」
シ ノ カ
隣人「え、あ・・・・・・がっ!!!」
隣人「あ・・・・・・ぐ・・・・・・」バタバタ
兄「イモートシンジャッタノネー」ギリギリギリギリ
隣人「い・・・・・・あぁ・・・・・・げ」ピクピク
兄「ダカラサー、テメーガサー」ギリギリギリギリギリギリ
隣人「・・・・・・ぁ・・・・・・・・・はっ・・・・・・」カタカタ
兄「カワッテ」ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ
隣人「・・・・・・・・・・・・ぇ・・・・・・」カクッ
ズルズルズルズルズルズルズルズル
兄「起きてくださーい・・・・・・起きてってばー・・・・・・」ペシペシ
隣人「・・・・・・・・・ん、?」パチッ
兄「あ、やっと目覚めた」
隣人「・・・・・あ、あの・・・・・・ちょっ!こ、これ!何で私、つ、つち、土に」
兄「妹の代わりです」
隣人「な、何のことですか一体、い、妹?どういう・・・」
兄「妹を育ててたら貴方がお茶をこぼして不完全のまま熟しました、よってこれから貴方を育てます」
兄「もう一回説明しましょうか?」
隣人「・・・・・・え、え?どういう・・・・・・」
兄「もう決まったことです、次こそ失敗しないように、お互い頑張りましょうね」
兄「いやあ、もう怒ってないですよ。むしろ貴方みたいな美人がこれから増えると思ったら嬉しいかもしれませんね」
隣人「ど、どういう・・・・・・ことですか」
兄「ははっ、いつまでも純粋な方ですね。そのまま純粋なままでいてくれた方が可愛いので、これ以上は説明しません」
隣人「そ、そんな・・・・・・お、お願いです・・・ここから出してください・・・・・・体が、動かな」
兄「さて、まずは肥料から与えましょうかね」
隣人「え、ひ、肥料って・・・・・・そんな、やだ、出して・・・お願い、ち、近づけないで・・・あっ」
隣人「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
いもピクミンは 腕がない
いもピクミンは 顔がない
いもピクミンは 片足ない
全員ちゃんと 喋れない
隣人ピクミン よく育つ
個性がイロイロうつくしいね・・・・・・
おしまい
途中からトリプ付けるの忘れてました。すみません
そしてこれ以上の展開は言いません。ご想像にお任せします
皆さんお疲れ様でした、次はzipうpスレでお会いしましょう
乙
Entry ⇒ 2012.02.16 | Category ⇒ 兄弟姉妹「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
後輩「灯油が切れました」 先輩「寒い」
後輩「先輩行ってくださいよ」
先輩「やだよクソ寒い」
後輩「あー、また雪強くなってきた」
先輩「さーみーいー」
後輩「ブランケット使います?」
先輩「うん」モゾモゾ
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1327812635/
後輩「灯油が切れました」 先輩「寒い」
後輩「はい」
先輩「脚にかけると首周りが寒い」
後輩「はい」
先輩「首にかけると足が寒い」
後輩「はい」
先輩「クソ役に立たないと思うんですけどね私は!」モゾモゾ
後輩「先輩と一緒ですね」
先輩「親近感わくなぁー!」モゾモゾ
後輩「寒くなってきた……」
後輩「だから、買ってきましょうよ灯油」
先輩「いくらくれる?」
後輩「クズい発言やめてください」
先輩「あ、いいこと気づいた」
後輩「はい」
先輩「一杯やろう」
後輩「く、クズい……!」
先輩「かんぱーい!」
後輩「かんぱい……」カチャン
先輩「ぐびぐび」
後輩「ぐびぐび」
先輩「いやぁ、あったまるなぁ」
後輩「なんでウォッカばっかりこんなあるんだ先輩の部屋……」
先輩「ロシアの血がな、4分の1混じってるんだ」
後輩「へえぇ」
先輩「ヤー、リュブリューティビャー」
後輩「ぐびぐび」
先輩「ん?」
後輩「飲んじゃった……」
先輩「いかんの?」
後輩「いや、飲んだら車乗れないじゃん」
先輩「うん」
後輩「車なかったら灯油買いにいけないじゃん」
先輩「それ今言うのかよ」
後輩「なんで飲ますのバカ先輩」
先輩「アホ後輩」
後輩「ついでください」
先輩「ほらよ」ドプドプ
先輩「ろれつ危ねーぞお前」
後輩「雪またすごくなってきたぁ」
先輩「おう」
後輩「あー……」
先輩「ぐびぐび」
後輩「寒い……」
先輩「ブランケット使うか?」
後輩「うん……」モゾモゾ
先輩「ほんと、よく降るなぁ」
後輩「このブランケットってやつは、脚に――」
先輩「それもう私がやったから」
後輩「そうですか……」
先輩「……」
後輩「……」
先輩「毛布とか無かったかな……」
後輩「先輩」
先輩「おう」
後輩「……」
先輩「……」
後輩「……あの」
先輩「おう」
先輩「嘘だけど」
後輩「でしゅよね」
先輩「あ、毛布あった」
後輩「くださーい」
先輩「ほらよ」バサッ
後輩「わっう、あっ、酒こぼした」
先輩「あ、こら、てめっ」
後輩「ティッシュティッシュ」
先輩「モッタイナーイ、モッタイナーイ」ペロペロ
後輩「いや、それはダメでしょ!先輩!ちょっ!」
先輩「ぐびぐび」
後輩「ちょっと温い……」
先輩「よかったな」
後輩「ぐびぐび」
先輩「あー……」
後輩「はんぶんこします?」
先輩「あ?」
後輩「毛布」
先輩「あー。うん」
先輩「あー……」
後輩「……なんか、これ」
先輩「うん」
後輩「雪山で遭難した風情ですね」
先輩「遠からずってとこだけどな」
後輩「寝たら死ぬ?」
先輩「死ぬかよ」
後輩「ですよね」
先輩「3度くらいなら耐えられるだろ」
後輩「死にませんそれ?」
先輩「死んだことないから分かんない……」
後輩「私もですよ。奇遇ですね」
後輩(♀)
だよな
先輩「え、いまさら?」
後輩「脳みそ煮えてる感じで」
先輩「暖まるだろ」
後輩「寒いです」
先輩「言うなバカ」
後輩「せんぱーい」
先輩「ひっつくなバカ」
後輩「ぐびぐび」
先輩「……あ、吐くなよ、お前マジ」
後輩「私もですよ。奇遇ですね」
つまり二人とも女ということか
私という一人称の男だっているさ
つまり先輩♂後輩♂ということか
先輩「……」
後輩「……そう言われると」
先輩「……おい」
後輩「……」
先輩「……」
後輩「……っうぷ」
先輩「おい、ばかコラ!」
後輩「冗談ですよ」
先輩「死ねっ」
後輩「いたい!」
後輩「はい」
先輩「酒強いな、お前」
後輩「肝臓が普通の人よりだいぶ大きいって、お医者さんに褒められたことがあります」
先輩「……へぇ」
後輩「ほんとですよ」
先輩「すごいじゃん」
後輩「えへへ……」
先輩「バカにしてんだから照れるな」
後輩「あっ、おつまみほしい!」
先輩「酔うと案外面倒くさいなお前」
先輩「おう」
後輩「おつまみー」
先輩「先輩はおつまみじゃありません」
後輩「お願いしますよぉ……」
先輩「指でもしゃぶってろ」
後輩「あむあむ」
先輩「私のじゃねぇよ」
後輩「ぐびぐび」
先輩「酒進んでるんじゃねーわよ」
後輩「……――です、小町伝説に関する教授の著書を読んで――」
先輩「……」
後輩「……で、このゼミに決めました。よろしくお願いします」
先輩「……」
パチパチ パチパチ
教授「……では、後輩さんは先輩の横に座って」
後輩「はい」
先輩「……」
先輩「ん」
後輩「よ、よろしくお願いします」
先輩「……おう」
後輩(怖っ)
後輩(ピアスすごい数だし)
後輩(喋り方もマニッシュ、っていうのかな?)
後輩「……」チラッ
先輩「……」
後輩(……苦手そうだな)
先輩「……おい、おーい」
後輩「むにゃ……」
先輩「むにゃじゃねーよバカタレ」
後輩「あふっ!?」
先輩「先輩にツマミ作らせて自分は居眠りとか、いい根性じゃねぇか」
後輩「……」
先輩「寒いから毛布入れろバカ」モゾモゾ
後輩「先輩」
先輩「あー?」
後輩「ピアス増やしたんですね、そういえば」
先輩「いつの話だよ」
先輩「チーズと大葉をな、餃子の皮で包んで」
後輩「なにクソ手ぇ込んだもの作ってるんですか……」
先輩「ケチつけるんなら食わせねーぞバカ娘」
後輩「柿ピーとかでいいじゃないですか」
先輩「何ていうか、性根が安っぽいのよお前」
後輩「にゃにおー!」
先輩「あーばーれーるーな。騒ぐと毛布めくれてさみぃ」
後輩「もぐもぐ」
先輩「もぐもぐ」
後輩「ぐびぐび」
先輩「ぐびぐび」
後輩「ぐびぐび」
先輩「さすがに朦朧としてきた……」
後輩「せーんぱい」
先輩「さわるなぁー……」
後輩「寝たら死にますよー」
先輩「うるせー……」
後輩「あっためたげますー」
先輩「やーあー……」
後輩「……」
先輩「……」
先輩「……」
後輩「……」
先輩「……っふ……」
後輩「……先ぱ――」
先輩「調子にのんなー!」
後輩「いって!」
先輩「お前なぁ」
後輩「先輩すぐぶつ……」
先輩「飲みすぎだって。もう寝ろ」
後輩「むぅ……」
後輩「……」
後輩「……」グスッ
後輩「……っうぅ」
先輩「あ」
後輩「……っ!」
先輩「……」
後輩「……」ゴシゴシ
先輩「……」
後輩「……」
先輩「……」
先輩「……なぁ」
後輩「っ!」
先輩「聞こえた?」
後輩「……は、はい」
先輩「アンタ、今日時間ある?」
後輩「え……」
先輩「夜。どっか飲み行こうぜー」
後輩「飲……、い、いえ、私……!」
先輩「あ、なんか用事あった?」
後輩「いえ、…お、お酒……?飲んだことなくて……」
先輩「へーぇ?」
後輩「や、そんな、ちょっと……」
後輩(……悪い遊び、クラブ、風紀紊乱)
後輩(……違法ドラッグ、身体と金銭の交換活動、デスメタル)
後輩「私は――」
先輩「だーいじょうぶ」
後輩「あ……」
先輩「心配すんなって」
後輩(笑った……)
後輩(笑うとこんな顔なんだ……)
後輩「ちょっとだけ……なら」
先輩「おっしゃ。いやー、このゼミみんな下戸でさぁー」
後輩(結構……、普通の人っぽい……)
後輩「……ぅあ」
先輩「……」
後輩「……寝てた」
先輩「……むにゃ」
後輩「先輩?」
先輩「……」
後輩「普通よりちょっと」
先輩「むにゃー……」
後輩「ダメ先輩」
先輩「……」
後輩「もっかい寝よ」
後輩「死ぬ」
先輩「死ぬ」
後輩「頭痛いよぉー……」
先輩「寒いよぉー……」
先輩「ふざけんなバカ」
後輩「アンタだろバカ」
先輩「今日は無理だぞ、私。腰抜けてるからな、マジで」
後輩「クズいと思います」
先輩「そういうお前」
後輩「私?」
先輩「腰立つの?ゆうべアレだけ飲んでおいて」
後輩「……よっこい」グラ
先輩「……」
後輩「……」バタン
先輩「……」
後輩「……むにゃ」
先輩「おい、おいバカ」
先輩「……」
後輩「……酒臭い」
先輩「なら布団出ろよ」
後輩「立てませんし」
先輩「なら文句言うな」
後輩「……」
先輩「……」
後輩「……」
先輩「……」
先輩「こーれだからゆーとーせぇちゃんは」
後輩「……」
先輩「……」
後輩「……」
先輩「……」
後輩「先輩」
先輩「ん」
先輩「暇だったから」
後輩「ですよね」
先輩「……」
後輩「……」
先輩「……」
後輩「……」
先輩「……あと」
後輩「はい」
先輩「泣いてるのが可愛かったから」
後輩「何それ」
先輩「フェチなんだよ」
先輩「うるせ」
後輩「……」
先輩「……」
後輩「……」
先輩「……」
後輩「ねぇ」
先輩「おう」
後輩「なんでしないんですか?」
先輩「……したいのかよ」
後輩「……」
先輩「変態」
後輩「もう」
先輩「頭ガンガンしてんだよ、休ませろ」
後輩「……」
先輩「……」
後輩「……」
先輩「キス顔やめろ」
後輩「……」
先輩「……」
後輩「……」
先輩「……キスだけだぞ」
後輩「んー」
後輩「……んぅ」
後輩「……」
先輩「灯油、買いに行かないと……」
後輩「……」
先輩「……寒いから」
後輩「すぐに暖かくなります」
先輩「……ばーか」
Entry ⇒ 2012.02.12 | Category ⇒ 兄弟姉妹「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
妹「お兄ちゃんキスしようよ~」 兄「いやどす」
兄「兄妹だからこそ遠慮したい」
妹「いいじゃん…どうせお兄ちゃん彼女ができる見込みもないんだし」
兄「ううううるせえ!俺だっていつか…」
妹「それを言い続けて早7年」
妹「一向に彼女ができる様子は無し」
妹「20歳にもなっていまだ童貞」
兄「どどどどどどどどどどどどどどど童貞ちゃうわ!」
妹「彼女いない歴=年齢のお兄ちゃんが?」
兄「うっ」
みたいな?
早急にかけ
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1327753899/
妹「お兄ちゃんキスしようよ~」 兄「いやどす」
妹「別にエッチなことするわけじゃないんだし……さ、早く」
兄「いいや結構です!」
妹「……お兄ちゃんがその気ならいいもん!えいっ」ガバッ
兄「うわぁ」ボスッ
妹「ん~…チュッ」
兄「ん!?んー!」
兄「んっ…んんん!」
妹「プハァッ…」
兄「はあ…はあ…」
妹「ふふっ…しちゃった♪」
兄「まさか唇の童貞を妹で卒業することになるとは・・・」
妹「私も今のがファーストキスだったんだよ…」
兄「おいおい」
妹「だめなの、もっとするの」
兄「え?おいちょっとまて…んっ!?」
妹「ちゅーっ…ちゅる…じゅるる」
兄「んっ…んふっ…」ピクン
妹「てろ…ぷちゅるるっ」
兄「んー…」ピクン
妹「ぷはぁっ」
妹「ふう…スッキリした」
兄「妹…どうしたんだよ」
妹「何が?」
兄「お前、今迄何回もキスをせがむことはあったけど俺が拒否すれば諦めたじゃん」
兄「なのに今日はなんであんなに…」
妹「お兄ちゃんの身が危ないからだよ」
兄「は?」
妹「いいのなんでもない、お風呂入ってくる。お兄ちゃんも一緒に入る?」
兄「結構です!」
兄「おい妹、もう行くぞ」
妹「いま行くー」ドタドタ
兄「よし行こう」
ガチャッバタンガチャガチャ
妹「お兄t」
幼「兄ぃ~」タタタ
兄「おはよう幼」
妹「チッ!」
※兄と幼は同じ職場で働いているのである
兄「今日もまたドンと疲れそうだな」
幼「またチーフがガミガミうるさいのかな」
兄「あのババアはクソッタレだよな、自分は水出しだけやって食べ物は全部俺らにやらせるんだもんな」
幼「まったくだよね、よくあんなんでチーフが務まるものだ」
妹「……」
幼「それで店長が見てみぬふりだから嫌なんだよねー」
兄「ですな」
幼「あのおっさんはちゃんと仕事してくれるけど部下への指導がなってない」
兄「本部はよくあんなのを店長にしたな」
幼「うちの店ってダメなのかなぁ?」
兄「なんか変な人ばっかり集まってるっていうか」
妹(幼死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね)
兄「おう、気をつけろよ」
幼「またね~」
妹(お前に言ってんじゃねえよks)
妹「それじゃ」
幼「……」
兄「……」
幼「兄~♪」ギュッ
兄「くっつくなって」
妹友「なんだって?邪魔が現れた?」
妹「現れたって言うか…ずっと前からいたんだけど最近ものすごくお兄ちゃんにくっついて…」
妹友「ほうほう」
妹「取られちゃ嫌だからとりあえずキスした」
妹友「おぉ!やっとできたのか!」
妹「妹友がキスしろキスしろって言うから…」
妹「でもすっごく恥ずかしかったんだからね!」
妹友「よかったね、それじゃあ次のステップだ」
妹「えぇ!?」
妹「ふえぇ!?いきなり夜這いなんてできないよ!」
妹友「幼にお兄ちゃん取られちゃってもいいの?」
妹「それは…だめ」
妹友「大丈夫大丈夫、夜這いっていってもいきなりエッチなことをするわけじゃない」
妹友「お兄ちゃんの理性をだんだん崩していくんだよ」
妹「ほう」
妹友「そうすればお兄ちゃんから抱いてくれるかもしれないよ?」
妹「えっ…ちょっ」
妹友「抱かれるのが嫌なの?」
妹「そんなことないよ!嬉しいけど…でも…」
妹「そ、その…恥ずかしいというか・・・」
妹友「やれやれ」
妹友「いいか?これは兄妹という関係を崩すんだ」
妹友「お兄ちゃんは妹にベタ惚れ!」
妹友「そして幼からお兄ちゃんを引き離す!」
妹友「これでどうだ!」
妹「……妹友、あんた凄いよ」
妹友「えっへん」ハナタカダカ
妹「でも性のことばかりじゃなくて勉強にも目を向けて欲しいな」
妹友「う、うるさい!」
妹(お兄ちゃんをちょっとずつ刺激する…か)
妹(でもどうやればいいんだろ…)
妹(うーむ…)
妹(…とりあえずお兄ちゃんのエロ本を参考にしてみよう)
兄部屋
妹(oh...)ペラペラ
妹(全部妹物…)ペラペラ
兄「ふぅー疲れたぁ」ガチャ
妹「あっ」
兄「えっ」
妹「…」
兄「……っあー!!そそそそれ俺の秘蔵エロ本あばばばばばばばばば」
妹「ご、ごめん!出来心だったんだよ!」
兄「はやく離れろびばばばばばばばば」
妹「ごめんね!ほんとごめんね!」
兄「うっ…ひぐっ…」
兄「うっ」ズキ
妹「私だったらいつでも相手してあげるから…」
妹「したくなったら言ってね…」
兄「」ズキューン
妹「お邪魔しました」
ガチャン
妹(言ったった…)
※妹友にメール打ってます
妹「送信」ピッ
妹(お兄ちゃん…♪)
妹友家
妹友「来たか…」ガタッ
妹友(『作戦変更、寝込みを襲ってもうどうにでもなれ作戦だ』)カチカチ
妹友「送信」ピッ
妹(お兄ちゃんは寝た)
妹(体もきれいに洗った)
妹(作戦の最終確認もした)
妹(私は今夜、女になります)
妹「すぅ……はぁ……」
妹「」ガチャ…
妹「!?」
兄「妹ぉ…妹ぉ…」シコシコ
妹「!…」
兄「はあ…はあ…」
妹「…んっ」パク
兄「んんっ!?」
妹「」ペロッ
兄「ちょっ…なっ…?んっ!」ビクン
兄「おまっ…妹か?」
妹「そうだよ…」
兄「お、おいやめろよ…うあっ!」ビクン
妹「こうして欲しいんでしょ…?」カプ
兄「あうぅ!ちょっ…うぁ!」ビクンビクン
妹「」ジュプジュプ
兄「ぁうぅ!」ビクッ
兄「あっ…!出る…出るッ!」ドビュルルルル
妹「んんっ!?んっ…んぐ…んっ…」
兄「はぁ…はぁ…」
妹「ぷはぁっ…いっぱい出たね…」
妹「私のココも結構キてるから…舐めて…」
兄「」ドッカーン
兄「っ!」ガバッ!
妹「きゃあ!?」
兄「はあ…はあ…」ペロッ
妹「んっ!」
兄「はぁ…」ペロペロ
妹「ああっ!いいよぉ、もっと!」
兄「はぁ…はぁ…」ペロペロペロッ!
妹「あぁん!ああっ!ああああああっ!」ビクンビクン
妹「はあ……はあ……」ビクッビクン
兄「…いいか?」
妹「いいよっ…来て」
兄「わかった…入れるぞ」
兄「うっ」クチュ
妹「んっ…」
兄「っく…」ズズズ
妹「きたぁ…お兄ちゃんのおちんちん…」
兄「我慢しろ…あともうちょっとだから…」ズズ
兄「ほら全部入ったぞ…」
妹「うれひい、あたし嬉しい…」
妹「お兄ちゃんと…一つになれた…」
兄「…可愛い、可愛いぞ妹…」ギュッ
妹「お兄ちゃん…お兄ちゃん…」ギュッ
兄「…分かった」
兄「っ」ズッズッ
妹「はうんっ…ふぁんっ!」
兄「いいぞ…」ズッズッ
妹「あたひもいいよぉ…はぅんっ」
兄「っ!っ!」ズッズッ
妹「うぁっ!いぁんっ!」
妹「そっ、そんなぁ…恥ずかしいよぉ…あんっ」
兄「最高の妹だ…っ」パンパン
妹「あんっ!はぁんっ!」
兄「あぁ…出そうだ…」パンパン
妹「あぁっ!んっ!いいよっ!出してぇっ!」
兄「はぁっ…はぁっ…」パンパン
妹「いっ…あたしもイクっ!」
兄「出るっ……出るぞ妹っ」パンパン
妹「あたしもイクぅぅぅっ!」
妹「はぁぁああんっ!」
兄「うっ…」ビュルッビュクッ
妹「はぁっ、はぁ…」ピクン
兄「はぁ…はぁ…」バサッ
妹「お兄ちゃん…」
兄「妹…」
妹「ちゅっ…ちゅうぅ」
兄「んっ…」
兄「しちゃったな…」
妹「この事誰にも言わないでよ?」
兄「言わないよ」
妹「あと…」
兄「?」
妹「最近、幼さんとくっつぎ過ぎじゃない?」
兄「ああ…」
兄「幼は…最近親が亡くなったんだ」
妹「えっ」
兄「あいつの家は母子家庭でな…あいつのお母さんが女手一人で幼を育ててきた」
兄「でも先日、お母さんが癌で亡くなったんだ」
兄「幼は悲しみでしばらくまともに話せなかった」
兄「だから『何かあったら俺に言ってくれればいいよ』っていったらあのご様子で」
兄「とくに付き合ってるとかそういう事ではない」
妹「なんだぁ…安心した」
兄「うっ」
妹「それならそうと言ってくれれば…」
兄「言えるわけ無いだろ…兄妹なんだし…」
兄「社会の目だって怖いし…」
妹「愛があれば社会なんてどうでもいいんだよ」
妹「実際、やっちゃったじゃん、近親相姦」
兄「うっ」
妹「だからもう遠慮なんていらないよ」
妹「これからは二人で愛し合おう?」
兄「」ズキューン
妹「きゃはっ!お兄ちゃん…」
妹「なんだ…また元気になってんじゃん…」
兄「う…ごめん」
妹「いいんだよ…もう一回戦、する?」
兄「…します」
妹「…じゃあ、来て?
兄「…うん」
~fin~
大層乙であった
Entry ⇒ 2012.02.02 | Category ⇒ 兄弟姉妹「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
弟「お姉ちゃんってよく見たら美人だな」
友「確かにお前の姉ちゃんはクラスでも評判な美人だよな」
弟「実は血繋がってないんだよね」
友「まじかよ!?義理の姉なのか」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1327144033/
弟「お姉ちゃんってよく見たら美人だな」
友「おいおいいくら義理っていってもな」
弟「分かってるよ!一線を越えちゃだめだってことくらいさ!」
友「分かればいいんだよ」
友「何が?」
弟「普通に胸大きいし細いし肌白いしさ」
弟「マジでやばいってこれ」
友「おいおい」
弟「まじかよー」
弟「どん引きだわいい加減にしろよ」
友「いやごめんね。でも俺以外でもしてるやついると思う」
弟「萎えるわーお姉ちゃんよりお前のオカズを知ったことに失望するよ」
友「そうため息つくなよ」
友「ていうかお前はオカズにしてないの?下着とかあるんだしさ」
弟「ねーよ」
弟「お姉ちゃんが美人なのに気づいたのが今のことだから」
弟「彼氏とかいるのかなー」
友「もう高3なんだろ?今はいなくても経験はあるんじゃね?」
弟「うるせーよお前黙ってろよ」
弟「あーもう少し早く気づいたらなー」
弟「俺がお姉ちゃんのジョジョ奪えたかも」
弟「処女だよバカ。変な聞き間違いするな」
友「ごめんごめん。ていうよりもうそんな目線でみてるのか」
弟「まぁな」
友「美人だと気づいたらすぐ性の対象にするとかお前中々すごいな」
友「そうか」
弟「お前の妹は?」
友「いやあのさ?まだ5歳なんだけど?」
弟「え?全然いけるじゃん」
友「は?ふざけんなよお前。マジで怒るぞ」
弟「冗談だって冗談。アハハ」
友「本当かよ」
友「なんだよ」
弟「お前さ。人の姉をオカズにしておいて自分の妹は嫌がるんだな」
友「あたりめーだろバカ」
弟「いやいやおかしいって。だって考えてみてよ。人の姉を許可なくオカズにしておいてお前の妹をオカズにしてはいけないっておかしくね?」
友「歳が違うだろ」
弟「いやいや関係ないって。元から人のストライクゾーンなんて人それぞれなんだから関係ないだろ」
友「いやいや常識的に考えてだな」
弟「この場合の常識ってなんだろうな」
友「は?」
弟「人の姉をオカズにしてるのに常識を語る奴ってなんなんだろうな」
友「え?なに?お前怒ってるの?」
友「いやさ、だって5歳だよ?お前の姉ちゃんは18だろ?」
弟「いや、それはお前の物差しで測ってる場合だろ?」
友「は?何物差しって」
弟「いや例えだって」
友「認めたくはないけどお前のお姉ちゃんをオカズにしたから認めざるをえないな」
弟「だろ?だからお前の妹をオカズにしたって何にも問題ないわけだろ?」
友「はぁ…じゃあお前さ」
弟「なに?」
弟「え?」
友「いやだから俺の妹で性的興奮するのかって話」
弟「いやしないけど」
友「だろ?ていうかお前殴るよ?」
友「なんで興奮もしないのにオカズにしようとするの?ねぇなんでなの?」
弟「いや何か仕返しっていうかやり返しっていうか」
友「姉が犯されたわけでもなくオカズにされただけで友達の妹オカズにしたがるって…」
友「だけどお前はどうだ?興奮もしてないのに仇の為にオカズにするなんておかしくないか?」
弟「ごめん…」
友「分かればいいんだよ。俺もオカズにしてごめんな」
友「なんだよ」
弟「犯された…」
友「は?」
弟「俺の姉ちゃん犯されたよ…」
友「はい?」
弟「最悪だよ…」
友「え?ちょっと待って説明して?」
友「いやいやそれはおかしいって。だったらお前だって俺の妹」
弟「いやまだしてねーし。未遂だし」
友「え?何それ絶対におかしいって」
弟「おかしくねーよ妄想レイパー」
友「おかしいだろ!っていうか変な名前でよぶなよ」
弟「いや…処女膜が再生するわけじゃないし」
友「それは俺じゃねーって!ていうか憶測だろ!」
弟「お前から経験してるって言ったんだろ」
友「憶測だって!」
弟「ん?」
友「ここからどうやって出るんだよ」
友「いや、ただの現実逃避じゃん。早い所でないとここで死ぬぞ」
弟「分かってるよ」
友「マンホールに落ちたなんて馬鹿みたいだよな」
弟「さっきから声出しても誰も来ないもんな」
弟「今は日が沈んでないからいいけど夜になったら真っ暗だよな」
友「よりによって二人とも携帯の電池ないなんてな」
弟「俺喉疲れたわ」
友「しっかりしろよ。とにかく所持品の確認しようぜ。暗くなると見えなくなるからさ」
弟「オッケー。これ俺のバッグな」
・携帯電話(電池切れ)・財布(小銭のみ)
・定期入れ・教科書・ノート
・ペンケース・ハンカチ
友のバッグ
・携帯電話(電池切れ)・トランプ
・新聞・ノート・ペンケース・ライター
・靴紐・鍵
どういうことだってばよ
友「こういう時には役にたつだろ?」
弟「まぁ灯りを灯すマッチ、寒さも凌げる。暇つぶし用のトランプ、新聞。」
友「中々だろ?」
弟「どうやって出る?」
友「靴紐が何かに使えそうだな」
友「お?どうした」
弟「ノートに落ちてしまった。助けてくれと書いて上に紐をつけて投げ込むんだ!」
友「紐で繋がってるから風で飛ばないし信じられるな」
弟「そういうこと!マッキーでデカく書けば目に止まるだろ」
友「よし!書こうか」
弟「あ、そうか」
弟「あ!閃いた!小銭をノートで包んでテープで止めて重石にすればいいんだ!」
弟「俺の財布には小銭がクソみたいにあるからな!」
友「おお!お前結構頭いいな!」
弟「じゃあ、頼むぞ」
友「任せろ!」
友「野球部球拾い王の実力見せてやるぜ!!」ビューン
弟「いったー!」
友「まじかよ」
弟「しかもテーピング崩れて小銭が落ちてくるぞ!」
友「うわあああ!!!」ズガズサズガ
弟「こいつ使えねえな」
弟「おいおい勘弁してくれよ。野球部のお前が無理なら希望ないじゃんか」
友「いや、次はいける!」
弟「テーピングの強度上げるか」
友「テープも残り少ないな」
弟「セロハンだから強度は無いんだな」
友「よし行くか二投目!」
弟「届いても乗せなきゃ意味ないからな」
弟「おおっ!」
友「越したっー!!!」
弟「風も吹いてるぞ!」
友、弟「乗れええええっ!!!」
友「だああああああああっ!!!」ズガズガビシズシ
友「な、中の小銭を減らそう」
弟「いや、だめだ」
友「なんでだよおおおおおっ!!!」
弟「中の小銭の減らして風で乗るようにするってことは乗っても風で落ちる可能性があるっていうこと」
弟「元から重石の役割なんだから風に頼るのはよくない」
友「ち、ちくしょう…」
弟(友のダメージが大きい…!)
弟「友、大丈夫か」
友「あ、ああ…」
弟(それに加えて小銭の雨…!今友のダメージはとても大きい筈…!)
弟「高さはクリアしてるんだ!後はどうやって上に乗せるか!」
友「ち、ちくしょう…」
弟「まずは小銭のダメージを抑えよう」
弟「袋をノートの紙から俺のハンカチに変えてクリップでノートの紙と固定させよう」
弟「これで小銭の落下は防げるはず」
友「日が暮れる前に上に乗せないと!」
弟「俺が考えるのはまずSOSサインを
垂直に飛ばす」
弟「それからその垂直に飛んだサインに何かをぶつけて軌道をズラし乗せるしかない!」
友「それは越えるだけじゃ無くもっと高く飛ばさなくてはいけないのか」
弟「そうだ。頑張ってくれ」
友「でも、何をぶつけるんだよ。固くて小さいものなんて無いぞ」
弟「ある。携帯電話だ」
友「なるほど!」
友「携帯は二個しかないから頑張ってくれよ」
弟「靴紐はスペアの一個だからサインにしかつけられない。携帯に紐はつけられないから下手したら消失してしまう」
友「よし!行くぞ!」
弟「ああ!3、2、1のサインでいくぜ!」
友「おお!」
弟、友「3!!!!」
弟、友「2!!!!」
弟、友「1!!!!」
ビュン!
友「おいいいいいいいっ!!!」
友「何で同じタイミングで投げてるんだよおお!!!」
弟「やっちまった!」
弟(サインに携帯をぶつけるんだからタイミングはサイン→携帯なのに!)
友「凄い高さで飛んでいる!」
弟(二つとも同時に凄い高さだ!マンホールの上は越した!)
弟「!!!!!」
友「うおおおお!!!!」
友「すげええええ!!!!」
友「でも、何でだ!」
弟「分かったぞ!」
弟「ほぼ、同時にマンホールを越した二つの物は風に当たったんだ!」
弟「当然、重石がついているSOSサインは風じゃビクともしない」
弟「けど、携帯電話は違った!」
弟「携帯電話は風に流されて軌道が変わったんだ。そして携帯はSOSサインにぶつかって上に乗ったんだ!」
弟「あ、携帯が落ちてくる!」
ひゅーーーー
ガツン!
弟「友ももももおおおおお!!!!」
友「………」
落下してきた携帯は友の頭に直撃した
ダメージを前から受けていた友は倒れてしまった
弟「ふざけんなよ!起きろよおお!!」
弟「いくらでもお姉ちゃんオカズにしていいからよおおお!!!」
友「………」
弟「ともおおおおお!!!」
弟「だけど乗ったんだ!待ってろよ!今から人が来て助けてくれるさ!だから死ぬなよ!」
友「…………」
弟「なんでだああああ???」
弟「サインが落ちてくるっ!!」
弟「あっ!クソガキが蹴りやがった!!」
弟「待てやクソガキっ!!!人を呼べっ!!!」
弟「うぐあああああああっ!!!!!」
弟「がああああっ!!!!」
弟「ちっちくしょおおおあおおっ!!!!!」
友「いってええええっ!!!」
弟「あ、起きたか」
友「な、何するんだよ」
弟「あ、ごめんちょっと怒っちゃって」
友「あ、それよりもサインが!」
弟「そうなんだよ。クソガキが蹴りやがった」
友「これでまた振り出しかー」
友「あれ、おい!見ろよ!」
弟「あっ!人が落ちてくる!」
弟「避けなきゃ!」
ドスン!
弟「おい、ブタ吉じゃねーか」
ブタ吉「い、痛いブヒ」
友「ブタ吉が落ちてくるなんてな」
ブタ吉「え?どうしてお前らがいるブヒ?」
弟「俺達も落ちたんだよ」
友「そう」
ブタ吉「よ、よかったぁ」
弟「こっちもよかったぜ」
ブタ吉「あっ分かったブヒ」ブヒ
ブタ吉「あ、あれ?無いブヒ」
友「は?もっとちゃんと探せよ」
ブタ吉「な、ないブヒ…」
弟「ま、まさかお前!今日に限って忘れたのか!?」
友「ありえねえよコイツ!」ガスッ
ブタ吉「痛いブヒ!」
ブタ吉「あ、でも食べ物はあるブヒ」
友「パン一つじゃねーか」
弟「お前の分はねーぞ」
ブタ吉「そ、そんな…」
弟「そう!どうやってここから出るんだ!」
ブタ吉「ど、どうしましょうかね…」
友「肩車で誰か一人が出て誰か呼ぶっていうのはどうだ?」
弟「身長の高いブタ吉が来たとしても人数が足りない」
弟「後3人は必要だ」
友「くっそー」
友「お前なんて事考えるんだよ!」
弟「いや、でも的をえている」
弟「誰かが落ちてくれば肩車で繋げる!」
友「落とすって俺達が落ちているんだぞ」
弟「靴紐を飛ばして足をかけるしかない」
友「それをブタ吉が受け止めてか」
弟「その人の携帯電話で出られるかもしれないし、やるしかないよ」
友「ブタ吉!肩車だ!」
ブタ吉「は、はいブヒ」
ひゅん
友「よしっ!手応えあった!」
弟「落ちてくるぞー!」
ドスン!
男「い、いてえ…」
友「大丈夫ですか?」
男「え?どういうことですか?」
友「私達も落ちてしまっているんですよ」
弟「携帯電話があれば連絡できますね」
男「あっあります」
男「あっ!壊れてる!」
ブタ吉「真っ二つ…」
友「ちくしょう!!」
弟「いや、でもあと二人だ。この人に説明しよう」
弟「かくかくしかじか」
男「え?じゃあ故意で私を落としたんですか?」
弟「本当にすいません」
男「まぁ仕方ないですよ…次の人の携帯電話に期待しましょう」
ホームレス「……」
弟「携帯電話、持ってませんよね?」
ホームレス「はい…」
弟「うん、仕方ない」
友「あと、一人だ!」
弟「オーケー任せろ!」
弟「ん?あれって」
友「あ」
弟「姉ちゃんじゃん!」
友「いや、落とせよ?」
弟「いやだよ!」
友「いやいや」
友「いや、この場合誰とか関係ないだろ!」
弟「あるだろ!じゃあお前の妹が来ても落とすのか?」
友「俺の妹は背低いし、携帯持ってないから普通にパスだろ」
弟「はあああああああ????」
弟「いや、やめろよ!」
弟「ありえねえだろうが!!」
友「なんでだよ!助かることが優先だろ!」
友「ここは人通り少ないんだぞ!」
弟「いやだあああ!!」
友「貸せよ!」
弟「あっ!」
ドスン!
姉「いてて…」
弟「姉ちゃん!」
姉「お、弟?なんで弟と友達がいるの?」
弟「俺達も落ちたんだよ!」
弟「じゃあ、携帯電話」
姉「あっ今持ってない」
友「え?」
姉「散歩してただけだから…」
弟「はぁ…」
弟「よし」
連結!
弟「もう少しで届くぞ!」
友「ブタ吉!もう少しピシッと立て!」
ブタ吉「わ、わかったよぉ!」
姉「弟!」
弟「届いたああっ!お姉ちゃんのおかげで届いたぁ!!」
ブタ吉「いや、僕の」
弟「あっ!さっきのクソガキ!」
弟「お前の妹かよ!ちゃんと躾しろ」
弟「蹴ってきてる!!!お前の妹蹴ってきてるぞ!」
弟「やめろおおお!!」
ブタ吉「も、もう限界だよお」
弟「崩れるうう!!!」
弟(妹をおいはらわねば!何か武器は)
友「俺のトランプを使え!」
弟「そうだ!トランプがあった!」
弟「くらえ!」シュビ
弟「ヒソカ!俺はヒソカだ!」シュビシュ
妹「い、痛いよお!」ウワアアン
友「ああっ!俺の妹泣かせやがったなああああ!!!」
友「じゃあお前の姉も!」ガスッガスッ
姉「痛い!やめて!」
弟「くううおおおらああああっ!!!」
弟「何やってんだよ友!!」
友「うるせええ!!俺の妹をよくも!」
ブタ吉「崩れちゃうよ!」
男「や、やめてください!」
ホームレス「……」
姉「私のことはどうでもいいんだね」
弟「ち、ちがうって!ああああめんどくせええええ!!!」
友「ユルサン…ユルサン…」ガスガス
弟「く、狂ってる!」
姉「も、もうダメっ!」
男「崩れる!」
弟「俺から友までは一人分空いてる!直接攻撃はできない!」
弟「!!俺はヒソカだ!くらえトランプ!!」シュッ
友「めがああああっ!!!」
弟「しまった!やりすぎたか!」
男「こいつ手をはなしやがった!」
ブタ吉「崩れるっ!」
弟「と、届かないっ!」
弟「ともおおおお!!!しっかりしろおおお!!!」
友「はっ!」
弟「しっかりつかめえ!!」
友「正気に戻ったぜ相棒!すまなかった!」
弟「戻ったか相棒!」
男「セーフだ!いける!」
姉「立て直ったわ!ブタ吉さん!もう一回ピシッとたって!」
ブタ吉「う、うううおお!!」
弟「ナイスブタ吉!」
弟「と、届くぞ!俺達の未来へ!」
友「いけええええっ!!!」
ガスッ!!
弟(この蹴り音は友の蹴りそのもの…!だけどこれは友ではない!)
弟「友の妹の蹴りだ!!!」
男「バランスがっ!」
妹「ケヘヘヘヘヘ」
妹「ケヘヘヘヘヘ」
弟「蹴りは完全に友の物を受け継いでいるる…!しかもこの歳でこの蹴りは天才的だ!」
友「やめろ妹!プリン食べたのは謝るから!」
男「くそおっ!プリンのせいで!」
男「両手が空いているのは弟くんだけだ!」
弟「くそおっ!怒ったぞ!」
友「弟!やってしまって構わない!」
弟「うおおおおおおっ!!!」
弟「来たな蹴りっ!受け止めてやるぜっ!」
弟「震えるぜハート!」
弟「燃え尽きるほどヒート!」
弟「刻むぜ血液のビート!」
弟「ブルーオーバードライブ!!」ドゴオオオッ!!
友「波紋の流れる音だ!手応えあったな!」
妹「う、うぐぐぐ」
男「妹を倒したぞー!!」
友「弟っ!お前だけでも上へ上がれっ!」
弟「届いたっ!」
男「崩れるぞおっ!」バラバラ
姉「きゃあああああっ!!」
ブタ吉「うわああああ」
妹「よ、よくも…」
弟「まだ立ち上がる体力があったか!」
弟「トランプをくらえっ!」シュッ
弟(オーラを込めたトランプ!当たれば一撃だ!友よ…すまない)
妹「当たるかっ!」
弟「かわされたっ!」
弟「ぐわあおっ!!」
弟(あぶねえ…落ちる所だった…)
弟(何て野郎だ…俺の全オーラを込めて放ったトランプ数枚を交わすとは)
弟(そしてオーラで守られていない俺の身体にオーラを込めての蹴りっ!)
弟(ギリギリでオーラを込めたが効いたぜ…)
弟「友と同じ強化系か」
妹「また落としてやるっ!」シュッ
弟「何度も当たるかっ!」
男「今上で戦っているぞ!」
ブタ吉「弟が落とされればもう希望はない」
友「弟…頑張ってくれ」
弟「攻撃がなんて早いんだっ!」
弟「避けるので精一杯だ!攻撃なんててまきないっ!」
妹「ケヘヘ!攻撃する隙を与えないのさ!」
弟「なら!お前の動きを止めるまでだ!」
男「蹴りが入った!」
妹(オーラで受け止めたかっ!ならもう片方の足でっ!)シュン!!
男「ふんっ!」パシッ!!
妹「受け止めたっ!?」
妹(なぜだ?一発目の蹴りを受ける為のオーラを消費したのだから受け止められるはずがないっ!)
男「フフフ、俺は全オーラを腕にこめたのさ」
妹「なっなんだとっ!じゃあ一発目は素の防御で受け止めたというのか!?」
男「その通りだ!もうにげられないぜ!」
妹「逃げられないのはお前の方だっ!」
妹(ここからラッシュを叩き込めるっ!)バババ
弟「どうかなっ!」シュシュッ!!
妹「後ろからカードがっ!」
弟「バンジーガム。ガムとゴムの両方の性質を持つ。隠で隠しておいたのさ!」
妹「くそ…」バタッ
弟「た、倒した!」
友「勝ったのか!弟!」
姉「よかった!流石私の弟よ!」
ブタ吉「すげえブヒ!」
男「中々の戦いでしたね」
ホームレス「……」
友の妹は軽い怪我ですんだみたいでよかった
姉とはより仲良くなれたし、俺は更に強くなれた
あのマンホールも、悪いことばかりではなかったと思う
友「で、どうなのよお姉ちゃんとは」
弟「うっうるせー!」
終
最初は姉と弟のエロssにしようとしたのですがよくよく考えれば自分にはそんな文章力が無いことに気づき時間稼ぎの予定変更をしている内にこんなssになってしまいました。
スレタイで期待された方は本当にすいませんでした
おい文章力無くてもいいから書け
早く練習しなさい
乙
Entry ⇒ 2012.01.28 | Category ⇒ 兄弟姉妹「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
友「女になるらしい」
友「いや、だから、俺が女になるらしいんだよ。海外のニュースとか見なかったか?男が女に変態したってやつさ」
男「あー…見たことある」
友「この前病院いったらさ」
男「何で急に病院なんていったんだよ」
友「ん?ああ、何か最近ココの調子が悪くてさ泌尿器科に行ったんだよ」
男「お…おお…そうだったのか」
友「そしたら何か精密検査受けることになって、デカい病院に行ってさ」
男「それでわかったということか」
友「そういうこと」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1327485080/
友「女になるらしい」
友「別に、女になるだけだろ?」
男「結構大変なことだと思うんだけどな」
友「そうか?」
男「俺がお前の立場だったら、もっと焦ってると思うぞ」
友「そうだな。それなら面白そうだったな」
男「いや、面白い面白くないの問題じゃないだろ」
男「今度学校に来るときは、もう女になってるってことか」
友「なんでも、前例だと性格や考え方まで女っぽくなるらしいが、そうなってもよろしく頼むわ」
男「ああ、わかったよ」
友「じゃあ、またな」
男「おう、またな」
友「おはよっ」
男「………お、おはよう。予定より帰ってくるの早かったな」
友「ん?一発でわかかったのか。なんかつまらないな」
男「何年の付き合いだと思ってんだよ。それに男子制服着た女子なんて、この学校にいないからな」
友「あー、そこでバレたのか。でもスカートははきたくなかったからな」
男「だろうな。流石のお前でもいきなりは抵抗あるだろ」
友「いや、寒いだろ」
男「夏だっだったらスカートだったってのかよ」
友「かもな」
友「ん、ああ、この一週間は準備期間みたいなものだったからな。それに家にいたくなかったし」
男「ああ…お前の兄さん受験生だったしな」
友「試験は終わったぞ」
男「あれ?でもまだ……」
友「もう3月だぞ。何言ってんだ、お前」
男「お前んとこの親はお前の兄貴の勉強に力いれてたもんな」
友「そうそう、兄貴も親父達の期待に応えるべく頭おかしくなりそうな位してたしな」
男「でも受験は終わったんだろ?一段落ついたことだし、居づらいってことはないだろ」
友「俺に構ってくるんだよ……前まではほぼ野放し状態だった俺に執拗にさ……」
男「いいじゃん。お前の一大事なんだし」
友「受験終わったから、兄貴まで俺にまとわりついてくるわけ……」
男「何が駄目なんだよ」
友「苦手なんだよー…そういうの…」
コンコン
友「ん?」
ガチャッ
兄「お…おっす、どうだ調子は?」
友「別に問題ないな」
兄「何か欲しいものとかないか?俺これからバイトしようと思うんだけどさ」
友「バイト……?親父達がよく許したな」
兄「勉強さえしっかりするならいいってさ」
友「でも急になんでだよ」
兄「いや…今まで構ってやれなかったからさ………」
________
友「てな感じで気持ち悪いんだよ」
男「いや、だから何が駄目なんだよ」
男「他にも?」
友「お兄ちゃんって呼んでくれとかさ」
男「別に呼んでやればいいじゃん」
友「嫌だよ。あとは、もっと女の子らしく話しなさいとか」
男「あー………ってそういえば、お前」
友「なんだ?」
男「女になったら性格も女っぽくなるんじゃなかったのか?」
友「あー、うん、それな」
男「お前、変わってないじゃん」
友「難しい話でよくわからなかったんだけど、女の体で男の心だと普通の人はストレス感じるらしいんだってさ。
それで、そのストレスから心を守るために自然と女っぽくなるとか」
男「お前はストレスを感じなかったと」
友「それは知らんが、どうでもいいとは思ってるな」
男「面白い面白くないは別として、お前はお前ままだってことなんだな。安心したわ」
友「そう簡単には変わらないって」
男「身体は変わってるだろ」
友「そうだったな……しかし、学校に来たらもっと周りから絡まれると思ったんだが、意外と皆大人しいな」
男「先生方の教育のおかげだ。今お前はとても精神が不安定な時期らしいから、あまり騒ぎ立ててやるなだってよ」
友「そうか。まぁ、絡まれるのは嫌いだから、結果よかったけどな」
男「皆内心、お前と話たくてウズウズしてるだろうな」
友「うわー…それは嫌だな…」
友「グロかったな」
男「グロかった?どういう意味だ」
友「肉片が飛び散ったよ」
男「え?お、おい!大丈夫なのか?」
友「大丈夫大丈夫。痛かったけど」
男「本当に大丈夫か?」
友「大丈夫だって言ってるだろ。この通り身長が縮んでるだろ?物理的にそのぶんが無くなったんだよ」
男「……そうか、女になるって大変なんだな」
男「わー、そういう生々しいの聞きたくない」
友「そうか?まぁいいや」
男「その後の話聞かせてくれよ」
友「その後?その後は普通に寝てただけだよ。ああ、病室は豪華な個室だったな」
男「マジで?」
友「なんか、国が全面的にお金だしてくれてさ。ほら、日本で女になったのって俺が初めてだろ」
男「なんか凄いな……」
友「この制服や新しく買ったものも国から貰った金だし」
友「お前まで兄貴みたいなこと言うのか…」
男「いや、だってずっとその性別なんだろ?ずっと俺のままってわけにはいかないだろ」
友「……そうだな。まぁ、社会に出れば目上の人は俺とか言えないだろうし、一人称くらい変えてみるかな」
男「そうだな」
友「じゃあ、これからも私をよろしく」
男「お……おう」
友「照れたのか今」
男「う………うん」
男「皆、何て声かけたらいいかわかんないんだよ」
友「普段から話し合う中でもないしな」
男「そう寂しいこと言うなよ」
友「私にはお前しかいないよ」
男「………」
友「そう照れてくれると、狙ってやったかいがあったってもんだよ」
男「……変わんねえな、お前」
友「ははっ、とりあえず今日は久しぶりにお前の家に遊びにいくことにするよ」
男「え……来るの?」
友「何で嫌がるんだよ」
男「女の子なんて家にあげるの初めてなんだよ」
男「俺はお前と違って繊細なんだよ。今だってなんとかいつもの感じで話しているけど、内心ドッキドッキだから」
友「そうか」ペタッ
ドキッドキッドキッドキッドキッ
友「本当だ。はちきれん勢いだな」
男「………だからさ、そういうボディタッチやめてくんないかな?」
男「…真面目にやめて」
友「私はいたって平常心なわけだけど」
男「凄いよ……素直に感心するよ」
友「確かめてみる?手で」ポンポン
男「いやいやいやいや」
友「急拵えだからたいして大きくないが、一応形はしっかりしてるから」
男「だから、触らないって」
友「だってさ、家に居たくないんだよ。家族がしつこいから」
男「愛されてるってことだろ」
友「女になったとたんに何だぜ。それまで放っておかれていた身としては納得できない」
男「寂しかったんだろ?素直に家族愛を感じに帰れよ」
友「いや、寂しくはなかったぞ。自由にやれて楽だったし」
男「知ってるよ………ただ今は家に来てほしくないからそう言ったんだよ」
男「え?なに?」
友「やっぱり、男と女の間になんて友情なんてあり得なかったのね!」クルッ
男「……なにこれ」
友「………」
男「………」
クルッ
友「…引・き・止・め・ろ・よー。友情ポイントマイナス1な」
男「なんだよ、今の小芝居」
友「面白いな。お前の母さん」
男「面白くねえよ…」
友「お前の家では、私はお前の恋人になってるみたいだな」
男「小学校前からの付き合いだからってな……」
友「元男ってところは気にしないんだな」
男「なんであの家族の中で俺だけこんな損な性格なんだろうな……」
男「急にどうした」
友「お前の反応が面白くてな」
男「そんな理由なら止めてくれよ……寒いんだろ?」
友「まだ寒いが、もうすぐ春だ。それよりお前の反応を楽しみたい」
男「やめろよ………ただでさえ可愛いんだから」
友「……今なんて言った?」
男「……何も」
友「俄然やる気が出てきた。頑張ってお目かしするぞ」
男「聞こえてただろ」
友「当たり前だろ」
友「どやっ」
男「あー…可愛い可愛い…似合ってんぞ」
友「可愛いって言われると案外気分がいいもんだな。女子が必要以上におめかしするのもわかる気がするよ」
女「あのー…」
友「何か用?」
女「女の子になってみた感想とか聞いていいかな?」
友「昨日まではどうとも思わなかったけど、案外いい気分だよ」
男「ん?俺にも?」
女「二人は付き合ってるんだよね?」
男「………は?」
友「恋人関係かということなら違うな?」
女「で、でも…仲良いし…」
友「友達だからな」
男「親友だし」
友「むしろ心の友だな」
女「…えー、そんなことないでしょ?」
友「この子は何がしたいんだ?」
男「俺達が付き合ってるってことにしたいんだろ」
友「ん?友達ってのは恋人より下なのか?」
男「俺はそうは思わないけどな」
女「じゃあ二人はどういう関係なの!」
男「世界で一番大切な友達」
友「多分一生来の友達かな。恋人なんてのは場合によっては数週間すら保たないもんだろ?それとは違うよ」
女「じゃ、じゃあ、相手に恋人ができたらどう思う?」
友「わからんな。互いに恋人いたことないし」
男「今のお前は可愛いからすぐ恋人くらい出来るんじゃないか」
友「へへへ、そんな褒めるなよ」
男「まぁ、イチャついてる感じは俺もするよ」
友「まぁ、それなりに狙ってやってるからな」
女「お互いに好きなんでしょ!そうなんでしょ!」
男「なんでそんなに必死なんだよ……」
友「はいはい大好き大好き」ムギュッ
男「あふっ……」
女「ほら抱きついた!ほら!皆見てほら!」
男「…こ…こういうのはまだ馴れないな」
女「なにやってんの!抱き返してあげないと!ほらっ!」グイグイ
男(……なにこれ)
ギュー ギュー
友「おお……これは幸せかもしれん……あれだな、女脳と女神経のおかげか」
男「…お前は恥ずかしいとか思わんのか」
友(まぁ、いいじゃん。楽しいし幸せだし、友達のままでいてくれるのなら恋人も悪くはない)
男(アイコンタクトでここまで意思が伝わるとは……)
友(お前が不愉快でないなら、しばらくこのままでいたい)
ギュー…………
パチパチパチパチ
男「おい、この拍手何なんだよ!」
友「本当に神経質だな」
男「お前がノー天気すぎるんだよ」
友「さて、今日もお前の家に行くとしようか」
男「駄目だな」
友「なんでだよ」
男「今日はお前の家だ」
友「えー………」
男「もう兄貴の受験も終わったんだろ?別にいいだろ」
男「何時までも苦手じゃ駄目だろ。それに」
友「それに?」
男「昔はこういう風に、俺の家で遊んだら次はお前の家だったろ?」
友「あー…昔からインドア派だったな私達…」
男「そういうことはあまり言うな」
男「そんな金ないだろ俺もお前も」
友「今日は家に帰りたくないの……」
男「そんなに嫌なのか?」
友「おい、今の演技はスルーか」
男「嫌なのか?」
友「嫌っていうよりは馴れないんだよ」
友「お前、女の部屋に入るの初めてだろ」
男「そうなんだよ。緊張してんだよ」
友「まぁ…部屋に関してはほぼ変わってないけどな」
男「でも、お前の部屋きたの久しぶりだよ。前にきたのいつだったかな」
友「兄貴が勉強漬けになる前だからなぁ」
コンコン
兄「入っていいかい」
友「噂をしてたら、きたか……」
男「お前の兄貴に会うのも久しぶりだな。なんか緊張してきた」
男「あ、はい。お久しぶりですね」
兄「何を話したらいいんだろうか……」
友「話すことないのに入ってくるとはな」
男「いや、別にいいだろ。兄弟なんだし」
兄「いいんだよ。しばらく自分のことで手一杯だったし……兄っぽいことなんてしばらくやってないし」
男(おい、可哀想だろ。なんとかしてやれよ)
友(嫌だよ…第一何をすれば……)
友(……マジで?そんなことしなくちゃいけんの?)
男(お前、小芝居得意だろ)
兄「うん、じゃあ俺は出てくよ」
友「待ってお兄ちゃん」
兄「何かな?……………え?今……」
友「お兄ちゃん…今まで勉強大変だったでしょ?」
兄「いや、別に…それより、お兄ちゃんて……」
兄「う、うん。頑張るよ」
男(さぁ、兄貴の胸に飛び込んでこい)
友(……はぁ?嫌だよ)
男(幸せを抱きしめて来いよ。抱きしめられるの幸せだって言ってたじゃん)ポンッ
友(……お前、覚えとけよ)
友「お兄ちゃん!」ガバッ
兄「えっ?」
ギュー
友「お兄ちゃんのこと大好きだよ…」
兄「……う…うん、ありがとう。俺も大好きだよ」ポンポン
友(………はぁ?)
男(お前、昔はお兄ちゃんっ子だったしな)
友(昔のことだよ)
兄「さてと、なんか恥ずかしいとこ見せちゃったね」ナデナデ
友(恥ずかしいと思うなら頭を撫でるな)
男「いや、なんか家族愛っていいなって思いました。自分一人っ子なんで」
兄「なに、すぐに俺の弟になるんだし」
男「あ…はい?」
友「……はぁ」
兄「え?そういうのじゃないの?」
男「まだそういう関係じゃないんです」
友「……面倒くさいなこいつ」
兄「あ、あれか、恋人未満友達以上とかいうアレかい?」
男「なんて言うんでしょうかね?妹さんのことは大切に思ってます。友達として」
友「恋人以上の友達だってことだ馬鹿」
兄「よくわからないこど……君に妹のことを任せておけば間違いないってことだね。安心したよ」
男「お前が落ち込んでるとは珍しいな」
友「これも女になったせいなのか?」
男「関係ないだろうな」
友「で、これから私達はどうなるんだ?兄貴から親に話はいくだろうし、あの親共なら喜んでお前を迎えるだろうし」
男「両家公認カップルになってしまったな……」
友「クラス公認でもあるしな」
男「……話飛びすぎじゃないか?」
友「じゃあまずは友達から」
男「もう友達だろ」
友「掛け替えのない?」
男「唯一無二の」
友「絶対無敵の?」
男「それは何か違う。にしても、俺達気持ち悪いくらいに友達だな」
友「付き合っても、結婚しても友達だろうな」
男「それはそれでいいんじゃないか?」
男「何がだよ」
友「セックスしたらセフレになるじゃん」
男「おまっ、おいっ……」
友「セフレは駄目だろ。体だけの関係っぽいから心の繋がりが感じられない」
男「け、結婚したら問題ないだろ。友達夫婦とか言うし」
友「それは友達っぽい夫婦じゃなくて、夫か妻の友人の夫婦って意味じゃないのか?」
男「まぁ、いいじゃん。お前可愛いし」
友「ははっ、今それ関係ないじゃん」
友「流石だな。男同士だったころはホモ疑惑が立っただけはある」
男「よし、取りあえずこれからのことを考えよう」
友「これから?」
お前の兄貴に勉強教えてもらってだな。
嫌だよ。
一緒にいい大学入ろうぜ。
そうだな、夫にはいい会社はいってもらわんと。
安定するまで共働きな。
おーおー、任せろ任せろ。
友情エンド
ラブラブエンドじゃないですかー
ブーン ブーン
友「メールだ。あいつからか……」
件名 本当に女になった
本文 本当に女になってしまった。頭の中がごちゃごちゃで何をしたらいいかわからない。
助けて。
友「……親友が助けを求めているな。助けるしかないだろこれは」
元男「………」
友「随分とかわいらしくなったな」
元「どうしよう……」
友「オスからメスになる際に優れたメスになるってのは生存競争的には正解なんだろうな」
元「私…本当に女になっちゃった……」
友「なんか口調おかしくないか?」
元「そうなの……気持ち悪いでしょ……」
友「いや、あざとすぎず丁度いいと思うよ」
友「とりあえず、気持ちの整理をする期間はあるんだ。場合によってはもっと休めるだろうしね。
落ち着いてから学校に来ればいいよ」
元「うん……」
友「俺も毎日来てやる」
元「ありがとう」
友「何言ってんだ。友達だろ?」
男の場合はストレスが掛かったんだな
元「落ち着かない」
友「そういうもんなんだ」
元「だって……無くなるし……有るし…」
友「何が?」
元「それは……」ゴニョゴニョゴニョ
友「聞こえない」
元「………馬鹿」
友「………ヤバいなんかやりづらい、この子」
友「機嫌直してよ。むしろこんぐらいで機嫌悪くしないで」
元「……そうだね。友達だもんね」
友「じゃあさ、女になるときってどんな感じだった?」
元「なる時?……………ウプッ」
友「どうしたの?口元おさえて?顔色も悪いよ」
元「………」フルフルフル
友「ああ、思い出したくないんだ」
元「………」コクコクコク
友「悪かったね。そんなに嫌なことだったとは思わなかったよ」
元「………」
友「ごめん。まだ、気分悪いみたいだな。吐きたいなら吐いたほうがいいよ」スリスリ
元「……大丈夫。なんとか。なった後は大したことはなかったよ。」
友「そうか」
元「あ、病室が凄い豪華だったのは覚えてる。ちょっと嬉しかった」
友「よかったな」
元「うん、国から助成金だとかいうのが出てるらしくて、それで色々と」
友「学校の制服とか衣類も?」
元「うん、スカートはくの初めてだからドキドキする」
友「じゃあ下着も女物の買ったんだ」
元「…う…うん、初めてスリーサイズ計ったよ」
友「生理用品も忘れてないよな?」
元「………」
友「人によって重い軽いがあるらしいね。軽いといいね」
元「………」
友「え?なんで怒ってるの?何か変なこと言った?」
友「あ、はい」
元「あ、違う。多分私が男のままでいたとしてもおかしいと思うよ、今の発言は」
友「……今の発言って?」
元「女の子に下着の話とかしちゃダメ。生理用品の話とかも」
友「でも、大事なことだろ?」
元「…わかってる。あなたがそういう人だってのは昔からわかってるけど」
友「うん」
元「……なんて言ったらいいの?」
友「わかった。わかったから泣きそうになるな親友」
元「……ありがとう」
友「ほら、泣くなよ。可愛いんだから」
元「…あ……うん…」
友「なんか顔赤いな。熱あるのか?」
元「え?ちがっ、違うよ」
友「青くなったり赤くなったり信号機みたいだな」
兄「うーん…取りあえずデリカシー無さ過ぎじゃないかい?」
友「デリカシーねぇ」
兄「あの子にとって今一番頼れる存在は友達である君なんだから、しっかりしてやらないと」
友「しっかりと言っても具体的に何をしたらいいんだよ」
兄「人の気持ちを理解してあげないと」
友「……あいつが男のときだったら、何を考えてるかだいたいわかったんだけどな」
兄「今は女の子なんだ。仕方ないね」
友「難しいもんだな」
兄「それはそれと、昔みたいにお兄ちゃんって呼んではくれないのかな?」
元「でも、お兄さんと仲直りできてよかったね」
友「別に仲が悪かったわけじゃない。ただあいつが自分のことで手一杯だっただけだしな」
元「いいなー…私もお兄さん欲しかったなぁ」
友「別にそんな良いものじゃないって」
元「流石に馴れてきたよ。この体にもね」
友「風呂とかトイレとかも、もう大丈夫ってことか」
元「もう………相変わらずだね。私の友達は」
友「ごめん、つい」
元「そんなに気になるの?私がお風呂やトイレに入るときの様子が」
友「興味はある」
元「……お風呂とかはもう普通に入れるよ」
元「ひとつ……気になることはあるけど……」
友「何?」
元「お風呂に入ると嫌でも気になっちゃうの……ちっちゃいのが……」
友「えーっと………わかった。胸の発育具合が気になるんだな」
元「……やっぱりちっちゃいと思う?」
友「気になるもんなのか?」
元「わかんない……私が元男だったからかもしれないけど」
友「まぁ、最初の変態のときは時間的にもその位の大きさまでにしかならないんだってよ。
そこからちゃんと成長するから安心しとけ」
元「そうなんだ。詳しいね」
友「色々調べたからな。何か役にたつかもと思って」
元「もうないよ……」
友「ほんとに?」
元「う……うん」
友「ならいいや」
元(言えないよ……なんで私の胸の鼓動がこんなに高鳴ってるのかなんて……)
ドキッドキッドキッドキッドキッ
元(なんでなの?だって……友達なのに……女になったせい?)
チョンチョン
友「ん?」
元「……おはよっ」
友「おはよっ」
元「どうかな?変じゃないかな?女子制服………」
友「間違いなく似合ってる」
元(…う…うれしい)
友「どうした?」
元「周りが静かだなって……私、こんなことになったし、物珍しさで騒ぎになるんじゃないかって……」
友「何でだろ?」
元「何か知らないの?」
友「なんかホームルームのときそういう話してた気がするけど、話を聞いてなかったから」
元「先生の話はちゃんと聞かなきゃダメでしょ」
元「……どっちも職員用のを使うことになってます」
友「あ、丁度トイレに行きたくなってきた……」
元「行けばいいでしょ……」
友「でもさ、学校生活不安なんだろ?そばにいてあげたいし……」
元「トイレくらいの間大丈夫だから……早く行ってきて」
友「大だよ。時間かかるよ」
元「わかったから………」
女「お久しぶり」
元「あ、はい…お久しぶりです」
女「あなた今恋してるでしょ?」
元「………え?あ、ああ、わ、わかりますか?」
女「恋する乙女の目をしてるもん」(キリッ
元(わかるものなんだ………すごいな本物の女の子って)
女「え?どうしたらって………」
元「恋を実らせるにはどうしたらいいのでしょうか」
女「………どうしたらいいんだろうねえ?」
元「……え?」
女「ごめんね……私にもわかんない」
元「そうなんですか……」
女「あの、何で敬語なの?」
元「恋愛の先生だと思ったから……」
元「今の関係が崩れたりしないかな…」
女「崩れちゃう?現状脆そうな関係の人?」
元「ううん、そんなことないけど」
女「じゃあ想いを伝えてみたら?」
元「そ…そうしようかな……」
元「好きっ!」
女(タイミング……どういうタイミングなのコレ…)
友「ん?すっきりしたって俺は言ったんだけど」
元「私は好きって言った」
友「何が好きなの?」
元「あなたのこと」
友「俺も好きだよ」
元「本とうに……?」
女(成功!?すごいじゃない!?)
友「好きだよ。だって友達だろ?」
元「え……あ…うん…」
友「俺にとっても一番好きな異性だけど」
元「…でも、友達なんでしょ?」
友「うん。世界で一番好き。なによりも」
元「い…一番かぁ……」
友「どうした?」
元「一番ならいいや」
元「ありがと。なんだかよくわからない結果になったけど満足してる」
女「お…おめでとう」
元「私…世界で一番だって……」
女(幸せそうだしこれでいっか)
友「俺はね、君といるとすっごい穏やかな気持ちになれるよ」
元「本当だ…こうやって耳をあてるとあなたの心臓の音がきこえる……ゆっくりゆっくりときこえる」
友「じゃあ交代」
元「交代!?」
友「今度はそっちの心臓の音を聴かせてよ」
元「い…いいよ」
友「うわぁ…速い速い速い速い…」
友「ん?」
元「大好きな気持ちは変わってなんかなかった……ただ単に私が男から女になっただけ」
友「友達だからな」
元「じゃあ親愛なる友人さん」
友「なんだい信愛なる友人」
元「ギュって抱きしめて下さい」
友「お安いごようで」
ギュッ
元「じゃ…じゃあ、次はききき、キッシュを……」
友「いっておくけどな」
元「は、はい」
友「流石に男のままだったらこんなことないからな」
本当に終わり
本当に乙
良い設定だった
ストレスの設定が非常に良かった
Entry ⇒ 2012.01.27 | Category ⇒ 兄弟姉妹「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
姉「近寄らないで!クズ!変態!色情狂!」
姉「んー?知らないよー?」
弟「姉ちゃん持って行ってなかったっけ」
姉「私借りたっけかなあ」
弟「何かいい曲探すとかで」
姉「ああそんなこともあったね、多分部屋にあるから持って行って」
弟「へーい」
弟「えーっと」
弟「つーか…きたねえ部屋だな…脱いだ服くらいなんとかしとけよ」
弟「机にはないな」
弟「あのコードっぽい」
―ズルズル
バサバサッ―ボトッ
弟「雑誌――じゃねえ、なんだこれエロ本じゃねえか」
弟「っとこれ…ローターとかいうやつか……?」
弟「うわあ…初めて見たわ…」
弟「しかもこのエロ本の内容、弟にヤられてるのばっかりだ…」
―ということは俺と一緒に居てあんなことやこんなことも
「あったー?」
弟(!)
弟(とりあえずこれ片付けよう)バサバサバサ
弟「あったー、さんきゅー」
「うんー」
弟(居ない時にゆっくり見るか…)
――
―
姉「ちょっとお買い物行ってくるねー」
弟「んー」
姉「何かいるものあるー?」
弟「特にー」
姉「あーい」
―パタン
弟「……」チラッ
弟(行ったか、忘れ物してないよな?)
弟(焦ったら負けだ、ばれちゃいけない)
――
―そろそろか
弟(部屋見られて何か思うところでもあったのか)
弟(今日は片付いてるな)
弟(ああいうものの隠し場所ってのは…)
弟(ベッドの下になけりゃ押入れかクローゼットだな)
弟(下着類もクローゼットの小箪笥に入れてるのか、へぇ)
弟(こうやってみると、女の子の下着って感じがするな)
弟(他の女の子もこういうの穿いてるんだろうな)
弟(やべ…ちょっと勃ってきた)
弟(なんでこんな幼女なんだよ)
弟(しかもどじっこ天然…)
弟(最近のそれっぽさはここからきてるのか)
弟(この弟の性格ないわー、実の姉にこれはない)
弟(姉も姉だな、弟にこんなことされて喜んでやがる)
弟(弟君にして欲しいの…か)
弟(姉ちゃんもそう思ってるのかな…)
弟(俺にして欲しいと…なんてな)
弟(なんかムラムラしてきた)
弟(一枚くらいならばれないよな…)
弟(…持ってきちまった)
弟(ポケットがなんか妙な感じだ…)
弟(後ろめたいものを隠し持ってるからか)
弟(早く部屋にもどろう)
姉「ただい、うわあ!びっくりした」
弟「うお!」
姉「ただいま!」
弟「お、おかえり…」
姉「んに?どうしたの?」
弟「なんでもねえよ!」
―スタスタスタ
姉「んぅ?」
弟(びっくりした…)ドキドキ
弟(心臓口から出ると思った…)
弟(…)スッ
弟(何だこの高揚感…)
弟(姉ちゃんのパンツ盗んできただけなのに…)
弟(…)クンクン
弟(姉ちゃんの匂い…)
弟(はぁはぁ…)
――
―
本当お願いします
―ゴソゴソ
弟(やばい…調子に乗って汚しちまった…)
弟(洗濯物に混ぜとけばわからないかな)
弟(寧ろばれた方が姉の思惑通り…)
弟(まさか…)
―いや、でも
母「明後日からお父さんとおばあちゃんのところ行ってくるからお留守番お願いね」
姉「うん、帰りは?」
母「1週間後になるかなあ…、おばあちゃんもう危ないでしょ」
姉「そっか…」
母「弟は?」
姉「わかんない、部屋に居るみたい」
母「御飯くらい食べればいいのに…」
父「あとで様子見に行ってやれ」
姉「はぁーい」
――
―
姉「弟君ー?」
姉「御飯食べないのー?」
姉「体調悪いのー?」
姉「もう…」
―スタスタスタ
――パタン
弟(はぁ…はぁ…)
弟(姉ちゃん…)
弟(あれは汚れちまったし、姉ちゃんが風呂入ってる時にでももう一枚…)
弟(はぁはぁ…)
母「お風呂空いたわよー」
姉「はーい」
――パタン
―スタスタ
姉「弟君、大丈夫?」
姉「寝てるのかなあ…」
―スタスタスタ
弟(姉ちゃんの後に風呂入れば…、脱いだものも…)
弟(ばれない、慎重にやればきっと大丈夫…)
弟(姉ちゃんをもっと…)
―サスッサスッ
弟(早く…早く戻ろう…)
弟(…)パタン
弟(ばれたら終わりだ…)
―スタスタスタ、キィ
姉「あ、弟君大丈夫?」
弟「―!」ビクゥ
姉「体調悪いの?」
弟「あ、ああ…」
姉「御粥でも持ってこようか?」
弟「いや、気にしないで」
姉「ん、わかったあ」
―スタスタスタ、パタン
弟(風呂上りの姉ちゃんが可愛く見える…)
弟(やばい…)
―カチッ
弟(姉ちゃんのはっと…)
弟(ない…ない…!)
弟(なんでないんだ!)
弟(待てよ…いつも姉ちゃんの洗濯物に下着類だけなかったな…)
弟(別の時間帯に自分で洗濯してるのか!)
弟(くそっ!くそがっ!)
―ガンッ
母「大丈夫ー?」
弟「ちょっとこけそうになっただけー」
母「大丈夫なのー?」
弟「平気ー」
弟(ちっ…)
―翌日、朝食
姉「弟君こないね…」
父「明日から出るのに心配かけないでほしいな」
母「あの子元気だからすぐに治りますよ」
姉「そうだといいけど…」
――
―
弟(姉ちゃんと会ったらまずい…)
弟(なんか色々我慢できなくなりそうだ…)
―コンコン
姉「大丈夫ー?」
弟「…」
姉「何か食べないと体に悪いよー?」
弟「あとで食べる」
姉「もう…」
―スタスタスタ
弟(俺が居ないと心配なのか―それとも親父になんか言われたのか…)
弟(俺にヤられたいと思ってるくらいだし、俺が居ないとダメなんだろうな)
弟「ハハハ…」
弟(腹減ったな)
弟(誰も起きてないだろうし何か食うか)
―スタスタ
母「あら、大丈夫なの?」
弟「ああ、こんな時間に何してんの」
母「明日から居ないでしょ、お母さん朝早いし
だからあんたの御飯作ってたのよ」
弟「ありがとな」
母「お姉ちゃんも居るから何かあったら言うのよ?」
弟「はいよ」
母「お腹減ってるならそこにカップラーメンあるから食べなさい」
弟「んじゃ部屋持ってく、おやすみ」
母「それじゃあ行ってくるから弟の事お願いね」
父「何かあったら言うんだぞ」
姉「はーい、いってらっしゃい」
―パタン
姉「下りてこなかったなあ、ご飯持っていこうかな」
―スタスタスタ
―コンコン
姉「弟君ー御飯もってきたよー」
姉「入るねー」
―カチャ
姉「弟く…―っ!」
姉「なに…え…これ…?」
弟「ん…」
弟「!」
姉「私の下着で……何して……」
弟「…こっちこいよ」
姉「いや…やだ……」
―ガチャン!
弟「あーあ、せっかく母さん作ってくれたのに、…よっこらせっと」
姉「こないで…」
弟「何で?大好きな弟君が目の前にいるよ?」
姉「ちが…こんなこと」
弟「エロ本に描いてあったみたいにしてあげるから、おいでよ」
姉「―っ!こないで!」パシッ
―バタン
弟「いってえ」
―ドンドン
弟「姉ちゃん、開けてよ」
姉「こないで!」
弟「酷いなあ、ちょっと下着借りただけじゃない」
姉「それで……何してたの…」
弟「姉ちゃんのこと一杯考えたなあ、早く二人っきりになりたいなあとも、ね」
姉「いや、やめて!」
弟「姉ちゃんは弟物のエロ本でいやらしいこと考えてるんだよねえ」
姉「違う!あれh―」
弟「ほら、愛用のローターも使ってあげるから、開けてよ」
姉「近寄らないで!クズ!変態!色情狂!」
無限ループって怖くね?
はよ
弟「姉ちゃん開けてよ」
姉「いや!」
弟「開けろって言ってんの!」ガンガンガン
姉「やめて…もうやだよ…こんなの……ぐすっ」
弟「じゃあいいよ、部屋で大人しく待ってな」
姉「ぇ…?」
弟「リビングに部屋の鍵のスペアあるでしょ」
姉「いや!やめて!」
弟「すぐ戻ってくるよ」スタスタスタ
姉「いやぁぁぁ!」
弟「せっかちだなー、出てこなくてもいいのに」
姉「誰か…誰か!」
―スタスタ
弟「逃げんなよ」ガシッ
姉「やめよう…よ……ね?弟君…?」
弟「残念だなあ、俺は姉ちゃんの顔を見てヤりたくてたまらないよ」
姉「や…やだ…」
弟「泣き顔も可愛いね…ほら、部屋に戻るよ」グイッ
姉「ぁ…ぁ…ぅ…」
弟「力で勝てると思ってるの?」
姉「やぁだぁ…」
弟「姉ちゃんの部屋にしようか、いい匂いがするから興奮する」
姉「誰か助けt―」
ドカッ!
姉「うっ…ぁ……」
弟「騒がないでよ、近所の人が通報しちゃうじゃん」
弟「殴られると痛いでしょ?だったら静かにしてないとね」
姉「うっ…ひくっ…ぐすっ…」
姉「や…」
弟「ほら、ベッドに座ってていいよ」
姉「なんでこんなことするの…」
弟「姉ちゃんが弟物のエロ本読んでるからそうして欲しいのかなあと」
姉「違うって!」
弟「違わねーよ、あれをオカズにやらしいこと考えてたんだろ?」
姉「…」
弟「ほら、手ぇ出して」
姉「なに…するの…?」スッ
弟「縛るに決まってるじゃん」
姉「やめて…」
―ガスッ!
姉「うっ…!やぁ…やめてぇ…もう殴らないでぇ…」
弟「大人しくしてれば殴らないよ、ほら手だして」ニコ
姉「うっ…うぅ…」ギュッ
弟「大丈夫だよ、すぐ気持ちよくしてあげるから」
姉「やぁだぁ…」
弟「姉ちゃんのおっぱい柔らかいよ…」モミモミ
姉「ぐすっ…うっ…」
弟「あぁいい匂い…、ずっとこうしたかった」
弟「姉ちゃんもこんなことされたかっただろ?」
姉「くすん…」フルフル
弟「素直じゃねえなぁ」
姉「下はやめて…」
弟「いいから開けよ」
姉「やだ…」
弟「ちっ…」ガスッ
姉「うっ!」
弟「脱がせられるか殴られるか選べよ」
姉「…」スッ
弟「最初っからそうしとけばいいのに」スルスル
姉「やだ…」
弟「姉ちゃんの好きなオモチャ使ってあげるよ」
―カチッ、ヴヴヴヴヴヴヴヴヴ
弟「ん、その前に…姉ちゃんの股に顔埋めたいな」
姉「ひぅ…ぐすっ…」
弟「湿ってるよ?あんなこと言いながらもして欲しかったんでしょ?」
姉「…」ブンブン
弟「じゃあわかるくらい濡らしてあげるよ」スリスリ
姉「や…ぁ…」
弟「えっちだなあ、シミができてるよ」
姉「違ぁ…んっ…」ピクッ
弟「感じてるじゃん、素直になっちゃいなって」クリクリ
姉「うぅ…ぁ…っ…」ピクン
―ヴヴヴヴヴヴヴヴ
姉「うぅ…」
弟「出てこないようにパンツの中で挿れちゃおうか」クチュックチュッ
姉「あぅっ…ぁ…はぁぅ…だめぇ…抜いてぇ…っ」ピクピクッ
弟「いい眺めだなあ、感じまくってるじゃん」
姉「ふぁっ…やっ……あっ……っ!」ピクッ
弟「えっちな汁いっぱい垂れてるよ?」モミモミ
姉「やぁ…抜いて!抜いてよぅ…ぁぅ…」
弟「泣きそうな顔でお願いする姉ちゃんも可愛いなあ」
弟「イきそうなの?いいよ」
姉「ぁぁぁっ!」ビクン
―ピクン
弟「気持ちよかったんだ?」
姉「はぁ…はぁ…」ヒクッヒクッ
弟「でもまだ俺は気持ちよくなってないからなあ」スリスリ
姉「ゃ…」
弟「姉ちゃんのえっちな汁美味しいよ」ペロペロ
姉「まっ…だ…イったばっかり…あっ…」ピクッ
弟「いいなあ…もっとえっちな声聞かせてよ」クリックリッ
姉「やぁっ…めて…」
―ブルン
姉「うっ…」
弟「姉ちゃんとしたくてしたくてたまらなかったんだよ」グニグニ
姉「うぅ…」
弟「優しく舐めてあげてよ――噛んだりしたらわかってるよね?」
姉「む…んっ…」
弟「ほら、早く舐めろよ」
姉「…」チロッ
弟「もっとおいしそうにしゃぶれよ」
姉「…」ペロッペロッ
弟「ほらよ」ズッ
姉「んむぅ…っ」
弟「姉ちゃんがしゃぶらないなら俺が腰振ってあげるよ」グチュッズチュッ
弟「ああ、姉ちゃんの口の中気持ちいわあ」グチョッグチョッ
姉「んぁ…げほっげほっ…」
弟「早く気持ちよくしてあげないと苦しいのは姉ちゃんだよ」ゴリッ
姉「んっ…むぁ…ぁぅ…らえる…あめるっ…から…」
弟「してくれるの?」ピタッ
姉「ゴホッ…ゴホッ…はぁ…はぁ…くちゅ…じゅぷっ…」
弟「いいね…気持ちいいよ」
姉「じゅぷっ…じゅぷっ…はぅ…ぁ…じゅっ」
弟「出そう、全部飲んで!」
姉「んっ……」
―ビクッビクン
姉「ゲホッ…うぇっ…ぅ…ぁ」
弟「あーあーこぼしちゃって、これは罰ゲームだなあ」
姉「や…やだ…」
姉「…」フルフル
弟「何?まだ抵抗する?」
姉「…ぅ」
弟「じゃあ股開いて、一回出しただけじゃ全然治まらないからさ」
姉「…」フルフル
弟「しかたないなあ、もう一度イかせるか」
弟「その方が感度も良くなるし」クリッグリグリ
姉「やぁ…あっ…うぁっ…」ピクン
弟「ブラずれてるから乳首立ってるの丸わかり」
姉「いわないで…ぇっ…あぅ…」ピクッ
弟「姉ちゃんはえっちぃなあ」クリクリ
姉「うぅ…ぁ…っ」ビクッ
弟「ここ気持ちいいんだ」クチュッ
姉「ひぅっ!」ピクン
姉「あぁぁ…でちゃう…でちゃう…っ…だめえ…やめてぇぇぇ…」
弟「いいよ、一杯だしなよ」クチュクチュクチュ
姉「あぁぁぁぁぁっ!」ビクンビクン
―プシャァァァァァ
弟「弄られ過ぎて気持ちよくなっちゃったの?」
姉「ぁ……ぅ」ヒクヒク
弟「じゃあそろそろ俺も気持ちよくしてもらおうかな」グッ
姉「や…ぁ…もぅ…やめ…」
弟「やめるわけないじゃん♪」ズプププ
姉「ひぎっ…ぁ!」
弟「あれ、姉ちゃん処女だったの?エロいくせにしたことなかったんだ?」
姉「うっ…ぁぅ…」ガクガク
姉「あっ…いやっ……あっ…」
弟「俺が姉ちゃんの初めての男になれるとはなあ」ズプッズプッ
姉「やっ…あぅ……っ」
弟「姉ちゃんも弟と初めてを迎えられて良かったね」ズプッズプッ
姉「いやぁ…ぁっ…ぁっ」フルフル
弟「姉ちゃんの締め付け気持ちよくてもう…」
姉「膣はだめぇ…っ!やめてえ!」
弟「できちゃったら俺働くよ、姉ちゃんとの子供大切にするから膣に…っ」
姉「いやぁぁぁぁぁぁ」
――ビュルッビュルルルッ
―ビクンビクン
姉「ぁ…」カクカク
弟「気持ちよかったね、姉ちゃん」チュックチュ
―それから私は毎日、弟の性処理に使われていた
弟「もっとうまく咥えてよ、吸い込み弱いよ」
姉「ふぐっ…むぐぅ…じゅぷっ」
最初は抵抗しようと思っていた
―しかし、その気持ちも三日経った頃には薄れ始め…
弟「ほら、大好きな弟君の汁飲みたかったらしゃぶりな」
姉「んっ…あふっ…じゅぷっ…はぁっ…」
―次第に何かを諦め始め
――性欲のままに、弟のモノを愛撫していた
弟「親父たち帰ってくるの今日だよな」グッグッ
姉「じゅぷっ…じゅぷっ…」
弟「明日からは静かにしないとな」チュポッ
姉「あっ…弟君のおちんちん…もっと…欲しいよぅ…」
弟「いい子だね、ご褒美に挿れてあげるよ」ズプッ
姉「あっ♡ 弟君のきたよぉ♡」
弟「気持ちいい?」
姉「うん、気持ちいいよぅ♡」
弟「今日は膣と口どっちがいいの?」
姉「弟君のせーし飲ませてぇ…」
弟「じゃあ口に…」
姉「でも下も欲しいよぅ…」
弟「わがままだなあ」
姉「えへへぇ…♡」
―それでもいいと思っている
私は永遠に弟君だけのもの
弟「で…るっ!」
姉「いっぱいきてぇぇぇぇ!」
―ビュッビュルルルル
姉「あはぁ…弟君のが一杯きてるよぅ…♡」
これからもこうしていくしかないんだろう
私はもう、壊れてしまったのだから
おわり
マジでいいわ
乙乙
乙
Entry ⇒ 2012.01.15 | Category ⇒ 兄弟姉妹「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
夫「この先何があろうと、僕が守るから」 妻「………」
妻「ん~~! 今日もいい天気だ! こんないい天気の日には部屋にこもってオナニーに限るな!」
夫「……はぁ。いくつになっても、結婚しても、女さんは全然変わりませんね」
妻「なにをー!? わたしだって成長してるっての! 見ろよこのムチムチボディを!」
夫「あいかわらずの絶壁です。背も低いまんまです」
妻「背のことは言うなっつってんでしょ!」
夫「ふふ。ほら馬鹿やってないで、座りましょう。朝食が冷めちゃいますよ?」
夫「え? どうしたんですか急に」
妻「んーにゃ、別に………ただ何となく聞きたくなっただけ。で、どーなのさ」
夫「そりゃあ幸せですよ。だって、こんな素敵な嫁さんと暮らしてるんですから」
妻「あぅ………、そ、そうか! ///」
夫「まぁ、口が悪くて、いつも下ネタばっかで、変態行為を自重しないちんちくりんの奇妙生物でもありますが」フッ
妻「………おいコラ」
夫「お金持ちの御令嬢っていう肩書がこれだけ似合わない人もいないですよね。食べ方汚いですし」
夫「ッ! ……他人の身体的特徴を責めるのは卑怯だと思います」
妻「どの口が言ってんだコラ」
妻「………はぁ~ぁ」
妻「まぁでも、そうか、………幸せならいいんだよ、うん」ニコニコ
夫「何なんですか今日は、気持ち悪いですね」
妻「べっつにー。まぁ細けぇーこたぁいいんだよ! 気にすんなって! あはは」バンバン!
夫「ごふっ! ……ッ人がもの食ってる最中に背中を叩かないで下さい!」
妻「………はい、最近は安定しています」
「そうですか。それではしばらくはこのまま様子を見ましょう。こっちは……いつも通りに、忘れずに」
妻「はい、分かりました。いつも通りにですね」
「来月初旬にでもまたお越しください。もちろん何か問題が起こればいつでも」
妻「はい、心得てます」
「それでは」
妻「はい、ありがとうございました」
「………」
妻「青姦シーズン到来! もうお姉さん今から身体がうずいてうずいて!」
夫「やめろ変態。花見、連れて行きませんよ」
妻「はっ! そんなこと言ってー。期待してるくせにぃ」
夫「あのですね、お母さんも一緒に行くんでしょ? 娘のそんな姿見たら泣きますよ」
妻「大丈夫大丈夫! ほら、うちのママ、子どもをスルーするのには慣れてるから!」
夫「………うわぁ、キッツい自虐ネタですねぇ」
妻「えッ!? あー……………うん、パパは……ね………………」
夫「そう……ですか………」
妻「あはは、ほらそんな顔しないで! わたしは男さえいれば幸せなんだから! おまけに最近はママも優しいし!」
夫「ええ、………そうですよね」
夫「ふふ。お父さんが来れない分、僕が優しくしますから」
妻「男………。うん、……ありがとね」ニコ
妻「………」
父「………おい、コーヒーだ」
妻「………はい」
母「あぁそうそう、この荷物出しておいてちょうだい」
妻「………はい、わかりました」
妻「………」
妻「……」
妻「うだーーー………」
夫「ちょっと最近家にいるときだらけ過ぎじゃないですか、女さん」
妻「なによ、いいじゃんべつにー。わたし平日はちゃんと仕事してるしぃー」
夫「………ふぅ。スポーツの秋、読書の秋と言いますが女さんの場合は……」
妻「ずばり、オナニーの秋ね!」ドヤァ
夫「いや、あんた一年中盛ってるから」
妻「わたしだってねー。人間なんだから色々悩みごともあったりするし、疲れもするってーの!」
妻「だから休みの日くらいだらけさせなさいよぅー」
夫「悩みごとって……。何かあるなら言って下さいよ。相談にのりますから」
妻「………………それができたら苦労しないっての」ボソ
夫「え? なんですか? 聞こえませんでした」
妻「いーんにゃ。なんでもにゃーい」
夫「女さん………? 女さん………! どこにいるんだ女さん!」
妻「男!? どうしたの!?」
夫「あぁぁ、よかった………いやな夢を見たんだ」
夫「女さんが遠くに行ってしまうような」
夫「でもよかった………、本当によかったぁ……」
妻「もう……。そんなに不安がらなくていいわよ」
妻「私はどこにも行ったりしないんだから」ナデナデ
妻「………ふふ。少しは落ち着いた?」
夫「………ごめん。取り乱して。みっともなかったよな ///」
妻「いいっていいってぇ! わたしにだけ見せてくれる弱さってやつ? そういうの憧れてたもん!」
夫「……でも、これじゃ格好がつかないよ。いくら年下とはいえ、男なんだからさ」
妻「はーん。一丁前なこと言っちゃってぇ! あんたは典型的な尻にしかれるタイプじゃない!」
夫「………む。そんなことない。僕だって、好きな女を守ることくらいできるよ」
妻「………」
夫「女さんは、僕が守るよ」
夫「この先何があろうと、僕が守るから」
妻「………」
妻「………ふふ。ありがとね」ニコ
「あなたを長年苦しめてきた私なんかがとてもこんなこと言えた義理じゃないけど……」
妻「………」
「やめておきなさい、不幸になるだけよ」
妻「………」
「なんて、今更母親ぶっても説得力なんてないわよね」
妻「………ううん、ママ、ありがとう」
妻「でももう私は決めたから」
妻「覚悟、できてるもの」
「……ありがとう」
妻「………ッ」
「本当に感謝してるの。あなたのおかげで、悔いを残さずに逝けるから……」
妻「でも………私は………ッ」ポロ
「…………どうして泣くの?」
妻「私は………嘘つきだから。ほんとうは、私は弱い……醜い………」
「……………」
妻「誰よりも大好き! 他のことなんてどうでもいいくらい!」
「……………」
妻「自分でも自分が歪んでるって分かってる! でもッ、止まらないの……。自分じゃ止められない………」
妻「ごめん……ね。ごめん、なさい……」ポロ..
妻「こんな女………。あなたに『ありがとう』なんてッ……言われる資格ない!」ポロポロ....
「ふふっ。………なんだ、そんなこと」
「そんなの、ずっと前から知ってることだもの」
「……むしろ、そうじゃなかったら安心できない」
妻「………ッ」ポロ..
「あなたはそれでいいのよ。そんなあなただから、任せられる」
「あとのこと、よろしくね」ニコ
妻「………ヒッグ……ヒック」ポロポロポロ….
男「………」スヤスヤ..
妻「ふふ。普段は神経質で皮肉屋なのに、寝顔だけは子どもみたい……」
男「………ぅ、あ」
妻「……?」
男「……おん、な、さん。……………おんな、さん」
妻「………」
妻「はいはい。甘えん坊さんでちゅねー。よちよーち」
妻「ふふ」
「今はまだ安定していません」
妻「………」
「医師としてはそれをおすすめしますが、選択権はあなたにあります」
「反対している関係者はいません。………この意味が、わかりますよね?」
妻「………でも、」
妻「私は……」
夫「……………」
妻「………ほら、りんご、むけたわよー」
夫「……………」
妻「えっと………、そういえば! この間ママが誕生日プレゼントをくれたの!」
夫「……………」
妻「あー、………えと、すごく嬉しかったわ。ママからの初めてのプレゼントだもの」
夫「………そう、なんだ」
妻「あ……う、うん! それで、嬉しくって、わたし泣いちゃって。そしたら、ママも泣いちゃって……」
妻「誕生日なのに、……へへ、泣きつかれてそのまま眠っちゃった」
夫「……………」
「────高次脳機能障害です」
妻「………やはり、脳に障害が……」
「はい、検査の結果、記憶障害と見当識障害を併発していることがわかりました」
妻「………どうして。なんで、こんな……」
妻「もとには、戻るんでしょうか?」
「リハビリテーションによって改善する事例もありますが……」
「高次脳機能障害には確実といえる治療法があるわけではありません」
「長いスパンで取り組んでいくことを視野に入れておいて下さい」
妻「………」
妻「………」
「驚いた?こんな身体で」
妻「………」
「そんな顔しないで、仕方のないことだもの」
妻「………」
「あなたが無事でよかったわ。本当に、よかった……」
妻「………ッ」キュッ
「だけど……、正直に言うと……ちょっぴり打算もあるの」
妻「………」
「……この意味、わかるわよね」
妻「………」
「わたし、……あんたが好きよ。世界で二番目に好き」
妻「………ッ」
妻「わたし、も、です。わたしも……あなたが大好きです」ポロポロ..
「でも、あんただから、安心して任せられるの」
「ううん。……あんたにしか、私は任せたくない」
妻「………ヒック……ヒッグ…」ポロポロ..
「だから、ね?」
「お願い」
「───── あんたが男を支えてあげて、少女」
女「あの日、わたしたちが紅葉狩りの帰りに事故にあったとき、血だらけの私を見て発狂したっきり、あいつは戻ってこれなくなった」
少女「………」ポロポロ….
女「まぁ、自分の奥さんの手足がちぎれてるのを目の当たりにしたら、狂っちゃうわよね。逆の立場だったら私だってそうなってたもん」
女「お医者さんの話だと、事故で頭を強くぶつけたことと、私の惨状を見た精神的なショック、両方が原因でしょうって」
女「まぁ仕方ないわ、これも。運命ってやつよ。潔く諦めるわー。あはは」
少女「………でもそれじゃ、女さんが……」ポロポロ….
女「………まぁ、否定したってどうしようもないじゃない」
女「ううん、無理に否定して、あいつがもっとおかしくなるなんて、そっちの方が耐えられないもの」
少女「………でも、それじゃっ!」
女「いやぁ……それにね、正直悪い気もしないの」
女「わたしって頭のネジがぶっとんでるでしょ? まぁそれも両親に虐待されてきた影響だって自覚くらいはあるけど」
女「でもそんなキチガイだからさ、わたし。実のところそう悲観してないのよ」
女「正直、夢や幻にまであいつが私の姿を追い求めてくれるのがさ、……けっこう嬉しいの」
女「あんたがあいつと関わる限り、あいつはこれからあんたのこと、私として扱うわ」
少女「………」
女「このまま逃げちゃって、二度と顔をあわせなければ辛い思いをしないですむけど」
女「性格的にそれは無理でしょ、あんたは」
少女「………」
女「だからお願いしてるの」
女「私の代わりにあいつのママゴトに付き合ってやってほしい」
女「辛いこと押し付けてごめんなさい。でもあんたは、このことで私に気兼ねする必要もないんだからね」
ガチャ..バタン...
少女(………)
少女(…………女さん)
少女(女さんはああ言っていたけど…………辛くないはずがない)
少女(それに、わたしに女さんの真似なんて…………できるのかな……)
少女(………)
少女(………ううん、できるかじゃなくて、しないといけないんだ)
少女(………それが、女さんと、男さんのためだから)
少女「あの、………こんにちは……」
男「あぁ! 女さん! 待ってたよー」
少女「う、うん……。ごめんね待たせちゃって」
男「僕がいないからって無精してない? 少しくらい自分で料理できないと、こういうとき困るでしょ」
少女「あ、はは。ぅ、うんそうだよね! 料理……して、みようかな?」
男「………どうしたの女さん。今日はやけに殊勝だね」
男「いつもなら、『料理なんて下女にやらせておけばいいのよ!』くらい言いそうだけど」
少女「えっ。あっ……!」
少女「たまには私の腕を見せて惚れ直させてやるんだから!」
男「あはは。うんうん、期待してるよ!」
少女「………ッ ///」
少女(………違う)
少女(……………こんなのダメ)
少女「馬鹿ねー。私がどれだけ繊細な指づかいをしてると思ってんの? 伊達にオナニストNo.1の称号をもらってないっての」
少女(…………やっぱり間違ってる)
男「はぁ……、そのガサツさや下品さが真逆になれば、完璧なお嬢さまですよね、女さんは」
少女「はっ! あのねぇ、貴族ってのは育ちで貴族になるんじゃないの。生まれで貴族になるのよ! だから私は生まれつきのお嬢! 性格なんてかんけーねー!」
男「あはは」
少女(…………こんなこと、間違ってる)
少女(…………こんなことが、……)
少女(…………こんなに幸せに感じられるだなんて、わたしは、ぜったい、間違ってる!!)
少女「えー? どうしたってなにがー……」ボロボロボロボロ……
男「いや、涙 涙! すごい泣いてるってば!」
少女「……へ? あれ? なにこれ………」ボロボロボロ……
少女「あはは、なんでなんだろーね。わかんないや」ボロボロボロ…
少女「あはははは」ボロボロ…
少女(わたしは、最低だ)
少女(───最低)
女さんが亡くなっても、男さんは変わらず女さんの幻を追った
男さんは、本物の女さんが亡くなったことにすら気づいていない
そしてわたしは、─── 今も幻の影として、ずっと男さんのそばにいる
男「………」スー…スー…
少女「………」
男「………」スー…
少女「………ねえ、男さん。いつまで夢を見てるんですか」
男「………」スー…
少女「………女さんは、最後まで笑顔でした。翳りなんてこれっぽっちもない笑顔で、『あんたになら任せられる』って逝っちゃいました」
少女「ねぇ。いつまで続ければいいんですかこのバカバカしい茶番を」
男「………」スー…スー…
少女「いいかげん、目を覚ましてくださいよ」
少女「………」
少女「…………なんて、ね」
少女「……………嘘つき。……卑怯者」
少女「わたし、本当は続けたい。あなたと生涯をともに歩みたい」
少女「たとえ私があなたにとって幻でしかなくても………それでも、私は幸せなんです」
少女「でも…………」
少女「でも、なぜでしょうね……」キュゥッ...
男「………」スー…
少女「わたし、最近なぜか、すごく、寒いんです………」カタ...
少女「……………」カタカタ…
少女「………………………寒い………寒い……」カタカタカタ…
男「………」スー…
少女「……わたし、……寒いよぉ、女さん。………女さん、……………女さん……ッ!!」ポロポロポロ…
男「……………ぅ」
男「ぁ………、ショウ、ジョ?」
少女「……………ッ」グシグシ
少女「……やっとお目覚めか? もう夜だぞ。オナニーのしすぎで体力消耗してんじゃないのか? 言ってくれりゃァ手伝ってやるってのに」ニコ
男「………ぇ?」
少女「どうした? 寝ぼけてんのか? なんなら、起き掛けに一発抜いてやってもいーんだけど? あはは」
男「………あぁ、………いや、………………少女、だよな?」
男「………どうしたんだ、その喋り方!? しかもオナニーとか……、女さんの口ぐせがうつったのか!?」
少女「……えっ!?」
男「あの人………、やっぱりその存在自体が子どもに悪影響を及ぼす人だな」
少女「え? えっ 嘘、うそ……………ッッ!!!」
男「え? そりゃぁ、いま起きたけど……」
男「どうしたんだよ、少女。なんかおかしいぞ……」
少女「ぁ………ぁあ、………あああああああああああああぁぁぁぁぁ」ポロポロポロポロ……
男「お、おい!? 本当にどうしたんだ!?」
少女「男さんッ! 男さん、男さん、男さん男さん男さんッッッッッ!!!!!」ギュウウッッッ
男「ッッと!? ………はぁ、その、少女。正直なにがなにやらサッパリなんだが」ナデナデ
少女「わた、わだし………ずっど………………ずっと………独りで………女さんの………わたし………ッッ」ポロポロポロ……
男「ちょっと、落ち着け少女! ゆっくり! ゆっくりでいいから!」
────こうして、わたしと男さんの幻のような関係は、唐突にあっさりと幕を下ろした
驚いたことに、男さんは事故の当日から今日までの数年間の記憶が、一切ないらしい
お医者さんが病院で、こういう事例は極稀ながらあることだと説明してくれた
おそらくは脳の防衛機制がかかり、記憶が閉じ込められてしまったのだろう、と
数日の検査入院の後、問題ないということで、男さんは晴れて退院となった
少女「……本当に、もうなんともないんですか?」
男「うん、ここ数年の記憶がないだけで、その前のことや、最近のことはよく覚えてるよ。まともに考えられるし、お医者さんからも問題ないって言われた」
少女「………そう、ですか。よかった。本当に……」ニコ
少女「………また元のように戻ってしまうんじゃないかって」
男「あぁ………。実は、お医者さんが言うには、その可能性もないわけじゃないらしいんだ。何かの機会に突発的に症状が再発する可能性はあるって」
少女「………ッ。そう、………なんですか」
男「うん。その………少女にはとてつもない迷惑をかけた。何度謝っても、誤りきれるものじゃない」
少女「いえ、………いいんです。私が、したかったことですから」
男「いや、若い時期の数年間を、いわば……僕の介護に使わせてしまったようなものだろう?」
男「君には、その、本当にどうやって償えばいいのかわからない」
男「僕にできることなら、何でも言ってくれ。どんなことをしてでも償うつもりだから」
少女「………はぁ。お兄さんは馬鹿ですね」
男「え?」
少女「あのですね、病人が難しいこと考えないで下さい」
少女「女さんの件で、まともな精神状態でいられなかったことはわかります。そんな状態なんですから、誰かに頼ったっていいんです!」
男「………」
少女「まぁとは言え、今回わたしがお兄さんのお世話をしたのは、私がたまたまお兄さんに身近な知り合いだったからにすぎませんけど」
少女「私だって、他に適任の人がいればその人に預けてたかもしれませんし」
少女「本音を言えば、私もお兄さんの相手をしながら、面倒だなぁって思ってました」
男「………ッ」
男「………そう、だよな。すまない。本当に……」
少女「………ふふ。ゴメンなさい、今のウソです」ウフフ
男「え?」
少女「いつかの仕返しですよ! 覚えてませんか? お兄さんが私を1週間預かることになったときのこと」
男「………ぁ、……ああ」
少女「あのとき、まだ年端もいかない私に随分ひどいことを言いましたよね、お兄さん。まぁ、その愚直で面倒くさいところがお兄さんの味なんでしょうけど。ふふふ、今のはあの時の仕返しです」ニコ
男「……あはは。……うん、一本とられた」
男「それにしても、僕が知らないうちに随分明るくなったなぁ少女は」
少女「それはもう!あんなに長い間女さんの真似をし続けたら、素の人格だって自然と明るくなっちゃいますよ」
男「………んー、でも年頃の娘がオナニーとかセックスとか連呼するのは、ちょっとなぁ……」
少女「………こ、この間のは女さんの真似をしてただけです! わたしの本心じゃありません! /////」
少女「………」
少女「……………あの、お兄さん」
男「ん?」
少女「その女さんから、手紙を預かってるんです。『もし男が夢から覚めたら叩きつけてやってくれ』って」
男「………そう、か」
少女「………これです。どうぞ」ガサ…
少女「今、読みますか?」
男「………うん。僕はあいつの最期を看取ってやれなかったから、……」
男「今じゃ、手紙に記されたあいつの気持ちを受け止めてやることくらいしかできないもんな」
男「………ッ」パンパン!
男「よし!」
男(たとえ、どんな恨み言が綴られていようと、すべて受け入れる)
男(僕がお前にやれる最期の手向けはそんなことでしかなくて、ごめんな女────)
男「………………」ガサ
男「………」
女『────よう、ロリコン野郎!』
男「──────────────…………………………おい」
男(…………)
男(……………………『同棲生活』を無理矢理な誤字にしたな)
女『あの娘にはあんたの性的なウィークポイントをたっぷり教え込んでやったからな! 悦べよぉ、おい!』
男(………………)
男「教え込まされたのか……?」
少女「…………///////」...プイッ
女『男、分かってるとは思うが、いまお前の隣にいるヤツはな、お前がお花畑で蝶々さんと戯れてる間、お前をたった一人で守り通したすごいヤツなんだ』
男「………………」
少女「………………」
女『不可抗力とは言え、少女には一番つらい役を押し付けちゃうことになった』
女『本当に申し訳なく思ってる。ごめんな少女』
少女「……………………女さん」
男「……………」
女『ごめりんこ!』
少女「!!」
男「……………………はぁ」
女『本音では『役得役得ぅ!』ってところだろ少女!』
男「……………」
少女「………え、いや、ちが!! ///」
女『まぁ、あんたたちは私にとって世界で最も大切なものランキングの NO.1 と NO.2 だ』
女『だからセックスくらいは寛容な心で許してやる』
女『大いに励めよ若者たち!』
男「……………」
少女「……… ///」
女『地獄から化けて出てお前の包茎ペニーを切り落とすからな。いやマジで。冗談抜きで』
男「………………………しませんよ、そんなこと」
少女「……………」
女『おほん! まぁ、とにかくだ、男』
女『いい女ならここで「わたしのことは引きずらないで前を向いて歩いて」って言うところだろうがな』
女『わたしは嫉妬心がそこらの女の20倍は堅いから、むしろこう言う。「わたしをひきずれ!」』
女『わたしのことを引きずって、後悔しまくって最期まで生きろ! 」
女『そんでもって、お前らしくうじうじ悩みながら私のことを想いつつ生きるなら………まぁあれだ、お前の半分くらいは、少女に分けてやってもいい』
女『その娘は強い娘だよ。………でも強いようで弱いから、身近にいて支えてやってほしい』
男「……………」
男「………………はい。約束します、必ず」
少女「……………」
女『最後になったけど、────── 愛してる、男』
女『また来世で抱いてくれよ!』
男「…………」
男「………………はい。また、いつか」
少女「………ッ」キュッ
女「…………」
男「………女さん、最期まであの人らしかったんだな」
女「………はい。亡くなる直前まで、明るく笑っていました」
男「…………」
男「………君を守る」
男「………この先何があろうと、僕は君を守るから」
女「……………ッ」
少女「ありがとうッ………ございます」
男「……約束するよ」
それは悔いるような、
少女「………それじゃあ、」
けれども祈るような、
少女「………お兄さんのことは、」
万感の想いを込めた────
少女「─────── わたしとお姉さんの、二人で守ってあげますね!」
──── 華の蕾がほころびるような、キレイな笑顔だった
男「パン……食べるか?」 少女「……」 &
夫「この先何があろうと、僕が守るから」 妻「………」
── fin.
叙述トリックがやりたくて書いた短い後日談でしたが
これでこのお話は本当におしまい
またの別のSSを書く機会があったらそのときはよろしく!
ハッピーエンドとは言えないかもしれんが
少女が笑顔になって終わってよかった
この時間に目が覚めてよかった
乙
Entry ⇒ 2012.01.08 | Category ⇒ 兄弟姉妹「」SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
姪「おじさん。ご飯作るの手伝いましょうか?」
姪「・・・あ、おじさん。ご飯作るの手伝いましょうか?」
オレ「あー、そうだな。じゃあ皿を出してくれ。今日はハンバーグだから」
姪「ハンバーグっ!」
オレ「おまえ、ハンバーグ好きだろ。体は小さいけど、意外と肉食だもんな」
姪「・・・肉食って・・・」
オレ「つけあわせはマッシュポテトと焼き玉ねぎだ。黄金の三角比だなwww」
姪「・・・黄金の三角比って・・・」
オレ「マッシュポテト、盛るぜぇ~ 超盛るぜぇ~」
オレ「あとはニンジンのスープをっと・・・」
オレ「・・・しかも今日のハンバーグはオーブンで焼くからな。美味いぞ」
姪「フライパンで焼かないんですか?」
オレ「いや、もちろんフライパンでも焼く、表面だけな」
オレ「それからオーブンでじっくり焼くんだ」
オレ「ケンタロウなんかは、ハンバーグをフライパンで焼くとき水入れて蒸し焼きするんだけどな」
オレ「あれはあれでジューシーな仕上がりになるが、いかんせん香ばしさが足りないわけよ」
姪「・・・」
オレ「だが、ガスオーブンはいいぞぉ。これで焼くと肉汁が閉じ込められてだな、」
オレ「ふわあっとした食感とじゅわあっとしたジューシーさとふわんとした肉の香ばしさがもうたまらんくなるわけよ・・・」
姪「・・・・・・」
オレ「おまえも結婚するときはガスオーブン買え。絶対買え。ガスオーブンは神・・・」
姪「おじさん、お皿とナイフとフォークは準備したよ。スープ皿も」
ピンポーン
姪「はあーい」
オレ(・・・こいつ、最近、スルースキルを身につけやがったな。姪友の悪影響か。あいつめ)
お袋「よっこらしょっと、ただいまー、姪ちゃん重くない?」
姪「よいしょ・・・よいしょ・・・はい、大丈夫です」
オレ「なんだよ、これ」
お袋「リンゴよ」
オレ「リンゴ?」
お袋「いただいてきたのよ、仕事場のひとから。B級品とかで、おすそわけ」
お袋「そろそろリンゴの季節も終わりだし、ちょうどいいかなって」
オレ(なにが「ちょうどいい」んだろうか・・・)
オレ「うちには3人しかいないのに、どーすんだよこんなに・・・」
お袋「そりゃあんたが考えなさいよ。ジャムとかケーキとか・・・ あと、ジャムとか?」
オレ(2種類しか言ってねーじゃんか)
オレ(・・・とりあえずささっとリンゴのサラダでも作るか)
オレ「姪、サラダ入れる深皿も出してくれる?」
姪「はい!」
・・・・・・・・
オレ「姪は寝た?」
お袋「寝たわ。だいぶ明るくなってきたわね、あの娘」
お袋「ご飯もたくさん食べるようになったし」
オレ「・・・ああ、まあそうだな。だったらいいけどな」
お袋「え?」
オレ「なんでもない。じゃ、オレ、仕事するわ」
お袋「ちょっと待って。あんたに頼みごとがあるの」
オレ「頼みごと? また面倒事か? 勘弁してくれよ・・・」
お袋「その姪ちゃんのことよ」
オレ「・・・なんだよ、話してみろよ」
お袋「・・・あんた、姪ちゃんのことになるとちゃんと話を聞くのね」
オレ「はい、そこ。脱線すんな」
お袋「学校の新しい担任の先生から電話があってね、姪ちゃんのことで話がしたいって」
オレ「・・・6年生になって、学校でなんかあったのか?」
お袋「そうじゃないらしいの。お父さんお母さんについて少し知りたいって」
オレ「そんなの、義弟に直接聞けばいいだけだろ?」
お袋「・・・そうなんだけど、ねぇ」
お袋「わたしもよくわかんなくてねぇ・・・」
オレ「お袋が行けよ、学校の先生とかオレ会いたくねーし。親でもねーのに」
お袋「でもあんただって、いまあの子の保護者なんだから・・・」
お袋「それに、義弟たちのこと、わたしも冷静に話せる自信がないわ・・・」
オレ(たしかにお袋は義弟を毛嫌いしてるからなあ)
オレ「だけどなー、オレだって義弟は嫌いだぞ」
お袋「いいえ。あんたのほうが先生とは冷静に話せるわよ、たぶん」
お袋「あんた、簡単にキレないとこだけは信用できるし」
オレ(・・・いったいどんな信用だよ)
お袋「それに、たぶん身内の中じゃあんたが姪ちゃんのいちばんの理解者だと思うわよ」
オレ「・・・そんなわけあるか。同じ女なんだからお袋のほうが理解者なんじゃね?」
お袋「・・・・・・・・・・・」
オレ「・・・わーかった。わかったよ。行くよ、オレが行く。それでいいだろ」
お袋「じゃあ、頼むわよ」
・・・・・・・・
先生「すいません。ご足労願いまして、オレさん」
オレ「いえいえ、自宅だと姪がオレたちの話を気にするでしょうから・・・」
先生「早速ですが、姪さん、お宅ではいかがですか?」
オレ「そうですね、だいぶ落ち着いてはきました。うちに来て3ヶ月すぎて、日常会話もうちとけてきましたし」
先生「そうですか・・・」
オレ「ただ・・・」
先生「ただ?」
オレ「・・・まだ距離は感じます。なかなか自分の気持ちを表現しないというか、できないというか」
先生「といいますと?」
オレ「夜、泣いてることがまだあるみたいで・・・」
オレ「うちに来た最初の日、姪はオレの部屋で泣きながら寝たんです」
オレ「それからはずっと自分の部屋でひとりで寝てるんですが、」
オレ「夜中、部屋から泣いてる声が聞こえたり・・・」
先生「・・・そういうときは声かけられます?」
オレ「はい。でも「夢を見てた。ひとりで大丈夫。」って言って・・・」
先生「そうですか・・・」
オレ「あの・・・ 姪は学校ではどうですか?」
先生「そうですね、とてもいい子です」
先生「多少、内気なところもありますが、お友だちも増えましたし、委員会の仕事もきちんとやっています」
先生「ただ、お母さんやお父さんのお話を聞こうとすると、表情が固くなります」
先生「それ以上は立ち入らないで、って雰囲気があるんです」
オレ「あの・・・、義弟から家庭の状況について説明はありましたか?」
先生「はい、精神的な病気でお母さんが入院されてる・・・」
先生「自分が仕事で不在がちだからおばあちゃんのお宅に姪さんを預けてる、と・・・」
オレ「母親の具合については?」
先生「しばらく入院の必要はあるけどそんなに大変な状況ではない、心配しなくていい、と伺っています」
オレ(義弟は、先生に病状を隠しているっぽいな・・・)
先生「わたしたち教師は、生徒に関わることとはいえ、家庭内の事情に簡単には立ち入ることができません」
先生「しかし、これまで姪さんがどういう生活をしていたかがわからないと指導の方針を立てることが難しいんです」
オレ「前の学校の先生はどうおっしゃってましたか?」
先生「あちらの学校では、懇談会や学校の行事ごとにはお父さんが積極的に参加されてて、」
先生「特に問題は感じられなかったという認識で・・・」
先生「お母さんが入院されたとき、学校もびっくりしたようです」
オレ(前の学校にも詳しいことを言ってないんだな、義弟は・・・)
先生「あの・・・オレさんは、姪さんの以前の生活はご存知ですか?」
オレ「・・・いえ、よく知りません」
オレ「ただ・・・うつ病の母親と一緒に暮らしてるとき、あまり良い食生活をしてなかったらしいこととか、」
オレ「うちに来たとき、服や下着の替えをあまり持ってなかったこととか、知ってるのはそのくらいです」
オレ「本人にも無理に聞くようなことはしていません」
先生「そうですか・・・ 姪さんはできるだけはやくカウンセリングを受けたほうが良い状況にあるかもしれませんね」
先生「医療機関だけでなく、スクールカウンセラーを利用することもできます」
先生「学校と連携した対応もできますから・・・」
先生「姪さんはいま思春期の入り口にいます」
先生「お母さんとの生活がこれからの発達にどう影響するのか、よく見てあげたほうがよいかと・・・」
オレ「オレもそう思いますが・・・ でも、そこいらは義弟の意見を聞かないと・・・」
先生「はい。この件は、わたしからもお父さんにお話してみます」
・・・・・・・・
オレ「おーい、姪っ。と、ついでにその子分っ」
姪「・・・おじさん!」
姪友「あーーーーっ、おじーーーさーーーんっ」
オレ「そこは伸ばすな、姪友。別の意味になるだろが。んで、おまえら公園で何してんの?」
姪友「鉄棒。姪ちゃんに逆上がり教えてもらってた。なかなかできないんだよぉ、わたし」
オレ「ふ~ん、オレもひさしぶりにやってみるかな。にしてもこりゃ、むちゃくちゃ低い鉄棒だなあ」
オレ「あーらよっと」
姪&姪友「おおおっ」
オレ「逆上がりとか、こんなん簡単じゃねえか」
オレ(とは言ったものの、思ったより身体が重いな。なまってるなあ、オレ)
姪友「ねえねえ 蹴上がりしてみてよ」
オレ「ああ? 蹴上がりってどんなんだっけ」
姪友「こうやってグーンって体を前にやってさ、んで、からだを引き寄せてババッて・・・」
オレ「あーなんか思い出したわ。ちょっとやってみるからどいてろ」
グーーーーン バコン
オレ「ぐわあああああああああ いってえええええええええ」
姪「わ わ わ おじさん大丈夫ですか!?」
姪友「ぎゃははははははは」
オレ「いってええ いてええよおお、くそおおお なんだこれええ」
姪「おじさんっ! 頭、こぶができてますよっ!!」
オレ「ちくしょう。鉄棒が低いからだ、くそお。もう鉄棒とかやんねえよ、あほお」
姪友「ぎゃははははははは」
オレ「笑うんじゃねえよ、バカたれっ」
姪友「なあなあ、おじさん、もしかして運動音痴? 運痴? うんちくんなの? くくく」
オレ「おまえ、いま見てただろが。鉄棒が低いから頭打っちまったんだよっ 運動神経は関係ねーんだよ(たぶん)」
オレ「だいたい逆上がりできない奴が、ひとのこと運痴とか言うなっ このうんこたれが」
姪友「ぎゃははははははは」
姪「くすくすくす」
オレ「おら、おまえらとっとと帰るぞ。こぶ冷やさないと、オレ死ぬかもしれん」
姪「えっ (;゜Д゜)」
姪友「そんなんで死なねーよーーー、バ~カwww」
姪友「・・・あっ、でもでもっ!! もしかして、頭打っていまバカになったとか?」
姪「えっ Σ(゜д゜lll)」
オレ「・・・もういいよ。帰ろうぜ。どうせバカだよ、オレは・・・」
姪友「ねえ、おじさん。ワタシハ けーきガ 食ベタイ デス」
オレ「食えよ。自分の家で思う存分食ってろよ」
姪友「えー、ケーキケーキーっ、おじさんが作ったケーキーっ」
オレ「あーーっ、うるせー。姪友の声は頭に響くんだよっ」
姪友「ケーキっケーキーっケーキっケーキーっケーキっケーキーっケーキっケーキーっ」
オレ「・・・姪友、明日うちに来い。リンゴのケーキ、作っとくから」
姪友「うっひょおおおお 救われたああああ 神さまありがっとんんんっ」
オレ「・・・やっすい神さまだなあ・・・」
姪「くすくすくす」
・・・・・・・・
オレ「・・・とまあ、そんな感じの話を先生とした」
お袋「そう・・・ で、どう思うの?」
オレ「どう思うって?」
お袋「カウンセリング、姪ちゃんは受ける必要あると思う?」
オレ「ある・・・だろうな」
お袋「姪ちゃん、元気そうだけど・・・」
オレ「・・・こういうのは予防だと思ったほうがいい。念のためにってやつだ」
オレ「何もないならそれにこしたことはないけどさ、もしこの先なにかあったら困るだろう?」
オレ「姪も思春期に入るんだ。先々、摂食障害とか起こしたらどうする?」
お袋「・・・・・」
オレ「・・・ずっと俺たちが姪の面倒を見るわけじゃない。いずれ姪は義弟たちに返すんだ」
お袋「・・・・・」
オレ「いまここで出来ることをやっておいたほうがよくね?」
オレ「カウンセリングの件を、姪にどう説明するかはあとから考えよう。とにかく方針だけは決めとかないとな」
お袋「・・・そうね。そうかもしれないわ」
オレ「なんにしろ義弟が同意しないと先には進まねーけどな」
オレ「ま、オレからも電話してみるわ、義弟に」
お袋「ふぅ、わかったわ・・・ それにしてもあんた・・・」
オレ「ん?」
お袋「その頭、すごいこぶね。どうしたの?」
オレ「・・・・・・・」
TRRRRRRR....Pi
オレ「もしもし、義弟か?」
義弟「ご無沙汰してます、義兄さん。娘がお世話になってます」
オレ「いま大丈夫か?」
義弟「ええ、娘のカウンセリングのお話ですか?」
オレ「ああ、もしかして先生から話を・・・」
義弟「さきほど先生から伺ったところです。ですが、娘にカウンセリングの必要はありません」
オレ「は?」
義弟「こないだも電話で娘と話しましたけど、義兄さんたちが言うほど娘におかしいところはありませんでしたから」
オレ「いや、これは将来への予防みたいなもので・・・」
義弟「いえ、わたしは大丈夫だと思ってます。娘を信頼してるんです。義兄さんは、信頼できないんですか?」
義弟「・・・それとも、本人からなにか悩みを聞いてるとか?」
オレ「・・・いや、そういうわけじゃないが・・・」
義弟「では、大丈夫だということです。このあいだもお話させてもらいましたが、余計な干渉はしないでください」
オレ「・・・・・」
義弟「義兄さんたちに感謝はしてますけど、わたしたち家族のなかに立ち入って欲しくないんです」
義弟「家内の治療も、いまが大事な時期です。彼女にも余計な心配はかけたくない」
オレ「・・・・・」
義弟「もしなにか娘に問題が発生したら、まずわたしに電話してください。着信拒否してるわけじゃないんですから」
オレ「・・・・・ああ」
義弟「お義母さんにも同じこと、伝えてもらえますか? それではよろしくお願いします。じゃ・・・」
オレ「ちょっと待ってくれ」
義弟「は?」
オレ「もうひとつ義弟に頼み事があったんだ」
義弟「・・・なんですか?」
オレ「姪が自分の家にある本を取りに行きたいって言ってるんだが、行っていいか?」
義弟「・・・・わかりました。鍵は娘が持っていますからいつでもどうぞ。わたしはたぶんいませんけど」
オレ「わかった。忙しいところすまなかったな」 Pi
オレ(さすが、オレ。よくキレなかったな。我ながら感心する)
オレ(義弟の野郎。嫁の病気を「恥」だとか思ってるのかもしれんな)
オレ(恥はおおやけにしたくないってことか。こんなふうだと、姪も手遅れになるかもしれん)
オレ(それにしても、姪は母親に会いたがらないんだよなあ・・・)
オレ(病院に見舞いに行こうとか、自分で言ったことがない・・・)
オレ(だが、せっせと母親あてに手紙は送っている・・・ いったいどういうことだ?)
オレ(姪が母親のことを嫌ってないことはわかるんだが・・・)
オレ(だが、なぜか会いたがらない・・・)
オレ(・・・やっぱ、一度家に行ってみるしかないよな・・・ なにか分かるかもしれん)
オレ「おーい、姪」
姪「なんですか、おじさん。頭のこぶはどんな具合?」
オレ「帰ってきて冷やしたからな、だいぶ引っ込んだ。死ななくて済んだみたいだな」
姪「くすくす」
オレ「ところで、姪」
姪「はい?」
オレ「おまえ、家ではどんな本読んでたんだ?」
姪「えっと、いろいろですけど・・・」
オレ「オレにも何冊か読ませてくんない?」
姪「うーーん・・・ でもあんまり持ってきてないし・・・」
オレ「そっか・・・ じゃあ、おまえんちに取りに行くか、日曜でも」
姪「え?」
姪「・・・・・・」
姪「・・・・・・・・・・・・」
オレ(・・・こいつ、見事に固まったな)
オレ「ダメか?」
姪「いえ、だめじゃない・・・ですけど」
オレ「じゃあ、行こう」
姪「・・・・・・・・はい」
オレ「あとな、いまからリンゴのケーキ作るから手伝え。皮剥きくらいできるだろ?」
姪「・・・はいっ」
・・・・・・・
お袋「この家に来るの、2回目だわ、わたし」
オレ「オレなんかはじめてだ。綺麗な家だなあ、姪」
姪「・・・・・・・・はい」
ガチャッ
オレ「おおっ、玄関広い! しかも綺麗にしてある」
姪「・・・・・・・」
オレ(リビングも綺麗だな。っていうか全然生活感がない。義弟はこの家に戻ってきてるのか?)
姪「・・・・あの、じゃあ、わたし2階の自分の部屋に行って本を取ってきます」
オレ「ん、わかった」
姪「・・・・あの・・・おじさん?」
オレ「なに?」
姪「ついてこないでもらえますか?」
オレ(ついてこないで、か。姪にしては強い言葉だな・・・)
オレ「・・・・なんで?」
姪「恥ずかしいし・・・」
オレ「おまえの部屋、オレいっつも入ってるじゃん」
姪「でも・・・でも・・・」
姪「・・・・・・」
オレ「あのな、姪」
オレ「オレはなに見たって、おまえとおまえのお母さんのこと、嫌いになったりしねーよ」
姪「・・・・・・」
オレ「だいじょうぶだから。二階を見せてみろ」
姪「・・・・・・」
オレ「へぇ、お前の部屋、ちゃんと片づいてるな」
姪「・・・はい」
オレ「隣のこの部屋、開けてもいいか?」
姪「・・・・・・・・・・・・・・・・ダメです」
オレ「信用しろ、姪。大丈夫だよ。ちょっと見るだけだ。なかのものは触らないから」
姪「・・・・・・・・・・・・・・・・」
ガチャッ
オレ「うわ・・・・」
オレ(なんだこれ・・・ ぼろ布の山? レールごとカーテンが落ちて・・・)
オレ(雛飾りがバラバラだ・・・ 箱もぐちゃぐちゃじゃんか・・・)
姪「・・・それ、お雛さまで・・・・お母さんが・・・・お母さんが・・・・うううううわあああん」
オレ「・・・わかった、姪、下に行こう」
オレ(そういうことか・・・・)
お袋「なに? なにがあったの?」
オレ「見ないほうがいいぞ、お袋」
お袋「は? どうして姪ちゃん泣いてるのよ! あっ」
お袋「これは、わたしが買ってあげた雛飾り・・・」
オレ「下りような、姪」
姪「・・・クスンクスン」
・・・・・・・
オレ「状況はわからんが、とにかく暴れたんだろうな、妹は・・・」
お袋「・・・・・」
オレ「たぶん、姪の前で暴れた・・・ 義弟がその場にいたかどうかはわからん」
お袋「姪ちゃんは叩かれたりしたのかしら・・・」
オレ「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。本人がはっきり言わないからなんとも言えん」
オレ「とにかく、姪が母親を怖がってることだけはわかった」
オレ「だから見舞いに行こうって自分からは言わないんだ」
お袋「・・・・・」
オレ「学校の先生にも、それを言いたくないんだろうな。だから黙ってるんだ」
お袋「・・・・・」
お袋「・・・言えばいいのに。悩みは大人に話すもんでしょ?」
オレ「母親をかばってるんだよ、たぶんな。悪く思われたくないだろ? 自分の母親のことを・・・」
お袋「・・・・・」
オレ「会いたいけど、会いたくない。会うのが怖い」
オレ「暴れた怖いお母さんには会いたくないって感じなんだろうな、姪の気持ちは」
お袋「・・・・・」
・・・・・・・・・
コンコン ガチャッ
オレ「姪、入るぞ」
姪「・・・・・はい」
オレ「持ってきた本、見せてみろ」
姪「・・・・・はい」
オレ「ふーん、面白そうだな。これ借りてもいい?」
姪「・・・・・はい」
オレ「・・・・・じゃあ、姪にはかわりにこの本を貸してやる。読んでみな」
姪「・・・しん せいざ じゅん? れい? 『新星座巡礼』ですか?」
オレ「うん、オレがガキの頃に読んでた本だからボロボロだけど」
オレ「あー、ちょっと姪には難しいかもなあ・・・ でもいい本だ。暇なときに読んでみな」
姪「・・・おじさんは、小学生の頃、これ読んだんですか?」
オレ「ああ、たぶんお前と同じくらいの年だったと思うけど」
姪「じゃあ、頑張って読みます」
オレ「ん」
姪「・・・あの、おじさん」
オレ「なんだ?」
姪「お母さんは治りますか?」
オレ「ああ、治るよ。時間はかかるかもしれないけど、ぜったい治るよ」
姪「・・・はい」
オレ(ほんとはオレにもわからんけど、こういう嘘ならいくらでもついてやる)
TRRRRRRR....Pi
オレ「よお、義弟」
義弟「こんばんわ、義兄さん。最近良く電話かけてくれますね」
義弟「いったいどうしたんですか? いままでこんなにわたしと話したことはないと思いますが」
オレ「皮肉はいい、義弟。お互いそんな時間はねぇ。今日、おまえの家に行ったぞ」
義弟「そうですか。娘は本を持って帰りました?」
オレ「二階の部屋を見たぞ」
義弟「・・・・・ガサ入れってやつですか? 趣味が悪いですね、義兄さん」
オレ「説明しろ。あれはどういうことだ?」
義弟「・・・義兄さんには関係ないと思いますよ」
オレ「あの雛人形は姪が生まれたときお袋が買ってやったもんだぞ」
オレ「オレに説明できないならお袋にしろ。その義務はあるだろう?」
義弟「・・・・・・家内が壊したんです」
オレ「・・・えらく派手に壊したな。なにが原因なんだ?」
義弟「・・・・・・話したくありません」
オレ「その場に姪はいたのか?」
義弟「・・・・・・・・・」
オレ「その場に姪はいたのかっつってんだよ、義弟っ!」
義弟「・・・・・・・・・」
義弟「・・・娘が義兄さんに話したんでしょ? じゃあご存知なんじゃないんですか?」
オレ「姪はなにも話しちゃいねえよ。母親をかばって」
義弟「・・・・・・・・・」
オレ「あのな、義弟。オレはおまえが嫌いだ。話したくもないからいままで距離をとってきた」
オレ「だがな、うっかり姪と関わっちまった。ガキを守るのは大人の義務だ」
オレ「・・・しょうがねえ。てめえとは徹底的に戦争してやる。覚悟を決めろ」
義弟「・・・・・・・・・」
オレ「戦争が嫌なら、正直に話せ」
義弟「・・・・・・・・・」
義弟「・・・娘は・・・その場にいました」
オレ「おまえはそこにいたのか?」
義弟「・・・・・・いえ」
オレ「じゃあ、姪は暴れる母親とふたりっきりだったのか?」
義弟「・・・そういうことになります」
オレ「・・・・・・・・・・」
オレ「なんでいままで話してくれなかったんだ?」
義弟「・・・・・先日も言いましたが、わたしたちの家庭に踏み込んで欲しくないんです・・・」
オレ「ふん。だが、知ってしまったもんは仕方ねえな。学校の先生にはなにがあったのか伝えておく」
義弟「・・・・・・・・・・」
オレ「どう考えても姪にはカウンセリングが必要な状況だな。お前も同意しろ」
義弟「・・・どうしてですか?」
オレ「馬鹿かおまえは。姪は母親を怖がってるぞ。このままだとおまえらずっと同居できねーだろが」
義弟「・・・・・・・・・・わかりました。先生にはわたしのほうから連絡します」
オレ「オレのほうからも先生には電話しておく。それとな・・・」
義弟「まだなにかあるんですか? わたしも忙しいんですが」
オレ「妹と、いや姪の母親と会わせろ」
義弟「・・・・いいですけど、後悔すると思いますよ」
オレ「どういう意味だ?」
義弟「いえ、そのままの意味です」
義弟「病院には連絡しておきますが、先生の判断とか本人の具合とかあるので、」
義弟「すぐには会えないかもしれませんよ。いいですか?」
オレ「ああ、それでいい。頼む」
義弟「わかりました。では娘のこと、よろしくお願いします」 Pi
・・・・・・・・・
オレ(ベランダはまだ寒いな)
オレ(スピカも見えないか。東から上ってきてるはずなんだがな・・・)
オレ(やっぱ街中だとあんまり星が見えねぇ・・・)
オレ(・・・・・・)
オレ(姪はどんな気持ちだったんだろうか。母親が暴れてるとき・・・)
オレ(雛人形が壊されるとき・・・ 姪はどんな気持ちだったんだろうか)
オレ(自分が生まれたお祝いの人形を壊されたとき・・・)
オレ(・・・・・・)
オレ(・・・ほんとうは、姪を中心に考えるべきなんだろうな)
オレ(大人が苦しい思いをするのは仕方ねぇが、ガキは難しいことを考えずに育つべきだ)
オレ(周りにいる大人たちが、ちょっとずつ我慢する)
オレ(・・・子どものために)
オレ(問題は、それを当事者がどれだけ理解してるかってことなんだが・・・)
カラララ...
姪「おじさん・・・」
オレ「ああ、姪か。なんだ?」
姪「いえ、別に・・・ 星の観測ですか?」
オレ「んー? ぜんぜん見えないんだけどなー」
姪「でも、今夜は晴れてるんですよね?」
オレ「街中は、家とか車の光で星が見えにくくなるんだよ。光害ってやつなー」
姪「あ~あ、せっかく星の本読んでるのに・・・」
オレ「あの本、おもしろいか?」
姪「はい。・・・でも難しいです」
オレ「・・・だろうな。オレも最初読んだ時はよくわからんかったからな」
姪「でも、星のこと詳しいですよね、おじさんは。なにげに」
オレ「なにげに? んん、なんかひっかかるけど、まあそうかもな」
姪「星が好きなんですか?」
オレ「好きだなー ガキの頃は天文学者になりたかったなー」
姪「す、すごいですね」
オレ「でもなあ、数学が全然ダメでさ。あきらめた」
オレ「まあ、ぼけーっと星を見る分にゃ数学は関係ないしな」
姪「いまからなれない?」
オレ「無理だろww オレ、すでにおっさんだぞww」
オレ「あ、でも雑学は詳しいぞ。「ブラックホールには毛が3本」って格言とか知ってる(格言じゃねえけど)」
姪「・・・なんですか、それ?」
オレ「ggrksって言いたいところだけど、おまえはパソコン持たないからな。学校の先生に聞け」
姪「・・・はい。で、ggrksってなんですか?」
オレ「・・・・・・それも先生に聞け」
オレ「でも、星はいいよな。何百年も前の光がやっとここに届いてるんだ。なんかありがたくなる」
姪「・・・よくわかんないです」
オレ「・・・オレもなんかよくわかんないけど」
オレ&姪「・・・・・・・」
姪「あの・・・いつか星見したいです」
オレ「ああ、それいいな。気候も良くなってきたし」
オレ「この辺でもちょっと郊外に行けば、意外と星がたくさん見れるはずだがなあ」
姪「行きたいです! 本で勉強します。あの・・・姪友も連れていきたいです」
オレ「ああ、あいつか・・・ あいつは基本的にオレの敵だからなあ・・・」
姪「え?」
オレ「いや、いいよ。あちらの家のひとの許可があれば連れてってやる」
オレ「・・・寒いから家の中に入ろう、姪」
姪「はいっ! じゃあコーヒー入れます」
オレ「あ、おれ、ミロでいいや」
・・・・・・・・・・・・
オレ(閉鎖病棟か・・・ 無茶苦茶ひさしぶりだな)
オレ(この独特の雰囲気、気が滅入るな)
オレ「お袋」
お袋「な、なによ・・・」
オレ「不愉快なこと言われてもスルーしろ。いちいち相手するな」
オレ「なに言われても気に留めるな。病気だから仕方ないと思え」
お袋「・・・・・」
医師「患者さんがいらっしゃいました・・・」
医師「事前にご案内したとおり医師のわたしが立会いさせていただきますが、ご了承ください」
オレ&お袋「あ、はい」
ガチャッ
お袋「ひさしぶりね、妹ちゃん」
オレ「ひさしぶりだな、妹」
妹「・・・こんにちは」
お袋「元気そうね、よかった」
妹「・・・・・・・元気なはずないでしょ」
オレ「義弟に聞いてるだろうけど、姪は元気にしてる。心配しなくていい」
妹「・・・・・・・」
オレ「時期を見て、姪をここにも連れてこようかと思ってるんだ。おまえも会いたいだろうし」
妹「・・・・・・・」
妹「・・・なんでお見舞いになんか来たの?」
お袋「・・・え?」
妹「違うでしょ、姪のことが心配なだけでしょ?」
お袋「そんなことないわよ・・・」
妹「・・・・・・・・・・・・・・」
お袋「・・・・・・・・・・・・・・」
オレ「・・・・・・・・・・・・・・」
妹「お母さんも笑ってるんでしょ?」
お袋「え?」
妹「お兄ちゃんもわたしがこんなふうで笑ってるんでしょ?」
オレ「・・・・・・・」
妹「お母さん、むかしからそうだったし・・・ お兄ちゃんばっかりほめてたし」
お袋「そんなことないわよ、妹ちゃん・・・」
妹「お母さんはわたしがピアノ教室やめたときもすごく怒った、ダメな子だって言った」
お袋「言ったかもしれないけど・・・そんなこと思ってない・・・」
妹「お母さんはわたしを褒めてくれたことない、そんな記憶ぜんぜんないもん」
お袋「・・・・・・・」
妹「わたしが結婚するときも「どうせ失敗する」って思ってたんでしょ」
お袋「・・・・・・・」
妹「お兄ちゃんもずっと昔からわたしのこと馬鹿にしてた」
妹「お兄ちゃん、わたしが成績悪いの、すごく嫌だったでしょ」
妹「中学生の頃、友だちと話してたでしょ、わたしの悪口いっぱい言ってた」
妹「わたしのことブサイクだって話してたでしょ、わたし知ってるよ」
妹「お兄ちゃんみたいに、友だちもすぐできないダメ人間だ、わたし」
妹「いまもいい気味だって思ってるんでしょ、お兄ちゃん」
妹「黙ってるけど、お兄ちゃんが考えてること全部わかるんだからね」
妹「わたしひとつのことしかできないのに家のこととか子育てとか全部ひとりでやってて」
妹「お母さんはむかしからなんでもできるしお兄ちゃんもなんでもできるのにわたしだけ」
妹「ひととちがうんだもんでもしょうがないもんお兄ちゃんが笑っててお母さんも笑って」
妹「るし旦那は帰ってこないし帰ってきても話とかしないしわたしがおもしろい話ができ」
妹「ないからだろうしあの子も言うこときかないし近所の人が噂したりしててわたしのこ」
妹「と馬鹿にしてお金を貯めないと旦那と別れたときに困るから一生懸命お金貯めてでも」
妹「すごく怒られてお父さんが怖いお母さんが怖いお兄ちゃんが怖い旦那が怖い娘も怖い」
妹「お父さんが嫌いお母さんが嫌いお兄ちゃんが嫌い旦那が嫌い娘も嫌い先生も嫌い嫌い」
妹「嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い」
妹「もういやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ」
妹「いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいや」
妹「だやだやだやだややだだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだや」
妹「だやだやだやだややだだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだや」
妹「だあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
妹「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
妹「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
妹「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
妹「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
・・・・・・・・・・
オレ「落ち着いたか・・・お袋?」
お袋「・・・わたしの育て方が間違ってたのかしら・・・」
オレ「そうじゃないだろ。あれは病気で一時的にああいう状態になってるだけだ」
オレ「波があるって先生も言ってただろう? 今日はああいう気分の日だったんだよ」
お袋「でも・・・あの子があんなことずっと考えてたなんて・・・」
お袋「あの雛飾り壊したのも、わたしがあげたものだからかもしれない・・・」
オレ「・・・・・・」
お袋「それに、あんな目をするなんて・・・」
オレ(たしかにそうだな。あれは、オレたちを憎んでいる目だ。絶対許さないっていう目だった)
オレ「お袋・・・ 人間は自分の「物語」を作って生きてるんだ。それが楽だからな」
オレ「あいつにとっては、いまあれがいちばん楽な「物語」なんだ。ほんとのことじゃねーよ」
お袋「・・・・・・」
オレ「・・・あー、なんだっけ? 嘘も方便ってやつだな」
オレ「子どもの頃、オレはそんなにあいつを馬鹿にしてたつもりはない。お袋もそうだろ?」
オレ「でも、いまはそう思い込んでいたいんだよ、あいつは」
オレ「それだけなんだから、気にするな」
お袋「気にするなって言っても気になるわよ・・・ あんたみたいに鈍感じゃないのよ、わたしは」
オレ「・・・・・・とにかく帰ろう。姪が待ってる」
・・・・・・・・
コンコン
オレ「あー? 入っていいぞ」
ガチャッ
姪「あの・・・おじさん・・・」
オレ「ん? どうした??」
姪「おばあちゃんが元気ないから・・・ 部屋から出てこない・・・」
オレ「ああ、ばあちゃんちょっと落ち込むことがあったんだよ」
オレ「・・・できればそっとしておいてやってくれ」
姪「はい・・・ あの・・・」
オレ「まだ、なんかあるのか?」
姪「あのあの・・・ ここで宿題してもいいですか?」
オレ「・・・ああ、いいよ。そのへんでやれ。オレは仕事するから面倒見れないけどな」
カキカキカキ
姪「・・・・・・」
カチャカチャカチャカチャ
オレ「・・・・・・」
姪「・・・あの」
カチャカチャカチャカチャ
オレ「あ? なんだ?」
姪「・・・お母さんのところに行ったんですか?」
カチャカチャカチャ ピタッ
オレ「なんでそう思うんだ? 姪」
姪「・・・おばあちゃんが、泣いてたみたいだから。お母さんの名前聞こえて」
オレ「・・・・・・・ふぅ」
オレ「うん、見舞いに行った」
姪「・・・お母さん、元気でしたか?」
オレ「・・・ああ、元気だったけど、帰るときちょっと調子悪くなってな」
姪「・・・そう・・・ですか」
姪「・・・・・・・」
オレ(もしかすると全部嘘になるかもしれんが・・・ いま言っておくしかねぇか)
オレ(しゃーない。これが大人の務めってやつだ)
オレ「あのな、姪」
オレ「お母さんは、むかしのお母さんにちゃんと戻れるけど、時間がかかるかもしれない」
姪「・・・・はい」
オレ「しばらく待てるか?」
姪「・・・コクン」
オレ「お母さんを待つあいだ、おまえはここにいていい」
オレ「おまえがここにいられるようオレは一生懸命努力する。安心しろ」
姪「・・・はい」
オレ「待ってるあいだ、おまえは元気じゃないといけない」
オレ「お母さんが元気になったのに、おまえが元気じゃないと、意味ねーからな」
姪「はい」
オレ「ご飯はちゃんと食べろ、夜はちゃんと寝ろ」
オレ「心がきつくなったら、いつでもそう言えばいいし、」
オレ「すぐに言えなかったら、言ってくれるまでオレたちはそばで待ってる。わかった?」
姪「はい」
オレ(うん、まっすぐな目だ。オレが嘘をついてる間はこいつはだいじょうぶなはず)
オレ「もしかすると、お母さんがおまえを傷つけるようなことを言ったことがあるかもしれないけど・・・」
オレ「それは全部嘘だ、心配するな・・・ほんとうのことじゃない・・・」
オレ「・・・いま、あいつは病気だから・・・病気だからな・・・」
オレ「お母さんは・・・妹は・・・・えっとな・・・・・妹は・・・・・・」
姪「・・・おじさん、泣いてるの?」
オレ「あ・・・ いや・・・昔のこと・・・ちょっと思い出して・・・」
オレ「子どもの頃、小学生の頃、おまえのお母さんといっしょにおたふく風邪にかかって・・・」
オレ「雪が降る日で、ふたりで顔がまんまるくなった写真とか・・・撮って・・・」
オレ「小学生の頃は、二段ベッド使ってて・・・・、上のベッドの取り合いで喧嘩したり」
姪「・・・・・・クスンクスン」
オレ「年子だったからかなあ・・・たしかに仲は良くなかったかもしれないけど・・・」
姪「・・・おじさん・・・クスンクスン」
オレ「・・・やっぱ妹だしな」
オレ「・・・おまえのお母さんは、オレの妹だから。みんなで一緒に待っててやろうな、姪」
姪「・・・はい」
・・・・・・・・
オレ「おい、姪友。あんまり離れて歩くな。懐中電灯にセロファン巻いてる暗い。離れたらあぶねぇだろが」
姪友「だいじょおぶですうううううう」
オレ「今夜は寒いからベストも脱ぐな。風邪ひくぞ」
姪友「だいじょおぶですうううううう」
オレ「やっぱムカつくな。あの言い方が激しくムカつく。あいつはオレの敵だ」
姪「くすくす」
姪友「お~~いっ、おっさ~んっ」
オレ「「じ」を略すな。二文字目に「っ」を入れるな。ちゃんと「おじさ~ん」と言え」
姪友「で、ケーキ持ってきた?」
オレ「は? ケーキ?」
姪友「こないだ食べた、樽とトタン? だっけ? リンゴがみっちみちのやつ」
オレ「そりゃ、タルト・タタンだ」
姪友「それーっww」
オレ「暗いとこで星見するのに、ホールケーキとか持ってくるわけないだろ。おまえ、アホか」
姪友「・・・はぁ、存在価値なし」
オレ「あ? なんだと?? マドレーヌ持ってきたのに。おまえにはやらん」
姪友「マ ド レ ー ヌ ・・・って、なにそれ?」
オレ「知らんのか、おまえは。ふふん、無知なやつめ。要するにちっちゃいケーキみたいな菓子だ」
姪友「やったあああああ、なんだケーキ持ってきてるじゃん。生くり~むぅ、いちごぉ」
オレ「マドレーヌにゃ生クリームも苺もトッピングされてねぇよ」
姪友「え? じゃ、栗は」
オレ「モンブランじゃねぇよっ」
姪友「ケーキじゃないじゃん。やっぱ存在価値なし」
オレ「流行ってんのか? 「存在価値なし」って。なんかすげえ凹むわ・・・」
オレ「・・・なあ、姪」
姪「はい?」
オレ「おまえこんなやつと一緒にいて、くたびれないの?」
姪「いいえ? どうしてですか」
オレ(いちばん変わってるのはこいつかもしれんな)
姪友「うわああああああああああああ」
オレ「おい、どした姪友! だいじょうぶか!?」
姪友「すげえっす、おっさん、その懐中電灯消して空見ろ、おっさん」
オレ「だからおっさんはやめれって・・・・」
カチッ
姪「・・・うわあ」
オレ「・・・すげえ」
真っ暗な世界から見上げた
夜空は星が降るようで
姪「ね、おじさん。わたし、南のあの星知ってる。スピカでしょ」
オレ「ああ、そうだ。よく知ってるな、姪」
姪「わたし、おじさんの貸してくれた本、ノートに写してきたんだ」
春の静かな黄昏に、この星が柔い純白な光にきらめくのを眺めると、
胸の底まで浄められたような気持がします。
広い天上にもこれほど純潔な印象を与える星はありません。
姪「綺麗だねー、おじさん」
オレ「・・・ああ」
姪友「ねー、姪のおっさん。なんか飲み物ちょうだい」
オレ「おまえのせいでなにもかもぶちこわしだな、姪友。 ・・・あったかいミロでいいだろ?」
姪友「もちろん、おけー」
姪「くすくすくす」
-おわり-
読んでる人がおるかわからんけど、すっきりした。
おやすみなさい。
Entry ⇒ 2012.01.08 | Category ⇒ 兄弟姉妹「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
姪「おじさんは・・・いいひとだもん」 オレ「・・・」
オレ「はい、もしもし」
お袋「あ、いたのね。あと1時間ほどで家に帰るわ」
お袋「食事も用意しててくれる?」
オレ「ああ、わかった。で、親父の話はなんだったの?」
お袋「・・・ええ、まあ・・・ とにかくそちらに着いて話すわ。それじゃあ切るわね」プツッ
オレ(なんか話を濁したな。面倒なことになりそうだ。できるだけ関わらないようにしないと)
お袋「ただいまー」
オレ「おう、おかえり・・・って、これどういうこと?」
お袋「挨拶しなさい、姪ちゃん」
姪「こんばんは、おじさん・・・」
オレ「・・・ああ、こんばんは。 で、どういうことだ? お袋」
お袋「連れて来たのよ」
お袋「しばらく預かることにしたのよ」
オレ「は?」
お袋「さ、姪ちゃん、入って入って」
姪「はい・・・おじゃまします」
オレ「」
姪「・・・はい」
オレ(二人分しか作ってないから俺の分がねーよorz)
お袋「ご飯食べたらお風呂入っておいで」
姪「・・・はい」
オレ(ずっと俯いてるな、この娘。たしか11になるよな。数年ぶりか。)
姪「・・・あの、おじさん・・・、なにか・・・?」
お袋「あんた、そんな難しい顔して姪ちゃん睨むんじゃないわよ」
オレ「ああ、すまん。ごめんな、姪」
オレ(それにしても、なんで家で預かるなんてことに・・・)
お袋「姪ちゃん、お風呂に行ったわ」
オレ「で、どういうことだよ。なんで姪を預かんなきゃいけねーんだよ」
お袋「実はね、妹が入院してるらしいのよ、うつ病らしいわ」
お袋「見舞いにも行ったけど会えなかった。相当悪いらしいの」
お袋「妹の旦那はあんなふうだから、妹がいないと子育てとか無理でしょ」
お袋「パパがしばらく姪を預かってたけど、あの人にも無理よね」
オレ(別れた旦那を「パパ」とか言うなよ・・・ にしても、妹が入院、ねぇ・・・)
お袋「他に頼るとこもないし、それで相談されたのよ」
オレ「ましてお袋は親父と離婚してる。俺たちと妹夫婦も仲悪くて、何年もまともに話してない」
オレ「なのにこんなときだけ頼って来るなんておかしいだろ? 俺もお袋も仕事してるんだぞ?」
お袋「あんたは家で仕事してるからいいじゃない。姪ちゃんをひとりにすることも少ないでしょ」
オレ「意味がわからん」
オレ「義弟にも親戚がいるだろう? そっちに預けるのが筋だろう?」
お袋「それがうまくいかなかったから、うちが預かることになったんじゃない」
オレ「・・・とにかく反対だな。送り返すしかない。面倒事はもうゴメンだ」
お袋「・・・じゃあ、あんた。これ見なさい」
お袋「・・・」ゴソゴソ
オレ「こらこら、下着とか出すな・・・」
お袋「これ、どう思う?」
お袋「これであの子の服は全部よ」
オレ「ん?」
お袋「よく見なさいよ、服がこれだけしかないわ。春夏秋冬あわせて全部でこれだけなのよ」
オレ「・・・」
お袋「服を買ってもらってないのよ、育ち盛りなのに・・・」
お袋「気がつかなかった? 今日着てた服もサイズが小さいの。ちゃんと親が育ててないのよ」
お袋「ご飯もずいぶん偏ったもの食べてたみたいだし、心配なのよ」
オレ「で、しばらくって、いつまでの予定なんだ?」
お袋「半年くらい・・・かしら。そのくらいは覚悟しないと」
オレ「っ!! 無理無理!!! 学校とかどうすんだよ!!!」
お袋「転校手続きするしかないわね、明日、役所に行ってくるわ」
オレ「待ってくれよ・・・サイアクだ。俺、ガキが苦手なんだよ・・・」
オレ「なあ、お袋。なんで事前に俺に相談しなかったんだよ? マジですげえ困るわ」
お袋「あんたがごねるのがわかってたからよ」
オレ「」
お袋「姪ちゃんの部屋、あんたの部屋でいい?」
姪「・・・えっ?」
オレ「・・・おい。いいわけないだろ」
お袋「あんた、自分の仕事部屋にソファーベッドあるじゃない?」
お袋「姪ちゃんもしばらくこの家にいるんだったら自分の部屋があったほうがいいでしょ」
オレ「」
オレ(・・・もうなんか頭痛い)
オレ(リビングで寝起き? それはいかんだろ。ああ、もうなんだかなあっ)
オレ「もういい。姪は俺の部屋を使いな。俺は仕事部屋で寝ることが多いし」
姪「でも、悪いし・・・」
オレ「もうこの話は終わりだ、めんどくせぇ。とにかく俺の部屋を使え」
姪「・・・はい。ごめんなさい」
カチャカチャカチャカチャ
オレ(サイアクだ。マジでサイアクだ)
カチャカチャカチャカチャ ...カチャッ...
オレ(とにかく仕事を先に倒していかないと、何が起こるかわからん)
カチャカチャカチャカチャ ...カタッ...クスン...
オレ(とりあえず、Sさんの表紙デザインのラフ案はこんな感じでどうかな)
カチャカチャカチャカチャ ...クスン...クスン...
オレ(なんだ、ドアの外。なんの気配だ? まさか・・・)
ガチャッ
オレ「・・・どうしたんだ、姪」
オレ「眠れないのか?」
姪「・・・・・・・・クスンクスン」
オレ「まあ入れ」
オレ「なんでばあちゃんとこに行かないんだ?」
姪「・・・・・・・・クスン」
オレ(そりゃまあ寂しんだろうけどさぁ。困ったな。どう声をかけていいかわからん)
オレ「仕方ないな。そこのソファでしばらく寝るか?」
姪「・・・・・・・・コクン」
オレ「じゃあ、寝てろ。俺は仕事してるから電気消せないけど、いいか?」
姪「・・・はい。ごめんなさい クスン」
オレ(毛布一枚じゃ寒いだろうな、布団持ってくるか)
オレ(にしてもこの子小さいな。このソファ、オレだと足がはみ出るんだが、余裕でベッドになってる)
オレ(最後に会ったのが、この子が小学校に上がるまえだな)
オレ(あの頃はもう少し活発だったようだったけど。いまはえらく静かというか陰気というか・・・)
オレ(髪、あの頃よりずいぶん伸びたな・・・)
すぅっ
オレ(っ!!! おいおい、オレはまだ仕事があるんだ、手とか握ってくんなよっ)
姪「・・・お母さん・・・お父さん・・・クスン」
オレ「・・・・・・」
おまわりさんこいつです
姪「・・・あの・・・おはようございます・・・おじさん・・・」
オレ「・・・んあ? げっ、朝じゃん。さぶっ」
姪「おはようございます、おじさん」
オレ「ああっ? あ、姪か。そうか。ここでお前寝たんだったな」
姪「・・・お仕事邪魔してごめんなさい」
姪「今夜からちゃんと自分の部屋で寝るようにします。じゃ、顔洗ってきます・・・」
オレ「まて、姪」
姪「・・・はい」
オレ「・・・まあなんだ、ときどきならここで寝てもいいぞ」
姪「・・・・・・」
オレ「・・・な、なんだよ。そんなマジマジ見んな」
姪「ありがとう、おじさん」
オレ(・・・なんでオレ、あんなこと言ったんだ?)
オレ(さて、朝から侵略イカ娘でも見るかなっと)
ガチャリ
お袋「あんた、今日は暇でしょ」
オレ「なんだよ、いきなり。ノックして入れよ」
お袋「いまから姪ちゃんの服、買ってきてちょうだい」
オレ「は??? なんでオレが!?」
お袋「わたしはこれから役所に行くの、忙しいのよ。姪ちゃんと車で行ってきなさいよ」
オレ「いやいやいやいや。オンナモノの服とかオレわかんねえよ」
お袋「オンナモノの服じゃないわよ。子ども服よ」
お袋「あんたもいい歳なんだから、子ども服選ぶくらいの甲斐性がないとダメ」
オレ「子どもいねえしっ、結婚もしてねえしっ」
お袋「とにかく、なんにせよ姪ちゃんをこのままにできないんだから。頼んだわよっ」
オレ(・・・・・・勘弁してくれ)
オレ「・・・しゃあない、行くか」
ガチャッ
オレ「おい、姪。服買いに行くぞ」
姪「キャッ」
オレ「あ、ごめんっっ」
バタンッ
オレ(着替えてたんか。失敗した・・・ ノックするべきだった。ひとのことは言えんな)
オレ(だけど、体型はまんま子どもだわ。発育が遅いのかな。あんなもんなのかな)
カチャッ
姪「・・・あの、ごめんなさい・・・着替えました」
オレ「あ、そう・・・ んじゃ、出かけるか」
姪「・・・はい」
オレ(あー、たしかにいま着てるコートも小さいなあ)
オレ「姪は好きな洋服屋さんとかあるか?」
姪「・・・いえ、洋服のことはよくわかんないんです。ごめんなさい」
オレ「服は誰と買いに行ってたの?」
姪「・・・服はいつもお古で・・・」
オレ「お古って、お前に姉はいないだろ」
姪「・・・いえ、お母さんが他所の家からもらってきてくれた服を・・・」
オレ(は? 義弟は稼ぎいいはずだぞ?? どういうことだ???)
オレ「リサイクルとかバザーってやつ?」
姪「・・・いえ、もらってくるんです・・・」
オレ(意味がわからん。要するに、新しい服を買わないで貰いもんで済ませてたわけか)
オレ(なにやってんだ、妹は)
姪「・・・あの、おじさん」
オレ「ん? どした?」
姪「・・・わたし、お金持ってない・・・です・・・」
オレ「ああ、お金か。ちゃんとあるからだいじょうぶ。心配するな」
姪「・・・ごめんなさい」
オレ(なんでいちいち謝るんだ?)
オレ「まず下着を買うか。その後は冬物だな。じゃあ、デパートの下着売り場に行くか」
オレ(って、オンナモノの下着とか・・・ ヤだなあ)
オレ(小学生の下着とか、どんなんか全然わからんぞ。ブラは・・・まだいらんだろけど)
オレ(パンツとか、こんなキャラクターのプリントされてるのがいいのか?)
オレ(いやいや、小5だし、もうちょっと大人っぽいのがいいのか?)
店員 「・・・あの」
オレ「うわわっ」
店員 「なにかお探しですか?」
オレ「あ、えっと、えっとですねっ、この子の下着をですねっ」
店員 「ああ、お嬢様の下着ですね」
オレ「いや、オレの子どもじゃないんですけどねっ」
店員 「は?」
オレ「いえ、なんでもないですっ。あのぉ、オレにはよくわからないので選んでもらえますか? 上下5、6枚ずつっ」
店員 「わかりました。じゃあ、お嬢ちゃん。一緒に探そうか」
姪「・・・はい」
オレ(下着の買い物は終了。うううう、難所は超えたな)
オレ(にしても、こいつにはやっぱまだブラは必要なさそうだww)
オレ「じゃあ、あとは服だな。GAPでも行くか」
姪「・・・はい。あの、さっきはごめんなさい」
オレ「あ? なにが?」
姪「・・・下着買うとき。おじさん困ってたから・・・」
オレ「・・・別に困ってねえよ。ちょっと店員さんにびっくりしただけだ」
姪「・・・・・・」
オレ「気にするな。大人の男は、その気になったらなんでも買えるんだよ」
オレ(・・・エロ本とかな)
・・・・・・・・
オレ「これとこれ着てみろ。靴はこれだな。試着室行け」
姪「え、でも、もうたくさん・・・」
オレ「いいから試着してみろ」
姪「・・・・・・はい」
オレ(体は小さいけど細いから、わりとなんでも似合うんだよなあ、こいつは)
オレ(髪はロングだけど、微妙に茶っぽいし。よく見ると顔だちもいいし)
姪「・・・・・・あの、着ました」モジモジ
オレ「おっ、そのライダース、似合うな。背が高く見える。ブーツもデニムも似合ってるな」
オレ「よし、じゃあそれも買うか」
姪「えっ、あのあのっ・・・」
オレ「店員さん、これ計算お願いします」
店員 「はい、わかりました。こちらへどうぞ」
姪「・・・・・・・」
オレ(買い物したあとは気持ちいいなあ。すげえハッピーな気分だぜ)
オレ(・・・よく考えたら、子どもの下着と服買っただけだけどなorz)
姪「・・・あの」
オレ「あ、どした?」
姪「・・・ごめんなさい。たくさんお金使わせて」
オレ「礼は、ばあちゃんに言っておけ。ばあちゃんがお金出してるから」
オレ「でも、似合ってるぞ、その服。大人っぽく見える。新しい服に着替えて正解だったな」
姪「あ・・・はい。ありがとうございます・・・」モジモジ
姪「・・・あのっ」
オレ「ん?」
姪「・・・本屋さん、寄ってもいいですか?」
オレ「ああ、いいけど? オレも買いたい本あるし」
オレ(自分の買い物、ちょっとくらいしておきたいしな。このまんまじゃ虚しくなりそうだし)
姪「・・・ありがとうございますっ」
オレ(なんか嬉しそうだな。漫画でも買うのか?)
姪「あっちのコーナーに行ってきますっ」
オレ「ああ、オレはこのへんにいるから、終わったらここに来て」
姪「はいっ」タッタッタッタッ
オレ(なんか元気になったな・・・)
【30分経過】
オレ(おせえな。何やってんだ、姪は? 様子を見に行くか。あー荷物が重ぇよ)
オレ(児童書か。ん?あれ、姪か?)
オレ(あんなに本に集中して。横顔、綺麗だな・・・)
オレ(あ? 綺麗? キレイってなんだよ。おいおい、ロリコンかっつーのorz)
オレ(あれは自分の姪だぞ。小5だぞ。なに考えてるんだ。大人っぽい服着てるから、そう思っただけだっつうの)
オレ「おい、姪」
姪「あっあっ、はいっ。あ、おじさん・・・」
オレ「その本、面白いか?」
姪「・・・はい、ごめんなさい」
オレ「そうか。じゃあ買ってやる」
姪「えっ?」
オレ「オレも本を買うからついでに買ってやる」
姪「・・・いえ、これは自分のお金で買います。お小遣い持ってきてますから」
オレ「・・・あっそ。んじゃ、自分で買って、残りは家で読め。ケーキ食って帰るぞ」
姪「・・・ケーキ・・・? あっ、はい」
・・・・・・
オレ(さすがだな、このりんごのシブースト。紅玉使ってるようだが、キャラメリゼして酸味をおさえてる)
姪「・・・」
オレ(このオレンジピールの混じったカスタードクリーム。絶品じゃまいか)
姪「・・・・・」
オレ(タルト生地のこの香り、うむむ、紅茶の葉を混ぜてるのか)
姪「・・・・・・・」
オレ(イタリアンメレンゲの固さも申し分ないし、見た目も完璧だ。美味いなっ)
姪「・・・・・・・ふふっ」
オレ「ん? なに??」
姪「・・・いえ、おじさんは美味しそうにケーキ食べますね」
オレ「・・・・・・・」
姪「・・・な、なんでもないです。ごめんなさい」
オレ「あんま見んな。恥ずかしい」
オレ「ケーキ、うまかったか?」
姪「・・・はい。おごちそうさまでした」
オレ「あそこはこの街でいちばんうまいケーキ屋なんだ。・・・たぶんな」
姪「・・・・・・」
オレ「なあ、姪。おまえ、よく謝るよな、ごめんなさいって」
姪「・・・はい」
オレ「口ぐせなのかもしれんが、あれはできるだけやめろ」
姪「・・・はい。ごめんなさい・・・あっ」
オレ「・・・・・・」
オレ「おまえはここに来て、別に悪いことは一度もしてないよ」
オレ「しばらくは一緒に過ごすんだから、謝られてばかりだとオレの気も滅入る」
オレ「口ぐせだろうけど直せ。わかった?」
姪「・・・はい」
・・・・・・・
お袋「あんた、センスいいじゃない! かわいいわよ。このワンピースも」
お袋「こっちも着てみてよ、姪ちゃん」
姪「・・・はい」
オレ「・・・」
オレ(まあ、姪も嬉しい気持ちはあるんだろうな)
オレ(顔、赤くして恥ずかしそうだけど、女の子だし)
オレ(いままで洋服を選んだりする楽しみもなかったんだろうなあ・・・)
オレ「あ、そうだ、姪。ばあちゃんにお土産があるんだろ?」
姪「・・・はい。これ、おばあちゃんに」
お袋「ああっ、紅茶ね。ありがとう」
姪「・・・ニコッ」
お袋「あんた、わたしがあげたお金じゃ足りなかったでしょ」
オレ「・・・」
お袋「いいところあるわね。もしかしてわたしのお土産もお金足したげたんじゃないの?」
オレ「・・・」
お袋「ケーキも食べさせたんだって? ふふん」
オレ「・・・」
オレ(いちいちうるさいババアだな)
・・・・・・
オレ(まだ起きてんのか、姪は? もう11時過ぎたぞ。そろそろ寝かせるか)
コンコン、ガチャッ
オレ「姪。まだ起きてるのか、そろそろ寝ろ」
姪「」
オレ「おい、姪っ」
姪「あっ、はい。あ、えっと、もう寝ます」
オレ「本、読んでたのか?」
姪「・・・はい、ごめんなさい」
オレ「謝らなくてもいい。昼、言っただろ。でも、もう遅いから寝な」
姪「・・・はい」
姪「・・・」
オレ「・・・なんの本読んでるんだ?」
姪「・・・えっと・・・」
オレ「どんな話?」
姪「・・・シリーズものの物語なんです。新しいのが出てたから・・・」
姪「女の子が弟と冒険する話で、変な世界に行っちゃうんだけど毎回ハッピーエンドで」
姪「読んでると楽しくって、何回も読み返してしちゃって・・・・あ、ごめんなさい」
オレ「謝らなくていい。本を読むのは悪いことじゃないからな」
オレ「とにかく、もう寝ろ。遅いから」
姪「・・・はい、ごめん・・・おやすみなさい」
オレ(ほんとに本が好きなんだな。はじめてだな、あんなにしゃべんの)
・・・・・・
オレ「今日から学校だな、姪」
姪「・・・はい」
お袋「集団登下校らしいけど、気をつけるのよ」
姪「・・・・・はい」
オレ「友だちできたらいいな」
姪「・・・・・・・・はい」
オレ(緊張してるんだろうな。ま、オレには関係ないけど)
姪「・・・あの、じゃ、行ってきます」
・・・・・・
オレ(もう4時半か。そろそろ帰ってくるはずなんだが)
オレ(まだか?)
オレ(おいおい、そろそろ5時だぞ。なんかあったのか?)
オレ(ちっ、迎えに行くか)
ガチャッ
姪「・・・あの、ただいま」
オレ「おい、どうした? 遅かったな。4時に帰るって朝は言ってただろ」
姪「・・・あ、すいません。先生とお話してて」
オレ「・・・・・」
姪「・・・あの、心配かけました?」
オレ「いや、まあ、ちょっとな」
・・・・・・・
オレ「どう、お袋? 今日のポトフ。うまい?」
お袋「で、姪ちゃん。学校はどうだった? お友だちはできた?」
オレ(無視かよ)
姪「・・・・いえ、まだ・・・」
オレ「そんなにいきなり友だちできたりはしないだろ」
お袋「あら、子どもなんだから。あんたなんか転校してもすぐに友だち作ってたじゃないの」
オレ「そんな高度なスキルを姪に求めるなよ」
姪「・・・ごちそうさまでした」
お袋「もういいの? 姪ちゃん??」
姪「・・・はい。宿題してきます」
オレ「・・・・・・」
トントン、ガチャッ
オレ「おい、姪。入るぞ」
姪「・・・はい」
オレ「学校はどうだった?」」
姪「・・・はい、楽しかったです」
オレ「勉強は、前の学校と同じくらいのとこやってんのか?」
姪「・・・はい。だいたい同じです・・・」
オレ「そうか・・・」
姪「・・・・・」
オレ「なあ、姪。無理はしなくていいからな」
姪「・・・・・」
オレ「オレもだいぶ転校したからわかるんだが、なじみやすい学校とそうじゃない学校がある」
姪「・・・・・」
オレ「心配するな。そのうち友だちもできる。そんときはここに遊びに連れてこい」
姪「えっ・・・いいんですか?」
オレ「え? あ? ・・・ああ、うん、いいよ。連れてこい」
姪「はいっ」
オレ「じゃあな、おやすみ」
姪「はい、おやすみなさい」
オレ(墓穴掘ったああああああああ)
・・・・・
オレ(さて、今日は打ち合わせで客が来るわけだが、菓子焼いてたらこんな時間か)
姪「ただいま」
オレ「おかえり」
姪「・・・あれ、なんですか、これ。ケーキ」
オレ「ああ、タルトだけど」
姪「! なんでわたしの友だちが今日来るの分かったんですか?!」
オレ「は?」
姪「友だちが来るからケーキ焼いてるんじゃ?」
オレ「そんなわけねえべ。これからオレの客がくるから・・・」
ピンポーン
姪友「姪ちゃーん」
・・・・・・
客「なんかオレさん、雰囲気変わりましたね」
オレ「・・・そう?」
客「柔らかくなりました」」
オレ「そうかな? 自覚ねえな」
客「ていうか、オレさんの家に子どもがいるってことがちょっと信じられない」
オレ「仕方なく預かってるだけだよ」
客「そうですか? 意外と楽しそうですけど」
オレ「そんなわけあるかよ。めんどくさい事の方が多いぞ」
オレ「知ってるか? いまどき宿題をチェックするのは保護者だぞ」
オレ「ガキの宿題チェックしてサインとかするんだぞ、たまんねえよ」
客「あははは、それはたしかにオレさんらしくないですね」
オレ「だろ? 毎日、教科書の音読聞かされたりするんだ」
客「あはははは ・・・でも、オレさんらしい気もしますよ」
オレ「なんでよ?」
客「オレさんは、ほんとは子ども好きですよね?」
オレ「・・・おまえ、なに言ってんの? 馬鹿なの死ぬの?」
バタバタバタッ
姪友「ねえ、おじさん!」
オレ「え? なに?」
姪友「ココアありますかーっ?」
姪「姪友ちゃん! ちょっとまって・・・」
オレ「・・・・・・」
オレ「・・・ココアは切れてる。ミロならある」
姪友「ミロでいいですっ wktk」
オレ「・・・ふぅ 作ってやるから待ってろ」
姪友「やったあ」
姪「・・・わたしも手伝います」
オレ「カップ出して、姪」
客「クスクス」
・・・・・・
姪「ただいま」
オレ「おう、おかえり」
姪「あの、おじさん・・・これ・・・」
オレ「ん?『授業参観のお知らせ』?」
姪「はい・・・」
オレ(う〜ん、まず義弟に知らせないとな。どうせ来ないだろうけど)
オレ(それにしても、義弟は姪に電話かけてこねえな。お袋には時々電話してるみたいだが)
オレ「そうだな、お前のお父さんにも知らせておく。オレかお袋も行くようにするから」
姪「はい!」
・・・・・・・
TRRRRRRR... Pi
オレ「おう、ひさしぶりだな、義弟」
義弟「ああ、お兄さんですか。姪がお世話になってます」
義弟「もっとはやくご挨拶したかったんですけど、ご無沙汰しててすいませんでした」
オレ(まったくだな。俺には電話一本かけてこないわけだが)
オレ「実はな、○月○日に姪の授業参観があるんだが」
義弟「そうですか。ちょっと待ってください。・・・ああ、ボクが行けます」
オレ(は? てっきり来ないと思ってたんだが。こいつ来るのか?)
オレ「お、おう。そうか。俺とお袋も行くから・・・」
義弟「いえ、結構です。ご足労かけるのもなんですし」
オレ「あ? なんだって?」
義弟「授業参観には僕が行きます。先生にご挨拶しないといけませんから」
・・・・・・
お袋「どういうことなのよ、わたしたちは行っちゃいけないの?」
オレ「そうは義弟は言ってないが・・・ まあ暗にそういうことだな」
姪「・・・・・」
お袋「失礼じゃないの? 姪ちゃんと生活してるのはわたしたちなのに!」
オレ「・・・姪がいるんだから、その辺にしておけ、お袋」
お袋「だって、悔しいでしょ。馬鹿にしてるわよ。あんたは悔しくないの?」
オレ「まあ、父親が授業参観に行ってくれるって言ってるんだから、それがいちばんいいじゃねえか」
オレ「そもそも、それがあたりまえなんだからな」
姪「・・・わたしは、おじさんとおばあちゃんにも来てほしかったです」
お袋「・・・・・」
オレ「・・・・・」
・・・・・・・
姪「ただいま」
義弟「お邪魔します」
オレ「おお、こんにちは。ひさしぶりだな、義弟」
お袋「いらっしゃい、義弟さん」
義弟「ひさしぶりですね、お兄さん、お義母さん」
オレ「妹の具合はどう?」
義弟「・・・まだしばらくかかりそうです。ご迷惑をおかけします」
オレ「いや、そんなことは気にしなくていい。どうだった、授業参観は」
義弟「はい。娘にも友だちがたくさんいるようで安心しました。先生もよい先生ですし」
オレ「そうか」
義弟「ただ、ちょっと気になることがあったんですが」
オレ「ん?」
義弟「今日の授業参観、「家族」ってテーマで作文の発表があったんですけどね」
義弟「娘は、お兄さんと義母さんのことを書いてたんです」
オレ「・・・・・・」
義弟「もちろんぼくと家内のことも書いてましたけど」
義弟「ただ、家内の病気が改善して3人で暮らすようになったとき、あまりおふたりに干渉されるようだと困るんです」
オレ「・・・・・・・」
義弟「洋服や本を買い与えてるようですけど、あまり贅沢させてほしくないし」
義弟「できれば、わたしが送っている金額で足りる生活をしていただきたいと思って」
姪「・・・・お父さん、やめて!」
お袋「ちょっと待ちなさい、あなたなにを言ってるの、義弟さん?」
オレ「お袋、いいよ ・・・なあ、義弟。外に出ようか」
オレ「やっぱ外は冷えるな」
義弟「ええ」
オレ「なあ、義弟。おまえ、なんで姪に電話しないんだ?」
義弟「・・・え?」
オレ「おまえ、ここに姪が来て、姪宛てに、姪だけのために電話したことは何回あるんだ?」
義弟「・・・」
オレ「俺と会話したくないって気持ちはわかる。俺もそうだ。お前と話はしたくない。」
オレ「だから決まった時間にこの自宅に電話かけろ。姪に出させる。あいつの話をちゃんと聞け」
オレ「学校のこととか勉強のこととか友だちのこととか、ちゃんと話を聞いてやれ」
義弟「・・・」
オレ「オレはな、正直言って、姪が不憫だと思う」
オレ「ここに来た最初の日の夜「お母さん、お父さん」って泣いてたんだ」
オレ「姪は、お前たちのことを家族だと思ってないなんてことない」
義弟「ふっ、義兄さんからそんな話を聞かされるとは思いませんでしたね」
ガチャッ
姪「お父さんっ」
義弟「姪っ」
オレ「・・・姪」
姪「おじさんはね、優しいんだよ。不機嫌な顔してる時もあるけど、優しいよ」
姪「ごはん作ってくれる、お買い物についてきてくれる、宿題も教えてくれる」
姪「友だち連れてきていいって、はじめてだったの、家にお友だち呼んだの」
姪「ケーキ作ってくれて・・・」
姪「おばあちゃんもね、いっしょにお風呂に入ってくれるし、お裁縫教えてくれるし、」
姪「ボタンも自分で縫えるようになったよ、マフラーもへたくそだけど編めるよ」
姪「おじさんは・・・いいひとだもん・・・ おばあちゃんもね、いいひとだもん・・・」
姪「うううう・・・だからね・・・だからね・・・ うわあああああんん」
オレ「・・・」
義弟「ふう」
義弟「わかりました。姪には決まった時間に電話するようにします」
義弟「今日はこれで帰ります。姪、またな。電話するから」
姪「・・・ヒックヒック」
【1年後】
オレ「義弟、転職先はどうだ?」
義弟「ええ、まあなんとか・・・ でも、少しは姪と時間がとれそうです」
お袋「あとは妹ちゃんね」
弟「ええ、でも家内もだいぶ良くなってきましたし」
オレ「・・・また頼っていいぞ。姪のこと限定だけどな」
お袋「そうね、姪ちゃんはいつでも来ていいわよ」
義弟「・・・はい」
姪友「姪ちゃん、引っ越したら手紙書いてね。絶対だよ。あ、そうだ。みんなで写真撮ろうよ」
オレ「おう、並べ並べ、撮ってやるから。みんなもうちょっと姪にくっつけ」
オレ(姪もすいぶん身長伸びたな、かわいくなった)
オレ「よし撮るぞ、1たす1はーーー」
「にーーーーっ」
パシャッ
姪「おじさん・・・」
オレ「ん? よかったな。また元の学校に戻れるな」
姪「おじさん・・・ありがとうございました」
オレ「ん」
姪「・・・クスンクスン」
オレ「おまえ、よく泣くな。最初に来た日も泣いてたな」
姪「・・・クスンクスン」
オレ「でも明るくなった。友だちがこんなにできるなんてすげえよ、おまえ」
姪「・・・クスンクスン」
オレ「ああ、そうだ」
姪「・・・・」
オレ「姪に餞別だ。お前の好きな本だぞ」
姪「あっ・・・」
オレ「お前が読んでた本の作家さんが新しい本出したんだ。その表紙のデザインしたんだ。持ってけ」
姪「はい、ありがとう、おじさん」
本のタイトルは『みんなでケーキを食べましょう』
ごまんなさい。
脚色してるけどほぼ実話。
義弟のクズっぷりはマイルドにした。
マジでドクズな義弟なんだけどな。
やっぱり実話か
しかし最後不覚にも
これでほぼ実話とか
次→姪「おじさん。ご飯作るの手伝いましょうか?」
Entry ⇒ 2012.01.08 | Category ⇒ 兄弟姉妹「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
姉「これ、足拭きマットだから使って」姉友「弟君?」
姉「どういう事って、足拭きマットよ。ねっ?」
弟「……はい」
姉友「えっ?えっ?」
姉「こいつね、足フェチのM男でね、昨日洗濯機から私のストッキング盗んでオナニーしてたのよ」
姉友「……」
姉「ねっ?」
弟「……はい」
姉「だから、そんなに足が好きなら、足拭きマットになりなさいって言ったら、喜んでなるって言ったの。ねっ?」
弟「うぅ……はい……」
弟「うぅ……はい……」
姉「こうやって、足拭いてね」グリグリ
弟「うぐ……うぐぐ……」
姉友「ちょっと……!靴のままで弟君、可哀想だよっ!」
姉「大丈夫よ。これはただの足拭きマットだし」グリグリ
弟「うぐぐ……」
弟「……うぅ」
姉「ほら、友ちゃんも。靴拭いてから、あがって?」ヌギヌギ
姉友「弟君!大丈夫!?」
弟「うぅぅ……」
姉「どうしたの?なんで玄関で固まってるの?」
姉友「姉……酷いよ……弟君が可哀想だよ……」
姉友「……」
姉「うちには、洗濯機からストッキング盗んでオナニーする変態なんていないもん。ねっ?君は何?」
弟「……僕は」
姉「うん」
弟「……足拭きマットです」
姉友「……」
姉「ねっ、ただの足拭きマットでしょ?友も靴拭きなよ」
姉「あ~ぁ!」
弟「!」
姉「うちの足拭きマットが変なせいで、友ちゃん足拭いてくれないや!」
弟「!」
姉「これは、お母さんに洗濯機からストッキングなくなった事、相談しないといけないかな~」
弟「姉友さんっ……!」
姉友「わっ、弟君……?」
弟「ぼ…僕を踏んで下さいっ……!お願いしますっ……!」ベタッ
姉友「……弟君」
弟「お願い……します……」ボロボロ
姉友「……ねぇ?私が踏んだら、黙っててあげるんだよね?」
姉「うん」
弟「お願い……しますっ……踏んで下さい……」ボロボロ
姉友「……じゃあ……踏む」
弟「あっ……ありがとう……ございますっ……」ボロボロ
弟「うぅ……はい……」グスッ
姉友「……じゃあ、踏むよ?」
弟「……はい」グスッ
姉友「あっ……!あの……私、スカートだから……目、瞑ってて……?」
弟「……わかり……ました」ギュッ
姉友「……じゃあ、踏むね?」ソーッ
弟「……はい」
姉「クスクス」
弟「……あっ」
姉友「姉……踏んだよ……?」
姉「ダメよ、そんなのじゃ靴、綺麗になってないでしょ?」
姉友「えっ……でも……」
姉「もっと、こういう風に」ガスッ
弟「ぐっ!」
姉「こういう風にしなきゃ、綺麗にならないよ」グリグリ
弟「がっ……!うぐっ……!」
弟「はぁ……はぁ……」
姉友「……本当にするの?」
姉「何、気をつかってんのよ。これはただの足拭きマットなんだから、気にしないでよ」クスクス
姉友「……でも」
姉「ねっ?あんたは何?」クスクス
弟「はい……僕は……足拭きマットです……」
姉友「弟君……」
弟「姉友さん……踏んで下さい……」
弟「悪いのは僕だから……気にしないで踏んで下さい……」ギュッ
姉友「……んっ」グリグリ
弟「あっ……がっ……」
姉「ふふ」クスクス
姉友「弟君、ごめんね……」グリグリ
弟「うぐっ……がっ……」
姉友「姉……靴、綺麗にしたよ?」
姉「うん、じゃあ、部屋あがろっか?」ニコッ
弟「ごめん……なさい……」
姉友「弟君……!ごめんね?大丈夫?」
弟「気に……しないで下さい……」
姉「友~、何してんの~?それはもう、ほっといていいから」
姉友「うぅ……」
姉「ほら、早く~」
姉友「ごめんね……」タタッ
姉友「ねぇ……ちょっとやりすぎだよ……」
姉「ん~?何が?」
姉友「弟君の事……」
姉「あ~、足拭きマットの事ね」クスクス
姉友「もうっ!」
姉「あはは、ごめんごめん。でも、私のストッキング盗んでオナニーしてたんだよ?いいお灸よ」クスクス
姉「まぁ、でも、あいつもそんなに嫌がってなかったと思うよ?」クスクス
姉友「……そんなワケないじゃんっ!」
姉「いやいや……だって、あいつ足フェチのM男だよ?ブラとかパンツじゃなくて、ストッキング盗んじゃうような奴だよ?」
姉友「それは……」
姉「それにアイツ、そういうやらしいDVDいっぱ~いもってるし」クスクス
姉友「……そうなの?」
姉「どうせ今頃、友ちゃんに踏まれたのオカズにオナニーでもしてるでしょ」クスクス
姉「いやいや、してるって。絶対」クスクス
姉友「……してないよ」
姉「じゃあ、覗きに行ってみる?」
姉友「えっ……?」
姉「ねっ?覗きに行ってみようよ?しっこしこオナニーしてるからさ」クスクス
姉友「……」
姉「まぁまぁ、してなかったらしてなかったで、あいつの部屋でゲームでもしようよ。ねっ?」
姉「オナニー中の弟君、こんにちは~!」ガチャ
弟「わっ……!わわっ……!姉ちゃん!?」
姉「ほ~ら、してた!やっぱりオナニーしてた!」
弟「ううぅ……」
姉「ねっ?言ったでしょ?やっぱりオナニーしてたでしょ?」クスクス
姉友「わかったから……!もういいよ……!」
弟「うぅぅ……」グスッ
姉「ね~?あんた、何オカズにしてたの~?」クスクス
弟「うぅ……」グスッ
姉友「もう、やめてあげようよ……!弟君、泣いてるよ!」
姉「ねぇ~?友ちゃんに踏まれて興奮したんでしょ~?変態~」クスクス
弟「うぅぅ……」
姉友「もう、姉っ!」
姉「あっ……友ちゃん、弟に足、ガン見されてるよ?」
姉友「えっ……?」
弟「あっ……違っ……見てませんっ……!」
姉「ふふ、慌ててる~。やっぱり、踏まれた事オカズにしてたんでしょ?」クスクス
弟「うぅ……」
姉友「姉っ!」
姉「答えないと、ストッキングの事言うよ?いいの?」
弟「待って……!」
姉「何?じゃあ、何オカズにしてたの?教えてよ」
弟「……さっきの事」ボソッ
姉「ん~?さっきの事って何~?」クスクス
弟「踏まれた事です……」グスッ
姉「ほ~ら、やっぱり!」クスクス
弟「……はい」
姉「友ちゃん、ドン引きだよ」ボソッ
弟「……えっ!?」
姉友「……えっ!?」
姉「まぁ、普通引くよね~?足拭きマットにされて、お腹とか顔とか踏まれてるのに、それオカズにしてオナニーしてるんだもんね」クスクス
弟「……うぅ」グスッ
姉友「大丈夫だよ……?私、引いてないからっ……!」
姉「あ~ぁ、友ちゃんに気使わせちゃって……弟君惨めだねぇ~?」クスクス
姉友「もう!弟君、泣いてるよ!」
姉「ふふ……」ソーッ
弟「……えっ?」
姉「ちんちん、踏んであげるね」ギュッ
弟「あっ……お姉ちゃんっ……!」
姉友「ちょ、ちょっと……!姉っ!」///
姉「ほら、踏まれてるのにどんどん大きくなってくるよ?どうしてだろうね~?」クスクス
弟「あっ……あぁっ……」ガクガク
姉「なんで?こいつ、喜んでるよ?ほら、どんどんちんちん大きくなってきてるし」グリグリ
姉友「えっ……?」
弟「やめて……お姉ちゃん……」
姉「ほら、もっと力づくで抵抗したらいいのに、大人しく踏まれてるし」グリグリ
弟「それは……」ガクガク
姉「本当は好きなんでしょ?正直に言ったら、出るまでしてあげるよ?どうなの?」
弟「うぅ……」
姉「な~に?聞こえな~い」グリグリ
弟「……好き……です」
姉「ほら、ねっ?言ったでしょ?」グリグリ
姉友「……」
姉「じゃあ、してあげる。ほら、そのまま股開きなさい」
弟「うぅ……はい……」
姉「じゃあ、おちんちん踏んでぐりぐりしてあげるね?」グリグリ
弟「あっ……あぁっ……んぁっ……!」
姉友「……」
姉「ふふ、友ちゃんがドン引きしながら見てるよ?」グリグリ
弟「あぁっ……うぅ……」チラッ
姉友「えっ……?」
姉「ほ~ら、軽蔑されてる~。情けな~い」グリグリ
弟「うぅ……」
姉友「違っ……軽蔑なんかしてないよ……」アセアセ
姉「ねぇ?足舐めさせて下さ~いって、頼んでみなよ」クスクス
姉友「……えっ?」
弟「んぁっ……!舐めさせて……下さいっ……!」
姉友「えっ……?」
姉「ほら、もっとちゃんと!」グリッ
弟「足……舐めさせて下さいっ……!お願いしますっ……!」
姉友「うぅ……」
姉「あはは、弟君軽蔑されてるよ?」
弟「うぅぅ……」
姉「でも、おちんちんはまたおっきくなってきたや。変態~」グリグリ
弟「うぅぅ……」
姉「そんな変態だから、彼女も友達もいないんだよねぇ~?」グリグリ
弟「あっ……うぅ……」グスッ
姉「あはは、泣きながら感じてるんだ?悲しいの?気持ちいいの?ねぇ、どっち?」グリグリ
弟「うぅっ……」
姉「友達のいない変態な弟君はお姉ちゃんがず~っと、調教してあげるからねぇ~?」クスクス
姉友「……私は軽蔑……してないよ?」
弟「……えっ?」
姉友「姉……確かに下着盗んだのは悪い事だよ?」
姉「ストッキングね」
姉友「うん……でも、それで友達とか、彼女の事まで責めるのは可哀想だよ……」
弟「うぅ……」
姉友「大丈夫だよ。弟君がこんな……趣味でも受け入れてくれる人はいるよ?ほら、足舐めていいよ?」
弟「うぅぅ……姉友さん……」グスッ
姉「えいっ、えいっ」グリグリ
弟「んあっ……あぁんっ……!」ビクッ
弟「んあっ……姉友さんの足っ……」ペロッ
姉友「きゃっ……」
弟「あっ……ごめんなさい……」
姉友「ううん、大丈夫。続けていいよ?」ニコッ
弟「はいっ……」ペロペロ
姉友「んっ……」
姉「弟君、友ちゃん優しくてよかったねぇ~?」グリグリ
弟「あっ……あぁっ……」ペロペロ
弟「あああぁっ……!イッちゃう……あああぁっ……!」
姉友「弟君……大丈夫……?」
弟「あああっ……姉友さん……ああぁっ……」アーン
姉友「えっ……?」
弟「あぁっ……姉友さん……」アーン
姉友「足……お口に入れてほしいの……?」
姉「うりうり」ググッ、ググッ
弟「んあっ……!あっ……ああっ……!」コクン
弟「んんっ……!んふっ……んあっ……!」ジュプジュプ
姉友「ひゃっ……!」
弟「んんっ……んんっ……」
姉友「……大丈夫、ちょっとくすぐったかっただから」ニコッ
姉「変態~、おちんちん踏まれながら、友ちゃんの足くわえて……ホントに変態~!」ググッ、ググッ
弟「んんっ……!い…く…」ピュッ
姉友「えっ……?」
姉「ほらほら、でたでた」クスクス
弟「はぁ……はぁ……」
姉「あんた舐めるのも好きなんでしょ?ほら、舐めて掃除……」
弟「うぅ……姉友さん……」ペロペロ
姉友「えっ?弟君……?」
弟「姉友さん……姉友さん……」ペロペロ
姉「ちょっと、私の足舐めなさいよ!あんたのがついてるのよ!」
弟「うぅ……」ペロペロ
姉「こら、弟~!」ムカッ
弟「うぅ……姉友さん……」ペロペロ
姉「……そんなに友ちゃんの足が好きだったら、ずっと舐めておけばいいじゃない。ストッキングの事、言うからね!」フキフキ
弟「えっ……!?ごめんなさいっ……!」
姉「もう、遅いっ!」
バタンッ
姉友「あっ……」
弟「うぅっ……」
姉(何よ……バカ……)
弟「うぅぅ……」グスッ
姉友「ねっ?弟君も、ちょっと興奮してわけわかんなくなっちゃったんだよねっ?」
弟「うぅ……そう……です……」グスッ
姉友「ふふ」クスッ
弟「あっ……!違っ……!いや、あのっ……」
姉友「私は、大丈夫だよ?最初はびっくりしたけど、そういう趣味の人もいるもんね?」クスッ
弟「……はい」///
姉友「お姉ちゃんには、私から説明しておくから、安心して?」ニコッ
弟「……はい」
姉友「今日はお邪魔しました~」
姉「一人で大丈夫?駅まで送っていこうか?」
姉友「ううん、大丈夫。あっ、そうだ弟君?」
弟「……はい?」
姉友「ふふ、また今度しようね?私も、はまっちゃったかも」ボソッ
弟「……えっ?」
姉友「ふふ、じゃあお邪魔しました~」クスクス
姉「……」
姉「……あんた、友ちゃんと最後、何話してたの?」
弟「えっ……?」アセアセ
姉「だから……友ちゃんが帰る時」
弟「いやっ……あのっ……」アセアセ
姉「言わないと、ストッキングの事、言うわよ?」
弟「えっ……?あの、それは……うぅっ……」
姉「……もう、いいっ!お風呂入る」
弟「あっ……」
姉「……お風呂の足拭きマットがきれてるから、お風呂上がりに準備しておきなさい。そしたら、ストッキングの事考えてあげる」
弟「……はい」
おわり
終わりかよ…
Entry ⇒ 2012.01.05 | Category ⇒ 兄弟姉妹「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
妹「3、2、1…」
男「」
妹「」
妹「…ねぇ?」
男「ん?」
妹「なんか言わないの?」
男「言ってどうなんの?」
妹「…」シュン
...‐''゙ . ` ´ ´、 ゝ ''‐...
..‐´ ゙ `‐..
/ \
.................;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::´ ヽ.:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.................
.......;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙ .' ヽ ゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;......
;;;;;;゙゙゙゙゙ / ゙: ゙゙゙゙゙;;;;;;
゙゙゙゙゙;;;;;;;;............ ;゙ ゙; .............;;;;;;;;゙゙゙゙゙
゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;.......;............................. ................................;.......;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙
゙゙゙゙ i;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;l゙゙゙゙゙
ノi|lli; i . .;, 、 .,, ` ; 、 .; ´ ;,il||iγ
/゙||lii|li||,;,.il|i;, ; . ., ,li ' ; .` .; il,.;;.:||i .i| :;il|l||;(゙
`;;i|l|li||lll|||il;i:ii,..,.i||l´i,,.;,.. .il `, ,i|;.,l;;:`ii||iil||il||il||l||i|lii゙ゝ
゙゙´`´゙ -;il||||il|||li||i||iiii;ilii;lili;||i;;;,,|i;,:,i|liil||ill|||ilill|||ii||lli゙ /`゙
´゙`゙⌒ゞ;iill|||lli|llii:;゙i|||||l||ilil||i|llii;|;_゙ι´゚゙´
妹「少しでも家族とのコミュニケーションを大切にしてもらおうと思って」
男「それがなんで『どーん!!』なんだよ」
妹「普通びっくりするでしょ!なんでピクリとも動かないの!」
男「いやだってまあ、同じくらいいつもうるさいし」
妹「…」シュン
妹「今夜9時から、お兄ちゃんがCM見て面白そうって言ってたドラマが始まるよ」
男「ふーん」
妹「よかったら一緒に…」
男「見ないぞ」
妹「なんでー!?」
男「録画予約はしておいたから、あとで1人でゆっくり見る」
妹「…」シュン
妹(これは何か大きなイベントがあったに違いない)
妹(イベント… イベント… …!まさか!)
妹(彼女ができた…とか…?)
妹「…」
男「…」ピッピッ
妹「…ねえ」
男「んー」
妹「なんか今日、冷たいよね」
男「別にー」ピッピッ
妹(今携帯でメールしてる相手も…まさか彼女…)
妹(彼女…彼女…彼女…)フルフル
妹「うがあああああ!」ドーン
男「うお!?」ガタン
妹「なんでまともに話してくれないの!?」
男「はあ?」
妹「いつもはもっと話し込んだりツッコんだりしてくれるのに」
妹「なんで今日は冷たいのさ!!」
男「いや待て落ち付け」
妹「わかってる!わかってるよお兄ちゃん!彼女できたんでしょ!!」
男「はあ!?」
妹「今までもずっと彼女にメール打ってたんでしょ!このこのこの!」ボカボカ
男「痛っ痛いっ、それお前関係ないし勘違いだし、落ち付けってのこの」ドンッ
妹「きゃあっ」ボスン
妹「うん」
男「まず、俺に彼女はいない」
妹「本当?」
男「ああ。なんで妹にこんな嘘つかなきゃいけないんだよ」
妹(…怪しい)
妹「じゃ、じゃあさっきまで誰にメール打ってたの?」
男「大学の先輩」
妹「ああ、夕方まで家に来てた人?」
男「そう。その人」
妹「ふーん…」
妹「色々ってどんな?」
男「それは言えない」
妹「なんでさ」
男「これはさすがに一番身近な妹だとしても言うわけには」
妹「いいじゃん、教えてよー」
男「……」
妹「…お兄ちゃん?」
男「妹よ。2つ約束してくれるか」
妹「? …うん」
妹「とんでもないこと?」
男「それは文字通りのことだから、誰にも言わないでほしい」
妹「……?まあ、わかった」
男「2つ目、俺はそれをされることにより先輩との仲が大変微妙なことになった」
男「それを何とかできるように協力してほしい」
妹「…一体何をされたの?」
男「それを今から言うよ…俺自身言うのにかなり抵抗があるけど」
妹「私でよかったら相談に乗るよ、何でも言って」
男「…」
男「掘られた」
妹「」
男「…そのまさかだ。お前もどんな意味かぐらいは知ってるだろ」
妹「その…つまり先輩と…あ、あな…」
男「言っとくが合意の上じゃないぞ。力ずくでされたようなものなんだ」
妹「お兄ちゃんと…先輩が…あな、あな…」
男「その先を言うな妹よ。言われたら俺もう吐きそう」
妹「アナルセックスしたってこと…?」
男「」オエー
\ ヽ ヽ / / /
お断りだああああああああああぁぁぁ!!
\ | / /
,イ
 ̄ -- = _ / | --'''''''
,,, ,r‐、λノ ゙i、_,、ノゝ -  ̄
゙l ゙、_
.j´ . .ハ_, ,_ハ (.
─ _ ─ { (゚ω゚ ) /─ _ ─
). c/ ,つ ,l~
´y { ,、 { <
ゝ lノ ヽ,) ,)
男「だ、大丈夫だ。ありがとう」
妹(30分近くもトイレで吐き続けるなんて)
妹(よっぽどショックだったんだなあ)
妹「その…ごめんね」
男「?」
妹「そんなことされて思い詰めてる時に…変なこと言っちゃってさ」
男「いや、むしろ一瞬でも忘れられた。ありがとうと言いたい」
妹「い、いやそんな////」
妹「…」
妹「?でも待って」
妹「その先輩にメールしてるのはなんで?」
妹「先輩からメールが?」
男「なんなら本文見るか?」ピッピッピ
妹「…」ゴクリ
件名:スゴかったなぁ(笑)
本文:
いやースンゴかった(笑笑)
男ってばメチャ喘いでやんのW
おかげでこっちも興奮して腰に力入ったしWW
あんトキ撮った写メ送るわ
お前スンゴい顔してるから見てみWWW
添付:20111226184214.jpg
妹「…」フルフル
男「決定キーを押すなよ、絶対に押すなよ妹よ。俺でさえ見れないんだ」
男「あぁ…それで、さっきからこういうメールが何通も来るんだがな」
男「どう返したもんか…書いては消して、書いては消してを繰り返してたんだ」
妹「だから愛想ない感じだったんだね」
男「そういうこt…うえっぷ、思いだしたらまた…もよおしてきた」
妹「は、はやくトイレに!」
男「あぁ…!」ドタドタ
妹「…」
妹「…」パカッ ピッピッピッ
添付:20111226184214.jpg
妹「…」ドキドキドキドキ
妹「…!!」ピッ
妹「…?」
妹「」オエー
男「おーい、妹ー…」
妹「」
男「い、妹!?どうしたんだおい!!」
妹「」
男「ハッ…これは俺の携帯…」
妹「」
男「ま、ま・さ・か」パカッ
男「……!」チラッ
男「うわあああああああああうおええええええ」
妹「おはよう、お兄ちゃん」
男「お、おはよう…妹」
男「なあ…昨日のあr」
妹「何も言わないでお兄ちゃん。言いたいことはわかってるから」
妹「言いたくもないでしょ?」
男「あ、あぁ…すまない」
妹「…」
男「こ、今度は過激なのじゃない。これからどうするか話し合うだけだ」
妹「う、うん」
男「それじゃ、大学行ってくる」
妹「…行ってらっしゃい、お兄ちゃん」
妹「…」
妹「………」
妹「大学行ったら危険なんじゃないかな…?」
妹「あれから夕方になった」
妹「私はずいぶん前に学校から帰ってきてきたけど」
妹「お兄ちゃんが帰ってこない」
妹「やっぱり…何かあったのかな…」
妹「…」
妹「電話…かけてみよう」パカッ ピッピッピ
プルルルル
プルルルル
ピッ
妹「あ、もしもしお兄ちゃ」
男「あっひいいいいい!!!ケツマンコ気持ちいいよおおおおおお!!!」
妹「」
妹「い、いや…」
妹「いや…いや…」
~~~~~~~~~
妹「いやああああああああ!!!」ガバッ
男「うわああああああっ!?」ガタンッ
妹「あ!?あ…れ?お兄ちゃ…ん?」
男「起きるなら静かに起きろ、大声出すな!」
妹「…お兄ちゃんっ!!」ダキッ
男「へ!?な、なんだいきなり!ちょ、離せよ」
妹「よかった…大学でも襲われたのかと思ったよ…」
男「へ?襲わ……何の話だ?」
男「先輩?なんでお前先輩のこと知ってんだ?」
妹「へ?だって昨日その…」
男「昨日?」
妹「…?」
男「…?」
妹「…もしかして、全部夢?」
男「…わかった。疲れてるんだお前。きっとそうだ」
妹「べ、別に疲れてなんかないってば」
男「はいはい、明日も学校あんだから自分のベッドで寝ような」
妹「………」
男「なんだよ、その納得できないみたいな顔は」
男「? …まあ、さっきまでそこで寝てたんだし、夢なんだろうな」
妹「よかったぁ…本当によかったぁ」
男「…一体どんなひどい夢を見たんだよ」
妹「教えない。言ったらたぶん私もお兄ちゃんも吐く」
男「はい?」
妹「んー…なんか夢でぐったりしちゃった。本当に部屋で寝よう」
男「そうしたほうがいいぞ、風邪引くしな」
妹「じゃあ…おやすみ、お兄ちゃん」
男「ああ、おやすみ」
男「しかも先輩の名前が出てくるなんて」
男「……」ヒュン
男「なんかあいつの夢の内容がなんとなく想像できた気がする」
男「寒気がするな…俺もさっさと寝るとするか」
夢の部分とほぼ同じ内容の夢を先日見ました
おしまい
起きた後吐いた
Entry ⇒ 2011.12.30 | Category ⇒ 兄弟姉妹「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)
娘「セック――」 男「言わせねーよ!?」 後
俺の通う大学にて。
娘「おい男。何処を見ても若い男女しかいないぞ」
男「……だから来たくなかったんだよ」
文化祭とかいう何処がどう文化的なのか理解に苦しむ大騒ぎ。
その渦中で俺と娘は人いきれにのまれていた。
どこもかしこもチャランポランな男女でごった返すここはまさにアウェイ。
娘に『興味深いな。行ってみたい』と
言われなければ絶対に来なかった。
娘「しかし、色んな屋台が並んでいるな」
門をくぐってすぐのここは屋台ゾーン。
何か食べ物が焼ける音。氷水がかき混ぜられる音。人を呼び込もうと大声で宣伝して回ってる男女の声。
嫌って程に多様な物がごった返していた。
男「まあ、お祭りと同じ様なものだよ。中では文化系のサークルとかが色々やってるけど」
去年は文化祭にも参加していたのだ。
てきとーなサークルでスポーツ喫茶的なのをやっただけだが。
いや、俺が言うのもなんだけど、大学生って最もお遊びが過ぎる部類の学生だと思うぜ。
男「まあ、その通り規模だけなら立派なもんだから暇はしないと思うぜ」
娘「そうか。ならざっと回ってみるか」
男「おうよ」
そんな感じで。
俺たちは文化祭をぼちぼち楽しむのだった。
娘「何故か知らないが両手がふさがっている」
両手に袋。中には大量のお菓子。
男「お前がそんな魔性の持ち主だとはな……」
何処に行っても。何をしていても。
娘は絶対と言っていい確率で大学生たちを虜にしていた。
『可愛いいいいいいいい!!!!』『ちっちゃああああああああああああああああああい!!!!!!!』
『だっこしたああああああああい!!!』『デゥフフッwwwく、黒髪ロリ美少女発見でござるwww神速で撮るべしw撮るべしwww』
などなど。
娘「そういえば、私が女子大学生たちと話している間にカメラを持った男と何処か行っていたな? どうしてたんだ?」
男「ああ、あいつか。あれだよ。友達になったんだよ。メールアドレスと電話番号と本名を聞いて絶対に
顔写真付きで廃棄されるべき汚物、としてネット上に公開しないよ☆っていう堅い誓いを交わしていた」
娘「おお、男にも友達が出来たのか。私もなんだか知らないが沢山アドレス交換したぞ」
娘の携帯のアドレス帳の登録件数が夢の三桁代を叩き出していた。
俺はギリギリ十件なのに……。
俺はあんまり受けていた記憶ないけどね……。
男「しかし」
もう殆どの事はやったんじゃないか?
変な自主制作映画をチラ見したり、バンド演奏を観てみたり。屋台で色々買い食いするのはもちろん
文化系のサークルも結構のぞいた。
男「まあ、大学の文化祭なんてのはこんなもんだ」
そろそろ帰るか。
そんな風に思ったとき。
女「あーーーーー!!!!!!!!!」
人がごった返す構内。その喧噪の中に一際うるさく響く声。
思わずその声の主から目をそらし、背を向ける。
やっかいなのに出会ってしまった。
女「目をそらさない!!!」
回り込んで、俯いていた俺の顔を無理矢理下からのぞき込むそいつ。
女「チームの練習にも来ない。サークルのミーティングにも来ない。その上授業もめちゃくちゃサボってる!!
今の今まで何処でどんな油をうってたのかなー!?」
大音量に思わず顔を上げ、そのまま仰け反る。うるさすぎるんだよ……。
男「えーと、これはこれは。○○大学サッカー部マネージャー兼なんとかサッカー研究部部長さんじゃないですか……」
女「アジア南米欧州サッカー研究部だよ! 自分の所属サークルぐらい把握しといてよね!?
というかもしかして私の名前も忘れてたりしない!?」
男「いやいや、そんな失礼な事は無いって」
……。
男「久しぶりだな、なんとかかんとか!」
女「私の名前は部分的にも覚えてないの!?!?」
いやまあ冗談だけど。
長い髪を後ろで一本に纏め、どっかのクラブチームの赤いレプリカユニフォームを纏った長身で
すらっとした体型のこの女子。サッカーオタクのハイテンション。
名を女と言う。
大学に入ってから知り合っただけなのにこの通りかなり馴れ馴れしい。
女「名前覚えててくれたんだ……さすがに忘れられてたら悲しすぎたよ。で、言い訳はなにかな? 聞くだけ聞くよ?」
男「えーと、色々ってのは色々で、最近だとほら、こいつとか」
娘の肩を両手で掴んで、女の前につき出してみせる。
女「まさか男くんっ!!!!!!!!!!!!」
女が俺の股間を指さしながら大絶叫した。
男「お前とおんなじ反応した奴がいたなあ!!!! もう一度言うけど違う!!!
そして子供の前でそういう事やめろ!!!!!」
女「子供っ!?!?!?!?!?」
男「叔母さんのな!!!」
やっぱり俺の周りはめんどくさい奴ばかりだった。
女「え~!? 本当に? というかそういう事なら今すぐ私に電話しなよ! 色々手伝ったのに!」
男「そういえばお前に無理矢理連絡先の交換させられたっけ……けどまあ、そこまで大変じゃなかったよ」
娘「娘という。好きに呼んでくれていいぞ」
女「あ、あたしは女だよ! 男くんのお友達!」
友達だったの俺たち。初耳だぜ。
女「あ、そうだ! 積もる話もあることだし、ウチの『喫茶、ピッチで汗を流す漢達』で
歴代の名試合を観戦しながら話そうよ! というか強制だよ! 本当なら男くんも働く側だったんだから!」
男「なんだよその汗臭そうな喫茶店は……まあちょっとぐらいならいいけどよ」
二時間歩きっぱなしだったから少し座りたいし。
そんな感じで。
俺たちは喫茶、ピッチで汗を流す漢達に入店するのだった。
短く刈りそろえられた芝が本来ならあるべき床の上敷き詰められていた。
ちなみに人の入りはまあまあで、弱小研究部にしては健闘している方だろう。
女「ふっふーん! どうだこの天然芝! 去年は許可が下りなかったけど、今年は頑張って許可をもぎ取ったんだよ!
○○大学文化祭の奇跡だよ!」
また余計な事に情熱を捧ぐ奴だなー……。こんな一発芸みたいなのにいったい幾らかかっているのやら。
女「はい! メニューだよっ!」
必要以上に大きな声で元気に言う女。
俺は軽くため息を吐きながらメニューを受け取った。
男「えーとなになに……って水しかねーじゃねーか!」
A4の紙にでかでかと『水』とだけ印字されていた。
これじゃあメニューではなく標識だろう。
男「確かに天然芝のピッチでは禁止されてるけどな……」
こいつ、喫茶店なんて作るきなかったんだなぁ。なにがやりたかったんだろう……。
女「はい! ボトル入りのミネラルウォーター! 芝の上だから被ってもいいよ!」
男「被らねーよ」
もう十月の終わりだっつの。
女「はい! 娘ちゃんにも! お代はいらないからね!」
娘「おお、ありがたい。それにしても凄い店内だな」
女「すごいでしょ! 頑張って芝を育ててきた甲斐があったよ!」
娘「外でやればいいのに」
周りに居た何人かの部員達が凍り付いたように動きを止めた。
そして目で語っている。そういうまともな意見は止めてあげてくれ! 部長が死んでしまうよ! と。
男「お、おい……あんまり身も蓋もない事を言うなよな」
時既に遅し。女が瞬間落ち込み機と化していた。どよーんと肩を下げている。
女「そうだよね……外でやればいいのにね……
こう言う馬鹿な事ばかりやってるから色々みんなから引かれるんだよね……分かってるよ…うん知ってる……」
スッ! と女が素早い動きで顔を上げた。
女「えっ? そう思う? 男くんそう想っててくれてたの!? いやああん!! 男くん大胆な接触プレーだよ!
そのプレーで私はベッカムの低弾道&高精度クロスだよっ! 当てるだけでゴールだあああ!!!」
一際うるさく意味分からない事を叫びまくる女だった。
余計なところで気を遣って慰めてしまった……。
男「いやぁ、相変わらずお前は何言ってるかわからねぇな……」
まあ分かる必要も無いだろうけど。
ピピピピッピュイイイイイイイイイ!!!!!
けたたましくホイッスルが鳴った。
チャラ男「はああああい! 男、今のプレーで一発退場ね!!!」
レッドカードを高々と掲げ、俺を指さす銀髪野郎が現れた。
お察しの通り、こいつもめんどくさい。
男「……久しぶりだな」
そういえばこいつも部員だったか。
チャラ男「いきなり現れたと思ったら何勝手に女にちょっかいだしてんだよ!」
あー……そういえばこいつ俺が女と話してると異様につっかかって来てたよな~……。
絶対こいつ女の事好きだよな。
それに気が付かない女の鈍感っぷりが恐ろしいぜ。
チャラ男「えっ!? いやだって男が!」
女「審判への抗議はイエローですっ!」
チャラ男「ちょっと!? 冷たいよ女!!」
……。
娘「なんだか賑やかな店だな……」
男「悪いな……あんまりこう言う駄目な大人達を見せたくなかったんだが……」
まだ二人でごたごた騒いでいる。
チャラ男もどうしてあの騒がしい変人女の事が好きなのやら。
まあ黙ってればまあまあ可愛い部類に入るんだろうけど。俺としては変人扱いする他にない。
チャラ男「くっ!! あからさまに追い出されようとしている気がするが女の頼みならば断れない……!」
そう言い残してあっさり店を後にするチャラ男。
素直なのか馬鹿なのか。
女「ふっー……やっと落ち着いたよ。なんでああやって男くんにつっかかるかな-? 昔はむしろ懐いてたじゃん!」
男「……まあ、俺みたいな不真面目な奴は嫌いなんだろうよ。あいつ、ああ見えて結構真面目な奴だったし」
大学サッカー部にも所属するチャラ男。
少しの間だったが、俺もあいつのプレーをみていた。
ポジションは俺がやっていたものと同じ。フォワードの一列後ろ。
男「まあ、色々話している内に俺の事が嫌いになっただけだろうよ」
女「うーん……なんかそういうのとは違う気もするんだけどねー……」
もちろんお前の事もあるだろうよ。そう心で突っ込んだ。
まあ、色々あるんだろうよ。あいつにも。
女「えー? もう帰っちゃうの? これからオールドトラフォードの奇跡の上映が始まるのに?」
男「いいよ。帰ってYoutubeで観るから」
女「現代っ子なんだね……男くん……」
男「そういうわけで」
娘「お邪魔したな。水、ありがとうな女」
女「うんっ! じゃあね二人とも! あっ! 男くんは来週から練習に参加すること!
監督からも言われてるんだからねっ!」
男「……分かったよ。行くだけ行くよ」
女「ぜーーーーーーったいだよっ!!」
そんな感じで。
俺たちは喫茶店を後にした。
娘「そういえば、女とはどういう知り合いなのだ?」
喫茶を出て、大学構内の下り階段。娘にそんな事を聞かれた。
男「……あれだよ。部活のマネージャー。あと俺もあいつがやってるあのサークルのメンバーなんだよ」
ほぼ強制的に入れられたのだけども。
娘「? 男は部活をやっていたのか? 何をやっていたんだ?」
男「……サッカーだよ。それももう昔の話だけどな」
娘「そうなのか? でも女の話から察するに、来週はその部活に参加するんじゃないのか?」
子供の癖にイヤに鋭かった。今更驚きはしないけど。
娘「ふうん? 何かよく分からないが、頑張るんだぞ男」
そう言って笑顔になる娘。
当の俺は何を頑張ればいいかすら分かっていないのだけれど。
チャラ男「やっと帰るのかよ」
男「あ? ああなんだ、チャラ男か」
ミネラルウォーターのボトルが入った袋を両手に持ち、階段を上ってくるチャラ男。
チャラ男「なんだとは失礼だな! まあいい! 今日こそ決着をつけるぞ!」
男「ああ? 決着って。何を」
チャラ男「決まってるだろうが! 女の事だよ! 負けた方が潔く手を引くってことだよ!」
手を引くも何も、手を伸ばしてもいないのだが。
男「つっても、お前何やっても俺に勝てないじゃん。カラオケ採点対決、ボーリング対決、卓球対決、釣り対決……
全部俺の圧勝だっただろうが」
チャラ男「ふん! そんなのは昔の話だろうが! そして俺は気がついたんだよ!」
男「何に」
だから最終決戦はサッカー対決だ!! 会場はこの下だ! ついてこい!」
そう言って、チャラ男は上ってきた階段を下りていく。
うーん……。
まあ適当に付き合うしかないか……。
そうして。
俺たちはその会場とやらに向かう。
それをより多くサッカーボールで打ち抜いた方が勝ち。
ストラックアウトで勝負とは、中々文化祭っぽいな。
チャラ男「言っておくが遊びじゃねーぞ、これは。負けた方は問答無用で千円払う」
男「なんか小さいな……つーかさっきはそんな事言ってなかっただろうが」
チャラ男「うるさい。今決めたんだよ」
男「そーかい……」
チャラ男「じゃあ一番手はもちろん俺だな」
そう言って、係の学生からサッカーボールを受け取る。
そしてそのままリフティング。
巧みなボールさばきに周りが沸く。
チャラ男「ふっふーん! これは圧勝かな?」
10球の内の第1球目。
バコンっ!
チャラ男「よっし! 1番ゲット!」
そんな調子で順調に枚数を重ねていく
チャラ男「ふーん。9枚か。まあ一発外したのはちょっと朝から足首に違和感があったせいだろう。
万全の状態だったら普通に抜いてたね」
男「いや、素直にしてれば結構凄い結果なのに……」
15メートルぐらいの距離から縦横50センチ程のボードを狙い打つのはけして容易じゃない。
チャラ男「うるせー! 次はお前の番だからな!」
そう言ってボールを足で浮かして俺にパスを出す。
それを受けて軽くリフティング。実用性の無い小技も挟んでやる。
チャラ男「くっ!! 俺の時よりまわり女の子達のリアクションが大きい!」
男「知るかよ」
ボールを足で踏んで感触を確かめながら的達をみる。
男「まあ右足で十分かな」
チャラ男「はっは~ん余裕だな! そういうお前の慢心が破滅の始まりなんだよ!」
別に破滅は始まらないだろう。千円は払いたくないが。
男「いっちょ行ってみるか」
一発目。
パスッ!
男「あー。1番狙ったんだけど2番に当たった」
そんなんで俺の記録を超えられるかどうかは分からないけどな!
負けるのが怖かったら利き足使ってもいんだぜ?」
男「そうかもな。やばくなったら使うわ」
そして。
一球。また一球と蹴り込んでいく。
そして最後の一球となる。
チャラ男「おいおい。四枚も残ってるじゃないですか~? え~? これ勝負にならないな~?」
やっぱり利き足じゃないと細かいブレがある。元々、逆足で蹴るのは得意では無かったし。
男「うーん。じゃあ左足解禁」
ヒョイッ、とボールの位置を逆にする。
男「幸い的は一カ所に固まっているな」
上段の4と5。下段の9と10。
こうなると狙うのはフレームだろう。
当たれば全部を打ち落とす事が出来るフレームの真ん中。十字の中心を狙う。
シュバッ!!
ガスンッ! バタッバタッ!
男「よっしゃー! 四枚抜き-!!!」
おー、と声が上がり、ぱちぱちと拍手が響く。
チャラ男「お、おい!!!! これはルール違反だよなっ!?!?」
係の男子大学生「いや、別にいいっすよ」
チャラ男「軽いなああ!!! こっちは女をかけて戦ってるのに!!!」
男「いや、俺は千円のためだけに戦ってたけど。お前、前からなんか勘違いしてるけど俺別にアイツの事好きじゃないから」
チャラ男「……! お前が好きとかどうとかじゃねーんだよ!!! ほらよっ!千円!!これでヤバイ物でも食って○ね!!」
男「じゃあなんの戦いだったんだよ……まあ千円は有り難く貰っておくよ」
娘と出かけすぎて金欠が著しいからな
男「いやー、だったら無視してくれてかまわないぜ」
チャラ男「そういう所がうざいって言ってるんだよ!」
男「はいはい。じゃあ俺は帰るよ。おーーい、帰るぞ娘!!」
ちょっと離れたところで女子大学生達に囲まれていた娘に声をかけながら歩き出す。
背を向けた後ろ。
チャラ男「おい……来週は練習に来いよな。ボランチ男とその控えが怪我で人が足りない。
だから不本意ながらお前が必要だ」
……。
男「今更いったところでどうなるかわからねぇぞ」
だって。
俺はもう長い間ピッチを離れている。
チャラ男「チームの同期達と後輩は俺から説得しておいてやったよ……マジで不本意だったけどな。
先輩達もいいって言ってる。
そして……監督はお前を必要としてるよ。いくら監督の意向だからっていって
こればっかりは俺も快く全部飲み込もうとは思えないけどな」
そしてチャラ男は言う。
チャラ男「あの高校三年の選手権決勝。お前の対戦校の控えだった俺は
お前がピッチで倒れる瞬間をベンチから観ていた」
――三年間の血のにじむ様な努力。だが、それだけでは決勝という舞台には立てなかった。
悔しさに唇を噛みしめ、ピッチに立つ選手達を眺めていた。
チャラ男「あれで美しく散ったとか思ってるんじゃねーぞ。
お前は、お前みたいな奴は惨めにボールを追いかけてる方がお似合いなんだよ」
チャラ男「止めるなんて楽でしかたない事に逃げるんじゃねーよ。
俺みたいな……俺たちみたいな高校では鳴かず飛ばず、でもサッカーを諦められない奴からしたらよ
お前みたいな才能をもてあまして、舐めた態度で諦めた振りしてる奴が一番うざってーんだよ」
だから。
与えられたチャンスには結果で答えろ。
……。
男「……ああ。やれるだけはやってみるよ」
出来るのかは……正直分からない。
でも何だかんだ言って。
走り込みの時間を延ばしたり。友のメソッドに打ち込んだり。
結局この数週間、娘と遊びながらもピッチに戻ることについてばかり考えていたのだ。
男「もう一度、やってみる」
友の足を壊したのは二年時。
それからの俺は酷い有様だった
一年を通してのゴール数が二桁を下回った事が無かったのに、その年はわずか3点しか取れていなかった。
マネージャーとして部に復帰した友を避けるようになって。代表招集も無くなって。自分の才能が信じられなくなって。
そして何より。
サッカーが怖かった――
男「……今日の日のためにみんな良く頑張ってくれた。だから絶対に勝とう!」
円陣を組み、チームを鼓舞する台詞を吐く。
観客席からの声。熱気。
そして形容しがたい緊張感に満ちたこのムードに心が高ぶっていた。
心拍数が急激に上昇し、雑音が聞こえなくなる。
主将として。そして友のためにも、俺は絶対に勝とう。
ベンチで親指を立てる友をみやる。本当はこのピッチに立っていた筈なのに、俺の所為でそのチャンスを失ったと言うのに、恨みなんて微塵も感じさせないいつもの笑顔。
男「よしっ! 行こう! 一発と言わず何発もかましてやろう!」
キックオフ。
対戦校の選手がボールを蹴る。
――――――――
前半、試合は相手のペースで進んでいた。
こちらがボールを持っても直ぐに多人数でボールを奪いにきて、ボールがうまく繋がらない。
そして後半も両者一歩も譲らない展開。
そして90とロスタイムを終え――
~ロッカールーム~
友「お互い通常よりも激しく動いた後の延長戦……つらいけど頑張って!」
友が疲れたチームメイト達に飲み物とタオルを配って回っている。
友「はい、男にも」
男「あ、ありがとう……」
未だに友と話すのには慣れない。むこうがどう思っているのかは分からないが
俺は未だにこいつの目を観て話すことが出来ない。
俺を責めるような目をしているんじゃないか。なんて事を思ってしまうのだ。
男「……ああ、問題ない。……延長もフルで行ける」
三年の初めに軽い故障をした左足。それが今でも時より痛む。
ほとんどプレーに影響が無いので、今の今まではそれほど気にしないでやってきた。
しかし。
連戦を強いられる選手権において、これは決して小さな問題ではなかった。
痛むのだ。
90分を走って、わずかな痛みは確かな疼痛となっていた。
友「そうか! それなら良かった! でも無理はいけないよ」
男「分かってる」
口だけで友の言葉を肯定する。
ここで逃げ出すなんて発想は微塵もないのに。
男「絶対勝つよ」
友の為に。
この試合に勝てば、自分道をふさいでいる何かを打開出来るような気がするから。
延長戦。辛い戦いだけど、俺は立ち上がり戦うのだ。
俺は足の痛みを無視して走り回る。
普段なら無視出来ない痛み。しかし、決勝、歓声、感情、様々なものが俺の中で渦巻き全てを忘れさせる。
欲しいのは唯一、この先にある勝利のみ。
男「足止まってるぞ!!!!!! プレス早めにいけ!!! 一秒でもスペース空けるな!」
つぶれかかった喉から無理矢理声をひねり出す。
チームメイトも同様に声を上げ、チームが一つになって動く。
悪くない流れだった。
延長戦。早めに勝負を決めたかったらしい相手は明らかに消耗している。厳しかったプレスは着実に弱まっている。
チャンスだ。
チームの全員がそう感じていたと思う。
男「そこ!! 三人で寄せろ!!!」
パスを出すと直ぐに奪われるという状況に焦れた相手の選手が突破を試みる。しかし、こちらのデフェンダーが多人数でよって、奪い取る。
ピッチの真ん中より少し下。良い位置だった。
俺は走り出す。思考と言うよりは感覚で。戦略というよりは意地の為に動く。
バスッ
チームメイトが大きくボールを前に蹴った。
それを合図に俺は一気に足の動きを速め、トップスピードを目指す。
絶対に俺が勝利を掴むという決意が背中を押しているようだった。
ボールが相手四人から成るデフェンスラインを飛び越える。それをトップスピードで追う。
男「行ける!!」
デフェンダーがボールに向くよりも速く俺はデフェンスラインを超える。目指すはボールの落下点。
男「ッ!!」
トップスピードの勢いのまま右足でボールを受けた。
立ち足となった左足が痛みに悲鳴を上げるが、今はそんな事に構っていられない。
ボールを持った俺。
目の前にはゴール。そして立ちふさがるゴールキーパー。
試合はここで決まる。
左足は……痛んでいてシュートを正確に打てるか確かじゃない。
かといって逆足の右で打とうというもリスクが伴う。
そして俺は今トップスピードで走っている。
だとしたらベストアンサーは一つだろう。
このままキーパーを抜いてボールをゴールに流し込む。それだけだ。
男「ッ……!」
痛みを堪えキーパーを見据える。
いつ動く? どっちに動く?
その時、キーパーの体が一瞬左にぶれる。
男「……右!」
左足でボールを右に蹴り出す。
行ける。
キーパーは俺の動きに反応して右に飛ぶがきっとボールには届かない。
目の前にはゴール。
あとは右足を振り抜くだけでいい。それで俺は呪縛から解放される。
右足が弓のように張り詰める。そして、それを一気に解き放ちボールを蹴る――
その時世界が暗転した。
夢から覚めた様に周囲の音が俺の耳に飛び込んでくる。
ホイッスル。怒号。悲鳴。
そして俺のうめき声。
男「ああっ……なんだこれ……」
どうやら俺は芝生に顔をつっこんで倒れているらしい事が口の中に紛れ込んだ土の味で分かった。
動けない。
ああ、そうか。キーパーの腕が俺の左足にかかったのか。
その場面を観て無くとも、それは明確だった。
だって。
男「左足が……動かない……」
誰かが俺の名前を呼んでいる。だけど意識はだんだんと遠のいていって……。
こうして俺の高校最後の大会は幕を閉じた。勝利と引き替えに、未来と希望を失って。
その日は穏やかに始まった。
娘「もう土曜日か。といっても毎日が日曜日な私たちからしてみれば何の感慨も無いな」
男「うーん。同意したら何か社会に生ける人として大事な物を失うよな……だが概ね同意せざるを得ない!」
まあ来週からは本気出すけどな! そういう予定だけどな!
娘「そういえば世の中の人たちは土曜日や日曜日に何をするんだろうな?」
男「いや、俺まで『曜日とか関係ない自由な生活』をしてみたいに語りかけるな。
俺はまだ駄目人間歴二ヶ月ぐらいだっての」
娘「そういえばそうだったか? まあ、過去の自分がどれだけ立派であったかではなく
今という瞬間に何をしているかが大事だと思うよ、私は」
男「だんだん気が付いてきたけど、お前って基本的に上から目線な……その意見には賛成だけどよ」
娘「まあとにかく、土曜日や日曜日には何をするべきなんだろうな?
今まであまり考えた事が無かったが、一般的な人々は土曜と日曜日にしか休めないのだろう?」
男「祝日やら有給やら学生の長期休暇やらなんやらを除けばそうなるんじゃないか?」
娘「で、何をするんだ?」
男「何って……そりゃその人のやりたい事だの何だのだろうよ。
それこそ、俺たちがやってきたいわゆる『遊びに行く』ってのは本来土日なんかの休みの日にやるもんだぜ」
サボりと休みは違うのだ。
男「は、はぁ? 何なんだよお前は。急に変な事きくよなぁ……まあ、多分普通にしていればいいだろう。
何なら何処かに出掛けてもいいし」
娘「そうか。じゃあ出掛けよう」
穏やかな朝。
俺たちは朝食を済ませてから出掛ける事になった。
最後の日はこうして始まる。
男「何度見てもこの人の多さには圧倒されるな……」
一人一人というよりも大きな一つの塊。そう表現したくなる様な人々から成る大きな渦。
はぐれないように娘の手を強く握る。
名前も知らない誰かとなんども肩がぶつかりそうになる。
幾千もの足音を聞きながら、俺たちは歩く。
男「しかしいろんな所に行ったけど、映画は観てなかったな。盲点だった」
娘「そうだな」
映画を観よう、という事になり俺たちは映画館を目指していた。
男「下調べもせずに来た訳だけど、何か観たいのあるか?」
娘「特にないな。上映中の作品を把握していない」
男「俺も全然何やってるかわからねぇなぁ」
まあ、その場にいって決めればいいだろう。
男「えーと……SF系洋画が二本、バンド物が一本、アニメが一本、ラブコメが一本、切ないラブストーリーが一本……
タイトルと広告を見る限りそんな感じのラインナップだな」
娘「男はどれが観たいんだ?」
男「俺はどれでもいいけど。お前が決めていいぜ」
娘「……じゃあこれだな」
娘がチケット売り場に張ってある広告の一枚を指さす。
男「切ないラブストーリーか。なになに、『死期迫る恋人との一ヶ月。訪れるのは予定通りの別れか、幸せな未来か』」
なんだかありがちな設定だ。
男「これでいいのか?」
娘「ああ」
……。なんだかさっきから口数が少ないなこいつ。
白いコート着た娘。その無口な横顔は、東京じゃあまり振らないと言う雪の様に白い。
どこかの誰かと同じく、こいつも黙ってれば絵になる奴だ。
昔はポップコーンと飲み物を買っても二千円以内に収まってたっていうのに」
娘「いつも悪いな。私のお金を使ってくれてもいいのだが」
男「いや……なんか抵抗あってな……まあいいから行こうぜ」
なんだかあの叔母さんのお金だと思うと素直に受け取れないのだ。
まあとにかく。
俺たちは飲み物を買い、劇場の席に着く。
凡作っぽい作品だからだろうか。人の入りは土曜日にしては少ない。
男「悲愛ものの映画ってのは見終わったあとなんとも言えない気持ちになるんだよなぁ。
かといってご都合主義なハッピーエンドも白けるし」
娘「……」
本当にさっきから口数が少ないな。いつもなら気の利いた話題の展開をするのに。
まあ、最近の疲れがたまっているのかも知れない。
毎日が日曜日でも、それはそれで疲れるのだ。
場内案内と注意事項の放送が終わると照明が落ちて幕が上がる。
――――――――――――――――――――――――――――――
話の内容を要約すると大体こんな感じだ。
幼なじみだった主人公とヒロイン。
しかし、ジュニアハイスクールの卒業式を明日に控えた日の夜にヒロインが突然倒れてしまう。
そして、宣告される過酷な運命。劇的な医療進歩が起こらない限り、彼女は十年と持たずに死んでしまう運命だった。
その日から彼は私利私欲を捨て、彼女のために医療研究の道を歩み出す。
そして運命の十年目。そこには研究を成し遂げた主人公と、回復の兆しを見せるヒロインの姿が……。
――――――――――――――――――――――――――――――
陳腐。それが唯一の感想だろうか。
エンドロールを眺めながらため息を吐く。
まだ暗い劇場の中、俺は小さく娘に耳打ちした。
娘「ああ……現実味に欠ける。駄作といってもいい……」
娘がつぶやく様に答えた。
スクリーン眺める娘の表情は暗くてよくうかがえない。
だけど、何かがいつもと違う。
娘「時間の無駄だったかもしれないな……こんな映画を選んでしまって悪かった。出よう」
そう言って娘は立ち上がると、殆ど走るみたいに出口に向かう。
男「お、おい……! まてってば!……っ! もうなんなんだよ……」
俺の言葉は届かないようで娘はどんどんと進んで行ってしまう。俺も立ち上がり、後を追う。
一体、今日の娘はどうしたっていうんだ。
人の声と足音。車の騒音と排気ガス。
その中に二人して黙り込んだまま立ち尽くす。
娘「悪かった。今日はなんだか調子が出なくてな」
男「……少し疲れが溜まってるんだろう。仕方ないさ、最近ちょっと遊びすぎてたからな、俺たち」
娘「ああ……そうかもしれないな」
娘がはにかむ。吹き付ける風に両のほほが赤くなっていた。
娘「……! どうしたんだ男?」
気が付いたら、娘を抱き寄せていた。過ぎゆく人の怪訝そうに視線を送ってくるが気にしない。
男「いや……何でだろう……? 何となく」
何となく現実に戻ってしまったからだ。
最近は娘と過ごすの楽しくて、色々な事を忘れていたから。
目の前の問題を無視して、子供みたいにはしゃいでいたから。
だからだろうか。
ちょっとした変化の『兆し』におびえてしまった。
夢は終わって、また以前みたいな漠然とした不安がやってくるんじゃないか、と。
これが一体どういう種類の感情なのか分からないけど、その気持ちは明確だった。
娘を抱きしめたまま動かないこの両腕が何よりも確かな証拠だ。
男「母親の所には戻らなくていいよ。学校も家の近くの所に転校してやり直そう。
色々金がかかるだろうけど、そこは俺がどうにする」
娘「……」
その為なら、今度はきっぱりサッカーと縁を切れるのかもしれない。そんな事も思っていた。
男「お前が大人になるまで、俺がお前と一緒にいてやる。俺はお前を絶対に捨てたりしないから……!」
気持ちが高ぶり、声が大きくなる。
そしてより強く娘を抱き寄せる。
男「なっ!? こっちは真面目なんだよっ!」
一世一代の勇気を振り絞って言った言葉だったのに!
娘「……でも、そう言われて嬉しい……人生で一番の幸せを今感じてる」
からかう様だった笑みを、少女はにかみに変えて娘が言う。
娘のおでこが俺の胸にこつんと当たる。
娘「大好きだ、男。心からそう思った」
男「……っ!」
言われた瞬間、心臓がバカになったみたいに早鐘を打ち始めた。
あわてて娘を俺の体から遠ざける。
男「はっはは……! 俺は結構モテるかならな! こんな感じでいっつも女を落として回ってるんだ!」
娘「彼女が出来た経験は無し、と友が言っていたが!」
男「あのボケッ! じゃなくて落とすだけ落としてポイしてきたんだよ!」
娘「ふーん……じゃあ私も落とされるだけ落とされて、後はポイされるのか?」
娘はピョン、と一歩後ろに飛び退いて、いたずらな笑みを浮かべながら首をかしげる。
その仕草に、また鼓動が高鳴る
本当によく分からない奴だ。こっちが年上だって事を忘れてしまう程。
娘「ははっ! 少し意地悪し過ぎたかもしれないな。だけど嬉しかったのは本当だし
男がどんな意味で私の事を大切にしてくれているのか、理解しているつもりだ」
娘「だから、ありがとう、今はただそう言いたい」
明るい、いつもの娘の笑顔だった。
娘「そして……」
娘「そう思ったから、私は私の話をしなければらならないと思う」
大きな目が、力強い意志を持って俺を射貫くように見つめた。
男『いや、適当に開業してどうするつもりだよ。それを言うなら店に入ろうだろう』
なんていつもみたいなバカな雰囲気を持ちかえして、俺たちはファミレスにやってきていた。
男「もうちょい洒落た店でもよかったんだけどな、せっかく渋谷まで出てきたんだし」
当ても金も無いけどそんな事を言ってみる。
娘「別に洒落た店に用は無いよ。お互い忘れがちだが私はまだ小学生なのだしな」
男「それもそうか」
店員「和風ハンバーグ定食とオムライス、お待たせいたしましたー」
頼んでいた料理がテーブルに届く。時間は既に六時。
晩ご飯はここで済ませていこう、という話になったのだ。
男「本当だよ。なんだか昔からの友達みたいだよな、俺たちって」
娘「はは。違いない……そうだ」
そう言うと、娘は思い出した様にポシェットから例の手帳を取り出し、ページをめくり始める。
そして目当てのページを見つけたのか、手帳をテーブルに置いてボールペンを走らせる。
男「今度は何の願いが叶ったんだ?」
娘「友達を作る、だよ。今更だけど、一応記しておこうと思ってな」
娘「ついでにセック――」
男「してねーよ!」
公共の場で何てこと言おうとしてるんだこの小学生。俺の世間体が危ういだろうが。
そのページを見た限りでも、チェックが付いてない願い事が殆どだし」
娘「まあ、全部を埋めなくてもいいんだよ」
男「そう言うなって、時間は余ってるんだから。その内埋まって次の願い事考える事になるかもしれないぜ?」
娘「……」
反応が無かった。
なんだか朝の時の雰囲気がまた漂い始めたような気がして、胸がざわつく。
娘「この願い事リストの事は忘れてくれていい。もう、必要なくなったから」
男「おいおい、そんな遠慮しなくたっていいんだぜ……?
お前あんまりでっかい事お願いしないから俺だってそこまで苦労しないし
俺みたいにバカじゃないから『アメリカ人になる』とか無茶言わないだろ?」
娘「そうじゃなくて……」
娘「男は私のために色々な事をしてくれるが私は何も返せない。
そして男は自分の生活を犠牲にしてまで私に付き合ってくれているから、それが嬉しくもあり、心苦しい」
娘「そして――」
娘「私はずっと嘘を吐いていた。酷い嘘を」
娘は視線を窓の向こうの景色にやりながらそう言う。
男「嘘? 嘘ってなんだよ? お前は叔母さんに捨てられて、ただ為す術もなく、仕方なく俺と――」
娘「だから、それがもう嘘なのだ……」
それが嘘?
どういう事だよ? そこにどんな嘘を吐く余地があるって言うんだ。意図が汲み取れない。
男「お前が、お前であると言う事が嘘? 全く意味が分からないぞ?」
つまり、と娘は続ける。
娘「私は男が言うところの『叔母』の娘じゃない」
そして、
娘「男、あなたの両親はもう死んでいる」
男「……」
言葉が出なかった。
娘の言っていることが理解出来なくて。
理解しようなんて気にも到底なれなくて。
娘「あなたの記憶は偽りで」
娘「今のあなた偽物で」
娘「嘘つきな私は」
――あなたの妹だ。
私には自慢の兄がいる。
サッカーがとても上手で、優しくて、他の誰よりも素敵な兄だ。
周りからの期待も凄くで、将来は日の丸を背負う立派なサッカー選手になるだろうと言われている。
だから、兄はその期待に応えるために沢山練習をしなくちゃいけなくて、あまり私と一緒に居てくれない。
だけど大丈夫だ。
私たち兄妹の両親は私が三歳で、兄が十二歳の時に死んでしまったけど私は寂しくなんか無い。
兄は昔から私が退屈しない様に色々な事をしてくれた。
練習帰りにはいつも何処からか本を拾ってきて私にくれる。
私にとってそれはいつだって宝物で、内容がどうであれ一字一句覚えてしまう程に読んだ。
私たち兄妹を引き取ってくれたお母さんのお姉さん(叔母さんって言うのかな?)はとても優しいし
お金はあんまり無くても楽しく暮らしている。
高校二年生になった兄は以前よりもずっと生き生きとサッカーをしていて、なんだか私まで嬉しくなってくる。
兄は私に大きな手帳をくれた。
『お金が無いからこれしか上げられない』なんて兄は言ったけど、私は嬉しくて仕方が無かった。
『これに願い事を書いておいてくれ。俺がプロになってガッツリ稼ぐようになったら全部叶えてやるから』
その言葉はまるで魔法みたいだった。いや、それを魔法と呼ばずに何を魔法と呼ぼうか。
私はその日から毎日日記のように願い事を書き連ねていった。
私はおもち何かを食べてたりして、お正月気分を味わっていたけど、兄はそうとも行かない様だった。
高校選手権第二回戦。大事な試合を控えていたのだ。
一回戦も観たかったけど、叔母さんお医者さんだから忙しくて、結局都合がつけられなくて観られなかったから
私はとてもワクワクしていた。
今日は父方の叔母さんの一家とこの競技場までやってきた。
この家の人たちもすごく優しくて、私たちが困っていると良く助けてくれた。
この家の一人娘ちゃんは私より三つ年上でとても優しくて、なんだか私に姉が出来たみたいで嬉しかった。
やっぱり、兄は最高に格好良かった。
私は兄が格好良くゴールを決める瞬間が一番好きだ。自分のことより嬉しい!
だけど。
今回は少し不安だ。
兄の親友の友さんが怪我をした様だった。
ピッチに立つ兄の顔はスタンドからは良く見えなかったけど、いつも兄を観ている私にははっきりと分かった。
兄は今までで一番辛そうな顔をしていた。
結局その日は兄に会えなくて、励まして上げる事が出来なかった。
父方の叔母さん一家の都合でその日にしか東京に居られなかったから残念だ。
兄が帰ってきたらいっぱい励ましてあげよう!
――――
兄は三回戦には出なかった。友さんの事がショックだったかららしい。
試合は兄の高校の敗退という結果で終わった。私はなんだかよく分からないけど泣いてしまった。
とにかく、早く兄に会いたかった。
練習が終わった後も自主的に何かトレーニングをしているらしい。
今まで良く友さんが家に遊びに来たりしていたのだけど、そういうこともめっきりなくなってしまった。
そういえば本を持ってきてくれる事も無くなってしまったなぁ。
二年生の時とは違って、兄はあまり笑わなくなった。サッカーがうまくいってないからだ。
友達と遊んだりする事も少なくなった様だった。私は『変な奴』だから友達と遊んだりしないのが普通なんだけど
兄みたいなみんなから尊敬される人の場合は違うだろう。
私ともあまり喋ってくれない気がする。
はぁ。
元々、私の兄としては凄すぎる人で、絶対に釣り合わないなぁーなんて思っていたけど。
なんだろう。
最近は更に深い溝とか、遠い距離とかを感じるようになってしまった。
盗み聞きをするつもりなんて無かったけど、偶然、兄の部屋を訪れようとした時に声を聞いてしまって
何となく聞き耳を立てる形になってしまったのだ。
男『絶対に……俺は絶対に成功しなきゃいけない……。もう妹に辛い思いをさせない為だ……。
もう誰にも迷惑かけずに生きていく為だ……。全部のしがらみを取っ払って――俺が救われるためだ……』
男『無理してでももぎ取れ……アイツの事は……もう仕方が無いんだから気にするな……!
チクショウなんでずっと頭にこびり付いて離れないんだよッ!
そんな下らない事忘れて結果出さなきゃ俺も終わっちまうだろうが!!』
兄はとても追い詰められているようだった。
だけど、私はそんな兄を慰めてやる事が出来なかった。無力は罪だ、なんて難しい事が本に書いてあったけど
その意味が何となく分かったきがした。
今までみたいな天才的な活躍が無くなって、代表戦にも呼ばれなくなってしまった兄だけど
なんとか血のにじむ様な努力で高校チームのスタメン、そして主将の座を手に入れていた。
そして決勝戦。
この日は叔母さんと一緒に観戦しに来ていた。
兄がこの競技場に立っている姿をみて、私はやっぱり感動して泣いてしまった。
背中の10番がまぶしくて、何より誇らしかった。
そんな誇らしい兄の姿を観るのはこれが最後に成るかも知れなかった。
延長戦前半。
決勝ゴールを決めた兄が左足に大けがを負った。
兄が怪我をして三日目。兄は未だに目を覚まさない。
この病院のお医者さんも、お医者さんである叔母さんを何で兄が目を覚まさないのか分からないらしい。
もしかしたらこのまま――
そんな事が頭を過ぎるけど、そんなこと無いと自分に言い聞かせる。
私の兄が、私のかっこいい兄がそんな簡単に居なくなったりするものか。
そう強く念じながら千羽鶴を折り始めた。
そして――
私が920羽目を折り終えた時兄は目を覚ました。
男『あれ? ここどこだ?』
男『あ、あれ? 何だこの足? なんでこんな――』
男『うわああああああああああ! 俺の足が! 左足が!!!!』
男『なんだよこれ! なんなんだよ! 夢じゃなかったのかよ!!!!
これじゃあもう……サッカー出来ないじゃねぇーかよ!!!!』
目覚めたばかりの兄は酷く錯乱していて私や叔母さんの事には気が付いていなかった。
いや、正確に言えば兄はその時点で私のことを『妹』だと認識することも
叔母さんのことを『今まで面倒をみてくれ来た叔母さん』だと認識する事も無くなって居たのだ。
男『何なんだよ……!』
ギプスにまかれ、吊された自分の足を見つめながら苛立ちを包含したため息を吐く。
男『あぁ……なんてこった……』
男『あの……』
兄は目覚めたから初めて私たちに目を向け、私たちに向かっての言葉を口にした。
男『どちら様か知りませんけど……今は一人にしてくれませんか……』
その時からだった。
かっこいい兄は消えなかったけど――
だけど。
兄の中から私は消されてしまったのだった。
兄の中では『父方の叔母一家』が彼の家族であり、妹は私ではなく一人娘ちゃん。
叔母さん(私たちの面倒を見てくれていた母方の方の叔母さんだ)の名前を聞くと幼少期に会ったことがある
と言ったが、それ以降の記憶は無いらしかった。
そして私に関する記憶。
それだけはどうしても見つける事が出来ない。
それどころか、私が昔の話をして兄の記憶を引き戻そうと試みる度に兄は頭痛を訴えて、その後眠りに落ちるのだった。
そして目が覚めるとまた
男『どちら様ですか?』
と、『他人としての私』と話した記憶さえも失う。
叔母と医師が相談した結果、兄はしばらくの間、彼が家族だと思っている父方の叔母一家と暮らす事になった。
幸いなのか最悪なのか分からないけれど、兄の抱える問題は『私と叔母との生活を覚えていない』 だけであり
他の部分では全く正常だった。
だから大学に行くことも出来た。
怪我でプロクラブ入団の道は閉ざされたが
監督さんという兄の知り合いからの誘いで東京の大学へ行くことになったのだ。
そうして、私と兄は切り離された。
兄の居ない生活の中でそれを問い続けた。
そして行き着いた仮説。
いや、仮説というのは自己保身がすぎて卑怯かもしれない。
だから私はあえて自分が傷つくように結論付けた。
――結局、私は邪魔な子供だったのだ。
兄にとって私は重りだったし、彼が経験した暮らしとは彼のストレスそのものだったのだろう。
両親の死。
私と叔母からの無言の期待。それがひたすらに邪魔だったに違いない。今ならそう分かる。
兄は優しいから期待には応えようとするし、実力も才能もあるから無理だって出来る。
それが決定的に、致命的に兄を苦しめてきたのだ。
兄はついに折れてしまった。
――私はなんてバカな子供だったんだろう。自分の寂しさばかりに気をかけて、兄には何にもしてあげてなかった。
そう気が付くと、弱い私はやはり泣いてしまうのだった。
その時、なんとなく昔兄からもらった本の内容を思い出していた。
脳の病気で記憶を失っていくヒロイン。彼女の病はゆるやかに死に至るもので、ヒロインの幼なじみの少年は
彼女を助ける為に先端医療の研究者を志す。記憶を失い行く彼女は、しかし何度も少年に恋する。
そして最後は大人になった少年が治療方を確立し、彼女を助けてハッピーエンド。
そんな小説らしい夢物語。
馬鹿らしい。現実はそんなに甘くないのだ。
私はその時初めて兄から貰った物を嫌いになった。
そして思う。
夢物語ではない現実の世界で私がすべきことを。
今後は兄から出来るだけ離れて暮らすべきなのだろうか。
私も、私の中から兄を消すべきなのだろうか? と。
だから一つの計画を思いついたのだ。
他人としてでもいいか兄と一緒に居よう。そう言う我が儘を叶えるための計画だった。
ついていた嘘を全てバラしてしまうと、心がすっと軽くなった。
でも、こんな事をいきなり言われた『男』の心境を考えればまたすぐにどんより暗く重い気持ちが湧き出る。
男「……」
娘「すべて、本当の話だ」
『男』は私の顔を見つめたまま、黙り込んでいる。
私は思わず目をそらした。
やっぱり、心が痛むのだ。今から自分がやろうとしていることに。
娘「信じがたいかもしれないが、私はあなたの妹で、あなたが家族だと思っていた人たちは私たちの父方の叔母一家。
そしてあなたが私の母親だと思っている人は私たちの『育ての親』だ」
男「やめてくれ……頭が痛い……」
『男』息が荒くなる。
それは一年前に何度も観た記憶喪失の前兆だった。
また失ってしまいそうで。
また『兄』を傷つけてしまいそうで。
だけどここで立ち向かわなければならない。
そうしないと『兄』には会えないのだから。
娘「……やめない」
ここで止めるわけにはいかない。
娘「正直、何も話さないままずっと『男』と居るのも悪くないと思った」
男「……! 本当にやめてくれ! 頭が痛いんだ!」
娘「あなたは『兄』と同じぐらい優しいし、一緒に居てくれる時間なら『兄』よりもずっと長かった!」
あなたは『兄』が生きるべきはずだった時間を蝕んでいる。
偽物だらけの毎日を『兄』なりかわって生きている。
娘「その時間は本物じゃない。それは私の為にも、『男』のためにも使われるべきでは無かったんだ……」
だって、
娘「『男』、あなたは偽物だから」
そして私も偽物になりかけていたから。
娘「だからっ!」
偽物ごっこはもう終わりにしようよ。
妹「お兄ちゃんを返してよ!」
吐き気を感じた時にはもう胃の中の物を半分以上吐き出していた。
人気の少ない路地裏。
ファミレスから逃げ出した俺は隠れるようにかがみ込む。
それにしても。
男「何だよあいつ……いきなり変なこと言いやがって……」
あんな嘘っぱちを俺に話すなんて、どういうつもりなんだよ……。
男「全部、嘘だよな?」
自分の存在を確かめる為に右の掌を眺める。
大丈夫だ。俺はココにいて、ちゃんと昔の事だって思い出せ――
男「うあああああ……っ! 頭が……っ!」
嘘だろ? おかしいって。
あるべき記憶がない。
あると思っていた記憶が見当たらない。
男「おえっ――」
痛みに耐えかねて胃液が逆流してくる。
何かを探すような手つきを感じる。
誰かが何かを探している。そんな感覚。
男「俺が偽物ってどういう意味だよっ!」
俺が偽物。
『娘』は『妹』 で、俺は『兄』だって?
そんなの信じられないだろうが。あり得ないだろうが。
なのに、なんでこんなに混乱しているんだよ俺は!
何でだよ……。
もう屈んだ体勢すら維持できない。俺はゆっくり倒れていく。
目の前はゴミ捨て場だけど、そんな事はもう些末な事だった。
手にどこか懐かしい感触を覚えた。
ゴミ捨て場。
何の変哲も無いただのゴミ溜めから何を思い出すというのか。だけど、手から感じるその感覚は確かに懐かしい。
力を振り絞って首を持ち上げ、その手に触れる物をみる。
男「何だよ……」
ただの本じゃないか。
こんなもん、何だって言うんだ。
男「うっ……うっ……」
とうとう俺も気が触れてしまったのかもしれない。本を触っただけなのに涙がとまらない。
『キャッチャー・イン・ザ・ライ』
有名なタイトルだった。
それこそサッカーばかりやってきた無学な俺ですら知ってるくらい。
だけど、なんで俺はこんな本を見つけたぐらいの事で泣いてるんだ?
この本にそんな深い思い入れが有るわけじゃ無いだろう。
思い入れじゃないとしたらこの感覚はなんだ――
これはいつか俺が拾った本だった。
誰かのために拾って、その誰かを喜ばせようとしていたんだっけ。
男「誰にこんなもん上げようと思ったんだっけなぁ……」
思い出せない誰か。
その誰かを想うと何故か涙が止まらない。
男「こんな本だけじゃ喜べないのになぁ……」
必要なのはそんなもんじゃ無いだろう。なんて誰かに向けての怒りが沸く。
誰への?
もう分かってるさ。さすがに、馬鹿な俺だって。
男「立ち上がれよ……」
抜けた力を呼び戻すように命令する。誰にでも無く、ただ自分自身に。
なんとかゴミまみれながらも立ち上がる。
散々な姿だろう。
みっともない姿だろう。
だけど行かなきゃ。
そいつが誰なのかを確かめにいかなきゃ。
ずっと俺を待ってるやつ。しょうもないお土産なんかを宝物みたいに大切にする奴が俺を待ってるから。
――たとえ偽物だとしても、俺は走り出す。
きっともう店を出ただろう。
そんな駄目もとで戻ったファミレスにそいつは居た。
あっけないというか。こいつらしいというか。まるで全てがお見通しみたいな感じで、最後までまるで食えない奴だ。
妹「戻ってくるって信じてた」
男「はは……そんなに信頼されてるのかよ……その『兄』って奴は」
本当に。マジで妬けるよ。
男「はぁ……信じがたいけど、信じるしかないよな」
今まで感じない振りをしてきた違和感たちに一度気が付いてしまうと、もうそれは無視出来ない。
俺は偽物で、本物が他にいる。
男「俺ってなんだったんだろうな」
男「俺なんて居なくてもよかったんじゃないか?」
妹「……そんな事は無い」
男「はは、そう言われると悪い気はしないな。つーか結構報われるかも」
男「……短かったけど、楽しかったよ……」
お別れの仕方はもう分かっている。
妹「私も楽しかった……絶対に忘れない」
右手の本。
さっきゴミ捨て場で拾ったうすきたない古本だ。
それを妹に差し出す。
これで本当にお別れ、というかバトンを本来もっていなきゃいけなかった奴に返さなきゃならない。
妹「ありがとう……っ!」
本がゆっくり妹の手に触れる。
――そして、俺の意識は急激に揺らいでいく。
どうやらこれで本当に終わりらしい。
意外とあっけない物だな。動揺していない自分も以外だし。
まあとにかく。
――あとは頼むぜ。本物の『お兄ちゃん』
高校選手権決勝からの一年と何ヶ月かの間。
その間の記憶が思い出せるようで……しかし、なんだかハッキリしない。
気が付いたら脚は大分良くなってるし(そりゃ以前みたいに50Mを五秒台で走るなんて絶対無理だけど)
東京でマンションを借りて大学に通っていた。
嘘みたいだけど本当の話だ。
一緒に暮らしている妹に聞いてみても「さあ」としか答えないし、俺たち兄弟を育ててくれた叔母さんに聞いてもまた「さあ」
まあ別に、その疑問に答えを見つけるのはいつだっていいんだけどな。
俺には今確固とした目標があって、それを目指して這いつくばるのに精一杯なのだから。
――速く走れなくたって、俺はまだまだサッカーを続けられる。
いつか監督のいった通りだったのだ。
ゲームメイクのセンスと正確なキック。それを生かしたボランチというポジション。
そこでならまだ俺は輝けるのだ。
そして俺は今新たな目標に向かって一歩踏み出そうとしている。
友は言った。
『やっぱり男は出来る男だよ! 世界一のサッカー選手とか夢じゃないよね!』
本当にむずがゆいことを平気で言う奴だ。
監督は言った。
『いや、実に良かった。
君みたいな原石を目の前に『加工ミス』をしてしまってはフットボールの神様に申し訳が立たないからね。
良かった。まだ私の目は狂っていなかったよ。老眼だけどね』
いちいち訳の分からんこと言うオッサンだ。
まあ嫌いじゃないけど
記者「怪我での挫折、そして大学二年時の劇的復活とプロデビュー。そしてその二年後の今はスペインの強豪入り!
この劇的なシンデレラストーリーについてご自身はどうお思うなんですか!?」
空港の入り口。数十人の記者に囲まれてしまっていた。
兄「――っあ、ちょっと考え事してました。えーっとなんだっけ? この二年? いやー早かったですよねー。
もうあれ、びゅーんって感じでしたはい」
記者の問いに適当に答えつつ、キャスターを引きエントランスへ向かう。
記者「恩師であり、プロデビューの立役者でもある監督氏からは何か言われましたか?」
兄「えーっと、なんだっけ。老眼?がどうのこうのって言ってましたね」
パシャッ パシャッ! パシャッ パシャッ!
記者「今の気持ちは?」
兄「早くサッカーがしたいですね」
パシャッ パシャッ! パシャッ パシャッ!
兄「うんじゃそろそろ」
記者「あ、最後の質問です!」
――感謝している人は誰ですか?
自然と足が止まった。
俺には沢山居る気がする。
妹、叔母さん、父方の叔母さん一家、友、監督、大学の奴ら。
兄「うーん……」
それで全部だろうか?
誰か欠けているような気がする。
一番近くて、一番離れている様な存在。
それは一体――
兄「まあ、それはまた今度で! 全部成し遂げてから纏めて感謝したいとおもいまーす! じゃ、アディオス!」
記者「あ、ちょっと待ってください!!」
パシャッ パシャッ! パシャッ パシャッ!
記者の群れを抜けてエントランスをくぐる。
なんとか待ち合わせの時間に間に合っただろうか。
今日みたいな真夏日にぴったりな白いワンピースを纏った長髪の少女。
数年前と比べれば随分大人っぽく成ったなぁ、なんてオヤジ臭くも思う。
妹「遅いぞ」
兄「いや、なんかインタビューとか記者の相手とか色々あって」
妹「スーツ。せっかく良いのを買ったのにもう皺になってるぞ」
そう言って彼女はスーツの皺を手で撫でならし、ついでにネクタイのズレまで直してくれる。
兄「はは、悪い。ありがとう」
そう言って頭を撫でてやる。
彼女、妹の表情は屈託のない笑み。
妹「何、兄妹なのだから助け合うのが当たり前だろう?」
そりゃそうだ。
そう心から思う。
一方的に頼られるだけでも、一方的に頼るだけでもない関係。
それが俺たちのあるべき姿。
辛いことは絶えないだろうけど、こいつが居ればどうにかなりそうだ。
いつかお互いに好きな奴が出来て結婚したりしても、俺たちの関係はきっと変わらない。
足りない分だけ補い合うのみ、だ。
妹「分かってるって!」
妹「がんばろうね! お兄ちゃん!!」
そんな感じで。
俺たちは進んでいく。
END
面白かったわ今後も期待
~おまけ~
ダメじゃねえか
おい
Entry ⇒ 2011.12.29 | Category ⇒ 兄弟姉妹「」SS | Comments (1) | Trackbacks (0)
娘「セック――」 男「言わせねーよ!?」 前
十月の終わりってこんなに寒かったっけ?」
毎年経験しているはずなのに、季節の変わり目はいつも新鮮だ。
寒空とはまだ言えないが、しかし両手をポケットに突っ込みたくなるぐらいにはしっかり寒い。
男「あー寒い。こんな時は恋人と手でもつなぎたいなー。なんて」
恋人が居たことなんてないけど。だからこそそう思った。上京してからというもの、何故か時より人恋しい。
今までそんな事無かったのに。
そうつぶやいてみる。
そうつぶやいた事は前にもあった。
この一ヶ月と半月、ずっとそうぶつぶつとつぶやき続けていた。
だけど。
男「なんでこうなったんだろうなぁ……」
語尾がそのままため息となる。
色々駄目な俺が、一ヶ月ほど前からはついに大学をサボるようになっていた。
理由は不透明。
それか無色透明。
多分、何となくやる気がなくなってきたから。
男「まあいいや。飯買わないとな、今は」
仕送りの金で買う飯は、なんだかすごく酸っぱいし苦いのだけれど。
男「まあそこそこの値段でそこそこの満足感があるよな、うん」
男「さて、帰えるとす―――」
ブー ブー ブー
男「電話?」
一ヶ月ぶりの着信だろうか。まあ友達は殆どいないし、母親からの電話だろう。
女の声『あーもしもし? 男だよね?』
母親じゃなかった。だが俺の下の名前を呼んだ。
男「は、はい。 そうですけど?」
叔母「私よ私。叔母。ってあんまり覚えてないかな?」
男「あ、あー。叔母さんですか」
名前は知っている。でも最後に会ったのは俺が6才くらいの時か? 今19才だからおよそ13年前。
正直顔は解らないし、声だって今聞いて何となく思い出した様な感じだ。
しかし、なんで俺のケータイの番号なんて知っているんだ?
叔母「突然ゴメンね。とても急いでいたから事前に連絡も出来なかったんだけど
私今○○駅前のファミレスにいるの」
男「え? あの? どういう事ですか?」
叔母「今すぐ来てほしいの」
頼み事があるから、そう一息おいた後に付け足された。
男「えーと、叔母さん。叔母さんは僕をからかってるんですか?」
久々に、本当に久々に体中に血がめぐるのを実感した。寒さなんて忘れて、今はひたすらに体が熱かった。
叔母「お金は振り込むし、それとこれ。クレジットカード。好きに使って良いよ」
いきなり現れて、勝手に身勝手な事情を説明して……そしてこれは金とかの問題じゃない。
男「自分の娘なんですよね? それって簡単に他人に投げ渡したりしていいものなんですか?」
なんと。自分の娘を俺に引き取って欲しいのだと。
震える腕を隠すようにテーブルの下にやる。震える声はどうしようもないけど。
だったらなんで? 自分の子供でしょ?」
叔母「自分の子供だからよ」
叔母「もう無理なの」
男「ッ――!」
震えていた手が耐えきれずに大きく脈を打つように跳ねた。意図は無くともテーブルの裏を殴った形になる。
コーヒーカップが跳ねてソーサーにぶつかり大きな音を立てる。スプーンは床に落ちてしまった。
隣の客からの視線を受けつつ、言った。
叔母「いいのよ。当然だもの。誰だって怒るでしょうね」
他人が同じ事をするならば、私だって怒るでしょうし。叔母さんはそう言って窓の外に視線を向けた。
表情は、西日でよく見えない。
叔母「頼まれてくれる?」
男「そんなの無理に決まってるじゃないですか! 大体なんで俺にたのむんですか?
もっと適当な、もっと大人の人に頼むべきでしょう?」
叔母「あの子、大人のことあんまり好きじゃないの。ううん。大嫌いなの」
大人のことが嫌い。
だからって大人から見捨てられてしまったら、子供は生きていけないだろう。
はらわたが煮えくりかえる。だけどどうやってこの怒りを爆発させればいいのか解らない。
叔母さんはクレジットカードを俺の方に手で押しやり席を立つ。
男「は? どういう事ですか? まだ何にも話して無いようなものじゃないですか?」
何を勝手に言っているんだ。お願いするって一体何をだ。
叔母「あの子、賢いから。住所渡しておいたのよ」
男「え?」
叔母「今頃あなたの家に着くぐらいじゃない? 迷ってなければいいけどね」
男「なにを――」
何を言っているんだこの人は。
そんな事、親がしていいのかよ。
叔母「じゃあ、仲良くしてあげてね」
今度はテーブルが跳ねた。
勢いよく立ち上がりすぎたのだ。
叔母「えーと。胸ぐら掴むのは止めてくれないかな? 目立つよ?」
男「ふざけんなよっ! なんでそんな事出来るんだよ! お前親だろ?
親ならそんな事出来ちゃいけないだろうがよ!
子供のことを一番に考えて、自分の事だって犠牲にするべきだろうが!」
十三年ぶりに会っただとか。母親の妹だとか。相手は女性だとか。
怒りに任せずに、しっかりと話をするべきだとか。
そういうものが、湧き出た熱いものに一気に溶かされ蒸発する。
叔母さんは俺に胸ぐらを捕まれても尚、無表情を貫き通す。
叔母「これが一番なの。じゃあね。お金は払っておくから」
叔母さんは俺の手を払うと、どんどんと歩いて行ってしまう。
さも当たり前の様にそうされて、俺は馬鹿みたいに立ち尽くす。
負け犬みたいな台詞になってしまった。
だけどとにかく何か言ってやらなければ気が済まない。
叔母「地獄はやめてあげてほしいかな」
レジで会計を済ませた叔母さんはそういって笑う。酷く苛立つ。
体の芯が熱いのか冷たいのか。よくわからない。
男「あー……なんかもう……あんた、もう消えてくれよ……顔を見たくない」
叔母「そのつもり」
そして付け加えた。
叔母「二度と会うことが無いように願ってる」
男「な――」
チャリンチャリーン
ドアが閉まり、心境にそぐわない間抜けなベルが鳴る。
なんて言う大人だ。
無責任ここに極まれり。
頭に血が上っていて気がつかなかったが……
男「お、お騒がせしました……」
集まってしまった客達からの奇異の視線に気が付いて。さっさと店を出た方がいい。
それに――
叔母さんの子。
叔母さんに捨てられたその女の子は寒空ともつかない空の下。
俺に何が出来るか解らないけど。
今は出来ることをするべきだろう。
俺はもらったクレジットカードを丁寧に四枚にへし折って灰皿に入れた。
冷めたメンチ弁当の袋を下げて家までひとっ走りだ。
男「えっと、叔母さんの子だよね?」
十歳ぐらいだろうか。腰に届きそうなほど伸びた黒髪と、大きな目が叔母さんによく似ている気がする。
女の子「……」
露骨に警戒された。
女の子「そうだが……あなたが男なのか?」
怪訝に思う気持ちをみじんも隠さぬジト目で俺を見上げる女の子。
三十センチぐらいの身長差を感じさせない威圧感だ。
男「そうだけど……えーと君、名前は?」
逡巡した後。
娘「娘」
俺から目をそらして短く答えた。
男「えーと、じゃあ娘ちゃん。今からお母さんを追いかけよう」
まさか、じゃあ部屋に上がってお茶でもしながら自己紹介をしようじゃないか、なんて抜かす程俺もおめでたくない。
あの人はあのまま家に帰っただろう。だったらこの子を家まで連れ返すまで。
娘「それは出来ない」
また短く言う。
男「は、はあ? なんでだよ? 嫌なのか」
娘「そうじゃない。違うけど、迷惑をかけたくない。事情があるんだ」
まだ幼い声でかたくなに言う。
娘「しばらくの間でいいから、私をここに置いてほしい。お願いする。いや、お願いします!」
我ながらデリカシーの欠片も何もあったもんじゃない言い方であった。
娘「いいや」
娘「大事にしてくれていた」
だったら尚更わからない。何で彼女がそんなお願いをするのか。
何で叔母さんがこの子を俺に投げつけるみたいに預けるのか。
一体どんな理由があるんだ。
と言うか少しぐらい『事情』について教えてもらえてもいいと思うんだけどなぁ……。
そのあたりを曖昧にしか言っていなかった叔母さんからみるに、それは聞いても納得できない物なんだろうけど。
男「一日だけって……」
一日泊めるぐらいどうってこと無い。でも、それは根本的な解決には全く結びつかないだろう。
だったら今すぐ動くべきだ。
だが。
娘「頼む……どうしてもなんだ……いいや、お願いします」
頭を垂れて今にも泣きそうな女の子にそう言われてしまえば……俺は折れる男なのだ。
それが正しいかは解らないけど。
本当に俺の意志の弱さには愛想が尽きる。
なんだか、いいように巻き込まれてるなぁ、俺……。
男「はぁ……まあ上がって。その、まあ自己紹介でもしよう」
まあ一日だけ。
明日には、きっとお別れだ。
趣味は読書。
堅苦しいしゃべり口調(自覚していた)は本の読み過ぎのため。
猫が好き。
お茶を呑みつつの自己紹介で解ったことはこれぐらいだろうか。
肝心な「なんで俺がこんな状況に陥っているのか」は未だに不明瞭だ。
男「俺の事は男と呼んでくれればいいよ」
娘「そうか。なら男、一つ頼みたい」
男「お、おう。なんだ?」
娘「友達、になってほしい」
娘「私には友達がいない。だから至急友達になってほしい。男。私では駄目なのか?」
男「えーと。何というか。俺たちさっき会ったばかりだろ?しかも経緯が経緯だし……
それでいきなり友達って言うのはなんかなー? いや、別に娘ちゃんと友達になりたくない訳では無くて。
というかなんでいきなりそんな話に?」
俺が言うのはおかしいかも知れないが、この子に友達がどうとか言っている余裕があるわけ無いと思うんだが……。
事態の深刻さが解っていないのか? それとも俺が深刻に考えすぎているだけなのか? ドッキリなの?
娘「じゃあ明日ならいいのか?」
男「そういうものでもない気がするなー……」
なんかすごく嫌な予感がした。
男「……今なんて言おうとした……?」
こいつなんかとんでも無い事を言おうとしていた気がする。
娘「だから私とセックむぐっあ!?!?」
男「言わせねー! 絶対いわせねーよ!? 十歳の女の子には絶対言わせちゃいけないワードなんだよ、それは!
そして絶対しません!」
娘「むぐっ――なに? 十歳だと駄目なのか?」
男「俺はそういう趣味の人じゃないから、そんな法律を熟知してたりしねーけど、たぶん
というか確実に駄目だろきっと……」
少なくとも俺の人生はそこで終わる。
娘は大きな鞄(彼女の唯一の持ち物だ)からメモ帳のようなものを引っ張り出す。
娘「書くものを貸してくれ」
男「え? いいけど?」
デスクからペンを取ってきて渡してやる。
娘「これは没、と」
男「何やってるんだ?」
娘「これはあれだ。to do リスト的なものだ」
男「やることリストって事か?」
娘「そうだ。私のやりたい事が書いてある」
B4ぐらいはありそうな手帳を俺に向けてバラバラと一気にめくって見せる。
男「うお。めちゃくちゃやる事あるじゃん」
内容までは見えなかったが、全ページが真っ黒くインクに染まっているのは解った。
俺よりやることの多い10才だった。なんだか自分が恥ずかしい。
男「セッ――後者はともかくとして、友達にならなれるだろう。多分」
娘「何? そうなのか? てっきりもう駄目なのかと思っていたが」
男「今は駄目かもしれないけどそのうちだろ」
この子が親の元に戻って。すべてが解決した後ならば、友達にぐらいにはなってやれるだろう。
俺も友達あんまり居ないしね!
娘「ふむ。そういうものか」
娘「ん? ならば、後者も可能だろう。それは親しい間柄である男女の間で交わされると言う。
だったら友達になれば可能だろう。どうだ」
どうだ、じゃねーよ。
男「人はそれを最悪の人間関係と呼ぶ……」
はぁ……。この子と話すと疲れるな。
こう言う状況に陥ってしまっている、ってことは何か色々他の問題も抱えていそうだしな……。
ちょっとの間だろうし、優しくしてあげた方がいいのかもしれない。
そういえば。
男「そういえば学校はどうするんだ?」
娘「学校とは何だ?」
男「それは古典的にボケてるのか?」
娘「人間とは何だ?」
男「哲学的な問いだったのか!?」
じゃなくて。
娘「冗談だ。しかし、私は学校には通っていないんだよ。これは冗談抜きで」
娘「義務教育だからこそ、通わなくてもいいんだよ。それに、小学校とは世にも幼稚な事を教わる所と聞くが?」
誰から聞くんだよそんな事。
男「いや、今となっては幼稚に思えるけど、お前ぐらいの年の奴だったらみんな行ってるし、行くべきだと思うぜ。
それこそ、友達だって百人単位で出来るだろうよ」
俺は友達百人なんて出来たこと無いけど。
娘「別に百人も欲しい訳じゃないんだよ。一人作ればそれで完了だ」
男「? まあとにかく、小学校には行くべきだと思うぜ。勉強以外にも学ぶことはたくさんある」
自分で言っていて、胡散臭かった。でもまあこう言っておくべき、だと思う。
娘「ふん……まあいいよ。とにかく学校の心配はしなくていいんだ」
男「……まあ、今はそれで納得しておくよ」
俺もそこまでは面倒みられないだろうし。
娘「ああ、そういえばもうそんな時間だな」
結構話し込んでしまっていた。というか打ち解けすぎだ。
10才の女の子とこんなに打ち解けてる事が誇れるかどうかは不明だが。
男「あー、悪いけど今日はこれを俺と半分つ、って事で手を打ってくれないか?」
メンチ弁当をコンビニ袋から出し、娘の前に置く。
娘「半分もか? 私は半分のそのまた半分で十分だ」
男「いやいや、子供が遠慮するなって。レンジで温めておくから、先に食っといてくれ。残りを俺が食うから。
それじゃ俺は風呂掃除に行ってくる。着替えとかは鞄に入ってるよな?」
娘「ああ。そうか、わかった……」
男「掃除おわったぞ。今お湯沸かしてるから二十分ぐらい待ってくれ、っておまえ、気分でも悪いのか?
飯も半分の半分ぐらいしか食ってないし」
娘は少し、気分が悪そうな顔をしながら箸を置いてイスに座っている。
娘「いや、すこし油が強くてな。そして食べる量はいつも大体これぐらいだ」
男「まじかよ。いくら何でも燃費が良すぎないか?」
いや、でも燃費が良いわけでは無いのだろう。
長袖と長ズボンで覆われているから解りづらかったが、彼女の肢体は酷く華奢だ。
それこそ、欠食児童のそれのように。
娘「まあ、気にしなくて良い。それよりもテレビをつけてもらえるか?」
男「ああ? いいけど。はい」
電源を入れて、リモコンを渡してやる。
娘「ありがとう」
国営放送の堅苦しいニュースから一変、民放のチャライ音楽が流れ出す。
なにやら動物を紹介する種の番組らしかった。
娘「ふふ」
猫の親子が仲むつまじく散歩している映像を見て娘は笑みをこぼす。
たぶん俺が見る彼女の初めての笑顔。やっぱり母親の笑顔と似ている。
母親の方の笑顔は思い出すだけでもむかっ腹がたつが。
娘「なあ男」
男「なんだ?」
娘「猫を解体」
男「なんてことを!? お前猫好きじゃなかったのか!?」
娘「ではなく、猫を飼いたい、だ」
男「ああ、そっちか。もちろん駄目だよ。というか何ここに長いこと住むことが前提になってる、みたいな話してんだよ」
娘「なんで駄目なんだ!? いくら積めばいいんだ!?」
男「どこで覚えてきたんだよそのフレーズ……。俺が個人的に駄目って言ってる訳じゃなくて
このマンションの入居規約としてNGなんだよ」
男「どんだけ猫飼いたいんだよお前……」
何がなるほどだよ。みじんも納得してないどころか、めちゃくちゃわがままじゃねーか。
娘「いや、まあテレビで観ているだけで十分なのだけどな」
男「そう言っちゃうと言っちゃうで、なんだかオヤジくさいな」
娘「可愛いから、もしも居なくなってしまった時悲しい思いをするからな」
男「それは……」
確かにそれはそうだ。居なくなってしまうと、死んでしまうととても悲しい。俺も小学生の時に亀を飼っていて
そいつが飼い始めて二年と経たないうちに死んでしまった時はひどく悲しんだものだ。
死んでしまうなんて、全然考えていなかったし。
娘「まあ、これは元々望みの薄いお願い事だったからな。よし、没、と」
男「それもリストに入ってたのか」
娘「ん? ああ。そうだ。でもまあ難しい事だろう? 生き物を扱うというのは。
だからまあ、もともとダメ元で加えたようなものだ」
男「そうか。そういえばさ、猫を飼えないのは仕方ないにしても、猫とをふれ合うだけなら案外簡単にできるぜ」
その言葉に娘がピキンと背筋を猫みたいに動かして反応する。猫耳が生えてきそうな程猫っぽい動きだ。
娘「本当か!? そんな都合の良い話があるのか!? ヤリ逃げってやつなのか!?」
男「どっからそんな下品な語彙を仕入れてるんだよ10才! 意味はわかってなさそうだけど!」
まあともかく……。
男「あー……えーとな。俺の記憶が正しければ
ここから電車で5駅ぐらい行ったところにそういうテーマパークがあるんだよ」
男「そこにいけば少しは猫を飼っている気分に浸れるだろ」
娘「なんと! 地上にこそ楽園があったのか!」
男「なんかお前のキャラつかめねーよ……。まあ喜んでくれるのはいいんだけど」
娘「そこにはいつ連れて行ってくれるんだ!?」
え?
男「何? 俺が連れて行くの?」
娘「他に誰が居るんだ?」
男「お前のお母さん、叔母さんと行けよ」
娘「……」
娘は困ったような顔をしながら目線を下に落とす。そしてもう一度俺を見上げる。
娘「さっきは一日だけと言ったが、やっぱり私はお母さんの所へは帰れないのだよ」
男「「お前も結構物わかり悪いのな……」
さすが親子だ。なんだか扱いの難しさが似ている気がする。
男「今はちょっと色々あってこんな事になってるだけなんだろうよ。
だからきっと、全部解決したときにはちゃんと家に帰るんだよ。その時叔母さんに連れていってもらえばいい」
娘「全部は全部、そっくりそのまま解決なんてしないんだ」
だって、悪いのは私だから。
そう娘は言う。
いや、俺が言わせたのかもしれない。
どちらにせよ、
男「そんな訳ない。俺が保証する」
娘「どうして……」
男「俺がそう思うからだよ」
酷く脆弱な根拠だった。だけど、それだけで十分だ。
男「明日には全部良くなる」
チキンの癖に、頭はまあまあ悪い方の癖に。こう言う大見得は一丁前にきれてしまうのが俺の悪いところだった。
事態は思いもよらぬ形で迷宮入りしかけていた。
男「吐け」
娘「黙秘だ」
男「どうしても?」
娘「黙秘だな」
男「往生際わりーな! そんなもんその内わかっちまうんだから早く吐けやあああ!」
娘「そういえば、ベッドの下からこんなイカガワシイ本が顔をのぞかしていたぞ。これは男の所有物だろう?」
男「黙秘だあああああああああああ!!」
娘の手からエロ本をひったくって、そのままの勢いでゴミ箱にダンクした。
ちくしょう! 自室のベッドを貸したらこのざまか! やっぱり娘をリビングのソファーで寝かせ方が良かった!
娘「おいおい。本は大切に扱わないと」
男「俺の中の何か大切な物を失うよりはましだよ!」
10才の女の子に奪われてしまうなんてたまった物じゃない。なんて10才なんだよまったく!
今日は朝から娘、もとい叔母さんの家にカチコミに行く予定だったのに。
男「なんで家の場所を言わない……」
娘「何度も言っているだろう。帰る気は無い」
確かに何度も言われた。
それについての理由も尋ねた。
家が嫌いなのか? 『好きだ。むしろ大好きだ』
とにかく俺だけでも行かないと話が進まないんだが?
『別に進める話は無いよ。私をここに置いて居てくれればいい。迷惑は……かけないように善処する』
お父さんはどうなってるんだ? 『さあね。私が生まれる前に何処かに行ってしまったらしい』
わからないが。一つだけ解った。
叔母さんが娘と暮らす気がないのと同時に、娘も家に帰る気が無いのだ。
事態は悪くなって行くのみだった。
いや、事態は俺の知らないところでもっと悪い事になっているのかも知れない。
なにしろ俺は叔母さんの事情も、娘の事情も、何一つとして正確に把握していないのだ。
つい昨日までは叔母さんに子供が居たことすら知らなかった訳だし。
母親は何だかんだで叔母さんと会っていた様だから知っていたのだろうが、そんな事は教えてもらっていない。
娘「とにかく、しばらくの間で良いんだ。頼みたい……お願いします」
表情は悲痛で。願いは切実だった。
一体この子の周りで、この子の中でどんな事が起こっているのかわからない。
男「わからない……が、わかったよ……。しばらくの間だけだからな。しばらく経ったらすぐに家に帰すからな」
娘「ありがたい!」
汚いマンションの一室に華やかな笑顔が咲いた。
男「ま、まあ最低限の家事手伝いはしてもらうぞ」
不覚にもその笑顔を可愛いとか思ってしまう。と言うかこの子かなり整った部類のお顔をしていらっしゃる。
男っぽい口調と、普段の仏頂面で気がつかなかったが。
娘「ああ! 任せてほしい。 こう見えても食う寝る遊ぶに関しては鬼泣かせなレベルで極めている!」
男「それ極めちゃったら親泣かせだろうが!
働かない大きなお子さんの肩書きじゃなくて実務としての家事手伝いだっての!」
娘「ああ、なら最初からそう言ってくれればいいのに」
男「なんか悪意的に取り違えてる節があるよな、お前……」
10才女子への突っ込みに息を切らしてる19才男子ってどうなんだろう。
娘はそう言うと立ち上がり、部屋をぐるりと見渡す。
娘「呑みっぱなしの空き缶はデスクの上だけにとどまらず、床にまで勢力を展開。脱ぎっぱなしの服はそこら中に。
弁当のプラスチック容器とファーストフードの紙袋で形成された、部屋の角にそそり立つ現代アート……」
……。
娘「汚い!」
ズビシッと指を指されて断言された。
男「クッ……悔しいが反論の言葉が無い……」
二週間も掃除しないとこんな有様だろう。男の一人暮らしなんて。
男「いや、ここの所忙しくて……」
娘「そうなのか。そういえば昨日、大学に通っていると言っていたな。今日は行かないのか?」
男「ああ、ちょっとね。休みみたいな? 普段は忙しいんだよ。うんすごく忙しいよ」
定期的に恋人にブルガリの時計とヴィトンのバッグをプレゼントし
夜はシャツをパンツインにしてポルシェでディスコに向かうんだろう?」
男「一つとしてやった事ねーよ……」
どこのバブル大学生だよ。
男「そんな世代の大学生とは大きくかけ離れてるけど、まあ普通に勉強とか、バイトとか急がしいんだよ」
まあ、勉強もバイトも『してた』なんだけど……。
娘「そうか。学生たるもの学業や勤労に精を出すのが一番だな、うん」
男「いや、小学校中退みたいな生活してる奴に言われたくないけどな」
昨日は聞きそびれたけど、こいついつから学校行ってないんだろう。
昨日は行きたくないから行かないみたいな感じに言っていたが、実際は何か問題でもあったんだろうか?
なんかこいつすべてが謎だな……。
男は……そうだな、とりあえず掃除機をドアの前に置いておいてくれ。後は私がすべてやろう」
男「お、おう。なんか頼もしいな」
俺はすべて言われた通りにして、自室の掃除を娘に任した。
現在はリビングのソファーに寝転がり、観るとも無くテレビを眺めていた。
男「アナログで所持していたアダルトな物はあのエロ本が最後だから、まあ心配ないな」
非常に惜しいことをした。だが俺も男だ。一度別れを告げたエロ本をゴミ箱から引きずり出すような真似はしない……!
男「昨日はソファーで寝たからまだ疲れが残ってるな……」
疲れるような生活はしてないはずだけども。
男「一眠り……」
娘「掃除おわったぞ」
男「うおうっ!!」
背もたれの方から娘が顔をのぞかせ、俺の顔に娘の髪が覆い被さる。
男「びびったわ! 一気に目が覚めた」
と言うか昨日は俺のシャンプー使ったんだよな? なのに俺の頭から垂れ流れてくる臭いと違う。
なんだこの良い香り。女の子って不思議!
娘「よかったではないか」
男「心臓に悪いって……えーと終わったのか。じゃあ早速アフターを見てみよう」
立ち上がり、自室へ向かった。
俺の部屋がキレイ…だと?
男「床が見えるし輝いてる。服も洋箪笥に収まっている。本棚の整頓も欠かしてない!」
素直に関心した。俺だったら色々手を抜いて絶対にこうはならないだろう。
男「お前やるな! かなり良い嫁さんになるとみた!」
娘「お、おう!? そうか? 良いお嫁さんになれそうか!?」
男「おうマジでマジで。つーか俺のところに嫁げ!」
娘「えっ……それはちょっと……その……」
素で反応かよ! そこは頼むからノって欲しかったよ! 褒めたときはちょっと赤くなってて可愛かったじゃん!
男「少し傷ついた……」
娘「少しは気がついて欲しい」
男「ええ!? 俺が知る以上に俺には欠点があるのかっ!? 頼む教えてくれ!
気がつかないまま一生独身だけは勘弁してくれええ!」
娘「冗談だよ」
男「冗談じゃねぇ! 危うくアイデンティティーを失う所だったよ!」
娘「ずいぶんチャチャな作りなんだな……」
だから。
だからこそまた違和感を感じた。
男「なんかお前と話してると、お前が小学生だってことを忘れちまうなぁ……」
というかそこらの同年代より大人な印象を受ける。
こんなくだらないやりとりが参考になるかどうかは解らないが、こう言うのだって色々頭を使ったり
他人の考えを読み解く力が無いと出来ない事のはずだ。
だから、それが出来るこいつに違和感を感じざるを得ない。
環境が人を作ると言うが、だとしたらどう育って、こいつはこんな風になったんだろうか?
男「別に変わってるとかだなんて、俺は思わないよ。それどころかすごいし、良いことだと思う」
えらいえらい、と頭をなでてみた。140センチぐらいだから撫でやすい。
そしてサラサラだろうと思っていた髪はやっぱりサラサラだった。
娘「べっ、別に大した事じゃないっ! 遊ぶ金ほしさでやってるだけだっ!」
娘の顔がボッと赤くなる。
男「いや、それは犯行動機だろう」
そして別に遊ぶ金は手に入らない。
娘「そうじゃなくて、あれだ! 別に最初は殺すつもりじゃなかった!」
男「言い訳する部分がすり替わってるぞ……」
娘「あー、とにかく! 私は普通でなくとも、年相応だ! むやみに褒めるな! むしろ罵ってくれ! さあ早く!」
男「第一印象の欠片も残らないキャラになってんなお前……」
娘「男がそうさせているんだろうっ」
男「そうなんだろうか? まあ、ちょっとからかったかも。悪い悪い」
娘「ふんっ」
娘は腕を組んで顔を横にプイッとする。
リアルでこの感情表現する人いるんだ……。いや、まあ様になっていて可愛いけど。
やっぱいくら性格が大人っぽいといっても、やっぱり子供だなぁ。あー微笑ましい。
娘「まあ全部演技だったのだがな」
男「台無しだよ!」
恐ろしい人心掌握術だな!
まあ、そんな感じで。
さよならの日だと思っていた日は過ぎていく。
娘「この野菜炒め、モヤシが八割なのは匠のこだわりと言う解釈でいいのか?」
男「雪国モヤシにそこまでの意匠を凝らしたつもりはねーよ。ただあれだよ、節約。
暫く二人分の飯を作らなきゃならないんだ」
娘「節約? 金が無いのか?」
男「仕送りと奨学金で生活している身分なのでね。そうそう贅沢は出来ないんだよ」
娘「そうなのか。だが、金の心配はしなくて良いぞ.。私も少しなら持っている」
そう言うと箸を置いて鞄を持ってくる。
男「おいおい、いくらこう言う状況とは言え小学生女子から金を巻き上げるような真似は出来ないぞ。男、というか人として」
それにこいつ全然食わないっぽいし。コンビニ弁当を買わないようにして
自炊に専念すればむしろ今までより安上がりじゃなかろうか。
娘「ほら、一束あれば足りるか?」
はい、とそれを俺の手のひらにのっける。
男「あーうんそうそう。これが一束あればうまい棒が1、2、3、4――」
娘「……ん? どうした? 急に止まってしまって」
おいおいこれって。
うまい棒換算してたら日が昇ってまた暮れる!
娘「おいおい、そんな事は絶対にないだろう。 百万円はヒャックマンに勝たないと手に入らないんだぞ?」
男「いつのネタだよ!? 俺でもぎりぎりの世代だっつの! そんな冗談はいいからさ!
どうしてこんな大金持ち歩いてるんだよ!」
娘「お母さんから貰ったんだよ」
あの人小学生に現生100万をポイと渡す様な人なのかよ。犯罪に巻き込まれでもしたら、とか考えないのかよ!
男「あー……! なんかもう無茶苦茶だなーお前も叔母さんも!」
娘「この野菜炒め、バンジージャンプで食べられたら百万円」
男「今すぐその話題から離れろ!」
バシッ、と堪えきれずに頭をはたいて突っ込んだ。
こいつ、気を抜くとすぐボケに走りやがる!
娘「殴ったな!? 殴った人には冬場の暖房の効いた満員電車の中で体がめちゃくちゃ痒くなる呪いがかかります」
男「地味にすごく嫌で二度ぶてないっ!? いや、というか俺はすでにその体質を抱えているんだっ!!」
スッパーン。二度もぶった。多分、親父にもぶたれたことない子を。
どうでもいいけど、冬場に発汗すると体中が非常に痒くなるアレはコリン性蕁麻疹とかと呼ばれるらしい。
電車の中でアレが来ると地獄なんだよなぁ……。
男「……いや、なんか盛り上がりすぎたとは言え、俺も反省してるよ……今後このような突っ込みはひかえる」
娘「いやいや、そんな事は言わなくていいんだ。これも私の願いだからな」
男「え? そうなのか? と言う事はあのリストに?」
娘「もちろんだ。ほら」
おおう……本当だ。びっしり文字の書き込まれたページ。
娘が指さす一行に目を通すと『激しく突っ込まれる』と達筆に記されていた。
というかもうちょっと他に書き方があるだろう……。
男「そのリスト、一体どこまでお前の願望をカバーしているんだよ」
娘「そうだな……吉野屋でお持ち帰りするときに紅ショウガを20袋ほど入れて貰う、までかな」
男「そんな紅ショウガに飢えた小学生いてたまるかっ! というかお前吉野屋でお持ち帰りとかしねぇだろ絶対!」
並を間食するまでに袋換算で15袋ほど消費する俺には割と共感出来る話だけども。
10袋ぐらいは何も言わずに入れてくれるんだけど、それ以上頼むのはちょっとためらわれるよなぁ。
男「未経験なのにそこまで紅ショウガに熱くなれるお前に脱帽だよ……」
そんな感じで。
夕食の時間は過ぎていった……。
そうとだけ娘に伝えて俺は夜の住宅街へと足を運ぶ。
目的はあるが、目的地はない。
男「自分から電話するのってどれぐらいぶりだろう」
ギリギリ二桁の名前達が並ぶアドレス帳から「母」を選択する。そこからの一歩が重かった。
男「かかってくるのを受ける分にはまだいんだけどなぁ……」
自分からかけるとなると別だ。
高校の時のアレコレで。俺はちょっと変わってしまって。そして家族と顔を合わすのが何となく気まずくなってしまって。
東京の大学に逃げるように入学して。そこでもまた挫折しかけていて……。
男「俺が地元に帰れる日は来るのだろうか……」
ケータイを握りしめたまま、ドーンと気分が重くなる。
精々噛んだりどもったりしない様に努力しよう……。
通話ボタンをプッシュして十秒と経たない内に相手が出る。
妹『はい、○○ですけど』
母親の声ではなくもっと若い、妹の声が受話口から鳴る。
ビクッ、と曲がった背筋が伸びる。
妹『……少し待ってて』
あー……。なんでこう言う時に限って妹がでるかな-。
軽く冷や汗かいた。背中が痒い。
何故か妹とは特に気まずいんだよなぁ……向こうも気まずそうだし。昔は結構仲が良かったはずなのに。
母『もしもし男? 送ったお米届いた!? 今年は豊作だったから期待しておけ、っておじいちゃんが言ってたわよ』
男「お、おう……まだ届いてないよ」
母『念のため一俵送ったからね』
念の入れ方が間違っていた。置き場所に困ること間違いない。
男「あのさぁ、まあそれはいいとして……えーとさぁ……娘ちゃん、って知ってる?」
回りくどく言っても仕方がない。俺は単刀直入に言うことにした。
沈黙の後、
母『……うん』
男「昨日さ。叔母さんにその子を半ば強引な形で引き取らされた。
えーと、つまり……いきなり呼び出されて、要領を得ない説明を受けて、
その間に娘ちゃんは俺の家の前まで来てた……。
まあ、昨日は諦めて、今日は叔母さんに家にその子を連れて行こうと思ったんだけど、
何故かあいつ中々家の場所を教えなくてさ。なんかもうほとほと困り果ててるんだよ、今の俺。
何か知らないかな? 叔母さんの事情とか、その他諸々の不明な点について」
そもそも、叔母さんに子供が居たなら俺が聞き知っていても良いはずだろう、とまでは言わなかった。
母さんは少しの沈黙の後、ゆっくりと口を開いた。
男「一人。外で歩きながらかけてる」
母『そう……』
男「もしかしてさ、この事知ってた?」
母『……うん、知ってる。事情についても、知ってる』
やっぱり。何というか。親子のカンみたいな物で感じ取っていた。
知っていた、そう確認すると少しだけ腹が立つ。それって叔母さんがしている事を容認してるって事と同じだろう。
男「じゃあさ、叔母さんに連絡つけてくれないか? 昨日の夜にも電話かけてみたんだけど全然通じなくて……」
母『悪いけど、それは出来ないの』
男「えーとさぁ……」
また体の芯が熱くなる。なんでみんなそうはっきりしないのかなぁー、なんて思う。
男「正直さ。俺がなんでこんな事に巻き込まれてるか全く意味がわからないんだよ。
別にさ、少しぐらい子供を預かるのは良いよ。
だけど、ろくな説明もなしに『無理だから預けます、はい』みたいに言われたらさぁ」
――俺だって困るし、困られるあいつだって可哀想だろ。
母『今は……詳しくは言えないの。ゴメンね。でもこれを言ったら色々駄目になっちゃうから……
だから今は少し待って欲しいの。あの子と居てあげて欲しいの。たぶん……きっと遠くない日に』
彼女が全部をあなたに教えてくれるはずだから。だから今は少し待ってあげて。そんな事を言われた。
母『そして、たぶん私は、私たちはあなたに謝らなければいけないと思う。でも今は言わせて。
あの子と、精一杯、出来る限り仲良くしてあげて』
なんだか、よくわからない。
昨日からよくわかる事が一つもない。
俺はぼーとする頭をなんとか働かせてそれに答えていた。
電話を切って。帰り道。
随分と住宅地の外れの方まで歩いてきてしまった。
男「八方塞がり、孤軍奮闘、か」
誰も何も教えてくれやしない。
男「やっぱり俺ってついて無いのかなー」
石ころを蹴っ飛ばそうとして、思いとどまる。嫌なことを思い出しそうになったから。
そして思い直す。たぶん、そういうわけでは無いんだろう、と。
そして。
八方塞がりなのも、孤軍奮闘しているのも、俺ではなくて娘なんだろう。
だったら。
男「まあ、俺ぐらいは味方になってやらなきゃなぁ……」
頼りない俺だけど。味方を名乗るぐらいは、まだ出来たはずだ。
家に帰ると娘がリビングのソファーに寝転がりながら俺の漫画を読んでいた。
というか、部屋着スカート穿くならもっと上品に振る舞え。パ、パンツが見える! 細い太ももが限界まで露出してるぞ!
いやまあ、10才のパンツにはマジで興味が無いけども。
男「ああ、あれだよ。電話したり、その後もちょっと」
娘「ん? 汗をかいているな? 外はそんなに暑いのか?」
男「いいや、別に。まあ、ちょっと汗っかきなんだよ俺」
娘「ははは、風をひかない内に早くシャワーを浴びた方がいいぞ」
そう言って視線を漫画のコマへと移す。なんでチョイスがマサルさんなんだよ。くすりともしねぇで読んでるし……。
娘「そういえばさっき見知らぬ男が何やら叫びながらいきなり家に入ってきたぞ」
男「それを一番先に言ええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
男「大丈夫じゃないだろそれ!? 不審者と一つ屋根の下とか非常事態だっての!!」
娘「まあ落ち付けって、あんちゃん」
男「お前と一つ屋根の下なのも嫌だなああ!!!」
何なんだよこいつ……。なんか嫌だよ……。怖いよぉ……。
しかし。
男「鍵は閉めたはずだよな!? なんで入ってきたんだ!?」
俺は背負っていたバッグを床に置き、拳を握って軽く構える。俺の拳がやや内角に抉り込むように空を切る。
俺の部屋のドアは閉まっている。
娘「開けてくれ、と大絶叫していたので開けてやった」
男「なんなんだよお前……。それ絶対入れちゃいけない奴の台詞じゃん……。男らしすぎるよお前……」
一歩間違えれば大事件じゃねーか。というか事件だよこれ。
でもまあ見たところ何もされていないようだし……。
今のところは大事には至っていないか。
閉ざされたドア。
その向こうには得体の知れない変質者が居るらしい。
男「どんな奴だった? 強そうだったか? 凶器になりそうな物は持っていたか?」
娘「うーん……年の頃合いは男と同じぐらいだっただろうか。
凶器になりそうな物は右手に持った一本のちくわぐらいだろうか……?」
娘はひとまず漫画を置いて、ソファーの上であぐらをかいて腕を組みながら言った。
男「ちくわは凶器じゃねーだろう……」
ちくわで殺されてたまるか。
男「なんだかわからねーな……部屋も静かだし……」
娘「三十分前ぐらいからは静かにしてるな」
男「というか本当に居るのか? もしかしてお前ものすごくたちの悪い冗談を――」
?『デゥっアアアアアアアアアアアアッーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!』
男「誰かいるううううううううう!!!!!」
部屋の中からものすごい絶叫が聞こえてきた。
お前なんで、何を当たり前なこと声を大にして言ってやがるんだよコイツみたいな顔してるんだよ……。
?『男おおおおおおおおおおうああああああうううあああおろああ!!!!!!!!! しゃあああ!!』
男「あわわわわわああ!?!?! どうすればいいのっ?
なんかあたしの名前呼んでるよっ!? 怖いよおおおおおお!! うわーん!!!」
台詞だけ読めば不審者におびえる可愛い女の子だった。まあ俺だけど。
娘「おいおい、そんなに取り乱しても仕方ないだろ。事はもう起きてしまっているのだから」
男「お前が入れたんだろうがよっ!!」
?『男あああわっっおうっおろろろろこおおおおうっ……
うあう、はやくううううう、早く、ひゃああく来てくれっえええええええ!!!!』
なんかすげー俺の事呼んでるよこの不審者っ! すっげー怖いぜ。
だがよ。
男「チクショウ……こんな羽目になるとはな……」
右手で顔を覆うポーズをとりつつ、俺はニヒルに微笑する。
娘「おおっ、何故かいきなり顔つきが漢らしくなったぞ!」
そろそろ今宵のメインディッシュがご登場ってわけかい……
ふっ、いいだろうよ。この俺がおいしく射止めてやろう……危険な戦いになるだろう。
でもさよならは言わないぜ……アディオス・アミーガ」
娘「スペイン語で言っているではないか……」
ドアのガタガタ音が一層と大きくなる。くるかっ!!
男「でてこいやああああああああああああ!!!!!!」
ガタッン
友「うわあああん!!!男ぉ~~ゲロはいちゃいそうだよぉ~ん!!!!!」
男「おまえかあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
俺の右がやや内角に、抉り込むように吠えたのだった。
男「で、何故このような事になったんだ」
俺の右を食らって気を失いかけた友をトイレまで引きずって吐かせた後
俺は友にリビングの中央で正座するように命じた。
友「えーとその……彼女とその友達とで飲みに行って……ぐすっ……
でも、実はその飲みというのは俺との別れ話のために開かれたものでして……はうんっ……
四人+彼女という女性陣から……えんっ!……遠回しで優しい感じの言葉遣いで……
うっ……別れを迫られました……!」
うわあ……。それは壮絶だなあ……。
一対五の状況で別れ話ってどんな刑罰なんだ……。
男「なんでちくわを片手にしてたんだ?」
友「鞄と間違えて、目の前にあったちくわを引っつかんでここまで来たんだよ……」
男「おお……それはまた大層な間違いを……」
でもまあ……そんな振られ方をしたら、ちくわも鞄もあったもんじゃないのかもしれない。
友「ああぁ、多分、彼女……元彼女が鞄をもってるからなぁ……また会わないといけないのかなぁああ……
気まずいなああ……!」
友の目からは大粒の涙が溢れていた。ああ、なんかカワイソウだなこいつ……。さっきは殴ったりして悪かったよ……。
友「はぁ……そういえばその子……恵まれない僕を家に入れてくれた天使はどちら様? はっ! もしかして男さんっ!」
男「出来てねえし作ってねえよ!! 子供の前でそういうのやめろって!」
友「子供っ!?!?!?!?」
男「親戚のなっ!!!!!!!!! 大体年齢的にありえないだろ!」
なんで俺の周りの人間は扱い辛い奴ばかりなんだよ!
娘「娘だ。好きに呼んでいいい」
読書(漫画)を再開していた娘が短く自己紹介をする。
友「天使ちゃんと呼ばせて貰うよっ! かわいいしねっ!」
いきなりテンション高いな~……。いつの間にか泣き止んでるし。
男「そんで、なんで俺の家に来たわけ?」
友「鞄の中に鍵を入れてたんだよ……大家さん九時には寝ちゃうから開けて貰えないし……」
男「散々な奴だな……同情するよもう……」
友「あと、直接話したい事もあったんだ」
男「何だよ……いきなり真剣な顔しちゃって」
友「監督からの言い伝え。そして、僕からの個人的な誘いだ」
具体的に言うとスポーツ要素と男の過去とかが中心になっていきます。
女の子の話もっとかけや、と言う人には申し訳ない。
校内放送『一年B組の男君。サッカー部のミーティングがあります。至急一階の視聴覚室にきてください』
高校一年生の頃の俺は、まさしく調子に乗ったクソガキだったと思う。
だが――
まあそれは仕方が無かった事だと思うのだ。
日本代表U-15のレギュラーであり、U-18入りもほぼ確定していたし。
順風満帆。将来有望。何も心配することなんて無い。だから無敵だった。自分を無敵だと思っていた。
まあ、その性格が災いしてクラブユースチームの監督と大げんか、チーム追放という事になったんだけどな。
そして地元の高校。高校選手権の常連。最近では十指の内に数えられる名門サッカー部でプレーする様になった。
そんなの試合前にちょちょっとやれば良いと思うんだけどな~。
友「あの……男君」
男「だるいし、まあ行か無くとも俺をスタメンから落とすほどあの監督も無能じゃないだろう」
友「ねえってば!」
男「うん。きっとそうだ! よし、気合い入れてねるぞ!!!」
友「起きろおおお!!!」バスンっ
男「いってえええええええ!?!?」
こいつ加減なしで殴りやがった!?
友「うわっ! あ、あのそのっゴメンっ!!! 別にそんなに強く殴るつもりは全くなかったっていうか
そもそもミーティングに来て欲しかっただけだからあのその――」
男「うるせええ! 何だお前! いきなり殴るってのはこっちぶん殴っていいって事だよなあ!? ああっ?!」
胸ぐらを掴んで問い詰める。
男「ああ!?! お前あれだろ……部に居る奴だよなああ!? ホモとかいったけよおお!?!?」
友「と、と、と、と、友ですっ! ちなみにノーマルですっ!!!」
男「トトト・ト・トモ!? どういうネーミングセンスだそりゃっ!?!?!」
友「友ですっ!」
男「なんでもいいわコラァァァアッ!!!」
友「ひあああああああっ!!!!!」
多分そんな感じの。どうしようも無いぐらいにくだらないファーストコンタクトだったと思う。
だけど、15才だとか16才っていう年頃は不思議だ。
そんな最悪な出会いをした奴と友達になって、今では消して換えがきかない親友になっているんだから。
まあ、友と俺の話はまた、少し後に話せばいいだろう。
娘を家に残して再び住宅街へ。今度は友を連れ立っての散歩だった。
男「誰か来ても絶対に入れるなと命じたが……全然信頼できないよなぁ……」
なんつーか、あいつは常識という人間にとってとても大事なピースを欠かしているような……。
友「はは。まあ彼女ならうまいことやりそうだけどね。もしも変な奴と出会っても」
男「あいつ自体が大分な変人だからな」
友「こらこら、女の子の悪口は駄目だぞ☆」
男「何が、駄目だぞ☆、だよ。女にこっぴどく振られてきた癖に」
友「ははっ! そんなのは過去だよ! もうすっかり元気! ほらっ!」
男「……」
満面の笑みをたたえたまま鼻水と涙の大洪水を起こしてる男がそこにいた……。
男「ほら……ティッシュ」
友「ははっ……ありがとう……」
やっぱり振られたショックはでかいのか……。
友はものすごくでかい音を立てて鼻をかみ、俺の方へと向き直る。
友「うん。さっき言った通りだけど。監督の伝言と僕からの誘い」
男「まあ、手短にたのむよ。娘を一人にしたくない」
友「はは。つれないな~。すっかりお兄ちゃん、いやお父さんになっちゃったのかな?」
男「からかうだけなら帰る」
友「違う違う。悪かったよ。ここからは真剣な話」
そう言ってまた表情を硬くさせる。
友「まず監督の話。彼は君のことをまだ諦めてない。
見捨ててない。そしていつもみたいに言ってたよ『諦めるのは死んでからにしろ』って」
男「あのおっさんまだそんなスポコン漫画かぶれな台詞を口癖にしてんのかよ」
友「はは。僕は結構気に入ってるけどね。実際結構励まされる」
ふん。さすが高校時代から『高校卒業したら監督さんの居る大学でスポーツ心理とスポーツマネージメントを学びたい』
とか言ってただけあるぜ。昔から気持ち悪いほどあの初老に入れ込んでたしな。
まあ、事情は違えど俺だっておっさんが居るからあの大学に入ったわけだが。
友「それは前置き、というか締めの言葉だったね。本筋はこうだった」
『男、お前は未だに勘違いしているようだが、お前が思っているほど挫折とは甘くない。
だからお前が今経験している甘くて温いそれは、挫折と呼べるものじゃない。
だから俺は学校に行きたくないとぐずるクソガキを叩き起こすように何度もお前に言う。
サッカーを捨てるな。自分を捨てるな。諦めるのは死んでからで良い。
一度はぐれたなら、今からまたチームに合流すればいい。お前は生まれ変わることの出来る選手だ』
低い声で友が言う。糞にて無いおっさんの物まねだった。
友「実際はもっとキツイ言葉で遠回しに言っていたけどね」
男「いい年こいてラノベの読み過ぎの厨房みたいな事いってるなーおっさん、はは」
友「男」
男「それに別に俺サッカー嫌いになった訳じゃないよ? テレビでよく見るし、ゲームも結構やるよ?」
友「男……」
男「つまりさ。俺は思う訳よ。別にサッカーを『プレー』しなくてもいいやって。満足だって。
人それぞれに価値観ってあるわけじゃん? ピッチの中にしかサッカーがないなんて時代錯誤も甚だしいぜ?」
けして大きくない。でも俺の心を抉って、不快にさせて、何よりも恐怖させる声だった。
友「逃げるのはもう止めてくれ! 現実に向き合え! 君は終わってない!まだ――君はまだ逃げられないっ!」
静かな住宅街の夜が、突然花火でも打ち込まれたみたいにざわめいた。
そして、またすぐに薄暗い静けさを取り戻す。
友「君の脚、君の左膝は完全に終わっちゃいない。筋肉で補強して、練習で熟練させればいいんだ。
そうすれば君はまだ第一線で活躍出来る。それだけの才能と資質が、君にはまだ備わっている」
なにを。なにを言っているんだ。
こいつは俺をよく知っているはずなのに。
何で俺がもう駄目なのか。
俺が、俺のすべてを失った瞬間をこいつは全部見てたはずじゃないか。
昔の俺。
俺が膝を壊す前。
誰よりもピッチを速く駆け抜け、誰よりもサッカーの神様に愛されていたあの頃。
そんな俺は、もう戻らない。
男「だから」
すっかり冷えた十月の空気。
すう、と軽く吸い込んだ。
男「俺はピッチを捨てた」
俺はもうただの凡人。平凡な挫折に脚をもがれた弱い人間なのだ。
あれはまだ高校一年の春だっただろうか。
友とのファーストコンタクトがあって、また少し経った頃。
友「……」
男「……」 シュタッ バコン!
友「……」
男「……」 シュタッ バコン!
友「……」
男「……」 シュタッ バコン!
友「……」
男「……」 シュタッ……
男「おい」
友「えっ? ル、ルイス?」
男「いや、そこは『ナ、ナニ?』だろうが」
どういう言い間違いだよ。
男「どうでもいいが観られながらだと集中出来ない。どっか他に行ってくれないか」
練習が終わった後。誰も居ない学校のグラウンドでボールを蹴るのがあの頃の俺の日課だった。
その日もいつも通りに、ゴール手前25メートルの位置から黙々とボールを蹴り込んでいた。
なんかあまりにもキレイな球蹴るからさ、びっくりした」
男「お前の玉を蹴り飛ばせばもっとビックリできるぜ。ビックリ『マン』になる事は叶わなくなるけど」
友「はっ……はは~……男君は冗談が好きだな~」
男「冗談で済む内にかえって欲しいね。ホモ君」
友「と、友だってば!」
男「ホモ田・ト・友だって? 変わったミドルネームだな」
友「ホモ田さんという名字の方が珍しいよっ! と言うか日本には存在しない! とにかく僕の名前は友だよ!」
男「まあ、なんでもいいけど」シュタッ バコン
友「はー……なんか男君はもう少し硬派だと思っていたよ」
男「はぁ? うるせーな。何でだよ」シュタッ バコン
男「別に。ボール蹴るのに女は必要ないだろ」シュタッ バコン
友「あと、そういう臭い事も平気で言う」
男「……」シュタッ バコン
友「天才だって自称するけど、こう言う努力も欠かさないってのは少し硬派だね」
シュタッ…… ス……
男「何が言いたいんだ?」
友は目を伏せて、情けない顔をさらに情けない笑みにゆがめた。
友「僕、君みたいになりたいんだ」
男「はあ? それは無理だな。俺は天才だし、無敵だ。俺は二人としていらない」
先輩負かしてスタメン張ってる男君と違って、まだまだベンチ外だけど……」
そういえばそうだったかも知れない。
わざわざ東京からこの高校まで『サッカー留学』しに来てるんだったっけ?
そんな遠出して、ベンチすら温めさせてもらえないなんて哀れだな、なんて感想を抱いた事があったかも知れない。
男「そういえばお前もオフェンシブミッドフィルダーだったか? 相手にならなすぎて忘れてたけど」
友「うん……一応トップ下志望でやってる」
男「なんでまた、そんな競争率高いポジションでやってるんだよ?」
友は照れたように笑った。
友「僕、サッカーが大好きなんだよね。そして、サッカーが一番良くみえる場所が、僕にとってはそこなんだよ」
シュタッ
男「……ふーん」
バコン!
男「俺はただ誰よりも強く速くありたいだけだ。そうなれるなら何処だってかまわない」
シュタッ バコン
男「そして、サッカーが好きなのかどうかもよくわからない」
友「はは。サッカーが好きじゃない奴がこんなキレーな球蹴れるわけないじゃないか!」ニカッ
バッコーーーーン!!!!!!
友「うわあああ!!! それは人に向けて撃って良い物じゃないよ!?!?
わ、わかったよ! 帰るから振り上げた脚をゆっくり下ろして!?!?」
友は慌てた様子で下ろしていたエナメルバッグを背負い直し、俺に背を向けて小走り。ちょっとやり過ぎたかも知れない。
男「……おい!」
友「ナ、ナスリ!?!?」
男「いや、もう全然何を言い間違えてるのか解らないぞ……」
男「まあいい。えーと、そのあれだ。たまには来い」
友「えーと…何処に?」
男「だからっ!」
友「ひっ!!!!」
男「……ああもう……調子狂うなお前……」
友「ゴ、ゴメス」
男「もういいよそのネタの縛り……とにかく、えーと、あれだ! 練習の後はここに残ってろ。俺がサッカーを教えてやる。
勘違いするなよ? 俺はとにかく下手な奴が嫌いなんだ。
そんな奴が俺の控えになんてなった日には一日十時間しか寝られない」
友「十分寝られてると思うけど……じゃなくて、それって本当なの!? 教えてくれるの!?」
男「タイガーショットまでは教えてやる」
友「いや、それは無理だと思うけど……でもありがたいよ!
やっぱり君みたいな才能がある人から教わる事は多いからね!」
友「師匠って呼んで良い!?」
男「それは絶対に止めろ」
そんな感じで。
俺と友は友達になっていくのだった。
また結構住宅地の奥の方まで歩いて来てしまっていた。
俺と友は来た道を引き返す。
ケータイで時間を確認するともう零時を回っていた。早く帰らなければ。
友「監督からもう一つ伝言。三週間後の○○大学との練習試合。君をスタメンにラインナップしてるそうだ」
男「おいおい、もうかれこれ一年と数ヶ月も顔出してないボンクラだぞ?
そんな奴をスタメンに入れるなら、近所の野球少年を招き入れた方がまだマシだと思うぜ?」
一年生の夏ぐらいには既に幽霊部員、今は二年の春。今更俺なんて呼ばなくてもいいだろうが。
友「システムは変わらず4-1-3-2。男には中盤の底、ボランチの位置に入って貰う」
男「! だから何度も言ってるだろうがっ! 俺にボランチは向いてないって!
速く走れなくなったからって守備的に使ってもらっても俺は何も出来ないんだよ! 勝手に話し進めるんじゃねぇ!!」
そんな『使い回し』がきいてたまるか。
友「監督の采配だよ。僕に言われても困る。それに君は勘違いしてる」
フォワード(一番前の方に居る選手)の選手の間がオフェンシブミッドのポジション。
トップ下=フォワードの一個後ろに位置をとる選手。ゲームメイクの能力に長けた選手が多いポジ。
パスが巧かったり、ゴールも狙える感じ。
ボランチ=デフェンダーより前、オフェンシブミッドフィルダーより後ろの位置。
守備の割合が大きいが、ゲーム全体を把握して巧く調整してやるようなボジ。
凄く簡単に書いた。
分かりやすいかはわかりません。
友「それは自分で気がついてほしいな」
あー全く……! 自分の親友ながら腹がたつ。おっさんもおっさんだ。勝手に変な真似しやがって。
こっちはにはこっちの日常があって、それについて今めちゃくちゃ苦労してるっていうのに……。
友「それから。これは僕からのお願い、いや、誘いだ」
友「君を世界一のサッカー選手にさせてくれ」
何を言うかと思ったら。
なんの脈絡の無いことをさらりと言うなよ。
いやさ、お前は昔からそういう奴だったけどよ。
男「寝言は寝てからいってくれよ」
そんな言葉に乗るには、もう遅すぎるんだよ。
だって。
速かった俺はもう死んだのだ。
娘「さらに遅かったな」
男「ああ、ちょっと宇宙人や陰謀論や世界滅亡諸説について語っていたらお互い熱くなってしまってな」
嘘だけど。
娘「ああ、そういえばさっき見知らぬ宇宙人が勝手に家に入ってきたぞ」
男「それを一番先に言えええええええええええ!!!!!!?!?! あれか!? また俺の部屋にいるのか!?!?」
娘「いや、もちろん冗談だ」
冗談か。
男「ちょっと期待してたのに……」
娘「してたのか……」
宇宙人。居ると信じなきゃ現実ってつらいじゃん?
友「はは、なんか二人とも息ぴったりだねー。もうどれぐらい一緒にいるの?」
そういえばこいつ、あんまり深く俺たちの関係について聞いてこなかったな。まあ、元々こいつはそういう奴だったっけな。
そういう気を遣う奴だから俺みたいなのとも一緒にいられるんだろうけど。
娘「昨日……もう日付が変わったから正確には一昨日からだ」
友「ええっ!? あの男君がこんなにも打ち解けてるのに!?」
娘「ん? そうなのか男?」
男「しらねーよ。でもまあなんか……一昨日知り合ったばかりとは思えないのは確かだけどな……」
心の声ではもう『こいつ』 とか呼んじゃってるし。
男「おい、余計なことは話すんじゃねぇ」
娘「おお。男はそんな内気な性格をした男だったのか? そうだとは想像に難いのだが」
友「いやー、男の場合は内気というよりツンデレだったね。落ちた後は早かったよ」
男「落とされてねぇし後も糞も何にもねーよっ!」
娘「これがツンデレという奴なのか!?」
男「ちげぇよ! 純粋な誤りの修正だ!」
なんで目をキラキラさせてるんだよ。それはパンダとか観るとき目だろうが。
友「いいやっ! これがツンデレだよ天使ちゃんっ! さあ早く! 捕まえろ~~~っ!!!!!!!!!」ガッバーーー
娘「わかったぞ! とりゃあああああああっ!!」トーーン!!
男「鬱陶しいわコラアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!」
こいつらを同時に相手するのは絶対にやめよう。
体中をもみくちゃにされながらそう思いました マル
だって10才だぜ?
いくら一緒のベッドで寝る事になろうが、そんなの隣に大根を一本置いて寝るのと全くかわりねーよ。
いや、むしろ大根の方が緊張しちゃうって。
娘「男、ベッドから落ちる恐れがあるからもっとそっちに寄るぞ」
男「……」
娘「うーん……これでも少し不安だな……恥ずかしながら私の寝相は相当悪いんだ。もうヤバイぞ、私のは」
男「……」
娘「おお、そうだ」
男「……」
娘「男、腕を動かすぞ? よし……男の右腕を私の頭の下にして……そしたら男、私の肩を抱くような形に出来るか?
……うん、それでいいぞ。後は私が右手で男の胴の反則面を抱える様にして……
そうだな、念のために脚も固定しておくか。
男、私の両脚を男の右足に絡めるから少し持ち上げてくれ」
男「……ひふっ……!」
な、な、な、な、何なんだこの状況は!?!?!?
腕枕をしてやっている女の子に抱きつかれ&脚からませだと!?!?
いやまて男っ! 冷静になれっ! こいつはたかだか10才のガキンチョじゃないか!?
深呼吸していつものお前に戻れは全然どうってこと
うわああ鼻から息吸うと女の子特有のいい香りが鼻腔に充満しゅるよおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!
娘「どうした男? 窮屈なら体制を考え直すが?」
男「いやイイよ。じゃなくて別に考え直すなんて面倒な事はしなくてもいいよと言う事だよ」
あいつなら別にこれ位のことでは何にも感じないだろうし。それはそれでむかつくけ。
どうせ俺は10才相手にも緊張するドチキン童貞『キング・クズ』だよ。まだまだ小僧だよ……。
娘「ならいいな。じゃあお話をしてくれ」
男「はあっ?」
首を回して横を見ると、娘と目が合う。うっ、上目遣いは止めろっ! 何の意図も無いのだろうけども!
娘「寝る前のお話だよ」
この状況でお話かよ。こっちはとっとと夢の世界に逃げ込んで平常心を取り戻したいってのに。
娘「ふうむ……私も、そこら一帯はもう制覇した感があるからなあ……」
娘「でも男を困らせるわけにはいかないな……楽しみにしてたんだけどなぁ……でも仕方ないよなぁ……」
男「お、おい……そんな風に言われても――」
娘「うっ……うぐっ……」
涙目+上目遣いキターーーーーー!!!!!! じゃなくてえええ! ええっ? 泣くの!?
これって泣く様なことなの!? ああっ! えーとこう言うときはもうとにかく適当にメイクサムシングアップ!
男「あっ! ああっ-! 今一個思い出したぞっ! これはやばい名作だよ!」
娘「本当かっ!?」ぎゅっ!
男「あ、ああ本当だとも! これはマジでやばいよ。百回話して百回とも大盛況だったもん。
寝ながらのお話なのに最後はスタンディングオベーションだったもん!!」
娘「それはすごいなっ! じゃあ早速話してくれっ!」脚カラメッ
男「ふはっ!? ああ!? ああっ! 今すぐ始めるぜ!? 乗り遅れるなよ? このビッグウェーブに!!!」
肝心な話す内容がないようううううう!?!?!
娘「さあ! スタート!!」
スタートしてしまった!
男「え、ええーと……昔々……」
ああもう! こうなりゃ適当に!
えーと……えーと……。
男「あるところに大国を治める偉大な王様がいました」
娘は余計な突っ込みはしないようで、俺の腕の中で目をぱちくりさせながら真剣に聞いている。
適当な設定を……えーとこんな感じか……。
男「王様は戦が大好きで、日々剣術の鍛錬を怠りません」
そんで何かお話の起点になりそうなイベントを……。
男「ある日、王様はいつもの様に城を抜け出し、剣術の鍛錬をするために森へ行きました」
おお。中々それっぽいぞ!
次は会話シーンの挿入だ!
木こり『……』
王様『うわっはああああああああああうりゃああああぐおおおおおおおあああfoooooooooooooooooh!!!』バッスーン! シュタバシュババシュバーン!!!!!
シュタッ……
王様『……! そこのお前ええええええええ! 我が気が付かぬとでも思っていたか!
こそこそとのぞき見る様な真似はやめて、今すぐ姿を晒すがいい!!!
我のこの伝説の剣の鋭い切っ先で、お前の喉を一突きにしてやろうぞ!!!!』
木こり『ひああああああっ!!!!! ごめんなさいいいいい!!!
あまりにも美しい刀裁きにみとれていたのです!!! 偶然です!!! 偶然なのです王様あああ!!!!!』
男「木こりは木の陰から飛び出し、そのまま王様の足下へとジャンピング土下座しました」
名を名乗れ! そして我にひれ伏せ!!!!!』
木こり『ひいいいいいっ!?!?!? キキ、キ、木こりですうっ!!!
あとこれ以上はひれ伏せませんですぅっ!!!!!!!!!』
王様『キキ・キ・キコリニデスウだとっ!?!? まさかあの一家のご子息!?!?』
木こり『いや普通に木こりですっ!!! というかそんな名前の貴族が実在するんですかっ!?!?!?』
男「強くて戦好きの王様はいつも敵国から狙われていて、どんな時でも気が抜けず、いつもピリピリしていたのでした」
王様『なんだ。ただの木こりか。気構えて損したぞ。まあどうでもいいんだが。あ。でも慰謝料はもらわないとな-?
ほらちょっと飛んでみ? 木こりでも銅貨ぐらいもってんだろ?』
木こり『一国の主がそんなちんけなカツアゲしちゃうんですかっ!?
ていうかさっきから伝説の剣でそこのウンコつついてるのは何なんですか!?!?
ネームバリューが大暴落ですよ!?!?!?』
王様『おまえうるさいよ』
木こり『え? あれ? なんか僕がわるいのか? というかいつの間にか王様のボケに激しく突っ込んでいたけど
これって何かの罪に問われるんだろうか!? すみません! どうか家族だけは!!!』
木こり『ひいいいいいいいっ!!!! そんなあああ!! でも家族は助けてくれますよねっ!?!?!?!?!?』
王様『いや。別にお前を死刑にする気はないよ』
木こり『え? 助けてくださるんですか!? なんと王様の徳高きことおおお!!!!!!』
王様『もちろんロハとはいかないぜ。ちゃんと体で払って貰う』
木こり『えっ……///// それってもしかして/////////』
王様『いやいや違うから!?!? ってズボンを下ろすな! 何で結構乗り気なんだよ!?!?
俺が言ってるのは、俺の側近として城で働けということだ!!!』
木こり『そ、側近?』
王様『そうだ。今の側近の奴らって厳しいんだよなぁ……だからそいつらを左遷してお前を側近に迎え入れる。
そしておやつを三時以外にも食べられて、夜十時以降も夜更かし出来る生活を手に入れるのだ!』
木こり『今の時代、子供でもそんなルール守りませんけどね……というかそんなに簡単に側近変えちゃっていいんですか?』
王様『え? ああ。まあ、俺はいいと思うよ!』
木こり『僕、こんな王様の国に住んでたのかぁ……』
男「こうして、木こりは王様の側近になるのでした」
うん。割とまともに進んでるぜ! この調子だ。
男「数年の月日が経つと、木こりはすっかり王を慕う様になり、二人はもう親友と呼べる間柄になっていて
戦場での二人の息のあった連携は敵兵達を震え上がらしました」
男「……しかし……」
なんだろう。
ただの作り話のおとぎ話だ。
なのに。
なのになんで古傷をほじくり返している気分になっているんだろう。
男「しかしある日の事です」
男「とある敵国の兵士群を相手取っていた王様と木こりとその他の兵達」
男「その日の王様の剣捌きはいつものそれよりも一段も二段も落ちる物でした。
少し前の戦いで負った傷がまだ治直っていなかったのです」
王様『とうとう追い詰めたぞ! 敵国の王よ!』
敵国の王『追い詰められてなどいないぞ。兵を失えど、私にはこの剣と、消しても消えぬ闘争心が残っている』
木こり『降参する気は無いのですか……王様、どうします?』
王様『無論、お望み通り伝説の剣の錆になってもらうまでだ……!』 シュタッ
王様『クッ……! こんな時にも痛むか! この軟弱な体め……! 木こり! 位置をとれ! いつも通りに片づけるぞ!』
木こり『はいっ!!』
男「二人の連携は……完璧だった」
そうだった。
完璧なはずだった。
王様『とりゃあああ!!!』
敵国の王『くっ!!!! 噂に違わぬ速さだ!!! だがまだかわせる範疇だ!』
シュンッ!
王様『紙一重だな! 敵国の王よ!
それではこの一撃は――相棒とのこの一撃は避けきれないだろう!!!!!!!!!!!!』
暗い。狭い。
そんな場所から嫌な記憶が顔をのぞかせる。
あの日。
あの寒空の下に広がるピッチ。
俺。
そして友。
ゴール前。
全力でディフェンダーを抜きにかかった俺。
もう一人のディフェンダーを背負ってコースを空ける友。
ズキッ
あの時、時間は酷くゆっくりと流れた。
王様『くっ!!! これしき――くっ!?!?――』
前の試合で痛めた脚が、まだ痛かった。
でも、無理を押して試合に出たのだ。
スカウトが来る。そう聞いていたから。
日本のリーグの中では一、二を争う大きなクラブ。
そこのスカウトに俺の技術、センス、そして試合を俺のものにするゴールを見せつけて、俺の実力を知らしめてやろう。
なんて事を考えていた。
自分のことしか、考えていなかった。
後半45分。
ロスタイム一分。
スコアラインは0-0。
ゴール前。
全力で走る俺――
目の前の友。
世界は音を失って。
王様はもう止まれずに。
バランスを崩したまま愚かしく、滑稽に進んでいく。
王様『――木こり!! 避けてくれっ!!!!!』
木こり『え――』
あの時のあいつ――友の顔はしわ一つとして忘れることが出来ない。
まさかこんな簡単に。
まさかこんないきなり。
まさか自分の大好きな物を奪われるなんて。
そんな事が起こるなんて思ってもいないような。
男「――王様は止まりきれず、木こりは避けきれず」
男「伝説の剣は木こりの脚を突き抜けた」
ゴールポストと俺の体に挟まれた友の右足。
悲鳴。
担架。
あざ笑うかのように、俺の愚かさを晒すように。スコアボードに点灯する皮肉な『1』
男「……こうして、木こりは戦場を去ることになり、二度と戻りませんでした」
続かない物語。
もう、あいつの中で終わってしまって……紡げない物語。
男「……めでたし、めでたし……ははっ」
娘は今どんな顔をしているんだろう。
こんな救いも落ちもない話を聞かされてしまって。いったいどんな顔をしているのだろうか。
見たくない。
これはいわゆるイングランド産の民族伝承系のお話で、エンディングには色々な説があるんだぜ?
あと、王様の側近が木こりじゃなくて奴隷商人であったりするエディションもあってだな、
特に伝説の剣に関する設定は地域によって伝承が違って、その中でも群を抜いて奇抜なのが――」
娘「なぜ泣いているんだ?」
男「えっ?」
娘「さっきから、なぜ泣いているんだ?」
思わず娘の方に首を回してしまう。二つの大きな瞳が俺を真っ直ぐ見据える。
男「ははっ……えーと……これはあれだよ! ナイアガラの滝だぜ!? 知ってたか?
実はナイアガラの滝は俺の顔面上にあったのだ!」
娘「……」
くだらない冗談。いつも通りの逃げ。
止まらぬ涙は、まさにナイアガラの滝のそれだったが。
親友を、かけがえのない相棒を傷つけた王様は。
男「……罪悪感から逃げるように走り続けた王様の剣は……いつか折れてしまい、王様も――」
男「――二度と戦場には戻らなかった」
それで本当にこのお話は終わる。
娘「……何がいけなかったのだろうな」
持つべき者は、それを半端にしてはいけない、そんな風に思う」
娘「そして」
娘「木こりは……王の親友は彼を恨んだのだろうか? 慕っていた友を、勇敢な王を、果たして恨んだのだろうか」
そんなの決まってる。
こんなのは俺が一番しっていなきゃいけないはずだ。
男「もちろん」
そうだ。
そうなのだ。
男「もちろん……恨むわけが無かったよ。木こりは……親友はそういう奴だった……」
娘「そうだろうな。そんな気がする。だとすると、王の親友はさぞ心を痛めたのだろうなぁ……」
娘「自分の所為で、王を追い詰めて、最後には王の剣を折るという結末を迎えてしまう。
それはきっと酷く痛かったのだろうなぁ……それこそ、自分が失ったものに対する痛みよりも、もっともっと痛かったのかもしれない」
男「……ああ……きっとそうだった……」
……きっとそうなのだ。
愚かな裸の王様の親友は。
どうしようもなく優しいのだ。
見てるこっちが痛いほどに。
奪ったこっちが失ってしまうほどに。
娘「だったら」
娘の小さくて白い手が、俺の頬に触れ、涙をぬぐう。
娘「二人の友情はそのままなのだろう? だったらそれはハッピーエンドだな」
だから。
娘「そんなに泣かなくてもいいのではないか? 涙とは……きっと、もっとどうしようもないときに流すものだろう?」
誰かにこんなに真っ直ぐ優しくされたのはいつぐらいだろう。思い出せない。
娘の言葉が胸に響く。
涙が溢れる。
男「あははっ……っく……じゅ、じゅっしゃ……10才のっ……がっ、ガキにぃ…なぐっ、なっ…慰められるようなぁ……
や、くっ、ふうっ…! 奴はぁなぁ……! も……もうっ……とっ…とっくに……」
男「とっくにどうしようもねぇんだよおおおおおおお! うわあああああああん!!!!!!!」
娘「お、おいおい……そこまで泣く話だったか? いや、感情移入の仕方は人それぞれだと思っているが……」
まあ、と娘は呆れたように。
諦めたように。
とても優しく言う。
娘「生きてれば、泣くことも必要だろう」
そういってより強く俺を抱きしめる。
その安らぎに俺は身を任せて、気が付いたら目を閉じていて。
まるで小さな天使に縋るようにして眠りに落ちた。
いや、そこまで古いわけじゃないがどこか輪郭がハッキリしない、今の俺とは関係ないようにも思える記憶。
友から全てを奪ってしまったあの日。
年が明けて数日。高校サッカー選手権の第二戦終了後。
チームメイトや監督が宿泊所に戻るバスに荷物を詰め込んでいる間、俺はこっそりとそこから抜け出す。
誰にも話かけられたくない。誰も見たくない。
何も考えられなかった。
競技場から少し離れた公園。
寂れたベンチに腰を下ろしうな垂れる。
目立つからせめてユニフォームからジャージに着替えておいた方がよかったかもしれない。寒いし。
なんて考えるでもなく感じていた。
それにしても。
男「俺は取り返しのつかないことをした」
声に出すと、それは一気に現実味を増長させる。
俺が奪った。その事実を。
男「つまらない事を気にして、無理に試合に出て……結局はこのザマか」
くだらない。
くだらない…。
くだらない……。
ぶつかった体が、友の足を通してポストの感触を伝えてくる程だった。
おかしな方向に曲がったあいつの膝がフラッシュバックする。
男「うっ……くっ……! おえっ……!」
我慢する気にもなれずにうな垂れたまま地面に吐き散らす。
心に詰まったものまでは、当然吐き出せない。
男「もう、あいつに見せる顔がないなぁ……」
初めてあんなにわかり合える友達が出来たのに。
こう言う結末を迎えてしまうのか。
あいつは、俺になんて二度と会いたくないと思っているんだろうか。
そう思われてたって、文句の言葉は一つもない。
文句を言われないと、殴って貰わないと、誰よりも嫌悪してもらわないと――
俺はもう死んでいく。
そんな感じがする。
ゆっくり折れる。
ゆっくり沈んでいく。
?「試合、みせてもらったよ」
うな垂れていた上体をゆっくり、死体を引っ張り起こすみたいにして持ち上げる。
見知らぬ初老がそこにいた。
?「まあ、90分間の内、五分は楽しませて貰ったよ。そこは素直に評価しよう」
?「残りの85分は、息をするのですら一級品の娯楽であるかの様に思わせる退屈ぶりだったがね」
無表情というか仏頂面というか。
声の抑揚も表情の変化も読み取りにくい。
男「……誰だ?」
監督「スカウト、と名乗るのは気が乗らないのだがね。
なにせ薄給の上に長くて骨が折れる割に合わない仕事ばかりやらされるのだから。
まあ、クラブへの感謝の気持ちを込めたボランティア活動のつもりでやらせて貰っているだけなのだけれども。
まあ……だから、今は監督としての私を名乗らせて貰おう。○○大学で指揮をとらせてもらっている監督という者だ」
監督「今日は君を観に来ていた」
俺を指さしながら抑揚の無い声で言う。
監督「さて、今日の君の総評を聞きたいか? 普段はこんなサービスは絶対にしないのだが
今日は特別に教えてやろうと思っているんだ」
いきなり現れて何を言うかと思えば。
そういって立ち上がり、歩き出す。
たとえクラブのスカウトだろうと。
ついさっきまで絶対に評価を得て俺の実力を知らしめてやると思っていた相手だったといっても。
今となってはもう意味がない。
どの言葉も耳障りだった。
監督「おや。君はそんなに謙虚な人物だったのか」
監督「あんなプレーをしてまで一点もぎ取った選手だとは、到底思えないな。いや、これだからサッカーは面白い」
男「……何が言いたいんだ?」
監督「そう苛立つな。そこに車を止めてある」
公園の敷地外を指さす監督と名乗る男。
堅苦しい表情だが、その雰囲気は飄々としたものを漂わせ、つかみ所がない。
監督「少し話をしよう」
監督と名乗る男は神経質そうにあごを撫でる仕草をして、言葉を加える。
監督「いや、君のために話をして上げたい、だろうか」
どっちにしろそんなの聞く気分じゃない。
歩みを早める。
監督「そして、君を助けてあげられるかもしれないよ」
背中を向けた向こう側。そんな言葉。
いつもなら信じないだろうに。
だけど、弱った心はその藁よりも信用ならない言葉に縋る。
見透かしたような事を言う見知らぬ男に、ひょっとしたらこのやり場のない物をどうにかしてもらえるかもしれない。
なんて叶わぬ愚かな希望を抱いてしまう。
黒皮シートの車に乗るなんて久しぶりの経験だった。
高級どころのドイツ車の静かなエンジンが作る独特の静寂に、すこし緊張して体が硬くなる。
遠征先であるここでの地理カンはゼロに等しい。
さっきから何処に向かっているのか、目的地なんてあるのか、全く解らない。
監督「とにかく脚が速い選手だと聞いていたよ」
車に乗ってから続いていた約五分の沈黙。監督がそれをなんのためらいもなく、流れるような品のある低声で破る。
これがベストタイミングである、と計算していたみたいな、何処か得体の知れぬ余裕を感じさせた。
監督「そこにズームアップして編集されたビデオも幾つかみせられた」
監督「確かに速い選手だと思った」
赤信号の交差点。ブレーキが生む緩やかなGが胸を押す。
監督「でも、それだけだと思ったね。それ以外は何も持っていない平凡な選手だと、正直思っていた」
青信号になり、また車が進み出す。監督は俺の反応なんて待ちもしないで話を続ける。
監督「そういう前振りがあったからだろうか。今日は、久しぶりに、少し心が動いたよ」
抑揚の無い声で監督が言った。
多分ずっとそうしてきたんだろう」
監督「これは君の過失じゃないだろう。正しく、君を見誤っていた、君の周りにいたコーチや監督の所為だろう」
何を言いたいのかさっぱり伝わってこない。話までつかみ所のない人だ。
監督「今日の君が一番輝いていたのはどういう所だろう?」
俺が回答するのを待つような空白。だけど俺は窓の外を流れる景色を眺めながら口を閉ざす。
監督「ふん……なら私が答えよう」
監督「君が低い位置でボールを奪ったり受けたりした時から始まる攻撃だよ」
監督の声は心なしか高揚しているようだった。
正直、息を呑んだよ。そう監督がつぶやく様に言う。
監督「一番遠い位置にいる選手の動きを予測出来る理解力と視野の広さ。
細かいパスの流れから、一気に大波をたてるように蹴り込むサイドチェンジ。そしてそれを可能にする積極性と技術」
監督「味方の選手、相手の選手を高いレベルで把握し、ベストな判断を下せる冷静さ」
監督「ピッチを俯瞰出来る選手と言うのは、観ている者ですら驚く『道』を探し出す事が出来る。
君もそういうものを持っている。そう感じたよ」
監督「チームを押し上げ、ゴールが生まれるまでのシナリオをその場で創り上げる創造性。それが君の武器だよ。誰でも持てるものじゃないんだ、これは」
監督が運転席から振り返り、俺の目を数秒睨むように見据える。
監督「君も、君の周りの人間も、その他人よりも速く動く両脚を伝家の宝刀の様に扱ってきたかも知れない」
監督「それは只の脇差しだ」
監督「だからそれに頼りすぎたらいけない。確かに脚を武器に戦うサッカーに置いて、俊足であることは有利に違いない」
監督「だが、君という人間が戦う人生という時間を考えた時、それに頼り続けるというのは酷く危うい生き方だと思うのだ」
眺めるビルも少なくなっていく。
監督の声を聞きながら、俺は逃げ出したい心を抑えるように胸を押さえる。
一体、何を言いたいのだ。この初老は。
監督「そういうものは、案外簡単に奪われてしまうものだから」
その言葉に胸が刺されたように痛んだ。
より強く押さえる。
痛みは止まらず、鼓動が暴れ馬みたいに跳ね回る。
監督「だから。だからこそ、君は自分と言う人間が持つ武器に気が付くべきだと思うのだ」
監督「速いことは強さではないよ。強さとは、もっと誰にも見えぬ高い所にある。
君がいくら地ベタを速く這い回ろうと手には入らない」
監督「だから、君はもっと全てを広くとらえるべきだと思うのだ。君は、君という人間は」
君にとって、サッカーが最も美しく見える場所を探さなくちゃならない。
いつまでも覚えているその言葉。
今までの自分が酷く薄っぺらく思えたその瞬間。
監督「ピッチの上でも、心の中でも。それを見つけなきゃならない。そうしなければ君はいつか止まってしまうよ。
つまらぬ挫折に脚を持って行かれ、立ち止まる事も出来ずに土の味を噛みしめる事になるかもしれない」
冗談ともつかない事をいい、車を止める監督。どれぐらい走ったのだろうか。もう何処なのか見当もつかなかった。
監督「さあ、着いたよ。君の所の監督には既に『話がある』と伝えてあるから、面倒な事にはならないと思う」
男「……どこ……ですか」
監督「君が泊まってるホテルだろう」
言われて気が付く。そういえばこんなフロントだったっけ。
監督「ドアを開けてあげよう」
エンジンを切り、車を出る監督。
俺が座っている席の方に回り込み、ドアを開ける。
監督「忘れ物はないかな。これは借り物だから、もしもの場合取り戻すのに手間がかかる」
男「大丈夫です。何も持ってきてないので」
そういえば手ぶらだった。曲がりなりにもこうして送って貰ったのは幸いだったかもしれない。
さすがにユニフォームのパンツには電車に乗る小銭なんて入ってない。というかポケットがない。
車を降りる。
監督「いや、これは私の頼み事だったからね。気にしなくていい」
男「じゃあ、さよなら」
短く告げて、ホテルの正面玄関のドアへと歩みを進める。
監督「最後に。今日のことはよく考えてみてくれ。そして――」
後ろは振り返らない。
聞こえないふりをする。
監督「――被害者面は止めた方がいい。失ったのは彼で、奪ったのは君だ。そしてこれは、ただそれだけの事。
君が逃げ出す理由にはならないよ。それを理解して、納得しろ」
後のことは良く思い出せない。
泣いたのかも知れないし。
いらだちに任せて叫んだのかもしれないし。
何もせずに何処かに籠もっていたのかも知れない。
いずれにせよ変わらない。
それが俺が友から大切な物を奪った日の話。
男「……」
最悪な目覚めだ。
久しぶりに嫌な夢を見てしまった。
男「寝る前に変な話するんじゃなかった……」
娘にせがまれて適当に話しを作ってみたけど、最後の方は色々ごっちゃになって大号泣していた気がする……。
大人としてどうだったんだろう、それって。
男「そういえば娘が居ない」
空っぽの右腕。
もう起きているんだろうか。
手探りで目覚まし時計を探し当て、目の前にもってくる。
男「もう十時かー……つーかもう大学に行かないのが普通になってるなー……」
それに伴う罪悪感も感じなく無くなってきていた。
それって色々まずいよなー……。
やっぱり、母さんと親父には申し訳ない気持ちになる。だからと言って何か行動に出られる訳じゃないけれど。
なんとなくやる気が無くなって、大学をサボるようになってもうすぐ二ヶ月になろうとしている。
将来への不安は、曖昧な輪郭から実体的な像へと変わりかけていた。
出来る事もやりたい事もわからない今の俺。
一体、一年や二年たった頃にどうなっているのやら。想像もしたくない。
男「朝からテンションがガタ落ちる……」
ガチャ
娘「男。朝だぞ」
朝というには微妙な時間だが。
男「おう、今起きた。飯作るからちょっと待っててくれ」
寝癖頭を手串で押さえつけながらベッドから這い出る。
娘「朝食なら私と友が作ったぞ」
男「え? マジで? お前料理とか出来るの?」
娘「多少の心得はあるぞ。だが、実戦経験が少ないゆえ、今回は友の手伝いをしただけだ」
男「あいつまだ居たのか……まあ元彼女から鞄の取り戻すなんてハードな任務を前にしたら
ルンルンと朝から出掛ける気分にはならないか」
娘「まあとにかく、朝食が出来たから早くきてくれ」
男「はいよ」
食卓にはいつもよりも多い食器達が並ぶ。
友「遅いよ男。朝には強い方じゃないか」
先に席に着いていた友がそんなことを言う。
男「昔の話だろそんなの。今はめっきり早起きなんてしなくなったよ。
それのおかげで10時には眠ってしまう体質が改善されたぜ」
友「確かに、最近まで10時以降に男を見かけたこと無かったかも……」
どうでもいいところで大人になっていた俺だった。
男「それにしても、焼き魚なんて久しぶりに食べるなぁ。魚、買ってきたのか?」
友「朝早くからやってるスーパーがあるからね。そこで」
わざわざご苦労な事だ。
娘「よし、これで準備が整った」
サラダの入ったボウルと取り分け用の皿をテーブルに置く娘。本日のメニューは焼き魚と卵焼きと味噌汁と白米。
そして今持ってきたゴマドレッシングサラダと言う事らしかった。
男「朝から二品目以上食べるのは幾らぶりだろ……」
一人暮らしとなると朝は抜かす事だって多くなりがちだったからな。
作るのめんどくさいし、腹減ったら出掛けるついでに外で買っちゃうし。
毎日朝食を作っていた母さんの偉大さを思い知った。
男「そういういえばこの国にはそんな文化があったなぁ。一人暮らしの所為で忘れてた」
友「僕は一人でも言うかなー。この前までは彼女と一緒に食べる事が殆どだったから一緒にいってたね。
今日からまた一人なのかー」
男「目から何か出てるぞ……」
友「ははっ……これは今朝の汁物だよ」
遠慮したい。というか味噌汁が既にあるから。
娘「ほら、早く手を合わせるんだ二人とも」
行儀の悪い大人二匹をたしなめる娘。
なんだか朝から情けない。
でも。
でもなんだか悪くもない。
なんだか悪くない日になりそうだった。
一同『いただきます!』
そんな感じで一日が始まる。
友が戦場(元彼女宅)へ赴くため家を去ってから数十分。
男「だから。俺がお前のリストの完遂に一肌脱ごうって事だよ」
娘「願ってもない話だが……男も忙しいのでは無いか?」
男「うーん……」
多分、忙しくあるべきなのかなー。
でも大学行く気にもなれないし……。
今更行ったところで、もうテストとかサボっちゃってるわけだし……。
男「えーと……知ってたか? 出来る男は大学に行かなくてもいいんだ」
娘「な、なんだって-!?!?」
期待してた以上のリアクションだった。
娘「なんで出来る男だと大学に行かなくていいんだ!?」
男「出木杉君から成績の良さ、人望の厚さ、誠実さを引いた男、と呼ばれる俺みたいな奴は
大学で『BOCCHI』と呼ばれ、周りから一目引かれる存在なのさ」
娘「おお! なんかすごそうだ! そんなにすごい奴だったのか男!」
男「HAHA. 別に大した事じゃないぜ? 食事は大衆用の汚い食堂ではなくとある個室で。
講義中は俺の近く二メートルの場所に座ってはいけないというルールがあり、
たまにある『じゃあ、近くの人とこれについて話し合ってみてください』は免除される等々……
その他思い出してみればまだまだいろんな特別待遇があったなぁ……」
アレ……? 目から朝の味噌汁が。
娘「おお! すごい待遇だな! まるで貴族だなっ!」
娘「そうか! それは私にとってもうれしい事だな!」
娘の無邪気な笑顔が痛かった……。
情けないなあ俺!!!!
男「……で、早速今日からリストに書かれてるものを消費していこうと思う」
娘「今日からか! さすがだ! 出来る男は違う!」
テンション高いなー……。俺が上げたんだと思うけど……。
男「えーと……じゃあ、早速リストを持ってきてくれたまえ」
娘「わかったぞ!」
鞄をがさごそして例の大きめの手帳を持ってくる。
男「うんじゃ、ざっと目を通すとするか」
男「うわ……この前も思ったけどかなりびっしり書き込まれてるのな……」
紀元前の遺跡から発掘された解読不能の書物みたいな感じだ。書かれている文字自体はキレイなもんだけど。
娘「いやー、書き出すとお願い事とは尽きないのでな」
男「いやまあ確かにそうだろうけど……まあいいや、とりあえずこれを全部読むわけにはいかないから
目に留まった奴を適当に候補に挙げていくぞ」
娘「わかった。それでいいぞ」
男「よし、そんじゃ適当に……」
ページを飛ばし飛ばしめくっていく。
男「えーと……ショートケーキの生クリームだけ食べたい、テリヤキバーガーにマヨネーズを追加したい
バブを一箱一気に使ってみたい、野菜炒めの肉だけ食べたい、吉野家ので並と牛皿を注文したい
吉野家のゴボウサラダが復活しますように、吉野家で働きたい」
いや。
願い事は人それぞれだけどさぁ。
男「もうちょいマシな願い事無いわけ?」
吉野家へ情熱は一丁前だな。行ったこともない癖に。
娘「それらの何処に不足があるんだ。どれも叶えたら幸せになる事間違いなしの願い事達ではないか」
男「いやさぁ……そりゃまあちょっと幸せになるだろうけど、こう言うのってもっとスケールでかい方がいいじゃん?」
娘「むー……そう言われてもな。何がスケールのでかい願い事なのか検討がつかないぞ」
男「そうか? 俺がお前ぐらいの時なんて、平気で『将来はアメリカ人になる』とか言ってたけどなー。
アメリカンドリームだよ、アメリカンドリーム」
娘「いや、それはアメリカンドリームが本来意味する物では無いと思うのだが……
とにかく、私はよくわからないから男が選んでくれ」
男「う……そう言われるとやっぱりチョイスが難しいな……」
ページをぺらぺらとめくる。
それにしてもあんまりデカイ事を書かないな、こいつ。
学校に行って無くても年齢的には小学生なんだからもっと大胆な願いを書きまくればいいものを。
『水族館でイルカをみる』
小さな願い事には違いないけど、他の鰻重のウナギだけ食べたい等々と比べてみれば立派な方だ。
男「これはどうだ?」
娘「おお、さすが男だ。それは特Aクラスの願い事だ」
男「これで特Aなのか……それはいいんだが、まあこれ位なら簡単に叶えてやれるぞ。
電車で一時間と少し行けばイルカショーやらなんやらをやってる水族館があるはずだ」
娘「本当か!? イルカはいるか!?!?」
男「いや、そういう寒いこという奴連れて行かないけどな……」
そんな感じで。
俺たちは水族館に向かう。
俺自身も十年ぶりぐらいだ。
彼女なんて作らなかった(作れなかったわけでは無い!)から家族と行った以来。
娘「おい男! あそこに人が居るぞ!」
男「あー、あれだよ。水槽の掃除してる人だよ」
娘「なんでレモンガスボンベを背負っているんだ?」
男「いや、レモンガスボンベだったらすぐ死ぬだろうが。酸素ボンベだよあれは。あれで息継ぎとかしなくてよくなるんだよ」
娘「ああ、あれか。テレビで観たことがあるなー、すごいなー」
いちいちウキウキとしている娘だった。
チケットを買い、入り口を潜ってすぐそこ。
曲線的に反り出た水槽。
雑多な種類の魚たちが銀色の鱗を煌めかせながら通り過ぎていく。
男「へぇ~さすが東京だな。地元の比べると立派なもんだ」
男「ああーあれは結構でかいなー。何々、ああ、ジンベエザメかー。確かに斑点柄が甚平っぽいかな」
でもサメと言うよりも鯨っぽい印象だ。
娘「な、何を暢気な事を言っているんだ! 危ないっ! やられるぞ!」
そう言って娘はジンベエザメの水槽へ向かう。
娘「おい! 後ろ! 後ろだぁぁあ!!」ゴンゴンゴンゴンゴンっ!!!!
男「ってコラっ!! なにやってんだよ!?!? 他のお客さんめっちゃみてるだろうが!!!!」
娘「人が、人が死んでるんだぞっ!?!?」
男「まだ死んでねーよ! というか死なねーよ!
水族館に居るサメは餌をいっぱい貰っていて人とか他の魚おそわない様になってるの!!!」
奴らは満腹だと狩りをしない省エネ族なのだ。
娘「そ、そうなのか? それは良かった……」
安堵に胸をなで下ろす娘。大げさだ。
男「はぁ……水槽の掃除のたびに死人が出てたら水族館の人材不足がとんでも無いことになるっての」
しかし、周りの人にクスクス笑われてるのが気になるなぁ……。
そういえば、俺達は親子だとでも思われているのだろうか?
いや、それは見た目の年齢的にちょっと無理があるか。それと同じ理屈でカップルも。
近くにいた若い係員の女性にそんな事を言われた。
男「あ、え?」
娘「おお! イルカの帽子をかぶっているな!」
係員「ああこれ? うん、ここで働いてる人は海の生き物の帽子をかぶるんだよ~。イルカ好き?」
娘「大好きだ! 今日はイルカに会いに来た」
係員「へぇ~。今日はお兄ちゃんに連れてきて貰ったんだ?」
娘「? 男はお兄ちゃんでは無いぞ。大学に行かない『BOCCHI』だ」
係員「へ、へぇ~……そうだったんだぁ~……」
すげー怪しい物とか哀れな物を見る目で見られてる……。いや、あんな紹介をされれば当たり前か……。
男「あはは……今のはたちの悪い冗談ですよ。ちょっと訳があって叔母さんの子供を預かってるんですよ。
普段は普通に楽しく大学生活してますよ僕」
平日に堂々と水族館に居るのにこんな事言っても無駄かもしれないが。
係員「そ、そうだったんですか~。若いのに偉いですねぇ~、子供の面倒みてあげるなんて~」
棒読みで褒められた。
そして係員さんはすっと逃げるように俺から娘へと目を移す。
係員「えーと、イルカ好きなんだよね? それじゃあ、あと十五分ぐらいでイルカショーが始まるよ? 観に行きたい?」
娘「行く!」
一つ返事だった。
イルカショー。
恥ずかしながら人生初体験だった。
娘「なんでイルカショーなのにアシカが一番手なんだ?」
男「うーん……これは一番手というよりも前座な感じが否めないな……」
輪っかを器用に受け取るアシカのトリオ。実に年季が入った無駄のない所作だった。
しかし息荒くひげを揺らす姿が何処となくオッサンを彷彿とされる。残念ながらイルカほどのスター性は感じられない。
なんか現代社会の序列をそこに観た気がした。
男「どれだけ頑張っても、所詮はイルカ達の前座なのさ……」
娘「そうなのか……確かにイルカほどの華々しさは無いからな……」
そんなこんなで前座が終わる。
ピョーン!
吊されていた輪を三匹のイルカが連続でくぐり抜ける。大ジャンプだった。
娘「うおおおお!!! 飛んだぞ! 羽ないのに!」
娘は大興奮。飛び散る水しぶきにキャッキャしている。
男「すげーもんだな。俺も初めて観たけど」
悪くない。最初はどんなもんかと思っていたが、かなり楽しめるぞ!
娘「すごいなー。おお、今度は尾ひれで水面に立つ様にして泳いでいる!」
男「すげー!! エビフライみてぇだ!!!」
娘「今度はボールをバスケットのゴールにシュートだ!」
男「すげー!! 俺だったら外してたぜ!!!」
どっちが子供かわからない。
というかどっちも子供だった。
イルカショーの人『はーい!! じゃあ、イルカに触りたい人手をあげてー!!!』
娘&男『はああああああああああああああああああいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!!!!』
俺たちの鬼気迫る大絶叫に営業スマイルが引いていた。
いや、だって触りたいじゃん? イルカ。
そしてイルカたちが待機するプール際へ。
娘「Oh////// すごいな……なんかヌメッとしてるけどあったかいぜ……本当にほ乳類なんだな……」
男「なんかお前キャラが崩壊してるよ……でもこいつは……ゴクリ……!?!?!?」
すげー。
ヌメッとしててあったけー。
でも灰色の肌は結構傷みたいなのがあって痛そうだ。
イルカ『……』
……。
男「イルカなのにマグロなんだな……」
そんな感じで。
俺たちはイルカと触れ合った。
ウニを触るコーナーでウニタワーを作って怒られたり(ヒトデが居たのでそれを一番上にのせてみた)、サメの水槽に餌の小魚を入れる体験をさせて貰ったり、おみやげ屋さんでイルカの帽子を買ったり。
そんなこんなですっかり夕方になっていた。
娘「マンボーが思った以上に大きかったな。そして、もっと愛嬌がある物かと思っていたのだが
現物観て少し考えを改めてしまったよ」
男「あー、なんか目が怖いよなあいつら。寄生虫とかもヤバイらしいし」
娘「そうなのか……サン○オがアレンジしたマンボーはあんなに愛らしいのに……」
そんなくだらない話をしながら歩く帰り道。
娘は早速イルカの帽子を被っている。
後ろで二つに結っている髪がプラプラ揺れているのと合わさってなんだか宇宙人みたいだ。
そんな事を、本当に屈託のない笑顔で言う。
夕日のオレンジに照らされるそれがとてもまぶしい。
そしてちょっとストレート過ぎて照れる。
男「はん、この程度で楽しいなんて言ってたらこの先ぶっ飛び過ぎてマジバイヤーだぜ姉さん?
こっからマジでギンギマリだぜ? ah hun?」
娘「本当か!?」
イルカの宇宙人が俺に抱きつく。
男「当たり前だっつーの。まあ、色々終わるのに時間かかりそうだし
その間に俺がお前のリストをコンプリートしちゃうって寸法だぜ!」
こいつの事情がどうなるのか。まだ全然不透明。
でもなんだろう。
まだ出会って数日なのに。
こいつのこの笑顔を見ていると嬉しくなるのだ。もっと見ていたくなるのだ。
娘「あははっ! 大好きだぞっ! 男!!」
小さい宇宙人の頭を撫でてやり、手をつなぐ。
駄目人類とイルカの宇宙人は仲良くオレンジ色に染まっていた。
家に帰ってきて飯を食って数時間後。テレビを見終わった娘を俺の部屋に連れて行った。
そろそろ娘は寝ただろうか。
男「じゃあ……今日もジメジメ未練たらっしく言ってみるか-!」
無意味に明るく言ってみた。
余計惨めな気分になるだけだった。
男「……まあ、特に目標があるわけじゃないんだけどな」
ランニング。軽い走り込み。そして基本的な筋トレ。
それらは膝を壊した後も、結局観るだけだった大学サッカー部の幽霊部員になった後も止めずに続けていた。
惨めにダラダラジメジメと。目的なんて無い癖に。
ただ、止めたら自分が消えてしまいそうだから。
今までの自分が無かった事になりそうだから。
そんなくだらない理由で続けていた。
男「今日は少しペース早めでいっときますかー」
男「……? なんだこれ?」
ランニングシューズの片方に、一枚の紙が入っていた。
取り出してみる。
男「……友の奴……またこう言う余計な事を……」
あーあ。
何が『男改造計画その一 ~世界一のサッカー選手への道~』 だよ。小学生でも考えないっての。
ざっと目を通すと、筋トレのメニューや、走り込みをする際に意識する点
その他には友が独自に考えた『俺の現在の体のパフォーマンスの限界』を引き出すカギなど
いろんな項目に別れてびっしりと書き込まれている。
見た感じの印象だと、高校の時にやっていたメニューと同等、またはそれ以上にハードなものかもしれなかった。
男「本当に余計なお世話だよな~……」
そしてたちが悪い。
男「お前にここまでして貰ったらさー」
簡単に無碍にできないよなー。と。
俺がそう思うことをあいつは解ってやってる。
男「世界一のサッカー選手なんてお笑いだけどさ」
ふっと、なんだか懐かしい様な気持ちが溢れる。
言って、自分で驚いた。
試合に出てもいいかもしれないなんて。
もう一度やってみようなんて。
そんな事思った自分に酷く驚く。
男「あーあ。やっぱりまだ未練たらたらなのかねー」
彼女なんて出来たこと無いけど。
人を好きになった事なんて数える程だけど。
それでもこれは。この気持ちは否定できやしない。
やっぱり俺は、惨めなまでにサッカーに一途なのだ。
次の日も。
その次の日も。
そのまた次の日も。
多分一週間と少し。
俺たちはリストに従っていろんな事をした。
男「いやー、吉野家で紅ショウガの使いすぎで注意される奴を見ることになるとは思わなかった」
娘「いや、デ○ズニーランドでミ○キーに「あの、あんまり触らないでください」と
普通のトーンで注意される人の方が珍しいのではないか」
まあ、本当に色々なところに行って色々な事をした。
ゲーセン、カラオケ、ボーリング、動物園、スクランブル交差点、高級店をウィンドーショッピン、東京タワー
夜景、プール、ピンポンダッシュ、二人だけの鬼ごっこやかくれんぼ、ザリガニ釣り、野球観戦……。
言い出したら切りがない。よくもまあ一週間と数日でここまでやったもんだ。
娘も疲れた様子で歩いていた事が多かった気がするし。
男「これだけ遊んだのはいつぶりだろうか……というかこんなに遊んだ事ねーよ」
金が水のようにするする何処かに行ってしまうなんて初めての体験だよ。
俺が知らないだけで、世の中にはこんなにも多くの娯楽があったのか。
娘「ああ、私も生まれて初めてだよ。多分、一生分遊んだぞ」
まあ一生分は言い過ぎでも。
男「ああ、なんか遊ぶのも結構な体力がいるもんだな」
娘「確かにな。こんなに楽しくて疲れたのは初めてだ」
楽しんでくれたならよしてするか。
それだけでいいんだろうか。
やっぱり色々引っかかる。
男「……あのさ」
娘「? どうした」
男「楽しかったあとにこう言う話するのもアレだけど……お前のお母さん。
お前を俺に預けたっきりなんの連絡もない。
お前もお前で自分の家いわねーし」
しかも家の母親まで黙りときた。
男「俺はさー。こう言う『解らない』だとか『知らされない』だとかが嫌いだ」
男「でもさ。お前に理由があったり、叔母さんに理由があったりするのは……今では冷静に見る事が出来る。
良しとするほど俺は出来た人間じゃないけど、少しの間看過するぐらいは出来るつもりだ」
でもだ。
何か根本的におかしいとは思わないか?
つまり。
預けるだけなら俺の実家でいいわけだし。
じいさんとばあさんの家もあるわけだ。
そのなかで、なんで一番無責任そうで、一番若い俺が選ばれる?
面倒に思ってるわけでは無く、純粋に。何か引っかかる。
男「だから俺はお前のことが心配だ」
嘘偽りなく言った本心。
男「お前のことを助けたいとも思ってる。短い間しかまだ付き合いが無いけど――」
いざ言おうと思うと結構緊張する。別に恋人になってくれと告白するわけでもないのに。
男「――お前の事が大事だ。多分友達とか親友とか、もしくはそれ以上に思える」
俺には妹がいるけど。やっぱり妹と比べても同じぐらいに大事だった。
男「だから話してほしい。お前が言いたい事とか、お前が一人じゃ抱えきれず背負いきれない物を」
娘「……」
娘は何処か悲しそうな。何かを諦めた様な目で俺を見る。
そして、と娘が付け加える。
娘「全部謝る」
男「……わかった。俺もお前を急かしてる訳じゃない。ただお前の力になりたいってだけだ」
娘「……ありがとう」
いつもの張りのある声ではなく、しぼんだ声でそういう。
力になれないのがもどかしい。
こんな小さな女の子の力になってやれない俺が情けなかった。
男「……今日は一緒に寝ようか」
そうやって。
何か変化の予感を残して。その日は終わっていく。
続きます→娘「セック――」 男「言わせねーよ!?」 後
Entry ⇒ 2011.12.29 | Category ⇒ 兄弟姉妹「」SS | Comments (0) | Trackbacks (0)