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二階堂「ポプラの弁当498円」

元スレ:二階堂「ポプラの弁当498円」
http://hibari.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1321014632/
5 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/11(金) 21:47:10.16 ID:J2L4R3Kq0

ブーッ…ブーッ…
ピッ

『二階堂さん、今日はどちらのスーパーに向かわれるのですか?私たちはまっちゃんのお店に向かう予定ですわ!』

どうしたものか…
《オルトロス》からの夕餉の誘いのメールに目を通し、プリントアウトされたA4用紙を片手に二階堂連は苦笑する。
いつもなら『では待っていよう』と短いメールを送り、後はいつものスーパーで彼女らを待つのだが、今日は用事があるのだ。
と、いっても大した用事ではない。誰か人を待たせている訳でもない。
いつものように《オルトロス》の魅惑的な挑発に乗るのも悪くなかったのだが・・・
「やはり、初日に行かないとな…」
元・《ガブリエル・ラチェット》の頭目と言う過去の立場がその誘惑を許さなかった。
情報収集するのならば速度が命だ。初日に行かなくて何が上場収集か。

『悪いが今日はコンビニ弁当だ』

短いメールを送信する。姉はともかく、勘の良い妹ならばこれだけで何の事か理解できるだろう。

「・・・そろそろ寒くなってきたな」


7 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/11(金) 21:48:53.75 ID:J2L4R3Kq0

携帯をカバンに入れ、手に息を吹きかけながら二階堂連は呟きバイクにまたがる。

今日は新しいコンビニが東区に出来る。
それだけなら二階堂がわざわざ初日に行くような事はないが、出来たコンビニが問題だった。
《魔導士(ウィザード)》金城が狼減少に警告鳴らし続けていた。《氷結の魔女》槍水が出店に怯ていた。そして《変態》佐藤が遠征に行き、そしてその魅力を語ったコンビニ…

そのコンビニの名は『ポプラ』
中国地方からやってきた『狼の牙を抜くもの』である。




8 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/11(金) 21:49:19.67 ID:J2L4R3Kq0



「嘘…でしょ…?二階堂さん…が?」

メールの返信を見た《オルトロス》の片頭、沢桔梗が携帯を落とす。
ゆるいカールがかかったその髪の下にある表情は、絶望の一色に染まっていた。

「どうしましたか姉さん。断られましたか?」

またか…そんな事を思いながら《オルトロス》のもう一つの頭、沢桔鏡が姉に声をかける。


9 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/11(金) 21:50:17.87 ID:J2L4R3Kq0

「二階堂さんも大学生です、止む終えぬ用事で戦いに行けない事もあるでしょう。そんな事でこの世の終わりみたいな顔をしないでください。それならば佐藤さん達がいる西区に…」

そこまで言いかけて鏡は言葉を止めた、何時もの姉と錯乱とは表情が違うのだ。泣いて居るのだ…

「…違うんですの…ちが…ひっく…鏡…私達…二階堂さんに…」

「ね、姉さん、落ち着いてください!ど、どうしたのですか!?」

「私達…二階堂さんに…捨てられ…ひっく…」

姉の嗚咽に鏡はふと嫌な記憶がフラッシュバックした。3年前、沢桔姉妹に向けられた《ヘラクレスの棍棒》その一撃を食らった時のあの時の姉、そのものだったから。


10 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/11(金) 21:51:21.35 ID:J2L4R3Kq0

「どうしましょう…私達…二階堂さんに…甘えすぎて…」

鏡は信じたくなかった。姉ほど感情を前に出す事はないが、鏡もまた、二階堂の事を信じきっていた。
私達がどんなけ勝利の味を付加した半額弁当を食べたいとわがままを言っても、彼ならいつでも最高のスパイスをかけてくれる。
そんな男性だと信じていた。
だから、姉の涙が信じられなかった。

「姉さん!だからメールに何と書いてあったのです!私にも分かるように!!」

梗はメールの内容を口に出そうとする、が、激しい嗚咽により口に出そうとしても出せない状況にいる。
その代わりといわんばかりに先ほど落とした携帯電話を指差す。
その系帯電を鏡は震えながら手に取り、内容を確認する。
そのディスプレイには
短く

『悪いが今日はコンビニ弁当だ』

と書かれていた。


11 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/11(金) 21:51:45.49 ID:J2L4R3Kq0


ああ…と、鏡は理解する。私達との戦いに二階堂さんは疲れたのだと。
私達との戦いに疲れ果て、スーパーに行く気力を無くし、コンビニに行くほうがマシだと感じてしまったのだと。
早い話が、私達は捨てられたのだと、それも一番大切な男性に。
理解した瞬間、姉とは違い、静かに、ただ静かに、力なくその場で泣き崩れた。


13 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/11(金) 21:53:03.18 ID:J2L4R3Kq0



沢桔姉妹にメールを送ってから訳1時間後
二階堂連は新規オープンしたポプラの近くのスターバックスで時間をつぶしていた。
現在午後5時32分、今からポプラで弁当を購入しても問題はなかった。
コンビニには半値印証時刻(ハーフプライスラベリングタイム)もなく、腹の虫の加護も必要としていないのだから。
ただ、自分の体が半値印証時刻を超えないと夕餉を受け付けなくなっていた。

「…性分だな」

そんな自分に自笑し、糖分も何も入っていないコーヒーに口をつける。
さて、せめて後2時間は時間をつぶさなくてはな、そんな事を思いつつレポートを広げようとすると
右ポケットに入れていた二階堂の携帯電話にメールが受信される。




14 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/11(金) 21:54:16.88 ID:J2L4R3Kq0

「…おや?《オルトロス?》」

《オルトロス》との宴は先ほど断って、メールも切れたはずだ。
そんな彼女達からまたメールとは…怪訝な顔をしながら二階堂はメールを見る。
そこには

『ご迷惑をおかけしてすみませんでした二階堂さん。もう、私達は貴方の前に姿を現しません。ありがとうございました』

1時間前のあの明るいメールとは全然違うその内容に二階堂は戦慄した。
何が起きているのかは分からない。ただ、あの《オルトロス》、いや沢桔姉妹に何かがあった。それだけは理解できた。

「…くそっ!まさかまた《ヘラクレスの棍棒》が!?」

カバンを手に取り急いでスタバから外にでて、沢桔姉妹に電話をかける。



15 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/11(金) 21:55:15.59 ID:J2L4R3Kq0

トルルル…トルルル…
「…くそっ!電話に出れないか!?」
10回目のコール音と共に携帯電話を切り変わりに『今日6時、丸富大学西駐車場にて待つ。そこで話を聞かせてくれ。
いつまでも待つ』とメールを送り、そのままバイクに乗り込んだ。
もう新オープンしたコンビニなど関係ない、二階堂は来るかも分からない沢桔姉妹との待ち合わせ場所へと向かった。



サークル活動が終了した学生がまばらにやってくる駐車場の一角で、二階堂は来るかも分からぬ沢桔姉妹を待っていた
時刻は午後7時半、日は完全に落ち、秋の寒さが痛みに変わりながら彼の体を刺してくる。
しかしそんな事は関係ない。一人の狼として、そして一人の先輩として彼女を待ち続けなくてはいけないのだから。

「あ…に、二階堂…さん…?」

待ち合わせ時刻から1時間半、顔色を青くした沢桔姉妹が二階堂の前に現れる。

「…来たか…」




16 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/11(金) 21:56:26.88 ID:J2L4R3Kq0

寒さや不安、きてくれた喜び、その他色々な感情があったが、表情を変える事無く二階堂が二人に声をかける。

「二階堂さん…今まで、今まで本当にありがとうございました…やっぱり、お別れの挨拶は、直接いいませんと…ね?」

涙の後が残る沢桔梗が笑顔で二階堂に伝える。本心だった。本当はメールで伝え、そのまま消えて無くなろうと思っていたが。
ただ、今までの感謝の気持ちは伝えないと、そう、思っていたから。

「私達姉妹、もう、二度と貴方と会う事はございません、ご安心ください、それでは…」

「まて!」

立ち去ろうとする沢桔梗の腕をつかむ。

「そんな上辺だけの別れの挨拶なぞ聞きたくない!本音を伝えろ!何故そう思う事があったのか!全部俺に伝えて…それからだ!」

「そ、そんな…」




17 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/11(金) 21:57:23.51 ID:J2L4R3Kq0

なんて酷い人なのだろうか。私達の前から去ろうとしてるのは貴方なのに、それなのに私達の本音が聞きたいだんてなんてドSな人なんだろうか。佐藤さんは逆の意味で変態だ
そこまで思ってふと《ヘラクレスの棍棒》の事を思い出した。
あの人は私達の思いを聞くことなくその棍棒を振り下ろした。二階堂さんは違う。私達と最後までぶつかって、最後の最後まで本気でぶつかって…
そして、最後まで抗わせて貰った後に、悔いを残さないようにしてから私達を殺すんだ…あの人とは違う、優しい人なんだ…
ならば、本音を言おう。みっともなくてもいい。泣いてもいい。本音を、言おう。

梗は後ろの妹を見る。涙の後を見せるその瞳は、自分の意思を受け取ったように力強く、そして、物悲しかった。
全部言おう。自分の後ろで腕を掴んでいる二階堂にすべてぶつけてやろう。沢桔梗はそう、決意する。

「…捨てないで…くださいまし…」

「…え?」

二階堂はその言葉を聞き返そうとするが、沢桔梗の強力な抱擁により言葉がさえぎられる。




18 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/11(金) 21:58:23.64 ID:J2L4R3Kq0

「捨てないで下さいまし!私達姉妹は、貴方が思っている以上に貴方を必要としているのです!

もう、私達は…私達は貴方無しでは生きられないようになっていた…そ、それを…」

「お、おい!?」

「私達が至らぬところがあるのなら何でもなおします!貴方が言う事なら何でも聞きます!

貴方がいたから…私達は幸せだったのです…我侭だとは分かっております!もう疲れたというのは分かります!
ですが……ですが!それでも…ううっ!うわぁぁぁぁぁぁぁん」

こ、これはどういう事だ?沢桔姉の何時もの勘違いなのか?それならばそろそろ妹の方から鋭いツッコミが来てこの号泣している姉を治めてくれるはず。
そう思い二階堂は目線を妹に向ける……が

「二階堂…さん……二階堂…さん…!ひっく……」

妹のほうも泣いてるぅ───!?
何だ?俺が何をしたと言うのだ?二階堂は今日一日何があったか思い出す。
確か、久しぶりに大学に顔を出し…そして大学の購買でコンビニ、ポプラが今日東区に出店されるという話を聞いて…その情報の真偽を確かめ…PCで住所を調べて…
そしてポプラに行こうとしたら沢桔姉妹からメールが来て…そしてコンビニ行くからやめると…
そこで二階堂は気づく、この姉妹は勘違いしていると。沢桔姉妹と戦うのに疲れ、コンビニ弁当の方がマシなのだと言う風に彼女らは受け取ってしまったのだと。

「ま、まて!《オルトロス》!まずは俺の話を…!?」


19 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/11(金) 21:59:42.38 ID:J2L4R3Kq0

「ええっ、ええっ…!分かってます!分かっているんです!!!頭では理解しているんです…ひっく…うあぁぁぁぁん!!」

涙で顔を濡らしながら沢桔梗は無理に笑顔を作る。その姿に二階堂は不覚にも言葉に詰まってしまう。

「でも…貴方の口から聞く勇気が…それが出来るまで…泣かせて…下さい…」

再び、自分の胸で勘違いした思いの丈をぶつけながら涙する沢桔梗

「き…今日は…私も…泣かせて…下さい…!!ひっく…!二階堂さん…!二階堂さん…!!」

そこに妹の沢桔鏡も加わる。

──すげえ…女の子二人を泣かせてるぞ…──双方に捨てないでとか…──おい…あれ付属高の生徒会の沢桔姉妹じゃねえか
──マジかよ…美少女生徒会姉妹丼とかどこのエロゲーだよ…!?──おっちゃんに!早くおっちゃんに連絡しないと!単一電池を!?
──元《ガブリエル・ラチェット》の頭目も外道に落ちたか…松葉菊に報告したほうがよいのか・・・?
…と、割と洒落にならない言葉が二階堂の元に浴びせられる。と、言うか最後のは確実に《ガブリエル・ラチェット》の元メンバーだ。松葉菊に報告するのはやめて欲しい

二人が泣き止み、落ち着かせ勘違いを理解させるまでそれから約1時間を要することとなる。




20 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/11(金) 22:03:42.05 ID:J2L4R3Kq0



「ありあっしたー!!」

コンビニポプラから出てくる3人の影が見えた。
沢桔姉妹と二階堂だ。
あの後、三人でコンビにポプラへと向かうことにしたのだ。
本来、バイクで行く距離であるコンビニまで徒歩で三人で向かったため、時刻は午後10時を過ぎていた。
お弁当をどこかで食べようという話も出ていたが、お互い疲れたため、今日は解散と言う事になり、沢桔兄弟のアパート前まで歩くことになる。



21 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/11(金) 22:04:07.50 ID:J2L4R3Kq0


「…そ、その、二階堂さん…?」

アパート前まで一言も喋らなかった沢桔鏡が口を開く

「何だ?」

二階堂は少し不機嫌そうに答える。今日は疲れたのだ、早くメシを食べて布団に入って寝たい。
「そ、その…今日はすみません…そ、その…姉どころか…私まで勘違いして…」

申し訳なさそうに謝る沢桔鏡。その様子をみて二階堂は苦笑する。

「……気にするな……あ、そうだ、後な」

笑顔のまま二階堂は続ける。

「俺がお前達を追っているのも、俺が楽しいから追っているだけだ。
後、俺がお前達より弱いと思った事は一度もない、それだけは覚えておけ」

その言葉に沢桔姉妹は自然と笑顔になる。
じゃあな、と手を振って別れようとする二階堂に梗が声をかける。

「あ、あの!二階堂さん!」

その声に姉妹達に顔を向ける二階堂




22 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/11(金) 22:04:34.25 ID:J2L4R3Kq0

「あ、あの!このお弁当、お米が多すぎですので!おにぎりにしようと思いますの!あ、明日の朝!お、おすそ分けしますわ!」

梗は勇気を持って思いを伝える。それに対して二階堂はニヒルに笑い、後ろを向いて再び手を振る。
明日は少し早めに大学に行かないとな…そんな事を思って居ると、少しだけ岐路が軽くなった気がした。


次の日、二階堂の尻の中に単一電池が入るか否かの激戦が丸富大学付属校前で行われたのは、また別のお話。



24 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/11(金) 22:05:16.85 ID:J2L4R3Kq0

終わり

書き貯めしたのはいいけど、PC水遁された…


27 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/11(金) 22:22:52.21 ID:lh6Fhrk20

乙wベン・トーSSは珍しくて楽しめたよw



36 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2011/11/11(金) 22:48:00.35 ID:m0wuV5LT0

よいSSだったよ

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