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バージル「この手の痣は・・・・」言峰「それは令呪というものだ」

元スレ:バージル「この手の痣は・・・・」言峰「それは令呪というものだ」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1327846247/
1 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/29(日) 23:10:47.14 ID:WcZjyrPd0

バージル「(結局ここにはスパーダの手掛かりはなかったか。しかしこの手の痣は―)」

聖杯戦争が開幕する数日前、バージルは自らが持つ魔刀、閻魔刀の日本刀に酷似した形状から父、スパーダの秘密を探れると考え日本を訪れていた。

しかし日本刀に似た形状というだけで他に何も手掛かりはない。仕方なく地から出る魔力が濃い地域をあたるほかなかった。それが第五次聖杯戦争が開幕される土地冬木だった

異変が起こったのは絡んできた男達を切伏せようとしたときに魔術師を名乗る女に挑まれ、女もろとも始末したときからだ

いつも通りその土地で一番書物が多い図書館へ足を運び書物を読み漁るがスパーダについて記されたモノはない、そしてそれより今気になるもの


???「先ほどから手を気にされているようだが、君がお探しの本はコレではないだろうか?」



2 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/29(日) 23:15:16.40 ID:WcZjyrPd0

目の前には男が立っていた。自分と比べると幾分小さいが日本人にしては十分な長身だ。神職についていると思われる服装をしているが、服越しからも歴戦の猛者だということが窺える。その男が自分に一冊の本を手渡す。本のタイトルは

バージル「聖杯戦争?」

男は言峰綺礼と名乗り、バージルが読む所を追って聖杯戦争について語り始める
言峰「聖杯戦争―それは七騎の英霊をサーヴァントとして使役し七人のマスターが万能の器、聖杯へと至るための戦争。」

バージル「それが俺とどういう関係が?」

言峰「恐らくだが君の手には令呪というモノが宿っている。聖杯に認められしマスターの証だ。見た所魔術師といった風ではないが、聖杯が認めうるほどの待望が君には宿っているのだろうな」

バージル「確かに心当たりはあるが―貴様が何故その手引きを?」
返答次第では―といった含みを持たせながらバージルが問うと、目の前の神父は歪に釣り上った口角で答える

言峰「何、私は聖杯戦争の監督役を任されている者でね。公平な戦いを行うために知識のない者には施しをせねばなるまい。ただそれだけのことなのだが。」



3 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/29(日) 23:17:54.15 ID:WcZjyrPd0

この男は信用ならない―その気になれば始末も容易だろう。だが今はその時ではない、異国の地に単身乗り込み、向かってくる敵を切伏せるのはいつものことだが今回の聖杯戦争とやらは少し仕組みを知る必要がありそうだ。

言峰「バージルと言ったかな?魔術の心得は?簡易なものでも構わない」

バージル「錬金術程度なら問題ない」

言峰「それは結構、十分だ。教えるこちら側としては項目が少ないほど楽で助かるのでな。問題がないのであれば早速召喚に取り掛かりたいのだが」

無言で肯定の意を示す、それに伴い神父が歩を進める。図書館を抜け、教会と思わしき建物で薄暗い夕闇の中、英霊を呼ぶための召喚の儀が行われようとしていた

言峰「見返りを求めるという訳ではないが、君の願いを聞いてみたい。それほどの力を持っていながら聖杯に何を望む?」

日本に来て初めて笑みが零れた、いや笑うこと自体かなり久しい。言峰はあまりにも当然の事を聞いてきたのだから
バージル「決まっている」

言峰「その望みとは?」

そう、母が死んだあの日から、弟と生き別れたあの日から今まで抱き続けた変わらない願い

バージル「I need more power・・・・・!!!」



4 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/29(日) 23:21:30.88 ID:WcZjyrPd0

召喚の儀式は成功した。聖杯の力が働いているとは聞かされていたが恐ろしく簡単なものだった。確かに令呪からサーヴァントとのパスが通っているのを感じることができる。
何の触媒も用いず冬木の地に召喚したそのサーヴァントは、誰かを思い出すような鬱陶しい赤の外套を纏った弓兵だった

アーチャー「サーヴァントアーチャー、召喚に従いここに参上した。君が私のマスターか?」

アーチャー「・・・・ふむ。そちらの殺気を放つ方がマスターで間違いないかな?」

バージル「・・・・構えろ」

アーチャー「敵の気配は感じられないが?」

バージル「三度は言わん。構えろ」

アーチャー「そう言うことなら仕方ない。投影・開始―」

バージル「死ね」



7 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/29(日) 23:23:54.43 ID:UzEM8XzB0

マスターの方が強いだろ


8 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/29(日) 23:23:55.56 ID:WcZjyrPd0

疾走居合―一度の抜刀で生み出された複数の斬撃が弓兵に襲いかかる

アーチャー「疾い―!!」

バージル「その程度か?」

アーチャー「くっ・・・瞬間移動か?これでは距離すらとれん」
接近戦ではあまりにも向こうに分がある。しかし瞬間移動にも見える高速移動が距離をとることを許さない
バージル「どうした剣が鈍っているが?」

アーチャー「召喚されて早々にマスターと一戦交えるとは思ってもみなかったのでな」

バージル「これで終わりだ」

アーチャーの周りを魔力で編まれた剣が取り囲む

アーチャー「これは・・・・投影魔術?だが!」

上空に跳躍し幻影剣をかわす、投影魔術の対策は当然熟知している。そう自負していたアーチャーだが次の瞬間目の前には青の魔剣士が待ち構えていた




9 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/29(日) 23:27:19.09 ID:WcZjyrPd0

バージル「言ったはずだ。これで終わりだと」

アーチャー「グっ・・・私の敗北だ。しかし自分のマスターに殺されかけるとは思ってもみなかったぞ」
バージル「英霊相手と言うのも退屈らしいな」

アーチャー「いきなり斬りかかって来ておいてよく言う。戦いとは万全に準備をしたうえで行うものだと私は思うがね」

バージル「いかなる事態にも対応しなければならないのも戦闘だと思うが?」

アーチャー「これは一本取られたな。いや二本目と言ったところか。だがマスターよ、この傷では私はしばらく戦えん、そこは了承しておいてくれ。せいぜい警戒と偵察程度が限度だ」

バージル「・・・・構わん。ところで先ほどの戦い、アレが貴様の全力か?」

アーチャー「ふむ、全力は全力だが出す必要のなかった能力と出せなかった能力がある」

ふらふらする足取りでアーチャーが木に腰をかけ語り出す



11 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/29(日) 23:31:05.18 ID:WcZjyrPd0

アーチャー「まずはアーチャーの名が示す通り遠隔射撃を行うことができる。敵の居所さえ掴めば一方的に殲滅することも可能だろうよ。尤も先ほどの戦いは近接戦闘なので使う必要がないと判断したが」

バージル「貴様が距離をとれなかっただけだろう?」

アーチャー「―そしてもう一つが私の奥義とでも言うべきモノ。固有結界だ」

バージル「固有結界?」

アーチャー「術者の心象風景を具現化する魔法に近いとされる魔術だな。マスターほどの魔力があればかなりの時間の展開が可能なはずだ」

バージル「では貴様の心象風景とは?」

アーチャー「無限の剣、剣の丘さ。一度見た宝具をこの心象世界にストックしておくことが出来る。私の他の能力はすべてここより漏れ出す産物だ」




13 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/29(日) 23:34:03.07 ID:WcZjyrPd0

バージル「この閻魔刀も可能と?」

アーチャー「・・・・・不可能ではないが、見た所それは神造兵器に近い造りのようだ。あふれだす力は禍々しいがね、それを投影するとなると多大な魔力を消費する上に幾らかランクが落ちてしまうだろう」

バージル「―ではアミュレットは?」

アーチャー「?また何故アミュレットなど・・・こちらも目視さえすれば不可能ではない。が私の特性上剣以外のモノは精度が落ちる上に消費する魔力も割高だ」

バージル「中途半端な能力だ。―それはそうと言峰、貴様いつまでそこで見物を続けるつもりだ?」

言峰「監督役として召喚を最後まで見届けようとしたら急に戦闘が始まったのでな、勝手に動き回っても邪魔になると思ったのだが。」

バージル「行くぞアーチャー。それと言峰」

言峰「?」

反応する間もなく言峰のとなりにあった大木は二つに斬り裂かれていた

バージル「こうなりたくなければあまり俺の周りをうろつかんことだ」

言峰「承知した。君と私の緊張ある関係を尊重しよう。そしてバージル―君に聖杯の加護があらんことを」



12 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/29(日) 23:33:24.04 ID:QSx/Czib0

ダンテのサーヴァントは誰かな


14 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/29(日) 23:35:10.49 ID:WcZjyrPd0

>>12
ごめん3の前の設定で書いたしまったからダンテ出ない



19 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/29(日) 23:40:00.14 ID:WcZjyrPd0

教会

ギルガメッシュ「どういう風の吹きまわしだ言峰?」

言峰「何を言い出すかと思えば、私は聖杯戦争の監督役として当然の施しをしたまでなのだがな」

ギルガメッシュ「ハ、そのような動機で動く貴様でもなかろうに。白々しい、相変わらず建前だけは一丁前に見繕うか」

言峰「では、ここからは独り言を・・・・この前魔術教会より派遣されし一人の女魔術師が殺害された。マスターの証、令呪が宿った魔術師だ」

わざとらしく英雄王に背を向けあくまで体裁を保ちつつ神父が独白という形の会話を始める

ギルガメッシュ「・・・・・・」

言峰「本来ならそれを手にかけるのは私の筈だったのだが、どうやら別の者に先を越された挙句その者は手に令呪を宿したらしい。私では到底手に負えん相手だと判断したのでな、その大望の行方を導いてみるのもよし。と思っただけの事だ」

ギルガメッシュ「確かにあの男只の雑種とは違うらしい。今回の聖杯戦争は我を興じさせるや否や―楽しみだな」

不敵に微笑み薄暗い部屋を照らす蝋燭を見つめる。その炎の先にあるものを見つめるように―



20 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/29(日) 23:43:00.44 ID:WcZjyrPd0

ホテル
新都のホテルの一室をバージルは拠点とした。弟と違い無駄な浪費はしない為か向かって来た者の金品と不必要な魔具やオーブの売買で生活は十分に成り立っている

バージル「遅かったな」

アーチャー「マスター、大方のサーヴァントの位置は把握した。まだ出揃っていない組もあるようだが」

バージル「あの神父によればセイバーのクラスが現界していないそうだ」

アーチャー「中立を謳う監督役のすることとは思えんな。奴らしいと言えばそうだが、で報告の方だが・・・・」

バージル「判明している分で構わん。話せ」

アーチャー「では、まずこの地の聖杯戦争に深く関わる御三家。アインツベルン、遠坂、間桐の家はそれぞれの敷地にサーヴァントを構えているだろう。さすがにクラスの特定は出来ていないが」

アーチャー「続いて柳堂寺山門にてサーヴァントを確認した。とても暗殺者とは思えんが自らアサシンと名乗った。奴の話によると柳堂寺にはキャスターが構えているそうだ」

バージル「門番でも任されていると?」

アーチャー「まぁそういうことだろう。何があってそうなったまでは知らんがね」

アーチャー「ここまで話せばわかるだろうが・・・・・」

バージル「御三家とやらはランサー、ライダー、バーサーカーを引いたか」

アーチャー「そういうことになる。私が戦列に加わるにはもう少し時間がかかるがどうする?」

バージル「―まずは御三家とやらに悪魔の力を思い知らせてやろう」



21 忍法帖【Lv=16,xxxPT】 2012/01/29(日) 23:44:30.51 ID:cVH6uV690

御三家オワタ


24 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/29(日) 23:48:01.93 ID:WcZjyrPd0

学校
「おい嬢ちゃんよ」
放課後屋上には二つの影があった。一つは学生の姿、もう一つは声の主。平和な学び舎に似つかわしくない呪いの魔槍を携えた槍兵が

凛「その呼び方はやめなさい、ランサー」

ランサー「あぁそうだったな。はいよ、ところで」

凛「分かってるわ。見られてる・・・・ここまでの殺気を隠す気もないなんてどういう奴なのかしら」

ランサー「バーサーカーじゃねぇのか?どっちにしろ夜になりゃ分かる。覚悟決めときな、マスターさんよ」

遠坂凛は夜を待つ。視線の主が最強の魔剣士とは知らず―聖杯戦争は幕を開ける


気付けば青のコートを纏った剣士は目の前に居た。ランサーの反応が遅かったわけではない、だが気配を感じた次の瞬間。そこにはまるで何時間も待たされたような顔で今にも斬りかからんとする者が現れた

ランサー「ようやくお出ましか、下がってな嬢ちゃん」

凛「分かった。後はお願い」

ランサー「やっと来たか、待ちくたびれたぜ」

こいつは期待を裏切らない。数々の戦いを経験したランサーの勘ははっきりそう告げている。



26 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/29(日) 23:51:41.06 ID:WcZjyrPd0

バージル「それは済まない。怯えて出てこれないものと思っていた」

ランサー「抜かせ!得物から見るにセイバーだがそのツラと随分あわねぇ得物だな、どこの英霊だ?」

バージル「心外だな、英霊如きと同じ括りにされるとは。敢えて言うなら魔界と言ったところか」

ランサー「訳の分からねぇことを・・・まぁいい、戦えば分かることだぁ!!」

バージル「―屑が!」

ランサー「ちぃっ!!」

魔剣と魔槍がぶつかり合う。速さに関しては自信があったランサーだが完全に上回られている、だがそれ以上にランサーを焦らせるのは剣士が持つただならぬ気配。半神である自分と似ていて、それでいて決して違う何か。

バージル「やる気があるのか・・・・?」

ランサー「やる気も何も・・・・最初からテメェみたいな奴とやりあえるなんざ今回は楽しめそうだってもんだ!」




27 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/29(日) 23:55:01.51 ID:WcZjyrPd0

衛宮士郎には理解しがたい光景だった。あり得ない速さで人らしきモノが戦っている。人らしきモノと表したのは心のどこかでアレを人と認めなかったのかもしれない

士郎「な・・・何なんだよコレ」

バージル「―招かれざる客が来たか」

凛「そんな・・・・まだ人がいたなんて」

ランサー「待ちやがれ!」

かなりの距離を走った。奴等ほどではないが体力には自信があるここまで逃げれば追ってはこないはずだ。誰もいない廊下に腰をおろし呼吸を整えつつ思考を整理する

士郎「ハァハァ・・・何だったんだアレは」

バージル「ほう、人間にしてはなかなかの身のこなしだ。人間にしては、の話だがな」

思考を整理する間もなく、後悔する間もなく、何にもなれないまま無慈悲に衛宮士郎の胸は貫かれた



28 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/29(日) 23:57:49.16 ID:WcZjyrPd0

士郎「―なっ?」

バージル「力なき者は自らの命すら守れない。哀れだな」

士郎「痛―ぁっ」

バージル「次に生を受けた時は力を求めろ、何よりも」

薄れゆく意識の中衛宮士郎の頭は父の言葉ではなく不思議なことに青の剣士の言葉で満たされていた

『力を求めろ』

そのまま衛宮士郎は眠りに落ちた。力が欲しい。そう思いながら



凛「遅かった・・・・」

ランサー「ここまで綺麗な切り口はアイツだろうな」

駆けつけた時には既にその生徒は倒れ制服は血で塗れていた。せめて運ぶくらいはしてあげないと―責任感にも似た感情がこみあげ手を差し伸べる

凛「―!まだ息がある・・・・これなら!」

ランサー「オイオイ、それとっておきじゃなかったのか?誰かがやられるたびに使ってちゃもたねぇぞ?」

凛「いいのよ!ケチケチしないの!もう犠牲者を出さなきゃいいんだから!!」

ランサー「そうかい。んじゃ好きにすると良い」



37 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 00:18:29.37 ID:6787ovxI0

呆れた顔のランサーそっちのけでとっておきの一つを手にする。父から貰った貴重な宝石、決して易々と使っていいものではない。それでも使わずにはいられなかった、犠牲者をこんな最初に出してはいけない。何故彼が―そして自分が誇り高き遠坂の魔術師なら尚更のことだった

凛「・・・・・これで大丈夫なはず。切り口が綺麗だから助かったわ」

凛「さ、行きましょランサー。まだやれるでしょ?」

ランサー「たりめェよ。ちょっくら先行って探してくるぜ。何かありゃ令呪で呼びな」

凛「分かった・・・・それにしてもさっきのはどこの英霊かしら・・・・」



目が覚めると廊下に居た。混濁する記憶の中、血でぬれた制服を見て刺された事をようやく思い出す

ここに居ても仕方がない。まさかアイツもあれで死んでないとは思っていないはずだ。
なら家に帰ろう。桜達は大丈夫だろうか。そんなことを思いながら士郎は帰路についた

衛宮邸

士郎「傷が治ってるってことはやっぱり・・・・俺は刺されたんだよな」

電気もつけないまま居間に座り込む。信じたくはないが赤黒く変色した血が刺されたことを雄弁に語っている。
 
バージル「人間にしてはしぶといな。魔術師の類か?」

士郎「―!!何処から・・・くそっ」

一瞬の事だった。目の前に男が現れると同時に警報が鳴り響く。今度はタダではやられない―足元にあった鉄製のポスターに魔力を通し強化する。これならそう簡単にはやられないはず・・・・だった



41 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 00:25:48.48 ID:6787ovxI0

バージル「強化の魔術か、筋も悪くないが―それで終わりだ」

何が起こったかも分からないまま、強化したポスターは形を失っていた

士郎「畜生何なんだ・・・・・!こんなところで死ぬわけには・・・・・」

せめて武器を―全力で蔵へ向かう。あそこになら何か切嗣の残したモノがあるはず。
バージル「人間にしては良く走る。便利屋でも営めば稼げただろうな」

全力で走ったのをあざ笑うように男は士郎を追い越す。次の瞬間鞘による一撃が脇腹に叩き込まれ蔵の屋根まで吹き飛ばされる

バージル「力なき自分を呪うといい。力こそ全てを制する」

士郎「くそっ――!俺に力があれば力が・・・・!!!」

もう助からない。自らの無力さを呪った―そう覚悟した時、目を開けると美しくありながら凛とした少女が剣士の一撃を阻んでいた

バージル「―!?貴様もマスターだったとはな小僧」

セイバー「サーヴァントセイバーここに参上した問おう。貴方が私のマスターか?」

士郎「・・・・・・」

言葉が出ない。再び命の危機に瀕しているにも拘らず目に前に少女のあまりの美しさに見とれてしまった



45 忍法帖【Lv=16,xxxPT】 2012/01/30(月) 00:28:11.26 ID:8IR41yWL0

バージルさんマスターなのに前線で戦い過ぎです


49 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 00:31:22.44 ID:6787ovxI0

セイバー「話は後にしましょう。―私の相手はお前だな?」

バージル「俺の相手はどこだ?よもやセイバーのサーヴァントが小娘ということはないだろうな?」

セイバー「ならば敵ですらない小娘に斬り伏せられた無銘の剣士になろうとも異論はないな?」

バージル「ほう、スパーダの血を無銘と?―いいだろう、思い知るがいいスパーダの力をな」

ランサー「こっちだ!もうやりあってるみてぇだぜ!」

凛「何でアイツがまた殺しに行くって分からなかったんだろう私のバカ・・・」

屋敷に入ると小柄な少女が一人と男が一人、両者ともセイバーのクラスにふさわしい圧倒的な身体能力を持っている

ランサー「―セイバーが二人?」

押されているのはセイバーであった。純粋な剣技ではややあちらに分がありマスターからの魔力供給が乏しくこのまま続けてもジリ貧になる。宝具をもってすればこの男でも―しかしこんなところで宝具を使えば周囲に被害が及ぶ―そんなことはできない

セイバー「くっ・・・ここで宝具を開放するわけには・・・」

バージル「どうした?」

ランサー「どうながってやがんだ・・・・」

凛「いいから行って!あの青い方を狙って!」

ランサー「俺含めて全員青じゃねぇか、まぁいいどいつをやるかは分かり切ってるからなぁ!!!」



51 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 00:33:57.64 ID:Xm16jLkQ0

全員青いワロタ


53 忍法帖【Lv=16,xxxPT】 2012/01/30(月) 00:35:52.69 ID:8IR41yWL0

青タイツに青鎧に青コート


54 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 00:37:45.27 ID:6787ovxI0

バージル「・・・・力なき者は徒党を組むか」

セイバー「貴方はランサーか?何故貴方が?」

ランサー「元々ソイツは俺の獲物でな、まぁ今回そんなこと言ってられる場合でもねぇ。マスターのご所望でもあるんでな、加勢するぜ」

セイバー「了解した。、事情は後で窺おう背中は預けたぞランサー」

ランサー「そういうお嬢さんこそ頼んだぜセイバーさんよ」

バージル「―話は済んだか?」

ランサー「あぁ、これから二人でお前をとっちめようって話だ」

バージル「―来い」

ランサー「はぁぁぁぁ!!」

バージル「調子に乗るな」

ランサー「何っ!?」

ランサーが斬りかかると同時にバージルの周りを幻影剣が主を守るかのように取り囲む。とっさに身を引き回避する。

次に構えたのはバージル、居合の構えと同時に繰り出されたのは次元斬―次元を切り裂く連続斬撃がセイバーとランサーを襲う



61 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 00:42:53.09 ID:6787ovxI0

セイバー「投影した剣を周囲に展開・・・・これでは迂闊には近づけない」

ランサー「かと言って中距離じゃ奴に分がある、か」

バージル「貴様等にも奥の手はあるのだろうが―二人がかりでこれとはな」

納刀した次の瞬間には青の魔剣士は屋根の上に月を背負う形で立っていた

セイバー「待ちなさい!逃げるのですか!」

バージル「次会うときは決殺の覚悟を持って来い。その時は我がサーヴァントと共にもてなそう」

凛「ランサー追って!」

ランサー「いくら俺でもありゃ無理だ、速すぎる。追えたとしてもアイツのサーヴァントまで相手するのは危険だ」

セイバー「マスター我らはどう動きますか?マスターが追えというのなら今すぐにでも」

士郎「ちょ、ちょっと待ってくれ。展開が急すぎて混乱してるんだ。もう何が何だか・・・・」



68 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 00:48:36.59 ID:6787ovxI0

ランサー「はぁ!?じゃあ坊主、お前何にも分からないでセイバー呼び出したってのか?」

士郎「多分・・・そういうことになる。良く分からないけどアイツも遠坂も俺と同じマスターってのになっちまったのか?」

凛「あいつはともかく、ほとんど素人の衛宮君と一緒にしないでくれる?ほら、説明してあげるから家に入れてくれるかしら」

士郎「それは構わないけど・・・・今は無茶苦茶だぞ?」

凛「呆れた。その程度の修復もできないレベルだなんて・・・・本当に素人なのね」

士郎「だから言ってるじゃないか!本当に何が何だか分からないんだ」

凛「はぁ・・・・いいわよ。そういうことで貴女も異論はないかしら?」

セイバー「えぇ。その方が私としても助かります」

凛「じゃあランサーさっきの奴がサーヴァント連れてくるかもしれないから見張りお願い」

ランサー「はいよ」

凛「じゃあ説明するわね。あまり何度も繰り返したくないから、しっかり聞きなさい。聖杯戦争とは―」
こうして衛宮士郎は聖杯戦争に巻き込まれる―自らの未来を相手に、伝説の英雄の血族を相手に




72 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 00:55:52.79 ID:6787ovxI0

ホテル

バージルがホテルへ帰るとアーチャーは備え付けの紅茶セットを少し不満そうに淹れソファーにもたれ掛かっている

アーチャー「今帰ったかマスター。こちらは先に終わったのでな一息入れさせてもらっている」

バージル「そうか」

アーチャー「その様子だと何かいいモノでも見つけたか?」

バージル「退屈しのぎくらいにはなりそうなモノをな」

アーチャー「マスターが直々に動いてくれるのであれば私の負担も少なくて済む。それはそうと何故地獄門などを?」

地獄門―――魔界と人界を繋ぐ門であり、ギルバと名乗っていた過去に幾度か開いたこともある。

もっとも大規模なモノは不可能だったため低級悪魔が行き来でき、周囲を魔界に近い空間に近づける程度のモノだったが、

それでも有用と考えバージルはアーチャーに簡易地獄門を開かせていた



74 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 01:02:08.84 ID:6787ovxI0

バージル「こそこそと見物を決め込まれても困るのでな。悪魔を放っておけば嫌でも偵察には出なければならないだろう」

アーチャー「もし疲弊した後に悪魔に襲われ敗北するようなサーヴァントがいたら?楽しみが減るのではないか?」

バージル「その程度のサーヴァントなら俺が相手をする価値もないということだ」

アーチャー「そう来ると思っていたよ。マスターの程の力がなければただの笑いの種にしかならんセリフだな。しかしマスターよ答えたくないなら聞き流してくれてかまわないが、それほどの力を持ちながら聖杯に何を望むというのだ?」

バージル「決まっている。―力だ、力こそ全てを制する。力なくしては何も守れなどしない」

強い意志で言い放ったバージルとは相対的にアーチャーの反応は冷ややかな苦笑いを含むものだった

バージル「何が可笑しい?」

アーチャー「いやあまりにもストレートだったのでな。マスターらしいと言えばそうなのだが、気に障ったのなら謝ろう」



76 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 01:08:28.72 ID:6787ovxI0

バージル「ほう、では貴様の望みとは?万能の器に何を望む?」

アーチャー「マスターとは真逆だ。力を放棄したいと言ったところかな」

バージル「どういうことだ?」

アーチャー「マスターは力を得ることが目的だが私は違った。私は身に余る目的の為に力を欲した、私がそう思うこと自体間違いだったのかもしれない」

バージル「・・・・・・」

アーチャー「結果的に私は力を手に入れた、私はその力で剣とった。だが私の力ではどうにもならないことが起こってね、それを叶える代償として私は英霊となった。英霊となってようやく気付いたのだ。私が求めた目的は無意味だったのだと」

バージル「―故に手放すと?」

アーチャー「あぁ、嗤ってくれて構わない。凡庸な身で大望を持った愚かな男の末路だ」

バージル「愚かだなアーチャー、愚かだ。何故さらなる力を求めなかった?」

アーチャー「昔の私がそれを聞けば耳を傾けただろうが―すべては過去だ。今となってはこの忌まわしい連鎖から逃れる方が望ましいな」

バージル「・・・・・・」

アーチャー「そんな顔をするなマスター、こと戦闘においては全力を出すことを誓おう。私もかなえたい望みはあるのでな。さぁマスターも一杯どうだ?」

あらかじめ用意していたティーカップに紅茶を慣れた手つきで淹れ、差し出す



79 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 01:15:31.03 ID:6787ovxI0

バージル「フン、悪くはない」

アーチャー「それはどうも。淹れた甲斐があったというものだ」

教会
言峰「青い剣士のマスター?聞き及んでいないがそれがどうしたというのだ」

凛「そう、ならいいんだけど。魔術師って見てくれじゃなかったし教会に顔出してないのも仕方ないか」

言峰「分かっていて私に聞くとはタチが悪いな凛」

凛「それアンタにだけは言われたくないわ。もういいからさっさと詳しい説明してあげて」

言峰「衛宮士郎と言ったかな?では監督役の私から説明しよう―」

言峰「―長くなったが言うべきことは伝えたぞ。喜べ少年君の願いはようやく叶う」

教会を後にし、帰路につく。理屈の上では納得できたが半日もたたないうちにさまざまなことが起こりすぎたためか未だに脳が付いていかない



91 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 01:25:44.12 ID:6787ovxI0

士郎「アイツが言いたかったのはどういうことなんだ・・・・・・」

凛「別にアイツの言うことなんか気にしなくていいのよ。昔っからあんな分かりにくい話し方だし」

イリヤ「あら、悪魔がうろつくような物騒な夜に考え事かしら?」

セイバー「マスター下がって。―悪魔とはお前の事ではないのか」

イリヤ「人が親切に教えてあげたのに失礼しちゃうわ。もういい、皆にはここで死んでもらうから。バーサーカー!」

バーサーカー「■■■■■■■―――ッッッ!!」

ランサー「こいつはチトきつそうだな」

セイバー「やぁぁぁぁぁぁぁ!!」

ランサー「せやぁぁぁぁぁぁ!!」

バーサーカー「■■■■■■■―――ッッッ!!」

セイバー「グッ・・・・」

マスターである士郎からの供給不足が原因で先のバージル戦でのダメージが癒えていない思うように体が動かない




97 母が死ぬまでは多分おしゃべりだったと俺は思うんだ 2012/01/30(月) 01:35:31.87 ID:6787ovxI0

ランサー「何だもうへこたれたのか嬢ちゃんよぉ―チィ!」

セイバー「魔力の供給が万全であればこんなッ・・・・・」

イリヤ「そんな粗末なサーヴァントじゃ私のヘラクレスに勝てるわけないじゃない。骨すら残さないんだから。でも、お兄ちゃんだけなら見逃してあげてもいいかな」

士郎「何言ってるんだ!もうこんなことやめさせろ!!」

イリヤ「貴方に選択肢なんてあるわけないじゃない。弱い士郎は私が守ってあげるんだから」

セイバー「コレは・・・・」

周囲に瘴気が立ち込め、悪魔が姿を現す。砂を媒体にした低級な悪魔だが数で囲まれるとサーヴァントであっても厄介であり、人の身であるマスターはそれ以上に危険である

ランサー「悪魔か!?おいこのくらいなら任せても大丈夫だな!俺はこのままバーサーカーと戦うぜ!」

凛「分かってるわよ!!衛宮君!!私のそばを離れないで!!」

士郎「―俺には力がない・・・・・」

凛「ちょっと!?衛宮君聞こえてる!?」

士郎「あんなに小さな女の子が戦ってるのに俺は何もできない?―ふざけるな!!」



101 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 01:41:06.01 ID:6787ovxI0

声が聞こえる。胸を貫かれた時、再び死の間際に立った時あの男は言った

『力を求めろ、何よりもな』『力こそ全てを制する』

士郎「バーサーカーは無理でもあいつらを倒せる武器―剣を!!」

手が焼け切れるほどに熱い、出来ればアイツの剣が欲しかった。だが手には黒と白の対になった双剣が握られていた。

凛「投影・・・・・魔術?」

士郎「はぁ・・・はぁ・・・・これなら行ける!!」

士郎「うぉぉぉぉぉぉ!!!」

セイバー「士郎・・・・私はいいからせめて自分の身を・・・・逃げて」

士郎「やっぱり女の子が戦うなんておかしいんだよ!大丈夫だ剣がある。セイバーほどじゃないけど俺だって戦える!!」



107 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 01:58:48.02 ID:6787ovxI0

イリヤ「あーあ、みんな弱くてつまんない。邪魔も入っちゃったし、いこっバーサーカー」

ランサー「俺が弱いだと?待ちやがれ!!―チィッ!この悪魔どもはどこから湧いてきやがる!!」

凛「キャスター辺りが妥当かしら?まぁ一番の敵は去ってくれたみたいね。さ、ここからはアンタも悪魔狩りよ、ランサー」

ランサー「そうするしかねェわな。それじゃ行くか!」

溜った鬱憤を晴らすかのように呪いの魔槍を振るうランサーの手により大半の悪魔は瞬く間に消え去り、士郎の健闘もあってか1分足らずでその場の悪魔は完全に駆逐された

ランサー「何とか片付いたな」

凛「ふぅ、結構疲れるのね悪魔狩りって」

士郎「はぁ・・・・はぁ。終わったのか・・・・?」

凛「それじゃここで解散としましょうか。セイバーもその様子だし衛宮君達は帰って休むのが賢明ね」

士郎「そうだな、ありがとう遠坂。色々と助かった」

凛「勘違いしてるようだから言っておくけど悪魔で素人だったあなたに最低限の知識を与えただけ。明日からは勿論敵同士だからそのつもりでいなさい」

士郎「それでもだよ、俺がこうしてマスターでいられるのは事実遠坂のおかげなんだし」

凛「と、とにかく!明日からは敵同士だから!!いい!?」



111 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 02:05:56.64 ID:6787ovxI0

士郎「分かった分かった。じゃあな。立てるか?セイバー」

セイバー「はい・・・・申し訳ありません」

士郎「(あの剣士が言っていた言葉が妙に胸に残ってる・・・・・・・力を求めろ・・・・か)」

ホテル

アーチャー「傷は大方癒えた、今日からは私も戦線復帰だがマスターよどう動く?」

バージル「アサシンとキャスターだ、魔術師風情に見物を決め込まれるのは不愉快でならん。俺がアサシンを」

アーチャー「二人でアサシンを仕留めた後キャスターを叩く方が確実だと思うのだが」

バージル「生憎俺は貴様ほど脆弱ではない。嫌なら俺が一人で出向こう」

アーチャー「やれやれ、ではマスターの方針に従うとしよう。しかし果敢なのもいいがいつかそれでは身を滅ぼすぞ、マスターよ」

バージル「その時はさらなる力を求めるだけの事だ」

アーチャー「行っても聞かん、か。まぁ私は自分の目的を果たすとしよう」

バージル「夜まで待たなければならないとは―随分呑気な戦争だ」



113 書き終わった 遅くてごめんなさい 2012/01/30(月) 02:10:53.44 ID:6787ovxI0

遠坂邸

あまりにも無防備な士郎に腹を立て襲いかかる凛だったが何者かによる襲撃があり一時停戦することとなった

凛「これからは一時休戦にしましょう。学校のマスターの方が厄介だわ」

士郎「あぁ、いきなり学校で撃ってきたときはびっくりしたけどな」

凛「アレは貴方が悪いんでしょ!!サーヴァントもつれてこないなんて馬鹿じゃないの?」

士郎「仕方ないじゃないか。霊体化できないんだしセイバーは傷ついてる」

凛「その優先順位もおかしいのよ・・・・」

どう考えてもおかしい。自らの命あってのサーヴァントなのに、そう思うと口に出さずに
はいられなかった

士郎「とにかく学校のマスターを倒してライダーを止めればいいんだろ?俺は無事だしそれでいいじゃないか?」

凛「もういいわよ!そのかわり同盟結んでる間は勝手に死なないでね。組んだ私の格まで下がるから」



115 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 02:14:37.38 ID:6787ovxI0

ランサー「言わなくても分かってるよ」

凛「ちゃんと送り届けなさいよ」

ランサー「へいへい」

帰路

士郎「悪いなランサー」

ランサー「マスターのご所望だからな、逆らうと何されるかわかったもんじゃねぇ」

士郎「ハハ、それもそうか。まさか遠坂があんな奴とは思ってもなかったからなぁ」

ランサー「ありゃ大した猫かぶりだわな。ところで坊主、お前魔術はてんで出来ないんじゃなかったか?」

士郎「分からない、でも戦わなきゃならないって思ったら剣を投影出来てた」

今でもあの感触が残ってる。思い返せば剣士に胸を貫かれた時僅かながら双剣のイメージが流れ込んできたのを思い出す

ランサー「案外才能あるのかもな、剣の筋も悪くねェしな。いつでももんでやるぜ」

士郎「それは助かるよ。力は早い内につけておきたい。セイバーを守らないと―」

ランサー「気持ちは分かるがあまり生き急ぐなよ坊主。」

士郎「女の子が戦うなんておかしいんだ―俺だって戦える」

戦うことが出来ればセイバーを守れる―きっと



117 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 02:17:09.48 ID:6787ovxI0

柳堂寺前
アサシン「ほう、今日は随分と変わった客人だ。この前の弓兵も一緒か、さて俺の相手はどちらか」

バージル「――貴様の相手は俺だ」

アサシン「その得物とは似合わん面だが――実力は大丈夫か?」

洋風の端正な顔立ちに青のコート。いずれも繊細な拵えの日本刀を持つ者としてはあまりにも奇異な格好だ

バージル「試してみるといい。――楽しむ前に倒れなければの話だが」

抜刀と同時にすさまじい殺気が周囲を覆う。並大抵のものであれば身動きできなくなる程の殺意は魔剣士の実力を示すに十分なものだった

アサシン「それは結構。俗世に呼び出された甲斐もあったというもの!!」

バージル「――では」

アサシン「いざ尋常に勝負!!」




120 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 02:19:59.43 ID:6787ovxI0

柳堂寺庭内

キャスター「あら、私の門番は何をしていたのかしら?」

アーチャー「あの侍なら私のマスターと交戦中だ。街に悪魔がはびこってる今貴様の魔力招集も遅れているだろうからな。早期に叩かせてもらう」

キャスター「マスターがサーヴァントと?あなたのマスターは死にたいのかしら?」

アーチャー「普通ならな」

寧ろ死ぬのは―と言いかけて口を噤む

キャスター「―?どういう意味かしら」

ただの負け惜しみには見えない。しかしこれ以上聞いたところで割るような男でもなさそうだ

アーチャー「そのままの意味さ。真っ当な魔術師ではないということだが。さて、もういいかな?」

キャスター「見逃して―と言っても無駄そうね?」

言葉とは裏腹にキャスターは結界によりアーチャーの行動が制限されているのを確かに感じていた



121 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 02:22:39.28 ID:6787ovxI0

アーチャー「I am the bone of my sword―」

「我が骨子は捻れ狂う、偽・螺旋剣Ⅱ(カラド・ボルグ)!!」

爆風が吹き荒れ砂埃を巻き起こす―威力が十分ではないとは言え確かに手応えはあった

アーチャー「さすがに魔術師―この程度では倒れてくれんか」

刀と刀が火花を散らしぶつかり合う。常人ではとらえきれない速さで魔剣士と侍は既に打ち合うこと100合以上に達しようとしていた

バージル「ほう、元は人の身でありながら互角に俺と打ち合うとは―」

アサシン「その物言いだとまるで自らが人ならざる者と言ってるように聞こえるが?」

バージル「―だとしたら?」

アサシン「この強さにも納得がいく」

アサシン「(とは言え―力も得物も向こうが上とあっては地の利程度は者の数にはいらんか、あの女狐もそう蓄えはあるまい。弓兵を相手は無理があるか?)」

アサシン「フッ」

バージル「その笑みは諦観か?」

アサシン「いやぁこれほどの剣士と打ち合えるとは夢にも思わなんだ。出来れば刹那でもこの時を楽しみたいのだが――どう転んでも時間は限られているらしい」



124 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 02:26:10.92 ID:6787ovxI0

バージル「こちらは貴様の遊びに付き合ってやるわけにもいかないのでな」

アサシン「哀れみで加減されるよりはよさそうだ」

アサシンが構えるとバージルが大きく跳躍し一直線に魔剣を振り下ろす

バージル「消し飛べ!」

アサシン「グッ・・・・マスターよりこちらが先に参るとは・・・いや残念」

とっさに刀を盾にしたがその全ては受け流しきれず刀を持つ手が震える。そして得物の決定的な違い―刀には所々ヒビが入り震えるのはおそらく次の一度が限度だ

バージル「フン・・・・どうした?」

アサシン「そう言うな・・・・最後に我が秘剣、その目に刻んでいけ」

バージル「少しは楽しめそうだな」

アサシン「ゆくぞ、秘剣―――燕返し!!」

三方向からの同時斬撃―その一撃は確かに魔剣士の脇腹を抉った



128 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 02:28:46.91 ID:6787ovxI0

バージル「俺と同じ次元に辿り着くか―少し本気を出すとしよう」

アサシン「これで倒れぬか、まるで知っているような動きだったが何故だ?」

バージル「貴様も最後に見るといい―立っていられればだが」

絶刀―――数十の同時斬撃が周囲を切り裂く。木が、草が、空間が全て閻魔刀の前ではいとも簡単に切り裂かれ元の形を失っていく。それがアサシンの目にした最後の光景だった

アサシン「なるほどな・・・・・同じ次元とはよく言う・・・・ここまで先を行かれるとは・・・・剣技にも磨き甲斐がある・・・な・・・・」

バージル「―安らかに眠れ」

独特の納刀と共に振り向くことなく門へと向かう。



129 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 02:30:29.68 ID:ysoDs9/V0

攻撃当たったところで大して意味ないのが酷いな
しばらく打ち合えるだけでも異常なんだろうけど



130 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 02:31:48.05 ID:6787ovxI0

思いのほかアーチャーは劣勢を強いられていた
美しい邸内には場違いな竜牙兵がアーチャーをとり囲む
一体辺りの戦闘力は恐れるに足らないが結界内で弱体化していること、敵が竜牙兵だけではないことがアーチャーを苦戦させる

アーチャー「ここまで敵が多いと手が回らんな・・・・」

葛木「何処を見ている?」
葛木の拳がアーチャーに襲いかかる
まるでそれが別の生物のように軌道を変える拳撃は心眼を持つアーチャーと言えども対多数の状況では防戦に徹せざるを得なかった

アーチャー「チィッ!お前のマスターも人の事を言えんな」

キャスター「ただ行使されるだけの貴方と同じような立場にしないでほしいわ」

葛木「キャスター、魔力の補充を」

キャスター「はい、ですが総一郎様ご無理はなさらずに」



バージル「―――いつまで遊んでいるつもりだ?アーチャー」



133 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 02:34:47.30 ID:6787ovxI0

苛立ちを含んだ声と共に庭内を殺気が包み込む
その場にいた者はアサシンを倒した魔剣士を前に身動きできずにいた

アーチャー「遅いぞマスター、これでもざっと100は倒したのだが。それにサーヴァントとマスターも相手となってはな」

周りの者とは対照的に悪態をつくアーチャー
それもそうだ。各個撃破よりも共同戦線の方が良いと提案して案の定苦戦を強いられる羽目になったのだからアーチャーとしては良い気がしない

バージル「固有結界を使え」

気にする様子もなくアーチャーに告げる
サーヴァントの宝具を明かす―――バージルはここで勝負を決めるつもりなのだ

アーチャー「了解したその間は任せたぞ」

「I am the bone of my sword―」

バージル「貴様等の相手は俺がしてやろう」

幻影剣が葛木に襲いかかる。それを手で打ち砕くが既に目の前にはバージルの姿があった



136 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 02:36:57.15 ID:6787ovxI0

バージル「つまらんな」

葛木「―!!」

一閃を拳でガードするが一撃でキャスターから補充された魔力は消し飛び、血が噴き出し骨もいくつか損傷してしまった

バージル「もう手は使い物にならんか?」

キャスター「総一郎様!!」

次の一撃を見舞おうとした時キャスターの魔術により攻撃を阻まれる

葛木「まだ行ける、応急処置で構わん」

バージル「屑共が!!」

バージルの苛立ちは最高潮に達しようとしていた。もとより彼は1対1の純粋な勝負に拘るタイプでありこのような数に任せる戦法は何ら低級悪魔を屠るのと変わりがない。それでいて相手は英霊等と強者のように扱われるのだから

アーチャー「さて、待たせたなマスターよ。」

このままでは暴走しかねない絶妙なタイミングでアーチャーが声をかける

「―So as I play unlimited blade works」



138 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 02:39:21.25 ID:6787ovxI0

目の前に広がっていたのは無数の剣が広がる広大な丘。無骨でありどこか物哀しげな世界は赤の弓兵の数奇な人生を語っているかのようだった

キャスター「これは・・・・固有結界・・・・?」

アーチャー「御覧の通りこれが私の固有結界、これより貴様らが挑むのは無限の剣だ」

バージル「退屈凌ぎにはなりそうだ」

剣の一振りを手に取り演武を披露する。耐久度使用感共に実物の剣に何ら相違はなく魔具を手にした時と同じ独特の高揚が沸き立つ

アーチャー「それは結構。ここの剣は全て使ってもらって構わない」

バージル「―少しは本気を出すか」

最強の悪魔による蹂躙が始まった。剣は振るわれ、投擲され、破壊され、爆風が吹き荒れる。無数の剣を自在に操り数秒もたたないうちに五十は居たであろう竜牙兵は無残に切り刻まれていた



142 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 02:42:48.88 ID:6787ovxI0

アーチャー「担い手ではないが―いや我流に使いこなしていると言ったところか。結界の持続時間も桁違いだ、良くアレと戦って死なずに済んだな私も」

アーチャー「さて、残ったのはお前達だけだが?」

キャスター「総一郎様!貴方だけでもお逃げに―」

この者には敵わない。ならせめてあの人だけでも―

バージル「―何処へ?」

ここは敵の固有結界内、最初から逃げる場所などどこにもなかったのだ

キャスター「無事ですか?総一郎様・・・・?」

葛木「――あぁ」

キャスター「そう・・・・よかっ・・・た」

最後にあの人を守ることが出来た。キャスターの最後は裏切りの魔女とは思えない程の柔らかな笑顔だった

葛木「―――ぐぅっ」

キャスターが身を呈する前に葛木はバージルの一撃を受けていた。
朽ち果てた自分が何故彼女を心配させまいとしたのか。最後まで分からないまま葛木は息絶えた

バージル「――退屈だな」



144 >>143幻影剣は簡易投影魔術と脳内補完してください 2012/01/30(月) 02:46:36.99 ID:6787ovxI0

垂れ下った髪を乱雑にかき上げる。アサシンに比べればキャスターとの戦いは酷くつまらないとバージルは評する

アーチャー「緒戦はこんなものか、今日は引き上げよう。ここまで派手に暴れたのだ、寄ってこないサーヴァントの方が少ないのではないか」

マスターに撤退を進言する。自分のマスターに限ってやられることはないだろうがどこか彼からは無謀な危うさを感じる。
自らの目的の為にも敗北は許されない。残るサーヴァントが如何に屈強な敵であるかを知る彼だからこそ慎重にならざるを得なかった

ホテル

バージル「何の用だ言峰」

扉を開けると神父姿の男が一人と影に隠れて見えないが華美な甲冑を纏った男が一人

言峰「済まないな。勝手だが上がらせてもらっている」

?「待ち侘びたぞ?王であるこの我を待たせるとは―まぁ良い。まずは座れ、特別に赦す」

魔剣士と英霊を前にして男は平然と高圧的な態度を取った



147 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 02:49:31.69 ID:6787ovxI0

アーチャー「勝手に入ってきておいて良く言う。」

このままではまずい。マスターが顔をしかめるのを感じ牽制の意味を込めて皮肉を言う

?「貴様になど用はない贋作者。我の興味は貴様のマスターだ」

バージル「誰だ貴様は?」

尚も幅からぬ態度の男にバージルが痺れを切らし、ますます場の空気は凍りついていく

言峰「英雄王ギルガメッシュ―以前の第四次聖杯戦争の勝者であり、聖杯の力によって呪肉し限界し続けているサーヴァントだ」

場の空気を読む者がもう一人。これ以上ほっておくとどうなるか分からない
アーチャーは胸をなでおろした

ギルガメッシュ「ふむ、掃いて捨てるような凡夫ならこの非礼万死に値するが―貴様のその刀、只の刀ではあるまい?それを保有する貴様も、だ。この我が原点どころか枝別れの品すら持ち合わせんとは一体その刀の正体や如何に?」

しかし肝心の英雄王は空気を読まない



151 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 02:54:49.65 ID:6787ovxI0

バージル「――失せろ」

さっきからこの男の態度は気に入らない。閻魔刀を握る手に自然と力がこもる

ギルガメッシュ「まぁそう言うな。我とて奪いに来たのではない。まずはその魔剣の価値を見極めたくてな。そうだ、特別に酒にも招待してくれよう。」

バージル「三度は言わん。――失せろ」

スパーダの血族である自分を前にこの高圧的な物言い。これで引かねば――

ギルガメッシュ「今の状態で我とやりあえば――立っていられるのはどちらか分からん貴様でもあるまい?」

先に殺意を表したのは英雄王だった。決して広いとは言えないホテルの一室を大量の宝具が埋めつくす
アーチャーは元より、消耗しているとはいえバージルにさえそれは脅威と認めざるを得ないものだった

バージル「――閻魔刀。スパーダが愛用していた剣の一振り」

僅かに出ていた刀身を鞘に戻す。質問には答えるが当然慣れ合うつもりはない



152 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 02:57:05.50 ID:6787ovxI0

ギルガメッシュ「スパーダ?」

アーチャー「伝説の英雄―――魔剣士スパーダ。2000年前に悪魔の身でありながら反旗を翻し魔帝を打倒。その後世界各地を放浪、英雄的活動をしスパーダは人間との間に子を生した。魔術師ならだれでも聞くお伽話だな。―だが何故それをマスターが?」

首をかしげる英雄王に対しアーチャーが補足する
今の空気は比較的常識人であるアーチャーと言峰には耐えがたい空気なのだ

バージル「簡単な話だ。俺はスパーダの血族、この刀は父から譲り受けたものだ」

ギルガメッシュ「なるほどな。魔界――門の向こう側の産物とあっては我が知らぬのも納得がいく。益々気に行ったぞ、閻魔刀」

アーチャー「それが本当なら確かに桁外れの魔力に卓越した身体能力も頷けるな」

ギルガメッシュ「言峰、ここまで我を興じさせる物がこの俗世にあるとは思わなかったぞ。その見事な拵え、今宵は目に刻むだけで由としてやろう。さぁお前達王の酒を飲むことを許そう今宵は気分がいい」

パチン、と指を鳴らすと黄金の器や華美な飾りの数々が現れる
1人を除きそれぞれ器を手に取り極上の美酒に手を伸ばす



155 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 03:01:30.63 ID:6787ovxI0

言峰「ここまでに上機嫌なお前を見るのは果たしていつ以来だったかな?」

アーチャー「では、お言葉に甘えて」

バージル「・・・・・・・・・・・・・」

ギルガメッシュ「どうした?飲まんのか」

バージル「生憎、酒にはいい思い出がないものでな」

ギルバと名乗っていた時代の苦い記憶がよみがえる。勝負を途中で中断させられ人間に良いように飲まされた記憶が。
それ以来どうにも人に勧められる酒に良い気がしない

ギルガメッシュ「つれん奴だ」

アーチャー「そうでもない。ここまで我がマスターの口を開かせたのだ。十分健闘していると思うが、英雄王よ」

言峰「それには同感だな」

ギルガメッシュ「フン―そう言えば貴様が聖杯に託す願いを聞いていなかったな。何もない者に令呪は宿らん貴様は聖杯に何を望む?その力をもってすればおおよその事は叶うだろうに」

バージル「さらなる力だ」

即答する。母を悪魔に殺されたあの日以来この願いに変わりはない



157 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 03:04:39.95 ID:6787ovxI0

ギルガメッシュ「ほう?」

バージル「―力こそ全てを制する。力なくしては何も守れなどしない」

ギルガメッシュ「守るような者が貴様にあるとは我には見えんが?」

バージル「・・・・・・・・」

ギルガメッシュ「では聖杯を手に入れ、力を得た貴様はそこから何を望む?」

言葉が詰まる。それが当然だと思っていたから
何より自分に興味を持つ者などスパーダに恨みを持つ悪魔にしか出会ったことがなかったから

バージル「・・・・・・・・・・・」

ギルガメッシュ「フフ・・・ハハハ!!!ハハハハハハ!!!何も見えておらんのか!愉快だ、実に愉快だぞ!」

バージル「何が可笑しい?」

ギルガメッシュ「圧倒的な力を持ちながらもさらなる力を求めその先が何も見えていない。これ以上に愉快なことはそうないぞ?―だが、それはそれで愛でようがある。閻魔刀見たさに来たがそれ以上に我はそなたを気に入った」

雑種とみなす者なら即座に殺してでも我が手に,と思っていたがそうでもないらしい
英雄王の顔は無邪気な子供のように満ち足りた笑顔だ

ギルガメッシュ「また会おう魔剣士よ。」



158 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 03:07:41.33 ID:6787ovxI0

教会

言峰「珍しいこともあったものだな。お前が他者を気に入るなどと」

ギルガメッシュ「ふん。魔剣士もだが魔界というものに興味がわいたのでな。あれほどの宝があるなら我が宝物庫に加える価値のある逸品も多そうなものだ」

総ての宝は我の物。納めていないところがあるならば王の中の王である我が治める必要がある

ギルガメッシュ「あの魔剣士は最後まで生き残る――その時この我が再び奴の価値を見極めてやろう」

幸か不幸か彼は最強の魔剣士に、魔剣に興味を持ってしまった



160 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 03:09:42.30 ID:6787ovxI0

衛宮邸
士郎「ったく何処に行ったんだセイバーの奴・・・まさか外に出たんじゃ・・・」

ここを探せば屋敷にはいない。頼むからいてくれよと願いを込めて道場の扉を開ける

セイバー「おはようございます。士郎」

そこに彼女はいた。ホッと胸を撫で下ろす

士郎「セイバー、寝てないとだめじゃないか」

セイバー「大方の傷は癒えました。通常の戦闘なら問題ありません。それに学校にはライダーのサーヴァントが居ます。学校までいかずとも令呪でいつでも呼び出していただけるようにするのは当然かと」

胸が痛む。自分が傷つくのは良い
でも目の前の少女が傷つくのは耐えられない

士郎「それでも・・・・無理はしないでくれ。俺のせいでセイバーに魔力が回ってないことは分かったんだ。だから代わりに極力俺が戦うようにしたい」

セイバー「―言っても聞かないようですね。では構えてください、登校まではまだ時間があります」

士郎「あぁ、みっちり鍛えてくれ」

セイバー「行きます!」



161 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 03:11:34.17 ID:6787ovxI0

士郎「おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

セイバー「(やはりあの時と同じ二刀流―)」

結果は一本も取れずにひたすら打ち込まれるだけだった
改めて前の前の少女がサーヴァントだということを思い知らされる


凛「おはよう衛宮君。勝手に上がらせてもらったけど朝から稽古かしら?」

士郎「遠坂来てたのか。そうだ、いつでも戦えるようにしておかないとな。ライダーの事もあるし」

凛「そのことなんだけれど」

士郎「?」

凛「どうも結界が張られてるみたいなのよ。」

士郎「結界?」

凛「えぇ。今はまだ完成していないけど完成したら大勢の人を巻き込むことになるわ。今ならあまり人もいないだろうし衛宮君にも手伝ってもらおうと思って」

士郎「分かった。俺に出来ることなら何でもする」

凛「それじゃあ行きましょうか」

セイバー「士郎」

士郎「分かってる。何かあればセイバーを呼ぶさ、ランサーだってついてるし心配いらない」



162 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 03:14:16.44 ID:6787ovxI0

セイバー「了解しました、それでは」

士郎「あぁ、行ってくるよ」

再び彼は運命の夜へ飛び込む。そして己の無力を知ることになる

ホテル

アーチャー「目覚めたかマスター。今日は少し遅かったな、朝食は用意しておいたぞ」

目が覚めて真っ先に目にしたのはアーチャーが丁寧にカップを磨いている光景だった

バージル「・・・・貴様は英霊を辞めて執事にでもなりたいのか?」

アーチャー「そうだな、そちらの方が幾分ましだ。」

バージル「・・・・・・・・・・・」

アーチャー「・・・・・冗談だよ。それで今日はどうするつもりだ?」

淹れられた紅茶を手に取り口に運ぶ。絶妙な淹れ加減に目が覚めていく
ひょっとするとアーチャーは本当に執事になった方がいいのかもしれない



163 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 03:15:17.59 ID:6787ovxI0

バージル「悪魔を狩る」

アーチャー「まさか今になって街の住民が心配か?」

バージル「悪魔の魂―レッドオーブを収集する」

アレさえあれば回復に必要なものを錬成することが出来る。
昨日の様なことはもう二度と起こしてはいけない

アーチャー「そういうことか。まだ奴らが出るには時間だ掛かるだろう、それまでゆっくりと休むといい。目覚めるころには再び食事を用意しておこう」

バージル「フン、やはり執事の方が向いているのかもしれんな」

再び眠りに就く。
そう言えば夢を見た気がする―普段は見ない夢を



165 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 03:16:48.94 ID:6787ovxI0

学校

凛「これでしばらくは結界の完成はないわ。でも意外だった、衛宮君にこんな才能があったなんて」

士郎「多分それ褒めてないぞ、でもよかった。これで学校のみんなが巻き込まれることはないんだな」

凛「そうとも限らないわ。少なくとも近い内に何らかの動きがあるはずよ。マスターは学校にいるんだから気をつけておきなさい」

士郎「そうだな・・・こんなところに結界を張るような奴だ。絶対に止めなきゃいけない」

言葉と同時に吐き気が襲う。空の色は変わり甘ったるい臭いが充満する

士郎「・・・結界か!!」

凛「そうみたいね」

慎二「なんだ、お前らグルだったのか」



166 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 03:18:08.35 ID:6787ovxI0

士郎「慎二!!この結界はおまえが!」

慎二「だったら何?僕を止めようってわけ?ハッハッハ!!行けよライダーこいつら二人とも殺せっ!」

凛「ランサー!!」

投擲された鎖に繋がれた短剣を間一髪のところでランサーが弾き飛ばす

ランサー「ここは任せて生徒でも運んどけ。またとっておき使いたくなかったらな」

凛「そんな冗談言ってる場合じゃないでしょ!・・・・頼んだわよ」

ランサー「何にも乗ってねぇ騎乗兵に遅れはとらねぇよ」

マスターの安全を確認し再度槍を構える

ライダー「・・・・・!!」

ランサー「さぁ来な!」




168 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 03:20:44.41 ID:6787ovxI0

教室

士郎「みんなの魔力が失われていく・・・」

凛「ライダーが自分で解くか倒す以外に方法はないでしょうね。」

士郎「結局俺は何もできないのか・・・」

凛「それが普通なのよ、今は私のランサーを信じなさい。あんな奴に負けたりしないから今は衛宮君が出来ることをして」

士郎「あぁ」

廊下

ランサー「こんなものか!?ライダー!!」

勝負はランサーが優位にことを運んでいた。致命傷こそ防いでいるものの三騎士のクラスであるランサー相手に敵の土俵で戦うのはどうにも分が悪いらしい

ライダー「・・・・クッ!」

慎二「お、おいライダー!お前何してるんだよ!?」

ライダー「・・・すみません。どうやら白兵戦では分が悪いようです」

慎二「ふざけるなよオマエ!!何のために結界で魔力蓄えたと思ってるんだ!!この役立たず!!」

このマスターのヒステリックも慣れたものだがまさかここまで酷いものだったとは




169 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 03:23:50.21 ID:6787ovxI0

ランサー「自分の無能さ棚に上げてサーヴァントのせいにするとは酷いマスターにひかれたもんだな」

慎二「ひぃっ!」

ライダー「―グッ!!」

それでも、桜に任された以上放っておくわけにもいかない
こんな人物でも彼女の兄なのだから

慎二「た、助かった?」

ライダー「・・・マスター、宝具を使用してもよろしいでしょうか?」

慎二「何でもいいからさっさとそいつを殺せ!!」

ライダー「了解しました」

轟音が鳴り響く

士郎「何だ今の音は!?」

轟音と同時に結界が解ける。どうやらライダー側に何か動きがあったようだ

凛「校庭?」

士郎「ランサー!!」

凛「あれは・・・ペガサス?」

上空には美しい天馬が羽ばたいていた





バージル「父を超える・・・!」ギルガメッシュ「修羅の道を行くか」


元スレ
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1327915517/
バージル「父を超える・・・!」ギルガメッシュ「修羅の道を行くか」

1 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 18:25:17.20 ID:7xzUqS5Z0

昨日の続きです

ライダー「出来ればこの子は使いたくなかったのですが・・・・・」

ランサー「刺すにしろ投げるにしろ、一発で両方仕留めなきゃちとキツイな」

ランサーの額を冷汗が伝う。今度は相手の土俵に持っていかれてしまったのだ
ギリギリのところでかわしてはいるが幻想種による単純な突進になす術がない


慎二「やればできるんじゃないか・・・・さっさとやれ!」

凛「まずいわね・・・・ランサーは元々白兵戦向きなのにあの高さじゃ私も援護できない・・・」

士郎「どうすれば・・・・」

また自分は無力なのか

凛「衛宮君、セイバーを呼んで」

士郎「でも今のセイバーは・・・・」

彼女はボロボロだ呼べるわけがない。なにより呼びたくないのだ

凛「そんなの後でどうとでもしてあげるから!!呼んで!!アンタだけの戦いじゃないの」

ここには大勢の生徒が居る。もしランサーが敗れれば生徒の命もただでは済まない
正義の味方を目指している以上そんなことはできない――



7 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 18:30:35.44 ID:7xzUqS5Z0

士郎「・・・・分かった。本当だな?」

凛「え、えぇ。ちょっと・・・・するけどゴニョゴニョ」

凛の顔が真っ赤になる。しかし士郎には全く理解できない

士郎「?」

ランサー「チィ!降りてきやがれ!!」

痺れを切らしたランサーがルーンの魔術を行使する
しかし遥か上空に羽ばたく天馬を落とすには頼りないものだ

凛「ほら!もういいから早く呼ぶ!」

士郎「・・・・来い!!セイバァァァァァァァァァァ!!」

叫びと共に手の甲が熱くなる
一角を消費した代償に、目の前には空間を超越したセイバーが構えていた

セイバー「士郎、敵は?」

士郎「上だ!」

セイバー「幻想種・・・・仕方ありません、宝具を使用します。ここなら校舎に被害が及ぶ心配もないでしょう」

士郎「・・・・頼んだ」

悔しい、結局自分は何もできていない
正義の味方に憧れ、力を欲した。それでも自分はまだまだ無力なのだと実感する



9 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 18:34:04.11 ID:7xzUqS5Z0

>>8兄貴が聖杯戦争に介入するスレの続き

ライダー「この魔力はセイバー・・・・出来ればこの子にこんなものは使いたくなかったのだけれど」

セイバー「ライダー!お前も英霊なら何故こんなことを!」

ライダー「それがマスターの命ですので」

セイバー「・・・・お前が上空にいてよかった。私の宝具で周囲を焼き払う憂いもない!!」

ライダー「騎英の―ー」

「約束された」

セイバー「勝利の剣――!!!」

ライダー「手綱――!!!!」

凄まじい光の奔流が天馬を迎撃する。窓は割れ、大地は悲鳴を上げる
その名が示す通り打ち勝ったのはセイバーの宝具だった

セイバー「はぁ・・・はぁ・・・・うっ・・・」

士郎「セイバー!!」

ランサー「さて、どうすんだライダーのマスターさんよ」

慎二「くそっ!」



10 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 18:37:09.98 ID:7xzUqS5Z0

凛「待ちなさい!慎二!!」

ランサー「ほっとけ、もうあれじゃなにもできやしねぇ」

士郎「遠坂!セイバーが!!」

凛「そうね・・・・まずは衛宮君の家に行きましょう。ランサー、セイバーをお願い」

ランサー「よっこらせっと・・・軽いな」

士郎「で、遠坂セイバーに何をすればいいんだ?」

遠坂「そ、それはセイバーが最低限動けるようにならないとできないことなのよ!」

士郎「そうなのか?具体的には何をすれば・・・・」

凛「ととととにかく!セイバーが起きないことには出来ないことなのよ!!いいから買い出し行くわよ!お腹すいたから!」

いつになくあわてる凛を目にしさらに思考は混乱する
とにかく今は従おう。自分が出来ることをするしかないのだから


郊外
気付けば慎二は街の外れに居た。ただイライラする,、じっとしていられない。
すぐそばに迫る魔の手にも気付かずにひたすら怒りをぶちまける

慎二「ふざけるなよ・・・!あんな雑魚を引いたから僕は負けたんだ!あんな奴じゃなかったら僕は!!」

グサリ。何か熱い感覚が背中を伝う



11 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 18:41:02.38 ID:7xzUqS5Z0

慎二「あ?」

振り向くと自分の背中には鎌が刺さり、鮮血が吹き出しているではないか

慎二「―あ。あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

悪魔に弄られ生き血を啜られる。それが慎二の最期だった

アーチャー「―人?」

かつて間桐慎二だったそれに目を向ける。興味がないのか摩耗してしまったのか、何の感情も湧いてこなかった

バージル「逃げることすらせんとは愚かだな」

アーチャー「さて、悪魔狩りでも始めようか」

一斉に悪魔たちが二人に襲いかかる

バージル「――死ね!」

青と赤による蹂躙ショーが幕を開ける
招かれざる客を呼ぶとも知らず



13 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 18:46:15.14 ID:7xzUqS5Z0

郊外

買い出しに来たはいいが一連の事件の影響でほとんどの店が閉まっていた為
士郎と凛も郊外まで来ていた

士郎「全然店開いてなかったな。見つかったからよかったけど結構遠くに来たみたいだ」

凛「毎日のように失踪事件が起きてたら当然よね・・・・完全に忘れてた」

士郎「遠坂でもそんなことあるんだな」

凛「あのね!私だって人間なんだから1度や2度はあるわよ!男だったら終わったことをぐちぐち言わないの!」

士郎「はいはい」

歩を進めると独特の瘴気が一帯を覆っていた
間違いなく悪魔のそれだ



14 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 18:50:18.83 ID:7xzUqS5Z0

凛「―静かにして、ランサー聞こえる?」

ランサー「あぁ、こりゃ悪魔の匂いだな。近いぞ」

士郎「巻き込まれる人が出る前に!!」

考えるまでもなく体が勝手に動いていた
悪魔くらいなら自分だって倒せるんだ――気付いた時には手に短剣が握られていた

アーチャー「これほどあれば十分ではないか?」

その場に居た悪魔は皆屠られ、周囲は悪魔の地とも内臓とも言えぬ物が飛び散る凄惨な状況になっていた
しかしマスターであるバージルの表情は何一つ変わらない


バージル「―帰るぞ」



士郎「はぁ・・・・はぁ・・・悪魔がいない・・・あれは慎二!?」

顔は見えないが制服と体格で分かってしまう
確かに間違いを犯したが殺される程の奴じゃなかったはずだ――



15 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 18:54:43.44 ID:7xzUqS5Z0

アーチャー「それならすでに私達が始末したが」

初めて聞くが初めて聞いた気がしない、そんな声が耳に入る

士郎「―!お前は・・・?」

アーチャー「アーチャーのサーヴァントだ」

士郎「慎二もお前がやったのか!?」

もしそうだったとしたらコイツを放っておくわけにはいかない

アーチャー「サーヴァントである以上敵のマスターを処分するのは当然の事だと思うがな。相変わらずお前は甘い男だ」

士郎「何を訳の分からないことを・・・・ふざけるな!」

目の前の男は許せない―慎二の事もある。だがそれ以上に本能的に受け付けない



16 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 18:59:41.57 ID:7xzUqS5Z0

こいつだけは倒さなくちゃならない

バージル「いつまで遊んでいる、アーチャー」

アーチャー「敵のマスターを見つけたので排除しようと思ってな」

凛「そこまでにしてもらえるかしら?それでも私の同盟者だから勝手に手を出されても困るのよ」

ランサー「そういうことだ。剣を引きなアーチャー」

アーチャー「そうもいかんだろう。そもそも近づいてきたのはそちらの方だ」

バージル「・・・・貴様はこの前のランサーか」

ランサー「アーチャーのマスターだったか。この前言ったな決殺の覚悟を持って来いと、今日はこのクー・フーリンが全力で貴様を屠る!!」

バージル「いいだろう、失った魔力は取り戻した。アーチャー、お前はマスターを」

アーチャー「言われずとも承知している」



元より目の前の男が目的なのだから



17 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 19:04:46.82 ID:7xzUqS5Z0

士郎「いくらなんでも一人であいつの相手は無茶だ!俺も」

凛「―逃げるならまだアーチャーの方が可能性はあるわ。ランサー後はお願い」

あの魔剣士相手ではランサーと言えども勝ち目は薄い。
それを承知でランサーに告げる。聖杯戦争で勝ち残るためにここで倒れる訳にはいかないのだから

ランサー「人が死ぬみてぇな言い方すんなよ」

凛「そうね。ランサー令呪を持って命ずるわ、勝って帰ってきなさい」

凛の手の甲から一角が消え去る
クー・フーリンが伝説の魔剣士に全力で牙をむく為に令呪はランサーに魔力を与えた

ランサー「行け」

凛達は走り出す
一度振り向いたらもう走れない――凛達は振り向かなかった


アーチャー「もう追いかけても良いかな?」

ランサー「なんだ、待ってたのかよ。折角カッコつけたのが台無しじゃねえか。―さっさと行けよ」



19 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 19:12:27.73 ID:7xzUqS5Z0

バージル「待っているのは俺も同じだ」

ランサー「それはいけねぇな。大丈夫俺は逃げたりしねぇよ」

バージル「そうでなくては困る」

ランサー「あんたみたいな奴と戦えるなんて今回はとことんついてるなぁ!!」

再び青と青はぶつかる。最強の座に近づくため、主の命を守るため


凛「こっちよ!」

士郎「ここまで逃げれば・・・・」

どれくらい走ったのだろう。息は切れ呼吸が苦しい
それでも走ることは止めない

アーチャー「貴様の考えなどお見通しだ。」

あの時と同じ―全力で走ったところで追いつかれる
でも今は違う。戦う力がある



20 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 19:16:01.11 ID:7xzUqS5Z0

士郎「グッ!―投影開始!」

アーチャー「ほう、では私も同じ手で行こう」

アーチャーが手にしたのは自分と同じ白と黒の短剣だった

凛「何ボーっとしてるの!来るわよ!」

凛をまるでいないもののように扱った弓兵は真っ先に士郎に襲いかかる

士郎「セイバーに比べれば・・・こいつの剣なんか・・・!」

左に一閃、続いて縦の連撃。無駄な動きこそないがセイバーに比べると幾らか防ぎようはあった

アーチャー「だろうな。だがこれが貴様と私の差だ」

詰み将棋の様に繰り出された攻撃は士郎の剣をはじき喉元に剣を突き付ける

凛「相手はこっちにもいるのよ!」

とっさに飛び出した凛があり合わせの宝石と大量のガンドをアーチャーに見舞う
直撃したところで大したダメージがないのは承知の上だった



25 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 19:46:01.98 ID:7xzUqS5Z0

アーチャー「危なかったな・・・君と言う奴は相変わらず無茶をする」

士郎「さっきから何なんだこいつ・・・・」

凛「生憎だけど私はあんたみたいなやつ知らないわ。」

アーチャー「知る必要もないさ。さぁ気を抜くな衛宮士郎。死にたくなければな」

青と青のぶつかり合いは続いていた。瞬間移動に等しい速さに何とかくらいつき、一閃を見舞う。それをかわしたバージルが強烈な一撃を。そんなやり取りを何回も繰り返していた

ランサー「そぉらどうした!こんなものか!!」

バージル「フン、前よりはマシになったか?」

ランサー「(押しているのは俺の方だが嫌な予感がしやがるな・・・・)」

槍には絶対の自信がある。如何に目の前の敵が屈強であろうと心臓さえ貫けば自らの勝ちは揺るがない。
なのに嫌な予感が背筋を伝う

バージル「やる気があるのか?」

隙をついた一撃がランサーを襲う。やはりこの男は油断ならない



26 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 19:51:26.53 ID:7xzUqS5Z0

ランサー「この呪いの魔槍、その身に受ける覚悟はあるか?」

バージル「面白い、だが速さで上回る俺にどう当てる?」

ランサー「先に結果を作っちまうのさ。ではその心臓、―貰い受ける!」

「ゲイ・ボルグ!!」

因果逆転の呪いを帯びた魔槍は確かに魔剣士の心臓を貫いた

ランサー「手応えありだ」

如何なる者でも心臓を貫けば――そのはずだった



バージル「―因果の逆転とは面白い武器を使う」

確かに手応えはあった。だが魔剣士は立っている
自ら槍を引き抜き乱暴に投げ捨てる

バージル「俺の心臓を貫いた褒美だ。―思い知らせてやろう、スパーダの血に挑むとはどういうことかをな・・・・・!」

目の前の魔剣士が異形の姿へと変貌していく。それは純粋な魔の権化。魔人と呼ぶに相違ないものだった



28 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 19:54:10.02 ID:7xzUqS5Z0

ランサー「魔人・・・か上等だ」

口には出したが状況は絶望的だ。宝具は通じず、槍も手元からは離れてしまっている
体術とルーンで勝てる相手ではないだろう

バージル「遅い」

考える間もなく今度は自分の心臓を魔剣が貫く

ランサー「ガッ!?―ハッ!」

バージル「―安らかに眠れ」

魔剣が引き抜かれ力なく地面に倒れこむ

ランサー「あー・・・負け・・ちまったか・・・へっ楽しかったぜ・・・・」

体から力が抜ける。悔しくはあるが悔いはない。こんなに思う存分戦えたのはいつ以来だろうか

バージル「悪くなかったぞ。出来ればその槍も使ってみたかったがな」

ランサー「そいつぁ・・・残・・・念・・・だった・・・な」

バージル「呪いが解けたか。」 

ランサーの消滅と同時に心臓の修復が始まる

バージル「残るはセイバーとバーサーカー・・・・・か」



29 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 19:58:10.88 ID:7xzUqS5Z0

アーチャー側も勝敗が決しようとしていた
士郎の剣はことごとく粉砕され、鋭い一撃で体を吹き飛ばされる

士郎「クソっ・・・もっと力を・・・・」

『力こそ全てを制する』
何故かあの男の声が胸に響く

アーチャー「言っただろうこれが私と貴様の差だと。―これで終わりだ」

凛「余所見ばっかりしないでって言ってるでしょ!!」

アーチャー「君の得意な手段もよく知っているよ。」

いとも簡単にガンドを捌き切る

セイバー「・・・・離れなさい・・・我がマスターに触れようものなら・・・」

現れたのはセイバーだった。立つのがやっとの様な顔で剣を構える。その手は震え、足元はおぼつかない。酷く頼りないものだ

アーチャー「仕方ないな、まずは君から倒そうかセイバー」

矛先をセイバーに向けアーチャーの攻撃が始める
いかにセイバーと言えど消耗した状態ではまともに打ち合うことが出来ず何度も吹き飛ばされる

士郎「アーチャァァァァァ!!お前の相手は俺だぁ!!」

再び短剣を投影しアーチャーに斬りかかる



34 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 20:06:21.97 ID:7xzUqS5Z0

凛「衛宮君伏せて!」

セイバー「一太刀浴びせれば・・・・!」

士郎「よそ見してんじゃねぇぇぇぇ!!」

三社の連携攻撃がアーチャーを襲う
渾身の一撃はアーチャーを穿ち先ほどの余裕は消え去っていた

アーチャー「流石に三対一では流石に分が悪いか・・・・今日は引くとしよう」

状況を冷静に判断しアーチャーは撤退する
勿論追いつける者などいない

士郎「待ちやがれ!」

この距離ではもう追いつけない。なら飛び道具を、戦闘中にアイツが使ったものを真似ればいい

全神経を集中させる。魔力は残り少ない――失敗は許されない

「投影・重層―」

「I am the bone of my sword―」

「偽・螺旋剣!!」

一瞬驚いた表情を見せたアーチャーだったが士郎が投影したものと全く同じものを瞬時に投影し相殺する



35 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 20:11:30.27 ID:7xzUqS5Z0

アーチャー「ほう、そこまで辿り着いたか。せいぜい精進しろ、死にたくなければな」

そう言い残しアーチャーは暗闇の彼方へ消えていった。

凛「まるで私達を知ってるみたいな口ぶりだったわね、何者なのかしら」

士郎「分からない・・・でもアイツのまねをしてみるとびっくりするほど戦えた。」

セイバー「・・・凛、ランサーは?」

凛「・・・・・」

首を横に振る。それはランサーが既にいないことを示す

士郎「・・・・ランサーが」

凛「途中宝具を使ったであろう魔力の消費があったの。その時は勝利を確信したわ、いくらアーチャーが単独行動スキル持ちだからってマスターの死に動揺しないはずがないって」

士郎「でもアイツ眉一つ動かさなかったことは・・・危機ですらなかったのか」

凛「ランサーの宝具を避けたか、受けた上でランサーを倒したんでしょうね。相手は因果の逆転すら通じないか心臓貫いても死なない相手かもしれないってこと」

士郎「そんな相手にどうやって勝てば・・・・セイバーだってまともに戦える状態じゃ・・・・」

決してランサーは弱いサーヴァントではない。寧ろ上位に入る部類だ
あの魔剣士はそのランサーすら上回る相手だというのだ



36 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 20:15:36.53 ID:7xzUqS5Z0

セイバー「大丈夫です・・・士郎の盾になるくらいは・・・グッ・・」

士郎「馬鹿言うな!本当は今でも寝てなきゃいけないんだ!!」

凛「セイバー、あなた今本当に危ないでしょ。現界を維持するので精いっぱいなはず。・・・まぁあなたが来てくれなかったら危なかったんだけどね」

士郎「俺はセイバーを家に連れてく。遠坂は?」

凛「遠坂は?じゃないのよ!!何のためにランサーが犠牲になったと思ってるの?これから毎日みっちり鍛えてやるから覚悟しなさい。・・・・負けたら許さないんだから」

士郎「それはありがたいけど・・・剣道とかならともかく魔術は・・・・」

凛「アンタさっき言ったわよね。アイツの真似をすれば、って。そこを徹底的に磨くわ。私も今度アーチャーに会ったらとっておきを使うから、それでうまく行けばアーチャーだけは倒せるはず。」

士郎「分かった。少しでもセイバーや遠坂の負担が減らせるなら俺は何でもする」

凛「問題はあのマスターなのよ。セイバーが万全でも勝てるかどうか・・・」

士郎「ここで考えても仕方ない、まだ時間はあるんだいったん家に帰ろう。楽観視はできないけどここは冷えるしセイバーも早く休ませてやりたい」




38 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 20:19:57.05 ID:7xzUqS5Z0

凛「・・・・・そうね。バーサーカーもまだ残ってるしここにいるのは危険ね」

士郎「(俺には力が必要なんだセイバーを、遠坂を守る力が)」

そうだ俺には力が必要なんだもっと力を
意識こそしていないが衛宮士郎は衛宮切嗣ではなく圧倒的な力を持つ魔剣士に憧れを抱くようになっていた

ホテル

アーチャー「遅かったな。私の方が後だとばっかり思っていたのだが」

アーチャーが士郎達との交戦を終えて帰還した約一時間後にバージルは帰ってきた

バージル「コートを新調しようと思ったがどこも閉まっていてな」

アーチャー「その原因の一端は自分だろう、自業自得という奴だ。・・・・どれ見せてみろ」

見ると丁寧な作りのコートには大きな穴があいている、ランサーによるものだろう。

アーチャー「この位置・・・・悪魔と言うのは本当らしいな。あの呪いの魔槍を受けた上でランサーを倒すとは」

バージル「そんなことはどうでもいい。それは治るのか?」

アーチャー「この程度なら何とかなるだろう」

裁縫針と鋏を投影し、取っても問題のない裏地の布で修復作業に取り掛かる

アーチャー「・・・・・ム、思ったより複雑だな」



40 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 20:27:20.08 ID:7xzUqS5Z0

バージル「相変わらず威勢がいいのは最初だけのようだな」

アーチャー「・・・・・時にマスターよ、セイバーのマスターに何か吹き込んだか?」

バージル「知らんな」

アーチャー「そうか、ならいいのだが。・・・・・しかし意外だな、あまり外見にこだわるタイプでもないと思っていたのだが」

バージル「貴様が言えたことではないだろう」

アーチャー「そんなにこの外套が気に入らないか?」

バージル「フン」

アーチャー「・・・・そんなに駄目だろうか」

教会

言峰が仕事を終え部屋に戻ると
英雄王はソファにもたれ掛かりそれぞれのクラスを模した駒が置かれた盤を見つめていた

言峰「ランサーが脱落した様だ」

ギルガメッシュ「報告するまでもない。妥当だ」

盤に置かれた槍兵のコマを倒しはじき出す

言峰「まるで全て知っているかのような口ぶりだ、ギルガメッシュよ貴様はいつまで高見の見物を続ける気なのだ?」



42 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 20:30:16.27 ID:Ceg/JgAr0

ああ、アーチャーの服ダンテに似てるもんな・・・


44 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 20:35:54.03 ID:7xzUqS5Z0

ギルガメッシュ「無論最後まで―と言いたいところだが。そろそろじっとしているのも飽きた。器の確保ぐらいはしてやってもよい」

弓兵のコマを盤に立てる
それは自らが戦地に赴くことを意味する

言峰「乱入される側は迷惑でしかないだろうな」

ギルガメッシュ「何を言う言峰、英霊共もマスター共も英雄王たる我に屠られたとなれば末代まで語り継がれる誉となるに決まっておろうが」

ギルガメッシュ「―では、行ってくるぞ」

言峰「全く、貴様の気まぐれを隠蔽する私の心労も察して欲しいものだ」

衛宮邸

士郎「―ハァ・・・ハァ今のは・・・・」

一瞬ではあったが目の前には確かに剣の丘が存在していた

凛「固有結界・・・?かしら。すぐに消えちゃったけれど」

士郎「もう魔力がすっからかんだ。とてもじゃないけど維持なんてできないぞ。折角ここまで来れたってのに・・・・!」

力を手に入れられたのに、これでは奴らに勝つことなんてできっこない

凛「魔力さえあればどうにかなりそうなの?」



45 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 20:41:18.77 ID:7xzUqS5Z0

士郎「ん、まぁそうだけどどうするんだ?」

凛「それなら何とかならないこともないわ」

士郎「ただでさえセイバーとゴニョゴニョするのも大変だってのにどうするんだ?」

凛「わ、私とパスを繋ぐのよ。それで魔力の問題は解消されるはず・・・・・多分」

士郎「それってまさか・・・・」

嬉しいような辛い様な、そんな予感がする

凛「べべべ別に他意なんてないのよ!?ただアンタとは同盟結んだんだから最善を尽くすのが筋ってもんでしょ!?」

いくら鈍感な自分でもわかる。そういうことなんだろう

士郎「やめよう遠坂。そんなに無理することない」

セイバー「士郎、凛に従ってはどうでしょうか」

士郎「セ、セイバーいたのか!?」

セイバーがいたこともそうだが言葉の内容に驚きを隠せない
従うということはアレをするということも・・・




47 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 20:45:33.19 ID:7xzUqS5Z0

セイバー「す、すみません・・・・盗み聞きする気はなかったのですが。私との修練の時間になっても来ないもので呼びに来たらその、士郎と凛が話していたものですからいつ切り出せばよいものかと・・・」

士郎「そっか。ごめんな、遠坂やっぱりこの話は」

男としてはやはり1人に絞らなくてはいけない
セイバーを裏切るようなまねはしたくなかった

セイバー「いえ、言葉に甘んじるべきです。残るバーサーカー、アーチャー、そしてマスター。戦闘になった時私が相手に出来るのは一人が限界です」

士郎「だから他の方法を考えれば・・・・」

セイバー「それに、私との行為は大変ということは・・・やはり私の様な女らしくない体よりも、凛のようなしなやかな体の方が・・・・」

士郎「違うんだ!そんな意味で言ったんじゃ・・・・」

凛「あー!聞いてるこっちが恥ずかしくなるからもうやめなさい!」

士郎「・・・・」

凛「あなたね、今危険だってこと理解してる?本当にいつ死んでもおかしくないの。いくら死ぬ覚悟があるからって無駄死にだけはやめてよね。それに早くしないと完全にセイバーに取られ・・・・ゴニョゴニョ」



48 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 20:49:05.97 ID:7xzUqS5Z0

士郎・セイバー「?」

凛「とにかく!またあとで呼ぶからアンタ達は剣の修行でもしてなさい!」

士郎「そうだな。行こうセイバー今日も鍛えてくれ」

セイバー「はい。ここ数日の士郎の腕の上達は目を見張るものがある。今日も何か得られるモノがあるでしょう」

士郎「この前あいつと・・・・アーチャーと打ち合った時見えたんだ」

打ち合うたびに見えたアイツの剣の丘が、アイツの人生が

セイバー「見えた・・・とは剣の筋が?」

士郎「そんなんじゃない。アイツがどういう奴なのか、俺に出来ることがどういうことなのか―それが少し見えたんだ」

だからこそアイツと同じようになっちゃいけない。認める訳にはいかない


セイバー「私には少し分かりかねるのですが・・・士郎が何か掴めたのは伝わりました」

士郎「俺もよく分かってないんだ。セイバーが分からなくて当然だ、そんな顔しないでくれ」

セイバー「はい。では士郎、構えて」

士郎「今日こそは1本取ってやるからな」

竹刀を2本手に取り構える。振るうにはかなりの力が必要だがこの方が幾らかしっくりくる



50 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 20:53:55.33 ID:7xzUqS5Z0

セイバー「はぁぁぁあぁ!!」

士郎「うおぉぉぉぉぉぉ!!」

士郎「これでどうだ!」

まずは下段と中段を横に薙ぎ払い距離を取られたところで突きを見舞う

セイバー「甘い!」

最低限の力で受け流され鋭い胴をもらう。どうやらセイバーも手加減する気はないようだ

士郎「まだまだぁ!!」

今度はアーチャーの剣を思い出す。奴の剣筋なら食らいつくくらいなら・・・!

セイバー「そこ!」

今度は攻めきれずに小手をもらう。手元が疎かになってはいけない
この手は剣を作る手いかなる時も集中力を絶やしてはいけない

士郎「くそっ!もう一回!」

セイバー「やぁぁぁ!」

そんなやり取りが何度も続いた。今日も一本も取れなかった。唯一惜しかったのがあの魔剣士の剣技を見よう見真似で振った時だ
結局だめだった上にとても自分が真似て使いこなせるようなモノでもないみたいだ。体への負担が凄まじく、しかも反応スピードがないととても無理だ。



60 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 21:20:33.26 ID:7xzUqS5Z0

士郎「―はぁ・・・はぁ」

セイバー「今日はここまでにしておきましょう。これ以上は体をいたずらに痛めるだけだ」

士郎「まだ一本取ってない。よし、もう大丈夫。続けよう」

セイバー「いけません、休むことも戦のうちです。・・・とりあえず食事にしましょう」

グゥ、とセイバーの腹の虫がなる

士郎「お腹がすいてるなら言ってくれたらすぐ作ったのに、でも食材なかったような・・・・」

セイバー「それはいけません!部屋の片づけや食器は私が出しておきます。士郎は食材を!」

セイバーが途端に元気になる。本当にお腹がすいているらしい

士郎「はいはい。何か分からないことがあったら遠坂にでも聞いてくれ」

セイバー「分かりました」

士郎「じゃあちょっと行ってくる」

商店街

必要最低限の物をメモしていたので予想していたよりも早く買い物を終えることが出来た
普段なら多めに買ってしまい金があまり余らなかったが今日はタイ焼きも買えた。こうしている間もセイバーは腹をすかせてまっているだろう



66 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 21:26:35.90 ID:7xzUqS5Z0

士郎「思ったより早く帰れそうだな―アレは?」

イリヤ「あ、お兄ちゃん!」

士郎「えーと、イリヤス・・・」

イリヤ「イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。イリヤでいいよ!お兄ちゃんは?」

士郎「俺は衛宮士郎っていうんだ。」

イリヤ「エミ、ヤシロー?」

士郎「衛宮、士郎。士郎でいいよ」

イリヤ「しろー!しろー!」

士郎「こらイリヤ!あんまりひっつくな!」

こんな無邪気な姿を見ているとバーサーカーのマスターであり聖杯戦争という殺しあいに参加しているなんて到底思えない

イリヤ「えー、駄目?」

士郎「駄目だ、ほら代わりにこれやるから」

イリヤ「何これ?」

士郎「タイ焼きだ。食べたことないのか?」



67 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 21:31:28.33 ID:7xzUqS5Z0

イリヤ「うん。・・・美味しい」

士郎「そっか、それは良か・・・・体が・・・・」

イリヤ「だからお礼に私のお城に招待してあげるね、士郎」

士郎「イリ・・・・ヤ」

視界が歪む。瞼が異様に重たくなり目を閉じる
薄れゆく意識の中ようやく現術にかけられたことに気付く

そこで衛宮士郎の意識は途絶えた

衛宮邸
凛「お昼まだ―って士郎は?」

セイバー「士郎なら買い出しへ。ところで凛、食器はどこに」

凛「・・・士郎が出かけたのは何時くらい?」

セイバー「今から小一時間程前でしょうか」

凛「マズいわね・・・・捕まっちゃったわよ。多分アインツベルンでしょうね、アーチャーのマスターにしろ何処にいるか分からないんじゃ探しようもないし」

嫌な予感が胸をよぎる。どちらに転んでも事態は最悪なのだから



71 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 21:35:46.06 ID:7xzUqS5Z0

セイバー「分かりました。アインツベルンの城には私が一人で行きます。これは私の責任だ・・・・凛は市街地をお願いします」

凛「幾ら貴女でも危険よ。私も行くわ、今使うことになるとは思わなかったけどとっておきの宝石を持っていくから火力は心配しないで」

セイバー「しかし・・・・」

凛「まだ同盟は破棄してないもの、行かないわけにはいかないでしょ。あなたの言う騎士道みたいなものよ。それにこれ以上セイバーとゴニョゴニョ」

セイバー「―ではその崇高な精神を尊重しましょう。感謝します、凛」

士郎を死なせるわけにはいかない
協力するパートナーとして、女性として。凛とセイバーは最強に挑む

アインツベルン城前

バージルとアーチャーはアインツベルンの領地に踏み込んでいた
そこはギリシャの大英雄ヘラクレスが幼き主を守る鉄壁の城。

バージル「ここがアインツベルン城か」

アーチャー「ああ」

イリヤ「あら、お客様かしら?おもてなしの用意もできていないのに」



73 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 21:40:07.88 ID:7xzUqS5Z0

正面玄関からイリヤスフィールが現れる
その堂々たる態度は幼いながらも貴族そのものだ

バージル「それは済まない。ホテル暮らしに飽きていてな、気が急いてしまった」

イリヤ「折角来たんだからアインツベルンの者としておもてなしはさせて頂くわ。少し手荒な歓迎かもしれないけれど。バーサーカー!!」

バーサーカー「■■■■■■■―――ッッッ!!」

出現と共にバーサーカーが唸りを上げる
隆々とした筋肉は見る者を震え上がらせ、叫びを聞いた者はその場で身が竦んでしまう程の迫力がある

イリヤ「紹介するわ。これが私のサーヴァント、ギリシャの英雄ヘラクレス」

アーチャー「ヘラクレスすら呼び出すとはアインツベルンも本気で勝ちに来ているらしいな。気を引き締めろマスター」

バージル「―貴様は下がっていろ」

短く一言バージルは告げた。
大英霊であるヘラクレス相手に味方に下がれと



75 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 21:45:08.01 ID:7xzUqS5Z0

アーチャー「正気かマスター?いくらマスターと言えど」

思わず聞き返す
今まで相手にしてきた英霊も破格のものだったが、今回はさらに別格なのだ
青の魔剣士はそれを1人で相手にしようと言うのだ

バージル「―令呪を持って命じる。さがれアーチャー」

バージルの項が光り輝き絶対強制力を以てアーチャーを後退させる
傍から見れば自殺行為以外の何物でもない

アーチャー「全く・・・どうなっても知らんぞ・・・」

イリヤ「何を考えているのかしら?貴方一人で私のバーサーカーに勝てると思ってるの?」

バージル「――貴様如きが半神の英霊を狂化し使役するなど身の程を知れ」

ゴミを見るような眼でイリヤに視線を向ける
バージルにとって力こそ全て。力こそが絶対の階級であり力なき者が力ある者を統べることは彼の美学に著しく反している
――少女は魔剣士の怒りに触れてしまったのだ



77 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 21:48:49.06 ID:7xzUqS5Z0

イリヤ「何よ、あんたなんか私のバーサーカーに殺されちゃえばいいんだから!行きなさい!バーサーカー!!」

バーサーカー「■■■■■■■―――ッッッ!!」

バージル「スパーダならこの程度造作もなく通れる道だ。ならば俺にも―」

通れない通理はない。通らなくてはいけない
スパーダの血族に敗北は許されない

バーサーカー「■■■■■■■―――ッッッ!!」

バージル「ハァァァァァァァァァァァ!!!!!」

こうして半魔と半神の壮絶な戦いの火蓋は切って落とされた




80 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 21:55:27.52 ID:7xzUqS5Z0

城内

士郎「―ん、ここは・・・・そうか俺イリヤに捕まって・・・・」

響く轟音で目が覚めると椅子に括りつけられているらしい

士郎「この音は・・・まさかセイバー達が・・・・?」

地から響くようなこの音は間違いなくサーヴァントが交戦している音だ。
しかし誰が?セイバーだったらグズグズはしていられない。折角新たな力を身につけたというのにまた無力で終わるのは嫌だ―

士郎「クソっ!早くほどいて確かめないと・・・誰か来る!?」

セイバー「動くな!―士郎、ここでしたか・・・・」

凛「ホント、手間がかかるわね」

士郎「遠坂!・・・・この音は?」

凛「アーチャー達でしょうね。今のうちにさっさと逃げるわよ」

士郎「いや、イリヤが心配だ。遠坂達は先に行っててくれ」

凛「アンタ馬鹿じゃないの!?自分連れ去った奴の心配してる場合じゃないでしょ!!」

士郎「ごめん、それでも行かないとだめな気がするんだ」

相手があの魔剣士ならイリヤの命が危ない
今の自分ならイリヤが逃げる時間稼ぎくらいは・・・・



82 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 22:00:03.42 ID:7xzUqS5Z0

セイバー「ならば私も行きます」

凛「―はぁ 行けばいいんでしょ行けば!!ただし、状況によっては撤退するわよ。いいわね?」

士郎「ありがとう、約束するよ」


エントランス

状況はバーサーカーが優勢に運んでいた
バーサーカーの猛攻を間一髪のところでかわし数撃入れ後退
総ての攻撃をかわしているものの凄まじい残圧はバージルの身を裂き青のコートは血の赤に染まっていた

イリヤ「威勢が良かった割には逃げて攻撃してるばっかりじゃない、そんなことじゃ私のバーサーカーは倒せないわ」

バージル「―フン」



84 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 22:07:24.96 ID:7xzUqS5Z0

不敵な笑みと共に攻撃に転じる
一撃ごとに精度、重さ、そして美しさに磨きがかかる

Dope!Crazy!Blast!Alright!Sweet!Showtime!

バージル「これで終わりだ」

バーサーカー「■■■■■!?」

SSStylish!!!

イリヤ「私のバーサーカーが今ので2回も・・・手を抜いたんじゃないでしょうねバーサーカー!?早く殺してしまいなさい!!」

バーサーカー「■■■■■■■―――ッ!!!」

倒したと思い込んでいた相手からの全力の猛突進
瞬間移動も間に合わず壁に叩きつけられる

バージル「グッ―」

壁は原形をなくし無様にめり込む
しかし狂戦士と化した英霊は容赦なくバージルに襲いかかる
バーサーカー「■■■■■■―――ッ!!」

バージル「―12の試練を超えた報酬か」

眼前までバーサーカーが迫りくる。しかしバージルは動こうともしない



85 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 22:11:27.34 ID:7xzUqS5Z0

イリヤ「あら?諦めたのかしら。バーサーカーが本気になればアンタなんか相手にならないんだから」

バージル「半神と言うのは嘘ではないらしいな――――――では真の悪魔の力を見せてやろう」

その刹那バーサーカーの攻撃は阻まれ、何者も寄せ付けない強大な力場が形成されていた

バージル「――You're going down・・・・・!!」



バージル「――散るがいい」

目の前では人知を超える戦いが繰り広げられていた
数百の斬撃は空間を削るように無差別に周囲を切り刻む

凛「何よアレ・・・」

セイバー「士郎」

士郎「分かってる・・・・まだだ・まだ出ちゃいけない。俺だって犬死するつもりはない」

バーサーカー「■■■■■■――!」

バーサーカーはその身を呈し幼き主を守る
数度絶命しながらも決してマスターを守ることはやめない



86 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 22:15:50.01 ID:7xzUqS5Z0

イリヤ「バーサーカー!」

バージル「失せろ!」

上空からの鋭い斬撃
振り払おうとした腕が斬り落とされる

バーサーカー「■■■■―――!!」

バージル「消し飛べ!」

再び上空に移動し次こそはイリヤを仕留めんと斬りかかる

バーサーカー「■■―――ッ!」

バージル「消えろ!」

バーサーカー「―――――――」

最後の一撃。とうとうストックされていた命は終わりは迎える
しかし彼は最後まで主を守り抜いた

バージル「―これがスパーダの力だ」




87 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 22:20:30.24 ID:7xzUqS5Z0

イリヤ「やだ・・・やだよ・・・バーサーカー!」

バージル「次は・・・貴様の番だ・・・・」

魔人化は解け、息は上がっているが
イリヤへの殺意の炎は消えていない

士郎「させるかよぉ!!」

剣を持ち飛び出す。これ以上は放っておけない

バージル「貴様達は・・・・」

イリヤ「士・・・郎?」

士郎「バーサーカーは倒しただろ!!この子を狙う理由なんてない!」

バージル「その娘は身に余る英霊を狂化し服従させた―それが理由だ」

士郎「どうしても止める気はないのか」

士郎の額を冷汗が伝う
バージルの殺意は士郎に向けられているのだ



88 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 22:20:30.39 ID:xI47GCIu0

これ本当にアーチャーいらねえなwww



90 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 22:25:29.53 ID:7xzUqS5Z0

バージル「―ないな」

セイバー「我がマスターに手を出そうというなら私も相手になろう」

凛「流石にアンタでもバーサーカーと戦った後じゃ堪えてるんじゃないかしら?」

バージル「スパーダの血族には取るに足りん事だ―1人残らず殺してやろう」

絶体絶命の危機に瀕してなおバージルは余裕を崩さない
父ならば―その思いがバージルを奮い立たせる

アーチャー「そろそろ私も参加していいかな?」

バージル「誰が出て来いと?」

アーチャー「バーサーカー戦は黙って見届けただろう。私にも奴らの一人に用があってね、それとも令呪を使い再び下がらせるか?」

バージル「―フン、好きにしろ」



91 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 22:29:58.61 ID:7xzUqS5Z0

士郎「来るぞ!イリヤ!!下がってろ!」

イリヤ「うん――――――――え?」

次の瞬間イリヤの体は無数の剣で串刺しされていた

「双方剣を納めろ。王の御前であるぞ」

イリヤ「士――――郎」

士郎「イリヤ!!!」

駆け寄った時にはすでにイリヤの命は事切れていた

ギルガメッシュ「喚くな雑種。人形に本来の役目をさせるだけの事よ」

士郎「ふざけたこと言ってんじゃねぇぇぇぇぇぇ!!!」

目の前の奴が誰だかは分からない
だけど、だけどイリヤをこんな目にあわせた奴を許しておくわけにはいかない



93 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 22:33:30.72 ID:7xzUqS5Z0

ギルガメッシュ「この我の手を煩わせるか。万死に値すると覚悟しろ雑種」

「王の財宝(ゲートオブ・バビロン)」

無数の剣が向けられる
しかし今の士郎にとってこれ以上にありがたいことはない。目の前の敵を倒す武器が手に入ったのだから

士郎「―――――投影、開始」

「――――憑依経験、共感終了」

「――――投影完了。全投影、待機。」

ギルガメッシュ「贋作者が二人も・・・・虫唾が走るわ!!!」

士郎「―――停止解凍、全投影連続層写・・・・!!」

両者の剣が一斉に解き放たれる
ぶつかり合うと思われたそれは第三者によってことごとく弾き落とされた



94 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 22:38:27.22 ID:7xzUqS5Z0

ギルガメッシュ「どうした魔剣士?我が財宝の一振りでも欲したか?」

バージル「何故邪魔をした?」

先まで士郎に向けられていた殺気は英雄王に向けられている

ギルガメッシュ「何を殺気立っていると思えば先の人形の事だったか」

バージル「アレは俺が殺すべき相手だった」

ギルガメッシュ「人形に殺すも何もないであろう。」

バージル「貴様が元々気に入らなかったのもあるな」

ギルガメッシュ「ふむ・・・・ここで雑種共々葬り閻魔刀を手にしたいのは山々だが、まずは聖杯を機能させるが先か・・・・ではなまた会おう魔剣士」

そう言い残し英雄王はイリヤの亡骸を手にしその場を後にする

アーチャー「肝が冷えたぞマスター。どうせ戦いだせば下がれというのつもりだったのだろう?」

溜息をつき安堵する
いくらバージルと言えど三つ巴の今の状態で戦っては敗色は濃厚だ



95 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 22:41:51.42 ID:7xzUqS5Z0

バージル「分かっているなら自らそうしろ」

アーチャー「本来なら戦闘はサーヴァントの領分だ。それに下がれとは中々おかしな話だぞ。もう慣れてしまったが」

バージル「―引くぞ」

最早この場に興味はない
士郎に一瞥もくれることなくアーチャーに撤退を促す
アーチャー「了解だ。――残るマスターはお前だけだ覚悟しておけ衛宮士郎」

それに伴いアーチャーも撤退する
必殺の誓いと共に

士郎「あの金色のサーヴァントは一体・・・・・」

おかしな状況には慣れたつもりだった
けれど思考が追い付かない



97 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 22:44:58.86 ID:7xzUqS5Z0

凛「アーチャーのマスターとは面識がある様子だったけど」

セイバー「私は彼を知っている。彼は前回の聖杯戦争でアーチャーのクラスのサーヴァントでした」

士郎「それが何で今も残ってるんだ?」

セイバー「すみません。そこまでは・・・・」

士郎「セイバーが謝ることじゃない。ただ、アーチャーのマスターだけでも大変だってのに」

自分の力の無さがもどかしい
もう何度味わっただろう感情に苛立ちを覚える

凛「出てきちゃった以上仕方ないわ。勝率が低いのはもともとなんだし前向きに考える方が賢明よ」

セイバー「はい。何があろうと我が剣に誓い士郎に傷は付けさせない。そのことに変わりはありません」

士郎「そうだ。何があっても俺は負けちゃいけない。あんな奴らに聖杯は渡せない」

凛「あのね、何一人で背負いこんでるのよ」

セイバー「そうです。貴方はもっと周囲に頼るべきだ」

士郎「ごめん・・・・なんだか俺浮かれてたみたいだ」



98 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 22:49:22.32 ID:7xzUqS5Z0

セイバー「ですが私も貴方に頼らせてもらいます」

凛「もう私達運命共同体みたいなものなんだから」

士郎達は決戦に備える
運命を捻じ曲げた強大な魔剣士に立ち向かうために

ホテル

アインツベルンでの出来事から数日後が経とうとしていた

アーチャー「やはりだマスター。柳堂寺に聖杯を確認した。英雄王と言峰がいるがどうする?セイバー達が来るのも時間の問題だとは思うが」

バージル「出るぞ」

アーチャー「流石だな、決断が早い」

笑いが零れ出る。今更ながらとんだマスターに引き当てられたものだと
そしてそれが寂しくもあった。

魔剣士は最後の戦いに身を投じる。自らの最強を証明する為、聖杯の価値を見定める為に




99 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 22:52:59.74 ID:7xzUqS5Z0

柳堂寺

遠くからでも分かる程に禍々しい呪いの渦は漏れ出していた
それは血で血を洗う聖杯戦争の最期を祝福するように

言峰「ようこそ、アーチャーのマスターよ。これが万能の願望機聖杯だ。―この呪いの泥を飲み干せば、君が望む力も手に入るだろう」

バージル「―貴様にもう用はない」

閻魔刀を胸に突き立てる
最早この神父に一切の利用価値はないのだ

言峰「―な・・・・に」

血を振り払い鞘に戻す
それと同時に言峰はあっけなくその場に崩れ落ちた

バージル「貴様など最初から利用しているに過ぎん。貴様の道化振りにも飽きた頃だ」



101 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 22:59:07.76 ID:7xzUqS5Z0

ギルガメッシュ「来ていたのか魔剣士。それならそうと言え。―これは?」

足元に転がっている亡骸に目をやる

バージル「生憎俺は奴の長々とつまらん話を聞く耳は持ち合わせていないのでな」

ギルガメッシュ「成程な、奴は奴で愛でようもあったがこれから手に入る財の事を思えばほんの些事に過ぎんか」

閻魔刀の事を思えば―退屈しのぎのコマが一つなくなったにすぎないのだ

アーチャー「話している間に来たようだ」

ギルガメッシュ「まずは奴らを斃せ我が相手をする真の英雄は一人のみで良い」

バージル「―すぐ済む」

セイバー「随分な言いようだがその言葉虚勢ということはないだろうな?」

バージル「愚かだな。スパーダの血に挑んだ者たちがどうなったかを知らない貴様ではあるまい?」

セイバー「たとえ刺し違えてでも―私はお前を倒す!!」

アーチャー「お前の相手は私がしよう。そろそろ決着をつけようと思っていた」

士郎「あぁ、俺もそう思っていた」



105 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 23:04:57.37 ID:7xzUqS5Z0

アーチャー「その様子だと薄々気付いたか?衛宮士郎」

士郎「お前と打ち合った時に何かが見えた。でも―俺はそれを認めない、認めちゃいけない」

アーチャー「いいだろう、英霊となったこの身、お前の手には余るぞ?」

凛「だから私が居るんでしょう」

アーチャー「―相変わらず無茶をするな遠坂は。だが遠慮はしないぞ」

士郎・アーチャー「「I am the bone of my sword―!!」」

各々の信念をかけた最後の戦いは幕を開ける
自らにけじめをつける為、最強を示す為



青と青はぶつかりあう
お互い決殺の覚悟を以て総て急所を狙う斬撃を繰り出しあう
セイバー「やぁぁぁぁぁぁぁ!!」

バージル「死ね!!」

この前とは一撃の重みが違う
だがこの女は本気を出していない―

バージル「いつまで下らん小細工をするつもりだ?」




107 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 23:09:05.26 ID:7xzUqS5Z0

セイバー「どういうことだ?」

バージル「既に貴様の間合いは見切っている。そのまま死にたいなら別だがな」

セイバー「―いいだろう。私も貴様相手に宝具なしで勝てるとは思っていない」

風王結界を解き、伝説の聖剣が現れる
聖剣と魔剣が主の為に猛りを上げる

バージル「・・・来い。殺してやろう」

セイバー「結構な刀だが、貴様にのみ分があると思うな!」

バージル「屑が―!!」


一方士郎はアーチャーに劣勢を強いられていた
未来の自分、何より供給される魔力の量、質が段違いなのだ

アーチャー「これで理解しただろうお前と私には年月、経験の差がある。対して才能がない私達にとって――それは決定的な差だ」

士郎「ならお前の経験を模倣するだけだ!!」

アーチャー「それでは私には勝てん!!」

凛「そっちばかり見てていいのかしら!?」

とっておきの宝石を手にしアーチャーに投擲する
いくらサーヴァントであろうともこの一撃は―――



109 3前の設定で書いたから少し未熟ってことにしておいてください 2012/01/30(月) 23:11:40.90 ID:7xzUqS5Z0

アーチャー「――I am the bone of my sword」

「“熾天覆う七つの円環”――――!」

凄まじい魔力の奔流を円環が受け止める
花弁が三枚はがれおちたが円環は主を守り通した

アーチャー「直撃すれば死んでいたな・・・・大した威力だ」

凛「そんな・・・・・」

士郎「大丈夫だ遠坂、やっぱりコイツは俺が倒さなきゃならないんだ」

アーチャー「せぇぇやぁぁ!!」

士郎「グウッ――はぁぁぁぁぁ!!」

倒しても倒しても士郎は立ち上がり挑みかかってくる
無様だと笑われようとこの男は最後まであがくだろう

アーチャー「まだ分からんか?―いや、お前はそういう男だったな!!」

士郎「お前がどうやってそうなったのかは知らない。だけどここでお前に殺されるわけにはいかない!!」

アーチャー「私とお前の剣製に決定的な差がある事を教えてやろう」

短刀に魔力を込める
過去の因縁を断ち切るためその短刀は倍以上の長さを持つ羽根状の剣へと昇華された



111 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 23:17:43.44 ID:7xzUqS5Z0

「―――心技、泰山ニ至リ」

「―――心技 黄河ヲ渡ル」

アーチャー「はぁぁぁぁぁ!!」

一閃
士郎の剣は砕け肩から真っ二つに士郎の体は引き裂かれていた

士郎「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!―っは・・・あ・・・畜・・生・・・・!!」

アーチャー「―これで終わりだ。手こずらされたな」

戦いは一つの終わりを迎えた
男は過去の因縁を断ち切ったのだ

セイバー「―士郎が・・・」

士郎からの魔力供給が完全に断たれたことがセイバーに伝わる
覚悟はしていた――しかし心の揺れは止まらなかった




112 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 23:21:48.15 ID:7xzUqS5Z0

バージル「マスターが敗れたようだがまだ続けるか?」

戦意の確認をする
バージルに腑抜けをいたぶるような趣味はないのだ

セイバー「当然だ!士郎は最後まで戦った!ここで引いたのでは士郎に申し訳が立たない!!」

涙が止まらない
亡骸でもせめて最後に抱きしめたい――けれどそれは許されない

バージル「―来い」

セイバー「約束された―」

鎧を魔力に変換し聖剣は今までにない光を放つ

「勝利の剣―!!」

「―な」

唸る聖剣がバージルに到達する前に魔剣はセイバーを貫いていた



113 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 23:25:09.24 ID:7xzUqS5Z0

バージル「何を迷ったのかは知らんが踏み込みが足らん」

セイバー「―グッ」

引き抜くとともに倒れ斬る前のセイバーを蹴り飛ばす
ブリテンの王ではなく一人の女には足蹴が妥当だと言わんばかりに

バージル「人間如きの為に心を迷わせるとは愚かな女だ」

軽蔑のまなざしをセイバーに向ける
魔人化こそしていないもののその顔は冷酷な悪魔そのものだ

セイバー「すみません・・士郎。私は・・・・・」

バージル「(直撃していればただでは済まんかっただろうな――惜しい女だ)」

アーチャー「そちらも済んだようだな」

バージル「まだ終わってはいない」

見据える先には王の中の王がいた

ギルガメッシュ「やはり勝ったのはそなたであったか。つくづく我の期待を裏切らん男よな」



118 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 23:32:50.00 ID:7xzUqS5Z0

バージル「そう言う貴様は俺の期待を裏切らんのだろうな?」

ギルガメッシュ「無論だ。出し惜しみはせん」

バージル「ではこちらも本気を出すとしよう」

あくまでお互いに譲ろうとはしない
伝説の魔剣士の直系として、王の中の王たる男として譲るわけにはいかないのだ

ギルガメッシュ「王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)」

バージル「図に乗るな」

無数の宝具を幻影剣が迎撃する
勿論相殺など出来ていない、しかし減速された宝具を全て神速の剣技で叩き落とし傷は一つもつけられていない

ギルガメッシュ「さてそれでいつまで持つかな?」

蔵から引き出すだけのギルガメッシュと違い、バージルは全て自ら精製しなければならない
いずれ差がつくのは誰の目にも明らかだ

バージル「たりんなら貴様の剣を使うまでだ」

撃ち落とした剣の一振りを手に取り魔力を吸い取る
幻影剣は勢いを取り戻し再び王の財を迎撃する



122 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 23:37:55.89 ID:7xzUqS5Z0

ギルガメッシュ「いくら魔剣士と言えど我の財に触れるとは、その罪は重いぞ?」

バージル「貴様が使うよりはマシだろう?」

ギルガメッシュ「言ってくれるわ」

バージル「はぁぁぁぁぁ!!」

瞬間移動と共にギルガメッシュに斬りかかる

ギルガメッシュ「天の鎖よ!」

しかし斬りかかる一瞬、動きは常時のものへと戻る
その瞬間を英雄王は見逃さなかった。数本の剣が突きささる

バージル「こんなもので俺を捕えたつもりか?愚かだな英雄王」

真の姿を現し鎖を引きちぎる
魔の前に聖は意味をなさなかった



123 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 23:41:42.06 ID:7xzUqS5Z0

ギルガメッシュ「最初の一手と言ったところか、心配するなこの程度では我の財は尽きん」

バージル「―フン」

ギルガメッシュ「魔人・・・・か」

バージル「スパーダの力その身で思い知るがいい」

ギルガメッシュ「貴様の力か我の財か―簡単に倒れてくれるなよ」

バージル「誰に向かって言っている?」

ギルガメッシュ「そうであったな―では往くぞ?」

何時間も何時間も永遠と思えるほどの死闘は続いた
柳堂寺の庭内は無数に剣や盾、あらゆる財が魔剣士の手によって無残な姿に帰られ埋めつくされていた


ギルガメッシュ「―ほう、我が財を全て叩き落とすか」



124 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 23:43:28.62 ID:QufprD8u0

誰かダンテかネロ呼んで来い


126 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 23:45:50.77 ID:7xzUqS5Z0

バージル「―ハァ・・・・ハァ」

補給しつつとはいえほぼ常時の魔人化
無尽蔵と思われるバージルの体力も限界に来ていた

ギルガメッシュ「だが最早魔人の姿を保つことすら敵わんか」

英雄王の手には剣の様なものが握られている

バージル「貴様が剣の腕で俺に勝てると?」

ギルガメッシュ「コレは少し特別なものでな、名をエアと言う。喜べ魔剣士、我の財を総て使わせた挙句このエアによって葬られるのだ。これ以上に我が敵に敬意を払うことなどないぞ?」

バージル「・・・・・・・」

ギルガメッシュ「エヌマ―」

英雄王が勝利を確信したその時
魔剣士は再び魔人と化し眼前に現われていた

バージル「遅い」

ギルガメッシュ「魔人に―!?」

魔人化による高速斬撃に加え無数の幻影剣が逃げ場をなくし止めをさす

バージル「―安らかに眠れ」



128 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 23:50:19.69 ID:7xzUqS5Z0

ギルガメッシュ「ガぁっ―!!」

絶界――バージルの最終奥義であり英霊如きに使うまいと決めていた技を英雄王には使わざるを得なかったのだ(MVCP参照)

バージル「これが悪魔の力だ」

ギルガメッシュ「―最後に聞かせよ、魔界とはどのような場所だ?」

バージル「生憎俺も知らん」

ギルガメッシュ「ハッ、知らぬとは笑わせおる。だが別の答えは得たようだな」

バージル「俺は父を――スパーダを超える」

ギルガメッシュ「修羅の道を行くか」

バージル「それが悪魔の運命なら」

ギルガメッシュ「なら再び我と相見えるその日までにそなたが魔界を治めておけ。魔界の財総て我が手に入れてくれよう」

バージル「―好きにしろ」

ギルガメッシュ「手が届かぬ物程美しく見える・・・いや中々の切れ味だったぞ」

お互い微かに笑みがこぼれる
視線こそ合わせなかったがそれは強者を称えるものだった



129 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 23:55:13.20 ID:7xzUqS5Z0

バージル「グッ―」

思わずその場に倒れこみそうになる、ギリギリのところで閻魔刀を杖にし持ちこたえる
スパーダの血族に倒れることは許されない
限界を超え最終奥義を放ったバージルにはそれが限界だった

アーチャー「無事終わったようだな」

バージル「当然だ」

アーチャー「正真正銘聖杯を手に入れる権利があるのはマスターだがどうする?」

バージル「所詮聖杯なぞ人間が生み出した下らん遊びにすぎなかった、俺が求めるのはもっと純粋な―悪魔の力だ」

父に近づくにはやはり父のいる世界を必要がある
バージルはそう結論付けた。あの男の言葉も聞いてやってもいいだろう、と

アーチャー「ではアレはどうする?私にも聖杯は必要なくなってしまったのでね、壊してしまっても構わんのだが?」

バージル「令呪を持って命じる―聖杯を破壊しろ」

令呪を2角を消費しアーチャーに最後の命令を下す

アーチャー「令呪による魔力供給―ふむ十分に破壊可能だ。最後の務めを果たすとしよう」
「――投影・開始」

「約束された勝利の剣――!!」

凄まじい閃光が呪いの壺を破壊する
空は浄化されたかのように晴れやかなものに変わっていった



130 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/30(月) 23:57:26.33 ID:7xzUqS5Z0

バージル「品のない技だ」

アーチャー「そう言うな、私としては会心の出来だったのだぞ?」

バージル「アレが会心の出来と?」

アーチャー「元が元だ。大目に見てくれ」

最後の最後まで皮肉を言いあう関係である事に変わりはないらしい
たまたま最後に言われるのはアーチャーだったというだけだ

バージル「奇跡を求め人の道を捨てる―その考えは嫌いではないがな」

アーチャー「マスターに褒められるとは驚いたな―どうやら時間のようだ輪廻の輪から私は外れたらしい」

薄れゆくサーヴァントを背にバージルは歩き出す



132 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/31(火) 00:00:16.61 ID:2UxrRNAm0

バージル「俺は行く」

アーチャー「最後に聞かせてくれ。やはり力を求め続けるのか?」

バージル「当然だ」

短く答える。振り向かずに

アーチャー「では少しでも幸あらんことを祈っておくよ」

バージル「(力を求めるには魔界―魔界への扉を開く必要がある)」


「そして父―スパーダを超える・・・・!」


「I need more power・・・・!!」

3前日譚漫画編へ続くかもしれない



133 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/31(火) 00:00:45.79 ID:2UxrRNAm0

終わり


136 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/31(火) 00:06:47.15 ID:BR+o3QmS0

乙tylish!


138 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/31(火) 00:07:55.76 ID:U3wFfIX40

乙!

>>136
乙・・・タイリッシュ?



139 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/31(火) 00:11:01.30 ID:2UxrRNAm0

今度は五次に介入するネロか四次に介入するダンテでも書いてみたいと思ってます

ありがとうございました



143 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/31(火) 00:23:47.85 ID:oI462xEHO

>>139
楽しみに待ってる



141 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/01/31(火) 00:15:24.76 ID:B8Zx9tFpO

乙!


この記事へのコメント

No Title - 名無しさん - 2012年06月14日 02:34:32

Fate勢じゃバージルやダンテには敵わんだろ…w
マガジンのヤンキー漫画の主人公が、ジャンプの人外じみた聖闘士や北斗神拳伝承者に挑むようなもんだよww

- 名無しさん - 2012年09月05日 23:57:21

これはひどいマンセーだと感じたが
でもバージルだからしょうがないと諦めた

だってスパーダの血族だもん、止められねーよダンテ連れてこい

承認待ちコメント - - 2013年12月03日 04:17:45

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