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入須「もしもし、入須です」
引用元:
・10/3 折木家
供恵「あら、どしたの?」
入須『…先輩ですか?』
供恵「うん」
入須『あの、明日の事を話したくてお電話したのですが…』
供恵「明日? 私は暇だけど」
入須『…私は忙しいんです。文化祭なので』
供恵「あー、そういや文化祭だったねー」
入須『…あの、先輩』
供恵「んー?」
入須『わざとですね?』
供恵「ほーたろー! 愛しのイリスちゃんよー!」
入須『せ、先輩っ!』
ダンダンダンダン ガラッ
奉太郎「バカ姉貴!!」
供恵「はい」スッ
奉太郎「………」ガシッ
入須『…折木君?』
奉太郎「なんですか? 先輩」
供恵「おとなのかいだんのーぼるー♪」
奉太郎「部屋に行け! バカ!」
供恵「はいはい。ちゃんと電気消すのよー」
タンタンタン
奉太郎「…ったく」
入須『ふふっ、先輩はいつも面白いな』
奉太郎「どこがですか…」
入須『…まぁ、からかうのは控えて貰いたいが』
奉太郎「あれにそんな事言っても無駄ですよ」
入須『…そうだな』
奉太郎「それで、どうしたんですか?」
入須『あぁ、明日の事を話そうと思ってな』
奉太郎「文化祭ですか?」
入須『そうだ。君の予定を教えて貰おうと思って』
奉太郎「……先輩、俺には恐らく暇はなさそうです」
入須『…何かあったのか?』
奉太郎「…いえ、特には無いんですが」
入須『どういう事だ?』
奉太郎「…すいません、先輩。状況が不透明過ぎて説明できません」
入須『気になるよ。相談にのれると思うんだが』
奉太郎「必要なら千反田が行くと思います」
入須『……君じゃなくてか?』
奉太郎「…えぇ、確証は有りませんが」
入須『そういう事を聞いている訳じゃないんだが…』
奉太郎「先輩。もしあいつが来たら、何も言わずに受け止めてやって下さい」
入須『…事情は話してくれないんだな?』
奉太郎「…明日の夜にもう一度話しましょう。その時には予定を話せると思います」
入須『…わかった』
奉太郎「すいません」
入須『信じてるから』
奉太郎「はい」
入須『…まぁ、私も初日はあまり抜けられそうになかったから』
奉太郎「そうですか」
入須『明日の朝も少し早くてな。君は遅くて大丈夫だよ』
奉太郎「本当ですか!?」
入須『…随分嬉しそうだな』
奉太郎「そんな事ありません」
入須『…まぁ、いい。 …放課後も予定が合わなさそうなんだ。文化祭の期間は別々に行動しよう』
奉太郎「上映会、忙しいんですか?」
入須『ふふっ、それこそ不透明だ。明日はその流れを見る為に常駐しようと思ってな』
奉太郎「女帝の腕の見せ所ですね」
入須『……ふん』
奉太郎「…見えない所で不貞腐れないで下さい」
入須『君には女帝と呼ばれたくない』
奉太郎「みんな呼んでるんじゃないんですか?」
入須『呼ばれる事もあるが、君は駄目だ』
奉太郎「…女帝さん?」
入須『さんを付けても駄目だ』
奉太郎「…女帝様?」
入須『そういう意味じゃない』
奉太郎「じゃあなんて呼べばいいんですか?」
入須『………』
奉太郎「…先輩?」
入須『……名前で、呼んで欲しい』
奉太郎「…え?」
入須『聞こえただろ』
奉太郎「…いや、いつも呼んでるじゃないですか。入須先輩って」
入須『……もう知らん。バカ』
奉太郎「え?」
入須『また明日』ガチャッ
ツー ツー ツー
奉太郎「………」
奉太郎(暴言を吐かれて切られてしまった…)
奉太郎「…まぁ、いいか」
奉太郎(…そういえば、高校のホームページに特設ページがあったんだったな)
奉太郎(手芸部と奇術部…一応見ておくか)
・10/4 通学路
入須(設営は完了、パンフは沢木口に確認済み、釣り銭は担任が朝持ってくる)
入須(配置スケジュールは江波に確認、フィルムの管理は中城に確認、フィルムのコピーは完了)
入須(機器のチェックは羽場に確認…後は私が視聴覚室の鍵を借りてくれば、終わりか)
入須(とりあえず、問題は無さそうだな)
入須(………)
入須(折木君、昨日はどうしたんだろうな…)
入須(何も無いと言いながら、明らかに何かがあった声色だった)
入須(…いや、妙な勘ぐりはよそう。信じると言ったんだから)
入須(………)
入須(…もうすぐ商店街か)
入須(今日は折木君は居ないんだな…)
入須(………)
入須(ふふっ。随分弱くなったな、私も)
入須(全部折木君のせいだ。まったく…)
入須(…だが、昨日の折木君は酷かったぞ!)
入須(私の言っている事を全く理解してなかったし、的外れな事を言うし)
入須(いくら私でも怒る事はあるんだぞ。鈍感…)
入須(先輩でも入須でもなく、本当は…)
入須「…ほ、ほうたろう」ボソッ
入須(………)
入須(…無理だな、これは)
入須(………)
入須(か、顔が焼けそうだ…)
・体育館 開会後
ズン ズン ズン ズン
奉太郎「……あれがダンサーか」
トントン
奉太郎「?」
入須「折木君」
奉太郎「…先輩?」
ズン ズン ズン ズン
入須(…音が凄い)
入須「…ここでは話し辛いな。折木君」
奉太郎「はい」
入須「ちょっと来てくれ」
奉太郎「…はぁ」
・廊下
入須「…すまないな、歩きながらで」スタスタ
奉太郎「いえ。それで、何ですか?」
入須「…まぁ、特に何がある訳でもないんだが」
奉太郎「………」
入須「こら、止まるな。一緒に来い」
奉太郎「部室に行きます」
入須「上がる階段が違うだけだ。距離は変わらないだろ?」
奉太郎「…まったく」スタスタ
入須「…少しだけ君の顔を見ようかと思ってな」
奉太郎「部室に来て下さい。ずっと居ますから」
入須「ずっと?」
奉太郎「三日間古典部で店番なんですよ」
入須「そうか。だが今日は予定が詰まっているんだ」
奉太郎「忙しいんですか?」
入須「そうだな」
奉太郎「頑張ってくださいねぇ」
入須「…気持ちが一ミリも入ってないだろ?」
奉太郎「…そんな事ありません」
入須「嘘をつくな」
奉太郎「……あ、もうすぐ視聴覚室ですよ」
入須「話を逸らすな」
奉太郎「ほら、みんないますよ」
入須「……夜、電話するんだぞ」
奉太郎「じゃあ俺は部室に
ガシッ
入須「電話、するんだぞ」
奉太郎「…わかりました」
入須「頼むぞ。九時には自室にいるから」
奉太郎「では、また」
入須「あぁ」
入須(…この分だとまた忘れそうだな)
入須(いや、信じる事も大切だ)
入須(信頼してこそ、対等だからな)
・視聴覚室 午後
入須(大きなトラブルも無く、パンフの売れ行きも上々)
入須(順調だな。明日は見て回る事もできそうだ)
入須(…奇術部、楽しみだな)
入須(手芸部のぬいぐるみ、カワイイだろうな)
入須(折木君はどちらが好きなんだろうか)
入須(…いや、どちらも興味がないだろうな)
入須(私が手芸部でぬいぐるみを選んでいたら)
入須(先輩、長いです。帰ってもいいですか? とか)
入須(私が二つのぬいぐるみで迷って、どちらが良いか聞いたとしたら)
入須(どっちでもいいんじゃないですか? とか)
入須(……腹が立ってきた)
江波「入須さん」
入須「! …なんだ?」
江波「受付の隣にそんな顔で立たないで下さい」
入須「…酷いか?」
江波「お客が帰ります」
入須「……中に入っていよう」
江波「はい」
入須(…折木君のせいだ!)
入須(……ふん)
入須(………)
入須(……反省しよう)
・折木家 夜
奉太郎(明日も店番、明後日も店番…素晴らしいじゃないか)
奉太郎(…あの文集がなければだが)
奉太郎「………」ハァ
供恵「ため息つくな」パシッ
奉太郎「痛っ! なんだよ姉貴」
供恵「私の幸せが逃げる」
奉太郎「姉貴のは逃げねぇよ」
供恵「婚期が遅れたらあんたのせいよ」
奉太郎「姉貴が結婚? …諦めろ、無理だ」
供恵「なんだってー?」
奉太郎「……へ、部屋に戻る!」ダッ
供恵「待てコラ!」
プルルルルル…プルルルルル…
奉太郎「…こんな時間に電話?」
供恵「誰だろ?」
奉太郎「とりあえず取れよ」
供恵「はいはい」
ガチャ
供恵「はい、折木ですけど」
入須『もしもし、入須です』
供恵「…ただいま留守にしております。御用の方は
入須『…先輩』
供恵「ん? どした?」
入須『折木君はいますか?』
供恵「後ろにいるよ」
入須『代わってください』
供恵「なんか声怖いねー」
入須『…代・わ・っ・て・く・だ・さ・い』
供恵「は、はーい」
入須『………』
供恵「…奉太郎、またあの子に余計な事いったでしょ?」
奉太郎「あの子?」
供恵「はい」スッ
奉太郎「…なんだよ?」ガシッ
入須『…折木君?』
奉太郎「あぁ、先輩ですか。どうしたんですか?」
入須『待っていたんだが』
奉太郎「何をですか?」
入須『………』
奉太郎「…先輩?」
入須『折木君』
奉太郎「はい」
入須『バカ!!』ガチャッ
奉太郎「うぉわっ」
ツー ツー ツー
奉太郎「………」
供恵「なんだって?」
奉太郎「…わからん」
供恵「とりあえず会ったら謝っときなよ」
奉太郎「…その方が良さそうだ」
・10/5 通学路
入須(………)
入須(………)
入須(………)
入須(……絶対に許さん)
入須(土下座しても許さん)
入須(強い気持ちを持って、折木君に憤慨しよう)
入須(昨日のは酷過ぎる!)
入須(………)
入須(…とはいえ、釈明の機会を与えなくては可愛そうだろう)
入須(今日は部室に行ってやるか)
入須(………)
入須(…まぁ、許さないがな)
入須(………)
入須(…内容によっては考えてやるか)
入須(………)
入須(…正直に頭を下げたら、許してやろう)
入須(私も鬼ではないからな)
入須(…感謝しろよ、折木君)
・古典部 午前
奉太郎「…ふぁいやー」
入須(………)コソコソ
奉太郎「………」
入須(…折木君一人か)
入須「…失礼する」
奉太郎「! せ、先輩」
入須「休みが取れてな。来たよ」
奉太郎「そ、そうですか」
入須「…どうした?」
奉太郎「いや、あのー…」
入須「なんだ?」
奉太郎「…怒ってないんですか?」
入須「…そう聞く前に言う事はないのか?」
奉太郎「……すいませんでした」
入須「なにがだ?」
奉太郎「…なにがでしょう?」
入須「………」ペシッ
奉太郎「痛っ!」
入須「…まったく。もういいよ」
奉太郎「…寝る前に考えてはいたんですけど」
入須「あぁ」
奉太郎「ひょっとして何もしていないんじゃないかと」
入須「………」
奉太郎「すいません、冗談です」
入須(………)ハァ
入須「……いいか、例えば、君がどうしても読みたい本が発売するとしよう」
奉太郎「はい」
入須「書店の開店は十時だ。君はどうしても読みたくて九時からその書店の前で待っていた」
奉太郎「絶対しませんけどね」
入須「まぁ君はそうだろう。続けるが、十時になってもその書店は開かない。十時半、十一時、十一時半」
奉太郎「他の店に行きましょう」
入須「近場にはその書店しかないと考えろ。十二時になってようやく店主が表に現れ、シャッターを開けた。そこで散々待たされていた君は店主に聞くんだ、待っていたんですけど、と」
奉太郎「はぁ」
入須「そこで店主はこう言った。あぁ、待ってらっしゃったんですか。何故ですか? と」
奉太郎「…それがオチですか?」
入須「違う、笑い話じゃないよ。君はこの店主をどう思う?」
奉太郎「……二時間待たされて何故ですか、ですか。とりあえず腹が立つと思います」
入須「そうだろう」
奉太郎「……え?」
入須「………」
奉太郎「……考えます」
入須「あぁ、頼む。そろそろ休みも終わる、私は戻るぞ」
奉太郎「お気をつけて」
入須「午後にまた来るから」
奉太郎「来なくていいです」
入須「それまでに考えておくんだぞ?」
奉太郎「明日まで待って
入須「考えろ」
奉太郎「…はい」
入須「ではな」
奉太郎「………」
スタスタ
入須(…わかってなさそうだったな)
入須(…いや、腐っても折木君だ。期待しておこう)
・古典部 午後
入須(………)
入須(…凄かった! 奇術!)
入須(お椀と玉がまさかあんな事になるとは!)
入須(…はぁ、不思議だ)
入須(折木君も誘えばよかったな)
入須(福部君が居たから折木君も居るかと思ったんだが)
入須(…まぁ、居たら何故私と来なかったのかを問い詰めるが)
入須(…そろそろ着くな)
入須(………)コソコソ
奉太郎「………」ボーッ
入須(………)
入須「…折木君」
奉太郎「…先輩」
入須「どうしたんだ、ボーっとして」
奉太郎「そう見えます?」
入須「あぁ」
奉太郎「色々考えていたつもりなんですけど」
入須「色々?」
奉太郎「先輩の件以外にも色々ありまして」
入須「…この文集か?」
奉太郎「それもあります。先輩、ありがとうございました」
入須「千反田の事か。君たちには世話になったしな」
奉太郎「すいません」
入須「…流石にこの量は驚いたが」
奉太郎「止むに止まれぬ事情がありまして」
入須「まぁ、出来る限り協力はするよ。こちらの売れ行きは上々だ」
奉太郎「助かります」
入須「…そういえば、千反田が妙な事を聞いてきたんだが」
奉太郎「はぁ」
入須「人への頼み方を教えてくれと」
奉太郎「……あぁ」
入須「なんなんだ一体?」
奉太郎「あいつなりに努力しているんでしょう」
入須「………?」
奉太郎「で、なんて言ってやったんですか?」
入須「……まぁ、私の思う所をな」
奉太郎「…先輩」
入須「…なんだ」
奉太郎「俺にやった事、そのまま言ったんじゃないでしょうね?」
入須「……そんなことはないぞ」
奉太郎「目を逸らさないでください」
入須「…似た様な事は言ったかもな」
奉太郎「言いましたね」
入須「言ってない」
奉太郎「………」
入須「……ところで、君が私にした酷い事がなにかはわかったのか?」
奉太郎「なんですかその表現は」
入須「そのままの意味だ。鈍感鬼畜の折木君」
奉太郎「とんでもない二つ名ですね…でも、わかりましたよ」
入須「本当か?」
奉太郎「流石にこれだけ時間があれば」
入須「では聞かせて貰おうか」
奉太郎「ずばり、一言で当てましょう」
入須「あぁ」
奉太郎「放課後、俺が待ち合わせせずに帰ったからです」
入須「……ん?」
奉太郎「約束の話をしてましたけど、先輩、文化祭中はその約束は無かった筈ですよ」
入須「………」
奉太郎「前もありましたよね。俺に朝五分遅れたって怒った事」
入須「あぁ」
奉太郎「自分で言った事ですよ、先輩。俺の手帳に予定を書くんですから、先輩も気をつけてくださいよ」
入須「………」
奉太郎「……どうですか、先輩?」
入須「………」
奉太郎「………」
入須「………!!」ペシッペシッ
奉太郎「痛っ!」
入須「バカ!」ペシッ
奉太郎「痛っ! せ、先輩!」
入須「…明日まで君とは話さない」
奉太郎「…え?」
入須「反省しろ」
奉太郎「違うんですか?」
入須「一晩考えろ、バカ」スタスタ
奉太郎「………」
スタスタ
入須(……! ……!!)
入須(信じられない!)
入須(好きじゃなかったら絶交だ!)
入須(……!!!)
入須(………)ハァ
入須(…もう知らん)
・折木家 夜
奉太郎(………)
奉太郎(一体なんなんだ、先輩が怒っている事…)
奉太郎(…俺が忘れている事があるはずだ)
奉太郎(………)
供恵「風呂上がったよ」
奉太郎「…あぁ」
供恵「…なにしてんの?」
奉太郎「少し考え事だ」
供恵「入須ちゃん?」
奉太郎「…なぜわかる」
供恵「まぁねぇ」
奉太郎「……女心はわからん」
供恵「あんたがんな事言う日が来るとはねぇ」
奉太郎「…割と真剣なんだ」
供恵「ふーん」
奉太郎「…興味なさそうだな」
供恵「無いよ」
奉太郎「なら絡んでくるな、バカ」
供恵「いいのかなー? そんな事言って」
奉太郎「………?」
供恵「折角アドバイスしてあげようと思ったのに」
奉太郎「…なんだよ」
供恵「わからない事に頭を使ってもしょうがないわよ」
奉太郎「どういう事だよ」
供恵「わかる事に目を向けて考えれば、わからない事にも答えは出るって事よ」
奉太郎「…よくわからないんだが」
供恵「あんた、テストでわからない問題が出たらどうする?」
奉太郎「飛ばして先にいく」
供恵「それでわかる問題を解いている内に思い出す事もあるでしょ? もしかしたらその先に答えのヒントがあるかもしれない」
奉太郎「だが、数学の公式なんかは頭から抜けていたら無理じゃないか?」
供恵「それなら終わった後に教科書を見ればいいじゃない」
奉太郎「手遅れだ」
供恵「次につながるでしょ」
奉太郎「…詭弁じゃないか、それは」
供恵「ようは、解決方法なんていくらでもあるって事」
奉太郎「あぁ」
供恵「今回の場合、事実を検討すればわからない事に上書きできるはずよ」
奉太郎「上書き?」
供恵「入須ちゃんが今必要としているエックス。それより必要なワイを示せれば、この問題は解決」
奉太郎「だが、今以上に悩んでいる問題は無いぞ」
供恵「それをあんたが検討して考えるのよ」
奉太郎「…難しいな」
供恵「それ以上は知らない。じゃ、私は寝るから」
奉太郎「助かったよ、姉貴」
供恵「尊敬したでしょ?」グリグリ
奉太郎「…頭から手を離せ」
供恵「ふふーん。おやすみー」
奉太郎「あぁ」
奉太郎(…とはいえ、入須先輩が今必要としている答え以上の答えか)
奉太郎(…また明日、考えてみよう)
・10/6 折木家 朝
奉太郎(………)
奉太郎(…姉貴の言っていた事はなんとなくわかったが)
奉太郎(この答えを出すのは、勇気がいるな)
奉太郎(だが、先輩の事を考えれば…)
奉太郎(そろそろ、決着をつけないといけないな)
プルルルルル… プルルルルル…
供恵「出てー」
奉太郎「おー」
ガチャッ
奉太郎「はい、折木です」
入須『…折木君か?』
奉太郎(!)
奉太郎「入須先輩…」
入須『…昨日の事はひとまず保留にして、要件だけ伝えよう』
奉太郎「はい」
入須『十二時に手芸部でデートする、以上』
奉太郎「…わかりました、昼ですね」
入須『約束したからな』
奉太郎「はい」
入須『では、後で』ガチャッ
ツー ツー ツー
奉太郎「……ふぅ」
供恵「なんだって?」
奉太郎「昼に会おうとさ」
供恵「ふーん」
奉太郎(……先輩)
・古典部 午前
入須(…と、言いながら来てしまった)
入須(少し顔を見るだけだ)
入須(まだ許してないしな)
入須(いや、謝ったから許したが、折木君が私を否定するのがいけないんだ)
入須(………)ハァ
入須(もっと私に興味を持ってくれ、折木君)
入須(…待ち続けるのも、辛いよ)
入須(……そろそろ古典部か)
入須(………)コソコソ
入須(…ん? 声がするな)
奉太郎「二百円です」ニコォ
女「はい」
奉太郎「ありがとうございます」
女「…君、笑顔がぎこちないね」
奉太郎「…そうですか?」
女「ほら、こうやって口角上げて」
奉太郎「はぁ」
女「少しだけ口を開けて」ニコー
奉太郎「なるほど」
女「ほらっ、やってみて」
奉太郎「………」ニコォ
女「んー…」グイッ
奉太郎「!」
入須(! あの女性、折木君の顔を…)
女「ちょっと口を開けて」
奉太郎「………」ニコー
女「…ま、こんなもんか」
奉太郎「…離ひて貰ってひひでふか」
女「おっと、ごめん」
奉太郎「…ぎこちなくなりましたかね?」
女「ギリギリオッケーかな」
奉太郎「ありがとうございます」ニコー
女「!」ズイ
入須(あの女、折木君に顔を…!)
奉太郎「…な、なんでしょうか?」
女「あなた名前は?」
奉太郎「お、折木です」
女「折木君、ね。覚えとく」
奉太郎「…はぁ」
女「なかなか可愛い笑顔ね」
奉太郎「それ、言われて嬉しくないですよ」
女「そう?」
入須(……今は、やめておこう)
スタスタ
入須(………)
入須(折木君、楽しそうだったな)
入須(私以外の女性と楽しそうに)
入須(………)
入須(…私の前で、笑った事はあっただろうか)
入須(………)
入須(…辛いな、とても)
・手芸部 昼
入須(可愛いカエルのぬいぐるみだ!)
入須(カエル先生と名付けよう!)
手芸部員「ありがとうございます」
入須(しかし、千反田える…)
入須(…後で、言っておかないとな)
奉太郎「先輩」
入須「!」
奉太郎「もう見てたんですか」
入須「…折木君」
奉太郎「…そのかえる、買ったんですか?」
入須「あ、あぁ」
奉太郎「可愛いですね」
入須「…そう言われて、君は嬉しいのか?」
奉太郎「え?」
入須「…いや、なんでもないよ」
奉太郎「…はぁ」
入須「その荷物はどうした?」
奉太郎「諸事情です」
入須「店番はいいのか?」
奉太郎「伊原に頼みました」
入須「そうか…」
入須(できれば、会いたくなかったな)
奉太郎「…先輩、もう全部見ましたか?」
入須「…いや、まだだ」
奉太郎「それなら、軽く見て回りましょう」
入須「…そうだな」
スタスタ
奉太郎「…おぉ、でかいクマがいますよ、先輩」
入須「…そうだな」
奉太郎「売ってたら姉貴が買いそうですね」
入須「…そうだな」
奉太郎「…あ、里志の展示品がありますね」
入須「…あぁ」
奉太郎「……キャンディーに、歯…何を作ってるんだアイツは」
入須「………」
奉太郎「…先輩」
入須「…なんだ?」
奉太郎「どうかしましたか?」
入須「………」
奉太郎「先輩?」
入須「…来てくれ、折木君」
奉太郎「…はぁ」
・3F連絡路
入須「………」
奉太郎「………」
入須「……折木君」
奉太郎「はい」
入須「…夏に君と出会ってから今まで、色々あったな」
奉太郎「そうですね」
入須「…楽しかったか? 私と居て」
奉太郎「…まぁ、それなりに」
入須「…嘘をつくな」
奉太郎「嘘じゃありませんよ」
入須「…誰でも自分を自覚するべきだ、折木君」
奉太郎「…どこかで聞いた台詞ですね」
入須「自分がそう認識していなくても、心の底で思っている事は表面化する」
奉太郎「………」
入須「夏から今まで、君は何も変わっていない」
奉太郎「変わってますよ、多少は」
入須「…折木君、変わったのは私だ。夏の一件以来、私は君に変えられた」
奉太郎「…はぁ」
入須「一人の人間を変える力が君にはある。私が保証する」
奉太郎「…ありがとうございます」
入須「…君は私にとって、特別な存在よ。だからこそ、君は私の前では変わらない」
奉太郎「どういう事ですか?」
入須「変わる必要が無い。私が折木君に位置を合わせようと上下左右に動いているから、君はそれを待っているだけで良い」
奉太郎「………」
入須「そう、君は根本的には私と相対し真実を突き止め、苦手意識を宿したあの頃と何も変わっていない」
奉太郎「…それは間違っています、先輩」
入須「なら一つ聞こう。君は私が居なくてはいけない理由があるか?」
奉太郎「……それは」
入須「君は私に何も話さない」
入須「君は私に笑顔を見せない」
入須「君は私に興味を持たない」
入須「君は…
入須(何を言うんだ、私は…)
入須「私の事が嫌いなんだろう。私だけが楽しかった。朝君と会う時も、昼食も、放課後も」
奉太郎「先輩…」
入須「君は苦痛に感じていたんだろ? 束縛されて、今も嫉妬に狂っている私の事を」
奉太郎「…嫉妬?」
入須「君が知らない女性と話しているだけで、私は辛い」
奉太郎「…もしかして午前中、部室に来ましたか?」
入須「君が楽しそうに話しているのを見たよ。そして自身の浅ましさを知った」
奉太郎「誤解ですよ、先輩…」
入須「…折木君、私は君が必要だが、君は私が必要ではないんだろう」
奉太郎「そんな事ありません!」
入須「…君は、その理由を話す事は出来ない」
奉太郎「………」
入須(……! 折木君、なぜ、そんなにも悲しそうに私を見るんだ…)
入須(私は、間違っていたのか…?)
奉太郎「先輩…?」
入須(…もしかしたら、私が)
入須「…私が、変わっていなかったのか?」
奉太郎「…え?」
入須(私は昔のまま、折木君に尽くさせようと、決定的な言葉を無理矢理言わせようと…)
入須「違うんだ、折木君。私にそんなつもりは…」
奉太郎「…落ち着いてください、先輩!」ガシッ
入須「! お、折木君…」
奉太郎「入須先輩…」
入須「………」
奉太郎「………」
入須「……私に、触れてくれたな」
奉太郎「はい」
入須「…君の事になると、冷静で居られなくなってしまう」
奉太郎「…俺が悪いんです。態度が曖昧だから」
入須「君じゃない、私だ」
奉太郎「………」
入須「…しばらく、会わない方が良いかもしれない」
奉太郎「!」
入須「昔の、あの夏の終わりには戻りたくない。それだけは、嫌なんだ」
奉太郎「…俺も、嫌ですよ」
入須「……今日はここで別れよう。その内また顔を合わせた時は…」
奉太郎「………」
入須「…笑って話せる様に、頑張るよ」
奉太郎「先輩…」
入須「…またな」スッ
スタスタ
入須(汚い、醜い…私はなんて女なんだ…)
入須(折木君が好きだ、偽りは無い)
入須(折木君も、同じ気持ちだと信じている)
入須(…だが私がこのまま変わらなければ、いずれまた、元に戻ってしまう)
入須(…私では、折木君に相応しくないのかもしれないな)
入須(辛いよ、折木君…)
・奉太郎の自室 夜
奉太郎(…あの時俺が理由を話せていれば、こうはならなかっただろう)
奉太郎(先輩の気持ちは理解していたはずだ)
奉太郎(俺自身にも自覚している心がある)
奉太郎(だが、それを言葉で、体で、相手に伝わらなければ意味が無い)
奉太郎(…変わっていない、か。確かにその通りかもしれないな)
奉太郎(無意識の内に俺は先輩に頼りきって、全てを放置していたんだ)
奉太郎(最初の告白、朝と放課後の約束、先日の休日の事、全て先輩がしてくれた事だ)
奉太郎(………)
奉太郎(……それなら、今度は俺が)
奉太郎(俺が、先輩に示す番だ)
奉太郎(全てに理由をつけて、答えを出して)
奉太郎(先輩を納得させるしかない!)
奉太郎(……考えますよ、先輩。省エネはしばらくやめましょう)
奉太郎(しばらくなんて言わせない。すぐにでも、二人で笑って話せるように…)
奉太郎(待っていろ、入須冬実…!)
次回に続く
おまけ
・入須の自室 夜
入須「カエル先生…」
入須「………」ギューッ
入須「可愛い…」
入須「………」
入須「先生、折木君にしばらく会えないんだ…」
入須「………」
入須「いや、もしかしたら、ずっと…」
入須「………」ギューッ
入須「ふわふわだ…」
入須「…先生、折木君に二度と会えないとわかった時は」
入須「先生と結婚するよ…」
入須「………」ギューッ
入須「…もこもこ」
入須「折木君…」
入須「………」
入須「……今日は先生と寝よう」
パチッ
入須「…おやすみ、カエル先生」
入須「………」ギューッ
おわり
1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 04:49:31.34 ID:wVS031cn0
入須「折木君、忘れてないだろうな?」の続きです。
3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 04:53:30.00 ID:wVS031cn0
・10/3 折木家
供恵「あら、どしたの?」
入須『…先輩ですか?』
供恵「うん」
入須『あの、明日の事を話したくてお電話したのですが…』
供恵「明日? 私は暇だけど」
入須『…私は忙しいんです。文化祭なので』
供恵「あー、そういや文化祭だったねー」
入須『…あの、先輩』
供恵「んー?」
5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 04:54:31.69 ID:wVS031cn0
入須『わざとですね?』
供恵「ほーたろー! 愛しのイリスちゃんよー!」
入須『せ、先輩っ!』
ダンダンダンダン ガラッ
奉太郎「バカ姉貴!!」
供恵「はい」スッ
奉太郎「………」ガシッ
入須『…折木君?』
奉太郎「なんですか? 先輩」
供恵「おとなのかいだんのーぼるー♪」
奉太郎「部屋に行け! バカ!」
6: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 04:56:07.34 ID:wVS031cn0
供恵「はいはい。ちゃんと電気消すのよー」
タンタンタン
奉太郎「…ったく」
入須『ふふっ、先輩はいつも面白いな』
奉太郎「どこがですか…」
入須『…まぁ、からかうのは控えて貰いたいが』
奉太郎「あれにそんな事言っても無駄ですよ」
入須『…そうだな』
奉太郎「それで、どうしたんですか?」
入須『あぁ、明日の事を話そうと思ってな』
7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 04:57:39.61 ID:wVS031cn0
奉太郎「文化祭ですか?」
入須『そうだ。君の予定を教えて貰おうと思って』
奉太郎「……先輩、俺には恐らく暇はなさそうです」
入須『…何かあったのか?』
奉太郎「…いえ、特には無いんですが」
入須『どういう事だ?』
奉太郎「…すいません、先輩。状況が不透明過ぎて説明できません」
入須『気になるよ。相談にのれると思うんだが』
奉太郎「必要なら千反田が行くと思います」
9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 04:59:17.91 ID:wVS031cn0
入須『……君じゃなくてか?』
奉太郎「…えぇ、確証は有りませんが」
入須『そういう事を聞いている訳じゃないんだが…』
奉太郎「先輩。もしあいつが来たら、何も言わずに受け止めてやって下さい」
入須『…事情は話してくれないんだな?』
奉太郎「…明日の夜にもう一度話しましょう。その時には予定を話せると思います」
入須『…わかった』
奉太郎「すいません」
入須『信じてるから』
奉太郎「はい」
11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:01:03.07 ID:wVS031cn0
入須『…まぁ、私も初日はあまり抜けられそうになかったから』
奉太郎「そうですか」
入須『明日の朝も少し早くてな。君は遅くて大丈夫だよ』
奉太郎「本当ですか!?」
入須『…随分嬉しそうだな』
奉太郎「そんな事ありません」
入須『…まぁ、いい。 …放課後も予定が合わなさそうなんだ。文化祭の期間は別々に行動しよう』
奉太郎「上映会、忙しいんですか?」
12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:02:35.61 ID:wVS031cn0
入須『ふふっ、それこそ不透明だ。明日はその流れを見る為に常駐しようと思ってな』
奉太郎「女帝の腕の見せ所ですね」
入須『……ふん』
奉太郎「…見えない所で不貞腐れないで下さい」
入須『君には女帝と呼ばれたくない』
奉太郎「みんな呼んでるんじゃないんですか?」
入須『呼ばれる事もあるが、君は駄目だ』
奉太郎「…女帝さん?」
入須『さんを付けても駄目だ』
13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:04:39.17 ID:wVS031cn0
奉太郎「…女帝様?」
入須『そういう意味じゃない』
奉太郎「じゃあなんて呼べばいいんですか?」
入須『………』
奉太郎「…先輩?」
入須『……名前で、呼んで欲しい』
奉太郎「…え?」
入須『聞こえただろ』
奉太郎「…いや、いつも呼んでるじゃないですか。入須先輩って」
14: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:06:49.35 ID:wVS031cn0
入須『……もう知らん。バカ』
奉太郎「え?」
入須『また明日』ガチャッ
ツー ツー ツー
奉太郎「………」
奉太郎(暴言を吐かれて切られてしまった…)
奉太郎「…まぁ、いいか」
奉太郎(…そういえば、高校のホームページに特設ページがあったんだったな)
奉太郎(手芸部と奇術部…一応見ておくか)
15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:08:30.99 ID:wVS031cn0
・10/4 通学路
入須(設営は完了、パンフは沢木口に確認済み、釣り銭は担任が朝持ってくる)
入須(配置スケジュールは江波に確認、フィルムの管理は中城に確認、フィルムのコピーは完了)
入須(機器のチェックは羽場に確認…後は私が視聴覚室の鍵を借りてくれば、終わりか)
入須(とりあえず、問題は無さそうだな)
入須(………)
入須(折木君、昨日はどうしたんだろうな…)
入須(何も無いと言いながら、明らかに何かがあった声色だった)
16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:10:12.54 ID:wVS031cn0
入須(…いや、妙な勘ぐりはよそう。信じると言ったんだから)
入須(………)
入須(…もうすぐ商店街か)
入須(今日は折木君は居ないんだな…)
入須(………)
入須(ふふっ。随分弱くなったな、私も)
入須(全部折木君のせいだ。まったく…)
17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:11:49.66 ID:wVS031cn0
入須(…だが、昨日の折木君は酷かったぞ!)
入須(私の言っている事を全く理解してなかったし、的外れな事を言うし)
入須(いくら私でも怒る事はあるんだぞ。鈍感…)
入須(先輩でも入須でもなく、本当は…)
入須「…ほ、ほうたろう」ボソッ
入須(………)
入須(…無理だな、これは)
入須(………)
入須(か、顔が焼けそうだ…)
19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:13:02.98 ID:wVS031cn0
・体育館 開会後
ズン ズン ズン ズン
奉太郎「……あれがダンサーか」
トントン
奉太郎「?」
入須「折木君」
奉太郎「…先輩?」
ズン ズン ズン ズン
入須(…音が凄い)
入須「…ここでは話し辛いな。折木君」
奉太郎「はい」
入須「ちょっと来てくれ」
奉太郎「…はぁ」
20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:14:30.73 ID:wVS031cn0
・廊下
入須「…すまないな、歩きながらで」スタスタ
奉太郎「いえ。それで、何ですか?」
入須「…まぁ、特に何がある訳でもないんだが」
奉太郎「………」
入須「こら、止まるな。一緒に来い」
奉太郎「部室に行きます」
入須「上がる階段が違うだけだ。距離は変わらないだろ?」
奉太郎「…まったく」スタスタ
入須「…少しだけ君の顔を見ようかと思ってな」
23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:15:36.62 ID:wVS031cn0
奉太郎「部室に来て下さい。ずっと居ますから」
入須「ずっと?」
奉太郎「三日間古典部で店番なんですよ」
入須「そうか。だが今日は予定が詰まっているんだ」
奉太郎「忙しいんですか?」
入須「そうだな」
奉太郎「頑張ってくださいねぇ」
入須「…気持ちが一ミリも入ってないだろ?」
奉太郎「…そんな事ありません」
入須「嘘をつくな」
25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:16:51.35 ID:wVS031cn0
奉太郎「……あ、もうすぐ視聴覚室ですよ」
入須「話を逸らすな」
奉太郎「ほら、みんないますよ」
入須「……夜、電話するんだぞ」
奉太郎「じゃあ俺は部室に
ガシッ
入須「電話、するんだぞ」
奉太郎「…わかりました」
入須「頼むぞ。九時には自室にいるから」
奉太郎「では、また」
入須「あぁ」
入須(…この分だとまた忘れそうだな)
入須(いや、信じる事も大切だ)
入須(信頼してこそ、対等だからな)
26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:19:05.46 ID:wVS031cn0
・視聴覚室 午後
入須(大きなトラブルも無く、パンフの売れ行きも上々)
入須(順調だな。明日は見て回る事もできそうだ)
入須(…奇術部、楽しみだな)
入須(手芸部のぬいぐるみ、カワイイだろうな)
入須(折木君はどちらが好きなんだろうか)
入須(…いや、どちらも興味がないだろうな)
入須(私が手芸部でぬいぐるみを選んでいたら)
入須(先輩、長いです。帰ってもいいですか? とか)
入須(私が二つのぬいぐるみで迷って、どちらが良いか聞いたとしたら)
入須(どっちでもいいんじゃないですか? とか)
入須(……腹が立ってきた)
27: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:21:07.44 ID:wVS031cn0
江波「入須さん」
入須「! …なんだ?」
江波「受付の隣にそんな顔で立たないで下さい」
入須「…酷いか?」
江波「お客が帰ります」
入須「……中に入っていよう」
江波「はい」
入須(…折木君のせいだ!)
入須(……ふん)
入須(………)
入須(……反省しよう)
28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:22:17.91 ID:wVS031cn0
・折木家 夜
奉太郎(明日も店番、明後日も店番…素晴らしいじゃないか)
奉太郎(…あの文集がなければだが)
奉太郎「………」ハァ
供恵「ため息つくな」パシッ
奉太郎「痛っ! なんだよ姉貴」
供恵「私の幸せが逃げる」
奉太郎「姉貴のは逃げねぇよ」
供恵「婚期が遅れたらあんたのせいよ」
29: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:24:23.08 ID:wVS031cn0
奉太郎「姉貴が結婚? …諦めろ、無理だ」
供恵「なんだってー?」
奉太郎「……へ、部屋に戻る!」ダッ
供恵「待てコラ!」
プルルルルル…プルルルルル…
奉太郎「…こんな時間に電話?」
供恵「誰だろ?」
奉太郎「とりあえず取れよ」
供恵「はいはい」
30: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:26:10.08 ID:wVS031cn0
ガチャ
供恵「はい、折木ですけど」
入須『もしもし、入須です』
供恵「…ただいま留守にしております。御用の方は
入須『…先輩』
供恵「ん? どした?」
入須『折木君はいますか?』
供恵「後ろにいるよ」
入須『代わってください』
供恵「なんか声怖いねー」
31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:27:34.85 ID:wVS031cn0
入須『…代・わ・っ・て・く・だ・さ・い』
供恵「は、はーい」
入須『………』
供恵「…奉太郎、またあの子に余計な事いったでしょ?」
奉太郎「あの子?」
供恵「はい」スッ
奉太郎「…なんだよ?」ガシッ
入須『…折木君?』
奉太郎「あぁ、先輩ですか。どうしたんですか?」
32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:28:38.63 ID:wVS031cn0
入須『待っていたんだが』
奉太郎「何をですか?」
入須『………』
奉太郎「…先輩?」
入須『折木君』
奉太郎「はい」
入須『バカ!!』ガチャッ
奉太郎「うぉわっ」
ツー ツー ツー
奉太郎「………」
供恵「なんだって?」
奉太郎「…わからん」
供恵「とりあえず会ったら謝っときなよ」
奉太郎「…その方が良さそうだ」
34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:29:40.60 ID:wVS031cn0
・10/5 通学路
入須(………)
入須(………)
入須(………)
入須(……絶対に許さん)
入須(土下座しても許さん)
入須(強い気持ちを持って、折木君に憤慨しよう)
入須(昨日のは酷過ぎる!)
入須(………)
入須(…とはいえ、釈明の機会を与えなくては可愛そうだろう)
35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:31:07.96 ID:wVS031cn0
入須(今日は部室に行ってやるか)
入須(………)
入須(…まぁ、許さないがな)
入須(………)
入須(…内容によっては考えてやるか)
入須(………)
入須(…正直に頭を下げたら、許してやろう)
入須(私も鬼ではないからな)
入須(…感謝しろよ、折木君)
37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:32:11.83 ID:wVS031cn0
・古典部 午前
奉太郎「…ふぁいやー」
入須(………)コソコソ
奉太郎「………」
入須(…折木君一人か)
入須「…失礼する」
奉太郎「! せ、先輩」
入須「休みが取れてな。来たよ」
奉太郎「そ、そうですか」
入須「…どうした?」
38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:33:16.51 ID:wVS031cn0
奉太郎「いや、あのー…」
入須「なんだ?」
奉太郎「…怒ってないんですか?」
入須「…そう聞く前に言う事はないのか?」
奉太郎「……すいませんでした」
入須「なにがだ?」
奉太郎「…なにがでしょう?」
入須「………」ペシッ
奉太郎「痛っ!」
39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:34:19.03 ID:wVS031cn0
入須「…まったく。もういいよ」
奉太郎「…寝る前に考えてはいたんですけど」
入須「あぁ」
奉太郎「ひょっとして何もしていないんじゃないかと」
入須「………」
奉太郎「すいません、冗談です」
入須(………)ハァ
入須「……いいか、例えば、君がどうしても読みたい本が発売するとしよう」
奉太郎「はい」
40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:36:29.41 ID:wVS031cn0
入須「書店の開店は十時だ。君はどうしても読みたくて九時からその書店の前で待っていた」
奉太郎「絶対しませんけどね」
入須「まぁ君はそうだろう。続けるが、十時になってもその書店は開かない。十時半、十一時、十一時半」
奉太郎「他の店に行きましょう」
入須「近場にはその書店しかないと考えろ。十二時になってようやく店主が表に現れ、シャッターを開けた。そこで散々待たされていた君は店主に聞くんだ、待っていたんですけど、と」
奉太郎「はぁ」
入須「そこで店主はこう言った。あぁ、待ってらっしゃったんですか。何故ですか? と」
奉太郎「…それがオチですか?」
41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:37:57.51 ID:wVS031cn0
入須「違う、笑い話じゃないよ。君はこの店主をどう思う?」
奉太郎「……二時間待たされて何故ですか、ですか。とりあえず腹が立つと思います」
入須「そうだろう」
奉太郎「……え?」
入須「………」
奉太郎「……考えます」
入須「あぁ、頼む。そろそろ休みも終わる、私は戻るぞ」
奉太郎「お気をつけて」
入須「午後にまた来るから」
42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:39:50.10 ID:wVS031cn0
奉太郎「来なくていいです」
入須「それまでに考えておくんだぞ?」
奉太郎「明日まで待って
入須「考えろ」
奉太郎「…はい」
入須「ではな」
奉太郎「………」
スタスタ
入須(…わかってなさそうだったな)
入須(…いや、腐っても折木君だ。期待しておこう)
43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:41:18.25 ID:wVS031cn0
・古典部 午後
入須(………)
入須(…凄かった! 奇術!)
入須(お椀と玉がまさかあんな事になるとは!)
入須(…はぁ、不思議だ)
入須(折木君も誘えばよかったな)
入須(福部君が居たから折木君も居るかと思ったんだが)
入須(…まぁ、居たら何故私と来なかったのかを問い詰めるが)
入須(…そろそろ着くな)
入須(………)コソコソ
44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:42:31.31 ID:wVS031cn0
奉太郎「………」ボーッ
入須(………)
入須「…折木君」
奉太郎「…先輩」
入須「どうしたんだ、ボーっとして」
奉太郎「そう見えます?」
入須「あぁ」
奉太郎「色々考えていたつもりなんですけど」
入須「色々?」
奉太郎「先輩の件以外にも色々ありまして」
45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:44:06.73 ID:wVS031cn0
入須「…この文集か?」
奉太郎「それもあります。先輩、ありがとうございました」
入須「千反田の事か。君たちには世話になったしな」
奉太郎「すいません」
入須「…流石にこの量は驚いたが」
奉太郎「止むに止まれぬ事情がありまして」
入須「まぁ、出来る限り協力はするよ。こちらの売れ行きは上々だ」
奉太郎「助かります」
入須「…そういえば、千反田が妙な事を聞いてきたんだが」
奉太郎「はぁ」
47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:45:11.93 ID:wVS031cn0
入須「人への頼み方を教えてくれと」
奉太郎「……あぁ」
入須「なんなんだ一体?」
奉太郎「あいつなりに努力しているんでしょう」
入須「………?」
奉太郎「で、なんて言ってやったんですか?」
入須「……まぁ、私の思う所をな」
奉太郎「…先輩」
入須「…なんだ」
50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:46:26.57 ID:wVS031cn0
奉太郎「俺にやった事、そのまま言ったんじゃないでしょうね?」
入須「……そんなことはないぞ」
奉太郎「目を逸らさないでください」
入須「…似た様な事は言ったかもな」
奉太郎「言いましたね」
入須「言ってない」
奉太郎「………」
入須「……ところで、君が私にした酷い事がなにかはわかったのか?」
奉太郎「なんですかその表現は」
入須「そのままの意味だ。鈍感鬼畜の折木君」
奉太郎「とんでもない二つ名ですね…でも、わかりましたよ」
入須「本当か?」
51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:48:39.23 ID:wVS031cn0
奉太郎「流石にこれだけ時間があれば」
入須「では聞かせて貰おうか」
奉太郎「ずばり、一言で当てましょう」
入須「あぁ」
奉太郎「放課後、俺が待ち合わせせずに帰ったからです」
入須「……ん?」
奉太郎「約束の話をしてましたけど、先輩、文化祭中はその約束は無かった筈ですよ」
入須「………」
奉太郎「前もありましたよね。俺に朝五分遅れたって怒った事」
入須「あぁ」
52: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:50:53.07 ID:wVS031cn0
奉太郎「自分で言った事ですよ、先輩。俺の手帳に予定を書くんですから、先輩も気をつけてくださいよ」
入須「………」
奉太郎「……どうですか、先輩?」
入須「………」
奉太郎「………」
入須「………!!」ペシッペシッ
奉太郎「痛っ!」
入須「バカ!」ペシッ
奉太郎「痛っ! せ、先輩!」
入須「…明日まで君とは話さない」
奉太郎「…え?」
入須「反省しろ」
55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:52:03.33 ID:wVS031cn0
奉太郎「違うんですか?」
入須「一晩考えろ、バカ」スタスタ
奉太郎「………」
スタスタ
入須(……! ……!!)
入須(信じられない!)
入須(好きじゃなかったら絶交だ!)
入須(……!!!)
入須(………)ハァ
入須(…もう知らん)
56: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:53:39.22 ID:wVS031cn0
・折木家 夜
奉太郎(………)
奉太郎(一体なんなんだ、先輩が怒っている事…)
奉太郎(…俺が忘れている事があるはずだ)
奉太郎(………)
供恵「風呂上がったよ」
奉太郎「…あぁ」
供恵「…なにしてんの?」
奉太郎「少し考え事だ」
供恵「入須ちゃん?」
57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:54:56.73 ID:wVS031cn0
奉太郎「…なぜわかる」
供恵「まぁねぇ」
奉太郎「……女心はわからん」
供恵「あんたがんな事言う日が来るとはねぇ」
奉太郎「…割と真剣なんだ」
供恵「ふーん」
奉太郎「…興味なさそうだな」
供恵「無いよ」
奉太郎「なら絡んでくるな、バカ」
供恵「いいのかなー? そんな事言って」
58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:56:05.52 ID:wVS031cn0
奉太郎「………?」
供恵「折角アドバイスしてあげようと思ったのに」
奉太郎「…なんだよ」
供恵「わからない事に頭を使ってもしょうがないわよ」
奉太郎「どういう事だよ」
供恵「わかる事に目を向けて考えれば、わからない事にも答えは出るって事よ」
奉太郎「…よくわからないんだが」
供恵「あんた、テストでわからない問題が出たらどうする?」
奉太郎「飛ばして先にいく」
59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:58:02.79 ID:wVS031cn0
供恵「それでわかる問題を解いている内に思い出す事もあるでしょ? もしかしたらその先に答えのヒントがあるかもしれない」
奉太郎「だが、数学の公式なんかは頭から抜けていたら無理じゃないか?」
供恵「それなら終わった後に教科書を見ればいいじゃない」
奉太郎「手遅れだ」
供恵「次につながるでしょ」
奉太郎「…詭弁じゃないか、それは」
供恵「ようは、解決方法なんていくらでもあるって事」
奉太郎「あぁ」
供恵「今回の場合、事実を検討すればわからない事に上書きできるはずよ」
奉太郎「上書き?」
供恵「入須ちゃんが今必要としているエックス。それより必要なワイを示せれば、この問題は解決」
60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 05:58:56.31 ID:wVS031cn0
奉太郎「だが、今以上に悩んでいる問題は無いぞ」
供恵「それをあんたが検討して考えるのよ」
奉太郎「…難しいな」
供恵「それ以上は知らない。じゃ、私は寝るから」
奉太郎「助かったよ、姉貴」
供恵「尊敬したでしょ?」グリグリ
奉太郎「…頭から手を離せ」
供恵「ふふーん。おやすみー」
奉太郎「あぁ」
奉太郎(…とはいえ、入須先輩が今必要としている答え以上の答えか)
奉太郎(…また明日、考えてみよう)
61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 06:00:14.66 ID:wVS031cn0
・10/6 折木家 朝
奉太郎(………)
奉太郎(…姉貴の言っていた事はなんとなくわかったが)
奉太郎(この答えを出すのは、勇気がいるな)
奉太郎(だが、先輩の事を考えれば…)
奉太郎(そろそろ、決着をつけないといけないな)
プルルルルル… プルルルルル…
供恵「出てー」
奉太郎「おー」
ガチャッ
奉太郎「はい、折木です」
入須『…折木君か?』
奉太郎(!)
奉太郎「入須先輩…」
入須『…昨日の事はひとまず保留にして、要件だけ伝えよう』
63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 06:01:31.54 ID:wVS031cn0
奉太郎「はい」
入須『十二時に手芸部でデートする、以上』
奉太郎「…わかりました、昼ですね」
入須『約束したからな』
奉太郎「はい」
入須『では、後で』ガチャッ
ツー ツー ツー
奉太郎「……ふぅ」
供恵「なんだって?」
奉太郎「昼に会おうとさ」
供恵「ふーん」
奉太郎(……先輩)
64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 06:03:36.05 ID:wVS031cn0
・古典部 午前
入須(…と、言いながら来てしまった)
入須(少し顔を見るだけだ)
入須(まだ許してないしな)
入須(いや、謝ったから許したが、折木君が私を否定するのがいけないんだ)
入須(………)ハァ
入須(もっと私に興味を持ってくれ、折木君)
入須(…待ち続けるのも、辛いよ)
入須(……そろそろ古典部か)
入須(………)コソコソ
入須(…ん? 声がするな)
奉太郎「二百円です」ニコォ
女「はい」
65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 06:04:48.68 ID:wVS031cn0
奉太郎「ありがとうございます」
女「…君、笑顔がぎこちないね」
奉太郎「…そうですか?」
女「ほら、こうやって口角上げて」
奉太郎「はぁ」
女「少しだけ口を開けて」ニコー
奉太郎「なるほど」
女「ほらっ、やってみて」
奉太郎「………」ニコォ
女「んー…」グイッ
奉太郎「!」
入須(! あの女性、折木君の顔を…)
女「ちょっと口を開けて」
奉太郎「………」ニコー
67: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 06:06:32.36 ID:wVS031cn0
女「…ま、こんなもんか」
奉太郎「…離ひて貰ってひひでふか」
女「おっと、ごめん」
奉太郎「…ぎこちなくなりましたかね?」
女「ギリギリオッケーかな」
奉太郎「ありがとうございます」ニコー
女「!」ズイ
入須(あの女、折木君に顔を…!)
奉太郎「…な、なんでしょうか?」
女「あなた名前は?」
奉太郎「お、折木です」
女「折木君、ね。覚えとく」
奉太郎「…はぁ」
68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 06:08:21.56 ID:wVS031cn0
女「なかなか可愛い笑顔ね」
奉太郎「それ、言われて嬉しくないですよ」
女「そう?」
入須(……今は、やめておこう)
スタスタ
入須(………)
入須(折木君、楽しそうだったな)
入須(私以外の女性と楽しそうに)
入須(………)
入須(…私の前で、笑った事はあっただろうか)
入須(………)
入須(…辛いな、とても)
69: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 06:09:39.66 ID:wVS031cn0
・手芸部 昼
入須(可愛いカエルのぬいぐるみだ!)
入須(カエル先生と名付けよう!)
手芸部員「ありがとうございます」
入須(しかし、千反田える…)
入須(…後で、言っておかないとな)
奉太郎「先輩」
入須「!」
奉太郎「もう見てたんですか」
入須「…折木君」
奉太郎「…そのかえる、買ったんですか?」
入須「あ、あぁ」
奉太郎「可愛いですね」
70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 06:11:55.13 ID:wVS031cn0
入須「…そう言われて、君は嬉しいのか?」
奉太郎「え?」
入須「…いや、なんでもないよ」
奉太郎「…はぁ」
入須「その荷物はどうした?」
奉太郎「諸事情です」
入須「店番はいいのか?」
奉太郎「伊原に頼みました」
入須「そうか…」
入須(できれば、会いたくなかったな)
奉太郎「…先輩、もう全部見ましたか?」
入須「…いや、まだだ」
奉太郎「それなら、軽く見て回りましょう」
入須「…そうだな」
71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 06:13:44.43 ID:wVS031cn0
スタスタ
奉太郎「…おぉ、でかいクマがいますよ、先輩」
入須「…そうだな」
奉太郎「売ってたら姉貴が買いそうですね」
入須「…そうだな」
奉太郎「…あ、里志の展示品がありますね」
入須「…あぁ」
奉太郎「……キャンディーに、歯…何を作ってるんだアイツは」
72: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 06:15:22.44 ID:wVS031cn0
入須「………」
奉太郎「…先輩」
入須「…なんだ?」
奉太郎「どうかしましたか?」
入須「………」
奉太郎「先輩?」
入須「…来てくれ、折木君」
奉太郎「…はぁ」
73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 06:16:22.98 ID:wVS031cn0
・3F連絡路
入須「………」
奉太郎「………」
入須「……折木君」
奉太郎「はい」
入須「…夏に君と出会ってから今まで、色々あったな」
奉太郎「そうですね」
入須「…楽しかったか? 私と居て」
奉太郎「…まぁ、それなりに」
入須「…嘘をつくな」
奉太郎「嘘じゃありませんよ」
75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 06:18:07.28 ID:wVS031cn0
入須「…誰でも自分を自覚するべきだ、折木君」
奉太郎「…どこかで聞いた台詞ですね」
入須「自分がそう認識していなくても、心の底で思っている事は表面化する」
奉太郎「………」
入須「夏から今まで、君は何も変わっていない」
奉太郎「変わってますよ、多少は」
入須「…折木君、変わったのは私だ。夏の一件以来、私は君に変えられた」
奉太郎「…はぁ」
入須「一人の人間を変える力が君にはある。私が保証する」
奉太郎「…ありがとうございます」
入須「…君は私にとって、特別な存在よ。だからこそ、君は私の前では変わらない」
奉太郎「どういう事ですか?」
77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 06:19:29.77 ID:wVS031cn0
入須「変わる必要が無い。私が折木君に位置を合わせようと上下左右に動いているから、君はそれを待っているだけで良い」
奉太郎「………」
入須「そう、君は根本的には私と相対し真実を突き止め、苦手意識を宿したあの頃と何も変わっていない」
奉太郎「…それは間違っています、先輩」
入須「なら一つ聞こう。君は私が居なくてはいけない理由があるか?」
奉太郎「……それは」
入須「君は私に何も話さない」
入須「君は私に笑顔を見せない」
入須「君は私に興味を持たない」
入須「君は…
入須(何を言うんだ、私は…)
78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 06:20:55.50 ID:wVS031cn0
入須「私の事が嫌いなんだろう。私だけが楽しかった。朝君と会う時も、昼食も、放課後も」
奉太郎「先輩…」
入須「君は苦痛に感じていたんだろ? 束縛されて、今も嫉妬に狂っている私の事を」
奉太郎「…嫉妬?」
入須「君が知らない女性と話しているだけで、私は辛い」
奉太郎「…もしかして午前中、部室に来ましたか?」
入須「君が楽しそうに話しているのを見たよ。そして自身の浅ましさを知った」
奉太郎「誤解ですよ、先輩…」
入須「…折木君、私は君が必要だが、君は私が必要ではないんだろう」
奉太郎「そんな事ありません!」
入須「…君は、その理由を話す事は出来ない」
奉太郎「………」
79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 06:22:58.78 ID:wVS031cn0
入須(……! 折木君、なぜ、そんなにも悲しそうに私を見るんだ…)
入須(私は、間違っていたのか…?)
奉太郎「先輩…?」
入須(…もしかしたら、私が)
入須「…私が、変わっていなかったのか?」
奉太郎「…え?」
入須(私は昔のまま、折木君に尽くさせようと、決定的な言葉を無理矢理言わせようと…)
入須「違うんだ、折木君。私にそんなつもりは…」
奉太郎「…落ち着いてください、先輩!」ガシッ
入須「! お、折木君…」
奉太郎「入須先輩…」
入須「………」
奉太郎「………」
80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 06:25:16.54 ID:wVS031cn0
入須「……私に、触れてくれたな」
奉太郎「はい」
入須「…君の事になると、冷静で居られなくなってしまう」
奉太郎「…俺が悪いんです。態度が曖昧だから」
入須「君じゃない、私だ」
奉太郎「………」
入須「…しばらく、会わない方が良いかもしれない」
奉太郎「!」
入須「昔の、あの夏の終わりには戻りたくない。それだけは、嫌なんだ」
奉太郎「…俺も、嫌ですよ」
入須「……今日はここで別れよう。その内また顔を合わせた時は…」
奉太郎「………」
81: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 06:26:18.84 ID:wVS031cn0
入須「…笑って話せる様に、頑張るよ」
奉太郎「先輩…」
入須「…またな」スッ
スタスタ
入須(汚い、醜い…私はなんて女なんだ…)
入須(折木君が好きだ、偽りは無い)
入須(折木君も、同じ気持ちだと信じている)
入須(…だが私がこのまま変わらなければ、いずれまた、元に戻ってしまう)
入須(…私では、折木君に相応しくないのかもしれないな)
入須(辛いよ、折木君…)
82: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 06:28:07.24 ID:wVS031cn0
・奉太郎の自室 夜
奉太郎(…あの時俺が理由を話せていれば、こうはならなかっただろう)
奉太郎(先輩の気持ちは理解していたはずだ)
奉太郎(俺自身にも自覚している心がある)
奉太郎(だが、それを言葉で、体で、相手に伝わらなければ意味が無い)
奉太郎(…変わっていない、か。確かにその通りかもしれないな)
奉太郎(無意識の内に俺は先輩に頼りきって、全てを放置していたんだ)
奉太郎(最初の告白、朝と放課後の約束、先日の休日の事、全て先輩がしてくれた事だ)
奉太郎(………)
83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 06:28:55.71 ID:wVS031cn0
奉太郎(……それなら、今度は俺が)
奉太郎(俺が、先輩に示す番だ)
奉太郎(全てに理由をつけて、答えを出して)
奉太郎(先輩を納得させるしかない!)
奉太郎(……考えますよ、先輩。省エネはしばらくやめましょう)
奉太郎(しばらくなんて言わせない。すぐにでも、二人で笑って話せるように…)
奉太郎(待っていろ、入須冬実…!)
次回に続く
84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 06:29:49.81 ID:wVS031cn0
おまけ
・入須の自室 夜
入須「カエル先生…」
入須「………」ギューッ
入須「可愛い…」
入須「………」
入須「先生、折木君にしばらく会えないんだ…」
入須「………」
入須「いや、もしかしたら、ずっと…」
入須「………」ギューッ
入須「ふわふわだ…」
85: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 06:30:53.03 ID:wVS031cn0
入須「…先生、折木君に二度と会えないとわかった時は」
入須「先生と結婚するよ…」
入須「………」ギューッ
入須「…もこもこ」
入須「折木君…」
入須「………」
入須「……今日は先生と寝よう」
パチッ
入須「…おやすみ、カエル先生」
入須「………」ギューッ
おわり
87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 06:33:19.48 ID:wVS031cn0
以上です。
次回で延々まわりくどくやってきたこのSSも終わりです。
できれば土曜日にあげたい所ですが…頑張ります。
お付き合いいただいた方、ありがとうございました。
次回で延々まわりくどくやってきたこのSSも終わりです。
できれば土曜日にあげたい所ですが…頑張ります。
お付き合いいただいた方、ありがとうございました。
86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 06:32:27.00 ID:JV4cg1J40
乙
やっぱ入須先輩可愛い
やっぱ入須先輩可愛い
88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/09/17(月) 06:34:24.75 ID:5l0p2YDJ0
乙
アニメでも普通に先輩とほうたろ話しててびっくりした
アニメでも普通に先輩とほうたろ話しててびっくりした
この記事へのコメント
駄目だ最高すぎる
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- 名無しさん - 2012年09月20日 00:07:55