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淡「ねぇ」 照「……」
引用元: ・http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1344696034/
淡「今日はしないんだ?」
問い掛けに、彼女は本から私へと視線を移した。
うるさい邪魔するな、とでも言いたげな表情で一瞥すると、また紙面の文字を追う作業に戻る。
面白くない私は、けれども苛立ちを抑えて彼女を呼ぶ。
淡「ねぇってば」
しかし、当の彼女は相変わらずの沈黙だった。
淡(呼んだのはそっちのくせに……)
良いだろう、待ってやろうじゃないか。
私は彼女の座る傍の、長机の上に行儀悪く腰を下ろした。
ぶらぶら。子供っぽいな、と思いながらも、宙に浮く脚を揺らしてみる。
合わせて机がゆるゆると軋む。
これで彼女の読書を少しでも邪魔できないだろうか。
ちらりと窺ってみるも、彼女は私など気にも止めていないようだった。
淡(……ま、わかってたけど)
本に集中しているのか、意図的に無視しているのか。
……どちらでもいいか。
彼女の真剣な眼差しを見ながら、それが私に向けばいいな、なんて。
淡(無理無理、ないない)
考えて、自嘲する。
思考を掻き消すように頭を振った。
しばらくして、彼女の漏らした吐息が空気を揺るがせた。
ぱたん、と手の本が閉じられる。
淡「読書は終わり?」
照「あぁ」
彼女は本を丁寧に鞄へ仕舞うと、立ち上がって私へと向き直った。
彼女とは、私が机の上に座ることで、同じ高さで顔を合わせられる。
身長も年齢も、麻雀でも私の上をいく彼女。
並ぼうと思って、届くところではない場所。
だけど、この時だけは。
淡「実は、期待してるんでしょ?」
この時間だけは、隣に立てる気がして。
彼女が、私だけを見てくれる気がして。
淡「ねぇ、照」
にやりと口の端を吊り上げてみる。
彼女はひどく冷めていて、けれども私の熱は上がっていく。
照「期待してるのはお前だろう、大星」
凜と張った涼しい目もとに見惚れてしまう。
視線が私を射抜いた一瞬、世界が止まったかと錯覚した。
淡「……、」
一体、何人がこうして彼女に囚われただろうか。
淡「そんなわけ――、」
ない、と。
続く言葉は唇に塞がれて、彼女の中へと消えていった。
淡「ん、くっ……」
彼女の指が私の肌をなぞって、触れられた所が熱を持って、そして私はそれに浮かされていく。
淡「んんっ、あんっ……」
唇を塞がれて、肌を吸われて、局部を撫でられて。
淡「ん、あ……ふあ、あっ……」
いつからだろう。
彼女への憧れが、失望に変わったのは。
そしてそれが、どう違えて愛慕に変わってしまったのか。
揺れる視界と思考の中で、ぼんやりと記憶をなぞった。
―――――――
―――――
―――
彼女は、私の憧れだった。
照「大星」
前年度のインターハイ及び今年度の春季大会の2冠優勝者。
高校生1万人の、頂点。
淡「何ですか、宮永先輩」
インターハイといえば彼女のこと、とまで言われるほどの実力の持ち主。
そんな先輩に呼び出された。
夕焼けに染まる部室で、他の部員は誰一人いない。
私と先輩だけの空間だった。
照「回りくどいのは苦手だ。単刀直入に聞こう」
相変わらず表情の変わらない人だな、と思った。
入部当初こそ驚いたものの、取材記者や報道陣へするような偽りの笑顔よりは、こっちの方がずっと良い。
照「お前、私が好きじゃないだろう」
何もかも、お見通しと言ったふうな瞳だった。
ふ、と息が漏れる。
淡「そんなこと無いですよ」
そう、先輩は憧れであり、今まで出会った中で最も強い敵であり、倒したい相手であり。
照「遠慮しなくていい。好いてもいない奴とチームを組んで打つ麻雀は楽しいか」
楽しい?
無表情で麻雀を打つ先輩から、そんな言葉が聞けるなんて思ってもなかった。
淡「先輩を嫌ってなんかないですよ」
照「じゃあお前のそれは憎悪か?」
淡「……それも、少し違うと思います」
この感情はそんなんじゃない。
もっと違う、純粋な何かで。
照「私と卓を囲む時、お前からは殺気めいたものを感じる」
淡「……」
照「違うのか」
淡「ええ」
照「じゃあアレは何だ」
淡「……そうですね」
淡「あなたは、私の憧れなんですよ」
淡「あなたのようになりたくて、あなたと打ちたくて、私は白糸台に入りました」
淡「覚えてますか? あなたと初めて卓を囲んだ時のこと」
淡「格の違いを見せ付けられました」
淡「私だって、自信はあったんですよ。大好きな麻雀で、今まで負けたことなんかなかったから」
淡「だから悔しかった、すごく。私の力じゃ遠く及ばない、こんな人もいるんだって」
淡「それで一層あなたへの憧れが強くなりました。同時に、こうも思ったんです」
淡「あなたに勝ちたい」
照「……」
淡「純粋な憧れが、闘争心に変わったんです」
憎いわけじゃない。
妬んでいるわけじゃない。
ただ、それに近しい感情はあると思う。
淡「勝ちたいと思うあまりに、知らず知らず先輩に誤解を招いていたんですね。すみませんでした」
照「いや……なるほど、それであの気迫か」
淡「はい、だから」
今は到底及ばない、けれど必ず追いついて、抜かしてみせる。
大きく立ちはだかる先輩を見据えて言った。
淡「宮永照。私があなたを倒す」
先輩は、その言葉に一瞬目を丸くして、それから口端を釣り上げた。
照「あぁ、やってみろ」
初めて見た、彼女の表情。
見繕ったそれとは違う、らしくない子供っぽい笑みだった。
淡「すぐに追い越してやりますよ」
宮永先輩を倒す、そのためなら、どんな努力も厭わない。
私は、ただこの人を超えるために。
そう、思ってた。
それからは毎日が練習の日々で、たった数ヶ月の間に、自分でもよくやったと思う。
相変わらず先輩には一度も勝てなかったけれど、それでも一緒に打つ麻雀はとても楽しかった。
淡「照先輩、今日こそ倒しますよ」
照「淡、毎日聞いてるぞ、それ」
淡「毎日言ってますもん」
照「ふ……今日も返り討ちにしてやろう」
淡「させません!」
毎日のように先輩に挑んで、そして宣言された通り返り討ちに合う。
勝てないことは悔しい。
けれど、それ以上に麻雀が楽しい。
あれから先輩は私を気にかけてくれるようになった。
話すことも増え、知らなかった一面を知り、私の中で先輩の存在はより大きいものになっていった。
そんな充実した日々が続いていた、ある放課後のことだった。
それはたまたま部室の前を通りかかった時で――――そこで聞いた、誰かの嬌声。
声の主はわからない。
ただ、荒い息づかいの節々に、照先輩の名を呼んでいた。
淡「…………、」
一瞬で思考がフリーズして、それでもここにいたらいけない事だけはわかったから、走ってその場を離れた。
走って、走って、その間中、思考はぐちゃぐちゃだった。
淡(なんで……照先輩……)
迷いのなかった心に、暗い雲が覆い始めた。
疑い出したら早いもので、あっという間に、私の中の先輩は崩れ去っていった。
「ああ、大星さん知らなかったの?」
噂を耳にして、失望した。
「宮永さん、取っ替え引っ替えで部員の子に手を出してるらしいよ」
「まぁ、あれだけ有名人だもんね。ファンも大勢いるだろうし」
「来るもの拒まずで、誰でも抱いてあげてるとか……」
「え、宮永先輩好みの可愛い子は無理矢理……って聞いたけど」
「まぁどっちにしろ、あの人にはあんまり近付かないほうがいいんじゃない?」
「淡は大丈夫? あんた可愛いから、先輩に襲われちゃうかもよ~?」
「あはははは! 止めなってぇ」
知らなかった。
憧れだった先輩に近付けて、舞い上がって、彼女を知った気になって、でも結局は彼女のことなど、わかっていなかった。
淡「……先輩、ちょっといいですか」
照「なんだ淡?」
噂のことを問い詰めた。
あんなこと、嘘であって欲しかった。
否定してほしかった。
照「あぁ、そのことか」
淡「……」
照「毎回断りはするんだが、泣かれるとどうも弱くてな……」
先輩は、麻雀を打つ時と同じ表情で、淡々とした口調で肯定した。
淡「……もういいです」
淡「……先輩には、がっかりですよ……!!」
自分でも、何を言ったのかあまりよく覚えていない。
よくわかっていないような顔をする先輩に、込み上げて来たぐちゃぐちゃな感情をぶつけたのは覚えている。
照「淡、お前何を怒って…………、あぁ、こうすれば良いのか?」
先輩の手が私を捕まえて、指が顎を撫でて、すぐ目の前には先輩の顔があって。
淡「――っ!?」
柔らかで、ほんの少し甘い先輩の唇が、私のそれを塞いでいた。
照「……ん、ふ……」
淡「んっ……!? っ、んむっ……ちゅ、んんっ……!」
よくわからない感情と感触に驚いて、何故だか視界が潤んだ。
淡「……っ! やめてください……!!」
照「……?」
淡「はぁ、はぁっ……最低、です……っ、信じてたのに……!」
その後、どう帰宅したのか覚えてなくて、帰るなりご飯も食べずに部屋に篭った。
淡「……」
私の憧れだった宮永照は、もういないんだ。
淡(……これから、どんな顔して先輩に会えばいいんだろう)
失望と苛立ちとがぐるぐると渦巻いて目が回る。
もう何も考えたくなくて、ベッドに身を放り投げた。
淡(なんで、あんなこと……)
無意識に指で唇をなぞっていたのに気付いて、枕に顔をうずめた。
淡(……明日、部活行きたくないや)
ついこの間まで、部活に行きたくて、先輩に会いたくて、先輩と麻雀を打ちたくてしょうがなかったのに。
淡(…………)
思考に捕われているうち、私はいつの間にか眠りに落ちてしまった。
淡(……)
放課後、部室には来たものの、私はドアの前で入りあぐねていた。
相変わらず気持ちはモヤモヤとしたままで、やはり帰ろうと踵を返そうとしたその時だった。
照「淡?」
淡「……!」
今、1番会いたくなかった。
私のそんな心情を余所に、変わらない口調で先輩は言う。
照「鍵が開いてないのか? ……なんだ、開いてるじゃないか」
淡「……」
照「どうした、入らないのか? 今日も私と打つんだろう?」
淡「……」
淡「……なんで、ですか」
照「?」
淡「どうして、何事もなかったような顔で話し掛けられるんですか!?」
淡「私は、ショックでしたよ……!」
淡「ずっと憧れだった、目標だったあなたが、あんなことしてたなんて……」
淡「みんなの気持ちを利用して、好き勝手なことしてるだけじゃないですか!」
淡「何が、高校生の頂点……!」
淡「何で、何で私は、こんな人……!!」
淡「あんたなんか、もう憧れでも何でもない!」
淡「私は、私はっ……!」
照「……淡」
ひどく、冷たい声だった。
照「来て」
突然にぐっと手を掴まれ、そのまま有無を言わさず引きずられて行く。
淡「……!? ちょ……せんぱ……!」
スタスタと、一度もこちらを振り返ることなく進んで行く。
手には力が篭っていて、少し痛いくらいだった。
淡「どこ行くんですか……離してください!」
連れて来られたのは、部室近くの仮眠室。
淡(……そういえば照先輩、よくここ利用してたっけ)
大抵は部室で本を読んだり、麻雀を打っている先輩。
それでも部室に姿がない時は、決まってここで寝ていた気がする。
淡(菫先輩に言われて、何度も起こしに行った……)
照の目覚まし係だな、なんて言われて、そんな係押し付けないでくださいと言いながら、本当は満更でもなかった。
穏やかに寝息を立てる照先輩の顔は普段とは違っていて、無防備で可愛い。
それを独り占めできることが、嬉しかったから。
淡(それも、思い上がりだったんだ……)
ガチャリ、仮眠室のドアを開く音で我に返った。
淡「きゃ……!?」
中に入るなりベッドに放り投げられる。
鍵のかかる音が聞こえて、私の頭に警鐘が響く頃には、もうすでに遅かった。
淡「っ……何、するつもりですか……!」
覆いかぶさるようにして、先輩が私を囚える。
照「……」
先輩は無言のまま、私の頬を撫でた。
びくりと身体が跳ねてしまって、けれども気持ちは負けないように、視線だけは逸らさない。
照「……、」
ごめん、と聞こえた気がした。
淡「っ!?」
柔らかな唇が重なった。
触れて、離して、まるで恋人同士でするかのような優しいそれに、困惑と怒りとが混ざり合う。
淡「や、めっ……んむっ……!?」
舌が口内に入ってくると同時に、制服の裾から先輩の手が侵入してくる。
淡「っ、……ふっ、ぅ……」
口の中でぬるぬるとうごめくそれを噛んでやろうと思って、できなくて、太股を撫でられて力が抜けた。
淡「ん、く、……ふっ……」
酸素が足りなくて、気持ち良くて、徐々に頭が痺れてくる。
たっぷり口内をねぶられてからやっと唇を解放されて、足りない酸素を勢いよく取り込んだ。
淡「ぷはっ! はぁっ、はっ……はぁっ……」
じわじわと熱が高ぶっていて、頭がぼーっとする。
逃げなければと思うのに、身体は言うことを聞いてくれない。
照「淡」
制服の上から胸を撫でられ、自分でもよくわからない感情でいっぱいになった。
淡「っ、ぁ……ん、んくぅ……」
引っ掻くような指使いが、固くしこり始めた先端に引っ掛かる。
その刺激がまた思考を奪って、体温を上げていく。
淡「あっ、……っ!」
びくびくと跳ねてしまう身体に気を良くしたのか、先輩はそこを執拗に弄り始めた。
淡「ひあっ……あっ、や……やだぁっ……!」
先輩の指が踊るように胸の先端を弄ぶ。
制服越しでも、私には刺激が強すぎた。
淡「んっ……あっ、ふぁあ……っ!!」
びくん、と身体が一際大きく跳ねた。
頭が真っ白になって、視界がぼやける。
照「……軽くイッちゃった?」
口調は優しかったけれど、意地悪な笑みだった。
淡「はぁっ、はぁっ……もう、やめて、くださいっ……!」
首筋を吸われながら、自由のきかない身体で私は抵抗を試みる。
淡「こうやって、いろんな女の子に手をだしてたんですね……」
淡「私にもこんなことして、どうするんですか……?」
淡「あなたを求めてる子なんて、ほかにごまんといるでしょう……」
淡「私にはもう、構わないでくださいよ……!」
淡「どうしてっ……」
照「黙って」
鋭い眼光に射ぬかれた。
一瞬で変わったその場の空気に、体温が冷めていく。
淡「っ……」
照「そういうのは、聞きたくない」
ふわりと頭を撫でる先輩の手は温かくて、その温度差に私は畏縮する。
淡「……」
照「可愛い声は聞きたいんだけど」
淡「何、言って……っ!」
くちゅ、と水音が響いた。
ショーツの隙間から、先輩の指が私に触れた音だった。
照「淡?」
淡「ん……、く、ふっ……!」
誰が、そんな声出すもんか。
右手でシーツをぎゅっと握って、声が漏れないよう左手で口元を覆う。
照「あぁ……そういうつもり?」
割れ目をなぞりながら、先輩は徐々に指を奥へと沈めていく。
淡「んん……ふっ……!」
じゅうぶんに濡れていたそこは、心とは裏腹に先輩の指を容易く受け入れてしまう。
あれだけ細い先輩の指が、中を圧迫してキツくて苦しい。
淡「か……はっ……」
ゆっくりと、慣らすように焦らすように、差し挿れては抜かれ、中と外を何度も往復される。
淡「ん、ふっ……ふぅっ……」
気を抜けば漏れてしまいそうな声を塞いで、懸命に快感に耐えた。
照「淡……」
そんな努力も虚しく、ぷっくりと腫れた陰核を転がされると、さすがに声が我慢出来なくなった。
淡「ひぁ、あっ……あっ、ひぅ、も……もう、やだっ……やだぁっ……ふあっ」
弄〈イラ〉うような指使いが私の快感を煽って、反抗心を奪っていく。
淡「あっ、あっ……ふぁ、あっ……はぁっ……」
きっとこの人は、ほかの子とも、こんなふうに。
やるせない想いを抱えたまま、けれど身体は愛撫に反応してしまって。
頭の中で火花が散って、二度目の快感の波が私の意識をさらっていった。
未だ軽く痙攣する身体で息を整えながら、ぼやけた視界に先輩を捕らえる。
照「……」
視線が交わったけれども、先輩から言葉はなかった。
淡「……」
しばらくして、先輩は立ち上がると踵をめぐらす。
これでたぶん、私たちの関係は終わるんだろう。
淡「……私は」
遠くなっていくその背中に、呟いた。
淡「私はきっと、先輩のこと、好きだったんですよ……」
先輩後輩としてでなく、ひとりの女の子として。
たぶんそれは、あなたを初めて見た時からで。
淡「でも」
淡「今はもう、そんな気持ちなんてない」
淡「先輩なんて、……大嫌い、です」
照「……」
照「私もだ、大星」
ドアが閉まり、私は一人、部屋に取り残された。
先輩なんて嫌いだ。
淡「……ぅ」
これは、ただ彼女に裏切られたことが悔しいんだ。
自分だけを見てくれていたなんて、思い上がっていた自分に呆れただけだ。
淡「ぐすっ……うええぇぇん……!」
こんな形で、彼女との関わりが壊れるなんて。
小さな恋が終わるだなんて、思ってもなかった。
先輩なんて、大嫌い。
そう自分に言い聞かせた。
そんなことがあって、けれども私は部活を辞めることはなかった。
照「大星」
淡「なに?」
やっぱり麻雀は好きだし、彼女を倒したいという思いも変わってはいないから。
照「人数が足らない。卓に着いてくれ」
淡「えぇ……しょうがないなぁ」
ただ、彼女との関係は少し変わった。
そのひとつが、口調。
淡「今日は倒すよ?」
何一つ敵わない彼女に、せめて仮初にも同じ場所に立てたらと。
淡「はぁ、2位か……また勝てなかったぁ」
照「……」
そして、もうひとつ。
照「……大星」
淡「なに?」
けじめは、つけたつもりだった。
照「部活が終わったら、少し残っててくれ」
けれど、彼女との繋がりが全て途絶えてしまうのは、私には堪えらなかったらしい。
淡「……いいよ」
ずるずると、曖昧で宙ぶらりんで、ひどく脆い関係が残った。
仕方がないと思いたい。
呆れることに、彼女への想いは変わらなかった。
―――――――
―――――
―――
照「……大星?」
彼女の声で、ふと我に返る。
長い間、過去に耽っていたらしい。
淡「……ちょっと、考え事」
照「そうか」
首に腕を回して、彼女を捕まえた。
淡「ねぇ」
淡「私のこと、好きですか?」
照「……あぁ」
変わらぬ表情と口調。
予想通りの答えだった。
淡「ふふ……それ、誰にでも言っているんでしょう?」
照「……」
逃がさないように、囲っていたつもりだったのに。
淡「ねぇ、私にも聞いて」
照「……大星は、私のことが好きか?」
いつの間にか、囚われていたのは私の方だったらしい。
淡「さぁ、どうでしょうね?」
言葉を並べて、気持ちを閉じ込める。
けれど、いくら外側を見繕った所で、内側の私はボロボロのままで。
淡「きっと、好きじゃないと思う」
そう思いたい。
けれども。
この抜け出せない甘い心地好さに、私は更に、溺れ囚われていく。
尭深「……」カリカリ
尭深「……」ズズー
尭深「……」カリカリ
尭深(「私は更に、溺れ囚われていく。」……)カリカリ
尭深「完、っと……」カリカリ
尭深「……ふぅ」
誠子「何書いてたんだ?」ヒョコッ
尭深「ひゃああああああああ!?」バッ
尭深「ななななな、誠子……いつからそこに……」
誠子「いや……ついさっきだけど」
尭深「……見た?」
誠子「え?」
尭深「見た!?」
誠子「何を」
尭深「小説!!」
誠子「あぁ、それ小説なのか」
尭深「!? な、なし! 今のなし!」
誠子「へぇ、小説書いてるのか。すごいな」
尭深「や……その……」
誠子「どんな内容なんだ? 見せて……」スッ
尭深「だ、だめっ!!」バッ
誠子「いいじゃんいいじゃん、小説は人に見せるために書くんだろー」
尭深「いや……自己満足のために書いてるだけで……」ゴニョゴニョ
淡「なになに、たかみー小説書いてるの?」ピョコ
尭深「!?」
淡「見せてー」
\ワイワイ/
照「なんだ騒がしい……」
淡「あっ、テルー!」パアッ
誠子「いや、何やら尭深が小説を書いてるそうですよ」
尭深「わわっ、わー! わー!」
照「ほう、小説か……見せてくれないか?」
尭深「だだだだだめです!!」ヒッシ
照「むぅ……」
尭深「ふーっ!」
淡「たかみー、威嚇してる猫みたいになってる……」
照「まぁ、むりやり奪うのもアレだしな、ここらであきらめとこうか」
誠子「ですね」
照「ん。淡、こっち」
淡「なにー?」
照「よいしょ」ギュム
淡「うー、ちょっと暑いよテルー……」
照「落ち着く」スリスリ
誠子(相変わらず仲良いなぁ、この2人……微笑ましい)
尭深「……」ジー
誠子「?」
尭深「……」ズズー
尭深「……ふぅ」
尭深(たまにはドロドロした照×淡も良いかなと思って書いてみたけど……)
尭深「やっぱり新刊は照×淡イチャラブKENZEN本にしよう、うん」
菫「いや渋谷、やはりエースは後輩よりも部長と絡ませた方が良いんじゃないか?」
照「あれ菫、いつからいたの?」
淡「テルーお腹すいたーお菓子ちょーだーい」
おわり
7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/11(土) 23:42:39.22 ID:b7BwrxYTO
淡「今日はしないんだ?」
問い掛けに、彼女は本から私へと視線を移した。
うるさい邪魔するな、とでも言いたげな表情で一瞥すると、また紙面の文字を追う作業に戻る。
面白くない私は、けれども苛立ちを抑えて彼女を呼ぶ。
淡「ねぇってば」
しかし、当の彼女は相変わらずの沈黙だった。
淡(呼んだのはそっちのくせに……)
良いだろう、待ってやろうじゃないか。
私は彼女の座る傍の、長机の上に行儀悪く腰を下ろした。
9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/11(土) 23:45:08.18 ID:b7BwrxYTO
ぶらぶら。子供っぽいな、と思いながらも、宙に浮く脚を揺らしてみる。
合わせて机がゆるゆると軋む。
これで彼女の読書を少しでも邪魔できないだろうか。
ちらりと窺ってみるも、彼女は私など気にも止めていないようだった。
淡(……ま、わかってたけど)
本に集中しているのか、意図的に無視しているのか。
……どちらでもいいか。
彼女の真剣な眼差しを見ながら、それが私に向けばいいな、なんて。
淡(無理無理、ないない)
考えて、自嘲する。
思考を掻き消すように頭を振った。
10: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/11(土) 23:50:55.73 ID:b7BwrxYTO
しばらくして、彼女の漏らした吐息が空気を揺るがせた。
ぱたん、と手の本が閉じられる。
淡「読書は終わり?」
照「あぁ」
彼女は本を丁寧に鞄へ仕舞うと、立ち上がって私へと向き直った。
彼女とは、私が机の上に座ることで、同じ高さで顔を合わせられる。
身長も年齢も、麻雀でも私の上をいく彼女。
並ぼうと思って、届くところではない場所。
だけど、この時だけは。
淡「実は、期待してるんでしょ?」
この時間だけは、隣に立てる気がして。
彼女が、私だけを見てくれる気がして。
11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/11(土) 23:54:27.25 ID:b7BwrxYTO
淡「ねぇ、照」
にやりと口の端を吊り上げてみる。
彼女はひどく冷めていて、けれども私の熱は上がっていく。
照「期待してるのはお前だろう、大星」
凜と張った涼しい目もとに見惚れてしまう。
視線が私を射抜いた一瞬、世界が止まったかと錯覚した。
淡「……、」
一体、何人がこうして彼女に囚われただろうか。
淡「そんなわけ――、」
ない、と。
続く言葉は唇に塞がれて、彼女の中へと消えていった。
淡「ん、くっ……」
12: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/11(土) 23:58:05.92 ID:b7BwrxYTO
彼女の指が私の肌をなぞって、触れられた所が熱を持って、そして私はそれに浮かされていく。
淡「んんっ、あんっ……」
唇を塞がれて、肌を吸われて、局部を撫でられて。
淡「ん、あ……ふあ、あっ……」
いつからだろう。
彼女への憧れが、失望に変わったのは。
そしてそれが、どう違えて愛慕に変わってしまったのか。
揺れる視界と思考の中で、ぼんやりと記憶をなぞった。
13: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 00:02:08.74 ID:ysfkkMNCO
―――――――
―――――
―――
彼女は、私の憧れだった。
照「大星」
前年度のインターハイ及び今年度の春季大会の2冠優勝者。
高校生1万人の、頂点。
淡「何ですか、宮永先輩」
インターハイといえば彼女のこと、とまで言われるほどの実力の持ち主。
そんな先輩に呼び出された。
夕焼けに染まる部室で、他の部員は誰一人いない。
私と先輩だけの空間だった。
照「回りくどいのは苦手だ。単刀直入に聞こう」
相変わらず表情の変わらない人だな、と思った。
入部当初こそ驚いたものの、取材記者や報道陣へするような偽りの笑顔よりは、こっちの方がずっと良い。
15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 00:08:15.55 ID:ysfkkMNCO
照「お前、私が好きじゃないだろう」
何もかも、お見通しと言ったふうな瞳だった。
ふ、と息が漏れる。
淡「そんなこと無いですよ」
そう、先輩は憧れであり、今まで出会った中で最も強い敵であり、倒したい相手であり。
照「遠慮しなくていい。好いてもいない奴とチームを組んで打つ麻雀は楽しいか」
楽しい?
無表情で麻雀を打つ先輩から、そんな言葉が聞けるなんて思ってもなかった。
淡「先輩を嫌ってなんかないですよ」
照「じゃあお前のそれは憎悪か?」
16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 00:09:33.04 ID:ysfkkMNCO
淡「……それも、少し違うと思います」
この感情はそんなんじゃない。
もっと違う、純粋な何かで。
照「私と卓を囲む時、お前からは殺気めいたものを感じる」
淡「……」
照「違うのか」
淡「ええ」
照「じゃあアレは何だ」
淡「……そうですね」
18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 00:12:17.03 ID:ysfkkMNCO
淡「あなたは、私の憧れなんですよ」
淡「あなたのようになりたくて、あなたと打ちたくて、私は白糸台に入りました」
淡「覚えてますか? あなたと初めて卓を囲んだ時のこと」
淡「格の違いを見せ付けられました」
淡「私だって、自信はあったんですよ。大好きな麻雀で、今まで負けたことなんかなかったから」
淡「だから悔しかった、すごく。私の力じゃ遠く及ばない、こんな人もいるんだって」
淡「それで一層あなたへの憧れが強くなりました。同時に、こうも思ったんです」
淡「あなたに勝ちたい」
19: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 00:17:07.06 ID:ysfkkMNCO
照「……」
淡「純粋な憧れが、闘争心に変わったんです」
憎いわけじゃない。
妬んでいるわけじゃない。
ただ、それに近しい感情はあると思う。
淡「勝ちたいと思うあまりに、知らず知らず先輩に誤解を招いていたんですね。すみませんでした」
照「いや……なるほど、それであの気迫か」
淡「はい、だから」
今は到底及ばない、けれど必ず追いついて、抜かしてみせる。
大きく立ちはだかる先輩を見据えて言った。
淡「宮永照。私があなたを倒す」
20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 00:19:05.43 ID:ysfkkMNCO
先輩は、その言葉に一瞬目を丸くして、それから口端を釣り上げた。
照「あぁ、やってみろ」
初めて見た、彼女の表情。
見繕ったそれとは違う、らしくない子供っぽい笑みだった。
淡「すぐに追い越してやりますよ」
宮永先輩を倒す、そのためなら、どんな努力も厭わない。
私は、ただこの人を超えるために。
そう、思ってた。
21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 00:22:52.03 ID:ysfkkMNCO
それからは毎日が練習の日々で、たった数ヶ月の間に、自分でもよくやったと思う。
相変わらず先輩には一度も勝てなかったけれど、それでも一緒に打つ麻雀はとても楽しかった。
淡「照先輩、今日こそ倒しますよ」
照「淡、毎日聞いてるぞ、それ」
淡「毎日言ってますもん」
照「ふ……今日も返り討ちにしてやろう」
淡「させません!」
毎日のように先輩に挑んで、そして宣言された通り返り討ちに合う。
勝てないことは悔しい。
けれど、それ以上に麻雀が楽しい。
あれから先輩は私を気にかけてくれるようになった。
話すことも増え、知らなかった一面を知り、私の中で先輩の存在はより大きいものになっていった。
22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 00:26:29.01 ID:ysfkkMNCO
そんな充実した日々が続いていた、ある放課後のことだった。
それはたまたま部室の前を通りかかった時で――――そこで聞いた、誰かの嬌声。
声の主はわからない。
ただ、荒い息づかいの節々に、照先輩の名を呼んでいた。
淡「…………、」
一瞬で思考がフリーズして、それでもここにいたらいけない事だけはわかったから、走ってその場を離れた。
走って、走って、その間中、思考はぐちゃぐちゃだった。
淡(なんで……照先輩……)
迷いのなかった心に、暗い雲が覆い始めた。
24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 00:31:57.39 ID:ysfkkMNCO
疑い出したら早いもので、あっという間に、私の中の先輩は崩れ去っていった。
「ああ、大星さん知らなかったの?」
噂を耳にして、失望した。
「宮永さん、取っ替え引っ替えで部員の子に手を出してるらしいよ」
「まぁ、あれだけ有名人だもんね。ファンも大勢いるだろうし」
「来るもの拒まずで、誰でも抱いてあげてるとか……」
「え、宮永先輩好みの可愛い子は無理矢理……って聞いたけど」
「まぁどっちにしろ、あの人にはあんまり近付かないほうがいいんじゃない?」
「淡は大丈夫? あんた可愛いから、先輩に襲われちゃうかもよ~?」
「あはははは! 止めなってぇ」
知らなかった。
憧れだった先輩に近付けて、舞い上がって、彼女を知った気になって、でも結局は彼女のことなど、わかっていなかった。
25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 00:35:29.01 ID:ysfkkMNCO
淡「……先輩、ちょっといいですか」
照「なんだ淡?」
噂のことを問い詰めた。
あんなこと、嘘であって欲しかった。
否定してほしかった。
照「あぁ、そのことか」
淡「……」
照「毎回断りはするんだが、泣かれるとどうも弱くてな……」
先輩は、麻雀を打つ時と同じ表情で、淡々とした口調で肯定した。
淡「……もういいです」
淡「……先輩には、がっかりですよ……!!」
自分でも、何を言ったのかあまりよく覚えていない。
よくわかっていないような顔をする先輩に、込み上げて来たぐちゃぐちゃな感情をぶつけたのは覚えている。
28: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 00:39:02.78 ID:ysfkkMNCO
照「淡、お前何を怒って…………、あぁ、こうすれば良いのか?」
先輩の手が私を捕まえて、指が顎を撫でて、すぐ目の前には先輩の顔があって。
淡「――っ!?」
柔らかで、ほんの少し甘い先輩の唇が、私のそれを塞いでいた。
照「……ん、ふ……」
淡「んっ……!? っ、んむっ……ちゅ、んんっ……!」
よくわからない感情と感触に驚いて、何故だか視界が潤んだ。
淡「……っ! やめてください……!!」
照「……?」
淡「はぁ、はぁっ……最低、です……っ、信じてたのに……!」
31: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 00:46:03.22 ID:ysfkkMNCO
その後、どう帰宅したのか覚えてなくて、帰るなりご飯も食べずに部屋に篭った。
淡「……」
私の憧れだった宮永照は、もういないんだ。
淡(……これから、どんな顔して先輩に会えばいいんだろう)
失望と苛立ちとがぐるぐると渦巻いて目が回る。
もう何も考えたくなくて、ベッドに身を放り投げた。
淡(なんで、あんなこと……)
無意識に指で唇をなぞっていたのに気付いて、枕に顔をうずめた。
淡(……明日、部活行きたくないや)
ついこの間まで、部活に行きたくて、先輩に会いたくて、先輩と麻雀を打ちたくてしょうがなかったのに。
淡(…………)
思考に捕われているうち、私はいつの間にか眠りに落ちてしまった。
32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 00:50:23.55 ID:ysfkkMNCO
淡(……)
放課後、部室には来たものの、私はドアの前で入りあぐねていた。
相変わらず気持ちはモヤモヤとしたままで、やはり帰ろうと踵を返そうとしたその時だった。
照「淡?」
淡「……!」
今、1番会いたくなかった。
私のそんな心情を余所に、変わらない口調で先輩は言う。
照「鍵が開いてないのか? ……なんだ、開いてるじゃないか」
淡「……」
照「どうした、入らないのか? 今日も私と打つんだろう?」
淡「……」
淡「……なんで、ですか」
照「?」
33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 00:53:51.86 ID:ysfkkMNCO
淡「どうして、何事もなかったような顔で話し掛けられるんですか!?」
淡「私は、ショックでしたよ……!」
淡「ずっと憧れだった、目標だったあなたが、あんなことしてたなんて……」
淡「みんなの気持ちを利用して、好き勝手なことしてるだけじゃないですか!」
淡「何が、高校生の頂点……!」
淡「何で、何で私は、こんな人……!!」
淡「あんたなんか、もう憧れでも何でもない!」
淡「私は、私はっ……!」
37: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 00:55:36.23 ID:ysfkkMNCO
照「……淡」
ひどく、冷たい声だった。
照「来て」
突然にぐっと手を掴まれ、そのまま有無を言わさず引きずられて行く。
淡「……!? ちょ……せんぱ……!」
スタスタと、一度もこちらを振り返ることなく進んで行く。
手には力が篭っていて、少し痛いくらいだった。
淡「どこ行くんですか……離してください!」
39: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 01:00:01.24 ID:ysfkkMNCO
連れて来られたのは、部室近くの仮眠室。
淡(……そういえば照先輩、よくここ利用してたっけ)
大抵は部室で本を読んだり、麻雀を打っている先輩。
それでも部室に姿がない時は、決まってここで寝ていた気がする。
淡(菫先輩に言われて、何度も起こしに行った……)
照の目覚まし係だな、なんて言われて、そんな係押し付けないでくださいと言いながら、本当は満更でもなかった。
穏やかに寝息を立てる照先輩の顔は普段とは違っていて、無防備で可愛い。
それを独り占めできることが、嬉しかったから。
淡(それも、思い上がりだったんだ……)
ガチャリ、仮眠室のドアを開く音で我に返った。
41: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 01:04:09.52 ID:ysfkkMNCO
淡「きゃ……!?」
中に入るなりベッドに放り投げられる。
鍵のかかる音が聞こえて、私の頭に警鐘が響く頃には、もうすでに遅かった。
淡「っ……何、するつもりですか……!」
覆いかぶさるようにして、先輩が私を囚える。
照「……」
先輩は無言のまま、私の頬を撫でた。
びくりと身体が跳ねてしまって、けれども気持ちは負けないように、視線だけは逸らさない。
照「……、」
ごめん、と聞こえた気がした。
45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 01:07:42.49 ID:ysfkkMNCO
淡「っ!?」
柔らかな唇が重なった。
触れて、離して、まるで恋人同士でするかのような優しいそれに、困惑と怒りとが混ざり合う。
淡「や、めっ……んむっ……!?」
舌が口内に入ってくると同時に、制服の裾から先輩の手が侵入してくる。
淡「っ、……ふっ、ぅ……」
口の中でぬるぬるとうごめくそれを噛んでやろうと思って、できなくて、太股を撫でられて力が抜けた。
淡「ん、く、……ふっ……」
酸素が足りなくて、気持ち良くて、徐々に頭が痺れてくる。
46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 01:10:37.02 ID:ysfkkMNCO
たっぷり口内をねぶられてからやっと唇を解放されて、足りない酸素を勢いよく取り込んだ。
淡「ぷはっ! はぁっ、はっ……はぁっ……」
じわじわと熱が高ぶっていて、頭がぼーっとする。
逃げなければと思うのに、身体は言うことを聞いてくれない。
照「淡」
制服の上から胸を撫でられ、自分でもよくわからない感情でいっぱいになった。
淡「っ、ぁ……ん、んくぅ……」
引っ掻くような指使いが、固くしこり始めた先端に引っ掛かる。
その刺激がまた思考を奪って、体温を上げていく。
淡「あっ、……っ!」
びくびくと跳ねてしまう身体に気を良くしたのか、先輩はそこを執拗に弄り始めた。
47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 01:13:06.41 ID:ysfkkMNCO
淡「ひあっ……あっ、や……やだぁっ……!」
先輩の指が踊るように胸の先端を弄ぶ。
制服越しでも、私には刺激が強すぎた。
淡「んっ……あっ、ふぁあ……っ!!」
びくん、と身体が一際大きく跳ねた。
頭が真っ白になって、視界がぼやける。
照「……軽くイッちゃった?」
口調は優しかったけれど、意地悪な笑みだった。
51: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 01:16:12.82 ID:ysfkkMNCO
淡「はぁっ、はぁっ……もう、やめて、くださいっ……!」
首筋を吸われながら、自由のきかない身体で私は抵抗を試みる。
淡「こうやって、いろんな女の子に手をだしてたんですね……」
淡「私にもこんなことして、どうするんですか……?」
淡「あなたを求めてる子なんて、ほかにごまんといるでしょう……」
淡「私にはもう、構わないでくださいよ……!」
淡「どうしてっ……」
照「黙って」
鋭い眼光に射ぬかれた。
一瞬で変わったその場の空気に、体温が冷めていく。
53: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 01:20:44.38 ID:ysfkkMNCO
淡「っ……」
照「そういうのは、聞きたくない」
ふわりと頭を撫でる先輩の手は温かくて、その温度差に私は畏縮する。
淡「……」
照「可愛い声は聞きたいんだけど」
淡「何、言って……っ!」
くちゅ、と水音が響いた。
ショーツの隙間から、先輩の指が私に触れた音だった。
照「淡?」
淡「ん……、く、ふっ……!」
誰が、そんな声出すもんか。
右手でシーツをぎゅっと握って、声が漏れないよう左手で口元を覆う。
54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 01:25:28.18 ID:ysfkkMNCO
照「あぁ……そういうつもり?」
割れ目をなぞりながら、先輩は徐々に指を奥へと沈めていく。
淡「んん……ふっ……!」
じゅうぶんに濡れていたそこは、心とは裏腹に先輩の指を容易く受け入れてしまう。
あれだけ細い先輩の指が、中を圧迫してキツくて苦しい。
淡「か……はっ……」
ゆっくりと、慣らすように焦らすように、差し挿れては抜かれ、中と外を何度も往復される。
淡「ん、ふっ……ふぅっ……」
気を抜けば漏れてしまいそうな声を塞いで、懸命に快感に耐えた。
57: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 01:30:08.64 ID:ysfkkMNCO
照「淡……」
そんな努力も虚しく、ぷっくりと腫れた陰核を転がされると、さすがに声が我慢出来なくなった。
淡「ひぁ、あっ……あっ、ひぅ、も……もう、やだっ……やだぁっ……ふあっ」
弄〈イラ〉うような指使いが私の快感を煽って、反抗心を奪っていく。
淡「あっ、あっ……ふぁ、あっ……はぁっ……」
きっとこの人は、ほかの子とも、こんなふうに。
やるせない想いを抱えたまま、けれど身体は愛撫に反応してしまって。
頭の中で火花が散って、二度目の快感の波が私の意識をさらっていった。
59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 01:35:05.19 ID:ysfkkMNCO
未だ軽く痙攣する身体で息を整えながら、ぼやけた視界に先輩を捕らえる。
照「……」
視線が交わったけれども、先輩から言葉はなかった。
淡「……」
しばらくして、先輩は立ち上がると踵をめぐらす。
これでたぶん、私たちの関係は終わるんだろう。
淡「……私は」
遠くなっていくその背中に、呟いた。
61: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 01:41:06.00 ID:ysfkkMNCO
淡「私はきっと、先輩のこと、好きだったんですよ……」
先輩後輩としてでなく、ひとりの女の子として。
たぶんそれは、あなたを初めて見た時からで。
淡「でも」
淡「今はもう、そんな気持ちなんてない」
淡「先輩なんて、……大嫌い、です」
照「……」
照「私もだ、大星」
ドアが閉まり、私は一人、部屋に取り残された。
63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 01:45:07.36 ID:ysfkkMNCO
先輩なんて嫌いだ。
淡「……ぅ」
これは、ただ彼女に裏切られたことが悔しいんだ。
自分だけを見てくれていたなんて、思い上がっていた自分に呆れただけだ。
淡「ぐすっ……うええぇぇん……!」
こんな形で、彼女との関わりが壊れるなんて。
小さな恋が終わるだなんて、思ってもなかった。
先輩なんて、大嫌い。
そう自分に言い聞かせた。
68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 01:50:44.30 ID:ysfkkMNCO
そんなことがあって、けれども私は部活を辞めることはなかった。
照「大星」
淡「なに?」
やっぱり麻雀は好きだし、彼女を倒したいという思いも変わってはいないから。
照「人数が足らない。卓に着いてくれ」
淡「えぇ……しょうがないなぁ」
ただ、彼女との関係は少し変わった。
そのひとつが、口調。
淡「今日は倒すよ?」
何一つ敵わない彼女に、せめて仮初にも同じ場所に立てたらと。
71: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 01:55:42.31 ID:ysfkkMNCO
淡「はぁ、2位か……また勝てなかったぁ」
照「……」
そして、もうひとつ。
照「……大星」
淡「なに?」
けじめは、つけたつもりだった。
照「部活が終わったら、少し残っててくれ」
けれど、彼女との繋がりが全て途絶えてしまうのは、私には堪えらなかったらしい。
淡「……いいよ」
ずるずると、曖昧で宙ぶらりんで、ひどく脆い関係が残った。
仕方がないと思いたい。
呆れることに、彼女への想いは変わらなかった。
73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 02:00:16.95 ID:ysfkkMNCO
―――――――
―――――
―――
照「……大星?」
彼女の声で、ふと我に返る。
長い間、過去に耽っていたらしい。
淡「……ちょっと、考え事」
照「そうか」
首に腕を回して、彼女を捕まえた。
淡「ねぇ」
淡「私のこと、好きですか?」
照「……あぁ」
変わらぬ表情と口調。
予想通りの答えだった。
76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 02:05:07.41 ID:ysfkkMNCO
淡「ふふ……それ、誰にでも言っているんでしょう?」
照「……」
逃がさないように、囲っていたつもりだったのに。
淡「ねぇ、私にも聞いて」
照「……大星は、私のことが好きか?」
いつの間にか、囚われていたのは私の方だったらしい。
淡「さぁ、どうでしょうね?」
言葉を並べて、気持ちを閉じ込める。
けれど、いくら外側を見繕った所で、内側の私はボロボロのままで。
淡「きっと、好きじゃないと思う」
そう思いたい。
けれども。
この抜け出せない甘い心地好さに、私は更に、溺れ囚われていく。
77: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 02:06:29.47 ID:ysfkkMNCO
この雰囲気のまま終わりたい人はここでスレを閉じることをオススメする
84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 02:10:06.79 ID:ysfkkMNCO
尭深「……」カリカリ
尭深「……」ズズー
尭深「……」カリカリ
尭深(「私は更に、溺れ囚われていく。」……)カリカリ
尭深「完、っと……」カリカリ
尭深「……ふぅ」
誠子「何書いてたんだ?」ヒョコッ
尭深「ひゃああああああああ!?」バッ
86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 02:11:29.26 ID:d4upOl3+0
亦野さんチィーッス!
87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 02:12:16.72 ID:+b9TCfU9O
ってええええええ
すばら!
すばら!
88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 02:13:07.67 ID:ysfkkMNCO
尭深「ななななな、誠子……いつからそこに……」
誠子「いや……ついさっきだけど」
尭深「……見た?」
誠子「え?」
尭深「見た!?」
誠子「何を」
尭深「小説!!」
誠子「あぁ、それ小説なのか」
尭深「!? な、なし! 今のなし!」
90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 02:16:15.32 ID:ysfkkMNCO
誠子「へぇ、小説書いてるのか。すごいな」
尭深「や……その……」
誠子「どんな内容なんだ? 見せて……」スッ
尭深「だ、だめっ!!」バッ
誠子「いいじゃんいいじゃん、小説は人に見せるために書くんだろー」
尭深「いや……自己満足のために書いてるだけで……」ゴニョゴニョ
淡「なになに、たかみー小説書いてるの?」ピョコ
尭深「!?」
淡「見せてー」
93: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 02:19:52.95 ID:ysfkkMNCO
\ワイワイ/
照「なんだ騒がしい……」
淡「あっ、テルー!」パアッ
誠子「いや、何やら尭深が小説を書いてるそうですよ」
尭深「わわっ、わー! わー!」
照「ほう、小説か……見せてくれないか?」
尭深「だだだだだめです!!」ヒッシ
照「むぅ……」
95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 02:22:14.34 ID:ysfkkMNCO
尭深「ふーっ!」
淡「たかみー、威嚇してる猫みたいになってる……」
照「まぁ、むりやり奪うのもアレだしな、ここらであきらめとこうか」
誠子「ですね」
照「ん。淡、こっち」
淡「なにー?」
照「よいしょ」ギュム
淡「うー、ちょっと暑いよテルー……」
照「落ち着く」スリスリ
誠子(相変わらず仲良いなぁ、この2人……微笑ましい)
100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 02:25:31.24 ID:ysfkkMNCO
尭深「……」ジー
誠子「?」
尭深「……」ズズー
尭深「……ふぅ」
尭深(たまにはドロドロした照×淡も良いかなと思って書いてみたけど……)
尭深「やっぱり新刊は照×淡イチャラブKENZEN本にしよう、うん」
菫「いや渋谷、やはりエースは後輩よりも部長と絡ませた方が良いんじゃないか?」
照「あれ菫、いつからいたの?」
淡「テルーお腹すいたーお菓子ちょーだーい」
おわり
103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 02:29:36.36 ID:ysfkkMNCO
あわあわ何でてるてるにタメ口やねんから始まった妄想
地の文あるから読むの大変だっただろ
みんなおつかれ
支援、読んでくれてどうもサンクスでした
地の文あるから読むの大変だっただろ
みんなおつかれ
支援、読んでくれてどうもサンクスでした
102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 02:27:24.22 ID:+b9TCfU9O
乙乙
(そのイチャラブ本の内容も書いて)ええんやで
(そのイチャラブ本の内容も書いて)ええんやで
105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 02:32:17.49 ID:D2gjtvkF0
乙乙すばらです!
地の文ある方が好きだし楽しませて頂きましたわ!
淡照は最新号で更に妄想が捗ったな
また書いてね!
地の文ある方が好きだし楽しませて頂きましたわ!
淡照は最新号で更に妄想が捗ったな
また書いてね!
107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 02:33:00.74 ID:jH1VrSlPP
最高やった
乙
乙
112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/08/12(日) 02:46:28.82 ID:iIzk8u7TO
乙
久々に地のあるSS読んだ気がする
良かったよ気が向いたらまた地の文のSS書いてくれ
楽しみにしてるから
久々に地のあるSS読んだ気がする
良かったよ気が向いたらまた地の文のSS書いてくれ
楽しみにしてるから
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