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雪歩「愛ちゃん、お誕生日おめでとう」
引用元: ・http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1340561520/
愛「そういえば雪歩先輩って、あたしにずっと敬語つかってますよね」
雪歩「え? そ、そうですかぁ?」
愛「そうですよ! 雪歩先輩のほうが年上なのに、そんなのおかしいって思います」
雪歩「うう、そんなにヘンでしょうか……」
愛「ホラ、また! ねえねえ雪歩先輩、一回、あたしのこと呼び捨てで呼んでみてください!」
雪歩「ええ!?」
愛「ほらほら~」
雪歩「わ、わわわかりましたぁ……今呼びますから、ま、待っててくださいね!」
愛「はいっ!」
雪歩「あ……、あ、あ……」
愛「……」ワクテカ
雪歩「愛!」
愛「! やったぁ!」ピョン
雪歩「……ちゃん」
愛「……えぇー……」
雪歩「うぅ、や、やっぱりもう癖になっちゃってるから、直すのは難しいですぅ」
愛「そんなぁ……」
雪歩「それに、ちゃん付けじゃなくて、呼び捨てで呼ぶのは、別に敬語とは関係ないんじゃあ……」
愛「え? ……それもそーかも! 涼さんや絵理さんも、あたしのこと呼び捨てしないもんね」
愛「さっすが雪歩先輩、頭イイっ!」
雪歩「えへへ……それほどでもないですよぉ」
愛「でもでも、それとこれとも関係ないです! 雪歩先輩は先輩なんだから、あたしに敬語つかっちゃダメですっ!」
雪歩「そんなこと言っても……わ、私、後輩とかあんまり出来たことないから」
愛「あれ、でも765プロには雪歩先輩より年下の人、けっこーいますよね?」
雪歩「年下の人? えーっと……」
愛「亜美ちゃんとか伊織さん、やよいさん、あとホシイミ……、美希センパイとかも」
雪歩「愛ちゃん、みんなのこと知ってるんですかぁ?」
雪歩「……あ、そ、そりゃそうですよね、私なんかと違って、みんな大人気だから……私なんかと違って……えへへ」
愛「わー! な、なんでいきなり落ち込んでるんですかーっ!?」
愛「美希センパイ以外のみなさんとは、レッスンスタジオで知り合って、たまにお稽古付けてもらったりしてるんです」
雪歩「そうだったんですかぁ」
愛「あれ、なんとなく見たことあるなぁって思ってたら、ちょー有名アイドルだったんですもん! あたしビックリしちゃって」
雪歩(ちょー有名なのに一目じゃわからなかったんだ)
愛「みんなあんなにスゴイ人たちなのに、事務所が違うあたしにもスゴイ優しくしてくれて」
愛「あたしの知らないことスゴイ色々教えてくれて、本当スゴイって思います」
雪歩「たしかに、みんなはスゴイですぅ」
愛「そーなんです、スゴイんですっ! 765プロのみなさんは、あたしの目標ですっ!」
雪歩「……私なんかじゃ、ちゃんと他の人に教えられるか不安……、むしろ教えてもらっちゃう方かも……えへ、えへへ」
愛「わー! ま、またなんで急に落ち込んでるんですかーっ!?」
愛「あれ? なんの話してたんだっけ……えーっと」
雪歩「亜美ちゃんとか伊織ちゃんが、私より年下って話ですかぁ?」
愛「そーです! 後輩できたことないって言ってたけど、年下なんだから、雪歩先輩より後輩ってことじゃないんですか?」
雪歩「えっと……、そういうわけじゃないんです。今のメンバーはみんな、ほとんど一緒の時期に入ってきた人ばかりだから」
愛「あれ、そーだったんですか?」
雪歩「うん。だから、センパイコウハイって言うより……、仲間って言ったほうがいいかも」
愛「仲間……」
雪歩「もちろん、年上のあずささんとか律子さん、四条さんには私も敬語をつかってますけど……」
雪歩「でもきっと、早く入ったからエライとか、年上だからエライってことはありません。そんなこと思ってたら怒られちゃいます」
愛(あたしにとっての、涼さんや絵理さんみたいなもんかな?)
雪歩(あれ? でも私……そういえば、年下の子たちに敬語つかわれたことないかも……。春香ちゃんにも……)
雪歩「そ、そんなことはどうでもいいんですぅ!!」
愛「!?」
雪歩「年上とか年下とか関係ないもん……だって、わ、私たちみんな……仲間だもんげ……うぅ」
愛「ゆ、雪歩先輩!? どーしたんですかっ!?」
雪歩「はっ! ……ご、ごめんね愛ちゃん、ちょっと衝撃の事実に気が付いちゃって」
愛「しょーげきの事実……」
雪歩「うん……私って年上の貫禄がないんだなぁって。きっとみんな、私のこと事務所の観葉植物くらいにしか思ってないんです」
愛「そ、そんなことありませんって!」
雪歩「うぅ……こ、こんな私なんて……穴掘って……収穫されるまでそのへんに埋まってますぅ!」
愛「ちょ、ちょっと雪歩先輩! ここ、あたしの部屋! 穴開いたらママに怒られちゃうよーっ!」
ガチャ
舞「うるっさーいっ!!!!!!!」
愛・雪歩「!?」キーン
舞「さっきから何ドタバタやってんのよ! 愛、あんたの声はただでさえ大きいんだから、ちょっとボリューム抑えなさいっ!」
愛「は、はい……ごめんなさい、ママ……」キーン
舞「ったく……あら、ゆっきー? どうしたの?」
雪歩「」
愛「雪歩先輩? ……し、死んでる!?」
雪歩「」
舞「なにバカなこと言ってんのよ。えーっと……うん、ただ失神してるだけね」
愛「あ、気絶してるだけかー、よかった……。それなら大したことないよね」
舞「よくあること」
愛「よくあることだもんね」
雪歩「」
舞「ま、いずれ気が付くでしょ。この子のことは置いといて……愛?」
愛「なーに?」
舞「休みの日にゆっきーが遊びに来るのは別に構わないけど、あんたたちどっか行かないわけ? ずっと部屋にこもっちゃって」
愛「うーん……、でもお仕事がない日曜日は、いつも家にいるから……どこに遊びに行けばいいのかわかんないよ」
舞「……」
愛「部屋でじっとしてテンション回復させて、夜プレゼントが届くのを待つのが普通じゃないの?」
舞「……ちょ、ちょっと前は、同じ事務所の子のライブを見に行ったりしてたじゃない」
愛「涼さんや絵理さん、あたしと違ってスゴ過ぎて、テンション下がっちゃうんだもん」
舞(ダメだこいつ……、早くなんとかしないと……。ゆっきーのネガティブ思考がうつっちゃったんじゃないかしら)
愛「だから、雪歩先輩が家で遊ぶのオッケーな人で良かったよーっ!」ピョン
舞「誰かと遊ぶのは構わないわけ?」
愛「うん! 大好きな雪歩先輩とお休みの日に会えて、とっても嬉しいくらいだもんっ!」
舞「……引きこもり、ってわけじゃないのね」ホッ
愛「引きこもり? そんなんじゃないってー。ただ、どこに行けばいいのかわかんないだけで」
舞「……」
舞(えーっと確か……、今日だって言ってたわよね)
愛「ママ? どーしたの?」
舞「よし、決めたわ。今からあんたちには、あるところに行ってもらいます」
愛「ええーっ!? あるところって……どこ?」
舞「遊園地よ」
―――
――
―
雪歩「……ほぁっ!」
愛「あ、雪歩先輩! 起きましたねっ! おはようございまーっす!」
雪歩「あ、おはようございますぅ……、じゃなくてぇ!」
雪歩「え、え? あ、愛ちゃん? どうしてここに? というかここはどこですかぁ? な、なんで私ここに連れてこられたんですかぁ!?」
愛「ここは、遊園地ですよっ、遊園地!」
雪歩「遊園地……?」
愛「そーですっ! えへへ、ママが珍しくお小遣いいーっぱいくれたから、今日は楽しんじゃいましょうっ!」
雪歩「な、なんで遊園地なんですかぁ?」
愛「えっと……あたしも実はよくわかってないんです! えへへ」
雪歩「そうなんですか……あ、そういえば」ガサゴソ
愛「カバンごそごそして、どーしたんですか?」
雪歩「……あ、あった……。よかったぁ……」
愛「雪歩先輩?」
雪歩「あ、ううん! なんでもないですぅ。ちゃ、ちゃんとカバンも持ってきてくれて、ありがとうございます」
愛「いえいえそれくらいお安いごよーですよ!」
雪歩「……えっと、じゃあ」
愛「はいっ! さっそくアトラクション乗りにいきましょーっ!」
雪歩「最初は、なにがいいかなぁ」
愛「やっぱり、ジェットコースターとか? 定番ですもんねっ!」
雪歩「じぇ、ジェットコースターっ!? む、むむむむムリですそんなの乗ったら死んじゃいますぅ!」
愛「あ、そーいえば雪歩先輩、絶叫系苦手でしたっけ。じゃあ……、お化け屋敷!」
雪歩「ひぃーん! な、なんでジェットコースターの次がお化け屋敷なんですかぁ……」
愛「あ、あれれー? お化け屋敷もダメですか?」
雪歩「きっと私、お化け屋敷なんて入ったら一生出て来れなくなりますよぉ……うぅ」
愛「そんな、おーげさな……」
雪歩「大げさなんかじゃありませぇん! 絶対ゼッタイ、ムリですぅ!」
雪歩「……取り残された私は、お化けの仲間となって、罪のない子どもたちを脅かし続けることになるんですぅ……」
愛「あは! そんなに可愛いお化けなら、あたし見てみたいかもーっ!」
雪歩「私はちっとも見たくありませぇん! もうっ……愛ちゃん、前も一緒に来たから知ってるはずなのにぃ……」
愛「あ、あはは……」
愛(あわわわ……間違っちゃった。これじゃあバッドメモリーだよー!)
愛「それで結局、これですねっ!」
雪歩「これが一番好きですぅ……、えへへ」
愛「メリーゴーラウンドっ! うわあ、雪歩先輩にぴったりのイメージかも」
雪歩「そうですか?」
愛「はいっ! だって雪歩先輩、なんというか、清掃でカレーで……、お嬢様って感じですから!」
雪歩(清掃? お掃除のこと? それにカレーって……?)
雪歩「か、カレーは甘口のほうが好きですぅ!」
愛「あは! あたしと一緒だー! ……あ、雪歩先輩! ほらほら、もうすぐあたしたちの番ですよっ!」
雪歩「あ、本当ですね……えへへ、楽しみかも……」
愛「あ、そーだ!」
雪歩「どうしたんですかぁ?」
愛「さぁ、雪歩先輩! お手を拝借!」スッ
雪歩「え?」
愛「ほらほらー。お嬢様でお姫様の雪歩先輩がいるなら、あたしがナイト様になるしかないじゃないですか」
雪歩「お、お姫様? ナイト?」
愛「そーです! ちょうど馬車に乗れそうですしね。ほら早く早くっ!」
雪歩「……じゃ、じゃあ……は、はは恥ずかしいけど」スッ
ギュッ
愛「えへへ、あたしちびだから、なんだかただ手繋いでるだけみたいですね」
雪歩「ふふ……、愛ちゃんはちっちゃくて、とっても可愛いですよぅ」
愛「そ、そんなこと……」モジモジ
愛「……さ、さあ、早く乗りましょうっ!」タタッ!
雪歩「あ、ま、待ってー」タタ
従業員「あぶないですから走って乗り込まないでくださーい」
ガチャ、バタン
雪歩「ふぅ、やっと座れましたぁー……」
愛「えへへ、係の人に怒られちゃった」
雪歩「そうですね、ふふっ」
愛「……」
雪歩「……?」
愛「あ、そ、そーいえばナイト様といえばあたし、前に涼さんのストーカーをやっつけたこともあるんですよ!」
雪歩「えぇっ!? ストーカー? そ、そんなのあぶないんじゃぁ……」
愛「全然ヘーキですっ! 涼さんに何かあったら大変ですもん」
雪歩「優しいんですね、愛ちゃん」
愛「そりゃあ、仲間ですから! 涼さんのガッコーの前で張り込みして、とうとう見つけたそのアヤシイ人物をですね……」
雪歩「へぇー……そんなことが……」
雪歩(愛ちゃんってちっちゃくてまだ中学生になったばかりなのに、私なんかと違ってすっごいパワフルですぅ。スゴイなぁ)
愛「えへへ、『ありがとう、小さな騎士様』って涼さんに褒められちゃいましたっ!」
愛「……雪歩先輩の手、冷たいですね」
雪歩「え? ……あ、そういえばまだ、手繋ぎっぱなしだったんだ」
愛「だいじょぶですか? も、もしかして風邪とか……!」
雪歩「大丈夫……ですよ。ただ平熱が低いだけだから……、それに風邪を引いてたら、逆に熱くなるだろうし」
愛「それならいーんですけど……」
雪歩「……気遣ってくれて、ありがとね、愛ちゃん」
愛「全然かまいません! あたしが付いていながら、雪歩先輩の具合を悪くさせるわけにはいきませんから!」
雪歩「えへへ……そんな風に言ってくれて、とっても嬉しいですぅ」ニコ
愛「そ、そんなこと……」
愛(雪歩先輩の笑顔って、不思議だなぁ……)
雪歩(……ちょっとずつ、敬語じゃなくして話してるんだけど……気付いてもらえてるかな?)
愛(見てるとなんか、こっちまで嬉しくなっちゃう。だ、ダメダメ、平常心平常心だよー!)
雪歩(今日で……今までよりちょっとだけでも、仲良くなれたらなぁ)
テクテク
愛「楽しかったですね、メリーゴーラウンド!」
雪歩「うん。……愛ちゃん、つまらなくなかった? 景色を見るだけだったし……」
愛「ぜんっぜんそんなことないですよ! 雪歩先輩と一緒なら、それだけであたしは楽しいですから」
雪歩「……そ、そうなの?」
愛「はいっ! さあ、次は何に乗りましょっか?」
雪歩「あ、え、えーっとじゃあ……、コーヒーカップとかはどうかな」
愛「いいですね! よーっし、思いっきりグルグル回すぞーっ!」
雪歩「ひーん! あ、あんまりまわしすぎないでくださいぃ……」
雪歩(……ちょ、ちょっとドキドキしちゃいましたぁ。あんな風に言ってもらえて、嬉しいなぁ……って、あれ?)
携帯『好きだよ♪ 心込めて♪ 好きだよ♪ 力込めて♪』
愛「電話ですかーっ?」
雪歩「そうみたいですぅ。えーっと……あ、春香ちゃんだ」
愛「春香さん?」
雪歩「うん。愛ちゃん、電話、出てもいいですか?」
愛「もちろん! どーぞどーぞ、遠慮しないでください」
雪歩「ごめんね、それじゃあ……」
ピッ
雪歩「もしもし、春香ちゃん? どうしたの? ……え? それって……」チラ
愛「……?」
雪歩「……うん、うん……わかりましたぁ、ちょ、ちょっと待ってて」
愛(どうしたんだろ、雪歩先輩。今あたしのこと、ちらって見たようなー?)
雪歩「愛ちゃん、ごめんなさいです……ちょっとだけ、あっち行って電話してくるね」
愛「え? ……は、はい、わかりました……」
雪歩「……お待たせ、春香ちゃん。うん、うん……それで……」テクテク
愛(え、え、あ、あたしに聞かれちゃマズイ話だったのー!?)
愛「……」チョコン
愛(雪歩先輩が、向こうで春香さんと話してる……)
雪歩「……? ……!」コクコク
愛(どんな話してるんだろー? うぅ、気になるよー!)
愛「だ、ダメダメ! あたしが聞いちゃいけないってことは、大事なお仕事の話かもしれないしっ!」
雪歩「……」ニコニコ
愛「でも……、むむむむ……」
愛(雪歩先輩、あんなに笑顔で……さっきのあたしに見せてくれたのと、またちょっと違って……)
愛「あー、もう!! あたしったらやな奴やな奴やな奴っ!!!」
通行人「!?」ビクッ
ザワ…… ザワ……
愛「あれ? 何人か、こっちを見てるような……」
??「あ、あの! 日高愛ちゃんですよね!?」ズイ
愛「はひ! え、えっと……、あたしのこと? そーですけど……」
ファン「やっぱり! わ、私、ずっと前から愛ちゃんのファンなんです!」
愛「あ、そーなんですか!? わぁ、ありがとうございますっ!」
愛(えへへ……こんなところでファンの人に会えるなんて! 今日はラッキーかも!)
ファン「何回かファンレター書いたり、ステージ映えするようなアクセサリー贈ったりしたんですけど……」※
愛「あ、あれ、あなたがプレゼントしてくれたんだ!」
愛「最初は神棚に飾っとこうかと思ったけど、大事に使わせてもらってるよーっ!」
ファン「キャー! 嬉しい!」
※アイマスDSではファンからアクセサリーやステージ衣装をもらって、アイドルたちは何の疑いもなくそれを身につけます
ファン「今日はひとりでここに?」
愛「あ、えーっと、他の事務所の先輩と一緒に……あそこにいる、雪歩先輩と」
ファン「……?」
愛「あれ? いない……?」
愛(さっきまであそこで電話してたはずだったのに、いつの間にいなくなっちゃったの!?)
愛(まさか……! 涼さんみたいに、ストーカーに連れ去られた、とか!? た、大変だよー!!)
愛「ちょ、ちょっとごめんなさい! あたし、探さなきゃ!」
ファン「は、はい。あの、応援してます! 頑張ってくださいっ!」
愛「ありがとねーっ!」タタタ
愛(雪歩先輩……、どこに……!?)
愛「はぁ、はぁ……雪歩せんぱーい……どこー……?」
愛(この辺りは一通り探したけど、全然見つからないよ……こ、こうなったら)
すぅー……
愛『雪歩せんぱーい!!!!!!!!!!』
通行人A「!!?」
―――…… ィィィイイイイン ……―――
愛『せんぱーい!!! どこですかー!!!!?』
通行人A「あれ? なにか……聞こえるような」
通行人B「み、耳がおかしい……? あれ、立ってられない……」
通行人A「あ、あ、あ……」ブクブク
―――…… ィィィイイイイン ……―――
愛『雪歩せんぱーい!!!!!』
雪歩「あ、愛ちゃん……!」プルプル
愛『あ、雪歩先輩っ! よかった、どこ行ってたんですか、もー』
雪歩「心配かけて、ご、ごめんなさいですぅ……だからちょっと、その声を止めてぇ……!」
愛『え? あ、ああ、ごめんなさいっ」
雪歩「ふぅ……、やっと収まりましたぁ」
愛「雪歩先輩、心配しましたよっ!」
雪歩「ご、ごめんね愛ちゃん。でも、それは普通の人じゃ聞き取れない周波数だから、あんまり使っちゃダメですぅ」
愛「はい……、ごめんなさい」
雪歩「そのおかげですぐ愛ちゃんを見つけられたから、結果オーライですけど……」
雪歩「相手がアイドルのとき、そしてココ一番の決闘(オーディション)のとき以外は、ゼッタイに禁じ手ですよ」
愛「……」シュン
愛(あたしったら、また雪歩先輩に迷惑かけちゃった……)
雪歩「でも、愛ちゃんに会えてよかったですぅ。もう一生会えないのかと思いました」
愛「え? そういえば、見つけられた、ってさっき言ってたけど……」
雪歩「ずっと探してたんですよ。ちょっと目を離したら、愛ちゃん、煙みたいに消えちゃってたから」
愛「ええっ!? 雪歩先輩こそ、急にどっか行っちゃって……、それであたし、いろんなところ探してたんですよっ!」
雪歩「そ、そうだったんですか? それじゃあ、入れ違いになっちゃったのかもしれないですぅ……」
愛「入れ違い……あの、雪歩先輩は、電話してるときにどこに?」
雪歩「え? えーっと……、あの、その……」
愛「?」
雪歩「そ、そうそう! 愛ちゃんがファンの人とお話してるみたいだったから、ちょっとお手洗いに……」
愛「トイレだったんですか! 雪歩先輩も、おしっことかするんですね!」
雪歩「あ、愛ちゃん! 声が大きいよ……そ、それに」
愛「あ、もしかして大きいほう……」
雪歩「違いますぅっ!! もう、アイドルがそんなこと言っちゃダメですよ……アイドルはおトイレなんかしませぇん!」
愛「雪歩先輩、自分でお手洗いに行ったって言ったのに……」
雪歩「そ、それとこれとは……、アイドルは幻想を守らなきゃ、って律子さんが言ってたから」
愛「幻想……ですか?」
雪歩「そうです。アイドルはおしっこもしなければ……、……もしません。そういう生き物なんですぅ」
愛「そーだったんだ……、あたし、アイドルじゃなかったのかも。だって毎日、朝とお昼休みに……」
雪歩「だ、だだだダメですぅ! あわわわわ……と、とにかくっ!」
愛「とにかく?」
雪歩「……コーヒーカップ、行きましょう? 今はまだまだ、ふたりで遊べる時間はいっぱいありますから」
愛「……はいっ!」
愛(あたしたちはそのあと、遊園地のいろんな場所を見てまわりました)
愛(あたしがコーヒーカップで頑張りすぎたせいで頭がぐるぐるになっちゃった雪歩先輩を、介護室で休ませて)
愛(一時間経ってようやく目が覚めた、まだ顔に青味の残った雪歩先輩を連れながら)
愛(自分の行いをいっぱいいっぱい反省していたあたしは、なるべくゆっくりとしたペースで雪歩先輩と歩いていたのでした)
愛(えへへ。そして今は……)
愛「……」ズーン
雪歩「あ、愛ちゃん? 元気出してください……私はもう、大丈夫だから」
愛「雪歩先輩がだいじょぶって言っても、だいじょばなくさせたのはあたしですから……」
雪歩「うぅ……、気分転換に、な、何か飲み物でも買ってきますね! 何がいいですか?」
愛「…………いちご牛乳、お願いします」
愛(実は今は、とってもとってもへこんでいるのです。理由は、コーヒーカップの件をいまだに引きずっているから)
愛(あたし、また雪歩先輩を困らせて……、うう、なんだか泣きたくなってきちゃったよ……)
愛「ちゅーちゅー……」ゴクゴク
雪歩「いちご牛乳、おいしいですか?」
愛「はい! えへへ、あたし、これ大好きですっ!」ニパー
雪歩「……よかったですぅ。愛ちゃん、元気になったみたいで」
愛「はっ! ……あ、あたしったら……、いちご牛乳飲んだだけで、雪歩先輩にしたことを忘れちゃうなんて……!」
雪歩「あ、ちょっと、そんなのもう、気にしてないのに……」
愛「雪歩先輩が気にしてなくても、あたしは忘れないつもりだったんです! なのに……」
愛「あ、あたしなんて……三歩歩いたらモノを忘れる、ニワトリのほうがまだお利口さんなんだぁ……」
雪歩「……あ、愛ちゃん……」
愛「うぇえええん……あたしのばがばがぁ!」グスグス
雪歩「……な、泣かないでぇ……。愛ちゃんが泣いてると、なんだか私まで……」ジワ
愛「う……」
雪歩「うぅ……!」
愛・雪歩「「うわぁあああああん……!」」
ポロポロ……
愛(あたしと雪歩先輩は、ベンチに隣り合って座りながら、泣いちゃいました)
愛(泣き虫のふたりを、いろんな人がヘンな目で見ていたけど……)
愛(そんなこと、もうあまり気にならずに……、ただただ、何が悲しいのかも忘れて、泣いていたのです)
愛(なんだかもう……、いろんなことがだめだめでした)
愛(今日は、久しぶりに雪歩先輩と会えて、とっても嬉しいはずだったのに……)
愛(せっかく、最高の気分で、明日を迎えられると思ってたのに)
愛(……でも、やっぱり、雪歩先輩だったんです)
愛(何がというと、あたしの涙を止めてくれたのが、です)
愛(初めて出会ったときとおんなじように、雪歩先輩は、いつだってあたしのことを助けてくれるんです)
カァ、カァ……
雪歩「……あ、愛ちゃん……」
愛「ばい゛……、なんですが……ぐす」
雪歩「あ、あのね゛……」
愛「……?」
雪歩「……ちょ、ちょっと待って」ゴシゴシ
愛「……」
雪歩「すぅ……ふぅ。もう、大丈夫」
愛(……雪歩先輩、自分で涙を……)
雪歩「愛ちゃん、ステージに行こう?」
愛「ステージ?」
雪歩「そうですぅ。もうそろそろ、始まるはずだから……」
愛「始まる、って、何が……」
雪歩「……」
スッ
雪歩「ほら、私の手を握って?」
愛「手……」
雪歩「愛ちゃんが、自分で立てないなら……、私が連れてってあげるね」
愛「……」
雪歩「きっと、楽しくて、嬉しいことが待ってるから。私、愛ちゃんにその景色を……、見せてあげたいんだ」
愛「雪歩先輩……」
愛(……気が付いたら、雪歩先輩は、あたしに対して敬語じゃなくて……)
愛(落ち込みがちな、いつもの雪歩先輩と違って……、ステージの上に立っているときみたいな、とっても強い目をしていました)
―――
――
―
ザワザワ…… ザワザワ……
愛「な、なにこれ!? こんなにいっぱいの人が……」
雪歩「えへへ、遊園地にいた人みーんな、このステージに来てるんだよ」
愛「すごい……、立ってる人も、こんなにたくさん。あたしがライブしても、こんなにたくさん集まらないかも」
雪歩「……そんなことないよ、愛ちゃん。だって、ここにいる人たちは、みんな……のために」
愛「え? なにか言いましたか、雪歩先輩?」
雪歩「……ううん、なんでもないですぅ!」
愛「? ……あれ、なんか、こっちに向かってくる人が……」
??「おぉ、いたいた! ようやく来たな、雪歩!」
雪歩「……! プロデューサー!」
P「遅かったな。もうみんな、準備出来てるぞ」
雪歩「ご、ごめんなさいですぅ。ちょっとトラぶっちゃって……」
P「……何があったかわからないが、ちゃんと来てくれたから問題ないな」
P「ほら、これが今日のセットリストだ」スッ
雪歩「はい……」ジー
P「……いけるな?」
雪歩「ばっちりですぅ! それじゃ、私は……」
愛「ゆ、雪歩先輩! ちょっと、何がなんやら、なにもわかんないんですけどーっ!」
雪歩「愛ちゃん……それはね、今日は……」
P「っと、雪歩、話してる暇はないぞ。この子には俺が話しておくから、メイクしてこい」
雪歩「……わかりました!」
愛(メイク? セットリスト? それって……)
タタタ……クルッ
雪歩「愛ちゃん……、最後に、これだけは、言っておくねっ!」
愛「は、はい!」
雪歩「あのとき愛ちゃんが私に言ってくれたこと、お返ししますぅ!」
愛「あのとき……?」
雪歩「……愛ちゃん! 今日は、めいっぱい! めいっぱい楽しもうねっ!」
タッタッタ……
愛「……」ポカーン
P「……ごほん! えー、君が、876プロの日高愛ちゃん、だね?」
愛「あ、はい。えっと、あなたは……」
P「俺は、765プロダクションのプロデューサーだよ。今日は来てくれてありがとう」
愛「プロデューサーさん? 雪歩先輩の?」
P「雪歩の、ってだけじゃないが……まあ、俺のことはどうでもいいんだよ」
P「今日は、君のお母さんのおかげで、こんなに素晴らしい舞台を用意することができた。ありがとうな」
愛「舞台って、ことは……今日はやっぱりここで……」
P「ああ、ライブをやる。でも……、ただのライブじゃないぞ」
愛「それって……
ピンポンパンポーン
小鳥『えー、マイクテスマイクテス……、本日はお日柄もよく……』
律子『ちょっと小鳥さん! そんなのどーでもいいですから、始めてください!』
小鳥『あら、そう? ……それじゃあ、春香ちゃん! ちゃちゃっとやっちゃってー♪』
春香『はーいっ!』
愛「春香さんっ!?」
P(音無さん、利益度外視だからって適当にやってるな……)
愛「あ、あの! これって、なんなんですかーっ!?」
P「ん、ああ……もう説明してる暇もないな。まぁ、あとでいろんな人から説明聞くと思うから、とりあえず今は楽しんでくれ」
愛「そんなこと言ってm
春香『会場のみなさーん!! こーんばーんわー!!!』
コンバンワー!!!
春香『今日は急だったのに、集まってくれてありがとねーっ!!!』
真『お待たせしちゃってごめーん! さあ、いよいよ始めるよーっ!』
春香・真『『765プロダクション……プラス!』』
涼・絵理『『876プロダクションオールスターズの、ゲリラライブっ!!』』
真『題して……!』
たったったった……
雪歩『ま、間に合いましたぁ! ……いぇええええーい!!』
キーン! イエェエエイ!!
真『ゆ、雪歩! それまだ違うって! ライブのタイトルコールして!』
雪歩『あ、あわわわ……ご、ごめんなさいですぅ!』
P「ははは……」
愛「雪歩先輩っ!?」
雪歩『え、えっと! 改めて、題しまして……、すぅー……』
『THE 愛!』
雪歩『……愛ちゃん! お誕生日、おめでとう!!!』
愛「……!」
真『へへーん! 今日は日曜日だから、本当の誕生日は明日。だからちょっとフライングだけど……ま、いいよねっ!』
春香『急だったからねー。舞さんが、なんでもかんでもどんどん進めていっちゃうんだもん』
絵理『本当は……わたしのライブ?』
涼『え、絵理ちゃん。それにみなさんも……、身内にしか通じないこと、言っちゃダメですよ』
真『涼、そんなこと言ったら、愛の誕生日ライブってことですでに身内ネタじゃない?』
春香『わ! 真、するどいね! あはは!』
涼『うぅ……、胃が痛くなってきた……』
雪歩『だ、大丈夫ですかぁ……?』
涼『はは……大丈夫です。それより雪歩さん、一曲目一曲目』
雪歩『はぅっ! そそそそうでした! えーっと確か最初の曲は……』
P(あいつら好き勝手やりすぎじゃないですかね)ビキビキ
愛「みなさん……! これ、あたしのために……!?」
雪歩『改めて……』
雪歩『愛ちゃん、お誕生日おめでとう』
パチパチパチ……!
ワーワー! オメデトーアイチャーン!
愛「雪歩先輩……、それに、会場にいるみんなも……」
P「みんな、君の誕生日を祝うために集まってくれたんだよ」
愛「でも、どうやって? これだけの人集めるなんて……あたし、全然気付かなかったし」
P「君の様子は逐一雪歩から連絡受けてたからな。765プロのスタッフ総出で、その隙を縫ったのさ」
P「……本当は雪歩とふたりで遊ぶはずだったんだろ? 無理言って、巻き込んだことはすまなかった」
愛「い、いえいえ! そんなこと……とっても、嬉しいでs
雪歩『いぇえええええい!!!』キーン
愛「!?」
雪歩『こ、今度はちゃんと出来ましたぁ! ……この会場のどこかにいる、あなたのために、歌いますぅ!』
雪歩『一曲目は……、“ALRIGHT*”!!』
~♪
READY SET GO!!
行きたいトコ 行ってみようよ
歩いたり 走ったり 休んだりして
READY BOY GIRL?
やりたいコトやってみようよ
目指して 追いかけて 自分信じて……
愛「雪歩先輩……、かっこいい……! やっぱり雪歩先輩、あたしの……!」
P(……雪歩は、良い後輩を持ったみたいだな……)
~♪
ALRIGHT*
今日が笑えたら
ALRIGHT*
明日はきっと幸せ
大丈夫!!
どこまでだって
さあ 出発オーライ
雪歩『どこまでだって さあ出発 オーライ♪』
パチパチパチ……
……~♪
ウォオオオ……!
愛「……! この曲って……」
~♪
今 目指してく 私だけのストーリー
BRAND NEW TOUCH 始めよう
SAY “HELLO!!”
絵理『涼さん……いい?』
涼『もっちろん! い、っせーの!』
涼・絵理『……ハッピーバースディ!! 愛ちゃん!!!』
愛「涼さん……、絵理さん……! うぅ、ありがとう……!」ジワァ
舞「愛、楽しんでるー?」
愛「もっちろん! こんなライブ初めて……って、ママっ!?」
舞「そう、私よ」
P「……お疲れ様です、舞さん」
舞「ほんとよもー。まなみなんて、私がやるはずだった雑務をちょっとやっただけで倒れちゃったんだから」
愛「ちょ、ちょっと! ママのおかげでライブできた、とか聞いたけど、どういうことっ!?」
舞「ああ、それはね……コレよ」スッ
愛「え? 人差し指と、親指で○を作って……って、それ」
舞「ハッハー! お金よ! 今回のライブ、スポンサーとプロデューサーはぜーんぶ私なわけ!」
愛「えぇえええ!!?」
舞「ビックリしたでしょう! どうだ、参ったか! あははは!!」
P(こ、これがあの伝説のアイドルなのか……)
舞「……涼さんや絵理さん、あたしと違ってスゴ過ぎて、テンション下がっちゃうんだもん!」キャピ
愛「…………なにそれ」
舞「昼間、あんたが言ってた台詞のマネだけど。きゃっぴぴぴ~ん!」
愛「やめてよっ! そんなの全っ然、似てないもん! オバサンが無理すんなーっ!」
舞「ああ?」ギロ
愛「ひぅっ! ……ま、負けないもん! ぐるるるる……」
舞「ったく、私はまだおねえさん、でしょうが。……そんなことより、愛?」
愛「……なーに?」
舞「アレを見ても、まだテンション下がる、って言えるわけ?」
愛「……」
~♪
今 咲き誇る芽生えた蕾
根を張って 胸張って
ねえいくつも実らせよう
涼『抱きしめる 私と言うヒストリ~♪』
絵理『BRAND NEW TOUCH 始めよう♪』
涼・絵理『『SAY “HELLO!!”』』
~♪
愛「……い、」
愛・涼・絵理「『『いっせーのっ!』』」
舞「……」
愛「……そんなわけ、ないじゃん……」
舞「何が、そんなわけないの?」
愛「あんなに輝いてる、涼さんや絵理さんを見て、テンションが下がるわけないもん! ……あ、あたしも……!」
愛「……あたしも……、あの場所へ……!」
愛「きらめく舞台(ステージ)に、私も立ちたい!」
P「その言葉が聞きたかった」
愛「え?」
舞「さあ、行ってらっしゃいっ!」
トンッ
愛「え、え?」
バンッ! ピカー……
愛「ま、眩しい……っ!」
涼『あ! 愛ちゃん、やっと来るみたいだよ!』
絵理『ふふ、ちょっと……遅刻?』
涼『ギリギリセーフ、じゃない? さあ愛ちゃん、早くっ!』
愛「……! は、はいっ! 涼さん、絵理さん!」
タッタッタッタ……
愛(スポットライトに照らされながら、あたしは走りました)
愛(涼さんや、絵理さん……春香さんに真さん、そして……)
愛(雪歩先輩の待つ、ステージへ……!)
小鳥「さ、こっちよ!」ガシッ
愛「え、え、ちょ! あなた誰ですかっ!? せっかく今良い感じで走ってたのにーっ!」
小鳥「私服のまんまステージに上がるわけにはいかないでしょ?」
律子「さー、行くわよ! 40秒で着替えさせてあげるからねっ!」
愛「あー…… れー……」
~♪
ポイッ トタタタ……
愛「はぁ、はぁ……お、お待たせしました」
涼「大丈夫?」
絵理「息……上がってる」
愛「ぜ、ぜんぜんヘッチャラですっ! それより、さっそく……」
涼「……そうだね! もうずっと間奏やってもらってるし」
絵理「じゃあ、改めて……!」
愛・涼・絵理『『『……いっせーのっ!!!』』』
~♪
“HELLO!!”
いってみよう みんな一緒にSTEP
転んでも 挫いても
OK信じれば大丈夫!!
どこまでも 続いてゆくストーリー
BRAND NEW TOUCH 始めよう
SAY “HELLO!!”
~♪
涼『BRAND NEW達♪』
絵理『始まりは そう♪』
愛『“HELLO!!”』
愛(そのあとも、何時間もライブは続き……)
愛(最後のアンコールに、みなさんで“THE 愛”を歌ってもらって……)
愛(あたしの、一生忘れられそうにない誕生日ライブは、終わりました)
―――
――
―
絵理「本当は今日、わたしがあそこでライブをするはずだったの」
愛「え!? そ、そーだったんですか?」
絵理「うん。でも、今日急に舞さんから事務所に連絡があって。それであれよあれよという間に……予定変更?」
涼「あはは、舞さんのバイタリティはすごいよね。僕も今日、実はさっきまで違うところで仕事をしてたんだ」
愛「そんな……じゃあおふたりは、今日のことを……」
涼「うん、知らなかった! というか、舞さんがこれ思いついたのが、今日だったらしいしね」
愛(あ、そういえばそんなこと言ってたかも……)
絵理「……愛ちゃん、お誕生日、おめでとう。これ……プレゼントだよ」スッ
涼「僕からは、これ。愛ちゃん、これからもよろしくね!」スッ
愛「涼さん、絵理さん……、うぅ……、ありがどうございまず……!」グスッ
愛「あれ、でも……知らなかったなら、なんでプレゼントを持ってこれたんですか?」
涼「ああ、それは……あの人が、わざわざここまで届けてくれて」
絵理「……」チラ
まなみ「」チーン
絵理「……完全燃焼?」
愛「な、なるほど……」
涼「まなみさんも、舞さんや765プロのプロデューサーさんにいろいろ頼まれたみたいで……すっごい頑張ってくれたみたいだね」
愛「ありがとうございます、まなみさん……なんまいだぶなんまいだぶ」パンッ
涼「あ、愛ちゃん! まだ死んでないよ!」
絵理「……たぶん?」
石川「……」
高木「どうしたのかね?」
石川「いえ……あの子も強くなったんだな、って思いまして」
高木「強く……、とは?」
石川「……まなみがうちを辞めたとき、愛は……、しばらく立ち直れてなかったんです」
石川「何日も泣きつづけて、仕事も休んで……。きっと、とても強くまなみに依存していたんでしょうね」
高木「ふむ……そんなことが」
石川「ええ。でも……貴方のところに所属する、あるアイドルが……愛を救ってくれたみたいなんです」
高木「私も、そのことは彼女から少しだけ聞いているよ。そのアイドルの名前は……」
石川「……ふふ、噂をすれば……」
涼「……あ」チラ
絵理「もうそろそろ、わたしたちは……退散しなきゃいけないみたいだね」
涼「そうだね。あとは、あの人に任せよっか」
愛「え? どうしたんですか、涼さん、絵理さん」
涼「それじゃあ愛ちゃん! また明日、月曜日に事務所でね!」
絵理「ばいばい」トコトコ
愛「え、えー!? そんな急に……」
涼「あ、最後に愛ちゃん! うしろを見て!」
愛「うしろ? えーっと……」
クルリ
雪歩「……愛ちゃん」
愛「雪歩先輩……!」
―――
――
―
ザァ…… サァ……
愛「……まっくらですね」
雪歩「うう……、ちょ、ちょっと怖いですぅ……。お化けが出るかも……」
愛「だいじょぶです! お化けなんか出たって、あたしがランクDちょっぷをお見舞いして追い払ってみせますっ!」
雪歩「ありがとうございます、愛ちゃん……でも、もうランクDじゃないですよね?」
愛「あ、そういえばそーでしたっ! えへへ……」
雪歩「……お化けに、ちょっぷは効くのかなぁ」
愛「どうなんでしょう……ポ○モンみたいに、格闘タイプの技は効かないかも」
愛(なーんて、他愛のない話をしながら、あたしと雪歩先輩は真っ暗な道を歩いていました)
愛(雪歩先輩が、あたしをお家まで送ってくれるって言ってくれたんです! もうカンゲキで!)
愛(……でも……)
愛(なんとなく……、カクシンをつかない、適当な話題しか、あたしは広げられないでいたのでした……)
雪歩「……」
愛「……」ムズムズ
愛(気まずいよーーーーー!!)
雪歩「……ありがとう、ありがとう……愛をありがとう♪」
愛「え? な、なにかお礼言われるようなことしましたかーっ?」
雪歩「ううん、これは“THE 愛”ですぅ。みんなで、最後に歌った曲……」
愛「……」カァァ
愛(恥ずかしいよーーーー!!)
愛「あたしったらまた勝手に勘違いしちゃって……もう、バカバカ」ブツブツ
雪歩「レッツゴー愛がある世界♪ レッツゴー愛らしい世界♪ ……ふふ、ふふふ♪」
愛「……」
愛(こんなときになっても、あたしは相変わらずバカだけど……でも)
愛(雪歩先輩が、笑ってくれるなら……もうなんでも、いいかな)
かち、かち……
雪歩「~♪」
愛「……」
愛(……雪歩先輩、さっきから歌ってばっかで、あたしのこと見えてないのかなーっ?)
雪歩「……~♪」チラ
愛(そうだよね、さっきのライブ、すっごい楽しかったもん)
愛(あたしの誕生日かどうかは関係なく、雪歩先輩はそのヨインに浸ってるんだ……うぅ)
愛「……」ジワァ
雪歩「……全員集合 手と手繋いで♪」
愛(……足と足揃えて 初めの一歩……)
愛(頭の中で、一緒に歌うことしか、あたしには出来ないよ……う、うぅ)
かち!
ボーン ボーン……
愛「え?」
愛(日付が変わって、あそこに立ってる時計が鳴ってるんだ)
愛「……ってことは、今この瞬間にあたしは……」
雪歩「……~♪」
~♪
おめでとう おめでとう
愛が生まれる
おめでとう おめでとう
HAPPY BIRTHDAY
愛「!」
雪歩「……愛ちゃん、お誕生日おめでとう」
愛「ゆ、雪歩先輩!」
雪歩「えへへ……タイミングぴったりですぅ!」
愛「た、タイミングって……」
雪歩「今日、この日に……、世界でいちばん最初に、愛ちゃんにおめでとう、って言うことができましたぁ」
愛「……」
雪歩「あ、あれ……愛ちゃん?」
愛「…………」
雪歩「ど、どうしよう、愛ちゃんの顔がひょっとこみたいですぅ! こ、これはひょっとして……」
愛「………………」
雪歩「ひぃーん! す、すすすすべっちゃいましたぁ……! あわわわわ……!」
愛「…………ぷ」
雪歩「うぅ……、せっかく、良いアイディアだと思って……、や、やっぱりこんな私なんて……」
雪歩「徹夜で考えたネタも受け入れてもらえない、こんなセンスのかけらもない私なんて……!」
愛「……ぷぷ。ゆ、雪歩先輩……べ、べつにすべったわけじゃ……」
雪歩「穴掘って、そのへんに埋まってきますぅーー!!!!!」タタタ
愛「ちょ、ちょっと、雪歩先輩っ!? 帰ってきてくださーいっ!!」
タッタッタッタ……
愛「ま、待ってください! このーっ!」ガシッ
雪歩「はぅっ!」
愛「……や、やっと捕まえた……ぜぇ、ぜぇ」
雪歩「捕獲されちゃいましたぁ……うぅ」
愛「……」
雪歩「愛ちゃん……、その、ごめんなさいですぅ。さっきのあんまり、良くなかったですか? そうですよね……」
愛「……そんなこと、ないです。とっても……とっても、嬉しかったもん」
雪歩「ほ、ほんとう?」
愛「ほんともほんとですっ! あんな風に、おめでとうって言われたのなんて……きっと初めてです」
ぎゅー
愛「雪歩先輩……、あたし、雪歩先輩のこと、だいすきです」
雪歩「!?」
愛「雪歩先輩は、頼りになるし、かっこいいし……あたしの憧れですっ! それで……」
雪歩「あ、あ、うん……そういう意味……、そ、そうですよね」
愛「?」
雪歩「なんでもないですぅ……えっと、それで……」
愛「それで……、あれ? な、なんて言おうとしてたんだっけ……」
雪歩「……?」
愛(忘れちゃったよーーーー!!! あたしのバカバカバカ!!!)プルプル
雪歩「あ、愛ちゃん?」
愛「うぅ……もっといろんな言葉をつかって、ありがとうって言おうとしたのにー! うわぁああーん!!!」
雪歩「……えへへ」
愛「うわああああああん!!! やっぱりあたし、バカなんだーー!!!」
雪歩「愛ちゃん……、泣かないで」
ぎゅーっ!
愛「んぎゅっ」
雪歩「……その気持ちだけで、十分だよ。言葉なんか、いらない」
愛「ゆ、雪歩先輩……」
ぎゅー……
雪歩「……私も、愛ちゃんのこと、だいすきだよ」
愛(雪歩先輩に優しく包まれながら、あたしは、こんなことを思っていました)
愛(……もう、泣き虫と弱気と……、お別れしちゃったはずなのに)
愛(雪歩先輩に、抱きしめられて、とっても嬉しいはずなのに……)
愛「うぇええ……! わかんない、わかんないよー……!」
雪歩「……なにがわかんないの?」
愛「おかしいんです……涙が、嬉しいのに、止まらないよ……!」
ポロポロ……
愛「雪歩先輩……、だいすきです……!」
雪歩「私もだよ。……何度も、何度だって、言えるよ」
雪歩「……愛ちゃん、だいすき」
雪歩「愛ちゃんと知り合ってから、これが最初の誕生日だったから……こうやって、一緒に過ごせたこと、とって嬉しいですぅ」
愛「あ、あだじもぉおおお……嬉しいでずぅ」
雪歩「こんな私と仲良くなってくれて、ありがとう。……一緒に頑張ったこと、一生忘れない……」
愛「ゆぎほぜんばーい゛ぃいい……!」ボロボロ
雪歩「だいすき……、愛ちゃん……!」
愛(こうして、涙でぼろぼろになりながら……)
愛(あたしの、十四回目の誕生日は、最高の思い出と一緒に、始まったのでした)
―――
――
―
愛「ごく、ごく……ぷはぁ! ってことがあってね! もーすっごいでしょ!?」
舞「あー……うん、良かったわねぇ」
愛「もう最高の誕生日って感じ! 今までにないし、これから先もないんだからーっ!」
舞「さっきから何度目よ、それ……で、次はこう言うんでしょ?」
愛・舞「「ママ、お茶淹れてーっ!」」
愛「はっ!? むむむ……ママ、もしかしてエスパー!?」
舞「フフフ、愛のことならなんでもわかるわよ? でももう、お茶はやめときなさい」
愛「えー、なんでー? せっかく雪歩先輩にプレゼントしてもらったのに……」
舞「いま何時だと思ってんのよ! 愛、あんた明日起きれなくなるわよっ!」
愛「ぶー……」ギンギン
―――
――
―
舞「ちゃんと休むのよ? 誕生日だからって、仕事は休めないんだから。むしろ忙しくなるのがアイドルよ」
愛「はーい」
舞「……それじゃ、おやすみ……」
ガチャ……バタン
愛「……」
愛(……えへへ。あんまり、眠れないかも)
愛(お茶のかふぇいんのせいとか、そういうんじゃなくて……)
愛(嬉しいことが、いっぱいで……ドキドキ、わくわくして、眠れない)
愛「明日は、どんな良いことがあるかなぁ……えへへ」
愛(……それでも、寝なきゃだよね。だって、私はアイドル、なんだから……)
愛「雪歩先輩……あたし、もっともっと頑張って、それで……いつか、きっと……」
愛「ゆきこせんぱい……みたい……に……」
ガチャリ
舞「……」ソー
愛「……zzz……」
舞「よしよし、ちゃんと寝た……、わね」
ガチャ……バタン
ソロリソロリ
舞「……雪歩先輩、雪歩先輩、か……」
舞(なんだかちょっと……、妬けちゃうかも)
舞「……」ナデナデ
愛「うーん……むにゃむにゃ」
舞「ふふっ、可愛い寝顔しちゃって。さすが、私の娘ね」
舞(……この子がアイドルになったら、きっと……私を目標にする、って思ってたんだけど……)
舞(いまはとっても良い時代ね、愛。私のときとは違って……目標も、ライバルも、たくさんいる)
舞「……あーあ。なんか、生まれる時代、間違ったかなぁ」
舞「つまんないつまんない、つまんないのー。愛も、近頃忙しいしー」プニプニ
愛「うぅーん……うるしゃい……zzz」
舞「おっと……」
愛「あたし、アイドルに……ママ……」
舞「……」
舞「そうだわ」ティン
舞「そうね、これだわ……。もう一度まなみに頼んで、それで……フフフ」
愛「……zzz……」
舞「ふふ、ふふふ♪ なんだか楽しくなってきちゃった! 愛、覚悟しときなさいよね!」
舞「今度は、ほんとのほんとに、本気でステージに立ってあげる」
舞「前みたいに、ちょこちょこ手を抜いたりしないわよ……ふふふ」
舞「それが……私からの、本当の誕生日プレゼント! まずはそうね……前みたいに、ゆっきーから倒す?」
舞「……ゆっきーなんかには、負けないんだから」
舞「最高の誕生日は、この子が生まれた、あの瞬間なのよ! それを教えてあげるわ……ふふふ!」
舞「……愛、お誕生日、おめでとう。明日プレゼントが届くのを、楽しみにしててね♪」
おわり
1: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 03:12:00.08 ID:VLNaZV+j0
愛「そういえば雪歩先輩って、あたしにずっと敬語つかってますよね」
雪歩「え? そ、そうですかぁ?」
愛「そうですよ! 雪歩先輩のほうが年上なのに、そんなのおかしいって思います」
雪歩「うう、そんなにヘンでしょうか……」
愛「ホラ、また! ねえねえ雪歩先輩、一回、あたしのこと呼び捨てで呼んでみてください!」
雪歩「ええ!?」
3: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 03:15:29.77 ID:VLNaZV+j0
愛「ほらほら~」
雪歩「わ、わわわかりましたぁ……今呼びますから、ま、待っててくださいね!」
愛「はいっ!」
雪歩「あ……、あ、あ……」
愛「……」ワクテカ
雪歩「愛!」
愛「! やったぁ!」ピョン
雪歩「……ちゃん」
愛「……えぇー……」
4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 03:20:54.42 ID:VLNaZV+j0
雪歩「うぅ、や、やっぱりもう癖になっちゃってるから、直すのは難しいですぅ」
愛「そんなぁ……」
雪歩「それに、ちゃん付けじゃなくて、呼び捨てで呼ぶのは、別に敬語とは関係ないんじゃあ……」
愛「え? ……それもそーかも! 涼さんや絵理さんも、あたしのこと呼び捨てしないもんね」
愛「さっすが雪歩先輩、頭イイっ!」
雪歩「えへへ……それほどでもないですよぉ」
5: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 03:31:04.95 ID:VLNaZV+j0
愛「でもでも、それとこれとも関係ないです! 雪歩先輩は先輩なんだから、あたしに敬語つかっちゃダメですっ!」
雪歩「そんなこと言っても……わ、私、後輩とかあんまり出来たことないから」
愛「あれ、でも765プロには雪歩先輩より年下の人、けっこーいますよね?」
雪歩「年下の人? えーっと……」
愛「亜美ちゃんとか伊織さん、やよいさん、あとホシイミ……、美希センパイとかも」
雪歩「愛ちゃん、みんなのこと知ってるんですかぁ?」
雪歩「……あ、そ、そりゃそうですよね、私なんかと違って、みんな大人気だから……私なんかと違って……えへへ」
愛「わー! な、なんでいきなり落ち込んでるんですかーっ!?」
7: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 03:45:06.19 ID:VLNaZV+j0
愛「美希センパイ以外のみなさんとは、レッスンスタジオで知り合って、たまにお稽古付けてもらったりしてるんです」
雪歩「そうだったんですかぁ」
愛「あれ、なんとなく見たことあるなぁって思ってたら、ちょー有名アイドルだったんですもん! あたしビックリしちゃって」
雪歩(ちょー有名なのに一目じゃわからなかったんだ)
愛「みんなあんなにスゴイ人たちなのに、事務所が違うあたしにもスゴイ優しくしてくれて」
愛「あたしの知らないことスゴイ色々教えてくれて、本当スゴイって思います」
雪歩「たしかに、みんなはスゴイですぅ」
愛「そーなんです、スゴイんですっ! 765プロのみなさんは、あたしの目標ですっ!」
雪歩「……私なんかじゃ、ちゃんと他の人に教えられるか不安……、むしろ教えてもらっちゃう方かも……えへ、えへへ」
愛「わー! ま、またなんで急に落ち込んでるんですかーっ!?」
9: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 03:58:51.53 ID:VLNaZV+j0
愛「あれ? なんの話してたんだっけ……えーっと」
雪歩「亜美ちゃんとか伊織ちゃんが、私より年下って話ですかぁ?」
愛「そーです! 後輩できたことないって言ってたけど、年下なんだから、雪歩先輩より後輩ってことじゃないんですか?」
雪歩「えっと……、そういうわけじゃないんです。今のメンバーはみんな、ほとんど一緒の時期に入ってきた人ばかりだから」
愛「あれ、そーだったんですか?」
雪歩「うん。だから、センパイコウハイって言うより……、仲間って言ったほうがいいかも」
愛「仲間……」
雪歩「もちろん、年上のあずささんとか律子さん、四条さんには私も敬語をつかってますけど……」
雪歩「でもきっと、早く入ったからエライとか、年上だからエライってことはありません。そんなこと思ってたら怒られちゃいます」
愛(あたしにとっての、涼さんや絵理さんみたいなもんかな?)
雪歩(あれ? でも私……そういえば、年下の子たちに敬語つかわれたことないかも……。春香ちゃんにも……)
11: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 04:08:04.90 ID:VLNaZV+j0
雪歩「そ、そんなことはどうでもいいんですぅ!!」
愛「!?」
雪歩「年上とか年下とか関係ないもん……だって、わ、私たちみんな……仲間だもんげ……うぅ」
愛「ゆ、雪歩先輩!? どーしたんですかっ!?」
雪歩「はっ! ……ご、ごめんね愛ちゃん、ちょっと衝撃の事実に気が付いちゃって」
愛「しょーげきの事実……」
雪歩「うん……私って年上の貫禄がないんだなぁって。きっとみんな、私のこと事務所の観葉植物くらいにしか思ってないんです」
愛「そ、そんなことありませんって!」
雪歩「うぅ……こ、こんな私なんて……穴掘って……収穫されるまでそのへんに埋まってますぅ!」
愛「ちょ、ちょっと雪歩先輩! ここ、あたしの部屋! 穴開いたらママに怒られちゃうよーっ!」
15: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 04:19:34.29 ID:VLNaZV+j0
ガチャ
舞「うるっさーいっ!!!!!!!」
愛・雪歩「!?」キーン
舞「さっきから何ドタバタやってんのよ! 愛、あんたの声はただでさえ大きいんだから、ちょっとボリューム抑えなさいっ!」
愛「は、はい……ごめんなさい、ママ……」キーン
舞「ったく……あら、ゆっきー? どうしたの?」
雪歩「」
愛「雪歩先輩? ……し、死んでる!?」
雪歩「」
舞「なにバカなこと言ってんのよ。えーっと……うん、ただ失神してるだけね」
愛「あ、気絶してるだけかー、よかった……。それなら大したことないよね」
舞「よくあること」
愛「よくあることだもんね」
16: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 04:31:06.44 ID:VLNaZV+j0
雪歩「」
舞「ま、いずれ気が付くでしょ。この子のことは置いといて……愛?」
愛「なーに?」
舞「休みの日にゆっきーが遊びに来るのは別に構わないけど、あんたたちどっか行かないわけ? ずっと部屋にこもっちゃって」
愛「うーん……、でもお仕事がない日曜日は、いつも家にいるから……どこに遊びに行けばいいのかわかんないよ」
舞「……」
愛「部屋でじっとしてテンション回復させて、夜プレゼントが届くのを待つのが普通じゃないの?」
舞「……ちょ、ちょっと前は、同じ事務所の子のライブを見に行ったりしてたじゃない」
愛「涼さんや絵理さん、あたしと違ってスゴ過ぎて、テンション下がっちゃうんだもん」
舞(ダメだこいつ……、早くなんとかしないと……。ゆっきーのネガティブ思考がうつっちゃったんじゃないかしら)
17: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 04:42:36.47 ID:VLNaZV+j0
愛「だから、雪歩先輩が家で遊ぶのオッケーな人で良かったよーっ!」ピョン
舞「誰かと遊ぶのは構わないわけ?」
愛「うん! 大好きな雪歩先輩とお休みの日に会えて、とっても嬉しいくらいだもんっ!」
舞「……引きこもり、ってわけじゃないのね」ホッ
愛「引きこもり? そんなんじゃないってー。ただ、どこに行けばいいのかわかんないだけで」
舞「……」
舞(えーっと確か……、今日だって言ってたわよね)
愛「ママ? どーしたの?」
舞「よし、決めたわ。今からあんたちには、あるところに行ってもらいます」
愛「ええーっ!? あるところって……どこ?」
舞「遊園地よ」
18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 04:48:10.11 ID:VLNaZV+j0
―――
――
―
雪歩「……ほぁっ!」
愛「あ、雪歩先輩! 起きましたねっ! おはようございまーっす!」
雪歩「あ、おはようございますぅ……、じゃなくてぇ!」
雪歩「え、え? あ、愛ちゃん? どうしてここに? というかここはどこですかぁ? な、なんで私ここに連れてこられたんですかぁ!?」
愛「ここは、遊園地ですよっ、遊園地!」
雪歩「遊園地……?」
愛「そーですっ! えへへ、ママが珍しくお小遣いいーっぱいくれたから、今日は楽しんじゃいましょうっ!」
20: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 05:28:05.30 ID:VLNaZV+j0
雪歩「な、なんで遊園地なんですかぁ?」
愛「えっと……あたしも実はよくわかってないんです! えへへ」
雪歩「そうなんですか……あ、そういえば」ガサゴソ
愛「カバンごそごそして、どーしたんですか?」
雪歩「……あ、あった……。よかったぁ……」
愛「雪歩先輩?」
雪歩「あ、ううん! なんでもないですぅ。ちゃ、ちゃんとカバンも持ってきてくれて、ありがとうございます」
愛「いえいえそれくらいお安いごよーですよ!」
雪歩「……えっと、じゃあ」
愛「はいっ! さっそくアトラクション乗りにいきましょーっ!」
21: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 05:42:45.17 ID:VLNaZV+j0
雪歩「最初は、なにがいいかなぁ」
愛「やっぱり、ジェットコースターとか? 定番ですもんねっ!」
雪歩「じぇ、ジェットコースターっ!? む、むむむむムリですそんなの乗ったら死んじゃいますぅ!」
愛「あ、そーいえば雪歩先輩、絶叫系苦手でしたっけ。じゃあ……、お化け屋敷!」
雪歩「ひぃーん! な、なんでジェットコースターの次がお化け屋敷なんですかぁ……」
愛「あ、あれれー? お化け屋敷もダメですか?」
雪歩「きっと私、お化け屋敷なんて入ったら一生出て来れなくなりますよぉ……うぅ」
愛「そんな、おーげさな……」
雪歩「大げさなんかじゃありませぇん! 絶対ゼッタイ、ムリですぅ!」
雪歩「……取り残された私は、お化けの仲間となって、罪のない子どもたちを脅かし続けることになるんですぅ……」
愛「あは! そんなに可愛いお化けなら、あたし見てみたいかもーっ!」
雪歩「私はちっとも見たくありませぇん! もうっ……愛ちゃん、前も一緒に来たから知ってるはずなのにぃ……」
愛「あ、あはは……」
愛(あわわわ……間違っちゃった。これじゃあバッドメモリーだよー!)
22: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 05:52:09.31 ID:VLNaZV+j0
愛「それで結局、これですねっ!」
雪歩「これが一番好きですぅ……、えへへ」
愛「メリーゴーラウンドっ! うわあ、雪歩先輩にぴったりのイメージかも」
雪歩「そうですか?」
愛「はいっ! だって雪歩先輩、なんというか、清掃でカレーで……、お嬢様って感じですから!」
雪歩(清掃? お掃除のこと? それにカレーって……?)
雪歩「か、カレーは甘口のほうが好きですぅ!」
愛「あは! あたしと一緒だー! ……あ、雪歩先輩! ほらほら、もうすぐあたしたちの番ですよっ!」
雪歩「あ、本当ですね……えへへ、楽しみかも……」
23: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 06:01:53.72 ID:VLNaZV+j0
愛「あ、そーだ!」
雪歩「どうしたんですかぁ?」
愛「さぁ、雪歩先輩! お手を拝借!」スッ
雪歩「え?」
愛「ほらほらー。お嬢様でお姫様の雪歩先輩がいるなら、あたしがナイト様になるしかないじゃないですか」
雪歩「お、お姫様? ナイト?」
愛「そーです! ちょうど馬車に乗れそうですしね。ほら早く早くっ!」
雪歩「……じゃ、じゃあ……は、はは恥ずかしいけど」スッ
ギュッ
愛「えへへ、あたしちびだから、なんだかただ手繋いでるだけみたいですね」
雪歩「ふふ……、愛ちゃんはちっちゃくて、とっても可愛いですよぅ」
愛「そ、そんなこと……」モジモジ
愛「……さ、さあ、早く乗りましょうっ!」タタッ!
雪歩「あ、ま、待ってー」タタ
従業員「あぶないですから走って乗り込まないでくださーい」
24: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 06:10:05.56 ID:VLNaZV+j0
ガチャ、バタン
雪歩「ふぅ、やっと座れましたぁー……」
愛「えへへ、係の人に怒られちゃった」
雪歩「そうですね、ふふっ」
愛「……」
雪歩「……?」
愛「あ、そ、そーいえばナイト様といえばあたし、前に涼さんのストーカーをやっつけたこともあるんですよ!」
雪歩「えぇっ!? ストーカー? そ、そんなのあぶないんじゃぁ……」
愛「全然ヘーキですっ! 涼さんに何かあったら大変ですもん」
雪歩「優しいんですね、愛ちゃん」
愛「そりゃあ、仲間ですから! 涼さんのガッコーの前で張り込みして、とうとう見つけたそのアヤシイ人物をですね……」
雪歩「へぇー……そんなことが……」
雪歩(愛ちゃんってちっちゃくてまだ中学生になったばかりなのに、私なんかと違ってすっごいパワフルですぅ。スゴイなぁ)
愛「えへへ、『ありがとう、小さな騎士様』って涼さんに褒められちゃいましたっ!」
25: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 06:21:30.10 ID:VLNaZV+j0
愛「……雪歩先輩の手、冷たいですね」
雪歩「え? ……あ、そういえばまだ、手繋ぎっぱなしだったんだ」
愛「だいじょぶですか? も、もしかして風邪とか……!」
雪歩「大丈夫……ですよ。ただ平熱が低いだけだから……、それに風邪を引いてたら、逆に熱くなるだろうし」
愛「それならいーんですけど……」
雪歩「……気遣ってくれて、ありがとね、愛ちゃん」
愛「全然かまいません! あたしが付いていながら、雪歩先輩の具合を悪くさせるわけにはいきませんから!」
雪歩「えへへ……そんな風に言ってくれて、とっても嬉しいですぅ」ニコ
愛「そ、そんなこと……」
愛(雪歩先輩の笑顔って、不思議だなぁ……)
雪歩(……ちょっとずつ、敬語じゃなくして話してるんだけど……気付いてもらえてるかな?)
愛(見てるとなんか、こっちまで嬉しくなっちゃう。だ、ダメダメ、平常心平常心だよー!)
雪歩(今日で……今までよりちょっとだけでも、仲良くなれたらなぁ)
26: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 06:45:33.91 ID:VLNaZV+j0
テクテク
愛「楽しかったですね、メリーゴーラウンド!」
雪歩「うん。……愛ちゃん、つまらなくなかった? 景色を見るだけだったし……」
愛「ぜんっぜんそんなことないですよ! 雪歩先輩と一緒なら、それだけであたしは楽しいですから」
雪歩「……そ、そうなの?」
愛「はいっ! さあ、次は何に乗りましょっか?」
雪歩「あ、え、えーっとじゃあ……、コーヒーカップとかはどうかな」
愛「いいですね! よーっし、思いっきりグルグル回すぞーっ!」
雪歩「ひーん! あ、あんまりまわしすぎないでくださいぃ……」
雪歩(……ちょ、ちょっとドキドキしちゃいましたぁ。あんな風に言ってもらえて、嬉しいなぁ……って、あれ?)
携帯『好きだよ♪ 心込めて♪ 好きだよ♪ 力込めて♪』
愛「電話ですかーっ?」
雪歩「そうみたいですぅ。えーっと……あ、春香ちゃんだ」
32: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 07:34:33.50 ID:VLNaZV+j0
愛「春香さん?」
雪歩「うん。愛ちゃん、電話、出てもいいですか?」
愛「もちろん! どーぞどーぞ、遠慮しないでください」
雪歩「ごめんね、それじゃあ……」
ピッ
雪歩「もしもし、春香ちゃん? どうしたの? ……え? それって……」チラ
愛「……?」
雪歩「……うん、うん……わかりましたぁ、ちょ、ちょっと待ってて」
愛(どうしたんだろ、雪歩先輩。今あたしのこと、ちらって見たようなー?)
雪歩「愛ちゃん、ごめんなさいです……ちょっとだけ、あっち行って電話してくるね」
愛「え? ……は、はい、わかりました……」
雪歩「……お待たせ、春香ちゃん。うん、うん……それで……」テクテク
愛(え、え、あ、あたしに聞かれちゃマズイ話だったのー!?)
33: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 07:41:34.90 ID:VLNaZV+j0
愛「……」チョコン
愛(雪歩先輩が、向こうで春香さんと話してる……)
雪歩「……? ……!」コクコク
愛(どんな話してるんだろー? うぅ、気になるよー!)
愛「だ、ダメダメ! あたしが聞いちゃいけないってことは、大事なお仕事の話かもしれないしっ!」
雪歩「……」ニコニコ
愛「でも……、むむむむ……」
愛(雪歩先輩、あんなに笑顔で……さっきのあたしに見せてくれたのと、またちょっと違って……)
愛「あー、もう!! あたしったらやな奴やな奴やな奴っ!!!」
通行人「!?」ビクッ
34: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 07:49:30.85 ID:VLNaZV+j0
ザワ…… ザワ……
愛「あれ? 何人か、こっちを見てるような……」
??「あ、あの! 日高愛ちゃんですよね!?」ズイ
愛「はひ! え、えっと……、あたしのこと? そーですけど……」
ファン「やっぱり! わ、私、ずっと前から愛ちゃんのファンなんです!」
愛「あ、そーなんですか!? わぁ、ありがとうございますっ!」
愛(えへへ……こんなところでファンの人に会えるなんて! 今日はラッキーかも!)
ファン「何回かファンレター書いたり、ステージ映えするようなアクセサリー贈ったりしたんですけど……」※
愛「あ、あれ、あなたがプレゼントしてくれたんだ!」
愛「最初は神棚に飾っとこうかと思ったけど、大事に使わせてもらってるよーっ!」
ファン「キャー! 嬉しい!」
※アイマスDSではファンからアクセサリーやステージ衣装をもらって、アイドルたちは何の疑いもなくそれを身につけます
35: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 07:59:15.66 ID:VLNaZV+j0
ファン「今日はひとりでここに?」
愛「あ、えーっと、他の事務所の先輩と一緒に……あそこにいる、雪歩先輩と」
ファン「……?」
愛「あれ? いない……?」
愛(さっきまであそこで電話してたはずだったのに、いつの間にいなくなっちゃったの!?)
愛(まさか……! 涼さんみたいに、ストーカーに連れ去られた、とか!? た、大変だよー!!)
愛「ちょ、ちょっとごめんなさい! あたし、探さなきゃ!」
ファン「は、はい。あの、応援してます! 頑張ってくださいっ!」
愛「ありがとねーっ!」タタタ
愛(雪歩先輩……、どこに……!?)
36: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 08:08:29.63 ID:VLNaZV+j0
愛「はぁ、はぁ……雪歩せんぱーい……どこー……?」
愛(この辺りは一通り探したけど、全然見つからないよ……こ、こうなったら)
すぅー……
愛『雪歩せんぱーい!!!!!!!!!!』
通行人A「!!?」
―――…… ィィィイイイイン ……―――
愛『せんぱーい!!! どこですかー!!!!?』
通行人A「あれ? なにか……聞こえるような」
通行人B「み、耳がおかしい……? あれ、立ってられない……」
通行人A「あ、あ、あ……」ブクブク
―――…… ィィィイイイイン ……―――
38: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 08:14:57.84 ID:VLNaZV+j0
愛『雪歩せんぱーい!!!!!』
雪歩「あ、愛ちゃん……!」プルプル
愛『あ、雪歩先輩っ! よかった、どこ行ってたんですか、もー』
雪歩「心配かけて、ご、ごめんなさいですぅ……だからちょっと、その声を止めてぇ……!」
愛『え? あ、ああ、ごめんなさいっ」
雪歩「ふぅ……、やっと収まりましたぁ」
愛「雪歩先輩、心配しましたよっ!」
雪歩「ご、ごめんね愛ちゃん。でも、それは普通の人じゃ聞き取れない周波数だから、あんまり使っちゃダメですぅ」
愛「はい……、ごめんなさい」
雪歩「そのおかげですぐ愛ちゃんを見つけられたから、結果オーライですけど……」
雪歩「相手がアイドルのとき、そしてココ一番の決闘(オーディション)のとき以外は、ゼッタイに禁じ手ですよ」
40: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 08:38:43.11 ID:GtoFWQA1O
周波数ワロタ
42: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 08:52:28.15 ID:VLNaZV+j0
愛「……」シュン
愛(あたしったら、また雪歩先輩に迷惑かけちゃった……)
雪歩「でも、愛ちゃんに会えてよかったですぅ。もう一生会えないのかと思いました」
愛「え? そういえば、見つけられた、ってさっき言ってたけど……」
雪歩「ずっと探してたんですよ。ちょっと目を離したら、愛ちゃん、煙みたいに消えちゃってたから」
愛「ええっ!? 雪歩先輩こそ、急にどっか行っちゃって……、それであたし、いろんなところ探してたんですよっ!」
雪歩「そ、そうだったんですか? それじゃあ、入れ違いになっちゃったのかもしれないですぅ……」
愛「入れ違い……あの、雪歩先輩は、電話してるときにどこに?」
雪歩「え? えーっと……、あの、その……」
愛「?」
雪歩「そ、そうそう! 愛ちゃんがファンの人とお話してるみたいだったから、ちょっとお手洗いに……」
愛「トイレだったんですか! 雪歩先輩も、おしっことかするんですね!」
雪歩「あ、愛ちゃん! 声が大きいよ……そ、それに」
愛「あ、もしかして大きいほう……」
雪歩「違いますぅっ!! もう、アイドルがそんなこと言っちゃダメですよ……アイドルはおトイレなんかしませぇん!」
43: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 08:59:07.92 ID:VLNaZV+j0
愛「雪歩先輩、自分でお手洗いに行ったって言ったのに……」
雪歩「そ、それとこれとは……、アイドルは幻想を守らなきゃ、って律子さんが言ってたから」
愛「幻想……ですか?」
雪歩「そうです。アイドルはおしっこもしなければ……、……もしません。そういう生き物なんですぅ」
愛「そーだったんだ……、あたし、アイドルじゃなかったのかも。だって毎日、朝とお昼休みに……」
雪歩「だ、だだだダメですぅ! あわわわわ……と、とにかくっ!」
愛「とにかく?」
雪歩「……コーヒーカップ、行きましょう? 今はまだまだ、ふたりで遊べる時間はいっぱいありますから」
愛「……はいっ!」
45: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 09:18:24.02 ID:VLNaZV+j0
愛(あたしたちはそのあと、遊園地のいろんな場所を見てまわりました)
愛(あたしがコーヒーカップで頑張りすぎたせいで頭がぐるぐるになっちゃった雪歩先輩を、介護室で休ませて)
愛(一時間経ってようやく目が覚めた、まだ顔に青味の残った雪歩先輩を連れながら)
愛(自分の行いをいっぱいいっぱい反省していたあたしは、なるべくゆっくりとしたペースで雪歩先輩と歩いていたのでした)
愛(えへへ。そして今は……)
愛「……」ズーン
雪歩「あ、愛ちゃん? 元気出してください……私はもう、大丈夫だから」
愛「雪歩先輩がだいじょぶって言っても、だいじょばなくさせたのはあたしですから……」
雪歩「うぅ……、気分転換に、な、何か飲み物でも買ってきますね! 何がいいですか?」
愛「…………いちご牛乳、お願いします」
愛(実は今は、とってもとってもへこんでいるのです。理由は、コーヒーカップの件をいまだに引きずっているから)
愛(あたし、また雪歩先輩を困らせて……、うう、なんだか泣きたくなってきちゃったよ……)
46: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 09:29:36.99 ID:VLNaZV+j0
愛「ちゅーちゅー……」ゴクゴク
雪歩「いちご牛乳、おいしいですか?」
愛「はい! えへへ、あたし、これ大好きですっ!」ニパー
雪歩「……よかったですぅ。愛ちゃん、元気になったみたいで」
愛「はっ! ……あ、あたしったら……、いちご牛乳飲んだだけで、雪歩先輩にしたことを忘れちゃうなんて……!」
雪歩「あ、ちょっと、そんなのもう、気にしてないのに……」
愛「雪歩先輩が気にしてなくても、あたしは忘れないつもりだったんです! なのに……」
愛「あ、あたしなんて……三歩歩いたらモノを忘れる、ニワトリのほうがまだお利口さんなんだぁ……」
雪歩「……あ、愛ちゃん……」
愛「うぇえええん……あたしのばがばがぁ!」グスグス
雪歩「……な、泣かないでぇ……。愛ちゃんが泣いてると、なんだか私まで……」ジワ
47: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 09:37:57.30 ID:VLNaZV+j0
愛「う……」
雪歩「うぅ……!」
愛・雪歩「「うわぁあああああん……!」」
ポロポロ……
48: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 09:46:28.28 ID:VLNaZV+j0
愛(あたしと雪歩先輩は、ベンチに隣り合って座りながら、泣いちゃいました)
愛(泣き虫のふたりを、いろんな人がヘンな目で見ていたけど……)
愛(そんなこと、もうあまり気にならずに……、ただただ、何が悲しいのかも忘れて、泣いていたのです)
愛(なんだかもう……、いろんなことがだめだめでした)
愛(今日は、久しぶりに雪歩先輩と会えて、とっても嬉しいはずだったのに……)
愛(せっかく、最高の気分で、明日を迎えられると思ってたのに)
愛(……でも、やっぱり、雪歩先輩だったんです)
愛(何がというと、あたしの涙を止めてくれたのが、です)
愛(初めて出会ったときとおんなじように、雪歩先輩は、いつだってあたしのことを助けてくれるんです)
49: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 09:50:57.31 ID:VLNaZV+j0
カァ、カァ……
雪歩「……あ、愛ちゃん……」
愛「ばい゛……、なんですが……ぐす」
雪歩「あ、あのね゛……」
愛「……?」
雪歩「……ちょ、ちょっと待って」ゴシゴシ
愛「……」
雪歩「すぅ……ふぅ。もう、大丈夫」
愛(……雪歩先輩、自分で涙を……)
雪歩「愛ちゃん、ステージに行こう?」
愛「ステージ?」
雪歩「そうですぅ。もうそろそろ、始まるはずだから……」
50: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 09:57:19.96 ID:VLNaZV+j0
愛「始まる、って、何が……」
雪歩「……」
スッ
雪歩「ほら、私の手を握って?」
愛「手……」
雪歩「愛ちゃんが、自分で立てないなら……、私が連れてってあげるね」
愛「……」
雪歩「きっと、楽しくて、嬉しいことが待ってるから。私、愛ちゃんにその景色を……、見せてあげたいんだ」
愛「雪歩先輩……」
愛(……気が付いたら、雪歩先輩は、あたしに対して敬語じゃなくて……)
愛(落ち込みがちな、いつもの雪歩先輩と違って……、ステージの上に立っているときみたいな、とっても強い目をしていました)
54: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 10:28:21.63 ID:VLNaZV+j0
―――
――
―
ザワザワ…… ザワザワ……
愛「な、なにこれ!? こんなにいっぱいの人が……」
雪歩「えへへ、遊園地にいた人みーんな、このステージに来てるんだよ」
愛「すごい……、立ってる人も、こんなにたくさん。あたしがライブしても、こんなにたくさん集まらないかも」
雪歩「……そんなことないよ、愛ちゃん。だって、ここにいる人たちは、みんな……のために」
愛「え? なにか言いましたか、雪歩先輩?」
雪歩「……ううん、なんでもないですぅ!」
55: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 10:33:14.12 ID:VLNaZV+j0
愛「? ……あれ、なんか、こっちに向かってくる人が……」
??「おぉ、いたいた! ようやく来たな、雪歩!」
雪歩「……! プロデューサー!」
P「遅かったな。もうみんな、準備出来てるぞ」
雪歩「ご、ごめんなさいですぅ。ちょっとトラぶっちゃって……」
P「……何があったかわからないが、ちゃんと来てくれたから問題ないな」
P「ほら、これが今日のセットリストだ」スッ
雪歩「はい……」ジー
P「……いけるな?」
雪歩「ばっちりですぅ! それじゃ、私は……」
愛「ゆ、雪歩先輩! ちょっと、何がなんやら、なにもわかんないんですけどーっ!」
58: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 10:37:40.24 ID:VLNaZV+j0
雪歩「愛ちゃん……それはね、今日は……」
P「っと、雪歩、話してる暇はないぞ。この子には俺が話しておくから、メイクしてこい」
雪歩「……わかりました!」
愛(メイク? セットリスト? それって……)
タタタ……クルッ
雪歩「愛ちゃん……、最後に、これだけは、言っておくねっ!」
愛「は、はい!」
雪歩「あのとき愛ちゃんが私に言ってくれたこと、お返ししますぅ!」
愛「あのとき……?」
雪歩「……愛ちゃん! 今日は、めいっぱい! めいっぱい楽しもうねっ!」
59: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 10:44:34.87 ID:VLNaZV+j0
タッタッタ……
愛「……」ポカーン
P「……ごほん! えー、君が、876プロの日高愛ちゃん、だね?」
愛「あ、はい。えっと、あなたは……」
P「俺は、765プロダクションのプロデューサーだよ。今日は来てくれてありがとう」
愛「プロデューサーさん? 雪歩先輩の?」
P「雪歩の、ってだけじゃないが……まあ、俺のことはどうでもいいんだよ」
P「今日は、君のお母さんのおかげで、こんなに素晴らしい舞台を用意することができた。ありがとうな」
愛「舞台って、ことは……今日はやっぱりここで……」
P「ああ、ライブをやる。でも……、ただのライブじゃないぞ」
愛「それって……
ピンポンパンポーン
小鳥『えー、マイクテスマイクテス……、本日はお日柄もよく……』
律子『ちょっと小鳥さん! そんなのどーでもいいですから、始めてください!』
60: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 10:50:52.52 ID:VLNaZV+j0
小鳥『あら、そう? ……それじゃあ、春香ちゃん! ちゃちゃっとやっちゃってー♪』
春香『はーいっ!』
愛「春香さんっ!?」
P(音無さん、利益度外視だからって適当にやってるな……)
愛「あ、あの! これって、なんなんですかーっ!?」
P「ん、ああ……もう説明してる暇もないな。まぁ、あとでいろんな人から説明聞くと思うから、とりあえず今は楽しんでくれ」
愛「そんなこと言ってm
春香『会場のみなさーん!! こーんばーんわー!!!』
コンバンワー!!!
春香『今日は急だったのに、集まってくれてありがとねーっ!!!』
62: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 10:56:17.49 ID:VLNaZV+j0
真『お待たせしちゃってごめーん! さあ、いよいよ始めるよーっ!』
春香・真『『765プロダクション……プラス!』』
涼・絵理『『876プロダクションオールスターズの、ゲリラライブっ!!』』
真『題して……!』
たったったった……
63: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 11:01:37.06 ID:VLNaZV+j0
雪歩『ま、間に合いましたぁ! ……いぇええええーい!!』
キーン! イエェエエイ!!
真『ゆ、雪歩! それまだ違うって! ライブのタイトルコールして!』
雪歩『あ、あわわわ……ご、ごめんなさいですぅ!』
P「ははは……」
愛「雪歩先輩っ!?」
雪歩『え、えっと! 改めて、題しまして……、すぅー……』
『THE 愛!』
雪歩『……愛ちゃん! お誕生日、おめでとう!!!』
64: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 11:11:07.55 ID:VLNaZV+j0
愛「……!」
真『へへーん! 今日は日曜日だから、本当の誕生日は明日。だからちょっとフライングだけど……ま、いいよねっ!』
春香『急だったからねー。舞さんが、なんでもかんでもどんどん進めていっちゃうんだもん』
絵理『本当は……わたしのライブ?』
涼『え、絵理ちゃん。それにみなさんも……、身内にしか通じないこと、言っちゃダメですよ』
真『涼、そんなこと言ったら、愛の誕生日ライブってことですでに身内ネタじゃない?』
春香『わ! 真、するどいね! あはは!』
涼『うぅ……、胃が痛くなってきた……』
雪歩『だ、大丈夫ですかぁ……?』
涼『はは……大丈夫です。それより雪歩さん、一曲目一曲目』
雪歩『はぅっ! そそそそうでした! えーっと確か最初の曲は……』
P(あいつら好き勝手やりすぎじゃないですかね)ビキビキ
愛「みなさん……! これ、あたしのために……!?」
65: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 11:23:37.10 ID:VLNaZV+j0
雪歩『改めて……』
雪歩『愛ちゃん、お誕生日おめでとう』
パチパチパチ……!
ワーワー! オメデトーアイチャーン!
愛「雪歩先輩……、それに、会場にいるみんなも……」
P「みんな、君の誕生日を祝うために集まってくれたんだよ」
愛「でも、どうやって? これだけの人集めるなんて……あたし、全然気付かなかったし」
P「君の様子は逐一雪歩から連絡受けてたからな。765プロのスタッフ総出で、その隙を縫ったのさ」
P「……本当は雪歩とふたりで遊ぶはずだったんだろ? 無理言って、巻き込んだことはすまなかった」
愛「い、いえいえ! そんなこと……とっても、嬉しいでs
雪歩『いぇえええええい!!!』キーン
愛「!?」
雪歩『こ、今度はちゃんと出来ましたぁ! ……この会場のどこかにいる、あなたのために、歌いますぅ!』
雪歩『一曲目は……、“ALRIGHT*”!!』
66: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 11:30:44.48 ID:VLNaZV+j0
~♪
READY SET GO!!
行きたいトコ 行ってみようよ
歩いたり 走ったり 休んだりして
READY BOY GIRL?
やりたいコトやってみようよ
目指して 追いかけて 自分信じて……
愛「雪歩先輩……、かっこいい……! やっぱり雪歩先輩、あたしの……!」
P(……雪歩は、良い後輩を持ったみたいだな……)
~♪
ALRIGHT*
今日が笑えたら
ALRIGHT*
明日はきっと幸せ
大丈夫!!
どこまでだって
さあ 出発オーライ
68: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 11:41:45.83 ID:VLNaZV+j0
雪歩『どこまでだって さあ出発 オーライ♪』
パチパチパチ……
……~♪
ウォオオオ……!
愛「……! この曲って……」
~♪
今 目指してく 私だけのストーリー
BRAND NEW TOUCH 始めよう
SAY “HELLO!!”
絵理『涼さん……いい?』
涼『もっちろん! い、っせーの!』
涼・絵理『……ハッピーバースディ!! 愛ちゃん!!!』
70: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 11:48:56.58 ID:VLNaZV+j0
愛「涼さん……、絵理さん……! うぅ、ありがとう……!」ジワァ
舞「愛、楽しんでるー?」
愛「もっちろん! こんなライブ初めて……って、ママっ!?」
舞「そう、私よ」
P「……お疲れ様です、舞さん」
舞「ほんとよもー。まなみなんて、私がやるはずだった雑務をちょっとやっただけで倒れちゃったんだから」
愛「ちょ、ちょっと! ママのおかげでライブできた、とか聞いたけど、どういうことっ!?」
舞「ああ、それはね……コレよ」スッ
愛「え? 人差し指と、親指で○を作って……って、それ」
舞「ハッハー! お金よ! 今回のライブ、スポンサーとプロデューサーはぜーんぶ私なわけ!」
愛「えぇえええ!!?」
舞「ビックリしたでしょう! どうだ、参ったか! あははは!!」
P(こ、これがあの伝説のアイドルなのか……)
73: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 12:23:06.35 ID:VLNaZV+j0
舞「……涼さんや絵理さん、あたしと違ってスゴ過ぎて、テンション下がっちゃうんだもん!」キャピ
愛「…………なにそれ」
舞「昼間、あんたが言ってた台詞のマネだけど。きゃっぴぴぴ~ん!」
愛「やめてよっ! そんなの全っ然、似てないもん! オバサンが無理すんなーっ!」
舞「ああ?」ギロ
愛「ひぅっ! ……ま、負けないもん! ぐるるるる……」
舞「ったく、私はまだおねえさん、でしょうが。……そんなことより、愛?」
愛「……なーに?」
舞「アレを見ても、まだテンション下がる、って言えるわけ?」
愛「……」
75: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 12:31:02.16 ID:VLNaZV+j0
~♪
今 咲き誇る芽生えた蕾
根を張って 胸張って
ねえいくつも実らせよう
涼『抱きしめる 私と言うヒストリ~♪』
絵理『BRAND NEW TOUCH 始めよう♪』
涼・絵理『『SAY “HELLO!!”』』
~♪
愛「……い、」
愛・涼・絵理「『『いっせーのっ!』』」
76: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 12:34:31.67 ID:VLNaZV+j0
舞「……」
愛「……そんなわけ、ないじゃん……」
舞「何が、そんなわけないの?」
愛「あんなに輝いてる、涼さんや絵理さんを見て、テンションが下がるわけないもん! ……あ、あたしも……!」
愛「……あたしも……、あの場所へ……!」
愛「きらめく舞台(ステージ)に、私も立ちたい!」
78: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 12:41:37.73 ID:VLNaZV+j0
P「その言葉が聞きたかった」
愛「え?」
舞「さあ、行ってらっしゃいっ!」
トンッ
愛「え、え?」
バンッ! ピカー……
愛「ま、眩しい……っ!」
涼『あ! 愛ちゃん、やっと来るみたいだよ!』
絵理『ふふ、ちょっと……遅刻?』
涼『ギリギリセーフ、じゃない? さあ愛ちゃん、早くっ!』
愛「……! は、はいっ! 涼さん、絵理さん!」
79: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 12:46:50.82 ID:VLNaZV+j0
タッタッタッタ……
愛(スポットライトに照らされながら、あたしは走りました)
愛(涼さんや、絵理さん……春香さんに真さん、そして……)
愛(雪歩先輩の待つ、ステージへ……!)
小鳥「さ、こっちよ!」ガシッ
愛「え、え、ちょ! あなた誰ですかっ!? せっかく今良い感じで走ってたのにーっ!」
小鳥「私服のまんまステージに上がるわけにはいかないでしょ?」
律子「さー、行くわよ! 40秒で着替えさせてあげるからねっ!」
愛「あー…… れー……」
80: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 12:51:44.46 ID:VLNaZV+j0
~♪
ポイッ トタタタ……
愛「はぁ、はぁ……お、お待たせしました」
涼「大丈夫?」
絵理「息……上がってる」
愛「ぜ、ぜんぜんヘッチャラですっ! それより、さっそく……」
涼「……そうだね! もうずっと間奏やってもらってるし」
絵理「じゃあ、改めて……!」
愛・涼・絵理『『『……いっせーのっ!!!』』』
83: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 12:55:16.01 ID:VLNaZV+j0
~♪
“HELLO!!”
いってみよう みんな一緒にSTEP
転んでも 挫いても
OK信じれば大丈夫!!
どこまでも 続いてゆくストーリー
BRAND NEW TOUCH 始めよう
SAY “HELLO!!”
~♪
涼『BRAND NEW達♪』
絵理『始まりは そう♪』
愛『“HELLO!!”』
84: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 12:58:57.29 ID:VLNaZV+j0
愛(そのあとも、何時間もライブは続き……)
愛(最後のアンコールに、みなさんで“THE 愛”を歌ってもらって……)
愛(あたしの、一生忘れられそうにない誕生日ライブは、終わりました)
86: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 13:11:01.14 ID:VLNaZV+j0
―――
――
―
絵理「本当は今日、わたしがあそこでライブをするはずだったの」
愛「え!? そ、そーだったんですか?」
絵理「うん。でも、今日急に舞さんから事務所に連絡があって。それであれよあれよという間に……予定変更?」
涼「あはは、舞さんのバイタリティはすごいよね。僕も今日、実はさっきまで違うところで仕事をしてたんだ」
愛「そんな……じゃあおふたりは、今日のことを……」
涼「うん、知らなかった! というか、舞さんがこれ思いついたのが、今日だったらしいしね」
愛(あ、そういえばそんなこと言ってたかも……)
絵理「……愛ちゃん、お誕生日、おめでとう。これ……プレゼントだよ」スッ
涼「僕からは、これ。愛ちゃん、これからもよろしくね!」スッ
愛「涼さん、絵理さん……、うぅ……、ありがどうございまず……!」グスッ
87: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 13:15:08.05 ID:VLNaZV+j0
愛「あれ、でも……知らなかったなら、なんでプレゼントを持ってこれたんですか?」
涼「ああ、それは……あの人が、わざわざここまで届けてくれて」
絵理「……」チラ
まなみ「」チーン
絵理「……完全燃焼?」
愛「な、なるほど……」
涼「まなみさんも、舞さんや765プロのプロデューサーさんにいろいろ頼まれたみたいで……すっごい頑張ってくれたみたいだね」
88: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 13:22:03.31 ID:VLNaZV+j0
愛「ありがとうございます、まなみさん……なんまいだぶなんまいだぶ」パンッ
涼「あ、愛ちゃん! まだ死んでないよ!」
絵理「……たぶん?」
石川「……」
高木「どうしたのかね?」
石川「いえ……あの子も強くなったんだな、って思いまして」
高木「強く……、とは?」
石川「……まなみがうちを辞めたとき、愛は……、しばらく立ち直れてなかったんです」
石川「何日も泣きつづけて、仕事も休んで……。きっと、とても強くまなみに依存していたんでしょうね」
高木「ふむ……そんなことが」
石川「ええ。でも……貴方のところに所属する、あるアイドルが……愛を救ってくれたみたいなんです」
89: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 13:30:03.63 ID:VLNaZV+j0
高木「私も、そのことは彼女から少しだけ聞いているよ。そのアイドルの名前は……」
石川「……ふふ、噂をすれば……」
涼「……あ」チラ
絵理「もうそろそろ、わたしたちは……退散しなきゃいけないみたいだね」
涼「そうだね。あとは、あの人に任せよっか」
愛「え? どうしたんですか、涼さん、絵理さん」
涼「それじゃあ愛ちゃん! また明日、月曜日に事務所でね!」
絵理「ばいばい」トコトコ
愛「え、えー!? そんな急に……」
涼「あ、最後に愛ちゃん! うしろを見て!」
愛「うしろ? えーっと……」
クルリ
90: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 13:30:49.24 ID:VLNaZV+j0
雪歩「……愛ちゃん」
愛「雪歩先輩……!」
94: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 13:55:27.91 ID:VLNaZV+j0
―――
――
―
ザァ…… サァ……
愛「……まっくらですね」
雪歩「うう……、ちょ、ちょっと怖いですぅ……。お化けが出るかも……」
愛「だいじょぶです! お化けなんか出たって、あたしがランクDちょっぷをお見舞いして追い払ってみせますっ!」
雪歩「ありがとうございます、愛ちゃん……でも、もうランクDじゃないですよね?」
愛「あ、そういえばそーでしたっ! えへへ……」
雪歩「……お化けに、ちょっぷは効くのかなぁ」
愛「どうなんでしょう……ポ○モンみたいに、格闘タイプの技は効かないかも」
95: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 13:59:51.67 ID:VLNaZV+j0
愛(なーんて、他愛のない話をしながら、あたしと雪歩先輩は真っ暗な道を歩いていました)
愛(雪歩先輩が、あたしをお家まで送ってくれるって言ってくれたんです! もうカンゲキで!)
愛(……でも……)
愛(なんとなく……、カクシンをつかない、適当な話題しか、あたしは広げられないでいたのでした……)
雪歩「……」
愛「……」ムズムズ
愛(気まずいよーーーーー!!)
97: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 14:08:20.27 ID:VLNaZV+j0
雪歩「……ありがとう、ありがとう……愛をありがとう♪」
愛「え? な、なにかお礼言われるようなことしましたかーっ?」
雪歩「ううん、これは“THE 愛”ですぅ。みんなで、最後に歌った曲……」
愛「……」カァァ
愛(恥ずかしいよーーーー!!)
愛「あたしったらまた勝手に勘違いしちゃって……もう、バカバカ」ブツブツ
雪歩「レッツゴー愛がある世界♪ レッツゴー愛らしい世界♪ ……ふふ、ふふふ♪」
愛「……」
愛(こんなときになっても、あたしは相変わらずバカだけど……でも)
愛(雪歩先輩が、笑ってくれるなら……もうなんでも、いいかな)
98: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 14:19:52.30 ID:VLNaZV+j0
かち、かち……
雪歩「~♪」
愛「……」
愛(……雪歩先輩、さっきから歌ってばっかで、あたしのこと見えてないのかなーっ?)
雪歩「……~♪」チラ
愛(そうだよね、さっきのライブ、すっごい楽しかったもん)
愛(あたしの誕生日かどうかは関係なく、雪歩先輩はそのヨインに浸ってるんだ……うぅ)
愛「……」ジワァ
雪歩「……全員集合 手と手繋いで♪」
愛(……足と足揃えて 初めの一歩……)
愛(頭の中で、一緒に歌うことしか、あたしには出来ないよ……う、うぅ)
99: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 14:24:02.21 ID:VLNaZV+j0
かち!
ボーン ボーン……
愛「え?」
愛(日付が変わって、あそこに立ってる時計が鳴ってるんだ)
愛「……ってことは、今この瞬間にあたしは……」
雪歩「……~♪」
~♪
おめでとう おめでとう
愛が生まれる
おめでとう おめでとう
HAPPY BIRTHDAY
100: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 14:26:58.64 ID:VLNaZV+j0
愛「!」
雪歩「……愛ちゃん、お誕生日おめでとう」
愛「ゆ、雪歩先輩!」
雪歩「えへへ……タイミングぴったりですぅ!」
愛「た、タイミングって……」
雪歩「今日、この日に……、世界でいちばん最初に、愛ちゃんにおめでとう、って言うことができましたぁ」
102: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 14:42:14.42 ID:VLNaZV+j0
愛「……」
雪歩「あ、あれ……愛ちゃん?」
愛「…………」
雪歩「ど、どうしよう、愛ちゃんの顔がひょっとこみたいですぅ! こ、これはひょっとして……」
愛「………………」
雪歩「ひぃーん! す、すすすすべっちゃいましたぁ……! あわわわわ……!」
愛「…………ぷ」
雪歩「うぅ……、せっかく、良いアイディアだと思って……、や、やっぱりこんな私なんて……」
雪歩「徹夜で考えたネタも受け入れてもらえない、こんなセンスのかけらもない私なんて……!」
愛「……ぷぷ。ゆ、雪歩先輩……べ、べつにすべったわけじゃ……」
雪歩「穴掘って、そのへんに埋まってきますぅーー!!!!!」タタタ
愛「ちょ、ちょっと、雪歩先輩っ!? 帰ってきてくださーいっ!!」
103: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 14:49:18.09 ID:VLNaZV+j0
タッタッタッタ……
愛「ま、待ってください! このーっ!」ガシッ
雪歩「はぅっ!」
愛「……や、やっと捕まえた……ぜぇ、ぜぇ」
雪歩「捕獲されちゃいましたぁ……うぅ」
愛「……」
雪歩「愛ちゃん……、その、ごめんなさいですぅ。さっきのあんまり、良くなかったですか? そうですよね……」
愛「……そんなこと、ないです。とっても……とっても、嬉しかったもん」
雪歩「ほ、ほんとう?」
愛「ほんともほんとですっ! あんな風に、おめでとうって言われたのなんて……きっと初めてです」
104: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 14:55:12.82 ID:VLNaZV+j0
ぎゅー
愛「雪歩先輩……、あたし、雪歩先輩のこと、だいすきです」
雪歩「!?」
愛「雪歩先輩は、頼りになるし、かっこいいし……あたしの憧れですっ! それで……」
雪歩「あ、あ、うん……そういう意味……、そ、そうですよね」
愛「?」
雪歩「なんでもないですぅ……えっと、それで……」
愛「それで……、あれ? な、なんて言おうとしてたんだっけ……」
雪歩「……?」
愛(忘れちゃったよーーーー!!! あたしのバカバカバカ!!!)プルプル
雪歩「あ、愛ちゃん?」
愛「うぅ……もっといろんな言葉をつかって、ありがとうって言おうとしたのにー! うわぁああーん!!!」
105: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 15:00:51.93 ID:VLNaZV+j0
雪歩「……えへへ」
愛「うわああああああん!!! やっぱりあたし、バカなんだーー!!!」
雪歩「愛ちゃん……、泣かないで」
ぎゅーっ!
愛「んぎゅっ」
雪歩「……その気持ちだけで、十分だよ。言葉なんか、いらない」
愛「ゆ、雪歩先輩……」
ぎゅー……
雪歩「……私も、愛ちゃんのこと、だいすきだよ」
106: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 15:08:27.38 ID:VLNaZV+j0
愛(雪歩先輩に優しく包まれながら、あたしは、こんなことを思っていました)
愛(……もう、泣き虫と弱気と……、お別れしちゃったはずなのに)
愛(雪歩先輩に、抱きしめられて、とっても嬉しいはずなのに……)
愛「うぇええ……! わかんない、わかんないよー……!」
雪歩「……なにがわかんないの?」
愛「おかしいんです……涙が、嬉しいのに、止まらないよ……!」
ポロポロ……
107: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 15:13:47.26 ID:VLNaZV+j0
愛「雪歩先輩……、だいすきです……!」
雪歩「私もだよ。……何度も、何度だって、言えるよ」
雪歩「……愛ちゃん、だいすき」
雪歩「愛ちゃんと知り合ってから、これが最初の誕生日だったから……こうやって、一緒に過ごせたこと、とって嬉しいですぅ」
愛「あ、あだじもぉおおお……嬉しいでずぅ」
雪歩「こんな私と仲良くなってくれて、ありがとう。……一緒に頑張ったこと、一生忘れない……」
愛「ゆぎほぜんばーい゛ぃいい……!」ボロボロ
雪歩「だいすき……、愛ちゃん……!」
愛(こうして、涙でぼろぼろになりながら……)
愛(あたしの、十四回目の誕生日は、最高の思い出と一緒に、始まったのでした)
108: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 15:19:47.80 ID:VLNaZV+j0
―――
――
―
愛「ごく、ごく……ぷはぁ! ってことがあってね! もーすっごいでしょ!?」
舞「あー……うん、良かったわねぇ」
愛「もう最高の誕生日って感じ! 今までにないし、これから先もないんだからーっ!」
舞「さっきから何度目よ、それ……で、次はこう言うんでしょ?」
愛・舞「「ママ、お茶淹れてーっ!」」
愛「はっ!? むむむ……ママ、もしかしてエスパー!?」
舞「フフフ、愛のことならなんでもわかるわよ? でももう、お茶はやめときなさい」
愛「えー、なんでー? せっかく雪歩先輩にプレゼントしてもらったのに……」
舞「いま何時だと思ってんのよ! 愛、あんた明日起きれなくなるわよっ!」
愛「ぶー……」ギンギン
109: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 15:25:42.56 ID:VLNaZV+j0
―――
――
―
舞「ちゃんと休むのよ? 誕生日だからって、仕事は休めないんだから。むしろ忙しくなるのがアイドルよ」
愛「はーい」
舞「……それじゃ、おやすみ……」
ガチャ……バタン
愛「……」
愛(……えへへ。あんまり、眠れないかも)
愛(お茶のかふぇいんのせいとか、そういうんじゃなくて……)
愛(嬉しいことが、いっぱいで……ドキドキ、わくわくして、眠れない)
愛「明日は、どんな良いことがあるかなぁ……えへへ」
110: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 15:28:41.05 ID:VLNaZV+j0
愛(……それでも、寝なきゃだよね。だって、私はアイドル、なんだから……)
愛「雪歩先輩……あたし、もっともっと頑張って、それで……いつか、きっと……」
愛「ゆきこせんぱい……みたい……に……」
ガチャリ
舞「……」ソー
愛「……zzz……」
舞「よしよし、ちゃんと寝た……、わね」
ガチャ……バタン
ソロリソロリ
112: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 15:32:18.87 ID:VLNaZV+j0
舞「……雪歩先輩、雪歩先輩、か……」
舞(なんだかちょっと……、妬けちゃうかも)
舞「……」ナデナデ
愛「うーん……むにゃむにゃ」
舞「ふふっ、可愛い寝顔しちゃって。さすが、私の娘ね」
舞(……この子がアイドルになったら、きっと……私を目標にする、って思ってたんだけど……)
舞(いまはとっても良い時代ね、愛。私のときとは違って……目標も、ライバルも、たくさんいる)
113: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 15:36:05.27 ID:VLNaZV+j0
舞「……あーあ。なんか、生まれる時代、間違ったかなぁ」
舞「つまんないつまんない、つまんないのー。愛も、近頃忙しいしー」プニプニ
愛「うぅーん……うるしゃい……zzz」
舞「おっと……」
愛「あたし、アイドルに……ママ……」
舞「……」
舞「そうだわ」ティン
114: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 15:44:12.59 ID:VLNaZV+j0
舞「そうね、これだわ……。もう一度まなみに頼んで、それで……フフフ」
愛「……zzz……」
舞「ふふ、ふふふ♪ なんだか楽しくなってきちゃった! 愛、覚悟しときなさいよね!」
舞「今度は、ほんとのほんとに、本気でステージに立ってあげる」
舞「前みたいに、ちょこちょこ手を抜いたりしないわよ……ふふふ」
舞「それが……私からの、本当の誕生日プレゼント! まずはそうね……前みたいに、ゆっきーから倒す?」
舞「……ゆっきーなんかには、負けないんだから」
舞「最高の誕生日は、この子が生まれた、あの瞬間なのよ! それを教えてあげるわ……ふふふ!」
舞「……愛、お誕生日、おめでとう。明日プレゼントが届くのを、楽しみにしててね♪」
おわり
116: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 15:51:22.66 ID:VLNaZV+j0
読んでくれた人ありがとうございました
愛ちゃん、お誕生日おめでとう!
愛ちゃん、お誕生日おめでとう!
117: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 15:52:56.84 ID:m9a+/en90
おつ
118: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 16:02:42.66 ID:LYaNzy0C0
乙
愛ちゃん誕生日おめでとう
愛ちゃん誕生日おめでとう
119: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/06/25(月) 16:21:36.68 ID:bTuDK8J+0
乙!
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